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別に新ジャンルじゃない「ひょんなことから女の子」Part4 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2011/04/17(日) 23:55:06.63 ID:ZcoMrkbn0
ここは「ひょんなことから女の子」スレ Part4です。

誰かが女の子になったり、何かが女の子になったりしています。
デフォのキャラがいないので、自由にキャラを作って下さい。
別に新ジャンルじゃないし既出も上等。何でも自由、ただし節度を持って。
あなたも「ひょんなの子」を妄想してみませんか?

・過度のリアル報告・自虐、自動保守は避けましょう。
・書きたければ迷わず書こう。長編でもSSでも何でもおk。
・投下する時はコテや作品名をつけるとまとめやすいです。

Part1 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1177071350/
Part2 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1213089411/
Part3 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1259406114/
まとめwiki http://www12.atwiki.jp/hyon/
避難所 http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/computer/31732/

ということでおねがいします。どしどし投下おk。

※パー速から移転しました※
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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714054765/

渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714052788/

二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714049241/

佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/

2 : ◆/ShBG.hvjg :2011/04/18(月) 00:03:07.96 ID:oo+QBWM9o
移転記念で新しい話をどーん
週1回、日曜日前後に不定休で投下していきます
3 : ◆/ShBG.hvjg :2011/04/18(月) 00:04:55.84 ID:oo+QBWM9o
健二「おいっ、おまえ……」
女子「なに?」(ニコ
健二「ごめん!間違えた(気のせいか…?)」
女子「じゃあね、健二君」(タッタッタッ
健二「え!?なんで俺の名前――行ってしまった…」
健二「げ、はやく教室に行かないと遅刻してしまう!」

キーンコーンカーン♪キーンコーンカーン♪
健二「セーッフ。さっきの女子なんだったんだろうなあ、見たことある気が…」(ガヤガヤ
友男「おい健二、遅かったな。今日転校生来るらしいぞwwww」(ガヤガヤ
健二「まじかよwwwwww」(ガヤガヤ
先生「おまえらー席着けー」(ガヤガヤ
先生「静かにせいっ」(シーン…
先生「転校生がこのクラスに入ることになったので紹介する。入りなさい」

女子「(ガラッ スタスタスタ ペコリ)」(オーーーッ!
先生「自己紹介を」
女子「はじめまして。水野千明ですっ」(オーーーッ!
健二「!!!!?」
先生「斉藤…斉藤健二の横が空いてるな。そこが水野君の席だ」(オーーーッ!
先生「さて授業始めるぞ、静かにせいっ」(シーン…
4 : ◆/ShBG.hvjg :2011/04/18(月) 00:06:42.52 ID:oo+QBWM9o
キーンコーンカーン♪キーンコーンカーン♪
先生「今日はここまで。21ページ中段まで予習してくるように」(ガヤガヤ
男達「はじm「やあ、俺田中。よr「俺は谷口っていいまs「俺も俺も」」」」(ガヤガヤ
千明「あはは。みんな、よろしくね」
健二「ジー…」
千明「チラッ(なんか怒ってる…?ww)」

友男「あれ?健二、さっそく千明ちゃんがお気に入り?」
健二「ビクッ!な、お前居たのか。そんなんじゃねーって!」
千明「ねえ、斉藤君っ」
健二「ドキッ!なんだいきなり話しかけてくんなよ!」
男達「ナンダナンダ」友男「オイオイどういうことだよ」

健二「(こいつ…)」
千明「ねえ、ちょっと付き合ってくれる?」
男達「告白キタ━━━(Д゚(○=(゚∀゚)=○)Д゚)━━━!!」
健二「意味ちげえだろ!!!」
千明「(///)」
健二「おまえも顔赤くしてんじゃねえ!」
5 : ◆/ShBG.hvjg :2011/04/18(月) 00:08:10.28 ID:oo+QBWM9o
(タッタッタッ…キュッ…タッタッタッ
健二「ふぅ。やっとまけた」
千明「健二くん、そろそろ手、放して…」
健二「ご、ごめん(///)」(バッ

健二「じゃ、なくて!お…おまえ、千明なんだろ!?」
千明「さっき紹介したとおり、私の名前は千明だけど?」(ニコッ
健二「誤魔化すな!おまえは、男だったはずだ!」
千明「……」
健二「見間違うはずがねえ。お前は、俺の幼馴染みの千明だ」

千明「………なんで、ボクから話そうと声かけたのに先言っちゃうかなあ」
健二「やっぱり。なにが、どうして、そんな格好してるんだよ?」
千明「まあ、まあ、落ち着いて」(ポンポン
健二「お、おう…(顔は元々女顔な千明だけど見た目…体つきも女の子だよな)」

千明「ボク、こう見えても女なんだ」
健二「いや見たまんまそうだよな。って、え!?」
千明「『男じゃなかったのか?』って聞きたいよねえ」
健二「(コクリ)」
千明「こっちがききてえよ!」
健二「えっ」
6 : ◆/ShBG.hvjg :2011/04/18(月) 00:09:36.79 ID:oo+QBWM9o
千明「コホン…1ヶ月前までは確かに男だった。でもね…」
健二「(さっきちょっと素が出てた…)」
千明「ひょんな事から女の子になっちゃったんだよ!」
健二「……ひょんな事ってなんだよ?」
千明「わかんない。手術とかそういうのじゃないよ。朝起きたら突然って感じね」
健二「マジかよ」
千明「大マジ。で、これまでの学校居られなくなって故郷に戻ってきたわけ」

健二「(話し方がやっぱり千明だ。でも…本当に女になっちゃったのか…?)」(ジー
千明「『本当に女なのか確かめたい』って目だよねえ」
健二「(コクリ)」
千明「いやん、えっち!(///)」
健二「なっ。ばっ馬鹿、変な意味じゃなくて、…いやお前元々男だろ!」

千明「でも…あたし…女の子だよ?」
健二「ゴクリ」
千明「やーらーしー」
健二「やらしいのはお前だっ!」
7 : ◆/ShBG.hvjg :2011/04/18(月) 00:10:29.28 ID:oo+QBWM9o
千明「触ってみる?」
健二「……ゴクッ」

友男「いたぞっ!」(ダッダッダッ
男達「「「「友男GJ!確保しろ!」」」」(ドドドドドド
友男「ハモんな気持ち悪りぃ!」(ダッダッダッ

千明「あっ…」
健二「げっ…」

千明「逃げよっか」
健二「そうだな」

健二「(俺…これからどうなっちゃうんだろう……)」(タッタッタッ…
千明「♪」

つづく
8 : ◆/ShBG.hvjg :2011/04/18(月) 00:11:08.45 ID:oo+QBWM9o
というわけで、過疎が続くひょんな子スレの移転を機に新しい話はじめましたー
例によって最後まで続くかわかんないけどよろしくおねがいしますー
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) :2011/04/18(月) 00:14:04.98 ID:w7GeF4Nh0
乙!
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [↓]:2011/04/18(月) 17:28:04.39 ID:4Tu2KgNP0
乙!
頑張れ。
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/18(月) 21:58:49.82 ID:8JqqB2ZGo
移転と投下乙!
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/24(日) 00:26:19.39 ID:QKZ48EtIO
派手に転んだ。

学校からのいつもと同じ帰り道、何もない、しいて上げるなら緩やかな坂道くらいしかない道を歩いていたらすっ転んだ。

まぁ見てるヤツといったら隣を歩いていた幼馴染しかいないからいいんだけどさ。

「ははは、大丈夫?」

…笑いたくなるのはわかるが耐えろよ、っと心の中で毒を吐く。笑われた礼に今度コイツが大切にしてるZZRにポケモンのシールでも貼ってやろうか?フルフェイスにホモと油性ペンで書いてやろうか。

「ほら、いつまで寝転んでだよ。ケガしてねぇよな?手、出せよ」

あぁ、とうなづき手を掴んで立ち上がる。ん?

何故か男の幼馴染のハズのコイツの胸が膨らんでた。さっきまでは普通だったのに。

「なしたよ?変なツラして」

顔も微妙に違っている、もともと整っていた顔立ちなんだが、少し丸みを帯び、全体的に柔らかくなっているが、長い髪と少し剣呑な目つきが合わさりキツメの美人といった感じだ。

ふむ…困った。どうやら夢をみてるらしい。

「手、いつまで掴んでんだよ?」
悪い、少し驚いてな。
「あ?」
気にするな

どうやらコイツは自分の変化に気付いてないみたいだ。つねってみるか。

「痛い…何をする」
ごめん、ほんの出来心なんだ。いた、痛いって。

なるほど、夢じゃない。こんなの絶対おかしいよ。つかほっぺた柔らかいな。

そうか、幼馴染の外見が変わったわけではなく、俺の視神経がやられたのかもしれないな。

可能性は高い、幼馴染が男から女に変わったわけではなく俺が、頭をぶつけた事で幼馴染を男ではなく女と認識するようになった。

困ったね、コレは。
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) :2011/04/25(月) 00:05:50.92 ID:JLFw7UNL0
続きwktk
14 : ◆/ShBG.hvjg :2011/04/25(月) 00:28:36.63 ID:aSx54SNBo
2話投下しますー。>>12新しい人かな?wwktk!

これまでのお話
01[11/04/18] >>3-7
15 : ◆/ShBG.hvjg :2011/04/25(月) 00:29:19.89 ID:aSx54SNBo
友男「どういう訳か教えて貰おうか」
健二「フン、お前は薄情な奴だな。こいつ俺ん家の隣に住んでたの覚えてないか?」(ズイッ
千明「ちょちょと押さないでっ」
友男「んー?」(ジーッ
千明「じーっ…」

友男「すまん。全然思い出せない。てか俺ら小さい頃から遊んでた中に女の子居なかったろ?」
健二「やれやれ、仕方ないか。千明は幼稚園入る前に引っ越して行ったからな」
友男「あーもう全然わかんねえ!なんでお前だけ覚えてんだよ」

健二「家族ぐるみの付き合いが続いてるからな。半年前会ったばっかりだし…あれ?」
千明「ん?」
健二「なんで引っ越してくるって連絡くれなかったんだよ?」
千明「!」
16 : ◆/ShBG.hvjg :2011/04/25(月) 00:30:00.24 ID:aSx54SNBo
友男「そういえば千明ちゃんはなんで転校する事になったの?」
男達「聞きたい」(ザッ)「聞きたい」(ザッ)「聞きたい」(ザッ)「聞きたい」(ザッ)
友男「順番に現れてんじゃねえ気持ち悪りぃ!」
健二「お前も早速下の名前で呼んでんじゃねえよww」

千明「んー…なんでだっけ?」
健二「(おまえ、建前考えてなかったのかよ!)」
友男「首をかしげる千明ちゃんかわいいなあ……」
健二「(答えなくても特に問題なかったようだ)」
キーンコーンカーン♪キーンコーンカーン♪

先生「それではみなさん。席について。数学の時間ですよ」
千明「(ツンツン)」
健二「?」
千明「(サッ)」
健二「(手紙か…)」

千明『ごめんね』
健二『何が?』
千明『驚かせたかったんだ』
17 : ◆/ShBG.hvjg :2011/04/25(月) 00:30:54.73 ID:aSx54SNBo
健二「(突然体が変化して…ホントは大変だったろうに………)」
健二『ばーか』
千明『ところで数学の先生、ひげすごいね』
健二『あれ筆にして毎年書道展やってるんだぜ』
千明「(うそ!?)」(キョロッ
健二「……wwww」(プフッ
健二『うそ』

男達「あの2人…仲いいなぁ(ボソッ」「うらやましいなぁ(ボソッ」
先生「君たちぃ!今の説明を聞いていましたか?練習問題3と4、はい黒板に」
男達「「はいぃ!」」
千明「あ、ハモった。仲いいなあww」

キーンコーンカーン♪キーンコーンカーン♪

健二「次体育だけどどうすんの?」
千明「えっ」
えり「千明ちゃん、私たちが更衣室案内するよ」
千明「あのっ、私まだ体操服無くて今日は見学……」
18 : ◆/ShBG.hvjg :2011/04/25(月) 00:34:21.17 ID:aSx54SNBo
女1「前の学校の持ってこなかったんだ?」
千明「えへへ」
えり「しょうがないな。私の予備有るから使いなよ」
千明「あの…(えええ〜!女子達の中で着替える事になってしまう!?)」
健二「だそうだ。いってらっしゃいー」
千明「あ、ありがとう。えっと…」
えり「わたしは、えり。高岡えり。よろしくね」
千明「よろしく、えりちゃん。じゃ行こっか(ドキドキ)」(スタスタ…
健二「(千明め…羨ましいやら羨ましくないのやら……)」

友男「さて健二……あんなかわいい子ちゃんキープしてたとはなんて奴だ!」
健二「キープておまえ、人聞き悪いな」
友男「てなわけで、色々と千明ちゃんに詳しい健二君に質問ターイム!」
男達「「「「オーッ!」」」」
友男「直接聞けないあんな事やこんな事まで全部聞いてしまえ−!」
男達「「「「オーッ!」」」」

健二「おまえら体育遅れるぞ」(キガエキガエ
友男「しまった!」
男達「orz」「orz」「orz=3」「クセェ!>orz」
19 : ◆/ShBG.hvjg :2011/04/25(月) 00:35:39.61 ID:aSx54SNBo
女1「ここが更衣室ねー場所覚えられた?」
えり「ほらこれ貸してあげる」
千明「ア、タスカッタヨ、アリガトウ」(ポスッ
女1「転校初日で緊張してなーい?」(ヌギヌギ
女2「でも男子と打ち解けてたじゃんwwww」(ヌギヌギ

千明「いやあの、斉藤(健二)君が前からの友達で(///)」(ヌギッ
女1「なに顔赤くしてんのwwうけるwwww」
千明「……(ちがうwwww女子の着替え直視できないんだってばww)」
女2「ホントにただの友達?すごく仲よさそうだったけど」

千明「近くに住んでたから家族ぐるみの付き合いで親戚みたいな感――」
女1「家族公認のお付き合いだってー!!!」
女2「キャ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」
千明「違う違うwwww」

えり「そっかー…千明ちゃん狙ってたのにな…(ボソッ」
千明「えっ?」
えり「え、あの、なんでもないのよ?」
千明「えっ」

3話につづく
20 : ◆/ShBG.hvjg :2011/04/25(月) 00:36:17.80 ID:aSx54SNBo
今日は以上ですーこの文体書きやすいなーww
名前が増えるとややこしいのでモブキャラは名前無しでいきますー
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) :2011/04/26(火) 00:31:58.17 ID:cEG7LQ040
乙!
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/27(水) 10:43:10.40 ID:dOrW8m0IO
12から

困ったね。見えかたが変わっただけだと思っていた。

だがしかし、手で頬に触れた感じだと普通に女性の質感。

目眩がしてきた。俺の頭がおかしくなった可能性よりも、元々の俺の頭がおかしかったという可能性が出てきた。

とりあえず…寝たら治ると信じよう。
「なんか言った?」
いんや、なんも。てか寒くねぇか?
「あっついぞ?」

そう言ってコイツはスカジャンとスカートをぱたぱた扇ぐ。

あ…?スカート?コイツさっきまでジーパンはいていry…いや良い、考えるのはやめよう。

「あ、妹来てるよ」
お〜…調度いい
「何が?」
聞きたい事あってさ、んじゃまた
「はいよ〜」


ただいま
「おかえり、兄さん。といってもまだ家ではないけれど」
妹さんよ、今夜暇か?
「暇だよ、なしたの?」
ドライブ行こうぜ、展望台までさ
「車ならいいよ。バイクだとまだ寒いから、や」
わかった、車で行こう。

さて、幼馴染の事、もしくは俺の頭の事をどう切り出したもんか考えとくか。
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/27(水) 11:18:48.58 ID:dOrW8m0IO
「ん〜…ここの景色は変わらず綺麗だね〜。」

そだな、自販機が近場にあればなおいいんだけどな

「んで兄さん、なしたの?なんか話あるんでしょ?」

あぁ、結構重要な話だわ
「ほ〜…」

どうやら兄ちゃんは頭がおかしくなったみたいなんだ。

「元からでしょうが」

…どうやら兄ちゃんは頭がおかしくなったみたいなんだ。

「元からでしょうが!」

いやいやいや、マジでマジで

「いやいや、こっちもマジだって」

まぁ、元からおかしかったどうかは置いとこうぜ

「うん。具体的にはどうしたの?」

男の友人のうち一人が女に見える

「何それ?ついに頭まで精子回って発狂しちゃったの?」

溜まってないから

「やめて!兄のそんな話聞きたくない!」

まぁ聞け

「はい」
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) :2011/04/27(水) 22:39:32.89 ID:uunh3qrH0
続きwktk
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/01(日) 22:04:43.98 ID:RmIHumvIO
「そいつかなり、美人なんですよ。」

「ほほぅ、どんな感じで?」

「ロング、綺麗め、悪い事思いついたら凄惨な笑みを浮かべそう。」

「戦闘力はどのくらいですか?」

「お前を美少女のBとすると奴はエリートのEだな」

「いや兄さん、私Cありますからね⁈」

「妹、現実を受け入れろ。パッドを詰めれば誰でもCはいく」

「だからちゃんと生身でありますって‼揉んでみますか⁈」

ガシッ‼ギュ、ギュ

「即決⁈悩むそぶりもないんですか⁈しかも力み過ぎっ‼」



26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) :2011/05/06(金) 00:16:43.69 ID:eAJ3K8Zk0
続きはまだか
27 : ◆/ShBG.hvjg :2011/05/08(日) 23:59:21.56 ID:TR5Qx63Io
3話投下しますー

これまでのお話
01[11/04/18] >>3-7
02[11/04/25] >>15-19
28 : ◆/ShBG.hvjg :2011/05/08(日) 23:59:50.94 ID:TR5Qx63Io
千明「(冷静に考えると女の子に好かれる方がいいのか…?)」
千明「(かといって「普通」に男に好かれるのも男だったボクとしては……)」
えり「ちーあーきーちゃん!」
千明「わぁっ!びっくりした」
えり「まさか千明ちゃんがこんなに運動音痴だったなんてww」
千明「あはは。せっかく体操服貸してくれたのに見学になっちゃった」

えり「ハードル1つ目でいきなりあんな転け方して怪我大丈夫だったの?」
千明「言わないでwwwwはずかしいからwwwwww」
えり「ほらみせて」
千明「…(ドキッ)」

えり「痛いの痛いのとんでけー!」
千明「子どもかww」
えり「…(///)」
千明「えっ」
29 : ◆/ShBG.hvjg :2011/05/09(月) 00:01:12.75 ID:hOdci9oHo
えり「私ってやっぱり変…?」
千明「いや、会ったばっかだしよくわかんないけど」
えり「そ、そうよね」
千明「(やっぱりってなんだ…?でも確かに変な子)」
えり「千明ちゃん、私のこともっと知って欲しい!千明ちゃんの事も知りたい!」
千明「あ、はあ…」

えり「+(0゚・∀・) + 」
千明「あ…あのさ」
えり「はいっ」
千明「体育、戻らなくて良いの?」
女達「(じーっ……)」
先生「……」
えり「はっ…! にゃああああああぁぁ!!」(タッタッタッ…
千明「(どうやら助かった…)」

友男「なんだか女子の方が騒がしいな」
健二「おい、よそ見してんな。ボールくるぞ」
友男「あー千明ちゃんが」
健二「なにっ!?」(キョロッ
友男「ニヤニヤ」
健二「チッ…てか、なんであいつ見学してるんだろう…?」
30 : ◆/ShBG.hvjg :2011/05/09(月) 00:03:12.40 ID:hOdci9oHo
キーンコーンカーン♪キーンコーンカーン♪

健二「(四時間目文理別の移動教室だったから結局昼休みまで会えなかった…)」
健二「いやなに寂しくなってんだ俺!」

ガラガラ
健二「お、居た」
千明「健二くん、どこかお弁当食べる良い場所しらない?」
健二「ああ。アテはあるが」
千明「行こっ!」
健二「ちょちょっとまて弁当っ(ガサゴソ)…おい待てって」
友男「けん……行っちまいやがった…ちくしょう羨ましいなあ、おい」
男達「「「「シクシクシクシク」」」」

タッタッタッ…

ガチャッ
健二「ここ一応食堂のオープンテラスなんだが、少し場所離れてるせいであんまり使われてないんだ」
千明「だれもいないね。健二くんたら2人きりになりかったの…?」
健二「だぁ、変なこと言うな!お前が良いところ連れてけって言ったんだろが」
31 : ◆/ShBG.hvjg :2011/05/09(月) 00:03:51.03 ID:hOdci9oHo
キーンコーンカーン♪キーンコーンカーン♪

健二「(四時間目文理別の移動教室だったから結局昼休みまで会えなかった…)」
健二「いやなに寂しくなってんだ俺!」

ガラガラ
健二「お、居た」
千明「健二くん、どこかお弁当食べる良い場所しらない?」
健二「ああ。アテはあるが」
千明「行こっ!」
健二「ちょちょっとまて弁当っ(ガサゴソ)…おい待てって」
友男「けん……行っちまいやがった…ちくしょう羨ましいなあ、おい」
男達「「「「シクシクシクシク」」」」

タッタッタッ…

ガチャッ
健二「ここ一応食堂のオープンテラスなんだが、少し場所離れてるせいであんまり使われてないんだ」
千明「だれもいないね。健二くんたら2人きりになりかったの…?」
健二「だぁ、変なこと言うな!お前が良いところ連れてけって言ったんだろが」
32 : ◆/ShBG.hvjg :2011/05/09(月) 00:05:23.95 ID:hOdci9oHo
千明「でも丁度良かったぜ。人が居ると話せないこともあるしな」
健二「千明、言葉遣いが男に戻ってるぞww」
千明「だってぇ。いやほんと、自分のキャラ見失ってるのよ」
健二「大変なんだな…」

健二「いっそ男勝りな女の子というキャラでいくというのは?」
千明「楽だけど完全に素に戻ってしまう問題が…」
健二「それもアリかもしれないね」
千明「でもさあ」
健二「(おや?)」

健二「千明さ、自分から女の子になろうとしてない?」
千明「!?な、何言って…」
健二「見た目変わっても中身まで女になる必要ないんじゃないか?」
千明「…」
健二「こんなに完璧な外見じゃ性格が男でも元男ってばれるわけないよな」
33 : ◆/ShBG.hvjg :2011/05/09(月) 00:07:11.91 ID:hOdci9oHo
千明「違う!外見と内面のズレは明らかに不審だし!その…」
健二「どんなに言葉を荒げても千明はちゃんと女の子だよ。どう見ても」
千明「っ…」
健二「あとギャップ萌えというのがだな」
千明「…(ピキッ」
健二「あれ…?千明サン?」

千明「てめぇこの!人の苦労も知らないで!!」
健二「う」
千明「(ガツガッガッガツ)っぷぅ。もうお前には頼らねえよ!」
ガチャッ タッタッタッ…
健二「しっかり食べて行きやがった……」

健二「あ。見学のこと聞きそびれたな」

えり「(な…なんやえらいもん見てしもたー!)」

4話につづく
34 : ◆/ShBG.hvjg :2011/05/09(月) 00:09:52.60 ID:hOdci9oHo
今日は以上ですー
書き込みエラーかと思って再投下したら>>30-31が重複しちゃいましたテヘ
ではまた
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 00:37:15.94 ID:tiUuRdaSO
乙ー
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 00:37:50.63 ID:tiUuRdaSO
乙ー
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/05/10(火) 22:32:26.48 ID:Qs02MlLE0
25から
妹と戯れていたら10時を過ぎたので会話もそこそこに帰宅した。つけっぱなしのPCの画面とスピーカーをつけ、CDラックに手をかける。

「(今日はゆっくり考えたいしボサノバのカヴァー集でも聞くか…いや、こないだ買ったPlastic Beachもええな。あ?棒読みちゃんが)」
Skypeのチャットに何件かきている、して今もまたきたみたいだ。

幼「Gwにツーリング行こうよ」
幼「無視すんな〜o(゚д゚o≡o゚д゚)o」
幼「まだ〜壁|ョ。・`ω・。)」
幼「[壁]д=)д=)ジィー」
幼「(/ω\*)ウゥ… (/ω-、\*) チラ、ナイテナイヨ」

「(何やってんだか、退室中ってのを見てくれよな。)」
マイクのスイッチを入れてコールする。1、2、早いな。出た。

「すまん、妹と出かけていた」
幼「別にコール待ってなかったからな」

いつも男性の声が聞こえてきたハズなのに、女性の声が聞こえてきて若干戸惑う。

「き、聞いてねぇよ、どっか行かないかってのだけどどこ行きたい?」
幼「300Km位のとこがいいな〜」
「高速?それとも国道?」
幼「どっちでもいいよ」
「一泊になりそうだな」
幼「そだね、のんびり行きたい〜」

その後、細かい話をして行き先を決めてから通話を切った。明後日が楽しみだ。

♪〜Well you can't get what you want〜♪
On melancholy hillの歌詞が聞こえてくる、結構話し込んでいたようだ。そして唐突に気付く。

「あれ…?彼女でもない女性と一泊二日ってやばくねぇか?」
思わず声に出た、独り言を素で言ってる自分が気持ち悪いがそれどころじゃねぇ気がする。
「あ、あぁ、でも男だ、男。あいつ男だよ。」
軽い現実逃避、ノリとは恐ろしい。話してる時は普段とテンポ変わらない会話であいつの声が女性でも、あいつの見た目が女性でも男として扱っていた。

妹「(…声漏れてる、幼が男?女ではなくて?)」

38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/05/10(火) 22:50:54.36 ID:Qs02MlLE0
最後一文訂正
妹「(…声漏れてる、幼さんが男?女ではなくて?)」
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/05/10(火) 22:52:24.93 ID:Qs02MlLE0
あ〜!またミスってもうた…。
妹「(…声漏れてる、幼さんが女?男ではなくて?)」
です。何度もすみません。
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2011/05/10(火) 23:26:05.03 ID:tQ9dnql4o
訂正ワロタww
実は男だと思ってたのが間違いだったっていう話かとwwww
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/11(水) 02:08:30.72 ID:lLpXIx/IO
妹「(何はともあれ、聞いてみましょうか)」

コツン、コツンと控えめに二度ノックして声かけると生返事が帰ってきて私は扉を開ける。兄さんの部屋は変わっている。とにかく物が無い。あるのはベッドとパソコン、それと床にドンと置かれたCDコンポだけ。MDは聞けない。今かかっているのは聖飢魔U?相変わらずセンスがわからない。

15畳ある部屋にそれだけ。窓はカーテンが付いているがそれが活用されてるのを見たことがない。あ、本だ。また図書館から借りてきたのかな?

「(野豚をプロデュースに猫の気持ちを知る本に、フォーデイズム〜フォードの実績?この三つを一度に借りた理由がわからない…。)」

兄「どうした?」
「さっき展望台で言ってた事をもう一度詳しく聞こうと思いまして」
兄「そっか…内心焦って損した」
「?」
兄「お赤飯炊いて〜って言いだすかと」
「…ナゼ?」
兄「血の匂いと若干生臭いから」
「……」プルプル
兄「あ、赤飯は始めての時か」
「バカぁ‼バーカ‼」

恥ずかしい、なぜあの兄はこうも、こうも‼しばらく口聞かない‼

部屋を飛び出して布団に入ると顔が熱いのが自分でもわかる。真っ赤になってるんだろうなぁ〜…。

もういい、恥ずかしいから丸くなっちゃう
…。あぁもう、あの…あの兄さんはぁ〜‼は〜ら〜た〜つ〜。

あ、アレ?もしかして話すのめんどいから私を怒らせて追い払った?兄さんなら可能性は高い…。余計腹立つ。

寝ましょう…夢よね?これは。そうでしょう?多分蝶がみてるのよ。

忘れよう、忘れよう。おやすみ、忘れよう。
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/11(水) 02:31:23.14 ID:lLpXIx/IO
バキバキバキ

幻聴か?いまさら幻聴くらいじゃ驚きはしねぇけど何かが折れた音が聞こえたな。

♪BaーdeーyaーSay do you remeberー♪

まぁいい、妹のご機嫌取りは明日しておこう。それよりもウホッ一泊二日のバイク旅行、ポロリはないよをどうするかだな。

OKしちゃったもんなぁ…あの嬉しそうな声聞くと断り辛い。して何より俺も楽しみなんだよな。

良く考えろ俺、相手は幼だ。昔から一緒にいるし、昔から遊んできた。そしてあいつは男だ。何が心配だ?

容姿で発情してんのか?それこそ頭に精子回ってるわけではあるまいし、第一あいつは男だぜ?女性とやるより病気になる確率が高いぞ?

そうだコンドームすりゃ問題ないか…んじゃsagamiオリジナル買ってけば解決じゃん。

待て待て待て、何でやる事前提なんだよ。落ちつこう、まだ慌てる時間じゃない。リミットは明後日、イケるイケる。

よし寝よう、今の状況は多分蝶が見てる夢なんだ。明日になればいつも見てる夢に戻るさ、さぁ寝よう。おやすみ。
43 : ◆/ShBG.hvjg :2011/05/29(日) 14:56:30.85 ID:325qUAtJo
4話投下しますー

これまでのお話
01[11/04/18] >>3-7
02[11/04/25] >>15-19
03[11/05/08] >>28-33 (31は投下ミス)
44 : ◆/ShBG.hvjg :2011/05/29(日) 14:56:56.22 ID:325qUAtJo
えり「――という感じだったんだけどね、どう思う?」
女2「あの転校生が男だっていうの?」
女1「まじうけるwwwwありえないwwwwww」
えり「でも斉藤君が『男ってばれる』とかなんとか」
女2「聞き間違えじゃない?そうそう、胸もあったし。うちより大きくてむかつくww」
女1「あたしら着替え見てたけど、あれは上げ底じゃなかったよね」

ガラッ

えり「ひゃっ!(うわさをすればなんとやら!)」
千明「ん?えりさん〜」
えり「あー、あ、あの、千明ちゃんっ!」(ガバッ
千明「ギャァッ!!!!ちょ、ちょっとぉ!」
えり「(スリスリ)この軟らかさ…本物ね……」
女1「だーから言ったっしょー?」
千明「はーなーしーてー!」
男達「うっ鼻血…」「大丈夫か!」「保健委員〜!」「1人で行けwwww」
45 : ◆/ShBG.hvjg :2011/05/29(日) 14:57:32.28 ID:325qUAtJo
友男「(うらやまけしからん……)千明ちゃん、健二は一緒じゃないのか?」
千明「あ。あー、どこか寄ってくるって(えりさん離れてくれない;;)」
友男「そうか。すまん(なんか変だな)」

―――

健二「ちょっと茶化しすぎたなー…どうしよ」(パクパク
健二「でもホント、無理に女の子演じる必要ないのになあ、あいつ」(ムシャムシャ
カパッ
健二「とりあえず戻るか。そういや最近独り言多いな俺」

ガチャッ
友男「お」
健二「あ」
友男「こんな所に居たか。千明ちゃんどうしたんだ?」
健二「んまー色々ありましてな……」
友男「千明ちゃん泣かせんじゃねーよ」
健二「は?(えっ…あいつ泣いてんの?)」
46 : ◆/ShBG.hvjg :2011/05/29(日) 14:58:08.17 ID:325qUAtJo
友男「心配か?」
健二「いや、んー」
友男「素直になれよっ」
健二「わりぃ、先戻る」(タッタッタッ

友男「何やってんだろうなあ俺は…」

健二「教室が遠く感じる…」(タッタッタッ…

ガラッ!
健二「ん!?(なんなだこの状況は……)」
千明「健二くーん、たすけて〜(泣」
健二「なにやってんの?」
えり「見ての通りよ!」
健二「わかんねえ」
47 : ◆/ShBG.hvjg :2011/05/29(日) 14:58:37.07 ID:325qUAtJo
千明「私もわかんないんですけどー」
えり「抱きついているだけなのよ」
健二「――本当に見ての通りだったか…」

千明「いや納得する所じゃないってwwwwそろそろ助け…」
健二「ほーう?どうしようかなあ」
男達「なんて奴だ!」「極悪人!」「畜生め!」「地獄に落ちろ!」
健二「そこまで言うかwwww」.
千明「健二君…グスッ;;」

健二「調子乗んなwwww嘘泣き……あれ?」
えり「えっ」
男達「「「「!?」」」」
友男「……」
48 : ◆/ShBG.hvjg :2011/05/29(日) 14:59:14.02 ID:325qUAtJo
―――

健二「落ち着いたか?」
千明「うん…」
健二「下校時刻とっくに過ぎてるんだが」
千明「うん…」
健二「千明」
千明「うん…」
健二「(参ったなこりゃ……)」

千明「健二君」
健二「おっ?」
千明「ごめん」
健二「いや、いいよ。うん。色々大変だったんだろ?
    もうちょっと俺を頼りなさいな」
千明「うん…」

ガラッ
えり「ハァッ…ハァッ…千明さん!良かった、居たのね。私、ついに解ったわ!」
千明「えっ」
健二「な!?」

5話につづく
49 : ◆/ShBG.hvjg :2011/05/29(日) 14:59:50.01 ID:325qUAtJo
休載が続きましたがマイペースで続けていきますー
6月も休載多くなりそうww
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) :2011/05/29(日) 23:07:37.45 ID:1cmEQFbg0
乙!
51 : ◆/ShBG.hvjg :2011/06/18(土) 23:09:19.87 ID:W2eGXCawo
5話投下しますー

これまでのお話
01[11/04/18] >>3-7
02[11/04/25] >>15-19
03[11/05/08] >>28-33 (31は投下ミス)
04[11/05/29] >>44-48
52 : ◆/ShBG.hvjg :2011/06/18(土) 23:09:46.10 ID:W2eGXCawo
ガラッ
えり「ハァッ…ハァッ…千明さん!良かった、居たのね。私、ついに解ったわ!」
千明「えっ」
健二「な!?(――っと、まて、冷静になろう)」
健二「えーっと、何が解ったって?」

えり「あんたに言ってないの。ね、千明ちゃん」
千明「別に今日じゃなくても良いのに」
えり「わかったら即教えてあげたいのが友情じゃない?」

健二「お?(ほ……千明の正体とかそういう話じゃなさそうだな)」
えり「ほら斉藤くんシッシッ!あっちいった。男子禁制よー」
千明「ごめん、話長くなりそうだから先帰っちゃって。今日はありがとね」
健二「お、おう、わかった。じゃな」
千明「ばいばい」
53 : ◆/ShBG.hvjg :2011/06/18(土) 23:10:35.89 ID:W2eGXCawo
健二「一体今日はなんだったんだ……1日が、長すぎた」テクテク…

友男「よお」
健二「なんだ、校門で待ち伏せとはどういう趣味だ」
友男「千明ちゃんと一緒に出てくると思ったが――?」
健二「高岡さんと内緒の話があるんだと」

友男「高岡えり、か。千明ちゃんともう友達なんだな」テクテク
健二「千明に友達できて良かったよ」テクテク
友男「良いのか?危ないぜアイツ」
健二「何のことだ」
友男「抱きついて離れなかったろ。相当気に入ったな。友達以上の関係求めてるぜあれは」
健二「まさか。じゃれてただけじゃないのか?」
友男「高岡が女のくせに女好きだっての、結構有名だぜ?そういう話疎いよなあ健二」
健二「(中身が男とは知らずにご苦労なもんだ。千明からしたら良いのやら悪いのやら?)」
54 : ◆/ShBG.hvjg :2011/06/18(土) 23:11:20.02 ID:W2eGXCawo
友男「ま、千明ちゃんが好きなら高岡は要注意ってこった」
健二「別に好きって訳じゃ…俺はそりゃまあ、旧知の知り合い、なんだから、あれだよ」
友男「何言ってるのかサッパリ解らんぞwwwwどうでもいいがなww」
健二「(奴は男だあ!ちくしょう、ばらしてえ)」
友男「千明ちゃん、今頃高岡さんとふたりきりで何してるのかなー?」
健二「知るかっ!」

――――

ドサッ
健二「疲れたーー今日はこのままベッドから起き上がれる気がしない……
    本当に不思議な日だったな。あの千明が女になったってどういうことだよ。
    いや、まてまてまて。冷静に考えてありえないって。偽物?
    でも面影あるしなあ。兄弟――いや、一人っ子だし、
    そうだ。本物ならケータイ持ってるだろ、かけてみようか」prrrrr

千明『もしもしー?』
健二「よお(あー…結局やっぱり今日の声。本物か…)」
千明『どうしたの?電話かけてくるなんてそう無いよね』
健二「いや、大した用事は無いんだが」
55 : ◆/ShBG.hvjg :2011/06/18(土) 23:12:16.81 ID:W2eGXCawo
千明『ふーん。今日あのあとね――あ、やっぱやめ』
健二「なんだそりゃ。あ、そういえばさ」
千明『なに?』
健二「まえ会ったとき貸した本、もう読み終わったか?」
千明『えー、借りたっけ?――あっ!ふふっ、そうか。カマかけた?』
健二「!」
千明『ボクが偽物なら話を合わせようとするよね。でも本なんて借りてないし、ボクは紛れもなくボクだよ』
健二「すまん、悪かった。わけわかんないけど、とにかくお前は千明だって信じて良いんだな?」

千明『……それはどうだろ。自分でもこの姿をしているボクが自分だって信じられないよ』
健二「そっか。」
千明『そうだ、今からウチ来ない?学校じゃあんまり話できなかったし、ね』
健二「ああ良いけど」
千明『学校の近くにマンションあるでしょ。今はそこに住んでるから』
56 : ◆/ShBG.hvjg :2011/06/18(土) 23:15:06.41 ID:W2eGXCawo
――――
健二「――このマンションでいいのかな。3、0、……あった、水野。やっぱりここか」

ピポパ…ピンポーン
千明『ハーイ』
健二「おお、俺だ」
千明『早かったね。いま開けるよー』

カチャツ、ガーッ
健二「エントランスがオートロックって、良いところ住んでんなあ」トツトツ

健二「お、丁度エレベーター降りてきた」

ポーン
えり「あれ、斉藤君じゃん。家ここ…じゃなかったよね」
健二「お?おお、友達に呼ばれてな」
えり「そう。じゃねー」

健二「高岡もここ住んでんのかよ……ややこしい事にならなきゃいいが」

6話につづく
57 : ◆/ShBG.hvjg :2011/06/18(土) 23:15:40.68 ID:W2eGXCawo
お久しぶりです。5話でしたー
少なくとも来週はお休みですーww
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) :2011/06/19(日) 00:09:51.45 ID:gfMsd7yc0
乙乙
無理せず頑張ってください
59 :u4ZPDzk0 :2011/07/08(金) 01:49:56.56 ID:5DhIAsV70
お久しぶりです。
あまりに久しぶり過ぎて続きをこのまま落としてよいものか悩んでます。
どうしましょう……。
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2011/07/08(金) 10:31:29.51 ID:grtaijHpo
良いと思うよ!
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州・沖縄) :2011/07/08(金) 11:19:20.23 ID:FF6iwNOAO
これを読んで面白いと感じた人に

世界の果てで愛しましょう

をお薦めします
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) :2011/07/08(金) 22:56:46.75 ID:EPdfcm3m0
世界の果てで愛ましょうな
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2011/07/09(土) 00:12:37.66 ID:EL/SEhfOo
試し読み見たらおもいっきしひょんなの子だなww
64 :u4ZPDzk0 :2011/07/21(木) 05:13:40.64 ID:l7Vcb6zS0

---------------------------------*

彼らは昼間部の人間ではない。
真夜中の校内で、度々騒いでは、問題を起こすという噂をよく聞いている。
評判の悪い、夜間部の3人組。
なにより、その筆頭である彼を、僕はよく知っている。

その彼と、件の少女は、ちょうど見つめ合う格好になっていた――

------------------------


と、いうことで、Flower*Vacation
超絶久しぶりに、投下致します。

65 :u4ZPDzk0 :2011/07/21(木) 05:15:07.16 ID:l7Vcb6zS0
スギヤマの手は、俺の胸にあてがわれている。
彼の手のぬくもりが直に伝わってきて少しくすぐったい。
一応、彼の名誉のために補足しておいてやるが、これは俺の仕業である。
俺が女だという証拠を見せろうるさいので、見たり聞いたりするよりも、実際に手に取ったほうが早いだろうと思ってこうしたのだ。
スギヤマの引き攣ったような表情を見ると、この思いつきは、存外に効果があったらしい。
念には念を入れて、少し上目遣いにしながら彼に詰め寄る。

「あの……これで、信じて頂けますか?」

というか、これでダメだというなら、これ以上どうすればいいのだ。
残る方法など、あとは裸になるくらいだ。
ならば裸になれと、そう言えるのものなら言ってみるがいい。
その場で泣いてやる。それでお前は晴れて変態の仲間入りだ。
ちなみに、俺がマジで泣くことなんて、それこそ世界が終わるときか、
ネトゲのキャラデータが全部消える時くらいだ。

「あ、いや……」

もぞ、と俺の胸にあてがわれているスギヤマの手がすこし動く。

「んぁっ――」

「すっ…すまん!!」

今、なにか変な声が聞こえた。
スギヤマが慌てて謝ったところを見ると、その声は彼の口から出たものではない。
というか、その甲高い声からして、もしかしなくてもその声の出所は俺の口以外のどこでもなかった。
途端に気持ちが悪くなる。
激しい嫌悪感、それは自分が自分でないような、そんな、ひどく嫌な感覚。

「い、いえ、だ、大丈夫……です……」

全然大丈夫ではない。
なんだかよく分からない感情、その正体を一生懸命探って、
何か征服されたような気持ちが住んでいることにきづく。
それが堪らない悔しさとなって、胸の奥底から滲み出てきているみたいだった。

マジで――泣きそうだった。



66 :u4ZPDzk0 :2011/07/21(木) 05:15:39.60 ID:l7Vcb6zS0


『姫、あなたは男の子だから、理解出来ないかもしれないけれど…
女の子にはね、とっておきの魔法があるのよ――』

『まほう……?』

『そう、魔法』

『……母様も使えるの?』

『もちろんよ!』

『すごい!』

随分昔に聞いた母さんの言葉を思い出す。
母さんは魔法と云った。
ふたりして目を輝かせていたあのときを、はっきりと覚えている。
いつも母さんは、子供の俺以上に無邪気だった。
自信満々に、変なセリフを吹き込む母さんのせいで、
本気で、その魔法の存在を信じて、数年を過ごした俺が哀れだった。

だけど母さんは、俺の前では決して、その魔法を使うことはなかった。
どこまでも強くて、そして優しい母さんだった

「お、おい…そんな今にも泣きそうな顔してんじゃねえよ」

「……」

そんなことを言われる俺は今、一体全体どんな顔をしているのだろう。

「わかった!すまん!謝る!
 俺が悪かった、人違いだった、許してくれ!」

力が抜けて、足に力が入らなかった。
地面にへたりこみそうになる。

「っと、おいしっかり……」

不意に、スギヤマの、胸にのっている手と反対の手で、俺の腰が支えられた。
ソシアルダンスのフィニッシュみたいな格好になる。
しんと、これまでにない静寂が訪れる。
俺はその静けさの中でふと思う。
胸を揉まれ、甘い声を上げて、あまつさえ涙ぐんで、そしてこの格好、
その状況は、どう考えても、「一応精神的に男である」、と思っている人間の所業ではなかった。
急に恥ずかしくなってくる。
顔と胸がまるでぐらぐらと沸騰しているように熱い。
今にもオーバーヒートしてしまいそうだ。
夜の色とは反対に、頭の中が、だんだん真っ白になる。
まるで、心だけが、何処か別の世界に飛んでいってしまいそうな、そんな感覚。


67 :u4ZPDzk0 :2011/07/21(木) 05:16:33.79 ID:l7Vcb6zS0


「やれやれ……全く……」

俺を現実に引き戻してくれたのは、屋外でもよく通る、聞き慣れた女性の声だった。

「お月様がこんなに綺麗な晩に……」

魔女は、静寂を切り裂いてやってきた。
それが自分のために用意されたものだと云わんばかりに。

「何してんだい悪ガキ共」

魔女が、お土産に持ってきたのも、結局のところ、誰もが息を呑む静寂だったけれど。

「なんだ?どいつもこいつも黙っちまって」

マギ以外の誰もが、状況を理解できなくて困惑していた。
呼び出した当の本人、つまり俺が一番戸惑っているのだから当然のことかもしれない。

マギが、この場にいるのが、不思議だった。
職員室からこの正門まで、普通の人間でも、結構な時間がかかる。
さっき俺が携帯で呼び出してから今までの、こんなに短い時間で来れる距離じゃない。

生徒たちからは、その外見と、得体のしれなさへの畏れを込めて「魔女」と言われている。
だけど、まさか、本当に箒に乗って飛んできたなんてことはあり得ない。

マギには、稀にこういうところがある。
普通じゃないところ、本当に魔法使いなのではないだろうかと、そう思ってしまうところが。
そのせいだろうか、戸惑いはすぐに腹の中に収まってしまう。

「マギ、てめぇ……」

スギヤマも状況を飲み込んだのか、威嚇のような声を上げる。
けれど、それを意にも介さず、マギは此方に歩いてくる。
その姿は相変わらず野生動物みたいに靭やかで、優雅で、つい、見惚れてしまう。
だけど、その見た目に騙されてはいけない。
綺麗なバラには刺があるが、彼女の刺には致死性の毒が仕込まれている。
そんなことを考えた瞬間、目が合った。
クスリと不敵に笑うマギの視線を受けて、ドキリと心臓が跳ねる。
その心臓を、きゅっと握り締められているような錯覚に陥るほど、
考えていることを見透かされている感じだった。




68 :u4ZPDzk0 :2011/07/21(木) 05:17:26.93 ID:l7Vcb6zS0

マギは、あと数歩で俺とスギヤマに手が届くというところで、立ち止まって、
あたりを一瞥するように、一通り首を回し終えたあと、俺とスギヤマを見て目を細める。

「スギヤマ、可愛い子相手に羨ましいことしてるじゃないか」

「いや、こ、これは……」

勿論、俺とスギヤマの体勢はずっと先程のままで、
なんというか、どう見ても言い訳のできない格好だった。
未だに確り、俺の胸に手を置いているところが、なんだか癪に障る。

「面白そうだから、私も混ぜてくれないかい?」

魔女は、すっ…と小さく此方に一歩、と思った。
だけど違った。
一歩、だけど、「あと数歩で手が届く距離」を一息で詰めるだけ、靭やかに、跳んだ。

「なっ!?」

驚いたスギヤマが、慌てて後ずさる。
俺とスギヤマの間に、マギが割って入るような格好になる。

「教師が生徒に襲いかかるのかよ!どうなっても知らねえぞ!」

「やかましい!このド変態不良が!!」

此方から背中しか見えないマギが、
ちらと振り返り、俺を認めて、また、クスリと笑う。

何も言わず、何も聞かず、全てを悟っているわけでもないだろうけれど、
それでも「まかせろ」と、そう言ってる気がする。
俺が困った時、何時も事情も理由も訊かず、何も言わずに助けてくれる人だった。
毎度、申し訳なさで、頭が下がる。

そしてマギは、スギヤマに向き直り、
おおよその事情からすれば、実は限りなく冤罪に近い容疑をふっかける。

「今やったことを振り返ろうか、スギヤマ。
警察に突き出されてもおかしくないな?」
 
「いや、だから違うって!」

「うん、大丈夫だよ、私は心が広い。
 まだまだ夜は長いし、私が相手をしてあげるよ。
 だから、ゆっくりしていきなさい」

マギの背中が少し小さくなった。
それが、また一歩跳んで、スギヤマの懐に踏み込んだ動きなのだと気づいた時、もう勝敗は決していた。

「ちょ…ちょっと待てマギ。
 誤解だ!ヒメノ!じゃないのか?
 くそっ、結局誰なんだおまえ!」

こちらに悲鳴とも取れる質問を投げかけつつ、
魔女が伸ばした手を避けようと体をひねろうとする彼。
だけど、それより早く、マギが、彼の襟首をむずと掴み取る。

「んなもん知るかッ!!今ここで[ピーーー]っ!!」

「全然!心が!広くねぇ!!」

スギヤマの頭上目がけて、勢い良く振り下ろされる鉄槌。

「っいってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
  
69 :u4ZPDzk0 :2011/07/21(木) 05:18:17.90 ID:l7Vcb6zS0
  
人を魅了するほどの上品さとか、気品のようなものすら漂わせてるくせに、
どうしてこうも、この人は凶暴なのだろうか。
先ほど職員室で興じていた、あのゲームの中でも、
職業は魔法使いなのに、いつも大いに接近戦好みのプレイスタイルだったりするところから見ても、
どうしようも無いくらいに、この凶暴さが、彼女の本質なのかもしれない。
だから魔女とか言われるのだ。
もったいない。
玉に瑕とはこういうことだ。
いやむしろ、キズというか、玉にトゲトゲが付いてる感じだ。
淑やかさを装備すれば、天下無敵に違いないはずなのに…
本当にもったいない。

拳骨の痛みにもだえている間に、今度はがしりと首根っこをつかまれたスギヤマが、
ぎゃーぎゃーと喚きちらしながら、そのまま連行されていく。

「ちくしょう離せ!くそっ!俺はどんな拷問にも屈しねえぞ!」

どうにも見当違いなことを口走っているが、連行された先に、
一体何が待っていると思っているのだろうか。
それは……
あれ?だいたいあってるかも。

「スギヤマぁぁぁぁぁ!」

ツガムラが叫びながら地面に膝を折る。

「お前の死は無駄にはしないぞーーー!」

マツダが目に涙を浮かべて悔しがる。

「お前らぁぁぁ、ここは俺に任せて先に行けぇぇぇ!!」

生存フラグを立てているつもりなのかもしれないが、
少々、使いどころを間違えている気がしなくもない。

はっ、まさか……
もしかすると、ギャグなのだろうか?
というか、お願いだからギャグだと言って欲しかった。
そんな俺の願いをあざ笑うように、スギヤマは校舎に姿を消し、
ツガムラもマツダも、色々と叫びながら校門の方へ走って行ってしまう。

毎度、こちらの真剣さを木っ端微塵に粉砕するやりとりを、大真面目に繰り広げる三馬鹿。
そんなのだから、端高の三大唐変木だとか言われるのだ。


70 :u4ZPDzk0 :2011/07/21(木) 05:18:48.48 ID:l7Vcb6zS0

「ふう……」

それぞれに退場していく役者たち。
それを見送って、思わずため息が出る。
上手くごまかすために、あの手この手を使って、
冷や汗がとまらないやり取りだったけれど、なんとか収めることができたらしい。
だけどまだ、演目は終わっていなかった。

最後に、舞台に残ったのは、俺と、こいつ。

「さて――……」

くるりと後ろへ向き直って、
目の前の男をしっかりと見据える。

「……あれでよかったんですか?」

苦笑いしながら、彼が問いかけてくる。

「ええ、まあ……
 良いのでは……ないでしょうか」

それで、思わず自分も笑ってしまった。

夏の香りの混じった、湿気の多い、少し生暖かい空気。
風の無いこの場所は少し暑い。
この暑さのせいか、それとも先程激しく動いたせいなのか、はたまた緊張のせいなのか、
つう、と汗が頬をしたたっていく。

思い返すと、こうしてコイツと面取向かって顔を合わせるのは、一体何年ぶりなのだろう――
どれほど、俺のことを覚えているのだろうか。
どれほど、あの日の俺の面影を、今の俺に見出しているだろうか。
どんどん、不安が増していく。
胸の鼓動が大きくなる。
だけど、この高鳴りの原因は、不安だけではないのかもしれない。
それを意識したら、クス、と…笑みがこぼれてしまった。

ああ、そうか。
嬉しいのか。
かつての親友と言葉を交わすことが。

元気にしていただろうか。
今は何をしているのだろうか。
話したいことがたくさんあった。
だけど、今から言葉を交わすのは、そんなことのためじゃない。

「お話、聞かせてくださいますか?」

「ありがとうございます、"ヒメノ"さん。」

彼は、そう言って、話しはじめた。

71 :u4ZPDzk0 :2011/07/21(木) 05:21:15.57 ID:l7Vcb6zS0

「ヒメノさん、親戚かどなたかに、同じ名字の、
私と同じくらいの年齢の男の子はいませんか?」

いない。
今現時点で、母方の姓であるヒメノを名乗っているのは俺だけだった。
父は離婚したときに旧姓に戻ったし、母はもういない。
だから、ヒメノという苗字で、目の前のコイツと同じくらいの年齢の「男の子」という条件に該当する人間は、
この狭い街だ、おそらく"一人しかいない"のは間違いない。
いや正確にいうなら、一人しか”いなかった”。
少なくとも、今、この時は、一人も”いない”だろう。

彼は更に言葉を連ねる。

「もうずいぶんと昔の話ですけど、僕の、とても親しい友人だった人なんです。
僕はどうしても、もう一度彼と会いたい。
いいえ、会わなくちゃいけないんです。
どんな小さな手がかりでも良いんです。
もし、知っていたら、教えて頂けないでしょうか」

彼の質問。
実のところ、それは彼が問うてくる前から分かっていた。
そして、その質問に対する、答えも。

「存じ上げません――…」

「そうですか…」

「ごめんなさい……」

彼が少しうつむく。
それで胸の奥がチクリと痛む。
だけど、言えるわけがなかった。
この罪悪感の理由に向き合うことなんて、出来るはずがなかった。

なのに、つい零れてしまった、謝罪の言葉。
謝ってもどうしようもないのに、一体、何に対しての謝罪だというのだろうか。
自分でも分からなかった。

「あ、謝らないでください。
こちらがダメもとで聞いてるんですから、
逆に申し訳なくなってしまいます」

「ですが……
このようなことに巻き込んでしまって、危ういところを助けられましたから。
何か、お礼をして差し上げたいのです。
それなのに、貴方の助けになれないのは、とても歯がゆいです。」

体の良い言い訳にしか聞こえないのだろうけれど、本心だ。
こんなふうに助けられたなんて、初めての事かもしれない。
だって、昔は、ずっと逆だったから。

「あはは……大丈夫ですよ。
 そのお気持ちだけで十分です」

「ありがとう…ございます…」

「どういたしまして。
 ああ、そうだ、もし良ければ、お名前を教えて頂けませんか」

「名前……ですか…」

「はい、お名前です。
 あ、いえ…べつに変なことは考えてないですから…
 言いたくなければ断っていただいても結構ですし……」

こちらの険しい表情を見取ったのか、慌てて取り繕う彼。
こういうところは、相変わらずだ。
やさしいというか、気を回しすぎるというか…

「く、ふふ」
72 :u4ZPDzk0 :2011/07/21(木) 05:22:27.21 ID:l7Vcb6zS0

懐かしい光景に、思わずくつくつと笑いがこみ上げてしまう。
それを見てか、彼が少し不満そうに顔をしかめる。

「ごめんなさい…大丈夫です。
変なことなどとは…決してそんなことは思いませんから。」

「そ、そうですか?
 有難う、ございます…」

「どういたしまして。
くっ、ふふふ……」

なぜ笑われているのか、その理由が分からず戸惑っている様子が、
口からも、態度からも、簡単に察せられるのが可笑しかった。
心模様の完全公開は、相変わらずなのだろう。

昔を少しだけ思い出したところで…彼の表情に少しの晴間が射したのに気づく。
何か、笑われた原因が思い当たるようだった。
ただ、その答えは、不正解に違いない。

「…自分から名乗らなきゃ失礼…ですよね。」

首が俯いて、とても申し訳なさそうにしている。
言っていることは正しいけれど、笑った理由はそんなのじゃない。

『失礼に感じる必要なんてありません。
 だって、お互いに見知っているのだから』

なんて、口が裂けても言えなかった。




73 :u4ZPDzk0 :2011/07/21(木) 05:24:42.42 ID:l7Vcb6zS0
-----------------------**

今日はここまで。
眠いので寝ます。
74 :u4ZPDzk0 :2011/07/22(金) 03:48:54.43 ID:YkcHRJak0
どうも。

------------------------**

75 :u4ZPDzk0 :2011/07/22(金) 04:00:21.70 ID:YkcHRJak0
どうも。

------------------------**

76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2011/07/22(金) 13:25:02.63 ID:ayTn5fHAo
どうした?ww
77 :u4ZPDzk0 :2011/07/22(金) 15:22:59.45 ID:c3WVryw70
続きをあげようと思ったのですが、繋がりにくかったのと風邪で具合が悪かったので力尽きました…
今晩あたりにあげますね。
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2011/07/22(金) 17:14:06.34 ID:ayTn5fHAo
待ってるねー
79 :u4ZPDzk0 :2011/07/24(日) 03:42:22.61 ID:BTWO4z/20
どうも、夏風邪で撃沈されておりました。
TAKE3でごめんなさい。
今度こそ…

------------------------**
80 :u4ZPDzk0 :2011/07/24(日) 03:43:52.67 ID:BTWO4z/20

「さっきもお伝えしましたけど、それじゃあ改めて…
僕はコソバといいます。コソバ、カズキです。」

「コソバ…カズキ」

「あ、ひょっとして、珍しい苗字だと思いました?
詳しいことは僕もよくわからないんですけど、ここの土地に縁のある苗字なのだそうです。
昔は、コソバカとか、バカズキ、なんて言われて散々馬鹿にされたのであまり好きではなかったんです。
でも、いろいろあって、今は好きになりました。」

ソバはそう言って笑う。

いろいろあって……
確かにいろいろあった。
あり過ぎた。
しっかりと覚えている。

事の発端は、お前とスギヤマ達のやりとりだった。
お前と知り合ったのも、お前と会うことがなくなったのも、
悪く言うわけではないが、お前のその名前が切欠だった。
勿論、それはただの切欠であって、原因ではない。
そして、あの事件において、ソバは、圧倒的に被害者であったことも間違いなかった。

コソバカズキ。
きっと、お前がその名前でなければ、俺は一生、
お前と出会うことは無かったのだろうと思う。

だけど――
だけどもし、俺がお前と出会わなかったら……

ひょっとすると、それはお互いにとって、とても幸せなことだったのかもしれない。
お互いが出会わなければ、あの日、ああいう出来事が起こることもなかったのだろうから。

けれども、人生において、そのときの「選択」が正しかったかどうかなんて、分かりはしない。
そう、誰にも分かりはしないのだ。
だけど……
だけどもし、あの日の俺の選択が、今と別の結果を生んでいたとしたら、どうだったろうか。

あの時はただ運が良かっただけで……
ただ、運が良かっただけで……
もし、あの日、俺の、その選択が、ある誰かの……

「全て」を、根こそぎ奪ってしまうような結果を生んでしまったとしたら……

どうだろう。
運が良かったから、結果オーライだったから、
そう云って、済ませてしまっても良いと思うだろうか。

だけど結局、それはifの話で…
やはり、あの日の俺の選択が正しかったのかどうかなんて、誰にも分からない。
そんな誰にもわからない答えを、俺はずっと欲しがっている。
誰にもわからないし、誰も教えてくれない。
だからこそ、あの日からずっと悩んで、もがき苦しんでいたのだけれど、
月日が経つごとに、少しずつ、そうやって悩むこと自体が馬鹿らしくなっていった。

こんな、出口のない迷路のような自問自答の中、道の途切れた袋小路で進むことすら諦めて、単純な作業に溺れる今。
そんな、くだらない人生だけれど……
だけど、今でも、はっきりと言えることだって、少しくらいはある。
81 :u4ZPDzk0 :2011/07/24(日) 03:44:38.24 ID:BTWO4z/20

「とても……」

初めて出会ったあの時も、こうして再会した今だって……

「とても、素敵なお名前だと思いますよ」

「そ、そうですか……?」

「ええ」

「……嬉しい、です。
 そう言ってくれたのは、僕の、今までの人生で、貴女が二人目なんです。」

「それはその一人目以外の方々は、きっと見る目がないのでしょうね」

その花の、一つ一つはとても小さいのだけれど……

「あはは…
 そこまで言われるとさすがに照れちゃいますね…」

貴いと、本当に、そう思う。

「蕎麦の花、貴方は御覧になったことはありますか?」

「はい、昔友人と一緒に…その、一度きりですが。」

「そうですか」

その友人を、俺はあの日、とんでもないことにしてしまった。

「アイです」

スギヤマにああ云った手前、矛盾を生じさせるわけにはいかなかった。

「え…?」

「アイです」

「アイさん?」

「はい」

「素敵なお名前ですね」

ぱあ、と明るい顔になるソバ。
本気で嬉しいのだろう、それがわかる満面の笑みで、
確かに、きっと心からそう思っているのだろうが、
さっき俺が同じ言葉を口にした手前、
どう考えても社交辞令としか取られないのではないかと思われるセリフを、
何の躊躇いもなく言った。

「あ、ありがとう…ございます」

途方も無いデリカシーの無さに対して、心からの苦笑が漏れる。
ソバの想いとは関係なく、ヒメノアイという人は、実際は存在しない人物なのだから、
その名前を褒められても仕方がないのだけど、それでも、不思議と悪い気はしないものだ。

82 :u4ZPDzk0 :2011/07/24(日) 03:45:12.47 ID:BTWO4z/20


それにしても、ここまで何とか取り繕ってみたものの、
ここから先を完璧に誤魔化し通せる自信が、すっかり無くなってしまっていた。
昔はこんなに積極的に人と話すような人間ではなかったはずなのだ。
だけど、変わっていた。
今の俺が、昔と違うのと同じように、彼もまた、あたりまえに変わっていた。
だから、こいつと会えたことはとても嬉しかったけれど、襤褸が出ないうちに、
もうそろそろ、終いにしなければいけないと思った。

「……」

わざと、携帯の時計を気にするそぶりをしてみせる。
日付がそろそろ変わろうとしていることを、こいつに教えるために。
相手の細かい動作を気にするやつだから、きっとすぐに気づくだろう。

「うわ、なんだかとんでもなく遅くなっちゃいましたね…」

ソバが、自分のを確認して気まずそうな声を上げる。
清清しいくらいに、見事に引っかかる。
さっき思ったことを、撤回したくなった。
昔のままの一面、全然、変わっていなかった。
何食わぬ顔で応える俺。
こういうやりとりも、昔よくやった。

「時間…ですか」

「はい。あ、でももう夏休みだし、大丈夫といえば大丈夫なんですけど」

「夏休み……」

そういえばそうだった。
この頭の痛くなる展開で、すっかり忘れていた。

「でもこれ以上遅くなると流石にまずいかもしれないですね……僕、制服だし」

「そうですね……では…帰りましょうか」

「はい、帰りましょう」

襤褸が出る前に、早く、この場を後にしたい気持ちがあって、
だけど、ひとつだけ、やり残したこともあった。
やり残したままの方が、良いのかもしれないけれど……
でも、どうしても聞かなければいけなくて……
けれども、やはり、絶対に聞いてはいけない……
そう思っていたことがあった。
83 :u4ZPDzk0 :2011/07/24(日) 03:46:10.14 ID:BTWO4z/20


「ソバ――」

名前を呼ぶ。
そういえば、今日は初めてで、そして随分と久しぶりだった。

「え――!?」

彼が驚いたように振り返る。
案の定、怪訝な表情を浮かべている。

「コソバさん」

すかさず違和感の無いように言い直す。
ちょっとした悪戯。

「え、あ、はい、なんでしょう」

「彼のこと、どうして探しているのですか?」

俺は、我慢出来なかった。

「ああ――それは……」

俺は、心のどこかで、もしかすると、
「彼が許してくれている」
そのような現実を期待していたのかもしれない。

「僕は……」

だけど、そんなご都合主義の淡い期待は――

「僕は……彼に、裏切られたんです」

一瞬で、木っ端微塵に打ち砕かれる。

「僕は彼を、絶対に許しません。
必ず見つけ出して、あの日のことを――」

ソバは、続くはずの言葉を口にせず、そのまま押し黙ってしまった。

「……」

俺も、黙っていた。
言葉が出なかった。
何も言えるわけが無かった。
確かに思い出は歳月と共に風化するものだけど、
だけど、俺がこいつに刻み付けた傷は、途方もなく、深かった。
歳月、そんなものでどうにかなるものではなかった。
84 :u4ZPDzk0 :2011/07/24(日) 03:51:38.37 ID:BTWO4z/20

「……」

俺も、黙っていた。
言葉が出なかった。
何も言えるわけが無かった。
確かに思い出は歳月と共に風化するものだけど、
だけど、俺がこいつに刻み付けた傷は、途方もなく、深かった。
歳月、そんなものでどうにかなるものではなかった。

「ごめん……なさい――」

また、謝ってしまっていた。
そう。
やはりこれは……
あの日、あの時、やってしまった、「取り返しの付かないこと」に対する謝罪だった。

涙が出ていた。
「まさか」とか、「なんで」と考える自分の思考を悉く無視して、どんどん零れてきた。

涙なんて、あの時以来、ずっと流したことはないのに……
どうしよう。
こんな顔を見られたら、言い訳ができない……

「あ、あの……え、えーっと……」

泣き顔を隠すために俯いてしまった俺に、ソバは戸惑っていた。

「すみません、あんまり気にしないでください。」

あたふたしながら、取り繕うソバ。
どうにも彼らしい。

「気にしてないというと嘘になりますけど、
人に聞かれたくないとかそういうのはないので、
悪いのは彼で、アイさんが謝ることはないんですよ」

バレないように、必死で、涙を拭ってごまかす。

「ええ……そう……ですね。ごめんなさい」

彼は、バツの悪そうに、また苦笑する。

「えっと……もう遅いですし、帰りましょうか」

「はい……」

「それじゃあ……」

「……はい」

お互いに踵を返す、背を向けて反対の方向、反対の道に向かう。
きっと、もう二度と顔を合わせることは無いだろう。
マギには悪いけれど…この学校には、二度と来ることができないだろうと思った。
やっぱり、あの日、逃げ出すべきだった。
こうしてソバとあってしまった以上、もう遅すぎるかもしれない。

忘れかけていた、いや、忘れようとしていた、忘れてしまいたかった、出来事。
こんなに時間がたって、もう一度、向き合うことになるなんて、神様は悪魔のようなやつだ。
逃げ出さなきゃいけない。
途方もなく遠いところまで。

85 :u4ZPDzk0 :2011/07/24(日) 03:52:19.22 ID:BTWO4z/20


見上げれば、綺麗な満月が見える。
遠い昔においてきたモノたちを、全部引き連れて来た、月夜。
だけど、秒針があと半周くらいを刻めば、長い、長い、休みがやってくる。
明日からは、自由な時間は山ほどある。

だから今夜は今すぐ、このパーティを解散してログアウトしてしまいたい。
そう思った。だけど……

「ヒメノさん――!」

だけど何故か……そういう時ほど、引き止められてしまうのだ。

足が止まる、心臓も止まりそうになる。
いっそこのまま立ったまま目を閉じてしまいたかった。
一体いつになれば、この夢から開放されるのだろう。

彼へ、振り返る。

「――また……会えますか?」

尋ねてくる彼の笑顔が、あの日とだぶった。
苦しかった、胸がぎりぎりと締め付けられるようだった。

「アイ……で…」

「え…?」

「アイ……で、いいです」

「アイ…さん?」

「はい」

「アイさん」

「はい」

「よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

何故だかお互いにぺこりとお辞儀をする。
下げた頭から見える暗い地面を見ながら、
この期に及んで、自分がアイという人間であることを強調する自分が、
無様で、とてもばからしい人間に思えた。

86 :u4ZPDzk0 :2011/07/24(日) 03:54:02.52 ID:BTWO4z/20


時計の秒針が、天辺をさそうとしている。
今日が終わって、明日が始まろうとしている。

「アイさん、また…会えますか?」

決して消えることのない思い出があった。
消えないから……
あの日、箱に仕舞って、蓋をして、錠をかけて、心の奥に仕舞った、
ずっと開けないつもりだった。放っておくつもりだった、そんな思い出があった。
でも、その思い出の詰まった箱の鍵を、今日、この夜が、親友と、悪友と、全部一緒に、連れてきた。
俺の箱の鍵……きっと、ずっと、ソバが握っていたのだ。
その鍵で、俺の箱の錠は外れてしまった。

そしてきっと、ソバが探している鍵は、俺が握っている。
もしかすると鍵穴に刺さってしまったかもしれない。
だけど、まだ、そこまでだ。
鍵をひねるのは、俺だ。

あの日、こいつと別れた瞬間と同じ。
あの日しっかりと鍵をかけたように、
同じ言葉をコイツにかければきっと……
だから俺は、もう一度しっかりと、鍵をかけ直すために……

「いいえ――……」

あの日と反対の言葉を、ソバにかける。

「申し訳ありません……
 もう、お目にかかれる機会は……無いと、思います」

彼がソバと出会ったのは、遥か遠い昔のこと。
彼がソバを裏切ったのは、遠い遠いあの日のこと。

今夜、ソバと出会ったのは、何も知らない「女の子」。
その「女の子」は、もう二度とソバと会うことはない。
目前の人を裏切った誰かも、ソバと会うことはない。

そんなこと、普通ならばあり得なかった。
でも今の自分になら、出来る。出来てしまう。
嫌な思い出が詰まった箱に、もう一度、綺麗に蓋をしてしまえる。
なんて意地の悪い僥倖だろうか。
なんて胸くそ悪い奇跡だろうか。
なんて都合のいい魔法だろうか。
神様がこのために、俺を女にしてくれたのなら、
俺は神様が悪魔のようなやつでも一生敬うことを誓おう。

「本当に、ごめんなさい――……」

家を出る前に、レン姉と話したことを思い出す。
ネトゲで、キャラのロールなんてしたことはない。
やってる人は散々見てきたけれど、
やっぱり自分は、同じことをやっても絶対に楽しめないだろうと思う。
それなのに、なんて嫌な皮肉だ。
ずいぶんと懐かしい気持ちを引っ張り出して、
ずいぶんと昔に使っていた笑顔を持ち出して、
演じるのだ。
あろうことか、昔、大切な友人だった人を欺くために。
あろうことかリアルで、この俺が女の子を。

87 :u4ZPDzk0 :2011/07/24(日) 03:55:02.48 ID:BTWO4z/20


別れの言葉を紡ぐ。

今、俺は、きっと自分でも驚くほどに、とても可愛らしい笑顔を浮かべていると思う。
何故かそんな核心があった。
演技なのに、心のそこから溢れてくるのだ。
何なのかよくわからないけど、とてもあたたかい気持ちが。
だから俺は、今、なぜだかわからないけれど、心のそこから、笑っているのだった。
「残念ながら、お別れです」
彼に背を向けるように踵を返す。
時計の針は丁度、Iのカタチになるところ。
足に力が入らなくて、気を抜けば転んでしまいそうだった。
だけど、それでも……
振り返って、もう一度だけ、ソバの顔を見て、また顔がほころんで、

「さようなら、コソバ……カズキさん」

そう言って、心いっぱいの好意を込めて、もう一度笑いかけてやった。
俺がもし女の子だったら、一発で攻め落とす自信がある笑顔だった。
俺がもし男の子だったら、一発で攻め落とされる自信のある笑顔だった。

それから……

彼に背を向けて、歩いた。
向かうべき方向すら分からなかった。
わからないままに、そのまま正門を飛び出した。
それから俺は、まるで何かの留め具が外れたように全力で駆け出していた。

88 :u4ZPDzk0 :2011/07/24(日) 03:57:29.14 ID:BTWO4z/20
-----------------------**

今日はここまでです。
おやすみなさい!
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/26(火) 22:12:57.11 ID:D+/e2oaPo
投下きたよ、マジで楽しみにしてるから頑張って
90 :u4ZPDzk0 :2011/07/27(水) 04:26:26.73 ID:hbsdanSt0
どうも。
今日も少しだけ投下します。

---------------------**


自転車で来た道。
長い長い坂道。
月明かりの夜。
止まらない涙。
拭うこともせす。
駆けて、駆けて、駆けた。
足が、止まらなかった。
止められなかった。
追いかけてくると思った。
追いつかれると思った。
彼に。
あの日に。
苦しかった。
謝りたかった。
赦してもらいたかった。
でも、赦してもらえるわけがなかった。
だから、また、逃げた。

ぼろぼろになりながら。
ぐしゃぐしゃになりながら。
吐きそうになりながら。
ごほごほ咳をしながら。
意識が擦り切れそうになっても、それでもずっと、走った。

ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう。

長い長い坂道を、転げ落ちるように駆け下りていく。
振り乱し、取り乱し、一心不乱に駆けて、だんだん、
どちらの足を前にだしているのかも分からなくなって、そうして、足が縺れた。

あ……

という間に、急勾配の地面からふわりと宙に投げ出され、
そのまま無様に転んだ。

はは……

靴が飛び、その場に倒れ伏した。
身体がズキズキ痛む。

あはは……

なぜか笑いが込み上げてくる。
馬鹿らしい、今までずっと逃げていたくせに、
今になって許されようなんて思ってしまった自分がとても憎たらしかった。
こうやって無様に転んでいるのが、お似合いだと思った。
可笑しいのに、涙が溢れてきた。

「ぐ……う……えぐ……う……う……」


ありとあらゆる感情が渦になって、それがそのまま涙になって溢れてくるのだ。
自分では歯止めがきかなかった。
きっと、夜明けまでこのままだろうと思うくらいに――

91 :u4ZPDzk0 :2011/07/27(水) 04:30:29.34 ID:hbsdanSt0

どれくらいそうしていただろう――

「おやおや、これはこれは……」

声が聞こえた。
すぐそこに人の気配も感じたけれど、だけどそんなものは、どうでも良かった。
ずっと、この感情の渦に浸っていたかった、それで許されるわけはないけれど、それでも、なんだか、その胸の痛みだけが、自分を慰めてくれるような気分だった。

「ふむ、月のこんなに綺麗な晩に、そのように俯いているのは勿体無いですね」

男の声だった。
よく通る音、人に語り聴かせる心得のある声音。

「何があったのかは存じませんが、いつまでもそうして無様に倒れ伏しているのは、
これほど美しく輝いている、お月様に失礼というものですよ、それこそ無粋というやつです」

涙が止まらないほど、こんなに悲しいのに、こんなに辛いのに。
こんなに悲しいのに、こんなに謝りたいと思っているのに、その気持ちを、お前は邪魔するのか!?
何も知らない奴に無神経なことを言われて、まるでヘドロのように沈殿していた感情が一遍に吹き出す。

「……なんかに……」

「失礼――今なにかおっしゃいましたか?
声は相手に伝わるように発しなければ、意味がありませんよ」

「貴方なんかにッ――」

声を荒らげて、怒鳴りつけようと、俯いていた顔を上げると、黒いスーツの男が立っていた。
月明かりがなければ闇に溶けてしまうのではないか、そう思うほど真っ黒だった。
思わず、ぶつけるはずの言葉を失った。
何か、何か、胸に楔が打ち込まれたような感覚、一瞬でその男の雰囲気に呑まれてしまった。

92 :u4ZPDzk0 :2011/07/27(水) 04:51:17.33 ID:hbsdanSt0


「今晩は、可愛らしいお嬢さん」

なぜかは分からないけれど、俺は、この人間に、
とても、とても、懐かしい感情を抱いた。

「とても悲しいことがあったのですね」

この懐かしさの理由に思い当たることのできない、戸惑い。
それを解決しようと、必死で記憶を探る。
そんなことなど知らず、男は勝手に、饒舌に語り出す。

「私には、貴女の心内を覗くことは出来ません。
 けれども、貴女のその美しい瞳が湛える宝石のような涙を見れば分かります。
どんなにお辛いかったか…それは私の想像を絶することでしょう。
 ただ、ただ……こんなにも美しい夜なのです。
 すこし、その悲しい気持ちを忘れて頂くわけには参りませんか。
 悲しいときだからこそ、この月夜に出会えた幸福を、共に分かち合いましょう」

慰めなのか、ナンパなのかよく分からない、そして少し世間ずれしたあやしいセリフ。
コイツが件の変質者なのだろうか。

「月明かりに美しく照らされる姫君のお顔が、
 そんなにも悲しげでは、お月様も輝き甲斐がない。
 さあ、お立ちなさい。凛とするのです。
 それから真摯に向き合いましょう。貴女の、その悲しみと」

そう言って、にこやかに笑い、手をさしだしてくる。

「私でよければ、力になりますよ」

その無邪気な顔、まるで母と同じよう。
ああ、不意に感じた懐かしさは、そのせいなのかもしれない。

「……貴方は……」

「訳あって名乗れませんが……
 そうですね、騎士(ナイト)とでも呼んで頂きましょうか。
 ええ、そうです、Nightともかかっていい具合だ。
 いかがですか、麗しいプリンセス……?」

「……はあ……」

辻斬り紛いではないようだった。
十分に変質者ではあるけれど……悪い人間ではないようだった。
93 :u4ZPDzk0 :2011/07/27(水) 04:52:11.50 ID:hbsdanSt0

「その……キシ……さん」

「ええ、何なりと」

普通ならば、明らかに世間ずれした、まるで舞台の上に立っているかような言い回し。
母のそれと、やっぱり重なってしまう。
母とゆかりのある人間であるのだろか。
けれども、そんな偶然があるのだろうか。
いや、もし偶然などではないとしたら……
ほんの些細な、それに思い過ごしである確率のほうがはるかに高いその疑問。
だけど、この胸騒ぎを信じて、鍵を投げかけた。

「私と、お友達になってくださるのですか……?」

それは、母の口癖だった。
事あるごと、人と合うごとに片端から投げかけていくのが、母の悪癖だった。
騎士は、俺の言葉を受けて、目を丸くして、それから細めて、恭しく言った。

「今宵の私の時間、すべて貴女に差し上げましょう。
 私の為すべき仕事よりはるかに価値がある使い道だ。
 とても、光栄に思います。」

「仕事……?」

「ええ、この先の学校に……」

そういって、騎士は坂の頂上、
先程まで俺がいたところを見遣る。

「魔女が住んでいると……
     そう……伺ったものでしてね――」

その言葉を発する刹那なだけ、その一瞬だけ、
騎士の目が、冥く光っていたことに、その時の俺は、
全く、気がついていなかった。

「いやはや、そんなことはどうでも良いのです。
 さあ姫、貴女のお城までお送りいたしましょう。
 御労しい、ボロボロでは御座いませんか。
 お召し替えはさすがに致しかねますが、
 せめて、お御足を煩わせぬよう、私めがお役に立ちましょう」

冗談めかしく言って、
騎士はそのまま、抱き上げた。
俺を。

94 :u4ZPDzk0 :2011/07/27(水) 04:52:42.69 ID:hbsdanSt0

「え……?
 え……!?
 あ……ちょ……ちょっと?……困ります!」

「いえいえ、お気になさらず」

「そういう問題じゃない!!」

「いえいえ、お気になさらず」

「この……!」

「おっと、暴れると落としてしまう」

「わ……ひゃ……落ちちゃ……ちゃんと抱えてください!」

「かしこまりました」

「いや……違、そうじゃなくて……」

「わがままな姫君ですねぇ……」

「なっ……」

「あ、ほら、月が綺麗ですよ」

「……ほんとだ……」

「どうです?
 すこしは冷静になれましたか?」

「あ……」

言われて、ソバとの出来事を、本当に少しだけ忘れていたことに気づく。
いつの間にか、騎士にうまい具合にのせられてたのだ。


95 :u4ZPDzk0 :2011/07/27(水) 04:53:09.10 ID:hbsdanSt0


「――それで良いのですよ。
月は、貴女に美しい姿を見せようとしているわけでは、決して有りません。
 月はただ、陽の光に照らされて、在るが儘の姿を魅せているだけにすぎない。
 満月が美しいのは、単に、見ている貴女が、貴女の心が、美しいと、そう感じるからです。
 貴女がそれを美しいと感じることの出来る心は、他でもない貴女だけの大切なものです」

俺を抱き抱えている彼の腕の力が、少しだけ強くなった。
彼が、真面目に、真摯に語ってくれていることは分かる。
その腕の力だけじゃなく、穏やかな声音と、優しげな表情が、教えてくれる。
騎士は、語り続ける。

 「――辛い、悲しい、そう感じることも、
 それは貴女の心であり、貴女だけの大切なものなのですよ。
 世界が貴女を辛い目に合わせようと、悲しませようとしているわけでは、決してありません。
 現実は、ただただ、在るが儘の姿で、そこに存在します。
 貴女が何を思うのか、そして、その思いの為に何を為すのか。
 それはあなた自身の決めることです。
 だけど、一人、暗闇で地に伏していては、他人の想いは変えられません。
 貴女が苦しいとか感じる、この世界は変わりません。
 立ってください。強く、凛と立つのです。
 思いを馳せるだけでは、地に伏すだけでは、なに変わらない――」


「昔の私がそうであったように」と騎士は云う。
とても遠いところを見ながら。
 
96 :u4ZPDzk0 :2011/07/27(水) 04:54:04.03 ID:hbsdanSt0


「だからこそ、貴女には立って欲しい。
 立って、一歩踏み出すこと。
 それが唯一、貴女に与えられた、世界を変える手段なのですから。
 世界は……貴女が思っている以上に、簡単に変わるものですよ。
 暗い地面を見下すのではなく、こうして、空を見上げるだけでも……ね?」

その通りだと、思う。
それは素直な気持ちだった。
母にもそうして、事あるごとに説教された。
だけど……

「だけど…過去は変わりません」

そう、自分のしたことは、どうやったって取り返しの付かないことだった。

「過去に悔いがあるのですか?」

「はい……」

「私もあります」

その応えに、俺は少し驚いて、尋ねた。

「どのような…と、聞いても良いですか?」

「私の失態で、仲間を失いました」

「……」

「しかし、彼らの前で、泣いて謝罪することが贖罪では無いと、私は考えます。
 彼らが成し得たかったこと、それを何としても、彼らの代わりに成す。
 私の人生は、今、そのためだけに使われています。
 ああ、今は少し寄り道していますけどね、行き倒れの美しい姫君のために」

「……」

「冗談です。そんな目で見ないでください。
 もちろん、そうすることで償いきれるものではないことはないとは思います。
 それでも、そうすべきだと、私は信じています」

97 :u4ZPDzk0 :2011/07/27(水) 04:54:31.45 ID:hbsdanSt0


「お強い…ですね」

「弱いから……救われたいから……綺麗事を並べて、自分を偽っているのかもしれません」

「私は…どのように見えますか」

「少なくとも私には、今の貴女は答えを探そうとしているように見えます」

「ずっとそうしてきました」

「でも答えが見つからない」

「その通りです」

「誰しも、そうして苦しむと思います」

「私は、昔、友人を傷つけました。
 取り返しのつかないことをしました」

「割り切れ、とも、一生背負え、とも、私には言う権利がありません。
 私はあなたの神様には成り得ません。友達としてしか話せません」

「貴方は、もし私に裏切られたとしたら、
 友達として、どう思いますか?
 どうすれば、許してくださいますか?」

「貴方が悔いているなら、これ以上悔いることなど無いと伝えます。
 許すも何も、私のために、思い、悩んでくれている。
 それはとても光栄で、嬉しいことです。
 友人として、これからも友人であって欲しいと伝えます」

「だけど、彼が貴方のようであるとは限りません」

「その通りです。
 だから貴女は、悔い続けないければなりません。
 彼を思い、彼のために悩み、
 彼のために為すべきことを、全力で成さなければなりません。
 彼が許してくれることを見返りとして考えてはならない。
 貴女は、貴女のために、大切な友人を愛し、大切な友人の為に、
 行動するべきだと思います」

「そう……ですね……確かにそうです」

「ただ、まあ、今このときは、この美しいお月様でも眺めて、
 少しだけ現実逃避しても良いのではないかなと、そう思いますよ」

「そうしても……許されるでしょうか」

「私が許します」

「有難う、優しい人ですね、キシさんは」

「お褒めに預かり光栄です」

お姫様抱っこのまま笑い合って、
そのままの格好で見上げる月は、たしかに、とても美しかった。


98 :u4ZPDzk0 :2011/07/27(水) 04:55:04.43 ID:hbsdanSt0
---------------**
今日はここまで。
おやすみなさい。
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) :2011/07/27(水) 22:59:54.15 ID:3a2QxEAp0
乙!
続きwktk
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2011/08/27(土) 21:12:22.50 ID:s+zdnoSNo
漏れら極悪非道のageブラザーズ!
今日もネタもないのにageてやるからな!
 ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  ∧_∧   ∧_∧    age
 (・∀・∩)(∩・∀・)    age
 (つ  丿 (   ⊂) age
  ( ヽノ   ヽ/  )   age
  し(_)   (_)J
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2011/10/13(木) 23:29:12.50 ID:T6qd+xNxo
まだこないのか…
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2011/10/13(木) 23:35:05.61 ID:a25fuw4Co
こないね…
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [s]:2011/10/30(日) 22:25:34.30 ID:DEy3QoQRo
wikiって更新されないの?
Flower*Vacationの一から読みたいんだけど


104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/10/30(日) 22:27:16.30 ID:Vlwt1nWbo
更新係とか居ないからな。住人もほぼゼロだし
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