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一方通行「いいか、フラグってのはなァ」 ガブリエル「vbhti素敵apfrgt」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/18(月) 22:23:13.40 ID:dNiEP72yo


このSSは、とある魔術の禁書目録に出てくるキャラクター、一方通行(アクセラレータ)を中心とした
もうあまりほのぼのとは言えない感じの二次創作物です。



一方通行「フラグ・・・ねェ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1285654962/

一方通行「フラグ・・・・・・なのかァ?」  風斬「そうですよ!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1289310136/

一方通行「フラグ・・・・・・じゃねェだろ」  エイワス「まだそんな事を言っているのか」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1294928027/

一方通行「フラグ・・・・・・だろォな」  垣根「ち・・・・・・くしょ・・・・・・う」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1295564748/

一方通行「フラグだと? って事ァ」  レッサー「私はあなたが好きって事です♪」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1298041227/

一方通行「そンなフラグはヘシ折ってやる」  ヴェント「・・・・・・あ?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1300453744/


上記のスレからの続きとなっています。もしお暇でしたら、ご一読を。


以下、留意点など。


・投下は基本的に三日おきです、多分。そしてかなり気まぐれに投下するので質悪いです。
・第三次世界大戦は終結。その後のお話です。
・キャラ崩壊しまくりな上に、設定も弄りまくっています ←これ一番重要、ご注意ください。
・地の文が多めになってきました。
・書き溜めはありますが恐らく速攻で尽きます・・・・・・


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=^・ω・^= ぬこ神社 Part125《ぬこみくじ・猫育成ゲーム》 @ 2024/03/29(金) 17:12:24.43 ID:jZB3xFnv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1711699942/

VIPでTW ★5 @ 2024/03/29(金) 09:54:48.69 ID:aP+hFwQR0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1711673687/

小テスト @ 2024/03/28(木) 19:48:27.38 ID:ptMrOEVy0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/zikken/1711622906/

満身創痍 @ 2024/03/28(木) 18:15:37.00 ID:YDfjckg/o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1711617334/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part8 @ 2024/03/28(木) 10:54:28.17 ID:l/9ZW4Ws0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1711590867/

旅にでんちう @ 2024/03/27(水) 09:07:07.22 ID:y4bABGEzO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1711498027/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:18.81 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459578/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:02.91 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459562/

2 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/18(月) 22:24:12.54 ID:dNiEP72yo


                   【超今更の登場人物紹介・『天使同盟』の構成員】


【一方通行(アクセラレータ)】


本作の主人公にして『天使同盟(アライアンス)』のリーダー。第三次世界大戦終結後、大天使ミーシャ=クロイツェフになぜか好かれてしまい、
その後の生活はほぼミーシャと共に過ごしている。すき焼き屋で風斬氷華とフラグを立てると同時に
『天使同盟』を結成。酒の勢いとノリで結成したこの組織が、後に全世界を揺るがす
とんでもない同盟になることは、その時の彼には予想も出来なかった。ちなみに、この本作では結構な数の女性とフラグを立てている。


【ミーシャ=クロイツェフ】


『神の力(ガブリエル)』。本作のヒロインにして『天使同盟』の顔。第三次世界大戦終結後、
なぜか一方通行に懐いてしまい生活を共にすることになる。身長ニメートル以上、
全身をすべすべとした白の布で覆い、顔のパーツを全て凹凸で再現しているその姿はまさに異形。
しかし彼女の仕草にはどこか可愛らしい一面も見られる。ような気がする。一方通行からはガブリエルと呼ばれている。


【風斬氷華(ヒューズ=カザキリ)】


『天使同盟』の清涼剤にして唯一、常識を持ち合わせている女の子。でも最近はそんな事なくなってきた。
すき焼き屋の一件で一方通行に特別な感情を抱く事になる。キレるとエイワスですら手が付けられなくなる。
基本的には誰に対しても敬語で、レッサー以外には『さん』付けで名前を呼ぶ。ミーシャの事は『天使さん』。
超絶鈍感クソ野郎こと一方通行相手に唯一『女性』を意識させた女傑。最もフラグらしいフラグが立っている。


【エイワス】


『天使同盟』のジェネラルマネージャーにして最強の聖守護天使。霊的存在。銀河系悪鬼。
アレイスター=クロウリーに必要な知識を全て授けた大馬鹿野郎。ある時は巨乳のパツ金ねーちゃん。
シリアスパートもそうだが、特にギャグパート時のエイワスは全宇宙最強の存在。出来ない事がない。
『天使同盟』結成に興味を持ったため、垣根帝督というお土産を手に彼らに接触した。
その瞬間、『天使同盟』の命運は決まってしまったのかもしれない。ドラコ=アイワズという偽名をよく使う。


【垣根帝督】


学園都市第二位の超能力者(レベル5)、『未元物質(ダークマター)』。イケメンホストかぶれ。
現時点では彼が最後の『天使同盟』構成員である。イジラれ役。すぐ死ぬ。
本作で最も死亡フラグを積み重ねてきている男。しかしそれらを全て跳ね除けている彼は
実は不死身なのではないかと囁かれている。あとすぐ死ぬ。でもたまに本気でかっこいい一面を見せる。
一方通行とのデートにおいて自らの心の内を暴露。以降はミーシャを守るために彼らと行動を共にする。
実は彼、この本作で三人ほどちゃんとしたフラグを立てている。

3 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/18(月) 22:29:06.93 ID:dNiEP72yo

テンプレは一応これだけとなります。
前スレ992様、ニュアンスとしてはそんな感じですww伝わってよかった・・・・・・
でも顔は見えてるのであの藍染様みたいなのとは違いますよww

前スレ1000様。これだけじゃ強さがどうこうは決められません。
もはや殺し合いになりかけているとはいえ、これはただの訓練ですので。


・・・・・・ここだけ見ると何の話してんのかわかりませんね。


ではまた、よろしくお願いします!

ミーシャがやっとスレタイに来ました・・・・・・。

4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/18(月) 22:29:51.71 ID:nIqZdo1p0
キターーーーーーーー!!
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2011/04/18(月) 22:31:59.10 ID:pHeSTOTu0
いやほおおおおおおおおお
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/18(月) 22:32:10.14 ID:cQCsbxsW0
スレ立て乙です

ミーシャがやっとスレタイに…!!
そしてていとくんはすぐ死にすぎだろwwww
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/04/18(月) 22:32:10.47 ID:T+NVsJ/AO
新スレキタ―――――――!
しかし大作すぎるwwww
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2011/04/18(月) 22:32:30.24 ID:eZ6j+pcY0
一方さんが何かを悟った模様
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/18(月) 22:34:07.76 ID:bfYwnPLUo

垣根にフラグが立ってるだと……?
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/18(月) 22:34:55.32 ID:nIqZdo1p0
>>実は彼、この本作で三人はちゃんとしたフラグを立てている

なん……だと……思い当たる候補はサーシャ・ワシリーサの師妹丼ぐらいだぞ
後一人…………心理定規?
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/18(月) 22:35:24.37 ID:GA5Y9L1WP
>>1
このスレで終わるんだろうか

それより帝凍庫が3人ほどフラグ立ててるって誰にだ デートの時の女の子とルチアババァと誰だ
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/18(月) 22:36:07.01 ID:YQvGHZFf0
>>9
黒騎士たん
白騎士たん
赤騎士たん
の3本だな
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/18(月) 22:38:29.06 ID:nIqZdo1p0
>>12
その発想は無かったけどいいや



ていとくんを取り合う甲冑少女達を想像して萌えたから
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/18(月) 22:43:27.98 ID:NR72VMYD0
゚乙<これは乙の軌道じゃ云々

ついに一方さんがフラグを理解したか
しかしどういう状況なのか全く予想できないww
前スレのスレタイ回収はまさかのシーンだったからなwwww

帝督ンのフラグは追ってなかったからな……誰に対して立っているのか読み返してみるか
あと前スレイメージは合っていたようで何より

このスレも張り付いて投下を待つぜ
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/18(月) 22:50:16.90 ID:Y+HP9gKDO
いやっほー!
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/04/18(月) 22:53:08.36 ID:Q3I9J90AO
>>1
スレタイはガブリエルと書いたのか
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/18(月) 22:56:11.29 ID:cpKUDn0DO
一方通行で親友フラグとかは、ありか……?
正直死亡フラグしかワカランカッタ
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/18(月) 23:11:17.51 ID:IcpD7rtUo
誘導張られる前に前スレ埋めるなよ
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/04/18(月) 23:16:09.10 ID:qIgcajwYo
1002見りゃわかるだろ
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/04/18(月) 23:51:23.70 ID:hx74saGto


垣根帝督最後の戦いっぽくなってて笑った
なんかフラグあるみたいだから頑張って生き延びて回収してくれw
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/18(月) 23:53:30.86 ID:I6GN3fQk0
>>1
ついにスレタイにミーシャってかガブリエルキタ――(゚∀゚)――!!
しかし終わりが近づいてるってことでもあるのがさみしい
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/19(火) 00:06:12.78 ID:7Zzdc86O0
>>13
誰か詳細希望
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/04/19(火) 00:48:39.59 ID:RqbK+jhAO
>>13
視力を奪って自分の色しか見えないようにするんですね?
なんというヤンデレ
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/19(火) 00:57:47.17 ID:CQyu8sPUo
>>19
既に立ってればな
埋めたやつらは次スレ立ってるのを確認したうえで埋めたってのか?
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/19(火) 01:31:34.67 ID:EgDCru77o
>>24
スマン。残り少ないってたのはわかってたが感想レスしてしまった
頃合を見て勝手に立てますって書いてあったので埋まる事想定で大丈夫かなと…
自分勝手な考えで申し訳ない
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/19(火) 01:58:42.12 ID:oN1Walq60
ああ、まだミーシャの台詞がノイズにまみれている
まだ時間は残っている、こんなに嬉しいことはない
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/04/19(火) 08:18:37.37 ID:tMmgOUfx0
>>1
見た目重視で全身の皮膚と筋細胞と神経細胞をズタボロにするおしゃれさんの垣根を支援
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/04/19(火) 13:20:37.94 ID:7rqgaXoKo
垣根ならやってくれると信じてる
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/19(火) 14:57:15.59 ID:fKE6qUjv0
ついにスレタイにガブリエルが来たのか
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/19(火) 21:20:24.70 ID:RZYjUBc7o
白い仮面みたいなトゥルトゥルはEqu.Darkmatterみたいな感じかな
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/19(火) 22:42:52.60 ID:NIz+4vp10
とうとうメインヒロイン登場か…
胸が熱くなるな
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/04/20(水) 00:47:45.94 ID:5mdpuqsSo
あの人は真性のロリコンだから最後はミ…私のところへ戻ってくるんだけどねってミ…ゲフンゲフン
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/04/20(水) 12:24:06.37 ID:3Vw3DFWAO
ていとくんがうろこさかなびとみたいなイメージしか出来ない
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/04/20(水) 17:13:05.42 ID:DeOLCB/fo
むしろすけとうだらかタンノ君
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/20(水) 20:58:24.28 ID:MzS1TP4i0
この一方さんの説得するようなしゃべり方そしてそれを聞いてまるでわかっていないような感じのガブリエルということは……
36 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/20(水) 21:22:21.37 ID:znxtMwqJo
次からはちゃんと誘導レスします、申し訳ない。

というわけでこんばんわ、投下しにきました。
新スレ立ったってのに投下もせずに丸一日放置とかあり得ねえ・・・・・・お待たせしました。

このスレでもう7スレ目・・・・・・とんでもない事になってきました。
別に大作でもなんでもないのに。


そんなわけで、このスレもどうかよろしくお願いします!
今回で垣根の訓練という名の殺し合いも終わります。


では、行きましょう
37 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/20(水) 21:23:51.47 ID:znxtMwqJo


白鎧の怪物と最強の修道女が激突する。その衝撃は目視できる程の球状の衝撃波が発生するほどだった。

砲弾のような速度で放たれるワシリーサの右ストレートが、垣根帝督の身を守る『未元物質』の鎧越しに痛烈なダメージを肉体に与える。
返す刀で繰り出した垣根帝督の前蹴りが、ワシリーサの着る赤い修道服の上からでも分かる引き締まった脇腹をごっそりと抉る。

両者はそのまますれ違い、一旦距離をおいた。
ポッカリと欠落した部分が出来上がったワシリーサの脇腹から尋常ではない量の出血が起きている。
それでも、ワシリーサは不敵な笑みを崩さない。

『未元物質』の鎧で身を包み、完全に無敵状態であるはずの垣根帝督が口から吐血する。
ワシリーサの放った右ストレートが肺に深く入り込み、深刻なダメージを負わせていた。


ワシリーサは『何もかもが赤い騎士』と赤い馬を絶対安全な距離まで退かせていた。
万が一にも垣根の攻撃に巻き込まれて赤い騎士がやられるような事になれば、
今も轟音を放ちながら君臨している擬似太陽も綺麗サッパリ消失してしまうからだ。

もはや『三騎士』程度では、今の垣根帝督には傷一つ負わせる事は出来ない。
だからワシリーサは自身の肉体を魔力で強化し、その肉体のみで戦う事を選択した。

38 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/20(水) 21:24:49.24 ID:znxtMwqJo


一方の垣根は腰に巻いてあるズタボロになったジャケットからルーンを取り出すと、
詠唱破棄を行い魔術による攻撃を放った。
これによって彼の身体のどこかに出血が起こっているのだろうが、白の鎧に包まれた今の姿では
それを確認することも出来ない。


(これって手で払ったりガードしたりしてもダメなのかしら?)


この魔術訓練での垣根の合格条件は『ワシリーサに魔術による攻撃を当てる事』。
しかし垣根の魔術攻撃を手や足で防いだり弾いたりしてもいいのかどうかは議論されていない。

ともあれ、限界まで集中力を高めた今のワシリーサならこんなショボい魔術攻撃など
防ぐまでもない。彼女は軽い動作で垣根の放った魔術を避ける。


と、回避行動を見計らって垣根の背中にある"五枚"の翼がドバァッ!!!とワシリーサに襲いかかってきた。


(目ェ潰れてるんじゃないの!? さっきの魔術攻撃といい、どんだけ正確に私の位置を把握してんのよ〜!)

39 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/20(水) 21:26:22.89 ID:znxtMwqJo


極限状態にある今の垣根は、六枚の内の一枚の翼を『エコーロケーション』を行使するための
超音波発生機に変化させている。
よって、これだけ素早い動きで行われる戦闘の最中でも、『エコーロケーション』によってワシリーサの位置を
一寸の狂いもなく完璧に把握していた。


ズギャギャギャギャギャ!!!と五枚の翼が地面に深く突き刺さる。
それだけでこの地下防空壕跡地がぐらぐらと揺れ、軽い地震が起きた。
しかし肝心の手応えがない。ワシリーサは翼を避けて垣根の懐に侵入していた。


瞬間、垣根の身を覆う白の鎧が一斉に光を放ち、彼を中心に大爆発を起こした。
暗部での抗争でも使用したことのある、『未元物質』の応用だ。


左フックをこめかみに入れようとしていたため、その爆発でワシリーサの左腕が吹っ飛んでしまった。
だが彼女はその事にも怯まず、すかさず垣根の顔面にハイキックをぶち込む。


「―――――――――ッッ・・・・・・!!!」

40 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/20(水) 21:27:13.66 ID:znxtMwqJo


その攻撃で鼻の骨が折れ、苦痛に顔を歪める。
魔術による攻撃すら軽減できる特製の『未元物質』越しにダメージを与えてくるこの修道女は、本当に人間なのかと疑ってしまう。


垣根は翼から烈風を巻き起こし、ワシリーサとの距離を離した。が、その時、


「一本足の家の人喰い婆さん―――――」

「!?」


ワシリーサが突然口ずさみ始めた。それはあの『バーバ・ヤーガ』を呼び出す時に口ずさむ、二度と聞きたくない言葉。


垣根は直ぐ様『エコーロケーション』用の翼に意識を向ける。
ここであの妖婆に出てこられてはワシリーサに魔術攻撃を当てる事が困難になってしまう。


超音波を発し妖婆の姿を捜していると、すぐ近くから声が聞こえた。


「うっそぴょーん♪」


メギィッ、という音と共に垣根は腹の辺りにじわりとした鈍痛を感じた。
ワシリーサが瞬間移動のように素早く垣根の懐に飛び込み、みぞおちに肘鉄を喰らわせていたのだ。

41 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/20(水) 21:28:39.50 ID:znxtMwqJo


(・・・・・・こんのクソババア!! 俺の意識を散らせるためにくだらねえウソつきやがったな!?
 それに見事に引っかかってる俺も俺だけど・・・・・・。 情けねえ・・・・・・!!)


肘鉄に次いで飛んできたハイキックが顔にブチ当たり、地面を転がりながら垣根は心の中で自身に叱咤する。
ワシリーサは『未元物質』の翼が放つ超音波を撹乱させるために『バーバ・ヤーガ』を呼び出すと見せかけ、
そのまま自分の姿を見失った垣根に攻撃するという作戦を実行したのだ。


「一本足の家の人喰い婆さん――――」

(クソったれが・・・・・・!!!)


またしてもあの呼び声。今度こそ妖婆を召喚するのか、それともフェイクか。
ワシリーサはここにきて、垣根に対して心理戦を持ち込んできた。

42 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/20(水) 21:29:54.12 ID:znxtMwqJo


『未元物質』から放たれる超音波をより拡大させ、地下空間全域の状況を把握すれば打破出来るのだが、
今の垣根にはそんな演算をする余裕は無かった。せいぜい自身を中心に半径一〇〇メートル程度の範囲までしか
超音波による恩恵を受けられない状態だった。

ワシリーサ一人を相手にするならそれで十分だ。ワシリーサが超音波の届かない範囲に出ても、
自分は何もせず相手が飛び込んでくるのを待てばいいし、ワシリーサが髑髏のランプやらなんやらで
遠距離攻撃をしてきても『未元物質』の鎧でダメージを著しく軽減できる。

しかし相手が『増えてしまう』と途端に垣根の負担は重くなる。
本当に妖婆を呼び出して二人で攻めて来ると分かりきっているのなら対応できるが、
それがフェイクだった場合、居もしない妖婆の位置を確認する作業で隙が生じてしまうのだ。

さっきはその隙を突かれて手痛いダメージを負ってしまった。
見かけでは分かりにくいが、ワシリーサから受ける攻撃と『未元物質』を無茶な演算で行使し続けているため
垣根の体力はもう限界などとっくに通り越しているのだ。


長期戦や心理戦などに構っている暇も余裕もない。短期決戦、これしか生き残る道は無かった。

43 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/20(水) 21:30:43.38 ID:znxtMwqJo


(こうなりゃ賭けだ、ちくしょう!)


垣根帝督は腰に巻いているボロボロのジャケットに手を伸ばし、ゴソゴソとルーンを取り出していく。


「幸薄く誠実な娘のために力を貸してくださいな♪」


真っ赤に染まった地下空間でワシリーサは唄い終わると、二〇メートル程先でふらふらと佇んでいる垣根の方を向いた。


「さてさて、今度はちゃんと婆さんは出てきてくれたかな?」


そんな戯言など無視して垣根はワシリーサに背を向け、潰れた喉にムチを入れて雄叫びをあげる。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!!!!!!」

「!」

44 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/20(水) 21:31:52.57 ID:znxtMwqJo


長期戦に持ち込もうと考えていたワシリーサの一瞬の油断をついて、

"垣根帝督は自身の身体を覆い尽くしている白の鎧も、チューブ状に変化させていた翼も引きぬいて、翼を爆発的に肥大化させた"。
これまでにない、深海にまで届きそうな光を放ちながらその翼は伸びていく。


計一二枚、一〇〇メートル以上の大きさにまで膨れ上がった無機質な純白の翼は、あっという間にワシリーサを取り囲んだ。
垣根はワシリーサに対して背を向けていたため、彼女を閉じ込めたその複数の翼は綺麗な球状の牢のような形になっていた。


(ヤバ、一切の隙間なし。 ここで烈風とか出されたら私バラバラになるんじゃね?)


と、


ここで垣根は妙な声を耳にする。
この世の物とは思えない、その悍ましい『叫び声』を、彼は一度聞いたことがある。

45 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/20(水) 21:32:57.27 ID:znxtMwqJo


(・・・・・・・・・・・・人喰いババアかッ!!?)


気付いたときには、既に千切れた影を纏った『バーバ・ヤーガ』が垣根の目と鼻の先まで接近していた。
現出させている全ての『未元物質』の翼をワシリーサを捕える牢に回しているため、エコーロケーションを
行うことが出来ない。




だから、『バーバ・ヤーガ』が繰り出した手刀は、垣根の腹を容赦なく突き破る。




「か、は。 ぁ・・・・・・」


ワシリーサは二度目の歌の時、本当に妖婆を召喚していたのだ。
その時には既に垣根はある『賭け』の準備していたため、超音波に意識を向けられなかった。

46 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/20(水) 21:34:23.75 ID:znxtMwqJo


一二枚の翼が渦を巻くように形状を変化させて出来上がった『未元物質』の白い球状の牢の中から、
ガンッ、ゴンッ、と鈍い音が連続して響いてきた。


(あああもう!!! 何これ、どうやってもぶっ壊せない!!
 どんだけ頑丈な作りにしてあんのよ、さっきまでとはまるで硬度が違う・・・・・・)


視力が機能しなくなりそうなほど発光している牢内で、ワシリーサはなんとか脱出を試みようと
何度も何度も牢の壁に攻撃していた。

外界からこれといった物音が聞こえてこない。
まさかとは思うが"本当に"呼び出した『バーバ・ヤーガ』が垣根に止めを刺したのだろうか?


(だとしたらこの白い翼が崩壊しなければおかしいわ・・・・・・、完全に意識を断たれても尚
 現出させ続けられるようなシロモノなら話は別だけど)


ワシリーサの推測は当たっていた。
確かに『未元物質』を現出させている垣根本人の意識が断たれたり、本人が死んだりすれば
『未元物質』は否応なく消えてなくなってしまう。

47 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/20(水) 21:35:29.91 ID:znxtMwqJo


つまり今外にいるであろう垣根は、まだ意識をしっかりと保っているという事になる。


そんな垣根帝督は、妖婆に腹を貫かれてもその皺だらけの顔を見ながら笑っていた。


「ざ、・・・・・・んねん、だったなあ・・・・・・」


掠れた声でそう言う垣根は、自分の腹を貫いている妖婆の腕を『未元物質』の鎧のせいでぐちゃぐちゃになった
両手でつかみ、これ以上余計なことをさせまいと試みた。
妖婆がその気になれば満身創痍の垣根の腕など容易に引き千切る事が出来るだろうが、
あくまでもワシリーサに呼ばれた『人形』である妖婆にそこまでの判断は下せない。


垣根は自分の真後ろにある牢の中で暴れているワシリーサに言った。


「よお・・・・・・聞こえてんのかババア」

「むむ!? 垣根の坊や? 悪いんだけど声が掠れまくっててあなたが何を言ってるのか分からんちん」

「この訓練の・・・・・・終了条件なんだけどよお」

48 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/20(水) 21:36:56.09 ID:znxtMwqJo


『未元物質』で構成されている白の鎧を全て解除してしまったため、こうしている今も
垣根は『赤い騎士』の擬似太陽熱で身を焦がしている。

しかし構わず、垣根は続けた。


「テメェ、に・・・・・・魔術による攻撃を当てれば・・・・・・俺の勝ち、だった・・・・・・よなぁ」

「・・・・・・・・・・・・うんうん。 聞き取れた。 そのとおりよ、それが何?」





「"気付けよ、マヌケ"」


垣根の言葉に首を傾げるワシリーサは、そこで違和感に気付いた。
ゆっくりと、僅かずつではあるが牢内の発光が無くなっていっている。




そして、ワシリーサの全身からドッと汗が吹き出た。



49 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/20(水) 21:37:56.87 ID:znxtMwqJo


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・か、垣根ちゃん。 これは一体何ザマス?」


牢内の様子がくっきりと見える程度に発光が収まったところで、ワシリーサは改めて牢内を見回す。
一二枚の翼で構成されたその牢の壁には、『未元物質』には本来あり得ない物があった。


「マジで・・・・・・賭けだったわ。 あん時テメェがこの怪物ババアなんか呼ばずに
 俺を一方的にボコボコにしときゃ勝負は着いてたんだ」


ワシリーサが顔を青ざめさせながら見ている光景。それは、


「これが『未元物質』と魔術の応用だ・・・・・・クソ野郎」




『未元物質』の翼の裏にびっしりと貼り付けられた、何百枚という数のルーンの札だった。



50 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/20(水) 21:38:36.06 ID:znxtMwqJo


垣根は渾身の力を込めて目の前にいる『バーバ・ヤーガ』を蹴り飛ばす。
咄嗟にワシリーサが妖婆に指示を送ろうとしたが、牢内のルーンに意識を向けていたため後手に回ってしまった。


「チェックメイト」

「さ、サーシャちゃ〜〜〜〜〜〜〜ん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」




「人間ってのは、何分くらい『焼けば』食べ頃になるんだろうな」




垣根は言い終えると、ありったけの魔力を込めて真後ろの牢内にあるルーンを発動させた。

51 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/20(水) 21:40:12.78 ID:znxtMwqJo


『未元物質』の牢内に、獄炎の渦が狂ったように吹き荒れた。


「うぎゃあああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!!!!!!」


ワシリーサは女性特有の甲高い悲鳴を上げながら牢内でのたうち回る。
さっきまで垣根に対して行っていた灼熱攻撃を、今度は自身が身を持って体験するハメになってしまった。
自らが呼び出した『赤い騎士』による擬似太陽熱の影響は受けないワシリーサでも、
相手からの魔術による影響までは無視、というわけにはいかない。

それでもワシリーサならここから形勢逆転できる方法を見つけることが出来るだろうが、勝負は既に決している。





『ワシリーサに魔術による攻撃を当てる事』。
学園都市第二位の超能力者(レベル5)、垣根帝督は見事に元『殲滅白書』最強のシスター、ワシリーサから勝利を得ることが出来た。




52 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/20(水) 21:41:48.02 ID:znxtMwqJo


程なくして、地下空間の頂上に浮かんでいた『赤い騎士』の擬似太陽が消えた。
ワシリーサが『赤い騎士』の現出を維持できなくなったのだろう。
それとほぼ同時に地面に転がっていた『バーバ・ヤーガ』も姿を消した。


それらを確認すると、垣根帝督は『未元物質』の翼を収める。と、いうよりはもう体力的にも精神的にも
限界を超えて限界だったのだろう。自分の意志とは関係なく、『未元物質』は霧散していった。

そして力無く垣根帝督は糸の切れた操り人形のようにその場に倒れ込んだ。
垣根の身体は見るに耐えない凄惨な状態になっていた。全身の皮膚と肉が巨大な彫刻刀で思いっきり抉ったように
捲れあがっており、それによる出血に加え最後の魔術の使用の際の大量出血。

さらに『赤い騎士』による超高温熱風によって負った火傷で、捲れあがっている皮膚という皮膚が熟れ過ぎた果実のように
じゅくじゅくに腫れ上がり、着ていた衣服などもはや見る影も無くなっている。


まさに満身創痍、半死半生。こんな状態で戦っていた垣根には賞賛というより理解に苦しむ、という感想の方を抱いてしまう。
実際、現在の垣根の心臓はその活動を停止していた。

53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/04/20(水) 21:42:20.25 ID:1oIb9sks0
もはや攻撃を当てるじゃなくて勝利か
さすがだなかきねん
54 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/20(水) 21:42:48.67 ID:znxtMwqJo


「ああ、いかんなこれは」


今までずっとそこにいたのかと言いたくなるほど、この訓練を観賞していたエイワスは
パッと垣根の下に移動していた。


「いやあ、人間ここまで酷い姿に彩られるものなのだな。 今の垣根の姿を風斬辺りが見たら
 昏倒してしまいかねん。 ふふ、それはそれで愉快だが」


洒落にならない冗談を口走りながらエイワスはそっと垣根の頭に手を近付け、
ボヤーっとした謎の光を当てる。頭からゆっくりと手を移動させ、身体、腕、脚と。
そして脚からまた頭まで、とその手を往復させていった。治療を行っているのだろう。


すると、異様に焦げ臭い香りが立ち込める地下空間に、女性の呻き声が聞こえてきた。


「・・・・・・ち、ちょっとエイワスぅ・・・・・・。 私も治してよぉ・・・・・・」

「ワシリーサ、生きていたのか。 そのまま死んでいれば面白かったのに」

「あのねえ・・・・・・」

55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/20(水) 21:45:01.50 ID:eBDXGiZD0
>実際、現在の垣根の心臓はその活動を停止していた。
えっ
56 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/20(水) 21:45:43.69 ID:znxtMwqJo


冗談みたいな光景だった。
ワシリーサは顔とわずかな上半身だけを残し、あとは全て骨だけの状態で焼け焦げていた。
一体これでどうやって生命活動をしているのか。不死身にもほどがある彼女には呆れる他ない。


「水を弾くような美しい君の柔肌も、そこまでこんがり焼かれると見てられんな」

「うるせー・・・・・・マジで死ぬかと思った。 垣根の坊やったら、私を殺すつもりかっつーの」

「君が言える事かね、それ」


くすくすと二人は笑い合い、激闘の後の静けさを満喫する。
なんでこの状況で笑ってられるのだろう。今、一人の若い少年がデッドオアアライブを彷徨っているというのに。


「その子は無事?」

「無事なわけがないだろう。 だが必ず復活させてみせる。 垣根帝督のしぶとさは
 君も十分に理解しているだろう?」

「そうね、素敵」


その後はしばらく沈黙が続き、エイワスは垣根の治療に専念した。

57 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/20(水) 21:50:31.00 ID:znxtMwqJo


Q. ていとくん死んでますやん。

A. 心臓くらい止まったって平気平気。すぐに誰かが助けてくれればの話ですが。


今回はここまでです。ちょっとやり過ぎ感溢れる訓練でしたが無事に終了しました。
さすがに勝利ってのは言い過ぎましたね、もうこの辺は勢いで書いてた記憶があるので・・・・・・


さて、エイワスの治療でまぁなんとか助かっただろう垣根にはエイワスからのご褒美が・・・・・・。
それは一体何なのか?勘のするどい方ならこの時点で気付くかもしれません。

次回更新は三日以内。

それでは、新スレでもよろしくお願いします。ありがとうございました!


あと、スレタイはそんな深い意味はないですよww割とあっさり回収されるはずです。

58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/20(水) 21:52:47.50 ID:wpKpocfIo


「勝利条件:ワシリーサに魔法攻撃をあてる」だから勝利っちゃー勝利じゃね
つかワシリーサも大概酷いなwwww
59 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/20(水) 21:53:21.70 ID:znxtMwqJo



                          【次回予告】



『おめでとう、垣根帝督。 君は見事、この訓練の合格条件をクリアした。
 君はもう、立派な魔術師だよ』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・エイワス




『へへ・・・・・・やったぜクソったれが・・・・・・!!! ざまあみろチクショウ・・・・・・!!!』
―――――――――――『天使同盟』の構成員・垣根帝督




『(見てあれ、派手には喜ばないけどすんごい嬉しそう。 ぷぷっ、可愛いww)』
―――――――――――元『殲滅白書』のシスター・ワシリーサ



60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/04/20(水) 21:57:36.57 ID:aOPhDBR7o
何かが…立った?
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/04/20(水) 22:00:01.16 ID:j/I/Ar2AO
サービスサービスぅですね
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/20(水) 22:04:55.41 ID:K4OyeXaXo
ああ…立ったな
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/04/20(水) 22:10:59.43 ID:wqarSh0vo
ご褒美は女の子
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/20(水) 22:21:48.29 ID:S/Z8H3FbP

フラグが立ったな
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/04/20(水) 22:36:20.22 ID:ji1NAmv+o
人喰い婆「可愛い…///」
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/20(水) 22:36:41.57 ID:KfG/lFeAO


フラグが、フラグが立ったわ!!
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2011/04/20(水) 22:37:58.85 ID:+a9llqfW0
エイワス「というわけでご褒美に『桃太郎』を読み聞かせてあげよう」
こうですかわかりません
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/20(水) 22:52:41.19 ID:sD3WNjeF0
乙!
三騎士に加えワシリーサにもフラグを建てたか
サーシャ辺りが知ったら「第一の懇願ですが、どうぞ引き取ってください!補足しますと、主に私の為に!!」
とか言って全力で押し付けそう


追記

黒騎士→暗闇の世界にていとくんを閉じ込め、不意を突き脅かそうとする悪戯っ子
白騎士→ていとくんの視界を奪い、自分無しでは生きられないようにしようとするヤンデレ
赤騎士→三人の中ではもっとも純粋な好意を示してくる(ただし表面温度は数千度)

こんな電波が浮かんだんだが
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/20(水) 23:05:11.53 ID:MzS1TP4i0
ちょっとまて黒騎士可愛すぎだろ
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/04/20(水) 23:16:49.22 ID:JYhByLTR0
赤騎士「カキネ…///」
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/20(水) 23:40:30.61 ID:Ti/CC27SO
エイワス「ご褒美は」

黒騎士「私達との」

白騎士「フラグです」

赤騎士「///」ボッ
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/04/21(木) 00:22:35.82 ID:aYA0cZvAO
※なおていとくんの動力源は電気なので心臓が止まっても直ちに影響は有りません
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/04/21(木) 00:29:56.58 ID:X/7huNyPo
乙。
ていとくんかっけー

でもワシリーサってどんだけ死なないの?
え、不死身なの、この人w
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/21(木) 00:33:13.70 ID:0bLKzFde0
>>73
「命の水」持ってるから事実上不死身

それはそうと、赤騎士は俺が貰ってもいいですか
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/21(木) 01:04:19.65 ID:a+D+8CISO
>>74 表明ですら数千度の温度、抱く、触れるどころか近づいたら死ぬ
近づくどころか遠くから眺めても死ぬ

赤騎士の赤にお前の血とか内臓の赤が追加されてもいいなら俺は止めないwwwwwwwwwwww
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/04/21(木) 01:05:58.34 ID:MKJpgbU90
乙、ていとくんも乙
あーそうだった、ワシリーサって可愛いは正義思想の人だった

それはそうと、今回のルーンは垣根が未元物質の翼の内側に「現出させた」ものなの?
それとも腰のホルスターからの束を未元物質にぺたぺたしただけ?
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/21(木) 01:24:26.51 ID:79udGChDO
多分ぺたぺたしたんだと思うよ

後赤騎士は俺の妄想だとしょっちゅう数千度に真っ赤になる恥ずかしがり屋さん
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/21(木) 01:25:46.84 ID:0YuvTaAz0
お前らどンだけ上級者だよ…
ついていけねェ、っつーかついていきたくねェ
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/04/21(木) 01:56:17.86 ID:yYanDWEBo
ならオマエが引っ張って行けばいいンじゃねェか?
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/04/21(木) 02:02:22.27 ID:3mI0yYNAO
ていとくんまじかっけー

でもこいつ前スレでは盗撮しようとしてたんだよな…
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/21(木) 08:37:19.21 ID:JUSQlALIO
一方通行「いいか、フラグってのはなァ」 ガブリエル「vbhti素敵apfrgt」

素敵ap「frg」t
何気にフ ラ グ
って言ってるwww
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/21(木) 20:20:48.16 ID:0bLKzFde0
>>81

!?
お前凄いな
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/21(木) 20:39:33.25 ID:oIKnQcYSO
ここのていとくンは垣根さンと呼ばざるをえねェなァ

>>81

そこに気付くとは……やはり天才か………
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/21(木) 21:00:11.32 ID:wUMdAZLNo
rじゃなくてlだろ
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/04/21(木) 22:10:58.44 ID:TTjm7UUG0
>>84 お前、それ死亡フラグ
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/04/22(金) 06:18:20.95 ID:WxkEq1hAO
>>81
人差し指から近いから押しやすかっただkごめんなんでもないです
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/22(金) 17:00:34.93 ID:IZlTkze90
>>84
oh...
88 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/22(金) 23:49:38.07 ID:yjyq2a+/o
>>86
シーッ!それだけは言わないでください!やりにくくなるww


夜遅くにこんばんわ、投下しにきました。

しかしみなさん・・・・・・垣根帝督に真面目なフラグを立たせる気はないんですか・・・・・・
やれバーバ・ヤーガだの黒騎士だの白騎士だの・・・・・・人ですらねえよww


で、今回はなんとか蘇生に成功した垣根くんおめでとうみたいな話です。


では、よろしくお願いします。
89 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/22(金) 23:50:21.34 ID:yjyq2a+/o


――――――――――――――――――――――


『よォ』


声がした。もう幾度と無く耳にした、聞けば聞くほど鬱陶しい少年の声だった。
なぜか妙に響き、こもった声質で耳に届くのだが、なんとか言葉は聞き取れる。


『よかったなァ、生きてて。 あンだけ暴れるだけ暴れといてその本人はこォしてぐっすり安眠中ってンだから、
 世の中はつくづく平等じゃねェよな。 植物状態だって聞いたが・・・・・・オマエ本当にこのまま目ェ覚まさねェつもりか?』


しゃり、しゃり、という何かを裂いているような、切っているような音も聞こえてきた。
りんごの皮を刃物で剥いている音だろうか?この少年が自分のすぐ側でりんごを剥いている。

だとしたら考えられるのは今自分は病室のようなところにいて、この少年は
自分を見舞いに訪れ、りんごの皮を剥いているという事だろう。ベタだがそれが今考えられる状況で最も可能性が高い。


しかしこの少年はさっきこんな事を言った。
『植物状態だって聞いたが・・・・・・』。一体誰が植物状態だというのか。

90 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/22(金) 23:51:16.46 ID:yjyq2a+/o


考えるまでもない。


『・・・・・・・・・・・・なァ』


少年の声がわずかに震えている。




『・・・・・・・・・・・・起きろよ、垣根』




やはり。


やはり今眠っているのは、少年の声を聞いているのは、自分だったか。

91 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/22(金) 23:52:02.64 ID:yjyq2a+/o


『あと少しだったンだ・・・・・・あと少しで、アイツを救う事が出来たンだよ。
 オマエの想いを無駄にはしたくねェ。 だが俺はオマエの頼みを聞いてやれなかった。
 すまねェと思ってる。 だからよォ、起きてくれよ。 起きて、俺に土下座で謝らせてくれよ』


この少年が何を言っているのか分からない。
アイツとは誰だ。救うとはどういう事だ。自分に頭を下げてまで謝りたいというこの少年は何を考えている。


『・・・・・・皆、消えちまった』


要領を得ない。皆とは誰だ。消えたとはどういう事だ。


なぜ、この少年は涙声でこんな事を言っている?

92 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/22(金) 23:52:45.07 ID:yjyq2a+/o


『でも、まだ手はあるンだ。 ――――――を、――――――を、そして――――――を救える方法が』


聞こえない。言葉の一部分が、そこだけが意図的に切り取られたように、耳に届かない。
肝心な部分だけ聞こえないというのはなんとも歯痒い。


『――――――なら多分放っといてもいずれまたひょっこり顔を出してくるに違いねェ。
 ・・・・・・・・・・・・――――――だが、学園都市にAIMに詳しい研究員が一人いるらしくてな、そいつに当たってみよォと思う。
 で、問題の――――――なンだが、こいつはまた俺達で呼び出すンだよ。 ――――――に会いに行こう。
 そいつならきっと方法を知ってるはずだ。 シメあげてでも聞き出して、――――――をまた呼ぼう。
 ・・・・・・どォだ? 希望が出てきただろ? 可能性なンざ漁ればいくらでも出てくンだ。 楽勝なンだよ。
 そしたら俺達は、またやり直せる。 オマエもそォ思うだろ? こォなったら泥啜ってでも足掻いてやろォぜ』


学園都市?研究員?呼び出す?希望?


何を伝えたいのか分からない。足掻くとはどういう事だ。何かに失敗したのだという事は薄々分かるが、
もう少し具体的に内容を聞かせてほしい。


それとも、


内容を理解出来ない自分のほうがおかしい、のか?

93 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/22(金) 23:54:31.83 ID:yjyq2a+/o


『・・・・・・話聞いてンのかよ、このメルヘン野郎が』


聞いている。しっかりと聞く努力はしている。
だからもっと、具体的に、一から順に説明してほしい。


『・・・・・・・・・・・・それとなァ、』


どうやら話題が変わるらしい。少年の声はどこか呆れたような感じになっていた。
今度は何だ。

というか、なぜ自分は一向に目を覚まさない?


『インデックスのヤツが泣いてたぞ。 自分のせいでオマエがこンな目に・・・・・・ってな。
 オマエ、女は泣かせちゃマズいだろォよ、俺も人の事言えねェけどな。
 目ェ覚ましたら会いに行ってやれよ。 とりあえず謝って、ブン殴られろ』

94 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/22(金) 23:55:45.83 ID:yjyq2a+/o


そう言って少年は失笑し、――恐らく――りんごの皮を剥いていく。


ちょっと待て。


インデックス?・・・・・・目次?
誰だ、人間なのか、人の名前にしちゃ少しおかしい気もする。

そして自分がそのインデックスという何者かを泣かせたという。身に覚えがないのだが。
そもそも誰なんだ。会ったことのない――これも恐らく――人間を泣かせるとは、自分が一体何をしたというのか。

そして『インデックス』という言葉は、前に聞いたことがある。あの金髪の怪物から。
『インデックス』という言葉を覚えておけ、だったか。そんな事を言われた気がする。


この少年の口からもインデックスという言葉が出てきたが、何か関係があるのだろうか?
全く分からない、情報が断片的すぎて整理のしようがない。

95 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/22(金) 23:56:42.01 ID:yjyq2a+/o


『・・・・・・・・・・・・なァ、垣根』


そもそもここは本当に病室なのか。だとしたらおかしい、おかしすぎる。


『俺達、またやり直そォな』


というのも、さっきまで自分は――――――。

96 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/22(金) 23:57:11.84 ID:yjyq2a+/o




『そンでオマエの願い通り、また皆で集まって、バカしよォな』




"ついさっきまで俺は、ロシアで、ワシリーサとの魔術訓練をしていたはずで"――――――。




――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――

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――――――――――――

――――――――――

――――――――

――――――

――――

――



97 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/22(金) 23:58:08.88 ID:yjyq2a+/o


――――――――――――――――――――――


――エリザリーナ独立国同盟・地下にある防空壕跡地


ワシリーサ「・・・・・・おおースッゲ。 服まで完璧に復元出来るのね、どーいう仕組みなワケ?
      魔術じゃないわよねえ? だって魔力を感じなかったし」

エイワス「この世界の言葉で表現するのは難しいな。 まあ、瑣末な事だ。
     あまり気にしないでおきたまえ。 頭痛の種になるぞ」

ワシリーサ「ふーん。 にしても見事に元の垣根ちゃんに戻ってるわね。
      これって医術業界を根底からぶっ飛ばす事になってると思うんだけど」

エイワス「『オシリス』に蔓延る人間はどうにも"既存の法則"という楔が魂を貫いている傾向にあるからな。
     ルールの構成法が根本から異なる『ホルス』でも医術という概念は生き残るだろうが・・・・・・
     その更に奥深く、私が立っているような深層の位置だとそういう概念も必要なくなる」

ワシリーサ「スケールの大きい発言ですこと、おほほほ」

98 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/22(金) 23:59:11.09 ID:yjyq2a+/o


エイワス「事実を述べたまでだよ。 要は原始時代と現代の違いのようなものだ。
     時代が変われば、それによって世間や人間の生活の風潮も変わっていく。
     今の世の中に、わざわざ煙草に火をつける時に火溝式や紐錐式を用いて
     着火する人間などいないだろう?」

ワシリーサ「あなたのそれはそういう概念なんか超えちゃってると思うんだけど」

エイワス「それが私だ。 私は私以外の何者でもない。 私は時代に左右される事はないし、
     『概念』という統括的な意味には当てはまらない。だからこそ、
     私は古い時代である『オシリス』も好きなのだがね。 あれだよ。 懐古厨だよ懐古厨」

ワシリーサ「じゃーアレだ、あなたは『ブラック・ホワイト』より『赤・緑』をこよなく愛するタイプなのね?」

エイワス「いや、あのシリーズは別け隔てなく愛しているが」

ワシリーサ「やってんのかい・・・・・・」

99 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/23(土) 00:00:14.63 ID:LPnFXlsHo




垣根「・・・・・・・・・・・・、ん」モゾッ




ワシリーサ「お、目覚めたか? もう少し寝顔見てたかったなぁ〜、結構可愛いから」ウヘヘ

エイワス「垣根帝督、気分はどうかね?」

垣根「・・・・・・目が覚めたら化物二匹が俺の顔を見下ろしていた。
   これで気分爽快スッキリお目覚め、ってな事になると思うか?」

エイワス「元気そうでなによりだ」ニコッ

ワシリーサ「よかったにゃー、あなた、さっきまで死んでたのよん?」

垣根「もう死には慣れたぜ」

エイワス「人智を超えた発言だな。 愉快だぞ垣根帝督」

垣根「ほざいてろクソ野郎。 ・・・・・・・・・・・・っていうか、」

100 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/23(土) 00:01:25.07 ID:LPnFXlsHo


ワシリーサ「うにゅ?」

垣根「全然訓練の内容覚えてねえんだけど・・・・・・」

エイワス「無理もない。 あれだけ盲滅法まがいな魔術の使用を行ったのだからね。
     私がいなければ君は今頃閻魔大王と天国地獄の判決を喰らっていただろう」

垣根「・・・・・・ああ、その辺は覚えてる。 俺は『未元物質(ダークマター)』に魔術の法則を・・・・・・」

ワシリーサ「訓練内容はどこまで思い出せるかにゃーん?」

垣根「・・・・・・視力が無くなって・・・・・・いきなりクソ熱い風が吹いてきて・・・・・・
   そっからはもう覚えてねえな。 つか目ぇ見えてんじゃん俺」

エイワス「私が治癒しておいた。 目が見えなくてはやはり何かと不便だろうからな。
     『盲目』は君が背負う必要のないリスクだ。 サービスだよ、サービス」

垣根「?」

ワシリーサ「ごめんね垣根ちゃん。 私、ちょっとばかしヒートアップしすぎちゃった」テヘペロ

垣根「俺が望んだ事だ、構わねえ。 つか『坊や』は卒業かよ?」

ワシリーサ「さっすがにもうあなたのことを坊や呼ばわりは出来ないわよ」ニコッ

垣根「・・・・・・・・・・・・待て、っつー事は」

101 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/23(土) 00:02:42.45 ID:LPnFXlsHo




エイワス「おめでとう、垣根帝督。 君は見事、この訓練の合格条件をクリアした。
     君はもう、立派な魔術師だよ」




垣根「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ワシリーサ「い、言っておくけどこれは所謂『試合に勝って勝負に負けた』みたいなものなんだからね!
      私はまだ全然やれたんだから、そこんとこ勘違いしないでよねっ!///」

エイワス「ワシリーサ、ツンデレの使いどころを間違えているぞ」

ワシリーサ「あ、ありゃ。 そう?」

垣根「お、俺。 勝ったのか?」

エイワス「いや、結果的には君はぼろ負けしているが、合格条件は満たしたという事だ」

102 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/23(土) 00:03:40.87 ID:LPnFXlsHo


垣根「・・・・・・じゃあ、俺は魔術をお前に・・・・・・」

ワシリーサ「めっさ熱かったにょろ!! 死ぬかと思ったわよマジで!!」ウガー

垣根「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

垣根「・・・・・・・・・・・・は、・・・・・・はは」




垣根「・・・・・・・・・・・・やった・・・・・・!!!」グッ




垣根「へへ・・・・・・やったぜクソったれが・・・・・・!!! ざまあみろチクショウ・・・・・・!!!」プルプル

ワシリーサ「(見てあれ、派手には喜ばないけどすんごい嬉しそう。 ぷぷっ、可愛いww)」ボソボソ

エイワス「(恐らく私たちがここにいなかったら跳ね回って歓喜しているだろうな)」クスクス

103 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/23(土) 00:05:06.96 ID:LPnFXlsHo


垣根「すっげえ・・・・・・俺、やったのかよ・・・・・・!! よし・・・・・・!!」プルプル

ワシリーサ「(あ、見て! ちょっとだけ泣いてる! やべ、マジ可愛いんですけどwww)」ジュルリ

エイワス「(超能力者という点を除けば、彼は一人の少年だ。
      達成感という喜びがしみじみと全身を駆け巡っているのだろうな)」

垣根「へへ・・・・・・やったやった・・・・・・! ははは・・・・・・! ・・・・・・・・・・・・あ、///」

ワシリーサ「・・・・・・・・・・・・」ニヤニヤ

エイワス「ふふ、可愛らしい一面もあるじゃないか」ニヤニヤ

垣根「あ、いや、クソ、何でもねえよ・・・・・・/// こんなもんまだ通過点だろうが」プイッ

ワシリーサ「可愛すぎワロタwwwwwwww ねえ、ギュってしていい?」ハァハァ

垣根「近づいたらまた焼き殺すからな」サッ

104 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/23(土) 00:06:20.43 ID:LPnFXlsHo


エイワス「いやしかし、本当に見事な成果だったよ。 見事に私を満足させてくれた」

垣根「死ね、テメェのために頑張ったんじゃねえよ。 ・・・・・・、・・・・・・・・・・・・・・・・・・」キョロキョロ

ワシリーサ「どったの?」



垣根「・・・・・・、オイ。 あのクソったれの第一位はどこいった?」



ワシリーサ「第一位? ユーアーナンバーワン?」

エイワス「一方通行がここにいるわけないだろう。 いられたら困るのは君じゃないか」

垣根「・・・・・・そりゃそうだ。 じゃあアレは夢か・・・・・・?」

ワシリーサ「どんな夢を見てたの?」

105 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/23(土) 00:07:12.78 ID:LPnFXlsHo


垣根「・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや、もう覚えてねえ。 ただあの白髪が何か言ってたような夢だったんだが・・・・・・」

エイワス「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

垣根「まあいい。 それじゃさっさとこんな焦げ臭え地下からおさらばしようぜ」

ワシリーサ「私も帰ろっと♪ 朝のサーシャちゃんのベッドに今日こそ侵入して一緒に添い寝するんだから!
      まずは最大の防壁であるミーシャをどうするかだが・・・・・・突撃あるのみッッ!!!」ズドドドドドド

垣根「オイ、ちょっと待て」

ワシリーサ「む?」ピタッ

垣根「・・・・・・ありがとな」

ワシリーサ「いいってことよん♪ 私も久々に気持ちいいバトルが出来て満足だからね!
      じゃ、お大事に。 サーシャちゃん成分補給しにいってきまーす!!」ダダダダダッ

垣根「ブレねえなぁアイツ・・・・・・・・・・・・」

エイワス「さて、垣根帝督。 約束のプレゼントだが」

106 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/23(土) 00:09:47.05 ID:LPnFXlsHo


垣根「ん? ああ、そういや俺が訓練合格したら何かくれるっつってたな。 何だよ?」

エイワス「私が君に渡した魔術講座の書物を覚えているかね? 冷蔵庫がカバーの」

垣根「覚えてるに決まってんだろクソが。 なんだよあのナメきったカバーイラストはよ」

エイワス「そのカバーを外すと私からのメッセージが添えられているのだが、目は通したか?」

垣根「『とある魔術の』とかどうとか言うヤツか? 使ったら死ぬ可能性があるとかって書いてあったな。
   もしかしてプレゼントってのはそれの使用方法の伝授か?」

エイワス「ほぼ正解だ。 君ならあるいは使いこなせるかもな。 受け取りたまえ」スッ

垣根「・・・・・・何だコレ? 砂時計? じゃねえよな・・・・・・なんだ?」ジロジロ

エイワス「ふふ、喜びたまえ。 それには君が求める全てが詰まっている」

107 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/23(土) 00:11:46.40 ID:LPnFXlsHo


垣根「『霊装』ってやつか? どうしろってんだこんなもん・・・・・・」

エイワス「使用方法は戻りながら説明しようか。 では行こう」スタスタ

垣根(歩いて戻るとか、こいつがやると違和感あるな・・・・・・)スタスタ

エイワス(・・・・・・さて。 垣根帝督は"それ"で私をどこまで愉しませてくれるかな? くく・・・・・・)


垣根「あー・・・・・・そういや」

エイワス「?」

垣根「俺、今回の訓練で"とっておき"使ってねえと思うんだけど。 もったいねえことしたな」

エイワス「・・・・・・"魔女狩り"?」

垣根「そうそう。 あ、じゃあついでに聞きてえんだけどよ――――・・・・・・」

108 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/23(土) 00:13:39.49 ID:LPnFXlsHo


――――――――――――――――――――――


ロシア連邦、エリザリーナ独立国同盟に『天使同盟(アライアンス)』が来訪してから三日目の朝。


学園都市最強の超能力者にして『天使同盟』のリーダー、一方通行は特にやることもなく、行く宛もなく、
自らがカスタマイズした杖をつきながら独立国同盟の居住区を適当にぶらついていた。


相変わらず街の民間人達は自分に向かって陽気に挨拶をしてくる。
すっかり自分たちは街の住人として受け入れられているらしい。


「おはよう、一方通行。 今日は何をしてくれるんだい?」


冷え込んだ朝の気温の中、白い息を吐きながらそう話しかけてきたのは名前も分からぬ民間人の青年だった。

109 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/23(土) 00:14:41.45 ID:LPnFXlsHo



「別に。 俺達はオマエらにサプライズを毎日提供しなきゃなンねェ義務でもあンのか?」

「あはは、それもそうだ!」


あははは、と笑いながら青年は手を振って去っていった。
なんともまぁ、まるで田舎のご近所さんのように親しげに話しかけてくるものだ。

一方通行という少年の本当の正体を知らないからあんな気さくに振る舞えるのか。
例え知っていても、今のように気軽に声をかけてきてくれるのか。


(たかがプライベーティアを追い払ってやっただけであそこまでフレンドリーに接してくるモンかァ?
 ・・・・・・船を"押し付けて"やったことに恩義でも感じてンのか、だとしたらお人好しにも程があらァな)


一方通行はポリポリとダルそうに頭を掻きながら止めていた歩を再び進める。

110 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/23(土) 00:16:29.81 ID:LPnFXlsHo


今のところ、他の『天使同盟』のメンバーは見かけていない。
風斬氷華や垣根帝督はまだ自分の部屋で寝ているのだろうか。時刻は午前七時を迎えようとしている。
垣根はともかく風斬辺りはそろそろ起床していてもおかしくない時間だ。

ミーシャ=クロイツェフは今日もエリザリーナが使用しているオフィスにいるのだろうか。
それともサーシャ=クロイツェフの部屋?ミーシャはここに来てすっかりサーシャと打ち解けていたような気がする。
昨日から体調が優れないようだったが、今日は大丈夫だろうかと一方通行は少しだけ大天使に気を配る。

エイワスは・・・・・・どォでもいいな、と一方通行はあっさり思考を放棄した。
アレは放っておいても勝手にあちこちで誰かを不幸にしているような疫病神だ。止めようがないし、
止める気もない。


商店街を歩いていると街の人々の会話が耳に入ってくる。
内容といえばやはり昨日の『ハッキング』についてだった。他に話すことはねェのか、と一方通行は心の中だけで呆れた。


・・・・・・そういえば今日はエイワスが昨日の『ハッキング』事件の真の目的を明らかにするといっていた日のはずだ。
当時はあまりにも勝手で横暴すぎるその行為に憤慨していたが、かなしいかなその怒りも今ではすっかり鎮火してしまっていた。
まあその時が来ればエイワスが自ずと話しだすだろう、と一方通行は楽観的に考えた。

111 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/23(土) 00:17:34.27 ID:LPnFXlsHo


レッサーやサーシャ、エリザリーナやワシリーサ、そしてヴェントも、今のところは見かけていない。

こうして女性陣を思い浮かべていくうちに一方通行は昨晩の露天風呂騒動を思い出してしまった。
あれはいくらなんでもやりすぎた。元はといえば垣根帝督が原因なのだが、それにしたって
軽いノリで便乗してしまった一方通行も十分に非はあるといえよう。


(・・・・・・まァ、たまにはあァいうバカ騒ぎも悪くねェかもしンねェけど。
 やっぱ垣根の野郎は一発ぶン殴っとかなきゃ気が済まねェな)


そんな事を考えながら適当に歩いていると、後ろから声がかかった。


「白いの」


振り返ると、そこには元『神の右席』の一員である魔術師、ヴェントがいた。
ただし、


「オマエか。 ・・・・・・なンだよその格好」

「・・・・・・べ、別に」


ヴェントの格好は一方通行がすっかり見慣れたあの『神の右席』仕様の真黄色ない服ではなく、
女の子なら誰でも着そうなブラウンカラーのロングスカートと、細身で白いダウンジャケットを纏っている。
髪の毛は降ろしてあり、顔中に留められていた銀色のピアスも、未だに留めているとはいえその数は極少数だった。
舌先には例の鎖がジャラリと音を立ててぶら下がっている。水晶の十字架は確か『女王艦隊』の霊装だったか。

『神の右席』に所属していた頃の彼女しか知らない人間が見たら一体何事だと驚愕するだろう。
ピアスと霊装が無ければ完璧に普通の可愛い女の子にしか見えない。

112 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/23(土) 00:23:46.26 ID:LPnFXlsHo
いつも中途半端に終わるのはご愛嬌、ということで。
今回はここまでです。やっと一方通行出てきたよ・・・・・・

なんか色々な場所で色々な事が起きてますが、さて、ロシア編三日目最大のイベントも終わって
これからどうなってしまんでしょうか。のんびりと待っていてください。


そんなわけで次回はのほほんとしたお話を少し。
嵐の前の静けさってやつでしょうか。


次回更新は三日以内。


それでは、今回もここまで読んでいただいた方に最大の感謝を。
ありがとうございました!

113 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/23(土) 00:24:15.98 ID:LPnFXlsHo



                          【次回予告】



『hrggdlm貴方cpfkegfj』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・ミーシャ=クロイツェフ




『ガブリエル、珍しいな。 オマエ一人かよ』
―――――――――――『天使同盟』のリーダー・一方通行(アクセラレータ)




『(ああ〜ちくしょう・・・・・・、なんで私、昨日アイツに"あんなコト"したんだろ・・・・・・。
 うわああああ思い出しただけで叫びそうになるううううううううう!!!!)』
―――――――――――ローマ正教、禁断の組織『神の右席』の元一員・『前方』のヴェント




『い、愛しのって・・・・・・』
―――――――――――『天使同盟』の構成員・風斬氷華



114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/04/23(土) 00:25:31.26 ID:VJ2y5DIp0
うわぁーなんか喰らい展開が見えたぞ!?
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/23(土) 00:29:28.63 ID:TvjWg0no0
乙!
なんか垣根が不吉な夢?を見てる……嫌なフラグが立ったような、逆にバッドエンド回避フラグが立ったような
砂時計型の霊装とか、思いっきり使い道が予想できるけど合ってるかな……
ってか魔女狩りってまさかイノケンさんか? ステイルェ……

>ワシリーサ「めっさ熱かったにょろ!! 死ぬかと思ったわよマジで!!」ウガー
鶴屋さんがinした……だと……!?
スモチを、誰かスモチを持て!
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/23(土) 00:31:00.29 ID:Yzb9rWnko
おつ!
ガブリエル!
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/04/23(土) 00:31:29.09 ID:bkFIIitAO
バーバ・ヤーガのどこが不真面目だって証拠だよ!?

おつ
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/23(土) 00:42:38.89 ID:00ECsH3v0


刻の三騎士娘をdisるとか、いくら>>1でも許すまじ

あと、黒騎士ちゃんは俺が貰っていく
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/04/23(土) 00:50:43.67 ID:+B41gQ/AO
あれか!?冒頭の不吉な夢を回避するために、謎の霊装を使って時を駆けるメルヘンになるのか!?
一度BADENDを迎えてからの垣根のターンなのか!!!?
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/23(土) 00:54:52.15 ID:oKQV7DvIO


まさかの鶴屋さん噴いたww
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/04/23(土) 00:57:52.42 ID:XYMdit2ro
乙!

ワシリーサフラグ、か……
限りなく死亡フラグに近い気がするのはなぜだろう

夢は気になるけど、これが本当なら垣根は予知の才能もあるんだろうか
さすが常識が通じない男だな
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2011/04/23(土) 00:58:31.67 ID:oM/VAdwc0

エイワスってモンスターボールとか預かりサービスとか好きそうだよね
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/23(土) 00:59:08.62 ID:CdmwjqdDO
>>1

魔法少年かきね☆マギカ


………一度言ってみたかったんだどー
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/23(土) 01:00:01.65 ID:oKQV7DvIO
>>120

sage忘れてた
申し訳ない
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/04/23(土) 01:07:59.08 ID:c1Yge38U0
乙!ていとくんフラグ立てすぎwwwwww
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/23(土) 01:22:54.69 ID:mFPazvIT0
乙!!
嫌なフラグが立ったような立ってないような・・・
あとていとくんを可愛いと思ってしまったので
赤騎士ちゃんに焼かれてくる

ヴェントちゃんの私服姿…!!
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) [sage]:2011/04/23(土) 01:28:06.14 ID:ysaJ4PYzo

三日目最大のイベントって、おいコラ!
エイワスのアレよりもこっちの方がメインなのかよww
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/04/23(土) 01:34:01.19 ID:J7AOajrCo
>>123
そうにしか見えなくなったじゃねーかww
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2011/04/23(土) 08:30:51.78 ID:REO5SmTAO
なんかていとくんは
色々なフラグを立てるなぁ
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/23(土) 09:21:55.10 ID:0uDsQxcAO


これはバッドエンドからの大どんでん返しハッピーエンドフラグと受け取っておいていいよな!?
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/23(土) 09:26:31.08 ID:zqp7AjTCP

夢の中の人が一方さんにしては気持ち悪い喋り方だな
でも白髪だし黒夜オチは無いか
132 :真真真真・スラッドムーバー [sage]:2011/04/23(土) 10:23:08.96 ID:w/ute2CSO
このたびこのスレに移転することになりました( ̄ー ̄)ニヤリ
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage saga]:2011/04/23(土) 10:24:32.88 ID:PQiRQUHIo
エイワス「私と契約して魔術師にならないか?」
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/23(土) 10:41:44.15 ID:x3Wict1F0
>>132
スレッドではなくスラッドを移動させる人なのか
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/23(土) 10:42:14.03 ID:Bu3JG8YR0
イノケン+未元物質……

ステイルがやばいな
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/04/23(土) 11:42:27.53 ID:5UjPEo6Oo
逆にこう考えるんだ

ステイルを顕現させると…
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/23(土) 12:38:17.68 ID:m+72D7jU0
お前等馬鹿か


ステイルが影でていとくん支えてたに決まってんだろ
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [sage]:2011/04/23(土) 12:52:05.68 ID:7arWG3Gyo
あれか、はじめの一歩の鷹村vsホーク戦での背後霊的な
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/23(土) 17:36:16.12 ID:V+cEdZ+B0
ステイルさん、出口はこっちです
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/23(土) 19:44:19.53 ID:00ECsH3v0
>>131
黒夜が気持ち悪いとでも言うのか
ちょっと裏まで
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2011/04/23(土) 21:32:01.84 ID:RLGFNn8C0
垣根ぇーーーーーーーーー
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/23(土) 21:32:49.21 ID:UvJlWYrgo
>>140
俺も手を貸そう
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/23(土) 23:01:06.22 ID:mFPazvIT0
>>140
俺のガトリングレールガンも貸そう
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/23(土) 23:18:20.23 ID:x3Wict1F0
>>140
俺の瞬間錬金も貸そう
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/24(日) 00:00:05.34 ID:Q9LDI/rSO
>>140

ようわからんけど………俺のすごいパンチもかすぜ……
146 :上条当麻 [sage]:2011/04/24(日) 00:25:53.21 ID:5hZ2NBq10
>>140
うちのシスターを貸すからなんか食わせといてくれよ
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/24(日) 00:27:26.56 ID:fLlCNFvy0
>>146
いらねえww
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/04/24(日) 00:37:33.97 ID:S1P+6ZCAO
>>140
尻を貸そう
149 :>>140 [sage]:2011/04/24(日) 00:49:11.85 ID:WQXjxds90
>>142-148

ありがとう皆………………さあ、>>131狩りの始まりだ
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/04/24(日) 08:24:16.19 ID:KnpchtLk0
なるほど、、。このSSは、本当は原作通りの脳死状態のていとくんとの脳内で演算されている仮想世界、
ていとくんが精神(こころ)の救済をされるっていう幻想だったんですね。

えぇ、わかりまs、・・・わかりません。そんなわけねぇだろ。どうせまた、くそエイワスがたくらんでるんだろ?ん?なんだ、うわ、やめr
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/24(日) 08:27:49.11 ID:GN5aK+pR0
>>149
二つほど必要ないものが紛れ込んでるがいいのか
152 :>>140 [sage]:2011/04/24(日) 10:37:15.55 ID:WQXjxds90
>>151
盾ぐらいになら
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/24(日) 11:59:01.60 ID:xhrMcs3AO
後れ馳せながら乙!!
154 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/24(日) 15:40:07.38 ID:aQSXvtR2o
>>131
確かにらしくない口調ですが、まぁこれにはワケがありまして・・・・・・
っていうか、あ、一方通行だとはまだ確定してないですよ・・・・・・うん・・・・・・

>>127
すみませんwwロシア三日目と最終章をごっちゃにして考えてました・・・・・・
三日目最大のイベントは垣根の訓練でしょうが、最終章は違います。


真昼間からこんにちわ、>>1です。この時間帯に投下するのは極めて珍しいですが
人いるのかな・・・・・・。まあ気が向いたら読んでやってください。よろしくお願いします。

今回は三日目の各々の過ごし方をのんびりとお送りします。
退屈でしょうがお付き合いいただけたらなと思います。

それでは、レッツゴー。

155 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/24(日) 15:40:46.49 ID:aQSXvtR2o


「なンつゥか、すっかり大人しくなっちまったよなァ」

「朝からそんな悪態つけるなんて、ホントいい性格してるわねアンタ」

「いやいや、そォいう意味で言ったンじゃねェよ」

「?」

「似合ってるなと思っただけだ」


そう言われて、ヴェントはほんのりと頬を赤らめて忌々しげに視線を逸らした。
出で立ちを褒めただけなのになぜこんな態度をとられたのか分からない一方通行は眉をひそめる。
今日も第一位様の鈍感っぷりは絶好調のようだこのクソったれが。


「あ、あのさ・・・・・・」

「あン?」

156 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/24(日) 15:41:51.06 ID:aQSXvtR2o


ヴェントは目を逸らしたまま何かを言いかけるが途中で言葉を切った。
一方通行はそんな彼女に気も遣わず言葉の続きを催促する。


「ンだよ。 言いたい事があンならさっさと言いやがれ」

「いや、あの、き、昨日・・・・・・」

「昨日? ・・・・・・あァ、風呂での事なら俺も反省してるっつゥの。
 さすがに女湯に侵入するのはマズかっ―――――」

「そっちじゃねえよ。 ・・・・・・そ、その後の」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・アレなら別に気にしてねェから気ィ遣わなくていいぞ」

「気にしてないってどういうコトよ・・・・・・」

「?」

「な、なんでもない。 それより今から私、朝食摂るんだけど・・・・・・よかったらアンタも、」

157 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/24(日) 15:42:34.47 ID:aQSXvtR2o


一方通行は首を傾げた。どうも今日のヴェントは少し様子がおかしい。
いつもならまず開口一番にぶちぶちと毒づいてくるのが彼女の性格なはずだが、
今日はどこか顔を赤く染め、言葉も何か言いにくそうな、途切れ途切れというか、
言葉にするのを躊躇いがちというか、はっきりしない様子だった。

そして朝食の誘い。今日は一日くらいキャラを変えてみようかとでも考えているのだろうか、
と一方通行は適当に推測する。


(・・・・・・・・・・・・風邪でもひいてンのかコイツ?)


当然、あの一方通行がヴェントの気持ちに気付くことはない。
別にそれが悪いというわけでもないのだが、もう少し考えてやってもいいものだと思う。


「メシは起きてから部屋で適当に食ったから遠慮しとく」

「・・・・・・・・・・・・あっそ」

158 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/24(日) 15:43:51.83 ID:aQSXvtR2o


ヴェントはそう言ってドン!とわざとらしく一方通行にぶつかりながらスタスタと朝食を摂りに行った。
なンなンですかァ・・・・・・?と、一方通行は彼女の後ろ姿を睨みながら舌打ちをする。

朝からご機嫌ナナメなヴェントちゃんの後を追う甲斐性もない第一位は白いため息をつき、
特にやることがないからやはり朝食の誘いに乗っておけばよかったか、と若干後悔しながら歩き出した。


そのまましばらく適当に散歩していると、大きな広場に行き着いた。
広場というよりは雪原だろうか、この辺一帯だけ居住区特有の建造物がなく見渡すかぎり白銀の雪原だった。

見るとその雪原では何人かの子供たちが朝から元気に雪合戦をしている。
雪が積もれば雪合戦は日本だけではないらしい、ロシア人の子供たちは防寒着を着込んでキャーキャーはしゃぎながら
そこら中にある雪を丸め、ターゲットに向かって勢い良く雪玉を投げつけていた。


「・・・・・・平和なモンだな」


一方通行はそんな光景を見て苦笑し、その辺にあったいい具合の形の岩を見つけて座り込んだ。
学園都市に長く居たため、こうして雪合戦というテレビのニュース番組でしか見たことのない遊びを
その目で見るのは初めてだった。

159 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/24(日) 15:44:48.34 ID:aQSXvtR2o


(クソガキをここに連れてきたら真っ先に走りまわって騒ぐンだろォな・・・・・・)


今度暇が出来たときにでも打ち止め(ラストオーダー)や番外個体(ミサカワースト)らを連れて
独立国同盟に遊びに行こうかと考え始めていると、


「hrggdlm貴方cpfkegfj」

「?」


独特のノイズが混じった声。聞き間違えようのないあの大天使の自分を呼ぶ声が後ろから聞こえてきた。


「ガブリエル、珍しいな。 オマエ一人かよ」


『水』を司る大天使、ミーシャ=クロイツェフはいつものポンチョ風の衣服を着て
ゆっくりと一方通行の方に歩いてきた。

160 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/24(日) 15:45:35.77 ID:aQSXvtR2o


――――――――――――――――――――――


「あのクソもやし・・・・・・人がせっかく誘ってやってんだからおとなしく来ればいいだろうが・・・・・・」


ブツブツと独り言を言いながら、ヴェントは朝から営業している店を捜して居住区を歩いていた。

つい先ほど、居住区で出会った一方通行を朝食に誘った彼女だが、
一方通行がつれない返事をして拒否してきたのだ。


そもそも、今までのヴェントなら異性の人間を食事に誘うという行為すらしなかっただろう。
『前方』のヴェントを知る人物がこの事実を耳にすれば自分の聴覚器官がイカれたのかと思うかもしれない。
だがこれも、ヴェントが『天使同盟』という怪しいことこの上ない集団に出会ってからの彼女の変化を示しているのだ。


「クソが・・・・・・なんでこの私があんなクソ白髪のために愚痴らなきゃなんないのよ。
 あークソ、クッソムカつく!!」

161 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/24(日) 15:46:17.47 ID:aQSXvtR2o


ガン!と、『クソ』をいう女の子らしからぬ単語を四回くらい言いながら道端に置いてあったアルミ製のゴミ箱に蹴りを入れた。
通りかかったランニング中の女性がビクッ、と怯みながら顔を青くしている。


そんな女性とは対照的に、さっきまで絶賛憤慨中だったヴェントはなぜか顔を赤くしていた。


(ああ〜ちくしょう・・・・・・、なんで私、昨日アイツに"あんなコト"したんだろ・・・・・・。
 うわああああ思い出しただけで叫びそうになるううううううううう!!!!)


うぎゃあああああああああ!!と、まるで過去の黒歴史を思い出して悶える人のように
ヴェントは亜麻色の可愛らしいショートカットをぐしゃぐしゃと掻き乱しながら絶叫する。
顔を青くしていたランニング中の女性がその速度を大幅に上げて走り去ってしまった。


(キャラじゃねえよなぁ・・・・・・違うよなぁ。 あんなのは、あんなのヴェントじゃねえよな・・・・・・。
 わざと相手に嫌悪感を抱かせ、無意味に挑発して、誰が相手だろうがとりあえず初対面の挨拶は『消えろカス』、
 これがヴェントってキャラじゃなかったのかよぉぉぉ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・・・いやでも、
 『天罰術式』はもう私には必要のないもので、いやいやでもでも天罰術式が必要ないのは白いのの前だけであって、
 ・・・・・・・・・・・・まぁつまり、白いのと居る時だけは素直な私? みたいな・・・・・・・・・・・・、って)

162 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/24(日) 15:47:19.40 ID:aQSXvtR2o


「な、ナーニ言っちゃってんだろね私は! ああああもう誰かあの白いのを殺せええええ!!!!」


ドゴンッッ!!!と、今度はひと際大きな打撃音が響き渡った。
羞恥心と混乱で思考回路がむちゃくちゃになったヴェントがさっき蹴っ飛ばしたアルミ製のゴミ箱に
踵落としをぶち込んだ音だった。落石事故にでもあったのかというほどにゴミ箱は見事に変形して潰れてしまっている。
中身がほとんど無かったのが幸いだ。『俺が何をしたんだよ・・・・・・』というゴミ箱の悲壮感漂う声が聞こえてきそうだった。


ぜー・・・・・・ぜー・・・・・・と荒く真っ白な息を吐きながらヴェントはキョロキョロと周囲を見渡す。
彼女がいる道はあまり人気が無かったためか、ゴミ箱を潰してしまった事で責められるという事はなさそうだ。

もっとも、今の彼女に文句をつけられる人物がいたら是非見てみたいところだが。


「だ、ダメじゃないですか・・・・・・公共の物を壊したりしたら・・・・・・」

「あ・・・・・・!!?」

163 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/24(日) 15:47:58.60 ID:aQSXvtR2o


いた。今のヴェントにきちんと注意出来る人物が。


「おはようございます、ヴェントさん」

「・・・・・・・・・・・・テメェか、"堕天使"」


ヴェントは自分のやった行いに対して注意をした人物をギロリと睨んだ。

風斬氷華。『天使同盟』の清涼剤だ。

彼女は昨日も巻いていたマフラーにダウンコート、そして見ただけで暖がとれそうなふんわりとした手袋に
学生が着ていそうないつもの制服のロングスカートを履いヴェントに困り顔が含まれた笑みを送り返した。

164 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/24(日) 15:48:27.00 ID:aQSXvtR2o


「お一人ですか・・・・・・?」

「だったら何だよ、テメェこそ愛しのあくせられーたちゃんと一緒に朝の雪景色を眺めながら
 散歩ついでのデートとかしないの?」

「い、愛しのって・・・・・・」


言われてポッと顔を紅潮させる風斬の、なんと可愛らしい乙女な事か。

そんな彼女の様子を見てヴェントはしばし無言だったが、やがてプイッと視線を逸らしながら言った。


「・・・・・・・・・・・・今からご飯食べるんだけど、一緒にどう?」

「え・・・・・・、あ、はい! 私もちょうど朝ご飯を食べようと思ってたんです!」


ヴェントが三、四年くらい修行しないと浮かべることが出来なさそうな一〇〇点満点の笑顔を浮かべて、
風斬氷華はヴェントの隣にとてとてと小走りしながら並んだ。

165 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/24(日) 15:49:36.44 ID:aQSXvtR2o


――――――――――――――――――――――


「サーシャさーん!! 今日も朝から可愛いお顔立ちですこと! にっひひひ、
 そのポケーっとした面構えはイケナイ狼辺りに需要ありそうですよねぇホント♪」

「・・・・・・第一の私見ですが、あなた段々ワシリーサに似てきてますよね」


と、朝から黄色い大声を出して元気いっぱいな女の子はイギリスにある魔術結社予備軍
『新たなる光』の構成員、レッサーだ。
彼女は普段どおりのコスチュームを身に纏い、ミニスカの中から霊装である『尻尾』が伸びている。

そして朝っぱらからセクハラまがいな発言を受けたのは元『殲滅白書』の魔術師、サーシャ=クロイツェフだ。
昔ワシリーサに見立ててもらった拘束具のような服に赤い外套を着込んでいる金髪の彼女は
昨晩自分の部屋に招いて一夜を共にしたはずのミーシャ=クロイツェフがいなくなっている事に気付いて
独立国同盟の軍事施設辺りを歩きながら捜しているところだった。

166 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/24(日) 15:50:26.56 ID:aQSXvtR2o


「第一の質問ですが、今朝はミーシャを見かけましたか?」

「ミーシャ? 見てないですよ〜、どっか適当にほっつき歩いてるんじゃないですかね?」


本物の大天使の行方に『どっか適当にほっつき歩いている』という返事が出来るのも、
レッサーが他より少し『天使同盟』と過ごしている期間が多いからだろうか。
普通なら考えられない返答だ。


「昨日一緒に寝たのですが、今朝起きたら既に姿が無くて」

「心配しなくても大丈夫ですよ、あんまり遠くに行ってたら一方通行さんかエイワスさん辺りが気付くでしょうし、
 どっか他の魔術結社がミーシャを狙って襲撃してきたなんて事になってたら、それこそ『天使同盟』が出張るでしょ」

「・・・・・・まぁ、あなたの言う事にも一理ありますが」

「そういえば昨日ショッピングセンターで買った服、ここに届いてますかねえ?」

「第二の私見ですが、『買った』ではなく『買わせた』が正しいと思います」

「ノンノン、『買ってくれた』が正解ですよ♪ あ、私の場合は『愛しのレッサーちゃんに買ってあげた』、
 が正解ですかね〜。 なんちって、みゅふふふ」

167 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/24(日) 15:51:02.38 ID:aQSXvtR2o


何かワケの分からないことを口走るレッサーは本当に朝から元気溌剌だった。
昨日露天風呂であれだけ騒いだというのに、彼女の体力は底なしだ。


「第三の質問ですが、あなた達はいつまでロシアに滞在するつもりなんですか?」

「あなた達って?」

「いや、『天使同盟』・・・・・・」

「なんでそれを私に聞くんですか? 私じゃなくて一方通行さんとかに聞いたほうが早くないです?」

「・・・・・・ああ、そうでした。 あなたは『天使同盟』ではないのでしたね」

「ま、じきに正式なメンバーとして迎え入れられるでしょうけどね♪」

「第四の質問ですが、なぜ?」

「そりゃだって、私は(多分)リーダーである一方通行さんと将来を約束した仲ですから」

168 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/24(日) 15:53:08.35 ID:aQSXvtR2o


これを一方通行に聞かれていたらまたいつものように拳骨の一発でも放られていただろう。
サーシャはやれやれとため息をついて質問する。


「第五の質問ですが、・・・・・・それ本気で言ってるんですか?」

「んん〜どーでしょ。 あはははは」


レッサーの発言はいつも突拍子も無い事ばかりで、サーシャもイマイチ彼女の真意が掴めないでいた。
こういう適当なところがレッサーの欠点であり、同時に良いところでもあるのだろうか。


と、ここでサーシャが不意にレッサーの肩を掴んでその歩を止める。


「おっとと・・・・・・どうしたんですか?」

「シッ、声を出さないでください。 ・・・・・・・・・・・・、・・・・・・なんだか妙な気配がしませんか?」

「?」

169 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/24(日) 15:53:51.03 ID:aQSXvtR2o


レッサーは石造りの砦の廊下を軽く見渡すが、とくに何も感じなかった。
すれ違う人は皆、朝早くからせっせと仕事をしている軍人や民間人だけだ。


「気のせいじゃないです?」

「いや・・・・・・、第三の私見ですが私には分かります。 この粘つくような視線・・・・・・、
 そしてじわじわとやってくるこの胸騒ぎ・・・・・・・・・・・・」


人差し指を唇に当てながらサーシャは小声で呟きつつ周囲の警戒を怠らない。


そして、


「・・・・・・・・・・・・"ヤツが来る"」

「は? あの・・・・・・サーシャさん、昨日からその探偵みたいなキャラが妙に気に入ってるみたいですけど――――」

170 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/24(日) 15:54:21.48 ID:aQSXvtR2o


と、昨日のショッピングセンターの飲食店での一件について話題を出そうとしたところで、
その『ヤツ』が二人の元へ陸上の金メダリストも裸足で逃げ出す速度で向かってきた。




「サーシャちゅわあああああああああん!!! おっはよおおおおおおおおおおおお!!!!」



「うわあああああああああやっぱりかこの変態シスターァァァァァァああああああああああ!!!!!」

「あ、ワシリーサさん、おはよ―――――」


レッサーが涎を零しながら猛スピードで接近してくるワシリーサに挨拶をしようとしたときには、
既にサーシャを『誘拐』して廊下から跡形もなく消え去っていた。

彼女が走り去った後、廊下に風速五〇m/s級の突風が突き抜けていった。


「――――うございます。 ・・・・・・・・・・・・ブレないなぁ、相変わらず」

171 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/24(日) 15:55:33.45 ID:aQSXvtR2o


――――――――――――――――――――――


ミーシャ=クロイツェフは一方通行が座っている岩の側まで歩み寄ると、
ポツリと何かを言い始めた。


「hkgvhafe雪vghityhdfa」

「あァ?」

「pavvmw戦争yheridv」

「・・・・・・ハッ、相変わらず、何言ってンのかわかンねェなオマエは」


思えば、こうしてミーシャと二人きりで居るのは久しぶりだなと一方通行は思いふけた。
最初にこの天使と出会った時は事情を話せる人物が風斬氷華くらいしかいなかったため
三人で過ごす事が多かったように思う。

しかしそこからあの金髪の怪物が現れて『天使同盟』を引っ掻き回し、
さらに学園都市から復活してやってきた第二位の超能力者が現れて『天使同盟』は更に賑やかになった。

172 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/24(日) 15:56:28.36 ID:aQSXvtR2o


そして二度のイギリス訪問、ロシアへの訪問、黄泉川愛穂達との交流。
気がつけば、『天使同盟』の周りには数多くの人間たちが集まってきていた。


「大きくなったよなァ・・・・・・『天使同盟』も。 オマエ、覚えてるかァ?
 『天使同盟』が誕生したのは学園都市にあるボロっちィすき焼き屋だって事」

「htrbnfdk勿論aqqpgh」

「あンなの、単に酒の勢いで俺が口走っただけの同盟だったってのによォ・・・・・・
 気がつきゃこンな大規模な組織に発展しちまって・・・・・・いや、俺ァまだ組織だなンて
 思っちゃいねェが、こォなっちまったらもォ認めざるを得ねェかもなァ」

「――――――、」

「それにオマエも変わったよな。 最初の頃と比べるとずいぶン人間らしくなっちまった。
 俺としてはその方が楽でいいけどな。 オマエ、最初はメシ食う前の合掌でガラスとかブチ割ってたンだぞ?
 あンな頃と比べるとオマエも立派に適応してきてるよな」

173 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/24(日) 15:57:22.01 ID:aQSXvtR2o


懐かしいな・・・・・・、と一方通行は『天使同盟』が結成された時期の思い出に浸る。
普段の彼なら過去の事を思い出してほんの少しでも感傷的になるような事は無かった。

しかしもうここまで来ると、たまにはこうして懐かしき過去に思いを巡らせるのもいいか、
と一方通行はふとそんな事を思ったのだ。
目の前に広がるミルクの海のような雪原の景色がそれを手伝っているのかもしれない。


「eobmdwg貴方vnutefkhp」


ミーシャは一方通行の隣でしゃがみ込むと、ジッと彼の顔を見つめてきた。
一方通行は彼女の方を見ずに言う。


「・・・・・・今ここにゃオマエしかいねェから言うけどよ。
 いつの間にか、俺には大切なモンが、守りてェモンが増えたよ。
 ・・・・・・増えすぎたくれェだ」


失笑しながら、一方通行は他の皆の前では絶対に言えないような事を言い出した。

174 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/24(日) 15:58:24.82 ID:aQSXvtR2o


最初は、ただ打ち止め(ラストオーダー)という一人の少女さえ守れればそれでいいと思った。
彼には最初、守るべきものなど無かったのだから。

しかしその内、黄泉川愛穂や芳川桔梗、番外個体(ミサカワースト)、学園都市に住む光の住人。
風斬氷華や『天使同盟』、今まで出会った数多くの魔術師達。


そして、


「オマエもな、ガブリエル」

「――――――、」

「ったくよォ・・・・・・いつから一方通行はこンなに丸くなっちまったンだァ?
 今更そンな事言うのもおかしいけどよォ・・・・・・・・・・・・。 でもまァ、
 偽善だろォがなンだろォが、何かを守るってのも悪くねェンだよな」


それを教えてくれたのはあのツンツン頭の無能力者であり、そして自分の心に残っていたわずかな『善』でもあった。

175 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/24(日) 15:59:18.57 ID:aQSXvtR2o


「・・・・・・たまにはオマエと二人で駄弁るのも悪くねェな」


一方通行とミーシャはしばしの間、子供たちの雪合戦を眺めながら談笑を続けた。
談笑と言っても一方通行が一方的にミーシャに話しかけているだけの形だったが。


「いいか、フラグってのはなァ―――――」

「vbhti素敵apfrgt」


天使と人間の交流。そこだけ聞くとなにやら大事な雰囲気にも思えるが
二人が交わした言葉は何ら変哲もない、他愛のないものだった。


一頻り会話をした一方通行は短くため息をつき、ミーシャに尋ねる。

176 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/24(日) 16:00:30.49 ID:aQSXvtR2o


「もォちょっとしたら、一旦学園都市に帰るぞ。 『星の欠片』探しは
 その後でまた再開する。 行き先はまだハッキリとは決まってねェが・・・・・・。
 だから今のうちに、ここでやりてェ事やっとけ。 何がしてェ?」


一方通行が聞きながらミーシャの顔を見る。
その顔は相変わらずマネキンのように無表情だったが、気のせいか少しだけ、


微笑んでいるようにも見えた。


「konmdbh雪jopgfm子供gjirgewg」

「あァ? ・・・・・・オマエ、さっきから雪合戦やってるガキが気になってたのか?」

177 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/24(日) 16:01:29.21 ID:aQSXvtR2o


ミーシャが指を差す方向には、雪原で走り回りながら雪玉を投げつける子供たちの姿があった。
もしかして彼女もああやって雪合戦をして遊びたいのだろうか、と一方通行は考える。
この大天使はたまにこういう子供っぽい一面を見せるのだ。


普段の一方通行ならあんな風にハシャいで雪合戦をやるなどという結論には至らなかっただろうが、
今の彼の心境を考えるとミーシャの要望に答えるであろうことは一目瞭然だった。


「・・・・・・・・・・・・たまにはハメ外してみるのも悪くねェかもな。
 よし、俺と雪合戦で勝負だ」

「pthrjbsv勝負iscusfegf」


そう言って一方通行とミーシャは勢い良く雪原の中心部へ駆け出した。
そんな二人はまるで、幼馴染の子供同士のような仲睦まじい関係に見えた。

178 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/24(日) 16:09:15.68 ID:aQSXvtR2o

スレタイ回収が普通すぎてつまらない?気のせいでしょう。


今回はここまでです。スレタイどころか話の内容も普通すぎて何の面白みもないというね・・・・・・。
いやたまにはこういうのもいいんじゃないかと。

次回もこんな感じで進みますが、実を言うとこのロシア編、もうあとわずかで終わりです。
そうなったら後は最終章ですね。
書きためはもう本編が終了しそうなとこまで来ています。現行と書きためじゃ雰囲気や状況が
違いすぎて笑えてきますねいろんな意味で。


次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!


ごめんねレッサー、六人目の席はもう埋まってます。
179 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/24(日) 16:09:47.94 ID:aQSXvtR2o



                          【次回予告】



『私はあの人の・・・・・・一方通行さんにとって必要な存在になりたいんです。
 そうすることで私も彼の側にいられますし・・・・・・例え彼が振り向いてくれなくても、そうなれればそれでいいかなって・・・・・・』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・風斬氷華




『・・・・・・・・・・・・アンタそれ、『好意』っていうよりもはや『崇拝』じゃないの?』
―――――――――――ローマ正教、禁断の組織『神の右席』の元一員・『前方』のヴェント




『mvgjib攻撃方法csaqpgih変更ncfhugfg』
―――――――――――『天使同盟』の構成員・ミーシャ=クロイツェフ




『翼で攻撃したらもォ雪合戦じゃねェだろボケ!!』
―――――――――――『天使同盟』のリーダー・一方通行(アクセラレータ)




『せめて人前で着られるような服じゃねえと困るんだよなー。 ちゃんとそこんとこゴフォォッ!!!?』
―――――――――――『天使同盟』の構成員・垣根帝督

180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2011/04/24(日) 16:13:49.92 ID:xrt9NsjU0

六人目…だと…
しかしほかに翼を生やしたキャラなんて…美琴は違うだろうし…
あぁ、一人該当者が居たっけか
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/24(日) 16:15:10.63 ID:TzwjrFTL0

六人目……ふむ

天使と第一位の雪合戦とか流れ玉で死人が出そうだww
とか書いてる内に次回予告で垣根がなんか予想通りの事に!?wwwwww
まぁ、シーンが違う可能性もある訳だけど
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/24(日) 16:15:13.35 ID:KcCMKlzrP

いろいろ気になる発言多いなおい
6人目誰だか全然わからん
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/24(日) 17:43:25.10 ID:xhrMcs3AO
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/04/24(日) 18:13:12.93 ID:KnpchtLk0
乙です。
まぁ普通って言うか、ほのぼのってことでいいなじゃない?
ほのぼのをぶっ壊すように、雪合戦で久々に走馬燈をみさせてくれたら面白かったな
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/24(日) 18:15:52.22 ID:WQXjxds90
乙!

雪まみれになったていとくんを救う為、赤騎士が出動した模様です
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/04/24(日) 18:18:27.74 ID:UMFJO1WF0
乙!今回も面白かった!
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/24(日) 18:36:55.99 ID:GN5aK+pR0
確かペンさんも翼を出していた気がするな。
……というか、六人とはまさに戦隊ヒーローではないか
赤→一方
青→垣根
黄→ミーシャ
ピンク→風斬
黒or白→?
メンバーを集めたやけに強い指令統→エイワス
みたいな
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/04/24(日) 19:52:49.38 ID:Xt6Wif4AO
弁当が可愛い
ワシリーサ超可愛い
最後の二人が綺麗すぎて泣ける

6人目はあれか?翼の代わりに腕が生えてる人か?
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) [sage ]:2011/04/24(日) 19:58:40.77 ID:RwLbwQ2C0
ネタバレ:六人目はヤス
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/04/24(日) 20:26:47.51 ID:KnpchtLk0
天使クラスの強さで、羽を生やすことも可能なレベルの奴というと、、、自動書記かアウレオルスくらいか?
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/04/24(日) 20:34:11.22 ID:4hQaEd8so
6枚羽がこのスレを(ry
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/04/24(日) 20:47:34.54 ID:g26dYaWAO
六人目……前スレ予想の通りだと火野神作か
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/24(日) 21:08:03.73 ID:JjkxKPgh0
>>192
それだ
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/24(日) 21:18:55.03 ID:WQXjxds90
>>193
落ち着け、それだと赤のポジションがだぶる
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [sage]:2011/04/24(日) 21:32:52.90 ID:YiZupAEU0
>>194
一方通行はどう考えても白です
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/04/24(日) 21:53:00.61 ID:yqUOf5i8o

一方さん円くなっちゃってまあ

ここにきて最後の一人が加わるのか
予想外だ
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/24(日) 22:38:32.95 ID:GN5aK+pR0
むぅ……条件が厳しいな。
・天使クラスの戦闘力
・エイワスの行動にいちいち驚かない
・エイワスを信用しない
・何かあったらエイワスのせいにする
・一方通行にフラグを建てられる←ここ重要
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/25(月) 00:10:34.52 ID:6FBmufYAO
>>197
その条件に完全に合う人間……そうか、アレイスターも天使同盟入りか……
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(佐賀県) [sage]:2011/04/25(月) 00:33:12.75 ID:EsoEgCtwo
アレイスターは羽根生えてないけどな
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/04/25(月) 00:56:12.47 ID:FEalhzk4o
その気になったらはやせるんじゃね?
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2011/04/25(月) 00:57:21.00 ID:lyS9WHYAO
6人目…誰なんだ?
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage ]:2011/04/25(月) 01:41:10.00 ID:nb39eQvi0
ナンバーセブンじゃね
その気になれば翼だろうが尻尾だろうが生やせそうだし
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/04/25(月) 01:58:33.50 ID:s5fZjdSoo
翼といえば翼ある者の帰還
ということでテクパトルだな
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/04/25(月) 02:46:06.26 ID:tmd7taMA0
ついに神裂さん(堕天使ver)降臨か
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/25(月) 05:04:39.23 ID:D2tm4erd0
エイワス
ビイワス
シイワス
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/25(月) 07:57:59.91 ID:IfDsFBaSO
打ち止めがアホ毛ヘリコプターで飛ぶんじゃね?
207 :木原くン [sage]:2011/04/25(月) 08:28:34.48 ID:oWLdbsAAO
何だ……六人目はウィングガンダムゼロカスタムか……
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/04/25(月) 10:26:42.49 ID:bxJpbehV0

ふつーにフィアンマさんとオッレルスさん忘れてないかお前ら
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/25(月) 11:16:54.79 ID:8iom1YXI0
マジな予想で言ってるならこのSSに関係なさすぎだろjk
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/25(月) 12:11:26.85 ID:jOiKO3pAO
まあ>>1の事だから俺達の予想の斜め上をいってくるに違いないさ
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/26(火) 18:48:47.80 ID:5CO8hnXSO
>>210真上かもしれないよ?
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/04/26(火) 19:03:56.61 ID:lIT/9+VQ0
ガブリエルからして俺にとっては真上だった
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/26(火) 19:12:09.41 ID:97QUhzTs0
>>185どうしてくれる


赤騎士が炎の翼でていとくんの下へ飛んでいく様子を創造してしまっただろ
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/26(火) 20:03:55.32 ID:9zmxHN140
お前ら、とあるで天使と言ったら一人しかいないだろ?
初春マジ天使 のこと忘れんじゃねぇよ
 天使クラスの可愛さ (=マジ天使)
 天使クラスの希少価値 (=下の人は根)
 天使クラスの演算速度(電子世界で唯一、エイワスに対抗出来うる存在) 
 一方通行にフラグを建てられる
完璧じゃね?
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/26(火) 20:43:31.01 ID:97QUhzTs0
>>214

ヒント:翼
216 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/26(火) 21:05:13.64 ID:OY7zS2s5o
・・・・・・いやあ、様々な憶測が飛び交っていますね。
喜んでいいやらどうなのなやら・・・・・・

とにかく私がいの一番にすべき事は、皆さんへの『謝罪』なんだろうなぁ
すぐ調子に乗るからなここの>>1は・・・・・・


そんなわけで、投下します。
いつも沢山のレスをありがとうございます。


さ、どんどん話進めていきましょ。
217 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/26(火) 21:05:54.22 ID:OY7zS2s5o


――――――――――――――――――――――


運良くというか何というか、普通に考えて朝の七時から営業している喫茶店などそうそう見つかるわけがない。
ないのだが、二人にとっては今日は朝からラッキーデーだったらしい。


「ああ、船くれた人のお仲間さんかい? うれしいよねえ。 私も昨日は立食パーティに参加したクチでね、
 街の人達はみーんなあなた達に感謝してるのよ? プライベーティアのバカどもも追っ払ってくれたし」


そう言って、居住区の商店街にポツンと建っていた喫茶店で働く四十代くらいのおばさんは
まだ開店前の準備中であるにも関わらず、風斬氷華とヴェントを店内へ招き入れてくれたのだった。


「あ、あの、ありがとうございます・・・・・・。 何だか無理言っちゃって・・・・・・」

「何でアンタが気ィ遣うのよ。 店主が入れって言ってきたんだから堂々と入ればいいの」

218 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/26(火) 21:06:47.60 ID:OY7zS2s5o


ヘコヘコとテーブル席に着く風斬とは対照的に、ヴェントは有言実行堂々とふんぞり返って
風斬の向かい側の席に座った。
本当に、"白いの"以外の人物の前ではいつも通りに振る舞うヴェントの態度が微笑ましい。


「え、えと・・・・・・コーヒーと・・・・・・この、ハムカツサンドを・・・・・・」

「同じの」


適当に注文すると店主のおばさんは笑顔で応対してくれた。
キッチンに引っ込んで注文の品を用意する。

で、そこから華やかなガールズトークが展開されていくのかと思うだろうがそんな事はなく、
さっきからどこか不機嫌なヴェントの様子を風斬がオドオドしながら窺うだけだった。


「あ、あの〜・・・・・・」

「何よ」

219 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/26(火) 21:07:31.25 ID:OY7zS2s5o


一緒に買い物をして、自分の秘密を打ち明けて、風呂で裸の付き合いをするまでに至ったのに、
二人きりという状況になるとやはりまだギスギスした雰囲気のままだ。というかヴェントが一方的に不機嫌なだけなのだが。

このままではマズい、と風斬は精一杯の勇気を振り絞って会話を続けようと努力する。


「何かあったんですか・・・・・・? あ、いやその、なんだか機嫌悪そうなんで・・・・・・」

「別に。 ・・・・・・アンタがいちいち私の御機嫌取りしなくていいわよ。
 アンタのせいでこんなにイライラしてるわけじゃないんだから」

(やっぱりイライラしてるんだ・・・・・・)


程なくして注文したハムカツサンドと湯気と共に香ばしい豆の香りを放つコーヒーが二人の元に置かれた。
『いただきます』と風斬は律儀に手を合わせてパクパクと食べ始める。
ヴェントは目の前のハムカツサンドには目もくれず、ぶすーっとした顔でガラス張りの壁から外の景色を眺めていた。


「食べないんですか?」

「意外と食い意地張ってんのね、堕天使のクセに」

220 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/26(火) 21:08:23.90 ID:OY7zS2s5o


ほっぺたを膨らませてハムカツサンドを頬張る風斬を見てヴェントは言った。
ジッとこちらを見つめてくる風斬に苛立ちを感じ始めたが、やがて根負けし、
舌先に取り付けてある鎖と霊装を外してヴェントも食事を始める。

そして今度はヴェントの方から話を切り出してきた。


「アンタってさぁ、」

「?」

「何で白いののコトが好きなワケ?」


ゲホッゲホッっと喉にハムカツサンドを詰まらせて咳き込む風斬。
慌ててコーヒーを飲むが、ホットであることを失念していたのか『熱ッ!』と舌を出して涙目になってしまった。
眺めているだけでも飽きない女の子だ。

221 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/26(火) 21:08:54.28 ID:OY7zS2s5o


「バカでしょアンタ」

「うう・・・・・・、それより、その話はもうしたような気がするんですが・・・・・・」

「今度は真面目に聞いてんの」

「前のは真面目に聞いてくれなかったんですか・・・・・・」


風斬はあからさまに悄げてみせた。感情表現豊かなAIM拡散力場の集合体を見て、ヴェントは少しだけ笑う。
そして風斬はヴェントの質問に答えた。


「好きっていうより・・・・・・ただずっと一緒にいたいって気持ちのほうが強いんです。 もちろん、『天使同盟』の皆とも」

222 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/26(火) 21:09:38.57 ID:OY7zS2s5o


「『好き』とどう違うってのよ? そういうのを好意って言うんでしょうが」

「それならそうなんでしょうけど・・・・・・、私はあの人の・・・・・・一方通行さんにとって必要な存在になりたいんです。
 彼が今最も欲してるような存在に私はなってあげたいんです。
 そうすることで私も彼の側にいられますし・・・・・・例え彼が振り向いてくれなくても、そうなれればそれでいいかなって・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・アンタそれ、『好意』っていうよりもはや『崇拝』じゃないの?」

「そ、そうでしょうか・・・・・・? あ、でも普通に一方通行さんと二人でまた遊びたいなって思う事もあるんですよ?」

「あの白髪にアンタと同じような気持ちを抱いてる女は一人や二人じゃないってコトは分かってんでしょ?」

「は、はい・・・・・・。 でも私は別に彼を束縛したいとか、そういう考えは無いですし・・・・・・
 ちょっとヤキモチ焼いちゃいますけど、それは実のところ、それほど気にしてはいないんです」


昨日のショッピングセンターの一件であれだけ取り乱していたくせに、とヴェントは思ったが口には出さなかった。
風斬氷華は色々な考えを巡らせてはいるが、どうやら根本的な部分はブレていないらしい。

一方通行と、『天使同盟』の面々とこれからも共に過ごしたい。
AIMという魔術視点から見たら不可思議な概念で構成されたこの化物は、とても芯が強いようだ。

223 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/26(火) 21:11:03.39 ID:OY7zS2s5o


「んじゃアレか、テメェは白いのがその辺で女誑かしてるのを見守りながら、
 いつか自分に振り向いてくれたらいいなと。 そういう考えか」

「は、はい・・・・・・。 い、いや、一方通行さんはそんな人じゃないですけど・・・・・・」

「バーカ」

「うう・・・・・・・・・・・・」

「後手に回ってどうすんダヨ。 テメェ昨日もショッピングセンターで後手に回ってることを嘆いてたじゃねえか。
 あの白いのはどこに出しても恥ずかしくねえ世界一の鈍感クズだ。 あんなゴミ野郎をそれでも振り向かせてえってんなら
 もっとアンタから攻めていかなきゃ駄目だろうが」


ボロクソに言われている一方通行に、しかし風斬はフォローを入れずヴェントに問いかけた。


「同じような指摘を何度も受けてます・・・・・・、具体的にはどうしたらいいのか・・・・・・いえ、
 どうしたらいいのかは・・・・・・その・・・・・・なんとなく分かってるんですけど・・・・・・」

224 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/26(火) 21:11:55.29 ID:OY7zS2s5o


俯きながら顔を紅潮させ、風斬はもじもじしながらヴェントの顔をチラチラと見る。


「ぐ、具体的には・・・・・・例えばヴェントさんなら、どうやって・・・・・・?」

「え・・・・・・? 私? ・・・・・・・・・・・・し、知らねえ・・・・・・」


同じように顔を赤くして視線を外の景色に投げるヴェントの仕草に首を傾げる風斬。
過去に何か男関係でのいざこざでもあったのだろうか、と適当に想像してみる。
そういえば昨日、ヴェントは一方通行と何やらジェットコースターに乗って遊んだとか何かそんな話があった気がしたが、
もう昨日の話は思い出として記憶のアルバムに仕舞い込んでおこうと風斬は一人決意した。


「・・・・・・ま、頑張れば」

「は、はい! 頑張ります・・・・・・! ありがとうございます」


別に礼を言われるような事はしていないのだが、ヴェントは照れ臭そうにハムカツサンドを口に放り込む。
風斬もある程度ヴェントと会話が出来たことで気を良くしたのか、その後は終始ニコニコしながら
朝食を摂り終えるのだった。

225 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/26(火) 21:12:46.69 ID:OY7zS2s5o


そして互いにコーヒーをすすりながら、ヴェントが一言。


「で、アンタら今日はどうすんの?」

「ノープランです・・・・・・。 あ、でも今日はなんかエイワスさんがお話があるって言ってたような」

「ああ、例のハッキングがどうこう言うヤツね。 アンタらも大変よね、
 あんな化物に毎日振り回されてるんじゃ身が持たねえだろうに」

「確かに大変ですけど、慣れれば楽しめますよ? 毎日刺激的で面白いし・・・・・・
 メンバーも愉快ですから、苦痛を感じたことはありません」

「アンタも所詮、アイツらと同じ化物だってコトね」

「・・・・・・・・・・・・あの、ヴェントさんはこれからどうするんですか?」


不意に質問され、コーヒーを飲んでいた手の動きがピタっと止まる。

確かにヴェントも『天使同盟』と同じく、特に目的もなく独立国同盟に居座る日々が続いていた。
『天使同盟』にはミーシャ=クロイツェフに関する情報を収集するという漠然とした目的があるが、
『神の右席』から外れた今のヴェントにはそれすらない。

226 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/26(火) 21:13:57.23 ID:OY7zS2s5o


そしてヴェントは思う。『天使同盟』はいつまでもここにいるわけではない。
近いうちにここを発ち『星の欠片』を探しにどこかの魔術結社や魔術師と接触するのだろう。

つまり、こうして風斬氷華と一緒に食事をしながら喋ったり、あの超能力者がしてくれた『闇を共に支える』
という約束も、ハッキリしないまま有耶無耶になってしまうという事になる。


「・・・・・・・・・・・・、特にやることもないわね。 ここに居続ける理由も無いし、
 バチカンに帰ったって"私に『居場所』なんて無いし"、『神の右席』はもう解体されたし。
 はは、このままだと私、いわゆる『ニート』ってヤツになっちゃうわね」


一応プライベーティア戦でも彼女は第一線で戦ってくれたし、独立国同盟に元とはいえ『神の右席』という
最上級クラスの魔術師が居るというだけで大きなアドバンテージにはなっているのだが。


「それなら・・・・・・」


風斬は少し言葉を選ぶように口を止め、そしてヴェントに笑顔でこう言った。




「ヴェントさんも私たちと・・・・・・、一緒に過ごしませんか?」




それにしても、今日のロシアは心地のよい快晴に見舞われている。

227 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/26(火) 21:14:45.77 ID:OY7zS2s5o


――――――――――――――――――――――


「あの人たちってプロの雪合戦の人かな?」

「ばかだなーお前、雪合戦にプロなんかねーよ」

「でもあの二人すごいよー・・・・・・雪玉が全然見えない」


そんな話をしながら、独立国同盟に住む小学校低学年くらいの男女の子供たちは
漫画やアニメから飛び出してきたキャラクターのような怪物二人の壮絶な雪合戦を遠くで見物していた。

ひと際大きなクリーム色のフードを頭からすっぽり被った身長ニメートルくらいの怪物が
背中から生えた氷の巨大な翼を振るうだけで、夥しい数の雪玉が宙に浮かび相手めがけて飛んでいく。
そのまま雪原と同化しそうなほどに白い少年が大地を踏み込むだけで雪の結晶で出来た巨大な壁が出現し、
相手からの雪玉攻撃を難なく防ぐ。

228 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/26(火) 21:15:59.46 ID:OY7zS2s5o


「甘ェンだよ、そンなンで俺に勝とォなンざ一〇〇年早ェぞ三下ァ!!」

「frgkreov手数hjbotr増加dsyuyferg」

「うォッ・・・・・・!」


ズオオオオオオッッと渦を巻くように自身の周囲に雪を展開しているのは
言わずもがな、大天使ミーシャ=クロイツェフだ。
彼女は更に膨大な量の雪玉を一秒もかけず作成し、容赦なく白い少年に向かって放つ。

そしてその白い少年、一方通行は背中に四本の竜巻を接続し、空を飛び回りながら
時には回避し、時には雪玉を『反射』して抵抗していた。
チョーカーにスイッチを入れている辺り一方通行も本気なのだろうが
本気でやらなければこの雪合戦、相手がまた本気だからマジで殺される可能性があるのだ。


「無駄だ、いくら攻撃に『魔力』を注いだって、『反射』は出来なくても逸らす事ぐれェなら造作もねェンだよ」

「mvgjib攻撃方法csaqpgih変更ncfhugfg」

「翼で攻撃したらもォ雪合戦じゃねェだろボケ!!」

229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/26(火) 21:16:40.09 ID:97QUhzTs0
文字通りの合戦じゃねえかwwww
230 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/26(火) 21:16:46.32 ID:OY7zS2s5o


音速並のスピードで振るわれる氷の翼を強引に身体を捻って回避する。
今のが当たっていたら一方通行もタダじゃ済まなかっただろうが、これでもミーシャにとっては
ただの『じゃれ合い』なのだから手に負えない。


と、そこで二人が繰り広げる雪合戦という名の戦場に、悠然と歩きながら近付く者が現れた。


「よう一方通行。 お前ら朝っぱらから何ガキみてえな事やってんだよ」

「・・・・・・オマエか」

「帝督kvueg」

「お? ミーシャ、お前今俺の名前呼んだか?」


さくさくと雪を踏みしめながら歩いてきたのは垣根帝督だった。
相変わらずの軽装だったが、彼は寒くないのだろうか。

231 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/26(火) 21:18:03.33 ID:OY7zS2s5o


「オマエ・・・・・・なンかやけに綺麗だなその服。 新調でもしたか?
 さっき買ったばかりですみてェな雰囲気がプンプンするンだが」


一方通行の指摘にほんの少し動揺する垣根帝督。
彼の着ている服は早朝に行ったワシリーサとの激しい戦闘によってズタボロになり、
治療の際にエイワスがついでで彼の衣服も『復元』させたために新品同様に見えるのだ。

垣根は努めて平静を装い、一方通行に答える。


「いつまでも同じ服着てらんねえだろ。 つかお前俺の服ちゃんと買っといたんだろうな?」

「あァ? あァ〜・・・・・・どォだったかな」

「ふざけてんじゃねえぞテメェ。 おつかいもまともに出来ねえガキか。
 ま、オマエのファッションセンスでチョイスした服なんざまともに着られるもんじゃねえだろうけどな」

「やれ、ガブリエル」

「せめて人前で着られるような服じゃねえと困るんだよなー。 ちゃんとそこんとこゴフォォッ!!!?」


ペラペラと上機嫌で喋る垣根の顔面に、ミーシャの雪玉攻撃がクリティカルヒットした。
なんとも間抜けな体勢で派手に転ぶ垣根を見て、遠くに『避難』していた子供たちが盛大な笑い声をあげる。
それに釣られてミーシャもガクガクと体を震わせた。これは彼女が笑っている時の仕草だ。

232 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/26(火) 21:19:18.54 ID:OY7zS2s5o


「懐かしいなその笑い方。 オマエ最近笑ってなかったンじゃねェの?」

「――――――――――、」


ミーシャは首を横に振る。


「pxmbve露天風呂cfjoe愉快dhdhn他mlvgr多数pobk」

「あンだって?」

「テ、メェらぁぁぁ・・・・・・・・・・・・!!!」


ゆらりとした緩慢な動きで起き上がる垣根は憎悪に満ちた表情を浮かべていた。
そして顔や髪の毛からドサドサと雪を落としながら彼はニヤリと笑った。

233 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/26(火) 21:20:16.09 ID:OY7zS2s5o


「そういやミーシャ、テメェにゃ昨日の露天風呂で世話ンなってんだよなぁ・・・・・・、
 あん時の報復、今ここでキッチリやってやんよ」

「さっすが第二位サマ、心の器が小さくいらっしゃる」


そう言って一方通行はケタケタと笑う。それがこの雪合戦第三の参加者を迎え入れる合図となった。


「テメェもここで雪原の一部にしてやるよ、一方通行ァァァァァあああああああああ!!!!」

「ハッ、来いよ! こォいうのは数が多けりゃ多いほど混沌として面白くなるってモンだ!!」

「dfgherig再開fjguth」


学園都市の第一位と第二位、そして天界より降臨せし大天使の三名による
雪合戦レベル一〇〇が幕を開けた。

『未元物質(ダークマター)』で構成された六枚の翼を展開して不可思議な法則で攻撃する垣根。
その法則をあっさりと解読し、難なく『ベクトル変換』で反撃する一方通行。
それら二人の攻防を正面から叩き潰し、圧倒的に君臨するミーシャ=クロイツェフ。


こんな化物三人が、こんな風に暴れてしまえば、図らずも人が集まってくるものだ。

234 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/26(火) 21:21:04.90 ID:OY7zS2s5o


――――――――――――――――――――――


「・・・・・・今なんつった?」

「いえ、あの、ですから・・・・・・私たちと一緒に過ごしませんかって・・・・・・」

「私に『天使同盟(アライアンス)』に入れっつってんの? アンタ」

「も、もしよろしければですけど・・・・・・」


視線をあちこちに泳がせながら風斬はそんな事を言った。


対するヴェントはというと、手に持ったコーヒー入りのマグカップを置くことも忘れ、
口を開けたままポカンとした表情を浮かべて固まってしまっている。

彼女たちがいる喫茶店の店主が皿を洗う音だけが、店内に流れるBGMとなっていた。

235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2011/04/26(火) 21:21:12.57 ID:+B+4Kl0o0
>なんとも間抜けな体勢で派手に転ぶ垣根

ズゴンッ!!
ノーバンで十数メートル先の雪山に凄まじい勢いで激突した。


今さっきまで新約読んでたら勝手に脳内変換された。
236 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/26(火) 21:21:46.10 ID:OY7zS2s5o


「本気で言ってんならアンタも大概おかしいわ。 大体そんな簡単に
 所属できるモンなのかよ『天使同盟』って」

「え、基本誰でもウェルカムだと思ってますけど・・・・・・」

「裏カジノの店長かアンタは。 ・・・・・・つかそんなんでいいのかよ、
 テメェらみたいなとんでもない組織がそんな簡単に他人を受け入れてさぁ」

「私はそんな大きな組織とは思ってません・・・・・・というより、
 一方通行さんがそんな風に考えてないんで、大丈夫だと思います」


なんて楽観的な、とヴェントは深く溜息をつく。
目の前にいるぽや〜っとした少女、風斬氷華は本当に自分の言っている事が分かっているのだろうか、と。


実際、『天使同盟』という組織はとてつもなく強大で恐ろしい組織になっている。
学園都市トップ2の超能力者に、天使を模したAIM拡散力場の集合体、もはや別世界に生きている金髪の聖守護天使、
そして『天使同盟』の顔とも言える本物の大天使『神の力(ガブリエル)』。

237 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/26(火) 21:22:49.52 ID:OY7zS2s5o


そんなぶっ飛んだ人員で構成されているこの組織に、たかが一魔術師が加わってどうするというのか。


そんな風に考えるヴェントの返答は、当然のものだった。


「断る」

「えぇ〜・・・・・・・・・・・・」

「えぇ〜、じゃないわよアホ。 なんでアンタらみたいな化物集団に私が加えられなきゃいけないのよ。
 それならまだ『神の右席』を再結成した方が・・・・・・・・・・・・、いやそれよりはマシかもしんないけど。
 ともかく嫌。 ゼッタイ嫌。 第一、アンタが良くても私が良くてもあの白いのとかが断るでしょうが」

「そ、そこは私も頑張って説得しますから・・・・・・!」

「いやそこまで必死に勧誘する意味がわからないんだけど。 とにかく私が嫌って言ったら嫌なの。
 悪いけど、人員を増やしたいってんなら他を当たってくれないかしら」

「・・・・・・そう、ですか・・・・・・・・・・・・」


シュン・・・・・・と、どうやら風斬はヴェントに断られた事に本気で落ち込んでいるようだ。
ヴェントは別に何も悪いこと、いやむしろ正しい事を言っているだけなのだが、
アヒル口を作って悄げているメガネの少女を見ると、どうも後ろめたさを感じてしまう。

238 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/26(火) 21:37:39.20 ID:OY7zS2s5o

Q. 六人目はヴェント?

A. 断られてますやん


前回、なんで六人目がどうこう言い出したのかというと、こういうお話があったからです。
ヴェントを六人目として誘った風斬でしたが、やはり無理でした。
私の中で六人目はこのSSの初期段階の時点で決まっていた構成員なのですが・・・・・・


実を言いますと、もう本編で六人目が出てくる事はありません。


間に合いませんでした。どうにかして合流させようと思いましたが、それでは幾ら何でも無茶すぎるのと、
これ以上グダグダと話を長引かせるわけにもいかないので泣く泣く未登場ということに・・・・・・。
そういう意味で、みなさんに余計な事を言ってしまったという意味で謝らせてください。すみません。

ちなみに六人目は全然意外な人物じゃないです。ただ『翼が生えなきゃ構成員になれない』という考えは捨てたほうがいいです。
いつか登場させたいので、(分かりきっているとは思いますが)あえて伏せておきます。


次回更新は三日以内。


それではみなさん、今日もありがとうございました!

239 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/26(火) 21:38:26.78 ID:OY7zS2s5o



                          【次回予告】



『つかガブリエルよォ、雪玉で攻撃しねェと雪合戦になンねェっつっただろォが』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・一方通行(アクセラレータ)




『テメェも来いよ風斬。 俺と手を組んで一方通行の野郎を沈めねえか?』
―――――――――――『天使同盟』の構成員・垣根帝督




『・・・・・・どうせなら私は天使さんと一緒に遊びます。 天使さん、私も一緒に混ぜてもらっていいですか?』
―――――――――――『天使同盟』の構成員・風斬氷華




『まったく・・・・・・くだらないコトやってるわね・・・・・・』
―――――――――――ローマ正教、禁断の組織『神の右席』の元一員・『前方』のヴェント

240 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/26(火) 21:38:55.34 ID:OY7zS2s5o



                          【次回予告】




『ちぃ! さっすが大天使、私の華麗なる不意打ちを見切ってましたか!』
―――――――――――魔術結社予備軍『新たなる光』の構成員・レッサー




『朝から何を騒いでいるのかと思えば・・・・・・案の定、あなた達だったのね』
―――――――――――エリザリーナ独立国同盟の中心的人物・エリザリーナ




『ミーシャぁぁぁ・・・・・・!! 助けてください〜〜〜・・・・・・・・・・・・!!』
―――――――――――元『殲滅白書』の魔術師・サーシャ=クロイツェフ




『ちっ!! 何の騒ぎかと見に来たのが間違いだったわ!! まさかミーシャまでいるだなんて・・・・・・!』
―――――――――――元『殲滅白書』のシスター・ワシリーサ

241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/04/26(火) 21:39:04.86 ID:nE3H5l9AO
乙。つまりタンヤオのフィアンマだったのか
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/26(火) 21:40:45.94 ID:XyQaLpgDO
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/26(火) 21:44:45.06 ID:w2tfwWPqo
本編ではって事はおまけでは出るのかな
wwktk
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/04/26(火) 21:52:32.75 ID:IMRTAsKT0
翼がある人なんてあとインなんとかさんぐらいしかいない
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/26(火) 22:04:57.09 ID:+Yu3aObgP

本編にこれまで出てないって事はフィアンマで確定か
話上がってるのにハブられるとかカワイソス
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/04/26(火) 22:13:41.65 ID:IT5/2v5U0
「で、アンタら今日はどうすんの?」

「ノーパンです・・・・・・。 あ、でも今日はなんかエイワスさんがお話があるって言ってたような」

こんな風に一瞬見えたww
どうでもいいけどノープランって言葉をはじめて知ったのは内Pだった気がする
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage ]:2011/04/26(火) 22:33:24.22 ID:veYyw88n0
このモブ子どもたち、スラムダンクにいたよな……
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/26(火) 22:41:37.36 ID:BoXoKsyr0
>>246

「前略、露天風呂の上より」を歌ってたグループだな
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県) [sage]:2011/04/26(火) 23:21:37.02 ID:s+19lCbj0
6人目は番外編に期待か
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/27(水) 00:07:21.88 ID:aOZDlwrAO
神作ェ…
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/27(水) 00:51:32.59 ID:6leNEHjro
>>246
俺は「ノーブラです」に見えたぜ
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/04/27(水) 01:39:32.28 ID:tAt41Nia0
乙、俺もノーブラに見えました
0次元をマスターした麦のんなら翼くらい生えそうだと更新前は思ってたが、やはり魔術サイドか
フィアンマ・オッレルス・インデックスのいずれかで確定だろうな
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/27(水) 02:31:09.30 ID:T6Ufn2ADO
美琴も翼生やしてたよね
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/04/27(水) 03:01:54.41 ID:T7+LIEBC0
御坂は登場したから天使同盟入りは無理だろう
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/27(水) 09:59:35.71 ID:FY2Q7qZI0
風斬のかわいさが王道すぎてもう生きていけない
でもミーシャに頼りきりのサーシャがかわいくて[ピーーー]ない
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(佐賀県) [sage]:2011/04/27(水) 11:37:07.58 ID:ZdTs4r8Ro
この垣根って原作15巻ラストで覚醒した垣根だよな
実際のところ、覚醒垣根と普通の一方通行(黒翼/白翼無し)だとどっちが強いんだろ
あの描写からすると、通常の一方通行より強そうなんだけど
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2011/04/27(水) 12:44:45.43 ID:l9EtLsm70
15巻までの通常一方よりは間違いなく強い
でもいまは黒翼も意のままだし白翼も生えたからな
個人的には垣根は禁書の中で上の下クラスだと思ってる
上位陣にダメージを与えることはできるからな
御坂麦野あたりは中の上から中あたりだと個人的にそう思った
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2011/04/27(水) 12:48:00.28 ID:l9EtLsm70
ああなんか意味不明な返事しちゃったな
要するに通常一方自体も15巻時よりも強くなってるんじゃいかって言いたかった
連レススマソ
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/04/27(水) 15:35:59.53 ID:u9PtY2+lo
ここは裏をかいて根性さんだな
260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/27(水) 18:03:57.49 ID:2pG4mFn40
裏の裏をかいてモツ鍋……ごめんなんでもない
261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県) [sage]:2011/04/27(水) 18:46:24.25 ID:SF34vsk10
いやそこは裏の裏の裏をかいて黒夜さんだな
262 :TLB :2011/04/27(水) 19:20:42.78 ID:g3JGZBZH0
この雪合戦に参加してぇ・・・
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/04/27(水) 19:34:02.80 ID:gWRSCv7o0
>>262
sage無いお前はぜひとも参加してくるといいよ
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/27(水) 21:23:07.27 ID:7qqDEdM70
>>262
そうか・・
この最新式たこ焼き連射機の実験台になってくれるなんて
なんていいひとなんだ
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/27(水) 21:54:33.07 ID:dfTMYwtE0
>>264
たこ焼きの代わりに雪(でコーティングされた氷)玉を詰めるんですね、了解!!
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/27(水) 22:08:52.51 ID:2pG4mFn40
>>265
たっぷりとテレズマを流し込んで作れよ。あと、材料にこれ使えよ
つカーテナセカンドの欠片
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/28(木) 00:42:16.58 ID:8S1tD1kIO
どっかで雪でコーティングした砂鉄のレールガンがあったな
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/04/28(木) 04:01:00.87 ID:H6kkqTbv0
六人目がアレイスターならある意味面白そうな展開になりそうだと思うのは俺だけじゃ無いはずだ。
269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/04/28(木) 11:28:51.68 ID:usCJf+2AO
>>268
敵がいなくなっちゃうwww
そうなれば、今までの建てたフラグと戦うんですね。
270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/28(木) 14:17:35.44 ID:03/6KmPAO
>>268
まさかの☆にフラグが立っちゃうんですね分かります
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/04/28(木) 16:56:44.87 ID:5QMkWwhAO
サーシャって線はないかな?
272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/28(木) 17:13:03.38 ID:e6IVtofh0
>>253
電気の翼だがな、個人的には天使同盟に入ってほしかった。一方さんにデレる美琴なんて胸熱だし。
まあ、天使の翼がなく尻尾がありどちらかと悪魔ぽく特に色気もないに誘惑して自分勝手に利用しようとして戦闘ではまったく役立たないどっかの数年前に流行った動物の名前の一部の名前が含まれている人より千万倍いいしね。
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/28(木) 17:23:31.29 ID:PKUTuSBr0
>>272
ウーパールーパー?
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/04/28(木) 17:36:39.91 ID:2VNxqjQK0
>>272 御坂レベルでも天使同盟じゃ雑魚扱いだろ。一方さん達にとってはレッサーも御坂も大差無いと思う。
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/04/28(木) 17:40:30.04 ID:s9CBCGnAO
>>272
シーモンキーちゃんの悪口は止めたまえ
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/04/28(木) 18:33:53.47 ID:m+JplWij0
>>275
おいてめぇバシリスクDisってんじゃねえよ
277 :TLB [sage]:2011/04/28(木) 18:34:23.81 ID:JmBSsHQ70
>>264ご教授ありがとう
これから気を付ける
278 :TLB [sage]:2011/04/28(木) 18:46:38.47 ID:JmBSsHQ70
間違えた
>>263ありがとう
279 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/28(木) 19:04:31.95 ID:o4JK3iZCo
>>247
すごいですね・・・・・・よくぞ気付かれました。
流川楓vs仙道彰の1on1を見学してた子供たちですねww

こんばんわ、ゴールデンタイムでの投下となります。

六人目について色々と盛り上がっているようで嬉しいです。
本編に出て来れなくなりましたが、これで報われます・・・・・・。


前回までのお話は、風斬がヴェントを『天使同盟』に誘うも断られてしまった、というお話でしたね。
その続きからいきまーす。
280 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/28(木) 19:05:29.55 ID:o4JK3iZCo


ヴェントは胸糞悪そうに舌打ちをし、手に持っていたマグカップを口元に寄せる。
コーヒーを飲んでいるときに風斬の方を見るが、相変わらずしょぼくれていた。


(仮に私が『天使同盟』に入ったら、ますます白いのが振り向いてくれる可能性が減るでしょ。
 コイツそこんとこ分かって言って・・・・・・・・・・・・、って! 何考えてんのよ私は!!
 私がいたところでコイツと白いのがどうなったりとかしねえだろうが!!)


あわわわわ・・・・・・と片手を団扇にして顔を扇ぐヴェントを見て風斬は首を傾げた。
そしてヴェントはゆっくりとマグカップを置き、コホンと咳払いをして言う。


「・・・・・・・・・・・・ま、考えといてあげてもいいけど」


なぜか上から目線だった。

281 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/28(木) 19:06:15.05 ID:o4JK3iZCo


「ほ、本当ですか・・・・・・?」

「考えとくだけよ! まずあり得ない話だけど・・・・・・」

「ありがとうございます! 絶対ヴェントさんも『天使同盟』に入れてみせますから」

「必死過ぎて怖えよ。 何が目的だ何が」


パァァっと表情を綻ばせる風斬に、ヴェントも思わず苦笑してしまう。

『0930』事件の時には必死で目の前の少女を始末しようと考えていたというのに、
人生とは分からないものだ、とヴェントは少しだけ物思いにふけた。


その後、しばらく二人で他愛もない話をしていた時だった。


突然、ズズゥゥゥン・・・・・・!!!という重低音が鳴り響いた。
彼女たちがいる喫茶店もわずかだが揺れている。

282 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/28(木) 19:06:50.61 ID:o4JK3iZCo


「あら・・・・・・なんだか騒がしいわねえ」


キッチンからひょっこりと顔を出してそう言ったのはこの店の店主のおばさんだ。
しかしそこまで気にしていないのか、小さな揺れが収まると同時にさっさと開店準備に戻っていった。


「なんだろう・・・・・・? 今ちょっと揺れましたよね?」

「天使が貧乏揺すりでもしてんじゃねえの」


ヴェントの冗談を無視して風斬は店の出入口の扉を開けて外の様子を確認する。
しばらく同じ方角をボーッと見ていた風斬が、心なしかワクワクした表情を貼りつけて店内に戻ってきた。


「なんだかあっちの方で雪が沢山『浮いてます』! 一方通行さん達かも・・・・・・!」

「いやなんでそんな楽しそうなのアンタ。 ・・・・・・・・・・・・、行ってみる?」

「はい!」

283 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/28(木) 19:07:36.78 ID:o4JK3iZCo


というわけで二人は騒ぎの中心へと足を運んでみることにした。
店主のおばさんに代金を支払おうとすると、『まだ開店前だからお金はいらないよ』と笑顔で無料にしてくれた。サービス精神が旺盛すぎる。

申し訳なくなった風斬がお金を払おうとするが、『タダより安い物はねえよ』と
ヴェントがそれを阻止し、二人は結局お金を払わず店を後にしたのだった。


道中、ふとヴェントが風斬に話しかけてきた。


「・・・・・・ねえ」

「?」

「・・・・・・その、アレだ。 ・・・・・・誘ってくれてアリガトね」

「あ・・・・・・、デレた」

「ああァッ!!?」

「ひいいい、じょ、冗談です・・・・・・!!!」


科学を憎む魔術サイドの魔術師と、科学技術を凝縮して作られた人工天使。


そんな二人はまるで、どこにでもいるような仲睦まじい友達同士のようにも見えた。

284 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/28(木) 19:08:26.40 ID:o4JK3iZCo


――――――――――――――――――――――


やっぱり、こうやって皆と一緒に騒いで遊ぶのは面白い。


「二人まとめて死ねェ!!」


一方通行が『私』と帝督に雪玉を叩きつけてくる。
彼は背中から噴出する竜巻を利用して常に雪をキープしている状態にあった。


「遅えよ第一位!! このまま十月九日の続きでもおっ始めるかあ!!?」


私と帝督は一方通行の攻撃を避け、帝督は背中の『未元物質』を使って
地面にある大量の雪を津波のように巻きあげていく。

285 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/28(木) 19:09:32.32 ID:o4JK3iZCo


十月九日の事はエイワスから聞いているので知っている。
なんでも、学園都市に潜む『暗部』と呼ばれる組織の抗争があったようで、
そこで一方通行と垣根帝督が一騎打ちをしたらしい。

理由は聞いていないが、多分『喧嘩するほど仲が良い』というアレだと私は思う。違うかな。

そして帝督だが、彼の様子から察するに恐らくある程度の魔術を習得したのだろう。
彼から並々ならぬ魔力を感じる。おめでとう、と伝えたいけどそれも叶わないのが悔しい。


「余所見してンじゃねェぞガブリエル! 特大の雪玉でも喰らってろォ!!」


一方通行が元気玉みたいな大きさの雪を私に向かって投げつけてきた。
彼にしては珍しく、こういう遊びを純粋に楽しんでいるようにも見える。
とりあえず私は一方通行が投げてきた大きな雪玉を指一本で破壊し、事なきを得る。


楽しいな。

286 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/28(木) 19:10:17.39 ID:o4JK3iZCo


すごく楽しい。そして何よりも、彼が、一方通行が私と楽しく遊んでくれるのがとても嬉しい。


私は背中の翼を振るい、そのまま一方通行と帝督に攻撃を仕掛けた。


「ッ!? 早え・・・・・・こうして対峙してみると天使ってのは恐ろしいな」

「つかガブリエルよォ、雪玉で攻撃しねェと雪合戦になンねェっつっただろォが」


そうだった、失敬。つい夢中になってしまっていた。
なぜだか急に、私の中の攻撃性が高まってしまった。


・・・・・・・・・・・・。


どうしてだろう。


「おーい、一方通行さーん!」

287 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/28(木) 19:10:51.69 ID:o4JK3iZCo


声が聞こえた。この声は氷華の声だ。遊びに来てくれたのだろうか。


「風斬じゃねェか。 どォした?」

「どうしたじゃないですよー・・・・・・、あなた達が暴れてるから建物が揺れちゃってますよ?」

「テメェも来いよ風斬。 俺と手を組んで一方通行の野郎を沈めねえか?」

「・・・・・・どうせなら私は天使さんと一緒に遊びます。 天使さん、私も一緒に混ぜてもらっていいですか?」


断る理由がない。私は快く了承し、首を縦に振った。
氷華はこちらに向かって走り出し、雪原の雪をせっせとかき集めて一方通行と帝督に投げつける。

288 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/28(木) 19:11:33.18 ID:o4JK3iZCo


「風斬ちゃンよォ、俺を敵に回して後悔すンじゃねェぞ?」

「こうなったらテメェら三人まとめてミンチにしてやる」

「二人とも、空を飛ぶのは卑怯ですよ〜・・・・・・!!」


氷華はそう言いながらも笑顔で雪玉を投げつけていく。
しかし上空にいる二人には届かなかったため、『覚醒』して彼女も飛び始めた。


「まったく・・・・・・くだらないコトやってるわね・・・・・・」


別の人物の声がした。そちらを向くと、・・・・・・ヴェントだろうか。
昨日の露天風呂の時にチラッと見たがやはりあの独特の化粧や『ウリエル』の属性を司る衣服を身に纏っていないと
その姿に違和感を覚える。けど、今の方が可愛らしいとは思う。

289 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/28(木) 19:12:28.39 ID:o4JK3iZCo


ヴェントは空にいる私の姿を見上げると、フンとそっぽを向いて適当なところに座り込んだ。
彼女は雪合戦に参加しないのだろうか?残念だ。


背中からエーテル?に似た物質で構成された翼を生やして空を飛ぶ風斬は
普段の怖ず怖ずとした雰囲気は見受けられず、活発に遊んでいる。
何か良い事でもあったのだろうか、彼女が嬉しそうだと私も嬉しい。


「きゃっ! 冷た〜い・・・・・・」

「ざまあねえな、所詮は学園都市製の人工天使かよ」

「油断してていいのかメルヘン野郎」


氷華に雪玉を当てて優越感に浸っている帝督の頭に、一方通行が思いっきり雪を浴びせた。
雪崩のようなその攻撃はあっという間に帝督を飲み込み、地面へ流していく。

私はとりあえず帝督が落っこちた場所に追加攻撃を送った。

290 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/28(木) 19:13:27.70 ID:o4JK3iZCo


と、不意に私の背後から何者かの攻撃が飛んできた。
事前に気配を感じていた私はその攻撃を難なく回避する。


「ちぃ! さっすが大天使、私の華麗なる不意打ちを見切ってましたか!」


振り向くと、そこにはイギリスで出会った魔術師、レッサーがいた。
彼女は手に『鋼の手袋』を構えている。


「レッサー、おはようございます」

「おはようございます風斬さん。 なんだか騒がしいと思ったら、楽しそうな事やってるじゃないですか」

「来いよマセガキ。 オマエも雪の藻屑にしてやる」

「それを言うなら海の藻屑で・・・・・・しょっ!」

291 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/28(木) 19:14:25.94 ID:o4JK3iZCo


『鋼の手袋』で掴んだ雪を勢い良く一方通行めがけて投げるが、彼の『反射』能力であっさり防御されてしまう。

しかもその反射された雪が、なぜか私のところに―――――。


「ハッ、さすがに能力アリじゃ俺に分があり過ぎるかァ?」


私はふるふると頭を振って付着した雪を払い落とす。

この雪合戦にレッサーも参加し、戦場はますます賑やかになってきた。
彼女は『天使同盟』と一緒に行動している時も、みんなを盛り上げてくれる元気な人間だった。
こういうのを・・・・・・『ムードメーカー』というのだろうか?

エイワスはさほど興味が無さそうだったが、私は是非これからもレッサーとも過ごしていきたいと考えている。
・・・・・・いや、過ごしたかったが正解だろうか。


・・・・・・・・・・・・こんなにも楽しい時間も、もうすぐ終わる。
嫌だ、こんな時間が永遠に続けばいいのに。

292 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/28(木) 19:15:28.28 ID:o4JK3iZCo


「そりゃー!」

「甘ェよマセガキ、オマエのチンケな魔術じゃ俺に雪玉一つ当てる事も出来ねェよ!
 ・・・・・・ていうかヴェント、オマエも一緒にやらねェか?」

「やんないわよバカ。 アンタちょっとガキっぽいわよ、キャラ変えたの?」

「・・・・・・ま、たまにはいいと思ってな。 オマエと同じだよ」

「私は何にも変わってねえっつってんだろこのクソウサギがぁぁ!!!」


激昂したヴェントは舌先に付けている霊装をジャラリと揺らす。
瞬間、雪原の中央から氷で出来た『女王艦隊』の帆船の一部がと飛び出してきた。
雪原を突き破って出現したソレは、船体の側面に取り付けてある氷の砲身の照準を一方通行に向ける。


「お、オイ。 雪合戦ってのは相手に向かって雪玉を――――」

「『雪』も『氷』も似たようなモンだろぉ? 覚悟しろ!!」


ズドドドドド!!!という爆音が連続して鳴り響き、空気を震わせた。
氷で構成されたニメートル程の大きさの錨が、容赦なく一方通行の肉体を粉々にしようとする。


「こんにゃろ、こんにゃろ! 逃げんな白いの!」

「うっぜェェェェ!! ナニ急にムキになってンだこの女ァ!」


ヴェントも意外と子供っぽいところがあるのだなと思った。
私も人の事は言えないが、でも楽しかったら何でも良い。

293 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/28(木) 19:16:29.62 ID:o4JK3iZCo


「朝から何を騒いでいるのかと思えば・・・・・・案の定、あなた達だったのね」


独立国同盟産のふっかふかなコートに身を包んでそう言ってきたのはエリザリーナだった。
彼女には本当に世話になっている。
『天使同盟』でも何でもないただの人間であるというのに、私の事を親身になって考えてくれた。


「おはよう、ミーシャ。 今日は元気そうね」

「vmfegri元気pxeya百倍iteqhg」


挨拶をしてきたエリザリーナに、私はサムズアップをして応えた。
ちなみにこのサムズアップというジェスチャーは、一方通行と初めて『ファミリーレストラン』という
飲食店へ行ったときにいた、青い髪の少年がやっていたのを見て覚えたものだ。


エリザリーナはホット専用の缶コーヒーを片手に微笑を浮かべながら皆の雪合戦を
遠目で眺めている。

294 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/28(木) 19:17:12.96 ID:o4JK3iZCo


と、その時にまたしても声がした。私に助けを求めるこの声は―――――。


「ミーシャぁぁぁ・・・・・・!! 助けてください〜〜〜・・・・・・・・・・・・!!」

「ちっ!! 何の騒ぎかと見に来たのが間違いだったわ!! まさかミーシャまでいるだなんて・・・・・・!」


ロシアに来て私と色々楽しい会話をしてくれたサーシャ=クロイツェフだ。
そのサーシャを脇に抱えて私を畏怖の目で見上げている修道女はワシリーサ。

私は前に一度、サーシャの肉体を器にして現世に降りたことがある。
あの時は本当に迷惑をかけた、謝罪したいが・・・・・・・・・・・・それももう叶わない。
でもそんな事もあってか、サーシャは私に対してまるで姉妹のように接してきてくれた。
一緒に私のスケッチブックを見たり、『殲滅白書』に居た頃はどういう活動をしていたのかという話を聞いたり・・・・・・。
サーシャのお話はいつも聞くのが楽しみだった。


「ミーシャ、ワシリーサを何とかしてください・・・・・・!」

295 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/28(木) 19:18:11.33 ID:o4JK3iZCo


私はそんな『親友』を助けるために、上空から一気に下降してワシリーサに飛び蹴りを喰らわせた。


「ぎゃふっ!!」


ワシリーサ程の魔術師なら、今の攻撃など簡単に避けることが出来るはずだが、
あえてこんな風にわざと喰らってくれる辺り、彼女もノリが良くて愉快な人間だ。

でも、サーシャに過度な猥褻行為を働くのはダメ。


「痛い・・・・・・痛い・・・・・・痛いィィィィいいいいいいい!!!」

「ミーシャ、ありがとうございます。 ・・・・・・これ、皆さん雪合戦をしているのですか?」

「tibvvn肯定cxzgjoj」


痛い痛いと喚くワシリーサを無視し、サーシャは私に寄り添いながら雪合戦の様子を眺める。


「・・・・・・第一の私見ですが、私もやってみたいです」

「rvbrgn参戦aqqwi歓迎eovbsv」

296 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/28(木) 19:19:03.69 ID:o4JK3iZCo


もちろん、断る理由などない。
私がビシッと指を差すジェスチャーをすると、サーシャは少女相応の笑顔を浮かべて
戦場に駈け出していった。


「うがあああああああああ!!! テメェら覚悟は出来てんだろうなぁ!!?
 念仏唱える準備しとけよクソどもがあぁぁ!!!」

「うわぁ、垣根さんが復活しましたよ!」

「埋めろ埋めろォ、コイツ氷漬けにして博物館に進呈してやろォぜ」

「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・クソ、『女王艦隊』もうニ、三隻くらい呼び出すか」

「ちょっとヴェントさん、ぶっちゃけその船ジャマなんですけど」

「第二の私見ですが、くれぐれも居住区に被害が及ばない程度に暴れてくださいね」


エリザリーナとワシリーサは参加しないのだろうか。
やはりこういう時にはしゃがないのが大人の女の基本なのか・・・・・・うーむ。


「ワシリーサ、あなたも少しは自重しなさい。 昨日露天風呂で散々セクハラ働いたでしょ」

「スキンシップだも〜ん。 ・・・・・・でも、こうして無邪気に走りまわるサーシャちゃんも素敵だわ・・・・・・」

297 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/28(木) 19:20:02.14 ID:o4JK3iZCo


エイワスが居ないが、あれはどこにでも居てどこにも居ない存在だからいいのかな。
それともエイワスは、『私を待っている』のだろうか。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。




とにかく、これで全員揃った。




エリザリーナは相変わらず缶コーヒー片手に呆れるように笑みを浮かべて佇んでいる。


ワシリーサは楽しそうに笑いながら遊びまわるサーシャを見て、恍惚な表情を浮かべている。


そんなサーシャはレッサーに向かって雪玉を健気に投げつけている。

298 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/28(木) 19:20:53.73 ID:o4JK3iZCo


レッサーもそれに対抗して『鋼の手袋』で圧倒的物量の雪を散弾のように巻き上げている。


ヴェントは本当に『女王艦隊』の一部を三隻までに増やし、凄まじい手数で空中の標的を撃ち落とそうとしている。


氷華は巨大な氷の錨を涙目になりながら必死で回避している。


帝督は一方通行の操る竜巻に飲み込まれて、コマのように回転しながら地面に叩きつけられている。


―――――そして彼は。一方通行は。


「オイどォしたガブリエル。 もォ降参か? まだ終いにゃ早ェぞ、来いよ」


普段あまり見せない屈託の無い笑顔を私に向けて、手を差し伸べて来た。

299 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/28(木) 19:21:34.15 ID:o4JK3iZCo


嬉しい。


嬉しい。


笑いたい。


私も彼のように、皆と同じように笑いたい。


ふと、私は視線をよそに向ける。


エイワスがいた。誰もまだエイワスの存在に気付いていない。


エイワスは。


クラアトの召使は。




皆とは違う、冷笑を浮かべながらロシアの空を、いや、『星』を見上げていた。



300 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/28(木) 19:22:21.05 ID:o4JK3iZCo


ああ。


待って。


待ってほしい。


一方通行fatghが、彼が私を呼んxoqmでいる。


私も彼を呼んでいる。


もう一度、最期にもう一dawhe度だけ。彼の手の温もりをfst感じたkliugい。


ああ、でも。




―――――――――keoghtumここfhewまで、irghか。



301 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/28(木) 19:23:30.19 ID:o4JK3iZCo


――――――――――――――――――――――


間もなく午後二時を迎えるこの学園都市。
封鎖された第十九学区は住人の移動が全て終わっているため、不気味なほどの静けさに包まれていた。


そんな街にただ一人、ポツンと立っている『人間』、アレイスター=クロウリーは誰に言うでもなく呟いた。






「さあ、始めようか『天使同盟(アライアンス)』。 愉快で残酷な、『時代』の命運を懸けたショウタイムを」





302 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/28(木) 19:30:22.58 ID:o4JK3iZCo
あー・・・・・・以上です。ついにやってきてしまいました。
アレイスターもせっかちな野郎ですねまったく・・・・・・。


さて、あと数回で過去最長のロシア編も終わり、最終章に突入します。
その時もどうかみなさん、読んでくれたらと思います。

次回更新は三日以内。

それでは、ありがとうございました!

303 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/28(木) 19:30:52.01 ID:o4JK3iZCo



                          【次回予告】



『ここが「天使同盟」の正念場だ。 さて、どうするかね一方通行?
 ミーシャ=クロイツェフを救うために「立ち上がるのか」、「立ち塞がるのか」』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・エイワス




『昨日言ってたのはこォいう意味か!! オマエ、ガブリエルがあンな事になるのが分かってたンだな!?』
―――――――――――『天使同盟』のリーダー・一方通行(アクセラレータ)




『「星の欠片」のある場所がそんなに前から分かっていたのなら、どうして教えてくれなかったんですか・・・・・・!?
 あなたが最初から私たちに伝えていれば、もっと早く対策を打てたかもしれないのに・・・・・・!!』
―――――――――――『天使同盟』の構成員・風斬氷華




『アレイスター・・・・・・だと・・・・・・!?』
―――――――――――『天使同盟』の構成員・垣根帝督



304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/28(木) 19:36:10.57 ID:j0T+fNTS0
エイワスがガブリエルにカウントされてない件について

ザマアwwwwwwwwwwww
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) [sage]:2011/04/28(木) 19:42:39.59 ID:94uuQPTh0
ふむ
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/04/28(木) 19:46:54.03 ID:L5yU3nRKo
長い一日だったな
続きが楽しみすぎて困る
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/04/28(木) 19:58:52.99 ID:H6kkqTbv0
やっぱり良作だな。終わらないでほしいのが本音。

いよいよアレイスターの出番か……どうなるのかすごく楽しみです

308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/28(木) 20:14:44.43 ID:AmiYO2NTo


ガブリエル一人称視点は切なすぎるぜぇ……
309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/04/28(木) 20:36:25.79 ID:5QMkWwhAO
ガブリエル…。
310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/04/28(木) 21:13:32.96 ID:b8krykFn0
さすが正ヒロインだぜ
311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/04/28(木) 21:23:00.47 ID:vlfBvtn50
いよいよ最終章始まりか!
楽しみであり寂しくもあり
312 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/28(木) 21:50:58.16 ID:iK7nDj1d0
>ミーシャ=クロイツェフを救うために「立ち上がるのか」、「立ち塞がるのか」
立ち上がるっつうのはわかるけど…
立ち塞がるってどういう意味なんだ!?
313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/04/28(木) 21:50:58.72 ID:82TicbCAO

☆……だと……?
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/04/28(木) 21:55:03.63 ID:BO0CSysI0
ああ、時代と次代か
315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県) [sage]:2011/04/28(木) 22:39:04.06 ID:cGhvBpN70
アレイスター「ショータイムだ!」
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/29(金) 00:14:40.65 ID:LMRoK1e80
>>312
☆の前に立ち塞がるってことじゃね?
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/29(金) 01:30:06.76 ID:ap7VFQrlo
>>312
☆を倒す為に立ち上がる
ミーシャを帰すために立ち塞がる?あれ?
あれれれ?
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/29(金) 01:31:35.76 ID:mOqjiZSAO


ついにこの時か……
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/04/29(金) 01:33:36.03 ID:G/qzthS80

あぁ・・・切ねえなぁ・・・
320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/29(金) 09:51:51.88 ID:friNCojz0
クソウサギさん雪合戦でバッテリー使い果たしそうな勢いですけど大丈夫っすかwwwwww
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) [sage]:2011/04/29(金) 10:44:11.84 ID:qpZxH9m60
立ち塞がるってのはつまりミーシャが……いやなんでもない
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/29(金) 13:58:52.79 ID:LMRoK1e80
>>320
クソウサギだと!?貴様、ウサギバカ様に何を申す!
323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/04/29(金) 17:35:11.25 ID:UlCYTbKHo

みんなの仲良しぶりに和んだ
レッサーは本当に、慣れたなあ
天使に雪玉投げつけるとはw

ガブリエルの純真さが心に痛い
すごく痛い
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/29(金) 19:43:58.26 ID:qJdwflRw0
>>320
てめ、ウサギさんディスってンじゃねェよ!
325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/29(金) 21:14:05.01 ID:XWmgljPG0
>>323

みレ天ガす?
326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) :2011/04/30(土) 00:06:32.04 ID:EOeDQ1Q/0
>>1 乙!・・・もう天使同盟シリーズ文庫化しようぜ?
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/04/30(土) 00:19:14.97 ID:0zy85BVz0
>>326 激しく同意だがsageよう
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/30(土) 01:46:48.58 ID:GM/UHscf0
>>325

つまりあれか「みろ!!レールガンが天使ガチですげぇ!!!」ってことだな
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/30(土) 09:18:33.24 ID:aFLJe54I0
無駄レスやめようぜ。
このスレ内で完結できるようにしないと。
330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/04/30(土) 18:53:40.59 ID:0zy85BVz0
>>329 無駄レスしないに賛成だが、最後に一度させてくれ。天使同盟はこのスレで完結しない!永遠につづくさ!! 
331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/04/30(土) 19:10:26.82 ID:AActkvki0
こんなこと言うのはおこがましいかもだけど
俺らのレスポンスが>>1のモチベ維持に役立つというならいくらでも無駄レスさせていただきたい
確かにやりすぎの感はあるけどさ
332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) [sage]:2011/04/30(土) 21:12:10.08 ID:Bsj6GOPD0
>>331
役に立っているなら無駄とは言わないんだぜ
333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/30(土) 21:45:14.97 ID:oZSr0BK70
このスレでギリギリ終わらない

次スレ早々に終わる

スレ超余る

>>1「これはもったいない」

番外編特盛り
334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [[sage]]:2011/04/30(土) 22:15:08.38 ID:SxmwHjvN0
この話は終わらんよ
なぜならここは我々読者の帰る場所なのだからな
335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) :2011/04/30(土) 22:22:36.65 ID:EOeDQ1Q/0
>>327 この状況で本当に申し訳ない・・・・sageって何ですか?(冗談抜きで判らないです)
336 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/04/30(土) 22:24:41.40 ID:NBXuE+yoo
★教えてクソ五大要素★

1 読まない
2 調べない
3 試さない
4 理解力が足りない
5 人を利用することしか頭にない

           YES → 【見つかった?】 ─ YES → じゃあ聞くな[ピーーー]
         /                  \
【探した?】                        NO → なら、ねぇよ
         \
            NO → [ピーーー]
337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/30(土) 22:25:08.64 ID:Bg8RLKP6o
ググれ
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/30(土) 22:34:16.30 ID:QANgi3qvo
>>335
説明下手で通じなかったら悪いがメール欄にsageって入れると板でこのスレが上がらない
書き手さんが来たときの更新と区別しやすいから感想レスはsageとくと良いと思う

答えて今更だけどそういうちょっとした質問は自分で調べるか、質問用のスレで聞くといいよ
嫌う人がいて、こういう風に険悪なので続いて消費しちゃうのは勿体ないからね
339 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/30(土) 23:01:43.85 ID:Ez54bxd9o
レスが沢山あればあるだけ>>1のモチベが上がってつけあがります。
構ってちゃん全開ですからねここの>>1は。

私です。今日も投下していきます。
前回の投下で平和な一時も終わり、ロシア編でまとめに入ります。


では、投下ッッッッ
340 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/30(土) 23:02:59.48 ID:Ez54bxd9o


――――――――――――――――――――――


午前八時前。ロシア連邦のエリザリーナ独立国同盟で、
突如として異変が発生した。


「・・・・・・・・・・・・ガブ、リエル?」


一方通行は背に四つの竜巻を接続して宙に浮かびながら天使の名を呼ぶ。
彼の表情は不思議な物を見つめるように眉をひそめていた。

彼の他に雪原にいた風斬氷華、垣根帝督、レッサー、サーシャ=クロイツェフ、
ヴェント、エリザリーナ、ワシリーサも、ミーシャ=クロイツェフの異変に気付き彼女を見たまま固まっている。


「jovgrbae、fgjvnvs、aqio、epioryevns」

「?」

341 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/30(土) 23:04:04.21 ID:Ez54bxd9o


ノイズだらけの声を発しながら、ーシャは両手で頭を押さえつけてフラフラと揺れている。
全身がガタガタと震えており、誰が見ても今の彼女は『異常』だということが理解できた。
人語とは思えない言葉を、口を型どる凹凸をもごもごと動かしながら呻く彼女を見て、
一方通行は地上に降りて駆け寄った。


「どォしたオマエ? どっか具合悪いのか? やっぱ昨日あンだけハシャいだ無理が祟って―――――」

「ぐ、う、うgggggg、gggggggg――――」


ドンッ!!と、肉を打つ鈍い音が鳴った。
ミーシャが邪魔な障害物を押しのけるように、そのまま一方通行の胸を叩いた音だった。

柔らかい雪の絨毯に尻餅をつく一方通行。幸い彼に大したダメージは無かったようだが、
ミーシャが見せる初めての行動に呆然とした表情を貼りつけていた。
そのまま立ち上がらない一方通行を心配して風斬が彼を介抱する。

342 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/30(土) 23:05:02.19 ID:Ez54bxd9o


「あ、一方通行さん、大丈夫ですか・・・・・・? ・・・・・・天使さん、一体どうして―――」


プツンと、何か細い糸が切れたような音が聞こえた気がした。


そして、




エリザリーナ独立国同盟に、ロシアに、否、世界に轟かせるように、
ミーシャ=クロイツェフは尋常ではない音量の絶叫をその口から上げた。




343 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/30(土) 23:06:10.90 ID:Ez54bxd9o


ビリ――ビリビリバリ―――ピシピシ!!!!と、そこら一帯の空気が激しく振動しているのが伝わる。
その衝撃だけでミーシャを中心に、彼女周辺の地面が陥没した。
なおも雄叫びをあげるミーシャの声に、その場にいた全員はたまらず両手で耳を塞ぐ。
ヴェントが呼び出した三隻の『女王艦隊』が大きな亀裂を走らせて崩れていった。


「なん・・・・・・だよ急に!! どうしちまったんだこのクソ天使は!!」


垣根は『未元物質(ダークマター)』を利用してミーシャの絶叫を完全に遮断しようと試みたが、
それでも鼓膜が揺さぶられてその苦痛に顔を歪めている。
一方通行は聴覚器官に響く痛みを堪えながら首元のチョーカーのスイッチを切り替え、
衝撃と音を"受け流しながら"再びミーシャの下へ歩み寄った。


「オイどォしたガブリエル!! 何を急に叫びだしてやがる!?」


なんとか彼女に近付いて事態を収めようとしたが、もはやミーシャには一方通行すら見えていないのか、
先ほどと同じように乱暴に腕を振って一方通行を薙ぎ倒してしまった。
『反射』の設定にミーシャを入れていなかったため、一方通行は背中から地面へ倒れる。


そして皆が呆然とする中、ミーシャは背中から氷で出来た一〇〇メートル以上の大きさの翼を一気に広げ、
ぐしゃぐしゃになった地面を思い切り踏み込み、大空へと飛翔してしまった。

344 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/30(土) 23:06:53.97 ID:Ez54bxd9o


ミーシャが飛び立った衝撃で雪原の地殻は大きくめくれ上がり、そこら中に雪と土の破片がばらまかれる。
彼女がいた地点は大規模のクレーターが出来上がっており、危うく近くにいたエリザリーナがバランスを崩して倒れてしまうところだった。
ワシリーサが咄嗟にエリザリーナの体を支えていなければ怪我をしていたかもしれない。


ミーシャは一瞬で独立国同盟の空から姿を消し、辺りは水を打ったような静けさに包まれた。


程なくして居住区の方からざわざわと喧騒が起こり始めた。
あれだけの悲鳴と爆音が鳴り響いたのだ、当然といえば当然である。

そしてその喧騒で我に返った一同は慌てて一方通行の近くへ集まってきた。
風斬が再度声をかけてくる。


「だ、大丈夫ですか・・・・・・?」

345 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/30(土) 23:07:56.99 ID:Ez54bxd9o


「・・・・・・・・・・・・なンだ、なンだってンだクソったれ。 ガブリエルはどこに行った?」

「分かりません、もう天使さんの姿も見えませんし、何がどうなってるのか・・・・・・」


一方通行は仰向けで倒れたその上半身を起き上がらせ、周囲を見渡す。


酷い有り様だった。
自分たちも大人げなく暴れまわっていたとはいえ、最低限周りに被害が及ばないよう配慮はしていた。
もちろん、さっきまで無邪気にはしゃいでいたミーシャもそうだっただろう。

しかし今の雪原はまるで空からミサイルでも撃ち込まれたかのような光景に成り果てていた。
ミーシャがいた地点のクレーターの周囲には深い亀裂が刻み込まれており、中には断層がズレている所まであった。
捲り上げられた土と雪が混ざり合い、雪原は奇妙に染色されている。

一方通行達の雪合戦を楽しげに見物していた三人の子供たちも、今は涙目になりながらガタガタと震えていた。

346 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/30(土) 23:08:49.67 ID:Ez54bxd9o


「ちくしょう・・・・・・急にどォしたってンだアイツ。 大体どこに向かって・・・・・・」


心を落ち着かせようと懸命に努めていた一方通行だが、それでもやはり呼吸がじわじわと荒くなっていくのが分かる。
嫌な予感。前から感じていた虫の知らせがここに来て正体を現してきたのではと、最悪の可能性が頭をよぎる。

そして彼以外、誰も口を開かない。なんと言ったらいいのか分からないでいるようだ。
ミーシャがどうして急に錯乱したのか、飛んだ後はどこに向かったのか。皆目見当も付かない。


しかしここで、エリザリーナが深刻な表情を浮かべながらポツリと言った。


「・・・・・・・・・・・・『彼女』なら、全てを説明してくれるんじゃないかしら?」


エリザリーナは誰を見るでもなく、真っ直ぐと視線を『彼女』に固定させていた。
他の一同もエリザリーナの視線を追うように顔を向ける。

347 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/30(土) 23:09:28.33 ID:Ez54bxd9o


そこには、




「うむ、どうやら愉しい時間は終着点に至ったようだ。 混乱しているのは分かる、
 だから約束通り、私が皆に全てを説明しようと思う」




金色の長髪。ゆったりとした白い装束。喜怒哀楽の全てを同時に浮かべたような、しかし極めてフラットな表情。
美しいその裸足で極寒の雪原の地を何でもないように踏みしめながら、ソレはゆっくりとこちらに歩いてきた。

348 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/30(土) 23:10:31.54 ID:Ez54bxd9o


「・・・・・・エイワス」

「ここが『天使同盟(アライアンス)』の正念場だ。 さて、どうするかね一方通行?
 ミーシャ=クロイツェフを救うために『立ち上がるのか』、『立ち塞がるのか』」


その言葉を聞いて、一方通行は激昂しながら迷うこと無くエイワスに向かって走りだした。


「エイワスゥゥゥゥゥゥゥゥゥううううううううううううう!!!!!!!!!!!」


いよいよ、この物語は佳境を迎える。
人間界に降臨し、人間界に留まった稀有な大天使、ミーシャ=クロイツェフから全てが始まったこの物語は、
一方通行という名の少年を中心に歯車を回して、どこで止まるのだろうか。




ヒトと天使が交差する時、物語は始まる―――――。



349 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/30(土) 23:11:13.77 ID:Ez54bxd9o


――エリザリーナ独立国同盟・荒れ果てた雪原


一方通行「昨日言ってたのはこォいう意味か!! オマエ、ガブリエルがあンな事になるのが分かってたンだな!?」ガシッ

エイワス「私の胸ぐらを掴んでいきり立つ事で君の気が収まるのなら、いくらでもそうすればいい」

一方通行「・・・・・・・・・・・・ッッ!!!」ググッ

風斬「一方通行さん、落ち着いてください・・・・・・」

一方通行「風斬・・・・・・でもコイツは・・・・・・!!」

風斬「あなたが取り乱していたら何も始まりません・・・・・・!!」

一方通行「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

エイワス「・・・・・・・・・・・・」

350 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/30(土) 23:12:01.99 ID:Ez54bxd9o


一方通行「・・・・・・・・・・・・チッ、わかった」パッ

エイワス「理解が早くて助かるよ」

一方通行「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」ギロッ

エイワス「さて・・・・・・どうしたものか。 私の口からペラペラと説明してもいいのだが
     君たちも聞きたいことが山ほどあるだろう? 君たちの質問に全て答える形式に
     した方が状況を整理しやすいのではないかな?」

一方通行「そォだな」

エイワス「では、承ろうか」

一方通行「・・・・・・ガブリエルはどこに行った?」

エイワス「学園都市だよ」

垣根「・・・・・・?」

351 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/30(土) 23:12:47.26 ID:Ez54bxd9o


風斬「が、学園都市・・・・・・? どうしてそんな急に・・・・・・」

サーシャ「第一の私見ですが・・・・・・、あなた達は元々学園都市からここへ来たのですよね?
     ならば単純にミーシャは学園都市に『帰った』のでは・・・・・・」

ワシリーサ「それなら飛翔する前に彼女が錯乱した理由が説明できないわよ、サーシャちゃん」

サーシャ「あ・・・・・・」シュン

一方通行「ガブリエルは何しに学園都市へ向かったンだ?」

エイワス「うむ、・・・・・・ま、これも十中八九、」


エイワス「アレイスター=クロウリーを討つつもりだろう」


一方通行「!!」

風斬「え・・・・・・」

垣根「アレイスター・・・・・・だと・・・・・・!?」

レッサー「・・・・・・・・・・・・!」

ヴェント「アレイスター=クロウリー・・・・・・・・・・・・」ギリッ

352 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/30(土) 23:13:48.49 ID:Ez54bxd9o


エリザリーナ(・・・・・・そういう、事か。 ならば『時代を変えんとする者』というのは・・・・・・)

一方通行「なンでガブリエルがアレイスターのクソ野郎なンざ相手にする必要があンだ?
     アレイスターが『プラン』だかなンだかの計画遂行のためにはガブリエルが邪魔だったってンなら
     とうの昔に何らかの手段でガブリエルに牙を剥いているはずだろォが」

エイワス「その牙を剥いたというのが、今日なのだよ。 それまでは手が出せなかった、
     君たち『天使同盟』と、私というイレギュラーが突発的に発生していたからね。
     だがそれも今日で全て終わりだ。 準備は全て整った」

垣根「準備だと? テメェ、アレイスターのクソったれと裏で何をしてやがる?」

エイワス「私はアレイスターとは今、敵対関係にある。 私も一応『天使同盟』だからね」

垣根「答えになってねえよ」

一方通行「オマエはアレイスターの『プラン』の主軸じゃなかったのかよ? 裏切ったのか?」

エイワス「裏切るも何も、私は彼に『属した』覚えなどない。
     アレイスターの手から、クラアトの手から離れた今の私は・・・・・・そうだな、
     アラジンに最後の願いを叶えてもらったランプの魔人みたいなものだよ」

レッサー「あ、あのー・・・・・・話がぶっ飛び過ぎて意味が分からないんですけど、
     『プラン』って一体なんですか?」

エイワス「残念ながらその質問に答える時間は残されていない。
     そもそもアレを全部説明しようとしても、この世界では表現できない言葉がありすぎるのでな」

353 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/30(土) 23:15:07.31 ID:Ez54bxd9o


一方通行「アレイスターが学園都市からガブリエルに何らかのアクションを起こしたのか?」

エイワス「そうではない。 ミーシャが学園都市へ向かったのは彼女自身の判断だ。
     もっとも、ミーシャもほぼ本能的にとった行動ではあるがな。
     今の彼女にはもはや自意識などほとんど残ってはいまい」

風斬「そんな・・・・・・・・・・・・」

垣根「自意識が残っていないってのはどういう事だ? なんでアイツは急に暴走しやがったんだ」

エイワス「それは、」


エリザリーナ「・・・・・・間もなく、『星の欠片』が消滅して、ミーシャが元の『位階』へ戻るから。
       恐らく肉体と自我の維持が困難になってきているのよ」


垣根「何?」

一方通行「『星の欠片』が消滅するだと・・・・・・!?」

354 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/30(土) 23:15:50.71 ID:Ez54bxd9o


サーシャ「第一の質問ですが、そんな事になったらミーシャはこの世界から消え去るのでは・・・・・?」

エイワス「そういう事だ」

一方通行「ちょっと待て、なンでエリザリーナがそンな事を知ってる?
     大体まだ『星の欠片』がどこにあるのかなンて分かってねェンだぞ」

エイワス「『星の欠片』の居場所は既に私が把握している」

一方通行「!?」

垣根「・・・・・・!」

風斬「ど、どこにあるんですか!? 私たちはずっとそれを探し続けてきたのに・・・・・・」

エリザリーナ「・・・・・・・・・・・・『星の欠片』は今、宇宙空間を漂っているわ」

垣根「う・・・・・・」

一方通行「宇宙にあるだと・・・・・・!? 『星の欠片』が? なンだそりゃ!?
     『星の欠片』ってのは宇宙まで飛び出せるよォなモンなのかよ!?」

355 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/30(土) 23:16:40.74 ID:Ez54bxd9o


ワシリーサ「エリザリーナ、あなた知ってたの?」

エリザリーナ「いいえ、私も昨日初めて知ったわ。 最初はただの勘でしかなかったけど
       エイワスがそれを確信づけた・・・・・・」

一方通行「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

エリザリーナ「ごめんなさい。 私も本当はもっと早くあなた達に知らせようとしたのよ。
       けど・・・・・・・・・・・・、本当にごめんなさい」

垣根「なんで教えなかったんだ? 時間はいくらでもあっただろうが」

エイワス「自分をそこまで責める必要はない、エリザリーナ。
     彼女には私から口止めをしておいた、それだけの事だ」

一方通行「・・・・・・エイワス、オマエはいつから『星の欠片』の在り処を知っていた?」

エイワス「学園都市から船で出発する時には既に宇宙にあるのだろうと漠然と思っていた。
     そしてアレイスターが先に発見したことにより、それが事実であると分かったのだ」

356 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/30(土) 23:17:24.81 ID:Ez54bxd9o


レッサー「え、えっと・・・・・・アレイスターはミーシャをこの世から消し去ろうとしているんですよね?
     だったらどうして『星の欠片』を見つけた時にさっさと破壊しなかったんですか?
     あれを破壊すればミーシャもこの世に居続けることは出来なくなってしまうと思うんですけど」

エイワス「その日から今日までの間、私があらゆる手段を用いてそれを阻止していたからだ」

一方通行「・・・・・・オマエが今までずっと、ガブリエルを守り続けてきたって事かよ」

エイワス「そんな大言壮語な事はしていないけどな。 私も私で勝手に動き回っていたし」

風斬「・・・・・・・・・・・・どうして、」

エイワス「?」

風斬「『星の欠片』のある場所がそんなに前から分かっていたのなら、どうして教えてくれなかったんですか・・・・・・!?
   あなたが最初から私たちに伝えていれば、もっと早く対策を打てたかもしれないのに・・・・・・!!」

ヴェント「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

エイワス「まあ、当然の疑問ではあるな」

垣根「答えろよ、まさかギリギリまで内密にしてる方が自分にとっては面白いからとかほざくんじゃねえだろうな」

エイワス「ふふ、それも一理あるが・・・・・・」

一方通行「・・・・・・・・・・・・」ギリッ

エイワス「そうだな、仮に私が『星の欠片』の在り処に気付いた時点で君たちにそれを打ち明けたとしよう。
     その場合、君たちはまず何をするかね?」

357 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/30(土) 23:18:41.08 ID:Ez54bxd9o


風斬「何って・・・・・・どうやって『星の欠片』を守って天使さんが消えないようにするか、とか・・・・・・」

エイワス「そう。 まず君たちは如何にして『星の欠片』を保護するか、その方法を考案していくだろうな。
     いや、学園都市第一位と第二位、そして私の製造ライン上で生み出された風斬氷華の知識を
     持ちあわせていけば考案どころか即実行に移せたかもしれない」

サーシャ「だ、だったら尚の事・・・・・・」

エイワス「しかしそれをアレイスターが黙って見ていると思うのか?」

ヴェント「・・・・・・あのクソ野郎は、学園都市外の情報も逐一把握している、と?」

エイワス「そういう事だ。 さすがに世界中の出来事全てとまではいかないだろうが、
     それでも我々『天使同盟』の行動は最優先で追っていただろう。
     今はやることをあらかた終えて手が余った私がカバーしているから心配はいらないがな」

一方通行「つまり『星の欠片』の在り処を知ったオマエがすぐに俺達にそれを伝えて、
     俺達が対策を練って実行しよォとすればアレイスターは必ず俺達を阻止しよォとした、って事か?」

エイワス「ああ、そしてそれは私のシナリオには無いイベントだ。 そうなってしまっては困るのでね」

垣根「テメェの言うその『シナリオ』ってのはもう完成してんのかよ?」

358 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/30(土) 23:19:39.96 ID:Ez54bxd9o


エイワス「勿論だ、後は物語に沿って演じるだけ・・・・・・」

一方通行「・・・・・・オマエの作ったシナリオに踊らされて動けってのか」

エイワス「ミーシャ=クロイツェフを守るためだ。 利害は一致しているはずだが?」

一方通行「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ヴェント「でもそれだと何で天使がアレイスターをぶち殺しに向かったのか説明できないじゃない」



エイワス「簡単なプロセスだ。 このまま旅を続けていけば、君たちはいずれ自力で『星の欠片』を
     発見するに至るだろう。 そうなれば君たちは必ず『星の欠片』を保護しようとする。
     しかしアレイスターはそれを見過ごしはしない。 必ず『天使同盟』を滅ぼすために
     何らかの策を講じてくる。 すなわち君たちが『星の欠片』、言い換えれば
     ミーシャ=クロイツェフのせいで命の危機に脅かされる。 ミーシャはそれを拒否する。
     そうなる前に、『星の欠片』がどうにかなる前にアレイスターを始末しようと考える。
     ・・・・・・・・・・・・つまり、」


風斬「・・・・・・て、天使さんは私たちをアレイスターから守るために・・・・・・!!?」

359 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/30(土) 23:21:10.79 ID:Ez54bxd9o


ワシリーサ「『天使』って魔術的には神に造られた人形のような物よ?
      あんな風に感情的になる事自体おかしいのに、わざわざ人間のために
      体を張ってアレイスターを討ちに行くなんてあり得るの?」

エイワス「何を今更。 まず天使という存在が今までのように人間側につき、共に行動していた自体が既にあり得ん。
     ミーシャは自我を手にしている。 あれはもう完全なるイレギュラーだ」

サーシャ「・・・・・・第二の私見ですが、私にはわかります。 それがミーシャ=クロイツェフという天使なんです」

垣根「ま、確かにあのバカならやり兼ねねえな」

一方通行「・・・・・・・・・・・・・・・・・・バカ野郎」

風斬「一方通行さん・・・・・・」

一方通行「バカ野郎が・・・・・・っ!!!」ギリリッ

垣根「・・・・・・そりゃお前、誰に対する『バカ野郎』だ?」

一方通行「・・・・・・『両方』に決まってンだろクソったれ・・・・・・」

360 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/30(土) 23:22:00.49 ID:Ez54bxd9o


レッサー「・・・・・・ところで『星の欠片』はなぜ消滅するんですか? あれにはあらゆる要素から
     儀式場を守るための強固な防御術式が施されてるはずです。
     デブリや人工衛星ごときにぶつかったところで壊れる事はないと思うんですけど」

エイワス「太陽」

一方通行「!」

風斬「!」

垣根「!」

エリザリーナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

エイワス「このまま『星の欠片』が宇宙に滞在していれば、星の軌道に乗っている
     太陽に飲み込まれてしまう。 いくら協力な術式を行使していようが、
     『歳月の船』の航行を止めることなど出来んよ」

風斬「太陽・・・・・・、そんな・・・・・・そんなのどうやって・・・・・・」

361 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/30(土) 23:22:59.73 ID:Ez54bxd9o


ワシリーサ「『天体制御(アストロインハンド)』は? あれなら太陽を移動させて
      『星の欠片』を守ることだって出来るんじゃないのかにゃん?」

エイワス「今のミーシャ=クロイツェフはひどく衰弱している。 とても『天体制御』を
     使用できるコンディションではない。 ただでさえ、第三次世界大戦時に
     『天使の力(テレズマ)』を奪われているからな。 それに無闇矢鱈と太陽を
     動かしてしまっては地球に悪影響を及ぼす可能性もある。 ミーシャも恐らくその可能性を考慮しているだろう」

ヴェント「天界より地球を優先する天使か・・・・・・、それはもう天使じゃなくて、限りなく天使に近い人間じゃないの」

エイワス「言い得て妙だな」

サーシャ「な、何か手は残されていないのですか・・・・・・?」

エイワス「無い。 私とて、さすがに『ラー』の意志を歪めたりは出来ないからね。
     普通ならここで『天使同盟』の物語は終焉を迎えている」

垣根「チッ・・・・・・」

風斬「そ、んな・・・・・・・・・・・・」ドシャ

レッサー「か、風斬さん! しっかり・・・・・・・・・・・・」

風斬「う、うう・・・・・・ううぅ・・・・・・・・・・・・」ポロポロ

エリザリーナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

362 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/30(土) 23:24:07.33 ID:Ez54bxd9o


一方通行「・・・・・・・・・・・・具体的には」

エイワス「ん?」

一方通行「『星の欠片』が太陽に飲み込まれる具体的な時間だ。 いつだ?」

レッサー「あ、一方通行さん・・・・・・? そんな事聞いてどうするんですか?
     もしかして何か対策が・・・・・・?」

風斬「え・・・・・・・・・・・・」グスッ

エイワス(・・・・・・これだから面白いのだよ、君は)

エイワス「そうだな・・・・・・完璧な時刻は分からないが、日本時間の夕刻前までに対処しなければ間に合わんだろう」

垣根「今ここは午前八時だよな? だったら学園都市は真っ昼間だぞ」

風斬「人が沢山活動してる時刻ですね・・・・・・それに夕刻前なら、あと二時間くらいしか・・・・・・」

363 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/30(土) 23:24:48.75 ID:Ez54bxd9o


一方通行「・・・・・・二時間ありゃどォにかなる」

サーシャ「だ、第二の質問ですが、一体どうするつもりなのですか?」

一方通行「さァな。 太陽なンざ相手にした事ねェからどォすりゃいいかなンてさっぱりわかンねェよ。
     だがなァ、だからってここでボーッとガブリエルが消えるのを待つなンて間抜けな事もするつもりはねェ」

ヴェント「・・・・・・・・・・・・」

エイワス「では、どうする?」

一方通行「とりあえず今、俺達に出来る事があるだろォが」

垣根「分かってるじゃねえか、俺もそのつもりだぞ」

風斬「え、・・・・・・どうするんですか・・・・・・?」



一方通行「とりあえず学園都市に戻ってアレイスターのクソ野郎を粉々にする。 まずはそれしかねェ」


364 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/30(土) 23:25:32.51 ID:Ez54bxd9o


エイワス「くくく・・・・・・やはりそうでなくてはな」

エリザリーナ「ほ、本気なの・・・・・・!? 私は詳しく知らないけれど、もし学園都市にいるそのアレイスターが
       私の知っているアレイスターなのだとしたら・・・・・・」

一方通行「知った事か。 学園都市統括理事長サマだろォが稀代の大魔術師サマだろォが、
     "アレイスターはこの俺を怒らせた"、それだけの話だ」

垣根「オーケー、テンション上がってきた」

ヴェント「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

風斬「一方通行さん・・・・・・・・・・・・ぐすっ」

一方通行「言っただろ? 何が起きよォが絶対に俺は"オマエらを逃さねェ"ってなァ。
     ガブリエルも運が悪いぜ、なンだってこの俺に着いてきちまったンだか。
     ・・・・・・でもな、」


一方通行「絶対にガブリエルは守ってみせる。 アレイスターだろォが太陽だろォが
     『天使同盟』に楯突くクソは誰であってもぶち殺すンだよ。 簡単な話だ」

365 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/30(土) 23:27:16.72 ID:Ez54bxd9o


エイワス「決まりだな」

風斬「うう・・・・・・ひっく・・・・・・ぐす」

一方通行「だからもォ泣くな。 大丈夫だから。 今までだってどォにかなったンだ。
     今回だってどォにかなる。 してみせる。 俺達はずっと一緒だ。
     ・・・・・・そォ約束したはずだが、何か間違ってるか?」

風斬「・・・・・・・・・・・・・・・・・・いいえ・・・・・・!」グスッ

一方通行「ウチのバカ天使を救いに行くぞ」

風斬「はい・・・・・・!」スクッ

エイワス「(思わぬところで、新たに得た玩具を披露するチャンスが巡ってきたな、垣根帝督)」

垣根「(黙ってろクソ野郎。 俺から言わせりゃテメェもアレイスターも同列なんだよ)」

エイワス「ふふふ・・・・・・」

垣根(・・・・・・アレイスター。 思えば俺はあいつのクソったれな計画を潰すために
   暗部で活動してたんだ。 まさかこのタイミングでその機会に恵まれるとはな・・・・・・)

366 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/30(土) 23:35:49.64 ID:Ez54bxd9o
なんか色々とごちゃってますが、ようはアレイスターを討つかミーシャを助けるか。
どっちかを達成すれば結果オーライってことです。


そして、次回で本当にロシア編は終了します。
長かっただけに、ちょっと名残惜しい気がしないでもない。


次回更新は三日以内。

では、今日もありがとうございました!


>>333
マジで申し訳ないことにそうなりそうな可能性大です。どうしよ・・・・・・
番外編は未定ですが。

367 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/04/30(土) 23:36:20.15 ID:Ez54bxd9o



                          【次回予告】



『・・・・・・・・・・・・私は、一緒には行けません。 皆さんとはここでお別れです』
―――――――――――魔術結社予備軍『新たなる光』の構成員・レッサー




『・・・・・・事が済ンだら、迎えに行く』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・一方通行(アクセラレータ)




『・・・・・・・・・・・・・・・・・・その必要はないわよ』
―――――――――――ローマ正教、禁断の組織『神の右席』の元一員・『前方』のヴェント




『必ず無事で・・・・・・。 ミーシャにも必ずよろしく伝えておいてください・・・・・・!!』
―――――――――――元『殲滅白書』の魔術師・サーシャ=クロイツェフ




『ま、せいぜい頑張ってきてねー♪』
―――――――――――元『殲滅白書』のシスター・ワシリーサ




『一段落着いたら連絡をくれると嬉しいわ。 それじゃあね』
―――――――――――エリザリーナ独立国同盟の中心的人物・エリザリーナ

368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/04/30(土) 23:42:39.93 ID:aASOgjVAO
乙です!!

つまりミーシャと一緒に☆をぶちのめすのが「立ち上がる」で、ミーシャを守るために☆と戦うのが「立ち塞がる」ってこと?

とにかく次回にも期待!!
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/04/30(土) 23:44:41.95 ID:2oGFJ2bAO
迎えに行く…
お嫁さんとして、ということですね?


>>368
星の欠片を太陽から守るか、☆を倒すか、じゃね
370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/30(土) 23:45:07.72 ID:Bg8RLKP6o
超乙乙!

太陽か……アレイスターは何も手を出さずとも欠片を破壊できるわけか
天使同盟が助けようとするのを邪魔する事に専念できる、と

対して天使同盟はvsアレイスターと欠片の軌道修正を両方行う必要があるわけだ
軌道修正に関しては一方通行なら可能だろうけど……どうなることやら

>次回予告
レッサーは帰国、ヴェントは同行、かね
371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/30(土) 23:45:27.38 ID:uGw77cxSO
☆が相手だと流石にレッサーは戦力外だな…
372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/01(日) 00:01:25.11 ID:9fF/sKbX0
>>371 レッサーはもちろん、フィアンマでも勝てない☆にエイワス以外が戦力になるとは思えない。どうすんだろ? 
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/01(日) 00:10:32.12 ID:TPUosZMSO
今のところエイワス以外では最強だからな>アレイスター
374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/05/01(日) 00:13:56.83 ID:EqkJjnvu0
>>372
そら一通さんの本来の能力を覚醒させるんだよ
その本来の能力がどんなものか分からんがな
>>1は作中で伏線とか張ってるのかな?
375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2011/05/01(日) 00:16:06.22 ID:MjAQSOyS0
それでも一方さんなら何とかしてくれる
376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/01(日) 00:18:08.28 ID:uTqrYO3DO
つか敵はアレイスターだけじゃないよな?なんかファイブオーバーがどうこう言ってたし

ガブリエルが自我を失いかけてるのも気になる。素直に天使同盟対アレイスターになるとは思えん
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/01(日) 00:26:06.16 ID:M9Ep2ioDo
これって事情を知らない人間から見たらガブリエルが学園都市を襲撃した様に見えるよな、きっと

上条さん手出すなよ? 絶対出すなよ!?
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/01(日) 00:27:26.33 ID:hHJC16uLP

インデックスも関わってくるっぽいし上条さんに来てほしいな
軌道修正っていうか儀式場地球に持ってくればいいのに
379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/05/01(日) 00:36:18.34 ID:+oo4Uyu50
OTUです!!!

いよいよアレイスターとの戦いが近づいてますね。一方さんや氷華やていとくンがどうやってアレイスターに立ち向かっていくのか楽しみです。エイワスもなんだかの面白いアクションを起こしてくれそうなのでそこにも期待して続きを見たいと思います。
380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) [sage]:2011/05/01(日) 01:03:30.59 ID:AsNLYcAk0
たぶんレベル5のtop2以外の奴らは敵になるだろ
上条は一方通行か風斬以外が遭遇したら戦いになるな
381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/01(日) 01:06:46.93 ID:K75YA0JDO
上条さんには説明済みじゃなかったっけ?

エルシャダイのせいで、エイワスがルシフェルボイスで再生される……
382 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/01(日) 01:13:27.21 ID:Qn5uE5eAO
エイワス「そんな装備で大丈夫か?」
383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/05/01(日) 01:28:51.47 ID:vhP9w96F0
>>338 説明ありがとうございます 他の方々にもご迷惑おかけして申し訳ありません
384 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/05/01(日) 01:38:11.65 ID:RoL0lozD0

おらわくわくしてきたぞ
385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/05/01(日) 01:57:12.72 ID:wFk+Dwtvo
俺もしがない無能力者だけど天使同盟のために何かできないかやってみるわ
386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/05/01(日) 02:15:51.48 ID:tc3e0gREo
二刀流のていとくんをなめてもらっちゃ困るぜ

それと一方通行が承太郎のセリフを……
387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/01(日) 02:18:22.87 ID:cn0NfImSo
モリモリ盛り上がってまいりました
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/01(日) 02:32:11.24 ID:A43fbmJg0
上条さんは最大のイレギュラー要素だからそうでなくてもエイワスが手を回してない訳がない
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/01(日) 03:25:38.53 ID:d21cMCsI0

>>388
むしろ☆にとっての最大のイレギュラーは浜面だと思うの
エイワスの概念の中にホントにイレギュラーなんてもんが存在すんのか疑問だわ
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/01(日) 06:42:48.60 ID:wC0ksD1T0
楽しみすぎて眠れないぜ
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/01(日) 11:33:02.02 ID:6R0kC7mk0
>>390
完結するまで起きてろよ お前には期待してる
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/05/01(日) 13:30:07.99 ID:QD8D+hTx0
こういう熱い展開大好き。期待して待ってる。
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/01(日) 18:35:54.08 ID:lZft2Piy0
戦場は物語の始まりへ移ったか・・・
これでうまいこと天使同盟vs★になりゃいいが・・・
一通さんのフラグ勢力に期待
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/01(日) 22:28:15.72 ID:62T/qrkSO
展開予想とかどんだけマナー悪いんだよ
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/05/02(月) 00:08:05.15 ID:LLps6xKAO
流れを無視しますが
垣根のフラグ相手が誰か、の予想が色々ありましたが
一方通行「フラグ・・・ねェ」
のレス番690の常盤台の女子学生にフラグ建ってませんか?
読み返していたらどうもそれっぽかったので
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/02(月) 00:36:39.13 ID:9wm7aCkW0
あれ、よく読んだらサーシャ&ワシリーサもここで離脱?
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/02(月) 01:57:50.25 ID:hHi8TeDP0
>>395 垣根のフラグの相手は黒騎士・白騎士・赤騎士だろ? 
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2011/05/02(月) 06:59:35.99 ID:t6lNBnna0
一方さんマジ承太郎
399 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/02(月) 11:22:51.46 ID:qT/j1HA20
>>397
バーバ・ヤーガの間違いだろ
400 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/02(月) 19:10:10.29 ID:ejhf7bZro
こんなSSで考察など行っていただいて・・・・・・恐縮です。
なるべく皆様のご期待に添えられるよう頑張らせていただきます。

そんなわけで投下しにきました。
前回、エイワスが大体の真相を説明し、天使同盟はミーシャを救うことを決意しました。
しかしエイワスの言っていること全てが本当かどうかはわかりません。面倒なやつですね。


では、行きましょう。
401 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/02(月) 19:10:51.99 ID:ejhf7bZro


レッサー「あ、あの、・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

サーシャ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ヴェント「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

エリザリーナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ワシリーサ「そんじゃ、あなた達とはここでお別れって事になるのかしら?」

一方通行「あァ、そォいう事だな」

風斬「そうですね・・・・・・こんな突然だとすごく名残惜しいですけど・・・・・・」

サーシャ「・・・・・・・・・・・・そう、ですね。 こうなった以上、いつまでもこんなところに
     いるわけにはいかないですよね」シュン

ワシリーサ「言っとくけど、私とサーシャちゃんは行かないからね。
      アレイスターなんてワケの分からない野郎の前にサーシャちゃんを向かわせられるわけがないもの」

402 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/02(月) 19:11:46.00 ID:ejhf7bZro


サーシャ「わ、ワシリーサ・・・・・・私は・・・・・・」

一方通行「分かってる、オマエらはここにいろ。 俺達に付き合う必要はねェよ」

サーシャ「で、でも私はミーシャにまだ何も・・・・・・!!」

一方通行「あのバカには俺達からよろしく伝えておいてやる。 何も心配はいらねェ」

サーシャ「う・・・・・・・・・・・・」

風斬「サーシャさん、私たち、これで永遠にお別れってわけじゃないですよ・・・・・・?」

サーシャ「風斬氷華・・・・・・」

風斬「また遊びに来ますから、絶対に。 約束です」ニコッ

サーシャ「約束・・・・・・」

一方通行「・・・・・・また買い物行くンだろ? 今度はもっと大勢でよ。
     次はちゃンと買い物するって俺とも約束しただろ? だから首洗って待ってろ」

403 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/02(月) 19:12:24.85 ID:ejhf7bZro


サーシャ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」ウルウル

一方通行「あーあー、泣くンじゃねェぞ頼むから。 ・・・・・・ったく、ガキだなオマエは」

サーシャ「・・・・・・・・・・・・!! な、泣いてないですっ!!」ゴシゴシゴシ!!

ワシリーサ「きゃわいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!! 今の!! 今の写真に撮っときゃ良かったぁぁぁぁ!!!」

一方通行「結局オマエは最後までワシリーサだったな・・・・・・全くブレねェ・・・・・・」

垣根「・・・・・・オイ、ワシリーサ」

ワシリーサ「む? あ! そういえば垣根ちゃん、カメラ持ってたっしょ! あれ私に――――」

垣根「色々世話になったな。 また遊びに来てやっから、覚悟しとけよ」

ワシリーサ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 んふ、楽しみにしといてあげる♪」キャピッ

垣根「うっわ・・・・・・おばさんのウィンクとか誰が得するんだよ・・・・・・」オエェ

ワシリーサ「次会ったら覚えとけよクソガキ」

エイワス「ここに置いてある荷物などはどうする?」

エリザリーナ「・・・・・・私が後日、学園都市宛に届けておいてあげるわ。 "全員分の荷物"、また必要になるでしょ?」

404 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/02(月) 19:13:21.53 ID:ejhf7bZro


一方通行「すまねェな。 そォしてくれ」

エリザリーナ「・・・・・・本当に申し訳ないわ。 私がもっとしっかりしていれば・・・・・・」

一方通行「気に病むンじゃねェよ、ガブリエルのヤツが気にしちまうだろォが。
     ・・・・・・暇が出来たらオマエらも今度学園都市に来い。 『天使同盟』総出で歓迎してやるよ」

エリザリーナ「・・・・・・了解。 頑張ってきなさいね」ニコッ

風斬「あ、ショッピングセンターで買った荷物・・・・・・」

エリザリーナ「それも私が手配しておくから心配しなくていいわよ」

風斬「あ、ありがとうございます・・・・・・!」ペコッ

エイワス「一方通行」

一方通行「あン?」

エイワス「・・・・・・カチッとな」カチッ

一方通行「オイ、俺のチョーカーに何しやがっ・・・・・・、充電が満タンになってやがる・・・・・・」

エイワス「今回の戦いは恐らく熾烈を極める。 戦闘準備は万全でないとな」

一方通行「ふン」

405 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/02(月) 19:14:20.18 ID:ejhf7bZro


垣根「ていうかどうやって学園都市まで向かうんだ? 船はもう使えねえし、
   そもそものんびり海や空から戻る時間はねえんだろ?」

エイワス「一方通行と垣根帝督は私の背中に乗りたまえ。 風斬氷華、
     君はそのままヒューズ化して学園都市に向かうんだ」

風斬「わかりました」

一方通行「間に合うのか?」

エイワス「『ドラゴン』を侮るなよ一方通行。 その気になれば地球を十六時間で一周出来る速度を出せる」

一方通行「カイリューかオマエは。 つかオマエの場合十六時間どころか一秒もいらねェだろ」

レッサー「・・・・・・・・・・・・・・・・・・、あ、・・・・・・」

一方通行「あ?」

レッサー「え、えと・・・・・・私、・・・・・・・・・・・・」

406 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/02(月) 19:15:06.70 ID:ejhf7bZro


風斬「?」

垣根「何だよ、なんか問題でもあるか?」

レッサー「い、いえ・・・・・・別に・・・・・・・・・・・・」

一方通行「つーかよォ、マセガキ」

レッサー「は、はい・・・・・・?」



一方通行「いつまでそこでボーッと突っ立ってンだ? さっさと準備しろよ」



レッサー「・・・・・・・・・・・・・・・・・・え・・・・・・?」ポカン

407 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/02(月) 19:16:21.76 ID:ejhf7bZro


風斬「レッサーさんは私の背中に乗ってください。 安全に飛行しますから大丈夫ですよ」

レッサー「え、いやでも・・・・・・」

垣根「何だよテメェ、この期に及んで及び腰になっちまったか?」

レッサー「そ、そうじゃないですよ! でも、何で私も・・・・・・?」

一方通行「はァ? 今更何を言ってンだオマエは」

サーシャ「・・・・・・・・・・・・レッサー」

レッサー「どういう事ですか・・・・・・?」

風斬「?」

エリザリーナ「・・・・・・・・・・・・レッサーは『天使同盟』じゃないんじゃなかったかしら?」

風斬「え? ・・・・・・・・・・・・あ、」

垣根「そういやそうだったな。 こいつイギリスの時からいたからすっかり溶けこんでて違和感無かったわ」

レッサー「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

408 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/02(月) 19:17:05.69 ID:ejhf7bZro


一方通行「・・・・・・そォだったか? まァ、そンな事ァどォでもいいンだけどよ」

レッサー「わ、私・・・・・・」

一方通行「来ねェのか?」




レッサー「・・・・・・・・・・・・私は、一緒には行けません。 皆さんとはここでお別れです」




一方通行「・・・・・・・・・・・・」

垣根「んだよ、ここまで来たらもう勢いで一緒に着いてこいよ」

レッサー「私も出来ればそうしたいですけど・・・・・・私にはイギリスで帰りを待ってくれてる『仲間』がいるんです」

風斬「あ・・・・・・」

一方通行「・・・・・・『新たなる光』、だったか」

レッサー「はい。 ベイロープもフロリスもランシスも、私の帰りを待ってくれています。
     だから私はイギリスに帰らなくちゃいけません・・・・・・。 ここで『天使同盟』の旅が
     終わるなら、私もこれ以上皆さんと一緒には居られません・・・・・・」

409 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/02(月) 19:18:59.93 ID:ejhf7bZro


一方通行「・・・・・・・・・・・・」

一方通行「・・・・・・まァ、そりゃそォだよなァ」

レッサー「い、一緒に行きたいって気持ちは本当ですよ! ただ私には・・・・・・」

一方通行「分かってるっつの、何度同じこと言えばいいンだよオマエは。
     ・・・・・・そォだな、じゃあオマエはイギリスで待ってろ」

レッサー「え・・・・・・?」

一方通行「アレだろ? イギリスに何かヤバい事件やらが起きたら俺達に助けて欲しいって事言ってただろ?
     それれはもォ約束した。 だがそれ以外にも、ただ遊びにいくってだけの理由でイギリス行ったって
     いいンだろ? 逆にオマエが学園都市に来るって方向でもいいけどな。
     とにかく、風斬もさっき言ってたがこれで今生の別れってワケじゃねェンだ。 だから待ってろ」

レッサー「・・・・・・・・・・・・うゆ・・・・・・」グスッ

一方通行「げ・・・・・・(泣くぞ、すぐ泣くぞ・・・・・・絶対泣くぞほォら泣くぞ・・・・・・)」ギクッ

レッサー「うわあああああああああああああんっ!!!」ダキッ

410 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/02(月) 19:19:43.58 ID:ejhf7bZro


風斬「きゃっ」ギュッ

一方通行「あ、そっちか。 ・・・・・・つかこンな事で泣くンじゃねェよいちいち大袈裟だな」

レッサー「ふえええええええええええん・・・・・・!!!」ポロポロ

風斬「ふふ、よしよし・・・・・・」ナデナデ

垣根「つかお前そんなにホイホイ約束しちまっていいのかよ?
   こりゃアレイスターぶっ殺した後もスケジュールがパンパンだな」

一方通行「オマエはスケジュールの内には入れてねェけどな」

レッサー「絶対・・・・・・、ぐしゅっ、また絶対会いに来てくださいよ・・・・・・? えぐっ」グスッ

風斬「もちろんですよ、またすぐ会えますから、ね?」ナデナデ

レッサー「うん・・・・・・うん・・・・・・!」ヒック

垣根「オイ、そろそろお涙頂戴してる場合じゃねえぞ」

411 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/02(月) 19:20:11.75 ID:ejhf7bZro


一方通行「あァ、分かってる。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・」チラッ

ヴェント「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」ギロ

一方通行「・・・・・・事が済ンだら、迎えに行く」

ヴェント「!」

一方通行「悪いが少しの間待っててくれ。 オマエとの約束もちゃンと守るからよ」

ヴェント「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

一方通行「すまねェな」

ヴェント「・・・・・・・・・・・・・・・・・・その必要はないわよ」ボソッ

一方通行「?」

412 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/02(月) 19:23:20.88 ID:ejhf7bZro


エイワス「・・・・・・・・・・・・」

エイワス(やはり、空気が変わっている。 もう"アレ"は現世に降りてきているのか。
     学園都市で一方通行を迎えるために・・・・・・・・・・・・)

エイワス「やれやれ、困った方だな」

ヴェント「・・・・・・エイワス」

エイワス「ん?」

ヴェント「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

エイワス「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ヴェント「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

エイワス「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふー・・・・・・」

エイワス「仕方がないな。 君も大概、頑固な人間だ」

ヴェント「うるさい」

413 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/02(月) 19:24:26.56 ID:ejhf7bZro


――――――――――――――――――――――


エイワス「しっかりと掴まっておけよ、二人とも」

一方通行「すっげェまぶしい、すっげェまぶしいンですけどコイツの背中ァァ!!!」ペカー

垣根「翼がすげえウザいんだけど、これどうにかならねえのかよ!!
   つか何でお前翼一枚だけそんな膨らんでるんだ? なんか包んであんのか」ブワッサァ

エイワス「少し事情があってな、我慢したまえ。 では間もなく離陸するぞ」

風斬「じゃあ皆さん! また必ずお会いしましょうね!」


サーシャ「必ず無事で・・・・・・。 ミーシャにも必ずよろしく伝えておいてください・・・・・・!!」

ワシリーサ「ま、せいぜい頑張ってきてねー」バァーイ

エリザリーナ「一段落着いたら連絡をくれると嬉しいわ。 それじゃあね」

レッサー「さよならー!! 必ず、必ずまたイギリスに足を運んでくださいよー!!」バイバーイ

414 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/02(月) 19:25:07.45 ID:ejhf7bZro





一方通行「世話になったな」





こうして『天使同盟(アライアンス)』のロシアでの旅は幕を閉じた。


そして同時に、これで『星の欠片』を巡る旅も幕切れとなった。


だがこれで彼らの物語は終わりではない。彼ら『天使同盟』にはまだ最後の試練が待ち構えている。
ミーシャ=クロイツェフの救出、それ即ち、『星の欠片』に残る儀式場の『門』の保護。
それを行うためには、学園都市の頂点に君臨する最強最悪の魔術師、アレイスター=クロウリーを
退けなければならない。


『天使同盟』とアレイスター=クロウリー。

『時代』を手にするのは、そして『願い』を成就するのは果たしてどちらか。

415 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/02(月) 19:27:00.54 ID:ejhf7bZro


――――――――――――――――――――――


警備員(アンチスキル)の才郷良太と杉山枝雄は人がごった返す昼の学園都市で見回りの仕事をこなしていた。
連日徹夜で勤務していた二人は眠気を払うために目をシパシパさせながら料理店が立ち並ぶ第四学区を歩き回っていた。


はぁ、とため息をつき、才郷は杉山に話しかける。


「何か異常は?」

「本日も異常なし。 戦争が終わってからというもの、平和そのものだよなあ。
 ・・・・・・唯一、異常と言えるのはこの洒落にならねえ寒気だけど。 っくしゅ!!
 なんか今日は特別寒いんだよなぁ。 なんなんだこれ?」

「見回りなんてさせるなっつーんだよな〜・・・・・・いつもなら監視衛星が動いてるから
 俺達がこんなガードマンみたいな事する必要ねえのによ。 『天使同盟(アライアンス)』だっけ?
 今回のハッキング事件をやらかしたヤツ。 ふざけたことしてくれるよな」


『天使同盟』によるハッキングが原因で各国を始め学園都市が飛ばしている監視衛星も全て乗っ取られており、
現在の学園都市は警備が非常に甘くなっていた。
おまけに『風紀委員(ジャッジメント)』と『警備員(アンチスキル)』という学園都市の二大警察的組織の
データベースやその他もろもろもなぜかハッキングされているため、才郷と杉山はこうして
普段指示されることのない見回りを行っているというわけだ。

416 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/02(月) 19:27:57.58 ID:ejhf7bZro


才郷は未だに『天使同盟』への小さな怒りが晴れないようで、ぶつぶつと愚痴っている。


「今日は本来非番だったから家でゆっくり酒でも飲もうかと思ってたのによ〜・・・・・・一体どういうヤツらなんだ?
 『天使同盟』って。 さっさと捕まえてくれねえとこの分じゃ明日もまた見回りだぞ」

「捕まえてくれって、捕まえるのは本来俺達の仕事だろ?」

「そりゃ学園都市内に『天使同盟』がいるならな。 けどこいつら、俺の勘だと
 『外』のヤツらだぞ。 例の戦争の時に『金色の肋骨』とか出してた
 オカルト集団。 ああ違いねえ、きっとそいつらだ」


くっそー!、と才郷は両手を丸めてパキポキと骨を鳴らす。
オカルト集団の情報などろくに警備員に回ってきていない上に、オカルトというのが
どういうものなのかもロクに知らないくせによくそんな闘争心を燃やせるな、と杉山は口には出さないがそう思った。

417 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/02(月) 19:29:00.19 ID:ejhf7bZro


そして杉山は言う。


「まあアレだ。 オカルトがどうとかはともかく、一回どんなヤツらなのかは見てみたいよな、
 『天使同盟』。 さっきからヤツらとかあいつらとか言ってるけどそもそも単独犯かも知れないし。
 なにより天使って部分が神々しさっつーか・・・・・・胡散臭さを加速させてるよなー」

「天使だろうが悪魔だろうが俺の休日を奪った罪は重い! ・・・・・・・・・・・・、
 でも、天使かぁ・・・・・・。 仮に実在するとしたら、やっぱ全裸の子供に羽根が生えてる感じなのかな」

「ベタだなー、その天使のイメージ」


からかう杉山に軽く蹴りを入れる才郷。そして、


「本当にいるんなら、一度でいいからこの目で天使ってのを拝んでみてえもんだな」


そんな才郷のささやかな願いは、すぐに叶う事になった。

418 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/02(月) 19:29:53.89 ID:ejhf7bZro






突如として第四学区、いや、学園都市中、下手すれば日本列島全域に響いたんじゃないかというほどの爆音と、
直下型地震というにはあまりにも『近距離すぎる』激しい震動が学園都市を襲ったからだ。






「〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!!? ―――ッ!! ――――杉や―――・・・・・・ッッ!!!」

「―――――――――――――――――――――――ッッッ!!! 耳が・・・・・・」


爆音というが、しかしそれにはもはや『音』は無かった。
世界から音が消える瞬間を才郷と杉山は体感した。


震動でバランスを崩しその場に倒れた才郷と杉山に、今度は遅れて凄まじい烈風が襲いかかってきた。
建造物の瓦礫や地面のアスファルトの破片が容赦なく二人を蜂の巣にせんと猛スピードで飛んでくる。
才郷と杉山は反射的に身を屈め、奇跡的に難を逃れることが出来た。

419 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/02(月) 19:30:55.07 ID:ejhf7bZro


きーん・・・・・・という耳鳴りが頭と聴覚を巡り、爆風が収まってからも二人はしばらく聴覚を失ったままだった。


(第四学区じゃない・・・・・・その隣、第一九学区か!? 一体何が・・・・・・!!)


核ミサイル攻撃?第一九学区にあるどこかの研究機関が不慮の事故で爆発した?それとも単なる自然災害?


違う。どれも見当違いにもほどがあった。
程なくしてざわざわという喧騒が周りから起こっていく。当たり前だ、これほどの爆音と衝撃で
平気でいられる人間がいるはずがない。もしかしたら怪我人も出ているかもしれない。


そして、才郷は確かに、ほんの一瞬だが確かにその目で見ていた。


(・・・・・・一瞬見えた、空から降ってきやがった・・・・・・なんだあの・・・・・・羽、根・・・・・・!?)


そう。
彼が見たそれこそ、つい先ほど彼が望んでいた『天使』だった。

二人は屈んだまま腰をあげることも出来ず、しばらく経ってから入ってきた無線の通信傍受音が聞こえるまで
屈んだ体勢から動くことが出来なかった。

420 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/02(月) 19:31:45.84 ID:ejhf7bZro


――――――――――――――――――――――


学園都市の第一九学区。
他の学区とは違い発展が遅れ、比較すればするほど古い街並みが目立つこの学区は、


今現在、もはや古い街並みどころか空爆された跡地のような荒れ果てた廃墟と化していた。


「ひどいことをする」


第一九学区の爆心地へ、その声の主は何でもないように裸足で近付いていく。
男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも見える不気味な容姿のその『人間』。


学園都市統括理事長、アレイスター=クロウリー。


その身に纏う緑色の手術衣が、彼の奇怪さを余計に際立たせている。

421 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/02(月) 19:32:44.57 ID:ejhf7bZro


「確かに第一九学区は開発が大幅に滞った『時代遅れ』の街だが・・・・・・それでもまだ利用価値はあったというのに。
 いや、これは私の落ち度なのだがね。 私がここにいなければ『君』はここには落ちてこなかっただろうし・・・・・・。
 もっとも、もし私が学生たちが多く集まる、譬えば第七学区などに居たら君はどうするつもりだったんだ?」


そう言いながら呆れたように笑うアレイスターは、別に独り言を呟いているわけではない。
彼の目の前、それこそ本当に核ミサイルが落ちてきたかのような巨大なクレーターがべっこりと出現している、
その中心点。


そこにいる『天使』に向かって言葉を投げかけているのだ。


「守る。 彼ら。 仲間vjru。 友達。 全てseit。 全て」

「天使の口から出てくる言葉とは思えんな。 なるほど、エイワスが興味を持つのも納得出来る。
 守る・・・・・・か、立場が逆転しているな、『天使同盟』。 元々は彼らが君を守る立場じゃなかったか?
 まあ、そんな事ももう考える必要がない段階まで事態は進んでいるのだが」

422 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/02(月) 19:33:53.56 ID:ejhf7bZro


守る、と彼女はほとんどノイズの無い、はっきりとした言葉でそう言った。


彼女。天使。水を司る、天界から降り立った本物の大天使。


『神の力(ガブリエル)』。ミーシャ=クロイツェフ。


ミーシャは今自分がいる第一九学区一帯に超音波を発した。他に誰かがこの学区に潜んでいるのかどうかを確認しているのだ。

反応があった。ほとんど人がいなくなっているこの第一九学区で、"目の前のアレイスター以外の生体反応が確認できた"。
数は・・・・・・一〇〇、一〇〇〇、それ以上?パッと見回しただけでは分からない、一体どこにそんな数の人間が潜んでいるのか。
中には何やら機械的な反応もあった。・・・・・・ロボット?ミーシャには理解できなかった。


そしてミーシャはアレイスターの顔を正面から見据えたまま右腕を前に突き出す。
その掌にピキパキキキキ・・・・・・と、虚空から氷で出来た剣が出現した。

423 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/02(月) 19:34:59.40 ID:ejhf7bZro


「私を殺すか、ミーシャ=クロイツェフ。 戦いの前に少しだけ君と会話をしてみたいと思ったのだが・・・・・・
 貴重なサンプルが取れそうだしな。 しかし、それはさすがに欲が深すぎるといったところか」

「ssrjg貴方、を、ここで討つ」


対して、アレイスターもアクションを取ってみせた。
アクションというほど、それは大きな動きではなかった。軽く指を動かし、虚空からある筈もない物を
その手で掴みとる。気付けば、ついさっきまで無かった物が出現していた。
アレイスターの手の握り方からして、それは杖。


『衝撃の杖(ブラスティングロッド)』、フィアンマを撃破するときに使った『存在自体が疑わしいあやふやな幻覚』ではない。
正真正銘、第七学区の『窓のないビル』から手元に送ってきた、本物の、現実に存在する銀色の杖。

アレイスターが『衝撃の杖』に魔力を送り込むと、杖は銀色から透き通った透明色に変色していき、
その先端の花のつぼみのような部分がゆっくりと円状に開いていく。その中心部はエメラルドグリーンの輝きを放っていた。

424 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/02(月) 19:35:46.70 ID:ejhf7bZro


「では・・・・・・学園都市にお越しいただいた早々で申し訳ないのだが・・・・・・ミーシャ=クロイツェフ。
 そろそろ君には元ある『位階』へとお還り願おうか。 これでも私はここの統括理事長を勤めていてね。
 学園都市に入り込んできた『異物』は私が責任をもって排除しなければならないのだよ」

「vfep私の事はkbrti好きにしていいjfiw」


ゴオッッ!!!、とミーシャは背中から生やしている氷の翼を更に肥大化させて、


ハッキリと、宣戦布告した。




「でも、彼らに手は出させない――――――――」




歴史史上最強最悪の魔術師と、『神の力』を統べる大天使は正面から激突した。

ミーシャ=クロイツェフが学園都市に降り立った時のものとは比べ物にならない衝撃波が
第一九学区の廃墟化をさらに加速させていった。

425 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/02(月) 19:41:31.26 ID:ejhf7bZro


今回はここまでとなります。

そして今回の投下で無事、SS最長のロシア編は終了しました。
皆様、ここまでお付き合いいただきありがとうございます。

そして次回からついに最終章に入ります。
ここからエンディングまではぶっ飛んだ展開満載ですが、どうか寛大な精神で見守っていただけたらと思います。

次回更新は三日以内。


では、ありがとうございました!

426 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/02(月) 19:41:59.72 ID:ejhf7bZro



                          【次回予告】



『では、健闘を祈る。 グッドラック』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・エイワス




『っとと、めちゃくちゃ人が混んでんな・・・・・・。 警備員の指示があってもこの混乱っぷりかよ。
 ちくしょう・・・・・・何だったんださっきの揺れは。 インデックス、絶対俺から離れんなよ』
―――――――――――学園都市の無能力者(レベル0)・上条当麻




『・・・・・・行ってみよう、とうま』
―――――――――――禁書目録を司るイギリス清教のシスター・インデックス



427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県) [sage]:2011/05/02(月) 19:43:39.01 ID:iaFKF1AG0
乙!!
リアルタイムで初めて見れた!!
428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/02(月) 19:44:11.12 ID:w0T5NDRXo
乙!
やっぱワシリーサはワシリーサなのか
429 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/02(月) 19:50:46.89 ID:UdFxf8SS0

一方通行がレッサーを見て思った言葉が
ティーダとジェクトのやりとりを思い出すなぁ
430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/05/02(月) 19:53:39.87 ID:ZkZphwXn0
乙!乙!!乙!!!!もう『天使同盟編』を本にして販売しても良いレベルですね。


ガブリエルが宣戦布告するところで少し感動してしまった。
アレイスターがそんなに簡単に討たれるとは思えないが天使同盟に頑張ってほしい。

431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/05/02(月) 20:07:45.17 ID:iYLj2Z3AO
そろそろ筋トレアックアさんの出番ですね
432 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/02(月) 20:24:00.24 ID:9wm7aCkW0
乙!
ガブリエルの宣言に涙腺が緩んでしまったぜ
そして>>397、今度何か食べに行こうか
433 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/02(月) 20:33:36.51 ID:KRaPn3ax0
>ワシリーサ「次会ったら覚えとけよクソガキ」

これは二度と会えないフラグ・・・・・
そして、この物語の最後が一方禁書みたいに原作の最終回みたいな展開になるな絶対。


434 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/02(月) 21:30:55.07 ID:BrjHoZM80
乙!
上条さんが敵という展開かもしれぬ…
435 :TLB [sage]:2011/05/02(月) 22:10:28.66 ID:IGjhIYrR0
エイワスが戦闘前に回復してくれる魔王に見えた
436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/02(月) 22:14:22.05 ID:aVNURTR3o
アレイスターさん強そうだな…熱い展開で目が離せないぜ!
乙!
437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/05/02(月) 22:29:37.52 ID:KLnTlkpBo
おつです

シリアスな流れにちょくちょくネタを仕込むなww
438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/02(月) 22:38:11.85 ID:KRaPn3ax0
どうせ当たらない最終回を一部予想
アレイスターとの戦いが終わりガブリエルの墓に集まり花を置く一方達

イギリスの女子寮の女子や王権派の人々と会うためイギリスに行く途中チンピラに絡まれている少女を助ける一方通行

その少女の顔を見ると雰囲気がなんとなくカブリエルを漂わせて驚く一方たち

そしてその少女は一方たちに何者か聞いてこう答える

「天使同盟(アライアンス)」  完

まあ、>>1はこんな最終回にはしないと思う(俺の予想はほぼ外れるし)
439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/02(月) 22:44:01.05 ID:LHBDjqk70
乙すぎてもう乙
禁書厨なら誰もが妄想するアレイスターの霊装の実態、>>1の解釈が気になりすぎてヤバい
普段なら魔術サイドの危険に上条さんを巻き込もうとしないインデックスが
上条さんと連れ立って現場に行こうとするあたり、事態の深刻さが伺えるな
440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/05/02(月) 22:58:10.90 ID:LLps6xKAO
乙です!!
あれ?もしかしてヴェントさんこっそり付いて来てません?
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/03(火) 00:20:38.38 ID:2AKNApXDO
予想はやめい
442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/03(火) 00:38:41.10 ID:XH7ZGTpn0
乙! FF10ネタで笑ってしまった。あと>>432 焼き肉食べにいこう。
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/03(火) 03:57:21.57 ID:5jrfQBfp0
確かに大天使が墜落してきたらインデックスとしては見て見ぬふりする訳にはいかんよなあ…
444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) :2011/05/03(火) 07:41:56.49 ID:ePqL2xqAO
ここはあえての木原君登場で胸熱展開を予想しておこう
445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2011/05/03(火) 07:42:31.42 ID:ePqL2xqAO
ごめんsage忘れた
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2011/05/03(火) 08:02:46.48 ID:eq3Zc2sj0
ここに来て上条さん再登場か。
胸が熱くなるな。
447 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/03(火) 12:26:02.12 ID:wIDZiU8s0
寝不足になっちた・・・
448 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/03(火) 21:36:06.82 ID:tAq83Vet0
確かロシア編以降だから上条さんはガブリエルと一騎打ちをしている……まさか、な
449 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/03(火) 21:50:57.00 ID:k4pWiUOz0
>>448
シーッ
450 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/03(火) 21:52:58.73 ID:0vvqGwr/0
>>448
初代スレから読み直して来なされ
451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/03(火) 23:22:55.92 ID:8XiZjZZ/0
>>442>>432の間にフラグが発生しちょる!!
452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/05/04(水) 02:58:10.45 ID:yXiGomR7o
垣根のセリフがいいおとこすぎて濡れた
453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/04(水) 19:37:52.95 ID:eo/AYDov0
ていとくんにも魔法名とかあったりするのかな?
454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/04(水) 19:40:22.82 ID:NV8Wl+Xzo
そういう事言うと妄想垂れ流す奴が沸くから止めろ
455 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/04(水) 20:38:51.64 ID:W6Lb7RQoo
こんばんわ、今日も投下していきたいと思います。

さて、いよいよ最終章に突入したわけですが・・・・・・
恐らくみなさんが期待しているほど濃い展開にはならないんじゃないかなーと思います・・・・・・。
しかしそれでも出来る限り頑張っていきたいです。

それでは、行きましょう。ミーシャ来訪の学園都市は色々騒がしいことになっています。
456 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/04(水) 20:39:24.43 ID:W6Lb7RQoo


――――――――――――――――――――――


『天使同盟(アライアンス)』の構成員。一方通行、風斬氷華、エイワス、垣根帝督の四人は
日本海上空を横断していた。

現在時刻は日本時間で午後二時を少し過ぎたところだった。
ロシアからわずか数分で日本海上空まで辿りつくとなると、相当な速度で飛行している事が窺える。


一方通行と垣根帝督はエイワスの背中に乗っていた。音速を超えるスピードで飛んでいるため
普通ならこの二人は一瞬で吹き飛ばされているだろうが、風斬氷華の鱗粉の光のような物を
全身を覆うように散布してその身を守っている。


一方通行は焦燥を含んだ声でエイワスに尋ねた。


「おいエイワス!! 学園都市まであとどれくらいだ!?」

「慌てる必要はない、あと数分もすれば学園都市の制空権に侵入出来る」

457 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/04(水) 20:41:44.78 ID:W6Lb7RQoo


応えたエイワスの声色は普段どおり、不気味だがどこか綺麗に透き通った声だった。
そしてそんな声のままエイワスはボソッと呟く。


「・・・・・・・・・・・・ふ、アレイスターめ。 "もう始めている"」

「なに・・・・・・!? ガブリエルと交戦してンのか!?」

「そのようだ、第一九学区だな。 ・・・・・・ところで、学園都市に到着する前にいくつか言っておきたいことがある」


猛スピードの飛行による風切り音で大声を出さないと耳に届かない状況にも関わらず、
エイワスの声はすんなりと三人の耳に届いていた。


「申し訳ないことに私は学園都市に到着してもしばらくの間は参戦できない。
 "最後のおつかい"が残っていてね。 それを処理しなければならない」

「そ、そんな・・・・・・!? あなたが戦ってくれたらアレイスターだってどうにでもなるんじゃないんですか!?
 そうしたら天使さんだってすぐに助けられるのに・・・・・・!」

458 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/04(水) 20:42:47.10 ID:W6Lb7RQoo


エイワスの急な発言に捲くし立てる風斬を、一方通行は片手で遮った。


「・・・・・・その"おつかい"も、ガブリエル救出のために必要な事なンだな?」

「必要どころか、これを成し遂げなければ恐らくミーシャの救出は不可能だ。
 もちろん、それも私のシナリオ通りに事が進めばの話になるがね」


エイワスが学園都市に到着して行う事が、ミーシャ=クロイツェフ救出の最大のポイントになるという。
それをしなければ恐らくミーシャは救えないと、あのエイワスが言うのだからよほど大事な事なのだろう。


「構わねェ。 アレイスターのクソ野郎は俺達でなンとかしてやる」

「俺は最初からそのつもりだけどな」


一方通行の言葉に垣根も同意する。風斬はしばし不安そうな表情を浮かべていたが、
やがてその表情を引き締め、力強く頷いた。

459 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/04(水) 20:44:22.13 ID:W6Lb7RQoo


「理解してくれて助かるよ。 私も事が済み次第、戦闘に加わるつもりだ。
 それと補足説明しておくが、"敵はアレイスターだけではないようだ"。 用心したまえ」


そんな会話をしているうちに、四人はあっという間に日本列島、学園都市上空付近に突入していた。
ここからではまだ学園都市内の様子は詳しく窺えない。


「それと、一方通行」


何層も重なる雲の先にボンヤリと見える学園都市を見据えながらエイワスは一方通行に言った。


「『神』が君を依代にしようとしている。 実際"降りられたら"抗えないだろうが・・・・・・
 まあ一応、警告はしておいたぞ?」

「あァ?」

460 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/04(水) 20:45:09.01 ID:W6Lb7RQoo


警告、という何やら穏やかではない言葉を放つエイワスだったが、
現時点での一方通行にはエイワスの言っている意味が理解できなかった。


「間もなく上空三〇〇〇メートル、私はこれから"荷物"と共に目的地へ先行するが、一方通行、垣根帝督。
 着陸の準備は出来ているかね?」

「問題ねェよ、今すぐここから振り落としてもらって構わねェ。
 風斬、垣根、ションベン行くなら今のうちだぞ」

「も、もうっ! あなたはこんな時に・・・・・・!!」

「・・・・・・ハッ、間に合ってるっつうの」

「では、」


こんな時にこそ必要なふざけ合いをしている三人に、エイワスは微笑みを浮かべて言った。

461 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/04(水) 20:45:55.74 ID:W6Lb7RQoo




「健闘を祈る。 グッドラック」




ドウッッ!!!!、と。


エイワスは流星のように夜空を駆けながら一足先に『目的地』へと急降下していった。
金髪の怪物の背中に乗っていた一方通行と垣根は上空三〇〇〇メートルの空へ放り出されてしまう。
しかし風斬はそんな二人に手を差し伸べる事は無かった。


一方通行は投げ出される瞬間に電極チョーカーのスイッチを切り替えて背中に四本の竜巻を接続し、
垣根帝督は『未元物質(ダークマター)』による六枚の白い翼を背中から現出させて飛んでいたからだ。

462 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/04(水) 20:47:46.40 ID:W6Lb7RQoo


「第一九学区だったな。 人払いとか出来てんのかよ」

「なるよォになンだろ。 とにかく最優先はガブリエルの救出だ、周囲に雑魚が居たら容赦なく蹴散らせ。
 『星の欠片』はひとまず置いといて、アレイスターは必要ならぶち殺す、必要ないなら放置、これでいいだろメルヘン野郎」

「必要なくてもぶっ殺してえとこだが、・・・・・・ひとまずそれで納得してやる」

「じゃ、じゃあ降下しましょう! 天使さんが待っています・・・・・・!!」


日本時間午後二時。『ゲーム』開始


『天使同盟(アライアンス)』は約一週間ぶりに学園都市へと"帰還"する。

463 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/04(水) 20:48:59.54 ID:W6Lb7RQoo


――――――――――――――――――――――


学園都市は騒然としていた。


突如として発生した第一九学区からの謎の大爆発。
学園都市全域を比喩ではなく揺るがせたその現象は、第三次世界大戦からまださほど日が経っていないせいか
大勢の学生や大人たちの心に大きな不安を植えつけていた。

現在、全警備員(アンチスキル)と風紀委員(ジャッジメント)によって全力の警戒避難体制が敷かれ、
的確で素早い指示の下、学生達の避難活動が行われていた。
第一九学区と隣接している第四学区、第六学区、第一四学区は全面立ち入り禁止、
残る学区に住んでいる住人達も地下シェルターが備えてある各学区へと避難指示が出されていた。

ほぼ全ての住人が外へ出て緊急事態として急遽運転が始まった電車やバスに乗って
安全なシェルターへ避難していく。

464 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/04(水) 20:50:18.35 ID:W6Lb7RQoo


各学区の中でも特に住人の数が多く、雑多な雰囲気を持つ第七学区で、上条当麻は同居人のインデックスを連れて
人混みにもみくちゃにされながら地下シェルターへ繋がる入り口へと足を運んでいた。


「っとと、めちゃくちゃ人が混んでんな・・・・・・。 警備員の指示があってもこの混乱っぷりかよ。
 ちくしょう・・・・・・何だったんださっきの揺れは。 インデックス、絶対俺から離れんなよ」

「うん。 ちゃんとスフィンクスも連れてきてるし、平気なんだよ。 ・・・・・・・・・・・・」


白の修道服を来た銀髪のシスターの懐から、にゃあという今の雰囲気とはかけ離れた鳴き声が聞こえてきた。


「とうま」

「何だ?」

「・・・・・・ここから遠いところ、さっきの話してた第一九学区ってところ。 そこから異常なほどの魔力が
 感知できるんだよ。 それも一つじゃない、二つ、三つ・・・・・・、・・・・・・? 魔力じゃない、何か変な力も感じるかも」

「ま、魔力!?」

465 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/04(水) 20:51:34.79 ID:W6Lb7RQoo


上条は愕然とした。インデックスの言っている事が本当なら、今宵のこの騒ぎを引き起こしたのは
魔術師だという事になる。
第七学区から第一九学区までの距離はかなり遠い。そんな距離からでも感知できるほど魔力を秘める
魔術師とは一体どんな化物なのか、上条は考えるだけで背筋が凍った。


「今まで私たちは魔術に関するいろんな事件に巻き込まれてきたけど、
 今回のこの騒ぎはそれらとは比にならない程の事件かも・・・・・・」


インデックスは何も上条の不安を煽るためにこんな事を言っているのではない。
ただ単純に、真実を述べているだけだ。

確かに上条当麻はインデックスというシスターと出会ってからというもの、様々な魔術に関する事件に遭遇していった。
何度もひどい怪我を負い、何度も命の危機に晒されてきたが、それでも守るべき者のために彼は生き延びてきた。

そんな上条が体験してきたどの事件よりも、今回のコレは危険度が違いすぎると魔道書図書館を司るシスターは言う。
だが彼もそれは肌で感じ取っていた。理解していた。

466 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/04(水) 20:52:41.71 ID:W6Lb7RQoo


今、第一九学区で起こっている何かは、間違いなく世界規模クラスの大事件であると。
学園都市内で起きている事だというのに、世界全体の危機を上条は本能的に察知した。


(どうする・・・・・・?)


基本、彼は自分とは関係なさそうな危険なことには首を突っ込んだりはしない。
というか、普通の人ならそれが当たり前だろう。

しかし上条当麻は『幻想殺し(イマジンブレイカー)』という不思議な力を秘めた右手を見つめながら葛藤していた。
このまま放置しておいていい騒ぎなのか、魔術関連なら自分も向かうべきではないのか。
けれど向かえば、隣で不安そうな表情を浮かべているインデックスに危険が及ぶのではないか。

現にこうしている今も遠くの第一九学区の方からは大きな爆発音や得体のしれない音が絶えずここまで届いている。


ギリリと歯軋りをする上条に、インデックスはそっと彼の手を握って言った。

467 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/04(水) 20:53:36.33 ID:W6Lb7RQoo


「・・・・・・行ってみよう、とうま」

「インデックス・・・・・・。 で、でも今回の事件は俺達には関係の無い事件だ!
 魔術師だって、そう、何も悪いヤツだとは限らない。 案外第一九学区の研究所かなんかが
 大爆発を起こしただけかもしれないし、魔術師だってたまたまそこに居た可能性だって・・・・・・」

「だから、それを確かめにいくんだよ。 とうまもこのままじゃ収まりがつかないんでしょ?」


図星だった。
インデックスは上条の心中を完全に察していた。察していながら、彼女は柔和な笑顔でそう言ってきていた。


「インデックス・・・・・・」

「大丈夫なんだよ。 私に何かあっても、とうまが守ってくれるよね?」


インデックスの表情にはまだ不安が残っていたが、その目は上条当麻という今までずっと自分を窮地から
救ってくれた男を信じている真っ直ぐな眼差しだった。

468 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/04(水) 20:57:21.81 ID:W6Lb7RQoo


「・・・・・・・・・・・・ああ、行こう! インデックス」

「うん!」


意を決した二人はまずこの馬鹿みたいな数の人混みをどう切り抜けようかと考える。


と、そこで聞き慣れた声が上条の耳に届いた。


「おーいカミやん! こっちやこっち!!」


その野太すぎる少年の声は、この人混みの中でもバッチリと聞こえてきた。
上条はインデックスの手を握って声のした方へ人波をかき分けて進んでいく。


「青髪! お前まだ避難してなかったのか」

「それはカミやんも同じやろ! 人がせっかくええ気分で寝とったっちゅーのに・・・・・・
 なんなんやこの騒ぎは。 まさかまた戦争が始まったゆーんやないやろな!?」

469 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/04(水) 20:58:36.27 ID:W6Lb7RQoo


『三バカ(デルタフォース)』の一人、青髪ピアスはやたら量の多い手荷物を抱えながら
肩で息をしている。

余談ではあるが、大天使ミーシャ=クロイツェフにサムズアップを教えたのは彼である。
ただ単にミーシャが彼のサムズアップを目撃しただけなのだが。


「ん? 吹寄も一緒だったのか」

「何よその言い方は。 それより、私たちも早く避難するわよ。
 第一九学区の騒ぎがこっちにまで飛び火してきたらたまらないわ」


相変わらず広めのおでことスタイル抜群の肢体が特徴的な吹寄制理は
背中にパンパンに膨らんだリュックサックを背負っていた。健康関連グッズでも詰まっているのだろうか。

そんな彼女は上条の手を握っている修道女を見て目を見開いた。

470 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/04(水) 20:59:59.58 ID:W6Lb7RQoo


「・・・・・・ん? この子、どこかで・・・・・・」

「インデックスっていう俺にとって大事な人だ。 それより頼みがあるんだけど」


『大事な人』、というキーワードに顔を真っ赤にするインデックスを無視して、
上条は吹寄と青髪ピアスに言った。


「インデックスが抱えてる猫をお前らで預かってて欲しいんだ。
 俺達はちょっと用事がある。 ここから離れなきゃなら―――」


その時、ズズゥゥゥン・・・・・・!!!、という爆発音が遥か遠くから聞こえてきた。
それに呼応するように地面が揺れ、周りにいる大勢の学生達から悲鳴が多数上がってくる。

第一九学区の騒ぎは勢いを増す一方のようだ。

471 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/04(水) 21:01:00.85 ID:W6Lb7RQoo


「・・・・・・・・・・・・ッく!! 大丈夫かお前ら!?」

「うう・・・・・・もう、なんなのよこれは・・・・・・!!! もうすぐ『一端覧祭』が始まるっていうこんな時に
 ・・・・・・当日に向けて頑張った私の苦労が水の泡だわ・・・・・・!!」

「あかんな、こんな事になるんやったら大枚叩いてカナミンのブルーレイBOX買うとくんやった・・・・・・」

「とうま・・・・・・」


一層大きくなった喧騒に顔をしかめながら、上条は続けた。


「インデックス、スフィンクスこっちに渡せ。 ・・・・・・ほら、この猫をお前らで預かっててくれないか?」

「預かれって・・・・・・、貴様はどうするのよ!」

「俺達はちょっと行かなきゃいけない所があるんだ」

「こんな時にか? どこへ行くゆうねん」

472 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/04(水) 21:01:53.85 ID:W6Lb7RQoo


それを言ったらこの二人は必ず制止してくる。今の上条にとってはその時間ロスすら惜しかった。
上条は半ば強引に吹寄にスフィンクスを押し付けると、インデックスの手を取って人混みの中に潜り込もうとした。


「ちょ、ちょっと待ちなさい上条当麻!! 貴様は―――、」

「あ、・・・・・・」


と、ふいに青髪ピアスが声を出した。上条と吹寄が眉をひそめながら青髪の方を向くと、彼は空を見上げていた。

気がつけば周りにいる学生たちもざわつきながら同じように空を見上げている。
上条とインデックス、そして吹寄も釣られて学園都市から見える曇った空を見ると、


「な、なんだあれ・・・・・・!?」

「・・・・・・・・・・・・流れ星?」


吹寄が言った『流れ星』という言葉はあながち間違いでもなかった。

473 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/04(水) 21:02:44.49 ID:W6Lb7RQoo




皆が見上げる空から、"三つの光"が今まさに学園都市へ墜落せんと急降下しているところだったからだ。




上条達がいる距離からでは落ちてくるそれが何なのかは確認できなかった。
ただそれは、方向的に間違いなくこの騒ぎの渦中である第一九学区へ向かっていることだけは分かった。


「―――――ッッ!!?」


上条が声を上げる前に、もはや本日何度目になるかも分からない激しい爆音と震動が、
三つの光が見えなくなった数秒後に学園都市中へ駆け巡った。


戦況は、更に熾烈を、極めていく。

474 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/04(水) 21:04:03.28 ID:W6Lb7RQoo


――――――――――――――――――――――


「・・・・・・・・・・・・オマエか」

「と、言うと?」


『人間』は上空から舞い降りてきた『三つの光』に睨まれていた。
舞い降りてきた、という言い方は間違いかもしれない。その『光』は宇宙から飛来した隕石のように
この第一九学区へと『衝突』してきたのだから。


「テメェがアレイスターなのかって聞いてんだよ」


もう一つの『光』が凄むような声色で言及してくる。


アレイスター=クロウリー。学園都市の統括理事長。
そして世界最高の魔術師である彼は、そんな言葉を受けても薄い笑みを崩さないでいた。

475 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/04(水) 21:04:58.93 ID:W6Lb7RQoo


「天使さんは・・・・・・? ミーシャ=クロイツェフがここに来ているはずです・・・・・・!」


更にもう一つ、他の二つより一層光を放っているソレが、不安と憤怒が混じった表情を浮かべながら
アレイスターに問いかける。


「・・・・・・それよりまずは、挨拶をしようじゃないか。 初めまして、『天使同盟(アライアンス)』。
 私は学園都市の統括理事長を勤めている、アレイスター=クロウリーという者だ。
 こうして直に会うのは初めてだな。 私があまり外に出ないというせいもあるが・・・・・・。 
 私の存在はちゃんと認識できているか? こうして外出する事はあまりないものだからそれだけが心配だよ」


一方通行。風斬氷華。垣根帝督。


『天使同盟』の三人はついに、かつて魔術サイドの頂点に立っていた、そして現在は科学の頂点に君臨している人間、
アレイスター=クロウリーと接触した。


三人はその姿をしっかりと頭に刻みこむようにアレイスターの顔を睨む。

476 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/04(水) 21:05:48.17 ID:W6Lb7RQoo


垣根帝督は、アレイスターが原因で発生した学園都市の悲劇を垣間見て、『闇』に堕ちていった。

風斬氷華は自身の身体をアレイスターに利用されて、かつて学園都市に、そして大切な友に甚大な被害を及ぼしてしまった。

そして一方通行は、何があっても守ると決めた打ち止め(ラストオーダー)を、アレイスターの計画の一旦として
散々利用され、振り回され、絶望の淵に追いやられた。


そして、それはまだ終わっていない。今も尚、三人はアレイスターの掌の上で踊らされている。
三人はその舞台から降りるために、こうしてここでアレイスターの前に立ち塞がっているのだ。


「アレイスター=クロウリー」

「何だ? 一方通行。 しかしこうして直接肉眼で君を確認すると、その成長ぶりが窺えるな。
 まさかこんなにも早い段階で君と、君たちと対面することになるとは想定の範囲外―――」

「ガブリエルはどこにいる」


アレイスターの言葉を無視して、一方通行は尋ねた。
怒り狂うでもなく出合い頭に飛び掛かるでもなく、極めて冷静な様子で。

477 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/04(水) 21:07:07.68 ID:W6Lb7RQoo


それでもアレイスターの表情は変わらなかった。彼は顔に笑みを貼り付けたまま答える。


「『神の力(ガブリエル)』、か。 ミーシャ=クロイツェフという誤った名前ではなく、
 天使としての名で呼ばれることは彼女にとっては非常に嬉しい事なのだろうね」

「言葉が通じてねェのかクズ野郎。 呼び方なンざどォでもいいンだ、
 ガブリエルはどこにいるのか聞いてンだよ」


それ以上の余計な言葉は紡がせない、と暗に示した威圧感をアレイスターは感じた。
やれやれ、と彼は杖を振って一方通行達の斜め後ろへと杖の先を向ける。


「なかなかに執念深かったよ。 最後まで君たちを守るために、彼女は懸命に戦った。
 まったく・・・・・・これで天使だというのだから笑わせる。 滑稽極まりないな」


明らかに侮蔑の意を含んだアレイスターの言葉を無視して、三人は杖の先の光景を視界に収めた。
そこに映るは五階建てのビル。しかし五階から三階辺りまでの部分は粉々に吹き飛んでしまっている。

478 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/04(水) 21:07:43.88 ID:W6Lb7RQoo


だが、その下、一階の部分が壊れて空いた穴から見えたそれを見て、一方通行は目を見開いた。


「気をつけたまえよ、"今はあんな状態だが"じきに目が覚める。 その時のミーシャが、君たちの見てきた
 ミーシャだとは考えない方が身のためだ」




そこには、見るも無残なボロ布のような姿に成り果てたミーシャ=クロイツェフが地面に倒れたまま動かなくなっていた。



479 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/04(水) 21:15:57.60 ID:W6Lb7RQoo


案の定と言いますか、アレイスターはやはり強かったのでした。
たった一人で天使を圧倒する魔術師に、三人は抗えるのか。みたいな感じで次回もお送りします。

そして今回の投下で出てきた青髪ピアスと吹寄制理ですが、なぜこの二人なのかと言うと
実はこの二人、このSSでは二回目の登場だからです。
せっかくなのでもう一回出してみようかなということで。吹寄というキャラを思い出すのが大変でした・・・・・・。

それと>>433。も、もしかしてどこかの作品と展開被っちゃってますでしょうか・・・・・・?
もう修正しきれない規模まで書きためを終えているのでそれだけが心配です。
なるべく被らないような展開にしていきますので、よろしくお願いします。・・・・・・ああ心配だ。

次回更新は三日以内。


では、ありがとうございました!

480 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/04(水) 21:16:40.03 ID:W6Lb7RQoo



                          【次回予告】



『・・・・・・それで、どうする? このまま君たちが引き下がるというのなら私は何もしたりしない。
 エイワスがいないようだが・・・・・・ふふ、今度はどこで何を企んでいるのやら』
―――――――――――学園都市統括理事長・アレイスター=クロウリー




『覚悟は出来てンだろォなオマエ』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・一方通行(アクセラレータ)




『ごめんね・・・・・・ごめん・・・・・・なさい・・・・・・』
―――――――――――『天使同盟』の構成員・風斬氷華




『bploa平気uydrv』
―――――――――――『天使同盟』の構成員・ミーシャ=クロイツェフ



481 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/05/04(水) 21:17:23.49 ID:9CRbNrjf0
このスレ中に完結しちゃう?
482 : [sage]:2011/05/04(水) 21:18:38.51 ID:HkP+L9Ug0
乙! 続きが気になって死にそうだ! でも続き読むために生きとく!
483 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/05/04(水) 21:19:31.24 ID:oWiFcVATo
大天使級をボッコボコとは流石の強さ
484 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/04(水) 21:22:54.72 ID:NV8Wl+Xzo
485 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/04(水) 21:29:03.16 ID:ZvO+3jr6o
乙!
やはり強かったアレイスター!
どうなる、天使同盟……
486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/04(水) 21:29:57.78 ID:cbJ2WwZho
くふぅ…ヤバイ感じがヒシヒシと。でも天使同盟ならきっと…
上条さんとインデックスが可愛くて良いね
乙!
487 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2011/05/04(水) 21:38:26.86 ID:W6Lb7RQoo
>>481
ちょっと・・・・・・無理っぽいですね。書きため見直したらかなりグダグダと続いていたので・・・・・・。
なんだか申し訳ないです。

ただ、次のスレでは確実に完結します。
488 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/04(水) 21:41:07.31 ID:cPbrrZa0P

さらっと神フラグ立てやがって
489 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) [sage]:2011/05/04(水) 21:43:00.05 ID:+TnX3lfq0
いっそアレイスターが滅茶苦茶弱かったら笑うのに
三人が到着したらもう終わってミーシャがポカーン状態とか
490 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/04(水) 22:16:19.07 ID:EONLAuVS0
>>489
俺はむしろ☆の圧倒的な強さに安心した。
やっぱりラスボス?は絶望的な位強くなくちゃ。

遅れましたが乙です!!
無理はしないで1さんのペースで投下してください!!
491 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/05/04(水) 22:19:09.70 ID:92/WjqI3o
おつおつ
続けば続くほど俺たちは楽しめるんだぜ
492 :TLB [sage]:2011/05/04(水) 22:35:23.11 ID:iHO+FLM10
乙です
これからの展開にも期待しています
493 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/05/04(水) 22:43:02.33 ID:uLqR54tU0
>そこから異常なほどの魔翌力が
 感知できるんだよ。 それも一つじゃない、二つ、三つ・・・・・・、・・・・・・

一方垣根風斬の三人がドラゴンボールのZ戦士のように飛んでくるのをイメージしてしまった
494 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/04(水) 22:49:29.40 ID:PMtB3Jdvo
乙乙

>>479
展開は全然かぶってないよ
多分、433は、一方禁書と同じく原作の最終回かと思わせるくらいに盛り上がる展開になるんだろうなぁ、という期待だと思われる
495 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/05/04(水) 22:50:32.44 ID:jAMxLN+D0
>>1 乙! エイワスの「おつかい」ってなんだよ・・・
一方さんを依代にって・・・・
気になって寝れないじゃねーかww
496 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/04(水) 23:15:25.32 ID:iiwxnERQo

次回はアレイスター無双かな
497 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/05/04(水) 23:41:36.30 ID:jxbjtwRAO
>>493
もしくはギニュー特戦隊
498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/05(木) 00:05:28.06 ID:QEem4sqe0
>>1乙!
目覚めたミーシャがどうなってしまうか、気になってしょうがない!
このスレで終わりそうにないくらい続いてくれるのが嬉しいなぁ。次回も待ってます。
499 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/05(木) 01:21:28.73 ID:KvG6pbbQ0
もしここで上条さんが来てガブリエルか一方通行を殴る様な事があればもうクズ条さん確定だなw
まあエイワスが言うには、きっと一方通行に何かが入り込んで暴走するのを上条さんが止めるって事なんだろうな

一体エイワスはどこまで未来の事を予測しつくしているんだ…
500 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(徳島県) [sage]:2011/05/05(木) 14:48:14.97 ID:888yevG/0
そも風斬がいるから上条さんは敵にまわらないんじゃね
501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 15:37:54.43 ID:coXGSzK60
>>499
全国の女子高生に絶大な人気を博していて
初めてのおつかいもこなせるカリスマ不思議系下着ドロ美少女ドラッキーさんですから。
不可能なんてあるわけない。
502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2011/05/05(木) 16:40:11.14 ID:GQlPe2pB0

滝壺的なAIM拡散力場の応用でマルチスキルもどきとか持ってそうな☆だもんな
十字教徒が科学と魔術を融合させちゃいけないタブーに縛られてるのも関係ないし、
ガブリエルが阻害・看破・対策のいずれもできない魔術とか平気で使ってきそう
クロウリーさんマジブラックボックス
503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/05(木) 16:42:09.85 ID:GQlPe2pB0
うお、ageちった
ごめん
504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 17:35:08.35 ID:+92Ll73k0
>>500

上条さんなら相手が間違ってると思ったら敵味方関係なくそげぶしそうだけどな
まあ、風斬は殴ったら消えちゃう(かもしれない)事は知ってるから一方通行かガブリエルだな
…………もし本当にやったらKYどころの騒ぎじゃないけど
505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 18:58:54.30 ID:KFInbjwf0
>>479
>>494が真理。
↓みたいに禁書の原作の最終回をイメージさせる展開になるんだろうなと思っただけ
ttp://punpunpun.blog107.fc2.com/blog-entry-2072.html
ttp://punpunpun.blog107.fc2.com/blog-entry-2071.html
506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/06(金) 12:31:21.96 ID:ctKl/pZSO
予想厨はもう書き込むなよマジで
507 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/06(金) 18:57:26.98 ID:zZH5TG9d0
>>506
別に書き込んでもよくね?
俺は予想厨ではないが>>1はここ見てる人に自分の物語について
考察してくれるのは嬉しいとおっしゃているし
それにここの皆はここが好きだから予想や考察書き込んでる訳だしな
大体予想厨嫌なら見なければおk
508 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/06(金) 18:59:30.27 ID:zZH5TG9d0
>>507
あ、見なければおkっつーのは
予想厨の書き込みを見なければいいって意味です
509 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/06(金) 20:37:39.98 ID:7XAVvU+Mo
>>494>>505
そういうことでしたか、どうやら早とちりしてしまったようですね
しかしそういうことでしたらなんともありがたいです・・・・・・俄然やる気が出ます。


そんなわけで今日も投下していきます。
皆様、GWは楽しく過ごせましたか?私はまあ・・・・・・仕事三昧でしたよ・・・・・・


では、行きます。ミーシャすら一蹴するアレイスターに勝ち目はあるのでしょうか。
510 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/06(金) 20:39:05.51 ID:7XAVvU+Mo


「て、天使さん!!!」


風斬は悲痛な叫びを上げながらミーシャに駆け寄ろうとするが、それを一方通行は片手で制した。
だが彼の視線も、垣根の視線も、そのままピクリとも動かないミーシャに向いたまま固定されている。


「死んではいないから安心していい。 もっとも、天使に死の概念など存在しないのだが。
 本当に大変な"作業"だったよ、二度ほど致命傷を受けそうになってひやりとした」

「・・・・・・・・・・・・アレイスター・・・・・・!!!」


風斬は今まで一度も見せたことのないような激昂の表情を浮かべる。
それに呼応して彼女の背中から生えている雷光のような翼が激しく音を立てて紫電を撒き散らし、
頭上に浮いている、外周部に鉛筆のような棒が生えた輪が肥大した。

511 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/06(金) 20:40:07.59 ID:7XAVvU+Mo


「怒り、か。 ヒューズ=カザキリ、やはりエイワスと同じ生産ラインで生まれた"人形"だけの事はある。
 その仕草、表情、どれもが豊かで見ていて飽きないな」

「・・・・・・・・・・・・ッッ!!!」


一方通行が風斬の肩を掴んでいなければ、彼女はすぐにでもアレイスターに襲いかかっていただろう。
それほどまでに、風斬の『心』は憤激で満ち満ちていた。


「あ、一方通行さん・・・・・・離してください!! どうして天使さんがあんな目に・・・・・・。
 一方通行さんや垣根さんはなんとも思わないんですか・・・・・・!!?」


目に涙を浮かべながら、震えた声で風斬は言う。
自分たちを守るために、そしてアレイスター個人の勝手な理由でボロボロにされて
倒れているミーシャを見ても、一方通行と垣根は何も感じていないのかと。

512 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/06(金) 20:40:51.92 ID:7XAVvU+Mo


「・・・・・・それで、どうする? このまま君たちが引き下がるというのなら私は何もしたりしない。
 エイワスがいないようだが・・・・・・ふふ、今度はどこで何を企んでいるのやら」


しかし、


「・・・・・・アレイスター」


風斬の肩から手を離し、涙を流す彼女の目元をそっと指で拭うと、
一方通行はアレイスターの方を振り返って言った。




「覚悟は出来てンだろォなオマエ」



513 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/06(金) 20:42:05.50 ID:7XAVvU+Mo


ボンッッ!!!、という炸裂音と共に、一方通行の背中から翼が噴出した。
その翼を染め上げるは黒。怒りと憎悪に満たされた一方通行が放つ、全てを蹂躙し破壊し尽くす最強の翼。

それを合図に、垣根も背中から無機質な白い翼を六枚展開する。
学園都市第二位が誇る未知なる元素、『未元物質(ダークマター)』の翼を。


一方通行も垣根帝督も、アレイスターに対して言いたいことが沢山あっただろう。
今までよくも散々利用してくれたなとか、何度自分の大切な人達を傷つけ悲しませれば気が済むんだとか、
アレイスターの目的とは何なのか、『プラン』とは一体なんなのか、
学園都市の人間をゴミのように扱いやがって、いい加減にしろ、何様のつもりだ。


しかしそれらを全て放棄し、一方通行達はアレイスターに明確な殺意を向けた。
そして、


「やはりそうなってしまうか・・・・・・。 至極残念だ」

「垣根」

「ああ」


二人はほぼ同時にアスファルトの大地を踏みしめ、アレイスターに突撃した。
学園都市の第一位と第二位。科学サイドの龍と虎が、学園都市最強のタッグが、アレイスターへ牙を向ける。

514 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/06(金) 20:43:57.10 ID:7XAVvU+Mo


「天使さん・・・・・・!!」


一方通行と垣根がアレイスターとの戦闘を開始した頃、風斬氷華はミーシャの下へ駆け寄っていた。


無残な姿に成り果てたミーシャを見て、今まで堪えてきた涙腺に限界が訪れる。
風斬は大粒の涙を流しながら倒れているミーシャの側で屈み込んだ。


「天、使さん・・・・・・。 どうしてこんな・・・・・・」


風斬はミーシャの頭を抱え、優しく頬を撫でながら声をかける。
彼女の流す涙が天使の顔に落ち、そのまま頬を伝って流れていった。

そこだけを見ると、まるでミーシャも涙を流しているように見える。

515 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/06(金) 20:45:01.04 ID:7XAVvU+Mo


「ごめん、なさい・・・・・・ごめんなさい、私、あなたの本当の気持ちなんて、ちっとも・・・・・・」

「氷、華」

「!」


声がした。水のように透き通ったその綺麗な声は、どこかで聞いたことがあった。
普段はその声にひどいノイズがかかっている為、あまり耳に出来ないその天使のような声色は。


紛れもない、本物の大天使から発せられたか細い声だった。


「天使さん・・・・・・!」

「氷華」

516 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/06(金) 20:45:52.69 ID:7XAVvU+Mo


風斬の表情が綻ぶ。天使には死の概念が無いとアレイスターは言っていたが、
それでもここまでボロボロになったミーシャがまた目を覚ましてくれるとは思えなかった。
嬉しさの反動で風斬の瞳から更に涙が溢れ出す。

ミーシャはその水晶のような彼女の涙を指でそっと、極めて優しく暖かな動作で拭ってあげた。
そして嗚咽を発する風斬の頭を『人間愛』に満ちたその手でゆっくりと撫でる。


あまりにも愛に満ちたその行為を受け、風斬はついにミーシャの胸に顔を埋めて泣き叫んでしまった。


「氷華。 大丈夫」

「ううう、ううううううう・・・・・・!!!」

「大丈夫」


何らかの力で弾き返されたのか、ミーシャの腹には彼女自身が作り出したのだろう氷の剣が三本も貫通している。
一体何が大丈夫なのか。五体満足とはいえ、全身の至る所に裂傷を負っているミーシャの、どこが大丈夫なのか。
死んだりしていないから心配はいらないという意味なのか、それとも『星の欠片の事なら大丈夫』とか、そういう意味か。

517 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/06(金) 20:46:54.74 ID:7XAVvU+Mo


何も伝わらない。動作は優しくても、ミーシャの言葉はまるで機械音声のように感情が無かった。


「ごめんね・・・・・・ごめん・・・・・・なさい・・・・・・」

「bploa平気uydrv」


風斬の背後で凄まじい爆発が起きた。一方通行達の戦闘が激化していっているのだろうか。
それによって発生した烈風を背で受けても、風斬はただひたすら涙を流しミーシャに謝罪の言葉を繰り返す。

風斬はミーシャの胸から顔を上げ、ゴシゴシと目元に残った涙を拭う。
拭っても拭っても零れてくる涙を、彼女はギュッと強く瞼を閉じることで強引に止める。

そして無理矢理な笑顔を作って言った。

518 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/06(金) 20:47:34.12 ID:7XAVvU+Mo


「逃げましょう、天使さん。 こんな危険なところからは早く離れたほうがいい・・・・・・。
 エイワスさんが言うには、ここにいる敵はアレイスターだけじゃないみたいです。
 さっきからあちこちで銃声みたいな音も鳴ってますし・・・・・・ここは危険すぎます」

「氷華」

「大丈夫です。 アレイスター・・・・・・あんな悪いヤツなんて私たちでやっつけちゃいますから。
 それで、『星の欠片』もみんなで知恵を絞れば絶対に打開策が見つかるはずです。
 まだ時間はあります。 だから急いでここを・・・・・・」


と、風斬がミーシャを抱えて第一九学区から離れようとした時、




『繋がった?』




風斬の頭の中に、不思議な声が響いた。

519 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/06(金) 20:49:01.66 ID:7XAVvU+Mo


「え・・・・・・?」

『良かった、聞こえてる』


風斬は忙しなく首を動かして辺りを見回す。
しかし風斬の『耳』に届く音は、さっきから断続的に聞こえてる戦闘の騒音だけで、
頭の中に響いてきた澄明な声とはまるで違っていた。


澄明。


「え、もしかして・・・・・・」

『驚かせてごめんね、氷華』

520 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/06(金) 20:49:39.09 ID:7XAVvU+Mo


信じられなかった。でも疑いようがなかった。
頭の中で響いているにも関わらず、全くと言っていいほど不快感が無いその声の主は、
ミーシャ=クロイツェフのものだった。


彼女の声に驚いたのはさっきのと合わせて二度目だ。
まず先程の声は全くノイズが混じっていなく鮮明に耳に届き、その事実だけでも驚愕に価するのに
今度は脳内、しかもかなり流暢に言葉を紡いでいる。

しばらくリアクションを取ることを忘れていた風斬はやがて我に返り、


「て、天使さん、どうやって・・・・・・?」

『逃げて』


風斬の疑問を無視して、ミーシャは逃走を促しながらボロボロの身体を引きずるように動かす。
腹に刺さった氷の剣を引き抜き、ミーシャの無茶な行動を止めようとする風斬を片手で制しながら、
彼女は続けた。

521 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/06(金) 20:50:35.67 ID:7XAVvU+Mo


『アレイスター=クロウリーも言っていたけど、もうじき私は私じゃなくなる』

「どういう・・・・・・事ですか・・・・・・?」

『私はoebyhju言うfetyxを・・・・・・ごめんなさい。 ・・・・・・・・・・・・、私は水という属性を司る天使。
 いいえ、もうすぐ私は「天使」ですらなくなる』


崩れたビルの壁に手をつきながらミーシャは精一杯言葉を紡いでいく。


『天使という存在でありながらこのetghvs、・・・・・・この人間界へ依存し、定着した私は、もう天使ではなくなる。
 「神」に見捨てられ、そして人間にすら破れた私は堕落する。 堕落した天使に待っている末路は―――』


言いながら、ミーシャは手で頭を抑えながら俯いた。
天使が天使でなくなる。彼女の身に、何か危険な前兆が起き始めているのだろうか。

それでもミーシャは立ち上がった。自分のせいで、自分がアレイスターに敗北したことで
招いてしまった、この悲劇を食い止めるために。

522 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/06(金) 20:52:03.08 ID:7XAVvU+Mo


風斬はミーシャの言っていることが理解できなかったが、それでも今のミーシャが
これ以上動いたらさらに大変な傷を負ってしまうことだけは分かった。


「天使さん、そんな身体で動いたら・・・・・・!」

『彼と、帝督が・・・・・・。 彼らを止めないと。 あの魔術師は人間の身でありながら既に"私達"と
 同じ領域に佇んでいる。アレイスターは"神ならぬ身でありながら、既に天の意志に到達している"・・・・・・』


風斬は眉をひそめた。今ミーシャが言った言葉のどこかに、聞き覚えのあるワードが混じっていた気がする。
しかし今はそんな曖昧な記憶を探っている場合ではない。


「動いちゃいけません! これ以上無茶をしたら本当に――――、」


無理やりでもミーシャを食い止めようとしたとき、


風斬達の目の前の景色が『歪曲』した。あまりにも巨大なその爆発は、
彼女たちの視界を白一色に染め上げる。

523 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/06(金) 20:54:14.36 ID:7XAVvU+Mo


粉々になった地面から吹き出る粉塵で激しく咳き込む風斬。
段々と元の色を取り戻していく風斬の視界には、またしても信じがたい光景が広がっていた。


「あ、一方通行さん・・・・・・垣根さん!!」


爆発の正体は、学園都市の第一位と第二位は地面に叩きつけられた、ただそれだけの事だった。
だが冷静に考えてみて欲しい。

片やこの世に存在しない物質を自由自在に生み出し物理法則を捩じ曲げる『未元物質(ダークマター)』。
片やこの世に存在する全てのベクトルを自由自在に操作できる『一方通行(アクセラレータ)』。


第三位以下のレベル5の差を凄まじく突き放す最強のトップ2が、まとめて地面に伏しているという状況はあまりに絶望的だった。


「が、はァ・・・・・・ッ!?」

「・・・・・・・・・・・・ぐ・・・・・・、」

524 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/06(金) 20:55:04.41 ID:7XAVvU+Mo


一方通行の背から噴出していた禍々しい黒の翼も、今ではその勢いが著しく霧散している。
垣根帝督の背から現出していた無機質な白の翼も、今では所々が砕け散り、見ただけで痛々しさが伝わる。

二人は身体の至る所から出血しながら苦痛の表情を浮かべてよろよろと地面から立ち上がる。


その先。晴れてきた粉塵から見える人影。


「クソ・・・・・・ったれがァ、どォなってンだちくしょう・・・・・・!!」

「テメェ・・・・・・"魔術じゃねえだろそれ"」


二人はその人影に視線を向ける。


粉塵の奥から歩いて来る緑色の手術衣の魔術師を見て、風斬は驚愕するしかなかった。
アレイスター=クロウリーは、第一位と第二位を相手にしながら未だ無傷で君臨していた。

525 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/06(金) 20:56:01.84 ID:7XAVvU+Mo


「そ、んな・・・・・・」

「風斬、オマエはとりあえずここから離れ――――、・・・・・・!?」


今度は後ろを振り向いた一方通行が驚愕する番だった。
ついさっきまで屍のように倒れて動かなかったミーシャ=クロイツェフが、
ふらふらと頼りない足取りでゆっくりとこちらに歩いて来るのを見たからだ。


そんな彼女の姿を見て、一方通行は拳を強く握りしめて歯噛みする。
正直、見ていられなかった、見たくなかった。

出会ってから今日まで、常に天真爛漫に振る舞ってきたミーシャ=クロイツェフと、
現在こうして瀕死の状態で、それでも自分たちを守ろうとするミーシャ=クロイツェフを
どうしても同義したくなかった。


風斬は死に物狂いで伝えてきたミーシャの言葉を彼らに伝える。


「あの、天使さん・・・・・・もうすぐ"自分が自分じゃなくなる"って・・・・・・」

「?」

526 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/06(金) 20:57:00.28 ID:7XAVvU+Mo


一方通行と垣根は反応できなかった。自分が自分じゃなくるとはどういう意味か、
天才的頭脳を誇る二人の頭でもそれは理解出来ない。

代わりに、世紀の大魔術師がその答えを口にした。


「さっきも言っただろう? 間もなくミーシャ=クロイツェフは天使として存在できなくなると。
 それは『星の欠片』の消滅によって彼女が『位階』へ還る事を意味しているのではない。
 知っているか? 自身の存在を見失い、堕落し、暴走した天使の事を――――――――」

「ecnasef討asncfui」

「きゃっ!?」


ドンッ!!、とアレイスターが語っている途中で、ミーシャは翼も生やさず跳躍してアレイスターに飛びかかった。
一方通行と垣根の頭上を飛び越え、掌に集めた『天使の力(テレズマ)』をアレイスターに喰らわせるために。

対するアレイスターの行動はひどく単純だった。手に持っている杖をほんの少し振り上げ、




「――――――『悪魔』と呼ぶのだよ。 申し訳ないが私はそんな物を相手にしている暇はないのでね。 ・・・・・・・・・・・・"散れ"」




コツン、と。『衝撃の杖(ブラスティングロッド)』の先端を地盤が捲れたアスファルトの大地にぶつけた。

527 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/06(金) 20:58:42.19 ID:7XAVvU+Mo


アレイスターの鼻先まで接近したミーシャの掌が、彼に届くことはなかった。


咲いた花の花弁のように広がっている『衝撃の杖』の先端が、逆再生するようにつぼみへ戻ると、
またそこから猛烈な勢いで"咲き開いた"。
その薄い金属のような物質で構成された"花"の中心部に埋め込まれている水晶のような塊が
一瞬だけ激しく発光した。




瞬間、アレイスターを中心に爆発的な衝撃波が発生し、それは球状に広がって
付近にいたミーシャ=クロイツェフ、一方通行、垣根帝督を飲み込んだ。



528 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/06(金) 20:59:29.02 ID:7XAVvU+Mo


「―――――――ッ」


声を発することも許されなかった。その圧倒的な破壊力は一方通行の『反射』など軽々と突き破り、
垣根帝督の『未元物質』の防御を押しのけ、ミーシャ=クロイツェフの『天使の力』を蹂躙する。
その球状の衝撃波は視認できるほどに色濃く、強力で、周囲にある建造物を粉々に砕き、
数秒も経たない内に半径約一キロメートルもの範囲に拡大した。

さらにその爆発によって生じた暴風が、第一九学区という街を破壊していく。
『第一九学区にはまだ利用できる価値がある』と言っていたアレイスターの言葉とは裏腹に、
彼は何の躊躇いもなく自らが作り上げていった世界を破砕していった。


(・・・・・・それぞれが上手く別の方向へと散ったか。 これでいい、エイワスとの戦闘に備えるためにも、
 私が今ここで無駄に消耗するわけにはいかないしな。 垣根帝督は『ファイブオーバー』と"その中身"に
 相手をさせていればいい。 一方通行は十中八九、ミーシャ=クロイツェフと接触するために
 彼女を捜し求める。 そして今、この第一九学区に潜んでいる"『天使同盟(アライアンス)』以外の鼠"は
 ・・・・・・・・・・・・全てを終えた後に私の方で処理するか)

529 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/06(金) 21:00:21.47 ID:7XAVvU+Mo


一方通行、垣根帝督、ミーシャはアレイスターの前から姿を消していた。
先程のアレイスターの攻撃で跡形も無く消滅したわけではない。アレイスターが故意に
彼らを散り散りにしたのだ。


アレイスターがいる地点の周囲は、もはや地獄絵図と化していた。
ついさっきまで密集していた建造物は森林伐採をしたかのように綺麗に吹き飛んでおり、
その衝撃波は遙か数キロ先に立ち並ぶビルやマンションが確認できるほどの規模だった。


「さて、」


アレイスターはパシン、と杖の先端を掌へ軽く叩きつけながら笑みを浮かべる。


「それで、見苦しくも今の私の魔術に耐え切った君は、どうするかね?
 素直に『アストラル界』にでも還った方が懸命だと私は思うけどな」

「・・・・・・『虚数学区』の事ですか」

530 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/06(金) 21:01:23.18 ID:7XAVvU+Mo


アレイスターがいる周辺には、雪のように淡く輝く綿のようなものが、
あれだけの爆風が起きたにも関わらず、ふよふよと漂っていた。

それは、光る鱗粉。
アレイスターが見据える視線の先にいる、科学の力で構成された人工天使、
ヒューズ=カザキリの翼から生み出されている光の鱗粉だった。


「素晴らしい反応だったな、私が『衝撃の杖』を展開させた時には、
 既に君はその『擬似エーテル』の元素で壁を作っていたわけだ。
 もっとも、一方通行達の壁を作るまでには至らなかったようだが」

「・・・・・・彼らは必ず無事でいます。 あなたのような人間に、彼らを討てるわけがない」

「ほう。 しかし現状はこの通りだが・・・・・・どう出るつもりだ?」

「私が・・・・・・・・・・・・、」

531 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/06(金) 21:02:21.45 ID:7XAVvU+Mo


風斬氷華は行方が分からなくなった一方通行達の事を、今だけは考えないように
一度ゆっくりと目を閉じる。
そして、次に開いた時、彼女の瞳にはこれまで見せたことのないような勇ましい光が宿っていた。




「ここで私が、あなたを止めます。 アレイスター=クロウリー」

「愉快だよ、"人形"」




アレイスターは楽しそうな、とても愉しそうな笑顔を風斬に送り返した。





『人形』が、『人形師』に謀反する。

532 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/06(金) 21:08:09.83 ID:7XAVvU+Mo


Q. あたち幼女だけどあんだけ格好つけといてアレイスターに手も足も出ないトップ2って・・・・・・

A. 天使すら指先ひとつでダウンさせたアレイスターに人間が勝てるわけない


とはいえ、とんでもない事になってきました。
主人公補正とかそんなん一切通用せず、アレイスターにフルボッコにされた第一位と第二位。
終いにゃ蠅を追い払うが如く皆散り散りにされてしまいます。
どうやら風斬がアレイスターにタイマンを挑むようですが誰か助けてあげてください。このままじゃ殺される。

各々が散った先に待っている敵とは?そんな感じで次回もよろしくお願いします。

次回更新は三日以内。

それでは、本日もお付き合いいただきありがとうございました!


・・・・・・次回予告が短すぎて投下するか迷いましたが、一応投下しときます。

533 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/06(金) 21:09:01.81 ID:7XAVvU+Mo



                          【次回予告】



『テ、メェ・・・・・・・・・・・・そのふざけた仮面は・・・・・・ッ!!!』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・垣根帝督



534 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/05/06(金) 21:10:13.79 ID:CCsT56yAO

続き待ってます
535 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/05/06(金) 21:11:26.76 ID:ouXwC2yKo

人工天使は"死"ねるのか
536 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/06(金) 21:11:49.43 ID:+d9jmuR00

どうやって勝つんだこれ…吉良みたいになってきてんぞ
537 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/05/06(金) 21:12:27.00 ID:2itmkyQY0
乙!
"『天使同盟(アライアンス)』以外の鼠"って誰だ?
538 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/05/06(金) 21:13:32.67 ID:KdtOllsUo
>>537
ほら、なんかウニ頭に付けてる・・・
539 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/06(金) 21:15:40.25 ID:LcARHLOzo
乙乙

次回は垣根編か
仮面と言うとEqu.Darkmatterかな……

>>537
遊園地でジェットコースターから落ちながら告白したアイツとか
540 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/06(金) 21:16:08.23 ID:tpSwidjSO
>>538 美堂蛮!?
確かに天使とか関わってくるけど…
541 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2011/05/06(金) 21:20:07.63 ID:O8E6Vint0
>風斬の肩から手を離し、涙を流す彼女の目元をそっと指で拭うと、
>一方通行はアレイスターの方を振り返って言った。

>「覚悟は出来てンだろォなオマエ

一方さんマジイケメン
俺が女なら惚れてるレベル
542 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/06(金) 21:20:18.29 ID:WIfeujLh0
ていとくんの相手は、ファイブオーバーと未元仮面か……
学園都市のテクノロジーに、果たして勝てるのか……?

それはそうと、やっぱアレイスター強すぎるな。
消耗していたとはいえ、あのフィアンマをボッコボコにした魔術師だからな……
エイワス、急ぐんだッ!
543 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/05/06(金) 21:24:35.77 ID:oupEMGZAO
乙です!!
アレイ☆強すぎだろ…。
フリーザの53万発言より絶望的すぎる
544 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/05/06(金) 21:25:20.59 ID:LBXkAmZZ0
ここでKJさんですよ
545 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/05/06(金) 21:32:36.70 ID:PsP238z20
アレイスター強い、さすがはラスボス(暫定)
しかしこんなアレイスターをよくまあ昔の魔術師たちは瀕死の重傷まで追い込めたな
546 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/05/06(金) 21:35:41.63 ID:ouXwC2yKo
ホームグラウンドだから魔術師としては万全に近いのだろう
547 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/05/06(金) 22:00:47.85 ID:dDNOGpAyo
無理ゲー臭がしてきたな
548 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/06(金) 22:02:06.73 ID:ZLaVjGv/0
>>540
ネタでもそいつはやばいwwwwwwwwwwマジで「天使?何それ?おいしいの?」レベルぐらい強いからwwwwwwwwwwwwww
それにしてもアレイスターって冥土帰しに助けてもらっときまでは人間だったの?
549 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/05/06(金) 22:37:43.51 ID:yChaWKRm0
時々思うんだ・・鎌池さんも泣く泣くボツにしたネタをssにしてupしてたりするのかな?って・・・・
>>1 鎌池さんですか?
550 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(佐賀県) [sage]:2011/05/06(金) 22:49:15.24 ID:c8Ih8wyOo
テレズマと拡散力場の両方を扱えるんだろ多分
この絶望感は老バーン vs ダイ一行のファーストバトルを思い出すな
551 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/06(金) 23:30:04.13 ID:Q8Ym2Vlv0

流石のアレイスターだな
でも魔術攻撃っぽい超現象を防いじゃう風斬も地味に凄いぞおい
よく考えりゃ科学と魔術が存在の根底から絡み合った限りなくホルスの世界の住民に近い子だもんな
で垣根!
Equ.Darkmatterが超能力という火で打った鉄なら、今のお前は魔術という酸素を得たガスバーナーの炎だ!
焼き切っておしまい!
552 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 00:13:57.57 ID:GQFb9PEIo
ちょっとアレイスター消してくる

553 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(佐賀県) [sage]:2011/05/07(土) 01:39:37.50 ID:n5y0JgNlo
Equ.Darkmatterって浜ヅラと麦野相手に全滅した雑魚だろ
554 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/07(土) 03:03:04.18 ID:/EYaVvAc0
でも当然のごとく中身が訳ありらしいけどなあ
555 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/05/07(土) 11:41:18.04 ID:H532QQMAO
てか冥土帰しって何歳なの?
556 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 12:25:39.18 ID:nBI/QGCSO
>>555
スレチ
557 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/05/08(日) 02:29:50.57 ID:FBBCeTJQ0
じゃあ、俺はアレイスターの魔の手から風斬を守るために戦ってくるわ。
558 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/08(日) 02:49:50.30 ID:sFod0sJT0
じゃぁ、俺は>>557のsageないという魔の手からみんなを守るため戦うわ。
559 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/08(日) 03:09:20.34 ID:rK8+VBvV0
>>553
浜面・麦野戦は相手が手負いの無能力者だと油断しまくって不用意に近づいた上に麦野が来ることは完全に予想外だったから負けた
普通の銃器は効かない(不完全とはいえ原始崩しまで防いでる)し、翼はリーチ長くて硬くて強力
中の人間は能力者じゃないだろうから脳に影響する音も関係ない=キャパシティダウンも効かない
つまり能力者が行動不能のなか発条包帯装着者なみの機動力と窒素装甲以上の防御力とレベル4なみの攻撃翌力を持てることになる
まして普通の軍隊相手なら中隊程度は秒殺できるはず
これから出てくる強敵をナメてたんじゃ楽しめないぞ
560 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/08(日) 04:16:45.27 ID:eaVRxPNIo
おいおい相手は新・ていとくんだぜ
そんな常識通用しねぇよ

この>>1ならそれすら上回りそうだけど…
561 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/08(日) 16:08:35.49 ID:23kDzkD5o
こんにちわ、夜に投下できそうにないので今から投下します。

いつも沢山のレスをありがとうございます。何だか考察的なレスも多くて恐縮です。
つーか皆さんいいアイデア浮かびまくりですよね・・・・・・パクろっかな普通に・・・・・・


さて、前回の投下でアレイスターにボッコボコにされた第一位と第二位。
しかもミーシャも含めた三人は散り散りにぶっ飛ばされてしまいます。勝負にもなんねえ
その場に何とか残った風斬氷華は一人、アレイスターに戦いを挑みます。

では続きをどうぞ。
562 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/08(日) 16:10:16.38 ID:23kDzkD5o


――――――――――――――――――――――


"目に映る光景が全てゴチャ混ぜになる瞬間"を、垣根帝督は久々に体感した。
今まで彼は能力者同士の戦闘では無類の強さを誇っていた。
こんな風に、景色がぐるぐると回転するほどの衝撃を喰らったのは一〇月九日の対一方通行戦の時以来だったか。


やがてアレイスターによる魔術での攻撃で吹き飛ばされていた自身の肉体が停止する。
全身がズタボロになりながらも、垣根は痛みを堪えて立ち上がった。
荒い呼吸を繰り返しながら、肺から奪われた酸素を急ピッチで取り込んでいく。


「ぜぇ・・・・・・はぁ・・・・・・クッソ・・・・・・!!! ・・・・・・どの辺だここは」


垣根は辺りを見回す。第一九学区外まで吹き飛ばされたという事は無いようだった。
何らかの衝撃でへし折れたのか、信号機の上に付けられていた看板に『第一九学区』と書かれていたので確認が出来た。
周りに"人の気配"は無い。どうやら相当の距離まで吹き飛ばされたようだ。

垣根帝督は拳を強く握り締めながら今自分が立っている三車線の広い道路のど真ん中で
口に溜まっていた血糊を吐き出す。

563 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/08(日) 16:11:35.17 ID:23kDzkD5o


(アレイスターの野郎・・・・・・完全に遊んでやがる・・・・・・!!)


格の違い、というものを見せつけられた気がした。
お前のような人間などいつでも殺せます、というアピールをされた気がした。


魔術師、アレイスター=クロウリーは学園都市第二位の超能力者にそこまで思わせるほどの力を秘めていた。


しかもそれでいて、依然アレイスターは遊んでいる。
一瞬、背中に寒気のようなものを感じたが、垣根はブンブンと頭を振って無理やり払拭させた。


(とにかくアレイスターのクソ野郎を捜さねえと・・・・・・せっかくここまで辿り着いたんだ。
 もうここまで来たら『天使同盟』なんざ必要ねえ。 あとは俺がアレイスターの首を掻っ切るだけだ)


垣根帝督にとって、『天使同盟』はアレイスターと直接接触するための『橋』だと、彼はこの時思った。
そして悲願は達成寸前のところまで来ている。アレイスターに出会えた、あとはそのアレイスターを殺すだけ。

564 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/08(日) 16:12:12.65 ID:23kDzkD5o


だから、風斬氷華がどうなろうが知った事ではない。エイワスなど以ての外。
ミーシャ=クロイツェフが天界へ還ろうがどうなろうが、どうだっていい。

一方通行が殺されようが、垣根にとってはむしろ好都合だ。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


本当に?本当にそうだろうか?

垣根は『天使同盟逢引計画』で交わした一方通行との会話を思い出す。


(・・・・・・知るかよ、クソったれ)


ともあれ、まずはさっき居た地点まで戻ってみることにした垣根帝督。

565 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/08(日) 16:12:51.19 ID:23kDzkD5o


しかしその最初の第一歩が踏み出される事は無かった。


「ッ!!?」


突然、垣根の眼前に迫ってきたのは、閃光。


垣根は恐ろしい反射速度で『未元物質(ダークマター)』の翼を前面に展開。
辛うじてその閃光を防ぐことに成功する。

『未元物質』の翼に触れた閃光は、凄まじい衝撃音を放ち消滅した。
垣根帝督はこの感覚に妙な既視感を感じる。


(・・・・・・今の攻撃、どこかで・・・・・・?)

566 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/08(日) 16:13:19.91 ID:23kDzkD5o


実際に見たわけではない、と垣根はこの既視感について分析する。
直に見たわけではない、ただ何かの情報を得たときについでに得た情報のような、
なんとも言えない不思議な違和感だと思った。


そして、垣根が立っている道路の向こう側から何かが近付いてくるのを感じる。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・、なんだありゃ? 『駆動鎧(パワードスーツ)』・・・・・・か?」


人ではなかった。
垣根帝督に向かって真っ直ぐ近付いてくるそれは、誰が見ても『ロボット』を連想させる物体だった。

そして垣根はそこまで駆動鎧に詳しいわけではなかった。なので近付いてくるそれを完全に目視しても、
どういうタイプの物でどういう機能を備えているのか推測出来なかった。


ただ、垣根はその駆動鎧の外観を見て『カマキリ』を連想した。

567 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/08(日) 16:14:06.11 ID:23kDzkD5o


その駆動鎧の全長は、およそ五メートルといったところか。
学園都市の駆動鎧は多種多様に存在するが、取り立てて巨大というわけではない大きさだ。

しかし異様なのは、その姿。カマキリを連想させるそのボディデザイン。

カマキリと言ってもその駆動鎧は二本の脚に二本の腕、そして二本の鎌を構えているという
妙な体勢をとっていた。
そしてパカッと開かれた装甲からは、それこそ虫のような薄い半透明の羽根が
人間の目では捉えきれないほどの速度で羽ばたいていた。


(・・・・・・あの羽根で空気を叩いて渦みてえな気流を生み出して、揚力を得てやがるんだな)


普通の科学力なら全長五メートル以上の機械の塊をあんな薄い羽根で浮かせる事など出来ないかもしれないが、
ここは学園都市だ。必要ならば本気でアニメに出てくるようなロボットも量産出来るかもしれない。

568 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/08(日) 16:14:50.96 ID:23kDzkD5o


しかし垣根が一番気にかかったのはそんな小さな事ではない。
駆動鎧の背部に取り付けられているタンク、恐らくは銃弾か何かを収めておくような部分、ではない。
前脚の先端にある保護カバーから覗いている、束ねられた三本の銃身、でもない。

その前脚の保護カバーに刻印されている文字。




Gatling_Railgun'。




ガトリングレールガン。『超電磁砲』。


確かそれは、学園都市の超能力者(レベル5)第三位が冠する異名ではなかったか?

569 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/08(日) 16:15:31.05 ID:23kDzkD5o


「ハッ」


垣根が失笑した直後、


――――――ッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!と、もはや銃声というものすら
聞こえないような暴風が第二位を粉々に砕くために襲いかかってきた。
直径一メートル程の弾丸が、一分間に四〇〇〇発を超える速度で、電磁力の原理を利用して撃ち出されていく。


垣根が立っていた地点で、巨大な爆発が発生した。
弾丸を撃っているというのに、爆発が発生した。

その現象が、このガトリングレールガンという駆動鎧の破壊力を如実に表していた。

570 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/08(日) 16:16:10.39 ID:23kDzkD5o


「で? それで終いかクソ雑魚ども」


爆炎と爆煙の中から聞こえたのは、そんな言葉だった。


ボバッッ!!!、という衝撃音と共に"白い繭"が煙の中から飛び出してきた。


「『FIVE_Over. Modelcase_"RAILGUN".』、なぁ。 第三位の『超電磁砲』を
 機械的に再現した駆動鎧か。 学園都市も面白えオモチャを作ってやがるじゃねえか」


繭がゆっくりと解けていく。そこから姿を現したのは、言うまでもなく学園都市第二位の超能力者だった。

571 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/08(日) 16:16:54.56 ID:23kDzkD5o


垣根帝督は威力だけなら本家の『超電磁砲』を超える威力のガトリングレールガンを真正面から喰らっても
全くの無傷を維持していた。
彼は反射速度ではなく『予測』でファイブオーバーのガトリングレールガンを防御するため、
『あらゆる電力と衝撃、砲弾という物理的衝撃を遮断する法則』を組み込んだ『未元物質』を現出させたのだ。

これが、第二位の超能力。

第二位と第三位の間に立ち塞がる壁は、あまりにも巨大で強固だった。
本家『超電磁砲』より応用性が無いファイブオーバーだと尚更だ。


「俺を蜂の巣にしてえなら、そのオモチャをあと一〇〇体は持ってこい。
 それらで一斉に襲い掛かれば俺にカスリ傷くらいは負わせられるかもな」


言うやいなや、垣根帝督は空中に停滞したまま『不可思議のベクトル』を組み込んだ烈風を六枚の翼から
発生させた。ファイブオーバーは完全自立AIではない。乗り込んだパイロットの脳を演算コアに指定し、
それを徹底的に補強する形で駆動用コンピュータが周囲を取り囲む、という方式になっている。

簡単に言えば人間が乗り込んである程度操作しなければならない駆動鎧であり、
人間である以上その反射速度には限界が存在する。


垣根の放った烈風は音速の域を超えていた。その上ノーモーション、更に『不可思議のベクトル』によって
原因不明の破壊現象が発生し、ファイブオーバーはあっという間に高価なガラクタと化してしまった。

572 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/08(日) 16:17:54.40 ID:23kDzkD5o


「悪いな。 俺の『未元物質(ダークマター)』に、常識は通用しねえんだよ」


解体されていくファイブオーバーを空中から見下ろしながら垣根は独り言を呟く。


だが、それは独り言にはならなかった。




「そうか。 だが常識が通用しないのは"我々も同じだ"」




機械音声のような、しかしそれとはまた違う、妙な音質でそんな言葉が聞こえてきた。
破壊される寸前に、機体前面にあるコックピットハッチがグシャァッ!!、という音と共に開かれ、
そこからパイロットであろう男が飛び出してきた。

573 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/08(日) 16:18:37.58 ID:23kDzkD5o


そのパイロットは空中に飛び出したまま、しかし地面に降り立つことはなかった。


「・・・・・・・・・・・・な、に・・・・・・!?」


ファイブオーバーを目の当たりにしても余裕の笑みを見せていた垣根帝督は、今度こそ驚嘆した。
駆動鎧のパイロットは全身を黒のコスチュームに包んでおり、それは暗部などでよく見かける
『警備員(アンチスキル)』の武装によく似た形状の出で立ちだった。

しかし、圧倒的に異なる部分がそのパイロットには見受けられた。


「テ、メェ・・・・・・・・・・・・そのふざけた仮面は・・・・・・ッ!!!」

「見覚えがあるか? 当たり前か」


パイロットは垣根と同じ高度で停滞したまま"翼を羽ばたかせ"、くだらなそうな声色で言った。

574 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/08(日) 16:19:17.08 ID:23kDzkD5o




「貴様が今背負っている翼と"全く同じ素材"だからな、この仮面は」




パイロットの――恐らく男だろうか――装着している仮面は、白と金で装飾されており、
縦の長さが顔の二倍以上もある異様な形相だった。
白くのっぺりとしたその仮面には目や口などの穴が空いておらず、仮面全体がLEDデコレーションのように
発光し、色鮮やかな模様を描いている。

そのLED発光によって、白い仮面にはこんな文字が浮かび上がっていた。




Equ.DarkMatter。




確かそれは、学園都市の超能力者(レベル5)第ニ位が冠する異名ではなかったか?

575 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/08(日) 16:20:12.67 ID:23kDzkD5o


「科学技術の性能と『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』、一体どちらが秀でているのかな?
 貴様がいつまでも学園都市の第二位として君臨し続けていられると思ったら大間違いだ」


垣根帝督はこみ上げてくる怒りでこめかみの血管が破裂するかと思った。
目の前の仮面の男に怒っているのではない。
恐らくは、一〇月九日に『死』に至った垣根帝督の脳を利用してこの仮面を、猿真似の第二位を作り上げた
学園都市に。アレイスター=クロウリーに対して怒っているのだ。


「くふ、は、」


あまりの憤激に垣根は変な笑い声を漏らしてしまった。その怒りは、油断すれば
自身の人格まで歪めて、破壊してしまいそうなほどにまで高まっていた。

垣根は、漠然と思った。

576 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/08(日) 16:21:26.81 ID:23kDzkD5o


この街はもうダメだ。


第四位は既に玩具にされている。ボロボロになった肉体を学園都市の技術の試験として改造し尽くしたことで。


第三位は既に玩具にされている。筋ジストロフィーの治療の為だと言われて提供したDNAサンプルのせいで、
彼女はこの世の『闇』の一部を垣間目撃し、絶望の淵へ追いやられている。


第二位は既に玩具にされている。今もこうして、『自分だけの現実』を利用されてアレイスターのために貢献している。


「第三次世界大戦時、ロシアに投入された『未元物質』の仮面と、"我々"の装着しているこの仮面は
 既に絶対的性能差がある。 我々が装着しているこの『未元物質』は、貴様の『自分だけの現実』を
 "一〇〇パーセント実現させることが出来る"。 貴様のオリジナルとこの仮面の応用性に差は無い」


仮面の男が何かを言っていたが、垣根の耳には右から左だった。

577 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/08(日) 16:22:14.24 ID:23kDzkD5o


第五位はどうなのだろうか?確か『心理掌握(メンタルアウト)』だったか、あれもいずれはこんな風に
玩具として利用されるのだろうか。第六位は?七位は?こんな腐った街に居れば、いずれ彼らも食い物にされる。

そして第一位は?彼はアレイスターにとっての『第一候補(メインプラン)』だが、そう認識されている事こそが
既に彼の玩具として扱われているということではないのか。


今までこんな事を考えたことはなかった、と垣根は自身の思考に驚く。
アレイスターとの交渉権を手に入れ、隙をついてアレイスターの『プラン』を潰す。
その事ばかりを考えて、垣根は暗部として活動してきた。

そしてその野望は一方通行によって頓挫する。
エイワスの手によって『復活』した垣根は、『天使同盟(アライアンス)』と合流した当初は
本気で一方通行を始末しようと考えていた。

でも、今は―――――。


『―――――だったら、オマエもガブリエルを守れよ』

578 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/08(日) 16:23:04.55 ID:23kDzkD5o


黄泉川愛穂という人物が提案したくだらないデート計画の時、一方通行は垣根に言った。
ミーシャ=クロイツェフを一緒に守れ、と。それが『天使同盟』の構成員の義務だと、彼は言っていた。


『オマエにはもォ帰る場所もあるし、帰りを待ってくれるやつもいる。
 俺もオマエも、全く変わらねェってことだ。 わかったかこのメルヘン野郎が』


一方通行は言った。垣根にはもう帰るべき場所があると。帰りを待ってくれる人がいると。

垣根はその時なんと答えた?




『守ってやるよ、ミーシャも、風斬も、「天使同盟」も、何もかも。
 俺の居場所なんだろ? ぶっ壊されちゃたまんねえ』





579 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/08(日) 16:23:43.63 ID:23kDzkD5o


そうだ。


やっぱり、違う。『天使同盟』は垣根をアレイスターの下へ辿り着かせるための『橋』じゃない。


『天使同盟』は、そして学園都市は、垣根帝督の帰るべき場所。
垣根の帰りを待ってくれている人がいる、大切な場所。


『協力してやる。 ――――――』

「―――――・・・・・・今度は嘘じゃねえ」


垣根帝督は怒りで沸騰しそうになっていた頭を冷静にする。
緩やかに息を吐き、全神経を研ぎ澄まして自分の状態をベストコンディションにする。


「守らねえとな」

「?」

580 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/08(日) 16:24:37.12 ID:23kDzkD5o


『未元物質』の仮面を装着した男は、垣根が何を言っているのか分からなかった。
だが伝わらなくていい。それは、垣根が自身に言い聞かせた言葉なのだから。


ようやく追いついた。『天使同盟』の皆の気持ちに、ようやく追いついた。


守らなければ。学園都市を、『天使同盟』を、ミーシャ=クロイツェフを。


そのためには、目の前にいるクソったれの猿真似野郎を叩き潰さなければならない。
そして垣根の帰る場所を腐らせている、アレイスター=クロウリーという魔術師を討たなければ。


垣根は目の前にいる仮面の男を睨んだ。状況は実に把握しやすい。
倒すべき『敵』を倒せば、居場所は守れる。

581 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/08(日) 16:25:05.90 ID:23kDzkD5o


「・・・・・・ふん。 何を決意したのか知らんが、そんな顔をしても無駄だ」


仮面の男は無機質な声でそう言った。
そしておもむろにサッと右腕を天に向かって上げる。


それを合図に、空中から、地上から、わらわらと何かが湧き出してきた。


「リクエストにお応えしようか、垣根帝督。 貴様は先ほど、
 『俺を蜂の巣にしてえならそのオモチャをあと一〇〇体は持ってこい』、と言っていたな?」


湧き出してきたそれは、さっき破壊したタイプと全く同じ駆動鎧、『ファイブオーバー』。
そして目の前にいる白と金の仮面を被った戦闘員だった。

582 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/08(日) 16:26:25.30 ID:23kDzkD5o


しかも『ファイブオーバー』や仮面の兵士は一人や一機ではなかった。
ニ、三、いや一〇、二〇・・・・・・・・・・・・。


「まぁ、今この周囲に配備されている『回収部隊(アンチツヴァイ)』は貴様の要望の一〇〇には満たないが・・・・・・、
 それでも五〇以上は参戦できる。 どうだ? これなら貴様も少しは喜んでくれるんじゃないか?」


気がつけば、垣根帝督の周りには『ファイブオーバー』と仮面の軍隊が彼を取り囲むような配置で
出現していた。目の前の仮面の男の言ったとおり、合わせて五〇以上の数が確認できる。


『回収部隊(アンチツヴァイ)』。


『未元物質』の仮面の兵士と『ファイブオーバー』のみで構成された、"『第二候補(スペアプラン)』回収部隊"。
垣根帝督を"回収"するためだけにアレイスターの直接指揮で組まれた即席の部隊だ。

583 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/08(日) 16:27:38.39 ID:23kDzkD5o


「わざわざ俺のためにこんなキャストを送り込んでくれたのか? 感謝しねえとな」

「必要ない。 貴様の脳さえ回収出来れば、貴様を殺しても構わないのだから。
 そして我々はもちろん、貴様を殺すつもりでいる。 この仮面があればオリジナルはもう必要ない」


そして仮面の男は止めと言わんばかりに、垣根にこう告げた。




「『Equ.DarkMatter』を装着した兵士が一〇〇〇人、そして駆動鎧『FIVE_Over. Modelcase_"RAILGUN".』が五〇〇機。
 ファイブオーバーに乗り込んでいるパイロットはもちろん全てが私と同じ、仮面の兵士だ。
 合計一五〇〇の『回収部隊(アンチツヴァイ)』が、貴様の命に照準を定めている。 
 一〇〇は連れてこいと言っていた貴様のリクエストに応えられて我々も非常に嬉しいよ、垣根帝督」




そう言われても、垣根帝督の表情に変化はなかった。
『超電磁砲』の"応用性"を捨て、"威力"に特化した駆動鎧五〇〇と、垣根の演算パターンを完璧に
再現できる『未元物質』の仮面を装着した兵士が一〇〇〇人。

584 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/08(日) 16:28:49.39 ID:23kDzkD5o


垣根帝督を回収するためだけに構成された即席部隊とはいえ、それはあまりにも豪華すぎる顔ぶれだった。
『回収部隊』だけで一国と戦争が出来るのではないかと思えるレベルの戦力だ。


「第一九学区に一五〇〇の勢力が揃ってやがるのか? どこにコソコソ隠れてやがるんだか」

「地下だよ。 さすがに全勢力を一斉に表へ出すことは出来ん。 学園都市の人間に目撃されても
 困るし、何より我々は暗部だ。 全勢力で一気に攻めるなどという派手な真似はしない」

「ハッ、あんだけ銃声や爆撃音を鳴らしまくっておきながら何を言ってんだ」

「それは我々だけが原因ではない。 何やらこの第一九学区にワケの分からん"ネズミ"が何匹か紛れ込んで
 我々の戦力を削いでいるとの情報が入っている。 ・・・・・・が、それは貴様には関係の無いことだ」


垣根は訝しげに眉をひそめた。
第一九学区に潜むネズミ。一方通行や風斬の事かと思ったが、彼らは『天使同盟』であって
アレイスターも予期せぬ来訪客ということはあるまい。

なら、誰か他に第一九学区に潜んでいる謎の勢力が・・・・・・?

585 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/08(日) 16:29:27.69 ID:23kDzkD5o


「さて、ではそろそろ回収させてもらうが、構わないな?
 申し訳ないが最期の一言を聞くほどの慈悲は持ち合わせていないのでな」


あちこちから奇妙な音が聞こえてきた。
ファイブオーバーが銃弾を装填する音、『未元物質』の仮面が白い翼を展開する音。

垣根はそれでも臆しない。その表情には、不敵な笑みしか見られなかった。




「来いよ猿真似野郎ども。 テメェらが俺の居場所を荒らすってんなら容赦はしねえ。
 お前らに垣根帝督ってのがどんなヤツかを教えてやるよ!!!」 

「攻撃開始」




第一九学区の一角から、色と音が消える。


垣根帝督が挑むは、五〇〇人の第三位と、一〇〇〇人の第二位。


彼はいつまで、第二位として君臨できるのか。

586 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/08(日) 16:37:59.89 ID:23kDzkD5o

Q. 第三次世界大戦時に投入された『未元物質』の仮面も第二位の演算パターンを
  完璧に再現できる物なのでは?

A. 覚えてません。ごめんなさい。なのでこのSSの設定では戦時中に浜面仕上を襲った仮面は
  あまり応用性がない未完成の仮面ということになっています。


さて、アレイスターという憎き敵を前に変な方向へ暴走しかけた垣根ですが、何とか留まりました。
そして彼を襲う凶悪な部隊は、第三位と第二位が大勢で襲ってくるようなとんでも部隊。
ただし敵の仮面野郎には、垣根が新たに手に入れたあの力が無いですね。

なのですが・・・・・・、実はこの『回収部隊(笑)』、この最終決戦では"その他大勢の雑魚"扱いです。
よくヒーロー物でボスとやる前に雑魚戦闘員と立ち回りますよね?つまりはそれです。
垣根帝督には申し訳ありませんが、彼にはこの使い捨て集団を相手してもらいます。

それと、ここから垣根帝督は一旦主軸から外れ、彼独自のストーリーが展開されていきます。
今まで散々な目に遭ってきた垣根ですが、独自のストーリーで思わずカッコイイと思えるような垣根帝督を
お送りできたらなと思っています。

次回更新は三日以内。

それでは、長々と失礼しました。

587 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/08(日) 16:38:46.78 ID:23kDzkD5o



                          【次回予告】



『ガブリエル・・・・・・俺の声が聞こえねェのか!! 俺が誰だかわからねェのか!!?』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・一方通行(アクセラレータ)




『うが、が。 う、ggggggggggggggg―――――――』
―――――――――――水を司る『大天使』・ミーシャ=クロイツェフ



588 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/08(日) 16:39:46.78 ID:TE2tZ0UL0

こんなに格好いい垣根は見たことない
589 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 16:40:34.66 ID:XAEhjl5Do
>>1乙!
カッキー格好いいよカッキー
590 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/05/08(日) 16:43:01.78 ID:sLaJhrgI0

雑魚のレベル高過ぎだな
591 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 16:44:20.22 ID:FsQs9pNko
かっきーマジかっけー

まぁ、オリジナルvs超大量コピーはむしろ勝ちフラグ
こちらはあまり心配しなくてよさそうww

次回は一方通行&ガブリエル
悪魔と言うか堕天使と言うか、多分そんな状態なんだろうけど、どうなる事やら……
592 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/08(日) 16:47:00.27 ID:sFod0sJT0
乙! 一国と戦争できる勢力を雑魚…… 天使同盟のレベルの高さが改めて分かるな……
593 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/08(日) 16:47:31.85 ID:4EUud+K0o

この垣根ならたかがコピーの量産品に負けるはずないと信じてる
594 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/05/08(日) 16:47:52.28 ID:/nCXGhEn0
乙乙
>>579の「今度は嘘じゃねえ」で
スラムダンクの最終巻を思い出したのは俺だけか?
595 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 17:08:14.05 ID://5r+SjDO
次回予告のガブリエルのところが「天使同盟の構成員」でなくなっている…だと……!?
596 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/05/08(日) 17:10:27.50 ID:QoZ0q9u1o
おっつ

むしろちょっとピンチになってから思わぬ応援が!
的な妄想をしてみた
597 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/05/08(日) 18:03:02.16 ID:785U3qGAO
だ!れ!か! ワ!ク!テ!カ!
止!め!て! w!k!t!k!
598 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 18:55:23.37 ID:uCA8ZEGio
おつん
垣根カッコいいよ垣根!!

>>595
うお、マジだ
ガブリエル……
599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/08(日) 19:04:29.01 ID:TXcGtjNfo
ARMSの最終決戦を思い出す展開で熱いぜ!
600 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 23:21:50.57 ID:kngXkxkSO
絶対能力進化計画:第一位が第三位を128人殺せばok
今回:量産系最雑魚キャラが第2位1000体と第3位500体とか

垣根がこれ一人で狩るだけでLevel6余裕だな
601 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/08(日) 23:43:54.81 ID:rK8+VBvV0

いやああああ垣根いやあああああかっこいいやああああああ!!
いやあああ・・・ガブリエルいやああああ・・・
602 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/08(日) 23:45:37.61 ID:rK8+VBvV0

いやああああ垣根いやあああああかっこいいやああああああ!!
いやあああ・・・ガブリエルいやああああ・・・
603 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/05/09(月) 00:26:17.02 ID:c7pE81md0
>>601-602

落ち着けwwww
604 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/05/09(月) 00:27:27.65 ID:c7pE81md0
>>601-602

落ち着けwwww
605 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 00:31:37.92 ID:e8+QvKhuo
もうダメだ気持ちはわかるがしばらく全員書き込むな
606 :TLB [sage]:2011/05/09(月) 00:45:22.90 ID:fMz1nNvf0
なんてカッコイイ垣根くン
相手の仮面なんて割っちまえ
607 :>>601・602 [sage]:2011/05/09(月) 01:33:22.18 ID:+eKuWyOY0
なぜか連投されてた。スマンカッタ
608 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 18:22:25.21 ID:CBD+Idv00
>>601-604

ワロタ
609 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2011/05/09(月) 19:31:08.31 ID:lM26VP/20
信じられないだろ……?
こいつ、ほんの少し前では能力全開で女風呂覗こうとしてたんだぜ…………
610 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/09(月) 21:53:03.50 ID:SFTFFmxUo
久々の連日投下です。
何だか二重投稿が多発していたようですね。私もそれで困ったことがあるのでわかります。
何なんでしょうかアレは・・・・・・

さて、>>609さんの言うとおり少し前は全身全霊で女湯を覗こうとしてた垣根が
だんだんイケメンに見えてきた前回の投下ですが、
今回は一方通行です。垣根同様彼も第一九学区のどこかにぶっ飛ばされました。

そこで彼は彼女を発見します。

そんな感じの展開で参ります。ではどうぞ

611 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/09(月) 21:54:51.55 ID:SFTFFmxUo


――――――――――――――――――――――


無造作に腕を振るうだけで、辺りのビルが吹き飛んでいった。


乱暴に翼を振るうだけで、地殻がめくれ上がり、烈風が巻き起こり、
第一九学区の商店街を瓦礫の山に仕立て上げた。


掌から『天使の力(テレズマ)』を発射するだけで、ズン!!!という爆発音と共に
その地点に大きなクレーターが出来上がった。


それが、大天使の力。ミーシャ=クロイツェフの驚異。


そして彼女は今、天使ですらなくなりかけていた。

612 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/09(月) 21:56:25.39 ID:SFTFFmxUo


「nfgheaghbvuう、ううsqfiugうううううぐnhwevb」


ノイズだらけの呻き声を上げながら、ミーシャはひたすら暴れ続けていた。
アレイスターの魔術によって吹き飛ばされて来た場所は、第一九学区と第四学区の
境界線近くの場所だった。

ロシアでの一方通行との接触と、『天使同盟』での生活で手に入れたミーシャの自我は、
もはや風前の灯火と化していた。わずかに残った自我の葛藤と、間もなく訪れる自身の崩壊の恐怖とが
ぐちゃぐちゃに混ざり合い、ミーシャは自分というものを保てなくなっていた。


結局、アレイスター=クロウリーは倒せなかった。結果、一方通行達を巻き込んでしまう事となった。
その自責の念の一押しもあり、彼女の『悪魔化』を促進していく。

身も心もボロボロになってしまったミーシャ=クロイツェフは、

613 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/09(月) 21:59:37.85 ID:SFTFFmxUo




「見つけたぞクソ天使。 ・・・・・・ったく、学園都市をこンなに荒しちまいやがって。
 これ誰が復旧費用出すンだァ? また俺に借金背負わせる気かよオマエは」




そんな声を聞いて、ピタリと破壊活動を止めた。


カツッ、カツッ、と突起物が地面を叩く音がする。靴底が地面を叩く音が、ミーシャの下へ近付いてくる。
ぐにゃぐにゃに歪んだ視界で、ミーシャはその音と声の正体を捉えた。

白よりも白い髪、白い肌。その白に浮かんでいる、真っ赤な眼光。
図らずもミーシャに自我というものを植えつけた張本人が、そこにはいた。


学園都市最強の超能力者(レベル5)、第一位の一方通行。


彼はミーシャから五メートル程離れた位置で歩みを止めた。
その体はアレイスターの攻撃によるものか、衣服は擦り切れ、露出している手や顔には
至る所に血が滲んでいた。

614 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/09(月) 22:01:54.37 ID:SFTFFmxUo


「帰るぞ、ガブリエル」


彼女の本来の存在を示す名を呼びながら、一方通行は言う。


「こンなところで暴れてたってしょうがねェだろ。 オマエはただでさえ目立っちゃいけねェってのに、
 これ以上俺達を困らせンじゃねェよ・・・・・・バカが。 おとなしく黄泉川ン家にでも向かってろ。
 アレイスターのクソ野郎は俺達でなンとかしておくからよ」


返事はなかった。ミーシャは両手で頭を抱えて呻くだけだった。
必死に何かに抗うように、背中から生えた水晶の翼を振り回して無差別に攻撃をする。


(ちくしょうが・・・・・・!!)


ミーシャの攻撃をギリギリで回避しながら、一方通行は下唇を噛んだ。
もう目の前の天使は一方通行すら見えていない、下手をすれば覚えてすらいないかもしれない。

ミーシャ=クロイツェフと呼ばれる天使が崩壊していってるのは、人間である一方通行にも一目瞭然だった。
『星の欠片』をどうにかすることで今のミーシャの状態も回復するとは思えなかった。

615 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/09(月) 22:03:36.59 ID:SFTFFmxUo


エイワスから、そしてアレイスターから聞いた話と、目の前の現実は完璧に一致していた。
もう、あの時のような、皆でバカをやって騒いでいたような日々には戻れないのかもしれない。

だとしたら、ミーシャはこのまま止まることはない。放っておけば『星の欠片』が消滅して
自身も消えてなくなるまで、こうして破壊行為を繰り返し続けるだろう。


ならば止めなければならない。それはつまり、本物の大天使と戦わなければならないという事だ。


「ガブリエル・・・・・・俺の声が聞こえねェのか!! 俺が誰だかわからねェのか!!?」

「うが、が。 う、ggggggggggggggg―――――――」


ちょろちょろと飛び回るうるさい蠅を追い払うようにミーシャは一方通行に向かって翼を振るった。
狙いがめちゃくちゃだった。爆発的に伸びた氷の翼は、一方通行には当たらず、明後日の方向へ飛んでいった。

616 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/09(月) 22:04:26.68 ID:SFTFFmxUo


だがその翼は一〇階建てのビルを突き破り、その瓦礫が地上にいる一方通行を押し潰そうと
雨のように降ってくる。

一方通行は首元に装着してある電極チョーカーのスイッチを弾くように切り替え、
背中に四本の竜巻を接続して瓦礫を周囲に吹き飛ばした。


レベル5第一位の超能力、『一方通行(アクセラレータ)』はこの世に存在するあらゆるベクトルを操作する。
そんな反則級の能力を用いても、果たして大天使にたった一人で立ち向かえるのか。


(クソが・・・・・・とりあえず今は錯乱しまくってるこのバカを止めるしかねェ。
 だが出来るか? ロシアじゃ一度こいつに殺されかけてる、この能力だけで
 こいつの暴走を食い止める事なンざ出来るのか?)


一方通行が決断に迷っていると、ふとミーシャの様子が変化した。
頭を俯かせ、猫背になり、だらりと両腕を下げた状態のまま動かない。

617 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/09(月) 22:04:58.32 ID:SFTFFmxUo


そしてゆっくりと一方通行の方を向くと、彼女の背中にある水晶の翼が一瞬で膨張し、展開した。
一〇〇メートル以上はあろうかというその巨大すぎる翼は、この学園都市に存在する全ての『水』に
接続して展開させているらしい。

その影響か、学園都市全域でビリビリと不安を煽るように低く重い震動が響いた。


「cvbtihbx攻撃tohrpf対象apfghb捕捉xaawpdi」


ゴォッッ!!!、という見えない殺意が一方通行とミーシャの周りに広がっていった。
呼吸が出来なくなるなるんじゃないかというほどの圧迫が一方通行の胸を襲う。

ロシア戦でも見せた戦闘モード。ミーシャは完膚なきまでに一方通行を殲滅するつもりのようだ。


「ガブリエル・・・・・・」


迷っている暇など無かった。一方通行はチョーカーのスイッチをオンにしたままミーシャの方へ
体を向けると、右腕に装着している杖を収めて背中の竜巻を更に膨張させた。


こうなったらもうやるしかない。味方の援護が望めない以上、たった一人で天使に立ち向かうしかない。
アレイスターの動向も気になるが、一方通行の、『天使同盟』の目的はあくまでミーシャの救出だ。

618 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/09(月) 22:05:31.14 ID:SFTFFmxUo


「btjoh貴方、dkvqeuda」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・クソッ」


ミーシャは全身をガクガクと震わせながら、一方通行に突撃する前に一言告げた。




「逃、げて」

「クソったれがァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!」




それは、第三次世界大戦のリプレイだった。
学園都市の超能力者と大天使ミーシャ=クロイツェフの激突。


しかし、両者が胸に秘める想いは、あの時とはまるで違っている。

619 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/09(月) 22:06:56.59 ID:SFTFFmxUo


――――――――――――――――――――――


「はーまづらぁ!!! テメェもっとスピード出せコラ!! このままじゃ追いつかれちまうだろうが!!」

「アクセル底まで踏んでるっつーの!! ちくしょう・・・・・・人がいい気分で昼寝してたら
 ワケの分かんねえ爆発が起きてテメェらからの呼び出しがかかって、
 今じゃこうして『警備員(アンチスキル)』とカーチェイス!!? どこのアクション映画だっつの!!」

「はまづら、きぬはたから通達。 このまま真っ直ぐ進んで二つ目の角を左に曲がれば振りきれるって。
 私達の乗ってる車の大きさならギリギリ入れる道幅の抜け道がある」

「だークソったれ!!! お前らしっかり掴まってろよ!!!」


同じ頃、学園都市の第六学区では小さな軽自動車一台と『警備員』の武装車両数台が
盛大な鬼ごっこを繰り広げていた。
今現在、第六学区には人や車は全く通っていない。それはこの騒ぎが原因でもあるが、
何より昨日、第一九学区と隣接する学区には全て避難指示が通達されていたからだ。

620 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/09(月) 22:08:12.67 ID:SFTFFmxUo


軽自動車は明らかに第一九学区に向かって走っていた。『警備員』が武装車両を持ち出して
追いかけてくるのも当然である。


「また爆発音! やっぱり第一九学区じゃ今、間違いなく『祭り』が行われてる。
 学園都市の『闇』どころの匂いじゃないでしょこれは!!」

「なんでお前はこの状況でそんなハイテンションを保っていられるんだ!?
 第一九学区がヤバすぎる状況になってんのは分かってんだろうが!!?」

「だからこそこのビッグウェーブに乗らなきゃなんねえっつってんの!
 ちんたらと地下シェルターなんぞに避難してられっか! こんな時の『アイテム』だろうが!!」


軽自動車の中でギャーギャーと喚く男女の声が響く。
運転席には浜面仕上、助手席には滝壺理后。そして後部座席には超能力者(レベル5)第四位、『原子崩し(メルトダウナー)』の
麦野沈利が居座っていた。

621 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/09(月) 22:09:07.49 ID:SFTFFmxUo


彼らは『アイテム』という名の組織。『アイテム』はかつて学園都市の暗部として活動していた組織だが、
第三次世界大戦以降は『闇』から解放され、学園都市で平和な日々を過ごしていた。

過ごしていたはずなのだが。


「麦野ォ!! もしこれで俺達全員ブタ箱行きとかになったらゼッテー許さねえからな!!」

「そうならねえようにテメェがここで踏ん張らなきゃならねえんだろうが!!
 滝壺の前だ、しっかり男を魅せてちょうだいよ」

「大丈夫、私はこの状況で涙目になってるはまづらを応援してる」


ドンッ!ドンッ!、と背後に迫る武装車両から乾いた銃声が何度も鳴り響く。
浜面達の乗る軽自動車のタイヤを撃ち抜いて無理やり停止させようとしているのだ。

後部座席にいた麦野が窓から身を乗り出した。そしてじっくりと武装車両の位置を把握すると、
その掌から不健康そうな青白い閃光が迸る。

『原子崩し』。電子を『粒子』でもない『波形』でもない『曖昧なまま固定された電子』として操る能力。
それによって射出される光線は、いかなる遮断物をも濡れた和紙のように突き破る威力を持つ。

622 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/09(月) 22:10:29.77 ID:SFTFFmxUo


麦野はその光線を道路へ目掛けて発射し、爆破させることで武装車両をその勢いで横転させてしまった。


「これなら人死も出ないでしょ」

「俺達のワガママで『警備員』をぶっ飛ばすなよ!! 顔見られてねえだろうな!?
 そうなったらマジで俺達、学園都市から逃げ出さなきゃならねえハメになるぞ!?」

「その学園都市が今、滅びようとしてるんだけど?」


そうやって口論を交わす二人を無視して、助手席にいる滝壺は携帯電話を耳に当てたままボーッとしていた。
彼らと同行していない『アイテム』の構成員、絹旗最愛の指示を聞いているのだ。


「はまづら、ここでインド人を右に」

「よし・・・・・・!!」


恐らく絹旗はどこかでパソコンでも弄って学園都市の全体図を見て指示を出しているのだろう。
昨今、『天使同盟(アライアンス)』なる謎の組織の手により『警備員』と『風紀委員(ジャッジメント)』の
データベースがハッキングされているわけだが、学園都市のマップくらいならアクセス出来るようだ。

浜面は電話越しの絹旗の指示に従い、素晴らしいハンドルさばきで軽自動車を左折させる。
『警備員』の武装車両も同じように左折するが、その瞬間に麦野の光線攻撃で吹き飛ばされてしまった。
これで残りの武装車両はニ、三台ほど。どうやら無事に第一九学区に到着できそうな流れだった。

623 :左折じゃない、右折です。 申し訳ない  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/09(月) 22:11:52.50 ID:SFTFFmxUo


軽自動車は第六学区の遊園地に強引に侵入し、尚も爆走し続ける。
助手席の滝壺が窓ガラスに貼り付きながらこんなことを言い出した。


「この遊園地、この前はまづらとあくせられーたとどらこの皆で一緒に遊んだとこだよね」

「確かにそうですけどね滝壺さん、今それどころじゃないんですよ!!」

「はぁ? 一方通行? 遊園地で遊んできたってのは滝壺から聞いてるけど、
 第一位も一緒だったの? 意味わかんねえ」


言いながら麦野は残りの武装車両を全て片付けてしまった。
連射が聞かないその能力の性質上、だいぶ時間を割いてしまったがどうにか撃退に成功する。

624 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/09(月) 22:13:05.46 ID:SFTFFmxUo


「あくせられーた達は今なにしてるのかな」

「ロシアにいるって昨日電話があったけど・・・・・・さすがにまだ戻ってきてねえだろ。
 あ、じゃあ第一九学区の騒ぎに一方通行達は関わってねえって事か・・・・・・。
 やっぱり俺の考えすぎだったのかな」

「何が?」


浜面は難しい顔をしながら麦野の問いに答える。


「今起きてる第一九学区の騒ぎ。 俺、もしかしたら『天使同盟』ってヤツらの
 仕業じゃねえかって漠然と思ってたんだよな」

「そりゃお前、この学園都市に住むほとんどの人間がそう思ってんでしょ。
 私もそうだし、あのハッキング事件があって次の日にこれだ。 ほぼ間違いないね」

「いやそうなんだけどさ、その『天使同盟』って一方通行達のことじゃねえかって思ってたんだ。
 根拠も何もねえただの勘だけどな。 ほら、滝壺は覚えてねえか? 一方通行が俺に偽装パスポート
 作れって言ってきた時に俺達に見せてきた写真。 あれにロシアで出た天使も写ってたろ」

625 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/09(月) 22:14:43.61 ID:SFTFFmxUo


「あ・・・・・・、うん。 そうだね」

「何の話?」

「いやあ・・・・・・説明すると長くなるんだけどさ、とにかくこの第一九学区の件は一方通行が関わってると思ってた。
 でもあいつ今ロシアにいるんだよな・・・・・・それが嘘ならまだ考えられるけど、本当なら一方通行達はこの件に
 関わってない。 あいつは『天使同盟』じゃないって事になるんだ。 あー・・・・・・でも電話があったのは
 朝だからな。 ロシアから日本って最速でどれくらい掛かるモンなんだろ?」


驚くべきというか当然というべきか、浜面仕上は一方通行が『天使同盟』の一人だという答えに"辿り着きかけていた"。
しかし彼はその推理を自ら否定する。一方通行は未だにロシアにいるのならこの第一九学区の事件は引き起こせない、と。
一方通行達が関わっていたらどうなのかと問われたら浜面も答えようがないだろうが、彼はあと少しで『天使同盟』の
全貌を知りうる存在となるところだった。

普段は頭が悪そうに見えるこのチンピラも、思わぬところで頭が働いているのだ。


「ワケの分からねえ話はいいからさ。 さっさと第一九学区に向かってよ」

626 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/09(月) 22:16:04.70 ID:SFTFFmxUo


「はいはい。 つかこの遊園地抜けて少し走ったらもう到着するぞ。
 "戦闘準備"は出来てんのか?」

「大丈夫」


滝壺の言葉を最後に、車内にしばしの沈黙が訪れた。
戦闘準備。第一九学区内では今、とても穏やかでない事が起きていると三人は理解していた。


「よっしゃ。 じゃあ突入するぞ!!」


浜面は勢い良く軽自動車を真っ直ぐに走らせる。第一九学区まで残り数メートルといった距離。


そして、




ガシャァァンッッ!!!!、という交通事故が起きたような衝撃音と共に、彼らの乗る軽自動車が急停止した。



627 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/09(月) 22:17:41.53 ID:SFTFFmxUo


「が、はぁ・・・・・・!!?」


浜面はハンドルから飛び出てきたエアバッグに顔を埋めながら呻き声を上げた。
突然全身を襲った衝撃に悶えながらも顔を上げ、直ぐ様隣にいる滝壺に視線を向ける。


「大丈夫か!?」

「う・・・・・・、うん。 なん、とか・・・・・・」

「はーまづらぁ・・・・・・私の心配もしろよコラ」


どうやら滝壺も麦野も大怪我は負っていないようだ。浜面は安堵の息を吐く。
しかしなぜ急に車は急停止したのか?衝撃音からして何かに真正面からぶつかってしまったようだが・・・・・・。

三人はぐしゃぐしゃになった軽自動車から何とか抜け出し、外へ出る。
彼らの目に映った光景は、空爆でも受けたかのような惨状の第一九学区と、


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なん、だこれ? ・・・・・・"壁"・・・・・・?」


あらゆる物から第一九学区への侵入を妨げるようにそびえ立つ、オーロラのように輝く半透明の光のカーテンだった。

628 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/09(月) 22:26:31.76 ID:SFTFFmxUo


今回はここまでです。
一方通行の必死の叫びも虚しく、ミーシャとの戦闘に突入してしまいました。
最終章でミーシャと再び戦うという展開は最初から決めていました。
こうすることでアレイスターと『天使同盟』の戦力差が均一になると思ったので。

・・・・・・実際はアレイスター一人でもべらぼうに強かったですけど。

そして唐突に登場した浜面仕上と愉快な仲間たち。
麦野沈利はこのSS二度目の登場ですが、果たして皆様は最初に登場した時の話を覚えていらっしゃるでしょうか・・・・・・ww

彼らのように、学園都市から地下シェルターに避難していない大馬鹿者はまだ何人かいます。
それら全てが第一九学区に向かっているわけではありませんが、アイテムの連中は門前払いを喰らいましたね。
例のツンツン頭はどうするつもりでしょうか。


次回更新は三日以内。


それでは、ありがとうございました!

629 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/09(月) 22:27:12.91 ID:SFTFFmxUo



                          【次回予告】



『・・・・・・私みたいな化物が、人を好きになっちゃいけないっていうんですか・・・・・・』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・風斬氷華




『幻想は人間とは相容れない。 立場を弁えたまえ、木偶人形』
―――――――――――学園都市統括理事長・アレイスター=クロウリー



630 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県) [sage]:2011/05/09(月) 22:31:53.63 ID:x+Eml8vVo
きてる?
631 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/09(月) 22:35:51.17 ID:Ed6LPWr90
乙! 門前払いってことはアイテムはもう出ないの?
632 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/09(月) 22:38:17.46 ID:TPF3J+Mf0
超乙です!
今日はいろんな良スレの投下があって嬉しいww

それにしても次回予告の風斬のセリフ……まさかフラグか!?
そしてアレイスターこの野郎……
一方さんじゃなくても、神浄さんでも馬面でもいい。早くアイツをぶん殴ってやってくれ!
633 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/05/09(月) 22:46:12.84 ID:H3hHyQVoo
乙!

避難しない大馬鹿者は厄介ごとに首を突っ込むタイプの人(達)ですね……
むぎのんは偽装パスポートのとき以来の出演だ

次回も期待してる
634 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/05/09(月) 22:46:29.80 ID:kipz+/fAO
乙です!!
鼠の正体が気になるぜ…。
635 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 22:48:27.75 ID:MWv8O2tU0
とどのつまり、乙です
さあて、ここからどうハッピーエンドに持っていくかが作者の腕の見せ所だ
636 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 23:08:53.15 ID:oxDaxWh6o
熱い熱い熱いぜ! このビックウェーブに乗り遅れるんじゃねえぞ野郎ども!
続きが楽しみすぎる。乙です!
637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/09(月) 23:11:14.91 ID:KnWwpOAio


一方さんは能力全開でもミーシャに全然及ばない感じだったが大丈夫かいな

第二位がぼこぼこにされるような戦場に第三位以下が来てもな……
いくら序列は戦闘能力の高低ではないとはいえ
638 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2011/05/09(月) 23:46:23.53 ID:lM26VP/20
>『・・・・・・私みたいな化物が、人を好きになっちゃいけないっていうんですか・・・・・・』
あかん……あかんでぇ氷華たん…………
それは死亡フラグにいたる第一歩やでぇ……
639 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 23:52:58.76 ID:mlwOwwMfo
シリアス展開だからこそ、インド人を右に左折がツボに入ってしまった…
640 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/10(火) 00:14:31.84 ID:pujIKm2IO
アレイスター側にミーシャを入れて戦力の均衡が取れるということはやっぱエイワスやべぇんだな
641 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/10(火) 00:21:38.96 ID:PhIvJifB0
鼠って浜面達みたいなシェルターに逃げない大馬鹿ものたちってて事でOK?
642 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(佐賀県) [sage]:2011/05/10(火) 01:40:01.88 ID:TygeCBT9o
エイワス以外の天使同盟全員<アレイスター
エイワス以外の登場人物全員(アレイスター含む)<エイワス
とかじゃない?
643 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/10(火) 02:06:19.37 ID:hBQceW2B0
戦力を削ってるって言ってたからネズミは必ずしも学園都市の人間じゃないかもな
ホラ、あの金髪ロリババァも不穏な動きをしてたし、第一能力を使っての戦闘となるとダークマター仮面にそう勝てないのでは
644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/05/10(火) 05:07:34.85 ID:DuWlaeJBo
インド人を右にするのはカウンターだから左折で間違ってないぜ!
645 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/11(水) 22:16:40.27 ID:C1VtU0hHo
>>644
混乱してましたぜ、すまぬです

そんなわけで今回も投下です。
前回は情緒不安定なミーシャを止めるべく立ち向かう一方通行。
そんで門前払いを喰らってもうたアイテムの皆さんをお送りしました。

では、行きます!


>>631
あともう一回くらいは出番あったかな・・・・・・と思います
646 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/11(水) 22:17:41.39 ID:C1VtU0hHo


――――――――――――――――――――――


何かを守るためなら、誰かを守るためなら、人は強くなれると知っていた。


「ん?」


上条当麻という少年は、誰かを守るためにその右手を握り締め、
どう考えても太刀打ち出来そうもない苦難に、何度も立ち向かっていった。

その結果、彼は幾度と無く人を救い続けていた。


「第一九学区全周囲に遮断術式の展開・・・・・・いや、これは『魔術』ではないな。
 エイワスの仕業か。 まったく・・・・・・面倒なことをしてくれる」


一方通行と呼ばれる少年も、一人の少女を守り続けてきた。
その少女のためなら例え自身の命が脅かされる状況でも、彼はがむしゃらに、不器用に走り続けた。

そして一方通行には今、守らなければならない人が大勢いる。

647 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/11(水) 22:18:35.34 ID:C1VtU0hHo


だから彼女、風斬氷華も大切な人を守るために戦う決意をした。
ミーシャ=クロイツェフ。水を司る大天使を守るために、一方通行という、彼女に居場所を提供してくれた
少年を守るために。それだけじゃない、この学園都市にいる人間を、全ての大切な人を守るために、
風斬氷華は苦難に立ち向かった。


そうすることで、人は強くなれる。そんな例を何度も見てきた風斬だからこその決断だった。
何かを守るためなら、人は誰だって主人公になれる。


そのはずなのに、


「これでこの第一九学区に侵入する術は上空から降りてくるという手段しか無くなったわけか。
 エイワスめ、『神浄』の成就を妨害するつもりだな。 ・・・・・・さて、それで。 君はどうするかね?」


そのはずなのに、


「ヒューズ=カザキリ」

648 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/11(水) 22:19:13.72 ID:C1VtU0hHo




なんで、自分は地面に倒れ伏せている?




「・・・・・・・・・・・・あ、・・・・・・ぅぐ・・・・・・」


圧倒的だった。あまりにも、理不尽なまでに、アレイスター=クロウリーという人間は強大無比だった。
魔術なのか能力なのかも分からない。仕組みも原理も法則も分からない。意味不明、理科不能の攻撃によって
風斬は為す術も無く沈められてしまった。

AIM拡散力場によって構成されている風斬氷華の体は、至る所に亀裂が入り、穴があき、陶器のように割れていた。
風斬は目の前に落ちているひび割れたメガネを緩慢な動きで手に取ると、手を震わせながらそれをかける。

649 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/11(水) 22:20:06.66 ID:C1VtU0hHo


「ふむ、まだ動けるのか。 まさか虚数学区が学園都市全体に展開しているのか?
 虚数学区を動かした覚えはないのだが・・・・・・ふふ、これもエイワスの仕業かな?
 それとも、君の『心』とやらが抱く『想い』から力が湧いているのか」


アレイスター=クロウリーが立っている場所には、綺麗な半球状のクレーターが出来ていた。
以前に彼の行使した魔術で一方通行、垣根帝督、そしてミーシャ=クロイツェフを散り散りに吹き飛ばした時に
発生したクレーターだ。


つまりそれから、風斬氷華との戦闘が始まって以来、"アレイスターは一歩もその位置から動いていないのだ"。


「見たまえ、ヒューズ=カザキリ」


周囲一帯を撫でるように、アレイスターは片腕をゆっくりと動かす。

650 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/11(水) 22:20:48.78 ID:C1VtU0hHo


「小癪だとは思わんか? エイワスの仕業だよ。 第一九学区周域の『境界線』を操作しているんだ。
 これでこの第一九学区と外界は完全に遮断された。 見た目はただ輝く黄金のカーテンが
 敷かれているだけのように見えるが、これで外部から第一九学区への干渉は出来なくなってしまった。
 『回収部隊(アンチツヴァイ)』を予めここに配備しておいて良かったよ」


風斬はアレイスターの言葉など聞いていなかった。荒い呼吸を繰り返しながら、
ボロボロになった手で地面を押さえつけ、よろよろと立ち上がる。


「ただ不思議なことに、エイワスはこのカーテンをドーム状に展開していないんだ。
 私はそこがどうも引っかかる。 エイワスならこの第一九学区という空間そのものを
 異世界に仕立て上げ、この世から隔離してしまうくらいの芸当は出来るはずなのに。
 この私の制御や、ホール=パール=クラアトの召使としての立場から一時的に離れたことで
 エイワスは自由の身であるはずだ。 それくらいの事が出来なくてはおかしい。
 なのになぜ境界を不完全なまま切り離し、放置する・・・・・・?」


風斬に尋ねているとは思えなかった。実際、そんな事を聞いても風斬は一割も内容が理解出来ていない。
そしてアレイスターも、風斬の方を向いていなかった。興味も無いものには目を向ける価値もないとでも言いたげに。

651 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/11(水) 22:22:30.08 ID:C1VtU0hHo


風斬は乱れた呼吸を強引に整え、そして右手を何かを握るような形に作る。
彼女の右手の内部から強烈な光が発せられると共に、そこに彼女の背中から生えている紫電の翼と
同じ材質で構成された雷光の剣が出現した。

ヒューズ=カザキリ。風斬氷華に追加モジュールを上書きする事で出現する人工天使。
だが以前から彼女の意志だけでヒューズ化する事が可能な状態にある。

その瞳と頭上に浮かぶ天使の輪は虹色に輝き、その長い髪は現在、美しい金色に染め上げられている。
人工天使とはいってもその姿だけを見れば、誰もが天使であると頷くであろう彼女も、
今はアレイスターの手によって目を覆いたくなるようなボロボロの姿に成り果ててしまっていた。


それでも剣を握り立ち上がる風斬に対し、アレイスターは呆れ果てたように深い溜息をついた。


「・・・・・・・・・・・・まだ私に立ち向かうか、"人形"」

「・・・・・・わ、私・・・・・・は・・・・・・、・・・・・・人形じゃない・・・・・・」

652 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/11(水) 22:23:24.74 ID:C1VtU0hHo


声を出すのも辛そうで、しかし風斬は続ける。


「私は・・・・・・化物かも知れない。 人間じゃない事は・・・・・・とっくに理解しています。
 でも・・・・・・それでも・・・・・・そんな私を受け入れてくれる人達がいるんです」

「ふふ。 上条当麻と禁書目録、そして一方通行か?」

「その三人だけじゃありません・・・・・・、他にも沢山、私の事を人間のように扱ってくれる
 人達に出会えました。 世界はこんなにも広いんだって・・・・・・知ったんです」

「人間のような口を聞く。 愉快だな」


アレイスターはようやく風斬のいる方へ振り返り、そして嘲笑う。


「それで、その人間たちの"虚言"に励まされ、それを糧にして私に立ち向かうと
 言うのか。 人形」

653 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/11(水) 22:24:16.24 ID:C1VtU0hHo


「私は人形じゃない・・・・・・!!! それに、皆がかけてくれた私への言葉は嘘なんかじゃない!!
 今の発言、取り消してください・・・・・・!!」


虹色の瞳に涙を浮かべながら風斬は叫んだ。化物であっても人形じゃない、
そしてこれまでの旅で出会ってきた"友達"全てを侮蔑するようなアレイスターの言葉に激怒する。

しかしアレイスターの表情から挑発するよな薄い笑みが消えることはなかった。


「取り消す? 事実を言ったまでなのにか? おかしな事を言う」

「あなたが皆の・・・・・・私の友達の何を知ってるって言うんですか!!」

「ヒューズ=カザキリ。 君は人形だ」

654 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/11(水) 22:24:52.78 ID:C1VtU0hHo


あくまで風斬氷華は人形だと言い張るアレイスターに、風斬は歯噛みする。


「確かに君はこれまでの、『星の欠片』を巡る旅で数々の人間と出会い、
 触れ合い、そして親睦を深めていったのだろう。 そこは否定しない」


アレイスターはその手に持つ銀色の杖、『衝撃の杖(ブラスティングロッド)』を
指でツツー・・・・・・と撫でながら続ける。


「だが考えてもみたまえ。 果たしてその旅で出会った"友達"の言葉に
 嘘偽りは一切無いと断言できるのか? それこそ、君はその人間たちの事を
 全て理解しているわけではないだろう? 気遣い、同情、もしくは拒否感から
 生まれた、ただの虚言である可能性を否定することなど出来はしないんだ」


風斬は下唇を噛みながらアレイスターの顔を睨みつける。

655 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/11(水) 22:25:37.29 ID:C1VtU0hHo


「・・・・・・そんなこと・・・・・・!!」

「化物とは所詮、そういう物なのだよ。 この世界の常識と異常は決して相容れない。
 表層では仲睦まじく交流しているように見えても、深層ではそうではない。
 そうでなくとも君はこの学園都市で私が作った人形だ。 人形は人間から一方的に
 愛される事はあっても、人形の方から人間を愛するという事は決してあり得ない」

「な、何が言いたいんですか・・・・・・・・・・・・!!」

「君が人間に送る笑顔など、相手には決して届きはしない。
 それが嫌悪であっても"好意"であっても、な。 君の好意は主に一方通行に
 注がれているようだが・・・・・・・・・・・・、」


アレイスターは嘲笑しながら言った。




「君の想いが実ることは無いよ。 ヒューズ=カザキリ」




風斬氷華は何も言い返す事が出来なかった。

656 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/11(水) 22:26:52.83 ID:C1VtU0hHo



化物だからいくら愛想を振りまいても、それが相手の心に響くことはない。
例えそうではなくても、人形だから自分の気持ちが相手に届くことはない。
人形は人形らしく、ただ一方的に相手に愛され、飽きたら捨てられる。


「それが君という存在だ」


悔しかった。

これまで過ごして自分の思い出を、あたかも知ったように否定してくるアレイスターの言葉が悔しかった。

そして何より、何も言い返せないでいる自分が一番悔しくて、惨めだった。


「まぁ・・・・・・これはさっさと君に目を覚まして欲しいという私の願いでもあるのだがね。
 君はこの学園都市に、そして私の『プラン』にとっても重要な存在だ。
 いつまでも"夢"を見続けて幻想に浸かったままでいられては私としても困る」

657 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/11(水) 22:27:30.16 ID:C1VtU0hHo


自覚はあった。もしかしたらいくら自分が一生懸命に愛想良くしていても、
相手は何にも感じてくれはしないのではないかと。

例え一人の人間を愛したとして、その人間に一生懸命気持ちを送っても、
振り向いてはもらえないんじゃないかと。

自分が化物である事はとうの昔に理解している。そしてその現実もとっくに受け止めて、背負っている。

けれど、それでもわずかに、風斬の心にはその決心が揺らいでしまう『隙間』があった。
アレイスター=クロウリーはそこを突いたのだ。


いつまでも純情な少女が見るような夢から覚めて、この学園都市に"人形"として留まってもらうために。


あまりの悔しさに、風斬の瞳からはいつの間にか涙が流れていた。
あれだけ散々化物である自分を受け入れてくれた人達の支えがありながら、
こうしてアレイスターに言い包められてしまっている自分の現状が情けなさ過ぎて。

658 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/11(水) 22:28:25.43 ID:C1VtU0hHo


「・・・・・・私みたいな化物が、人を好きになっちゃいけないっていうんですか・・・・・・」

「『胡蝶の夢』に例えようか。 果たして人間と交流し人間に恋をする君が現実なのか、
 それともこの学園都市に人形として、化物として縫い付けられている君が現実なのか。
 どちらが夢で、どちらが現実なのか。 私は人間と交流し、人間に恋をする君が
 夢で、人形としての君が現実なのだと言っている。 そしてそれは真実だ」

「ど、どっちも現実です・・・・・・!! 私自身じゃないあなたに、私の何が分かると言うんですか!?」

「分かるさ」


出来の悪い機械人形にいちいち説明をしなければならないのか、とでも言いたげな
仕草を見せながらアレイスターは告げた。




「君は私が作った人形なのだから。 "この時代"では君はただの幻想でしかない。
 幻想は、人間とは相容れない。 立場を弁えたまえ、霞んだ木偶よ」



659 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/11(水) 22:29:25.32 ID:C1VtU0hHo


風斬氷華は膝から崩れ落ちた。虹色に輝いていた瞳からも光が消え、天使の輪も消失し、
背中から生える大小様々な雷光の翼も、学園都市の空に吸い込まれるように霧散していった。

結局、人形は持ち主には歯向かえないのか。いくら人形がああだこうだと喚いたところで、
その主が人形を縛り付けてしまえば全く動けなくなる。

それと同じことを、風斬はたった今アレイスターにしてやられた。
死刑宣告を喰らったも同然だった。今はただこうして存在出来てはいるものの、
アレイスターを討たない限り風斬はこの戦いが終わったら元の持ち主の下へ帰ることになるだろう。

そうなればもう、皆には会えない。旅で出会った数多くの友達とも、上条当麻ともインデックスとも、
エイワスとも垣根帝督とも、ミーシャ=クロイツェフとも。

一方通行とも、二度と会えない場所に帰されることになる。


「悲しむな、ヒューズ=カザキリ。 その悲しみすら、人形である君には必要のない物だったんだ。
 これは私の落ち度だな。 申し訳ないと思っている」


言いながら、アレイスターは『衝撃の杖』を風斬の方へ突きつける。
それを受けても風斬はひび割れた地面にしゃがみ込んだまま、ピクリとも動くことはなかった。

ただその瞳から宝石のように流れる涙と、小さく鳴り続ける嗚咽だけが、壊れた機械のように繰り返されるだけだった。

660 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/11(水) 22:31:11.61 ID:C1VtU0hHo


『衝撃の杖』の中心部が激しく発光する。そこに込められた魔力は、
魔術師が見たら誰もが絶句するような凄まじく洗練された大量の魔力だった。


「今しばらく、虚数学区に帰っていたまえ。 そしてそこで自分自身という存在が
 どういうものなのか、永い時間を掛けて見つめ直すといい」

「あ、・・・・・・イヤ・・・・・・。 イヤだ・・・・・・・・・・・・」


ふるふると首を振るも、風斬はもはや抵抗を見せなかった。
星のように輝く『衝撃の杖』の先端を、ただただ見つめることしか出来なかった。


「せめてもの慈悲だ、」


口ではそう言うが、アレイスターの表情に慈悲など欠片も見受けられなかった。
彼の顔にはフラットながらも、その中に愚かで惨めで、出来の悪いガラクタ人形を見下すような表情しか張り付いていなかった。

661 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/11(水) 22:32:00.74 ID:C1VtU0hHo


そして、




「せめてこの一撃で、今までの想い出が全て消え去るよう祈っている」

「"テメェが消えろ"」




ゴシャァァァァァァッッ!!!!!!!!!、という耳を劈くような炸裂音と共に、
風斬の視界は真っ白に染め上げられた。


「え・・・・・・・・・・・・?」

662 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/11(水) 22:32:54.78 ID:C1VtU0hHo


彼女の視界を覆っていた白はすぐに風と共に消え去っていった。
次に風斬の目に映った光景は、ヒュンヒュンと風を切りながら飛んでいく『衝撃の杖』と、
何らかの防御術式でも発動したのか、全身を金色のバリアのようなものに包んでいるアレイスター。


そして風斬が背後を振り向くと、そこには以前どこかで見たことのある『水晶のような氷で出来た帆船』と、




「ハッアァーイ、アレイスター。 こうして直に会うのは初めてよねえ?
 あーいやいや、自己紹介は必要ないわよ。 そのクソみてえなツラ見たら
 一発でアンタだってわかっちゃったから♪」




"少し前にロシアで別れた時と同じ"、ブラウンのロングスカートに細身の白いダウンジャケット。
綺麗な亜麻色のショートヘアが風に靡き、その舌の先に付けられている鎖の先には帆船と同じ
水晶の十字架がぶら下がっている。

663 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/11(水) 22:33:50.72 ID:C1VtU0hHo


「賊が。 今更私に何の用だ?」

「そのスッカラカンの頭で考えてみろクソ魔術師。 私がここに来る理由なんて
 たかが知れてるでしょうが」

「ふ。 私の首でも取りに来たか」

「"友達"ってのを助けに来たんだよクソボケ」


『前方』のヴェント。ロシアで別れたはずの"友達"が、アレイスター=クロウリーに
『女王艦隊』による攻撃を仕掛けたのだ。


「ヴェント・・・・・・さん・・・・・?」

「よう"風斬"、三〇分ぶりくらい? 相変わらずメソメソしてやがんなぁアンタは」


ヴェントは第一九学区の道路に氷の帆船を現出させたまま、ツカツカと風斬の方へ歩み寄ってきた。
風斬は一瞬、幻ではないかと疑ったが、この威風堂々たる態度、化粧が無くなりより少女らしくなった顔立ち、
そして相変わらずの乱暴な言葉づかい。


間違いなく、ヴェントは学園都市に現れていた。

664 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/11(水) 22:35:32.92 ID:C1VtU0hHo


ヴェントは舌先からぶら下がっている鎖をジャラリと鳴らしながら苦笑する。


「ハッ、独立国同盟に居たヤツらには何も言わずにここまで来ちゃったわ。
 これ終わったら電話貸してくんない? あんなヤツらでも、一応世話にはなったしね」

「え、あ、はい。 ・・・・・・って、そんな事言ってる場合じゃないです!」


風斬はゴシゴシと涙を拭って慌てながら立ち上がった。
なぜ学園都市にヴェントが来ているのか。間違いなくロシアで別れたというのに。
風斬は未だに自分の目を疑いながらヴェントに問う。


「ど、どうしてヴェントさんがここにいるんですか・・・・・・?」

「あん? 魔術師が学園都市に来ちゃいけねえ決まりでもあんの?」

「そうじゃなくて・・・・・・ヴェントさんはロシアにいたはずじゃ・・・・・・!?
 どうやって学園都市に来たんですか?」

「アンタらのとこにいる金色の音速直行便に学園都市行きのチケットを発行してもらっただけ」

665 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/11(水) 22:36:25.17 ID:C1VtU0hHo


ヴェントの言葉の意味が分からなかったが、やがてそれはエイワスにここまで連れてきてもらったと
いう意味だと風斬は理解した。


「でもどうしてわざわざこんな危険な場所に・・・・・・?」

「・・・・・・・・・・・・別に。 暇だったからね。 それにこんな状況だ、どうせアンタはまた
 びーびー泣いてるんだろうなと思ってからかいに来たのもあるかしら。 案の定だったわね。
 ・・・・・・それと、そこにいる世界最高のクズ野郎の顔を拝めるチャンスでもあるし」

「ふふ、ひどい言われようだな」


肩をすくめて大袈裟なリアクションをとるアレイスターの余裕綽々ぶりに舌打ちしながら、
ヴェントは周囲の様子を軽く見回す。


「・・・・・・白いのは?」

「あ、一方通行さんも垣根さんも天使さんも・・・・・・アレイスターの攻撃でどこかへ飛ばされてしまいました。
 恐らくみんなまだ第一九学区にいると思いますけど・・・・・・」

666 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/11(水) 22:38:03.14 ID:C1VtU0hHo


「ふうん。 ああ、そうだ。 エイワスからここに降ろしてもらってしばらく歩いてたら変な機械に
 襲撃されたんだけど、あれ何? なんか白い仮面着けた気持ち悪い人間もいたし。
 ま、適当にあしらいながら二〇匹くらいぶち殺してやったけどさあ」

「?」


キョトンとしてるところから見ると、風斬はヴェントを襲撃してきた謎の機械と仮面の兵士については
心当たりがないらしい。
そしてよく見ると、ヴェントの着ている服は既に所々が痛んでおり、手や脇腹にはじわりと血が滲んでいる。
その謎の勢力に襲撃された際に負った傷なのだろうか。


「だ、大丈夫ですか・・・・・・?」

「問題無いわよ。 ・・・・・・ていうかね」


ヴェントは厳しい目付きを風斬に送りながら言う。


「アンタが胸に抱いてる気持ちは、アレイスターなんかに
 簡単に論破されるほど安いモンだったの?」

667 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/11(水) 22:38:49.54 ID:C1VtU0hHo


「そ、それは・・・・・・」

「アンタが私に話した事全部、あんなヤツに否定されて終わるような事じゃないでしょ。
 白いのの事も、『天使同盟』も、アンタ自身も、何もかも」


ヴェントは風斬とアレイスターの会話を一部始終聞いていた。
まず風斬氷華を発見し、彼女が対峙している人間が何者なのかを判断するために
少しの間身を潜めていたのだ。


「こんな所で言い包められてヘコンでんじゃないわよ、風斬」

「・・・・・・・・・・・・。 ありがとう、ございます」


ついさっきも含め、ヴェントが初めて自分の名前を呼んでくれた。
そして彼女なりに身も心も崩れかけていた風斬を励ましてくれようとしている事が伝わり、
風斬の心に、瞳に、再び光が宿っていく。


「やれやれ・・・・・・ここまで大勢の『客』を招くつもりはなかったのだがな・・・・・・。
 エイワスは少し欲が過ぎるよ。 これでは会場が保たん」

668 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/11(水) 22:39:49.31 ID:C1VtU0hHo


そう言いながらアレイスターは手で虚空を掴むような動作を行った。
それだけで彼の手には、さっきヴェントの攻撃で吹き飛ばされたはずの『衝撃の杖』が握られていた。
同時に、アレイスターの周囲に粘つくような何かが渦のように蠢いているのを風斬は感じ取った。


「・・・・・・・・・・・・この私にあれだけの事を言いやがったんだ、アンタは。
 言うだけ言って、アンタがこの世からいなくなるなんて間抜けな結果になるだなんて
 私はごめんだからね」

「え、それじゃあ・・・・・・」

「『天使同盟』には入んないっつーの。 けど、」


ベキベキベキベキッッ!!!と、アスファルトの地面に次々と亀裂が走ったかと思った瞬間には、
既に風斬とヴェントの周りには五隻もの『女王艦隊』の一部が出現していた。
地面から飛び出した船体の衝撃と、その船体のあまりの大きさに、その辺のビルが何棟か崩落する。

ぎちぎち・・・・・・と複数の帆船の側面に取り付けられた氷の砲身全てが、アレイスターへと照準を定める。
だがやはり、アレイスターの不敵な笑みが変化する事は無かった。


「とりあえずコイツをぶっ殺す手伝いは、してあげてもいいかな」

「・・・・・・・・・・・・お願いします」


風斬は再びヒューズ化し、その全身を輝かせた。
自分はまだ、戦える。こんなところで挫折している暇など無い。
こうしている間にも、ミーシャ=クロイツェフ消失の時が刻一刻と迫っているのだから。


かつて、九月三〇日に対立した科学を憎む魔術師と科学の人工天使が、
互いに手を取り合い、最強の魔術師に挑む。

669 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/11(水) 22:44:04.52 ID:C1VtU0hHo

Q. 今更ヴェントが参戦したところでアレイスターには・・・・・・

A. 彼女はアレイスターを倒しに来たのではなく、友人を助けに来ただけなので結果オーライです


というわけで、第一九学区をうろちょろしていたネズミその1、ヴェントが参戦しました。
アレイスター相手ではヴェントですら心許ないですが、私個人としては
ヴェントを学園都市に送っておきたかっただけなのでまぁいいかな・・・・・・と。

だからってヴェントを蔑ろに扱ったりはしませんよ。


次回更新は三日以内。


それでは、ありがとうございました!


学園都市をうろつくネズミは、ヴェントだけではないです
670 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/11(水) 22:44:53.20 ID:C1VtU0hHo



                          【次回予告】



『見せてやるよ。 テメェらが知らねえ、俺が得た新たな『法則』をなぁ』
―――――――――――『天使同盟』の構成員・垣根帝督



671 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/11(水) 22:54:15.13 ID:i8vaNF8ro
>>1乙!
熾天使ていとくんキター!
672 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/11(水) 22:58:23.91 ID:Ea4HxPiB0
ヤダ…ていとくん最近かっこいい。
673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/11(水) 23:05:44.14 ID:B/TIV+N60
>>1
ていとくん本当にかっこいいけど大丈夫?期待しちゃうよ?
674 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/11(水) 23:06:43.96 ID:1xQCdiHOP

ヴェントの株が急上昇した
675 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/11(水) 23:07:28.51 ID:2bHpRkcAO

ヴェント登場に心震えた
676 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2011/05/11(水) 23:14:15.18 ID:t0CZLVqm0
>>1乙!

ていとくんマジイケメン。マジメルヘン。
そして上条さんはいつ参戦するのか気になるぜ!
677 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/11(水) 23:21:04.99 ID:P9QyyT/W0

ていとくん……これは期待しちゃっていいんだよな?
678 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/11(水) 23:21:17.00 ID:j7lkSs+Bo
幻想を守るためにどんな現実にだって立ち向かう人がリーダーだから大丈夫っすよ風斬さん!

帝督さん予告だけでも格好いい…次回も楽しみにしてます
乙!
679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/11(水) 23:26:10.62 ID:lnFNrx/h0

ヴェントにグッチャグチャの塊にされたい
680 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/11(水) 23:33:03.78 ID:ulr01fga0
ていとくんが気になってしょうがない
681 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/05/11(水) 23:43:22.65 ID:Bjoqwq+I0

風斬の再起とか、ガブリエルVS一方通行とか、ヴェント参戦とか色々震えたがとりあえず

ていとくんマジ帝督!予告一行だけなのに全部持ってかれた!
682 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/12(木) 00:33:28.57 ID:ZiNERR9Co
乙!
683 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2011/05/12(木) 01:12:31.04 ID:JhtRMuSD0
これで上条さんが最後に全部おいしいとこ持ってく展開だったらやだなww
684 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage saga]:2011/05/12(木) 03:39:14.33 ID:ik8BLDHLo
上条さんはうっかりガブリエルに攻撃しちゃって
天使同盟からフルボッコだろw
685 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/12(木) 05:03:32.63 ID:YVSNBSRY0

風斬はともかく、正体不明の高位能力者と学園都市製のトンデモ兵器が交戦してたら上条さんはどっちに付くんだろうね
ロシアやアビニョンの件もあったし警備員は全員いい奴だと思い込んでるなんてことは無いだろうど、どう見てもていとくんってば暗部の子なんだもん
686 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/12(木) 10:40:01.62 ID:REAAW2+T0
先が気になりすぎて体が持たない・・・
仕方ないな明日の4時限目は睡眠学習にするか
687 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/05/13(金) 08:16:33.44 ID:P0943Nnq0
>>685
あの上条さんがリンチに加わる姿を想像できん
というか、どう見ても向こうも一般人には見えんだろ
688 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/13(金) 11:28:56.77 ID:/qghPU2Z0
なーんかアレイスター、ヴェントちゃんちゅっちゅが横槍入れてくるタイミングを計ってたようにも見えるが…
考え過ぎだろうな、風斬を[ピーーー]んじゃなくて再インストールする為の一撃なんだろうし
689 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/13(金) 22:32:07.96 ID:rjpFEEXxo
ここでの垣根帝督の人気は異常。
彼もいいけど他のキャラもよろしくね!

と、いうわけで今回の投下は垣根帝督サイド。
『回収部隊』というファイブオーバーと『未元物質』の仮面兵士で構成された
総勢1500の勢力を相手に垣根は立ち向かえているのでしょうか?

それでは、御覧ください
690 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/13(金) 22:32:56.85 ID:rjpFEEXxo


――――――――――――――――――――――


対戦型格闘ゲームという娯楽をご存知だろうか?
現在、この世界にはありとあらゆる格闘ゲームが嗜まれているが、その中に『サバイバルモード』という
生き残り形式で対戦相手を倒して進んでいくというモードがある。

自身のキャラクターの体力は対戦相手を倒しても微量しか回復せず、それでいて終わりがない。
ゲームの種類によっては終わりがあるパターンもあるが、大抵は無数の対戦相手と戦闘を行わなければならない。
最初の方は順調に勝ち進んでいくも、対戦回数が二〇、三〇、六〇、果ては一〇〇以上にまで登り詰めると、
操作キャラクターでなくプレイヤーの精神が疲弊してくる。

体力も残り少ないまま、万全のコンディションである対戦相手を倒していかなければならない状況になっていき、
僅かなミスが命取りとなると、プレイヤーの精神も徐々に、そして確実に脆くなっていくものだ。

そして、最終的には対戦相手に敗北し、リザルトとなる。
プレイヤーにもよるが大体がそういうパターンで終わるのが格闘ゲームのサバイバルモードなのだ。


学園都市第二位の超能力者、垣根帝督はそのサバイバルモードを現実で体感していた。

691 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/13(金) 22:33:49.42 ID:rjpFEEXxo


「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・ぜぇっ・・・・・・、ちくしょうが・・・・・・!!!」


倒しても倒しても、殺しても殺しても、壊しても壊しても、巣から無尽蔵に沸き出る蟻のように、
垣根帝督の対戦相手は出現してくる。
相手は、第三位『超電磁砲(レールガン)』の威力を特化させた高性能駆動鎧ファイブオーバー。
そしてそれを操縦するは第二位『未元物質(ダークマター)』の仮面を装着した兵士。

ファイブオーバー五〇〇機。『未元物質』部隊一〇〇〇人。

『回収部隊(アンチツヴァイ)』と呼称される、垣根帝督専用の特殊部隊だった。


垣根は現在、半ば廃ビルと化した建物の中で息を潜めていた。
既に数十機、そして数十人もの『回収部隊』を殲滅している彼なのだが、さすがに体力が保たなくなってきていた。
そのためこうしてビルの中に隠れて体力を回復させるという安直ながらも効果的な行動をとっているのだが。


『回収部隊』相手にそんな行動は無意味だった。

692 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/13(金) 22:35:07.34 ID:rjpFEEXxo


鼓膜が爆発してしまいそうな爆撃音と共に、七階建てはあろうかという垣根帝督が潜んでいたビルが
一瞬にして粉塵と化してしまった。
垣根は『未元物質』を展開し、速やかに外へ飛翔する。
ビルを"霧散"させてしまった攻撃を放ったのは、ファイブオーバーのガトリングレールガンだった。

上空へと飛び出した垣根はすかさず空中にピタリと停滞していたファイブオーバーに向けて
背から生える六枚の翼から激しい烈風を巻き起こす。
その烈風がファイブオーバーに直撃した時は、既にファイブオーバーは粉々になって地面へ瓦礫の雨を降らせていた。

しかし『回収部隊』の恐ろしいところは、その破壊されたファイブオーバーの中から今度は『未元物質』の兵士が
飛び出して戦闘を続行させる部分にあった。
垣根帝督と"まったく同じ応用性"を秘める、最悪の白金の仮面。

ファイブオーバーの中から『未元物質』が飛び出る。タチの悪いマトリョーシカだ、垣根は忌々しげに呟く。


視線を下界へ向ける。第一九学区の一角は既に凄惨たる状況になっていた。
どこを見ても目に映るのは、空爆でも受けたような街並み、至る所から立ち込める黒煙、炎。
そして垣根帝督が殲滅したファイブオーバーの残骸、無残な姿で転がる『未元物質』部隊の死体。

戦争の縮図だった。垣根帝督の『未元物質』は、街を一瞬で地獄絵図に変えてしまう力が備わっている。
だがそんな能力を秘めている垣根帝督は今、精神的に追い詰められつつあった。

693 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/13(金) 22:36:02.87 ID:rjpFEEXxo


(今何匹ほど殺ったんだ俺は・・・・・・。 殺っても殺ってもゴキブリみてえに沸いてきやがって・・・・・・。
 一五〇〇だと・・・・・・ふざけてんじゃねえぞクソったれが・・・・・・!!!)


息つく間などありはしない。気がつけば空中にいる垣根帝督の三六〇度の周囲に、
ファイブオーバーと『未元物質』部隊が大勢で彼を取り囲んでいた。


「ちくしょ、―――――――」


毒づく暇もなかった。即座に全方位からガトリングレールガンと未知なる法則を含んだ烈風が
垣根帝督をバラバラにするために襲いかかってくる。
彼は背中の翼で自身の身を包みながら包囲網を突破していく。『未元物質』の翼は敵のあらゆる攻撃を
防いでくれる鉄壁の盾だ。

しかし、


「ご、が・・・・・・ッ!!!」


無数の攻撃の内の何発かが、垣根帝督の肉体に確かなダメージを与えていた。
口から鮮血を零しながら地面すれすれを滑空して後退していく垣根。

694 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/13(金) 22:37:05.11 ID:rjpFEEXxo


(ファイブオーバーはそれ単体相手なら問題にならねえ・・・・・・。 だがあのクソ仮面野郎の
 攻撃はまずい。 俺の『未元物質』の応用性を駆使して"相殺"してきやがる・・・・・・!!)


『未元物質』との戦闘経験が無い垣根には『未元物質』と『未元物質』がぶつかり合った時、
どのような現象が起こるか予想がつかなかった。

結果は、相殺。烈風と烈風なら霧散し、翼と翼が接触すれば双方の翼がもぎ取られる。
『「未元物質」を破壊する法則』を組み込んでも結果は同じ、相手も同じ法則を
組み込んで攻撃してくるのだから意味が無い。

相殺したらその隙を突いて『未元物質』の兵士に追撃出来そうなものだが、
それをさせないのが複数のファイブオーバーだった。

ガトリングレールガンは絶対に阻止しなければならない。そのため垣根帝督は
全身を常に不可視の『対「超電磁砲」用遮断演算パターン』の『未元物質』を展開していた。
これは翼によるものではない。『未元物質』は何もその翼からしか効果を引き出せないわけではない。

695 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/13(金) 22:38:23.96 ID:rjpFEEXxo


ならば垣根はファイブオーバーに対しては完全無敵である、というわけではなかった。
ガトリングレールガンの威力はデタラメだ、わずかでも集中力を緩ませ、演算が狂おうものなら
全身に展開させている対『超電磁砲』の防御が崩れ、垣根は肉片と化してしまう。


ならばしっかりとガトリングレールガンを警戒していれば問題ない、ともいかない。
『未元物質』部隊は垣根の『未元物質』を打ち消してしまう仮面を装備している。
そちらの方にも気を配らなければ今度は『未元物質』による攻撃で垣根は死に至る事になる。

では仮面の攻撃に備えようと思うと、四方八方からガトリングレールガン。
それを防ごうとすると『未元物質』の攻撃。

それなら『未元物質』とガトリングレールガンの両者の攻撃を防ぐ『未元物質』を展開すればいい
と思うだろうが、その内の『「未元物質」の攻撃を防ぐ法則』がどうやっても演算できないのだ。

相手も垣根と同じ『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』を持ち合わせた仮面を装着している。
その演算パターンを駆使して、仮面の兵士達は垣根の『未元物質』を容易く破壊してしまう。
ガトリングレールガンはともかく、『未元物質』部隊だけがどうしても隘路になる状況だった。

696 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/13(金) 22:39:40.15 ID:rjpFEEXxo


それでも垣根帝督は第二位を誇る超能力者だ。そんな状況に追い込まれても
対処できる戦略はいくらでも考え出す事は出来る。

ただし、それは相手の数が少数の場合だ。上記で挙げた『回収部隊』の攻撃パターンは、
それを圧倒的な数で実行してくるから驚異なのだ。


と、そんな事を考えている間にも滑空する垣根の眼前にある地面から
ドドドドドドッッ!!!、と海中から飛び出す魚のようにファイブオーバーが複数出現してきた。
そしてそのままファイブオーバーは銃口を垣根に向けて、ガトリングレールガンを一斉に発射する。

当然その攻撃は垣根の『未元物質』の前では無意味なのだが、今度は上から
複数の『未元物質』部隊が怪しく輝く殺人光線を射出してきた。
上下からの攻撃なら前方へ回避すればいいと前に視線を向けると、そこには既にファイブオーバーと『未元物質』部隊が
地獄へ誘うように立ちはだかっている。後方も、左右も全く同じだ。完全に包囲されてしまっている。


(コイ、ツらぁ・・・・・・!! 本当に俺を『回収』する気あんのか・・・・・・!?
 インターバルの一つもとらねえで全力で俺を粉々にしようとしてやがる・・・・・・!!)


ここで停まったらお終いだ。停まる事は死を意味する。
垣根は驚愕すべき判断速度で全方位の状況を把握した後、右のファイブオーバーばかりがいる方に向かって
突貫した。ファイブオーバーは破壊され、その中から『未元物質』の兵士が飛び出てくるが、
そこから攻撃に転じる際に若干のタイムラグがあることを垣根は理解していた。

697 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/13(金) 22:40:47.80 ID:rjpFEEXxo


垣根はファイブオーバーを破壊した突進の勢いを緩める事なく、ビルというビルを
積み木のように崩しながら突き進んで包囲網を突破する。


そのまま進んでいくと彼の視界に小さな建物が見えてきた。
教員用の事務所かなんかだろうか、二階建ての建物の窓ガラスを突き破って
垣根は滑りこむようにその事務所内へと突入した。


(・・・・・・・・・・・・ッく。 最初のうちは仮面野郎の四肢に攻撃することで
 始末出来てはいたが・・・・・・あいつらすぐに対応しやがった。 さっきから
 全然数減らせてねえぞ・・・・・・・・・・・・)


もはや自身の『未元物質』だけでは手詰まりであるという現実を受け入れざるを得なかった。
その事が非常に腹ただしく、悔しく、そして情けないと思った。

垣根は上着として羽織っているジャケットの内ポケットに手を入れながら呟いた。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もう、出し惜しみは出来ねえな」


ズギャァァッ!!!!!、という轟音と共に垣根のいた事務所は手品のように消失してしまった。
もちろん、『回収部隊』の仕業である。

しかしこれも当然だが、既に垣根は事務所から脱出していた。

698 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/13(金) 22:42:28.13 ID:rjpFEEXxo


『未元物質』部隊は姿を隠した垣根を捜索するため、白と金の仮面に『反響定位の法則』を組み込む。
垣根帝督がロシアでワシリーサと訓練をした際に行った演算だ。

そしてファイブオーバーのコックピット内にいる仮面の兵士も同じようにエコーロケーションで
垣根の位置を捜索していた。ファイブオーバーに備わっている機能で捜すことも不可能ではないが、
『未元物質』で捜し出した方が遙かに手早く、的確だからだ。


だが、捜索するまでもなく、その対象の声が『回収部隊』の面々に届いた。





「見せてやるよ。 テメェらが知らねえ、俺が得た新たな『法則』をなぁ」




699 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/13(金) 22:43:24.30 ID:rjpFEEXxo


『回収部隊』は聞こえてきた言葉の意味が理解できなかった。
そして理解する必要もない、彼らの目的は『垣根帝督の抹殺、及び回収』、ただそれだけなのだから。

だがそれでも、"警戒くらいはしておくべきだった"。


「ぐ、ぎゃああああああああああああああああああ!!!?」

「!?」


垣根ではない、誰か男の悲鳴が上がってきた。
そちらへ視線を向けると、『未元物質』の仮面を装備した兵士の一人が地面をゴロゴロと転がっている光景が映った。


その仮面の兵士の全身は激しく燃え上がっており、それは顔の部分にある『未元物質』の仮面も例外ではなかった。


『な、馬鹿な・・・・・・!! なぜ「未元物質」に燃焼現象が起きる!!?
 あの物質に既存の法則など通じないはずだ!!』

700 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/13(金) 22:45:09.79 ID:rjpFEEXxo


複数のファイブオーバーの内の一機から、そんな言葉が聞こえてきた。
他の『回収部隊』も何が起きたのか全く分からず、ただ呆然と燃えていく自軍の兵士を見つめるしかなかった。


「既存の法則じゃなきゃいいんだよ。 お勉強が足りてねえなテメェら。
 ったく、・・・・・・ロシアじゃ散々な目に遭ったが、その甲斐があったってもんだ」


崩れた廃ビルの角から聞こえた声の方に目を向けると、そこには垣根帝督がいた。
既に全身あらゆる所に痛々しい傷が窺え、あと数分攻め続ければ討てるくらいには衰弱しているようにも見える。

だが、この垣根帝督は何かが違っていた。


「さて・・・・・・、準備は整ったか」


垣根は懐から何かを取り出した。それは奇妙な文字が連々と書かれた薄い札。
『回収部隊』はその札を見ても尚、それが何なのかが分からなかった。
当たり前だろう、『回収部隊』の構成員は全員が学園都市に住む暗部の人間だ。
科学による能力の知識はあっても、垣根が手に持つ謎の札の知識はない。

701 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/13(金) 22:46:42.83 ID:rjpFEEXxo




だから、その『ルーン』と呼ばれる札から瞬時に『炎剣』が現出し、
広範囲に渡って大爆発が引き起こされても、『回収部隊』はその正体を掴むことができなかった。




周囲にいたファイブオーバーや『未元物質』部隊が無様に吹き飛び、転がり、炎上していく。
悲痛な叫びを上げながら燃え続ける炎を消そうと、地面をバタバタと転がる何人もの兵士の姿が
垣根帝督の視界に映っていた。


そして彼の頭からドロリと、血糊が零れていく。

702 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/13(金) 22:47:12.78 ID:rjpFEEXxo


魔術。

垣根帝督が『天使同盟(アライアンス)』として旅をし、得た力は、炎の魔術だった。


(本来、設置型のルーンは入念な準備が必要だとエイワスから貰った本に書いてあったが・・・・・・。
 実際使ってみるとその通りだな。 逃げ回りながらの設置だったせいか、炎剣の威力も大きさも
 とても褒められたもんじゃねえ)


垣根帝督はただ闇雲に『回収部隊』から逃げ回っていたわけではなかった。

ビルとビルの隙間を縫って飛行しているときも、さり気無くビルの壁にルーンをばら撒き設置したり、
わずかでも相手の攻撃が止んでいたら地面やゴミ箱の蓋の裏、被害の少ない建物の天上など、
様々な場所にルーンを設置していたのだ。

703 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/13(金) 22:48:59.56 ID:rjpFEEXxo


事態の重大さを理解した『回収部隊』は即座に陣形を立て直し、
再びを垣根を中心に取り囲むような配置につく。
あの燃焼現象や広範囲に及ぶ大爆発、そして第二位が手に持つ不可思議な炎剣。

どれもこれも法則の掴めないものばかりだったが、要はそんなものに付き合わなければいい。
『未元物質』すら燃やしてしまうような炎なら、それを回避すればいい。

冷静になってみれば、実に簡単な攻略法だった。
『回収部隊』は魔術という、学園都市には存在しない法則を目の当たりにしても平静を取り戻していた。
既に彼らは合図一つで垣根を抹殺出来る体勢を整えていた。


そんな『回収部隊』の考えを一蹴するように、垣根は口を開く。

704 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/13(金) 22:50:06.07 ID:rjpFEEXxo




「灰は灰に―――――」
(Ash To Ash)




目標が何かをブツブツと呟き始めたのを確認すると、
『回収部隊』の一人は訝し気に思いながらもそれを無視し、攻撃再開の合図を送る。




「――――塵は塵に――――」
    (Dust To Dust)




ガトリングレールガンと『未元物質』の烈風、怪光線が垣根の生命活動を停止させるために
容赦なく牙を剥く。

705 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/13(金) 22:50:48.06 ID:rjpFEEXxo


その時、ファイブオーバーに乗っていた『未元物質』の兵士の一人は漠然とこんな感想を抱いた。
頭や口、腕や腹から出血を起こしながら呟いている垣根の言葉はまるで、




「――――吸血殺しの紅十字!!」
   (SqueamishBloody Rood)




"呪文"、のようだと。


そんな感想を抱いたまま、その仮面の兵士はファイブオーバーと共に塵と化し、この世から消滅した。
垣根帝督が"もう片方の手で振るった"、青白い炎剣によって。


「さて・・・・・・散々攻められまくった鬱憤、晴らさせてもらうぞ。
 こっからは俺のターンだ」

706 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/13(金) 22:51:55.99 ID:rjpFEEXxo


『吸血殺しの紅十字』。
垣根帝督の両手には今、二本の炎剣が握られている。
右手には赤き業炎の剣、左手には青き聖火の剣。

垣根帝督が『天使同盟』と合流して得た知識、魔術に興味を持ったところから始まり、
そして"とある魔術師"との出会いが、図らずも彼を魔術サイドの更に奥深くへと導くことになった。

その結果が、この炎の術式。


全身に巡る神経がビキビキと悲鳴を上げ、その痛みで体が震え上がるが垣根は気にも留めない。
背中から『未元物質』の翼を現出させるとそのまま『回収部隊』の群れに突っ込んでいく。

ファイブオーバーや『未元物質』の兵士達は、突如として垣根が行使した謎の『法則』にどう対応すべきか
思考する。構う必要はないと言っても、こうして実際に未知の法則を振るわれるとやはり無視などという
選択肢は取れない、否、垣根帝督が取らせてくれない。

だから対応策を瞬時に練る。だがその"瞬時"という刹那の瞬間が、今この場においては命取りとなるのだった。

707 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/13(金) 22:53:34.52 ID:rjpFEEXxo


垣根が右手の赤い炎剣を横一線に薙ぐ。その行為だけで扇状の爆熱と熱風が発生し、
ファイブオーバーのコックピット内に、『未元物質』の仮面越しに、確かなダメージを与えていく。
第二位の"魔術師"はそこで動きを止めることなく、更に一歩踏み込み、射程範囲内にいた
ファイブオーバーと仮面の兵士に容赦なく青の炎剣で"焼き裂いて"いく。

この時点で既に一〇〇以上の『回収部隊』が未知の法則の前にその命を散らせていった。

『回収部隊』は即座に垣根帝督から距離を取る。あの炎剣が一体どういう原理で出現しているのかは分からないが、
所詮は『剣』。遠距離を保っていればとりあえず触れる事はない。そしてその距離からガトリングレールガンや
『未元物質』による不可思議のベクトルを組み込んだ攻撃でなぶり殺しにすればいい。今までと何ら変わりはない。

『回収部隊』の皆が皆、セオリー通りに事を運ぼうと考えていた時だった。


「おい、ボケッとしてんじゃねえぞ」


ドバァッ!!!!!、という爆発音が鳴ったかと思ったら、ファイブオーバーの一機が激しく煙を立ち上げながら
スクラップになっていた。その中にいたパイロットの仮面の兵士の体も燃え上がっており、
『未元物質』で炎を消そうと試みるが、どう演算しても体を焦がしていく炎に干渉出来なかった。

708 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/13(金) 22:54:55.95 ID:rjpFEEXxo


「なるほど、コックピット内までは貫通出来る事は分かった。 遠距離から攻撃すればいいってのは
 当たり前の考えだが、詰めが甘かったなクソども」


炎剣を握る垣根の手の指の隙間には炎剣を生み出すときにも使用していた妙な札が数枚挟んであった。
恐らくあの札には炎剣を生み出す以外にも何かが効果があるのだと『回収部隊』は理解する。


つまり今の攻撃は遠距離からの狙撃。垣根が操る炎は、あの炎剣だけではない。
『回収部隊』は息を呑んだ。学園都市統括理事長から受理した情報に、垣根がこんな力を使うことは
一切記載されていない。


そして垣根が持つ手札も、遠距離攻撃用の火炎弾や炎剣だけではない。
彼にはまだ、いわゆる『切り札』と呼べる力を秘めていた。


現在時刻は午後二時四〇分過ぎ。『ゲーム』開始から約四〇分が経過していた。

709 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/13(金) 23:01:46.37 ID:rjpFEEXxo


以上です。というわけで垣根が行使する魔術とは『炎』でした。
え、分かりきってたって?ですよねー・・・・・・。

ワシリーサとの訓練のときも垣根は炎剣やらなんやらを使っていましたが、
あえて描写はしませんでした。まあ最後はワシリーサを焼いていたのであまり意味は無かったですが・・・・・・

ここからは垣根無双、と一概には言えません。能力者が使う魔術は身を滅ぼします。
どうなっちゃうのでしょうか、次回をお楽しみに!次回は一方通行ですけど


次回更新は三日以内。


それでは、ありがとうございました!

710 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/13(金) 23:02:20.33 ID:rjpFEEXxo



                          【次回予告】



『(「雰囲気が俺にまとわりついてやがる」・・・・・・。
 いや、と言うよりは"誰かが俺を監視してる"雰囲気に近い。 ・・・・・・なンなンだこりゃ)』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・一方通行(アクセラレータ)




『「貴方に話したい事がいっぱいある。 聞いて・・・・・・くれる?」』
―――――――――――水を司る大天使・ミーシャ=クロイツェフ



711 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/05/13(金) 23:02:50.95 ID:P0943Nnq0
>>1超乙!
やばい、帝督がかっこよすぎて身震いした
712 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/05/13(金) 23:03:09.19 ID:0zcOLfFn0
ステイルェ・・・
713 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/13(金) 23:04:55.71 ID:DhOnGXWa0
乙!!

これはイノケンさんが見られるのか!!
714 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/13(金) 23:08:25.83 ID:PqeeDyGU0
ステイルの使ってた魔術ってこんなにつよかったんだな
715 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北陸地方) [sage]:2011/05/13(金) 23:13:25.98 ID:fawwICjAO
垣根マジかっこいい。しかしやっぱりステイルの魔術って強いよな、ただ原作では敵が強すぎたり特殊すぎたりするだけで。
716 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2011/05/13(金) 23:58:26.52 ID:L0RgFaBR0
決して弱くないのに何故か相性が悪かったり相手が規格外の強さだったりで負けてるところしか印象に残らない。
人それをウオーズマンポジションという。
717 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/05/14(土) 00:21:19.60 ID:JzI70rgu0
作者! きさま! スパロボを知っているな!
乙でした!
718 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/14(土) 01:55:55.76 ID:d0qCPo/Y0

っていうか血反吐吐く思いして若干14歳でルーンと炎の術式を極め
新たなルーンを開発して法王級の魔術を超短時間で使えるようになった
ネセサリウスきっての天才としてのステイルの立場ェ・・・
たしかにていとくんも天才だし血反吐も吐いてるけど、身体能力と費やした時間と超能力で完全に負けてるじゃねえか・・・
それだけ第2位の演算能力がべらぼうだったのか、エイワスの入門魔道書がデタラメなシロモノだったのか
多分両方だよな・・・
ステイル・・・
719 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/14(土) 02:02:12.47 ID:nzF5TR2bo
ステイルにはトリプルイノケンさんが居る・・・
いくらていとくんでもイノケン三体召還したら体持たないだろう・・・
720 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/14(土) 02:25:55.66 ID:FFv7AJpIO
毎度毎度熱い本編の後に気になりすぎる予告……
とりあえずは>>1に何事もなく無事完走してくれることは切に願っておこう
721 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(佐賀県) [sage]:2011/05/14(土) 03:12:02.25 ID:oxyxSit0o
トリプルイノケンさんは三位一体で体の負担を軽くする術式だからていとくんにはうってつけだと思う
722 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/14(土) 05:01:06.15 ID:g8jdoApRo
一番ステイル好きの俺としては悲しいww
あ、別に文句を言いたいわけじゃないんだけどね?
このSS内でもそうなんだけど、目に見えて不遇なキャラを応援したくなる。
723 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/14(土) 09:23:17.29 ID:F1PTgHfAO
724 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/05/14(土) 10:42:16.56 ID:9niKXxas0
>>721
そして反面、一体でもやられれば残り二体分の負荷が一気に来ることを忘れるな
725 :TLB [sage]:2011/05/14(土) 13:46:09.70 ID:sePHWr+Q0
垣根マジかっこいい・・・
726 :糞音痴 :2011/05/14(土) 13:49:48.69 ID:FXCc2n8i0
ていとくんにマジ惚れしそうなんすけどwwwwwww
727 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/14(土) 14:05:13.28 ID:ZCMEKPLQ0
なんか完結したらすごい勢いで感想が出てきそうだから先に言っておこう
大爆笑から入ったのにまさかこんなかっこいい戦闘系SSになるとは思ってなかった。もちろんいい意味で
このスレに出会わなければガブリエルとていとくんここまで好きにはならなかったと思う
毎度毎度楽しみに見てるよ。是非完結まで突っ走ってくれ乙乙
728 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/05/14(土) 16:47:29.29 ID:H4n5sUmSo
ていとくんマジでかっこいいな
729 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/14(土) 17:03:15.30 ID:FFv7AJpIO
最初はほんと「この発想はねーよwww」から始まったんだよな
ただのギャグで終わるかと思いきやガブリエルはすごいメインヒロインになったもんだ
730 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/14(土) 17:17:25.96 ID:9eSsApvd0
ガブリエルが出てくるなんて予想してなかったなー初代スレのころ
731 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/14(土) 21:26:16.99 ID:XDrqXVUF0
てかていとくんはイノケンさん使ってないし、何より自力開発じゃないだろ?
イノケンさんを「ただばらまくだけ」のルーン制御で使える方法を確立したのがステイルの天才たる所以なんじゃないの?
732 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/14(土) 22:58:31.99 ID:Sam7OFnqo
こんばんわ〜、投下しにきました。
連日投下・・・・・・になるんですかね?

さて、前回はついに垣根帝督が魔術を使い始めました。
ステイル=マグヌスが用いる炎の魔術ですね。
当然ながら物申したい方々もいるようですが、それは後ほど。

今回は一方通行。暴走寸前のミーシャを相手に大苦戦。
はてさてどうなることやら。


それでは、よろしくお願いします。

733 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/14(土) 22:59:21.89 ID:Sam7OFnqo


最初にその異変に気がついたのは、エイワスを除けば一方通行が初めてだった。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」


彼はひとまずミーシャ=クロイツェフから離れ、電気が通っている場所を捜し回っていた。
天使との戦闘で能力使用のための電極チョーカーのバッテリーを大幅に消費したためだ。

ミーシャとの戦闘では『反射』もあまり意味を成さないため、彼の体は既にボロボロだった。
これ以上戦えない、という程の重傷でもないが、ここから先、天使との戦闘が長引けば
待っているのは死。

一方通行も人間だ、人間がたった一人で、いや、例え何億何百億という人数で戦ったとしても
天使には絶対に敵わない。
だからこそ、大した意味がない能力でも使わざるを得ない。能力さえあれば、彼は辛うじて
天使相手に立ち回れるのだ。

734 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/14(土) 23:00:10.64 ID:Sam7OFnqo


だから消費したバッテリーを充電するために第一九学区を歩いていたのだが、


(・・・・・・な、ンだ? 空気がおかしい・・・・・・具体的に説明できねェが、『雰囲気が俺にまとわりついてやがる』・・・・・・。
 いや、と言うよりは"誰かが俺を監視してる"雰囲気に近い。 ・・・・・・なンなンだこりゃ)


一方通行は周囲を注意深く見渡す。だが自分を監視している者の正体を見つけ出すことは出来なかった。
そもそもさっきから感じる視線のようなもの自体が気のせいだというならそれまでだが、
一方通行は暗部での活動でその辺りの『勘』が非常に鋭くなっている。

だから分かる。明らかに今、誰かが一方通行を"凝視"していると。


(・・・・・・アレイスター、じゃねェな。 あのクソ野郎というよりはこの視線はエイワスのものに近い。
 だが、エイワスでもねェはずだ。 "エイワスに限りなく近い領域に立ってやがる誰か"・・・・・・。
 ・・・・・・ガブリエルか? でもあいつは・・・・・・)

735 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/14(土) 23:01:23.49 ID:Sam7OFnqo


自分を監視する者の正体を推理していると、遠くから建造物を破壊するような音が聞こえた。
その音は徐々にこちらに近付いている。

ミーシャ=クロイツェフだ。


(・・・・・・とりあえず、さっさと充電しとかねェと)


一方通行は適当に視線を巡らせ、視界に入った建造物の中に入っていった。
今は自分を見つめる視線の正体きついて考察している場合ではないと、彼は思考を放棄した。


だが、それでよかったのかもしれない。


一方通行も、アレイスターも、ミーシャも、この世の誰もが気付けぬ事だったが。


一方通行をさっきから見つめている者は、彼がこの学園都市に到着した時から今までずっと"居たのだから"。

736 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/14(土) 23:02:05.34 ID:Sam7OFnqo


――――――――――――――――――――――


第一九学区に立ち並ぶ廃ビルの一棟の中から、ピピッという小さな電子音が鳴った。
その音を確認した学園都市最強の超能力者は即席で組み立てた充電器のコードを
首元にある黒のチョーカーから取り外す。


(・・・・・・これでまた三〇分フルで能力を使用できる。 望み薄で適当に
 配線弄ってみたのが正解だったな。 この学区にまだ電気が通ってやがるとは)


一方通行は電極チョーカーに問題が無い事を確認すると、壁に手を当てながら
ゆっくりと腰をあげた。右腕に装着している自作の杖をつこうと思ったが、その杖は
"数分前の戦闘"で粉々に砕かれてしまった事を思い出し、舌打ちする。

彼が今いるビルは元々デパートだったようだ。このフロアは洋服店売り場のようで、
あちこちにこの時間帯で見ると不気味に見えるマネキンがポツンと淋しげに設置されている。

フロアにあるロッカーの中には物々しい銃火器等が収納されていたり、さっきのように
ちょっと配線を弄っただけで電気が通るようになっているところから推測するに、
どうやらこのデパートを隠れ家として誰かが使用しているようだ。

737 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/14(土) 23:03:12.34 ID:Sam7OFnqo


一方通行は商品棚などに手をつきながら歩いて行き、壁一面がガラスで出来た窓から下の様子を俯瞰する。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・あそこか。 クソったれ・・・・・・」


一方通行の視線の先には、彼がいるフロアに置いてある埃まみれのマネキンに
似ていると言えば似ている、そんな怪物がフラフラと当てもなく道を歩いていた。


大天使、ミーシャ=クロイツェフ。つい先程まで一方通行と死闘を繰り広げていた天使だ。


結果としては、一方通行は命からがらこのデパートまで避難できた、といったところか。
天使の力はやはり暴走寸前であっても健在だった。暴走寸前だからこそ、『天使の力(テレズマ)』を
奪われる前の、万全のコンディションに戻りつつあるのかもしれない。

そう思わせるほど、ミーシャ=クロイツェフは圧倒的な力で最強の超能力者に牙を剥いた。
今こうして一方通行は窓の景色を眺めるという、端から見れば呑気な事をしているが、
許されるなら今すぐにでも意識を断絶して眠りにつきたいくらい、その肉体と精神は疲労していた。
身に纏う白のダウンのあちこちが破れて綿が飛び出しており、口の周りは拭った血の跡がべっとりとこびりついている。

738 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/14(土) 23:04:33.74 ID:Sam7OFnqo


だが対する一方通行もただ天使の前に屈するだけではなかった。というより、一方的に攻撃されていたら
彼はもうこの世にはいないだろう。一方通行は学園都市最高の頭脳を活かし、能力を全力で駆使し、
見事にたった一人で大天使を相手に立ち回っていた。

ミーシャには付け入る隙があった。アレイスターも掻い摘んで説明していたが、
彼女は『天使同盟』として過ごしてきた事によって得た自我と、『星の欠片』にある『門』の柱が
太陽に近付くにつれその力が弱まり存在の維持が困難になってきている現実とがごちゃまぜになり、
暴走寸前、『悪魔』と化す一歩手前まで来ていた。

天使が本来決して手に入れる事の出来ない自我、感情が原因でミーシャにはもう
何も見えていなかった。一番大切な存在である一方通行にも牙を剥くほどに。

だから彼女の攻撃も強烈ながら安定していなかった。見当違いの方向に飛んでいく『天使の力』の塊。
どこに狙いをつけて振るっているのか分からない氷の翼。


一方通行はその隙をついてなんとか天使の攻撃をやり過ごしながら、ひたすらミーシャに声をかけていた。
『俺が分からねェのか』、『自分をしっかり保て』、『これ以上暴れるンじゃねェ』。
そんな言葉を、喉が掠れるまでずっと叫び続けた。

739 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/14(土) 23:06:03.67 ID:Sam7OFnqo


だが彼の言葉が届く前に、無情にもバッテリーの電源が切れる寸前まで消費されてしまった。
一方通行はやむなく充電を行うためにこのデパート内に身を潜めているというわけだ。


ミーシャは現在、一方通行がいるデパートの周辺をゾンビのようにおぼつかない足取りで
うろうろと彷徨っていた。無意識に彼の居場所を掴んでいるのだろうか。

一方通行は意を決したように短く息を吐き、チョーカーの電源をオンにする。
コツン、と指で目の前のガラスを突付くと、それだけで放射状にひび割れが生じ、派手な音と共に割れた。


一方通行は躊躇なく割れたガラスから足を踏み出し外へ飛び出す。
ガラスの割れた音に反応したのか、見下ろした先にいたミーシャの水晶の翼が左右から
薙ぐように現れ、一瞬で一方通行のいた廃ビルを真っ二つにしてしまった。
地響きを鳴らしながらデパートが崩落していく。


そして一方通行は背中に接続した四本の竜巻を一斉にミーシャへ向ける。
避けられるか吹き消されるかと考えていたが、意外にも竜巻は直撃しミーシャは派手に地面を転がっていった。

740 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/14(土) 23:07:33.63 ID:Sam7OFnqo


とにかくミーシャに暴れられてはこの街が持たない。
一方通行はさらに追撃を加えるためにうつ伏せで倒れているミーシャの下へ駆け寄るが、


「bnthi攻撃nvrgio開始vyjmk」

「ッ!?」


天使はうつ伏せのまま背中にある水晶の翼を一方通行目掛けて縦に振った。
脚力のベクトルを操作し、ロケットのように突っ込んでいた一方通行は急停止が間に合わず、
翼の斬撃をもろに受ける形になってしまった。


鮮血が吹き出る。一発で意識が刈り取られそうになる重い一撃。
『反射』を適応させていたにも関わらず、天使の翼は容赦なく彼の体を引き裂いた。
一方通行の体から吹き出た出血が、ミーシャの翼を不気味に染め上げる。


「ご、ご・・・・・・が・・・・・・ッ!?」

741 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/14(土) 23:08:21.81 ID:Sam7OFnqo


一方通行は大量の出血をベクトル操作によって抑えるが、
それでも視界がぼやけて焦点が定まらなかった。わずかでも気を緩めたら
間違いなくそこで昏倒してしまう確信があった。

フラフラと揺れて次のアクションを起こせない一方通行に天使は翼を展開させ、
数百数千の氷の刃を躊躇なく少年に向けて振るう。
斬撃と衝撃波がメチャクチャに混ざり合う。一方通行の華奢な体は一瞬で膾切りになってしまった。
彼女の振るった翼は、この学園都市全体を大きく振動させるほどの威力があった。

そのまま輪切りにされてバラバラにならないのが逆に不思議だった。
彼の能力である『反射』が既の所で働いているのだろうか。


だが、ここまでされても。全身をズタズタに切り裂かれても、一方通行は倒れなかった。
本来なら致死量に達していたであろう出血をベクトル操作で抑えているのもあるが、それ以上に、


「vgkhj貴方kougう、ううううううggggggggggggg」

「バ、カ野郎・・・・・・が・・・・・・!!」

742 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/14(土) 23:09:29.89 ID:Sam7OFnqo


ミーシャ=クロイツェフの顔にある、目を型どる凹みから、雫が零れていたからだ。


涙。一方通行はロシアでサーシャ=クロイツェフから聞いた『天使の涙』の話を思い出した。
だがミーシャが流しているこの涙は、そんな紛い物ではない。

自身の理不尽とまで言える強大な力で大切な人を傷つけてしまっている事実に、彼女は苦痛の涙を流していた。

そんな光景を目にしては、一方通行もこのままミーシャに攻撃する事をどうしても躊躇ってしまう。
今まで彼女と過ごしてきた思い出が映画のフィルムのように断続的に脳裏を過ぎり、
自身の行いに苦悩している隙だらけの天使に攻撃する事が出来ない。

手を伸ばせば届く範囲にいるというのに、一方通行とミーシャはお互い向き合ったまま
立ち尽くしているという奇妙な状況になっていた。


ミーシャは緩慢な動きで、それでも一歩一歩踏み出し、一方通行に近づいていた。
一方通行は後退することもなく、かと言って攻撃することもなく、黙ってミーシャを見つめていた。
やがて天使は至近距離まで彼に近付くと、


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」

743 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/14(土) 23:10:26.64 ID:Sam7OFnqo


ゆっくりと彼の華奢な体に腕を回し、抱擁した。


「・・・・・・抱き、」


『抱きつくな』、と言いかけて一方通行は口を噤んだ。
思わず一方通行とミーシャの間で日常的に行われているやり取りが、こんな状況で出る所だった。

ミシ・・・・・・と骨が軋む音が聞こえる。一方通行は一瞬、このまま背骨を折られて絞め殺されるのではないかと
危惧したが、精神不安定なミーシャのこの抱擁にはどこか暖かさが感じられた。
そしてミーシャは彼を抱きしめたまま動かなくなってしまった。さっきまでの暴れっぷりは、今や見る影もない。


(終わったのか・・・・・・? こいつは自我を取り戻したのか・・・・・・、)


一方通行はどう対応していいのか分からず困惑する。油断をすればまたさっきのように
翼の斬撃が飛んでくるかもしれない。
もしそうなれば、一方通行はそれをやり過ごす事が出来ないと確信していた。ここまでの時点で彼は
肉体に深刻なダメージを負っている。正直、こうしてミーシャに抱き寄せられていなかったら倒れていたかもしれない。

744 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/14(土) 23:11:46.39 ID:Sam7OFnqo


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「―――――――――――――――」


やがて、どのぐらいそうしていたか分からなくなるほどの時間が経った頃、






『・・・・・・・・・・・・、貴方』

「!!!」






一方通行の脳に直接語りかけているような、優しい、それこそ天使のような声が響いてきた。

745 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/14(土) 23:12:55.22 ID:Sam7OFnqo


「ガブリ、エル・・・・・・か・・・・・・?」

『やっと・・・・・・話せる。 ね』


風斬氷華に起きたような現象が、一方通行にも起きた。
ミーシャ=クロイツェフは彼の頭を優しく撫でながら、諭すような声色で言った。


『貴方に話したい事がいっぱいある。 聞いて・・・・・・くれる?』


そして一方通行は知る。ミーシャ=クロイツェフという存在がずっと胸に抱いていた真の想いを。
そして一方通行は知る。自分という存在が、どれほど愚かで小さな存在だったのかを。


『星の欠片』の予想消滅時間まで、残り一時間を切ったところだった。

746 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/14(土) 23:16:36.80 ID:Sam7OFnqo


――――――――――――――――――――――


九月三〇日にこの学園都市にやってきた魔術師。ヴェントは、本気でアレイスター=クロウリーという
魔術師の首を取ろうと躍起になっていた。
だがその野望はアレイスターが虚数学区を学園都市に展開した事によって魔術師としての力を
著しく削がれ、本来のターゲットでもあった上条当麻という少年に敗れることで一度打ち砕かれる。


しかし、そんな彼女に願ってもいないチャンスが訪れた。
『天使同盟』。天使を引き連れているこの連中が、アレイスター=クロウリーと直接対峙するのだという。

一方通行という少年と出会い己の心境に大きな変化が生じたヴェントだったが、
それでもやはり魔術から科学に走り他の魔術師を見下すアレイスターには憤りを抱いていた。
そんな彼女に、再びアレイスターと接触できるチャンスを、『天使同盟』は与えてくれた。
もちろん本命は風斬氷華の救出と・・・・・・・・・・・・。・・・・・・。

だがその目でアレイスターを確認すると、胸の中にある憎悪の炎が激しく燃え上がってしまう。

『天使同盟』の構成員、風斬氷華という、本物の大天使に勝るとも劣らない力を秘めた人工天使を
味方につけたヴェントは、今度こそアレイスターを討ち取れると思った。

747 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/14(土) 23:17:38.80 ID:Sam7OFnqo


だが、ここまでアレイスターという存在に近付いても、人工天使を味方につけても、
学園都市に君臨する魔術師には指一本触れることは叶わなかった。


「『女王艦隊』の船体そのものを私にぶつけ、物理的ダメージを与える・・・・・・。
 ヒューズ=カザキリの攻撃で私の防御術式を破らせ、そこに魔力を凝縮させたハンマーで
 私に追撃を仕掛ける。 ・・・・・・対魔術では敵わぬと判断し、物理的攻撃によって
 優位に立とうと考えた君の考えも評するに値するが・・・・・・、ふふ。 愚行でしかなかったな」


ゴトン、という重厚な物が地面に落ちる音がした。それはヴェントが手に握っていた
有刺鉄線付きの鉄製ハンマーだった。
そしてそのハンマーの跡を追うように、ヴェントも力無く膝を折る。
血糊が伝う鎖が伸びるその口からは浅い呼吸が繰り返すその彼女の様子は、絶命寸前の虫を思わせた。


「クソ・・・・・・野郎が・・・・・・」

「おや、これは驚いた。 まだ口が聞けるのか」


ヴェントは不敵に笑うアレイスターの顔を睨みながら、ガクガクと震える膝に鞭を入れて立ち上がろうとする。
だがどう見ても立ち上がるだけで精一杯といった様子の彼女は、もうこれ以上戦えるようには見えなかった。

748 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/14(土) 23:18:33.89 ID:Sam7OFnqo


バランスを崩して倒れそうになったヴェントを、ヴェント以上に深刻なダメージを負っている人工天使が
手を添えて支える。


「ヴェントさん・・・・・・、大丈夫ですか・・・・・・?」

「ハッ、・・・・・・アンタ。 これが大丈夫なように見えるの?」


ヴェントは両腕を横に広げ、血塗れになった体躯を見せつけるような仕草を行いながら言った。


「平気よ。 こんなの・・・・・・屁でもないわ」


強がりとしか思えなかった。事実、それは強がりだった。


ヴェントは静かに悟る。目の前にいる魔術師、アレイスター=クロウリーには逆立ちしたって敵わない、と。
圧倒的だった。見せつけられて、魅せつけられた。これが、次の時代に生きる魔術師の実力。
結局、風斬氷華と合流したときにアレイスターが立っていた地点から、二人がかりでも彼を動かすことは出来なかった。

749 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/14(土) 23:19:20.10 ID:Sam7OFnqo


アレイスターは依然として、自身で作ったクレーターの中心に佇んでいる。


ズズゥゥゥゥン・・・・・・、と学園都市が不気味に震動する。この第一九学区では今でも
あらゆる場所で激しい戦闘が行われている。今の震動はその一環だった。


「・・・・・・か、ざきり」


声を出すのも辛そうな様子で、ヴェントは側で自分を支えてくれている風斬に向かって言った。


「アンタは・・・・・・白いのの所に・・・・・・行ってあげて」

「え・・・・・・? で、でもヴェントさんは・・・・・・?」


ヴェントは返事をせず、アレイスターの方に憎悪を込めた視線を向ける事で暗に返答を示す。
それを受けたアレイスターは、ただ微笑を返すだけだった。

750 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/14(土) 23:25:42.96 ID:Sam7OFnqo

ちょいと短いですが今回はここまでとなります。

まず垣根帝督の魔術についてですが、確かにあれではステイルの立場が無いようにも思えます。
垣根には魔術師としての才能なんてほとんどありません。が、それでもステイルの魔術を使いこなす
彼がいてはさすがのステイルも苦笑いするしかありません。これではあまりにも不遇なのではないか。
そう思われても仕方がないですね。

しかしこれだけは言わせてください。私はステイル=マグヌスが大好きです。
お楽しみに・・・・・・という事で!

一方通行の方も進展があったかと思います。
なぜミーシャ=クロイツェフが一方通行に好意を寄せてきたのか。次の一方通行場面で全てが明らかになります。

そんで風斬とヴェント。アレイスターが強すぎます。もうどうしようもありません。
このまま黙って嬲り殺しにされるしかないんでしょうか。次回も風斬サイドからお送りします。


次回更新は三日以内。


それでは、長々と失礼しました。ありがとうございました。


アレイスターと相対出来るのは、やはりあいつしかいません。
751 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/14(土) 23:26:54.68 ID:Sam7OFnqo



                          【次回予告】



『遅い・・・・・・んですよ。 もう少しで・・・・・・何も守れなくなるところだったじゃないですか・・・・・・』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・風斬氷華



752 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/05/14(土) 23:44:28.79 ID:VRy0vcKEo
いちおつ

展開が全く見えてこない
次が待ち遠しいな
753 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/14(土) 23:46:44.17 ID:F1PTgHfAO
754 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/14(土) 23:53:12.60 ID:XYQJmSX+0
乙です!!
755 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 00:04:02.21 ID:Sdjej2po0

それにしても垣根は↓の>>13の展開をしそうで怖い。一方みたいに天使の翼を手に入れるほうがまだしも・・・・
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/6947/1160397759/
756 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/05/15(日) 00:07:31.53 ID:85NusHaso
乙。
いつも思うんだが、ここの>>1の執筆速度はすごいな。
ネタ探しながら、資料調べながら、話を考えながら
書いてるんだよね。

学生ならともかく仕事しながらとかマジですごいよ。
757 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2011/05/15(日) 00:08:38.35 ID:hkMIX6vb0
エエエェェイワアアアアアァァァスくウゥゥン!!
758 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 01:36:39.68 ID:ge8r7KWbo
ステイルは魔術の開発をした
垣根はそれを利用したってことじゃないの?
開発するのと使うだけなのは難易度の差が半端ない
759 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 10:39:32.62 ID:9D6Ql8Ue0
>>756
むしろ今は遅いほうだろ
760 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 11:51:49.91 ID:NslZQ2BIO
エイワス来るぅぅぅぅ!?
761 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/15(日) 13:00:01.45 ID:aNfv0LlY0
ステイルクルー!?
エイワスも来そうだしイン条ペアも来そうだし・・・
っていうかエイワスに限りなく近い領域にってやっぱり神浄?
やばい今夜は眠れない
762 :糞音痴 :2011/05/15(日) 14:33:57.79 ID:IaO1dSF70
俺もwww
763 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/15(日) 14:59:30.03 ID:h1Yzhyxqo
フィアンマとか来ちゃうのかな
取り敢えずガブリエルが素敵
764 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/15(日) 15:24:57.37 ID:dQ0GzvlV0
いや、ここは復活して更に光の処刑を完成させたエリマキトカゲさんがだな……
765 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/15(日) 15:37:31.43 ID:JavJiI4r0
エイワスキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!
766 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 17:12:04.53 ID:NhRnFB8to
火野神作、推参!!
767 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/15(日) 17:51:23.70 ID:2T1rKI5Go
>>759
すみません、なるべく早く投下出来るよう頑張ります


ちょっと私事で申し訳ないですが、微調整のために投下します。
本当にちょっとしか投下しませんがよろしければどうぞ。

ではいきます。

768 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/15(日) 17:52:10.20 ID:2T1rKI5Go


「何を・・・・・・言ってるんですか・・・・・・!? たった一人でアレイスターに立ち向かうなんて、
 無謀です・・・・・・!! 私も最後までヴェントさんと――――」

「アンタ・・・・・・自分の目的を忘れてるんじゃないわよ・・・・・・」


ヴェントは自分の体を支えている風斬の手を強く握り締め、
この場から出て行けというようにその手を払う。
アレイスターの攻撃で満身創痍になっている風斬はその行為だけでふらりと倒れそうになる。


「アンタは・・・・・・あいつの、白いのにとって必要な存在でありたいって・・・・・・言ってただろうが。
 今の白いのには、・・・・・・アンタが必要だ。白いのは恐らく、ミーシャ=クロイツェフと一緒にいる。
 戦ってる。 ・・・・・・人間が、たった一人で天使に勝てるわけ・・・・・・いや、例え何万何億の人間が
 束になったって、本物の大天使には敵わない。 ・・・・・・アンタも分かってるんでしょ?」


言いながら、ヴェントは激しく咳き込む。その口から夥しい量の鮮血が飛び散った。
風斬が慌てて彼女に駆け寄ろうとするが、ヴェントはそれを片手で制した。

769 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/15(日) 17:52:52.76 ID:2T1rKI5Go


ひゅるり、と。そよ風が吹いた気がした。
いつの間にかヴェントの手には例のハンマーが握られていた。


「ヴェントさん、・・・・・・でも、・・・・・・でも私・・・・・・」

「デモもストライキもねえんだよクソボケ。 ・・・・・・アンタがここで白いのを支えてやんなきゃ、
 あいつは折れる。 あいつは・・・・・・ここで死んだらダメなのよ。 アンタも困るし、私も困る。
 アレイスターは私が・・・・・・このヴェントが引き止めるから。 だから・・・・・・アンタは早く行け」

「・・・・・・ここであなたを見捨てて、一方通行さんの所へは向かえません」

「・・・・・・この私に・・・・・・否定形はない・・・・・・。 例え人工天使だろうが、否定だけは認めねえ・・・・・・。
 私がやれっつったことは・・・・・・やれよ泣き虫」


それでも、と風斬が言いかけた時。


ザンッ!!、と木材に刃物をめり込ませるような音がした。
風斬の顔とメガネに真っ赤な血が飛び散り、彼女の視界は赤一色に染まる。

770 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/15(日) 17:53:57.02 ID:2T1rKI5Go


「が、ァァァあああああああああああああああああ!!?」

「余興が過ぎるぞ。 何時まで私の前でお涙頂戴の茶番劇を見せつける気だ」


いつの間に、どうやって攻撃されたのかも分からなかった。
気がつけばヴェントの肩口から横腹にかけて、一直線に大きな裂傷が出来上がっていた。
そこから大量に溢れ出す血飛沫のシャワーが、彼女の側にいた風斬の全身を洗い流していく。

ヴェントが着ている白のジャケットが深紅色に染まっていくのを見て憤慨した風斬が
アレイスターに突貫しようとするが、突如として風斬の足元から黒より暗い闇が噴出する。


「!?」


直後、ズグンッ!!!と風斬の全身に驚異的な『負荷』がかかった。
抗う間もなく、平伏せるように風斬の体が地面に強く叩きつけられてしまう。
恐らくは局地的に重力を変化させるような魔術を行使したのだろうが、AIM拡散力場の集合体である
風斬に重力変化の攻撃など大した意味はないはず。

やはり、アレイスターが操る魔術は、"魔術という物差しでは計りきれない法則が含まれていた"。

771 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/15(日) 17:54:53.11 ID:2T1rKI5Go


「が、・・・・・・ぐっ・・・・・・!!?」


理解不能の魔術攻撃によって全く身動きが取れなくなった風斬と、
目を覆いたくなるような出血をしながら膝をついているヴェントに向かって、
魔術師は言葉を送る。


「魔術師と人工天使の、概念を超越した友情か。 くく、実に感動的だな。
 私にそういう感情が残っていれば、涙を流してしまったかもしれない」

「流させてやろう・・・・・・か? 今ならオプションで脳漿がはじけ飛ぶサービスが
 付いてくるけどな・・・・・・・・・・・・」


ごぽ・・・・・・と口から血を流しながらヴェントが挑発するが、もはやアレイスターの耳には届いていない。


「だがそういった余興は、ほんの一瞬楽しむだけに留める事でその甘美さを満喫できるというのに、
 君たちはその辺りをまだ理解していない。 舞台に上がる覚悟があるなら客を最高に楽しませる
 作法を完璧に熟知してから上がるのが役者というものだろう?」


どこかで聞いたことのある物言いだ、と風斬は不可視の魔術攻撃に体を押し潰されながらそう思った。
全身の至る所からガラスがひび割れていくような音がする。自身の身体が悲鳴を上げている音だった。


もう、終わりだ。自分はここで消える。
そう悟った風斬の目から悔しさによる涙が流れていた。

772 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/15(日) 17:55:56.40 ID:2T1rKI5Go


アレイスターはクレーターの中心点から一歩も動くことなく、
手に持っている『衝撃の杖(ブラスティングロッド)』を弄びながら続けた。


「よって、君たちはこの舞台には相応しくない役者だ。 お役御免とさせてもらおうか」


スッ、と『衝撃の杖』の先端を風斬とヴェントに向ける。
咲きかけの花のように螺旋状に重なった金属状の板がゆっくりと花開いていく。
その中央部、つぼみのような部分が発光し始めた。


「殺してやる・・・・・・」

「次の時代でまた君たちと出会える事があれば、そのような罵詈雑言も聞いてやる」


ヴェントはただただ、発光する『衝撃の杖』の先端部を見つめることしか出来なかった。
地面に伏している風斬に至っては、そんな光景すら目にする事が出来ない。

773 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/15(日) 17:56:53.78 ID:2T1rKI5Go


せっかく、ここまで来たというのに。結局はこんなつまらない結末で幕を閉じてしまうのか。
風斬とヴェントの心には、『もう会いたい人と会えない』という不安と絶望と悲観がぐるぐると回っていた。


そして、カッッ!!!、と『衝撃の杖』の発光が一層激しくなり、炸裂する。
三人がいた場所は局所的な大爆発に見舞われ、わずかにビルとしての形を残していた建造物も
今度こそただの瓦礫と化して粉々に破砕されていった。

空気がビリビリと震え、地面はめくれ上がり、あまつさえ天空すら割れんばかりの衝撃が走る。
もはや更地となったと言って遜色ないほどの被害を受けていく第一九学区の一角を、





"全くその被害を受けていない風斬とヴェントはキョトンとした表情で見つめていた"。




774 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/15(日) 17:57:53.51 ID:2T1rKI5Go


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」


あまりの衝撃で粉塵すら舞い上がっていなかったため、はっきりと見て取れた。
風斬氷華の猛攻を受けても、ヴェントの加勢で二対一の状況になっても、
その場から全く動かなかったアレイスター=クロウリーの肢体が、派手に吹き飛んでいく光景を。


そして二人の目の前には今、一つの『光』が佇んでいた。
比喩ではない、本当に『光』が、先程までアレイスターが居た場所に"空から墜落してきたのだ"。
その光は、黄金色に輝いており、そして不健康そうな青ざめた輝きを放っている。


風斬氷華は知っている。そしてヴェントも、ロシアで初めてその『光』に遭遇した。

775 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/15(日) 17:58:33.94 ID:2T1rKI5Go










              ついに、あいつがやって来た。















776 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/15(日) 17:59:12.78 ID:2T1rKI5Go


「相変わらず君はせっかちだな、アレイスター。 先程の判断も実に早計だよ」


頭部から宇宙にある星のように流れる美しい金髪。
その体は、ゆったりとした白の装束に包まれている。


「この舞台にはまだ役者が全員揃っていないじゃないか。 幕を閉じるどころか
 まだ開いてすらいないというのに」


その極めてフラットな表情からは、なぜか微笑みが浮かんでいる印象を与えてくる。


「役者が全員揃い、観客が揃って、初めて舞台は成立する。
 そこから観賞する価値が生まれるのだよ・・・・・・まったく」


金色に輝く長い頭髪をかき分けるように背中から生えているのは、輝きすぎるほど輝く翼。
日本刀よりも精巧で、西洋剣よりも勇ましく、しかしどこか怪奇さを漂わせる美しい翼。

777 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/15(日) 18:00:23.34 ID:2T1rKI5Go


「まぁ、遅刻してしまった私がこんな事を言える立場ではないのかも知れないがね。
 待たせたな風斬氷華、ヴェント。 傷の方は平気かね?」


その頭上にプラチナのような輝きを放っている天使の輪を浮かべながら、"それ"は尋ねてきた。

風斬氷華は"それ"に対して、最初はあまり良い印象を抱いていなかった。
いつも人間という存在を下に見るような発言をし、全ての現象を価値と興味で判断する"それ"に、
わずかだが嫌悪感すら抱いていた。


しかし、この時ばかりは、もうそんな気持ちは霧散していた。
単純に、純粋に、助けてもらったことへの感謝の気持ちで一杯だった。


「遅い・・・・・・んですよ。 もう少しで・・・・・・何も守れなくなるところだったじゃないですか・・・・・・」

「そうか。 では今から、そしてこれから先も守っていけばいいだろう。 君の大切な友人を」


日本時間の午後三時過ぎ。


聖守護天使エイワスが、ついに舞台へと降臨した。

778 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/15(日) 18:07:25.21 ID:2T1rKI5Go
ここまでです。全然物足りないと思った方には申し訳が立ちません。
ちょっと前回の終わり方がいつも以上に中途半端過ぎたのと、書きためと現行の差を調節しておきたかったので
投下させていただきました。


さて、ついに『天使同盟』最強の存在であるエイワスが降臨しました。
エイワスが今までどこで何をやっていたのかはかなり後のほうで判明します。
今回、エイワスの登場をかっこ良く演出しようと頑張ってみたのですが、いかがでしたでしょうか?
全然駄目だと言われればもっと頑張ります、はい。


次回更新は三日以内。


それでは、ありがとうございました!

779 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/15(日) 18:07:56.48 ID:2T1rKI5Go



                          【次回予告】



『「神浄」と「ホルスの永劫」はともかく、「星幽界」の成立はあなたがいなければ達成出来ない「プラン」の最終目標だ。
 だから「天使同盟」に頭を抱えているのだと私は言ったはずだが、伝わらなかったか?』
―――――――――――学園都市統括理事長・アレイスター=クロウリー




『そうだな、ただその前にこれだけは言わせてくれ。 ――――「セト」は絶対に、君に振り向く事はない』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・エイワス



780 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2011/05/15(日) 18:12:28.93 ID:k6E09/1Jo
エイワスかっけーwwww
781 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/15(日) 18:16:43.02 ID:z4iTsPb9o
エイワスたんかわゆすと言って時代が懐かしい…
782 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/15(日) 18:18:47.54 ID:aNfv0LlY0
なンだよ格好イイじゃねェかエイワスのクソ野郎!
愉快に陽気に決まってンなァオイ!
783 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 18:35:24.91 ID:dOMRkKE90
乙乙。
惚れちゃいそうだぜエイワスぅーwww

セトってアレか、エジプト神話の悪神だか破壊神だか。オシリス殺しでホルスと敵対し…て、んん?
…一方さんを視てたのはもしや…いやいやいや。
784 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/05/15(日) 18:35:45.94 ID:naQE/5T0o
アレイスターに攻撃が刺さるのは流石だな
785 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/15(日) 18:36:31.00 ID:2a7LyGLAO

「セト」と聞くとどうしても某コーポレーションの社長が頭をよぎってしまうぜワハハハハ
786 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/05/15(日) 18:36:36.52 ID:YYH26/UXo
>>1は一体どれだけ書き溜めをしていたのか
こんだけの長編でこのペースだったら普通に尽きるだろうと思うのだが
ううむ、ホルスを感じる

そしてエイワスに心を許しそうになる
だがあんな胡散臭いヤツに心を許すわkエイワスかっけえ!
787 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/15(日) 18:37:39.46 ID:3bOisAE2o

エイワスキタ!
こういうときは頼りになるなってか、いよいよ戦うのか?
え、マジで?
788 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 18:56:04.14 ID:91bC8a5SO
流石俺のドラちゃん
789 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 18:57:42.89 ID:Sdjej2po0
>>785
俺はどっちでもいいけど。
790 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 19:33:07.84 ID:hdypHmoDO
某社長の前世がセトじゃなかったっけ?
791 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/05/15(日) 20:11:59.69 ID:naQE/5T0o
神と神官じゃ大分違うだろ
792 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/05/15(日) 21:17:44.00 ID:85z+YKmF0
とりあえず、ここは最強の援軍を素直に喜ぼうぜ
そういや、今のエイワスはどういった姿なんだ
793 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 22:06:16.26 ID:HKMXtxtDO
遊戯王のセトは名前借りただけだから!
砂漠の神で、暴風の神で、オシリスを殺してホルスと敵対したから悪魔の代表って辞書にあった
794 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 23:43:20.84 ID:JBLdim4IO
>>786
きっとこの>>1はクライマックス時、相当な量の投下で一気に終わらせそうな気がする。
795 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/05/15(日) 23:56:50.97 ID:/d8G30GAO
このスレもう半年以上やってんだよな
796 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/16(月) 00:00:23.15 ID:9azBn7sVo
題名で避けててやたら続いてるから読み始めたのが最近だが、追いつくまで何時間かかったことやらww
797 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/16(月) 00:07:23.63 ID:kAnm9zbDO
>>796
俺達の半年が、お前の数時間か
798 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/16(月) 00:32:36.82 ID:7Xicc2yq0
これまで一方通行・風斬・垣根・ヴェントがまともに戦うことも許されず
その場から一歩も動かず完全に圧倒していた(ミーシャは動かすくらいは出来たかもしれないが)アレイスターが
エイワスがただ空から衝突してきただけで粉微塵にされてしまう
しかも、当然それは倒したのではなくほとんどあいさつ代わりにすぎないだろう

この二個の化け物は次元が違いすぎる
そして主の演出が素晴らしい
799 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/16(月) 00:34:06.23 ID:TEzHWidpP
>>798
800 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/16(月) 03:11:35.99 ID:BcdI9bO/0
おいおいこれからどーなんだよ
気になりすぎて隈できちゃったじゃねーか!
801 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/05/16(月) 06:19:36.30 ID:INK79jAAO
>>800
このネットワークから、続きが気になるもやもや感だけを抽出する特性を持ったナナシワーストさんですか
802 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/05/16(月) 18:57:02.06 ID:Yy2FsWze0
か、勘違いしないでよね、続きが気になるのはわたしじゃなくて妹たちなんだから!





〜昨日の夜〜

「エイワスかっけぇぇぇぇっぇぇぇぇぇぇぇぇぇっぇぇぇぇええええええええええええ!!!」
803 :糞音痴 :2011/05/16(月) 20:13:42.70 ID:k9w8pIyl0
ハッ、何だこのエイワスの登場の仕方。1点だな(0.000001点満点中)
804 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/16(月) 20:15:17.48 ID:APD0/crAO
………。
805 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/05/16(月) 20:15:43.24 ID:xlR5Qixi0
>>803 おまえ色々なスレにいるけど なんでageるの?
[ピーーー]よ
806 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/16(月) 22:35:38.70 ID:7Xicc2yq0
しかし、当然のように次スレ確定状態だなあ
807 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/16(月) 23:04:50.48 ID:IdZvxwfSO
>>803
コテハンは自己顕示欲が強いから
808 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/16(月) 23:46:49.57 ID:TQjBoT4io
>>805
いちいちそんなことで目くじら立てんなよ
809 :糞音痴 :2011/05/17(火) 02:53:14.22 ID:np0W9DJy0
ageたっていいじゃないか
810 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 07:36:59.22 ID:a3c++g9SO
言い訳ねーだろ迷惑なんだよ
811 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/17(火) 07:59:48.34 ID:WwQt4yZv0
いままでは黙ってたけど流石にいい加減にしろよてめえ
ほんとのクソコテだな
812 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 08:13:02.72 ID:YzWqNoCIO
スレが上がっている事を>>1の来た合図だと思ってる俺らからすると無駄なageは死活問題
813 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/17(火) 09:02:07.49 ID:V01g42KDO
じゃあage
814 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 12:41:16.93 ID:i76eaK0DO
悪禁ってどうすれば出来るんだ?
815 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 13:24:42.39 ID:ygynZOizo
瀬戸さん……
816 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 17:04:37.56 ID:XzvMgQbN0
>>809
メール欄に「sage」と、ただ四文字打ち込めばいいだけのこと。
それだけで済む話なわけなんだけど糞君はどうしてもageたいようだね。
817 :糞音痴 :2011/05/17(火) 17:15:10.70 ID:np0W9DJy0
え?ちょ、俺アクキンされるようなことした?
818 :糞音痴 :2011/05/17(火) 17:17:27.51 ID:np0W9DJy0
したなら謝る。ゴメン
819 :糞音痴 :2011/05/17(火) 17:20:17.44 ID:np0W9DJy0
・・・あっ、それと一つにまとめられなくてゴメン。努力する。
820 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [sage]:2011/05/17(火) 17:20:33.86 ID:YyA0ctyDo
もういい
sageろ
もしくはレスすんな
821 :糞音痴 :2011/05/17(火) 17:22:50.99 ID:np0W9DJy0
・・・ねぇsageの意味教えて?どうすればいいのか分らない
822 :糞音痴 :2011/05/17(火) 17:24:16.88 ID:np0W9DJy0
・・・ねぇsageの意味教えて?どうすればいいのか分らない
823 :糞音痴 :2011/05/17(火) 17:24:59.27 ID:np0W9DJy0
・・・ねぇsageの意味教えて?どうすればいいのか分らない
824 :糞音痴 [sage]:2011/05/17(火) 17:33:33.25 ID:np0W9DJy0
こゆこと?
825 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/17(火) 17:33:51.78 ID:VmV3gkmX0
こええ
826 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [sage]:2011/05/17(火) 17:35:16.00 ID:YyA0ctyDo
>>824
うん
二度と外すな
827 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 17:42:54.12 ID:XzvMgQbN0
>>824
なんだよ、やり方わからないのにageたっていいじゃないかなんていってたのかww
やり方わかったならもう一生はずすなよ。
828 :糞音痴 [sage]:2011/05/17(火) 18:07:26.36 ID:np0W9DJy0
OK。了解した。
829 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 18:10:20.45 ID:rch8wmLIO
お前ら一体誰と戦ってんだ……あ、アレイスターか
830 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 18:19:44.11 ID:yhV7Jy2LP
ついでに言わせてもらうとそのコテ(名前)も外してほしい
名前欄は何も入力しなくてもVIPにかわりましてNIPPERがお送りしますになるから
クソコテって言われて嫌われるよ
831 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 18:22:44.90 ID:hStMysCHo
上がってるから見てみたらこれかよ
小学生はレスしないでくれ
832 :糞音痴 [sage]:2011/05/17(火) 18:41:30.34 ID:np0W9DJy0
ごめん俺小じゃない
833 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 18:41:51.05 ID:TgTQ5nNU0
そろそろこの話題は終了しようぜ
834 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2011/05/17(火) 18:44:33.15 ID:np0W9DJy0
ゴメン直す。おれは高3
835 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/05/17(火) 18:46:17.77 ID:H3EAmbFyo
更新来たかと思ったら検索して調べられない奴が来てただけかよ。。
836 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 19:02:41.54 ID:pklz3xCIO
頭悪い高3だな
837 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [sage]:2011/05/17(火) 19:06:31.62 ID:YyA0ctyDo
過ぎたことをネチネチと
838 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/17(火) 19:06:49.44 ID:uQHi8o0z0
テッラ「優先する。スレを上位に、クソコテを下位に」
839 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2011/05/17(火) 19:19:42.39 ID:np0W9DJy0
クソコテ卒業したぜ。
840 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2011/05/17(火) 19:21:31.34 ID:np0W9DJy0
なっ・・・光の処刑・・だと!?
841 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 19:22:15.95 ID:hStMysCHo
それ以上どうでもいいことをレスするな
これに対するレスも要らん
お願いだから黙ってくれ
842 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage saga]:2011/05/17(火) 20:23:47.79 ID:/bE+8A22o
黙ってNGしろよ
クソガキ1匹の為に無駄にスレ消費しないでくれるかな
843 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 20:24:26.02 ID:qFgXQ0HSO
>>832
ROMってろ生ゴミ
844 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 20:58:02.34 ID:Z9CRRIdIO
このスレに漂う殺伐とした空気。アレイスターも本気だということか……
845 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/17(火) 22:32:40.16 ID:9q3HpP9po
こんばんわ、お待たせしました。

前回、ついに学園都市に現れたエイワス。
唯一アレイスターに対抗出来るこの存在はどう出るのか・・・・・・、って
いかにもな前振りと共に投下を開始します・・・・・・ww


それではよろしくお願いします。
846 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/17(火) 22:33:25.71 ID:9q3HpP9po


――――――――――――――――――――――


エイワス。
学園都市の暗部の、最奥部に位置する最重要機密コード『ドラゴン』を冠する存在。
ホルスの時代に生きる先住民であり、アレイスター=クロウリーに『法の書』を書かせた霊的存在。

そして、今はホール=パール=クラアトという神の手を離れた『天使同盟(アライアンス)』の構成員。


エイワスは数十メートル先まで吹き飛ばしたアレイスターの姿を確認すると
背後にいる風斬とヴェントの方に身を翻し、うっすらと笑う。


「パーティは愉しんでもらえているようだな。 主催者としても嬉しい・・・・・・、
 いや、主催者は私ではなくミーシャ=クロイツェフだったか」

「エイワスさん・・・・・・」

「ヴェントを連れてここから離脱したまえ。私は久しぶりに直に出会えた旧友と
 談笑を愉しみたい。 ふふ、"ここは少し荒れるぞ?"」

847 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/17(火) 22:34:28.02 ID:9q3HpP9po


ぞくっ、と。風斬の背筋が凍った。
"あのエイワスの口から"『この場は荒れる』という言葉が出た意味を、
彼女は本能的に察知し、身震いしたのだ。

風斬はヴェントに肩を貸し、背中に生えている雷光の翼を広げる。


「ヴェントさん、大丈夫ですか・・・・・・?」

「・・・・・・、く・・・・・・エイワス。 アレイスターは・・・・・・」


全身を血で染めているヴェントは微かに呼吸をしながらエイワスに声をかける。


「いつまでもアレイスターの影に囚われていては前に進めないぞ、『前方』のヴェント。
 アレイスターは私が"処理"する。 君はもう、科学にそんな目を向けられるような
 立場ではあるまい? 一方通行の件もあるしな」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

848 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/17(火) 22:35:54.55 ID:9q3HpP9po


ヴェントの表情が沈む。エイワスの言葉に反論できなかった事で沈んだのか。
それとも、


「風斬氷華は一方通行とミーシャ=クロイツェフの下へ向かえ。 状況が切迫している、
 ミーシャはまもなく『悪魔』に変貌し、自我の崩壊という道を辿るだろう。
 "今の"一方通行ではミーシャ=クロイツェフには敵わない。 助力してあげたまえ」


"今の"、という含みのある言い方に首を傾げたが、深くは追求しなかった。
風斬氷華は頷くだけで返事をしない。言われるまでもないという意思表示だろう。


「ヴェント、君はもう動けないようなら安全な場所へ避難したまえ。
 分かっているとは思うが、今はまだ第一九学区からは出られない」

「・・・・・・動けない? 冗談でしょ」

849 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/17(火) 22:36:55.70 ID:9q3HpP9po


ヴェントの言葉にエイワスはクスっと笑って、


「ならば君には掃除当番を任せようか。 既に『回収部隊(アンチツヴァイ)』と接触しているようだから
 敵の情報は分かっているな? 現在、垣根帝督と"魔術師二人"が『回収部隊』と交戦している。
 君もそこに加わり、『回収部隊』の殲滅に当たってくれたまえ」

「わ、私以外にも学園都市に潜入している魔術師がいるのか・・・・・・!?」

「私が招待した。 まだ舞台に上がっていない者もいるがな」

「・・・・・・・・・・・・所詮、私は脇役って訳か」

「それを言うならこの私も脇役だぞ? 脇は脇らしく、慎みやかに事を運ぼうじゃないか」


チッ、と舌打ちをするヴェントだったが、エイワスに対して文句は一切言わなかった。
今の自分ではアレイスターには届かない。だがそんな自分にもやれる事はある。
それをエイワスに指摘されたのが、少し腹ただしかった。

風斬はヴェントを抱えたまま、ふわりと地から足を離す。

850 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/17(火) 22:37:49.75 ID:9q3HpP9po


「おい・・・・・・天使のアンタが私をお姫様抱っこして宙に浮いたりなんかしたら、
 そのまま天国に連れていかれそうなんだけど?」

「あ・・・・・・すみません。 でも今だけは我慢してくださいね」


ボロボロで虫の息になっていたヴェントもそんな軽口が聞ける程度には
無事であると知った風斬は安堵の息を吐く。
そしてそんな二人を見上げているエイワスに向かって風斬は言った。


「・・・・・・エイワスさん」

「?」

「私達・・・・・・ちゃんと元に戻れますよね?」


エイワスは答えず、ただ微笑を浮かべるだけだった。
風斬はヴェントと共に荒野と化した第一九学区の一角から飛翔していった。

851 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/17(火) 22:38:56.06 ID:9q3HpP9po


「ふ」


呆れが含まれたような失笑が聞こえた。


「『「天使同盟」が元に戻れる』、か」


緑色の手術衣に付いた砂埃を適当に手で払いながら
魔術師はエイワスの方へ歩いて来る。


「なぜ答えてあげなかった? 『天使同盟』という集団の結末が、あなたには見えているからか」


風斬氷華とヴェントが居なくなり、ビルも商店街も吹き飛んだ第一九学区という名の荒野には
エイワスとアレイスターだけが存在している。
空爆を被った跡地のようなこの場所でも、この二人がいるだけで神聖なる地に変貌しているかのような雰囲気が生まれる。

852 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/17(火) 22:40:02.40 ID:9q3HpP9po


「久しぶりだな、アレイスター。 ・・・・・・ふふ、面白い。
 君はあの時と全く変わっていないな」

「人間を外見だけで判断しないでほしいものだが」

「人間という生き物に、私が中身まで熟知して印象を決めるほどの価値があるとでも?」


エイワスとの距離が残り一〇メートル辺りになったところでアレイスターは足を止める。


エイワス。
アレイスター=クロウリー。


この二人の容姿は非常によく似ていた。
頭部から流れる美しい頭髪、フラットながらも時折微妙に変化するその表情。簡素な出で立ち。

だが対照的に、エイワスの長髪は金色だがアレイスターは銀、いや灰色に近いだろうか。
そして微妙に変化する表情にも、エイワスには『怪』、アレイスターには『邪』の雰囲気が含まれている印象を受ける。

アレイスターが『人外の領域ギリギリの所に位置する人間』なら、今のエイワスは『人間の領域ギリギリの所にいる人外』。

853 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/17(火) 22:40:04.17 ID:Y67edFS90
生キターーーー
がんばれ。俺は>>1を応援している。
854 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/17(火) 22:41:04.46 ID:9q3HpP9po


容姿こそ似ているものの、アレイスターの言うとおり人間は見た目では判断出来ないものだ。
もっとも、エイワスは人間ではないのだが。

そんな人外が口を開く。


「"愉しそう"だな、アレイスター」

「"楽しい"よ、エイワス。 あなたたちのせいで私の『プラン』に甚大な乱れが生じてしまったが、
 今はあなたたちのおかげでその『プラン』の過程を大幅にカット出来る状況にある」

「ほう、『プラン』の修正ルートを新たに構築したのか。 それはそれは・・・・・・。
 で、その修正ルートが現状だと」

「察しのとおりだ」


パシッ、という軽い音がした。アレイスターが再び虚空から取り出した『衝撃の杖』を掴んだ音だ。

855 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/05/17(火) 22:42:12.47 ID:XvIMfj5x0
今の……一通さン凶化フラグが立ちました
856 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/17(火) 22:42:23.23 ID:9q3HpP9po


与えられた台本を忠実に読み上げるかのように、アレイスターは尋ねる。


「ここに来るまでの間、色々と動き回っていたようだが・・・・・・。 何をしていた?」

「返答を得られると思って問うているとは思えん質問内容だな。
 だが・・・・・・いずれその答えは私が口にするまでもなく、君自身が思い知ることになるさ」


ちりちり・・・・・・と二人を包む空気が鋭くなっていく。
仮に人間がこの場に居たら一秒も経たないうちにその重厚に押し潰されて発狂しているかもしれない。
それ程までに、この二人が生み出す雰囲気は常軌を逸していた。


「さて、今度はこちらから質問しよう。 先ほど君は『プラン』の過程を大幅に省くことが出来ると
 言っていたが・・・・・・。 具体的にはどこまで進められる状況にある?」

857 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/17(火) 22:45:12.69 ID:9q3HpP9po


「珍しいこともあるのだな、まさかあなたから『プラン』に関する質問をされるような
 日がやってくるとは。 『プラン』の中心核に位置するあなたなら答えるまでもないのでは?」

「『神浄』への到達段階まで来ている、と?」

「『幻想殺し(イマジンブレイカー)』なくして『神浄』への到達は不可能だと思っていたが、
 あなたたち『天使同盟』の"おかげ"で『幻想殺し』を利用することなく達成できるかもしれない」

「くく。 それを成せば『最古の神』が君を認め、君は私と同じ位置に立つ事が出来る、か。
 ずいぶんと焦ってるじゃないか。 そんなに『天使同盟』が怖いのか?
 まあ今回ばかりは、君の焦りも良い傾向にあると思うけどな」

「何?」


それは、この二人にしか理解出来ない会話だった。
アレイスター=クロウリーとエイワス。両者が存在している領域は、もはや現代の人間では
到底理解が追いつかない所にある。

858 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/17(火) 22:48:28.58 ID:9q3HpP9po


第一九学区のあちこちで戦闘が勃発しているためか、打ち上げ花火が至近距離で大量に炸裂したように学園都市全体の空気がビリビリと
震えているがエイワスは相変わらず気にも留めず会話を続行する。


「いつもいつも焦りすぎで早計気味だった君だが、今回ばかりはそれが正しいと言っているのだよ。
 こんなところで私と会話などしてないで、『回収部隊』などという瑣末な戦力を作っていないで、
 さっさと『星幽界』を展開させるなり『ホルス』を迎えるなりしていればよかったものを」


その言葉を聞いて、アレイスターの表情が初めて険しいものとなった。
と言っても、それは彼の表情を一切見逃さず延々と観察することでようやく分かる程度の変化だったが。


「星幽界とホルスは連動しているわけだが。 知っているくせに知らないフリをするなよエイワス。
『神浄』と『ホルスの永劫』はともかく、『星幽界』の成立はあなたがいなければ達成出来ない『プラン』の最終目標だ。
 だから『天使同盟』に頭を抱えているのだと私は言ったはずだが、伝わらなかったか?」

「私程度の存在に『楔』さえ打てないような君が、新たなる『界』と時代を開拓出来るわけがない。
 私が君の束縛から解き放たれた時点で、『プラン』の崩壊は約束されたも同然だ」

「・・・・・・・・・・・・、」

859 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/17(火) 22:51:28.81 ID:9q3HpP9po


今ここにいるエイワスは、アレイスターがヒューズ=カザキリを製造ラインにしてこの世に現出させた、
いわゆる『レプリカ』のようなものである。
つまりは人形。本来ならエイワスはアレイスターの手中に今も収められていなければならない存在なのだが、
エイワスが『天使同盟』の存在に興味を持った瞬間、アレイスターの『プラン』は致命的な損傷を負うことになった。

エイワスは学園都市に重なる蜃気楼のように存在する虚数学区をアレイスターの手中から奪い、
逆に掌握してしまっている。これでアレイスターは強制的に排除する以外の方法でエイワスと風斬氷華を
どうにかすることが出来ない状態にあった。

だがアレイスターはため息をつくだけで、エイワスの言葉に動じたりすることはなかった。


「分かっているつもりだ。 だから、」


アレイスターは『衝撃の杖』をエイワスの方に向け、


「だからここで今日。 あなたを取り戻す」

860 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/17(火) 22:52:43.54 ID:9q3HpP9po


「ふふ、照れるじゃないか。 ここまで私に熱烈なアプローチをしてくる人間は、
 今まで君だけだったな」

「今は他にもいると?」

「さあ・・・・・・、どうかな」

「妬けるじゃないか」

「くく」


二人の談笑はここまでだった。
会話が途切れた途端、二人がいる場所を中心に、もう何度起きたか数えるのも面倒なほどの震動が
学園都市を襲う。
比喩ではない。実際に揺れている。この二人の『殺気』に地球という惑星が恐怖しているかのように、
地面が、空が、空間が、確かに震動している。

エイワスは微笑を貼りつけたまま言う。

861 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/17(火) 22:53:22.92 ID:9q3HpP9po


「ならば、私も私自身の身を守るために、君と戦わざるを得ないな。
 もっとも、ここで私が君を止めなければ君はミーシャ=クロイツェフの下へ向かい、
 『星の欠片』の消滅を待たず彼女を消し去ってしまうだろうがな」

「まさかあなたと刃を交える日を迎えようとは・・・・・・私は何を呪えばいいのかな?
 私に必要な知識を全て授けてくださったあなたに牙を剥かなければならない運命にか?
 それとも『天使同盟』か。 いずれにせよ、あなたたちはここで終わりだ」

「そうだな、ただその前にこれだけは言わせてくれ」

「?」


星のように輝く翼を大きく広げ、完全な戦闘態勢に入ったエイワスは
嘲笑を前置きにして言った。

862 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/17(火) 22:54:10.39 ID:9q3HpP9po




「――――『セト』は絶対に、君に振り向く事はない」




それはアレイスターにしか理解出来ない、エイワスから送られた侮辱だった。
アレイスターの表情は誰が見ても分かるほどに『憤怒』一色に染まる。
『衝撃の杖』から一切容赦のない攻撃が放たれる。


世界ではこれまで、様々な戦争が起きた。
トロイア戦争。ローマ内戦。ダキア戦争。スコットランド独立戦争。フランス革命。
日露戦争。第一次世界大戦。第二次世界大戦。太平洋戦争。イラク戦争。第三次世界大戦。
上記以外にも数々の戦争が勃発してきた。挙げていけばキリがない程に。

だがこれから起こるこの両者の戦いは、それら全ての戦争が『茶番』とでも言うような、
人間が引き起こしてきた戦争とは世界が違う、それこそ神の領域の戦い。


アレイスター=クロウリーとエイワスのたった二名による、地球誕生以来最大規模の戦争が幕を開けた。

863 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/17(火) 22:55:17.33 ID:9q3HpP9po


――――――――――――――――――――――


風斬氷華はヴェントを抱きかかえたまま第一九学区の上空を飛行していた。
ヴェントはアレイスターとの戦闘で重傷を負っている。今は風斬と共に
どこか体を休める事が出来る安全な場所を探しまわっていたのだが、


「な、何なんですかこの人達は・・・・・・!?」

「・・・・・・『回収部隊(アンチツヴァイ)』とかいう、ワケのわかんない連中だったか」


風斬とヴェントは突如として現れた謎の兵器と仮面の軍隊たちから奇襲を受けていた。
何とか逃げ回りながら雷光の翼やAIMの剣を駆使して風斬はそれらをやり過ごしている。

『回収部隊』。垣根帝督のために結成されたファイブオーバーと『未元物質』の仮面の兵士で即席の軍隊。
恐らくは風斬達を垣根の仲間と判断して攻撃を仕掛けてきているのだろう。

風斬は頭上に浮かんでいる虹の輪を拡大させ、それを盾にして素早く自身の周囲へ
移動させていく事で『回収部隊』の攻撃を防いでいる。

864 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/17(火) 22:56:33.43 ID:9q3HpP9po


「も、もしかしてこの人達、第一九学区全域に配備されているんでしょうか・・・・・・?
 だとしたらもうこの学区に安全な場所なんて・・・・・・」


ならば第一九学区から他の学区に移動すればいいのだが、それも出来ない。
現在この第一九学区外周にはエイワスが施した、高さ一〇〇〇メートル以上の強固な魔術防壁が出現している。
筒状に展開されているため、風斬なら上空から外へ出ることも可能だが、それは『回収部隊』も同じことだ。
必ず風斬を追ってくる、そうなると他学区にいる関係の無い一般人まで巻き込まれる事になってしまう。

だが自分たちが第一九学区にいる限りだと『回収部隊』も外へは移動したりしないようだ。
あくまで彼らの目的は垣根帝督。彼が第一九学区にいれば『回収部隊』もそこから出ることはない。

ヴェントは消え入りそうな呼吸を繰り返しながら風斬に言った。


「エイワスの話じゃ・・・・・・この場所には私以外の魔術師がいるらしい・・・・・・。
 仮面の連中と戦闘を行ってるなら、上空に行けばすぐに魔術師がいる場所が分かるはず。
 ・・・・・・その周辺で私を降ろしてくれればそれでいいから」

865 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/17(火) 22:57:40.57 ID:9q3HpP9po


それを聞いた風斬は背中の翼で周囲の『回収部隊』を辛くも撃退し、
一瞬で高度一〇〇〇メートル付近まで飛翔した。

俯瞰風景をじっと観察していく。上空から見渡す学園都市には、学生たちの姿は確認できなかった。
そして、


「あ、あそこ。 ビルとか沢山崩れてる・・・・・・」

「・・・・・・あそこでいい、私を降ろしてアンタはさっさと白いのの所に・・・・・・」


立ち並んでいる建造物のエリアに、そこだけポッカリと穴が開いたような場所があった。
恐らく『回収部隊』と戦闘をしていた垣根帝督か魔術師の仕業だろう。
一方通行とミーシャ=クロイツェフである可能性も考慮したが、天使が暴れているとなると
被害はあんなものじゃないと風斬は判断する。

そのまま上空で一方通行達の居場所を捜すことも出来たが、まずはヴェントの安全確保が最優先だ。
風斬は目処を付けたそのエリアへ向かうために一気に下降したが、

866 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/17(火) 22:58:46.71 ID:9q3HpP9po




直後、風斬とヴェントの視界と聴覚が。否、少なくともこの学園都市から
景色と音という概念が一瞬だけ消えてなくなった。




宇宙からでも余裕で観測できそうな激しい閃光と爆発。
そして遅れてやってきた恐るべき爆風に煽られ、あらぬ方向に吹き飛ばされてしまう。

核爆発の数千倍はあるのではと疑う程の爆破が起きた場所は、エイワスとアレイスターがいたエリアだった。


(・・・・・・空中でのバランス制御が・・・・・・出来、な・・・・・・!!!)


エンジンの故障で地面へ墜落していく飛行機のように、風斬は螺旋状に回転しながら
落下していく。上空に飛んだ風斬達を追うために飛翔していた『回収部隊』も爆風に飲み込まれ
一瞬で吹き飛ばされていた。
こんな状況下でも風斬はヴェントを絶対離さないよう強く強く抱きしめていた。

尚も続く爆風に乗って、二人は本来向かうべきエリアから少し離れた地点へ勢い良く墜落していった。

867 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/17(火) 23:00:33.77 ID:9q3HpP9po


――――――――――――――――――――――


エイワスとアレイスターの衝突によって起きた規格外の大爆発によって、
第一九学区以外の地域も巻き起こる暴風に晒されていた。

しかし『警備員(アンチスキル)』と『風紀委員(ジャッジメント)』による適格で迅速な対応の甲斐あって、
学園都市に住む全ての住人達は地下にあるシェルターに避難していた。
人外の化物二人が起こした爆発は当然地下にも響いているが、学園都市に作られているシェルターは
地上からの衝撃を極限まで拡散させる構造になっている。地下での被害者は出ていないだろう。

だが、中には例外もいる。本当に例外中の例外だが、例えば第一九学区で起きている出来事を
確認したいと、わざわざ危険を承知で第一九学区に近付いている人間がいたとしたらどうだろうか?


例えば『アイテム』。浜面仕上と滝壺理后、麦野沈利の三人は
エイワスが施した光のオーロラ状の壁付近から一気に一〇〇メートル近い距離まで吹き飛んでしまっていた。


「・・・・・・・・・・・・た、きつぼ。 ・・・・・・むぎの・・・・・・」

868 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/17(火) 23:01:38.09 ID:9q3HpP9po


どれくらい気を失っていたのかも分からない。浜面はゆっくりと目を開けて呟いた。

生きている事が奇跡だった。奇跡というよりはもはや不自然といってもいい。
浜面が盗んだ軽自動車の中にいたことが生命線をギリギリのところで繋ぐ原因になったのだろうか。

その軽自動車はひどい有様になっていた。ガラスというガラスは全て粉々に割れており、
車体はグシャグシャに歪み、どういう交通事故を起こせばこんなことになるのかと言いたくなるような状態だった。

浜面は未だに聴覚が戻って来ない耳を気にしながら車内をもぞもぞと這う。
車体はタイヤが仰向けになる形で、綺麗にひっくり返っていた。
浜面は隣の助手席に目をやる。呼吸が止まるかと思った。助手席に座っていたはずの滝壺の姿がなかったからだ。

後部座席"だった"場所にも視線を向ける。しかし予想通り、そこに麦野沈利の姿は無かった。


(ち、きしょ・・・・・・。 一体全体何がどうなってやがんだ・・・・・・!!?
 また戦争でもおっ始めてるってのかよ・・・・・・!!!)

869 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/17(火) 23:02:38.30 ID:9q3HpP9po


浜面仕上は諸事情により、第三次世界大戦に巻き込まれている。
あれはまさに地獄を再現したような戦争だった。二度と関わりたくないと素直に思った。

頭から生温い液体が頬を伝ってくる。頭部からの出血だった。
軽傷ではない、このまま目を閉じたら死ねる自身があるくらい浜面はダメージを受けていた。

と、そんな馬鹿な事を考えていると、


「はまづら・・・・・・はまづら・・・・・・!! 大丈夫・・・・・・!?」


その第三次世界大戦で必死になって守り続けてきた浜面の一番大事な人間の声が車外から聞こえてきた。
どうやら滝壺理后は生きているようだ。彼女の声を聞いた浜面の表情が綻ぶ。

ベキベキベキッ!!!、という鉄板をへし折るような音がした。
浜面の目の前にある、助手席側の扉がめくれ上がって外の景色が飛び込んできた。


「浜面、そこから這って外に出れる?」

「麦野か? 良かった・・・・・・お前も無事だったんだな。 ・・・・・・ちょっと待っててくれ。
 シートが邪魔だけど何とか出られると思う」

870 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/17(火) 23:03:26.03 ID:9q3HpP9po


浜面はズリズリと芋虫のように体を這わせ、やっとの思いで外に出る。
腕にガラス片がいくつか突き刺さっていたが生きていただけ御の字だ。

外にいた滝壺と麦野も無傷ではなかった。滝壺は着ているジャージが所々破れているし、
麦野も頭から軽く出血しており、左腕の義腕が不自然な方向に折れている。


「何があったんだ・・・・・・?」

「わかんない。 けど学園都市全域に及ぶ爆破があった事だけは確か。
 携帯がぶっ壊れたから絹旗とは連絡つかないけど、あいつは第七学区にいたから
 多分無事でしょ。 ただ第一九学区周辺の学区はダメだね。 ほら、」


麦野が顎を少しだけ動かして示す。
彼らがいる第六学区は荒れていた。まるでそこだけ集中的にハリケーンでも起きたかのように
建物のガラスは吹き飛び、遊園地から飛んできたのか、メリーゴーランドの白馬の乗り物が
無造作に転がっている。


「・・・・・・・・・・・・ふざけやがって」

871 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/17(火) 23:04:18.21 ID:9q3HpP9po


毒づく浜面に歩み寄った滝壺が持っていたハンカチで彼の頭の血を拭う。
浜面は彼女に感謝しながら考えた。この学園都市で今何が起こっているのか。

だが、浜面程度の頭ではいくら思考を巡らせてもそれらしい答えには辿りつけない。
それは滝壺や麦野も同じだった。もう彼らに出来る事はただ一つ、これ以上この騒ぎに首を突っ込まないようにすることだけだった。

とにかく第一九学区から遠く離れて避難したほうが良いと、浜面は二人に声をかけようとしたところに、


「ん?」


遠くの方から足音が聞こえてきた。誰かが走っている。
三人がその方向へ目を向けると、第六学区にある遊園地へ続く道を二人の人影が走っていくのが一瞬だけ見えた。
一人は異国のシスターのようなコスプレをした女の子だった。そしてもう一人は、


「・・・・・・あいつ、確か断崖大学の時の・・・・・・?」


二人はその人影を無視したが、浜面仕上は見覚えがあった。
確かあれは十月初旬、御坂美鈴襲撃のために断崖大学にいた浜面の前に立ち塞がった、無能力者ではなかったか?

872 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/17(火) 23:05:32.70 ID:9q3HpP9po


――――――――――――――――――――――


「・・・・・・なんだ? あの壁・・・・・・」

「とうま、怪我は大丈夫?」

「ああ、問題ない。 インデックスこそ平気かよ?
 さっきは思いっきり吹っ飛ばされたけど・・・・・・」

「大丈夫なんだよ。 とうまが守ってくれたから」


学園都市の無能力者(レベル0)、上条当麻とイギリス清教のシスター、インデックスもまた、
第六学区と第一九学区の境界線付近まで足を運んでいた。

彼らは青髪ピアスと吹寄制理の制止を振り切り、『警備員』の目を盗んで
第七学区から三時間以上もかけて全力疾走でこの場所に向かっていた。

途中、この世のものとは思えないほどの大爆発が発生し、二人は爆風に飲み込まれた。
上条は咄嗟にインデックスを懐に抱え右手を突き出したが無意味だった。
あっさり吹き飛ばされて地面を何度も転がるハメになってしまう。

873 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/17(火) 23:06:52.18 ID:9q3HpP9po


だが幸い、上条はともかくインデックスは軽い擦り傷で済んだ。
上条も全身傷だらけになってしまったが、命に関わるような怪我は負っていない。


そして現在、二人は第一九学区周囲に展開されている光のカーテンの前までたどり着いていた。


「インデックス、この壁って魔術で出来た物なのか?」

「・・・・・・ごめん、分からないんだよ。 私の中の魔道書にもこんな魔術は記載されていないし、
 私自身もこんな物は見たことがないかも」


インデックスの脳に収められている一〇万三〇〇〇冊の原典にも、『完全記憶能力』という
特異体質を秘めるインデックス自身も、この壁については全く知らないという。
だが上条から見てもこれが魔術以外の技術、例えば科学的な人工物だとは思えなかった。
要するに、この壁は『異能の力』で構成されているということだ。

ならば上条当麻がその右手に宿す、全ての異能の力を打ち消す『幻想殺し』なら壁を壊せるはず。
だが上条は自分の右手を見つめながら迷っていた。本当にこの壁を壊してしまってもいいのかと。

もしかしたらさっきの爆風もこの壁があったから威力が弱まって自分たちは助かったのではないか。
もしこの壁を破壊した結果、さっきのような爆発が発生したら学園都市そのものが吹き飛んでしまう程の
被害を被ってしまうのではないか。

874 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/17(火) 23:08:36.62 ID:9q3HpP9po


(・・・・・・どうする? どうすればいい、この壁を破壊しちまってもいいのか・・・・・・!?
 第一九学区で起こってる事はやっぱり只事じゃない。 第三次世界大戦がおままごと
 に思えるくらいの事が起きてんじゃないか・・・・・・。 ・・・・・・でももしこの壁を壊して、
 そのせいで誰かが傷つくような事があったら・・・・・・・・・・・・)


じわり、ときつく握り締めている右手が汗ばむ。自分としては、今すぐにでも
第一九学区に入ってこの騒ぎを食い止めたい。しかしこの壁を破壊してしまってもいいものなのか、
上条当麻は最後の決断を下せずにいた。

と、壁の前で立ち往生している彼に、すぐ後ろからインデックスが声をかける。


「行ってみよう、とうま」

「インデックス・・・・・・。 で、でも、これって第一九学区にいる魔術師か誰かが
 他学区にまで被害が及ばないように設けた壁じゃないのか・・・・・・?
 それを壊しちまったら俺・・・・・・」

「多分だけど、壁が破壊されてもその魔術師はまたすぐに壁を出現させられるはず。
 目測でしかないけど、その魔術師はこれだけ巨大で強固な壁を一瞬で作り出せるような魔力を秘めていたんだよ。
 そんな魔術師、聞いたことないかも。 だからとうまが右手でこれを壊したら、魔術師は必ずそれを察知して
 再び一瞬でこの壁を出現させると思う。 ・・・・・・自分勝手な意見だけど、私達が中に入るにはそれしかないかも」

875 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/17(火) 23:12:12.47 ID:9q3HpP9po


二人はこの光のオーロラが出現する瞬間を目撃している。なにせ高度一〇〇〇メートル以上の巨大な壁だ、
遠く離れた位置からでもそれは確認できる。そしてその壁は、まるで最初からそこにあったかのように
一瞬で出現していた。並の魔術師では、いや、例え世界に名を馳せるような大魔術師でも果たしてそんな事が出来るのか。

上条は目を閉じ、しばし沈黙する。
これは賭けだ。インデックスの言ったとおり、自分勝手な理由でこの壁を破壊して、もしそれで
誰かが酷い目に遭うような事があったら・・・・・・。しかし、自分たちが一旦第一九学区に入れば
必ずこの騒ぎを止められるという自身があった。これまで様々な事件に関わってきた経験もあっての自身だった。

上条はバシッ!と自分の両頬を強く叩いて喝を入れる。これから自分たちが首を突っ込む場所は、
地獄すら生温いと思える戦場だと強く心に念じる。そして必ず、学園都市のために、学園都市に住む人間のために
この騒ぎを終わらせてみせると強く誓った。

『幻想殺し』が宿る右手を握り、インデックスの方を見て上条は言った。


「・・・・・・それじゃあ、行くぞ」

「うん」


上条は右腕を思い切り振りかぶり、叩き割る勢いで右手を壁にぶつける。
パキイィィィィン!!!!!!、という甲高い音が鳴り響いた。

876 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/17(火) 23:15:18.16 ID:9q3HpP9po


そして上条は絶句する。


「・・・・・・・・・・・・え?」


『幻想殺し』で異能の力を打ち消す時の独特の手応えは確かに感じた。
だが依然として、光の壁は第一九学区への侵入を防ぐように、上条達の目の前に君臨していた。


「な、何で消えねえんだ・・・・・・? これも魔術の一環のはずだろ・・・・・・」


上条はもう一度右手を壁に押し付ける。だが今度はもう、異能の力を打ち消す感触すらしなくなった。
普通の右手で、普通の壁を触っているような感触しか伝わってこなかった。間違いなくこの壁は『異能』で
あるにも関わらず、まるで"『幻想殺し』が破壊する必要がないと判断しているかのような錯覚さえ覚える"。


「と、とうま・・・・・・」

「・・・・・・意味が分かんねえ。 何だよ、どうなってんだちくしょう・・・・・・!!!」


第一九学区から絶えず聞こえてくる銃声や爆撃音を聞きながら、二人は呆然と立ち尽くすしかなかった。


もうここは、"招かれざる客"は絶対に入れない不可侵領域だと認めざるを得なかった。

877 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/17(火) 23:23:04.73 ID:9q3HpP9po
ここまでです。前回の投下が少なめだったんで今日はちょいと多めに。

地球誕生以来最大規模の戦いっつってもそれが第一九学区だけで起きてるってんじゃ
スケール小さい感が否めませんよね・・・・・・。地球を巻き込んでしまうのはもう少しあとになります。
頑張れ地球、>>1は限界だー

そして上条当麻と浜面仕上。上条当麻は特に動向が注目されていましたが、
なんと舞台にすら上がれないという事態に。
このまま上条の出番は終わってしまうのでしょうか。


次回は第一九学区に『天使同盟』より早く侵入していたネズミが出てきます。
どうかお楽しみに・・・・・・。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!

878 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/17(火) 23:24:57.29 ID:9q3HpP9po



                          【次回予告】



『まさかアンタみたいな大物まであいつらと関わってたなんて。
 助けてもらったお礼と自己紹介は今しておいた方がいいかしら?』
―――――――――――ローマ正教の暗部『神の右席』の元一員・前方のヴェント




『どちらも後にしましょう。 まだ援軍がこちらに向かってきています』
―――――――――――イギリス清教『必要悪の教会(ネセサリウス)』所属の魔術師・神裂火織




『・・・・・・あー・・・・・・、お前・・・・・・ステイル、だっけ』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・垣根帝督




『覚えててくれたのか。 まあ、君みたいな無茶をする馬鹿に覚えられても
 ちっとも嬉しくないんだけどね。 ・・・・・・久しぶりだな、垣根帝督』
―――――――――――イギリス清教『必要悪の教会』所属の魔術師・ステイル=マグヌス



879 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 23:27:34.35 ID:IVroh8ic0

上条さんキt……あれー……
一方さんとガブリエルのターンが待ち遠しい
880 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/05/17(火) 23:31:36.85 ID:JiSDFZW9o

ネセサリウスの二人組登場か
この二人ってコンビ組んでたの最初だけなのに妙な安定感あるよね
881 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/17(火) 23:32:11.08 ID:NWHR0sAuo


流石の上条さんも主人公ではないこの物語には介入できないか
てか、介入しても回収部隊に襲われたら右手だけではどうにもならん気がするしな……
882 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/17(火) 23:33:04.05 ID:2l0kLO8E0
ステイルキターーーーーー!!!!!!!!!!!!!
883 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/17(火) 23:37:14.23 ID:XuovpZ0Lo
ステイルさんがここにきたってことは何か新しい魔術的なものが完成したのでは・・・!!
884 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北陸地方) [sage]:2011/05/17(火) 23:38:03.39 ID:vzCqgJ+AO

ステイルとねーちんキターーーー!
ステイル&ていとくんでダブルイノケンティウス、いやクワドループルトイノケンティウスが見れるかもしれんとは胸が熱くなるな
しかし上条さんは介入不可か
885 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/05/17(火) 23:39:01.88 ID:DR6T6MDko
うん。上条は今回お呼びではないからな
主役のはずだろ、、頑張れ、一方通行
886 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 23:40:23.74 ID:tayZLbbco

オーバーレベル5の大群とか上条さんには鬼門だし介入しない方が吉か
次回は新旧イノケンコンビが見れたりするのかね

それにしても>>877
>頑張れ地球、>>1は限界だー
が某エキセントリックな少年ボーイを思い出さずにはいられない
887 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/05/17(火) 23:44:06.13 ID:pJtVZOv10
よし、初遭遇
上条さんがどうなるか気になってたがまさか門前払いとはwwwwww
888 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 23:44:24.61 ID:L55r3SPr0


インデックスがエイワスに頭の中を整理されたみたいな感じだったから、
てっきりインデックスと上条さんは物語にだいぶかかわってくると思ってた
889 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/17(火) 23:45:10.24 ID:JadGHKqd0
乙なんだよ!
まさか戦場に残るネズミ…いや、舞台に上がる役者がこんなラインナップだとは!
そしてエキセントリック少年ボウイやめろww
890 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 23:56:03.90 ID:u2xEDiVS0
乙乙!
ステイルと垣根の炎の魔術師遭遇ktkr!

それに引き換え上条さんェ…
…いや、まだ門前払いと決まった訳じゃない
のーみそこねこねされちゃったインデックスの見せ場がきっとあるんだよ!
891 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/05/17(火) 23:59:13.37 ID:XvIMfj5x0

中条さんの判断により、上条さんはシャットアウトされました
でも浜面たちと遭遇フラグは立ったし、このまま出番終了するとも……
892 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/05/18(水) 00:15:54.10 ID:5IF4yvOAO
二人(?)のおかげで地球がヤバい
というか、エイワスが負ける場面が想像出来ないんだが
893 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/18(水) 00:33:50.00 ID:MU1vAvrbo
アレイスターがそこまで強いとは思えないけどね
894 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/05/18(水) 00:36:29.35 ID:EnrsY1XAO
前スレ>793の
明日。
垣根帝督がとった行動で、とある銀髪のシスターが悲痛の涙を流してしまうとも知らずに。

って、もしかして…。
895 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2011/05/18(水) 00:42:01.01 ID:vWLhg8mp0
わざとやってんじゃねぇかって思うくらい気持ちよく間違ってるけど自身→自信な。
こういう間違いは読んでて萎えるから気をつけてくれ。
話は最高に面白いのに。
896 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2011/05/18(水) 01:08:26.81 ID:/mR3LkGoo
まぁそういうのは取りあえず置いておいて1乙しようぜ!

次回の更新も待ち遠しいぜ
897 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2011/05/18(水) 06:59:30.65 ID:iAhd9vD/0
乙でっす!!
エイワスさすが!
898 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/18(水) 07:24:02.41 ID:tgyhjMvIO
>>895
899 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/05/18(水) 12:17:40.00 ID:OHxt9NXE0
乙でーす
900 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/05/18(水) 15:12:20.26 ID:JzxftZCAO
エイワスはあれだな、良い油を使った[たぬき]なんだな。
901 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/18(水) 17:00:27.39 ID:ySeJNFBJ0
乙!
エイワスと☆の対決……胸熱やで!
902 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/18(水) 17:42:47.91 ID:TejLR3a80
エイワス☆マジックという名のどこでもドアで
☆を太陽の中に飛ばすことはできないものか
903 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/05/18(水) 20:51:57.27 ID:MvB5N/fAO
         ↑太陽

       ☆
       /
      /
      //
     //
     ///
    ///
エイワス マジック!

こうですかわかりません
904 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/18(水) 21:14:58.32 ID:X5FCqiGd0
おつおつ
上条さんに主人公補正がかからなくなってしまった…
905 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/05/18(水) 22:09:28.00 ID:58nEat4Q0

ステイルとていとくんのコンビネーションに期待
906 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/05/18(水) 23:26:47.48 ID:KsY8/jjg0
>>1乙!!
よっしゃあああああああステイル来たああああああああああああ
907 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/18(水) 23:36:00.71 ID:nS2L2I+Yo
>>895
大変申し訳ない・・・・・・深く反省します。
未だに誤字脱字が直らないのはいただけませんね・・・・・・長期間やってるのに

>>902
大気圏外への干渉はちょっと・・・・・・ww 今のエイワスは所詮AIMの結晶なので


こんばんわ、投下しに来ました。
つか何か次スレの匂いが漂ってきましたね。次で終わるかなぁ

前回はエイワスvsアレイスターの開幕。上条当麻と浜面仕上の門前払いという展開でした。

今回はついに、学園都市に侵入したネズミが登場します。
思いっきり次回予告でバラしてますけど気にしない。

では、いきます!
908 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/18(水) 23:36:38.42 ID:nS2L2I+Yo


――――――――――――――――――――――


瓦礫の山の中で目を覚ました風斬氷華とヴェントは周囲を警戒しながら歩き、
第一九学区の廃ビルの中に入っていった。


「ここでいい、アンタはもう行け」

「・・・・・・ここなら『回収部隊』も追ってきませんかね?」

「どこだろうがあいつらはやってくる。 でも私は傷の回復時間さえ稼げればそれでいい。
 ここで傷を癒せばまた戦える」


風斬は抱きかかえているヴェントをそっと降ろす。
ここは恐らくマンションだったビルなのだろう、ほぼ全壊している部屋の一室に、
わずかだが人が生活していたような痕跡が見られる。

屋根や天井はない。『回収部隊』辺りの攻撃が流れてきて破壊されてしまったのだろう。
壁も頼りない程度にしか残っておらず、こんなところにヴェントを置いていくのは躊躇われたが、
さすがにこれ以上うろちょろしてると『回収部隊』に見つかってしまう恐れがあるため
苦渋の決断でヴェントをここに降ろすことにした。

909 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/18(水) 23:37:45.42 ID:nS2L2I+Yo


「・・・・・・・・・・・・ヴェントさん」

「いいから行けっつってんだろ。 万が一仮面の野郎共が来たところで、
 この私があんな奴らにやられると思ってんの?」


アレイスターと対峙していた頃よりは幾許か傷は回復しているようだが、
それでも風斬から見るヴェントは満身創痍の状態にしか見えなかった。

しかし実を言うと、そんなヴェントよりも風斬のほうがより消耗が激しかった。
出血や傷はAIM拡散力場の集合体である彼女からは見受けられないが、
アレイスターと二連戦するという熾烈な状況に置かれていた彼女も、もはや戦闘不能寸前と言える状態だった。

ここで時間を食って『回収部隊』に攻められでもしたら、一方通行達と合流出来る可能性が無くなってしまう。
風斬は最後まで心配そうな表情でヴェントを見つめ、背中の翼を羽ばたかせて足を地から離す。


「・・・・・・・・・・・・風斬」

「?」

「また機会があったら・・・・・・ご飯食べに行こう」

「・・・・・・そんな不吉なこと言わないでください! 必ず、また一緒に」

「・・・・・・ふん」

910 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/18(水) 23:38:26.53 ID:nS2L2I+Yo


そう言って、風斬は静かに飛翔していった。
戦闘の騒音が鳴り響く学園都市で、ヴェントは一人残される。


風斬が飛び立って数分が経過した頃だろうか。
動ける程度まで回復したヴェントが壁に手をつきながらよろよろと立ち上がると、


「・・・・・・もうおでましか。 もう少しくらいゆっくり休ませろよ」


いつの間にか、『回収部隊』の連中がヴェントが身を潜める廃ビルの周囲を取り囲んでいた。


動けるとは言うが、それでもまだ満足に戦闘を行えるような状態ではない。
それでもヴェントは最後まで諦めなかった。風を呼び、その手に有刺鉄線付きのハンマーを携える。
兵士達が身につける『未元物質(ダークマター)』の仮面が怪しく発光する。ファイブオーバーがガトリングレールガンの
銃口をヴェントに向けて正確に構える。


(・・・・・・『また一緒に』、か。 どうせ死ぬなら、あいつに殺してほしかったかな)

911 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/18(水) 23:39:41.81 ID:nS2L2I+Yo


仮面の兵士の一人が『未元物質』の翼を斬撃用に変化させ、容赦なくヴェントの首を切断せんと振るってきた。
その瞬間まで、ヴェントは幸せそうな笑顔を浮かべていた。
そして、


ザンッ!!!、と人間の肉を斬ったにしては、あまりに呆気無い音だった。
ヴェントがいた廃ビルの壁に大量の血糊が飛び散る。
ドシャ・・・・・・と、人間の体が倒れる音がした。


ただし、それはヴェントではない。
倒れた人間の顔には、のっぺりとした白と金の仮面が装着されていた。


『!?』


ファイブオーバーと仮面の兵士が一斉に視線を同じ方向へと向ける。
だがその瞬間、複数のファイブオーバーはコックピットにいた仮面の兵士ごと斬り裂かれ、
仮面の軍隊たちも全身を一瞬で斬られて地面へ落下していく。

912 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/18(水) 23:40:31.66 ID:nS2L2I+Yo


ヴェントは『回収部隊』を切り捨てた者の正体を視界に収めた。
その人物が口を開く。


「あなたも『天使同盟』との関わりで学園都市に?」

「・・・・・・まあね。 でも驚いたわ、まさかアンタみたいな大物まであいつらと関わってたなんて。
 助けてもらったお礼と自己紹介は今しておいた方がいいかしら?」

「どちらも後にしましょう。 まだ援軍がこちらに向かってきています」


その人物は二メートル以上はあろうかという巨大な日本刀を構えて背後を睨む。
ヴェントがその人物と会うのはこれが初めてだったが、話だけは聞いたことがあった。


確かこの女は、イギリス清教『必要悪の教会(ネセサリウス)』に所属している、"聖人"だったはずだ。

913 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/18(水) 23:42:35.34 ID:nS2L2I+Yo


――――――――――――――――――――――


『数』という名の暴力の恐ろしさを、学園都市の第二位は心身で感じることになった。


垣根帝督はエイワスとアレイスターによって引き起こされた極めて強烈な爆風を
『未元物質』で防いだ後も、一心不乱に『回収部隊』と交戦していた。

魔術。垣根帝督という『超能力者』が手に入れた、科学の視点から見れば未知の法則。
彼はルーンという道具をフル活用し、両手に赤と青の炎剣を携えて『回収部隊』を蹴散らしていく。
ファイブオーバーも『未元物質』の仮面部隊も、やはり魔術の法則までは対応出来ないでいた。
そのため垣根が魔術を発動してからしばらくは彼一人による無双状態が展開されていたのだが、


「・・・・・・・・・・・・ったく、何、匹、殺れば、終わるん・・・・・・だっつの・・・・・・」


ボタボタと血が地面に落ちていく。それは垣根帝督の口から、頭から、全身から。
能力者が魔術を行使する際に起こる副作用。拒絶反応とでも言うべきか。
それは彼の体を容赦なく食い散らかしていき、徐々に『死』へと追い込んでいく。


そしてここで、ついに垣根の魔術による猛攻が止んでしまう。

914 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/18(水) 23:43:47.75 ID:nS2L2I+Yo


(一〇〇〇は殺ったはずだ・・・・・・。 確か総人数は一五〇〇だったか。
 ・・・・・・あと三分の一、か・・・・・・)


構えていた両手をだらりと下げる。その隙を突いて周囲に潜む『回収部隊』が一斉に攻撃し始めた。
垣根は再び炎剣を構え、その攻撃を薙ぎ払っていく。

第一九学区は現在、死屍累々の地獄絵図と化していた。どこを見ても必ず黒のコスチュームに身を包んだ
死体がゴロゴロと転がり、中にはファイブオーバーの破片と一緒に溶けて固まっているような死体まである。

それらは全て、垣根が仕留めた『回収部隊』の人間達だった。
多数を相手取って長時間戦い未だ生存している垣根帝督も見事なものだが、
そんな彼もこの死体の山の一部に加わってしまうのは時間の問題だった。

垣根はただひたすら炎剣を振るい続け、時には背中の『未元物質』を使い、
死に物狂いで敵を殲滅していく。
他の『天使同盟』の戦況も気になるところだったが、今それを調べるような余裕は残っていない。


と、魔術の使用による拒絶反応で垣根の目に血が入り込み、一時的に視界を奪われてしまう。

915 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/18(水) 23:44:44.46 ID:nS2L2I+Yo


(しまっ・・・・・・)


拭っている暇はない。こうしている間にも『回収部隊』は垣根に向かって攻撃を仕掛けてきている。
垣根は血を拭うことを諦めて応戦しようとするが、視界を気にした一瞬の隙が原因だったのか、
相手の攻撃の方がわずかに早く届く事を垣根は本能で理解した。

死。

思わず垣根の脳裏にそんな言葉が浮かんだ。しかし、


ゴォォォッ!!!!、という轟音が鳴った次の瞬間には、垣根の目の前に炎の海が出現していた。
垣根に向かって飛翔していた大量の『未元物質』部隊が炭になり、そして灰となって散っていった。


「・・・・・・なん、だ?」


垣根が使用している魔術は炎の魔術だ。『回収部隊』は今の炎の海は垣根の攻撃だと
思っているようだが、それは違っていた。
なにせ垣根自身も、その炎の海を見て目を点にしていたのだから。

916 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/18(水) 23:46:47.10 ID:nS2L2I+Yo




「炎剣の使い方が雑すぎる。 他の魔術に比べれば劣るが、炎剣の応用性は実は割と高い。
 炎剣の刀身を団扇のような形にして叩きつけたり、今のように刀身を伸ばして
 一線に薙ぎ払う事だって可能なんだ。 もっと頭を柔らかくしてはどうかな」




声が聞こえた。その声を垣根帝督は聞いたことがあった。
横に視線を送る。揺らめく炎の海の中から、誰かが悠然と歩いてきていた。
人影を見る限りでは、その人物はかなりの長身。そして衣服を何枚も着重ねているような厚着。


「けど・・・・・・実際、敬意にすら値するよ。 僕が炎の術式の開発と応用に
 一体どれほどの年月をかけて、どれほどの犠牲を払ってきたと思っているんだ。 
 ・・・・・・まったく、どこの誰から教わったのか知らないが、君達と別れてからこの短期間でどんな訓練をしてきたんだか」

917 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/18(水) 23:47:19.96 ID:nS2L2I+Yo


「・・・・・・あー・・・・・・、お前」


その魔術師は長く炎のように赤い長髪を靡かせていた。
あちこちに派手なアクセサリーを身につけ、神父らしからぬきつい香水の匂いを漂わせている。
右目の下にはバーコードの刺青、その口には煙草が咥えられていた。


「・・・・・・ステイル、だっけ」

「覚えててくれたのか。 まあ、君みたいな無茶をする馬鹿に覚えられても
 ちっとも嬉しくないんだけどね。 ・・・・・・久しぶりだな、垣根帝督」


ステイル=マグヌス。イギリス清教『必要悪の教会』に所属する、天才魔術師。
彼もまた、この『茶会』の舞台に半ば強引に招かれた役者だった。

918 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/18(水) 23:48:33.35 ID:nS2L2I+Yo


――――――――――――――――――――――


どうにかその場にいた『回収部隊』を殲滅した垣根とステイルは
辛うじて形を残していた商店街に並ぶコンビニの中に身を潜めていた。
店内は当然ながら、営業が再開できるような状態ではなかった。
商品という商品がまるで店内限定で発生した竜巻に見舞われたかのようにあちこちに散乱しており、
キャッシュレジスターはコードが千切れた状態でひっくり返って中の小銭や紙幣が飛び散っている。

垣根は壁に背を預けて座り込み、手に持っているルーンをしげしげと眺めていた。
右手には自分で作ったルーン、左手にはステイルが自作したルーンがある。
難しい顔をしながら垣根はそれらを見比べる。


「・・・・・・・・・・・・なんだこれ? ラミネート加工?」

「学園都市で販売されていた高性能・・・・・・カラープリンタ?
 それを使ってルーンの表現力を高めているんだ。 自作では手間がかかるが
 カラープリンタなら一発で大量に生産出来るからね」

「ちょっと待てや。 カラープリンタでルーンって強化出来るのかよ!?
 科学が混じってどうする! そんなんでいいなら俺が一手間一手間かけて
 作り出した俺の苦労は一体どうなる?」

「魔術だけに囚われていては未来は見えてこないということだ。
 ・・・・・・まぁ正直、僕も機械に頼ってルーン魔術の強化を施すことには
 抵抗があったんだけどね。 大切な者を守るためだ、選り好みなどしていられないさ」

919 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/18(水) 23:50:07.04 ID:nS2L2I+Yo


がっくりと項垂れる垣根を見て肩をすくめて大袈裟なリアクションをとるステイル。
科学の力で魔術を強化。こうして考えると、科学と魔術は案外背中合わせのように近しい概念なのかもしれない。


「この街の至る所にルーンの札が貼りつけてあったけど・・・・・・あれも君の仕業なんだろう?」


ステイルは吸い終えた煙草を一瞬で灰に還すと、改めて懐から煙草を取り出し口に咥え、
ライターも使わずに火を付けた。


「まあな。 火の玉や炎剣だけじゃねえぞ、俺が会得した魔術は。
 ・・・・・・もっとも、ワシリーサとの訓練で使ってねえ魔術がまだ一つある。
 そればっかりはぶっつけ本番って事になっちまうけどよ」

「応用は? 炎で攻撃するだけがこの魔術の能じゃない。
 温度変化を利用した蜃気楼の現出、人払いのルーン、『神隠し』・・・・・・etc。
 ルーンを極めたというならその辺の応用にも長けていないとね」

「極めたなんて一言も言ってねえよ。 テメェに言わせりゃ俺なんて
 まだまだひよっ子なんだろうが・・・・・・別に俺は本物の大魔術師になろうだなんて
 考えちゃいねえ。 ちょっとかじる程度に使えりゃそれでよかったんだ」

「・・・・・・、」

920 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/18(水) 23:52:33.87 ID:nS2L2I+Yo


隣で座り込んでいる垣根をジッと見つめるステイル。
その表情は一見無表情ながら、どこか驚愕の色も含まれていた。


(・・・・・・"ちょっとかじる程度"であれだけルーンを使いこなせるわけがない。
 特にこの男が使用していた『吸血殺しの紅十字』。 あれは一朝一夕で
 習得できるような魔術じゃないぞ・・・・・・? 垣根帝督、一体どんな無茶をすれば
 この短期間でこれほどまでに・・・・・・・・・・・・)


ふぅー・・・・・・と口から煙を吐き出し、ステイルは話題を変える。


「・・・・・・敵の数は?」

「奴さん、全部で一五〇〇とかほざいてやがったが実際はどうなのか分からねえ。
 少なくとも一〇〇〇は固いが・・・・・・つかお前、何でここにいんの?」

「僕だって来たくて来たわけじゃないさ。 ある意味君たち『天使同盟』のせいとも言える。
 君たちが秘密裏にイギリス清教と協定を結んだことによって、イギリス清教は『天使同盟』に
 干渉出来る立場になってしまった。 それで『最大主教』が僕に命令を送ったのさ。
 『天使の存在が危ぶまれている、学園都市に向かい天使存続のために貢献してこい』・・・・・・ってね。
 まったく・・・・・・学園都市に"あの子"がいるから今回は僕の利害とも一致しているとはいえ、
 それが無ければこんな時代の命運を懸けたような戦争に誰が好き好んで首を突っ込むものか」

921 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/18(水) 23:54:12.72 ID:nS2L2I+Yo


垣根には詳しい事情は分からなかったが、ステイルはイギリスでローラ=スチュアートと共に
エイワスから手紙を受け取っていた。

その手紙の内容は今現在学園都市で起こっているこの戦いの詳細が書かれていた。
アレイスター=クロウリーの出撃、ミーシャ=クロイツェフ消滅の危機、十字教存続の危機・・・・・・。
手紙に書かれていた事はまるで今回のこの戦争が起こると予め分かっていたとしか思えないような物だった。

ランベスにある『必要悪の教会』の女子寮やバッキンガム宮殿に送られた手紙も
ステイルが受け取った物とほぼ同じ内容だ。


「テメェ以外にも魔術師が来てんのかよ?」

「神裂火織。 君たちも彼女に接触しているだろう? 天草式十字凄教の女教皇だよ。
 僕は彼女と一緒に手紙を貰ってすぐに学園都市に侵入したのさ」

「げ・・・・・・あの露出狂、ここに来てんのかよ・・・・・・」

「僕と神裂であのワケの分からない仮面と機械の塊はかなりの数を減らせたはずだが・・・・・・
 君の方でも何体か討っているんだろう?」

「一〇〇〇強。 詳しくは数えてねえ」

「なら、あと少しで全滅だな」


周囲はさっきまでとは一転、不気味なまでに静まり返っていた。
時折地面が揺れたり爆発音が遠くから聞こえたりはするが、『回収部隊』が攻めてくる様子はない。

922 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/18(水) 23:55:39.05 ID:nS2L2I+Yo


ステイルは口の煙草を指で挟んで話しながら現在の戦況を質問していく。


「ミーシャ=クロイツェフとアレイスター=クロウリーの状況は?」

「どっちも知らねえよ。 ただ、アレイスターは恐らくエイワスのクソ野郎と殺りあってる。
 さっきのアホみてえな爆発も多分あいつらの仕業だろ」

「・・・・・・僕達はミーシャの下に向かった方がいいのかな?」

「『回収部隊』のゴミ共がそれをさせてくれねえんだけどな。 あいつら、
 俺のためだけに編成された特殊部隊なんだとよ。 笑えるだろ?」

「何? どういう意味だ?」


垣根は呆れたように笑いながら指でこめかみをトントンと叩き、


「あいつらの狙いは俺の頭ん中にある脳みそだ。 アレイスターの命令だろうな。
 俺をまた学園都市の実験の玩具にしようって企みだろうよ」


ステイルは眉をひそめながら冷や汗を流す。垣根の言っていることの大半は理解できなかったが、
それでもなぜか、学園都市に利用される危機を迎えているという点が、かつての『あの子』と重なった。

923 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/18(水) 23:56:00.35 ID:cYgotFKt0
タブルイノケンティウスクルーーー?
きっとていとくんはイノケンティウスと合体するはず・・・・
924 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/18(水) 23:56:36.82 ID:nS2L2I+Yo


「・・・・・・とりあえず、僕らはその『回収部隊』とやらを追い払いながら
 ミーシャ=クロイツェフの下へ向かうとしようか」

「・・・・・・」


垣根は賛成も反対もせず、黙って立ち上がる。
彼としてはミーシャよりも先にアレイスターの方をどうにかしたかったのだが、
先の戦闘で垣根はアレイスターに指一本触れることなく敗北している。

つまり今ここでアレイスターの下へ向かっても垣根は何も出来ない。
その事実を受け止めざるを得ない事に彼は歯噛みするのだった。

と、ここで垣根はステイルを見て言った。


「おい、お前」

「なに、大した怪我じゃない。 ・・・・・・ただ、あの機械はともかく
 仮面の兵隊。 あの白い仮面は何かおかしい、どう考えてもこの世に既存する
 法則で働いているとは思えない力を現出させている」

925 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/18(水) 23:57:29.13 ID:nS2L2I+Yo


よく見ればステイルの体は所々が傷ついていた。黒のローブは出血で更に黒ずんでおり、
彼の顔にもじっとりと脂汗が出ているのが窺える。

ステイルは確かに魔術サイドでも一線を張れる天才魔術師だ。
だがそんな彼にとって今回の敵はあまりにも『未知』が過ぎた。『未元物質』、
防護術式で体を固めているステイルの体に傷をつけたのは、その未知なる力と圧倒的な数の暴力だった。


「行こう」


垣根とステイルはコンビニから外へ出る。最大限の警戒を行いながら
周囲の様子を確認するが、やはりまだ『回収部隊』が攻めてくる気配はない。
そのまま警戒の糸を切らさず商店街を歩いていると、


「ステイル!」

「!」

926 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/18(水) 23:58:29.85 ID:nS2L2I+Yo


廃ビルの一棟の中から声がした。
声の主はステイル達の姿を窓から確認するとビルの中から出てきた。


「神裂、無事だったか」

「無傷とはいきませんでしたけどね。 ・・・・・・お久しぶりです、垣根帝督」


黒の長髪をポニーテールに括り、無地の白いTシャツに根元までバッサリ切り落としたジーンズ。
腰に巻いたウエスタンベルトには七天七刀を携えている。

神裂火織。イギリス清教『必要悪の教会(ネセサリウス)』所属の魔術師にして
天草式十字凄教の女教皇。そして世界に二〇人といない『聖人』の一人だ。

だが垣根帝督が目を見開いたのは神裂火織の登場のせいではない。
その隣、肩口から斜め一直線に切り裂かれ血に染まったジャケットを着ている、
舌先に鎖をぶら下げたショートカットの女の子。

927 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/19(木) 00:00:48.41 ID:yTCD0ejoo


「・・・・・・・・・・・・ヴェント、だっけ。 え? お前何でここにいんだよ?」

「説明するのが面倒くさい。 ・・・・・・そっちの赤い髪は大体の話は聞いてるの?」

「ヴェント・・・・・・? 『神の右席』まで参加しているのか。 ・・・・・・ああ、
 状況は把握した。 ひとまず『回収部隊』と片付けながらミーシャに接触する」

「つか聞けお前ら。 あの白い仮面のクソ野郎との立ち回り方を教えてやる。
 魔術に関しちゃテメェらの方がお得意だろうが、『未元物質』のスペシャリストは俺しかいねえ」


神裂は無言で頷く。無傷とはいかなかったと言う彼女の体にも
腹に青アザが出来ていたり口元には血を拭ったような跡があった。

こうして、現在この第一九学区にいる魔術師がアレイスターを除いて全員集結した。
彼らの当面の目標は『回収部隊』の殲滅とミーシャ=クロイツェフとの接触。


『ゲーム』開始から一時間一五分が経過。『星の欠片』消滅予測時間まで残り四五分を切った。
しかしこの舞台に招待された役者は、これでもまだ全員揃っていない。

928 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/19(木) 00:06:19.82 ID:yTCD0ejoo
ここまでです。戦闘もなく比較的おとなしいお話でした。
垣根帝督とステイルのコンビネーションが期待されているようで、私としても冷や汗を流すしか無いというかその・・・・・・まあいいか


次回は一方通行とミーシャのターン。
このSSが始まった原因といってもいい、ミーシャがこの世界でやり残したことを成すために
無理を押して現世に留まった理由とか、そういうのが全部明らかになります。

ただ、期待しないでください。そんな大したことじゃないので・・・・・・


次回更新は三日以内。


それでは、今日もお付き合いいただきありがとうございました!


はよ役者全員揃えたいです
929 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/19(木) 00:06:52.86 ID:yTCD0ejoo



                          【次回予告】



『ハッ、鈍感どころか・・・・・・クソったれのクズ以下じゃねェか俺は!!!』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・一方通行(アクセラレータ)




『だから、言うね。 私がこんなになってまで、「星の欠片」の事も無視してまで
 ktob私がこの世に居続けた理由。 私cmsがこの世界でやり残している事』
―――――――――――水を司る大天使・ミーシャ=クロイツェフ



930 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/19(木) 00:07:29.13 ID:b6aeJ1OEo
乙だァ、そんなこと言われると期待しちまうよなァ
931 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/19(木) 00:13:59.08 ID:owmFvhF70
乙ッス
とうとう最終回か。さみしくなるな・・・・・
932 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/19(木) 00:58:44.17 ID:MQ4dAwRmo
ステイルさん何だこの渋み…ベテランの風格じゃないっすか
頼もしい援軍も続々と集まって、物語が加速する。次回も楽しみにしてます
おつ!
933 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/05/19(木) 01:17:06.60 ID:7l8GQ7IQ0

ワシリーサはカラープリンタの事を知らなかったのか、それとも知ってて黙ってたのか
……エイワスは間違いなく後者だな
934 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/05/19(木) 01:50:17.25 ID:rjE9p8X3o
ルーンにカラープリンタとラミネート加工って結構ギリギリのラインだよなぁ
破滅の枝のリチャード的に考えて
935 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/19(木) 01:53:23.47 ID:zsv0cJPjo


1時間15分で回収部隊1000人も殺ったのか
垣根くン、すげェな
ステイル+神裂も来たなら回収部隊は全滅だろうが、他にアレイスターに手ゴマはあるのかな?
まあ、本人と暴走してるガブリエルだけで全滅に追い込めそうな気もするけど
936 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/19(木) 02:27:38.65 ID:XCh0dPBDO
1000人強とか三国無双かっての
937 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/19(木) 04:18:42.43 ID:xsaDiyxto
おつおつ
クライマックスに向けて読み返してきたが
当初のギャグっぷりから今の展開なんて誰も想像出来ないな
938 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/19(木) 06:15:29.61 ID:VQ0vVht50
おぉ・・・いつも扱い雑なステイルがかっこいい
>>1クオリティ乙!
939 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/05/19(木) 06:15:58.12 ID:Aci+MzP6o
佳境だねえ。正しく言葉を使えるミーシャがかわいい。

前に100度のジェットコースターて、つうツッコミをしたんだけど、121度のが出来るみたいね。日本に。
逆反りって本当にあったんだなあ……
940 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/19(木) 09:19:01.92 ID:RfwVekODO



垣根レイターに期待
941 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/05/19(木) 13:53:58.92 ID:6IImpfFG0
ステイル強いもんなぁ、ただいつも相手が悪すぎる
まともなのオリアナ位じゃなかろうか・・・
942 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2011/05/19(木) 20:18:26.75 ID:AY//Y8Gx0
やべ、ていとくんに惚れちまった
943 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/20(金) 02:22:15.90 ID:q/hfaRJ90
>>941 建宮も結構まともなほうだろ。

そんなことより1乙!
944 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/05/20(金) 05:45:48.27 ID:7HHPxSfAO
>>939
ヴェントが泣いて土下座するレベル
945 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/20(金) 09:51:53.07 ID:lxMX5J2vo
>>939>>944
早くヴェントをつれてかなきゃ!
946 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県) [sage]:2011/05/20(金) 16:23:52.66 ID:+lZWq/Qw0
俺が連れて行こう
誰か共に行く者があるか!
947 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/20(金) 16:37:18.09 ID:KlepS9wCo
では私が同行しましょう!

こんにちわ、ちょっと夜は都合が悪くなってしまったのでこんな時間帯ですが投下します。

今回、少し投下量が多いかも知れませんが、お付き合いいただけたらなと思っております。

一方通行とミーシャの場面から始まりです。それでは行きます
948 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/20(金) 16:38:04.37 ID:KlepS9wCo


――――――――――――――――――――――


二人がいるこの空間だけ、時間の流れという概念が無くなっているように思えた。
実際には今も周囲から戦闘による騒音が響いているのだが、一方通行にはもうそんな音すら
耳に入ってこなかった。

聴覚神経を全て"そちら"に集中させていたから。

声。

一方通行の頭に直接響いてくるように、ミーシャ=クロイツェフの声は彼に語りかける。


『・・・・・・ごめんなさい。 怪我は大丈夫?』

「・・・・・・・・掠り傷だ、こンなモン」


優しい、優しい声色だった。
一方通行は今まで何度かミーシャのノイズ無しの純粋な声を聞いたことがあるが、
いずれもここまで透き通った愛に溢れる声ではなかったように思う。

949 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/20(金) 16:39:32.33 ID:KlepS9wCo


『ずっと・・・・・・今までずっと、こうしたかった。 あなたに寄り添って、
 あなたとちゃんとお話がしたかった。 ・・・・・・こんな事になる前に、
 この世界から消える前に、話したかった』


ミーシャは自我を失った自分の攻撃でボロボロになった一方通行を
全身で抱きしめていた。長い間自分の子と離れ離れになり、数十年後の再会を喜び
自分の子を抱きしめる母親のような、慈愛に満ちた抱擁だった。


『突然こんな事をしてごめんね。 でも、こうしないと私の精神体と
 対象の精神体が接続出来ないから・・・・・・』

「?」

『こうして相手にちゃんとした声を伝えるjosnklときは、長時間相手に直接接触していないと駄目。 
 だから今まで、私はあなたとお話ochsをすることが出来なかった』

「なンだと・・・・・・? ・・・・・・だったら、なぜ最初からこォしなかった?
 抱きつくのもいいが、例えば手を握ってもこンな風に会話が――――」


と、不意に一方通行の言葉が途切れた。

950 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/20(金) 16:40:35.26 ID:KlepS9wCo


『うん・・・・・・』


待て、と一方通行は思う。
"相手に直接触れなければ言葉を伝達することが出来ない?"。
そしてミーシャはどうしても一方通行に伝えたい事があったという。

ならばなぜ最初からそうしなかったのか?それは今、一方通行が尋ねた事だ。

目の前が真っ白になっていく。自分の鼓動が徐々に早まっていくのを感じる。
違う。そうではない。なぜ最初からそうしなかったのか、ではない。


例えば、そんなことも出来なかったのだとしたら?


一方通行は『ある事』に気づき、ひどく呼吸が乱れていた。


「・・・・・・・・・・・・は、・・・・・・ァ・・・・・・。 ・・・・・・オ、マエ・・・・・・・・・・・・」

951 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/20(金) 16:41:14.24 ID:KlepS9wCo


『大丈夫だよ。 貴方のせいじゃない。 私。 私に非がある。
 だから貴方が気に病む事じゃない。 大丈夫』

「は・・・・・・・・・・・・ッ・・・・・・!! オマエ・・・・・・まさか、・・・・・・俺・・・・・・!!」


ようやく再開した呼吸はひどく乱れていた。どうすればいつものように酸素を取り込めるのかも
分からなくなるほど、一方通行は混乱、動揺していた。
彼の全身の震えを止めるように、ミーシャは取り乱す一方通行を更に強く抱きしめる。

相手と直接触れる機会が無かったんじゃない。機会ならいくらでもあったのだ。
ならば機会があったにも関わらずミーシャは何の行動も起こさなかったのか。
違う、それも違う。ミーシャは相手と、一方通行とコミュニケーションをとるために
ちゃんと行動を起こしていた。長時間一方通行に触れられるような行動を起こしていた。


だが、その行動を拒否されてしまったらどうだろうか?
そうなってしまったらミーシャも相手とコミュニケーションをとれないのではないか。


「・・・・・・う、・・・・・・うゥ・・・・・・オマエ・・・・・・まさか・・・・・・今までの・・・・・・
 今までのは全部・・・・・・そォいう意味で・・・・・・」

『自分を責めないで。 私のやり方が間違っていただけ』

952 :う、ぐ・・・・・・・・・・・・。 脳内変換お願いします・・・・・・ごめんなさい ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/20(金) 16:42:05.05 ID:KlepS9wCo


ミーシャ=クロイツェフはロシアの航空機で一方通行と再会し、学園都市へ帰ってからというもの、
事あるごとに一方通行に"抱きつこうとしていた"。彼に隙があればすかさず抱擁を試みていた。
そうすることで、長時間彼に接触することで、会話が出来るのだから。




そんなミーシャを、これまで自分はどう対処していた?




「う、うゥ、ううううううううううううううううううううう・・・・・・!!!!!!!」


ギキキキッッ・・・・・・と血が出るほど唇を噛み締めながら一方通行は獣のように唸った。
ミーシャの肩に手を添え、止まらない震えを止めようとしたが無意味だった。
柔らかな動作で頭を撫でてくるミーシャの行為がより一層自分の惨めさを際立たせた。


つまりは、そういう事だった。
ミーシャは一方通行と会話をするために触れ合おうとした。
一方通行はそんな彼女の行為の意味をよく考えもしないで、適当にあしらっていただけだった。

953 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/20(金) 16:43:34.79 ID:KlepS9wCo


一方通行はミーシャにすがるようにずるずるとへたれ込み、膝を地につける。
ミーシャは身を低くして再び一方通行を抱きしめた。


「・・・・・・・・・・・・俺が、寝てる時とかじゃダメだったのかよ」

『悪いと思ったけど、試したことはある。 貴方に寄り添って
 抱きしめながら寝た日があった。 でも駄dmjvi目だった、私の意志は貴方の中で
 「夢」に変換されて、私のcslvk意志が伝わらなかった』


言い訳などいくらでも出来たはずだった。
そんな事に気付けるわけがない。紙にでも書いてそれを見せてくれれば
いくらでもミーシャに触れてあげてたかもしれない。
もしくはエイワス越しの通訳でその事実を伝えてくれれば一方通行も理解していたかもしれない。

だから結局は、


『単なる私の我儘。 どうしても、自分だけの力で貴方vnbに想いを伝えたかった。
 だからこんなにxcvm時間xvjissewがかかっちゃった・・・・・・。 全部、私が悪い』

「違うだろ・・・・・・そォじゃねェだろ・・・・・・なンでオマエが悪いンだ・・・・・・。
 そォだよ、あンだけくっついてくるンだ・・・・・・何かあるンだと気付かねェ俺がおかしいンだ。
 『鈍感通行』・・・・・・。 ハッ、鈍感どころか・・・・・・クソったれのクズ以下じゃねェか俺は!!!」

954 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/20(金) 16:45:34.84 ID:KlepS9wCo


反論の余地を全て放棄した一方通行は声を上げて涙を流した。
人生で二度目の涙かもしれなかった。最初に流した涙は恐らく自分というクソ野郎が
この世に誕生した瞬間なのだろうが、それ以来涙を流した記憶は一方通行には無かった。


何が『天使同盟』。ミーシャ=クロイツェフの事を全て分かっていたつもりの愚かなリーダーは、
実際は何一つ、天使の気持ちに気付いてあげられていなかった。


そして気づいた時にはこの状況。学園都市は戦場と化し、ミーシャ=クロイツェフは消滅まで
残り一時間も無いという、あまりにも絶望的な状況。
出来るものなら、一方通行は自分で自分を呪い殺したかった。


『mboi泣かないで。 全部私の我儘dkvのせいでこxnhiんな事に
 なってるんだから。 貴方は何もvmgk悪くない、dhq貴方は私にこれだけ尽くlfstuしてくれた』


何もしてやれてねェよ!!!、と一方通行は爆発するように叫んだ。
よく聞けばさっきから頭の中に響くミーシャの純粋な言葉にさえ、ノイズが混じり始めている。
本当に一方通行が本気になって尽くしてやれていたならこんな事態も避けられたかもしれないと、
彼はひたすら自分を責め続けた。

ミーシャは青白く長い指でそっと一方通行の目元を拭いながら言う。

955 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/20(金) 16:46:36.35 ID:KlepS9wCo


『も・・・・・・もうこれ以上・・・・・・wiuy自我cvnを、保っていられない。
 だから、伝える。 私がこんなになってまで、「門」の事も無視してまで
 ktob私がこの世に居続けた理由。 私cmsがこの世界でやり残している事』

「・・・・・・!」


それは『天使同盟』が追う最大の謎と言っても過言ではなかった。
ミーシャ=クロイツェフがこの世界やり残している事。
一方通行達は『星の欠片』の行方と同時に、その謎についても散々調べ尽くしていたのだ。


『一言。 私の口から、貴方に直接言いたかった事がある。
 ・・・・・・それだけ、だよ』


ミーシャは凹凸で表現されている口の部分をモゾモゾと動かして、
自分の口で、自分の言葉で、自分の声で、一方通行にずっと伝えたかった言葉を送った。

956 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/20(金) 16:47:21.32 ID:KlepS9wCo







「ありがとう」






957 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/20(金) 16:47:59.74 ID:KlepS9wCo


たった、これだけ。
自分の身が元の『位階』へ還るという運命に無理やり抗ってまでやりたかった事は、
たった一言。一方通行に礼を言うだけという、あっさりとしたものだった。


けれど、彼女にとってはそれが一番大切なこと。それだけが全てだった。


『ロシアpqf,sの戦争で貴方とojvavq対峙したとき、貴方は私を恐れないと言ってくれた。
 理由はどうあれ、貴方はこの世界では異形lwpfkのaydrxm化物である私と対話をしてくれると
 言ってapveiくれた』


ミーシャは一方通行の体を自分の胸に寄せたまま、空を仰ぎながら言った。


『――――――嬉しかった』


あの時の一方通行はとにかく打ち止めという少女を救うことで頭がいっぱいだったため、
そこまで深い意味を込めてミーシャに語りかけたわけではなかった。
しかし、その事実があったからこそ、ミーシャは元の座に戻ることなく、一方通行と共に過ごす事を決意したのだ。


「・・・・・・・・・・・・そォかよ。 ったく、オマエはとンでもねェ勘違い野郎だな・・・・・・」


洟を啜りながら一方通行は失笑する。
そんな些細なきっかけで、『天使同盟』なんて大仰な集まりが生まれたのかと思うと
笑いを漏らさずにはいられなかった。

958 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/20(金) 16:49:20.32 ID:KlepS9wCo


そんな一方通行とミーシャ=クロイツェフの様子を、風斬氷華は上空から見下ろしていた。
慌てて彼らの下に降りるというような行動は取らなかった。
ただ、二人の間に割って入ろうとする愚者が出てきた場合、それらを撃破することが
自分が今出来る事だと風斬は自覚していた。

そして、


「―――――・・・・・・・・・・・・、jcbpfoghivm jisv pqam fhjgke」

「―――――――、」


トンッ、という人が物を軽く押すような、そんな音が響いた。
その音が鳴った時、既に一方通行は風に舞うビニール袋のように地面を転がっていた。

風斬は急降下して彼の華奢な体を受け止める。


「・・・・・・・・・・・・大丈夫、"ですよね"?」

「・・・・・・当たり前だろクソボケ。 誰に向かって言ってンだよオマエは」

959 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/20(金) 16:50:12.23 ID:KlepS9wCo


全身がボロ衣のようになっている一方通行の減らず口を聞いて、風斬は柔和な笑みを浮かべる。
一方通行は風斬の肩を借りながら立ち上がると、数メートル先にいる『天使』でもない『悪魔』でもない
曖昧な塊をジッと見据えた。


ミーシャ=クロイツェフ。彼女は体を小刻みに震わせ、フラフラと不気味に揺れている。
自我が残っている間に一方通行に伝えたい事を全て伝えた安心感から来た緩みで、
彼女の中に残っている僅かな『天使』が溶けてなくなっていく。

一方通行は風斬の方を見ずに言った。


「・・・・・・状況は」


状況の説明を求められた風斬はどこから説明しようか悩み、
視線の先にいるミーシャを見て悩んでいる暇すらない事を悟り、彼に短く告げた。


「みんなが、私達を支えてくれてます」

「そォかよ」


その一言で充分だった。

960 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/20(金) 16:51:10.41 ID:KlepS9wCo


「aelbjo貴、方tyuytbbnz」

「オマエの言いてェ事は伝わった。 ちゃンと聞いて、理解した。
 俺や、俺たちからもオマエに言いてェ事が山ほどあるンだが・・・・・・
 どォやらそンな時間は残されてねェらしい。 だからひとまず、
 俺達は今からオマエを救う。 だがな、・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


気怠げに全身の力を抜いたまま動かなくなったミーシャに構わず、一方通行は続ける。


「『ありがとう』、の続きを俺はまだ聞いてねェ。
 ありがとう、と言われて俺達はどォ答えりゃいい? どォいたしましてってか?
 そォじゃねェだろ。 "そしてオマエはこれからどォしてェンだ"。 それをまだ
 俺達は聞いてねェ。 あいにく、今ここにゃ俺と風斬しかいねェが、垣根と
 エイワスの馬鹿共には後で俺からちゃンと伝えておいてやるからよ。
 オマエはここからどォしてェのか、今ここで言ってみろ」

「――――・・・・・・、逃げ、―――・・・・・・逃、逃げ、て」

961 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/20(金) 16:52:33.04 ID:KlepS9wCo


もうお互いは触れ合っていないにも関わらず、ミーシャは渾身の力を振り絞って
彼らに言いたい事を伝えた。だが風斬は答えない。そして一方通行も首をゆっくりと
横に振るだけだった。


「もォ一度しか聞かねェぞ。 オマエの気持ちは分かった。
 俺達はこれからオマエを救う。 そンで、その後オマエはどォしてェンだ?」


一方通行が再び問い掛ける。しばしの沈黙が場を包んだ後、石のように固まっていた
ミーシャは顔をゆっくりと上げた。その凹凸で表現された目からは、確かに涙が流れていた。
そして、






「ずっと・・・・・・みんなと一緒に・・・・・・・・・・・・居たい、よ・・・・・・」





962 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/20(金) 16:54:10.38 ID:KlepS9wCo


その言葉を最後に、ミーシャ=クロイツェフは『天使』ではなくなった。
殺気と狂気がゴチャ混ぜになったような得体のしれない何かが第一九学区を、学園都市を、世界を覆っていく。
地球という惑星が狂気に満ちていくような錯覚さえ覚えた。異常事態、怪奇現象、
どれにも当てはまらない、表現しようのない、どうしようもない現象。


悪魔。その悪魔の名は、ミーシャ=クロイツェフといった。


完全に自我を失ってしまったミーシャは、もう目の前にいる二つの人影が
『障害』にしか見えない。背中から生える大小様々な水晶の翼は、
天使だった頃の美しい透明色ではなく、毒々しい黒紫に染まっていた。

白、というよりは灰色に近かった、体表を覆う布の色も背中の一〇〇メートル近い翼に同調するように
紫に染まり、身体中に巡る金色の葉脈のようなものの色が血のように紅く発光している。

天使という存在と長期間過ごしてきた一方通行達でさえ、この悪魔の姿は異形に見えた。
今後、『地獄という風景とそこに住む悪魔の姿を描け』と言われたら、彼らはまず、この前にいる
怪物の姿を思い浮かべながら筆を振るうだろう。

963 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/20(金) 16:56:26.29 ID:KlepS9wCo


ミーシャを中心に空気が膨張していくのが分かる。まだ何も起きていないというのに、
大地には深い地割れが発生し、地鳴りの音が耳を劈く。
辛うじて形を残していた建造物のガラスがひとりでにはじけ飛び、立ち並ぶビル群は小さな崩壊音をたてながら"死んでいく"。


ここまでの状況に陥り、しかしそれでも一方通行と風斬は真っ直ぐミーシャを視界に収めていた。


「ずっと一緒に居たい、だとよ。 どォやらこの大天使様は人間界居残りコースを
 希望してるみてェだな。 どォする?」

「・・・・・・大歓迎です!」


ゴォッッ、ドバァッッッ!!!!!!!!、と炸裂音が立て続けに発生した。
風斬の背中から生えていた紫電を撒き散らす光の翼が、ミーシャの翼と同じくらいに肥大する。

一方通行の頭上に天使の輪が出現した。そして彼も同様に、背中から噴射するように翼を現出させる。


その翼の色は、白。対象をひたすら殲滅する時に出現する黒ではなく、
否が応でも大切な存在を守る、救うという気持ちで彼の心が満たされた時に発生する聖なる翼。
だが、そんな守護全開の翼を生やしながらも、彼の意向は少し異なった。

964 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/20(金) 16:57:29.09 ID:KlepS9wCo


「救うったって、相手は本物の"悪魔"だ。 何とかダメージを与えずにとか、そンな生温い
 考えだと瞬殺されるぞ。 "殺すつもりで救う"。 そンぐらいの矛盾をこなさねェと、
 ガブリエルを救う事なンざ何年経っても出来やしねェ。 いいか?」

「理解してます。 大丈夫です・・・・・・全力でいきます」

「・・・・・・・・・・・・もしこれでガブリエルが悪魔から元に戻らなかったら、
 『天使同盟(アライアンス)』改め『悪魔連合(ディ・ユニオン)』に改名するか?」

「・・・・・・あなたがそれで良いなら私も良いですけど。 でもやっぱり天使がいいなぁ」


この状況下で笑いながらそんな他愛も無い話が出来るのも、二人が自分自身を信じているからだった。
ミーシャ=クロイツェフは必ず救える。ミーシャ=クロイツェフはまた天使として君臨してくれる。


悪魔は口を蠢かし、この世のものとは異なる声を出した。

965 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/20(金) 16:58:59.37 ID:KlepS9wCo


「trhbjs対象dhgaq確認axnveorg排除ihj開始orvn」

「いくぞ!!」

「はい!」


三者が同時に地を蹴り、突撃した。
その衝撃だけで地面が深く陥没し、『渦』が発生する。
渦に巻き込まれた周囲のビルが、まるで蟻地獄の巣に引っかかった蟻のように渦の中心に引きずり込まれていく。

だが、建造物は渦の中心で飲み込まれる前に三者の激突で発生した衝撃波で粉々に吹き飛んでしまった。
一方通行の白い翼がちぎられ、風斬の雷光の翼が霧散し、悪魔の禍々しい黒紫の翼が粉塵と化す。

いよいよ本日のメインイベント、神話に新たな一ページを追加出来そうなほどの『救済』が始まった。


『ゲーム』開始から一時間三〇分が経過。『星の欠片』消滅まで、残り三〇分。


皮肉にもこの熾烈な戦闘は、『天使同盟』結成当初のメンバー三人で行われているものだった。

966 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/20(金) 17:06:18.49 ID:KlepS9wCo
どこが多めの投下だよ、むしろ少ねえよ。

申し訳ないですが、今回はここまでで・・・・・・。もう少し多くなる予定だったんですけどねえ・・・・・・

そんなわけで、ミーシャは一方通行に同伴してきたのでした・・・・・・というお話だったのですが
少し強引すぎたでしょうか。まぁ私程度の技量ではこんなお話くらいしか思いつかないわけで・・・・・・ごめんなさい。

風斬通行vs悪魔も始まり、役者のバトルシーンもまとまってきました。
次はエイワスvsアレイスターから始まります。どうか読んでいただけたらと思います。


次回更新は三日以内。


それでは、ありがとうございました!

967 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/20(金) 17:06:52.47 ID:KlepS9wCo



                          【次回予告】



『幼稚、は余計だったかもしれないな。 まぁ聞けよ"エドワード"。
 そして考え方が変わっていった人間は、当然心境も変わっていく。
 微妙に、少しずつ変化していく人間もいれば劇的に変わる人間もいる』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・エイワス




『それは自分の「芯」を貫けない愚かな人間に起こる変化だ。 私は違う。
 私以外の人間を見下すつもりなど毛頭ないが、私は「ホルスの永劫」を迎えるために
 これまで一切寄り道をすることなく「プラン」を進行させていったつもりだ』
―――――――――――学園都市統括理事長・アレイスター=クロウリー



968 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/20(金) 17:14:39.16 ID:mPlees/P0
神速の乙
そろそろ次スレか
969 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/20(金) 17:18:04.02 ID:QVQQKejq0
鈍感通行・・・これを機に敏感通行と生まれ変わってほしいものだ
そして>>1には最大級の乙を
970 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/05/20(金) 17:18:29.28 ID:O0NWk5eao
くっ……熱いなチクショウ!
乙!
971 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北陸地方) [sage]:2011/05/20(金) 17:28:42.16 ID:jzrzkaMAO

いいねェ、いいねェ、最っ高だねェ!
しかし今回のを踏まえて、今までのを読み返すと切なくなりそうだ…
972 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/20(金) 17:34:23.56 ID:QY4v102IO
ロシアの大天使戦と同じメンツて戦うにも関わらず、目的が違うところが感慨深いぜぃ
973 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/20(金) 18:30:57.21 ID:b++pT6ZIO
かっこよすぎるだろ

乙!
974 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県) [sage]:2011/05/20(金) 19:03:52.47 ID:+UlO1yJw0

次スレのスレタイが気になりすぎて困る。
975 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/20(金) 20:07:22.11 ID:dUndI9J+0

もうすぐ次スレの季節か
それにしてもかっこいいなあ
976 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/20(金) 20:14:21.68 ID:ZDL+PJin0


一方さん、一刻も早くガブリエルを救ってやってくれ……!
977 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/20(金) 21:07:43.71 ID:MFbnQ65d0
やっと追いついた……乙でした!

…ガブリエル……何でこんなに可愛いんだよ
…一方さんがマジイケメン
かっこいいな〜
978 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/20(金) 23:00:08.07 ID:23q9x6Ww0

もうすぐ次スレか…速いな

ガブリエルが切なすぎて泣きそう
そして一方さんがかっこよすぎる
979 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/05/20(金) 23:22:06.33 ID:4nvVIrsG0
>>1 乙! そうか・・・・もう次スレか・・・・・次のタイトルが楽しみすぎるww
980 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2011/05/21(土) 01:46:14.54 ID:+o+gymmX0
もう風斬さん完全に一方さんの嫁だよねこれ。
981 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/21(土) 03:14:40.74 ID:/4Y+VLZ3o
次は☆とエイワスか…
もうシャランラーでいんじゃね?
982 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/21(土) 08:02:01.00 ID:DOaGmMFEo
>>1
もう次スレ突入かww早いもんだなwwww
983 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/21(土) 14:32:20.05 ID:gnwx0bnf0
>>981
テクマクあわきん☆テクマクあわきん☆
☆がかわいいショタっ子にな〜れ☆
984 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/21(土) 16:35:31.42 ID:F25Xy5fYo
こんにちわ、今日もこんな時間帯ですが投下します。

それと次スレ立てました。↓からどうぞ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1305963129/


このスレでもたくさんの支援をありがとうございました。
次スレも是非、よろしくお願いいたします。

それでは行きます。
985 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/21(土) 16:36:09.63 ID:F25Xy5fYo


――――――――――――――――――――――


現在、戦場という名の舞台になっているこの第一九学区は周囲一帯が
エイワスが施したオーロラ状の光のカーテンによって"世界"から隔離されている状態になっていた。

よって、第一九学区は外部からの干渉を一切遮断する。
核ミサイルをぶち込もうが戦闘機で突っ込もうが地球そのものを破壊しようが
この第一九学区という別世界だけは何があっても揺らぐことはない。


だが、その一角は隔離されているはずの第一九学区全体から"更に別世界へと化していた"。


緑色の手術衣を身に纏う魔術師が口を動かして何かを呟く。


「地に平和を。 安らぎを。 楽園を創りたまえ。 カルマの束縛を解き放ち、
 サンガに至るべき境地を与えん。 ―――――『Nirv??a(ニルヴァーナ)』」

986 :一発目の投下から文字化けとはやりおる  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/21(土) 16:37:01.41 ID:F25Xy5fYo


手術衣の魔術師、アレイスター=クロウリーは目前に佇む『敵』に向かって
フッと、軽く息を吹いた。


それだけの行為でアレイスターの前方にある景色が見えない津波に飲み込まれていくように
『消失』していった。地面も、もはやひび割れることすらなく巨大な研磨に磨かれるように
粒子と化し、原子と化し、一瞬で『無』に帰す。
その一帯にあった空気ですら消え去り、急に引き起こされた不可思議な現象に『自然』がついていけず、
空間が"無くなる"という表現しようのない状態が出来上がっていく。


迫り来るニルヴァーナをアレイスターの『敵』、エイワスは薄い笑みを浮かべたまま
全く動じることなく応戦する。


「『ヴェーダ』より抜粋。 生贄は『AIM拡散力場(擬似エーテル)』。 歌うは『反転』。
 我が歌声に呼応し、迫る驚異を払いのける力を貸し与えん」

987 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/21(土) 16:37:34.14 ID:F25Xy5fYo


一瞬、エイワスの体がテレビの砂嵐のようにブレ、光の粒が天に昇っていく。
するとエイワスの喉から信じ難いほどに美しい歌声が世界に響き渡った。
エイワスの眼前まで迫っていたニルヴァーナの波は何が起きたのか、さっきまでの進行方向とは
真逆、つまりアレイスターに向かって反射された。

アレイスターのニルヴァーナで消失した景色がビデオの巻き戻しのように修復されていき、
今度は逆にアレイスターのいた場所が最初からそこに無かったかのように消失していく。


こんなものに巻き込まれればアレイスターはこの世から削除されてしまうだろうが、
跳ね返ってきたニルヴァーナの波に彼が巻き込まれることはなかった。
既にアレイスターは音も立てず、既にエイワスの真後ろに回り込んでいた。

エイワスは振り向かず、表情も崩さぬまま言う。


「『レイライン』を参照にして私の後ろに回りこんだか、ニルヴァーナの反転も読んでいたわけだ」


アレイスターが手に持つ『衝撃の杖(ブラスティングロッド)』が怪しく輝く。
その先端部をエイワスの後頭部に突き出し、躊躇うことなく魔力を放出させる。
だが、


「私の目にも常に『レイライン』が見えていることくらい、君も知っているだろう?」

988 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/21(土) 16:38:22.94 ID:F25Xy5fYo


アレイスターの放出攻撃が虚空を貫き飛んでいく。
辺りを見回すと、エイワスは既にあらぬ場所へと体を移動させていた。

そしてその場からエイワスは背中から生える太陽のように輝く翼を展開し、
光速と同程度の速度でアレイスターに叩きつける。
質量のある翼を光速で振るうと当然その周囲にも尋常ではない影響が及ぶはずなのだが、
どのようにエネルギーをコントロールしているのか、エイワスの攻撃で学園都市が吹き飛ぶという事はなかった。

吹き飛んだのは、攻撃を食らったアレイスター本人だけだ。


「ちっ」


惑星一つを真っ二つに出来るほどの攻撃を食らったにも関わらず、アレイスターの体は
傷一つ負っていなかった。彼は空中で上手くバランスをとり、そのまま宙に留まる。


「『ショート・リチュアル』を使って一時的に『ラプラス』を身に降ろしていただろう?
 だから人間である君にさえも『レイライン』が見えていたわけだ。
 いけないな、人間程度の肉の器で悪魔を身に降ろすのは。 君はそうやって昔から
 無茶ばかりしてきたね。 自分の伴侶だけでなく、ついには自分自身もただの器と定め始めたか」

「だがそのおかげで、かつて私はローズにあなたを降ろす事が出来たのだよ」


言いながら、アレイスターが杖を振ると虚空から蛇のような光が数十本に渡って出現した。
エイワスはそれらを自身の翼で蠅を落とすように撃破していく。

989 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/21(土) 16:40:05.61 ID:F25Xy5fYo


現世という領域から大きく逸脱した二人の戦いに巻き込まれた第一九学区の一角は、
もはや元通りに修復することなど不可能ではないかと思わせるほどに凄惨たる状況になっていた。
二人の周囲にある空間は未だに謎のねじれ現象が多数発生したままになっており、
地面というものは無くなっている。幸い、第一九学区の真下にある地下シェルターには避難民はいないため
不幸な被害者が出てしまうという事はなかった。

火山の噴火口のようにぽっかりと空いた穴からは二人のうちどちらかが何らかの方法で現出させたのか、
豪華な装飾が施された高さ数百メートル以上の巨大な『塔』がいくつも飛び出していた。

その塔の一つを挟んだ位置で、二人は互いの方を向き対峙する。


「ところで、エイワス。 少し前の発言について尋ねたい」

「?」


塔に設置されている窓ガラスの向こうに見えるエイワスを見据えながら
アレイスターはわずかに顔を歪ませて続けた。


「・・・・・・『セト』がこの私に振り向くことはないと、あなたは言ったな。
 あれはどういう意味だ? 私では『オシリス』を殺せないとでも?」

「くく、やはり気にしているのか? 可愛いな」

990 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/21(土) 16:41:33.16 ID:F25Xy5fYo


エイワスは小馬鹿にするように笑って、


「少し違うな。 確かに人はいずれ『セト』に接触し『神浄』へと至って『オシリス』を殺すことになるだろう。
 『オシリス』の死によって時代は『ホルス』に引き継がれ、これまで人類が築いてきた価値観は崩壊する。
 洪水伝説とはまた違うが・・・・・・人類が新たな時代へ向かうための『方舟』も自ずと姿を現すだろうな」


エイワスの言う事が本当なら、例えアレイスター=クロウリーではなくとも
人類はいつか必ず『神浄』に到達し、時代は変わっていくという。
それはつまり、これまでの歴史も全てリセットされるということ。魔術サイドの十字教は崩壊し、
科学サイドは下手をすれば一部を除いて全て無くなってしまうかもしれない。

だが、とエイワスは前置きをして、


「君は彼と学園都市を創設し、進める必要のない時計の針を大きく進めてしまった。
 時が速く進めばこの時代に生きている人間たちもそれに比例してどんどん成長していく。
 肉体も、心もな。 すると、成長するにつれ人間は考え方が変わっていく。
 子供の頃の幼稚な思考をいつまでも引き摺る大人などいないだろう?」

「・・・・・・幼稚な思考? それは私が『アレイスター=クロウリー』を名乗った時の事を言っているのか」

991 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/21(土) 16:42:21.76 ID:F25Xy5fYo


チリッ、と空気が一瞬刺々しくなる。どうもアレイスターはエイワスと会話をしている時と
『セト』、『神浄』に関する話題になると奥に秘める感情というものを表に出してしまう傾向にあるようだ。


「幼稚、は余計だったかもしれないな。 まぁ聞けよ"エドワード"。
 そして考え方が変わっていった人間は、当然心境も変わっていく。
 微妙に、少しずつ変化していく人間もいれば劇的に変わる人間もいる」

「それは自分の『芯』を貫けない愚かな人間に起こる変化だ。 私は違う。
 私以外の人間を見下すつもりなど毛頭ないが、私は『ホルスの永劫』を迎えるために
 これまで一切寄り道をすることなく『プラン』を進行させていったつもりだ」

「私はそんな人間ごときの心境の変化にいちいち興味を抱くことはないが・・・・・・、
 例外もあるぞ? 例えば私は十月一九日に"とある人間"の心境変化と行動に興味を持ち、
 珍しくこの世界にorevm・・・・・・失礼、現出した」


"とある人間"、とは言わずもがな白髪の彼のことだ。
彼の前に姿を現した事が、後々このような事態になっているわけだが。

992 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/21(土) 16:43:24.99 ID:F25Xy5fYo


アレイスターはなかなか本題に入らないエイワスの演説に若干の苛立ちを見せながら続きを促す。


「それで、何が言いたい」

「そういう事だ。 神という存在は基本、ただ人間の想像上で君臨するものだが、
 時には人間を観察し、見極めるという愚行を働くことだってあるのだぞ?」

「・・・・・・? ・・・・・・・・・・・・、・・・・・・・・・・・・理解している。 だからこそ私は『セト』を崇拝し、
 貢献し、尽くしてきた。 『セト』に受け入れられれば、私は『神浄』に至ることが出来る。
 『幻想殺し』があれば成るのだ。 『幻想殺し』の真の意味は、全てそこに集約されている」

「それだよ、アレイスター」

「?」


エイワスの言葉に惑わされることなく、アレイスターは己を貫いてみせた。
『プラン』の完遂。それこそが、アレイスターが寿命を無理やり伸ばしてまで生きてきた理由。

しかしエイワスから返ってきた言葉に、アレイスターは意味を見出せなかった。

993 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/21(土) 16:44:17.13 ID:F25Xy5fYo


「君は自分で作った『プラン』に頼り切って・・・・・・いや、心酔し過ぎている。
 視野が狭すぎるのだと言っているんだ。 視野を狭める上に君の早計さが重なれば、
 なるほど、"何時まで経っても気がつかないのも頷ける"」

「・・・・・・それは挑発のつもりか? エイワス」

「挑発ではない、"親友"へ送る私のささやかな『忠告』だ。 ・・・・・・仕方がない、
 君に最大のヒントをプレゼントしてやろう」


馬鹿にするような発言にアレイスターの苛立ちは積もる一方だった。
だがそれは、無意識にエイワスの言葉の意味を理解しているからこそなのだが、
アレイスターはまだ気がついていない。

そしてエイワスから提示されたヒントを聞き入れたアレイスターは呼吸が止まる。

994 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/21(土) 16:45:24.65 ID:F25Xy5fYo


「一方通行は九月三〇日に君の意向によって半ば無理やりにAIM拡散力場の数値設定を入力された。
 その時に発現した彼の『黒翼』と、『セト』の言葉の意味。 そして『セト』が支配する世界。
 『黒翼』を構成している物質。 ・・・・・・さて、ここまで言えば幼子でも分かるはずだが」

「・・・・・・・・・・・・あり得ん・・・・・・」

「神は気紛れなのさ。 一方通行も恐らく、"自分を見つめ続ける視線"を感じているはずだ」

「・・・・・・あり得ん・・・・・・ッ!!」

「何を嘆く、これは君にとってのチャンスでもあるんだぞ?」


ビキッ、という音がした。
気がつけばアレイスターは拳をわなわなと震わせながら、握っていた『衝撃の杖』をへし折っていた。

995 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/21(土) 16:46:40.07 ID:F25Xy5fYo
このスレではここまでにしときます。
一応もう一度、次スレURLを。
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1305963129/

それでは続きはあちらで。ありがとうございました!

996 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/21(土) 16:47:27.50 ID:D2/dg6xeo
乙!!!!!うめにはいるぜ
997 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/05/21(土) 16:48:07.40 ID:Iach0c7a0
初埋め
998 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/05/21(土) 16:51:30.97 ID:izgQm0m+0

埋めとく
999 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/21(土) 16:52:50.71 ID:2CQ4xmxAO
1000なら誰もが納得するハッピーエンド(番外編つき)
1000 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/21(土) 16:55:07.68 ID:mkp74rzXo
1000なら一方さんのデレ投入
1001 :1001 :Over 1000 Thread
                     ___, - 、
                    /_____)
.                    | | /   ヽ || 父さんな、会社辞めて小説で食っていこうと思うんだ
                    |_|  ┃ ┃  ||  
                   (/   ⊂⊃  ヽ)        /  ̄ ̄ ̄ \
  \僕はSS!/           \_/  !        ( ( (ヽ     ヽ
                   ,\ _____ /、       | −、ヽ\     !  <私は二次創作
   ゝ/  ̄ ̄ ̄ \     /. \/ ̄\/   .\     | ・ |─ |__   /
   / _____ヽ    |  |  _┌l⊂⊃l  |  |    ┌ - ′  )   /
   | | /  ─ 、−、!    |  |  / ∋ |__|  |  |    ヽ  /   ヽ <
   |__|─ |   ・| ・ |    |  /`, ──── 、 |  |     ` ─┐  ?h ̄
   (   ` ─ o−i    ヽ /         \ .ノ_      .j ̄ ̄ |
    ヽ、  ┬─┬ノ / ̄ ./            ヽ- 、\    /   ̄ ヽ\
  // /ヽ─| | ♯|  /   i  ぼくオリジナル   | ..) ) \  i  ./   |\\
  | |  /  `i'lノ))┘/ , ─│             !-l⊂⊃l┐__ヽ__/\ / |   | |
  | |  | ̄| / /| / ( (... .ヽ              / |____|∈  __./ .|   | |
  |_|/ヽ、_/  ./   ` ─ /\           /ヽ      ̄ \-──| \|_|
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1002 :最近建ったスレッドのご案内★ :Powered By VIP Service
とあるフラグの天使同盟 @ 2011/05/21(土) 16:32:09.18 ID:F25Xy5fYo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1305963129/

A雑いつ閉鎖するんだよ @ 2011/05/21(土) 16:31:16.81 ID:YiEl7eaWo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1305963076/

A雑民の性感帯 @ 2011/05/21(土) 15:07:45.35 ID:I3Q9orWyo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1305958064/

エイワス「アレイ☆が雛見沢に行くようです」 @ 2011/05/21(土) 14:57:59.97 ID:wyJhbN+AO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1305957479/

一方通行「暇だし安価で行動するかァ」 @ 2011/05/21(土) 14:40:45.55 ID:8TrEvdED0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1305956445/

唯「なんで借金しちゃったの?」 カイジ「……!!!」 @ 2011/05/21(土) 13:49:06.71 ID:dTwIesDE0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1305953346/

あの人が全レス[東方]避難所γ @ 2011/05/21(土) 12:36:39.71 ID:zYPF5YS9o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1305948997/

階段が汚れてるよ…次に上ってくる者に失礼だろーがAKBSKEスレ @ 2011/05/21(土) 11:35:17.83 ID:1AVqxb9yo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1305945317/


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