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人を救った偽善者と人を殺した正義の味方 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :1 ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/02(月) 17:51:32.22 ID:NvD2XyXg0
散々やるやる詐欺してきたけど今回やっと投下

とある×Fate
大体コメディ、シリアス少な目
クロスオーバーなんでちょいオリ要素、独自解釈あり
OKな人のみどうぞ
因みに当SSは色んな場所からアイディアをお借りしています
特に月姫研究室には感謝

SS初挑戦だけど大長編になるよう頑張るよ
文章が稚拙な所とか誤植とかあったらすまん

では、投下開始―――!
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旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713353246/

木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1713351945/

いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713279251/

【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713277692/

こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713183168/

【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713091115/

アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713089503/

エルヴィン「ボーナスを支給する!」 @ 2024/04/14(日) 11:41:07.59 ID:o/ZidldvO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713062467/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/02(月) 17:52:18.55 ID:iEuZh9mDo
待っていた!
3 :1 ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/02(月) 17:53:27.07 ID:NvD2XyXg0




ある青年がいました。

彼には願いがありました。

それは本当に小さな願いでした。

けれど、その願いさえも、人々が、世界が、叶えてくれる事はありませんでした。

それでも彼は、馬鹿みたいに理想を語って、何度も理想に溺れて、

最後には、いつまでも自分を裏切り続ける人々や世界、

そして、叶う筈のない理想を掲げ続けていた自分に、絶望したのでした。



4 :1 ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/02(月) 17:54:27.45 ID:NvD2XyXg0
―――PrologueT 禁書目録 side

私こと、上条当麻は不幸である。

朝から居候にお腹が減ったと振り回され。
やっとのことで学校に行けたと思えば、クラスメイト二人からの熱烈な朝の挨拶。
見兼ねた女子生徒がそれに乱入し、担任が来るまで一悶着有り。
4時限目の授業では終了間際に質問をすれば、何が先生の琴線に触れたのか昼の時間を削っての指導。
帰り道で馴染みの女子中学生に絡まれ、その後輩からドロップキックを喰らい。

「そして今に至る…不幸だ……」

そんないつもの、当たり前の日常。いい飽きた独り言。
でも、と言葉を続ける。

「まぁ楽しいっちゃあ、楽しい…かな?」

ロシアから帰ってきた後はこんなことがとても眩しく感じられる。
科学魔術両サイドのいがみ合いも一先ずの決着がつき、各々が平和な日々を取り戻しつつあった。
帰って直ぐ争いには巻き込まれたが。

「明日からは旅行だし…ううっ、上条さんは久しぶりに幸せを満喫できそうです」ホロリ

そう、私、上条当麻は明日から旅行なのである。

「つっても絶対能力進化実験の時みたいなもんだけどな」

事の顛末は昨日に始まる。
5 :1 ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/02(月) 17:55:45.14 ID:NvD2XyXg0
それは居候との食事のため野菜炒めを作っている時のことだった。

「ふふふ…料理スキルが最近飛躍的に上がってる気がする…」

などと呟いていると電話の呼び出し音がなった。後ろを向き、声をかける。

「インデックスー! ちょっと手が離せないから出てくれー!」

「わかったんだよー!」

とてとてと軽い音が響く。
余談だが、最近居候がやけに素直になった気がする。…気のせいか?

「はい、こちらInde…じゃなくて上条です!」

『あれっ、シスターちゃんですかー? すみませんが上条ちゃんをお願いしますー』

「あっ、こもえ? わかったんだよ」

一旦調理を終え、インデックスの所へ行く。

「あいよ、代わってくれ」

はい、と受話器を渡し、テレビの前に戻る居候さん。

「もしもし、先生ですか?」

廊下へ出ながら応答する。

『はい、上条ちゃん。実はですねーかくかくしかじかという訳でー』

「……。漫画じゃないんですから、ちゃんと説明してくださいよ…」

『つまりー、上条ちゃん前に海に行きましたよね?』

海?…ああ、あの時の。嫌な思い出が殆どだが。
6 :1 ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/02(月) 17:56:20.50 ID:NvD2XyXg0
『その時と同じようなことを上の人から言われちゃいましてですねー』

ふむふむ。話が見えてきた。つまり、

「用は、また少し『外』に行ってろって事ですか」

『物分りがよくて先生助かりますー。あっ、出席日数は心配ないです。公欠なので。行き先のチケットは郵送でそろそろ…』

その時、ガタンと郵便受けに何かが入る音。…ナイスタイミング、か?

『ちょうどよかったですね。それではー』ガチャリ

廊下で話していたせいか、郵便物が来た音が聞こえていたようだ。

「まさか盗聴されてねぇだろうな…」

軽く戸締りを確認しつつ封筒を開くと、二枚のチケットと書類、そして…手袋?
まぁ先ずは行き先の確認である。

「場所はっと…冬木? 聞いたことないな」

新しく合併でもされたのかな、とか思いつつ次に書類の確認。

「下宿先は下記の住所を訪ねてください、か。旅館じゃないんだな」

まぁ統括理事会が指定する辺り、学園都市に理解のある人が住んでいるんだろう、と予想する。

「戦争も終わったし、楽しい旅になる、よな…。っと、悩んでも仕方が無いな。インデックス、食べるぞー」

詳しい事は今度先生に聞こうと考え、余計な思考を断ち切り夕食を始める。

後から思った。つくづく人生って何が起こるか分からないもんだな、と。
7 :1 ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/02(月) 17:56:48.49 ID:NvD2XyXg0
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―――Interlude in

今日も時間は流れ、一日が終わる。
学園都市といえ、ここは学生が多い第七学区。
学生の大半が眠りに着き、街が殆ど闇に包まれ、景色が黒に染まる。

そんな街の、窓のないビルに設置された生命維持槽で外界を見下ろす、いや、見上げている『人間』がいた。

その男は、
否。
その女は、
否。

『ソレ』は、男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも罪人にも見える、形容するなら『人間』というべき存在。
アレイスター=クロウリー。世界最高の魔術師であり世界最高の科学者である者は、そこに逆さまに佇んでいた。

「…………」

「アレイスター」

少年の声が響く。その格好はこの場に相応しいものとは言えなかった。

土御門元春。上条当麻の友人であり、彼が知る中で最も深い闇の中にいる少年である。

「土御門元春か。なんだね、明らかな疑問の表情が見て取れる。答えれる限りなら答えよう」

「白々しい。何故上条当麻をあそこへと送った」

「ふむ。あそこ、とは?」

その表情を崩さず、その口調も変わらなかった。

「恍けるな。あの、冬木とか言うつい最近現れた土地だ。」

ノープロブレム。そう言うかの如く、アレイスターは答える。

「ほう、君は既に知っていたのか。文献など色々と改竄がされていた筈だが」

「それが及んでいない書物が発見されただけの話だ。御託はいい、質問に答えろ」

若干の苛立ちを覚えながら応答する土御門。それに、

「ふむ…。では先ずこちらの質問に答えてもらおう。君はあれがなんだか分かっているかい?」

核心を突く質問が、『人間』の口から返ってきた。

―――Interlude out

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8 :1 ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/02(月) 17:57:53.09 ID:NvD2XyXg0
―――PrologueU Fate side

いつも通りの夕食を開始した後、追加のおかずを忘れていたのに気づき少し台所に行った。
再び食卓に戻る。

「シロウ、おかわりです」

今日もセイバーのお決まりの声が食卓を飾る。うん、平和だ。つい笑みがこぼれる。

「…シロウ?」

「先輩。セイバーさんおかわりって言ってますよ?」

しまった、と桜の声で我に返り、慌てて茶碗を受け取ってご飯を盛る。

「わり、ちょっとボーっとしてた。…ってあれ、イリヤと遠坂は?」

ライダーはバイト、藤ねえは残業、バゼットは就活で遅くなるって聞いたが。

「姉さんとイリヤちゃんはさっき深刻な顔して新都の方に行くって言ってましたけど…何かあったんでしょうか?」

深刻な顔…最近は平和で忘れてたけど、そういや俺たちって魔術師だったな。
こんなに平和だといくら鍛錬をしてるからって忘れるってもんだ。
っと,いかんいかん、こんなこと言ったら遠坂やセイバーに殺される。

「んー、まぁ帰ってきたら聞けるだろ。ほい、セイバー」

「ありがとうございます、シロウ」

ぺこりと頭を下げつつ茶碗を受け取るセイバーを眺めつつ、
晩飯の後何をしようかと考えた。

また変な事にならなきゃ良いが…。
9 :1 ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/02(月) 17:58:28.26 ID:NvD2XyXg0
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―――Interlude in

「うそ…こんな事って…」

「まさか冬木が平行世界に隔離されるなんて、ってところかしら。リン」

新都で最も高いビル。その屋上に二人の少女の声が響く。そこに、

「そちらも異変に気づいたようだな」

ふと、男の声が入り込んできた。

「「アーチャー?」」

ふむ、と呟きながら近づきアーチャーと呼ばれた男は言葉を続ける。

「冬樹を覆うように認識阻害と人払いの結界が張られている。誰の仕業かは知らんが、これでは一般人も気づけないだろう」

何処か達観したような眼で街を一望する男。その様子に、何かを思いついたような顔で、

「アーチャー。あなた、こんな経験今まであった?」

赤い少女が尋ねる。白い方の少女も同じ目線を向ける。

「ない。英霊としての記録にも、『エミヤシロウ』としての記憶にも、な」

そう、と、あからさまに残念がる赤い少女。
それに対し、白い少女はいつものような表情で言う。

「まぁあの程度なら、一般人に危害も加えないし知られもしない。秘匿はされてるんだからいいんじゃない?」

「……随分簡単に言うのね、イリヤ」

「だってシロウ達がいなくなるわけじゃないしー、正直な所、アインツベルンの本家が消えて清々してるわ」

「「………」」

呆れる二人を余所に、彼女は微笑み、くるくると踊りながら続ける。

「それに、何だか面白いことが起きる気がするのよね♪」

と、言葉を残し、雪の妖精は歌を口ずさみながら階段を下りていった。

―――Interlude out

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―――Prologue End
10 :1 ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/02(月) 17:59:35.90 ID:NvD2XyXg0
はい、プロローグ終了です

このまま第一章投下します
11 :1 ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/02(月) 18:00:23.08 ID:NvD2XyXg0
―――Chapter1-1 禁書目録 side

出発の朝。国内とはいえ旅行は旅行、気は抜けない。
準備は万全。イタリアのときの経験を生かして、居候のシスターさんはすでに私服モード。
……インデックスにはまだ伝えてないが、旅行中はずっと私服になってもらう予定である。
まさか、あの服で動き回るわけには行かない。下宿先で洗濯すればいいので、最低限の着替えしか持っていない。
自分の鞄の中に入っているので、健康優良男子が服や下着に色々感じてしまうのはご愛嬌なのである。

「あ、短髪」

「む」

などと考えていると登校途中の御坂と出会った。
またまた余談だが、こちらは居候さんと違い、ロシアから帰って来てから妙に不機嫌である。何かやったか俺?
朝から一試合ありそうだなぁ、早く出て来てよかったなぁ、とか思っていると、

「なっ! な、何よその格好!!」

予想とは違う反応。

「何って、今から旅行なんだよ」

今から旅行、と言葉を反芻する御坂。おー、顔が真っ赤になっていく。何興奮してるんだ、と声を掛けると、

「興奮してないっ! だってその…、ええと…、二人で…旅行なんて……こっ、こっ、」

鶏か、という突っ込みは控えておこう。

「こ?」

「こ、恋人みたいじゃない!!」

がぁー、と叫ぶ御坂とは逆に、

「……………はい?」

俺の思考は停止・凍結した。
12 :1 ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/02(月) 18:01:00.78 ID:NvD2XyXg0
「みたいじゃなくて、そうなのかも!」

「「はっ!?」」

インデックスの馬鹿みたいな発言で思考を取り戻した俺。そういう誤解を招く、いや誤解しか招かない表現はやめろ!

「…私以外の人ともそういうことするなんて……」ゴニョゴニョ

「今のは違うっ! 冗談だ冗談! ははっ、結構面白かったよな御坂!?」

パキン、空気が音を立てて崩れた。…何故だ。空気を直すために取り繕ったのに。

「とうまはどうやってもとうまなんだね…」「全く…今のは私もどうかと思うわ…」

さて、と呟く二人。あ、この展開はまずい。

「「覚悟は出来てる?」」

こりゃあ弁解の余地もない、と悟った俺は、

「はい…」

と返事をして、飛行機間に合うかなぁなどと考えつつ、

「不幸だ…」

と、何度目かも分からない、口癖を口にした。
13 :1 ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/02(月) 18:01:37.93 ID:NvD2XyXg0
―――Chapter1-2 Fate side

「おはよう、衛宮」

登校すると、校門で見慣れた顔に声を掛けられた。

「慎二か。おはよう」

「あっ、兄さん。おはようございます」

「おっ、おはよう、桜」ビクッ

慎二の顔に冷や汗が浮かぶ。
…前にも聞いたが、今や間桐家の実権はほぼ桜にあるらしい。
それにしても慎二の反応は過敏すぎないか、と思う。

「じゃあ、また教室でね」タタッ

逃げるように校舎へ入っていく慎二。
俺も桜を怒らせないようにしよう…。

「…くす。兄さんったら可愛い反応するんですね」

「あのー、桜、さん?」

おずおずと尋ねると、桜が振り返った。

「どうしました? 行きましょう、先輩」

…あの邪悪な笑顔は見なかったことにしておこう。
育った環境は違うとはいえ、さすが姉妹。遠坂に通じるものがある…。
14 :1 ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/02(月) 18:02:30.75 ID:NvD2XyXg0
―――――――――――――――

教室へ入り、我等が生徒会長のところへ行く。

「よう、一成」

「む、衛宮か…。おはよう」

「どうした、具合悪そうだな」

「うむ…。キャスターさんの料理、といえば分かるだろう」ドンヨリ

あー…と応答しつつ、まだまだ上達しないかと感傷に浸る。
指導のお陰でだいぶ良くなったと思っていたが、まだまだ人に食べさせれるレベルじゃなかったらしい。

「あれほどの美人なのに料理が壊滅的とは、最初見たときは全く思わなんだ」

人を見かけで判断するみたいで嫌だが、それには賛成だ。
まぁ俺の第一印象はローブ羽織った腹黒魔女なんだけど。

「それについてお前のことを口にすると恨めしそうな顔をするのだが、心当たりあるか」

「いや、心当たりはないんだが…。夜道は後ろに注意しておこう」

後ろからブスリ、はなさそうだが、もっと酷いことをされそうな気がする。

「っと、そんなことより、もっと面白い話題がある」

一成の口から面白い話題、とな。是非も無く聞こう。

「恐らく生徒で知っているのは今のところ俺ぐらいのものだ。何でも……明日転校生が来るらしい」

…自分の顔が真剣になるのが分かる。表情を隠しつつ、

「何処からだ? 市内か?」

と聞く。案の定返ってきた答えは心配していたものになった。

「何でも東京の方かららしい。異文化共有のいい機会になるだろう、っと、俺としたことが浮かれてしまった。喝」

……昨日夕食後に帰ってきた遠坂の話を思い出す。

外からということは平行世界の住人ということ。
町を覆うように結界が張っているらしいから、来る人間はそれにも拘らず来るということだ。
平行世界の魔術師、もしくはそれに準ずる者だろう。

「……そうか。教えてくれてありがとうな」

「む、広めるのなら止めはしないが、度を過ぎんようにな。騒がれるのは御免だ」

ああ、と言いつつ、遠坂と桜へ昼に屋上に来るよう伝えるために走り出した。
15 :1 ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/02(月) 18:03:19.95 ID:NvD2XyXg0
―――Chapter1-3 禁書目録 side

十分以上に及ぶ二人の説教の後、やっと俺にも発言権が与えられた。
俺の説得が通じたようで、御坂は割とあっさり許してくれたようだ。
行き先を伝えたところ、やはりあいつも聞いたことが無い土地らしい。

「ふ、ふーん。まぁ、何か困ったことがあったら連絡しなさいよね」

その一言でようやく解放された俺は、インデックスを引っ張り、二十三学区へ急ぐ。
予定では十分余裕を持って来ていた筈だが、安心はできない。
経験上、こういうことは余裕を持ってやらないと、後々大変な目に遭うのである。

―――――――――――――――

結果として、離陸には間に合った。
以前のようなハプニングは起きなかったものの、俺の体には噛み傷が一つ。
空港での荷物確認の際、修道服を持って来なかったのがばれてしまったのだ。
言い訳は、忘れてきたの一言。さすがにここから寮へ戻るわけにも行かず、何とか了承を得た。
その代償としての傷が、これである。

「国内だから、さすがに音速旅客機じゃないよな」

「わたしはご飯が後ろに飛ばないなら何でもいいんだよ」

なんというか、単純だな。

「むぅ、何か失礼な目線を感じるんだよ」

話しながら歩いていると、旅客機が見えてきた。
………あれって、やっぱり音速旅客機だよな?

「あああああ!! 上条さんは結局あれにしか乗れないんですかそうですか!!」

知りうる全ての愚痴を叫びながら全身で怒りを表現する俺に、

「大丈夫だよとうま! 前みたいに別のを使えばいいのかも!」アセアセ

インデックスが助言。インデックスさん、前はそれで散々な目に遭ったのに、それを言いますか。
……不本意だが仕方ない、そうするか―――と思った矢先、

「おっと、そうはいかないぜい! 上やん、禁書目録!」

この場にいるはずが無い、友人の声が聞こえた。
16 :1 ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/02(月) 18:04:14.65 ID:NvD2XyXg0
―――Chapter1-4 Fate side

「「外からの転校生?」」

昼休みの屋上。人が多いはずの場所には人っ子一人居らず、少女らの驚嘆の声だけが響いた。

屋上に先に来ていた桜の様子も元に戻っている。
二番手の俺が入ってくると「先輩! 何か御用でしょうか!」と真っ赤になっていた。さすがに驚いたぞ、おい。
一方、最後に来た遠坂は、今も深刻な様子を崩していない。流石と言ったところだ。

「ああ、一成の話だと明日転校して来るらしい」

そう言った後、俺はさっき考えたことを伝えた。

「士郎にしちゃあ悪くない予想ね。今外から来るやつは、十中八九この町の異変に気づいてるわ」

と断言する遠坂。それに、顔を暗くした桜が質問する。

「また、争いごとが起きるんでしょうか……」

「心配するな。まだ戦うと決まったわけじゃないだろ」

桜は基本的に争うのは好きじゃない。ここに呼んだのは間違いだったろうか。

「二人とも、甘えないで。戦いになる可能性があるのは否めないわ」キッ

でも、と言葉は続けられる。

「積極的に解決のために協力していくつもりよ。せっかくあちらも異変に気づいているんだから。
 それに、転校生、なんて皆に知られる形で使者を送り込んだってことは、あちらもコンタクトを望んでる筈よ」

その言葉に顔を明るくする桜。なんだかんだ言っても、やっぱり妹思いなんだな、遠坂は。

「さて、この話は終わり! せっかく集まったんだし、一緒にお昼ご飯食べましょう」

パンパンと遠坂が手を叩き、弁当を広げ始める。

「あ、それいいですね、姉さん。さ、先輩も」

「…ごめん。魅力的な提案だけど、今日は一成と昼飯を食べなきゃならん」

キャスターのせいで弁当が無いらしいからな。
頭を下げる。再び頭を上げると、

「「…………」」

ピシッ、と、空気が音を立てて崩れ落ちた。
そこには、あかいあくまと黒い聖母が笑いながら立っていた。
どこからかゴゴゴと効果音が聞こえてくる…。あ、死んだ。こりゃあ無理だ。

「衛宮くん、行ってらっしゃい」「先輩、どうぞ、行ってきて下さい」

あれ?と拍子抜けする俺。
しかし、神様はどうやっても俺には微笑んでくれないらしい。

でも、と二人の声が被る。

「帰ったら、お仕置きね」「帰ったら、お仕置きですよ」

願わくば、家にいる誰かが味方になってくれることを祈ろう。
17 :1 ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/02(月) 18:05:52.27 ID:NvD2XyXg0
―――Chapter1-5 禁書目録 side

「土御門…?」

何でお前がここに、という質問は、

「何でお「冬木行きの旅客機はこれしかないにゃー。
 統括理事会指定だから変更はできないし、変更しようとも思わんにゃー。
 何で俺がここにいるかって? 上やんの付き添いに決まってるぜよ!
 あと、ステイルと神裂もいるにゃー。そこんとこ、ヨロシク!」」

いきなりのマシンガントークで、他の聞きたいことと一緒にかき消されてしまった。
って、ステイルと神裂?

「上条当麻にインデックス、お久しぶりです」

「やあ、まさかまた君と顔を合わせるなんてね」

「…なんでお前らがここに」

先ほどの疑問は、解決されるどころか一文字多くなって帰ってきた。
ステイルの顔に若干の苛立ちと呆れが見える。

「…土御門。上条当麻に説明していなかったな」ジロッ

「だから今から説明するんだぜい。
 っと、あの旅客機は俺たち以外誰も乗らないから少しくらい待たせてもいい。心配無用だにゃー」

そんなことは微塵も思っていなかった。やっぱ何か欠けてるな、俺って。

「さて、まずは今回の目的だが―――
 上やん、今から行く冬木と呼ばれるあの土地は、『平行世界』だ」

18 :1 ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/02(月) 18:06:28.59 ID:NvD2XyXg0
ヘイコウセカイ?と頭を傾げる俺。
それに対し、インデックスはとても驚いた顔をしている。

「『平行世界』って言うのは、この世に存在するあらゆる可能性から枝分かれした世界。
 例えば、ここで俺が右腕を前に出す。今俺は右腕を挙げているが、それとは別に
 『左腕を挙げた未来』『両腕を挙げた未来』『どちらも挙げなかった未来』『そもそも俺がここにいない未来』
 …と言う様に、数多の未来が平行して存在する。この未来が『平行世界』って呼ばれるものだ」

必死に理解しようと頭に叩き込む。なんか授業を受けている気分だ。

「で、今回行く冬木って地だが…、恐らく今言ったような些細な違いじゃない。
 俺たちの世界とは根本から違う、言っちゃ悪いが言わば異世界みたいなところだ」

異世界、という言葉に身が締まる。今まで散々振り回されてきたが、初めての経験だ。

「そこでの俺たちの目的は、観測。つまり、異世界異文化を体験してこいってことだにゃー!」

…こいつ、真面目になったと思えばいつも通りに戻りやがる。忙しいやつだ。
見れば、ステイルも神裂も呆れている。説明役はあくまで土御門らしく、口には出さないが。

「第二に、ステイルと神裂が居る理由だが、
 これはぶっちゃけ戦闘になるかもしれないってことで、俺が独断でイギリス清教から呼んだって訳だぜい」

なるほど、それなら納得である。こいつらなら見知った顔だし、心配ないだろう。
最後に、と付け足す土御門。

「手袋、持ってきたかにゃー、上やん?」

「ああ、一緒に入ってたから持ってきたけど、何だこれ?」

奥を見透かせるほど薄いのに、いくら引っ張っても破れず形も変わらない。
喩えるなら手術用の手袋みたいのもので、それが片手分だけ。

「それ、あっちで緊急のとき以外はつけててもらうぜよ」

???頭が?だらけになる。

「その右手で何でもかんでもぶち壊されたらたまらんからにゃー」

「…お前、俺のこと馬鹿にしてるだろ」

「学園都市製のトンデモ手袋だから、肌触りは最高。そのままで風呂も、寝るのもOKだにゃー」

聞き流された。話し聞いてねぇなこいつ。と、そんな俺達を見兼ねて、

「説明も終わりましたし、そろそろ出発しましょう。いくら待たせてもいいとは言え、限度があります」

神裂の至極真っ当な意見が炸裂。まぁ全面的に賛成だけど。
俺は、よし、と呟き、

「じゃあ、行くか」

手袋をはめつつ、皆に声を掛けた。
19 :1 ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/02(月) 18:07:34.06 ID:NvD2XyXg0
―――Chapter1-6 Fate side

「……はぁ」

満身創痍である。

家に帰ると、昼の続きが開始された。
最初のうちはセイバーが味方になってくれたものの、遠坂と桜の話を聞くと、

「それは明らかにシロウが悪い。怒られて当たり前です」ハァ

と、意見を変えてしまった。なんでさ。
そんなこんなで、ブリテンの赤き竜、あかいあくま、黒い聖母に太刀打ちできる訳がなく、俺の敗北が決定。
いや、昼休みの時点で勝敗は見えていた。説教が酷く長くなっただけだ。

その後の鍛錬、魔術指導がいつにも増して過酷だったのは言うまでもない。

廊下を歩いていると、後ろから声を掛けられた。

「士郎君、封筒が届いてますよ」

「お、バゼットか。就活はどうだ?」

「それが、先日の一次試験に見事合格しました! 正社員採用は目の前です」

「いい調子だな。よきかなよきかな」

などと談笑しつつ、封筒を受け取る。差出人は、っと。

「…バゼット」

自然に声が真剣になる。様子を察してくれたのか、

「夕食の後、ですね。分かりました」

藤ねえに知られるわけにはいかない、という理由で、真面目な話は専ら夕食の後に行われる。

「離れに居る遠坂と桜にも伝えておいてくれ。今に居るセイバー達には俺が伝える」

分かりました、と言ってバゼットは踵を返す。
手紙の差出人の欄には名前など無く、東京都とだけ記してあった。
20 :1 ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/02(月) 18:08:35.01 ID:NvD2XyXg0
―――――――――――――――

夕食時の空気が重かったのは言うまでも無い。
にも拘らず、「今日は士郎が当番だっけ。この焼き魚美味しいねー」と、藤ねえはいつも通りだった。

「じゃ、お姉ちゃん仕事残ってるから帰るよ。ごちそうさまでしたー」

「おそまつさまでした。仕事しっかりやれよ、藤ねえ?」

「言われなくてもさっさとやっつけちゃうよ。あと、」

こっちに顔を近づけてくる藤ねえ。内緒話か?

「夕食の空気悪かったけど、あんたまた何かしたの?」ヒソヒソ

ぐっ、と固まる。この虎、意外に鋭い。

「…いや、何も」ボソッ

ふーん、と明らかにこちらを疑う目。

「まぁいいけど。鈍感ーとか、朴念仁ーとか、言われないよう気をつけなさいよ?」

「大きなお世話だ。さっさと帰って仕事終わらせてこい」

ほーい、と言って出て行く藤ねえ。あれでも教師なんだよな…。

「さて、居間で作戦会議だな」

久しぶりの緊張感。俺は玄関に背を向け、居間に向かった。
21 :1 ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/02(月) 18:09:13.61 ID:NvD2XyXg0
―――Chapter1-7 禁書目録 side

目的地から少し離れた空港に降り、そこからはバスで向かう。
その途中で土御門がこんなことを言った。

「上やん。あっちでも学校には通うからにゃー」

また重要なことをさらっと言いやがって。ん…?まてよ、

「それって、これ旅行じゃないのか!?」

「だって、学生が昼間堂々と町を歩いて居たら不審だろ?昼はステイル達に任せておけばいいぜよ」

俺の質問に答えてない気がするが…まぁいいや…。

「あっちでも学校なんて…仕方ないけどさ」ハァ

「心配するな上やん、俺も通う。それに、新しい土地、新しい学校、これすなわち新しい出会いの場!!」

「そう言われると、なんだか俺も希望が湧いてきたぜ!」

「その粋だにゃー上や「いい加減にしなさい!!」」

キーン、と神裂の声が耳に響く。
公共の場なのですからマナーを守りなさいだの、出会いの場とはどういうことですかだの、
そもそも学校というのは学び舎であってですねだの、土御門が散々怒られている。

言っておくけど、お前もうるさいぞ、神裂。
22 :1 ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/02(月) 18:09:48.10 ID:NvD2XyXg0
―――――――――――――――

「っと、到着だぜい」

橋を前に立ち止まる土御門。ここから冬木を見てみる…が、特に変わった様子は無い。

「そりゃあ、認識阻害の結界がある所為だにゃー。
 これは一般人に知られない為のものだから、壊さないようにしてくれ」

そのための手袋だったな。
それにしてもこれ、素肌の感覚と殆ど同じだ。学園都市製のトンデモ商品ってのも頷ける。

「さて、ちょっと集まってくれ」

土御門の声が真剣なものになり、それにつられて俺も肩が強張る。

「こちらもあちらも今のところ互いの戦力は分かっていない。
 この結界を越えたらいきなり戦闘という可能性も大いにある。戦闘になった場合、ねーちんがまず様子見。
 その後、準備を終えたステイルが援護へ入る。状況に応じて俺、上やん、禁書目録も戦闘に参加することになるだろう」

「待て! その子も参加するのか!?」

「相手の戦術も、技術も、あまつさえどんな攻撃をしてくるかさえ分からないしな。
 心配するな。禁書目録が参加するのは、相手が魔術師と分かってからだ」

危険だが、魔術師相手ならインデックスの存在は大きな武器になる。

「まぁあっちは平行世界の住人。見たことも無いようなことをしてくる可能性も否めないがな」

ステイルはまだ不満があるようだが、一応筋は通っているので渋々口を閉じている。

「さあ、皆。準備は良いか?」

全員が頷くのを確認しようともせず、俺達は橋へ向かって前進し始めた。
結界を越え、無事に抜けたか、と安堵する俺。そこへ、

「……来たか」

不意に声がした。聞こえた方を見る。
そこで、服も肌も黒く髪だけが白い男が、鷹のような目で殺気を放っていた。
23 :1 ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/02(月) 18:14:43.58 ID:NvD2XyXg0
今日の投下は終了。
まだ一章までしか書いてないから、次の投下で終わりだと思われ

という訳で、アイディア募集!
第二章はほぼ前編コメディになる予定
書いて欲しい話など色々あったらどうぞ
因みに執筆スピードは超が付くほど遅いので次の投下はいつになるか分からんwww
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/02(月) 18:16:25.31 ID:ZvUISaik0
嵐の予感だじぇ支援

クソみたいな設定議論で荒れないことを祈ります。
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/02(月) 18:17:02.81 ID:iEuZh9mDo
乙〜
荒れなきゃいいが
26 :1 ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/02(月) 18:30:14.56 ID:NvD2XyXg0
じゃあ今更だが注意書きしとくか

強さ議論は禁止
ここでは俺がルールだ(言ってて恥ずかしいwww

あと何か気づく度書いていくから宜しく
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/05/02(月) 20:55:01.18 ID:7URHrSSE0
おつしえん
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(香川県) [sage]:2011/05/02(月) 21:09:03.83 ID:aCbJbGfco

またあのジジイの仕業か?
29 :1 ◆TyXhq8/md2 [saga]:2011/05/03(火) 00:48:12.44 ID:iJNIbgsA0
どうやらしばらくPCに触る事ができそうに無いのが分かった
なので今から少しだけ投下していく

>>2
待ってくれていたとは…感謝感激ゲイボルグ雨あられだ

>>28
それが濃厚だけど、実は他の理由もあったりするんだな、これが
30 :1 ◆TyXhq8/md2 [saga]:2011/05/03(火) 00:49:39.46 ID:iJNIbgsA0
―――Chapter1-8 Fate side

「で、話を整理すると」ハァ

溜息をつきながら話し始める遠坂。
居間には居候の面々に加え、藤ねえと入れ替わりでやってきたイリヤが食卓を囲み座っている。

「あっちには最初から争う気なんて無くて、協力する気しかなかったらしいわね。
 それに、問題解決のためには近くに居たほうがずっと便利だからって理由で」

「俺の家に下宿する…か。はぁ、なんというか、理不尽だ」

「良いじゃない、シロウ。楽しくなりそうよ」

気分が良いのか俺の肩に掴まるイリヤ。
お嬢様、楽しいのは良いんですが、食費の問題はどうすりゃ良いんでしょうか。

「そうですよ。イリヤちゃん、ただでさえ家計が火の車なのに、これ以上は…」

「桜の言う通りです。それに、一番家計を苦しめているセイバーこそ働くべきなのではないですか、士郎」

「む、ライダー、そうしたいのは山々なのですが、この外見では雇ってくれる店舗も少ない。
 それにやっと見つけても、シロウが許可してくれないのです」ブツブツ

「そりゃあ仕方ないわよ、セイバー。士郎があんな店許すわけ無いじゃない」

「ぐっ、それもこれも私が早く定職に就けば解決するのに…」ワナワナ

口々に言う衛宮家の女性たち。
それに、セイバーが働いてくれるというのは嬉しいが、彼女を雇ってくれる店なんてあれな店が殆どである。

「まぁ、そこら辺は後で考えよう。予定だとそろそろ新都に到着してるはずだし、迎えに行かなきゃな」

全員に声を掛ける。何はともあれ、まず会わないと話にもならないからな。
31 :1 ◆TyXhq8/md2 [saga]:2011/05/03(火) 00:50:56.52 ID:iJNIbgsA0
―――Chapter1-9 禁書目録 side

「お出迎えにしては、少し荒っぽすぎるんじゃないかにゃー」

土御門が男に話しかける。軽口を叩いているが、声は真剣だ。

「当たり前だ。むしろ、いきなり切り伏せられなかっただけ有り難いと思え」

土御門の言葉には納得だ。素人の俺にも分かるほどの強大な殺気を感じる。
そんな男に、挑発のつもりなのか、

「おいおい、俺たちに喧嘩を売るつもりか?悪いことは言わない、止めといた方が身の為だぜ」

土御門が問いかける。が、

「ふん。君達の方こそ、私に勝てる自信があるというのかね」

どうやら相当な自信があるらしく、男は動じない。

「こっちは五人。しかも、そのうちの一人が聖人だ。お前が勝つ見込みは無いと思うがな」

「セイジン?聞き覚えは無い言葉だな。見たところそこの少年と少女は戦い慣れていない様だが…
 まぁいい。そこまで自信があるならかかってこい。軽くあしらって見せよう」

フ、と男が鼻で笑う。
男の殺気が先ほどの数倍に膨れ上がる。腰が抜けそうになるが、こっちも怖気づいてられない。

「ちぃ、やはり戦闘になるか……。皆、作戦通りに行くぞ」

「了解しました。では……行きます」

言い終わらないうちに神裂が稲妻の如き速さで相手に切り掛かる。
隣では、勝ったと言わんばかりの眼で相手を見る俺以外の三人。
……嫌な予感がするのは俺だけだろうか。
32 :1 ◆TyXhq8/md2 [saga]:2011/05/03(火) 00:51:35.84 ID:iJNIbgsA0
「むっ」

男が眼を見開く。彼の手は未だぶらりと下を向いたままである。
だが次の瞬間、男の手には、

「「「「「…ッ!!?」」」」」

いつの間にか陰陽を模した双剣が握られ、七天七刀と鍔迫り合いをしていた。
その様子に、真っ先に反論したのはインデックスだった。

「今の魔術は何? 確かに魔力は感じたけど、術式が全く分からないんだよ!」

その後も予測を色々立てているみたいだが、結果は出ないようだ。

「転移の魔術? いや、そんな高度な魔術を易々と使いこなせる筈が…」

「その子の頭の中の魔道書も意味無し、か…。厄介な敵だね」

言いながらルーンのカードを配置し続けるステイル。

「一つ思いついたんだが、あれが魔術なら俺が行けば良いんじゃないか?」

ぽっと頭に浮かんだ事をそのまま口に出してみる。

「馬鹿言うんじゃない。君はその体一つであの闘いについていけるって言うのかい?
 君では、あの男に触ることすら出来ないだろう」

…腹が立つが、言い返せない。それほどまでに、ここから見る闘いは壮絶だった。
情けないが、俺には勝利を願うことしか出来ない。

「頑張ってくれ、神裂…」

自分でも気づかぬ内に、そんな言葉を発していた。
33 :1 ◆TyXhq8/md2 [saga]:2011/05/03(火) 00:52:17.04 ID:iJNIbgsA0
――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――
――――

―――Interlude in

鈍い剣の音が響く。

神裂火織は困惑していた。
この男はどうやって何も無い所から剣を出したのか。
聖人たる私に拮抗するこの男は何者なのか。
なぜこの男は競り合うばかりで全く攻めてこないのか。
考えれば考えるだけ思考は泥沼に嵌っていく。

(考えるな。私が今すべきは目の前の敵を倒すことのみ―――!)

一旦引き、刀を振りかぶってもう三度目になる渾身の一撃を叩き込む。
だが男は、陰陽の夫婦剣でそれを防ぎ押し返す。

「ぐっ…」

声に苛立ちの色が表れる。元々彼女は気の長い方ではないのだ。
不殺の信念で今まで戦ってきたものの、そんなものが通じる相手ではないらしい。

「むっ」

気配を感じ取ったのか、男が身構える。

「いきます、唯閃―――!!」

十字教、仏教、神道それぞれの弱点を補い合うことで、天使をも傷つける絶対の破壊力を生み出す。
天草式十字凄教において彼女の持つ最大かつ唯一無二の術式。それを、

「ハッ!!」

有ろう事か、男は正面から受け止めた。
あまつさえ、それを双剣で巧みに受け流したのである。
だが、防がれても切り札、唯閃は確実に敵の武器を破壊していた。

「「よし!」」

仲間の少年達からも歓声が上がる。勝った、神裂は息を整えながら思った。

「降伏しなさい。まさか徒手空拳で戦うわけではないでしょう」

「ふむ、君の意見は半分正しい。武器が無くては戦えない。だがな、」

言いながら、男は刃が折れた剣を捨てる。
手から離れたそれは、まるで最初から無かったとでも言うかのように霧散していく。
神裂火織が再び男に目線を戻すと、その手には、

「まだ武器が無くなった訳ではないだろう?」

今消えたはずの剣と全く同じ得物が握られていた。

―――Interlude out

――――
――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/03(火) 00:53:42.53 ID:XA67Z5xko
クロススレに直接宣伝に来るのはお行儀わるいと思うの
以上
35 :1 ◆TyXhq8/md2 [saga]:2011/05/03(火) 00:54:04.22 ID:iJNIbgsA0
「また、同じ魔術…」

インデックスが呟く。

正直な話、俺は凄く混乱している。
あの男は全く訳が分からない存在だ。
そもそも、生身であの神裂と互角以上に戦っていることがおかしい。

「戦闘力だけなら、神の右席をも凌駕するかもしれないぜい」

それって殆ど人間じゃないだろ、アックアみたいに。

「それなんだが、禁書目録。あの男は人間か?」

「うーん…一概には言えないんだけど、あの人からは人間が持つ生命力が感じられないんだよ」

「えっ!? も、もしかして、幽霊とかその類の奴か……?」

背筋が凍る。天使の後は幽霊なんて……って、幽霊が怖い訳じゃないぞ?

「それ、案外的を得ている発言だぜい。見てみろ、上やん」

土御門の指差した方を見る。男が使っている武器がどうしたんだよ。

「あの陰陽の双剣、干将・莫耶って言ってな。今はレプリカを陰陽道の儀式とかに使ったりするんだが、
 本物は中国史に残る夫婦が作った名剣なんだ。一度砕けたのにまた出してきたってのには引っかかるが、
 唯閃を受け止めるあの強度は本物に近い」

土御門が言ってることを必死に理解する。
ってことはつまり?

「ぶっちゃけあの剣に所縁のある有名人の霊だったりするのかにゃー?」

…もしそうだとしたら全然笑えないぞ、それ。

「そうだよ!霊格の高い死者の降霊なんて、そんなの主程の御方じゃないと出来っこないかも!」

ほら、天下のインデックスさんがこう反論してるし、有り得ないって。

「おいおい、二人とも、此処が平行世界だということを忘れてないか?
 こっちの世界の法則なんて、まるで通じない可能性だってある。あの男がいい例だ」

「「ぐっ……」」

「君達、お喋りはそこまでだよ。ルーンのカードの配置も終わったし、そろそろ僕も参戦する。
 神裂一人じゃ辛くても、三対一なら勝機はある筈だ」
36 :>>34すまん、気をつける ◆TyXhq8/md2 [saga]:2011/05/03(火) 00:56:10.80 ID:iJNIbgsA0
三対一?誰のことだ。
土御門に「その子を頼む、あの男だけじゃあ心許無いからな」と頼むステイル。
あいつ、去り際に捨て台詞吐いて行きやがった。

そして神裂と睨み合っている男へ近づき、

「名を訊いていなかったね」

と尋ねた。男は構えを崩さず答える。

「……生憎名乗る名は持ち合わせていない。アーチャーとでも言っておこう」

「その名から察するに、貴方は弓使いなのですか?」

神裂が疑問に思うのも無理は無い。あの男はさっきから剣、しかも二刀流を操っているのだから。

「まぁいい。こちらも真名を名乗るつもりは無かったし、そっちの方が都合が良い。
 僕の魔法名―――と言うより殺し名―――は、Fortis931だ」

魔法名と聞いて首を傾げる男を余所に、ステイルは戦闘態勢に入る。

「一人じゃ厳しい様だし、遊んでいる時間も無くてね。悪いが、大勢で行かせてもらう」

「フッ、臨む所だ」

言って、男は目を見開き、呪文を唱える相手をその目に捉える。

「―――世界を構築する五大元素の一つ、偉大なる始まりの炎よ。
       それは生命を育む恵みの光にして、邪悪を罰する裁きの光なり。
             それは穏やかな幸福を満たすと同時、冷たき闇を滅する凍える不幸なり。
                   その名は炎、その役は剣。
                         顕現せよ、我が身を喰らいて力と為せ――――――!!!」

瞬間、ステイルの胸から巨大な炎の塊が飛び出した。
その炎は、周りの酸素という酸素を巻き込み、炎の巨人を形どっていく。

「『魔女狩りの王(イノケンティウス)』―――その意味は、必ず殺す」

まるで叫び声を発するかのように轟々と燃え盛る巨人は、主人の声と共に標的へ向かう。
人よりも大きい一歩で男へ辿り着き、2mは有ろうかという十字架を振り下ろす。

「くっ…!」

男は堪らず双剣でそれを防ぐ。

「干将・莫耶が熔けない…。投影品とは言え、ランクは低くとも『宝具』という訳か」

何を言っているかは分からないが、男が安堵している様子を見せている。
だが、味方もそう甘くは無かったみたいで、

「はあっ!」

背後へ神裂の追撃。隣で「行け!神裂!」と土御門が叫んでいる。
が、なんと男は苦しくも身を翻しそれを避けた。
信じられない。あれを避けるなんて、背中に目がついてる様なもんだぞ。

しかもさらに信じがたいことに、その後も男は神業的身体能力と直感で神裂と巨人の攻撃を受け流し、避け続けた。
ああいうのを心眼って言うんだろうな。こりゃあ土御門の説も否定できなくなってきた。
と、そこへ、

「灰は灰に―――塵は塵に――――――吸血殺しの紅十字!!」
37 :>>34すまん、気をつける ◆TyXhq8/md2 [saga]:2011/05/03(火) 00:58:28.54 ID:iJNIbgsA0
「何だとッ!!」

ステイルの魔術がさらに男へ追い討ちを掛ける。
あ、今やっと三対一の意味が分かった。
男はあっちで手一杯のようだし、これってもしかして勝ったの?と思っていると、

「灰は灰に―――塵は塵に――――――!!」

不意に、女の子の高い声が響く。
って…女の子?
瞬間、ステイルの呪文は相殺され、男は巨人と神裂の間から離脱していた。

「「「「「なっ…!」」」」」

俺達全員の驚く声が木霊する。
だって、一瞬であそこまで離れた男に対しても驚いたが、その向こう側には、

「お前達が、外からの人間か…」

一人の男と、そいつを囲む沢山の女の子+女の人が立っていたんだから。
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/03(火) 01:00:14.99 ID:z6024UNc0
2巻で説明があったけど、禁書世界で頭の中にあるものを現実に持ってくる魔術って、珍しくないんじゃ……
アウレオルスも同じようなことできそうだし……
39 :1 ◆TyXhq8/md2 [saga]:2011/05/03(火) 01:02:17.49 ID:iJNIbgsA0
今回はこの辺で終了

第二章は今書いてるから
小話のアイディアは続々募集中
40 :1 ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/03(火) 01:03:43.82 ID:iJNIbgsA0
>>38
何…だと……?

すまん、出直してくる
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/03(火) 01:09:53.65 ID:1vzYN48ho
小話と言うか小ネタと言うか、大食い対決は外せないな
そうなるとやはり焼肉か、型月的に
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/03(火) 01:12:57.14 ID:GretDbQDO
>>38
できそうというより、その究極形が黄金錬成じゃね?
43 :1 ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/03(火) 01:27:07.05 ID:iJNIbgsA0
>>38
OK、読んできた

ここでは、あくまでインデックスは
「呪文を詠唱せずに、その物を形作るイメージに一つの綻びも無かった訳で、
そんな事を可能にするアルス=マグナもヘタ錬以外に使い手が存在するなんて」
という事に驚いた

これで勘弁してくれ
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/03(火) 01:31:11.70 ID:sGYNOgEDO
糞面白そうなスレタイなのにFate知らないから読めない俺は負け組orz
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/03(火) 01:39:36.70 ID:z6024UNc0
>>43
ほころびがあると、小萌せんせいの天使みたいになってしまうわけですね。

ネタといえば、インデックスが士郎とアーチャーの手を見たら完全記憶能力によりきづくじゃないか。
二人の指の模様がまったく同じであるということに。

というかんじに、まったく警戒されていなかった方向からあっさりと明らかになるアーチャーの真名。
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/03(火) 09:32:01.39 ID:Mav+We01o
>>45
逆に、子細な差異にも気付くから、同一人物とは思わないんじゃないかね。

御坂妹と美琴の関係と同じだと思うんじゃないだろうか。
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/03(火) 11:52:41.15 ID:k22jX7FF0
>>46
ヒューズ・カザキリと風斬氷華のパターンは照合できたみたいだけどいわれてみると気になりますね。

子供と大人でも照合すれば同じとわかるとか、双子は似ているけど違うというのはありますけど、
インデックスがどうかはやってみないとわからないですし。
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/03(火) 15:08:07.06 ID:X8xSrqKSO

なんかきめぇのが湧いてるな…
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/03(火) 17:07:47.34 ID:OtLvv1VTo
クロス紹介スレに>>1自らがここ貼って宣伝しゃったからねえ
あそこは眼の肥えた評論家様(笑)の巣だし
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [sage saga]:2011/05/04(水) 21:25:06.36 ID:vcRSgpNi0
>>1
負けずに頑張れ
支援
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/05/10(火) 10:52:20.59 ID:4qrqZp1oo
冬木における物流とかってどうなってんだろ
認識阻害だけならまだ良いかもだけど人払いも掛かっちゃってんじゃ消費されるだけで補充されないだろうし
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/11(水) 00:47:36.79 ID:fzj07lwy0
今日は来る。そんな気がする。たぶん
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/11(水) 17:21:17.42 ID:ZKxlMuzO0
型月の敵キャラと上条さんって相性最悪だと思うんだよね。
戦闘的な意味じゃなくて、あいつらもう1つの概念の域に達してるから説教1つじゃ変わらないと思う。
それに言峰は求道だけど実質趣味に近いから説教のしようがないだろうし
54 :1 ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/12(木) 19:15:37.53 ID:I7BD27GR0
俺、参上。
という訳で一週間以上ぶりに来たぜ
割とすぐ来れたと思ったけど以外二時間経っててちょい驚いた
レスがあまりついてないのは残念だが、これじゃネタが集まらないんだぜ
一応何でも書いていくつもりだから宜しく

じゃあ今日も少し投下する
オリ要素っていうか同人ネタが入るから嫌な人はスルーしてね?
55 :挨拶から誤字…だと……? ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/12(木) 19:16:55.73 ID:I7BD27GR0
―――Chapter1-10 Fate side

遠坂を先頭に、町を歩いている途中に感じた大きな魔力の源を辿って行く。
やはりと言うか、そこでは一対多の戦闘が行われていた。
相手方はこっちの人数を見て面食らっている。
だって、皆ついて行くって聞かなかったし。

それにしてもすごい光景である。
あのお姉さんと神父の格好もそうだが、他三名の少年少女の格好は全然それと釣り合っていない。
何よりあの炎の巨人。魔力の源はこれのようだが、あんな魔術初めて見た。

見たところ、アーチャーはこいつら相手に一人で善戦していたっぽい。…少し悔しい。

「…………」

周りを見ると、遠坂らも同じような反応。
沈黙が少しの間世界を支配していた。そこに、

「…くっ! 魔女狩りの王!」

痺れを切らし、真っ先に反抗したのは赤毛の神父だった。
その言葉に反応し、沈黙を守っていた巨人が轟々と暴れだす。
狙われたのは、さっき魔術を使ったため一人前線に出ていた遠坂。だが、

「えっ、ちょっと―――!?」

「凛―――!」

アーチャーが巨人の一撃を受け止める。
56 :1 ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/12(木) 19:17:51.73 ID:I7BD27GR0
「っち、貴方には最低限の魔力供給しかしてないし、士郎も頼りになるか分からない……。
 ここは私が行くしかないようね。一寸痛い目に遭って貰うわ。アーチャー、詠唱中の守護、お願い」

その言葉にうなづき、あいつが戦闘を再開する。
俺は客には極力手出しはしないと行く途中に言ってある。あくまで守りに徹するのみだ。

「病の風は黒く黒く吹きつける―――」

「って待った! それは手加減できないマジな呪いだぞ!」

遠坂が宝石とかの道具を使わずに放てる魔術の中で最大の一撃だ。
それは痛い目ってレベルじゃないと思う。

「いいのよ!見たところあの巨人、これ位の大魔術じゃないと消え去らない程の代物っぽいしっ!!」

…膨大な魔力の奔流に、ゴクリ、と息を呑む。遠坂が指で鉄砲の形を作り、詠唱を開始する。

「我に一切の慈悲はない。
    逆巻く呪いは不可避の災害。
       腐朽する己が身で深淵に触れよ。
          汝に一切の救いなく。
             千切れた己が耳で狂乱の残響を聞け。
                来たれ黒炎の渦、極光の終焉。
                   我が指開くは冥界の門。
                      覇道の上には何物も不要ず。
                         眼前の悉くに永劫の滅びを!」

十小節に及ぶ詠唱が終わる。チラリと後ろを見ると、イリヤが嫌そうな顔をしていた。

「遠坂流ガンド術最終奥義!! 終末の死風―――――――!!!!!」

轟音と共に、フィンの一撃をも軽く超える瞬間契約(テンカウント)のガンドが放たれた。
想像を絶する呪いの塊が相手を襲う。
ガンドが炎の巨人に激突。
徐々に消えつつありながらも、あれは巨大な呪いを受け止めている…が長くは持たない様子だ。
57 :1 ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/12(木) 19:18:29.88 ID:I7BD27GR0
「上やん! お前の出番だ!!」

巨人が消え去りそうになってきた途端である。
金髪の少年が突然叫んだ。その声に反応して、上やんと呼ばれたツンツン頭の方の少年が前に出る。

「なっ!」

思わず声が出る。巨人のお蔭で威力は下がっているものの、信用は出来ない。
続けて、危ない、と叫ぼうとしたが、爆音が響いた。

「間に合わなかった…!」

煙が晴れていく。そこには少年達が倒れている…筈だった。

「ふぅ…危ねぇ……」

何故ならそこには、右手を前に突き出した少年が無傷で立っていたのだから。

「……何が起きたのかは分からないけど、とりあえずあいつがあっちのジョーカーみたいね」

遠坂が呟く。

「ふむ…。膨大な魔力で相殺した、という訳では無さそうだな」

いきなりアーチャーが後ろに現れる。
こいつはこいつでいつの間にか戦線から離脱したようだ。

「ええ。あいつからは魔力の欠片も感じない。…けど、魔術師じゃないとは言え魔力が全くないってのも変な話ね」

「フ、ならばひっ捕らえて話を聞き出すまで。凛、一つ賭けに出るとしよう」

ピクリ、と遠坂が反応する。難しい顔のあいつに対し、弓兵は余裕の表情を浮かべている。

「……聞かせなさい」

賭けってのは心配だが、あの二人に任せて損は無いだろう。
見ると、なんと炎の巨人が復活していた。
58 :1 ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/12(木) 19:20:28.28 ID:I7BD27GR0
―――Chapter1-11 禁書目録 side

………やばい。
何がやばいって、あの魔術を打ち消してから敵の眼つきが変わった事だ。
次は本気で潰しにかかって来るかもしれない。

「よかったぜい、上やん。牽制になったから、相手も魔術じゃ迂闊に攻撃してこれない筈だ」

土御門の言葉がいつにも増して信用できない。

「それって本当―――がっ!!?」

鳩尾に強烈な痛み、同時に肺の息が全て外に押し出される。
声が出せない。息が吸えない。
苦しい、苦しい、苦しい―――!
逃げる様に、申し訳程度に敵から遠ざかろうとすると、

「はっ!」

ガン、という大きな音が響く。
誰かが何かで叩かれた音。
その誰かが俺で、何かが硬い棒みたいな物と気づいたのはその少し後だった。

「ぐっ―――は、あ―――!」
59 :>>58ミス ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/12(木) 19:25:26.80 ID:I7BD27GR0
―――Chapter1-11 禁書目録 side

………やばい。
何がやばいって、あの魔術を打ち消してから敵の眼つきが変わった事だ。
次は本気で潰しにかかって来るかもしれない。

「よかったぜい、上やん。牽制になったから、相手も魔術じゃ迂闊に攻撃してこれない筈だ」

土御門の言葉がいつにも増して信用できない。

「それって本当―――がっ!!?」

鳩尾に強烈な痛み、同時に肺の息が全て外に押し出される。
声が出せない。息が吸えない。
苦しい、苦しい、苦しい―――!

土御門め、こんな状況で嘘をつく事もないだろう。
なんとか逃げる為、申し訳程度に敵から遠ざかろうとすると、

「はっ!」

ガン、という大きな音が響く。
誰かが何かで叩かれた音。
その誰かが俺で、何かが硬い棒みたいな物と気づいたのはその少し後だった。

「ぐっ―――は、あ―――!」
60 :>>58ミス ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/12(木) 19:26:26.07 ID:I7BD27GR0
声は出た、けれど言葉を発せる訳じゃない。
視界がぐらんぐらんと廻る。
俺が廻っているのか、それとも世界が廻っているのか。そんな判断もつかない。
あれ、おかしいな。頭を叩かれるなんて、何度も経験したはずなのに。

「上やん!!」「とうま!!」

誰かの声が響く。
懐かしい。何故?何度も会ってたじゃないか。
……駄目だな。どうやら頭も回っていないようだ。

「あ……え……?」

不思議と痛みは無い。
世界が廻って、嫌みたいに眩しくて、愛おしかった。
一瞬の筈なのに、何分にも何十分にも思える、そんな永遠。

薄れていく意識。
それに対して思考は段々クリアになっていく。

「君達の負けだ。…少しの間眠っていろ」

―――――ああ、俺は、俺たちは、負けたのか。

なら、起きても無駄。
少し、少しだけならいいだろう。最近色々あったし、眠ろうか―――。
61 :1 ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/12(木) 19:27:19.16 ID:I7BD27GR0
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―――Interlude in

上条当麻を下された土御門達には、もう勝ち目らしいものすら無かった。
最終手段だが、あとは一つしかこの場を逃れる策は無い。

「分かった、俺達の負けだ。だから、ここは退いてくれないか。再び襲うなんて事は勿論しない」

「断る。この世界は我々の世界ではない事はそちらも知っているだろう。こちらには君達から情報を聞き出す権利がある。
 その男を引きずって行ってでも、な」

(交渉は決裂、か)

どうしたものか、と土御門が思っていると、神裂火織がいつの間にか何処からか戻ってきた。
彼女がその脇に抱えているのは、

「とうま!!」

意識を失っている上条当麻だった。

「そっちが退かないのならば、私達が退かせて貰います」

「まぁそういうこった。一人が戦闘不能なのに、わざわざ敵地に乗り込んでまで話をする程馬鹿じゃない。
 日を改めて話をしよう。場所や時間はこっちが指定する」
62 :1 ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/12(木) 19:28:32.69 ID:I7BD27GR0
さっきより強い口調で土御門が話すと、弓兵の表情は呆れを通り越して笑いに変わった。

「…何が可笑しいんだい、アーチャーとやら」

苛立ちを隠そうともせずステイルが言う。隣では、魔女狩りの王が今にも襲いかかろうとしている。

「フッ、もしかして君達はこれを交渉か何かだと思っているのか?
 だとしたらそれは全くの間違いだよ。これは、闘いの勝者が敗者に下す、命令だ」

明らかな挑発の言葉。それに、

「…っ、この―――!」

「待つんだ、ねーちん!」

「止まりなさい」「ッ!?」

瞬間、空気が凍った。
その言葉は、年端もいかない少女の筈なのに、千年生きた魔女の様に冷淡で、残酷だった。

「イリヤ…?」

イリヤと呼ばれた少女は、静かに神裂に近づいていく。

「貴方達に選択の余地は無いの。こちらの要求に応じる事しか出来ない。
 それとも、此処でミンチになる事を御所望かしら?」

「舐めた口を―――――って、え?」

そこには何も無い、誰も居ない筈なのに。

「そんな…」「嘘…だろ……?」「この、化け物が…!」

今まで感じていた殺気なんて、生温い。
殺す、なんてよく聞く言葉は、何の意味も無い。
ソレは、命の温かみなんて、微塵も感じさせてくれない。

「う…あ、あ……!」
63 :1 ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/12(木) 19:29:38.23 ID:I7BD27GR0
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::::::::::::::::::::::;' ',:::::::::::::::::::::::ヽヽ`':::/  /´ ,r'''¨¨¨ヽ_______   /:::::   ヽ
::::::::::::::::::;' , ', ' ;:::::::::::::::::::::::ヽ`、;!   /  /    `7::::::::::;! i /::  ..::::::.....ヽ __
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::::::::::::::;'      ' ;::::::::::::::::::::丶    !     ...::::::;!   !::. ::::::::::::::::;r‐ 、:::... ヽ
:::::::::::::',  ,' , ,  ', ' ;:::::::::; ' ' ´,'ヽ.._____`ー----‐'  , ' ヽ ', ,':::::::;/    !::   !
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:::::::; ' ,...'::::::::::::::;::; ' ' ;:::',  ';::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/′    ヽ::ヽ、     ヽ  `ヽ、

『死』。
それを司るかの様な、余りにも巨大過ぎる象徴が、そこに居た。

―――Interlude out

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64 :1 ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/12(木) 19:38:05.90 ID:I7BD27GR0
今日の分は終了。

AAはいいね。AAはSSを助けてくれる。2chの生み出した文化の極みだよ。
バーサーカーの恐怖なんて俺の文才じゃ表現できそうにないし、こっちのほうが眼に見えて分かり易いし。
まぁこうやって色々試してるけど、駄目だったら言ってくれ。

今予定確認して来た所、次の投下は休みの日になると思われ。
ネタは絶賛募集中、やって欲しい話があったらどしどしレス頼む。
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/13(金) 21:39:02.18 ID:QKgK6O870
ネタ……

パワードスーツなしで、HsSSV-01「ドラゴンライダー」を扱うライダー
何かの交換条件として渡すということならできるかな。
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/14(土) 09:49:13.54 ID:gNQVp32h0
ネタ募集なんかしたら物語がぐちゃぐちゃになるんじゃないか?
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/05/14(土) 10:29:27.25 ID:Kf8NW87zo
やって欲しい話とか言ってもどんな方向性なのかわからんからなぁ
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/05/14(土) 14:56:42.35 ID:uKz/ZdF+o
もう全部>>1が思いつく通りにしちゃえよ

思いつかなかったらギャグとばしーの、シリアルにしちゃうとかさ
69 :1 ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/24(火) 17:25:44.14 ID:KgWrSng60
えー、この度残念な報告があります
掲示板という形では更新に斑があり過ぎ、遅れると迷惑を掛ける場合があるので投稿を止めます
そのため他サイトで連載させていただく事に決めました

タイトルはそのままで、これまでと同じ不定期更新になります
勝手な判断で決定してしまい申し訳ありません

深夜にHTML化依頼出します
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/24(火) 21:57:37.76 ID:B1Hx6mRIO
できればそこのurlを教えて貰えないだろうか
71 :1 ◆TyXhq8/md2 [sage saga]:2011/05/24(火) 22:14:40.47 ID:KgWrSng60
直リンは避けたいので
「小説家になろう」内の「にじファン」というサイトです

お手数お掛けして申し訳ありません
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/28(土) 02:19:58.11 ID:gc5jIbZO0
http://ncode.syosetu.com/n5329t/

ここで>>1がやってるよ
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