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魔王「わたしが世界を」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(石川県) :2011/05/03(火) 00:56:48.08 ID:XFAk4YGUo
少女「ふぁーあ」

男「おきたか」

少女「うん、おはよ」

男「野宿もなれたかよ」

少女「わりかし」

男「それにしても」

男「アイツはどこにいるんだろうな」
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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714054765/

渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714052788/

二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714049241/

佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(石川県) :2011/05/03(火) 01:00:26.29 ID:XFAk4YGUo
少女「さあね」

少女「でも魔王の『凶暴性』を継いでるから、騒ぎをすぐおこす」

少女「大きな騒ぎがおこったその周辺にいるはずだよ」

男「ああ…」

男「…」

少女「責任を感じなくてもいいよ」
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(石川県) :2011/05/03(火) 01:03:20.54 ID:XFAk4YGUo
少女「貴方があんなことしなくても結局魔王は誕生し世界は荒らされる運命だった」

男「でも」

男「魔王の『凶暴性』を継いでるアイツは『凶暴性』だけで魔王ほどの力はない」

男「しかも魔王のように部下を従え一つのところに留まらない」

男「本能に従い世界を旅して暴れるから、勇者も中々遭遇できないでいるらしい」

男「厄介だ」
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(石川県) :2011/05/03(火) 01:04:34.49 ID:XFAk4YGUo
少女「でもアイツを追って倒そうとしているのは勇者だけじゃない」

男「・・・」

少女「貴方もでしょ」

少女「魔王の『力』を継いだ、貴方も」

男「…」
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/03(火) 01:06:51.57 ID:nbZL7Vhxo
ほうほう
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(石川県) :2011/05/03(火) 01:07:09.92 ID:XFAk4YGUo
男「ああ」

男「こうなっちまったのは俺のせいだ」

少女「だから貴方があんなことしなくても…」

男「だとしても、俺には責任とアイツを止める義務がある」

男「俺は神様すら予想外の状況をつくりだした馬鹿だ」
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(石川県) :2011/05/03(火) 01:09:52.44 ID:XFAk4YGUo
少女「そんなことないよ」

少女「世界中のみんなが」

少女「勇者が、王様が、神様が」

少女「貴方を厄介者扱いしているとしても」

少女「わたしは、貴方に感謝しているよ」

男「…」

少女「貴方が儀式を乱してくれたおかげで、私は魔王にならなくてすんだんだから」

男「…」

少女「死ななくてすんだんだから」
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(石川県) :2011/05/03(火) 01:12:33.99 ID:XFAk4YGUo
男(……そうだ)

男(俺は元々はただの平民)

男(でもある日、この少女にあった)

男(それは、いつものように畑仕事を終えて帰っていた時に)

男(その時は思いもよらなかった)

男(コイツが、魔王の素質を持った継承者候補だったなんて)
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(石川県) :2011/05/03(火) 01:19:30.63 ID:XFAk4YGUo
少女「だから笑って笑って!」ニコッ

男「…」

男「ああ…」ニ…

男(馬鹿か俺は)

男(コイツに魔王にならなかったから死ななくて済んだ、なんて情けない言葉言わせちまった)

男(少女だって魔王候補だったんだ…覚悟ってのもあるだろうし、例えそう思っていてもその言葉は口に出してはいけない禁句だ)

男「!」パシン

男「気合いれた!もうクヨクヨしない」

少女「うん!」
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(石川県) :2011/05/03(火) 01:20:52.21 ID:XFAk4YGUo
ガサッ

男「!」

少女「あ」

魔物「グルグルルル…」

男「チッ!」ブゥゥゥン…

少女「待って」

男「?」
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(石川県) :2011/05/03(火) 01:23:30.77 ID:XFAk4YGUo
少女「タイガーだね」

少女「乗り物にできそうだよ」

男「そうか」

少女「わたしが手懐ける」

男「気をつけろ」

タイガー「ガルルルルル…」

少女「…」スッ

タイガー「グルグル…!」ビク

タイガー「…」

少女「おすわり」

タイガー「」ペタ

男「…」
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(石川県) :2011/05/03(火) 01:26:20.33 ID:XFAk4YGUo
少女「いいこいいこ」ナデナデ

タイガー「クーン」

男(魔物を犬や猫のように手懐ける)

男(さすが魔王継承候補…いや、魔王になるはずだった少女)

少女「アハハ」ペロペロ

タイガー「…」
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(石川県) :2011/05/03(火) 01:33:48.95 ID:XFAk4YGUo
男(アイツは)

男(魔王として必要な…)

男(魔物たちから慕われ、尊敬され、そして畏怖される素質がある)

少女「アハハ」

男(他の候補者達と比べて、ズバ抜けていた)

男(だから次代の魔王に選ばれた)
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(石川県) :2011/05/03(火) 01:37:53.26 ID:XFAk4YGUo
魔王というのは生まれた時から、魔王としての絶対的な『力』や『凶暴性』をもっているわけではない
それらは先代から継承される

これは魔王の力や質を劣化させないための策
稀に現れる天性の力より安定した力を魔物は選んだ

だが『力』と『凶暴性』以外はどうにもならなかった
よって現在の魔王が死ぬ時期に存命している人物で、魔王として必要な素質を一番備えている者を選び魔王を継がせることにした
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(石川県) :2011/05/03(火) 01:40:09.34 ID:XFAk4YGUo
少女『私は"それだけ"だったけど』

少女『それがズバ抜けすぎていた』

少女『安定を好む魔物たちが突出した力を選んでしまうくらいに』


少女『私に足りないものは、部下がカバーしてくれるし』

少女『私はもう、魔王になるしかないの』

男『そんな』
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(石川県) :2011/05/03(火) 01:42:46.31 ID:XFAk4YGUo
いったんここまで

こんな感じです
突っ込みどころある作品になりそうですが、冷たい目で見ててください

更新は不定期でスローペースになります

ではまた
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/03(火) 01:43:49.18 ID:nbZL7Vhxo

今後に期待
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/03(火) 05:39:46.53 ID:jVI0DwQe0
勇者魔王系なら支援せざるを得ない。

書いちゃいなよっ!!
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/03(火) 08:53:41.22 ID:iAo7cNKDO
期待
20 : ◆zdnjVeqOAQ [saga]:2011/05/03(火) 14:32:00.60 ID:XFAk4YGUo
レス支援ありがとうございます

GW終わったらパソコン使えない環境になるんで携帯からの投下になります
だから分かるようにコテつけときます
21 : ◆zdnjVeqOAQ [saga]:2011/05/03(火) 14:32:29.83 ID:XFAk4YGUo
少女「男?」

男「」ハッ

少女「ぼっとしてた」

男「悪い悪い」

少女「またなにか悩んでたの?」

男「いや違うさ、そのタイガーをどうしようかと」

タイガー「」

少女「荷物運びとかにしようよ」

男「そうだな」
22 : ◆zdnjVeqOAQ [saga]:2011/05/03(火) 14:37:31.26 ID:XFAk4YGUo
男「じゃ出発するぞ」

少女「うん」

男「北の町へ」

男「最近その町で大量の人が攫われ、殺されるということがあった」

男「でもそれが本当にアイツなのか?」

少女「噂をきく限り、間違いないよ」

少女「暴れるだけで細かな作戦とかを立てない」

少女「ただ、圧倒的な凶暴性を持つ犯人」
23 : ◆zdnjVeqOAQ [saga]:2011/05/03(火) 14:41:45.04 ID:XFAk4YGUo
男「うーん、だけどその事件があったのは二日前」

男「とっくに別の所に行っちまったんじゃないかな?」

少女「多分」

男「だろう、後手後手だ」

男「やっぱり配下の人達に協力してもらった方がよかったんじゃないか」

少女「無理だよ」

男「なんで?この旅にでる前に協力してくれそうな魔物がいたじゃん、お前断ってたけど」
24 : ◆zdnjVeqOAQ [saga]:2011/05/03(火) 14:47:38.09 ID:XFAk4YGUo
少女「だから無理だから断ったの」

少女「魔物達は今、この私たちの旅に協力するかしないかで割れている」

少女「協力派は、支援をして一刻も早く継承される『力』と『凶暴性』を回収するという考え」

少女「そして非協力派は…」

男「…」

男「儀式を乱した男になど協力できない、ってか」
25 : ◆zdnjVeqOAQ [saga]:2011/05/03(火) 14:50:34.55 ID:XFAk4YGUo
少女「ごめんね」

男「なんでお前が謝るんだよ、もっともの事だ」

少女「ううん、本当は協力してくれるといった魔物に手伝ってもらう事はできたの」

少女「でも無理に協力させたらその魔物は非協力派の者に暗殺されるかもしれなかった」

少女「それが嫌だったから、この先の見えない方法を選んだの」

少女「だからごめんなさい」

男「…フゥ」
26 : ◆zdnjVeqOAQ [saga]:2011/05/03(火) 14:52:22.78 ID:XFAk4YGUo
男「だから、いいんだって」

少女「…」

男「だからしょげるな、笑えよ」

少女「……うん」ニコ

男「…」

男(やっぱ、魔王にしては優しすぎる)

男(でもそんな優しさも『凶暴性』を継承してしまったら、塗りつぶされちまうだろう)

男(だから俺は、邪魔したんだ)
27 : ◆zdnjVeqOAQ [saga]:2011/05/03(火) 14:53:38.52 ID:XFAk4YGUo
男「いこうぜ」

少女「うん、タイガー!」

タイガー「ガオッ!」タタッ

少女「て!タイガーはやすぎるよ、私達にあわせて歩きなさーい!!」

タイガー「きゅーん」スタスタ

男「はは」
28 : ◆zdnjVeqOAQ [saga]:2011/05/03(火) 14:55:49.15 ID:XFAk4YGUo
北東の町

人「はー、今日も一日がんばるべ」

人「……ん?」

人「なんだ、アレ」

ライオン「ガルァアアアアアアアアアア……」

人「! まっ、魔物!?」

人「マズイべ!」
29 : ◆zdnjVeqOAQ [saga]:2011/05/03(火) 14:57:01.82 ID:XFAk4YGUo
ライオン「アアアアアアァァァァァァァ………・・・」

人「?」

ライオン「」バタン

人「……は?」

ライオン「」

人「死んだか?」

人「……アイツがやったのか」

???「」
30 : ◆zdnjVeqOAQ [saga]:2011/05/03(火) 14:58:27.72 ID:XFAk4YGUo
人「おーい、アンタがその魔物を倒したのかい?」

???「」

???「ヒャハ」

人「?」

???「ギャハは…」

???「ギャハハハハハハハハハハハハハ!!!」

人「なんだぁ?いきなり」
31 : ◆zdnjVeqOAQ [saga]:2011/05/03(火) 15:00:14.70 ID:XFAk4YGUo
ボゴォ!!

???「ギャハハハハハハハハハハハ!!」 ボゴンボガン

ドズーン! ガーン!!

人「なんだー!?」

人「アイツもやばいべ!早くみんなを…」

???「ウヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」 ビュン

人「!」

ドシュ!
32 : ◆zdnjVeqOAQ [saga]:2011/05/03(火) 15:02:09.59 ID:XFAk4YGUo
人「あが…」 ッブシュ…

???「アハ…」

???「チだ、チだ、マッカなチだ」

ボトボト…

???「ニンゲンはミニクイなぁ…」

???「でもチはサイコウだああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

人B「キャーッ!」
33 : ◆zdnjVeqOAQ [saga]:2011/05/03(火) 15:04:20.36 ID:XFAk4YGUo
???「アハ、ハハハ」

人B「ひっ…」

???「オマエはどのくらいのチがあるの?」

???「死ネェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!」

ドォーーーーーーーーーーン!!

パラパラ…

???「アァ」

パラパラ…

???「ショウゲキでチまでジョウハツしちゃったよ」
34 : ◆zdnjVeqOAQ [saga]:2011/05/03(火) 15:05:32.55 ID:XFAk4YGUo
???「ショーガネーヤ!だったらチが残る程度にこのムラゼンメツさせるわ!!」

???「アハハハ!!!」 ドーン!!

バゴーーーーン!

ズッガアアアアアアアアアン!!!

???「アハハハハハ!!!」
35 : ◆zdnjVeqOAQ [saga]:2011/05/03(火) 15:11:19.94 ID:XFAk4YGUo
〜魔王の城〜

竜王「……ム」

竜王「また暴れだしたか、『凶暴性』よ」

竜王「く…」

竜王「勝手に動くものなら反対派が黙っておらず」

竜王「魔王候補のあの方にお供、という大義名分もあの方自身によって断られた」

竜王「何も出来ぬというのは歯がゆいのう」
36 : ◆zdnjVeqOAQ [saga]:2011/05/03(火) 15:14:13.73 ID:XFAk4YGUo
竜王「はぁ…」

竜王「この私が、こんなことで悩む日が来るとは」

竜王「全てあの小僧のせいだ」

竜王「しかし、あの男は魔王様の『力』を受け継いでいる」

竜王「そして、戦闘経験はほぼ皆無だが、あの継承儀式時の警備を潜り抜けた天性の何かをもっている」

竜王「迂闊に手は出せん」
37 : ◆zdnjVeqOAQ [saga]:2011/05/03(火) 15:20:38.31 ID:XFAk4YGUo
竜王「ハァ…」

鳥王「悩んでますなぁ」

竜王「鳥王か」

鳥王「まぁ自分も協力派ですから、私情と仕事の板挟みに苦しむのは分かります」

竜王「……フゥ」

竜王「また…『凶暴性』を継いでしまった息子が暴れだした」

鳥王「そうですか」
38 : ◆zdnjVeqOAQ [saga]:2011/05/03(火) 15:26:11.98 ID:XFAk4YGUo
竜王「なんとかして魔王候補様にその位置情報をお伝えしたいのだが…」

鳥王「反対派がうるさいし、魔王候補様自身がお気を遣われ拒んでいるんですよねぇ」

竜王「ハァ」

鳥王「だったら私めのの部下を使いましょう」

竜王「……いいのか」

鳥王「ええ、我等『鳥』は古来より伝達、諜報の分野に長けている」

鳥王「そして、自然と隠密行動は得意とします」

鳥王「私情と仕事も分けられない、暴力だけの荒くれ者達に感づかれるようなヘマはしませんよ」
39 : ◆zdnjVeqOAQ [saga]:2011/05/03(火) 15:28:29.15 ID:XFAk4YGUo
竜王「いいのだな」

鳥王「ハハ、魔王候補様に感化されましたか?」

竜王「…」

鳥王「すいません、冗談が過ぎました」

鳥王「ヘマをすれば責任は私にきます、貴方には行きませんよ」

竜王「そうか…」

鳥王「貴方こそ良いのですね?」

竜王「…」
40 : ◆zdnjVeqOAQ [saga]:2011/05/03(火) 15:30:52.39 ID:XFAk4YGUo
鳥王「貴方の息子様が受け継いでいる『凶暴性』、それを取り除くには…」

鳥王「殺す、しかないのですよ」

竜王「……愚問だな」

竜王「貴様こそ、感化されたか?」

鳥王「ハハハ」

鳥王「では」

竜王「ウム」


竜王「…」
41 : ◆zdnjVeqOAQ [saga]:2011/05/03(火) 15:33:00.14 ID:XFAk4YGUo
〜山道〜

男「…」

少女「……ん?」

男「? なんだ?」

少女「鳥だ」

男「鳥?そりゃあ山道だからな」

少女「違う」

鳥兵士「…」 ヒュヒュヒュン

鳥兵士「」 ポト

男「!」

少女「よいしょ」パサ
42 : ◆zdnjVeqOAQ [saga]:2011/05/03(火) 15:34:30.03 ID:XFAk4YGUo
少女「手紙…」

男「……魔物達からか」

少女「多分」

少女「!」

男「どうした…」

男「!」
43 : ◆zdnjVeqOAQ [saga]:2011/05/03(火) 15:38:17.16 ID:XFAk4YGUo
少女「いますぐ北東の町へ方向転換」

男「ああ、そして東の町へ進む道を塞ぐように進むぞ」


---
魔王候補様

ヤツは、現在北東の町に出現しています
間にあわぬのなら、東の町へ

ヤツの次のターゲットは東の町と推測されます

              鳥王
------

少女「……ばか」

男「ここは素直に甘えようぜ」

男「この密告がバレる前に、アイツを片付けるんだ」

少女「…」

少女「うん」
44 : ◆zdnjVeqOAQ [saga]:2011/05/03(火) 15:41:14.06 ID:XFAk4YGUo
〜北東の町〜

ヒュウウウウウゥゥゥゥゥゥ…

ガラ…ガララ…

竜王子「……チがキレイだ」

竜王子「ツギは」

竜王子「アッチ…イコウ…」
45 : ◆zdnjVeqOAQ [saga]:2011/05/03(火) 15:44:58.50 ID:XFAk4YGUo
時間がきたのでここまでです…

GW中は今回が最後と思うのですが、時間があったら明日もくるかもしれません
では、また
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/03(火) 16:09:43.46 ID:iAo7cNKDO
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/03(火) 20:49:31.72 ID:ma1nMtS+o
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/03(火) 20:57:59.24 ID:ma1nMtS+o
しえ
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga sage]:2011/05/04(水) 00:03:05.72 ID:TCjY53BL0
まってゆ
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga sage]:2011/05/04(水) 00:09:37.52 ID:TCjY53BL0
まってゆ
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2011/05/04(水) 01:26:51.82 ID:4OT30yTyo
期待支援
52 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/05/08(日) 01:31:45.97 ID:Cl1C/5KSO
支援どうもです
遅い時間から投下します
53 : ◆5D6zjjshNc :2011/05/08(日) 01:32:54.17 ID:Cl1C/5KSO
あれコテが違う
こうかな
54 : ◆V4RCXYKWrw :2011/05/08(日) 01:33:29.82 ID:Cl1C/5KSO
てす
55 : ◆PvMD0kdv3w :2011/05/08(日) 01:34:23.96 ID:Cl1C/5KSO
てすと
56 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 01:36:31.06 ID:Cl1C/5KSO
思い出せないのでこれでいきます
57 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 01:37:52.61 ID:Cl1C/5KSO
タタタタ…

男「はあっ、はあっ」

少女「はっ、はぁっ、はああっ、はああ…」

男「…」

男「おい」

少女「ふぇ?な、なに」

男「少し休憩するか」

少女「……はぁ、そんな暇なんか…はぁ、ないよ、ふぅ…急ごう」

男「…」
58 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 01:38:53.34 ID:Cl1C/5KSO
男「だったら」

男「タイガーにでも乗れよ」

少女「え?」

男「もう限界なのがバレバレなんだよ、このまま走らせるのは心苦しいわ」

少女「だ、だいじょうぶ!」フンッ

男「なに意地はってんだ」トンッ

少女「うひゃ」トスッ

少女「ひえ」パスッ
59 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 01:39:47.01 ID:Cl1C/5KSO
少女「あ…」ガクガク

男「ホラ、膝がガクガクしてんじゃねえか」

少女「……う」

男「遠慮せず乗ってろ、俺に気をつかわんでくれよ」

男「お前は」

男「もっと甘えていいんだよ」

少女「……」

少女「……ありがとう」

男「…」
60 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 01:40:55.39 ID:Cl1C/5KSO
少女「タイガー、乗せて」

タイガー「ガオ」

少女「しゅっぱーつ」

タイガー「ガアアアアア!」ダダダダダ

男「うわ!はやっ!!」

少女「コラ、タイガー!男に合わせなさい」

男「…」

男「ふんっ」

少女「!!」
61 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 01:41:46.49 ID:Cl1C/5KSO
タイガー「ガァッ!!」

ギュン

男「へん」

少女「追い抜かれちゃった」

男「遅いぞ、少女、タイガー」

少女「むー!」

少女「タイガー!本気で走って!男を抜いちゃえ!!」

タイガー「ガアアアアアアアアアアアアアア!!」

ズドドドドドドドド…

男「ふん」ヒュン
62 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 01:42:23.89 ID:Cl1C/5KSO
タイガー「ヘァッ、ヘァッ」

男「全然追いつかないぞー」

少女「がんばれ、タイガー」

男「ハハ」

少女「あはははっ!」

男「…」

男(久し振りだな)

少女「がんばれタイガー」

男(少女の、あんな笑顔は)
63 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 01:42:59.10 ID:Cl1C/5KSO


男「大分、北東の町に近付いたな」

少女「でもそこが目的じゃないからね」

男「分かってるさ」

タイガー「……」

男「タイガー疲れてるな」

少女「当たり前だよ、全力疾走を三時間も続けたんだから」

少女「おとなげないんだから」

男「悪い悪い」

男(そうだな)

男(その気になれば、タイガー以上の脚力も、ゴーレム以上の腕力も出せる)

男(勇者と互角に渡り合える力がある)
64 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 01:43:27.63 ID:Cl1C/5KSO
男「……もうすぐだな」

少女「うん」

男「…」

少女「…」

―――いいの?

少女(なんて言えないよ)

少女(男も覚悟があるからこそ、こんなことをしているんだから)

少女(うん)

少女(私のせいでこんな覚悟をしなくちゃいけなくなった)
65 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 01:44:28.81 ID:Cl1C/5KSO
少女(もしも、もっと強く覚悟ができていれば)

少女(もっと、男に悟られないくらい強く覚悟できていれば)

少女(覚悟が弱かったばかりに…)

少女(だから今度こそ、男に悟られないくらい、強くこの決意を…)

少女「」グ

男「…」
66 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 01:45:19.12 ID:Cl1C/5KSO
魔王が代々受け継ぐ『力』、『凶暴性』
それを解除する方法は『死』

それ以外はない

魔王となれば継承魔法により死せずとも解除できるが
男と竜王子は片割れしか受け継いでいないため、完全な魔王ではない

だから、死しかない
67 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 01:47:14.69 ID:Cl1C/5KSO
男(構わない)

男(たくさんの人に迷惑をかけた)

男(だからこれでいい)

男(……まずは『凶暴性』を引き継いだ竜王子を止めなければ)

男(でも)

男(それは…自分勝手なことなんだろうな)
68 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 01:50:54.86 ID:Cl1C/5KSO
鳥王「手配しておきましたよ」

竜王「悪いな」

竜王「…」

竜王「……貴様、何かしたな」

鳥王「やはり勘付かれてしまいましたか」

竜王「……まさか…」

鳥王「我が軍の最強の兵を、竜王子様に差し向けておきました」
69 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 01:51:45.08 ID:Cl1C/5KSO
竜王子「ア」

竜王子「アハハハ」

竜王子「?」

魔物「キキ…」ブルブル

ドーン

パラパラ

竜王子「ギャは」
70 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 01:52:24.41 ID:Cl1C/5KSO
竜王子「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」

竜王子「ススム」

竜王子「ヨクボウのままにぃいいいい」

ガサッ

竜王子「アハ」

ドーン

竜王子「ジャマだなあ」

ズッドァォォォォォォォォン!!

グゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
71 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 01:53:09.85 ID:Cl1C/5KSO
竜王子「キレイになった」

???「さすがですね」

竜王子「?」

???「竜王子様」

竜王子「ダレ」

???「覚えてらっしゃらないですか」

????「鳥王子ですよ」

鳥王子「かつて貴方と共に辛い訓練の日々をおくった同士であり、友であります」

竜王子「シラネ」

鳥王子「そんなはずはありません」
72 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 01:54:07.31 ID:Cl1C/5KSO
鳥王子「理性は無くしても、記憶は失われないはずですから」

竜王子「シネ」ビュゴッ

鳥王子「」ギュン

竜王子「?」

鳥王子「……」

竜王子「今のをヨケルとはやるね」

鳥王子「たいしたことではありません」

鳥王子「ご存じの通り、貴方は魔王様の『凶暴性』しか受け継いではいない」

鳥王子「戦闘能力はほぼ、私の知る貴方だ」
73 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 01:55:13.15 ID:Cl1C/5KSO
竜王子「チッ」

竜王子「ていうかナニをしにキタ」

鳥王子「分かりませんか」

竜王子「ウン」

鳥王子「貴方を殺しに」

鳥王子「今の貴方が魔王軍にどれほどの迷惑をかけているか」

竜王子「あ?」

竜王子「竜の劣化種の鳥が勝てるとでも?」

鳥王子「確かに」
74 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 01:55:45.90 ID:Cl1C/5KSO
鳥王子「竜と鳥とでは越えられない壁が存在します」

鳥王子「そうやって鳥は竜に虐げられてきた歴史があります」

鳥王子「貴方の御先祖様が和解を持ち掛けてくれなければ、いつまでも主と従の関係でしたでしょう」

鳥王子「ですから私と貴方が闘っても私が勝てる確率などゼロでしょう」

竜王子「ハイハイ、話が長い」ゴッ!

ドーン

竜王子「…」

鳥王子「だからこそ、なりふり構わずやらせていただきます」
75 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 01:56:23.85 ID:Cl1C/5KSO
竜王子「オレのコウゲキをヨケルならともかく、ウケキッタ?」

竜王子「ナニをした」

鳥王子「…」


〜魔王の城〜

鳥王「スライムしかできないスライム独自の技、『合体』をさせました」

竜王「そういえば、スライムでなくとも合体ができる魔法が開発されていたな」

鳥王「ええ」

鳥王「鳥兵士一万体、鳥騎士千体、鳥隊長百体を鳥王子に合体させた」

竜王「そんなにしても負荷に耐えられず死ぬだろう」
76 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 01:57:08.17 ID:Cl1C/5KSO
鳥王子「これで貴方とも渡り合える!」

竜王子「……」

竜王子「カナシイねぇ」

鳥王子「?」

竜王子「ツライクンレンのヒビをトモにノリコエタトモよ」

竜王子「キミはオレのナニをミテイタ?」

鳥王子「!!」

グシャア

鳥王子「ぐはぁっ!」

竜王子「あは」
77 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 01:57:52.27 ID:Cl1C/5KSO
鳥王子「うが…」

ヒューン

鳥王子(馬鹿な…この強靱な羽がいとも簡単に消し飛ばされた…しかも、避けることすらかなわなかった…)

ドサッ

竜王子「このテイドで」

竜王子「ゴカクになったつもりとは…カショウヒョウカされていたモンだ」

鳥王子「……ぐ」

鳥王子(さっきの一撃で……もう…まさか…)

竜王子「」ザッ

鳥王子「……」
78 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 01:58:42.32 ID:Cl1C/5KSO
竜王子「…」

竜王子「悪いが、死んでくれ」

鳥王子「!!」

鳥王子「その……普通の口調…は」

鳥王子「貴方まさか…」

竜王子「……俺の我が儘のために、ここで止められるわけにはいかないんだよ」

鳥王子「……」

ドオオオオーン

竜王子「……ニヒィ」
79 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 02:02:00.28 ID:Cl1C/5KSO
少女「!」

男「…」

少女「男…」

男「ああ、俺も感じたよ」

少女「じゃあ…」

少女「……」

男「……いくか」

少女「…」

少女「うん…」
80 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 02:02:26.43 ID:Cl1C/5KSO
ドーン

ゴオオオン

ズッガァアン

竜王子「ギャハハハハハ」

竜王子「!」ピク

竜王子「……オマエラか…」

男「…」

少女「見つけたよ、竜王子」
81 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 02:03:10.51 ID:Cl1C/5KSO
男「……止めにきた」

ドーン

竜王子「」

シュウウウウウウ……

竜王子「……チッ」

男「やめとけ」

男「いくら竜王子としての力があるとはいえ、魔王の『力』を受け継いでいる俺には…」

ズドドドォン

竜王子「 黙れ クソ野郎」

少女「!」

少女「その喋り方」
82 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 02:03:46.21 ID:Cl1C/5KSO
男「ある程度、自我が戻っている…?」

竜王子「誰のせいで俺がこんなになったと思ってる」

男「……」

竜王子「お前があんなことしたから、俺はこんなんになったんだよ!正義面してんじゃねえ!!」

竜王子「これを解除するには死しかねぇが…」

竜王子「生きたまま解除できる方法があっても死の末路が待ってる…なんせ魔王軍に迷惑かけたからな!!」

少女「…」

竜王子「だったらこのまま暴れて生きてやる」

竜王子「ついでにお前らをコロシテやる」
83 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 02:04:51.82 ID:Cl1C/5KSO
男「!」

竜王子「ギャハハハハハハハハ!」ゴァアアアッ!!

男「く」キィン

少女「ひゃ!」

男「そうか」

少女(どうりで魔王の『凶暴性』とは思えない狂気が混じっているように見えるはず)

少女(あれは竜王子自身の狂気…)
84 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 02:05:17.74 ID:Cl1C/5KSO
竜王子「シネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネ」

ズドォッ!  ゴォォオオオッ!  ガアアアアアアアアン!!

男「シールド」キィン

男「…」

竜王子「……ムキズ」ギリッ…

竜王子「ホントウにハラがタツなあああああああ」

ゴァアアアアアアアアアアアアアアアァァァン!!

少女「……男」
85 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 02:06:04.21 ID:Cl1C/5KSO
シュウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥ……

竜王子「これでドウだよ…」

ウゥゥゥゥゥゥゥ…………

男「……」

竜王子「……グ」

竜王子「……ナメてんじゃねえよ!ナメやがって!!」

竜王子「……ホントならオレをイクラでもイツでもコロセルのに!」

竜王子「ナンデつったったままだ、ナンデコロサナイ!?ソレがモクテキだろ!!」

男「……」

少女(迷っているんだね)

少女(竜王子も自分の被害者と思って)
86 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 02:06:35.89 ID:Cl1C/5KSO
少女「……男」

男「……分かってる」

竜王子「このギゼンシャがああああああ」ゴッ

男「うああああああああああ!」ズドォッ!!

竜王子「!!」

ゴアアッ

竜王子「オシキラレ…」

ズドーン!

男「終わった」
87 : ◆7HPeWTM.wM :2011/05/08(日) 02:15:04.56 ID:Cl1C/5KSO
ここまでで一区切りします

読んでくれる方々はありがとうございましたー
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 02:18:48.36 ID:a9AyVAwKo
乙乙
89 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 16:11:26.62 ID:Cl1C/5KSO
男「ふう…」

少女「……ん」

ギャウウウン

男「! あれは!!」

少女「あの黒いオーラ…」

少女「間違いないね、魔王の『凶暴性』!」

少女「……ぬううん」

男「封印の巻き物…」

ギャウウウン………

バシュン

少女「…」

少女「……うん、封印完了」

男「おお」

少女「……だから…」

少女「これでこの旅もおしまい」
90 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 16:12:09.61 ID:Cl1C/5KSO
少女「そして…」

男「ああ」

男「俺を殺して、全てをおしまいにしてくれ」

少女「うん」

男「」

少女「……本当に、やるよ?」

男「ああ、思う存分やってくれ」

少女「」

少女「……」

少女「やっぱり…」

少女「無理だよ」
91 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 16:12:38.50 ID:Cl1C/5KSO
男「え」

少女「魔王候補とはいえ…私は今はただの人間、『力』を受け継いでいる貴方を殺すことは無理…」

男「……」

少女「………だから」

ポタ

少女「だから…」

少女「貴方を、殺す、方法は、一つ…」ポロポロ

少女「魔王軍が……総力をあげて、貴方をなぶり……殺しに、するくらいしか…ない……」ポロポロ

男「……そうだったな」

男「じゃあ、いこうぜ魔王の城へ」

少女「いや…」

男「へ?」
92 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 16:14:00.97 ID:Cl1C/5KSO
少女「いやだよ、やっぱり」

男「魔王になるのがか?」

少女「違う!」

少女「男がそんなことされなきゃいけないなんて!」
男「……少女」

少女「私が…男と会わなければ…弱みなんかみせなければ……」

男「……」

少女「私が男を不幸にした……私は男の疫病神…」

少女「だから私のことなんか構わずに逃げて」

男「……」
93 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 16:15:14.02 ID:Cl1C/5KSO
男「駄目だ」

男「そんなことしたら、少女が辛い道を歩む…」

少女「そんなのいいよ、私は貴方の人生を崩したんだから……」

男「違う」

男「そんなことはない」

少女「?」

男「俺は親を魔物に殺されて独りになってしまった」

男「でも生きるために一人でも、王国に納める農作物を一生懸命耕したりしなくちゃいけなかった」

男「親を魔物に殺されてから、俺の人生はただそれだけ」

男「正直、なんの生きがいもなかった」

男「今、勇者のおかげで世界は魔王に支配されず平和とされているけど…俺にとってこの世界は、地獄にも等しかった」

少女「……」
94 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 16:16:16.10 ID:Cl1C/5KSO
男「でも、お前が来てくれた」

男「お前が、俺が見るこの世界を平和で楽しいものにしてくれた」

少女「……う」

男「ありがとう」ダキッ

少女「……男…」ポロ…

少女「私も…ありがとう」
95 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 16:16:56.51 ID:Cl1C/5KSO
男「…」グ

男「最後のいたちっぺだ」

男「魔王軍を壊滅させて、お前を普通の少女のままにしてやる」

少女「……な!?」

少女「駄目だよ!そんな…」

少女「私はいいからこれ以上は、辛い人生を…歩まないで」

男「」

男「辛くなんかないよ」
96 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 16:17:34.41 ID:Cl1C/5KSO
少女「」

男「」ギュン

少女「…あ」

男「……」ニッ

ビュン

少女「お…」


少女「男ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
97 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 16:19:52.20 ID:Cl1C/5KSO
―――この後

男は一人で魔王軍の六割を壊滅させた

しかし想いは達成されず
魔王の『力』は回収された

その後の展開は、言うまでもない

98 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 16:20:31.16 ID:Cl1C/5KSO
〜魔王の城〜

魔物「魔王様!」

魔物「魔王様!」

魔物「魔王様!」


魔王「……」

竜王「静まれェ、モノども!」

魔王「……」

魔王「皆が知っての通り、我が軍は壊滅的危機に陥っている状況だ」

魔王「そして我がこうして我が城に座するようになり、忌々しき勇者は愚かにもここを目指してきておる」

魔王「危機だ」

魔物「……」ゴク
99 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 16:21:18.47 ID:Cl1C/5KSO
竜王「……」

海王「……」

獣王「……」

魔王「だが!」

魔王「恐るるに足らず!」

魔王「勇者も危機も、我が全て薙払う!!」

魔王「だから貴様等も大人しく、連いてこい!!」

魔王「破壊の限りを尽くすのだあああああああ!!」

魔物「ウオオオオオオオ!」
100 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 16:22:53.76 ID:Cl1C/5KSO
魔物「ワアアアアアアアアア!!」

アアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

アアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

魔王「フフ…」

魔王「竜王、獣王」

竜王「ハッ」

獣王「ハハッ」

魔王「後は任せた」

竜王・獣王「ハハッ!」

魔王「海王は我とこい」

海王「ハッ」

魔王「」スタスタ
101 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 16:24:09.07 ID:Cl1C/5KSO
獣王「……しかし驚きだな」

竜王「何がだ」

獣王「継承前はとてもじゃないが、このように壊滅寸前の我が軍を保たせるようなことはできまいと思っていたが」

竜王「簡単だ、魔王様は今のように、我らを惹きつける何かを人間時代から持っておられた」

獣王「分かっておる、だからこそ、それ以外取り柄がないひ弱な人間だったが、後継者に選んだ」

竜王「口を慎めよ、お前が言う人間らしい思想は、今はもうないのだからな」

竜王「人間時代が気に入らない人物だったとしても、今の魔王様はむしろ…」

獣王「分かっておる!」
102 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 16:25:29.02 ID:Cl1C/5KSO
〜魔王城内〜

海王「…」

海王(これが、あの人間としか思えない少女だった方か…)

魔王「         」

ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア …………

海王「…」ゾクッ

海王(この威圧…反対派だった者達が恥じる程の…)

海王(……歴代最強の魔王、“魔王T世様”となんら遜色ない…)
103 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 16:26:06.76 ID:Cl1C/5KSO
ここで一旦終わります

また夜きます
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) [sage]:2011/05/08(日) 16:45:47.22 ID:G5vK3ueXo
まってる
105 : ◆7HPeWTM.wM :2011/05/08(日) 23:03:31.06 ID:Cl1C/5KSO
魔王「む」

海王「は?」

魔王「シールド」キィン

ドーン!

海王「! な、なにやつ!!」

???「やるな、さすが魔王といった所か」

魔王「……貴様は」

???「魔王がこのような少女とは」

海王「まさか貴様!」

魔王「……勇者か」

勇者「ああ」

勇者「貴様らを倒しにきた」
106 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 23:04:37.25 ID:Cl1C/5KSO
戦士「ハハァーッ!やっとお目にかかれたな!!」

賢者「戦士、魔王の前ですよ、集中なさい」

魔法使い「……ついに、この時が」

海王「……勇者とそのパーティ…か」

魔王「…」

勇者「繰り返すかま本当に、少女なのだな」

賢者「勇者…」

勇者「分かっている」

魔王「」

戦士「んだよ、ナメやがって…さっきからコイツ黙りこくってやがる」

魔法使い「……」
107 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 23:06:02.56 ID:Cl1C/5KSO
海王「く…」

海王(唐突すぎる…侵入される前兆どころか侵入されたことすら…しかも早すぎる)

魔王「…」

海王「ち、何をしている…であえー!であえー!!」

賢者「無駄だ」

海王「なに!」

賢者「全て、片付けた」

魔王「ほう」

海王「なんだと…ッ」

〜魔王の城 広間〜

竜王「」

獣王「」
108 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 23:08:10.57 ID:Cl1C/5KSO
戦士「さすがに強かったがな、長い旅を乗り越えてきた俺らにとってはどうってことねえ!」

魔法使い「頑張った…」

勇者「そうだな」

勇者「だから、お前らを倒す」

海王「……ぐ」ザッ

魔王「よい、海王」

海王「」ゾクッ

勇者「!」

魔法使い「ひ…」

戦士「……な!」

賢者「……!」

ゴ  オ  オ オ  オ オ オ   オ  オオ  オ  オ  オ……………
109 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 23:10:00.87 ID:Cl1C/5KSO
戦士「さすがに強かったがな、長い旅を乗り越えてきた俺らにとってはどうってことねえ!」

魔法使い「頑張った…」

勇者「そうだな」

勇者「だから、お前らを倒す」

海王「……ぐ」ザッ

魔王「よい、海王」

海王「」ゾクッ

勇者「!」

魔法使い「ひ…」

戦士「……な!」

賢者「……!」

ゴ  オ  オ オ  オ オ オ   オ  オオ  オ  オ  オ……………
110 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 23:10:46.19 ID:Cl1C/5KSO
戦士「さすがに強かったがな、長い旅を乗り越えてきた俺らにとってはどうってことねえ!」

魔法使い「頑張った…」

勇者「そうだな」

勇者「だから、お前らを倒す」

海王「……ぐ」ザッ

魔王「よい、海王」

海王「」ゾクッ

勇者「!」

魔法使い「ひ…」

戦士「……な!」

賢者「……!」

ゴ  オ  オ オ  オ オ オ   オ  オオ  オ  オ  オ……………
111 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 23:13:25.32 ID:Cl1C/5KSO
魔王「」

魔王「フ…」

海王(……や、やはりこの方の力は…計り知れない…)

魔王「海王よ」

海王「ハッ!」

魔王「各地に遠征している幹部を呼び戻し、魔界の入口を固めるよう」

海王「ハアッ!」ザッ

戦士「待てよ!行かせるとでも!!」

カ     アッ!!

戦士「!」
112 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 23:15:51.38 ID:Cl1C/5KSO
ジュウウウ…

賢者「…なに」

魔法使い「……なんて魔力…」ガク

魔王「行け、我がこやつらを片付けておく」

戦士「……チィッ、マジでやらなきゃな」

勇者「……」

勇者「これは…」
113 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 23:17:09.61 ID:Cl1C/5KSO
数分後

勇者「…」

魔王「…」

勇者「がはっ…」

ビチャ

ドサッ

戦士「……ぐぁ、勇者!」

賢者「く……早く回復を…」

魔王「フフ」

ドーン

賢者「あぐぁぁ!」ドサッ

魔法使い「賢者様!」

戦士「………ぐ、くそ、マジで強ぇ」

魔王「貴様らでは勝てない」

魔王「我は絶対なのだから」

勇者「……ぐ、なぜ…」

魔王「?」
114 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 23:21:23.54 ID:Cl1C/5KSO
勇者「魔物軍はこんな少女をも利用して魔王を作り上げているのか」

魔王「……」

勇者「許されない、絶対こんな非道なヤツラを野放しにしていてはいけない」

戦士「勇者」

賢者「…………」

魔法使い「はい」

魔王「……無力だな」

戦士「なに!?」

魔法使い「ゆ、勇者様の悪口は、許しませんよ!」

魔王「本当だろう」

魔王「そこの勇者は口だけだ」
115 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 23:23:00.36 ID:Cl1C/5KSO
魔王「勇者といっても人間か」

魔王「我を少女として哀れむ、ただそれだけだ」

勇者「……」

魔王「そういうのは反吐が出るだけだ」

戦士「く……」ギリ

魔王「貴様らのような軟弱な集まりは大人しく王国の周りをコセコセ守っていればよいのだ」

魔法使い「……」ギシ

魔王「……無駄な正義に囚われて、分不相応なことを実行し、死ぬ」

魔王「笑える人生だよ」

勇者「……く」

勇者(無念…)

バーーーーーーン

魔王「……」

魔王「消し飛んだか“三人”…」
116 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 23:25:38.30 ID:Cl1C/5KSO
「……く」

魔王「…」

賢者「か……く」

魔王「シールドを貼って即死は免れたか」

魔王「しかし壁を貫かれ、衝撃が貴様の骨を折り、その骨折は内臓にまで悪影響を及ぼした」

魔王「もはや魔法を使う力もない、助かるまい」

賢者「……ゲホッ」

魔王「」ス…

グシャ
117 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 23:28:37.06 ID:Cl1C/5KSO
魔王「……」

魔王「……」

魔王「蘇生」

パアアアァァァァ…

〜魔王の城 広場〜

竜王「……ぬ」

獣王「……ぐ、はっ!」

ザワザワ…

竜王「…」

竜王「我らは確か、勇者に不覚をとって…」
118 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 23:32:01.03 ID:Cl1C/5KSO

獣王「しかし、こうして蘇生した」

ザワ

ザワザワ

ザワザワザワザワ

竜王「皆、蘇生している」

獣王「……」

獣王「魔王様か」

魔王「…」

119 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 23:40:05.17 ID:Cl1C/5KSO
魔王「皆の勇者はこのような人物だった」

魔王「パーティもそんな勇者を慕い従っていた」

魔王「……あの男と」

魔王「何が違うのか」
120 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 23:46:31.51 ID:Cl1C/5KSO
ここまでです
ありがとうございました
121 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 23:52:33.57 ID:Cl1C/5KSO
竜王(あの勇者パーティは決して弱くはなかった)

竜王(むしろ、我の知る中では最強を誇っていたと思われる)

竜王(そんな奴らを…)

竜王(明らかに、受け継がれた魔王の『力』を超えている)

竜王(これは…)
122 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/08(日) 23:53:21.31 ID:Cl1C/5KSO
ここまでです(今度こそ本当)
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 23:59:20.65 ID:a9AyVAwKo
otuotu
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 00:23:58.30 ID:TU8+BFVfo
>>1乙!

魔王……いろいろ疑問がわくが、とりあえずまだ静観
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 00:24:26.13 ID:TU8+BFVfo
>>1乙!

魔王……いろいろ疑問がわくが、とりあえずまだ静観
126 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 01:15:48.98 ID:PNHJvEHSO
>>124
ある程度ボカして書いていますので色々と見えない所が出てきます
でも本当に書き忘れているだけな時もあるので
気が向いたら遠慮せず突っ込んでください
127 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 01:17:33.30 ID:PNHJvEHSO
魔王「……男よ」

魔王「今貴様はどんな人生を歩んでいる」
128 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 01:18:11.78 ID:PNHJvEHSO
山奥の村


夫「おーい、そっちはできたかー?」

男「はーい」

男「ここ一面に種を植え終わりましたー」

夫「そっかー、じゃあ今日はここらへんにしとくかー」

男「はい」

夫「それにしてもすごいべな、お前」

男「はい?」

夫「オラと同じぐらいの年なのに、畑仕事が結構サマになっとるべ」

夫「とても数ヶ月前まで山で記憶をなくして倒れていたとは思えんわ」
129 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 01:18:45.67 ID:PNHJvEHSO
男「僕も、元々は畑仕事にしていましたみたいですからね、体に染みついてます」

夫「そうだね、この手際良さは城の兵士や貴族には真似できねえだよ」

男「ははっ、あまりそういうこと言わない方がいいですよ」

夫「そうだなー」

男「……」

男(そう…)

男(俺にはここ数年の記憶がない)

男(……小さい頃に親をなくし、ある村で一人畑仕事をしていたごく普通の村人…そうやって生活をしてきた)

男(そこまで)
130 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 01:19:45.00 ID:PNHJvEHSO
男(そこまでしか記憶がない、それ以降の記憶がパッタリとない)

男(気付いたら、彼の家に寝かされていた…)

夫「ハラ減っただなー、嫁はちゃんとメシ作っとるかなー?」

男(山で倒れていたらしい…そこを拾ってくれた)

夫「なあ?今日のメシはなんだろな?」

男「あ、はい…パンでは」

夫「いやー、あの“けちんぼ”のことだ、どうせあの『とてつもなくかったいパン』だべー、あっはっは」

男「あはは、また怒られますよ」

男「…」

男(こんなに貧しいのに拾って居候させてくれている…)
131 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 01:21:20.53 ID:PNHJvEHSO
男(年もあまり離れておらず話も合い、友のように接してくれる)


夫「ただいまー」

嫁「おかえりー」

男「ただいまです、嫁さん」

嫁「疲れたでしょう、ささ、夕食を食べ」

夫「おい、オラには何もいうことなしか」

嫁「アンタは小さい時からやっているコトこなしてるだけやないの、男さんはまだ慣れとらんのやから」

男「まあまあ」

男(夫さんの嫁さんも、僕を快く受け入れてくれている)


男(……この一帯を支配する王様は比較的穏和な人物だ)


男(だから、特にこのような『戸籍記録』を乱すような行為も大抵は許してくれる)
132 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 01:22:10.15 ID:PNHJvEHSO
嫁「まあ…お疲れ様」

夫「おお…」

嫁「ふふ…」

男(仲がいいな)

男(だから明るく生きれるんだ…)

男(この貧しさも乗り越えられる)

男(記憶がある部分を思い出すに、両親が死んでからは、俺は笑ったことがない)

男(俺も、あのように自分を理解して支えてくれるような人がいれば、笑えたのかな)

夫「なんだ男、食わねえのか?だったら…」

男「へ?あ…」

嫁「コラ、人のを取るな!みっともない!」

夫「分かってるべよ!うるせえなあ!!」
133 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 01:23:08.89 ID:PNHJvEHSO


夫「ごちそうさまー」

男「ごちそうさまでした」

夫「じゃあ行ってくるべー」

男「行ってきます」

嫁「ああ、片付けたら私もすぐ行くからなー」

夫「おー」

男「……」

夫「なんだあ?朝メシ足りなかったかあ?」

男「いや!そうではなく…」

嫁「すまんな男さん、ウチは貧しいからな」

男「だから、不満なんかないですよ、むしろ…」

夫「……」

男「むしろ…」

男(俺も貧乏だったから分かりますよ、どれだけ食い物が大切か…余裕がないか…)

夫「気にすんな」

夫「だからこそだ」

男「だからこそ…?」

嫁「ああ、男さんも貧乏だったからこそ助けあわないけん」

夫「男がいる分、仕事が捗る、それだけで十分だ」

男「夫さん…嫁さん」

夫「じゃーいくべよ」

男「はい…」
134 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 01:24:24.25 ID:PNHJvEHSO
だからこそ

貴方達がいい人すぎるから

何か恩返しがしたいんだよ

夫「……ん?」

夫「なんだあの看板は」

ザワザワ  ザワザワ

男「へ?」

ザワザワ  ザワザワ

‐‐‐‐‐

この地方に生息しているといわれる魔物に近い暴れ馬

手懐け捕獲し、我に差し出す者に金10000Gを授ける

中央の国、王
‐‐‐‐‐
135 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 01:25:02.25 ID:PNHJvEHSO
男「……」

ザワザワ  ザワザワ

夫「ひゃー10000G!?すっげえなあー」

夫「でも…あの暴れ馬かー、そりゃあ無理だ」

夫「オラ達みたいな村人には勝てねえべ、なんせ城の兵士ですら手がつけられねえんだから」

夫「……さあ諦めて、行くべ」

夫「…………オイ?」

男「……ふ」

夫「!? ま、まさか…お前…」

男「……」
136 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 01:26:03.35 ID:PNHJvEHSO
男「俺…アレをやります」

夫「な!?やっぱりか!!」

夫「なに考えてるだ!絶対無理だ死ぬべよ!!」

男「大丈夫ですよ…」

夫「大丈夫じゃない!」

男「俺…そういう修羅場慣れてますから」

夫「な…?」

男「すいません、今日は仕事サボりますー!!」ダダダダダー

夫「あ、オイッ!」

夫「戻ってこいー!てか農具だけ持って何ができるだ!」
137 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 01:27:04.29 ID:PNHJvEHSO
男「……」ダダダ

男「すいません、夫さん…ああ言ってくれたけど」

男「やっぱり俺…何か恩返しをしたいんです」

男「施しを受けっぱなしは嫌なんです…」

男「だから、何か……」
138 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 01:28:36.22 ID:PNHJvEHSO
男「……」ゴクッ

男(……それにしても、魔物に近い、兵士でさえ手に負えない暴れ馬)

男(……油断しないでいけば、いける)

男(俺は夫さん達と違って、よく荒くれ者や盗賊とツルんで、王国に見つかったらヤバい仕事をやってた)

男(……その中には魔物を仕留めて、その肉や皮を使ったり売ったりするなんてことも、しょっちゅう…)

男(記憶の無い期間は…数年間なにをしていたかは知らないが、感覚は残ってるし、身体も鈍ってない)

男「いける…」
139 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 01:29:38.47 ID:PNHJvEHSO


男「……」

ガサガサ

男(……周りは木などで見づらい、下は落葉が音を鳴らす)

男(結構つらい戦場だな…)

男(……いくつもの折られた木…)

男(相手は障害物なんかお構いなしにやってくる…)

男「……」ツ…
140 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 01:30:59.04 ID:PNHJvEHSO
ガサガサ

男(なかなか来ないな、わざとらしさの無い音を出しているのに…)

男(…まあそう簡単に出現するなら、この村は滅びているわな)

男(……)

……………ォンォンォォンズォン

男「……は」

ズギャン ズギャン ガズゥン

男「ははっ!」

暴れ馬「ヒルゥィィイイイイ!!」

男「きた!」
141 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 01:36:15.51 ID:PNHJvEHSO
暴れ馬「ブルォアアアア!!」ガシャガシャガシャ

男「落葉を踏む音がやっぱり人間の非じゃねえな!」

ゴオッ!

暴れ馬「」

男「」

ヒュン

男「くっ…!」ゴロゴロ

暴れ馬「ヒルゥィィイイイイイイ…」

男(避けられた…!後は!!)
142 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 01:37:14.73 ID:PNHJvEHSO
男「 」フッ

男「」

暴れ馬「ヒイン!?」

男「  」

男(……落葉の音をたてずに歩く、盗賊達に散々叩き込まれた)

暴れ馬「?!」

男(後ろに気配を消して、それでいて早く…)

暴れ馬「フルルルル……」

男(……よし)

男(後は、コイツの急所を農具で……)

ドカッ!

暴れ馬「ヒィィィイイイイ!!」
143 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 01:39:04.67 ID:PNHJvEHSO
暴れ馬「カルアアアアアアアア!!」

バタバタ

男(クソ、やっぱ一発じゃ…昔はみんなでやってたからな、一人はやはり辛い!)

暴れ馬「」ビュン

男(蹴りがくる…!)

男「くっ!」ヒュ…

ドゴッシャ!

男「…………ッツ!」

ドサッ!
144 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 01:39:46.91 ID:PNHJvEHSO
男「う…(足をやられた…)」

暴れ馬「フルァァアアアア!」

ガバッ

男(マズい…押し潰される……!)

男「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ッ!!」ゴロン

暴れ馬「ヒィン!」ズシャ

男「……ぐ!」ゴロン バッ ズキン

男「農具を…」

男「舐めんなよ!!」

ゴッ

暴れ馬「ヒィアアアアアァァァァァァ!!」

ドサッ

男「……はァ、ちっとは人間を見直したか」
145 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 01:40:59.29 ID:PNHJvEHSO
山への道

嫁「なんで止めなかったんや!」

夫「……だから悪かったって…それより叫ぶな…まだ山道だけんど…出ない保障は」

嫁「……分かってるわ…!」

夫「……死ぬ」

嫁「馬鹿なこというな!そんなことは死んでから言えい!!」

夫「だからあ!」

嫁「だけどオマエが…」

嫁「……ん?」

?「」ヌッ

夫「……あの細長い口…」

夫「暴れ馬!!!」
146 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 01:42:06.40 ID:PNHJvEHSO
嫁「く……わあっ!」バッ


?「……あのー」

夫「?!?!!」

男「俺です」

嫁「……はい?」

夫「だべ?」

男「はは…」

嫁「よかった……ってうわあ!」

夫「男ー!ソレはああー!!」

男「あまり騒ぐと起きますよ」

嫁「…」バッ

夫「……それ…暴れ馬か……?」

男「はい」

夫「本当にか」

男「……」ニッ
147 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 01:43:36.70 ID:PNHJvEHSO
夫「担げるんかい…」

男「まあ…ある程度は……」

男「それにもう俺に従うようになってますから…起きても大丈夫です」

嫁「なんで…そこまでして?」

男「……」

夫「一歩間違えれば死んでたかもしんねえんだど…」

男「……なんでなんでしょうね」ニヤッ

男「性なのかも…」


―――ザザッ


『お人好しすぎるよ…男は』


男「!?」
148 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 01:44:02.09 ID:PNHJvEHSO
夫「どうしたべ?」

男「……」

嫁「よ、よく見たら足を怪我してるやんけ!」

夫「ほ、本当だ!」

男「いや、大丈夫です…」

男「夫さん達でこれ運べますか?」

夫「…………運ぶ!男の足が大事だ!!」

男「ええーっ!」

夫「ほらあ!」

男「ちょ、ちょっと、無理です!」
149 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 01:44:42.57 ID:PNHJvEHSO
こうしてなんとか夫さんと嫁さんを説得して帰った

暴れ馬は俺が「暴れるな、他の人に危害を加えるな」と命令してあるので、家の裏に置いた

そして、王国からの使者がやってきた
150 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 01:45:20.09 ID:PNHJvEHSO
使者「……」

男「これでございます」

使者「あ、う、うむ…」ゴホン

使者「この全長、強靱さ、威圧感…まさにかの暴れ馬と見受けた」

男「はは」

夫「はっ、ははー!」

使者「では、引き取ろう」

男「どうぞ」

使者「では皆のもの、馬とともき行くぞ」

暴れ馬「」

使者「……ん?」
151 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 01:46:12.76 ID:PNHJvEHSO
暴れ馬「」

使者「馬、行くぞ」

暴れ馬「」

男「……」

男「暴れ馬、使者様に連いていけ」

暴れ馬「」

使者「これは…」

夫「……あわわ」

嫁「マズいわ…」

男「……」
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 01:47:00.98 ID:weWaO78ho
生きてたのか
153 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 01:51:07.70 ID:PNHJvEHSO
男「申し訳ありません…今」

夫「暴れ馬は男にしかついていかないらしいですだ」

男「ちょ!!」

使者「……ぬ」

男「こら!彼等貴族は自分が下に見られることを嫌う」ボソ

夫「あ…」ボソ

使者「……」

夫「!!」
154 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 01:52:18.20 ID:PNHJvEHSO
使者「ならば」

使者「男とやらにだけしか従わないのならば!」

男「……?」

使者「その男とやらが、馬を従えて我が城にこい」

男「……え、はっ!」

使者「そして…」

男「……?」

使者「勇者のパーティの馬車引きを、頼まれるか」

男「!?」
155 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 01:52:59.62 ID:PNHJvEHSO
夫「……え」

嫁「勇者様の…」

男「……」

使者「引き受けてくれるか」

男「……は、は」

夫「……」

嫁「……」

男「……」

使者「…」
156 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 01:53:32.93 ID:PNHJvEHSO
男(……それは即ち)

男(夫さんと嫁さんと…離れる)

男(……まだ、何も返せていないよ)

男「……」

夫「……!」

夫「こらっ!」ガバッ

男「!」
157 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 01:54:31.28 ID:PNHJvEHSO
男「夫さん!?失礼ですよ…」ボソ

夫「断るなよ」ボソ

男「……へ」ボソ

夫「男が勇者のパーティに加われば…英雄の一員だべ」ボソ

夫「そしたら…チヤホヤされて、あっという間に大金持ちだ」ボソ

男「……?」

夫「だからやれよ」
158 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 01:55:24.50 ID:PNHJvEHSO

ボソ

男「夫さん…?」

嫁「さすが、アンタの目利きは一流だな」

男「?」

夫「ああ、コイツは将来、勇者並の有名人になって『金蔓』になるとわかってた」

男「!!」

嫁「そうだな、金のためとはいえ良くするのは疲れただ」

夫「ああ、食いもんとか無いのに、贅沢にも一緒の量食べやがって、なんどこの小僧殴ってやろうかと思ったか」

男「……」

夫「だから、いけ」

夫「恩返しだべ、お・ん・が・え・し」
159 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 01:56:00.58 ID:PNHJvEHSO
男「分かりました行きます」

使者「おお、そうかよくいってくれた」

使者「では、荷物の用意を」

男「いや、いいです」

使者「……そうか?では行くぞ」

男「暴れ馬行くぞ」

暴れ馬「ヒヒン」

夫「……」

嫁「……」

男「……」

男「さようなら」ニッ
160 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 01:57:05.74 ID:PNHJvEHSO
男「……」

暴れ馬「」ゴッゴッ

兵士「本当に動いている…従っている」


男(……そうかやっぱりな、そうだよな普通)

男(だったら最初から、冷たく扱って欲しかった)

男(優しさの方が、痛い)


男(せっかく心を許せる人ができたと思ったのに)

男(……やっぱり俺は一人)

男『―――会いたい、少女に』

男「?」

使者「どうした?」

男「いえなんでもありません」

男(……少女って、誰だ?)
161 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 01:58:45.01 ID:PNHJvEHSO
田舎の村

夫「……行ってしまっただな」

嫁「これでいいんや」

嫁「暴れ馬懐けた時に確信した、あの人はこんな村で農業してていい人やない」

夫「ああ、でも傷つけてしまった」

嫁「仕方ない、男さんはああいうやり方やないと動かん人やから」

嫁「まあ、辛かったけどな」

嫁「……おかげで、アンタの喋り方が移ってたわ」

夫「すまん」

夫(輝いてくれ、アンタなら魔王倒せる旅でも生きれるだ)

夫(そして幸せになってくれ)
162 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 02:04:23.19 ID:PNHJvEHSO
〜中央の王国 城門前〜

男「……」

使者「ここだ」

男「はい」

使者「待っておれ、今大臣や王にこのことを」

男「はい」

使者「この大きさは、小屋に入らぬな」

使者「ここで待っておれ」

男「は」
163 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 02:05:15.30 ID:PNHJvEHSO
暴れ馬「」

男「……それにしてもよくお前用の手綱とかあったなあ…さすが王国」

ギィィィン

男「おっと…」

男「」ザッ

使者「王はお目にかかりたいそうだ」

男「はっ」

男「ここで大人しく待っていろ」

暴れ馬「」コク

使者「では」

男「はっ」
164 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 02:06:19.13 ID:PNHJvEHSO
王「よくきた」

男「」ザッ

王「……『使者』の案を聞いた」

王「認めよう」

男「はっ」

王「そなたを勇者一行の馬車、その『馬車引き』に命じよう」

男「は」
165 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 02:07:25.84 ID:PNHJvEHSO
王「よいのか」

男「はい」

王「馬車引きとはいえ、勇者の過酷な旅に付き合うのだ、最悪死ぬやもしれぬ」

男「覚悟はできております」

王「そうか」

男(それに、俺は何もない)

男(どんな人生を進もうが独りならば、どんな人生でもいく)

王「では、勇者達は城内の訓練場にて待機している、ゆけ」

男「はっ」
166 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 02:07:57.69 ID:PNHJvEHSO
男「……」

男「ここか」

〜中央の王国 訓練場〜

男「…」コンコン

?「はい」

男「馬車引きに任じられました、男です」

?「どうぞ」

男「失礼します」ガチャ

男「……」

勇者「…」

魔法使い「…」

僧侶「…」

武道家「…」
167 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 02:08:56.42 ID:PNHJvEHSO
男「改めまして、『馬車引き』の男と申します」

勇者「先程聞かされましたよ、よろしくお願いします」

男「はい、よろしくお願いします」

僧侶「よっ、よろしくお願いします!!」

武道家「よろしく」

魔法使い「……」

僧侶「こら、魔法使い!よろしくしなさい!」

男「あっ、構いません、下っ端ですから」

勇者「そのようなこと…」

男「……」
168 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 02:10:24.33 ID:PNHJvEHSO
勇者「例えそうだとしても貴方は仲間です、上とか下とかは考えなくてもいい」

男「は…」

武道家「そうだ」

武道家「貴方は仲間だ、しかし…」

男「?」

武道家「足を引っ張る真似は止めていただきたい、貴方は『馬車引き』だ」

武道家「それに全力をつぎこめ、それ以外は気にしなくていい」

男(……そうだよな)

男「はい」

勇者「あ…」

僧侶「もー!」
169 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 02:11:25.91 ID:PNHJvEHSO
僧侶「気にしなくていいですよ男さん、仲間です危険からまもります」

男「ありがとうございます」

僧侶「私は見てのとおり『僧侶』なので回復魔法が得意です!なのでケガしたらバンバンいってください!」

男「はい」

僧侶「ふー、仲間が増えると楽しいですね」

武道家「チームワークは大事だが、仲良しこよしの遊びのチームではないのだぞ僧侶」

僧侶「わっ、分かってますよー!」

僧侶「魔王は絶対倒します、私…空回って失敗することが多いですが…これだけは絶対失敗しません」

男「……」
170 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 02:12:14.12 ID:PNHJvEHSO
僧侶「あ、すいません!男さん放って置いて!」

男「いえ」

勇者「では行きましょうか」

武道家「そうだな」

僧侶「待ってください!まだ魔法使いが挨拶していません」

魔法使い「…」

武道家「そんなことは…」

僧侶「よくありません!こういうのはキッチリしなきゃいけないんです!」

魔法使い「……」

男「よろしくお願いします」

魔法使い「……」

男「……」タラ…

魔法使い「……」

勇者「はは…」

僧侶「こらー!」
171 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 02:13:25.92 ID:PNHJvEHSO
武道家「もうよい、魔法使いは私達にも話かけなかった」

武道家「話す気がないならばそれでよい、協調する気はあるらしいのだから」

僧侶「ぐぬぬ…」

魔法使い「…」

勇者「ではみんないいかな?」

武道家「はい」

僧侶「はいっ!」

魔法使い「…」コク

男「……は、はい」

勇者「行こう」
172 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 02:17:38.79 ID:PNHJvEHSO
男「むうう…」

暴れ馬「」ズーン

勇者「おお…」

僧侶「わあっ!魔物ですか!?」

武道家「落ち着きなさい、『馬車引き』が手懐けた馬ですよ」

僧侶「わっ、分かってますよ、ジョークですよ!」

魔法使い「…」

武道家「素晴らしい」

男「では馬車にお乗りください」

勇者「はい」

ザッ ザッ

男「さて…」

男「出発です!」
173 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 02:18:15.58 ID:PNHJvEHSO
ザッ

ザッ

ワー ワー ワー

ワー ワー ワー

街人A「勇者様ー」

街人B「頑張ってくださいー!」

勇者「…」ヒラヒラ

男(やはりすごい人気だな)

ワー ワー ワー

男(自分に向けられたものじゃないとはないとは言えやはり恥ずかしい)
174 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 02:18:43.31 ID:PNHJvEHSO

街の外

  ワー

勇者「……ふぅ」

武道家「溜め息などをしてはいけないぞ、貴方は勇者…」

勇者「わかっているよ、すまない」

僧侶「勇者さん!気合いをいれて!」

勇者「うん…」

武道家「……」

男(……大変そうですねえ)
175 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 02:19:27.34 ID:PNHJvEHSO


男「……」

男(今日は魔物に会わなかったなあ)

男(でも夜中現れるかもしれないから見張り、か)

男(想像以上に楽じゃない『馬車引き』…)


男「はあ…」

バサッ

男「!?」

勇者「やあ…どうもご苦労様です」

男「勇者様」
176 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 02:20:19.59 ID:PNHJvEHSO
勇者「勇者でいいですよ」

男「いえ…」

勇者「……一緒しても良いですか」ドカッ

男「いや勇者様にそんな…僕の仕事ですし、魔物が近づけば暴れ馬が吠えます」

勇者「……では、少しお話しましょう」

男「お話」
177 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 02:20:54.24 ID:PNHJvEHSO
勇者「このパーティに入ってどう思われましたか?」

男「素敵なパーティです、光栄に思っています」

勇者「本当に?」

男「はい?」

勇者「男は、少し気まずそうでした」

男「……いや」

勇者「実際そうでしょう、田舎の村人だったそうじゃないですか」

男「……やはり、覚悟の違いを感じさせられました」

勇者「覚悟ですか」
178 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 02:22:02.20 ID:PNHJvEHSO
男「今まで畑を耕すだけだった人間が、いきなり世界のため日々訓練を重ねておられた方達の中にこんなに簡単に入っていいのか、と」

勇者「……」

男「了承したとはいえ、実際この時となると勇者パーティというものを実感してしまい、心が追いついていないかもしれません」

勇者「……僕もです」

男「え?」

勇者「僕は本当は勇者の候補生の中でも落ちこぼれで …でもこうやって選ばれたのは」

勇者「先代の勇者様が、私を推薦していたらしいからです」

男「先代…様が?」
179 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 02:22:47.90 ID:PNHJvEHSO
勇者「おちこぼれで、絶対選ばないと気持ちを抜いてしまっていたから…武道家達についていくのが必死です」

男「推薦が通ったのですか?」

勇者「ええ…」

勇者「王様は、強大な力を誇っていた先代勇者様のパーティが魔王に破れ、焦っておられる」

勇者「だから、先代様の言葉なら…と討議もせず決められた」

男(なるほど、それでこの暴れ馬を求めたり、村人でしかない俺を採用したり…と簡単に無茶な案も通していたりするのか)

勇者「まあ、情けない話をしてすまない…」ハハ

男「……いや」

男「応援しています」

勇者「……ありがとう、君も無理しないで」

男「勿体ないお言葉…」

勇者「では、武道家達は早寝早起きにうるさいのでな」

男「おやすみなさいませ」

勇者「おやすみ」

男「……」
180 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 02:48:29.93 ID:PNHJvEHSO
投下し終わって気をぬいたら寝落ちしてました
というわけでここまでです

あとレスありがとうございます
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 09:00:08.62 ID:z0HfUMRZo
乙乙!
こっちも読んでるうちに寝落ちしたww
勇者パーティも総入れ替えかぁ……前パーティは一体どこへ…
まだまだ先は長そうだな、期待して舞ってる
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 09:07:23.04 ID:H0BvmKiSO
>>181に続き俺も舞ってる
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 09:55:48.91 ID:J3IITVADO
舞ってる
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 15:58:02.94 ID:z8FKDBCDO
185 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 22:23:30.12 ID:PNHJvEHSO
男「勇者さんも…か」

男(……まあ、人の数だけ悩みがあるってやつね)

男(あ、眠くなってきた)

男(まあ暴れ馬が、反応するだろ…)

暴れ馬「」スウスウ…

男「寝てる…」

男(まあ…反応するだろ)

男「……く」

男「起きていよう」
186 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 22:26:57.35 ID:PNHJvEHSO


勇者「んー!」バサッ

武道家「おはよう早いな」

勇者「おはようございます」

魔法使い「…」バサ

僧侶「むー」ネムネム

勇者「じゃあ、朝ご飯を調達して…」

武道家「私も同行しよう、魔法使いと僧侶は待機していていいぞ」

僧侶「むーん」フラフラ

魔法使い「…」

武道家「馬車引きは…寝ているか」

勇者「夜中は見張りをしていましたから、寝かしておこう」

男「…」クウクウ
187 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 22:29:58.39 ID:PNHJvEHSO
僧侶「むあー」フラフラ

男「…」クー

僧侶「あー」フラ

ゴチン

男「あがっ!?」

僧侶「! なんですか!魔物か!?」

男「……いや…」

僧侶「あっ!そういうことかゴメンなさい!!」

男「いえいえ、当たってしまうような所で寝てた私が悪いので」

男(しまったー!でもまさか寝ぼけて台にのっかってくるとは…)

ズキ

男「……っ」

僧侶「?」
188 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 22:31:15.02 ID:PNHJvEHSO
男(暴れ馬に蹴られた足に痛みが…きた…!)

僧侶「……あ、やっぱり痛かったですよね」

男「いえ、それではありません…お気になさらず」

僧侶「んー?」

サワサワ

男「!?」

僧侶「だったらどこですか?」サワサワ

男(いいえええ!?なんで体中をまさぐる…)ゾクゾク

僧侶「!」サワ…

男「?」

僧侶「足ですね」

男「え」

僧侶「」

ポゥ…
189 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 22:34:28.70 ID:PNHJvEHSO
男「……!」

僧侶「はい、おしまいですよ!」

男「あ、ありがとうございます」

僧侶「礼には及びませんよ!私は僧侶なので回復魔法すごいんですから!!」フン

僧侶「どこを怪我しているかも大体分かるんですよ、『僧侶』だから勘で!」フフン

男「本当ですか」

男(……勘で? で、でもそれなら体を触りまくる必要はあったのか…?)

僧侶「あっ、体を触る必要がないとか思ってますね!」

男「あっ!いやいや…!」

僧侶「医者さんに憧れているんです!だから触ります検査の真似ごとです」

男「……ははあ」
190 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 22:38:40.52 ID:PNHJvEHSO
僧侶「返事が適当です! もうっ!今日は許しませんよ!」

男(しまった怒らせてしまったぁぁぁ!)

男「申し訳ありません!深く反省します、どうか…」ガバッ

僧侶「…ふん」

男「……」

僧侶「朝だけは許しません、に変更します」

男「あ、ありがとうございます!」

僧侶「…」ツーン

男「は、はは…」

男「!」
191 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 22:40:21.60 ID:PNHJvEHSO
男(なに笑ってんだ俺、相手は勇者様のパーティの僧侶様だぞ!)

男(友達のように接してたよ)

僧侶「魔法使いおはよー」

魔法使い「…」

男(……僧侶様は苦手だ、ペースにつられてまた失礼なことをやらかしそうだ…)

勇者「おーい」

男「?」

勇者「果物をとってきたよー」

武道家「飲み水もな」

男「は、はい!」
192 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 22:43:31.46 ID:PNHJvEHSO

男「果物切り分けました、どうぞ」

勇者「ありがとう」

武道家「すまない」

魔法使い「…」

僧侶「…」ツーン

男「あはは…」

勇者「? 僧侶も男に返事をしなくなったのかな?」

僧侶「朝は男さんとは絶交してます」ツーン

武道家「なにかしたのか?」

男「はい…無礼な態度をとってしまい…」

僧侶「でも謝ったので『朝だけ』です」

魔法使い「…」モクモク

武道家「ふむ」
193 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 22:51:31.25 ID:PNHJvEHSO
武道家「……まあ、それなら良いが気をつけろ『馬車引き』よ」

男「は…」

武道家「分かったなら食べろ『馬車引き』」

僧侶「もう、武道家は何故男さんだけ職業で呼ぶんですか?」

武道家「何か問題でも?」

男「自分も職業呼びで構いません、私はその程度の地位なので」

勇者「な…だから……」

武道家「…」

男「貴方達と並んだなどと自惚れてはいません」

僧侶「なんでそんな……あっ」

男(なんで、か)

男(それは…田舎の村で散々思い知った)
194 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 22:55:55.46 ID:PNHJvEHSO
男「とにかく私は」

男「ただ馬車引きの仕事を全うします」

勇者「……男さん」

武道家「分かっているならいい」

僧侶「……むうっ」

魔法使い「…」


男(俺は信頼されるような人物じゃないから)

男(信頼されていないくらいでは、なんとも思わない)
195 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/15(日) 22:59:46.01 ID:PNHJvEHSO
ただキャラを掘りさげただけ関係を作っただけでした(自分なりに)

次は話を進めます
では
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 23:08:00.21 ID:rKDf8Pxmo
乙乙!
パーティの性別が知りたい
197 : ◆7HPeWTM.wM :2011/05/15(日) 23:35:02.64 ID:PNHJvEHSO
>>196
勇者 男
武道家 女
僧侶 女
魔法使い 女

男 男


男がいなければ勇者ハーレムでした
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 23:46:59.39 ID:rKDf8Pxmo
>武道家 女

なん……だと……?
ああでも確かに口調が武道家にしては…とは思った
他は想像通りだったが、武道家は160度くらい印象変わったわwwww
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage ]:2011/05/17(火) 18:50:20.07 ID:cb3dHmcB0
乙です。
200 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/22(日) 08:57:05.14 ID:YytUSy9SO
レスありがとうございます
201 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/22(日) 08:57:51.08 ID:YytUSy9SO
パカパカ

男「まだ眠い」

暴れ馬「」

男「……」

暴れ馬「」

男「やっぱりお前が勝手に動いてはくれないか」

暴れ馬「」

男「ねぶそく」
202 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/22(日) 08:59:23.13 ID:YytUSy9SO
男「……ふあー」

暴れ馬「」パカパカ

パカパカ

男「……」

パカ

男「!」

暴れ馬「…ブ」

男(……いる)
203 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/22(日) 09:00:22.08 ID:YytUSy9SO

――――ガサ


男「……」

暴れ馬「カアアアアアア…!」

男「みなさん!!」

勇者「!?」

ガサッ

暴れる獅子『カアアアア!』

勇者「魔物か、男さん!」ダダッ

男「はい!」

武道家「よし、下がっていろ」

僧侶「うわわ、よし 頑張りますよ!」

魔法使い「……」

暴れる獅子『  』
204 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/22(日) 09:03:24.48 ID:YytUSy9SO
暴れる獅子『クルァァァ!!』ゴオッ

男「……」ビリビリ

勇者「!」

武道家「ふん!」ダッ

ドンッ

暴れる獅子『  』ギギ…

武道家「くぅ…!」ギギ…

男「!」

男(……すごい、あの獣系の魔物と互角に力比べしている…!明らかに暴れ馬の比じゃない力持ってるハズだぞ)

武道家「……く、魔法使い!」
205 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/22(日) 09:04:31.87 ID:YytUSy9SO
魔法使い「…」コク

魔法使い「」オオオ…

男(! すごい魔力…)

魔法使い「炎」

ボアッ!

暴れる獅子『!!』

ゴアアアアアッ!!

武道家「くあっ…!」ヒュッ

ボォッ!!

暴れる獅子『アガアアアアアアアアアアア!』ボオアッ

僧侶「ケガはないですか」
武道家「うむ」
206 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/22(日) 09:08:35.30 ID:YytUSy9SO
勇者「ふん」

ギュン!

暴れる獅子『!!』

勇者「とおっ!」

ブンッ

暴れる獅子『ガアアッ!!』

ザンッ

勇者「……」
207 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/22(日) 09:11:42.56 ID:YytUSy9SO
勇者「……」

武道家「よし」

僧侶「回復魔法」ポァ

武道家「……む」

魔法使い「…」

僧侶「魔法使いの炎をかわしきれずに、少し火傷してしまいましたね」

武道家「このくらい大丈夫だが」

僧侶「駄目です」


男「……」

男(強い)

勇者「強い」

男「え?」
208 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/22(日) 09:14:56.19 ID:YytUSy9SO
武道家「ああ」

魔法使い「…」

男「と、いうのは」

勇者「うむ」

勇者「……この辺りの魔物にしてはレベルが高かった」

武道家「ああ」

僧侶「これは私もたくさん働かなければいけませんね」

男「……はあ」

武道家「気をつけろ、お前は一番危険な位置にいるのだからな」

男「はい」
209 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/22(日) 09:15:21.85 ID:YytUSy9SO

男「……」

男(あれからも魔物の襲撃はあったが、勇者パーティには敵わなかったな)

男(おかげで緊張感が持てないな…まあピンチにはなってほしくはないが)

男(さすがは魔王を討伐するのが目標の勇者パーティか)


〜馬車の中〜

武道家「どう思われる」

勇者「……なにがだ?」
210 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/22(日) 09:18:31.20 ID:YytUSy9SO
僧侶「?」

武道家「あの『馬車引き』は」

勇者「…」

僧侶「やはり気に食わないので?」

武道家「いや、そういうことではなく」

武道家「先程から魔物の襲撃を逸早く察知している」

勇者「……む」

魔法使い「…」

武道家「私達より早く、そして私達が気付かなかった気配も感じている」

僧侶「気配察知に長けている『盗賊』なんですかね?」

勇者「…」
211 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/22(日) 09:21:54.38 ID:YytUSy9SO
勇者「あ奴は元々は田舎にすむ農民」

勇者「……まあ、そのようなこともあるのだろう」

武道家「しかし中央の王国の支配地域は比較的に緩いぞ」

僧侶「でも、辛いこともたくさんあるでしょう」

魔法使い「…」

勇者「とりあえずこの時のことは男には内密に」

武道家「…」

僧侶「はい!」
212 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/22(日) 09:24:39.46 ID:YytUSy9SO
男「みなさん!戦闘です!!」

勇者「! よしみんないくぞ!!」

武道家「うむ」

僧侶「はい!」

魔法使い「…」コク
213 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/22(日) 09:25:38.65 ID:YytUSy9SO
パカパカ

男「……あ」

勇者「見つけたか」

男「はい」

勇者「町」

男「……入りましょう、休憩や調達もできます」

勇者「うむ」

武道家「ついたぞ僧侶、魔法使い、移動準備をしろ」

僧侶「はい」
214 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/22(日) 09:26:36.97 ID:YytUSy9SO
山の町

男「……」

僧侶「大きい町ですねー」

武道家「中央の王国から近いからな、山の田舎とはいえ栄えているのだろう」

男(……まあまあの調達はできそうだな…しかし…)

男(建物のほとんどが新築で新品だ、出来て間もない町というわけでもないのに)

勇者「……栄えてはいるが」

僧侶「?」

勇者「活気がない」
215 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/22(日) 09:27:36.68 ID:YytUSy9SO
ここまでです

ではでは
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/22(日) 10:28:22.64 ID:WlQ0D5Qvo
乙〜
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/22(日) 18:06:28.00 ID:tBDHgtODO
今日の投下分あっという間に読み終わってしまた…


次ははやめに来て来て
218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage ]:2011/05/22(日) 23:38:47.72 ID:24IFLO8H0
乙です。
219 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/22(日) 23:49:46.59 ID:YytUSy9SO
男「活気…」

勇者「いや、なんとなくだ」

僧侶「ま、とりあえず入りましょう」

武道家「そうだな、調達もせねばならない」

勇者「ああ、私がやろう」

男「暴れ馬、ここで大人しくしておけ、後からエサ持ってくるからな」

暴れ馬「」

男「よし」

男「あのー」

勇者「?」
220 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/22(日) 23:50:46.54 ID:YytUSy9SO
男「私が色々買いますので、何か注文は」

勇者「いや、私が…男は疲れているだろう」

男「そんな、戦闘をなさっている勇者様達程では」

武道家「そうだな、『私も馬車引き』に同行する、だから勇者達は宿屋で休んでいなされ」

僧侶「はい、ありがとうございます」

勇者「……悪い」

魔法使い「…」
221 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/22(日) 23:51:24.23 ID:YytUSy9SO
武道家「…」

男「…」

武道家「勇者の言うとおり活気がないな」

男「はい」

武道家「……」

男「……」

男(会話がない、まあ当たり前か)

武道家「ここだな、よろず屋」

男「あ、はい」

よろず屋「……あ、いらっしゃいませ」
222 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/22(日) 23:52:03.91 ID:YytUSy9SO
男「え、と…薬草に食料に…」

よろず屋「……」

武道家「……」

男「……これだけください」

よろず屋「…」

男「……?」

男「あのー」

よろず屋「! あのー」ハッ
223 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/22(日) 23:53:15.49 ID:YytUSy9SO
よろず屋「ありがとうございました…」

男「……」

武道家「やはりおかしいか」

男「はい…商人らしからぬ元気の無さですね」

武道家「うむ、客が商品選びをしている時に黙っているなど…」

男「はい…」

武道家「なにかあるな、この町」
224 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/22(日) 23:54:37.17 ID:YytUSy9SO
〜宿屋〜

僧侶「いっぱいですね」

武道家「ああ、しばらく町がなくとも良いように」

勇者「男は?」

僧侶「そういえばいませんね、どうしたのでしょう」

武道家「ああ『馬車引き』なら馬にエサをやりにいった」

勇者「そうか、馬も仲間だからな」

僧侶「働きますね」

武道家「それよりこの町は…」

勇者「……そちらもだったか」
225 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/22(日) 23:55:42.00 ID:YytUSy9SO
勇者「活気がないどころではない、なにかある」

僧侶「ですね」

僧侶「魔物が、絡んでいるのでしょうか」

武道家「……可能性としてはあるな」

魔法使い「…」

武道家「……よし、ここの町長にきいてみよう」

勇者「え…」

僧侶「そうしましょう」
226 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/22(日) 23:56:11.24 ID:YytUSy9SO
勇者「しかし、勝手に首をつっこむのは余計なお世話なのでは…この村の問題だから…」

武道家「なにをいいますか、貴方は勇者です」

武道家「そのようなことは度が過ぎない限り、気にしなくてよいのです」

武道家「手を差しのべるべき」

勇者「……」

僧侶「そうですよ、違ったら『ごめんなさい』と謝ればいいんですよ、ね?魔法使い」

魔法使い「…」

勇者「……」

勇者「うむ分かった」

武道家「では訪ねにいこう」

僧侶「はい!」
227 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/22(日) 23:56:52.14 ID:YytUSy9SO
勇者「……」

勇者(度が過ぎない限り、遠慮はいらない)

勇者(勇者だから)

勇者(……)

勇者(……そうなのかな)

勇者(分からなかった、やはり…自分が勇者という自覚がないから)

僧侶「早く行きましょう、勇者様」

勇者「あ、うむ」
228 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/22(日) 23:57:47.94 ID:YytUSy9SO
〜町長の家〜

ガタン

勇者「…」

町長「……」

町長「誠に、勇者、様で…?」

勇者「はい」

武道家「中央の王国からの正式な任命書も授かっている…見せましょうか」

町長「いえいえ…うっ」

勇者「! どうなされました?」

町長「……い、いえ」
229 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/22(日) 23:58:51.95 ID:YytUSy9SO
町長「……」

勇者「僧侶!」

僧侶「は、はい!」

僧侶「……腰」サワサワ

ポァ

町長「……あ」

勇者「大丈夫ですか」

町長「……腰の怪我が」

僧侶「完全回復させました、もう大丈夫です」

町長「……ありがとうございます…」

僧侶「……今の怪我、誰かに傷つけられたものですね…?」

町長「なんでそれを!」

僧侶「僧侶ですから」

勇者「……やはり……」

町長「……はい」
230 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/22(日) 23:59:52.34 ID:YytUSy9SO
町長「この町は、魔物に占領されたも同然です」

武道家「……いつごろから?」

町長「……四か月も前です」

勇者「四か月…!?」

僧侶「何故…中央の王国に知らせなかったんですか!?」

町長「人質です…」

勇者「…!」

魔法使い「…」

町長「魔物達はこの町の女を大量に誘拐して人質にしているのです」

町長「伝えれば殺すと…」

武道家「卑劣な」
231 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/23(月) 00:00:46.32 ID:RFyH6MmSO
町長「なにもできないまま、魔物達に色々貢ぎ物を払わされたりで…」

町長「さらわれた女達が精神的に壊れたら、再び女を誘拐しにこの町にやってきて、破壊、略奪行為を…」

町長「勇者様…お願いします…どうか、奴等を退治してください!」

武道家「…」

僧侶「…」

魔法使い「…」

勇者「……」

勇者「分かった」
232 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/23(月) 00:01:26.46 ID:RFyH6MmSO
〜入口〜

暴れ馬「」

男「さっきのでおしまいだ、ごめんなあまり沢山エサ売ってなかったんだよ」

暴れ馬「」

男「次の町ではたくさん買うからスネないでくれよ」

暴れ馬「」

男「…」ピクン

男「……オイオイ」

誘拐屋『くひひ』

男「……やるしかないかな」

暴れ馬「ゥゥ…」

誘拐屋『かはは』
233 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/23(月) 00:02:04.50 ID:RFyH6MmSO
ここまでです
レスありがとうございます
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/23(月) 00:03:44.43 ID:IJy8DI3Io
乙〜
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/23(月) 01:19:55.08 ID:9nrgnEaoo
誘拐屋……?

>>1
236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage ]:2011/05/23(月) 02:11:54.63 ID:BQb5tx8R0
乙です。
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/24(火) 21:00:59.97 ID:eA18JTbIO
ゆかいや
238 : ◆7HPeWTM.wM :2011/05/29(日) 00:32:31.54 ID:hSEPbT2SO
>>235
ドラクエの魔物の名前みたいなものと思ってください
名前に特別な意味はありません

セリフが『』なのは魔物(幹部、魔王を除く)です
239 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 00:33:40.24 ID:hSEPbT2SO
誘拐屋『くひひ』

男「…」

誘拐屋『じゃまじゃま』

誘拐屋『どけい』ビュオッ

男「ぐ!」ヒュン

暴れ馬「ヒヒィィイ!!」

男(はや…!)
240 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 00:34:13.76 ID:hSEPbT2SO
誘拐屋『』バゴォン

男「……!」

誘拐屋『よけるな』

男(コイツ…マジでヤバい!!)

暴れ馬「ヒィイイイ!!」

誘拐屋『うるさい』

ヒュン ガゴッ

暴れ馬「ヒヒィィイイイ!!」ヒューン

ドガッ

男「暴れ馬!!」

誘拐屋『おまえも』

男「!」
241 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 00:34:59.22 ID:hSEPbT2SO
ズガッ

男「……ぐっ!!」メリメリ

バガーン

男「ぐはぁ!!」

ズルズル ドサッ

男「く…」

誘拐屋『さていくか』

勇者「悪いがさせない」

誘拐屋『!!』

男「! 勇者様!!」
242 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 00:36:30.25 ID:hSEPbT2SO
勇者「大丈夫か、暴れ馬も」

男「っ、はい」

勇者「僧侶」

僧侶「はい!」

僧侶「今回復させますね!」スタスタ

誘拐屋『おんな…』

武道家「私で我慢しろ」

誘拐屋『!?』

武道家「はっ!」バゴォン!

誘拐屋『うぎゃああ!!』

武道家「さらわれる気はないが」

勇者「ふんっ!」ザクッ

誘拐屋『ああああ!』
243 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 00:37:33.60 ID:hSEPbT2SO
誘拐屋『』

武道家「ふう」


僧侶「はい、もう大丈夫ですよ」

男「ありがとうございます」

僧侶「いえいえ、では暴れ馬も」

暴れ馬「ヒヒ…ン」

武道家「早めに倒しにいった方が良さそうだ」

魔法使い「…」

勇者「そうだな」
244 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 00:39:16.16 ID:hSEPbT2SO
武道家「馬車引き、大丈夫か」

男「は、はい、僧侶様のおかげで」

武道家「事情は移動しながら話す、北の洞窟に向かってはくれぬか」

男「はい」

勇者「……」

勇者「では、ゆかん」

武道家「はい」

僧侶「はいっ!」

魔法使い「…」
245 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 00:40:54.30 ID:hSEPbT2SO
男「では、その洞窟にいる魔物のせいで…?」

勇者「ああ、先程の魔物もその手駒だろう」

男「…」

勇者「大丈夫だ、男は洞窟前で待っていてくれれば良い、退治は我らだけでやる」

男「はい…」

男「……」

勇者「……」

男「あの…」

勇者「む?」
246 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 00:41:38.06 ID:hSEPbT2SO
男「……震えてますよ」

勇者「!!」

男「あ……も、申し訳ありません!」

勇者「……」

勇者「いや…良い」

男「……はい」

男(……また余計なことを、俺は仲間じゃなくただの馬車引きなのに…俺のアホ!!)

勇者「……」

勇者「……魔物が怖いわけではない」

男「?」
247 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 00:42:18.62 ID:hSEPbT2SO
勇者「勇者として…務めを果たせるかが不安なのだ」

男「……」

勇者「……全然、勇者らしくない、リーダーシップがない」

勇者「武道家の方がよほどリーダーだ」

勇者「こんなのが勇者で、このパーティの頭で……良いのだろうか」

勇者「……こんなのでは、ここのボスにさえ通じないのではないのか」

勇者「不安なのだ」

男「……」
248 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 00:43:27.02 ID:hSEPbT2SO
男「……」

勇者「すまない」

勇者「では」バサッ

男「……」

男(大丈夫、というべきだったかな)

男(でも俺みたいなヤツが言うことに、どれだけの根拠があるのか)

男「……」

男「余計なことはすぐ口に出るくせに、俺の馬鹿野郎」
249 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 00:43:57.48 ID:hSEPbT2SO
〜洞窟前〜

男「みなさん、つきました」

勇者「うむ」

武道家「ここか」

僧侶「いかにも魔物の巣窟って感じですね」

魔法使い「…」

勇者「では行ってくる、男はここで待っていてくれ」

男「は、はい」

僧侶「聖水をまいておいたので、魔物が寄ってくることはないと思いますよ」

僧侶「もしも襲われたら、この予備の聖水を…これをザバッ!とかけて戦ってください」スッ

男「はい」
250 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 00:44:57.69 ID:hSEPbT2SO

番人A『!』

番人B『!』

勇者「魔物か!!」

勇者「はあっ!」ザンッ

番人A『グギャ!』

勇者「はああっ!」ザンッ

番人B『グギャ!!』

武道家「勇者様、少し飛し過ぎでは…」

勇者「いや、これくらいでいい、気合いがはいる」

男「…」
251 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 00:46:24.71 ID:hSEPbT2SO
男「やっぱり肩に力が入ってたなあ勇者様」

男「かといって…」

暴れ馬「」

男「……俺に何ができるんだろうなぁ」

男「何もできないだろう」

男「馬車引きだし、そしてなにより…」

男「ロクでもない人間の俺に」

男「……」
252 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 00:47:02.89 ID:hSEPbT2SO
誘拐屋『くひひ』

男「…」

誘拐屋『じゃまじゃま』

誘拐屋『どけい』ビュオッ

男「ぐ!」ヒュン

暴れ馬「ヒヒィィイ!!」

男(はや…!)
253 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 00:48:04.95 ID:hSEPbT2SO
>>252は投下するのを間違いました><
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [sage]:2011/05/29(日) 00:50:45.71 ID:iCGWPAo3o
何事かと思ったわww
255 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 00:52:16.57 ID:hSEPbT2SO
〜洞窟 最深部〜

ボスケモノ『なんだテメェら!』

勇者「さらった人達を解放しろ」

ボスケモノ『なんだってきいてんだ!』

勇者「……勇者とそのパーティだ!」

ボスケモノ『なにぃ!』

勇者「よく覚えておけ!」

ボスケモノ『……』
256 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 00:53:19.30 ID:hSEPbT2SO
ボスケモノ『ブッ』

勇者「?」

ボスケモノ『ブハハハハハハハハハ!!』

勇者「なにがおかしい!」

ボスケモノ『そんなヘナヘナしたお前が勇者!?笑わせるぜ!!』

僧侶「なっ!」

魔法使い「…」

武道家「言わせておけ」
257 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 00:54:14.45 ID:hSEPbT2SO
勇者「武道家」

武道家「アイツは所詮討伐の対象でしかなく、議論をする相手ではない」

僧侶「しかし勇者様を馬鹿に…」

武道家「ただ倒すことだけに集中する、それでいい」

魔法使い「…」

勇者「……」

勇者「そうだな」
258 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 00:55:27.76 ID:hSEPbT2SO
勇者「ではいくぞみんな」

ボスケモノ『ハッ、こいよ偽者勇者があああ!』

勇者「……」スッ

武道家「はああっ!」ギュン

僧侶「神の御加護を……防御力上昇!」ギュン

ボスケモノ『ガアアアアアアアアアアアアアア!!』ガンッ

武道家「つ!」グラッ

武道家「すまない!僧侶助かった!!」

武道家「おかげでたいしてダメージはない!!」ドガッ!!

ボスケモノ『グアッ!!』
259 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 00:56:14.71 ID:hSEPbT2SO
魔法使い「防御力低下」グアアン

ボスケモノ『あが…』フラ

勇者「ふん!」ビュッ

ボスケモノ『この…』ブンッ

勇者「遅い!」ヒュン

ボスケモノ『ぐ!』

勇者「はああっ!」ザクッ

ボスケモノ『ああああああ!!』
260 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 00:57:07.79 ID:hSEPbT2SO
ボスケモノ『ぐ…』フラ

ボスケモノ『!!』

魔法使い「炎」

ボアアッ

ボスケモノ『あああっ!!』

武道家「だああーっ!!」

ドズーン!!

ボスケモノ『ガアアアアアアアッ!!』ゴロゴロ

ボスケモノ『ぐ』

勇者「…」ザッ

ボスケモノ『ぐぐ…』

武道家「よし」

僧侶「ふう」
261 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 00:59:18.29 ID:hSEPbT2SO
勇者「トドメだ」

ボスケモノ『ぐぐぐ』

武道家「観念しろ」

魔法使い「…」

ボスケモノ『(本当にやられる)』

僧侶「……」ザッ

ボスケモノ『(逃げ道もねーし)』

ボスケモノ『(どうすれば…)』

ボスケモノ『(はっ)』

勇者「?」

ボスケモノ『動くな!!』

勇者「?」
262 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 01:01:16.32 ID:hSEPbT2SO
武道家「!?」

僧侶「なんですいきなり!」

ボスケモノ『手をだしたら…』

魔法使い「…?」

ボスケモノ『人質を全員殺す』

勇者「!!」

僧侶「な、そんなことさせません、する前に貴方を倒します!!」

ボスケモノ『ふふ死ぬ直前に部下に命令をテレパシーで飛ばす』

ボスケモノ『人質の近くには常に俺の同胞がいるから、勿論…可愛がるためにな』

武道家「…!」

ボスケモノ『どうする?俺を倒すなら人質も死ぬ』
263 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 01:02:54.00 ID:hSEPbT2SO
勇者「……」

武道家「……?」

勇者「仕方がない」

勇者「」カランカラン…

武道家「武器を!」

僧侶「勇者様!?」

ボスケモノ『ハハハさすが勇者様だな、物分かりがいい、勇者の鏡だぜぇ?』

ボスケモノ『こっちきて俺に殴られ続けろ』

勇者「……」

ボスケモノ『やられた借りを返さなきゃなあ』

武道家「勇者!」
264 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 01:04:43.97 ID:hSEPbT2SO
ボスケモノ『ヒヒヒ』

武道家「ぐ、貴様…」

勇者「武道家」

武道家「! しかし!!」

勇者「……いいんだ」

僧侶「駄目です!なんとか…なにか別の方法を!!」

ボスケモノ『はやく来い!!』

勇者「……俺にはこれしかできないから」

魔法使い「……」

勇者「リーダーシップもとれない、勇者としての貫禄も威厳も力もない」
265 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 01:07:34.54 ID:hSEPbT2SO
勇者「本当の勇者なら、こんな状況ぐらい打開できる、いや持ち込まれないだろう」

僧侶「勇者様…」

武道家「勇者様」

勇者「でも俺は、こうやって従う以外打開策が思い付かない」

勇者「こんな俺でも人が無意味に理不尽に傷つくのは嫌と、生意気にも思ってるからさ」

勇者「これでいいんだ」

武道家「勇者……」

僧侶「まって…」

ボスケモノ『来い!!』
266 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 01:08:23.03 ID:hSEPbT2SO

男「待ったあああああああ!!!」
267 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 01:10:48.48 ID:hSEPbT2SO
勇者「!?」

武道家「!」

僧侶「!」

魔法使い「!」

ボスケモノ『なんだあ!?』

男「はあ…はあ……」ボロ

勇者「……男…?」

武道家「馬車引き…お前なにをしに」

男「…」

僧侶「しかもボロボロじゃないですか」

男「…」

男「人質なら…」

男「全員俺が解放した!!」

武道家「!!」

僧侶「え!?」

魔法使い「…」
268 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 01:11:55.83 ID:hSEPbT2SO
勇者「……」

ボスケモノ『嘘つくなクソ野郎!!オイ野郎共、人質を…』

ボスケモノ『……』

男「……」ニッ

ボスケモノ『……連絡がとれない…まさか本当に』

勇者「……」

男「人質はみんな聖水まみれの暴れ馬の所にいます!」

武道家「……よくやった!」
269 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 01:16:39.73 ID:hSEPbT2SO
男「勇者様」

勇者「…」

男「……あの、俺は…」

勇者「俺はなんだろうな」

男「?」

勇者「お前の方が、よほど…」

男「勇者様!!」

勇者「!?」
270 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 01:17:14.23 ID:hSEPbT2SO

ボスケモノ『クソがあああああ!!』

武道家「あああっ!!」


勇者「…」

男「俺は、駄目人間だけど」

男「人から好かれたこともない駄目な人間だから…説得力とかないかもしれないけど…」

男「人質の命を優先した貴方は」

男「勇者失格ってことはないと思います」

勇者「……」
271 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 01:17:42.06 ID:hSEPbT2SO
ボスケモノ『ガアアッッ!!』

武道家「勇者様!!」

僧侶「今です!」

勇者「…」

勇者「……男」

勇者「感謝する」

男「…」

勇者「だっ!」

ザンッ
272 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 01:18:08.07 ID:hSEPbT2SO
ボスケモノ『アアアアアアアアア!!!』

ドサッ

ボスケモノ『』

僧侶「倒しました!」

武道家「ああ」

魔法使い「…」

勇者「……」

男「よし…」

勇者「……もう」

勇者「グダグタ迷わない」
273 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 01:18:45.36 ID:hSEPbT2SO
〜洞窟前〜

武道家「本当に全員避難させたのだな」

男「ええ、意識がハッキリしている人達が協力してくれましたから」

僧侶「魔物は聖水で?」

男「はい」

村娘A「ありがとうございます…」ペコペコ

村娘B「ありがとうございます」ペコ

勇者「……いえ」


勇者「……」フ…
274 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 01:19:29.61 ID:hSEPbT2SO

ザザザッ

勇者「……?」

僧侶「勇者様」

武道家「……」

魔法使い「…」

勇者「なんだ?」

武道家「貴方が勇者という立場を不安に思っていたのに気付かず、申し訳ありません」

勇者「…」

僧侶「……私も謝ります、すいません」

魔法使い「…」ペコ

勇者「……」

勇者「いい」
275 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 01:20:30.05 ID:hSEPbT2SO
勇者「これは自分の精神の弱さの問題だ、君達に非はない」

武道家「……」

僧侶「……」

魔法使い「……」

武道家「分かりました」

僧侶「それならば」

魔法使い「…支えます」

武道家「二度と、貴方が不安に思わぬように」

男「……」

男(一致団結、一件落着ってか)
276 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 01:21:54.19 ID:hSEPbT2SO
〜魔界〜

獣王「……」

海王「どうした?獣王」

獣王「報告がきた、どうやら私の部下の一人が勇者にやられたらしい」

海王「そうか、しかし魔界の外の部下ということは、主戦力ではないのだろう」

海王「そこまで考え込むことでもないではないか」

獣王「そこではない」

海王「? ではなにがひっかかるのだ」

獣王「いたらしい」

海王「?」

獣王「勇者一行の中に、死んだはずのアイツが」

海王「!?」
277 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 01:23:09.40 ID:hSEPbT2SO
〜魔王城〜


魔王「……」
278 : ◆7HPeWTM.wM [saga]:2011/05/29(日) 01:26:03.29 ID:hSEPbT2SO
ここまでです
レスくれた方ありがとうございます

そして今回も読んでくれた方もありがとうございます
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/05/29(日) 01:27:31.03 ID:nZDkyQlvo
乙!
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2011/05/29(日) 01:45:24.39 ID:QydyQVvK0
乙っした
281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage ]:2011/06/03(金) 00:15:56.71 ID:sAbxEpw50
乙です。
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/03(金) 07:39:05.42 ID:Ur+gZK63o
乙乙!
次も楽しみに待ってるわー
283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/05(日) 19:07:30.18 ID:r1ew+BfDO
そろそろ投下くるかな?
284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/11(土) 18:06:15.67 ID:+1hVeZnDO
こうしてどんどん投下間隔が延びていってそのうち来なくなるんだよな

見てるSSほとんどこんな状態だわ…
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/12(日) 16:33:19.89 ID:hJDcLeSDO
待ってるよ〜! 書いて〜! お願い〜!
286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/08(金) 16:12:20.81 ID:aySetI4DO
まだ来ないのか?
287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/05(金) 13:10:02.24 ID:gO+PjNsDO
>>1消えたか
288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/15(月) 16:04:25.34 ID:oANYArc80
今日このss知って今全部読み終わった。
めっちゃ面白かったから>>1が戻ってきてくれると嬉しいな…
289 : ◆zdnjVeqOAQ [saga]:2011/08/15(月) 20:21:16.71 ID:CRgLYV0Bo
忙しくてこれませんでしたすいませぬ
投下は9月あたりになります
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/08/15(月) 23:21:56.64 ID:rAbXrlbZo
キテター
完結するまで付き合いますよ
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/19(金) 11:59:18.27 ID:HAWVXSvDO
おお、諦めながら、久々来たけど書く気あったか
よかった
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/05(月) 19:56:13.34 ID:pEfRAAaDO
9月だよ〜
293 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/09(金) 13:57:32.21 ID:EpWZ00BSO
1です
またトリップかわったかも?
とりあえず間をあけてすいません

投下します
294 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/09(金) 13:59:36.52 ID:EpWZ00BSO
ザワザワ

町長「勇者さまに乾杯」

町人「カンパイ」

勇者「町が助かったとはいえ、まだつらい状況なのはかわりない」

勇者「無理してこのようなことはしなくてよいのですよ」

町長「いえ、こうやってばか騒ぎした方が我々は活気づくのです」

町長「それに感謝の気持ちを是非」

勇者「む…」

武道家「相変わらずお優しい方ですね、あなたは」

武道家「確かに経済的にも危ないこの町で、ただ遇されるのは抵抗ありますが」

町長「本当に大丈夫ですから、魔物にとられたお金はある程度戻ってきましたし」

勇者「む…」
295 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/09(金) 14:01:11.85 ID:EpWZ00BSO
〜村の外れ〜

ザワザワ

男「なあ暴れ馬」

暴れ馬「…」

男「みんな楽しそうだな」

暴れ馬「…」

男「俺らも参加したいなあ…」

僧侶「だったら参加すればいいじゃないですか!」ヌッ

男「うわ!」ビクッ
296 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/09(金) 14:02:55.11 ID:EpWZ00BSO
僧侶「さ、行きましょう!あ…でも馬さんは無理かな……でもでもおいしいニンジンもってきてあげますよ!」

男「ちょ、ちょっと待ってくださいっ!」

僧侶「なんですか?」

男「俺は、馬車引きなんで勇者様のパーティーに参加は…」

僧侶「なにいってるんです!関係ないですよ」

僧侶「それに今回は男さんが一番の活躍をしたんですよ」
297 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/09(金) 14:04:41.24 ID:EpWZ00BSO
男「……でも」

僧侶「どうしてそこまで謙遜するんですか?」

僧侶「確かに武道家はああ言いますけど…」

僧侶「今回は男さんは胸をはるべきと思います!」

男「……」

男「……俺、は」

男「皆さんと違って、魔王を倒す覚悟なんて微塵もありません」

僧侶「ん」
298 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/09(金) 14:07:00.50 ID:EpWZ00BSO
男「この馬車引きを引き受けたのも、人に利用された勢いでついたようなものですし」

男「それは…皆さんのお役に立てたらとは思ってますけど…」

男「死にそうになったら逃げ出すと思います、そんな中途半端なヤツがみなさんのパーティにいることがおかしいから…」

男「身の程はわきまえていよう、と」

僧侶「…」
299 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/09(金) 14:08:58.85 ID:EpWZ00BSO
僧侶「説得力ないなあ…」

男「え?」

僧侶「今日、頼まれてもいないのに聖水一つで魔物から町の人を助けたのは誰ですか?」

男「……」

僧侶「男さんは自分を悪くいいすぎですよ」

僧侶「馬車引きになった理由が、自分から望んだわけではなく人に乗せられたものだとしても!」

僧侶「男さんはスゴい人ですよ!」

男「僧侶様」
300 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/09(金) 14:10:32.75 ID:EpWZ00BSO
男(……は優しいな)

男(でも)

僧侶「…ふう」

僧侶「私が魔王討伐を目指した理由は姉なんです」

男「お姉さん…ですか」

僧侶「そうお姉さんです!」
301 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/09(金) 14:12:36.15 ID:EpWZ00BSO
僧侶「姉は、私と違ってドジで空回りばかりする人でした」

男(似てるな)

僧侶「でも優しくて、凄かったんです」

僧侶「あの歴代の中でもトップクラスの実力を有した先代勇者様のパーティに選ばれた魔法使いでした」

男「お姉さんも勇者様のパーティで…?」

男(……ということは)

僧侶「ええ、死んじゃいました。もうこの世にはいません」

僧侶「旅立つ時私に『必ず帰って、またおいしい料理を作ってくれる』と約束したのに」
302 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/09(金) 14:15:13.54 ID:EpWZ00BSO
男「……」

僧侶「私が今ここにいるのは、つまりそういうことです」

僧侶「復讐です」

男「あ…」

僧侶「それに比べたら、男さんはすごい良い方ですよ!」ビシッ

男「……」

男(俺を慰めるために、言いたくもなさそうことを言わせてしまった)

男「……」


―――ザザッ

303 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/09(金) 14:17:42.08 ID:EpWZ00BSO
ザザッ


―――コイツに魔王にならなかったら死ななかった、なんて情けない言葉使わせてしまった 

男「!?」ドクッ

僧侶「?」

男「……」ガク

僧侶「!? 男さん大丈夫ですか」

男「……」

僧侶「今、私が…」

男「そんなことありません」

僧侶「はい?」
304 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/09(金) 14:20:29.03 ID:EpWZ00BSO
男「僧侶さんは俺なんかよりすごく良い人です」

僧侶「えぇ?」

男「だって優しいし、やることは大体空回るけど…」

僧侶「ひどっ!」ガーン

男「一生懸命で見てても悪い印象なんか全くないです!」

僧侶「…」

男「だから……えーと、つまり、その……」

男「気をつかわせてすいませんでした!」

僧侶「…」
305 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/09(金) 14:22:28.83 ID:EpWZ00BSO
僧侶「じゃあ、二人ともいい人ですね!」ニヤッ

男「あ、は、はい!」

僧侶「じゃ!そういうことでパーティーに参加しましょう!ホラあのサラダ美味しそうですよ!!」

男「は、はい!」

男「……」
306 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/09(金) 14:24:55.15 ID:EpWZ00BSO
男「……」

男(さっきの、言葉)

男(俺の声?)

男(前にもあった、いきなり頭をよぎる言葉)

男(もしかして、記憶がない時の言葉なのかもしれない…)

男(……その時も俺は誰かに気を遣わせていたのか?)

男(……分からない、思い出せない)

男(だけど思い出せるなら、思い出してみたい…)
307 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/09(金) 14:25:29.88 ID:EpWZ00BSO
ここでいったんくぎります
また夜にきます
308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/09(金) 15:48:54.89 ID:WRBkifkwo
おつ!
309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/09/09(金) 18:19:24.61 ID:u5srl8kVo
キテターーーーーーーー!!
310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/10(土) 00:14:49.30 ID:MhkGQu+C0
これ完璧に記憶取り戻したら男はどっちにつくんだろう??

俺的には魔王に幸せになって欲しいなぁ
311 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/10(土) 00:29:17.03 ID:KnaJqUcSO
海王「それは…あの」

獣王「ああ」

獣王「かつて現・魔王様の継承儀式を邪魔し、魔王様の『力』を受け継いだ忌々しき男」

海王「馬鹿な…ヤツは死んだはず、我ら魔王軍が確実に仕留めたのだ」

獣王「それは分かっておる!だからこそ不可解というのだ」

海王「……く」

獣王「確実に死体も、死ぬ瞬間も見た…なのに生きている」

海王「見間違えではないのか?」

獣王「かもしれぬが」

獣王「調べる価値はある」
312 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/10(土) 00:31:35.27 ID:KnaJqUcSO
獣王「」ボソ

海王「」ボソ

――――……・・・ボソ

魔王「…………フム」

魔王「盗聴魔法解除」

魔王「来るのか…男」

魔王「確実に『私』との繋がりを絶ったはずなのに…」

魔王「運命というやつなのか」

竜王「魔王様」

魔王「」

魔王「『我』になにか用か」

竜王「会議のお時間です」

魔王「わかった」

魔王「…」
313 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/10(土) 00:32:54.21 ID:KnaJqUcSO
〜町〜

勇者「では、中央の国に伝えておきましたので」

武道家「三日で到着するだろう」

町長「ありがとうございました」

男「では」

暴れ馬『ヒィン』ザッ

町長「本当にありがとうございました」
314 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/10(土) 00:34:37.45 ID:KnaJqUcSO
勇者「では、旅を続けよう」

武道家「はい」

僧侶「はいです!」

魔法使い「」コク

男「……」

男(みなさん一段と気合い入ってるな)

男「俺も気合いいれなおさないとな」
315 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/10(土) 00:36:36.54 ID:KnaJqUcSO
それからも過酷な旅は続いた

〜草原〜

勇者「……」

男「……?」

男(どうしたんだろう?勇者様)

勇者「……よし決めた」

僧侶「? なにがです?」

勇者「神殿へいく」

武道家「神殿ですか!?」

僧侶「ふへぇ!!」

魔法使い「…」ピク

勇者「ああ、今のままじゃとても魔王に届かないからな」
316 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/10(土) 00:38:00.12 ID:KnaJqUcSO
男(神殿)

男(話には聞いたことがある)

男(そこには大神官がいて、『力』を与えてくれるという)
317 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/10(土) 00:40:42.87 ID:KnaJqUcSO
『力』を与える、というのは
例えば、普通の村人に『魔法使い』という『力』を与えて
『魔法使い』にする、ということ

結果、その村人は魔法使いの修行なくして
熟練された魔法使いになることができるのだ


男(だがそれだけではないらしい)
318 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/10(土) 00:44:29.05 ID:KnaJqUcSO
勇者「私たちのように元から何かの『力』がある者に対しては、その『力』を底上げしてくれる」


武道家「つまりそこにいって強くなろうと」

僧侶「つまりもなにもそれ以外考えられませんねえ」

魔法使い「…」
319 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/10(土) 00:46:09.16 ID:KnaJqUcSO
僧侶「確かにそれは良いアイディアですねえ」

魔法使い「…」

武道家「」

勇者「武道家、何か言いたそうだな」

男「!」

武道家「いえ」

勇者「構わん、言え」

武道家「……」

武道家「確かに神殿に行けば、短い時間で最強の力が手に入る」

武道家「しかし長い経験や鍛練に勝るものはないと私は考えます」

勇者「ふむ」
320 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/10(土) 00:47:25.65 ID:KnaJqUcSO
武道家「力があっても経験がなければ赤子が凶器を持つのと同じ」

僧侶「それも一理ありますね」

勇者「うむ」

勇者「しかし、時間も魔王たちも私たちを待ってはくれない」
321 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/10(土) 00:50:14.25 ID:KnaJqUcSO
武道家「はい…」

勇者「分かっているのだ私も、焦っていることぐらい」

魔法使い「…」

勇者「知ってのとおり先代勇者が敗れた時点で私たちの勝率はゼロに近い」

勇者「だから今回神殿で力を上げてもらうのは、経験か大きな力か、という問題以前のことなのだ」

男(神殿での底上げは魔王を倒すうえで最低必要なことと)

武道家「分かりました」
322 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/10(土) 00:51:38.67 ID:KnaJqUcSO
僧侶「むむう、それにしても神殿に行くとなれば覚悟しなければいけませんね」

魔法使い「…」

勇者「うむ」

男(そう)
323 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/10(土) 00:52:58.69 ID:KnaJqUcSO
神殿の存在
それは危険でもある
誰でも簡単に『力』が与えるようになっていたら
与えられた力を悪用する者が出てくる

だから神殿は魔物の鳥すらも飛び越えられない程、高い岩山に囲まれている
入るには岩山の中に掘られた洞窟を通るしかない
しかしその洞窟も険しく、とても普通の人間ではゴールまで辿り着けないという

そんな様々な関門が待ち構えている
324 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/10(土) 00:54:29.55 ID:KnaJqUcSO
男「……ゴク」

勇者「男よ、来るか?」

男「……」

武道家「無理はするなよ、本当に危険だ」

男「……大丈夫です、それに皆さんにとっても洞窟ごえに、この暴れ馬はいた方がいいですよね」

暴れ馬『ブル』

男「ついていきます」

勇者「分かった」
325 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/10(土) 00:55:46.46 ID:KnaJqUcSO
勇者「ではいこう、神殿へ」

武道家「はい」

僧侶「はいっ!!」

魔法使い「…」コク

男「はい」

暴れ馬『ブルル』
326 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/10(土) 01:02:23.39 ID:KnaJqUcSO
さてワケのわからない設定が出てきました
つまりドラクエのダーマ神殿と同じです
そこにレベルを上げてくれるサービスがついたようなものです

>>310
なるべくいい展開になるよう努力します
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/10(土) 01:20:32.48 ID:MhkGQu+C0
>>326 乙!
まぁ魔王が幸せになるエンドをのぞんでます
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/10(土) 01:49:04.20 ID:Td4NTSPSO
さてどうなる

329 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/11(日) 00:21:14.80 ID:e0WKu1cSO
〜魔界〜


獣王「では」

獣王「いってこい」

鳥王「やれやれ私もですか」

獣王「もしも時、コイツだけでは心配だからな」

?『……』

鳥王「そうですね」
330 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/11(日) 00:23:20.75 ID:e0WKu1cSO
〜険しい山〜

暴れ馬『フルルゥ…』

男「さすがに疲れてるな」

男(まあこんな険しい山をスラスラ登れてるだけでもすごいんだがね)
331 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/11(日) 00:25:35.15 ID:e0WKu1cSO
勇者「険しくなってきたな」

武道家「神殿に近づいてきた証拠ですね」

僧侶「こんなとこで魔物に会いたくないですねー」

男「みなさん魔物出ました!」

僧侶「んが!」

バッ

ババッ


勇者「まかせろ!」

男「はい!」

僧侶「むむむ」

男(なんか僧侶様の機嫌が悪いな)ビク
332 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/11(日) 00:28:14.74 ID:e0WKu1cSO
………

男「ふぅうー」

男(険しいうえに魔物も出放題…)

男(気がぬけないなあ)

男「うーむ」

暴れ馬『フル』

男「なんだ暴れ馬?って……!!」

男「……これはっ」

男「みなさんっ!」
333 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/11(日) 00:31:32.47 ID:e0WKu1cSO
勇者「なんだ?」

武道家「魔物ではないのか?……っ!」

僧侶「ひえ!」

魔法使い「…」

勇者「これは……」

男「たくさんの食いちぎられた、魔物の獣達の死体」
334 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/11(日) 00:38:39.88 ID:e0WKu1cSO
僧侶「餌に困って共食いですかね」

武道家「共食いではありそうだが、餌に困っての争いとは考えづらい」

武道家「あまりに一方的に食われている、争った形跡がなさすぎる」

勇者「誰か、強い捕食者に一方的に食われた」
335 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/11(日) 00:42:09.40 ID:e0WKu1cSO
男「とにかく、気をつけています」

勇者「だが心配だ、男の側に私がつく」

武道家「勇者様は駄目です、こういう役目は私が」

スッ

勇者「!」

武道家「魔法使い」

魔法使い「…」

魔法使い「…」

魔法使い「…」

勇者「分かった」
336 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/11(日) 00:43:23.60 ID:e0WKu1cSO
勇者「気を付けろ二人共」

男「はい」

魔法使い「…」コク

武道家「魔法使いならば迅速にシールドなどを張って防御できる、適任かもしれない」

僧侶「ですね」

勇者「もう一度いっておく、気をつけろ」


337 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/11(日) 00:45:06.44 ID:e0WKu1cSO
暴れ馬『ブル…』

男「……」

魔法使い「…」

男「……」

魔法使い「…」

男「…」

男(まあ今は呑気に喋ってる時じゃないし、気軽に喋りあえる関係ではないが気まずい…)

男(僧侶様とは違った大変さだ)
338 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/11(日) 00:49:29.06 ID:e0WKu1cSO
魔法使い「…」

魔法使い「シールド」

パッ

男「えっ!」

男(魔法使い様がシールドをはった!つまり…)

男(あの獣たちを食った魔物が……っ!!)


シーン


男「……」

魔法使い「…」

男「……あ、あれ…?」

魔法使い「…」

魔法使い「保険」

男(保険?つまりいつでも襲撃されていいように予備のシールドをはっただけ?)
339 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/11(日) 00:51:06.65 ID:e0WKu1cSO
魔法使い「…」

男(マイペースだなあ…)
-----

魔法使い「…」

男「…………」チリ

男「……いる…っ!」

魔法使い「」ピク

男「みなさ……」

?『カァッ』ギヤリイイイイ!!

男「!?」

?『チィ…』

魔法使い「…」バッ

男(速い……!本当に予備のシールドをはっておいてよかった)

魔法使い「…」キッ
340 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/11(日) 00:54:20.42 ID:e0WKu1cSO
勇者「!」

武道家「きたか!」

男「アレをやったのがこいつかは分かりませんが…」

?『…………』

男「とんでもないやつです!」

?『あれを見たのか』

?『その通り、アレは俺がやったのさ』
341 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/11(日) 00:56:20.08 ID:e0WKu1cSO
勇者「!」

?『アレ喜んでもらえた?俺の部下を食ったんだけどイイ作品になって…』

武道家「それ以上喋るな、不快だ」

?『オヤ、残念』

?『この俺、獣の王子の言葉が不快と』

勇者「獣の王子」

獣王子『へへ』
342 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/11(日) 00:59:38.06 ID:e0WKu1cSO
獣王子『おい、さっき俺の奇襲を防いだシールドはったのは誰だ?』

魔法使い「…」

獣王子『よかったぜ、貫けなかったし、ナメてたわ』

武道家「もういい」バッ

ガッ

獣王子『おぉっとぉ』ザザッ

武道家「…」

獣王子『なかなかイイ正拳突きだ…』

武道家「かぁっ…」ブシュ

僧侶「武道家の手が!」
343 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/11(日) 01:01:49.88 ID:e0WKu1cSO
武道家「ぐ…」

勇者「武道家の拳でさえ壊れるほど硬い体…」

武道家「獣王子の名は伊達ではない、か……」ズキズキ

魔法使い「…」

獣王子『そーいうこと』

獣王子『さーて、そろそろ本気……』

ズキ

獣王子『……!?』
344 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/11(日) 01:10:55.48 ID:e0WKu1cSO
男「……」

武道家「馬車引き!」

獣王子『……』

男「スキだらけだったんで」

獣王子『…ガバァッ……!』

勇者「喉をナイフで突いたのか!」

男「魔法使い様の攻撃力上昇魔法で強化しました」

魔法使い「…」

僧侶「よし! 防御力低下!」

ギュン

獣王子『!!』

魔法使い「風」

ザシュッ ザシャッ

獣王子『ガアアアアァァァァッッ!!』

勇者「はっ!」バッ

グアッ

勇者「トドメだ!」

獣王子『……!』

ザンッ
345 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/11(日) 01:12:50.98 ID:e0WKu1cSO
勇者「……」

僧侶「消えた?」

魔法使い「…」

男「上です!」

勇者「!」バッ

獣王子『』

鳥王『……』バサバサ

ヒュン
346 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/11(日) 01:15:16.00 ID:e0WKu1cSO
勇者「引いたか」

武道家「く…」

僧侶「大丈夫ですか?」

武道家「ああ…」

男「ふう…」

勇者「また助けられたな」

男「いえ、でしゃばってすいません」

勇者「なにをいっている」

魔法使い「…」
347 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/11(日) 01:16:37.07 ID:e0WKu1cSO
バサバサ

鳥王「あれは確かに…」

鳥王「あの男だった」

鳥王「見間違うはずがない」

獣王子『ガアアアアァァァァ!クソオオ!!』

獣王子『ちくしょう、鳥王殿、俺はまだ負けていない!戻してください!!』

鳥王「駄目です、今の貴方のケガでは無駄死するだけです」

獣王子『グゥゥゥウ……』
348 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/11(日) 01:19:49.33 ID:e0WKu1cSO
鳥王「我慢してください、貴方が油断したから悪いのですよ」

鳥王「全て自業自得です、喉を治してあげただけでも感謝してください」

獣王子『してませんでしたよ…』

鳥王「はい?」

獣王子『ナメているフリをして、本当は周囲に注意を張り巡らせていました』

獣王子『なのに、あの男その注意を掻い潜って…』

鳥王「…」

獣王子『ただもんじゃありませんぜ…やはり……』

鳥王「そうですね」

鳥王「とりあえず貴方の父からの二つの命令」

鳥王「『勇者一行にいる男があの男かの調査』は成功、『そうであれば抹殺』の指令は失敗、と貴方の父に報告しておきます」
349 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/11(日) 01:22:36.25 ID:e0WKu1cSO
〜険しい山〜

武道家「助かった僧侶」

僧侶「はいはい〜」

勇者「早くここから出てしまいたいが、この後は神殿に繋がる洞窟がある」

勇者「ここで休むか」

男「はい」
350 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/11(日) 01:24:37.98 ID:e0WKu1cSO
男「ふう」

魔法使い「ねえねえ」

男「はい」

男「…」

男「え!?」

僧侶「えあーっ!!」

武道家「なんだ?」

勇者「……」

魔法使い「そんなに驚かなくても」
351 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/11(日) 01:26:54.31 ID:e0WKu1cSO
男「え、あ、あ…な、なんでしょうか…」

魔法使い「うん」

武道家「なんだと…」

勇者「魔法使いが」

僧侶「しゃべった!」

男「……」

魔法使い「少し話がある」
352 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/11(日) 01:27:52.40 ID:e0WKu1cSO
ここまでです
ではまた
353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/11(日) 01:42:31.71 ID:P5TVfMSVo
乙かな?
354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/11(日) 05:41:47.32 ID:yxb5FcxB0
乙w それと男と魔王の幸せを祈ってる
355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/11(日) 07:51:02.01 ID:yxb5FcxB0
ageてすまない
356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/11(日) 08:25:23.30 ID:vcaVcwit0
実に面白い
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/11(日) 09:20:07.53 ID:E8Z194mZ0
乙乙 がんばれ
次を期待して舞ってる
358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/09/12(月) 19:10:04.65 ID:MleSouAQo
すごく遅くなったが再開thx!
楽しみにしてるぜ!!
359 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/19(月) 00:49:52.31 ID:yKAutwtSO
男「話…ですか?」

魔法使い「うん」

勇者「私達にも必要以上に喋らなかった魔法使いが」

僧侶「その魔法使いが喋ってまで男さんにしたい話?」

男「な、なんでしょう」

魔法使い「うん」
360 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/19(月) 00:51:24.87 ID:yKAutwtSO
魔法使い「君は何者ですか?」

男「え…?」

男「な、何者と言われましても…ただの村人ですが」

魔法使い「本当に?」

男「はい」

魔法使い「…」

魔法使い「私はボケが激しいんだよ」

男「はい?」
361 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/19(月) 00:52:55.29 ID:yKAutwtSO
魔法使い「すごくボケが激しい」

男「……」

魔法使い「なにか喋ると、その他のことを急速に忘れてしまう」

魔法使い「普段必要以上に喋らないのも、魔法の使い方を忘れないため」

僧侶「どんだけ忘れっぽいんですか!」

魔法使い「今回の質問はそのリスクをかけてでも訊いておきたいこと」

男「…」

魔法使い「だから真面目に考えて答えてください」
362 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/19(月) 00:54:40.25 ID:yKAutwtSO
魔法使い「さっきの獣の王子との戦い」

魔法使い「君は私の『強化魔法』によりヤツの喉を貫くほどの攻撃力を手に入れた」

魔法使い「だけど、ヤツの防御力は武道家の攻撃をもはじく」

武道家「……」

魔法使い「そんなやつの防御を貫くほどの力を得られるか?いくら強化したとはいえただの村人が」

男「……それは」

勇者「男…」

魔法使い「考えられる可能性は」
363 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/19(月) 01:00:45.57 ID:yKAutwtSO
魔法使い「君が真の力を隠しているか…」

魔法使い「もともと力があったか」

男「……もともと?」

勇者「……強大な力を持っていた者が弱体化しても、力の器までは小さくはならないと言われている」

勇者「大きなグラスいっぱいに注がれていた水が少量になっても、グラスまでが小さくなるわけではないように」

魔法使い「そうやって…器はそのままの大きさだから、強化魔法により力が上がると、体が元々あった力をある程度思い出し、通常の効果以上に力があがる」
364 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/19(月) 01:03:41.05 ID:yKAutwtSO
男「……」

魔法使い「そのうえでもう一度きく」

魔法使い「あなたは何者?」

僧侶「男さん…」

武道家「……」

男「……」

男「……わ」
365 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/19(月) 01:06:16.35 ID:yKAutwtSO
魔法使い「わ?」

男「……」

男「わかりません…本当です」

魔法使い「…」

男「ただ私には、自分でも分からない…記憶の空白があるのです」

魔法使い「空白」

男「そこになにかがあるかもしれませんが、分かりません」

魔法使い「…」

魔法使い「わかった」
366 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/19(月) 01:08:11.84 ID:yKAutwtSO
勇者「……」

僧侶「……」

武道家「……」

男「……」

魔法使い「いきなりすまなかった」

男「いえ…」

魔法使い「…」スタスタ

男「…」

武道家「私も、失礼」スタスタ

僧侶「あ…」
367 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/19(月) 01:11:58.88 ID:yKAutwtSO
僧侶「べ、別に魔法使いは男さんを嫌いとか、疑ってるわけじゃないですよ!」

男「はは…」

勇者「そうだ、ただマイペースなだけだろう」

僧侶「そうですマイペースなだけです!」

男「……」

男「でも…」

男「本当にそうなのかもしれません」

男「先程申し上げた通り、私には記憶の空白があります」

男「と、いってもどれくらいの間の記憶が失ったのかすら分からないんですが…」

勇者「男…」

僧侶「男さん」
368 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/19(月) 01:14:40.00 ID:yKAutwtSO
男「でも今回の魔法使い様のおかげで、少し推測がつきました」

男「自分でいうのもおかしいですが、私は…」

男「何か力もってた奴だったのかもしれません!」

僧侶「……へ」

勇者「……む?」

男「それで、調子にのって神様から罰を与えられ、力をとりあげられて記憶を失ったとか…」

勇者「……」

僧侶「……」

男「……あ」
369 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/19(月) 01:17:15.40 ID:yKAutwtSO
男「ああっ!も、申し訳ありません!調子にのって馬鹿な妄想を話し続けてしまいました…!」

勇者「……いや、それはいいのだが…」

勇者「今まで消極的なことばかり言っていた男らしくない、前向きな姿勢だな、と」

男「……」

勇者「……」ニッ
370 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/19(月) 01:19:05.11 ID:yKAutwtSO
僧侶「うんうん」

男「……おそらく」

男「その失った記憶を、私は」

男「取り戻したいから、だと思います」

僧侶「……」

勇者「そうか…」
371 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/19(月) 01:21:28.70 ID:yKAutwtSO
男「無礼を、失礼しました」

僧侶「もう、またそんなことを!さっきまでの勢いはどうしました?」

男「しかし」

僧侶「せっかく、本当の男さんを見たような気がしたのに」

勇者「うむ」

男「……」

僧侶「私はさっきの男さんが、好きだなあ」

男「え?あ、ありがとうございます」

勇者「うむ」
372 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/19(月) 01:23:03.43 ID:yKAutwtSO
---

武道家「……」

魔法使い「…」

武道家「魔法使い」

魔法使い「…」クル

武道家「やはり私には喋ってくれないか」

武道家「…」

武道家「ヤツには」

武道家「男には、そんなに価値があるのか」

魔法使い「…」
373 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/19(月) 01:24:55.57 ID:yKAutwtSO
武道家「私より…」

武道家「このパーティーに必要な存在か」

魔法使い「…」

武道家「……」フルフル
374 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/09/19(月) 01:29:06.48 ID:yKAutwtSO
今回はここまでです
また小難しいこといってます。なんで簡単に作れないんだろう

細かい設定は無視してください
どうせたいしたことに使われませんから

ではまた
375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/19(月) 02:19:26.77 ID:wvGPeX8Do
おつおつ
376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/19(月) 14:24:29.14 ID:wruCNuEwo
乙!
男と魔王が会う時をwwktkしながら待ってます
377 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 22:45:27.64 ID:k5xjvLUSO
また間をあけてすいません
投下します
378 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 22:46:38.75 ID:k5xjvLUSO
〜神殿につながる洞窟前〜

勇者「ついたか」

僧侶「ものすごく緊張です…」

武道家「気を引きしめねばな」

男「はい」

武道家「馬車引き」

男「はい?」

武道家「お前は自分の身を守ることだけ考えていろ」

男「はい」
379 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 22:47:21.63 ID:k5xjvLUSO
武道家「山の町や獣王子の件でのお前の功績、確かに誉められるようなものだが…はっきりといえば偶然だ」

魔法使い「…」

男「はい」

武道家「この洞窟は本当に危険。偶然はおこらないものとして行動したい」

男「承知しています」

僧侶「もー言い方がキツイです」勇者「……」
380 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 22:47:54.27 ID:k5xjvLUSO
勇者「では入るぞ」

武道家「はい」

僧侶「は、はい」

魔法使い「…」コクン

男「はい」
381 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 22:48:36.15 ID:k5xjvLUSO
〜神殿につながる洞窟〜

暴れ馬『…』

ギャギャギヤ

勇者「!」

僧侶「なんですかっ、この鳴き声!」

ギャーギャギャギヤ

勇者「魔物か…いやこれは…」

ガブガブ

武道家「うっ!」
382 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 22:49:08.04 ID:k5xjvLUSO
僧侶「いたぁっ!なにかに噛まれました」

ギャギャギヤ

男「……コウモリです!」

ギャギャギヤ

勇者「見えるのか!」

男「はい!」

武道家「…っ」ギリ

魔法使い「火」

ボワァッ

ギャー

男「逃げていきました」
383 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 22:50:29.81 ID:k5xjvLUSO
勇者「視界が悪いうえに、おそろしい野生動物」

僧侶「注意が必要ですね」

武道家「魔物でないのなら、追い払うのは容易」

男「しかし…暴れ馬すらコウモリの接近に気が付かなかったんですよ、ある意味魔物より」

暴れ馬『ブル』

武道家「…」ギッ

男「す、すいません」

勇者「武道家。男のいう通りだ。油断は禁物だ」

武道家「……っ」

武道家「はい」
384 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 22:51:44.98 ID:k5xjvLUSO
男「……」

魔法使い「…」


武道家『男はそんなに重要な存在か。私より』


魔法使い「…」

武道家「……」
385 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 22:54:21.42 ID:k5xjvLUSO
武道家(勇者様のいう通りだ)

武道家(焦り軽率な発言をするなど…)

武道家(やはり…馬車引きの方が役に…私はそれ以下の価値…?)

武道家(いや!取り返せばいい。私も役に立つ)

武道家(立たないと…)

武道家「……」ギシギシ
386 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 22:55:49.81 ID:k5xjvLUSO
僧侶「……」

僧侶(なんか駄目なピリピリ空気のよかん…)

僧侶「と、とにかくワナとかにも気をつけましょうねぇ…」グラ

僧侶「……………」

僧侶「え」

勇者「どうした!」

僧侶「あ、足場がない…お、落ちるぅ!!」

男「くっ!」バッ

武道家「!」

武道家(……また)
387 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 22:56:19.75 ID:k5xjvLUSO
武道家(私より迅速に動き、役に立つ…)

武道家「私より…」

ガッ

男「う、ぐぐ…」

僧侶「すいません…」

武道家「私の力も貸す…」ザッ

勇者「私も…」ザッ

武道家・勇者「え」

ゴチン
388 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 22:57:41.16 ID:k5xjvLUSO
勇者「はぐ…」ガク

武道家「すっ、すいませ…」タジ…

スカッ

武道家「な…?」グラ

勇者「…!」
389 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 22:58:10.90 ID:k5xjvLUSO
武道家(こっちも落とし穴…!)

ガッ

勇者「……ぅ、大丈夫…か」

武道家「す、すいません」

勇者「いま、引き上げる…」

武道家(……どうしてこんなに足を引っ張って…)
カサカサ

武道家「…かさかさ?」

武道家「ひっ…」
カサカサ

勇者「?」
390 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 22:59:03.92 ID:k5xjvLUSO
武道家「くっ、クモ!?」

勇者「なんだ!?」

武道家「クモが、私のうででで!!」ジタバタ

勇者「落ち着け、暴れるな…!」グラ

勇者「あ」


男「勇者さん!?」

魔法使い「…!」
391 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 23:00:20.37 ID:k5xjvLUSO
男「う…」

魔法使い「…」

僧侶「どうしたんですか?早くあげてくださいー」

男「すっ、すいません」


魔法使い「仕方ない、力上昇」

男「おっ、よっと」

僧侶「うわっ…やっとあがれた…」

魔法使い「こんな無駄なことにMPを使わせない」

僧侶「ごめんなさい…って勇者様と武道家は…」

男「……もう一つの落とし穴に」
392 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 23:01:13.42 ID:k5xjvLUSO
ちょっとストップします
少ししたら戻ります
393 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 23:29:07.06 ID:k5xjvLUSO
勇者「ぐ…」

武道家「……」

勇者「大丈夫か?武道家」

武道家「はい…」

勇者「ならばよい、よかったただの地面で。だがまいったな、どう上がれば」

武道家「……」
394 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 23:29:52.13 ID:k5xjvLUSO
武道家「お咎めは…」

勇者「…」

武道家「周りが見えておらず勇者様を邪魔し、落とし穴にはまり、クモごときに乱心し、仲間とはぐれるという失態をおかした私へ」

勇者「…少し落ちつけ」

武道家「私は魔王討伐のための勇者様のパーティーに加えていただいたことに誇りをもっていました」

勇者「……」

武道家「選んでいただいたからには期待にお応えし、お役に立とうとしました…」

武道家「っぐ…」
395 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 23:30:34.26 ID:k5xjvLUSO
武道家「なのに…今の私は……役に立つどころか足を引っ張り…」ポロ

勇者「武道家」

武道家「っ、うっうっ…」ポロポロ

勇者「……」
396 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 23:31:15.80 ID:k5xjvLUSO
勇者「これで涙をふけ」

武道家「も、申し訳ありません!大丈夫です…」ゴシゴシ

勇者「……」

武道家「見苦しい姿を見せてしまい…」

勇者「これは先代の勇者様のうけうりなのだが」

武道家「…?」

勇者「絆で繋がってこそ屈強なパーティーが生まれる」

勇者「私はそういうパーティーを目指しているのだ。だからこそ思うのだが…」

勇者「少しの失敗で失格とか、言いたくはない」
397 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 23:31:41.66 ID:k5xjvLUSO
武道家「……」

勇者「お前は失敗を最後にこのパーティーをやめるつもりか?」

武道家「……」

武道家(しかし…)

ガァン!
398 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 23:32:16.00 ID:k5xjvLUSO
勇者「!」

武道家「な!?」

洞窟の主『がっはっは』

勇者「魔物か」

洞窟の主『違うね』

勇者「ならば争いは無意味だ、通していただきたい」

洞窟の主『いやだね』

武道家「なぜ?」

洞窟の主『この先にある神殿の庭の果物は俺のもの。他のヤツには渡さない』

勇者「神殿の庭…つまりこの先に神殿が?」
399 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 23:32:43.29 ID:k5xjvLUSO
武道家「私たちは果物をとったりはしない」

洞窟の主『お前ら人間だろ?』

勇者「ああ」

洞窟の主『人間ってのは嘘つきだからな。自分達の利益のために呼吸をするように嘘をつく。だから通さない』
400 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 23:33:15.32 ID:k5xjvLUSO
洞窟の主『ガァッ!』バガーン

勇者「うっ!」

武道家「ならばこちらも戦うしかない…」ザッ

勇者「殺すのは無しでいくぞ。彼は魔物ではないし悪気はない」

武道家「分かっています」

武道家「私がアイツを引き付けますので、勇者様は死角から攻撃を」

勇者「気を付けろ」

武道家「はい」
401 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 23:34:38.87 ID:k5xjvLUSO
洞窟の主『ガアアア!』

武道家「はぁあああっ!」ダダダダダッ

洞窟の主『チョロチョロ動きやがって』

武道家「あああああ!」ダダダダダ

洞窟の主『人間にしては早いな』

武道家「!?」

ゴギッ

武道家「…が」ドサ

勇者「武道家!」

洞窟の主『俺にとっては遅い…』
402 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 23:35:18.92 ID:k5xjvLUSO
武道家「……」

勇者「武……家……夫か」

武道家(やはり駄目だ)

武道家(私に勇者様についていく価値はない)

勇者『少しの失敗で失格とか言いたくはない』

武道家(そう言ってくれたが…その優しさにすら応えられない無能だ)

武道家(世の中は役に立たなければ捨てられるもの)
403 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 23:35:51.91 ID:k5xjvLUSO
十数年前

武道家「お父さんお母さん」

武道家母「いいこにしてた?」

武道家「うんっ」

武道家父「今日はお城の武道大会があったぞーそれでお父さんなー」

武道家母「お父さんが優勝よ。王様に誉められたのよ」
404 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 23:36:27.69 ID:k5xjvLUSO
武道家「すごいお父さん!」

武道家父「俺が言おうとしてたのに!」

武道家「お父さんはかっこいいなあ」

武道家父「ははは」

武道家「いつか勇者様のパーティーに入れるよ!」

武道家父「……そうなんだ」

武道家「え?」
405 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 23:36:56.06 ID:k5xjvLUSO
武道家母「お父さん、勇者様のパーティーに選ばれたのよ」

武道家「ほんと!すごい!」

武道家父「おいおい泣いてくれよ。旅に出るからしばらく会えないんだぞ」

武道家「武道家たるもの簡単に涙を流さない!」

武道家母「まあ」

武道家父「一本とられた!」

はっはっは
406 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 23:38:18.37 ID:k5xjvLUSO
お城の僧侶「ダメですね」

武道家父「…」

王様「そうか」

お城の僧侶「この方のかかった病気は、誰にも治せない病気です」

王様「どうしても駄目なのか?」

お城の僧侶「現代の回復魔法では…」

王様「仕方ない」

武道家父「…」

王様「菌がうつったら大変だ。誰もいない場所に監禁しておきなさい」

王様「死んだら、その場所ごと焼き尽くせ」

お城の僧侶「はい」
407 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 23:38:45.18 ID:k5xjvLUSO
武道家「お父さんは」

武道家母「……」

武道家「旅はまだなのになんでいないの?」

武道家母「うっ…」

武道家「お母さん、涙は見せちゃダメだよ」

武道家母「うっうっ…」
408 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 23:40:23.19 ID:k5xjvLUSO
===

武道家(それから数年後、父の受けた扱いと最後をしった)

武道家(あれだけ期待されていた父が、使えなくなると同時にあの扱い…)

武道家(私もああなるのは嫌だ…母を泣かせるのは嫌だ…)

勇者「武道家っ!」

武道家「……」ハッ

武道家「勇者…さま」
409 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 23:43:22.10 ID:k5xjvLUSO
勇者「よかった…私も僧侶ほどではないが軽い回復魔法を使える…効いたか?」

武道家「……はい」

勇者「……」

勇者「今は逃亡に忙しいが一つだけ言おう」ダダダダ
武道家(逃亡…?そういえば揺れて…)
ダダダダダ

ダダダダダ

武道家(って、はっ!私勇者様に抱えていただいて…)
410 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 23:44:31.66 ID:k5xjvLUSO
武道家「申し訳ありません!お荷物になって…いま降ります…!」

勇者「男は確かに馬車引きにしては、すごい。功績をあげている」

武道家「…」ピク

勇者「だが男は魔物を素手で倒せない。力仕事はできない」

武道家「…」

勇者「お前のできることで、男ができないことがたくさんある」
411 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 23:45:54.87 ID:k5xjvLUSO
勇者「……お前の感じていることなんて、それぐらいのことだ」

勇者「私はお前が必要以前に、お前にいてほしいのだ」

武道家「……勇者様」
412 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 23:48:06.06 ID:k5xjvLUSO
武道家「勇者様」

勇者「…」

武道家「お手数かけました…」

勇者(目の色が変わった…)

勇者「ああ…」

武道家「くだらぬ悩みのために申し訳ありませんでした。この詫びは」

洞窟の主『まてこらあ!』

武道家「とらせていただきます」
413 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 23:49:38.33 ID:k5xjvLUSO
洞窟の主『おっ』

武道家「…」

洞窟の主『逃げるのをやめて観念したか』

武道家「…ふぅー」

洞窟の主『なんだ?スースー息をはいたりして』

武道家「…」

洞窟の主『!』ゾク
414 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 23:51:14.59 ID:k5xjvLUSO
洞窟の主『なんか、ヤバイ…』

武道家「はあっ」

ビュゴッ

洞窟の主『ぐわああああああ』ギューン

バッガーン

洞窟の主『』

武道家「…」

勇者「よし」
415 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 23:53:41.69 ID:k5xjvLUSO
男「います!勇者様と武道家様がいます」

僧侶「ほんとですか!」

勇者「僧侶と男たち…?」

僧侶「勇者様ど武道家…やっと見つけました」

勇者「お前たち、あの穴を降りてきたのか」

僧侶「もちろんですよ!ほっておけません」

僧侶「ナビゲーターは男さんがしました!」

男「…」ペコ
416 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 23:54:55.48 ID:k5xjvLUSO
勇者「すまない」

男「そんな、お礼を言われることでもありません!」

武道家「すまない」

男「!?」

僧侶「はり?」

勇者「…」
417 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 23:56:36.58 ID:k5xjvLUSO
武道家「私の失態のせいで迷惑かけた」

僧侶「気にしない気にしない」

武道家「それと…」ジ…

男「……わ、私ですか?」

武道家「今までの態度、すまなかった」

男「…」
418 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 23:58:49.49 ID:k5xjvLUSO
男「そんな、武道家様は当たり前のことを…」

武道家「いや…」

武道家「ただ自分の地位を、価値が脅かされることを恐れていただけだ」

魔法使い「…」

武道家「つまらぬことで、本当にすまなかった…男」

僧侶「あ、名前を!」
419 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/02(日) 23:59:36.76 ID:k5xjvLUSO
男「…」

僧侶「名前よびましたね!」

武道家「それがどうした!」

勇者「ふふ」

魔法使い「…」

男「……」
420 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/03(月) 00:02:32.30 ID:lcvUbTlSO
僧侶「男さん、やっと認められましたね!」

勇者「認めたというか素直になったのだな」

男「…は、い」

男(これは本当に…認められたのか武道家様に…?)

男(俺みたいな、ヤツが…?)
421 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/03(月) 00:04:18.91 ID:lcvUbTlSO
ここまでです
魔王出せなくてすいません
ではまた
422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/03(月) 00:31:36.15 ID:khrYJJpSO
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/03(月) 00:36:56.93 ID:vwjWftQJo
おつおつ
424 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 00:07:41.84 ID:jYuTAJuSO
獣王「そうか、やはり」

鳥王「はい」

鳥王「勇者一行にいるのはヤツでした」

獣王「……むう」

鳥王「どうなさいます?」

獣王「消す、しかないだろう」
425 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 00:08:28.39 ID:jYuTAJuSO
鳥王「……」

獣王「ヤツはかつて魔王継承儀式の邪魔をした、害だ」

鳥王「はい」

獣王「我が馬鹿息子は」

鳥王「失敗りまして、ただいま休養中です」

獣王「そうか」

獣王「やはり我が行く」

カツ

魔王「どこへだ?」
426 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 00:10:16.50 ID:jYuTAJuSO
鳥王「!?」バッ

獣王「魔王様!?」

魔王「今の話…」

魔王「どこへ行くときいている」

獣王「……」
427 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 00:11:04.99 ID:jYuTAJuSO
鳥王「魔王様…」

獣王「かつて魔王様の継承儀式を邪魔した男を抹殺しに、です」

魔王「…」

鳥王「獣王」

獣王「……確かに死んだはずでしたが」

鳥王「獣王!」

獣王「なにを恐れる。我はただ我が軍の害を払おうとする任務を報告しているだけだ」
428 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 00:11:47.59 ID:jYuTAJuSO
魔王「……続けろ」

獣王「はっ」

獣王「何故か生きておりまして、勇者一行に加わりここを目指しているとか」

魔王「本物という確証は…」

獣王「我が息子である獣王子が撃退されました」

獣王「かつて厳重な魔王の城の警備を潜り抜けたのと同じくらい信じられない技術です」
429 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 00:12:19.76 ID:jYuTAJuSO
魔王「…」

獣王「獣王。軍のため獣王軍総力をあげヤツを始末します」

魔王「……ほうっておけばよい」

獣王「!?」

鳥王「…」

魔王「仮に我々を討伐せんとヤツが再びここを目指していたとしてもそれが何だ?」

獣王「ヤツは…」

魔王「ヤツにはもはや、魔王の力はないのだぞ」

獣王「しかし…力以上にヤツには、こざかしい技術が…」
430 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 00:12:50.78 ID:jYuTAJuSO
鳥王「私からも、おそれながら申しあげます魔王様」

鳥王「現在勇者一行は神殿に向かっております」

魔王「…」

鳥王「そこでヤツに力が…」

魔王「なんだ?」
431 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 00:13:26.67 ID:jYuTAJuSO
獣王「!」

鳥王「!」

魔王「貴様らはそんな技術や『魔王の力』ごときに、我が敗北するとでも?」

鳥王「……」

獣王「……」

魔王「ならば行け、獣王よ」

獣王「……は?」

魔王「そこまでいうのならば殺してこい、男を」

獣王「は、はっ!了解しました!!」
432 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 00:13:59.98 ID:jYuTAJuSO
バババババッ

鳥王「……」

魔王「……」

鳥王「魔王様…」

魔王「ハァ…ハァ…」

鳥王「少し休まれては…」

魔王「……」
433 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 00:14:30.05 ID:jYuTAJuSO
魔王「そんなヒマはないだろう」

鳥王「……」

魔王「下がれ」

鳥王「……はっ」

魔王「……」
434 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 00:15:42.84 ID:jYuTAJuSO
竜王「男抹殺を許可したそうで」

魔王「……」

竜王「よいのですか?」

魔王「なにがだ」

竜王「獣王が特定した理由、酷く根拠が小さなものとはいえ…」

竜王「もしその勇者一行にいる者が真に男ならば…」

魔王「フッ竜王、そなたとしては万歳なのではないか?」

竜王「……」
435 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 00:17:12.14 ID:jYuTAJuSO
魔王「……いいのさ」

竜王「…」

魔王「男が、技術があろうが、神殿に行こうが、我の敵ではない」

魔王「しかし、男が生きていて困る魔物もいる」

竜王「……」
436 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 00:18:30.76 ID:jYuTAJuSO
竜王「……魔王様」

魔王「だからさ」

魔王「そなたと同じ、私情は持ち込まない、だけだ」

竜王「はっ」

魔王(それに…)

魔王(内に宿る凶暴性がそうするよう、我を刺激する…)
437 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 00:19:00.35 ID:jYuTAJuSO
竜王「…」

竜王(この方は酷く優しい…)

竜王(本物に魔王様の凶暴性を受け継いでいるのか疑問に思う程に)

竜王(人間時代の優しさが凶暴性を中和しているのか?)

竜王(それとも……)
438 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 00:19:52.23 ID:jYuTAJuSO
〜神殿に繋がる洞窟〜

勇者「はあっ!」ブン

僧侶「勇者様、どうですか?」

勇者「空振りだ!」

武道家「男!」

魔法使い「光」ポウ

男「ありがとうございます、より見えやすくなりました!」

男「………」ジッ
439 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 00:20:41.96 ID:jYuTAJuSO
男「左です!」

武道家「よし!」ブンッ

ドガ

『ギャーッ!』

ドサッ

武道家「よし」

勇者「戦闘終了だ」
440 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 00:21:20.23 ID:jYuTAJuSO
僧侶「おつかれさまです!」パタパタ

男「僧侶様!その方向にそれ以上進むと!!」

僧侶「えっ!」ピタ

勇者「……セーフか」

僧侶「よく分かりますね」
男「魔法使い様の光がありますから」

僧侶「私にはそれでも何も見えません」
441 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 00:21:48.76 ID:jYuTAJuSO
パアアァァァァ

勇者「……やったぞみんな」

武道家「長かった」

僧侶「ほー」

魔法使い「…」

男「……」


勇者「神殿到着だ!」
442 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 00:23:18.84 ID:jYuTAJuSO
ここまでです

いつもレスありがとうございます励みになります

ではまた
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/10/09(日) 04:18:06.26 ID:KU0VbOua0
乙でしたー
ここでやっと魔王様フラグ
男が何の力を手にいれるか楽しみじゃのう
444 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 21:54:54.18 ID:jYuTAJuSO
もういちど投下します
445 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 21:55:41.78 ID:jYuTAJuSO
〜洞窟・出口〜

勇者「ここが神殿」

僧侶「きれいですねぇ…」

武道家「山に囲まれていなければ世界屈指の観光名所にでもなっていただろうな」

魔法使い「…」

男「ですね」

勇者「では行くぞ」

武道家「はい」

僧侶「はいっ」
446 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 21:56:25.63 ID:jYuTAJuSO

男「…」

男(認められた…)

男(こんな俺なのに?自分の過去すら覚えていない俺を)

男(勇者様、武道家様、僧侶様、魔法使い様…魔王を討伐するためのパーティ)

男(そんな方たちに認められた…本当だとしたら…)

男(少しうれしい、かもしれない)

勇者「男?」

僧侶「遅れてますよっ!」プンプン

男「は、はい!」
447 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 21:57:07.62 ID:jYuTAJuSO
〜神殿・入り口〜

門番A「旅の方、よくぞいらっしゃいました」

門番B「ここは貴方の『力』を開花させ、強化する神聖な場です」

門番C「御用ですか」

勇者「はい」

門番A「そうですか」

門番B「では」

門番C「悪しき心がないかを調べます」
448 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 21:57:49.55 ID:jYuTAJuSO
勇者「…」

武道家「…」

僧侶「…」

魔法使い「…」

門番A「完了しました」

門番B「合格でございます」

門番C「では、お通りください」

勇者「ありがとうございます」
449 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 21:58:30.21 ID:jYuTAJuSO
門番A「しかし」

男「…」ビク

勇者「なにか…」

門番A「その馬は」

門番B「私たちで」

門番C「預からせていただきます」

暴れ馬『ブル』

男「やはりですか」

門番A「貴方たちはお通りください」
450 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 21:59:23.58 ID:jYuTAJuSO
〜神殿〜

勇者「む」

武道家「……」

僧侶「中はより一層キラキラしてて…」

魔法使い「綺麗」

勇者「光の魔法を灯り代わりにしているか」

男「山に囲まれていて、太陽の光などは、ほぼ遮られてしまいそうですからね」
451 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 22:00:06.81 ID:jYuTAJuSO
兵士「こちらへ」

勇者「はっ」

兵士「ここへ」

勇者「ここが…」

兵士「大神官様がお待ちしておられます」


兵士「ボソ」

側近「入られよ」

勇者「はっ…」
452 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 22:01:08.00 ID:jYuTAJuSO
〜大神官の間〜

勇者「……」

武道家「…」

僧侶「一段と」

魔法使い「綺麗」

男(流れで入ってしまったけど…)

側近「大神官様の御前です」


大神官「お待ちしておりました」
453 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 22:03:58.56 ID:jYuTAJuSO
勇者「はっ!」

武道家(こ、このような年端もいかぬ方が…)

僧侶(すごい美少年ですっ!)

魔法使い「…」

男(大神官様とは思えない…)
454 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 22:04:41.57 ID:jYuTAJuSO
大神官「貴方たちがここへ来ることは存じておりました」

勇者「は」

大神官「勇者、様。でありますね」

勇者「はい、中央の王国の王により任命された勇者とその一行であります」

大神官「…」

大神官「貴方たちの極めんとする、『力』」

大神官「…勇者」

勇者「はっ」
455 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 22:05:45.56 ID:jYuTAJuSO
大神官「…武道家」

武道家「はっ」

大神官「…僧侶」

僧侶「はぃいっ!」

大神官「…魔法使い」

魔法使い「はい」

大神官「……?」

男「…」
456 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 22:06:44.55 ID:jYuTAJuSO
大神官「奥の方は」

勇者「この者は我々の仲間でございます」

男「はっ」

勇者「極めようとする『力』はないのですが、頼れる仲間ですので」

大神官「…」

男「…」

大神官「そうですか。魔王を討伐する勇者様の傍らに置くというのならば、この方の『力』を引き出すことにしましょう」
457 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 22:07:41.72 ID:jYuTAJuSO
男「!」

大神官「最近雲行きが怪しいですから」

勇者「…と、いいますと」

大神官「魔物達は数年前、理由は不明ですが壊滅的危機に陥り、衰えました」

大神官「しかし最近の魔物は強くなっている。貴方たちも感じませんでしたか?」

勇者「恥ずかしながら」

大神官「数は少なくなったにもかかわらず、個人の力が強くなっている」

大神官「つまり彼らが優秀な指導者を得たということ、その指導者の存在はいうまでもありませんね」

男(魔王…)
458 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 22:08:39.14 ID:jYuTAJuSO
勇者「承知しております、その魔王に先代勇者様は…」

武道家「……勇者様」

僧侶「…」ギリッ

魔法使い「…」

大神官「……このままでは現在の強力な魔王の元で、質の高い今までに類をみない魔王軍が生まれることでしょう」
459 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 22:09:19.92 ID:jYuTAJuSO
大神官「長くなりましたが…それに対抗するために、そこの男の『力』を目覚めさせ、強化しましょう」

男「はい!」

大神官「ではお近づきください、はじめに貴方にふさわしい『力』を探します」

男「わ、私が一番目ですか?」

勇者「大神官様のご指名だ」

武道家「いけ、遠慮するな」

僧侶「ファイ…、いや、頑張れ!ですよ!」

魔法使い「…」クイ

男「はい…」

大神官「…」スッ

ピタリ
460 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 22:10:16.99 ID:jYuTAJuSO
男(おでこピッタリ…)

大神官「…………」

大神官「……見えました」

勇者「男は、どんな力に適しているのですか…?」

大神官「……盗賊、です」

男「盗賊…(やっぱり…昔の経験からかなぁ…)」

武道家(やはり、といったところか)

僧侶(気配絶ちや気配察知、目とかも異常によかったですからねえ)

大神官「……それと」

勇者「もう一つ、あると…?」
461 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 22:11:01.95 ID:jYuTAJuSO
大神官「……」

男「?」

勇者「どうなされたのですか?」

側近「大神官様?」

大神官「いや、大丈夫だ」

男「……」

大神官「あまりに、信じがたきこと、でしたので…」
462 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 22:12:13.41 ID:jYuTAJuSO
大神官「その方が適している『力』は、盗賊と…」

男「…?」



大神官「魔王」



勇者「!?」

武道家「なっ!?」

僧侶「…え」

魔法使い「…」

男「」
463 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 22:14:45.04 ID:jYuTAJuSO
男「えっ…」

勇者「そんなっ、なにかの間違いでは…」

側近「大神官様は絶対であります」

勇者「しかし…」

大神官「ええ」

大神官「『生物は無限の可能性をもつ、生物であれば、英雄であろうが王であろうが百姓であろうが、どんな『力』をも求め極められる可能性がある…」

大神官「…ただ、勇者と魔王を除けば』」

大神官「始まりの大神官様の残されたお言葉です」
464 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 22:16:28.53 ID:jYuTAJuSO
大神官「勇者と魔王だけはその才能のある者にしかなれず、大神官といえど与えることはできません」

勇者「…………つまり、男は、魔王の才能があるだけ……」

大神官「と、思いたかったのですが」

勇者「!」

大神官「王に任命されたものが『勇者』とされるように…」

大神官「魔王にも『魔王』と呼ばれるための段階があります」

武道家「つ、つまり」
465 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 22:18:39.65 ID:jYuTAJuSO
大神官「魔王は脈々と受け継がれる『魔王の力』を継承してはじめて『魔王』とされます。今の男にその『魔王の力』は見当たりませんが」


魔法使い「……その力だけの『器』がある…」

大神官「はい」

側近「『力』を鍛えるとは、『器の水』を増やすことではなく『器』を大きくすることに例えられます」

大神官「力を失ったり力が衰えたとしても『器』の大きさは変わりません。つまり『器』の大きさとは、人生で得た『最大の力』の記録のようなもの」

側近「無駄な補足をしますと大神官様はその『器』の大きさが見えるのであります」

勇者「つまり男は、魔王の力を、受け継いで…いた…」

男「」
466 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 22:19:46.17 ID:jYuTAJuSO
僧侶「……男さん」

男「」ビクッ

僧侶「うそ、ですよね」

男「僧侶さま……」

武道家「…」

魔法使い「…」

勇者「……男」

男(皆さん…)
467 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 22:21:03.69 ID:jYuTAJuSO
男「知らない」

大神官「しかし」

男「知らない!俺は魔王の力なんか知らない!!」

僧侶「大神官様は絶対であります」

男「知らないっ!本当です!!信じてください!!!」


(俺には数年の間の記憶がない)


男「………あ」
468 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 22:21:49.99 ID:jYuTAJuSO
男(まさか)

勇者「…」

男(まさかまさか)

武道家「…」

僧侶「…」

魔法使い「…」

男「うっ!」

ダッ
469 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 22:23:11.89 ID:jYuTAJuSO
男「はっ、はっはっ…」ダダダダダ

ダダダ

男「はぁ…はぁっ、はぁっ、はぁ…」ダダダダダ

ダ…

男「……っ」

男「なんだよ、俺」

男「せっかく皆さんから認められたのに…いや…」

男「隣で魔王を討伐する仲、とまでじゃなくても…気を許しあえるような仲になれたのが…うれしかったのに」
470 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 22:25:45.55 ID:jYuTAJuSO
男「やっとだったのに…」

男「なのになんだよ、なんで俺…魔王の力なんて受け継いでんだ!」

男「馬鹿か、俺はっ!!」

男「……」


??「馬鹿、か…その通りだな大罪人よ」

男「!?」バッ

男「魔物…!?どうやってここに…?」
471 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 22:26:52.83 ID:jYuTAJuSO
〜洞窟〜

洞窟の主『』


〜神殿・入り口〜

門番A「」

門番B「」

門番C「」

暴れ馬『ブ…ル……』
472 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 22:28:32.90 ID:jYuTAJuSO
獣王「…………」

獣王「やはり貴様はあのとき継承式を邪魔し、魔王様の力を奪い取った忌々しき男か」

男「…」

獣王「確実に貴様の死をこの目で見たはずなのだが、生きていたのならば仕方がない」

男「…」

獣王「我が名は獣王!罰を下しにきた者だ!!」

獣王「貴様によって我々が受けた屈辱、死をもって償うがよい!!」

男「…」
473 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 22:30:29.02 ID:jYuTAJuSO
男「魔王魔王、と」

男「そんな記憶はない、勘違いするな」

獣王「……」

男「俺は!『勇者様のパーティーの馬車引き』だ!!覚えておけっ!!!」

獣王「シラを切るかぁああっ!!」

男「魔王になんか一切関係しないっ!」

獣王「死ねえぇい!!」

男「勇者様のパーティーの一員としてお前を倒す!」
474 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/09(日) 22:32:28.86 ID:jYuTAJuSO
ここまでです

また難しく長文だらだらです、すいません

それとレスありがとうございます!

ではまた
475 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/09(日) 22:33:40.24 ID:Twz/nskt0
なんか魔王が可哀想だな。早く男が記憶を取り戻す事を願っている
476 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/12(水) 23:10:00.15 ID:2vMtLv/SO
熱い展開乙
477 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/14(金) 00:52:16.42 ID:JbZv7O/SO
天井に設置されている魔法の光に照らされ、眩しいくらい輝いている石たちによってできている神殿。
その中で大神宮の間の次に広くとられている大広間に、魔物と人間は立っている。

二つの影は動かない、お互いがお互いを睨み、警戒し、そして殺意をぶつけている。

魔物は全長が四メートル以上はあり、獅子のように威厳ある風貌。その体躯に武士の鎧を身につけ、腰には二メートルある刀を下げている。
そこらの獣でさえ、すくみあがるだろう鋭い目付きと牙で、相手にメッセージを送る。


『殺す』と
478 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/14(金) 00:53:19.34 ID:JbZv7O/SO
そんな全身を包む黄金の体毛をなびかせている獣の王と対立している人間は丸腰。
防具も兵士が訓練の際に使用しているような薄い鉄の鎧、と殺されにきたとしか思えない格好でいる。
しかしその外見とは反対に、人間自身は万全の構えをとっていた。
呼吸を整え、動きに警戒しながら頭の中ではこれから行われる戦闘を予想し描く。


そんな盗賊であり魔王の力を受け継いだこともある人間、男
獣の魔物の頂点に君臨し、統率している獣王


すでに勝敗のみえた戦いが始まる。
479 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/14(金) 00:54:51.85 ID:JbZv7O/SO
「な…?」

大広間以上の輝きに包まれた、この神殿の主である大神宮が座する間。
そこにいるのは大神宮とその側近
そして力を授けてもらうために面会していた勇者とその一行である、武道家僧侶魔法使いの六人。
その中の一人、大神宮の壇の下で膝をついている勇者が思わず漏らした、

「今のは」

壮絶な破壊音が響いてきたからである。
ただの事故ではない。これは神殿が破壊に犯されている音。
つまり

「魔物がついに侵攻してきましたから」

「大神宮様こちらへ」

側近は震源を睨む大神宮を避難させる。そして勇者たちと一瞬だけ目を合わせ、奥に消えていってしまった。
480 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/14(金) 00:56:13.53 ID:JbZv7O/SO
勇者たちはその伝言に答えるように、この間を出る。
そして魔物を討伐するために走る。

その足取りはみんな重い。先程大神宮から明かされた事実に対しての整理がまだついていないから。
思わずなのだろう、いつもやるべきことに集中できる武道家が漏らした。

「どうします…?」

短い言葉だが勇者はその言葉を理解する。それは勇者に結論を求めるもの。


―――男のことはどうするか?


武道家だけでなく、僧侶と魔法使いも言葉を待つ顔をしている。
それに勇者はこう返す。

「どうするもなにも、魔物を倒すことに集中するのみだ」
481 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/14(金) 00:57:07.52 ID:JbZv7O/SO

「今は、な」

男のことはそれからだ、ということ。
その答えに、勇者の傍らを走る三人はさらに顔を暗くする。

(そんなことは分かっています)

(だけど集中できない、から…)

(…)

武道家も僧侶も魔法使いも、そして勇者も集中できずに走っているのだ。
この迷った顔つきで走る彼らを見た者がいたならば抱く印象は
「魔物を退治しにいく勇者パーティ」ではなく「逃げ惑う人々」だろう。
それほど頼りなさげな背中。

だから勇者は辛く、厳しい言葉をひねりだした。

「……できないのならば、こなくていい」
482 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/14(金) 00:58:10.90 ID:JbZv7O/SO
三人は肩を竦ませた。
この『こなくていい』は、勇者パーティからの永遠の離脱を意味する。
勇者一行というのは城の命から逃げ出すことは許されないという暗黙の了解がある集団だから。

普段の勇者はこのようなことを言う人物ではない。
だから三人は竦み、そして悟った。

勇者も追い詰められながら気を張っている。カバーをしなければいけないと
静かに武道家は誓い、いつもの色を取り戻す。魔法使いも同様、

「……いくぞ」

その動きをとらえた勇者は三人を従えゆく。
僧侶が、色を取り戻し切れていないことを念頭におきながら
483 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/14(金) 01:00:36.39 ID:JbZv7O/SO
神殿の外部の庭には、獣の魔物と神殿を守る兵士であふれている。
普段ならばここは神殿の光をうけた草花が人々の心を癒してくれる場である。

しかし今は両軍の戦闘により緑の絨毯は抉られ、土が顔を出し、血が飛び散った悲惨な魔の地帯と化している

「魔物を倒せ」

『ガアアアア』

二つの、相手を討ち取らんとする獰猛で荒れた雄叫びが渡る。
この神殿周辺に住んでいる鳥たちの愉快な歌声も、今は聞こえない

そんな状況を、拳を握り眺めている者がいる。
それは魔法で隠された側近が作った『別空間』に身を隠している大神宮。
484 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/14(金) 01:02:14.84 ID:JbZv7O/SO
彼は普段感じたことがない憤りが自分を支配していることがわかった。

「私は何もしないのですか」

無表情で幼い顔に皺をよせながら、側につく側近に呟く。

今この瞬間にも神殿の兵士が命を落としている状況で、
自分は身の安全が確保されながら、何もしない。そんな自分に腹がたつ。
側近は感情のない声で返した。

「はいこちらには勇者がいます。まだ大神宮様の御力の恩恵を授かってはいませんが…ここまで来ることができた実力ならば、敗北の可能性は低いと予想します」

「そういうことでは…」
485 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/14(金) 01:03:20.26 ID:JbZv7O/SO
大神宮が物を申そうとすると

「おそれながら大神宮様、自分の立場のご自覚を。大神宮様は死なないことが今の役目かと。万が一命を落とされることがあられて未来に見える光は閉ざされます」

「……」

「勇者、魔王につぎ、大神宮様の立場は国の王のような地位があればつけるようなものではないのです」

「し、しかし……む…?」

突然大神宮が声を荒げたため、側近は別空間を隠す魔法が破られたと思い、構えるが違った。

「……」


大神宮が驚いたわけは大広間の出来事。
486 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/14(金) 01:04:51.64 ID:JbZv7O/SO

「死ねぃぃっ!!」

獣の王である魔物が、弾丸のような速さで男の元へ突っ込んだ。
あまりの早さに、男は盗賊としての目と経験がなければ反応すらできずにいただろう。

獣王は男へと殴りかかる。その際におこった風圧は並の人間ならば吹き飛ぶくらい強烈だった。拳に当たれば死は確実。
その風に押されながらも、男はかろうじて攻撃をかわすことに成功し、急いで距離をとろうとする。

獣王の拳は神殿の床にヒビをいれ、さらに破壊された床の破片を撒き散らした。
その鋭い破片が身体のどこかに突き刺さるだけでも、その後の戦闘を不利にする。
487 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/14(金) 01:07:23.76 ID:JbZv7O/SO
だが、避けてしまえばこれからはこちらのもの。

巻きあげられた破片は視界を狭くする。何も見えなくなるわけではないが、それで十分。
戦闘前に練っていた予想にもこの展開はあった。

男は盗賊。気配を消し姿を隠し、策を弄し、相手を翻弄し、格上に勝利する。
今までもそうしてきた。
かつての盗賊仲間と一緒に、訓練された城の兵士を煙に巻き、倒したこともある。
ここにくるまでの魔物との戦闘でも少なからず通用したとは言える。


例え獣王だろうと例外ではないと思っていた。
488 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/14(金) 01:08:44.66 ID:JbZv7O/SO
「小賢しいわァァッ!!」

気配を消し身を隠そうとした男を、長く大木のような左腕が伸びてきて掴んだ。
「ぐぅ……っ!」

拘束された男は必死に抜け出そうとするが獣王はそれを許さない。
城の兵士や魔物とは違う。
獣王は男の例外で、予想以上の存在であった。

「がは…っ!」

今までにない圧迫により、男は血を吐く。身体からの警告。
獣王は飛び散った血を醜い汚れのように眺め、笑う。

「そのチョロチョロした動きも、こうして捕えればなにもできまい」

獣王は男を掴んでいる反対の右腕を、男に狙いを定めるように動かす。

「し、ね」

獣王から手向けられた、別れ。
489 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/14(金) 01:10:03.81 ID:JbZv7O/SO
男は咄嗟に口の中の歯に仕込んでいた『聖水晶』を吐き出す。
勇者から神殿に繋がる洞窟に入る前に渡されていた道具。

『聖水晶』は防御結界をはり、魔物の攻撃を緩和する道具。
並の魔物ならば全く攻撃が通らないという。

しかし目の前の敵は並ではなく例外。

結界をガラスのように突き破り、抜けてきた右腕が男を潰すように殴りかかった。

「…………!!」

悲鳴すら出せない。
防具の鉄の鎧は役に立たず砕けるが、『聖水晶』のほうは多少の効果があった。
490 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/14(金) 01:11:54.01 ID:JbZv7O/SO
あれだけの破壊力を、男が受けて死なないはずがない。

だが、全身の骨が折れて血が吹き出す程度ですんだ。

さらには静電気程度の痛みを獣王に感じさせ、反射的に獣王は男を投げ飛ばした。

「しまった、放してしまったか」

投げ飛ばされた先の壁を突き破ってもまだ勢いが止まらず
壁の向こうにあった部屋のテーブルや本棚にぶつかりながら、男は静止した。

「………」
491 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/14(金) 01:12:49.40 ID:JbZv7O/SO
投げ飛ばされたのは幸か不幸か。

壁を突き抜けるほどの痛みを負ったが、獣王の拘束からは解放された。
意識は朦朧としているが、まだ保てている。

今、男は獣王の視界にいない

ここからが男の戦いになる。
はずだが、体がもう動かない。チャンスを活かせない。
全身の骨が折れている。
あばらどころか、腕の骨も足の骨め、顎も鼻も、もしかすると背骨も。

壁の向こうから、瓦礫を踏みこちらへやってくる足音が聞こえる。
492 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/14(金) 01:14:31.50 ID:JbZv7O/SO

「……」


初めから決まっていた結末が見えてきた。
男の敗北という結末が。

消えゆく意識の中でこう思う。

(やっと、死ぬのか…)

足音が、壁を抜けて部屋に入ってきた。
獣王にしては小さな、まるで、人間の少女のような足音。

「……」

何かを感じる。記憶が感じさせようてしている。覚えがない記憶が、足音に反応して。

感情を呼び起こそうとする。

懐かしく、暖かい気持ちになる。


(…………え)
493 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/14(金) 01:15:43.49 ID:JbZv7O/SO
「回復魔法」

やってきた足音の主は手をかざし、男に対して回復魔法をかける。

効果は絶大で意識もハッキリ戻り、感覚すらなかった身体も全快する。
それで床に倒れていることや本棚に押しつぶされていることに気付けた。

「あ……」

「……」

そこにいたのは少女。
薄い青色の長髪で、僧侶の服と帽子を装備した勇者パーティてして共に旅した僧侶。

仲間、と呼んでいいのかすら分からない、仲間。
494 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/14(金) 01:17:22.08 ID:JbZv7O/SO
勇者の顔は優れていない。頬には汗がつたう。
そして手は赤く腫れ、手首がおかしな方向に曲がっている。

(ここまでの大物とは、さすがに予想外だった…)

魔物退治のために走っていた勇者たちは大広間にたどり着く。
そこはすでに荘厳な床が破壊され、無惨なものとなっていた。

そして、四メートル以上はある、黄金の体毛を生やした獣の魔物がいた。

ハッキリとは見えなかったが、その魔物は誰かを、横の壁に投げ飛ばしていた。
武道家と魔法使いを脇におき構えさせ、僧侶を救助に向かわせた。
当然のことながら魔物は僧侶を塞ぐように襲い掛かった。勇者は守るために剣で防ぐ。
そのおかげで僧侶は、救助に無事迎えたようだ。

ここまでは予想通り。
495 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/14(金) 01:18:16.64 ID:JbZv7O/SO
あまりに魔物の攻撃力が強すぎだ。
自分の手はこの様であり、神殿にいく前に現れた獣王子すら霞む破壊力。


これらから考えられるのは一つの結論。


「獣の魔物を統率する獣の王、獣王か…」
496 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/14(金) 01:21:07.51 ID:JbZv7O/SO
「……」

正解の証か、獣王は勇者の問に答えず、かわりに目を細めて勇者たちを眺める。
そして、口を大きく開き、不気味に笑う。

「がっはっは!なるほどそうだったな、ヤツは勇者をも騙し…まぁよいどうせ憎き敵同士。あの男と共に潰してやろう」

「男…」

勇者が呟くと、獣王は楽しそうに答えた。

「貴様の一行に紛れ込んでおるゴミだ。フン、我らを掻き回した醜い小細工に貴様らも上手く取り込まれたようだな」

その答えは勇者たちの心を確実に撃った。

(やはり男は魔物と……)

と、うかんでしまった疑念を無理に払い、忘れる。
隣を任せている二人も同様に忘れるようにしていた。
497 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/14(金) 01:22:28.73 ID:JbZv7O/SO
勇者の手首の痛みは、未熟ながら扱える自身の回復魔法で治した。
まだわずかな腫れはあるが、関節は元に戻った。

そして勇者は怒りを無理に吹き出し、獣王に言う。

「貴様がなんて言おうと、男は…仲間だ。悪くいうのはやめてもらおう…」


それに対して、獣王はただ笑っていた。
498 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/14(金) 01:25:40.80 ID:JbZv7O/SO
じのぶんを入れました
でも次の投下では無くしているかもしれません

初めてなのでヒドい文になってますが、どうかご勘弁を

ではまた
499 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/14(金) 01:35:38.24 ID:JbZv7O/SO
あ、それと大神官がほとんど大神宮になっています
すいません
500 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/10/14(金) 01:40:59.89 ID:3Sy2X0y0o
乙!
501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/14(金) 07:57:39.80 ID:JJV+5Q2SO
502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/10/14(金) 21:05:58.20 ID:g2zp406DO
地の文、良いよ!どんな所か、分かり易かった。
カキコミ過ぎしなければ、他のSSと差別化出来ていいと、思う。
新鮮な感じしたな
503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/10/16(日) 11:44:09.44 ID:NdkMjHcEo
句読点の使い方がわからねーんなら無理に使わないほうがいいぞ低脳
504 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/23(日) 02:13:55.23 ID:Zh+t+w+SO
「なにがおかしい」

「おかしいさ」

髭をなで、口を歪ませながら笑う獣王。

「勇者の盲目ぶりとあの男のペテンが」

「いい加減にしろよ貴様…」

「それにしても勇者にとりついて何をするつもりだ?我らの邪魔が目的だからな。勇者を利用しようとしているのか」

武道家の怒りどころか、目の前の勇者たちの存在にも目をくれず、獣王は自分の世界。
この余裕は勇者たちなど眼中にないということか。
そんなことより今、気になることを耳にした。

「邪魔、だと」
505 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/23(日) 02:18:57.30 ID:Zh+t+w+SO
「そうだ、ヤツは我らの邪魔が一番の目的。かつては魔王様の御力を盗んでいった」

「……」

「『もう片方』の回収のため、魔王様に力を貸しよったが…それも『もう片方』をも自分のものにするためであろうな…忌々しい」

『男は邪魔をするのが目的』、『魔王に力を貸した』
真逆のキーワードから何も見えない。

「さてそろそろ、貴様らを狩るとするか」

「ッ」

今まで向けられなかった獣王の視線が向けられ、勇者たちにとてつもない重圧がやってきた。
勇者は腫れた手を庇いながら剣を構え、武道家は武道の構えをとり、魔法使いは『攻撃力上昇魔法』を使用し、仲間を強化した。

「フフ」

獣王は口を裂けそうなぐらい鋭くし、殺意を増幅した。

「勇者が、その程度か?フフフ」
506 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/23(日) 02:22:23.49 ID:Zh+t+w+SO
その威圧。
勇者は今までにない恐怖を感じた。
だが、怖くて何もできなくはならない。城での訓練が、ここに来るまでの旅が、その恐怖を勇気に変えた。
勇者は目の前の獣に立ち向かおうとするが、武道家が視線だけでそれを止める。

「貴方の手…腫れのみとはいえその状態での戦闘は危険です。僧侶が戻るまで」

「一人でヤツと戦う方が危険だ」

「そうとは言っていません、いつものように私がスキを作ります」

「同意」

二人に魔法使いも加わり、小声早口で作戦を立てる。もちろん相手はそれの十分な時間を与えない。

「来ないのならば、コチラから行くぞぉ!」

「!」

獣王は拳を握らず五指を伸ばしたまま、地面を平行に薄く削るような攻撃をする。
砂のように削られていく床、それによって巻きあがる石つぶて。
三人は俊敏にその攻撃をよけといく。
その動きを獣王は批評するように

「ほう、あの男よりは考えて動くではないか、しかしまだ甘い」

「っ!?」
507 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/23(日) 02:24:02.13 ID:Zh+t+w+SO
勇者たちが苦労してよけた石つぶてを、傘を使うに値しない小雨のように
ぶつかる事も厭わず獣王は、それらを無視し突撃してくる。

「男と同じ痛みを与えようか」

「…男!?」

その言葉で不安に支配された勇者は回避がおくれた。獣王は勇者への攻撃のヒットを確信したが

「火」

獣王の背後に灼熱が襲いかかった。魔法使いである。
彼女自慢の魔法は獣王の鎧を焦がすこともできなかった。
しかし、敵の気を引くことには成功する。
相手の標的が魔法使いに向けられた。

「カァ…」

「…」
508 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/23(日) 02:25:29.86 ID:Zh+t+w+SO
魔法使いの華奢な身体を獅子をも凌ぐ威圧ある目で睨んだ獣王は
いきなり身体をひねり、標的を変更した。

「小賢しい!」

獣王の背後から攻撃しようとする武道家にである。
向きを変えた時の回転を利用し、そのまま武道家に正拳をくらわそうとしている。
だが攻撃をしようとしているのは彼女も同じ。
だからこそ勇者は叫んだ。

「やめろ武道家!」
509 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/23(日) 02:28:00.02 ID:Zh+t+w+SO
獣王と武道家、なにもかもが違いすぎる。
武道家もただの女性ではない。勇者の力になるための『武道家としての』訓練を受けてきた人物。
この勇者パーティーの中で一番肉弾戦を得意とするのは武道家であるし、
拳の風圧だけで洞窟の主を制圧する力の持ち主。
だが相手の獣王にとっては、彼女の力も巨大な鉄杭の前の小さな釘でしかない。

「武道……」

と叫んだ直後に勇者は気付いた。
勇者から武道家、獣王と並ぶ直線上の位置にいたはずの魔法使いが移動している。距離をとり武道家の横手になる位置にいた。
そして勇者は、自分の役割にも気付く。

「そうか…」
510 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/23(日) 02:31:00.72 ID:Zh+t+w+SO
「!?」

「逆風」

獣王も位置の変化に気付くが、遅い。魔法使いは魔法を発動させた。
すると風が、武道家を巻き込む形で魔法使いの向かい風になるように吹いた。
そしてそれに巻き込まれなかった獣王は、安定したまま風が吹くまで武道家のいた場所に攻撃した。つまり空振り。

その一瞬を、武道家と魔法使いが作り出した隙を

「はああっ!」

勇者がつく。

「ぬ!」

勇者はロクに力も入らない手首を無理させ、剣を振り上げる。

(いつもの調子は出せないが、攻撃力上昇もある…せめて致命傷を)

破壊力は保障されている。
勇者は、この攻撃でどのくらいダメージを与えられるかを考えていた。
511 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/23(日) 02:33:38.94 ID:Zh+t+w+SO
「フ」

獣王の笑み。
やってきた結果は、勇者の望む『最低』を下回っていた。

「―――、」

獣王が、四メートル以上の巨体とは思えない、鉄砲玉のような速さで後方に下がった。

突然のことに勇者は身体を強張らせ、剣の攻撃を中断しそうになってしまう。

その僅かな隙で、獣王は巻き戻されたように勇者のもとに戻ってきて

「ぐはぁ…っ!!」

勇者は獣王の拳を腹部にうけ、振り下ろす型のまま手から剣をこぼし、吹き飛んで倒れた。
512 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/23(日) 02:35:57.48 ID:Zh+t+w+SO
「…!」

「勇者様!」

倒れた勇者はピクリとも動かない。心配で、かけよろうとする武道家だが獣王に塞がれた。

武道家は、焦りと怒りが混じった今までにない形相で怒鳴る。

「どけ!」

「どかしてみろ」

相手はその怒りを平然と受け止め、挑発してきた。

だが武道家は安易にそれに乗らない。
今この魔物の恐ろしさを見せ付けられたばかりだから。

先ほどの獣王の後方への移動。あれは回避ではなくフェイントと武道家は考える。

一瞬の隙をついた勇者の攻撃だったが、獣王にとっては十分な時間であったのだ。

だとするとそのまま勇者に迎撃をできたのであろうが、それだと勇者の剣と同士討ちになる可能性もある。

だから突然のバックにより勇者を驚きで硬直させて、隙を作り出した。
513 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/23(日) 02:37:59.31 ID:Zh+t+w+SO
力だけの獣ではない、頭脳がある、と武道家は警戒を強めている。

「…」

魔法使いは無言でいる。いつも通りだが、喋らないのではなく喋られない。

思案しているために喋られない。

思考に集中してもどう出ていいかが思いつかない。


「来ないのならば、こちらからいこう」


時間を与えない獣王の宣告に、二人は
514 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/23(日) 02:39:04.06 ID:Zh+t+w+SO
〜部屋〜


男「…」

僧侶「…」

男「そ」

僧侶「時間がありませんから」

男「あ…」

僧侶「敵、強いです」

男「えと…はい」

僧侶「来るかどうかは貴方が決めてください」
515 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/23(日) 02:40:46.70 ID:Zh+t+w+SO
男「…」

僧侶「…」スタスタ

男(……もう名前すらよんでもらえない)

男(仕方ない…僧侶様は、姉を魔王に殺されているから)

男(記憶にはないけど…殺したのが俺の可能性もあるんだから…)

僧侶「…」スタスタ

男「…」

僧侶「っ」

僧侶「……男さ」


グサッ
516 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/23(日) 02:43:20.99 ID:Zh+t+w+SO
男「!?」

僧侶「ごふ……っ!?」


ドサッ

男「僧侶様っ!」

僧侶「……かい、ふ…」

ガツン

僧侶「あうっ!」

男「獣王!」

獣王「いかんな…敵地を前に背を向けるのは…」
517 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/23(日) 02:46:57.27 ID:Zh+t+w+SO
ここまでです
レスありがとうございます
これからも地の文と台本形式をいったりきたりしますがすいません

では、ありがとうございました
518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/23(日) 04:05:09.88 ID:/OzN0bC0o
乙っス!
519 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/23(日) 10:56:00.41 ID:A/R7e6hSO
520 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/23(日) 23:09:47.54 ID:Zh+t+w+SO
男「あ…!」

獣王「フフフ」

ググ

僧侶「う!…ぁが…!」ゴホッ

男「や…」

獣王「・・・・・・」グググ
521 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/23(日) 23:14:43.36 ID:Zh+t+w+SO
僧侶「…………ぅ」

男「やめろ…」

獣王「なぜやめる必要がある。こやつは我が敵だ」

ググググ……グシィ

僧侶「ぁぁ……」

ミシミシ

男「やめろっ!!」

獣王「ニッ」

僧侶「」ガボ ッ


グシャッ
522 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/23(日) 23:22:20.47 ID:Zh+t+w+SO
男「  」

僧侶「」

獣王「死んだ、な」

男「そうりょさま?」

獣王「これで勇者パーティは全滅」

男「ぜんめつ…?」

男「うそだ」

獣王「現実だ」
523 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/23(日) 23:24:33.30 ID:Zh+t+w+SO
男「…」

獣王「この女の身体は潰れた、踏まれたトマトのように」

男「僧侶…さま」

僧侶「 」

男「……………………あ」


男「あああああっ!」
524 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/23(日) 23:26:07.38 ID:Zh+t+w+SO
男「この、野郎っっっ!!」

獣王「まあ、待て」ドガッ

男「うぐ!」

ズドーン

獣王「また壁を突き破っていきおった、もろい」
525 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/23(日) 23:27:54.27 ID:Zh+t+w+SO
ガララ…

男「う、ぐ」

フ   ワッ

男「……?」

大神官「」

男「だ、い……」

大神官「神のご加護を」ポウッ

男「……あっ」

大神官「……」

男「…っ」

大神官「勇者たちも敗れました、このままでは全滅です」
526 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/23(日) 23:29:45.79 ID:Zh+t+w+SO
男「…」

大神官「ゆえに今から勇者たちの力を引き出す儀式を行います、これで戦えるでしょう」

男「僧侶さま…」フラ…

大神官「ああ、獣王には側近が向かっています。それに貴方がいっても変わりません…」

男「……っ!」

大神官「……貴方も引き出しますか?…盗賊の力を」

男「…」

男(無力)
527 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/23(日) 23:30:40.89 ID:Zh+t+w+SO
男(なにもできない)


男(助けようと思っていても、死なせてしまった…)


男(それ以前に勇者様たちは、仲間でもないヤツの助けなんていらないのかも…)


男(僧侶様も来るかは自分で決めろと…言っていた)
528 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/23(日) 23:31:55.47 ID:Zh+t+w+SO

バガァーン

大神官「側近が向かったところから……」

男(…………そうだ)

大神官「時間がありません、我は勇者のところへ…」

男(力を得たところで、いらないヤツが…なにかしても……)


でも、俺はもう


男「待ってください!」

大神官「…なんです」

男「頼みが、あります」
529 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/23(日) 23:33:14.73 ID:Zh+t+w+SO


側近「ぐ…」ガクッ

獣王「さすがは大神官の側近を勤める男だ、なかなかやるではないか」

側近「……はぁ、はぁ…」

獣王「だが終わりだ」

側近(ここまでか…)


ドーン
530 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/23(日) 23:34:33.52 ID:Zh+t+w+SO


「……………………」

531 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/23(日) 23:36:22.33 ID:Zh+t+w+SO
獣王「」ゾッ

側近「お主…」

「貴方は回復につとめて」

獣王(アイツ、この力は…)

側近「……まさか大神官様…」

「僧侶様」スッ

僧侶「」

「まだ間に合う」

獣王「ソイツは死んだと…」

「蘇生」

パァッ
532 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/23(日) 23:38:26.81 ID:Zh+t+w+SO
獣王「!?」

僧侶「……」ドクンドクン

側近(心臓が……?)

「側近様、僧侶様を頼みます」スッ

側近「ああ…」ガシッ

側近(…大神官様でも人間を生き返らせることなどできぬ……やはり)

獣王「……」

「……」

獣王「きさま」
533 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/23(日) 23:39:04.02 ID:Zh+t+w+SO

男「…」

獣王「取り戻したな」


獣王「魔王様の御力を」
534 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/23(日) 23:40:54.39 ID:Zh+t+w+SO

大神官「……ふぅ」

〜すこし前〜

男『魔王の力を引き出してもらえますか』

大神官『本気で言っているのですか』

男『本気です』

大神官『正気ですか…?』

男『はい』
535 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/23(日) 23:41:50.30 ID:Zh+t+w+SO
大神官『……』

男『……』

大神官『なにをするつもり…』

男『決まっています』

大神官『…』

男『……獣王を倒すため』

大神官『悪用すれば世界が滅ぶ力です…悪用しないという、信用していいという根拠は』

男『……ただ勇者様たちを救いたいとしか言えません…』

大神官『……』
536 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/23(日) 23:43:04.49 ID:Zh+t+w+SO
男『仲間、とされていなくても…一時は俺を信用していると言ってくれた勇者様たちを…死なせたくない』

男『信用しているという言葉がすごく嬉しかった、涙が出そうだった…』

男『さっきまではショックでした、仲間でなくなったことが…』

男『でも目の前で…僧侶様が……死んだ、とき』

大神官『!』

男『死にたくなりました…哀しみとか、自分の力のなさとかで』

男『だから気付いたんです』

男『……俺はもう』

大神官『わかりました』
537 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/23(日) 23:44:05.98 ID:Zh+t+w+SO
男『!』

大神官『魔王の力を引き出すことは可能』

大神官『貴方は魔王の力をうけ、その器がある。力を取り戻すだけならば魔王の力とはいえ容易』

男『お願いします!』

大神官『はぁ…』

大神官『……目を閉じ、何も考えずに』

男『……』
538 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/23(日) 23:45:08.50 ID:Zh+t+w+SO
大神官『  、    』

男『…………っ!』
539 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/23(日) 23:45:55.58 ID:Zh+t+w+SO
大神官「……ふぅ」

大神官「魔王の力を取り戻させてしまった」

大神官「全て終わったあとに、正しかったと思えることを願います」


獣王「……」

男「いくぞ」グッ
540 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/23(日) 23:48:05.66 ID:Zh+t+w+SO
獣王「フ」

男「?」

獣王「なんだそれは、勝ち誇っているのか」

男「……」

獣王「盗人風情が偉そうな」

男「…」

獣王「その盗品を、見せつけているのか」ミシッ

男「そんなことはない」

獣王「だったらなんだというのだぁぁあああ!」
541 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/23(日) 23:53:52.38 ID:Zh+t+w+SO
「俺は」

男は言う。
獣王の必殺の拳が自分に向かっているのにも気をむけず、言葉を繋ぐ。

「もう」

その余裕に獣王も、予想はしていたが考えまいとしていた展開が頭を過った。
獣王の攻撃が鼻先まで近づき、やっと男は動き出す。
恐るべき拳の風圧にもおされず、弾丸以上の速度にも負けずに。

「!!」

獣王の攻撃を避け、懐を潜り抜け、背後に回る。
ただそれだけの行為をした。

だが『それだけ』を達成するのがどれほど困難か。

「失いたくないだけ」

風向きが変わる。
542 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/23(日) 23:57:54.30 ID:Zh+t+w+SO
ここまでです
いつもレスありがとうございます
なるべく頑張ります

ではまた
543 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/24(月) 00:02:48.36 ID:mf3D25CNo
乙っス!
544 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/10/24(月) 00:03:25.97 ID:v5AHhcsno
乙!
男のターンキター
記憶を取り戻すのはいつのことやら
545 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/24(月) 10:16:58.19 ID:STOZXR6SO
男は果してどうなることやら

546 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/30(日) 01:41:03.68 ID:WXS5nUjSO
「……っ」

獣王は自分の攻撃がかわされたことに、冷や汗を流した。

知っていたはずなのに改めて実感させられる。
この男が取り戻した力の脅威を、今まで自分が優勢だった戦況をひっくり返されたことを。

「本物だ」

側近もこの結果に唖然としていた。

だが、この場にいる全員の注目を浴びている男は、視線に興味をもたない。

「俺はもう、仲間を死なせたくないだけ」

獣王の攻撃をかわしたけとも、相手を恐怖させたことも、男にとってはどうでもいいこと。

やりたかったのは、決意を宣言することだけ。
547 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/30(日) 01:42:15.26 ID:WXS5nUjSO
「っ…」

獣王は恐れた。相手を恐れた。蹴落とされた。

ただ攻撃をかわされただけなのに、自分の攻撃があたらなかったことなんていくらでもあるのに。

目の前の男にかわされたことが、己の心を抉った。

「アアアアァォアッ!!」

ひっそりと小さいが、重くのしかかる重圧を叫ぶことで誤魔化す。

そして、小さく強大な敵に立ち向かう。

攻撃手段は、拳の連打。
単純にみえるがその攻撃は、雨のように間髪入れない全方位からやってくる、普通では回避不可能なもの。

これを防ぐには魔法を使うか
見切って、即座に回避するか。

「グッ……」

「……」

男がとったのは後者。
548 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/30(日) 01:43:21.24 ID:WXS5nUjSO
獣王の攻撃はいまだに続く。
まだ決定打どころか、一撃も男に決まっていない。

「グ、ゥウウウ…!」

次第に獣王のスピードとキレが落ちていく。

連打が始まってからまだ一○秒も経過していない。獣の王である彼にとってこれは、今までにないこと。

息をあらげ必死に攻撃を維持しようとする獣王とは対照的に、男の方は全く動きが衰えない。

むしろ今の戦闘に退屈を覚えているほど。

しかし妙なことに気付く。
549 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/30(日) 01:44:35.93 ID:WXS5nUjSO
「……?」

「グヌァァ!」

攻撃が避けづらくなっている。
自分のスタミナも動きもまだ余裕がある。相手の攻撃速度が上がっているとは考えづらい。

それにも拘らず、男は回避が遅れてきているように感じる。

「ハァッ!」

「!」

今、男の頬に獣王の攻撃が擦れた。続く攻撃も、その次も。

男は完全な回避ができなくなっている。

まだ攻撃は擦っているだけだが、重ねるごとに削られる皮膚が厚くなる。

かすり傷が、どんどん重い傷へとなっていく。

「フゥゥゥゥゥゥゥウウウウウ!」

獣王は荒く息をはく。確かに余裕のない顔をしているが、僅かに期待の色があった。

なにかあると男は確信する。
だから、ただ避けるだけでなく獣王の動きを観察することにする。
550 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/30(日) 01:45:48.14 ID:WXS5nUjSO
「ッ!」

獣王の一撃がついに、男の頬を抉った。血がはしる。

避けることに集中しなければ、いつか相手の攻撃を許してしまう。

男は動きを上げるが、一向に獣王の侵食は止まらない。

「ツ!」

獣王に、首筋の皮膚を深く抉られる。
打撃のはずなのに、男の首には刃物で浅く切ったような一筋の溝ができる。

今までの優位からは考え付かない損傷だ。

「ハッ、ハハハハハハハハハハ!」

歓喜のあまり爆笑する獣王は
舞う男の血を弾き、次弾を飛ばす。

それは左から右への裏拳だった。

それを今までにない速さで潜るように男は、体勢を低くして避ける。
その攻撃は擦りもしなかった、が
551 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/30(日) 01:46:56.64 ID:WXS5nUjSO
「っ!?」

その男を先回りするように、獣王の拳が飛んできていた。

完全に回避したことで思わず気を抜いた男は、反応が遅れる。

ようやく獣王の追い上げの秘密にたどり着く。

獣王は今まで何も考えずに連打していたわけではなかった。

自分の攻撃により、相手に来て欲しい場へ誘導する。そしてそこに、予めもう片方の拳を繰り出しておく。

この一連の動作により、無駄をなくし、縮めていく。

成果は、出た。


「まずは一発!」


その一発は、男に到達した。
552 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/30(日) 01:47:56.83 ID:WXS5nUjSO

男の手のひらでピタリと、静止した。

「やはり俺は駄目だ」

獣王の攻撃は、男の細い腕によって止められた。

その図はまるで、大木が盆栽の小枝に支えられているようなもの。

「……魔王の身体能力を得ても、この体たらく」

553 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/30(日) 01:49:16.04 ID:WXS5nUjSO
心の奥底にひっそり潜んでいた、小さかった不安は全体に広がり、明確に大きいものとなった。

「き、さ、ま…まさか今までのは…」

「ただこの力を知っていこうとしていた。まだ力の使い方をよく知らないから」

獣王の本気の戦闘は、『魔王の力』を取り戻した男にとって力を知るための勉強程度でしかなった。

獣王は考える。
避けるのが苦しくなってきたのであれば、攻撃をもって余裕を作ればいい。まさか考え付かなかったわけはあるまい。

それをしなかったということは、本当に勉強でしかなかった。

獣王の眉が不気味に動く。

「力を知らないだとォ…?その力で魔王軍を壊滅寸前に陥れたヤツがなにを…」

「……?」

男は首を傾げる。
その反応に獣王はさらに怒りを募らせる。

―――自分は遊ばれている。
554 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/30(日) 01:51:59.55 ID:WXS5nUjSO
「フハハハハハハハ」

感情のない笑い声を獣王はあげながら、受けとめられていた拳を、男の手から振り払って放す。
そして

「舐められたものだァ!」

目を大きく見開き、先ほどのように計算された動きではなく、
ただ相手を押しつぶすために襲い掛かった。

だからそれに男は応戦した。

「はあぁッ!!」

獣王の正拳を、裏拳で軽く横へとそらし

足を深く踏み込んで、獣王の鳩尾に重い拳を叩きこんだ。

「グバァッ!!?」

男の攻撃は獣王の鎧に深い亀裂を入れ、その間から覗く生身の部分まで深くめりこませた。

衝撃はそこまでに留まらず、臓器にも伝わる。
証拠に獣王は口から唾と共に、少量とはいえない血を吐いた。

そして、揺るがない巨体を地から浮かび上がらせ、そのまま後ろに飛ばし、壁に激突させた。

獣王は口から血を流し、そのまま動く様子はない。
555 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/30(日) 01:54:16.65 ID:WXS5nUjSO
少ないですがここまでです
また夜にもきます

今回の話…なかなか終わりませんが
次の次くらいには

いつもレスありがとうございます!
ではまた
556 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/30(日) 01:59:18.74 ID:14OpsQJyo
おつんつん
557 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/10/30(日) 02:02:20.55 ID:3u3uxCpw0
乙!!
558 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/10/30(日) 10:17:56.60 ID:fZaFe27e0
魔王戦が楽しみでしょうがない
乙ですん
559 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/30(日) 12:18:15.67 ID:GSbFSNcSO
560 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/31(月) 00:12:44.15 ID:5Y7WUgpSO
今の戦闘を傍観していた大神官の側近は、なにもかも忘れて目の前を眺めていた。

あまりに凄絶な戦闘により、体が硬直してしまっていた。

しかし、一旦の区切りともいえる獣王のダウンにより、やっとその束縛から解放された。

「……僧侶」

まずは、安全な場所へと避難しなければならない。
自分の手の中で眠っている僧侶を呼ぶ。

「……」

当然返事はない。
死んではいない。生きている。

先ほどまで血を失い、肌が白かった少女。

呼吸も心臓も停止していることが一目瞭然な死に方をしていた少女。

もはやこの世にはかえってこないと諦めるしかなかった少女。
561 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/31(月) 00:13:37.32 ID:5Y7WUgpSO
だが奇跡がおきた少女を側近は抱えている。

「どう考えても、魔王の能力…だな、やはり…」

未だに変わらぬ目の前の状況が、確信をさらに濃いものへと上塗りする。

(……いくか)

魔王の力を得た男の目的は分からないが、
せっかく繋がれた命を無駄にしてはいけない。

(大神官様の身も、心配だからな)
562 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/31(月) 00:14:57.18 ID:5Y7WUgpSO
痛みにたえながら、この戦場から離脱しようとする側近。

獣王にやられた傷は思った以上に深かった。

空間移動の魔法の発動に苦労していると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「ここか!」

声のした方向に視線だけ移す。

「……勇者、か」

「側近様ご無事で…そして僧侶は…」

自分の不甲斐なさに打ち拉がれているような声で、側近に話しかけてくるのは、
中央王国の最高品である兜と、少しヒビが入ってしまっている鎧を、鍛えられた身体に装備している
黒髪を逆立てた青年である勇者。
563 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/31(月) 00:15:36.37 ID:5Y7WUgpSO
「……大丈夫である。私もこの場もな。だから勇者、貴方も避難するのだ」

「しかし私は…」

「目の前を見てみよ」

勇者は側近の指示に従い、目を前に向け、驚く。

「え…」

視線の先に、いつも暴れ馬を引いていた仲間が、
壁にもたれかかり動かない獣王を見下していかたからだ。
564 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/31(月) 00:17:08.64 ID:5Y7WUgpSO
獣王は動かない。
男も動く様子はない。

一向に進まない戦況だったが、獣王が微かに動きを見せた。

「ぐ、ァ…」

左手で鳩尾を庇いながら、右手を軸に馬の子のように起き上がろうとする獣王。

今の彼は、人間の子供が子突いても尻餅をついてしまいそうなぐらい弱々しい。

その誰がみてもチャンスな時にでも、男は動かない。

おそらく獣王が二本足で立ち、背筋をのばし、戦闘体勢に入るまで指一本動かさないだろう。

獣王もそれに気付いている。
だからこそ顔色は、動きとは正反対の、表情だけで相手の心臓を止めてしまいそうなものとなっていた。

頭に血が上りきっている獣王は、男のそれを舐めているとしか捉えられなくなっている。
565 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/31(月) 00:18:07.00 ID:5Y7WUgpSO
だが男は獣王をそのような存在としていない。

仲間を護るため、絶対倒すべき敵としてみている。

動かないのは、『魔王の力』の使い方を知るため。
己の中から感じる、巨大な力を学びとることに集中している。

「……完全にこの力をものにしてお前を倒し、仲間をまもる」

「……」

獣王は男の言葉に耳を傾けない。意味はないからである。
舐めている相手の口から出る言葉など、舐めている言葉でしかないから。

そんな相手には言葉でなく、死を与えることで返すと、獣王は決めているから。

「……ッ」

獣王がよろけながらも完全に立ったため、男も戦闘体勢にはいる。
566 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/31(月) 00:19:46.36 ID:5Y7WUgpSO
獣王は何も言わない。
今までのように、笑いもしない。

「―――」

無表情となり、何を考えているかも分からない。
その様子に男は、恐怖とは別物の不気味さを感じる。

相手を警戒しながら、男は距離をとるため下がる。

この力を得てから初めて、警戒しろと直感が告げている。
その警告は正解。

獣王が「はっ」と息をはいた瞬間に、
獣王の装備していた鎧が粉々に弾けとぶ。男はその破片を腕で防御する。

弾けたワケは、獣王の筋肉の拡大による圧力。

床に剣が落ちる音が、周りに響く。

「フぅ」と、息が漏れた口がある顔に血管が無数に浮かび蠢く。
だが表情は相変わらず、無。

男は改めて構えなおして、呟く。

「だから早めに力をモノにしておきたかったんだが…その前に予想外がおこってしまった…」

獣王はそれに、答える。

「関係ない。どちらにしても殺していたからな」

絶対の勝利宣言。

「……だが負けない」

弱気に見えるが、男も勝利宣言ととれる言葉を発する。

勝利宣言と勝利宣言がぶつかった、その時。
567 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/31(月) 00:20:48.41 ID:5Y7WUgpSO
「獣王!」

第三者の介入。
それに対し獣王は見向きもせず、
逆に男は反応した。

「勇者様…」

その、男が気をとられた一瞬に獣王が動く。

「余裕だな!」

最速の動きで最大の攻撃の奇襲が、放たれた。

「ぐ…!」

急いで向き直す男。
人間ならば絶対に反応できずに人生を終えてしまうようなものにも、なんとか対応する。

だが、深手を負うことは免れられないようだ。
男の防御よりも、獣王の爪が届くほうが早い。

その状況を作り出してしまった勇者。
彼はその失態を、悔やむ様子はない。
568 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/31(月) 00:22:03.14 ID:5Y7WUgpSO
勇者は男が言った一つの言葉を思い出していた。


『……完全にこの力をものにしてお前を倒し、仲間をまもる』


「そうか、お前は…」

獣王との戦闘の時には見えなかった答えが、今は分かる。

「私達をまもるために、魔王の力を…」

だから勇者は男の窮地な焦らない。

すでに、男を助ける用意が出来ているからである。


ここにきたのは足を引っ張るためでない。

「ならば、私たちもお前を助ける」

勇者はもう迷わない。
569 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/31(月) 00:23:24.44 ID:5Y7WUgpSO
「!?」

男と獣王の真上の天井が、爆発した。

攻撃に力を入れていた獣王とは違い、
距離をとる体勢に入りかけていた男は、その頭上の破壊に反応して、そこから離れる。

「な……」

天井を破壊して、やってきたのは雷。

それは勢い衰えず、反応できずにいる獣王に、まっすぐ落ちる。

「ギィ、アアアアアアアアアアアアッ!!」

さすがの獣も、雷という天災には適わない。

「私も大神官様に、力を引き出してもらったのだ」

それが魔法であれば、
勇者しか使えないといわれる『雷の魔法』であるならば尚更だ。

「少しは私を見る気になったか?獣王」
570 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/31(月) 00:25:40.81 ID:5Y7WUgpSO
「……」

男は呆然とする。
そんな男の様子に、勇者は笑う。

「倒すぞ」

勇者の『雷の魔法』を受けた、
火花を散らし、丸焦げになりながらうずくまっている獣王を見ながら勇者はいう。
571 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/31(月) 00:26:49.29 ID:5Y7WUgpSO
もう仲間にはなれないと思っていた仲間に助けられた男は戸惑う。

「……」

何故ならば、勇者の気持ちがわかったから。

(仲間として、扱ってくれている…?)

どう反応していいのか分からないが、返す答えは一つ。

「はい、倒しましょう」

仲間であろうとかろうと、獣王を倒すのは変わらない。

くだらぬ戸惑いを持ち込み、目的は見失わない。

「色々言いたいことはあるだろうが、全てあとだ」

「はい」

勇者の力と魔王の力が、獣の王へと向けられる。
572 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/31(月) 00:28:05.46 ID:5Y7WUgpSO
ここまでです
次には獣王との戦いは終わりますので
魔王様をなかなか出せなくて申し訳ありません

レスありがとうございます
ではまた
573 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/10/31(月) 00:36:22.54 ID:5Y7WUgpSO
あと>>562の兜をかぶっているのに髪が逆立っているのが分かる…
そんな不思議な勇者は忘れてください
574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/31(月) 01:08:56.18 ID:nNKYPcISO
壮絶なウニ頭だなwwwwww
575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/10/31(月) 01:50:41.57 ID:6VZZwOUDo
隙間からすげぇはみ出てたんだな
576 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/10/31(月) 07:06:06.46 ID:2vaEM5SB0
こう兜の下の方とかからもモサッと…
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/10/31(月) 19:40:19.90 ID:0jaEWU9Eo
モデリングに失敗したんだろうw
578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/04(金) 16:30:42.03 ID:kdW7m27IO
舞ってる
579 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2011/11/12(土) 21:54:36.13 ID:40V6KeJSO
すいません
投下は来週の土曜日、日曜日あたりで
580 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) [sage]:2011/11/14(月) 08:12:00.14 ID:Uiy8Rop60
いつまでも待ってるんだぜ!
581 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/20(日) 20:25:33.80 ID:ej5PbYmSO
神殿の入り口付近にある庭園で行われていた、神殿の兵と獣の魔物軍との戦闘は、
両軍の力がほぼ互角であり、泥沼にはまっていた。

だがそれは「ある時」から一変して、一方的なものとなっていた。

獣の魔物たちは壊滅寸前にまで追い込まれ、神殿の兵側は
「ある時」から被害がゼロとなる。

その「ある時」とは、いつのことか。

「魔法使い!大丈夫か!?」

「…」

長い黒髪を一本結びにして、袖のない動きやすさを重視した軽装の女と、
頭にかぶっている「魔法使いの帽子」から覗く茶髪のショートヘアー、
黒のローブの上に黒のマントを羽織っている女が乱入してきた時から。
582 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/20(日) 20:26:43.14 ID:ej5PbYmSO
その二人は、勇者のパーティの二人。武道家と魔法使い。

彼女たちは圧倒的な力をもって神殿の兵士たちにつき、戦況を傾かせた。

それにより、魔物たちは戦闘での勝利は諦め、神殿へと侵入しることを優先するものが出てくる。
ある熊の魔物は、神殿の壁を力わざで壊して侵入を試みた。
しかしそれは叶わず。

「魔法使い、あちらから…」

「承知している」

早口で小さく頷いた、魔法使いが言葉のとおり邪魔をする。

「風」

まさに自然の凶暴さを召喚したような強大な風の魔法が、
普通の熊より巨漢な魔物を吹き飛ばす。

飛ばされた熊の魔物は、風に身体の自由を奪われて、
受け身をとることも出来ずに地面に頭を打ち付け、動かなくなる。
583 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/20(日) 20:27:56.25 ID:ej5PbYmSO
その魔物軍の劣勢さをみて、一際焦りをみせている魔物がいた。

獣王から、この獣の魔物軍の指揮を一時的に任されている、名を獣の隊長という者である。

「獣王様…なぜこんな…」

彼は半ば諦めており、自暴自棄になる一歩手前であった。

今回の戦闘は急なもので、ろくに準備の時間もかけず、しかも粗が多すぎた。

それもこれも、この軍の本来の主が、
かつて魔王の力を奪った男を仕留めるとお結果しか見ていないから。

獣王は神殿に辿り着くと共に、軍の指揮を獣の隊長に渡し、
一人で先頭をきって神殿の中へと突撃していってしまった。

(まったくふざけている…馬鹿げている…)

今までもぞんざいな所があった王だが、さすがに今回のことは目に余った。

(この戦闘は良いものとはいえないが敗北するとも思えない、
我が王が戻ってきていただければ勝利できる戦闘、と思っていたはずなのに…この現状!)

この様では、この軍本来の主が戻ってきたときに獣の隊長は処罰されるだろう。
それがどうしても許せなかった。
584 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/20(日) 20:28:58.39 ID:ej5PbYmSO
だが今はそんな不安より大きなものが、頭を陰っている。
神殿より、強大すぎる『なにか』が自分の体の髄にまで響いてくるから。

(……おそらく我が王は戻ってはこない。そしてここの戦闘も敗北する。
 ならば…我が王のために死んでやる)

獣王へ救援をおくる。あの王はそれに激怒するだろうが構わない、
と獣の隊長は自分に言い聞かせる。

せめて散り際ぐらい美しくさせたいという想いからの、暴走。
585 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/20(日) 20:30:57.74 ID:ej5PbYmSO
肉弾戦を得意とする獣の魔物たちだが、魔法が使えないわけではない。
獣の隊長クラスとなれば『テレパシー』程度ならば使える。

その唯一の魔法を駆使し、獣の隊長は全獣の魔物に命をおくる。

『皆のものきけ。これよりは勝利を考えるな、
ただ自らが与えられた命令を遂行することだけに従事するのだ』

獣たちはそれをききながらも、相手に悟られないように戦闘を続ける。
それに感心しながら獣の隊長は言葉をつなぐ。

『さて、命を下すぞ。まずは隊を二つに分ける。前衛にいるものを『囮組』、
 私を含む後衛を『侵入組』とする』

囮というワードにも動じずに兵士としての強靭な心で、前衛は覚悟をきめる。
586 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/20(日) 20:32:10.56 ID:ej5PbYmSO
それに対して、まだ詳しい説明がない『侵入組』は続きの言葉を待った。

『まず『囮組』は引き続き相手と戦闘、または壁を壊して侵入しようとせよ。
 そしてその対応に尽力する相手共の隙をついて『侵入組』は侵入する』

つまり本命は、獣の隊長がついている『侵入組』の方ということ。

『もちろん隙をつくとはいえ、それに気づかぬほど相手も馬鹿ではない。
 だからその場合は、『囮組』がそのものたちを食い止めるのだ、以上』

という、なげやりな命令を最後に獣の隊長はテレパシーをきる。

それと同時に獣たちは静かな唸り声をあげる。
了解の合図。覚悟の合図。

火蓋はきられる。
587 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/20(日) 20:34:14.12 ID:ej5PbYmSO
「アアアアアアアア!」

前衛の魔物が出陣し、突撃してきた。
荒々しい雄叫びと足音の段幕が響き渡る。

それに応戦する神殿の兵士たちと、武道家と魔法使い。

向かってくる魔物の数はたいして多くはなかったが、迷いがなくなっており、ただ一つの目的に集中し立ち向かってくる。

迎え撃つものたちは、こういう奴らは強いと知っていた。
武道家はみんなに呼びかける。

「神殿兵たち、魔法使い、気を付けろ!」

無言で頷く魔法使いと、魔物たちに負けじと気合いの入った返事をする兵士たち。

「火、風」

魔法使いが詠唱した。
すると、火が巻き起こり、風が吹き荒れる。
火は風に煽られて、流れに身を任せる。よってこの場に火の波ていうものが出来上がった。

魔法という脅威をもとに作りだされた驚異。

また、仲間にまで被害を与えないように見事にコントロールされていて、意思があるように魔物だけを襲う。
それは覚悟ができているだけでは突破できない壁となり、獣の魔物たちの進攻を許さない。

だが一発だけでは完全にシャットダウンできなかった。
運良く火の波を逃れた魔物たちは引き続き進攻する。
588 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/20(日) 20:35:30.77 ID:ej5PbYmSO
「魔法使いだけではないぞ!」

火の波の余波が残る場まで、迷わず進んできたものがいた。
それは神殿側の有利に貢献した一人、武道家。

彼女は自分の肌が火傷するのも構わずに、火の粉舞う場で正拳突きの構えをとる。

「はっ!」

そして引いた拳を、前に突き出した。

すると、拳に押された風が空気の大砲と化して獣の魔物たちの防御を突き破り、重々しいダメージを与えた。
その風圧は、周囲に揺らいでいた魔法の火をも吹き消す。
破壊力という一点では、『風の魔法』を凌ぐ風を技を、武道家は魔力も魔法もなしに成した。
589 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/20(日) 20:37:37.27 ID:ej5PbYmSO
神殿の兵士たちも、今までの戦闘で追った傷に耐えながら魔物たちと交える。

武道家たちに遅れをとらず、
彼らも第二の神殿の壁となり魔物たちを弾く。

だが魔物たちは数という利点でゴリ押しして、壁の隙間に潜りこもうとする。
生き残った残党は、まともな戦闘をしようとはしない。
壁を通りぬけることに気を向けている。


だからこそ壁たちは、この前衛たちが自滅覚悟の特攻隊と思い込んだ。
590 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/20(日) 20:38:57.20 ID:ej5PbYmSO
その前衛の魔物たちを止めることに集中してしまった神殿の壁たちは、
新の特攻部隊である後衛の対応が遅れてしまった。

すでに後衛たちは死角をついて、前衛たちより神殿に近づいていた。

「……」

猛りをおさえて、足音を殺しての突入。神殿側は咄嗟に悟った。

「あっちが本命か…」

武道家は魔法使いに「ここは任せた」と目で合図をおくり、
後衛に応戦しようとするが、前衛である『囮組』に防がれる。

「……」

魔法使いは武道家が妨害されているのをみて、自分が動くことを決意する。
だが直接向かえば、武道家と同じ轍をふむ。

だから動かずとも迎撃可能な、遠距離魔法の『風の魔物』を吹き荒らす。
だがやはり『囮組』の決死の猛攻におされた。

コントロールが出来ずに、結果威力をおさえたものとなってしまった。
また、味方がいない部分しか放てなかった。
591 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/20(日) 20:39:54.08 ID:ej5PbYmSO
「やはり数ではやつらが上であったか…やっかいな…」

「弱音をはくな、止めるぞ!!」

武道家と魔法使いの手が届かないところに、向かう神殿の兵士たち。
傷ついてはいるが、武道家たちの参入で、士気が高まっていた。

手早くイレギュラーな状況に対応して、後衛の『侵入組』をくいとめようと奮闘する。
592 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/20(日) 20:41:33.53 ID:ej5PbYmSO
「………グゥ」

相手の魔物たちは険しい顔をする。

脅威はあの二人だけと、残りの兵士たちはすでに体力も失われた飾りだと思っていたが、
ここにきて障害となった。

勝てない敵ではないが、避けても避けても寄ってくる。その様に苛立つ。

「ガアアアアアアアアアアアアアッ!」

「グルルルル……」

彼らはさらに奮起するが、相手が一枚上手だったと思わずにはいられなかった。
593 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/20(日) 20:42:42.61 ID:ej5PbYmSO
しかし『侵入組』の中に一名だけ、そう思っていないものがいた。

その魔物を獣の隊長という。

彼は笑いが込み上げてくるのか、顔が歪みに歪んでいる。

(目の前の状況がおかしくてしょうがない…自分の作成通りにことが進んでいる)

『侵入組』にまで立ちふさがる神殿の兵士たちも、魔法使いも武道家も、
『まだ戦闘可能な魔物たち』をみている。

魔法使いの『風の魔法』によって吹き飛ばされた、
『すでに倒された魔物たち』は見ていない。

そのような状況確認を心の中でした獣の隊長は、さらに口を歪ませて
誰にも気づかれないだろう場所でそっと呟いた。


「ばかだなぁ」


そして笑う魔物は動き出す。
594 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/20(日) 20:45:12.77 ID:ej5PbYmSO
戦場の中心から離れた場所に獅子の魔物が倒れていた。

魔法使いの『風の魔法』を受けたために意識はなく、
口を大きく開いたまま倒れている。

動くとしても戦闘の衝撃で小刻みに揺れる程度。
しかし、突然魔物の開いている口が、さらに大きくなる。

この口の動きは、魔物自身が動かしたものでなければ、戦闘による余波でもない。
中からねじあけるように開かされている。

次第には、口を開けた輩がみえるほどにまで拡大されていった。

中から見えたのは、猿のような顔と身体と手、そして鼠みたいな口からはみ出た歯。
それらは獣の隊長の外見を表す。

獣の隊長は、獅子の魔物の口を顎が外れるほど開いて、
十分な出口を作ると、飛び出した。
595 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/20(日) 20:46:10.87 ID:ej5PbYmSO
その時の獣の隊長は愉快な気分で、この上なく口を開いて笑った。

(……これで、死に際を美しく飾れる……)

達成感の笑いにくわえて、自分の死後に浴びせられるだろう、
敗北者に対する侮辱を少なくできたことに安心を覚えて、溜息をつく。

それを終えると、獣王がいる目の前の建物を睨む。一拍おくような
無言の睨みを終えると後ろを振り返り、庭園で戦闘する兵士たちへと呟く。

「俺が、一枚上手だったな……」

すると、獣の隊長は誰にも気づかれず悠々と、兵士たちの壁をこえる。

まだ自分気づかない馬鹿共を侮蔑しながら、軽快なリズムで歩いていく。


そして、神殿の中へと足を踏みいれた。
596 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/20(日) 20:47:55.75 ID:ej5PbYmSO
この大神官の神殿の入り口には、門というものがある。

そしてそこには当然、門番という監視者がいる。
その門番は三人おり、訪問者が神殿に入る資格があるか見極めることや、
許可なく入ろうとするものを追い返す、という役割を大神官から仰せつかっている。

つまり神殿に入るためには、この三人からの許可が絶対に必要となる。

何百年も続く神殿の歴史で、許可なく侵入できたものは
今回の襲撃の首謀者である獣王のみである。

神殿へと繋がる洞窟を抜ける困難さが稀ということも功績の理由の一つだが、
逆にいえば洞窟を越えてきた手練にも侵入を許さなかったことになる。

門番は決して優れた戦士というわけではない。

だとすると、今までの侵入者を獣王のみに留めることができたわけは―――
597 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/20(日) 20:49:15.14 ID:ej5PbYmSO
「門番Aより。結界は修復できていますね?」

「門番Bより。はい、獣王にやぶられたことにより、
 精神拘束機能が失われていましたが、現在は復旧しております」

「門番Cより。ただいまここゆり三○○メートル東で一匹、
 結界にかかりました。おそらく相手軍の頭かと」

この三人が編み出した、神殿全体に張られている『二重結界』。

結界に触れた者を、肉体的にだけではなく精神的にも拘束する。
精神を拘束されれば意思が働かなくなり、事実上意識を失った状態となる。

それをもってしても獣王の強靭な意思までは縛れなかったが、
今回の魔物には効果があったようだ。

「門番Aより。こちらが一枚上手でしたようですね」

「門番Bより。油断はいけませんよ」
598 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/20(日) 20:51:45.17 ID:ej5PbYmSO
相手の軍の頭らしき魔物を、結界によって捕えたという情報は、
門番のテレパシーにより魔法使いの耳にも入った。

その報告を魔法使いはいつものように短い一言で返す。
そして武道家にも伝えるために、魔物を蹴散らしながら走る。

「本当なのか?」

それを聞いた武道家は自分の周りの魔物との戦闘の傍ら、そう聞き返す。
魔法使いは無言で小さく頷くことで、対応した。
その後魔物たちに囲まれたため、『風の魔法』で吹き飛ばす。

そして門番たちからの、もう一つのメッセージを口にする。

「だからここはもういいので勇者の応援へ、と」

「……む」

もともと二人がここへきたのは、獣王のせいで機能停止した結界を修復するまでの時間稼ぎ。
兵士たちが戦いに駆り出されているのも、そのためであった。

獣の魔物つがどれだけの数で攻めてこようが、どんな策を弄しようが、
門番たちの結界で事足りる手筈だった。

しかし獣王というイレギュラーのために、二人は大神官からここへくるようにと懇願された。
599 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/20(日) 20:52:51.46 ID:ej5PbYmSO
「本当は、勇者様のもとへむかいたいが…」

尊敬するパーティのリーダーを心配する武道家は、獣を二、三匹も同時に蹴り飛ばす。
魔法使いもそれに続こうとする。

「……時間稼ぎのために失われる命は、できる限りなくしたいからな。私は最後まで残るよ」

「同じく」

魔物たちめ残り僅かとなっていた。二人が自由に動けているのも魔物の減少によるためだった。

「だが勇者様も心配だ…早く片付けるぞ魔法使い!」

「大神官様も。一人だった」
600 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/20(日) 20:55:12.64 ID:ej5PbYmSO
ここまでです

終わりませんでした
それどころか獣王側は進展なし
また深夜にくるかもしれません
一時をすぎても来なかったら来ないものとしてください
次の投下では絶対終わらせます…
601 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/20(日) 21:11:43.26 ID:TIV7Zj+SO
602 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/21(月) 00:53:58.33 ID:lcS/KBkSO
その大神官はというと、現在は一人ではいなかった。

この神殿には門番や兵士の他にも、世から理不尽に弾きだされた者たちが存在していた。
例をあげるならば、王の圧政により逃亡した農民や、国にとって不都合な研究をしたために追放された学者などである。

普段そんな者たちは、大広間の周囲に並ぶように設置されている部屋で過ごしていた。
しかしいまは全員が緊急避難用の、地下室に繋がる階段をおりて、隠し部屋に身を潜めている。

もちろん大神官はその部屋の存在を知っているため、勇者たちを覚醒させた後、
空間移動でむかったわけである。
603 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/21(月) 00:55:29.96 ID:lcS/KBkSO
「大神官様、われわれはどうなってしまうのでしょうか!?」

「助かるのでしょうか!」

やはり皆は戸惑っていた。無理もない。今まで一度たりとも魔物どころか、
人間による襲撃もなかったのだから。あったとしても未然に防いでいた。

しかし、今回は簡単に破られて、大広間まで侵攻されている。
そうなれば人々のなかには獣王の姿を目にしてしまったものもいるはずだ。

勇者たちでさえ一蹴されてしまうような化物に、ここまで犯されていれば混乱するのも無理はない。

だからこそ、大神官はここに来た。

「大丈夫だ」

と、彼は言い放つ。
あまりに澄んだ声に、バラバラであった人々は、統率された軍隊のように一斉に大神官に注目した。

「勇者とその仲間たちが魔物から神殿を、我々をまもってくれている。だから安心するのだ!」

手を大きく広げて、高らかと言葉を響かせた。
まだ幼い顔つきの大神官は誰よりも強く勝利を信じて、皆を勇気づけた。
604 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/21(月) 00:56:13.50 ID:lcS/KBkSO
人々の群にまぎれながら、倒れた勇者の仲間の僧侶の看護を担当していた大神官の側近は、
そんな一○歳前後の少年をみて、改めて感服してしまった。

そして同時に悟る。

大神官は信じているのだ。
勇者と、魔王の力をもつあの男が掴む勝利を。
605 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/21(月) 00:57:29.29 ID:lcS/KBkSO
普段ならば、この神殿に匿われている者が住む部屋の一室。
その部屋の壁には、大きな穴が無数に開いている。それは破壊された跡であった。

とにかくこの部屋は荒れており、天井にいたっては穴の方が面積を占めているほどである。
亀裂などにより平らを保っていない床には、血が模様のように飛び散っており、
まだ乾いていないだろう浅い水溜まりのような血痕もある。

そこで行われているものは、この神殿と獣の魔物軍の攻防戦における主戦。

互いの勢力の最強がぶつかる決戦。

攻めてきた獣王と、勇者の死闘。そこに勇者を味方する魔王の力を保有した男が加わったもの。

「グアァゥ…ウグ」

その戦闘も終盤を迎えていた。
606 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/21(月) 00:58:29.00 ID:lcS/KBkSO
魔王軍では幹部の位である獣王だが、
世界を救う人物とされる力と世界を滅ぼす力という二つにとっては、弱敵でしかなかった。

獣王は触れることもかなわず、
攻める側から攻められる側に成り下がっていた。
607 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/21(月) 01:00:06.54 ID:lcS/KBkSO
「男、そろそろとどめだ」

勇者は男にそう呼び掛ける。男はその判断に納得できた。

獣王はそろそろ限界だ。

勇者の『雷の魔法』をうけて致命傷を負い、動きも落ちているのをみれば、誰でもそう思うだろう。

「はい」

だから男は同意して、身体に力をこめる。

そしてまた同じく自分が限界だと感じていた獣王はというと、静かに唸っていた。

「……ウウウウウウウウウウ」

「……?」

勇者はそれからただならぬものを感じたねか、距離をとった。

その勇者にあわせた男は、この感じを知っている。
608 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/21(月) 01:00:53.54 ID:lcS/KBkSO
全身が寒気に蝕まれ、鳥肌がたつ、この感じ。

「これは…」

男は、自分ひとりで闘っていた時にその片鱗をみている。
強制的に肝を冷やされるような空気を作りだす相手の気配、雰囲気。

その発信源である獣王が言葉を発する。

「これは獣だけがもつ、相手を支配するための威圧感」
609 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/21(月) 01:02:10.19 ID:lcS/KBkSO
獣王は、男と勇者に全く感情のない声で語る。

「……!」

なにかが男の肌につきささる。これは攻撃ではなく、やはり威圧なのだろう。

獣王から放たれる威圧によって、肌が刺激をうけたと勘違いをして反応する。
そのレベルにまで研かれた獣の威嚇。

「この威圧は、相手を絶対に狩るという宣言のようなもの。絶対的勝利の確信からくる確信」

相も変わらず言葉に感情がないが、男はその言葉から獣王の言葉が強がりではないと知る。

「確信だと…?自棄にでもなったか」

「そう思うか?」

思わず男はこの魔物に敗北してしまうのではないかと錯覚する。
610 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/21(月) 01:03:22.99 ID:lcS/KBkSO
ありえない、と首を振る。
相手は虫の息だ。それに今は勇者がついてくれている。

絶対はないが、万が一にも負けることはないだろう。

汗を流している男をみた勇者は声をかけた。

「落ち着くのだ男。お前が感じた不安は獣王がいう、獣特有の支配というやつだ。暗示のようなものにすぎない」

「はい」

男は勇者からの励ましによって、再び心を強く持ちなおす。

だか相手が術中から逃れたにも拘らず、
獣王は余裕にもみえる無表情で、無感情な声を出した

「ここまではな」
611 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/21(月) 01:04:39.64 ID:lcS/KBkSO
獣王を中心に強烈な風が吹き出した。
それは魔法によって生みだされたのではなく、周囲を漂う空気が押し飛ばされたもの。

押し飛ばした正体は、力。

肉体的ではなく、どちらかというと魔法的な力。
それは魔法なしでは絶対に生まれるものではなく、つまりそれは獣王が魔法を使ったことを示す。

「!」

怪訝な顔をする男と勇者。

それに対して獣王はボロボロの身体をふらつかせながら、
それでいて相手を圧倒する風格を保っていた。

「これは我が使える、唯一の魔法であり切り札…体術を得意とする獣の切り札が魔法とはおかしいがな」

獣王の切り札。
それは感情を魔力に変換して、それをもとに戦闘力をつくりだす。
612 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/21(月) 01:05:27.07 ID:lcS/KBkSO
もともと魔力に乏しい獣の魔物は、感情を魔力にしたという。
獣の魔物は感情を、獲物に自分の存在を伝えてしまうと考え、
それを捨てるのではなく有効活用する方法を長い年月をかけて考えだした。

獣王はその古来の技術を学んだわけである

「よし」

獣王はゆったりと構えた。

「いくぞ愚者共が」

と、威圧ある感情のない宣言をする。
613 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/21(月) 01:07:16.26 ID:lcS/KBkSO
「つまりそれは補助魔法か」

とてつもない速さで突進してきた獣王を前にして、余裕の態度で勇者はそう漏らした男は、
獣王の攻撃を回避しようともしない勇者に疑念を抱く。

「勇者様、避けないのですか!?」

「ああ、男はよけていろ」

ますます分からなくなる男は、勇者が相討ちを考えているのかと勘ぐってしまう
しかし勇者は、無駄な死に方をする人物ではない。
とりあえず、もしもの時に勇者を助けることができる構えをとりながら、
獣王の突進を回避する男。

対して勇者はまだ避けるどころか、なんの動きもみせない。

もはや、相討ちのための用意をする時間もない。
614 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/21(月) 01:08:30.07 ID:lcS/KBkSO
危険、と判断した男は魔王の力をもって、『破壊の魔法』を練る。

この『破壊の魔法』は破壊を象徴する、まさに魔王の技ともいえる魔法。

直撃したものは必ず破壊する。防ぐには、魔力の質と防ぐための技を
『魔王の力』と同じレベルにまで高めなくてはならない。

「勇者様!」

『破壊の魔法』を完成させた男は、獣王に放とうとする。
たがその直前に勇者の口元の動きを捉える。

「……あれは、詠唱している…?」

ようやく勇者の意図を理解した男は、『破壊の魔法』を抑えた。
615 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/21(月) 01:10:14.46 ID:lcS/KBkSO
「そう」

と、詠唱をおえた勇者は男に言ったその時の勇者は、青白い光を身体から発していた。

まるで輝いている宝石のようだった。

「これこそが勇者の魔法のひとつ」

そして輝く光は、勇者のもとから放水されたように離れていき、
一点に集まり凝縮して、球体となる。

それはゆったりとした動きで前に進みだし、突進してきた獣王のもとへとぶつかった

瞬間。

「ア、アアアアァアアァア!?」

その光は獣王を包み込んだのだ。

感情がない声しか出せない獣王が、明らかに驚愕を含んだ叫びをあげる。
そして混乱、困惑の色もまざっていく。

光によって見えないが、無表情な顔つきも崩れているはずだ。

やがて獣王を包んでいた光は消えていく。
いや、よく観察すると消えたのではなく、
獣王の身体からの中へと侵入しているようにみえた。
616 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/21(月) 01:11:34.18 ID:lcS/KBkSO
獣王は、黄金の体毛を汗に濡らしながら、みていられない表情で、膝をついた。

すっかりパワーアップ効果は消えているようであった。

「な、ン、だ、いマの、は」

弱々しかったために男は獣王の言葉をよく聞き取れなかったが、
勇者のほうはしっかり聞き取ったようで獣王の言葉に答えた。

「無効化魔法だ、補助魔法限定のだがな」

「!」

簡単に口にした勇者の言葉は、獣王の心を深く抉った。
もはや相手は精神的にボロボロだろう。
神殿の結界にも屈しなかった精神は、二つの最強の力によって膝をつかされた。

希望をなくした暗い表情の相手をみた男は、思わず弱いもの虐めを想像してしまう。

だから男は早急に『破壊魔法』を練る。

自分がしたいのは弱いもの虐めではなく、名前をまもること。


練り上げた魔力によって紅い閃光が出来上がり、
それが纏われている手を獣王の方へとむけて、言う。

「とどめだ、獣王」
617 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/21(月) 01:12:44.44 ID:lcS/KBkSO
その瞬間に、獣王は足元の地面を拳で叩いた。

当然その衝撃により、瓦礫と砂塵がまきあがる。

獣王の腕力は人間の比ではない。
勇者と魔王という二つの頂点のせいで霞んでいるが、
その力は戦闘訓練された兵士でも想像が及ばないレベルであろう。

起こった爆発は、魔法でも使用したのではないかと勘違いさせるに等しい規模であった。

地面の破片と砂埃は、獣王から前のフロアの隅々にまっ行き渡り、壁などに傷あとをのこす。

「大丈夫ですか、勇者様」

「ああ、おかげさまでな」

影響をうける位置にいた男と勇者は、
男が『シールド』を展開することで、傷ひとつおわずに身を守っていた。

では爆発の原因であり震源、そして影響のなかった場所にいた獣王はどうしていたか。


答えは前進。
618 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/21(月) 01:13:42.24 ID:lcS/KBkSO
「アアアアアアア!!」

「!?」

自ら爆発へと巻き込まれるように、影響が及ぶところへと向かっていった。

そのフラフラとした突進は、もはや獣の王てしての貫禄はなかったが、誇りはあった。

「……ッ!!」

先ほどまで自分が感じていた獣王の弱さは、自分の優位における錯覚であった。
獣の王は誇りを失ってはいなかった。
死するまで己の目的を捨てない。
どれだけ身体が衰えようとも、心だけは弱めない。

それを宣言するように、獣王は吠える。


「せめて貴様だけは……ッ!」
619 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/21(月) 01:14:50.85 ID:lcS/KBkSO
地面の欠片や、同じく目の前にいる勇者など、己のターゲット以外は何も見ずに、
獣王はなんの考えもない力を振り絞った拳を振りかぶってきた。

それに男は真正面から立ち向かう。

「アアアアアアアッ!!」

「はああああぁぁっ!!」

そして交錯した獣の腕と、人間の腕。

獣の王たる一撃と、魔王の力がこめられた最強の一撃。

腕の長さで勝っていた獣王の拳は人間の身体に届かず、
一歩多く踏み込んだ男が獣王の頭を揺さぶる。

衝撃の中心点からは頭蓋骨が粉砕される音が唸り、
顔の至るところから血が吹き出した。
620 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/21(月) 01:15:45.22 ID:lcS/KBkSO
「……」

獣王は身体を起立させておくほどの力を失い、ゆっくりと仰向けに倒れた。

倒れた後も頭からの出血が、地面を彩色していく。

獣王はもう、動かない。

男は目を閉じて、つぶやく。


「……終わった」
621 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/21(月) 01:16:33.59 ID:lcS/KBkSO
ここまでです
やっとひとくぎりです

ではまた
622 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/21(月) 01:25:25.57 ID:8tXjlbXSO
623 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/21(月) 04:51:47.67 ID:RpX09pN5o
624 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2011/11/21(月) 22:15:59.31 ID:lcS/KBkSO
レスありがとうございます
>>616の一文を訂正
×自分がしたいのは弱いもの虐めではなく、名前をまもること

○自分がしたいのは弱いもの虐めではなく、仲間をまもること

その他にもミスがたくさんあります。
本当にすいません
625 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/22(火) 00:36:57.16 ID:oMsXxdPSO
獣王が倒れた。

だが、まだ戦いは終わっていない。

勇者と男は庭園にむかう。

そして―――
626 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/22(火) 00:39:49.30 ID:oMsXxdPSO
〜神殿 小部屋〜

僧侶「……」

勇者「目覚めたか」

僧侶「勇者…さ……」

勇者「そのままでいい。まだ身体が動かないだろう」

僧侶「わたしは…」

勇者「……」

僧侶「そうだ、獣王は……」

勇者「もうすべて終わった」

僧侶「えっ…」

勇者「だから寝ているんだ」

僧侶「……そうだわたし」

勇者「お前は…一度絶命した。しかし……」
627 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/22(火) 00:40:59.29 ID:oMsXxdPSO

〜神殿 大広間〜

武道家「大丈夫か?」

兵士「はい…」

ガチャ

武道家「!」

勇者「……」

武道家「勇者様、僧侶は」

勇者「一人になりたいそうだ」

武道家「そうですか」
628 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/22(火) 00:42:07.10 ID:oMsXxdPSO
勇者「本当によかったものか」

武道家「ですが話さないままというのも無理があります」

勇者「そうだな…だがあの沈みようは」

武道家「……あの子の姉上は魔王に殺されました。だから人一倍魔王を恨んでいた」

勇者「……」

武道家「しかしあの子も弱くはありません。だから貴方も気に病む必要はありません」
629 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/22(火) 00:43:19.28 ID:oMsXxdPSO
勇者「む…」

神殿兵「すいません!誰かこちらを!」

勇者「はい!」

武道家「わたしが行きます」

勇者「すまない」

勇者「…む」


男「……」
630 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/22(火) 00:45:26.66 ID:oMsXxdPSO
勇者「男」

男「勇者様」

勇者「上の空だが…」

男「すいません。今すぐ怪我人の治療の手伝いに戻ります」

勇者「いや、ここは私に任せろ」

男「しかし…」

勇者「よい。疲れているのならば休んでいろ」

勇者「」クイ

男「…」
631 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/22(火) 00:46:35.79 ID:oMsXxdPSO
男「……」

男「部屋のまえまで来たはいいが…」

男「どうしようかな」

男「一応、そこらに生ってた果物を持ってきたけど」

男「…」


男(許されなくても守りたい…そう決めたはず)

男「だが礼儀として、ケジメをつける」
632 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/22(火) 00:47:49.87 ID:oMsXxdPSO

トントン

男「失礼します」

男「……」

男(返事がない?)

トントン

男「失礼、します…」

ガチャ

男「!?」


男「いない…?」
633 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/22(火) 00:48:53.44 ID:oMsXxdPSO
〜神殿 庭園〜

僧侶「ふぅ…ふぅ……」

ドサッ

僧侶「もう歩けない…」

僧侶「魔法を使う余力もない」

僧侶「……」

僧侶(男さん)

僧侶(嫌いじゃなかった。むしろ信頼できる好きな部類の人)

僧侶(だったのに)
634 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/22(火) 00:50:16.32 ID:oMsXxdPSO
僧侶(わたしが嫌いな魔王の力を受け継いでいた。そんな力、普通じゃ手に入らない…)

僧侶(つまり男さんは魔王の関係者…だった?)

僧侶(いや考えるのは無駄。どうにしろ…)

僧侶「…………」
635 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/22(火) 00:51:49.95 ID:oMsXxdPSO
ザッ

僧侶「!?」ビクッ

男「……僧侶様」

僧侶「……」

男「…」

僧侶「……なんでしょう」

男「言いたいことが…」

僧侶「……どうぞ」

男「確かに…僕は魔王の力を受け継いだらしいです。そして今はこの身体の内に保有されています」
636 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/22(火) 00:52:56.01 ID:oMsXxdPSO
僧侶「……しっています。勇者様にききました」

男「……」

僧侶「それだけですか?」

男「……僧侶様が、魔王を嫌悪していることも承知しています」

僧侶「知ったような口を…」
637 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/22(火) 00:54:34.43 ID:oMsXxdPSO
男「……ですが僕は、貴方たちの力になれないのは嫌です」


男「ですので、この力を持ち続けます」


僧侶「そうですか……」


僧侶「ならばわたしは貴方を一生嫌い続けます」


男「……」

僧侶「……」
638 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/22(火) 00:55:39.86 ID:oMsXxdPSO

僧侶「でも、その力でわたしを生き返らせてくれた」

男「…」

僧侶「勇者様たちの力になってくれた」


僧侶「……いつもの男さんです」

男「…」
639 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/22(火) 00:57:06.32 ID:oMsXxdPSO
僧侶「魔王の力を持っているのに、やっていることはいつもの……」

男「僧侶様」

僧侶「だからもう……わたしは貴方にどんな感情を向けていいか分かりませんっ!」

僧侶「魔王の力は嫌い。だけどアナタの行動は…嫌いじゃないです」

男「そ…」

僧侶「もうぐちゃぐちゃで……どうしたらいいかわからないよ!」ポロ

男「僧侶…さま…」
640 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/22(火) 00:59:42.08 ID:oMsXxdPSO
僧侶「うううぅぅ…」ポロポロ

男「…」

僧侶「バカバカ、馬鹿っ!ばか…うぅ……」

男「……」
641 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/22(火) 01:01:02.94 ID:oMsXxdPSO
ここまでです
ではまた
642 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東・甲信越) :2011/11/22(火) 01:26:32.78 ID:Xy3PgSNAO
643 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/22(火) 13:04:26.29 ID:O0r5ljbSO
644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/23(水) 11:24:42.93 ID:Zb5zPCyIO
645 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/23(水) 18:23:20.15 ID:s9Q/A48DO
なんか力をつけたとたん態度がでかくなったな勇者

前はもっと謙虚な感じだったのに
646 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/27(日) 00:17:45.55 ID:bIRXMRKSO
>>645
力をつけた時からというか最初立ち寄った村の時点でそうなりました
647 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]:2011/11/27(日) 00:18:31.89 ID:cgbGl7cXo
御託はいいからHKB!
648 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/27(日) 00:20:39.94 ID:bIRXMRKSO
〜神殿 大広間〜

勇者「どうだ?武道家」

武道家「……依然として、男も僧侶も黙ったまま部屋に籠もっております」

勇者「そうか」

勇者(やはりそう簡単に埋まる溝ではないか…しかし)

勇者(あの二人なら必ずわかりあえると信じる)

勇者(……無責任な言葉だが、今は第三者が介入する余地など…いや…)
649 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/27(日) 00:23:02.94 ID:bIRXMRKSO
武道家「…と考えていますか?」

勇者「武道家」

武道家「あの二人の問題は複雑です。ですから私も、今はそっとしておくべき時だと…」

勇者「しかし、仲間であるというのに、何もできないというのはな…」

武道家「……」
650 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/27(日) 00:23:42.73 ID:bIRXMRKSO
武道家「…」グッ

武道家「勇者様」

勇者「なんだ?」

武道家「……見守るだけということが辛いと、無責任であるとお考えならば」

651 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/27(日) 00:24:32.06 ID:bIRXMRKSO
武道家「私は、貴方と共にその辛さを背負います」

勇者「なに?」

武道家「……そうすれば、少しは軽くなりませんか?」

勇者「武道家…」
652 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/27(日) 00:25:55.88 ID:bIRXMRKSO
武道家「貴方は一人で抱え込む癖がおありです」

勇者「む……」

武道家「貴方と旅をする中で」

武道家「私の中に、魔王討伐と同じぐらい大きなものができました」

勇者「…」


武道家「私は、気持ちを共有しあうことで貴方の支えとなりたい」
653 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/27(日) 00:27:38.74 ID:bIRXMRKSO
勇者「……」

武道家「共に笑ったり、泣いたり」

武道家「そうすることで、貴方の辛さを少しでも軽減できるのならば…」

武道家「貴方と…感じた気持ちを分けあっていきたいです」
654 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/27(日) 00:28:13.45 ID:bIRXMRKSO
武道家「躓きそうな時は私が支えます」

武道家「だから…貴方は迷わず信じる道をお進みください」

勇者「……」


勇者「ありがとう」
655 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/27(日) 00:29:30.68 ID:bIRXMRKSO
勇者「部下ではなく、仲間でいてくれて嬉しい」

武道家「……」

勇者「少し楽になったよ」

武道家「……そうですか」


勇者「……武道家。私の支えになってくれ」

武道家「……はい」
656 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/27(日) 00:32:51.25 ID:bIRXMRKSO
勇者「僧侶と男は…信じよう」

武道家「はい」

勇者「では、手伝いにでもいこうか」

武道家「はい」

勇者「ここの治療も一段落ついているみたいだな」

勇者「では神殿の修理のほうにまわろうか」

武道家「はい」

武道家「……」

武道家「…」
657 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/27(日) 00:34:40.04 ID:bIRXMRKSO
武道家(い、いま考えればなんてことを…なんてことを……いいまくったものか…私は!)

武道家(支えますだけで良いだろう…省いていい言葉だらけだ!)

武道家(いや、勇者様の気が楽になるのならばそれでいいではないか!…しかしだがしかし)

武道家(うわああああっ!)ブルブル

勇者「……大丈夫か?」

武道家「大丈夫でございます…」フルフル
658 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/11/27(日) 00:36:32.37 ID:bIRXMRKSO
ここまでです
レスありがとうございます!

>>647
すいませんでした!

ではまた
659 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/27(日) 00:40:54.71 ID:WyQIM23jo
おつん!
660 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/27(日) 19:19:31.76 ID:U0/ECrASO
661 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/06(火) 00:51:18.42 ID:pt21mxQSO
〜神殿 地下〜

側近「蘇生されたとはいえ僧侶の身体はまだ衰弱したまま」

側近「一度死んだ身体が、ほんの僅かの生気を得たという、瀕死より身体が弱っている状態」

側近「そんな身体に、回復魔法という治癒力を促進させる行為は危険」

側近「自然回復に身を任せるのが賢明」

魔法使い「承知」
662 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/06(火) 00:52:25.21 ID:pt21mxQSO
側近「その間、貴方にはここを見張っていていただきたい」

魔法使い「…」

側近「ここは」

側近「獣王を含めた、今回の獣王軍の墓場」

魔法使い「…」
663 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/06(火) 00:55:05.82 ID:pt21mxQSO
側近「僧侶が、魔王の力を得た男の蘇生魔法で生き返ったように…」

魔法使い「魔王がやってきて、獣王たちを蘇らせる可能性がある」

側近「その通り」

側近「蘇生魔法は、魔王の専売特許なのだ」
664 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/06(火) 00:56:33.17 ID:pt21mxQSO
魔法使い「私達が去ったあとはどうするつもりで」

側近「いかに魔王の蘇生魔法といえど、限界がある」

魔法使い「限界…」

側近「肉体と魂が完全に分離してしまったものは、生き返らせることはできない」

魔法使い「完全分離までの時間は」

側近「我らの研究によれば、五日」

魔法使い「…」

側近「獣王たちの死亡日から、すでに二日。つまりあと三日」
665 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/06(火) 00:58:55.96 ID:pt21mxQSO
側近「確かに長い」

魔法使い「…」

側近「魔王と戦えとはいわない。ただ見張りをお願いしたい」

魔法使い「わかりました」

魔法使い「そして、全く関係のない疑問がわきました」

側近「なんだ」

魔法使い「魔王軍は一時期、壊滅的危機に陥ったんですよね」

側近「ああ」

魔法使い「……その危機の理由は、魔物たちの大量死と」

側近「うむ」

魔法使い「なぜ、魔王は蘇生魔法を使い、その魔物たちを蘇らせなかったのですか?」

側近「……それは」
666 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/06(火) 01:01:09.64 ID:pt21mxQSO


側近「その時期は、魔王が行方不明であったらしい」

魔法使い「不在」

側近「理由は不明だし、根拠もない情報だがね」

魔法使い「…」
667 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/06(火) 01:05:23.52 ID:pt21mxQSO
〜神殿 庭園〜

勇者「この庭園は、見たこともない様式ですね」

武道家「たしかに…このように荒らされる前から、全く手入れされていなかった」

学者「中央の国などにある庭園とは少し違います」

学者「芸術性はありません。ありのままの自然を堪能するという思想から作られたらしいです」

勇者「なるほど」
668 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/06(火) 01:07:39.82 ID:pt21mxQSO
武道家「ふぅ」

学者「お疲れでは?」

武道家「いや申し訳ない。大丈夫です」

兵士「武道家殿たちは戦闘による疲労の回復に専念なさってください」

武道家「そういうわけには…」
669 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/06(火) 01:09:20.33 ID:pt21mxQSO
兵士「しかし…」

武道家「戦闘ならば貴方達もしただろう。私ひとり休むわけにはいかない」

勇者「無理はするなよ」

武道家「大丈夫…」フラッ

武道家「あうっ」コテン

勇者「…」

武道家「……」
670 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/06(火) 01:11:14.98 ID:pt21mxQSO
武道家「だいじょうぶです」

勇者「休もう、武道家」

武道家「し、しかし…」バッ

フラ

武道家「わっ…!」コテン

勇者「……」

武道家「……」

勇者「休もうか、武道家」
671 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/06(火) 01:14:46.98 ID:pt21mxQSO
〜神殿 小部屋〜

武道家(な、情けない。二度もあのように情けなく…情けない情けない)

武道家「不甲斐ない」

勇者「どうした?」

武道家「!? あ、いや…」

武道家(そうだ、勇者様が隣にいたのだった!)

武道家(それを忘れて、声に出していた……)

武道家「恥だ…」
672 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/06(火) 01:17:08.39 ID:pt21mxQSO
勇者「疲れを感じるのは当たり前のことだ」

武道家「……はい」

勇者「そう自虐的にならなくてもいいさ」

武道家「…」

勇者「いまは自分の身体を大事にする時だ」

武道家「……はい」

武道家(やはり、この方は優しい…)
673 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/06(火) 01:26:16.04 ID:pt21mxQSO
武道家(おそらく、そんな優しいところに、私は…)

勇者「ん?」

武道家「はいっ!?」

勇者「顔に土がついているぞ、おそらく先ほど転んだ時についたのだろう」

武道家「はい、わかりましたっ!!」ゴシゴシゴシ

勇者「……うむ、とれた」

武道家「どうもです…」

武道家(……考えるとおかしくなる。この感情についてはしばらくは考えるのをやめよう…)
674 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/06(火) 01:27:32.42 ID:pt21mxQSO
〜魔界 魔王城〜

竜王「……」

鳥王「獣王軍の中に紛れさせた、私の配下が帰ってきました」

竜王「……」

鳥王「敗北。獣王殿も死亡」

竜王「!」

鳥王「やはり勇者パーティにいる男は、あの男でした…」

竜王「神殿の大神官は、かつての力を取り戻すことも可能だからな…」

鳥王「配下の中に、とてつもない力を察知したものもいます」

竜王「無茶はやめておけといったのに、あの馬鹿ものめが」
675 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/06(火) 01:29:42.48 ID:pt21mxQSO
鳥王「問題が増えましたね」

竜王「ああ。獣王という一つの穴ができてしまった」

鳥王「そして…」


鳥王「確かに死が確認されたはずの男が生存している」

竜王「……」

竜王「なぜだ…なぜ生きているのだ…」

鳥王「……考えましょうか」
676 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/06(火) 01:31:20.66 ID:pt21mxQSO
竜王「確認からしよう…」

竜王「あの男を討ち取ったのは誰だ?」

鳥王「アンデッド系の魔物を統率する、幻王殿です」

竜王「……幻王ならば、誤魔化すことは可能だな…男と繋がっていたか…?」

鳥王「いえ、幻王殿は獣王殿にも劣らない程、男を嫌悪されていましたが」

竜王「なるほど。男の死体を魔物にし、配下に加えるなどしないか…」
677 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/06(火) 01:33:19.57 ID:pt21mxQSO
竜王「では…」

鳥王「やはり」

竜王「……」ピクッ

鳥王「……やはり、考えられるのは一つしかありませぬ」

竜王「それはありえん」

鳥王「私も信じたくはありません。しかし、そう考えてみると、しっくりきてしまう…」

竜王「っ…」
678 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/06(火) 01:36:05.93 ID:pt21mxQSO
かつて魔物軍は壊滅的危機に陥った。
その詳細は、魔物達にしか知られていない。


魔王の力を奪い取った男が、その力をもって、魔王軍を急襲したのだ。

それは、魔王軍全体の半数近くにまで被害を及ぼした。

だが魔物たちはその被害を、危機としては捉えなかった。


魔王様がいる、と。

あの方の蘇生魔法の恩恵を授かれば、無傷な魔王軍にすぐさま戻る、と。
679 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/06(火) 01:37:46.95 ID:pt21mxQSO
その襲撃後まもなく、
盗人のせいで長らく不在であった魔王が、新しく誕生していた。

身体は人間の少女という頼りなさげなものではあったが、
この状態を打破してくれるのならば、容姿などどうでもよかった。
680 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/06(火) 01:40:32.65 ID:pt21mxQSO
しかし魔物たちの希望は打ち砕かれる。

新生魔王である少女は、魔王任命後、行方を眩ました。


このままでは、死んだ魔物が蘇生することができる期間が過ぎてしまう。
騒然となった。魔王軍だけでなく、魔界全体が。


数日後、少女の魔王はかえってくる。
しかしやはり、手遅れであった。死んだ魔物を蘇らせることは、不可能となっていた。
681 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/06(火) 01:43:19.59 ID:pt21mxQSO
鳥王「魔王様はわざと行方を眩ませたとしか思えません。
   魔王軍に消えないダメージを与えるためでしょう」

鳥王「それは魔王様の『人間の部分』が、魔王軍を疲弊させるためにとった
   最後の抵抗かと予測していました。それ以外考えられなかった」

鳥王「しかし…」


その予想も、理由も、まったくの見当違いなのかもしれない。

もしかして魔王様は。
682 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/06(火) 01:48:46.63 ID:pt21mxQSO
魔王「男」

魔王「なぜ来るの?」

魔王「蘇生させ、わたしと関わった時期の記憶もけした」

魔王「貴方はもうわたしと旅した男じゃないのに」

魔王「わたしは、魔物とは無関係の人生をおくってほしい」

魔王「だから貴方にみせつけなきゃいけないね」

魔王「立ち向かうなんて気持ちを無くすくらいの、魔王の恐怖を」
683 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/06(火) 01:53:36.18 ID:pt21mxQSO
ここまでです
投下ペース遅すぎですね。
いろいろすいません

レスはありがとうございます
ではまた
684 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/06(火) 04:19:36.10 ID:DqYTM9dIO
685 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/06(火) 08:15:51.94 ID:Jjxqnl3SO
686 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/18(日) 21:35:09.88 ID:gKEnPkwSO


男「暗くなってきたな」

少女「そうだね」

男「晩メシの時間だ」

少女「ばんめし」

男「晩メシだ」

少女「うんっ」

男「それがどうしたんだ?」

少女「いや、なんでもないよ」

男「?」

少女「ばんめし、食べよう」

男「おお」

少女「ふふふ」
687 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/18(日) 21:37:17.97 ID:gKEnPkwSO
男「魔物たちからの支援はほぼナシか」

少女「食べ物も、自分たちで調達しなきゃね」

男「こうして旅してるから…いつでも簡単に食い物がとれる所にいるとも限らないしなー」

少女「でも、それもそれで、楽しいよ」

男「……そうだな」
688 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/18(日) 21:38:11.73 ID:gKEnPkwSO
男「なに食う?」

少女「なんでもいいよ」

男「じゃあ肉にするか」

少女「あっ…」

男「はははっ」

少女「いじわる。わたしが…お肉苦手なこと知ってるくせに」

男「ははは、冗談だよ」

少女「むぅ…」
689 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/18(日) 21:39:39.12 ID:gKEnPkwSO
男「食べられなくはないけど、食べられる動物がかわいそう、だっけ?」

少女「……」コク

男「やさしいな」

少女「そ、そんなことないよ」

男「そんなことあるさ、俺はお前のそういうところ、好きだよ」

少女「すき…」ビク

男「じゃあ、なにかテキトーにとってくるな」

少女「うん…」
690 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/18(日) 21:40:48.51 ID:gKEnPkwSO
男「こんなのしかなかった」

少女「たべられるの…?みたこともないよ…」

男「ま、まあ。味見はしてみた…」

少女「じゃあ食べよう」

男「ま、まて!」

少女「?」

男「時間がたってから来るものかもしれないし…」

少女「でも、これ以外食べられそうなものはなかったんでしょ?」

男「あ、ああ」

少女「じゃあいいよ。だってせっかく男がとってきてくれたものだよ」

男「……」

男「よ、よーし!カラダがおかしくなったら言え!すぐに治してやる!」

少女「そうこなくちゃー」
691 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/18(日) 21:42:41.06 ID:gKEnPkwSO
男「ふぅー、そろそろ寝るか」

少女「結局なにもおこらないね」

男「ああ大丈夫だったな。それとも…」

少女「?」

男「お前の胃袋が頑丈なのかもなー」

少女「!?」カァ

男「冗談だ」

少女「も、もう!失礼な冗談が多いよっ」ポカポカ

男「いたた、ごめんごめん!」
692 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/18(日) 21:43:37.22 ID:gKEnPkwSO
男「いたたー」

少女「ふん」

男「わるかったよ」

少女「本当に思ってるの?」

男「このとおり!」

少女「……むー、よし、許す」

男「ありがとうございますお姫様」

少女「くるしゅーない」

男「ははははっ、なんだよそれ」

少女「おしえなーい」
693 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/18(日) 21:44:59.28 ID:gKEnPkwSO
男「よし」パァッ

少女「これは?」

男「結界。寝床がわり」

少女「ほうほう」

男「魔物におそわれることは多分ないだろうけど、寒さ避けとかにもなるしな」

少女「わかった!」

男「でも一応、この毛布使え」

少女「もうふ…」

男「一応だ」

少女「男のは?」

男「俺のはいいよ」

少女「そんな…」
694 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/18(日) 21:45:49.93 ID:gKEnPkwSO
少女「そんな、ダメだよ」

男「大丈夫だって、俺は風邪とかひかないから」

少女「いやダメ!」

男「おわっ!」

少女「むむ」

男「……」

男「わかったよ」

少女「うん…」
695 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/18(日) 21:46:42.81 ID:gKEnPkwSO
男「でも、これ一枚しか、かっぱらってこれなかったんだよな」

少女「じゃあ一緒にくるまろう」

男「えっ!?」

少女「それにくっついてた方が、あったかいし」

男「……お、おお」

ギュー

少女「……ふぅ、ほらあったかい」

男「う、うん…」


ギュー

696 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/18(日) 21:50:44.91 ID:gKEnPkwSO
少女(あったかいし、男と近くにいることができて幸せ…)

少女(こんなに近いと…)

少女(男のにおいも、する)

少女(近くに、いるんだなあ…)
697 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/18(日) 21:52:26.51 ID:gKEnPkwSO


魔王「……」

魔王「男との繋がりは全て捨てた」

魔王「魔物たちに内緒で、死んだ男を生き返らせて、目の届かないところに置いた」

魔王「でも、いくら秘密裏での行動とはいえ、男との思い出の品を残していたら…」

魔王「まだわたしが男のことを忘れられていないような素振りを見せてしまったら…」

魔王「男を蘇生させたことに気付く魔物が出てくるかもしれない」

魔王「だから、すてた」
698 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/18(日) 21:53:24.48 ID:gKEnPkwSO
魔王「でも、捨てられなかったものがひとつ」

ブゥン

魔王「この、毛布」

魔王「男と一緒にくるまって寝た、毛布」


魔王「……すん」

魔王「ふぅ、すぅう…はぁ……」

魔王「もう男のにおいはしないけど…」

魔王「この毛布に包まれてにおいを嗅ぐことで、誰よりも男の近くにいられる…」

魔王「すぅ、はぁ…すうう……」


魔王「……………」
699 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/18(日) 21:55:04.81 ID:gKEnPkwSO
魔王「……」

魔王「甘える時間は、おしまい…」

魔王「結界、毛布を隠せ」

ブゥン

魔王「…」

魔王「ごめんね」

魔王「わたしは男にもう、魔物に関わってほしくない」

魔王「幸せになってほしい」

魔王「だから、だから、魔王討伐パーティにいるというのならば……」
700 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/18(日) 21:55:54.35 ID:gKEnPkwSO
わたしは

いや、

我は

全力で

男を

倒す。
701 : ◆FZZZbezvBI [saga]:2011/12/18(日) 21:58:04.46 ID:gKEnPkwSO
ここまでです
投下おそくてすいません

ではまた
702 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/18(日) 22:07:15.02 ID:6oxpPedWo
おつんつん!
703 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 14:21:11.60 ID:zR4XsWRSO
704 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 15:10:38.61 ID:KO2Hw1930
マダカナー
705 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/28(水) 10:07:57.17 ID:zvRvkGbj0
待ってるー
706 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2011/12/31(土) 22:12:23.07 ID:g073JH6SO
〜神殿〜

男「よっ…と」

勇者「それは?」

男「勇者様」

勇者「果物…?」

男「えぇ」

男「僧侶様への、お見舞いの品にと」

勇者「そうか」

男「はい」
707 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2011/12/31(土) 22:13:03.01 ID:g073JH6SO
勇者「……どうだ?」

男「やはり、何も話しかけてはくれません」

勇者「そうか」

勇者「私も力になるから、あきらめないでくれ」

男「はい、すいません…」

男「……」
708 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2011/12/31(土) 22:13:48.21 ID:g073JH6SO
男「失礼します」

僧侶「はい」

男「!?」

男(返事をしてくれた!?)

男「し、失礼します」

僧侶「……」

男「……」

男「これ、果物です。食べられるようにしておきました」

僧侶「すいません」

男「い、いえ!」
709 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2011/12/31(土) 22:15:17.92 ID:g073JH6SO
男「……」

僧侶「毎日、ありがとうございます…」

男「そんな、これくらいやらせてください」

僧侶「……話が」

男「?」

僧侶「話があるので、きいてくれますか?」

男「…はい」
710 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2011/12/31(土) 22:16:12.03 ID:g073JH6SO
男「……」

僧侶「私はやはり、魔王への憎しみを消すことができないみたいです」

男「……」

僧侶「でも、男さんのことは憎めませんでした」

男「!」

僧侶「頑張って憎もうとしても、憎めない…」

男「僧侶様」

僧侶「私は、貴方のことを魔王としては見れないみたいです」
711 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2011/12/31(土) 22:16:45.12 ID:g073JH6SO
僧侶「旅の仲間の男さんとしてしか、見れない」

男「……しかし、私は魔王の力を持っていた。いや、今も持っている」

僧侶「それを踏まえた上でもです」

男「……!」
712 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2011/12/31(土) 22:17:42.17 ID:g073JH6SO
僧侶「だからあやまりたいんです」

僧侶「今までの無礼を」

僧侶「すいませんでした!」

男「あ、いえ…」

僧侶「……」

男「仲直り…ですか」

僧侶「はい……男さんがよいのならば」

男「……はい!」

僧侶「!」
713 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2011/12/31(土) 22:19:47.52 ID:g073JH6SO
僧侶「よかった…」

男「こちらこそ、ありがとうございます…!」

僧侶「いえ!そんな!」

男「……」

男(いつもの、僧侶様だ)

僧侶「では、果物食べていいですか」

男(よかった…笑顔が戻ってくれて)

男「どうぞ」
714 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2011/12/31(土) 22:21:35.66 ID:g073JH6SO
僧侶「もぐ」

男「……よし」

僧侶「?」

男「決めました」

僧侶「はい?」

男「私は、この力を貴方たちのために使います」

僧侶「え?」

男「悪い力を、悪いように捉えるから悪い力のままなんだと思います」

男「僧侶様のように、何事も良い方向に持っていく…そんな生き方をする」

男「決めました」
715 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2011/12/31(土) 22:23:45.53 ID:g073JH6SO
僧侶「そんなふうに誉められると、照れますよ」

男「そうですか?僧侶様はすごいです」

僧侶「そんなことないです」

僧侶「……この前も、男さんの前でみっともないマネを」

男「あの夜のことですか?」

僧侶「思いきり泣いちゃいました」

男「それは…」

僧侶「恥ずかしいからあまり思い出したくないですよ…」ギュ

男「もぶ!」
716 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2011/12/31(土) 22:25:33.14 ID:g073JH6SO
男「普通だと思います」

僧侶「……」

男「私なんかより、よほど強いです僧侶様は」

僧侶「男さんも強いですよ?」

男「そうですか?」

僧侶「あ」

男「?」

僧侶「やっと心を開いてくれました!」

男「と、いいますと…?」

僧侶「謙遜をしなくなりました」

男「……」

僧侶「にひひ」グッ

男「はは…」

グッ
717 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2011/12/31(土) 22:27:29.50 ID:g073JH6SO
男「では」

僧侶「一人じゃヒマなので、またきてください」

男「はい」

男「失礼しました」

ガチャ

男「……」

男「がんばらなきゃな」
718 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2011/12/31(土) 22:28:22.42 ID:g073JH6SO
魔王「頑張らなくてよい」

男「!?」

魔王「結界」

魔王「その結界は、世界との繋がりをも拒絶してしまう」

魔王「この空間は世界から切り離される」

男「!!」

ギュン!

男「な…!?」

魔王「これで、二人きり」

男(この、威圧感…!)

魔王「この空間は世界から忘れられた空間になった。我が結界を解くまで世界にいる人々はこの空間を認知できない」
719 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2011/12/31(土) 22:29:35.57 ID:g073JH6SO
男「お前、は…」

魔王「魔王」

男「な…」

魔王「とりあえず、潰す」

男「……!」

魔王「質問は受け付けない」

男(……どうする!)
720 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2011/12/31(土) 22:30:03.26 ID:g073JH6SO
ここまでです
ありがとうございました
721 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2012/01/01(日) 01:41:26.86 ID:/oDgDpVDO
乙!
あけおめ
722 :以下、あけまして、おめでとうございます [sage]:2012/01/03(火) 00:17:21.03 ID:2NyzLOwH0
乙!
723 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/06(金) 10:13:18.43 ID:3WO/ArESO
724 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/29(日) 02:11:14.58 ID:U8Nr2qrDO
まだー?
725 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/29(日) 10:50:42.29 ID:E0/Y9msIO
     ...| ̄ ̄ | < 続きはまだかね?
   /:::|  ___|       ∧∧    ∧∧
  /::::_|___|_    ( 。_。).  ( 。_。)
  ||:::::::( ・∀・)     /<▽>  /<▽>
  ||::/ <ヽ∞/>\   |::::::;;;;::/  |::::::;;;;::/
  ||::|   <ヽ/>.- |  |:と),__」   |:と),__」
_..||::|   o  o ...|_ξ|:::::::::|    .|::::::::|
\  \__(久)__/_\::::::|    |:::::::|
.||.i\        、__ノフ \|    |:::::::|
.||ヽ .i\ _ __ ____ __ _.\   |::::::|
.|| ゙ヽ i    ハ i ハ i ハ i ハ |  し'_つ
.||   ゙|i〜^~^〜^~^〜^~^〜
726 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) :2012/02/02(木) 14:09:02.07 ID:VRjd/YrJ0
>>1はそろそろ生存報告だけでもしろよage
727 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/02(木) 21:36:55.03 ID:OQo1gYESO


僧侶「…」

僧侶「?」

僧侶「なんだろう…なんだか」

僧侶「不安な気持ちが…」
728 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/02(木) 21:37:53.81 ID:OQo1gYESO

男「…」

魔王「…」

男「ぐは……っ」

魔王「まだ続けるか」

男「なんで…当たらないんだ、俺の攻撃が」
729 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/02(木) 21:40:02.67 ID:OQo1gYESO
魔王
そう名乗る、目の前の少女が、いきなり俺をこの空間に閉じ込めて、襲ってきた。

魔王という言葉が、嘘ではないとわかった。
ただの人間ではない。獣王以上のおぞましさを感じた。

危険だ。

だが、チャンスとも思った。

相手がいくら魔王だとしても
俺にも『魔王の力』がある

ここで魔王と名乗る少女を、倒せば……

しかし
俺の攻撃が全く当たらない。
逆にあちらの攻撃ばかり、俺に当たる。

さっきから、劣勢を強いられている。
730 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/02(木) 21:41:05.50 ID:OQo1gYESO
魔王「……」

男(経験値の差ぐらいは覚悟してたけど、これは)

男「……ぐっ」

魔王「じゃあ当ててみるか」

男「ッ!」
731 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/02(木) 21:42:47.02 ID:OQo1gYESO
男(上等だ、余裕ぶって!)

男「破壊の魔法」

魔王「……」

男「防ぐには同じ『魔王の力』で防御するしかない」

男「余裕でつっ立ってられないぞ!」

ズーン

男「直撃した!」

男「……!?」

魔王「……別に、防御体勢をとらなくとも害はなかったな」

男「……!!」
732 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/02(木) 21:45:30.41 ID:OQo1gYESO
男「なんだ、お前…」

男「今のは、例え魔王でも、防御魔法無しで受けたら、無傷ではいられない程の威力があるはず」

魔王「……」ヒュッ

男「!」

ズドッ

男「ぐはぁっ!」

魔王「質問は受け付けないと言った」

男「……ぐっ」

男(全く動きが見えない…)

男(あんな細い腕で、さっきから『魔王の力』の防御力を軽々突破している)

男(経験値の差だけじゃ説明がつかない…)


男「なんで、だ…」

魔王「…………」
733 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/02(木) 21:47:02.55 ID:OQo1gYESO
男「く…」ヨロ

魔王「まだやるか」

男「お前が、この謎の空間に…閉じ込めて……襲って、きたんだろ…」

魔王「我に、貴様を[ピーーー]つもりはない」

男「な!?」

魔王「だから大人しく降参したらどうだ」

魔王「先程からの戦闘で、自分と我の力の差ぐらいはわかるだろう」

男「……」

魔王「あまりに開きすぎている力の差」

魔王「このままではこちらに殺意がなくとも、死ぬかもしれんぞ」

男「だったらなんなんだ」
734 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/02(木) 21:48:07.62 ID:OQo1gYESO
男「なにが目的だ…」

魔王「……」

男「俺を[ピーーー]気がないなら、なぜこんなことをする…」

魔王「……」

男「お前は何者だ」

魔王「…………」


カッ
735 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/02(木) 21:49:20.10 ID:OQo1gYESO
男「ぐああっ!」

魔王「質問は受け付けない、が」

魔王「一つだけ、宣言しておく」

男「……」


魔王「我は貴様の敵だ」

魔王「『魔王の力』を得て、獣王を倒したらしいな」

男「!」

魔王「だから、貴様が勘違いしないように念押しをしにきた」

魔王「『魔王の力』を保有していたとしても、所詮はただの人間」

魔王「本物の魔王にふさわしい我とは、格が違う」

男「……」
736 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/02(木) 21:51:22.44 ID:OQo1gYESO
男(く……!)

男(でも、俺にも同じ『魔王の力』があるはずなのに)


魔王「我は全ての魔物に選ばれた者」

魔王「『魔王の力』に対する適性値が、『魔』から好まれる素質が違う」

魔王「だから貴様とは格が違う」


男「……!」

魔王「絶望したか」

男「……」

男「ふん」

魔王「?」

男「答えるのは一つじゃなかったのか?」

魔王「……」
737 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/02(木) 21:52:29.84 ID:OQo1gYESO
ドゴ

男「っ…!」

魔王「諦めないのか」

男「魔王様ってのは、あきらめるチャンスをくれる血も涙もあるお方ってか」


ドガ

男「……ぐ!」
738 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/02(木) 21:53:29.03 ID:OQo1gYESO


魔王「本物に死ぬぞ」

男「……っ!」

魔王「……」

男「諦めるか…」

男「勇者様たちの力になるって決めたんだ…」

男「ここで魔王を倒せば、勇者様たちはもう傷つかずに済む」

魔王「……」


男「だから、あきらめない!」


魔王「」
739 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/02(木) 21:55:09.15 ID:OQo1gYESO
魔王「そっか」

男「?」

魔王「無理やりとかじゃなくて、自分の意志で勇者たちの力になろうと思ってるんだね、今は」

男「……」

魔王「だったらどんなに力の差があっても、どんなに傷ついても……諦めないよねアナタは」

男「え…」

魔王「わたしは知ってる」

魔王「それが男だもんね」

男「……」

男(泣い、てる…?)
740 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/02(木) 21:56:36.91 ID:OQo1gYESO

『――――――――――――――』


男「ッ!!(なんだこれ!)」ズキ

男「記憶…!?」

魔王「」ヒュッ

男「!?」

魔王「でも、こっちもアナタを諦めさせることを、諦めるわけにはいかない」

ドスッ

男「うっ」

魔王「魔王の力を扱えるだけの器を破壊し、魔王の力を使えなくさせる」

741 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/02(木) 21:57:36.64 ID:OQo1gYESO
バキン

男「う、がぁ……!」

魔王「力が暴走するから、少し痛いけど…」

男「あああああああ!!」

魔王「大丈夫」

魔王「治してあげるから」

魔王「そしてまた記憶を消して、今度こそ魔物に関われないところにおいてあげる」

男(き、お、く……!?)

男「あああああああ、がっああああ!」

男(まずい、本当に力が無くなっていく感じ……!)

男(また…)

男(なにもできない…自分に……!)
742 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/02(木) 21:58:54.74 ID:OQo1gYESO

魔王「……」

男「……」

男「……え?」

魔王「何故ここが」

勇者「大丈夫か、男」
743 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/02(木) 21:59:55.09 ID:OQo1gYESO
ここまでです
最近忙しくてまったく来れていませんでした
すいません

ではまた
できれば近いうちに
744 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/02/02(木) 22:22:58.26 ID:+1ePR1CE0
745 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/02(木) 22:26:49.45 ID:K0EgTrFSO
746 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/02/03(金) 08:33:02.13 ID:QnY268fAO
ヤバい、追いついちゃった……
佳境過ぎて待ちきれぬぅ!
747 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/03(金) 10:36:02.06 ID:HLtpwMQIO
748 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/02/05(日) 00:11:52.28 ID:PZFr+Ir2o
追いついたorz
749 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/13(月) 17:34:57.93 ID:i+EvcfZSO
勇者「男」

男「勇者…様」

魔王「…!」

魔王(勇者…)

男「……どうやってここが」

勇者「お前が見当たらなくて、探した」

勇者「だが見つからないので、なにかに巻き込まれたと思い」

勇者「一応、無効化魔法を発動させてみたのだ」

勇者「神殿全域に片っ端から」

男「……え!」
750 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/13(月) 17:38:53.80 ID:i+EvcfZSO
魔王「…」

魔王(私が発動させた結界は、世界との因果すらシャットアウトさせる)

魔王(囲った空間の中の物や人は、『世界』から忘れられる。さらに『世界』側にいる人々からも忘れられる)

魔王(……つまり探すという行為すら、かなわないはず)

魔王(一体、どうやって)

魔王(いや…そんなことはどうでもいい)
751 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/13(月) 17:40:25.27 ID:i+EvcfZSO
魔王「……」

男「……ぅ」

武道家「男!」

男「武道家、様」

武道家「すごいケガじゃないか」

男「……大丈夫、です」

武道家「大丈夫ではない…一旦、安全な場所に…!?」
752 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/13(月) 17:41:37.41 ID:i+EvcfZSO
ゾワッ

武道家「な、んっ…!?」

勇者「!」

男「……退却なんて、させてくれないみたいです」

魔王「……」ズズズズ

勇者「さて…」

勇者「この、少女は?」

男「気をつけて…ただの…少女じゃありま、せん……」

勇者「ああ、分かる」

勇者「ただの少女どころか、魔物より怖いくらいだ」
753 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/13(月) 17:42:40.88 ID:i+EvcfZSO
武道家「獣王と同じクラス?いや…」


勇者「……魔王」


男「はい」

勇者「やはり、そうか…」

武道家「……この少女が!?」
754 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/13(月) 17:44:11.15 ID:i+EvcfZSO
勇者「魔王よ」

魔王「いったい…」

勇者「?」

魔王「どうやって、男のことを忘れずにいたのか」

魔王「そんなことは、どうでもいい」

魔王「勇者」ズズズ


勇者「!!」

男(なんか……マズイ)

魔王「男を、再び魔物に関わらせた、張本人!!」

勇者「っ!」
755 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/13(月) 17:46:52.80 ID:i+EvcfZSO

バッ

魔法使い「…」

武道家「魔法使い!」

魔法使い「氷」

魔王「」

ガキガキガキ

魔法使い「火、風、火、火、火、火、火、風」

魔法使い「勇者様、後退を」

勇者「いや、駄目だ!!」

魔法使い「!」

魔王「……」
756 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/13(月) 17:49:29.90 ID:i+EvcfZSO
魔王「破壊」

ズオッ

魔法使い「…!」

勇者「シールド!」

ピキ

勇者(まったく役に立たない…)

魔王「お前は許せない、勇者」

ピキ

ピキピキピキ

勇者「まずい…回避するぞ!」

魔法使い「防御力上昇、素早さ上昇」ギュン ギュン

勇者「く!それでも、間に合わな…」

男「うおおっ!」
757 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/13(月) 17:50:45.56 ID:i+EvcfZSO
男「破壊…!」ズッ

魔王「!」

ドーン

男「ぐ…」フラ


フッ
勇者「魔王の放った破壊魔法が消えた」

魔法使い「後退しましょう」

勇者「ああ」

男「……」

シュウウウ
758 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/13(月) 17:51:38.59 ID:i+EvcfZSO
魔王「……」

魔法使い「無傷」

魔王「……」

勇者「ぐっ」

武道家「勝ち目が見えない…」
759 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/13(月) 17:52:52.05 ID:i+EvcfZSO


魔王(……)

魔王(そうだった、いま私は、男の敵だった)

魔王(なに、忘れているんだろう私)

魔王「……」
760 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/13(月) 17:53:48.34 ID:i+EvcfZSO
男「……ぐ」ガク

武道家「男!」

魔法使い「重傷」

勇者「私の回復魔法で…効力は小さいが、何もしないよりはマシだ」ポウ

男「……」

武道家「まだ、辛そうです」

勇者「む…」
761 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/13(月) 17:55:08.51 ID:i+EvcfZSO
勇者『……武道家、私と魔法使いが時間を稼ぐから、男を大神官様の元へ連れていけ』ボソ

武道家『しかし…』ボソ

勇者『今はチャンスかもしれない』

武道家『え?』

勇者『魔王の殺気が、おさまっている。動く気配もない』

勇者『離脱するには、今しかない』

武道家『……嵐の前の静けさとも、とれますが』

勇者『そうだとしても、静かな今がチャンスなのだ』

勇者『私たちは大丈夫だ』

魔法使い「……」コク

武道家「……」
762 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/13(月) 17:57:35.89 ID:i+EvcfZSO
武道家『……分かりました。信じます』

僧侶「その必要はありません」

勇者「!?」

武道家「僧侶!?」

男「……」

僧侶「回復」ポウ

男「ぅ…」

勇者「僧侶、お前」

僧侶「大丈夫ですか?男さん」

武道家「大丈夫ですか?じゃない!それはこちらのセリフだ。お前はおとなしくしていなければ…!」

僧侶「大丈夫です」
763 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/13(月) 17:58:46.82 ID:i+EvcfZSO
僧侶「男さんが、危ない時に、寝てなんかいられませんよ」

勇者「……」

男「……ぅ」

男「って、僧侶様!?」

僧侶「大丈夫ですか?」

男「それはこっちのセリフです!おとなしく…」

僧侶「男さんも、おとなしく!」ムギュ

男「むぎゅ!」
764 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/13(月) 18:01:27.58 ID:i+EvcfZSO
魔法使い「緊張感、持とう」

勇者「……来てしまったものは仕方ない。魔法使いのいうように今はあちらだ」

魔王「……」

僧侶「あの子は…」

男「……」

勇者「落ち着いて聞くんだ僧侶。あれは」

僧侶「魔王、ですね」

男「!」
765 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/13(月) 18:02:53.00 ID:i+EvcfZSO
僧侶「男さんから感じた力と、同じ感じがします」

僧侶「あの魔王が、男さんに酷い怪我を負わせたですね」

勇者「ああ。僧侶が、『男が危険に晒されているような胸騒ぎ』を感じなかったら、手遅れだったかもしれない」

魔王「!」
766 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/13(月) 18:03:56.98 ID:i+EvcfZSO
男「!」

武道家「……私たちが男を探しはじめたきっかけは、その僧侶の胸騒ぎだ」

男「僧侶様…!」

僧侶「そんな顔で見られましても…」

僧侶「仲間じゃないですか」

男「……はい!」

魔王「……」
767 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/13(月) 18:05:07.63 ID:i+EvcfZSO


魔王(男が危険に晒されているような胸騒ぎを感じた…?)

魔王(……)

魔王(魔王の結界の力を凌ぐほどの絆が)

魔王(男と、あの勇者達にはある)

魔王(……)
768 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/13(月) 18:06:34.98 ID:i+EvcfZSO

勇者「構えるぞ」

武道家「はい」

男「……僧侶様」

僧侶「大丈夫です。冷静です」

魔王「……っ」

魔王「破壊」ズッ

僧侶「!!」

男「シールド!」

勇者「シールドッ!」

魔法使い「シールド」
769 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/13(月) 18:08:21.06 ID:i+EvcfZSO
武道家「シールド三枚重ね!!」

バキン

男「三枚重ねでも駄目なのか!」


ドーン


魔王「魔界へ、帰還」
ヒュ

勇者「……!」

男「……帰った…?」
770 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/13(月) 18:17:59.55 ID:i+EvcfZSO
勇者「とりあえず…」

勇者「警戒をとかず、態勢を立て直す」
771 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/13(月) 18:19:31.75 ID:i+EvcfZSO
魔王城

魔王「……」

魔王「駄目だ…」
772 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/13(月) 18:21:36.71 ID:i+EvcfZSO
ここまでです
ではまた
773 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/13(月) 18:52:58.91 ID:81igGonmo
>>1の心の中を魔王が代弁したかと思った・・・
774 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/13(月) 20:22:20.84 ID:8YcRy1Kbo
775 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/15(水) 23:12:19.90 ID:zPZ/ix+SO
少し投下します
776 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/15(水) 23:15:30.23 ID:zPZ/ix+SO
魔王城のある一室にわたしはいた。

ここはわたしの寝室であり、自分以外の立ち入りを禁止している不可侵の場。
魔王の寝室だ。

その部屋にある、薄暗い魔界の景観を切り抜く窓に、わたしは寄り添っている。

暗雲に光を遮られ、黒に染まった山などの景色を眺めているわけでもなく、
ただ、自分の未熟さを恥じていた。

男の、魔物との因縁を断ち切れないまま逃げてしまった。

これではなんのために神殿まで乗り込んだのか、分からない。

魔物達と無縁とまではいかなくても、平和な人生を送ってもらうため
魔王の圧倒的な力を見せつけて恐怖させ、勇者一行から離脱させる。


だけどあれではただ、男を痛めつけただけだ。

男はこれからも、勇者たちと共に魔王軍討伐を胸に、魔物たちと戦い続けるだろう。

それを止めるために男と接触したというのに。
777 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/15(水) 23:17:31.87 ID:zPZ/ix+SO
辛かった。
魔王の力をも凌駕する絆を見るのが、辛かった。

自分には、無いもの。

欲しくても、手に入らないもの。

自分から、捨てたもの。

魔王「駄目だ」


覚悟が足りなかった。

男への未練を全然断ち切れていなかった。
まだ、男と一緒に旅してた少女が残っていたみたいだ。
778 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/15(水) 23:21:18.68 ID:zPZ/ix+SO
男の、仲間気取り。

もう赤の他人なのだ、わたしは。

こんなんじゃ駄目だ。

魔王「解除」

ある結界を解除する。
その結界は、囲った空間を世界から切り離す程の遮断力がある。
結界に包まれた部分は、皆からその存在を忘れられる。
そのためわたしはこれを、隠ぺいなどによく用いていた。

解除した結界の空間におさめられているのは、
男との唯一の繋がりである、毛布。

寂しくなった時に、男の傍にいる妄想に浸る、汚れた行為に及ぶためのもの。
779 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/15(水) 23:22:48.63 ID:zPZ/ix+SO
魔王「こんなものがあるから駄目なんだ」

魔王「男との繋がりは、消す。徹底して」

魔王「破壊」

わたしの指先から、小さな青白い電流のようなものが走った。

それは、力を最小限に抑えた『破壊』魔法。

最も手加減したものとはいえ、魔王の専売特許である破壊の魔法。

なんの変哲もない毛布を消し去るには、十分であった。

魔王「……」

塵すら舞わずに消えた毛布があった空間を、見つめ続けた。
どれだけ頑張ってももう、男との思い出をよみがえさせる匂いすら感じ取れない。

魔王「これで男との繋がりは、なにもない」
780 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/15(水) 23:24:53.80 ID:zPZ/ix+SO
魔王「今度こそ、わたしは…」

魔王「……我は、魔王となった」


わたしはもう、少女ではない。

勇者一行に組するあの男はもう、わたしと旅した男ではない。

もうあの頃の二人はいない。

勇者パーティにいる男は、我を必要としない


魔王「だから我も、今の男を必要としない」
781 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/15(水) 23:29:58.36 ID:zPZ/ix+SO


魔王は、狂いはじめる。


782 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/02/15(水) 23:31:04.07 ID:zPZ/ix+SO
ここまでです
ではまた
783 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/16(木) 09:07:21.72 ID:a2bgBFMCo
784 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/17(金) 02:01:06.10 ID:5qnW4D/SO
785 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/03/04(日) 23:07:51.58 ID:dvNpHh6SO
〜神殿〜

大神官「そうですか、もう出ますか」

男「……」

魔法使い「……」

勇者「はい。獣王戦から一ヶ月もお世話になりました」

勇者「いつまでもお世話になるわけにもいきません」

大神官「そうですか…」

側近「……」

大神官「魔王がやってきたそうですね」

勇者「はい…」

大神官「貴方が狙い打ちされたとか…大丈夫でしたか?」

男「はい…大丈夫です」
786 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/03/04(日) 23:09:07.61 ID:dvNpHh6SO
大神官「申し訳ありません。力になれず」

男「そんな」

勇者「獣王襲撃から間もないのに、大神官様や神殿の方たちにそんなご迷惑は」

大神官「……襲撃されて間もないのは貴方たちもでしょう」

勇者「お気になさらずに。皆、無事でしたゆえ…」

大神官「……」

大神官「しかし単身で乗り込み、男を痛めつけ…それ以外特になにもせず退却…」

大神官「懸念された、獣王をよみがえらせることもしなかった…」

大神官「魔王の目的はいったいなんだったのでしょうか」

男「……」

勇者「……」
787 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/03/04(日) 23:11:07.07 ID:dvNpHh6SO
武道家「もう大丈夫か」

僧侶「はい」

僧侶「いっぱい休みをいただきましたから」

武道家「それはよかった」

僧侶「それより、男さんは大丈夫なんですか?」

武道家「もちろんピンピンしているぞ」

武道家「僧侶の回復魔法のおかげでな」

僧侶「あれ?武道家さん…?なんか声が怒ってる感じなんですが…」

僧侶「まさか怒ってます…?」

武道家「ああ。すごく怒っているぞ」
788 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/03/04(日) 23:13:41.31 ID:dvNpHh6SO
武道家「お前が一番怪我人なのに、魔法なんていう負担のかかることをした…」

僧侶「魔王と戦った時のことですか!?」

僧侶「で、で、でも!それは男さんが危なかったからで!それに終わったことじゃないですか…あははやだなぁ」

武道家「だから叱らないでいるんだ」

僧侶「はい……」

武道家「こうやってお前のそばにいるのは、再び魔物が攻めてきた時のための護衛兼、無茶をさせないための見張りだ」

僧侶「反省します…」

コンコン

僧侶「! はい」

勇者「勇者だ」
789 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/03/04(日) 23:16:21.27 ID:dvNpHh6SO
僧侶「勇者様?どうぞ」

ガチャ
勇者「大神官様に挨拶してきた」

武道家「ご苦労様です」

僧侶「本来ならば皆で挨拶にいくべきでしたのに…すいません」

勇者「いいさ、状況が状況だからな、許してくださったさ」

男「僧侶様、体調はどうですか」

僧侶「元気です!」

勇者「よかった、ならば荷物をまとめよう」

僧侶「はい!」

武道家「僧侶は休んでなさい」

僧侶「はい」
790 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/03/04(日) 23:17:33.08 ID:dvNpHh6SO

ゴソゴソ

男「……」

勇者「……」

勇者「男」

男「はい?」

勇者「お前は知っているか?」

男「なにがでしょうか?」

勇者「……魔王がお前を襲った理由とか目的…」

男「……」
791 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/03/04(日) 23:18:34.74 ID:dvNpHh6SO
男「魔王…ヤツが言っていたことですが…」

勇者「! きかせてほしい…」

男「……本心かは分かりませんよ。デタラメの可能性も」

勇者「それで良い、頼む」

男「……はい」

勇者「……」
792 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/03/04(日) 23:20:12.69 ID:dvNpHh6SO
男「獣王を倒したからといって思い上がらせないため、らしいです」

勇者「……それだけ?」

男「……あと」

男「ヤツは俺を殺すつもりはないとも言ってました」

勇者「!?」

男「そのことは確かです。しつこく降参することを勧められましたから」

勇者「!」

勇者「まるで、お前を気遣うかのようだったのか?」

男「……」

勇者「そうか分かった、すまない」
793 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/03/04(日) 23:21:12.20 ID:dvNpHh6SO
男「……いえ。魔王にとっては、単なる暇つぶしだったのかもしれませんね」

勇者「……」

男「荷物まとめに戻っても…」

勇者「ああ、すまない」


勇者「こんなことを訊く理由を探らないでくれてありがとう」

男「?」
794 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/03/04(日) 23:22:50.43 ID:dvNpHh6SO
勇者「……」

勇者(魔王と相対したとき…)

魔王『男を、再び魔物に関わらせた張本人』

魔王『お前だけは、許さない』

勇者(まさか、魔王からあんな言葉をぶつけられるとは思わなかった…)

勇者(そんな恨まれ方をするとは思わなかった)

勇者(つまり魔王は…)

勇者(男を魔物に関わらせたくない。それなのに男を連れる私が許せない、と……)

勇者(でも、あの魔王がそんな感情を抱くわけがない、考えすぎだとモヤモヤしはじめた)

勇者(だから魔王の言葉が嘘と判断できる材料を探した…)
795 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/03/04(日) 23:25:09.23 ID:dvNpHh6SO
勇者(男を魔物に関わらせたくないのに、魔物の王である自身が襲撃をした)

勇者(その矛盾をつけば、あの恨みの言葉が嘘であると断じることができると思った)

勇者(だから男に今回の襲撃について何かを知っているか、訊いてみることにした)


勇者(しかしそこからは、男を気遣う面も見つかった)
796 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/03/04(日) 23:27:00.72 ID:dvNpHh6SO
勇者(だからまだモヤモヤが残る…完全に嘘だと思えない)

勇者(なぜここまで妙に神経質に…)

勇者(やはり少女の見た目であんなことを言われたのが想定外だったからか…)
勇者(いや、それもあるが…一番の理由は、心が弱いせいだ)


勇者(魔王を魔王と思えなくなる…)
797 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/03/04(日) 23:28:58.64 ID:dvNpHh6SO
勇者(それは駄目だ、だからなんとしても…あれは嘘だと思わなければ)

勇者「……」


再び、勇者は迷いはじめる。
798 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/03/04(日) 23:31:29.01 ID:dvNpHh6SO
ここまでです。ではまた。
799 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/05(月) 00:29:49.75 ID:PiY2rh46o
乙!
魔王きゃわわ
800 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/03/05(月) 02:16:06.64 ID:7enmYG1Bo
801 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/03/09(金) 21:51:51.46 ID:jTghvvjh0
802 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/03/21(水) 23:40:28.22 ID:Uk/AI4uSO
旅立ちの荷造りも終わり、神殿出発の時が迫る。
その合間に男は、一人で風にあたっていた。

男「ふぅ」

男「……」
803 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/03/21(水) 23:41:26.27 ID:Uk/AI4uSO
男「思い出した」

男「無くした記憶が、よみがえった」

男「……俺は、魔王軍を一人で潰そうとして失敗したんだ」

男「そこで死んだと思ったんだけど、生きていたんだな…俺」

男「それにしても、勇者様たちと出会うまで、無意味な人生を送っていたと思ってたけど」

男「誰かの幸せの為に…命をはってたなんて」

男「……」
804 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/03/21(水) 23:43:29.28 ID:Uk/AI4uSO
男「……んん」

男「……そこまでは思い出せたけど」

男「命を懸けた理由の『その人』が、誰なのかが思い出せない」

男「思い出した記憶からも読み取れない…」

男「……でも…俺はまだ『その人』を救えていないはず…」

男「……」

男「……昔の俺は、魔王軍を壊滅させることで、『その人』を救おうとしていた」

男「つまり魔王を倒すことが、『その人』を救うことになる?」

男「このまま勇者様たちと旅をすればいい…か?」
805 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/03/21(水) 23:45:24.14 ID:Uk/AI4uSO
男「………」

男「いやでも…やっぱ『その人』が誰なのかを知らないまま救うなんて、少し…無責任な感じだ」

男「誰なのかを、思い出さなきゃいけない」

男「……」

男「この記憶は、魔王と闘った時によみがえったもの」

男「つまりあの魔王と闘ったことが、記憶がよみがえるきっかけとなった…!」
806 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/03/21(水) 23:46:10.01 ID:Uk/AI4uSO


男「……アイツとはもう一度…」

男「なんとしても、もう一度会わなければいけない」
807 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/03/21(水) 23:47:14.43 ID:Uk/AI4uSO
短いけどここまでです
毎度遅くてすいません
808 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/03/22(木) 13:46:31.40 ID:4ZTLKSauo
     ...| ̄ ̄ | < 乙です
   /:::|  ___|       ∧∧    ∧∧
  /::::_|___|_    ( 。_。).  ( 。_。)
  ||:::::::( ・∀・)     /<▽>  /<▽>
  ||::/ <ヽ∞/>\   |::::::;;;;::/  |::::::;;;;::/
  ||::|   <ヽ/>.- |  |:と),__」   |:と),__」
_..||::|   o  o ...|_ξ|:::::::::|    .|::::::::|
\  \__(久)__/_\::::::|    |:::::::|
.||.i\        、__ノフ \|    |:::::::|
.||ヽ .i\ _ __ ____ __ _.\   |::::::|
.|| ゙ヽ i    ハ i ハ i ハ i ハ |  し'_つ
.||   ゙|i〜^~^〜^~^〜^~^〜

とても面白いので速度などは気にしなくてもいいと思いますよ
809 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/22(木) 13:47:24.31 ID:1GbN+g/5o
中途半端に戻ったのか…
おつおつ
810 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/25(日) 10:38:48.38 ID:qs6+b+JSO
更新きてたか
811 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/04/09(月) 21:08:11.41 ID:eGlVfhPxo
まだかな?
812 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/04/14(土) 22:49:40.53 ID:Q6xqQD9SO
今週中に投下します
813 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/04/21(土) 02:20:28.40 ID:Z+zfb6Ch0
待ってるよー
814 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/04/22(日) 00:52:52.07 ID:pX1Lx4jSO
〜勇者たちの部屋〜

男「ただいま帰りました」

僧侶「あ、男さん」

男「僧侶様」

僧侶「……どうですか?」

男「?」

男「な、なにがですか?」

僧侶「わかりませんか?」

男「えっと…?」

僧侶「へへ、じつはですねー」
815 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/04/22(日) 01:00:02.23 ID:pX1Lx4jSO
武道家「僧侶は、レベルアップしたのだ」

男「そうなんですか」

僧侶「ああ!私が言おうとしていたのに!」

武道家「大神官様のレベルアップさせるの力でな」

男「そういえば僧侶様はまだでしたね」

僧侶「……身体を休めていましたからね…」

男「……」

男(レベルアップ…か。俺は…)
816 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/04/22(日) 01:01:11.92 ID:pX1Lx4jSO
勇者「さてそろそろ、だな」

武道家「はっ」

僧侶「はいっ!」

魔法使い「…」

男「はい」


勇者「出発だ」
817 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/04/22(日) 01:02:30.00 ID:pX1Lx4jSO
〜大神官の間〜

大神官「出ますか」

勇者「はっ」

大神官「神殿から出るにはまた、あの険しい洞窟を抜けなければならない」

大神官「よければ、洞窟の出口までワープさせるが」

勇者「いえ…結構です」

大神官「なぜ?旅もまだ長いだろう」

勇者「あの洞窟くらい自力で抜けられなければ…魔王には届きませんので」

大神官「そうか」
818 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/04/22(日) 01:03:12.06 ID:pX1Lx4jSO
大神官「では」

大神官「神のご加護がありますように」

勇者「……」
819 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/04/22(日) 01:04:41.85 ID:pX1Lx4jSO
〜洞窟〜

ザッ ザッ

男「久しぶりだな、頼むぞ」

暴れ馬「ブル」ザッ ザッ

僧侶「うー」

僧侶「やっぱりよく見えませんね」

勇者「レベルアップしたとはいえ、やはり容易く通り抜けられる洞窟ではないか」

ヒュ…

男「……」ピク
820 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/04/22(日) 01:05:46.41 ID:pX1Lx4jSO
男「皆さ…」

勇者「むっ!」バキッ

蝙『ギ、ガ…』ドサッ

勇者「ふぅっ、危なかった」

男「……!」

武道家「お見事です!」

僧侶「馬車の中にまで侵入してくるとは…相変わらずここの生物は凶暴」

勇者「皆も気を付けろ」

男(すごい…)
821 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/04/22(日) 01:06:50.22 ID:pX1Lx4jSO
ザッ ザッ

武道家「む! 馬を止めろ男!」

男「あ、え…!?」グイッ

暴れ馬「ブルッ!」ザシャッ

勇者「なんだ、武道家」

武道家「えぇ、あそこですが」

僧侶「目の前になにかあるんですか…暗く見えない」

男「……あ!」ジッ

男「穴が空いてる…このまま進んでいたら落ちていた」
822 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/04/22(日) 01:07:33.52 ID:pX1Lx4jSO
僧侶「おぉ…」

武道家「武道家は盗賊ほどではないが、目が利くからな」

男(俺以上だ)

男「では、回り道をしますね」

僧侶「いえ、その必要はありませんよ」

男「え?」
823 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/04/22(日) 01:11:53.59 ID:pX1Lx4jSO
僧侶「はっ!」ギュン

暴れ馬「ブルァ!!」

男「えっ?」

暴れ馬「ァァァァ!」ダッ

男「な!僧侶様、暴れ馬にいったいなにを!?」

僧侶「ふふん」

暴れ馬「ブルル!」バッ

男「跳ん……!?」ガクン

ズダァン

暴れ馬「ブル」

男「……」

男「と、とびこえた…あんな大きな穴を…」
824 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/04/22(日) 01:14:00.31 ID:pX1Lx4jSO
勇者「……」

魔法使い「…」

僧侶「暴れ馬が、穴をとびこえられるように強化しました」

武道家「よくやった」

僧侶「ありがとうございます」

武道家「しかしいきなりあんな跳ばせ方する馬鹿がいるか?」

僧侶「お、おこってますね…」

男「……」
825 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/04/22(日) 01:18:50.96 ID:pX1Lx4jSO
男(皆、パワーアップしている…)

男(俺も…魔王の力を引き出してもらって、強くなった。自分の中には魔王の力がある)

男(でも魔王のせいで、五○%以下の力しか扱えなくなってしまった)

男(力が無くなってしまったわけではない…一○○%、しっかりとある)

男(でも、扱える量以上の力を扱おうとすると…暴走して自分が傷つく)

男(だから、普段は魔王の力をゼロにまで押さえ込んでいなければいけない)

武道家「馬車の中にいる私たちが振り落とされることを考えなかったのか?」ガミガミ

僧侶「すいません…」ズーン

男(なんとか、しないとな…)

男(仲間をまもるため、アイツにたどり着くため)
826 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/04/22(日) 01:20:14.78 ID:pX1Lx4jSO
〜魔界〜

竜王「……それは真か」

鳥王「はい…確かな情報です」

竜王「……っ」
827 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/04/22(日) 01:20:54.86 ID:pX1Lx4jSO
ここまでです
ではまた近いうちに
828 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/22(日) 01:59:42.46 ID:UeZLeDeio
乙です
829 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/04/22(日) 08:24:50.18 ID:ghMDDSoPo
830 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/25(水) 19:48:53.85 ID:5ijY6SgSO
831 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/04/25(水) 20:57:14.31 ID:xAQoAvz1o
832 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/05/09(水) 10:51:12.99 ID:JQra86sSO
レスありがとうございます
もう少しお待ちください
申し訳ありません
833 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/13(日) 20:10:48.99 ID:OvRXCidSO
生存を確認
834 : ◆FZZZbezvBI [sage]:2012/05/21(月) 19:37:52.62 ID:KUPzM99SO
今週中に投下します
835 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/22(火) 20:36:41.20 ID:gTmeSXuSO
確認
836 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/30(水) 17:13:32.44 ID:7BDawQRSO
今週なんてなかった
837 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/05/30(水) 20:02:29.38 ID:RxFmwOQMo
     ...| ̄ ̄ | < 続きはまだかね?
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838 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/06/03(日) 22:40:05.30 ID:gqAd9v6SO

竜王「魔王様が、単身で勇者に戦闘を仕掛けただと」

鳥王「はい」

竜王「どういうおつもりか」

鳥王「男に会いにいかれたのです」

竜王「なに?」

鳥王「魔王様ご自身が仰ったことです」

竜王「!」

鳥王「本当のことであると、断言は出来ませんが」

竜王「……」
839 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/06/03(日) 22:42:48.12 ID:gqAd9v6SO
竜王(やはり勇者一行にいる男は、あの男なのか…)

竜王(魔王様はかつて、獣王に男の討伐を許した)

竜王(私情は持ち込まない、と仰った)

竜王(つまりそれは、まだ情があるということ)

竜王(今回の単身での襲撃も、我らに「男は生きている」という確信を持たせるような言葉も……)

竜王(その情を押し殺してのことなのか)

竜王(ならば我らは…)
840 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/06/03(日) 22:43:44.69 ID:gqAd9v6SO
竜王「……むぅ」

鳥王「……」

竜王子「悩み事ですか、父上」

鳥王「!」

竜王子「鳥王殿、ご無沙汰してます」

鳥王「はい」

竜王「竜王子か」

竜王子「ええ」

竜王子「最早この世にいない長男にかわり、貴方の後継者となる次男の竜王子です」

竜王「……」
841 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/06/03(日) 22:44:29.90 ID:gqAd9v6SO
竜王「言いたいことはそれだけか」

竜王子「……」

竜王子「いえ、たまたま通りかかって…父上の悩み…」

竜王「お前の力は要らん。別の場所で話すぞ鳥王」

鳥王「はっ」

竜王子「……」

鳥王「では」

竜王「……」ザッ

竜王子「…チッ」
842 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/06/03(日) 22:46:37.31 ID:gqAd9v6SO

相変わらずこれだ。父はいつも俺に厳しい。
いや、厳しいという言葉は間違いかもしれない。
期待していないのだ。
あの乾いた目。それが物語っている。
俺は、アンタの後継者になる者であるはずなのに。

まあ、理由は嫌というほどわかっているつもりだ。

父は、長男を自分の後継者にするつもりだったのだ。
確かに兄は才能に恵まれていた。
俺なんかより、はるかに竜王の名を継ぐにふさわしい存在だった。

しかし、その兄はもういない。数年前に死んだ。
843 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/06/03(日) 22:49:10.16 ID:gqAd9v6SO
きっかけは、現在の魔王様が誕生するはずだった日のこと。
継承式の最中に、謎の男が乱入して『魔王の力』を奪っていった。
そのせいで、『魔王の凶暴性』も、利口に魔王候補者様のもとへ向かうことなく暴走して、
最終的には兄の中に棲みついた。

『魔王の凶暴性』とは簡単にいえば、残虐といわれた初代魔王様の性格。
それにとりつかれた者は、もとの性格を塗り潰され、初代の性格となってしまう。
初代魔王様に成り代わられると言い換えても良いかもしれない。
さらに、『魔王の力』を同時に受け継がないと、理性が凶暴性に負けて、錯乱した状態になってしまう。
844 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/06/03(日) 22:52:07.52 ID:gqAd9v6SO
例に漏れず、『魔王の力』を受け継がなかった兄は見境なく暴走した。
しかしその後、現在の魔王様と『魔王の力』を奪った男に鎮められた。
命を奪われることで。

やっと、後継者への道にそびえていた高く厚い壁は消えた。
これで父は俺を認めざるをえない。
と、思っていたのに。
いまだ、あの乾いた視線は継続されている。

(俺は、そこまで駄目なのか)

なにが足りないんだ。父に認められるには、なにが必要なんだ。
845 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/06/03(日) 22:52:49.34 ID:gqAd9v6SO
幻王「お悩みですかな」

竜王子「!」

幻王「ホッホッ」

竜王子「げ、幻王殿」

幻王「竜王殿に認められたいのですね」

竜王子「!」

竜王子「なぜそれを」

幻王「私に見えぬことはありませぬ」
846 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/06/03(日) 22:55:10.29 ID:gqAd9v6SO
幻王「認められたいのですね」

竜王子「はい」

幻王「ならば、勇者一行にいる男を、討ち取るのです」

竜王子「?」

幻王「かつて、『魔王の力』を掠めとった賊のことです」

竜王子「馬鹿な、そいつは死んだはず…貴方が討ち取られたはずでは」

幻王「えぇ、ですがなぜか生きておりましてねぇ」

竜王子「(兄を倒した男…ソイツを討ち取れば…いや…)」

幻王「……」
847 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/06/03(日) 22:55:58.87 ID:gqAd9v6SO
竜王子「そんな者を討ち取ってどうなると」

竜王子「父は、兄と比較して私を低くみているわけではありません」

竜王子「兄より実力が上回ると訴えても…」

幻王「ホッホッ、そうではありません」

竜王子「え?」

幻王「魔王様です」

竜王子「魔王様?」

幻王「賊は、我らが魔王様のかつての親友であった」

竜王子「!」
848 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/06/03(日) 22:57:28.20 ID:gqAd9v6SO
幻王「魔王様は今までその絆を断ち切れずにいたが、つい先日、それを切った」

幻王「ですが、そうすぐに情を拭い切れるものでしょうか」

幻王「魔王様にとって賊はやりにくい相手、邪魔な存在でしかない」

幻王「そこで貴方が賊を潰し、魔王様に恩を売るのです…」
849 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/06/03(日) 22:58:32.76 ID:gqAd9v6SO
竜王子(そうすれば恩賞として、竜王の座につく権利を約束していただける!)

竜王(いや、しかしそれでは竜王になれるだけで、父に認められることには…)

幻王「……」キィィィ

キィィィ

竜王子「……」

竜王子「わかりました」

幻王「ホ」

竜王子「やりましょう」

幻王「ニィ」
850 : ◆FZZZbezvBI [sage saga]:2012/06/03(日) 23:01:49.93 ID:gqAd9v6SO
ここまでです
ありがとうございました
851 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/03(日) 23:04:24.62 ID:Z1g8fvc7o
おつおつ
852 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/04(月) 11:43:20.30 ID:Qi/VXXsIO
853 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/05(火) 18:14:31.06 ID:8ZpjgRqSO
854 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/03(火) 22:02:03.69 ID:jfMT58y2o
まってる
855 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/05(木) 19:02:32.78 ID:8cpvz1Tjo
おいついた
期待
856 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/31(火) 01:37:06.40 ID:Y6Yeh5bSO
追い付いちゃった……
続き待ってます
857 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/04(火) 16:33:23.66 ID:t7m6FGSIO
     ...| ̄ ̄ | < 続きはまだかね?
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858 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/04(火) 16:51:38.64 ID:L7ou4OkIO
おいレッドラインじゃねーか
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