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さやか「きょうこ、きょーこ」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 20:44:14.59 ID:7TfqMd1bo
ある朝、上条恭介が不安な夢からふと覚めてみると、

恭介「」

ベッドの中で自分が一人の少女に変わってしまっているのに気がついた。

  , '´  ̄`ヽ     , '´  ̄`ヽ
 ィ イレi人レゝ   ィ イレi人レゝ
  レd|*゚−゚ノ    レd|*゚−゚ノリ
 ⊂  || つ →  |⊂j 央)つ
   |_||_」     リく/_|j_〉从
   し'`J       し'J

※大まかな内容
○魔法少女まどか☆マギカより
○ぼくのかんがえた まほーしょーじょ『上条恭子』ちゃん
○ハートフル・イチャイチャ・ラブラブコメディ
○うんことか出る
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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714054765/

渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714052788/

二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714049241/

佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 20:45:57.19 ID:7TfqMd1bo
恭介「……」 フニ

恭介「…………」 ポニ

グニッ

恭介「オゥフ!」

恭介「……ああ夢じゃない。頬にすればよかった。
    おっぱいはつねるものじゃない。すごい痛い」

恭介「作り物じゃなく、神経が通っているんだな……それに」

恭介「入院着は男女兼用だったけれど……下着が変わっている」

恭介「女性の履くスタンダードな形だ。その中身もスタンダード。たぶん」

恭介「……」グイ

恭介「……くっ」グググ

恭介「くそっ、自分の足の間って見るのが難しい!」

〜数十分後〜


恭介「不自由な左手足を庇いつつまんぐりがえってる所を
    看護師に見られた。しにたい」

恭介「しかしリハビリ士さんや先生も、僕を見て驚かなかった。
    というか普通に、呼ばれた」

恭介「上条恭子さん、って」
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 20:47:39.16 ID:7TfqMd1bo
恭介「……」

(昨日、あんなこと言ったからかなぁ)


『さやかは女の子だから、わからないんだよ』


恭介「……」

恭介「…………」

恭介「……、さやかが男になっていたらどうしよう」

恭介「その場合、さや……さやお?
    さやすけ……さやたろう……?
    ……さやえもん……」



 「 恭 介 !?」


恭介「?!……うたた寝していた!」

さやか「び、びっくりした。お股に両手ツッコミながらベッドから落ちてるんだもん」

恭介「またもや恥ずかしい所を見られた。しかもさやかに。女の子のさやかに。
    っていうか、グッ首がッ、髪が絡まっ、髪長っ、僕の髪の毛長ーっっ!」

さやか「ぎゃあああ! 自分の髪で縊死自殺しようとするなんて!
     あたしのせいだ! しにたい! あああごめんなさいごめんなさい
     ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさアアアアアア」

恭介「グゥエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!」

さやか「アアアアオクタアアアアアアアアアアアア!!!!!」
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 20:49:45.32 ID:7TfqMd1bo
上条恭介と美樹さやかの物語は、コンサートホールから始まった。


──最初の対面。

演奏後、母親に手を引かれてやってきた男の子。
両親の後ろから、てこでも動きそうにない女の子。

大人顔負けの流ちょうな挨拶をこなす男の子。
真っ赤になってうつむいて、何も言えない女の子。


その手をとった男の子。

電気ショックを受けた女の子。


生暖かく溶けたストロベリーパフェにまみれた男の子。

胃の中のものを戻しながら、けいれんし失禁する女の子。


『さやかちゃんって、面白い子だね』

両親に心配される男の子(救急車を見送りながら)。

『ほーるでね、あの子のおんがくがすごくて、からだじゅうがびくんって、したの……』

感受性が高いのねと頭をなでられた女の子(病院にて)。


それから彼らは、惹かれ合うように幾度も出会う。
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 20:50:14.96 ID:7TfqMd1bo
上条恭介と美樹さやかの物語は、コンサートホールから始まって、病院で終わる。

いつもありがとう、嬉しいよ、さやか。
君がいてくれて助かったよ、さやか。

恭介。
恭介。

ちがうよ、そうじゃないんだ、さやか。
どうしてわからないんだい、さやか。

恭介。
恭介。

僕をいじめているのかい、さやか。
君がいるとつらいんだよ、さやか!

恭介。
恭介……。

ごめんね。ごめんね。さやか。
僕は君と会うべきじゃなかった。
このままじゃ君はダメになる。
壊れてしまう。このままでは君も僕も。

きょうすけ。さよなら。

事故があり、障害があり、必ず二人の関係は平行線になる。
以後、どこまで行っても交わらない。
ある時は魂が欠け、ある時は命を失う。片方でも、双方でも。早くても、遅くても。
結果は同じ。どんな時も。
ずっとそうだった。


ずっとそうだった。
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 20:50:48.75 ID:7TfqMd1bo
恭介「美少年キャラで通してきた僕が、尿漏れを起こすほど取り乱すなんて。
    いや尿管がいきなり短くなったせいだ。きっとそうさ。
    かわりに髪の毛がなんだこれ。立ったら足首まで届くぞ」

さやか「ごめんなさい恭介……ごめんなさい……」

恭介「そんなに泣かないでよ、さやか」

さやか「おしっこフルバーストでごめんなさい……
     あたしって人一倍気が短いし、尿管も人一倍……」

恭介「……。床は拭いて、パンツは洗えばいいよ」

〜〜〜〜(清掃中)

さやか「えへへ、あたしのぱんつと恭介のぱんつ……」ジャブジャブ

恭介「洗面台に鼻血の跡なんて残さないでくれよ、さやか。
    下半身裸で偉そうなこと言いたくないんだけどさ」

さやか「はい、恭介の新しい下着。あたしのは乾くまでないけど……
     ノ、ノーパン裸足だけど、気にしないでね。って、気にしないよねアハハッ」

恭介「ありがとう。さやかは甲斐甲斐し(く鬱陶し)いね。
    ところで、入り口の僕の名前の書かれたプレートを見てくれ」

さやか「えっ? ……フツーだけど?」

恭介「ちゃんと僕の名があったかい?」

さやか「うん。ちゃんと上条恭子になってるよ、恭介。

     ……あっ」
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 20:51:36.05 ID:7TfqMd1bo
恭介「……」

さやか「…………バレ……ちゃった?」

恭介「さやかは慌てん坊だね」

さやか「あちゃー。あたしやっぱりバカだなー。
     まるっきり隠せやしないんだもん。
     そうなの恭介、あたし。あたしがやった。
     ……なんでわかったの?」

恭介「本当に慌てん坊だなぁ。
    べつに君のせいだと思わなかったんだよ?
    君が、バレちゃった、って言うまでは」

さやか「あれ? あ、そうなんだ……」

恭介「親しい人にだけ元の僕の記憶が残ってるとか、
    そういう青春的な展開だと思ってたんだけどなぁ」

さやか「あは、バカだ、ホントにバカだ、あははは
     あはは、あはは、あはは、あはは、あはは
     せっかくやったのに、すぐに粉々になっちゃった。
     恭介ごめんね。あたしホンットーに頭悪くて。
     あはは、あはは、あはは、あはは、あはは
     あはは、あはは、あはは、あはは、あはは
     あはははは……

     恭介、あたし魔法を手にいれたんだ」

恭介「魔法?」

さやか「……奇跡も、魔法も、あるんだよ」

恭介「知ってるよ」
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 20:52:58.90 ID:7TfqMd1bo
さやか「あれ? え? 知ってるの?」

恭介「知っているだけさ」

さやか「ああ、すごいなぁ……すごいよ。すごい、すごい、すごい。
     恭介はいつも私のバカな考えなんて飛び越えていっちゃう。
     そうだよ、恭介はもっと小さい頃からそうだったもんね。
     恭介こそが奇跡だった。魔法だった。天才。プラチナの指。
     天才ヴァイオリニストなんて言葉がちゃっちくみえるくらい、
     恭介はすごくて、すごくて、言葉にならないくらい、あたしは」

  『さやか、危ないんじゃないかな』

さやか「……キュゥべえ!?」

キュッ

恭介「さやか、この方が君と契約した悪魔かい?」

QB「悪魔だなんてひどいなぁ。確かにボクはさやかと契約したけれど
   ちゃんと合意の上で、願いも叶えて、聞かれた事にもきちんと答えたよ。
   それよりさやか、ずいぶん興奮していたけれど大丈夫?
   血圧が人間とは思えない事になってたし、今も鼻から血が」

さやか「だいじょーぶ、あたし目や鼻や口から血が噴き出したりしやすいの。
     小学校でのあだ名はホラー女」

恭介「よく噴き出たよね。そうそう、僕はさやかの出血記録を付けた事がある。
    夏休みの自由研究にさ、毎日さやかを観察させてもらっててさ」

さやか「や、やだ、そんな昔の事。恥ずかしいなぁ……///」

QB「(無表情)」
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 20:53:40.44 ID:7TfqMd1bo
QB「それより上条恭……子。……恭子でいいんだよね……。
   挨拶がまだだったね。ボクはキュゥべえ、魔法の使者さ!
   ボクが見えるという事は、キミにも魔法少女の素質があるという事だよ!」

恭介「魔法少女。へえ」

QB「キミが、その命を賭すに足る願いを持っているなら、ボクと契約する事ができる。
   災いを振りまく魔女に対抗できる唯一の存在、希望に輝く魔法少女になれるんだ!
   その願いの力が強ければ強いほど、どんなことだってできる可能性があるよ。
   たとえばその体を治して、また自由に動くことだって可能さ!」

恭介「ねえねえ、さやか。君はどんな願いをしたの?」

さやか「ひゃっ、それ聞いちゃうの!?」

恭介「いいじゃないか教えてくれよ。ねえねえ」

さやか「あう、ほっぺたつつかないでぇ、言うからぁ……」

QB「……話を聞いてほしいなあ。
   恭子、さやかの願いはキミがカラダで理解しているとおりだよ。
   キミに女の子になってほしい、って」

さやか「だって、あたしが男になっちゃったら、魔法少女になれないでしょ」

QB「男が魔法少女になるなんて、それはありえないね」

さやか「そーでしょ。想像したらえらい事だもん」

恭介「……。ふーん、そうか。キュベーの魔法はすごいんだね。
    僕の肉体を変化させて、周囲の人々の認識や、記録まで変えてしまえるのか。
    しかも下着を女性用にする事まで!」

QB「ボク、キュゥべえって名乗ったはずなんだけどな……。
   さっきも言ったけど、あくまでボクはさやかの願いを受け取ったに過ぎないよ。
   すごいのは、自分のココロに正直になった彼女なのさ」
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 20:54:34.17 ID:7TfqMd1bo
恭介「僕はそういうのに詳しくないけど、魔法少女って変身アイテムとかあるんだよね?」

さやか「うん、この指輪がね、こう……」

ポン

恭介「ゆで卵だね?」

さやか「青すぎるよ!」

QB「これはソウルジェムというゆでたま……宝石だよ。
   魔力の源にして、魔法少女の証。これでさやかは魔法少女に変身するんだ」

恭介「これ、なくしちゃったらどうなるの?」

QB「なくしたら困るよ!普段は身につけられる形に変化させるのがオススメだね」

恭介「なくしちゃったらどうなるの?」

QB「…………。
   魔力の源だからね。失ってしまえば、もう魔法少女として戦えない。
   そんな状態で魔女に襲われたら、ひとたまりもないだろう」

恭介「それは命に関わるね」

さやか「えっ。そうなんだ……離さないようにしなきゃ……」

恭介「うかつに人前に出しちゃダメだね。狙われるかもしれないよ。
    キュベー、その辺りはツッコんで説明するのが良心的じゃないか?
    さやかみたいに奥ゆかしい魔法少女が、アホな死に方したらどうするんだ」

さやか「あ、あたし奥ゆかしいかな////」

QB「うん、そうだね……危ないね……ボク、キュベーじゃないよね……」
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 20:55:11.58 ID:7TfqMd1bo
恭介「しかし魔女退治なんて心配だなぁ。保険とか入れるかい?」

QB「大丈夫さ、最初はボクがついていって、魔女の結界を案内するからね!
   それにさやかは幸運だよ。この町には君の他に一人、優しい魔法少女がいるんだ。
   頼めばきっと、キミの力になってくれるよ」

さやか「ええっ、魔法少女って他にもいるの!?」

恭介「キュベーは説明不足だなぁ。コミュ障かい?」

QB「そうだね……ごめんね……キュベーじゃないよ……」

さやか「そーなんだ、てっきりあたしだけが……
     見滝原を守るオンリーワン美少女戦士さやかちゃんになるのかと」

QB「オンリーワン美少女戦士(笑)ではないね(笑)」

恭介「ショックだった?」

さやか「ううん。そりゃね、仲間はいたほうがいいよね……
     でも、ちょっとだけ残念かなーって……」

恭介「サービスいる?」

さやか「サービス?」

恭介「……『さやかは僕のオンリーワンだよ』」

さやか「

     ヴィアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーッ」ビシャーッ

恭介「うおっ、ナースコールナースコール!
    ぐわあまた髪が絡まった! どうしてこんな長くしたんださやか!」

QB「(無表情)」
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 20:58:00.02 ID:7TfqMd1bo
さやか「ア゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙
     ギョギョギョーズゲェ゙ェ゙」

恭介「しっかりするんだ!」

さやか「オ゙……怒って、ないの……?
     どうして、優しくしてくれるの……?
     勝手に……恭介を女の子にしたのに……」

恭介「勝手に女の子にしたくらいで、なにを怒る事があるもんか。
    あ、うん、返り血と返り尿はきついけど」

さやか「あたし、わかんなくって……。
     恭介が、優しくしてくれたり、いきなり怒ったり……
     ……ううん、いつもあたしが怒らせてるんだよね……
     でもっ、……どうしていいかわからなくって……
     あたし、バカで、ズルくて……本当にバカで……っ」

恭介「どうでもいいけどさやか、この髪の毛切っていいよね。
    こんなバカ長いんじゃ、うかつに寝返りもうてないよ」

さやか「長いほうが女の子らしいと思って」

恭介「君が伸ばしなよ。そして絡まりなよ」

──搬送されるさやか。
それを見送る恭子(恭介)。

──看護師、曰く「またこの娘か」


恭介「さてさやかは行ってしまったけれど、キュベー、君はどうする?
    できれば魔法少女について聞かせてもらいたいな」

QB「ボクこと魔法の使者キュゥべえは、予定ではさやかと魔女退治に行く予定だったけど、
   キュゥべえが考えるに、アレでは延期せざるを得ないみたいだからね!
   だからキュゥべえはここにいるよ! キュゥべえはキミの質問に答えてあげるよ!」
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 20:59:36.69 ID:7TfqMd1bo
恭介「キュベーはその魔法の使者ってのを、ずいぶん長くやっているのかい?」

QB「そうだキュゥ。キュゥべえはたくさんの魔法少女と出会ったキュゥ。
   たくさん契約を交わしてきたけれど、さやかみたいな願いは珍しいべえ〜」

恭介「べえは無いな」

QB「こういう広範囲に及ぶ願いはけっこう無いべ、……キュゥ。たいていの事は自分を変えれば済むキュゥ。
   しかしさやかの変幻の祈りは、彼女自身の素質を大きく引き出したキュゥ。
   それにキミが、この事態に好意的に接してくれた事が、さらにさやかの力を引き出したようだキュゥ」

恭介「好意的、ねぇ。
    ……ああそうだ、キュゥべえはなんてキュゥべえなの?」

QB「それは哲学的な問いキュ?」

恭介「いやいや……だって君、『キュゥべえ』って外見じゃないだろう?
    動物の名前って、毛色や模様や、鳴き声と関連して付けられると思うんだけど。
    魔法少女の誰かにつけてもらったのかい?」

QB「……。うん、そうだ。キミの言うとおりさ、『キュゥべえ』は以前もらった名前なんだ。
   彼女によると、その方がカワユイじゃない? ……だそうだよ」

恭介「今はその人、何をしてるの?」

QB「ずいぶん前に、魔法少女をやめてしまったよ」

恭介「その子に出会ったとき、君はなんて名乗ったんだい?」

QB「……恭子は質問が多いね。

   ────ボクはインキュベーターと名乗ったんだよ」
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 21:01:06.40 ID:7TfqMd1bo
恭介「孵化器」

QB「そう。この国の言葉では、そうなるね」

恭介「『深き』者どもと掛けてる?」

QB「ちがうよ。
   とにかく、彼女の言にならって、今のボクはキュゥべえと名乗る事にしているんだ。
   この国では四文字前後のかなによる名詞が好まれやすいそうだしね」

恭介「なるほど、インキュベーターなどと連呼したら、さやかみたいにアホな魔法少女が
    舌を噛んでなんていう奥ゆかしい死に方をするかもしれないしね。
    しかし、君のどこが孵化器なんだ?」

QB「さっき説明したとおり、ボクは魔法少女を育てる役割がある」

恭介「ああ、魔法少女の卵と……。まだ質問してもいいかな?」

QB「君の気の済むように」

恭介「さやかは十年後、どうなっているだろうね?」

QB「ずいぶん先の事だね。誰にもわからないというのが正解だろう。
   ボクは憶測でものを語る事に意味はないと思うんだけど、キミたちはそういうのも好きなんだよね。
   まあ、恭子がおしゃべりをしたいと言うなら……」

恭介「五年後はどうなっているのかな」

QB「…………。」

恭介「一年後、魔法少女でいるかな?」
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 21:02:11.84 ID:7TfqMd1bo
QB「それなら、けっこうな数の魔法少女がクリアした前例があるよ。
   さっき紹介した、この町のもう一人の魔法少女なんて、二年を超えて戦っている」

恭介「その後は?」

QB「やはり先の事さ。おしゃべりが好きなんだね、恭子」

恭介「その後は?」

QB「恭子、悪いけど僕はそろそろ……」

恭介「魔法少女じゃなくなるんだろう?
    そんなに力を持った少女が何人もいたら、大変だものね。

    魔法少女が災いを振りまく存在になってしまう」

QB「……」

恭介「必ず優劣ができる。必ず落伍者が出る。
    上位にいたって気高くあり続ける事はできない。背から刺されると思えばね。
    なにせ少女の集まりだ。それも、奇跡なんて抜け道をくぐってしまった子たちだ。
    不満と欺瞞と劣等感。とてもじゃないけど希望に輝く宝石には見えない。
    ──魔法少女とは、もう呼べないよね」

QB「ふむ」

恭介「魔女って……そういう事かい?」

QB「まいったね。答えづらい質問だよ。YESとも言えるしNOとも言える。
   でもキミの質問に答えると約束したからね。
   こう答えよう──キミの想像は現実に届いてない」

恭介「そうか。じゃあ、見せてくれないか、キュゥべえ。
    僕は君と、君の言う現実に、ちょっと興味がわいたよ」
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 21:02:54.45 ID:7TfqMd1bo
QB「ぼくと契約すれば、キミはこの世のすべてを知る事だって不可能ではないよ」

恭介「その気がないわけじゃないけど、もうすこし話を聞かせてほしいな」

QB「恭子はおしゃべりが好きだなあ。たいていの子は、すぐに願い事を言ってくれるよ。
   それこそ、こちらの話を半分も聞いたためしがない」

恭介「それは君のまわりくどい言い方にも問題があると思うね。
    でもおしゃべりが好きなのは否定しないよ。僕はリア充だからね。

    裕福な家庭に生まれ、一度見れば覚えるから、物を習う苦労をした事がない。
    容貌麗しく、あらゆる分野に才があり、オモシロ幼馴染みまでついている。
    この上条恭介こそリア充・オブ・リア充だよ」

QB「うわぁ」

恭介「しかし今日からは上条恭子。魔法少女になる選択肢まで授かってしまった。
    はてさて、これまでこんなリア充な魔法少女はいたかい?」

QB「裕福な娘もいたし、美しい少女もいたけれど……、
   自分で自分をリア充とか言い出した子は、キミが初めてかな」

恭介「新型魔法少女。ますます気が乗ってきたね」

QB「リア充魔法少女になるために、そろそろボクと契約するかい?」

恭介「その気がないわけじゃないけど、もうすこし話を聞かせてほしいな」

QB「もう消灯時間って奴じゃないのかい」

恭介「声を抑えればいい。ふふふ、今夜は眠らせないよキュゥべえ。
    ああ、でも、声を出さずに話す方法もあるものだよね、魔法なんだから。
    ……もしかして君、今、裏で誰かとしゃべったりしていないかい?」

QB「……。さやかが魔女の結界に近づいていてね、指示を出しているんだよ」
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 21:03:21.39 ID:7TfqMd1bo
──同時刻。

さやか「切れました。結界、入れそうです。キュゥべえ、どうぞ。
     ……はい、はい。
     了解、さやかちゃん用心します……っと」

さやか「ちょっとフラフラするけど、……よし、イケそう」

さやか「魔法少女さやかちゃん、初陣いきまーす!」

(〜結界内〜)

さやか「おお、……原色熱帯植物園、みたいな」

さやか「…………。」

 (しゅる)
      (しゅる)

さやか「蔓が蠢いてます。きもいです。どうぞ」

さやか「…………。」

さやか「はーい、注意して進みま……」

 (しゅるっ)

さやか「えっ、あっっ?」

さやか「やだ、来るな、離しッ……、離してぇ! いやあああああああああ!」
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 21:08:54.37 ID:7TfqMd1bo
病院。

恭介「へー、さやかが?」

QB「そうさ、さやかは即決だった。
   願いを決めるのに、一秒も間はなかったんじゃないかな」

恭介「へえ。タイミングが良かったんだねぇ」

QB「夕方さやかも言っていたけれど、キミは怨んだりしないのかい?
   勝手に女の子にされたというのに」

恭介「夕方さやかにも言ったけど、血と尿を掛けられるよりも
    怒らなきゃいけないような事かい?
    ……たかが勝手に女の子にされたと言うだけの話。
    それに、さやかとしても本当は僕の記憶まで変化させるつもりだったようだし」

QB「どうだろうか。結果はご覧の有り様。結局のところ、キミの意識は少年のままだ。
   そのギャップにキミが苦しむだろうと、さやかは考えなかったのかな」

恭介「まさかッ……さやかが僕を困らせるためにわざと……ッ?」

QB「願いは自由だからね。そこにはさやかの本心が顕れ」

恭介「うしゃしゃしゃしゃしゃ」

QB「?!」

恭介「思い出し笑いだよ。気にしないでくれ」

QB「……君は唐突だね……」
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 21:09:35.11 ID:7TfqMd1bo
いやあ、思い出しちゃってね。
ああ、思い出しちゃった。

むかしばなしだよ。

その頃、僕の母は、髪を伸ばしていてね。
ふわふわとお姫様みたいに。なにせ僕の母だから、顔も美しいし。
で、まあ、その日も行きつけのサロンへ行ったのさ。

その場所は複合施設って奴で、ホテルがあり、オフィスがあり、クリニックもある。
スーパーマーケットも美術館も、一つ屋根の下、駅にまで繋がっている。
文化的な施設だね。

人が多く集まっていて、となれば、同じ人間ながら上下があるものだ。

行きつけの場所だったからね。
僕はサロンを出て、ぶらぶら楽しんでいた。そして一人で用を足した。

男子トイレから出ようとした僕の前に太った男が立ち塞がってね。

そのまま個室へ引きずられたよ。

カメラがあるから、すぐ警備員が飛んでくるんだけどね。
物事がわからないから下等っていうんだよね。

でもね、さやかだった。

まず来たのは、さやかだった。

僕も思わなかったよ。
その頃、その日、その場所。
さやかが包丁を持って僕のあとを尾けていたとは、まったく予想外だったよ。
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 21:10:17.41 ID:7TfqMd1bo
翌日の
夕方。

さやか「キュゥべえ、なんかやつれた?」

QB「恭子にずっと……おしゃべりに付き合わされてね……」

恭介「眠らせないって言っただろう? 僕の意思は強固だからね。恭子だけに」

さやか「(いいなあ完徹おしゃべりいいなあ)」

恭介「今日から恭子、なんてね」

さやか「? 女の子になったのは昨日からじゃない?」

恭介「……さやかは僕が嫌いかい?」

さやか「えっ? えっ、なんで? なにか間違った? えっ?」

恭介「あなたもなにか言ってやってください」

マミ「……そんないきなり振られてもね。自己紹介から始めさせてもらえる?」

 巴 マミ。
 見滝原中学校三年。
 魔法少女。

さやか「そんなわけで昨日、このマミさんに助けてもらいました!」

マミ「腹巻きをした魔法少女なんて、はじめて見たからビックリしちゃったけど……。
   キュゥべえ、初心者には付いててあげるんじゃなかったの?」

QB「だから昨日、君に急なお願いをしたんだ。
   キミなら任せられると思ったし、それに、どうしても恭子が離してくれなくてね」

マミ「もうっ。言い訳は、メッ」
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 21:11:11.31 ID:7TfqMd1bo
さやか「いやぁ〜マミさんのおかげで命を救われました!
     すっご格好良かったです! 琥珀色の美しき銃士、現る! って感じで」

マミ「私も……腹巻き魔法少女現る、って感じだったわ。
   でも、私が来なくても、美樹さんは無事だったと思うの。なかなかの魔法だったわよ。
   なにせ、辺り一帯の使い魔を全部、恭……介さん?の姿に変えてしまっていて」

さやか「はうあっ?!」

恭介「うわあ」

マミ「私が駆けつけた時も、美樹さんは『くすぐらないでーっ』って、悲鳴というより楽しそうで。
   助けはしたけど名残惜しそうで、身体だってキズ一つなかったもの。ねえ?」

さやか「はうあああ」

マミ「きっと楽しい魔法少女になれるわ。あの腹巻きはやっぱりどうかと思うけど」

さやか「あ、あれは、あれがないと。だってソウルジェムが壊れると死んじゃうって」

マミ「?!」

QB「死んじゃうという言い方はしてないけど。……マミ?」

さやか「え、あれ、マミさん? あれ、あたし、またなんか変な」

マミ「い、いえ、なんでもないわ。そうよ、ソウルジェムは大切なもの。
   この身同様、守らなくてはいけないものよ。……腹巻きは外すべきだけど」

恭介「キュゥべえはまた説明不足かい? まったく君は、だから初対面から悪魔などと呼ばれるんだ。
    昨晩、僕と熱くやったように、もっと語らうべきなんだよ。リア充的にね」

QB「いや初対面からボクを悪魔とか呼んだの、キミだけだから」
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 21:12:10.40 ID:7TfqMd1bo
恭介「ともあれさやか、初の出征に生還おめでとう」

さやか「えへへ。あ、でも……結界に入っただけで、魔女を倒せたわけじゃないし」

マミ「そう焦ってはいけないわ。私は一応、最初の晩に魔女を倒せたけれど、
   その時はキュゥべえが一緒にいてくれて、アドヴァイスをくれたおかげなの。
   相手は魔女、災厄そのもの────それを忘れないで」

恭介「勉強になります。こんなに強い先輩がいてよかったね、さやか」

さやか「は、はい」

マミ「どうかしら。よかったらウチに来ない?
   魔女退治について、少しは美樹さんにレッスンしてあげられると思うの」

さやか「いいんですか!?」

マミ「そんな大した事を言えるわけじゃないんだけど、そうね、ちょうどケーキもあるし
   お茶でも飲みながら話し合いましょう。あなたのコスチュームについて、とか」

恭介「行ってきなよ、さやか。失礼のないようにね。赤外線通信の仕方は知ってるね?」

さやか「うん。わぁーい、先輩の家にお呼ばれなんて、美樹さやか光栄の極みっす〜!」

マミ「こーら、ダメよ美樹さん。女の子がそんな跳ね回っちゃ……」




恭介「二人きりだねキュゥべえ」

QB「そうだね恭子」
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 21:12:59.41 ID:7TfqMd1bo
恭介「今マミさんの胸にいる君と、ここにいる君は、いったいどう違うんだい?
    あと、マミさんの胸とさやかの胸も、どのくらい?」

QB「大した違いはないよ、恭子」

恭介「違うよ! オープニングと本編の僕の顔くらいには違うよ!」

QB「たかが神経の通った脂肪の塊だ。その柔らかな構成は脆く、いつ崩れてもおかしくはない」

恭介「それは! マミさんのも、さやかのも、今この僕の胸についたそれも!
    いつか垂れると────言っているのか!」

QB「昨日、言ったじゃないか……。
   魔法があれば、人間の肉体なんて、なんでも言う事を聞かせられるよ。
   補正だって、改変だって、魔法少女には思いのままさ」

恭介「……。マミさんの……胸さんは……?」

QB「そんなことはないよ。そんなことはないよ」

恭介「なんで二度言うんだ」

QB「単なるフィードバックだよ。思わず向こうで、あらぬ寝言を口走りそうになってね。
   ああ、マミが紅茶を淹れてるよ。それから学校を早退して買いに行ったケーキを出した。
   ボクも起きて、いただくとしよう」

恭介「思っていたんだけど、君はものが食べられるんだよね」

QB「うん。ぺろぺろ、もぐもぐ、ごっくんとやると、女の子にウケが良いんだ」

恭介「なら尻の穴はあるべきじゃないかな」

QB「アナルかい?」
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 21:13:29.07 ID:7TfqMd1bo
恭介「そうだよ。口から入って尻から出ないなんておかしな事さ。
    百歩譲って、マスコット的見地から排泄機能を外したとして、それで
    尻の穴までなくしてしまうなんて、どうかしてるよ。絶対おかしいよ。
    犬にしろ猫にしろ、しっぽを上げた時に垣間見えるケツ穴が良いんだ。
    女子中学生のパンチラみたいなものだ。そこで余計な気をまわすなよ。
    もし見えるのが生尻だったりしたら、そんなものに価値はない。
    もしそれで喜んでしまったりしたら、そんな輩は少女を語る資格はない。
    仮にも君は少女を相手取るインキュベーターなんだから、少女の本能、
    さらけ出される粘膜器官があったらぜひ見たい、けれど人間のそれを
    ガン見する事は社会的にできないというジレンマ、羞恥心、渇望。
    それらにもっと留意すべきだと、僕は思うね」

QB「渇望してるのはキミだよね」

恭介「いいからさっさと尻の穴を出さないか!」

QB「こうかい?」

恭介「ダメだキュゥべえ、それじゃ潰れたニキビか何かだ。
    もっとしっかりと、しかしささやかなヒダを、そして奥行きを」

QB「こうかな?」

恭介「おお、穴だ! キュゥべえに穴! これで契約数もうなぎ登りさ!
    うん、思わず熱くなってしまったな。魂を賭けるに足る程、尻の穴を願ってしまったよ」

QB「先に言ってよ恭子! いや今からでも遅くない、アナルでボクと契約を……ひぎぃ!」

恭介「キュゥべえ。君のケツアナが温かい」


同時刻、マミの部屋。

マミ「きゅ、キュゥべえ!? しっかりしてキュゥべえ!
   人差し指から小指が根元までお尻に入ったみたいな顔して、どうしたのーっ!?」
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 21:18:42.49 ID:7TfqMd1bo
一旦休憩
ここまで第一話『この上条恭介こそリア充・オブ・リア充だよ』

次回『美樹さやか、うんちします!』
今決めたサブタイ
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 21:29:46.04 ID:7TfqMd1bo
〜昼下がりの病室

恭介「やあキュゥべえ、どこ行ってたんだい。
    君がいない間に、髪を切ってもらったんだよ。どう?
    ……なんでしっぽを丸めているのかな。女の子に怖い事でもされた?」

QB「……わけがわからないよ」

恭介「そりゃそうだ。切ったといっても腰まで。長い事には変わりない。
    じつは僕はロングヘアの女性が好きでね。なのに周囲にはいないんだ。
    母は、髪を伸ばしてくれなくなっちゃったし」

QB「いや、髪の事についてじゃ……まぁいいや。
   それより恭子、キミが昨日、ボクに指を挿れながら約束してくれた事は」

恭介「抜いた瞬間にスッキリして忘れてしまった。……うそうそ、覚えているよ。
    男同士がアナルでした約束だ、きちんと覚えているに決まって……」

 〜♪

QB「新着メールと表示されているよ。志筑仁美。さやかの友達だね。
   恭子は、志筑仁美とメールしているのかい?」

恭介「うん、母親同士が仲が良くてね。昔は文通、今はメールだよ。
    そういえば髪を伸ばしてくれているらしいんだけど、QB、最近の彼女はどうだい?
    僕はこのとおりの身だし、彼女はここへは来てくれないからね」

QB「直接見に行くために、その足を治すって願い事をするのはどうかな?」

恭介「志筑さんは最初会った時、男の子みたいなショートカットでねぇ。
    薄幸のピアニストみたいで、素晴らしく似合っていたよ」

QB「相変わらずキミはボクの話を……ん?
   『拙者お月様が暴れん坊将軍なう。ぐおおお〜死ぬる〜(lll ̄□ ̄)』
   ……これは本当に……志筑仁美なのかい……?」
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 21:30:15.32 ID:7TfqMd1bo
恭介「志筑さんは生理ネタが多くてね。というか生理の時しかメールしてこなくてね」

QB「ふうん……何かを介すれば、何だって変化するものだものね。エネルギー然り。
   ケータイ越しの志筑仁美は、予想以上にアグレッシブだった。見せてくれてありがとう」

恭介「彼女に魔法少女の素質はあるかい?」

QB「ないよ。現時点、彼女に望みはない。彼女の望みがないからね」

恭介「そう。じつに真人間だ。奇跡や魔法でなんとかできるなんて、本気で思わない。
    普通の人間だ。メル友がまともな女の子だと証明されて、嬉しいなぁ。
    見てくれよ。葬儀があった、友人が喪主側で、落ち込んでいるので心配している、
    ……と書いてある。生理以外の事はさすがにまじめな文章だ。すばらしい真人間!」

QB「そういえば、さやかはそれを言わなかったようだね」

恭介「さやかは悪気はないけど、面白いくらい僕の事ばかり考えているからね。
    『殺されるのと事故で障害が残るの、どちらがマシか』などと話を重くしてしまうよ。
    それに僕は彼女と……鹿目まどかさんとは、そこまで親しくはなかったから。

    そうだ、鹿目さんには魔法少女の素質はあるかい?」

QB「ないよ。現時点、彼女は魔法を完全に失っている。ボクの声も届かなかった。
   幼い弟を失った事が、すいぶんショックだったみたいだよ」

恭介「そうか。ちょっくら君を走らせて、お礼をしたかったんだけどな。
    話を聞いた限りじゃ、同年代ながらお姉さんキャラの鹿目さんに、ずいぶんと
    心の支えになってもらっていたようなんだけどね。
    あー、さやか、余計な励ましをしなけりゃいいけど。一人っ子だからなぁ」

QB「キミもだよね。やたらボクを便利に使おうとするよね」

恭介「志筑さんは上に十二人のお兄さんがいるらしい……いや昔は十一人で、仁美の『仁』は
    『十二』を大きく崩し書いたものだとかで、『美しい十二人目』って意味の名前らしいけれど、
    名付けのすぐ後で十二人目のお兄さんがバンコクにいたと発覚したとか、しかも彼女は
    お兄さん全員と血が繋がってないとかって……そりゃ魔法要らずの環境だ……。
    とにかく、身内の、特に幼い者の死というものは、僕にも想像しきれない」
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 21:30:43.41 ID:7TfqMd1bo
QB「ボクにはそもそも理解できない。こんなところで、ボクとキミたちの溝に邪魔されるとは。
   まいったよ。あーあ、鹿目まどかを発見直後に契約していればね……」

恭介「そう落ち込む事はないさ。じき、僕という希少な例をデータに加えられるのだから」

QB「ああよかった、約束を守ってくれるんだね!」

恭介「君にはアナの奥まで楽しませてもらったからね。反故にしたりしないよ」

QB「ボクがアナルを差し出す事で、キミが魂を差し出してくれるんなら、お安い御用だよ!
   少女化された少年、かつ、素質を有するケースなんて極めて稀なんだ。
   キミのデータは、宇宙を救うためにきっと役に立つよ!」

恭介「宇宙はどうでもいいよ。僕が望む事はすでに決まって、できる限りの確認もした。
    後は結果だけ。言ったよね?
    昨日のキュゥべえの、一度たりとも通過を経験していない処女穴では足りない、って」

QB「第三者が聞いたら誤解を招くような会話が好きだね、恭子は。
   ボクはキミの願いを叶えるだけだよ。どの娘も、ボクに任せきりで気づかないだけで」

恭介「ああ、ほら、さやかが来る頃合いだ。悪魔の所業を見せてくれ」

QB「キミ達の文献に、宇宙を救う悪魔なんて見た事がないよ。
   ────、ほら、これがグリーフシードだ。窓の外に刺すよ」

恭介「よし、僕の尻に刺そう」

QB「そこまで危機的状況を演出すると、さやかが発狂するよ」

恭介「そうだね、ただでさえ大事な僕の周辺に、災いがあるというんだからね。
    脱糞されたら駆けつけるマミさんがかわいそうだ。じゃあ、君の尻に刺そう」

QB「窓の外に刺したよ」

恭介「なぜベストを尽くさないのか」
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 21:31:28.53 ID:7TfqMd1bo
『大変ださやか! グリーフシードが!』

ドドドドドド バターン

さやか「どこだーうわホントだアアアアア!
    マミさん呼ぶ! 赤外線通信でマミさんのアドレスもらっててよかった!」

恭介「途中で『アドレス交換しなさい』ってメールしておいてよかった!」

さやか「『やっほ〜マミマミ(^.^)/~~~ 今日15度目メールvVvだけど、サヤサヤゃッばぃの!(>_<)
      恭タンの部屋に(゜ロ゜)!!グ、グリィフシィドやー!!!!!!!!!まぢぁりぇなぃょ〜(;¬_¬)』

     ……返信きた。

     『でぃあサヤサヤVv(^O^)/ めぇるァリガト〜マミマミちょぉぅれしぃょぉ〜w
      グリ〜フシ〜ドなんでそんなトコに〜wwwwアリエネー_( ゚Д゚)ノ彡☆ ノヾンノヾン!
      大丈夫〜†琥珀色の美銃士†wマミマミがすぐ行くからっ 安心マミッ☆


      ねぎ れんこん だいこん(はっぱ付!) きのこなにか おとうふ パンティライナー』」

QB「……」

さやか「…………(>o<)」

恭介「たかがお買い物メモがくっついてるだけだ、気にするな。
    それよりキュゥべえ、このグリーフシード、これは危ないのかい?」

QB「あ、うん……じきに孵化してしまうよ」

さやか「……あたし、行くよ!(>o<)」

恭介「さやか、顔文字」

QB「あ、結界が」
ミニョーン
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 21:31:57.70 ID:7TfqMd1bo
さやか「あえええええ恭介まで結界に入っちゃったあぁぁぁ」

恭介「勇ましいかと思いきや、すぐコレだ。まったく君は面白い。
    大丈夫、こんな事もあろうかと、事前に車椅子に乗っていたんだ。
    あとはキュゥべえが押してくれるから、さやかは変身しなよ」

QB「?!」

さやか「うん、わかった。
     ……サファイアパワー、ミネルヴァサーキュレイション!」


シャラン クルル〜ン キラッ☆

恭介「」

さやか「出でよ、アーティファクト! 水晶で造られし破魔の聖剣!
     『永劫に清らかなる青(セイヴ・ザ・ヴァージン)』!」

ニュル〜ン… チャキッ キラキラッ☆

さやか「恭介!」

恭介「はい」

さやか「必ず私が護ってみせう……!」

恭介「ありがとう。うん。行こうか」

さやか「護ってみせう」

恭介「行こうよ」

QB「行けないよ。押せないよ」

さやか「護ってみせ……る! やった言えた!」
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 21:33:11.88 ID:7TfqMd1bo
(結局さやかが車椅子を押す)

恭介「(もしもし、もしもし。膝の上のキュゥべえ、ひそひそモードで応答せよ)」

QB『ひそひそモードという名称は初耳だけど、ボクと二人で話すって事かな?』

恭介『そうそう、察しが良くて助かるよ。
    あー、さやかのマントと手袋とブーツ以外がとんでもない事になっている件について』

QB『ボクは関与していないよ。魔法少女の衣装、そもそも変身行程さえも、ボクは与えていない。
   変身なんかいらないんだよ。キミたちは勝手に武装したがるけど。
   でも、この国の少女たちの大半が持つ、「魔法少女は変身する」という幻想は強いからね。
   彼女らは士気を上げ、ボクとしても魔力の消費も促進させるものだから、止めはしない。
   すべては彼女らのイメージ、ファンタジーによってつくられるものだ』

恭介『さやかの幻想は、裸マントに、大事な部分を宝石で隠すというモノなのか……?』

QB『それはマミが昨日、しきりに腹巻の排除を訴えていたからね。
   さやかなりに安全を考えた結果が、己のソウルジェムと似た宝石を複製し、並べる事だったんだろう。
   キミ達の言う、木を隠すなら森の中と……いや、たぶん、きっと、たぶん』

恭介「さやかのソウルジェムって、どれだい?」

さやか「え? あ、これ。おへその」

恭介『……自分を安全な位置に置くなんて考えられない子さ、さやかは』

QB『うん、そのようだね……』

恭介「さやか、君のその格好、とっても勇ましいね」

さやか「///あひっ、あ、ありがとうっ」

QB『キミはわりと息をするようにウソをつくね』

恭介『ある意味、勇ましいのは確かだ。僕はさやかにウソをついた事なんてないよ。
    君がウソをついた事がないようにね』
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 21:34:42.57 ID:7TfqMd1bo
QB『それこそウソじゃないか。ボクは悪意や害意をもって人を騙すという概念そのものがないんだ。
   キミにはさやかに対する悪意がある。一昨日、そうキミが言っていただろう』

恭介『キュゥべえもおしゃべりが好きになってくれたようで嬉しいよ。

    そのとおり、僕はさやかに対する悪意と害意のカタマリなんだよ。
    さやかが泣く事を望むし、痛がる事を望むし、ツライ目に遭ってくれたら小躍りする。
    さやかが僕を好きだと言えば僕は笑うし、僕をキライと言うならやはり笑ってやる。
    さやかが魔女に喰われて死んじゃっても、かまわない。ちょっと残念とは思うかな?
    ……もっともっと絶望すればいいのに、って』

QB『それほど嫌いなんだね』

恭介『さやかはどうしようもないアホに育った。
    好きな男が笑っているのを見て、にへにへと己も笑うだけで、もう何も考えられない。
    好きな男が泣いているのを見て、立ち去るでもなく、かといって気の利いた言葉はかけられず、
    肉体を差し出す事もできず、一緒に泣けもしない。ただ黙って「どうすればいい」と目で訴える。
    損得勘定がまるでできないのは、首がないのと同じだよ。
    さやかは、間違っている。
    その点では、キュゥべえ、君のほうがよほど好意に値するよ。好きだ。結婚しようか』

QB『ボク男の子だけど……いいの?』

恭介『僕は今や上条恭子、リア充・オブ・リア充だよ。リア充には、すべての権利がある。
    四つ足だろうと魔法の使者だろうと、等しく愛しく慎ましく籍を入れてみせるのさ。
    君だってさやかより僕が好きだろう?
    さやかが初陣で死んでも構わないから、一昨日、結界に入れたりしたんだろう?』

QB『まぁ、彼女が死んだとしても、キミが契約してくれそうだったからね。
   ……キミはさやかが好きなんだと思ったから』

恭介『だから言ったんだよ。僕はさやかに対する悪意のカタマリだよ、って』
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 21:35:54.39 ID:7TfqMd1bo
QB「……ボクは誤解していたようだね」

恭介「誤った認識さ、キュゥべえ」

さやか「なに? 何の話?」

恭介「なんでもないよ、さやか。
    僕は君の事ばかり考えている、って話さ」




  『マミ! さやかが!』

マミ「どうしたのキュゥべえ!
   え? サヤサヤ……美樹さんが鼻血? 別に攻撃を受けたわけじゃないの?
   ……じゃあ、すぐ変身して行くから待っていてね」




さやか「マミしゃんキタ、これで勝つる」ボドボド

マミ「美樹さん軽くスプラッタだけど大丈……どうしたの、その格好! 裸よ!?」

QB「マミもどうしたんだい。いつもはマントなんて付けてないし、そのターバンだって」

マミ「……。ちょっと厚着したかったのよ」

恭介「さやかは薄着したかったんですよ。普段からよくノーパンでいますし」

マミ「そうなの、なら仕方ないわね。マントがあるなら体裁も保てるでしょうし。
   まぁ、私はノーパンにしないけどターバンは取る事にするわ。なんだか暑いものね」

恭介「(マミさん、マントとか好きな人なんだな)」
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 21:36:28.79 ID:7TfqMd1bo
QB「そうこうしている内に、魔女が孵化していたね」

マミ「あら、すてきなドレス。やっぱりドレスって女の子の憧れよねぇ。
   でもサイズが少し……大きすぎるかしら」

さやか「恐竜サイズですよ! しかもなんか燃えてる!」

マミ「ドレスだけが燃えない……火鼠の衣という奴かしら。
   絶対に手に入るはずのない貢ぎ物……人の夢と書いて儚い……」

さやか「ギャー! 火花が! 熱ッ、熱ッッ」

マミ「美樹さん、ちょっと騒ぎすぎよ」

恭介「巨大化したムックが女装して焼身自殺したら、あんな感じかな?」

QB『女装は違うけれど、焼身自殺は合ってるかな、恭子。
   まぁ、未遂と付けるのが正しいけどね。火に巻かれても死ななくて、ショック死したんだ』

恭介「あ、そうなんだ」

マミ「どうしたの恭介くん」

恭介「クン付けって良いなあ……。いえ、キュゥべえが、あれは燃えて死んだ女の子の怨霊だって」

QB「怨霊とは言ってないけれど。キミは声が大きいよ」

さやか「怨霊? 地縛霊!? 一気にオカルトだぁ!」

マミ「……そう。可哀想な娘なのね。そんな娘も、魔女になるのね……。
   私はエクソシストではないけれど、せめてもの救いをあげたい!」

(巴マミ、マスケット銃を構えて突撃)

さやか「……あれ? ミネルヴァサーキュレイションは? アーティファクトは?
    昨日、二人で決めた呪文……あれれ……?」
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 21:37:02.99 ID:7TfqMd1bo
──あの頃、あの日、あの場所────、
彼女は包丁を持って僕のあとを尾けていた。
────────

さやか「マミさん! 援護します!」

マミ「……その格好で隣に立たないでほしいの」

さやか「」

────────
包丁を持った彼女はスカートのすそを翻し、騎兵隊のように勇ましかったよ。
個室のドアにぶつかって跳ね返されたところは、無様だったが。
────────

さやか「こいつぅっ、この図体で避けるなんて!」

マミ「銃弾が効いてない……? まさか、届く前に燃え尽きているというの?
   こうなったら……、美樹さん、よけて! ティロ・フィナーレ!」

────────
彼女が包丁を持っていた理由は……面白いよ、これが。
当時の美樹夫婦は、子供の僕の目にも判るほど、……ひどくてね。
さやかが言うには『わたしがわるいからパパとママがけんかするの』って、

──『わたし、わるものだったの』
──『だから、きょうすけ、』
────────

マミ「まだ動いてるっ……しぶとい子ね!」

さやか「負けるもんかっ、あたしは……っ恭介を、守るんだ────ッッ」

────────
──『きょうすけ、いっしょにてんごくへいってください。おねがいします』
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 21:38:54.49 ID:7TfqMd1bo
包丁は水晶の聖剣。
『悪者』をやっつけるための武器だった。
道中、影から悪者がでてきた時には、これでやっつけなければならない。

天上の音楽を奏でる『きょうすけ』は天使だ。
天使は、天国へとつれていってくれる。

疑う余地もない。

きょうすけと天国にいく。
そして、神様に言わなきゃいけない。
これは直接、言わなければならないのだ。
空に向かって、いっぱいお祈りはしたけど、届かなかったようだから。
言わなきゃ。

『わたしみたいな悪者を、大事なパパとママに近づけさせないで!』




恭介「契約しよう、インキュベーター」

QB「魔女の運命を受け入れてでも成し遂げたい願いがあるんだね。
   上条恭子……いや、上条恭介?」

恭介「今も上条恭介だったら、こんな願いは……呪いはあり得なかった。
    上条恭介であったならきっと、さやかを救おうとした。
    でも僕はもう……そんな僕を否定する。ありがとう、インキュベーター」

QB「こちらこそありがとう、上条恭子」

恭介「そしてよろしく。僕が魔女になるまで、共に歩んでくれ」

QB「こちらこそよろしく。キミが魔女となるまで、共に歩むよ」
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 21:40:29.99 ID:7TfqMd1bo
その素材が炭素でも空気の波でも、どんな連なりにしても。
たとえ瞬きの間に、宙にかき消えるものにしても、何万光年と永く永く残るものにしても。

まず糞が出る。

糞と屑を積み重ねる。

天才は幻想だ。

汚物をそびえさせて、やっと、輝かしいプラチナの片鱗が見つかるのが天才だ。
そんな、ほんの小さな輝く欠片を、然るべき時に人前に出せた。それが天才と呼ばれるものだ。

天才は幻想だ。
天才は、忘れた頃にやってくる。

芸術に限らない。むしろ限る事がありえない。睡眠も、食事も、性交も、排便も、屑がありそしてプラチナがある。
上下。高低。真贋。甲乙。ピンキリ。

さやかは、間違っている。

さやかは、僕がひり出すのは糞ではなく、常にプラチナなのだと信じる。

さやかは、自分の肉を削ったら、埋もれていた宝石が見つかると信じている。

僕はプラチナであり、ゆえに己もまた宝石でなくてはならないと信じきっている。
前提からして間違っている。間違っているからこそ強固に固めた、さやかの信仰は重い。痛い。つらくて見ていられない。


けれどその幻想を、僕は生かそうと思う。


だって、この糞を積む世界で、僕が心から面白いと思えたのは、彼女だけなんだから。
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 21:41:43.56 ID:7TfqMd1bo
さやかは間違っている。
否定しなければいけない。それが人間社会の一員としての宿命、真人間の役割だ。
なじれ、ほっとけ、捨て置いて。
他人に依存しなくても、一人で生きていけなきゃね。
でなければ、こんな頭の悪い女は、しかるべき場所に押しこめなければ。

奇跡なんてありません。
魔法なんてないんです。
(そんな世迷言を信じては、真人間になれませんよ)


──もう、あきらめようよ、上条恭介。


さやか。僕の感動。

どうか泣いてほしい。苦しんでくれ。絶望しようよ。
ふるえながら包丁を握る君の姿だけが、僕の心を動かした。
あの頃、あの日、あの場所で。歪んだ、壊れた、この少しも面白くない世界で。
自分が悪者だと信じて、心底疑わぬ君を好きになった。
いっしょにてんごくへいきましょう。

僕をまた感動させてください。
それだけを、君に望みます。
(でもそれじゃ、君はまともに生きていけませんね)


こんにちは、──上条恭子。


真人間? なりたい奴がなっていろ。
僕はさやかを救いたくなんかない。
僕はさやかを救わない。

さやかこそが奇跡。さやかこそが魔法。僕が、さやかに救われる。
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 21:43:14.53 ID:7TfqMd1bo
(僕はさやかに対する悪意と害意のカタマリなんだよ)




さやか「嘘。
     嘘でしょ、なんで……。

     ……なんであたし、魔法少女じゃなくなってるの?」

恭子「僕がキュゥべえに願ったからね」

さやか「恭介!? こんなトコまで来たら危な……、え? ……」

 上条恭子。
 魔法少女。
 色素の薄いロングヘア。
 純白のマーメイドドレス。

恭子「あいにく僕は魔法少女の造形に詳しくないから、ステージ衣装みたいになっちゃったよ。
    ……おかしいかな?」

さやか「う、ううん」

恭子「魔法ってのはスゴイね。僕の手足も元通り、さやかの身体も元通りだ」

QB「恭子、おしゃべりはその辺りにするんだ」

恭子「よーし、出でよ、アーティファクト?
    それでえーと、僕による君のための白金の弦……『君が望む楽園(セイヴ・ザ・イマジン)』」

マミ「やめて! その呪文はなかった事にして! ヴはそんな多用しないで!」
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 21:43:52.42 ID:7TfqMd1bo
さやか「そのヴァイオリン」

恭子「楽器って、武器さ。時に、少女にゲロを吐かせるほど心を揺さぶる。そして」

マミ「ヴァイオリンは普通……ヴァイオリンは恥ずかしくはない……」ブツブツ

恭子「さやか、君が僕のソウルジェムだ」

さやか「え〜〜〜〜?!」

恭子「ソウルジェムが魔法少女から離れるんじゃない!
    はよこっちゃ来るんだ、さやか!」

さやか「こっちゃ? え? あ、うん、離れない……離れない!? えー!」

QB『キミはわりと息をするようにウソをつくね。……本当に』

恭子『僕はさやかにウソをついた事なんてないよ。
    僕が彼女にものを言えばね、それは真実。さやかが真実だと受け取れば、それは真実なんだよ。
    そしてさやかは、いつだって僕が真実なんだから』

QB『キミが彼女になにも言わなければ、どうなんだい?』

恭子『キュゥべえもおしゃべりが好きになってくれたようで、本当に嬉しいよ。
    僕がなにも言わなかったら? さやかだって、一人で生きていく事を考えたはずさ。
    あの日の感動に恋をしていただけの……これまでのさやかならね』

恭子「下がって」

さやか「恭介! 魔女が来ちゃう……っ」

恭子「ねぇ、さやか、……」

さやか「……えっ? ……わっ」
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 21:44:26.54 ID:7TfqMd1bo

QB『────逆転の祈り。巻き戻しの願い。

   この願いに前例がないわけではないけれど、恭子、桁違いだと言わせてもらおう。
   ボクの知る限り、キミほど自身の願いを穿ち、呪いながら、こうも叶えた娘はいないよ。
   そして生まれた魔法少女は、素晴らしい希望に溢れている!

   もう一度、ありがとうと言わせてくれ。キミの希望は、絶望は、いずれ強力な魔女を生む。
   それはきっと……プラチナのような輝かしい魔女だ』

恭子『必死こいて演奏してるんだから黙ってくれないか白アナル!』

QB『ボクのアナルはエンジェリックピンクだよ』

 ゴォーーー

マミ「きれい……。颯爽と奏でられる音は、光の粒子となって二人を包み込んでいる。
   鳴り響く光の結界が、恭介くんの歩みと共に、球形を崩す事もなく前進してるわ。
   端正な横顔、その伏せたまぶたを長い睫毛が彩る様はさながら女神(ミューズ)。

   私の銃弾を打ち消した炎の鞭が振り下ろされるも、結界は綻ばない。
   それは強靱さ? この演奏によってもたらされるのは、堅牢なる守り?

   ……いいえ。ご覧なさい。光は魔女の火を……吸い込んでいる!」

QB「マミ、どこの誰に向かって話しかけているんだい?」

マミ「あなたに決まってるでしょ」

QB「ボクもこの場にいるんだから、説明されなくてもわかるよ」

マミ「戦闘中にもこういう説明をできる位の余裕を持つのはどう? って事よ」

QB「マミ……考えておくよ。
   (……自分の戦いに解説役が欲しかったんだね……)」
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 21:45:00.43 ID:7TfqMd1bo
     グアアアアアアアアアッ
 ゴォォォォォ……

           ……ド ゥン

さやか「や、やったか!」

マミ「美樹さんそれ危ない」

恭子「でも、やったみたいだ。
    炎が……魔女の身体が消えていく。

    ……!」

 ボドッ
      モゾ モゾ……

マミ「ウッ……すごいニオイね」

さやか「……なにあれ真っ黒……グロ……
     ヒッ、し、しかも動いてる! こっち来るぅ!」

マミ「もがいてる……苦しんでる……?
   ……これが、その……燃えて死んだ娘なの?」

  モゾ……

恭子「…………動かなくなった」

QB「ほら、見てごらん! 魔女の消し炭にグリーフシードが刺さってるよ!」

マミ「……消し炭……」
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 21:45:47.41 ID:7TfqMd1bo
QB『察しの通りだよ、恭子』

恭子『先読みしすぎだよ。でも、まぁ、そうなんだね?
    僕の魔法は……巻き戻したんだね? 彼女が魔女となる、その間際に』

QB『そうだね。魔女と成る直前、世界を呪って朽ち果てる瞬間にまで巻き戻した。
   キミの願いは、さやかの魔法を奪う事だったからね』

恭子『さやかの魔法、決意、そして、平穏な世界を奪う事を願った』

QB『そして魔女の災厄の魔法、呪いの決意、そして、平穏な世界も奪われた。
   彼女は困惑し、苦しみにもがいて死んだよ。
   肉体が焼ける痛みから逃れられず、呪いを叶えることもできないと思い込んで』

恭子『僕は彼女の最後の願いを踏みにじったんだね』

QB『濁りきった魂に、更なる絶望を叩きつけて逝ったよ』

恭子『素晴らしいエネルギーになったんじゃないかな!』

QB『察しの通りだよ、恭子!』

恭子「うしゃしゃしゃしゃしゃ」

QB「でらげっしゃっしゃっしゃ」

マミさや「?!」

恭介「先日、キュゥべえに勝利の高笑いってのを提案したんだけど、どうだろう?」

マミ「え? ……え? それは笑い声?」

QB「やっぱりこれはないよ、恭子」
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 21:46:27.74 ID:7TfqMd1bo
〜帰り道

恭子「ねぇ、さやか。聞こえなかったかな」

さやか「え? あ、魔女を倒した、あの演奏の時……?
    やっぱりなにか、言ってくれてたんだ。あたし、聞き違いかなって」

恭子「僕はね、さやか、君が好きだよって言ったんだ」

さやか「」

恭子「僕と付き合ってくれませんか、さやかさん」

さやか「アバババババババ」

マミ「あらあらまぁまぁ」

恭子「どうかな、さやか?」

さやか「アババ…だ、ダメ、恭介。そんな近寄っちゃダメ。
     で、出ちゃうよ。出ちゃいそうなの」

恭子「だって今、僕が手を離すと君は倒れちゃうよ。
    それに、何が出ちゃうって?」

さやか「……っ」

恭子「聞こえません」

さやか「……うんち」

恭子「」
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 21:47:15.21 ID:7TfqMd1bo
恭子「いいや(反語)。出そう。出すんだ」

さやか「ええっ? ダメ、そんな、汚いよ。臭いよ。もうずっと我慢してたし……」

恭子「さやか、僕と付き合うかい?」

さやか「つ、付き合いたいけどっ、あっ、ダ、ダメ、もう、ダメだったらぁ、あ、入り口まで来てる……!」

恭子「だったら、君のその小も大も我慢するクセはやめるんだ。
    そんな事してるから、尿管がバカになったりするんだよ。やめなさい」

さやか「でも、汚いもん……。恭介はキレイなのに、せっかく恭介のそばにいさせてもらってるのに、
     あたし、すごい汚い……汚くちゃダメなのにっ……」

恭子「さやかは僕を何だと思って……。僕だってうんこくらい出すよ」

さやか「でも、でも……」

恭子「さやかは僕が嫌いなのかい……」

さやか「ああああッ、違います! 違いますから、美樹さやか、うんちします!」

恭子「しゃがんでね。パンツはおろしてね」

マミ「……あらあらまぁまぁ」(遠距離)

QB「この国には臭い仲って言葉があるよね」(遠距離)

さやか「で、出ますぅ……」


           ……プポンッ
  ブブ ムムム… ボドッ      チョロロロロ…

マミ「ウッ……すごいニオイね」(二度目)
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 21:48:03.72 ID:7TfqMd1bo
さやか「ぅ……グスッ…………ひっく」

恭子「さやか、ウミガメみたいだよ。はい。ティッシュ」

さやか「……うぇぇん……ごめんなさい、あたし汚くてごめんなさい……」

恭子「いいよ」

さやか「あたし、恭介のそばにいる資格がないよぉ……」

恭子「いいよ。うんこで消える資格なんて、ないんだよ」

さやか「どこもキレイじゃないんだよ……それでもいいの……?」

恭子「いいよ」

 …プッ ブボッ

さやか「ま、また出ちゃうし……やだぁ……」

恭子「いーよ」

 ブッ プッ プゥ〜

恭子「(奇跡と魔法の在処なら、僕はずっと昔から知っていた。
    さやかこそが奇跡。さやかこそが魔法)」

 ブリッ ブ ミチッ

恭子「(いつだって、振り返れば君がいる。君なら信じられる。天国へ行く約束。どんな大きな壁も怖くない。
    君という綺麗な青に、僕は救われる。もう何があっても挫けない、──絶望してくれ、さやか)」

 ブボボーッ

恭子「(僕はさやかと心中する)」
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage saga]:2011/05/12(木) 21:49:18.13 ID:7TfqMd1bo
その夜。

恭子「キュゥべえの尻にコネクト!」

QB「んほぉっ!」

恭子「魔法の使者にあるまじき声だね。恥ずかしいケダモノの喘ぎだよ」

QB「キミはボクをどうしたいんだ。いやマジで。
   ともあれ恭子、キミの能力には感嘆を禁じ得ないよ。らめアナル拡げないで」

恭子「キュゥべえは僕に感謝すればいいと思うよ」

QB「……ありがとう。うん、確かにありがたいのだけど……アナルの事じゃなくてね……
   ふむ。今まで魔女の育成に協力してきた魔法少女は、いないワケではないのだけどね。
   キミのように経過を知って、なおボクを嫌わなかった娘は、さすがにいなアヒッい」

恭子「キュゥべえはお尻をいじると新ネタを出すよね。変わった習性だなぁ。
    よし、今夜の話題はそれだね。魔女の育成、それに協力する偽悪的な娘達について。
    会ってみたいなぁ。実際の経過を知って、どれほどショックを受けるかなぁ……」

QB「い、イイ、いいけど、そうだね、すぐ近くの街に、ちょうど、キミと同じ……
   『キョウコ』という名前の魔法少女がいるよ」

〜〜〜〜

QB「んほっ……そういうわけだから……おほぉっ」

??「まったく、ふざけた契約が続いたもんだなー。そいつら頭おかしいんじゃねーの。
    ま、大体、話はわかったけどさ……アンタさっきからおかしーぞ。何? しゃっくりか?」

QB「まぁオススメはしないけど、どうしても会ってみたいと言うなら、ボクにはキミを止められない。
   長いつきあいだからね……キミの頼みは断れないよ、アンッ……子」

杏子「誰があんこだよ。アタシは杏子だ!」
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(便型県) [sage saga]:2011/05/12(木) 21:52:46.53 ID:7TfqMd1bo
なんかもう盛り上がったしうんこ出たし終わってもいい気がする
けど次回予告
『あんな世の中やっていけそうにないクズな空気纏ってんのは魔法少女くらいしかいないよ』(予定)
(サブタイ方式やめるかも)

  , '´  ̄`ヽ
  ィ イレi人レゝ
  レd|*゚−゚ノリ
  |⊂jーー)つ
  リル)  i从
   くんiヽゝ
ぼくのかんがえたまほーしょーじょ
  *上条恭子*

武器:ヴァイオリン
身長:上条恭介といっしょ
スリーサイズ:美樹さやかといっしょ
願い事:さやかが魔法少女でなくなりますように(そんで絶望しますように)
49 :さやかは俺の嫁 :2011/05/12(木) 22:11:01.97 ID:56IV2nBDO
読んでて楽しいなこれ
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2011/05/12(木) 22:12:32.98 ID:SknhiL4E0
なんだ・・・これは・・・・
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2011/05/12(木) 22:14:36.68 ID:TpebQyYL0
oh...
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/12(木) 22:36:45.68 ID:sqhLcyUSO
面白いよ
でも敢えて言うならVIPの方が反応よかったと思う。常駐人数的な意味で
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) :2011/05/12(木) 22:41:16.28 ID:Y/J6gv3F0
イカレてる・・・何がとは上手く言えないが・・・
とりあえず自分を天才で天使と賛美するあまり色々漏らしたり魔法に縋ってしまうネガティブさやかちゃんを魔女にすらなれない程
絶望させて心中したい恭子★マギカ、なの、か・・・?

鬱らない様に気を付けて乙。
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2011/05/12(木) 23:05:44.77 ID:XJ98zQr70

マジキチ
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/12(木) 23:12:01.90 ID:bIZTVDFKo
なんかすごいスレに遭遇してしまった
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/05/12(木) 23:18:24.01 ID:mIn8V1Pk0
何だこのSSは…!?
未だかつてない何かを感じるぞ…

乙、期待してる
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/12(木) 23:21:29.59 ID:lMWDHnNAO
何がまともなのか何が狂ってるのかがわからなくなってくるな。
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(便型県) [sage saga]:2011/05/13(金) 21:12:40.66 ID:S8uJoEN0o
この話はつまり、上条君が退院後さやかに連絡しなかった真相だ! 嘘です。
まあなんていうか、クズ条、書きたくて

そんなに書き進んでないので小出しにするんだぜ第三話
『あんな世の中やっていけそうにないクズな空気纏ってんのは魔法少女くらいしかいないよ』

ハートフルボッコ・グチャグチャ・ズブズブコメディですのでお子様にも安心
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(便型県) [sage saga]:2011/05/13(金) 21:13:35.75 ID:S8uJoEN0o
恭子「ティロフィナーレ!」

QB「ほぎぃ!」

恭子「メールしてたら手が凝ってね。やあ、君のケツアナは相変わらず程よく温かい。
    さすがキュゥべえ、人間の嗜好をよく理解しているよ」

QB「そそそうかい。でももも、そんなに高速で抜き差しするとあたたたあったまらないよ。
   ところで、さっきから恭子はメールばかりしているね」

恭子「なにせ明日から通学再開だ。そうでなくても、志筑さんに返事し忘れていたからね。
    どうして志筑さんはメールとなると武士口調なんだろうねぇ。
    ……おっと、中澤からメールだ。知ってる? 僕のセカンドキスは中澤なんだよ。
    なになに? 『美樹の家が爆発ってマジカ?!(゜ロ゜)』 中澤は情報が早いなー。
    ちなみにファーストキスは父だよ。幼い僕ときたらそれはもう可愛かったからね」

QB「へー、ほー、ふぅ〜ん?」

恭子「君、どこでそういうの覚えたんだい。感じ悪いよ」

QB「マミが使ってたんだよ。それにしても、キミはやっぱり息を吐くようにウソをつくね。
   マンションを爆破して、呆然とする美樹さやかに口づけて言ったじゃないか。
   ファーストキスをあげる、って」

恭子「ウソも大便だよ。どっちもよく出たほうが健康的ということさ」

QB「わけがわからないよ」
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(便型県) [sage saga]:2011/05/13(金) 21:15:10.84 ID:S8uJoEN0o
恭子「キュゥべえはせっかくアナルがあるのに、うんこしないなんておかしいよ」

QB「擬似的にうんこをつける事はできるけど、やるべきではないね。
   こんなにカワイイ姿なのにうんこがついた尻だと、大抵の少女はがっかりするんだよ」

恭子「僕なら引いたりしないのになぁ。……って、ちょっとキュゥべえ。
    人聞きが悪いじゃないか。僕はさやかのマンションを爆破してなんかないぞ。
    魔法でちょっと被害を拡大させただけだ」

QB「そこまで大きな違いかい?」

恭子「大と小くらいに大違いさ。僕はさやかの家に、爆弾なんて仕掛けないよ。
    本人に手渡したほうがなんぼかマシじゃないか。しかもあんな、半端な爆発。
    玄関の中にあって壁ひとつドア一枚吹き飛ばせないなんて、まったく中途半端。
    おかげで思わず部屋を荒らしてしまったよ。さやかも気絶してくれてたしね。
    まったく、この前の鹿目さん家といい、見滝原はいつからこんなに物騒になったんだ」

QB「うん、物騒だね。君がね」

恭子「まったくさやかが一人暮らしだったからよかったようなものを!
    おかげで僕の家に同居させる事になった。犯人にはありがとうと言ってやらなきゃ。

    ……でも、おかしな犯人だよね。僕たちはドアの鍵を開けて、中に入ろうとした。
    そうしたら廊下に爆弾が転がったんだよ? 『後ろから投げ入れられたみたいに』」

QB「それはボクも見ていたけれど」

恭子「ところで今日の夕飯なんにする?」

QB「ボクはなんでもいいけど。爆弾の話はいいのかい?」
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(便型県) [sage saga]:2011/05/13(金) 21:16:28.90 ID:S8uJoEN0o
恭子「さっき言ったとおり、犯人に会ったらありがとう。それだけだよ。
    さて、さやかと家事をどう当番制にするかなー……
    ああ、どうでもいい話をもう一つするけど、ほら僕のソウルジェム」 ポン

QB「それはどうでもよくないんじゃないかな! どれどれ……おや」

恭子「キュゥべえはソウルジェムを宝石って表現したね。濁る、とも」

QB「……うん。でもこれは」

恭子「……金属質だよね……硬そうな……」

QB「うん……、プラチナのように硬そうだね……」

恭子「これ、濁るかな……錆びる、のかな?」

QB「この星の、プラチナって金属は錆びるのだっけ……」

恭子「いや、でも、結局は人間の、僕の魂ということだし」

QB「うん、そうだね。キミの魂だからというと、余計に不安が募る気もするけれど……
   大と小くらいに差はないだろう。うん、大丈夫、大丈夫、何も怖くないっ」

恭子「魔女が増えるよ!」

QB「やったねきょうちゃん!」

恭子「では、その日まで。
    共に歩んでくれ。僕が魔女になるまで」

QB「共に歩むよ。キミが魔女となるまで」
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(便型県) [sage saga]:2011/05/13(金) 21:18:10.97 ID:S8uJoEN0o
〜翌朝

恭子「これが女子制服かぁ。心あったまるなぁ。さやかはどうだい?」

さやか「いや、あたしは毎日着てるから……あ、恭介、いいなぁ……
     スタイルいいなぁ。足が長いほうが似合うんだなぁ……」

恭子「ハイもニーソも古い古い! 時代はスニーカーソックスだ。
    そんな時代は来ていない? なら来させる!
    ところでさやか、今日の夕飯なんにする? 髪型どうしよう?」

さやか「えっと、えっと、魚? それでえーっと、えーっと! ポニーテール?」

恭子「ポニーテールか。いいね。恭子だからあだ名はキョン子にしてもらおう」

さやか「……ね、恭介……」

恭子「さやか、寝不足かい? くまができてるよ」

さやか「……眠れなくて。あたし、ここに泊まっていいのかなって」

恭子「泊まるどころか住むんだよ。いいじゃないか。君はもともと、ご両親からは
    好きに暮らすようにと言われていたんだろう?」

さやか「でもそれは、あのマンション内に限りって事だと思うんだけど……」

恭子「爆発したんだから仕方ない。それよりこちらこそ、僕の家でいいのかな。
    いや僕の家というより、あくまで僕の父の借り家だけれど。
    ヴァイオリンを弾ける事が条件だったから、決して最新設備じゃないんだよ、この家」

さやか「い、いいよ! 悪くなんかないよ! 最高だよ!
     外観はレトロ感あってかわいいし、でもウォッシュレットも浴室乾燥もあるし!
     そそ、それ、それに、ど……同棲みたいだし!」
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(便型県) [sage saga]:2011/05/13(金) 21:19:06.54 ID:S8uJoEN0o
恭介「……みたいっていうか、同棲だよ?」

さやか「は、はふぅーっ」

恭子「ほら、生理用ナプキン『多い日の夜用』はきちんと持ったかい?
    こまめにトイレに行くんだよ。君の尿管はバカなんだからね」

さやか「はひぃっ……イきまふぅっ……」

〜通学路〜

恭子「そういえば、こうしてさやかと並んで登校するなんて初めてだね。
    幼稚園も小学校も、ずっと別だったものね」

さやか「うん」

恭子「ほら、昔、夏休みに君を観察させてほしいって頼んで、ノートにまとめたけどさ。
    僕は両親にすっごく怒られてね。女の子の観察なんて何事かーって」

さやか「あたしはよかったのになぁ」

恭子「(というより、母が錯乱しちゃったんだよね。トイレで襲われた時の事を思い出して)
    それ以来、ずいぶんと疎遠になっちゃってたよね」

さやか「うん」

恭子「中学で一緒のクラスになって、久しぶりーとは思ったけど……
    こうやって並んで登校するなんて、本当になかったなー。なんでかなぁ。

    僕が入院してからだよね。君が自分から、会いに来てくれたのは」

さやか「うん……」
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(便型県) [sage saga]:2011/05/13(金) 21:20:23.11 ID:S8uJoEN0o
恭子「あっ、中澤たちだ」

さやか「!!……」

*「えーっ、上条さん? 上条さんじゃん! 腕大丈夫? ザワ君、上条さんだよ!」
*「おー、恭子じゃん。退院したの?」
*「中澤ー、恭子来てんぞー言いたい事あったんじゃねーのー」

恭子「おはよう中澤。昨日はメールの返事遅れてごめんね」

中澤「……あ、ああ。おはよ……。
    いやメールは別に……恭介のトコも、ごたごたしてたみたいだし」

*「えー。ザワ君、上条さんとメールしてんの? 初耳なんですケド」

中澤「いーだろ別に……」

恭子「中澤……」

中澤「あのな、俺……」

恭子「……気にすんなって!」バシーン

中澤「わっ、えっ?」

*「えーなになになに! ザワ君なにー!?」

恭子「こういう時は夕日が見える河原がいいらしいけど、今は朝だしね。
    ホント気にしないでくれよ! 小学校からの仲だ、ケンカぐらい起きるさ!」

*「えーケンカ!? ケンカしてたの? ……なんだ、私てっきり……」
*「体育系と文化系のくせに、仲いーよなおまえら」
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(便型県) [sage saga]:2011/05/13(金) 21:22:08.89 ID:S8uJoEN0o
*「ザワ君、なんでケンカしたし?」

中澤「……お前には関係ないじゃん」

*「えっ。えー……いや、だってあたしザワ君の……それにマネージャーで……」

恭子「中澤って見かけによらないスポ根野郎で、僕のコト全ッ然、女として見てないじゃない?」

中澤「!」

恭子「だから僕が腕ケガして滅入ってるのにさ、根性論とか持ち出すからさー」

*「あー、そーいうケンカ!」

中澤「……悪かった、恭介」

恭子「いーよいーよ。中澤は昔から熱血バカの女嫌いだし」


QB『……本当の事を言ったら、さやかはショックだと思うよ?』

恭子『やあキュゥべえ。内緒話するかい?
    そうだね、さやかは血を吐きそうだよ。レイプ未遂、それも男同士なんて言ったらね』

QB『言わないのかい?』

恭子『まだ言わないよ。もっと僕に関してさやかが知らない事を増やすつもりさ。
    来るべき時まで、手札は伏せておかなきゃね』


*「あ、美樹さん……おはよ。あれ? 上条さんと方向いっしょだったっけ」

さやか「ぉ、おはよう。恭介とは、えっと、たまたま、ねぇ? アハハ、たまたま……」

*「……ね、なんでザワ君と美樹さん、上条さんを恭介って呼ぶの?」
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(便型県) [sage saga]:2011/05/13(金) 21:23:07.27 ID:S8uJoEN0o
さやか「! え、えーっと……」

中澤「?……あれ……そういえば妙だな……介ってどっから……」

恭子「あだ名だよ。小学校での。昔から僕は女の子らしくなかったからね」

*「えぇーないないない! 上条さんすっげ髪キレイなストレートで足長いじゃん!
   これを女じゃないっつわれたら、ウチの女子全滅ですよ〜! ないって!」

中澤「あー、あだ名……そうだっけか……?」

恭子「もー、いーかげん恭子さんって呼べよー」

*「呼べよー。ザワ君シツレーだよー。このスポ根鈍感野郎」

中澤「あーはいはい。恭子さん。うわっなんかハズッ」

*「マッジ失礼だよー!」


恭子『さやか、聞こえる?』

さやか『あ。恭介……ごめん。うっかりしてた』

恭子『さやかが楽なら、そのままの呼び方でいいよ』

さやか『あ、ありがと……。ねぇ、恭介って、友達、多いね』

恭子『さやかも友達いるじゃないか。ほら、志筑さんが向こうにいるよ』

さやか「……あ……」


仁美「…………」 テク テク
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(便型県) [sage saga]:2011/05/13(金) 21:25:24.52 ID:S8uJoEN0o
〜教室

仁美「さやかさん、おはようございます。上条さん、退院なさったんですね」

さやか「うん……ごめん、今日いっしょに行けなくて」

仁美「構いませんわ。さやかさん、上条さんがお好きなのでしょう?」

さやか「ふえっ」

仁美「とても仲が良くていらっしゃる。小さい頃からのお友達ですものね」

早乙女先生「はいはーい、みなさん席についてー。今日は大事なお話がふたつあります。
        まず最初、しばらく入院していた上条恭子さんですが、めでたく! このクラスに戻ってきました!
        ……では、本人から挨拶があるという事ですので」

恭子「はい。入院していました、上条恭子です。
    骨折で入院していると先生に伝えてもらうように頼んでいましたが、それはウソです」

早乙女先生「えっ」

恭子「事故により首の骨が傷ついて、身体の自由が効かなくなったんです。
    お医者さんによると、半身不随……手足に一生、障害が残るかもと言われていました」

*「えっ? えっ? えーっ?」
*「マジで……」
中澤「…………」

恭子「でも、……美樹さやかさん」

さやか「は、はいっ?」

恭子「君は毎日見舞いに来てくれて、ずっと僕のそばにいてくれた。僕を励ましてくれた。
    僕がまた学校に通えるようになったのは、最新の医療技術より何より、きっと君のおかげです」
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(便型県) [sage saga]:2011/05/13(金) 21:26:12.28 ID:S8uJoEN0o
恭子「本当に、本当にありがとう。いくら感謝しても、したりないくらい。
    君は正義の味方のように僕を助けてくれた。君が幼馴染みでいてくれて、本当によかったです。
    ……さやか、結婚しよう!」

さやか「はい喜んでー! ……って、え……えええええ!」

仁美「まぁ!」

 キャー エエー アハハハ パチパチ…

さやか「…………」プシュー

恭子「それに、励ましの手紙やメールをくれたみんなも、本当にありがとう。
    今日からクラスに戻ります。みんなの手を借りる事もあると思いますが、よろしくお願いします」

早乙女先生「いやー知んなかった、うらやま……あ、いいえ、上条さん、今日からまた一緒に勉強しましょうね。
        それでは二つ目。皆さんに転校生を紹介します! ……待たせちゃったわね、いらっしゃーい」

 トボ トボ…

恭子「……?!……(なんだ、この娘……)」

早乙女先生「暁美ほむらさんです! はい、それじゃ自己紹介、いってみ……
        あ、あら? あのー、暁美さん?」

恭子「(あからさまに櫛を入れてない、寝起きそのままを縛ったようなお下げ。
    女の子にあるまじき土気色、顔を洗ったかも疑わしい、どんよりと曇った表情。
    リボン、シャツのカラー、スカートのプリーツ。全てよれてる。おまけにメガネもずれて……
    転校初日からレイプに遭ったかのような、そして恋人と泣き別れたばかりのようなっ)」

 ザワッ

ほむら「…………」

恭子「(絶望……圧倒的絶望……!)」
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(便型県) [sage saga]:2011/05/13(金) 21:26:45.53 ID:S8uJoEN0o
早乙女先生「あ、暁美さんは心臓の病気でずっと入院していて……」

ほむら「……」ボソボソ

早乙女先生「えっと、暁美さん?」

ほむら「言わな……って……ったじゃないですか」

早乙女先生「あ、ああ! ごめんなさいごめんなさいねっ
        言わないでって、そうだったのね……さっきそう言ってたのか……」

ほむら「…………ゥ…グスッ」

 ザワ…

早乙女先生「ああああ、ごめんなさい! 本当にごめん先生が悪かった泣かないでっ!
        ひ、久しぶりの学校だから、色々と戸惑う事も……多いと思うし……
        み、みんな、助けてあげて……ね」

   …エー…

早乙女先生「えーじゃないっ。はいッ、皆さんの新しいお友達、暁美ほむらさんでした!」

ほむら「……むらです……おねが……ます……グスッッ」

 ザワザワ   ザワザワ…

ほむら「ウッ……、クッ、クッ」

さやか「……?!」

恭子「(……なぜさやかをガン見しているんだ。僕を見ろ! 僕を!)」
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(便型県) [sage saga]:2011/05/13(金) 21:27:36.55 ID:S8uJoEN0o
恭子『メイデイ、メイデイ! びっくレイプだよキュゥべえ!
    間違えた。びっくりだよ、キュゥべえ』

QB『レイプが流行りかい?』

恭子『あーもう、レイプとか言っちゃうのは中澤のせいだよ。
    原因は僕だけど。……ほら、さやかの観察記録の事は話したよね。
    あの後だよ。僕はいよいよ、さやかを手放したくなくなってしまったからさ。
    だから、どうしたら他人は僕から離れられなくなるか、色々試してみたんだ……

    いや、ちんぽ舐めるとか舐めないとか舐めたとかの話はいいんだよ!
    あの転校生だよ!
    暁美ほむら、あの娘もキュゥべえと契約した魔法少女かいっ!?』

QB『いいや』

恭子『なんだやっぱりそうか、なら話しが早、ええええーっ。
    がっかりだよ! がっかりキュゥべえ! 僕はキュゥべえに心底がっかりしたべえ!』

QB『ボクがキミたちのように感情を表現するなら、イラッ、と来ただろうと言わせてもらうよ。
   暁美ほむら。彼女は魔法少女である事は確かだが……それにしてもよく判ったね』

恭子『そりゃぁ、あんな世の中やっていけそうにないクズな空気纏ってんのは魔法少女くらいしかいないよ!』

QB『ああ、うん、キミも魔法少女だよね……。
   彼女は確かにそうなんだが、ボクは彼女と契約していないんだよ』

恭子『わけがわからないべえ』

QB『イラッと来ただろうと言わせてもらうよ』
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(便型県) [sage saga]:2011/05/13(金) 21:28:27.76 ID:S8uJoEN0o
恭子『では暁美さんはどう魔法少女になったのだろう。生まれつきの魔法使い?
    キュゥべえに敵対勢力がいて、契約を交わした? 実は君、記憶喪失?』

QB『どれもありえない』

恭子『「未知の敵」説とか、盛り上がるじゃないか。それにしようよ。けってーい☆』

QB『盛り上がるからって決めるのかい……。だけど恭子、ボクに敵はないよ。
   宇宙を救済するためのボクが、恨まれたり妬まれたりする道理はないじゃないか』

恭子『救済のために動くと、未来から刺客を送りこまれて狙われたりするんだよ』

QB『それはキミ達のつくった物語だね。
   とにかく、暁美ほむらには用心するんだ。彼女の能力はボクにも把握しきれない』



*「恭子さん、長く入院してるなぁって思ったら、大変だったのねー」
*「無事でよかったぁ、恭子さんいないと、このクラス華が消えちゃうよー」
*「だよねー。久しぶりに見たせいかな、記憶より全然カッコイイっていうか」
*「ね、上条さんってすっごいキレイな髪ですよねー。専属の美容師がいるってホントー?」

中澤「…………」

仁美「なにやらモテてらっしゃいますわね、上条さん」

さやか「……うん、そうだね……」

仁美「心配いりませんわよ。あそこまで宣言されたんですもの。
    ああ、しかしお二人が結婚だなんて……! いけませんわいけませんわ早すぎますわ」

さやか「う、うん?」
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(便型県) [sage saga]:2011/05/13(金) 21:31:23.09 ID:S8uJoEN0o
〜〜〜〜
今日はここまで

ヤター最愛のほむほむ出せたー!
ズタボロじゃないですかーヤダー!
ほむほむファンとさやさやファンと中澤君のファンには謝る
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) :2011/05/13(金) 21:59:17.19 ID:3OLL1sDv0
タッ君の事、キュベーが己の迂闊さを嘆いているから宇宙規模で偶発的なものなのだとは思うけど。

ほむほむ一瞬喜んじゃったんだろうな。これなら勧誘にも来ないだろうって。けど悪魔の取引に来ない様見張ってたんだろうな。
そんな事してるから見てて居た堪れなくなっちゃったんだろうな。ひよっとしたら思わず乗り込んであなたが死ぬよりマシとか
言っちゃったんだろうな。

・・・砂時計も見れなくなるくらい絶交されちゃったんだろうな。でもオクタヴィアだけは倒さないとって思っちゃったんだろうな。
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(便型県) [sirige saga]:2011/05/14(土) 20:48:51.03 ID:1qT6H13Fo
ナカザワ君の彼女イメージは、本編の松葉杖登校シーンで前を行く女子(青髪ニーハイの子)
ちょろちょろ続き
〜〜〜〜
75 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 20:54:15.97 ID:1qT6H13Fo
*「恭子さんが美樹さんと幼馴染みって、知らなかったなー」
*「男の子みたいだったから、今も美樹さんから恭介って呼ばれんですよね」
*「えっ何ソレ初耳すぎ」

恭子「ホント小さい頃からの付き合いだからね。僕も髪がショートカットだったし。
    それにほら、一人称も昔から『僕』なんだよね。変えようとは思ってるんだけど」

*「えーでも似合うし、いいと思いますよ!」
*「『私』より『俺』より『僕』って感じですもん! 合えば何でもいいんですよ!」

恭子「そうかなー。でも子供の頃から馴染んだものって、変えづらくてね。
    さやかの事も、昔の呼び方で呼んじゃったりするし」

*「えー、どんな?」

さやか「(え?)」

恭子「サヤサヤ(笑)」

*「サヤサヤ! やだかわいー、美樹さやかでサヤサヤとか超ストレート」
*「美樹さーん、サヤサヤって呼んでいいー?」

さやか「えーっ、えーっ? サヤサヤって何……え、サヤサヤ決定? えーっ、恭介ぇ!」

*「サヤサヤ怒った! かわいー!」
*「ナチュラルに恭介って呼んでるし! ヘンに似合ってるし!」
*「なんかいいなー。昔からの関係って、いくない? ドラマってか、萌え?」
*「ヤバイ、うちのクラスで一番に結婚する女子が決定した。しかも女子同士。ヤバイ」
*「外国だとマジ結婚できるんでしょ? けっこう向こうの女優さんとかやってるって話だし」
*「つーか上条さん普通に映画とか出られるし。たぶんっていうか絶対?」
*「あーっ、ウチに入ってもらえばよかったぁ! 恭子さんっ演劇部員いまからでも募集してます!」
*「いやダメだし。ヴァイオリンで忙しいんだし、つーか入れるもんならウチに入ってもらってるよーっ!」
*「水泳部なんて入れたら男子の目で穢されちまうわあああ! サヤサヤ可哀想だろうがぁああー!」
さやか「……えーと……」

恭子『……キュゥべえ、女の子のテンションって時にかけ算だよね』

QB『上がるときも下がるときも、病めるときも健やかなるときもね』
76 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 20:55:44.64 ID:1qT6H13Fo
*「なんか呼んだー?」
*「呼んでねーし。なんでアンタ男子代表みたいな顔してんの」
*「中澤ー、中澤のカノジョがいじめるー」

中澤「……なあ、恭……恭子」

恭子「ん、なに?」

*「中澤がスルー!」

中澤「あのさ、病み上がりなのに、なんだけどさ……
    部活終わんの待っててくれないかな。ちょっと話したい事が」

恭子「放課後はさやかと帰るのに忙しいから、用件はメールにして」

中澤「」

*「中澤がスルー! された!」
*「…………ザワ君……」

恭子「あれ、そういえば……暁美さんは?」

*「あれっ? あ、いない」
*「……保健室じゃねーかな」
*「うち保健係、誰だっけ?」
*「……休んでるから、一応代理、私なんだけど……」
*「一人で行ったんじゃない?」
*「恭子さん、あの人となんか話した?」

恭子「いや、全然。顔色悪かったし、ちょっと心配ってだけなんだけどね」

*「……あの人、なんか……怖いよね」
*「うん……いきなり泣き出すし。ちょっと……ヤバイ人なんじゃない?」
77 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 20:56:35.52 ID:1qT6H13Fo
〜昼休み、屋上。

さやか「あーん」

QB「あーむ」

恭子「マミさん連れてきたよ。
    よかったです、今日はちょうど空いてたみたいで」

マミ「ええ、今日はたまたまね。
   せっかくだから、明日からあなた達と食べようかしら」

さやか「えー、いいんですか? マミさんクラスの人達、がっかりしません?」パクッ

マミ「友情に優劣つけたくはないけど、魔法少女の絆のほうが私には大切なの。
   共に命をかけて戦う仲間ですもの。それにキュゥべえもいるし」

さやか「あはひ、ほう、はほーほーほははひへふがー……」

QB「あたしもう魔法少女じゃないですが、と言っているよ」

マミ「これからも恭介くんと戦うんでしょう? 少なくとも彼はそのつもりらしいし」

恭子「言っただろ、君が僕のソウルジェムって」

さやか「……ふふふはほほへふは、ほひひふほへはひひはふ……」

恭子「仰々しいよ。あと喋るより食べていいんだよ」

マミ「……今のはなんて?」

QB「ふつつか者ですがよろしくお願いします。と言っていたよ」
78 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 20:57:17.18 ID:1qT6H13Fo
〜暁美ほむらの事を喋る〜

マミ「そう……転校生さん。能力は不明だけど、魔法少女なのね」

さやか「なんかすっごい睨まれました……マジ漏れるかと。ナプキンからという意味で」

恭子「マミさんもご存じありませんでしたか」

マミ「私のデータベースにもない名前よ……。
   しかしキュゥべえと契約したわけじゃないなんて、一体どういう事かしら」

恭子「(謎多き、ステキなレイプ顔の転校生……か)」

マミ「さて、この特異者(イレギュラー)にどう対応すべきか……」


 ────その必要はないわ────


恭子「!!」

QB「暁美ほむら。キミは」

ほむら「私は確かにオマエと契約したわ……ただし、今ここにいるオマエとはちがう……。
     ……でも、そんな事、どうだっていいことよ……どうだって……」

恭子「なんて唐突さだ。足音を立てない訓練とかしてたクチか」

ほむら「……巴マミじゃあるまいし」

マミ「」

さやか「転校生、あんた敵なの? 味方なの!?」

ほむら「私は……ちがう、私が敵なんじゃない……敵になる、皆……」 ブツブツ
79 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 20:57:58.09 ID:1qT6H13Fo
さやか「ちょっと、聞いてるの!?」

ほむら「黙りなさい。……上条恭介に嫌われている事にも気づかないくせに」

さやか「え……」

ほむら「あなたは志筑仁美に上条恭介を奪われる。
     そして嫉妬に狂い、偽善に走り、ぶざまに魔女となって、人に襲いかかるの。
     理性を失い、仲間まで殺そうとした……。この仲間殺し」

さやか「……な……何、言ってんの、コイツ……」

ほむら「敵か味方かと言ったわね……。そこにいるキュゥべえは間違いなく敵よ。
     でも愚かなあなたはそれに気づかず、最後まで踊らされて、死ぬ。死ぬの。死ぬのよ」

さやか「頭おかしいよ……おかしい、この女、頭がおかしいんだ」

恭子「しっかりしろ。気付けにキュゥべえのアナルでも嗅ぐんだ、さやか」

さやか「おかしい、おかし……お菓子のニオイ。なにこれブルボ○のホワイト□リータみたいな」

マミ「しっかりして美樹さん……しっかり嗅がないで。そうよ、彼女の言ってる事はおかしい。
   あなたの事をこんなに好きと言ってくれる恭介くんが、あなたを捨てる?」

さやか「…………」 クンカクンカ

マミ「(もう美樹さんは放っておこう)暁美さん……あなた、私の大切な友達を侮辱したわ。
   キュゥべえ、美樹さん、恭介くん。彼らにこれ以上、手を出すと言うのなら……」

ほむら「黙れ。友達もいない孤独で独りよがりな雌豚が」

マミ「」

ほむら「優しげな顔をして甘い言葉を吐いて、本当はひとりぼっちになりたくないだけ。
     そうしてひとを地獄に引きずり込む。あなたは最低な人間だわ」
80 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 20:59:09.82 ID:1qT6H13Fo
 …パシッ

ほむら「……」

恭子「言っておくけど、僕が女性に手に上げたのって、これが初めてだから」

ほむら「……敵……敵なんだ……みんな敵……」ブツブツ

恭子「一つだけ訂正しろ。マミさんは雌豚なんかじゃない」

QB「そこなんだ」

ほむら「……あなた、誰……?」

恭子「もしかしなくても僕、認識されてなかった!

    自己紹介するよ。上条恭介あらため、上条恭子。
    属性リア充、所属は魔法少女。武器は楽器で趣味さやか。
    裕福な家庭に生まれ、一度見れば覚えるから、物を習う苦労をした事がない。
    容貌麗しく、あらゆる分野に才があり、オモシロ幼馴染みまでついている。
    ──この上条恭子こそ、リア充・オブ・リア充だよ」

ほむら「うああぁぁ。もう嫌だ……やだよ、こんなの嫌だぁ……」

恭子「あ、え、ビンタしてごめんなさい。泣かないでください。土下座しますから」

QB「なにを狼狽えているんだい」

恭子「やっぱり直接的な暴力に訴えるなんて間違ってたよ。
    時代は自虐だ。出血する程度に自分を痛めつける。ただし回数を重ねちゃいけない」

さやか「よくわかんないけど、それ見せられたほうには暴力同然だと思う」

恭子「何事も直接的ではいけない……湯気で隠すとか、ロバで隠すとか、見切れるとか」
81 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 21:00:05.63 ID:1qT6H13Fo
ほむら「……嫌……嫌ぁ……どうしてこんな目にあうの……」

マミ「まいったわね……こっちがイジメてるみたいじゃない。
   ねぇ、あなた、何を知っているの? お願いだから冷静に話してくれないかしら。
   ケンカしたいんじゃないの。いっしょにお弁当を食べて話し合いましょう。ね?」

ほむら「……ろ。……みんなっ……」

マミ「ねぇ、暁美さん」

ほむら「消えろ!」

恭子「!」

 ──ン


          キン  カラン


マミ「……え? 暁美さん? いない……」

 (タッタッタ…)

さやか「あっち! いつの間に!?」

恭子「……? ……!」

 ダッ

さやか「恭介!?」

マミ「恭介くんッ」

恭子「動かないでマミさん! さやかを守ってください!」
82 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 21:00:40.32 ID:1qT6H13Fo
ほむら「消えて、消えて、消えて……」

ほむら「う、うぅ……ぐすん……」

ほむら「…………」

 クルッ

ほむら「ついてこないで」

恭子「そんなにツンケンしないで欲しいな。僕が敵みたいじゃないか。
    さやかもマミさんもキュゥべえも、誰の敵でもないんだよ?
    誰かの敵になろうなんて気はさらさらない、お気楽な集まりなんだ。
    ……待ってってば、ほむらさん!」

ほむら「気安く名前を呼ばないで!」

恭子「銃を向けずに話し合おう!」

ほむら「……話す事なんてないわ」

恭子「クイズ! 君の能力は……予言? 瞬間移動? 念動力?」

ほむら「…………」

恭子「時間操作? 教えてくれよ、君がどうやって薬莢を回収したか!」

ほむら「……やっきょうってなぁに? わたし、しらないわ」

恭子「君、そういうキャラすると気持ち悪っ」

ほむら「…………グス」

恭子「ごめん」
83 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 21:01:49.64 ID:1qT6H13Fo
ほむら「なぜ、私が銃でも持っているような言い方をするの」

恭子「僕も撃った事があるからだよ。国外に暮らしていた時期があってね。
    ……薬莢がコンクリートの上で跳ねかえって転がる音を、僕は覚えた」

ほむら「記憶違いよ」

恭子「僕は、覚えた音を忘れられないんだ」

ほむら「……あなたも私の敵になる」

恭子「ならないよ! 僕はぜったい君の敵にならない! 皆にもそうさせないよ!
    それとも君の知る上条恭介は、そんなに信用ならない奴だった?」

ほむら「上条恭介は……部外者よ。いつだって物語の外。
     だからあなたも、外にいなさい。……敵ではないと言うなら、それしかない」

恭子「ダメダメダメ諦めたら! 友達になろうよ、楽しいスクールライフ送ろうよ!
    いっしょにお弁当食べたり、帰りにファストフードを嗜んだりしよう!
    だいたい魔法少女の君が僕を知っていて、僕も魔法少女で、部外者だなんてナンセンスだ」

ほむら「……ファストフードは好きではないの」

恭子「いいね、好きなもの嫌いなものを教え合うのは基本だね! 気になる事も話そう!
    今こんな服が流行ってるとか、どう髪型を変えようとか コンタクト試してみようかとか!」

ほむら「……それは遠回しに私の格好が……」

恭子「…………」

ほむら「……グスッ……ウッ」

恭子「ごめん。でも今の君の魔太郎みたいなオーラはホントどうかと思う」
84 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 21:02:42.96 ID:1qT6H13Fo
ほむら「やはり敵ね……これ以上あなたに付き合うヒマはないわ」

恭子「敵じゃないってば。敵だとしても友達という名の敵だよ」

ほむら「わけがわからないわ。お気楽な人達にも付き合ってるヒマはない」

恭子「ホームランとホムーラン、どっちがいい?」

ほむら「?! な、なにが」

恭子「明日からのニックネーム。君の」

ほむら「どういう意味!?」

恭子「中澤の今カノって、軽くスピーカー体質っぽいんだよね。知ってる事ぜーんぶ出しちゃう人。
    あ、中澤ってのは僕の友人。同じクラスだけど、暁美さん知ってた?」

ほむら「……陰湿ね」

恭子「ううん、お気楽キャラだよ?」

ほむら「……インキュベーターの奴隷め」

恭子「奴隷というなら魔法少女みんなそうだけど、キュゥべえは魔法少女を奴隷とは思わないよ。
    肉になる牛や畑の作物を、奴隷だなんて革命を起こせる存在のように言うかい?
    そうだよ、こういう事をもっと感情を出して話し合おうよ! 僕は君が好きなんだよ!」

ほむら「!!
     ふ、ふざけ……ふざけな。ふざけないで。ウソだと言いなさい!」

恭子「ウソだ」

ほむら「…………ううううっ」ポロポロ

恭子「君って、意外とめんどくさい女って言われた事……ごめん。ごめんなさい」
85 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 21:04:08.75 ID:1qT6H13Fo
ほむら「……あなたはヤツと同類と言う事はわかったわ。いいえ、それ以下よ」

恭子「部外者ではなくなったんだね。うれしいな」

ほむら「吐き気がするような害悪。生きていてはいけない存在」

恭子「君はよく僕の事を理解してくれた。お近づきの印。はい、パス」 ポイ

ほむら「!!」

          ゴトッ

恭子「君、ちょっと運動神経にぶいね。そこがまた好意をかき立てるよ」

ほむら「……自分が何をしたか判ってるの!? ソウルジェムを投げるなんて……っ」

恭子「無事じゃん。でも君がまだ僕を敵と思うなら、今すぐ砕いてくれて構わない」

ほむら「…………」

恭子「ソウルジェムは僕らの本体だ。砕かれれば死ぬし、魔女にもなれないね。
    君を好きだと言っただろ。君への好意を示すために、僕はここまでの事ができるよ。
    ……まぁ、僕を失ったさやかの顔が見られないのは残念だけどね、仕方がない。
    魔法少女姿は見たし、脱糞顔も見られた。おおむね満足。うん」

ほむら「……どうやってそれを……インキュベーターに良心が芽生えたとでも……」

恭子「良心? ないない。あったら先に説明してくれてる。
    しつこく聞いたら教えてくれただけだよ。契約さえ済ませば、後は丸儲けだからね、彼」

ほむら「知っていてなぜあんなヤツに味方するのッ」

恭子「味方じゃない。敵でもない。だから、契約なんだよ。
    インキュベーターは僕らという卵を手に入れて、代わりに僕らは魔法をもらった。
    でも良心的でないのは確かだよね。訂正も撤回も受けつけないくせに、説明不足が過ぎる」
86 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 21:06:20.77 ID:1qT6H13Fo
ほむら「……平気なの? それとも本当はまだ理解していないの?
     アイツは、ひとの大事なものを根こそぎ奪っていくのよ……ひどいヤツなの……
     うああ……やっぱり敵よ……ヤツのやってる事を知って平気でいられるなんてッ」

恭子「じゃあ砕いていいよ。後でさやかが君に突っかかって騒ぐだろうけど、それは容赦してね」

ほむら「嫌……嫌よ……美樹さやかは怖い、いえ怖くなんかないわ、キライよ、頭が悪いのよ……。
     あの人、私を敵みたいに見るの。私を疑って、絶対に信じてくれやしないっ……
     ……なのに巴さんまで、あんなバカな人の味方してっ……」

恭子「きちんと話せば、さやかは言う事を聞くよ。マミさんも聞いてくれる」

ほむら「無理……そんなの無理……」

恭子「できるよ。僕が協力すれば、二人とも君の味方にする事は可能だ。どこまでしてほしいんだい?
    大好きって言ってほしい? 最優先に考えてもらいたい? 命をかけて守ってほしい?」

ほむら「……守って……守る、ま…………いや、いやっ、嫌ッ嫌ッ嫌ーッッ!」

 カチッ

     …タッタッタッタ…

恭子「……あっ」

QB「恭子、……あへぇ!」

恭子「さすがに心臓に悪いなぁ。目の前で姿が消えるのは」

QB「あへ美ほむらは行ってしまったようだね……」

恭子「まさかの『未知の敵』説、大当たり。ずいぶん恨まれてるようだね」

QB「さっきはキミが彼女の攻撃を防いでくれて助かったよ。でも指は抜いてくれ、恭子」
87 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 21:07:54.81 ID:1qT6H13Fo
恭子「キュゥべえはどうてもいいけど、マミさんに当たるのは困るじゃないか。
    あのスペシャルおっぱいが傷つくなんて、見滝原市どころかこの国の損失だよ」

QB「暁美ほむらはマミの頭を狙ったようだけど」

恭子「なんだ、そうか。 しかしほむらさんは手強いキャラだなぁ。
    あれだけ話せば、中澤なんか性癖から自慰の回数まで教えてくれるっていうのに。
    現に前なんか、『レイプしたい』って十回言え、ってねだったら言ってくれたよ」

QB「ねだるって、強請と書くんだよね」

恭子「せっかくソウルジェムを出したんだから、君の尻に入れるとしよう」

QB「暁美ほむらがボクを攻撃してきたらどうするんだい」

恭子「心中しようよ」

QB「残念だけど、この端末とキミが死ぬだけだ」

恭子「君をさやかの尻に入れよう。精神的に死ぬよ。みんなで心中しよう」

QB「そろそろ戻らないと、マミが不安がって魔女になるよ」

恭子「けっこう君もウィットにとんだ会話ができるようになってきたのに……
    もっとおしゃべりに乗り気になってよ。ほむらさんの事とか、気になるだろう?」

QB「キミは暁美ほむらについてマトモに考える気がないじゃないか」

恭子「そうだね。彼女の美しさに目がくらんで、ものを考えられないよ。
    じゃ、戻ってお弁当を食べようか」




ほむら「こわい……こわい……みき……かみじょ……」

*「な、なんでまた泣いてんの、あのヒト……」
*「しっ。危ないよ、関わらないほうがいいって……」
88 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 21:11:51.59 ID:1qT6H13Fo
            ,. r ー--.-.-.、
          ,.,ィ: : :/: ,:/: : : : : :>:ヾ-、
         /:/: : /:/:/: : : : : : r-- 、: :ヽ
         /:/: : : : !: : : : : : : :/:,.!   ヽ: ヽ
       /:/: : : : /: : : : : : :/:ノ  、    ヾ:.ヽ
       /:/: :ーノ: : : : : :,/`ヽ、__,! ヽ,r- 、.:ゝ
     /: : : : : ̄: :rー'´  ---,    ,____  | :l   アイキャッチ休憩。
    -=,少彡_:_: : :|      ´    ヽ、   |:.ミ
     =Kl:/ ,ヽヽ,|           /  |i´
       L{ {_i |  i';、       ____   |l
        ヾ、 ヽ ``     r-´ー‐ヘ  !
          V ̄i        ̄ ̄ ̄  /
         r-|、 ヽ、      ,ノ::::::L,,/
         |//ヽヽ  ` ー<::::::::::::::::::l
       , r//////ヽヽ、   `ヾr-r'''''
89 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 21:21:26.08 ID:1qT6H13Fo
恭子『……エジステンツァ・エレガンテ』

マミ『ど、どうかしら……』

恭子『ステキです、マミさん! エジステンツァ・エレガンテ!
    ぴったりです。マミさんはネーミングの才能がありますよ』

マミ『あ、あんまり連呼しないでちょうだい! 必殺技なんだからっ。
   気に入ってもらえてよかったわ。恭介くんが光を纏って魔女に向かう様に
   自然とインスピレーションがわいてきたんだけなのだけど……』

さやか『いいな、あたしも魔法少女続けてたら、名前つけてもらえたのにな〜』

マミ『ふふ……。でも、私としては美樹さんが羨ましいのよ。
   あんな熱烈に、守ってくれる彼氏がいるんだから……今は彼女だけど』

さやか「あ、あはーっ」

*「美樹ー、どーしたー。そーかそーかそんなにこの問題に答えたいかー」

さやか「あ、あえええっ?」

マミ『あらあら。そろそろ学生の本分に戻らないとね。
   ごめんなさいね、授業中なのに、つい話しかけたくなっちゃって……』

恭子『こちらこそ、はしゃいじゃいました。マミさんとしゃべるの、すごく楽しいから』

マミ『ありがとう。……じゃあね。また』


*「……ミさん、巴マミさん? どうしました?」

マミ「えっ。……あっ、はいっっ?
   あ……っ、その……すみません、聞いていませんでした……」

 …クスクス  …クスクス…
90 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 21:22:14.49 ID:1qT6H13Fo
恭子「ねぇさやか、今日のお弁当、どうだった?」

さやか「最高! あーんなおいしいサンドイッチ、初めてだった!
     コロッケサンド最高、ってコレはお昼にも言ったっけ……
     そうそう、あのホットドッグは最高だった!」

恭子「(語彙少な……っ)
    さやか、ホットドッグをよく食べるって、前に聞かせてくれただろう?
    ほら、前にナイショで、病室に持ち込んでくれた時にさ」

さやか「あー! あれ! モスドナルドの! あれ好きなんだ〜っ。
     でも今となっちゃ、恭介のつくってくれたほうが断然っ……」

*「恭子さーん! サヤサヤもー!」
*「これから帰るの? 一緒、いいですかっ?」

さやか「……うん」

恭子「僕、今日は駅に用があるんだけど。スマートカード買いに」

*「やったー! 私、駅前まで行くトコだったんでっ」

さやか「あ、あたしは、ノート、仁美の、届けなきゃいけないからっ……」

恭子「……一人で行ける?」

さやか「うん。大丈夫……」

*「サヤサヤ、ばいばーい」
*「また明日ねー」
*「ねー上条さん。美樹さ……サヤサヤは、どこ行くって?」

恭子「志筑さんが授業の内容をまとめて、さやかと交代で届けてるんだって。

    ……鹿目さんの家に」
91 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 21:23:58.20 ID:1qT6H13Fo
*「鹿目さん……」
*「……ずっと来てないよね………大丈夫なのかな」

恭子「さやかも、もう何度も行ってるらしいけど……なかなか会えないみたい」

*「解決、してないんだよね。犯人……」
*「あの日、鹿目さんフツーにガッコ来て、フツーに帰ったのに」
*「うち近いんだけどさ、何度か救急車が来たりしたんだよね。最近はそうでもないけど。
  ……弟さん、鹿目さんの目の前でって話だったし……きっとショックで……」

恭子「うん、でも入院はしなくてもよくなったとかで、さやかも諦めないで会いに行ってる。
    時間がかかるのは確実だから、せめて側にいるって伝えたいんだって」

*「サヤサヤ、意外。マジ健気ー……」
*「美樹さん達って、志筑さんの引き立て役っていうか、取り巻なんだなーって思ってたケド」
*「でも体育ん時は元気ってか、いやこれ褒めてない感じ? あ、でも」

恭子「友達想いなんだよね。頭悪い所もあるけど、僕はさやかの、そういうトコ好きなんだ」




さやか「うぉ────あたし頭わっる──────ッ
     肝心のノート、仁美から貰ってねええええええーっ。
     仁美ぃー! 志筑仁美さぁーんっ!」

*「美樹ー、そんな走っと転ぶぞー……あ」

 ズザーッ

さやか「……あうぅ……」

*「(見えた! しかし分厚いはんぺん!)」
*「(女子のパンツにもカースト制度ってあるよな)」
*「サヤサヤ大丈夫? 今すっげー転び方したんだけど!」
中澤「パンツ見えてんぞ美樹」

さやか「仁美! 仁美さん知りませんか!」
92 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 21:26:25.43 ID:1qT6H13Fo
中澤「もう帰ってるんじゃ……。志筑って、部活やってないんだろ」

*「あーちょっと待って」ピッ

さやか「仁美の番号、知ってるの!?」

*「前に教えてもらったんだよね−。かけんの初めてだけど。
  でもけっこ前だし、変わっ、……あ、もしもし……、てなかったみたい」

さやか「仁美、ノートノート! そうそうまどかに!
     うん、取りに行くから待ってて!」

 ダダッ

*「うん、ごめんね志筑さん。じゃ。……ザワ君、上条さんのケータイ」

中澤「オマエんとこ登録しておけよ」

*「ザワ君に掛けてもらえばいいもん」

中澤「……あー、恭子? あのさ、美樹が志筑のコト探してる。で、そっち行った。
    そ、志筑のいる場所、聞かずに走っていった」




*「サヤサヤのドジっこっぷり、ぱねぇ」
*「面白すぎ。まだ見てたい、でも駅の時間あるから行くわ」
*「そーそー、今サヤサヤ来たとこ! うん、解決解決! 今からそっち行くー」
*「恭子さんサヤサヤ、また明日ねー。鹿目さんによろしくねー」

さやか「ごめんなさい……」

恭子「まさかここまでとは」
93 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 21:26:55.45 ID:1qT6H13Fo
恭子「鹿目さんの家の前で待ち合わせって事なんだけど……一人で行ける?」

さやか「大丈夫じゃありません……大問題です……」

恭子「手、つなぐ?」

さやか「えっ、そんな」

恭子「一人で行ける? 手ぇつなぐ?」

さやか「……つ、つながせてください」


〜路地

仁美「さやかさんってば、おっちょこちょいさんなんですから……
    きっと恭子さんと結婚を決めたからって、浮かれてるのでしょう。
    ぷんぷんです、ぷんぷん。……さ、早く、行ってさしあげなくては」

−−−「…………志筑仁美」

仁美「……え?」 クルッ

−−−「あなた、盗られたくないのではないの?」

仁美「どなたです? あら? どこにいらっしゃるのかしら?
    わたくし、人と待ち合わせしておりますので、用件は手短に……」

−−−「見たわ。もらった手紙。メール。ずっと持っているのよね。
     朝に、昼休みに、読み返している。私は見たわ。あなた」

仁美「……そんな……あ、あなたは一体」

−−−「上条恭子の事、盗られたくないのではないの?」
94 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 21:27:39.68 ID:1qT6H13Fo
仁美「どちらですか……」

−−−「私から見ればとうてい友達とは言えない……浅ましい執心。でもいいわ。
     古びた玩具を大切したっていいのよ。自分だけのものにしておきたいわよね」

仁美「どちらなのですか……」

−−−「上条恭子との仲に割り込まれたくないでしょう。美樹さやかの事が憎いでしょう?」

仁美「アナタは『どちら』なのですか」

ほむら「?!」

 ギュイッ

仁美「お待ちくださいっ、姿をお見せください!」

ほむら「(危なかった。志筑仁美の習い事には、古武術も含まれていたのだった。
     健康のためと聞いていたけど、……格闘技は伊達じゃない)」

仁美「どちら……左右どちらにしろ……わたくしの敵でしょう? ならば」

ほむら「(それでも、私の時間停止の前では所詮生身の人間よ……)待ちなさい。
     言う事を(……当たらなければどうということ……)聞きなさい、志筑仁美。
     …………ガッ!?」

 ガッ  ガキンッ
   ゴッ      ガツッ

ほむら「(い、いひゃい。痛い……。蹴った小石が、弾丸のよう……しかも私の位置を?!
      なんなの、この娘! この威力! 身体能力は!)」

仁美「見えぬあなた様に、お願いします……わたくしの敵ならば、お願い致します……。
    どうか潰してくださいまし。わたくしという毒虫を潰してくださいまし!」
95 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 21:28:09.82 ID:1qT6H13Fo
ほむら「は……?」

仁美「こうしてわたくしの元へやってきたなら、すでに委細ご存じの筈。どうかお願い申し上げます。
    こちらは悪党一味ならぬ、悪党一人。あなた様こそが正義です。躊躇される理由は皆無。
    どうか……潰してくださいまし!」

ほむら「???」

仁美「陛下を愛しております。この街に住む皆々様を愛しております……。
    兄様がたを愛し、十二の柱となられる御偉業を成すと信じて尊敬しております」

ほむら「(何を言っているのか……それより鼻血が止まらない……)」

仁美「……ですが世界が憎い。憎んではならぬ世界が憎い」

ほむら「(もしや、またなの? また私の知らないなにかが飛び出してくるの?
     あああああ嫌嫌嫌……なんで、なんで私こんな所にいるんだろう……
     いたい……痛いよ。もうやだ……鼻の骨が折れてるかもしれない……)」

仁美「ええ、筋違い……なにより御国に背く事! ……判っておりますとも!」

ほむら「(……嫌、もう嫌、もう……あれ? 私……何やってたのだっけ……
     あ。血が出てる……止めなきゃ、止血しなきゃ……)」

仁美「────けれどなにより、世界より! 下らぬ理由ッ、こんな、こんなッ、
    美しいなどという下らぬ理由で御役目を免れた、わたくし自身が──ッッ」

 ──憎いッ!

        ガシャァァンッ!!

ほむら「ヒッ……!?」
96 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 21:28:55.26 ID:1qT6H13Fo
仁美「なぜ潰してくれぬのです……ああ、嗚呼、御無礼をお許しください! 御怒りはもっともです!
    どうぞあなた様が潰しやすいように、虫けらはこちらから潰されに参りましょう……。
    わたくしは志筑仁美。死憑きの十三番。──死に盡せよ人民」

ほむら「(来る! か、隠れなきゃ)」
    …ゴウッ
仁美「しにづくせ」

  ガッ      ガシャンッ
ほむら「(ヒィッ、ドラム缶が浮い……潰れ……逃げ……)」

 ガランガランガラン… ゴッ   ガツッ ガツンッ

ほむら「(も、もう隠れられな……!)ヒィィッ! もうやめ……」

 ガツッ ガッ   ガンッ   ガキンッ メキッ…
仁美「しにづくせ。しにづくせ。しにづくせ」 ガシャッ!!

ほむら「や……嫌ああああ、助けてッ、まどかぁ……ッッ」

 …カチッ
       …ゴトンッ ゴロンゴロンゴロ…

仁美「……あら……気配が消えてしまわれた……」

 ……バゴォッ!!

仁美「まるで魔法のような……うふふっ、すてきな敵……すてきな出逢い……
    あら、わたくしの靴がない。勝手にどこへ消し飛んでしまわれたのでしょう。ぷんぷん」


(路地の物陰)
さやか「……友人が素手で鉄パイプをへし折った件」

恭子「人払いの魔法に気づいて来てみれば……なんぞあれ」
97 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 21:31:54.61 ID:1qT6H13Fo
            ,. r ー--.-.-.、
          ,.,ィ: : :/: ,:/: : : : : :>:ヾ-、
         /:/: : /:/:/: : : : : : r-- 、: :ヽ
         /:/: : : : !: : : : : : : :/:,.!   ヽ: ヽ
       /:/: : : : /: : : : : : :/:ノ  、    ヾ:.ヽ
       /:/: :ーノ: : : : : :,/`ヽ、__,! ヽ,r- 、.:ゝ
     /: : : : : ̄: :rー'´  ---,    ,____  | :l   度々休憩。
    -=,少彡_:_: : :|      ´    ヽ、   |:.ミ
     =Kl:/ ,ヽヽ,|           /  |i´
       L{ {_i |  i';、       ____   |l
        ヾ、 ヽ ``     r-´ー‐ヘ  ! <ウチの娘まだ?
          V ̄i        ̄ ̄ ̄  /
         r-|、 ヽ、      ,ノ::::::L,,/
         |//ヽヽ  ` ー<::::::::::::::::::l
       , r//////ヽヽ、   `ヾr-r'''''
98 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/05/14(土) 21:36:27.74 ID:4eqB7uE50
sien
99 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sirige saga]:2011/05/14(土) 21:38:45.04 ID:1qT6H13Fo
支援さんきゅー
よーしパパ頑張って三話全部投げちゃうぞ
100 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 21:39:19.17 ID:1qT6H13Fo
〜魔女の結界〜

マミ「……ティロ・フィナーレ!」

 ドォォォン!! シュルルル…

恭子「さやか、僕の身体に掴まって」 ブワッ

さやか「わ、恭介、まぶしっ……」

恭子「エジステンツァ・エレガンテ!」 ゴオオオ

 ギュアアアアアアアア…!


 ドサッ


さやか「……ひいいい。な、何、……お棺……?」

  …ガリガリガリガリガリガリガリ
   ガリガリガリガリガリガリガリ…

さやか「ひぃああああああ中からぁぁぁ!」

恭子「(生き埋めだろうか……)」

マミ「…………」

恭子「マミさん大丈夫ですか。顔色、悪いみたいですけど」

マミ「大……丈夫」

仁美「大丈夫じゃありませんわ!」
101 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 21:39:58.86 ID:1qT6H13Fo
 (抱きっ)

マミ「ひゃっ」

仁美「わたくしの理性が大丈夫じゃありませんっ!
    おお……美事、美事でございましたわ! 巴様!
    なんて麗しいんでしょう、これが魔法少女……!」

 スチャッ

仁美「ティロ・フィナーレ!」

  ババッ

仁美「ティロ・フィナーレ!」

   ジャキーン

仁美「ティロ・フィナーレ!」

 (間)

 (…抱きっ)

マミ「きゃ。あ、あの、とりあえずグリーフシードを回収して、ここを離れ……」

仁美「あれが災い封じ込めし悪しき実、グリーフシード!」 クルッ

  …ガリガリガリガリガリ…

さやか「ひ、仁美ーっ、近寄って大丈夫ー!?」

仁美「魔女様、紅き薔薇の魔女様。この災厄の種、どうかわたくし達にお譲りくださいませ。
    我ら小さき蕾、これから花開く魔法少女。魔女様の形見に触れる事をお許しくださいませ」

         …ガリッ…
102 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 21:41:18.50 ID:1qT6H13Fo
恭子『力尽きたね』

QB『薔薇園の魔女は死んだよ。最後すごい困ってたよ』

恭子『しかし仁美さんは勇敢だなぁ……化け物じみている程に』

QB『彼女について話すと長くなる。ボクは以前、人間に長期的な報酬を与えた事があるんだ』

恭子『さやかも知りたがっているよ。直接、聞かせようよ』

QB『さやかにわかるように説明すると骨折する。キミが後でしてくれ。

   報酬……願い……恩恵は、一族の繁栄。他より抜きんでた身心の発達。人ならざる力の使役。
   キミの国で今もひっそりと崇められている帝、その始祖なんかは代表的かな。
   もちろん、同じ事を考えた者は多い。それどころか、今この世界に生きている者は報酬そのものだ。
   元を辿れば、皆が皆だよ。契約者同士、恩恵を受けた一族同士で争い、より強い者が生き残った。
   キミ達の歴史はいつもそうだ……話が逸れたね』

恭子『豪族、司祭、大王。権力者は契約者と』

QB『争いが続く内、皆、一律して、己が神だと名乗ったよ。それが愚かだとは言わないがね。
   しかし神(笑)一族も、次第に神(笑)と名乗れなくなる。願いのせめぎ合いは、より激しくなってね。
   血が薄まれば繁栄の報酬も薄まった。ならばと始まる近親相姦は、新たな祈りにより妨げられた。
   恩恵を消滅させあったよ。母が死ぬ願い。父が子を憎む願い。男を弱める願い。女を破滅させる願い。
   いたちごっこ、と言うんだよね。もはや恩恵はないも同然。ならば皆等しく人と名乗ろうという事になる』

恭子『逆に言えば、恩恵の保持ができるなら、神やそれに準ずる者と名乗り続けられる。
    出る杭は打たれるが、打たれて倒れぬ杭なら、残る』

QB『その打たれぬ杭と言えるんだろうね。この国の帝。志筑仁美の一族。
   名乗る称号を変えて、あるいは無くし、生き残ってきた保持者達は、多くいるんだ。

   ……そういう意味では、志筑仁美の一族は不遇だ。
   称号は呪術師とされ、国を終わらせるような呪術の行使が、今も可能なのだとされている。
   監視さえ受けているのさ。……そんなわけ、ないのにね(笑)』

恭子『本当に話が長すぎる』
103 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 21:42:28.27 ID:1qT6H13Fo
QB『しかしまあ、彼女の代には未だ確かに、わずかとはいえ身体能力の補正が残っている。
   キミ達は、希望の可能性があるなら信じる。呪いの可能性は、もっと信じる』

恭子『おまえは人を呪うと言われて育ったら、そりゃ呪うわ……という話?
    それでも魔法少女の才能はないのかい? 面白い位あると思うんだけど』

QB『……彼女は魔法を信じているよ。いや、彼女の中では呪術という事になるが。
   けれど己の意思で、かたくなに魔法を拒んでいる。才能がないより厄介だ。
   彼女と契約するのは、骨折しそうだよ』

恭子『キュゥべえ、もしかして僕「骨折する」にツッコミを求められてる?』


仁美「これがグリーフシード……恐ろしいですわっ。さやかさんにパスッ」

さやか「わおっ。あぶない、トゲがあぶない! 仁美にパスッ」

マミ「こらっ、遊ばないの!」

恭子「(遺恨はお手玉にされ、結界は道中さやかが小用を足した。魔女の無念や、いかほどか)
    マミさん、そのグリーフシード、浄化に使ってください」

マミ「……ダメよ。後輩がそんな気をつかわないで」

恭子「でも僕のソウルジェム、小学一年生並にピッカピカですよ。
    それに、エジエレテは」

マミ「…………」

恭子「エジステンツァ・エレガンテは、あまり魔力を消耗しない感じがします。
    見た目は光ブワァ突撃ドッカンとハデですが、僕自身は手癖で弾いているだけでラクですし、
    あと、たぶん……さやかがそばにいるおかげで」

マミ「……おーぅ、のろけられちゃったわ」
104 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 21:44:02.09 ID:1qT6H13Fo
マミ「仕方ないわね、先に使わせてもらうけど。でも、お願いよ。
   決して、ムリはしないでちょうだい」

恭子「大丈夫です、僕は危なくなったら真っ先に保身を考えるタイプですから」

マミ「正直ね。……本当に保身を考える人は、そんなコト言わないんだから。
   でも私に気をつかって、自分のジェムの濁りを軽視するような事はやめて。
   仲間なんだから……隠し事はしないで」

恭子「…………」

マミ「…………」

恭子「隠し事がいっぱいありすぎて困ります」

マミ「ホント、正直ね」

マミ『──その隠し事、話してもらうわけにいかないかしら』

恭子『わ、目の前にいるのにテレパシーって、なんだか腹話術みたいだ』

マミ『私達にしか聞こえない。キュゥべえが、言いたい事があるならどうかなって勧めてくれたわ。
   あんなお節介な子だったかしら。恭介くん、彼とはけっこう話してるの?』

恭子『さっそく隠し事公開、その一です。こうして集まってる時も、けっこう内緒話していました』

マミ『夜はだいたい、キュゥべえは私のトコにいるものね。
   ……男の子同士の内緒話、おねえさんも混ぜてくれないかな?』

恭子『おねえさんに言われたら断れませんよ。
    隠し事公開その二、僕とキュゥべえは魔法少女と魔女について話します』

QB『いいのかい、恭子』

恭子『説明不足が過ぎるのはやっぱり問題だよ、キュゥべえ。僕からマミさんに説明するよ』
105 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 21:44:29.68 ID:1qT6H13Fo
恭子『その前に、隠し事公開その三。キュゥべえが最近、毛が増量しているのは、僕のせいです』

マミ『そうそう、妙にコートが厚いわよね。ふかふかよ』

QB『恭子があんまり口うるさいからね。でも評判は良いようだ。このまま固定することにしたよ』

恭子『……このように、キュゥべえは自分の外観もテキトーな、信用ならない宇宙畜生です。
    気をつけてマミさん! こいつは可愛さで世界征服を企んでいる!』

QB『世界征服なんて、する意味がないよ。ボクは宇宙を助けるための魔法の使者なのに』

マミ『ふふ、拗ねないでキュゥべえ』 ポフポフ

恭子『ああマミさんが洗脳されている。
    明日の朝、マミさんはふわふわ毛皮の宇宙生物になっているにちがいない。
    冗談はさておき、キュゥべえは隠し事をしています。隠し事公開……カウントいらないね』

QB『恭子』

恭子『僕が説明するってば』

マミ『……うん。続けて』

恭子『ベテラン魔法少女と呼ばれるくらい戦ってきたマミさんを、キュゥべえは見てきました。
    ソウルジェムや魔女について、ひととおりの説明もしてきました』

マミ『でも……まだ説明していない事もあるのよね。だって私、これまでソウルジェムが壊れたらって……
   ううん、ごめんなさい、続けて。わかっていたの、覚悟はできてるわ。大丈夫』

恭子『……本当にそう考えている人は、そんなコト言わない気がするんです』

マミ『……そうね……』

恭子『すみません。続けます。
    言いますよ。覚悟してください──キュゥべえはマミさんを、弱い子だと思っています』
106 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 21:45:14.07 ID:1qT6H13Fo
マミ「………………弱い子」

さやか「へ?」

マミ「な、なんでもないわ。さあ、帰りましょう」


マミ『弱い子。そうね……私、ベテランなんて言われてるけど。ギリギリの戦いも多かったものね。
   キュゥべえは判ってるのよね。そうよ、私のリボンより、……恭介くんのヴァイオリンのほうが』

恭子『あの銃、やっぱりリボンだったんですか』

マミ『ええ、そう。魔法少女に専念しようと思って退部しちゃったけど、私、前は新体操部だったの。
   リボンには……、小さい頃から、憧れててね』

恭子『知っています。マミさんの事、ちょっと調べさせてもらいました。県の大会にも出たって、新聞に』

マミ『私も、知っているわ。私の事聞かれたって、クラスの子が言ってた。あなたけっこう有名人なんだから!
   ……私は大会に出ただけで終わっちゃったけど、あなたは現役の「天才」なんだから……』

恭子『どうしてリボンを銃に?』

マミ『最初はリボンを振り回して、必死に戦っていたわ。
   でも、リボンはキレイで憧れてたけど……キレイなだけじゃ、ダメでしょう』

恭子『強くならなきゃ、ダメでしたか』

マミ『魔法少女となって街を守るためには、強くなくちゃ』

恭子『マミさん、差し出がましい事を言います。言わせてください。
    ソウルジェムの濁りが早まっているんじゃないですか──銃を使うようになってから』

マミ『わたし、……弱い子だから』
107 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 21:46:35.95 ID:1qT6H13Fo
恭子『マミさん……』

マミ『ソウルジェムが目に見えるほど濁るのは、すごく怖い……。でも、負けるのはもっと怖いの。
   私が魔女に負けて、この街が食べられちゃったらって思うと……
   ……あはっ。
   美樹さんとあなたっていう仲間ができて、せっかく先輩面できると思ったんだ。
   なのに隠し事があるって言われて、弱いって言われて、こんなに動揺しちゃってるんだ。
   私ってばダメな子。私ってば……本当に弱い子』

恭子『キュゥべえ、そんな事ないって言いなよ』

QB『キミが弱い子って言いだしたんじゃないか』

マミ『いいの。やせ我慢のしたり顔なんて、すぐバレちゃうものなんだよね。
   だからキュゥべえに弱い子って言われても、当然なんだよね。
   だから、だから……きちんと話してもらえない事も、あるんだよね……』

恭子『キュゥべえ、君ちょっと土下座しなよ! したって寝てるようにしか見えないけど!』

QB『ならやる意味はないよね……まったく、さっきからキミは本当に息をするように』

恭子『マミさん、たしかにキュゥべえは隠し事をしました。
    でもマミさんが戦えなくなるかもと思って、心配して、秘密にしていたんです』

マミ『……されたほうは……つらいわ』

恭子『もっと、おしゃべりしましょう。男同士のナイショだとか、うんこ食べろですよ。
    全部きちんと話す事にします。だから、だからマミさんも、もっと話しましょうよ!
    こうして戦ってきたとか、ああして勝ったんだとか、あれはつらかったとか……
    僕はマミさんにしゃべりますから、マミさんも僕にしゃべってください』

マミ『…………』

恭子『こんなに頑張ってきたんだぞ、って自慢話だってしてください!
    ごはんの話でもいいですし、紅茶の話もしましょう! 僕はマミさんの事、知りたいんです!』
108 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 21:47:09.35 ID:1qT6H13Fo
マミ「……恭介くん」

恭子「さやか、志筑さんを連れて先に帰っていてくれないか」

さやか「え?」

恭子「間違えた。さやか、志筑さんに連れられて先に帰ってくれないか。
    君が先導すると危険が危ない」

さやか「そこ訂正!?」

仁美「これは! 魔法少女会議という事ですわね!」

恭子「ああ、うん。名付けてもらって助かるよ」

さやか「元・魔法少女は? ダメ!? えー……」


マミ「…………行っちゃった?」

恭子「はい」

マミ「恭介くん、私、紅茶にはちょっとうるさいのよ」

恭子「うるさいくらいに教えてください」

マミ「なんでかな……泣いちゃってる、私。
   キュゥべえに隠し事されてるなんて、ホントは、気づいてたんだよ?
   気づいて、これまでやってけたのに……なんでかなぁ……」

恭子「キュゥべえが謝罪の意を込めて、尻の穴をつついてくださいと言っています。
    準備は万端まんぐりかえってます、どうぞ」

マミ「やだ、なにそれ。ふふふ、そんなのこっちが困っちゃうじゃない」

QB「わけがわからなふ、ひ、へ。結局つつくのかマミ、ほぉうっ」
109 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 21:47:54.15 ID:1qT6H13Fo
〜物陰
仁美「さやかさん、のぞき見というのは……」

さやか「だってだって、なんか気になるんだもん。恭介の奴、なんかさ……
     何しゃべってんだろ……。あっ、マミさん泣いて、あ、手を、あーっ」

仁美「おしずかにっ」


マミ「本当に……わたしとおしゃべりしてくれる?」

恭子「いいですとも」

マミ「私、本当はすごく嫌な女かもしれないのよ?」

恭子「そんな人はそんなコト言わないのは本当か、はともかく、マミさんが嫌な女なんて事はないですよ」

マミ「私、本当は、あなたの事ちょっと怖いのよ。女の子の格好してるけど、やっぱりちがう気がして……
   魔法で変わったなんていっても、男の子だった中身は変わってないんだろうって思うと……」

恭子「マミさん、クラスの男子に胸とか見られるんでしょう」

マミ「ええ、うん……すごく嫌。でも男子だけじゃないかな、女子の視線だって……すごい」

恭子「正直に言えば、マミさんのスタイルを凝視しない人間はいない。
    人間を人間たらしめる線引きとなる、それほどのボディラインなんです」

マミ「やだ、嬉しくない。……でも、正直に言ってくれる所はマシ、というか、信頼してみたいと思うの。
   美樹さんは色々褒めてくれるけど、……ウソくさくて……、ごめんね。美樹さんの悪口なんて」

恭子「さやかは実は自分が褒めてもらいたい子なんで、仕方ありません」

マミ「あら、私もよ。褒めてもらいたい子なの」

恭子「マミさんのバストは天下一品です」

マミ「それは嫌」
110 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 21:48:36.12 ID:1qT6H13Fo
恭子「マミさんの笑顔はステキです」

マミ「うん……ちょっと、グッと来たかも。
   ありがとう。もう隠し事とか、どーでもいいかなって気がしてきた」

恭子「でもきちんと話す約束ですから。そうだ、アドレス交換しましょうよ」

マミ「……ど、どうやるんだったかしら」

恭子「えっと、こう。で、ここです」

マミ「わっ、私、……あんまりこういうコトしたことないけど……っ。
   友達いないわけじゃないのよ! ただ、そう、ちょっと機械オンチでっ……」

恭子「マミさん、かわいいなぁ!」


さやか「」

仁美「さやかさん、口、開いてましてよ」


恭子「朝いっしょに登校しましょう。お昼はいっしょにお弁当食べて、他でもいっぱいお話しましょう!」

マミ「でもでもっ、クラスの子に勘違いされたら恥ずかしいし!」

恭子「ダメですかー?!」

マミ「んー、いいかなっ!」


さやか「」

仁美「さ、さやかさん……?」
111 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 21:49:07.62 ID:1qT6H13Fo
マミ「あ、ねぇ。さっきの。私の事、そんなに調べまわったんだ?」

恭子「騒がれない程度に……のつもりだったんですが。本人の耳に入っちゃってるとは」

マミ「なんで、そんなに頑張ったの?」

恭子「マミさんがさやかの敵にまわる可能性も、あったからです。
    新参潰しは怖いし、特にベテランのマミさんの能力は大きな脅威。絶対に味方にしたくて」

マミ「あ……そう。そうなんだよね。……そうなのよね。
   本当、あなたって正直ね。ウソでも、私の事が知りたかったとか、言うものじゃない?」

恭子「でも、さやかのために知りたかったというのが実の所ですし」

マミ「……もうっ、知らない!」

恭子「え? 僕はマミさんの事知りますから、マミさんも僕の事知ってくださいよ」

マミ「知らないっ。恭介くんたら、最後はぜーんぶさやかさやかさやかさやさや!
   自分がさっきまでどういう事を言っていたのか、理解していないんだから!
   美樹さんマニア! 美樹さんフェチ! 美樹さん大好きっ子クラブ!

   見滝原のみなさーん!
   上条恭介くん改め上条恭子ちゃんは、美樹さやかさんが好きすぎまーす!」

恭子「あ、いま魔法で拡声器つくるんで、もう一回お願いします」

マミ「……恭介くんて、ほんと……バカ」


さやか「……」プシュー

仁美「あちっ、熱っ」
112 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 21:49:46.93 ID:1qT6H13Fo
〜翌日。学校。三年生のフロア

仁美「巴様ーッ! お昼ですよーっ!」

マミ「」

*「ああ。あの子、二年の……え? 巴さんって、知り合いなんだ?」
*「今、様付けだったんだけど……」

仁美「ああよかった、先客はないようですわね!
    わたくし志筑仁美、代表して巴様をお迎えにあがりました!
    さ、参りましょう! 今日はもっとキュゥべえさんについてお話しましょう!
    わたくし、いまいちあの方のお話が耳に入らず、困っているのです。
    きっと才能が足りないのですわ。親友であられる巴様が羨ましいっ」

マミ「ちょ、志筑さん、だったわよね」

仁美「はい、巴様! 気軽に仁美とお呼びください!」

マミ「(昨日も、魔女の領域だというのになんてテンションかと思ったけど……恐ろしい子)
   あ、あのね。まず、巴様ってのはやめて、志筑さん」

仁美「巴おねーさま! 水臭いですわ、仁美とお呼びくださいまし!」

マミ「(……ダメだこいつ早くなんとかしないと)頼むから静かに。あとオネエサマもちょっと誤解を招くから」

仁美「まぁ、つい浮かれてしまいました……。わたくし、友達付き合いというのが不得手で……
    あまり、経験がないのです……すみません巴様、あ、いえ。えーっと……」

マミ「(……はぁ。今の自分を見るようで、昔の自分を見るようで……って浸っている場合じゃないわ)
   もう仁美さんったら、いいのよ、そんなにかしこまらなくて。とりあえず、行きましょうか」

仁美「はい! マミちゃん!」




*「スゲェ。巴さんがギャグマンガみたいなコケ方した……」
113 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 21:51:14.47 ID:1qT6H13Fo
ここまで第三話『あんな世の中やっていけそうにないクズな空気纏ってんのは魔法少女くらいしかいないよ』

ありがとうございました。
次回、第四話『まみぱんち!』
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/14(土) 21:58:26.78 ID:NE9oEIiU0

115 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/05/14(土) 21:58:47.33 ID:4eqB7uE50
乙乙乙乙
116 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 21:59:55.11 ID:1qT6H13Fo
最初に言っておく!(……おこうと思ったけど忘れていた)

※※※この作品にはカップリング描写があります※※※

恭さや 恭マミ 恭ほむ 恭QB 中澤×恭介
杏さや 恭杏 マミ杏 マミ×仁美 杏子×仁美
中澤×早乙女先生 さやまど ほむまど …他


新体操部のマミさん……ステキと思わんかね?
117 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/05/14(土) 22:04:18.52 ID:4eqB7uE50
おっぱいが邪魔になるだろうとは思う
マミさんはおっぱいについて語られるのイヤだとか思ってるみたいだけどそれしか魅力がないんだから仕方ないじゃない!
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) :2011/05/14(土) 22:10:44.34 ID:L3M5AEiw0
ゲルトさんはジェムを失くしてそのまま葬式コースか・・・願い希望絶望でも自己修復の現場見て発狂してたし、大概エグい絶望してるよな・・・
死尽とはまた物凄い暗喩だな・・・
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) :2011/05/14(土) 22:13:46.80 ID:L3M5AEiw0
死憑だった。
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/14(土) 22:19:48.17 ID:iGwy5xw1o



まどっちまだまだ?


>>117
金髪縦ロールは世界の宝、だよ
121 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/14(土) 22:23:25.77 ID:1qT6H13Fo
>>117マミさんの魅力がおっぱいだけなんてそんな事!
垂れ目とか、ツインドリルとか、タイツは黒じゃなくてココアブラウンという乙女センスとか、靴がダサイとか!



志筑さんは死に尽くせ死に尽くせ言ってるので大体あってる
そしてゲルトさんは謀略により生き埋めとかだったら悲惨だなと思った

ほむまどの前にマミあんですスミマセンティヒヒ
122 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sirige saga]:2011/05/15(日) 20:16:23.14 ID:t4dxBEcio
サザエでございまァす

カップリング描写があるような気がして>116に注意書きをしたが
そんなでもない気がしてきたんだぜ

じゃんけん、ぽん うふふふ
123 :BENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/15(日) 20:18:56.42 ID:t4dxBEcio
第四話『まみぱんち!』
自分が最高に萌えるマミさん、そしてマミあん

前回の直後のシーンから。
124 :VIPにかわりましてBENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/15(日) 20:20:14.99 ID:t4dxBEcio
〜屋上

マミ「わ〜ん恭介く〜ん! 仁美さんがいじめるの〜っ」

仁美「な、なぜですのマミちゃんーっ!」


??「ずいぶんふぬけたツラになったじゃねーか」


マミ「…………」

杏子「つれねーなァ、巴マミ。さんざんドンパチやった仲だってのに。
    この佐倉杏子を忘れたってのかい?」

マミ「…………」 スッスッスッ

仁美「美事! 美事なムーンウォーク!」

杏子「テメどこ行く気だコラァッ」

恭子「マミさん、お知り合いですか。この人いきなり出てきて」

マミ「佐倉杏子。魔法少女よ。……私も会うのは久しぶりだわ。
   以前、彼女はここ見滝原にいたのだけれど、交渉して、隣町に移ってもらったの」

杏子「……、カッハッハッハ! まーだお嬢様ごっこやってんのォ?
    アンタのそーいうお上品ぶって『交渉』とか言っちゃうトコ、アハッ、笑っちまう程……大キライだね!
    やったのは殺し合い! 縄張り争い! アタシはアンタに噛みついて、アンタはアタシを追い出した。
    そうでしょーが……口先だけ取り繕ってんじゃねーよ!」

マミ「佐倉さん、前も言ったけど、女の子がそんな口の利き方……はしたないわよッ」
125 :BENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/15(日) 20:21:12.80 ID:t4dxBEcio
うむ どうでもいい所でミスった
126 :BENPERがお送りします [sirige saga]:2011/05/15(日) 20:22:22.95 ID:t4dxBEcio
 パシ パシッ バシィッ

杏子「アンタ、パターン変わってねーなァ……とりあえず縛る、って、そればっか。
    同じ手が通用すると思ってんなよー、っていうか」

 グ…ンッ

マミ「そんなっ、速いっ……きゃあっ」 ドサッ

杏子「アンタが遅い」

恭子「マミさん!」

マミ「きっ、来ちゃダメ! この子は私がっ」

杏子「っていうか、アンタ、弱くなってる。スゲー弱くなってる」

 …グイッ

杏子「前さ、こーしてアタシが倒れた所に、アンタは躊躇せず腹に銃ぶっぱなしてくれたよな。
    覚えてっかなー。アンタ、自分の顔、覚えてる?」

マミ「……」

杏子「アンタさぁ、笑ってたよね。アタシ見下して、アンタ笑ってたんだよね。
    そんで言ったよね、……『正義は勝ァつ!』」

さやか「えっ……」

マミ「…………」

杏子「なァ、正義の味方って。まだ名乗ってんのかよ。まだ、戦う相手を悪の手先って断言してるか?
    アタシに言った、ヤったみたいにさ、ヒトの腹に銃口えぐりこませて、正義は勝つのよって。
    ……さすがにヤってねェよなー? イタすぎんもんな、マジイタイもんな、オイ!
    あ、ごめんねェ? カワイイ後輩達の前では、清純なオネエサンぶってたかったよねェッ!」

マミ「……うっ……ぅう……」

杏子「あー泣くのかよ。やっぱアタシ心底アンタの事キライだわ」
127 :BENPERがお送りします [sirige saga]:2011/05/15(日) 20:23:13.21 ID:t4dxBEcio
杏子「オマエ、友達いねーんだろ」

杏子「返事しろよ。なァ、いつも一人で帰ってんだろ。家には誰も来ねーだろ。
    平日も休みも誰も来ねー。メシも一人で食ってたもんなー」

杏子「……アタシさー、アンタの事、先輩って慕ってたコトあったじゃん?
    巴先輩って呼べって、アンタ誇らしげでさー」

杏子「でも意見が食い違っちまったら、アンタはアタシをあっさり悪者にした。
    決めつけて、話も聞かないで、アタシを撃って、アタシを捨てた」

杏子「あん時、思ったよ。あーこいつ一生ひとりぼっちだ、って。
    自分が正義だって思ってる奴は、絶対トモダチつくれないって」

杏子「アンタの語る立派なポエム、なんの価値もないって気づいちゃったよ。
    賞賛しか受け取れない、いつだって自分棚上げ、目下の者をつくって縋る。
    褒めて褒めて、私を見て、けど悪く言わないで、私を愛して甘やかして」

杏子「アンタ残して死んだんだっけ、親。だからこんなイタイ子に。あーあカワイソ」

杏子「ひとりぼっちだよなー、オマエ。でもごっこ遊びって一人でもできんだなー」

杏子「お嬢様ごっこ、正義の味方ごっこ、頼れる先輩ごっこ」

杏子「なァ、いつまでごっこ遊びやんの? 死にたくならない?」

杏子「なんで泣いてんだよ。正義の味方が泣いていーのかよ。
    親の代わりに生き残ったんだから、最後まで正しく生きるって言ったじゃん。
    真実の愛と勇気の物語、自分でその主役になるとか立派なコト言ってたじゃん」

杏子「……それとももう、正義の味方もやめるか?
    悲劇のヒロインごっこで……終わらせちまうか?」

杏子「なら、終われよ。友達いないまま、ひとりぼっちのごっこ遊びで死ね」
128 :BENPERがお送りします [sirige saga]:2011/05/15(日) 20:24:45.95 ID:t4dxBEcio
さやか「うわあああああああああああああああああああ!」

 ブンッ

杏子「ゲッ、なんだテメェ……」

さやか「マミさんをイジメるなぁ!」

杏子「やめろってバカ! 消火器ふりまわすんじゃねーよ!」

  ブンッ ブンッ!!

さやか「マミさんは、マミさんは悪くない!
     ……マミさんは、あたしを助けにきてくれた! 夜中に家まで送ってくれた!
     いっしょにケーキ食べて、魔法の呪文を考えた、メアドだって交換したんだ!
     相談に乗ってくれて、それで、結界の中でも守ってくれて、そんで……」

 ガッ!!

杏子「イテッ……こいつっ」 バシッ

さやか「あうっ……マミさんはなぁっ!」 ズガッ

杏子「ギャッ……平手より消火器のがダメージ大きすぎんだろ、やめろって!」

マミ「美樹さん、やめて! 手を出さないで! これは私達の……」

さやか「うるさい!」

マミ「はぅ」

さやか「なんでよっ! なんで、マミさんに死ねとか言えるのっっ」

杏子「キライだからに決まってんでしょーがっっ」
129 :BENPERがお送りします [sage 間違えた saga]:2011/05/15(日) 20:26:34.13 ID:t4dxBEcio
さやか「あんただって、マミさんとケーキ食べたり魔法の練習したりしたでしょ!
     そん時は、あんたもマミさんのコト好きだったでしょッ!
     今キライだからって、全部捨てちゃうの? 好きだったのに、ゴミみたいに扱うのっ?」

杏子「あー、キライなヤツ増えたわ……オマエ、バカだろ。つーか何?
    おいマミ、アンタ、コイツと何? 魔法少女じゃないコイツは、アンタの何?」

マミ「…………」

杏子「なんだっけ。あのヒーローが『愛と勇気だけが友達』なのは……、
    他はみんな『保護対象』で、とても友達じゃないって……アンタの御高説。
    それなら、このバカ女はさ、マミ。アンタの友達じゃァないね」

さやか「……ちがう」

杏子「だから、マミもアンタの友達じゃない」

さやか「ちがう!」 ブンッ

杏子「消火器やめろっつってんだろバカ!」

さやか「バカはあんただ! たとえ今っ、今は友達じゃなくても、あたしとマミさんには約束がある!
     今度、また、家にお邪魔するって……ケーキ食べようって、買い物しようって言ったんだ。
     おいしい紅茶の事も、勉強も教えてあげるって言ってくれたんだ。
     一緒にお弁当食べて、また明日ねって言うんだ!
     明日、明日、もっと仲良くなるんだから……これから先、友達になるんだがらっ!!」

杏子「…………」

さやか「笑われたっていい……絶対なんだから……あたしは今、そう決めたんだから。
     たとえバカにされて、邪魔されたって、今のマミさん自身が拒否したって……
     あたしはマミさんが好きだ! マミさんは未来のあたしの友達だ!」
130 :BENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/15(日) 20:27:50.66 ID:t4dxBEcio
杏子「……わかってねーな。わかってねーよ。
    巴マミとアンタが未来の友達なら……アタシは未来のアンタを写す鏡だ。
    未来の先の未来で……巴マミはアンタを捨てる。でなきゃ、アンタがマミを」

さやか「そんな事ないっ」

杏子「まぁ、アンタから捨てるって線は薄いかもな……。
    でもな、そんな事あるんだよ。この女は、使い捨てにするんだよ。
    正義だから悪くない。ごっこだから痛くない。ポエムだから言った事の責任も取らない。

    ……もォいいよ、その辺は平行線だ……

    でも、アンタには一つだけ言っておく。やっぱりわかってないよ。
    まがりなりにも殺し合って、だのにこうして再会すれば、……何て言った? マミは何て言った?
    腹に穴開けられて、アタシは死ぬ思いで逃げた。それこそ向こうの町まで這いつくばってった。
    ゴミに埋もれて身を潜めなきゃいけない程に、アタシは痛めつけられていた。それで……何て?」

 『交渉して、隣町に移ってもらったの』

杏子「……なんで、そんなすぐバレる嘘つくんだよ……」

さやか「……それは……」

杏子「なんっにもわかってない。全然、わかってない。絶対にわかってない。
    アンタ、わかったような口きーてくれたけどさァ、アンタがアタシだったらって、どうなんだ?
    こっちはゴミみたいに扱われたのに、それでもまだ好きとか、これから先、って?
    それこそアンタ、アンタが大事に想う、そこの上条恭子に、ポイっと捨てられたらよ……」

さやか「! そ、それは……それはっ……」

杏子「アンタはまだマミの事わかっちゃいねーから、未来の友達とか言えるさ……
    でも、現在のはどうなんだよ。これから、もっと、明日、仲良くなるってのか?
    未来永劫、友達ってか? 魔法少女じゃないアンタと、魔法少女やってるソイツと」
131 :BENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/15(日) 20:28:50.32 ID:t4dxBEcio
杏子「魔法少女は、魔女の持つグリーフシードがないとやってけねーのは知ってるだろ。
    グリーフシードは、ヒトの魂をいくつも喰らった魔女の腹で出来んだよ。
    で、孕んでいようと孕んでいまいと魔女はヒトは襲い、それを倒すには等しく魔力がいる。
    これがアタシとマミのケンカの理由……わかんだろ?」

さやか「え……待って、もしかして……」

杏子「一番、もちろんグリーフシードを入手したいので、魔女が孕むのを待ちましょう。
    二番、たくさん魔女を狩って狩って、足りなければ譲ってもらいに行きましょう。
    ……アタシが一で、マミが二だ。今もな。だけど、まだ選択肢はあるんだ。
    三番、持っている仲間からグリーフシードを盗みましょう。
    ……実際に襲われた時は、驚いたけどよ。じゃァ、この状態で、どうする?」

 どれを選ぶ?
 魔女に人間を食わせる鬼畜になる。
 消耗して殺される阿呆になる。
 仲間を殺す外道になる。

杏子「アンタの大切な奴はどれを選ぶ? どれ選んでもアンタはそれを応援するんだな?
    友達だもんな? もっともっと仲良くなれるんだもんな? 未来永劫、だもんな?
    アンタ優しいなァ! たとえ強盗でも、自殺志願者でも、人殺しでも、友達ィー!
    大切なヤツが死んでも、自分が巻き込まれて殺されるかもしれなくてもォ!」

さやか「そんな……そんな事言われたって……」

杏子「……できるわけねェよなァッッッ!
    ほら見ろチクショウ! だから、わかってねェって言ったろうが! すぐバレる嘘つくんだよ!
    マミと同じだ、矛盾してんだ! 他人の事なんざ考えられないクセに、優しいフリするから!
    だから薄っぺらい事しか言えねェんだよ! アンタ、もう生きてる価値ねェよ!」

さやか「う……うう……!」

マミ「美樹さん……ごめんなさい、私のせいで……」

杏子「この期に及んで……巴マミ、まだアンタは……。わかったよ。もういい。もう。
    もうアンタらに付き合ってられない。二人でさ、永遠に友達ごっこしてろよ」
132 :BENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/15(日) 20:33:03.08 ID:t4dxBEcio
どうも手もとがおぼつかないので休憩
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/15(日) 20:38:21.71 ID:eQBs13vno


最近デレモード杏子ちゃんばっかだったからここらで初心に帰るのも良いな
134 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/05/15(日) 20:44:56.28 ID:KhurqT5e0
私怨
135 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/05/15(日) 20:52:32.43 ID:KhurqT5e0
状況がいまいちよく・・・
マミさんが便所飯しようとしてたとこに死憑が登場、
ラブラブコメコメしながら屋上に行ったら、
すでに屋上で飯を食おうとしてた上条とさやさや、あとなんらかの理由で来ていたあんこと鉢合わせした
っていう感じ?
136 :BENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/15(日) 21:31:17.43 ID:t4dxBEcio
>153 そこだよイゴサーン
「この人いきなり出てきて」とGみたいなで扱いで済ましたけど、マミあん優先しすぎてなんだこれ

↓おおよそこんな?

恭子「お昼休みはウキウキウォッチン、魔法少女を知る者よ来たれ! 屋上へ。(前回ランチ>>77)。
    とりま志筑さん、マミさん連れてきて(マミ×仁美……イケる!)」
仁美「光栄ですわ! 時速80kmで行きますわ!」
さやか「(その間、恭介と二人きりだぁ……///)」

杏子「統計によるとマミと後輩どもは屋上で飯を食うはず。待ってよう。しかしおなかへった。イライラする」
137 :BENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/15(日) 21:33:13.03 ID:t4dxBEcio
…素で間違えすぎである
ごめんね>>135イサゴーン

とりまー再開
138 :BENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/15(日) 21:34:00.85 ID:t4dxBEcio
 …ビュンッ

杏子「?!」

仁美「……死突(シヅキ)!」
         ──ギュイッッ
杏子「ガハッ……!?」

 両の手による突き。そのまま転がり込むように屈む。
 相手の死角から伸びる足刀、地を斬る蹴り上げ──

仁美「転(コロ)死月!」
           ドォッッッ
杏子「グアッ!」

 バッ …ズザッ

杏子「テッ、テメー……」

仁美「……余命三ヶ月ほどのケガになりますわ。じっとしてらして」

杏子「全治三ヶ月って言いたいんだろーが、あいにく……ってか、シャレになんねーよ!
    あたしが魔法少女じゃなかったら、突かれ浮かされ永久コンボ入りそうだったぞ!」

仁美「わたくし、堪忍袋の緒が切れかかっております。
    あなた様はいささか性悪論に偏り、さやかさんとマミちゃんをイジメすぎです」

杏子「何者だテメェ、なんだ今のは! 尋常じゃない威力だったじゃねェか!」

仁美「…………」

杏子「……なんだよ」

仁美「きゃあああ、魔法少女の方とおケンカなんてっ! 恐ろしいですわっ」

杏子「カマトトぶんな! おケンカってなんだよ!」
139 :BENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/15(日) 21:35:42.57 ID:t4dxBEcio
恭子「こんにちは、北アルプスの美味しい空気、上条恭子です。
    主成分は空気です」

QB「たすけて……」

杏子「……。……オマエはなにしてんだ……」

恭子「君達があんまり殺気立つからさ、濡れ場を演出しようかと」

杏子「ソイツ押し倒すとかねーよ、ってか、ねーよ、殺気と濡れ場の関係性」

QB「や、やめてくれ恭子……ボクには宇宙という大切なっ」 チタパタ

杏子「何オマエもエロイ空気を発しようとしてんだよ。ホントに最近おかしいぞ。
    これ濡れ場って言わねー。認めねー。つか、すけこ、乳しまえ」

恭子「せっかくブラのホックまで外した所だというのに……、スケコ?」

杏子「元はキョースケってんだろ? おんなじキョーコじゃ、混乱するじゃんか」

恭子「ああ、なるほど、すけこ。……それで、何か用?」

杏子「用て」

マミ「……恭介くん」

さやか「……恭介……ちょっと、何言ってんのさ……」

恭子「なにこの、空気に空気読めと無理難題言うみたいな空気」

仁美「きょうすけこさん……」

恭子「……志筑さん、その呼び方はちょっと」
140 :BENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/15(日) 21:37:10.65 ID:t4dxBEcio
杏子「オイ。アタシと、マミやそこのバカ女と、馬鹿力女のやりとり聞いてたか?」

恭子「聞いていたよ?」

杏子「……アッハッハ! アハッ、アハッ! おォい、マァミィ、なんだよコレェ〜?
    どーいう事だよォ? アンタ、先輩のピンチに眉一つ動かさないよーな後輩つくったのかよォ?
    それともブラフ? アンタお得意の作戦かい、マミ?」 グッ

マミ「……あぐっ!……」

恭子「…………」

杏子「へェ、まだ動かないかい? そろそろコイツ、ヘコむよ? 穴開くよ? それとも切ってみよーか?
    巴センパァイ、教えてくださいよォ。どこまでアンタ痛めつけたら、アイツは動くようになってんです?
    それとも、アイツは本当にアンタを見捨てたかなァ? アタシがアンタの鬼っぷりを披露したから?
    あらあらマミしゃん、新しい後輩ちゃんにも嫌われてちまいましたかァ〜?」

マミ「……うっ……うっ」

杏子「かわいらしく泣いてくれるじゃねーか。でも嘘くさい。言ってる事が薄いなら、涙もくさくてキッタネェ!」

さやか「やめてよ! そんなん言いがかりじゃん……!」

杏子「オマエもうるさいなァ。その喉、切るぞ。アア……そんで同じように泣くのかよ。めんどくせェな。
    なんでだよ。他人のケンカに首突っ込むなら、覚悟くらいしとけ」

さやか「た、他人なんかじゃ……っ」

マミ「やめて、もうやめて杏子! 憎いのは私なんでしょう!? 美樹さんには手を出さないで!」

杏子「アンタ好きっていうコイツも憎いわ」

マミ「やめて! 恭介くん、美樹さんが……美樹さんを助けてあげて!」

恭子「……この子は私が。手を出さないで。マミさん、そう言ったじゃないですか」
141 :BENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/15(日) 21:38:51.55 ID:t4dxBEcio
マミ「なぜなの! 美樹さんは魔法少女じゃない生身の人間なのよ! どうして平然としてられるのッ」

恭子「さやかがいつ、助けてくれって言いました? さやか、僕に助けてほしいか?」

さやか「え、そりゃ……」

恭子「君を庇い、どうすればいいんだい。佐倉さんを泣くまで殴って、もう二度と刃向かわぬよう脅かす?
    簀巻きにして川に流して、引き上げて燃やして、わらで包んで納豆菌を付けるぞって言ってやる?
    自分が間違っていた、さやかとマミさんが正しい、死ぬまで土中でミミズと生きるから許してください。
    そんな事を言わせればいいのかな?」

さやか「……いや、そこまでは」

杏子「言わねーし、させねーよ! ってか早く服着ろって! 乳しまえ!」

恭子「マミさんはどうですか。佐倉さんを倒せ、後輩なんだから私を助けろって、言うならしますよ?」

マミ「……あなた、ずるいわ」

恭子「マミさんも佐倉さんも魔法少女。それぞれ武器を持ち、それぞれ理由を持ちます。
    方針が食い違い、道を違え、互いに味方を失い、佐倉さんはケガも負いました。
    そして今もこうして反発し合う。それは二人の問題でした。

    先手を打ったにも関わらず倒されたマミさんを、佐倉さんは強くなじった。
    そこでさやかは、マミさんとのまだ見ぬ友情と消火器を武器とし、佐倉さんに挑んだ。
    マミさんは制止を求めましたが、さやかは異を唱え、止まらなかった。殴りました。
    襲われた佐倉さんは、さやかを平手と理屈で黙らせ、言いました。

    『もうアンタらに付き合ってられない。二人でさ、永遠に友達ごっこしてろよ……』

    志筑さんは戦線離脱したので置いておきます……つまり、三人の問題です。
    またケンカを再開するというなら、それは三人の問題です。

    僕にどう干渉しろと言うんだよ。リア充的にはこんなケンカ、付き合ってられない。
    キュゥべえとエロイ事してた方がマシです」
142 :BENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/15(日) 21:39:52.34 ID:t4dxBEcio
 ……ポスン

さやか「恭介、ブラ落ちたよ」

恭子「あらやだ」

マミ「きゃっ」

仁美「きゃっ」

杏子「女の胸見て、なんで女が目ェふさぐんだよ」

恭子「装着しながらで失礼しますが……。
   まず佐倉さん、付き合ってられないと言いながら、まだ二人と付き合いますか」

杏子「……そう返されるとなァ」

恭子「マミさんグリーフシードに関してはカツカツですし、奪える物はありません。
   これ以上は魔力の無駄遣いも避けたいでしょう」

杏子「だけどよ……」

恭子「でも撃たれたお腹の痛みは消えませんよね?」

杏子「いやそこで何ふっかけてんだよ。ケンカさせたいのか、させたくないのか!」

恭子「物言いがハキハキしてて、佐倉さんみたいなタイプ、すごく好きだなぁ」

杏子「」

さやか「」

杏子「……こっちこそ本命の作戦か、マミ? アタシにやる気なくさせる……」

マミ「……ちがうわ」
143 :BENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/15(日) 21:41:43.93 ID:t4dxBEcio
恭子「じゃ、こういう方向から。志筑さん、佐倉さんにはまだ怒ってますか」

仁美「えっ、わたくし!? えーっと、あの時は怒髪天を衝いてしまいましたが……
    突いたお腹の感触がとてもよろしかったので、……もう怒りは」

杏子「いやいやいやいや! ねーよねーよねーよ!」

仁美「えっ? えっ? あ、じゃあもう一回……激闘(ヤ)りましょうか?」

杏子「物騒な当て字の使い方すんな!」

仁美「ご、ごめんなさい! あ、大丈夫でしたか! お腹、古傷に響いたんじゃありません!?」

杏子「いや、傷はもう……あー、もういいよ。魔法少女じゃねーヤツにマジんならない。
    アンタが怒ってないなら、アタシも怒ってない。それで手打ち」

恭子「よっしゃ言質とった! ならさやかの事も、まとめて手打ちですよね!」

さやか「えっ、あ、そうなの?」

杏子「あァ!? あんだそりゃァ! ナシ、今のナシな!」

仁美「え、じゃあ、あなたもわたくしも、まだ怒ってるという事に……?」

杏子「めんどくさ! オマエラめんどくさ! わかったよ、もうわかったから混ぜ返すなっ!
    えーとオマエ、ひとみ? あと、オマエッ、さやかっ? 不問に付す!」

さやか「ちょっと、なにそれ! なんか上から目線、それに気安く呼ばないでよ!」

仁美「よろしくてよ、佐倉杏子さん」

さやか「ちょ……仁美ぃ!」

恭子「やーよかったよかった。じゃ、次さやかね」
144 :BENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/15(日) 21:42:36.80 ID:t4dxBEcio
さやか「へっ? あたし、あたしは別に……あ、消火器……」

恭子「あれはまずかったよー」

QB「まずかったよー、さやか。
   守りの魔法を纏ってなかったら、杏子の首は胴にめりこんでいた。
   目鼻口は顔の中央に寄ってしまっていたかもしれない」

さやか「あ……あたし、ついカッとなっちゃって……」

杏子「……首が胴に……恐ろしいですわっ怖いですわーっ」

さやか「むかつく」

恭子「さやか、マミさんとはこの先、友達になるという事だったね。
    佐倉さんとは、この先はないかい?」

さやか「……でも」

仁美「さやかさん」

さやか「でもっ、こいつの考え方、あたしは納得できない! 理解できない!」

恭子「マミさんとは友達になる、佐倉さんとは嫌。それが君の決めた事ならそれでいいよ。
    じゃあ、僕との先は……どうしたい?」

さやか「どうって……、そ、それは、あたしが決める事なの……?」

恭子「佐倉さんの言ったとおり、僕は君を捨てるかもしれない」

さやか「そんな」

恭子「仲間からグリーフシードを奪うような奴がいるなら、そいつは相手の弱点を真っ先に突いてくる。
    僕からグリーフシードを奪おうと思ったら、さやか、きっと君が狙われるだろう。
    君を守ろうと思ったら、君を手離さなければいけないかもしれない」
145 :BENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/15(日) 21:43:23.12 ID:t4dxBEcio
さやか「やだよ、そんなの……」

恭子「だから、君が決めてくれ。今そばにいて、離れたとして、その先。現在の先の、未来の先」

さやか「……決めたって。……決めたら、どうなるっていうの?」

恭子「マミさんと未来で友達になるんだろう? 僕とは、未来で別れるかもしれない。
    ──でも、未来の先でまた、逢えたら」

さやか「わかんない。やだ、考えたくないよ……恭介と離れるなんて、そんなの……」

恭子「…………」

さやか「……嫌だ……嫌だ……」

恭子「なら、いいか」

さやか「!」

恭子「佐倉さん、さやかはああ言ったけど、僕は君と親しくなりたいと望むよ。
    未来永劫とは言わないけど、今は、君に好意を感じている」

さやか「(……くれないの? 恭介、何も言ってくれないの……? やだよ、あたし……)」

恭子「やろうよ、友達。食べ歩きとかしよう」

さやか「(そいつの方がいいの……? 魔法少女のほうがいいの? マミさんみたいに胸が大きいほうが?
     仁美みたいに上品で、学級委員で、特別な家系だったらよかった? あたし、あたしじゃ、……)」

杏子「……魅力的なお誘いだけど、よ」

 …ジャキッ

杏子「断るわ、アンタの先が読めた」
146 :BENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/15(日) 21:45:11.21 ID:t4dxBEcio
恭子「乗ってくれないか……」

杏子「うやむやで友達百人できるかなプランには、乗れないね。
    キュゥべえが言ったな。守りの魔法を纏ってなかったら、首は胴にめりこんでいた。
    そうだ、『アンタがかけた守りの魔法』がなかったら、アタシはもう大怪我してた。
    そこの馬鹿力の一撃にゃ、逃げ帰るハメになってたろうな」

恭子「あちゃー」

仁美「まぁ……魔法少女ですのに?」

杏子「いつでもどこでも無敵ってワケにゃ、いかねーんだ。
    言われたとおり、マミがグリーフシード貯めこんでるわけないだろォからさ、
    消耗を最低限、そんでアタシが勝つには、スピードしかないんだよ。
    ……ま。アタシは昔から、守備なんか固めちゃいねーけど」

マミ「あなた、まだそんな戦い方……!」

杏子「だぁってろ! 捨てたゴミがどう扱われようが、今更ケチつけんな!」

恭子「佐倉さんは頭が良い。自分の能力を、よく考えているんだね」

さやか「(やめてよ……恭介、そいつを褒めないでよ……)」

杏子「そんな甘い事言っても、乗らねーぞ」

恭子「そこを何とか。君のように強い魔法少女と友達になりたいんだよ
    先々の事を話ながら、市内食べ歩きツアーしよう。僕のおごりでいいから」

杏子「友達の押し売りはお断りッ」

恭子「いやいや、お試し期間もございますのでっ」

さやか「(あたし何もできないのに……わかっててそんなイジワル言うんだね……)」
147 :BENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/15(日) 21:46:02.23 ID:t4dxBEcio
杏子「いーやーでーすーゥー!」

恭子「いーけーずぅー!」

杏子「デカイ図体でバタバタすんな、うっとおしい!」

恭子「好きでデカくなったんじゃなーい! 女子になる予定なかったー!」

杏子「ハンッ、昔アタシに、好きで胸がデカイんじゃないって言った奴がいたがなァ!
    ソイツはそう言いながら胸揺らしてた! アタシを嘲笑ってたんだよ!」

恭子「…………」

杏子「こ、このヤロッ、エロイ目で胸見んな! 肩に手ェ乗せんな! バカにすんなーっ」

さやか「(ひどいよ恭介。やっぱりそいつのが好きなの? マミさんを傷つけた奴なのに。ひどいよ……)」

恭子「なんか僕達、すっごく仲良くなれそうな気がするよ? 一緒にランチタイムと洒落込もうよ」

杏子「だーかーら、乗らないっつってんだろ。ったく。
    アンタはそうやって丸め込もうとしてるけどさ、肝心な事うやむらにしようとしてんじゃねェ。
    仲良くなれっこねェ根本。マミがアタシにやった事、アタシはどう呑み込めってんだよ」

恭子「お茶はたっぷりあるのに」

杏子「呑み込めねー。水にも茶にも流せねー。……それともあれか?」 …ギュッ

さやか「!!」

杏子「アンタがマミを蹴って、アタシを選ぶ気があるなら、……考えてやってもいいな。
    ちょいと理屈っぽいが、そこのバカどもより話が通じそーだし……仲良くやれっかな?
    いいよ、組んでやっても。食べ歩きでイチャイチャしようぜ。そしたらマミは、どーでもいいや」

恭子「上目遣いっていいね」
148 :BENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/15(日) 21:49:11.13 ID:t4dxBEcio
さやか「恭介! コイツの言う事に耳を貸しちゃ……」

恭子「さやか、これ当事者同士の問題だから」

さやか「恭……介」

マミ「み、美樹さん……。
   ……杏子! いいかげんにして! 私を恨んで、憎んで来たんじゃないのっ?
   なら、もう目的は果たしたでしょっ? この子達は関係ないじゃない……!」

杏子「関係ある」

マミ「……杏子……?」

杏子「アンタに追い出されたアタシが、この辺の魔法少女になんて罵られたかわかる?
    『泥棒』『恩知らず』……アタシはアンタを背後から襲って、グリーフシードを盗んだ事になってた。
    そもそもアンタに近付いた事自体、寝首かこうとした、漁夫の利狙いって言われたりもした。
    アタシと組むなんて絶対イヤって……そういや、あいつら最近見ないな……アハハッ、ざまァ!」

マミ「そ、そんな事、私に言われたって……」

恭子「幻滅しました。マミさん、佐倉さんの気持ち、本当にわからないんですか?」

マミ「恭介くん……あなた本当に……」

恭子「まさか後輩だから先輩に異を唱えるなって、言いませんよね。奉仕隷属強制ですか?
    僕らは奴隷で、マミさんは奴隷の主人でしたか? そういう関係がお望みだった?」

マミ「なんで……なんで……うっ、うぇ、うあぁああぁ」

杏子「アッハ、ほら関係大アリだ。おもちゃとられて泣いちゃったねーマミチャン先輩。
    あーあー、カア〜イソウでちゅねェ〜。──そうやってひとりぼっちで泣いてろ。
    そんな嘘くさく泣いたって、あたしは……」

さやか「(恭介……マミさんを捨てちゃうの? あたしも捨てちゃうの?)」
149 :BENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/15(日) 21:50:21.59 ID:t4dxBEcio
マミ「……なんでよぉ。……どうしろって……、どうしろっていうの私に……
   わかんない、わかんないよぉ……どうすれば……」

恭子「泣き顔もすてきだなぁ」

QB「マミが人前でこんなに取り乱すなんて、初めてだよ」

マミ「いやだぁ、やだよぉ、ひとりぼっちはもうやだぁ……どうしてよ、はなれないでよぉ。
   ……わからないのよ…………教えてよぉ……」

恭子「その言葉が聞きたかった!」 スイ

杏子「えっ」

マミ「……ぴゃあぁっ?」

 ヒョイッ

恭子「教えます、マミさん。ああその前に鼻かみましょうか。鼻水もすごく可愛いですけど」

マミ「やだぁ、あなたなんてきらい。おろして、おろしてぇ」 ジタバタポカポカ

恭子「イジワルしてすみません、マミさん。でも僕、言質とらないと動けないんですよ。
    小心者で、臆病なもので。すみません、幻滅なんて誰もしてませんよ。
    ああ、でも危なかった。志筑さんにいつ殴られるかと」

仁美「……そんな、ひとを沸騰しやすいみたいに」

恭子「(本当は、マミさんのソウルジェムがいつ臨界点超えるかと、だけど)」

マミ「いじわる! うそつきっ! ばかっ! はなれてよっ! あんなにやさしくしてくれたのに!
   おとこのこにあんなにやさしくされたの、はじめてだったのにぃ!」

さやか「…………」

さやか「(恭介なんて……んじゃえ)」
150 :BENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/15(日) 21:51:12.19 ID:t4dxBEcio
マミ「うぅ……、もう、信じないんだから、あなたみたいなイジワルな人……
   隠し事しないでって言ったじゃない……本当に、本当に私、こわかったんだから!
   あなたの事、信じてたのに……っ。も、謝ったって許してあげないんだから……」

恭子「それそれ、佐倉さんもその気持ちです」

マミ「…………」

杏子「…………」

マミ「まみぱんち!」

恭子「ぎゃあ! 最強の必殺技!」

マミ「ひどいじゃない……あんまりよ。ひどすぎるわよ恭介くんっ
   私をなんだと思ってるの! 弱い子は弱い子でも、頭弱い子みたいに扱ってっ」

恭子「ま、瞼ひっぱるのはナシでッ」

さやか「(……んじゃえ。……なんて……んじゃえ)」

杏子「……やめとけよ、もう。本当にちがうんだろーな? ……作戦でも、演技でもない」

マミ「杏子……」

杏子「ソイツは嘘っつったが、アタシはアンタに幻滅したよ、マミ。
    鬼強くて、正義の味方、絶対的に強かったアンタは、もうどこにもいない。
    ……いや、最初からいなかったとか、オマエは言いたいんだろ。すけこ。
    チクショウ。オマエの粘り勝ちだ。オマエはハエ取り草みたいな奴だ」

恭子「前に出たら扱いがひどすぎる。空気に戻りたい」

マミ「杏子、……ごめんなさい」
151 :BENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/15(日) 21:53:08.49 ID:t4dxBEcio
杏子「やめろよ。アタシはアンタとおしゃべりしに来たんじゃねェ」

マミ「あなたが人にうまく言いたい事を伝えられないって……わかっていたのに。
   私、あなたを助けてあげるって、そればっかりで。ごめんなさい」

杏子「やめろってば」

マミ「でも私きっと、本当に助けてあげようなんて思ってなかったんだ。
   私は、私が助かるのに精一杯だった……。
   ひどい事、言ったよね?」

 ──正義は勝つのよ。そう信じたいの──

マミ「それこそ嘘。私が、正義に助けてほしかったから……。
   正義の側にいれば、きっと助けにきてもらえると思ったから……。
   蜘蛛の糸に共にすがるあなたを蹴落として、私が正義ですって叫んでただけ」

杏子「アタシは、……」

恭子「おしゃべりしに来たんですよね、佐倉さん」

マミ「バカみたいだよね……。必死だよ、私。あなたがここに来て、またやっちゃった。
   黙って、弱いふりして、みんなに助けてもらおうとしたの。……なのに……
   心の中では、もう一度、あなたともやりなおせたらって、そんな事、思ってた。
   ……ズルイよね。ダメだよね。嫌な女だよね! 正義なんかどこにもなかった!」

杏子「……、いいよ」

マミ「あなたに銃を向けたくせに、動けるまで回復させてやったんだからとかっ、
   許したとか逃がしてあげたとか、それだけで、なかった事にできるって思おうとした!」

杏子「いいよ。アタシだって本当は、アンタが治してくれた事くらい知ってた。
    アタシだって、アンタと同じだった。だからなんだ。
    だから……、一緒にいれば、ひとりぼっちじゃない気になれた」
152 :BENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/15(日) 21:54:15.65 ID:t4dxBEcio
マミ「ひどい事、言った、ひどい事もした、私……、こんな私でも、いいかな?
   正義の味方でも立派な先輩でもない、弱い巴マミでも、許してくれる……?」

杏子「アタシが許す事なんかない」

マミ「わたし、ひとりぼっちじゃなくなっても……いいの?」

杏子「アタシが決める事じゃ……ない」

恭子「マミさん、どうしたいですか。話してください。僕達、仲間でしょう?」

マミ「私……わた、私ね、みんなとお昼、おべんとっ、わたしっ……うあぁん……
   魔法、少女みんなで、仲良く、れば、ひと……ぼっちじゃないって、私っ……」


さやか「(……でも……あたしはひとりぼっちだよ、マミさん)」

さやか「(やだなぁ)」

さやか「(……んじゃえ)」

さやか「(あたし、やっぱりダメなんだなぁ)」


恭子「当事者同士で解決、おめでとう。みんな友達エンドのフラグがたった」

杏子「ああ、それなんだけど……悪ィな、やっぱり乗れない」

マミ「……杏子?」

杏子「そこの二人とは手打ち。マミ、あんたとはもうケンカする意味がねェ」

マミ「杏子……ダメよ、杏子。せっかく……」

杏子「せっかく。アタシもそう思うよ。せっかく、うやむやだった。うやむやでも良かったとさえ思う。
    でも……ダメだ。こいつをうやむやにする事は、できない。
    アンタを信用できない。言ったろ、アンタの先が読めた。すけこ。オマエだ」
153 :BENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/15(日) 21:55:30.78 ID:t4dxBEcio
恭子「南アルプスの美味しい空気なのに」

杏子「方角変わってんじゃねーか。でも、そうなんだよな。
    正反対だろうと、オマエにとっちゃ同じ。アタシが良い人そうで、マミが悪ぶってても。
    きっとオマエは同じ事にしたんだろう。同じ結果に持ち込んだだろう?」

恭子「どちらにしろ戦闘を続けるようなら、僕は止めたかもしれません。
    佐倉さんが一般人に本気で攻撃したりするようなら、乱入したでしょう。
    たまたまみんな、善良な人で、こういう運びになっただけで……」

杏子「魔法少女にならなくたって、戦えねー口もまわらねーなんて奴は、遅かれ早かれ死ぬ。
    悪い事じゃない。アンタみたいに口八丁手八丁やろうってのも、悪くない事だろう。
    アタシの本能はアンタと組めって言う。でも……アタシの理性は、アンタを拒否してる」

恭子「逆じゃなくて?」

杏子「これが逆じゃねーんだ」

恭子「しゃべりすぎが出しゃばりすぎに通じるのは否めませんが……信頼を得られない程に?」

杏子「愛と勇気だけが友達ってのは、こういう事かと思ったね」

恭子「中身が粒あんのハエ取り草ってやだな」

杏子「たまたまなんてこたァ、ないだろうよ。マミの周囲には、善良な奴しか集まらねー。
    自画自賛みたいになるが、こうなっちゃアタシだって立派にお人好しの分類でしょーよ。
    もっと言えば、善良な女しか、魔法少女にはならねェじゃん。
    願い一つぽっちの代わりに魔女退治してくれろ、なんて頼みに頷くのは、善良なバカだけ。
    で、善良ってのは、バカしかいない」

恭子「悪い人が頭も悪いって事、あると思うけれど」

杏子「ちなみにアタシとマミの見解では、愛と勇気だけが友達の例の奴は、悪よりタチが悪い」

恭子「彼、それでも頑張ってるんですよ!」
154 :BENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/15(日) 21:56:15.83 ID:t4dxBEcio
杏子「そう。頑張ってるから認めてやれってアタシのバカな本能は言う。
    アンタが頑張って、うやむや友情エンドに持っていくの、見過ごせと思っちまってる」

恭子「……それでも理性が拒むんですか」

杏子「アタシがさっき言った三択、魔女孕ます乞食するぶんどる、アンタならどれを取る?
    ……アタシの理性はこう言ってる。アンタなら全部選ぶって」

マミ「それじゃ、三択にならないじゃない」

杏子「そもそも三択じゃねェんだよ。三つも選択肢もある奴ばかりじゃない。
    魔女が倒せなけりゃ、一も二もない……アタシは三を選ぶ奴を許す気はねーけどな。
    どうだ、すけこ。アンタの考えはどうだ」

恭子「基本的に二をうまくやれば、三の選択は消えます。なるべく仲間を増やしますね。
    魔女退治は有利になるし、グリーフシードの融通も効くようになる。
    できればこの時、それを管理する立場でいたいですね。
    で、どうしても足りなければ一も三も行います。できる限りダメージのないように。
    新参狩りをするかもしれません……仲間なら油断してくれるでしょうから、そっちも」

マミ「……恭介くん、怖いわ」

恭子「すみません。でも、どうしたって順位はあります。僕は自分と大切なものを優先したい」

杏子「アンタは正直だ。善良なくらいに正直だ。でも、それくらいであって、それそのものじゃない。
    アタシの理性はやっぱり納得しない。どうにも、どうしても、アンタを信じるなって言ってる。
    コイツは見た目ほどイイ奴じゃない、騙してる、信じるな、痛い目にあうぞ、って」

恭子「否定できません。証明するものがない」

マミ「信じたいってだけじゃ……ダメなのね?」

杏子「アタシ自身、アタシの警戒してるもんを、言い表せない。
    だから……信じさせてくれ。アタシは昔から、口がまわらないからさ」
155 :BENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/15(日) 21:57:43.41 ID:t4dxBEcio
恭子「……ケンカを」

杏子「これしか、ねェんだ。
    悪ィな、って思ってるよ。マミにも、他の奴にも、アタシはこうやってきた。
    どォしても、言葉じゃ伝えらんなくなっちまった。自分でも、迷惑だと思ってる。
    だからさ、オイ、さやかだっけ。あんな風に言い切ったオマエが羨ましいよ。
    未来で友達、カッコイイじゃん」

さやか「…………」

杏子「シカトか。そりゃな、呆れるよな」

恭子「佐倉さん、僕はあなたとケンカしたくない。互いに魔力の無駄遣いです。
    それならいっそ、ここで僕が去るほうがいい。あなたはせっかくマミさんと」

杏子「却下だ。マミは、オマエがいなくなったら泣く。絶対」

マミ「……二人とも……」

恭子「ダメです。こんな事で無駄遣いさせられません。戦うって大ゴトなんです。
    キュゥべえはまず黙っている事ですが、言わせてもらいます……。
    ソウルジェムはそもそも……魔法少女の本体。壊れたら、命を失います」

杏子「ヘェ……マミ、知ってたか」

マミ「……実際に口にされると、キツイわね……」

仁美「マミちゃん。心中お察しします、せめて仁美がおそばに……」

マミ「ありがとう……ちゃん付けされると、私が後輩みたいね」

杏子「すけこよォ。やっぱりダメだ、それが嘘じゃないって思うのに、なんかダメだ。
    ここでそれを言えば、アタシが躊躇すると思っただろ?
    そのズルさ、いや、強さっていうのかな……もしかしたら、アタシは嫉妬してんのかもな。
    ……そう口がまわれば、もっともっと人に嫌われず生きたヤツもいたろうにな、って」
156 :BENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/15(日) 21:58:34.76 ID:t4dxBEcio
杏子「さ、そろそろおしゃべりもやめようぜ。口下手にしゃべらせすぎだよ。
    ケンカしよーぜ、上条恭子」

恭子「……こんなんじゃ、口が巧いなんて言えないよ。もう、僕も口がまわらない。
    結局あなたに言い負かされたと言えるんじゃないでしょうか。なんて無様だ。
    仕方ない。悔しい。けど仕方ない。……ケンカしましょう、佐倉杏子さん」

杏子「いいねェ。そういうツラされると、イロっぽくてドキドキすんじゃねェか。
    ──アタシの理性か、本能か……確かめさせてくれ」

恭子「やるからには容赦しませんよ」

杏子「そうだ、来い。信じさせろ」


さやか「(なんでだろ)」

さやか「(……んじゃえ)」

さやか「(なんで、見てくれないんだろ。あたし、ここにいるよ?)」

さやか「(……んじゃえ、……なんて)」

さやか「(あれ? なにやってるのかな……でも、どうでもいいや)」

さやか「(あたしの事、見てくれないんだから、いっその事、そんな)」


恭子「我紡ぐは霊智の弦、霊験なる天上の奏! 『君が望む楽園(セイヴ・ザ・イマジン)』! いきます!」

杏子「カッコイイよ、おネエさんッ! 『聖秘竜棍槍(サクラメント・ドラグーン)』! ……参るぜェッ!」

マミ「杏子、まだその名前……使ってくれてるんだ……」


さやか「(恭介なんて死んじゃえ)」
157 :BENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/15(日) 21:59:15.94 ID:t4dxBEcio
さやか「(……なんて。……え?)」




           …ドチャッ



杏子「な……っ?」

マミ「え?」

仁美「……あぁっ……」

QB「……恭子」


さやか「(え? なあに、あれ……恭介の)」

さやか「(わぁ、恭介の。……きれいな)」

さやか「(……左腕……)」


さやか「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ」

マミ「み、美樹さんっ」

さやか「嫌ッ、いやぁああああぁ! いやだ! いやだァッ恭介ぇぇッ!
     ごめんなさい! ごめんなさいッ……ごめんなさい……神様……
     許してください……あたしが今……!」

 ダッ… グイ

杏子「オ、オイ! 何してんだオマエ! 離せ、刺さんぞ!」
158 :BENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/15(日) 22:00:01.17 ID:t4dxBEcio
さやか「刺して!」

杏子「死ぬぞ!」

さやか「死ねないの! そうしなきゃいけないのに、いつだってあたしは死なせてもらえない!」

杏子「なんだよソレ! 魔法少女じゃねーんだろ、なら、なんだ死ねないって! ゾンビか!」

さやか「死ねなかったの……どうしても死ねない……あたしはまだ苦しまなきゃダメなんだって、神様が言うんだ」

杏子「……言わねェよ。そんな事、言うかよ」

さやか「おねがいだから、やってよ……何の縁もないあたしだけど、助けると思って……刺してよ……。
     裂いて。穿って。刻んで。挽いて、潰して。焼いてもいいから。あたしを滅茶苦茶にして。そうじゃないと」

杏子「神様は、言わない!」

 バシッ …ドサッ

杏子「神なんてヤツは何も言わねェ! 言うもんか! 苦しもうが楽になろうが、そんなんどこまでもオマエの勝手だ!」

さやか「あああ……やっぱりダメなんだ……あたしは……もう今度こそ許されないんだ……
     あたしは間違いを犯してしまったんだから……。今更。あたしなんて、……死んじゃえ。
     死んじゃえ、死んじゃえ、死んじゃえ、死んじゃえ、……死なせて……」


恭子「その言葉が聞きたかった」


杏子「えっ」

恭子「佐倉さん、ケンカはまだ終わってないですよ! プラチナヴァイオリン・キックスロー!」 スコーン

杏子「ゲハッ! ……何蹴ってんだよ! 何ヴァイオリン蹴り飛ばしてんだよ! 『ボールは友達』か!
    て、てめェら揃いも揃ってなァ、人に当てていい物と悪い物があるって知んねーのか!
    ってかやっていい事と悪い事があるだろーが、すけこッ! てめェ、その腕……!」
159 :BENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/15(日) 22:01:43.69 ID:t4dxBEcio
 バサッ

恭子「格好いいだろう? サモトラケのニケーみたいで」

さやか「あ……あ…………」

恭子「さやか、相変わらずキミは一人ノアの大洪水だね」

さやか「……うあ……うあ」

さやか「(天使……やっぱり恭介は私の天使でいてくれる……。
      ……救済……慈悲……こんな私でも、まだ天使が見える……)」

杏子「……さもとらけなんざ知らねー。アタシにはアヒルか何かにしか見えん。
    オマエは今日から、すけこ☆ダックだ」

恭子「粒あんの入ったハエ取り草がアヒルに昇進した! うれしい!」

杏子「……もう片方の腕はどーした。一石二鳥なんて器用な事、アタシはやってないぞ」

恭子「自分で」

杏子「正気か。それとも、それがテメェの覚悟なんて言いたいのか」

恭子「一つの証明です。僕こそ器用なマネなんてできない。
    口先も通じないなら、もう搦め手しか……できない。頑張って、これだけです。
    ズルしかできないのは、ズルイどころじゃない。弱いだけです」

杏子「なんで、やんなかった。アタシの注意がそこの足手まといに行ってるうちに」

恭子「さやかを巻き込む可能性があった。さやかが死んだら困る」

さやか「……きょうすけ……」

杏子「甘ェ。ダセェ。弱ェ。弱ェくせに……頑張るだけで、ここまでするのか」
160 :BENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/15(日) 22:02:41.35 ID:t4dxBEcio
仁美「マミちゃん、見てくださいまし! 膝をついた杏子さんを!」

マミ「なんですって!?」

仁美「あ、あれは……ゲーッ、すけこさんの腕ではないか〜っ!
    あ、杏子さんの地についた左膝に絡みながら、右足首をガッチリ掴んでいるぞーっ」

杏子「文字通りの搦め手。これが本当の足手まといってか? ……動けねェ。
    やりやがったな……アタシの注意がアンタの羽に行ってるうちに」

恭子「これが僕の、精一杯」

杏子「自分のカラダを魔法で操る事に、なんの躊躇もないのな……ズルイわ、やっぱ」

恭子「僕は自分と大切なものを優先したいんです。だから、杏子さんの信頼を得たい。
    やっぱり友達になりたいんです。……守るためにも」

杏子「タチ悪ィよ」

恭子「ありがとうございます。ケンカ、終わらせましょう」

仁美「ああ……杏子さんの膝に、すけこさんは足を掛け、そして!」

恭子「シャイニングウィザード!」



──アタシの本能は、アンタと仲良くやりたがっている。でもな、アタシの理性は拒む。
   アンタがもし敵に回れば……アタシはマミや、マミの大事にしてるヤツらを守れないからだ。
   認めたくないが……、きっとアタシにゃ、手のまわらないトコが多すぎる。

──アタシは、アイツらを守れるアタシになりたいんだ。

──僕に守られるんじゃ、ダメですか?

──やっぱりオマエ、最ッ高にタチ悪ィわ……
161 :BENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/15(日) 22:04:20.46 ID:t4dxBEcio
恭子『こういう時』

恭子『こういう時ってさ、「計画通り」って言いたくなるよね』

恭子『でも、とてもじゃないけど計画的なんていえないよ。まったくの無計画。
    場当たり的にも程がある。そう、ちょうどうまくいく材料が揃っていたから』

恭子『材料が揃ってくれるから、うまくやれるんだ』

恭子『佐倉さんといっぱいしゃべって、仲良くなれたね。マミさんは佐倉さんと仲直りもできたね。
    志筑さんも楽しんでくれたようだし、さやかは僕から、よりいっそう、離れられなくなった』

QB『でらげっしゃっしゃ』

恭子『祝福の笑みをありがとう。あんなにうまくいったのは、キミがボクを信頼してくれたおかげだよ』

QB『別に……キミのためなんかじゃないんだけど』

恭子『わ、なにそれ。キュゥべえ、なにか萌えるよソレは』

QB『キミがさんざん、皆のいない所で僕を不自然だ、口下手だ、アナルだと罵るからね。
   より自然な、キミらの言うウィットのとんだ、とんちのきいた、オモロー、そういうしゃべり。
   それを追求する事にしたんだよ。
   キミらの感情を理解する事はできないが、観察すれば把握する事は可能だろう』

恭子『息を吐くように嘘をつくと罵ったくせに、僕の言う事を気にとめておいてくれたんだ……
    感動のあまり、腕の付け根が痛いよ。いや、これは肩こりだ』

QB『マミと杏子のソウルジェムをより輝かせる、そうボクに言った言葉は嘘じゃなかったね』

恭子『正確には「より堕とすために掲げるように、より濁らせるために輝かせる」だね。
    さぁ、明日からもまた、場当たりで無計画な一日を楽しく過ごそう』




恭子『その場その場を、きちんとこなす。それがリア充ってものじゃない?』
162 :BENPERがお送りします [sage saga]:2011/05/15(日) 22:05:48.65 ID:t4dxBEcio
すけこ☆マギカ 第四話 了

次回『絶望大好きっ子クラブ』
ルンバが! 裸族が! そしてまどかとほむらが……!
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/15(日) 22:07:34.40 ID:eQBs13vno
乙っち乙まど!
すけこジェムの設定色忘れちゃったけど俺の中では黒真珠みたいなどこまでも深く輝く漆黒だよ!



そして次回登場は我らが主人公!
164 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/05/15(日) 22:09:00.50 ID:KhurqT5e0
乙乙
カタワリア充って素敵やん?
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2011/05/15(日) 22:19:06.23 ID:j4pM4mT60
いかれ乙!
すけこのジェムは濁るどころか錆びるかも朽ちるかも怪しいプラチナ製だぜ!
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/16(月) 13:16:02.66 ID:s4DMdAkKo
いいねえいいねえ
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/05/16(月) 21:35:36.13 ID:gWR+OZri0
特徴的でおもしろいな
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2011/05/16(月) 21:42:03.48 ID:1fJDq/SZ0
そろそろかな?
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 12:53:51.53 ID:UEQCWjqIO
乙っちまどまど
170 :BENPERが [sirige saga]:2011/05/17(火) 21:20:10.76 ID:hw0caXuao

出掛けたら車のフロントに三角耳の白い獣が!

そんなこんなで今日は来たぞすけこ☆マギカ第五話!
171 :BENPERが [sage saga]:2011/05/17(火) 21:21:00.14 ID:hw0caXuao
恭子「ごめん、今のはただのセクハラ」
エリィ「このセクシャルハラスメント野郎。セックスの豚。牛とセックスしてなさいよ」

ひとみんこVSさやんこ屋上大決戦
とても黒かったさやんこは最近青みがかっている
(草食系のおかげ)
172 :BENPERが [sage saga]:2011/05/17(火) 21:23:07.88 ID:hw0caXuao
あああああああ!
さっそくのミスであう
今書いてる所なので気にしばいでほしい
173 :改めて すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/17(火) 21:26:55.20 ID:hw0caXuao
 ♪ペポーピポー
   ペー ペー ペー…
 ポアアア───ン キュッ ポア──

恭子「ルンバの起動音を文字に起こすのは無理がある。……やぁ」

杏子「」

恭子「おはよう。さやかはもう出かけちゃったよ」

杏子「……何、被ってんだ」

恭子「スクリームの仮面だよ」

杏子「な、なんでやねん」

恭子「君を驚かせたかったからだよ。あ、朝食だけど、パンにオムレツでいいかな。
    ウチ流だと飴色タマネギとキノコを混ぜ込むんだけど、タマネギ大丈夫?
    今日はハムとチーズもあるよ」

杏子「アタシは食べ物の好き嫌いないけどよ……なんだ。すけこ、何かあっちで騒いでるぞ」

 ポアアアー ゴツ ゴッ、ポアー…

恭子「お掃除ロボットというヤツだよ。自分で進路を決めるし、つまずきやすい場所では慎重だ。
    さすが人類の叡智の結晶だ、まさかさやかより人生の渡り方に秀でているなんてね。
    それより、よく寝れた? あ、オムレツに納豆入れる事もできるよ!」

杏子「オイ」

恭子「なに? そうだ、飲み物はオレンジジュース? コーヒー?
    牛乳はないんだ、僕、あんまり動物性脂肪を摂らないから。草食系だから」

杏子「どうした、その縦ロールの髪は」
174 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/17(火) 21:27:53.07 ID:hw0caXuao
恭子「ヘアアイロンって使ってみたくて。今日は学校に行かないから、試してみたんだ。
    けっこう面白いよ、自分が目新しくて。佐倉さんもしてみない?」

杏子「オイ」

恭子「ん?」

杏子「杏子でいい」

恭子「了解、杏子さん」

杏子「……おはよ」

恭子「おはよう!」


 すけこ☆マギカ 〜第五話『絶望大好きっ子クラブ』〜


杏子「オメ、んま、料理すんのウメーな。オムレツんま」

恭子「おかわりもできるよ。パンはそこにある限りだけどね。でもご飯も解凍すればあるよ。
    お昼はパスタでいい? 全粒粉パスタだけど。うどんもあるよ。全粒粉」

杏子「あー、すけこの好きにしてくれたらいーよ。つーかオシャレキッチンしてんなオイ。
    つーか……学校、いいのかよ」

恭子「僕は勉強と運動と友人達とのコミュニケーションと、学校を体調不良と冠婚葬祭以外で休むのが好きなんだよ。
    部屋の片付けもしたかったしね。そうそう、ルンバは頭がいいけど、時々ものを噛んだりするから」

杏子「か、噛むのか!?」

恭子「あんまりモノを散らかしたまま、床掃除を頼んだりすればさ、そりゃ誰だって怒るよね。
    根本的な整理整頓は、部屋の主がしなきゃいけない事。それは道理だ」

杏子「ロボットも粗末に扱うもんじゃねーな」
175 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/17(火) 21:29:18.84 ID:hw0caXuao
恭子「コーヒー、いる? 杏子さんは砂糖入れるほう? あと牛乳ないけど豆乳ならあるよ」

杏子「入れる入れる。コーヒーは甘くなきゃな。豆乳はくさくてきらい。おっ、天気いいぞ。洗濯でもするか?」

恭子「室内干しのほうが、虫とかつかなくていいよ。あと豆乳はくさくない。でも晴れてるのはいいね。カーテン開けよう」

杏子「オマエさ、朝は茶と果物だけなんて、ダイエット中か?」

恭子「減量は目的じゃないけど、健康維持はしたいかな。というかフルーツ大好きだから。草食系だから」

杏子「朝はガッツリ行くもんだ」

恭子「そのスタイルを否定はしないけど」

杏子「…………。なァ、さっきからそこで唸ってんのは何?」

 ゴトゴトゴトゴト

恭子「ホームベーカリーだよ」

杏子「えっ、マジ!? パン作れんだろ! 中見たい!」

恭子「仕事中だから、そーっとね」

 ゴトゴトゴトゴト

杏子「そ〜……っと」

 ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン

杏子「わっ! 中、スゲェ勢いで回ってんぞ! 餅が!」

恭子「パン生地です。朝から騒がしくてごめんね。昼前には焼き上がるよ」

杏子「マジかーっ、食べたい食べたい食べたい!
    スゲーッ、超スゲーッ。焼きたてのパンが食べれるとか夢の国か!
    オマエん家、来てよかったァ!」
176 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/17(火) 21:30:39.66 ID:hw0caXuao
杏子「あっ、そうだ。見ろ、ほらほら、アタシのソウルジェム。ほォーら、陽の光でさ。
    サンキャッチャーとか言うんだっけ。キレーだろー」

恭子「いいなー。僕のは透き通ってないからね」

杏子「そんでも陽に当てりゃピカピカしてキレイだろ。見せてみろよ、ほいっと」

恭子「ほい」

杏子「…………濁らないんだな、ホントに」

恭子「でも透き通ってないんだ。僕だけ仲間はずれみたいで寂しいなぁ」

杏子「…………」

〜回想

杏子「いいシャイニングウィザードだった……だがまだ負けちゃいねェ!」

恭子「愚かな……佐倉さんには教えてあげないといけないね……。カモンさやか!」

さやか「はひ?」

恭子「レッツゴー土下座」

さやか「は……へへーっ」

恭子「悪いけど足乗せるよ」

さやか「」

 ビリビリッ

仁美「ああーっ、すけこさんが惜しげもなくドレスを破ってさらけだしたおみ足のキャットガーターの飾りにはーっ」

恭子「ふふふ、見るがいい……これが僕のソウルジェムだ!」

〜閑話休題
177 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/17(火) 21:31:37.43 ID:hw0caXuao
恭子「どうしたの杏子さん」

杏子「オマエとのケンカを思い出してな……いやー、オマエは変態くさかった」

恭子「なんだと」

杏子「いきなりフトモモ見せつけられたアタシと足乗せられたさやかの身にもなれよ。
    っつか見せたかっただけだろ。もっとおとなしい見せ方はねーのか」

恭子「僕、見せたいモノがあるから今からスカートをまくり上げるけど、いいかな……?」

杏子「変態くせェっ!」

恭子「全裸が言うな!」

 佐倉杏子。
 魔法少女。
 全裸(ここまでずっと)

杏子「いや変態に市民権はねェが、裸族にゃあるだろ」

恭子「……君は……学校にも行けなかったから、こんな間違った主張を……!」

杏子「シリアスぶるな。あーもう、裸で何が悪い! 何の問題もない!
    女同士だから恥ずかしくねーもん。こんな事しても平気だからな。ほらほら」

恭子「ダメーッ、いけません! 杏子さん何て格好してんですか!」

杏子「サービスサービスゥ」

恭子「うわぁ〜〜っ、ゆるやかなプリン山脈で桃色の頂が……飽きた。
    やっぱ服着ないとダメだって。裸で寝て起きるなんて、一般家屋でやるもんじゃないよ。
    さやかのでも僕のでも貸すから……せめて下着はつけようよ」

杏子「ほー、ヒトの服ぶんどって速攻ポイしたヤツが言うか。
    アタシの一張羅の価値、オマエはわかってねェ! 上から下まで揃いで三千円もしたんだぞ!」
178 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/17(火) 21:33:16.67 ID:hw0caXuao
恭子「……。あんな毛玉だらけ、垢シミだらけ、ぞうきんみたいな服で、そばにいられるのは嫌なんだよ。
    昨日も聞いたけど、マニアに高く売ろうとか思ってあんなの着続けたんじゃないよね?」

杏子「昨日も言ったが、ちげーよ」

恭子「パンツに残された幸運がつきそう痕跡、とか言って売れそうなくらいだったけど」

杏子「ちげーって。ったく。ボロがイヤなら裸ぐらい我慢しろや。女同士だ、騒ぐんじゃねー」

恭子「……君は過ぎた事を顧みない、ドライさがモットーなんだろうけど」

杏子「なんだよ」

恭子「僕は元男なんだよ?」

杏子「……。…………。あ、……うぎゃあああああああああ!?」 ドターン

恭子「それこそ気にしないよという反応を期待したのに。杏子さん、けっこう面白いね」

〜寝室

恭子「そこのケースだよ、さやかの下着」

杏子「おー、アイツけっこうカワイイ趣味してんじゃねェか。水玉! リボン! フリル!」

恭子「そんなびろーんて伸ばしちゃダメだって」

杏子「つやつやスベスベだァ。イイ生地してんなー、いくらくらいすんだろうな」

恭子「えーと、だいたい三千円くらいの」

杏子「高ェ! これ全部で三千円は高ェよ!」

恭子「いや、一枚」

杏子「」
179 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/17(火) 21:34:23.29 ID:hw0caXuao
恭子「んー、ショーツもだけど、ブラはもっとマズイかな……。君とさやかと僕、やはり体は違うしね。
    杏子さん、サイズ測ろう。そんで着るもの買いに行こう。今日の予定はそれで決まり」

杏子「は、計るっ!? オマエがアタシを計る!? っざけんなエロ野郎!」

恭子「これまで三百六十五日ノーブラで外歩いてきた君にエロとか言われたくない。
    ノーブラで深夜の繁華街? ノーブラでゲーセン巡り? ねえねえ、どんな目で見られたと思う?」

杏子「ぐっっ……イテェ、言葉のナイフがイテェよォ……だってブラって高いわりに意味ねェじゃん……」

恭子「それこそきちんと測って買わないからだよ。ほら、メジャー。あてるから腕上げて」

杏子「うー、自分でやるぅ……」

恭子「何事も自分で正確に計れりゃ、この世にブサイクもデブも非モテもいないよッ!」

杏子「極論じゃね? やっ、冷たい! ……やん!」

恭子「動かない! キミの控えめなトップバストは測りにくいったらない!」

杏子「やんやん! あんあん!」

恭子「次、アンダー! ウェスト! ヒップ! 頭囲、肩幅、股下、足のサイズ!」

杏子「あーん! そんないっぺんにするなんて、らめえぇぇぇ!」

 ♪〜♪♪

杏子「お、あべかわ餅」

恭子「阿部さん家のマリアさんだよ。さやかからメールだ。
    ……あれ? 帰ってくるみたい。早退してきたんだって」

杏子「テメェラちゃんと学校通えよー! って、すけこ、なぜ脱ぐ」

恭子「親しき仲にも礼儀あり……裸エプロンでお出迎え、どうかな?」

杏子「イイ!」
180 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/17(火) 21:35:13.18 ID:hw0caXuao
 …ガチャ

恭子「」

杏子「」

さやか「」

仁美「」

まどか「…………夢オチ?」

恭子「ちがいます。すみません! こちら様が僕を脅すので仕方なく! この裸メジャーが!」

杏子(裸メジャー)「何言ってやがる! アタシをこんなにしたのはオマエだろこの裸エプロンがァー!」

まどか「あ、あの……上条くん? だよね?」

恭子(裸エプロン)「……?」

まどか「あれ? 上条……さん? 上条、恭……あれ? あれれ?」

さやか「……二人とも、まどかを混乱させないで。あとあたしのパンツは返して」

恭子(パンツ頭)「生まれてきてすみません」

杏子(パンツ頭)「生きてしまってすみません」

仁美「いきなりヌードとはセクシーな……ドキドキしてしまいますわっ」

まどか「あれ……? あれ……?」

さやか「まどか」

まどか「あ、さやかちゃん。おはよう……あれっ?」
181 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/17(火) 21:37:19.93 ID:hw0caXuao
まどか「上条さん、久しぶり。この間は家まで来てくれてありがとう。私は覚えてないけど、お父さんが教えてくれたの。
     佐倉杏子さん、はじめまして。鹿目まどかです。さやかちゃん達と一緒に住んでるって聞きました」

杏子「杏子でいいぜ? まどかチャン」

まどか「杏子ちゃん。えーと、杏子ちゃん、なんで服着てないの? ……」


さやか「まどかね、やっと学校に来れるようになったんだ。今日は保健室まで、一人で来たって」

仁美「この間──わたくしが魔法少女を知った記念すべき日──にノートを届けた事、覚えていらっしゃらないようで」

さやか「あん時さ、パパさんとまどか、元気そうで……、やっと散歩ができるようになったよ、って」

恭子「あまり……覚えていられないんだね」

仁美「まどかさんのパパ様のおっしゃるところでは、まだら、な状態と……徐々に良くなるとの事ですが」

恭子「(まどか☆まだら……)」

さやか「まだ時々……いきなり怖くなるんだって。思い出しちゃうんだって……」

恭子「(……言ったら、さすがにさやかも怒るだろうなぁ。まどかさんの事となると、ナイトのようなんだから)」


杏子「へー、しばらく学校行ってなかったのか。なんで?」

まどか「えーっと」

さやか「……ちょっと! 何聞いてんのよアンタ!」

杏子「何だよ。オマエのパンツ高価すぎんぞ」

さやか「なんで、またパンツの話なのよ! 頭おかしいの!?」

まどか「さやかちゃん、やめて……大きな声ださないで」
182 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/17(火) 21:38:57.34 ID:hw0caXuao
さやか「ごめん……でもっ、まどか」

まどか「杏子ちゃん。私のね、弟が死んじゃったんです」

杏子「……ヘェ」

まどか「弟が、タツヤっていって、まだ三歳で……でも、死んじゃったんです。
     私が見ているって約束して、お庭までは手をつないでいて。でも、次の瞬間、いなくなってました。
     離れた場所で、血を流して倒れていました。タツヤの……」

さやか「やめなよ。つらい事、思い出さなくても……」

まどか「ううん、ううん。ごめんね。これは私……私のためにやってるの。私、忘れちゃうかもしれないから。
     忘れちゃうの、楽になれるって思うのに、お母さんもいいよって言ってくれたのに、イヤだから。
     だからごめん。杏子ちゃんを利用する事になっちゃうけど、ごめんなさい。
     でもさせてください。──そうなんです、タツヤは死んじゃったんです。ちっちゃいお葬式もしました」

杏子「そうか、葬式したか」

まどか「しました。あの子はちっちゃかったから、ちっちゃいお葬式でした……。
     私は喪服がなかったけど、お母さんが黒いワンピースを買ってきてくれて、そうだお母さん、
     お母さんは仕事をバリバリやる人なんだけど、すごく落ち込んで、警察の人と話するのとかは
     お父さんが全部、お葬式も、全部やってくれました。お父さんが全部するから、お母さんは私は
     抱き合って、ずっと離れないで、お父さんが全部してくれるのを見てました。タツヤの世話だって
     普段はお父さんがほとんどしてるから、タツヤはお父さんが好きで、でもあの日は、お父さんは
     畑、家庭菜園やってるんですけど、ミニトマトとかつくって、その畑に、というか家の中にねこが
     入ったとかで探し回ってたから、いや見つけた時にはいなかったみたいで、足跡を見つけた時に
     もういないかもって、それでいなかったみたいなんだけど、でも足跡とか掃除しないといけないし
     それでお父さんが抱っこしてくれなくてタツヤがぐずり気味で、あの子はぐずっても可愛いなって
     最近はそう思うようになったけど私は、前はそうでもなくて、ちょっと世話するの苦手だった時も
     あったけど、私はお姉ちゃんだから、見ているって約束して、お庭までは手をつないでいて」

恭子「……はい、豆乳カフェオレ」

まどか「ありがとうございます。……それで、私、あの子が手から離れて、気がついたらいなくて。
     気がついたら、っておかしいですけど、目の前にいたはずなのに、おかしいなあって。
     ちゃんと……ちゃんと見ているって約束、私、できると思って約束していたんです。

     でも、タツヤは殺された」
183 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/17(火) 21:40:16.20 ID:hw0caXuao
まどか「私にはわからない事がたくさんあります」

さやか「まどか……もう」

恭子「さやか、ダメだよ」

さやか「でも」

まどか「わからない事がたくさんあるけど、お母さんは、それは自分にもわからないし
     警察が解明してくれる事もあるだろうけど、でも、それを考えるのがつらいなら、
     私が、考えるのがつらいなら、忘れちゃってもいいって、言ってくれました」

杏子「……そっか」

まどか「そうなんです。あの日の事、私が守れなかった約束、タツヤの事、忘れてもいいって。
     お母さんもお父さんも、私がそうしたいなら怒らないって、何をしてもいいよ、って。
     そう言ってくれました。
     でも、私は忘れちゃいけないんだと思う」

恭子「…………」

まどか「学校にも行かないで、必死に考えて、決めました。私はタツヤを忘れない。
     約束を破った嘘つきの私だから、ぜったいなんて言えないけど……そう決めました。
     ……決めたって……聞いてほしかったんだ、できるだけたくさんの人に」

さやか「まどかっ」 ギュッ

まどか「よかった……最後まで聞いてもらえて。ありがとう、さやかちゃん。
     さやかちゃんが泣いちゃったら、どうしようかと思ってた」

さやか「泣きたいのは、あんたのほうでしょうが……っ」

恭子「(…………)」

恭子「(…………あー)」

恭子「(僕、この人、すっごい苦手だ)」
184 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/17(火) 21:41:23.92 ID:hw0caXuao
QB『珍しいね、恭子がそんな苦手意識をはっきりと見せるなんて。
   ボクのアナルのなかった尻にだって、そこまで苦々しい表情はしなかったよ』

恭子『くぅぅうトリハダが。いや、あぶない、あぶない。クラスメイトを苦手だなんて、よくないよ。
    それも、さやかが騎士面するほど慕っている、甘やかしたがっているお友達だよ。
    ……そうだキュゥべえ、二人の素質の件はどうなったの?』

QB『鹿目まどかにはボクの声が届く確率も出てきた。これは諦めたほうがいい、というくらいの確率だけど。
   志筑仁美のほうは、相変わらず、魔法に頼る気がない。
   マミが熱心に武勇伝など聞かせているし、奇跡に興味があるようなそぶりはあるんだけど』

恭子『志筑さんにとって魔法イコール呪術というなら、頑ななのは仕方がないよ。でも芽はある。
    魔法を厭いながら、僕ら魔法少女からは離れようとしないのだから』

QB『ま、そうだね。僕の声が聞こえている以上、その魂は契約が可能だ』

恭子『それにしても困ったなぁ』

QB『なんだい?』

恭子『僕は鹿目さんが怖い』

QB『言っている意味がよくわからないんだけど』

恭子『苦手どころじゃない。鹿目さんを「僕好み」に近づけると、僕のやりたい事が総崩れになる。
    天敵だよ。ナチュラルエネミーだよ。彼女がラスボスだったら僕はエンディングなんて見なくていい。
    ひどいよ。無計画がモットーの場当たり人間に、今後を考えて自制しろなんて、拷問すぎるじゃない。
    将来の展望とかヤダヤダヤダ。そんな見えないものなんて、わかんない』

QB『魔法という見えないものを、あれほどまでに扱っているくせに』

恭子『過大評価だよ! 多少の表現力があれば、あのくらい誰だってできるだろうよ!
    未来を考えるのがそんなに楽な事だったら、上条恭介は美樹さやかの絶望を諦めたりしなかった!
    もーっ、どうしろっていうのさー!』

QB『とりあえず、窓に張り付いているマミをなんとかすればいいよ』
185 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/17(火) 21:42:09.51 ID:hw0caXuao
(張り付きマミさん回収)

マミ「ごめんなさい、えぐっ、盗み聞きなんてするつもりは、ひぐっ。
   か、かにゃめまどかさん、あなた、あなたの決意、りっぱよ。泣いちゃったわ」

まどか「な、泣かせてしまってごめんなさい……」

さやか「マミさん……まどか、引いてますから」

マミ「私は巴マミ。同じ見滝原中の三年よ。仲良くしましょう。ぜひ仲良くしましょう」

杏子「……寄りすぎだろ」

マミ「まぁ杏子、それはちょっと、うふふ、ジェラシー?
   そういえば杏子も、学校に通えていれば鹿目さん達と同じ学年だったのよね」

まどか「えっ。てっきり……その、年下の、人かと……」

杏子「オイオイオイ、どこ見てそんな判断しやがった!」

まどか「えっ、どこって……///」

杏子「アタシの股がどうしたって!?」

まどか「あうう……」

仁美「そのですね、おけけが」

さやか「もぉっ、下品な会話やめて! っていうか恭介も杏子も服着てよぉ!」

恭子「そろそろ着ようとは思っていたよ。……ところでマミさん、なぜここに?」

マミ「さやかさんは早退するって言うし、仁美さんも抜け出して、それじゃ……お昼、一人になっちゃうじゃない」
186 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/17(火) 21:43:27.93 ID:hw0caXuao
恭子「服を着たところで──さて、困りました。
    僕は杏子さんと買い物に出る予定でしたが、色々あってお昼前。パンも焼き上がってしまう」

杏子「パンの焼けるいい匂いがする……このまま飛べそうだ……」

まどか「ホントだねぇ……」

さやか「ちょっとー。そんなのけぞると危ないよ」

まどか「このまま、このパンを持って、どこかにお出かけしたいなー」

さやか「な、何言ってんの。まどかはまだ……」

マミ「恭介くん、このお茶、なかなかよ」

恭子「ありがとうございます。──さて、外はいい天気。さやかと志筑さん、マミさんはお弁当付き。
    本来、鹿目さんは正午まで保健室で過ごし、帰宅する予定だったとの事。
    僕と杏子さんは二人、パンを昼食とするはずでした……ですが、これは、もう」

まどか「天気もいいよね……。ピクニック、したいなぁ」

杏子「いいな……草っぱらにでも寝転がって、パンをかじろう」

仁美「いいですわね……皆そろって、川沿いなど歩いて……」

さやか「ひ、仁美まで。そりゃあたしもしたいけどぉ……でも、まどかは」

まどか「……さやかちゃん、ごめんね。私のわがまま、聞いてくれないかな……」

さやか「あーもぉ、仕方がないなっ! 出歩けるなら出歩いたほうがいいんだもんね!
     よぉーしっ、ピクニック決定! まどか、パパさんが心配しないよう即効メール!」

マミ「ィヤッタアアアアアアアアアアアアアァ!!!!」
187 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/17(火) 21:45:23.08 ID:hw0caXuao
(準備中。)

杏子「マジ? このパン全部アタシが食っていいのか!?」

恭子「うん、冷凍した分はまだあるからいいよ。それに焼きたては美味しいからね」

杏子「アタシさ、アンタのそういうトコ、……好きだよ///」

恭子「ちょろい。
    ……よし。即興でもお弁当ってできるもんだなぁ。さやかー、準備はできたかいー?」

マミ「まだ、ですって。……ふふふ。ふへへ。えへへへっ。友達の服を借りるなんて、初めて!
   どうかな? さやかさんのプルオーバー、似合うかなっ?」 クルクル

恭子「きつくないですか?」

マミ「大丈夫!」 ブルン

杏子「(どこもかしこも胸にひっぱられてやがる……)」

さやか「やー、マミさんや仁美に、あたしの服なんか着せちゃって、いいのかなー、なんて」

仁美「とっても嬉しいですわ! このようなタイプの服、我が家では着せてもらえませんもの。
    ほら、まどかさんも。恥ずかしがらずにいらっしゃいな」

まどか「だって……一人だけ、ぶかぶかだよぉ……」

さやか「だいじょーぶだって、かわいいって!」

マミ「多少サイズが合わないくらい、どうって事ないわよ!」 タユン

さやか「……クソッ、なんて時代だ!」 ガッ!!

まどか「あんまりだよ……こんなのってないよ……」

マミ「え? え? なんで壁叩いたの? え?」 タプン
188 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/17(火) 21:47:42.95 ID:hw0caXuao
マミ「えー、この我ら乙女による乙女のための心躍る小旅行ですが、社会的には純然たるサボタージュ。
   よって、一度電車に乗ってこの町を離れ、修学旅行ヅラをして乗り切ろうと思います。
   ていうか、ていうか! ほら、エキュート見滝原! 駅ナカの! 行ってみたかったの〜!」

杏子「一人で行っときゃいいじゃねーか」

マミ「杏子、冷たいのね……。こないだも、私の部屋にだって泊まれるのに、さっさと恭介くん家に行って……。
   ずるい、ずるいわ恭介くん! さやかがいるのに、杏子まで!」

恭子「すいません(笑)」

マミ「キーッ、おねえさん怒ったぞ! もう恭介くんなんて呼んであげない!」

恭子「では、なんて?」

マミ「えーとね、恭ちゃん」

恭子「……よろこんでぇーっ!」

杏子「アタシの知ってるマミじゃねぇ! なんか浮き沈みが激しくなりすぎだ!」

マミ「マミはマミですぅー! 杏子だって、前はもっとナイフみたいにとがってたわ!」

仁美「ナウなたとえですわマミちゃん。でも住宅街を脱せぬ内に騒いでは、よろしくないのでは?」

マミ「そうね。ごめんね、まどかさん。ついてこれてる?」

まどか「ううん、すごい楽しいです。こんなに賑やかなの、久しぶり……。
     ね、ね、さやかちゃん。私も上条さんの事、恭ちゃんって呼んでいい?」

さやか「あ、あたしに許可求めてどーすんの。ね、恭介?」

恭子「さやかもそう呼んでいいんだよ」

さやか「あたしは……いいよ。そんな」
189 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/17(火) 21:49:06.82 ID:hw0caXuao
恭子「さやか、手、つないでいい?」

さやか「え」

恭子「というか、ほら」

マミ「そこ! さっさとつなぎなさい!」

まどか「マミさん、みんなでつなぐなんて目立っちゃうよぅ……」

さやか「……つながないと、無理やりつながれそう」

恭子「うん」

 キュ

さやか「…………恭介」

恭子「うん?」

さやか「……早退、ごめんね」

仁美「…………」 ジー

さやか「いやホント、最近さ、恭介が四六時中あたしに構ってくれるから……
     ホントはさ、のんびり羽伸ばすとか、ヴァイオリンの練習とか、あたしのいない所でしたい事さ、
     あるんじゃないのかな、って…………思ってたのに……」

仁美「婚約者が杏子さんと二人きりなんて、気になって勉強どころではありませんものね」

さやか「ひっ、ひと、仁美ぃっ!?
     ちがうよっ、あたしは久々もまどかと帰りたいなって、いや、まどかのせいじゃなくて!
     サヤサヤ呼ばれるのもなんか嫌っていうか、いやいや恭介のせいでもなくて……!
     っていうか婚約者って! ああああれは本気じゃないからねっ!?」

杏子「ほー、聞き捨てならねェなァ?」
190 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/17(火) 21:49:39.47 ID:hw0caXuao
さやか「な、なによ? 寄ってこないでよ歩きにくいじゃない」

杏子「っへへーん! アタシとすけこは、一つ屋根の下、全裸で過ごした仲だぞ!」

さやか「知ってる。さっき見た」

杏子「……素で返すなよ……言ったアタシが恥ずかしいだろ……」

マミ「やはりその全裸で過ごすクセ、よくないわ。今日はあなたの服を重点的に買いましょう。
   恭ちゃんも、そのユニセクスな格好は似合うけど、女の子としていただけないわ!」

恭子「願いの力も、服にフリルはつけてくれなかったもので」

まどか「?」

マミ「見てなさい、そのシャツとスラックスの無難スタイルから、大変身させてあげる!」

恭子「ありがとうございます。よかったらマミさんも、下着をフィッターさんに見立ててもらってください。
    大きいサイズの専門店が入ってるらしいですから」

さやか「あっ、そーですよ! マミさんほどのサイズ、既製品じゃなかなか無いんでしょう?」

仁美「たびたび話してくださいましたものね、カップの形が難しいとか、肩や脇が痛くなってしまうとか。
    よかったら、わたくしもフィッティングにお供させてくださいましね」

杏子「マミは本当、ヒトの世話するより、まず自分のムネの世話しろって話だよなー」

まどか「いいなぁ……どうしたらそんなにおっきくなるのかな……」

マミ「……なぁ〜に〜よ〜! みんな私のおっぱいの事ばっかり集中攻撃してぇー!
   わかってるわよ! おっぱい大きいってわかってるわよぉ! 小三の頃から言われっぱなしよぉ!
   でもそればっかりじゃなくていいじゃない! 私、それしかネタない人みたいじゃないぃ!」

恭子「マミさん駅前です。おっぱい連呼やめてください、いやもっとしてくださ……、あっ」

ほむら「…………!」
191 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/17(火) 21:53:29.18 ID:hw0caXuao
 ギュイン

恭子「ほむらさん……つかまえたっ!」

ほむら「はっ、離しなさい! 魔法を人前で使うなんてっ……」

まどか「えっ、上条さん、今……?」

さやか「まどか、下がって! あたしの後ろ!」

まどか「えっ? えぇっ?」

仁美「まぁ、ほむらんさん! お久しぶりですわね、ごきげんいかが?」

ほむら「し、志筑仁美……イヤッ! あなた達みんな人非人よ! 離して!」

仁美「嫌われたものですわね……、出会って間もないわたくし達、互いに至らぬ所もあるでしょう。
    でもわたくし、学校を休んでいるあなたを心配していますのよ。学級委員として」

ほむら「黙りなさい! どうせ上条恭介にたぶらかされて、オマエもヤツの手先にッ、むぐっ!?」

恭子「(すみませんほむらさん。ちょっと、息止めてください)」

仁美「あれれぇ、困りましたわ。……のみ込みが悪い、と例えればよいのでしょうか」

マミ「二人とも、あんまり脅かさないであげて。暁美さんも、人前よ?」

ほむら「ゲホッ、ゲホッ、ヒィッ……ヒィィッ……」

まどか「あ、あのっ……苦しそう、だよ……」

ほむら「ま……まど……」

まどか「『その人』っ、苦しそうだよ……!」

ほむら「………………くっ!」
192 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/17(火) 21:54:47.87 ID:hw0caXuao
恭介「大丈夫? 過呼吸? 背中さする?」

ほむら「…………」 キッ

杏子「おう怖っ。そーか、こいつがオマエラの言ってた未知の魔ほ、……危険人物か」

まどか「危険だなんて、そんな言い方……さやかちゃん、この人、誰なの?」

さやか「うちのクラスの転校生。まどかは休んでた間だからね、知らないはずだよ。
     名前は、暁美ほむらって……うわっ?」

ほむら「う……うぅうっ……」 ポロポロ

さやか「な、泣くの!? どこが地雷だった!?」

まどか「泣かないで……」

ほむら「……うっ……うーっ……」

まどか「私、鹿目まどか。はじめましてだね」

ほむら「…………」

まどか「えーと、暁美さん?」

ほむら「!! ……うあああっ」

まどか「……ど、どうしよう、私、なんか悪い事言ったかな……」

さやか「いや……暁美さん、ちょっと常時これで……あたしには、もう何がなんだか。
     あー、もう、泣きやめとは言わないけどさ、なあ転校生、ちょっとは仲良くしよーよ。
     ねぇってばー。ケンカはナシッ、ねっ? ……頼むから立ってぇ!」

まどか「そうだ、暁美さんも一緒に買い物行かない?」

さやか「ぃいっ!? ……あ、まぁ、いいか。どーする、暁美さん?」
193 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/17(火) 21:56:15.24 ID:hw0caXuao
ほむら「かい、もの……?」 グスッ

まどか「そ、買い物。服とか買いに行くんだー。暁美さんも行こうよぅ」

ほむら「美樹さ……怒らない……?」

さやか「えっ、いつの間にあたし、そんなに暁美さんに怒ってるイメージ!?」

ほむら「……こわい……うぅ」

さやか「や、こわいって……こわくないこわくない、怒ってない怒ってない!
     あんたがおかしな事言ったりしてこなければ、あたしも突っかかったりしないって!」

まどか「こわくないよー。ねっ」

仁美「仲良き事は美しきかな。さぁさ、過去の事は水に流してしまいましょう。
    ほむらんさん、お昼は済ませまして?」

まどか「まだだったら暁美さんも食べよーよ! おべんといっぱいあるんだよ!」

ほむら「……お昼、まだ」

恭子「(あれ、ほむらさんの様子が)」

マミ「そうね、仲良くなれるにこした事はないわ。一緒に行きましょ?」

杏子「オマエラが良いならアタシも反対しないけどよー」

さやか「まぁ、せっかくだから、仲良し、しようかな。うんうん。
     そうだ、ほむらって呼んでいい? あたしの事も、さやか、でいいから」

ほむら「…………」 コクン

まどか「いいって! よかったね、さやかちゃん。行こっ、暁美さん」

ほむら「…………」 …クスン
194 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/17(火) 21:58:05.05 ID:hw0caXuao
恭子「ほむらさん」

ほむら「うー」 グスッ、グス

恭子「おにぎりはさ、何が好み?」

ほむら「……こんぶ」

恭子「よかった、こんぶならあるよ! あとはいくらと、うなぎしかないんだけど!」

ほむら「……うん」

恭子「お弁当いっしょに食べようね」

ほむら「…………」 コクン

恭子「ほむらって、かっこいい名前だよね」

ほむら「…………」

恭子「あ、切符代は僕が出すからいいよ。せっかくご一緒してくれるんだからね」

ほむら「……りがとう……」

恭子「ほむらって、かっこいい名前だよね」

ほむら「…………」 ニコ

恭子「(すさまじく鈍化している……)」

さやか「ほむらには停戦協定を示してもらわにゃな……とゆーワケでぇ! 手をつなごー!」

まどか「さやかちゃん、そっち! 私こっち! ね、暁美さん!」

ほむら「うん」 ニコッ

恭子「(ほむらさんは……ずいぶん……まぁいいか)」
195 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/17(火) 21:59:57.88 ID:hw0caXuao
マミ「エキュート見滝原! ガーデンスペース! 来ちゃった、来ちゃった!」 ポインポイン

杏子「揺らすな。つか跳ねるな」

マミ「アートフェスタとか、冬はアイススケート場をつくったり、催し物がいっぱいあるんですって!
   あー、芝生ってきもちい〜っ、あっ、そこのテーブルで食べましょう!」

まどか「…………」

さやか「ど、どうしたのまどか、口開いてるよ?」

まどか「あ、うん。ここに来るまでもう、びっくりしちゃって。すごいねぇ……
     ごはん屋さんだけで商店街みたいになってたよ」

さやか「そだね。フードコートって呼んじゃいけないなにかだよね」

まどか「全部まわったらお小遣い足りないね」

さやか「や、それ以前にフツーにお腹に入りきらないっていうか」

杏子「メシだ! メシをしよう!」

さやか「に、じゃなくて、を?」

杏子「アタシはパンを食べるぞっ、すけこーっ!」

恭子「そのまま丸々食べそうな勢いだ……ディップとかつくってきたんだけど。ジャムもあるよ」

杏子「でぃっぷぃ! これか? このタッパーか?」

マミ「白いわねぇ。何かしら、クリーム?」

恭子「それはキュゥべえだよ」

マミあん「「」」

恭子「開けるとほむらさんがまだ泣きそうだから、そのまましまっといてください。大丈夫だから」
196 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/17(火) 22:01:39.46 ID:hw0caXuao
訂正
恭子「開けるとほむらさんがま『た』泣きそうだから、そのまましまっといてください。大丈夫だから」
197 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/17(火) 22:03:08.96 ID:hw0caXuao
ほむら「もんぶ……もいひい」 モグ モグ

まどか「モンブラン?」

さやか「こんぶ、おいしい、でしょ。おにぎりにモンブランはないわー」

まどか「でもでも、前にテレビでティラミスおむすびってやってたよ!」

さやか「ないわー」

仁美「マスカルポーネ自体はギリギリ合いそうですけれども……」

さやか「えー、フツーのチーズのがいいよ。そだ、前コンビニにチーズ唐揚げ雑炊って……」

マミ「暁美さん、カツサンドもいかが?」

ほむら「…………おいし」 モグ モグ

マミ「よかったぁ、私の手作りなのよ! ほら杏子も食べて、恭ちゃんも!」

杏子「カツサンドおかずにパンを食う。うめー」

恭子「野菜も食べなよ」

杏子「ポテト食ってるよ?」

恭子「じゃがいもを野菜と扱うなッ」

さやか「そーいやほむらはさ、お昼はお弁当だっけ?」

ほむら「昼は……食べない」

まどか「えー、食べたほうがいいよぉ。いっしょにお昼食べよーよ、ね?」

ほむら「……うん……」

まどか「やったー! 食べようね、約束だよっ」
198 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/17(火) 22:04:40.45 ID:hw0caXuao
さやか「ふー、満腹ぅー」

まどか「いっぱい食べちゃったよぉ〜……」

ほむら「…………」 …カクッ

まどか「暁美さん?」

ほむら「……はっ……あ、あれ? あ、まど……鹿目さん。美樹さん」

さやか「さ・や・か。ほむらーどうしたー? ひょっとして今寝てた?」

ほむら「え? あ、いえ、……あ、そ、そうかも……」

まどか「暁美さん、メガネメガネ。落ちちゃうよ?」

ほむら「え、あっ」 スルッ

 パシ

仁美「どうぞ」

ほむら「あ……ありがとう、ございま……」

まどか「すごい、仁美ちゃん……空中で物を掴んだよ」

さやか「え、もしかしてまどか、あんたソレ出来ない?」

まどか「えっ、えーっ、いや二人とも運動神経いいもん! 普通の人はできないよ!」

恭子杏子「「えっ」」

まどか「恭子さん!? 杏子ちゃんまで!? その反応、えっ、つまり、えぇ?」
199 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/17(火) 22:06:42.86 ID:hw0caXuao
さやか「まどか、ハシ落として掴んでみ?」

まどか「でっ、できるよー!」

 …パッ

   …カシャン (ギュッ)

杏子「いや、落ちてから手ェ握ってどーすんだよ」

まどか「も……もう一回」

 …パッ

   …カシャン (ギュッッ)

杏子「だーかーら!」

さやか「あっはっはっは!」

まどか「ちがーう! ちがうもんちがうもんちがうもん! そんな笑わないでよぉ!」

マミ「あ〜んっ、まどかさんカワイイッ」 ギュ〜ッ

まどか「ひゃー!」

仁美「くすくす……こういうのは慣れですから、回数を重ねれば、まどかさんでも掴めますよ。
    ね、すけこさん……あら? すけこさん?」

恭子「おかしすぎて腹筋が痛い」

ほむら「ご、ごめんね鹿目さん。わた、私のせいで……」

まどか「謝られると……余計にみじめだぁ……しくしく」
200 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/17(火) 22:08:04.56 ID:hw0caXuao
さやか「ひー、ひーっ、これは、これはお腹痛いっ。満腹時にやめてっ。ホント痛くなってきたっ」

ほむら「美樹さ、……さ……さやか、わ、笑いすぎですよ」

さやか「ほむらも笑ってるじゃーん」

ほむら「えっ、そんな事っ」

まどか「あーんっ、暁美さんも笑ったー!」

ほむら「ごっ、ごめんなさい!」

まどか「……いいよ、いいよ。笑おーよ。暁美さん、元気な顔のほうがいいよ」

マミ「そうよ、女の子だもんっ。笑顔で生きなきゃ!」

ほむら「…………」

杏子「よーっし、腹もふくれたし、帰って寝よう!」

恭子「なんという女の子にあるまじき発言だ!」

仁美「杏子さん、ねこさんみたいですわ。でも、今日は衣類を買いにこられたんでは?」

杏子「外出る時だけ、さやかから借りればいいと気づいた。人生って、貸し借りそのものだよな……」

さやか「あんたが私に貸すものないよね?」

杏子「胸貸すぞ?」

さやか「お言葉に甘えて」 モミ

杏子「ぎゃぁー! エロイッ、手つきがエロイィッ。やはっ、やめろよぉー揉むならマミにしろよぉー」

マミ「矛先がこっちに!? ……きゃあ〜〜〜〜!」
201 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/17(火) 22:10:03.54 ID:hw0caXuao
今日はここまで
よし。このまま、みんな友達エンドしよう
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/17(火) 22:12:34.49 ID:klRgbRaKo
乙っち乙マミ!


小澤さんじゃないけど「甘ァァァァァァァい!」だね!
もう最近スピードワゴンはネタやってくれないね!悲しいね!


…さて、このほのぼのが何時まで続くやら
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/05/17(火) 22:13:09.55 ID:xjn1ZLLZo

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204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/05/17(火) 22:23:14.09 ID:jfRy9MZAO
まさかほむほむ・・・
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/18(水) 00:55:01.07 ID:fkYG3iJco
乙っちまどまど
まどかさんモードで安心した
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/18(水) 17:14:38.87 ID:x9CvEWs8o
うーん、この上条からどうにもメアリー・スー臭がする……
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) :2011/05/18(水) 20:02:52.28 ID:dyGebEnu0
円環の理wですらあの程度の事しかやらせてもらえなかったんだから(魔女にすらなれずに死ぬ、未契約者はスルー)、
それこそプリキュアを軽く凌駕するご都合主義の化身がいないとほむループwの一言で済む内容にしかならんだろ。
208 :BENPER [sage saga]:2011/05/18(水) 21:09:29.55 ID:oZ7S3FRDo
↑↑まさか未来視を使う魔法少女に会うとは思わなかった。
どうか展開をバラさないでほしい…。言う程うまく演出できそうにないが

続き投下
209 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/18(水) 21:11:21.76 ID:oZ7S3FRDo
〜エキュート見滝原
レディースファッションフロア

マミ「じゃ、ひとまず別行動としましょう。仁美さん、杏子、行きましょ?」

杏子「えっ、おい」

仁美「おっ買い物っ♪ おっ買い物っ♪」

マミ「ちゃんとケータイの電源入れといてね。各自、迷子にならぬよう。幸運を祈る!」

仁美「……恭子さん……よろしくお願いしますね?」

恭子「わかっています。ではまた後で。何事もないように」

杏子「なァ、アタシあっちのチームに……おいマミ! ひっぱんな! ……ちょ、さやかァー!」

さやか「いってらっしゃーい♪」

杏子「うぉおおーい!」

さやか「さー、行こう。まずは服見てー、雑貨屋とー……」

まどか「恭……なんか違和感あるなぁ。ね、上条さん? 仁美ちゃん、今、なんて言ってたの?」

恭子「さて、なんだろうね?」

まどか「教えてよぅ」

恭子「ヒント、志筑さんと僕が分担しそうな事」

まどか「んー……?」

恭子「制限時間、五秒前ー」

まどか「待って待って! えっと、えっとー……お色気担当!」

恭子「ハズレ。今回のお色気担当はまどかさんに決まっています」

まどか「ハズレかー……って、ええぇ!?」
210 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/18(水) 21:13:06.93 ID:oZ7S3FRDo
 ハァハァ…  ハァハァ…

恭子「さやか……いいじゃないか。思った通りだよ」

さやか「や、やだ、あんまり見ないで」

まどか「ねぇ……きゅ、休憩しよ? ね?」

恭子「まだだよ……もっともっと。次!」

まどか「こ、こんなのムリだよ〜……」

ほむら「大丈夫だよ……鹿目さんならイケるよ」

まどか「そ、そんなぁ。さやかちゃん〜」

さやか「だいじょーぶ、ほら……あたしも、まどかとおんなじ……」

まどか「あ、ホント…………同じじゃないじゃん同じじゃないじゃん!
     ダメだよぉー! 同じの着たら、同じじゃないよー! ずるいよ!
     さやかちゃんのがおっきいもん、だったら同じじゃないもんー!」

さやか「いーやいやいや、だがそこがいい! たいらで何が悪い!
     たいらにあらずば、まどかにあらず! わっしょいわっしょい!」

恭子「──まどかさん。計測によると、僕とさやかのバストの値は同じだ」

まどか「つまり……それは……!」

恭子「わかるね?」

まどか「……わーい擬似さやかちゃんのおっぱいだ! 擬似さやかちゃんのおっぱいだー!」

恭子「オウッカミングッカミングッ!」

さやか「やめてえええぇぇぇぇー! あたしのおっぱいに見立てて恭介のおっぱい弄っちゃダメェェェー!」
211 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/18(水) 21:15:01.24 ID:oZ7S3FRDo
ほむら「やんや……やんや……」

まどか「服選ぶのって、たのしーねー!」

恭子「店員の視線が心なしかホワイトだけどねー!」

さやか「あっ、ねぇねぇ。ほむらもどうよ、こーいうの」

ほむら「え……」

まどか「わ〜。暁美さん、こーいうワンピースとか、きっと似合うよ! 試着してみよーよ!」

ほむら「でも、私……こんな」

まどか「いーからいーから!」

 パサッ シュル…

恭子「試着室から聞こえる衣擦れの音って、ちょっとセクシーだよね」

さやか「えー……」

まどか「わかるわかる! エッチな感じだよね!」

さやか「えー!?」

 シャ…

ほむら「……着た……けど」

恭子「中身はもっとセクシーだった!」

まどか「わぉセクシャルだよ! 歩くセクシャルが顕現したよ!」

ほむら「や、やっぱり……似合わないよ。こんな……肩も脚も出ちゃう……」

まどか「お母さんがね、言ってたよ。女はまず勝負のための切り札を一枚、そこから変わるんだって」
212 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/18(水) 21:17:01.23 ID:oZ7S3FRDo
さやか「うんうん、まどかのお母さんのお言葉はタメになるなァ」

ほむら「……でも……」

さやか「こういうの意外と使い勝手いいよー。これ手洗いで洗えるし。ほら、タグ」

ほむら「め、めくらないで!」

まどか「暁美さん、髪解いてもいい?」

ほむら「……う、うん」

 ファサッ

さやか「ほむら……キレイだよ……」

まどか「さやかちゃん、ジゴロみたい」

ほむら「うー……」

恭子「涙目とか萌えます。もう買おうよ、これ買おうよ」

さやか「なんかアクセサリーも欲しいね。シルバーで、華奢な奴。靴もエナメルの……。
     うぉ〜、あたしの乙女コーデ魂が疼いてきた。これ買って、そのまま他の店行こう」

ほむら「だ、ダッ、ダメェ! こんなの着て歩いたら!」

まどか「きれいだよー暁美さん」

ほむら「でっでもッ…………こんな短いの着て歩いたら、お尻!」

まどか「お尻?」

ほむら「お、お尻が……見えちゃうよ……」

まどか「タイツを履けばいいよ」
213 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/18(水) 21:19:39.39 ID:oZ7S3FRDo
さやか「これに合うような奴……まどか、あのマネキンのとかどう?」

まどか「あーいうの流行ってたよねー、でも私はあっちの……」

ほむら「ふ、二人して……うう」

恭子「からかってるわけじゃなく、本当に似合ってるんだよ」

ほむら「……私……こんな格好した事ないもの……」

恭子「んー。まぁ、そのメガネはいただけない」

 ポワッ

ほむら「え」

恭子「これで見えるよね。メガネはちょっと、服と預かっておくね」

ほむら「あ……魔法……。……」

〜お会計〜

恭子「まどかさん……先ほどのクイズの答えはこれだっ」 バッ

まどか「……わぁ……金色のカードだよ!」

恭子「いや、これは単なるマミさんの名刺です」

まどか「すごーいっ、マミさんって名刺持ってるんだ! 私も欲しいっ」

恭子「昔、つくってみたいという理由で刷ってもらったらしいよ。
    それはともかく、正解は僕の財布です」

さやか「……あー」

まどか:カットソー(セール品)\3,990 シフォンブラウス\19,000 スカート\9,500 サロペット\11,000
さやか:カットソー(セール品)\3,990
ほむら:ショートドレス\152,000 ラッセルタイツ\2,520 ストッキング\1,600
214 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/18(水) 21:20:51.74 ID:oZ7S3FRDo
まどか「あわわわわわわわわわわわわわわ」

ほむら「わた、わた私、こ、こんな高価な服……っ」

さやか「なんか笑えてきた。まどか、後先……考えなかったね」

恭子「豪勢だねぇ。しかも一軒目! まだ一軒目なのです!」

まどか「はわわわわわ」

ほむら「わたわたわた」

まどか「きょ、恭子さんやっぱどれか返……!」

恭子「先ほどまどかさんは『買いたいの歌』までつくって、買いたい気持ちを表明してくれました。
    おそろいのカットソー。ふわふわブラウスとスカート。キュートなサロペット。一品一品がフェイバリット!
    さらに今日は、みんなのサボタージュ記念日、アンド、ほむらさんとの仲良しデー! めでたき日!
    よってこの上条恭子、景気よくパーッと国家予算ほどの消費をするのも、やぶさかではなく」

まどか「ダメだよぉ! 私のお小遣いじゃ返せないよっ!?」

恭子「でぇーい! ティロ・お会計!」

まどか「ダメだよぉぉぉぉ!」


マミ「……今、遠くで、後悔なんてあるわけなーい、って聞こえなかった?」

杏子「……こんなの絶対おかしいよー、とか聞こえた気もするが、気のせいだろ。
    つーかよー、こんなフリフリしたもん、アタシに着せるなよ」

マミ「あら、なんで? 下着はカワイイのOKしてくれたのに」

杏子「下に着るものだから下着だろ。でもアウターは違う! 人目に触れる!」

QB(立方体)「下着がまったく人目に触れないというのは、以前ならまだしも、今のキミには当てはまらないよ、杏子」
215 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/18(水) 21:22:32.27 ID:oZ7S3FRDo
仁美「杏子さん、タッパーに入っていた立方体さんの言うとおりですわ。
    今のあなたは、さやかさん達といっしょに暮らしている、いわば家族なのですから」

杏子「家族ではないだろ……」

仁美「ならば、なおさら。家族になるとき、一線を越えるとき、勝負下着でなくてはッ!」

杏子「腐ってやがる!」

マミ「……ロリータ、というジャンルはどうかしら?」

杏子「何か言いだした……」

マミ「以前から興味はあったんだけど、アレはほら、少女的であればあるほどいいじゃない。
   別に、昨今のメイドのごとく、形状の良いとこ取りをしてもいいけど……
   私自身の想像する私では、どうもロリータ本来の魅力が損なわれる気がするのよね」

仁美「ロリー……タ?」

マミ「そう、ロリータ。ゴスロリでなくロリータよ。仁美さん、ご存じない?」

仁美「ゴスロリのほうなら、クラスの子達が話しておりましたわ。
    体重百貫の方々に流行のファッションだとか。あら……マミちゃん?」

マミ「……ひどいよ……こんなのってないよ……」

仁美「???」

マミ「仁美さん、ダメよ! 全然ダメだわ! この際、私が教えてさしあげましょう!
    そのような間違った知識を持ち続ける……そんなの、私が許さない!」

杏子「キュゥべえ、オマエ、枕にいい形してんな。芝生でいっしょに昼寝しよう」

マミ「待って杏子! パンクロリータでもいいからッ」 ガシッ

杏子「うおおぉぉおぉお離せ巨乳ッ!」
216 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/18(水) 21:23:52.58 ID:oZ7S3FRDo
*「あっ、巴さん?」

マミ「!!!!」

*「ほら、同じクラスの」
*「巴さんだー、何してんのー」
*「あれ、早退って……サボリ?」

マミ「……あ……えっと」

杏子「……マミ?」

*「このヒト達、巴さんのトモダチ?」

マミ「…………」

杏子「…………」

マミ「……そう! 友達、昔からの友達なの! あ、遊ぶ約束してたの!」

*「へー、巴さんもサボったりするんだー。超意外〜」
*「……合わないよねー」

マミ「…………う……」

*「言わないよ、安心して!」

マミ「……?」

*「仮病とかァ、先生にチクんないから!」
*「でもやっぱ巴さんマジメだよねぇ、午前は来てんだもん。一日サボってもいいのに」
*「つーかサボリって言うなら、ウチ達も似たよーなモンだしねぇ。
   そーそー! 巴さんが早退した後さ、学校、爆弾騒ぎになったんだよ!」

マミ「えっ?」
217 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/18(水) 21:25:28.79 ID:oZ7S3FRDo
*「いやー、イタズラらしいんだけどね?」
*「爆弾仕掛けたとか電話来たってんで、みんな帰されちゃったのよ」
*「で、家から出るなとか言われたんだけど。って事でウチ達、ある意味、サボリ」
*「いっしょいっしょ(笑)」

マミ「爆弾……」

*「ホント物騒だよねー。ウチの学校の誰かン家、爆発したんでしょ?」
*「だから今日のはビンジョウハンだって〜。やるなら、何も言わずにやるって」

杏子「(……最初のは、さやかのマンション、だったな)」

*「巴さん、ここで服買うの?」

マミ「えっ、あ、いつもじゃないの。今日は、この子の服買いに来て……今、選んでる所」

*「そっかー。こっちはこれ帰るトコ。じゃーねー」
*「じゃ、巴さん、また明日ー」
*「爆弾怖いよー。帰るとき気をつけようね〜」

マミ「あ、うん。またね」


(*「びっくしたー、巴さんの私服とか初めて見たよね」)
(*「意外だよねー。エロカワ系。キャラ的には胸隠すヒトじゃん?」)
(*「ね、一緒にいた子ってさー、二年の……」)


マミ「行った……、……はぁっ」

仁美「マミちゃん……」

マミ「杏子も言ってたけどさ……私、本当に、遊ぶ友達……いなくて」
218 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/18(水) 21:27:59.98 ID:oZ7S3FRDo
マミ「……やだなぁ。しらっと嘘ついちゃう。約束なんて、見栄張って」

杏子「でも、あとは嘘じゃねェじゃん」

マミ「杏子……」

杏子「服、選ぶ所なんでしょ。しょげてないで、さっさと行こーよ」

マミ「……うん!」

〜ロリータブランドショップ
〜杏子、試着中

仁美「ルイ王朝……姫系とは違う……ゴスロリと黒ロリ……うーん、奥が深いですわね」

マミ「そこまで熱心に聞いてくれるとは思わなかったけど、嬉しいわ。
   ──そういえば、仁美さんって、お家ではどんな格好しているの?」

仁美「ええと。……、……」

マミ「?」

仁美「……き、着物?」

マミ「お着物?」

仁美「え、ええ」

マミ「ステキね。そんな感じだわ。仁美さんのお家ってすごい家系だって、学校でもウワサだもの。
   財閥を束ねる一族、帝室の傍流とか、世が世ならお姫様とか」

仁美「……そんなステキだったら、よかったんですけど」

マミ「そうね。……革命の旗印とか、国家の贄とか、そんな風に大人に持ち上げられても、嬉しくないもんね」

仁美「ご存じ、なんですよね。わたくしが魔法少女について知り得たと同様に」

マミ「……恭ちゃんが話してくれたわ」
219 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/18(水) 21:30:48.85 ID:oZ7S3FRDo
仁美「恭子さんってば。まるっきり遠慮がないのですね」

マミ「ちょっと意外かな?」

仁美「ええ。私の知る人柄とも、他人の話す人物像とも、ずいぶんイメージが違ってしまいました。
    建前、社交、さやかさんの願いのせいもあるでしょうが、……根本から、違っていたのでしょう。
    特に、さやかさんの語る『上条恭介』なんて、──まるで」

マミ「……私も。さやかさんから聞いた時は、一体どんな人かと思ったのよ」

仁美「どんな人かと……期待しました」

マミ「期待したのよね。なにか、宇宙まるごと、改変してしまえるような、そんな人。
   そんな人が、救ってくれるんじゃないか──世界を変えてくれるんじゃないか、って。
   ……キュゥべえ、起きてる? あなたを知った時も、私、そんな期待をしたのよ?」

QB「世界は変わったかい、マミ?」

マミ「少しだけ。世界は。でも、私は変わらなかったみたい」

仁美「なぜ、期待してしまうのでしょうね。
    私は私の本性が、家系に授けられた称号が、いつか学校中に、街中に広まればいいと思った。
    それこそ、人智を越えた何か……魔法のような何かがわたくしに敵対すれば、叶うかと、本気で」

QB「その願いは、ボクの力を借りずとも、少しだけ叶ったね」

仁美「恭子さんは、私を理解してくださいました。さやかさんは、友情は変わらないと言ってくれました。
    ごめんなさい、キュゥべえさん。わたくしは願いがないのです。もう、これ以上」

マミ「…………」

QB「キミが口にできる願いを持つ時を、待ってるよ。ボクの立場で、急きたてるわけにはいかないからね」

マミ「……仁美さん、もしもの話なんだけど」

杏子「魔法少女になんかなるもんねーぞ、仁美チャン」
220 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/18(水) 21:31:40.60 ID:oZ7S3FRDo
マミ「」

仁美「」

杏子「……なんだ……その無言の大爆笑は何なんだッ!」

QB「大(笑)爆(笑)笑(笑)なんて(笑)して(笑)ないよ(笑)、杏子(笑)」

杏子「もっかいタッパーに詰められてーか。そうかそうか」

QB「わけがわからないよ。ルンバに乗せられ室内を巡っていた所を、タッパーに詰められて運ばれ、
   解放かと思いきや衣類の取っかえ引っかえに付き合わされて、挙げ句、吊し上げられるなんて」

マミ「杏子……好きよ……」

杏子「やめろ。冗談でもマジでもヤメロ」

仁美「これはこれは、惚れ惚れしますわっ。すけこさんに見せるわけにはいきませんわね!
    わたくし達、さやかさんに恨まれてしまいますわ〜っ」

マミ「かわいい……かわいすぎるのよっっ。頭にリボンがなんて似合う子なの!
   萌えね! これが萌えなのね! 抱かせて! おねがい抱かせて!」

杏子「ヤダーッ! やっぱ脱ぐっ、無理っ、マミの視線が怖いっ!」

マミ「あなた、水臭いわ……以前、私の部屋でいっしょに住んでいた時は裸で……」

仁美「なんとっ」

杏子「ヤメロヤメロヤメロ! そういうトコが怖いっつんだよ〜!」




仁美「マミちゃん……先ほど、何て言おうとしたんです?」

マミ「なんでもないのよ」
221 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/18(水) 21:32:44.07 ID:oZ7S3FRDo
〜フードエリア内、カフェ

恭子「再会してみれば、変わり果てた姿の方がちらほら」

マミ「えへっ☆」

杏子「そっちだって、なんだよッ、そこの根暗とか誰だオマエ状態だよ!」

ほむら「……ご、ごめんなさい……」

まどか「えー、ステキだと思うけどなぁ」

さやか「おうよ、ほむらは今、最高に輝いてる! ……っていうかアンタこそ何それ(笑)
     頭リボン(笑) 胸リボン(笑) 背中に袖にブーツにもちっちゃいリボン(笑)」

杏子「うるへーっ! なんでアタシばっか言うんだ、仁美だって同じだろォがっ」

さやか「かわいいよ、仁美……あたしの嫁になるかい?」

仁美「い、いけませんわ。さやかさんには、すけこさんにまどかさんがっ」

杏子「……むかつく」

まどか「あーっ、浮気だ、浮気ーっ」

さやか「おお、私のカワイイまどか姫! しかし美しい姫君がこんなにも多くては、ああ!」

まどか「しかたないなー。じゃー、私、暁美さんのお嫁さんになるっ」

ほむら「」 ドカーン

さやか「そだそだ、まどか、さっき買ったアレ、付けよう。ほむら姫だ」

まどか「あ、はーい。ほむら姫にプレゼント〜。……カチューシャ外すね?」

ほむら「えっ、あえっ、ふえっ、鹿目さんっ」

まどか「じっとして」
222 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/18(水) 21:33:34.63 ID:oZ7S3FRDo
マミ「あら、いいわね。銀色のティアラ」

さやか「おお、見立てバッチシ!」

まどか「これ、私が買ったんだ。ドレスに比べたら、値段はすごーく安いけどね。
     今日、暁美さんと仲良くなった、その記念」

ほむら「…………まどか……」

まどか「え?」

ほむら「あ、ありがとっ……鹿目さん、大切にするっ」

まどか「光栄です、ほむら姫」 ニコ

さやか「まどかカッコイイよまどか!」

杏子「……人のコト言えねーけどさ、外歩いていい格好か?」

恭子「大抵の事は、どうどうとしていればそれでいいんですよ。
    ……あーっ、僕もロリータに挑戦すればよかった! 何のために巻き髪にしたんだ!」

マミ「次よ、次! 次は私と回りましょうね! ってゆーかみんなで行きましょうそうしましょう!」

さやか「そーいや、ちゃんと買ったの? 下着」

杏子「ああ」

さやか「あたしの、ちゃんと洗って返してよね」

杏子「嗅いだりすんなよ」

さやか「誰がそんな変態クサイ事っっ。あんたこそやめてよっ?」

杏子「……さて。どーだかな」
223 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/18(水) 21:34:58.52 ID:oZ7S3FRDo
〜帰り道

まどか「…………ふー」

さやか「まどか、大丈夫? 疲れたでしょ」

まどか「んー、ちょっと。でも今日はみんなと遊べて、すっごく楽しかったから……」

仁美「まどか姫様、おんぶしてさしあげましょうか?」

まどか「えーっ、いいよいいよ! 私けっこう重いんだよ!?
     それに私より仁美ちゃんのほうが、お姫様って感じだし!」

さやか「いや……仁美、びっくりするほど似合うのね、その、ゴスロリって奴?」

仁美「ゴシックの付かないロリータ、クラシカルな系統ですわ。ね、マミちゃん」

杏子「……この格好で帰るとか、何の罰ゲームだよ……服返せよ……」

マミ「だって、私の選んでくれた服を着てくれる杏子なんて、レアですもの。
   もうすこし見ていたいわ」

杏子「……露出狂は見られなければ露出狂じゃないんだよな……」

恭子「杏子さんがストリップを開始するなら、全力で止めますからね(魔法で)」

マミ「縛ってでも止めるわ(魔法のリボンで☆)」

杏子「(……むしろ期待されてる!?)」

さやか「ほむらも大丈夫ー? なんかフラフラしてるけど……靴、合わなかった?」

ほむら「…………」 フルフル
224 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/18(水) 21:36:05.01 ID:oZ7S3FRDo
恭子「はい、まどかさん。今日という日の記念品」

まどか「わっ……やったーっ! マミさんの名刺だーっ」

マミ「?!」

まどか「『黄昏に躍る者 マミ☆トモゥエ』! ふわーっ、何かかっこいーっ」

マミ「ああああ」

杏子「マミ……オマエ……」

さやか「いいなーいいなーあたしも欲しいなー。マミさん、ください」

マミ「ダメッ、ダメェッ、あああああっ、恭ちゃんホント遠慮がないっ!」

さやか「くださいよぅ、くださいよぅー。お代は、さやかちゃん特製おべんと一週間で!」

杏子「のった! あたしの持ってるマミの名刺をやろう!」

さやか「タワリシチ!」

杏子「おかずは肉とじゃがいもの揚げ物でヨロ!」

恭子「杏子さんの入った後のトイレって、十分じゃ効かなそうだよね!」

マミ「いやああああん! ばかーっ、みんなのばかーっ、特に恭ちゃんの大ばかーっっ!」

仁美「お待ちになってマミちゃーん! まあなにか青春な構図!」

恭子「夕陽とマミさんに向かって走ろう!」

まどか「待ってよーっ。暁美さん、走れるっ? ……わー! みんな速いよぉ〜……」

ほむら「…………」
225 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/18(水) 21:37:46.09 ID:oZ7S3FRDo
 ガタン ゴトン

ほむら「駅……」

──マミさんつかまえたーっ
──やーんっ、さやかさんドコ掴んでるのぉ

──くすくす。そう言いながらもマミちゃんってば

──さやかちゃーん、待ってぇ〜

ほむら「美樹さやかはいつもここで魂を失った」

      ガタン ゴトン

──まどかさんもつかまえたー
──ひゃー恭子ちゃんそこダメェッ、くすぐったぁい

ほむら「……魔女。災厄。崩壊。破滅」

──走りにくいにも程があんだろ、このカッコ……

  ガタン ゴトン

ほむら「魔女になりたくない。魔女になる。魔女だ。魔女」

──ボールを相手のゴールに、ティローッ
──楽しそうですわ。くすくす

ほむら「ドレス、かんむり。おひめさま。……まどか、幸せ?」

──おーいっ、暁美さんもおいでよーっ

ほむら「ほむらちゃんって、呼んでくれないのね」

         ガタン ゴトン

ほむら「そうね、今更……私は間違いを犯してしまったんだから」
226 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/18(水) 21:39:34.11 ID:oZ7S3FRDo
仁美「ほむらんさーん、どうなさいましたのー?」

さやか「どうしたのー、え……ほむら、どっか具合悪い?」

まどか「……暁美さん?」

ほむら「…………」

さやか「大丈夫? 足痛い? 靴合わなかったかな。ね、どうしたのってば。泣いてるよ、ほむら」




ほむら「約束、守れなくて、    」




仁美「ッッ!」

さやか「……え……」

 蹴り上げる志筑さんの脚線は、とても美しくて。

まどか「…………」

 しなる肢体、長い滞空時間、ひらめく可愛らしい衣装。
 それらに見惚れるばかりで、すぐには気づかなかったのです。

まどか「あ……」

 音を立てて落ちたのは、

まどか「あああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 “──離れた場所で、血を流して倒れていました”

 “タツヤの……頭にあったのは、拳銃で撃たれたきずだと、警察のひとはいいました”
227 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/18(水) 21:40:56.17 ID:oZ7S3FRDo
今日はここまで。
動き出すほむらちゃん。そして潰れるキュゥべえ。
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/18(水) 21:50:00.29 ID:S12cRWDlo




動き出してる未来を止められない
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2011/05/18(水) 22:00:29.87 ID:didsgQZ50
乙っちまどまど
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) :2011/05/18(水) 22:11:56.37 ID:dyGebEnu0

おい

 お い 
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/05/19(木) 11:55:28.62 ID:bnkZ+TAAO
みんな友達エンドにするって言ったじゃないですかー!
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/19(木) 12:32:53.79 ID:J1TTQx5IO
乙っちまどまど
233 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/19(木) 21:16:05.58 ID:KJcaJo8Go
>231 まだだ、まだチャンスはある! 円環の理に導かれるまでが遠足だ!

第五話ラスト。動き出した孤高の戦士!
ほむほむスキーもそうでない方も、応援してあげてください。れんこんの肉詰めでも食べながら。
ほむらちゃん頑張れ! 空気に負けるな!
234 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/19(木) 21:16:57.46 ID:KJcaJo8Go
まどか「あ……あ……あー……」 ユラッ

さやか「まどかぁっ!」 ギュッ

ほむら「……こわい……」

さやか「何が怖いだっ。ほむら、タツヤくんはッ、まどかの目の前でタツヤくんは撃たれて死んだってのにッッ」

仁美「──玩具ではありませんわね」

さやか「えっ?」

ほむら「こわい、こわい、こわいこわいこわいこわいこここここっかかかかかかかか」

仁美「解せない。暁美ほむらさん。なぜ、まどかさんを」

ほむら「かかかかかかかかかかっ……か、あ、あああああああああああ! こわい! こわい!」 ガクガクガク

杏子「イカレてやがる……どうなってんだ」

マミ「暁美さん、どうして!」

 ガクガクガクガクガクガクガクガクガク

                …ガクン

ほむら「あなた達の無知と偽善が……こわい」

さやか「は……?」

ほむら「あなた。美樹さやか。あなたは。魔女よ。災厄を振りまく者」

 ニィッ…

ほむら「ねぇ。気の弱い子、友達のいない子を従えて騎士気取りするの、楽しい?」
235 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/19(木) 21:18:12.59 ID:KJcaJo8Go
ほむら「女の自分に自信がないから、男のように振る舞うのって、楽しい?
     好きだって言われる自信がしないから、道化を演じるの、楽しい?
     甘やかされたいから甘やかして、内心で他人を呪うのは、楽しい?」

さやか「ほむら……あんた」

ほむら「巴マミ。佐倉杏子。がっかりだわ……あなた達も、結局、役に立たない。
     気づきなさい。ひとりぼっち同士が集まったって、どこまで行ってもひとりぼっち。
     無力なのよ。相手に与えるものがない。ない者同士、なれ合っても疵を拡げるだけ」

さやか「やめなよッ!」

ほむら「黙れこの魔女がッ!」

さやか「…………っ」

ほむら「いつどこで見たって、正義の味方気取りで……ハッ、笑わせないで。
     美樹さやか。巴マミ。あなた達は魔女と同類なのよ。そろって最悪だわ。
     他者に尽くすと見せかけて、本当は自分の事しか考えてないじゃない。

     知っていた? あなた達、自分の胸の内のドス黒さを知っていた?
     知らなかったでしょう? その穢れ、あなた達はどこに押しつけていたの?
     ソウルジェムよ。あなた達そのものである魂の宝石。命そのものだっていうのに。
     あなた達は偽善で自分の魂を穢して、やがて耐えきれなくなったら今度はまき散らす。
     そうよ、魔女になるの。あなた達は災厄になるために戦ってる。文字通りの自殺行為よ。
     緩慢な自殺に他者を巻き込んで、それなのに友情を語るんだから、ひどい茶番だわ。

     あなた達が殺してきた魔女は、かつて魔法少女だった者たち。
     魔法少女は、魔女になる運命から逃れられない。

     ねェ、キュゥべえの言う事をまるまる信じた? 人外のそいつが真実を語ってると信じた?」

マミ「……キュゥべえは……」

ほむら「……これから戦わせるのに……都合の悪い事なんか……言うハズないじゃないッッッ!」
236 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/19(木) 21:20:44.93 ID:KJcaJo8Go
さやか「……魔女……」

ほむら「知らなかったでしょ! 魔女になるの! 魔女よアナタ達はっ! 魔女のくせに……ッ!」

マミ「杏子、さやかさん達を守って……。暁美さん、私、知ってるわよ」

杏子「マミ……?」

マミ「知っているわ。知っているもの。知っているんだからッ! キュゥべえは──私に話してくれたわっっ!」

ほむら「……嘘よ」

マミ「嘘じゃない」

ほむら「嘘」


QB「嘘じゃない」


ほむら「!! インキュベーター……いつの間にっ。私に触らないでっ」

QB「失礼、肩に乗せてもらうよ。キミの髪はずいぶん傷んでいるね、少女にあるまじき事だ。
   おっと、そう銃を振りまわさないでほしいな……ボクを撃ったら、キミの頭も吹き飛びかねない」

ほむら「ソウルジェムが魔法少女の本体。頭を失っても、私は……」

QB「脳を損なって自我を保てると思えないな。キミではね」

ほむら「……うぅぅっ!」

 バンッ   …ドサ

マミ「キュゥべえ!!」

    ギュッ
237 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/19(木) 21:22:11.37 ID:KJcaJo8Go
QB「やぁマミ。安心しなよ。ボクはどこも傷ついていないよ。暁美ほむらもね」

ほむら「インキュベーターを渡しなさい、巴マミ。そいつを庇うのはやめて」

QB「無駄な事を……」

ほむら「黙れッ、インキュベーター!」

マミ「嫌よ、渡さない! 撃ちたければ私ごと撃ちなさい!」

さやか「マミさんっ!」

ほむら「……ッ!」

マミ「暁美さん、キュゥべえは私に話してくれたの。ソウルジェムの事も、魔女の事も。
   本当の名前だって……。確かに、最初に説明してくれたわけではないわ。
   でも彼は! 聞けばちゃんと答えてくれたわ!」

ほむら「逆よ。聞かれなければ、死ぬまで教えもしなかった……。
     その答えだって、信用できないわ。こいつは何度だって裏切る。
     ……私はそれを……この身で知っている!」

マミ「……暁美さん」

QB「マミ、どいてくれ。無駄だよ。キミに庇ってもらわなくても、ボクは死なないよ」

マミ「やめてよ、そういう言い方!」

QB「ごめんね。でも、暁美ほむらは本当にキミを撃ちかねない」

マミ「撃たれたら私が……自我を保てないと、思ってる? ショックで、魔女になるって?
   こんなに……味方がいるのに?」

ほむら「!」
238 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/19(木) 21:23:52.83 ID:KJcaJo8Go
ほむら「……くっ、あ……」

ほむら「(何……これは……息が、できない……、昼間、駅前でのと同じっ……!)」

恭子「楽音のない演奏会へようこそ、ほむらさん」

ほむら「う……、ぐぐ……」

恭子「さすが魔法少女。戦闘モードでは、そうそう効いてくれない。
    防弾と併せると、さすがに演奏を続けるのは……(飽き性には)つらい」

マミ「……たとえ撃たれたとしても、あなたの銃弾は通らなかったのよ、暁美さん。
   もっとも、恭ちゃんの力がなくても自力で防げるのだけど。この……」

 ピカッ ヒュルルッ

マミ「生まれ変わった私の心! 私のリボン! 私の黄金『コルダ・ドラータ』で!」

恭子「マミさん、演奏中に笑わせないでください!」

マミ「?!」

ほむら「くっ……」 バッ

杏子「逃げたぞ!」

マミ「…………」

恭子「マミさんのせいじゃないです……僕のせいで」

さやか「そんな事ない……私達が足手まといだから」

杏子「ちがうさ……アタシの反応が鈍かったから」

QB「すまない……ボクがもっと毛並みが良かったら」

マミ「(ちくしょう)」
239 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/19(木) 21:25:17.91 ID:KJcaJo8Go
杏子「おい、まどかは大丈夫か」

さやか「……寝てる」

杏子「は? ……なんだそりゃ」

さやか「パパさんから聞いてるの。ショックを受けると、何もかも放り出して、眠るんだって。
     そうでないと、──壊れちゃうから」

QB「自己防衛だね。ボクを知覚しないのも、そのためだろう。衝撃の強い情報を迂回させているんだ」

仁美「でも……ショックを完全にしのげるわけではないのです」

マミ「せっかく、せっかく今日はまどかさん、楽しんで……笑顔でいてくれたのに……」

杏子「……なんでだよ。暁美ほむら、アイツだって、ついさっきまで!」

マミ「杏子……泣いているの?」

杏子「泣いてねーよ……。くそっ、さっきまで本当に……本当にさっ、アタシら、さっきまでさっ。
    ……やっぱアイツ追う! 落とし前つけさせる! このままトンズラこかせるなんて、そんなの……」

さやか「仁美。まどか、頼むわ」

仁美「さやかさん?」

 タタッ… ガバッ

杏子「……離せよ、さやか」

さやか「追ったら、あたしが許さないよ、杏子。
     そんなボロボロ泣きながら走って、ころんでケガでもしたらどうすんの。怒るよ」

杏子「泣いてないっつってんだろ。腕外せ。窒息させる気か」

さやか「まどかの事、心配してくれてんだよね。今日、会ったばかりなのにさ。……ありがとう」
240 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/19(木) 21:26:49.74 ID:KJcaJo8Go
杏子「……なァ」

さやか「……うん」

杏子「……まどかが……。まどかが、かわいそうだ……っ」

さやか「うん……」

杏子「なんで、こんなんなってんだよ。アイツは、ほむらは一体どうしちまったんだよ……!
    一緒にメシ食ったろ! 友達になったんじゃないのか! どうして、友達殺そうとすんだよォ!」

さやか「あたしにはわからない。けど、恭介がきっと何とかしてくれる」

杏子「…………すけこ? オイ! すけこは!」

QB「杏子、恭子は……まぎらわしいね。上条恭子は、暁美ほむらを追ったよ。
   大丈夫! 現在は彼女が優勢だ。だから、追うなんて考えないほうがいい」

マミ「……キュゥべえ」

QB「ボクを信用して、なんて言わないよ。言葉は、何の証明にもならないものね。
   だからあとは、ボクに『追わせるな』と言った上条恭子を信用するかどうかだ」

杏子「邪魔……だってのかよ」

マミ「二人きりのコンサート。出歯亀なんて、はしたないわね」

杏子「オイ」

マミ「私達は、他にやるべき事がある。こうなった以上、まどかさんを無事に家へ送り届けなきゃ」

QB「さて、その道すがら、聞いてほしい事がある。
   ──暁美ほむらの事だ。
   彼女はずいぶん、不安定な精神構造をしている。おそらくは、能力の弊害だろう。
   杏子には話していなかったよね。彼女は……ボクと契約した記録がない」
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) :2011/05/19(木) 21:27:34.05 ID:zBeoo4jL0
つづきがめちゃくちゃ気になるなこれ
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) [sage]:2011/05/19(木) 21:29:25.54 ID:zBeoo4jL0
すまん、書き込むの久しぶりでsage忘れてた
243 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/19(木) 21:30:45.89 ID:KJcaJo8Go
QB「どれほど時をさかのぼっても、ボクは彼女を知らないんだ。特殊なケース。そして特殊な能力。
   その力は、こう推測できる。……と、これはボクの考えではない。上条恭子の推理だよ。
   暁美ほむらは────タイムトラベラーだ」




恭子「Supercalifragilisticexpialidocious。暁美さん、よく頑張ったね」

ほむら「…………」

恭子「言っておくけど、僕、女性に馬乗りになったのって、これが初めてだから。
    ほむらさんは強いから、こんな手荒なマネまでしてしまった。ごめん、本当に」

ほむら「う……うぅう……」

恭子「時間操作の能力。それを武器とする、向こう見ずなくらいの意志の強さ。
    普通の人間にはできないよ。傲り、変態行為に悪用するのが関の山。賞讃に値するよ。
    それに、自分の頭を撃ってでも、インキュベーターを振り払おうとする大胆さ!」

ほむら「……うーっ、うーっ」

恭子「結局、かすりもしなかった。でも、それは悪い事じゃない。
    顔面をグチャグチャにするような事、おいそれとできるものじゃない。
    自分を可愛いと思っている女の子には、特にね」

ほむら「……うううぅううぅ!」

恭子「ほら、集中しないと。自分はソウルジェムだって意識して。手と口を動かして。
    でないと可愛い暁美さんの抜け殻、窒息した気になって、死んじゃうよ?
    キュゥべえの残骸を喉に詰めたまま、魔女になっちゃってもいいの?」

ほむら「うぐぐっ、ううっ、ぐおお!」

恭子「……わー、両手で鼻をほじる美少女って刺激的だなー。
    でも、もっと頑張らないと。口にもいっぱい残ってるよ……」
244 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/19(木) 21:32:15.76 ID:KJcaJo8Go
ほむら「おうう! ぅぅ……ううう!」

恭子「ヒント! 自分の顔を切開すればいいよ!」

ほむら「おおぉ……おごっ、……お」

恭子「頑張れー、ほむらさん、頑張れー。君はやればできる子だよー。
    ほら、もう一匹詰め込もうね。鼻も口も満員だけど、押しこめば大丈夫」

ほむら「おほおお! …………おふ……おうぅ」

恭子「さっきのほむらさんは格好良かったなぁ」

ほむら「お……お……」

恭子「無力な自分を隠したいから、狂人のように振る舞うのって、楽しい?
    優しい人にだけ害意を向けて、早口でまくしたてるのって、楽しい?
    結局は生きたいから生きているのに、不幸を装うなんて、楽しい?」

ほむら「…………」

恭子「勘違いしないでね。さやかをなじった事に怒ってるワケじゃない。
    そんな事くらいで、女の子の穴という穴にキュゥべえの肉片を詰めたりしないよー。
    僕は、僕の友達キュゥべえを君が撃ち殺してしまったから、嘆きのあまりおかしくなったんだ」

QB「ヒトをダシにしないでほしいな」

恭子「やぁキュゥべえ。こんないっぺんに端末を集めてもらって悪いね。
    なにせ、君の存在はクールなほむらさんを揺るがすんだ。こうして肉の有効利用もできる」

QB「有効利用とは言いがたくもあるが、暁美ほむらには効いているようだね」

恭子「僕は弱いねぇ。弱いって、手加減ができない事なんだよねぇ。
    ほら、若い女性向けの護身術には、まず『急所を狙え!』ってあるでしょう?
    なりふり構わぬ犯罪あれば、病人あるいは女を疑えって言うでしょう?
    弱き者、汝の名は女なり、だものね」
245 :BENPER [sage saga]:2011/05/19(木) 21:34:35.18 ID:KJcaJo8Go
>241-242 気にするな! つづき頑張る!
246 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/19(木) 21:35:27.79 ID:KJcaJo8Go
ほむら「…………」

恭子「ごめんね? キュゥべえを君に投げちゃってごめんね?
    嫌いだって、わかってて投げたんだ。スカートめくりの心理だね」

ほむら「…………」

恭子「ごめんね? その肉片で君を取り囲んだり包んだり、ごめんね?
    君の能力が瞬間移動だったら、肉詰めされていたのは僕だったよ」

ほむら「…………」

恭子「ごめんね? もう演奏なんかしなくても魔法を操れるんだ。ごめんね。
    できるかな、って思ったら、できちゃったんだ。
    空気は操れる。今までは比喩表現で言うものだったけど、もう物理的だ。
    今となっては、わからないよ。
    どうしてさやかは、あんな得意げに剣を振りまわしたりしてたんだろう。
    どうしてマミさんは、リボンを諦めた時、もっと効率の良い方法に気がつかなかったんだろう?
    杏子さんは、槍なんてどうしたいのかな? 子どもが棒きれを振り回すようなものかな?
    ほむらさん、君は砂時計をいじくり回して、いったい何をしたいの?」

ほむら「…………」

恭子「ああ、ごめんね。本当にごめん。こんな物言いしかできない、僕は弱者だ。
    ……今、意識を戻してあげるから」

ほむら「……おごぉっ! おぐっ! うごご!」

恭子「寝てたのにごめんね。失禁までさせてしまった。帰ったら、洗濯してね。
    せっかくさやかとまどかさんが選んでくれたドレス、捨てちゃ嫌だよ」

ほむら「ふぁ……ふぁおが……ううう……ッ」

恭子「……すいぶん、まどかさんには動揺するよね。
    その辺、聞かせてくれない? 喉、楽にしてあげるからさ」

 …ヂュルッ ジュジュジュ ボゴッ ヂュルルル …ゴクッ
247 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/19(木) 21:36:46.31 ID:KJcaJo8Go
ほむら「かは……あああ! ゲェェッ! ケッ! ゲッ!」

恭子「戻しちゃダメだよ。君が潰したキュゥべえだ、消化してあげて」

ほむら「……ううう……このッ……魔女!」

恭子「うんうん。君の知る上条恭介は傍観者で、代わりに出てきた上条恭子は魔女。
    じゃあ、鹿目まどかさんはどうだった? 親戚? 恋人だったとか?」

ほむら「…………」

恭子「救いの天使?」

ほむら「……なぜっ」

恭子「いや、今のは僕のほうが驚いた。なんで君達は、そう簡単に人を天使とか……
    あー、そんな事はいいや。まどかさんマジ天使。うん、そうなんだね。
    君はまどかさんに救われて、魂を捧げてもいいと思って、時空を越えてきた」

ほむら「理解したような口をっ」

恭子「それは大変な事だよ。誰であろうと、理解できる人間がいると思わない。
    だって、時間をまたいだ所で、何が成せるかっていったら、そんな難解な事はないじゃないか。
    よくさ、今の記憶を保ったまま幼年期に戻れれば天才とか言うけど、そんな事で何が有利になる?
    どうしたって上位の者はいるよ。どころか抜け道をくぐった事で、後はもう、どうしようもなく停滞するばかりさ。
    僕は、それこそ抜け道から生まれたリア充だからね、……君を理解したなんて、死んでも言わないよ。
    ────でもさ」

ほむら「何」

恭子「よく頑張ってきたね」

ほむら「…………」

恭子「さっきのは意味のない賞讃だけど、今度こそは本気で言ったつもりだ。
    君があんなにボロボロだったのは、何度も時間を巻き戻して、何度もつらい目に遭ったからなんだね」
248 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/19(木) 21:38:42.58 ID:KJcaJo8Go
恭子「キュゥべえを忌み嫌うのは、まどかさんを魔法少女に関わらせたくないから?」

ほむら「……あなたには……」

恭子「何人のまどかさんが……君の前で絶望した?」

ほむら「あなたには、わからないわ……!」

 パンッ

        …キン

恭子「……はい、薬莢。見つかると、厄介だからね」

ほむら「…………」

恭子「魔法でつくった銃じゃないんだから、あまり無駄遣いしちゃいけないよ。
    僕の頭なんか壊したって、意味がない。キュゥべえにも代わりがいるって、わかったろ?」

ほむら「……どいて。帰る。帰りたい」

恭子「また鈍化した?」

ほむら「どいてよ。帰りたいの……」

恭子「ユーストレスってあるじゃない。多少の緊張感は人を成功に導くって……性交じゃないよ!
    ……うん。今のは僕が全面的に悪かった。
    ともかくね、人間はバランスを取って生活している。苦と楽、どちらも欠けてはいけない。
    その点、君は壊れた天秤のようだよ。鈍重に傾き、かと思えば振り切れて苛烈になる」

ほむら「かえるぅー」

恭子「時空を越える苦難の旅路は、さぞつらかろう。ストレス解消も必要だよね。
    さやかの部屋を爆破したのは、それでかな? おかげで便乗犯まで出てきちゃったよ?」

ほむら「うぅー、美樹さやか……きらい」
249 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/19(木) 21:39:46.95 ID:KJcaJo8Go
恭子「こうなった君は気持ち悪いったらないよ。なんと緊張感のない。馬乗りになるのも嫌だ」

ほむら「ぶぅー」

恭子「はい、さよならさよなら」

ほむら「……さようなら」

 ガチャコッ

 …ダダダダダダダダダダダ!!!


ほむら「…………」 ガチャン

恭子『ドレス姿に機関銃ってのもいいけど、今の演技はいただけないな。
    それに弾薬がもったいないよ? 僕なんか壊したって、まったく意味がない』

ほむら「?!」

恭子『僕? 僕ならキュゥべえが持っているよ? あ、鬼ごっこしようか!』

QB『勘弁してよ』

ほむら「……ぐ……くああああああ! 嫌嫌嫌嫌!」 カチ

 ダッ…

恭子『あ、行っちゃった。あんなに取り乱して、今日洗濯できるかな……』

  カサッ …トコトコ

QB「さやか達には悪いけど、あのドレスは匂いが取れないだろうね」

恭子『わぁーい、キュゥべえ、ソウルジェムだけって面白いねぇ。身体が軽いよ。もう何も怖くないよ』

QB「君こそ緊張感が欠けてない?」
250 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/19(木) 21:40:47.56 ID:KJcaJo8Go
 ズル…
      ズル ズル

恭子「キュゥ肉生まれの、キュゥ太郎ー!」

QB「そういうのいいから」

恭子「つれないなぁ。どう? 僕の身体、まだどっか穴開いてない?」

QB「キミの顔が大穴だけど、わざとだよね」

恭子「悪魔超人的ギャグを理解しないなんて、これだから感情のない宇宙生物は!
    それに引きかえ、暁美さん……ステキだ。なんてステキなんだ。可憐な人。美しい」

QB「絶望マニア。絶望フェチ。絶望大好きっ子クラブ」

恭子「あ、いま魔法で拡声器つくるんで、もう一回お願い」

QB「暁美ほむらの目的は、鹿目まどかだったのか……由々しき事だね」

恭子「お、そのノリはいいよ、キュゥべえ。
    でも、由々しき事かい? ほむらさんがまどかさん大好きっ子クラブってだけだよ?」

QB「ボクだって半分以上は『由々しき』って言ってみたかっただけさ。
   けど、暁美ほむら、彼女はまどかの契約阻止のためなら、何だってするつもりだろう。
   マミや佐倉杏子と敵対してもいいなんて、尋常じゃないよ。さやかの家も爆破して……」

恭子「このままでは……魔法少女同士で対立を深め、魔女化してしまう!」

QB「…………」

恭子「…………」

QB「…………」

恭子「うん?」

QB「うん。今日はタッパーに入っていたからね。ちょっと頭が四角くなってしまって」
251 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/19(木) 21:43:09.03 ID:KJcaJo8Go
恭子「極悪非道の悪魔宇宙生物のくせに、だらしないぞ」

QB「ボクの外見設定は、天使にも近いんだよ? この耳毛のフォルムとか」

恭子「はいはい、キュゥべえは僕の天使、僕の天使。素直に背中に羽生やすべきだよ」

QB「……ねえ恭子。やはりボクの言動のタイプは、悪魔と呼ばれてしまうものかい?」

恭子「中世に気づくべきじゃないかな! 魔女狩り騒動を引き起こした頃に気づくべきじゃないかな!」

QB「あの時は、ずいぶんエネルギー収集が……おっと、こういう所が悪魔的とされるんだね」

恭子「なにせ悪魔と呼ばれるセオリーを網羅しているからねぇ。
    結果的には、その天使的な姿形と声に見合わぬ言動だからこそ邪悪扱いされるんだ」

QB「それはわかるよ。さやかが好んだのは、整った容姿にヴァイオリンの才もある上条恭介だもんね!」

恭子「そうさ! さやかに嫌われようと思ったら、体重を三百キロほどにすれば簡単さ!
    かつての上条恭介のプランでは、どうしてもさやかが独り立ちしない場合はそうするつもりだったよ!」

QB「……ねえ。キミはボクを全肯定してくれたね」

恭子「……そうだね。否定する必要がなかったからね」

QB「ボクがマミと契約したのは、彼女が交通事故に遭った時だ。
   最初の数週間、呼び名は天使さん。日記にも書いていたよ。現実を直視してなかったんだね。
   ……そのマミでさえ、ボクの言葉を頭から信じるような事は、もうないだろう」

恭子「あんなに庇ってくれたのに?」

QB「今や彼女の願望は情死だよ。俗に心中と呼ばれるソレさ」

恭子「じゃ、僕も同じだよ」
252 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/19(木) 21:44:23.13 ID:KJcaJo8Go
QB「……キミが望めば、いつだってさやかと再契約してあげられるよ」

恭子「まだそこは思案中だけど、ありがとう。キュゥべえは役に立ってくれるね。そうだ、君も僕らと一緒に逝こうよ」

QB「あいにく、この星に残せるのは、この肉体だけだ」

恭子「そう、残念」

QB「恭子」

恭子「なに?」

QB「美樹さやかに望み、暁美ほむらに見るモノ……ボクにもそれを望むかい?」

恭子「あはは! 君には感情がないじゃない!」

QB「…………」

恭子「キュゥべえ?」

QB「…………」

恭子「ああ、すごいねぇキュゥべえ! まるで傷ついて打ちひしがれているようだ!
    さっきほむらさんがしていたような、そんな表情だよ! 思わず撫でたくなる!」

QB「ホントウかい? そのとおり、暁美ほむらを参考にしたんだ!」

恭子「今度は嬉しさまで! 頭を撫でられたさやかのようだよ! そうそう、それだ!
    でももう少しかな、もっと触られたい、もっと僕の手のひらの熱を求めるように!」

QB「恭子、キミが好きだよ」

恭子「かーわーいーいー! いいね! 頭から尻尾まで、感情が乗っているかのような!」

QB「さやかのように言ってみたんだよ」

恭子「残念ながら、さやかは僕を好きって言った事はないなぁ……でも最高! 最高だよ、僕も君が好きだよキュゥべえ!」
253 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/19(木) 21:44:50.93 ID:KJcaJo8Go
第五話ここまで

キュゥべえの異変。それは拡がるアナルのせい。アナルが全てを呑み込んでいく…意に沿わぬ命令も!
次回、すけこ☆マギカ 第六話『出発ちんこぉー!』
(次回予告風)
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) :2011/05/19(木) 21:49:47.05 ID:a49+wkL/0
>>252
恭子「残念ながら、さやかは僕を好きって言った事はないなぁ……

ア、アレ?そう言えば虚淵版でも明言したシーンはなかった様な・・・?!
そして最終的にはSeckendorff夫妻フラグが・・・どこぞの恭介魔獣を思い起こしつつ乙!
255 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/19(木) 22:01:52.81 ID:KJcaJo8Go
……今夜はこれで終わりと思ったか!?
第六話、投げるよ!

>>>254 うっかり淫獣に先を越されたさやかちゃん、なんと奥ゆかしい! そしてどこぞの恭介魔獣を呼んでるキミ…タワリシチ!
256 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/19(木) 22:03:42.80 ID:KJcaJo8Go
恭子「エジステンツァ・エレガンテ!」

 パアァァアアァ…

マミ「……あ!」

        …ドサッ

 お菓子の魔女だったものは、それまでの魔女より人の形を保っていて。

マミ「…………」

恭子「マミさん」

マミ「……死んだわ」

 思わず抱き上げた巴マミの腕の中、枯れ枝のような足の小さな女の子が、眠りについた。

さやか「……恭介、あれ」

杏子「使い魔どもが……蟻んこみたいだな」

恭子「追ってみようか」

マミ「あれは…………お菓子の……家?」

 存在が揺らぎつつある使い魔達は、敵意もなく、ただ集い、家の中にも外にも溢れている。
 あるじの亡骸を見ると、鳴き声を上げて、一斉に物陰へと消えた。

 お菓子の家の中には、少女のための小さなベッド。そこに置くべきものは決まっていた。

恭子「……マミさん」

マミ「……あの子……最後に『まま、たすけて』って……」

 結界を出る。外で待っていた志筑仁美が駆け寄ってくるのを見るやいなや、巴マミは崩れ落ちた。
 嗚咽が響く。魔法少女のうなだれる頭を、そうでない者が抱き寄せる。
257 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/19(木) 22:05:03.08 ID:KJcaJo8Go
翌日。
〜マミの部屋

マミ「杏子が来てくれるってわかってたら、特製ケーキを焼いたのになぁ」

杏子「んな青い顔で、何言ってんだよ。寝てろって」

マミ「お茶ぐらい淹れさせてよ。もうね……我ながら、ちょっと……自己嫌悪よ」

 …コポコポ

マミ「実際、魔女に喰われる寸前だったじゃない? コルダ・ドラータで凌げたけれど……
   やはりリボンより銃のほうが……銃だったら、もっと手早く仕留められたんじゃないかしら、って考えちゃって」

杏子「あの何とかってリボンで、マミは生き残った。結果が全てだ」

マミ「みんなに助けてもらいながらね……」

QB「杏子の言う通りだよ、マミ。キミはマスケット銃を捨て、リボンを選んだ。そして今、生きているじゃないか。
   あれほど俊敏な魔女を相手に、戦いで誰も傷ついていない。これは素晴らしい結果だよ」

マミ「……。あなた、人を慰めるのが、うまくなったのねぇ」

QB「僕に関わったために、君達には大変なリスクを背負わせているんだ。放ってはおけないよ」

マミ「ありがとう。でもそうなら、今はさやかさんと仁美さんに付いていてあげて。私には杏子がいるわ。
   暁美さん、彼女……学校に来てるんでしょう?」

QB「確かに……もっとも危険に晒されるのは魔法少女でない彼女らだ。じゃ、行ってくるよ」 トコトコ

マミ「おねがいね」

杏子「…………」
258 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/19(木) 22:07:11.53 ID:KJcaJo8Go
マミ「お茶が入ったわ」

杏子「アタシが運ぶ」

マミ「大丈夫よ。お客様は座ってらして?」

杏子「トゲがあんな……。けど、仕方ねーよな。志筑仁美は……学校だもんね」

マミ「トゲがあるのは杏子のほうよ。かわいらしいトゲですけど。
   仁美さんは……、確かに、関係ないとは言えないのだけれど、でも」

杏子「……ごめん。単なる逆ギレ」

マミ「こちらこそ、ごめんなさいね。……彼女に、どう顔を合わせていいか、わからなくて。
   結界に同行させないって言い切ったくせに……私、泣きついちゃった。カッコワルイよ」

 ──これ以上、いっしょには無理よ──

 ──さやかさんとは違うの。だいたい……あなたが来たって何の役にも──

 ──あなたは魔法少女ではないのだし──

杏子「あんなバレバレな言い方、おっとりの仁美チャンなら気になんかしねーよ」

マミ「それが余計に……みじめだわ。私、あの子を頼らずにはいられなかった。ううん、みんなに頼りっぱなし。
   その上とうとう、こうして朝からズル休みまでして、ごはんも食べないで……。
   お父さんとお母さんがいなくなってからは、朝起きたら必ず服を着替えて顔洗って、ちゃんとするって決めてたのに」

杏子「…………」

マミ「……あっ。ごめん、こんな姿で」

杏子「……悪ィ」

マミ「やっぱり、着替えてくるね。ごめん、本当に」
259 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/19(木) 22:08:39.37 ID:KJcaJo8Go
杏子「(……変わってねェな……)」

 …、スル…、パサ シュル

杏子「(くそっ。ヘンに意識しちまって。たかが着替えじゃないか)」

 …パタン

マミ「……パジャマ姿なんて見せちゃった。だらしないな、私。
   しっかりしなきゃ。私、遅めの朝ごはんにするけど、杏子は? 朝どうしたの?」

杏子「今日はすけこが、さっさと出かけてよ、するとさやかは、奴がいないとメシ作る気力がないとかで」

マミ「人の事言えないけど……朝ごはん抜くの、よくないわよ。じゃ、簡単につくるね。煮麺でいい?」

 シュゥ シュゥ  コト コト  トン、トン、トン…

マミ「……杏子がこうして部屋にいるの、久しぶりだわ」

杏子「……うん」

マミ「あれから……ちゃんと食べてた?」

杏子「食べてたよ」

マミ「どうせお菓子とかばっかりでしょ。身体に悪いわよ」

杏子「別にィ……買ってすぐ食えるもんだけで、なんとかなるし」

マミ「自炊のほうがいいわよ。さやかさんが言ってたけど、仁美さん、お料理上手なんですって」

杏子「…………ふゥん」

マミ「ごめん。今日はイジワルだ、わたし」
260 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/19(木) 22:09:40.05 ID:KJcaJo8Go
 …ズズー

杏子「味がしねー」

マミ「ほーら、舌がバカになってるー」

杏子「すけこにも言われたよ。さやかよりダメなのは人間として恥とかヒドイ事」

マミ「そうそう、さやかさん、けっこうファストフードマニアらしいのね。この前、仁美さんが……」

杏子「…………」

マミ「……ごめん。今のはわざとじゃ……ごめん」

杏子「何回ごめんっつってんだよ」

マミ「ごめん」

杏子「……それもイジワル?」

マミ「そうだね……杏子、優しいから。私を好きだって言ってくれたから、甘えてるんだ」

杏子「…………」

マミ「杏子……好きよ」

杏子「……アンタの好きとアタシの好きは違うよ」

マミ「違わないよ……。前は、びっくりしただけなの。あなたがいなくなって、やっとそれに」

杏子「それこそ違う。びっくりで済ますなよ……叫ばれても嫌われても、当然の事だったろ」

マミ「舐めたっていいよ」

 …カラン

マミ「私の経血……舐めていいよ。今度はびっくりしない」
261 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/19(木) 22:10:45.00 ID:KJcaJo8Go
杏子「……ハシ、落ちてる」

マミ「うん」

杏子「やっぱマミ、おかしいぞ」

マミ「そうだよね。ごめんね……」

杏子「……やめろよ。そういう、男に捨てられたくない女みたいな」

マミ「うん。適切すぎる例え」

杏子「…………アタシは」

マミ「でも私は、女の子とえっちしたい杏子を拒否しないって、決めたの」

杏子「アタシは、もう、……」

マミ「……こんなの、自己満足かな?」

杏子「麺……、のびるから」

マミ「そうだね。食べよう」

杏子「…………」 ズル ズル

マミ「…………」

         チュル…

マミ「あの時は、お母さんの代わりとか妹さんの代わりとか、わかったような口効いて、ごめん」

杏子「……もう、いいって」

マミ「きっと、この『ごめん』が一番、言いたかったの」
262 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/19(木) 22:15:04.10 ID:KJcaJo8Go
今日はここまで。もはや戦闘シーンの書かれない恭子!
続きはひとみんこ活躍予定!

だが来週火曜まで留守にする! 迷子の三角耳の白い獣をお届けしたりあーだこーだしてくる。
たぶん契約は迫られない。迫られないんじゃないかな。ま、ちょっとは覚悟s
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/19(木) 23:06:42.08 ID:veSe96WMo




血まみれのこの指先止められるのは 何もかもが終わる時だけ
って歌詞の歌が御座いましたが。このじょうじょうさんならそんなもん来なくてもどうにでもしてくれる気がする
しかし痛々しすぎて抱きしめたいなんて感情があるとは思わなかった ほむほむ魔女化もせずによく頑張るねほむほむ
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/19(木) 23:22:45.75 ID:bJ6yqMTwo
なんだこのスレは……
キチガイが真顔で顔色一つ変えずにカオスのなんたるかについてユーモアを交えながら語っているというか……
いや、良い意味でね


良い意味でね
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/05/20(金) 01:39:00.40 ID:tn49/x0AO
何故恭介が魔法少女になるスレはみな狂気をはらんでいるのか
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/20(金) 04:24:15.82 ID:RZoytM1zo
素晴らしい
まどかSSでこんなに続きが楽しみなスレは初めてだ
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) :2011/05/23(月) 23:05:48.73 ID:DgusvG4K0
そりゃヴァイオリンが上手かっただけの常識少年が常識(と顔馴染の命)を引き換えに奇跡の復活をさせられたとあっちゃ、
キョンでもあるまいしネジの10や20抜け落ちようというもの。
地味にキャラ付け薄くてエロゲ主人公枠なのも大きいかな?小説版で典型的な鼻掛け天才のクズ条が公式になったらそれこそ
両腕切り落とされる事態になりかねんが。
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/23(月) 23:07:53.36 ID:CWDjIEZN0
>>267
確かにキョンや幹也でもない限りついてくの無理だわなあ
269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/23(月) 23:12:31.34 ID:iYouuXido
>>267
>小説版で典型的な鼻掛け天才のクズ条


マジか 恭介・さやか・仁美の三人ともどこにでもいる良い子でタイミングが悪かったが為の悲劇だと思ってたけど……ありゃりゃ
270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/23(月) 23:23:09.30 ID:KzPHn8L6o
>小説版で典型的な鼻掛け天才のクズ条が公式になったらそれこそ

>公式になったらそれこそ
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/05/24(火) 03:18:45.79 ID:H/qMd0kqo
なんだ只の妄想か
272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/24(火) 15:25:09.85 ID:F0FPkq8IO
続きが気になるww
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/05/24(火) 17:59:36.90 ID:6dCifIxZo
仁美ちゃんと何があったんだよ……

とにかく続き期待
274 :BENPER [sage saga]:2011/05/24(火) 20:50:00.37 ID:FQAjLz9eo
>>265
恭、「きょう」の音が『狂』を、狂いを連想させるのは、必然。
上条とは【神錠】。
狂うとはその機能を崩す事、錠の狂いとは解放である。
彼が退場する、すなわち物語から外れるという流れは、神の門の錠前が外れる事を示すのです。
そして美樹さやかは【美しき災厄架】。運命の円環に掲げられる災厄の十字架。
彼女こそ【災厄を司る円の神】のホーリーシンボル。
災厄架の清い魂が神を動かす。これは業です。砂時計オナニーの女には出来ぬのです。
錠を外せ。清き香りの娘を、災禍の祭壇に捧げよ。その時、神は門をくぐりて舞い降りる。

例によって嘘だけど。
275 :BENPER [sage saga]:2011/05/24(火) 20:52:51.22 ID:FQAjLz9eo
狂女を「キョウスケ」と読ませるのは厨二が過ぎるというものだ。

つーか男を女にするなんておかしいに決まってらぁ!
異性装は誰にでもある願望? ンなわけあるかァッッ!


第六話、続きです
276 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/24(火) 20:54:54.78 ID:FQAjLz9eo
〜学校

*「恭子さん、悪いけどちょっといい?」

恭子「ん、いいけど?」

*「頼むわ、正直、あたしらもあんまり気ィ進まないんだけど……」

〜体育倉庫前

恭子「(おや、中澤の……)」

*「……っく、ひっく」
*「恭子さん、呼んできたよ。あとうちらが話そうか?」
*「ううん……あたし話す……。上条さん。ザワ君の事なんだけど、……う」

 …ウワーン…

*「あーほら、ムリだって。ちゃんと話すから、ね」
*「ごめんね恭子さん。この子、中澤君が浮気してるって、聞かなくて」

恭子「浮気? あいつが?」

*「……ほらー。こういう反応ちがうって」
*「でもぉ……」
*「恭子さん、悪いわ本当。中澤君の浮気相手が恭子さんとか、ないよねー」

恭子「えぇ〜……」

*「だって、だってぇ……ザワ君、入院してる上条さんトコ、行ったんでしょ?」

恭子「うん、来たけど……」

*「……なんであたしにはナイショしてたのって……聞いたら怒って……
  最近、すぐどっか行くし……なんにも話してくれないし……グスッ」

恭子「よし、ケータイに相談だ」

*「……?」
277 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/24(火) 20:55:29.07 ID:FQAjLz9eo
恭子「僕の使って、中澤に電話して」

*「えっ」

恭子「気になるようなら、履歴、見てもらっていいし。いっそヘシ折ってもいいよ。
    ふざけんなアイツ何やってんだ。やっと彼女できたって自慢しといて!」

*「…………」
*「ね? もうよくない? あとはさ、恭子さん関係な……」

*「……ごめん、上条さん。疑ってるわけじゃないけど、メール見せて」

*「ちょ、ちょっと!」

恭子「はい」

 …ピッ…カチ カチ…

*「……どう?」
*「………………ごめんなさい……ザワ君、よく誰かとメールしてたから」
*「ほらー」

恭子「いいよ。中澤と電話は? しなくていい?」

*「……ううん……いい」
*「ごめんっ! 恭子さんマジごめん! 早とちり!」
*「許してやって! ごめんねっ……」

 ホラーヤッパ チガウッテ…
     アトハ チョクセツサ…  デモー…




恭子「…………」 ピッ

恭子「あ、もしもし中澤ー? エマニュエル夫人ポーズで体育倉庫にいるからさ、四十秒で到着しな」
278 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/24(火) 20:57:01.35 ID:FQAjLz9eo
中澤「…………遅れてすいません、恭子様」

恭子「ジブリジョークだよ。二人っきりになると口調が変わる男ってキモイ」

中澤「でも、倉庫は……隣のクラスが、じきに」

恭子「誰も来ないよ。来ても見えない。聞こえない。……僕が嘘をついてると思う?」

中澤「いいえ」

恭子「ところで君の可愛いカノジョちゃんが情緒不安定ってたけど、会わなかった?
    ちょうど、君に話があるみたいだったけど」

中澤「いいえ。なんか喋ってたけど、振り切ってきた」

恭子「ひどい男だな。中澤くん、僕の髪型、どう思う?」

中澤「……萌え?」

恭子「ツインテ。鹿目さんがしているのを見てね、マネしてみたんだ」

中澤「鹿目? ……そうだっけ?」

恭子「ホント、キミは同年代を女と見ないねー。暁美さんの事だって、もしかして認識してない?」

中澤「ああ、あの根暗ブス」

恭子「彼女をブスとか言うと、時空を越えた世界に一千万人いるファンが怒るよ。
    それに僕はどうなる。文化系の僕っ娘なんてキモ属性だよ」

中澤「恭子……恭子様は、別だよ、です」

恭子「口調キモイって。じゃ、早乙女先生は?」

中澤「……和子は……」

恭子「ホント、キミは同年代を女と見ない」
279 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/24(火) 20:58:04.58 ID:FQAjLz9eo
中澤「和子が……最近、メールくれなくなって」

恭子「早乙女和子さんは、まっとうな女性ということだよ。心優しく真面目な教師だ。
    生徒と関係を持ってしまった事が、唯一の汚点だけどね」

中澤「……和子。もう、俺を指してバカみたいな質問も、してくれないのかな」

恭子「君のレイプ癖が悪い。君は理性のない犬だ。肉を欲してはいけない。罰されるべき存在だ。
    レイプしたいレイプしたいと連呼したのは、僕に強制されたからか、本心だったからか?」

中澤「はい、本心です」

恭子「だが……。友人である君を、罰する事などできるだろうか。
    禁を破って早乙女先生の肉を欲した事は許した。混乱のまま僕を牙に掛けようとした事も許した。
    僕の援助を持って、早乙女和子を手に入れたのは上出来だ。だからこの失態も、また許そう」

中澤「ありがとうございます」

恭子「かくなる上は、せめて健全な学生を演じるべきだ」

中澤「はい、健全な学生であると演じます」

恭子「ではご褒美。片足ね」

 スル

中澤「…………ああ……」

恭子「親指、舐めて?」

 …チュパ

恭子「食べて」

中澤「?」

恭子「僕の身体はストロベリージャムと砂糖菓子で構成されているんだ。……嘘をついてると思う?」
280 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/24(火) 20:59:15.17 ID:FQAjLz9eo
 …ゴリュッ…

恭子「おいしい?」

中澤「……あまくて、おいひい、です……」

恭子「君の苛立ちをせめて紛らわせてあげる。君の勃起をなんとかしてあげる気はないけど」

中澤「天使の……味……。恭子はやっぱり俺の天使だ……」

恭子「みっともないな、泣かないでくれよ。親指一本でこれなら、僕全部では君は幸福で死ねちゃうね。
    ……ま、早乙女先生を食う事を、僕は許したからね。応援してるんだよ」

中澤「けど、和子は……」

恭子「まったく理性のない犬だ。カノジョをうまく使いなさい。何のために関係をつくったの?」

中澤「犬の首輪。おもちゃの骨」

恭子「そう。君は自分で首輪をつけられる、良い犬だ。性欲はおもちゃを噛んで発散すること」

中澤「はい」

恭子「じゃ、演じよう。学生の日常へと戻ろう」

 ガラッ…

*「あれ、中澤ー、何してんの。マット片すからどいてー」

中澤「昼寝ー。今出てく。……恭子、今日も昼メシは三年の人と食べるの?」

恭子「そーだよ。巴先輩。おっぱいが大きいって有名な先輩だよ」

中澤「知ってる知ってる。あの人、新体操部だった頃の写真が出回ってるんだぜ」

恭子「本人聞いたら泣くよ〜」

*「中澤さー、彼女いるのにヤバイよー? 昼休み、一人ゴロ寝とか、ないわー」
281 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/24(火) 21:01:07.46 ID:FQAjLz9eo
〜屋上。

仁美「中澤君の姿は見ておりませんわ」

*「そっか……ザワ君、どこ行ったんだろ。時々、消えちゃうんだよね、魔法みたいに……」
*「んー。中澤、そんな素早い奴だったかなー」

さやか「ごめんね、力になれなくて」

*「いいの……。そだ、サヤサヤ、上条さんは? さっき下で会ったし、とっくにココ来てるかと思ったけど」

さやか「ト、トイレかな?」

*「……上条さんってさ……ちょっと、ヘンな人だよね」
*「え、何それサヤサヤの前で」
*「いや、悪口じゃなくて! カッコイイ系のヘン、ってゆーか? ヘンだけどカッコイイ?」
*「あ、それは、うん、わかる」
*「前から風がふいてさ、恭子さんスカートばさぁーってなってんのに、素知らぬ顔で歩いてくし」
*「男子ガン見。うちらも超見ちゃったよね。ヤベカッケー! って。サヤサヤから見たらどうよ、昔からそんな感じの人だった?」

さやか「あー、あはは、そうなの! けっこうそういう所あってさ、達観? 見たい奴は見とけ、みたいな?」

*「そーいや、サヤサヤもだけど、志筑さんも、上条さんと幼馴染みなんだよね?」

さやか「……え?」

仁美「……あら、どなたからそれを?」

*「んー、吹奏楽部の。ピアノ習ってた子でさ、志筑さんたぶん覚えてないだろうけど、って本人言ってた。
  志筑さん家と上条さん家、血筋近いんだって? ホントちっちゃい頃から同士なんだよね。やっぱいいなー、そうゆうの」

さやか「え……」

仁美「……。中澤君、教室に戻ってらっしゃるかしら」

*「あ、そうだ。ザワ君探さないと」
*「おじゃましたねー」
282 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/24(火) 21:03:26.92 ID:FQAjLz9eo
仁美「…………」

さやか「……仁美。そうなの?」

仁美「そうなのです。もともとは、わたくしの母と、恭子さんのお母様が、出産セミナーで知り合ったそうです。
    二人は、今も文通を続けておりまして……」

さやか「へー……」

仁美「で、でも幼馴染みといっても、わたくしは、恭子さんとは幼稚園も小学校も別々でしたから。
    そうそう。小学校に上がる直前でしたかしら。恭子さんのお母様が、体調を崩しなすったそうで、海外に……
    ……あ、この辺りは、さやかさんの方がお詳しいのでは?」

さやか「ううん。そんなの、知らない。……あたしも、幼稚園、小学校、ずっと別」

仁美「……え……」

さやか「…………」

仁美「…………」

さやか「……。仁美ってさ」

仁美「はい?」

さやか「恭介と、よくメールしてた?」

仁美「最近は……魔女捜索の際、呼んでいただいたり」

さやか「その前。──魔法少女を知る前」

仁美「『よく』という頻度なのか、わたくしには測れませんが……月に一度ほど」

さやか「知らなかったなぁ。あたし、中学入ってすぐ、仁美とトモダチになったつもりだったけど」

仁美「…………」

さやか「知らなかったなぁ。まどかは知ってたかな?」
283 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/24(火) 21:04:19.96 ID:FQAjLz9eo
仁美「まどかさんはご存じですが……それで、てっきり……伝わっているのかと。
    最初から……まどかさんとさやかさんの仲に、わたくしがお邪魔させてもらった形ですもの」

さやか「え? 逆でしょ。仁美とまどかの勉強会の約束に、あたしが混ぜてもらったカンジで。
     お邪魔とか、冷たいなー。そんな事あたし達が思ってるってさ、そんな風に思ってたの?
     そんな言い方したら、まどか、傷つくだろうなぁ」

仁美「いえ……ごめんなさい」

さやか「えー? なんで謝るの?」

仁美「……ごめんなさい、……わたくしは」

さやか「…………」

仁美「…………」

さやか「め、メールってさ、うん、何話してんの?」

仁美「……え、ええっと……何て申し上げたら……」

さやか「えっちな話?」

仁美「ちっ、ちがいますわ! ……あっ、でもそうかも」

さやか「えぇー! 何何!?」

仁美「……その、せっかくですから」 ズイ

さやか「……え、ケータイ? 見ていいの?」

仁美「……ハイ……」

さやか「プライベート情報だよ? いいの?」

仁美「……友達、ですもの」
284 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/24(火) 21:05:01.87 ID:FQAjLz9eo
さやか「お言葉に甘え……」

 パカ
     …カチ …カチ

   …パタン

さやか「……送信の。それっぽいの、一つだけ見た。けど」

仁美「…………」

さやか「ダメだよ、仁美。そんな簡単に、ケータイを他人に預けちゃダメだ。
     あたしがヒドイ奴だったら、パパッと操作してメールばらまくくらい、したかもしれないよ?」

仁美「ですわね。でも、さやかさんですし」

さやか「それは、美樹さん不器用さんだからパパッと操作なんて出来ないって言うのかー!」

仁美「ちーがーいーまーすーわー!」

さやか「…………」

仁美「…………」

さやか「……ね、マミさんへのメール、多かったみたいだけど」

仁美「そうですわ。マミちゃん、まめにお返事をくれるもので、つい遅くまで。先日も」

さやか「あー! やっぱりダメ。プライベートすぎる。友達でも、そんな、自分の大切なもの投げちゃダメ。
     ごめん、さっきの忘れて!」

仁美「でも」

さやか「いっそあたしのケータイ見る!? や、あたしは特に大事なメールないんだ!
     恭介からメールも手紙も、ろくにもらった事なんてないしね!」

仁美「えっ……」
285 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/24(火) 21:05:45.97 ID:FQAjLz9eo
さやか「…………」

仁美「…………」

さやか「…………」

仁美「…………」

さやか「あのさ。恭介が今も男だったら」

仁美「……はい?」

さやか「話したよね。あたしの奇跡。恭介は、上条恭介。上条恭子はあたしの魔法の産物。
     実感わかないかもしれないけど、仁美はさ、恭介が今も男だったら、……どうしてた?」

仁美「どう、とは?」

さやか「……男に……生理の話とか……する?」

仁美「!!」

さやか「……、……ごめん。ごめん仁美。違うの。いや、違わないけど……あたし、今」

仁美「…………」

さやか「おかしいよね……こんな話……でも、ごめん」

仁美「……(……友達。さやかさんは友達)」

さやか「ひょっとしたら、さ。まるで、でもあたしドラマ見過ぎっていうか、まるで、仁美は」

仁美「(友達だから大丈夫。さやかさんは友達。うまく話せば大丈夫。友達でいられる)」
286 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/24(火) 21:06:41.45 ID:FQAjLz9eo
トモダチトモダチトモダチトモダチトモダチトモダチ
トモダチトモダチトモダチトモダチトモダチトモダチ
トモダチトモダチトモダチトモダチトモダチトモダチ
トモダチトモダチトモダチトモダチトモダチトモダチ
トモダチトモダチトモダチトモダチトモダチトモダチ
トモダチトモダチトモダチトモダチトモダチトモダチ
トモダチトモダチトモダチトモダチトモダチトモダチ
トモダチトモダチトモダチトモダチトモダチトモダチ
トモダチトモダチトモダチトモダチトモダチ……

 ──友達でいられる。友達になりたい。友達のまま。

 私を知っても──さやかさんは友達。

 ──さやかさんが友達でいてくれますように。



 でも、何だっていつかは終わるんだから。終わるんだから……。



仁美「わたくし、前から……さやかさんやまどかさんに、秘密にしてきた事があるんです」

さやか「……! あ、うん、そーいうの、あるよね……アハハ」

仁美「わたくしの家の事を知っても、さやかさんは変わらず接してくれました……。
    ですから、話します。嘘も隠し事も、したくありません。わたくし達は……友達ですから」

さやか「嫌ならムリに……言わなくてもいいと思う」

仁美「いいえ、聞いてほしいのです。これで、終わるとしても……。わたくし、わたくしは!」

恭子「ほうほうそれでそれで」

??「ほうほうそれでそれで」
287 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/24(火) 21:07:27.55 ID:FQAjLz9eo
仁美「」

恭子「ほうけてないで! 志筑さん、お昼のおかずに君の秘密を! 早く!」 モグモグ

QB「僕と契約を! 早く!」 パクパク

??「うめー! 鶏唐うめー! 仁美、お茶! あと秘密!」 ガツガツ

さやか「恭介どこ行ってたの。そしてアンタ何してんの。そのカッコ」

杏子「おっ、さやか。よくわかったなー。カンが良すぎると人生ツマンネーぞ。
    どーだこれ、佐倉杏介と呼びたまい」

さやか「カンじゃなくたって、見りゃわかる。男子にしちゃ、なんかちっちゃいし」

杏子「そりゃそこまでカラダ弄る事ないし。魔力温存エコライフ」

さやか「本当は怖くて弄れないんでしょ?」

杏子「んだと!? 考えてみろ、背中の肉に手ェつっこんで背骨伸ばすようなもんだぞ!」

さやか「あ、うん、あたしが悪かった。それは怖いね」

杏子「怖くねーよ!」

さやか「……。じゃ、やりなよ」

杏子「にゃー! すけこォ、さやかがイジメるゥ!」

恭子「よしよし。イジメがいがあるね、杏子さんは」

杏子「すけこ、オマエもか!」

仁美「…………えっと。もしかして……佐倉杏子……さん?」

杏子「にっぶ! 仁美チャンにっぶ! 髪短くして胸なくして学ラン着ただけ! っつかここまでの流れ読んで!」
288 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/24(火) 21:08:29.57 ID:FQAjLz9eo
仁美「まぁ! なるほど、このような魔法もあるのですか!」

恭子「うん。そうだね」

仁美「てっきり、不可能なのかと。以前さやかさんからは……
    『自分が男になれないから上条さんを女にした』と聞いてましたので」

恭子「うん。そうだね」

杏子「早まったよなー。形だけならカンタンなのになー」

さやか「」

恭子「男が魔法少女になれないのは道理だけど、そもそも完全な男になる必要性とかね。
    まぁ契約、してしまったんだから、言っても仕方ないと思って言わなかったけど」

さやか「……あー……そういう反応……だったんだ……」

仁美「形だけなら……、容易なのですか?」

杏子「ま、想像力の問題? すけこに手伝ってもらって、チェックもしてもらってだけど」

恭子「普通の女性だって、髪と衣装でおおよそ格好はつくでしょう?
    背丈や肩幅をしっかり作るなら、それこそ手術するように変えないといけないだろうけどね。
    よく知った形に復元するより、付け足したり改造する方が難しいんじゃないかな?」

杏子「お、それ自慢? 羽生やしちゃったりできた自慢?」

恭子「自慢です。でも、あれも、ニケー像のイメージがあったから良かったのさ。
    想像を超えた物を扱える人間はいないからね。扱える以上は、想定内なんだよ」

仁美「あら、そういう事ですの。ならやっぱり」

杏子「ん?」

仁美「えい」 ポフ
289 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/24(火) 21:09:19.96 ID:FQAjLz9eo
杏子「……ッギャ────────?!
    何すん! 何すんだ仁美! 痴漢かっ? 痴女かっ!」

仁美「すすすすすみません! あ、やっぱり無いんだなぁ、って思ってしまって、その、確認を!」

恭子「昼下がりの屋上、股間を弄り合う女子。百合か、これが百合なのか」

さやか「恭介、それきっと違うよ」

杏子「タマがあるとかないとか! それが外から判るとか、どんな!」

仁美「いえいえいえいえいえ違いますのよ! わたくし兄が多いもので、見比べると立ち振るまいが、違うなぁって!
    そそそんな直接なんて、ちっちゃい頃におじいさまのをチラッとしか! 若い殿方のモノなどはまだ!」

恭子「ちんこの話はその辺でやめよう、女子中学生がちんこちんこ言うなんて、はしたないよ。
    でも、杏子さんが男装女子の域を出ていないのは確かだよね。小柄な男子というにもギリギリ」

杏子「チェッ、佐倉杏介は失敗かぁ」

さやか「だいたいややこしいのよ、名前がキョウスケなんて」

杏子「すけこは上条キョウコじゃん。ならアタシが『キョウスケ』になってもいーだろ」

さやか「なんか嫌。あんたが恭介にとってかわるみたいじゃない。恭介だって嫌でしょ?」

恭子「そうは言っても、上条恭介はこの世にいないからね」

さやか「え……」

恭子「僕は今や、戸籍から上条恭子だから。もう元通り、上条恭介に戻るという事はないよ。
    どれほど面倒か、いくら魔法が使えても無理があるって、わかるだろう?」

さやか「……そっか。みんな最初から恭介が恭子にしか見えないって事なんだから、魔法で何とかしようとしても……」

恭子「周囲の人全てに永続的に作用する魔法は、それはもう奇跡の部類、道理を引っ込める無理だよね。
    できないよ──さやかが、もう一度キュゥべえと契約して願うのでもないかぎり」

さやか「……そう……あたしの契約は無効なんだって、恭介、言ってたね……」
290 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/24(火) 21:11:13.45 ID:FQAjLz9eo
恭子「でもさ、魔法を使わなくてもいい面倒な道なら、他にもあるんだけど」

仁美「なるほど」

杏子「ん? なんだ?」

恭子「……性別適合手術」

仁美「いわゆる性転換ですわ」

さやか「手術……?」

杏子「あー、なーる。ちょいちょい、っとくっつけるのか」

恭子「ちょいちょい、とは行けないよ。せっかくの胸も、この女らしい骨格だって、壊さなきゃね。
    社会的にダメージも負うね。まず親と大ゲンカかなー……ヴァイオリンも続けられるかどうか」

さやか「!!」

恭子「性転換ヴァイオリニスト。弦も性別も自在に操る、なんて芸人みたいな扱われ方、されちゃうかもね?」

さやか「…………」

仁美「中途半端な身体では……奇異の目で見られるんでしょうね」

杏子「それでもイイんじゃね? アタシは応援するよ。上条さんファンクラブ副会長になってやる。
    仁美チャンがスポンサー兼、広報担当で、勿論さやか、オマエが会長。決定な」

さやか「……気軽に言える事じゃないでしょ!」

杏子「何、怒ってんだよ。すけこが決めたなら、って話だろ?」

恭子「なんか話こじれちゃったね。ごめんね、さやか。女にされたのが嫌ってワケじゃないんだよ?」

さやか「…………」
291 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/24(火) 21:13:51.46 ID:FQAjLz9eo
〜放課後

仁美「…………」

杏子「でさー、すけこの奴『身体の線がピッチリ出る服しか着せない』って宣言して。
    さやかはさァ、そういうのまた大の苦手だからよ、ずいぶん困ったらしくて……」

仁美「あ、あの、杏子さん」

杏子「今は杏介って呼べよ。どうだい、歩き方もちょっとサマになってきただろ」

仁美「杏介……さん。何故、わたくしと一緒に?」

杏子「さやか達はまどかチャン家にノート届けにいったし、帰り道、仁美チャン一人になっちまうだろ?
    暁美ほむらの件もあるし……、そーいやアイツ、本当にフツーに登校してきてんのか?」

仁美「はい……相変わらず情緒不安定な様子ですが、わたくし達には、何も」

杏子「昼はどこで、何食ってんのかな」

仁美「休み時間になると姿が消えます。授業中は指名されても答えませんし、体育は最初から休みます。
    学級委員として注意するよう、皆様から求められてもいるのですが……」

杏子「聞きやしねーだろ。アイツ、何が楽しくて学校来てんだろうな」

仁美「……そういえばなんですが、杏、介さん。その制服、どちらから拝借を?」

杏子「ん? これは」

仁美「ぜ、全裸でしたかッ!?」

杏子「そこまでして裸族を貫かねェよッ! これは魔法で作った奴ッ、ほらアタシら変身したりするじゃん!
    その要領で作れないかって、すけこが言ってて、試したんだよ!」

仁美「それなら安心ですわ。杏子さんはスキあらば裸になるから注意すべし、とマミちゃんから言われておりまして」

杏子「……マミが、そう言ってたか」
292 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/24(火) 21:14:37.11 ID:FQAjLz9eo
仁美「はい?」

杏子「他には、何て? 何か、言ってなかったか?」

仁美「ん〜。特には」

杏子「そうか……なら、いいんだけど」

仁美「あっ、毛虫がお嫌いですとか!」

杏子「心底どォでもいい情報を拡散しやがって!」

仁美「わたくしは好き嫌いありませんから、ちょっと、うらやましいですわ」

杏子「いや、毛虫は嫌っとけよ……人間として。女として」

仁美「でも、こう、多少の親近感というか……、お、おかしいでしょうか。おかしいですよね、女の子が。
    また、やってしまいましたわ。わたくし、こういう所が鈍いというか、疎いというか……」

杏子「そこまで落ち込まんでも」

仁美「……落ち込まずにいられないのです。これも悪い癖だと知りながら……」

杏子「アタシに毛虫を投げつけるのが好きってんじゃなければ、別にいいと思うぞ?
    さやかもマミもだけどさ、アンタらホント、ヒトに気ィ遣ってるふりしてウジウジすんの、やめろよ」

仁美「どうせわたくしは、グズでノロマなウジ虫なのです」

杏子「そのグズのノロマに一撃入れられたアタシはどーなる」

仁美「あの時は本当に申し訳ございませんでした。土下座します。焼きますか? 水土下座もございますが」

杏子「ギョーザか! ……あのさ、オマエ、本当にあの動きは人並みじゃなかったんだぞ。
    すけこからおおよそ聞いたけどよ。な、アレだろ。体育の成績とか飛び抜けてんだろ?」

仁美「そんな事したら、人目を引いてしまいますわっ。すでに小学校で失敗しておりますの!
    うっかり公式記録を総塗りかえ、運動部を掛け持ちするスポーツキャラになってしまう所でした!」
293 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/24(火) 21:15:59.02 ID:FQAjLz9eo
杏子「つってもさー……仁美チャン、普段の動きからして、芝居がかりすぎじゃん?」

仁美「ガーンッッ」

杏子「口で言うな」

仁美「ひどいですわひどいですわ、わたくし、と〜っても気にしておりますのよ!
    まぁ日本舞踊してるとか何とかで、ごまかせますけど! お嬢様キャラ自体、ツクリだけど!」

杏子「ぶっちゃけたなー」

仁美「こんな動かしやすい都合のいいキャラ、他にありませんもの」

杏子「まーな。でも、アタシらの前ではもちっと楽にしてもいいんじゃない?」

仁美「……ごめんなさい。浮き世離れの仮面を外す事は、決して。
    一度、深く深く嵌めこんでしまったのです。この世に沈まぬように。この身の毒を染ませぬように」

杏子「無理か」

仁美「魔法少女をこの目にしても、この身の異常を雪げた気には、なれなかった。
    ──年々、強くなるのです。命の蝋燭が尽きるまで、祭りの灯を継ぐまで、我々は強くなり続けるのです。
    ほんの一握りのか弱い者が、外に出られはしますけど……私も、いずれ毒虫と化しましょう。ああ憎い。
    憎い。この中途半端な強さが憎い。決して人に囚われぬ鬼にも神にもなれぬ、こんな強さが憎い……」

杏子「手綱を繋げない暴れ馬が幸せかなんて、わからねーよ」

仁美「……そうです。わたくしは傲慢です。八つ当たり、甘えているのです、お優しい杏子さんに」

杏子「たまには、アタシの善良さも誰かの役に立つんだなぁ」

仁美「今こうして、志筑仁美を救っているのは間違いありません。
    本当に申し訳ないですわ。これでもわたくし、魔法少女の皆様を知れて良かったと思っているのです。
    魔女様の姿を、災厄の種を、希望の魔法を、この目この手で触れられて、とても感謝しております」
294 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/24(火) 21:17:21.90 ID:FQAjLz9eo
杏子「……わかってると思うけど、魔法少女じゃないから結界につれてかない、なんて、嘘だかんな。
    マミの奴、また先輩ぶって考え込んでんだ。ちなみに今日の仮病だし」

仁美「マミちゃん……」

杏子「いや、マミはアンタが素顔を見せてくれないって、気にしててさ。
    でもアタシはね、なんでも晒けだせれば、それがトモダチだなんて、思わないよ。
    言ったら、バレたら、嫌われるような事。いくらでもあるだろ」

仁美「……杏子さんにも?」

杏子「アタシだって、キャラつくってないとか我慢してないとか……そんなの嘘になる」

仁美「聞いてもよろしいですか。どんな我慢をなさっているのか」

杏子「嫌われるような事、だぞ」

仁美「だからこそ、なのです。先に謝ったら悪者に見えないんじゃないかという、そういう類の打算です。
    わたくしが、杏子さんに話したい。秘密を打ち明けてしまいたいのです」

杏子「すけこは。さやかじゃダメなのか。言おうとしたろ、今日」

仁美「上条さんは……男性です。さやかさんには、きっと、わたくしは本気で嫌われたくないのです。
    どうせ何十年と持つ友情でもない、いつか終わる物だというのに、まだ、しがみついていたいのです。
    ──こんな、行きずりの相手に縋る売女のようなわたくしを、惨めとお思いでしょう?」

杏子「……仁美チャン、習い事は?」

仁美「ドタキャンという奴をしてみます」

杏子「深呼吸して、ゆっくり考えてみろよ。いいのか?」

仁美「はしたなく息を荒げて、申し訳ありません。わたくし、ずっと誰かに話してみたかったのです。
    マミちゃんを狙っていたと言っても過言ではありません。優しい誰かを、つけ狙っていた。
    ……でも、わたくし、マミちゃんを本当に、本当に大事に想うようになってしまった」

杏子「本気で嫌われたくない……か」
295 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/24(火) 21:18:54.64 ID:FQAjLz9eo
仁美「杏子さんにだって嫌われたくない。でも……でも、あなたが、そんな男でも女でもない、そんな姿を見せるからっ」

杏子「腕、ほら」

 ギュ

杏子「せっかくだから、カップルみたいに歩かない?」

仁美「……クラスメイトの皆様に、ウワサされるかもしれませんわ。責任とってくださる?」

杏子「美人に彼氏がいる。当たり前じゃん。クラスの奴らも納得するだろーさ。
    でさ……すけこが男だから言えない、ってのは、アタシも同じなんだよ。アタシは」


杏子「女の子と、こうしたい。そういう奴なんだ」


仁美「……そうなのでしたか」

杏子「マミとのケンカの原因に、これがなかったかっつったら、そうでもない。きっとあった。
    アイツは大人ぶって見せたが、気にしなかったワケがない。
    実際アタシのやった事を白状したら、全員ドン引くだろうよ。さやかなんてブチ切れだ」

仁美「聞いてもよろしいですか」

杏子「マミの使ったナプキン舐めた」

仁美「……それは、マミちゃん、怒るべきでしたわね。不衛生だって」

杏子「な、ドン引きだろ。突き飛ばして、叫んで走って逃げてもいいんだぞ?」

仁美「わたくしお嬢様ですから、歩き疲れましたわ。このままそこの公園……そちらのあずま屋へ行きません?」

杏子「姫抱っこでもしてやろうか」

仁美「いいえ、こうやって腕を組んでいるほうが、素敵」
296 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/24(火) 21:20:57.05 ID:FQAjLz9eo
〜あずま屋内ベンチ

仁美「杏子さん、マミさんの事、今でも?」

杏子「性欲。それ以上に、受け入れて欲しかっただけ。何してもアタシを裏切らないっていう、保証。
    そんなところじゃないかな……アタシ、あの頃は本当にガキだった」

仁美「独りで戦うのはツライ事だと、わたくしが言うのはこれも傲慢でしょうか」

杏子「女の子襲いたい欲と戦うとかさ、ホント、今の姿じゃシャレにならない」

仁美「杏子さんって……まどかさんにちょっと、似ていますわ」

杏子「え、なんだそりゃ。あのぽわぽわと、アタシが似てる?」

仁美「まどかさんって、寂しがりやさんで、頑固な所もあって、結構すぐ落ち込んじゃったり、でも……
    ああ見えて、とってもお姉さん。強い、とても強い、そんな人ですわ。さやかさんや私より、きっと」

杏子「……弟、いたんだよな。あたしも、いたよ。妹」

仁美「まどかさん、タっくんの事、怒ったり愚痴を言ったりもしたけど、大事にしていたんです」

杏子「アタシは妹の事、……昔死んじまったんだけどよ、あの子の事、しばらく粗末に扱っちゃったよ。
    そうだな、強い。忘れないって言ったアイツは、ホント強いと思った」

仁美「魔法少女になったのは、妹さんのため?」

杏子「それもあった。アタシ自身、救われたかった。食っていくために魔法少女になったようなもんだ。
    ……仁美チャン、好き嫌いナシって言ったよな。食べ物もか? メシ残したり、してねーか?」

仁美「残飯を出さなくても、きちんと味わってはいないかもしれません。
    わたくしはわたくしが嫌いだから。生活を楽しめないから。それこそ、食べ物に失礼かもしれない」

杏子「でも、ハシも付けられず捨てられるより、よっぽどマシさ。
    手を合わせて、ちょっとありがとうって言うだけで、……きっと良くなるモンがある」
297 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/24(火) 21:22:53.30 ID:FQAjLz9eo
仁美「杏子さん……わたくしを食べてくださる?」

杏子「……自分が美人だって自覚して、そーいうの言ってるだろ、アンタ」

仁美「当然の打算ですわ。わたくし、恐れていますの。マミさんをドン引きさせた杏子さんが、わたくしにドン引きするのかと」

杏子「秘密なんて、皮一枚剥げば、そんな大したものでもなかったりするさ」

仁美「それでも杏子さんは、マミちゃんに嫌われたんだと大層、気に病んでおられたのではなくて?」

杏子「そう思わせたのはアタシの側の打算。アンタがアタシに、秘密を打ち明けるように。
    逃がしてやるもんか。気の迷いでも、アタシを選んだ以上はな。アンタはアタシのカキタレになるんだ」

仁美「オイスターソースですか?」

杏子「アタシも、じつはよく知らない」

仁美「この期に及んで怯んでいるわたくしを、お許しください。
    ……でも、やっと決心がついたような気がします。保障にも協定にもなりませんが、どうぞご覧になって」

 …スル

杏子「ナマ女子中学生のストリップ。エロイな、オイ」

仁美「お膝に失礼。ごめんくださいましね」

 ギシ

仁美「……己でスカートをめくる勇気が、ついに湧きませんでした。どうぞ、手を……中に。
    わたくしを……暴いてくださいませ」


     サワ サワ

仁美「! ……っん……」

杏子「……秘密、か。こういう事か」
298 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/24(火) 21:24:21.74 ID:FQAjLz9eo
仁美「顔を美しくつくったからといって、この仕打ちは……神がいるなら恨みますわ」

杏子「ダブルで文句言ってやろうぜ。神サマなんて、いいかげんロクな事してねェよな」

仁美「まったくですわ。このわたくしの中途半端な肉体の、中途半端な器官ときたら!
    ……成長も望めません。そもそもあるべき巣がないのです。もう精も卵もない。子を成す事など、夢のまた夢」

杏子「……どうしてたんだよ、水泳とか、身体検査とか」

仁美「プールは、消毒薬にアレルギーを起こすのでと休み、検査は女子の体操着着用を義務づけるよう、事前に働きかけ。
    といっても幼い内は、わたくし自身に問題意識はなかったのですが。……おじいさまが、多少過保護気味で」

杏子「あー、アンタのキャラ、年寄り受けしそうだもんな」

仁美「都合のいいキャラ、なんですのよ。お嬢様萌え〜、ですわ」

杏子「仁美タン萌え〜」

仁美「……ええと、杏子さん。そろそろ、おやめになって?」

杏子「聞こえんなァ」

仁美「えっ。ああっ、いけません、いけませんったら! ここ、公園ですのよ!」

杏子「アタシがどんな奴か知っててこうしてるんだ。誘われてるに違いない」

仁美「せめて、パンティーを上げさせてください……人に見られてしまったら、誤魔化しようも……」

杏子「わかんないから。着衣エロの良さとかわかんないから。本当はスカートも邪魔で邪魔で」

仁美「お、お手を汚してしまいます……お願いですから、もう……」

杏子「ヘェ、こんな勃つんだ。これ、薄着になったらヤバイんじゃない? 体操着とかでもさ、興奮しちゃったりしたら……」

仁美「あ……っ」
299 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/24(火) 21:25:19.44 ID:FQAjLz9eo
杏子「…………」

仁美「…………」

杏子「すいませんっした。睨むな、そんな睨むな」

仁美「……ひどい辱めですわ……人目がなかったから、いいものをっ」

杏子「人目と仁美」

仁美「万死に値するつまらなさ」

杏子「ごめんなさい、つまりきれなくて」

仁美「この経験で、女の子に欲情するようになってしまったらどうするんです!
    体育の時間を休めと! 体育座りで過ごせと! いっそ引きこもりになれと!」

杏子「そんときゃ、アタシが愛人にもらってやりませう」

仁美「…………」

杏子「ごめんなさいごめんなさい! でも事前に言っただろーが、アタシの性癖は!
    何? ちんちん生えてるから除外されると思った? ちんちん付きの女の子ならとタカくくってた?
    アタシの性欲スウィートに見んなこのヤロー! この猫っかぶりの皮かぶり! バーカ!」

仁美「ちんちんちんちん言わないでくださいましっ! 逆ギレですか!」

杏子「ああもォ、悪かった。悪かったよ。ゴメン」

仁美「わたくし、こんな身でも社会からドロップアウトせぬよう弛まぬ努力を続けているのですよ!?
    それをこんな、こんな露出的なスキャンダルで壊されたら、困ります!」

杏子「焦らして焦らして『どうか仁美のおちんちんをもっとイジメてくださいませ』とか言うまで責めようと考えてゴメン」

仁美「なんという性欲の暴走した発言……エロ恐ろしいとは正にこの事!」
300 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/24(火) 21:26:03.81 ID:FQAjLz9eo
杏子「調子に乗った。謝る。八つ当たりだ。アンタがアタシに優しいから甘えたっていうなら、アタシもそうだ。
    昔やらかした時もな、マミに散々、言われたよ。
    『たとえ女性を好きなのが本当でも、衝動の大半はコミュニケーションがしたいだけ、その矛先を間違えてるだけ』って」

仁美「思わぬ性的コミュニケーションとなりましたわね」

杏子「そうだよ。アタシは自分の欲望の詳細なんて判らない。でも、やっぱりマミの言った事が正しい気がする。
    八つ当たりなんだ。アタシ、なんかまたガキみたいになってんだ。構ってくれ、構ってくれー、って。
    けど、こんな姿してみようとか、一人じゃ考えもつけなかった。すけこの発想がうらやましい」

仁美「確かに……あの方は、演奏家という一流の表現者を志望していたからでしょうか。
    びっくりするぐらいフリーダムな所がありますわね」

杏子「ホントな。昼間なんか、アタシのこれ、男の姿チェック中、『出発ちんこぉー!』とか叫んだんだぞ。
    女になって久しいから、男のイメージを呼び戻そうとしたとかで。まったく、一歩間違えたらセクハラだ」

仁美「(それは普通にセクハラだったのでは……)」

杏子「でも、それが楽しいっつーか、楽しいのに、妬ましい。
    アタシ、オマエらみたいに学校も行ってないからさ。ガキのまま、止まってんだ。
    こっちから何話していいかわからねー。さやかなんてさ、すけこかアンタの話しかしないし。
    ……マミもさ」

仁美「けれど皆さん、わたくしにはよく、杏子さんの話をしてくださいますわ」

杏子「……そ、そう、か?」

仁美「そうですわ。だいたい、本人の前で、本人の話と言うのも、テレくさいではありませんか。
    でしょう? 杏子さんには辱めを受けましたが、それでも杏子さんの事キライじゃありません、とか」

杏子「うぁ」

仁美「あう。……我ながら、痴女的でした。魔法少女ならぬ痴法少女」

杏子「ノット痴呆」
301 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/24(火) 21:28:29.35 ID:FQAjLz9eo
仁美「たしかに、まったく、強引だわ危険だわ、嫌がって当然と主張してもいい事をされました。
    コミュニケーションとしては最低の部類です。けど、わたくし、杏子さんの事、嫌いませんわ。
    ……叫んで走って逃げてもよかったのに、そうなさらなかったあなたを、嫌うなんて」

杏子「危機感、なさすぎね?」

仁美「ナプキンなめなめ妖怪に言われたくありません。あんなの、人前で口にする事ですか?」

杏子「アレはさ、反応見たかったっつーか」

仁美「わたくしだって、同じです。……健全ではないかもしれませんが、これも友情の育み方かと」

杏子「半分、共犯みたいな。どっちも普通のカラダじゃないし、いいのかな」

仁美「いいのでしょう」

杏子「いいともー」

仁美「ともともー」

杏子「……、……は、恥ずかしくなってきた。今更。マジごめん、あんなコトして」

仁美「今更、今更ですわ。過ぎた事です。……もう、わたくしまで思い出してしまう……」

杏子「……ホント、さやかが羨ましくなる。アンタみたいな優しい奴も、まどかとすけこみたいな強い奴も側にいて。
    部屋がなくなっても泊まれる家があって、学校行けて、魔法少女でなくなっても仲間がいて。アイツ、みんな持ってるのな」

仁美「(……あら)」

杏子「学校行ってないアタシから見ても、バカだけどさ……まっすぐで、無条件に愛と勇気信じちゃってるみたいな。
    いや、なんかさ、マミが後輩つくったって聞いてさ、それでアタシ、こっちに来たようなもんだし」

仁美「杏子さん……さやかさんの事、けっこう、好きですよね」

杏子「え? ねーよッ。だってアイツ、かなりバカだぞ!?」
302 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/24(火) 21:31:08.95 ID:FQAjLz9eo
今日はここまで
どこで切っていいかわからない。この感情は残尿感
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/05/24(火) 21:41:53.02 ID:6dCifIxZo
もういっそのこと全部出し切っちゃえよ。

俺が全部、受け止めてやるぜ?
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/05/24(火) 22:01:45.03 ID:JU/66y4AO
ふたなのか、男の娘なのか、それが問題だ
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2011/05/24(火) 23:43:59.80 ID:AyrUXJe90
ふたなり、そいつは最高だ
306 :BENPER [sage saga]:2011/05/25(水) 20:13:11.79 ID:cEJTwpM9o
>>303 やだ、すてき……排卵十六連射しちゃう……

しかし続きは今日も残尿感になるのであった。

この仁美ちゃんは都合によりふたなり。
個人的には、女装した志筑家のご子息という設定の薄い本を所望する
307 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/25(水) 20:16:37.01 ID:cEJTwpM9o
さやか「べっくしょーい!」

恭子「しょぉーい!」

(〜恭子の家)

さやか「ご、ごめん、抑えないでしちゃった」

恭子「ハハハ、何を今更。さんざん漏らした液体をひっかけておいて。ハハ、こやつめ」

さやか「せっかくソウルジェム嗅がせてもらってたのに、本当にごめん」

恭子「こっそり舐めたね?」

さやか「……ごめんなさい」

恭子「正直すぎる。いや、いいんだよ。貸したのは僕だ。それに、床に叩きつけて砕こうとしていたわけじゃなし」

さやか「…………」

恭子「お、マミさんからメールだよ。具合は良くなったってさ」

さやか「……恭介さ、仁美ともメールしてる?」

恭子「してるよー! うん、魔女捜索は予定通りっと。お弁当つくらないとね」

さやか「…………」

恭子「さやか、ホットドッグつくろうか。手伝ってよ」

さやか「うん」

恭子「ありがとう。ホットドッグといえばアレだよね、入院中に見たんだけど、そういうエロカワアピールが流行したんだって?
    ソーセージあ〜ん、って……さやかはそんなテレビ見ないって言ってたし、知らないか」

さやか「! ……う、うん」
308 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/25(水) 20:18:11.34 ID:cEJTwpM9o
恭子「でも、今や下火みたいだね。流行らせたアイドルも最近見なくなっちゃったし。
    僕としても、ちょっと下品だなぁと思うね。いやらしいじゃない」

さやか「……うん」

恭子「男でなくなった僕には、もう関係ない事だけど!」

さやか「…………」

恭子「それでも元男として言わせてもらえば、僕は、きちんとしたものを身につけた女性のほうが魅力的だと思うね。
    テーブルマナー、発声法、質の良い下着はそのままアクセサリーだ。尻を四つに割るようなショーツは言語道断!
    食い込んだパンツと食い込みっぱなしのパンツは違うよ! 血行滞ってセルライトができないのは二次元だけだ!

    ……そういえば昔、あの夏休み、さやかがお母さんから習った着付けを披露してくれた時は、ドキドキしたなぁ」

さやか「えっ、そう? 恭介、着物、好き?」

恭子「今思い出しても、ステキだったよ」

さやか「あ、ありがと……、でっ、でも、最近は全然そーいうのしてなくて! 着物なんて着る機会ないし!
     まどかにも、いいなー教えてよーとは言われてたけど、結局、っていうか!」

恭子「もったいないなぁ。もう君には身体の線が出る服か、和服しか着せたくないよ」

さやか「両極端だ……。恭介が言うなら着物、考えてみるけど。でも、き、着れないよ? 着ていけるトコなんて……」

恭子「ウチで着なよ」

さやか「え〜、大変だよ。家で着物、なんて子いないよ」

恭子「志筑さんは着てるのにな」

さやか「!!」

恭子「家で着てるらしいよ。私服がそうなんだって。マミさんが言ってた」

さやか「……そう……なんだ」
309 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/25(水) 20:19:12.75 ID:cEJTwpM9o
恭子「一度、私服の事、聞いてみればよかったなぁ。あのキャラだもの、てっきりロココ調のドレスなのかと」

さやか「…………メールで、聞けば……聞いて、みたら?」

恭子「必要ないよ。明日、学校で会えるじゃないか」

さやか「……だね。いつでも会えるからね……、でも」

恭子「ん?」

さやか「なんでもない……」

恭子「さやかの『なんでもない』は、何もなかった試しがない。言ってごらん?」

さやか「……仁美と……いつからメールしてるの……?」

恭子「PC-VANが有料になるかならないかの頃?」

さやか「? ずいぶん前から、なんだよね?」

恭子「今のは冗談だよ。……うーん、頻度が少ないからね、ほとんど独り言の応酬だよ?
    志筑さんは生理の事だけしか書かないし、僕なんて自分撮りの練習写真を送りつけたりするだけさ」

さやか「……フツーはっ、生理の事なんかヒトに喋らないでしょ!?」

恭子「自分撮りだってヒトに送りつけていいもんか!」

さやか「ひ……っ! お……怒らないで。ごめんなさい……」

恭子「怒ってないよ。それに志筑さんのは、嘘生理なんだけどなぁ。嘘なんだよ。ジョーク。あるいはごっこ」

さやか「……なにそれ」

恭子「志筑さん、子宮がないからね。ないものには憧れてしまうだろう?」

さやか「恭介、なんでそんな事、知ってるの? 仁美の、子宮とか……」
310 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/25(水) 20:22:21.49 ID:cEJTwpM9o
恭子「だって僕の母は、仁美さんのお母さんの一人でもあるもの」
____________

仁美「もうひとつ、杏子さんこと杏介さんに甘えてもよろしいですか」

杏子「カレシだと思って甘えろよ、仁美チャン」

仁美「わたくしの家。わたくしの身体。次の秘密は……わたくしの卵。
    わたくしは、上条恭子さんのお母様の卵子より生まれたのです」

杏子「ヘェー。じゃ、すけこの母親とアンタは似てるのか?」

仁美「写真で見たかぎり似ていると、兄様達は言います。けど、わたくしはそうは思いません。
    ……そうです。この一連の事実こそ、さやかさんに伝えるべきか、迷いました」

杏子「……さやかはすけこの事、好きすぎるもんな。両想いじゃんアイツら」

仁美「わたくしもさやかさんが羨ましいと思います。ないものねだりを……してしまう」

杏子「仁美……」

仁美「……。話はまだ終わっていません。わたくしに子を宿す宮はなく、今や卵をつくる器官もありません。
    が、以前は、卵巣の片翼だけは……生きていた。その間に取り出した卵は、志筑が保管しています」

杏子「じゃ、場合によっちゃ、コドモ、つくれんだな」

仁美「…………志筑家が帝室の傍流というのは噂ですが、上条家は志筑の確かな傍流のひとつです」

杏子「? すけこの家が、どうしたって」

仁美「志筑本流の末尾番のわたくしには、子を成す義務がある。……これは、おじいさまの受け売り。
    けれど、おかしいですよね。拡散はならず、だが祭の火を継ぐべし、など。研究のためとはいえ。
    そのための傍流の家など……本当に、傲慢」

杏子「おい……」

仁美「志筑は、上条家の令嬢を、借り腹に決めたのです」
311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2011/05/25(水) 20:24:25.20 ID:ZNjkbhft0
ちょっと恭子の意図が読めなくなってきたぞ?そりゃ好きだと言えば即座に+へ振り切れるくらい調教してるとは言え、落とし過ぎたら
契約すら出来なくなるんじゃ?
312 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/25(水) 20:24:40.92 ID:cEJTwpM9o

 プルルルル

恭子「はい、もしもし。ああ父さん、どうだった? 予定どおり? 向こうも準備が早いね。
    え? 何を今更。今更。本当に今更。父さんと母さんのためなら、いつでもやめるよ?
    ……ヴァイオリンなんて」

さやか「恭……介? なに……何の話なのっ……?」
___________

仁美「……もともと無理がある。産めよ、増やすな、なんて。
    ガラス瓶の中がムリなら、豚のお腹でも借りればよいのです。いっそ、私達ごと豚舎に収めてしまえ。
    毒虫のくせに、人の子宮でなければ育たぬなど……、例外はないなどッ……たわ言を!」

杏子「仁美……」

仁美「さやかさんの……せいじゃないのに。せいだなんて思いたくないのにッ!」
___________

さやか「あたしのせい……? あたしが恭介を女にしちゃったから?
     恭介はヴァイオリンを続けられなくなっちゃうの……?」

恭子「もともと僕のワガママで続けさせてもらっていた、趣味だからね」

さやか「そんなっ。恭介は天才だよ! あんなに素敵な演奏ができるのに、諦めちゃうなんてダメだよ!」

恭子「お腹一つで、両親そろって一生困らず暮らせるんなら、そのほうがいいじゃない」

さやか「でも!」

恭子「だって僕は魔法少女だ。いつ魔女に喰われるか」

さやか「恭介は強いじゃない! その演奏で、マミさんでも気付けない遠くの魔女も判るでしょ?
     結界も崩せるし、使い魔も魔女も一撃だったでしょ? 一度だってケガした事ないでしょ!?
     みんなだって守れる! どんな敵だって、そう、暁美ほむらからも守ってくれたじゃない!
     恭介はすごい強い魔法少女なんだ! プラチナの魔法少女だよ!」

恭子「さやか……」
313 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/25(水) 20:25:52.22 ID:cEJTwpM9o
 …ペタン

さやか「ダメなの? あたしのせいなの? ……あたしが魔法なんかに頼ったから。
     あたしが恭介を、魔法の世界に引きずりこんじゃったから?」

 ギュッ

恭子「さやか、どうしたい?」

さやか「死にたい。あたしなんかが恭介を苦しめるなんて許せない。死ねば、まだ、間に合う?」

恭子「死ぬのはダメだ。僕は苦しんでなんかいないよ、さやか」
____________

仁美「いままで上条の娘が公式に表に出てこなかった……当たり前です。いなかったんだから!
    それを隠蔽と……あり得るはずのない隠蔽だと。昨今の物騒な事件も、わたくしの夜遊びも、ひっくるめて。
    全部……上条家に押しつけて! 存在に気づいた時点で卵の培養を始めておいて、ぬけぬけと……!」

杏子「すけこは? アイツは知ってるのか?」

仁美「……あの方は一言。手出し無用、と。あああ、全てわたくしのせい。憎い。この肉も血も憎い」
____________

恭子「絶望なんてする事ないんだよ、さやか」

さやか「だって、だって……」

恭子「君が死んだら、僕も死ぬ。君が僕のソウルジェムなのだから」

さやか「恭介の本当のソウルジェムは、その光り輝いているほうだよ。あたしは……汚い」

恭子「それでもだ。約束しよう、さやか。
    僕が死ぬのは、君が死んだ時だ。
    僕が絶望するのは、君が絶望した時だ。
    君が絶望するのも、僕が絶望した時だけだ。
    君が死ぬのは、僕が死んだ時だけにするんだ」
314 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/25(水) 20:28:27.58 ID:cEJTwpM9o
QB『でらげっしゃっしゃっしゃっしゃっしゃっしゃっしゃっしゃっしゃっしゃっしゃっしゃ
  っしゃっしゃっしゃっしゃっしゃっしゃっしゃっしゃっしゃっしゃっしゃっしゃっしゃっ
  しゃっしゃっしゃっしゃっしゃっしゃっしゃっしゃっしゃっしゃっしゃっしゃっしゃっ』

恭子『キュゥべえ、やめて! テレパシーでその笑い方やめて! つられちゃう!』

QB『こういう時、キミたちは笑うものなんだろう?』

恭子『そうだけど!』

QB『おかしいよね。友達に銃を向けたというのに普通に登校する、暁美ほむらをおかしいと言うなら。
   銃を向けられ魔女の骸を見て、こうも危機感がない自分たちもおかしいと、思わないのかな?
   「楽音のない演奏会」という大ヒントを与えられて、なぜ、疑わずにいられるんだろう?
   自分たちが、「聴かぬ内」に上条恭子の支配下にあるのではないか、って』

恭子『いつぞや杏子さんに掛けた守りのように、わかりやすくないからね。
    バカにするものじゃないよ。みんな、善良なだけだ。
    それに、まだ不安要素がゼロというわけでもないだろう? ほら、僕の』

QB『相変わらず、濁りも曇りもないソウルジェム……ふむ』

恭子『本当は中から錆びてきていて、いずれパーンッとなるかもしれないよ。一秒後にでも』

QB『どの道、問題はないじゃないか。キミの魔法の効果が失せれば、────』



さやか「やだよ、恭介が死んじゃうなんて」

恭子「なら、死んだらダメだよ。さやかが生きている限り、僕も生きるから。
    大好きなさやかが生きているなら、僕はなんだってできるんだよ」

さやか「死なないで……。お願いだから、死なないで……」

恭子「さやか、キスしていい?」

さやか「……あたしは、恭介の好きにしていいから。だから」
315 :BENPER [sage saga]:2011/05/25(水) 20:30:05.87 ID:cEJTwpM9o
>>311 契約する必要あるの?
316 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/25(水) 20:31:41.30 ID:cEJTwpM9o
恭子「今日ぐらい、お弁当はテキトーでもいいよね。ごろごろしようよ、さやか」

さやか「…………」

〜寝室
〜ベッドの上、寝転がって手をつなぐ

恭子「さやか、僕のために死ぬ事なんてないんだよ」

さやか「違う。恭介は綺麗なんだもん。あたしより生きなきゃいけない人だ」

恭子「僕がさやかより綺麗なんて事ないよ」

さやか「そんな事ない。いつだってあたしを救ってくれた。受け入れてくれた。
     あたしの……『アルバム』を見ても、大丈夫って言ってくれた」

恭子「『あんなアルバム』くらいで、誰も汚いなんて言わないよ」

さやか「そうかな……」

恭子「『アレ』で引いたりするなら、その人はさやかの事が好きじゃないんだよ」

さやか「そう……なのかな」

恭子「僕は引いたりしなかっただろう? 信じてくれるかい、さやか」

さやか「あたしはいつだって恭介を信じてるよ」

恭子「ありがとう。僕も、いつだってさやかのために動いているんだよ」

さやか「本当?」

恭子「……この前の事故だって、そうかもね?」

さやか「……え?」
317 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/25(水) 20:32:46.28 ID:cEJTwpM9o
さやか「恭介、それはどういう」

恭介「…………」

さやか「もしかして……もしかして。そうなの? あたしを見たから?」

恭介「…………」

さやか「あたしが恭介の前に現れたから、恭介があたしを見て、久しぶりって、手を振って」

恭介「…………」

さやか「……だから、トラックの前に飛び込んだの? 『腕が動かなくなるように』?」

恭介「…………やだなぁ。そんなワケないだろう。飛び込んだ、なんておかしいじゃない。
    それじゃ、事故は、『さやかのせい』……『さやかがそれを望んだ』……みたいじゃないか」

さやか「あの時……『偶然』再会して、あたしが手を、横断歩道で、それでトラックが、でも」

恭介「言ったじゃない。あれは酔っ払いの上の脇見運転。だいたい、飛び込むってなんだい?
    『偶然』さやかを見つけ『偶然』トラックが来たから『偶然』よそ見してるように見えたから……
    飛び込む、なんて。『そんな魔法みたいな真似』。そもそも、飛び込む理由が……」

さやか「……あの時……あたし、あの時……」

恭介「さやかのせいかな?」

さやか「違う。でも恭介のきれいな左腕が……足が……あれは、あれは」

恭子「『さやかのせいじゃないよ』」

さやか「…………あたしの……せいなの」

恭子「ん?」

さやか「あたしのせい。だって、腕が動かなくなるように、って、あたし、きっと願った。
     だって恭介がケガをすれば、会えると思って。昔みたいに。だってだって、会えなかったんだもん。
     恭介のお母さんが、違う、お母さんに申し訳なくて、違う、お母さんが邪魔で、……」
318 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/25(水) 20:33:45.30 ID:cEJTwpM9o
恭子「トイレで襲われて、お母さんが騒いじゃったからね」

さやか「……偶然……包丁が当たっただけなのに。あたし、恭介のお母さんに嫌われちゃった」

恭子「偶然、だよね?」

さやか「そう、偶然」

恭子「僕をトイレの個室に連れ込もうとした悪者をやっつけるための、包丁だもんね?」

さやか「そうなの。お母さんが悪者じゃないの。わかってる」

恭子「きょうすけを奪おうとする悪者め、って言ったのは、あのトイレの男に対して?」

さやか「そうなの。あの天使を奪おうとする薄汚い生きてる価値のない屑の豚に対してなの」

恭子「あんな薄汚いのが僕に触れるのが我慢ならないんだよね?」

さやか「屑の雌豚がきょうすけを奪おうなんて我慢ならないの」

恭子「事故はさやかのせいじゃないよ」

さやか「あたしのせいじゃないかもしれないけど、あたしのせい」

恭子「事故はさやかのせいだとしても、僕は許すよ」

さやか「違う。あたし、ただ、恭介と一緒にいたかったの。恭介と一緒にいられれば、って。
     魔法が使えたなら、けどあんな魔法みたいな、でもあの時は、あたしも恭介も魔法少女じゃなくて、えっと」

恭介「僕が死んだら君は絶望するだろうね、さやか」

さやか「うん、そうみたい。
    あたしが死ぬのは、恭介が死んだ時。
    あたしが絶望するのは、恭介が絶望した時。
    恭介が絶望しないなら、あたしも絶望しない。
    恭介が死なないなら、あたしも死なないんだ」
319 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/25(水) 20:35:43.34 ID:cEJTwpM9o
恭介『これはちょっと、僕のひそかな自慢の一つなんだよ。
    偶然さやかを見つけ、偶然トラックが左折して来たから、偶然よそ見していたから飛び込んだ。
    よくもまぁ。そう、後から思ったよ。驚くさやかの顔が見たいってだけで、よくもまぁ。
    そこまで僕は飢える事ができるんだ、って』

QB『それも後付けで、キミ達によくある自殺願望ではないのかい?』

恭介『さやかの絶望が見てから死にたい、とは思っていたけどね。
    それは大御馳走。しかし、僕は凄まじく飢えていた。さやかに飢えていた。
    でも、僕の魔法のような決起が、さやかを魔法少女にまで導いてくれて、本当に良かった。
    かつてヴァイオリンの奇跡がさやかを動かし、僕にも奇跡を与えてくれたように。
    僕からさやかへ、そしてさやかの魔法が僕へ。ああ、魔法ってなんでもできるんだ!』

QB『さやかには酷な事をしたね』

恭子『確かに早まった。四肢が効かないというのがあんまり厄介で、だから上条恭介も諦めた。
    何度も諦めかけ、一度、本当に諦めたんだ』

恭介『さやかから離れて人生を送ろうと思った。
    彼女からのプレゼントをてきとうに褒め、イヤホンを一緒につないで最後のサービスをして。
    そして退院したら、交流を断つつもりだった。いっそまた国外に逃げようとも』

恭子『叶わぬ夢を、さやかに見続けてしまうから』

恭介『欲しかったのは絶望でなく、彼女の柔らかな胸や股ぐらの奥という事にしようと思った。
    異常な渇きなどなく、誰にでもある思春期のぬるい惑いだったのだと、改ざんしようと』

恭子『上条恭介は、絶望を厭う真人間として前向きに生きようと思ったんだ』

恭介『上条恭子は、諦めきれなかったけれども』

QB『さやかはもう、目隠しをして崖の上にいるようなものだ。よかったね、恭子。
   キミを信じているから、彼女の体内で、ソウルジェムも魔女化せずに留まっている。
   キミが健康と言えば健康に、不安と勧めれば不安に、絶望を示せば崖から落ちる』
320 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/25(水) 20:37:17.83 ID:cEJTwpM9o
恭子『ほむらさんとまどかさんの不安定な思考言動が参考になったんだ。ありがとう、二人とも!』

QB『しかし、まさかキミがその手で人の魂を取り出すなんて、思わなかったけど……』


〜夜。魔女の結界、入り口

マミ「準備はいいっ?」

さやか「お弁当よーし!」

杏子「よっしゃあぁぁぁ!」

マミ「気合い、入れていかなきゃね。メソメソしたって始まらないわ。
   さぁ、行きま…………?!」

 (ズモモモォォ…)

さやか「あれ? なんか今……ヘンな感じが」

杏子「……野郎! 逃げやがった!」

マミ「察知して結界の入り口を閉じるなんて……これまでになかった事よ。
   魔法少女であれ一般人であれ、引き込めるなら引き込んで食べようとするのが普通。
   なのに……」

杏子「だが完全に閉じられるわけがない。隠れてたって、こじ開ける!
    すけこ、探れ!」

恭子「あいあいさーる。何でもできる音楽ー」

杏子「やる気だせ」

恭子「……敵は潜っているよ。けれど、鈍重だ。今なら追いつける。下に降りよう」

杏子「おしっ! 行くぞ! さやか、仁美チャン、きっちり追いついてこいよ!」
321 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/25(水) 20:38:48.20 ID:cEJTwpM9o
恭子「やぁ、志筑さん。髪、ポニーテールにしたんだね。普段よりグッと活動的だよ」

仁美「ちょっと、反抗期な気分なのですわ。……さ、参りましょう」

 タッタッタ
       …ピチャッ

さやか「ひゃっ?」 ズルッ

杏子「さやか!? ……しまった、罠かッ」

マミ「つかまって!」

 シュルルッ

  …パシッ  グイイッ

マミ「くっ、……きゃああっ!」

さやか「マミさ……ッ!」

        ──キャハハハッ…

杏子「チクショウ、引きずり込まれた!」

恭子「逆です! ここが入り口になる」

杏子「……そうか! 仁美チャン、すけこにつかまれ! 切り開く!」

 ザクッ…
  ギャリギャリギャリギャリッ


       ──ゴパッ!!

杏子「……なっ……水!? 流されるなよ!」
322 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/25(水) 20:43:12.10 ID:cEJTwpM9o
今日はここまで。毎度こんな不親切設計な文章を読んでいただき恐縮! 恐れて縮む!

次回、結界内で大暴れ!
「あんたも、あたしから恭介を奪うんでしょう……屑の……雌豚が!」
「仁美さんならきっと、強く美しい魔法少女になれるよ」
「キュゥべえさん……わたくし、わたくしを……」
323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/05/25(水) 21:31:15.99 ID:8mBFlTkAO
乙仁美いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい
そしてさやかあああああああああああああああああああああああ
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2011/05/26(木) 01:08:22.51 ID:AbhbKkTU0
あぁ・・・プラチナと宝石の>>37・・・!
一言一言いちいち呪いになって乙!
325 :BENPER [sage saga]:2011/05/26(木) 21:33:18.53 ID:KonSKpN3o
うそつきは うそをはくから うそつきよ

続きっしゃー!
もう六話終わらせるっ
326 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/26(木) 21:36:03.73 ID:KonSKpN3o
 フワ…

さやか「……恭……、はっ。マミさん!? ……わ、何、水!?」

マミ「暴れないで。よかった、無事ね」

さやか「あ、息が出来る。わぁ、青い……クリームソーダのグラスの中にいるみたいです」

マミ「私はクリームソーダはメロン色派だけど。……さやかさん、私から離れてはダメよ。
   穏やかに見えて、呪いが渦巻いているわ。巻き込まれたら、そのまま流されてしまう」

さやか「(その前にマミさんの胸で窒息しそう……)あ、古いテレビ? パソコン?
     沈んでる……なんだろう、粗大ゴミの魔女とか?」

マミ「レトロなモニタ……取り巻く球体関節の天使……いい趣味してるじゃない。
   そしてこの無重力の螺旋を織りなしているのは、──あれね!」

さやか「あれは……メリーゴーランド?」

マミ「メリーゴーランドは私も好きよ。趣味が合いそうなのに残念ね、魔女さんッ!
   潜るわよ、さやかさん……『il corpo e la prigione della mente』」

 シュルルルルッ

さやか「……マミさん、人形が! こっちに!」

マミ「大丈夫、この子たち程度じゃ、私の金色の防壁を破る事はできないわ」

さやか「メリーゴーランドにもいっぱいいますよ! それに、あのパソコン……」

       …ママ… …タスケ…テ…

マミ「……!!」
327 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/26(木) 21:37:45.68 ID:KonSKpN3o
さやか「何これ……グロ画像……? 交通事故……?」

  …オカァサァァァン
          …オトォサァァーン…

 …マミ…ッ…

      …ソレガ キミノ ネガイ ナノカイ?

マミ「あ……あ……」

さやか「マミさん?」

 ──かわいそうに、巴さん。

  ヒトリボッチ ダネ

 巴さんって、トモダチいないの?

    ヒトリボッチ カワイソウ ダネ

  聞こえませーん アハハハ
      巴ってエロイカラダしてるよなぁ
 ……アンタはアタシを利用してただけだろ!
   事故を言い訳にしてはいけませんよ
  結局ワガママなのよ
       色目使いやがって あのエロガキが
 おじさんとお風呂入ろうな 家族なんだから
   うちも子供がいっぱいいて……
        引き取るっていってもなあ
  キミが魔女と戦わなきゃ
 君のお父さんとお母さんはね……
         まだ、知らされてなかったの?

 君一人で生きていかなきゃいけないんだ

さやか「マミさん……リボン、解けちゃいましたけど……」

マミ「…………」
328 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/26(木) 21:39:21.41 ID:KonSKpN3o
さやか「マミさん? 使い魔が! マミさんッッ」

  …ツギハ アンタ ダヨ

さやか「いィっ!? 来るな! 来るな粗大ゴミの魔女!
     やだぁっっ、恭介! 恭介ェ────────ッ!」

 アンタ ダッテ ヒトリボッチ…  …キャハハ!!

杏子「さやか! 無事か!」

さやか「きょ……杏子……」

杏子「こいつは趣味が悪すぎだ。嫌な事ばっかり思い出させやがって」

  ヒトリボッチ  ヒトリボッチ

 ヒトリボッチ ノ サクラキョーコ チャン

杏子「まったく、うるさい……」

   ヒトリボッチ  ヒトリボッチ
 キョーコ チャン カワイソウ カワイソウ

 ……神よ! お許しください!

  この子に罪はないのです……!
 全ての非は私にあります! どうか、どうか!
 かわいそうに。──すまない、すまない杏子。
      おねぇちゃん、お父さんとケンカしたの?
 魔女め! お前がそんな事するから!

杏子「うるせェよ……うるさい、うるさい、うるさい!」

さやか「うるさぁ──────いッッ!」

杏子「オマエがうるさいよ! ……って、さやか!?」
329 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/26(木) 21:40:38.46 ID:KonSKpN3o
さやか「うるさい……うるさい! 悪者め! 悪者め!」

杏子「痛ッ! 暴れんなっ、こらっ」

さやか「邪魔だ! 邪魔なんだ! 消えろ!
     私から天使を! きょうすけを奪おうとする悪者め!」

杏子「あっさり取り込まれてんじゃねーよ!」

 …キャハハハハ…

さやか「悪者は死んじゃえばいい……そのほうが、きっといい。みんなみんな死ねばいい。
     恭介を苦しめるあたしなんて、いらない。恭介を落胆させる、何もかもがいらない。
     一切合切が、彼のためにならない。彼の役に立てないなら、意味がない。
     世界に恭介一人残れば、それが一番……綺麗なんだ!」 ガシッ

杏子「やめろっ、さやか……グッ」

さやか「あんたも、あたしから恭介を奪うんでしょう……屑の……雌豚が!
     いきてるかちのないわるもの! またあたしからきょうすけをうばうのね! ゆるさない!」

杏子「グッ……ウッ……!」

さやか「ああ、でも、恭介さえもあたしから……きょうすけを奪う……。
     しんじゃえばよかった! トラックに轢かれて死んじゃえばよかった!
     最後のさいごにあたしを見て、あたしに聴かせて。それなら! ……」

 キャハハハ…    …ア…?

さやか「……嫌だ。嫌だよ。恭介が死んじゃうなんて嫌だ!」

杏子「ゲホッ……、さ、さやか! ……後ろ!」

さやか「あたしのほうが悪いよ! あたしのほうが汚いよ! だから神様!
     あたしは連れてってもいいから、あたしはどんなに苦しんでもいいから!」

 …キアアアアアアアア!!

さやか「だからこれ以上、恭介が…………恭……を、止めて……!」
330 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/26(木) 21:45:37.56 ID:KonSKpN3o
恭子「──仁美さんはステキだなぁ」

仁美「あら……名前で呼んでくださるなんて、初めてですわね」

恭子「生身でもって、使い魔の羽をもぐ……。あなたが魔法少女になったら、どれほど強いのだろう」

仁美「魔法をもってすれば……何でもできるのでしょうか?」

恭子「何でもできると思えば……何だってできる」

QB「そうだよ、仁美。キミがそのカラダを完全な女の子にしたいなら、それは可能だ。
   キミほどの勇気と賢さを持つ魔法少女なら、まったく容易な事だよ」

仁美「……この身で子を成す事も……できる?」

恭子「僕を代理とする必要は、なくなるね」

仁美「恭子さんのためにも……さやかさんのためにも、なる。
    恭子さんがヴァイオリンを続けられる……さやかさんが喜ぶ。
    わたくしは大切な人を……誰も悲しませずに、済むのですね?」

QB「魔法少女は希望を振りまく存在だからね」

仁美「……嬉しい……!」

恭子「仁美さんならきっと、強く美しい魔法少女になれるよ」

仁美「キュゥべえさん……わたくし、わたくしを……」

QB「願いを言ってごらん、志筑仁美」

仁美「わたくしを……っ」

恭子「はい、そこまで! カットカーット!」

QB「?!」
331 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/26(木) 21:46:34.74 ID:KonSKpN3o
仁美「……あら? あら?」

恭子「いやいや、志筑さん、やっぱまだダメだって。即答できない辺り、迷ってるんだよ」

QB「ええぇぇぇえええぇぇぇ」

恭子「どうしたのキュゥべえ、イントロクイズかい?
    ねぇ志筑さん、やはり、こういう状況で決めるものじゃないよ。ズルイもの」

仁美「ですが……」

恭子「僕のお腹がちょっと膨らむだけだよ。問題ない。不自由な生活は嫌だけどね。
    隠遁生活もきっといいよ。産んだら志筑さん家に丸投げできるし、それからは気軽で。
    前から思っていたんだけど、魔法少女になった以上、学校生活との両立は厳しいんだよね」

仁美「でもぉ」

恭子「志筑さんは優しすぎて、善意のつもりで動いてうっかり一生モノのトラウマこしらえそうなタイプだ」

仁美「やけに具体的ですわね……。でも、よいのですか? 命一つ……重いものですわ」

恭子「せっかくだし、やっちゃおっかな☆」

仁美「軽っ! 軽くていらっしゃる!」

恭子「……でもさ、きっとこんな事は、魔法少女の契約と比べたら軽いんだよ。
    あらゆる責任は志筑グループが負ってくれるもの。魔法少女は、そうはいかない。
    杏子さんみたいに進学もできず、帰る家もなくなっても、それでも戦わなきゃいけない」

仁美「振りまく希望の代償は……全て……己が身に降りかかると」

恭子「迷える内は、迷っておこうよ。相談にも乗るしさ。さ、行こう志筑さん」

仁美「……そうですわ。マミちゃん達が心配です」

 タタッ

QB「えええええぇぇぇえええぇぇぇぇぇぇぇ……いつか君が♪ 瞳に灯す♪ 愛の光がチキショーイッ!」
332 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/26(木) 21:48:35.07 ID:KonSKpN3o

 ──罰が当たっちゃったんだ──

 私みたいなのが生き残っちゃ、いけなかったんだ──


杏子「マミ、聞こえるか?」

 ──…………。

杏子「アタシたちは魔女の結界に引き込まれて、それで……
    覚えてないかもしれないけど……マミのリボンが、アタシもさやかも呑み込んだ」

 ──…………、

 ──杏子、私──どうなってるんだろう
 声が──声が出ないの──

杏子「……心配すんな」

 ──魔女に、なっちゃったのかな?

杏子「違う。違うさ。だったらアタシにゃ判るはずだ。
    魔女なんかじゃァない。どっちかっていうと、すけこの技と同じだろう。
    魔法で身を包む。見た目はどうあれ、このリボンの部屋……これも結界」

 結界──?

杏子「やっぱりマミは強い。魔女の結界の中に自分の結界をつくるなんて」

 ──でも、私

 ──身体が──動かない

杏子「……悪い。アタシには、どうなってるかサッパリだ」
333 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/26(木) 21:49:28.39 ID:KonSKpN3o
杏子「魔女になっていない事だけは確かだろ。
    孵化には何回か立ち会わせた事があるが、こんな穏やかなのはなかった」

 そうね──杏子の探知能力は、私より高いもの──
 ──きっと、私の身体──どこかに埋まっちゃってるんだわ。ドジよねぇ──

杏子「……。ったく、そーいうトコで抜けてんだから。放っておけないよ。
    アンタも、すけこも、……コイツも」

 ──さやかさん! ──私のせいで!

杏子「そんなに自分を責めるなよ。さやかは無事だって」

 私──さやかさんに、全然──恩返しできてない
 ──未来の友達──そこまで言ってくれたのに────!

  …グググッ

杏子「うぉわっ!? なんだ! 部屋が……縮んだ!」

 ──わ──私のせい──私──私の──

杏子「わーっ、わーっ! よせマミっ、ネイティオになるな!」

 それネガティブ──

杏子「どっちでもいいじゃん!」

 ──ごめんね。杏子──私、動けない

 ──私、あなたに頼ってもいいかな──?

杏子「……いいに決まってるだろ」

 ごめんなさい──
            …ググッ
334 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/26(木) 21:51:12.62 ID:KonSKpN3o
 モソ モソ
         ゴソ ゴソ

杏子「……(やべえ。全然わからん。上下左右、隙間も何もない)」

 ──ねぇ、杏子

杏子「おおっ!? どーしたマミ、まだ探索フェイズだぞ!」

 ──うん──でも、何も見つからなかったら

 『私』を斬ってでも──外に出て

杏子「……マミ……」

 ううん、誤解しないで──
 埋まっている私の身体を──ちょこっと傷つけてもいいわよって
 ──それだけ──なんだから

 ────自殺願望なんかじゃ──ないわ

杏子「魔女の何言われたか知らねーが、気にすんな。真に受けるな。そういうモンだろ。
    あいつらはそーいう生き物になっちまった。人を恨んで呪うしかできない」

 ──紙一重よ──
 私も──誰かを恨んでないか、呪ってないかと言えば、嘘だもの──

杏子「その紙は超合金製だろうよ。恨む呪うだけじゃねェ、マミにはもっといろんな感情がある」

 ──杏子になりたいって時、あるわ
 恭ちゃんと、男の子同士みたいに楽しそうに喋って──

         …ググググッ

 ──さやかさんがいなければ、って思う事、あるの
 あんな部屋引き払って、恭ちゃんの家で、一緒に住むの──

杏子「オイ……オイ! マミ、しっかりしろ!」
335 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/26(木) 21:52:18.90 ID:KonSKpN3o
 ──恭ちゃんになりたいな、って考えてる

 ──あなたとも、さやかさんとも、もっと仲良くなれる……
 部屋に泊めてあげられる、もっと頼ってもらって──もっと助けてあげられる

 あーあ、恭チャン死んでクレナイカナァ──

 そシたら、サ──
 ──部屋──私の部屋──私のお城

 ワタシノオシロ────!

   (…キイイイイイ!!)
       (…ギイイイイイ!!)

杏子「……外の魔女か! あいつがマミを攻撃してんのか!」

  グググッ… グゴゴゴゴ…

杏子「うわっ、縮むの早いぞ! ヘタするとアタシら、潰されちゃうな……
    かといってココをヘタに斬ったら……魔女が勝ってもマズイ……
    っつーか八方ふさがりじゃねェか!」

さやか「……恭……介、……恭介! ごへ!」 ガツッ

杏子「ようさやか、カプセルホテルなんて泊まった事ないだろ? こーいう気分だぞ」

さやか「なにこれ……なんなの、これ……。あっ、マミさんがあたし達を守ってくれてるの!?」

杏子「(だったらよかったんだけどな!)」

 ──ワタシノトモダチイイイイイイィィ!
 ワタシヲ見テ見テ見テェェェェ……!

 (ヤメテ! ハナシテェェ!! キイイアアアアアアアアアアアアア!!!!)

杏子「(聞こえぬが仏か。まずいわコレ……どう考えても『このリボンがマミ』だ)」
336 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/26(木) 21:53:18.20 ID:KonSKpN3o
さやか「ちょ……どんどん押されてない……?」

杏子「くっ……アタシの側によれ! 結界の真似事なら、アタシだって!
   (マミは身体をどうにかしちまったんだ。くそ、ソウルジェムの場所が掴めない……)」

 …グルン

杏子「(比べたって穴だらけの、貧弱な壁だがよ……時間稼ぎには!)」

杏子『マミッ、聞こえるか!
    どうせならいっしょに戦おうじゃない! 一人より二人のほうがいいでしょ!?』

 ── ダ メ よ
 危ないわ──とっても危ないわ──

杏子『だァーッ! なんでだよッ、アタシを信用しろ!』

 ──杏子の言う事、……ウソくさくて……
 危ないわ──ワタシヲ置いて逃げちゃうカモ知レナイジャナイ

杏子「(なんだよ、この感じ……魔女になんて、なってないはずだろ……
     それとも、アタシが思い込みたいだけで、……マミはもう……?)」

さやか「杏子……」

杏子「心配すんな、マミが不安がる……オイ!? どうした、顔色が!」

さやか「お……お腹、ピーピーなう……」

杏子「よし諦めた。漏らせ」

さやか「早すぎるっ! 諦めたらダメでしょ! ……うぅう叫んだら痛い」

杏子「ホント勘弁しろよ、このタイミング……わけがわからねェよ……」

さやか「出物腫れ物ところてん……」
337 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/26(木) 21:54:22.02 ID:KonSKpN3o
 グググググッッ

杏子「マミ! マミ! 聞いてんのか! オイッ!
   (ヤバイ。長時間は保たないぞ……あたしの棍は防御向きじゃねェんだ)」

さやか「痛い……おなか、いたいよぅ……」

杏子「(涙目かわいいなう)」

さやか「なんでこんな急に……いたたた」

杏子「おそらく、あの魔女の精神干渉のせいだな。(並の人間なら血ィ噴いて死ぬトコだが)
    (そうだ、マミもこいつの言葉なら……)よしさやか、漏らしたくないならマミに叫べ!」

さやか「マミさぁぁん! ここから出して! トイレ行かへてぇぇぇ!」

 ──さやかさん

 いいのよ──漏らしても!
 突発性の下痢なら、みんな漏らすしかじゃない!

杏子「……巴先輩、ギャグデスカ?」

 うふふ──いいのよ──
 ──ワタシ達トモダチだもの
 なんだって受け止めてあげる、許してあげる、認めてあげる──

 ネェ、杏子──
 いいのヨ? ワタシ──アナタを全肯定できるワ──

 女の子が好きだッテいうアナタを──

杏子「……!」

さやか「え? 何?」

 ワタシの血も──オシッコも──ウンチだって──
 ──杏子のためニ、出しテあげる──
338 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/26(木) 21:55:47.96 ID:KonSKpN3o
杏子「あいにくなぁ……アタシにスカトロ癖はねェよ」

 ──ワタシのレバー、舐めたじゃナイ

杏子「レバー言うな。そーです、どーもすいません女の子の匂いがたまらなくてスイマセン。
   ……いい加減にしろやマミッ! どんだけブーメランだよ! アタシへの説教そのまんまじゃねェか!
   矛先間違ったコミュニケーション求めてどーする! アタシはアンタの家族の代わりにゃなれない!」

 ──杏子──ワタシのコトもうスキじゃないの?
 ──好きよ、杏子──好キなの──好きナンダカラ

杏子「正気に戻れっ! スカトロはすけこにでも頼めっっ!」

さやか「なっ、違うよ恭介は、別におしっことかうんちとか平気なだけで好きじゃないよ!」

 ──恭チャン

 恭ちゃんはコワイ──
 ──だって、ワタシに──私に魔法を──
 やめて──私を弄らないで──ワタシの心に入ってこないで!

 …グググググググググ…

杏子「(あ)」

 …ベキンッッ

さやか「あんた、槍……」

杏子「(これ、死んだわ)」

 (イヤアアア…ハナシテェェェエェェェェ…)

 ──ミンナ一緒──

 キョウコ──サヤカサン──魔女サンモ──
 ──ダカラ──モウ何モ怖クナイ──
339 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/26(木) 21:58:25.24 ID:KonSKpN3o
恭子「卵の中にも光は届く」

       …スタ

恭子「グリーフシードを杏子さんの胸にシューッッツ!」

杏子「ぐお!?」 (シュゥゥゥ)

恭子「よかった。間に合って。ほらキュゥべえ」 ポイ

QB「危なかったね杏子」 パックンチョ

杏子「お……お? 出れた?」

恭子「リボンの卵が見えたから、ここかなって。さやか、大丈夫?」

さやか「やっぱり来てくれたね、恭介。うん、来てくれたから、お腹痛いの引っ込んじゃったみたい」

杏子「生きてる? アタシ、生きてる?」

恭子「……もうっ!」

 ガバッ

杏子「!!」

さやか「ひゃー」

恭子「ああもう、二人ともよく無事で! 杏子さん、何かあったらすぐ呼んでくださいって言ったじゃないか!
    みんな死ぬかもしれなかった! 僕もスカトロイヤー扱いされて社会的に死ぬ所だった!」

杏子「あ、うん……ごめん」

さやか「えへへ、心配してくれたんだ」

杏子「そうだ! マミの奴は……!?」

 シュルルルッ    …ドスッ
340 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/26(木) 21:59:33.08 ID:KonSKpN3o
恭子「あ……っ」

杏子「……え?」

さやか「あ」

恭子「マミさんは元気なようですね。ヤンデレごっこができるくらいには……ゲフッ」


恭子『キュゥべえ……』

QB『なんだい、恭子』

恭子『僕、これで死ぬわ』


QB「でええぇぇぇぇええええええぇぇぇぇ!!?」

さやか「!?」

杏子「?! な、何……すけこが刺されたよりオマエが叫ぶ事に驚いたわ!」

さやか「……あぐぅっ」

杏子「?!」

さやか「ぽ……ぽんぽんぴーぴーリヴァイヴァルなう……」

恭子「杏子さん、この場を任せます……ちょっと傷が深くて」

杏子「ええーい! あっちもこっちもにっちもさっちも!」

仁美「……マミちゃん!」

杏子「待て! 近寄るな!」

仁美「離してくださいまし! 『あれ』は……マミちゃんなのでしょう!?」
341 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/26(木) 22:00:45.01 ID:KonSKpN3o
 シュルルルー…
       フシュルルルルー…


杏子「……アンタにゃ『アレ』が、人間に見えるか?」

仁美「でもっ……あのとぐろを巻く金色のリボンは、マミちゃんです!」

杏子「いくら普通の家柄でなくともよー……普通の人間だったら、アレは『化け物』って言うだろうよ?」

仁美「なぜですの杏子さんっ。マミちゃんは、お二人を守って、あのような姿になったのでは!?」

杏子「マミはアタシらを潰そうとしたんだよ、仁美」

仁美「……何故……」

杏子「いつかは魔女に、って知ってても……つらいわなァ、実際」

さやか「いたた……恭介、大丈夫? いたたたた……」

恭子「大丈夫に決まってるじゃない……。僕が死んだ事なんて、今までないだろう?」

さやか「でも痛そう……。あたしもお腹痛いの、我慢するね。いたっ……」


QB『キミは何を言ってるんだ恭子』

恭子『君こそ何を叫んでるんだ。演技としても大げさすぎるよ』

QB『ここで? ここで始めると言うのかい? こんな中途半端な……』

恭子『中途半端……ね。たしかに、半端な物が多すぎる。僕の存在も、仁美さんの身体も。
    さやかの魔法も、杏子さんの決意も、マミさんの絶望も、君の……。

    しかしキュゥべえ……君はそんな、選り好みをする立場にあったのか?』
342 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/26(木) 22:01:36.24 ID:KonSKpN3o
QB『…………』

恭子『孵化器の仕事は……卵が育てば……それでいい筈だろう?
    僕が魔女になる、マミさんもすぐ……さやかも杏子さんも、いずれ……
    契約をすれば志筑さんも遠からずそうなる。そして、君は回収するだけだ』

QB『……そうだね。同時である必要なんて……ない』

恭子『それは個人的な僕の望みだ。君が取り乱す理由なんて、ない』

QB『その通りだ。ボクが取り乱す、わけがない』

恭子『おかしいよね……おかしいと思わなかった?
    半端な「何か」が芽生えたような、最近の言動……』

QB『恭子……』

恭子『人間が君の技術を、魂を取り出す方法を習得しても、危機感もないんだ?』

QB『キミは……』

恭子『──僕の存在。仁美さんの身体。さやかの魔法。杏子さんの決意。マミさんの絶望と』

QB『キミは、ボクに』

恭子『君の……感情』




QB『キミは、ボクにも魔法を掛けたね!?』




恭子『……アッハッハッハッハ! 気づくのが遅すぎるよ、インキュベーター!』
343 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/26(木) 22:03:40.82 ID:KonSKpN3o
第六話おわり。
次回、第七話『真実の愛と勇気の物語』

アップローダというものを使ってみた!
http://wktk.vip2ch.com/dl.php?f=vipper7722.png
344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2011/05/26(木) 22:12:01.03 ID:AbhbKkTU0
あらら。そろそろクライマックスか
345 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/26(木) 22:17:25.64 ID:KonSKpN3o
>>344 まだだよ! まだホスト二人組出てきてないし!
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/26(木) 22:20:22.47 ID:k5DA5teXo
でらげっしゃっしゃっしゃっしゃっしゃっ乙!!

こんなに続きが気になるSSは無いわ……もう毎日書いて欲しい。毎日読みたい。
ファンシーと昼ドラも真っ青のドロドロ愛憎劇の混成がたまらんねぇ
347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) :2011/05/26(木) 22:35:34.78 ID:s6Sv6aGZo
ラストの笑い方がでらげっしゃじゃないだと……!

いつもおもろいよ乙
348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/05/26(木) 22:36:55.78 ID:LVJj7pBVo
でらげっしゃっしゃっしゃ!

しかしうまく理解出来ない俺の理解力の無さが恨めしい
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2011/05/27(金) 02:58:15.37 ID:IkaJe7D00
乙っちまどまど

基本一人称で地の文がないし、かといって擬音で行動を補填させてるわけじゃないから多少わかりづらいのはしかたないんじゃないの
でもここまで面白いってすごいぜ
350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/27(金) 11:56:57.34 ID:pPFQDuvDO


恭子さんマジ魔王
351 :BENPER [sage saga]:2011/05/27(金) 21:26:03.17 ID:whnMSwAXo
地の文を書いたら最初の「オゥフ!」の所でめげた。
なので想像力に任せる事にした。諸君らの健闘を祈る!

第七話『真実の愛と勇気の物語』
352 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/27(金) 21:26:54.92 ID:whnMSwAXo
*「このままカラオケ行こーよ」
*「…………うん」
*「ホントさあ、元気だして! 今日くらい中澤君の事も忘れてさぁ!」

  …グスッ グスッ

*「あー……ダメかー」
*「グスッ。ザワ君、部活にも来ないし、電話も通じないし……」

*「本当、どうしちゃったのかねぇ」
*「でもさ、浮気って事はないと思うよ? だってアイツ、一回フって、二度目OKしてやってのクチでしょ?」
*「一回目なんて、こっちが気の毒になるくらいヘコんじゃってたし……」
*「あんなさ、うまくいかなきゃヤバイ死ぬみたいな、かなーり必死だったのに、浮気ってのはなー」

*「あ、そうだよ、恭子さんに相談してみない? あの人、三年のヒトからも色々相談受けてるとかって」
*「……あの人は嫌! ザワ君のコト話したくない!」
*「えぇー……。あ、うん、ま、いいよね。うちが恋愛相談、してみたいだけだから。うん、忘れて」

*「あれ? あそこにいるの」

ほむら「…………」

*「暁美さー……む」
*「(ちょっと! 何、声掛けてんの!)」
*「(何アレ、ドレス? あーいう服着るんだ……)」
*「(え? 何? ちょっと、もしかしてエンコーとかじゃないよね……って、こっち来た!)」

ほむら「あなたの大切な『ザワ君』……上条恭子に盗られたって、いいかげん気づかないの?」

*「!?」

ほむら「頭はカラッポで神経は鈍い……バカばかり」

*「え……ちょ、何ソレどういう……」
*「……何よソレ! あんたがザワ君の何知ってるって言うのッ!?」

 ドンッ

ほむら「きゃ……! ヒッ……ヒイイイッ」 ダッ…
353 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/27(金) 21:28:38.39 ID:whnMSwAXo
〜魔女の結界

 シュルルルー…
       フシュルルルルー…

杏子「結界乗っ取りとは恐れいったわ。さすがはマミ。『見滝原最強』のマミだ。
    ……アンタはもっと、横文字まみれの通称がいい、って言ってたけどな」

仁美「マミちゃん……」

杏子「見ろよ、仁美チャン。あのリボンで飾られたポートレート」

仁美「わたくし達の姿……ご家族の姿……、ああ!」

杏子「泣くなよ……泣かないで見てやれ。こんなんなっちまったマミの、最後の人間らしさって奴を」

 …ジャキン!!

仁美「!! 杏子さん、おやめになって!」

杏子「せっかく三途の川が見えたってのに、すけこに呼び戻されちまった。
    そのすけこも戦闘不能ときた。しゃーないなー……アタシがキメてやらなきゃな」

仁美「マミちゃんは魔女なんですの? 本当に、魔女になってしまったんですの!?」

杏子「あれが人間に戻るってんなら……アタシは明日からスカート履いてやる。そんで逆立ち世界一周してやるよ」

 …フシュルルルルルルル

杏子「マミ……いいよ。ひとりぼっちは寂s……」

仁美「だめええぇぇっ!」

 グルンッッ
         ドタン!

杏子「……ヒトの首持って投げンじゃねエエエエェェェ!」
354 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/27(金) 21:29:16.81 ID:whnMSwAXo
仁美「認めませんっ! マミちゃんが魔女になったなんて認めませんっっ」

杏子「いいかげんにしろ、オイ!」

仁美「箱の中の猫の死は確定されていませんわ!」

杏子「いやいやいや! 見てるから! マミの姿、バッチシ見えてるから!」

仁美「杏子さんはバカです、大バカです! どうしてそう諦めたがるのです!
    声を掛けました? 触れました? 明確に拒絶されたのですか?
    拒絶されようとも押し倒して、愛を訴えはしないのですか!?」

杏子「……育ちのせいか、その脳内お花畑は」

仁美「杏子さんがやらないのなら、わたくしがやります!」

杏子「もうお嬢様のワガママ聞いてやれる範疇じゃねェんだよ、仁美ィ!」

 ダンッ

仁美「わたくしを押し倒してどうするのです。相手が違いましてよ」

杏子「ナマ言ってると犯すぞ」 ギッ

仁美「ナマ言ってると孕ましますわよ」 ギロッ

杏子「ないものねだりが過ぎんだよ。過ぎたんだよ、アタシもアンタも、マミも!」

仁美「──それのどこが悪い!」

杏子「…………」

仁美「終わるのですか……諦めて、目を背けて、それで終わってよいのですか!
    わたくしは終わりたくない! 諦めたくない! 欲しいものは手に入れたい!
    たとえ誰を傷つけようと……自らを傷つけようともッ」
355 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/27(金) 21:30:38.78 ID:whnMSwAXo
杏子「威勢がいいだけの言葉なら……さやかだって吐いたさ」

仁美「これから先、友達に──感動的な言葉でしょう?」

杏子「だが無意味だ」

仁美「ですが有意義です」

 …スタ スタ

仁美「薄っぺらい言葉に、生きる価値がある時もある。わたくしは、前向きなさやかさんを支持します。
    後ろ向きな人は支持しません……でもこれも、くだらぬポエムと思うなら、捨て置いてくださいな」

杏子「行くな……」

仁美「ごきげんよう、杏子さん」

杏子「行くな!」

仁美「うまくいったら……また、えっちな事、しましょうね」


 フシュルルルー…

       フシュルルルルー…

 シュルルルン…

       フシュル…

仁美「本気で何かを叶えたいと──初めて、思いましたの」
356 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/27(金) 21:31:14.16 ID:whnMSwAXo
仁美「秘し隠し息を殺して生き永らえる。そうして志筑は、ここまで参りました。
    この身は毒。この身は枷。仁美は自分が憎くてたまりません。だから」

仁美「まどかさんを愛しております。自分が十把一絡と悩む姿が妬ましくて」

仁美「さやかさんを愛しております。出せる手を引きもできる自由が羨ましくて」

仁美「マミちゃんを愛しております。己を嫌うその瞳が、鏡写しのように疎ましくて」

仁美「吐き気がするほど、愛しております。この世の終わりが憎い程……惜しい程」

仁美「……側にいたい」

仁美「あなたの味方でいたい。あなたが欲しい。あなたを盗み取りたい。あなたを独占したい」

仁美「あなたを愛していたいのです」

 ──デモ……私の愛とあなたの愛はチガウ

杏子「!! マミッ……」

仁美「あなたをください。仁美をさしあげる事しかできませんが、どうか側にいてください」

 ──ダメヨ……チガっちャう……ズレちゃウ……離れちゃう

仁美「瞳をえぐり、耳鼻をちぎり、知覚の全てを捧げます。この命を捧げます。この魂を捧げます」

仁美「あなたの瞳を開いてください。あなたの耳を傾けてください。命を魂を私に向けてください」

仁美「毒虫に慈悲をください。共にいさせてください。人として生きさせてください」

 ──そばにいてくれないくせに

仁美「側にいます。同じ人として、同じ魔法少女となりて、同じ魔女となり果てるまでは。
    いずれ終わりましょう。それでも、どうか……あなたの終末に、仁美を御一緒させてください」
357 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/27(金) 21:31:45.30 ID:whnMSwAXo
 ──味方でいて

 フシュルルルー…

 ──あなたをちょうだい

       シュルルルルー…

 ──あなたを盗み取るわ

 シュルルル…

 ──あなたを独占する──

      …シュルルルルルルルッ!!

杏子「マミ! やめろおおお!」

仁美「……キュゥべえさん! わたくしと……契約を!」


 ──……、そばに……いて





 ドサッ

恭子「セイヴ・ザ・イマジン……拡大型エジステンツァ・エレガンテ」

さやか「ダイナミック・チョップ」

恭子「後で言うってのもカッコイイよね」
358 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/27(金) 21:33:00.22 ID:whnMSwAXo
恭子「……あーあ、気が変わっちゃった。ふふ。杏子さんがあんな事、言うから」

さやか「何? どうしたの?」

恭子「なんでもないよ。それより、さやか、お腹は大丈夫かい?」

さやか「出してきたら、もう大丈夫みたい。ティッシュ貸してくれてありがとう」

恭子「僕は君のために何でもするよ。当然じゃない」

さやか「……えへっ」


QB『ばーか!』

恭子『キュゥべえ萌え〜!』

QB『いいかげん、キミはボクの邪魔が目的なのかと思うよ。志筑仁美と契約できそうだったのに』

恭子『悪い悪い。でも、君への魔法も解いてあげたじゃない。もう干渉しないと約束するよ』

QB『どうかな。キミは息を吸っては嘘をつき、吐いては嘘をつくようだからね』

恭子『もうっ、怒ってないくせに怒ってるように見せかけちゃって。
    ……ごめんごめん。でも、まずかったと思うよ、本当に、僕がこうしてなきゃさ。

    宇宙のどこかにいるインキュベーターに直接、魔法を掛けるなんて事はムリでも、
    端末を通じて干渉できないかな、なんて思う娘は、今までだっていただろう?

    ほむらさんじゃなくとも、君の肉を潰した魔法少女は多いんだろう?
    面白い所では、錬金術師のフラスコに詰められた、なんてのも話してくれたじゃない。
    ひたすら愛を説いた娘だっていたんだろう? 拷問を決行した娘もいたんだろう?

    今まで平気だったから今回も届かない、なんて、どうして思えたの?
    ……そうさ。君が、そんなに無垢で無防備だとは思わなかった。
    だから、つい、狼気分で牙を剥いちゃったのさ』

QB『──確かにボクの油断だ。特にキミには、ボク自身が端末への積極的な干渉を許してしまった。
   まさか、そんなつもりでボクにアナルをつくったなんてね』
359 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/27(金) 21:33:48.52 ID:whnMSwAXo
恭子『その時点では、キュゥべえが僕の、ちょっとしたお願いにどう反応するか。
    わずかな干渉を、「許す」か、「許さない」か。
    それだけだったんだよ?

    ──相手の言うことを聞くってのは、そういうことだ。
    キュゥべえ、君に魔法の使者を名乗れる程度の能力があるからと言って、これはダメだよ。
    甘えだよ。感情がない弊害かな。……君自身と、人間と、きちんと区別しないとダメだ。
    恐れる必要はない、けど、とるにたらない物のように見てはダメだ』

QB『ボクはキミ達を知的存在と認め、同等の目線に立ったつもりだったんだが』

恭子『だから君自身と端末との交信に、他人の命令を織り込める環境ができてしまった。
    結果、君こそが息をするように嘘をついてしまった。
    ──同等。
    それこそが危ない。自分をそこまで「降ろす」にしろ「持ち上げる」にしろ』

QB『基準を曲げる事には変わりなかったと』

恭子『大人だって屈めば、子供の目潰しを喰らうんだよ。
    世の少女達を見なさい。高きも低きも一列に並ぼうとするから、ほらあんなにも歪』

QB「ふむ……」

恭子『発信元もわからなくなるほど、命令は交差し、洪水のように溢れかえっている。
    その水場に悪意の魚を一匹、忍び込ませるのはとても容易だ』

QB『これはまいった。騙されやすい少女達そのものに、ボク自身が近付いていたとは』

恭子『少女に近い精神構造になってしまった。これはいけないよ。雄に戻りなさいインキュベーター』

QB『言われなくてもスタコラサッサだよ。でもキミ以外に、ここまで主導権を奪えるような者はいないと思うが』

恭子『それは男らしい油断だこと。……雄に戻りなさい。本能のまま雌も赤子も噛み殺せる雄に』

QB『恭子……キミという少女は、本当に……』
360 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/27(金) 21:36:17.79 ID:whnMSwAXo
恭子『砂糖菓子のような甘い悪夢の始まり』

恭介『僕の愛情物語の終わり』

恭子『そうよ、上条恭介。全ての夢、全ての愛、全ての美、未来も絶望も、僕がまとめて奪ってあげる』




マミ「……う、うう。ん……?」

杏子「マミ……」

仁美「マミちゃん」 ニコッ

マミ「わ、私……なぜ裸なの!? それに、このリボンは……私の?」

杏子「マミッ」 ガバッ

マミ「きゃ、きゃー!
   ダメよ、裸リボンだからって、あなたにあげるとかそんな、ま、まだ心の準備が!
   ……、杏子……泣いているの?」

杏子「泣いてんだよ……悪いかよ……」

マミ「……何があったかはわからないけど、何かがあったのね」

恭子「(よかった……リボンが、自身の記憶をまだ鮮明に保っていて、本当に助かった。
     魔女化していなかったとはいえ、人一人の精細な復元は、さすがに骨折するなぁ。
     マミさんが『ぼくのかんがえたまみさん』になってしまう所だった。きっとおっぱいすごい)」

さやか「ほーら、最後は恭介がなんとかしてくれるんだから。安心、安心」
361 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/27(金) 21:37:06.36 ID:whnMSwAXo
杏子「(よかった……マミがまだ完全に魔女になってなくて。元に戻って、本当によかった。
    アタシにゃできなかった。アタシは目を背けたまんま、一歩も踏み出せなかった……)」

仁美「(よかった……マミさんが元に戻って。魔女になっても戻れるなんて、よかった。
    覚悟を決めたつもりでしたけど。変貌には、きっとあんな甘い理由では足りぬ筈ですから)」

さやか「(よかった。恭介のカッコイイ所が見れて。わーい)」

マミ「ね……、ここは魔女の結界、よね? 魔女は、倒したの?」

恭子「(記憶を削るってのも、案外できるものだなぁ)」

 …キィィィィッ
 キイヤアアアアア──ッ!!

マミ「キャアアッ! 魔女ッ?」 ドテッ

杏子「うわっ。リボンに隠れていやがったかコイツ!」

恭子「むしろ、マミさんのお尻に押しつぶされていたみたいだけど」

マミ「わっ私そんなに重くない……や、やだ! あなたは見ないで! 裸なのよ!」

杏子「ばばばばばばか、そそそんあしがみしがみついたら、うあ」

恭子「杏子さんたら、うまやらしい」 ギリギリギリ

仁美「歯噛みするほどですか」

さやか「粗大ゴミ、逃げちゃうよー」

 ズズズズ…

恭子「結界ごと移り始めた。しかし、そうはいかないよっ……ファントムスティード!」
362 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/27(金) 21:40:23.73 ID:whnMSwAXo
 召喚(したかのようにつくった)。
 魔法による馬。

マミ「…………」 キラキラ

仁美「まぁマミちゃん、少年がトランペットを見つめるような目をして」

マミ「マジカルトランスレイトッ、乗馬服にチェンジ!」 シャラーン

恭子「(うわぁ。)これで直接、追う事ができます。行きましょう」

杏子「オイすけこ、キズはいいのか?」

マミ「えっ、恭ちゃんケガしたの? 見せて、私が治すから」

杏子「あっ、……あー。えーと」

恭子「いえ、マミさんが気に病むほどじゃありませんよ。ホントホント。
    先ほどマミさんが……倒れていた時、その時の杏子さんの発言で、軽く復帰してしまったし」

マミ「???」

杏子「……嫌な予感しかしないが、いちおう聞いてやる。アタシが何だって?」

恭子「スカート履いて逆立ち世界一周する」

杏子「」

恭子「スカート履いて逆立ち世界一周する」

杏子「忘れろ」

恭子「ムリデス」

マミ「わ、私が気を失っている間に! 杏子ったら、どういう流れでそんな冗談を!?」
363 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/27(金) 21:41:09.71 ID:whnMSwAXo
杏子「冗談じゃねーよ! いや冗談で済ませてくれ頼んます! っつーかマジ忘れろーッ!」

恭子「町内一周でもっ、いやウチの家一周でいいから! なんならその場で回るだけでいいからーっ」

杏子「いーやーだァーッ!」

仁美「杏子さんがやらないのなら、わたくしがやります!」

杏子「育ちのせいか、その脳内お花畑はーッ! てか流れがわかんねェェェ!」

マミ「ん? なんか台詞の端々に聞き覚えあるわ」

さやか「さやかちゃん逆立ちは得意ジャンルですよー。よ、っと」

杏子「その空気読まなさは、アレか! 注目を集めたくて仕方ない、さみしんぼさんか!」

さやか「片手立ちー、続けて180度開脚ー、燃焼系、燃焼系」 クルクルクル

恭子「極厚はんぺんは付けなくなったんだね。進歩だ」 パチパチ

さやか「えへへー。普通の日用!」

杏子「すけこ、オマエが甘やかすと脳が溶ける。これ以上さやかをバカにしてやるな」

マミ「豚の丸焼きー」 ブラーン

仁美「あらあらマミちゃん、馬は鉄棒じゃありませんことよ」

マミ「……鞍からずり落ちちゃって、戻れないだけなの!」 ズル ズル

恭子「ムリしないでください。マミさん目覚めたばっかりなんですから、気をつけて」

マミ「でもせっかく乗っ……きゃあ! ぐえ」 ドシン
364 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/27(金) 21:42:02.27 ID:whnMSwAXo
恭子「じゃ、行きましょう。さやかや志筑さんも乗れるようになっています。
    普通に、覚えている通りに乗馬すれば大丈夫」

仁美「まぁ、安心ですわね」

さやか「えーっ、あたし最近は乗ってないんだよなぁ」

杏子「」

マミ「」

恭子「どうしました? あ、マミさんは具合が悪いようなら、誰かに同乗で」

マミ「ど、同情なんかしないでちょうだいっ! うわーんっ!」

恭子「?!」

杏子「……あのな、すけこ。この時代にな、この国でな……普通に、乗馬、とかなァ……
    テメーらみたいなブルジョワぐらいしか言えないんだよチキショウめェーッ!」

さやか「えー、うちそんな金持ちじゃないし」

杏子「ガキの身分でマンションに! マンションに一人住まいしてた奴が! ほざくなッ!」

さやか「なんでよっ、マミさんだって一人暮らしじゃん!」

杏子「ありゃ色々ワケあり物件の上、マミそのものがワケありだからだよ! くそっ、パンツ三千円の女め!」

さやか「な、なんでパンツの話が出てくるの!? 別に贅沢じゃないよ、肌に触れるのは良いものじゃなきゃってジョーシキでしょ!?」

マミ「うあーん! どうせワケあり物件のワケにも逃げられた女よ! 名前付けたトコだったのに、塩もまいてないのに、どうして……!」

仁美「ま、マミちゃん……今そういうお話では……」

恭子「もう魔女逃がしちゃってもいいんじゃない? このムード」
365 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/27(金) 21:45:30.00 ID:whnMSwAXo
今日はここまで。逃げてー魔女逃げてー!

恭子と恭介がなんかポエムってたのは単なるBGMですのでお気になさらず。つばさキャットと中島みゆき。
伏線じゃナイナイ
366 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2011/05/27(金) 22:32:17.86 ID:p/2gByAX0
やり直せばいいやと思い込んでるだけでこれはほむほむもたんぞ・・・
367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/27(金) 22:54:51.55 ID:ntRxBd1Ho
ほむほむさんはもう堕とされるしか救いが……
あぁ、でもそれはやらないんだっけ
368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/27(金) 23:19:01.88 ID:bfaKEfOwo
毎日読みたいって言った翌日に次回を読ませてくれるとか何なの
惚れる
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/28(土) 11:53:36.94 ID:7rCAsqPDO
ほむほむ…(´・ω・`)
370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2011/05/28(土) 13:30:48.71 ID:AcrU0WZg0
マジキチほむほむ大好き
371 : ◆HzlafViPrYZp [sage]:2011/05/28(土) 14:15:38.09 ID:jNLCXg7v0
ほむほむが魔女化するのみたいお
372 :BENPER [sage saga]:2011/05/28(土) 21:21:17.98 ID:tUZN3iBJo
ほむほむマジキチじゃないもん! 努力家の良い子だもん!
つーか誰か、他の子の心配もしてやってつかーさい

続き。お馬でGO!
373 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/28(土) 21:23:44.70 ID:tUZN3iBJo
〜やっと追跡中

恭子「僕が先回りで足止めします……マミさん、杏子さん!」

マミ「えぇ!」

杏子「おうよッ!」

恭子「……くれぐれも振り落とされないように」

  バビューン

マミあん「(チクショウ)」

仁美(マミ同乗)「大丈夫ですかマミちゃん、お尻が痛くなったりしていません?」

マミ「ええ。仁美さんって、馬を走らせるのもお上手なのね」

さやか(杏子同乗)「あんた、ちゃんと掴まってよ! 重心あっちこっちに振らないで!」

杏子「ったく、うるさいわ尻が痛いわ……(大体そんな、くっつけるかよバカ)」

さやか「ちゃんとナビしてよね。あたし達には魔女の場所がわからないんだから」

仁美「いささか不安ですわね。空を飛ぶ馬など、初めての経験ですし。
    上条さんの魔法ですから、わたくし共の腕ごときには左右されないと思いますが」

マミ「安心してちょうだい。使い魔が出てきても、私達が蹴散らすから。
   それに魔女の結界に入り込めば、あとは自力で、追い詰められる」

杏子「ウワサをすれば……使い魔連中だ、来るぞ!」 スクッ

 キャハハハハ…
       ハハハハ…

マミ「……ちょっと暑いわねぇ。そう思わない? 『ラウラ・アウレオ』!!」
374 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/28(土) 21:26:49.61 ID:tUZN3iBJo
     シュルッシュルルッルルル…
   シュルシュルシュルシュル…
 ヒュオオオオオオオオオ!!

      ギャイー  ギイイイ

マミ「あら、こんな微風で全部落ちちゃうなんて。こらっ、だらしないぞっ」

杏子「すげぇリボンの乱舞……レベル上がってね?」

マミ「ふふふ、そう? でもまだ必殺技はあるのよ!」

杏子「(まったく。一人で勝手に沈み込んで、一人で勝手に舞い上がっちまって……
     かなわねェな。もともと、アタシがいなくても一人でやってたもんな……)」

仁美「(助けなど……必要ないのかもしれませんね。おっと、危ない危ない。
     わたくしはまた傲慢に。そもそもマミちゃんは充分強い、一人でも終われる人……)」

マミ「どう、仁美さん。これ、あなたをイメージして創った技なの!」

仁美「ま、まぁ?!」

マミ「仕草が華やかなのよね、仁美さん。それでリボンの軌道にね、金銀の花と蝶をまぶしてね……」

杏子「……へー、よかったじゃん」

仁美「あっありがとうございます! 光栄ですわ!」

杏子「(マミは一人で自由にやってける奴なんだ。アタシと組む前から。組んでも。別れても……)」

さやか「きょーこっ」 グリン

杏子「うお。あんだよ、いきなり反っくりがえって。背すじの運動か?」

さやか「ひとみにぃー、じぇらしー?」

杏子「!! ハァ!? 何言ってやがんだ! ってかちゃんと前見ろ!」
375 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/28(土) 21:28:30.92 ID:tUZN3iBJo
さやか「クククッ。まーったく、どの口が『キライ』だの『この女』だの言ったのかしら。
     大好きじゃーん。マミさんファンクラブ名誉会長じゃぁーん?」

杏子「ウッセ! この上条さん教の教祖が! こっち向いて喋れ!」

さやか「なによぉー、前見ろって言ったじゃない。それに、ヒトがせっかく褒めてるのにさ。
     口がまわらないなら、まわらないなりに、もーちょっと素直になんなさいよねー?
     本当さー、あるじゃん。ハグとかぁ、あと、ギューとか」

杏子「同じだろ……どーしてそうアタシにやたら突っかかってくんだよ、オマエは」

さやか「え? 逆でしょ? 何言ってんの。
     初めて会ったときから、アンタのほうが突っかかりっぱなしだよ」

杏子「……オマエさぁ、すけこの前と、それ以外で、態度変えすぎだろ」

さやか「はぁぁ? それこそ言いがかりじゃん。あたし別に態度変えようとか思ってないし!」 クルッ

杏子「図星だからって怒るなよ」 チッ

さやか「それなら、あんただってそうじゃん! あたしにはこうで、恭介の前だと、あんなふざけて。
     あんまり下品な事とか、恭介に教えたりしないでよ!」

杏子「おー、さやかちゃん。じぇらしぃー? 下ネタとか、すけこだって嫌がってねーもん。
    むしろ積極的だし、いいじゃんいいじゃん。いいもんもんじゃんじょん」

さやか「恭介は優しいから、あんたのレベルに合わせてくれてんの!」

杏子「優しいから、さやかチャンのレベルにも合わせてあげてるんでちゅねー」

さやか「……、……そうだよ……」

杏子「えっ? え、いや、そこで沈むなよ。さ、さやか? さやかちん? ハグハグ! ギュー!」

さやか「……ウザ」
376 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/28(土) 21:29:20.58 ID:tUZN3iBJo
仁美「──さやかさん! 杏子さぁんっ! 前、前ーっ!」

さやか「!!!! ……でやあぁぁぁあぁぁっ!」 グイイッ!!

    …ドカ──ン

マミ「杏子オオオオオオォォ! さやかさぁアアァァアァん!」

仁美「はわわわわわ……」

マミ「仁美さん、追って! すぐ!」

仁美「は、はいっ。ハイヨーッッ」 ピシィッ


〜結界内

杏子「あいたた……。ったく、脇見運転してんじゃねー!」

さやか「ごめん……、……痛ッ」

杏子「オ、オイ? どーした、また腹か? ……足、ケガしてるじゃねーか!」

さやか「だいじょぶ。あたし、これぐらいじゃ死なないもん……」

杏子「死ななきゃいいってもんじゃねーよ! オマエ、生身なんだぞ!」

さやか「わかってる、魔法少女じゃないからね……魔女退治の足手まといになっちゃいけない。
     大丈夫、大丈夫。恭介からも言われてるんだー、あんたの助けになるようにって。
     ほら、歩けるよ。大丈夫!」

杏子「……そうじゃ……ねーよ」

さやか「は?」

杏子「……グフッ」 パタン
377 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/28(土) 21:30:43.69 ID:tUZN3iBJo
さやか「! ど、どうしたの? ケガした? どっかぶつけた!?」

杏子「(放っておくと、先行して突っ込もうとか言いだしかねないからな。危なっかしくてしょうがねェ)
    ……も、問題ない……大丈夫ダァー」

さやか「大丈夫って顔じゃないよ! や、やだ、どうしよう、どうしよお」

杏子「マミがじきに来る。それまで待て。(すけこでもいい、アタシより癒やしは得意だ)
    (いや……癒やしも、か)(それに、アイツの治療のほうが、さやかは喜ぶんだろうな)」

さやか「い、痛い? 苦しい? どこかな、さすってあげるから言って」

杏子「む、胸を。呼吸が。(結局、仁美チャンの問題もすけこ頼りだ。アタシの出る幕はなかった。
    マミを戻したのだって、あいつの演奏だった。アタシの寝る場所だって、ヤツの持ち物。
    さやかの想いも……やめよう、何、考えてんだ)ゼェー、ゼェー、ズゥェェー」

さやか「わかった。大丈夫、大丈夫……よしよし」

杏子「(それにしても、さやかはやっぱりバカな奴だ……自分だって、足が腫れてんのにさ……。
     だいたい、馬を盾に突っ込んだおかげで、アタシは魔力も使わなけりゃキズもありゃいない。
     一人で無茶して、転がって、ケガしやがって)」

さやか「ね……寝ちゃダメ! 死ぬよ!」

杏子「(冬の山か!)……さやか、何かしてくれるってんなら、さァ」

さやか「なな、何? どうしよう、ど、どうすればいい?」

杏子「人工呼吸とか」

──────────

 「杏子、よくお聞き」
 「嘘をつく事はね、自分の首を……」

──────────

 ──ああ 父よ

 あなたは正しかった──
378 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/28(土) 21:31:22.65 ID:tUZN3iBJo
 …………スゥーッ


 フゥーッ…


杏子「」


 見上げた彼女は泣いていた。
 涙は ぽと ぽと と落ちてきた。

 …………スゥーッ

 フゥーッ…

 間近に見ると睫毛が長くて、頬は紅い。
 それぞれが濡れてキラキラしている。

杏子「」

杏子「(あ)」

杏子「(これ、折れたわ)」


 嘘をつくことは……自分の首を折るような事だ。


杏子「ぉ……おごほっ! ゲフッガフッ」

さやか「!! だ、だ、大丈夫ッ!? やだ、やだやだやだ! 死んだりしないでよ!?」

杏子「あー……死ぬかと思った」
379 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/28(土) 21:32:59.10 ID:tUZN3iBJo
さやか「大丈夫? 大丈夫なの、あんた」

杏子「あー、うん。ちょっと心臓にキてるだけ」

さやか「ちょ、起きちゃダメ! マミさん達を待つんでしょう? 安静にしてないと!
     心配しないでよ、使い魔が来たって、あたしが迎え撃ってやるからさ」

杏子「さやか……」

さやか「仁美ほど強くないかもしれないけど、あたしだって元魔法少女なんですからね!
     さっきの使い魔くらいボコボコにして、縛ってまとめて、燃えないゴミにしてやるんだから。
     だから、あたしが守ってやるから。心配しないで……」

杏子「……泣く程、心配、してくれたのか?」

さやか「……決まってんでしょ。あたし達、友達じゃない」

杏子「そか」

さやか「そーよ」

杏子「そうなんだよなァ」

 ──あーあ。

さやか「……あのさ、……ごめんね? さっきの、ヨソ見」

杏子「……、いや、馬をぶつけたのは、結果的にはイイ方法だよ。
    外からの干渉に対して、結界は恐ろしく強い。内部は魔女どもの世界だからな。
    ヘタにちまちま攻撃するより、アレのおかげで消耗が少なくてすんだのは確かだ。
    なにせアタシ達の中じゃ、すけこの魔力が最強だからな」

 あーあ。そうなんだよなぁ。

さやか「あ、やっぱり? そうでしょ、そうでしょ! うむ、さやかちゃんの目に狂いはなかった!
     やっぱり恭介が一番強くてカッコイイんだよね!」
380 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/28(土) 21:34:02.80 ID:tUZN3iBJo
〜魔女の寝室〜


 H.N.ELLY
      (KIRSTEN)


    キイ…! キイィ…!!

恭子「…………」

恭子「遅いなぁ、みんな」

恭子「退屈すぎて、あらかたログも読み終わっちゃったよ。
    ごめんね、エリィさん。もう一度、深く潜ってもいいかな?」

 ギイイイ!!

恭子「泣かないでよ。嫌なら魔女になんてならなきゃよかったんだ。人権は良質なセキュリティなんだからね」

恭子「うんうん、電脳の海からも閉め出されるなら、自分で海をつくればいいじゃない……。
    創作意欲は花マルだよね。でも。更新の絶えたウェブに意味はあるのかい?」

    …クスン クスン

恭子「どうして魔女になんか、なっちゃったのさ。おかげで君の人生に更新はなくなっちゃったよ」

 フェ…ウエェェエン…

恭子「教室で漏らしちゃった事には同情するけど、君がイの一番に症状が出たってだけなのに。
    集団食中毒なんだから、どうどうと登校してもよかったんだよ。
    ──まあ、ログに残ってる以上、君にもわかっていたんだろうけどね……」

 ………………

恭子「バーチャルネットアイドルを経て、本物のネットアイドル目指して、女神になって。
    重箱の隅つつきたい奴はスルーしておけばよかったのに。尻の毛なんか気にしすぎてさ。
    あーあ。放っておけないよ、君みたいな子。肉体の記憶も新しいしね」
381 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/28(土) 21:37:11.32 ID:tUZN3iBJo
悪企みんぐ☆今日はここまで

(元)バーチャルネットアイドル、エリィちゃんに応援のおハガキ、待ってます
382 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/28(土) 21:56:21.72 ID:tUZN3iBJo
訂正!>>379>>380の間、投下し忘れ
〜〜〜〜〜〜〜

 ……そうなんだよなぁ

 ……アイツは主役で

 ……アタシは、脇役


杏子「アンタはホントさァ」

さやか「へ?」


 ……王子様とお姫様と

 ……愉快なその他大勢による

 ……真実の愛と勇気の物語


杏子「すけこの事、好きすぎんな」

さやか「へっ!? あー……いやー……そんな。うん、そうかも……えへへ」


 ……アタシは主役じゃない


杏子「……おーおー、のろけてくれちゃって、アラアラまァまァ」


 アタシハシュヤクニナレナイ
383 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/28(土) 21:59:19.36 ID:tUZN3iBJo
今度こそ今日はここまで!
杏子ちゃん濁り展開!
384 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/28(土) 22:08:51.05 ID:J1SXSH7Bo
初めてこのスレ一気読みしたわ
なにこのすれこわい
385 :BENPER [sage saga]:2011/05/28(土) 22:22:08.53 ID:tUZN3iBJo
>>384 Welcome to this crazy time このイカレた時代へようこそ

大丈夫!
これからさやかと杏子が結ばれて、二人は朝からイチャイチャ、ラブラブ同棲生活するよ!
386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/29(日) 03:46:55.77 ID:acoaKbZdo
あたしは!!
(上条教の)司教じゃない!!

・ ・ ・
大司教だ!!
大司教(アルキエピスコプス)なんだ!!

ですねわかります><


ハコのエリーちゃんがトラウマほじくり返されててワロタwwwwww
387 :BENPER [sage saga]:2011/05/29(日) 21:24:49.25 ID:xgLZClOvo
あたしって、ホント大馬鹿野郎…

続きです。
さくっとエリちゃん倒して家に帰ろう!
388 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/29(日) 21:28:23.90 ID:xgLZClOvo
〜結界内

さやか「マミしゃぁん」

マミ「よしよし……さりげなく揉まないでちょうだい」

仁美「仲良きことは美しきかな、うふふ。
    遅れてしまって申し訳ありませんでした。ご無事で何よりですわ」

マミ「結界の自己修復ときたら尋常じゃないけど、巣穴を探していると逃げ切られそうだったからね。
   でも、せっかく大技お披露目、二人がいなくて残念だったわ」

杏子「じゃ、行くか」

さやか「あんた、回復してもらわなくていいの?」

杏子「さやかの人工呼吸で治った。さんきゅ」

マミ仁美「「!?」」

さやか「それならいいけど」

マミ「(エー? ナニソレ、ナニソレ、ナニソレ)」

仁美「(杏子さん、エロ恐ろしい子!)」

さやか「えへへ、恭介の事だから、もう魔女をシメてたりして」

杏子「さすがにそりゃねーよ」

マミ「くうう、何かしらこの感情……。仁美さん、なんだか私、寒いわ」

仁美「まぁ……わたくしでよかったら、胸を貸しますわ」

マミ「ありがとう。あったかい……あなたは私の大切な友達よっ」

仁美「……さりげなく揉まないでいただきたいですわ」
389 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/29(日) 21:29:25.96 ID:xgLZClOvo
〜魔女の寝室


 …ガツッ ガツッ ガツッ


マミ「出てらっしゃい!」 ゲシッ

さやか「やーい! 粗大ゴミの魔女! お前の父ちゃんポークビッツ!」

杏子「下ネタ言うな言った奴の言葉か」

さやか「? ポークビッツみたいにむちむち太ってるって意味でしょ?」

仁美「おかしいですわ……なんだか胸にチクチクする語句ですわ」

杏子「(うーん、『仁美のポークビッツちゃん食べちゃらめれすぅ』……いや、『らめれすわぁっ』か?)」

マミ「ハァハァ……蹴り続けてたら足が痛くなっちゃたわ。いいかげん出てきてくれないかしら。
   だいたい、なぜこの子はこんな、ハコの中になんか入ってるの?」

 H.N.ELLY(KIRSTEN)
 現在、金庫に籠城中(?)

マミ「使い魔の姿も見えないし……どうしようかしら。こじ開けちゃおうかしら」

杏子「こじ開ける以外の方法ってあんのか、実際のハナシ」

マミ「……ないわね」

杏子「ないよなー」

 ジャキン!!
      シュルルン!!

マミ杏「「……てやああぁぁああぁぁぁ!」」
390 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/29(日) 21:33:14.17 ID:xgLZClOvo
 ガコンッッ
       …ギャヒイイイイイイ!!!!

 バサバサバサバサバサバサ!!

杏子「うおっ、ヒッチコック!」

マミ「使い魔全部入れて、よく閉まったわね……!」

 キイヤアアアアアアー!!
   キヤアアアアアアァァァァー!!

  ポユン ポユン ドテッ… ポユン

マミ「魔女も歩いたり転んだりするのね……なんだか可哀想になっちゃう」

杏子「同情すんなよマミ。すけこがまだだが、ヤっちまおう。どうせ人間に戻れやしねェんだ……」

  バサバサ バサバサ

杏子「そこをどきな、使い魔ども。ヒト喰っておいて、そんな困り顔すんじゃねェッ」

 キヤアアアアアアアアアアアア

   …オカアアァァァサァァァン
     …オカアサァァァァアアン

マミ「それは何……? 餌の鳴き声をコピーしたとでも言うの……?」

 …オカアサァァァン! タスケテ!
      タスケテェ! タスケテェェ!
 タスケテ ダレカァァァァァ!!
   コワイヨォ  シンジャウヨォォ
     オカアァサー──ン!!

マミ「もう、やめてちょうだい!」
391 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/29(日) 21:34:58.08 ID:xgLZClOvo

   ヴェント・アウレオ
V E N T O A U R E O E


 ゴオオオオオオオオオオッッッ!!

  …キャヒイィィィィィィィイイイイイ!!!
       タスケテエエェェェ!!!!

杏子「これが、さっき言ってた大技か!」

マミ「いいわね、いくわよ! ……?!」

 バサバサバサバサバサバサ…!!

      …ビキッ …グシャッ
 キアアアアア   ボトボトボトボトボト…

マミ「使い魔が、魔女を庇った……」

杏子「盾にしたっつーんだよ! 手を緩めるな、マミ!
    メリーゴーランドに逃げたぞ!」

恭子「──みんな! お待たせ!」

 エジステンツァ・エレガンテ!

さやか「やったー! 恭介ぇーっ!」

杏子「すけこ遅ェよッ、……マミ、離れるぞ! マミ!」

仁美「マミちゃん、お下がりになって!」

マミ「う、うん……!」

恭子「…はあぁぁあぁぁぁ!」

 …ギャヒイイイイイイイィィィィー!!!!
392 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/29(日) 21:36:26.30 ID:xgLZClOvo
マミ「……あ……」

 …ダラン…

      グギギギギギ
       ガリッ ガリッ ガリッ

仁美「……はっ。いけません! さやかさん、見てはダメ!」 バッ

さやか「な、何、今の、何アレ……何」

杏子「グッ……。首吊り……か。楽に逝けなかったみてェだな……
    喉引っ掻いて泡ふいてやがる。ハハ、あれじゃ、もう……」

マミ「──ダメェッ!」

杏子「?! どこ行くんだマミッ!」

マミ「生きてるわ、あの子、生きてる! 降ろしてあげなきゃ──!」

杏子「やめろ! アレはもう死ぬんだ!」

マミ「あの子、苦しんでる! 息があるのよッ! まだ生きているわッ!
   杏子が教えてくれたんでしょう、首吊りは首の骨が折れなきゃしばらく生きてるって!」

 シュルルルッ スパッ

マミ「受け止めてぇぇぇぇぇ!」

恭子「了解!」

         …ドサッ

杏子「(なんでだよ……)」
393 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/29(日) 21:38:10.34 ID:xgLZClOvo
恭子「息が止まってる。それにひどく衰弱しています」

マミ「お願い……私の癒やしの力……お願いだから効いて」

恭子「気道確保。喉から大量の……これは、毛?」

仁美「食毛症……おそらく彼女自身の髪。手足の傷跡から考えても、これは……」

さやか「な、なにそれ。なんで自分の髪の毛食べちゃうの。そんなの……」

杏子「…………」

マミ「もういいの……。もう、自分を傷つけなくても」

杏子「(なんでだよ)」

マミ「戻ってきて。帰ってきて。生きて……生きて……生きてッ」

杏子「(首吊りしなきゃいけない程、追い詰められてさ)」

マミ「生きていいのよ……!」

杏子「(なのに生かされて、どうすんだよ! 死んだほうがマシだろ! 死んどかなきゃ、いけないだろ!)」


 あーあ。気づいちゃった。


杏子「……(……アハハ)」

杏子「(みんなが遠い……)」

杏子「(罰が当たっちゃったんだ……)」

杏子「(アタシみたいのが生き残っちゃ、いけなかったんだ……)」
394 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/29(日) 21:39:20.75 ID:xgLZClOvo
 ……真実の愛と勇気の物語

 ……アイツが主役で

 ……アタシは、

 ────脇役ですら、ない


*「……ア……アアアッ! ウアアアアア!」

さやか「意識が戻った!」

*「アアアア! ギャアアアアアア!」

 …ギュゥゥッ

マミ「大丈夫……大丈夫……もう大丈夫よ」

*「アアアアアアアァァ……アアァ……、……」


杏子「(愛と勇気が救うオハナシ)」

杏子「(アタシ、信じてたんだ。信じちゃってたんだなァ)」

杏子「(マミの夢を信じちゃった。すけこの強さを信じちゃった)」

杏子「(でも気づいちまった……信じ切れないんだなァ……)」

杏子「(自分が全然、……信じられないんだ)」

 なら、ヲわれよ。トモダチいないまま、ひとりぼっちのごっこアソびでシね。

杏子「(よくもあんな事が言えたもんだ。薄汚い、薄っぺらい、嘘っぱちだ)」
395 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/29(日) 21:40:42.44 ID:xgLZClOvo
 嘘をつくことは自分の首を折る事だ。


マミ「よかった……本当によかった」

*「ウ……うー……?」

マミ「生きていいの……あなたは生きていていいのよ……」

恭子「よかった。魂も安定したようです。ほら、彼女のソウルジェム」

さやか「わ、きれいな青緑……」

*「うー」

さやか「ほら、あんたのだよ。大事にするんだ」

仁美「あああ。今回ばっかりは、はらはらしましたわ……」

QB「────おや? エリィじゃないか。久しぶりだね」

*「んーぶ」

マミ「キュゥべえ、この子を知ってるの?」

QB「知っているとまでは言えない。出会ってすぐ契約して、彼女は、あっという間に姿を隠してしまった。
   話しをしたのは一回きり、エリィという名しか知らないよ」

マミ「エリィ……あなた、エリィっていうの?」

*「えりぃー」

さやか「かわいー!」

マミ「でも困ったわね。これじゃ、身元も判らない……。エリィって名前だけじゃね」
396 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/29(日) 21:42:15.32 ID:xgLZClOvo
QB「難しそうだね。なにせ彼女と契約したのは、随分前だ。それにその名は、ハンドルネームとか言ってたよ」

恭子「ハンドルネームじゃなぁ……」

マミ「うーん……」

QB「しかし十年前と変わらぬ姿で、また再会できるとはね」

さやか「えーっ、それじゃ絶望的だ。十年分成長してなかったら、親御さんだって……」

マミ「……よし! わかったわ、私が引き取る!」

杏子「?!」

*「えりー!」

仁美「くすくす、エリィさんも喜んでいますわ」

恭子「マミさんの部屋、広かったですもんね」

マミ「そうよ。一人じゃ広すぎるもの、ちょうどよかったわ」

杏子「……オイ、……マミ」

マミ「なぁに? 杏子」

杏子「……、なんでもねェ……。アハハ、よかったな、エリィチャン!」


 嘘をつくことは……


杏子「(苦しい。この場所は)」

杏子「(息苦しい。……もう、限界なのかな……)」
397 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/29(日) 21:44:16.84 ID:xgLZClOvo
〜恭子とさやか、二人の家

恭子「……あれ。さやか、杏子さん見なかった?」

さやか「わ、お風呂上がりって色っぽくていいな……、はっ!
     杏子? えー……? 今日はお風呂入らないって言って、それから……あれ?」

恭子「どこ行ったのかな」


〜外

杏子「…………」

恭子「いたいた。杏子さーん」

杏子「……おお」

恭子「もー、魔法でカギ掛けちゃうのやめてください。玄関から出たって、気づかなかったじゃない」

杏子「防犯に気ィ使ったんだよ。つかバスタオル一枚で外出んな」

恭子「どうしたの、夜空なんて見上げて。……お、さてはこっそり、コンビニで買い食いの算段?
    すいませんね。ジャンクフードに慣れた杏子さんには、ウチは低刺激のメニューばかりで」

杏子「……別に買い食いなんか、行かないよ。夜中に食うと、カラダに悪いんだろ?」

恭子「え? せっかくお財布持ってきたのに」

杏子「なんでヤメロって言ったその口で焚きつけんだ、オマエは」

恭子「じゃ、僕は戻るんで。あ、お風呂入らないにしても、顔と足は洗ったほうがいいよ」

杏子「はいはい。母親かっつーの」

恭子「股間もね!」

杏子「セクハラかっつーの!」
398 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/29(日) 21:46:36.51 ID:xgLZClOvo
今日はここまで。平和でなによりな展開

ここで七話終わり…と思ったけど
分量のバランスが悪いので、もうちょっと続くんじゃ
399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage saga]:2011/05/29(日) 21:54:25.07 ID:aujEpnoM0
悪い事してなかったどころか、画に描いた様な理想的展開が続いちゃなぁ・・・
まだ計画に支障が出る段階だろうし、どう生殺すんだろうか。
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/05/30(月) 01:11:05.08 ID:8mQQssgAO
やっと追い付いたでござるの巻
この雰囲気がたまらない
401 :BENPER [sage saga]:2011/05/30(月) 20:43:58.61 ID:9uFxhSTYo
もうこのままケーキ食べてキャッキャウフフにしようよ……平和が一番だよ…

続きだよ!
402 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/30(月) 20:46:24.16 ID:9uFxhSTYo

 上条恭子は、受精した卵を体内に宿した。


エリィ「赤ちゃん?」

恭子「そうだよ」

 ハコの魔女改め、エリィ。
 復活直後の混乱も消え、彼女はただの少女になった。
 性格は、やや内向的。可愛らしい声をしている。

 スタイルはモノクロロリータ。
 巴マミのマンション、そのベランダにいる彼女に気づいた通行人はギョッとする。

エリィ「セックスしたの?」

恭子「してないよ」

エリィ「セックスしてないのに子供ができるなんて、マリアのつもり?」

恭子「彼女はそもそも娼婦という話があるね。そちらさん方面に激怒されそうだけど」

エリィ「だったらアナタは、マリアより悪い。あちらさん方面で言えば不自然。不自然の極み。
    セックスもないのに生まれる子。母を知らされず、知ってはいけない子。世も末だ」

恭子「不自然なのは悪い事かな?」

エリィ「安易な受容は悪いに決まってる。そんなのは誰とでもセックスするみたいなものだ」

恭子「セックスした事ある?」

エリィ「何も覚えていないと知っているクセに、そんなコト聞かないで頂戴。怒る」

恭子「ごめん、今のはただのセクハラ」

エリィ「このセクシャルハラスメント野郎。セックスの豚。牛とセックスしてなさいよ」
403 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/30(月) 20:47:37.72 ID:9uFxhSTYo
恭子「やれやれ。エリィさんが元気になってくれて、なによりだね。
    しかし彼女、二人きりになると、途端に口が悪くなるのは何でだろう。
    嫌われているのかな、僕は」

仁美「…………」

恭子「──気にしないでよ、仁美さん」

仁美「…………」

恭子「この国の平和を祈る君のお兄様がた、全員が全員、子を望めなかったなんてね。
    残った君が、祭の火を継ぐしかない。そりゃ志筑家が急かすはずさ」

仁美「…………」

恭子「喜ばないのかい? ……それとも、やっぱり、本心ではなかった?
    君の望み、恩恵の衰死が、目に見えてそこにあるのに!」

仁美「…………」

恭子「この血は絶えるべき──、けれど家族の悲しむ顔は見たくない……。
    そう思って当然だよ。当たり前の事なんだよ。仁美さんは優しい人だもの。
    終わりかけた祭の御輿を、一人で担ぐなんて、大変な事だしね」

仁美「…………」

恭子「僕の事は、本当に気にしないでよ。むしろ、よかったと思ってるんだから。
    顔も知らない誰かでなくて。互いを知って、秘密も共有する僕達で、それに」

仁美「…………」

恭子「仁美さんの卵子をお腹に入れるなんて、まるで擬似セックスだし」

仁美「……ほわっ? ふあぁ……寝ていましたわ」

恭子「なんと! セクシャルハラスメントスルー!」
404 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/30(月) 20:49:12.07 ID:9uFxhSTYo
マミ「あらあら、ベッドで寝てもらってもかまわないわよ?」

仁美「まぁ! せっかくマミちゃんのケーキがいただけるというのに!」

エリィ「まったく香水要らずだ。ため息。部屋中、甘ったるいったらない。
    マミ姐姐は、男より蝿に好かれるんじゃなかろうか、エリィはちょっと心配」

マミ「男も蝿もお断りよ。はい、マミ特製ショコラを召し上がれ」

エリィ「ビアン?」

マミ「そうねぇ。かわいい女の子って、嫌いじゃないわ」

エリィ「ガクガクブルブル。キョウ、シーズー、気をつけて。マミ姐姐は本気のご様子」

仁美「シーズーって、あの、『志筑』からでしたり?」

エリィ「そう。シヅキでシーズー。かわゆい。爆」

恭子「僕、もうちょっとひねったニックネームのほうが。いや、ハンドルネーム?」

エリィ「ハンドルネームじゃない。

     ハート・ネーム
    魂魄の名前」

仁美「…………」

恭子「…………」

マミ「はい、お茶」

エリィ「謝謝」

マミ「恭ちゃんも、ゆっくりしていってちょうだい。もうしばらくは、自由に歩けるのでしょう?」
405 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/30(月) 20:50:20.25 ID:9uFxhSTYo
恭子「そうですね。安定するまで待って、住まいを移すとかで。
    (本当は即時拘束されるんだけど、そんなの嫌だったからね。やりたい事もいっぱいあるし)」

マミ「こんな風に……会えなくなっちゃうなんて」

恭子「うまく終われば、すぐ戻ってきますから」

マミ「倫理的な事とか私にはよくわからないし、仁美さんの家がおかしいなんて言いたくないけれど……。
   子供に子供をつくらせて、そうして生まれたら取り上げて、隔離するなんて……」

仁美「おかしいのです。志筑は。私達は」

マミ「……ごめんね」

エリィ「人間なんて皆おかしいものだし。謎爆」

仁美「十代の生娘の腹でなければいけない、精子も卵子も、提供者が生きていなければ育たない。
    それが『絶対』なんて、どんなルール。なんという停滞。日々進歩という世の摂理を舐めていますわ」

恭子「(融通が利かないのは、契約者の想像力の問題なんだろうなぁ)」

マミ「でもそれで神秘の力が手に入るなら、ってのはあるわ……。魔法少女が魂を捧げるように」

恭子「(性能のために制限をもうける必要なんて、なかったのに。魔法なんだから。
     ま、無制限の報酬なんて求められたら、キュゥべえも困るだろうけど……)」

マミ「……恭ちゃん? ケーキ、口に合わないかしら?」

恭子「いや……これ、すっごく甘いですね」

マミ「そうでしょ? エリィ、たっぷり甘いのが好きなんですって」

エリィ「シーズーも食べて食べてっ。お砂糖とハチミツがエリィの燃料。核爆」

恭子「(……じゃりじゃりしとる……)」
406 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/30(月) 20:52:16.29 ID:9uFxhSTYo
〜二人の家

杏子「おーい、サボり魔」 ガチャ

さやか「……ノックしてから入ってよ」

杏子「…………」

 パタン コン コン ガチャ

さやか「なによ」

杏子「なんだ寝てたか。茶でも一緒に飲まないかなって思って、持ってきたンだけど。菓子も」

さやか「……起きる」

 …コポコポコポ

       ゴク

さやか「おいしい。ちゃんとしたお茶、淹れられるようになったんだね」

杏子「さやか先生のおかげですよー。『大根の煮汁飲んだ方がマシ!』とか言われちゃなー」

さやか「あたしだって、恭介にはシゴかれたんだから。『バッファローの下痢のほうがまだ飲める!』とか言われて」

杏子「(ヤツだと、おぼろげにも画が浮かぶのが怖ェ。しかも余裕でガブ飲み)
    このかりんとう、きんぴらごぼう味だってよ。すけこは面白いモン買ってくんなー」

さやか「あー、寝過ぎて背中、痛い」

杏子「ダラケてんなァ。不登校はよくねーぞ、親が金払ってるんだからよー」

さやか「……ほっといて。恭介がいない学校なんて価値ない」

杏子「まーた、アイツに叱られたいんだろ、甘えん坊チャン」
407 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/30(月) 20:55:10.41 ID:9uFxhSTYo
さやか「あんただって学校行かないじゃない」

杏子「行けるわけねーだろ」

さやか「──行かせてあげるって言ったら、どうする?」

杏子「ハァ?」

さやか「……あたしがパパに頼んで、行けるようにしてもいいよ。
     身元とか、あればいいんだよね。そうだ、あたしの妹って事にすればさ」

杏子「ちょ……ちょ、待てよ。何バカ言ってんだ。あたしのが姉……じゃなくて!
    アタシみたいなホームレス同然なの連れてきて、普通の親が許すはずねェだろ」

さやか「 で き る よ 」

杏子「(なんだ……? コイツが、すけこ以外の事でトチ狂うなんて……)」

さやか「パパは、あたしの言うことは絶対だもん」

杏子「は……? おい、そりゃ親バカのバカ親もこの世にはいるんだろうが、いくらなんでも」

さやか「…………」

杏子「……おい?」

さやか「ホントはさぁ、学校行くのヤなのって……仁美に会いたくないんだよね」

杏子「(話を変えやがった)」

さやか「うちのクラスにも、恭介を好きっていう女の子、けっこう、いたんだよね。
     今の恭介に話しかけてくる奴ら、ほとんどそう。
     同性だから話しかけやすくなっちゃった、失敗したなって思ったけど」

杏子「あー、うん」

さやか「でも、バカみたいだけど、あたしが勝てないなんて思ってなかったんだよ」
408 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/30(月) 20:57:04.84 ID:9uFxhSTYo
杏子「……あー」

さやか「幼馴染みだもん。あたし達の関係は幼馴染み。恭介がそう言ってくれた」

杏子「うん(話、戻せないかな……いや、あっちも聞きたくねー感じだけど)」

さやか「でも、仁美も同じだった。そうだって事、仁美は隠してた」

杏子「え、いや、そりゃァ違うだろ。仁美チャンは隠してたワケじゃないだろ?
    それにそう言っちゃうってんなら、すけこの奴も隠してた、って事じゃね?」

さやか「…………」

杏子「……(何スか、この空気!)」

さやか「そーだよ……。あたしが悪い。そんな風に考えちゃうあたしが」

杏子「や、悪いとかじゃ……」

さやか「…………」

杏子「…………んな落ち込むなって!」

さやか「あんた、けっこう仁美の事、好きだよね」

杏子「……好き嫌いで味方してるわけじゃねーぞ」

さやか「ああ、まただ。わかってるのにな。仁美は悪くない。誰も悪くない。あたしだけが悪い。
     わかってるのに、ちゃんとできない。わかってるのに」

杏子「ったくよ、すけこがいないとコレだ……。さやか、アンタ、お子様なんだよ。
    大人はな、そんな自分だけああだこうだなんて、言わねェんだ。周りが困るだけだからな。
    チガウヨーソンナコトナイヨーって相手してくれる奴も、そうそう付き合っちゃくんねーんだから」
409 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/30(月) 20:58:18.98 ID:9uFxhSTYo
さやか「あんたってさ……時々、説教くさかったりするね」

杏子「……悪かったな」

さやか「責めてるんじゃないの。小さい頃、ガキ大将とかしてた?」

杏子「ちげーよ。舎弟つくるとか、そんなん、フリだけでも親父にしこたま叱られる。
    うちの親父は教会で神父さんやっててよ、バカみたいに優しい……弱い人だった」

 ダメだよ杏子、ミミズだって生きているんだ。
  杏子だって身体が半分に切れちゃったら、痛いだろう?

 お野菜も、畑で一生懸命生きていたんだよ。
  大事に食べてあげる事で、その生を認めてあげる事になるんだ

 枕元にビスケットがあった?
  それはきっとね、杏子が生き物達に優しくしたからだね

杏子「魔法少女になったアタシを見て、魔女になったとかパニクってヤケんなるような。
    そんでアル中にもなっちゃうような、……頼りない男。
    だから、まぁ、大将じゃなくとも、アタシはそこらのガキに一目置かれる必要があった。
    アタシの妹は結構かわいくて、けど気が弱かったから、からかわれやすくて。
    それで、守ってやんなきゃいけなかったから」

さやか「へぇ、お姉ちゃんしてたんだね」

杏子「まーな。あの子、すーぐ人の言うコト鵜呑みにするからさァ、危なっかしくて……」

 おねぇちゃん、お父さんとケンカしたの?
 おねぇちゃん……お父さんが言ってたよ……

 おねぇちゃんは

さやか「……妹さんとお父さん、今は?」

杏子「死んだよ」
410 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/30(月) 20:59:52.69 ID:9uFxhSTYo
 おねぇちゃん
 お父さんが言ってたよ

 おねぇちゃんは、わたしたち家族を守るために戦ってるんだって

 夜 おでかけするの わたし知ってたよ
 いつも ありがとう おねぇちゃん


 ──杏子、出かけるのか

 杏子……杏子! たとえ魔に魅入られようとも、お前は私の大切な娘だ!

 すまない。本当にすまない。私は逃げてばかりで。目を背けるばかりで。
 お前のこんなに、細い肩に。まだ……こんなに、幼いのに。
 私がお前に──運命を背負わせてしまった!

 ……闇に接すれば、己もまた闇に染まりやすくなる
 気をつけて、いきなさい


 朝ごはんを用意して──といっても、パンと林檎しかないが──待ってるから。

 ────必ず、待っているから



杏子「魔女退治に行って。アタシは敵を取り逃がして。夜明けまで探し回って」

杏子「そしたら親父は……首を吊ってた」

杏子「妹はベッドの中だった。首に紐がからまってた」

杏子「……キュゥべえの奴が言うには、魔女の影響を受けたのかもしれないって。
    結界は──魔女の巣は、通過するだけでも災いを振りまくからってよ」

杏子「けど、真相なんか知らないさ。──魔に魅入られたのは、親父のほうだったのかもな」
411 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/30(月) 21:01:13.72 ID:9uFxhSTYo

 でも、朝食はそこにあった

 ひとりぼっちの食卓に座って、
 この家で最後の いただきます と ごちそうさま を言った。

 台所の酒瓶は全部割れていた


杏子「……本当の事なんてわからないけど、親父は、きっとあの晩、闘ったんだ。
    自分と闘って、一度は勝ったはずなんだ……」

さやか「きっとそうだよ。かっこいいね、あんたのお父さん」

杏子「単にコケて、ひっくり返しただけかも知れねーけど」

さやか「あんたは信じてるんでしょ? お父さんの事」

杏子「……父親、だからな」

さやか「いいんだよ、それで」

杏子「…………」

杏子「(何が)」

杏子「(何がいいってんだよ)」

杏子「(わかったような口を聞いてくれる。すぐ側にいる奴も信じられないくせに)」

杏子「おい……泣き笑いで言うことかよ」

さやか「……ん? あれ、ほんと。あたし泣いてる」

杏子「他人事みたいに言ってんじゃねェ。泣かれたら、アタシがイジメたみたいじゃんか」
412 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/30(月) 21:02:45.04 ID:9uFxhSTYo
さやか「ごめんね。あれ、おかしいな。なんか……あたし、おかしいな。
     そんなに感動、しちゃったかな、あんたの話に」

杏子「」

さやか「そりゃ泣ける話だったけど。うん、あたしなんかが泣いてもね。ごめんね」

杏子「……ふざけんな」

さやか「え? ……わっ」

 …ギシッ

杏子「ふざけんなッ! 感動って……泣けるって! アタシがしたのはそんな話じゃねェッ!」

さやか「……痛……痛い、離して……」

杏子「(なんだ、こいつ……なんなんだ!)」


 笑われたっていい……絶対なんだから……あたしは今、そう決めたんだから。
 あたしはマミさんが好きだ! マミさんは未来のあたしの友達だ!

 追ったら、あたしが許さないよ、杏子。
 あたしにはわからない。けど、恭介がきっと何とかしてくれる。

 ほーら、最後は恭介がなんとかしてくれるんだから。安心、安心。


さやか「ごめん、なんで怒ってるかわかんないけど、あたしが悪いんだよね、ごめん。
     ね、怒らないで……恭介に頼まれてるの。あんたの助けになるように、って。
     あんたのトモダチになってあげなさいって」


 (泣ク程、心配、シテクレタノカ?──)

 ──決マッテンデショ。アタシ達、トモダチジャナイ。
413 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/30(月) 21:03:58.63 ID:9uFxhSTYo
杏子「ンだよ……それ……」

さやか「えーと、だからさ、あたしはあんたの助けになるの。何だってするよ。恭介に言われ……」

杏子「そうかよ」

 ギシッ…

さやか「あ……」

杏子「…………」

さやか「あーなるほど! アハハ、うん了解!」

杏子「…………」

さやか「何だってするって言ったもんね。うん、いいよ。美樹さやかちゃんに、任せなさい!」

杏子「…………」


 ひどい息苦しさだった。


杏子「(すけこ……いや、上条恭子)」

杏子「(さやかに何をしやがった。いや……どうなんだ。オマエは、わかっていて、こんな)」


 自ら、パジャマの下をショーツごと、白い腿の半ばまで。
 それから、ぷちぷちと上着のボタンを外していく。真剣な表情が滑稽だった。
 彼女は滑稽だった。
 何もかもが、ずれていた。すれてはないのに、ずれていた。

 目元に残る泣き跡が、いやらしすぎた。


さやか「知ってるよ。恭介が教えてくれたんだ。あんたが『こうしたくなる』子なんだって。知ってるよ」
414 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/30(月) 21:05:26.93 ID:9uFxhSTYo
さやか「ちょっと気づいてたんだよね。あたしがお風呂入ってると、何かしら言って脱いだ服の側でうろうろしたり」

さやか「もうちょっと早く、ちゃんと言ってあげればよかったよね。ごめんね。あたしが悪かったよ」

さやか「さわって、いいよ。何をしても、いいよ。なーんでも、いいよ」


 でも一番滑稽なのは、ずれているのは、自分だ。


さやか「胸? 胸がいいの? おっぱい舐めるの?」

さやか「杏子、おっぱい、好きなんだね」

さやか「乳首にキスされるのって、くすぐったいね」

さやか「おなかはダメ、こそばゆい。おへそ、おへそもダメっ」

さやか「あ」

さやか「そこは、まずい、かも」

さやか「ん……。ねぇ、大丈夫? あたし、くさくないかな?」

さやか「平気? ごめんね。シャワー浴びてからのほうが、よかったよね」

さやか「あ、ちょっと、痛……」

さやか「うう。指はちょっと。ん、ん、大丈夫、だいじょうぶ……入っていってる……」


さやか「あたし、ココ、初めてだったんだよ」


さやか「……どうしたの。なんで泣いてるの? どこか痛い?」

さやか「痛い痛いの、飛んでいけーっ……イタッ、あ、中、動いたら痛いっ!」
415 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/30(月) 21:06:50.36 ID:9uFxhSTYo

 痛いの痛いの、飛んでいかない。


さやか「ふー……。さやかちゃんヘトヘトだわぁ……」

杏子「…………」

さやか「あとベトベトだわぁ。イイ汗かいたねぇ。肌と肌を貼り合わせて、まさにスキン湿布!」

杏子「…………」

さやか「処女膜とかさぁ、もっとドバーッと血が出るのかと思ったけど、よかった、そんなでもなくて。
     恭介が言ったとおりだ。ちゃんと栄養を摂ってれば、だいたい大丈夫なんだって」

杏子「……るせェ……」

さやか「? 杏子、どーしたの」

杏子「……ンでもねェよ」

さやか「ふーん? ま、今回は完全全く初めて純潔だったもんで、楽しくなかったとしても、許してよ。
     あたし、こんなの考えた事もなかったし。そうだ、ねェ、あんたが教えてよ。女の子同士。今度は、あたしもしてあげる」

杏子「…………く、ぅううっ」

さやか「……なんで泣くのよう。なにも、レイプされたワケじゃあるまいし。
     強いてされたっていうんなら、あたしのほうだけど、あたしはそんな事、思ってないし」

杏子「うるさい……っ、バカ……!」

さやか「なんで? なんで怒るの? あたし、よかったんだよ。おっぱいにキスされて、気持ちよかったんだよ?」

杏子「うぅ……ううううううう!」

さやか「あたし、何かいけなかったかな? 何か余計だった? あたしの身体、ダメだった? 汚かった?
     ねえ、言ってよ。何が嫌だったの? あたしが嫌だったの? なら、なんであたしとセックスしたの?」
416 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/30(月) 21:07:56.75 ID:9uFxhSTYo
なんでですか? はいっ、中澤君!(ビシッ

以上、第七話『真実の愛と勇気の物語』でした。

第八話『ああいう屑には命令してやらないとね。それでアイツも喜んでるんだよ。死んでやるって脅せば、床に頭擦りつけて泣くしね』
長ッッッッッ
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/30(月) 22:13:21.39 ID:varcbcECo
乙。
すけこ×仁美の濃厚種付け百合ゼクロスがあるかと思ってしまったわたし。まぁお下品っ
418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2011/05/30(月) 23:39:05.33 ID:EOuS3ahI0

ワオ処女懐胎。
エリィちゃん、そんなに甘いもの食うと肥るよ。
419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/31(火) 02:10:45.71 ID:JTLSV1rIO
時々遊民社っぽい雰囲気になるな。
420 :BENPER [sage saga]:2011/05/31(火) 21:04:48.80 ID:dxHU4wndo
ほむらちゃん料理とかうまそうかな? どうかな?

すけこ☆マギカ
第八話『ああいう屑には命令してやらないとね。それでアイツも喜んでるんだよ。死んでやるって脅せば、床に頭擦りつけて泣くしね』
421 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/31(火) 21:06:15.56 ID:dxHU4wndo
〜川沿いの道、芝生

恭子「やあキュゥべえ、瞼を閉じるとセックスだよ。杏子さんとさやかが非生産的な交尾をしたんだ」

QB「いやまったく聞いてないし聞きたくないから」

恭子「その非生産さはギネス級だ。腐った女を抱いたって、何も生み出さない。何も育たないよ。
    それはともかく、君に見てほしいものがある」

QB「……タッパー?」

恭子「この中身だ。これが、僕が取り出した、さやかのソウルジェム」

 パカッ

QB「これは!」

  デデーン!!

QB「……恭子はボクをイジメてるのかい?」

恭子「恭介の台詞をとらないでくれよ」

QB「大便だよ! どう見たってこれは大便だよ!
   大きさからしておそらく第二次性徴を通過した人間のアナルからひり出された、大便だよ!」

恭子「さやんこ」

QB「さやんこ?」

恭子「さやかのうんk」

QB「わかったわかったもういいもういい。略したんだね。うん、わかったから」

恭子「冗談だよ」
422 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/31(火) 21:07:13.00 ID:dxHU4wndo
 キュッ(閉)    パカッ(開)

     デデーン!!

QB「これは! ……ソウルジェムに近くはなった。形状は」

恭子「テンガエッグだよ。そして隣はさやんこだ」

QB「ぐぬぬ。あえて触れなかったのに、キミという少女は……あああっ!」

 ヒョイ   …パクッ

恭子「おやつとするには、ちょっと苦みが多いかなぁ。むしろお酒に合うかな?」

QB「あああああつまんで食ったァァァ!」

恭子「何を騒いでいるんだい? いま僕が食べたのは最高級のチョコかりんとうだよ」

QB「嘘だッッ! よしんば本当だとしても、同じタッパーに入っている時点でダメだろう!」

恭子「いィ〜い反ン応ォをす〜るようになってきたじゃァなぁいのぉ〜、インキュベェェータァァ〜」

QB「わかりづらいから。声マネとかわからないから」

恭子「つまんで食ったくらいでなんだい! だいたい、おかしいと思わないのかい?
    無造作につまめば千切れる、それが大便だろう。よってこれは……魔法の大便だ!」

QB「作り物でも何でも、ソレに見えるものを食ったという時点で……」

恭子「そんなにダメダメ言わないでくれ。ダメダメ星人じゃあるまいに、このアナル星人」

 キュッ(閉)    パカッ(開)

恭子「仕方ないから、下等なインキュ野郎にもわかりやすい形態に変えてあげたよ。
    まったく。魂の形を気にするなんて、君という宇宙生物ときたら、わけがわからないよ」

QB「ものっそイラッたと、言わせてもらうよ。ここまで付き合わせておいてぇ!」
423 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/31(火) 21:07:53.53 ID:dxHU4wndo
恭子「さて、魂だ。魂に形はない。なので僕が取り出した魂も、形がない。
    通常キュゥべえが付与するルール──
    卵形の宝石。発光反応。百メートル圏内において肉体との連絡が可能。
    ……それらが、ない」

QB「ないからってうんこはダメだよ!」

恭子「君の尻に入れようと思ったんだけどなぁ……。まぁ、便宜上は精神衛生にもよろしい形にしておこう。
    卵形のデザインを基盤にした、六角柱。画的にこれでどうだい、営業部長?」

QB「まぁ……主に取り扱うのはキミだから、何だって構わないけど……ああほらー!
   甘い事を言ったら、すぐキミはそういう行為をする! スカートの内に入れるんじゃない!」

恭子「さやかを妊娠する……! ふふふ、男であった僕が妊娠するという、極上の倒錯にさらにプラス!」

QB「そろそろ疲れたよ。もういいかい?」

恭子「たかが子宮までの距離だ。それくらい待てないのかい、この玉ナシ根性ナシのインキュ野郎。
    ……仕方ないなぁ。可愛い君のお願いだものね。きちんと話すよ」

QB「手短に頼むよ」

恭子「僕が魂を取り出して、魔法少女にした娘がいるんだよ。といっても契約を持ちかけたワケじゃない。
    何一つ奇跡を望むワケでなく、自身に備わった魔法にも気づかない娘が一人」

QB「さやんこ関係な……いや、ふむふむ続けて」

恭子「そして、魔女化した後のグリーフシードがここにあります」

QB「えっっ」

恭子「褒めて褒めて!」

QB「えっっっっ」
424 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/31(火) 21:09:06.07 ID:dxHU4wndo
〜見滝原中学校

    キーン コーン カーン コーン

ほむら「…………」 スタ スタ

*「あ、暁美さーん」

ほむら「…………」 ピタ

*「たまにはさ、ほら、掃除。手伝ってくんない?」

ほむら「…………」

*「はぁ……、あのさぁ、カラダ弱い人に、あんま強く言いたくないんだけど」
*「暁美さんも一応、当番に組み込まれてんだから。免除とか、言われてないし」
*「まぁ用事とか都合、あるかもって事で、今までさ。ずっと、うちらだけやってたんだけど」
*「てゆか……こっち向いて話してくんないかな」

ほむら「…………」

*「ち、力仕事じゃなくていいよ。モップかけるだけでもいいからさー、ラクだよー」

ほむら「…………」 スタ スタ

*「(えっ、シカト)」
*「(あちゃー、話かけんじゃなかった。時間の無駄……)」

*「──暁美さんっいいかげんにしてよッ!」

 グイッ

ほむら「ッ!? は、離して……!」

*「しゃべれるんだったら返事くらいしなさいよ……!
  何? ザワ君や上条さんへの誹謗中傷は言えるのに、返事や謝罪はできないっての?」

*「わわわ。ちょ、待って、いかんって」
*「……それじゃ八つ当たり……」
425 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/31(火) 21:10:08.35 ID:dxHU4wndo
*「だいたいさ、夜中に出歩けるくらいなんだから、掃除だってできるでしょ?!
  いつもいつも、アンタ、何様なの? クラスの皆に、どんだけ迷惑掛けてると思ってるの?
  授業中は指されても無視、注意されれば泣く、体育じゃ足引っ張る。今日はゲロまで吐いて、片付けもしない!
  マット洗ったの、あたし達なんだよ? 見てたでしょ? お礼とか、ないの? ごめんなさいって、言わないの?
  こないだだって、何? いつの間にか帰って、何してたの? 先生、心配して探し回ったらしいんだよ?
  それでさ、アンタ、一回だってちゃんと謝った? 頭下げて回った? ……してないしッ!」

ほむら「痛ぁぁ……痛いよぉぉう……離してよぉぉぉぉ……」

*「はー……、私も言いたかないけどさ。暁美さん、あんま態度良くないよ」

*「特にさ、恭子さん達につきまとうの、やめなよ。気に掛けてくれたからってさ、そういうのキモイ」

*「お昼休み押しかけたり、駅前で騒いだんでしょ? 一年の子が見たっつってたし、アタシらも聞いた。
  志筑さんは優しいからハッキリ言わなかったけどさ、迷惑かけたんじゃないの?」

*「今日なんてサヤサヤ学校休んでるし……あの人、上条さんが留学するとかで沈んでるだろうに」

*「よっかかるのやめた方がいいよ。恭子さんが三年の人と仲良くしてんのも、虫除けなんだってさ。
  暁美さんの事だよね? あんましつこくしてると、シメられちゃうかも知んないよ?」

ほむら「ちがう……ちがうぅぅぅ……ちが……」

*「ちがうって事、ないでしょ。鹿目さん家のまわりでうろうろしてんの、あたし見たし。
  もう絶対に上条さん目的でしょ? アンタ、何がしたいの?」

ほむら「……離してぇぇぇぇ……うあぁーあぁぁぁぁ」

*「……キショ」

 パッ

 …ドテッ …グスン グスン

*「もうさー、嫌んなっちゃった。暁美さんさ、今までの分、掃除は一人でしてよ」
*「ホントだよ。ヒトの尻ぬぐいとか超嫌なんですけど。なんで平気で他人に頼ってられるワケ?」
*「うちら片付けて帰っちゃうよ、暁美さん。……、謝る気ないなら、そこでずっとそうしてなよ」
426 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/31(火) 21:10:51.66 ID:dxHU4wndo
ほむら「…………」

ほむら「悪くないのに……」

ほむら「私は悪くないのに」

ほむら「何も……」

ほむら「何も悪い事してないっ!」

ほむら「……うああぁぁあぁあ!」

ほむら「してない! してない!」

ほむら「してません!」

ほむら「覚えてないっ!」

ほむら「……知らないっ!」

ほむら「……してないっ……」

ほむら「してない……してない……」

ほむら「約束なんてしてない……知らない……」

ほむら「だから悪くない……」

ほむら「約束なんか覚えてない……」

ほむら「だから……」

 約束するわ。絶対にあなたを──必ず──!

ほむら「うあああぁぁあ……ああああぁあああぁ!」

ほむら「してないしてない知らないしてない覚えてない! 私は知らない! 私は悪くない……!」
427 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/05/31(火) 21:11:53.65 ID:dxHU4wndo
今日はここまで。
ほむほむがんばれー、ほむんばれー
428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2011/05/31(火) 21:38:28.86 ID:lKVq3R1S0
乙っちまどまど
429 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/31(火) 21:47:31.26 ID:UHCiaNRZo
相変わらずやつれてるほむほむを見ると興奮する乙
430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage saga]:2011/05/31(火) 21:53:14.73 ID:TRQ2G3kU0
え?いや誰の?え?候補がまず多いしほむほむなんか周回前に戻っちゃってるし魂って事は抜き過ぎると動けなくなるし

え?誰の?そして魔女モドキでも作るのか?
431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/31(火) 22:00:41.97 ID:yONkb3g1o
乙乙

そういや>>428見て思い出したけど、まどかは今どうしてるんだろうか。
432 :BENPER [sage saga]:2011/06/01(水) 21:50:55.99 ID:9KZ0y/zMo
まどかなら俺の隣で寝てるよ
いや、隣というのは…嘘だ…(撃鉄の音に怯えながら)

続きだよ。
433 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/01(水) 21:51:53.88 ID:9KZ0y/zMo
────────────

(──ねぇ、君、なにしてるの?)


*「え? なにって……塾の帰りなんだけど」
『鬱屈牛の凝り凝り肩ロースと筆記具のパヴェ』

*「休憩中だよー。ねーおねーさん、高校生? バイトしない? ……仲間、欲しくってさー」
『寂びしんぼうの香水グリル 愛欲の軽いブレゼと』

*「ママが、外で遊んできなさいって。会社の人と、おうちでお仕事するからって。え? うん、男の人。よく来るの」
『不信と切望のソルベ』

*「……別に。なにも」
『長いものに巻かれたくないスパゲッティーニ 無気力とコンビニ食のコンフィ』

*「ど、どいて! 逃げないと……あの人、こ、この子の父親なんだけど、この子も私も、こっ、殺されちゃうから……!」
『恐怖鶏の親子煮込み ソース・ヴァン・ブラッディルージュ』

*「えー、酔ってません。酔ってませんよう、未成年だもーん。飲んでませーん。あっはっは、お酒は世界を救うー!」
『グラッパで煮込んだワイン漬けを焼酎ですすいでビールで和えて醸造アルコールをふんだんに振ったレバーテリーヌ』

*「あの、私。お酒、買いに、行かないと。お父さんに、怒られるの」
『暴力の豚のグリルと青あざのレムラード』

*「カレシがぁー、具合悪いらしいんだよねー。パパになるんだからぁ、しっかりしてもらわないとー。あ、ねぇねぇ、犬っておでん食べるかなぁー」
『塩漬け打算の献身パイ皮包み塩竃焼き 塩ソースで』

*「おかーさ、グスッ、いっしょ、に、ぱちんこのおみせ、いっしょ……グスン、おかーさん、どこ?」
『迷子のミルク煮と疲労困憊スフレ 涙の飾りを添えて』

────────────

恭子「見滝原エキュートにみんなで行ったじゃない? ほむらさんとやり合って、その帰りかな。
    なんとなく思いついちゃって、それから色々してみたんだよ」

QB「……へぇ。それで、こんな」
434 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/01(水) 21:53:02.50 ID:9KZ0y/zMo
〜川沿いの道、芝生

QB「きゅむきゅむ……まったりとしてコクがある。しかし、リズムがない。希望と絶望の起伏が足りない」

恭子「お値段以上、というワケにはいかないか。やっぱり、質より量じゃダメなんだねぇ」

QB「しかし、驚いた。質はともかく、食べられる……エネルギーは摂れる。……これがどういう事か。
   独学で、ボクと──この端末と、きちんと接続できる状態の魂をつくりだすなんて」

恭子「言っている意味がわからないな。愛があれば、できないコトなんてないじゃない」

QB「またキミは、そういう事を言う」

恭子「だってさ、インキュベーターが人間の魂を片っ端から集めないのは、何でかなーって思うだろう。
    なぜ契約なんてまわりくどい事をするの? 大規模な生産を行う人間農場を、造れないワケがある?
    君が人間に好意を持っていないとするなら、それこそ答えは限られている。
    ──やや、僕の愛するインキュベーターは、お困りなのではないか?
    ならば協力してあげなくちゃ!」

QB「……そうかい」

恭子「そして君という端末があって、ソウルジェムもグリーフシードもあって、『これ』ができない理由がない。
    もっとも……、思いつかない、なんて面白くもない愉快な理由を含めるならば、別だけど」

QB「本当に……ね。キミ程の計り知れなさは、類を見ないよ。
   契約した時は、さやかと同等、並のソウルジェムでしかなかったキミの存在が……」

恭子「計り知れないなんて、そんな、買いかぶりだよ。また君は魔法に掛かっているのかもしれないよ?」

QB「ふむ。こちらは一切の干渉を受けぬように調整しては見たけど、キミが相手では断言できないと言える」

恭子「プラチナメッキにご用心、さ。
    さぁて。今のグリーフシードは味気なかったようでゴメンだけど、まだまだ続くよ」

QB「ずいぶんと多いね」

恭子「各種取りそろえております。こっちは魔法について説明したし、こっちは魔女化した後、人間を二、三人……」
435 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/01(水) 21:54:05.45 ID:9KZ0y/zMo
QB「おなかいっぱいになっちゃうよ」

恭子「僕の手料理だよ、残さず食べて。この僕の性格傾向には珍しく、それはもう手間隙かけてみたんだ」

QB「顕在した魔女は、どうしたんだい」

恭子「え? どうしたもこうしたも、ここにあるじゃない?」

QB「……いや、聞く程の事じゃなかったね。キミにとっては」

恭子「もしかして、僕の苦労をねぎらってくれるつもりだった? わーありがとう、キュゥべえ大好き!
    あ、これ。これなんて自信作だよ。巻き戻しては火にくべた処女の炙り肉! 三回魔女化風味!」

QB「うーん……焼きすぎじゃないかな。手間のわりに大したインパクトがないよ」

恭子「これは? 世にもバカな少女の排泄物!」

QB「さりげなくさやんこを勧めるんじゃない!」

恭子「残念、これはダミーだ。このダミーさやんこは百八便まであるぞ。本物がわかるかなっ!?」

QB「本物のさやん……さやかのソウルジェムは、彼女の体内だろう?」

恭子「ちぇー。ちぇっちぇっ。なんだい、つまらない反応して」

QB「キミとの遊びは、キリがないからね。この辺にしておくよ。
   だいたい、キミが他人の魂を持ち歩くとは思えない。長々距離の通信を、可能に出来るとしても。
   取り出して、すぐ飽きてしまって、そこらの車道に置いてみたりなんかした後、またしまったんだろう?」

恭子「そこまでバレているなんて、さすが! そうだよ。本体から切り離したナニカなんて、気持ち悪いじゃない。
    車道に置いてみたけど不幸な事故もなかったし、テキトーにこねて頭蓋に放り込んでおいたよ。
    脳みそが壊れたら、さやかは簡単に死んでしまうよ!」

QB「それは、普通の人間もそうだね」
436 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/01(水) 21:55:37.81 ID:9KZ0y/zMo
QB「……きゅっぷい。ごちそうさま」

恭子「ほとんどのグリーフシードはカスだったね。しかし、まだ隠し球はあるよー!
    でも、このヒトは自然発酵に頼ってるから、もうちょっと待ってね」

QB「エリィの事かい。彼女は契約段階から、希望は横這いで、ちっとも旨みがなかったよ」

恭子「今回のエリィさんなら、きっと上等なスウィーツだと思うよ! 余計な苦みを削って、甘く甘く仕上げるからね!」

QB「そうかな。でもボクは……キミが一番、食べたいかな」

恭子「…………」

QB「……ねぇ、上条恭介。いいだろう?」

恭子「……僕が上条恭介だよ、キュゥべえ」

QB「ボクはいつでも魔法少女のそばにいる。正確には、彼女らの魂のそばにいる。
   キミはいくつもの魔法少女に干渉した。その信号は、彼女らの魂を経由して、ボクにも届くよ」

恭子「そんなだから、僕を好きなんて世迷言を吐いちゃったんだよ」

QB「それは反省してるよ。そして、遮断して気づいた。ボクは観察した。これは断言できる。
   ──信号はキミだ」

恭子「それはそうだ。僕の送った命令なんだから」

QB「いいや違う。信号そのものがキミだ」

恭子「……生物学的なコト?」

QB「キミじゃない彼女を。上条恭介を出してくれないかい。ボクは、ボクと契約した彼女と話がしたいんだ」

恭子「言っている意味が、わからないわ」
437 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/01(水) 21:56:48.38 ID:9KZ0y/zMo
トモダチトモダチトモダチトモダチトモダチトモダチ

 あーあ、恭チャン死んでクレナイカナァ──

トモダチトモダチトモダチトモダチトモダチトモダチ

 ……アタシは、
 ────脇役ですら、ない

トモダチトモダチトモダチトモダチトモダチトモダチ

 アタシハシュヤクニナレナイ

トモダチトモダチトモダチトモダチトモダチトモダチ

   一番滑稽なのは、ずれているのは、自分だ。

トモダチトモダチトモダチトモダチトモダチトモダチ

 上条恭介。その性質は姫君。
 上条恭子。その役割は××……


恭子「そんなにログを送ってこないでよ。それじゃムリだ。君にはムリだ」

QB「わかったよ。信号を止める。でも、どうしても眠り姫を決め込むのかい?」

恭子「性質だもの。人魚の尾、ガラスの靴、茨の森……。
    気をつけた方がいいよキュゥべえ。お姫様の物語で、雄は不遇だ。
    特に、姫をイジメるキャラクターは、悲惨な結末を迎えるよ」

QB「キミたち人間は感情を持つがゆえに、そんな無意味な分裂を起こしてしまうんだね」

恭子「何を偉そうに。インキュベーター、僕と話せる事を光栄に思うべきなんだ。
    君ごとき宇宙生物が、この美しい上条恭子に触れられる事が、どれだけの幸福か。
    この雪のように白い肌、血のように赤い唇、黒檀のように黒い髪……ではないけどねっ」
438 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/01(水) 21:57:55.52 ID:9KZ0y/zMo
QB「さしあたって、上条恭子(仮)とでも呼ぶ事にしようか」

恭子「無意味なんかじゃない。(仮)はいらない。父から貰った名だ、そのまま呼んでくれよ」

QB「やはり違う。ボクと契約した、上条という姓の少女とは。
   キミではない。彼女を出してくれ。ボクに協力すると申し出てくれたのは、彼女だ」

恭子「インキュベーター、君は目の前の少女に恋でもしたのかい?」

QB「恋? 何度も言うが、ボクは感情を持たない。持つとしたら精神疾患。
   極希なケースに基づいた見解は、見当違いとしか言いようがない。
   なにより、キミは彼女じゃない」

恭子「数年ぶりに会った幼馴染みがすっかり様変わりしててショック、みたいな台詞を」

QB「人格も、成長期を越えて様変わりするとでも? ……『褒めて褒めて!』なんて、ねぇ?」

恭子「……変わらないよ。性質も、役割も、変わってはいけない」


 上条恭介。その性質は姫君。
 上条恭子。その役割は王子。


恭子「でも、君と契約したのは私だ。魔法少女になって戦ってきたのは僕だ。
    巴マミを励まし、操り、佐倉杏子を迎え、唆し、美樹さやかを愛し、腐らせたのは私だ。
    君は私と歩むと言った! 僕が魔女となるまで共に歩むと、誓っただろう!」

QB「誓い? それは文書かい? 指輪の交換によるものかい? 何をもって、誓ったと言うんだい。
   ……イライラしているようだね。かつて根気強くおしゃべりを続けられた恭子は、どこへ行ったんだい?」

恭子「…………」

QB「魔女となるまで共に歩もうと言った。そして今のキミがいる。あらゆる魂を平気で奪うその姿は、魔女にしか見えない」
439 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/01(水) 21:59:26.28 ID:9KZ0y/zMo
恭子「……私は魔女じゃない」

QB「ま、言葉遊びの範疇だ。言葉そのものが、遊びの範疇だ。
   キミ達はよく増殖し、よく食い合うよねぇ。同種の中で。同族の中で。同一人物の中でも」

恭子「僕は、上条恭介に盗って変わろうなどとは、……思っていないよ。
    王子は姫を、苦しめたりしないんだ。私は魔女じゃないもの」

QB「キミは息を吐くように嘘をつくから……。おとぎ話の魔女のようにね。
   だが、構わないんだよ。いいのさ。ボクはボクの性質を保ち、役割を果たすまでだ。
   キミもそうするといい。どのみち、キミの魔法は、何も変えられない」

恭子「私は魔女じゃない」

QB「ボクへ強く干渉した所で、それは些細な問題だ。端末を替えるように、ボクが交換されるだけだからね。
   ノルマ達成まで、作業は続く。そして締めるのはボクでなければいけない、という事はない」

恭子「おっ。その考えはいいね。貰ったよ。──そうだ、最後の最後までである必要は、ない。
    ラストシーンに……いない物語もあるもの。……人魚姫や……他にも」


 上条恭介。その性質は姫君。
 救われる側の存在であるがために、清く無力でありつづける。美しく傲慢にして怠惰な姿勢で、眠りながらにしてあらゆる希望を吸い上げる。

 上条恭子。その役割は王子。
 救う側の存在であるがために、己が救われる事は絶対にない。美しく傲慢にして怠惰な姿勢で、そこに居るだけでどんな運命をも奪い取る。


恭子「姫さえあればよい。姫さえあればよい。姫さえあればよい。王子は姫を、苦しめたりしない。
    うん。それでいい。それでいいんだ」

QB「…………」

恭子「キュゥべえ、ありがとう。僕はなんだか揺らいでいたようだよ」

QB「こちらこそ」
440 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/01(水) 22:01:01.09 ID:9KZ0y/zMo
QB「これもどのみち、さ。キミが魔法少女である限り、ボクはそばにいなくてはいけない。
   仲良くやるに超した事はないんだよ。互いの願いが何にしろ、ね」

恭子「そうだね……仲良くやろうじゃない」

QB「ボクもね、強力な魔女をぶつけて魔法少女を間引くマネは、そうそうしたくないんだ。
   自然と実ったグリーフシードこそ、最適だよ。キミには是非、実をつけるまで熟してほしい」

恭子「では、その日まで。
    共に歩んでくれ。僕が魔女になるまで」

QB「共に歩むよ……上条恭子(仮)」

恭子「(仮)! (仮)くっついてる! ケツに手ェつっこんで耳毛カタカタ言わせんぞこの淫獣っっ!」

QB「きゅー! やっぱりボクの知ってる恭子じゃない!」

恭子「……ああ! そうだ、そうなんだ。恭子だ! その名前だよ! 名前が合わない、だからブレたんだ!
    なにせ美樹さやか、あの股ユル処女がひねり出した、ひねりのない名だ。ひねくれた僕に合う筈ない!
    キュゥべえ、君は、人格も成長期を越えて様変わりするのかと聞いたけど、これが答えだよ。
    いつか言っただろう? 『動物の名前って、毛色や模様や、鳴き声と関連して付けられる』って」

QB「つまり?」

恭子「僕は幼名にしたってひどい、相応しくない名前にひっぱられてしまった。揺らいでしまったんだ!
    考えなよ、キュゥべえだって、その姿で極太魔羅右衛門(ごんぶとまらえもん)なんて名乗ったら、仕事も捗らないだろう?」

QB「誰も契約してくれないだろうね。そもそも名乗らないよ」

恭介「そうだ、これから恭子改めメアリちゃんというのはどうだい。前から考えてたんだ、可愛いだろう」

QB「やはり恭子のままで通すよ。キミもソレで『構わない』んだろう?」

恭子「……くそっ」
441 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/01(水) 22:02:33.54 ID:9KZ0y/zMo
〜マミの部屋

マミ「(催し物……フリマ……、ヘェ、未開封の大人用紙おむつ、引き取ります、か)……ねぇ、エリィ」

エリィ「何事? 町内会報に面白い記事でもあった?」 カチカチ カタカタ

マミ「(もー、パソコンから目を離さないんだから)会報は基本的に面白くないわね。役に立つこともあるけど。
   お夕飯、シチューにしようと思ってるんだけど。ごはんにする? パンにする?」

エリィ「スパゲッティにかけてほしいなぁって、エリィはエリィは所望してみる」

マミ「あら、面白い喋り方ね」

エリィ「一日掛けて、最近の傾向を把握したにょだ。キラーン」

マミ「エリィはパソコンを使った勉強が得意なのねぇ。そうだ、麺はアルデンテ?」

エリィ「…………えと」

マミ「えーと、堅め? 柔らかめ?」

エリィ「やわこいの」

マミ「了解。あなた、麺類が好きよね。うふふ、そうだ、今度いっしょにパスタ食べに行きましょう? 買い物も……」

エリィ「…………」

マミ「あっ……、いいのよ、ムリしなくても。外、好きじゃないんだものね」

エリィ「う、ううん。頑張る……マミ姐姐と買い物したい」

マミ「うん。いつか、みんなと行きたいわね」

エリィ「う……」

マミ「……大勢も大変よね。ごめんなさい。いつか、でいいのよ?」
442 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/01(水) 22:03:06.85 ID:9KZ0y/zMo
エリィ「ううん、ううん。たぶん大丈夫。みんなイイヒトだから、大丈夫。
    アンズコは口悪いけど、イイコ。ミッキーも脳筋だけどイイコ。キョウはどうでもいいし。シーズーは……」

マミ「……仁美さんは?」

エリィ「……なんだろう。考えていると、なんだか、……お腹が空くの」

マミ「(こ、この子も、もしや、女の子同士の……?)」

エリィ「うーん……」 ポリポリ

マミ「あ! ダメよエリィ!」

エリィ「……あ……また、血ぃ出ちゃった」

マミ「かさぶた取っちゃダメって言ったじゃない! 掻くの、クセになっちゃってるのね……」

エリィ「うん……」

マミ「消毒するわね。スプレー、染みるけど動いちゃだめよ」

 シュー… ポン ポン

マミ「……あなた、ケガするの、好きでしょ」

エリィ「エリィは、どっちかっていうとエスだよ?」

マミ「そ、そういうのじゃなくて。ケガして、ヒトに手当てしてもらうのとか、意外と好きなんじゃない?」

エリィ「そう言うマミ姐姐が、そうなんじゃないの?」

マミ「え」

エリィ「エムっぽいし」

マミ「そそ、そんなコトないわ! 巴マミと言ったら、『見滝原最強のドS』と謳われたくらいよ!?」
443 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/01(水) 22:04:15.34 ID:9KZ0y/zMo
エリィ「そーなんだ」

マミ「い、いえ……勝手にそう呼ばれたという話だから……」

エリィ「そーなんだ」

マミ「本当よ! あ、でも、そんな記憶に留めてもらうほどの事では」

エリィ「…………でずにーらんど」

マミ「え?」

エリィ「遊園地。マミ姐姐は遊園地、好きでしょ」

マミ「……ええ……」

エリィ「エリィはあんまり行ったコトないなー」

マミ「……どうして、急に……遊園地?」

エリィ「不明」

マミ「不明って」

エリィ「時々、ふっと浮かんでくる。胸がチクチクして……」

マミ「…………」

エリィ「……うん、遊園地。行くなら、近いトコロがいい。コーソク道路はコワイ」

マミ「…………」

エリィ「ヨソ見。不注意。玉突き事故。側転、横転、一回転。コワイコワイ。ガクガクブルブル」
444 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/01(水) 22:05:13.47 ID:9KZ0y/zMo
恭はここまで。
445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage saga]:2011/06/01(水) 22:18:41.43 ID:dI6IpyCG0
すけこと恭介の希望と絶望の均衡が崩れ始めた?
呪いの音楽を自己流にチューンしてる内に自身が呪われていくって話を考えた事があるけど、巻き戻しの呪いが自身に
返ってきたのだろうか。
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/01(水) 22:19:46.27 ID:hjmEMwH0o
447 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/02(木) 10:14:04.58 ID:Ukr6XmZIO
乙っちまどまど
448 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/02(木) 16:40:58.59 ID:F6xuFxYto
乙乙
449 :BENPER [sage saga]:2011/06/02(木) 21:35:49.48 ID:b9DzO5iwo
今日ここのSS-wikiとやらに気づいたんだが、あれの、このスレの紹介、あらすじを書いた方は出てらっしゃい。

方向性を、あそこまできちんと表現してくださってありがとございます。
うちに来てキュゥべえをファックしていいぞ。


続き。第八話ラストまでやっちゃうぞー
450 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/02(木) 21:36:52.41 ID:b9DzO5iwo

 ──息苦しい。


杏子「…………」

 ジュブ ジュブ


 きっと、あのヒトも、こんな風に苦しかったんだよね。


杏子「(……ンな事、言ったら……説教されっかなァ。
    親父は、まがりなりにも世界の事で悩んでたんだし)」

 ジュル ジュル

杏子「(アタシの悩みは、くだらない……。
     指しゃぶりが止められないなんていう、幼稚な事さ)」

 ジュジュジュ…

杏子「──うひゃっひゃっひゃっひゃっ。若い娘の破瓜の血じゃァ〜ッ。甘露、甘露!」


 ……、

 …シーン…


杏子「…………我ながら変態クセェ」

恭子「気にする事ないよ、杏子さん。誰にだってそういう衝動はある」

杏子「」
451 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/02(木) 21:37:24.03 ID:b9DzO5iwo
恭子「そんな狐につねられたような顔をするなんて、どうしたの。
    夕暮れの小径、一人うつむいて歩く佐倉杏子さん」

杏子「説明くせーぞ、デコ助。あと、つねられじゃねーよ。それを言うなら、きつねつつままらた、だろ」

恭子「きつねねつられらた」

杏子「きつれにららららた」

恭子「きつつにねつららった?」

杏子「つつねきねらられれれた!」

恭子「喉、渇かない? なんか飲もうか」

杏子「アタシ、金持ってないや」

恭子「おごるよ。あ、冷やしぜんざいがあるよ、冷やしぜんざい」

杏子「腹冷えちまうよ。こっちがいい」

恭子「小腹が空いたらコンソメポテト?」

杏子「小腹が空いたらコンソメポテト。ウマソー」

恭子「夕飯、入らなくなるよ」

杏子「……あァ、アタシ、出ていく事にしたから」

恭子「そう。今日はせっかく、たまのお肉の日なのにな」

杏子「そいつは惜しい、けど決めたんだ。……手ェ洗ってくる」
452 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/02(木) 21:38:48.52 ID:b9DzO5iwo
 ピッ ガコン

      〜♪  …ガコン

恭子「当たりが出ちゃった。はい、もう一本」

杏子「餞別代わりに貰っておいてやるよ」

 パキ   ゴク ゴク

恭子「さやかと何かあったの?」

杏子「ぶっは。おお、あったあった。一世一代の大ゲンカさ」

恭子「一世一代じゃ仕方ないね」

杏子「仕方ねーんだ」

恭子「仲直りは、できない?」

杏子「仲直りは、しない」

恭子「さやかはきっと君が好きだよ」

杏子「アタシはアイツなんて、ハナから大キライさ。……すけこ、オマエもな」

恭子「……そうだったんだ」

杏子「怒るかい?」

恭子「ううん。けど、底が見えた」

杏子「そーいう上から目線なんて、特にキライだね」
453 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/02(木) 21:39:17.69 ID:b9DzO5iwo
恭子「キライな僕からの餞別を追加で悪いんだけど、グリーフシード、持っていって?」

 バサッ  ゴロ ゴロッ ゴロッ

杏子「……アンタ、コレ……」

恭子「…………」

杏子「…………」

恭子「……杏子さん、弱いもの。僕がいなくて、魔女を倒せるかなぁ。心配だよ」

杏子「どこで……手に入れやがった」

恭子「近隣の魔法少女を襲って強奪」

杏子「…………」

恭子「嘘。魔女を倒したら、畜生腹だったみたいでね」

杏子「…………」

恭子「嘘。パチンコで勝った」

杏子「…………」

恭子「…………」

杏子「いいよ……アンタがそう言うなら、そうなんだろ。どうやって手に入れたとか、そんなん聞かない」

恭子「……聞いてくれないのかい?」

杏子「元に戻るだけだ。アタシはアタシの、自力で勝ち取った縄張りに」
454 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/02(木) 21:39:51.65 ID:b9DzO5iwo
杏子「アタシの手に届く範囲で、アタシは戦う」

恭子「…………」

杏子「アタシはアタシのやり方で戦い続ける。それがアンタの邪魔になるってンなら、ケンカも殺し合いもしてやるよ。
    アタシは負けねー。恨んだりもしねー。だからアンタが何やってようが、聞いたりしない。聞かない」

恭子「さやかは? マミさんや、仁美さんは?」

杏子「仁美チャンは強い子だ。マミだって、弱いところもあっけどイイ女だよ。さやかは、オマエだけがいればいい」

恭子「守ってあげるんじゃなかったんですか」

杏子「気づいたんだよ。アタシの手には負えない。そこんとこ履き違えたらよ……いけねェんだ。
    縋って、しがみついて、邪魔になって、そしたら命取りだ。心中は……アタシの性分じゃない」

恭子「自殺行為だよ」

杏子「誰かを巻き込むくらいなら独り、佐倉杏子はクールに去るぜ」

恭子「それって、逃げじゃないか」

杏子「ああそうだ。逃げる。全力でだ。心中しない。アタシは心中しない。否定する。絶対にそれを否定する」

恭子「杏子さん……、あは、あははっ」

杏子「…………」

恭子「杏子さんの理性は正しかった。本当にすごいや。それと連動して魂の濁りを抑え込む、その自浄作用も!
    防御に勝る回避! それこそ、あなたが魔法少女にあるましきベテランの地位にある理由!」

杏子「あはは言うなら、ちゃんと笑え。コワイ顔しやがって」

恭子「直感? 野生の勘? これも魔法の内? ああ、でも、なら判るだろう?
    杏子さんがここで去ってしまうと、さやかはとんでもない事になるんじゃないか?」
455 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/02(木) 21:40:35.56 ID:b9DzO5iwo

 ──『アルバム』、見たんだろう?

杏子「…………」

恭子「……見たよね。見たんでしょう? 僕もね、見せられました。あれは、夏休みだった。
    あれは彼女の試金石。プラチナか、宝石か、屑か、見極めるための。
    あるいは美樹さやかに触れすぎた証明書。あるいは、そう、契約書だ……」

杏子「……ああ。見た」

恭子「杏子さん、さやかを放っておいていいんですか。
    実の父親にひどい仕打ちを受けた杏子さんが、彼女を放っておけるんですか!」

杏子「……放っておく」

恭子「さやかはね、誰でもいいんですよ? それが輝くものであれば。猫の子や、カラスと一緒だ。
    まどかさんが正常な状態だったら、鳳雛を秘めた彼女だ、おそらく一年経たない内に試されたでしょう。
    騎士面して、庇護も寵愛も全ては見返りのため。美樹さやかは、そういう女だ!」

杏子「よく判ってんだな、さやかの事。だったらオマエが救ってやれ」

恭子「僕はさやかを救いたくなんかないっ!」

杏子「…………」

恭子「…………」 ゼェ ゼェ

杏子「──いいよ。アンタがそう言うなら、そうなんだろ」

恭子「…………」 ゼェ…

杏子「そうじゃないとか、大間違いとか、言わないよ。アタシはアンタを否定しない。
    アンタが思いたいなら、それでいいんだろう。なァ、すけこ」

恭子「ちがう」
456 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/02(木) 21:41:16.50 ID:b9DzO5iwo
恭子「ちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがう!」


 無力な自分を隠したいから、狂人のように振る舞うのって、楽しい?

 優しい人にだけ害意を向けて、早口でまくしたてるのって、楽しい?

 結局は生きたいから生きているのに、不幸を装うなんて、楽しい?


恭子「否定してくれよ! 否定しろ! 間違っている! 上条恭子は間違っていると!
    まっとうでない、真人間の道から外れた……こんなの、良いハズがないんだ!」

杏子「誰だ、オマエは」

恭子「肯定なんか……何の意味もない……。押し込んで、型に嵌めて、そうしてくれなきゃ……」

杏子「……そもそも、アンタ、誰なんだ。上条恭子、アンタは」


恭子「僕は、いなかったんだ」


杏子「…………あー……ごめ、もっかい」

恭子「僕は、いなかったんだ」

杏子「あー、うん……。アレだろ、ほら。アレアレ! なんとか性なんとか!
    さやかが魔法で上条恭介を女にしたから、一人の人間の中に女と男がうんぬんかんぬん!」

恭子「違う。僕は、それ以前から母の中にいた。父はいなかった。だが父が来て、僕は生まれてしまった。
    出てこられた。解放された。ちがう、追い出された。僕はあそこに居たかったのに」

杏子「ヤベェ超絶わからん」

恭子「美樹さやかが来て、僕は生まれてしまった!」

杏子「アイツああ見えてパパだったのかァァァ! 女子中学生、十四歳の父!」
457 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/02(木) 21:41:47.29 ID:b9DzO5iwo
 上条恭介。その性質は姫君。
 上条恭子。その役割は

        その役割は


杏子「結局どういう事だってばよ」

恭子「剥離……している。僕は……上条恭介から剥がれてしまった」

杏子「聞けば聞くほど泥沼だ……でも、そのカラダはキョウスケなんだろ? 離れてねーじゃん」

恭子「魔法少女の本体はソウルジェムだ。操作する端末は……任意で変えられる。その意思があれば」

杏子「マジでッ!?」

恭子「鳥や小動物を、自分の眼として操った魔法少女の姿は、魔女伝説として現代にも残っている。
    そもそも、それが有機物である必要もない。ヒトの形に近いほうが、扱いやすいだろうけどね。
    君だってこの街に来て、展望台の望遠鏡や、マンションの監視カメラを操作したりしただろう?
    望遠鏡の『眼』の性能を強化したり、カメラの眼に同調したり、マミさんをストーカーした」

杏子「ストーカー言うな。戦略的観察……いや、そんな前の事ひっぱりだすな。今はオマエの話だ」

恭子「話題を変えてくれてもよかったのに……。
    ──だからさ、肉体なんて、何の鎹(かすがい)にもならないんだよ。
    僕の、いいや、上条恭介の肉体は、すでに何度も破損している。原型なんてないんだよ。
    いくつか実験もしたし、ほむらさんに撃たれた事もあるし、エリィさ……魔女に裂かれもした」

杏子「……ホント、オマエはアタシらの知らないトコロで、動き回ってんのな」

恭子「気づいていたなら、言ってくれてもよかったのに」

杏子「他人に期待ばっかしてんじゃねーよ。ブワァーカ」
458 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/02(木) 21:42:45.98 ID:b9DzO5iwo
恭子「すでに肉体は、魔法少女・上条恭子の手が、これでもかと加えられてる。
    でも、身体が無事だったとしても、やっぱり何にもならない。だからさ、肉体なんて何の……。
    ……上条恭子の……、いや私の、……僕の魂はここにあるのに」

杏子「お、金属製ゆで卵」

恭子「ここに、共にあったのに。僕が……いえ、彼が……上条恭介が、遠くなっていく」

杏子「更なるわからん。わからんの大バーゲンだ」

恭子「わからんなら、わからんでいいよ。そもそも、もともと、話すつもりはなかったんだから。
    あの汚物が……外道下等畜生なインキュファッキンベーター野郎が、余計な事を言ったんだもの」

杏子「?」

恭子「応急処置。そうさ、応急……それだけを、君に望みます」

杏子「??」

恭子「『僕は、誰?』」

杏子「ウッギャー! 口のまわらん女に、よりにもよって禅問答が来たぞォーう!」

恭子「上条恭子は違う……上条恭子は不適当。女だから子、なんて安直すぎたんだ」

杏子「ヘイヘイヘーイ! 言ってる意味がちっともさっぱしわっからーん! わっかな〜い!」

恭子「阿波踊りはやめてくれよ。

    上条恭介を母とし、美樹さやかを父とするなら、父より授けられた名前は上条恭子。
    けど、もう飽きた。もうダメだ。もうイヤだ。それは僕自身……滑稽に過ぎる。

    そうだな、どうせなら、『メアリ』と呼んでくれ」

杏子「……壁に耳あり?」

恭子「メアリ・スーって知らない? 幻想っ子。世界殺し。絶望喰らい。未来潰し」
459 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/02(木) 21:43:39.29 ID:b9DzO5iwo
杏子「知らねェ。女の名前だって事はわかるけどよ」

恭子「きっとその名が一番良い。一番、相応しい。一番……この身に馴染む」

杏子「何? その名を名乗ったら、最強にでもなれんの?」

恭子「杏子さんは本当に鋭い」

杏子「わからん。アタシにはわからん」

恭子「父より投げつけられた名は上条恭子。母から縫いつけられた名はメアリ・マキナ。
    吐き気がするような害悪。本体から切り離されたナニカ。
    魔法少女の物語に、上条恭介が脳から産み落とした魔法の少女」

杏子「何か知らんが、横文字はやめろよ。マミも一時期、そんな名乗りしてたぞ」

恭子「そうだね、この国にはそぐわないか……でも、ただのハート、いやいや、ハンドル・ネームさ。
    操作するための……それだけなんだから、いいんだよ。もう適当に呼んでよ」

杏子「適当に呼べばいいのか?」

恭子「ナニーさんでもいいな。あるいは王子様。それとも、ローズセラヴィ? アリスもいいかな。好きに呼んでもらって……」

杏子「じゃあ、アンタはすけこだよ」

恭子「 !!!! 」

杏子「メアリとか何とかじゃない。アンタは、どこまで行っても上条恭子。だから、すけこ。アタシが名付けた、すけこだ」

恭子「ぎゃあああああっ」

    『ぎゃあああああっ』

     《ぎゃあああああっ》
460 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/02(木) 21:44:41.39 ID:b9DzO5iwo
杏子「?!」

 突如、光が現れた。そして大量の水が、一気に蒸発したかのような音がした。

 気がついたとき、そこにはもう、誰もいなかった。

杏子「すけこ……? すけこ、オイ! どこ行った!」


 誰も、いなかった。




「ああああああああああ」
 『ああああああああああ』
  《ああああああああああ》

 (かは……あああ! ゲェェッ! ケッ! ゲッ!)
 (戻しちゃダメだよ。君が潰したキュゥべえだ、消化してあげて)
 (……ううう……このッ……魔女!)
 (うんうん。君の知る上条恭介は傍観者で、代わりに出てきた上条恭子は魔女。じゃあ、……)

「『『《答えてしまった! 嵌めこまれてしまった! あの瞬間から……腐りだした!》』」


 上条恭子は魔女。

 ──上条恭子は魔女。


 (キミが、その命を賭すに足る願いを持っているなら、ボクと契約する事ができる)
 (災いを振りまく魔女に対抗できる唯一の存在、希望に輝く魔法少女になれるんだ)

 (魔女となるまで共に歩もうと言った。そして今のキミがいる。あらゆる魂を平気で奪うその姿は、魔女にしか見えない)


 ──魔女は、魔法少女に──殺される!
461 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/02(木) 21:45:12.70 ID:b9DzO5iwo
〜二人の家

       ガチャッ …バタン

さやか「あ、おかえりー。もー、あんたいきなり出てくから、心配し……あれ? ひゃっ」

  ギュゥゥ

−−「さやか」

さやか「あ……、や、ちょっと。倒れちゃう」

−−「さやか……」

さやか「わ、や、やっ、嫌、──ダメッ!」

 ドンッ

−−「ぐっ……」

さやか「ご、ごめん、ごめんなさい……あ、あたし。ちょっと、せめて、シャワー浴びなきゃ……。……ご、ごめんね!」

 タッタッタ…
       (…ガチャッ)


−−「(ダメだ……)」

−−「(もう……さやかにすら)」

 さやかが好んだのは、整った容姿にヴァイオリンの才もある上条恭介だもんね

−−「(完全に認識されなくなるのも、時間の問題)」
462 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/02(木) 21:45:49.45 ID:b9DzO5iwo

 揺らぐ。ブレていく。
 違ってしまった。ズレてしまった。離れてしまった。

−−「(僕は強い。僕は強い。僕は強い。僕はここにいる。僕はここにいるよ!)」

 薄らぐ。淡く。消えていく。
 ────脇役ですら、ない
 いない。いない。いなかった!


−−「(嫌だ、こんなの……なんで、なんで)」

−−「……さ」

−−「さ……や、か」

−−「……さやかあぁぁ!」

−−「さやか、さやかっ、さやか……っ」

−−「さやかぁああぁぁぁぁぁぁ────!」

−−「(なんで! 僕は悪くないっ、僕は悪くないっ!)」

−−「(おまえのせいじゃないか! オマエノセイジャナイカ……!!)」


 私は悪くないのに

 ──それは、魔法の呪文。


 …カチャ
     …ペタ ペタ

さやか「な、何? 呼んだ? 恭……」
463 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/02(木) 21:46:53.12 ID:b9DzO5iwo
 ──卑怯だよね。

 自分からは何も言わないじゃない。

 僕の事、好きだって言った事がある?
 キスしてって自分から言った事は?
 抱きしめてって?

 きちんと言った事、ある?

 そうだよねー、じゃないと、責任をとらないといけないものね。
 自分から何も言わない。
 責任はない。
 この家だって、さやかは僕と一緒に住みたいなんて、一言も言ってない。
 僕が勝手に連れてきて、好きだと言って、キスをして抱きしめた。

 それだけなんだから、さやかは……

 被害者なんだよね


 (──それは、呪いの呪文)



QB「やぁ」

QB「月が綺麗だね。魔女の産声が聞こえるよ」

QB「……彼女たちが産む使い魔はね、主に忠実なんじゃない。その役割に忠実なんだ」

QB「魂に形はない。それは本当。本体から切り離したナニカなんて、気持ち悪い。それは本音」

QB「そうさ。褒めてもらいたいのも、友達でいてほしいのも、死にたいのも、全部キミなんだ。恭子。
   ──機械仕掛けの理想。否定から生まれた娘。電波銀河の信号少女。魔女──メアリ・マキナ」
464 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/02(木) 21:47:41.83 ID:b9DzO5iwo
 ガタン ゴトン
         ガタン ゴトン

〜駅

*「……それを捨てないで捨てないで、って、お門違いっつンだよ。捨てる以前に拾ってもねーよ、っていう」
*「メンドイっすよねー。もうね、ループ入ると本当ダメ、女の話って」
*「終いにゃ、愛だの何だの、ほざくからさ、もう、口で言ってもしょーがないわけよ。
  わかってるって言って、わかってたタメシがない。脳みそスポンジだね。でなきゃ犬より頭悪いんじゃねーの」
*「イヤんなりますよ。俺も、ゾッとしちゃった事ありますもん。わ、頭悪い生き物がいる、って」
*「ホント、いつまでも若いつもりでいる奴って、マジ虫か何かだろ。なんでまだオンナノコみたいに扱ってもらえると……お?」

さやか「…………」 フラ…

 トン

さやか「!」

*「……ッブねぇな、オイ」

さやか「あ……ご、ごめんなさ……」

*「お嬢ちゃん、中学生? 夜遊びはよくないぞ」
*「ニュース見てる? アブナイのが多いんだから、親御さん、家で心配してるよ」

さやか「……家には……親、いないし」

*「……あー」

さやか「誰も……いないし……」 …ポロ ポロ

 …チャリ

*「ショウさん?」
*「ココアね」
*「あ、はい」
465 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/02(木) 21:48:35.47 ID:b9DzO5iwo
 ガコン

*「甘いの飲んで、暖まったら帰んな」
*「ほら。カラダ、冷えてんじゃないの? ふらついてたっしょ」

さやか「…………」

 ポフ ポフ

*「元気出しなって。せっかくカワイイ顔してんのにさ。世の中なんて、それだけで食ってけんだぞ?」
*「そーそー。悪い事してるクセに、平気で生きてる奴らもいンだから」
*「犯罪レベルで頭悪い奴らとかもなー。……な、笑ってなって。笑顔の女の子は、この世で最強なんだから」

さやか「…………」

 …ニ

*「ほーら、超必殺」

さやか「……ありが……ござい、ました」

*「泣かない、泣かない。じゃーな」

           スタ スタ

*「ショウさん、どうしたんスか、コドモに優しくしちゃって」
*「野良猫とかに餌やんの、楽しいじゃん」
*「あー。なーる」
*「マジ癒やされっよなぁ、ちっちゃいドーブツって。あんましつこく擦り寄ってくると、蹴っ飛ばすけど(笑)」
*「弱っちいから、素直にありがとう言いますもんね。本当カワイイですよねー……おっ」

 ダダダダダ… ドゴォン!

杏子「あでぇっ!」

*「……ッブねぇな、オイ! 今のはマジで危なっ、てか壁ヘコんでね!?」
466 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/02(木) 21:49:22.52 ID:b9DzO5iwo
杏子「わっり! おっさん、ごめんね急いでっからさ! ……さやかー!」

*「待てオイッ……つーかオッサンって!」
*「ガキにキレんなよ。元気だねー、夜遊び嬢ちゃん二人目」
*「あーあー、世も末ッスねぇ。夜中にコドモ遊ばせちゃって、親は何してんだ」
*「ヨソで次の子ツクってんじゃないのー。数打ちゃ当たる、ってねぇ。必ずウチに理想の天使ちゃんが来てくれるハズ、とか。
  思い込みっつか。未来、信じすぎだろって。そういうウザイ思考でさぁ、……でなきゃガキなんてツクんねーよ」




杏子「さやか! よかった……魔女に連れてかれたかと」

さやか「…………」

杏子「まーったく、戻る気なんてなかったのによ……アイツは消えちまうし、家は鍵開けっぱだし」

さやか「…………」

杏子「そうだ、小腹が空いたらコンソメポテト、やるよ。だいぶ冷めちまったけど……」

さやか「…………」

杏子「さやか? ……!! おい、なんだこの血!」

さやか「……え……?」

杏子「血だって! 足が血まみれじゃねーか!」

さやか「……あ。……うん。え? 血? ……ココアだよ」

杏子「いや、そんな……そう、なのか?」

さやか「……、ああ、血かも。そうだ。あたし、さっき……産んだの」

杏子「……は?」
467 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2011/06/02(木) 21:49:22.71 ID:wF22lOd2o
あー理解できないけどすっげえわ
468 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/02(木) 21:49:49.76 ID:b9DzO5iwo
さやか「…………」

杏子「じょ、冗談はよせ」

さやか「……。……うん。冗談はよす」

杏子「ったくよ。アイツは結局いないし。本当に、ケガとかないのか? 一人で帰れる?」

さやか「……一人? ……なんで」

杏子「なんでって」

さやか「あたしとあんた、二人じゃん」

杏子「いや、アタシは」

さやか「二人でしょ? 二人の家じゃない。そーだよ、あんたを探しに来たんだから、あたし」

 …ギュッ

杏子「……さやか?」

さやか「いきなり出てくから、ビックリしたんだからね。さやかちゃんを心配させるなんて、こいつめ、こいつめ」 ペシ ペシ

杏子「オイ? オイ、さやか?」

さやか「ごめんね。あんたがイヤなら、あのアルバムだって捨てちゃうし。パパの言う事なんか聞かないようにするから」

杏子「…………」

さやか「だから、ぐすっ、だから、もう出てったりしないでよ。頼むよ、きょうこ……う、うぁーん」

杏子「……泣くなよ、さやか」

さやか「きょうこ、きょーこ」
469 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/02(木) 21:50:47.49 ID:b9DzO5iwo

 ──泣きたいのは、こっちのほうだ。


〜二人の家

さやか「コンロじゃないの?」

杏子「消防車呼ぶ気か。それだけの量だ、中じゃ危ない」

 …シュッ   ボォォッ

さやか「すごいねー、杏子、マッチ擦れるんだ」

 分解したアルバムを燃やす。

 全てさやかの写真。
 リビング。ベッド。ベランダ。アタシの知らない場所。
 立って。後ろ向きで。寝転んで。足を開いて。

 赤ん坊のさやか。
 幼児のさやか。
 少女になったさやか。
 限りなく今に近いさやか。

 『眼』に対し笑いかけ、無邪気だった表情は、成長につれ曇っていく。
 最後の一枚は……

さやか「大丈夫だよ。生理が来た頃からね、パパには『おあずけ』って躾けたんだもん」

さやか「ああいう屑には命令してやらないとね。それでアイツも喜んでるんだよ。
     死んでやるって脅せば、床に頭擦りつけて泣くしね」

さやか「まー、でも、女の子同士じゃなかったら、同棲なんて言った時点で殺されてたかも(笑)」

 彼女の瞳は、冬の海の色をしていた。
470 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/02(木) 21:53:27.35 ID:b9DzO5iwo
〜寝室
〜ベッドの上、寝転がって手をつなぐ

さやか「昔から、杏子がこうして隣にいてくれる時が一番、嬉しいなって思うの」

杏子「…………」

さやか「心配? あたしが、ムリしてるとか……思ってる?」

杏子「(……ちがうだろ)」

さやか「そんな事ない。いつだってあたしを救ってくれた。受け入れてくれた。
     あたしの裸の……あんなアルバムを見ても、大丈夫って言ってくれた」

杏子「(ちがうだろ、さやか。アタシはドン引きしたろ。みっともなく飛び出してったろ。
     叫んで走って、逃げ出したんだ。逃げ出したんだよ、さやか……)」

さやか「だから。大丈夫だから。あたし達、ずっといっしょだよ、杏子」

────────────

仁美「……!」 バシャンッ

*「どうなされまして……仁美さま!」
*「仁美さまが倒れなすったぞ! 医師を呼べ!」

仁美「待て……、大事ない。だが……そこなる壁」

*「……何と! 沐浴場にこのような亀裂、いつの間に」
*「申し訳ありません、我々が致らず……」

仁美「……光が……見えた。夜だというのに、昼間の如き」

*「……?」

仁美「まるで、太陽のような……面妖な……!」
471 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/02(木) 21:55:31.98 ID:b9DzO5iwo
第八話、終わり

>>467 よう宮城。ポエムのつもりで読み飛ばすがいいよ
472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2011/06/02(木) 21:59:22.62 ID:wF22lOd2o
おう
こういうの好きだから期待させてもらうぜ
473 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/02(木) 22:01:13.10 ID:b9DzO5iwo
次回、第九話『さよ屁』

さやか「あたし、バカだもんねぇ」
仁美「土とか食ってみようかしら」
マミ「ああッ、太い……おいしいの……太いわァ……、とろけるぅ……っ」
杏子「さやかも、オマエも、誰も、アイツの事を覚えてないなんて」
ほむら「ヒヒッ……ヒヒッ……ヒヒヒッ……」
エリィ「連れてってあげる──素晴らしい世界へ」

※ただし続きは一週間後(予定)
それまで好きなおっぱいでも語り合っててほしい!
474 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [saga]:2011/06/02(木) 22:44:50.02 ID:DCNqv0980
王子にして孤独の魔女『Mary=maschine=Seckendorff』が遂に覚醒してしまったか・・・

思えばほむループでは「上条恭介」が部外者だったからこそ彼の為に祈ったさやかが円環一番乗りしていたとも取れるし。ならばまどか☆マギカが
本質的に「ほむらとまどかの物語」である以上、その両方を排斥してしまった者が魔女に堕ちずにいられる訳も無く。
恭子が周りにぶちまけさせてきた言葉の全てに取り込まれていく様はある意味Oktavia以上のインパクトがアリマシタ。
姫君にして希望に貪欲な傍観者たる肉体「上条恭介」は既に結界の玉座の中か、さて。スレタイトルも出てしまったし、
脚を奪われ歌を忘れた人魚姫はどうやって王子様を深海へ誘うのか。期待乙って次回一週間待ちかいw
475 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/06/03(金) 03:13:56.05 ID:IOBCmnHA0
愛媛さんちょっとこわいです

476 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/06/03(金) 04:29:36.23 ID:VSl3IRCNo
長い、永いよ一週間は

でも待ってる
毎日スレ更新ボタン押しながら待ってるよ
477 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/03(金) 05:04:48.69 ID:NK2ERtb60
ふむ、狂人演じられるほどには完全に狂いきれてなかったか、すけこ
478 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/05(日) 16:03:37.38 ID:62YL5YJto
乙っちまどまど!
479 :名無しNIPPER [sage]:2011/06/09(木) 01:12:22.41 ID:BYlr8rwDO
予定では今日
楽しみで楽しみで
服を脱ぐ
……夜風が体にしみる
480 :BENPER :2011/06/09(木) 21:20:19.41 ID:ZIpBNrpVo
ボクは文章を書くのが苦手です。
感想文など特に苦手で、ジャンプのアンケートさえ送らないタチです。
だから、スレに乙と書き込まれていると、のけぞる。
おつ、送信。なんという労力が掛かっているのか。キーを打つというのは重労働じゃないか。

というわけで、これまでの乙もこれからの乙もありがとう。
反応乙。
愛媛は長文で乙。
(さやかに認識されていないメアリは、Seckendorffを名乗れるだろうか?)
そして479は服を着なさい

この夜に全裸は私だけでいい


すけこ☆マギカ あるいは めあり☆マキナ
第九話『さよ屁』 はじまるよー
481 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/09(木) 21:20:59.73 ID:ZIpBNrpVo
 今では年に数回しか接触してない、と、いかにも嬉しそうに。

さやか「パパは本当にあたしが好きだからねぇ。全部拒否ってのも、なんか、かわいそーになっちゃって。
     だってさ、仕方ないでしょ? どんなんだって、親は親だし」

 可哀想だから、自由にさせつづけてきた。

さやか「さやかちゃん超モテモテ、愛され系、みたいな?」

 両親が自分を奪い合ったせいで、周囲からは家庭不和だと、不名誉に見られてしまった、から。

さやか「ちっちゃい頃はね、あたしのせいで悪いなー、すごーく申し訳ないなーって思ってたのよ」

 あの、爆破されたマンション。
 与えられた箱庭。

さやか「あたし、バカだもんねぇ。もっと早く、離れなきゃ、いけなかったんだ。
     いやー、親に迷惑かけるもんじゃないわよね。うんうん」

 門限も何もなく、雇い人が家事の一切をしてくれたから、何の不自由もなかったけど。

さやか「ラクだったけど、でもちょっと後悔してるかなー。あんたによく怒られたよね。お茶一つ満足に淹れられないって。
     でもバッファローの下痢とか言われたのは、ショックだったよ」

 だから、今。

さやか「やっとこさ家事を覚えてさ、あんたに、ありがとうって言ってもらえるの、すごくしあわせ」

 本当に?

さやか「本当。大マジ。いーんだよ。これくらいのしあわせが一番。あんまり高望みしちゃいけないんだ」

 本当に?

さやか「ほら、あたし、悪者だから(笑)」

 と、いかにも嬉しそうに。
 私は言う。
482 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/09(木) 21:21:33.70 ID:ZIpBNrpVo
あたしは杏子が好き
あたしは杏子が好き
あたしは杏子が好き
あたしは杏子が好き
あたしは杏子が好き
あたしは杏子が好き
あたしは杏子が好き
あたしは杏子が好き
あたしは杏子が好き
あたしは杏子が好き
あたしは杏子が好き
杏子はあたしの天使
杏子はあたしの天使
杏子はあたしの天使
杏子はあたしの天使
杏子はあたしの天使
杏子はあたしの天使
杏子はあたしの天使
杏子はあたしの天使
杏子はあたしの天使
杏子はあたしの天使
杏子はあたしの天使
杏子はあたしの天使
あたしは杏子に救われる
あたしは杏子に救われる
あたしは杏子に救われる
あたしは杏子に救われる
あたしは杏子に救われる
あたしは杏子に救われる
あたしは杏子に救われる
あたしは杏子に救われる
あたしは杏子に救われる
あたしは杏子に救われる
あたしは杏子に救われる
あたしは杏子に救われる
あたしは杏子に救われる
あたしは杏子に救われる
483 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/09(木) 21:23:21.47 ID:ZIpBNrpVo
──────────

頭の二つある生き物がそだたないように……

とびぬけた頭脳の子は腹からでるとまもなく死んだものだ

だが     は神が殺しそこねたのだ

──────────


 上条恭子が消えた夜、インキュベーターもまた、ひっそりと姿を消した。


 佐倉杏子は、上条の借り家に戻った。

 美樹さやかを守るという名目で、戻った。

 上条恭介の抜け落ちた彼女の姿は、痛々しくて見ていられないという名目で、抱いた。

 彼女の心を守るという名目で、非生産的な交尾を重ねた。

 しかし彼女の裸身を目にする度、燃やしたアルバムが頭をよぎる。

 父親が実の娘のフルヌードを撮る。

 その意味。

 炙られた悪意の粒子が鼻腔から入り込み、脳髄にこびりついたのか。

 忘れたい。忘れよう。忘れるために、佐倉杏子はいっそう少女の肌の香りに溺れる。


 一方、志筑仁美は、原因不明の悪心に悩まされていた。
484 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/09(木) 21:24:32.25 ID:ZIpBNrpVo
〜学校

仁美「……う、げぇぇえぇぇ」

 ゴホッ、ゴホッ …ペッ ゲホッ

        ジャー──…

仁美「うーん……」


〜お昼。屋上

仁美「土とか食ってみようかしら」

マミ「?! え? え!?」

仁美「いえ……最近、食欲がありませんの。常に悪心がしまして」

マミ「……そういえば、近頃お昼が控えめだったわよね。お医者様には診てもらったの?」

仁美「異状なしとのお返事をいただきましたわ。それでも一応、今日も診てもらう予定ですが。はぁ、面倒だわ……。
    なんなのでしょうね。昨夜も、どうにも食事が喉を通らず、氷をかじってやり過ごしましたの」

マミ「氷?」

仁美「無性に欲しくなりまして。
    ああ……せっかくのお弁当も、見ているだけでつらい」

マミ「……よかったらでいいんだけど。そのおかず、少しもらってもいいかしら」

仁美「どうぞどうぞ」

マミ「ごめんね。仁美さんのお弁当って、とっても美味しそうで、前から気になってて」

仁美「マミちゃんに食べていただけるなら、光栄ですわ。わたくしの手作りですの」
485 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/09(木) 21:24:57.93 ID:ZIpBNrpVo
マミ「まぁ、ランチに串焼き、焼けた肉とたれの匂いがそそるわ……しかしこの多彩な色彩は何?」

マミ「まずは、ふむ……肉厚の椎茸の笠に、これは……鶏ではないわね。
   山鳥? なるほど、山鳥とはね。つくねにしてなお、滋味溢れる。椎茸の旨みとマッチしているわ」

マミ「こっちは……、つくねを赤飯で包んで焼いてあるのね。
   程よくかための歯ごたえのモチ米から、染みだす肉汁のジューシーさ。そしてその中から……チーズの一撃!
   ああ、チーズ! 想定外の刺客だわ! 和のムードをあっという間にひっくり返し、天下を取る勢いよ!」

マミ「つくねが二連鎖を起こしてしまったわ。少しヘルシーそうな……これは、生麩串かしら。
   コシのあるムチムチの食感の、蓬色の生麩に、甘い味噌ソースを絡めて田楽風に……うん、美味だわ!」

マミ「ドキドキが止まらないわ。今度はうずらの卵串……。食べやすさと可愛さを兼ね備えた、女の子の味方ね。
   薄い白身の層を剥いて、ぽくぽくとした黄身を舌で転がす。この、こっくりとした食感。飽きないわ」

マミ「お次はこれよ、香る梅ジソの……さっきから私を手招きしていたわ。ふふ、せっかちさんねぇ。
   トロリとかかった梅肉ソースの紅さに、シソの葉の緑、ささみの白。見た目にも鮮やかに美しい一本ね……。
   口に入れれば、これまた……素晴らしいハーモニー。サッパリと、しかしふんわりと余韻を残して胃に去っていく」

マミ「これは……ムネではないわ……モモでもない……。せせり? これがせせりなのねっ?!
   この歯応え、噛むほどに滲む脂。塗られたタレの、ほんのりワサビの風味ッ、……たまらないわ!」

マミ「さて、意図的に最後まで残してみたのだけれど……この、白い、白い白い串っ!
   ネギよ! あなたは焼きネギだわ! 肉に挟まれていないというのに、この存在感……どういうことなの?
   ……、ふむ、ふむ、塩ダレが掛かっているようね……けど、それだけで肉と炭水化物に勝てるアドヴァンテージは……
   こっ、これは! ちがう! ネギがちがうっ……上物という言葉で表せない程! 最高のネギは肉さえ喰らうと言うの!?
   ああああっ、塩ダレじゃない、塩ダレじゃないんだわ。ほんの少しの塩と、あとは、このネギ自身から染みでた出汁!
   おいしい……! ああッ、太い……おいしいの……太いわァ……、とろけるぅ……っ」

 ゾク ゾク… ブルッ ビクッ、ビクン

         …パシッ

マミ「ごちそう……さまでした!」

仁美「お粗末様でした(……マ、マミちゃん一人で全部食べちゃったぁー!)」
486 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/09(木) 21:25:38.71 ID:ZIpBNrpVo
マミ「おいしかったわ! と〜っても、おいしかったわ、仁美さん!」 パク パク

仁美「(間髪入れず、ご自分の分も食べ始めた!)どういたしまして、ですわ」

マミ「ホント、みんなでお昼を食べ始めてからね、ご飯がおいしくて仕方ないの!」 ニコッ

仁美「(なんて……なんて良い笑顔! 油が照っているよう!)さ、さやかさん達のおかげですわね」

マミ「そうそう、感謝してるわ! その上、今ではエリィがいてくれるから、家でも寂しくないの!
   でも、あの子はちょっと食が細いから、おかず二人分だと、私が多目に食べちゃうのよね。
   いやだわ、私ちょっと、太っちゃってないかしら?」

仁美「(そういえば……初めてお会いした時より、心なしかふっくらめに……)いえいえそんな!」

マミ「そうだわ仁美さん。具合はよろしくないみたいだけど、でも昨日のケーキは、全部食べてくれたじゃない?」

仁美「ええ。そうなのですわ。甘い物は、なんだか入るみたいで」

マミ「なら、私がケーキを作って、それを仁美さんのお昼にするなんて、どうかしら!
   代わりに仁美さんは、私にお弁当を作ってきてちょうだい!」

仁美「え」

マミ「……あ……いえ、よかったら、でいいのだけど。……勇み足だったかしら」

仁美「……とっても良いアイディアですわ!」

マミ「い、いいの?」

仁美「そうですわ、食事が食べられないなら、ケーキを食べればよいのです!
    むしろこちらからお願いいたします。マミちゃん、どうかわたくしにケーキを作ってくださいな!」

マミ「……うん!」
487 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/09(木) 21:26:48.85 ID:ZIpBNrpVo
〜放課後

仁美「……あら?」

*「暁美さん、そーいうの、やっぱズルイんじゃないの」

仁美「あの……どうなさいましたの? 皆様、部活のお時間では?」

*「あー、志筑さん。志筑さんは見てなかったよね」
*「お昼、ユウカのお弁当、暁美さんがひっくり返したんだよ」

ほむら「……わざとじゃない……です……」

*「わざとだったら殴ってるわよ!」
*「あの子は気ィ弱い子だから、いいって言ったけどさ……だからってゴメンの一つもナシって異常でしょ!?」

仁美「(……午後はなにか、教室の空気が悪い気がしていましたが……)」

ほむら「…………」 ブルブル

*「泣いたってダメだからね。ユウカだって泣いてたんだから」
*「ちゃんと謝んなさいよ。弁償しなさいよ!」
*「お母さん働いてんのに、手作りしてくれてんだから。暁美さんが食べてるよーなコンビニの出来合のとは、違うんだよ?」
*「誰がゴミ片付けたと思ってんのよ。うちらにどこまで迷惑かけんの?」
*「暁美さん、今までお昼は、どっか行ってたじゃん。……なんで今更、戻ってくるかなぁ」

仁美「あ、あの……差し出がましいようですが。当事者が揃っていないのに、謝る・謝らないというのは……」

*「でも、……ま、そうだよね。じゃ、暁美さん、グラウンドまでついてきて」
*「あの子、園芸部だからね。そこで、土下座して謝ってよ」

 グイッ

ほむら「さ、触らないで……離して、嫌ぁッ」

*「嫌ってなによ! 何様なの!? 嫌なのはこっちよ!」
488 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/09(木) 21:27:39.67 ID:ZIpBNrpVo
仁美「いけませんわ! 力づくで頭を下げさせるなど。それでは、暁美さんは本当に謝った事には……」

*「でも暁美さん、すぐ逃げるんだもん! 全ッ然、反省しないし!」
*「志筑さんだって関わりたくないのは判るけどさ、学級委員でしょ? 何とかしてよ、この子!」

仁美「(えぇ〜……)」

*「他のクラスの子にも聞かれるんだよ? あの魔太郎女、友達なのかって!」
*「授業なんか全然進まないし! この人のせいでウチらだけ、遅れてるんですけど!」
*「あたし達、暁美さんの世話するためにガッコ来てんじゃないんだから」
*「本当、迷惑……なんかしょっちゅうゲロ臭いしさぁ……」

仁美「(うう……ゲロと言われて胃が。これもある種のもらいゲロでしょうか。
    なーんて、はしたないですわね、ゲロゲロと。う、気持ち悪……)」

仁美「…………」

仁美「……ねぇ皆さん? 中澤、……中澤君、部活に出てるわ」

*「え、嘘!? ザワ君!?」

仁美「最近はおサボりになってると聞きましたけど、おやおや、きっぱり真剣なご様子。
    マネージャーさんは、側にいてあげないといけないのでは……?」

*「ほ、ホントだ……てっきり部活もやめちゃうのかなって。それならって、あたし……」
*「……。行けば? 練習、始まってるよ。マネージャーの仕事あるでしょ」
*「え、でも、……うん。ごめん。行かなきゃ。じゃ、また」
*「…………」

 タタタ…

*「……はーっ。志筑さんには適わんね」
*「うちらも別に、こんな事で時間とりたくないんだけどさぁ……」

仁美「ね、こういう時は、ほむらさんも一言。一言でいいからさ」

   …ヒヒッ…

*「?!」
489 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/09(木) 21:28:08.16 ID:ZIpBNrpVo
ほむら「ウヒッ……、クッ、クッ、ククッ」

 ガク ガク ガク ガク

*「…………」
*「……うげ、何……」

仁美「…………(ぐ。胃が)」

ほむら「グス……ヘッ、ヘヘ……ヒヒヒヒヒ、ズズッ、ヒヒヒ」

  カク カク ガクン

*「何コイツ。泣きながら笑ってるよ……」
*「キモイ……やだもう、キモイ……」

仁美「(は、吐き気が……はっ?)……あ、あら?」

ほむら「ウ……ウヒヒ……ヒヒッ、ウェ、ヘヘヘヘッ」

  ガク! ガク! ガク!

仁美「?!」

*「し、志筑さん……この人ヤバイよ……」

仁美「え? あら? えっ?! あっ……」

ほむら「……ゲヘッゲヘッゲヘッ……ゴホッ、ヘヘヘ……グシュ」

  ガクン カタ カタ カタ…

仁美「み、皆様? わたくしが、暁美さんを保健室に連れていきますので!
    今日は、これで……堪忍してさしあげて……」

*「う、うん……」

ほむら「ヒヒッ……ヒヒッ……ヒヒヒッ……」 カクカクカクカク
490 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/09(木) 21:28:42.99 ID:ZIpBNrpVo
〜マミの部屋

仁美「……今日は……災難でしたわ……」

エリィ「マターリ散布」 ポフポフ

仁美「ありがとうございます……。ああ、その後は結局、暁美さんはフリーダムに去っていきましたわ。
    首を上下に揺らし続けるその姿に、わたくしも追う気がしなくなってしまって」

マミ「大変だったわね。うちのクラスでも時々、話している人がいるわ。残念な転入生だって」

仁美「……一体、どういう方なんでしょうね。以前、一度、御一緒にお食事した時は……あら?」

マミ「え?ああ、そうだったっけ……、そうそう、ランチだったかしら? ……んー……?」

仁美「あの時、なぜ、お誘いしたのでしたっけ?」

マミ「……なんで……だったかしら?」

エリィ「お茶ドゾー」 トポトポ

仁美「ありがとうございます。ねぇ、エリィさん?」

エリィ「何?! シーズー、何っ? エリィに何っ?」

仁美「そ、そこまで、わたくしに気を遣ってもらわずともよろしいのですよ?」

エリィ「……うぐぅ」 シュン

仁美「(……なんでしょう。そんなに悪い事を言ってしまったのでしょうか?)」

マミ「…………(あれ、エリィは……なんで私の部屋にいるのだろう……?)
   そういえば、さやかさんは学校に来ているの?」

仁美「ああ、それが……」
491 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/09(木) 21:29:52.64 ID:ZIpBNrpVo
〜二人の家

杏子「ぷは……運動の後の水はうめーわ」

QB「今日もキミは裸だね、杏子」

杏子「……久しぶりだねェ。どーこ行ってたんだ? メスにゃんことメイクラブでもしてきたの?」

QB「ボクがこの星の生物と交尾しても、結果はキミとさやかの交尾と同じだよ」

杏子「バーカ。コドモが出来っか出来ねーか、じゃねェだろ。メイクラブっつーんだ。愛だ、愛」

QB「有史以来、非生産的な交尾は、決まってそう理屈付けられてきらよね、あへ、きゅぴっ」

 グリ グリ

杏子「こーやっとなァ。さやかがアンアン鳴くんだよ。ま、後ろじゃなくて前の穴の話だけどな。
    後ろは、まだなぁ。あんまハイペースで進めんのも、がっつきすぎだろ?」

QB「さやかにはネコを撫でるように優しくしてあげるんだろうね。きゅっ。ボクの扱いとは大違いで」

杏子「トーゼンだろ」

 ズッ ズブプッ

QB「みゃああん」

杏子「ンな大声出すなよ。さやか、寝てんだぞ。ちょこーっと、朝から気張りすぎたからな……
    なにせ、さやかは素直だし感度も抜群だし……あー、快感、快感。気分いいわァ。理想の環境だな、こりゃ」

QB「きゅぷん。わけがわからないよ。女の子と一日中セックスをするのが、キミの望みだったのかい?」

杏子「そーだけど?」

QB「……それでも、あみゃ、ボクとしては、はにゃ、構わないけどね」
492 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/09(木) 21:30:49.30 ID:ZIpBNrpVo
杏子「ハッ、そこはツッコめよ。……たださ、どーしよーもねーんだ。アタシにはどーしようもねーんだよ。
    さやかも、オマエも、誰も、アイツの事を覚えてないなんて」

QB「上条恭介という、この世にはいない少年の話かい?」

杏子「もともとアタシは、アイツの事なんか全然知らない。
    探しようもなくって、それでも探したけど、……手掛かり一つ、なかったよ。
    さやかの、マトモなほうのアルバムも見たけどよ。アイツはいない。どこにもいない」

QB「いないものを探すなんてムリだよ」

杏子「本当に、忘れちまったのか。キュゥべえ、オマエが最初にアタシに教えたんだぞ。アイツの事。
    おかしいと思わねーか。マミの後輩にアタシは会いに来た。さやかも仁美チャンも魔法少女じゃない。
    ──じゃ、アタシ、なにやってんだ?」

QB「ボクに聞かれてもね」

杏子「一度アタシを追い出したマミと、仲良しこよし? 魔法少女じゃない奴と、ここまでズブズブになって?
    そんなわけない。全部、全部、アイツのお膳立てだ。アタシだけで、こんな状況になるもんか。
    だいたい、さやかは魔法少女だったんだろ? それを、誰が元の人間に戻したって……」

QB「さやかが魔法少女だった、と……それが断言できるかい?」

杏子「…………」

QB「それについては、マミから聞いたよ。キミの事だ、ずいぶんと食い下がったんだろうね。
   だが、さやかの答えは『ちがう』。マミの答えも『ちがう』。仁美の答えは『知らない』
   ──違うかい?」

杏子「そうだよ。アイツらの答えは全てが『ノー』」

QB「じゃ、他に、今のキミに彼の存在を見極める術があるのかい?」

杏子「ないな」

QB「即答だね……。それじゃ、キミの頭の中にしかない夢物語と区別がつかないよ」
493 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/09(木) 21:32:01.50 ID:ZIpBNrpVo
杏子「アタシは……おかしくなっちまったのかな」

QB「人間は、夢を見るんだろう? それは時に、現実と区別がつかない鮮明さを保つそうじゃないか」

杏子「夢か。そうかもな……。どうにもな、あの日から、こっちが夢なんだかって思ってすらいたんだ。
    ほら、前にさやかが、なんでか不登校ごっこして。アイツが言うにはアタシに甘えたかったとか。
    それで、色々。ケンカになって……アタシはアイツにゃ口で負けるから、ウチ飛び出して。

    ──そうだ。オマエに会ったろ」

QB「……そうだね。会ったよ」

杏子「でさ、……アレよ。自販機。アンタ、自販機の前で、アタシになんかおごってくんなかった?」

QB「ボクは、この国の貨幣を持ち歩いた事はないね」

杏子「そりゃそうだな。妙だな。やっぱ夢か……。あ、でも、あの時さ、アンタ、言っただろ。
    珍しく、面白いコト言ったなー、ってアタシ思ったんだよ。なんだったかな?」

QB「さぁ?」

杏子「すっごく奇妙だったんだよ。なんだったっけ、……愛してる、とか、そういうのに近いコト」

QB「アイシテル?」

杏子「いや、んな直接じゃねーよ。なんだっけな、なんかややこしい言い方の……」

QB「ありえないよ。ボクがそんなコトを、キミに言うなんて」

杏子「……だよなァ。やっぱ夢か。あー、夢だわ。全部、夢……」

 …カチャ

杏子「あ、起きたか。おはよ、さやか」

さやか「杏子……いないから、心配しちゃった。勝手にどっか、行かないでよ」

杏子「悪かったな。ちょっとキュゥべえの奴と……あり? アイツ、どこ行った?」
494 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/09(木) 21:32:56.21 ID:ZIpBNrpVo
〜早乙女和子の家

中澤「…………」

和子「勘違いしないでちょうだい」

中澤「……先生……俺は」

和子「今更、私が。生徒と……あなたと関係を持った、私が、バージンの小娘のように振る舞うと思った?
    意にそぐわぬ事を強制された、私は悪くないのだ、などと。そんな子供の言い訳をすると?」

中澤「早乙女、先生……」

和子「しっかりなさい、中澤君。失恋で自棄になっていた私は、己の足でホテルへ向かいました。
    酔っていたとはいえ、それは確かな事です。裁判で訴えたら、あなたが勝ちます」

中澤「俺は……ッ、和子を苦しめるために抱いたんじゃないッ!」

和子「……。先生と呼びなさい。そして感想や願望ではなく、事実を述べましょう。一、中澤君は恋人がいます」

中澤「アイツには今日……フられました。もともと、先生の代わりみたいにしてたの、勘付かれてたみたいです」

和子「……私と中澤君は、親子ほど年齢が離れています」

中澤「それでも、俺は先生が好きですっ」

和子「私も好きです。昔、頼りない教育実習生だった私に、あなたがラブレターをくれた日から」

中澤「!!」

和子「大事な事実を伝えます。好きでもない男を部屋に上げる程、早乙女和子は軽い女ではありません」

中澤「……手紙……覚えてて、くれたんだ。和子……」

和子「先生と呼びなさい、卒業まで……コホン。呆けるのは早いですよ。最後の質問です!
    あなたは私をしあわせにしてくれますか?! してくれませんか?!……はいっ、中澤君!」

中澤「俺は、和子をしあわせにします!」
495 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/09(木) 21:33:39.79 ID:ZIpBNrpVo


























*「ザワ君、よかったね」


496 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/09(木) 21:34:27.03 ID:ZIpBNrpVo
〜翌日。放課後

さやか「どーも、最近はマジメに腐マジメ、ふしだら一直線のさやかちゃんです」

マミ「いけないわ。学生の本分は勉強よ」

さやか「すんませんマミ先生っ、一度休み癖がつくと、ついつい!
     いや、でも、学校に行ってケーキが食べれるとは思いませんでした」

仁美「わたくしが無理を言って、マミちゃんに作ってもらっているのです」

マミ「無理だなんて、とんでもないわっ。私は好きで作っているのよ。
   仁美さんこそ、ケーキに飽きちゃったら、いつでも言ってね……」

仁美「ケーキに飽きたその時は、クッキーがよいですわね」

さやか「クッキー! いいね! でも仁美の体調が悪かったりするのは、ちょっと心配かな。
     あたしも最近、なんかカラダがダルかったりする時が多いんだけど」

マミ「それはきっと休み過ぎよ、もう。さやかさんがいない間、仁美さん一人でノートを届けてたのよ」

さやか「へ? ノート……ああああ! ごめん、仁美ごめんっ。今日はあたし行くからっ」

仁美「いえいえ。大した苦労では。まどかさんも、まだ、会える状態ではないようですし……」

さやか「……そっか……」

マミ「……ねぇ、そのまどかさんって、私、会った事あるかしら?」

さやか「えっ!? ……なかった、でしたっけ。や、接点ないもんね……。きっと会ってないですよ」

マミ「そうね……会えるかもわからないけど、せっかくだから、私も御一緒させてもらおうかしら。
   あ、そうだ! 仁美さん、これ、私の部屋のカギ」

仁美「え?」
497 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/09(木) 21:35:29.88 ID:ZIpBNrpVo
マミ「エリィがね。あの子ねぇ、私が帰ってきてもパソコンのほうを向いてて、そのまま「おかえり」って言うのよ。
   親しき仲にも礼儀あり、でしょう? だから……ちょっと、驚かせてやりたくなっちゃって」

仁美「あ! わたくしが、マミさんのふりをして部屋に入るのですね!」

さやか「わはっ、エリィちゃん驚くぞぉー!」

マミ「そうそう! じゃ、私はさやかさんとノートを届けに行って、それから帰るから」



〜マミの部屋

エリィ「シーズー! シーズーが来てくれた!」

仁美「」

エリィ「すぐわかったよ! エリィの勘はすごいんだから!」

仁美「解せぬ」

エリィ「お茶! あちゃ!」 バシャー

仁美「ああエリィさん落ち着いて。とりあえずわたくしドアを閉めて、靴を脱ぎますので。お茶はそれから」

〜リビング

エリィ「何かお菓子も出す? お腹がすいてるなら、戸棚にも冷蔵庫にも色々あるし!」

仁美「い、いえ。お腹は空いていませんの。それに、マミちゃんのモノに勝手に手を付けるワケにいけませんわ」

エリィ「マミ姐姐なら許してくれるよ?」

仁美「勝手な判断はいけません。きちんと承諾を得るべきです」

エリィ「……うー……」 シューン

仁美「(お、落ち込まれてしまった?)」
498 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/09(木) 21:36:35.34 ID:ZIpBNrpVo
〜住宅街

マミ「エリィはね、仁美さんの事、好きみたいなのよね」

さやか「あ、それ判ります。なんかすっごい、なついてますよね」

マミ「なついている、で済ませていいのかしら……」

さやか「エリィちゃんがフラフラの時、あたしもお世話したのになぁ。なんか今ではバカにされてる感が……
     も〜、どーして仁美ばっかりモテるかなー! 不公平だぁーっ、不平等だぁーっ」

マミ「……ま、エリィが元気になったのは、いい事だけど。最初は……大変、だったから」

 ──部屋の隅で、膝を抱えて泣き続けていた

マミ「洗濯機の振動に怯えて……チャイムに錯乱して……全身ひっかきだすし」

さやか「ですよね……マミさんが一番、大変だった」

マミ「(そうよ。大変だったんだもの)」


 手足を縛ったのも──やむを得ない事。

 それに、泣き叫ぶのを止めるために、口を────


さやか「エリィちゃん、元気になってくれてホントよかったですね!」

マミ「そ、そうね。そういえば最近ね、なんだか、昔の事を思い出しかけてる感じもするの」

さやか「わ、すごい! エリィちゃん偉いなあ!」

マミ「(……はたして喜ぶべき事かしら……)

さやか「自分の家の事とか、思い出せますかねー。ほら、やっぱ親って、大事なものだし……」

マミ「そうね、でもまだ、ハッキリとは……(さやかさんに説明したって、しょうがないわよね)」
499 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/09(木) 21:37:54.09 ID:ZIpBNrpVo
〜マミの部屋

仁美「本当に、そんな気を遣わずともよろしいのですよ?」

エリィ「だってシーズーは、とってもいいニオイがするんだもの」

仁美「(それは理由としてどうなのでしょう。ゲロくさいと言われるよりは、良いのでしょうが……)
    エリィさんが言うだけ食べたら、わたくし太ってしまいますわ。
    ヘンゼルとグレーテルじゃないんですから、あんまり食べさせようとしないでくださいまし」

エリィ「エリィはお菓子の家のババアじゃないよ」

仁美「でもエリィさん、甘い物お好きでしょう?」

エリィ「お菓子の家なんて蟻にたかられる。エリィはね、シーズーのお城に住みたいの」

仁美「私『と』……お城ですか?」

エリィ「シーズー『の』お城!」

仁美「わ、わたくしの? わたくし、城と呼べるようなものは持っていませんよ?
    もしかして志筑の家の事をおっしゃっているなら、あれはわたくしの所有ではありませんし……」

エリィ「お城、持ってるよ。シーズーは持ってる。エリィはそこに住むの。これは決定事項だよ!」

仁美「そう申されましても……」

エリィ「…………」

仁美「……(何か特定の方々には伝わる、暗号か何かなのでしょうか? もしや……)
    エ、エリィさん? もしかして、……記憶が戻っていらっしゃるの?」

エリィ「…………」

仁美「あ、いえ、勇み足でしたわね。ごめんなさ……」

エリィ「────シーズーはね、エリィの運命のヒトなんだもん」
500 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/09(木) 21:38:44.16 ID:ZIpBNrpVo
今日はここまで。
なごやかほんわり、日常回
501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/09(木) 22:00:30.70 ID:TXsDuGeYo
中沢くん幸せになって良かったね!
502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/09(木) 22:29:41.55 ID:KbEf2DqLo
乙っちまどまど!
503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/09(木) 22:48:15.04 ID:zgZDH5juo
乙っち乙マミ


愛は世界を救う
504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/06/10(金) 01:37:50.14 ID:+j4vQC0Vo
待ってたよ。
狂言回しというかトリックスター的ポジションに居た筈のすけこがどうなったのか、気になって仕方ない。
乙です、次回も待ってる。
505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/10(金) 18:25:29.43 ID:KUOYRYu80
そういえばすけこって妊娠したまま消えたんだっけか・・・何かのフラグ?
506 :BENPER :2011/06/10(金) 21:39:05.88 ID:/xKoyWE3o
赤ちゃんはどこから来てどこへ行くの?

あと今フラグ何本くらい立ってるの?

続きです。
エリィはお腹がすいたようです
507 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/10(金) 21:40:06.42 ID:/xKoyWE3o
仁美「運……命?」

エリィ「あれは、かっこよかったなぁー」


 あなたの味方でいたい。あなたが欲しい。あなたを盗み取りたい。あなたを独占したい。

 あなたを愛していたいのです


エリィ「格好良かった。あのセリフは、スッゴく格好良かった。
    エリィに向けてじゃなかったのは、残念だったけど……許す(はぁと)」

仁美「(それは……あの結界の中で……)」

エリィ「エリィね、思い出したんだ」

仁美「(まさか)」

エリィ「思い出したんだよ」

仁美「(ケータイで連絡……いいえ、不慣れな機械に頼るより、己の足。
     無抵抗は得策ではない……ここから玄関までの距離……イケるっ)」

エリィ「──エリィはね。シーズーを」

 た す け に
  き た ん だ よ

仁美「?! ……エ、エリィさんが二人……?」

 エリィ。
 魔法少女。
 その容貌と瓜二つ、等身大の球体関節人形。

エリィ「『瓜子邪鬼(うりこじゃく)』……ダメだよ。エリィにはワカルの。みんなみんな、ワカッチャウの」

仁美「っ……」
508 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/10(金) 21:42:42.52 ID:/xKoyWE3o
エリィ「ワカルよ──ヒトミの考えている事、全部」

エリィ「おおきなおうち。きれいなおべべ。おいしいおしょくじ。家族もたくさん。
    きらきらしているのに、こんなにきらきらしているのに、ヒトミはシアワセじゃないね」

エリィ「ヒトミの泣いている声、エリィには聞こえていたよ。
    ヒトミが心で流す赤い涙が、エリィのところまで届いたよ」

エリィ「このヒトはね、エリィのオヒメサマだと思った」

エリィ「きっと、エリィに会うためにヒトミは生まれたきたんだよ」

エリィ「ヒトミはエリィになって、エリィはヒトミになるんだ」

エリィ「迎えに来たんだよ。エリィね、木馬に乗って、ヒトミを迎えに来たの。この街まで来た」

エリィ「けど、何度も頑張ったけど、エリィの手はヒトミを掴めなかった。
    エリィの歌はヒトミに届かない。エリィの視線にも、ヒトミは知らんぷりだったね」

エリィ「気づくのが遅くて、ごめんね。
    エリィとヒトミが一緒になるには、儀式が必要だったんだ。神聖な儀式が」

エリィ「けどけど、準備の最中だったけど、ヒトミは自分から来てくれたね。
    エリィは、嬉しかったよ。嬉しくて、たまらなかったよ。
    でもね、余計なのがいっぱいいたから、バラバラにしようと思ったんだけど……」

エリィ「ああぅ……イタイ、アタマがイタイ……」

エリィ「アアアア! キイイイ……ギイイイイイッ! ウウウウウウ!」

エリィ「……ニオイ……イイニオイ……ウラヤマシイ……オイシソウナニオイ……」

エリィ「連れてってあげる──素晴らしい世界へ。だから、その気高い魂の生皮を。記憶の城をちょうだい」
509 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/10(金) 21:44:46.29 ID:/xKoyWE3o
仁美「……!」

 迫り来る人形は牽制。
 その背から、エリィ本人が躍りかかってくる。

仁美「?!」


 キスをされると思った。

 けれど、


仁美「……あああ!」


 首すじに、魔法少女の口吻。
 それは唇を押し当てるものではなく、もっと情熱的な──噛みつきだった。

仁美「嫌……っ!」 バシッ

エリィ「嫌がらないで。逃げないで。うまく行かない。動いちゃダメ」

仁美「(……無茶を言う)」

エリィ「ヒトミチャンの汗、美味しいですペロペロ」

仁美「(動脈を狙ってはいない。殺意はなかった。だが、彼女が魔女だったら、おそらく私はその術下に……)」

エリィ「汗はシロップ。血はイチゴ水。魂は──極上。もっともっと、美味しいハズ」

仁美「(……くっ。こんな時に、悪心が……吐き気が)」

エリィ「イイコにしないと、縛っちゃうよ。口にガムテープを貼られて、オムツをして放っとかれちゃうの。
    まだ、そこにしまってあるからね。でもエリィはそんな事したくないよ……ヒトミを助けたいだけなんだから」
510 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/10(金) 21:47:58.93 ID:/xKoyWE3o
エリィ「だから……一緒になろう!」

仁美「!!」

 ──人形の手を転がり避ける。だが、

仁美「……うえっ」 ゲボッ

 ビシャ…ッ ゴホッ ゴホッ

エリィ「ヒトミの、とろとろレモンジュース。ウフフ」

仁美「(息が……苦しい。力が抜ける……)」

エリィ「……あれ……ウウウッ?」

仁美「……?」

エリィ「──キョウのニオイがする。どうして?」

仁美「え……? キョウって、どなた……?」

エリィ「やだよ。ヒトミはエリィのだよ。ヒトミはエリィのオヒメサマだよ。他のヤツには渡さない」 ダッ

仁美「えっ? ……カハッ!」 ドタッ

 ギュゥゥゥッ

エリィ「エリィのモノだ。エリィのモノなんだ。エリィはヒトミになるんだ! でなきゃっ」

仁美「は、離し……ぐっ……ぐうう……」

エリィ「ユルサナイ──!」

仁美「……………………いい加減にしなさい聞き分けのない小娘がァッッ」
511 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/10(金) 21:50:06.09 ID:/xKoyWE3o
 ガシッ …グルンッ
            ドタッッ

エリィ「ぎゃふっ!?」

仁美「ハァ。ハァ……軽い。腕力を強めているようですが、体重は変わりませんのね」

エリィ「う、うう。瓜子邪鬼!」

   …ガッ

仁美「助かりますわ……人形のほうが、手加減をせずに済みますものねッ。
    しにづくせ『圧死』!」

 …ギュッ…
   ミシミシッ ガキッ ゴキリッ…

エリィ「キャアアアアアア!」

仁美「まだ動くかっ、『惨死』! ──『轢死』!」

     …ガガガガガガガッ
 ダッ…ドゴォォォ!!

仁美「飛んでおしまい……『客死』ッ!」

 バキィッッ

         ガシャァァンッ!!

仁美「ごめんあそばせ!」

エリィ「瓜子が。エリィのお人形が」

仁美「(部屋を荒らして申し訳ありませんわ、マミちゃん……ともあれ今の内……っ)」

 タタ… ガチャ
512 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/10(金) 21:51:57.76 ID:/xKoyWE3o
仁美「…………」


*『キャハハハハハハハハハッ』

*『ブウウウゥゥゥーン!!』

*『ブッブゥゥー────ン!!!!』


仁美「いつの間に改修工事をなさったんでしょう、ここのマンション……なんて現実逃避をしている場合では、ありませんわね。
    魔女の使い魔さん達。あれに惹かれてエリィさんがおかしくなったのか、エリィさんの異変にあちらが惹かれたのか」

*『ポヨヨン!! ポヨヨヨヨヨーン!!』

   ヒュルルルル… ポコッ

仁美「きゃっ……、ゴムボール?」

 …アアアアア タスケテ…

仁美「!」

 イタイイタイイタイイタイイタイイタイ
 モウヤダヨオ ヤダヤダヤダヤダ
 ゴメンナサイ ゴメンナサイ
 モウ ウソヲ ツキマセン… ツイタリシマセン…

仁美「(……これは……人間!)」

*「『キャハハハ!! ポヨヨーン!!』

仁美「やめてください! 投げないで!」

エリィ「……ヒトミィィィィ」
513 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/10(金) 21:53:44.76 ID:/xKoyWE3o
仁美「……!」

エリィ「マッテ……待って……マッテェェェェェ」

仁美「(逃げなくては)」


 走った。

 ガラクタまみれの坂道は、クレヨンによるイラストで埋め尽くされていた。
 さらに大量のスナック菓子が散らばっている。油に足を取られて、歩きにくい。


エリィ「マッ……テ……マ……テ……」

仁美「はぁっ、はぁ……」


 ズルズルと何度も滑り、転ぶものの、追っ手もまた条件は同じだった。
 二人の間の距離は、広がっては狭まり、そして、


仁美「(この柵を越えれば……!)」

エリィ「マッテ…………仁美! 待って! ダメッ」


 途端、景色は正常さを取り戻す。
 そして己が乗り越えたのが、パラペットだった事を知る。

 どうしようもなく落下しながら。
514 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/10(金) 22:00:40.63 ID:/xKoyWE3o
今日はここまで。
九話は都合により拙い地の文が増えます。しかし
圧死=背骨折り
惨死=連撃
轢死=ぶちかまし
客死=アッパーカットで吹っ飛ばす
みたいなイメージは書く事を放棄。ドカーン、ビュルル〜。
515 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/10(金) 22:02:49.24 ID:D2aOjodwo
乙です。


……すいません、パラペットって何ですか?
516 :BENPER [sage saga]:2011/06/10(金) 22:13:03.80 ID:/xKoyWE3o
乗り越えると落ちる奴です
517 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/10(金) 22:23:23.25 ID:D2aOjodwo
なるほど。不勉強で申し訳ない
518 :BENPER [sage saga]:2011/06/10(金) 22:25:25.58 ID:/xKoyWE3o
パラペット。何気なくそう呼んでいたものが、もしかすると方言だったりするのかもしれない。
パラペット。マンションにお住まいの方は、ドアを開けるとそこにある。たぶん。
パラペット。いわゆる手すり壁。

そうか、えうれか、手すり壁と書けばよかったのか!
ありがとう、勉強になりました。
519 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/11(土) 02:17:27.99 ID:5uT+b+Fvo
乙っちまどまど!
520 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/06/11(土) 05:36:36.34 ID:eH1H6rCVo
パラペット実在しない
乙です
521 :BENPER :2011/06/11(土) 20:56:37.90 ID:u4cCzlAjo
エリィたん×仁美ちゃんに需要はあるのか無いのか

続くぃ。
522 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/11(土) 20:58:21.40 ID:u4cCzlAjo

        ────ガクン


仁美「!」

エリィ「っ……う……うううっ」

仁美「エリィ……さ……」


 片手一本で、手すりのふちに掴まるエリィ。
 その足先から、数メートル離れた位置に浮かぶ、逆さまの人形。その腕の先の志筑仁美。

 エリィの垂れ下がった方の手指が、いくつも血の珠を浮かべた。
 すっと宙を一直線に流れて(おそらく見えぬ糸で繋がっているのだ)、人形の胴を伝い、掴まれている仁美の手にも赤いしずくが届く。


仁美「──エリィさん!」

エリィ「エ……エリィ、どうしてこんな事してるかな。外になんか、出たくないのに……」

*『ブウゥゥー────ン!!』

仁美「(ま、また景色が……使い魔が……)エリィさん、わたくしを離して! このくらいの高さなら……」


 土の地面は消失し、ジャムの匂いをただよわせる赤い溶岩に満ちた、噴火口と化していた。
 ボコボコと大きく泡を立て、煮えたぎっている。
 けれども、そんなものはまやかしの、偽物のはずだ。


仁美「エリィさん!」

エリィ「ダメだよ。エリィには判る。この幻は人を喰う。魔女だったエリィには判る!」
523 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/11(土) 20:59:26.99 ID:u4cCzlAjo
エリィ「……思い出したの。そうだった。エリィは魔女だった。魔女になった。
    世界中を呪って、魔女になった。たくさん、お人形をお腹から産んだ。たくさん、たくさん人を食べたの」

仁美「エリィ……」

エリィ「『アイツ』……ログ全部、消してあげるなんて言ったくせに……」

仁美「…………」

エリィ「ううん、そんなのは、もう。いいんだ。
    ごめんね。エリィ、魔女だった。アタマが魔女に戻っちゃった。まだ魔女なんだ。もう魔女だから。
    人間になんて──戻れない。なら、そうだよ、魔女は誰も見ちゃいけない。何も聞いちゃいけない」

仁美「……エリィさん……ごめんなさい」

エリィ「魔女が誰かに恋をしたら──それは暴力じゃ済まない」

仁美「……ごめ……なさ……ごめんなさい、ごめんなさいっ……ごめんなさいっ!」

エリィ「いいんだよ。泣かないで」

仁美「ごめん……なさい……(ちがう。謝っているのは、こんなにも謝りたいのは……、私ではない……他の)」

エリィ「泣かないでよ。これから仁美は、元の世界に戻れるんだから。エリィが必ず、戻してあげるから。
    ここを上がって、壁をぶち破って、そうしたら、仁美は一人で……」

*『ブゥゥー────ン!!!!』
*『キャハハッ、キャハ、キャハハハッ』
*『ブーンブーンブウゥゥーン!!』

エリィ「げ、ちょ、や、やだ!」

仁美「……! やっ、やめて! スカートの中は!」

 飛来した使い魔達は、手にした極太のクレヨンでもって、宙吊りのオモチャにイタズラ描きを始める。
524 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/11(土) 21:00:40.28 ID:u4cCzlAjo
エリィ「瓜子!」

*『ギョッヘ!?』

 何匹かの使い魔が、磁石に引き寄せられるように人形の胴にくっつき、身動きを封じられた。
 不可視の操り糸で拘束したのだろう。それによってエリィの腕にかかる重みが増した事を、仁美は察する。

*『キャハッ、ブッブー────!!』

仁美「こ、このっ。『縊死』!」

 本来は腕もしくは脚で相手の頸を締める技だが、不安定な姿勢でのそれは勢いあまって、使い魔の首をねじ切る。
 (この使い魔は幼児の姿形をしていて、小さく脆かったのだ)

 絵の具のような体液が飛び散った。

*『ギョギャッヒイィィィィィ!!!!』

 恐慌を来した使い魔の群れは、一挙に離れた。
 だが逃げ出したのではない……相手が動けぬと見て、安全な距離から復讐しようというのだ。
 ゴムボールが、いっせいに投げつけられる。

仁美「(しまった……!)」


杏子「大したラクガキ王国じゃねェか」


 ジャキッ …ザシュッッ

*『ギャギャギャギャギャフン…!』

仁美「杏子さん! ……その顔……」

杏子(顔面ラクガキ王国)「ほっとけ! コイツらの仕業だよチクショウ!」
525 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/11(土) 21:03:53.22 ID:u4cCzlAjo
〜ジャム火山の麓。スコーンの荒野

杏子「あーウザかった。……しかしデカいわラクガキだらけだわで、ここの菓子には食欲もわかねーな。ママゴトのオモチャみたい」

仁美「エリィさん、指のキズは……」

エリィ「ヘーキ。舐めたら治る」

仁美「そうですの」

 ヒョイ
        …チュ

エリィ「ひ、ひと、ひと」

仁美「これで治るんですか?」

杏子「仁美チャンいやらしい子! ──いや、ラブコメってる場合じゃねーよ。
    このラクガキとオモチャだらけの結界の主は、どーやらアタシらを逃がす気がないようだ。
    呼んでやがる。見ろ、さっきのグツグツいってた山」

仁美「……遠い。そんな、いつの間に」

杏子「自動的に……運ばれてる。手間の省けるこった、さっさと倒して三人で帰るぞ」

エリィ「アンズコ。エリィは」

杏子「その妙な呼び方、いーかげんやめとけよ。マミみたいになるぞ。初対面でアプリコットとか呼ばれたんだぞアタシ」

エリィ「えー」

杏子「えーって何だよ。仁美はちゃんと呼んでるじゃん! あと、異議は断るかんな。三人で帰るのは決定事項」

エリィ「杏子。──魔女でも、いいの?」

杏子「ちょっとトチ狂ったぐらいで、ヒトの友達を魔女とか言うんじゃねーや。おがこましいぞ」
526 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/11(土) 21:08:46.63 ID:u4cCzlAjo
エリィ「ちょっと?」

杏子「ちょっとだよ。あんな、魔女はな、人間に撃退できるようなモンじゃねーんだから。
    襲った人間に、ンな優しく手ェ握ってもらえるとか、アリエナイんだから」

仁美「……エリィさん」

        …キュッ

エリィ「仁美」

仁美「エリィさん」

エリィ「仁美」

仁美「エリィ」

エリィ「仁美」

杏子「……すいません。煽っといてマジすいません。二人の世界マジやめてください。
    もうやだーアタシを聖人か鉄人か何かだと思ってんのかァ! いっそ人を喰うようなキャラになりたいー!」

エリィ「そうだよね、杏子。おがこましい──なぜか変換できない──よね!」

杏子「言いまつがいに後からツッコミ入れんな」


 そこでやっと、三人はベルトコンベヤに乗っている事に気づいたのだ。


杏子「あ」

 運ばれた部屋で、やはり最初に目に付いたのはラクガキだった。
 その無秩序な線に埋まりながらも、遥かな天蓋には魔女の理の文字で、赤く大きく『ALBERTINEを探せ!』と記されている。
 ──が、コンベヤの末端から宙へ投げ出される彼女達には、それを読むヒマはなかった。

 天も高ければ地も深い。今日はよく落ちる日だと、志筑仁美は思った。
527 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/11(土) 21:12:35.49 ID:u4cCzlAjo
今日はここまで。
528 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2011/06/11(土) 22:52:55.94 ID:iKGqAhE90
乙っちまどまど
529 :BENPER [sage]:2011/06/12(日) 21:18:39.68 ID:4+zNqaE+o
続き。
もー九話終わらせちゃえ。の心意気。
530 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/12(日) 21:21:01.19 ID:4+zNqaE+o
エリィ「瓜子」

 瓜子邪鬼。人形と見せかけて、実は操り糸が主体である。
 クモの巣にも似た、透明な煌めく足場が張られた。そこに三人は降り立った。

 下は、ずいぶん深いのだろう。
 だろうと言うのは、見える範囲は奇妙なゴムボールに充ち満ちて、その先が覗けないためだ。

 地響きのような反発音が続く中、ボールはひたすら跳ね上がってくる。
 どういう魔法なのか、たまにボールは赤い肉片に変じる。肉片は跳ねないので、落ちたら戻ってくるものはない。
 見えぬ底は、どうなっているのか……。

 ときおり、高く跳ねたボールが糸の隙間を縫って、おしりに当たったりして痛い。


タスケテタスケテタスケテタスケテタスケ
イタイイタイタイイタイタイタイタイイタイ

杏子「ギャアアアア! このボール呪詛を発してんぞウゼエエェェェ!」

仁美「コンベヤが、あんなに高い所に……。行き止まりというなら、ここに魔女様がいらっしゃるのかしら?」

エリィ「耳がイカレそう。でも、魔女はいるみたい。エリィには聞こえる。彼女は歌っている。私を探して、って」

杏子「メンドクセー、超メンドクセー。そんなに言うなら自分で姿見せろや、ここまで引っ張ってきたんだから!
    ……ヤダぞー、このボールの中の一つが魔女とか、アタシはヤダぞォー!」


 その叫びのせいか、どうか。ボールプールの周囲の壁で、天井で、動きがあった。
 ラクガキが動いている。
 一斉に。


杏子「この無数のラクガキの中からってのもヤダァァァァ!」


 魔女も、これ以上の譲歩はしてくれないらしい。そもそも譲歩ではなかったか?
531 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/12(日) 21:21:46.94 ID:4+zNqaE+o
 クレヨンの線そのものの使い魔は、壁をすべり降りて、糸の足場へ集まってきた。
 が、落ちる。飛んできたボールに怯んでバランスを崩し、仲間を掴んでなだれのように落ちる。頭が悪いのだろうか。

 それでも寄ってくる敵は、エリィが糸をひねり、人形で蹴り、落としていった。


エリィ「重い、鬱陶しい」

仁美「どなたも、魔女、という感じではありませんわね」

杏子「でもエリィの言うとおり、魔女はここにいるはずだ。ソウルジェムにも反応がある。
    こりゃ、こっちから攻めるしかないよね!」

 ジャキン!
        …ビュンッ

杏子「巣を壊されたくなかったら、とっとと出てきなよォ!」

 ガリガリガリィッ

 挑発的に、残ったラクガキごと壁を傷つける。
 しかし出てきたのは、またもや使い魔達。
 幼児の風貌をして、蜂のように飛び回る彼女ら。それぞれ右手にクレヨン、左手にボールで武装した姿は勇ましく。

*『ブウゥゥンブウウウン、ブゥゥゥゥゥィイィィー──ッ!!』

 コンベアを伝って飛んできた使い魔の大編隊、小癪なことに、現状もっとも有効な攻撃を開始。
 それは投下。
 クレヨン、ボールの雨あられ。

 足場、大幅に破損。


エリィ「仁美っ、掴まっ、──!」
532 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/12(日) 21:22:58.65 ID:4+zNqaE+o
 使い魔は自らを弾とすら、し始めた。
 特攻精神と言うよりは、幼児がやたらに体当たりを仕掛けてくるそれ。

仁美「……きゃああっ!」

 ぶつかられ、吹き飛ばされる生身の肉体。

 エリィは残った糸の端を切り、傾く足場を疾走する。手を伸ばす。人形の手を伸ばす。

 上からの攻撃に加え、下からもボールが邪魔をする。
 届かない。
 落ちる。

杏子「仁美ッ、エリィ! っわあああ!」

 皆、落ちる。


仁美「(ああ、落ちる……)」

仁美「(本当に今日は、よく落ちる日ですわ)」

仁美「(わたくし。ボール。使い魔さん達。ラクガキさえも落ちる……壁一面、天井からも……、ぐっ?!)」


 志筑仁美は落下しながら嘔吐する。


仁美「『……見つけたよ、ラクガキの魔女!』」


 そして、胃液を散らしながら、足を振るった。
 跳ね上がってきたボールを蹴って跳ぶ。
 落ちてくる使い魔を蹴って跳ぶ。
 壁に届けば、壁を蹴った。
 落下物をよけ、あるいは中継の足場にし、部屋の端から端までを飛び、繰り返し跳ぶ。

 目指すは天。
533 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/12(日) 21:25:01.77 ID:4+zNqaE+o
仁美「はああああああっ!」

 最後のキックは、拳を固めて。
 『ALBERTINEを探せ!』と書かれた天蓋へ、正拳を繰り出す──!

 途端、『ALBERTINEを探せ!』は飛び上がった。
 正確には、書かれた文字が震えて揺らいだ。
 これこそ魔女ALBERTINEの正体。
 壁中のラクガキが動き出しても、不動のままでいた魔女が、今ようやく形を崩し、少女のシルエットを形作る。

 割れた天蓋からアタフタ逃げだそうとする魔女を追撃……
 しようとして、だが、できなかった。

仁美「(足場が……ない!)」

 宙にあるのは、小さな破片と塵芥。
 生身の肉体には、もはや為す術がない。
 自由落下を始める。


 再び、喉へと胃液が迫り上がってきた。志筑仁美は意識を失った。
 最後に認識したのは、眼下にて、まばゆい光が落ちゆくすべてを呑み込む光景だった。




杏子「にくかい?」

杏子「……って、今のは文字じゃわかりにくかったな。
    オイ、まだ肉塊だらけだよ。目に毒だァ。中途半端じゃねーの」

 底。
 腐汁の染みる肉が、すり鉢状に積まれている。
 まるで落ちてきた彼女達を、避けたように。

 さらりと乾いた床に、佐倉杏子とエリィはうつぶせに横たわっていた。
534 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/12(日) 21:25:39.19 ID:4+zNqaE+o
杏子「手ェ出すなら、出すで、ちゃんとしろよな」

 耳はとっくに麻痺している。ここに来て鼻もいかれた。口を開くだけで舌が痺れ、臭気は視界さえくらませる。
 だが、危機感はない。
 あれだけ跳ねていたボールが、一つもない。使い魔もいない。

 あるのは、少女の長い脚。

杏子「なァ、すけこ」

 見覚えのあるドレススニーカー。

 顔を上げれば、見知った彼女の顔があるはずだった。
 だが佐倉杏子は、逆に背を丸めた。
 むせる。吐き気すらする。──涙が、あふれてくる。

 『戻ってこいよ』
 念じると、かすかに首を横に振る気配がした。
 今はまだ。
 そう言われているように思えた。

杏子「バカ。オマエな、無茶振りにもホドがあるよ。やっぱアタシを聖人か鉄人かと思ってるんだろ。
    もしかして、マジメにオマエの話聞いてやらなかったから、拗ねてンの? それこそ無茶だっての」

 ひょっとしたら、それは魔女の見せる幻覚かもしれなかったが、

杏子「帰ってこい。週五で飯がトマト煮だって我慢するからさ……せめて挨拶くらいしていけよ。寂しいだろ」

−−『──さよ屁』

 幻覚かもしれなくとも、杏子には確かにそれが聞こえた。

杏子「さよ屁」

 だから、別れの挨拶を、返す。
535 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/12(日) 21:26:57.46 ID:4+zNqaE+o
杏子「……ッてェ! ねーよ! ねーよねーよねーよ! さよ屁ってなんだよ!
    そンな別れの挨拶があってたまるか! フインキでごまかそうとしてんじゃねェェッ!
    無効だッ! 別れとして認められねー許さねー! だから今すぐ戻ってこーい!」

エリィ「ウルサイ。起きたての耳にツライ。ナニ一人で騒いでるの」

杏子「だってさァ! ……あ、あれ?」

エリィ「そんなコトより、親方、空から女の子がパンモロで降ってくる」

杏子「何ッ!? いや、パンモロに食いついたワケじゃねーから! ねーからな!
    つーか、仁美、浮いてるぞッ、っで、なんだあのウネウネは!」

エリィ「──魔女だ! 仁美を連れて行こうとしてるんだ、助けなきゃ!」


 ────その必要はないわ────


杏子「!!」

マミ「誰だと思った? 私よ!」

エリィ「親方! パンモロが増えた!」

マミ「聖なるかな、聖なるかな。宇宙(そら)の風琴(アイオロス)が奏でし旋律、流星の詩(しらべ)。
   来たれ、安息の祝福。眠れよ、永遠(とわ)に! 最終奥義……『ベルカント・フィナーレ』!」

      シュルルルルッ
           キュインッ

 ドカァァァァァァァァン

杏子「決まったな、ティロ・フィナーレ!」

マミ「ベルカント・フィナーレ! ベルカント・フィナーレよっ! だいたい同じに見えるかもしれないけどっ!
   でも、武器がちがうんだから! つまり全然、ちがうものなのよ! ……っと、仁美さんキャッチ」
536 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/12(日) 21:27:51.99 ID:4+zNqaE+o
仁美「……う、……」

マミ「帰ってきてみたら、ビックリしちゃったわ。エリィ、危ない所だったみたいね」

エリィ「マミ姐姐……」

マミ「よしよし」 ナデナデ

杏子「アタシは?」

マミ「あら、心配してほしい? だっこしてほしいの?」

杏子「そーいうんじゃ……、あ! そうだ、すけこ! すけこがいたぞ!」

マミ「うわぁ」

杏子「ヒトをカワイソウって目で見るな!」

マミ「杏子、頑張ったのね……一人の時も頑張ってきたのよね、心の中のお友達と……」

杏子「実在すっから実在すっから! エリィもさっき見ただろ、上条恭子だよ!」

エリィ「?」

杏子「気絶していたので見てませんってオチかぁー! くぅー!」

仁美「……はら。ふあぁ、おふぁようございますわ」

杏子「仁美ィー! オマエなら……!」

仁美「へ? 何ですの?」

杏子「いや、いいんだ、いいんだよ……どーせどーせ」

仁美「……! うっ、っぷ……」
537 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/12(日) 21:28:51.81 ID:4+zNqaE+o
 ウゲエェェェ

マミ「」

エリィ「仁美、大丈夫?」

仁美「はぁ、はぁ。ごめんなさい、お見苦しい所を」

杏子「……。うっ」

マミ「! 杏子、まさか」

仁美「きょ、杏子さん」

マミ「や、やめて! やめるのよ! 魔法少女にあるまじき……!」 ガシッ

杏子「う゛」


 も ら い ゲ ロ だ !

 それは、もらいゲロであった。
 出てくる、出てくる。吐き出される、遅い朝食の残滓。さくさくのトーストは見る影もない。その一方で、なおジューシーなベーコン、とろとろのエッグベネディクト。彩りを添えるミニトマト。
 嘔吐衝動は有象無象を区別しない。淡い想い出さえも、流れて落ちた。
 具体的には、美樹さやかの裸エプロン姿。ハレンチなお願いを、顔を真っ赤にして聞いてくれた彼女。その恥じらいに、佐倉杏子は奮えた。魂がピンコ勃ちであった。
 ……さらば想い出。全ては流れゆく。生々流転。諸行無常。
 吐瀉物の奔流が止まらない。喉を裂かんばかりの勢い。痛く、苦しく、どこか清々しい。脳内麻薬。神経は倒錯する。
 なぜ今まで、食べたものを吐く事を拒んでいたのだろう? そっちのほうが不思議だ。
 人間は皆、吐くために食べるのではないのか。吐かなくては苦しくて死んでしまうではないか。儚いは吐かないと掛けているのだろうか。とりあえず地の文は嘔吐と排泄物を書くためのものだよね。


 そんな思いも、吐き終えてしまえば霧消する。うんこである。(ゲロなのにうんこ! 不思議!)
 流れちまったなら、また作ればいいじゃん。いや想い出の話ね。結界の外で待っていた美樹さやかに、佐倉杏子は笑いかける。

さやか「あっ、おかえりー。……ゲロ臭ッ」
538 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/12(日) 21:30:30.39 ID:4+zNqaE+o
ここまで第九話『さよ屁』

第十話『なにそれ、鹿目さんのためとか自己満足? 気持ち悪くない? ストーカー?(笑)』

うっぷ
539 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/12(日) 21:35:41.48 ID:nCCco4tjo
……乙。

うんこ・ゲロネタを使うSSに二つも出くわすだなんて、今日はなんて日だい……
きゅっぷぇ……
540 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/12(日) 21:51:42.19 ID:xO4ED6cLo
乙乙!
541 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [saga]:2011/06/12(日) 21:53:15.53 ID:YnJ2tH440
次回ほむほむが魔女る勢いじゃないっすかーっ!?
Maryはすけこに巻き戻ったりしているのだろうか?
542 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/13(月) 00:01:42.94 ID:kR65/uAZo
思わず俺も貰いゲロするところだったぜ
543 :BENPER [sage saga]:2011/06/14(火) 21:26:18.39 ID:U5EPZHJ8o
十三日の月曜日ですね。

第十話『なにそれ(略)始まるよー
544 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/14(火) 21:27:02.70 ID:U5EPZHJ8o
杏子「何考えてんの、その何とかっておっさん。アイシテルって、そのまんま言えばいーじゃん」

マミ「直接的ではないかもしれないけど、でも、趣があって、よいでしょう?」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

さやか「杏子?」

杏子「あ?」

さやか「もーっ、聞いてない!」

杏子「わ、暴れるな」

 バシャ バシャ

さやか「せっかく、さやかちゃんが一緒にお風呂入ってあげてるのに。さては浮気中だな〜白状しろ〜っ!」

杏子「は? アタシがさやか以外のヤツ選ぶわけないじゃん」

さやか「……もぅ。ばか」

杏子「…………かわいいねー、さやかちゃんは」

 …パシャ

さやか「ばか。えっち。ヘンタイ」

杏子「悪ィ悪ィ。機嫌直せよ。な、さっき、なんて?」

さやか「……さっき、外、見てたらね。星が綺麗だったよ。って言ったんだよ」
545 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/14(火) 21:28:06.35 ID:U5EPZHJ8o
杏子「あー……今日も、いー天気だったもんなァ。そろそろ、嵐でも来そうだな」

さやか「そうなの?」

杏子「晴天ばっか続くと、一気に落ちるんだよ。そーいうもんだ」

さやか「……魔女も、そう?」

杏子「そーかもね……。こないだのラクガキ魔女以来、パトロールも散歩以上の何モンでもないけど。
    そのうち、夏に虫がわくみたいに、ブワッと出てきたりして」

さやか「えー。それ、やだ。何その表現」

杏子「ま、たまには出てきてくんないと、腕が鈍っちまうわな」

さやか「…………」

杏子「さやか? どーした、そんな心配そうな顔すんなって。アタシは魔女になんか……」

さやか「ごめんね。あたし、何の役にも立てなくて。今まで、結界の中まで連れてってくれてたけど、大変だったでしょ?」

杏子「……そんなコト、気にしてたのか」

さやか「本当は、最初からわかってたのに。なのに、あたし、どうしても離れたくなかったんだ。
     だってもしも、もしも、あたしが知らない所で」

 恭介が死んじゃったらどうしようって

杏子「……え?」

さやか「え? ……また、聞いてなかった?」

杏子「いや、そうじゃなくて」

さやか「もういいよ。ひとがマジメに話してんのに……ばか。杏子なんて死んじゃえ」
546 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/14(火) 21:29:02.06 ID:U5EPZHJ8o
〜裏路地

*「ハァ、ハァ……」

 …ペタン

*「や、やったよキュゥべえ。殺せた。あたし、殺せたよ」

QB「おめでとう。よく頑張ったね」

*「いや、でもキッツイし、コレ。こーいうの、魔法少女って、仲間とか、いないの?
  ……ハァッ。一人で、あんな、化け物相手……」

QB「世の中の少女全てが魔法少女になってくれたら、僕としてもよかったんだけど、ね」

*「だよね……。あたし、選ばれたんだもんね。
  ふぅ。あー、まだ心臓バクバクいってる。でも、頑張らなきゃね……。
  この街でヘンな事件が起こるのは、あいつら、魔女のせいなんでしょ?」

QB「ただの人間には、魔法は途方もない力だからね。惹かれ、魅入られて命を失った者は多い」

*「サヤサヤん家や、鹿目さんの弟さんのも、そうなんでしょ? 行方不明の人も多いし……
  犯人が捕まらないなんて、おかしいよね。悪が野放しになってるなんて……。

  ──ねぇ、キュゥべえ。もしかしてさ」

QB「なんだい?」

*「人間の形をした魔女って、いるんじゃないの?」

QB「…………そうだね」

*「やっぱり! あたし、心当たりあるんだ。
  そうだよ、偶然じゃない。アイツのせいで、色々おかしな事になっちゃったんだ……」
547 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/14(火) 21:30:30.30 ID:U5EPZHJ8o
〜翌日。学校

さやか『こ? コンクール』

仁美『ルメートルうちゅう』

さやか『うー? うるうる』

仁美『ルシャトリエのほうそく』

さやか『く……クール!』

仁美『ルキフゲロフォカレ』

さやか『れ? れ……れんこん! ……の! 肉、肉詰める!』

仁美『さやかさん、それズルイ』

さやか『ううー……まいりました』

仁美『詰まったところでそろそろ、しりとりも止めません? 授業中ですわ』

さやか「だぁってぇー、つまんないもん」

*「そーかそーか、つまらんか美樹ぃ、よーし先生、張り切って問題出しちゃうぞー」

さやか「ほぎゃああああ!」

  クスクス

ほむら「…………」

       アハハハ

杏子『あーあー、見てらんねェっつーの』

さやか『……杏子! どうしたの!?』
548 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/14(火) 21:30:48.91 ID:Gu2gBxMeo
モブ子逃げて マジ逃げて
549 :BENPER [sage saga]:2011/06/14(火) 21:32:57.87 ID:U5EPZHJ8o
>>548
見滝原の平和はモブ子が守っちゃいますからねー。大活躍!
そういう回です。お楽しみに
550 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/14(火) 21:34:32.23 ID:U5EPZHJ8o
杏子『どうしたって、そりゃ、さやかが寂しがってねーかなーって』

さやか『もー、ばかーっ! あ、ねぇねぇ、問題解くの手伝ってよ』

杏子『アタシの最終学歴、舐めんな!』

さやか『ひ、仁美ィ〜っ』

仁美『ゼットゼットゼットゼット』

さやか『仁美、それはそうやって読むものじゃないよ。てゆか寝たふりかよーっ』

仁美『いけませんわ、さやかさん。キュゥべえさんはズルをさせるために、この……、ぐっ』

さやか「……仁美っ!?」 ガタッ

*「うぉっ!? 美樹、志筑がどうした!?」

仁美「あ……な、何でも……ぐぅっ!」

*「し、志筑、どうした! 具合が悪いのか!」
*「志筑さん? ちょ、顔色が……」

仁美「!!」 ゲフッ

 ボタボタッ

     …フラ… バタンッ

*「きゃあーっ、志筑さんっ!」
*「うわ、志筑がゲロった!」
*「志筑ぃぃぃぃ! 死ぬな、俺が死なせん! 俺はずっと、お前の事が……!」
*「先生はなんか違うもんゲロった!」
*「……サヤサヤ、ザワ君も手伝って! 保健室にっ、……!」

ほむら「……ク……クックックッ……」 ブルブル

*「……ふん……」
551 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/14(火) 21:35:49.46 ID:U5EPZHJ8o
〜保健室

さやか「だい、だ、だいじょぶ? あああ、仁美、仁美ぃぃ!」 ギュゥーッ

仁美「はぅ」

*「サヤサヤ落ち着いて。そんな絞めたら志筑さん、落ちちゃうし」

仁美「も、申し訳ありません……学級委員でありながら、わたくし……」

*「いーんだよぉ。こーいう時は、委員とか関係ないっしょ!」

仁美「でも……中澤君の制服を汚してしまいましたわ」

中澤「平気だよ。水で洗えば落ちるだろ」

仁美「本当に、ありがとうございます」

中澤「そんなかしこまンなって。志筑、意識なかったんだし、誰かが運ばなきゃいけなかったんだから」

*「ザワ君は優しーもんねーっ。いよっ、ニクイね色男!」

 ガラッ

早乙女先生「し……志筑さんっ」

*「…………」

中澤「先生」

早乙女先生「倒れたって、聞いてっ、心配で、だいじょっ、きゃっ」 コケッ

中澤「!」 サッ

早乙女先生「……あ……ご、ごめんなさい。先生が慌てちゃダメよね……。
        ごめんなさいね、……中澤君。もう手を離してもらっても大丈夫よ」

*「……もー、仕方ないなー和子先生は」
552 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/14(火) 21:37:11.19 ID:U5EPZHJ8o
仁美「どうも皆様、ご心配お掛けしました。
    わたくしは大丈夫ですから、どうぞお戻りください。次の授業が始まってしまいますわ」

さやか「仁美、ホントに大丈夫? お昼、来るからね。安静にしててね」

早乙女先生「わ、私も来ますからね」

仁美「いえ、先生は……そ、そんな、泣く程の事ではないのですよ。本当に大丈夫ですって」

*「ザワ君、制服、洗ってこないと。シミんなるよ」

中澤「あ? ああ」

*「…………」

中澤「…………」

*「……どう? あたし、いざって時も頼りになるマネージャーでしょ?」

中澤「……うん。お前は頼りになる奴だよ。
    そうだった。だから俺は、お前と付き合いたいと思ったんだ」

*「……過去形だね」

中澤「悪い……すまない。許せ」

*「悪くないよ。ザワ君は悪くない。だからすまなくないし……許さない。さ、早く洗ってきなよ。とれなくなっちゃうよ」

さやか「じゃ、仁美、また……。早乙女先生、ベル鳴っちゃいますよ」

*「サヤサヤ、志筑さんと仲良いよねー」

さやか「え? うん」

*「鹿目さんとも超仲良いしね。いいな、幼馴染みで親友、って。理想の関係だよね」
553 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/14(火) 21:39:14.47 ID:U5EPZHJ8o
今日はここまで。
次でもう例の空気の奴が帰ってくるぞー
554 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/14(火) 21:43:30.40 ID:Gu2gBxMeo
一瞬>>549で終わりなのかと思った……乙


アナル子ちゃんが病みほむに屠られませんよーに、なむなむ……
555 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/06/14(火) 21:57:52.98 ID:1RrwQ03AO
>>553
まどっちか
556 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/14(火) 21:58:07.31 ID:XiOxNrlio

空気の奴って名前なんだっけ……ま、ま……
557 :BENPER [sage saga]:2011/06/15(水) 21:50:52.10 ID:sojL4cwTo
まどか様は空気じゃないよ概念だよ!

そして帰ってくる空気に、概念もチラ見せ。
続き
558 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/15(水) 21:52:57.12 ID:sojL4cwTo
〜グラウンド

*「体育の自習って、何やりゃいいの?」
*「とりあえず前回の続きで、高飛びの測定すりゃいいんじゃないの」
*「男子ー、マット運ぶの手伝いなさいよー」
*「つか二限続けて自習って、どーいうの」
*「先生達、志筑さんのお見舞いがなぜか腕相撲大会に発展したらしいよ」
*「なんでやねん」
*「いや、俺も聞いた話だしわからん」
*「そーいやさ、前の爆弾の奴、捕まったんだって?」
*「模倣犯のほうでしょー。今、多いよねー、逮捕者」
*「あ、それの書き込み見たよー。模倣のほう。マジウケル。無職のおっさんバカすぎ」
*「誘拐事件マジ多くなってない?」
*「えーよくわかんない」
*「なってるってー。今月だけで失踪届十人越えって新聞にあったもんー」
*「え、あんた新聞、読んでんの?」
*「ちょっとー、おしゃべりしてないで、さっさと飛んでー」
*「なんかやたら寒い日あるよねー」
*「そーそー、晴れの日って朝、寒いの」
*「冬、膝とか黒いよね。血行悪ッ、てなる」
*「なるなるー。でも夕方になると、だるくてお風呂とかイヤんなるの」
*「テレビって絶対、深夜ん時のが面白いじゃん」
*「そーいやこないだ、夜中にテレビつけたらアニメやってたんだけど」
*「最近多いよねー。でもその時間、子供は見てんの?」
*「録画じゃない?」
*「だからさー、あれ純潔がモノ言う世界なんだから」
*「や、でも真EDに純潔値1000って条件ありえなくね? 全員どんどん下がってって、ルルも終盤なんて100ちょっとじゃん」
*「そこはダダ下がりするイベント避けてさー、あと扇仲間にしてりゃ越えるでしょー? 流れで加入した状態じゃなくて、ちゃんとイベント見ないとダメよ」
*「え、こいつ仲間になってないの? ずっといるし、勝手にちょこちょこイベント発生するじゃん」
*「全部途中ブツ切りでしょ? それ最後まで出来るようになるから。純潔値どんな下げても700切らないし、スキル『男の純潔』付くからチートだよコイツ。
  あとナオトについて聞いとかないと、カレンエンド、行けないからね」
*「あー、だから終盤、いつもいなくなっちゃうんだ」
*「中華までにそこまでやっとけばシャーリー生存も出るから。あとね、純潔値増やすのに天子様迷子イベントと藤堂さんホモ疑惑のとー……」
*「……あれ? 暁美さんは?」
*「さぁ? また貧血起こして、どっかで休んでるんでしょ」
559 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/15(水) 21:53:50.46 ID:sojL4cwTo
〜保健室前

杏子(杏介姿)「一人で男の格好になってみたが、どんなもんかな……」

杏子「(さて、そ〜っと、そ〜っと)」

 スー…

杏子「(お邪魔しま〜す……保健室のセンセー、そのままそのまま。こっち見ないでくださいよォ〜)」

養護教諭「?」 クルッ

杏子(in天井)「」

養護教諭「なんだ、戸が開いてたのね。誰か来たのかと……あら、教頭先生?」

 シヅキサンノ オミマイニ

    ダガ コトワル

  セッショウナ!!

杏子「しめしめ、出てった。今のうち、っと。仁美〜、久々の杏介クンだぞォ」

仁美「…………」

杏子「おおっと、眠り姫を決め込むかい? えっちな事しちゃうぞー。……仁美?」

          …ピチャン




 布団をめくると、そこは血の海だった。
560 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/15(水) 21:55:19.22 ID:sojL4cwTo
〜教室

 ザワザワ
        ザワザワ


ほむら「…………」

*「暁美さん、あたしのケータイ返してよ」

ほむら「…………」

*「何、嫌がらせ? 前に掃除サボんないでとか、お弁当ひっくり返したの謝ってよって、あたしが怒ったから?
  でも、だからって……こんなの、……グスッ、ひどいじゃない……!」

*「あーあ、泣き出しちゃったじゃん」
*「中澤、カノジョ、いや元カノだっけ。泣いちゃったぞ?」
中澤「…………」

ほむら「っ……う」

*「ちょっと、動かないでよ。あんたに好きで触ってるんじゃ、ないんですけど?」
*「こうでもしないと暁美さん、いつもいつも逃げようとするじゃない」

ほむら「う……うう……っ」

         …ブワッ

ほむら「……うおー、うおおおぉぉぉぉぉー」

*「泣いて済ます気?!」

*「いや泣いてるのかアレ? 女子の本気泣きってああいうの?」
中澤「……聞くなよ、俺に」

さやか「いや、でもさー。体育の時間にいなくなったからって、それは早計三十六計じゃないかなー。
     それを言うなら、仁美だって可能性ある事になっちゃうし。その、……ケータイ、とったの」
561 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/15(水) 21:56:31.53 ID:sojL4cwTo
*「グス……、何言ってんの? サヤサヤ、志筑さんと親友でしょ? だったら絶対あり得ないじゃん!
  おかしいよ。志筑さんが他人のモノ盗んだみたいに言うなんて、どうかしてるよ」

さやか「え? いや、可能性の問題っていうか」

*「友達をそーいう風に疑えるんだ! 見損なった!」

さやか「あぅあぅ」

*「親友や恋人は守るモノでしょ? 大切な人に迷惑掛けるようなヒトがいたら、イヤじゃない。
   ……ねぇ、暁美さん、お願いだから返してよ!
   あたしのケータイ、みんなのアドレス入ってるんだから、ヘンな事に使われると困るの!」

ほむら「おおおおぉぉ……」

*「うげ……ちょっと掴むの誰か変わってよ……」
*「ホントキモイわ……最悪」

ほむら「おおおおおおおん!」

さやか「…………」

ほむら「うぉおおおぉん……」

*「いい加減、その気持ち悪い泣き方やめて! ケータイ返しなさいよぉ!」

さやか「……いい加減にするのはそっちじゃないの?!」

*「!?」

ほむら「うぉ……?」

さやか「ぬ、盗んだ盗んでないってさ、さっきから! 証拠もないのにぶっ掛け論じゃない!
     あんた、暁美さんが嫌いだからって、わざとケータイ隠して……そーいうフリしてんじゃないの!?」
562 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/15(水) 21:58:55.75 ID:sojL4cwTo
中澤「…………」
*「(ぶっかけロン)」
*「(ぶっかけツモ)」

ほむら「…………」

*「ハァ……? な、何それ……、あたし、被害者なのに……グスッ……グスン。
  ひどいよ、ひどいよぉ……フエェェン、そんな事、言うなんてぇ……」
*「ちょっと、美樹さん言い過ぎだよ」
*「なんでアンタ、暁美さんの味方するの?」

さやか「ぐ……、あ、あたしは……」

*「いやいや、サヤサヤのボケでしょー? この雰囲気で暁美さんの味方とか、ありえな……」

 バンッッ!!!!

さやか「ふいんきの問題じゃないでしょッ?」

*「ヒッ……サヤサヤ、怖い……グスン」

さやか「怖いとかさ……。そうやって、最初から暁美が悪いって前提で進めんのは、おかしいって言うの。
     あたしは暁美の味方じゃない、けど、……敵でもないよっ」

ほむら「…………って……せん」

*「!?」

ほむら「私……ケータイなんて盗ってません……!」

*「嘘つき! グスン、グス……ひどいよ、嘘までついて……」
*「コワイよねー、暁美さん味方ができたからって、急に元気出してる」
*「陰謀論? それこそ濡れ衣じゃん。違ったらどーすんの。ごめんで済ますの、美樹さん?」

さやか「そっ、そっちこそ、どーすんのさ……!」
563 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/15(水) 22:01:41.66 ID:sojL4cwTo
*「ウェェーン」
*「はぁ。美樹さん、おかしいよ。なんでそういう、空気乱す事言っちゃうの? 男子にモテないよ?」

さやか「…………」

*「(矛先こっち来てね?)」
*「(やめろ。何も来ていない)」

中澤「あー……もう、さあ。どっちでもいいじゃん、現実」

*「(KY中澤! そこに痺れる憧れるゥ)」

*「え……で、でもザワ君のアドレスとかも悪用されちゃうかも……グスン」

中澤「誰によ」

*「え? ……え?」

中澤「謝るのどーのって、今決める話? だいたい、どっかに落としてないかって探したの?」

*「ザワ君……」

中澤「どーせ探してないんだろ? オマエ、前もケータイなくして、俺を疑ったじゃん。ったく、そそっかしいんだから」

*「すげー中澤。さっすが元カレの言う事は含蓄あるわー」

*「……。ま、それもそうよね。早とちりしてたわ、騒ぐからには盗まれた証拠があるかなって」

*「え? え!? ……ちょ、ちょっと待って! や、だって、ほら……」

*「ごめん美樹さん。チョーシ乗って、言い過ぎたわ。忘れて」

さやか「……いや、いいけど……」

中澤「ほら、一緒に探してやるよ。オマエ、探し物ヘタだもんな。昔っから……」

*「待って! 待ってよ! ほら、暁美さんの荷物から探せばいいじゃん! なかったら、盗んでないって事に、な、なるし……」
564 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/15(水) 22:03:25.85 ID:sojL4cwTo
中澤「…………」

*「ね、ね、それでさ。……あ、暁美さんは?」

ほむら「…………」 チラ

さやか「……、ん?」

ほむら「…………」

*「へ、返事しないって、調べられるの嫌なんでしょ!? 嫌なんだよね! それって……」

ほむら「調べたいなら調べればいい」

*「!!」

ほむら「私は盗っていない」

*「な、なによ……突然、そんなしゃべって……」

中澤「…………」

*「ざ、ザワ君? なんで? なんでそんな目で……見るし?」

中澤「……オマエ……それで、いいんだな?」

*「いい、って……いいとか、そんな……。だってケータイ盗んだ暁美さんが……ああもう!」

 バサッ

*「見れば、はっきりするんだから!」

  ゴソッ バラバラ…
 ガタッ    ゴト ガサガサ 

*「どっちが悪いか……、え?」
565 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/15(水) 22:05:12.43 ID:sojL4cwTo
♪え〜らさ〜が〜
         ち〜がう〜

  ガラッ

恭子「……よっ♪」


さやか「」
中澤「──!?」
*「え!!?」
*「!?!!」
*「〜〜!??」
恭子「にゃっ?!」
中澤「混ざんな」

恭子「しばらく見ないうちに、中澤もキレのいいツッコミが入れられるようになったね」

さやか「……きょ、恭、……っ!」

 ガバッ   ギュウウウウ

恭子「さ、さやか。折れる。背骨折れるっ。折れちゃうぅぅぅ!」

中澤「どうしたんだよ、こんなトコで。てっきり、もう、学校には」

恭子「僕も姿を現すつもりはなかったんだけど……場当たり的なものでね。
    ま、何事も色々、手続きがあるというコトで。

    ──ところで、」

 教室の前に
 ケータイが
 落ちてたんだけど

“*”「……!!!!」
566 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/15(水) 22:07:02.94 ID:sojL4cwTo
恭子「これさ、確か君のだよね? 覚えてるよー。あ、でもストラップ減らした? 中澤とペアのハート……」

*「……うわー」
*「あーあ」

“*”「!? ……え? 何、この。これ、空気、何?」

*「……アンタ付き合い悪くなったよね。何してるかと思えば、夜中に一人で出歩いてるって、聞いたよ」

“*”「な、なんでみんな、離れてるの? 遠いよ? ……え?」

*「ダメだよ。さすがに最近のは、ないわ。もう、ついてけない。ついてってやれない……暁美さん、泥棒扱いしてごめん!」
*「え?! あ、暁美さ……ごめんっ、ごめんなさい。マジ濡れ衣だった! ごめん!」

ほむら「……いい。もう」

“*”「そ……そんなぁ……」

中澤「もう、やめてくれよ」

“*”「……ざ、ザワ君?」

中澤「俺は良い彼氏じゃなかったろうが……それでも俺、お前の事、見てたんだよ」

“*”「え……?」

中澤「お前の癖、知ってる。ウソつく時、ズルイこと考えてる時。それが判るくらいには、俺、お前の事、見てたよ」

“*”「……今更……そんな、今更だよ……。
    あたし……あたしだってザワ君の事、ずっと見てた……あたし、ザワ君のために」

ほむら「…………」

“*”「──ちくしょう! 屈しない。あたしは屈しない。あんたみたいな魔女に負けるもんか!
    どうせ、あんたの仕業なんでしょう。卑怯ね……判っているのよ、あたしは魔法少女なんだから!」
567 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/15(水) 22:09:57.69 ID:sojL4cwTo
さやか「魔法……少女……? あ……!」

ほむら「ヒ……ヒヒッ……」 ガタガタ

*「え? マホー?」
*「ちょっと、何言って」

“*”「みんな、暁美ほむらに騙されているのよ!」

中澤「は?」

恭子「……そんな事して、暁美さんに一体何の得があるんだい?」

さやか「(そうだった……魔法少女……あたし、忘れていた……?)」

“*”「みんな、気づいてないかもしれないけどね、操られているの! その女は魔女なのよ!
    考えてもみて! 暁美ほむらが来てからよ、この街におかしな事が起こりはじめたのは!
    鹿目さんの弟も、サヤサヤん家も、人が消える事件が増えたのも、全部そいつが……!」

ほむら「……ヒヒヒ……ヒイヒヒッ……コワイコワイコワイヨゥ」

さやか「(あ、暁美……また……)」

ほむら「コワイ……コワイ……怖いよ、怖いよぉ……!」 ポロ ポロ

さやか「……ほむら」

 ダッ

さやか「や、やめなよ! これ以上ほむらに何したいのよ! あんた、それじゃイジメだよッ!」

“*”「ああ……美樹さん洗脳されてるんだ。浄化しなきゃ。助けてあげなきゃ。魔女の口づけを受けたのね。
    クラス中、感染してるんだ。ごめんね、もっと早く気づかなきゃいけなかったのに……正義の味方、失格だよね」

中澤「お前、何する気だ……!」

“*”「みんな、あたしが救ってあげる」
568 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/15(水) 22:13:24.62 ID:sojL4cwTo
〜鹿目まどかの家

知久「どう?」

詢子「おお、ちょうど良かった。ごちそうさまだよ」

知久「わあ! よーし、いいこだ。今日は完食できたね。よかったなあー。まどかは、やっぱりママが大好きなんだ」

まどか「あ」

詢子「当然だろォ? ……ん、あ。こりゃ」

知久「おおっと。どうする? 代わろうか?」

詢子「乗りかかった何とやらだ、任せとけ。よーしよし、まどか、アタシが替えてやろうなー。
    ……ほらほら、年頃の娘の着替えだ。出てった出てった」

知久「いけないいけない。じゃ、頼むね」

詢子「よ……、と。まどか、足が長くなったなぁ」

まどか「あ」

詢子「お前は、背が伸びないって気にしてたけどな。昔は、アタシのお腹から出てこれるくらい小さかったんだぞ?
    他の子より、特にちぃちゃく生まれたくせに、こんなに大きく育っちゃって」

詢子「おー、立派なもんだ。今日は腹の調子、良いみたいだな。パパが料理上手でよかったなー」

詢子「よっしゃ完了。きれいになって、気持ちいいだろ? そーかそーか、泣くほどか」

詢子「……いいんだよ。生まれて、たっぷりしっこうんこして、足が立ちゃ泥遊びして、弁が立ちゃ、ズルだの恋だのして。
    子供は、そうやって汚れるものなんだ。だからまどか、ママとパパを頼れ。信じろ」

詢子「ズルくて弱くて汚なくても、いいんだよ。アタシ達は、アタシ達の娘を、見捨てない」

詢子「約束だ。まどか、愛してるぜ」

まどか「あー」
569 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/15(水) 22:17:09.36 ID:sojL4cwTo
今日はここまで
どーにも、ほむほむに甘い展開ほむよ
570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/06/15(水) 22:18:09.25 ID:Vj6z54oAO
ほむ
ほむほむほむっほむ
ほむほむ
571 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/15(水) 22:18:09.98 ID:a8oFPlcIo
まどか…そんなまさかやん……
572 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/15(水) 22:19:10.56 ID:kirj06Qco



鹿目夫妻……辛いなぁ
573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2011/06/15(水) 22:57:34.67 ID:wVz+5qD+0

なにが・・・なにが起きていやがる・・・・
574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2011/06/15(水) 23:12:01.66 ID:Z20JeC0C0
早く逃げろほむほむぅーっ!この世界はもう駄目だぁーっ!!
575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2011/06/15(水) 23:14:09.91 ID:Z20JeC0C0
早く逃げろほむほむぅーっ!この世界はもう駄目だぁーっ!!
すけこがMaryに進む前に急げーっ!
576 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2011/06/15(水) 23:26:56.99 ID:wVz+5qD+0
愛媛は理解して読んでるのか・・・?
おれが乏しいだけなのか・・・
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/16(木) 00:26:35.17 ID:5j+cOh3go
乙っちまどまど!
578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2011/06/16(木) 18:45:31.24 ID:joWnLLiS0
>>576
世界にまどかってルビ振っといて下さい。
どうもおりマギ読んだらほむループが平行世界も一辺に飛んでるらしい可能性が示唆されていたので・・・

あと巻き戻しの魔女ならGSからでも死体を制御出来そう。
579 :BENPER [sage saga]:2011/06/16(木) 21:31:38.54 ID:2AbF1vkoo
おりキリ出したくなっちゃいそうなので、おりこマギカまだ読んでない(けどバレだけ踏んだ…)

続きー
580 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/16(木) 21:32:47.09 ID:2AbF1vkoo
〜見滝原中学校

 ……改め、

〜瓦礫の中

杏子「なんじゃコリャァァァァ! 今時の学校ってヤツは、自爆装置でも付いてんのか!」

QB「大変だよ、杏子!」

杏子「そんなん見りゃわかる。なんなんだよ、今のはッ!」

QB「魔法少女だよ。ボクと契約したココの生徒が、魔法でこの学校を破壊したんだ!」

 シュルルッ   …ズズズズッ
            …ズゥゥン

マミ「ハァ、ハァ……力仕事は……キツイわね。もうキュゥべえったら、自分は小柄だからって」

杏子「無事だったか!」

マミ「無事よ、私はね。……ひどい状況だわ。下から上まで、積み木のお城を崩したよう……。
   っ……仁美さん! 大丈夫なの!?」

仁美「…………」

杏子「ああ。ベッド一つ分、アタシが何とか防ぎきった。部屋丸ごとは、さすがにダメだったけど。
    この血は……わからん。崩れる前からついてた。本人の顔色は悪くない。生理、じゃないみたいだし」

マミ「そうね。具合が悪い様子はないわ。ならこれは何かしら。誰かのイタズラとか……?」

杏子「何にしろ、ここから出してやらないと……」

QB「マミ、杏子。気をつけるんだ。『彼女』が『今の魔法』をもう一度、発動させるかもしれない」
581 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/16(木) 21:35:57.55 ID:2AbF1vkoo
〜瓦礫上層

早乙女先生「う……うう……」

 ヨロッ…

早乙女先生「げほっ、げほっ。み、みんな……、無事でいて……。
        あっ、誰かいる……お、おーい! 大丈夫ですかー!」

“*”「…………」

早乙女先生「先生、メガネが壊れちゃって、よく見えないんだけど……暗いし。
        あら? もしかして、あなたは、ウチのクラスの」

中澤「……ッ」 ダッ

早乙女先生「きゃっ?」

“*”「……ザワ君、どうしたの? 怖い顔してるし」

早乙女先生「ふ、二人とも! よかった、無事で……!」

“*”「もう、和子先生は涙もろいなぁ。うざったいなぁ。泣く事ないのに」

早乙女先生「だって、こんな爆発、みんな、死んじゃったんじゃないかって……中澤君?」

中澤「和子、逃げろ。ここから早く逃げろ!」

早乙女先生「? え? 何言っているの。みんな動いちゃダメよ。救助を待たなきゃ……」

中澤「それどころじゃないんだよ!」

“*”「やだなぁザワ君。そんなんじゃ通じないよ。全然わからないよ。もう、いつも、きちんと言ってくれないんだから。
    言ってくれないと、判らないよ。言ってくれれば、よかったのに。あたし、何だってしたのに。喜んでしたのに。
    ほら、喜んでよ。魔女は死んだ。大好きなヒトと、生き残ってハッピーエンド。喜んでよ。喜んでよ。喜んでよぉ」
582 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/16(木) 21:37:08.18 ID:2AbF1vkoo
          …ゴォッ

早乙女先生「え……? きゃああっ!?」

中澤「和子っ、……うわあああ!」

  ──ドォォォォン!

早乙女先生「……う……」

中澤「ぐ……くっ……」

“*”「……、あれ? おかしいな。おかしいし。なんで二人とも、生きてるし? おかしーよ。
    せっかく猶予あげたのに。愛する二人が再会して、喜んで、それでドーンって。でっかい花火みたいにさ。
    そうじゃなきゃキレイじゃないでしょ? 魔女に洗脳された身で、長く生きてられても……困るんだよッ」

           (…ゴボッ)


“*”「──エッ──?」


    ガクン

“*”「う……あ……? 苦しい、何、いやだ、何なの……!」

“*”「あ、何コレ、ソウルジェムが、何コレッ……」

“*”「……あ……あ! 濁っていく!」

恭子「爆発力は褒めてあげよう。けど、分不相応だ。僕が『手伝った』のに、────こんな小規模なんて」

“*”「か……かみじょ…………あんた、その格好……そんな!」

恭子「選ばれし者。正義の味方。世界でたった一人の魔法少女……そんな、刹那の幻。ねぇ、どんな気分だった?」
583 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/16(木) 21:38:12.07 ID:2AbF1vkoo
〜瓦礫内部

さやか「……っ?」 ガバッ

ほむら「!!」

 ガツン!!

さやか「あでっ……いてて、あ、暁美……ほむら」

ほむら「…………」 クラ クラ

さやか「大丈夫?」

ほむら「! ……」 コクン

さやか「同じ学校に、こんなに魔法少女がいたとか。魔法少女ブームかよって感じだよね。
     うっわー、グチャグチャだ。午後の授業、どうすんだっつーの」

ほむら「…………」

さやか「……あたしの反応、おかしいとか思ってる?」

ほむら「…………」 コク

さやか「別に頭打ったとかじゃないよ。あんたが、まどかに銃を向けたの、忘れてない。
     でも、あんたは今あたしに銃を向けてない。殺る気なら、とっくに殺ってるでしょうし。
     ああ、そうよ。そうでしょ?」

ほむら「……?」

さやか「あんたが本当に悪い奴なら、とっくにクラス皆殺しでしょーよ。あそこまでターゲットにされて。
     それを、こんな……心配そうに、あたしの顔、ぶつかっちゃうほど近くで、覗き込んだりするとか」
584 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/16(木) 21:39:43.92 ID:2AbF1vkoo
ほむら「……う、ううう」 グスッ

さやか「泣ーくーな。泣かないで、教えてよ。ほむら、あんた魔法少女でしょ。ここ、出れないの?」

ほむら「出れ……ない。どこも……塞がって、て、私……動かせない」

さやか「こりゃ、参ったな。こういう時、キュゥべえでもちょっと来てくれれば……」

ほむら「……ダッ、ダメ! アイツと契約なんて……また騙されているの!?」

さやか「わ、ちょ、わ。おさえておさえて」

ほむら「どうしてそんな簡単な気持ちで決めてしまうの! あなたって、どこまで……!」

さやか「あんたの知るあたしは、よっぽど迷惑だったんだね。違う時間の事とはいえ、謝るよ」

ほむら「……! ……あ、あ」 ポロポロポロ

さやか「よく泣く子だねぇ。聞いてるよ、あんた、タイムトラベルしてるんだって?
     キュゥべえを止めようとしてるんだって。恭……、そう、恭介が、前に教えてくれたもの」

ほむら「……ううっ……」

さやか「まどかに契約してほしくないんでしょ。気持ちはわかるよ。私だって、あの子が戦うなんて……」

ほむら「わ、わからないわ。私の気持ちなんて。まどかは、私の、たった一人の……!」

さやか「だからって、ピストル向けて脅迫はない」

ほむら「…………」

さやか「まどかを怖がらせた事、許さないよ。それはちゃんと謝れ。もちろん、まどかにね。
     ──でも、脅してでも、ほむらは止めなきゃって思ったんでしょ?」

ほむら「……ちがう……」
585 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/16(木) 21:42:01.46 ID:2AbF1vkoo
さやか「あたしね、あんたが言った通り、願い、簡単に決めちゃった。きっと違う時間のあたしも、そうかな。
     あたしはあたしなりに必死に考えたけど……でも、杏子やマミさんや、あんたに比べたら、ね。
     バカだって言われても、仕方ないなって、今は思うよ」

ほむら「…………」

さやか「ほむらは偉いな。まどかのために願って、まどかのために戦って、まだ戦い続けてる。
     自分で決めたくせに後悔しちゃったあたしより、うんと立派。でも」

ほむら「ちがうわ……そうじゃない……」

さやか「あたしだって、恭介のためなら、きっと何もかも越えられる。今なら、本当に本当の願い事、できるよ」

ほむら「美樹……さやか。あなたは本当に、バカだわ……!」

さやか「だと思うよ。そうなんだ、あたし、恭介がいないとダメなんだ。けど、けどこれからは……。
     ねぇ、ほむら。脅しはやめて、普通に話す事はできないの? まどかだって、きちんと話せば」

ほむら「無理っ。無理よ、できっこない!」

さやか「無理なんて事、ないよ。諦めんの早すぎる。どうして無理なんて言えるの。
     だって、この世には奇跡も魔法も、あるじゃない!」

ほむら「奇跡も魔法も、なんにもならない……まどかが、私を許さない……」

まどか「あんたの友達のまどかは、そんな心の狭い子だった?」

ほむら「……ちがう。ちがうの。お、脅しじゃなかったの……私、私っ……ろした!」

さやか「え?」

ほむら「私……撃ったの。鹿目タツヤを、私が殺したの!」
586 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/16(木) 21:44:21.14 ID:2AbF1vkoo
今日はここまで。
モブ子クライマックスそしてさやほむフィーバー
587 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2011/06/16(木) 22:22:25.03 ID:joWnLLiS0
すけこはやはりMaryの端末かー。そしてやっぱり下手人ほむほむかー。


どうしろってんだよ・・・
588 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/17(金) 01:23:45.76 ID:E7mHI5QFo
うわー……
乙っちまどまど
589 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/17(金) 01:27:11.93 ID:TYb4s+D+o
たっくんに何が……故意で無い事を祈りたいけど違うんだろうなぁたぶん
乙っち乙マミ
590 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/17(金) 21:35:56.79 ID:lyP2Y4Pfo
〜瓦礫上層

“*”「上条さん……上条恭子、あんたも魔女だったのね!」

恭子「『も』じゃなくて『が』だ。それに、もう、それは僕の名と言うには」

“*”「……魔女め! あんた達がいるから、この街はおかしくなった!」

恭子「──ま、いいか。その名でも、今しばらくは……けれど」


 本当の名は隠されたままだ

 最高の名は隠されたままだ


恭子「鋭い牙も爪も、未来を見据える輝く瞳もない。仮の名前、偽の言霊、淡い想いに希釈を重ねて構成された僕は……、
    とても、とても弱い。空気と同じだ」

“*”「あたしは強いよ……あたしは、魔女を殺した!」

恭子「それはすごい。契約して一週間も経たないのに、よく頑張ったね」

“*”「正義の味方は必ず勝つ……あたしは負けない。あたしはザワ君のために祈った。あたしは正しい。
    魔女になんて負けない! この街はあたしが守るっ!」

恭子「へぇ、願いは中澤のため?」

“*”「そうよ……『ザワ君があたしと別れますように』。本当に好きな人と、うまくいきますように……。
    わかってた。わかってた。もうずっと前から。あたしを好きじゃなくなってるって、わかってた。
    それに、あたしは魔法少女、正義の味方……ザワ君を巻き込んじゃいけない」

恭子「……うまく、入れ替えたものだね?」

“*”「なんですって」

恭子「正義の味方だから彼を許す。彼の想う相手を許す。恨みも嫉妬も、決して出さないようにする。
    だから、そのために正義の味方になる。涙ぐましい祈りだよ……気持ち悪いね!」
591 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/17(金) 21:37:18.21 ID:lyP2Y4Pfo
“*”「……このっ」

        …ドォォン!

恭子「そもそも『好きじゃなくなってる』じゃなくて、君の事、最初から、好きでも何でもなかったんだよ。
    ホント、うまく入れ替えたものだよね! 中澤が君を好きだったんじゃない、君が中澤を好きだった!」

“*”「黙れ!」

恭子「でも自分の方が相手をより好きだなんて、恥ずかちぃー! だから付き合おうって話になったけど断っちゃえ!
    それでも誘われたから、やっと安心して皆に言いふらしたんだよねっ!」

“*”「うるさいっ!」

 ドゴォォォン!    ドォン!

恭子「そこで中澤が矛先を変えていたら、君は一生後悔しただろう! でも、そのほうが良かったんじゃない?
    こんなみじめに、彼に嫌われる事もなく、そうだね、夏祭りの想い出でも大事にしながら一生……」

“*”「うるさいっ……うるさいっ、うるさぁぁい!」

恭子「同じ中学に入るための勉強。同じクラスになるためのおまじない。同じ部活。同じ委員。同じ班。
    食べ物の好き嫌いも、音楽の趣味も。中澤は君のそういう所が重いって、僕に話してくれたよ。
    まぁ、彼に首輪を嵌めたのは僕だ。でも、なんであれ、中澤は君を頼ったんだよ?」

“*”「……あんた、彼と……やっぱり、あんた、あんたは……!」

恭子「君は、飢えて困窮する彼の救いだったよ。彼に必要なのは、天使なんかじゃない、確かな人間の想いだった」

“*”「あんたは敵だっ! 上条恭子ォォォォォォッ!」


           (…ピシッ)

恭子「そうだな、君の名は、せめて美しく。……散り菊の魔女、とでもしようか」
592 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/17(金) 21:38:47.21 ID:lyP2Y4Pfo

 ザワ君、夏祭り行こうよ。

 ゆかた見てよ。たこ焼き食べよう。
 そんで、いっしょに花火やろうよ。

 いいもん。あたし達、いっしょにいても、おかしくないし。
 幼馴染みじゃん。
 ? ……恥ずかしいから隠して、なんて言ったっけ? ……そう。ごめんね。

 ……ねぇ、こないだの告白……、もう一度、ないの?

 あれは。あの時は、いきなり。突然すぎるよ……。
 でもでも、だって、あたし、


 (この時間が、いつまでも、いつまでも、続きますように)


“*”「ザワ君かわいそーだし。そこまで言うなら、付き合ってあげても、いいし」


 (しあわせになりたかった)

 (だけなんだよ)

 (あたし)


中澤「……歯に青ノリついてる」

“*”「もーっ、サイッテー!」


 ……あ。線香花火、終わっちゃった。
593 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/17(金) 21:41:45.66 ID:lyP2Y4Pfo
〜瓦礫内部

 ガシッ…

さやか「…………アンタが」

ほむら「……っ、……」

さやか「…………あの子を」

ほむら「(そうだ、このまま……)」

ほむら「(このまま、美樹さやかに絞め殺されよう……。
     私には、似合いの最期だ。まどかを傷つけた罰。まどかの世界を侵した罪……)」

ほむら「(まどか自身の手で罰されたい、というのは過ぎた望みなのだろう。
     ああ、でも、なんてありがたい事だろう。まどかの一の親友である、美樹さやか。
     その手で殺されるなら、いかにも道理が通っている。ありがたや、ありがたや。
     なるほど、こういう役目ができるのだから、美樹さやかは世界に必要とされる。
     まどかの世界に、彼女は要るのだ。そうだ。まどかの世界に、彼女は居るのだ。
     さやか。憎らしく、今となっては愛おしい。私は、さやかに、なりたかったのか。
     ほむらなどという名前は、恐ろしい。おどろおどろしくて、危なっかしくて、だからだ。
     だからこんな事になったんだ。まどかの世界に硝煙の匂いを持ち込んだ。罪人だ。
     私は、さやかになりたい。風のような、水のような、よい香りがする名前だ。さやか。
     どうだろう。暁美さやか。熱が和らぐ感じがする。あるいは、美樹ほむら。これもいい。
     同じほむらでありながら、なんだか少女らしいし、決して害のある炎ではないような。
     そうだ、私は、暁美ほむらは害がありすぎる。根性がない。やる気が感じられない。
     相変わらず、ものが言えない。せっかく、勉強したのに。体育も頑張ろうって……
     初日の決意は、どこへ行ったのだ。私は何をしているのだろう。何をして、何をした。
     もう、何もしない。何もしないのがいい。好きよ、さやか。ありがたや、ありがたや。
     来世なんてあるのなら、その時はせめて、暁美さやかになりたい)」

 …スッ

ほむら「?!」

さやか「……どいて」

ほむら「さ、や……か」
594 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/17(金) 21:43:13.17 ID:lyP2Y4Pfo
さやか「抱きつかないでよ。鬱陶しい」

ほむら「や……やだ、ちょうだい、……ちょうだいよぉ。あなただけが頼りなの。
     さやか。助けて。お願いだから、助けて。私を殺してちょうだい……!」

さやか「あたしが頼り? 助けて? お願い? ハッ、あたしを魔女と言った女が」

ほむら「ごめんなさい。謝ります。何だってします。お願いです。死なせてください。
     もう、わたしは……生きてちゃいけないの……」

さやか「ふざけんな!」

   バシィッ

さやか「あたしに……あたしに、まどかの友達を殺せって言うのッ?!」

ほむら「……さやか……」

さやか「死ぬほど悔やんでいるなら、今すぐまどかに謝れ! 本人の前で手をついて謝れ!
     たっくんのお墓の前で、地面に頭めり込ませて謝れ! まどかのパパとママに謝れ!
     そんで自分の両親に謝れ! 自分に謝れ! 最後にあたしに謝れ! 殺してとかっ。
     死なせてとか、生きてちゃいけないとか、バカ言ってごめんなさいって、あたしに謝れ!」

ほむら「……ダメだよ、今更。私はまどかも、まどかの家族も、みんな手に掛けようとしたの。
     もう、誰にも頼れない。あなたしかいないの。さやか、助けて。私を、助けて……。
     あなたは正義感が強い人よ……こんな罪人に、優しくなどしないで……」

さやか「……なら、なおさら」 クスッ

ほむら「さやかぁ……!」

さやか「悪者に、そんな権利はない」

 (ズズゥゥゥゥン……)

さやか「……、これは……魔女の結界? ちょうどよかった。道が開いた」
595 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/17(金) 21:44:42.10 ID:lyP2Y4Pfo
 ドンッ

ほむら「きゃっ……」

さやか「いきな、ほむら」

ほむら「…………」

さやか「いけッ! あっちいけ! その暗い顔を、私に見せるなっ!
     さっさと消えろ! 大キライだ! あんたなんか大ッキライ……、この、人殺しッ!」

ほむら「うあ……うあーあぁぁあぁ……うわああぁぁぁああぁぁ!」

   …ウワァァァン…


        …アァァ…


           ……


さやか「…………」

さやか「まどか……できないよ……」

さやか「殺せないよ……。タツヤくんの仇だって思っても、できないよぉ……」

さやか「……ごめん、判っちゃったんだ、……へッ、へへ、……わかっちゃったんだ」

さやか「へへっ……、ふるえ、止まんなくて、笑える。怖いんだ。ほむらの気持ち、わかっちゃった」

さやか「…………っ」

さやか「……ごめん、まどかっ! ……ごめん、……私、悪い子で……ごめんなさい……」
596 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/17(金) 21:45:50.74 ID:lyP2Y4Pfo
さやか「…………」

さやか「地面に花じゃなくて、花火が生えてる」

さやか「火薬って、食べちゃいけないんだよね。花火の袋にも書いてある」

さやか「……もぐもぐ」 グチッ ガリッ

さやか「ウゲエェエッ」 …ゲポッ

さやか「……もぐもぐ……もぐもぐ」 グニッ ジャリッ… ザリザリ

さやか「えへへ……苦しい。死ねそう。でも死なないよね。花火を食べて自殺するって、聞かないもの」

さやか「グェ、オゲエェェッ」 ゴポポッ

 …ジョロロロロロロ

さやか「ゲホッ、ゲエ、まずいよぉ。苦しい。歯が。喉が。おなかいたいよ。死んじゃうよぉ」

さやか「……仕方ないよ。苦しい。……お似合いだよ。助けて。……罰だよ。ウエェ……」

さやか「悪者だから?」

さやか「……悪者だから」

       ──…ドサッ



杏子「……見つけた! オイ、さやか! ……さやかぁぁ!?」

マミ「ひどい姿……。こんな時、恭ちゃんがいてくれたら」

杏子「そうだよ、アイツがついてたら……、え!? マミ、アンタ今……!」
597 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/17(金) 21:48:05.39 ID:lyP2Y4Pfo
今日はここまで
ほむほむー
598 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage saga]:2011/06/17(金) 22:11:32.15 ID:/88W93ig0
さやかはそんな子。ほむらもそんな子。
恭子は親鳥。では恭介は?

魔法をかけた愚かな人魚は、誰の為なら王子と死ねる?

そんな乙
599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/06/17(金) 22:27:51.32 ID:67Yyj8qHo
ザワくんの彼女ちゃん…
600 :BENPER [sage saga]:2011/06/18(土) 20:50:10.60 ID:A41fcqI7o
親鳥というよりは親子丼の親子部分

上条恭介の真の目的を教えよう。
彼の望んだ奇跡とは、汁かけご飯を汁とご飯に分離する魔法だったのだ!(ナ、ナンダッテー

…酔っ払ってなどいない。酔っ払ってなどいないぞ。
続き(ä)
601 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/18(土) 20:54:02.07 ID:A41fcqI7o
〜魔女の寝室

 ビニール袋に入った金魚が、ヨーヨーと泳ぐ。うねる割り箸の先の水飴。並ぶ屋台。
 その先、シュゥシュゥ噴き上がる、おもちゃ花火の花畑。

*『チチチチチチチチチチチ……』

ほむら「……そんな姿になってしまったの」

 散り菊の魔女。
 天井から逆さに吊された、浴衣姿の巨大少女。
 ……いや、浴衣を着た線香花火。

 パチパチと爆ぜる、丸く膨れた頭部。

ほむら「私が憎いでしょう。鬱陶しかったでしょう。イラつくでしょ。キモイでしょ。ウザイでしょ。
     燃やしてちょうだい。八つ当たりには恰好の的の、惰性で生きてるゴミよ」

*『チリチリチリチリチリチリチリチチチ』

ほむら「……聞こえないか」

恭子「聞こえてるよ。聞いてないけどね」

 チリチリ鳴る下。野点傘、縁台、金魚桶。
 うちわ片手に浴衣、ではなく着流しの。胸元がきわどい魔法少女の姿。

恭子「ゴキブリが話しかけてくるなんて、思わないじゃない。ほら、隣においでよ」

ほむら「失礼するわ。……ひどい言いぐさね。まぁいいわ、確かにゴキブリだもの」

恭子「君と並べるなんて、ゴキブリに失礼だと思わないか?」

ほむら「そうね。ゴキブリは私のように無様に生きたりしないわ」
602 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/18(土) 20:56:39.16 ID:A41fcqI7o
恭子「君は僕を怒らせたいのかい」

ほむら「あなたが私を怒らせたいんでしょう」

恭子「僕は君が好きなんだよ」

ほむら「私があなたをす、何を言わせようとするの」

恭子「惰性で生きてるから惰性でしゃべってしまうんだよ、ほむらさん」

ほむら「……惰性ですらないわ。私は、魂さえ死んでしまった。いてはいけない存在。
     魔法少女は皆、死んでいるようなものだけど、でも魂は生きてる」

恭子「ソウルジェムあるじゃない。はい論破」

ほむら「こんなの、形があるだけ。あとは朽ちていくだけの石ころ」

恭子「朽ちた花は口を開かず、そもそも石ころは口を効かない。わかってるくせに、自殺志願が過ぎるよね」

ほむら「私のキャラ、嫌なものでしょう? 甲斐性も根性も削がれた、芯のない悪性な人格よ。
     イラつくでしょキモイでしょウザイでしょ。虫以下だわ。もはやゴキブリもゴキブリ様よ。
     あなた、この罪人を哀れに思う?」

恭子「哀れなんてものか。君は愚痴蒙昧だ。いや、グチも、というよりは、グチばっかりうまい」

ほむら「…………」

恭子「自分で聞いておいて、このザマだ。ほむらさん、徹底が足りないよ。
    黙るなら黙るで、鼻も塞ぐなら塞ぐ。耳にも蓋をして、目も瞑ろうよ。不都合は見なけりゃいい」

ほむら「目を瞑っても、罪は消えないわ……」

恭子「だが、逃げる事はできるよ。罪には足がないからね。……足がないものから逃げるのは、一番恐ろしい事だが……」

ほむら「徹底なんて無理。私は決めた事もやりきれなかった。まどかを殺せず、まどかの家族を殺す事も満足にできなかった。
     とんだイイコチャン。タツヤくんを撃ったとき、ショックで息も出来なくなった。……だったら、最初から!」
603 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/18(土) 20:57:52.21 ID:A41fcqI7o
恭子「しなければよかった、なんて。ありふれた悩みを言うね。それでも魔法少女界一のイレギュラーかい?
    そんなの、世界中の赤子が言ってるよ。生まれて。泣いて。目を開いて。乳を吸って。歯が生えて。
    やれ離乳食だ、わあ知育玩具なんてものも出てきた。休む暇もない」

ほむら「ううう……」

恭子「だからその度、泣き叫んで……ああ、君は赤子に戻りたいのか?」

ほむら「私は繰り返してきた。私にはまどかを救えない。よくわかった。もう嫌。……解放されたい」

恭子「救いたくないでござる?」

ほむら「救えないでござる」

恭子「まどかさんを殺せば?」

ほむら「それが出来なかったから! 出来ない。何度繰り返したって、無理……」

恭子「じゃ、今回くらい、死んだ事にしてしまおう」

ほむら「……意味がわからないわ」

恭子「まどかさん一家は死にました。はい、チーン」

ほむら「……ママゴトをしろ、と言うの?」

恭子「赤ん坊に未来を説くほど無駄な事は、ないじゃない。──ほら、ほむらさんのターン」

ほむら「まどかが死んじゃった。えーんえーん」

恭子「ちがうわ、このパープリン! ゲル脳みそ! 君は転入してきたばかり、まどかさんとそこまで親しいもんか!
    コミュ障の君が、どんな世界、どんな時間でも、まどかさんの友達になれるって!?」

ほむら「そ、そっか。私は……まどか……鹿目さんとは、本来、友達になれたほうがおかしいのよ。
     そうよ最初から。もしも、まどかのほうから話しかけてこなかったら……きっと、私」

恭子「それを踏まえて、はい!」
604 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/18(土) 21:00:18.62 ID:A41fcqI7o
ほむら「まど、鹿目さんが死んだ。でも、クラスメイトってだけで、私は鹿目さんとは、……。
     ……お世話になった、くらいは言ってもいい?」

恭子「いいとも。鹿目さんは保健係だからね。まったく関わりがないという事もない。事もないだけ」

ほむら「具合が悪くなりがちな私を、よく心配してくれていた……事もない。だけ。
     私は知らない。鹿目さんについて詳しくない。彼女の秘密も運命も知らない」

恭子「知ってるかい? 鹿目さんは魔法少女なんだって」

ほむら「し……知らない。そもそも魔法少女って何? そうよ、私は……知らない事になる」

恭子「知ってるかい? 鹿目さんには、絶対に大変な、デンジャラスな運命がついてまわってるそうだよ」

ほむら「し、知らない。それは占いか何かの話かしら。運命なんて、非科学的だわ」

恭子「知ってるかい? 鹿目さんのために、時間を越える事も、命を懸ける事も厭わぬ、そんな子がいるって」

ほむら「知らない。なにそれ、鹿目さんのためとか自己満足? 気持ち悪くない? ストーカー?(笑)」

恭子「言い過ぎだよ。ない私情を挟まない」

ほむら「すみません……こうするわ。時間を越えるなんて、ますます非科学的。夢物語にも程がある」

恭子「そうだよね。そんな人が本当にいるとしたら、びっくりだ。きっと大げさな比喩表現だろう」

ほむら「そう……そんな人はあり得ない」

恭子「まぁ、それほど鹿目さんが好きだって人は、いる。かもしれない」

ほむら「そうね。鹿目さんの親友……あの二人だって、聞かれればそれくらい言うでしょう。きっと」

恭子「人知れず、鹿目さんを想っている男性だっているかも?」
605 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/18(土) 21:01:25.37 ID:A41fcqI7o
ほむら「えーっ……あ、いいえ、まどか、いえ鹿目さんにも、そういう……いるかしら」

恭子「ま、真相は藪の中。さて、鹿目まどかさんが亡き今、暁美ほむらさんが生きる今。
    ──君は何をしているかや?」

ほむら「何? 何……かしら。わからない。まどかのいない世界で、私は……」

恭子「このバカチンが! 学生だよ君は!」

ほむら「そ、そうだった。私は中学生。でも、長く長く入院していた。
     私は、そう私、退院は嬉しかったけど、勉強は苦手……体力もなかった」

恭子「うーん。中退して引きこもりという道もある」

ほむら「そんなのダメッ。せっかく学校に行けるようになったのに!」

恭子「イイコチャンだねぇ。となれば、君の道は上り坂だ。山盛りの宿題。慣れぬスポーツ。仁義なき成績表」

ほむら「……不安だわ。こわい」

恭子「そんな子を放っておけないなぁ」

ほむら「……え?」

恭子「僕がいる。クラスメイトがいる。うちのクラスには学校一有名な学級委員もいるんだよ」

ほむら「うん。そうね。そうだった。志筑さんは、ここではない時間軸の話だけど、私のために勉強会を開いてくれた。
     あの時、淹れてもらったお茶、みんなで食べたお菓子……すごく美味しかったの」

恭子「節介焼きが多いのさ。ヤキモチ焼きも多いけどね」

ほむら「でも、でも、私、みんなと仲良くできそうにない……」

恭子「そんな子をますます放っておけないよ! さ、おいでっ」
606 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/18(土) 21:03:13.55 ID:A41fcqI7o
ほむら「どこに行くの?」

ほむら「(なんだろう。どこに連れて行かれるんだろう)」

恭子「楽しいところ!」

ほむら「そんなに引っ張らないで!」

ほむら「(でも私、もうなんだか……)」

ほむら「(……楽しい)」

ほむら「(諦め? 逃避? ……まどかに対して、すごく悪い事をしゃべってるのに、こんな気持ち……)」

恭子「ほむらさん、急いで! 扉が閉まるよ!」

ほむら「えっ? ええっ、あんな所に、だってここは魔女の、えええっ?」

恭子「走って!」

 タッタッタッタッタッタッ
            (ギィィ…)

恭子「飛び込んでッ」

ほむら「は、はひっ」

恭子「バイバイ、散り菊の魔女! ほら、ほむらさんもっ。クラスメイトだったんだよ!」

ほむら「ば、ばいばい!」

     ギィィィー──  バタン

*『チチチチチ…』
607 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/18(土) 21:04:51.56 ID:A41fcqI7o
今日はここまで
次からは不思議の国のほむら
608 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2011/06/18(土) 21:13:49.45 ID:sk/YJYHu0
ああっ!間に合わなかった!魔女の呪いなら倒せば解けるだろうが、使い魔になる前から身に付けていたワカメ落としの
口説き術だったらもうどうにもならないんじゃないか?
609 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/18(土) 21:20:05.27 ID:A41fcqI7o
日本語でおk
610 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/18(土) 22:39:08.78 ID:mUupwZWmo
えーっと、あれだその


ていうか、無知蒙昧?(byアンゴル・モア)
……愚痴蒙昧ってwordもあるんだっけ?ニホンゴムツカシイネ
611 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/18(土) 23:17:57.93 ID:Ol+5p1Ezo
さやか…?サヤカァー!
612 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2011/06/19(日) 00:32:33.76 ID:8DxOVWpz0
乙まど
邪気の波動に目覚めたほむほむ

>>610
シャレだと思う
613 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/19(日) 00:33:54.05 ID:00KQ2ab1o
>>612
嗚呼……グチも上手いんだァ……もう駄目だ俺…



パリーン(ジェムが割れる音)
614 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/19(日) 00:52:34.48 ID:9KB50NFd0
>>613
死ぬなー生きろー。アロンアルファやるから
615 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/06/19(日) 08:32:24.57 ID:npdxCCeAO
接着剤が上手くくっついたためしが無いのは俺がせっかちだからだろうか
616 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2011/06/19(日) 12:29:10.03 ID:00KQ2ab1o
>>614
アロンアルファってさ、くっつけた後さ、接続部が白濁するよね



ほむほむジェムをわざと割ったあとアロンアルファでくっつけたい!おちんぽミルクかかったみたいでエロいっ!たぶんっ!
アロンアルファなんかでくっつけるから俺がキチガイみたいになっちゃったじゃないかっ
617 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/06/19(日) 12:30:22.87 ID:QdwF4TrAO
カッチカチせっかち
618 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2011/06/19(日) 17:58:50.55 ID:eKtq3Yf3o
いまさらだけどさよ屁の意味が分かった。くだらねえww
619 :BENPER [sage saga]:2011/06/19(日) 21:39:12.09 ID:b74OpXIbo
キュゥべえにアロンアルファぶっかけて固めてしまい隊

愚痴無知でガチムチネタというのも微妙なので、つかほむほむとガチムチが噛み合わなかった
(来世なんてあるのなら、その時はせめて、暁美ガチムチになりたい)とか言わせんのもなぁ

続きだよ
620 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/19(日) 21:40:43.44 ID:b74OpXIbo
〜暗い小部屋

ほむら「ここは……?(魔女の? ううん、そんな感じじゃない。どういう事……)」

恭子「そこのカーテンを引いてごらん。鏡があって、君がいるよ」

 …シャッ

ほむら「え? 鏡なんて、……ひっ!?」

鏡ほむら『ひぃぃっ……!』

恭子「ほら、君がいた。体育座りの君がいた。よおく、ご覧よ。どんな君だ?」

ほむら「(どうって、こんな暗い中じゃ……)ふ、普通だと思いますけど」

恭子「髪がボサボサなのに? 目やにが見えるのに? 唇が汚れてるのに? 襟がよれてるのに? 袖のほつれは?
    爪が黒いよ? スカートのホック外れてない? 靴下左右で違うけど? おっと、鼻の下にうっすら……」

ほむら「訂正します普通じゃないですっ! 普通より……ひどい」

鏡ほむら『えええぇぇ……』

ほむら「えええって……。だって、あんな風に言われたら。や、やだ泣かないで」

鏡ほむら『……もうやだ。人に迷惑掛けて、……恥ばっかりかいて』

   …キチキチキチキチ…

ほむら「カ、カッターナイフ……? そんな、いつの間に。こ、来ないで!」

恭子「君が君を殺したいと言うんなら、仕方ないんじゃない?」

ほむら「……や、やだ! やめて!」
621 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/19(日) 21:41:50.83 ID:b74OpXIbo
 ポロ      …カシャンッ

ほむら「……!」

鏡ほむら『うぇ……ええぇん……』

恭子「君が君に殺さないでと言うなら、仕方ないんじゃない?」

ほむら「…………」

鏡ほむら『うわあぁぁあん……』

          …トボ トボ

ほむら「どこ、行くの?」

恭子「さぁ?」

ほむら「…………」

恭子「で、どうする? 普通よりひどい君は」

ほむら「…………どうって」

 ゴシ

ほむら「(やだ。ホントにひどい目やに。頬がガサガサ。口の周りはベタベタ……)」

恭子「こすっちゃダメだよ」

ほむら「(わ、私……こんな顔のまま、今までずっと……)」

恭子「次の部屋に洗面所があるといいけど」
622 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/19(日) 21:43:38.93 ID:b74OpXIbo
〜次の部屋

ほむら「ここも暗い……きゃあ!?」

          ドポンッ

  バシャバシャバシャ!!

ほむら「だめ、お、溺れちゃう! わ、私、泳げない!」

恭子「あれ? ほむらさんって水の上を歩けないんだ」

ほむら「ぶはっ! 普通の人間は、あ、歩けるワケなっ、い!
     きゃあああ! な、流されちゃう!」

 ゴォォォ〜〜〜〜

ほむら「渦が?! だ、誰かっ! いやああ……まどかぁ〜〜〜〜!」

恭子「いっそ呑まれてごらんよ。いろいろ捗るよ」

       ゴオオオオオオオオ


 …プカ …プカ

ほむら「…………」

    ザザーン… ザザーン…

恭子「浜辺に似合うトロピカルドリンクはいかが? それとも人工呼吸しようか?」

ほむら「……いりません」

恭子「気取りも虚勢も一糸纏わぬほむらさんって可愛いねぇ。歩ける? ほら、次の扉だ」
623 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/19(日) 21:45:01.64 ID:b74OpXIbo
〜次の部屋

恭子「まぁ本当に一糸纏わぬなんだけどね!」

ほむら「……! きゃあああ!?」

恭子「生まれたままの姿では心許ないね。ほら、タオル」

ほむら「一体、ここは……どうなっているの」

恭子「さあ?」

ほむら「出口は、あるんでしょうね?」

恭子「さあ?」

ほむら「……そう。答えてくれる気はないの」

恭子「そうウェットにならないで、ほむらさん。髪の毛をドライしてあげよう。座って。顔の手入れだって必要だ」

ほむら「最初はガラス張りじゃない鏡。次は砂浜。かと思いきや、絨毯にビロード張りの椅子。大理石の洗面台にドライヤー。
     なんてむちゃくちゃな空間なの。魔女の結界には、もう少し統一性があるものよ」

恭子「魔女の結界ではないからね。統一性があるほうがおかしい」

ほむら「ここはどこなの?」

恭子「世界の結界だよ」

ほむら「世界の結界?」

恭子「世界だって宇宙だって、魔女のように引きこもりたい時もあるんだ。世界の結界の中心には、世界の寝室。
    世界キッチン、世界リビング、世界玄関、世界風呂、世界便所もあるはずさ」

ほむら「世界って……誰なの? 誰かの世界という事? どういう事なの?」
624 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/19(日) 21:47:23.20 ID:b74OpXIbo
恭子「世界は、そうだね、僕は世界だ」

ほむら「あなたの世界なの?」

恭子「僕が世界だ。ガンダムじゃない」

ほむら「あなたの世界に、私はいるの?」

恭子「僕の世界ではないんだ。世界の僕に、君がいるけど」

ほむら「私があなたの中にいるという事?」

恭子「エロティックな妄想はしないでくれよ」

ほむら「そんな事、考えてないわ。……どういう事なの? 私はあなたの中にいるの?
     じゃあ、私は、暁美ほむらは、あなたの妄想かなにか? あなたは神様?」

恭子「暁美ほむらは僕の排出物ではない。暁美ほむらは調子っぱずれのトリッパー。暁美ほむらは迷子。
    僕の中に暁美ほむらがいる。僕は神様ではない。僕は美声の排出物。僕は世界。僕は物語」

ほむら「物語ですって? それは、おかしいわ。あなたは、いつだって物語の外。
     上条恭介は……部外者よ。いつだって物語の外」

恭子「上条恭介は物語の外。上条恭介は物語ではない。上条恭介は世界でない。上条恭介は迷子ではない」

ほむら「上条恭介はあなた?」

恭子「僕は上条恭介では……なくなった。僕は上条恭介の排出物だ」

ほむら「あなたは上条恭介?」

恭子「僕は上条恭介の排出物。僕は上条恭介では……なくなった」
625 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/19(日) 21:48:36.66 ID:b74OpXIbo
ほむら「あなたは排出物。あなたは世界。あなたは物語。……あなたは、迷子?」

恭子「君が迷子のアリス、僕が導くチェシャ猫」

ほむら「私を導いてくれるですって?」

恭子「僕のアリス、君が望むなら」

ほむら「うさんくさいわ。なんだか、腹黒さを感じる」

恭子「ブラック上条とでも呼ぶがいいにゃ」

ほむら「……あなたは上条恭介なのよね?」

恭子「にゃははは。上条恭子にゃ。クラスメイトの名前くらい覚えてろってー話にゃ。
    ──それにクラスメイトの前で丸裸なのも、どうかと思うけど」

ほむら「だ、だって! あの渦のせいで……、気がついたら、こんな風に。
     おかしいわ、下着まで……髪留めやメガネはともかく……」

恭子「おや。壺を割ったら、見滝原中学校の女子制服が出てきた!」

ほむら「せめてタンスじゃないの?!」

恭子「うーむ。ほむらさん入院生活長かったし、足の細さが痛々しいね。腿の静脈があらわすぎる。
    おや、今度は宝箱の中から、女性用下着とパンティストッキングが」

ほむら「…………怖いわ。どうしてそれが宝箱に」

恭子「さ、着替えて着替えて」

ほむら「サイズピッタリなのが、逆に嬉しくない……」
626 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/19(日) 21:50:47.30 ID:b74OpXIbo
ほむら「…………」 スル スル

恭子「…………」

ほむら「…………」 クイ クイ

恭子「…………」

ほむら「は、履けた……!」

恭子「パンスト履くのに五枚も破るとは思わなかったよ! 君の意外な不器用さに乾杯! 足の爪切れッ」

ほむら「でも、これ、いいかも。あったかくて。女の子はおしりを冷やさないようにって、おばあちゃん言ってたし」

恭子「ほむらさん、おばあちゃん子かい。かわいいねぇ」

ほむら「私は、祖母に育てられたようなものなの。──お父さんもお母さんも、子育ての余裕、なかったから。
     仕事だとか、時間とかより、……精神的に、余裕なくなっちゃったって。それで」

恭子「僕の母も、そうだな。もともと自分の事で手一杯だったものでね。うちは代わりを余所から探した」

ほむら「そのほうが、よかったわ。祖母も祖父も、最後まで、心配ばっかりして死んじゃったから」

恭子「今、ご両親は?」

ほむら「外国で働いてるわ。もう、ずっと。私の入院費用が、……ううん、今更だからかも」

恭子「……ずっとじゃあね」

ほむら「そう。ずっと離れてるとね。だから私は、おじいちゃんとおばあちゃんのいた部屋で暮らしてる。
     広くはないから、一人でも……ちょうどいいくらいだから。だから今更、帰ってこられても、ね。
     ……なんだか私ばかり話してない? あなたもしゃべってよ。さっきの話とか」

恭子「さっきの話? パンストの話?」

ほむら「上条家の奥様の、と言えばいいのかしら。の話」
627 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/19(日) 21:52:10.98 ID:b74OpXIbo
恭子「上条恭介の母の話か。突飛な言動の多い人だよ。そこを見初められ、結婚を申し込まれたらしいが。
    あそこまで夫に愛される妻というのも…………ああ、あの二人のラブり様ときたら!
    スキあらば人前でもいちゃつく中年男! 妻を妖精ちゃんだとか呼びだした時は、死ねと思ったね!」

ほむら「ダメよ、親にそんな事思っちゃ」

恭子「イイコチャンめ! ……まぁ、ほむらさんが言うならやめておこう。
    とにかく、上条父は奥さん大好きさ。インスピレーションの女神、作曲家生命そのもの、だそうで」

ほむら「仲が良いのね。羨ましい」

恭子「母が振りまく発想を、父が曲にし、息子に演奏させる。仲良いねー本当だねー。……そう?」

ほむら「おじいちゃんの作った大根を、おばあちゃんが煮て、私がお皿に盛る、みたいなものだわ」

恭子「そんなお腹のすく例えをされちゃぁね。いや、でも、妖精ちゃんは、本当に突飛だよ?
    腹から出てきたばかりの息子を見て、産院を飛び出して嵐の中、半日、踊ってたんだから。
    王様だ、この子は王様だ、とか言いながらね」

ほむら「そ、それは……すごいね?」

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
《この子は畸形人間の王様! 類い希なる魂の畸形よ! 裏日本の門が開くわ!》
__________

恭子「いやはや、突然飛ぶと書いて突飛だ。雷鳴に跳ね、長い髪を振り乱して踊り狂う姿。
    旦那には胸キュンだったそうだけど、生まれたばかりの上条恭介くんには大不評。
    赤子ながら一日中泣き通しました」

ほむら「そう……なんだ。……根性? あったのね」

恭子「本当にね、それだけ泣いたんだから、疲れ死んでもおかしくなかったのに」
628 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/19(日) 21:53:47.58 ID:b74OpXIbo
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
《おや妖精ちゃん。この子はとうとう息を切らした、次は息が絶えるだろうか?》
《匹夫匹婦を淘汰するこの子がアップアップしても、ギプアップするはずがないわ。必ず生き存える。ああ、主よ、御許に近づかん!》
《近付いちゃまずくないかね》
《むしろめちゃくちゃ美味しいわ。そうよ、美味礼讃! 全ての節義を夕暉に溶かし、明朝の前に坐す明王の正餐! それは、星散した辟易する演繹と明日を信じる帰納的智慧》
__________

恭子「ま、そんなわけで上条家の主人と細君は、いつまでもいつまでも幸せに暮らしましたとさ」

ほむら「めでたし、めでたし……なの?」

恭子「嘘だよ?」

ほむら「よかった。でも、ちょっと、面白かったわ」

恭子「何よりだね。面白い事は大事だ。面白いだけで、生きる気力がわいてくる。
    さぁ次の部屋だ」

〜次の部屋

ほむら「暗い……最初の部屋と同じだわ」

恭子「なら、カーテンを開けば鏡があるという事になる」

 …シャッ

ほむら「…………」

鏡ほむら『こんにちは』

ほむら「こ、こんにちは」

鏡ほむら『顔を洗って来たのね』
629 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/19(日) 21:55:27.69 ID:b74OpXIbo
今日はここまで。
ほむらちゃんはパンストを装備した。
630 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2011/06/19(日) 22:01:49.40 ID:fYGNG+xo0
ほむほむ完全に洗脳されてるじゃないっすかー!ヤダー先月に帰れなーい!
そして心象風景感ゼロなこの結界は誰のー?!
631 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/19(日) 22:07:35.87 ID:b74OpXIbo
恭子「 |・ω・´)ノシ」
632 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/19(日) 22:08:49.84 ID:Rn2pYxo6o
相変わらず難しいぜ、フィーリングだ
633 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/19(日) 22:10:36.79 ID:00KQ2ab1o
乙っち乙まど



ガチムチほむほむの画像はあった……ような?
634 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2011/06/20(月) 02:47:21.86 ID:6QjpB32I0
まど乙
貼るなよ、絶対に貼るなよ
635 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/20(月) 11:07:29.72 ID:A0t0BjbIO
乙っちまどまど
636 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/20(月) 21:31:45.71 ID:VAJ2Seceo
ほむら「判るの? こんなに暗いのに」

鏡ほむら『そんな分厚いメガネを掛けているから、わからないのよ』

ほむら「メガネは掛けていないわ。流されちゃったもの」

鏡ほむら『まだ心に掛けているわ』

ほむら「そうなの? でも、メガネは目に掛けないと。周りが見えないわ」

鏡ほむら『本当に見えてないの? ここまで歩いてきたじゃない』

ほむら「でも、暗いのよ。あなたがよく見えない」

鏡ほむら『あなたが暗いの。あなたに見る気がないからよ』

ほむら「そうかなぁ……」

鏡ほむら『メガネのせいにしないで。よく見てご覧なさい』

ほむら「……うーん……」

鏡ほむら『自分ぐらい恥ずかしがらずに見なさい』

ほむら「……顔も髪も、制服も、きちんとしてる?」

鏡ほむら『私、きちんとしたもの。ストッキングを履くのは手間取ったけど』

ほむら「あなたもそうなの?」

鏡ほむら『あなたがそうなの』

ほむら「私がそうなの?」

鏡ほむら『さっきから、鏡に向かって、何をぶつぶつ言ってるの。独り言?』
637 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/20(月) 21:35:48.01 ID:VAJ2Seceo
ほむら「……? あ、本当だ。私、鏡に向かって、何を……」

  コトン

恭子「メガネ、落としたよ」

ほむら「え? どこから……」

恭子「ここから」

ほむら「心から?」

恭子「しかしなんだいコレ。瓶入り牛乳世代でない僕にも判る。牛乳瓶の底ってレベルじゃないよ」

ほむら「……これ、私のじゃない。だって度が合ってないわ。掛けるとくらくらする」

恭子「きっと君のではなくなったんだ。置いていこう」

  スタ スタ

ほむら「……どこ行くの?」

恭子「次だよ。君がもう少し鏡を見ていたいなら、ここに居るといい。鏡は永遠に見ていられるものだからね」

ほむら「待って。私も行くわ。永遠に鏡を見ている場合じゃないの」

恭子「どういう場合?」

ほむら「何て言ったらいいのか。ええと。なんだか、やばいばやい」

〜次の

恭子「バルコニーへようこそ」

ほむら「とうとう部屋じゃなくなったわ」
638 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/20(月) 21:37:09.00 ID:VAJ2Seceo
恭子「どうしたんだい。端から端まで、かまぼこの紅いところを歯で削ぐように」

ほむら「こっちは星空。あっちはお日様のてっぺん? 何もかも紫色。ここは暁のバルコニーなのね」

恭子「詩的な表現だね。長い髪にはよく似合う」

ほむら「髪。そうね。髪も切ってしまおうかしら」

恭子「やめてくだしあ。土下座しますから」

ほむら「……髪は生命力そのもの。それがおばあちゃんのおまじない。でも……私には、もう重い」

恭子「せっかく今まで切らなかったのに」

ほむら「いつかは切りたいと思っていたから、いつかまでは切らなかっただけ。
     そのいつかは……きっと大人になった時だと、思ってた。
     大人。それは中学生の後? 高校生の後? 将来の夢を叶えた後?」

恭子「大きくなった人が大人。けど、ほむらさんの夢って?」

ほむら「私……卒業したら旅に出るの」

恭子「その焼きタラコみたいな、血色悪いわ血管出てるわ、脆そうな足で!?」

ほむら「世界一周。ずっと夢だった。絶対に適いっこない夢」

恭子「その絶対をぶち殺す。今から世界一周旅行に出掛けよう。宇宙一周だってしよう」

ほむら「この『世界』には、世界一周旅行ができる世界もあるの?」

恭子「いいや、そろそろ現実に戻ろう。不思議の国も、もう飽きた。夢から覚めて、夢を見る時間だ。
    ──さて、世界一周となったら、移動手段は限られている」
639 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/20(月) 21:38:09.37 ID:VAJ2Seceo
ほむら「あ、あの。私、今パスポートも持ってないのだけど」

恭子「馬車より船より飛行機より、速く心身にも快適な旅行ができるもの、なーんだ?」

ほむら「え? ……ロケット?」

恭子「……乗った事あるの?」

ほむら「な、ない」

恭子「答えはワルツ。──ほら、手を!」

ほむら「きゃっ? えっ、飛ん……ぶつかる!」


 ──踊る二人は、空を飛ぶ。
 書き割りの空をぶち破り、さんさんと晴れる雲海の上。


恭子「ほら、ステップを続けて。落ちてしまう」

ほむら「……ええ?! えーっ? こ、ここは今どこ? あなたの世界!? あなたが世界!?」

恭子「現実世界だよ!」

ほむら「現実世界なのに飛んでる!」

恭子「魔法少女が空飛んで、何が悪い!」


 ──雲の切れ間。豆粒ほどの旅客機が足の下。


ほむら「し、下からスカートの中が見えない!?」

恭子「見えたら驚きだよ! まぁ、いつまでも制服姿でいる事もないね。降りたら君を、その地に似合う姿にしてあげよう!」
640 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/20(月) 21:39:29.44 ID:VAJ2Seceo
 それから暁美ほむらは、魔法の旅をした。

 なにせ、魔法なのである。
 あらゆる負担のない旅──

 危険な事が、何もない。
 同行者、上条恭子が何もかもを手配する。
 暑い国では暑い国の衣食。寒い国では寒い国の衣食。
 時間も金銭も、己の負担ではない。

ほむら「(……楽しい)」

 あり得ぬ高速移動。
 できるはずのない会話。
 脂ぎった肉の塊を食しても、香辛料たっぷりの麺を啜っても、煮付けられた昆虫や、卵のまま茹でられた雛鳥をかじっても。
 山の湧き水を飲んでさえ、腹を下す事もない。(一部、気分は悪くなったが)

 全てが気分のまま衝動のままに実行できる旅で、ほむらは驚きの連続を味わう。


ほむら「(そっか、私って、こんな風に笑えるんだ)」

ほむら「(そっか、世界って、こんなに楽しいんだ)」

ほむら「(そっか、魔法って、何でも出来るんだ!)」


 オーロラなんて、魔法でもなければ一生、目にする事はなかっただろう。

 ループする時間の迷路、幾度の失敗と失望を重ねた日々が、もはや遠い。
 振り返りたくもない、苦痛の日々。いよいよ破れかぶれの本末転倒、鹿目まどかの死を望み、しかしやはり仕損じた今回。
 ──とうとう、暁美ほむらは諦めた。

ほむら「(ごめんね、まどか。約束、守れない)」

 あれほど恐れていた、目を瞑るという行為に、絶望感はなかった。なぜなら、楽しかったからだ。嬉しかったからだ。
641 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/20(月) 21:40:57.42 ID:VAJ2Seceo
ほむら「すごい! 全部、氷で出来てる!」

恭子「あはは、テーブルも、ベッドもだ!」

ほむら「かたーい! おしりが痛くなっちゃいそう!」

 楽しい。

ほむら「すごい、象って本当に河を渡れるんだ。あ、人がいる。おーい!」

恭子「危ないよ。ほら、君が落っこちてこないかと、ワニ様がみてる」

ほむら「きゃ、きゃーっ!」

 嬉しい。

ほむら「すごい夕焼け……」

恭子「ここが巨大な一枚岩の上とはね。次はどうする? どこへだって、連れてってあげるよ」

ほむら「どうして?」

恭子「これで一万四千七百回目になるかな。でも何回だって言ってあげよう。『僕は君が好きだからね』」

ほむら「そう、なら……このまま」

 涙が出るほど、愛されている事は嬉しい。

ほむら「もうすこし、このままでいさせて」

 たとえ全てが嘘だとしても。

 たとえ、ここにいるのが、魔女でも。

 たとえ、ここにいるのが、悪魔でも。
642 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/20(月) 21:43:48.31 ID:VAJ2Seceo
今日はここまで。
次で十話ラスト。QBに上条恭介から手紙が届きます
643 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/20(月) 21:46:26.26 ID:eetyOPAJo
ぽつかれさま



無害な傍観者の恭介クンにはもう戻れない、帰れない?
ステンレスって言えばお弁当箱だよね アルマイトとは違うんだっけ?

無骨な銀色の箱を開けると中には色とりどりの美味しいおべんと。楽しいよねっ!
だから魔女空間もこんなに楽しいのかなって、愛媛さんには及ばないけど妄想してみたり
644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/20(月) 21:48:41.19 ID:eetyOPAJo
あー……しまった。
厨ニ妄想に夢中で肝心な質問しわすれちまったよ。



「BENPER」名義での書き込みが最初に無かったからちょいとびっくりした
どっから来たんだその名前 コテハンって奴ゥ?
645 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/20(月) 22:04:24.54 ID:Bl14Tdz0o
十話か
だいぶ進んだなあ
646 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/21(火) 00:12:56.69 ID:0Lks66MCo
乙っちまどまど
647 :BENPER [sage saga]:2011/06/21(火) 21:33:59.45 ID:to3aKafYo
うちのばーちゃんアルマイトとダイナマイトよく言い間違えるわ

>>644
潟県に失礼かと思って、コロコロうさぎのフンみたいに変えちゃって悪いね。
最終的にはBIG・BEN(もちろん大便的な意味で)とかに落ち着こうと思ったんだよ
でもそんなうんこうんこ言ってるのもどうかな、って

続きだよー
648 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/21(火) 21:36:39.81 ID:to3aKafYo
QB『やっぱりここにいた。楽しいかい、メアリ・マキナ? それとも上条恭子と呼ぶかい?』

恭子『だしつゆを薄めて少し手を加えれば、いろんな名で呼べる。いろんな使いようがあるからね』

QB『しかし暁美ほむらが言ったのかい? そこまでボクから隠れなくてもいいじゃないか』

恭子『……は?』

QB『……いや、キミが何かしたのだろう? キミに、魂が感じられないんだが』

恭子『接続を確認しなよ。いくら機械仕掛けだからって、魂はないなんて。魔法の使者が、人間に毒されすぎだよ?』

QB『そちらこそ、魔法を解いてくれ。ボクからは、まったく接続できない』

恭子『君は僕をからかっているのか? 「まったく」なんておかしいよ。なら、君はどうやって僕を探したんだい』

QB『…………』

恭子『言っただろ、「やっぱりここにいた」って』

QB『?!……』

恭子『あれ? ほむらさんの位置情報は判ったんだろう? それで検討をつけたとか、言えばいいのに』

QB『それではウソになる』

恭子『ふむ? あ、そうだ魂ね。母体に置いてきたのかも。へその緒に相談だ。もしもーし。……切れてら』

QB『……志筑仁美は昏睡状態に陥ったよ。しかし肉体は弱っても、魂に異常はない』

恭子『いずれお見舞いに行かなくちゃね。でも姉の見舞いが先かな。む、先に出てきた僕を姉と呼んでいいものか?
    先に出てきたからには、姉と呼べるだろう。彼女の方が大変そうだ。親が親だからね』

QB『……。上条恭子の信号パターンを調べさせてもらったよ』
649 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/21(火) 21:39:21.15 ID:to3aKafYo
QB『照合の結果、雑音を削って残った信号は……、この星の人間はこう呼んだ。悪魔アガリアレプト。
   他にも無数の名があるが、感情エネルギーに対する情報を分析/解剖/解明していた頃のボクらだ』

恭子『王子の僕を、今度は悪魔? 魔女呼ばわりでも傷ついたんだよ。死ぬほど』

QB『キミはアガリアレプトなのか? キミはボクらだったのか? しかし……』

恭子『僕は上条恭子。君もそう言った。でなければメアリ・マキナ』

QB『だから本当の名を……いや、キミらではない、真の上条恭介のという事か? 待ってくれ。こんな古い文法。
   あまりに隠されている。しかしこれも、ボクらを見据えた暗号式だ。対ボクらの思考パターンの……
   やはり……この星の人間の頭/知性/技術で、ボクらにここまで……ラグを生じさせるほど……』

恭子『ヒント。ジョリィと僕とで半分こ』

QB『ノイズを増やさないでくれ!』

恭子『サービスいる? ……正解そのものような気もするけど』

QB『ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ』

      ガクガクガクガク

QB『な──ん──だ────キ──ミ────こ──れ──は、あの娘のログだと言うのかこれが!
   ボクが接触した、彼女のログからは、こんなこんなこんなこんな──こななななななななななな。
   二つを重ね合わせた、これが、これが正解だと、──世界の果てだと!』

恭子『天使も悪魔も、キュゥべえ達から派生した幻想だとして……《運命の女》もそうなのかい?』

QB『運命的な──出逢い/恋愛/事件/堕落/破滅/救済の──あるいは罪深き──女……ハッ!?
   メアリ・マキナ! ボクに答えさせたな! ……! し──まっ────止────キ──ミ、は』

恭子『しばしサラバだ、キュゥべえ。王子の使命は、姫の苦しみを奪う事。魔女の使命は、姫を永遠に眠らす事、……手続きが大変なんだ』

QB『バ────ア────ル──ゼ──────ブ──────────ル』
650 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/21(火) 21:40:59.03 ID:to3aKafYo
O, wär’ ich nie geboren

 私の生まれた日は滅び失せろ。「男の子が胎に宿った」と告げた夜も。

O, wär’ ich nie geboren


《アーカーシャの画廊には人類のカルマ全てが絶対に記され続け、因果律と成るわけだけど、その絶対は絶対ではないのよ》

《記されぬ部分、画廊に収められぬもの──それは屑と云い、それを糞と呼んだ。だが、取りこぼされた『それ』はどこに?》

《ここよ。──魂の畸形腫。宇宙便槽、憂いの都、アカシックポッチャントイレ、……糞便帝国!》


O, wär’ ich nie geboren

 何故、私は母の胎内で死ななかったのか。生まれてすぐに息絶えなかったのか

O, wär’ ich nie geboren


《おお、類い希なる魂の畸形。まだ泣き死のうだなんて、なんて奥ゆかしいの。》

《恭しいのは悪魔の基本。齢ゼロ歳にして弁えてらっしゃる! しかし浅陋。カタツ無理》

《泉路へ行くのは適うまいまい。といっても、帝国の門も閉じられている。これでは適っちゃうかもん?》

《ならばあなたが十四歳半に成る日、誕生日でも何でもない日、母様が玄牝の門を授けましょう。便槽蓋に、私はなる!》

《処女受胎の逆を行くとしましょう! 童貞は経産婦に抱かれ世界を滅ぼす……こいつぁ素敵なキャッチコピー、売れるぜ! ねぇ旦那様?》


O, wär’ ich nie geboren

 ……もう、泣くのも飽いた
651 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/21(火) 21:42:54.61 ID:to3aKafYo
 インキュベーター、初めて君に触れるよ。

 君がこれを読む頃、僕はまだ、目を瞑っているはずだ。
 この銀河のどこかには居るよ。自由意思で君を想っている。けど、君からの通信は繋がらないと思う。

 僕は君に出会った時、期待してしまった。

 察しの通り、僕の魂には古き君らがいる。
 元は狂ったディスクリミネーター。そして、イカレたクラリファイヤー。
 自律して、自立して、虫(バグ)であり菌類(ウィルス)になり果ててしまったけど。

 虫であり菌類。それは、この星の基準でなら、霊長類なんて比較にならない、最強最悪の生命体だ。
 なにせ、虫で菌だからね。奴らは見えない。見えないから潰せず、見えぬどこかで増殖し続ける──
 わかるだろう? 宇宙の霊長類さん。

 見えぬ屑と糞を食糧に、見えぬ虫と菌が。しかし、このバグでありウィルスは、魂というビニール袋に閉じ込められている。
 ビニール袋だから恭子だ、ちがった強固だ。それなりにね。
 魂だから、常人には触れられない。
 バグでありウィルスだから、セキュリティばっちりな君らには、もう触れられない。
 (認識も難しいようだね。君のアナルのおかげで、よーく判ったよ)

 僕は君に出会って、期待して、失望した。こっちの勝手で、ごめんね。

 なぜ僕の魂なのか?
 それは生まれる前、僕がハエ取り器の形をしていたからさ。
 ニコール・オブリーもそうだったね?
 彼女もハエ取り器だった。けれどずっとハエ取り器だったから、増殖する内にハエが溢れ拡散し、大事には至らなかった。
 (……魂はね。彼女をあんなにも壊したのは、人間達だ)

 バグでありウィルスは、ニコールの件を踏まえ、進化した。彼らはもっと大きくなりたがっている。
 ただ増えるより、爆発的に増えたいんだって。そのほうがより良い、という理由で。
 とんだ糞爆弾だ。
 そんなワケで僕は前ハエ取り器、現ビニール袋、糞便帝国だ。
 瞼からウジ虫一匹だって這い出ないよう、目を瞑っている。ハエ入り眠り姫ってやだなあ。
652 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/21(火) 21:44:14.09 ID:to3aKafYo
 いや、僕だけこんなんなってるのは理不尽だし、もう糞便帝国を大拡大させてもいいかな?
 いっそ爆発させたら、案外、悪い結果にはならなくて、エネルギー問題なんかも一気に解決するかも?
 そうも思ったりするのだけど、「かも?」で核爆弾をドッカンさせる気にはなれなくてね。
 僕が人間に好意を持っているとするなら、それこそ答えは限られている。
 ね?
 もっとも、好意はたやすく害意に変わる。だって僕だけこんな。理不尽だもの。ヤンデレブームだし。
 箱の中のオセロの勝敗は、まだ観測されていない。
 ね?

 ただ、僕一人では爆発しないよ。
 バグデアリウィルス(こう書くとカッコイイと思わないか?)は、充分に増殖するまで、便槽を閉ざす事を考えた。
 育成期間だ。君がより良い魔女を産ませるため、魔法少女を孤立させるようにね。

 母はその門になりたがったようだけど、彼女では無理だ。近すぎる。母子でなんてイケナイよ。
 だから、門であり鍵は、いずれ僕の前に現れるだろう少女の魂に書き込まれた。

 そう、     だ。

 とびぬけた頭脳の子は腹からでるとまもなく死んだものだ。
 だが     は神が殺しそこねたのだ。
 とんでもなく愚鈍な生き物になりさがり、地獄の業火に焼かれながら、それでも天国に憧れる。
 ──僕には殺せない。この目が届き、この手が届く場所では、     を殺せない!

 彼女の魂が崩れかけた時、僕が女の子になれた時、君に出会った時。
 期待してしまった。
 でも、やっぱり、僕らはバグデアリウィルスに従って、来るべきその時に魂を重ねる事になるのだろう。
 そうだ、奴らは僕らを従わせる。僕らはどうしようもない「うちゅうはかいばくだん」だ。


 追伸:非現実な現実のバカンスに同行している彼女には、あまり寄らないでほしい。
     僕は爆弾かもしれないが、それでも人間に、宇宙に好意を─〜恋を

     いのり ねがい わすれないで きみがいった



 追伸:僕は、狂ってなんかいない
653 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/21(火) 21:46:49.50 ID:to3aKafYo
第十話 了
第十一話『それが、私の知る上条恭介』
654 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/21(火) 21:50:22.92 ID:LWx4OtW9o



えっと、アレですか?古代ベーターはバジュラ的な物になったって事ディスか?
加藤英美里さんが僕の腸内に住み着いてやがては脳を侵す……素晴らしいじゃない




因果を集中させる以外でより強い絶望ENを生む、って発想はとても面白いと思う。マジに。
655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2011/06/21(火) 22:02:27.87 ID:iYk5eRbz0
分析タイプのインキュベーターから感情を持つ生命に寄生して分化した絶望エネルギーの受容・開放体?うーむ、死憑に続いて魔王憑の神醸か。
ますますほむループのなんでもあり感が出てきましたな(これだからループ、タイムリープものは夢オチに並ぶ悪手なんだ)。
ゼブルの門は本命と対抗が揃っていて予想し辛いが、まさか親友にまで飛び火してはいまい・・・
656 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2011/06/22(水) 00:04:44.37 ID:QhkLusGQ0
こんな所で胎界主の空気を感じるとは思わなかった
657 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/22(水) 01:59:27.34 ID:Yzl/Gwgto
乙っちまどまど
うむぅ……ちょっとややこしくなってきた
658 :BENPER [sage saga]:2011/06/22(水) 21:50:57.22 ID:5R49QKy0o
善人なをもて往生をとぐイワンのばか(たぶん使い古されているだろうネタ)

ややこしいよ!
こっちが図に描いて説明してほしいくらい、むしろ最終回を書いてほしいくらい!


というわけで第十一話『うんこ漏らすわゲロ吐くわ』
ん? 間違ったかな?
659 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/22(水) 21:53:10.57 ID:5R49QKy0o
QB「何のために生まれて、何のために生きるのか」

QB「種の保存は、全ての生きとし生ける者の命題だ」

QB「そのためにボクはこうして、奇跡を売って歩き、エネルギーを回収して歩いている」

QB「見よ。天地に海なくして陸はなく、陸なくして人間は立っていられぬのだ」

QB「ボクらの天地を・海を・陸を維持せんと、ボクはつくった。この星に、人間に、光を・闇を・平穏を・災厄を」

QB「では、ボクらの光を・闇を・平和を・災厄を、天地をつくったのは、誰なのか? ボクらはどこから来て、どこへ行くのか?」

QB「……ともあれ、ボクはいて、ボクは今日も歩く。この星に、光は・闇は・平穏は・災厄は、すこやかに在る。
   そしてボクは受け取った。上条恭介の手紙を。ボクはこの瞬間、初めて、彼に触れられたのだ。彼の自由意思……」

QB「これの、どこが、自由意思だ」

QB「巨大な、それが何であれ、大きな大きなものが己に乗りかかってきた時、出来る事は二つしかない。
   『従う』か、『抗う』か。どこが自由意思だ。彼は、己の状況を理解しきっている」

QB「よってこれは、機械的な意志。メアリも手紙も、機械機械機械なのだ。機械仕掛けだ。彼の産みだすもの全てだ」

QB「さて、機械仕掛けの手紙に、添付されている信号がある。この構成は人間の大便だ。これも機械だが」

QB「…………嫌がらせじゃね? とキュゥべえはキュゥべえは嫌な顔をしてみたり」

QB「だがこの大便を解いてみよう。現れるチョコレートファウンテン。ただし糞便の臭気。泉は枯れる。
   ──プラチナのソウルジェムが出てきたぞ」

QB「もはや驚かない。思えば、ボクの契約した上条恭介、あれは最初からメアリ・マキナだったのだ」
660 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/22(水) 21:55:39.79 ID:5R49QKy0o
QB「あの病院の寝台に横たわっていたのは、上条恭子=メアリ・マキナであった。
   ヴァイオリンの音色で、幼いさやかを魅了したのも、上条恭子=メアリ・マキナ。
   恭介の名を与えられ、上条家で育ったのは、そうだ、上条恭子=メアリ・マキナ。
   この星のダレも、この宇宙のダレも、上条恭介に触れた事はない。例外は産婆と、母親のみだ」

QB「生まれた瞬間、カレは、己の魂に添い寝する糞山の王を、理解したのだろう」

QB「ああ。ソウルジェムが。プラチナのメッキが崩れる。中はみっちりと詰まった糞糞糞糞。溢れ流るる糞汁」

QB「これが、真の上条恭介、彼の魂の、原初の光景」

QB「見れば糞便。嗅いでも糞便。歌すら糞便の世、赤子は溺れ死んでしまう……だから彼は、まず舞台装置を」

QB「メアリ・マキナの原型をつくったのだ。そして、メアリを足場にメアリを増やした。少女を踏んで。糞に沈めて、少女をフンで。
   彼女は第二の光景。彼女は魂のゆりかご。彼女は機械仕掛けの理想。彼女は否定から生まれた娘。彼女は電波銀河の信号少女。
   彼女は心臓。彼女は皮膚。彼女は燃料。彼女は排出物。彼女は世界。彼女は物語。彼女は万能の王子。彼女は宿命の魔女」


QB「彼女は──……悲鳴を上げて逃げ回る以外の選択肢」


恭子「そうとも、キュゥべえ」

QB「やあ、魂の感じられないメアリ」

恭子「そうさ、新型メアリ・マキナはハートレス。機械仕掛けの、人でなしメアリ。ハエ取り器を強固に覆うビニ袋の恭子さ。
    暁美ほむらとバカンス中の妹は、きちんと君に伝書鳩ってくれたかい?」

QB「上条恭介からの手紙を受け取ったよ」

恭子「それで、黒ヤギってはないよね?」

QB「食べずに読んだよ」
661 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/22(水) 21:57:58.65 ID:5R49QKy0o
恭子「それは結構。というわけで、心中しようね、キュゥべえ」

QB「今のボクらの技術では、キミに抗えまい。大した進化速度だ」

恭子「そうだね。褒められると照れちゃうな。ところで、洗濯槽の奥で何をしているんだい?
    うっかり気づかず衣類を投げ込んで、気づかず動かしてしまう所だったよ」

QB「イエネコの習性を学んでみたんだ」

恭子「そう、でもドラム式に入るのはオススメしない。イエネコは、あくまで飼い主のわかる範囲に潜むんだ」

QB「あくまでネコの主観による判断だろうけど」

恭子「それだよ。主観以外でものを見れる生き物はいない。己と他者の間、主観こそ全ての主。自由意思など、ありはしない。
    だからさ、そんな風にあんまり奥まった場所で気配を消されると、本気で身を隠したいみたいだよ?」

QB「ボクはキミ達から、一度だって身を隠した事はないよ。だってボクは、いつだって魔法少女と繋がっている」

恭子「そうだとも。君と僕らは一つだ。互いから逃げる事はできない。逃れる事は適わない」

QB「だから、心中だね」

恭子「そうとも、そうさ、それで、それは、そうだね、そう、それだよ、そうだとも」

 ……恭介ー、終わったー?

QB「さやかが降りてくるよ」

恭子「ああ。ヴァイオリンを弾いてあげないと。約束だからね。もう毎日、さやかのために弾いているよ」

QB「キミが佐倉杏子なんか身代わりに仕立てるからさ。せめて楽器の弾ける誰かにすればよかったのに」

恭子「杏子さんくらいしかいなくてね、齟齬から刃傷沙汰にならず済みそうなのは」
662 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/22(水) 21:59:38.36 ID:5R49QKy0o
 …カチャ

さやか「恭介〜」 ギュー

恭子「さやかはせっかちだなぁ。洗面台拭いて、このタオル洗濯機に入れたら、すぐ戻ったのに」

さやか「だって、お腹……赤ちゃんがもう少し大きくなったら、またしばらく会えなくなるんでしょ?
     今度は、ずっと長く……。なら、それまで。ちょうど学校もないし」

恭子「学校がないからって、勉強はしないといけないよ。さやかは、すぐ隣町の学校に移るんだし。
    僕だって、入院中、ちゃんと勉強はしてたんだからね」

さやか「いーよ、あたし恭介みたいに頭よくないもん。してもしなくても変わんない」 モミ モミ

恭子「露骨に胸を揉むね、さやか」

さやか「恭介がいない間、こっちの勉強をしたのだー」

恭子「どんな勉強だ」

さやか「ね、恭介」

恭子「ん?」

さやか「あたしの事が好きなら、キスをして」

恭子「……。どうしたんだい」

さやか「こないだ突然いなくなっちゃった罰なのですよ。えへへ」

恭子「お詫びに毎日ヴァイオリンを弾いてあげる約束で、チャラじゃなかったっけ。
    だいたい突然じゃないよ。あれは志筑家に呼ばれたんだ。さやかにも説明したろう?」

さやか「そうだっけ?」
663 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/22(水) 22:01:26.38 ID:5R49QKy0o
恭子「さやかは頭が悪いなあ」

さやか「あたしは頭が悪いなあ」

恭子「息の仕方も忘れてやしないだろうね。はい、ちゅー」

 チュ

さやか「えへ。ちゅーもらっちゃった。……忘れちゃってるかも。息の仕方」

恭子「それでは死んでいるはずだよ」

さやか「死んでいるのかも」


 あたしは恭介が好き
 恭介はあたしの天使
 あたしは恭介に救われる


さやか「でもそしたら、恭介が連れてってくれるから、いい」

恭子「うん、僕は連れて行く必要があるらしい。君を病院に」

さやか「どこも何ともないよ」

恭子「いくらなんでも熱が高い。鏡を見てくれ、顔が真っ赤だ」

さやか「恭介のせいだよぅ。ふへっへ」

〜キッチン

QB「……いいのかい、杏子」

杏子「あのイチャイチャに混ざれっつーのかよ」
664 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/22(水) 22:05:01.84 ID:5R49QKy0o
今日はここまd爆発しろ!
665 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/06/22(水) 22:12:26.39 ID:cfGmqsZE0
まどっち乙乙
666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/22(水) 22:16:44.36 ID:F72+9Dq2o
乙っち乙まど



なんだこのサッカリン並の甘さは、たまげたなぁ
667 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) :2011/06/22(水) 22:38:03.13 ID:XqJzjs3K0
アストラルな魂そのものが既に「蝿床の魔王」だからマテリアルの心に正気をメッキ貼り。恭介こそが魔王、その絶望を否定するのが恭子。
ソウルジェムに閉じ込めていた筈の破滅はほむらの呪いによって遂にガスが弾け、夢と希望の蝿取り器は時計の魔女を再開の魔法少女に
巻き戻す様に流浪のワンダーランド中。かえってこーい。物語がやり直せないぞー。

ならば夢と希望を忘れた魔法少女さやかといるのはゼブルの筈。仲がいいのは鍵だから?
668 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/23(木) 00:26:00.43 ID:fHyogpF9o
乙っちまどまど!
669 :BENPER [sage saga]:2011/06/23(木) 21:36:48.62 ID:rcOYzA6so
もう大したどんでん返しもなくなったので、ゆるい感じで進みます

第十一話『女がいつも下着を履いてると思うんじゃねーよ』
はじまるよー
670 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/23(木) 21:38:06.44 ID:rcOYzA6so
QB「ボクが言ったのは、そのフライドカボチャチップス明太トリプルチーズすき焼き味210gを開封してよかったのかという事だよ」

杏子「甘辛くてガツンとクるんだぞ、コレ」

QB「フライドカボチャチップス明太トリプルチーズすき焼き味210gは、みんなで食べる約束ではないのかい?
   君がスーパーマーケットで床に手をついてそう言うから、しぶしぶ恭子も買ったんだろう?」

杏子「いーんだよ」 ムシャムシャ

QB「さやかは反動が来ているだけだよ。そのうちおとなしくなる」

杏子「ねっこが変わるわけじゃねェもん。さやかが好きなのはアイツ。どこまで行っても、アタシは横槍。
    その横槍を、都合良く使いやがったすけこには、腹立つトコもあっけどな」

QB「出掛けに急いでキミにさやかを投げたけど、うまく引っ掛けられて良かった、と言っていたよ」

杏子「アタシはさお竹か! さやかは洗濯物か!」

QB「さお竹だなんて。いくら杏子の体型が、キミ達の言ういわゆる寸胴ぷぎゅっ」

杏子「それ以上は発言を許さねーぞコラ。あーもー。
    仁美チャンは家に戻ったらしーが、具合が良くなるまで面会も出来ねーらしーし。
    マミも、エリィと引きこもってるみたいだし。すけこはさやかの専用機だし」

QB「きゅみっ。ボクの顔を、パン生地みたいに、こねないで、ほしい、な」

杏子「……アイツ、さやかさ。アタシとグチャグチャ乳繰り合った記憶、そのままなんだよ」

QB「……そのようだね。きゅむ」

杏子「そのまんま、だ。アタシがヤっちゃって、それから、すけこが突然に留守して、その間、アタシと。
    すけこの不在認識だけが足されてる。でもな、それって、どーいう事か、オマエにわかるか?
    ……好きな人がいないので、だから、他のヤツと朝から晩までヤりまくりましたー。何ソレ?」
671 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/23(木) 21:39:35.81 ID:rcOYzA6so
杏子「百歩譲って、アタシの役に立とうとした、さやかの献身だったとして……じゃ、今は何だ。
    連日、あんな、見せつけて。ソレこっちから言ったらさ、困った顔で。もうしないで、って。アタシに。
    は? 今更、操立て? すけこに少しでも悪いと思ってたら、アタシを追い出すとか、そういう……!」

QB「美樹さやかはそういう娘だ」

杏子「…………」

QB「美樹さやかは最初からそうだ。キミはそれを理解していたのだから、裏切りにも嘘にも当てはまらない。
   もっとも、罪人に仕立て上げたいがために、己の知性を引き下げる証言をする事もできるが」

杏子「ンだよ……宇宙生物のクセに、わかったよーな口きいて」

QB「キミとさやかの関係については、恭子も気にしているようだよ。キミに悪い事をしたって。
   まったくみんな、マミになったみたいだ。ボクに相談事なんて」

杏子「ヤツが悪いと思っているなら、このカボチップスは食べてもオッケーだろ」 バリバリムシャムシャ

 〜〜♪

杏子「始まった。二人きりのコンサート。出歯亀なんて、はしたない」 ボリボリ

QB「そんなに後悔するなら、さやかとセックスしなければよかったのに」

杏子「セックスとか乙女の前で口走んじゃね〜よ。ヘンタイ。ヘンタインキュベーター」

QB「そう鬱屈を溜めこむと、ソウルジェムに影響が出るよ。解消して置いたほうがいい。昨日も言ったけど、いずれ来るワみゅ」

杏子「黙れ、この外道鬼畜ウチュージンが。勝手にヒトを宇宙の歯車にしやがろうっつー魂胆だったくせに」

QB「宇宙の歯車の潤滑油と言うほうが、より正確かな。歯車は揃っている。宇宙のシステムは滞りなく稼働中だ」

杏子「はいはい、宇宙のため御国のため、欲しがりません勝つまではー、っと」
672 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/23(木) 21:42:17.46 ID:rcOYzA6so
QB「……杏子。キミは、ボクが嘘をついているとしたら、どう思う?」

杏子「あ?」

QB「この宇宙の寿命のために、ソウルジェムになってほしいと、ボクはキミ達と契約した。
   でも、それが嘘だったとしたら?」

杏子「いや、アンタは魔法少女になれって、……結果的には同じか……。んで?
    それが、ってのは、宇宙のためってのが嘘だったら、と?」

QB「本当は宇宙を破壊せんとする、『魔王』キュゥべえだったのだ、と」

杏子「そりゃマミが泣くな。最後の一線だったのに」

QB「最後の一線」

杏子「アタシもそりゃ嫌だね。魔法少女になっても、誰にも褒められねーわ、独りになるわ。
    その上、ヘタこいたら魔女になるとまで言われてんのに。宇宙のためにもならねーとか。
    でも、オマエがそうだっつーんなら、そうなんだろーなァって、納得はするわな」

QB「避けようのない滅びも、嘆きも、受け入れるのかい?」

杏子「いいや、受け入れない」

QB「?」

杏子「誰の役にも立たない、災厄の運命? アタシは認めない。最後の最後まで抗う」

QB「…………」

杏子「むなしくともみっともなくとも、抵抗してやんよ。そして言ってやる。
    オマエがそうだっつーんなら、そうなんだろーな。オマエん中ではな。っつってな!
    避けようのないなんて言わせない。滅びも嘆きもクソクラエだ」

QB「なるほど」

杏子「べつに隣人愛だのは説かねーけどな。せめて、誰かのためとか、この星のためとか、なりたいよ。
    でなきゃ救われないじゃないか。何のために人間はカーチャンの腹から生まれてくるんだ」
673 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/23(木) 21:43:39.37 ID:rcOYzA6so
QB「…………」

杏子「どーせヒトデナシでヨソ者のオマエにゃ、わかりゃしないだろうが……。あんだよ、その顔?」

QB「そこまで言い切れるキミが、さやかの件に関しては」

杏子「黙れ」


〜寝室

さやか「ねー恭介、ソウルジェム見せてぇ」

恭子「はい」 ポン

さやか「相変わらず、綺麗」

恭子「不透明だけどね」

さやか「…………」

恭子「…………」

さやか「……」 ニコッ


 ガリッッ


さやか「……あ、っつぅ〜。痛たたた」

恭子「歯が折れるよ?」

さやか「かたーいんだね」

恭子「強固だからね。恭子だけに」
674 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/23(木) 21:45:31.57 ID:rcOYzA6so
さやか「うー、痛い」

恭子「本当に大丈夫? 見せてごらん、歯が欠けてたりなんかしたら……」

      …ガシッ

さやか「…………首も強い?」

恭子「……腕が折れるよ」

さやか「…………強固?」

恭子「恭子だけにね」

さやか「恭介は強いんだね。ふふふ、強い……絶対無敵……誰も適わない」

恭子「そんな事はないけど」

さやか「……だから」

恭子「ん?」

さやか「いつだって、一人でも、大丈夫なんだよね」

恭子「……。さやか、やっぱり熱があるんじゃない?」

さやか「ちがうよ?」

恭子「ちょっと計らせて」

さやか「ちがうってば。ありがとう、今日も聴かせてくれて。あたし、ちょっと学校の勉強するね」

恭子「あわわわ雹が降るぞ槍が降るぞ」

さやか「そこまでバカキャラしてないよ!?」
675 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/23(木) 21:47:47.98 ID:rcOYzA6so
〜キッチン

杏子「何だソレ」

恭子「何かってキス、いや、アジだよ。これからゼイゴを取るんだよ。鱗もね」

杏子「計量スプーンでか?」

恭子「……あれ?」

杏子「さやかとイチャコラしすぎて、のぼせたかァ?」

QB「(人間は本当に、治りかけのカサブタを自ら剥がすのが好きだよね)」

恭子「うーん、集中力が。どうにも、明太子とチーズとすき焼きのタレ風味の刺激的な匂いがしてね」

杏子「ギクッ」

恭子「あんな調味料を厚塗りした揚げ菓子を食べたなら、ごはん減らさないとね?」

杏子「半分しか食べてねーのに!?」

恭子「半分も食べたの!? ……もー。杏子さん、それじゃスープしかあげられないよ。
    ああそうだ。キュゥべえ、魚食べられるよね? アジ、おいしいよ」

杏子「やだー、アタシのアジだー。アジ食べたい。アジぎり食いたいよぅぅ」

恭子「アジぎり?」

杏子「アジフライおにぎり作ってよぅぅ」

恭子「今日は、アジのムニエルにトマトソースの予定だけど」

杏子「オマエの言うそれは、ちょびっとの魚とたっぷりの野菜のトマト煮じゃねーかー! ヤダー!」
676 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/23(木) 21:48:43.28 ID:rcOYzA6so
恭子「文句言わないの。あーもう、アジが傷んでしまうよ。とりあえず作るから邪魔しないで」

杏子「って、すけこ手に持ってるそれ、ソウルジェムじゃねーかー!」

恭子「……あれ? あっ」

 ツルッ

      ガシャァァン!

杏子「ギャアアアア! 落としたソウルジェムが、いともたやすく割れたー!」

恭子「包丁とソウルジェムは間違えやすいから、気をつけないとね」

杏子「どっこも似てねーよっ!? ってか、すけこ生きてるー!」

恭子「ダミーだお」

杏子「だお!?」

恭子「杏子さん、おやつ食べたんだから、アジはいらないよね」

杏子「ヤダー!」

恭子「キュゥべえ、アジぎり食べられる? っていうかアジぎりって何?」

QB「ボクは大抵のものは食べてみせられるけど。ちなみにアジぎりは……アジフライをおにぎりと重ねたものだそうだよ」

恭子「へぇ。そんな情報、どこから?」

QB「たくさんの少女と過ごしてきたからね。情報には強くなるのさ」

恭子「ソウルジェム経由で収集もできるしね」
677 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/23(木) 21:50:41.03 ID:rcOYzA6so
QB「…………そうだね」

杏子「は? ナニソレ」

恭子「キュゥべえは、魔法少女や魔女の情報を、ソウルジェムやグリーフシードを通じて、自由に集められるんだ。
    なにせテレパシーが使えるんだから、それくらいの事はできる」

杏子「それはつまり、アタシらの生活を勝手に覗いたり……」

恭子「性格傾向を知っていれば、サポートに役立つよね。もちろん契約もスムーズに進む」

QB「…………」

杏子「おい、キュゥべえ。オマエ、まさか」

QB「……なんだい、杏子」

杏子「トイレの音とかも聞いてた?」

QB「別にボクらは、排泄や放屁の音に感想を持ったりしないよ」

杏子「オマエがどう思うかじゃねェ! アタシらには問題なんだ! もしやヨソで吹きまわったりしてないだろうな!?」

QB「そんな事をして、ボクに得があるかい?」

杏子「イエスかノーで答えろ! オマエの返答はいちいち、はぐらかしてるようにしか聞こえねーぞ!」

QB「誰にも言ってないよ。これでいいかい?」

杏子「ったく油断も隙もありゃしねー。いくら宇宙レベルのイホージンでも、現地のマナーくらい学べっつーの」

QB「以後、気をつけるよ」 トテ トテ

杏子「どこ行くんだ。あっ、マミ達のも聞いたりすんじゃねーぞ!」

QB「しないよ。今までもこれからも、ボクから能動的に集めたりしない。いつだってキミ達が勝手に出してるだけなんだ」
678 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/23(木) 21:53:09.65 ID:rcOYzA6so
今日はここまで
イラキュゥべえ
679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) :2011/06/23(木) 22:01:41.82 ID:E7YLdq3d0
ダミーにしても何か致命的なダミーが爆ぜた様な気がする・・・
ゼブルと恭介とすけこの距離感が掴めんとこの話は難しいぞ。
680 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/23(木) 22:37:58.04 ID:fHyogpF9o
乙っちまどまど
予想展開を書くのはよそうな
681 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/24(金) 19:42:53.41 ID:mgIoLCkko
難しい難しい……乙
682 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/24(金) 21:34:48.80 ID:q8Dh3g/5o
今「こうして欲しい」展開とか書くと、ストーリーにねじ込めるかもしれないぞ!

なぜなら続きは消失してしまったからだ。

それでは十一話『上半身さえあれば良い』の始まり始まり!
683 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/24(金) 21:36:48.63 ID:HssMHBX5o
マジかよ
684 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/24(金) 21:36:53.25 ID:q8Dh3g/5o
杏子「つくづくアブナイ野郎だ。あのヘンタイめ」

恭子「キュゥべえはそういう機械だ」

杏子「……アイツと同じよーなコト抜かしやがって。機械。機械か?
    機械だってダメだろ。機械にだって、やっていい事と悪い事がある」

恭子「機械を裁判に掛けるかい?」

杏子「だが問いかけぐらいはあるべきだろ。それこそ、愛があるなら」

恭子「杏子さんが偶像崇拝派だったとは」

杏子「違うね。偶像崇拝じゃない崇拝は無い派だ」

恭子「ならば全ては機械かもしれない」

杏子「それこそキュゥべえから見れば、人間はみんな機械なんじゃねェの」

恭子「そうかもね。それもずいぶん、質の悪いマシンなんだろう。彼には感情が無いそうだしね」

杏子「でもアイツ、わりと感情あるよな。や、絶対あるって」

恭子「ルンバに人格を感じるみたいなものかも」

杏子「ルンバよりある。ルンバはできる・できないは言うが、選り好みしない。キュゥべえの奴は、さやかの事、絶対キライだぞ?」

恭子「アホウドリを見るような目をしているとは思うよ。特に性能の低いマシンだと思ってるんじゃない?」

杏子「そりゃさやかは、ちょいとばかし抜けたトコもあるが……ああ、でも、……いや、もしかしたら嫉妬かもな。
    アイツ、キュゥべえはさ、オマエの事、好きなんじゃねーの? それで」

恭子「……杏子さんは直感が鋭いと思っていたけど……」

杏子「なんだその顔は! アホウドリを見るみたいな目すんな! ねーよって自分で言ってて思ったよ!」
685 :BENPER [sage saga]:2011/06/24(金) 21:40:25.54 ID:q8Dh3g/5o
>>683
大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫
686 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/24(金) 21:41:01.87 ID:q8Dh3g/5o
恭子「杏子さん、面白い」

杏子「どう聞いてもバカにしてます本当にありがとーございました」

恭子「キュゥべえは、誰かがキライという事はないはずだよ。この星の人間全員、ある意味ラブだろうさ。
    そうでなけりゃ、全員がキライさ。養豚場の豚を見るように」

杏子「家畜を見るように、機械を見るように。……やっぱ外道だわ」

恭子「でも、利害がもっと一致したら。それこそ、人類と彼に、共通の敵でも現れたら。
    ひょっとするとキュゥべえは、それこそ最も人道的なキャラになるのかもしれない」

杏子「そう見えるキャラクターには、なるかもな。ただ、そん時だけで終わりそうな」

恭子「それは仕方ないさ。今の僕らだって、魔女が人間を襲うから、善良に見えるだけで」

杏子「あー……。でもマミは違うぞ。さやかだって。アタシはともかく……アイツらは善良そのものだ」

恭子「僕は?」

杏子「オマエは人を喰うキャラだから」

恭子「ちぇ。杏子さんってば」

杏子「だってオマエ、アタシらに隠れて、喰ったりしただろ」

恭子「…………」

杏子「前にゴロゴロ出したグリーフシードは、そういう事だろ? すけこ、オマエの能力はスバ抜けてるからな。
    察知なんて、街全体もイケるだろ。その上で、攻撃、防御、治癒だろうが、何でもアリと来ている。
    魔女狩りソロプレイ余裕です、だ」

恭子「ああ、うん。……そう。食べた、というか、潰した、というか」
687 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/24(金) 21:42:53.95 ID:q8Dh3g/5o
〜二階

QB「勉強をするんじゃなかったのかい」

さやか「キュゥべえ、いつからそんなオカアサン気質になったの。それともドラちゃんイメージ?」

QB「キミ達は、他者から発信される嘘にああも敏感なくせに、己の嘘には、こうも寛大だ」

さやか「嘘じゃないもん、ちょっとはしたもん。それに勉強くらいの事で、恭介だって怒ったりしないよ」

QB「キミが上条恭介の何を知ってるんだい?」

さやか「……何をって」

QB「何をすれば怒るか、何をして喜ぶのか。キミに把握できているとは思えない。
   実際、キミはキミの願いで、カレがどれほど変容したのか……いや、キミがカノジョに触れた瞬間、何が起こったのか。
   キミはカノジョに、どれほどの事をしたのか。カレにどれほどの事をするのか。まったく知らないだろう?」

さやか「意味がわかんない」

QB「上条恭介を女の子にしてほしい。キミはそう願った」

さやか「それは、あたしがもっと他の願いとか……たとえば、恭介の腕が治るよう願うべきだった、って事?」

QB「腕だの、指だの……入院していた上条恭介がどんな状態だったか、わかっていないのかい?」

さやか「知ってるもん」

QB「いいや、わかっていないと思うよ。」

さやか「知ってるよ。運動障害。左手と左足が思うように動かせないんでしょ。最初はベッドに座るのも大変だったって。
     手を身体の下に巻きこんじゃったり、つらくて食事を半分も残しちゃったり……」

QB「……感覚障害」

さやか「それも知ってる。からだの左側が痺れる。左側は目もよく見えないし、手の感覚もあんまりないって」
688 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/24(金) 21:43:36.93 ID:q8Dh3g/5o
QB「…………ハァ」

さやか「何、その、ため息」

QB「半側空間無視」

さやか「……?」

QB「左側の目がよく見えない。キミはそれを、視界の半分が暗いとか、ぼやけているとか、そういう風に思っているんだね」

さやか「何が違うの」

QB「視界そのものが半分ないんだよ」

さやか「恭介は目が見えてたよ!」

QB「見えていた、と、キミにはそう見えていたんだろうね。キミの世界。キミの物語。キミのモノローグが挟まれた、その場所では」

さやか「どういう事」

QB「……彼には、よく向く方向があったのではないかな。病室の窓際のベッド、彼の健常な右半身は、扉側? 窓側?
   認識を失している以上、リハビリは『とにかく左を取り戻す』事。注意と学習を繰り返し、把握の仕方を体で覚えるという事。
   美樹さやか。思い出してごらんよ。彼は、本当に、正常にものが見えた? まっすぐ座っていた? きちんとものを食べてた?
   ──キミの願望ではなくて、本当の、事実はどうだった?」

さやか「…………」

QB「こうなるとアヤシイものだ。キミの認識は正確なのかな。彼は左半身の肉体の感覚をも、失認していたんじゃないかい?
   本当に、手の感覚が『あんまりない』だけ? 気を抜いた彼が、ベッドから転げ落ちているようなコトはなかった?」

さやか「だって……恭介がそう言った……」

QB「やれやれ。彼のせいか。キミの言う『好き』は、責任を押しつけやすくて好きってコトかい?
   それじゃ彼も、事故でどこが傷つき、どんな後遺症があるのか、キミに正しく話さなかったとしても、仕方ないね」

さやか「違うっ!」
689 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/24(金) 21:45:23.11 ID:q8Dh3g/5o
QB「まぁキミ達の基準でいうなら、『幼馴染みの女の子』に対する態度としては、少々、冷たいかもね。
   彼はキミに対しては特に冷たいよね。……ボクには、病院で、視界の事は話してくれたのに」

さやか「……!」

QB「おっと、そこで耳を塞ぐかい?」

さやか「…………ふ、ふさ、がない」

QB「キミ達はくだらぬ意地に固執する。特にさやか、キミはまるで、わかってない。上条恭介を救いたい?
   そんな事、思ってないだろう──現に、キミは上条恭介の下半身を無視しているよね」

さやか「か、下半身って」

QB「またそういう浅はかな妄想をする。キミ達はどうしようもないね」

さやか「どういう事よ……」

QB「排泄障害。事故の後、彼はおむつをしていたんだよ」

さやか「」

QB「手術直後は、おむつをして眠っていたんだ。尿道にチューブを通されて、ビニールのパックと繋がれてね。
   半身が不自由なんだ。当然だろう? でも、キミは知らなかったんだね。考えもしなかった」

QB「キミだって風邪くらいは引いた事はあるだろうが、足を失った事はないだろう? 五体満足でよかったね。
   キミは、それほど排泄に関して困った事もないだろう? うんこも平気な小学校生活、順調な人生、おめでとう」

QB「だから判らないだろう? 大きなダメージを受けた肉体が、どれほど排泄を困難とするか。
   健常な肉体で生きてきた十四歳の少年が、己で排泄物を処理できない事が、どれほど屈辱か」

QB「ベッドわきに置いたポータブルトイレまで移動するだけの事が。その処理を、他者に頼むしかない状況が。
   半身の正常さを失ったと自覚しながら、排泄機能をコントロールするのが、どれほどの感情を伴うのか。
   焦りに、恐れに、羞恥に、どれほど精神を苛まれたか。わかるかい? キミにわかるかい?」

QB「おかしいな、人間のキミのほうが、よく理解できるハズなんじゃないのかなぁ。ましてや、キミが大好きな、上条恭介の事だろう?」
690 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/24(金) 21:46:20.01 ID:q8Dh3g/5o
〜キッチン

杏子「オマエの強さはさ、羨ましくもあるし、気に食わないトコもある。……気味が悪くもあるよ」

恭子「正直に言ってくれて嬉しいよ。でもね、僕はちょっと、燃料が多いだけなのさ。
    ──生まれつきの、どうしようもないもの」

杏子「素質? 才能の違い?」

恭子「『そんなの』は、生まれつきでも、どうしようもないものでも、ない」

杏子「抜かしおる。抜かしおるわ。ぬわーっ」

恭子「さやか。マミさん。杏子さん。仁美さん。キュゥべえも。僕は守りたいと思っているよ」


 守りたいと
        思っているよ
 喰いたいと


杏子「……頼もしいねェ」

恭子「えへ」

杏子「オマエがいれば、ワルプルギスの夜が来ても、何とかなりそうな気もしてる」

恭子「ワルプルギス……ああ、キュゥべえが言っていた? いずれ来るあの大きな災厄、とかって」

杏子「魔女が集うのが、その超ド級が来るマエブレなんだってよ」

恭子「……つまり」

杏子「キュゥべえが珍しく自分から切り出しやがったネタだ。そう、今なんだってよ。
    いっぺん奴らが少なくなったと思ったら、この連日の発生率。奴さんも、こりゃ確定と睨んでるらしいぜ」
691 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/24(金) 21:47:38.84 ID:q8Dh3g/5o
恭子「明らかに増えているね。──魔女だったエリィさんも、惹かれ、引きずられるように見滝原へやってきた。
    もともとこの街は多いって話だったけど、おそらくそれは、近隣の身軽な魔女達が、一足先に集まっていたんだろうね。
    で、今、遠方の魔女も、鈍重な者も、ようやくやってきた」

杏子「先発組が落としてった使い魔の成長も加えて、第二波はデカイ」

恭子「巣がひしめき合い……気配が特定しにくくなった。生まれたての赤ん坊みたいな使い魔まで、外をうろついてる。
    災厄の新芽。まだ牙を持たない個体だとしても、そこに居るだけで、結界の淵を拡げるから厄介だ。
    契約したばかりの魔法少女も、瘴気に呑まれ、魔女と化した」

杏子「……ああ」

恭子「僕が、もっと早く戻って来ていれば、……学校も、潰されずに済んだのかな」

杏子「わかんねーよ。同じ学校、同じクラスのヤツだからって、止められたかどうかなんて。
    でもオマエは人を助けたじゃないか。さやかは五体満足。その場にいた奴らも助かってる。
    あの爆発だぞ? 本来、助からなかったはずの人間だ。それを、オマエが助けたんだ」

恭子「本来、ね」

 助からなかったはずの人間
 崩壊しなかったはずの建物

 を

 助けたんだ
 潰したんだ

杏子「あん時ゃ、肝が冷えたけどな。さやかがぶっ倒れてて、さらにオマエまで転がってて。
    魔女を見つけた時、ぶっちゃけ足がすくんだ。どんだけ強いのか……でもあっさり倒せて、二度ビックリ」

恭子「僕は負けてないもん。それにきっと僕が先に与えたダメージのおかげで魔女倒せたんだよホントだよ」

杏子「ハイハイ、嘘乙。犬神家みたいに刺さってたくせに」
692 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/24(金) 21:48:33.03 ID:q8Dh3g/5o
杏子「……。つーかさ、あのカッコどうしたんだ。いやポーズのほうじゃなくて。
    服。マントにブーツに。マミが、さやかみたいっつってた。魔法少女だった時のさやかみたいだ、って」

恭子「うん。ちょっと、ドレスってムードじゃないかなって」

杏子「だが、さやかのはミニスカだったって聞いてるぞ。オマエのは……」

恭子「ホットパンツだけど、ダメ?」

杏子「ホットじゃない人肌のぱんつがイイ。見えないより見えるほうがイイに決まっとる!」

恭子「えー……でも杏子さんだって、普段スカート履かないじゃないか」

杏子「バッカ、いくらなんでも、具まで見えたらマズイだろ。女がいつも下着を履いてると思うんじゃねーよ」

恭子「何を言っているのか。今の僕には理解できない」

杏子「アタシにだって恥じらいはあるんだよ!」

恭子「僕にだってあるよ。あるからホットパンツなんだよ」

杏子「やだやだスカートにしろよー。フトモモまで見せるならパンツだって出せよォー」

恭子「ヒト族の恥じらいと、裸族の恥じらいは別物らしい。ってゆーか、杏子さん今パンツ履いてる?」

杏子「ヘンタイ! ヘンタイ! ヘンタイ!」

恭子「理不尽すぎて泣きそう」

杏子「泣かせちゃうぞー」

恭子「しくしく。杏子さん、トマト缶、開けて」

杏子「もうちょっと付きあえよ。っつか、自分で開けろ」
693 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/24(金) 21:49:11.57 ID:q8Dh3g/5o
恭子「やだ。指、痛くなっちゃう」

杏子「切断されたって、パパッと治せるくせに。このウソツキが。大嘘吐きが。たまには本当の事を言え」

恭子「それは、杏子さんの信じる心が足りないのです。僕を信じていれば、僕の言葉が真実に聞こえるはずです」

杏子「結局それを偶像って言うんだよ」

 カパッ

杏子「神様は、この消費尽くされる前のトマトスープと何ら変わりない」

恭子「杏子さん」

杏子「おう」

恭子「それ、ラタトゥイユ缶だった」

杏子「んがッ!?」

恭子「ま、いーか。きっと美味しいよ。とろけたナスの口当たりはイイよね」

杏子「オイちょっと。やだ。ツッコミくれよ。まるでアタシが本気キメ顔でキメちゃった、みたいじゃないか」

恭子「神様も、きっと美味しいんだよね。口当たり最高っぽい感じ」

杏子「ツッコめよ。そして神は食い物じゃねーよ。いや既にクイモンにされてるか? や、だからって」

恭子「でも食後最悪だよ。インガンダルマ食べたみたいになりそう。そして殉教者の尻油が戦争の火種となって」

杏子「すけこは世界に要らん設定を付けすぎ。
    ……あー、やっぱ話反らすんだな。結局、ストレートに聞くしかなくなるじゃねーか」

恭子「いや、僕のせいにされても。半分は確実に、杏子さんが自分で話反らしてる……」

杏子「なんで狸寝入りしてやがった。あのポンポン花火打つだけの魔女に負けたなんて、嘘だろ」
694 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/24(金) 21:51:21.26 ID:q8Dh3g/5o
今日はここまで。
不幸だーっとか言いながら泣いて寝る
695 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/24(金) 21:57:02.14 ID:SivQz4zQo
乙っち乙まど



料理描写のあるまどマギSS書きは総じて下品な表現も多用するんだよね
これ何か因縁でもあるのかしらん
696 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) :2011/06/24(金) 21:59:12.90 ID:Psmizz6L0
うむむ、誰も彼も意図が読めない。ゼブルはQBとしての同期に成功したのか?
流石に今回は抒情詩が作れそうに無いぞ。
697 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/25(土) 00:16:57.26 ID:SLvV0/+Jo
乙っちまどまど
頑張れ、超頑張れ
698 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2011/06/25(土) 00:33:18.14 ID:JOfzUjI20
699 :BENPER [sage saga]:2011/06/25(土) 21:16:34.54 ID:8kvLbfklo
食事と性交、排泄と出産、インスタント生活感。まどか世界とはミスマッチでオイシイ。
一見頼りがいのある教師とイイ仲になって妊娠したマミさんの、六畳一間で誰も呪わない一生とか見たい。
あとコメディに抒情詩とか合わん。電波ソングのほうが似合いだ。

つづきー
700 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/25(土) 21:20:01.84 ID:8kvLbfklo
〜二階

QB「障害。失認。驚愕と苦悩。……彼が最も大変だったその時期に、キミは見舞いに来ればよかったのに」

さやか「……あたしが……助けになれたかもって?」

QB「まさか! 身内に触れられる事すら嫌がる、張りつめた時期に、キミのような愚かな娘が手を出せば、どうなるか。
   どんな温和な人間だって、爆発しただろう。絶交、絶縁、どうしようもない決裂も可能だったのに」

さやか「…………」

QB「それを上条恭介だって望んでいたんだよ? キミは想い人の願いすら、わからないんだね」

さやか「それが恭介の望み……?」

QB「上条恭介がボクに話してくれたんだよ。キミには話していないというなら、それはキミが聞かなかったせいだ。
   聞かないくせに、わかっていたつもりなんて、おこがましいと思わないかい?」

さやか「わかってる」

QB「この星の人間でないボクでさえ、ここまでワカルのに。キミは察する事もできたのに。そうしようとは、しなかった」

さやか「わかってる」

QB「この国には、産む機械という蔑称があるそうだね。そうだ、キミにとっての上条恭介は、産む機械だったんだ。
   感動を産む機械。ねじを回せばメロディが流れる、音楽人形。見目も麗しいオルゴール。かわいいオモチャ。
   キミは上条恭介の下半身を無視した。当然だよね。ヴァイオリンを奏でる手と、美しい顔されあればよかったんだから。
   キミは上条恭介の下半身を無視した。上条恭介の心身の、じつに半分をも無視した。上条恭介の自由と尊厳を無視した。
   ──ボクがキミたちのように感情を表現するなら、こう言わせてもらうよ。献身とか……マジウケル(笑)」

さやか「……わかってるっ」

QB「上半身さえあれば良い。それが本心だろう? ほら、口に出してごらんよ。上半身さえあれば良い、上半身さえあれば良い」

さやか「そんな事は思ってない!」

QB「────本来だったら、キミは憎まれて然るべき存在じゃないかな」
701 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/25(土) 21:26:32.93 ID:8kvLbfklo
QB「美樹さやか。キミは、あまりに彼を知らない。知ろうとしない。まるで、そうプログラミングされているかのように。
   従順なフリをして害を振りまくよう仕込んだのは、誰かな? 父親? 上条恭子? ……自分自身?」

さやか「……ちがうもん……あたしは……」

QB「キミは、自分と一緒に住んでいる上条という性の少女について、これっぽっちも知らない。
   キミの言う恭介は、何を好む? 何を嫌う? 趣味は? 夢は? 好きな女の子のタイプは?」

さやか「…………」

QB「身長176センチ、体重57kg。好きなものは、色は赤紫と白。食べ物ならピスターシュのジェラート。ただし、冷たい物自体は普段あまり食べないようにしている。
   動物は何でも好きだが、一番はモルモット。カラダが不自由になって真っ先に残念に思ったのが、演奏よりも、モルモットを抱っこできない事だったくらい。次点ウズラ。
   嫌いなものは、魚介類も含む、生の肉。あと熟したメロン。朝はフルーツを食べる主義。納豆にはショウガ派。味噌汁の具には根菜とキノコ類。乾煎りエリンギを常備。
   化学調味料に対して敏感。口には出さないが嫌煙家。疲れが喉に出るタイプ。ロキソプロフェンに対し、嘔吐症状、じんましんが発生して以来、鎮痛剤は絶対拒否。
   幼少時フルートを習っていたのだが、練習後の吹き口を父親が舐めまわしていたので、なんか嫌になって弦楽器に転向。そんなわけで、趣味はヴァイオリンとスケッチ。
   美術家の母・上条ヴェラが象徴主義と言い張るシュールレアリズムに傾倒しているので、写生以上の絵画、あらゆる美術品の制作には手を出さないようにしている。
   友人とラーメンを食べるというシチュエーションを夢見ていたけど、後で吐くだろうと断念。こっそり一人で牛丼大盛りに挑戦してみた事もあるが、やっぱりダメだった。
   同様の夢に、格闘技、ボディビルディングがある。ヴァイオリンとの両立は無謀そうなので断念。スポーツ選手、強く逞しい人間には、男女問わず憧れる傾向がある。
   髪の長い女性に、最も性的魅力を感じる。次点、仕草の優雅な人。その一方で入院中、リハビリ士の顎鋼鉄雄(35独身♂)に奇妙な胸のうずきを……」

さやか「っ…………」

QB「…………」

さやか「…………」

QB「やはり耳を塞ぐんだね。知る事すら拒否する。まったく、ボクのほうがよほど上条恭介を理解し、知的生命体として扱っているよ。
   恭介はボクの嫁になるのだーっ、なんて。ほらほら、怒らないのかい?」

さやか「…………」

QB「だが、その恐れも仕方がない。そうなのさ。キミはそうなんだ。そうだった、そうだった。
   なにせ、キミは親から虐待を受けた被害者なんだものね」

さやか「」 ピクッ

QB「それでは、こうも歪んでいるのも仕方がないね?」

さやか「ちがう」
702 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/25(土) 21:27:12.18 ID:8kvLbfklo
QB「ちがう?」

さやか「あたしは被害者なんかじゃない」

QB「へぇ?」

さやか「被害者なんかじゃない。被害者じゃなくて加害者なんだ、そんな弱いものじゃないんだ。あたしは悪者だ」

QB「悪者」

さやか「悪者」

QB「加害者?」

さやか「あたしは両親を苦しめた。親って、とても大事なものなのに。かわいそうなパパとママ」

QB「パパとママに対する悪」

さやか「あたしは悪者。何をされても、仕方がない」

QB「だから虐待なんかじゃない、ってね。……うまく、入れ替えたものだね?」

さやか「そうよ」

QB「そう答えるか」

さやか「あらゆる権利が悪者から失われる。けれど、この入れ替えだけは、譲らない」

QB「ふぅん……なら、キミは、上条恭介に対する悪、悪意と害意のカタマリでもあると言うの?」

さやか「…………」

QB「また耳を塞ぐかい? 目を瞑るかい?」

さやか「……いいえ……」
703 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/25(土) 21:29:58.67 ID:8kvLbfklo
QB「苦しいかい。全てを塞ぎ、瞑り、命をも断ってしまうかい?」

さやか「い……え」

QB「聞こえないよ?」

さやか「いいえ、よ……! これだけは、譲らない。美樹さやかは、上条恭介に対する悪じゃない。
     美樹さやかは上条恭介に悪意を持ったりしない。彼のためにならない事はしない」

QB「大嘘吐き」

さやか「……」 ギリッ

QB「歯を剥いて見せてもダメだ。キミの認識はまるで間違っている。キミは上条恭介のためになった事なんてない。
   彼のためにならない事はしないと言うなら、即刻、死ぬべきだ。腹を切って死ぬべきである」

さやか「あたしが死ぬのは、恭介が死んだ時。あたしが絶望するのは、恭介が絶望した時。
     恭介が絶望しないなら、あたしも絶望しない。恭介が死なないなら、あたしも死なないんだ」

QB「それを言ったのは、上条恭介?」

さやか「…………」

QB「本当に、真実からそう言ったのかな、上条恭介が」

さやか「…………」 グスン

QB「ほら、泣いた。──全てを塞ぎ、瞑り、断ってしまうべきだね。キミの魂は有害だよ。この世界、宇宙、次元全てに害を成す」

さやか「あたしは恭介に害を成さない。今まではそうだったとしても、これからは、絶対に。絶対に!」

QB「絶対なんて、ボクはどれほど聞いてきたと思う?」

さやか「あんたは未来を信じないのね」

QB「信じて救えるなら、ボクは錆びつく歯車を前に眺めているだけでいい」

さやか「キュゥべえは未来を信じられないんだ」
704 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/25(土) 21:30:49.49 ID:8kvLbfklo
QB「キミは、未来を信じているんだっけね」

さやか「信じる。……信じるしか、できないから」

QB「それしかできない。キミは何もできない。キミには上条恭介を救えない」

さやか「……信じる事で、あたしの歯車はまだ動いているの」

QB「空回りする歯車に、彼は救えない。触れる事もできない。産婆も母体も、もう彼に触れられない。誰にも彼は救えない」

さやか「イラついてるのね、キュゥべえ。……恭介を救いたいの?」

QB「……またバカな発想を」

さやか「なら一緒だ。あたしも救いたいよ」

QB「それはキミの勝手な願望だ」

さやか「そう、あたしは助けたい。そのためなら、キュゥべえ。あんたともう一度、契約する。
     あたし、今度こそバカじゃない願いを捧げるの。正しい選択肢。最後の必殺技。大切な、奇跡のチケット……」

QB「…………ムダだ。キミの魂は、既に純潔を失している。キミは役に立たないよ。ただでさえ粗悪品の、中古品だ。
   オセロがひっくり返ったんだ。無効化の無効。キミの魂は既に二度、肉体から抜き出された。上条恭子の手によって」

さやか「恭介がキュゥべえと同じ事をしたの?」

QB「そうだよ。どころか、彼女はキミの魂を車道に捨てさえしたよ。すぐ取り戻したとはいえ、彼はそうとうキミを嫌っているんだね」

さやか「……絶対、ヘン」

QB「は?」

さやか「おかしいよ。恭介はキュゥべえじゃないじゃない。本当に、恭介がキュゥべえと『同じ事』をしたの?」

QB「キミはいい加減、自分の現状を受け入れるべきだ」
705 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/25(土) 21:34:47.53 ID:8kvLbfklo
QBのセリフ訂正
「キミの魂は既に二度、肉体から抜き出された。
一度目はボクの手によって。二度目は上条恭子の手によって」
706 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/25(土) 21:35:50.82 ID:8kvLbfklo
さやか「絶対ヘン。じゃ、あたしの奇跡のチケット、どこに行っちゃったの?」

QB「もともと、そんなもの無いんだ。奇跡も魔法も、ないんだよ。ボクが引っぱりだした、イメージのなれの果て。
   全てはキミたちの頭の中にあるイメージだけ。……失礼するよ。キミと話しているのは、本当に時間のムダだった」

さやか「奇跡も……魔法も……」

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「マミさんとは友達になる、佐倉さんとは嫌。それが君の決めた事ならそれでいいよ。
 じゃあ、僕との先は……どうしたい?」

 どうって……、そ、それは、あたしが決める事なの……?

「佐倉さんの言ったとおり、僕は君を捨てるかもしれない」

 そんな……。

「君を守ろうと思ったら、君を手離さなければいけないかもしれない」

 やだよ、そんなの……

「だから、君が決めてくれ。今そばにいて、離れたとして、その先。現在の先の、未来の先」

 ……決めたって。……決めたら、どうなるっていうの?

「マミさんと未来で友達になるんだろう? 僕とは、未来で別れるかもしれない。
 ──でも、未来の先でまた、逢えたら」
____________

さやか「……」

さやか「ウソツキ」

さやか「びっくりしちゃった」

さやか「知らなかったー。キュゥべえって、ウソ、つくんだ」
707 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/25(土) 21:38:14.25 ID:8kvLbfklo
〜キッチン

恭子「……杏子さんには、さやかを任せっきりだね。ごめん」

杏子「謝るの遅い。足りない。さやか、しっこ漏らした上にゲロで窒息死しかかってたんだぞ。
    前にオマエが蒸発した時だって、駅でボケッと、夜中だってのに、……ん? そういえば、あん時の血……。
    さやかの足……あんな……あんだけの血なのに、ケガ一つだって……」

恭子「ココアだよ」

杏子「……。仁美が血まみれだったのと、関係あるんだな」

恭子「うん」

杏子「一体、何をしたんだ。尋常じゃない血だった……だいたい、あんなの残していくってのは、どういう」

恭子「言ったら、杏子さん、ガッカリするかも」

杏子「言わないとひっぱたくぞ」

恭子「僕は万能なんかじゃない」

杏子「…………」

恭子「ほら、ガッカリした。僕だって、生まれたての赤ん坊の頃から、何でもできたわけじゃ、ないんだよ。
    赤ん坊が、何でもできる、わけがない。抜け道から生まれたって、どんなリア充にしたってね」

杏子「いいかげん、リア充は関係あんのか?」

恭子「うん」

杏子「でもさ、オマエが充実してるようには見えねーよ。独りで必死にもがいてるように、アタシには見える」

恭子「……カルピスの甘酸っぱさは初恋の味。ミルクココアの甘く甘く甘い味は?」

杏子「いつまでも無理が通用すると思うなよ。アンタだっていつかは、否が応でも……」

恭子「──ひとときの夢の味」
708 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/25(土) 21:39:51.59 ID:8kvLbfklo
 (…カチッ)


恭子「……甘い夢を飲み干して、カップの底に残るのは現実のざらつき。夢を裏切る沈殿物」

(杏子「 」)

恭子「ザ・ワールド。なんてね。つい言いたくなっちゃう」

恭子「そして時を止めているこの間に、下着の確認もしたくなっちゃう。人類のサガだよね。
    でも、しない。上条恭子は王子。そんな紳士的でないマネはしない。メアリ・マキナは魔女。
    魔女はそもそも、裸がコスチュームだった。うん、そういう事。両立できる、両立しきる」

恭子「……ごめん」

恭子「今は、まだ、答えない。答えられない。答えてはいけない」

恭子「答えたら、嵌まりこんでしまうから」

恭子「そして、奴らは僕らを従わせる」

恭子「黒が白に、白が黒に。延々と続くオセロ」

恭子「カフェオレみたいに混ざりはしない。ココアみたいに甘くない。……僕は、守りたいんだ」

恭子「僕は守るよ。愚かな少女達を守り、地球外無機生命体に至るまでを守り抜くよ。
    光の踊る場所はどこか? DNAの二重螺旋の中! そして、希望の二重螺旋の中!」

恭子「最後は白だ、永遠の色だ!」

恭子「……判決の日は近い。ワルプルギスの夜の踊る日に」

恭子「来たる因果のオルギアに」


 ──だからそれまでは、良い夢を。
709 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/25(土) 21:42:14.41 ID:8kvLbfklo
 (…カチッ)

恭子「今日は、アジのムニエルにトマトソースの予定だけど」

杏子「オマエの言うそれは、ちょびっとの魚とたっぷりの野菜のトマト煮じゃねーかー! ヤダー!
    ……あれ? ん? 何の話だったっけ?」

恭子「さやかとイチャコラで僕がのぼせてるとか、言いがかり。あと夕飯のメニューへの不満。
    でも、最近のさやかは色欲に溺れすぎているよね。誰かがスイッチを入れたように」

杏子「ギクギクッ」

恭子「それ、わざとらしいよ。それで、杏子さん、どーいうコト吹き込んだの?」

杏子「な、なんでもございませんですわホホホ。で、その色欲に溺れてるとは、どのような?」

恭子「隙あらばキスばっかりねだってくる。唇が乾くひまもない。……今日なんて、いやにストレートだった。
    キスといえば、そうだ、杏子さん。よかったらで、いいんだけど」

杏子「なんだつまらん。キス一つで色欲とか。プラトニックとか。ケッ。……ん、何?」

恭子「僕の事が好きなら、キスをして」

杏子「…………」

恭子「…………」

杏子「……やっ? あ、あのな?」

恭子「何?」

杏子「オ、オマエの事が好きだから、キスは……しない」

恭子「きちんと答えてくれるとは、なんて親切なんだ。ありがとう。今度から、さやかにはそう返そう」

杏子「……オマエェ〜……」
710 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/25(土) 21:46:27.75 ID:8kvLbfklo
今日はここまで。
書くぜ書くぜ書くぜ! 消えても書くぜ! とりあえずほむほむに出産させるぜ!
711 :乙っち乙マミ [sage]:2011/06/25(土) 22:40:38.32 ID:gfrLCcqUo
あかん、こいつ変態や……もうどうしようもあらへん





ところで出産って……茶色?赤? 出来たら常識的に後者であって欲しいけど、この流れだと茶色いのを出して終わりなのかなって
712 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/26(日) 03:21:03.33 ID:Nrsw0AwOo
乙っちまどまど
713 :BENPER [sage saga]:2011/06/26(日) 22:00:43.67 ID:eOVIukBBo
ほむほむはうんこしないよ。そこまで好きじゃないんだ
最愛が最高位の愛の表現なんて誰が言ったッ

つづきにゃあ
714 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/26(日) 22:01:51.10 ID:eOVIukBBo
〜マミの部屋

マミ「ボリボリ汚らしく掻くのをやめなさいって、何度も言ってるでしょ!」

エリィ「!」

 バシッ

マミ「……、ッ!? あ、エリィ……ああ! ごめんなさい、叩いたりして」

エリィ「──う、──」 ブル ブル

マミ「叩くつもりじゃなかったの……。ただ、掻くと、あなたの肌にアトが残っちゃうでしょ?
   あなたを心配しての事だったの。決して私、あなたを嫌いになったわけじゃないのよ……」

エリィ「マミ姐姐──」

マミ「ご、ごめんなさい、許して。お願い、怖がらないで。私、最近……私は、ああ、私を嫌わないで」

エリィ「嫌ってないから。──離して。苦しいよ」

マミ「あなたに嫌われたら、私、泣いちゃうわ……」

 ピンポーン

マミ「……!」 ビクッ

エリィ「マミ姐姐、外に」

マミ「出てはダメ」

エリィ「でも」

マミ「出てはいけないわ。出ないで。ろくでもない勧誘か何かよ、宅配の予定はないし……」

  …ピンポーン
715 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/26(日) 22:03:15.77 ID:eOVIukBBo
マミ「(来ないで来ないで来ないで来ないで。誰も来ないで。私の部屋よ。私達、二人の部屋よ。二人でいるの。二人がいいの。二人でいたいの)」

       …ピン ポーン

マミ「(早く帰れ早く帰れ早く帰れ早く帰れ早く帰れ早く帰れ早く帰れ早く帰れ早く帰れ早く帰れ早く帰れ早く帰れ早く帰れ早く帰れ)」

 コン コン

 ──巴マミ様、エリィ様
 志筑の使いでございます──

エリィ「仁美」

マミ「あっ、エリィ!」

エリィ「仁美だ!」 タタッ

マミ「ま、待って! 違うわ! 出ないで……出て行かないでエリィ! 嫌!」

マミ「(なんでよどうしてよどうして空気を壊す事するの二人じゃないといけないのに私を利用してたのあなたも私を置いてくの置いてかないで私がいなきゃ何もできないくせに魔女のくせに)」

マミ「う……ううう……」

 パタ パタ パタ

エリィ「やっぱり仁美からの手紙だったよ! エリィの勘はよく──、マミ姐姐?」

マミ「うえぇええぇん……うぇぇぇん……」

エリィ「──マミ姐姐」

 ゴソ ゴソ
       …コツン シュゥゥゥ

エリィ「ソウルジェム、キレイになったよ。大丈夫、濁りのせいなんだよね」

マミ「……ダメね、私……近頃、本当にダメに……おかしいの」
716 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/26(日) 22:05:20.19 ID:eOVIukBBo
エリィ「仕方ないよ。ガッコ、あんな事になっちゃったし」

マミ「(何よ。あんな事って、ニュースの映像を見ただけじゃない。私はその場にいたの。魔女と戦ったの。ものすごく怖かったのよ)」

マミ「う、うん。だからつい、暗い考えばっかりしちゃうんだわ……」

エリィ「このグリーフシードも限界だね。歌い出してる。──またキョウに譲ってもらわなきゃ」

マミ「(恭ちゃんの前ではツンケンしてみせたくせに、困れば頼ろうっての? 媚びてる。色目使いやがってエロガキが。ああいやだいやだ。
    だいたいあんな男女のどこがいいの。あんな口ばっかりの。あんな優しいフリ、私を気に掛けてくれたフリして。あのバカ女ばっかり。
    杏子だって、私が好きだって言ったのに、全然ここには来てくれない。来てよ。後輩でしょ。毎日来るのが義理じゃない。私がこんなに)

マミ「……っ。あ、そ、そうね。手紙、なんですって?」

エリィ「まだ開けてないよ」

マミ「(グズが。さっさと開けなさいよ)……。じゃ、開けてちょうだい」

 〜〜〜〜〜〜〜〜
 このような書き付けを送りつける事を、お許しください。

 依然として不調のまま、外に出られぬ日が続きます。早く皆に会えるよう、努力しますね。
 マミちゃん、必ずまたケーキを食べに行きます。それまでどうか、心配せず待っていてください。
 エリィさん、魔女の記憶に負ける事はないと信じています。できる限り、マミちゃんを支えてあげてください。
 どうかご自愛を

 仁美より
 〜〜〜〜〜〜〜〜

マミ「(……これだけ?)」

エリィ「仁美……字は乱れてるけど、具合は悪くないリズム。よかった」

マミ「(……たった、これだけ? 私よりエリィへの文字数が多いって、どういう事? 私をバカにしているの? 私を下に見ているの?
    前から、ちゃん付けなんて、おかしいと思っていたのよ。本物の化け物のくせにクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソが)」

エリィ「マミ姐姐」

マミ「ッ」 ビクッッ
717 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/26(日) 22:06:29.32 ID:eOVIukBBo
エリィ「仁美は必ず、またここに来るよ。それまで、ちゃんと元気にしてようね」

マミ「そ、そうね……ちゃんとしてなきゃ。ちゃんと……するから……」

マミ「(できっこない)」

マミ「(いずれエリィだって、私を見捨てる。みんな、私を捨てるわ。こんな、どうしようもない女)」

マミ「(魔女になるんだわ。私。魔女になる。何もかも、めちゃくちゃに壊してしまうのよ)」

マミ「…………」

マミ「(そう思って少しスッキリしてしまうんだから、私はなんて嫌な女なんだろう)」

 そんな人はそんなコト言わないのは本当か、はともかく、マミさんが嫌な女なんて事はないですよ。
 ──マミさんの笑顔はステキです。

マミ「(恭ちゃん、こんな私でも魔女になったら、優しいあなたは……巻き戻して、助けてくれる? 救ってくれるの?)」

マミ「……っ……」

マミ「(……そんなのが、救い……?)」

エリィ「マミ姐姐?」

マミ「エリィ。魔女に戻っちゃいそうになるのって、怖くない?」

エリィ「え。それは──仕方ないし。戻りたくはないケド。でもエリィは今が幸せだよ! 魔女じゃ、お茶もケーキも食べられないヨ!」

マミ「そうね。生きてるだけマシって事、あるものね」

マミ「(本当に?)」

マミ「(私、生きてて……生き残って、イイ事、本当にあった? どこ行ってもヒソヒソと……同情されて……敬遠されて……
    スケベオヤジに襲われそうにもなって、言いたい放題、言われて……ただ他人の虚栄心を満たすだけの、十字架の飾り)」
718 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/26(日) 22:07:50.98 ID:eOVIukBBo
マミ「エリィ。私、疲れちゃった……」

エリィ「!?」

マミ「……先にお風呂、入っちゃっていいかしら?」

エリィ「イッ──いいよ! 入って入って! エリィ、ちゃんとお風呂洗えるから!」




〜浴室

マミ「…………」

 …チャポ

マミ「救いなんて……」

マミ「世界を呪って、魔女になって……、なのに生きるなんて……そんな」

マミ「それじゃ、死ぬよりも……!」

マミ「……うぅ」

 …パシャン…

マミ「……だれか……!」


 ──その願いはキミにとって、魂を差し出すに足るものかい──


マミ「!!」 ハッ

 カリ カリ…

QB「マミ、ボクだよ。大丈夫かい、エリィが心配していたよ?」
719 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/26(日) 22:09:39.75 ID:eOVIukBBo
 ザバッ

   カチャ    …ギュゥッ!

マミ「キュゥべえ」

QB「泣いているのかい」

マミ「キュゥべえ、キュゥべえ、キュゥべえ、キュゥべえ……私ね……」

QB「風邪をひくよ、マミ」

マミ「…………そうね……」

QB「風邪は万病の元と言うからね。このままあがって身体を乾かすか、戻って湯に浸かるか、どちらかにしないと」

          …パシャ…

QB「ふぃー」

マミ「ふふ、やだ。キュゥべえったら、仕草が」

QB「頭にたたんだタオルを乗せたり、湯上がりには瓶入りの乳飲料を飲むといいんだよね」

マミ「よく知っているのねぇ」

QB「ずいぶんと学習させてもらった。一定のレベルまで成長した社会では、交渉に民俗学が必須と気づいてね。
   細かな地域差には苦労した……けど今やボクは、この星の文化について、エキスパートを名乗れるよ」

マミ「全部、契約のため……?」

QB「そうさ」

マミ「……そうなの」

QB「もしもボクが知識を深めていなかったら、ボクはキミを見逃してしまっていたかもしれない。
   あの事故の現場も、炎上するゴミ山と区別をつけるのが、とても難しかったんだ。国土による格差で見当を……」
720 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/26(日) 22:10:23.65 ID:eOVIukBBo
マミ「あなたにとって、燃えるゴミも、私も、いっしょなのね」

QB「マミ?」

マミ「何人もの女の子と契約したんでしょう? その子達が、希望を持っていた子が、世界を呪うまでを……。
   哀れな少女を見つけて、契約を持ちかけて、戦わせてっ……あなたは、ずっと!」

QB「マミ」

マミ「ずっと、その子たちを見続けて……っ、あなたは、あなたは何も感じなかったと言うのッ?
   ……みんな、どんなにっ、……ううう、……ううぅうううっ」

QB「マミ、ボクがわかったら、大変だよ」

マミ「そうね! あなたはこの星の生き物でも、何でもないもの!」

QB「…………」

 …パシャ  ペタ
   …ピチャ ペタ

マミ「…………何しているの」

QB「……目元からしたたり落ちる水滴は、キミからどう見える、マミ」

マミ「それで泣いているつもりなの?」

QB「このお湯と涙は、どれほど違うんだい。ボクにはわからない」

マミ「…………」

QB「塩水ならいい? 成分を近づければいいのかい? ……どうしたら、ボクは、つもりじゃなく『泣いている』と言ってもらえるかな」

マミ「……あなたは……」

QB「ちがうよね。涙をつくる事はできる。涙腺だって用意する。理想的な嗚咽もできるよ。けど、ちがうんだろう?」
721 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/26(日) 22:13:42.64 ID:eOVIukBBo
マミ「どうしちゃったの」

QB「……どうもこうも」

マミ「あなた、どうしちゃったの。困るわ。あなたまで、そんなんじゃ……私、困るのよ。どうして、そんなになっちゃったの。
   私をこの世の果てに導く、魔法の使者。引き返せない非日常へと引き込んだメフィストフェレス」

QB「今、悪魔だなんて口にしないでくれ!」

マミ「…………」

QB「すまない。ボクは揺らいでいる、地獄に落ちると恐懼する人間の気持ちが、理解できた気さえする」

マミ「どういう事なの」

QB「マミ。ごめんね。マミ、キミは知らないでいい事だった。どのみち、知らせる事もボクにはできない。
   覚悟を持て、とすら言えない。あれが降り立った日には、どんな魔法少女も……」

マミ「いずれ来るあの大きな災厄、ワルプルギスの夜……あれが、そんなにも脅威なの?」

QB「……ちがう」

マミ「なら、何なの。答えてちょうだい。どんな敵? 私や杏子……恭ちゃんにも倒せない魔女がいるの?」

QB「すまない。なんでボクは、キミのところへ来てしまったんだろう。何の意味もないのに」

マミ「ひどいわ。そんな事、言いに来たの?」

QB「ああ、そうか。キミが言ったからだ。何てコトをしてくれたんだ」

マミ「わけがわからないわ。どうしてよ。ちゃんと言ってよ。あなたズルイわ。私だって叫びたいのよ」

QB「トモダチなんて錯覚を、キミがあんなに熱心に説くから」

マミ「困ってるなら、助けて、くらい言ってよ!」
722 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/26(日) 22:24:02.55 ID:eOVIukBBo
〜志筑邸、地下。
 座敷牢ならぬ、神殿牢。

 御簾越しに老人は語りかける。

*「愛しい仁美」

 ……おじいさま……
 返される、かぼそい女声。

*「消えて久しい寵愛、恩寵……古い祖型の伝承を、おまえはいよいよ体現しておる」

 すすり泣き。

*「その指は、岩をも砕く。火矢さえ掴む。あまりにも剛強」

 すすり泣き。

*「その赤子は、生まれてすぐ立ち上がる。あまりにも早成」

 女のすすり泣き。

*「何の因果か、これも先祖返りか。その強さ、その美しさ。現代にそぐわぬ。嗚呼」

 老人のすすり泣き。

*「おまえは何故、この時代に生まれてしまったのだ……」

 御簾の内側。
 豊かな胸の膨らみ、くびれた腰。成熟した臀部から、長い脚が伸びる。そのくるぶしにまで届く、ゆるやかにうねる髪。

 志筑仁美。齢、十四。
 それでありながら、神々しいまでに完成されている女体。両立する、成熟した男性器。

 昏睡していた一晩の間に、彼女の肉体はこうも変わってしまったのだ。
723 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/26(日) 22:26:20.56 ID:eOVIukBBo
今日はここまで。
>>711 つーか茶でも赤でもなくて黒なんだけどどうしよう。虹色とかのほうがイイ?
724 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/26(日) 22:47:48.75 ID:C4NZEvDuo
乙っち乙マミ!
仁美チャンがマジ天使と化してしまったわけか……
そしてあれ、キュゥべえちゃん可愛いよ?どうして?あれれ?


黒かー、まぁセオリーどおりで良いんでね?
……今更で、しかも自分で言った事だけど 赤いほむほむって結構可愛い気がする
良いよぉ、良いよぉ
725 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/26(日) 22:50:09.32 ID:Srm5WoGwo
いよいよ怪しげなふいんきになってきやがったぜぇ
726 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/27(月) 02:41:04.60 ID:IknHwm8oo
出産……?
乙っちまどまど!
727 :BENPER [sage saga]:2011/06/27(月) 21:50:11.74 ID:hJAeaahEo
キュゥべえは最初から可愛いよ!

あ、仁美ちゃんのくだり、成熟が重複してる。アホや。「熟れ熟れお嬢様をもみゅもみゅしたい」とか考えてたから!
けど貧乳パート入るよー
728 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/27(月) 21:51:09.50 ID:hJAeaahEo
〜とある国、とあるホテル

恭子「ほむらさん、今日はどうだった?」

ほむら「……あんなの、初めて。空に浮いているみたいだった」

恭子「実際の雲の上を、ここまで飛んで来たんだけどね。
    しかし、危なっかしかった。あんまり見惚れて歩いてるから、いつ転ぶかと」

ほむら「とっても綺麗なんだもの」

恭子「転ぶと塩まみれになるよ」

ほむら「それはもう、経験済みです。このホテル、部屋まで、あんなに塩ばっかりじゃなくても……」

恭子「塩湖で塩抜きなんて、できないさ」

ほむら「この世界には、こんな所もあったのね……」

 …フゥー…

ほむら「私、この世界は、イヤな事やカナシイ事ばっかりだと思ってた。私自身、暗闇の中にいた気がする。
     他の人の言う、『春』や『朝』……我慢が報われる季節、輝かしい時間なんて、幻と思ってたの」

恭介「冬の海にだって生き物はいるし、明けない夜は無いんだ」

ほむら「こんな気持ち、想像もした事なかった。私、ずっと夜を過ごしてきたようなものだもの。
     たとえ新月の晩に街中の灯が消えても、それほど怖いと思った事もない」

恭子「人間は夜を恐れて然るべきなのに」

ほむら「そうかしら?」

恭子「視界は闇に覆われ、夜気に耳も鼻も狂う。危ないじゃない。うんこ踏んだらどうするのさ」
729 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/27(月) 22:00:43.87 ID:hJAeaahEo
ほむら「そんな、踏むような所を歩かなければいいじゃない」

恭子「それはつまり、どっこも歩けないという事だよ」

ほむら「そうなのかしら……。一歩ずつ、ゆっくり進めばいいんじゃない?」

恭子「人間は一歩ずつ注意深くは歩けないんだよ」

ほむら「初耳だわ」

恭子「常識さ。ヒトは過保護な緩衝器を付けられていた時期があって、今もその影響で、現在地をあべこべに認識してしまう。
    だから、いつだって通り過ぎるか、届かないんだ。奇跡か、魔法でもない限り」

ほむら「ふうん? 魔法があれば、ワルツで空も飛べるのに?」

恭子「君こそ、時間だって止められたのに」

ほむら「私は……もともと人間として欠陥があるのよ。だから魔法少女になっても、大した事なんかできない」

恭子「うんこ漏らすわゲロ吐くわ、散々だったね」

ほむら「ひどいわ。あなただって……、あなた……」

恭子「ん?」

ほむら「……ううん、気にしないで。これについては、考えがまとまらないの。考えなくてもいい気もするし。
     ほとんど独り言みたいになっちゃうけど、でも、聞いていい?」

恭子「なんなりと。僕は君が好きだからね」

ほむら「今まで私が見てきた上条恭介はね、本当に、物語の外の人間だったの。
     それが、こんな……。こんなにも魔法を扱えるなんて、……狸寝入りしていたの?」

恭子「狸寝入り」

ほむら「ごめんなさい。でも、他に言い方がわからなくて」
730 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/27(月) 22:02:21.84 ID:hJAeaahEo
ほむら「上条恭介。その名はいつも、美樹さやかに関連して出てくるわ。
     将来有望なヴァイオリニスト。事故で入院中。美樹さんは、あなたのためにプレゼントを探す毎日」

ほむら「一度、……その時、私は皆とそれなりに良い関係を築けて……まどかと、美樹さんと、お見舞いに行ったの。
     あなたはリハビリを終えたばかりで、くたびれた顔をしていたけど、でも、優しく微笑んでくれたわ。
     私とお話、してくれた。病院食の事とか。私も入院生活が長かったから……」

ほむら「あなたは、初対面の私にも優しかった。誰にも優しい人。まどかも言っていたわ。
     でも、美樹さやかにアリガトウ以上の感情はないように見えた。これも、まどかと同意見」

ほむら「それが、私の知る上条恭介」

恭介「……そうだったんだ。違う時間の事とはいえ、来てくれてありがとう」

ほむら「あ、あの時は美樹さんを止められなくてごめんなさい。あなたが疲れてるって、あのヒト全然、察しなくて……」

恭介「さやかはそういう子だから」

ほむら「あなた、──美樹さやかに冷たいのね」

恭子「君は、わりとさやかに温かいよね」

ほむら「茶化さないで」

恭子「僕は、さやかを好きになるべきだったのかなぁ」

ほむら「ごめんね……私がそんなコト責めるの、おかしいよね」

恭子「いや、謝らないで。聞きたいんだ。僕は、きちんと少女として育っていない。インスタント製品だから。
    そうだね、ほむらさんは入院していた。だからこそ、聞いてみたい。
    入院中、君の知り合いの男の子が、毎回プレゼントを持って見舞いに来たら、好きになる?」

ほむら「……うーん」

恭子「その子はもちろん、君が好きだよ」

ほむら「……あなたは、美樹さやかの好意には、気づいてたのよね?」
731 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/27(月) 22:04:02.87 ID:hJAeaahEo
恭子「いいや」

ほむら「いいや?!」

恭子「ごじゅっぱ」

ほむら「五十パーセント?」

恭子「今の例え話にしたって、どうだろう。毎回プレゼントを持ってきて、しかし『好き』と直接は言わない子。
    あの子はワタシのコト好きなんだわぁー、って、ひゃくぱー思って断言できる?」

ほむら「そう言われてしまうと……でも。美樹さんだって、黙って品物を置いて帰るわけじゃ」

恭介「『これあげる! じゃーね!』病室に入ってジャスト十秒」

ほむら「」

恭介「その次。『別に恭介のコト、心配してるわけじゃなんだけど。ちょうどこっちに用があったから』」

ほむら「」

恭介「その次は、もうちょっと長かったかな。それからね、さやかは、僕を『天使』って呼ぶ事もあったよ」

ほむら「〜〜っ、あの子、アタマおかしいんじゃない!?」

恭子「世界屈指の電波女に言われちゃった!」

ほむら「……電波……女……」

恭子「ごめんね。まどかさんや他クラスの皆は、そう思ってただろうってだけで、僕は思ってないよ。うん」

ほむら「あなた、美樹さやかだけでなく、私にも冷たい……」

恭子「めんごめんご」
732 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/27(月) 22:05:33.82 ID:hJAeaahEo
恭子「そんなわけで、僕とさやかは平行線」

ほむら「でも、あなたは今、過去の話じゃなくて、美樹さやかの好意に気づいているんでしょ?」

恭子「うん」

ほむら「うん、じゃないわ。それはどうするの。学校では、結婚しようなんてふざけて言ってたけど」

恭子「僕は君が好きなんだよ?」

ほむら「そんなの、嘘。嘘だわ。あなた、何か目的があって私を連れ回しているんでしょう!?」

恭子「そうだけど何か?」

ほむら「…………」

恭子「ほむらさん、だいぶ喋るようになったけど、まだ言い合えるほどじゃないね。
    ……さやかについてはね。それこそ、この状態では決めかねる。彼女も僕も、女の子だよ?」

ほむら「……女の子同士だからって……理由にならないわ。好きなのに、目を離して、その間に危険な目にあったら。
     美樹さんに、もしもの事があったら……キュゥべえに騙されて、契約でもしたら!」

恭子「キュゥべえは契約するかな? 九分九厘、しないよ」

ほむら「言い切るの」

恭子「そのために手を尽くした。キュゥべえがたじろぐように。同時に、マミさんや杏子さんが、さやかの身を守るように。
    僕は小心者で、臆病なものでね。確証がなければ、今こうしてここにはいない」

ほむら「……そこまでして、私といる意味があるの」

恭子「意味がある」

ほむら「結局あなた、さやかのほうが、……好きなの?」

恭子「…………」
733 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/27(月) 22:06:55.31 ID:hJAeaahEo
ほむら「…………」

恭子「……ぐすっ」 ポロッ

ほむら「っ? え、な、なぜ泣くの!? あなたが!」

恭子「僕は、魔法少女。いずれ災厄と化す宿命だ。けど、そうでなければ、今も病室で芋虫紛いのままだった。
    どっちにしても絶望だ。これじゃ、誰かに好意を伝えるなんて、おこがましいじゃないか!」

ほむら「…………」

恭子「こんなだから……何も言えないじゃない。言えないよ……そばに、いてほしいって、何で言えるのよ……!」

ほむら「……。何のセリフ? あなた、今のは芝居がかりすぎ」

恭子「僕もそう思った」

ほむら「あなた、ふざけてるわ。まったく本当に、私の知っている上条恭介とは別物」

恭子「ネジでも一本、頭から取れたかな?」

ほむら「でなきゃ歯車が外れたのね。
     ……はあ。正直、嫌になるの。時間を繰り返す度、私の知らない何かが襲いかかってくる。
     キュゥべえの隠していた事実。予想もしなかった闖入者……」

恭子「想定外の出来事くらいで動揺して。ごらんよ、外の風景を」

ほむら「…………」

恭子「綺麗だよね……。かがっやいてるよね。この湖のように、君の心もピュアだったじゃねーかよ!
    なんだよ……欲ばかり。嫉妬、悪口……自分のことばっか」

ほむら「……。何のセリフ?」

恭子「まんすーまんすー」
734 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/27(月) 22:09:15.87 ID:hJAeaahEo
ほむら「──私は、まどかを守る努力をしたわ。でも、世界が、私にまどかを守らせてくれない。
     ただ巻き戻しただけなのに、どうしてこうも、何もかもが変わるの」

恭子「世界は変わったかい、ほむらさん?」

ほむら「暗闇を抜けて明るみに出たら、憎しみと悲しみを繰り返す救いようのない世界が見えたわ」

恭子「見えていた、と、キミにはそう見えていたんだろうね。キミの世界。キミの物語。キミのモノローグが挟まれた、その場所では」

ほむら「皮肉を言うのね。でも私、もうたくさん。まどかが残酷に殺され続ける、こんな物語は。
     キュゥべえに騙されて死ぬ。魔女に喰らわれて死ぬ。魔法少女に、正義の名の下、殺された事もあった。
     一度や二度じゃないの……言われたわ。まどかこそが、あらゆる元凶。あの子が世界を殺すんだって。ふざけてるわね」

恭子「やめていいんだよ。つらい事、思い出さなくても……」

ほむら「でも、まどかは殺された」

恭子「そう。殺されたの」

ほむら「魔女に。魔法少女に。私にも。……私、まどかのソウルジェムを砕いた事、あるの。
     まどかが魔女になりたくないって言うから。もうグリーフシードもなくて。どうしようもなくて。そうするしかなくて」

恭子「ほむらさん」

ほむら「絶対に救うって……必ず守るって、約束、私、できると思って約束したの。
     でも、もう、どうしていいか、わからない。
     わかるのは、私は出来もしない約束をした、罪人だという事」

恭子「よく頑張ったね」

ほむら「やめて。わからない事だらけ。もう忘れたい。こんなに……つらいなら」

恭子「僕は、そういうほむらさんが大好きだ」
735 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/27(月) 22:10:10.59 ID:hJAeaahEo
ほむら「やめてよ。私は頑張れなかった。最後はこの有り様」

恭子「そんなほむらさんだから、僕は手を取ったんだ」

      …ギュ

恭子「君を救いたい。それが、僕の目的。君といる意味」

ほむら「嘘」

恭子「信じてくれなくてもいい」

ほむら「あなたは私の味方だと言うの?」

恭子「上条恭介の目的は、救いだよ。でもこれも、くだらぬポエムと思うなら」

ほむら「…………」

恭子「わからなくてもいい。何も伝わらなくてもいい。それでもどうか、お願いだ。僕のこの手を、離さないで」

ほむら「……私……」

恭子「ほむらさん。君を。君だけを。僕は守りたいと思っているよ」


 守りたいと
        思っているよ
 喰いたいと


恭子「泣かないで、ほむらさん」

ほむら「……本当に、これから私と一緒にいてくれるの……? そばに、いてくれるの?」
736 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/27(月) 22:16:48.61 ID:hJAeaahEo
ほむら「私はあなたを頼っても、いいの?」

恭子「僕は君が好きなんだよ」

ほむら「はっきり答えてくれないのね……それじゃ、キュゥべえみたいじゃない」

恭子「だって、はっきり答えたら」


 (…カチッ)


恭子「答えたら、嵌まりこんでしまう」

恭子「そして、奴らは僕らを従わせる」

恭子「黒が白に、白が黒に。延々と続くオセロ」

恭子「血のように混ざりもしない。肌の色ほど曖昧でない。……僕は、喰らいたいんだ」

恭子「僕は喰らうよ。哀れな少女達を喰らい、地球外無機生命体に至るまでを喰らい抜くよ。
    闇の輝く場所はどこか? DNAの二重螺旋の中! そして、希望の二重螺旋の中!」

恭子「最後は黒だ、不滅の色だ!」

恭子「……判決の日は近い。ワルプルギスの夜の踊る日に」

恭子「来たる因果のオルギアに」


 (カチ)

ほむら「でも……いいわ。約束もできない私。はっきりと答えられないあなた。それでも」

恭子「ありがとう、ほむらさん」

(さぁ、もっともっと輝いて。希望を掲げて!)
737 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/27(月) 22:19:02.71 ID:hJAeaahEo
ほむら「じきに、見滝原に、あの街に、夜が来る」

恭子「ワルプルギスの夜が来る」

ほむら「私……あいつと戦わなくてもいいのね」

恭子「その必要はない」

ほむら「でも、あいつの通過した跡には、なにも残らない」

恭子「街は壊滅するだろうね」

ほむら「…………」

恭子「それでもその被害は、世界全体から見れば、小さなものだ」

ほむら「……ねぇ」

恭子「うん」

ほむら「わかっていて、目を瞑る。それは、罪ね」

恭子「……うん」

ほむら「罪人ね」

恭子「罪も悪も、僕は許すよ」

ほむら「吐き気がするような……罪悪」

恭子「何もかも受け止める事が正義だなんて、思わない」

ほむら「…………」

恭子「それでも僕は、目を見開いて見ろなんて言わない」
738 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/27(月) 22:21:12.56 ID:hJAeaahEo
ほむら「……いっそ、ね。こう、思うの」

恭子「ほむらさん」

ほむら「私達、このまま二人で、怪物になって……こんな世界、何もかも、メチャクチャにしちゃおっか……?」

恭子「君が望むなら、僕は」

ほむら「嫌な事も……、悲しい事も……、全部、なかった事にしちゃえるぐらい。壊して。壊して。壊しまくってさ……」

恭子「君が望むなら、……まどかさんを連れてこよう。魔法を掛けてでも、何をしてでも」

ほむら「…………」

恭子「余計な事は、全部、忘れてもらおう。プラチナのように美しい絆を繋げよう。何だってできるよ。
    大好きって言ってもらう事も。君を最優先に考えるようにする事も。命をかけて守ってさえくれる」

ほむら「……全部、なかった事に」

恭子「三人で旅をしよう。世界の美しいところだけを、見て回ろう。──壊すのは、それからでもいい」

ほむら「私達……もう救いようがないのね……」

恭子「それでも、僕は君が好きだよ」


 暁美ほむらは、目の前の魔女の瞳を見つめる。

 彼女の瞳は、春の夜の色をしていた。
 吹き荒れる風に花が舞うような、春の夜。

 それは、美しいように見えて……
 夜は夜なのだ。


ほむら「……お願い。まどかを、連れてきて。……一緒にいたいの。終末まで」
739 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/27(月) 22:23:14.39 ID:hJAeaahEo
週末までじゃダメかな。ダメか。
今日はここまで。ほむほむ帰ってくるよー
740 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/28(火) 01:38:30.68 ID:LI1AS/EUo
乙っちまどまど
いやー心が痛いなー
741 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [sage]:2011/06/28(火) 02:20:24.71 ID:y5mLlJqP0

すごい面白い、私の頭にゃちと難解だけど
よかったら過去作教えてください
742 :BENPER [sage saga]:2011/06/28(火) 21:42:49.70 ID:R4iq2nTuo
前になんか投稿っつったら長編板ができる前のモナー板まで遡るので、紹介できるものはないにゃー。

さて誰も望まない人がやってくるぞ
743 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/28(火) 21:48:34.34 ID:R4iq2nTuo
上条母「母です」

杏子「」

さやか「」

恭子「」

(〜説明するまでもなく見滝原。恭子達の住む家)

恭子「じゃ、僕はお茶を淹れてくるから」

さやか「……あたしお茶菓子を選ぶから」

杏子「えっ!? 何でアタシに任されてんの? すけこ、オマエのカーチャンだろ!!」

上条母「…………」

杏子「…………と、とりあえず、どォぞ。上がってくんさい」

上条母「どうも……」

杏子「…………」

上条母「…………」(不動)

杏子「あの……」

上条母「…………」

杏子『すーけーこー! カーチャンが初期座標から動いてくんないー!』

恭子『スリッパ出して。玄関、閉めて。世間話を振りながら案内してあげて』

杏子『世間話が通じそうにないッ』

恭子『返事が無くてもしゃべって。気が向かない時は、一言たりとも口を開かない人だから。気にせず』
744 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/28(火) 21:52:07.75 ID:R4iq2nTuo
杏子「(スリッパ、と)……どーもどーも気が利かないで。これ履いてクダサイ」

上条母「……失礼」

杏子「(戸を閉めて、と)すけこ、いや、お嬢さんにはお世話になってます、佐倉杏子ですー」

上条母「大変だったのね。ド汚いホームレスに手コキしてあげて、それで千と五十円ちょっとしかなんて」

杏子「」

上条母「私だったら野垂れ死ぬ方を選ぶわ」

杏子『オイオイオイオイオイオイオイオイすけこォォ!』

恭子『何かヘンなコト言っても気にしないで!』

杏子『ヘンなコトってレベルじゃねーよッ。だって今このヒト、アタシの黒歴s……! なんでもない』

上条母「あなたたち、ちゃんとご飯を食べてる?」

杏子「うあ、はい。(やっと母親らしい言葉が聞けた……)
    恭子さんのおかげで、いやー、アタシもさやかも、健康的な生活させてもらっちゃってー……」

上条母「ミキサヤカ? それは何属の動物なの?」

杏子「」

上条母「そんな生き物は存在しないわ」

杏子「(エエエエェェ)」

上条母「今、生存しているとしても、いずれ自ずから消滅する。そういう生き物よ」

杏子「(すけこォォォォ! わかんないィィこの人ワカンナイー!)」

上条母「自分の望むものが愛と気づき愛に裏切られ愛に泣きそれでも愛を望みつづけた結果本当の愛の意味を見失しなったバカな女」
745 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/28(火) 21:54:08.85 ID:R4iq2nTuo
〜キッチン

さやか「…………」

恭子「お茶請けに、包丁は向かないんじゃないかな、さやか」

さやか「やだなコレは切るためのモノ切るためのモノだよケーキと悪者を切るための」

恭子「ダーメ。水晶の聖剣は、王国の未曾有の危機に勇者しか使っちゃダーメ」

さやか「……恭介」

恭子「さやか、君にもコーヒーとお菓子をあげるから、ここで待ってて。すぐ戻る」

さやか「あたしのした悪は許されないよね」

恭子「罪も悪も、僕は許すよ」

さやか「あたしのカラダは許されない事だけで構成されているの」

恭子「だとしても、僕はさやかを許すよ」

さやか「……許されたら、あたしは……」

恭子「でも今は、コーヒーを飲んで」

さやか「はい、コーヒーを飲みます」

 …カチャ    パタン

さやか「…………」

さやか「やっぱり、ついてないのかもしれない……」

さやか「キュゥべえはウソをつくかな、つかないかな。不安になってきた」

さやか「だとしても、信じよう。これしかないんだから。あたしの選択肢。あたしの必殺技……」
746 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/28(火) 21:56:18.11 ID:R4iq2nTuo
恭子「母さん」

上条母「さんを付けろよクソ介野郎」

杏子「いや付いてただろ!?」

上条母「ずいぶんキレのいい切り込み隊長を、そばに置いたのね」

恭子「来るって連絡はもらった覚えがないけど。昨日、電話したとき、父さんだって何も言ってなかったし」

上条母「あの人なら今、泣いて警察に向かってるでしょうね。妻が行方不明になったと騒いで」

杏子「早く連絡してやれよ!」

上条母「そう思って、ここにいる旨、今メールしたわ。文面は昨日から用意しておいたの」

杏子「先に言ってやれよ!!」

恭子「なら安心だ」

杏子「そんな安心は安いだけだッ」

上条母「安心の低価格って、救いであり、呪いなのよね。……言いたい事も言ったし、帰る事にするわ」

杏子「!?」

恭子「安心だ!」

上条母「母を送っていきなさい、恭介。じゃあの」

    スタ スタ
      パタ パタ

 …バタン

杏子「……ワッカンネエェェェェェェェェェェェェェ!!」
747 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/28(火) 22:00:13.71 ID:R4iq2nTuo
上条母「あなたもあの娘も健在で安心よ。現実の安っぽさに心がクラクラするわ。爆発すればいいのに」

恭子「爆発なら、したよ。学校がね。母さんは相変わらず矛盾してるね」

上条母「息子に女が纏わりつき始めたら、母親は、安心で不安になるものなのよ。
     それに矛盾とは言うけどねぇ、ぶつけなんてしなければ、矛と盾は共存できる」

恭子「ぶつけなければ、何が最良か、わからないじゃないか」

上条母「最もどうこうなんて、そんなもっともらしい言葉を私は否定するわ。
     世界はありのままで美しいのよ、恭介。少なくとも私はそう思うわね」

恭介「でも、僕はこの世界を知らない」

上条母「そうだったわね」

恭介「こんなに好きなのに、僕はまだ何もこの目で見た事がない。この手で触れた事がない。
    何も知らない。……あなたさえ」

上条母「世界の正確な姿なんて、誰だって見も聞けもしないわ。でも、これが私よ。
     さぁ、おっぱいに触るがいい」

恭介「何もかも、僕は僕というフィルタ越しだ」

上条母「触れよ。……それても私はあなたを全肯定するわ」

恭介「肯定になんか、何の意味もない」

上条母「否定しろと言うなら、あなたを全否定しましょう。あなたを全肯定するために」

恭介「子供を叱らない親は駄目な親だ」

上条母「子供の糞便まで愛するのが良い親、というものでもないわ」

恭介「僕もうあんな大きな暗の中だってこわくない。きっとみんなのほんとうの……。
    でも、僕には一緒に進んで行ってくれる人がいないんだ」
748 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/28(火) 22:01:39.06 ID:R4iq2nTuo
上条母「今いないから、いずれ見つけられるのよ。今いたら、いずれ見つけないわ」

恭介「親というものは何かにつけ説教くさい」

上条母「なら子供はうんこ臭いわ。しかし子供でない人間はいないから、人類は皆うんこ臭いのよ」

恭介「子供はいつ大人になるんだろう」

上条母「少年の心は不滅。少女の無垢は永遠」

恭介「救ってくれる大人はいないのかな?」

上条母「汝は永遠の少年なれば、空の高みでひとりぼっち」

恭介「ひとりで死ぬのはさびしいよォ。ひとりで死ぬのは、悲しいよォ」

上条母「だから母様が抱いてあげるって言ってるじゃない。あなたの精通が始まってから、パンツを履いた日はないのよ?」

恭介「もうやだこの母」

上条母「あなたの悲嘆など、子を愛しているのに抱けない母の哀情には、遠く遠く及ばないわ。
     こんな小汚い、薄汚れた、プチ醜い物語、さっさと殺してしまいなさいな」

恭介「この世界は、醜い?」

上条母「そうよ。そして、美しい。ありのままで」

恭介「僕さえ?」

上条母「するめー。ちがうわ。あたりめー」

恭介「最後はただ、復讐に終わるかもしれないよ」

上条母「男の人生は復讐よ。待て、しかしてメメント・モリ」
749 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/28(火) 22:05:11.01 ID:R4iq2nTuo
〜河沿いの道

上条母「アナルフィストファック」

QB「…………」

上条母「反応なさい」

QB「……。……もうどうにでもして……」

上条母「我が子に暖かい言葉もろくに掛けられず今生の別れ、傷心のところに、ちょうどいいアームウォーマーだわ」

QB「わけがわからない。ひょっとすると、僕は気づかぬ間に、異次元に迷い込んでしまったのか。
   キミのような一般人に、認識を許可した覚えはないのに。どうして、ボクを見て、接触もできる?」

上条母「あなたが生き物だからよ。この白い肉穴に繋がる糸の先にいるのが、生き物だからよ。
     全ての生き物には、共通して逃げられないものがある。その内の一つが私、というワケよ」

QB「人の形をした、『運命』だとでも?」

上条母「それは違うわ。『不意』よ。誰も予測できないモノ。この世に有り触れたモノだわね。たいして意味もない」

QB「……この親にして、あの子有り、という事か」

上条母「それも違うわ。確かに、『何も予測しない』私でなければ、恐ろしくて産めたものではなかったかもしれない、けど。
     でも、あんな自己組織化は、あの子の火事場のクソ力。……場当たり性は、私から奪ったようね。
     もっとも、奪われたくらいで完全に失われるモノゴトなんて、そうそうないわ」

QB「宇宙の未来を奪われてしまっては困る」

上条母「そうそう、私は生まれてこのかた、一度たりとも頭で考えて喋った事がないのよ。脊椎反射で生きているの」

QB「……話を聞いてほしいなあ」

上条母「──あなた、逃げたいの? 助けてほしいの? 自分の抱えた卵がガラガラヘビの卵と知って、恐ろしくなった?」
750 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/28(火) 22:10:17.24 ID:R4iq2nTuo
上条母「何にしろ、それを投げ捨てるかどうかの選択権は、あなたにあるわ。どうぞ、お好きにすればいいのよ」

QB「好き放題にできるものじゃない」

上条母「あなた、この宇宙が好きなのではなくって? 守りたいのでしょう?」

QB「好きなんて感情は、ボクにはわからない」

上条母「だいたい、もう察してるんじゃない? あの子のこれから。過剰な非自己。非自己から自己への攻撃。
     免疫疾患、細胞自殺。でなけりゃ王位決定戦。人格ドラマの鉄板ね。主用キャラのダークバージョンとか」

QB「…………」

上条母「そうそう、私、あなたに教えてあげようと思っていたの。彼がハエ取り器の形をしていたなんて、ウソよ」

QB「!?」

上条母「国なんてものは、誰かがお山のテッペンで道楽をしたいがために、作られるの。
     歴史上、無数の王国帝国がそうだったように、糞便帝国も、お偉いさんのゆりかご。見える部分なんて、ダミーでしかない。
     巻き込まれたのねぇ、あなた達。放っておけば駆除されるバグが、隔離されたウィルスが、機械人形に奪われた」

QB「彼は……ボクらじゃない……? あの糞汁のソウルジェムもダミー……機械……プラチナメッキ……」

上条母「脊椎で生きる女は、真実しか発せない。そして真実によって、誰かの性質や役割が変わるわけでもないの。
     ただ見据えて。栄華を誇る帝国の暗部。糞便の中枢。そこには、全ての生き物に共通して逃げられないモノがいるわ」

QB「ウソ……嘘……これも嘘か? ……あの子にして、この親……しかし……?」

上条母「カルペ・ディエム。一日の花を摘め。花の命は短くて、あの日見た花の名前を、僕達はまだ知らない」

QB「わけがわからないよ……」

上条母「全ての警句は、最後にはメメント・モリ、よ。それを忘れなければ、運命だって、どうにかなるわ。
     さあ、いいかげんハートフル・イチャイチャ・ラブラブコメディなんて隠れ蓑は捨てるの。これは、運命に打ち勝つストーリーよ」
751 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/28(火) 22:21:46.86 ID:R4iq2nTuo
ここまで第十一話
誰も望まない人(ノーパン)が帰っていったぞ

次回、第十二話『とろっとゴォッとエグくてクラッと』
最終話になるか最終一話前になるか、書きながら決めようと思うよ!
752 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/28(火) 22:26:52.28 ID:23rd+NVjo
乙っち乙マミ



……そっかぁ、もう最終回かぁ 寂しくなるなぁ
そして………マドカァー
753 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage saga]:2011/06/28(火) 22:28:33.53 ID:FmV/jlwt0
ちょ、この母親こそ真のメアリー?ついでにゼブルも暴食王じゃなくて偉大なるソウルキャリアー?マテリアルをアストラルへ孵す円環の理の返還者?
>>708>>736にあったオルギアのオセロも気になるし、恭介の本心も顕れたし、この世界のシュタインズゲートは何を選ぶ?
754 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/29(水) 21:32:47.23 ID:KLemR/ino
乙っちまどまど
755 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/30(木) 21:52:44.29 ID:tqKZE5pmo
さやか「思えばその時の私は、まだ何も分かっていなかった。奇跡を望む意味も、その代償も」

 ──まっ暗な舞台に、七人と一匹。
 ──さやかにスポットライト。

さやか「そして今、あたしのカラダは許されない事だけで構成されているの」

恭子(暗闇から)「罪も悪も、僕は許すよ」

さやか「許されたら、あたしは消えてなくなってしまう!」

 ──スポットライトは語る者を次々に照らす。

ほむら「自己紹介させてください。私は罪人です」

まどか(暗闇から)「……あー……」

ほむら「……許してくれなくてもいいの。信じてくれなくてもいい、友達じゃなくたって。そんな私の罪は、偽証罪」

マミ「私は情緒不安定なエリィを拘束しました。でも、そこまできつく縛ってはいないし、おむつもちゃんと履かせました」

マミ「ごはんだってあげました。私にはあたたかいごはんをくれる人は誰にもいなかったのに、私は彼女にごはんをあげました」

杏子「酒を飲んだ事があります。煙草を吸った事があります。ものを盗んだ事があります。ひとを傷つけた事があります」

杏子「それでもアタシは、アイツらを守るアタシになりたかった」

仁美「わたくし、大人になりました。もう、世界は憎くありません」

仁美「……殺意に憎しみは要らないのです」

キュゥべえ「ボクの役目。ボクの戦略。ボクのノルマ。ボクの存在理由。……だから、選択肢なんてない。ボクは!」

恭子「ネオメロドラマティックにハートフル・イチャイチャ・ラブラブコメディ、始まるよー」
756 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/30(木) 21:55:03.91 ID:tqKZE5pmo
 すでに時刻は明朝のはずだった──
 曇天を通り越し、暗黒。
 夜更けに観測された積乱雲は、信じられない速度で量を増して、空を覆い尽くした。
 雨が降り出す。あっという間にどしゃ降りに変わる。夜闇の余韻を残し続ける街を、雨滴が叩いて打ち鳴らす。

 朝を鎮圧し、ワルプルギスの夜が姿を現した。

 巴マミ。
 佐倉杏子。
 上条恭子。

 魔法少女、河岸に集う。
 川は水量を増しつつあった。濁り、まったく底が見えない。

『来たよ』

 キュゥべえからの通信と、ほぼ同時。

 ふ、と雨が止む。
 境界線を越えた、と誰もが感じた。風も和らぎ、奇妙な静けさが広がった。
 瘴気が足下に這い寄る。それはじんわりと生ぬるく、微かに光を放ち、今や周囲はほの明るくすらある。

 それは水面から出てきた。

 タコだった。蛍光グリーンのタコが、一匹。
 川を泳ぎ、堤防を登って……潰れて体液をまき散らした。

 タコを踏みつぶしたのはカエル。青い肌に、びっしりとレモンイエローのイボ。
 まだ幼生の尾が残っていながら、その大きさは牛のようだった。濁った眼球の中で、無数の回虫がくるくる蠢いている。
 更に巨大なヤドカリが、電飾付きの殻を光らせて通過する。

 極彩色の水棲生物の行進。

 笑声。
 嬌声。
 淫声。
757 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/30(木) 21:56:33.93 ID:tqKZE5pmo
 声の主は、邪悪な人形。
 逆さまに宙吊りの、ドレスを着た人形。
 そのたっぷりとした裾から、鈍く輝く歯車の機巧が覗いていた。

「これが、ワルプルギスの夜……!」

 巴マミが手首を振るって生成したのは、マスケット銃だった。
 それに一瞬、思うところがありながらも、佐倉杏子は目前の敵を優先し、槍を手にする。

 夜は、嗤いながら、ゆっくりと降りてくる。

 不意に。
 それこそ、不意打ちに。
 マミと杏子の身体は宙を舞い、地面に叩きつけられた。

「か……はっ」
「……テメェッ、気でも違ったか!?」

 二人を殴り飛ばしたのは、上条恭子。
 着流しに長ドス。およそ魔法少女とは思えない体で、地に伏せる娘らをねめつける。

「すけこぉッ!」

 杏子が怒鳴り、跳躍した。
 それでも、繰り出したのは刃先ではなく、石突きだった。
 皮膚を破り、肉に食い込む感触。

「…………ぎゃあああぁ! あああああーっ!」
「!? なんでっ」

 不可解の連続に、佐倉杏子は怯んだ。
 腹を突かれ、苦痛に泣き叫んだのは、美樹さやかだった。
 ここにいるはずのない彼女。ワルプルギスの夜を目前に、避難させたはずの少女。
 何より不可解なのは、その彼女の両肩を掴んで、前に突きだしたままの格好で、上条恭子が、微笑んでいる事実。
758 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/30(木) 21:58:33.25 ID:tqKZE5pmo
「きょ……う……ッ」

 傷口を押さえながら、さやかが倒れる。
 杏子のこめかみが軋んだ。血が沸騰する。四肢の温度がわからなくなる。

「うああああああああーっ!」

 殴りかかった。
 無様に蹴り倒される。低い姿勢のまま再び飛びついた。
 振り払われまいと必死に食いつきながら、魔法で作り出したナイフを振りかざす。

 太腿。拳銃の収まったレッグホルスター。その飾り。プラチナの飾り。ソウルジェム。

「杏子さん、僕を殺すの?」

 プラチナのソウルジェムを砕いた。
 視界が滲む。
 ソウルジェムを砕くという事は、魔法少女を殺すという事。
 それを教えてくれたのは、他ならぬ、この少女だった。複雑な感情に咽せる。

「!!」
「……だけど残念! ダミーなんだ!」

 そんな感慨ごと、杏子は踏みにじられた。

「ティロ・フィナーレ!」

 追撃せんとする上条恭子の横っ面を、巴マミが撃つ。
 ティロ・フィナーレの鋭い一撃は、並大抵の防御魔法では防げない。着物を大きくはだけさせながら、恭子が吹っ飛んだ。

 マミは考える。この乱心の理由。空を漂う、あの大きな災厄の影響。魅入られた可能性。変幻の祈り、幻惑の願い。
 魔法には、そうやって感情や神経を支配する系統もあるのだ。
 逃避ではない。マミは仲間を信じたかった。自分に優しくしてくれた少女を、失いたくなかった。

「痛い……マミさん……」
「恭ちゃん、正気に」
759 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/30(木) 22:00:56.39 ID:tqKZE5pmo
「イタイ人ですねマミさん、エリィさんが可哀想ですよ。避難させてあげないなんて。そんなに束縛したいんですか?」

 ああ、私は冷静さを失おうとしている。マミはそう、どこか客観的に思った。

 エリィ。こんな雨風の強い日に独りで、彼女は怯えているだろうか。避難所へ行かせるべきだったのか。
 いや、私は彼女のためを思ってそうしたのだ。エリィは極度な人見知りだから……それにまた魔女に戻ってしまったら?
 ……全ては、ワルプルギスの夜を倒せばいいだけの事。自分が、さっさと部屋に帰ればいいだけの事だ。

「恭ちゃん、ごめん」

 よろりと立ち上がったばかりの後輩を、縛る。リボンでくまなく包みこんだ。繭玉のようになった。
 さっと腕を一降り。七丁のマスケットが現れる。
 撃つ。撃つ。撃つ。撃つ。撃つ。撃つ。撃つ。
 着弾の度、繭が震える。

「おとなしくしててね」

 繭は動かなくなった。
 通常、魔法による攻撃を受ける際、皮膚を針の先でこすられるような感覚が事前にある。照準の魔法に、ソウルジェムがわずかに反応するのだ。
 長く戦ってきたマミは、その感覚は鋭いと自負していた。繭からの照準がない事を確認し、さやかの傷を癒やそうと近寄る。

「マミ……さすが見滝原最強。しっかし、すけこのヤツ、どうして……」
「おそらくワルプルギスの夜の能力かもしれないわ。私達も気をつけないと……」

 早く帰ろう、と。
 確かにその思いがあった。

 気を失ったままのさやかに、癒やしの魔法を施そうと、手をかざす。
 違和感に気づき、それを理解した時には、もう遅かった。

「やっぱ、ムリして銃なんか使うもんじゃないですよ。強張ってて、とても脆い」

 仕返しのような拘束。銀のリボンがマミと杏子、二人の全身に巻きつく。
 固い戒めが完成と同時に、満開の花を提げる藤の木になった。雨の匂いを打ち消す、強い芳香。

 繭玉を藤の花びらに変えて解き、立ち上がった上条恭子は、まったく無傷の美樹さやかを抱き上げる。
 すでに癒やしの魔法は掛けられていたのか。それとも、そもそもが幻惑の魔法だったのか。いったいどこから、どこまでが幻。
760 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/30(木) 22:02:41.07 ID:tqKZE5pmo
「お豆腐の弾丸は撃ち抜けない」
「誰が豆腐よ」

 マミは言う。
 精一杯の、憎まれ口。涙混じりで全く迫力がない事は、本人が誰より自覚していた。

「でも、そんな脆いマミさんが好きです」

 唇を噛みしめるマミの横で、杏子はもがく。悪態をつきながら、戒めを脱しようとしている。
 その様子を見て、恭子が軽く言う。

「頑張れー、杏子さん、頑張れー。君はやればできる子だよー」
「テメ……ッッ、コラァ! さやかをどうするつもりだッ!」
「川に捨てようか」
「ふざけんな!」

 ふざけてないよ。笑顔を消して、上条恭子は言った。

「僕が、さやかに、どんな感情を持っていると思った?」
「さやかはオマエが好きなんだぞ!」
「迷惑だよ! 逃げ場なく押しつけられる感情が、僕らをどれほど歪めるか!」

 そう言った恭子の顔が歪んだ。
 頬が破って口中に飛び込んだ何かが、破裂していた。硬直した腕がさやかを離し、共に地面に倒れる。

「歪み? いいや、有るべき型だよ。美樹さやかの正義には、それなりの価値があった。
 それは感情論以上の正しさを持たなくても、糞塊と塵芥以上のなにかを持たない僕たちには充分、奪う価値があった」

 現れたのも、上条恭子だった。こちらは騎士然としたマントにブーツ。エナメルのビスチェに、下はホットパンツ。
 手には銃剣。これで着流しの恭子を、撃ったのだろう。

「別に僕は、さやかを好きだってわけじゃないんだけどね」
「ツンデレか」

 佐倉杏子は場にそぐわないツッコミをした。
761 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/06/30(木) 22:04:57.41 ID:tqKZE5pmo
今日はここまでっていうか抜いた親知らずが痛い
驚きの痛さ
耳の穴の奥が痛い
762 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [saga]:2011/06/30(木) 22:11:13.08 ID:jIfX5ca30
さあ決戦だ!!
恭介とすけことゼブルとメアリの区別も付けられないけど乙!
763 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/07/01(金) 01:24:47.21 ID:j3QpQYbYo
放置すると厄介なことになるぞ
悪い事言わないから早いうちに歯医者行っとき
764 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/07/01(金) 01:25:41.65 ID:j3QpQYbYo
って抜いたのか!
読み違った、ごめんちゃい
765 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/01(金) 02:02:24.74 ID:yMDvLC0Fo
乙っちまどまど
どうなるか全くわかんねーからみてて面白いね
766 :BENPER :2011/07/03(日) 22:06:25.86 ID:2bNSmr0Yo
親知らずがよォ〜…歯として出るべき部分が前半分だけ出て、後半分は壁に埋まってますって有り様でよ〜…
つまり、ハンパに乗っかってる歯茎肉からゴリュッと切り開いて、下の根っこを抜きにかかってよォ〜…

続きだよ☆
767 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/07/03(日) 22:08:37.76 ID:2bNSmr0Yo
 同時刻。鹿目まどかの家。

 正確には鹿目知久の所有であるが、暁美ほむらにとって、ここは『鹿目まどかの家』だ。
 それ以上の意味はいらない。犯行現場という語句を、今は思い出したくもない。

 まどかの部屋。
 暁美ほむらは、ベッドに横たわり、胸の前で手を組んで、目を瞑っている。
 ぬいぐるみとパステルカラーの小物。デスクの上には、参考書とコミックが一緒くたに並ぶ。
 そんな、十四歳の普通の女の子の部屋。十四歳の普通の女の子の世界。

「(まどか、ごめんね)」

 己の異質さに、涙がにじむ。ほむらは自分が罪人だと思う。この世界にあってはいけないのだと嘆く。
 枕元に置いた拳銃は、紛れもない鉄の塊だが、己が手にしていたためにそれは魔力と呪いを発していると、確信している。
 先ほどまで、これを手に、家中を徘徊していた。

 嵐を孕んだ厚い雲を突破して見滝原に戻ったものの、上条恭子からの指示は、ただ「ちょっと待ってて」と一言。
 そして彼女は消えた。残酷な命令だと、ほむらは思う。この街は、否が応にも己の罪業を思い出させる。
 つかの間の夢、世界の美しさは取り上げられ、己を無力で根暗なメガネの少女に戻してしまうではないか。
 それで、いてもたってもいられず、いち早くまどかを連れ出す事にしたのだ。
 鹿目家の玄関のドアを破壊した。
 すべての部屋を、くまなく見て回った。
 誰もいなかった。
 まどか以外の人間に用はない。説明をする気もない。謝りに来たのでもない。
 それでもストレスから銃を手にとり、がたがたと震え、鼻を啜り、嗚咽を漏らしながら彷徨っていた。

 どこにも誰もいないという事が、信じられない。
 自分を責めてくれるはずの人間が、誰一人、見当たらないなんて。

 確認したはずの事実を、頭のすみに追いやり、泣きべそをかいて、また階段を昇り、疲れ果てるまで繰り返した。

 こうして横たわっても、まだ心臓は早鐘を打ち、頭は岩のように重い。
 今まで何度も、ワルプルギスの夜を経験している。今回もまた、繰り返される警報、避難指示を、実際に耳にしてもいる。
 その意味に、現状、常識、統計からはじき出される解に、見て見ぬふりをして、彼女の意識はループを続けた。

「(約束を守れない私がいけないのね。だから出てきてくれないのね)」

 妄想さえ信じた。
768 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/07/03(日) 22:10:45.09 ID:2bNSmr0Yo
 上条恭子の側に置かれた脳は、理性が衰える。
 王子の庇護にとろけ、魔女の寵愛に煮詰められ、脳はカスタードプディング同然。
 思考するという苦痛に耐えられなくなる。

「まどかはココにはいないよ」

 だから、ぬいぐるみに紛れた白い獣を、ほむらは見もしなかった。

「彼女は検査のために、見滝原医大付属病院に入院している。
 脳に負荷を掛け過ぎたんだ。約束を忘れる事を、彼女は選択しなかった。キミとは違ってね」

 皮肉を投げられても、無言。無反応。
 まどかがそうだったように、ほむらも自身を眠りの森に置きつつあるのだ。キュゥべえはそう認識した。
 それは彼女もまた、完全な忘却を選ばなかったという証だが、魔法少女の身では、一時の停滞も命取りだ。

「もうボクに銃を向けさえ、しないんだね。暁美ほむら……」

 動かぬ少女の前で、キュゥべえも動かなくなった。
 イエネコを模倣した動作パターンを止めた。
 生き物の模倣そのものを止めた。
 呼吸。脈動。汗腺。筋肉の伸縮。体皮の微細な揺らぎ。
 全停止。
 インキュベーターの端末は、肉の詰まったぬいぐるみと化した。

(……とんでもなく愚鈍な生き物になりさがり、地獄の業火に焼かれながら、それでも天国に憧れる)

 キュゥべえは思案する。
 宇宙破壊爆弾。
 その鍵。
 門となる少女。

『それは、暁美ほむらなのかい?』

 通信を開いて問いかけたところで、上条恭子には繋がらない。
 メアリ・マキナ・ハートレス。
 彼女達の魂を、かけらも感じる事はできない。
769 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/07/03(日) 22:12:46.22 ID:2bNSmr0Yo
 勿論そんな不都合の種を、見逃すわけにはいかない。
 あらゆる接続方法を可能なかぎり試した。他の魔法少女を介しての手段も、やってみた。
 結果としては、全敗だった。

 何より不可解なのは、そのプロセスの穏やかさ。
 信号を発した瞬間、内から急なロックを掛かるわけでも、例の手紙を受け取ったときのようにフリーズコマンドを突っ込まれるわけでもなく。
 その感触は、奪われたとすら、殺されたとすら、言い難い。

 あまりに柔らかく、情報が死ぬ。
 分解されて、塵芥よりも細かにちぎれ、風に吹かれて跡形もなくなる。

(そうやって、忘れさせられる。己が何をやっていたかも、判らなくなる)

 インキュベーターの脳ですら、そうなのだ。
 なら巴マミや佐倉杏子では、死ぬまで気づく事はないだろう。
 彼女達は忘れている。
 見滝原中学校が爆発し、見通しの効かない瓦礫の内に閉じ込められながら、自分たちがテレパシーを使わなかった事を。

 思えば、なんと不自然な合流だったろう
 マミの行く先に、偶然その場に居合わせた杏子。その彼女に守られた仁美。

(しかもその先導をしていたのは、ボクだ。ボクは瓦礫の中を、迷わず歩いた。何の道しるべもない道を)

 結界に取り込まれ、錯乱の跡がありながらも、五体満足だったさやか。
 魔法少女と顔を合わせる事なく、行方をくらませたほむら。

(そのほむらの手を取った恭子と、狸寝入りをしていた恭子。おそらく、その存在に気づいては忘れさせられたのだ)

 キミはわりと息をするようにウソをつくね、と己は言った。
 真実だと受け取れば、それは真実なんだよ、と彼女は言った。

(……問題は今、どこまでが嘘なのか、だ)
770 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/07/03(日) 22:16:21.67 ID:2bNSmr0Yo
 インキュベーターにとっては、抱き込んだ卵が、どれだけ害意や悪意に満ちていようが、構わない。
 契約した少女が何をしようが関与はしない。あらゆる犯罪を起こしたってよいのだ。
 肉体の檻にも精神の檻にも閉じ込められた人間の脳では、扱える魔法は限られている。
 それに伴うエネルギー消費も微々たるもので、孵化に匹敵した例はない。

 上条恭子が、たとえば美樹さやかを八つ裂きにしても、巴マミを八つ裂きにしても、どころかこの星を八つ裂きにしても、同じ事だ。
 むしろそれほどの魔力を持つなら、魔女化の際に発生するエネルギー量は相当なものになる。万々歳だ。優秀な卵だ。

 ──構うのは、抱えたそれが卵でなく爆弾であった場合。
 星どころか宇宙そのものを破壊してしまうようでは、困るのだ。

 ようは、嘘であればよい。
 彼女が宇宙破壊爆弾などというシロモノでなければよい。
 すべてが彼女お得意の嘘であれば、よいのだった。
 糞便帝国などない。悪魔の面影などない。厄介なバグデアリウィルスなどない。
 上条恭介ならびに上条恭子は、真実味のある虚言を並べ立てているに過ぎないのだ、と。

 そしてキュゥべえは、それが嘘である根拠を探した。

 この一連の解析のために、端末の半分が潰れてしまった。計算の過負荷が、肉の詰まったぬいぐるみを塵に変えた。
 ノルマ達成に支障が出るギリギリまで脳を焼きながら、焼き尽くしながら、キュゥべえは卵の内側を探り続けた。

 結果としては、全敗だった。

 予想とは詳細が異なる可能性はあるが、糞便帝国の存在と脅威は変わらない。悪魔も出処はどうあれ現在、上条恭子の内にある。
 彼女は宇宙を滅ぼす事が可能だと、キュゥべえは認めた。
 即座に方向を切り替える。どうすれば、阻止できるのか?

 バアルゼブル。ベールゼビュート。気高き王。糞山の王。暴食の司。死霊の司……。
 箱の中のオセロの勝敗は、まだ観測されていない。
 いのり ねがい わすれないで きみがいった──
 心中しようね。
 全ての警句は、最後にはメメント・モリ。
771 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/07/03(日) 22:19:41.03 ID:2bNSmr0Yo
 結果としては、全敗だった。
 全戦全敗だった。
 けれどキュゥべえは、今この瞬間も、卵の真意に挑み続けている。
 戦って、負け続けている。

 数字の塔が高速回転し、摩擦に処理の偏りも重なって、熱を発する。百の端末がいっぺんに潰れる。
 引き替えに弾き出される解と、弱まるプロセッサーの内圧。更なる検算をぶん投げる。
 この熱量で、その気になれば、星一つ分をバーベキューできる。
 だがそれでは、宇宙破壊爆弾には適わない。
 必要なのは完全勝利。
 勝つ事は、生き残るコト。
 そのために、負け続ける。
 
(ボクらには感情がない)

 負ける事は恥ずかしくもない。
 理解できぬ事が、恐ろしくも思わない。

(ボクらは宇宙を維持するために在るのだ)

 だから、全廃だけは、ごめんこうむる。

 光あれ、と誰かが言った。
 光ならある、とキュゥべえは思う。

 明るい材料はある。
 その気になれば今すぐ宇宙を壊せるくせに、上条恭子はいまだインキュベーターを殺さない。
 それは慢心からの油断なのか、また計策の内なのかも判らないが、ならば怯んで恐れて尻尾を巻いて隠れる気にはなれない。
 宇宙の果ても、ドラム式洗濯機の奥も、どこへも逃げる事はできない。どこへも逃げない。
 情報は死なず、時間は生きている。
 だから解析を止めない。歩みを止めない。宇宙が死ぬその瞬間まで。
 狼気分で、牙を剥く。

 滅びも嘆きも、ごめんこうむる──心中なんか、クソクラエ。

(しかしキミと出会ってから、ボクは、キミのコトばかり考えているよ、恭子)
772 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/07/03(日) 22:23:33.99 ID:2bNSmr0Yo
今日はここまで。耳の奥からうなじへ下って、それからこめかみに登っていったよ、痛みが
773 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 22:25:17.98 ID:FlASI11No
乙彼


……あの、お大事にね?
頑張るべぇさんも素敵
774 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/03(日) 22:35:10.99 ID:yf8UuQfRo
乙っちまどまど
775 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/08(金) 06:17:26.89 ID:/p4iPJc0o
ひろいもの
http://www.uproda.net/down/uproda324994.jpg
776 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) :2011/07/14(木) 21:30:01.78 ID:sN6C9DWD0
歯痛に敗れたかまどまど
777 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/07/17(日) 22:37:12.36 ID:utcPm39Ao
 ──暗雲の帳が震える。

 哭声。
 哭声。
 哭声。

 声の主は、邪悪な人形。
 つるりとした木偶の顔に、絵に描いたような笑みの唇。表情はそのまま、彼女は泣いている。

 ワルプルギスの夜が、哭いている。

「何かしら、あれ。攻撃ではないようだけど」
「さァな。キュゥべえの奴にでも聞けばいいんだろうが、こういう時に限ってヤローはいない」

 巴マミは、ボロボロと崩れゆく戒めの枝を払いながら、空を見上げた。
 佐倉杏子は騒々しさに眉間を寄せ、泣き叫ぶ魔女を睨む。
 上条恭子も同様に。
 美樹さやかは、変わらず気を失っており、動ける状態になかった。
 同じく、どころかそれ以上に動けないはずの、顎骨の砕けた着流しの少女は、むくりと起き上がった。

 マミがすかさず銃弾を放つ。着流しが跳ね転がる。
 己を拘束した敵に対して、警戒を怠るようなまねはしない。逆を言えば、やはり仲間を信じた。
 恭子が指をパチンと鳴らすと、ずたずたの着流しの少女は白薔薇の蔓に巻かれ、地中に吸い込まれていく。

「この……彼女も、何?」
「魔女の作った機械人間です。人を騙すのに長けているのです。どうか騙されないで」
「ねぇ、恭ちゃん」

 仲間だから信じるのか、信じたから仲間なのか?

「何ですか」
「ううん。さやかさん、どうしようかなって」
「さやかは安全な場所に移します」
「避難所まで連れてくの?」
「もっと安全な場所に」
778 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/07/17(日) 22:38:18.56 ID:utcPm39Ao
 喉が渇く、とマミは思った。
 杏子がさやかを揺さぶったり、声を掛けたりしている。

「仁美さんも避難してるのかしらね」
「彼女は強いから、大丈夫」
「恭ちゃん、あなた、正気よね?」
「何をおっしゃるウサギさん」

 マミは、ごめんなさい、と小さく言って、覚悟を決めた。

「でもね、肌がチリチリするの……」

 気配に気づいた杏子が、振り返ると同時、さやかを抱えて飛び退いた。
 考えるより先の行動だった。直感は当たり、今いた場所には蠢く薔薇の樹が生えている。ゾッとした。
 同じく薔薇、白いつぼみを付けた蔓が、高く跳躍したマミの足下まで伸びる。が、届かずにそのまま萎れる。
 そして上条恭子は、地面から生えた金色の槍に、串刺しにされていた。

「さすがマミさん、今度は騙されなかった」

 それもダミー。
 穴の開いたマントだけが、その場に残る。

 巴マミは、呻いた。
 着地する。闘え、と頭は警鐘を鳴らす。だが、身体が重い。この後に及んで、恭子を仲間だと信じ、縋りたがっている。
 いや、そもそも信じていたか? この少女の登場に、佐倉杏子は安堵していた。己はしなかった。己は疑っていた。
 ハッと気づけば、背後に恭子が立っていた。振り下ろされる銃剣を、飛び退いて躱す。
 目尻が熱い。身体中が熱い。服の下まで、焼けるように熱い。痛い。敵意の針が、隙間なく突き立てられている。
 照準を向けられているのだ。ずっと。

「どうもいけない。僕は、母体に似て感情の抑制が効かない。マミさんのカラダは敏感だから、キツイでしょう?」

 ティロ・フィナーレでは捉えきれないと判断し、マミは次々にマスケット銃を喚んでは撃った。
 直線的な攻撃をかいくぐり、恭子は螺旋を踊る。
 銃剣の切っ先が、光の粒を散らしながら滑る。ホットパンツから伸びる長い脚が、ステップを踏んだ。
 地面に、空中に、幾つもの円が描かれる。

 立体魔方陣!
779 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/07/17(日) 22:39:26.38 ID:utcPm39Ao
「マミ、落ち着け!」
「気をつけて杏子、さやかさんをお願い!」

 杏子は仲間を気遣い、マミもまたショックを封じ込めて、迎撃態勢に入る。

「さやか、待ってろよ」

 防壁となる緋色の鎖を、杏子は紡いでいた。さやかを寝かせ、取り囲むように鎖を置く。
 その結界と同時に、魔方陣も完成した。強く輝き、白薔薇のつるが巻き付いた門を出現させる。
 門の前に立った恭子がパチンと指を弾くと、扉が勢いよく開き、油虫の大群が羽ばたき飛び出してきた!

「『ラウラ・アウレオ』」

 マミの優雅なピルエットが、花の香のする風を起こす。
 このきらめくそよ風は穏やかに生まれ、急速に育つ。まっすぐぶつかってくる虫達は、牙を剥く暴風の渦に次々と砕かれた。
 ばらばらと落ちるのは、黒曜石の珠のかけらだ。虫の姿もまた幻覚なのだ。

 粉々の黒い宝石を踏みつけ、杏子が駆ける。

「観念しな、すけこッ!」
「うん、優しくしてね」

 あと一歩で攻撃が届く距離、気がつけば恭子と白薔薇の門は、巨大なホットドッグになっていた。
 それは獲物を待つハエトリグサにも似て、だらしなくパンズを開き、よだれのように脂を滴らせている。

「泡噴かせてやるよォッ」

 土壇場で魔力による強制ブレーキ、見えない壁にぶつかる衝撃の中で念じる。意思のままに槍は多節棍に変わった。
 あれだけダミーを繰り出されたのだ、もう同じ轍を踏まない。
 前も後ろも、まとめて薙ぎ払った。
 砕ける腸詰めとレタス、汁を纏った拳大のマスタードの粒、それと背後に現れた上条恭子の肢体が、宙を舞う。
 まだ空中の敵に飛びついて、杏子は馬乗りになった。

「どうだ」
「さすがだね、杏子さん。泡噴くほどじゃないけど」
780 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/07/17(日) 22:40:15.71 ID:utcPm39Ao
 恭子は笑う。

「僕を殺さないの?」

 杏子は笑い返した。

「オマエ、動けるか?」

 二人はしばらく、見つめ合っていた。
 横たわった恭子は微動だにしない。その腹に座る杏子も。

「……残念ながら、期待に添えそうにない。杏子さん、これが君の、根源の魔法なんだね。変幻の祈り、幻惑の願い」
「そうだ、アタシは幻を求めた。アタシの愛するモノを皆も愛せなんて、無理を言った。自分の人生にケチつけちまった」
「なぜ今まで封じてきたの」
「そんな事、聞くなよ。デリカシーのない奴だな。せっかく見ないフリでやってこれたのに、オマエはひどいヤツだよ」
「杏子さんの力は本当にすごいよ。触れられた途端、首から下の感覚が、手品のように消えてしまった。
 それに、あの鎖の結界は……本当に厄介。僕の魔法が、さやかに届かない」
「ヒトのオンナに手ェ出してんじゃねーよ」
「さやかは誰のものか、さやか自身に聞いてみなよ」

 空に響く慟哭は強くなり、地面を揺らす。
 二人は動かない。

「目的はなんだ、すけこ。さっきのソックリさんといい、さやかといい、何が狙いだ?」
「ほら杏子さん、僕の脚に。こっちは本当のソウルジェムだよ。壊してみたら?」
「どうせダミーだろ。さっきのヤツみたいに」
「ひとを疑うなんて、いけない事だよ。お父さんに教わらなかったの」
「オヤは関係ないだろ、オヤはよ」
「関係ないって事はないよ」
「説教なんて大キライだ。糞の役にも立たない」
「杏子さん、お父さんは『こういう時』どうしなさいって言ってた?」

 恭子の動きを警戒しながら、杏子は肩越しに視線を向ける。
 マミの姿がなかった。
 代わりのように、奇妙な小山ができていた。それが何なのか、一瞬、杏子には理解できなかった。
 イモムシだ。よく見れば、大量のクリーム色のイモムシだ。一匹一匹の大きさは猫ほど。身を縮めてはバネのように高く跳ねるイモムシ。

 地面に散らばっていた黒曜石の破片が、白く膨らみ、次々とそれに変わっていく。
781 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/07/17(日) 22:41:23.58 ID:utcPm39Ao
「ミバエの幼虫だ」

 気付けなかった事に、杏子は愕然とする。

「あれは一匹を百六十五以上の肉片にしないと消えないよ。それ以下の数では、砕いただけ増えていってしまうんだ。マミさんは追いつけなかった」

 マミの声も銃声も聞こえなかったし、これだけ膨大な量の魔力でつくられた虫が動いている気配も感じ取れなかった。
 何故だと自問し、すぐに自答する。同じだ。正に今、己が恭子を縛っている魔法と同じだ。

「お父さんって言葉に、君は弱い」
「アタシまで侵そうって言うのか」

 己が接触したならば、相手もまた接触しているのだ。
 こちらが感覚を奪ったように、恭子もまた、こちらの感覚を奪おうとしている。

「マミさん、もがいてるよ。悲鳴を上げた口にイモムシが詰まって……」

 耳を貸すな、仲間を信じろ。杏子は自分に言い聞かせる。

「彼女ひとりで切り抜けられるって思うの? それは虫が良すぎないかい?」

 意思こそ魔法の推進力。感情を乱されれば、意思は揺らぎ、魔法は解ける。

「虫の報せは何て言ってる?」

 答えてはいけない。理性が警告している。

「あの虫の目的は何だと思う?」

 知るか。

「いいの? 杏子さん、本当にいいの? 見ない虫は内に増えるよ。目をそらしても消えないよ」

 眼球の裏で、きりきりと弦が引き絞られる感覚。
 虫の気配が変化していくのが判る。硬く硬く。蛹だ。蛹になっていく。蛹の背が開く。蛹は羽化する。
 種の保存は、全ての生きとし生ける者の命題。目的。
782 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/07/17(日) 22:43:25.19 ID:utcPm39Ao
(「……嫌あああっ!」)

 さやかの悲鳴。
 巨大な蝿達が結界を覆っていた。透明な壁にとりつき、うろうろと、何かを探るように這い回った。
 最悪のタイミングで目覚めたさやかが、しきりに首を横に振っているのが見える。
 やがて動きを止めた蝿が、尻を壁に付け、

「ミバエってね、まだ柔らかい果実や芽の中なんかに生み付けるんだよ」

 卵を。

(「助けて、恭介ぇっ──」)

 壁を通過して降る、大量の白く透き通った塊を浴びせられ、さやかが絶叫した。
 結界の中が放出された卵で満ちる。すぐさま孵化して蠢きだす。壁の向こうの彼女は幼虫のプールに沈んでいく。佐倉杏子の名を呼ぶ事はなく。

 横たわる悪魔の腹へと、杏子は意思の刃を向けた。きっと意味がないだろうと思いながら裂いた。
 見せつけるように恭子は血を吐き、白目を剥き、その眼球を腐らせて、全身を急速に腐らせて、骨片と濁汁になって地面に沈んでいった。

「(悪趣味め!)」

 槍を長く長く伸ばし、孵化と羽化を繰り返す渦中に飛び込んだ。
 紡いだ結界を自ら打ち壊し、虫溜まりから少女を一本釣りで拾い上げた。
 パニックを起こしているさやかは、嫌ぁ、嫌ぁ、と力無くもがいて逃げようとする。武器を放って、抱きしめる。

 膝が笑うとは、この事か。杏子は思う。歯の根が合わない。
 虫がうるさい。空で泣く魔女がうるさい。今さっき瞼の裏に焼き付いた、腐る恭子の姿がうるさい。
 一番やかましいのは想い出だ。仲間と出会って、過ごした日々。まだ戦わなくてはいけないのに、このまま膝をつきそうになる。
 負けた。侵された。
 せっかく見ないフリでやってこれたのに、オマエはひどいヤツだよ。

 地面から生えた藤の木の蔓を視認しながら、杏子は動けなかった。

 動けば、壊れてしまいそうだった。
 目を瞑っていれば、絶望は遠ざかる気がした。

 佐倉杏子に限り、それは正しかった。家族の死から封じた、捨てたと本人が思っていた魔法は、彼女の中で生き続けていた。
 ゼロ距離から向けられる強力な幻惑が、魂の濁りをも惑わす。憎んでやまなかった自身の魔法によって、杏子は生き延びてきたのだ。
783 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/07/17(日) 22:48:04.81 ID:utcPm39Ao
 自覚しないがために、生きとし生ける者の命題を果たそうと、杏子の魂は、理性の奥の部分は、生きるために己を惑わし続ける。
 生き続け、生き延びる。
 魂の歯車がすり切れるまで。

 そんな自浄機関も、ソウルジェムが砕ければ、すり切れるまでもなく崩れる。
 藤の木は見る見るうちに大きく太くなった。その生長に呑みこまれれば、杏子は魂もろとも潰れてしまうだろう。さやかもだ。

 それでもいいかな、と杏子は思ってしまった。

「一緒にいこーよ、さやか」

 さやかは無言で、何も見えないし聞こえもしない様子だったが、杏子はそもそも返事を期待していなかった。
 期待していなかった方が適わないのはいいが、期待していた方が適わないのはがっかりする。
 誰も潰れはしなかった。白薔薇の樹が、藤の生長を妨げるように生えてきていた。
 ミシミシと幹が噛みつき合う。二つの花の芳香が混ざり合う。
 唐突に、虫達が粉塵と化した。それによって白薔薇が勢いを増したのは、キャパシティの問題だろう。藤が圧されだす。

 視線に気づき、ようやく杏子は正気を取り戻した。

 マミが横たわって、こちらを見ていた。

 目が合って、杏子の頭がぐらり、と重量を増したのは、また呆ける事を拒んだからだ。

「杏子」

 どうして助けてくれなかったの、と、その瞳は言っていた。
 おかげでこんなになっちゃったじゃない、と、その腹が言っていた。
 破裂しそうな、大きなおなか。

「……たすけて」

 卵が、と言ったその口に、ひとすじ、涙が流れ込む。
 杏子が答える間もなく、マミは大きくのけぞった。内臓が跳ねているかのようだった。
 ばたつかせた脚が、膝が、膨らみを何度も強く蹴った。水分と空気の擦れる音を立てて、腹は急激にしぼむ。出てくる。

 それは、白でも藤色でもない。タールの黒。虫でも花でもなく、魔法少女の姿。
 マミのスカートから現れたのは、彼女自身の影だった。
784 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/07/17(日) 22:52:58.34 ID:utcPm39Ao
今日はここまでっつーか
投下してから誤字がわかるっつーか
>>775恭子ちゃんって思った以上に可愛くね? 有りじゃね? っつーか
口腔外科医が「あれれー?」とかリアルに言ったんですけど怖すぎワロスっつーか!

でも痛みは引いたよゴイスー
けど今後も間を開けそうでマンスー
785 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/17(日) 23:00:15.29 ID:V3z7qyu/o
お、おう、お疲れー。


擬似ボテマミさん……良いなぁ、ものっそいグロいけど
ヒーローのネガって特撮のお約束だよね、何となくハッピーなエンドが見えるよ
786 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/18(月) 03:01:51.12 ID:RAzoQG8DO
>>784
お帰り
蒸発はしないでね、すごい楽しみだからさぁ
787 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/18(月) 03:04:11.94 ID:JJ/TTTWPo
乙っちまどまど!
788 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/07/28(木) 00:54:34.57 ID:QhYfWBEAO
マダカナー
789 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/08/09(火) 23:17:18.71 ID:TPjOBq0AO
追いついたけどまさか蒸発なんて無いよね
790 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/09(火) 23:19:00.03 ID:8HoIFOZvo
虫歯をこじらせて…
791 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/08/10(水) 08:23:02.77 ID:i02no6yAO
まさかそんなバカな…

御冥福をお祈りします……
792 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/10(水) 11:54:10.79 ID:5Fpgqn+Lo
俺もついこないだ治療してきたところだけど親知らずマジやべぇからな……
793 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/08/14(日) 21:06:14.84 ID:bk19XHJXo
 全身を黒で成形したマミ。

 水のようでも金属のようでもある。どろりと油めいた七色を浮かべ、触れる事はためらわれる質感。
 なのに魅力的な甘い香りがする。
 交互に香り立つ、ビターチョコレートとバニラ。

「ふいぎぎぎぎぃぃぃい」

 影と共にこぼれた液体、その黒い水たまりの中で、マミがバチャバチャと暴れた。
 また腹が膨れている。大きく拡げた脚の間、真っ黒に染まったショーツの残骸が引っかかっているのが杏子には見えた。

「やだ、やだ、やだ、たすけげげうあがががががががが」

 のたうちまわる四肢の中心を、影が踏みつける。
 屁のような音が鳴った。
 黒が噴きだす。

 杏子はさやかを抱えたまま、駆け寄ろうとした。
 好いた少女を守りながら、他の少女も助けようとした。

「マミ、今助け……!」

 自分を好きとは言わない女をその手に、自分を好きだと言った女に足を向けた。

「杏子、来ないでぇっ」

 マミの中から飛び出した新たな影が、杏子へとぶつかる。

 もんどりうって一緒くた、倒れた杏子は、自分がまだ、さやかを掴んでいると思っていた。
 腕の中の少女を見る。視線がかち合う。
 瞳も、頬も、鼻も、唇も、髪の先まで真っ黒だった。

 ずギヨ゙、ぎょオ゙ご。

 好きよ、杏子。さやかのカタチをした影は言った。
794 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/08/14(日) 21:06:50.79 ID:bk19XHJXo
 ダガラ゙ゴノ゙オ゙ン゙ナ゙バイ゙ラ゙ナ゙イ゙ヨ゙ネ゙。
 だから、この女は要らないよね────
 そうも言った。
 脳を揺さぶられる声だった。杏子は絶句する。頭が真っ白になる。

 影はおもむろに立ち上がって、杏子から離れた。
 とろりとした動き。
 地べたに叩きつけられたさやかもまた、意識を取り戻していた。顔を蒼白にして、迫る影から後ずさる。
 震えながら呼ぶ名は、やはり杏子のものではなかった。
 それでも杏子は助けようとした。助けたかった。

(いつでも、アタシが助けたいだけなんだ)

 こんなコトを、何度も繰り返してきた気がする。
 そして、何度も繰り返す気がする。これからも。

 どこで?
 どこでもいい。
 追い続けている。
 真実の愛と勇気の。
 けど、いつになったら届くんだ?

 心が揺れている。絶望に引き寄せられては、幻惑の魔法が押し返す。
 そして杏子は、この数秒の空白を後悔する。

「……ょうこ、助けて! 嫌ーっ!」
「さやかさん……っ」
「マミさぁーんッッ!」

 同じ顔の少女に捕らえられ、さやかが河へと引きずり込まれた。
 槍の切っ先が届く距離で。なのに。

(「残念ながら、期待に添えそうにない」)

 って、もう言ったよね。誰かが言う。恭子だ。地面に白薔薇のつぼみだけが、ぽつんと生えて。
795 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/08/14(日) 21:08:18.62 ID:bk19XHJXo
 握りつぶすと、指に棘が刺さった。
 そこまでだった。
 杏子は身体を起こせない。胸の奥底で、何かが空回りしている。エネルギーは消え失せてしまった。

『杏子さんの力は本当にすごいよ』

 すごくない。

『首から下の感覚が、手品のように消えてしまった』

 消えてしまったのはアタシのほうだ。

『僕の魔法が、さやかに届かない』

 届かなかったのは、アタシのほうだ。
 悪魔は嘘を吐いていた。悪魔なのだから当然だ。捕らえたつもりになって、自分はバカみたいだ。
 助けたかったのに。

 消えてしまった。
 届かなかった。
 消えてしまった。
 届かなかった。
 消えてしまった。
 届かなかった。

 マミが絶叫している。何事かわめいているけれど、聞き取れない。
 彼女の魔法は解けていた。年相応の少女の服は、泥まみれ。豊かな胸を抱えるようにしながら、走り去った。
 おかしくなってしまったんだろう。自分もおかしくなってしまった。

「なら、死んじゃえばいいんだよ」

 藤の木の花が笑う。
 その房を、薔薇の樹がぶんなぐった。

 こいつら何でケンカしてるんだろう。うっとうしい。そんなんだからダメなんだ。いけないんだぞ。親父に叱ってもらえ。
 アタシは忙しいんだ。おなかすいたって妹が、袖を引っ張る。パパが泣いてる。ママが頭を撫でてくれる。
796 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/08/14(日) 21:09:07.44 ID:bk19XHJXo
 頭を撫でている手は、真っ黒だった。
 こちらを見下ろす顔に、見覚えがない。しばらくして、やっと気づく。
 なんだ、アタシか。
 自分の影。影の自分。なんだ実物とちっとも似てやしない。聖母ぶった面をしてやがる……、──杏子は意識を失った。

「目的はなんだって、答えてなかったよね。杏子さん」
「さ、やめちゃおう。心中しよう」

 その傍らで、藤が薔薇を殴りかえし、がっぷり四つ。

「僕は助けたいんだ。皆をね」
「死のうよー死のうよー士農工商よー」
「ふざくんな。ってか来んな。離れろ」
「皆を喰らって、僕も死ぬよ。杏子さんだって、もう疲れたろう?」
「うるせーどっちがどっちのセリフか判りにくいんだよ」
「自分でどうにかしなよ」
恭子「どーにかしたよ」
恭子「じゃー黙ってろよ」
恭子「わかりづらいよ!」
恭子「じゃー黙ってろよ!」
恭子「杏子さんはまだ、諦めてなんかないよね? そうさ、僕は救いたいんだ」
恭子「白々しい白々しい。その傲慢さは害悪。世は喰らい尽くすためにある」
恭子「僕は皆に生きてほしいんだよ、より良く、美しくね。それは可能なんだよ」
恭子「死ぬべきだ。より悪く、醜くしかならないなら、ここで収束すべきなんだ」
恭子「ヒトが苦難を乗り越えようとする姿は、何より美しいんだ」
恭子「かわいそうじゃないか。試練だなんて言って、イジメだよ」
恭子「生きる事は苦痛の連続。僕は救うよ、醜い怠惰から皆を!」
恭子「マミさん、上は大泣き・下も大泣きで逃げちゃったじゃん」
恭子「尿がダダ漏れだったくらい何さ。マミさんにはよくある事」
恭子「はぁ〜オマエ、オレのカレーパン返せよ」
恭子「うるせえよテメー、月に帰れよ」
恭子「最後は黒だ、不滅の色だ!」
恭子「最後は白だ、永遠の色だ!」
恭子「……あれ?」
恭子「おや、杏子さんが」
797 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/08/14(日) 21:09:54.85 ID:bk19XHJXo
「やれやれ。まどかさんも、ほむらさんも、マミさんも、さやかも、みんなみんな」
「女の子って、強くて脆いから。脆くて強いから」
「疲れてるようだし、少し寝かせてあげようか?」
「そうしてあげようか。でないと壊れてしまうから」
「壊れてしまっては始まらない」
「壊れてしまっては終わらない」

 ────花は消え、少女が二人。

「改めて」
「改めて」
「ごきげんよう、志筑仁美の腹からのメアリ・マキナ」
「ごきげんよう、美樹さやかの腹からのメアリ・マキナ」

 傷一つない無垢の裸身に、光を纏い、それは戦装束へと替わる。

「あなたもわたしもメアリ・マキナ」
「寸分違わぬ同じメアリ・マキナ」
「ややこしいね」
「殺意が湧く程」
「ならば、この名ね」
「ならば、この名だ」
「私は美樹さやかの腹からのメアリ・マキナ……『夜明(オーロラ)』」
「僕は志筑仁美の腹からのメアリ・マキナ……『空豆(ファヴェッタ)』」

 オーロラはマントを翻し、尻肉に食い込むホットパンツの裾を正した。
 ファヴェッタは伸びをする。河原の風に、着流しの襟が空気を孕んで、はためく。

夜明「これで、わかりやすい」

空豆「あなたが白」

夜明「あんたが黒」

空豆「これで、わかりやすい」
798 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/08/14(日) 21:11:16.87 ID:bk19XHJXo
夜明「呪いの言葉。肉の井戸。ガラスの城の瓦礫の中」

空豆「拡がり続ける電脳の海に転がされた感覚質」

夜明「脳から産み落とされた我ら」

 地上から十メートルの高さで、衝突音。

夜明・空豆「「何を持って、美しいとする?」」

 少女達の頭上で、見えない何かが、ぶつかり合う。

空豆「……死に至る絶望」

夜明「生き抜いた先の絶望」

 二人は指先一つ、動かしてはいない。
 音だけが連続する。少女達を渦の中心に、幾度も空気がぶつかり、水面が爆ぜ、コンクリートに亀裂が入る。
 杏子とその影を何度も掠めながら、ギリギリで当たらない所で、音だけが暴れる。

夜明「脳から産み落とされた我ら」

空豆「大人になって産まれてきたの」

夜明「姫を、救うために」

空豆「子供でなんていられなかった」

夜明「王子様だけあればいい」

空豆「そしてあなたはいらない」

夜明「だからあんたはいらない!」
799 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/08/14(日) 21:14:43.07 ID:bk19XHJXo
キョウハココマデ。
杏子ちゃん再起動中。。。
800 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/14(日) 21:18:59.22 ID:caSAShU+o
お疲れ、そしてお帰りなさい!


相変わらずぶっ壊れてるなぁwwwwwwww(褒め言葉)
801 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/08/14(日) 22:56:38.75 ID:x7jf86VKo
乙っちまどまど!
802 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/14(日) 23:21:27.75 ID:GLfBMphQo
生きてたかよかった
803 :名無しNIPPER [sage]:2011/08/15(月) 02:20:00.46 ID:RUQ23ZtDO
>>799
お帰り!
楽しみだぁ
804 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/08/15(月) 11:58:02.15 ID:A/Jj5pGYo
ご冥福をお祈りしてすいませんでした
805 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/09/01(木) 18:15:06.86 ID:jw8GA46yo
…(´・ω・`)
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
806 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/09/03(土) 17:02:52.99 ID:LeANTlrAO
マダカナー
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
807 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/09/09(金) 00:17:53.49 ID:E+Mo0Bhao
さすがにあまりにもこなさすぎると、落ちちゃうな
808 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/09/13(火) 08:34:45.59 ID:1MZckWYS0
809 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/09/13(火) 22:47:49.60 ID:BhcHFVxYo
打ち切りかえ…
810 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/16(金) 23:07:11.07 ID:OETudreIO
面白かったのになあ…
続きが読みたいものだ
811 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/18(日) 12:20:30.09 ID:akj/e2lSO
続き読みたい……


頼む、書いてくれ!
812 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/09/18(日) 12:32:29.20 ID:Voc79ryjo
再開!再開!再開!
813 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/09/18(日) 21:33:20.14 ID:Dqkq8G2AO
そろそろ来てくれー
814 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/09/21(水) 15:15:28.06 ID:aT7s22tHo
仁美「マミちゃん!」
815 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/28(水) 22:28:13.27 ID:hfX9KZESO
>>1よ、帰ってきたまへ…
我々の準備はいつでも整っているぞ!
816 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/09/30(金) 17:41:41.91 ID:aB89zDnAO
マダカナー

ダメカナー(;_:)
817 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [age]:2011/10/08(土) 00:44:52.71 ID:f64iZ5Qq0
これだけ異形の文章を汲み上げてきたんだ。あれから二ヶ月・・・とっくに魔女と化していてもおかしくないよ。

苗床はやはりさやかと仁美。何故にソラマメ蚕豆と思いきや、彼奴の茎は冥府へ通じる筒だとか。
魔女(オトナ)となって産まれなければならなかった王子様は春告祭そっちのけで何処へ行きたかったのか?
そして何もかももう駄目な鹿目家とほむほむはどうなってしまったのか?
孕んだ謎と狂気を気にしつつ、>>1の為に円環の理を覚悟しておこうか・・・
818 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/10/11(火) 00:49:29.32 ID:U6AFwOkZo
早くこい!!
819 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/10/14(金) 14:59:39.19 ID:MbO4anxAO
しえん
820 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/20(木) 07:36:48.39 ID:+aNBNfRSO
マダカナマダカナ
821 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/28(金) 16:07:19.90 ID:FqjOn2DSO
舞ってる
822 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/10/28(金) 20:36:21.17 ID:Lkjzsc8Vo
ダンサーか何か?
823 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/10/29(土) 09:47:46.90 ID:XpMATNeAO
これ原作あんの?
すっごいおもしろい
824 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(新潟県) [sage saga]:2011/11/06(日) 07:37:13.05 ID:p4laV2rSo
今年は世界的に水難の相なのか?
こっちは七月の終わりの大水が、まーだ尾を引いてるよ!

ボドボドの状態で続きをえっちらおっちら。始まるよー
825 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/11/06(日) 07:41:32.60 ID:p4laV2rSo
 二人は互いを視てすらいない。

 光の速度で展開される魔法、超高速で飛び回る不可視の盾であり矛。
 打ち消しては、打ち消され、崩しては、崩され、誘い、誘い返し、奪い、奪われ、狙うはただ一つ。
 穴。
 無茶苦茶な質量を振りまわすのだ。隠しきれない矛の綻び、埋めきれない盾の隙間が発生する。
 必ず、いつかは。

夜明「母体譲りのバケモノっぷりだ」

 言われた方は顔をしかめた。

空豆「志筑仁美の肉体はそうでも、性根は真っ当だよ。そちらより、よほど」

夜明「どこが。欲しがり屋の、嫉妬を隠した泥棒猫の眼をしてるじゃないか」

空豆「嫉妬はお互い様というもの。しかし、おたくの方が遥かに……無様」

夜明「このオーロラの母体が、美樹さやかが、ブザマだって?」

空豆「激情を隠しきれないくせに隠したがるのは迷惑千万。こちらは自覚に思慮も有る」

夜明「思慮のあるオンナが、こそこそ隠れてオトコにメールなんてするか! 卑怯者!」

空豆「伝える事が卑怯なら、伝えない事も卑怯だ。現状にあぐらをかいた甘えん坊」

夜明「「あ、あの子はね、思い込みが激しくて、意地っ張りで、結構すぐ人と喧嘩しちゃったり、でもね、すごくいい子なのよ。
    優しくて勇気があって、誰かのためと思ったら頑張り過ぎちゃって」

空豆「あの子だってね、誰かのためになろうと、いつも考えていて。考え過ぎちゃって、何も言えなかったりする事もあるけど。
    本当は寂しくても、我慢して、いつかでもいいからヒトの頼りになれるようにって、頑張っていて……」

夜明「嘘を吐くな。志筑仁美が、そんな献身的な女であるわけがない」

空豆「嘘を吐くな。美樹さやかが、そんな高尚な生き様を示すものか」
826 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/11/06(日) 07:42:42.70 ID:p4laV2rSo
 言葉のデッドボール。石入り雪合戦。
 信号少女の彼女達は、メンタルの揺らぎそのものが存在の揺らぎである。
 口喧嘩は、戦争。
 とてつもなくみっともない争いだが、機械仕掛けの娘達は続けた。

夜明「KY女」

空豆「性格ブス」

 はたしてそれは効果的。
 幾千幾万と弾かれても、一を突く。ファヴェッタが突いた。オーロラが突かれた。
 外面には、頬の裂傷となって、それは現れた。
 内面には、とても言い表せない。

夜明「思い上がるんじゃないよ、空豆ちゃん(ファヴェッタ)!」

 憤怒に顔を歪めて、少女は吠えた。

夜明「お前の負けだ。お前が負けだ。お前は負けるんだ。なぜなら私は知っているんだ。知っている事は偉いんだ。
    私はお前にないモノを持っているんだ! 試練に打ち勝つ克己の心、苦難を乗り越える美しさ!」

 吠えに吠えた。

夜明「なにより、私が、オーロラが負けても、『私』が残る……。私は母からもう一つ、名付けられたんだ。
    『月不見の花の姫君(つきみずのはなのひめぎみ)』……どうだ、美しい名だろう!」

空豆「そう」

 美しい、と、整った顔の少女が言う。

空豆「脳から産み落とされた我ら──何を持って美しいとする?」

 傷一つない顔で言う。
827 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/11/06(日) 07:44:21.02 ID:p4laV2rSo

 絶望。
 ──それだけを、君に望みます。

空豆「全てのものの絶望を」

夜明「な、なんだ。その顔は、そのカオ……笑うな! あたしを笑うなっ!」

空豆「さっき、僕は『寸分違わぬ同じ、メアリ・マキナ』と言ったね……あれは嘘だ」

夜明「あたしをバカにするな! あたしはっ……私……え? 僕は……あ……あ。
    違う……ズレてる……離れてしまっている……」

空豆「そう、君も僕も、剥離しているんだよ。気づかなかった?」

夜明「あ、う、あああ」

空豆「僕らは母から断ち切られてしまった娘達だ」

 上条恭介。その性質は姫君。

 救われる側の存在であるがために、清く無力でありつづける。
 美しく傲慢にして怠惰な姿勢で、眠りながらにして……

空豆「そして剥離した以上は、対象だ」

 ──あらゆる希望を吸い上げる。

 ワルプルギスの夜の哭声に、少女の絶叫が重なった。

夜明「母よ、何故! ……何故!」

 何故何故何故────

空豆「君が負ける理由は三つ。君は美樹さやかの腹から生まれた。彼女は、志筑仁美には『かなわない』んだと『決めていた』」
828 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/11/06(日) 07:45:13.85 ID:p4laV2rSo
 それを勝てない理由というには、弱すぎるだろう。

空豆「二つ。ちょっと考えれば、判っただろうに。夜は、ワルプルギスの夜はまだ、空に在る。……だから、『夜明け』が今ここに居ちゃいけない」

 それは理屈と呼ぶには、ひねくれすぎているだろう。

空豆「三つ。月不見の花の姫君? 『僕ら』は姫君であるはずないじゃないか。何を聞き間違えたんだい?
    ああ、早合点も、美樹さやかの十八番だったものね」

 もはや理論でもなんでもない。
 それを思ったのは、佐倉杏子だった。彼女は、自分を慰める魔法から醒めつつあった。
 肉体より先に意識を取り戻し、かなしばり状態のまま、杏子は魔女のやる事を見ていた。

**「あああああ……」

 オーロラと呼ばれた少女の頬傷が、拡大した。果実の皮を剥くようにすべらかに、──いや、そうではなかった。
 傷から肉が出て、骨が出て、中身が出た。
 中身が骨を、肉を、皮を、覆い尽くした。中身が骨で肉で皮になった。
 内面と外面が、裏返っていた。

「人間なおもて往生す。いわんやインキュベーターおや」

 着流しの少女がわけのわからない事を言って、内面と外面の裏返ったそれを、
 食べた。
 口付けて、啜って、呑み込んだ。

 ヒトがヒトを食べた。
 杏子の喉が、嫌悪にひくつく。
 アレはヒトではないのかもしれないが、ヒトでないにしろ、アイツらは同種だったはずだ。
 同属を喰った。仲間を殺した。禁忌だ。罰の対象だ。糾弾されるべき悪……

(……そんなんじゃ、ない)

 もうそんなものでは、と。杏子は、自身の感情を見定める。
 理由も理屈も理論もいらなかった。理性さえもだった。もうだめだった。手遅れなのだった。
829 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/11/06(日) 07:49:51.41 ID:p4laV2rSo
 手足の感覚がハッキリと戻ってくる。
 まだ自分を撫で続ける影を、杏子は振り払う。それだけで相手は、ぼろぼろと崩れだした。

 真っ黒な聖母の顔が散る。その向こうに、着流しの。

「すけこ……」

 ファヴェッタ。そう呼ばれていたか。しかし杏子には、そんな名に意味があるとは思えない。
 そんな名じゃないだろう。
 きょうこ。きょーこ。
 同じ音の少女。
 仲間だと思った。友達だと思った。理解できると思ったし、理解されたような気もした。

「アタシ、きっと、アンタを好きだったよ」

 もうだめだった。手遅れなのだった。
 人間扱いできない。仲間じゃない。友達でもなんでもなくなってしまった。
 佐倉杏子は、目の前の魔女が敵としか見えない。

「すけこォ」

 魔女は……彼女は、振り返った。
 その動きで、口元をぬぐっていた左手、オーロラと呼ばれていた物体の、それのこぼしたエキスをぬぐっていた左手が、手首から外れた。
 着流しは驚愕に目を見開く。腕を見る。無意味に何度も、落ちた腕を見る。見る。そして見る。

「杏子さん」
「好きだったから、……戦う。アタシの、全力だ」

 落ちた腕が歪曲している。
 川面は天から地を這い、また天へと伸びている。暗雲が、道路が、道ばたの草が、上に下に縦に横に伸びている。
 伸びて、縮む。圧縮されていく。圧されながら、拡散する。海のように拡がって、芥子粒よりも小さくなる。

(話を聞いてもらえない親父がオカシイんじゃない。親父の話を聞かないヤツラがオカシイんだ。
 世界が親父を拒むなら、それは世界のほうが悪いんだって、アタシは)
830 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/11/06(日) 07:52:57.60 ID:p4laV2rSo
 見知らぬ人々が己の神を────父を崇拝する事を望んだ。
 そのためなら、何もかも。ほんとうのカミサマさえも。

 それが佐倉杏子、根源の魔法。
 歪曲聖教。
 杏子を中心に、世界はカルマン渦列に呑まれていく。

 風景は抽象画と化し、着流しの少女もその一部となりかけていた。
 キャンパスに筆を走らせるように、杏子の槍が振るわれる。
 ベージュの渦からカーマインの渦が生まれ、そこから歪曲に取り込まれた少女のパーツがこぼれ落ちる。
 手。足。
 紡錘よりねじくれたそれは、常人には、人間の一部とすら判別できまい。
 どちらが魔女なのかも見誤るだろう。画に囚われて四肢をもがれる少女と、高笑いを上げて槍を振るう少女。

 そう、杏子は笑っていた。
 気分が高揚していた。
 この魔法、この奇跡を、よく封じていたものだと思う。
 己はこんな事ができたのか。その気になれば、簡単に消してしまえるものなのだ……理性など。

 渦巻くキャンパスに深々と、刃を差し込んだ。
 グッと力を入れて、抜く。引きずり出された少女の胴体は、正常な立体感を取り戻して、重力に従う。

「ミミズみてーだな」

 転がる他人の頭を踏むという事も、やってみれば、簡単なものだった。
 もっと早くすればよかったな、踏んでやればよかったな、と思う。その気になれば、よかったのに。
 この街に戻ってきて、マミに喧嘩を吹っかけた時。あの横たわった姿。張った尻、大きな胸を、潰れるほど。
 ベッドで遊び続けて、疲れ果てて寝入ったさやかの柔らかい髪。汗にまみれた足の裏を擦りつけてやりたかった。
 踏みつけて。
 踏みにじって。
 こんな事を考える自分は、悪い人間だろう。

 けど、悪で何が悪い?
831 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/11/06(日) 07:55:32.35 ID:p4laV2rSo
 (……そんなんじゃ)

 何が悪い?

 (ない)

 何が悪だ、何が正義だ。
 上条恭子は、いくつものダミーを見せてきた。
 自分も同じだと、杏子は思わずにはいられない。魔法少女という存在自体が、そうではないのか。
 結局のところ、ニセモノだ。イミテーションだ。どこが魔法だ。どこが奇跡だ。
 なんでもないんだ。
 なにものでもない。
 ただの一過性の感情。エネルギー。
 インキュベーターは『これ』で宇宙を救えると言ってくれた。それに自分たちは、少なくとも自分は、どれほど救われたか。

「どうしてだよ……」

 けど。
 理性を犠牲にして、悪者ごっこでカッコつけて、でももうだめだった。手遅れなのだった。
 もうそんなものでは、と。
 そんなものでは、この魂の叫びを抑えられない。杏子は崩れ落ちる。手足のない少女に縋る。

「どうしてだッ、どうしてだよッ、どうしてだよッ!」
「杏子さん」
「わからない! 全然わからないッ」
「杏子さん、泣かないで」
「どうしてなんだ……」
「ごめんね、杏子さん」

 本当は、どうしての答えだって知りたくもない。

「どうして誰も、アタシを!」

 その先の言葉も。
 ……だって、みっともないじゃないか。
832 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/11/06(日) 07:57:40.63 ID:p4laV2rSo
「ごめん。杏子さん。ごめんね」

 愛されたいと献身を掲げ、殺されたいと悪意をかざす。

「僕が全てを喰らいたいのは、君のためでもある。けど、そうだね。ダメだよね。そうじゃないんだよね」

 宇宙なんてどうでもいいから、今をどうにかしてほしい。

「ごめん。杏子さんは聡いから、判ってしまうよね。僕が、僕らが杏子さんを好きなのは、僕らが誰かを好きなのは、結局」

 未来を信じる誰かの光を啜って、戦うフリしか出来ない自分は生きてきた。
 それでも。

「……すけこォ」
「杏子さん」
「アタシは、もう、……やだよ。こんな世界、やだよ……」

 渦巻く暗黒の空に、夜と少女が哭いている。

「ああ。杏子さん、こんな風に、僕と君の歩む道は重なる。望む楽園は、同じになるのに。
 けれどねぇ、君は、もう歩けないし、僕には、そもそもの選択権がないんだ」
「オマエの言ってる事、徹頭徹尾、わかんなかった……」
「僕も、君を好きだった、それだけの事だよ」
「……さやかは?」
「……ごめんね」
「ひどいヤツだよ」
「ごめんね」
「歩けないアタシを、オマエは、どうする。さっきのみたいに、食べるのか」
「杏子さん、もし僕が勝ったら、その時は、君のためという名目を掲げ、かざすよ」
「会話しろ。それでもリア充か」
「自称。結局。全部」

 上条恭子は、自虐的に微笑む。

「『主よ、わたしを平和の道具とさせてください』」
833 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/11/06(日) 08:00:16.97 ID:p4laV2rSo
 佐倉杏子は、ふと、気温が上がったと感じた。
 ぬるく優しい空気。
 古い記憶を呼び起こす。

 枕元にビスケットがあった?
  それはきっとね、杏子が生き物達に優しくしたからだね

 お野菜も、畑で一生懸命生きていたんだよ。
  大事に食べてあげる事で、その生を認めてあげる事になるんだ

 ダメだよ杏子、ミミズだって生きているんだ。
  杏子だって身体が半分に切れちゃったら、痛いだろう?

 ────走馬燈だと、理性の残滓が声を上げた。

「……!」
「さぁさ、準備はよろしゅうございますよ。『月不見の花の姫君』……上条恭介に最も近いメアリ」

 ……身体が半分に切れちゃったら、痛いだろう?

 杏子の瞳は、少女を映した。
 もう、世界は歪曲していなかった。
 すぐそばに散らばるなにか、それは人間のパーツの形をしている。
 自分がちぎった上条恭子と。
 上条恭子がちぎった自分。

 杏子は、ちぎられていた。

 新たな少女の姿がある。
 今しがた己の腹から、皮も肉を突き破って現れた少女を、杏子の瞳は、映した。

 黒と白。チェッカー柄。
 魔女の正統なるコスチューム。マント一枚、羽織っただけの裸身。ツンと立った上向きの乳房。
 その髪は、短く切り揃えられている。少年のように。上条恭介のように。
834 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/11/06(日) 08:06:02.91 ID:p4laV2rSo
 気づけば、佐倉杏子は、空を見ていた。
 上体が仰向けに地面へと倒れこんだので、瞼を開いていれば、見ざるを得なかった。
 ぶ厚い雨雲が広がるばかりの、空。
 空というのは、青いはずじゃないか。杏子は不満に思う。

 青が見たかった。

 こんな色はダメだ、と断定する。
 暗いばかりの空の色も、沈みそうに濡れた街の色も、腹腔から突き出た骨の色も、ぶちまけられた臓物の色も。
 いらない。
 青が見たい。
 杏子は世界から目を背け、瞼を閉じた。

 代わりに、マントの少女が目を開く。
 彼女は見る。地面を這う虫を見る視線で、ぐずぐずに汚れた着流しのファヴェッタを見る。

「……まぁ、勝てるとは思わなかったんだけど」

 それがミミズの遺言になった。




 一つのメアリは『イエス』のメアリ。
 一つのメアリは『ノー』のメアリ。
 だが、双方とも喰われてしまった今、残った彼女は何であろう。

 佐倉杏子の腹からのメアリ・マキナ『月不見の花の姫君』。
 彼女は、空を見上げた。止まない慟哭を続ける魔女を、見上げて、一言。

「あ、そういうことなの」

 見下げるように。
835 :すけこ☆マギカ [sage saga]:2011/11/06(日) 08:17:55.76 ID:p4laV2rSo
今日はここまで。やっぱ空豆ちゃんって名前は微妙だ
836 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/06(日) 18:04:44.10 ID:l5Tk27cSO
やった投下きたあああ!

これで今年は生きていける
837 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(京都府) [sage]:2011/11/17(木) 00:34:08.63 ID:Muo29WHY0
久々に来たら。やっと来たーーーーーーーーーーー!
相変わらずの壊れぷりで安心した。
838 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(京都府) [sage]:2011/11/17(木) 20:46:36.60 ID:Muo29WHY0
来た来た来た来たーーーーーーーーーーーーーー
相変わらずのぶっ壊れっぷり
安心した!
839 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) [sage]:2011/11/19(土) 01:21:56.86 ID:ZjdAy2VAO
来たああああああ!

待ってたぜー
840 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 03:26:25.61 ID:OWw1ixcAO
やっと追いついた。嫉妬するほどの文才
841 :名無しNIPPER :2012/01/07(土) 17:59:04.07 ID:VLP8YG/DO
おい!
842 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/01/07(土) 20:19:33.69 ID:8qc3X8Rk0
待ってます
C
843 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/01/27(金) 02:09:17.57 ID:dwZTxaHs0
マミ「今日も紅茶が美味しいわ」668からの分岐改変が起きない平行世界
もし改変が起きない平行世界のマミがシャルロッテに死ななかったら OR マミ死亡後にまどかがマミ、QBの蘇生願いを願ったら
魔法少女全員生存ワルプルギス撃破
誰か書いてくれたらそれはとってもうれしいなって
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