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とあるフラグの天使同盟 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/21(土) 16:32:09.18 ID:F25Xy5fYo


このSSは、とある魔術の禁書目録に出てくるキャラクター、一方通行(アクセラレータ)を中心とした
もうあまりほのぼのとは言えない感じの二次創作物です。



一方通行「フラグ・・・ねェ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1285654962/

一方通行「フラグ・・・・・・なのかァ?」  風斬「そうですよ!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1289310136/

一方通行「フラグ・・・・・・じゃねェだろ」  エイワス「まだそんな事を言っているのか」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1294928027/

一方通行「フラグ・・・・・・だろォな」  垣根「ち・・・・・・くしょ・・・・・・う」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1295564748/

一方通行「フラグだと? って事ァ」  レッサー「私はあなたが好きって事です♪」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1298041227/

一方通行「そンなフラグはヘシ折ってやる」  ヴェント「・・・・・・あ?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1300453744/

一方通行「いいか、フラグってのはなァ」 ガブリエル「vbhti素敵apfrgt」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1303132992/




上記のスレからの続きとなっています。もしお暇でしたら、ご一読を。


以下、留意点など。


・投下は基本的に三日以内です、多分。そしてかなり気まぐれに投下するので質悪いです。
・第三次世界大戦は終結。その後のお話です。
・キャラ崩壊しまくりな上に、設定も弄りまくっています ←これ一番重要、ご注意ください。
・地の文が多めになってきました。
・誤字脱字のバーゲンセール。発見した方は厳しく指摘してやってください
・書き溜めはありますが恐らく速攻で尽きます・・・・・・

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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
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全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713736565/

2 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/21(土) 16:33:12.16 ID:F25Xy5fYo


                   【超今更の登場人物紹介・『天使同盟』の構成員】


【一方通行(アクセラレータ)】


本作の主人公にして『天使同盟(アライアンス)』のリーダー。第三次世界大戦終結後、大天使ミーシャ=クロイツェフになぜか好かれてしまい、
その後の生活はほぼミーシャと共に過ごしている。すき焼き屋で風斬氷華とフラグを立てると同時に
『天使同盟』を結成。酒の勢いとノリで結成したこの組織が、後に全世界を揺るがすとんでもない同盟になることは、
その時の彼には予想も出来なかった。ちなみに、この本作では結構な数の女性とフラグを立てている。


【ミーシャ=クロイツェフ】


『神の力(ガブリエル)』。本作のヒロインにして『天使同盟』の顔。第三次世界大戦終結後、
なぜか一方通行に懐いてしまい生活を共にすることになる。身長ニメートル以上、
全身をすべすべとした白の布で覆い、顔のパーツを全て凹凸で再現しているその姿はまさに異形。
しかし彼女の仕草にはどこか可愛らしい一面も見られる。ような気がする。一方通行からはガブリエルと呼ばれている。


【風斬氷華(ヒューズ=カザキリ)】


『天使同盟』の清涼剤にして唯一、常識を持ち合わせている女の子。でも最近はそんな事なくなってきた。
すき焼き屋の一件で一方通行に特別な感情を抱く事になる。キレるとエイワスですら手が付けられなくなる。
アルコールが入ると脱衣属性が追加される上に酒癖の悪さは天下一品。
基本的には誰に対しても敬語で、レッサー以外には『さん』付けで名前を呼ぶ。ミーシャの事は『天使さん』。
超絶鈍感クソ野郎こと一方通行相手に唯一『女性』を意識させた女傑。最もフラグらしいフラグが立っている。


【エイワス】


『天使同盟』のジェネラルマネージャーにして最強の聖守護天使。霊的存在。銀河系宇宙の悪鬼。
アレイスター=クロウリーに必要な知識を全て授けた大馬鹿野郎。ある時は巨乳のパツ金ねーちゃん。
シリアスパートもそうだが、特にギャグパート時のエイワスは全宇宙最強の存在。出来ない事がない。
『天使同盟』結成に興味を持ったため、垣根帝督というお土産を手に彼らに接触した。
その瞬間、『天使同盟』の命運は決まってしまったのかもしれない。ドラコ=アイワズという偽名をよく使う。
男にもなれるらしいが、現時点でそのような描写はなく、また需要もない。


【垣根帝督】


学園都市第二位の超能力者(レベル5)、『未元物質(ダークマター)』。イケメンホストかぶれ。
現時点では彼が最後の『天使同盟』構成員である。イジラれ役。すぐ死ぬ。
本作で最も死亡フラグを積み重ねてきている男。しかしそれらを全て跳ね除けている彼は
実は不死身なのではないかと囁かれている。あとすぐ死ぬ。でもたまに本気でかっこいい一面を見せる。
一方通行とのデートにおいて自らの心の内を暴露。以降はミーシャを守るために彼らと行動を共にする。
実は彼、この本作で三人ほどちゃんとしたフラグを立てている。

3 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/21(土) 16:33:50.73 ID:F25Xy5fYo
少々お待ちを
4 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/21(土) 16:48:18.37 ID:F25Xy5fYo


――――――――――――――――――――――


断続的に続く低い震動にもそろそろ慣れてきた頃だった。


ステイル=マグヌスと神裂火織、そしてヴェントはほぼ同時に"ある異変"に気づく。


「・・・・・・。 なんだ・・・・・・?」


ステイルは辺りを見回す。彼の目に映るのは相変わらず、崩れ落ちた数々のビルや
『回収部隊』のファイブオーバーと『未元物質(ダークマター)』の仮面の兵士達。
そしてその軍勢の死屍累々。

それ以外に異変が起きている所などなかった。
にも関わらず、ステイルは漠然と"変化している空間"を感じ取っていた。

彼は口に咥えていた煙草を指で挟み、それを魔術によって炎剣へと変える。
その炎剣を振るい、こちらに迫ってくる『回収部隊』を薙ぎ払う。
背後から鼓膜が吹き飛びそうな轟音を吐き出しながらファイブオーバーがガトリングレールガンを
射出してきたが、ステイルは辛うじてそれを避けると返す刀で炎剣を振るって撃破した。

5 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/21(土) 16:49:17.58 ID:F25Xy5fYo


周囲にいる神裂とヴェントを見ると、やはりステイルと同じように
戸惑いを隠せないという表情を浮かべていた。


(何かがこの学園都市の一角に入り込んできている・・・・・・? だが何が?
 人間・・・・・・特に魔術師なら僕らでもそれを察知できるはずだ)


ステイルが抱いた違和感は、白の絵の具を溶かした水の中にどす黒い墨を一滴垂らしたような、
そんなニュアンスのものだった。
白い水がこの学園都市という世界なら、黒い墨はその外部から滲むように入り込んできた"何か"。

しかもその黒い墨は、じわじわと拡散していってるような気さえした。
だが三人は漠然とそう捉えているだけで正体までは見当もつかない。

ジュバッ、と物が溶ける音がした。
ファイブオーバーが頭から真っ二つに焼き切れる。
中の仮面の兵士ごと左右に開いて倒れたファイブオーバーの先にいたのは垣根帝督だった。

6 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/21(土) 16:50:23.80 ID:F25Xy5fYo


「・・・・・・これで何匹目だ?」

「・・・・・・・・・・・・知るかよ。 いちいち数えてたら・・・・・・、キリ、ねえぞ・・・・・・」


ステイルが言葉を投げかけるも、垣根は返事をすることさえ億劫そうだった。
全身は魔術の使用の反動による自分の血で真っ赤に染まっており、『回収部隊』から受けた攻撃は彼を確実に衰弱させていた。
誰の目から見ても、これ以上の戦闘続行は不可能判断できる。

神裂が顔をしかめて垣根に忠告する。


「・・・・・・能力者が魔術を使用すれば死に及ぶ危険があると、イギリスであれほど注意したのに・・・・・・。
 その上これほどの長時間の戦闘、もうこれ以上は危険すぎます。 あなたは下がっていてください」

「うる、せえな・・・・・・、つか馬鹿かよテメェは。 ヤツらの狙いはこの俺なんだぞ?
 俺が戦線離脱したところで・・・・・・、あいつらはストーカーみてえに俺を追ってくるだけだ」

7 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/21(土) 16:51:48.36 ID:F25Xy5fYo


「しかし・・・・・・」

「なぁに、まだ俺は戦えるさ。 "こいつ"でな」


と、話し込んでいるうちに。気付けば『回収部隊』は一〇〇以上の数で垣根達の周囲に出現していた。
彼ら四人で相当の数を撃破したはずだが、一体あと何体相手にすればこの地獄は終わるのか。
しかし垣根の表情には焦燥でも諦めでもなく、今まで隠していた手品の種を披露する時のような
意地の悪い笑みが浮かんでいた。

そして彼は呟く。


「えーっと・・・・・・。 世界を構築する五大元素の一つ、偉大なる始まりの炎よ」
                   (MTWOTFFTOIIGOIIOF)


それを聞いたステイルの心臓が跳ね上がる。まさか、と彼は周りに潜む『回収部隊』の事など
気にもかけず垣根の言葉を聞き続ける。

8 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/21(土) 16:53:03.26 ID:F25Xy5fYo


「それは生命を育む恵みの光にして、邪悪を罰する裁きの光なり。
                (IIBOLAIIAOE)
 それは穏やかな幸福を満たすと同時、冷たき闇を滅する凍える不幸なり。
                (IIMHAIIBOD)
 その名は炎、その役は剣。
     (IINFIIMS)
 顕現せよ、我が身を喰らいて力と為せ」
         (ICRMMBGP)


神裂の目も驚愕によって見開かれた。彼女は垣根がぶつぶつと呟いている言葉の意味を知っている。
そしてステイルもその言葉の意味を知っている。いや、知っているどころの騒ぎではない。
その言葉は、その呪文は、ステイル自身も戦闘時に頻繁に口にする呪文だ。

『未元物質』の兵士が翼を広げて垣根に突進してくる。
それを合図にするように、垣根は咆哮してその名を叫んだ。




「『魔女狩りの王(イノケンティウス)』!!!!!」



9 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/21(土) 16:54:46.11 ID:F25Xy5fYo


垣根が叫ぶと同時、彼のすぐ側で局地的な爆風が発生した。
不可思議の法則を含むその爆風は飛び込んできた『未元物質』の兵士を
片っ端から薙ぎ払い、そして垣根自身も吹き飛んでしまう。


垣根の魔術によって出現したそれは、人の形をしていた。
それは真紅に燃え盛る炎に包まれており、その炎の中にはドロドロの黒い重油のような塊が蠢いている。
しかし完璧に行使出来てはいないのか、時折その形が歪む様を確認できた。


『魔女狩りの王(イノケンティウス)』。
それはステイル=マグヌスという炎の術式を操る魔術師が最も得意とし、最強の切り札でもある
魔術だった。


「ば、かな・・・・・・」


ステイルはそんな自分の切り札をも行使してしまった"能力者"に対し、一種の畏怖すら抱いた。
ルーンの基礎魔術だけならまだいい。炎剣も、何らかの措置があれば能力者でも使用できるかもしれない。

10 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/21(土) 16:56:43.05 ID:F25Xy5fYo


だがこの『魔女狩りの王』だけは話が違いすぎる。その辺の素人が、その辺の魔術師でも、
ここまで容易く扱えてしまうような安い魔術ではない。
ステイルは自身以外の者が顕現させたイノケンティウスを見て、激しい違和感を覚えた。


ゴッッ!!と、鈍器を物凄い勢いで射出する音が背後から聞こえた。
さっきから一人黙々と『回収部隊』を殲滅しているヴェントの『女王艦隊』が
氷で構成された巨大な錨を発射している音だった。

ヴェントは口から大量の血を吐き出しながらイノケンティウスを操る垣根を、呆れた目で見ながら問いかける。


「アンタ、魔術師だったの? 学園都市から来た能力者だって自分で言ってたじゃない」

「・・・・・・今日付けで、能力者兼魔術師だクソったれ・・・・・・。 ゲホッ・・・・・・!!!
 今みてえに・・・・・・血反吐ぶちまけながら必死で習得したんだぞ? スゲーだろ・・・・・・。
 まぁ・・・・・・、このイノケンさんは今日が初めてだけどな、まぁまぁの出来だろ? "センセイ"」


そんな言葉でステイルに声をかける垣根の視線は、もうステイルの方を向いていなかった。
どこを見ているのか分からないほどに彼は焦点が定まっていない。
その目からもダラダラと血が涙のように溢れ出しており、地についている足は酒に酔ったかのように
フラフラとあちこちに移動している。

11 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/21(土) 16:58:53.72 ID:F25Xy5fYo


こんな状態になっても戦い続ける垣根の闘志を見た『回収部隊』達から、息を呑む声が漏れた。
完全に垣根に気圧されている。
もはや『未元物質』の仮面でどう演算しようとも、今の垣根を討ち倒す手段が得られなかった。

もちろん神裂やヴェントはその隙を見逃さない。天草式の女教皇は手に携える七天七刀で
『未元物質』の兵士を斬り倒していく。三人の魔術師は垣根から『未元物質』の性質を説明されている。
なので仮面や黒のコスチュームの僅かな隙間を縫って確実に敵を斬り伏せていく事が出来るのだ。


「―――――『唯閃』」


独自の呼吸法で魔力を精製し、極限にまで強化した肉体から織り成す最強の抜刀術は、
魔力という未知の法則に対応出来ていない仮面の兵士を一瞬で戦闘不能にしてしまう。

ヴェントはさらに簡素な作業で『回収部隊』を駆逐していった。
霊装の力で呼び出した『女王艦隊』の砲台から氷の錨を射出する。
正確に『未元物質』の仮面に命中させ、確実に『回収部隊』の数を減らしていった。

もちろん、『回収部隊』もただ受けに回っているだけではない。
仮面の兵士は『未元物質』による魔術とはまた違う未知の法則で攻撃を仕掛けるのだが、
最悪なことにあちらには『未元物質』のオリジナルにしてスペシャリスト、垣根帝督がいる。

12 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/21(土) 17:00:10.23 ID:F25Xy5fYo


事前に『未元物質』の情報を得ていた魔術師たちはこの短時間で物の見事に『未元物質』に対応し、
大勢の『回収部隊』を前に完璧な立ち回りで応戦しているのだ。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおォォッッ!!!!!!!!」


垣根の叫びに応じるように、彼の呼び出したイノケンティウスが激しく燃え盛る。
その怪物が腕を振るうだけで炎剣とは比較にならないほどの爆熱が発生し、
建造物の位置や地形などを考慮した完璧な陣形を展開しているはずの『回収部隊』を
その地形ごと焼き払っていく。

垣根のイノケンティウスを見て呆けていたステイルもようやく我に返り、
自らが第一九学区に仕込んだルーンを使用して同じようにイノケンティウスを顕現させる。
一体でも驚異であるイノケンティウスが、更に追加でもう一体。


超能力者と魔術師が織り成す、灼熱の魔王の二重奏。


もはや『回収部隊』は為す術がなかった。戦意を喪失し動きが緩慢になるが、
垣根帝督は容赦をしない。


『星の欠片』消滅まで残り三〇分も無くなった頃、『回収部隊』はついに垣根の前に現れなくなった。

13 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/21(土) 17:07:15.91 ID:F25Xy5fYo
今日の投下は以上です。
相変わらず次スレを立てるタイミングがよく分からないのですが、
これで大丈夫でしたでしょうか?何か迷惑がかかっていたらごめんなさい。

そんなわけで新スレ、一応このSSはこのスレで終わる予定です。
終わる・・・・・・はずです。多分。終わらなかったらもうどうしようもないな・・・・・・

次回更新は三日以内。

それでは、新スレでもよろしくお願いします。ありがとうございました!


前スレは様子見て、あれでしたら私が適当に埋めておきます。

14 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/21(土) 17:07:56.14 ID:F25Xy5fYo



                          【次回予告】



『あるんだよ、俺にはまだ"とっておき"ってやつがな・・・・・・。 ロシアで・・・・・・、
 魔術訓練合格祝いとかでエイワスのヤツから貰ったもんがあるんだが・・・・・・。
 こいつを使えば俺はまだ魔術で暴れられる・・・・・・あいつらを駆除出来るんだ』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・垣根帝督




『ofugcnbkshg蹂躙jvdngjr続行fjkcnbg』
―――――――――――自我の崩壊と堕落が渦巻く悪魔・ミーシャ=クロイツェフ




『・・・・・・ったく、天使でも悪魔でも、そのやンちゃっぷりは変わンねェな。
 おとなしくしてろ』
―――――――――――『天使同盟』のリーダー・一方通行(アクセラレータ)




『(・・・・・・何、あれ・・・・・・? 私と、一方通行さんと、天使さん以外に・・・・・・"何か居る")』
―――――――――――『天使同盟』の構成員・風斬氷華



15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/21(土) 17:09:32.78 ID:mkp74rzXo
W乙!

そろそろ一方さんに何かが起こりそうな予感がするぜ
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage saga]:2011/05/21(土) 17:10:08.86 ID:T5hVcWWqo
いちおつ

ていとくんがかっこよすぎる
人物紹介だとすぐ死ぬとか書かれてるのにw
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/05/21(土) 17:11:03.81 ID:izgQm0m+0

次回予告がすごく気になる・・・というか、予告のていとくんの発言ww
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/21(土) 17:11:47.34 ID:LXnwxaQGo
乙です
それにしても垣根に死亡フラグしかたってない(((°д°;)))
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/21(土) 17:11:48.67 ID:M3XVuKczo
超乙!

ていと君はまだとっておきがあるのか
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/21(土) 17:14:35.51 ID:6KHga/h9o
乙おつ
1から読みはじめってやっと追いついたと思ったらリアルタイム遭遇ラッキー
めっちゃ楽しいですありがとう
これからは日々楽しみに読み進めていくのか・・・wktk
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/21(土) 17:31:53.34 ID:P5METR8Eo

何故だろう、アレイスターがかませにしか見えない
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/21(土) 18:11:47.96 ID:UrYhR6Wg0

スレタイ見てしばらく釣りかと思ったけどそんなことはなかった
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/21(土) 18:13:32.72 ID:zZH+9g290
スレ立てと更新乙!
次の一方さんと風斬がどうミーシャと戦うのか楽しみだ
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/05/21(土) 18:24:07.11 ID:WTTEE3//0
いちおつ

このスレで終わりか…感慨深いものがあるな
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/21(土) 18:24:45.56 ID:TL+8pQjZ0
乙です
このなかにどなたかイノケンさんを召還した垣根を描くことのできる
絵描き様はいらっしゃいますでしょうかー?
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/21(土) 18:27:08.45 ID:tk+7YT5to
乙!
イノケンさんキタ━━━( ゚∀ ゚)━━━!!
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/21(土) 18:40:17.50 ID:Ua/tXJyDO
>>1おーーつ!
ていとくんのとっておき・・・しかし今ここで使ってしまっていいのか?
『あの夢』のことを考えると・・・
1回しか使えないとは限りませぬが
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/21(土) 18:50:43.08 ID:ltrwgddDO

乙!
やっとリアルタイムでみれた!
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/05/21(土) 18:59:37.37 ID:lasFfErCo
驚異…脅威…胸囲!
おっぱい!
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/05/21(土) 19:46:01.63 ID:hwlUUDpLo
スレタイの最終回臭がヤバイ
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/05/21(土) 20:19:46.56 ID:PYcl5z3q0
そんなフラグはあれだ、そげぶだ
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/21(土) 20:22:28.24 ID:13SIh4+IO
"誰か居る"って、エイワスがいってた最後の1人か
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) [sage]:2011/05/21(土) 20:58:14.18 ID:cP2XMPrh0
神「ちょwww人間おもすれーwwww」
みたいな感じで見てるんだな
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage saga]:2011/05/22(日) 00:10:01.09 ID:Mf9PpE4P0
今回がラスト? そんな幻想は俺たちがぶち殺す!

乙です!
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/22(日) 00:32:13.57 ID:DT6zMpm90
もうセト本人が出てきちゃっても驚かない
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/05/22(日) 00:47:55.03 ID:8quVfIg10
この垣根を是非ともいのいちさんに描いて頂きたいな・・・・・・
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/05/22(日) 02:01:13.66 ID:dnyOyYsQo
>>35
セト「粉砕 玉砕 大喝采 ワハハハハー」
ですね
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北陸地方) [sage]:2011/05/22(日) 02:28:20.61 ID:/tsurr13o
セト「魔術『滅びの爆裂疾風弾』を発動!」
☆「ぬわーーーーーっ!」

こうか
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/22(日) 07:53:22.79 ID:Z8Mz4zQP0
>>37
そこは「俺はどっちでもいいけど」だろ
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2011/05/22(日) 10:13:58.64 ID:gmrP9frD0
乙!!
イノケンさんキターーーーーーーーーー!!!!!!
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/22(日) 10:29:53.42 ID:VcR6kn/SO
イノケン2体と女王艦隊に
大量のEqu.DarkMatterって
世界の終わりみたいな絵面だな
いや、実際に世界の終わりかwwww
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/05/22(日) 13:59:45.92 ID:900T1A/P0
ていとくんが大活躍するのはいいけど、イノケンさんを取られたら
ステイルさんのアイアンティディがwwww
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/22(日) 16:11:25.58 ID:tdeOSh1ao
一人一人では単なる火だが、二つ合わされば炎となるってコーチが言ってた
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/22(日) 16:30:26.84 ID:D67jc53P0
やっと追いついたぞクソが!面白すぎるだろうが!早く続きをくれえええ!
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/22(日) 16:45:42.95 ID:rog2U7Bz0
>>43合体したイノケンティウスをただのイノケンティウスと思わないでよっ!
  ていとくんとステイルの心がこもってるんだから」
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/22(日) 17:34:43.39 ID:pO1dLBLA0
イノケン「フラグ・・・なのかぁ?」イノケン「・・・///」
こういうことですねわかります
47 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/22(日) 18:13:28.04 ID:OT7UuePSo
こんにちわ!こんばんわ、ですかね?
投下しに来ました。

新スレ早々たくさんのレスをありがとうございます!
非常に嬉しく、そしてモチベーションも上がります。

なるべくこのスレで終わらせられるよう頑張りますので、よろしくお願いします。
つかいい加減終わらないと本気で呆れますよね・・・・・・マジで。


まずは垣根帝督サイドをほんの少し。彼がエイワスから貰った『褒美』とは。
そして一方通行&風斬氷華vs悪魔。一方通行を悩ませる異変が大きくなっていきます。

そんなあらすじでした。では行きます!
48 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/22(日) 18:14:17.26 ID:OT7UuePSo


『回収部隊(アンチツヴァイ)』が垣根たちの前に姿を現さなくなっても、
彼らはしばらく警戒を解くことはなかった。

そして完全に『回収部隊』の気配がしなくなった事を察知した四人は
それぞれの武器を収めて一息つく。さっきまでの雰囲気とは一転、
彼らのいる一角はずっと続いている震動を除けばすっかり静けさを取り戻していた。


「垣根帝督!!」


初行使であるイノケンティウスをいきなり実戦で使用した垣根は、既に身も精神もズタボロだった。
顕現させたイノケンティウスを消した瞬間、垣根は抵抗することなく地面に倒れ伏せる。
ステイルは焦燥しながら垣根の側に駆け寄った。


「垣根」

「・・・・・・ああ? あ、ああ・・・・・・んだよ、張り合いのねえヤツら。
 まだ何匹か残ってんだろうが・・・・・・どこいった?」

「怖じ気づいたんじゃないの? さっきまでのヤツらの勢いが止まってる。
 多分、アンタが魔術を使用するって点がよっぽどイレギュラーだったんでしょうね」

49 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/22(日) 18:15:28.29 ID:OT7UuePSo


やれやれ、とヴェントはため息をついて目についたビルの瓦礫に座り込む。
その崩れたビルの頂上には神裂がいた。聖人である彼女の視力は八.〇。
肉眼でも一キロメートル程度先の景色なら鮮明に視界に収めることが出来る。

その馬鹿げた視力を用いて、神裂は周囲を見張っていたのだが。


「・・・・・・どうやら、本当にもう『回収部隊』が攻めてくるという事は無さそうですね。
 垣根帝督の話では敵の数は一五〇〇。 まだ数百程度の勢力くらいは残っていそうですが・・・・・・」

「一方通行や風斬氷華。 ミーシャ=クロイツェフやアレイスター=クロウリーの状況は?」


ステイルが新たな煙草を吹かしながら質問する。


「私達ほどの魔術師が同時にここで戦闘を行いましたからね。
 この辺一帯はそれはもう見通しのいい景色になっていますよ。 
 ・・・・・・ただ、やはり私が視界に収められる限界の範囲にはまだ建物が残っています。
 申し訳ありませんが、一方通行達の様子までは確認できません」

「おいおい、お前・・・・・・どんだけ視力良いんだよ・・・・・・。 やっぱ・・・・・・、
 年季が入ってると視力も鍛えられるもんなのかぁ・・・・・・?」

「私は聖人だっつっただろこのド素人が。 もう一回『唯閃』ぶちかまされてえか?」

50 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/22(日) 18:16:16.56 ID:OT7UuePSo


ぴくぴくとこめかみを引きつらせながら神裂は腰の七天七刀に手をかける。
しかしそれを見ても垣根はただ弱々しく笑うだけで、何の行動も起こさなかった。
予想外のリアクションに神裂の顔が曇る。


「・・・・・・本当に大丈夫ですか? 垣根帝督。 ミーシャの捜索は一旦中止して
 今すぐにでも病院に向かった方がいいと思います。 私の知人にも一人、
 能力者でありながら魔術を使う者がいますが、あなたほど甚大な反動を被っている姿は見たことがありません。
 女子寮で魔術の話をしたときにあなたはやたら魔術に関して食いついていましたが、その事で
 ルチアがえらく心配していましたよ? 『あの男は必ず無茶を起こす』、と。 ・・・・・・その通りでしたね」

「・・・・・・・・・・・・あの小姑、そんな事言ってたのかぁ・・・・・・」


浅い呼吸を繰り返しながらヘラヘラと笑う垣根に、魔術師の三人は呆れるしかなかった。
こんな見るも無残な姿になってまで、なぜ彼は魔術という力を使って戦うのか。

ステイルがその事について言及してみようかと思っていると、


「さて、と」

51 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/22(日) 18:16:54.64 ID:OT7UuePSo


ガバっと。急に垣根は仰向けの体勢から勢い良く体を持ち上げた。
突然の行動に三人は目を点にする。


「・・・・・・急にどうしたの? 魔術の使い過ぎで頭やられちまったか」

「まだ仕事が残ってんだろうがよ。 『回収部隊』はまだ全滅してねえ」


どうやら彼は『回収部隊』の残存勢力を全て殲滅する気でいるらしい。
身体中から血を滴らせている状態で無茶を起こそうとする垣根に、三人の魔術師は『とある少年』の姿を重ねる。


「・・・・・・あなたがこれ以上の戦闘を続けるのは無謀を通り越して馬鹿です。
 残りの勢力が出てきたら私達で応戦しますから、あなたはここからどうにかして
 脱出し、急いで病院に向かって――――――」

「・・・・・・『回収部隊』のクソどもは・・・・・・、この第一九学区の地下にいる」

52 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/22(日) 18:17:49.31 ID:OT7UuePSo


神裂の忠告を遮って垣根は言った。


「まだ多分、一〇〇以上の勢力が地下で蠢いてんだ。 ・・・・・・ゴキブリみてえにな。
 気持ち悪い、そんな害虫共は駆除しなきゃならねえ・・・・・・、あいつらが出てきた原因も
 俺にあるしな。 テメェらが出しゃばる必要はねえんだよ」

「だがその体でどう戦うんだ? 君の『未元物質』とやらはアイツらには通用しないんだろう?
 まさかまだ魔術を使って戦おうだなんて言うつもりじゃないだろうね」

「あるんだよ、俺にはまだ"とっておき"ってやつがな・・・・・・。 ロシアで・・・・・・、
 魔術訓練合格祝いとかでエイワスのヤツから貰ったもんがあるんだが・・・・・・。
 こいつを使えば俺はまだ魔術で暴れられる・・・・・・あいつらを駆除出来るんだ」


焦点の定まってない、虚ろな目で垣根は薄く笑う。
彼の言っている事が理解出来ない一同だったが、垣根がおもむろにズボンのポケットから
取り出した『それ』を見て、ステイルは戦慄した。

53 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/22(日) 18:18:22.78 ID:OT7UuePSo


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・垣、根。 それは・・・・・・・・・・・・!?」

「さあな。 名前とかは知らねえが・・・・・・これで魔術が使えるんだろ?」


ステイルの顔にどっと汗が吹き出る。
垣根帝督が今まさに手で弄んでいるそれは、かつての第三次世界大戦の首謀者が使用していた霊装。




「・・・・・・・・・・・・『自動書記(ヨハネのペン)』の・・・・・・、遠隔制御霊装・・・・・・!!?」




ステイルが干上がった喉で何かを叫んだが、もう遅かった。
何も知らない垣根帝督はその霊装に魔力を込める。


そして――――――。

54 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/22(日) 18:19:30.10 ID:OT7UuePSo


――――――――――――――――――――――


ここでひとまず『一方通行』、という人物像について再確認しておきたい。
その少年は一体どのような人物か?


一方通行を知っている人間に彼のイメージを聞けば、恐らく大半は『恐怖』、『暴虐』、『化物』など
あまり良くないイメージを抱いていることだろう。
彼と親しい関係を持つ人物に聞けば『お人好し』、『根は優しい』など意外な一面を持っている人間だという
イメージも抱いているかもしれない。

だが今回は彼の内面にではなく、外見について復習しておきたい。


「ofugcnbkshg蹂躙jvdngjr続行fjkcnbg」

「ぐ、がッ・・・・・・!!!」


ミーシャ=クロイツェフという『悪魔』による翼の攻撃で吹き飛ばされる一方通行を、
あろうことか風斬氷華は遠くかに佇んで見ているだけという愚行を犯していた。
天使でさえ、人間がどれだけ束になっても敵わない存在だというのに、今一方通行が
相手にしているのは天使の暴走、悪魔だ。

55 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/22(日) 18:20:30.30 ID:OT7UuePSo


学園都市の技術で作られた人工天使、風斬氷華は本物の天使にも負けず劣らずの力を秘めている。
そんな彼女と学園都市最強の超能力者、一方通行が共闘することでようやく悪魔の足元に辿りつけるかどうか
といったところだ。


しかし風斬氷華は戦闘に参加し、一方通行と共に悪魔と戦う事も忘れてポカンとした表情を浮かべていた。
彼女の目は、常に悪魔ではなく一方通行の方に向かっている。


「・・・・・・っく。 風斬、何やってンだ!!?」

「・・・・・・あ、え、・・・・・・す、すみません!」


一方通行がボーッと突っ立っている風斬に吠えた。
別に怒っているわけではない。悪魔を相手に同じ場所に留まり続けるという行為が
危険過ぎるため、警告しているだけだ。

しかし風斬は怒鳴られたにも関わらず、そのまま悪魔と交戦する一方通行を視線で追う。


(・・・・・・・・・・・・気のせい、じゃないよね?)

56 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/22(日) 18:21:17.03 ID:OT7UuePSo


風斬氷華が抱く一方通行の外見のイメージは『白』だった。
外見年齢にそぐわない白い髪、雪のように綺麗な白い肌。そして今も背中から生やしている白い翼。

人物によっては『黒』のイメージもあるかもしれない。彼が戦闘時に現出させる黒翼は
見る者全ての眼球に焼きつくほどの印象を与える。


(一方通行さんは気付いていない? そんな、だってあんなに・・・・・・)


だが、今現在の風斬の目に映っている一方通行は、いつもと少し様子が違っていた。
もちろんその白い肌は相変わらずだが、頭髪に違和感を感じる。


たまに、ほんの一瞬ではあるが、彼の頭髪が『赤』、もしくは『紅』色に見える時がある・・・・・・気がするのだ。


一方通行の眼は確かにいつも紅く輝いているが、頭髪は違う。赤ではないはずだ。
しかも風斬の目に映っている赤は、頭髪が染まっていくというようなものではなく、
『"別の赤い何か"が一方通行と重なり、ブレて、その時少しだけ確認できる』、というものだった。

57 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/22(日) 18:22:15.24 ID:OT7UuePSo


「あ、一方通行さん・・・・・・!」


どう考えても気のせいではない事を確信した風斬は一方通行に声をかけるが、
悪魔の放つ神の如き猛攻に応じるだけで精一杯なのか、返事は返ってこない。
風斬自身も本当はこんなところでおとなしくしてないで一方通行に加勢するのが一番なのだが、


(・・・・・・何、あれ・・・・・・? 私と、一方通行さんと、天使さん以外に・・・・・・"何か居る")


そう、風斬がさっきからずっと見続けているのは、実は一方通行ではなかった。
かと言って、それはミーシャでもない。

何かが居る、としか表現しようがなかった。黒いもやもやとした煙のような・・・・・・影のような、
そんな不明瞭な"何か"が確実にこの場にいる。
人ではない、しかし獣でもなければ自分のようなAIMの塊でもないし、天使や悪魔でもない。

ただ、それは真っ赤な髪で真っ赤な眼を持っており、それ以外は『黒』で統一されている。これだけはハッキリと確認できた。

しかもそれは、


(天使さんとの戦闘が始まった頃から・・・・・・? 詳しくは分からないけど、さっきからずっと、)




その黒と紅の何かは、まるで一方通行の影であるように、彼の背後にぴったりと寄り添っていた。



58 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/22(日) 18:23:18.39 ID:OT7UuePSo


悪魔の掌が一方通行に照準を向ける。
その瞬間、既に悪魔の攻撃は放たれていた。

速い、とかそういうレベルで表現出来る速度ではなかった。目視して回避できる攻撃じゃない。
予兆や勘を利用して避けるという手も使ってみたが、なぜか悪魔の攻撃はそれらを全て予想して計算し、
確実に一方通行に攻撃が当たるように設定しているとしか思えなかった。

『神の力(ガブリエル)』は伝達の御使い。予兆、勘などといった第六感をデコイとして加工し、無効化させる。
そして放たれる攻撃は、結局五感を頼って回避しなければならないのだが。


「く、っそ・・・・・・!!!」


一方通行は第六感を捨て、ベクトル操作を使用して周囲の空気を常に感知している状態を保つ。
その空気の流れから読み取れる微妙な変化を察知し、悪魔の攻撃を避けるという手段に出たのだが
それでもギリギリだった。悪魔の放つ未知の攻撃は何度も彼の体を掠める。ダメージは確実に蓄積されていった。

59 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/22(日) 18:23:57.31 ID:OT7UuePSo


「oaguc滅xapqoub」
「pyvbs終vmergi」
「cmsbk続行vmpneb」

(来るッ・・・・・・!!!)


が、悪魔が仕掛けてきたのは掌からの放射ではなく、背中から伸びる黒紫の水晶。
一〇〇以上に及ぶ禍々しい翼が一方通行の息の根を止めようと全方位から襲いかかってくる。
目を見開く一方通行の視界が闇一色に染まった時、


ガガガギャギャギャッッ!!!! と悪魔の翼を更に包みこむように
光の翼が黒紫の水晶を屠っていった。


「ごめんなさい、出遅れました」


風斬はそのまま悪魔に向かって飛翔し、悪魔の顔面に飛び蹴りを浴びせた。
音速以上の速度慣性が付与された蹴りをまともに喰らった怪物はそのまま数百メートル以上も吹き飛んだ。
何棟ものビルを薙ぎ倒しながら地面を転がる悪魔を見て、風斬は悲痛の表情を浮かべる。

60 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/22(日) 18:24:44.50 ID:OT7UuePSo


「あの、一方通行さん・・・・・・」

「なンだ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


風斬は舐めるように一方通行の全身を見る。見られている本人は何がなんやらという顔をしている。
今の一方通行にはあの不気味な『影』は見当たらない。気のせいではないはずだが、とりあえず一方通行に
悪影響のようなものは出ていないようだ。


と、不意に一方通行の前から風斬の姿が消えた。遅れて地面が噴火したような音が耳に飛び込んでくる。


「風斬ッ!!」

61 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/22(日) 18:25:28.09 ID:OT7UuePSo


爆発音がした方を向くと、ビルの瓦礫と一緒に風斬がぐったりと倒れていた。
反対側に首を向けるとそこにはついさっき風斬に蹴り飛ばされたはずの悪魔が不気味に佇んでいた。


「oduxfjw残存勢力defjjwa一gtsnbv」


悪魔が地面を踏み込んで風斬に向かって突進する。踏み込まれた地面は深く陥没した。
一方通行は背中の白い翼を前面に盾のように展開して悪魔の前に立ち塞がり応戦する。
翼に触れるか触れないかのところで急停止した悪魔は掌を天にかざした。

バキバキバキッ!!!、と氷が軋むような音を上げて虚空から翼と同じ素材の剣が出現した。
一秒もかけず出現させたその水晶を手でつかみ、一方通行に天の一撃を振り落とす。
第一位の展開した白の翼が濡れた和紙のようにあっさりと引き裂かれたが、


「fkgjgms消失vkgtjwvm」


そこに一方通行の姿は無かった。破れた布団から飛び出たように白い羽根が宙に舞っている。

62 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/22(日) 18:26:15.53 ID:OT7UuePSo


背中に強い衝撃が走った。怪しく輝く悪魔の翼が粉々に砕かれていた。
悪魔が首を後ろに回そうとするが、その前に頭を何者かに掴まれてしまった。


「・・・・・・ったく、天使でも悪魔でも、そのやンちゃっぷりは変わンねェな。
 おとなしくしてろ」


一方通行は悪魔の頭を掴んだまま腕力のベクトルを操作して思い切り振りかぶった。
悪魔の頭が地面に激突し、ゴム鞠のように跳ねる。
それで終わりではない。一方通行は白の翼を聖剣のように変形させ、追撃を仕掛ける。

即座に体勢を整えた悪魔がすかさず反撃に出ようとするが、前方から強い力を感じた。
見ると、先ほど戦闘不能にしたはずの人工天使が眩く輝く剣を握ってこちらに飛翔している。
片方の手に携える剣で一方通行を、もう片方の掌で風斬氷華に放出攻撃を実行しようとしたが、数瞬遅かった。


「叩き込めェェ!!!!!!!」


風斬の剣が悪魔の体を斜め一直線に切り裂くのと、一方通行の翼が悪魔の背に突き込まれたのは同時だった。

63 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/22(日) 18:27:14.76 ID:OT7UuePSo


前後からの尋常ではない威力を挟み撃ちで喰らった悪魔は体をガクガクと痙攣させる。
そのまま吹き飛ぼうにも前と後ろには一方通行と風斬氷華がいるためなかなかその場から離脱できない。

キリキリ・・・・・・と二つの力が更に深く切り込まれていく。膨張していくエネルギーに耐えられなくなった悪魔は、


「fxnpsqi散mmclvkv」


自身の体の中にある、かつて『天使の力(テレズマ)』と呼ばれるエネルギーだった"どす黒い"オーラを
全て周囲に爆散させた。
墨より黒く、闇より深い黒の衝撃波は一方通行と風斬を巻き込み、周囲数キロに渡って広がっていった。


「が・・・・・・ァ・・・・・・ッ!!?」

「きゃっ!!」

64 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/22(日) 18:27:59.74 ID:OT7UuePSo


風斬の方は間に合った。悪魔がエネルギーを拡散させる寸前に一方通行は風斬の体を押して突き飛ばしたのだ。
ベクトル操作によって風斬の体は恐らく爆破の範囲内から逃れることが出来たはずだ。
しかし一方通行自身は間に合わなかった。翼を展開させて身を守ったにも関わらず体を襲ってきた衝撃は
全身の骨が砕け散らないのが不自然なくらいの威力だった。

地面を何度も跳ねた一方通行は口から大量に血を吐き出し、気道を確保する。
遠くのほうで轟音が鳴り響いてきた。風斬と悪魔が激突しているのだろう。



(はァ・・・・・・ちくしょう、今までも何度もあの馬鹿とじゃれ合ってきたが・・・・・・
 いざこォして本気でやりあってみると、改めてあいつの化物っぷりを再確認出来たな。
 ・・・・・・だがあいつを"倒す"必要はねェンだ。 あいつを・・・・・・救えれば・・・・・・)


一方通行は乱れた呼吸を整え、戦闘音が鳴っている方を見やる。


(・・・・・・待ってろよ)


口元の血を拭い、戦場へ駆けるために一歩踏み出したところで、


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

65 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/22(日) 18:29:03.46 ID:OT7UuePSo


一方通行は動きを止めた。今すぐにでも風斬の援護に向かわなければならないのだが、
第一位の怪物はそれよりこの"違和感"を優先した。

また、あれだ。あの粘つくような視線が一方通行を突き刺している。
一方通行はゆっくりと後ろを振り向くが、そこに映ったのは無残な姿に成り果てた街並みだけだった。
相変わらず視線は感じる。さっき感じたものよりも強く感じる。

『監視』、という雰囲気の視線ではなかった。どちらかと言えば『観察』の方が近い。
何者かは知らないが、上から見られているような高圧的な視線に彼は不愉快そうな表情を浮かべる。
この視線と似たようなものを感じたことがあった。あの金髪の怪物も、こんな目で自分を見ていた気がする。


(・・・・・・あの野郎と同類の何かか? 考えられねェが・・・・・・)


そのまましばらく一方通行は動きを止めて周囲を警戒したが、結局何かが現れるというような事は無かった。
しかし、彼を見つめる視線はより一層強くなっていた。息遣いまで聞こえるような気さえした。


遠くから聞こえてくる轟音が激しくなった。一方通行は視線の正体についての考察は一度放棄し、
悪魔と交戦を続ける風斬を助けるために背中から翼を噴出させて飛翔する。


『ゲーム』開始から一時間四〇分が経過していた。
一方通行は果たして気がついているのだろうか。


自分が噴出させている背中の白い翼が、根元から徐々に黒く染まっていっている事に。

66 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/22(日) 18:30:23.82 ID:OT7UuePSo


――――――――――――――――――――――


第一九学区の地下通路は迷路のように入り組んだ構造になっていた。
普段は下水道として使用されているのだが、住人がいなくなった今では機能していない。


代わりに、第一九学区の地下には『回収部隊(アンチツヴァイ)』の残存勢力がいた。
ファイブオーバーに搭乗している『未元物質(ダークマター)』の仮面をつけた兵士で構成された
対第二位専用特殊部隊。

地上でほぼ全ての勢力が垣根帝督他、魔術師によって殲滅されたため
今地下に残っているのはわずか一〇〇と少し。最初の一五〇〇に比べたら何とも頼りない数まで減っていた。


(・・・・・・どうなっている。 予定と違うじゃないか。 大体、・・・・・・)


その残存勢力の中に、ファイブオーバーに乗り込んでいない仮面の兵士がいた。
彼は地下通路の壁に背を預け、精も根も尽きたような顔でしゃがみこんでいた。
この兵士は一番最初に『回収部隊』として垣根帝督と接触した男だった。

67 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/22(日) 18:31:25.42 ID:OT7UuePSo


男は手に持っているGPSに似た機械の画面を睨みつけるように見つめる。
何度も同じスイッチを押し、何度も地上の状況を確認したが、結果は同じだった。
全滅。実際はまだこの地下に勢力は残っているため全滅という表現は正しくないが、
たった一人の少年を討つだけの任務にも関わらず『回収部隊』の勢力は著しく低下している。

全滅という表現は、そういう意味では正しいかもしれない。


(・・・・・・大体、なんだあれは。 未知の法則だと・・・・・・!? 『未元物質』を行使する
 超能力者が・・・・・・未知の法則を手に入れているとは・・・・・・ワケがわからない。
 上層部から送られた資料にはあんな力についての説明は記載されていなかったぞ・・・・・・。
 我々が使用している『未元物質』でも対応出来ない法則・・・・・・)


男は頭をバリバリと掻き乱し、手に握っていたGPSを乱暴に叩きつけた。
GPSが粉々になった音が地下通路に反響し、周りのファイブオーバー達がこちらを向いてくるが、
彼は微塵も気にしない。


(クソったれ・・・・・・!!! それになんだ、あの妙な連中は・・・・・・!!
 『魔術師』・・・・・・だの何だのとほざいていたが・・・・・・やはりそうなのか)

68 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/22(日) 18:32:20.97 ID:OT7UuePSo


男は聞いたことがあった。この世界には科学だけでは解明できない、いわゆる『オカルト』と呼ばれる
法則が蔓延っている勢力があると。
それは魔術と呼ばれ、近い未来、この学園都市は全勢力を動員してその勢力と戦争を起こそうとしていると。

先日の第三次世界大戦はその前哨戦のようなものだと、聞いたことがあった。


(その戦争が・・・・・・この状況の事だとでも言うつもりか・・・・・・ふざけている・・・・・・!!!)


垣根帝督の討伐は断念しよう。男はハッキリと心に誓った。
もはや『未元物質』を以てしてもファイブオーバーを出撃させようとも、あの男には通用しない。
垣根帝督だけではない、彼の周りには今、意味不明のイレギュラーが複数存在している。
しかもそいつらは全て垣根帝督の味方だ。イレギュラーにイレギュラーが重なるというこのふざけきった茶番。

付き合う道理はなかった。任務を果たせなければ『回収部隊』は"上"から何らかの処罰を受けるだろうが、
知った事ではなかった。 地上に出て嬲り殺されるより、まだこの地下で息を潜めていたほうがいい。

そう思っているのは彼だけではない、他の『回収部隊』の構成員も全員が同じ気持ちだった。
彼らは地上の騒ぎが完全に収まるまで、金輪際ここから動かないと覚悟を決めた。

69 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/22(日) 18:33:14.65 ID:OT7UuePSo


実際、その判断は正しいだろう。前述したとおり、今回の任務はあまりにもイレギュラーが過ぎる。
"ただの学園都市第二位"なら恐らく彼らは任務を遂行出来ていたはずだ。
しかしまず最初に発生したイレギュラー、垣根帝督が『魔術』という力を行使し、『回収部隊』を
大幅に撃破してしまったこと。

そしてもう一つのイレギュラー、垣根帝督を援護する魔術師達の出現。
こんな不運が重なってしまっては任務の遂行など到底不可能だ。


だから、


「ん?」


天井から砂埃が落ちてきたかと思った次の瞬間、直径数メートルもの光の柱が
地下通路を貫き、『回収部隊』の残存勢力の何十パーセントかを一瞬で蒸発させ、
地上の方から獣のような咆哮が轟き、


その咆哮が垣根帝督のものだと知った時、男は今度こそ垣根帝督という少年に関わった事を後悔した。

70 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/22(日) 18:44:08.24 ID:OT7UuePSo


Q. 一方通行が赤髪になったら『炎髪灼眼』になっちゃうじゃないですかー。


って思われた方もいるかもしれませんねww私はあの作品は読んでないので知らないんですが。
ただ一方通行の髪が赤く変色しているわけではないので、炎髪灼眼ファンの方々はご安心ください。

そんなわけで、今日はここまでです。
垣根帝督が大変ヤバい状況になってきました。今までもそうでしたが、今回もヤバいです。
あれ使ったらインデックスもヤバいはずですが・・・・・・果たして。

一方通行と風斬氷華、そして悪魔の戦闘も激しくなってきました。
文章力がアレなので激しい戦闘描写が伝わってるかどうかは微妙ですが・・・・・・。

次回更新は三日以内。

それでは、今回もありがとうございました!

71 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/22(日) 18:44:56.13 ID:OT7UuePSo



                          【次回予告】



『ぎ、ぎゃは、ぎゃはァはははっはははははははは!!!!!! が、ァ・・・・・・!!
 か、け、警告・・・・・・ッ、 "第禁章第二節"・・・・・・!!!! ぐ、ぅ、「自動書記」に
 正体不明の法則が介入・・・・・・、ただ、ちに・・・・・・、』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・垣根帝督




『(ふ、ざけンじゃねェぞ・・・・・・!! 『天体制御(アストロインハンド)』だったか・・・・・・、
 宇宙空間にある星を動かす馬鹿げた魔術は使えねェンじゃなかったのかよ!?)』
―――――――――――『天使同盟』のリーダー・一方通行(アクセラレータ)




『あ、一方通行さんから・・・・・・離れてください!! これ以上彼に付き纏わないで・・・・・・!!!』
―――――――――――『天使同盟』の構成員・風斬氷華




『命令名「一掃」――――――投下』
―――――――――――自我の崩壊と堕落が渦巻く悪魔・ミーシャ=クロイツェフ



72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2011/05/22(日) 18:46:10.14 ID:gmrP9frD0
女子寮で両手をあわせて垣根の無事を祈ってるルチア・・・かわいすぎるだろ!!!//////
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/22(日) 18:49:54.84 ID:rY4vCHog0
>>1
初めてリアルタイムで遭遇できました。

垣根君はどうして自分の命を削りたがるんだろう。
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/22(日) 19:44:03.59 ID:Q9V4IddDO
>>1乙だァ!
ていとくん、もう死亡フラグどころじゃないでしょこれ
このままじゃ予知夢通りに…
運命はやはり変えられないのか?
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/22(日) 19:53:53.69 ID:F1CWkD4AO
>>1

>>73
そりゃあ彼と死亡フラグとは切っても切り離せないものだからな
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/22(日) 20:01:54.59 ID:jY/D42e0o

もしやこの物語のテーマであるフラグってのは垣根の死亡フラグのことだったのか
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/22(日) 20:27:17.65 ID:BqN5qH34o


まさかの自動書記きちゃったよ……
ルチアたん可愛いよハスハスとか言ってる場合じゃなかったわ
みんな死亡フラグ立ちすぎだ
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/22(日) 20:39:43.88 ID:1Gh49Cpxo

自動書記のくだりはビックリしてガチで声が出たww
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/05/22(日) 21:15:17.70 ID:0Qiocd7I0

前スレ、前々スレ読み返して自動書記遠隔制御霊装がプレゼントかなとは思っていたけれど
まさか本当にやるとは思わなかった
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/22(日) 21:32:19.23 ID:1N22KCXN0
乙なのでございますよー
垣根すごいことになっとる あかん・・・
そういや自動書記は設定された奴の自我を奪って
設定された奴の周りの障害を無差別に排除する
警報システムみたいなものだよね?
ってことは自動書記が解除されない限り垣根は・・・
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2011/05/22(日) 22:11:09.52 ID:/uG84r7w0
もう何がどうなっとるのかさっぱり分からん。
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/22(日) 22:19:57.68 ID:bIy48+2Ho
考えるんじゃない
感じるんだ
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/22(日) 22:22:00.37 ID:PfzYRyRBo
わけわかめ
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/22(日) 22:36:56.58 ID:82Ywh4Yyo
神話知ってれば半分くらいはわかるな
あとはノリ
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/22(日) 22:48:37.39 ID:ZXQfRjty0

垣根の死亡フラグがやべぇ
次回予告見る前は
イ、インデックスー!
って感じだったのに次回予告見たら
か、垣根ー!
ってなってしまった

一方さんの翼はどうなってしまうのか…
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/22(日) 23:07:49.72 ID:MOBbVOmDO
一方さんに荒ぶるコロンビアさんが憑いてるのか?
そんな天使で大丈夫か?
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/23(月) 01:35:25.92 ID:67MSf5ip0
乙乙
さっすがに自動書記遠隔操作霊装なんぞを使おうもんならステイルが黙ってないと思うんだがなぁ
トリプルイノケンの時もフィアンマにブチ切れてたし・・・
インデックス守るためなら気合で大陸のひとつくらい
沈めちゃうくらいの気持ちで居る子なのに、ていとくんよく使えたな
一流魔術師が雁首そろえてるのに肉体回復のひとつも施してあげないのも不自然だし、謎が深まるぜ
あと予告風斬さんマジ正妻
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/23(月) 01:46:32.16 ID:7bVVE4eP0
一流の魔術師が一冊目を通しただけでも血を吐くような知識が、
能力者である垣根の元に103000冊分も入ってくることになるんだよな。
……何回目の死亡フラグだ!?
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(佐賀県) [sage]:2011/05/23(月) 09:16:56.07 ID:HulscpUuo
状況が酷すぎて逆に生存フラグにしか見えない
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/05/23(月) 16:37:23.94 ID:d7VGUqsSo
マジおつですの

>>89
死んだと思ったライバルがラスボス戦で駆けつけるパターンか
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(佐賀県) [sage]:2011/05/23(月) 17:20:05.21 ID:HulscpUuo
この技を使ったら死ぬかもしれん
この技を使って生きていた奴はいない

とかはだいたい生存フラグなんだよね
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/23(月) 18:58:03.33 ID:/mHKEqe00
まあとりあえず垣根は生きるんだよな

…な?な?
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2011/05/23(月) 19:25:13.83 ID:eqhlQ3lS0
・・・垣根はイイ奴だったな・・・・・・
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/23(月) 19:42:03.74 ID:bT2I2sg30
垣根……お前の事は忘れない……
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/23(月) 19:57:56.69 ID:L3nEPOFG0
垣根……無茶しやがって……
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/05/23(月) 20:04:12.80 ID:gwiJ9pnC0
垣根ぇ・・・うぅ・・
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/23(月) 20:12:39.00 ID:OUhJTYsIO
垣根は人の話を聞かない奴だったからなあ
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2011/05/23(月) 21:08:09.69 ID:eqhlQ3lS0
・・・垣根の野郎・・・!先に逝きやがって・・・・・・
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/23(月) 21:22:48.16 ID:7bVVE4eP0
『死亡フラグ』の具体例

・ここは俺に任せろ!後で必ず追いつく!
・垣根
・俺、この戦争から生きて帰ったら結婚するんだ……
・死ぬな?お前は誰に物言ってんだ
・ていとくん
・俺を置いて先に行け!
・ハ、はははははッ!力が、力が漲って来るッッッ!
・『垣根帝督』という存在
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/23(月) 22:08:18.36 ID:bT2I2sg30
>>99
不自然に多いだろwww


…………あれ?
ひょっとしてコレ世界の真理か……?
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) [sage]:2011/05/24(火) 02:52:36.11 ID:QGhG5+hX0
生と死の垣根に提督の如く君臨するから垣根帝督なんだ
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/24(火) 03:09:21.65 ID:M8lJMRqoo
>>101
ちょっとなにいってるかわかんない。
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/05/24(火) 04:08:19.19 ID:fIQZ+K5Oo
>>101
ちょっとかっこいいと思ってしまった
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/24(火) 07:40:13.31 ID:S5ZlKgfDO
>>87
ステイルが使える治癒魔術なんて火傷を治すくらいだし、インデックス方式のは時間かかるし、
神裂が治癒魔術使える描写はないしヴェントはそういう魔術が使えない体質だし
こいつらが皆で手を取り合って垣根を回復させるほうが不自然じゃないか?
もう自動書記使っちまったから後の祭りだが
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/24(火) 08:50:14.12 ID:cCuQUQY80
むしろねーちんクラスが使えない方が不自然な気がするけどまあどっちでもいいや
回収部隊の残党を抑えるのが先決だったんだよきっと
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/05/24(火) 17:23:17.13 ID:tsBn9kQ+0
>>1 お疲れ様です!ついにスレタイからセリフが消えた・・・・
あとニコ動の某禁書MADで天使同盟ってコメントがあって微笑んでしまったのは俺だけ?
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/24(火) 17:55:27.49 ID:mfYXFKm/P
荒れるだろうからさっさと1レスで終わらせるとニコ厨[ピーーー]
108 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/24(火) 19:09:16.85 ID:Pe+S46b2o
こんばんわ、ゴールデンタイムに投下です。

回復魔術云々についてですが、まず>>1がステイルが回復魔術なんてものを使えることを完全に失念していました。
まあそれに結局垣根が遠隔制御霊装を使うことは決定していたので回復なんてさせても意味ないかなーなんて・・・・・・
すんません、相変わらず適当で・・・・・・。

さて、今回はそんな垣根帝督サイドから投下を始めます。
一〇万三〇〇〇冊の前には如何に学園都市暗部でもまるで歯が立たないようです。

それではいきます。

109 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/24(火) 19:11:50.36 ID:Pe+S46b2o


――――――――――――――――――――――


「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
 おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
 おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!!」


特撮映画に登場する怪物でも、こんな咆哮は出さない。
学園都市全域に響き渡るその号哭は、信じられないことに人間の喉から発せられている声だった。
人間の喉の機能にも限界はある。だがこの咆哮はそんな限界などぶち破って発せられているとしか思えなかった。


学園都市第二位の超能力者。垣根帝督は全身から激しく出血を起こしながら尚も叫び続ける。


「あ、ァああああああああァァァあああァァァァああああああああああああァァァあああああ!!!!!!!!」

「ぐ、ぅ・・・・・・!!! よせ、垣根帝督!!!」


垣根の近くにいた魔術師、ステイル=マグヌスが必死に叫んで彼を止めようとするが、
一〇万三〇〇〇冊という大容量の原典の知識が頭に流れ込んでいる垣根の前では、
ステイルの叫びも小鳥のさえずりにしかならなかった。

110 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/24(火) 19:13:02.17 ID:Pe+S46b2o



『自動書記(ヨハネのペン)』。魔道図書館『禁書目録(インデックス)』に仕掛けられたその魔術に
外部から干渉出来る禁断の霊装を握り締め、垣根は狂ったように魔術を連発していく。
垣根の眼球は真っ赤に輝いていた。その眼球には魔方陣が浮かび上がっており、
目と連動して動く魔方陣と同時に、辺り一帯の空間に大きな裂け目が発生していた。


その裂け目から射出される光の柱、『竜の息吹(ドラゴンブレス)』は容赦なく地下に潜んでいた
『回収部隊』を塵にしていく。『回収部隊』は地下約五〇〇メートルという深度に位置していたが、
『竜の息吹』の前ではその程度、壁にすらなっていなかった。


「こ、こんな・・・・・・まさか・・・・・・どうして・・・・・・!?」


その光景を神裂火織は体を震わせながらしばし呆然と眺めていた。
かつて、彼女はステイルと共に目の前の光景を見たことがある。インデックスという、同じイギリス清教に
所属する仲間が放った『竜の息吹』で、とある悲劇が起きた。

その悲劇が、また繰り返されるとでもいうのか。

111 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/24(火) 19:13:49.74 ID:Pe+S46b2o


「ステイル!!!」

「分かっている・・・・・・!!!」


『自動書記』状態の垣根の前ではステイルも神裂もただの雑魚同然と化してしまうが、
だからと言ってこのまま彼を放置するわけにもいかない。
特にステイルにとってはあれほど忌々しい霊装も存在しない。


「あなたも!!! 垣根帝督を止めてください!!」

「・・・・・・遠隔制御霊装。 そうか、フィアンマの野郎が使ってたのと同じ・・・・・・!!!」


神裂に声をかけられたヴェントは『女王艦隊』の砲身を全て垣根に向ける。
だが意味があるとは思えなかった。魔道図書館の全ての知識を手に入れた化物の前に、
通常の魔術で対抗出来るとは考えられなかった。


実際、その通りだった。垣根は口元を三日月のように引き裂き、狂気の笑みを浮かべながら、

112 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/24(火) 19:14:52.35 ID:Pe+S46b2o


「ぎ、ぎゃは、ぎゃはァはははっはははははははは!!!!!! が、ァ・・・・・・!!
 か、け、警告・・・・・・ッ、 "第禁章第二節"・・・・・・!!!! ぐ、ぅ、『自動書記』に
 正体不明の法則が介入・・・・・・、ただ、ちに・・・・・・、」


ガシャアアアアアアアアン!!!!!!、というけたたましい音が炸裂した。
垣根が背中から一二枚、数百メートル以上もの『未元物質』の翼を現出させた音だった。
しかもその翼は、いつもの『未元物質』とは異なっていた。


「ぎ、ぐ・・・・・・ごぼっ。 だ、第禁章第一九節・・・・・・!!!! 『聖ジョージの聖域』に
 不可思議の法則の介入を・・・・・・か、確認・・・・・・!!! 受諾、許可、融合を・・・・・・、を、お、
 おおおおあああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!!!」


『未元物質』の翼はこの世の全ての光を飲み込んだのかというように発光する。
太陽が地上に舞い降りてきたかと錯覚するほどの光を放つ翼に、三人は目を背ける他なかった。


「喰らえええええええええええええええええええええッッ!!!!!!!」


三人の魔術師はあまりの光量に目を疑うことすら出来なかった。

ただ確実に分かったことは、垣根が現出させた背中の一二枚の翼から、
一斉に『竜の息吹(ドラゴンブレス)』が発射されたことだけだった。

113 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/24(火) 19:15:50.41 ID:Pe+S46b2o


冗談のような光景だった。


垣根帝督が背中の翼から放った『竜の息吹』が、四方八方に飛んでいく。
一閃でも宇宙空間まで到達出来る射程距離を持つ殺人光線が、ステージレーザーライトのように
無茶苦茶な方向へと射出されていく。
ビルや地面が閃光によって無と化していく。そしてそれらは瞬時に光り輝く白い羽根へと変化した。

ステイルや神裂、ヴェントが『竜の息吹』で消し飛ばなかったのは奇跡でしかなかった。
咄嗟の判断でその場に伏せた事で辛うじて難を逃れていた。


(・・・・・・学園都市は・・・・・・!!?)


ランダムな方向へ射出された『竜の息吹』によって学園都市そのものが吹き飛んでしまったのではないかと
ステイルは顔に冷や汗を浮かべながらゆっくりと伏せた顔を上げる。

そして彼は更に驚愕する。

あらぬ方向に飛んでいった『竜の息吹』は、第一九学区周域に展開されている光のカーテンに衝突すると、
それを貫くことなく霧散してしまった。

114 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/24(火) 19:17:39.09 ID:Pe+S46b2o


(馬鹿な・・・・・・!? 全てを無に帰する『竜の息吹』を完全に無効化しているだと・・・・・・!?
 ・・・・・・なんなんだあの壁は。 出現した時から分かってはいたが、とても十字教の知識だけで
 説明できる代物じゃない・・・・・・)


"生きる時代が違う"ステイルには、自分の目で見た光景が到底理解出来なかったが、
今はとりあえずあの光のカーテンのおかげで学園都市の他学区にまで被害が及ぶことはないと
前向きに考え直す。

と、


「ひ、ひ・・・・・・ひぃ・・・・・・!!!!」


垣根帝督がいる場所の向こう側から、そんな悲鳴のような声が聞こえた。
『竜の息吹』の乱射が止まった雰囲気を察知して、三人は声のした方を見る。
そこには彼らを襲撃した仮面の兵士、『回収部隊』の一人が四つん這いになって
必死に垣根の前から姿を消そうとしていた。


「ば、化物・・・・・・!!! 頼む、もう我々は貴様に一切関わらないと誓う!!
 だから見逃してくれ・・・・・・頼む・・・・・・!!!」

115 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/24(火) 19:18:38.47 ID:Pe+S46b2o


その男は最初に『回収部隊』として垣根帝督に接触した仮面の兵士だった。
あの『竜の息吹』の連射から逃れたところを見ると、かなりの運を持っているようだ。

しかし、『回収部隊』の生き残りはもう彼を含めても残り僅かだった。残りの『回収部隊』は
垣根の『竜の息吹』で数秒も経たず瞬殺されている。残りの勢力が今どこにいるのか、
地下で生き埋めになっているのか、確認をする暇などあるわけがなかった。


「頼む・・・・・・!!! 私の方からも貴様には今後一切関与しないよう
 他の暗部にも手配しておく・・・・・・! そうなれば貴様はこの学園都市での平和な生活を
 約束されたようなものだ、だから私に攻撃するのは・・・・・・!!」


小悪党のテンプレみたいなセリフを吐き続ける男を、垣根は血のように赤い魔方陣が
浮かんだ目で見つめる。その顔には大量に撒き散らされた血反吐と、


「頼む・・・・・・!!」

116 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/24(火) 19:19:12.27 ID:Pe+S46b2o


魔道図書館の知識を全て手に入れた『魔神』だけが浮かべられる笑みが貼りつけてあった。


「だ、『未元物質』の法則の合算に成功・・・・・・。 新たな術式を・・・・・・構、成。
 ・・・・・・第、禁章、・・・・・・最終節・・・・・・、『父よ、御手に私の霊を委ねます』。
 完全発動準備完了・・・・・・」

「や、やめろ・・・・・・、やめろおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」




「これが『未元物質(ダークマター)』だ。 ・・・・・・垣根帝督をナメるなよクソども」




垣根帝督の右手から真紅の芯が通った純白の光線が発射された。


『ゲーム』開始から一時間四五分。


学園都市に、垣根帝督という名の魔神が圧倒的に君臨していた。

117 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/24(火) 19:21:17.58 ID:Pe+S46b2o


――――――――――――――――――――――


間一髪だった。
悪魔と交戦している一方通行と風斬氷華は突然飛んできた謎の光の柱を間一髪のところで避けていた。
光の柱は街の建造物を薙ぎ払い、瞬く間に灰にしていく。

灰になった建造物が淡く輝く『光の羽』と化した。
あまりにも儚く、そして美しく輝く無数の羽を見た二人は思わず天使を意識してしまう。
風斬は無数の羽の内の一つを手に取ろうとして、


「触るなァ!!!」


突然、一方通行が怒号を発した。
風斬はビクッと肩を震わせて掌に乗る直前だった羽から遠ざかる。


「ご、ごめんなさい・・・・・・」

「・・・・・・いや、すまねェ。 だがこの羽には一切触れるな。 今は
 悪魔との戦闘に意識を集中させろ」

「? ・・・・・・は、はい」

118 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/24(火) 19:23:24.70 ID:Pe+S46b2o


それは一方通行にも分からなかった。なぜだかは分からないが、本能が語りかけてくる。

『この光の羽には絶対に触れてはならない』、と。

さっきの猛獣のような雄叫びは誰の声だったのか、光の柱はどこからの攻撃だったのか、そしてこの羽は何なのか。
第一位の脳に次々と疑問が湧きでてきたが、一方通行はそれらを全て払拭した。
今はそんな原因不明の現象を気にかけている場合ではない。


ジャキャッッ!!!! と甲走った音が鳴った。
かつてミーシャ=クロイツェフという名で呼ばれていた『悪魔』の背から生えている
黒紫の水晶の翼が二人に向けられた音だ。

メチャクチャに荒らされまくった地上は、もはや足の踏み場もない。
三者は空中戦を繰り広げていた。

一方通行は首元にある電極チョーカーのバッテリーの調子を確かめる。まだ充分残量があるが、決して油断は出来ない。
悪魔を相手にバッテリーの節約などをしていてはあっという間に死に至ってしまう。
能力は常に全開で、全力で戦わなければ"天使"は救えない。

119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2011/05/24(火) 19:25:23.30 ID:iaWvX0oG0
うオオおォい!!!!!
ていとくん壊れってっぞ!!!!!!
120 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/24(火) 19:27:37.95 ID:Pe+S46b2o


そして風斬氷華の体にも限界が訪れ始めていた。それも当然、天使とずっと交戦していた一方通行や、
本来行使出来るはずのない魔術を無理を押して使用し続けた垣根に隠れて目立っていないが、
実は『天使同盟(アライアンス)』の中で最も熾烈な戦闘をしていたのはこの風斬氷華という人工天使だった。

まず最初に戦った相手が魔術サイド最強の魔術師、アレイスター=クロウリーだというのが不運だった。
一回戦で為す術も無くボロボロにされ、そこからヴェントという魔術師の援護を得てアレイスターと連戦。
そのまま休む間もなく暴徒と化した天使、『悪魔』との戦い。

本来ならば彼女の体はとっくに結晶化し、この世から消え去っていただろう。そんな彼女を支えているのは
ミーシャ=クロイツェフという『仲間』を救いたいという一心だけだった。


風斬は隣にいる一方通行に目を向ける。彼女は先ほど、一方通行の身に起きている異変を目撃していたのだが、


(・・・・・・やっぱり、気のせいじゃない)


一方通行を凝視していると、ふとした所で彼の全身が黒い霧に包まれたようになり、紅い眼と紅い髪だけが
怪しく発光しているという姿になる。まるで映画のフィルムの合間合間に違う彼の姿のコマを入れたような現象。
おまけに、彼の背中から生える純白の翼と、頭上に出現している輪がどんどん黒ずんできているのが確認できた。

・・・・・・一方通行本人が全く気付いていなさそうなのが、その異変の不気味さを際立たせる。


だが今は気にしていられない。とにかく目の前にいる悪魔の中から天使を救い出さなければならない。
しかも今回は第三次世界大戦の時のように後方のアックアや上条当麻の支援は一切存在しない。
一方通行と二人で、たった二人で悪魔を討ち、天使を救い出さなければならないのだ。

121 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/24(火) 19:28:42.41 ID:Pe+S46b2o


「・・・・・・もォすぐだ。 俺達grlならaojdやれる」

「はい」


キッと表情を引き締め、手に携える剣をしっかりと握り、二人は悪魔に突進しようとした。

だが、


「・・・・・・kadiwbefuzwrktawpyrdhwANCTDGwgjiebdzdfspbPQNXkefjfpuwamyib・・・・・・」


それは今までにない言葉だった。いや、あまりにもノイズが混じりすぎて言葉なのかどうかも
判断できないが、


「sdkfhg夜の召喚をdoimadej実行・・・・・・」


一方通行と風斬の背中に、氷点下を彷彿とさせる悪寒が走った。
彼らは瞬時に悪魔の行っている事を理解する。


空が瞬いた。


気がついた時には、学園都市の空に『夜』が訪れていた。

122 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/24(火) 19:31:50.85 ID:Pe+S46b2o


予兆すら無かった。あるとしたら、悪魔が凹凸だけで表現されている口を動かして呟いていた言葉だけだろうか。
学園都市の空を覆った夜は、空に向かって大量の黒い塗料をぶちまけたように一瞬で拡がっていった。


「xjbyrsturyyjgjrpusegikpfauntiuzefkxcttzmnffiunjb・・・・・・、」


その夜空に、魔方陣をいくつも重ね合わせたような光の放物線が浮かび上がる。
更にその上空で、キラキラと何かが瞬いていた。


それは、星。


(ふ、ざけンじゃねェぞ・・・・・・!! 『天体制御(アストロインハンド)』だったか・・・・・・、
 宇宙空間にある星を動かす馬鹿げた魔術は使えねェンじゃなかったのかよ!?)


確かにそう、エイワスがそんな事を言っていた気がする。
だが現にこうして『天体制御』は使用された。使えないのではなかったのかとエイワスに
クレームを突きつけている暇など無い。

123 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/24(火) 19:32:49.97 ID:Pe+S46b2o


だがここで一方通行はある事に気付く。この『天体制御』によって星の位置は大きく変化したのではないか。
だとしたら、太陽に接触しつつある『星の欠片』は、消滅の危機を逃れたのではないか。
悪魔の気紛れによるこの大魔術で、天使の消滅というバッドエンドを迎えずに済んだのではないか、と。


そんな一方通行の脳裏を過ぎった甘い考えは、すぐに吹き飛ばされる事になる。


「命令名『一掃』――――――投下」


馬鹿だ、と一方通行は自分を殴り飛ばしたくなった。
あの夜空の瞬きを忘れたとは言わせない。あれはかの第三次世界大戦時、天使と交戦した際に
ミーシャ=クロイツェフが放った、一方通行の『反射』をも軽々と突き破る究極の天罰。


神戮。半径二、三キロ程に設定された領域に、灼熱の炎の矢が一方通行と風斬氷華を殲滅するために降り注がれる。

124 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/24(火) 19:35:41.16 ID:Pe+S46b2o


そう、仮にこの『天体制御』で『星の欠片』の消滅が免れたとしても、


「あ、・・・・・・」

「風斬ィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!!!!!」


自分たちが死んでしまっては元も子もないのだ。


一方通行は何かを考える前には、既に風斬に向かって飛翔しそのまま彼女を抱きとめて地上へ向かっていた。
風斬を下にして覆い被さるような体勢になる。そして一方通行の背中に、地上に、容赦なく流星群が叩き込まれた。

『反射』では神戮に対抗出来ない。ならばせめて、と一方通行は地面に手をつけベクトルを操作する。
背中にミサイル並の塊が数千万以上降り注いでも、地殻が捲れ上がろうと、せめて風斬だけは守ろうと
地面から決して剥がされぬように必死でベクトルを操った。

白い翼を最大まで展開するが、それでも全ての攻撃を防ぐことは出来なかった。
痛みにもがく余裕もない。奥歯が砕けるんじゃないかという程に彼は歯を食いしばって風斬を守る。

125 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/24(火) 19:36:33.39 ID:Pe+S46b2o


やがて、神戮は終わった。後に残ったのはロシアの時と同じ乱暴に耕されたような街の風景と、
風斬に覆い被さったまま動かなくなった一方通行だけだった。


「あ、・・・・・・一方通行、さん・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・怪、我は・・・・・・ねェかよ・・・・・・?」


瞳に涙を浮かべて至近距離にある一方通行の顔を見る風斬。彼は既に瀕死の状態へと追い込まれていた。
それでも悪魔は一切の容赦をしない。対象が完全に消滅するまで、何度でも神戮を叩き込む。


「第yj二波fard攻pdpc撃bh準備開始。 zgirbb『一掃』wt再投kosuvs下kcfmまでryhacf残りcghfj三〇秒uijbhwjzwgaj」

「・・・・・・・・・・・・ッ」


風斬は息を呑んだ。悪魔が放ったあまりにも無慈悲な言葉にではない。
上に覆い被さっている一方通行越しに見える夜空が再び瞬いたから、でもない。

覆い被さっている一方通行のすぐ後ろ。




そこに、風斬が先程からずっと目撃している紅い髪と眼をした黒い影が、こちらを見て笑っていたからだ。



126 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/24(火) 19:37:51.81 ID:Pe+S46b2o


「あ、一方通行さん、後ろ・・・・・・!!」

「krcswe風斬・・・・・・、いいovwfかァ、よく聞psvけ・・・・・・」


黒い影は吐き気を催すほどの醜悪な笑みを浮かべながら一方通行を抱きしめるようにまとわりついている。
影の頭部・・・・・・だろうか。そこに当たる部分から流れる紅い髪が、一方通行の頭に重なっている。
それを伝えようとした風斬だったが、一方通行の弱り切った声に遮られた。


「ggz俺の・・・・・・事は、wm捨て置け・・・・・・。 kik次にあいrzeつがd『星』dpをjs降らせgfたらdtmfe
 すぐにここから抜け出してtr悪魔をhxtbgrf連れて攻撃の範囲yc外xaからyk脱出fwgwndしろdxyg・・・・・・」

「・・・・・・? え・・・・・・?」


何を言っているのかほとんど聞き取れなかった。なぜ今ここで、一方通行の言葉にノイズが走る?
風斬は一方通行にまとわりつく紅と黒の影を睨みつける。


「俺はmdrgiいい、死ンでも・・・・・・nfiqwpあのクソapfjhry天使さえ救えれば・・・・・・。
 だから・・・・・・オマエはofcs行け・・・・・・」

「あ、一方通行さんから・・・・・・離れてください!!」

127 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/24(火) 19:39:11.03 ID:Pe+S46b2o


風斬はもう一方通行の言葉など聞いてはいなかった。自分は死んでもいいからお前だけは、
みたいなことを言っていた気がするが冗談ではない。

一方通行の言葉がおかしくなっているのは全て黒い影のせいだと決めつけ、風斬は影に向かって憤慨する。


「離れて・・・・・・!!! これ以上彼に付き纏わないで・・・・・・!!!」


黒い影は風斬の言葉に取り繕わなかった。『知った事か』、と暗に言われているような気がした。
風斬は黒い影から一方通行を引き剥がすように彼の細い体を力強く抱きしめる。
一方通行の背中の翼と頭上の輪は、ほとんど黒一色に染まっていた。

そして、


「命令名『一掃』――――――投下」


夜空の瞬きが一層強くなる。無慈悲に生命を狩り取る星の雨が、一方通行にトドメを刺そうと降り注いできた。
それでも、風斬は最後まで一方通行から離れようとはしなかった。

128 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/24(火) 19:39:56.69 ID:Pe+S46b2o


「か、ざきり・・・・・・・・・・・・」

「一方通行さん、私・・・・・・」


風斬は何かを伝えようとしたが、それは叶わなかった。神戮が炸裂し、凄まじい爆発音が学園都市に響き渡る。
神戮は容赦なく接触した対象物を粉々に破砕し、呆気なく無に帰してしまった。




ただし、神戮が炸裂したのは地上から遥か遠く。一〇〇〇メートル以上の上空で起きていた。




「・・・・・・・・・・・・!! ・・・・・・、・・・・・・・・・・・・。 え・・・・・・?」

129 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/24(火) 19:40:35.15 ID:Pe+S46b2o


ギュッと瞼を閉じていた風斬は恐る恐る目を開ける。
自分の体の上にいる一方通行に目立った変化はない。ボロボロの瀕死状態とはいえ、五体満足だった。
彼にまとわりついていた忌々しい黒い影も、今だけは姿が見当たらない。

しばらくして、上空から何かが降ってきた。それは赤い瓦礫だった。元がなんなのか分からないほど
原型を留めず粉々に破壊されている。神戮によって砕けたものが落ちてきたのだろう。

でも、何が?悪魔の放った神戮は、地上に居る一方通行と風斬を始末するために放ったものであるはずだ。
神戮は上空で炸裂していた。風斬は一方通行を抱えたままゆっくりと体を起こして空を見上げる。


夜になっていたはずの空が、真っ赤に染まっていた。


神戮を発動した悪魔も、何事かと空を見上げている。その真っ赤に染まった空はまるで
複雑な模様のようにも見え、それはゆっくりと動いているのが確認できた。

130 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/24(火) 19:41:48.59 ID:Pe+S46b2o


だがそれは、模様などではなかった。よく見るとその赤い何かは人工物だということが分かる。


「何・・・・・・あれ・・・・・・?」

「・・・・・?」


妙に静まり返った雰囲気を怪訝に思った一方通行も、浅い呼吸を繰り返しながら空を見上げた。
彼の視界に映ったのは、赤いハンググライダーのような航空機の大群と、その隙間から見えるわずかな夜空。


そして、上空から拡声器でも使っているのか。妙に響く大きな声が聞こえてきた。




『防御術式でガチガチにコーティングした「グリフォン=スカイ」が一撃で粉々だし。
 まったく・・・・・・母上にどー言い訳すればいいの。 これ一機でいくらすると思ってるんだ』




おてんばな小娘が放つような、独特の声だった。その声を、一方通行と風斬は聞いたことがあった。

131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2011/05/24(火) 19:43:40.12 ID:iaWvX0oG0
風斬・・・///
132 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/24(火) 19:45:21.16 ID:Pe+S46b2o
ここまでです。
『竜の息吹』が地下にいる回収部隊の大半を殲滅してしまいましたが、
地面に向かって竜の息吹なんて発射したらどうなるんでしょう?地球がヤバいことになりそうなんですが。

・・・・・・まぁ、気にしない方向で。

一方通行と風斬も間一髪のところで助かったようです。
次回は新たな助っ人と共に悪魔に挑みます。

次回予告は無しです。

ではまた、三日以内にお会いしましょう。
ありがとうございました!失礼します。
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage saga]:2011/05/24(火) 19:46:41.35 ID:aIg+Uzrjo
ババア!ババアじゃないか!
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/24(火) 19:50:55.36 ID:htwooNv+o
\キャーリササマー/
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/05/24(火) 19:52:53.13 ID:JU/66y4AO
>>133の全次元が切断されかねない
そしてゴールデン乙!
赤いのっていうとステイルかフィアンマか赤い騎士さんしか思い付かんな
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/24(火) 19:57:42.19 ID:dcn73Zrxo
垣根君が俺の厨二心をくすぐってやまない
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/24(火) 20:00:37.77 ID:Qpx6Khz90
乙!
垣根は一体どうなってしまうんだ
最後のほうで自我を取り戻していたような、いなかったような
結局一方さんの影をちらついてるのはなんなんだ?
赤いのはグリフォン=スカイなのか?
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/24(火) 20:04:33.42 ID:dcn73Zrxo
セトさん怖いです
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/05/24(火) 20:05:30.89 ID:LeiHW8eg0
乙です
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/24(火) 20:05:50.38 ID:vqIfAZXJ0
垣根君は自動初期状態でも若干の意思表示ができるのかな?
なんかそれっぽいことしゃべっていたし。

そして>>1
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/24(火) 20:25:22.92 ID:mfYXFKm/P

垣根さんが月光蝶使えるようになってしまった
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/24(火) 20:44:31.23 ID:cqgfRMlIO
ドラゴンブレスって「竜王の殺息」じゃなかったっけ?
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/24(火) 20:59:52.24 ID:cCuQUQY80
エイワスと☆のケンカで地球がヤバいと思ってたら別の奴らの方が先にブチ壊しにかかってた
144 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2011/05/24(火) 21:02:10.99 ID:Pe+S46b2o
>>142
なんてこったい。全部脳内変換お願いします、申し訳ねえ・・・・・・
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/05/24(火) 21:21:08.00 ID:XNCPc0jAO
キャーリサ様ー!

最強現地妻同盟きたよオォォォ
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/05/24(火) 21:34:30.18 ID:sYJmEj1/0
ここでキャーリサ?! 風斬vsキャーリサのメインヒロイン対決勃発か??
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/24(火) 21:35:15.50 ID:BnHZXoPFo

ていとくんマジていとくん
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/24(火) 21:38:38.10 ID:Mhs7jQ2e0
いいねいいね最ッ高だねェェェ!!!
この戦場チートしかいねえぜェェェ!!!
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/24(火) 21:39:58.15 ID:vrnYRIyDO
あばばばばばばばば(汗)か、垣根…さん?やめて…もうやめて…誰か彼を助けて
一方・風斬ペアはライバルもとい希望がキター
とにかく皆が笑っていてくれる結末を祈りながら乙
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2011/05/24(火) 21:40:41.87 ID:9MONvfpl0
こういう仲間が次々に現れる展開はテンプレと分かってても燃えるなぁ。
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/25(水) 00:25:08.01 ID:hY7C00Ra0
キャーリサアネゴキターーー
それにしてもちゃんと生きている垣根がイメージできない。
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/25(水) 00:41:13.56 ID:qewt1Xte0
>>1乙! 垣根がKAKINEXに見えるよ!
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2011/05/25(水) 20:13:19.26 ID:3N81al7a0
誰か、誰でもいいから、垣根を、友達を助けてやってくれぇぇぇぇええぇェぇェェェ!!!!!!
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/25(水) 20:46:27.20 ID:Cf52NTSZ0

安心の垣根生存率
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/05/25(水) 22:11:46.01 ID:vCKEMax30
おつおつ

垣根なら例え死んでも、「まだ建てるべき死亡フラグがある」とか言って蘇るよ
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/05/25(水) 22:18:10.55 ID:hvkStsVm0
垣根をもう殺さないで
平穏な日々をあげて
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/05/25(水) 22:57:49.19 ID:n+XxUr4AO
垣根ぇぇえええええぇぇえぇぇえ!!!!!!!!!!!!
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2011/05/25(水) 23:09:30.08 ID:QsIJFYTm0
キャーリサ様!!
キャーリサ様!!ウォォォォォ!!
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2011/05/26(木) 06:47:45.30 ID:nUGwnSRH0
大丈夫だよ垣根。私は無能力者だから、超能力者の垣根をきっと守ってみせる。
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/05/26(木) 17:46:35.50 ID:UhdUgf/t0
某エースもびっくりの生存率(垣根
161 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/26(木) 21:09:37.55 ID:jHN7xPqa0
乙!垣根・・・(泣)

この戦場を見て、ここの>>1
とてつもなく偉大なSS作者だと気付いた
KY発言でごめんけど
この人みたいな偉大な人に追いつけるかわからないけど、
今度SS書いてみようかな
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/26(木) 21:20:05.42 ID:WlILVqMf0

きた!メインキャーリサ様来た!これでかつる!
瞬間移動能力者が11次元を移動中に全次元切断したらどうなるのかなって誰もが考える剣持ってる人きた!
>>140
「自分だけの現実」でもって発動する超能力の融合に成功したのが大きいんじゃ?
インさんみたいに意識を自動書記に奪われてただの器にされてたんじゃ超能力使えないし。
ってかペンデックスがあんなべらぼうな魔術を使えるのは普段は魔翌力を自動書記のランにそなえて貯めてるからだったよな
それと同等以上の魔術を連発って流石に垣根やばくないか、魔翌力は生命エネルギーだろおい・・・
融合って言うくらいだからAIM⇔魔翌力の回路でも出来てるのかな
163 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/26(木) 22:57:53.41 ID:Ptx+XsDNo
こんばんわ、いつも沢山のレスをありがとうございます。
今日の分を投下していこうと思います。

前回、悪魔による神戮でブッ殺寸前まで追い詰められた一方通行と風斬。
しかしそこに颯爽と現れた華麗なる助っ人とは。

みたいな感じで。それでは続きをどうぞ!
164 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/26(木) 22:58:53.86 ID:Ptx+XsDNo


真っ赤な航空機に誰かが立っている。その人物は、極めて当然な行動だと言わんばかりに
何の躊躇もなく航空機から飛び降りた。

そして、


ゴシャアアアアアアッ!!、という痛烈な打撃音と共に、悪魔の頭に容赦ない一撃を浴びせた。
不意の一撃を喰らった悪魔は一直線に地上に吹き飛び地面に激突する。
悪魔に攻撃した何者かが、一方通行達の下へふわりと降り立った。


「・・・・・・・・・・・・オ、マエ・・・・・・」

「あーあー、いい男が台無しだし。 てゆーか何なのその『黒い翼』は。
 実はお前、天界から追放された堕天使でしたなんてオチじゃないだろーな」


その"女"の服装は各所に赤いレザーがあしらわれた、一見ボンテージとも思える燃えるように真っ赤なドレスを着込んでいた。
髪は金髪。豪快な笑顔を浮かべるその顔は非常に整った顔立ちだ。
手には宝石の欠片のようなものが握られており、そこから閃光の剣が伸びている。
さらにそのドレスにも、飾りのように同じ閃光の剣が一〇本ほど腰から後方へと流れている。

カーテナ=セカンド。その欠片。英国王室に代々伝わるその霊装を操れるものなど、限られていた。

165 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/26(木) 22:59:45.95 ID:Ptx+XsDNo




「き、キャーリサ・・・・・・さん・・・・・・?」

「おー、久しぶりだな風斬。 ・・・・・・って、お前も翼か。 何、流行ってるの?
 今度母上にお願いして私に天使の知識をご教授願おうかな」




英国『王室派』の第二王女、キャーリサ。
『天使同盟』として最初に訪問したイギリスで出会った、かけがえの無い仲間がそこにいた。

キャーリサは手に持つカーテナをひゅんひゅんと振り回し、意地の悪そうな笑顔で言った。

166 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/26(木) 23:01:13.34 ID:Ptx+XsDNo


「ここに来たのは私だけじゃないの。 ほれ、」


ピッと人差し指を空に向けるキャーリサに釣られて、一方通行と風斬は上を見る。
更に一人、いや二人の人影がゆっくりと地上に降りてきているところだった。

一人はいかにも英国紳士のような出で立ちの中年の男。もう一人は屈強な肉体に、馬鹿げたサイズの
大剣を肩に担いでいる。


「・・・・・・ウィリアムに、フルンティングのオッサン・・・・・・?」

「なぜわざわざ霊装の名で呼ぶ。 以前に『騎士団長(ナイトリーダー)』という役職名を名乗っただろうが」

「久しいのである、『天使同盟』」


英国『騎士派』のトップに君臨する『騎士団長』。そして元『神の右席』所属の魔術師、後方のアックア。
どれもこれも少し前にあったばかりの顔ぶれだったが、なぜか非常に懐かしく思えた。

167 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/26(木) 23:02:45.17 ID:Ptx+XsDNo


呆気にとられる一方通行と風斬を無視して騎士団長は尋ねる。


「英国を出てからの『天使同盟』のその後や、一方通行の背にある"黒翼"・・・・・・。
 君達とアレイスター=クロウリーの関係、そしてこの現状・・・・・・。
 聞きたいことは山ほどあるが、それは全て後日聞かせてもらおう。 キャーリサ様、どうします?」

「んー・・・・・・、とりあえずお前たちは散れ。 相手は天使だ、いくら『グラストンベリ』で
 私達を強化しよーと天使相手じゃ大した意味はないし。 なんか"手紙"に書いてあっただろ、
 垣根帝督とかいう男を援護するために勢力を分散させろって。 敵は天使やアレイスターだけじゃ
 無さそーなの」

「了解」

「了解しました」


キャーリサの言葉を受けた騎士団長とアックアは素早く移動し、一方通行達の前から姿を消した。
と、急に目の前の地面が爆発する。そこには背中の翼を禍々しく展開させた悪魔が膨大な殺気を放ちながら佇んでいた。


「お前たちは・・・・・・まだ戦えるの? だったら共同戦線だし」

「は、はい・・・・・・!」

168 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/26(木) 23:04:43.40 ID:Ptx+XsDNo


予期せぬ助っ人に歓喜の笑みを見せながら風斬が応える。
キャーリサがどの程度の実力を持っているのかは知らないが、さっきの悪魔への攻撃からして
充分に頼れる存在だと理解できた。


「天使・・・・・・いや、あれは悪魔か。 悪魔の神戮は上空に敷いた大量の『グリフォン=スカイ』で
 どーにかするしかないの。 一応あれでも盾にはなる、神戮の軌道さえ逸らせりゃ投下範囲外に
 避難できる猶予くらいは生まれるだろーし。 『グラストンベリ』については説明する必要ないか」

「・・・・・・オマエ、なンでここに・・・・・・?」

「そーいう話は全部後だ。 どーやらのんびりと茶を飲みながら会話するよーな暇は
 お前らのとこの可愛い悪魔ちゃんが与えてくれそーにないの」


キャーリサは空いていた手にもう一本カーテナの欠片を握りながら言う。


「うさぎ。 お前が何であの天使にそこまで執着するのかわからないけど・・・・・・、
 あんな状態になったミーシャ=クロイツェフでも救いたいんだろう?」

169 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/26(木) 23:05:46.55 ID:Ptx+XsDNo


一方通行は応えることも頷くこともしなかった。しかしそれがキャーリサへの返答になっていた。


「ふふ。 少し嫉妬するし」


そんな言葉と同時、キャーリサは地を蹴って一瞬で悪魔の懐へと飛び込む。
悪魔も新たな敵の出現に戸惑うことなく、冷静に、端的に状況を把握した。
新たな障害が出現したなら、ただそれを破壊すればいいだけの事。


ズンッッッと低い震動が起き、第二王女と悪魔が激突する。
かつての戦争でミーシャ=クロイツェフと対峙した経験を持つ彼女だからこそ、こうして
堂々と悪魔にも立ち向かっていける。


「一方通行さん・・・・・・」

「・・・・・・オマエが言ってた、『皆が支えてくれてる』って言葉。
 なるほど、実際目の当たりにしてみると、ありがたみがまるで違うな」

170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/26(木) 23:05:50.92 ID:MYeihsMm0
>>161
貴様ぁ気付くのが遅いぞ!!
………この人ホントに天才だよな…

SS書くなら応援するぞ、頑張れ
途中でめげたら駄目だぞ

後、>>1乙でした!!
垣根ェ…
171 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/26(木) 23:06:36.76 ID:Ptx+XsDNo


一方通行は白から黒に変色した翼を爆発させるように展開し、再び戦闘態勢に突入した。
風斬もそれに習い、いつの間にか消滅していた雷光の剣を掌に現出させてしっかりと握る。


「obvj行くぞllawh」

「はい。 ・・・・・・ッ!?」


風斬はギョッとした表情で一方通行の方に視線を向ける。
聞き間違いだと思いたかったが、やはり今の一方通行の声にはノイズが混じり込んでいた。


そしてやはり、彼の背後には例の黒い影が、一方通行と同調するように重なって――――。


『ゲーム』開始から一時間四八分。悪魔が発動した『天体制御』の影響で『星の欠片』の消失時間は不明。


ついに、この舞台にすべての役者が揃った。


終焉の時は近い。

172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/26(木) 23:08:00.25 ID:MYeihsMm0
>>170は無視でお願いします。
リロードしてなかった……orz

後、リアルタイム遭遇マジうれしい
173 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/26(木) 23:08:53.73 ID:Ptx+XsDNo


――――――――――――――――――――――


知識の海に飛び込んだような感覚だった。そこに身を沈めるだけで、森羅万象全ての知を得ることが出来ると確信した。
味わったことのない感覚だった。全身を駆け巡る細胞と神経の一つ一つが研ぎ澄まされていく感覚。
出来ない事などもう何も無い。今の自分は最強にして最高。究極。無敵だと思えた。

これが、『禁書目録』。

ロシアでの魔術訓練で見事に合格した垣根帝督は、エイワスから褒美としてある霊装を受け取っていた。
エイワス曰く、それを使えば自分の望む全てのものが得られるとの事。


「ハッ・・・・・・、ハッ・・・・・・はぁ・・・・・・」


その通りだった。この『自動書記(ヨハネのペン)』の遠隔制御霊装は凄まじい効力を秘めていた。
仕組みなどは一切知らないが、ダイヤル錠・・・・・・とでも言えばいいのか。リング状の液晶には
数字ではなくアルファベットが羅列してある。

そいつを少し回すだけで、頭の中にあらゆる魔術の知識が、色濃い知識が、滝のように流れてくる。
知識だけではない、その魔術の使い方、応用、効果、知りたいと思った情報は即座に脳にインプットされていった。

174 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/26(木) 23:09:53.29 ID:Ptx+XsDNo


でも、情報が絶え間なく焼き付いていくその脳が、


ドロドロと、濃硫酸に浸したかのように溶けていっている気がして。


・・・・・・・・・・・・毒?


そういえば、レッサーが言っていた気がする。常人が原典の知識を得ると、毒に侵されると。


「ご、ぼっ・・・・・・・・・・・・」


バシャシャシャシャ・・・・・・と、壊れた蛇口のように口から血を吐き続ける。
垣根の全身は真っ赤に染まりきっていた。どこからの出血なのか分からないほどに
彼の体は紅に染まっていた。


「・・・・・・。 垣根、その霊装をこっちに渡すんだ」

175 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/26(木) 23:11:27.66 ID:Ptx+XsDNo


極めて険しい表情のステイルが何かを言っているが、垣根にはもう聞こえない。聞き取れない。
脳が完全に原典による汚染にやられている。まともな思考も出来なくなっていた。
廃人になっていないほうが不自然なくらいに、垣根は『禁書目録』を行使し過ぎた。

ステイルは憤怒していた。同時に、心配もしていた。人の身である垣根帝督が原典を使用したことによる汚染侵食度も気になったが、
それ以上にステイルは"とある少女"の方が気掛かりでならなかった。

インデックス。垣根帝督が持っている霊装を使えば、彼女の体に深刻な負担が生じて意識不明になってしまう。
前例があるからそれは知っていた。第三次世界大戦時、遠隔制御霊装を右方のフィアンマが使用したことによって
彼女は散々な目に遭っている。


「・・・・・・垣根帝督」

「・・・・・・・・・・・・れで、・・・・・・倒・・・・・・」

「?」


ステイルの言葉は届いていない。代わりに、垣根は何か独り言をブツブツと呟いていた。
目から、耳から、鼻から、口から、ダラダラと血を垂れ流しながら独り言を呟く彼の姿は異様としか言えない。
視線もどこを向いているのか分からない。そもそも視力が機能しているのかも分からないような状態に見える。

176 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/26(木) 23:12:57.47 ID:Ptx+XsDNo

ステイルは注意深く彼の言葉に耳を傾けてみる。


「・・・・・・・・・・・・この、力があれば・・・・・・守れ、る。 う、ぅ・・・・・・倒せ・・・・・・る・・・・・・。
 だから、・・・・・・謝ってるだ、ろ・・・・・・・・・・・・。 "さっきからうるせえなこのガキ"・・・・・・」

「何だ? 何を言っている」

「・・・・・・守らなきゃ、俺」


瞬間、垣根は勢い良く『未元物質』の翼を展開させ飛翔し、あっという間にその場から姿を消してしまった。


「垣根!! クソッ・・・・・・!!!」

「ステイル、あなたは垣根帝督を追ってください。 後始末は私達でつけておきます」

「後始末?」


気がついた時には、ステイル達の周囲には『回収部隊』の残存勢力が姿を現していた。
垣根帝督の『竜王の殺息(ドラゴンブレス)』から奇跡的に逃れたのだろう。
彼がいなくなった瞬間に現れたところから見ると、『回収部隊』は本来の目的を棄て、魔術師に狙いを切り替えたらしい。


「彼の事、よろしく頼みますよ。 事はあの子にも関わっているのですから」

「・・・・・・分かっているさ」


言って、ステイルも垣根を追うためにその場を後にした。
残ったのは神裂火織とヴェントだけ。たった二人で残りの『回収部隊』を相手にしなければならない。

177 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/26(木) 23:14:09.44 ID:Ptx+XsDNo


神裂火織は七天七刀を構えなおし、『回収部隊』との最後の戦闘に備える。
目で確認できるファイブオーバーは五機。恐らくまだどこかに残存勢力が潜んでいるはずだ。
チラリと横にいるヴェントを見る。彼女はじっと夜に装飾された空を見上げていた。


「・・・・・・あれも、アンタらが呼んだお客さん?」

「?」


神裂もヴェントに習って空を見上げる。さっきまでの不気味な黒とは一転、
現在の空は赤く染まっていた。

否、それは染まっているのではなく、空中に赤い絨毯を敷いたように流れている。


「・・・・・・あれは、『グリフォン=スカイ』!? イギリスの攻城戦用移動要塞がなぜ学園都市に・・・・・・?
 まさか、『王室派』まで動いているというのですか? この『天使同盟』が発端の件で・・・・・・」

「『天使同盟』の影響力くらい、アンタも知ってるんじゃないの?」

178 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/26(木) 23:15:19.60 ID:Ptx+XsDNo


言われるまでもなかった。神裂火織もヴェントも、『天使同盟』という世界の価値観を根本から
ひっくり返しかねない馬鹿げた組織と直に接触している。
彼らなら、例え英国王族だろうがなんだろうが動かせても不思議ではないと思わせる何かを持っている。

もしかしたら、『神』すら微笑むかもしれない。神裂は自分でも馬鹿な考えだと思ったが、
彼女の知らないところでその考えは的中することになる。


と、


「おい!!!」

「ッ!?」


一瞬の隙を突いてファイブオーバーの数機がガトリングレールガンを発射してきた。
神裂火織は聖人である。垣根帝督達と合流する前にもこの『回収部隊』と何度か交戦したが、
このガトリングレールガンは聖人の肉体を持つ神裂にすら手痛いダメージを負わせる威力を持ち合わせていた。

常人がガトリングレールガンを浴びれば数瞬も経たず肉片になる威力だ。
それを耐え切れる神裂も化物といえば化物だが、それでも無傷というわけにはいかなかった。
よって、今この瞬間の攻撃は避けきれないと覚悟を決め歯を食いしばったのだが、

179 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/26(木) 23:16:27.46 ID:Ptx+XsDNo


「ゼロにする」


コココココン☆ と、何とも間抜けでコミカルな音が聞こえた。
信じ難い事に、神裂の頭にガトリングレールガンの連射が直撃した音だった。
遅れて、直径一メートル近い金属砲弾が神裂の足元に重厚な音を立てて落ちる。


「?」

『?』


神裂も、そして『回収部隊』も呆気に取られてポカンとしてしまう。
他のファイブオーバーが慌てて、今度はヴェントに照準を向けてガトリングレールガンを発射するが、


「それは先ほど"ゼロにした"はずだが?」


結果は同じだった。ヴェントの頭に直撃した、戦車なら三、四台程度縦に裂いて爆砕出来る威力の金属砲弾は
ヴェントの頭を吹き飛ばすことなく、虚しい音を立てて地面に転がる。
あまりに不可思議な現象を前に次のアクションが起こせない『回収部隊』がもたついていると、

180 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/26(木) 23:17:41.69 ID:Ptx+XsDNo


ガシャンッ!!! と、ファイブオーバーの数機がまとめて薙ぎ払われた。
とてつもない力で振るわれた何かによって、ファイブオーバーは不自然な形で歪んでしまう。


「ソーロルムの術式・・・・・・、やはりあなたでしたか。 騎士団長」

「こんな形で貴女に再会するとはな。 女教皇(プリエステス)」


神裂の背後から現れた金髪の男、騎士団長は柔和な笑みを浮かべながら悠々と歩いて来る。
彼が発動した『ソーロルムの術式』によってガトリングレールガンの攻撃力が無効化されていたのだ。

そして、ついさっきファイブオーバーをまとめて吹き飛ばした大剣を担ぐ男を見て
ヴェントは大きく目を見開き驚いた。


「・・・・・・はぁ? アンタ、アックア? 何でアンタまでこんなところに来るのよ」

「む?」


アックアは周囲を警戒しながらヴェントの方に歩み寄る。
前方のヴェント、後方のアックア。この学園都市という科学の街で、元『神の右席』は
奇妙な邂逅を果たした。はずなのだが、

181 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/26(木) 23:18:41.35 ID:Ptx+XsDNo


「何者だ貴様? なぜ『後方』としての私の名を知っている?
 ・・・・・・女教皇と一緒である所をみると、貴様も天草式の魔術師であるか?」

「アンタ何言ってんの? 私よ、前方のヴェント。 ・・・・・・ま、別に忘れててもいいけど」

「・・・・・・ふむ? 確かにその舌先にぶら下がっている鎖や耳に取り付けてある銀のピアスは
 『神の子』を十字架に縫い止める『釘』の属性、あの子が好んで使っていたものであるが・・・・・・」

「何よ?」


ふーむ・・・・・・とアックアにしては珍しい、顎に手を添えて首を傾げながら物を考えるという仕草をする。
そんな彼の様子を神裂も騎士団長も物珍しげに眺めていると、


「いや、しかしだな。 私の知っている前方のヴェントは"こんなに可愛さ溢れる少女"ではないのであるが。
 ヴェントと言えば見ている方もキツいほどの濃い化粧に、属性の関係上仕方が無いとはいえ女っ気のない
 真黄色の衣服。 そして声をかける者全てに等しく罵詈雑言を浴びせるという何とも憎たらしい少女であって、
 決して貴様のような『異性に恋してイメチェンしてみました』みたいな、そんな格好はしておらゴボォッッ!!?」


メリッ!!グチャァッ!! と、あまり聞きたくない音が鳴り響く。
手に持っていた有刺鉄線付きのハンマーを、顔真っ赤なヴェントが思い切りアックアの頭に叩き込んだ音だった。

182 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/26(木) 23:19:49.89 ID:Ptx+XsDNo


――――――――――――――――――――――


(・・・・・・あれって、イギリスのクーデターの時に見た移動要塞だよな・・・・・・!?
 グリフォン=スカイだったか。 なんであんな物が学園都市に・・・・・・?)


上条当麻は第一九学区の外周をなぞるようにぐるりと走っていた。
上空にはキャーリサ達が引き連れた攻城戦用移動要塞がカラスの群れのように
学園都市の空を横断している。

そしてその空は、今は『夜』に切り替わっていた。


(『天体制御(アストロインハンド)』・・・・・・、なんであの天使の術式が今ここで起きてんだよ!?
 まさか第一九学区じゃ大天使が暴れまわってるってのか!? ちくしょう、何だか想像以上に
 洒落にならない事態になってるじゃねえか!!)


ぜぇぜぇと荒い呼吸を繰り返しながら上条はひたすらに光のカーテンの側を駆け抜ける。
もちろん、何の目的もなく彼は走っているのではない。

上条当麻の前方、そこには銀髪のシスターが上条と同じように全力疾走していた。
彼はインデックスを追うために走り回っているのだ。

183 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/26(木) 23:20:50.10 ID:Ptx+XsDNo


「はっ・・・・・・はっ・・・・・・! おい、待てよインデックス!!」

「とうま、急いで!!」


インデックスが急に上条の側を離れて走りだしたのは、突然第一九学区から飛び出してきた
『光の柱』を見てからだった。
上条はその光の柱を見て悪寒が走っていた。あれは確か、第三次世界大戦でフィアンマが使用していた
『自動書記』の魔術の一種だったはずだ。

つまり今、第一九学区にいる誰かがあの忌々しい遠隔制御霊装を使用しているということになる。

しかし、


(・・・・・・だったら何でインデックスの体に何の異変も起きねえんだ? 今のインデックスには
 確か『首輪』の保護がないから『自動書記』が外部から干渉されたらインデックスは意識を
 失っちまうはずなんだけど・・・・・・)


それが理由で彼は戦場であるロシアに単身で乗り込んだのだ。
だからこそ、第一九学区で誰かがあの霊装を使用しているというのにインデックスに
何の異変も生じないというのはおかしな話だった。

184 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/26(木) 23:21:49.91 ID:Ptx+XsDNo


次々と湧き上がる疑問に上条が頭を抱えていると、


「居た!! あの人なんだよとうま!!」

「!?」


インデックスはある場所で足を止め、光のカーテンの向こう側を見て指を差す。
上条がそちらの方に視線を向けた瞬間、ゴォッッ!!! と何かが凄まじいスピードで彼らの前を横切った。

その人影の背中からは、純白の天使の翼が生えていて。


「・・・・・・今の、もしかして天使か!?」

「違うんだよ、"彼"からは『天使の力(テレズマ)』は感じなかった。 ・・・・・・でも今の人が
 私の中の一〇万三〇〇〇冊からどんどん情報を引き出してる・・・・・・!!」


インデックスの声は震えていた。見れば、彼女の碧眼には涙が溜まっていた。

185 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/26(木) 23:23:07.46 ID:Ptx+XsDNo


「・・・・・・止めないと・・・・・・」

「インデックス・・・・・・」

「あの人の思考が、少しだけど私の頭にも流れてくる。 ・・・・・・あの人は
 一〇万三〇〇〇冊の原典の力を使って大切な何かを守ろうとしてるんだよ・・・・・・。
 でも、こんなの絶対間違ってる・・・・・・。 大切なものを想う強い気持ちがあるなら
 こんな魔道書に頼らなくても絶対に守れるのに・・・・・・!!! このままじゃあの人、
 『原典』の毒に侵されて・・・・・・私のせいで・・・・・・死んじゃうんだよ・・・・・・」


インデックスは光のカーテンに手をついて項垂れた。
表情は見えないが、ぽたぽたと彼女の瞳から雫が零れているのが窺える。


(・・・・・・馬鹿野郎)


上条当麻はギュッと右手を握り締め、さっき横切った誰とも知らぬ人間に
静かに怒る。

インデックスを泣かせた事による怒りだけではない、何かを守るという強い信念を持ち合わせていながら
『原典』というくだらない代物を使って我が身を省みず、という方法をとった事に怒っているのだ。

186 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/26(木) 23:24:06.02 ID:Ptx+XsDNo


(バッカ野郎が・・・・・・!!)


とにかくここで立ち止まっている暇はない。
上条はインデックスに早く今の馬鹿野郎を追うぞ、と声をかけようとして、


「・・・・・・上条当麻?」

「え?」


光の壁の向こうから、自分を呼ぶ声が聞こえた。
上条とインデックスは壁の向こう側から声をかけてきた人物を見て目を丸くする。


「す、ステイル!!? 何でお前、どうやって第一九学区に入ったんだよ!?」


上条の問いに赤い髪の魔術師は答えなかった。
ただ彼は肩で息をしながら、意識を失う事なくピンピンしているインデックスを
唖然とした表情で凝視するだけだった。

187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/26(木) 23:32:14.95 ID:KKs2K/vCo
…… これにしたらどうだ
188 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/26(木) 23:34:55.52 ID:Ptx+XsDNo
以上です。
『グラストンベリ』自体は別に強化が施される効果はないですね、間違えました。

ついに第一九学区に役者が全員揃いました。
一方通行と風斬、キャーリサは悪魔と。神裂火織、騎士団長、ヴェント、アックアは回収部隊の残存勢力と。
ステイルは垣根帝督を追って。上条とインデックスは舞台に上がれないので役者ではないです。浜面たちも。
正確にはまだ全員揃ったとは言い難いですが、もうこれ以上第一九学区にキャラが増えることはないです、多分。

次回はステイルと上条のシーンから。アレイスターやエイワスにもカメラを向けます。

次回更新は三日以内。

それでは、今回もありがとうございました!


キャーリサ達は来るのちょっと遅かったですねー・・・・・・
189 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/26(木) 23:35:29.18 ID:Ptx+XsDNo



                          【次回予告】



『いや・・・・・・なんかさ、昨日俺とインデックスが晩飯食おうとした時に訪ねてきたんだよ。
 クイトって名前の魔術師が。 全身真っ白のローブ着てたから顔とかは見てないんだけど』
―――――――――――学園都市の無能力者(レベル0)・上条当麻




『クイト・・・・・・? ・・・・・・・・・・・・で、その魔術師は君たちに何の用件で現れたんだ』
―――――――――――イギリス清教『必要悪の教会(ネセサリウス)』の魔術師・ステイル=マグヌス




『・・・・・・「汝の欲する所を為せ。 それが汝の法とならん」。 ・・・・・・この言葉の真意に辿り着かない限り、
 たかが超能力者が・・・・・・私の、「セレマ」の意志を引き継げるものか!!!』
―――――――――――学園都市統括理事長・アレイスター=クロウリー




『一方通行は間もなく「ホルス」に足を踏み入れる。
 そこから先がどうなるかは私にも分からないと言っているのだよ。
 くくく・・・・・・どうだろうアレイスター。 わくわくしてこないかね?』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・エイワス



190 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2011/05/26(木) 23:38:27.15 ID:Ptx+XsDNo
>>187
ありがとうございます。そっちの方が読みやすいですかね?
でしたら結構時間かかりますが書き溜め分全てに修正を入れますが
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岐阜県) [sage]:2011/05/26(木) 23:39:44.27 ID:p8llYAG70
乙です
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/05/26(木) 23:41:28.23 ID:QDGUkdGeo
乙!
…は正直どっちでもいいや

上条さんが垣根にフラグ建てるかと思ったけどそんなことなかったぜ!
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/26(木) 23:44:07.99 ID:aPlLYE4To
>>190
別に大丈夫だと思う
あと、もし修正するならメモ帳とかで置換使えば一瞬ですむ
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/05/26(木) 23:44:28.49 ID:vx/DV45AO
>>190
そこまで気にすることじゃ無いと思いますよ
普通に読めますし

何かていとくんも一方さんもとんでもない事になってる
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/05/26(木) 23:44:40.93 ID:ImVyxPGSo

三点リーダーは……の方が読みやすいけど、確か最初の方で・・・・・・・でこれは統一するって決まってたんじゃなかったか
てかそこまで気にならないからおk
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2011/05/26(木) 23:44:42.04 ID:A3rYvP4L0
…は俺もどっちでも良いな。
一応、修正する気ならフリーのテキストエディタを落としてきて置換機能を使う手もある
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/05/26(木) 23:46:40.52 ID:TnoIYzeAO
乙です。
前スレの
垣根の行動のせいでインデックスが泣く、みたいなくだりはここのことを言っていたんですかね?
198 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2011/05/26(木) 23:48:07.31 ID:Ptx+XsDNo
貴重なご意見ありがとうございます!参考にさせていただきます。

では改めて、次回もよろしくお願いします。
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北陸地方) [sage]:2011/05/26(木) 23:51:00.86 ID:Hkvw7Nzjo
乙!ヴェントちゃん可愛い!
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/26(木) 23:52:33.85 ID:90GBixQAO

相変わらず熱いぜ
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/26(木) 23:56:41.21 ID:jOKNWo9DO
“・・・”は個人的には気にしてませんので>>1さんのやりやすい方で良いと思います
願わくば誰も泣かないハッピーエンドを…!
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/27(金) 00:02:58.67 ID:glxShxJ/o


状況がひでえ
ていとくんとか燃え尽きそうだ
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2011/05/27(金) 00:06:54.33 ID:gR8+NAa60
ていとくンもう死んでるよね絶対コレ
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/27(金) 00:17:51.70 ID:4Afa3D/mo
フルチンのおっさんか!
って読んでしまったw
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/05/27(金) 01:29:13.32 ID:K0SyBezK0
>>1
垣根も一方さんもやばいことになっててうわああああってなる
あとウィリアムェ…
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/27(金) 02:39:52.59 ID:Su7oTbTmo
乙!
インデックスが無事そうなのに一安心……してる場合じゃないな
しかし色々ヤバ気な中でもヴェントちゃん可愛いちゅっちゅっ
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/27(金) 03:47:45.55 ID:kEId6N4Io
ていとくんのダークマターがステイル以下ってのが納得いかない
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/05/27(金) 03:50:43.33 ID:sXW33Tpfo
相性の問題だろ
ましてや相手はなんやかんや言ったところでパチモンだ
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/05/27(金) 06:55:20.27 ID:vbAkvDTAO
この時のためにエイワスがのーみそこねこねしてたのか
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2011/05/27(金) 07:04:41.88 ID:xvv5RTBL0
乙!!
アックアwwwwwwwww
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/27(金) 07:16:56.15 ID:FxYz+o8So
>>207
ステイルさんじゅうよんさいも一応天才設定なんだぞ!
本人が打たれ弱い以外はかなり強いはずなんだ!
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/27(金) 11:31:04.68 ID:P0chmI8SO
まぁ、ステイルさんにガトリングレールガンを避ける事が出来るのかは疑問ですが
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/27(金) 11:31:53.69 ID:P0chmI8SO
まぁ、ステイルさんにガトリングレールガンを避ける事が出来るのかは疑問ですが
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/27(金) 11:32:49.08 ID:P0chmI8SO
連投すまん
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/27(金) 12:38:15.24 ID:iLkrix8SO
自重しろゴミ屑
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/27(金) 13:23:59.33 ID:AIv/JpXs0
イノケンさんを盾にすれば大抵の攻撃は防げる……はず
てか、さすがにレールガン直撃ったら聖人でも死なないか
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/27(金) 17:14:47.21 ID:kKqERtlIO
>>216
モロに当たっても死にはしないけど重傷だな
今の所直撃はないしいいだろう
218 :161です [sage]:2011/05/27(金) 18:26:29.46 ID:7eNwj28T0
>>161です
今日決意しました
俺・・SS書きます!
ここの>>1においつけるように頑張っていきます

そして最後に

>>170、あなたのおかげで勇気がわきました。
  本当にありがとうございました!
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/27(金) 19:49:43.05 ID:oQPfYpxT0
どうしてもフルティンと読んでしまう
脳が毒にやられてるな
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2011/05/27(金) 21:00:27.63 ID:xvv5RTBL0
ndjfaknksg219bhbdhkfbzj同意見nslkjgfnskdljnnk
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/27(金) 21:23:44.89 ID:gAQlsgRP0
アックアは敵と戦う前に死んだな。
それにしてもていとくンまた死ぬのかな?


※219

ここに俺の仲間がいたwwwwwwwwww
よかった。フルティンと読んでしまうのが俺だけじゃなくてwwww

※218

おおマジですか。頑張ってください、応援します!
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/27(金) 21:31:52.83 ID:qkfyCK45P
最近ほんと臭くなったなここ
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2011/05/27(金) 22:04:00.87 ID:xvv5RTBL0
↑大丈夫だ、問題ない
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/05/27(金) 22:47:40.09 ID:FsSW9wPro
乙、今回も面白!

うしおととらの最終戦を思い出した。
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/27(金) 23:03:25.60 ID:DjfPA1sp0
>>222
これがあればなにもこわくない
つ【消○力】
きっとお前んちトイレ壊れてるんだよ










いい意味でも悪い意味でもいろんな人が読んでくれてるってことだろ。きっと。
226 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/28(土) 16:58:57.27 ID:Ke7nglJHo
そ、そりゃもうステイルも神裂もガトリングレールガンなんて
見てから昇竜余裕でしたってなもんでしょう・・・・・・うん・・・・・・

まあその、こんなところで死なれても困るのでそれでお願いします。
都合よくて申し訳ない。

そんなわけで投下しに来ました。
今回はステイル、上条、インデックスというこのSSでは珍しいキャラからのスタートになります。
遠隔制御霊装を使用されても無事だったインデックスを見たステイルは・・・・・・。

では、いきます。
227 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/28(土) 16:59:35.94 ID:Ke7nglJHo


今頃インデックスは垣根帝督が『自動書記』の遠隔制御霊装を使用した事によって
第三次世界大戦時のようにぐったりと意識を失っていると思っていた。
だが彼女の側には上条当麻がいつでも居る。ステイルからすればそれはそれで腹ただしい事だったが、
彼がいるからインデックスについては任せておけると思っていた。

だからこそ、今自分の目の前で、自分と同じように肩で息をしているインデックスを見て
ステイルは呆気にとられるしかなかった。


「・・・・・・な、ぜ。 君は無事なんだ・・・・・・?」

「・・・・・・私のことなんてどうでもいいんだよ。 それより早くあの人を、
 私の原典の渦に飛び込んでいる彼を・・・・・・」

「ステイル、『自動書記』の遠隔制御霊装を使ってるのは誰なんだ!?
 あの霊装は俺が『幻想殺し』でぶち壊したはずなのに・・・・・・!!」


光のカーテンを挟んで会話をする三人。こうしている間にも垣根帝督は
原典の毒に侵されながらどこかへ移動している。

そんな彼の想いは、耐えず断片的にインデックスの頭の中に流れ込んでいた。

228 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/28(土) 17:00:31.67 ID:Ke7nglJHo


「・・・・・・止めないと、絶対に・・・・・・!!」

「あ、おい!」


目元の涙をゴシゴシと拭い、インデックスは再び走りだした。
上条は制止しようとするがその前にステイルに聞いておかなければならないことがある。


「上条当麻、」

「おいステイル、何だってまたあのクソったれの霊装が使われてんだよ!?
 さっき飛んでたあいつは何者なんだ? どこの魔術結社の魔術師なんだ!」

「・・・・・・君が知る必要はない。 なぜだか分からないが、あの子は無事だった。
 それなら僕は彼を止めることだけに専念できる」

「知る必要はないってなんだよ!!! インデックスに関わることなんだぞ!!」


ダンッ!! と右手で光の壁を叩きながら激昂する上条。
相変わらず、右手の『幻想殺し』に反応して壁が壊れるということはなかった。

ステイルは煙草を吹かしながら努めて冷静になり、上条に返答する。

229 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/28(土) 17:01:56.60 ID:Ke7nglJHo


「あの子の頭の中に、霊装を使っている者の思考が漏れているはずだ。
 後日、あの子から直接聞いてくれ。 僕の口からは何も言えない。
 色々と面倒な事になりそうなんでね。 というか、むしろ僕のほうが
 聞きたいくらいだよ。 どうやってあいつはあの霊装を・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・ッ!! ・・・・・・第一九学区で今なにが起きてんだ?
 まだ夕方前後だってのに夜になってるのはそこに天使がいるからなんだろ?
 もしかして誰かがそこに天使を呼び出して学園都市を攻めてきたとかか!?」

「・・・・・・今は全てを説明している時間はない」


ステイルの冷たく突き放すような言葉に上条は歯噛みする。
もはや自分たちは、少なくともインデックスは無関係ではなくなってしまったというのに。
尚もこの一連の騒ぎに一切関われない自分自身に腹がたつ。

垣根帝督を止めるためにその場を後にしようとしたステイルが、上条に尋ねた。


「一つ聞きたい。 前日・・・・・・いや、ここ数日でもいい。
 君とあの子のどちらか、或いは両者に何か変わったことはなかったか?」

230 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/28(土) 17:02:52.39 ID:Ke7nglJHo


「? どういう意味だ?」

「今、遠隔制御霊装を使っている彼はほぼ完全に『禁書目録』を掌握している。
 あそこまで干渉してあの子に何の異変もないというのはあまりに不自然だ。
 あの子自身に"何らかの処置を施しでもしない限り"は、ね」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 ・・・・・・、あ」


上条は自分たちの日常に介入してきた異変が無かったかと記憶を巡らせていると、
ある出来事を思い出した。あれは確か昨日だったか、突如として自分達の前に現れた謎の人物。


「・・・・・・クイト、だっけ」

「?」

「いや・・・・・・なんかさ、昨日俺とインデックスが晩飯食おうとした時に訪ねてきたんだよ。
 クイトって名前の魔術師が。 全身真っ白のローブ着てたから顔とかは見てないんだけど」

「クイト・・・・・・? ・・・・・・・・・・・・で、その魔術師は君たちに何の用件で現れたんだ」


ステイルはあからさまに訝し気な表情を作ってみせる。
全身を白のローブで包んだ顔も見せない魔術師など、どうぞ怪しんでくださいと言っているようなものだ。

231 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/28(土) 17:03:57.87 ID:Ke7nglJHo


上条は慎重に当時の出来事を思い浮かべながら話を続ける。


「そいつはインデックスの頭にある一〇万三〇〇〇冊の魔導書に用があってきたって言ってた。
 なんでも、フィアンマが使った遠隔制御霊装の負担の後遺症? みたいなのが残ってるから
 それを治療しに来たって・・・・・・。 治療しないと後遺症によるが脳に至ってインデックスが
 死んじまう・・・・・・みたいなことも言ってたと思う」

「・・・・・・・・・・・・後遺症?」


何の話だ、とステイルは頭に疑問符を浮かべる。
遠隔制御装置を使用された事によってインデックスの体に重大な負担が掛かる事は
ステイルも理解しているが、後遺症などという話は聞いたことがない。

口をはさむ前に、上条は更に話し続けた。


「俺は当然だけど、インデックスもそんな話は聞いたことないって言ってた。
 クイトは『イギリス清教の中でもトップクラスの秘匿情報』だって言ってたっけ。
 えっと・・・・・・、ろ、ローラ? って人とクイトしか知らされてない情報だって」

「待て、ローラ? イギリス清教?」

「ああ、クイトってイギリス清教の魔術師なんだってよ。 新入りの。
 お前は知らないのかな?」

232 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/28(土) 17:04:58.49 ID:Ke7nglJHo


知らないどころの騒ぎではなかった。ステイルは妙な頭痛を感じる。
イギリス清教?ローラ=スチュアート?トップクラスの秘匿情報?クイト?新入り?

上条が何を言っているのかさっぱり理解出来なかった。ボケているのかと疑った。
目の前にいる東洋人の男はさっきから何を言っている?


「・・・・・・それで、治療したのか」

「ああ、すげービックリしたよ。 クイトがいきなり自分の手をインデックスの頭に
 "直接挿し込んでさ"。 なんか脳を弄って毒を取り除くって。 あ、治療は成功したぞ。
 インデックスも喜んでたし、魔導書も全て揃ってるって言ってたからな」

「・・・・・・その治療というのは、魔術を使用して?」

「うん。 確か『貸出無料(アカシック・フリー)』だったっけ。
 クイトにしか使えない魔術なんだって。 インデックスの毒を治療するためだけに
 生み出された魔術らしいけど・・・・・・・・・・・・って、ステイル? おい、どうしたんだ?」


ステイルは危うく目眩で昏倒するところだった。目の前に敷かれた光のカーテンに思わず感謝する。
もしこの壁が無ければステイルは今頃、眼前にいるツンツン頭の大馬鹿野郎を骨も残さず焼き尽くしていたかもしれない。

上条の話を一通り聞き終えたステイルの結論は、

233 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/28(土) 17:06:09.03 ID:Ke7nglJHo


「上条当麻、とりあえずこれだけは言っておこう。 イギリス清教にクイトなどという名の
 魔術師は存在しないし、『最大主教(アークビショップ)』しか把握していないような情報が
 一魔術師に伝えられるわけがないし、『貸出無料』なんてふざけきった名前の魔術も存在しないし、
 そもそも『禁書目録』の毒があの子自身を侵すはずがないだろうがこのクソったれがッ!!!!」

「え・・・・・・、え・・・・・・・・・・・・?」


ステイルは短くなった口の煙草を乱暴に投げ捨て、深くため息をつく。
そのため息には明らかに『呆れ』の意が含まれていた。


「騙されたんだよ君たちは。 そのクイトとかいうクソ詐欺師にね」

「そ、そんなはず・・・・・・、だってインデックス自身が言ってたんだぞ!?
 『なんか頭がスッキリしたかも』とかって!! そ、それに・・・・・・
 そう、だからこそ遠隔制御霊装を使われてもインデックスはああやって意識を失わずに
 済んでるんじゃないのか? クイトの治療が無ければ今頃インデックスは・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」


ステイルは未だにクイトを擁護する無能力者の言葉を右から左に受け流しながら
この状況を整理していく。

234 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/28(土) 17:07:17.63 ID:Ke7nglJHo


(・・・・・・だが確かに、その『貸出無料』とかいうふざけた魔術は本物のようだ。
 僕もこの目でしっかり見ている、遠隔制御霊装を使われても健康な状態を
 維持しているあの子を。 『自動書記』の干渉を悟られないため・・・・・・か?
 だとしたらクイトの正体は垣根帝督・・・・・・? いや、そもそも垣根はどうやって
 あの遠隔制御霊装を手に入れたんだ。 一つは目の前のウニ頭が第三次世界大戦時に
 破壊している。 もう一つの霊装は今も『最大主教』が保管して・・・・・・・・・・・・、)


ドクン、と。ステイルの心臓が一際大きく跳ね上がった。
顔からじわじわと脂汗が滲んでくるのがわかった。

『最大主教』、ローラ=スチュアートとクイトだけが知るトップシークレット。
それは嘘だ。間違いない。本当なのは、ローラとクイトが"繋がっている"ということ。


(垣根帝督は学園都市の人間だ。 恐らくクイトとして接触したのは垣根じゃない・・・・・・)


ならばそれは誰か。その時、ステイルの脳裏にはとある人物の顔が浮かび上がっていた。
『天使同盟』と接触した際、イギリス清教と協定を結ぶとか言ってローラと接触した『天使同盟』の構成員。

235 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/28(土) 17:08:20.50 ID:Ke7nglJHo


(・・・・・・・・・・・・・・・・・・エイワス・・・・・・・・・・・・!!!)


あの超次元存在ならやりかねない。出会った期間はごく短いが、それでもステイルは確信した。
垣根帝督に遠隔制御霊装を渡したのは間違いなくあのとんでもチート野郎だと。


「す、ステイル・・・・・・?」

「お人好しもそこまでいくと罪だよ、上条当麻。 ・・・・・・遠隔制御霊装の事は僕に任せておけ。
 君はさっさとあの子を連れてここから離れるんだ」

「え、ちょ、おい!!!」


ステイルは言うだけ言うと、一目散に駆け出した。
後方から上条が何かを叫んでいたがステイルは無視してひたすら走り続けた。

ステイルは忌々しげに舌打ちをする。

この遠隔制御霊装の件の被害者はインデックスでも、ましてやまんまと騙された上条当麻でもない。

間違いなく、霊装を使っている本人。垣根帝督だったのだ。

236 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/28(土) 17:09:32.51 ID:Ke7nglJHo


――――――――――――――――――――――


アレイスターはひどく取り乱していた。どうしてここに来て、このタイミングで、と歯噛みする。
この戦いで『天使同盟』の連中を全て再起不能にし、後は歪み果てた『プラン』の修正をのんびりと行えば
それで全てが解決していたはずだった。

だがしかし、そこで"本命"である『セト』が『天使同盟』に肩入れをしてしまっては元も子もない。
虚数学区の方ならまだ修正可能範囲だった。しかし今、一方通行に"憑いている"のは間違いなく本物の『王』だ。


『セト』。アレイスター=クロウリーが最も崇拝している神は、この時だけは一方通行に微笑んだらしい。


「・・・・・・あなたは、最初からこうなることが分かって・・・・・・?」

「あれほどの存在だ。 むしろ今まで気がつかなかった君がおかしいのだよアレイスター。
 私という存在を目の当たりにしておきながら、神の意向を予測出来なかった君に非がある。
 なるほど、ならば『セト』が一方通行という純粋な存在に憑いた点も頷ける。 そうだろう?」


エイワスの背中から生えている光輝の翼がアレイスターを襲う。
その速度は二〇世紀最大の魔術師と謳われたアレイスターですら、目視出来ないものだった。
先程までのエイワスとはまるで動きが違う。今までは遊んでいたのかというほど、エイワスの攻撃は
凄まじいものになっていた。

よって、エイワスの翼はアレイスターの体を容赦なく引き裂く。

237 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/28(土) 17:10:17.75 ID:Ke7nglJHo


「が、ァァァああああああああああああああああああああああ!!!?」

「さて、どうするかね? このままだと君が開いた『セレマ教』は超能力者である一方通行が
 引き継ぐことになりかねんぞ? くく、万が一にでもそうなれば愉快極まりないのだがな」


自分の体から出る血飛沫を顔に浴びながらアレイスターはエイワスの顔を睨む。
全身を覆うように展開していた絶対不可侵術式も、もはや役に立たないほどに弱体化していた。


「・・・・・・『汝の欲する所を為せ。 それが汝の法とならん』。 ・・・・・・この言葉の真意に辿り着かない限り、
 たかが超能力者が・・・・・・、私の『セレマ』の意志を引き継げるものか!!!」

「『セト』がいる」

「・・・・・・・・・・・・ッ!!」

「確かに君の目指す『神浄』はその他からしてみれば大いなる意志かもしれない。
 だが、私から言わせれば『神浄』など所詮はそんなものだ。 超能力者、魔術に関しての
 知識が全く無い人間でも『セレマ』の意志に辿りつける。 そうなれば面白いとなぜ理解しない?
 もっと発想を柔軟にしてみたまえ」


ふざけるな、とアレイスターは苦痛に顔を歪ませながら言う。普段の彼からは考えられない状態だった。
学園都市で、世界で、どれだけ大きな事が起きようともアレイスターの計画にヒビが入る事はなかった。
どれだけのイレギュラーが発生しようと、『プラン』自体の修正が困難になろうと、アレイスターは
必ず自分の計画を成就出来ると確信していた。

238 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/28(土) 17:11:22.61 ID:Ke7nglJHo


今回も、『天使同盟』などというふざけきった集団を潰せばそれで終わるはずだったのに、
なぜ自分がこんな目に遭わなければならない?

口からボタボタと血を垂らすアレイスターを見ながら、エイワスは薄く笑う。


「もしかすると、今日この日こそが時代の節目なのかもしれないな。
 これは私でも予想できん事だ。 『セト』の恩恵を受けた一方通行が
 天使を救い、そしてどう行動するか。 人類を『ホルスの永劫』へ導くのは
 君でも私でもなく、学園都市に住む一人の少年でしたというオチでも私は構わん」

「・・・・・・わ、私が五〇年以上の時を費やして生み出した『一方通行』が・・・・・・」

「そう。 一方通行は間もなく『ホルス』に足を踏み入れる。
 そこから先がどうなるかは私にも分からないと言っているのだよ。
 くくく・・・・・・どうだろうアレイスター。 わくわくしてこないかね?」


だがそれは、決して一方通行本人の意志ではない。
このまま彼が『セト』の恩恵を受けて次の時代に突入しても、それは操り人形が人形師の意志で
時代に放り投げられた事と同義だ。

アレイスターにはエイワスの心中が理解できなかった。
エイワスの言葉にいいように翻弄され、さっきまで互角だった戦いもこうして劣勢に立たされている。
このままでは『プラン』どころか、今この場でエイワスに殺されてしまう可能性も大いに考えられた。
かつて自分の目の前に降臨し、あらゆる知識を授けてくれた聖守護天使が、今は自分に牙を剥いている。

239 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/28(土) 17:12:39.51 ID:Ke7nglJHo


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


思考を放棄したくなった。どうしてこうなったのかが分からない。
どこで躓いたのか。『天使同盟』を敵に回したことか、エイワスを作ってしまったことか、
学園都市を創立したことか、イギリスの片田舎で生き延びてしまったことか。

それらのどこかで自分は『セト』に見限られ、こんな状況に陥ってしまったというのか。


「学園都市の能力者は・・・・・・所詮『駒』だ」

「?」


アレイスターは呼吸を整え、魔術によって地面から生えている渦を巻いたような造形の塔の上で
悠然と佇んでいるエイワスを空中で見上げながら続けた。

240 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/28(土) 17:13:20.97 ID:Ke7nglJHo


「どういうわけか知らないが、一方通行という駒に『セト』が一時的に肩入れしているだけに過ぎん。
 事が終われば『セト』は星幽界に還る。 私はそこからまたやり直せばいい」

「そうか。 ならば『駒』は『駒』で徹底すべきだったな。
 君の作った駒がなまじ人間なだけに、意志を持つ駒は時に謀反を起こす」

「?」

「ほら、」


エイワスが顎を軽く動かして示す。アレイスターはゆっくりとエイワスが示した方向に首を動かした。

その時点では、アレイスターの視界に映ったのは天地がひっくり返ったように荒れ果てた第一九学区の景色だけだったが、
やがてそこから何かがこちらに猛スピードで飛んでくるのが分かった。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・垣根、帝督・・・・・・?」


それが自分が作り上げた『第二候補(スペアプラン)』だと理解したときには、


既にアレイスターの頭の左半分が消し飛んでいた。

241 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/28(土) 17:16:31.09 ID:Ke7nglJHo


――――――――――――――――――――――


エイワスから貰ったダイヤル錠のような霊装を使ってからずっと、頭の中に幼い少女の声が響いていた。
『そんな物を使わなくてもあなたは大事な人達を守れる』、『私のせいであなたが傷ついてしまうのが我慢ならない』。
こんな感じの言葉が、垣根帝督の頭に繰り返し反響する。

垣根はこれまでの人生で、これほど慈愛に満ちた声を聞いたことがなかった。

この声の主が誰なのかは分からない。だがこの声の主は、嘘偽りなく垣根の事を『想っていた』。
原典の毒に蝕まれていく自分を、本気で心配してくれていることだけは、意識が朦朧としている垣根にも理解できた。


だがそれでも、垣根帝督は止まらなかった。


(・・・・・・守る、守る・・・・・・守る。 居場所を、あいつらを、学園都市を、全て・・・・・・。
 これだけの力があれば守れる。 何もかも、この声の女も、全部、全部、全部、全部、全部、全部)


原典の毒は確実に垣根の脳に浸透していた。通常、人間が原典に触れると一瞬で廃人と化してしまう。
中身をチラッと見ただけでも、頭が破裂しそうな激痛が走る。そんなものを使い続けたら、数分も経たない内に
死に至るのが当たり前の原典だ。

垣根の場合はそれより酷い。彼は一〇万三〇〇〇冊という数の原典の毒をモロに浴びている。
フィアンマは汚染を『聖なる右』で抑えこんでいたが、垣根にそんな芸当は不可能だ。

242 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/28(土) 17:18:18.46 ID:Ke7nglJHo


にもかかわらず、彼はひたすらに戦っていた。『死』という究極の概念と必死に戦っていた。
原典の汚染に付き合っている暇など無いと、垣根はこの世の誰もが成し遂げられない事を
現在進行形で行っていた。

彼が原典の毒で死に至らない理由は誰も分からないだろう。本人にも分からないはずだ。
ただ彼は、『天使同盟』という自分の居場所を守りたいの一心で行動している。
『想い』だの『信念』だの、そんな曖昧なもので汚染に耐えられるわけがないのだが、そうとしか言い様がない。


垣根帝督は、もうほとんど本能の赴くままに動いていた。


(・・・・・・・・・・・・、見つけた)


空爆を数百回ほど受けたような第一九学区をひたすら飛翔していると、垣根の眼前に『目標』が見えた。
それは学園都市の人間を玩具のように扱う者。かつて自分自身の学園都市の『絶望』を見せつけてきた者。

それは、自分の居場所である『天使同盟』の存在を脅かす者。


「・・・・・・ア、レイ・・・・・・スター・・・・・・」

243 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/28(土) 17:19:18.78 ID:Ke7nglJHo


掠れた声で何かを呟いた垣根は、手に握っている『自動書記』の遠隔制御霊装のダイヤルを回す。
なぜか背中の『未元物質』が輝き始めた。科学の結晶であるはずの物質が、霊装に反応した。
『未元物質』と魔術の応用。垣根帝督は『禁書目録』と『未元物質』を組み合わせて使用するという
前人未踏の行為を安々とやってのけた。


そして『未元物質』の翼から放たれた『竜王の殺息(ドラゴンブレス)』が、アレイスターの顔を掠める。
エイワスとの熾烈な戦闘で防御術式を大幅に消費していたため、アレイスターは垣根の攻撃に即座に対応出来なかった。

結果、アレイスターの顔の左半分はごっそりと削り取られてしまった。


「・・・・・・!?」

「・・・・・・・・・・・・アレイスター」


尚も垣根は止まらない。完全に致命傷を負ったはずのアレイスターが未だに生きていることに何の疑問も持たず、
垣根はアレイスターに向かって吠えた。




「アァレイスタァァァァァァァあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」



244 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/28(土) 17:21:00.34 ID:Ke7nglJHo


超能力は使わなかった。魔術には頼らなかった。
垣根は血が滲み出るほど右手を握り締め、渾身の力を振るってアレイスターを殴り飛ばす。
地面から生えた塔に殴り飛ばされたアレイスターにそのまま馬乗りになり、一発、二発、何発も拳を放り込む。


「く、ゥァァァあああああああああああああああああああ!!!!!!!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ッ」


アレイスターもどうにかして抵抗しようとしたが垣根の力は予想以上に強く、なかなか引き剥がせない。
垣根は一心不乱に半分になったアレイスターの顔を殴り続けた。その姿はまるで駄々をこねる子供のようにも見えた。

何発殴ったかも分からなくなった頃、ようやく片腕が自由になったアレイスターは
魔術なのかも分からない未知の力を放って垣根帝督を吹き飛ばす。垣根はそのまま一〇〇メートル以上地面を転がっていった。

ドシャッ! と何かにぶつかる。垣根帝督を追って全力で走ってきたステイルだった。
彼は垣根のクッションになるように転がってきた垣根を両手で抱き止める。


「ぐっ・・・・・・! 垣根、しっかりしろ!!」

「が、は・・・・・・・・・・・・ァあ・・・・・・」


アレイスターの攻撃によるものなのか、垣根の脇腹は"爆ぜていた"。
皮膚が張り付いた肉が飛び散り、彼の脇腹から夥しい量の血が溢れ出している。

245 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/28(土) 17:22:35.65 ID:Ke7nglJHo


「ふ、危なかったなアレイスター。 今そこにいる君が『ホムンクルス』ではなかったら
 惨めに寿命を延ばしてまで維持していた『君』は死んでいたぞ?」


顔の半分を失い、垣根帝督に何十発も殴られボロボロになったアレイスターを、
エイワスは無数に立ち並ぶ塔の上から文字通り見下して嘲笑っていた。
そんな嘲りなど無視してアレイスターはよろよろと立ち上がる。

遠くの方には垣根帝督がいた。今にもアレイスターに飛び掛からんとしているが、
それを背後に居るステイルによって抑えられている。


「よせ、垣根帝督! これ以上『禁書目録』を酷使したら・・・・・・」


興奮した獣のように暴れ回る垣根を羽交い締めにしてどうにか抑えているが、
垣根はステイルの事など見向きもせず、ひたすら前方にいる魔術師に向かって叫び続けた。


「テメェさえ、テメェさえいなけりゃこんな事にはならなかったんだ!!! 何で邪魔すんだよ!?
 どうして人間をゴミみてえに扱えるんだ、どういう神経してたらそんな事が出来るんだよ!!?
 テメェにそんな権限があんのか!! 学園都市の統括理事長だぁ? 知らねえんだよそんなもんは!!!」

246 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/28(土) 17:23:42.38 ID:Ke7nglJHo


それは『原典』の毒ではない。
垣根帝督の胸中にへばりついて蓄積していた、彼自身の毒。彼が学園都市で見た闇、絶望。
暗部という不安定な居場所に居ついて知った、この世のものと思えぬ『負』。
垣根はアレイスターが生み出したそんな『毒』を、ここにきて一気に吐き出した。

そして、


「どうして俺の居場所までテメェに奪われなきゃなんねえんだ!!! 何でテメェの『プラン』に従って
 生きていかなきゃならねえんだよ!! 俺が一方通行に・・・・・・あいつらに出会ってから、俺はずっと
 あいつらの側にいた。 あいつらは笑ってた。 いつもいつも笑ってた。 俺も笑った。 楽しくて、
 楽しくてしょうがねえから心の底から笑った。 笑えたんだ!! そんなあいつらの笑顔まで、何で
 テメェに奪われなきゃなんねえんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」


唾と血糊をまき散らしながら垣根は激昂する。今まで溜まっていたアレイスターへの憎悪が
爆発した瞬間だった。
対するアレイスターは、何も答えない。自分に向かって恨み辛みを吐き出す垣根を黙って見据えるだけだった。

気がつけば、垣根の瞳からは血に混じって涙が流れていた。
アレイスターに対する怒りをぶつけても結局あの魔術師には何にもならない理不尽さに。
あまりにも非力過ぎる自分の力に。ようやく手に入れた安息の場所を守れもしない悔しさに。

247 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/28(土) 17:25:28.11 ID:Ke7nglJHo


「・・・・・・俺はただ・・・・・・あいつらとこれからも一緒にいたいだけなのに・・・・・・
 何でこんな目に遭わなくちゃならねえんだよ・・・・・・・・・・・・」


それは、アレイスターの『プラン』というレールに乗せられて失意と絶望の道を辿らされた
学園都市の住人の胸中を代弁した言葉だった。
普通に暮らしていきたい。ただそれだけを願うのに、なぜ血が流れるのか。なぜ誰かが涙を流さなければならないのか。

ありったけの毒を吐き終えた垣根はさっきまでの興奮から一転、糸の切れた操り人形のように
おとなしくなってしまった。背後にいたステイルがまさか、と焦燥したが彼はまだ息をしている。

やがて、アレイスターはゆっくりと半分になった口を開いた。


「・・・・・・君が『天使同盟』と共に笑顔で幸せに暮らしたいと願っているように、
 私にも全てを棄ててでも成し遂げたい願いがあるのだよ」


言いながら、彼は右手に『衝撃の杖(ブラスティングロッド)』を握ると、ゆっくりと先端部を
一〇〇メートル以上先にいる垣根帝督に向けた。
ステイルの表情に更なる焦りが追加されるが、今ここで動けない垣根を捨て置いて逃げる事は出来ない。

248 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/28(土) 17:26:26.99 ID:Ke7nglJHo


「願いと願いがぶつかれば、それは大きな渦となる。 その渦中では様々な思惑がぶつかり合い、
 噛み合い、喰いちぎり合い、屠っていく。 今ここで起きている事も、その一環に過ぎないんだ」


垣根はアレイスターの言葉など聞いていなかった。既に原典の汚染によって意識を失いかけている。
このままでは垣根もステイルもアレイスターの一撃で葬り去られてしまうところだが、
そんな様子を金髪の怪物が黙って見ているはずもなかった。


ゴゴォォォンッッ!!!!!! という轟音が鳴り響く。
エイワスが指を軽く下に向けただけで、偽装された夜空から音速の三〇倍以上の速度の天災が
アレイスターの胸を貫いた。

胸に歪な形の穴を空けたアレイスターは膝から崩れ落つ体を杖で支えながら歯を食いしばる。


「・・・・・・エイワス、"貴様"・・・・・・・・・・・・!!」

「ここから消えろ、ステイル=マグヌス。 垣根帝督を連れて」

249 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/28(土) 17:27:31.09 ID:Ke7nglJHo


言われるまでもなくステイルは垣根に肩を貸し、彼を支えながらその場を後にしようとする。
だがその時、彼は一歩を踏み出す前にエイワスを親の仇を見るように睨みつけた。


「・・・・・・君が垣根に渡したんだろう? 『自動書記』の遠隔制御霊装を」

「だったら?」


エイワスは否定しなかった。そんな瑣末事を知られたところで何の問題も無いと言いたげな、
憎たらしい表情を浮かべるだけだった。もしかしたら垣根に遠隔制御霊装を渡していることすら
忘れているかもしれない。


「君のせいで垣根帝督は死の淵に追いやられ、君のせいで本来無関係だった上条当麻は巻き込まれ、
 君のせいで・・・・・・僕が一番大切に想っているあの子は涙を流しているんだ」

250 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/28(土) 17:28:02.38 ID:Ke7nglJHo


ステイルが口に咥えている煙草の先端が異様に激しく燃え盛っていた。
まるで彼の憤りを如実に表しているかのように。


「アレイスターはどうなろうが構わないが・・・・・・、出来れば君はここで朽ち果ててくれると
 僕としてはとても嬉しいんだけどね」

「そうか。 ならばステイル、君が私を討てばいい」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・ふふ、さあ行きたまえ。 『茶会』はもうすぐ幕を閉じるぞ」


クソ、とステイルは毒づくと垣根を連れて今度こそその場を後にした。
残ったのは依然として冷笑を浮かべる聖守護天使と、目を覆いたくなるほどに
無残な姿で、しかし未だ健在している世紀の大魔術師だけとなった。

251 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/28(土) 17:32:50.24 ID:Ke7nglJHo
ここまでです。

一応報告を。昨日、このSS本編の書き溜めがついに終わりました。
ですが恐縮なことに私も都合がありまして・・・・・・書き溜めが終わっても投下速度はいつも通り、となります。
どうかご了承いただけたらと思います。

あとは最終回まで突っ走っていくだけです。
よろしくお願いします。

次回も垣根帝督サイドのお話から始まります。一体誰が主人公なのやら・・・・・・。


それではまた、三日以内に。ありがとうございました!
252 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/28(土) 17:33:27.84 ID:Ke7nglJHo



                          【次回予告】



『・・・・・・・・・・・・イン、デックス・・・・・・・・・・・・?』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・垣根帝督




『!! う、うん。 そうなんだよ、私がインデックス。 分かる・・・・・・?』
―――――――――――『禁書目録』を司るイギリス清教のシスター・インデックス




『・・・・・・・・・・・・いい加減にしろよテメェ!!!!
 お前の事なんかこれっぽっちも知らない。 お前が一体どんな"魔術師"で、どんな人生を送ってきたかなんて、
 "他人だった"俺には分からない。 けど、そんな霊装なんか使わなくったって守れるものはあるんだ!!』
―――――――――――学園都市の無能力者(レベル0)・上条当麻



253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/28(土) 17:34:45.24 ID:l6xjBZ5Fo
垣根さん…
ガブリエルが気になって仕方がない

書き溜めが終わったのかぁ もうすぐ終わりなんだなぁ
今日も乙!
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/05/28(土) 17:37:36.87 ID:ZyYbJdpDo
これで上条死なないかなー
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2011/05/28(土) 17:37:37.09 ID:rAfBu0Ug0
書き溜めが終わってもいつも通りの投下とは執筆速度速いな

しかしエイワス無双しすぎで結局エイワスの思いのまま感があるな
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/28(土) 17:38:13.77 ID:biN8cLb+o
>>255
俺も一瞬層勘違いしたが、書き終わったけどってことじゃないのか?
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/05/28(土) 17:41:49.93 ID:CeUXj2j0o
>>252
乙。
なんか☆が益々小物臭・・・・・・いや

>>256
だわなー
ってかこの速度でこの長期間投下しててなんで書き溜め尽きなかったんだ
どんだけ書き溜めてたのかどんだけ速筆なのか
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/05/28(土) 17:45:12.20 ID:jTAnT8pp0

その勢いで番外編も書いてくれ、いや書いてくださいお願いします
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2011/05/28(土) 17:49:40.11 ID:LNrEeQAr0
上条さんの説教キタ!
その調子でていとくンの死亡フラグという幻想をぶち殺してください
260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/28(土) 17:57:22.00 ID:lkpWWhuDO
Dボゥイ(ダークマター的な)さん…天使同盟のみんなはガブリエルを助けたいのと同じくらい、あなたがこんな姿になってしまうのを望んでないと思うんだ…

>>1
書き溜め終わりご苦労様でした。最後まで見届けさせてもらいます
261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/28(土) 18:05:17.07 ID:VvQp1ZTq0
今までていとくんがここまでかっこいいスレはあっただろうか?
あと、一方の黒翼は『セト』と関係ないの?上条の能力についての考察スレで見たけど一方の黒翼はまだオシリスの劫にあるルシフェルの力って書いてあったけど・・・・
262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/28(土) 18:05:24.86 ID:7Y7XflMIO
書き溜めが尽きたんじゃなくて終わったのか、最初わからんかった。

ガブリエルが出てる珍しいスレだと思ってこれを見た時からついにここまで来たのか。もう>>1乙しか言えない、ただただ楽しみにしてる。
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/28(土) 18:11:10.01 ID:1bOoh3dH0
なんで上条やインデックスは原典を使うことを否定するの?
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/28(土) 18:33:29.10 ID:94WLI4SNo


泣くな垣根
きっとうまくいくさ
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/28(土) 18:45:40.91 ID:4LqV18sDP

上条さん舞台の縁の下ぐらいにはなったな
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/05/28(土) 18:52:35.33 ID:HJrCGwoe0
おつおつ
垣根強すぎわろち

>>263
その二人は闇咲オルソラあたりの事件で、魔道書の原典が悲劇しか生まないってわかってるからじゃね?
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/28(土) 18:57:44.57 ID:xP7rQleHo

どうしよう本当に垣根がかっこいい
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2011/05/28(土) 19:13:26.14 ID:yxJ3hCYh0
ふむ、残念だが乙としか形容できないな
269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/28(土) 20:01:53.84 ID:3OiZlgEAO
>>1乙、熱いな
270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/28(土) 20:04:58.68 ID:znuDrxMN0
>>1

く、くそ・・・
すぐ死ぬていとくんなんかに涙を消費する日がこようとは
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage saga]:2011/05/28(土) 20:25:15.61 ID:MMl+QdrHo
垣根がどうやってインフレについていくのか気になってたけど禁書目録は予想外すぎた
エイワスが渡したアイテムもてっきり魔術でついた怪我を修復する物かとばかり
272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/28(土) 20:28:34.31 ID:4yHfMCNJ0


垣根のせいで泣いちまうじゃねぇか…
そしてやっと上条さんとインデックスの出番が来たか
茶会が終わるってことはこのスレももうすぐ終わりってこと…なのか?
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/28(土) 20:32:37.26 ID:Mlb9FnGB0
>>1

ていとくん、主人公の風格を醸し出しているぜ
このままその主人公オーラで死亡フラグをたたき折ってくれ
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/28(土) 20:50:00.48 ID:K+ZsQ8qwo
何故一方通行メインの話だと上条さんがウザく思えるのか
逆ならそうでもないのに
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/28(土) 20:56:16.78 ID:Lx/tPJ2DO
誰を主観にして見るかによってすべてが決まる………つまりこの話に上条さんは出てきてはいけない人なのだ
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/28(土) 20:59:49.19 ID:0JbA7KPB0
綺麗なていとくん頑張れ超頑張れ
インさんと上条さんとすているさんじゅうよんさいも超頑張れ
あとフェードアウトしてる正妻風斬さんと一通さんも超頑張れ
>>254は[ピーーー]
277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2011/05/28(土) 21:17:55.14 ID:NLvWDcxAO
>>274
まぁこれは天使同盟の物語で
上条さんの物語ではないからだろうな
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/28(土) 22:00:08.33 ID:+9AR/d7co
次回予告の台詞だけで上条ウザいと思ってしまった
どうしても好きになれん
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/05/28(土) 22:30:16.58 ID:Q0PDQZBk0
別にウザイとか、好きになれないとかは個人感情だから構わんが、そんなんはチラシの裏にでも書いとけ
そのキャラを好きな奴もいるし、作者さんのモチベも下がる
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/05/28(土) 22:54:35.76 ID:ZyYbJdpDo
作者さん(笑)
281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/28(土) 23:44:36.28 ID:xGckwVuH0
お前等、何を勘違いしているんだ
主人公でないスレでの上条さんの役割は、パワーアップアイテムなんだぜ?
つまりこれはそげぶからの主人公補正解禁フラグなのだよ!頑張れていとくん!
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/29(日) 01:59:34.24 ID:XOFZev81o
いちおつ

>>281
つまり原典の毒だけそげぶして更なる垣根無双が始まるわけか
283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/05/29(日) 02:17:55.24 ID:DeXFCWKY0
垣根が・・・垣根がぁぁぁぁぁああああ・・・

もう、彼に平和を与えてくれよ『セト』
284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送ってやらァ [sage]:2011/05/29(日) 08:28:53.84 ID:rJbs3ux60
>>282
なにそれ無敵

第一位と第二位がパワーアップしすぎて
二位と三位の差がどれだけ広がってるか予測付かない
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/05/29(日) 13:10:25.18 ID:OFKohvYOo
それより垣根の立てた3本のフラグのうちの一本がステイルさんじゅうよんさいだったとは誰が予想できただろうか
286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/29(日) 23:46:47.92 ID:WJT8pJMF0
結局、せっかく立てたたった三本のフラグさえフラグ一級建築士さんに
そげぶしてもらう代償として根こそぎ吸い取られちゃうって訳よ。
287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県) [sage]:2011/05/30(月) 12:40:14.70 ID:Vuk3kj6D0
三本のフラグ・・・一本足とステイルと死亡フラグか
奪われてもよくね?
288 :結局、VIPにかわってNIPPERがお送りするわけよ [sage]:2011/05/30(月) 15:28:45.13 ID:3QZCTgay0
いやていとくんの僅かなフラグだ。
大切にしないと。
289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/30(月) 21:17:33.23 ID:zWGOLKzSO

書き溜め終わった=……!
楽しみに待ってます
290 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/30(月) 23:33:34.99 ID:QDba7KYho
>>263
何かを守るのは結構ですがそれと引換に死んじゃあ元も子もねーだろ!的な感じです
闇咲の件もありますし


こんばんわ、今日も投下しにきました。
書き溜めが終わったというのは、つまり【完】まで書き終えたというわけです。
わかりにくくてすみません。

なのでなるべく更新スペースを上げたいのですがなかなか上手くいかないですね・・・・・・


それではいきます!
291 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/30(月) 23:34:04.60 ID:QDba7KYho


――――――――――――――――――――――


エイワス達が居た場所から離れてそのまましばらく歩いていると、
不意に垣根がステイルの腕を振り払った。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・アレイ、・・・・・・スター・・・・・・」

「垣根、意識が戻ったのか?」


あれだけ原典を開き、閲覧し、行使したにも関わらず、垣根帝督は意識を取り戻していた。
いや、意識はあるにはあるが未だ朦朧としている。相変わらず目の焦点は合っていないし
血塗れの口から漏れる言葉は耳を澄まさなければ聞き取れないほどに不明瞭だった。

だがそれでも自分の足で歩けている限り、いよいよ垣根も化物だとステイルは背筋を凍らせる。
彼も長い期間魔術サイドに身を預けているが、あれほど原典を使用して尚生きている例は聞いたことがなかった。


「霊装を僕に渡せ。 あの仮面の軍隊も出てくる気配がないし、
 それ以上原典を酷使する理由はない」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・、駄目、だ」

292 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/30(月) 23:34:51.01 ID:QDba7KYho


弱々しい声だったが、それでも強い意志が窺えた。
どうやら遠隔制御霊装を使ってまだ何かをやらかそうとしているらしい。

これ以上原典を行使し続ければ待っているのは掛け値なく『死』。
魔術サイドに属し、『自動書記』と正面から相対したことのあるステイルだからこそ分かることだった。

口で言っても無駄だと悟ったステイルは半ば強引に垣根の手から霊装を毟り取ろうとしたが、
『未元物質』の翼で突き飛ばされてしまった。断固として霊装を手放さないつもりらしい。
『禁書目録』の全知全能を手に入れ、原典に"魅せられた"かと危惧したステイルだったが、
垣根の表情を見る限りではそんな様子ではなかった。


彼の表情はまるで、一種の覚悟を決めたかのような―───―。


「ステイル!!」


と、そこで不意に遠方からステイルを呼ぶ声が聞こえてきた。
声のした方を見るとそこは既に第一九学区の端。光のカーテンが敷かれている場所だ。

そのカーテンの向こう側で、上条当麻とインデックスがこちらを不安げに見つめていた。

293 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/30(月) 23:35:29.70 ID:QDba7KYho


「ステイル、そいつか!? 『自動書記』の霊装を使ってるやつは!!」

「・・・・・・まったく、相変わらず最悪のタイミングで出くわすね君は。
 とっととここから去れと確かに言ったはず――――――」

「お願い!!! もうやめて!!」


ステイルと上条の会話に割り込んで叫んだのは白い修道服を着たシスターだった。
インデックスは光の壁に手をつけながら必死で垣根に声をかける。


「それが一体どんな霊装なのか、あなただって知らないわけじゃないでしょ・・・・・・?
 そんな物を使わなくったって、大切なものは守れるんだよ! あなたが何かを
 必死に守ろうとしているのは分かってる。 あなたの想いはその霊装を通して
 ほんの少しだけど私にも伝わってるから・・・・・・・・・・・・」


垣根は自分が話しかけられている事にすら気付いていなかった。
視界はぼやけ、聴覚は機能しているのかどうかもわからない。耳からも大量に出血しているため、
耳の穴の中で血が固まって音が聞き取りにくくなっているのかもしれない。

294 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/30(月) 23:36:12.70 ID:QDba7KYho


でも、それでも、目の前にいる誰かが自分の事を本気で心配してくれてる事だけは分かった。
そして垣根はふと、エイワスの言葉を思い出す。


『「禁書目録(インデックス)」、という言葉を覚えておくといい。 "アレ"は今も学園都市に存在しているだろう』


「・・・・・・・・・・・・イン、デックス・・・・・・・・・・・・?」

「!! う、うん。 そうなんだよ、私がインデックス。 分かる・・・・・・?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・インデックス・・・・・・」

295 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/30(月) 23:37:20.38 ID:QDba7KYho


呪文のように何度も銀髪の修道女の名を呼ぶ垣根に、ステイルと上条は眉をひそめて訝しむ。
上条は『遠隔制御霊装を使っておきながら、なぜこの男はインデックスを知らなかったのか?』と疑問に思った。
ステイルは『なぜ学園都市に住む人間がインデックスという言葉を知っている?』と頭を悩ませた。

答えはどちらも、『垣根帝督が科学サイド人間だから』、で説明できる。
インデックスという言葉だけは知っている。なぜならそれは科学サイドでない存在から耳にしているから。
インデックスが何なのかは知らない。なぜなら彼は科学サイドの人間だから。

困惑する二人を無視して、インデックスは諭すように垣根に話しかける。


「あなたはもう充分に戦ったんだよ・・・・・・。 だからお願い、もうこれ以上私の魔導書のせいで
 傷つかないで・・・・・・・・・・・・。 私のせいで誰かが苦しむなんて、もう沢山なんだよ・・・・・・」


ポロポロと大粒の涙を流しながらインデックスは懇願した。
正直、今の垣根帝督の姿は見ていられなかった。あらゆる箇所からの夥しい出血。
汚染の影響からか目は虚ろで、そのおぼつかない足取りはゴーストタウンを徘徊するゾンビのようにも見える。

誰がどう見たって、今の垣根は三途の川に片足を突っ込んでいる状態だった。

296 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/30(月) 23:39:40.13 ID:QDba7KYho


だが例え棺桶に収まる寸前の状態でも、垣根帝督は


「・・・・・・・・・・・・すまねえ、な」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!」


そう言って、笑うだけだった。
ただしその笑みは邪悪なものでも、嘲笑でもない。

普段の彼からは想像もつかない、優しい、少年のような柔和な笑みだった。


「ど、うして・・・・・・・・・・・・?」

「もう・・・・・・手に入れちまったから。 あいつらを、あのクソボケ共を守れる方法が・・・・・・。
 誰だかは知らねえが、お前のおかげで・・・・・・俺は居場所を守れる。 だから・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・いい加減にしろよテメェ!!!!」


垣根に向かって吠えたのは上条だった。
ミシ・・・・・・と右手から軋む音がするほど拳を握り締め上条は激昂する。

297 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/30(月) 23:42:05.77 ID:QDba7KYho


「お前の事なんかこれっぽっちも知らない。 お前が一体どんな"魔術師"で、どんな人生を送ってきたかなんて、
 "他人だった"俺には分からない。 けど、そんな霊装なんか使わなくったって守れるものはあるんだ!!
 インデックスを、こんな小さな女の子を泣かせなくても守れる方法があるんだよ!! 『自動書記』を
 ほいほい使いこなしちまうほどの強さがあるなら、魔道書なんかに頼らなくたって他の道を示せるはずじゃねえか!!!」

「・・・・・・、」

「そんな数ある可能性を全部放棄して、泣いてまでお前を止めようとするインデックスの意志も無視して、
 それでもまだそんなくだらねえオモチャに頼って大切なものを守ろうって言うんなら・・・・・・!!!
 まずはそのふざけた幻想を・・・・・・・・・・・・、・・・・・・・・・・・・ッッ!!! クソッ!!!!」


ゴッ!! と上条は異端の力が宿るその右手を思い切り不可思議な光の壁に叩きつける。
もちろん"『幻想殺し』程度"では、この強固な壁はビクともしない。
目の前にいる"自分と同じような馬鹿野郎"を、本当なら今すぐぶん殴ってやりたいのに、
それが出来ない非力で無力な自分が腹ただしくてしょうがなかった。

298 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/30(月) 23:46:22.33 ID:QDba7KYho


「とうま・・・・・・」

「ちくしょう・・・・・・何でだよ!!! それを使い続けたらどうなるか分かってるんだろ!!?
 死ぬんだぞ!!! テメェが大切なものを守って、死んで!!! 残された人が喜ぶとでも
 思ってんのかよ!! お前の想いは絶対に間違っちゃいない、でもやり方が間違ってる!!
 俺は今までそんな馬鹿を沢山見てきた!!! 目ェ覚ませよヒーロー!! お前はこんなところで
 死んでいいような人間じゃねえだろうがぁ!!!!」

「・・・・・・、は・・・・・・」


ふらふらと、今にも倒れそうな挙動で垣根は歩み始めた。
上条とインデックスがいる方向とは全く逆の方向へと。


「ま、待って・・・・・・お願いだから待って欲しいんだよ・・・・・・」

「く、ゥ・・・・・・!!! ステイル!!! その馬鹿の目を覚ましてやってくれよ!!
 俺じゃ・・・・・・俺なんかじゃ駄目だ。 舞台に上がれもしない"脇役"じゃ、そのヒーローを
 止められねえ・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・くっ・・・・・・」

299 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/30(月) 23:48:10.96 ID:QDba7KYho


もはやステイルにはどうしたらいいか判断出来なかった。
本来の彼なら例えここで垣根を殺してでも霊装を奪う選択をとっていただろう
だが同時に、本来絶対に間違っている方法で大切なものを守るという垣根の意志が、ステイルにはよく理解できる。

かつて彼が、最も大切な存在であるインデックスを、最低な方法で守り続けていた過去があるからこそ、
ステイルは垣根をあと一歩のところで抑止出来ずにいた。
垣根に対する怒りと共感がステイルの胸中でせめぎ合う。


上条とインデックスの叫びを背で受けながら、垣根は虫のさえずりのような小さい声で言った。


「・・・・・・・・・・・・『汝の欲する所を為せ、それが汝の法とならん』」

「な、に?」


その言葉を聞いてステイルは息が詰まった。なぜ科学サイドの人間が『法の書』に記されている言葉を知っているのか、と。
垣根はエイワスが所持していた『法の書』に目を通したことがある。そこに書かれていた言葉の意味がわからず、
その時はすぐに思考を放棄した。

300 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/30(月) 23:49:32.10 ID:QDba7KYho


だが、


「・・・・・・今なら、分かる気がする。 あの言葉の、意味・・・・・・が・・・・・・、・・・・・・ごぼっ・・・・・・!!」


垣根は口から大量の血を吐き出した。それを見たインデックスが思わず短い悲鳴を上げる。
涙を流しながら青ざめているインデックスに向かって、垣根は最後にこう告げた。


「ごめんな・・・・・・。 ありがとう、インデックス」


そして二度と、垣根はインデックス達へ目を向ける事はなかった。
ステイルも壁の向こうで捲し立てている彼らを名残惜しそうに見るが、『幻想殺し』でも壊せない
壁が立ちはだかっていてはどうすることも出来ない。彼はゆっくりとした足取りで垣根に近付く。

301 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/30(月) 23:50:37.20 ID:QDba7KYho


「・・・・・・ステイル。 俺を、一方通行と・・・・・・ミーシャのところへ連れてけ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・どうするつもりだ」

「"守る手段"は・・・・・・俺が肩入れしてやる。 だから"実行"は・・・・・・あのクソ野郎に託す。
 ・・・・・・一〇万三〇〇〇冊ってのはすげえなぁ・・・・・・この絶望的な状況に、光明を照らしてくれやがった」

「何か方法があるのか?」

「ああ。 ま、これで失敗したら・・・・・・そん時はインデックスの前でお前が俺の首を飛ばせ」


ステイルはしばし思考した。その気になれば恐らく垣根帝督から無理やり霊装を奪える。
そうすれば垣根がこれ以上死に近付くことはないし、インデックスもきっと安心してくれる。

あの子がまた、笑顔に戻ってくれる。そう考えたステイルは、

302 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/30(月) 23:51:27.80 ID:QDba7KYho


「分かった、・・・・・・手を貸そう。 君を一方通行の下へ連れて行く」

「いい、のかよ?」


苦渋の決断だった。ステイルは自分とはこれほど馬鹿で愚かな男だったのか、と自覚する。
だが、それでも、


「その代わり、全てが終わったら君を一〇万三〇〇〇発ぶん殴らせろ」

「おいおい、そんなに殴られたらイイ男が台無しになっちまう」


今だけはこの男に助力しようと、断腸の思いで決意する。


『ゲーム』開始から二時間が経過。本来なら『星の欠片』はとっくに消失しているであろう時間。


垣根帝督は仲間を守るため、命を賭けて前へ進む。

303 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/30(月) 23:53:03.15 ID:QDba7KYho


――――――――――――――――――――――


ズズン・・・・・・と派手な震動が起きた。
垣根帝督とステイルが立ち去った後、その場にあったいくつもの塔が大地に飲み込まれていった。
巨大なマンホールのようにポッカリと口を開けていた第一九学区の地面に、新たな足場が出現する。


「・・・・・・まあ、こんなものか。 気分はどうかねアレイスター? 必要なら小休止を挟もうか?」

「・・・・・・・・・・・・必要ない。 くだらん気遣いをどうもありがとう、我が守護神よ」


ドーム一個分ほどの大きさに広がった新たな大地に、エイワスとアレイスターが乗り込む。
エイワスは普段どおりの佇まいだったが、アレイスターは明らかにいつもと異なっていた。

エイワスとの戦闘でいつも着用している緑色の手術衣はボロボロになり、身体中に出来た裂傷から
じわりと血が滲んでいる。胸には雷に貫かれたような大きな穴が空いており、穴の周囲は軽く焦げていた。
アレイスターの顔は半分消し飛んでいる。垣根帝督の『竜王の殺息』という究極の不意打ちを喰らった事によって。

これでまだ動けるというのだから不思議でしょうがない。だが注目すべきはそんな所ではなかった。


アレイスターの表情。いつもの感情が読めないフラットな表情は、今や見る影もない。
エイワスに対して向けられるは、明らかな『憎悪』、『憤怒』。そして、

304 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/30(月) 23:55:48.07 ID:QDba7KYho


「『嫉妬』か。 このまま七つの大罪でもコンプリートしてみるか?
 君のように意志が強力な人間では、煉獄でも浄化出来ないかも知れんがね」

「"それも挑発か"?」

「忠告だよ。 まさかとは思うが、このまま私が君を見捨てるだなんて可能性に
 縋っているのではないだろうな? 安心しろ、"それはない"」


それは、何があってもここからアレイスターを逃がすつもりはないという、
エイワスからの宣戦布告だった。
『天使同盟』の面々がこれを聞いていたら、下手をすればアレイスターに同情していたかもしれない。
エイワスの口から出る『絶対に逃がさない』という言葉の恐ろしさがどれほどのものか、少なくとも
『天使同盟』のリーダーはよくご存知だろう。


アレイスターはふぅー・・・・・・と大きく息をつく。
顔が半分無くなっているため、呼吸をするたびに彼の口元から奇妙な音が聞こえていた。

その半分になってしまった顔で、アレイスターは微笑を浮かべる。
この時、初めてエイワスは不可解そうな顔を見せた。

305 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/30(月) 23:57:24.49 ID:QDba7KYho


「どうやらあなたは本気で『天使同盟』側につくつもりのようだ。
 私のことも、ここで殺してしまってもそれはそれで一興だと考えているのだろう」

「ならばどうする?」

「覚悟を決めたよ、エイワス」


ズグンッッッ!!!!!! と空間がひどく歪む音がした。
アレイスターの周囲にある景色が別の絵の具をそれぞれ混ぜ合わせたようにぐにゃりと渦を巻いている。


そして、アレイスターは歌うように呟いた。






「――――――――Perdurabo093」





306 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/30(月) 23:58:56.08 ID:QDba7KYho


その言葉を聞いたエイワスの表情は、信じられないことに『驚愕』一色に染め上がっていた。
アレイスターが放った言葉は呪文でも呪詛でも何でもない。

魔術師なら誰もが持っている『魔法名』。アレイスターの『Perdurabo093』の意味は『我、耐え忍ばん』。


アレイスター=クロウリーは学園都市創設以来、初めて"純粋なる魔術師"として君臨した。


「"久しぶりだな"、エイワス。 私は『黄金夜明(S∴M∴)』所属の魔術師、アレイスター=クロウリーという者だ」

「っ。 くく・・・・・・」


次にエイワスが浮かべた感情は『歓喜』と『追慕』だった。
かつてエジプトに訪れていた若りし頃の、言ってしまえば"全盛期"のアレイスターを前に、
エイワスは体を駆け巡る震えを感じた。

遅れて、大地がズズズズズズズ・・・・・・!!!! と震え始めた。
まるでエイワスの歓喜の震えに呼応するように。大地が、地球という惑星が魔術師アレイスターの
再帰を祝福しているかのように。

307 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 00:00:24.43 ID:yRnDv3tco


黄金の輝きを放つオーラを纏うアレイスターは、エイワスとは対照的に極めて無表情だった。
そして間髪を入れず先制攻撃を放つ。


「ソロモン七十二柱序列第一〇位、『ブエル』の召喚を実行する」

(・・・・・・ッ。 半物質化"魔法"―――――)


エイワスはすかさず反撃に出ようとしたが、一瞬早くアレイスターの攻撃が始まった。
ブエルの召喚を実行したアレイスターの背後に、星が現出する。
否、それは星ではなく、五つの触手を持った星型の『異形』だった。

続けて、ゴキィィィィィィン!!!!!!! と甲走った音が鼓膜を貫く。
まるで不可視のナイフでケーキをブロック状に切り取ったように、空間そのものが"ズレた"。
ここまでの一連の流れは、一秒にも満たなかった。

ズレた空間の範囲内には、エイワスの上半身も含まれていた。
エイワスは出遅れた事を悟ると一言、普段の調子で呟く。


「ああ。 "いかんなこれは"」

「隔離しろ」


切り取られた空間が虚空に取り除かれた。


空間の"切り取り"に巻き込まれたエイワスの上半身は、雪が溶けるような静けさと共にこの世から綺麗サッパリ消失した。

308 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 00:02:09.62 ID:yRnDv3tco


――――――――――――――――――――――


キャーリサは第三次世界大戦でミーシャ=クロイツェフと交戦した経験がある。
今と同じように大量のカーテナ=セカンドの欠片を装備して、本物の大天使と
互角に渡り合うほどの激戦を繰り広げた。

結果としては敗北した、と言えるかもしれない。カーテナの力を最大限に使用しても
ミーシャには傷ひとつ負わせることは敵わなかった。

だが問題はそこではない。彼女の数ある経験値でも目を見張るのは、天使と交戦して生き残ったという結果だ。
いくらカーテナで天使長としての力を肉体に降ろして強化したところでキャーリサは生身の人間だ。
ただの『人間』が真っ向から『天使』と衝突して生き残るなど、もはや"あってはならない"と言っても過言ではない。
だがキャーリサは見事にその偉業をやってのけた。


だから、今回の対悪魔も生き残る自身はあった。


こうして、実際に悪魔という未知の存在と真正面から衝突するその瞬間までは。


(こ、いつ―――――――!!?)

309 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 00:03:41.58 ID:yRnDv3tco


鞭が空気を破裂させる音が鳴り響いた。だがそれは鞭ではなく、悪魔が振り抜いた蹴りによる音。
ただの蹴りが音速以上の速度で飛んでくる。そこに悪魔自身の攻撃力が加算されることによって、
カーテナ程度では軽減しきれないほどのダメージがキャーリサを襲った。

五〇〇メートル以上後方へ吹き飛ばされたキャーリサはそれでも素早く体勢を整えなおす。
そのタイムラグですら悪魔相手には命取りなのだが、キャーリサは何も一人で悪魔と相対しているわけではない。


「qpohn回避pofkogis行動」

「はああああああああああああああああああッッ!!!!!!!」


雷鳴にも似た轟音が鳴ると同時、悪魔の頭に閃光の一撃が振りかかる。

風斬氷華。学園都市で作られたAIM拡散力場の集合体にして科学の人工天使が、
"大切な友達を救うために大切な友達に容赦なく光剣の矛先を振るう"。
キャーリサはこの人工天使と共同戦線を張る事で、辛うじて悪魔との戦闘を続行できていた。


風斬と悪魔の剣と背中の翼が幾度と無く交錯する。断続的に発生する空気の震えを感じながら
キャーリサは口元の血を拭い、周囲を見回した。

310 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 00:04:37.00 ID:yRnDv3tco


(・・・・・・・・・・・・、うさぎは・・・・・・?)


キャーリサが共同戦線を張っているのは風斬氷華だけではなかった。
学園都市最強の超能力者にして、ある意味この騒動の一番の原因とも言える少年、一方通行。
その華奢な背中から漆黒の双翼を生やす怪物が、さっきからこの戦闘に参加していないことにキャーリサが気付いた。

悪魔との戦闘は世界大戦の時と内容がほぼ同じだった。ギリギリのところで拮抗しているものの、
徐々にではあるが確実に体力と命を消耗し続けているのはキャーリサ達だけだ。悪魔に対しては
致命的なダメージはやはり与えられない。

風斬もこのまま悪魔と戦っていればいずれ深刻な一撃を喰らい、戦闘不能に陥ってしまう。
だから今だけは、一人でも多くの戦力が欲しいところだった。


「風斬! あのうさぎが居なくなってるの! どこに消えた!?」

「え・・・・・・!? さっきまで一緒に戦っ・・・・・・きゃああっ!!!!」

「クッソ・・・・・・!!」


会話中も風斬は悪魔への警戒心を解くことはなかった。にもかかわらず一体どこに隙があったのか、
悪魔は恐ろしい反射速度で風斬の猛攻を突破すると返す刀で黒紫の翼を振るい、風斬を退ける。

311 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 00:05:28.17 ID:yRnDv3tco


(この野郎・・・・・・、これが悪魔か。 天使の時より攻撃性が増してるし。
 大戦時には『帰還』という目的があったが、今のミーシャにはそれがない。
 ただ単純に目に映るものは皆殺しにするだけの暴走ロボット・・・・・・。 むしろタチが悪くなってるの)


天界から追放された暴徒の首が不気味に回る。悪魔の視線の先にはキャーリサが居た。
自我を失った悪魔に、イギリスで『王室派』と過ごした楽しい数日間の記憶など存在しない。

故に、背中の翼は慈悲の欠片も見せずキャーリサに照準を合わせる。


(チッ! まだ回復が―――――)


ガクガクと自分の意志とは関係なく震える膝を何とか動かそうとするが、まるで言う事を聞かない。
風斬もキャーリサを援護しようとボロボロの体を起こそうとするが、アレイスターとの連戦が祟って
なかなか次の行動に移れないでいた。
ここで走馬灯でも走り出したら笑ってやる、とキャーリサが覚悟をきめたところで、


水を打ったような静寂。原因は、電池切れでも起こしたかのような悪魔の突然の停止だった。

312 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 00:06:49.93 ID:yRnDv3tco


「・・・・・・・・・・・・?」

「あ・・・・・・」


風斬が思わず声を漏らす。悪魔の背後、一〇〇メートル以上に渡って伸びている水晶の翼で確認しにくいが、
彼女は確かに見た。悪魔の背後にゆらりと、まるで影のように佇む彼の姿を。


「うさぎ! お前どこ行って――――・・・・・・・・・・・・、・・・・・・!?」

「あ、・・・・・・・・・・・・一方、通行・・・・・・さん・・・・・・」


風斬とキャーリサは悪魔という、ただでさえ異形過ぎる存在を目にしているというのに、
二人は『この世のものとは思えない存在』を見る目を悪魔の背後に送っていた。
悪魔は振り向かない。キャーリサに目掛けて翼を構えたまま、時間が凍りついたように動かない。

悪魔の背後に居たのは、さっきまで行方をくらましていた一方通行。
ただし、

313 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 00:08:52.98 ID:yRnDv3tco




「・・・・・・なんだ、あの黒いのは。 うさぎ、お前・・・・・・"その化物はどこから連れてきたの"」




一方通行の頭上。いや、もはや彼の全身を覆うように漂うその黒い影。
それは彼以上に怪しく輝く紅い眼を持ち、頭部と思われる部分からは血よりも紅い髪が流れていた。

そしてその口はまるで、夜空に浮かぶ真っ赤な三日月のように引き裂かれていた。
その三日月が不気味に形を歪ませる。三日月から満月のように真ん丸になったその大きな口は、
そのまま彼を頭から飲み込んで――――――。


「やめ、て・・・・・・・・・・・・・・・・・・やめて・・・・・・!!!!」


人工天使の声が悲鳴が反響した。


黒い"神"は、応じなかった。

314 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 00:16:27.60 ID:yRnDv3tco
ここまでです。七つの大罪に『憎悪』なんてないですけどねー

やっと天使救出に合流する垣根。
いよいよ本気を出したアレイスター。
  /ワス。
そんで何かヤバいことになってる一方通行と・・・・・・。


もうイミフすぎると思われてる方もいるでしょうが、まあ何かとんでも展開が繰り広げられてるんだな
程度に認識していただければお楽しみいただけるかと思います。すみません


次回更新は三日以内。

それでは、ありがとうございました!

次回、『神浄』です。

315 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 00:17:09.63 ID:yRnDv3tco



                          【次回予告】



『でも、天使によって引き起こされたものじゃない・・・・・・。 天使より、もっと上位の・・・・・・・・・・・・』
―――――――――――『禁書目録』を司るイギリス清教のシスター・インデックス




『・・・・・・・・・・・・なんだ、このふざけた現象は。 もはや天使を救うとか、そんな話ではなくなっているぞ。
 クソッ、エイワスめ・・・・・・。 手紙に書いてあった『十字教の終焉』とはこの事を指していたのか・・・・・・!?』
―――――――――――イギリス清教『必要悪の教会(ネセサリウス)』の魔術師・ステイル=マグヌス




『ちょ、ちょっと待ってよ。 これ、体から魔力が漏れていってない?
 この黒い霧、私達の体からどこかに魔力を運んでやがるわよ』
―――――――――――ローマ正教、禁断の組織『神の右席』の元一員・前方のヴェント




『この世に現存する全ての魔術師を滅ぼし「神」という源を「浄化」し、神に隷属するオシリスの時代が終わる』
―――――――――――世界最強最悪の大魔術師・アレイスター=クロウリー



316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/05/31(火) 00:20:10.31 ID:UDkDBdI0o
乙!
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/31(火) 00:20:48.36 ID:HjppzBd8o
マジ乙です!
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/31(火) 00:22:05.91 ID:YpgXTTrjo
こんなとんでもアレイスターを追い詰めた昔の魔術師すげぇ
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/31(火) 00:22:47.26 ID:XkP7ZlAA0
乙!!
何やら物凄いことになってきたな…。
そしてまさかのそげぶ不発
320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/31(火) 00:28:50.32 ID:MnXl3kcso
垣根くん頼むからどうにか天使ちゃんとアクセラレータを救ってくれよ…
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/31(火) 00:32:30.80 ID:bcCD8rPi0
>/ワス

…えええぇぇぇぇぇ…
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/31(火) 00:44:34.87 ID:e4YrJGjd0
フレ/ワス
323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/31(火) 00:52:42.80 ID:X0UwMnye0
ちょっとしか出てないインデックスがヒロインに見えた
垣根とステイルのコンビいいな
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/31(火) 00:58:41.29 ID:fy366sXDO
いろいろありすぎて皆さん気づいてないようなので…
一方さんがマミったー!?
天使同盟みんなでキャッキャッウフフして頃が懐かしい乙
325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/31(火) 01:05:38.82 ID:0JMWMRCe0
ガブリエルがくしゃみで地面抉ってたときからは想像もつかない展開
326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2011/05/31(火) 01:25:49.50 ID:uOG7p6fQ0
上条さんあっさり退場したな。
やっぱこの物語じゃ上条さんは脇役なのか。

>322
ちょwwwwwwwwどこと合体してやがるwwwwww
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/05/31(火) 01:57:08.58 ID:W2LBMRjE0
あまりにも垣根がかっこよすぎて心が震えた
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/31(火) 03:30:13.24 ID:dafjvyt80
もうこれ主かまちーなんじゃね?
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2011/05/31(火) 06:44:25.76 ID:aqRsU+IAO
/ワスwwwwww
330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山梨県) [sage]:2011/05/31(火) 07:41:38.92 ID:fY8w1LE90
>>328
かまちーなら無駄に本編に使えるネタを使うはずがないだろう。
50巻のネタバレをしているし。
331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/31(火) 07:51:46.77 ID:WYFQxBMSO

上条さんはいつも通りだなあ
332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/05/31(火) 08:39:25.58 ID:g3MqBhY3o
ボロクソの垣根ぶん殴るとか[ピーーー]気まんまんじゃねえかwwwwwwwwwwwwwwww
333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/31(火) 08:45:11.39 ID:JlOtY3SIO
俺の知ってる垣根がこんなにカッコイイ訳がない
334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/05/31(火) 09:06:06.02 ID:B1kWEmxNo
>>332
ビンタ程度で済んでくれると信じたい
335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/31(火) 15:28:51.00 ID:fy366sXDO
>>334
轟!!と音を立てノーバウンドで十数メートル吹っ飛ばせる程のビンタですねわかります
336 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/31(火) 17:05:32.66 ID:1G99+kmY0
なんだよ・・少し目を離したすきに天使同盟では上半身を消す遊びが流行ってんのか
>>335
そして首が飛ぶんだな。ばらばらだよww
337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/31(火) 17:40:34.73 ID:1G99+kmY0
まちがえたwwばればれだった。スマソ
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/31(火) 18:18:28.53 ID:0AFdjJNT0

アレイスターの魔法名で鳥肌たったよ
すごすぎる
339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/31(火) 19:02:16.91 ID:qKu9TVgf0

垣根がかっこよすぎて惚れそう
エイワスが食われ一方さんがマミられ大変だな

ところでアレイスターの魔法名って何て読むの?
340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/31(火) 19:05:02.24 ID:VJalhYDZo
>>339
ペルデュラボー。wikipediaでアレイスター調べてみ
341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/31(火) 19:59:52.60 ID:oM5ZTz7ko
中二なのはVi Veri…の方だけど、かっこいいのはPerdurabo
342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/31(火) 20:01:57.15 ID:VyJ0C92go
なのはは関係ないだろ!!

続き期待してまし
343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/31(火) 20:06:33.65 ID:tth6VaFIO
>>342
何言ってんだお前?
344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/31(火) 20:12:05.30 ID:VyJ0C92go
まさかマジレスされるとは思わなかった
これ以上スレの無駄遣いしないように書き込むのは止めます
345 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 22:10:00.43 ID:yRnDv3tco
>>341
そうですね、中二病的には『Vi Veri Vniversum Vivus Vici(我、真理の力もて生きながらに宇宙を征服せり)』の方が
いいんですけど、長すぎる上にアレンジしづらすぎるのがネックでしたので『Perdurabo』にしました。
われ耐え忍ばん、という意味は後々意味が通じてくるからちょうどいいかなと思って。

こんばんわ、今日も投下をさせていただきます。

さて前回、ついに黒い影に飲み込まれてしまった一方通行。
その黒い影の正体とは?そしてミーシャの運命は!?

無理やり盛り上げようとしてますが、虚しいだけですね……

ではいきます。今回、かなり私個人の稚拙な妄想が爆発しておりますのでご注意を。
346 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 22:11:09.38 ID:yRnDv3tco


――――――――――――――――――――――


突然の出来事だった。キャーリサを加え、さらに激化する悪魔との戦闘に集中していた最中にそれは起きた。


フッ、と。停電が起きたように一方通行の周囲の景色が瞬時に『闇』に包まれた。
一方通行達と悪魔が織り成す演劇を急遽中止するかのように、黒の幕が降ってきたような感覚。


『?』


一方通行は周囲を見回す。右も、左も、地面も、空も、何もかもが真っ黒で、何もかもが真っ暗で。

ただ、自分の姿だけはハッキリと見えた。視線を落として両手を見る。
傷だらけだった。悪魔との激しい戦闘によって、『反射』を常に発動しているにも関わらず
その手はボロボロになっていた。

そんな傷だらけの一方通行の手に、


そっと、誰かの手が重なった。周囲は闇に覆われていたが、それでもその手が黒い何かであることが分かった。

347 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 22:12:21.69 ID:yRnDv3tco


『な、ンだ? 誰だオマエ・・・・・・』


一方通行は続けて喋ろうとしたが、その時背後から彼の口元にまたしても手が伸びてきた。
その手は――恐らく――人差し指を立て、彼の唇にそっと触れる。黙っていろ、とでも言いたげに。
なぜか、そんな些細な挙動を受けただけで一方通行は一切声を発することが出来なくなってしまった。


『――――――、――――――――――――・・・・・・――――ッ』


世界に存在するどの黒よりも黒いその両手が、一方通行の手に重なる。
時には指を絡ませ、時には彼の手の甲を優しく撫で、時には彼の頬を指先でツツー・・・・・・と摩る。
一方通行の肩に何かが降りた。見ると、それは紅い絹のような糸。

それが糸ではなく、背後に居る何者かの髪であることに気付くのに、大した時間は掛からなかった。

吐き気も、鳥肌も、恐怖も、畏怖も、背筋が凍りつくようなあの感覚も、何も感じなかった。
ただただ不思議だった。この現象が何なのか、学園都市最高の頭脳を以てしても解明できなかった。

348 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 22:13:12.53 ID:yRnDv3tco


とりあえず体は動くようなので一歩、足を踏み出してみる。
ズブリ・・・・・・と沼に足を突っ込んでしまったような感触が一方通行を襲う。
足元に視線を落とすと、自分の足が真っ黒な重油のような海に絡め取られているのが見えた。
もう片方の足も同様に、一方通行を奈落の底へ引きずり込まんとどんどん沈んでいく。


『―――――――ッ!? ・・・・・・・・・・・・・・・・・・』


慌てて足を引き上げた一方通行は、そこで喉が干上がった。
ドロドロの闇から引き上げた自分の足に、無数の小さな黒い腕が蜘蛛の巣のようにまとわりついていたからだ。

身を屈めてその忌々しい腕を振り払おうとするが、今度はさっきから背後にいる赤髪の何者かの腕が
彼の首に回った。そのおかげで一方通行は身動きが取れなくなってしまう。
首元のチョーカーのスイッチを入れるが、信じられないことにうんともすんとも言わなかった。
能力が使えない。


自分の背後にいるこのクソ野郎は、自分を"飲み込もうとしている"。
立て続けに起きる意味不明の現象を目の当たりにした一方通行が出した結論は、残念ながら"正解"だった。

349 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 22:14:08.93 ID:yRnDv3tco


だが時既に遅し。いつの間にか地面の闇は膝より上まで迫っていた。漆黒の海から伸びてくる腕の数も
さっきまでは数十程度だったのが、今は軽く一〇〇〇を越えている。一方通行の白い人影が無数の黒い腕で
覆い隠され見えなくなっていく。

どれだけもがいても闇からは逃れられなかった。むしろ暴れる分、より一層ひどく闇が絡みついてくる。
こんなところで油を売っている暇はない。こうしている今だって、風斬とキャーリサが悪魔を相手に
死を覚悟して戦っているのだ。こんな闇に飲まれている場合ではない。

頭ではそう理解しているのだが、肝心の体が闇に抗えない。
闇は一方通行の首まで到達していた。何とも不吉なことに、一方通行の脳裏に走馬灯が走る。


こんな意味のわからない事象で、自分は死んでしまうのか。


ここまで追い詰められた一方通行は逆に憤りを感じ、頭の先まで闇に飲まれる寸前、
渾身の力を振り絞って首を回し背後に向いた。自分をこんな目に遭わせるクソったれのツラを拝むために。


そして、一方通行は確かに見た。


神が神を屠るというヴィジョンを。


そこで一方通行の意識は完全に断絶された。

350 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 22:15:04.41 ID:yRnDv3tco


――――――――――――――――――――――


その時、垣根帝督を止めることが出来ず途方に暮れていた上条当麻とインデックスは確かに見た。


「・・・・・・な、なんだありゃ・・・・・・!? つか、また地震が・・・・・・!!!」

「あれって・・・・・・天使? いや違う、"そんなちっぽけなものじゃない"。
 でも、まさか、そんな・・・・・・」


二人は不気味に揺れる大地や、辺りを漂う『黒い粒子のようなもの』という不可思議な現象を全て無視して
空を見上げた。

上空一〇〇〇・・・・・・二〇〇〇、それよりもっと上の、遙か先の空に。
『禁書目録』の知識でも読み取れないような文字が浮かんだ『輪』が出現していた。

インデックスはそれを最初、天使の頭上に出現する輪と思ったが、すぐに否定した。
今現在浮かんでいる輪は天使のそれとは規模も力も『格』が違いすぎた。
そもそも、それが果たして『輪』なのかどうかも分からない。なぜならあまりにもその輪が巨大すぎて
端が確認できないからだ。

351 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 22:16:11.46 ID:yRnDv3tco


そしてその輪なのか魔方陣なのか定かではない『現象』から、『天使の力(テレズマ)』が矮小に思えてしまう程の
エネルギーがビリビリと空気を伝って広がっている。


「い、インデックス・・・・・・何なんだあれ?」

「わ、分からないんだよ。 でも、天使によって引き起こされたものじゃない・・・・・・。
 天使より、もっと上位の・・・・・・・・・・・・」


天使よりも上位の存在に位置するもの。
それを聞いた上条の頭には、ある一つの単語が浮かんでいた。


――――――――――――――――――――――


その時、垣根帝督に肩を貸しながら一方通行達の下に向かっていたステイル=マグヌスも
インデックス達と同じように空に出現した輪を見上げていた。


「・・・・・・・・・・・・なんだ、このふざけた現象は。 もはや天使を救うとか、そんな話ではなくなっているぞ。
 クソッ、エイワスめ・・・・・・。 手紙に書いてあった『十字教の終焉』とはこの事を指していたのか・・・・・・!?」

352 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 22:18:38.22 ID:yRnDv3tco


と、不意にステイルの体から力が抜けた。足元がふらつき、危うく垣根を巻き添えに倒れてしまいそうになる。


(・・・・・・・・・・・・な、馬鹿な!? マズい、これは僕の魔力が・・・・・・!!?)


掌を見ると、小刻みに自分の体が震えているのが確認できた。そしてその全身から
微量にではあるがどんどん魔力が漏れていっている。穴が空いたタンクから無尽蔵に流れるガソリンのように、
漏洩を止めようにも体が勝手に魔力をどこかへ放出しているので止めようがない。

同様に、垣根帝督の体から。そして彼の持つ『自動書記』の遠隔制御霊装からも
魔力が留まることなく漏れ出していた。漏れた魔力は黒い霧となり、どこかへ向かって流れていく。

だが、


(・・・・・・魔力が流れていく方向へ進めば、恐らく天使の所へ辿りつけるはずだ。
 この不可解な現象、中心には間違いなく天使と一方通行がいる・・・・・・)


ふらつく頭をなんとか支えながら、ステイルは歩を速めて漏れていく自分の魔力を吸い込む黒い霧を追っていった。

353 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 22:19:30.85 ID:yRnDv3tco


――――――――――――――――――――――


『回収部隊(アンチツヴァイ)』の残存勢力も、残すところあと僅か。
垣根帝督の討伐任務を放棄して魔術師との戦闘に目的を切り替えた『回収部隊』は、
神裂火織、ヴェント、アックア、騎士団長という錚々たるメンバーによって
ほぼ全滅状態に追い込まれていた。

ガラクタと化したファイブオーバーから這いずるように脱出した『回収部隊』の一人、
『未元物質』の仮面の男が声を震わせながら、魔術師には目もくれず上空の輪と辺りを漂う大量の黒い霧に視線を配る。


『ひ、ひ・・・・・・・・・・・・。 どうなってんだ、これもお前らの仕業か!? お前ら一体・・・・・・、
 なんなんだよちくしょう・・・・・・!!!』


仮面を装着しているため表情は窺えないが、確認するまでもなく仮面の兵士はこの非科学的現象を前に
青ざめた顔をしているのだろうと容易に想像できる。

なぜならその『回収部隊』の残存勢力を軒並みに撃破している魔術師の四人ですら、
突如発生したこの現象に戸惑いを隠せないでいたからだ。
神裂が腰に七天七刀を収めながら口を開く。

354 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 22:20:52.89 ID:yRnDv3tco


「魔方、陣? いや、これは・・・・・・。 ・・・・・・、」

「ちょ、ちょっと待ってよ。 これ、体から魔力が漏れていってない?
 この黒い霧、私達の体からどこかに魔力を運んでやがるわよ」


ヴェントの言葉に一同は驚愕した。カーテナによる『天使の力』の供給で最大まで強化されていたはずの
騎士団長のフルンティングが、ただのロングソードの姿に戻っている。ヴェントが呼び出した『女王艦隊』の
氷の帆船が、音もなく虚空に消えていく。魔術によって肉体強化を施していたアックアも体の力が抜けていき、
全長三.五メートル、総重量二〇〇キロの大剣『アスカロン』を担げなくなってしまった。

そしてあろうことか、神裂火織の肉体に宿る聖人の力ですら、黒い霧に吸い込まれ運ばれていた。
しかし彼女は努めて冷静になり、提案する。


「・・・・・・この辺りにはもう『回収部隊』に戦闘を続ける勢力は残っていないと判断します。
 この黒い霧を追ってみましょう。 恐らくこの現象を引き起こした張本人がいるはずです」

355 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 22:21:55.17 ID:yRnDv3tco


そう言って神裂は尻餅をついてガタガタと体を震わせている『未元物質』の兵士を
眼光を光らせて睨みつける。
それを受けた男は顔に装着していた仮面を投げ捨て、一目散に逃げ去ってしまった。

普通ならここで新たな『回収部隊』が攻めてくる可能性を考慮し警戒するところだが、事態はもうそれどころではない。
自身の魔力を容赦なく吸い込んで運んでいる黒い霧を追おうと一歩足を踏み出したところで、


「待て。 ・・・・・・空の様子がおかしい」


騎士団長の言葉を聞いて三人は再び上空を見上げた。空の様子がおかしいのは今に始まった事ではない。
悪魔の『天体制御』によって夜空が出現したかと思えば、イギリスからやって来た大量のグリフォン=スカイが
川の流れの如く夜空を覆い尽くし、極めつけは現在進行形で天空に浮かぶ妙な文字が蠢く輪。

だが四人が今見ている現象は、それらが全て茶番であるかのような現実味のない現象だった。


「・・・・・・・・・・・・空が、裂けてる・・・・・・?」

356 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 22:23:53.51 ID:yRnDv3tco


――――――――――――――――――――――


魔術師、アレイスター=クロウリーは複雑な心境を抱えながら裂け目が出来た空を見上げていた。
『衝撃の杖』を片手で弄びながら黄金の光を纏う彼の姿は、まるでその裂け目を『次なる時代』へ
導く門を開く神の召使のようにも見える。

だが、この現象を引き起こしているのはアレイスターではない。


「・・・・・・信じられんことだが、エイワスの言葉は真実だったか。 『セト』が現世に降臨した」


遠くの方で咆哮が轟いた。人間でもなければ天使でも悪魔でもない、そのそれにも該当しない存在が
発した咆哮だった。その叫びに呼応するように、楕円形の巨大な裂け目から黒い雷が炸裂する。

音はなかった。雷とはまず光が放たれ、そこから少し遅れて雷鳴が響くものだが、それすら起きなかった。
黒い閃光は世界から音という概念を吹き飛ばし、上空に浮かんでいたグリフォン=スカイを一瞬で塵芥に変え、
地面に激突し拡散していく。

その威力はエイワスが第一九学区全周囲に施した光のカーテンを余裕で貫通するほどだった。
学園都市全域に深刻な揺れが発生する。どう考えても被害は学園都市だけに収まるものではなかった。
今頃、全世界のニュースでこの異常事態が報道されていることだろう。

357 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 22:25:45.21 ID:yRnDv3tco


当然、アレイスターはそのような瑣末事に気を配ったりはしない。


「あの空間の亀裂が地球という惑星全域に拡がった時、星幽界は成り、ホルスは訪れる。
 ・・・・・・私は一方通行に感謝すべきなのか、それとも嫉妬すべきなのか」

「尊敬するべきじゃないのかね? 『セト』が親愛の情を抱く人間だ。
 一体『セト』が一方通行のどこに好感を持ったのかは私でさえも定かではないが、
 これで君のプランは完全に破綻してしまったな」


背後から掛かる声を聞いて、アレイスターはフッと笑う。
そこには『ブエル』によって上半身を粉々にされたはずのエイワスの姿があった。
金髪の怪物は何事もなかったかのようにそこに現出していた。

ただし、思わず見惚れてしまうその金髪は土埃で汚れ、ひどく乱れている。
AIM拡散力場で構成されたその体も至る部分が欠損しており、時折ノイズが走ったように
エイワスの全身がブレていた。


「・・・・・・尊敬? 破綻? あなたにしては珍しく見当違いな発言だな、エイワス。
 一方通行は私がこの時のために作ったパーツに過ぎん。 『セト』は私が作り上げた
 "作品"を痛く気に召さり、一方通行という肉の器に降臨したまでだよ」

358 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 22:27:02.25 ID:yRnDv3tco


アレイスターが負った垣根帝督に吹き飛ばされた頭の欠損や、エイワスに貫かれた胸の孔は完全に修復されていた。
かつて世にその名を知らしめた伝説の魔術師にかかれば、その程度の傷など容易に修復できるものなのか。

『ブエル』召喚後、上半身を消失させられたエイワスは即座に再生し、しばらくアレイスターと戦闘を行ったが、
まるで歯が立たなかった。アレイスターは全盛期の力をフルに使いこなし、自分に必要な知識を全て授けた
聖守護天使を圧倒していた。

その余裕からか、エイワスの指摘にも余裕の笑みを返しながらアレイスターは続ける。


「そして私のプランも何も問題はない。 間もなく私は、いや、我々人類は『神浄』に至る。
 今頃、『セト』はオシリスを葬っているだろう。 オシリスを葬る。 つまり、
 この世に現存する全ての魔術師を滅ぼし『神』という源を『浄化』し、神に隷属するオシリスの時代が終わる。
 私はホルスの到来を見届け、一方通行の器に降臨した『セト』と共に星幽界を完成させ、
 君臨し続ける。 人が神を隷属する時代は終焉を迎え、人が未来永劫神となりて存在し続けるのだ」

359 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 22:28:30.77 ID:yRnDv3tco


「科学技術で構成した擬似星幽界、か。 誰かが維持していなければ
 あんな蜃気楼のような紛い物はあっという間に虚無と化してしまうぞ」

「・・・・・・私が君臨すると言った。 知っているくせに惚けたような質問をするなよ、エイワス」


それが、アレイスターの『プラン』。彼が寿命を引き伸ばしてまで進めた神への道。
『第一候補(メインプラン)』の一方通行に『セト』が降臨した事で、結局はアレイスターの計画通りに事は進んでいた。


「まあ、それでも完全ではないがな」


アレイスターは尚も拡大を続ける『神浄』を達成感溢れる笑顔で見つめながら、


「私が作った星幽界の維持にはやはりあなたという私が作った"人形"が必要である上に、
 今の空を見れば分かるが、あの『神浄』はひどく不安定だ。 本来の『神浄』なら
 まず裂け目などという歪なもので現出したりはしない。 これもやはり『幻想殺し』無しで
 無理やり開いてしまったことにあるな。 まあ・・・・・・あまり欲が過ぎてもいけない」

360 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 22:30:31.54 ID:yRnDv3tco


「今の私は『天使同盟』の構成員だぞ? 君が作った擬似星幽界の維持に私が貢献するとでも?」

「だろうな。 かといってこのまま私とあなたが戦えばあなたは消滅し、本末転倒となってしまう」

「ふ。 さりげに勝利宣言をする君のなんと可愛らしいことか」


だから、とアレイスターは『衝撃の杖』の先端部をエイワスに向けて言った。


「あなたを『聖母ベイバロン』として私が迎え入れる事にした。 あなたをソーマと化して
 私自身に降ろせば、十中八九『幻想殺し』を使用せずとも『神浄』へ完全な状態で到達できる。
 私の中であなたを封印していれば、星幽界の維持も可能になるだろう」


それを聞いたエイワスはしばしの間沈黙していたが、やがて我慢を堪えきれなかったのか
プッと吹き出して笑い声を上げた。
そんなエイワスの様子を見ても、アレイスターの表情に変化はなかった。


「くくく、ふふふふふふふ・・・・・・・・・・・・。 私が『緋色の女』になるのか、君の。
 これは愉快極まりない。 私と情交を行う事で『神浄』は成り、星幽界の維持も
 可能になると。 くっははははは・・・・・・、その発想は無かったな」

「そう言うなよ。 私はあなたに尊崇の念を抱いていると同時、好意も抱いているんだぞ?
 純粋に、一人の女性として・・・・・・な」

「っ」

361 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 22:32:15.41 ID:yRnDv3tco


エイワスの中にあったわずかな感情のようなものが爆発した。
アレイスターの思わぬ告白を受けた金髪の怪物はその場に座り込み、腹を抱えて大笑いしてしまった。
一体どこから湧いてでたのか、目尻に溜まった涙を拭ってエイワスは滅茶苦茶な状況になっている空を仰いでただ笑った。


「面白い。 やはり君は愉快だなアレイスター=クロウリー。 しかし私が言うのもおかしなものだが、
 告白するならもう少しムード作りを勉強してからにするべきではなかったか?」

「怠っていた」

「くくくくく・・・・・・・・・・・・。 いやしかし本当に面白い、私は一体どこで君とフラグを立てたのか。
 私がエジプトのカイロでローズに降りたときかね? だとするなら君の眼中には既にローズでなく
 この私しか入っていなかったということになる。 これはひどい、君は元来浮気性な傾向があるからなぁ」

「君と出逢い、知識を授かってからというもの、私の頭にはいつもあなたの顔が浮かんでいた。
 言っておくが今まで私が『緋色の女』として何人もの女と重なったのは、あなたに会うためだったんだ。
 私が科学に身を委ねたのも、思えばそれが理由かもしれない。 科学の力でこうして今のあなたを
 作り出すためにね。 こういう事象を、世間では運命と呼ぶのではないか?」

「くっふふ・・・・・・私を笑い死にさせるつもりか? 世間ではそれを『ストーカー』と呼ぶのだよ」


けらけらと、端から見れば本当にただの女の子にしか見えなくなる仕草をしながらエイワスは笑い続ける。
大地が断続的に揺れ続け、世界が謎の黒い霧に覆われ、上空にはこの世の終わりというタイトルをつけて美術館に
展示できそうなほど不気味な裂け目が出来ているという状況で交わされた二人の会話は、狂っているとしか思えない内容だった。

一頻り笑い終えたエイワスに、アレイスターが真剣な顔つきで尋ねる。

362 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 22:33:32.10 ID:yRnDv3tco


「返答を聞かせてくれ、エイワス。 私の『スカーレット』となり共に星幽界を顕現し続けてくれるのか否か。
 あまり乱暴なことは言いたくないが、多少強引な方法であなたをソーマにすることも出来る。
 だが出来ればそんな方法をとるのは避けたい。 私の願いを受け入れ、両者同意の下で儀式を完成させたいのだ」


エイワスはゆっくりと起き上がり、尻についた砂埃を軽く手で払う。
アレイスターが冗談でこんな事を言う人間ではないということを、エイワスは理解していた。
この魔術師は昔から、変なところで純粋だった。エイワスが授けた『法の書』の知識を
疑うことなく頭に取り入れ、欲しいものがあれば何を犠牲にしてでも手に入れる。

自身のプランを完遂させるためにわざわざ寿命を延長させるほどの人間だ。
あらゆる点で歪んでいて、しかしその芯は赤子よりも純粋。
それがアレイスター=クロウリーという人間だという事を、他でもないエイワスだけは理解している。

そんなエイワスがアレイスターに送った言葉は、至極簡素なものだった。


「ごめんなさい」


謝罪。
ただしそれは頭を下げて丁寧に言うのではなく、あくまで悠然とした佇まいで
腕を組み、誰がどう見ても上から目線での謝罪だった。

363 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 22:34:50.57 ID:yRnDv3tco


「拒否、か。 何がどうあってもここで私を討つのか、エイワス」

「君は何かを勘違いしている。 我々『天使同盟』がここに来た理由はただ一つ、
 ミーシャ=クロイツェフの奪還だ。 『神浄』だの『セト』だの『星幽界』だの・・・・・・、
 『天使同盟』には一切関係の無い事ではないか。 そんな"くだらん事に"かまけているほど
 我々も暇じゃない。 さっさと『天使同盟』のヒロインを連れ戻し、それでハッピーエンドさ」

「・・・・・・・・・・・・ッ」


空気が一変する。アレイスターが明確な殺意を放っていた。
彼を包む黄金の輝きが一層激しくなる。その輝きはエイワスが放つそれよりも強力なものだった。

決別。かつてアレイスターが命の恩人であるカエル顔の医者と決別したように、
エイワスともまた、永遠に決別するときがきたのかもしれない。


「・・・・・・非常に残念だよ、エイワス。 結局私は、全てを手放さなければ
 ならない運命にあるというわけか。 ここで君を討たねばならんとは・・・・・・」

「ていうかね」


ひどく軽い口調でエイワスは言った。

364 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 22:35:42.22 ID:yRnDv3tco


「私にはもう、他に好きな人間がいるんだ。 素敵だぞ"彼"は。
 君より純粋で、君より熱血で、君より愚かで、君より可愛い」

「嫉妬で狂いそうになるな」

「それと、」


ヂヂヂヂヂヂッッッ!!!!! という奇妙な音を放ちながら、エイワスが背中の翼を肥大化させていく。
それと同時に、アレイスターはエイワスの体に起き始めた変化に気付き眉をひそめた。




「この私を討つ、だと? あまり私を見くびるなよ"坊や"」




音もなく、エイワスの体が緩やかに浮かび上がった。
アレイスターにはそれが、上空に出現した巨大な裂け目に導かれる一人の美しい『女神』のように見えた。
黄金に輝く魔術師は黄金に輝く聖守護天使を見上げながら漠然と思う。


エイワスもいよいよ本気で仕掛けてくる、と。


化物と化物の戦いは、ついに佳境へ突入する。

365 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 22:37:04.55 ID:yRnDv3tco


――――――――――――――――――――――


「こちらC部隊、現在第七学区のファミリーサイドを捜索中」

『了解。 こちらL部隊。 第二一学区の貯水ダムを捜索中。 ・・・・・・、
 作業員は確認できず。 全作業員は避難されたと思われる』

『了解。 こちらA部隊。 第一三学区の捜索作業を終了。
 全住民の避難を確認。 ・・・・・・、了解。 I部隊から連絡、第五学区にて
 避難が完了していない施設を発見。 応援に向かってくれ』

「了解。 ・・・・・・、第七学区のファミリーサイドの捜索を終了。
 住人は全て避難されたと思われる。 I部隊の応援に向かう」

『了解。 ――――・・・・・・、――――――』


ザザッザザザザザッ、と無線から聞こえるノイズが
4LDK高級マンションの廊下に反響する。
金属がカチカチとぶつかる音と何人かの人間の足音が忙しなく鳴り響いた後、
第七学区のファミリーサイドには再び気味が悪いほどの静音が蘇った。

366 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 22:38:06.02 ID:yRnDv3tco


「・・・・・・・・・・・・おっけー。 警備員は行っちゃったみたいだよ」

「・・・・・・ふう、ちょっとドキドキしたかもってミサカはミサカは
 こんな状況であるにも関わらず不謹慎な発言をしてみたり」

「子供の頃、よく友達と夜の学校とかでやったわこんな遊び」


全住人が避難したはずのマンションの一室から、そんな会話が聞こえてきた。
一三階にある部屋の中からだ。
その部屋の表札には『黄泉川』と書かれたネームプレートが嵌め込まれている。

だが現在、この部屋の主である黄泉川愛穂は不在だった。
黄泉川の部屋に潜んで警備員をやり過ごした打ち止め(ラストオーダー)、番外個体(ミサカワースト)、芳川桔梗の三人は
玄関のドアに取り付けてあるドアスコープから廊下の様子をし、警備員が完全に居なくなった事を確認すると
すかさずリビングに戻り、高級感溢れるソファに腰を降ろして一息つく。


「愛穂に見つかったら説教じゃ済まないわね」

「あの人も警備員として外に出回ってんでしょ? ミサカ達は避難を終えたって
 黄泉川には連絡してあるし、GPS対策として最終信号(ラストオーダー)が持ってた
 ガキっぽいデザインのケータイ、避難民の誰かのポケットに放り込んだんでしょ?」

367 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 22:39:34.77 ID:yRnDv3tco


「回収するのが面倒なのだけれど」

「いやいや回収してもらわないと困るのだ、ってミサカはミサカはジト目でヨシカワを睨んでみる」


打ち止め、番外個体、芳川の三人はミーシャ=クロイツェフが学園都市に『墜落』してきた時、
警備員の黄泉川愛穂に先導されて地下のシェルターに避難するよう言われていたのだが、
打ち止めと番外個体が同時に『あの人(第一位)の匂いがする(ってミサカはミサカは以下略)』と言い出し、
自分としてはこんな面倒極まりなさそうな事態には首を突っ込みたくないと思っていた芳川は
仕方なく二人に付き添ってこんな逃走犯紛いな真似事をさせられていた。


と、突然窓がビリビリと不安を煽るように震えた。さっきから断続的に続いている
『黒い雷』が天からの叫びの如く鳴り響いたためだ。
打ち止めはササッとお腹を手で隠してガラス張りの扉の向こう側に見える、この世のものとは思えない景色を眺める。


「・・・・・・最終信号、多分あの黒い雷はおヘソを取ったりしないと思うわよ」

368 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 22:40:19.86 ID:yRnDv3tco


「普通の雷もヘソなんか取らねーっつの。 つかミサカ達の司令塔のクセに雷が怖いってどうなのかな」

「雷の音ってなんだかあの人に怒られてるみたいでつい反応しちゃうのってミサカはミサカは
 ちょっと抱きついただけで雷みたいに怒るあの人の顔を思い出してみたり」

「それじゃまるで第一位が故人みたいだね。 ひゃっは」


打ち止めに習うように番外個体と芳川もベランダに続く扉から不気味な空を見上げた。

この三人の中で打ち止めと番外個体だけは『普通ではない空』を過去に一度、目撃したことがある。
ロシアの雪原で見た、黄金色の空。そこから降りかかった恐ろしい力は危うく一方通行の命を刈り取るところだった。
よって、番外個体はともかく打ち止めは普通ではない空に対してあまり良い印象を抱いていなかった。


「裂け目がさっきよりデカくなってるね。 あの処女膜みたいな裂け目から何か飛び出してくんのかな」

「私個人の意見を言わせてもらうと、どう考えてもあの空は『世界終了のお知らせ』なんだけど」

「・・・・・・・・・・・・多分、あの人が大きく関わってるんだと思う、ってミサカはミサカは
 あの黒い雷や黒い霧とあの人のイメージを結んでみたり」


それは番外個体も芳川も薄々感づいていた。
十中八九、今日の午後二時頃から続いているこの世紀末な騒ぎは同じ同居人である白髪の少年が一枚噛んでいる、と。

369 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 22:41:42.62 ID:yRnDv3tco


「ミサカも第一位の中二臭い黒翼は見てるからねー。 この黒い霧と黒雷は
 あの人の黒翼に酷似してる」

「今、『こく』って何回言った?」


芳川の戯言を無視して番外個体はテレビのリモコンを手に取る。
学園都市中に謎の黒い霧が蔓延している状況で電波が届くかどうか微妙なところだったが、
番外個体の予想とは裏腹にテレビ画面はいつもの調子で三人に番組を提供した。

番外個体はあらゆる局にチャンネルを合わせたが、まだ午後四時頃だというのに
やっている番組はどこもかしこもニュース速報ばかりだった。


『・・・・・・繰り返しお伝えします。 今日の午後四時前後、突如として上空に出現した
 「奇怪な文字のようなもの」と黒い霧は、日本全土に留まらず世界各国で目撃されています。
 原因や出元は一切不明で、各国首脳はG8を行って問題の究明と解決の糸口を模索する方針を示しており・・・・・・』

『・・・・・・黒い雷による人的被害や家屋の倒壊等といった被害は報告されておらず、
 また断続的に続く小さな地震による津波の影響は無いとされていますが、依然として・・・・・・』

『アメリカではこの現象を「海底火山の異常噴火」によるものであると発表しており、
 その際に吹き出た黒煙がこの黒い霧の正体だと報道しています。 しかしそれだけでは
 「空の裂け目」や黒い雷の説明はできず、アメリカは更に調査を・・・・・・・・・・・・』

『はい、繋がりました。 えー、こちら現場はですね、あ、ご覧になれますでしょうか。
 あの空ですねー。 午後四時前、突然日本全土が夜空に覆われまして、はい、・・・・・・
 あ、はい。 そうです、空間に浮かび上がった奇妙な文字や裂け目は関東上空を中心に
 拡がっていってまして、あっという間に世界全体の空を覆ってしまったというわけなんですね。
 えー、気象庁の報告によりますと・・・・・・・・・・・・』

370 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 22:43:02.07 ID:yRnDv3tco


第三次世界大戦と同じく、否、第三次世界大戦の時よりも世間はざわめいていた。
普段は映画しか垂れ流していないチャンネルや、ケーブルテレビでさえも
この異常現象の特番を放送している始末だった。

番外個体と芳川が無表情でそのニュース番組を見る中、打ち止めだけが
不安げな顔つきでそわそわと落ち着きのない仕草をしている。


「あれだけ大きな戦争が終わった矢先にこれ、か。 もうこの世界は一回全部
 取り壊してリセットしちゃった方がいいんじゃないのかにゃーん?」


番外個体のシャレになってない言葉に、しかし二人は応じない。
彼女はムスッとした表情を作ってソファの上にリモコンを放り投げる。

芳川は一方通行達がイギリス帰りに買ってきたイギリス煎餅なるものを
――こんな状況にも関わらず――ボリボリと食べながら二人に尋ねた。


「で、わざわざ警備員の目を盗んでまで避難を拒否したあなた達の目的は何?」

371 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 22:44:21.62 ID:yRnDv3tco


打ち止めと番外個体は一度だけ目を合わせた。同じ遺伝子で作られているクローンだから故なのか、
二人が抱いている気持ちは全く同じだった。


「・・・・・・あの人に会いに行きたい、ってミサカはミサカは懇願してみる」

「一方通行に? 彼は今、・・・・・・どこにいるのかしら。 とにかく日本にはいないと思うけど」

「さっきのミサカ達の話聞いてた? 第一位は間違いなく日本に、っつか学園都市に帰ってきてる。
 ミサカは確証出来ないけど第一位ファンクラブ第一号の最終信号がそう言ってんだから間違いないっしょ」


番外個体のふざけた言葉に打ち止めはポッと顔を赤らめるが、彼女はそんな滑稽な理由で
あの最大級危険地帯第一九学区に行きたいと言っているわけではない。

あの時の、一〇月九日の時のように、また一方通行が深い闇に閉ざされている。
打ち止めはそれを確信した上で彼に会いに行きたいと願っているのだ。

芳川はあからさまに気怠げな態度を見せつけながら唸った。

372 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 22:45:36.01 ID:yRnDv3tco


「うーん・・・・・・第一九学区に彼がねぇ。 今も各学区には警備員が
 配備されてるはずよ。 そんな簡単に向かえるかしら?」

「珍しくノリ気じゃん。 もう第一九学区に向かう前提なんだね」

「まぁ、今回ばかりは面倒臭がってられないわよ。 あの子がこんな事を引き起こしてる
 って言うなら、保護者である私が止めなきゃいけないでしょう」

「おーおー、天下のニート様が保護者ヅラですか。 さすが『絶対能力進化(レベル6)』実験に
 携わっていた狂人なだけのことはある」

「・・・・・・じ、自分に甘いだけよ。 私は」


ともかく、これで決まった。三人はこの大騒動の真っ只中である第一九学区に向かう。
打ち止めはエリザリーナ独立国同盟製のフッカフカのコートに身を包み、
番外個体と芳川桔梗は"念のために"軽装備の銃器を用意する。

373 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 22:46:08.07 ID:yRnDv3tco


「もし仮にこれで第一位が全く何の関係も無かったら、ミサカ達犬死にだね」

「死ぬ前提で話を進めないでもらえるかしら? まったく・・・・・・私はこんな
 銃なんか持って潜入行動をとるキャラじゃないっつーに・・・・・・」

「そん時はひたすら逃げる!! ってミサカはミサカは一刻も早くあの人に会いたいがために
 バタバタと足踏みしてみたり!」


フンスッ、と鼻息を荒げるちっこいお姉さんを見て番外個体は失笑した。
芳川も正直本気で行きたくないのだが、彼女は彼女でやはり一方通行の事が気に掛かるのか、
クローン二人に同行する事を決意する。


『ゲーム』開始から既に二時間以上が経過。もはやこの茶会に時間の経過など意味は無くなっている。


三人は『家族』である学園都市最強の超能力者に無事出会えるのだろうか。

374 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 22:52:22.79 ID:yRnDv3tco


Q. このSSでの『神浄』とは?


A. セトの降臨により発動。器は『第一候補(メインプラン)』の一方通行。
  セトの顕現によってまず全世界中の魔術師、及び神殿、聖域、霊装に込められた
  魔力を吸収し枯渇させる。これによって世界から魔力は無くなり、事実上
  神に隷属するという形の十字教は終演を迎える。
 
  空に出現した巨大な裂け目は今ある世界を全て『星幽界』で上書きするための現象。
  これによりアレイスターの目論む新たな『界』の誕生は実現し、現存する常識が
  全て塗り替えられる。神に隷属するのではなく、人間が神そのものになる時代。
  十字教ではなくセレマ教の時代。それが『ホルス』。
  
  セレマ教とはアレイスターがカイロでエイワスと接触し法の書を完成させた時に
  開いた、法の書を聖典とする十字教に代わる新たな宗教。
  星幽界とは、とある魔術の禁書目録でいう虚数学区。

  セトが出現し世界中の魔術的概念、魔術師を滅ぼす→セトがオシリスを殺す。
  後始末として星幽界でホルス(黄金の鷹)として君臨する予定のアレイスターが
  セトを一方通行ごと始末すれば『ホルスの永劫』は成される。

  星幽界の完全な現出には本来、上条当麻の『幻想殺し』が必要になるわけだが、
  それをアレイスターはエイワスを『聖母ベイバロン』として迎えることで
  自身の限界を超越し、自らが『幻想殺し』の代わりを努めようとする。
  かなり無茶苦茶な手段のためホルスの到来がかなり遅れる事になる。

  セトがなぜ急に現れたかは、上条当麻や一方通行、ミーシャ=クロイツェフ、
  ヒューズ=カザキリ、エイワスといった重要な素材がかなり近しい場所に集まったから……とか
  色々ありますけど正直私もこの辺は適当にしか考えてません……申し訳ないです。

  ちなみに、このSSで出てきたセトが果たして『虚数学区から生み出された偶像』なのか
  『正真正銘本物の神』なのかは不明瞭にしてあります。地の文では一応神と表記させて
  もらってますが………神とかもう何か馬鹿馬鹿しくて書きにくいったらないですね……。



Q. つまりどういうことだってばよ?

A. そんなことよりさっさと天使救出しようぜ。


そんな感じで、今日の投下はお終いです。
妄想全開でお送りしたわけですが……こんなものに付き合ってくれた方がいらっしゃったら、
もう本当に頭が上がりません。マジでありがとうございます。

『神浄』については意味が分からないだろうと思って上記のように捕捉させていただきました。
あくまで私個人の解釈です。他SSでも『神浄』は出てくるらしいのですが、多分そっちの方がそれっぽいと思います。

次回更新は三日以内。

それでは、ここまでお付き合いいただき改めてありがとうございました!

375 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/05/31(火) 22:53:18.86 ID:yRnDv3tco



                          【次回予告】



『何が神だ、馬鹿馬鹿しい。 神は人間が生み出した偶像なの、実際に存在するはずがない・・・・・・!!』
―――――――――――英国三派閥の一つ『王室派』第二王女・キャーリサ




『(AIMを操作出来ない・・・・・・。 学園都市の、いや、全世界に広がっているAIMを掌握され、た?)』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・風斬氷華



376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/31(火) 22:57:20.66 ID:X0UwMnye0
すげぇな乙
アレイスターとエイワスのやりとりにきゅんとしてしまった。
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/31(火) 22:57:24.41 ID:BTPAV2xco

よくわからんがつまり一方通行マジ天使ってことだな
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/31(火) 22:58:31.17 ID:eR9tHocDO
>>1おつ!
一方通行さん頑張れ!
379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/31(火) 22:59:14.13 ID:HGItsReOo


つまりフラグ、というわけだな
380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/31(火) 23:00:31.73 ID:WYFQxBMSO

まさかの初遭遇だったからじっくり読んだけどやっぱりアレイスターさんは憎めないなあ
381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/31(火) 23:13:01.51 ID:XkP7ZlAA0

…うん、とりあえず打ち止めマジ天使
382 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/05/31(火) 23:13:31.46 ID:NESaWRmAO
超乙!
それと頭悪くてすまんのだが
今までの「神に祈りを捧げ魔術を行使していた時代」ってのが「神に隷属する時代」「オシリスの時代」で、
《「セトを一方通行を器として降臨させる」「世界中の魔翌力を一気に吸い取る」「星幽界(=虚数学区)に地上を書き換える」》《》内が「神浄」で、
「神浄」によって、「神に祈りを捧げ魔術を行使する時代」を終わらせ、その後の世界にアレイスターが「ホルス」と呼ばれるようになって君臨するよって事だよね?
上条さんはどこで必要になるはずだったのか?っていうことと
なんでセトの器が一方通行じゃ無いといけなかったのか?っていうことがわからない
お暇な誰か教えて
383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) :2011/05/31(火) 23:15:40.75 ID:BuJo346K0
384 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2011/05/31(火) 23:23:17.41 ID:yRnDv3tco
>>382
正確には上条の中の人が虚数学区の展開に必要不可欠というわけです。
具体的にどう幻想殺しを使うかはハッキリ言ってこの物語にはあまり関係ないので
書いてません。つかその辺はもうよくわかりません。

一方通行は一三巻の時点でAIM拡散力場の設定入力を施されているので
セトの器には最適だった、という妄想です。だから翼も黒いのかなーって。
粒子加速器としての本質を使えばセトとして存在出来るから第一候補なんて呼ばれてる、というこれもまた妄想です。

まあその、あまり気にしないでください。そんなことより打ち止めが可愛かったでしょう?
385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/31(火) 23:29:04.08 ID:3GrR/0mDO
乙。なんだか原作のネタバレを盛大にくらってる気がしないでもないぜ

そうだな、打ち止め可愛かったな!あとアレイスターが何だか憎めなくなってきた、あれだけくたばれって思っていたのに
386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/31(火) 23:29:13.75 ID:dafjvyt80
ベイバロンという単語に見覚えがあったからググってみたらやはりベイベロンか
黒魔術的な、背徳性のある闇の聖母にして聖なる象徴にまで昇華された娼婦であり
かのバベルの塔によって神への挑戦を試みたというバビロンの地に由来する

☆のむっつりすけべー
387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/05/31(火) 23:35:15.96 ID:Hhff2c1AO
一方通行←セト
 ↑
エイワス
  ↑
アレイスター

今回の話をまとめると、こういうことですね
いやあ甘酸っぱい青春の物語ですなあ
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/31(火) 23:37:12.65 ID:IYTc813Ao
壮大になってきたが…とりあえず☆さんドンマイ
黄泉川一家の面々が久しぶりに見れて可愛かったです
乙!
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/31(火) 23:38:32.62 ID:hR4R2SXUo
>>387
その甘酸っぱい青春で地球がヤバイんだけどなwww
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/05/31(火) 23:48:14.05 ID:ODKKuWFo0
まさかエイワスがマジで一方通行ラブだったとは…またラブでコメってくれないかなー
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山梨県) [sage]:2011/05/31(火) 23:53:16.93 ID:fY8w1LE90
>>384
上条の能力考察スレではちなみに一方さんの黒翼はまだオシリスの劫にあるルシフェルの力、だからエイワスには及ばないながらも強い力を持っていた と書いてあったけどこのスレ的には関係ないんだよな?
とりあえず乙
392 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2011/05/31(火) 23:58:36.89 ID:yRnDv3tco
>>391
そうですね。本来この時期には絶対に出てくるはずのないセトが出てきたのも、
演出を派手にするために半ば強引に登場させたからですので。
今回は都合よくセトにしただけで、本当はまだルシフェルに留まってないとおかしいです。

あんだけ長々と説明しておいて恐縮ですが、このスレ的に関係ないのは間違いありません。
さっさと終わらせて本題に入るようにしておりますので、どうかもう少しお待ちください。
ミーシャには申し訳ないな……早く助けてあげないと
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/01(水) 00:08:54.69 ID:SMg5ASaao
いやぁ内容が濃すぎて言葉にできないぜ
最初からずっとスレ見てたよ>>1
ラストスパート頑張ってくれ
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/01(水) 00:30:24.21 ID:97Dm91F10
案外エイワスが好きなのって垣根なんじゃと思ってしまった。
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2011/06/01(水) 00:48:19.50 ID:chJ5RuuQ0
こんな世界中を巻き込む痴話喧嘩は嫌だwwwwww
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/01(水) 00:50:31.90 ID:pPajsr9To
俺だよ
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/01(水) 01:18:24.41 ID:4Hqyhl7DO
お前だったのか
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北陸地方) [sage]:2011/06/01(水) 01:20:09.98 ID:cE8M/a/So
また騙されたな
399 :結局、VIPにかわってNIPPERがお送りするわけよ [sage]:2011/06/01(水) 02:27:43.75 ID:JXQc+Q3C0

くそっ、風邪のせいで見るのが遅れた。
400 :結局、VIPにかわってNIPPERがお送りするわけよ [sage]:2011/06/01(水) 02:28:11.58 ID:JXQc+Q3C0

くそっ、風邪のせいで見るのが遅れた。
401 :結局、VIPにかわってNIPPERがお送りするわけよ [sage]:2011/06/01(水) 02:28:47.57 ID:JXQc+Q3C0

くそっ、風邪のせいで見るのが遅れた。
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/01(水) 07:20:31.25 ID:JPTGxBfao
>>399-401どォした、落ち着けよ

>>1乙でした続き舞ってる
403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/06/01(水) 07:51:24.62 ID:ktx41szAO

四角関係の甘酸っぱい痴話喧嘩で地球がヤバいな
404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage saga]:2011/06/01(水) 08:54:53.85 ID:Yfd2CcOAO
すまんなアレイ☆
エイワスは俺が好きらしい
405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2011/06/01(水) 15:03:34.88 ID:L9NYK3Wd0
☆「ブエル、>>404を隔離しろ」
406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/06/01(水) 16:35:15.26 ID:SAuc3UANo
大丈夫だ、すでに>>404は404だから
407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/06/01(水) 17:15:34.43 ID:LXSSvmfAO
ここから垣根の夢にどう繋がるのかwktk
408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/01(水) 17:23:07.56 ID:oXMo6rfB0
>>340
ありがとう。助かった

>>1
話の展開が難しくなってきたな…
垣根も魔翌力吸われてんのか?
吸われてたらマジでやばくないか?
409 :新しい世界から僕がお送りしてやるッ! [sage]:2011/06/01(水) 18:01:28.23 ID:vE3NxUY30
くそ、俺は修学旅行のせいで見るのが遅れたぜ
410 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北陸地方) [sage]:2011/06/01(水) 21:22:14.67 ID:cE8M/a/So
垣根と打ち止めが交差するとき伝説が始まる
          ミ\            _,,-‐'' ̄`''- 、,_  /彡
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    ミ____        \  |.|::::|.| /        ____彡
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       /   /   |〕   帝凍庫クン   .||   ´\   \
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    彡   /  │  ./..|   -―- 、__,        |ト、  | ´\    ミ
     彡/   │ ../ |   '叨¨ヽ   `ー-、  || \ |    \ ミ
           │ / ..|〕   ` ー    /叨¨)  ..||   \|     
   r、       |/   !         ヽ,     || \  \      ,、
    ) `ー''"´ ̄ ̄   / |    `ヽ.___´,      j.| ミ \   ̄` ー‐'´ (_
とニ二ゝソ____/ 彡..|       `ニ´      i|  ミ |\____(、,二つ
            |  彡...|´ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄`i| ミ |
            \彡 |               .|| ミ/
                     |〕 常識は通用しねぇ  ||
                 |             ..||
                |:::::::::::::::::::::::       /
                 |:::::::::::::::::::::::::::::   /
                 `|:::::::::::::::::::::::   /
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.                    マ::::::::::::::::::::/_,,-‐'' ̄`''- 、,
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                     |:::::::::::/ /:::::::::::/    `''ヾ、 
                     |::::::::/|/::::::/         ヽ     
.             .-'"´ `丶、 ):::::|/::::::ノ
.            / .::::::::::::::::::::::\|::::|::::::/
           /.::::::::/  ̄` 丶、l::::::::リ
           l:::::::/         マト/ __,. --──一ァ    ┌‐┐
           |::::::l        -‐ヽ\::/:: :: :: :: ::<´__        ノ
            \_ヽ      , ::´:: ::/: :: :: \:: ヽ:: :: :: :: `::<
                 /:: :: :: :: :: :: ::: :: :: :: :: :: :: ::、 : 寸=一   _|_
              _,ィ彡 :: :: ::′:: :: :: :: :: :: :ヽ:: :ト、:: ;ハ    /|
              ̄ ̄/:: :: :: :: |:: :: :: :/ :/ヽ::.::.Wハ ∨: ∧
               / : :: :: :: :;|: :: :::/|:7 .i :: :| マ:}`.V:: ::.i    |
              / : :: :: :: r‐く|:: ::./ .l/__ | :: :|__N  }: ト::|    |
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                 厶イ人ゝj / 圦:::ツ   {:::ツ }ルヘ{
                 > 笊 j/:;ゝx:x   _'  x:x丿
           *   /   :||: : ': : :> ._(_ノ_,. イ }   *
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          *  /   . :/: }`ー──一' 》': : :/
       ., .,.    , ′ . : :/=≠辷=ニ二ニ=彳:.:../
           ,   . : : /:: :: :: :: :: :: :: :: :: :;イ.: : {__
       :;.   〈    ̄ ` ー- ::_;: -─‐ 寸.:/、 i i ト、   ':,':,':,
            `,ー-.. .. ..____,.、ヽヽヽ}⌒ー'ーヘ′
           /:; :: :: :: :/: : . .     `┴┴ヘ: : : : .  } ゛"
       : ; : /: {:: ::_::_;:′: : : : : .      }: : : : ノ  、,、,   ゛"゛  .;:;:;:;.
         厶:: :;イ: : : : : : : _: : : -‐: . .  /: ;. <:、:、
              ゝ-: -‐: ´: : : : : :_:x≦=‐ "゛  ゛゙゛゙  .,.,.,.,.  "゛"゛
             ム: : : :Tニて:´: : 〔_
             三迅 : : マニニ}: : : :マニニ__   .;:;:;.
           三王存 : : : 迂迅、:、:、マ≡ニ=         凹_i_i_凹
          =三王企zzzz生 企企企三二     ,、,、    ┌ヘ_}┐ )))
411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/06/01(水) 22:31:36.69 ID:i/iHT238o
更なる進化を遂げたか・・・!帝督・D・垣根!
412 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/01(水) 22:41:37.12 ID:fpRPrYGKo
>>408
ややこしい話になってしまい申し訳ないです。
すぐに終わりますのでしばしお待ちを。その間はただ感じてください

と、無責任な発言をしながら今日も投下していきます。
久しぶりに一方通行パート。天使以上の化物の登場でさらにカオスな展開に

それではいきます
413 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/01(水) 22:43:14.86 ID:fpRPrYGKo


――――――――――――――――――――――


蛇に睨まれた蛙、などという比喩表現ではもはや収まりのつかない状況だった。
風斬氷華もキャーリサも、そしてあろうことか悪魔までもが
現世に降臨したそれをただ唖然と見つめるしかなかった。

世界中に漂う黒い霧の中で、ただそれだけが人の形をしていた。
まるで人の影がそのまま立体的に浮かび上がっているようにも見える。
紅い頭髪に紅い眼、背中からは宇宙空間まで届いていそうな長さの黒翼を背負っている。
樹形図のように複雑に絡み合うその翼は、何百という数にまで及んでいた。

それは、かつて一方通行と呼ばれる一人の人間だった。

だがその彼の面影は今はもう見受けられない。白い髪も白い肌も、
今はすべて上から塗りつぶされている。




黒の象徴。星幽界の支配神。『セト』。



414 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/01(水) 22:44:06.72 ID:fpRPrYGKo


十字教が蔓延る時代を喰らい尽くし、新たな時代への道を示す王。
一般的に崇められている『神』という存在とは違う位置に属している、最古の神。

一方通行という依代に降臨した神はゆっくりと首を動かし、荒廃した第一九学区の街並みを興味深そうに見渡す。


「・・・・・・・・・・・・ドラコ=アイワズだったか。 あんにゃろー、手紙に記してあった内容は
 これの事を意味していたとでもいうの・・・・・・?」

「?」


足を引きずってセトから遠ざかるキャーリサの独り言を聞き、風斬氷華は眉をひそめた。


「あ、あの・・・・・・一方通行さんに何が起きたのか、分かるんですか?」

「あれはもう一方通行じゃないの。 なら何なのかと問われたら・・・・・・」


ビルの残骸に背を預けながら、キャーリサは眉間に皺を寄せて言った。

415 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/01(水) 22:45:16.96 ID:fpRPrYGKo


「・・・・・・口にするにも荒唐無稽な事だが、『神』としか言い様がないし。
 十字教に生きる私がこんな事を言ってしまうのもあれだが・・・・・・何が神だ、馬鹿馬鹿しい。 
 神は人間が生み出した偶像なの、実際に存在するはずがない・・・・・・!!」

「神・・・・・・・・・・・・」


唐突にそんなワードを放たれても風斬としてはイマイチ実感が沸かなかった。
なぜなら、ついさっきまでその神とやらは間違いなく一方通行という、風斬氷華にとって大事な存在の人間だったのだから。
科学の結晶体と言っても過言ではない風斬の立場から言わせれば、あの神とさっきまで戦っていた悪魔の違いが
よく分からなかった。適当な言葉にするなら『どっちもどっち』、というのが風斬の本音だった。

だが、そんな風斬の見当違いな思い込みはすぐに雲散されることになった。


セトが一歩、足に該当する部位を大地へ踏み出す。
たったそれだけ、人間なら絶対に誰もがやったことのあるその行為だけで、不気味な震動が地面を走った。
体の大きさ自体は一方通行とほぼ変わらないはずの体躯から発せられるとは思えない震動だった。

そして風斬は我が目を疑う。


つい先程まで鬼神の如く大暴れしていたあの大悪魔が一歩、セトと同じように足を動かした。

416 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/01(水) 22:46:09.58 ID:fpRPrYGKo


しかし、セトと違う点はその一歩が"後ろ"に移動しているという事だけ。


「え・・・・・・?」


ガラス細工が軋むような音が聞こえてきた。風斬が悪魔を注意深く観察すると、
悪魔の全身が小刻みに震えて背中の水晶の翼がぶつかり合う音だという事が分かった。
それだけで、今の悪魔の心境を知る事が出来た。


悪魔は、目の前に現れた神を恐れていた。
神の手から離れ、自我を失い、暴走という道を選択してしまったはずの悪魔が、ハッキリと畏怖の意を顕にしていた。

そしてその恐怖心が伝染したかのように、気付けば風斬とキャーリサの体も微妙ながら震えていた。
自分の意志とは無関係に、まるでセトに"分からされた"ように。
動いたら死ぬ。言葉はなくとも、暗にそう示されているような感覚に陥る。


「―――――――――・・・・・・・・・・・・、・・・・・・・・・・・・――――――――――――、・・・・・・、――――――――」


セトが何かを口走った、"ようにも見えた"。声はしなかった。
口も動いていなかったどころか、そもそも口に当たる部位も黒い霧で覆われているため確認できない。
悪魔でさえ、大天使ミーシャ=クロイツェフでさえノイズは走るものの何らかの言語は声に出せるというのに、
『神の言葉』は"神以下"の存在には届かなかった。届くことすら許されないとでもいうのか。

417 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/01(水) 22:47:38.71 ID:fpRPrYGKo


と、何かが崩れるような音がした。
風斬が見ると、キャーリサがどこか具合の悪そうな青ざめた顔をしながら
膝を折って屈んでいた。


「キャーリサさん・・・・・・!?」

「チッ、あの黒いの・・・・・・私から魔力を吸い取ってやがるし・・・・・・!!
 ・・・・・・カーテナもダメか、これじゃただの石の欠片だ。 この調子だと
 太平洋に置いてある『グラストンベリ』も、全世界の魔術師も軒並み・・・・・・」


ボンヤリとした、夜景に飛び交う蛍の光のような粒がキャーリサの体から
漏れ出していた。その光は全てセトに向かって緩やかに漂い、吸収されている。
この時点でキャーリサは完全に戦闘能力を失ってしまった。

天使長の力による肉体強化の恩恵を失った今のキャーリサが悪魔との戦闘にもつれ込めば
彼女は一瞬で肉塊にされてしまうだろう。
だが今警戒すべき点はそこではない。セト。あの黒の化身が次にどんなアクションを起こすのか、
風斬もキャーリサもそこだけに意識を向けていた。


セトは相変わらず首を忙しなく動かし、辺りの様子を見渡していた。
その姿は突然飼育ケースに放りこまれて途方に暮れる小動物の仕草を思わせる。
神はすぐ近くにいる悪魔やキャーリサ、風斬氷華には全く目もくれなかった。
セトにとって彼女たちは、ただの背景の一部に過ぎないとでも言うのだろうか。

だが少なくとも、風斬氷華にとってはそんなセトの挙動は不気味でしかなかった。
さっきまで人間だったはずの一方通行が、何の間違いかこのような化物になってしまった
事に若干の憤りすら感じていた。

418 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/01(水) 22:48:36.75 ID:fpRPrYGKo


あの神とやらは、間違いなく今まで一方通行に付きまとっていた忌々しい黒い影の正体だ。
時折こちらを見ては怖気の走る笑みを振りまいてきたり、何度止めても一方通行から決して離れる
事のなかった、まるで悪霊のような影。


「よせよ風斬・・・・・・・・・・・・」


そんな風斬の様子を察知したのか、まだ何の行動も起こしていない風斬に向かってキャーリサが忠告した。


「いいか、アレは私達の手に負えるよーな存在じゃないの。
 一方通行の肉体を勝手に使って降りてきたアレに憤りを感じるお前の気持ちも分かるが、
 アレには絶対に手を出すな。 腹ただしーが、神にとっちゃ天使も人間も同じよーなもんだし」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・、」


風斬は応じない。キャーリサの忠告を無視して彼女は震える足を動かす。
一歩一歩、こっちの存在に気付いているのかも分からないセトに向かって歩んでいく。


「風斬・・・・・・!!!」

419 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/01(水) 22:49:28.99 ID:fpRPrYGKo


憤りを感じているその胸中とは裏腹に、風斬の表情は『恐れ』一色に染まっていた。
それでも風斬は神に歩み寄っていく。ゆっくりと、確かに大地を踏みしめて。

そして、セトとの距離が残り二メートル辺りまで近付いた時、彼女の表情は『恐れ』から『懇願』に切り替わった。


「あ、の。 ・・・・・・・・・・・・」

「―――・・・・・・、・・・・・・・・・・・・」


グキ、グキグキグキと。声をかけてきた眼鏡の少女の方へ、神は不自然な動きで首を風斬の方へ向ける。
奇怪な神の動きを見た風斬はこんな状況にも関わらず、かつて一方通行とのデートで観に行ったホラー映画に出てきた
女性の悪霊を思い浮かべた。

目と目が合う。赤よりも朱よりも紅いその真紅の瞳は、映る物全てを血に染めてしまいそうだった。
頭の中の三角柱がガタガタと震える。全身から嫌な汗が吹き出ているのが分かる。
しかし風斬は臆しない。ただ彼女は、自分にとって大切な人を返して欲しいだけなのだから。

420 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/01(水) 22:51:17.97 ID:fpRPrYGKo


「あ、一方通行さんは・・・・・・まだ私達とやらなきゃいけない事があるんです。
 大切な友達を・・・・・・天使さんを救わなきゃいけなくて・・・・・・。 その、
 だから彼から・・・・・・離れて・・・・・・・・・・・・!!」


最後のほうは思わず口調が強くなる風斬。キャーリサもそんな彼女の愚行を止めようとはしたが、
セトとの距離が近いためか魔力の吸収量が尋常ではなく、麻痺したように体が動いてくれない。


「・・・・・・、・・・・・・・・・・・・――――――、――――、・・・・・・――――――――」


風斬の言葉は果たして神に届いたのか。セトはしばらく何の反応も示さなかった。
だがやがて、セトは風斬の顔に自分の顔を近づける。吐息がかかるほどの距離まで接近してきた
セトの顔に、一方通行の凶悪ながらもその奥にある優しさが窺えた顔の面影は微塵も残っていない。
天使のように目や鼻を型どる凹凸すらない、のっぺりとした黒い顔は、制作初期段階のドールの顔を連想させる。

421 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/01(水) 22:53:43.47 ID:fpRPrYGKo


と、その時。不可解な現象が彼女たちがいる場所で起きた。
不可解な現象などさっきからオンパレード状態で続いているが、今回のそれはやや曖昧で
風斬達もすぐには気付けなかった。

まるで専用メガネを着用せずに閲覧した3D映像のように、辺りの景色が二重にブレたのだ。
セトは何もしていない。何の仕草も見せていないが、その現象を引き起こしたのはこの黒の化身であることは
一目瞭然だった。そして、


「あ、れ・・・・・・?」


目眩が起きたように、風斬は突然膝をついた。頭を垂れ、背中の翼や頭上に浮かんだ輪は一瞬で溶け消え、
彼女は身動きひとつ取れなくなってしまう。


(AIMを操作出来ない・・・・・・。 学園都市の、いや、全世界に広がっているAIMを掌握され、た?)


それはつまり、虚数学区そのものをセトに掌握されたも同義。


神の御前で膝をつく風斬の姿はまるで、神に崇拝する信者のようにも見えた。

422 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/01(水) 22:54:51.55 ID:fpRPrYGKo


風斬とキャーリサをあっという間に無力化させてしまった星幽界の王は
骨が折れた時のような鈍い音を発しながら首を動かした。
セトの目線の先には、上空に現れた異様な裂け目。最初に出現した時より更に大きくなっている。


「――――――・・・・・・」


セトが大きく口を開けた。その仕草は喉から咆哮を轟かせているようにも見えるが、
やはり風斬達には神の声は届かない。
代わりに、セトのそんな仕草に応じるように上空から黒雷が連続して鳴り響いた。
地面に直接落雷してくることはなくとも、その黒雷の威力は空気を伝わって肌で感じることが出来る。

まさに、神の天罰。あんなものを喰らえば人間など一瞬で無と化してしまうだろう。

更によく耳を澄ましてみると、ピッピッピッピッ・・・・・・・・・・・・と極めて小さな電子音が鳴っている事が分かる。
音源はセトの腹部。一方通行が能力使用時に使う電極チョーカーからだった。
風斬達からは電極チョーカーのバッテリー残量が表示されている液晶画面は確認できなかったが、
セトが憑依した影響なのか、画面のデジタル数字が目まぐるしくランダムな数字に切り替わり続けていた。

それが意味する事は、現時点で一方通行の能力制限という枷が無くなり、無制限に能力を使用できるという事。
だがセトが一方通行の全てを支配している今となっては、そんな嬉しい特典も意味はない。


と、セトが正面に視線を移す。その先にいるのは先程から身動きひとつ取らない悪魔がいた。
悪魔。元天使。ミーシャ=クロイツェフ。
翼を一振りするだけで山一つを吹き飛ばせる力を持つ強大な存在も、
セトと比べたらなんと小さく見えることか。

神はそんなちっぽけな悪魔を凝視すると、

423 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/01(水) 22:56:01.60 ID:fpRPrYGKo


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・―――、――――――――――」


ピシ、ミシミシミシとガラスにヒビが入るような音を出しながら口元を歪ませて
嘲笑うような笑みを見せつける。

嘲笑うというより、それは哀れんでいるようにも見えた。

そしてそれが引き金となった。


「!!」


風斬とキャーリサの呼吸が止まる。悪魔は背中の水晶の翼を勢い良く展開させ、
何層にも別れたその羽根をセトの頭上目掛けて振り下ろした。
悪魔による神への反旗。聞いたことぐらいはあるかもしれない。堕天使ルシファーなどが特に有名だ。

信じ難いことに、その時点でセトはもう悪魔の方には視線を向けておらず、
悪魔の行動など全く無視して大地を揺らしながら再び歩き始めていた。

悪魔の一撃はそれだけで大地を別ち、空を消し飛ばし、海を割る。
そんな攻撃からあろうことか注意すら向けない神の行動は愚行でしかなかった。

424 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/01(水) 22:56:44.04 ID:fpRPrYGKo


愚行。


愚行を働いているのは、本当に神の方か?


大ホールに吊るしてある大量のガラスのシャンデリアが、一斉に破砕するような派手な音が響き渡った。
それは悪魔が背から生やしていた水晶の翼が、瞬く間に全て砕け散った音。
雨のように降り注いでくる翼の欠片は、まるで上空からばら蒔かれた宝石のように美しく煌めいていた。


「―――――――・・・・・・・・・・・・kptihxf不可解naiehguiya」


何が起こったのかは翼を全て根こそぎ砕かれた悪魔本人にも分からないようで、
悪魔は思わず頭上や背後に落ち着きなく首を向ける。

無論、風斬やキャーリサの仕業ではない。彼女たちは今、セトの行使する理解不能の力によって
攻撃はおろか指一本動かすことも出来ない状態なのだから。

ならば超遠距離からの遠隔攻撃?違う。悪魔に翼に何かが飛んできたような様子は見受けられなかった。
気がついたら、次の瞬間には、瞬きをした時には既に。翼が破壊された時の状況を表すには
そんな比喩表現がぴったりだった。

425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/06/01(水) 22:57:16.77 ID:415IDOdI0
超乙。
まとめると、不思議世界到来。恋愛フラグ建築士の一方さん。死亡フラグ建築士のていとくん。初春マジ天使は俺の嫁。ってことだな。
426 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/01(水) 22:57:22.30 ID:fpRPrYGKo


「・・・・・・・・・・・・まさか、」


キャーリサが呟いたその言葉も、滑稽にしか聞こえない。
まさか、ではない。どう考えても、が正解だ。

セト。まるで何のアクションもとらなかった神が、恐らく何らかの攻撃で
悪魔の攻撃を無力化したのだ。


「命令名『一掃』kfaxerucz再投下までmvdvo残り五秒」


翼を失った悪魔が次にとった行動は、神戮による殲滅だった。
上空には依然として奇怪な文字のような記号と肥大化する一方の裂け目が出現しているため
星の瞬きは確認できない。

だが悪魔は確かに神戮の投下領域を神がいる場所一点に凝縮し、コマンドを実行している。
間違いなくあと数秒で、それこそ悪魔のような容赦のない蹂躙の礫がセトを襲うはずだ。


それでもセトは動じない。この神という存在に動じるなどという感情があるのかどうかも定かではないが、
セトは決して臆しなかった。亀より緩慢な速度で歩みを続けている。

427 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/01(水) 22:58:31.45 ID:fpRPrYGKo


そんなセトとは対照的に風斬とキャーリサは焦燥していた。
直感だが次の神戮の設定範囲はほぼピンポイントで黒の化身に定められている。
だがそこで本当にセトへ神戮が炸裂した場合、実際には喰らわないものの衝撃波などは
確実に風斬やキャーリサをも巻き込んでしまうだろう。

セトによってカーテナの恩恵を失い、ただの人間と化しているキャーリサや、
AIM拡散力場をセトの説明不能の力で制御されてしまい、人工天使としての力を振るえない風斬が
そんなものに飲み込まれてしまったら当然、無事では済まない。
運が悪ければ即死してしまう恐れもある。

そんな彼女たちの事情など、暴徒である悪魔が考慮してくれるはずがなかった。


「命令名『一掃』――――――投下」


悪魔の力によって彩られた夜空から、容赦なく殺戮の豪雨が降り注いでくる。
上空に浮かぶ気味の悪い記号や裂け目が神戮を遮ってくれるのではと稚拙な考えも頭によぎったが、
どうやらそれらの現象にそんな効果は無いようで、神戮は普通に素通りしてきた。


「く、そ・・・・・・・・・・・・!!!」


キャーリサは思わず奥歯を噛み締めるが、そんな事をしても流星雨は止まりはしない。
神戮の壁となっていたグリフォン=スカイの大群もセトによる黒雷で全て蒸発してしまっている。
一方の風斬はガタガタになった地面にペタンとしゃがみ込んだまま、呆けた様子で
空を見上げているだけだった。彼女にはもう、神戮を避けたりするほどの力すら残っていない。

428 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/01(水) 22:59:48.93 ID:fpRPrYGKo


そして神戮の対象に見事選ばれた最古の神、セトは―――――。


「・・・・・・、」


ヒュン、と。

背中から龍のように伸びている数百の黒翼の一本を、軽く振っただけだった。


それだけで、夜空から降り注いでいた数億という馬鹿げた数の破壊の礫は、
音もなく夜空に溶け込むように塵芥と成り果てた。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・!?」


驚愕する暇などなかった。
続けざまに風斬達を襲ったのは、セトがほんの僅かに振るった黒翼の余波。


その余波はなぜか上空数百メートル辺りで発生していた。言葉や文字ではもう追いつかないほどの
凄まじい威力を放つその衝撃波は刹那の速度で拡大し、エイワスが施した光のカーテンを
粉々に破壊し尽くし、そのまま地球という惑星を何周も往復するほどのものだった。

429 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/01(水) 23:01:40.17 ID:fpRPrYGKo


「?」


と、明らかに疑問の意を含むように首を傾げたのは他でもない、セトだった。

神は今行った黒翼のスイングによる二次災害が発生しないことに疑問を感じていた。
セトの予定通りだと、今の攻撃だけで地球の九八パーセントの地殻は吹き飛び、
光速に近い衝撃波は『ノアの箱舟物語』が茶番に思えるほどの津波を引き起こし、
学園都市を、日本を、世界を飲み込むはずだった。

だからこそ、世界どころか今自分がいる学園都市にすら大した被害が出ていないことに、
セトはただ純粋に疑問を感じていた。
全世界の大陸がめくれ上がり津波が起きるどころか、第一九学区を囲う光の壁が破壊された以外には
何の被害も出ていなかった。


しかしそれでも、神という圧倒的な存在を知らしめるには充分過ぎるパフォーマンスだったと言えるだろう。
一方通行ですら反射出来ない神戮を、上条当麻の『幻想殺し』ですらどうしようもない神戮を、
セトという神は呼吸をするかのように容易く一蹴してしまったのだ。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

430 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/01(水) 23:02:34.54 ID:fpRPrYGKo


言葉も無かった。風斬もキャーリサも、そして悪魔も。
魂が抜けたような表情を浮かべながら呆然とする他なかった。

世界が違う。例えるなら野球を始めて三〇分くらいの少年が、メジャーリーガーの華麗なるプレイを
ただ見せつけられているようなものだ。
理解が追いつかない。抗う気も、降伏する気も起きない。畏怖も感じないし、頼もしいとも思えない。

ただ、神は君臨し続ける。圧倒的。天下無敵。強大無比。壮厳で、崇高に。

だが暴走の止まらない悪魔は現状の理解が出来ず、もはや討ち倒す事など絶対に不可能な
セトへ尚も牙を剥こうと駆け出す。
しかしその瞬間、突然見えない落石に押し潰されたかのように悪魔が地面に勢い良く倒れ伏せた。
網目模様のネットのように細かな亀裂が地面を走る。

セトが何らかの力を行使したのだろう。それ以外に説明のしようがない。
人間だろうが天使だろうが悪魔だろうが、神の前ではただ頭を垂れて崇めるだけ。


この先、誰もこの破壊神を止められないというのなら、


これですべて終わりだ。あとは悪魔も風斬もキャーリサも、全ての生物も、セトによってただ破壊されるのを待つだけ。

431 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/01(水) 23:04:11.69 ID:fpRPrYGKo


――――――――――――――――――――――


「・・・・・・まったく、セトが何らかの行動を取るたびに逐一フォローしなければならない
 こちらの身にもなってほしい。 危うく地球という私の大切な『ゲーム盤』が崩壊するところだったぞ。
 やはり神ともなると、こんな矮小な惑星では舞台としては成り立たんか」


やれやれ、と首を横に振ってため息をつきながらエイワスは言った。

神戮を消し飛ばしたセトの一撃で深刻な余波が発生した際、セトが想定していた地球への
二次災害は発生しなかった。
エイワスがセトの放った余波を自身の力を行使し、『全力で』相殺したためだ。

それでも全くの被害ゼロ、とはいかなかった。神の一撃はエイワスが第一九学区全周囲に施した
光のカーテンを難なく破壊している。これで如何なる者も第一九学区へ足を踏み入れる事が可能となった。

エイワスとしては、それはとても面白くない事態だった。
ならばさっさと光のカーテンをもう一度展開してしまえばいいのだが――――。


「神の御前だぞエイワス。 口を慎みたまえ」


瞬間、左右の方向から何かがエイワスに向かって飛んできた。
それは黄金の翼。エイワスが背負っている青白く輝く翼よりも、更に神々しさを感じさせる翼。

432 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/01(水) 23:06:18.73 ID:fpRPrYGKo


そして前方からは黄金に輝く炎の塊。人間が生み出した安っぽい紅蓮の焔ではなく、
まるで最高品質の金箔を何千何億も織り重ねたような芸術的とすら言える金色の炎。

それらの攻撃を、エイワスは避けられない。『避ける』という概念すら認めない。
『気付いた時には攻撃過程が終了している』。それはフィアンマが行使していた『振れば当たる』聖なる右の
上位互換とも言える攻撃。攻撃動作すら無い、気がついた時には金色の炎は対象を灰にしている。


結果、エイワスはアレイスター=クロウリーの攻撃をまともに浴びてしまう。
左右から挟みこむように迫ってきた翼に体を切断され、目の前から飛来してきた炎に焼き尽くされる。
アレイスターは空中からそれを優越に眺めていた。


「セトが降臨した事で『七二柱の悪魔』が召喚出来なくなってしまったが・・・・・・、
 まぁそんな事はもういい。 まだ健在だろエイワス? 見てくれ、一方通行のおかげで、
 セトのおかげで、私は"ホルスそのもの"として君臨できるまでに至ってしまった」


第一九学区には今、神が二体存在していた。
一つは言わずもがな、一方通行を今も取り込んでいる星幽界の王セト。

そしてもう一つは、


「『黄金の鷹』・・・・・・。 どれだけ待ち望んだことだろう。 とても気持ちが良いよ、
 全てがクリアに感じる。 なるほど、これが神だと言うのなら人が神を崇め続ける
 オシリスの時代に執着する気持ちも分かる。 だが我々人類はそこで満足してはいけない。
 その更に先、自身が神として君臨することで『ホルスの永劫』は成るのだから」

433 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/01(水) 23:07:37.88 ID:fpRPrYGKo


ズズズ・・・・・・と。 黄金に煌くアレイスターの傍で、表現出来ない音がした。
何も無い虚空から出てきたそれは、鳥の頭。
それは隼頭。アレイスターが永い年月を掛けて成就した、現世の守護神ホルス。

虚空から頭を覗かせたホルスはそのままゆっくりと這い出てきた。
体型は巨大な鳥そのものに見える。体長はおよそ二〇メートル程だろうか。
だがその翼は常に大きさを変化させており、時には数メートル、時には数百メートル以上と極端だ。
全身に王族が嗜むような豪華絢爛な装飾が施されており、ただでさえ輝かしいその体の煌きを更に加速させている。

そして事態は、ますますアレイスターに都合の良い展開へと天秤を傾かせていた。


「セトがあなたの施した忌々しい壁を取り払ってくださったようだ。
 これで外にいた『幻想殺し』もこの神域に入ることが出来る。
 半ば諦めていたがこれで『幻想殺し』は再び私の下へ"還ってきてくれる"。
 その時が、ホルス到来の真の瞬間だ。 一緒に祝ってほしいな、エイワス」

「っくく」


ゴォォッッ!! と、ホルスが放った黄金の焔が四散した。
そこから現れたのは何とも痛々しい姿でよろよろと佇むエイワスがいた。


「言っておくが、もう一度あの壁を展開出来るなどと思うなよ。
 あれを展開させたあなたの目論見は分かっている。 ここに『幻想殺し』を
 招き入れないようにするためだろう? ・・・・・・分からないな、ホルスに位置するあなたが、
 なぜそうまでしてオシリスに拘るのか。 ホルスを独占したいなどという愚かな考えを
 持っているわけではあるまい。 人が神を隷属する無様な姿を見て楽しみたいだけか?」

434 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/01(水) 23:10:26.07 ID:fpRPrYGKo


以前の覇気など今や見る影も無くなってしまう程弱り果てたエイワスを、
アレイスターは文字通り見下しながら言った。

それでも、エイワスがフラットな表情から垣間見せる余裕の笑みだけは未だに健在だった。


「独占欲・・・・・・支配欲・・・・・・おかしいな。 ホルスという神に昇華したはずの
 君の口から、まだそんな薄汚い概念が出てくるとは」

「何?」

「考えてもみろ」


エイワスはホルスとして君臨したと豪語するアレイスターを哀れむようにため息をついて、


「上条当麻の『幻想殺し』や一方通行の『セト』が、本当にホルスの降臨を認めたならば、
 とうの昔に『ホルスの永劫』は訪れている。 にも関わらず、現状は維持されたままだ。
 何も変わっていない。 何時まで経っても上条当麻はここにやってこないし、
 セトはアテもなくうろうろと街を徘徊して待ち惚けをくらっている始末。 なんだこれは、
 まさかこれが君の望んでいた時代だとでも言うつもりかね?」

「・・・・・・・・・・・・どういう意味だ」

435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山梨県) [sage]:2011/06/01(水) 23:13:02.47 ID:f1LTeeoF0
まさかのリアル遭遇wwwwwwwwww
あとこのスレでは幻想殺しの正体は決まっていないの?
436 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/01(水) 23:13:47.55 ID:fpRPrYGKo


「・・・・・・・・・・・・どういう意味だ」

「そもそも何だ、君の傍らにいる"その鳥は"。 チャチなテレビ番組で報道された
 珍獣か何かか? 南アフリカとかで目撃された黄金に輝く巨大な鳥とかか?
 焼き鳥にしたら美味しそうだな、君さえよければ私達に振る舞って欲しいものだが」

「口を慎めと言ったはずだが? 自分で言っている事が分かっているのか。
 ホルスを愚弄するということは、あなたの主であるクラアトを愚弄する事に繋がる。
 あなたがどれだけ戯言をほざこうとも、間もなくホルスは訪れるのだ。
 素材は揃った、あとは場所を第七学区にある『叡智の橋』に移すだけだ。
 ・・・・・・・・・・・・学園都市ではあれを『窓の無いビル』と呼称されていたかな」

「アレイスター。 大体、『ホルスの永劫』とは"そういう事ではない"。
 ホルスとは確かに黄金の鷹のような姿で描かれている場合もあるが、
 それがそのまま具現化してどうする。 違うなアレイスター、そうではないのだよ」

「世迷言を」


言いながら、しかしアレイスターは頭をわずかによぎる妙な違和感を感じていた。

確かにアレイスターの言うとおり、ホルスへ至る素材はこの学園都市に揃っていた。
一方通行のセトによって魔術師は間もなく滅びるだろうし、上条当麻の『幻想殺し』によって『神浄』は
安定ラインの軌道上に乗るはずで、新たなる『界』が開かれる裂け目も出現している。

にも関わらず、上条当麻は一向に第一九学区へ足を踏み入れて来ないし、
一方通行の肉体を依代にしたセトは人間や悪魔と戯れているだけだ。
全ての準備が整ったというのに、その引き金は引かれない。

437 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/01(水) 23:16:19.61 ID:fpRPrYGKo


「・・・・・・・・・・・・エイワス。 あなたが何か仕込んでいるのか」

「まさか。 君もそういうところは『天使同盟』の面々と同じだなぁ。
 何でもかんでも私のせいにするなよ。 "この件に関しては私は一切関与していない"」

「この件、とは」

「上条当麻は自分の意志で決断した。 そして一方通行は―――――」


アレイスターの表情から、徐々に余裕が消えていくのが窺えた。
『まさか』、と『ありえない』、という言葉だけが彼の頭の中で渦のように蠢く。


「―――――神に屈するのではなく、神すらも眷属とする。 『天使同盟』の目的を忘れるな。
 我々はただ、ミーシャ=クロイツェフを救出しにここへ来ただけだ」


アレイスター最大の誤算は次の二つ。

たった今起きた、上条当麻の信じがたい選択。

そして、人の身でありながら神に真正面から抗う決意をした、一方通行という名の少年。

この二人の少年の間に意思疎通のようなものは行われていないが、
二人の想いはこの時、偶然にもぴったり一致していた。

438 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/01(水) 23:23:17.81 ID:fpRPrYGKo
以上でーす。

>>435
漠然としか………。何せ材料が少なすぎて、私程度では明確に正体を解き明かすことなど出来ませぬ。
まあ神(笑)とかそういうのとはまた少し違う概念だろうとは思ってますけど、
とにかく材料が少なすぎるので無理に登場させても寒くなるだけかなー、と。


さて、アレイスター的には間もなくやってくるはずのホルスがちっともやってこず、
エイワスがまた嫌味に意味深な事を言ってきてイライラは募るばかりです。
一方通行と上条当麻の行動とは?ってな感じで続く……。

次回更新は三日以内。

それでは、今回もありがとうございました!

今回の次回予告、何だか勘違いしちゃいそうなセリフを選択してしまったなぁ……

439 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/01(水) 23:24:25.90 ID:fpRPrYGKo



                          【次回予告】



『(・・・・・・この右手で幻想をぶち殺すだけが、がむしゃらに首突っ込んで暴れ回るだけが戦いじゃないんだ)』
―――――――――――学園都市の無能力者(レベル0)・上条当麻




『"こっから先は一方通行だ"。 あのアホ天使を救うために助力してもらうぜ"三下"ァァァ!!!!!!!!』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・一方通行(アクセラレータ)



440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県) [sage]:2011/06/01(水) 23:25:02.84 ID:cY58XyQe0
>>1 おつ
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北陸地方) [sage]:2011/06/01(水) 23:25:27.06 ID:cE8M/a/So
>>418の腹ただしーが、って腹だたしーが、じゃないのかなと

どうでもいいね、うん
442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/06/01(水) 23:27:05.51 ID:xsruHkAUo
超乙ですの

一方さんにとっては「計画通り」キリッ
って事なのか?
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/01(水) 23:28:29.88 ID:JPTGxBfao
うっほほー乙
444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/01(水) 23:32:59.87 ID:oXMo6rfB0
1乙!

>>412
わー!
ややこしいとか言っちゃってごめんなさい
なにせ私の理解力が足りないばかりに
あまり理解しきれていないのです
申し訳ない

どうやら上条さんにもスポットライトが当たる時が来たようだ
445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/01(水) 23:38:09.14 ID:m/D6j5Ih0

一方通行の言う“三下”っつうのが誰の事を指しているんだろう
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/06/01(水) 23:46:51.90 ID:PTCrU7YAO
アクセトレーラさんきた! これで勝つる!
447 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/01(水) 23:59:30.01 ID:ztZWc4/N0
乙乙
胸熱な展開が続くぜ!

>神すらも眷属とする
…もしや、天使同盟最後の一人って…
448 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2011/06/01(水) 23:59:37.25 ID:fpRPrYGKo
>>444
いえそんな、こんな都合の良い展開ばかり続いていれば理解できるわけないですよ
何たって私自身もよく分かってませんからねwwww何だよ上条の中の人って……

>>441
どうでもよくないです、ありがとうございます。またしても幼稚なミスを犯してしまった……
449 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/06/02(木) 00:20:27.82 ID:i/evnkZAO
セロリかっけーなww
450 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/02(木) 00:30:39.63 ID:xOVXZzej0
勘違い?何を今更。
むしろ、いつも素敵な勘違いをさせてくれる台詞選びじゃないか
451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2011/06/02(木) 00:57:58.53 ID:E3JXYxPz0
上条さんが……自重…………した……だと?
452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/02(木) 01:08:45.52 ID:OoVVBTYv0
上条さんはインデックスがブレーキかけたか、あるいは…俺の予想通りだとしたら嬉しいな
それにしてもセトさんこえーっす
453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/02(木) 02:07:44.15 ID:2RVVSjIxo
わざわざKJさんを学園都市の〜なんて紹介にしているのにセロリは天使同盟の〜って紹介をしている
つまり俺…じゃなくてイケメンの浜面がかっこよく登場するフラグってことだ!
454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/06/02(木) 02:09:33.24 ID:+CpVkofRo
とりあえず乙
なんかもうクライマックスすぎてヤヴァイ
455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/02(木) 07:32:46.09 ID:I019+0LIO
一方さん、まさか神を三下呼ばわりですかw
456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/02(木) 11:48:19.01 ID:/oA5KAkdo
>>455
[ピーーー]、氏ねじゃなくて[ピーーー]
457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/02(木) 12:05:17.71 ID:I019+0LIO
えっ
458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/02(木) 12:24:05.07 ID:LgJcT1xH0
自重する上条さんとか…
一体中に誰が入っているんだ
459 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/06/02(木) 14:39:16.60 ID:i/evnkZAO
面白い構造になってきたなぁ
天使たちのリーダーが一方さんなら一方さんは神だな
神vs神の戦いですね
460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/06/02(木) 19:05:03.37 ID:uOH/kB9M0
           /  ̄ ̄ \
             /         ',
               lイエア;,r─、イエアl
            /l   ー、,r-   l   焼き鳥と申したか
.            / /丶        ハ
.            / / /` ー--‐ くヘ l
           / / /ムヘ /\/ヽ 〉l l
         / / /,/  ヽT) (Tハ l
       〈_,/./ / , ヘ \_ノ  ヘ,j
          ヽ// /  │    ',
         ∧ /      |     l
          l  ヽ     │    │
           │ │ l  l  |  l  l│
            |==| ̄l ̄l ̄l ̄l ̄l´|
            |==| ̄l ̄l ̄l ̄l ̄l´l
           ` ̄` ̄| | ̄ ̄| | ̄ ̄
            ⊂ニ二二> <二二ニ⊃

461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/06/02(木) 20:43:39.10 ID:YfbZHFJJ0
>>458
うににきまってんじゃん
462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/06/02(木) 21:38:36.96 ID:kAExkheD0
>>1 乙! もう続きが気になって仕方がないw というかもう原作抜いてますね(特に原作がつまらないとかそういう意味ではありませんが)
463 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/02(木) 22:37:57.41 ID:66NvSJ9Fo
こんばんわ、今日も投下しに来ました!
いつも沢山の支援レスを本当にありがとうございます。

さて前回、神(本物かどうかは不明として)の圧倒的な力に悪魔もエイワスもたじたじ。
だが肝心の神浄はやってこず、アレイスターも首を傾げるばかり。
上条当麻と一方通行は一体どこで何をやってんだ、と苛立ちを顕にします。

今回は早速、上条にカメラ向いたところから始まりです。
このSSではあまりいいところがない上条がとった行動とは……。

まあ、そんな感じで始まり始まり、です。 よろしくお願いします。
464 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/02(木) 22:38:42.82 ID:66NvSJ9Fo


――――――――――――――――――――――


上条当麻とインデックスは腹が煮えくり返る程に忌々しかった光の壁が破壊された事で
もう何時でも第一九学区に入る事が可能であるにも関わらず、
第六学区と第一九学区を隔てる目に見えない境界線の前で佇んでいた。


「・・・・・・と、とうま? どうしたの? 何があったかは分からないけど、
 ようやく壁が無くなったんだよ。 早くステイル達の所に向かって彼を止めないと・・・・・・!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、」


そう、第一九学区の中では恐らく今も"あの男"が『自動書記』の遠隔制御霊装を使用して
原典の力を使っているはずだ。
理由はよくわからないが、今はあの霊装を使われてもインデックスには何の害もない。
だがアレを使い続けている茶髪の男には深刻な悪影響が及んでいる。

そんな馬鹿野郎は一刻も早く止めなければならない。

だから今すぐにでも、上条当麻は第一九学区に足を踏み入れなければならないはずなのだ。

465 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/02(木) 22:39:46.22 ID:66NvSJ9Fo


だから、上条の口から出た言葉に、インデックスは自分の耳を疑うしかなかった。




「・・・・・・・・・・・・行かない」




上条当麻は空に浮かぶ気味の悪い裂け目を睨みつけながらボソリと、そう呟いた。


「ごめん、インデックス。 お前が自分の中の魔道書のせいで苦しんでいる男を
 止めてやりたいって気持ちは分かる。 俺もインデックスと同じ気持ちだ。
 ・・・・・・でも、少なくとも、俺は行かない。 いや、行っちゃいけないんだ、俺は」

「どういう事・・・・・・? とうまが何を言っているのか分からないんだよ」


それは言っている本人にも説明できなかった。
インデックスの言うとおり、なぜ自分がこんな事を言っているのかさっぱり分からなかった。
ただ、あの上空に出現している薄気味悪い裂け目と自分の右手がどこかで繋がっているような気がしてならなかった。

上条の中にあるしょぼい直感がこう告げている。
『自分が今ここに侵入したら、全てが終わってしまう』、と。

466 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/02(木) 22:40:42.80 ID:66NvSJ9Fo


根拠などあるはずもない。そんな直感に耳を傾けてないで、さっさとあの茶髪の少年を
止めに行った方がインデックスの、自分の一番大切な人間のためになるという事実は一目瞭然だった。

しかし、上条は動かない。


「・・・・・・多分、俺達の役目はこうしてここで大人しくしてる事なんだ。
 俺達みたいなやつが関わることじゃない。 関わっちゃいけない。
 だから俺達はここで見届けるんだ、全てを」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・とうま」

「大丈夫、あの男にはステイルがついてんだ。 いざとなったらステイルが何とかしてくれる。
 あいつは俺なんかより断然強いヤツなんだから」


インデックスは反論しようとしたが、完全に決意を固めた上条の表情を見て
沈んだ表情を固定させたまま、しかし力強く言った。


「・・・・・・・・・・・・、とうまがそう言うなら、私も信じる」

「ごめんな、ありがとう」

467 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/02(木) 22:41:35.55 ID:66NvSJ9Fo


上条は不安げな表情が拭えないインデックスの頭を左手で優しく撫でてあげた。

そしてもう片方、異能の力『幻想殺し』が宿るその右手をジッと見つめる。
直感、というよりは何故だかこの右手が忠告してくれたような気もした。
今自分が第一九学区に足を踏み入れたら取り返しの付かない事になる、と。


この日、上条当麻は人生で一番頭が冴えていたかもしれない。


彼は今まで何らかの事件が発生するたびに右手を握り締め、猪突猛進に、がむしゃらに、
戦火をくぐり抜けて大切な何かを守ってきた。
そんな彼が、今回の騒動に関してだけは不動の道を選択した。


(・・・・・・この右手で幻想をぶち殺すだけが、がむしゃらに首突っ込んで暴れ回るだけが戦いじゃないんだ)


彼はこの騒動から学んだ。戦わないことで、守れる何かもあるんだということを。


そして偶然と言えばそれまでだが、そんな上条当麻の選んだ道が、
アレイスター=クロウリーという魔術師の幻想の一角をぶち殺す事に繋がっていた。


無論、そんな事は上条の知るところではないが。

468 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/02(木) 22:42:43.63 ID:66NvSJ9Fo


――――――――――――――――――――――


一方通行は一点の光もない、闇一色の空間を漂っていた。
足場はない。もし周囲に煌く星々でもあれば、ここが宇宙空間だと思い込んでしまうかもしれない。
文字通り、一方通行はこの黒々とした空間を漂っていた。


『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』


突然現れた『闇』に飲み込まれた事は覚えている。
かつて一方通行は三度、『闇』に飲まれた経験があった。
一度目は木原数多という科学者と相対した時、二度目は垣根帝督と相対した時。
そして三度目は、自ら『闇』に飛び込んだ。ロシアの雪原で全てを諦めかけた時の決断だった。

しかし今回の"嚥下"は、上述した時とはレベルが違いすぎた。
まさに侵食。三度『闇』に飲まれたときは何とか自我を取り戻すことが出来たが、
今回ばかりは完全に飲み込まれた。抗ってももがいても、手も足も出なかった。


『・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

469 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/02(木) 22:44:27.99 ID:66NvSJ9Fo


自分がさっきまで何をしていたのかも明確に思い出せなかった。
何か、すごく大切な何かを救うために奮闘していた気もするが、今の一方通行には思い出せない。

記憶すらも闇に塗り潰されようとしていた一方通行の視界に、何かが飛び込んできた。
僅かな曇りもない完全な暗黒であるはずの空間で、彼は確かにそれを認識出来た。


影。黒い影。
一方通行は漠然と理解した。こいつが自分を飲み込んだヤツだと。


そして同時に、こいつは恐らく一般的に『神』と呼ばれる存在であることを。


『・・・・・・・・・・・・オマエか。 俺を器にして勝手に土足で入り込ンで来やがったクソったれは』


返事はない。ただ、神は笑っているような気がした。
それは嘲笑の意を含む笑いではなく、親愛を求めるような笑みだと、一方通行は思った。
同時に、その神を視た瞬間自分が今まで何をしていたのか、正確に思い出すことが出来た。


『神、ねェ・・・・・・。 ハッ、俺ァいつから神にフラグなンざ立てちまったンだァ?
 ガブリエルといいオマエといい・・・・・・俺は人外に愛されちまう星の下に生まれちまったンかよ』

470 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/02(木) 22:45:54.19 ID:66NvSJ9Fo


相変わらず返事はなかった。だが、脳に直接刷り込まれたように
一方通行の頭に神の意志が伝達される。
今まで体験したことのない違和感に彼は顔を顰めながら送られてきた情報を読み取る。


『・・・・・・・・・・・・、チッ。 神なだけに上から目線かよ。 星幽界ってのが分からねェが・・・・・・
 虚数学区の事を言ってンのか? 俺が木原のクソ野郎をぶちのめした時に虚数学区に
 干渉した俺に興味を持った、と。 人間の言葉で説明してくれや、意味がわかンねェよ』


送られた情報は一方通行の頭脳を以てしてもほとんど理解不能だったが、
神が言いたいことは大まかに把握できた。

ようは、何度も何度も闇の力に溺れた人間風情がそれでも無様に足掻いて
自我を取り戻してきたという滑稽さが気に入ったというわけだ。
一方通行はこの神とやらとエイワスがどこか似ているな、と舌打ちしながら思った。


『・・・・・・まァいい。 それで、俺はこの先一生オマエの中で飼い殺しか?』


一方通行はその旨を良しとしない。神だか何だか知らないが、取り込まれて飼い殺されるだけの
人生なんてうんざりだと思った。一方通行じゃなくても大半の人間はそういう考えを持っているだろう。
だが一方通行とその他の人間の違いは、相手が神である点だった。
神に取り込まれるという事は即ち、神のご加護を永遠に受け続けられるという事に繋がる。

471 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/02(木) 22:46:59.64 ID:66NvSJ9Fo


そんな、宗教者からすればそれこそ神の恵みのような現実を一方通行は、




『冗談じゃねェぞクソったれが』




ピシッ、と。 陶器に亀裂が入る音が鳴った。
一方通行が腕を伸ばしたその先の虚空にヒビが入っていた。


『オマエ、ずっと俺をどこかから観察してたンだよなァ? あァきっとそォだ、間違いねェ。
 じゃねェと時間と場所に関わらず現出できた黒い翼の説明がつかねェからな。
 だったらオマエは俺の、「天使同盟(アライアンス)」の恐ろしい意向も知ってるはずだろォが』


? と、神が疑問を感じている事が一方通行にも伝わる。
どうやらこの黒の化身様はとても重要な事をお忘れでいらっしゃるらしい。
そんな間抜けな神様に、たかが人間の一方通行がご教授して差し上げた。


『何度言やァわかるンだ? この俺に、一方通行に関わってきやがったヤツは
 結果がどォあれ"逃しはしねェ"。 それが人間でも天使でも、ましてや神様だろォとなァ』

472 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/02(木) 22:50:14.70 ID:66NvSJ9Fo


空間に発生した亀裂がどんどん広がっていく。
その亀裂から水漏れのように流れてきたのは、黒を上から塗りつぶす聖なる『白』。
一方通行という人間を象徴するような、白く、白く、狂ったように白い『白』だった。


『丁度いい、天使ってのは神が作り出したモンなンだろォ? ・・・・・・オマエがどンな
 神なのかは知らねェが、この俺に関わった以上もォ逃さねェし、引き返すことも許さねェ』


一方通行は拳を思い切り握り締め、檻を、壁を、困難を、闇を吹き飛ばすように
勢い良く振り抜きながら、


"本物の神"に向かって吠えた。



『"こっから先は一方通行だ"。 あのアホ天使を救うために助力してもらうぜ"三下"ァァァ!!!!!!!!』



逃がさないし、引き返すことも許さない。それは"一方通行"というより"八方塞がり"だった。
もう、神は逃げられない。人間風情の少年に、逆に取り込まれていく。


一方通行の振るった拳が、黒を象徴する神に一筋の光明を突き刺す――――。

473 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/02(木) 22:51:25.79 ID:66NvSJ9Fo


――――――――――――――――――――――


「あ、れ・・・・・・? 体、が」

「・・・・・・・・・・・・魔力が、少しずつではあるが戻ってきている?
 ちくしょー、今度は一体何が起きたっていうの」


風斬とキャーリサは体の調子を確かめるように手の指を開いたり閉じたりしながら
黒い影の様子を窺ってみた。


「・・・・・・何だ? あいつの体、さっきはあんなに膨れていなかったはずだし」


セトの様子に明らかな変化が見受けられた。
ボコッ、ボコッ、と。沸騰した湯が泡立つような音がセトの腹に当たる部分から聞こえてくる。
セトの体躯は先程までとは違い、まるで妊婦のように不自然に膨らんでいた。


「――――――・・・・・・・・・・・・、・・・・・・」


セト自身もそれを不思議に思ったのか、どんどん膨れていく自分の腹を見つめている。
痛みや不快感があるのかどうかは未完成の人形のような顔から窺えないが、
代わりに背中から生える無数の黒翼が悶え苦しむ蛇のように不気味に蠢いていた。

474 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/02(木) 22:53:06.50 ID:66NvSJ9Fo


それだけで暴風が吹き荒れ、もはや壊れるところが無くなったビルの残骸にトドメを刺していく。
神の身に発生した異常事態を察知したのか、セトに完膚無きまでに打ちのめされていた悪魔が
ゆっくりと倒れ伏せた体を起き上がらせていた。

と、セトの腹の部分から何かが聞こえた。


「・・・・・・・・・・・・、rzmcが、ぐゥ・・・・・・fyxubく、おurxft・・・・・・!!」

「え」


聞き間違いではないかと風斬は自分の耳を疑った。
しかし風斬と同じように、キャーリサも驚きの表情を浮かべている。

空耳では、ない。


「zmが、ァぐ、ぎぎ・・・・・・!!! huxzwcybおおォ、ァynfd・・・・・・!!!」


メキキキ・・・・・・・・・・・・という骨が軋む音。
膨らみ続けるセトの腹の一部が、中から何か尖った物が押し上げているように不自然に歪む。
ボロボロの姿でむくりと起き上がる悪魔。かつて『神の力(ガブリエル)』と呼ばれた悪魔は、
聖母マリアに受胎を告知した天使だと伝えられている。

妊婦のように腹を膨らませている神が、ミーシャにはどのように見えているだろうか。

475 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/02(木) 22:54:22.81 ID:66NvSJ9Fo


セトはどこか狼狽えているような仕草を見せ、慌てて自分の腹を手で抑えたが。


もう遅かった。




「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおォォォッッ!!!!!!!!!!!!」




それはまるで、津波に襲われた防波堤の決壊のようだった。神の腹部が耐久値に限界が訪れた防波堤のように
崩壊し、そこから溢れ出すように出てきたのはセトが世界中の魔術師から吸収した魔力の光と、


学園都市最強の超能力者(レベル5)。第一位の一方通行と呼ばれる少年だった。


「あ、一方通行さん!!!」

「・・・・・・風斬、キャーリサ、オマエら無事か!? ガブリエルは!?
 『星の欠片』はまだ残って・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぐむっ!!?」

476 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/02(木) 22:55:51.10 ID:66NvSJ9Fo


上半身まで抜け出ていた一方通行を再び押し込めるためか、セトは信じられない力で
彼の頭を上から押さえつけて飲み込もうとする。


「こ、の野郎・・・・・・ッッ!!! 往生際が悪ィンだよ神のクセに・・・・・・!!!」

「あ、い、今行きます!!!」


セトの力が弱まっているのか、気付けば風斬の体に本来の力が戻っていた。
どうやら神はAIM拡散力場を掌握しきれなくなってしまったらしい。
風斬はすかさず背中から雷光の翼を噴出させ、一気にセトとの距離を詰める。


「掴まってください・・・・・・!!!」

「く、ゥ・・・・・・・・・・・・」


風斬が神の御前で救いの手を差し伸べる。
一方通行としてはこんな真っ黒な化物より風斬の方がよっぽど神らしいと思えた。
風斬の場合は女神が正しい表現か。

そしてセトもただそんな様子を黙って見ているわけがない。
惑星を一撃で消し飛ばせるような威力を誇る恐ろしい無数の黒翼が全て
目の前の風斬氷華に牙を剥く。

477 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/02(木) 22:57:34.93 ID:66NvSJ9Fo


だがそれが風斬の体を屠ることはなかった。
ギチギチと、まるで何かに抑えつけられているかのように黒翼が震えている。


「ざァァァァァンねェン・・・・・・!!! 今のオマエと俺ァ言わば一心同体ってヤツなンだろォが。
 だったらオマエに操れる黒翼が、この俺に操れねェワケがねェェェだろォォがよ、ああァッ!!?」


全身から汗を吹き出し、口から苦し気に荒い呼吸を繰り返しながら一方通行は頭上にあるセトの顔を思い切り睨みつける。
彼はあろうことか、神に対して『ベクトル操作』を行い、セトの黒翼を操作し始めていた。


ロシアで打ち止めという少女を救うため、彼は自身の能力『一方通行(アクセラレータ)』の本質を見極めている。
"一方通行自身が観測した現象・事象から逆算して、限りなく本物に近い推論を導きだす"。
『粒子加速器(アクセラレイター)』の名を冠する彼ならではの超能力。

この瞬間の一方通行の演算能力はまさに"神懸っていた"。体の芯まで神という存在に浸かっていた一方通行は
『神』という概念を完璧に把握、理解、掌握し、逆算する事で神の力そのものを操作するという
人類が未だ到達していない前代未聞前人未到の荒業を実行したのだ。

それはまさしく、人間という立場でありながら神の全知に到達した者。


学園都市ではその領域に達した人間を、何と呼んでいただろうか?

478 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/02(木) 22:59:56.77 ID:66NvSJ9Fo


セトの力が著しく弱体した事を察知した悪魔もまた、そのまま彼らの
状況を見つめているだけではない。
セトによって芯から破壊された水晶の翼は再生不可能になってしまったため、
自らの足を地面に思い切り踏み込ませて駆けようとしたのだが、


「おおっと。 ・・・・・・ここで横槍入れるのはさすがに野暮だし。
 外野は黙って結果を見届けよーじゃないの」


悪魔の真横から突然、眩い閃光が迸ってきた。
尋常ではない速度で飛んできた光は悪魔を勢い良く薙ぎ払う。
派手な音と共にビルの瓦礫に突っ込んだ悪魔を見届けながらキャーリサは不敵に笑った。


「神に向かってあんな口の聞き方するヤツがこの世にいるとはな、やっぱりあのウサギは面白すぎるし。 
 見ているこっちまで感化されてテンション上がってきたの」


セトの破れた腹部から放出された魔力が本人の下へ帰っていったため、
キャーリサもカーテナ恩恵を取り戻し、天使長の力を思う存分振る舞えるまで回復していた。
手に携えるカーテナの欠片から放たれる閃光が何とも頼もしい。

479 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/02(木) 23:01:15.91 ID:66NvSJ9Fo


キャーリサが悪魔を止めている間に一方通行は何とかその細い腕の一本を伸ばし、
風斬の手をしっかりと掴んでいた。


「もう・・・・・・少し・・・・・・!!」


風斬は渾身の力を込めて掴んだ彼の手を引っ張り出していく。
それに対抗するようにセトも執念で背中の黒翼を振るおうとするが、


「・・・・・・・・・・・・つーかよォォ」


獣の唸り声のように低い声を放ちながら、一方通行が神に一言。




「オイ神様。 ・・・・・・"頭が高けェ"」




ガシィッ!!! と一方通行はもう一方の手で鮮血より紅いセトの頭髪を思い切り掴むと、
勢い良く腕を振り落とし、神の頭を地面に押し付けた。

480 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/02(木) 23:02:17.44 ID:66NvSJ9Fo


体のバランスが取れなくなったセトはそのまま一方通行ごと全身を地面に預ける形になる。
彼の手を掴んでいた風斬も危うくコケそうになるが、そこでスッと自分の力に抵抗してくる力が無くなった。


「あ、一方通行さん・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・げほっ、げほっ!! ・・・・・・よォ、待たせて悪かったな」


風斬は顔を綻ばせ、目尻に涙を浮かべながらふるふると首を横に振った。
ついに一方通行は神の呪縛から逃れ、現世に再び還る事が出来たのだった。
セトに頭を押さえつけられ、散々引っ掻かれた顔の傷跡が非常に痛々しかったが、
それでも彼は五体満足で神の手から解放された。


「―――――・・・・・・・・・・・・、――――――――――・・・・・・―――――――」


ドスッ、ドスンッ、と。特撮映画に出てくる怪獣が鳴らすような足音を立てて地面を揺るがしながら
セトは一方通行の傍からゆっくりと後ずさっていく。

481 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/02(木) 23:03:06.39 ID:66NvSJ9Fo


黒い影だけを纏っていたセトの体は、ところどころが純白に染まっていた。
まるでそこにだけ、白いペンキを塗りたくられたかのように。

寒気のするような笑み以外の表情を浮かべない神の心境は窺いようがないが、
どこか落胆しているようにも見えた。


なぜ、人間の身でありながら神の恩恵を自ら手放すのか、と。


背後では何度も刃と刃が交わる音が轟いていた。
辛うじて現出させた水晶の剣を携えた悪魔が、カーテナを振るうキャーリサと
映画のワンシーンにそのまま引用できそうな戦いを繰り広げている。
キャーリサの肉体は少しずつではあるが確実に消耗してきている。
このまま戦いが長引けば、彼女はいずれ致命的なダメージを負ってしまうだろう。

だがキャーリサの表情には余裕があった。その顔には不敵な笑みすら窺える。
カーテナが復活したとはいえ、悪魔との一対一など本来なら一分も継続出来ないはずなのだが・・・・・・。

482 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/02(木) 23:04:23.23 ID:66NvSJ9Fo


「一方通行さん」

「あァ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


一方通行は空を見上げた。
彼が神に侵食されている間も空は相変わらず不気味な装飾を施されていたが、
心なしか彼が神から脱した瞬間から、奇怪な記号の羅列やそら恐ろしい裂け目が収縮しているような気がする。


「なンか空が随分愉快な事になってンな」

「お前のせいだしウサギ!! あとお前の"連れ"がウチのグリフォン=スカイを
 全て消し飛ばしちまったの!! キチンと弁償代は請求するからよろしく〜♪」

「・・・・・・・・・・・・はいはい」


なぜかやたらと元気活発な第二王女様がなんか言ってきたが一方通行は軽く流した。
そして彼は先程から静寂を貫いたまま微動だにしないセトに向かってこう言った。


「・・・・・・取引だ。 この一連の騒ぎが全部収まったら、俺の事は好きにしてもらって構わねェ。
 俺の体を乗っ取るなり何なり、好きにしやがれ」

「な、何を言ってるんですか・・・・・・!?」

483 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/02(木) 23:05:24.75 ID:66NvSJ9Fo


一方通行の突拍子も無い言葉に驚いたのは神ではなく風斬氷華の方だった。
セトは黙って一方通行の言葉を拝聴する。


「ただ、オマエも全部見てたンなら分かってると思うが、俺には守るべきヤツが沢山いる。
 もォ打ち止めや番外個体、黄泉川や芳川だけじゃねェ。 両手の指でも数えきれねェ、
 両腕で抱えても収まりきらねェほどにな。 俺自身はどォ扱ってくれても構わねェが、
 そいつらを蔑ろにするよォな事があれば俺はまた容赦なくオマエの土手っ腹をぶち抜くぞ」

「――――・・・・・・・・・・・・―・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・分かったンなら返事するなり頷くなり応答の意を見せやがれ神様。
 オマエの中でも言ったが、俺から逃れられると思ってンじゃねェぞ」


セトは肯定も否定もしなかった。
しかしセトも、一方通行の胸中にある強い想いを汲み取ったのか。
ただ神は、薄く笑みを浮かべて、そのまま霞のように現世から姿を消したのだった。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

484 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/02(木) 23:06:57.18 ID:66NvSJ9Fo


傍らで安堵の息を吐く風斬。一方通行も注意深く観察しなければ分からないほどの小さなため息をついた。
と、不意にピピッという小さな電子音が一方通行の電極チョーカーから鳴る。
確認すると、セトに吸収された時になぜか制限解除されていたバッテリーの残量が残り一〇分程にまで減っていた。

一方通行は静かに瞼を閉じ、背中に意識を集中させた。
瞬間、彼の背中が勢い良く炸裂する。


「あ・・・・・・・・・・・・」

「ふン。 あの野郎、背中にべったりストーカーコースを選択しやがったか。
 結局いつも通りに戻っちまったって訳だ。 神なら椀飯振舞でもして
 俺に神同等の力を与えてくださるとかそンくらいしたらどォなンだ」


彼の背中には、いつものように黒翼が噴出していた。

ただし、それは"片方のみ"。もう片方には白の翼も混じっている。
片翼は黒、片翼は白という何とも神秘的で、何とも不恰好で、何とも頼もしい姿に彼は成った。
頭上に出現した輪も白と黒のコントラストで彩られていた。

まるで一方通行という少年のこれまでの人生を色で表現しているかのように。

485 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/02(木) 23:08:19.46 ID:66NvSJ9Fo


「ウサギ、風斬!! 終わったんならさっさと来るの!! じゃないとこれ、
 私がトドメを刺しちゃいそーだし!!」

「?」


一方通行と風斬はそう叫ぶキャーリサの方を向く。
キャーリサの息は疲労困憊というようにひどく荒かったが、信じ難いことにそれは
対する悪魔も同じだった。


「お前らと神、そして私との連戦で悪魔もだいぶ消耗しているみたいなの。
 "討つ"にしろ"救う"にしろ、チャンスはもーここしかないよーだし」


悪魔は人間では計り知れない凶悪な力をその身に秘めている。
だが、決して無敵ではない。第一位という怪物と天使と同等の力を持つAIM拡散力場の集合体。
天使長の力を振るう第二王女。神。そして自我の崩壊と暴走という自らを滅ぼしかねない事象。

486 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/02(木) 23:08:55.82 ID:66NvSJ9Fo


これらが全て重なっては、さすがの悪魔も限界が訪れるものらしい。


「・・・・・・終わらせるぞ、風斬」


風斬は何も言わず、ただ力強く頷いた。
背中の翼を爆発的に羽ばたかせ、悪魔の下へ飛翔していく。

一方通行もまた、彼女を追うように背中に『神』を背負い、勢い良く戦火へ飛び込んでいった。


そう。


いつだって神は、背でうたう。

487 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/02(木) 23:15:05.34 ID:66NvSJ9Fo

ここまでです。
一方通行が主人公のはずなのに彼がここまで出てくる投下は珍しい……。

上条当麻ですが、戦わない事で活躍させてみたいなと思ってこういう展開にしてみました。
いかがでしたでしょうか?上条ファンには物足りないかも知れませんね。
やっぱ彼は右手で一直線に戦う姿の方が似合ってるかな……。

でもたまにはこんな上条もいいんじゃないかと思ったり思わなかったり。

そしてセトもいなくなった今、今度こそ天使救出作戦決行。
もうあとは悪魔を倒すだけ。長かった戦闘も終わりか近いです。

次回更新は三日以内。

それでは、今日も読んでくださった方にセトの恩恵がありますように……。ありがとうございました!

次回、いろんな所で起きている戦闘の一つに決着がつくようです。
488 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/02(木) 23:15:48.05 ID:66NvSJ9Fo



                          【次回予告】



『・・・・・・そろそろ飽きたな、もう』
―――――――――――『聖守護天使(アウゴエイデス)』を司るクラアトの召使・エイワス



489 :ラリラリ ◆IgJDZoCsoc [saga]:2011/06/02(木) 23:16:45.45 ID:SPsl29kT0
おつんこ!
490 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/02(木) 23:17:39.69 ID:tBoAv2cw0
これはエイワス△フラグやでッ!
491 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/02(木) 23:17:41.33 ID:IBN13Z6i0
一通さん格好良すぎ惚れた
492 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/02(木) 23:18:10.24 ID:kEwPuLwB0
乙!!
>>1にもセトの恩恵がありますように。
493 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/02(木) 23:18:29.81 ID:tpwVvoleo

エイワスの肩書がががが
494 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/02(木) 23:18:56.84 ID:DelaNO/w0
乙です!!
一方さん、神を三下呼ばわりとは流石っすね!
495 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/06/02(木) 23:19:31.77 ID:VwDwQQ1W0
乙!
こういう上条さんもいいな
496 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/06/02(木) 23:21:51.79 ID:n6UUTNfAO
神がかってるのはこのSSだった
素晴らしい以外の言葉が見当たらないよ、>>1
497 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/02(木) 23:22:50.89 ID:LgJcT1xH0
最終的に一方通行はパワーアップ無しでOK?
498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/06/02(木) 23:23:03.07 ID:kAExkheD0
乙!初めてリアルタイムで見れた・・・・もうすぐ終わりか・・・さみしいな
でも>>1なら番外編とかも書いてくれると信じてる
499 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/06/02(木) 23:24:16.63 ID:tE3QAKUn0

あれ……これ、アレイスター死亡フラグ?
そして、最近三日以内の更新が一日ごとになっている件について
500 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/06/02(木) 23:27:04.74 ID:p9ol3gnJ0
本日の三つの神展開

1:上条さん、まさかのそげぶ自重
2:一方さん、神を三下呼ばわりして啖呵をきる
そして
3:エイワス、逆転フラグ

>>1超乙!!
501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2011/06/02(木) 23:33:36.37 ID:ZxByqqe/0
そげぶしない上条さんなんて……と思ったがこれはこれでありか。
502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/02(木) 23:37:32.87 ID:bCI73tQDO

ところで>>486の「そう、いつだって、神は背でうたう」って
禁書2期オープニングか?
503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/06/02(木) 23:43:04.14 ID:qwcyG2mGo
そげぶしない事で結果的に☆をそげぶしてしまう上条さんマジそげぶ
504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/02(木) 23:55:26.40 ID:it0sEWxJP

一方通行かっこよすぎワロタ
505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/06/03(金) 00:09:58.86 ID:GVlLYOxG0
一方さんがとんでもないことなってるとパンツの中もとんでもないことなってんじゃないかと思ってる自分は某ssに影響されすぎてるな

それはともかく>>1
506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2011/06/03(金) 00:21:18.68 ID:rVY/zRXAO
一方さんマジかっけぇぇぇ!!!!
あと自重した上条さんもかっけぇ
507 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/03(金) 00:41:01.59 ID:vPw0haZY0
>>506
禿同ですの

>>1乙でした!
508 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/03(金) 00:50:46.27 ID:amXsg9Eso
神に向かって頭が高いとは格好いいぜ
学園都市第一位。王様流石です一方通行さん
乙!
509 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/03(金) 00:52:55.95 ID:tzoPPcZH0
思えば黒翼の上位互換として白翼が顕現したのはフラグだったのかもなあ…
いや、黒翼→白翼は本編の話だから理屈がおかしいんだけど、
むしろ敢えて黒翼を神の力に設定した主の発想の勝利か
510 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/03(金) 01:37:34.61 ID:PFONxOaDO
セトさんご出産おめでとうございます!
元気な男の子ですよー
511 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/06/03(金) 02:50:36.54 ID:EkcPtwv9o
アンチ上条ではないがありがちな俺様理論のそげぶがなくて良かった

要はいちおつ
512 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/03(金) 17:18:49.00 ID:dbJnFVvY0
マジ乙
しかしふと思ったんだが、
一方さんの黒翼がセトの恩恵だとすると、
大戦時に見せたあの白い翼は
一方さん本人の強力な意志によるセトの恩恵のコントロールなのか?
ってことは大戦時に既に一方さんは少なからず神を操っていたわけだが
513 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/03(金) 17:31:08.38 ID:Mau9GFwSO
>>510
ワロタ
514 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/06/03(金) 17:41:29.99 ID:fAZLuIDHo
ガブリエル「fnggbr祝tined幸運sp人wxbmieryy」セト「」
515 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2011/06/03(金) 18:39:49.70 ID:UEuWLNnt0
リアルタイム初めてです!!
このSSで来れたのでよかったです!
516 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2011/06/03(金) 18:40:33.15 ID:UEuWLNnt0
追いつきましたぁ・・
517 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2011/06/03(金) 18:41:11.38 ID:UEuWLNnt0
追いつきましたぁ・・・
518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/06/03(金) 19:03:47.35 ID:sVS++rXM0
>>510
あと19999人くらい頼むわ。
519 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/06/03(金) 19:04:16.67 ID:sVS++rXM0
>>510
あと19999人くらい頼むわ。
520 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/06/03(金) 19:04:42.62 ID:sVS++rXM0
>>510
あと19999人くらい頼むわ。
521 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/03(金) 19:12:58.91 ID:ksNcAhgm0
連投乙
522 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/03(金) 19:14:17.79 ID:/2iWskLg0
>>520
59997人ですねわかります。
上条さんが自重するとこんなにもかっこいいとは…不覚。
523 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/03(金) 19:39:37.62 ID:3UVNb21+0
1乙
あえて手を引く上条△
そして神を三下呼ばわりしたり
頭が高いとか言っちゃう一方さんさすが
そしてエイワスの肩書きが変わりましたね!
アレイスター死亡フラグか…

三日以内といいつつもほぼ毎日更新だなんて…お疲れ様です
>>1にもセトの恩恵がありますように
524 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/06/03(金) 19:41:56.04 ID:sVS++rXM0
>>510
あと19999人くらい頼むわ。
525 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/03(金) 20:11:25.45 ID:tzoPPcZH0
連投バグとか盛り上がりとか諸々の影響でこのスレでも終わりそうにない気がしてきたww
526 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/03(金) 21:29:35.22 ID:/2iWskLg0
そしたら後日談に期待するだけさ…。
このスレで終わりっぽいスレタイのフラグもブレイクされるのか…。
527 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/03(金) 22:07:46.85 ID:VmApPcpQ0
まだまだ終わらせない…限度いっぱいまで行く・・・
垣根編を倍プッシュだ…
528 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/06/03(金) 22:18:15.82 ID:Xy/ikzW70
むしろエイワスの死亡フラグじゃね?
529 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/03(金) 23:40:16.07 ID:f/UlrqQIO
興味失ったらエイワス居なくなっちゃうんじゃね
530 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/03(金) 23:56:15.00 ID:2WmDMGd6o
うおおお滑りこみセーフ!
日付変わる前に投下始めますぞ!

前回、セトを追っ払って現場復帰した一方通行。
長引く戦いと神の乱入で疲労困憊している悪魔をぶちのめすにはもう今しかチャンスはねえ。
最後の決戦に挑みます。

一方、エイワスとアレイスターは……?そんな彼らの場面からお送りします。

では、いきます。ちょっと投下間隔遅いかもです
531 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/03(金) 23:59:39.18 ID:2WmDMGd6o


――――――――――――――――――――――


それは突然、大事な約束を反故にされたようなものだ。


昔から信頼していた友達に『またここで、必ず会おう』という
ドラマや漫画でもよく見られるような青臭いながらも信頼の証と取れる約束。

その約束がまた果たせる時がきた。条件も状況も素材も、
全てが整った最適な状態。あとは友達さえ来てくれれば約束は果たせるのだ。


なのに。なのに。


「・・・・・・・・・・・・『神浄』が、閉じて、いく・・・・・・・・・・・・?」


傍に巨大な黄金の鷹を召喚している魔術師、アレイスター=クロウリーの表情が
徐々に絶望に染まっていった。

532 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/04(土) 00:04:01.93 ID:W28y0uR3o


彼は神域に染められた、いや"染められていた"空を見上げながら体を震わせている。
歓喜による震えではない。失意に怯える震えだ。
上空に出現していた裂け目が、見る見るうちに収縮しているのだ。

セトの出現によって起きていた魔術師殲滅現象も時が止まったかのようにピタリと収まり、
星幽界から漏れ出していた大量の黒い霧も今や僅かすら舞っていない。


「な、ぜだ・・・・・・? 私の『プラン』に狂いはないはずだ。
 上条当麻の『幻想殺し』も、一方通行の『セト』も揃い、『神浄』は成るはずなのに・・・・・・!?」

「『プラン』に狂いはない? それはひょっとしてギャグで言っているのか?」


嘲笑うように、アレイスターの独り言に応える声があった。

エイワス。

天の川のように綺羅びやかに流れる金髪の髪を掌で撫でながら、
エイワスも『神浄』の終焉を冷笑の顔で見つめ続けている。

533 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/04(土) 00:06:35.50 ID:W28y0uR3o


「アレイスター。 ホルスに至る、という言葉の意味を君はまだ理解していない。
 君はホルスに辿り着いてなどいないし、上条当麻もこの聖域には来ていないし、
 ・・・・・・・・・・・・おや、セトもどうやら一方通行と結託したようだな」

「な、に・・・・・・?」

「セトは星幽界に還り、『幻想殺し』も現時点での『神浄』を良しとしていない。
 何度言ったら分かるのかね? アレイスター、君はとにかく"急ぎすぎ"なのだよ」


顔から冷や汗がドッと吹き出る。エイワスが、この金髪のクソったれがさっきから何を言っているのか
全く分からない。戦闘においては完全にアレイスターが優位に立っているにも関わらず、
なぜかエイワスの表情は勝ち誇ったようなそれになっている。


「・・・・・・仮に上条当麻と一方通行が使いものにならなくとも、私はホルスとしてこの世に顕現した。
 あなたにも見えているだろう、私の傍らに佇むこの黄金の鷹が!! あなたにも分かっているだろう、
 このホルスの圧倒的な力が!! あなたですら立ち向かうことすら出来ない、絶対的な存在なんだ!!」


アレイスターは必死で激昂するが、余裕の笑みが崩れないエイワスの前では
何とも無様で情けない姿にしか映らなかった。

534 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/04(土) 00:12:33.36 ID:W28y0uR3o


「人間にだって、世界にだって、神にだって都合くらいあるさ。 君はそれを無視した。
 君の都合だけで時代を次のステップを移そうとした。 それが君のミスだ。
 君のような所詮人間風情が、スケジュールを無理やり詰めて時代を変えようとすることが
 烏滸がましいのだと言っている」

「『ホルスの永劫』を迎えるための全ての事象の時間軸は把握してある!!
 あなたも私の『プラン』は知っているだろう? 私が本当に愚かで、タイミングを
 考慮していないのなら、私はあなたに出会ったあの日からすぐに『神浄』を迎えていた!!」

「その時間軸の把握と設定が間違いなく正しいという証拠がどこにある?
 本当に正しいと言っていいのは、『アカシックレコード』を全て掌握し、
 『ブラフマンダ』以前の『カオス』、・・・・・・ああ、『タート』と言ったほうが分かりやすいか?
 それらを全て観測してからだと私は考える」

「・・・・・・そんな事をしていたらこの地球は持たんぞ・・・・・・!!」

「時代を変えるという事は、つまりはそういうことだ。 歴史を変えるのとは
 ワケが違うんだよ。 ホルス、神に成ったとほざくのはそれからでも遅くはないさ。
 君の隣にいるその"鳥"は、君の願望の具現化に過ぎない。 神に成るとは、神に昇華するということだ。
 君自身が黄金の鷹にならなければ成り立たん。 だというのに君自身が今そこにいるのはおかしな話だろう?」


つまるところ、エイワスが言わんとしている事はアレイスターの『プラン』は
最初から綻びがあったという事だった。
人間に残された時間というのは悲しいほどに少ない。せいぜい一〇〇年生きていられるかという程だ。
そんなあまりにも、時代からすれば刹那に等しい時間で時代を変えるということがどれだけ愚かしいことか、
アレイスターは思い知らされる事になってしまった。

535 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/04(土) 00:18:21.74 ID:W28y0uR3o


「時代を変えるために私は科学に身を委ね、惨めたらしく寿命を引き延ばし、
 学園都市を設立し、私の最後の味方であった"彼"とも決別した。
 これだけの犠牲を払って、それでも『神浄』には至れんというのか・・・・・・!?」

「一見完璧に見える『プラン』も、突如発生するイレギュラーには弱い。
 『天使同盟』はもちろん、浜面仕上の存在もあるし上条当麻や一方通行の
 予想だにしない行動。 それらを全て予測した上で新たなる時代の幕開けは成る」


アレイスターは横に視線を投げる。
『神浄』を経て降臨したはずの黄金の鷹、ホルスという名の『幻想』が、
音もなく消えていく瞬間だった。
アレイスターがその"鳥"をホルスではないと僅かでも認めてしまったために。

さて、とエイワスが一歩足を踏み出す。アレイスターはひどく大げさに体を震わせた。


「とりあえず今日のところは諦めて、ラスボスはラスボスらしくボコボコにされてくれんかね?」

「・・・・・・私自身がホルスに到達出来なくとも、私にはまだホルスの『力』が残っている・・・・・・」


黄金の鷹を失っても、アレイスターの全身を包む黄金の光が消えるような事は無かった。
むしろエイワスという自身の最大の『敵』を前に、更に輝きを増している。
魔力でも『天使の力(テレズマ)』でもない天上の力が、アレイスターという泉源から溢れ出てくる。

536 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/04(土) 00:23:35.23 ID:W28y0uR3o


神にはなれなかったとはいえ、もはや人間という枠組みから完全に外れている
魔術師の怪物を前に、しかしエイワスは全く物怖じしない。


「アレイスター、やはり君は興味深い。 これから先の未来でも
 君を観測する価値は残っていそうだ。 ホルスの具現化などという
 面白い玩具も見せてもらったしな」


だが、とエイワスは元に戻りつつある空を見上げながら前置きして、




「・・・・・・そろそろ飽きたな、もう」




ゾクッ、とアレイスターの背筋に昏倒しそうな程の悪寒が走った。

飽きた。

この化物が口にすると、そんな些細な言葉ですら死刑宣告に聞こえてくる。


「『聖守護天使(アウゴエイデス)』を冠する存在……君が真に追い求めていたのは今の私ではなく、
 その聖守護天使としての私だろう? ………ふふ、"呼んでやるよ"」

537 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/04(土) 00:27:14.86 ID:W28y0uR3o


生唾を飲む音がした。アレイスターは無意識に喉を鳴らしていた。
掌に汗が滲んでいる。『期待』と『恐怖』の感情が鬩ぎ合って体の内が耐え切れなくなり
ブルブルと小刻みに震えている。


「君が丹誠込めて作ってくれたこのAIM拡散力場の私。 本来の私の力には
 遠く及ばないが、実にいい出来だぞ。 今回はこの私の体を依代にし、"私"を降ろす。
 『神浄』が完全に消え去る前の今なら可能だろう」


今ここでエイワスに何らかの攻撃を加えれば"それ"の降臨は恐らく止められる。
だがアレイスターはそうしなかった。降臨の儀を許せば自分はろくな目に合わないと理解していながら、
彼は決してエイワスには手を出さず、ただ眺め続けるという愚行に走った。

見てみたい。これがアレイスターに残っていた純粋な感情から出た想いだった。

初めてエイワスに遭遇したときは妻のローズを依代にしていたため、
エイワス自身を拝むことは叶わなかった。
いつか実際にこの目で拝謁したいと思っていた。今日この日まで、ずっと。

案外、アレイスターがエイワスに向けて送った『好意を抱いている』という言葉も、本当なのかもしれない。

538 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/04(土) 00:28:32.91 ID:W28y0uR3o


その時、世界各地で"二度目"の異常現象が発生した。
直径一〇〇メートル程までに縮んでしまった上空の裂け目から不思議な音が流れ始めたのだ。


それは、歌。聖歌のようにも聞こえるが、それよりも更に上位に位置する神々の宴。


全世界の空から流れる音源不明の歌に合わせて、エイワスは空を抱き締めるように
両腕を大きく広げた。
上空の裂け目から、まるで『ヤコブの梯子』のような光の柱が伸びてきて
舞台に上がった主演女優を照らすスポットライトのようにエイワスを包みこむ。


どうやらこれだけで降臨の儀は終了したようだ。・・・・・・見た目は"いつもの"エイワスと変わりないようにも見える。
思わず眉をひそめるアレイスターを無視して、エイワスは満足気な表情を見せながら口を開いた。

その言葉は、アレイスターが魔法名を名乗った時の自己紹介にも似ていて――――。


「"久しぶりだな"、アレイスター。 私は――――――、」


と、


バキャキャビキビキビキッッ!!!!!!!! という、とんでもなく派手な音が鳴り渡った。
見るとエイワスの全身に蜘蛛の巣が更に複雑になったような激しい亀裂が入っている。
エイワスはせっかく作った陶器作品を誤って割ってしまった女の子のように眉を八の字に曲げて舌を出しながら、

539 :っしゃああ!書き込み失敗地獄から抜けだしたズェア! ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/04(土) 00:30:46.53 ID:W28y0uR3o


「・・・・・・おやおや、申し訳ない。 やはりこの程度の『器』では持たないようだ」


鼓膜を貫通してそのまま脳漿が弾け飛ぶような爆発音を放ち、"エイワスという依代は爆散した"。
そして、粉々に砕け散った器から出現したのは。





「お、お――――――」

「ynacab聖ngxyctgiyfsuyg見―――、gttzcbrjdtc死xcaksgzcx」





アレイスター=クロウリーはこの日、ついに悲願を達成した。
自身に必要な知識を全て授けてくれた、愛しい愛しい『女神』との拝謁を。

説明不可能の何らかの攻撃を受けて、
自身の肉体から芸術的なほど美しく吹き出る血雨で視界を染め上げるその瞬間まで。


人間と聖守護天使。その勝敗など、見極めるまでもない。

540 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/04(土) 00:33:41.71 ID:W28y0uR3o


――――――――――――――――――――――


微弱な魔力でも身に宿っていたほうがまだマシだな、と後方のアックアは
セトに吸収されていた魔力が元に戻った事によって改めてそれを再確認した。

黒いコスチュームに身を包んだ兵士が数十メートル上空へ薙ぎ払われる。
垣根帝督を"回収"するためだけに構成された特殊部隊『回収部隊(アンチツヴァイ)』が、
どこからともなく現れたオカルト集団の手によってついに全滅した瞬間だった。


「・・・・・・やはり聖人としての力を失ってはアスカロンを扱うのは容易ではないのである。
 そちらは全て片付いたか? ヴェント」

「アンタ誰に向かって言ってんの。 つーかさぁ、あんまり私に近づかないでよ。
 そんなガタイで汗まみれで・・・・・・むさいったらありゃしないっつーの」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


そう言われて心なしションボリとした表情を浮かべる後方のアックアの岩壁のような逞しい背中に寄り添うように、
彼の背後には前方のヴェントが片手にハンマーを担ぎながらうんざりとした顔を貼りつけていた。

541 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/04(土) 00:36:00.85 ID:W28y0uR3o


「まだ怒っているのであるか。 さっきから謝罪しているだろう。
 大体貴様のその雰囲気の変わり様に一体どれほどの者が気付けるというのであるか」

「またアタマ叩き潰してあげようか?」


どす黒いオーラを放ちながらニッコニコの笑顔でハンマーを振りかぶるヴェントから
そそくさと退いていくアックア。
そんな『前方』と『後方』が繰り広げる右席漫才を聖人の神裂と騎士団長は呆れた様子で眺めていた。


「この状況下でじゃれ合う余裕が生まれるほどのタフな精神とは・・・・・・
 恐らく樹齢一〇〇〇年を誇る大木よりも図太いのでしょうね」

「貴女でもそのような冗談を口走るのだな。 ・・・・・・しかし、黒い霧に
 魔力を持って行かれた時は肝を冷やしたぞ。 手紙に記されていた『十字教の終焉』の意味が
 今更になって理解できた。 ウチの姫様は・・・・・・まあ悪魔相手でも生き延びていらっしゃるだろう」


言いながら、騎士団長は頭から流れてきた血を鬱陶しそうに拭う。
ヴェントもアックアも神裂火織も騎士団長も、セトの支配下に収められ魔力を失った時は
『回収部隊』相手にかなり手こずったが、今はもう心配いらないようだ。

542 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/04(土) 00:36:55.96 ID:W28y0uR3o


空を見上げる。魔術サイドの人間の視点から見ても不可思議な現象だった巨大な裂け目が
今や目を凝らさなければ見えない程にまで縮小していた。

と、そこでまたしても不可思議な現象。天空から人語ではない不思議な言葉で
歌のような声が流れてきたかと思ったら、小さな裂け目から光の柱が漏れる。


直後、耳を劈くような破裂音が空気がビリビリと震わせた。
何が起きるかと四人は警戒していたが、その後はウソのようにしんと静まり返るだけだった。


どうやらどこかで、とてつもなく壮大な戦いが一つ、終結したらしい。


「・・・・・・今のは、『天使の力(テレズマ)』? いや違うな・・・・・・何だ?
 あのように莫大な力は未だかつて感じたことがないが・・・・・・」

「気にしている暇はありません。 とにかく『回収部隊』は粗方片付け終えました。
 もう襲ってこないというのなら、私達も急いで一方通行達の下へ向かいましょう」

543 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/04(土) 00:38:06.09 ID:W28y0uR3o


「白いの、まだ生きてんのかしら」

「イギリスから遥々足を運んできたのだ、大量のグリフォン=スカイを失ってな。
 ここまで来て死んでしまいましたでは困るのである」


原因不明の黒い霧もすっかり晴れ、彼らの視界を阻害する要素は無くなっていた。
アレイスターとエイワス、そして『回収部隊』との戦いも終わり、残るはただ一つ。


「『天使同盟』を救いましょう。 彼らには"貸し"も"借り"もあります。
 このまま有耶無耶でお別れという訳にもいきません」


神裂の言葉に皆が頷いた。
ヴェントも面倒くさそうにため息をつきながらも彼らの意向に賛同する。


『ゲーム』開始からどれほどの時が過ぎただろうか。


一方通行達が繋げた『輪』が、再び集結していく。

544 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/06/04(土) 00:39:01.98 ID:J9+NajUYo
指向性をもった信仰を集めてもそうそう降ろせないものを
230万人程度の妄想の垂れ流しに降ろすのは無理だろ
エイワスさんも意地が悪い
545 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/04(土) 00:40:26.10 ID:W28y0uR3o


――――――――――――――――――――――


同じ頃、垣根帝督に肩を貸しながら一方通行達の下へ向かっていた
ステイル=マグヌスも一つの巨大な戦いが終わったことを感じ取っていた。


(・・・・・・アレイスター、エイワス。 恐らくは聖守護天使に軍配が上がったのだろうね。
 でなければ今頃、十字教は終わりを迎えてる)


そしてエイワスは通常通り健在しているのだろうなと思うと、
あまりの忌々しさに思わず唾を吐き捨てそうになる。
人間を玩具のように扱い、あまつさえ『天使同盟』とは何の関わりもないインデックスをも巻き込んだ
あの金髪の怪物が、ステイルにはどうしても味方だとは思えなかった。

例として、エイワスの手によって生み出された悲劇の被害者がステイルのすぐ傍にいる。

垣根帝督。学園都市第二位の超能力者にして、『天使同盟』の構成員。

彼は『禁書目録』に自由自在にアクセスできる『自動書記』の遠隔制御霊装を
片手に握り締めながらブツブツつ独り言を呟いていた。

546 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/04(土) 00:43:55.77 ID:W28y0uR3o


「・・・・・・『ロンギヌス』に『グングニル』、『ブリューナク』に『ゲイボルグ』・・・・・・。
 俺の想定しているもんとは少し違うが、『天鹿児弓』とか『天羽羽矢』も悪くねえな。
 ・・・・・・ったく面倒くせえ。 俺のプロフィールの趣味の欄に『読書』が追加されることは
 永遠にねえだろうな・・・・・・・・・・・・。 一生分の読書をした気分だ」

「何か策は見つかったのか」


虚ろな目で、霊装を使用している反動で今も頭から血を流し続け、
『禁書目録』の毒による凄まじい頭痛に襲われながらも天使を救う術を模索する垣根帝督に、
ステイルは顔をしかめながら尋ねた。

ステイルはもう、垣根を止めない。止める事は出来ない。
例えそれがインデックスを悲しませる事になっているとしても。
ステイルにはこの垣根という男の気持ちが、痛いほどよく理解出来てしまったから。


「・・・・・・・・・・・・ちょっと、止まれ」


ステイルの質問を無視して、垣根はステイルの肩から身を離す。
垣根は足をもつれさせながら少しだけ歩くと、背中から『未元物質(ダークマター)』の翼を現出させた。

547 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/04(土) 00:46:08.12 ID:W28y0uR3o


「どうするつもりだ?」

「あー・・・・・・・・・・・・。 頭痛え・・・・・・あぁ・・・・・・、ええっと・・・・・・。
 『ベツレヘムの星』に施された・・・・・・防御術式の性質から逆算して、・・・・・・」


低い唸り声を発しながら垣根は六枚の翼の内の一枚を複雑に動かす。
すると、徐々にその羽根が羽根とはかけ離れた姿に変貌していった。
彼が何をしているのかステイルには分からず、ただ黙ってその行為を見つめるしかなかった。


「・・・・・・・・・・・・ッ。 ご、ぼっ・・・・・・!! ・・・・・・おぇ、」


ビチャビチャビチャッ! と口からもう何度目かも分からない吐血をする。
このままでは本当に出血多量で死んでしまう可能性があるが、それでも魔神は止まらない。
不自然な闇に彩られた夜空を仰ぎながら、一枚の羽根を変形させる作業に努める。

548 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/04(土) 00:47:33.15 ID:W28y0uR3o


「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・。 ・・・・・・こんなもんだろ。
 これで、俺達はまた元通りに・・・・・・」

「・・・・・・これ、は?」


一体どのような演算を行ったのか、垣根は変形作業を終えた純白の羽根を背中から分離させる。
そして一〇万三〇〇〇冊の魔導書と科学による未知の力を複合させた代物を片手に携えた。

それを見たステイルが、意図せず言葉を漏らす。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・『槍』・・・・・・?」


それは、一本の槍だった。
全長一五メートルくらいだろうか。それが鉄製ならかなりの重量があるはずなのだが、
垣根の様子からしてあまり重みがあるようには見えない。

ただ、ステイルはその槍を作った事や槍自体より、槍に施された『装飾』に驚いた。

549 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/04(土) 00:48:43.35 ID:W28y0uR3o


「これで、ミーシャ=クロイツェフが救えると?」

「・・・・・・これだけじゃ、足りねえ。 クソ忌々しいが、結局最後はあのクソ白髪に
 託さねえと救出は成り立たねえんだよ。 ・・・・・・・・・・・・俺はその橋渡しだ」


それだけ言うと垣根は槍を片手に再び危なっかしい足取りで歩き始めた。
ステイルが慌てて駆け寄るが、その時前方一キロ程先で大きな爆発音が飛んでくる。


「あそこだな」

「・・・・・・・・・・・・待ってろよ、ちくしょう」


このまま進めば恐らく一方通行達の下へ辿りつける。
垣根はステイルの肩を借りて、『希望』と『想い』を詰めた槍を"友達"に託すために歩いて行った。

550 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/06/04(土) 00:52:20.11 ID:dylx16Si0
興奮してきたお
551 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/04(土) 00:55:28.33 ID:W28y0uR3o
ちょっと短いですがここまでです。

>>544
原作ではさらにAIMを拡散させて……なんて事もしそうではありますけどねww
まぁここでは関係ないか……仰るとおり所詮はAIMです。

『回収部隊』が幽遊○書の爆拳みたいなやられ方をし、アレイスターはひとまず片付きました、多分。


次回、一方通行御一行vs悪魔もついに決着。次の投下でこのSSの戦闘パートがすべて終了します。


次回更新は三日以内。

それでは、今日は投下間隔が遅くて申し訳ありませんでした。失礼します!

552 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/04(土) 00:56:24.52 ID:W28y0uR3o



                          【次回予告】



『じゃあな。 俺の天使は返してもらうぞ』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・一方通行(アクセラレータ)



553 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/04(土) 00:56:37.19 ID:RsKhyfFSO
>>1
554 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/04(土) 00:57:45.38 ID:ugeE8W7ho
深く乙!
最近次回予告がカッコよすぎる
555 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/06/04(土) 01:00:10.98 ID:4oj9X+neo
乙乙
一方さんが俺の天使、というとマイエンジェル打ち止めちゃんに見える不思議!
556 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/04(土) 01:02:02.97 ID:3sT9rI5No
乙!
俺の女宣言入りましたー
557 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/04(土) 01:12:13.15 ID:fAAmi1If0
乙ゥ!
結末に向かって加速している。
うれしいような、さびしいような、そんな気持ちだぜ。
558 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/04(土) 01:21:31.74 ID:DROhh5se0
>>557に激しく同意する。全身血が滾るんだけどどこかで血が引いていく、みたいな?
とにかく乙ですの!


しかし予告の一方さん…
俺の天使… 俺達の、じゃなくて、俺の天使…
559 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/04(土) 01:21:52.24 ID:wF3dxJ3S0
乙!!
いやいや、>>1さんは絶倫ですって。これで遅いだなんてことはありませんよ。

俺の天使発言来たな
560 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2011/06/04(土) 03:17:08.35 ID:NQ2Oye9AO
あぁ もうすぐ本当に終わりが近づいてきてるんだな・・・
561 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/04(土) 03:36:35.37 ID:Q7WFv+Jz0
乙なのよな

ていとくん、死の淵に居るのが普段着みたいになってきたな…
原典読み漁ってるのに口調普段通りに戻ってるし
562 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/04(土) 03:48:55.64 ID:/otYLYRb0
乙!アレイ☆の報われない片思いっぷりが可哀相で泣けた・・・
ていとくんの格好良さの上昇っぷりがパネぇっす
563 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/04(土) 11:08:02.10 ID:OKyYm4dx0

ていとくんがかっこよすぎて
もうていとくんなんて軽々しく呼んでいいのかしら
戦闘パートが終わってほのぼのが戻ってくるといいな…
564 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/04(土) 11:19:59.25 ID:t+fNUzNho
ていとくんはもうていとさまだな!
565 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/06/04(土) 11:24:13.60 ID:WZ4g66cAO
ていとちゃん?
566 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) :2011/06/04(土) 13:17:48.38 ID:mHI2Qf/I0
ていとの?
567 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/06/04(土) 13:34:54.70 ID:OxHpzDKw0
何故ageるんだ
568 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/06/04(土) 15:02:12.17 ID:s9BAjoQAO
この後「俺の天使」が誰なのかを巡って凄絶極まる女の争いが
569 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/04(土) 15:11:33.65 ID:8/2WaJlOo
やはり聖守護天使であるエイワスではないだろうか
570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/04(土) 15:24:10.94 ID:JfbfBlod0
打ち「私のことだよねってミサカはミサカはあなたを左右に激しくゆすぶりながらきいてみたり!」
シーモンキー「はあ?なにいってんですかこの私に決まってますよ!」ユサユサ
ミサワ「どうでもいいんだけどさー、もやしのことそんなにゆすったらおれちまうんじゃねえのぉ?ギャハッ」
バナナ「同感同感。つーか白いのはこんなちびっこまでたぶらかしてるわけ?」
キャーリサ「ロリコンなんだし。」
ガブリエル「xyctgiy彼tzcbrjdt私asjdhf」
ドラ「残念だったな。今は私のことだろう。」ポッ///


ヒューズ「う☆る☆せ☆え☆よ」ニッコリ
一同「」

こういうラストですか。わかりますん
571 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/04(土) 15:38:31.25 ID:b2jlTbcSO

次回に戦闘が終了=ラブコメ再開!?
572 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/06/04(土) 21:25:11.40 ID:7HLFnLVz0

「俺の嫁」ならぬ「俺の天使」発言きたな


ここまで誰一人として爆散したアレイ☆に触れてないwwww
573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/06/04(土) 21:29:19.86 ID:uxf1q8wto
だってホムンクルスだし
多分本体はビーカーの中だし
574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/06/04(土) 23:16:52.27 ID:YY6VAu6k0
>>1
ところでめちゃくちゃ前にエイワスが言われて研究所かなんかに行った女子寮の皆さんはどうなったのだろうか
なんか「これが後に一方通行の心の支えになるとは」みたいなこと言ってた気がするのだが・・・
575 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/04(土) 23:34:42.94 ID:W28y0uR3o
ここまで残業が長引くとは……今日ばっかりは本当にしんどかった……

だが投下はするのだぜ!

そんなわけでこんばんわ、死力を尽くして投下していきますよー。
今回はいよいよ悪魔との最終決戦、果たして一方通行は悪魔を下し、天使に戻すことが出来るのか。
そんな感じで参ります。

では、よろしくお願いします。
576 :この時間帯はハイパーエラータイムだった……  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/04(土) 23:36:49.89 ID:W28y0uR3o


――――――――――――――――――――――


一方通行と風斬氷華の奮闘、英国第二王女キャーリサの参戦。
そしてこの戦い最大のイレギュラー要素であるセトの乱入によって、
悪魔は限界ギリギリの窮地に立たされていた。


「うゥォォォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!!!!!!」


白と黒が犇めき合う莫大な力を秘めた一方通行の翼が、悪魔を薙ぎ払う。
翼を無くした悪魔はすぐに体勢を整えて反撃に出ようと試みるが、
後続の人工天使とカーテナを振るう王女がそれを阻害する。


「ッ!?」

「今、悪魔の輪郭が"揺らいだ"・・・・・・!?」


悪魔に追撃を放った二人は確かにその目で見た。
毒々しくて禍々しい色で染まった悪魔の肢体の輪郭が、ろうそくに灯った頼りない炎のように揺らめいた瞬間を。

そしてその揺らめきの中に一瞬だけ確認できた、ミーシャ=クロイツェフと呼ばれる『天使』の姿を。

577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/06/04(土) 23:36:51.00 ID:8SeEitQzo
カモン
578 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/04(土) 23:38:39.54 ID:W28y0uR3o


「天使さん・・・・・・!!」

「あの野郎、まさか"中"で・・・・・・!?」


それは一方通行だからこそ漠然と思えた。
もしかしたらミーシャも、悪魔というもう一人の己の中で必死に抗っているのかも知れないと。
悪魔と戦っているのは一方通行達だけではない。


(もォ少し・・・・・・あともォ少しだ・・・・・・!!!)


もうここまで来たら人間では天使には勝てないとか悪魔には敵わないとか、
この時代が決めつけた勝手な常識などに構う必要はない。
ゴリ押しだ。攻めて攻めて、ひたすら攻めて悪魔というクソったれをぶちのめし、
ミーシャという天使のクセに人間の事を想う大馬鹿野郎を救い出す。

だが、それでも相手はまだ悪魔。
悪魔は神に反旗を翻し、人間という存在に絶望という贈り物を届ける者。


「・・・・・・・・・・・・gyurtyhKIUCDTYGgudjxfwhtrfziapdshLSMNBYwhxhb」

「ッ。 またあの流星雨か!!?」

579 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/04(土) 23:40:03.45 ID:W28y0uR3o


「ヤバいの。 グリフォン=スカイが"誰かさんのせいで全滅した"今、
 神戮をやられたら私達仲良く揃って挽き肉コース直行だし」

「うるせェな、知らねェってンだよ!!」


こんな時でもくだらない掛け合いをしながら、彼らは上空を睨んだ。
星が煌く。グリフォン=スカイの大群は微々たる盾だったとはいえ
神戮の軌道を僅かに逸らし、効果範囲から退避する時間を稼いでくれた。

だがそんな盾も今はセトの咆哮による黒雷で消滅してしまっている。
避ける術はおろか、軌道を逸らすことも出来はしない。

ならば残された道はただ一つ。地球を焦土に変えてしまう程の天の一撃に正面から立ち向かうしかない。


「風斬!! キャーリサ!!! オマエらは離れてろォ!!!!!!」


二人にそれだけ叫ぶと、一方通行はその場に留まって地面に膝をついた。
無論、そのまま頭を下げて悪魔に降伏宣言をするつもりではない。
彼は全意識を右手に集中させ、拳を地面に沈める。


(・・・・・・悪ィが地球よ、ちっとばかし力ァ借りるぞ!!)

580 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/04(土) 23:41:15.37 ID:W28y0uR3o


ドクン、と。大地が脈打ったような気さえした。
『天使同盟(アライアンス)』は一体どこまで地球に迷惑をかければ気が済むのかと激昂しているように。

一方通行は九月三〇日に自分が行ったあの演算を思い出していた。
地球の自転エネルギーというベクトルを操作し、それこそ悪魔も泣いて逃げ出すような
莫大な力を一点に集中させてぶつける禁断の一撃。
惑星一つのエネルギーなら、あるいは神戮に対抗出来るのではと考えたのだ。


("コイツ"をそのまま放っちまったら攻撃の余波で世界がとンでもねェ被害に遭っちまう。
 あの流星雨だけを仕留めるよォに、強大でかつ緻密な演算をするンだ・・・・・・・・・・・・!!
 脳が焼き切れても構わねェ、だがここだけは・・・・・・・・・・・・)


脳がオーバーヒートしてしまうのではないかというくらいに
彼は超繊密な演算を必死で行う。

しかし悪魔がそれを黙って見ているわけがない。
凹凸で表現された口を蠢かし、一方通行達に最後通牒を言い渡した。




「命令名『一掃』、投下。 ――――――――去ね」



581 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/04(土) 23:42:24.27 ID:W28y0uR3o


ノイズの無いハッキリとした口調でそう言い放つと同時、夜空が瞬いた。
これまでにない最大規模の質量の数億の神戮が、一方通行達がいる範囲限定に凝縮されて襲いかかってくる。

だが顔に大量の冷や汗を流しながらも、一方通行は口を三日月のように裂きながら笑っていた。

神戮に地球という力が真っ向から立ち向かう。




「吹っ飛べェェェェェェええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!」




鬼のような咆哮を轟かせながら一方通行は地面に埋め込んでいた拳を一気に引き抜いた。
アッパーカットの要領で引き抜かれた拳から放出された自転エネルギーは、
空気というよりも空間を切り裂くように夜空へ突進していく。

582 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/04(土) 23:45:01.95 ID:W28y0uR3o


一方通行の放った一撃と悪魔の神戮は上空一〇〇〇〇メートル辺りで衝突した。
その炸裂音は地上にも届くほどで、その爆風は綺麗なリング上となって周囲に散っていく。
一方通行の懸命な演算により、神戮との衝突で気候等に影響が出ることはなかった。

が、一方通行達のいる第一九学区はその限りではない。


「・・・・・・ほ、星が・・・・・・!!!」


風斬が慌てふためくのも無理はない。
阻止できたと思った炎の矢は彼女たちがいる地形一帯に降り注いできた。
絶え間なく続く神戮の激突音が鼓膜を乱暴に震わせる。


しかし、それだけだった。神戮が彼らの命を奪うことはなく、
ただ第一九学区の地殻を少し破壊するだけに留まっていた。


「―――――――――――、」


悪魔の動きが止まる。一方通行の一撃は見事に神戮の威力を拡散することに成功していた。

583 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/04(土) 23:47:58.73 ID:W28y0uR3o


「・・・・・・信じられないし。 これが超能力・・・・・・?」


キャーリサが目を丸くして驚愕する。彼女が学園都市第一位の真の実力を見るのはこれが初めてだった。
かつてイギリスのクーデターの時も学園都市から一人の少年が妙な右手と一緒に来訪してきたが、
あの右手とはまた違った概念の力を目の当たりにし、彼女は最強の超能力者の認識を改める。


「・・・・・・まだだ」


一方通行がそう呟いた瞬間、神戮を防がれた悪魔がこの世のものとは思えない絶叫を上げながら
彼に向かって駆け出していた。
神戮という最後の切札を無くした悪魔に出来ることは、純粋な力で障害をねじ伏せることだけ。

だが咄嗟に気持ちを切り替えたキャーリサと風斬が己の手に持つそれぞれの剣で
悪魔を食い止める。
風斬の光の剣が引きちぎられる。キャーリサのカーテナが弾き返される。
しかし、"それで充分だった"。


一方通行もまた、突貫してくる悪魔に向かって大地を駆け抜けていた。
片腕を下げ、掌を地面に埋めて引きずりながら。

再び地球から自転エネルギーを拝借するために。

584 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/04(土) 23:52:16.17 ID:W28y0uR3o


悪魔と一方通行の拳が交差する。第一位の顔に風穴を空けんと飛んできた拳を
彼は背中の翼で防御する。
そして一点に凝縮された自転エネルギーが込められた拳を何の躊躇いもなく
悪魔の顔面に突き込んだ。


グチャリ、と生肉を物理的に叩く生々しい音が響く。
惑星のエネルギーをまともに喰らった悪魔はとてつもない勢いで地面と並行に吹き飛んだ。
数百メートルまで飛距離を伸ばしてもまだ一度も地面に着かない程の勢いだった。

そんな状況で辛うじて悪魔が首を動かす。

視線の先には、吹き飛ぶ悪魔を戦闘機のような速度で追走する白と黒の怪物の姿があった。
そしてやはり彼の拳は自転操作のためか、地面を抉るように埋まっていて――――――。

585 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/04(土) 23:55:08.84 ID:W28y0uR3o






「じゃあな。 俺の天使は返してもらうぞ」






タンッ、と軽く地面を踏んで一方通行は跳躍した。

そして先程の展開をリプレイするように、一方通行の渾身の一撃が悪魔の顔面に突き刺さった。
彼の拳は悪魔ごと地面に達し、そのまま地面の中に沈んでいく。
一定のリズムで発せられる衝撃音と共に、地面に何層ものクレーターが出来上がっていった。
悪魔の全身が不気味に痙攣する。一方通行の拳はまだ悪魔の顔面から離れない。

遅れて、クレーターを中心にコンクリートの粉塵が吹き荒れた。
粉塵は加速度的に辺り一面を覆い隠し、風斬とキャーリサの視界を遮る。


「ど、どーなった・・・・・・!?」

「けほっ、けほ・・・・・・!! わかりません、ここからじゃよく見えなくて・・・・・・」

586 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/04(土) 23:57:55.71 ID:W28y0uR3o


その時、彼女たちに道を明け渡すように灰色の粉塵が不自然に流れていった。
どこからともなく吹いてきた風によって粉塵は数秒も経たず綺麗サッパリ運ばれていく。

ゴトン、という重量感溢れる音がした方へ二人が振り向くと。


「ハッアァーイ・・・・・・って、これどういう状況?
 白いのと天使は・・・・・・? って、うわ。 ホントに第二王女もいるじゃねえか」

「・・・・・・ヴェントさん・・・・・・!」

「おー・・・・・・お疲れ騎士団長。 ウィリアム。 ・・・・・・おや、『清教派』も一緒だったの」

「お久しぶりです。 キャーリサ第二王女」


そこには決して無事な状態では無かったものの、『天使同盟』と交流を深めた
魔術師たちがいた。
ヴェント、アックア、神裂火織、騎士団長。


彼らの姿を見た風斬は感動の再会に打ち震える前にペタンと、その場で安堵の尻餅を着くのだった。

587 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 00:03:36.55 ID:kzLIOaUKo


――――――――――――――――――――――


この沈黙が、逆に一方通行からしたら鬱陶しいほどの騒音に思えた。


彼は地下数十メートルの断層で一人佇んでいた。
断層の壁からはへし折れた鉄柱が飛び出ていたり、割れた水道管から水が滴り落ちている。
時折地面の破片が小さな音を立てて崩れ、足場はひどく不安定になっている。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


一方通行の視線の先には、仰向けになって倒れている何かが居た。


それはかつて悪魔という名の暴徒に成り果て狂気に乗って暴虐の限りを尽くしていた者。


大天使、ミーシャ=クロイツェフ。


全演算能力と全精神力、そして元々あまり蓄えられていなかった体力をほとんど吐き出して、
学園都市最強の超能力者、一方通行は数々の助力を得ながら悪魔を討つ事に成功した。

588 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 00:05:44.90 ID:kzLIOaUKo


一方通行は電極チョーカーのスイッチをオフに切り替え、浅い息を吐きながらふらふらとした足取りでミーシャに近付いていく。
杖はとうの昔にへし折れ、足場がひどく崩れているため、たまに突起に引っかかってコケたりしながらも
彼は一心不乱に天使の下へ歩み寄っていった。

倒れているミーシャの傍まで接近すると、一方通行は魂が抜けたように
その場で膝を折って屈んだ。
ミーシャの肢体は悪魔の時のような黒ずんだ色ではなく、天使の頃の
美しい白色に戻っていた。

これで悪魔を追い払ったことにはなっただろうが、その肉体はミーシャのものであるため
一方通行の攻撃によるダメージと自我の崩壊と暴走により消耗でこのままミーシャが消えてしまってもおかしくはなかった。
その不安要素が、彼の胸を潰さんと圧迫する。


しかし、そんな懸念は不要だった。

589 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 00:09:05.60 ID:kzLIOaUKo




「・・・・・・・・・・・・・・・・・・igs貴方pdif」




その声を聞いた瞬間、一方通行は深い深い溜息をついて仰向けに倒れた。

天使は無事。悪魔を取り除き、天使だけを残すという快挙は達成された。
吸い込まれそうな闇が広がる夜空を見つめながら、一方通行は心の底から思った事を呟いた。


「・・・・・・・・・・・・良かった」

「―――――――――、」

「良かった・・・・・・あァ、良かった。 ちくしょう、クソったれが・・・・・・。
 ざまァみやがれこの野郎・・・・・・・・・・・・。 く、かか・・・・・・!」

590 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 00:11:26.75 ID:kzLIOaUKo


声は震えていた。涙は、流れない。ミーシャが真相を告白した時に流し尽くしたのだろうか。
しかし彼の表情は非常に清々しい、歳相応の無垢な笑顔で彩られていた。


「・・・・・・・・・・・・痛かったろ。 遠慮無く本気でぶン殴らせてもらったからなァ」

「mvhrei平気opxuy大丈夫xafujddh」

「ハッ・・・・・・、やっぱ何言ってンのかわかンねェンだよ、バーカ。 くく・・・・・・」


何が可笑しいのか自分でもよく分からなかったが、彼は頻りに笑い続けた。
嬉しさや安堵感、達成感がゴチャ混ぜになった感情を吐き出すようにただただ笑い続けた。
人間、何もかもが空っぽになったらこんな風に笑ってしまうものなのだろうか。

ミーシャはよろよろと体を起こし、笑い続ける彼の頬を優しく撫でる。


「csuf貴方swqih」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・あァ?」

「ありがとう」

「・・・・・・・・・・・・『これからもよろしくね』が抜けてンぞマヌケ」

591 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 00:13:05.97 ID:kzLIOaUKo


と、仰向けの一方通行の視界に逆さまな視点で人影が映った。
それはひび割れた眼鏡越しでも確認できるほど大粒の涙を流しながらやってくる、
一方通行をずっと支え続けて来てくれた『天使同盟』に欠かせない人材。


「couv氷華otvbs」

「天、使さん・・・・・・・・・・・・、ううぅ・・・・・・!!」


風斬氷華は五体満足のミーシャを見るやいなや、一直線に断層を駆け下りて
水の天使を思い切り抱きしめた。
嗚咽が混じって何を言っているのか分からない人工天使を見て、天使も人工天使も似たようなモンだなと
一方通行は苦笑する。


「うっ・・・・・・うう・・・・・・ぐすっ。 良がっだぁ・・・・・・本当に・・・・・・ふええぇ・・・・・・」

「uyoanm大丈夫aqvpcmye」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


そんな天使達の抱擁を眺めていると、一方通行の脳裏に漠然とした新たな懸念がよぎる。
よく考えてみれば、この天使の救出という『天使同盟』最大のミッションはまだ終わってないのではないか、と。

592 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 00:24:05.51 ID:kzLIOaUKo
>>573
従来のホムンクルスの作り方とアレイスターのホムンクルスの作り方は異なるみたいですね。
アレイスターは本当に性魔術が好きだな……どんだけヤリたいのかと。

>>574
覚えてくれてる方がいなかったらどうしようとか思ってました……ww


はい、今日も短いですが以上です。書き込み全部エラー吐いてワロタwwこの時間帯は避けるようにしなくちゃ……
ようやく悪魔を払い、天使に戻すことが出来ました。おかえりミーシャ

そしてこれにて、本編の戦闘パートは全て終了となります。もうバトルありません。

が、まだこれでミーシャを救えたことにはなりません。まだ重大な問題が残っています。
一方通行が考えるミーシャの真の救出方法とは。そんな感じの次回です。


次回更新は……もう今日でいいや。


では、ありがとうございました!
593 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 00:25:40.35 ID:kzLIOaUKo



                          【次回予告】



『・・・・・・まだ「星の欠片」の件が残ってンだ。 ガブリエルもそれが分かってて、この夜空を元に戻してねェンだろ』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・一方通行(アクセラレータ)




『投擲って、何を投げるの』
―――――――――――英国三派閥の一つ『王室派』第二王女・キャーリサ




『「星の欠片」の正確な位置って・・・・・・どうやって調べればいいんでしょうか・・・・・・?』
―――――――――――『天使同盟』の構成員・風斬氷華




『仮に投擲物も「星の欠片」の位置の問題も解決したとして、誰がそんなモンを
 宇宙まで投げ飛ばすのよ。 ハンマー投げか槍投げの世界ランカーでも今から呼んでくるワケ?』
―――――――――――ローマ正教、禁断の組織『神の右席』の元一員・前方のヴェント



594 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/05(日) 00:27:05.66 ID:Z3piTTXK0
>>1
ミーシャ・・ほれてまうやろ
さて今日も一日頑張ろう
595 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/05(日) 00:27:14.59 ID:SG1yhf7ro
深く深くおつ!
ガブリエルが取り敢えずもとに戻って安心!
596 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/05(日) 00:27:58.42 ID:PZO2K4mL0
乙です!!
>・・・・・・悪ィが地球よ、ちっとばかし力ァ借りるぞ!!
元気○が頭に浮かんだのは俺だけじゃないはず
597 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/05(日) 00:35:17.46 ID:0EY2cP7wo

自転エネルギーの大バーゲンやー
598 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/05(日) 00:40:08.08 ID:Lfikr/nhP

そういえば自転パンチやってなかったな
599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/06/05(日) 00:40:59.58 ID:kkbahFJ9o

次回も楽しみにしてるよ
600 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/06/05(日) 00:44:13.40 ID:7utUvmlH0
>>1

>ハンマー投げか槍投げの世界ランカー
ていとくん早く…早くきて…!
601 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2011/06/05(日) 00:49:29.74 ID:RofhmzCL0
えっと、天使は神の命令を受信する装置で、悪魔はその通信が混線したもんだったから…。
この超能力者、あれか、古いテレビと同じ要領で天使治しやがったのか
602 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/05(日) 00:52:17.63 ID:VwL3mwja0
乙乙!
自転パンチ万能過ぐるwww

ていとくんが丹精込めて創り上げた槍を一方さんが自転パンチの応用で夜空に向って投擲するんですねわかりますん
603 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/05(日) 01:14:20.58 ID:3ODoIYBc0
こんなに自転操作したら地球が大変なことに・・・ってうわなにをするやめろくぁwせdrftgyふじこlp
604 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/06/05(日) 01:50:35.25 ID:/Urokmef0
これはもう、地球も一通さンに惚れてなきゃ許されないレベルだろww
605 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/05(日) 01:54:04.56 ID:YtcK0vXTo
次回予告見るまであれ?ていとくん無駄足?とか思っちまった
宇宙まで槍投げというとエヴァに倣ってロンギヌスか
606 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/05(日) 01:58:29.81 ID:3oGUCFv7o
その内公転エネルギーまで使い出しそうで怖いな。
で円運動がずれて太陽へ……
607 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2011/06/05(日) 08:29:44.07 ID:86CCu4Np0
>>601
おい
いきなり話が世界全体を巻き込むレベルからご近所の家庭のトラブルレベルになったじゃねぇかww
608 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/06/05(日) 09:09:17.97 ID:f6wGfLcAO
>>605
自転アッパーでていとくん打ち上げるんじゃないのか
609 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/05(日) 10:02:56.59 ID:TIzYrtDSO

このスレも六割を切ったけど終わるのかな
610 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/05(日) 12:03:10.64 ID:ICSAyfgDO
弾がていとくんの槍

射出台がビリビリ

位置調整と射出速度をベクトル操作の一方さん

三位一体の砲撃を想像した
611 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/05(日) 12:16:43.84 ID:RNS46pUIO
>>610
アレだ。戦隊ヒーローみたいに五人ででっかいバズーカ抱えて「天使同盟砲!」って言いながら発射するんだ。
612 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/06/05(日) 12:19:49.55 ID:QNniJKSmo
つまり、エヴァのロンギヌス投擲のイメージか
613 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/05(日) 13:04:09.38 ID:Zqe/E3F1o
ミーシャ:肩車土台
一方通行:肩車の上
風斬:左腕役
垣根:右腕役
エイワス:支え棒みたいな役

で天使同盟砲か・・・
614 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/05(日) 13:35:50.77 ID:riAqAucV0
>>608がいいと思う
615 :VIPにかわってそのNIPPERをぶち殺す!! [sage]:2011/06/05(日) 13:42:26.03 ID:LEFN1dDV0
シュールすぎるだろwwwwwwwwwww
616 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北陸地方) [sage]:2011/06/05(日) 13:43:16.95 ID:VTFwdNBZo
風雷波思い出した
617 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/06/05(日) 14:13:34.27 ID:eVJq7Dbh0
自転アッパーで上条さんをぶん投げたらいいんじゃね?
ウルトラマンみたいに右手突き出して飛んでけばいいよ  不幸だーーー で終わりだな
618 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 17:34:47.15 ID:kzLIOaUKo
>>607
実際、ご近所の家庭のトラブルみたいなもんですからww
それがちょっと惑星にまで被害が及んだだけの話です

投下しに来ました。あの魔の時間帯を避けるとしたら私の場合、この時間か
22時頃しか……すみません

では前回のおさらいを。自転パーンチ!!→デュクシッ→自転パーンチ!!→悪魔オワタ


それではいきます!
619 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 17:35:27.42 ID:kzLIOaUKo


最大級の安堵の直後に襲いかかってきた懸念材料に
科学サイド最高の頭脳で思考を巡らせていると、頭上から何人かの声が聞こえてきた。
断層の崖からヒョコっと顔を覗かせてきたのは、


「・・・・・・・・・・・・あァ!? オマエ、ヴェント、なンでここにいるンだよ!?」

「もう飽きたわよそのリアクションは。 ・・・・・・数時間ぶりね、白いの」


風斬氷華が『数多くの仲間が駆けつけて来てくれている』的な事を言っていたのは覚えていたが、
さすがにロシアで別れたばかりのヴェントまでもが学園都市に来ているとは一方通行も予想だにしなかった。
ヴェントの後ろからはキャーリサ、騎士団長、アックア、そして神裂火織も居る。


「女子寮にいた"露出星人"までいやがるじゃねェか。 天草式だったか、暇だなァオマエも」

「私は"星人"ではなく"聖人"ですし、この衣服は魔術的要素が含まれてるって
 何度説明すればいいんですかこのド素人が」

620 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 17:36:48.40 ID:kzLIOaUKo


こめかみに青筋を浮かべてひくひくしている女教皇を、一方通行は
傍にしゃがみ込んできたヴェントに頬をツンツン突付かれながら見つめる。
見れば神裂だけでなく、ヴェントもアックアも騎士団長も痛々しい傷をその体に負っていた。
一体誰と戦ってたンだと一方通行は眉をひそめたが、もうそんなことはどうでもいい。

傍に屈んでいたヴェントが立ち上がり、未だに泣き喚く風斬を宥める天使を見ながら言う。


「にしても、ホント派手に暴れたわねアンタ。 地球を真っ二つにする気かよ」

「・・・・・・まァそこは置いといて、ヴェントよ。 オマエこのアングルだと
 パンツがモロ見えだぞガフゥッ!!?」


耳まで真っ赤に顔を染めロングスカートを押さえながらヴェントは一方通行の顔を踏みまくる。
その手の方々の業界ではご褒美でしかない攻撃を喰らう第一位を横目に騎士団長とアックアが
口を開いた。


「本当に天使の救出を成し遂げてしまうとはな・・・・・・。
 『天使同盟』、会った時から思っていたがやはりとんでもない連中だ」

「・・・・・・・・・・・・待つのである。 あの『手紙』に書かれていた事が事実なら、
 ミーシャ=クロイツェフの暴走を止めただけでは救出には至らない」

「その通りだし」

621 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 17:37:22.77 ID:kzLIOaUKo


彼らの会話に全身ズタボロになった第二王女が割って入る。


「おいウサギ、お前も気付いてるんだろう? まだこの救出劇は終わってないの」

「ガハッ、グフッ!!! ・・・・・・あ、あァ、まだ終わってねェ」


顔に夥しい数の靴跡を残した一方通行の言葉に、風斬の嗚咽がピタリと止まる。
一方通行は辛そうに体を起こし、"未だに続いている偽りの夜空"を眺めた。




「・・・・・・まだ『星の欠片』の件が残ってンだ。 ガブリエルもそれが分かってて、
 この夜空を元に戻してねェンだろ」




一方通行の言葉を聞いて、全員が天使の方へ視線を向けた。

622 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 17:38:09.30 ID:kzLIOaUKo


そう、ミーシャ=クロイツェフの暴徒化は鎮める事が出来たが、まだ『天使の消滅』という危機は
解決に至っていない。
『星の欠片』。ベツレヘムの星の残骸にあるミーシャの『儀式場』を守らなければ、
結局ミーシャはこの世から消え去ってしまうのだ。

風斬はそれまでとは一転し、一気に不安げな表情を浮かべる。


「え、と・・・・・・確かロシアを発った時、学園都市は午後二時頃でしたよね?
 エイワスさんの予測では『夕刻前』までに『星の欠片』をどうにかしないと
 天使さんは消えちゃうって・・・・・・・・・・・・」

「エイワス?」


人工天使の口から出た謎のワードにイギリス組の四人が首を傾げるのを見て
風斬はギクッと体を強ばらせたが、一方通行が間に入って自然に流した。

623 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 17:38:43.91 ID:kzLIOaUKo


「大体二時間程度を時間制限に想定して俺達はここに戻ってきたンだ。
 ・・・・・・・・・・・・オイ、今何時だ?」

「日本時間で午後四時半前」


まだ顔の紅潮が直らないヴェントが携帯電話を取り出して答える。


「そんな! とっくにタイムオーバーじゃないですか・・・・・・、ってあれ?」

「あァ、ガブリエルが悪魔になっちまった時に『天体制御(アストロインハンド)』とかいう
 馬鹿げた魔術を使用してる。 それの影響で太陽系のどっかの惑星が動いちまった。 多分『月』だろォな。
 『天体制御』で月を動かす時に『星の欠片』がぶっ飛ンじまうよォな事は無かったみてェだが・・・・・・。
 ガブリエル、オマエ今も無理して『天体制御』を維持してるだろ」


ミーシャはしばらく固まったままだったが、やがてゆっくりと首を縦に振った。
周囲から息を呑む音がした。だとすればここから先、『星の欠片』をどうにかして
保護するまでミーシャは本来使えなくなった『天体制御』を無理を押し通して行使し続けなければならない。

624 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 17:39:37.30 ID:kzLIOaUKo


だが例えそれが天使という存在を脅かすような無茶であろうと、ミーシャは『天体制御』の使用を止めない。
彼女は願ったのだから。一方通行と、『天使同盟』と、世界を回って出会った数多くの友達と、
これからもずっと触れ合っていたいと。


「だからこいつが月をよそに移動させている間に宇宙空間にある『星の欠片』の位置を把握し、
 なンらかの方法で儀式場を保護するしかねェ」

「手はあるのか」


騎士団長の言葉に一方通行は押し黙る。

正直に言うと、無いわけではなかった。一方通行はここまで会話を続けながら
『星の欠片』の保護方法を必死で考案していたのだ。
にも関わらず騎士団長の言葉に応じないのにはワケがあった。
確かに『方法』はある。だがそれを実行するための『手段』が今の一方通行には無かった。

白髪の少年は重々しく口を開いた。


「・・・・・・投擲だ」

「?」

625 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 17:40:55.62 ID:kzLIOaUKo


「宇宙にある『星の欠片』の位置を正確に把握して、その儀式場の位置する場所に
 "何か"を投擲して接触させ、分離する。 儀式場を太陽から離しちまえば残りの欠片が
 どォなろォが知ったこっちゃねェ。 とにかくガブリエルが現世に居続けられりゃいいンだからな」


全員が唖然とした表情を浮かべるしかなかった。
無理というか無茶というか無謀というか、一方通行が提案した方法は無策も同義だとしか思えなかった。

『星の欠片』目掛けて何かを投擲し、その衝撃を利用して上手いこと儀式場だけを
欠片から分離させる。
確かに理論上なら可能・・・・・・という境界線に何とか入れる事が出来る方法だ。
学園都市で開発された頭脳は、やはりその他の人間とは違うぶっ飛んだ発想が出来るらしい。

しかし口だけならいくらでも成功できるものの、実際にやってみようとなると
話は全然違ってくる。


「投擲って、何を投げるの」


キャーリサがその場に居る全員の疑問を代弁した。
重要な問題点の一つだ。そこらにあるビルの瓦礫や空き缶などを適当に投げても
大気圏に阻まれて一瞬で消失してしまうだろう。

まだ問題点はある。

626 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 17:42:44.20 ID:kzLIOaUKo


「『星の欠片』の正確な位置って・・・・・・どうやって調べればいいんでしょうか・・・・・・?」


見た目では分かりづらいが疲労困憊に陥っているミーシャに寄り添いながら、今度は風斬が質問した。
例え大気圏の熱に耐えられる投擲物を得たとしても、それを正確に『星の欠片』の儀式場に
当てるとなると、やはり『星の欠片』の位置は完璧に、正確に知っておかなければならない。

恐らく一センチのズレも許されない精密な作業が要求されるだろう。


「仮に投擲物も『星の欠片』の位置の問題も解決したとして、誰がそんなモンを
 宇宙まで投げ飛ばすのよ。 ハンマー投げか槍投げの世界ランカーでも今から呼んでくるワケ?」

「・・・・・・それは俺がやる。 俺の『ベクトル操作』があればその点については解決できるはずだ」


熾烈な戦闘が続いたせいで疲労が窺える表情を見せるヴェントの疑問には一方通行が答えた。
彼に最適な投擲物を与え、彼の脳に『星の欠片』の座標情報を一つの間違いもなく送ることが出来れば、
十中八九この作戦は成り立つ。
いや、十中八九は言い過ぎだ。どう考えたって成功率は一桁、いや小数点以下だろう。

627 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 17:43:54.31 ID:kzLIOaUKo


ここまで述べられた通り、この作戦を実行するにはあまりにも必要材料が足りなかった。
やはり天使という偉大な存在を救うという事は容易ではない。幾つもの無理難題が要求される状況を前に、
一方通行はただ思考を巡らせる他なかった。


「・・・・・・魔術的観点を拝聴してェな。 魔術サイドの人間なら『星の欠片』をどォ保護する」


神裂が複雑な表情を見せながら一方通行の質問に答える。


「『ベツレヘムの星』の再構築が可能なら、『星の欠片』を逆に呼び戻せるかも知れません。
 欠片も元は『ベツレヘムの星』の一部。 あの要塞は十字教に縁のある教会等を寄せ集めて
 構成されたものですので、『ベツレヘムの星』を再構築し、要塞が正しく機能すれば・・・・・・」


言いかけて、神裂は首を横に振って自身の意見を否定する。


「・・・・・・駄目ですね。 再構築した『ベツレヘムの星』は第三次世界大戦時に構成された
 要塞とは全くの別物と認識されるでしょう。 それでは自動修復機能を用いて
 『星の欠片』を呼び戻す事は出来ません」

628 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 17:44:47.30 ID:kzLIOaUKo


「他には何か無いのか? 天使をしばらく現世に維持出来るよォな術式とか、霊装とか。
 とにかく『星の欠片』が保護出来りゃいいンだ。 欠片をこっちに持ってこれるよォな
 方法は魔術サイドには無いのかよ?」


キャーリサはミーシャが維持し続けている夜空を仰ぎながら答えた。


「欠片とはいえ『ベツレヘムの星』。 あれは相当な質量を誇る怪物要塞なの。
 現時点の十字教に則った魔術や霊装であの質量の物質を大気圏内に持ち込む
 方法は存在しないし。 それは科学サイドでも言えることだと思うけど」

「・・・・・・・・・・・・ちくしょうが。 結局、投擲作戦で事を運ぶしかねェってわけか」


じわじわと滲み出る重い雰囲気がこれ以上の相談は無意味だと暗に示してくる。
魔術サイドでも手に負えない案件を、果たして科学サイド主体の作戦で解決できるのか。


もしくは、魔術と科学が交差した『第三の概念』でも存在すればまだ活路が見い出せるかも知れないが―――。

629 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 17:46:03.33 ID:kzLIOaUKo


だから一方通行は全く考慮していなかった。
アレイスターとの激突で散り散りにされた後、音沙汰のなかった『天使同盟』の一員が、
その『第三の勢力』の概念をこさえてやってくるなんて。


「ッ。 ステイル!! ―――――――!」


神裂が言葉を詰まらせた。彼女の視線の先には戦闘による疲れとはまた違う、
様々な要因が混ざり合って出来た疲労を表情に浮かべながらこちらに歩いて来るステイルと、


「垣、根・・・・・・・・・・・・?」

「垣根さん・・・・・・!?」

「――――――――、」


血の池地獄にでも飛び込んだのかと言いたくなるような血塗れの姿。
誰がどう見ても瀕死状態に陥っている垣根帝督がいた。

一方通行は垣根を視界に収めるやいなや、一直線に彼の下へ駆けつけた。
信じられない光景だった。
第一位ほどとはいかないまでも、垣根帝督は学園都市第二位を誇る超能力者だ。
そんな彼をここまでボロボロにするような相手など、一方通行が思い当たる人物は一人しか存在しない。

630 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 17:47:02.42 ID:kzLIOaUKo


「オマエ、なンだよこのザマは・・・・・・? まさかあの後、アレイスターの野郎と
 殺りあったのか? でなきゃオマエがここまでやられるなンて、」

「・・・・・・彼自身だよ。 垣根帝督本人が、彼をここまで傷つけたんだ」


瀕死の垣根の代わりにステイルが答える。
しかし彼の言葉の意図が一方通行には全く理解できなかった。

ステイルは続ける。


「・・・・・・・・・・・・あの子の、インデックスという少女の頭の中に保管されている
 一〇万三〇〇〇冊の魔道書。 それを自由自在に引き出せる遠隔制御装置を
 酷使したんだ。 ・・・・・・能力者である上に『原典』の毒だ。 生きている方がおかしい」


それを聞いて驚愕したのは一方通行ではなく、キャーリサと騎士団長、そしてアックアの三人だった。
キャーリサはともかく、騎士団長とアックアは第三次世界大戦終結後にその霊装の存在を耳にしている。
実際に聞いても眉唾ものではあったが、垣根の姿を見ればそれが原典をそのまま使用してしまった
人間の成れの果てであるということは理解できた。

631 :×→装置 ○→霊装 申し訳ありません  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 17:49:05.19 ID:kzLIOaUKo


「馬鹿、な。 ・・・・・・なんで学園都市の人間があの霊装を所持している!?
 それは第三次世界大戦時に上条当麻がフィアンマの持っていたその霊装を
 破壊したはずなの! そんなものがまだもう一つこの世に存在して・・・・・・」

「僕の予想ではエイワスが一枚噛んでいる。 あの化物がイギリス清教から
 何らかの方法で入手、いや、くすねたに違いない」


またしても出てきたエイワスというワードにキャーリサ達は怪訝な顔を見せる。
対して、一方通行は奥歯を噛み締めていた。先ほどステイルの口から出てきた
『原典』という言葉。一方通行は知っている。

原典とは見た人間を廃人に、下手をすれば死に追いやるような碌でも無い代物であるということを。
ロシアに向かっている時に船の中でエイワスがそんな事を言っていたのを彼は覚えていた。


それを垣根帝督が酷使したということは。


「垣根、オマエ『魔術』を・・・・・・・・・・・・!!!」

「・・・・・・・・・・・・はは、何だよ第一位、その情けねえツラは。
 お前だって使った事あんだろ? お前に出来て俺に出来ねえ事なんか・・・・・・」

632 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 17:49:59.56 ID:kzLIOaUKo


垣根の言葉が途中で途切れた。彼が突然激しく咳き込み、口から夥しい量の
血を吐き出したからだ。
それを見た一方通行と風斬の顔が青ざめる。あのいつも不敵に構えている、
時にはふざけた調子を出して『天使同盟』内で明るく振舞っていた垣根帝督はどこへ行った?


「・・・・・・ミーシャの方は、テメェが片をつけたみてえだな。 ・・・・・・まあ、
 お前ならやれるって思ってたけどよ。 だから、こそ・・・・・・げほっ、・・・・・・。
 『コレ』、持ってきたわけだし・・・・・・・・・・・・」


もはや呼吸をしているのかも分からないような状態で、垣根はステイルから離れて
片手を軽く上げる。
その手には、一本の槍が握られていた。


「dhid氷華pafne」

「は、はい・・・・・・」

633 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 17:50:47.99 ID:kzLIOaUKo


ミーシャが垣根に指をさす。彼の下に連れていって欲しいと言っているのだろう。
風斬は優しくミーシャを支える。そしてそのまま手を貸しながらゆっくりと歩いていった。


「ckocs帝督oaucsklo」

「あ、ぁ・・・・・・? ああ・・・・・・お前か。 ったく、お前のせいだぞ・・・・・・
 こんな祭りみてえな事になったのはよぉ・・・・・・」

「―――――――――、」

「うわ、・・・・・・何だよ。 暑苦しいんだよテメェ」


ミーシャは垣根の手を握ると、血塗れの彼の体を思い切り抱き寄せた。
言葉は話さず、水の天使はただ垣根の頭を撫で続ける。

天使を守りたい、『天使同盟』という居場所を守りたいという垣根の気持ちが
ミーシャにも充分過ぎるほど伝わっていた。
言葉には出来ないが、代わりにこうして抱擁することで彼に精一杯の感謝を贈る。

634 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 17:51:43.55 ID:kzLIOaUKo


「あー・・・・・・、天使の抱擁ってのも悪くねえな。 このまま天に召されそうだわ」

「縁起でもない事言わないでください・・・・・・!」


風斬が震えた声でそう言った。大切な仲間がこんなにも痛々しい姿になって
帰ってきたことに、彼女はひどく悲しんでいた。
ただ天使という仲間を救って元通りになりたいだけなのに、どうしてこんな目に遭わなければいけないのか。
そこらの人間より『心』の優しい風斬は色々な感情をゴチャ混ぜにしながら涙を流す。

そんな状況の中、垣根帝督は儚い笑みを浮かべながら、


「・・・・・・・・・・・・良いなあ、こういうのも」


垣根はミーシャの胸からゆっくり顔を離すと、複雑な顔をした一方通行に
槍を携えた手を差し出した。


「・・・・・・宇宙にある『星の欠片』に向かって、テメェがこいつをぶん投げろ。
 『星の欠片』に施されてる防御術式は・・・・・・全部俺が計算しておいた、これなら通じるはずだ」

635 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 17:52:37.53 ID:kzLIOaUKo


一同は絶句した。垣根が持っている槍を宇宙空間に漂う『星の欠片』に向かって投げろという。

それはまさに、さっき一方通行が提案した『星の欠片』を保護する方法と全く同じものだった。
第一位と第二位。極めて近しい立場にある二人は、考える事も似るのだろうか。
一方通行は何も言わず、垣根から槍を受け取る。


全長約一五メートル。槍というだけあって、その先端部には鋭利な刃物が確認できる。
恐らく『未元物質(ダークマター)』を用いて作成したのだろう、槍の柄から刃先まで、
無機質な白色に染まっていた。

それだけならその辺にある普通の槍とあまり変わりはない。
ただ、槍の刃の部分。正確には刃から少し下の部分が大きく異なっていた。


それは、一言で言うなら『翼』。
刃の下から柄の中央部辺りまで、思わず圧倒されてしまいそうな程に美しい翼が、
複数枚ほど螺旋状に巻かれるように装飾されていた。

翼の色は様々で、それは黒であったり白であったり、雷光が走りそうな鋭い翼であったり、
より一層輝く青白いプラチナの輝きを放っていたり、水晶のような形をしていたり。

636 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 17:53:28.79 ID:kzLIOaUKo


つまり、『天使同盟』の構成員を模したような、そんな装飾だった。


「カッコイーだろ? 名前は・・・・・・ええと、何でもいいか。
 俺、案外芸術家とか向いてるかもなあ・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・なンで、」

「?」

「なンで・・・・・・」


垣根から受け取った翼の槍を眺めながらそう呟く第一位に、
第二位はふん、と鼻で笑いながら応える。


「『なんで皆に黙って魔術なんて使いやがった』、ってか?
 ・・・・・・別に。 お前が生意気に魔術を使ったことがあるって聞いて、
 ちょっとムカついた。 それだけだ」

「・・・・・・・・・・・・」

「それに、・・・・・・・・・・・・言ったらテメェら止めるだろ」

637 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 17:54:04.46 ID:kzLIOaUKo


垣根の発言は見当違いだった。一方通行が言いたいことはそんな事ではない。
確かに垣根が魔術を使用していると知ったら一方通行も風斬も怒鳴り散らして止めていただろう。
能力者が魔術を使えばどうなるか、彼らは知っているのだから。

けど、一方通行は知らなかった。気付けなかった。

いつも近くに居た垣根帝督の無茶に、自分は気付けなかった。


(・・・・・・ここまで来ると、鈍感じゃなくて痴呆だな。 ・・・・・・情けねェ)


一方通行は自分に呆れていた。ミーシャの真意に気付けず自分の鈍感さを痛感しながら、
更に垣根帝督の事も気付けない自分に。

言葉を発する事が出来なかった。ありがとうも、すまなかったも、この馬鹿野郎も無い。

ただ、


「・・・・・・・・・・・・無事で良かった」

「はあ? ・・・・・・・・・・・・、」


一方通行が漏らした本音に、垣根の我慢の限界が訪れた。
彼はププッと吹き出して、腹を抱えて笑った。
くつくつと、その笑い声にも最早力が無かったが、それでも彼は笑った。

638 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 17:54:53.16 ID:kzLIOaUKo


「・・・・・・・・・・・・ったく、お前でもそんな事言うんだな。
 あー気持ち悪い、勘弁してくれ。 それがお前の本音か?」


そして垣根は一頻り笑い終えた後、


「じゃあ俺も心の底から思ってる事を言わせてもらうけどよ」


頭を垂らしながら一方通行の眼前まで歩み寄り、槍を携えている手に重ねるように
一方通行の手を握った。
垣根は項垂れたまま一方通行の胸に頭を預けて、




「・・・・・・・・・・・・・・・・・・頼む。 俺の、俺達の居場所を守ってくれ」




垣根は唇を震わせながら、体を震わせながら、決して一方通行に表情を見せず言った。
二人の足元に雫のようなものが地面に落ちたが、誰も気付かない。

639 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 17:56:08.61 ID:kzLIOaUKo


「俺、・・・・・・俺、もっとお前らと一緒に居てえんだよ・・・・・・。
 お前らとずっと一緒にいたいんだ。 一緒にメシ食ってどっか出掛けたり
 ・・・・・・・・・・・・普通に、普通に過ごしてえんだ」


過酷を極める戦闘で受けたダメージのせいか、原典による毒と激痛でそんな些細なことに構う暇も無かったか、

今の垣根にはもう、第二位としてのプライドや彼の中にあった自尊心などは存在しなかった。

大勢の人間の前で弱々しい声を放つ事への羞恥心も、かつて自分を地獄の底まで引きずり落とした
一方通行に自分の想いを全て曝け出す事への抵抗感も、全て粉砕されていた。


「ミーシャを救えば・・・・・・またお前らと過ごせるんだろ・・・・・・?
 だったら頼む、ミーシャを救って、俺も救ってくれ・・・・・・・・・・・・。
 お前にしか出来ねえんだよ。 お前にやってほしいんだ」


時折嗚咽を交えながら、垣根は一方通行の胸に頭を押し付けて懇願した。


「これからもずっとお前らと・・・・・・馬鹿やって生きていきたいんだ・・・・・・」

640 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/05(日) 17:57:36.30 ID:9lqMGhRt0
カッキー・・・・・・
死なないで・・・・・・・
641 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 17:58:02.57 ID:kzLIOaUKo


その言葉を最後に、垣根の体から急激に力が抜けていった。
地面に向かって倒れる彼を一方通行は慌てて支える。
気を失っているのならこの槍は消えるはずだが、極度の疲労で寝てしまったのだろうか?
ともあれ、槍が無事なら垣根も無事であると今は信じるしかない。

一方通行はだらりと地面に置かれた垣根の手をギュッと握って
彼の心に直接声を掛けるように囁いた。


「・・・・・・・・・・・・任せとけ。 必ずガブリエルもオマエも救ってみせる」


一方通行はステイルに垣根を任せると、ゆっくりと膝を起こして立ち上がる。

右手には、垣根帝督という一人の男から託された槍がある。
垣根が『禁書目録』から引用した知識で作った槍が、果たして『星の欠片』の保護を完遂出来るのかどうかは
魔術的知識がほぼ無い一方通行にはまったく分からなかったが、彼は一切疑わなかった。

これで、ミーシャを救う鍵の一つは手に入った。


「あとは、『星の欠片』の位置をどうやって捉えるか、ですね・・・・・・」

642 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 18:00:06.23 ID:kzLIOaUKo


神裂の言葉を聞いて、皆が夜空を見上げる。
見上げている空のどこかに『星の欠片』はあるのだろうか。
今彼らが立っている大地の真下、地球の真裏にでも移動されていたら状況は一気に厳しくなる。

この水平線から一八〇度、そのどこかに存在していなければ
恐らくこの方法は成り立たない。
運も絡んできた『星の欠片』の保護作戦。槍を持つ一方通行の右手に汗が滲む。


(どォする。 ・・・・・・どォやって『星の欠片』の位置を把握する?)


闇雲に投擲したところで『星の欠片』に当たる可能性は限りなくゼロに近いだろう。
垣根が作った槍があと一〇〇万本くらいあれば適当に投擲して・・・・・・、それでも当たらないかもしれない。

問題はまだある。この作戦にはかなりの精密さが要求される。
槍を『星の欠片』にただ当てるだけでは駄目なのだ。欠片の更に一部、ミーシャの存在を維持している
儀式場。そこを全く傷つけずに欠片から突き離さなければならない。

もし全く違う場所に当たってしまえばそれで終わりだ。もう垣根に『原典』の海に飛び込む体力は残っていない。
天使を救う槍は、二度と作れない。ミーシャの精神力にもいずれ限界は訪れ、『天体制御』は解除される。
そうなれば後は『星の欠片』が太陽に飲み込まれ、ミーシャはこの世から消失してこの物語は幕を閉じる。

643 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 18:01:37.91 ID:kzLIOaUKo


もし儀式場そのものに当たってしまったら、それは最悪のケースだ。
一方通行のベクトル操作によって投擲された槍は儀式場の中の『柱』を粉々に破壊し、
ミーシャは最後の言葉すら残せず一瞬で消え去ってしまうだろう。

エイワスに頼るという手もあるが、その本人は今この場に居ない。
大体の予想はつく。恐らくアレイスターと相対しているのだろうと一方通行は思った。
相手があのアレイスターなら、こちらの状況に構っている暇はないだろう。
そもそも協力してくれる保証もあの金髪の怪物相手には存在しない。


垣根が命を削って作り上げた鍵を手に入れても、まだまだ問題は山積みだった。
一方通行の心に再び焦燥という名の津波が押し寄せてくる。


風斬もヴェントも、キャーリサも騎士団長もアックアも、神裂火織もステイルも、
皆が必死で思案を巡らせて解決策を模索していくが、閉口の状態が続くだけだった。

ここまでやって、ここまで戦い抜いて最後に駄目でしたでは納得いくはずもない。
何でもいい、誰でもいいから何か策は無いのかと一方通行は本気で願った。


そんな時だ。


「?」


不意に一方通行のポケットから鳴り渡る電子音が、この重苦しい沈黙を破ったのは。

644 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 18:03:18.56 ID:kzLIOaUKo


――――――――――――――――――――――


「・・・・・・・・・・・・黒・・・・・・」


ミーシャ=クロイツェフの『天体制御(アストロインハンド)』によって彩られた
偽りの夜空に向かって、仰向けでぐったりと倒れているアレイスターは手を伸ばす。

夜。空を染めるその一点の淀みもない黒は、アレイスターが最も崇拝した神『セト』を象徴する色。

一方通行に降臨したセトが、果たしてアレイスターが作った『虚数学区』のセトなのか、
それとも"本物の星幽界"から現世に降り立ったセトなのか。今となってはもう判断出来ない。

でも、それでも、アレイスターは素直に一方通行が羨ましいと思った。
一方通行に対して悔しさが込み上げてくる。『天使同盟』なんて滅んでしまえと悪態をつきたくなる。
同時に、そんな事を思う自分のなんと子供っぽいことかと、アレイスターは自分に苦笑する。

全身に満遍なく瀕死の重傷を負ったアレイスターと同じように空を仰いでいるだけで、さっきから物を言わないエイワスに
彼が話しかけた。


「私に止めを刺さないのか? 結局AIMの結晶に戻ってしまったとはいえ、
 今のあなたなら容易に私を始末出来るはずだろう。 ・・・・・・こうしてまた
 第一九学区周辺の境界線を弄って・・・・・・、まったく。 どこまでも周到だなあなたは」

645 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 18:04:11.94 ID:kzLIOaUKo


一体いつからそうなっていたのか。
セトによって破壊されたはずの光のカーテンが、いつの間にか金髪の怪物の手によって
再び第一九学区にオーロラの如く展開していた。


そしてエイワスの容姿は"いつも通り"の、綺羅びやかな金髪にゆったりとした白い装束、
喜怒哀楽全てが詰まっているフラットな表情を浮かべる『ドラゴン』へ戻っていた。

少し前、アレイスターを戦闘不能にした『聖守護天使(アウゴエイデス)』としての真の姿は、
それを直に見たアレイスター本人にしか分からない。


「君をこの場で葬ってみる。 それもまた一興だが、今の学園都市にはまだ君が必要だろう。
 この街は面白い。 一方通行から始まった私の好奇心をどんどん膨らませてくれる。
 それに、ここで仮に君を殺すとすれば今度はローラ=スチュアートも葬らねばなるまい。
 イギリス清教は君の処刑を確認すれば必ずその財産や地位を奪い取りに来る。
 権限もあるしな。 と、なると『天使同盟』はイギリス清教も滅ぼさなければならん。
 一方通行達が承諾してくれるわけがないし、私もまだ彼ら"玩具"を弄って遊んでいたいしな。
 ・・・・・・君も、またいつか完全に舞台が整った時、『ホルスの永劫』を私に見せて欲しい」

「・・・・・・そうか。 だが『天使同盟』はここで終幕だな。 人間では天使を救えない。
 『星の欠片』の保護、欠片に魔術と科学を融合させた槍を投擲して儀式場を
 宇宙を彼方へ"退避"させる・・・・・・か。 ふ、夢物語だな」

646 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 18:05:33.38 ID:kzLIOaUKo


アレイスターは一方通行と垣根帝督による『星の欠片』の保護方法を把握していた。
何故かというと簡単な話、そこにいるエイワスが一から一〇まで全部アレイスターに話したからだ。
バラしてしまっても問題ないとエイワスが踏んだ事もあるし、それを聞いてもアレイスターにはどうしようもない。

だがアレイスターは言う。そんな方法では『星の欠片』の保護は無理だと。
即ち、『天使同盟』はこの日を以て終了。欠片は『歳月の船』に飲み込まれ消失する。
そして、ミーシャ=クロイツェフも。


「夢物語、か。 ・・・・・・それはどうかな、アレイスター」

「何?」

「言っただろう? 私も『天使同盟』の一員だと。 『天使同盟』である以上、
 私も全力でミーシャ=クロイツェフを守るためにせっせと働くさ」


その言葉に、アレイスターは酷く嫌なものを感じ取る。
しかしエイワスは構わず続けた。

647 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 18:06:46.22 ID:kzLIOaUKo


「今回の『茶会』、まずイギリス清教の魔術師が学園都市に侵入した所から既に始まっていた。
 そしてミーシャ=クロイツェフがこの学園都市に乗り込んだ。 君を止めるためにね。 
 その後、一方通行と風斬氷華、垣根帝督が君の前に立ちはだかる。 ・・・・・・・・・・・・さて、
 この時点でおかしな点が一つだけあるのだが、君は気付いているだろう?」


言われるまでもなく気付いていた。だがこの時アレイスターが懸念したのはそこではない。
その気付くべき点から連鎖するように、アレイスターの脳裏に『嫌な予感』が迸っていた。


「・・・・・・待て、エイワス」

「そう、私はその時戦闘に参加していない。 かなり遅れて君の前に現れたな。
 さて問題、」

「・・・・・・・・・・・・ッ」


仮にアレイスター以外の人物がエイワスの問い掛けをここで聞いていたとしても、
その答えに自力で辿り着くのは不可能だっただろう。
その点、やはりアレイスターは優秀な人間だった。エイワスが答えを提示するまでもなく、
彼は答えに辿り着いたのだ。

考えたくもない、ミーシャ=クロイツェフを救い出せるかもしれない可能性を
生み出したエイワスの行動に。

648 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 18:07:42.61 ID:kzLIOaUKo




「私はその間、どこで何をしていたでしょう?」

「・・・・・・・・・・・・エイ、ワス・・・・・・!!!」




ここまで打ちのめされて、更に追い討ちをかけられるとは思わなかった。
アレイスターの前にその姿を現すまで、エイワスはどこで何をしていた?


ヒントは、昨日突如として世界中を襲った大規模な『ハッキング事件』。


エイワスによって乗っ取られていた宇宙空間の全人工衛星は、今はもう元の状態に修復されていた。


そしてその操作権限は―――――。

649 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 18:13:04.13 ID:kzLIOaUKo
ここまでです。

いや、言いたいことはわかります。確かにこの方法は無茶苦茶すぎます。
が………今回のところはこれでご勘弁を!見逃してくれ〜

はい、というわけで垣根帝督が都合よくこしらえてくれた槍で道具は確保しました。
この槍に名前つけようと思ったんですが寒いことになるだろうと判断し、やめましたww


残る問題を解決してくれるのは、一方通行の携帯電話にかけてきた謎の人物。
エイワスがヒントを提示してくれましたが、あれだけでわかるわけないですよねー……どこがヒントなのかと。
そもそもあれだけ激しい戦闘をしておきながら携帯電話が無事なのもおかし(ry


次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!

650 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/05(日) 18:13:55.60 ID:kzLIOaUKo



                          【次回予告】



『こっちは急にオマエから電話がかかってくるっつゥ素敵なサプライズのせいで
 絶賛混乱中なンだよ。 何の用件でかけてきた?』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・一方通行(アクセラレータ)



651 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/05(日) 18:15:00.90 ID:ygqldMu+0
神速の乙
652 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/05(日) 18:15:29.07 ID:h6/HW82q0

よくここまで話を練れるな…
653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/05(日) 18:15:29.47 ID:SG1yhf7ro
おつ!
垣根さんの想い…
素敵なガブリエルをいつまでも見てたいです
654 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/06/05(日) 18:15:38.16 ID:je7gzQV1o

槍の名は『槍』でいいと思うぜ
655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/05(日) 18:19:22.21 ID:PiuY4wDD0
言いたいことなんて「乙」以外ないんだぜ>>1
 
ていとくんの槍は『天使の槍』(アライランス)って名前でどうですか?
656 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/06/05(日) 18:21:16.43 ID:XbEQ4PwAO
>>1乙!!心から乙!!!!
657 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/06/05(日) 18:23:40.10 ID:HMu7BMcAO
うん
無名もまた良し
658 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/06/05(日) 18:29:49.01 ID:ZyckHRwd0
乙!
もう垣根さんがかっこよすぎてね…
なんか途中泣きそうになったわ…
659 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2011/06/05(日) 18:33:08.02 ID:LHYKGvlh0
やっべ、垣根の姿とか想像したら泣けてきた
心から乙!垣根乙!
660 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/06/05(日) 18:36:15.78 ID:tGlE79iO0
心の底から全力で>>1乙!
661 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/05(日) 18:44:51.49 ID:8S7JT71Qo
乙!
ああもう何だ垣根かっけーよ
最初、羽あるしネタでていとくん入れてやれよと軽く思ってたがそれどころじゃないわ
662 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/06/05(日) 18:48:50.49 ID:eW7QzChYo
ていとくんが格好よすぎて目から未元物質出てきた
663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2011/06/05(日) 19:02:37.34 ID:VnkNLKsAO
>>1乙!

ていとくんがカッコ良すぎてちょっと泣いてしまった
664 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/06/05(日) 19:13:22.25 ID:pzOR7eah0
>>649
>この槍に名前つけようと思ったんですが寒いことになるだろうと判断し、やめましたww
The Lance of Longinus?
665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/05(日) 19:15:18.18 ID:cwv+UMVSO
太陽動かしたならまだしも
天体制御で月を移動させて何か星の欠片に影響あんの?
666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/05(日) 19:33:05.22 ID:YbutmvdA0
乙!
垣根くん格好よすぎて鳥肌たった・・・
ちくしょう目から汗が
667 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/05(日) 19:44:24.02 ID:PiuY4wDD0
>>665 月の引力のおかげで太陽に近づかないようになるんじゃないの?
668 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2011/06/05(日) 19:54:32.72 ID:Rp9A8YOi0
ていとくん格好良すぎだろぉぉぉぉぉ!!

そして>>1
伏線回収が凄まじいったらありゃしない。
鳥肌モンだぜ!
669 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/06/05(日) 20:39:29.16 ID:0kCsNB2p0
泣いた…ここのていとくんカッコよすぎ…
670 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/06/05(日) 20:56:45.50 ID:eVJq7Dbh0
ヤヴァイ 垣根が主人公と言われても信じてしまいそうだ
槍の名前は、ていとくんの槍 でいいよ。
671 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/05(日) 21:00:39.40 ID:0YU8e5mP0

かっきーにホロリときた…
672 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/06/05(日) 21:31:57.25 ID:f6wGfLcAO
セロリさんの番号知ってるのは打ち止めかもげ面くらいか?
673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/05(日) 23:53:22.67 ID:riAqAucV0
よし、槍の名前はゲイボルグだ
674 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2011/06/06(月) 00:04:38.80 ID:lh5eDFGT0
いやたぶんランベスシスターズの誰かだろ……というかオルソラだな
675 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/06(月) 00:12:55.27 ID:RYoq4V4IO
天使同盟入りの時といい、ていとくんの独白はなんでこうも涙を誘うのか…
676 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2011/06/06(月) 00:17:19.55 ID:NVG/4nGi0
>>垣根はミーシャの胸からゆっくり顔を離すと、複雑な顔をした一方通行に
不覚にも一方さんがヤキモチ妬いてるように感じてしまったwwww
677 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/06(月) 00:20:02.53 ID:PxFmecQp0
乙!!
ていとくん召されちゃだめー
678 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/06(月) 02:10:07.32 ID:QyEn5N2M0
乙!
やっと追い付いた…
679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/06/06(月) 06:08:11.00 ID:Fc/glTb40
乙!

ミーシャの身体って確か、氷に近くなかったっけ?
それを「暑苦しい」って……ていとくん、もう皮膚の感覚も……
680 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/06(月) 10:24:28.22 ID:+kuZSoOXo
>>679
熱いんだよ、心が
681 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県) [sage]:2011/06/06(月) 11:11:11.32 ID:Qd4RZVZe0
>>679
熱いんだよ、○○が
682 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/06(月) 17:04:23.29 ID:KsIILxjL0
>>681 何が熱いんですか?
683 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/06/06(月) 17:08:18.61 ID:aRN3//5Do
684 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/06(月) 18:35:36.15 ID:eXCmUnNDO
パフパフか
685 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/06(月) 19:10:49.88 ID:2YeLKEJb0
>>683
字数が合ってないだろ

股 間  だよ
686 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/06(月) 23:00:01.95 ID:34eMcvu7o
>>665
とりあえず『天体制御』で星の欠片に悪影響は出ませんでした。
が、解除したとき何が起こるかわかんないから念のために天体制御を維持しておこうという
ミーシャの独断です。

でも変に誤解させてしまうような描写がありましたね、申し訳ありませんでした。


というわけでこんばんわ。今日も投下しに来ました。
連続投下一週間達成してるんじゃないですかこれ、快挙……と言いたいところですがそんなの別に
そこでもやってることですよね。

さて前回、垣根のおかげで槍は手に入ったものの、星の欠片の位置はどうすんべという話に
そんな時、都合よく無事だった一方通行の携帯電話に誰かが電話をかけてきて……。

そんな感じでいきます。

687 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/06(月) 23:00:50.63 ID:34eMcvu7o


――――――――――――――――――――――


人智を超えた戦闘が繰り広げられていた第一九学区とは打って変わって、
ここ第七学区はウソのように静まり返っていた。
第一九学区での騒動で街中の人間が地下シェルターで避難しているため当然といえばそうなのだが、
それにしたってこの静けさはどうだろうと思う。

そこは、第七学区にある病院だった。毎日のように沢山の患者がこの病院に運び込まれ、
病院に勤務しているスタッフが忙しなく走りまわる。それがここの病院の日常だった。

だからこそ、"彼"は患者やスタッフが地下シェルターへ搬送された後の院内の静けさに
どこか新鮮さすら覚える。


「・・・・・・・・・・・・エイワスに、『天使同盟(アライアンス)』、か」


誰に言うでもなく呟くと、彼は手に持っていたコーヒーカップを待合室のデスクに置く。
カップの中のそこそこ味がしっかりした黒の液体がゆらりと波打つ。

彼はこの病院に勤める医者だ。しかもただの医者ではない。
あらゆる病気や怪我を完全に治療し、最後まで自分が担当した患者は見捨てないという信念から、
いつしか『冥土帰し(ヘヴンキャンセラー)』と呼ばれるようになったカエル顔の医者。

688 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/06(月) 23:01:48.95 ID:34eMcvu7o


寿命すら克服してしまう研究にも携わっていた彼は、かつて魔術結社に追われていたアレイスター=クロウリーを
イギリスから匿い、日本に連れて学園都市の創設の手伝いをした人間でもある。

そんな医者は今、偽りの夜空を窓から眺めていた。
いや、彼が見ているのは夜空ではない。

その先の宇宙にある、『星の欠片』。


(流石に天使ともなると僕の手じゃ救えないね? それに、天使は僕の患者ではなく、
 あくまで彼らの患者。 彼らが救済することが、天使にとって一番の薬になるだろう)


今から約二時間ほど前。ミーシャ=クロイツェフが学園都市に到着して少し経った頃。
院内の患者の避難を手伝っていたカエル顔の医者の前に、突如として異質の存在が姿を現した。

エイワス。アレイスター=クロウリーに全ての知識を授けた地球外生命体。

カエル顔の医者もその存在は熟知していたが、実際にお目に掛かるのは初めてだった。
エイワスはカエル顔の医者に『天使同盟』の存在と、『天使同盟』のこれまでの経緯を余す所無く全て話した。
カエル顔の医者も最初は半信半疑だったが、こうして異形の存在と対話することは慣れている。
急にエイワスが目の前に現れた時も彼はパニックに陥るような事はなく、エイワスの話を黙って聞いていた。

689 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/06(月) 23:02:43.04 ID:34eMcvu7o


そしてエイワスの口から出た、『天使の救出に助力しろ』という言葉に、彼は二つ返事で頷いた。
断る理由がなかった。確かに天使はカエル顔の医者の患者でも何でもないが、天使の救出に助力することで
自分が担当している患者も助かる事に繋がると理解したからだ。

エイワスはカエル顔の医者がすべき事の手順を一通り説明すると、最初からそこにいなかったように
姿を消していた。その後にやれやれ、とため息をついたことは覚えている。


(だからと言って、"彼女たち"まで巻き込んで酷使するというのはどうかと思ったけどね。
 事情を説明したら了承してくれたんだ。 そうである以上、僕が引き止める権利はないね?)


彼は椅子に腰を降ろし、背もたれに体を預けて小さくため息をつく。

この日、アレイスター=クロウリーが起こした現象の一部始終を彼は知っていた。
『神浄』、そして『ホルスの永劫』。
この様子だとどうやらそれは未然に防がれたようだが、それで良いと彼は思った。

なぜなら、彼はまだアレイスター=クロウリーの治療を終わらせていない。
アレイスターもまた、この医者が担当している患者の一人だ。患者は最後まで絶対に見捨てないというスタンスで構えている以上、
ここで『神浄』やらなんやらが成就されては恐らくアレイスターはもう本当に自分の下に帰って来れなくなる。

690 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/06(月) 23:03:31.09 ID:34eMcvu7o


だからこれでいい。今回はアレイスターを止めてくれた『天使同盟』に感謝だ。
同時に、『天使同盟』には今後一切、このような大騒動は起こさないで欲しいなと
カエル顔の医者は憂い気な表情を見せながら笑う。


(『私は止まれない』、か)


それはアレイスターがカエル顔の医者と『決別』する前に言い残した言葉。
決心の中に哀愁が混じっているような、切ない言葉。
彼はそれを思い出しながら、窓を覗いて第一九学区のどこかにいるのだろう
アレイスターに向けて言うように口を開いた。


「もしこれで『天使同盟』が天使の救済に成功したら、
 さすがの君も一度歩みを止めるしかないだろうね? アレイスター」


カエル顔の医者は窓のサッシを閉め、待合室を後にした。

691 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/06(月) 23:04:32.08 ID:34eMcvu7o


――――――――――――――――――――――


その場にいる全員が、微動だにしなかった。
さっきまで続いていた息苦しい沈黙を粉々に破壊するこの小さな電子音を
訝しげに思いながら耳を傾けている。

音源は一方通行。彼のポケットから今も頻りに鳴り続けている。


(・・・・・・・・・・・・なンだ?)


このタイミングで、この状況で、自分のような人間に電話をかけてくるような人物など、
一方通行には思いつかなかった。
試しに風斬の顔を見る。『心当たりは無いか?』、と滲ませながら。

だが当然、風斬の返答はNO。黙って首を横に振るだけだ。
一方通行は他の面々の顔も同じように見回すが、どうやら本気で心当たりは無いらしい。
彼は片手に垣根帝督から託された聖槍をしっかりと握ったまま、空いた手でポケットの中身を漁る。
そこから出てきたのは彼が所有している携帯電話だ。

よく無事だったな、と一方通行は携帯電話相手に呆れる。
あれだけ派手な戦闘をした中で、液晶画面や本体の一部がひび割れているだけというのは
驚愕に値する事だった。

692 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/06(月) 23:05:31.63 ID:34eMcvu7o


二つ折りタイプの携帯電話を恐る恐る開く。液晶画面に表示されていたのは未登録の番号。
もしかしたら打ち止めか番外個体辺りがこちらの状況を確認するためにかけてきたのではと
思っていた一方通行は意表をつかれる。


(エイワスか・・・・・・? だとしたらあの野郎、一体何のつもりで・・・・・・)


悔しいことに、この時点での一方通行にとってエイワスからの電話は少しだけ期待出来る点もあった。
『星の欠片』の居場所。もしかしたらエイワスなら、あの何でもありの怪物なら宇宙に浮かぶ欠片の位置くらい
把握しているかもしれない。もしそれを伝えようと電話をかけてきたのであれば、一方通行にとって
これほど嬉しいことはない。

欠片の位置さえ正確に掴めれば、あとは垣根の作った槍と己のベクトル操作で恐らく天使は救える。
それで終わりだ。『天使同盟』はまたやり直せる。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


一方通行は未だに電子音を鳴らし続ける携帯電話の液晶画面を眺めながらしばし逡巡した後、
意を決して応答ボタンを押した。


「・・・・・・・・・・・・誰だ」

693 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/06(月) 23:06:19.13 ID:34eMcvu7o


必要以上に威嚇するような低い声を出してしまったが、相手からの応答はない。
とりあえず周囲にいる風斬達にも状況を知らせるためにスピーカーフォンモードのボタンを押す。

相手から返ってくる沈黙は数秒程度のものだった。


そして、ようやく返ってきた声を聞いた一方通行の思考が止まる。






『お久しぶりですね一方通行、とミサカ一〇〇三二号はちゃんとあなたの携帯電話に
 繋がっているかどうかを確認するためあなたの名を呼んでみます』





694 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/06(月) 23:07:15.13 ID:34eMcvu7o


その場にいる一方通行と風斬氷華を除く全員が首を傾げた。
一方通行の携帯電話から聞こえてきた妙な口調の少女に対して、でもあるが、
それ以上にこの状況でなぜこんな年端もいかぬような声の少女が一方通行に電話をかけるのか、と。

その中で、まず風斬氷華の反応は困惑だった。
彼女は知っている。一方通行に電話をかけてきた少女の事を。

ミサカ。

超能力者(レベル5)第三位の名も『御坂』というが、このミサカは違う。
彼女は『妹達(シスターズ)』と呼ばれる、その第三位の体細胞クローン体だ。
『超能力者の量産は可能かどうか』を命題に立ち上げられた『量産能力者(レディオノイズ)計画』によって
生み出されたクローン体。

二〇〇〇〇体の内一〇〇三一体は一方通行の手によって殺害されたが、残りの九九六九体は
今も世界各国の研究所で『治療』、調整が施されている。

なぜそんな妹達の一人が一方通行に? と、風斬は眉をひそめるしかなかった。


そして一方通行は風斬以上に困惑の渦に巻き込まれていた。
なぜこの状況で妹達の、それも"よりによって検体番号一〇〇三二が自分に電話などかけてくる?"、と。

695 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/06(月) 23:08:32.09 ID:34eMcvu7o


一〇〇三二号は『絶対能力進化(レベル6シフト)』の生き残りだった。
一方通行によって瀕死の状態まで追い詰められながらも、とある出来事があって奇跡的に生き残ることが出来た個体。
今も第七学区の病院で調整を施されているはずの彼女がなぜ、なぜ一方通行に電話をするのか。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

『・・・・・・お久しぶりですね一方通行、とミサカ一〇〇三二号はちゃんとあなたの携帯電話に――――』

「繋がってる。 なンで二回も言うンだ」

『だったら返事ぐらいしろよこの野郎、とミサカ一〇〇三二号は思わず悪態をつきそうになるところをグッと堪えます』

「堪えられてねェよ」


ここが壊滅状態の第一九学区でなかったら、一方通行の表情が石像のように固まっていなかったら。

今のやり取りは何とも微笑ましいものになっていただろう。

696 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/06(月) 23:09:40.53 ID:34eMcvu7o


一方通行側の状況を知ってか知らずか、一〇〇三二号は感情の起伏が感じられない無気力な声で
話を続けた。


『ミサカ達の話は既にあなたの耳に届いているでしょうか、とミサカ一〇〇三二号は確認します』

「何の話だ。 こっちは急にオマエから電話がかかってくるっつゥ素敵なサプライズのせいで
 絶賛混乱中なンだよ。 何の用件でかけてきた?」

『あなたをサポートするためです、とミサカ一〇〇三二号は全てを説明しようとすると
 長くなってしまう事を危惧し、主目的のみをあなたに伝えます』


ますます意味が分からなかった。
自分をサポートするために電話をかけた、と言われても内容を端折りすぎていて
用件が全く伝わってこない。

そもそも自分の携帯電話の番号をどうやって入手したのか、なぜあの実験の日以来全く接点がなかった
自分を『サポート』するなどという意味不明の電話をかけてきたのか、
聞きたいことは色々あったが一方通行はそれらを全て無視して一つの質問を一〇〇三二号にしてみた。

697 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/06(月) 23:10:28.78 ID:34eMcvu7o


「・・・・・・オマエ、俺が今どォいう状況下に置かれてンのか把握してンのか?」


一〇〇三二号は数秒の間沈黙を返し、平坦な声で答えた。


『あなたが対象呼称「エトワール」に対する投擲作戦を思案している事。
 それによってあなたがあなたにとって大切な存在を守ろうとしている事、
 以上の二点を把握しています、とミサカ一〇〇三二号はあなたの問いに応じます』


風斬たちがわずかにざわめいた。
この声の主は『天使同盟』の現在の状況と『星の欠片』への投擲作戦の事を知っている・・・・・・?

一方通行の顔を染めていた困惑の色が徐々に薄まっていく。
同時に、今度は疑問の色が上塗りされていった。


「『エトワール』ってのは・・・・・・、星の事か。 オマエ、どこまで知っている?」

『ですから、宇宙空間に漂流している対象呼称「エトワール」に何かを投擲する
 事で接触し、「エトワール」に存在する「コア」を切り離すことで
 あなたの大切な存在が守れる、それをあなたが実行しようとしているという事だけです、
 とミサカ一〇〇三二号は少々面倒臭がりながらも答えます』

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

698 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/06(月) 23:11:37.83 ID:34eMcvu7o


一方通行は目を閉じて考えを巡らせる。
一〇〇三二号が言っている『エトワール』とは、十中八九『星の欠片』の事だ。
宇宙空間にある星など無数に存在するが、『それに何かを投擲することで「コア」を切り離し―――』と
一方通行が『星の欠片』に投擲というアプローチを試みようとしている事まで知っているとなると、
『エトワール』=『星の欠片』であることが推理できる。

そして『エトワール』の『コア』とは、ミーシャ=クロイツェフの存在を左右している
儀式場の事で相違ないだろう。

なぜこの一〇〇三二号がそんな事まで知っているのか、一方通行は急激に胸を圧迫する悪寒を感じ取った。


「・・・・・・・・・・・・その話は誰から聞いた?」

『第七学区の病院に勤める医者からです、とミサカ一〇〇三二号はあっさりと暴露します。
 ちなみに"ミサカ達"は現在も尚、避難行動を取らずに第七学区の病院内にて待機しています』


避難行動という言葉の意図が最初は分からなかったが、一方通行はすぐに理解する。
恐らくこの第一九学区の騒ぎが原因で学園都市の住人に避難指示が出されているのだろう。

699 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/06(月) 23:12:22.97 ID:34eMcvu7o


しかしそんな事より一方通行が気になった点は二つ。
まず『星の欠片』と自分が提案した投擲作戦の情報を妹達に提供した医者。


(・・・・・・あのカエル野郎だろォな)


一方通行自身も何度か世話になっているカエル顔の医者。
彼はどういうわけか、一般では絶対知り得ないような情報をいつの間にか持っていたりする
掴めない人間だった。あの医者なら或いは『天使同盟』の事も知っているかもしれないと
一方通行は漠然と思う。

そしてもう一つ。


「その『サポート』ってのをしてくれるありがてェ妹達はオマエ一人じゃねェのか。
 病院内にまだ何人か妹達がいる事を示唆する言葉を吐いてやがったが」

『はい。 とりあえず学園都市からはこのミサカ、一〇〇三二号と一〇〇三九号、
 一三五七七号と一九〇九〇号があなたを全力でサポートします』

700 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/06(月) 23:13:09.91 ID:34eMcvu7o


『ご紹介に預かりましたミサカ一〇〇三九号です、とミサカはまだ出会った事もない一方通行に挨拶をします』

『同じくミサカ一三五七七号です、とミサカは衛星のカメラとリンクしている画面を見つめながら
 一方通行に初の挨拶を送ります』

『どーも、同じくミサカ一九〇九〇号です、とミサカは襲い来る睡魔と闘いながら一方通行に挨拶します』


若干の目眩を感じる一方通行。同じ声で、同じ調子で自己紹介をされても
正直区別するのに苦労すると愚痴りそうになってしまう。

そんな一方通行に構わず、一〇〇三二号は続ける。


『学園都市のミサカだけではありません。 世界各国に位置する学園都市協力機関に
 身を預ける全てのミサカ達とコンタクトを取れるように手配しますので少々お待ちを、
 とミサカ一〇〇三二号はテキパキと手元のキーボードを叩きながらあなたに待機を要求します』

「あァ?」


そりゃどォいう意味だ、と一方通行が尋ねようとしたところで
彼の耳元についさっきと全く同じ声が発せられた。

701 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/06(月) 23:14:10.55 ID:34eMcvu7o


『アルゼンチンより通信繋がりました、とミサカ一五一一〇号は確認を取ります。
 一方通行、聞こえてますでしょうか? とミサカは応答を要求します』

『チェンマイより通信繋がりました、とミサカ一二〇八三号は確認を取ります。
 一方通行、聞こえてますでしょうか? とミサカは応答を要求します』

『ポルトガルより通信繋がりました、とミサカ一五一一三号は確認を取ります。
 一方通行、聞こえてますでしょうか? とミサカは応答を要求します』

『南極より通信繋がりました、とミサカ一九九〇〇号は確認を取ります。
 一方通行、聞こえてますでしょうか? とミサカは応答を要求します』

『カナダより通信繋がりました、とミサカ一六八三六号は確認を取ります。
 一方通行、聞こえてますでしょうか? とミサカは応答を要求します』

『コダジャスより通信繋がりました、とミサカ一七四〇三号は確認を取ります。
 一方通行、聞こえてますでしょうか? とミサカは応答を要求します』

『ローザンヌより通信繋がりました、とミサカ一八〇二二号は確認を取ります。
 一方通行、聞こえてますでしょうか? とミサカは応答を要求します』

702 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/06(月) 23:15:22.49 ID:34eMcvu7o


『アメリカより通信繋がりました、とミサカ一八八二〇号は確認を取ります。
 一方通行、聞こえてますでしょうか? とミサカは応答を要求します』

『グアテマラより通信繋がりました、とミサカ一〇〇五〇号は確認を取ります。
 一方通行、聞こえてますでしょうか? とミサカは応答を要求します』

『アングレームより通信繋がりました、とミサカ一三〇七二号は確認を取ります。
 一方通行、聞こえてますでしょうか? とミサカは応答を要求します』

『シドニーより通信繋がりました、とミサカ一七〇〇九号は確認を取ります。
 一方通行、聞こえてますでしょうか? とミサカは応答を要求します』

『スタロガルトより通信繋がりました、とミサカ一〇八五五号は確認を取ります。
 一方通行、聞こえてますでしょうか? とミサカは応答を要求します』

『ベネズエラより通信繋がりました、とミサカ一一八九九号は確認を取ります。
 一方通行、聞こえてますでしょうか? とミサカは応答を要求します』

『フィンランドより通信繋がりました、とミサカ一九三四八号は確認を取ります。
 一方通行、聞こえてますでしょうか? とミサカは応答を要求します』

『韓国より通信繋がりました、とミサカ一五三二七号は確認を取ります。
 一方通行、聞こえてますでしょうか? とミサカは応答を要求します』

703 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/06(月) 23:16:30.41 ID:34eMcvu7o


『フィリピンより通信繋がりました、とミサカ一〇〇九〇号は確認を取ります。
 一方通行、聞こえてますでしょうか? とミサカは応答を要求します』

『ドイツより通信繋がりました、とミサカ一〇八四〇号は確認を取ります。
 一方通行、聞こえてますでしょうか? とミサカは応答を要求します』

『ロシアより通信繋がりました、とミサカ一九九九九号は確認を取ります。
 一方通行、聞こえてますでしょうか? とミサカは応答を要求します』

『同じくロシアより通信繋がりました、とミサカ二〇〇〇〇号は確認を取ります。
 一方通行、聞こえてますでしょうか? とミサカは応答を要求します』

『ノルウェーより通信繋がりました、とミサカ一八〇七二号は確認を取ります。
 一方通行、聞こえてますでしょうか? とミサカは応答を要求します』

『北京より通信繋がりました、とミサカ一九〇〇九号は確認を取ります。
 一方通行、聞こえてますでしょうか? とミサカは応答を要求します』

『イタリアより通信繋がりました、とミサカ一七二〇三号は確認を取ります。
 一方通行、聞こえてますでしょうか? とミサカは応答を要求します』

704 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/06(月) 23:17:30.74 ID:34eMcvu7o


『オーストリアより通信繋がりました、とミサカ一〇五〇一号は確認を取ります。
 一方通行、聞こえてますでしょうか? とミサカは応答を要求します』

『スロベニアより通信繋がりました、とミサカ一二四八一号は確認を取ります。
 一方通行、聞こえてますでしょうか? とミサカは応答を要求します』

『スペインより通信繋がりました、とミサカ一九四八八号は確認を取ります。
 一方通行、聞こえてますでしょうか? とミサカは応答を要求します』

『同じくスペインより通信繋がりました、とミサカ一〇八五四号は確認を取ります。
 一方通行、聞こえてますでしょうか? とミサカは応答を要求します』

『メキシコより通信繋がりました、とミサカ一四三三三号は確認を取ります。
 一方通行、聞こえてますでしょうか? とミサカは応答を要求します』

『インドより通信繋がりました、とミサカ一二〇五三号は確認を取ります。
 一方通行、聞こえてますでしょうか? とミサカは応答を要求します』

『ドイツより通信繋がりました、とミサカ一六七七〇号は確認を取ります。
 一方通行、聞こえてますでしょうか? とミサカは応答を要求します』

「オマエら俺をミサカノイローゼにするつもりか」

705 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/06(月) 23:18:20.78 ID:34eMcvu7o


それはまさに壮大なオーケストラ、というよりシュプレヒコールだろうか。
ミサカというミサカが次々と一方通行の耳元で電話越しに自己紹介をしてくる。
順番ずつ名乗るのではなく、ほぼ同時に喋ってくるので正直なところどれがどの妹達なのかさっぱり分からなかった。

それでも一方通行は文句ひとつ言わず、最後まで彼女たちの声を聞いた。

総勢九九六九人。『絶対能力進化』から生き延びた全ての妹達が、この瞬間一方通行とコンタクトを取った。

一方通行の電話から聞こえてくる謎のボイスに風斬他魔術師達は皆開口する以外のリアクションが出来なかった。
この白い髪の少年はどこの少年少女合唱団と会話しているのかと頭を悩ませる。
堪らず、キャーリサが風斬に質問した。


「・・・・・・何なのこのミサカはミサカはってのは。 お友達?」

「え、と・・・・・・・・・・・・私にも正直どういう事なのか・・・・・・。
 彼女たちが『星の欠片』の位置をどうにかして伝えてくれることは分かったんですけど・・・・・・」


科学サイドの人物である風斬氷華にも理解しきれないのなら、魔術サイドの人間が分かるはずもない。
一同はとりあえず妹達とのやり取りを一方通行に一任する事にした。

706 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/06/06(月) 23:18:28.75 ID:Fc/glTb40
もはや軽いホラーだww
707 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/06(月) 23:20:02.55 ID:34eMcvu7o


一方通行は頭を努めて冷静にし、次々と飛んで来る妹達の声を傍聴、分析する。


『ちょっとややこしいでしょうが我慢してください、とミサカ一〇〇三二号は
 ミサカ達の言葉を聞いて欲しいと暗に願います』

「・・・・・・俺からも一つイイか?」


最強の第一位は一瞬だけ憂鬱な表情を浮かべて、妹達に質問する。


「・・・・・・どォして俺に、俺達に助力しよォと思ったンだ?
 あの医者から言われた事だろォが何だろォが、その気になりゃ
 オマエらは俺への手助けなンざ断る事が出来たはずだ」


一方通行は八月三一日の件以来、打ち止めだけではなくその他全ての妹達を
守るとその腐りかけていた心に誓っている。
だがそれは彼が一方的に決めた信念だ。それに妹達が応じる必要は全くない。
むしろ一方通行は妹達を一〇〇三一体も殺害している、妹達にとっては死神よりも死神らしい存在と言える。

708 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/06(月) 23:22:00.86 ID:34eMcvu7o


そんな自分になぜ助力するのかと、一方通行は聞かなくてもいい事を敢えて尋ねた。


『あなたが何かを守りたいと願っているからです、とミサカ一四三三三号は
 何を今更そんな事を聞いてくるのかと心の中で失笑します』


当たり前のように、ごく自然に、妹達の一人がそう答えた。
一方通行が何かを言い返す前に他の妹達が割って入り彼の言葉を遮る。


『恐らくあなたは例の実験の件を気にしているのでしょうが、
 だからどうしたというのでしょう、とミサカ一〇〇三三号は逆に尋ねてみます』

「何?」

『あなたは八月三一日に上位個体との対話によってあの実験の事については
 全て語り終えているはずです、とミサカ一〇七六〇号は示唆してみます』

『もちろんミサカ達があなたを許すことは、少なくとも現時点ではあり得ませんが、
 ならば一方通行が何か守るのは良くないというのかと言われれば答えはNO、とミサカ一八二六四号は断言します』

709 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/06(月) 23:24:20.00 ID:KsIILxjL0
20000号がまともだと……!
710 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/06(月) 23:25:40.87 ID:34eMcvu7o


一方通行は少しだけ項垂れ、妹達の言葉を黙って聞き続ける。


『あなたが地獄に住む慈悲のない鬼だろうが悪魔だろうが、
 だからと言って何も守ってはいけないという事にはならないでしょう、と
 ミサカ一四五一〇号はあなたも恐らく理解している事を敢えて口にします』

『あなたが何を守ろうとしているのか、そもそも学園都市で今何が起きているのかすら
 ミサカ達は状況を全て傍受しているわけではありませんが・・・・・・。
 ミサカ達の協力があればそれを成せるというのなら、ミサカ達は助力を惜しみませんと
 ミサカ一八四一四号は全力であなたを支援することをここに誓います』

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


妹達の数々の言葉を受けた第一位は、一切の反論をしなかった。
この体細胞クローン達は一方通行よりクローンである自分という存在を重んじている。
蓋を開けてみれば、そこには何とも笑える光景が広がっていた。

711 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/06(月) 23:27:59.84 ID:34eMcvu7o


一方通行は少しだけ項垂れ、妹達の言葉を黙って聞き続ける。


『あなたが地獄に住む慈悲のない鬼だろうが悪魔だろうが、
 だからと言って何も守ってはいけないという事にはならないでしょう、と
 ミサカ一四五一〇号はあなたも恐らく理解している事を敢えて口にします』

『あなたが何を守ろうとしているのか、そもそも学園都市で今何が起きているのかすら
 ミサカ達は状況を全て傍受しているわけではありませんが・・・・・・。
 ミサカ達の協力があればそれを成せるというのなら、ミサカ達は助力を惜しみませんと
 ミサカ一八四一四号は全力であなたを支援することをここに誓います』

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


妹達の数々の言葉を受けた第一位は、一切の反論をしなかった。
この体細胞クローン達は一方通行よりクローンである自分という存在を重んじている。
蓋を開けてみれば、そこには何とも笑える光景が広がっていた。

一方通行は結局、妹達を守っているのではなく、妹達に支えられているのだと。
少なくともこの時の現状ではそうだと素直に思うことが出来た。

712 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/06(月) 23:29:40.89 ID:34eMcvu7o


一方通行は結局、妹達を守っているのではなく、妹達に支えられているのだと。
少なくともこの時の現状ではそうだと素直に思うことが出来た。

妹達は知る由もないが、ミーシャ=クロイツェフという天界より舞い降りた天使も、
一方通行同様こんなにも大勢の『人間』に支えられている。

だから、一方通行はもう何も言わない。妹達の援助を素直に受け止める事に決める。


「・・・・・・世話ァかけるな」

『無駄話はここまでにしましょう。 聞くところによるとこの「エトワール」投擲作戦には
 タイムリミットがあるとか、とミサカ一九七八五号は引き続き人工衛星の映像リンク作業に集中します』

「人工衛星?」


思わず声を出したのは神裂だった。
彼女は一方通行が片手に持つ携帯電話に向けて妹達に話しかける。


「失礼。 現在、世界各地で打ち上げている人工衛星は全て『はっきんぐ』とやらで
 干渉不可能になっていると耳にしていますが」

713 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/06(月) 23:31:33.45 ID:34eMcvu7o


妹達は知る由もないが、ミーシャ=クロイツェフという天界より舞い降りた天使も、
一方通行同様こんなにも大勢の『人間』に支えられている。

だから、一方通行はもう何も言わない。妹達の援助を素直に受け止める事に決める。


「・・・・・・世話ァかけるな」

『無駄話はここまでにしましょう。 聞くところによるとこの「エトワール」投擲作戦には
 タイムリミットがあるとか、とミサカ一九七八五号は引き続き人工衛星の映像リンク作業に集中します』

「人工衛星?」


思わず声を出したのは神裂だった。
彼女は一方通行が片手に持つ携帯電話に向けて妹達に話しかける。


「失礼。 現在、世界各地で打ち上げている人工衛星は全て『はっきんぐ』とやらで
 干渉不可能になっていると耳にしていますが」

714 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/06(月) 23:33:36.42 ID:34eMcvu7o


自分の声が聞こえているのかどうか少々不安に思う神裂だったが、
九九六九体の内の誰かが傍受してくれたのか、質問の答えが返ってくる。


『いきなり二十代後半の女性の声が聞こえたので何事かと、ミサカ一二三四五号は多少驚きます。
 疑問の声にお答えすると、「天使同盟」なる謎の勢力による人工衛星のハッキングは
 今から四時間以上前に全て解除されています、とミサカ一二三四五号は新鮮な情報をお届けしてみます』


一二三四五号の言葉に一番驚いたのは一方通行と風斬氷華だった。
なぜか神裂がふるふると震えながら七天七刀に手をかけているが、一方通行は無視して風斬と顔を見合わせる。


「じゃ、じゃあエイワスさんは今この時のために人工衛星の掌握を・・・・・・?」

「あのクソ野郎、俺達が『星の欠片』に地上から衝撃を加えることで儀式場を保護することまで
 読ンでたってわけか・・・・・・。 チッ、やっぱあいつは気に食わねェ」


妹達の何人かが何の話ですかと問いかけてきたが、何でもねェよと一方通行は流した。

要するにエイワスは妹達に人工衛星の映像をリンクさせてリアルタイムで宇宙空間の様子を
監視させて、『星の欠片』の位置を探らせるために敢えて今まで人工衛星をハッキングしていたということになる。

それを行うとなるとエイワスはこの投擲作戦をロシアに滞在していた時から予想していなければならないのだが・・・・・・、
あの金髪の怪物ならそんなことも出来るかもしれないと一方通行は忌々しく思いながらも静かに驚愕した。

715 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/06(月) 23:35:50.69 ID:34eMcvu7o


自分の声が聞こえているのかどうか少々不安に思う神裂だったが、
九九六九体の内の誰かが傍受してくれたのか、質問の答えが返ってくる。


『いきなり二十代後半の女性の声が聞こえたので何事かと、ミサカ一二三四五号は多少驚きます。
 疑問の声にお答えすると、「天使同盟」なる謎の勢力による人工衛星のハッキングは
 今から数分前に全て解除されています、とミサカ一二三四五号は新鮮な情報をお届けしてみます』


一二三四五号の言葉に一番驚いたのは一方通行と風斬氷華だった。
なぜか神裂がふるふると震えながら七天七刀に手をかけているが、一方通行は無視して風斬と顔を見合わせる。


「じゃ、じゃあエイワスさんは今この時のために人工衛星の掌握を・・・・・・?」

「あのクソ野郎、俺達が『星の欠片』に地上から衝撃を加えることで儀式場を保護することまで
 読ンでたってわけか・・・・・・。 チッ、やっぱあいつは気に食わねェ」


妹達の何人かが何の話ですかと問いかけてきたが、何でもねェよと一方通行は流した。

要するにエイワスは妹達に人工衛星の映像をリンクさせてリアルタイムで宇宙空間の様子を
監視させて、『星の欠片』の位置を探らせるために敢えて今まで人工衛星をハッキングしていたということになる。

それを行うとなるとエイワスはこの投擲作戦をロシアに滞在していた時から予想していなければならないのだが・・・・・・、
あの金髪の怪物ならそんなことも出来るかもしれないと一方通行は忌々しく思いながらも静かに驚愕した。

716 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/06/06(月) 23:41:54.14 ID:Fc/glTb40
10033も…だと…!?
717 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/06(月) 23:43:47.19 ID:mtmFuCDIO
>二十代後半
大事なことなので
718 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/06(月) 23:44:52.70 ID:34eMcvu7o
あーあー……最後にやっってしまった。
五分以上も反映に時間掛かるのか……この時間帯はもうダメダメですねえ……

かと言ってこの時間帯じゃなきゃ投下できないわけで、どうしましょう。
早いところ対策を練らねば……

というわけで、ご迷惑をおかけしました。お見苦しいところをお見せしました。

さて、妹達の援助が加わりいよいよ星の欠片の保護作戦が開始されます。
果たして一方通行に天使を交えた日常は戻ってくるのでしょうか。

このスレでも終わらない可能性が濃厚になってきたところで、次回に続く!

次回更新は三日以内。それでは、ありがとうございました!

どうしよ……ホンマに……
719 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/06(月) 23:45:46.46 ID:34eMcvu7o



                          【次回予告】



『(ふざ、けンな・・・・・・!! たかが恒星が意志でも持ち合わせてるってか!? 冗談じゃねェぞ。
 ・・・・・・だがそれ以外に考えられねェ。 妹達の報告が確かなら『星の欠片』は
 強制的に太陽に向かって直進してやがる。 引力じゃねェ、もっと訳のわからねェ力で・・・・・・!!)』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・一方通行(アクセラレータ)




『この意味不明の光の壁を取り除くために学園都市の全警備員が第一九周辺に
 配備されてるじゃんよ。 壁を破壊し次第、警備員全勢力が第一九学区に突入する。
 つってもこの壁、私の見立てじゃナパームでも核弾頭でも壊れそうにないじゃん。』
―――――――――――第七三活動支部所属の警備員・黄泉川愛穂




『一方通行とお話がしたいという人物達がいるのですが、どうしますか?
 とミサカ一七〇〇〇号は・・・・・・って、あの、ゴーグル引っ張るなー』
―――――――――――第三位のクローン体、『妹達』の一人・ミサカ一七〇〇〇号



720 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2011/06/06(月) 23:46:32.19 ID:9HYVsVyf0
>いきなり二十代後半の女性の声が聞こえたので
思いっきり地雷を踏んだなこの妹
721 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/06(月) 23:47:09.49 ID:KsIILxjL0
乙! ミスッても気にしないから大丈夫だぜ!
722 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/06(月) 23:50:14.97 ID:6OY0dJ+io
乙!
夜中を避けて投下するしか思い浮かばない
書き上げたテキストを携帯にメールして昼に書き込むとか?

予告の17000号は確かイギリス在住だよな
となるとここで出番か……!
723 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/06/06(月) 23:51:14.80 ID:nxv1dnII0
乙!
このスレで終わらなかったら新しいスレを立てて
ちょっとほのぼのな後日談とか書けばいいと思うの

妹達のくだりで泣きそうになった
黄泉川先生の出番にドキドキが止まらん
724 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/06(月) 23:52:20.10 ID:zKReF81Mo
二0000号がまともだと・・・・・!?
725 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/06(月) 23:56:56.93 ID:da3RWfGI0
ここで、レッサーが登場して、鋼の手袋レッサースペシャルカスタム改で、星の欠片を掴んで引き寄s

・・・無いな
726 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/07(火) 00:02:20.78 ID:uR/3RQ+e0
乙です!!
神裂さんじゅうはっさい怒っちゃだめー
727 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/06/07(火) 00:07:24.52 ID:rkZZcGQ7o
乙!

電話の相手が妹達だとは……
美琴だと思ってたのに
728 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/06/07(火) 00:14:33.50 ID:9ZXjWwUu0
乙!
黄泉川先生か……ここで突入されたらいろいろと面倒だぞ
外部の人間がほとんどだし、最悪ミーシャが全責任を被せられるかも

……出番だ、上条さん
729 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/07(火) 00:32:39.53 ID:/AF5LslDO

連続投下記録とかあるのかな
730 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/06/07(火) 00:44:52.63 ID:jmTHfJjBo
あの二〇〇〇〇号がまとも…まとも…!?
731 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/07(火) 00:47:33.75 ID:lbgAANPIO
>>728
どこでもエイワスがあれば楽勝だろ
732 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/07(火) 01:15:57.28 ID:8zKvZyvDO
乙!
ねーちん気にするな
それだけねーちんが年よ…ゲフンゲフン女教皇として威厳と風格に溢れてる証拠さ!
733 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/07(火) 01:21:42.25 ID:rpX0XrHY0
ねーちんェ…
734 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/07(火) 01:51:21.30 ID:jHxTIVpCo
>>1
恒星が垣根に見えた
735 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/07(火) 02:50:13.36 ID:r30j1jBDO
おまえもか
736 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) [sage]:2011/06/07(火) 07:23:52.71 ID:GfnBYW7B0
>>1乙!
そしてしかしお前らミサカネットワークSSに影響受け過ぎw 原作ではどっちもまともだった……はずだぞ?
737 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) [sage]:2011/06/07(火) 07:25:50.14 ID:GfnBYW7B0
>>1乙!
そしてしかしお前らミサカネットワークSSに影響受け過ぎw 原作ではどっちもまともだった……はずだぞ?
738 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/06/07(火) 19:00:07.45 ID:IkVzRid50
あれ?どれが原作だっけ??
739 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/07(火) 19:44:26.38 ID:dlxN5oHLo
この時間帯ならスムーズに投下出来るかなぁ、と思って来ました。
なんとか時間空けることが出来た……。

さて前回。『妹達』の助力を得ることになった一方通行。
あの忌まわしき過去の事もあり、一方通行は拒もうとしますが妹達は一方通行に協力する意志を変えません。
今は昔の事をグダグダ言ってる場合じゃねえだろ、と叱咤され一方通行も妹達に感謝します。

いよいよクライマックスも近づいてきた最終章。はたしてミーシャの運命や如何に!!

……そんな感じで、いきますよー。
740 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/07(火) 19:45:23.18 ID:dlxN5oHLo


『それではこれより「エトワール」の索敵を開始します、とミサカ一四四四〇号は
 ミサカネットワークを介して人工衛星のデータベースへのアクセスを開始します』


妹達の支援を得て、ついに『星の欠片』防衛作戦は開始された。
九九六九体の妹達は各々で人工衛星へのアクセスを始める。


『携帯電話の電源は切らぬようお願いします、とミサカ一四五一〇号は
 一方通行に一応の忠告を送ります』

『早速ですが問題が発生しました、とミサカ一三三三三号は
 ミサカネットワークを通して全妹達に報告をします』

『一三三三三号の報告を傍受しました、とミサカ一九〇七二号は確認します。
 現時刻と太陽系の軌道に乗っている月の位置に矛盾が発生していることを確認しました』

『この現象に何か心当たりはありませんか、とミサカ一〇〇三二号は
 一方通行に尋ねてみます』

741 :早速エラー吐きまくりでワロタwwwww  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/07(火) 19:46:28.80 ID:dlxN5oHLo


妹達は知らない。ミーシャ=クロイツェフの『天体制御(アストロインハンド)』によって
宇宙空間の星の位置が強制的に変換されてしまっている事を。

一方通行は掻い摘んで事情を説明する。


「詳しい理由は省くが、午後二時過ぎ時点で学園都市が夜に覆われた事は把握してンだろ?
 そこから逆算すれば現在の月の位置が妙な場所にあるのも納得出来るはずだ。 俺の身内が月を動かしてンだよ」

『月を動かすという驚愕の極みに値する言葉を聞きつつも、ミサカ一九九九九号は
 一方通行の報告通り月の位置から「エトワール」の現在地を参照してみます』


一九九九九号と同じような返答が他の妹達からも伝わってくる。

一方通行は一〇〇〇〇体近い妹達の支援を受けながらも、その心にある不安を抱えていた。
例え九九六九体の妹達がいようが宇宙にある人工衛星はそれと比べるとかなり少ない。
恐らく九九六九体の何十パーセントかが人工衛星にアクセスしその機能をフルに活用し、
残りが太陽系の軌道から『星の欠片』があるであろう予測ポイントを索敵しているはずだ。

だがもし仮に、人工衛星のカメラからでは捉えられないような位置に『星の欠片』があったとしたら。
そうなれば妹達には『星の欠片』を発見することが出来ない。
そしてミーシャ=クロイツェフに限界が訪れ『天体制御』は解除。その結果がどうなるかは定かではないが、
概ねろくな結果にはならないだろう。

742 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/07(火) 19:47:22.41 ID:dlxN5oHLo


しかし何度も言うように『星の欠片』の捜索に取り掛かっている妹達は九九六九体。
『人海戦術』とはまさにこの事。
一同が待ち望んでいたであろう言葉が、大した時間もかけずに飛び込んできた。




『太陽系の軌道上から大きく離れた位置より、太陽系の惑星とは異なる物体を確認、
 とミサカ一三八七四号は報告します。 これが目標の「エトワール」でしょうか?』




一方通行が握る携帯電話から響いてきた声を聞き、周囲から息を呑む音がした。
遅れて他の妹達からもいくつか太陽系の軌道から外れた異物が浮遊しているという報告が届く。
一方通行の顔から思わず笑みがこぼれた。携帯電話を握るその手にも無意識に力が入る。


『人工衛星のカメラを利用して写真を撮り、そのデータを一方通行の携帯電話に
 送信しましょうか? とミサカ一四八八九号は提案してみます』

「頼む」

743 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/07(火) 19:48:04.19 ID:dlxN5oHLo


程なくして一方通行の携帯から小さな電子音が短く鳴った。
人工衛星から撮影した写真を携帯端末で表示するとやはり多少画質が荒かったが、
真っ黒な空間に何か小さな物が浮かんでいるのが窺える。

これだけでは判別できないと一方通行がもう数枚写真を要求しようとした途端、
予測していたかのように妹達から再び添付ファイル付きのメールが届いた。
一方通行は写真を確認すると、魔術サイドの面々に画面を開いて向ける。


「これが『ベツレヘムの星』で間違いねェか?」

「・・・・・・・・・・・・、・・・・・・。 間違いない、ベツレヘムの星の最右部。
 儀式場の『門』を司る白と黒の液体が注入された柱・・・・・・。
 驚いたのである、まさか本当にまだ残っていたとは・・・・・・」


答えたのはアックアだった。キャーリサや騎士団長、神裂火織もそれに続くように首を縦に振る。
そしてミーシャ=クロイツェフも無言のまま頷いた。
妹達から送れられてきた超光学ズーム撮影の写真には、朽ち果てた城のような
場所に、夥しい数の白黒の柱がずらりと並んでいる様子が写っていた。


見つけた。ついに発見した。

744 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/07(火) 19:48:53.29 ID:dlxN5oHLo


『天使同盟(アライアンス)』が世界を駆け巡って捜し求めていた『ベツレヘムの星』。
ミーシャの存在を持続させている命の柱が残る儀式場、『星の欠片』。

一方通行が風斬の顔を見ると、彼女は深刻な表情を浮かべながらも力強く頷いた。


「これで間違いねェ。 こっちで確認した」

『了解しました。 ではこれより一方通行に「エトワール」の位置座標を
 逐一お伝えします。 電極チョーカーのスイッチをオンに切り替え、
 投擲物を構えてください、とミサカ一〇〇四七号は指示します』


言われたとおり一方通行はチョーカーのスイッチを切り替える。
彼はこの瞬間、天使に救いの手を差し伸べる一人の救世主へと変身した。
ジッと夜空を見上げながらゆっくりと槍を構える。

垣根帝督が純粋な気持ちを吐露しながら託してくれた、希望の槍を。


(待ってろよ・・・・・・・・・・・・)


そして一方通行の耳に次々と『星の欠片』の位置座標が通達されはじめた。
その数値を参考に第一位はベクトル操作の演算処理を調節し、右手に携える槍に送る。
妹達から伝えられてくる位置座標は常に数値が違っていた。
恐らくリアルタイムで『星の欠片』は移動しており、その影響で目まぐるしく位置座標も変わっているのだろう。

745 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/07(火) 19:50:57.76 ID:dlxN5oHLo


『第一九学区の一方通行から「エトワール」の距離までおよそ一億四九・・・・・・
 訂正をお伝えします。 そこから約六一度右へ角度を修正してください、とミサカ一〇〇三一号は指示します』

「おい、これじゃ太陽に向かってそっぽを向いているよォなモンじゃねェか。
 まさか『星の欠片』は・・・・・・」

『あなたの思っているとおり、「エトワール」は理由は不明ですが
 なぜか月、その他の惑星の引力に一切影響されること無く太陽に向かって直進しています。
 このままでは大きく見積もっても残り約二〇分ほどで「エトワール」は太陽のコロナに接触します、
 とミサカ一五九九七号は残された時間はあまり無い事実を示唆します』

「待て、その速度なら『星の欠片』は太陽の引力に引かれちまってンだろォが。
 惑星の引力の影響を受けてねェはずの欠片がどォして"太陽にだけ引っ張られてる"?」

『原因不明です、とミサカ一八〇七二号は簡素に答えます』


太陽との衝突まで残り約二〇分。夕刻前にはケリをつけておかなければならないと
踏んでいた『天使同盟』の予想とは少し違っていたが、概ね間違いでもなかった。

746 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/07(火) 19:51:55.73 ID:dlxN5oHLo


にしても問題なのはその二〇分という時間。太陽と『星の欠片』の位置は
人工衛星から見たらかなり離れているようにも見えるのだが、
実際『星の欠片』が太陽の表層面から発せられているコロナに接触した場合、消滅しない保証はない。
『彩層』に触れること無く消滅する可能性だって充分に考えられる。

それを考慮した上で妹達は二〇分という結論を導き出したのだろうが、
いくらなんでも早過ぎる。太陽の引力に引かれているとしか思えない。

一方通行はロシアを発つ前にエイワスが言っていた事を思い出す。




『いくら協力な術式を行使していようが、「歳月の船」の航行を止めることなど出来んよ』

『私とて、さすがに「ラー」の意志を歪めたりは出来ないからね』



747 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/07(火) 19:52:35.27 ID:dlxN5oHLo


あの聖守護天使が口にしていた聞き慣れない言葉。

『歳月の船』。『ラー』。

エイワスは太陽の事をそう呼称していた。
もしかすると『星の欠片』を消し飛ばそうとしている太陽の引力、いや、『未知の意志』が
この不可解な現象に関わっているのかもしれない。

それは言わずもがな、魔術。ここに来てオカルトが絡んできた事に一方通行は激しく憤る。


(ふざ、けンな・・・・・・!! たかが恒星が意志でも持ち合わせてるってか!? 冗談じゃねェぞ。
 ・・・・・・だがそれ以外に考えられねェ。 妹達の報告が確かなら『星の欠片』は
 強制的に太陽に向かって直進してやがる。 引力じゃねェ、もっと訳のわからねェ力で・・・・・・!!)


アレイスター=クロウリーという世界最強の大魔術師。
ミーシャ=クロイツェフという神に反旗を翻した暴徒の『悪魔』。

それらの困難を全て乗り越えた『天使同盟』の前に最後に立ちはだかったのは、太陽という名の敵だった。

748 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/07(火) 19:53:42.33 ID:dlxN5oHLo


『地上から「エトワール」に投擲物が接触する時間は算出できていますか? とミサカ一六二〇二号は確認をとってみます』

「およそ八分。 ただし、『光速』でだがな」

『光速で投擲物を射出する演算は可能な状態にありますか? とミサカ一〇九〇二号は
 妹達の代理演算でそこまでの演算補助が行えるか懸念します』

「問題ねェよ。 それより光速の余波をどォ演算して緩和させるかが重要だ。
 オマエら、リアルタイムで俺の演算処理式を把握出来るンだろ? だったら
 俺の演算に狂いが生じねェよォ何人かで"見張ってろ"。 針穴に糸を通すってレベルじゃねェからな」

『了解しました。 尚、太陽との接触まで残り八分の所で投擲物を射出しても
 間に合いません。 よって、残り一〇分以上のところで全ての演算を終わらせるよう
 お願いします、とミサカ一一二七五号は事実上の残り時間があと一〇分も無い事をお伝えします』


そこから一方通行は携帯を耳に当てたまま閉口した。
『槍の投擲』というベクトル操作に注ぐ演算のために全意識を槍を携える手に集中し始めたからだ。
直後、彼の顔に尋常ではない量の汗が滴り始める。一方通行はこの極度の緊張感を一度味わった事があった。


(あのクソガキの頭ン中にあったウイルスを除去する時も・・・・・・こンな風にベクトル操作の
 演算能力を全部一点に集中させたことがあったな。 クソったれ、これじゃ槍は投擲出来ても
 その反動で俺の体が粉々になっちまう。 俺にも、周囲にも危害が及ばねェよォ演算をしなきゃ
 ならねェって事か。 あのクソガキの時と同レベルの難易度だな)

749 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/07(火) 19:54:36.03 ID:dlxN5oHLo


もしくは打ち止めの『学習装置(テスタメント)』の代理を行った時よりも困難かもしれなかった。
とにかく、この演算は複雑だ。さっきも一方通行本人が言っていたが、この演算処理は針穴に
糸を通すなどという精密作業どころではない。数億数兆のプログラムに一つでもミスがあれば
全てが終わるレベル。

本来、このレベルの演算を行うならば学園都市最高の頭脳の持ち主である
一方通行ですらも三週間じっくり演算して成功するかどうかのレベルだ。
それを残り二〇分、正確には残り一〇分以下で処理しなければならない。

演算処理の難易度もあるが、それ以上に『もしも失敗したら』という最悪の"if"が脳裏をよぎる。
失敗したらまたやり直し、という都合の良い事は出来ない。
槍は垣根帝督が命を削って作った一振り。もう一度作ることが出来ないのは火を見るより明らかだ。

更に、失敗した場合本来の目的である『ミーシャ=クロイツェフの救出』が不可能となってしまう。
『星の欠片』は今も太陽に引き寄せられている状況にある。仮に失敗し、何らかの幸運が発生して
垣根が託してきた槍と同等の投擲物が手に入ってもいちいち演算し直している時間はない。


まさに一発勝負。
気付けば、一方通行の全身は小刻みに震えていた。極度の緊張と、最悪の未来を迎えるかもしれないという恐怖から。

750 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/07(火) 19:55:52.39 ID:dlxN5oHLo


――――――――――――――――――――――


「・・・・・・なんか、急に静まり返ったな。 戦いが終わったのか・・・・・・?」


上条当麻はすっかり異変の無くなった、しかし未だに空を覆う偽りの夜と
再び現出してきた光の壁を仰ぎながら呟いた。

結局、上条は第一九学区で起こっていた戦いに参加することはなかった。
チャンスはあった。第一九学区で降臨した神の手によって
第一九学区への侵入を不可能にしていた光の壁が取り払われたため、その時に
街に入って戦闘に参加することも出来た。

だが、上条当麻はそうしなかった。自分の意志で、自分の判断でそう決めた。
『自分が今この戦場に足を踏み入れたら、取り返しの付かない事になる』。
己の頭に浮かぶ直感を信じての行動だったが、結果としてそれは正しかった。

上条本人にはこの選択が正しかったのかどうかは分からない。
だが彼は後悔していなかった。仲間を信じ、自分を信じた上条は決して後ろを振り返らない。

751 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/07(火) 19:56:35.66 ID:dlxN5oHLo


「・・・・・・・・・・・・」

「インデックス、大丈夫か?」

「・・・・・・うん。 ただ、"あの人"の意識が私の頭に流れてこなくなった。
 多分もう今は『魔道書図書館』に触れていないんだと思う」

「そっか」


唯一、上条当麻に心残りがあるとすれば、それは彼の隣にいるインデックスの
頭の中にある魔道書を無理やり行使していた謎の男の末路。
彼が魔術師だろうと無かろうと、原典の毒はたちまちその対象の脳を破壊する。
インデックスの様子からして、あの男はかなりの数の原典に触れてしまっている。

まさかこの不可侵領域の第一九学区で朽ち果ててしまっているのでは、
という最悪の結果が嫌でも思い浮かぶ。

752 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/07(火) 19:57:13.69 ID:dlxN5oHLo


「・・・・・・次に、」

「?」

「次にこのクソ忌々しい壁が無くなったら、すぐにここに入ろう。
 さっきはここに居たほうがいいなんて言っちまったけど、もう待つ必要は無いと思う。
 だから次だ」


上条は異能の力が宿る右手をジッと見つめながら言った。


「多分もう一回くらいチャンスはある。 次に壁が無くなったらすぐに全速力で―――」

『こらああああああああああああああッッ!!!!!!』

「ひゃいいっ!!?」

753 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/07(火) 19:58:48.83 ID:dlxN5oHLo


突然背後から飛んできた大音声に、上条は思わずマヌケな声を出してしまった。
上条とインデックスが後ろを振り向くと、そこには大勢の警備員(アンチスキル)と
スポーツカーをベースとした高速車両が数台。駆動鎧(パワードスーツ)で構成された部隊と
分厚い緩衝材を完備した円筒型の自立ロボットがわらわらとこっちへ向かってくるところだった。


(や、ヤバい・・・・・・)


ポカンとした表情を浮かべているインデックスの横で顔を青くしながら冷や汗を流す上条。
本来、現状では一般学生等は近くの地下シェルターへ避難していなければならない。
上条達がここにいるということは即ち警備員の避難指示を無視したということになり、
最悪罰を受ける可能性もあった。

高速車両の一台から重装備の警備員が降りてきた。先ほど上条達に怒号を放った警備員だ。
その警備員を、上条は見知っている。


「あ、えっと、黄泉川先生・・・・・・?」

「ん? お前月詠先生んとこの悪ガキか? 地下街での件といい、
 騒ぎの中心にはいつもお前がいるじゃんよ」

754 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/07(火) 19:59:58.29 ID:dlxN5oHLo


今回は全く自分は関与していないんですけどねー・・・・・・と上条は言い訳をしようとしたが、
その前に黄泉川が薄ら寒い笑みを浮かべながら自分の頭を掴んできたため言葉を紡げなかった。


「・・・・・・で? 一般学生は避難してなきゃおかしい状況で、
 なんでお前が小さな修道女を傍らにこんなところにいるじゃんよ・・・・・・?」

「い、いやあの、そのですね。 これには深いわけがあるというか何というか・・・・・・」

「友達を助けに来たんだよ」


言ったのはインデックスだ。彼女の表情は真剣そのもので、
碧眼の奥に見える少女の固い決意に黄泉川はしばし口を閉じる。


「この壁の向こうで、私の友達が今も苦しんでるんだよ。
 だから助けに来たかも。 とうまは私が無理やり引っ張ってきただけだから
 お仕置きとかはしないでほしいんだよ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうか」

755 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/07(火) 20:00:40.55 ID:dlxN5oHLo


やれやれ、と心底うんざりしたようなため息をつきつつも
どうやら黄泉川はインデックスの気持ちを汲んでくれたようだ。
他の警備員に上条達はこっちで何とかすると指示して予定の配置へつかせていった。

上条が怪訝な顔をしながら尋ねる。


「あの、これって・・・・・・?」

「この意味不明の光の壁を取り除くために学園都市の全警備員が第一九周辺に
 配備されてるじゃんよ。 壁を破壊し次第、警備員全勢力が第一九学区に突入する。
 つってもこの壁、私の見立てじゃナパームでも核弾頭でも壊れそうにないじゃん。
 早くも一部の部隊がお手上げ宣言をしてる現状だし」


それと、と黄泉川はどこか複雑な表情を見せながら、


「今回のこの一件、どうもウチの家族が一枚噛んでるような気がしてならないじゃんよ」

「?」


黄泉川はある少年の名を呟いたが、上条とインデックスの耳には届かなかった。

756 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/07(火) 20:01:25.69 ID:dlxN5oHLo


――――――――――――――――――――――


「一方通行さん・・・・・・・・・・・・」


心配そうに彼の名を呟く風斬の声も、全神経を研ぎ澄ましている一方通行には届かない。
あとは一方通行が救出してくれるのを信じるだけとなったミーシャ=クロイツェフも
言葉はかけず、ただ黙って『天体制御』の維持に意識を集中させるだけだ。

キャーリサも騎士団長もアックアも、神裂火織もヴェントも、意識を失った垣根帝督を
肩で支えているステイルも、一方通行を黙って見守っている。


そして一方通行は、


「・・・・・・クソ。 ちくしょう・・・・・・」

757 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/07(火) 20:02:22.87 ID:dlxN5oHLo


『演算が著しく乱れています。 気持ちを落ち着かせて
 冷静に演算処理を行ってください、とミサカ一二二二一号はお願いします』

「わかってる・・・・・・」

『あなたが向いている方向と「エトワール」の位置がズレています。
 それと、やはり演算処理に大きな誤差が生じています、とミサカ一一一一一号は――――』

「わかってる!!!」


思わず怒鳴ってしまう。緊張、恐怖、混乱、苛立ちがぐるぐると鍋の中で掻き回されている状態の頭に、
さらに超精密の演算処理の実行がプラスされ、一方通行は今にも破裂しそうだった。
眼球が揺らぐ。掌に滲む汗で槍がずり落ちそうになる。終いには携帯から鼓膜に伝わってくる
大勢の妹達の声がまるで自分を責め立ててきてるような錯覚にまで陥ってきた。

最悪のコンディションだ。これでは天使を救うどころか、このままでは一方通行自身もダメになってしまう。
これだけの難問が立ち塞がっている手前、仕方がないといえばそれまでなのだが
一方通行がこの状況を打破しなければ他に成せる者などいないのだ。


(情けねェ・・・・・・ここまで来ておいて、妹達にまで支援させておきながらこのザマかよ。
 何が第一位だ。 クソ、ビビってンじゃねェぞ一方通行・・・・・・!!!)

758 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/07(火) 20:03:29.08 ID:dlxN5oHLo


気持ちとは裏腹に、彼の白い顔は真っ青になっていた。
胃袋から喉に目掛けて何かが迫上って来る。あまりの重圧から嘔吐しそうになった。

風斬氷華に言われた。『皆と一緒に過ごしたい』と。
垣根帝督に言われた。『居場所を守ってほしい』と。
ミーシャ=クロイツェフに言われた。『ずっと一緒に居たい』と。

一方通行のような華奢な背中で背負うには、その想いはあまりにも重すぎた。
しかし背負うと誓った以上、ここで放棄するなど考えられない。

しかし失敗すれば終わる。しかも成功する可能性などそれこそ神のみぞ知るといったところ。
失敗は許されない。ミスは論外。失敗を恐れている事は自覚している。
その恐怖がどうやっても拭えない。縁起でもない事にさっきから『天使同盟』として過ごした
数々の思い出が頭の中を猛スピードで駆け巡り、リピートしている。


怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。


出来るなら今すぐここで叫んでしまいたい。そしてそんな無駄な考えを巡らせるから
演算が乱れていく。妹達の声すらも届かなくなってきた。視界がどんどん狭まっていっているような気さえする。


だから、ある一人の妹達の声が届かなかったら、一方通行はその場で膝をついてしまうところだった。

759 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/07(火) 20:04:16.60 ID:dlxN5oHLo


『このような状況で本当に恐縮なのですが・・・・・・少しよろしいでしょうか一方通行、
 とミサカ一七〇〇〇号は多少うんざりしながらも尋ねてみます』

「あ・・・・・・・・・・・・、ァ・・・・・・?」


こんな時に一方通行の気を紛らわせるような問い掛けなど本当に愚の骨頂でしかないのだが、
一七〇〇〇号はそれでも続けた。


『えー、ミサカはイギリスの学園都市協力機関に身を預けている個体なのですが、
 ・・・・・・あの、あんまりその辺の機材を弄らないでもらえますか、とミサカ一七〇〇〇号は
 気を散らせてくる「客」を鬱陶しく思いながらも口には出しません』

「・・・・・・?」


この個体はさっきから何を言っているんだ、と一方通行は明らかに不愉快そうな顔をしながら
一七〇〇〇号の声に耳を傾ける。

と、そこで別の方向から声がした。そこには眉間に皺を寄せながらステイルが
視線をあちこちに泳がせていた。

760 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/07(火) 20:05:16.46 ID:dlxN5oHLo


「・・・・・・待て、イギリスの学園都市協力機関だって? 一方通行、その・・・・・・ミサカだったか。
 そのイギリスにいるミサカの他に誰かがいるような気配は感じられないか?」


ステイルの言っている事が一方通行には理解できなかった。
難易度の高い演算処理を実行しているためとかそんな理由ではなく、ただ単純に
なぜ魔術師が学園都市協力機関の様子を気にしているのかが疑問だった。


『一方通行とお話がしたいという人物達がいるのですが、どうしますか?
 とミサカ一七〇〇〇号は・・・・・・って、あの、ゴーグル引っ張るなー』

『ここに向かって話しかければよろしいのでございますか?』


一七〇〇〇号が放つ機械的な喋り方とは違う、人間の声がした。
その声を聞いた一方通行の時が止まった。
一方通行だけじゃない。ステイルも、神裂も、風斬氷華も、そしてミーシャ=クロイツェフも、
そこかで聞いたことのあるその独特のマイペースな声色にピクッと反応していた。

一方通行は搾り出すように声を発する。

761 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/07(火) 20:05:56.06 ID:dlxN5oHLo


「・・・・・・・・・・・・オ、マエ。 まさか」

『あ、聞こえたのでございますよ。 やはり学園都市の科学技術? というのは
 素晴らしいものなのでございますね〜・・・・・・』

『ただの無線通信です、とミサカ一七〇〇〇号はため息をつきながら呆れてみます』


心臓がドクン、と大きく脈打つ。
一方通行はさらに確認をとるように言葉を紡いだが、それを"あの時と同じように無視して
勝手に話を進めてきた"。






『お久しぶりでございます、一方通行さん。 オルソラ=アクィナスでございますよ〜』






『ゲーム』も間もなく幕を閉じようとしていたところへ。

一方通行に最後の光が差し込んできた。

762 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/07(火) 20:15:45.78 ID:dlxN5oHLo
今回はここまでです。やはりあの時間帯よりはスムーズに投下出来ますね。
多少エラーが出ますが……。どうにか頑張ってこの時間帯に暇を作るようにします。

オルソラが久々に登場しました。晴れて真の意味で全員集合という事になりますかね。
ロシア組のサーシャ達はいませんが……ヴェントがいるので許してくだちい。

そして次回、微々たる戦力にすらなりえない女子寮のメンバーが、それでも『言葉』で一方通行を応援します。
たったそれだけの事がどれだけ心強いか、一方通行は知ることになります。


次回更新は三日以内。


それでは、今日もありがとうございました!
763 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/07(火) 20:16:21.26 ID:dlxN5oHLo



                          【次回予告】



『あ、あの・・・・・・私達、あなたに・・・・・・皆さんに激励の言葉を送るためにここまで来ました』
―――――――――――元ローマ正教のシスター・アンジェレネ




『"手紙"の内容を見て貴方達の事情は把握しちまってますんで。
 大天使を救おうってんでしょう? だから応援しにきてやったんですよ』
―――――――――――元ローマ正教のシスター・アニェーゼ=サンクティス




『む!? 垣根帝督・・・・・・!?』
―――――――――――元ローマ正教のシスター・ルチア




『・・・・・・まぁよくわかんねえけど、頑張れよ。 お前らならきっと何とか出来るはずよ』
―――――――――――イギリス清教『必要悪の教会(ネセサリウス)』の魔術師・シェリー=クロムウェル




『あなたも今、大変な壁にぶつかっているのでしょうが、私たちは信じているのでございますよ。 あなたの成功を』
―――――――――――元ローマ正教のシスター・オルソラ=アクィナス



764 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/06/07(火) 20:18:39.31 ID:k2ZrJ+Nto
イギリス組キタ―――――!!
765 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/07(火) 20:20:54.17 ID:LtFK9ioqo
乙!
やっぱラストバトルで非戦闘組の応援による戦意回復は王道だよな!
766 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/06/07(火) 20:21:41.36 ID:1PrXGbXAO
アンジェレネエエエエエエェェェェェェ!!
俺だあああああああああああ!
結婚してくれえええええええええええぇぇぇぇ!!!

あ、乙
767 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/06/07(火) 20:28:29.57 ID:XlarOt1g0
俺のオルソラキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
768 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/07(火) 20:32:49.19 ID:laWTPTHIO
ルチアさんていとくんを幸せにしてあげてくださいよろしくお願いします
769 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/07(火) 20:33:09.69 ID:kjvVD2LDO
乙!
オルソラ待ってた
770 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2011/06/07(火) 20:35:53.40 ID:aAVKCjCG0
アニェーゼェェェェェ!!!
アニェーゼェェェェェ!!!
アニェーゼェェェェェ!!!
アnでjd9.ーfうsj
771 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/07(火) 21:05:08.13 ID:Sl1CO3Q0o
光速で8分って、太陽に到達しちゃうね!
772 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2011/06/07(火) 21:05:32.86 ID:twJJpy520
>『あなたが地獄に住む慈悲のない鬼だろうが悪魔だろうが、
> だからと言って何も守ってはいけないという事にはならないでしょう、と
> ミサカ一四五一〇号はあなたも恐らく理解している事を敢えて口にします』

MNWシリーズとは関係ないと分かっててもあえてこの台詞を14510号に言わせた事に色々考えてしまうww
773 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/06/07(火) 21:10:37.46 ID:WdjhGtJw0
乙!
イギリス組の登場で鳥肌が
なんかもう次回予告だけで泣ける気がしてきた
ルチアのセリフで垣根が出てるってことは
ちらっと出てくるのかしら
774 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2011/06/07(火) 21:11:50.26 ID:WB0vyHAAO
オルソラが嫁すぎるぜwwwwww
775 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/06/07(火) 21:17:06.98 ID:pf9qAB+AO
おおぅ、鳥肌だたっちまったぜぃ。
ここにきてある意味最強の助っ人登場か!
776 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/06/07(火) 21:20:55.94 ID:OAE0VVrl0
きてるね、オルソラ通行
777 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/07(火) 21:27:39.90 ID:5hGStDXko
オルソラああああああああああああああ
778 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/06/07(火) 21:51:08.27 ID:zFvLVc9j0
来た!メインオルソラ来た!これで乙る!!

> 訂正をお伝えします。 そこから約六一度右へ角度を修正してください、とミサカ一〇〇三一>号は指示します』
あれ、ここのSSの『実験』って本編と違ったんだっけ?
779 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2011/06/07(火) 21:54:27.97 ID:dlxN5oHLo
>>778
生き返らせた。ごめん、ウソです。吊ってきます。申し訳ありません……
780 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/07(火) 22:03:36.71 ID:57qWi7G50
>>1乙〜!
ああもうやっぱ一方さんの本妻はオルソラだよな。マジ天使。

オルソラは俺のマイナスイオン。異論は認めない。
781 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/06/07(火) 22:14:44.69 ID:IkVzRid50
やばいwwwwwwww オルソラが本妻過ぎるw
ていとくんの勇姿も、風斬のメインヒロインっぷりも、本妻キャーリサの登場も、オルソラに全部持ってかれたwwwwww
キャーリサの登場で浮き足だったせいか、みんながオルソラのこと忘れてたな
782 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/07(火) 22:15:45.74 ID:8zKvZyvDO

さあここが一方さんの踏ん張りどころだぞ
皆の力であの世界線を変えるんだ!
783 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/06/07(火) 23:05:12.14 ID:OWbnMQ3AO

冗談抜きで鳥肌立った
784 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/06/07(火) 23:06:15.10 ID:OWbnMQ3AO

冗談抜きで鳥肌立った
785 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/07(火) 23:07:59.25 ID:kfime3Us0
じゃあシェリーは貰っていきますねー。
786 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/07(火) 23:20:22.50 ID:kC4OZCqBo

楽しいなー読んでてホント楽しいww
787 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/06/07(火) 23:44:47.40 ID:Lu8WorIdo
MOTHER2のギーグ戦的な何かを感じた
788 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/06/07(火) 23:46:36.92 ID:9ZXjWwUu0
シスターズ第二波きたあああああああああああああ!!!
個人的にはボロボロのていとくんを見たルチアの反応が楽しみである
789 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/08(水) 05:13:35.03 ID:Ndjayvt50
なんというか、サマーウォーズとうしとらを混ぜたみたいだ
よろしくおねがいしまーすゥ!!
790 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/08(水) 05:14:33.31 ID:Ndjayvt50
なんというか、サマーウォーズとうしとらを混ぜたみたいだ
よろしくおねがいしまーすゥ!!
791 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/08(水) 07:02:48.34 ID:EMgxOIS+0
オルソラきた〜 よかったな一方さん。
792 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/06/08(水) 09:59:56.22 ID:sko0Ac8m0
オルソラきたこれでかつる
793 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/08(水) 17:54:54.19 ID:pyctA8uSO
オルソラなら…オルソラならやってくれる…!!
794 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/06/08(水) 20:53:57.29 ID:7kGkUxj+0
こんなにオルソラを頼もしく感じたのは初めてだ
オルソラならアレイスターですら癒してくれるはず
795 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/08(水) 21:46:10.09 ID:sOac1hnbo
こんばんわ、魔の時間帯が来る前に投下します。

前回、イギリスにいるミサカ一七〇〇〇号の下に何とオルソラが。
彼女は失敗を恐れる一方通行の心の支えとなるのか。

オルソラは人気だなぁ……出して良かったかも。
それではいきます!
796 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/08(水) 21:46:59.90 ID:sOac1hnbo


「オルソラ・・・・・・だと?」

『はい。 ・・・・・・あら、一方通行さん。 声色が少しおかしいのでございます。
 もしかして風邪でもひいてしまったのでございましょうか?』


別にオルソラの存在を失念していたわけではない。
むしろあんなマイペースで人の話を聞きやしないのんびりシスターなど
忘れたくても忘れられないだろう。

ただ一方通行が驚いたのはこのタイミングでオルソラ=アクィナスが登場してきたところにあった。
キャーリサ達『王室派』の面々、『必要悪の教会(ネセサリウス)』所属のステイルや神裂火織、
ロシアで交流したヴェントが学園都市へ来ていたことにも驚いたが、
これでオルソラまで現れたらいよいよ『天使同盟』として関わってきたメンバーが勢揃いとなる。


「なンでオマエまで妹達と一緒に・・・・・・?」

『ええ、ここはガラシールズという場所にある学園都市の・・・・・・何だったでございましょうか?』

『学園都市協力機関です、とミサカ一七〇〇〇号は面倒臭がりながら答えます』

797 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/08(水) 21:47:46.64 ID:sOac1hnbo


『そうでした、学園都市協力機関に足を運んだのでございますよ』

「そォいう事を聞いてンじゃねェ、なンでオマエがその学園都市協力機関にいやがるンだ」

『電車でのんびりと―――』

「手段の話をしてンじゃねェンだよ!」


どうやらオルソラは今の一方通行の状況をあまりよく把握していないらしい。
天使を救えるかどうかという一つの命を懸けた極限の状況下だというのに、
オルソラは相変わらずの会話方式で一方通行に接してくる。

空気が読めているのか読めていないのか、思わず一方通行がツッコミを入れてしまう程ののんびり屋っぷりを発揮していた。


『ステイルさんに指示されてここまで足を運んできたのでございます』

「ステイルだと?」


一方通行は赤い長髪を靡かせる魔術師の顔を見る。
ステイルもオルソラの放つ陽気さに当てられたのか、若干うんざりとした表情を見せながら応えた。

798 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/08(水) 21:48:39.32 ID:sOac1hnbo


「君のとこの金髪に言われたんだよ。 『必要悪の教会』の女子寮に住む
 シスターを全員イギリスの学園都市協力機関に向かわせておけ、ってね」

『まあ、ステイルさんもそちらにいらしているのでございますか?
 無事で何よりなのでございますよ』

「・・・・・・まったく」


ステイルはため息と一緒に煙草の煙を吐き出した。
彼の言っていた金髪とは言うまでもない、エイワスの事だろう。
粋な計らい、と言えば聞こえはいいがなぜエイワスは彼女たちをわざわざ学園都市協力機関に
呼び寄せたのか。

一方通行はその案件についてはひとまず保留し、改めてオルソラに尋ねる。


「・・・・・・あの金髪のクソ野郎に言われたから馬鹿正直にそこへ足を運びましたってンじゃねェンだろ?
 一体何しに行ったンだ?」

『それはでございますね――――』

799 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/08(水) 21:49:27.59 ID:sOac1hnbo


『ちょっとちょっと、シスター・オルソラばっかり話してないで
 私にも代わってくださいよ』


今度は少し幼い少女の声が聞こえた。
向こうにあるマイクを強引に動かす音が聞こえ、オルソラに代わってその少女が一方通行に話しかける。


『お久しぶりです一方通行。 アニェーゼですよ。
 まさか忘れちまったとか言うんじゃねえでしょうね?』

「・・・・・・忘れてねェよ。 つかマジでオマエら全員そこにいやがンのか」

『あ、一方通行さん・・・・・・・・・・・・、アンジェレネです・・・・・・』

「・・・・・・全員いるみてェだな」

『余裕で定員オーバーです、とミサカ一七〇〇〇号は襟をパタパタしながら涼みます』

800 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/08(水) 21:50:21.97 ID:sOac1hnbo


確かあの女子寮には二五〇人以上のシスターが住んでいたはずだ。
一七〇〇〇号がいる学園都市協力機関の一室がどれほどのスペースなのかは知る由もないが、
携帯電話から聞こえる大勢の黄色い声から察するに、ほぼ全員が同じ場所に詰め寄せているのだろう。

アンジェレネが照れているような怯えているような弱々しい声で言う。


『あ、あの・・・・・・私達、あなたに・・・・・・皆さんに激励の言葉を送るためにここまで来ました』

「激励だァ?」

『そうです。 "手紙"の内容を見て貴方達の事情は把握しちまってますんで。
 大天使を救おうってんでしょう? だから応援しにきてやったんですよ』


女子寮のメンバーもどうやらミーシャ=クロイツェフの事情を知っているようだった。
言われてみれば、一方通行はキャーリサ達にも神裂にもステイルにもそんな事は一切話していないのに、
なぜか彼らは『天使同盟』の事情を知った上でここに駆けつけて来てくれている。

アニェーゼが今言った"手紙"とやらに『天使同盟』の切羽詰った状況が全て書かれていたのだろうか。
そんな事が出来る者など・・・・・・、と一方通行は途中で考えを放棄した。どうせまたあいつのサプライズだろう。

801 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/08(水) 21:51:48.09 ID:sOac1hnbo


『えっと・・・・・・神裂さんもそちらにいらっしゃると思うんですけど・・・・・・。
 私達とは別行動をとっていたので・・・・・・』

「あ、はい。 私もここにいますよ、アンジェレネ」


急に自分の事をフられたため半ば慌てて応答する神裂。
彼女の声を聞いたアニェーゼが『ホントにいやがった! この抜け駆け女ァ〜!』などと喚いていたが
神裂は耳を塞いで無視した。


『ほらほら、シスター・ルチアもそんな部屋の隅っこで祈りを捧げてねえで
 一方通行に激励の一つでも送ってやったらどうです?』

『あ、いや私は別に・・・・・・。 あ、ちょ、引っ張らないでください!』


電話先から何やら慌ただしい音が鳴り響く。
アニェーゼとしばし言い合いをした後、再びマイクが動く音がした。

802 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/08(水) 21:52:55.22 ID:sOac1hnbo


『お久しぶりです、ルチアです。 えーと・・・・・・あまりこういうのは
 慣れていないので何と言ったらいいのか・・・・・・』

「別に無理しねェでいいぞ」

『あ、そうです。 大天使様はご無事なのですか!? 私、あの手紙を読んでから
 大天使様にもしもの事があったらという不安が押し寄せて夜も眠れなくて・・・・・・』

「とりあえず問題ねェよ。 ちょっと今は話せそォにねェが・・・・・・
 ほら。 『大丈夫』だって手ェ振って応えてくれてンぞ」


見ると、精神的疲労が堪えているのかだいぶ控えめだったが、ミーシャが一方通行の
携帯電話の先にいるルチア達へ手を振っていた。


『ああ・・・・・・ありがとうございます大天使様。 お姿は見えずとも、
 大天使様のお気遣いは私達に十二分に伝わっております・・・・・・』


と、一方通行側の方にも動きがあった。さっきまで一言も言葉を発しなかった
垣根帝督が顔を上げて一方通行の方を見ていた。
光が無くなりかけている目でボーッとしながら、ぶつぶつと何かを呟いている。

803 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/08(水) 21:53:55.14 ID:sOac1hnbo


「・・・・・・・・・・・・あー・・・・・・、何か。 口うるせえ小姑の声がする」


それを聞いた一方通行は黙って垣根の方に歩み寄った。
その間にもルチアが何かを言っていたが、その声を聞いた垣根の口元が緩む。


「オイ小姑。 垣根の野郎がうるせェだとよ」

『む!? 垣根帝督・・・・・・!?』

「目覚ましには最適だなぁ・・・・・・こいつの声。 てか誰だっけ」

『ルチアです!! 人の名前を忘れるとはなんて失礼・・・・・・』


怒鳴り散らすルチアの言葉が不自然に途切れた。
そして後から続くハッとしたような反応。垣根の妙に衰弱した声を聞いたルチアは電話越しに彼の異変に気付いたらしい。

804 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/08(水) 21:54:43.70 ID:sOac1hnbo


『・・・・・・ひどい怪我をなさっているようですが』

「・・・・・・ああ、図書館で調べ物してたらよ。 上から一〇万冊くらいの本が
 落っこちてきてそれに巻き込まれた。 ひでえ目に遭ったぜ」


そう言ってふざけたように笑う垣根。だがそれがただの強がりであることを
ルチアは瞬時に察知する。


『・・・・・・あの、お願いですからあまり無茶はしないでくださいね
 大天使様だけではなく、「天使同盟」の皆が無事で居てくれなければ意味はないのですから』

「はいはい。 お前もあんま眉間に皺寄せんなよ、早い時期に老け顔になっちまう」


携帯電話を爆発させる勢いでルチアが激昂してきたが、
垣根はそれを笑みで返すだけで受け流す。
原典の毒に浸かりきった超能力者の笑顔は、どこか心地良さそうにも見えた。

そしてまたしても喧騒が聞こえてきた。
ルチアの時のように、シスター達が誰かを無理やり引っ張ってきているようだ。
気怠げな、錆びた女の声が一方通行の鼓膜を揺さぶる。

805 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/08(水) 21:56:52.60 ID:sOac1hnbo


『眠い・・・・・・。 ていうかなんなのよこれ、私は事情も何も知らねえっての』

「あ、シェリーさん・・・・・・?」


反応したのは風斬だった。電話先の相手はシェリー=クロムウェル。
かつて学園都市で風斬氷華を襲撃し、『天使同盟』として現れた風斬と
親睦を深めたゴーレム使いの魔術師だ。


『おう、風斬か。 相変わらずおどおどした声してんなぁお前。
 つかこれ何? お前ら一体どこで何してんの?』

「ええと、・・・・・・とにかく色々と大変なことになってまして」

『ふーん』


いかにも興味ありません、な声色で返事をするシェリー。
彼女は他のシスターと違って今『天使同盟』が置かれている状況を全く把握していないようだ。
理解出来ないというわけではなく、どうやら本当にあまり興味が無いらしい。

806 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/08(水) 21:58:08.66 ID:sOac1hnbo


背後から『何か一言送ってやれよー』的な声を受けてひたすら面倒くさそうに息をつくシェリーは、


『・・・・・・まぁよくわかんねえけど、頑張れよ。 お前らならきっと何とか出来るはずよ』

「あ、ありがとうございます・・・・・・!」

『あの白髪のガキにフラレたら私のとこに来な。 また叩きのめしてやっから』


それを聞いた白髪のガキが疑問符を頭の上に四つ程並べるが、
風斬が慌てて『な、何でもないですよ!!』と捲し立ててきたので真相は聞けなかった。


電話先の相手が再びオルソラに切り替わる。


『それから他にも、シスターの皆さんから応援の言葉を・・・・・・』

807 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/08(水) 21:59:31.89 ID:sOac1hnbo


「いちいち全部聞いてたら日が暮れちまう。 ・・・・・・気持ちだけで充分だ、
 わざわざどォも、とでも伝えておいてくれ」

『それもそうでございますね。 けれどこれだけはお伝え申し上げます。
 私達シスターは直接あなた達の戦いを援護出来る力がありませんが・・・・・・、
 それでも何かのお役に立てればと思ってこうして学園都市協力機関にお邪魔させて
 もらったのでございます。 皆様一丸となって、あなた達の成功をお祈りしているのでございますよ』

「・・・・・・・・・・・・、あァ」


しばしの沈黙。先にそれを破ったのはやはりオルソラだった。


『・・・・・・それから、私個人からも』

「・・・・・・、」

『垣根さんも、ドラコさんも、風斬さんも、大天使様も、そしてあなたも。
 皆さんが無事で戦いを終わらせることにこそ意味があるのでございます。
 シスター・ルチアも言っていましたが、絶対に無茶だけはしないでほしいのでございます。
 あなたも今、大変な壁にぶつかっているのでしょうが、私たちは信じているのでございますよ。

808 :ミスった。 すみません、ちょいと修正  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/08(水) 22:01:35.97 ID:sOac1hnbo


『垣根さんも、ドラコさんも、風斬さんも、大天使様も、そしてあなたも。
 皆さんが無事で戦いを終わらせることにこそ意味があるのでございます。
 シスター・ルチアも言っていましたが、絶対に無茶だけはしないでほしいのでございます。
 あなたも今、大変な壁にぶつかっているのでしょうが、私たちは信じているのでございますよ。
 あなたの成功を・・・・・・」

「・・・・・・ハッ。 そォかよ」

『ええ、』


シスター達の暖かい言葉を受けて、一方通行の表情が柔和な笑みに変わっていった。
彼女たちの応援に素直に感謝した一方通行が礼を言おうとして、






『私とあなたで交わした口づけが、信頼の証でございますから』





809 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/08(水) 22:02:55.82 ID:sOac1hnbo




………………………………………………………………………………。




一方通行は優しい笑顔を貼りつけたままフリーズドライ加工された食品のように固まった。
第一位の周囲から送られてくる視線の質が一気に変わる。


「・・・・・・・・・・・・口づけ?」

「所謂キス、というものであるな」

「お、おおおお、オルソラ・・・・・・!!? それは一体どういう・・・・・・!?」

『これは速攻で上位個体に報告だろ、とミサカ一七〇〇〇号はこの会話内容を
 しっかりと記憶回路に焼き付けます』

810 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/08(水) 22:03:49.81 ID:sOac1hnbo


「この状況でよく惚気けていられるな君たちは・・・・・・」

『シスター・オルソラァァァァァあああああああああ!!!!!!
 そ、そそ、それは事実なのですか!? ウソですよね!? ね!?』

「yoged不覚nyesjh」

『一応報告しておきますが、今の会話はミサカネットワークを通すまでもなく
 全妹達に届いておりますので、とミサカ一〇九五三号は上位個体の反応を
 予想しながらニヤついてみます』

「ウサギのクセにそんな度胸があったとは。 人参でもぶら下げられて釣られたか?」

「オマエらちょっと黙ってください頼むからァァァァァァァ!!!!!!」


危うく手に握っている携帯電話を握り潰すところだった。
今ここで妹達との連絡が途絶えてしまったら終わりだ。一方通行は荒い息を吐きながら
頭を冷やしていく。

811 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/08(水) 22:04:31.07 ID:sOac1hnbo


「オルソラさンンンンンンン!!!!! オマエ今の状況わかってンのか!?
 いや違う、つか待て、これは違うンだよ何適当な事ぬかしてやがンだクソシスター!!」

『あらあら、照れてる一方通行さんも可愛らしいのでございますよー、うふふ』

「オイ、一七〇〇〇号だったか。 そこのバカ今すぐ捨ててこい!!」

『現在リアルタイムで「エトワール」の様子を追っているためあなたの声が聞こえません、
 とミサカ一七〇〇〇号は口笛を吹きながら手元のキーボードを叩きます』

「聞こえてンだろォがァァァ!!!!!」


つい先ほどまでの張り詰めた空気はどこへやら。すっかりオルソラのペースに巻き込まれた
一方通行は周囲に人目がなければ涙を流していたかもしれない。
さっきから風斬が『やはりあのノートに書いてあったことは・・・・・・あのノートさえ無ければ・・・・・・』とか
何か不気味な雰囲気を漂わせながら独り言を呟いているがどうしたのだろうか。

812 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/08(水) 22:05:42.67 ID:sOac1hnbo


その後も電話先から、そして一方通行の周囲から豪雨のような質問攻めが飛んできたが
一方通行は返す刀でそれを全て『反射』して誤魔化しきる。いや、多分誤魔化しきれてない。


『近々、学園都市に皆で足を運ぶかも知れませんので、その際は
 よろしくお願いするのでございますよー』

「あァ・・・・・・愉快に素敵に出迎えてやンよクソったれ」


いろんな意味で疲労困憊に陥った一方通行は呼吸を荒げながら答えた。


『次に会うときも・・・・・・全員揃っていることを願っています』

『私をいつまでも小姑扱いする垣根にもよろしく伝えておいてくださいね』

『十字教の終焉なんて冗談じゃねえです。 絶対に阻止しちまってくださいよー。
 信じてますからね』

813 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/08(水) 22:07:08.09 ID:sOac1hnbo


好き勝手言いやがって、と一方通行は毒づくもどこか嬉しそうだった。
交流の輪を作るということは、こういうことなのかと理解した。こうして大勢の人間から
暖かく見守れる経験など、まさか自分の人生においてそんな事になるとは思わなかった。

あのツンツン頭の無能力者も、こんな経験を味わっているからこそ何かを守れる力を得られるのだろうか。


『では、一方通行さん。 ご武運を―――』

「待て、オルソラ」


オルソラがしばしの別れを告げようとしたところに、一方通行が割って入った。


「もォ少しオマエらはそこにいろ。 今から俺が、『天使同盟』が。
 オマエらに・・・・・・いや、"世界"にメッセージを送りつけてやる」

『?』

814 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/08(水) 22:08:00.01 ID:sOac1hnbo


返ってきたのは沈黙だった。それもそうだ、いきなりメッセージを送ってやると言われても
一方通行本人以外には何のことやらさっぱりだ。
だがオルソラは漠然と一方通行が行おうとしていることを理解し、


『では、楽しみにしているのでございますよ』

「あァ。 またな」


そしてシスター達とのやり取りを終えた。
そこから入れ替わって電話先の相手は再び妹達となる。


『一方通行、あまり時間が』

「わかってる。 演算処理の続きを行うぞ」


と、急に頭の奥にまで響くような重低音が辺り一帯に鳴り響いた。
一方通行の足元が沈み、学園都市に地鳴りが発生する。
彼の周囲にいる者達は何事かと若干焦燥したが、一方通行は動じない。

815 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/08(水) 22:09:11.54 ID:sOac1hnbo


この現象は彼が引き起こしているものだった。一方通行は沈んだ足場に立ったまま
ゆっくりと体勢を変え、大量の翼の装飾が施された白い槍を構える。


『完璧な演算処理です。 「エトワール」接触に必要な距離、速度、予測時間、
 全てが奇跡的にバランスをとっています。 そのままの状態を維持してください、
 投擲開始時にミサカが合図を送ります、とミサカ一〇〇三二号は報告します』


気付けば、さっきまで一方通行を襲っていた焦燥感や緊張感、恐怖などは全て払拭されていた。
失敗を恐れなくなったわけではない。やはりまだどこかで失敗してしまったら、という不安は残っている。

だが、だからどォした、と一方通行は思う。

失敗を恐れてこのまま何もしなければ間違いなくミーシャは助からないのだ。
恐怖を感じるのは何も悪いことではない。それだけ意識がハッキリしているし、
その恐怖と緊張感が逆に超精密な演算処理をスムーズに行える。

そしてオルソラたちとの状況のそぐわない何ともマヌケな会話のおかげか、
一方通行の精神状態は非常にリラックスしていた。
ベストコンディション、こうなれば学園都市の第一位は本当に無敵だった。

816 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/08(水) 22:10:15.43 ID:sOac1hnbo


「もォすぐこいつを投擲する。 余波に備えてオマエらは少し離れてろ」


一方通行は遥か先にあるのだろう『星の欠片』を見据えるように空を睨みながら言った。
周囲にいたキャーリサ達や神裂、垣根に肩を貸すステイルは無言で一方通行から距離を取る。
風斬も不安そうな表情を残しながらミーシャを支えて彼から離れていくが、


「aslx貴方pfgxlh」

「・・・・・・・・・・・・心配すンな。 すぐに終わる」


一方通行は少年のような優しい笑顔を見せながら、


「これ終わったら、またすき焼きでも食いに行くか」


ミーシャは紛れもない笑顔を返し、彼を心の底から信じてその場を後にした。

817 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/08(水) 22:14:02.87 ID:sOac1hnbo


『カウントを開始します。 六六、六五、六四、六三・・・・・・・・・・・・』

『一分後に投擲開始です。 再度確認しますが準備はよろしいですか?
 とミサカ一六二一一号は尋ねます』

「問題ねェよ。 ただ一つ確認してェ、俺が投げる槍の軌道上に太陽があったら
 目標を突き放した際に太陽にぶつかって結局消滅しちまう。 その点については?」

『問題ありません。 現在の位置関係からしてコロナにすら触れることなく
 投擲物は「エトワール」の「コア」に接触するはずです、とミサカ二〇〇〇〇号は説明します』


―――――――残り六〇秒。


『「エトワール」に投擲物を射出した後は恐らく世界中を巡る電波、及び衛星軌道上にも深刻な影響が発生します。
 よって、ミサカ達との連絡も投擲開始と同時に終了することになると予想されますが
 他に確認したい案件がございましたら今のうちにどうぞ、とミサカ一六二一一号は続けて尋ねます』

「必要ねェ。 必須要素は全て揃ってる」

818 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/08(水) 22:15:23.92 ID:sOac1hnbo


『天使同盟』の全ての想いが込められた聖槍の投擲まで残り一分を切った。
妹達から今なお送られる『星の欠片』の位置座標を移動速度を考慮した演算処理に乱れはない。

電話先から刻まれる妹達のカウントに同調するように、一方通行の心臓も鼓動する。
地鳴りがどんどん激しくなってくる。一方通行の周囲には不自然に集まってきた風が
彼を取り巻くように吹き荒んでいた。


―――――――残り三〇秒。


『・・・・・・・・・・・・。 一方通行、』

「あァ?」


妹達の一人が何かを言い淀むように声をかけ、沈黙する。
何となくだが一方通行はこの妹達が一〇〇三二号だと判別することが出来た。


―――――――残り二〇秒。

819 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/08(水) 22:16:50.92 ID:sOac1hnbo


『・・・・・・。 もし機会があれば、一度真剣にミサカ達とお話する場を設けて欲しいです、
 とミサカは懇願します』

「・・・・・・、」


この場の雰囲気に飲まれているだけだ、と一方通行は思った。
この『天使同盟』が引き起こした騒動が収まれば妹達の頭も冷え、
一方通行と話をしたいなどという考えは吹き飛んでいくだろうと彼は考えた。


―――――――残り一〇秒。


それでも、


「・・・・・・オマエらがそォ思うンなら、俺はいつでもオマエらに会いに行く」

『ありがとうございます、とミサカ一〇〇三二号は妹達を代表して礼を言います』

820 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/08(水) 22:17:39.60 ID:sOac1hnbo


何の礼だ、と一方通行は苦笑した。
礼を言いたいのは、頭を下げなきゃならないのは間違いなく自分の方だというのに。


―――――――残り五秒。


四、三、二、


そして一方通行は最後にもう一度だけ、ミーシャ=クロイツェフの顔を見て、


―――――――残り一秒。

821 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/08(水) 22:18:34.97 ID:sOac1hnbo






『撃てます』

「当ァたれェェェェェェェェェええええええええええええええええええええええッッッ!!!!!!!!!!!!!!」






空間が圧縮するような妙な音がした。
地面が不気味に陥没し、一方通行を飲み込んでいく。
ブーストに火がついた瞬間の超音速戦闘機を爆音を至近距離で聞いたような、
鼓膜を容赦なく突き破らんとする音が炸裂する。


第二位が命を懸けて作り出した聖槍を、第一位が星に目掛けて投擲した。
『天使同盟』の、ミーシャ=クロイツェフの想いを全て乗せて。


成功か否かは神のみぞ知る、というのは全くのデタラメだと思った。
もしそうだとしたら、一方通行の背後にいたあの禍々しい神がとっくに結果を暴露しているはずだ。

結果は神が決めるのではない。

一方通行達が、自分たちで成すもの。


『ゲーム』開始から三時間以上が経過。


この日、世界で最後の異常現象が発生した。

822 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/08(水) 22:22:34.40 ID:sOac1hnbo
ここまでです。

やっぱオルソラが出てくるとギャグっぽい雰囲気になりがちですなぁ。
何だか少し懐かしくも思えました。


いよいよ槍が投擲されました。最後のミサカ妹の『撃てます』は言わずもがな、某ロボゲーのパロです。
果たして無事に天使を救うことは出来るのか(←何回言ってるんでしょうねこれ


最終章も残りわずかです。よろしくお願いします。
あと、次回予告は無しです。出てくるキャラの数が多すぎる………。

次回更新は三日以内。

それでは、今回もありがとうございました!

823 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/08(水) 22:24:02.03 ID:GgGm+pYGo

これでオルソラさん本妻ってのが周囲に知れ渡っちまったな!
824 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/06/08(水) 22:24:50.41 ID:sko0Ac8m0
ジェフティ!!
825 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/08(水) 22:25:55.61 ID:ct17aOZco


はいだらぁぁーーーーーー!!!
826 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2011/06/08(水) 22:26:29.78 ID:WkBNe9Am0
さすがオルソラ
期待を裏切らないwwww
827 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/08(水) 22:28:08.98 ID:JZYGvstGo
乙!
垣根とルチアに2828してたらオルソラが爆弾投げ込みやがったwwwwww
天使同盟でラブコメ話するなら欠かせないなオルソラはww
828 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/08(水) 22:28:35.04 ID:aaaQEEg00
乙!  

そしてみんな、このスレで完結出来るように支援・感想レスは1回投下ごとに10レスまでという決まりにしようぜ!
829 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/06/08(水) 22:31:14.63 ID:5nc/bJKk0
乙!!
終盤でやっと追いついて初リアルタイム!
オルソラの発言に対しての打ち止めの反応が気になるwwww
830 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/06/08(水) 22:31:58.03 ID:BZwNsH4W0
乙、溶鉱炉での長湯は誰もが一度は通る道
こんな非常時なのに更に爆弾投下するオルソラさんマジパネェ…
アレ?これ生き残った後も地獄じゃね?
831 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北陸地方) [sage]:2011/06/08(水) 22:44:27.20 ID:ej2huOwAO
これは全て終わった後の修羅場が楽しみだw
832 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/08(水) 22:53:05.68 ID:z8EAMCNS0
乙!
やはりていとくんはルチアとフラグを建てていたのか…
833 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/06/08(水) 22:54:21.11 ID:YYZABz/g0
しかしなんだ・・・・・・風斬異常にヒロインやってないかオルソラさん
834 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2011/06/08(水) 23:07:57.15 ID:sOac1hnbo
>>828
こんなこと言ったらタコ殴りにされるかも知れませんが、
例えこの先一つもレスが無くてもこのスレじゃ終わらないという答えが出てまして……
なので気にせず支援してやってください。もう埋めてもらってもいいくらいですwwww

本当にごめんなさい。もう少しお付き合いください
835 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/08(水) 23:16:38.37 ID:aaaQEEg00
>>834
ごめん! 
早く終わってほしいって意味じゃなくて最終スレっぽいスレタイから>>1が気持ちよく終われるよう、無駄レスするなという意味で言ったんだ。
私的には永遠に続いて欲しいくらいこのss好きだから! もう少しどころか永遠に付き合うから!
836 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/08(水) 23:28:37.19 ID:IBJKM47SO
返してもらいに来た……。
ハッピーエンドを!返してもらいに来た!!
837 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/08(水) 23:45:40.56 ID:sbgUeOOB0
ありがとう、一方、ガブリエル、風斬、エイワス、垣根、レなんとか、ヴェント・・・・天使同盟は不滅です。
そして、>>1、このスレの住人・・・・みんなと出会えて本当に良かった・・・・
これでオレも快くいけるは・・・・本当に本当にありがとう。
838 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/08(水) 23:46:39.61 ID:kPapLARR0
乙!!
まさかANUBISネタを持ってくるとは…
もうディンゴが一方通行にしか見えないww
839 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/06/09(木) 00:17:10.31 ID:b0TcgkzAO
>>1乙!
840 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/09(木) 00:21:48.77 ID:N+nmduCU0
お前ら
だれもつっこまないからつっこむが

シスターず エトワールのコアにあたるっていってるぞ! まずいぞ
841 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2011/06/09(木) 00:39:52.62 ID:M+dEGvnAO
やっぱオルソラやべぇなwwww
842 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/09(木) 01:52:31.88 ID:q+DHf67IO
>>840
コアに当てて、そのまま遠ざけるんだからいいのでは?
843 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/09(木) 04:07:19.06 ID:N+nmduCU0
いやコアにあてたら儀式場が破損してがぶりあるが消滅するかもしれない
844 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/09(木) 05:42:04.99 ID:b9jvrd3e0
流石本妻オルソラ最高な援護射撃。
845 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/09(木) 11:34:59.67 ID:AV5lteTO0
馬鹿じゃねえの?
一方さんの演算がそんな間抜けなミスするわけねえだろ。
ちゃんと計算されてる、角度とか。
846 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/06/09(木) 13:04:52.60 ID:b0TcgkzAO
このssにおける一方さんのかっこよさは異常だな
847 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/09(木) 14:25:52.50 ID:txPxBevTo
ANUBISですね、わかります
848 :結局、VIPにかわってNIPPERがお送りするわけよ! [sage]:2011/06/09(木) 15:43:38.38 ID:297SoJ/M0
垣根×ルチア
だあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
畜生、似合いすぎだろぅがああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!
849 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2011/06/09(木) 15:44:54.56 ID:297SoJ/M0
落ち着けえええええええええええええ!!!!!
850 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/06/09(木) 16:02:16.68 ID:/FQPu3Cz0
おまえもなあああああああ
851 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/09(木) 18:51:41.58 ID:SPghDBSM0
どう考えてもこの後何もかも問題が解決あと、一方通行にオルソラの問題発言について詳しく説明を求める風斬など。それから逃げようとする一方通行。
それを見て「やれやれ」とこぼし垣根に話しかけるステイル。だが垣根は安らかに顔で死んでいていて「返事をはしろ!返事をしろと言っているんだ!垣根帝督ゥゥゥゥゥゥ!!」と言うステイルのビジョンがイメージできた。
いくらんでもこんなデンプレどおりの展開にならないよね?>>1さん?予想の斜めをいくよね?
かっきーが死ぬ幻想なんてぶち殺してくれるよね?(´・ω・`)
852 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/06/09(木) 19:47:49.72 ID:nBPe0SU0o
だからそういうのやめろと
853 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/06/09(木) 19:50:00.74 ID:b0TcgkzAO
>>848
>>849
854 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/09(木) 19:57:15.36 ID:Yj7PrHXD0
>>853
あれだよ、『KOOLだ、KOOLになれ俺』的な発言だったんだよ
855 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/09(木) 20:12:24.16 ID:bk8fFc7eo
よく見ると名前欄変えてんのな
自演さんなのか、それとも上記レスのようなものなのか
856 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/06/09(木) 21:00:24.83 ID:SzV45g+50
騎士団長が垣根の死亡フラグをゼロにしてくれるはず

初リアルタイム…胸が燃えてきたな
857 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/09(木) 21:08:12.17 ID:NygntgQto
>>856
な、なぜ今から私が投下するとわかった!?
未来予知の能力者か……手強い!

というわけでこんばんわ、今日も張り切っていきます。

>>840>>845
残念ながら私は一方通行じゃないのでミスもあります。
そうですね、『コア』に当てるより星の欠片の一部ごと持っていかなきゃ危険ですね。
もちろん本編の一方通行はそれを理解しております、ご安心を。そしてごめんなさい。

前回、ついに槍が放たれました。その時世界で起こった異常現象とは?

では、行きます!
858 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/09(木) 21:08:52.52 ID:jxNX+44Bo
次スレ突入確定ってことは、つまり後日談が山ほど書けるってことだな!
859 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/09(木) 21:09:18.72 ID:NygntgQto


――――――――――――――――――――――


「あ・・・・・・」


日本。学園都市。

この日最後の異常現象が最初に確認されたのはそんな場所だった。


上条当麻は第一九学区への侵入を拒む謎の壁の前でインデックスと一緒に佇んでいた。
隣には警備員の黄泉川愛穂、そして周囲には大勢の警備員や駆動鎧が出張っている。
この光のカーテンが無くなった瞬間に第一九学区に突入する算段らしい。
そして上条達もそれは同じだった。

まず、ついさっきまでウソのように静まり返っていた第一九学区から
とてつもない爆裂音が鳴り渡った。
その少し前に発生した地鳴りの事など一瞬で忘却してしまうくらい、その衝撃は凄まじいものだった。
地球が爆発したんじゃないかと上条は本気で思った。

860 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/09(木) 21:10:06.69 ID:NygntgQto


次に、第一九学区から夜空にかけて閃光が伸びていった。
恐らく何かが第一九学区から射出されたのだろうと上条は漠然と思った。

だが彼は疑問に思う。一体何が、どんな速度で射出されたら
その投擲物の残像がいつまでも空に伸びたままで映るというのだろうか、と。


そしてしばらく経った後、


「・・・・・・雪?」


隣にいる白い修道服を着た少女がぽつりと、空を見上げながらそう呟いた。
上条と黄泉川も釣られて空を見る。

確かに、強制的に彩られた夜空からしんしんと、ぼんやりと光る何かが降ってきていた。
雪だと言われればその時点ではそうだと思い込んだかもしれない。
今は一一月下旬、関東地方に位置する学園都市に雪が降ってもおかしくない季節だ。

しかし、それは雪ではなかった。

861 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/09(木) 21:11:13.20 ID:NygntgQto


「これ、って・・・・・・・・・・・・」


上条は徐々に確認できる数が多くなってきたそれを見たとき、ふと思った。
いや、思わざるを得なかった。




「羽根?」




学園都市に降り注いだのは雪ではなく、天使を連想させる無数の羽根だった。

862 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/09(木) 21:11:56.11 ID:NygntgQto


――――――――――――――――――――――


突然第一九学区周辺に配備された警備員から逃げ出すように身を隠していた浜面仕上、滝壺理后、麦野沈利の
『アイテム』三人も、自然災害を彷彿とさせる地鳴りの後に起こったその現象を目の当たりにしていた。


「す、すげえ・・・・・・なんだこれ・・・・・・、天使の羽根か?」

「すごく綺麗だね」

「・・・・・・ちょーっと待って。 これってやっぱり第一九学区で祭りを行ってたヤツらが
 『天使同盟(アライアンス)』だって事を示してるんじゃないかにゃーん?」


彼らは例のハッキング事件で『天使同盟』という名の存在を知っている。
だからこそ、まるで天界から降ってきたかのようなこの羽根を見て彼らは真っ先に『天使同盟』を思い浮かべた。


「つかこれ何? どういう素材で出来てんだ。 まさか本当にこの世にゃ天使がいる
 だなんて思わせるために一連の騒動を起こしたんじゃないでしょうね『天使同盟』とやらは」

863 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/09(木) 21:13:02.64 ID:NygntgQto


麦野は降ってきた羽根の一枚を掌に乗せながら言った。
その羽根はふんわりとしている、などという表現では追いつかないほどに感触が無かった。
彼女の掌に乗ったのは発光する無機質な白い羽根。だが羽根はこれ一種類ではなかったようだ。


「見て、むぎの。 私のは黒い羽根。 AIM……で出来てる、のかな?」

「宝石みてえなのもあるぞ、こんな硬いもんがどうやってふわふわ降ってんだ。 
 ・・・・・・うわっ! これとか輝きすぎだろ! 近くで見たら目が潰れるぞ・・・・・・」

「なんでこんなバラエティに溢れてんだこの羽根どもは。 ・・・・・・これとか見てよ、
 ちょっと紫電が走ってない? どういう原理で生み出されてんだか・・・・・・」


一見すれば、それは身震いするほどに不気味な現象。
だがなぜか、アイテムの三人は尚も空から降ってくる羽根を見て柔らかい笑顔を浮かべていた。

なんだかこの羽根に触れていると、少しだけ幸せな気分がして――――。

864 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/09(木) 21:14:01.23 ID:NygntgQto


――――――――――――――――――――――


そして天使の羽根が降り注ぐという現象は瞬時に拡大し、世界中でも確認することが出来た。
その中でイギリスも例外に漏れることはなく。


「おお、・・・・・・おおおおおおお・・・・・・・・・・・・おおぉ・・・・・・・・・・・・」


学園都市協力機関から出てすぐの道端で、シスター・ルチアは膝をついて
両手を組み、涙を流しながら歓喜に震えていた。
機関に勤める科学者達も窓を開けて顔を覗かせながら目を点にしている。


「す、すごい・・・・・・! これって、一方通行さん達が・・・・・・?」

「おおー・・・・・・絶景ですねえ。 一体どうやってこんな演出を施したんでしょ?
 天使が空飛んでブワーって羽根でもばら蒔いちまってんですかね?」


一目散に研究所を飛び出したルチアを追うように出てきたアンジェレネとアニェーゼも
色どり鮮やかなその羽根を見て目を爛々と輝かせている。
窓からその光景を覗く科学者を押しのけて、シェリーも眠たそうな瞳でそれを眺めていた。

そしてオルソラも、


(・・・・・・・・・・・・ちゃんと、ここにも届いたのでございますよ。
 あなた達の、『天使同盟』のメッセージが)


ニッコリと笑いながら、何時までもこの幻想的な風景を眺めていた。

865 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/09(木) 21:15:21.22 ID:NygntgQto


――――――――――――――――――――――


ロシア連邦。エリザリーナ独立国同盟。


もうすぐ昼になろうというロシアの空にも、天界から贈られてきたような羽根のカーテンが覆われていた。


「だ、第一の質問ですが・・・・・・わ、わわ、ワシリーサ・・・・・・これって・・・・・・!!」

「うふふ、あの坊や達でしょうね。 つかこんなレア現象を目の当たりにして
 はしゃぐサーシャちゃんの可愛さと言ったらんもぉぉおおおおおっほほほほほほほほほ!!!!!!!」


うへへどひゅひゅと意味不明の奇声を上げながら抱きついてくるワシリーサにも構わず、
サーシャは歳相応の少女らしい笑顔を振りまきながら独立国同盟の領地内にある
白い雪原ではしゃぎまわっていた。

そんな二人の様子を見ながら、なぜかうずうずと体を震わせているレッサーがため息をつく。

866 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/09(木) 21:16:13.69 ID:NygntgQto


「はー、やれやれ。 サーシャさんもやっぱり根はお子ちゃまですねえ。
 確かにこんな綺麗な羽根が雪みたいに降ってくる事には驚きましたが・・・・・・
 そこは黙って微笑を浮かべながら眺めるのが大人の女の嗜みってもんですよねえ?」


レッサーの言葉に、その大人の女を彷彿とさせるエリザリーナが柔和な笑みで
空を見上げながら返答した。


「我慢しないであなたも混ざってきたら?」

「え!? い、いえ、私はあんな風にはしゃぎまわるような端無い女ではありませんので、」

「そう? でもほら、街の子供たちもサーシャと一緒に走りまわってるわよ。
 一番多く羽根を取った人が勝ちですって。 面白そうじゃない?」

「い、いやあ・・・・・・」

「もうこんな現象、二度とお目にかかれないと思うけど」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、」

867 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/09(木) 21:17:08.21 ID:NygntgQto


直後、きゃっはーーーーーー!!!!! とサーシャに負けず劣らずの少女らしい歓声を放ちながら
羽根が舞っている雪の絨毯に思い切りダイブした。


「うおおおおおおおお!!! 届いてます、『天使同盟』の皆さん!!!
 確かにあなた達の想い、このロシアの地にも届きましたよー!!!
 ってあれ!? なんですかこの羽根、すぐ消えちゃうじゃないですか!!」

「れ、レッサー! 第一の私見ですが見てくださいこれ! 黒い羽根を集めてみました」

「その羽根はトラウマぁぁぁぁぁああああああああああああああ!!!!!!」


ギャーギャーと喚くガキ二人を見て思わず吹き出すエリザリーナ。


(・・・・・・『天使同盟』。 なかなか粋なサプライズを披露してくれたわね)


彼女は手に乗った一枚の羽根にフッと息を吹きかける。
羽根は天に誘われるように舞い上がっていった。

868 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/09(木) 21:18:02.26 ID:NygntgQto


――――――――――――――――――――――


イギリスの一角に聳えるバッキンガム宮殿の前の近くにある公園に、
『王室派』を代表するお姫様三人が護衛の一人も従わせずに居た。


「わあ・・・・・・なんて綺麗・・・・・・」

「これもあの子達の仕業か? まったく、とんでもない事をしてくれたもんだな・・・・・・」

「あらあら。 ウチの自慢の妹も、これに負けず劣らずの馬鹿な行為を働いてるわよ?
 まあそれはさておき・・・・・・確かに圧巻ね、これは」


『王室派』、英国女王のエリザードと第一王女のリメエア。
そして第三王女のヴィリアンもまた、この不可思議な現象に直面していた。


「私は手紙を読んでいないのだけれど・・・・・・、キャーリサ達が向かったのは学園都市なんでしょう?
 だったらこれの原因も学園都市にあるのでしょうね」

869 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/09(木) 21:18:42.05 ID:NygntgQto


「は、はい・・・・・・そうだと思います」

「ていうか私もその手紙とやらは知らないわけで。 まったく、キャーリサの馬鹿はともかく
 騎士団長やウィリアムまで便乗しやがるとは・・・・・・ぐぬぬ。 どんな罰則を与えてやろうか・・・・・・」

(・・・・・・ごめんなさい、姉上、騎士団長、ウィリアム。 母上達に上手く言い訳出来ませんでした・・・・・・)


プンスカと煙を上げながら憤るエリザードを横目にヴィリアンが心の中で馬鹿三人に謝罪した。
リメエアとしてはキャーリサ達がどうなろうと知った事ではないらしく、
むしろどんな罰が降りかかるのか密かに楽しみにしているようにさえ見える。


「それにしても・・・・・・」

「?」

「この羽根、誰が掃除するのかしら?」

「雰囲気ぶち壊しです姉上!!!」


だがそんなリメエアの懸念を解消するように、地面に落ちた無数の羽根は
しばらく経つと虚空に消えていった。

870 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/09(木) 21:19:59.88 ID:NygntgQto


――――――――――――――――――――――


暖色という暖色を一切合切取り除いたような牢獄だった。
何やら周囲が騒がしい。天使がどうだの羽根がどうだの、詳細は確認できないが
イギリス清教『必要悪の教会(ネセサリウス)』にとっても驚愕すべき事態が発生したのだろう。

『彼女』もその事態の一部をその身で体験していた。
この『必要悪の教会』が管理する対一級魔術師用牢獄施設の一室で。


「………………………」


さっきまで彼女の体から魔力がどんどん吸い取られていた。原因はわからない、ただ急に
体から黒い霧……粒子のようなものが発生し、途端に全身の力が抜けたのだ。

今は事態も収まり魔力は戻っているが、それで彼女が喜ぶことはなかった。
彼女の肉体には『聖人』としての力が宿っていた。それを彼女はひどく憎んでいた。
先の現象の理由などは知らないが、いっその事、


「いっその事、この私から『聖人』の力を全て抜き取ってから終わって欲しかったものだ」


彼女には『聖人』としての力が備わっている他にもう一つ、ある力を持ち合わせていた。


それを、北欧神話では『ワルキューレ』と呼んでいる。

871 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/09(木) 21:21:09.94 ID:NygntgQto


――――――――――――――――――――――


某国。とあるアパートメントの一室。
とある近衛侍女(クイーンオブオナー)はとある事情で面倒をみている数人の子どもを寝かしつけたのを
確認すると、ふぅとため息をついて窓から見える景色を眺める。


「時代の変革、か。 この様子だとどうやら失敗に終わったみたいだね」

「そうだな」


金髪の女の言葉に答えたのは、同じ金髪の青年だった。
青い瞳の視線を膝下に落として洗濯物を畳んでいる彼は、何かを悟ったような声色で続ける。


「『抑止力』だよ。 何か大きな事象を起こすとき、世界ってのは
 必ずその事象に対抗出来るような抑止力を生み出す。 それは時に人間であり、
 天災であり、偶然であり、必然でもあるんだ」

872 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/09(木) 21:22:03.76 ID:NygntgQto


「アレイスターに対抗出来る抑止力が即席で出来上がるとは思えないけどねえ。
 それが例え天使でも。 空から降ってきてるこの羽根もそうだけどさ、
 どこかの魔術結社が秘密裏に構成させてた組織かなんかが止めたとしか思えない」

「それこそ無理だ。 たかが魔術結社や魔術師が食い止められるような事じゃない。
 『ホルスの永劫』っていうのはそういうものだ。 『セレマ』の意志は今も強固に存在している。
 魔術側の勢力じゃない。 かといって、科学の力だけでもアレイスターは止められない」

「だったら何?」


金髪の男はその顔だけで男性ファッション誌の表紙を飾れるような
キラキラとした清々しい笑顔を浮かべながら、


「簡単な話だ。 誰かが、拳を握って、自分が正しいと思っている理由を胸に抱いて立ち向かったんだ!
 多分今回のこれを引き起こした誰かは純粋で真っ直ぐな少年タイプだな。
 泥にまみれて何度も挫折を味わって、それでも地面を這いつくばって前に進んでいるような――――」


と、不意に男の言葉が途切れた。近衛侍女の蹴りが深々と顔面にクリティカルヒットしたからだ。

873 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/09(木) 21:22:54.52 ID:NygntgQto


「ぎゃぶっ・・・・・・!? にゃ、にゃんで・・・・・・」

「私は真面目に聞いてるんだっつーの」


男は椅子に座ったまま真後ろに倒れこんだ。その衝撃でベッドに眠る子供たちが
もぞもぞと寝返りをうつが、目を覚ますことはなかった。


「大体、本来ならそのアレイスターへの抑止力はアンタが果たす役割だったんだ。
 それをみすみすどこの馬の骨とも知れないヤツらに譲りやがって・・・・・・。
 また前の時みたいに後悔することになるんじゃないだろうなこの大馬鹿野郎!!」

「ひいいぃごめんなさいごめんなさい!! ていうかいいじゃんそんなの誰でも!!
 つかむしろ適役じゃん!? 俺なんかよりその方達はよっぽど優秀な人間なんだろうし!!」

「人間なわけねえええだろ!!!? どう考えても天使やら地球外生命体やらが一枚噛んでる!!
 人間だとしても普通じゃねえっての!! オシリスにそんな人間がいるかぁぁぁ!!?」

「い、いるでしょそりゃ・・・・・・」

874 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/09(木) 21:23:57.72 ID:NygntgQto


椅子の影に隠れてガタガタ震えながらも、男はハッキリと言い切った。
彼の視線がある方向へと向けられる。金髪の近衛侍女も追うように視線をそこへ投げた。

そこには、一人の男がいた。

その男は体を毛布で包み、見ただけで暖が取れそうな柔らかい湯気が立つマグカップを
口元に運び、ホットコーヒーを一口飲む。


「彼からオシリスの時代の話は大体聞いたんだ。 だからわかるだろ?
 この世界には、そんな抑止力がありふれてるんだって。 俺もその一部分に過ぎないよ」

「・・・・・・・・・・・・ったく」


女は頬を膨らませながら再び窓の外を見つめる。
金髪の男はコーヒーを味わう男を見て微笑しながら話しかけた。


「近々、この抑止力とも接触してみたいもんだな」


男は何も言わず、代わりに薄い笑みで返した。
マグカップを机に置き、『無くなってしまった右腕』に目を向けながら。

875 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/09(木) 21:24:54.16 ID:NygntgQto


――――――――――――――――――――――


「間もなく槍が『星の欠片』に接触する時間だな。
 さて、問題はその『結果発表』なのだが・・・・・・・・・・・・」


空から降ってくる羽根の数もだいぶ減ってきた頃、唐突にエイワスがそんな事を言った。


「こればっかりはミーシャ=クロイツェフの存否で判断するしかないだろうな。
 衛星軌道上の人工衛星もいくつか破損してしまったし・・・・・・。
 槍の投擲によるジャミングで妹達とも連絡がとれん状況にある」


独り言ではなかった。エイワスが佇むすぐ傍では、満身創痍になったアレイスターが
仰向けになって倒れている。虚ろな目に映るのはただただ黒い偽りの空。

876 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/09(木) 21:25:46.42 ID:NygntgQto


一方通行によって放たれた槍の軌跡は未だに残像として残っていた。
物理的現象によるものではない。魔術的な要素が絡んでいる現象でもない。
説明不可能の力が働いたその軌跡は、まるで天へと導く柱のようだった。

光速に等しい速度で射出された槍は当然、尋常ではない威力の余波を生み出している。
それでも学園都市が木っ端微塵になっていないところをみると、やはり一方通行の
演算式は完璧だったようだ。


「ここで『天使同盟(アライアンス)』が終わろうと終わるまいと、問題はこれからだな」


エイワスはこれから先の未来を思うと愉快で仕方がないというような顔をしながら、


「ホルスを逃した隙を狙って世界中の魔術結社が君を狙ってくるだろう。
 君の存在自体が公になるまでの時間もずいぶん長いだろうが、それでも
 いずれは明らかになる。 学園都市の存続に危機が迫れば上条当麻や一方通行は
 動くだろうが君自身はどうかな」

877 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/09(木) 21:26:24.20 ID:NygntgQto


「・・・・・・あなたはどうするつもりだ」

「まだしばらくは『天使同盟』で遊ぶか、もしくは『奥』に引っ込んで
 また傍観かな。 ただ、これほどにまで価値のある事象はあと数百年は起きないかもしれないな。
 私自身が引き金を引くという手もあるが・・・・・・ふふ、さてどうしようか」

「同情するよ」

「何に」

「あなた以外の、全ての存在にだ」


くぐもった笑いで返すエイワス。
それは無数の可能性を選択できる者にのみ生まれる余裕だった。
何時でもどんな時でも、エイワスは自由に『観測』出来る。
気が向いたらどこにでも現れ、興味がなくなれば一言も告げずに去っていく。

必要ならこの世の全ての人間に富と名声を与えるし、必要なら今すぐ全人類を滅ぼす。
願えばなんでも出来るのではない、それではエイワスとしてはつまらない。
エイワスはそれらを引き起こすためのトリガーを握っているだけ。それを引けば、あとはエイワスの思うように
世界は動いていく。

878 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/09(木) 21:27:54.83 ID:NygntgQto


そしてそれすらも、エイワスから言わせれば茶番。この地球外生命体が重視する点はいつだって興味と価値。
そこに運命や偶然というスパイスが加わることで、世界の理は更に旨味を増していく。

だからエイワスは何が起きても動じない。


そのはずだった。


「さて、ッ・・・・・・・・・・・・、・・・・・・」


さっきまで流暢に言葉を紡いでいたエイワスの口が途端に止まった。
というよりは、急に喋ることが出来なくなったような感じだった。
いつも浮かべているそのフラットな表情も、今はハッキリと判別できるくらい曇っていた。


エイワスは先程から一切、アレイスターの方を見ていない。
確かにアレイスターはエイワスに完膚無きまでに叩きのめされた。それは間違いない。
だから今更敗北者に向ける目線など無いといえばそれも正しいだろう。

だが、それがエイワスの最初で最後の『油断』だったと言えばそれも正解かも知れない。


ボロボロな体を地面に仰向けで預けているアレイスター=クロウリー。


彼の口角は、怖気が走るほどに醜い笑みで引き裂かれていた。

879 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/09(木) 21:32:10.96 ID:NygntgQto
ここまでです。なんと一方通行はおろか第一九学区にいる人物のほとんどが登場しない回でした。
エイワスとアレイスターくらいでしょうか。
え?いくつか見覚えのないキャラクターがいた?そうですか、何なんでしょうね。

ちょっと引っ張りすぎ感はありますが、次回でいよいよミーシャの安否が判明します。
現世に留まることが出来たのか、それとも消えてしまうのか。

一応、次でエンディングルートが確定するので次回予告は無しです。お楽しみに。

次回更新は三日以内。

それでは、今回もありがとうございました!
880 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/09(木) 21:33:03.60 ID:J0t8MhH5o
マジ乙超乙
881 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2011/06/09(木) 21:34:15.42 ID:NRXWe1vQo
まさかブリュンヒルド=エイクトベルさんを出してくれるとは…
乙です
882 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/09(木) 21:34:37.83 ID:+gvTP8mSO
乙です
それにしても超続きが気になる。
いやマジで
883 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2011/06/09(木) 21:38:30.75 ID:wG7j/jvS0
聖人・北欧王座・元右方が天使同盟と交わるとき
新たな物語が始まる!!

勝手に期待が膨らんだわwwwwww
884 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/09(木) 21:40:15.57 ID:sv0hmnkwo
乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙
乙乙乙己乙乙乙乙乙乙
乙乙乙乙乙乙乙2乙乙
乙巳乙乙乙乙乙乙乙乙
乙乙乙乙乙巴乙乙乙乙
885 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/06/09(木) 21:44:34.95 ID:v9fE4YeNo
なんて終わり方しやがる
三日以内が楽しみすぎる
886 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/09(木) 21:50:33.57 ID:unM9FZg20
乙乙
もちろんBAD√とGOOD√両方やってくれるんですよね?
887 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/09(木) 21:51:56.23 ID:B1TGUZnDO
どうせ明日だろ。しかも昼間ぐらい
888 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/09(木) 22:02:07.37 ID:JWRYPnhgP

6人目出たじゃないですかー
889 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/09(木) 22:18:33.38 ID:fJA9KJuSO

エンディングルート確定か…
890 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/06/09(木) 22:19:44.34 ID:FA1VKcgQ0
>>1乙!!
まだ垣根のあの夢が残ってるんだよな……
次スレで終わるか?
891 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2011/06/09(木) 22:22:40.03 ID:QznwRCjeo
次スレで終わりそうもないって言ってたからあるいは・・・
892 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/06/09(木) 22:25:48.54 ID:5wLNoamC0
超乙です。エイワス死んだーーーーwwwwww いや、あいつは死なないか・・・。


絵師さま絵師さま 
今こそ、オルソラが一方さんとキスした後に、ちょっと上目使いで照れてる絵をお願いします
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1294928027/328
の状況です。前もお願いしましたが、ぜひとも世界を救うためにお願いします。
全裸で蝶ネクタイして待ってます。
893 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/06/09(木) 22:26:06.91 ID:9fvyVDpL0

ミーシャはどうなるんだろうか
そしてエイワスもどうなるんだろ
気になる終わり方をいつもいつもするから
最近毎日楽しみでしかたない
894 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2011/06/09(木) 22:33:40.20 ID:M+dEGvnAO
6人目はフィアンマ?
それともオッレルス?
895 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/06/09(木) 23:10:02.20 ID:fJ2FIzCso
アレイスターやるじゃない
896 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/09(木) 23:14:59.59 ID:daUewLJ60
俺のエイワスは大丈夫なの!?
897 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/10(金) 02:53:32.95 ID:LSV+GSdIO
大丈夫だ、問題ない。
ttp://deai.mail-box.ne.jp/up/src/up2609.jpg
898 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/10(金) 03:10:40.39 ID:QsLWIR8No
>>897
クッソwwww笑っちまったww
899 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/10(金) 04:11:21.33 ID:yjHASK9j0
>>897
ワロタwwwwww
900 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/10(金) 14:51:05.66 ID:KzAEqOiO0
いいねいいねぇ
901 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/06/10(金) 15:05:51.14 ID:lKCFAAeAO
>>897
大丈夫な要素が一つも見当たらない
902 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/10(金) 20:35:05.47 ID:M83UShnk0
>>1 乙 オルソラの心身の描写が美しい。
903 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 00:36:51.30 ID:yWZotOlgo
>>897
ワロタwwwwwwwワロタが……なんですこれ?
何となく左の人がエイワスに見えますが。

こんばんわ、投下しにきました。この時間帯は例のアレが発動しそうですが
頑張りたいと思います。

槍投擲後の、ミーシャの結末。

どうぞ、よろしくお願いします
904 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 00:37:56.16 ID:yWZotOlgo


――――――――――――――――――――――


人間が倒れる音がした。
それは一方通行がガタガタになった足場に膝をつく音だった。

死んだわけではない。確かに彼の怪我は今すぐ病院へ直行するべき重傷なのだが、
今はそれどころではない。
槍は投げ終えた。だが妹達との連絡が取れなくなってしまったため、成功か否かは
ミーシャ=クロイツェフの様子を確認することで初めて観測できるのだ。

バッテリーが残り一分を切っていたため彼は電極のスイッチをオフにした。
右腕に装着していた杖は戦闘の経過で破壊されてしまっていたため、重心のバランスが取れなくなる。


(あいつは・・・・・・ガブリエルはどォなった!? 『星の欠片』は!?
 クソ、槍を投げてしばらく経ったってのになンでこンなに静かなンだ・・・・・・)

905 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 00:39:24.79 ID:yWZotOlgo


彼は適当な鉄のパイプの残骸を杖代わりにすると、肩で息をしながら
陥没した地面を駆け登っていく。
まだ全てが終わったと確信できたわけでもないのに、急に全身から力が抜けていくのが分かった。
心のどこかで安心してしまったからだろう。杖をついていても足元がフラつく。

それでも一方通行は懸命に登った。一目見たい。無事に儀式場が保護され、
無事にこの世界に顕現し続けているあの天使の顔が見たい。その一心で。

やがて何とか陥没した地面の壁を登り終えた一方通行の心臓を止めるような出来事が起きた。




前兆も何もなく、突然に、学園都市の空が夕焼けに変貌したのだ。



906 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 00:40:54.75 ID:yWZotOlgo


一方通行は呼吸をすることも忘れていた。さっきまで学園都市は夜だった。
だがその夜は、ミーシャ=クロイツェフが太陽系の惑星にこれ以上の刺激を与えないようにと
精神をすり減らして『天体制御(アストロインハンド)』を行使し続けていたからだ。

それ故、今の空模様が切り替わってしまうのはマズい。
それはつまり、『天体制御』の効果が切れたということ。


それはつまり、ミーシャ=クロイツェフの身に何らかの事態が発生したということにはならないだろうか?
それとも、ミーシャの独断なのか。


「う、ァ・・・・・・うぐ・・・・・・」


言葉にならない声を漏らしながら一方通行は呻いた。
ここまで来て? ここまで戦って? ここまで成し遂げたというのに?
最悪の可能性が第一位の脳を麻痺させていく。

だがそんな胸を押し潰すような懸念も、とある少女の声で和らいだ。


「一方通行さん!!」

907 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 00:41:55.43 ID:yWZotOlgo


遠くに見える人影に目を凝らす。風斬氷華だった。
さらに後ろには槍の投擲の余波を考慮して安全な場所まで離れていた魔術師達の姿が窺えた。


「一方通行さん、大丈夫ですか・・・・・・!?」

「風斬・・・・・・」


そして風斬の傍らには、




「oycmfk貴方lpuisd」

「・・・・・・・・・・・・ハッ。 この、野郎・・・・・・驚かすンじゃねェよ」




一方通行が今一番見たかった人物の姿。
いや、人物という表現は適当ではない。

天使。

ミーシャ=クロイツェフは衰弱しきった足取りで、しかし見紛うことなくその姿を彼の視界に映してくれていた。

908 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 00:42:36.04 ID:yWZotOlgo


鉄くずの棒切れだけで体を支える一方通行を風斬が慌てて介抱する。
心身ともに限界だった一方通行は風斬にそのまま身を預けた。


「あ、あの、大丈夫ですか・・・・・・? 頭とか・・・・・・」

「オイ、そりゃどォいう意味だコラ」

「え、あ、ああすみません! そういう意味じゃなくてその、演算処理の影響が
 脳とかに出てたらと思って・・・・・・」


ど至近距離であたふたする風斬に思わず笑ってしまう一方通行。
緊張の糸がプッツリと切れ、全身に力が入らない。

と、ヴェントがしかめっ面で一方通行達に突っかかる。

909 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 00:43:51.75 ID:yWZotOlgo


「チッ、見せつけてんじゃねえよクソ共」

「あァ?」

「ち、違いますよヴェントさん・・・・・・! これはそういう意味では・・・・・・」


どうやら弱り切った一方通行を介抱する風斬氷華の図がお気に召さなかったらしい。
ヴェントはもう一度舌打ちをするとそのままそっぽを向いてしまった。

微量ではあるが未だに降り続ける羽根を掌の上で弄びながらキャーリサ達が言った。


「感動のフィナーレを飾るのに最適な演出だし。 とりあえず、お勤めご苦労様?」

「うるせェよ。 つかウィリアムよォ、オマエの方で『星の欠片』がどォなったか
 調べたり出来ねェか? よくわかンねェけどオマエ、ガブリエルと同じ属性ってのを
 持ってンだろ?」

910 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 00:44:48.91 ID:yWZotOlgo


「その力は第三次世界大戦で失っているのである。 ・・・・・・だが現状、こうして
 大天使は顕現している。 引き続き様子を見る他あるまい」

「太平洋に浮かべていた『グラストンベリ』はどうなっているのでしょうか?
 少し前の魔力枯渇現象に巻き込まれて海に沈んでしまっていては事です」

「放っとけ。 後で適当にイギリスへ引き上げ作業でも要請するの」


キャーリサの無責任な言葉に騎士団長は深いため息をつくしかなかった。

そんな中、神裂火織は難しい顔をしながら首を忙しなく動かしていた。
彼女の様子に気付いたステイルが肩からずり落ちる垣根の位置を直しながら尋ねる。


「どうした? まさかあの仮面の軍団の気配がするとか言い出すんじゃないだろうね。
 今更あいつらが攻めて来るとも思えないけど」

「いえ、そうではありませんが・・・・・・。 この街の周辺、光の壁の外側を囲うように
 人間の気配を感じます。 ・・・・・・・・・・・・何でしょう?」

911 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 00:45:26.71 ID:yWZotOlgo


聖人の視力を発揮して周囲を注意深く見てみるが、どの方向もビルの残骸や
崖のように盛り上がっている地盤が視界を遮ってくるため確認出来なかった。

各々が今後の行動を思案する中。


「ckby貴方paituc」

「・・・・・・・・・・・・ンだよ、アホ天使」


ミーシャ=クロイツェフが一方通行から少し離れた場所で静かに佇んでいた。


天使は微笑んでいた。凹凸で表現されているだけの顔でもハッキリと確認できるくらい、
彼女は笑顔を見せていた。

912 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 00:46:15.40 ID:yWZotOlgo


「kdpgv貴方lordaf」

「ハッ。 いっちょ前に笑って見せやがって・・・・・・似合わねェってンだよ。
 だがまァ・・・・・・今くらいならそれもイイかもな」

「ありがとう」

「あァーはいはい。 どォいたしましてェ」


ミーシャはその場から動かない。だがこうして今もこの世に存在し続けている。
それが、一方通行が、皆が、天使の救済という奇跡を起こせた証拠。


だったら、


「jhnv貴方oyutdc」

「あン?」

913 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 00:47:10.90 ID:yWZotOlgo


「ありがとう」

「ンだよさっきから同じ事ばっかり言いやがって。 リピートなンざしなくても、」


なぜ、


「聞こえてる・・・・・・・・・・・・っつゥの・・・・・・・・・・・・」

「ありがとう」

914 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 00:47:50.26 ID:yWZotOlgo







助かったはずのミーシャ=クロイツェフが、足元から幻のように消えていく?






915 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 00:49:24.50 ID:yWZotOlgo


「え?」


ミーシャの身に起きた目を疑う現象に風斬は思わず声を漏らした。
他の面々も足元からどんどん消失していく天使を見て目を見開く。


「おい」

「・・・・・・・・・・・・あり、がとう」


一方通行は何度も何度も、壊れたカラクリ人形のように同じ言葉を放つミーシャを
呆気に取られた表情で見つめるしかなかった。
いや、これはもう―――――――見届けている、と言った方が正しかった。


「天使さん・・・・・・・・・・・・? 天使さん!!!」

916 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 00:51:14.08 ID:yWZotOlgo


悲鳴に近い声でミーシャをに呼びかけながら風斬が駆け寄る。
彼女はミーシャの手を取ろうとしたが、天使の体はホログラム映像のようになっているのか
風斬の手は虚空を掴むだけだった。


「・・・・・・・・・・・・どォ、した。 どこに行くンだよオマエ」


ミーシャは答えない。ただひたすら一方通行に笑顔を送るだけだ。
彼より先に事情を把握したのか、風斬が滅茶苦茶な言葉で泣き喚いていたがそれも聞こえない。
――――――聞きたくない。


「おい」

「・・・・・・ありがとう」

「・・・・・・ありがとうじゃねェよ」


そして、一方通行の中の感情が爆発した。

917 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 00:52:33.97 ID:yWZotOlgo


「どこに行くンだって聞いてンだろォがこのクソ野郎がァッ!!!!」


鉄の棒切れを地面に突き立て一直線にミーシャに飛び掛かる。
しかし一方通行の体は何も捉えることなく、何も抱くことなく、そのまま地面に倒れこんでしまった。


「―――――――――――、」


なんで?


一方通行の脳裏に浮かぶ言葉は、それだけだった。
なんで、どうして、ミーシャはどこに行った? ぐらぐらと眼球が忙しなく動く。
鳥肌が立つほどの不気味な震えが彼の細身の体を一気に襲う。

周囲からは声は聞こえない。ミーシャの消失を見ていた魔術師達も言葉がないというような状態だった。
静まり返った第一九学区に唯一音を発しているのは、大事なものを無くしてしまった子供のように
泣きじゃくる風斬氷華の声だけ。

918 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 00:53:33.59 ID:yWZotOlgo


こうなると嫌でも第一位の脳が結論を出してしまう。






失敗した。『星の欠片』は儀式場の『門』を残したまま、太陽というどうしようもない存在に飲み込まれた。





確かに成功の見込みなどなかった。一パーセントどころの話ではない。小数点以下、奇跡、そんな言葉で
表現されるほどの成功率だった事は承知している。
だが一方通行は現実を認めることが出来なかった。ミーシャ=クロイツェフはこの世から消失した。
この現実から全力で目を背けた。


現実逃避をしたところで、大天使が再び降臨するわけもないというのに。

919 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 00:54:53.34 ID:yWZotOlgo


(そンなわけねェ。 失敗したなンて、そンなはずがねェ!!!!
 多分・・・・・・そォだ、『天体制御』を酷使しすぎたせいで一時的に肉体の維持が
 出来なくなっただけで・・・・・・。 あァ、そォだ。 そォに違いねェ)


一方通行は汚い地面に頬を当てながら、しかし笑っていた。
きっとそうだ、無理してあんな大魔術を使用したから・・・・・・、という希望を抱きながら。


(・・・・・・エイワスに聞いてみりゃわかるかもしれねェ)


あの化物を宛にすることを一方通行はこれまで何度か抵抗感を抱いていたが、
もうそんな事を気にしている場合じゃないと彼は地面から起き上がる。


と、一方通行の耳が音を捉えた。それはまるでガラス容器にひびが入るような音で――――。


一方通行に降りかかる最悪の悲劇は、これで終わりではなかった。

920 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 00:58:34.38 ID:yWZotOlgo
短いですが、ここまでです。


次回更新は三日以内。


今日もここまで読んでくれた方々に感謝します。それでは、ありがとうございました!
921 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 00:59:01.57 ID:yWZotOlgo



                          【次回予告】



『………………………………………………………………』
―――――――――――学園都市最強の超能力者(レベル5)・一方通行(アクセラレータ)




『苦渋の決断だった・・・・・・あなたなら既に状況を把握しているはずだ。
 本当に、本当にこれは苦渋の決断だった。 『第七学区に置いてある私』だよ』
―――――――――――学園都市統括理事長・アレイスター=クロウリー



922 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/11(土) 00:59:36.64 ID:UccjI5DHo
最高におつ!
ガブリエル…
取り敢えず一方通行頑張れ!
923 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/11(土) 01:00:27.54 ID:bwFOc0i4o
え…えぇ…何が起こったんだ。何が悪かったんだこれ?
ここで焦らすなんて鬼畜な…
乙です
924 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/11(土) 01:02:56.84 ID:KCIu7JFQo


って、え、まさかのバッドエンドコース?
垣根が見た夢は正夢になってしまうのか?



……いやいやいや、天使同盟ならやってくれるハズ……!
925 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/11(土) 01:05:48.03 ID:/b2mfeJIO
ぐっ、ここまで、、、だと
>>1乙!!
926 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/11(土) 01:13:59.58 ID:4HNV21M+o
乙 
何だコレ何だコレ
最高に気になるじゃねぇか!何かしゃべれよぅ一方さん
927 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/06/11(土) 01:33:03.03 ID:QZhNHpySO
な…なん…だと…
まさかのバッドエンド?そんな…アレイスターは一体何を…誰かこの展開を、頼むからそげぶしてくれよ…
>>1乙。最近の連日投稿お疲れ様です。続き楽しみにしてます。
928 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/11(土) 01:45:18.34 ID:HLoH743ho

いや、ちょ、マジで?
ハッピーエンドに向かってるんだろうなーっていう安心感の下でハラハラを楽しんでたから見事そげぶされたわ
みんな幸せになって欲しいよ…
しかも一方さんの肩書きが天使同盟のリーダーじゃなくなってるしいいいいい!!
ガブリエルうううううううう!!!!
929 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/11(土) 01:50:43.03 ID:tSXlRAh80
☆本体が出てきた…だと…?
しかしここから先バトルはないはず……どういうことだってばよ?
930 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/06/11(土) 01:53:41.60 ID:Tme4EjvXo
アレイスター・オリジナルかよ
931 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/11(土) 03:21:40.28 ID:zjjiUNfl0
そろそろ上条と黄泉川、インデックス組は第七学区にいくべき
932 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/11(土) 07:38:24.32 ID:wqXYF2fDO
アァレイスターアアアァァァァアアアアッッ!!!
クソがアアアァァァァアアアアアアアアッッッ!!!!!
…………………
大丈夫さ!きっと……大丈夫さ…

乙でしたー
933 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/11(土) 07:40:47.08 ID:lDtcY8nc0
バッドエンドでこそオルソラの癒しが輝くと、期待してみる。
934 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/11(土) 07:50:17.50 ID:QjyUNf78o
天使同盟じゃなくなってるよ一方通行…
935 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/11(土) 08:51:55.44 ID:F8KZywoSO
936 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/11(土) 09:24:17.04 ID:w0XsnpyIO
やっとビーカーから出てきたのか
937 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/06/11(土) 10:26:29.59 ID:iFmRokOl0
う、嘘だろ…?
ガブリエルが消えたり
一方さんが天使同盟のリーダーじゃなくなったり
本物のアレイスターが出てきそうだったり
垣根の夢が正夢になりそうだったり
これはもうバッドエンドじゃないのか
ハッピーエンドを願うしかない

連日お疲れ様です
乙!
938 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/06/11(土) 10:47:30.01 ID:bB20djSAO

まあみんな落ち着けよ
野球だって9回裏2アウトからが本番じゃないか
>>1なら大逆転満塁ホームランも夢じゃないぜ??
939 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/11(土) 13:09:16.30 ID:Kjus0iGp0
なに? 天使同盟がどう考えてもバットエンドになりそう?

みんな、それは無理矢理この第一部で終わらせようとするからだよ
逆に考えるんだ、
「第二部が始まってもいいさ」と考えるんだ
940 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/06/11(土) 13:34:09.31 ID:Rd/s7u8r0
>>1 乙! そろそろ次スレか・・タイトルはセリフに戻るのかそうじゃなくなるのか気になる
941 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/06/11(土) 15:01:19.38 ID:zjjiUNfl0
これは第一部で 次から新約とあるフラグの天使同盟か

あとこんな神すれが皆ageないんで俺がageて公開します。
942 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/06/11(土) 15:04:53.49 ID:TzeMkURAO
(^^;)
943 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/11(土) 15:11:30.13 ID:Kjus0iGp0
(^^;)
944 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/11(土) 15:11:31.38 ID:b2Ri5Dqx0
>>941
ageは作者が来たときの目印だから…
945 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/11(土) 15:19:20.06 ID:p4PbTERDO
ここに来て本体だと……
946 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/11(土) 15:22:34.45 ID:KMhRWGEJo
本体を倒しても、

??「ククク……まだ奴は四天王の中でも最弱よ……」
947 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/11(土) 15:23:32.49 ID:sNtY114DO
アレイスター・オリジナル
彼もまた、特別な人なのです
948 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 22:51:17.37 ID:yWZotOlgo
こんばんわ、いつも沢山の支援をありがとうございます。
今日も更新していきたいと思います。

前回、一方通行の懸命の戦いなど意味を成さないと言わんばかりに、ミーシャ=クロイツェフは消え去りました。
あまりに衝撃的な出来事に言葉を失う一方通行、だが彼に襲いかかる悲劇はまだ終わりではありませんでした。

当然ながら、このスレでは終わりません。本当に長ったらしくて申し訳ない。

それでは、よろしくお願いします。
949 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 22:51:45.88 ID:yWZotOlgo


最初にその異変に気付いたのは"本人"ではなく、ヴェントだった。


「・・・・・・・・・・・・あ? オイ風斬、なんだよそりゃ」

「・・・・・・?」


涙でぐちゃぐちゃになった顔を手で拭いながら風斬はヴェントを見る。
見るが、なぜか視界に入ったヴェントの顔が"斜めにズレていた"。


「あ、れ?」


風斬はゆっくりと首を動かす。ステイルも、神裂も、キャーリサも、騎士団長も、アックアも、
ぽかんとこちらを見る皆の顔が不自然にズレていた。

950 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 22:53:07.66 ID:yWZotOlgo


ピシッ、と物質が軋む音がする。すると風斬の視界に映る皆の顔が、否、顔だけじゃない。
体も、腕も、手も、足も、背景も、何もかも。それら全てに違和感を覚える"亀裂"が走っていた。
顔の前に自分の両手を持ってきてみる。


「え? え? あ、れ・・・・・・・・・・・・あ・・・・・・、え・・・・・・・・・・・・?」


風斬の綺麗な細い腕に、歪なジグソーパズルのような模様が浮かび上がっていた。
そしてそれがパズルの模様などではなく、夥しい亀裂が腕に走っていると気付いた時には、


「か、ざきり・・・・・・?」

「あ、あ、あ、あ、・・・・・・いやだ、いや、いや、いや、あぁ、あ」

951 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 22:54:00.03 ID:yWZotOlgo


思わずたじろいでしまいそうになる程の嫌な音が絶え間なく響く。
風斬の腕に走っている亀裂はあっという間に全身に及び、彼女が人間ではないことを
改めて再確認させられる。

卵の殻が地面に落ちる軽い音と共に、風斬の頭の中が少しだけ顕になる。
その中には彼女の存在を保ち続ける三角柱の『核』がふよふよと浮いていた。
しかし誰の目から見てもそれはもうすぐ自壊することがわかるくらい弱々しい塊で、


「あ、一方通行、さん。 わ・・・・・・私、・・・・・・・・・・・・」

「風斬、」

「いや、だ。 消えたくない、『死にたくない』!! 死にたく――――」


悲痛な叫びは突然停止ボタンを押されたように途切れてしまった。
一方通行の目の前にある地面に光り輝く破片や粒子が砂時計の砂をぶちまけたように散らばる。




そして緩やかな風と一緒に、風斬氷華という少女を構成していたそれが間もなく沈む夕日に向かって運ばれた。




952 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 22:54:55.57 ID:yWZotOlgo


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


今度こそ一方通行は理解が追いつかなかった。
ミーシャ=クロイツェフの消失にはまだ認めたくないものの明確な理由がある。
天使の場合は(恐らく)儀式場の『門』を司る柱が消滅してしまったため。

だが風斬はどうだろうか。風斬氷華はAIM拡散力場で構成された集合体だ。
そして同時に虚数学区の住人でもある。
なぜ今、唐突に彼女は消失してしまったのか。

普段の一方通行ならここで冷静に状況を分析し、風斬が消失した原因を突き止めることも出来ただろう。
だがミーシャ=クロイツェフが目の前で消え去るという信じたくない現実を目の当たりにした上に、
さらに今までずっと寄り添ってくれていた風斬までもが消失するという大打撃を受けた一方通行に
そこまで考えを巡らせる余裕などあるはずがなかった。

せいぜい考えられるのは。

虚数学区に何らかの強制的干渉が加わったのではないか、という曖昧な事だけ。

953 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 22:58:04.66 ID:yWZotOlgo


――――――――――――――――――――――


一方通行がいる場所とはまた違う、第一九学区の一角に。


醜く、奇怪な、いつまでも耳にこびりつきそうな笑い声が支配していた。


「く、ふ。 くふふ、ふふ、ふふふふふ・・・・・・・・・・・・ふふふふ・・・・・・!!!!」


アレイスターは仰向けに倒れ、起き上がる様子も見せず、ただ夕空に向かって
くぐもった笑い声を発していた。


「私を無力化させたことは素直に驚嘆するが・・・・・・。 もう一つの、 
 第七学区に存在する『私』にも気を配るべきだったな、エイワス」

「・・・・・・、」

954 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 22:59:07.12 ID:yWZotOlgo


アレイスターの傍にはエイワスと呼ばれる金髪の怪物がいた。
怪物は何も言わない。アレイスターに話しかけられているが、エイワスは応じない。

応じないというよりは、応じることが出来ないと言ったほうが正しいのか。


「苦渋の決断だった・・・・・・あなたなら既に状況を把握しているはずだ。
 本当に、本当にこれは苦渋の決断だった。 『第七学区に置いてある私』だよ。
 『私』から虚数学区を奪って全てを掌握したまではよかったが、あなたは私との戦闘後に
 一瞬だけ隙を見せた。 『私』への警戒をほんのわずかだけ解いたな」

「・・・・・・・・・・・・」

「骨が折れたよ。 虚数学区は保ったまま、しかしあなたとヒューズ=カザキリだけを
 崩壊させ『放棄』する作業は。 そしてあなたが消失している今、虚数学区は再び
 『私』の下に戻ってきた。 あなたとヒューズ=カザキリの消失は『プラン』の崩壊に繋がるが、
 まだ再構成が可能な範囲内に維持できる。 二度と『プラン』を遂行出来なくなってしまうくらいなら・・・・・・」

955 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 22:59:56.11 ID:yWZotOlgo


アレイスターは視線だけ動かして見ると、


「あなたに消えてもらうしかない」


エイワスもまた、風斬氷華と同じように風に吹かれる砂漠の砂の如くその体が崩壊していた。
夕日に反射して煌くその粒子はまるで宇宙に流れる天の川を想起させる。
それに対してエイワスが何らかの反応を示すことはなかった。ただ視線を下に落とし、
消えていく自分の体を心なしか物珍しげに見つめるだけだった。

アレイスターが選択した決断。エイワスと風斬氷華という『プラン』の核を放棄するというもの。

事実上、これでアレイスターは『プラン』のステップをほぼスタート地点まで
戻すことになってしまう。一方通行と『幻想殺し』という最重要素材は健在しているものの、
それだけでは『プラン』の遂行は果たせない。


「あなたの気紛れには毎度ながら目眩がする・・・・・・まさかこの段階で『プラン』の一時放棄を
 決断しなければならないとは・・・・・・。 もし次に会うことがあればあなたが邪魔立て出来ぬよう
 『プラン』とは別の計画も立てねばならないだろうな」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

956 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 23:01:10.33 ID:yWZotOlgo


エイワスは応じない。アレイスターも、もはやエイワスに言葉を放つ力すらない事を理解していた。
自身に全ての知識を授けた聖守護天使が消え行く様を見るアレイスターの表情は、笑みが見られるも
どこか物哀しげだった。


「・・・・・・やはり、私を選んではくれないのか。 エイワス」


首元まで消失が及んでいるエイワスを横目に、アレイスターは独り言のように呟いた。


「ならばこの先、誰が私を導いてくれるというんだ・・・・・・・・・・・・」


エイワスは応じない。

ただその全てが無に帰する寸前、エイワスは微笑んでいるようにも見えた。


(・・・・・・・・・・・・・・・・・・これで、終わりなのか?)


天使は消えた。風斬氷華は消えた。だがエイワスは、と自問自答すればアレイスターははっきりと答えられない。
まだ可能性はある。アレイスターの中の懸念事項は、これでは解消出来ない。

念には念を。

虚数学区をもう一度、調べる必要があった。

957 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 23:01:59.50 ID:yWZotOlgo


――――――――――――――――――――――


ミーシャ=クロイツェフはこの世から消失した。
風斬氷華も同じように、塵一つ残さず虚空に飲み込まれていった。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


思考が止まる。学園都市最高の頭脳は、今は全く機能していなかった。
一方通行はただ地面に膝をつき、真正面に視線を固定させたまま微動だにしない。
当然、彼の視線の先に何か希望の光のようなものがあるわけでもない。
自分が今何を見ているのかさえも、彼はわかっていない。

魂の抜け殻のようになってしまった一方通行の肩を、ヴェントが乱暴に掴む。


「オイ白いの。 ・・・・・・風斬は、風斬はどこに行ったのよ?」

「・・・・・・」

958 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 23:02:51.69 ID:yWZotOlgo


「テメェが躍起になって救おうとしてた天使もいねえぞ。 オイ、聞いてるのかよ!?
 どういう事よこれは!? 風斬は、あの天使二人はどこに行った!?」


ヴェントの叫びも一方通行の耳には届かない。
彼の思考速度は未だに目の当たりにした現実に追いついていなかった。
ミーシャと風斬氷華は消えた。そこからピタリと止まったまま動かない。


そして絶望の闇という沼のようなそれは、まさに底知れぬと思い知らされる事が起きる。


「・・・・・・・・・・・・垣根?」


ステイルの声にようやく一方通行が反応した。彼は緩慢に視線をステイルの方へ向ける。
赤髪の魔術師は肩に担いだ少年に声をかけていた。

垣根帝督。しかし、いくら呼びかけても反応がない。
ステイルの顔にじわりと汗が滲む。彼は垣根の頬を叩いて反応を促すが、やはり垣根は応じない。
垣根の口元に耳を近づける。そこでステイルの顔を一気に青くなった。

959 :×→顔を ○→顔が 失礼しました。 ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 23:05:23.20 ID:yWZotOlgo


「馬鹿な・・・・・・いつから!!?」


垣根の呼吸は既に止まっていた。ステイルの言うとおり、いつからそうだったのかはわからない。
彼の体は魔術の行使による拒絶反応と原典による毒でボロボロだったことは百も承知だ。
いつこうなってしまってもおかしくはなかったはずだった。

イギリスからの電話でルチアの声に反応していた時点ではまだ意識はあったはずだ。
もっとも、それも風前の灯火だと言われればそれまでだが。


「ステイル、彼をすぐに病院へ!!」

「・・・・・・クソッ!!」


なんてくだらない失態だ、とステイルは歯噛みする。
インデックスに涙を流させて、上条当麻の意向を無視してまで垣根の意志に付き合ったというのに、
ここで垣根が死んでしまったら一体何のための戦いだったんだという事になってしまう。
同時に、最後の最後で瀕死の垣根帝督から目を離してしまった己の愚かさに反吐が出そうになった。

垣根が死んだらインデックスの涙の意味も失われる。
速やかに学園都市の病院へ運ぶために聖人である神裂に垣根を預けるステイル。
そして第一九学区からどうやって脱出しようか思考を巡らせていると、

960 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 23:06:32.38 ID:yWZotOlgo


音もなく、溶けるように第一九学区の周囲に展開していた光の壁が姿を消した。


まるでタイミングを見計らったようなカーテンの消失に一同は訝しむが、
どうやらそれについて考えている暇は無いらしい。


「・・・・・・? なんだこの物音は」


キャーリサが聴覚を研ぎ澄ませながら周囲の様子を窺う。
そしてすぐさま一方通行を除くその他全員が異変に気付いた。


「まずい、この街に大量の人間が押し寄せてきてるぞ!!」

「学園都市の警察的組織か・・・・・・」

「ッ」


神裂は一気に大地を踏みしめて垣根を担いだまま数十メートル以上跳躍した。
ステイルも遅れて彼女の後を追って走りだす。

961 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 23:07:54.73 ID:yWZotOlgo


やがてステイルと神裂の姿はあっという間に見えなくなってしまった。
一方通行は追わない。追えない。もう二度と垣根は目を覚ます事がないかも知れないという現実を受け止めるには
今の一方通行の許容量では足りなさ過ぎた。

動けない。キャーリサ達が何やら慌てた様子で周りをキョロキョロと見ているが、
なぜそんな事をしているのかが分からない。
ヴェントが自分に向かってさっきからずっと何かを捲し立てているが、何を言っているのか分からない。


「キャーリサ様、どのように?」

「やばいなー。 ただでさえ私達は不法入国者だし。
 しかもここは学園都市だ、ここの警察に英国王女が捕まったりなんかしてみろ。
 その瞬間から世界中のテレビには私しか映らなくなるの」

「逃げますか」

「それしかないけど、どこに逃げればいーの。 グリフォン=スカイは全部吹っ飛んじまったし、
 今から応援要請をしたってイギリスからここまで数秒で来れる手段もない。 それに、」

962 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 23:08:42.04 ID:yWZotOlgo


キャーリサは茫然自失になっている一方通行の方をちらりと見る。


「ウサギ、とりあえずここはとんずらだし。 こんな所で呆けてても何も進展しやしない」

「・・・・・・、」

「ヴェント。 貴様もひとまずここから離れるのである。
 学園都市のどこかに潜伏でもしてやり過ごす他あるまい」


と、キャーリサの言葉に応じたのか、スローモーションのような動きで
一方通行は立ち上がった。項垂れているため表情は窺えない。
そして彼はそのままフラフラと前に歩き始めた。どこか行く宛でもあるのかと
キャーリサが尋ねようとしたとき、一方通行の進む先に何かが落ちている事に気付く。

それはズタボロになった質素なノート一冊と、同じく傷んだスケッチブックだった。

いつからそこに置いてあったのかは分からない。だが一方通行は迷うことなくそれを拾い上げると
キャーリサ達には目もくれず、亡霊のようにその場から歩いて離れていった。

963 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 23:09:32.18 ID:yWZotOlgo


「お、オイ白いの。 どこに行くのよ」

「とにかく私達もさっさと逃げるの。 喧騒がこっちに近づいてきてるし」

「一方通行はどうするのですか?」

「・・・・・・放っておいてやれ」


一方通行に向かって叫び続けるヴェントをアックアは無理やり担ぎ上げ、
キャーリサと騎士団長と共に脱兎の如く戦場から去っていった。


「・・・・・・・・・・・・まだ、あの野郎が残ってるはずだ」


譫言のようにぶつぶつと口から言葉を漏らす一方通行。
杖はついていない。そのため重心のバランスがとれず、右へ左へと
ジグザグに廃墟となった第一九学区を歩いて行く。

964 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 23:10:24.63 ID:yWZotOlgo


途中、何度も足を躓かせたりビルの瓦礫に体をぶつけたりした。
気づけば顔はアザだらけ、気づけば衣服はボロボロ、気づけば周りには誰もいない。

しかし。

それでも、誰が落としたのかも不明なノートとスケッチブックだけは一度足りとも手放すことはなかった。


やがて一方通行も第一九学区に踏み込んだ警備員の存在に気付く。
今ここで彼らに連行されたりするのは避けたい。そう思った彼は適当に歩を進め
身を隠せそうな手頃な建造物を見つける。
当然ながらその建造物も見るも無残に壊れ果てていたが、何とかしゃがみこめるスペースを見つけて
その場に座り込んだ。


警備員の連中が起こす喧騒が落ち着くまで、一方通行はしばらくそこで固まっていた。
そんな彼の姿はまるで、生きているでも死んでいるでもない不安定な『物』のようだった。


ミーシャ=クロイツェフはもう居ない。
風斬氷華はもう居ない。
垣根帝督も二度と目を覚まさないかもしれない。
エイワスに至っては行方すら分かりはしない。


某日、学園都市第一九学区で起きた前代未聞の大戦争はこうして幕を閉じた。

965 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 23:13:19.52 ID:yWZotOlgo


『ゲーム』終了。『天使同盟(アライアンス)』は一方通行を残し全構成員が再起不能。
アレイスター=クロウリーは失踪。上層部に混乱が訪れるのは時間の問題だった。

『プラン』もほぼ白紙。アレイスターの手元に残ったのは、『天使同盟』という最大の
イレギュラーの排除という戦績だけ。
一方通行の手元に残ったのは一冊のノートとスケッチブックだけ。あとは、


何もなかった。

966 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/06/11(土) 23:14:34.13 ID:Efh2zYtv0
ちょ…え…?
967 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 23:16:20.37 ID:yWZotOlgo


――――――――――――――――――――――


まさか今更第一九学区に人払いのルーンを貼っても意味はない。
警備員は既に第一九学区へ踏み込んでいるのだから。

ステイル=マグヌスは大勢の警備員の目を盗み、ひたすらこの学区から抜け出すために
走っていた。
崩壊寸前のビルやギリギリのところまで傾いでいる電柱をとんとんと跳ねて高速移動する
神裂火織を追いながら。

神裂は今、垣根帝督を背負っている。背中の少年の呼吸は既に停止していた。
普通の人間ならそこで彼の生命活動は終焉を迎えたと諦めてしまうかも知れない。
だが神裂火織は知っている。この学園都市には凄腕の医者がいることを。

その病院にも何度か足を運んだことがあった。ツンツン頭の少年がその病院に常連で、
その少年の見舞いに向かうために神裂はあの病院に立ち寄ったことがあった。


(しかしここからでは道が・・・・・・、この警察の監視網をくぐり抜けてどこか高い場所へ。
 そこから捜せば見つかる可能性もある。 垣根帝督はまだ間に合う・・・・・・!!)

968 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/06/11(土) 23:19:20.65 ID:4fR1MPfo0
垣根ぇぇえええ!!?
969 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2011/06/11(土) 23:19:05.80 ID:D2lqOH4S0
一方通行…(´;ω;`)ブワッ
970 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/06/11(土) 23:19:22.92 ID:4fR1MPfo0
垣根ぇぇえええ!!?
971 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/06/11(土) 23:19:50.49 ID:zJQv513K0
……ぇ?

全……滅……!?
972 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 23:21:24.58 ID:yWZotOlgo


と、ようやく第一九学区と隣接する学区の境界線付近まで辿り着く。
だがそこで神裂はふと足を止めた。後ろから追ってくる疲労しきったステイルを待つためではない。
神裂達とは逆方向に、第一九学区に入って全速力で駆け抜ける少年と少女の姿が見えたからだ。


「か、上条当麻!!!」

「ん? ・・・・・・って、か、神裂か!?」


上条当麻は慌てて自分の足に急ブレーキをかける。
後ろを着いて走っていたインデックスが上条のケツに体当たりするようにぶつかり、二人はマヌケな体勢で転倒した。


「ご、ごめんとうま! 大丈夫・・・・・・?」

「う、ぎゅぎゅ・・・・・・あぁ。 いやそれどころじゃない!
 神裂、何でお前までこんなところにいるんだよ!!?」

「説明している暇がありません!! あなたが行きつけている病院へ案内してください、今すぐ!!」

「病院? 俺の行きつけって・・・・・・第七学区の? なんで、」

973 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/06/11(土) 23:21:48.81 ID:zJQv513K0
……ぇ?

全……滅……!?
974 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 23:23:54.60 ID:yWZotOlgo


言いながら上条は神裂が背負っているぼろ布のような少年を見てギョッとした。
インデックスも彼を見て小さく悲鳴を上げる。この少年は、


「いいから早く!!」

「ま、さか・・・・・・。 ・・・・・・ちくしょう!!」


上条は踵を返すとさっきまでの方向とは真逆に駆け出した。
神裂とステイルも彼の背中を追う。

上条は震える唇を噛み締めていた。
神裂が背負っている少年は間違いなく、『自動書記』の遠隔制御霊装を使用していたあの男だ。
予想通りの結末だった。最悪の結果だった。手遅れ。嫌でも浮かぶその言葉を上条は乱暴に頭を振って払拭する。

インデックスは頻りにその少年の容態を神裂達に尋ねていた。
まだ生きているのか、病院に行けば回復するのか、魔術による治療をここで施せないのか。
再びインデックスの目尻に涙が溜まる。ステイルがそれを見てハッキリと舌打ちをした。

第一九学区の境界付近に待機中の警備員とその車両を発見する。
上条はそこで一旦足を止め、キョロキョロと首を動かした。

975 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 23:27:00.86 ID:yWZotOlgo


「黄泉川先生!!」


黄泉川と呼ばれた重装備の女性警備員は無線機に向かって何かを指示しているところだった。
上条やインデックス達の姿を見て仲間との連絡を一度断つ。


「お前らまだこんなところに、・・・・・・・・・・・・。 おい、その背中の子」

「こいつを警備員の車両で第七学区の病院まで輸送してもらえませんか!?」

「既に呼吸が停止しています、一刻を争う容態なんです」


と、急に黄泉川が警備員の高速車両に思い切り拳を叩き込んだ。
突然の行動に一同は目を点にするが黄泉川は気にも留めない。


「クソったれ・・・・・・、当たらなくてもいい予感に限って的中するじゃんよ!!」

「先生、」

「乗れ!! 第七学区の病院でいいんだな。 とは言え、学園都市の住人はほぼ全員が
 地下シェルターに避難しているはずじゃん。 病院なんて開いてるのか・・・・・・」

976 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 23:30:43.33 ID:yWZotOlgo


黄泉川は上条達を少し大きめの車両に案内した。一同は滑りこむように大型車両に乗り込む。
車両のてっぺんに付いている赤色灯が点灯し、甲高いサイレンと共に車両が急速発進する。


「ちくしょう・・・・・・、なんでこんな無茶すんだ・・・・・・バカ野郎」

「お願い、息をして欲しいんだよ・・・・・・」


インデックスが零す涙が少年の頬に落ちる。
それによって奇跡的に息を吹き返す、などというドラマチックな展開は発生しなかった。


そして上条もインデックスも、ステイルも神裂も、目まぐるしい速度で進んでいく展開のせいか
"ある事"を完全に失念してしまっていた。

この少年が、垣根帝督という名の少年がこんな事になってしまった原因であるあの霊装の行方を。

977 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/06/11(土) 23:32:28.85 ID:zNOD2WAbo
黄泉川と垣根は知り合いだもんなぁ・・
978 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 23:34:46.85 ID:yWZotOlgo


――――――――――――――――――――――


キャーリサと騎士団長、アックアとヴェントは
荒野と化した第一九学区で奇妙な出来事に遭遇していた。


「・・・・・・・・・・・・騎士団長、あれどー思う?」

「戦闘時、詳しく言うとゲリラ戦、何者かから逃げ回っているような状況下でしたら
 まず『罠』であることを疑うでしょうが・・・・・・。 にしても露骨過ぎると思います」

「私も同意見である」

「ていうかアンタ、いい加減私を降ろしなさいよ!!」

979 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 23:37:19.79 ID:yWZotOlgo


アックアのごっつい腕で担がれているヴェントが鉄壁のような彼の脇腹に何度もグーをぶち込んでいるが
当の本人は気にせず視線を『それ』に固定させていた。
キャーリサも騎士団長も、まるで魔除けだの何だのという胡散臭い効果がある壺を見るような
訝しげな視線を『それ』に送っている。


視線の先には、今の第一九学区には珍しく割と綺麗に形を残している不動産屋が。
そしてその影から、ひょいひょいとこちらを手招きする何者かの手が覗いていた。


「斬り込んでみますか?」

「待て、万が一さっきからこの街をうろついてる警察だったら面倒極まりない。
 回り込んで正体を掴んでみるし」


キャーリサの指示で一同は素早く不動産屋の横に回りこもうとしたが、


「さっきからこっちにおいでと手招きをしているというのに、なぜ来ないのかしら?」

980 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/11(土) 23:38:49.21 ID:TF39QDjo0
リアルタイム初めてなのに…

垣根ェ。。。
981 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/11(土) 23:40:45.20 ID:m4+nynVDO
一方さん…
982 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 23:41:12.07 ID:yWZotOlgo


と、今度は手でなく顔がひょっこりと影から飛び出してきた。
見た目からして学園都市の警察ではないと判断した四人は、それでも警戒しながら"彼女"に近付いていく。

その女は肩の辺りまでかかった黒い髪に、化粧っ気の無い自堕落系お姉さんな顔立ち。
ファッションのファの字も知りませんと書いてそうな地味な出で立ち。
例えこれが一般人に変装した警察の隊員であってもどうにかなりそうだなと思わせる雰囲気を持っていた。

はるか後方からカチャカチャと金属がぶつかり合う音が聞こえてきた。恐らく警察、警備員(アンチスキル)だろう。
キャーリサ達はとりあえずその女の下へ駆け寄り一目散にその場を立ち去る。


「貴女は一体?」

「芳川桔梗っていうんだけど・・・・・・英語で話した方がいいかしら?」

「我々を匿うつもりであるか?」

「うーん・・・・・・まあ、何となくだけどこれから先、あなた達とは
 他人以上の関係を築くことになりそうなのよね。 それにあなたのような
 学校の教材に載ってる顔が学園都市にいるとなると、どうしてもあの子の顔が思い浮かぶもの」

983 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 23:42:51.35 ID:yWZotOlgo


芳川はキャーリサの顔を見ながら言う。


「あの子ってウサギ・・・・・・、一方通行の事か?」

「やっぱりね。 前にステイルと名乗る『マジュツシ』がウチに来てたらしいのよ。
 私はその時寝てたから詳しくは知らないんだけど、何だかあなた達とその『マジュツシ』という
 単語が結びついてるような気がしてね。 もしかしたら一方通行のお友達じゃないかなって」

「誰が友達よ、あんなヤツ」


アックアの腕の中でだらーんと両腕を垂れながら舌打ちをするヴェント。
芳川は遠慮気味に笑いながら話を続けた。


「警備員に見つかったら面倒なのでしょう? しばらく愛穂の家で潜伏していってはどうかしら?
 愛穂には事情を説明すればまぁ多分・・・・・・承諾してくれるでしょうし、私も構わないわ。
 帰国の目処が立つまで居ていいから。 ・・・・・・って、一国の姫君に言うセリフじゃないわね」

「・・・・・・・・・・・・いや、ここは一つ。 お言葉に甘えさせてもらうの」

「キャーリサ様!?」


何言い出すんだこの脳天気クイーンは、とでも言うように騎士団長が目を見開く。

984 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 23:43:40.72 ID:yWZotOlgo


「どちらにせよ、今の私達には居場所がないし。 潜伏先が見つかるのは悪い話じゃないはずなの。
 どーやら家主さんの器も大きいみたいだし、ひとまずそこに世話になって母上にでも連絡しないと」

「・・・・・・了解しました」

「そう言われたら・・・・・・そうするしかないですね。 はぁ・・・・・・『騎士派』の存続に影響が
 出るような事が無ければいいのですが」

「ちょっと待ってよ」


意義を申し出たのはヴェントだった。彼女は芳川の顔を睨みながら言う。


「白いのはどうするの?」

「一方通行の事なら心配はいらないわ。 ここで何があったのかは全く分からないけど、
 少なくともあの子はこんな騒ぎで心が折れるような人間じゃない。 必ず戻ってくるわよ」


そう言う芳川の雰囲気は、どこか母性に溢れていた。
本当に一方通行の事情を知らないのかと思わず疑ってしまうくらいに。


「あの子、ああ見えても強いんだから」

985 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 23:48:46.65 ID:yWZotOlgo
魔の時間帯に突入したため少し投下が滞りました。申し訳ない。

てなわけでここまでです。いやー長かった、長い戦いでした。
これでこのSSはほぼ終了です、次回からはまとめに入ります。
とりあえず次の投下で最終章はお終いです。ゴールが見えてきた………。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!

次スレはタイミングを見計らって立てますが、もう立てといた方がいいんですかね?
986 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 23:49:48.89 ID:yWZotOlgo



                          【次回予告】



『エイワスをここに呼べ。 風斬を元に戻せ。 垣根を五体満足で俺の下に返せ』
―――――――――――学園都市最強の超能力者(レベル5)・一方通行(アクセラレータ)




『ミーシャを再び顕現させろ、とは言わないのだな、くくく。
 あれが自分の落ち度であると自覚しているからか、意外と冷静じゃないか』
―――――――――――失踪した学園都市統括理事長・アレイスター=クロウリー



987 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2011/06/11(土) 23:49:52.74 ID:zNOD2WAbo
すぐに埋まりそうだが、>>1に任せるー
988 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/11(土) 23:49:53.65 ID:fPSswYsT0


な…なん…な…な…
989 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/11(土) 23:50:22.66 ID:UccjI5DHo
ここ一番のおつ!
ガブリエルのノート…
ずっとこれが気になってたんだよ…
皆いなくなっちゃうルートなのかな…
そして芳川さん素敵!

次スレはもう立ててもいいと思う
990 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2011/06/11(土) 23:51:53.29 ID:D2lqOH4S0
乙!

救われねぇ…
切なすぎだろ…

誘導してくれたらうれしいです
991 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) :2011/06/11(土) 23:53:17.81 ID:8fPXBp2C0
安価スレじゃないから分岐もなさそうだしこれで終わりかな。
乙。
次スレは立てないと感想ですぐ埋まると思う。
992 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/11(土) 23:53:54.91 ID:HZie1Elu0
乙!
垣根の夢は本当になったのか・・・。
993 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/06/11(土) 23:54:05.43 ID:AFdodZUm0
おおとつうとうつとおうつつおつつうt
まだ慌てるような時間j内
994 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2011/06/11(土) 23:54:05.46 ID:zNOD2WAbo
一方さん、可哀相に・・・・
>>1乙!!

もうすぐ第一部が終わるな
995 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/11(土) 23:54:28.08 ID:4kn+FnyZ0
乙ぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!
どうなっちゃうのこれぇぇぇ!!!
996 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/11(土) 23:55:08.28 ID:bwFOc0i4o
全部では無いけれど、一方さん天使同盟っていうこのSSで得たもの失っちゃった。夢だったみたいに
芳川さん一番付き合い長いだけあるな…再び立ち上がって一方さんが全て取り戻してくれるんだって俺も信じてるぜ
乙!
997 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/06/11(土) 23:55:25.75 ID:iFmRokOl0

スレはもう立てたほうがいい気がする

ガブリエル、風斬、垣根、エイワス…
皆戦線離脱しちゃった…
ノートとスケッチブックはガブリエルのなんだろうな
どんな内容か気になるけれど
見てはいけない気もする
本当に芳川が母のようだ

たぶんこのスレでの投下は終わりかな?
次スレも楽しみにしてる
998 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/06/11(土) 23:56:07.25 ID:7P1+7Z1b0
乙!!

1スレ目からずっと付いてきて今日初めてリアルタイムで遭遇した・・・!!
圧倒的ッ・・・感動ッ・・・!!

次スレはもう立てるべき、いや立ててください・・・
999 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/06/11(土) 23:57:14.64 ID:yWZotOlgo
蛇足 とあるフラグの天使同盟
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1307804166/
1000 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/06/11(土) 23:57:24.67 ID:zJQv513K0
>>1000なら、誰もが望むハッピーエンド!!
1001 :1001 :Over 1000 Thread
               /|\
              /::::::|:::::\
              |::::::::::| ::::::::|
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          ∨:::::|            |:::::∨
          V:::|            |:::∨       SS速報VIP(SS・ノベル・やる夫等々)
             ー'           `‐'        http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/
1002 :最近建ったスレッドのご案内★ :Powered By VIP Service
蛇足 とあるフラグの天使同盟 @ 2011/06/11(土) 23:56:07.09 ID:yWZotOlgo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1307804166/

one and only reethi rah 15 with 水先案内人 @ 2011/06/11(土) 23:25:35.50 ID:Q8eyFJddo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1307802334/

仙人を目指すスレ @ 2011/06/11(土) 23:05:32.85 ID:WQur7mm4o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1307801132/

アトラス大戦 @ 2011/06/11(土) 23:04:42.36 ID:cfxE8joAO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1307801082/

ラトゥーニとシャイン王女を見てると俺の股間もファイナルブレイクですわ! @ 2011/06/11(土) 22:37:26.21
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/vip4classic/1307799446/

律「だれですか?」 @ 2011/06/11(土) 22:15:08.76 ID:goJOdKVm0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1307798106/

紬「さわちゃん大嫌い」 @ 2011/06/11(土) 22:07:05.96 ID:htd5AQVLo
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オルソラ教会 @ 2011/06/11(土) 21:16:54.95 ID:z2CcYuCAO
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