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海賊戦隊ゴーカイジャー「見滝原市……?」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/22(日) 14:46:13.98 ID:YdeQKdTBo
ニュース速報VIP板に二度ほぼ同名のスレッドを建て、二度とも失敗に終わった「海賊戦隊ゴーカイジャー」×「魔法少女まどか☆マギカ」クロスSSです。
タイムリミットであった本日(2011/5/22)朝7:30を過ぎてしまったので、本来ならお蔵入りにすべきなのですが……

一応処女作だし、最後まで書かないと祟られそうだし、何より自分自身の書きたい欲望が抑えられないのでスレ建てをさせてもらいました。


どうか、この不詳の子の供養に付き合って頂ければ幸いです。
【 このスレッドはHTML化(過去ログ化)されています 】

ごめんなさい、このSS速報VIP板のスレッドは1000に到達したか、若しくは著しい過疎のため、お役を果たし過去ログ倉庫へご隠居されました。
このスレッドを閲覧することはできますが書き込むことはできませんです。
もし、探しているスレッドがパートスレッドの場合は次スレが建ってるかもしれないですよ。

こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713183168/

【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713091115/

アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713089503/

エルヴィン「ボーナスを支給する!」 @ 2024/04/14(日) 11:41:07.59 ID:o/ZidldvO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713062467/

さくらみこ「インターネッツのピクルス百科辞典で」大空スバル「ピクシブだろ」 @ 2024/04/13(土) 20:47:58.38 ID:5L1jDbEvo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713008877/

暇人の集い @ 2024/04/12(金) 14:35:10.76 ID:lRf80QOL0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1712900110/

ミカオだよ。 @ 2024/04/11(木) 20:08:45.26 ID:E3f+23FY0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1712833724/

アルミン「どうやら僕達は遭難したらしい」ミカサ「そうなんだ」 @ 2024/04/10(水) 07:39:32.62 ID:Xq6cGJEyO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1712702372/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/22(日) 14:47:05.04 ID:YdeQKdTBo
―――side マーベラス

その日は特に空が青く晴れ渡っていた。
俺達はいつも通り朝飯を済ませた後、今日もお宝探しの為にナビィの「お告げ」を待っていた。

「ソレジャイクヨォ、レッツ、おタカラナビゲートぉ〜♪」

ごつん、と音がして天井に勢い良くぶつかり、そしてまた勢い良く落下するナビィ。
しばらくしてその機械の嘴が動き出し、いつもの通り、半ば予言染みた一言を紡ぎ出した。

「……○××‐ΔYKκ○の通信回線に接続すると吉だぞよ。」

「へっ、今日のはやけに分かりやすいじゃねぇか。いつもそうだと助かるんだがな?」

いつもとは違う様子のナビィの発言を受けながらも、素早く回線に接続する。
すると、微弱ながらも音声による通信が流れ始めた。どうやらザンギャックの秘匿通信回線のひとつに繋がっているらしい。

「……ザ…ザザ…サーン、例のものの雛形は…ザザ成…ているよ。すぐに…ザ……渡す事もできると思う…ザザ…「………ンジャ…キー」をね。ザザザザ…それじゃ、見滝原で…」

プツッ…と、最後に短く音がして、回線が切断された。

「……おいジョー、今の何とかサンとか言う通信相手についてわからないか?それにあいつら、レンジャーキーがどうとか言ってやがったが…」
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/22(日) 14:48:04.27 ID:YdeQKdTBo
「インサーンはザンギャックの技術部長の女科学者で、こちらで言うとハカセのような存在だ。」

「おおかたミタキハラとか言うところに潜入した行動隊長からその、レンジャーキーについての作戦が成功したと言う報告を受けたのだろうが…」

手元のキーについては特に異常は無い。が、奴らがレンジャーキーについて新たな何かを手にした以上。
それは、俺達の目的である「宇宙最大のお宝」に繋がる「スーパー戦隊の大いなる力」が奪われかけていると言う事に他ならない。

「―――へっ、やってくれるじゃねぇか。だがこちらもタダじゃ奪われねぇぜ!お前ら、ミタキハラとやらに出航だ!」


冒険とロマンを求めて、宇宙の大海原を行く若者たちがいた。
宇宙帝国ザンギャックに反旗を翻し、海賊の汚名を誇りとして名乗る豪快な奴ら!
その名は、海賊戦隊ゴーカイジャー!
http://www.youtube.com/watch?v=dQta-fJobys
海賊戦隊ゴーカイジャー 第13.25話「見滝原市……?」

4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/22(日) 14:49:40.85 ID:YdeQKdTBo
―――side 鹿目まどか

わたしとさやかちゃんとマミさん、それに転校生のほむらちゃんと隣町から来た杏子ちゃん。
この5人がチームを組んで魔女狩りをするようになって、そろそろ二週間が経とうと言う頃でした。
学校で体育の授業中、突然地面が真っ黒になって。
今まで綺麗な青が広がっていたはずの空には真っ赤な船底?しか見えなくなっちゃった。

「あー、あー、ただいまマイクのテスト中!……よし、大丈夫だな?」

「今現在ザンギャック帝国の侵略を受けているお前らなら知ってるとは思うが。俺達はザンギャックと戦う宇宙海賊だ!」
「この街にザンギャックの行動隊長、つまりエージェントが忍びこんで作戦を行っているらしい!何か変わった事は無いか!?」

「……そこの男子!どうなんだ?」

中沢くんが謎の声の人に当てられた……それにしても大きな声、真下で聞いてる身にもなってよね!
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/22(日) 14:50:46.96 ID:YdeQKdTBo
「ひぃっ!?え、えぇっと、この街は別に何も……他の街みたいな攻撃も、受けてませんし」

「その通りです!というか群馬県全体が特に変わってませんよ、えっと……ゴーカイジャーの皆さん?」

「そーだよねー」
「こういう時は、田舎で良かったって感じ?」
「でも東京とか神奈川はほんとひどいらしいよ!」

「そう、私も友達の何人かと連絡取れないし……大丈夫なのかなぁ?うぅ……」「あーほらほら、泣かない泣かない」

中沢くんと早乙女先生(教科違うのに何で出てきたんだろ?)の答弁が終わると、巨大船にびっくりしていた皆も緊張の糸が切れたみたいで、たちまちいつも通り喋りだした。

たしかに見滝原にはザンギャックの攻撃なんて今まで一度も無い。
侵略が行われてるのはTVの中だけと言う平和ぶりだ。……そう、表向きは。

6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/22(日) 14:51:45.78 ID:YdeQKdTBo
現実は違う。この街には呪いが溢れてて、わたし達は毎日のように希望を振りまいてそれと戦っている。
でも、それは見滝原に限った事じゃないし。
キュゥべぇやマミさんが言うにはザンギャックの襲来以前から魔女との戦いは続いているらしい。

やっぱりザンギャックとは関係が無いって事には変りない。
情報を得られないと知ったゴーカイジャー?さん達は私達の頭上を立ち去る事に決めたみたい。
それを遮るように早乙女先生が声をかけた。

「あ、あの!」

「何だ?先生?」

「皆さんは目玉焼きは半熟じゃないと食べな…あぁっ行かないで!」先生、こんな場面でそりゃ無いよ……みんな呆れてるよ?

早乙女先生がこんな所でも目玉焼き談義を仕掛けようとするのを、ゴーカイジャー達の船は完全に無視して飛んでいった。そりゃそうだよね……ティヒヒ

7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/22(日) 14:52:47.44 ID:YdeQKdTBo
「あはははは……どうやら先生、今回の男は相当恨みが深いみたいねー。あんな初対面の人たちにまで話題を振るなんて。しかも相手はスーパー戦隊……?」
突如、さやかちゃんの目の色が変わった。

「あぁーっ!!あいつら有名人じゃん!サイン貰っておきゃあ良かったぁ〜!マニアに売れるのにぃ〜」

「美樹さん、お金の事ばっかりではしたないですわ!」

「ふ……言ってくれるな仁美。所詮小市民の俺じゃあお前の家とは釣り合わねぇ。俺には少しでも金が必要なのさ……」

「み、美樹さん……いや、さやかさん。お金なんて無くたって私が貴女を想う気持ちは変わりませんわ」

「仁美……!」「さやかさん……さやか!」あっちゃー、さやかちゃんも仁美ちゃんもノってきちゃってるね。こりゃあ当分帰ってきそうにないや……ティヒヒ……


そういえば、ほむらちゃんはどうしたんだろ?
……居た。校庭の隅っこに立って、ゴーカイジャーが去って行った方向をずっと見つめてるみたい。ほむらちゃんって戦隊マニアだったのかな?
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/22(日) 14:54:10.61 ID:YdeQKdTBo
―――side 巴マミ
その日の夕方、学業を終えて一度帰宅しようとする私の前に現れたのは、一番の友達であるキュゥべえだった。

「マミ……マミ……!」

「なぁに、キュゥべえ?学校でもひっきりなしに念話を送ってきたけど、そんなに急いじゃってどうしたのかしら?私、今日は早く家に……」

今日は最後の授業が体育だったから下着がビショビショで早く着替えたい……なんて事は言わないけれど。
それにしたってこのうだるような暑さ。まだこんな季節なのに、絶対おかしいわ……。まさに焦熱地獄。そういえば、彼がこれほど焦った様子なのは珍しいわね。

「マミ、最近学校で何か変わった事が無かったかい?」

「それもしかして、この間のゴーカイジャーさん達の事?カッコ良いわよねぇ……実は私、日曜朝に組まれてるゴーカイジャー報道特番毎週見てるのよ!今度はキュゥべえも一緒に見る?」
「それにしてもまさかあのスーパー戦隊がこんな所に来てくれるなんて!授業中じゃなかったらサイン貰いに行くとこだったわね、うふふ…っ」

私はやっとキュゥべえの訝しげな視線に気づく。…やっぱり友達の真面目な話はちゃんと聞くべきよね。
ゴメンなさい、と心の中で小さく詫びる。
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/22(日) 14:55:16.36 ID:YdeQKdTBo
「――それで、何の話かしら」

「何の事は無い、僕の方も“ゴーカイジャー”の話をするつもりだったさ」
「単刀直入に言おう。彼らは君の考える通りの正義の味方じゃない」

「……何言ってるのか、訳がわからないわ。あなたはいつもそうね、肝心な事は何も言わないで……」

「マミ、考えてもみてよ。数ヶ月前の“レジェンド大戦”でスーパー戦隊は全てその力を失い、力はレンジャーキーへと置き換えられた。」
「では、彼らはいつどうやってそんな力を手に入れたんだろうね?」

「……!?」

「それだけじゃない。君達は普通、海賊って言葉にマイナスイメージを持っているだろう?」
「それは銀河規模においても同じ事なんだ。にも関わらず、彼らゴーカイジャーは訂正して回らないどころか、それを自慢げに自称してすらいる。」
「何かやましい事の一つや二つ、自覚してると見て良いんじゃないかな?」

「……それで、私に何をさせたいのかしら」
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/22(日) 14:55:57.97 ID:YdeQKdTBo
「簡単な事だよマミ。彼らがこの街を好きにしようとしたら止めて欲しいと言うだけの話さ。」
「スーパー戦隊の力を我が物にしているだけかも知れない、そんな“正義の味方”なんて信じられないだろう?」

「ザンギャックに成り代わろうと画策している可能性だってある」
そして、この街を守れる正義の味方はマミ、君たちだけなんだ――と、キュゥべえはしめくくった。

私が、正義の味方……そう、キュゥべえの言う通り、今この街を守っているのは私達魔法少女なんだ。
いくらスーパー戦隊とは言え、この街では突然やってきて好き勝手なんてさせやしない。ましてや、彼らが戦隊を騙っているだけの存在なのだとしたら。そんなの、私が許さない。

「……わかったわ、キュゥべえ。一時間後に私の家に集合するよう、みんなに伝えてもらえるかしら」

「お安い御用さ、マミ」それだけ言い残して、キュゥべえはそそくさとどこかへと走り去って行った。私はそれをぼうっと突っ立ったまま眺めた。
なぜだか無性にのどが渇く。風が私の髪を巻き上げる。……やっぱり一度帰ろうかしら。
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/22(日) 14:57:01.42 ID:YdeQKdTBo
―――side 佐倉杏子

夕方、マミから一斉招集がかかった。
この街はつくづく平和ボケした所だ。普通なら学校に行っているような時間帯に、あたしみたいなJC(まさか小学生以下に見られてるって事は…無いよな?)が道を聞いてきてるのに。
全く気にせずすんなり教えてくれるなんてね。

こんな街にも呪いが溢れてるなんて魔女退治を生業にする我が身でも嘘みたいだ。
たまには感謝して金なり食い物なり供えてほしいね…などと考えつつ歩いている間に、マミのマンションにたどり着いた。

今ねぐらにしている河原のお手製ダンボールハウスからは、見滝原の中心から少し外れたこのマンションは、魔法少女の脚力をもってしても若干遠い。
駅前のホテルに丁度いい空室でも出来たらマジカルパワーで忍びこんで占拠してやりたいんだけど、今は丁度良い部屋が無い。

ほんとはダンボールハウスでもあたしは生きていけるんだけど……まぁ今はしょうがないやね。
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/22(日) 14:58:15.52 ID:YdeQKdTBo
エレベーターから降り、今はマミ一人で暮らす巴家の玄関を開く。靴の数から見るにどうやら他の面子は既にそろってるみたいだけど……
「そ、そんなの絶対おかしいですよマミさん!せっかく来てくれたのに、いきなり襲うだなんて……」

「ふぅ……何を勘違いしてるのかしら、暁美さん。彼らは「来てくれる」ような単純な正義の味方じゃない。」
「ゴーカイジャーがザンギャックと戦ってる理由、知ってるでしょ?」
“宇宙最大の至宝”に近づく為にザンギャックより先にスーパー戦隊の力を手に入れたいってだけなの。もしかするとザンギャックに成り代わる為かも知れないわよ?」

「そんな人達が私たちが守ってきたこの街で好き放題に暴れるのをただ見ているって言うのは、市民としても心苦しいわ。暁美さんはそうは思わないのかしら?」

へぇ、こいつは驚きだ。眼鏡でおさげの見るからに内気でクラスに馴染めない「転校生」の暁美ほむらが、リーダーのマミに楯突くだなんて。

いつもはマミかあたしが提案、もう片方が反対→さやかが煽り→まどかがなだめるのがお決まりのパターン。
で、こいつはそれを見てただただおろおろするのが通例だった。

なのにこれは一体どうしたんだ?いよいよ仲間割れか?チーム解散かぁ?
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/22(日) 14:59:34.16 ID:YdeQKdTBo
「そうだよ!転校生ぇ、どーせあんたはこの街に思い入れなんか無いんだからどうだって良いのよね!」
「さっさと見滝原からも群馬県からも出てって、東京にでも逃げ帰ったらどうなの?」
さやかのヤジが入り、ほむらの目が据わる。

「……私、逃げる気なんかありません。それにこの街にはワルプルギスの夜が」
すかさずさやかの声。

「ほら、またそんな来もしない物をでっち上げる!だいたいマミさんだって知らない物を、なんであんたが知ってるってのよ?」
「この前もキュゥべえが魔法少女を騙してるなんてデマをペラペラと喋ってくれて、そんなにあたしと一緒が嫌なのね!」

「さやかちゃん、その辺にしておきなよ……」
まどかの制止も振り切り、ますますさやかはヒートアップする。
「……まどかは黙ってて!戦いの時だってそう!いきなり目の前で爆発されちゃ困るのよ。まどかやマミさんは飛び道具だから平気だろうけど、こっちの事情も考えて欲しいんだけど?」

「やっぱりあんたと組んだのは間違いだったわね!」

14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/22(日) 15:01:09.05 ID:YdeQKdTBo
ドンッ

さやかの口撃の間ずっと押し黙っていて俯いていたほむらが、捨て台詞の直後に大きく机を叩き、立ち上がる。
それに応じて、さやかに気圧されていたまどかもようやく我に返る。

「待ってよ。ほむらちゃん、どこに行くの……」

「…鹿目さん、あなたにはもう関係ない事。巴先輩、今までお世話になりました。合鍵、お返しします」

それだけ言い残して、暁美ほむらは部屋から出て行った。あたしには会釈だけかよ、まぁ良いけど。
仲間になった時にマミから全員が貰ったこの部屋の合鍵だが、(当然あたしも貰ってる)これをも返納するって事は本格的に抜けちまうみたいだ。
ま、この人数の魔法少女同士が仲良くやってるって状況が異質だったんだけどな。

これからあいつ、一人でどうするのかな…なんて、柄にも無い事考えてないでとにかく話を聞く事にする。

「おいマミ!用事ってなんなんだよ?」
「あれ……佐倉さん?いつ来ていたの?」
へ?
「杏子ちゃん!?あ……ええっと、こんにちは…」
あれ?
「杏子?…何、立ち聞きってワケ?趣味悪いのね」

おいおい、まさか今まで気づかれてすら無いなんて思ってなかったぞ……

15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/22(日) 15:02:12.26 ID:YdeQKdTBo
―――side 暁美ほむら

マミさん、否、巴マミのマンションを出て歩きながら途方に暮れる。
なんて事だ。魔法少女4人全員と決別するほどのポカをやらかしたのは今回が初めてだ。
もう誰にも頼らず、たった一人でまどかを守りつつワルプルギスを倒す以外に道は無い。
だがそんな事は今までの経験則上絶対に不可能。

――もう一押しすればソウルジェムを濁らせるほどの絶望に包まれながら、私はどこへ行くとでもなく歩く。
そこへ現れたのは―――
「……インキュベーター」

「やぁ、ほむら。みんなと別れてしまって困ってるようだね。僕が力になろうか?」

「遠慮する…。もうあなただけは信じないって、決めたから」”まどかを殺した”、白々しい悪魔め。

「やれやれ心外だね。他の魔法少女達からは信頼を頂いてるって言うのに……暁美ほむら、君は一体、何者なんだい?」
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/22(日) 15:04:17.43 ID:YdeQKdTBo
「……答える必要はないわ。」消音器(サイレンサー)付きのM92Fベレッタを取り出し、3発発射する。
一発目が白くてたっぷりした尻尾を半分削ぎとり、二発目が逃げようとする脚を二本まとめてへし折り、吹き飛ばす。
最後の一発は顔面に大きな穴を穿ち、頭の向こうの景色を露出させる。

「……やれやれ、無駄だっていうのに」

「ひ…っ!?」こいつ、何故!?頭を潰した、生物なら生きていられるはずなんか…!

「暁美ほむら、ボディの精製にだってエネルギーは必要なんだ。出来ればこの個体を維持したままで居たいから傷を直す魔力を」 魔力をくれ、と続けたかったのであろう。

しかしそのインキュベーターの頭部は、以前奪取したドスによって胴体と泣き別れにされた。
やはりこいつは悪魔だ……。関わったら、ろくな事にならない。
しかし、これでもう誰にも頼れない。魔法少女の領域には一般人は何も感知できず、頼るべき魔法関係者などもはやいない。もはや救いの手は、無い……。

いや、一つだけあるかも知れない。正直信用できるかわからないがあのイレギュラー達。でも、私にはもう彼らしか残っていないのだから。
私は走りだす。未来を描く為に。

その後ろで新たなインキュベーターが笑うのに、私は気づいていなかった。
「きゅっぷい……暁美ほむら、君はとことん都合よく動いてくれるね……おかげでこちらもやり易くて助かるよ」
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/22(日) 15:06:15.42 ID:YdeQKdTBo
―――side ドン・ドッゴイヤー(ハカセ)

見滝原で情報を集め初めて3日目、やっと一人の少女がやって来てくれた。
…が、その子、暁美ほむらが僕らの所に持ち込んだのはとんでも無い情報だった。

曰く、自分は「魔法少女」である。
曰く、この街には「魔女」と言う怪物が潜み、人々を襲っている。
そして、それら魔女を倒す為にはゴーカイジャーの力が不可欠である、力を貸してくれ、と。

「冗談じゃねぇ」マーベラスがイラつきもあらわに口をはさむ。

「1日2日ならともかく、”ワルプルギスの夜”が来るのは一月も後の話だろうが」
「そんな時期までこの街に居座ってて見ろ、他のお宝はどうなる?ザンギャックに奪われるのがオチだ。」
「……とにかくそんなもんに付き合う義理は無ぇ。さっさと帰んな」

「……そんなっ!あなた達はスーパー戦隊なんでしょう?!」

「あぁその通り。だがな、その前に俺たちは宇宙海賊だ。慈善で悪を倒すボランティアじゃねぇ。」
「自分の星の問題くらい、自分達で解決するのが当たり前なんだぞ」
マーベラスの辛辣な口ぶりに、暁美さんは口をつぐんでしまう。まったく、少し上手くいかないからってイラついちゃって……

「言い過ぎだよマーベラス。……でも暁美さん、安心してよ。僕らだってあとちょっとはこの街にいるつもりだから。」

「その間何かあったらいつでも力に…『ザンギャックダヨ!ザンギャックノハンノーダ…アレ?』」

18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/22(日) 15:07:17.67 ID:YdeQKdTBo
ナビィが敵襲を告げかけ、そして途中で止める。何だったんだ、今の?

「おい鳥ィ!適当な事言うんじゃねぇ!」

「トリジャナイヨ、ナビィダヨぉ〜……マ、イイヤ」
「マタオキャクサンダヨ?コンドモオンナノコダケ、4ニングミ」

聞いた瞬間に暁美さんがとっさに身構えたように見えた。
……思春期の地球人って大変なんだなぁ。早くルカ達が戻ってくれば女同士で気軽に話せるかも知れないけど、僕じゃなぁ……

19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/22(日) 15:10:06.22 ID:YdeQKdTBo
本日はここまで。これから不定期に書きこんで行く予定ではある。
短くて一週間、長くても一ヶ月かからずに終わる予定。

最後に、VIPの方でこれを読んでくれた数少ない人達へ。本当にごめんなさい、書き溜めしてから建てるべきでした……
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/22(日) 15:14:05.20 ID:OSjdL5HD0
乙なんだよ
ゴーカイ未見だけど続き楽しみにしてる
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/22(日) 15:14:52.36 ID:OSjdL5HD0
乙なんだよ
ゴーカイ未見だけど続き楽しみにしてる
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/22(日) 20:58:50.94 ID:dnx8YZSSO
ライダー×まどかはいくつかあるけど、戦隊×まどかは初めて見たかもしれん

続き期待してる!
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/22(日) 21:53:48.05 ID:ax4aGvhSO
乙です。

戦隊モノとのクロスの完走を期待します。
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/24(火) 19:58:42.42 ID:DEsazwcc0
乙にいくぜ!!
地球を助ける義理があまり無いのがゴーカイジャーなんだよなぁ
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空) :2011/05/24(火) 20:10:23.69 ID:C+vEN3MP0
ライブマンみたいに恨みで敵対する戦隊だからね……


そういや来集はディエンド登場っぽいが、こっちでは出るのか
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/05/24(火) 20:37:24.69 ID:p5/nLrdn0
>ディエンド登場

なん……だと……!?
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/05/24(火) 20:48:27.96 ID:gI4hlqYlo
>>26
http://ca3.blog76.fc2.com/blog-entry-971.html
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/05/24(火) 21:20:37.35 ID:exw4wZWbo
VIPで見てたぜ結局完走しなかったのか
こっちだとのんびり出来るしがんばれ
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/24(火) 21:33:29.94 ID:I6bRqTRGo
>>1です。皆さんこんばんわ。
改めて読み返したら早速ミス発見しました……

× 不詳の子

○ 不肖の子

ですね……最初っからミスしちゃって馬鹿みたいだよね…気持ち、悪いよね……by11話ほむ
そして、第一回投下を読んでくだすって皆様ありがとうございます。
22時から第二回を投下いたします。 バスコは出せそうにない、かな……
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/24(火) 21:44:59.91 ID:DEsazwcc0
おk、宿題でもやって気長にまってます
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/24(火) 22:03:36.50 ID:I6bRqTRGo
―――side 巴マミ

眼前に浮かぶ巨大帆船「ゴーカイガレオン」からロープを伝って男が二人降り立った。
赤いジャケットはゴーカイジャーの船長、キャプテン・マーベラス。
緑のジャケットはゴーカイジャーの工作&コック担当、ハカセことドン・ドッゴイヤー。

どちらも「日曜朝7:30からの報道特番」でおなじみの二人。こんな出会いでなければ、正直サインを貰って記念撮影して欲しかったけど……

「ゴーカイジャーのお二人?単刀直入に言わせてもらうわ」
「私たちの要求は二つ。まず、船内にいるはずの暁美さん、暁美ほむらを引き渡す事。」
「そしてもう一つは、この街から一刻も早く退去する事よ」

「……へっ、名乗りもしない奴らの言う事を聞く義理は無いな。俺たちは…ま、言わなくてもわかるか」

さすがに場数が違うと言う事なのだろうか。強気に迫ってもまったく動じる所が無い。

「それは失礼したわ……私は巴マミ。こちらの二人は私の後輩、鹿目さんと美樹さん。こっちの赤い子は」

「佐倉杏子。正直言って、うちらも縄張り荒らされるのが気に食わないんだよね。ここはおとなしく従って貰えるかい?」

32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/24(火) 22:05:25.24 ID:I6bRqTRGo
「トモエにサクラ、カナメにミキ…と。ふん、お断りだな。子供の言う事にへいへいと従ってて海賊が通るかよ」
やはり、こうなってしまうのか。彼らにだって、海賊としての意地がある。…けど、私たちだって今まで見滝原を守ってきたんだ……!

「なら、仕方がないわね。……実力で通します。みんな、変身して!」

「望む所だ。おいハカセ、一つ生意気なガキ共のケツを引っぱたいてやるとしようぜ」

次の瞬間、赤・青・黄・緑・桃の光が一つに溶け合った。

33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/24(火) 22:09:31.52 ID:I6bRqTRGo
―――side 鹿目まどか

こんなの、絶対おかしいよ。マミさんも、さやかちゃんも。そしてわたしも。
ほむらちゃんを追放して、挙句に逃げ出したほむらちゃんを吊るし上げる為に「ゴーカイジャー」と戦うだなんて。
まだ出会ってから一週間も経ってないのに。同じ、正義の味方のはずなのに。

「…めさん!……鹿目さん!」
マミさんの声で、はっと我に返る。
「気が進まないのはわかるけど。こうなった以上、戦いが避けられないのもわかるわね?」

「……はい。」契約して戦士になった以上、戦いについてある程度の覚悟は決めていた。
同じ道を行く者同士であっても、武器を向け合ったのなら戦いは避けられない。
時には同じ少女を射つ事もある…って。でも、今日がその日だとは思ってなかった。

改めて戦況を確認する。

近距離型のさやかちゃんと杏子ちゃんがそれぞれゴーカイレッドとゴーカイグリーンを相手に戦っている。
新米のさやかちゃんはもちろんの事、杏子ちゃんまでもがグリーンのトリッキーな動きに翻弄されかけている。
それでもグリーンの反撃を的確に躱しているのがベテランの意地…なのかな。

遠距離タイプのマミさんは両手のマスケットから地面に向かってリボン弾を発射して只管援護に徹している。
が、生き物みたいにしゅるしゅる伸びるリボンはひょいひょいと躱され、あるいは切断されて。

ゴーカイジャーは全く意に介さず、何の邪魔も無いかのように戦っている。
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/24(火) 22:14:32.94 ID:I6bRqTRGo
その内に、さやかちゃんをより与し易いと見たゴーカイジャーが前後から襲いかかった!
ギィンッ!大きな金属音。さやかちゃんのサーベルが二本まとめてレッドの「ゴーカイサーベル」に切り裂かれた音だ。
同時に後ろからはグリーンの銃撃が直撃し、さやかちゃんがグッと短く苦悶の声を上げる。

「ダメぇぇぇっ!」その勢いで羽交い絞めにしようとするグリーンに、わたしは慌てて弦を絞り、光の矢を放つ。

矢はとっさに振り向いて防御体勢を取ったグリーンを「迂回して」ゴーカイレッドに突き刺さった。
黄色いリボンの亡骸の海に、赤い戦士がワンポイントとして倒れこむ。
「マーベラス!?…ぐぉぁっ!?」予期していなかったレッドへの攻撃に驚愕するゴーカイグリーンに今度こそ杏子ちゃんの槍が直撃する。
腹部に直撃した槍は緑の戦士を大きく吹き飛ばした。

間髪を入れず足元へマミさんのリボン弾が何十発と無く撃ちこまれ、よろよろと起き上がった二人の戦士を拘束する。
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/24(火) 22:18:48.02 ID:I6bRqTRGo
「チェック・メイトね。子供に倒された気分はどうかしら?キャプテンさん?」

「あぁ、最悪だな……だが、少し遅すぎだ」

マミさんがその言語に違和感を覚えた瞬間、20番目のスーパー戦隊「カーレンジャー」をコールする声が響き渡った。
それとほぼ同時に投げつけられた「バイブレード」がリボンを切り裂いた。更に一瞬遅れて、青・黄・桃の閃光が戦場に辿り着く。

青い人の怒声。「マーベラス!ハカセ!無事か!?」

赤い戦士の余裕たっぷりな返答。「……へっ、遅いんだよ……海賊がいちいち交通ルールなんか守って来たんじゃねえだろうな!?」
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/24(火) 22:25:26.64 ID:I6bRqTRGo
ゴーカイジャーの五人が勢揃いしちゃった……

それに対して今、満足に戦えるのはわたしとマミさんだけ、前衛組は杏子ちゃんはともかくさやかちゃんはすぐにでも治療が必要かも…
回復力に優れるさやかちゃんならすぐ戻れるだろうけど、それでももう少し時間が必要そう。

「魔法には、魔法だろ!ゴーカイチェンジ!」赤い戦士、マーベラスさんの掛け声と共にゴーカイジャーの姿が29番目のスーパー戦隊「マジレンジャー」へと変わった。

それと同時にマミさんがありったけのマスケットを喚び出して前に立ち、杏子ちゃんは満身創痍のさやかちゃんのカバーに下がる。
頼もしいけれど、全体的に圧倒的な実力差と経験差があるのは否めない。

ほむらちゃんの言ってた「ワルプルギスの夜」もこんな絶望的な戦いだったのかな……と今更考える

「……これで終わって!」
マミさんのマスケットが一斉に火を噴く。無数の使い魔相手にならまさに必殺となる効果的な一撃。
でも、この時は……

「「「「「マジカルカーテン!」」」」」

全ての銃弾がマジレンジャーの光の壁に跳ね返され、消滅させられてしまう。

「そんな……」
マミさんの最大級の攻撃すら、これほど簡単に無効化されてしまう。
これがスーパー戦隊の力だって言うの?こんなのって無いよ、強すぎるよ……
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/24(火) 22:30:19.18 ID:I6bRqTRGo
「こうなったら…鹿目さん、合わせて!時間を稼ぐわ!佐倉さん、動けるなら美樹さんを連れて撤収!」
「マミさんっ!?待って……!?ちょっ、放しなさいよっ」
「……了解!ゴーカイジャー、だっけ?今回は足手まといがいたけどね、次は容赦しないよ!」
さやかちゃんと杏子ちゃんが逃げて行く。

「向こうもこれで終わりにするつもりみてぇだな。残った奴らにはちょっとばかし痛い目見てもらうぜ!」

ゴーカイジャー達の声が聞こえる。
どうしてわたし達、戦わなきゃならなかったの?この星を、この街を、守っているって意味では同じなのに……

「グリーングランド!」
「ピンクストーム!」
「ブルースプラッシュ!」
「イエローサンダー!」
「レッドファイヤー!」

「来たわ、行くわよ!……ティロ・フィナーレ!」
「え……は、はい!行けぇっ!」

ピンクの光をまとったティロ・フィナーレと、マジレンジャーの「合体魔法」がぶつかり合い、強烈な閃光が辺りを満たす。

……相討ち!?そうじゃない、少し小さくなったけどマジレンジャー達の魔法がこちらに迫ってきてる。
わたしは結局何も出来なかった。戦いを止める事も、ほむらちゃんを助ける事も。
それでも、これで終わりなんだ。そう思った時。
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/24(火) 22:34:34.77 ID:I6bRqTRGo
「その必要は無いわ」
その一言と共に、目の前に黒い少女が現れ、大きく後ずさりながらも左手の盾で光弾を受け止め切った。同時に煙幕が張られる。

「ほむ、ら、ちゃん」
言葉が出ない。わたしが悪いのに。謝らなきゃいけないのに。
ぎゅむっ、とほむらちゃんがわたしの手をより強く握る。

「……鹿目さん、巴先輩を連れて逃げてください」

「ほむらちゃん、わたしは……」

「二度も、同じ事を言わせないでください。私は冷静な人の味方で、無駄な争いをする人の敵。」
「今回の件は一方的にあなた達のチームに非がある。……もう私達の邪魔をしないで。戦おうなんて気を起こさないで。鹿目…まどかさん。」

どんっ、と突き放すように握手を解かれる。
ほむらちゃんは煙幕の中を走り去って、行ってしまった。

隣ではマミさんがあっけに取られた顔で立ち尽くしている。
「今……暁美さんが…?」

「…マミさん、早く逃げましょう。今のままじゃ勝ち目なんてありませんから。」
「そうね……美樹さん達も脱出したみたいだし、ここは退きましょう。……行くわよ鹿目さん!」

ほむらちゃん……ゴーカイジャーと一緒に戦うつもりなのかな。
もう戻ってこないの……?
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/24(火) 22:39:31.70 ID:I6bRqTRGo
―――side マーベラス

戦闘を終えて一息つく。
しかし、あれが「魔法少女」か。
ザンギャック共よりは手ごわいが所詮はまだ子供、俺たちの敵にはならねぇな。
とは言えカナメ……だったか、あのピンクにやられた傷は以外と深い。見かけはおどおどしてるが奴は侮れないな。
それにしても―――

「おいお前!……ほむらとか言ったな?攻撃してきた相手を、何で庇ったりした?」

「……助けて頂いたのには感謝します。でも、こんな戦い無意味です!もう勝ちは見えたんですから、あれ以上は必要ないはずです…!」

「そうだよ!いくら子供にやられかけたからって、イライラしすぎだって!
「ハカセ、あんたもそれ言えた義理じゃないけどね。…どっちにせよらしくないよ、船長」
「その通り。そんな事で夢を掴めるのか?お前もまだまだ甘いな」
「まぁまぁ皆さん、お気をお鎮めになって……紅茶でも飲みましょう、マーベラスさん。パトロール中に良いお茶っ葉を見つけまして……」

ほむら・ハカセ・ルカ・ジョー・アイムから異口同音に責められる。ちっ、全くうるさい奴らだ。仮にも宇宙海賊が女子供にやられっぱなしで黙ってられる訳ねぇだろうが……あ?
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/24(火) 22:46:42.93 ID:I6bRqTRGo
「……おい、そこの白いのは何だ」
「え?……インキュベーター!?何しに来た!…って、そもそも、何で見えるんですか!?」
ほむらが二重に驚く。なんだ、この白いのは普通見えないのか?

「彼らは偉大な勇気の魔法使い『マジレンジャー』の大いなる力を受け継いでいる。」
「まぁ、僕達の知ってる魔法とはベクトルが違う物だけれど、彼らに僕が見えても不思議じゃあないね。」

「…それで、インキュベーター…さん……?わたくし達に、何かご用でしょうか?」

「君はファミーユ星のアイム・ド・ファミーユだね?僕と契約して魔法少女になる気は…『そんな必要ありません』…やれやれ、話の腰を折るのがうまいね、暁美ほむら。」
「まぁ良いや、ほむら、君は僕が何匹もいるって事は知ってるだろ?おかげ僕はいつもこの街全域をパトロールできるし、実際やってるんだよ。そしてこの間」

「――ザンギャック帝国の活動跡地みたいな物を発見したんだ」
…何だと?おい白いの、もっとちゃんと教えろ!

「落ち着いてよ、キャプテン・マーベラス。海賊とは言え、長にある人間があせっちゃいけないよ。まぁ今はこちらも都合が悪い」
「明日の夕方5時頃に、…………の座標にある建物に来て欲しいんだ」

「良いだろう……情報提供、感謝するぜ。」

ほむらが視界の隅で唇を噛み締めている。……悪いな、信用が薄いのはどちらも同じ。
なら、俺たちは派手にぶつかって行くだけだ。

41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/24(火) 22:50:43.48 ID:I6bRqTRGo
―――side 鹿目まどか

結局、次の日ほむらちゃんは学校を休んでいた。
さやかちゃんはゴーカイジャーに負けた事が悔しいみたいで、さっきから机に突っ伏して独り言をぶつぶつ呟いている。
(恭介……とか何で言わないの……なんてのも聞こえたような。…何かあったのかなぁ?)

『…聞こえるかしら?美樹さん、鹿目さん?』
マミさんからの念話だ!

『……はい、なんですか?マミさん。もしかしてまたゴーカイジャーと…?』

『さすがに今はそんな事しないわ。悔しいけど、彼らも場数を踏んでる。正攻法じゃあ勝てない相手なのは確かなんだから……それに、暁美さんもいる。なおさら厳しいわ』


『キュゥべえからグリーフシードを発見したって、連絡が入ったの。放課後にすぐ向かうわ。』

『わかりました。さやかちゃん、大丈夫だよね?』
『……うん。そう、昨日はちょっと油断しただけっすよ!魔女くらいパパっとやっちゃいますって!』

『そう、じゃあ決まりね。校門で待ってるわ』

念話が切られる。マミさんと杏子ちゃんは大丈夫みたいだけど、さやかちゃん……ほんとに戦えるのかな?


そしてほむらちゃん……もうどうしようもないのかな。
そんなのって…無いよ。こんなの、絶対おかしいよ。
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/24(火) 22:54:41.97 ID:I6bRqTRGo
―――side 美樹さやか

その日はマミさんの言いつけ通り、即座にグリーフシードへ急行した。
……確かにあの時は私達にも非があったかも知れないけど。魔女相手なら遠慮無く「正義として」本気で戦える。…やってやろうじゃん!

と、目的地についたみたい。前を行くマミさん(と、ついでに杏子)がこちらへ手を振ってる。

「……え?」
「嘘、ここって!」

「恭介くんの……入院してる病院」
まどかも事態を悟って息を飲む。冗談じゃない、退院ギリギリなのになんでこんな事が!?
グリーフシードが育ちきって結界が口を開くまでの数瞬すら待ち遠しい。早く、早く倒さないと!

「マミさんっ!先、行かせてもらいます!」
やっと結界が入り口を見せた。同時に変身を済ませ、前の二人を突き飛ばして、半ば倒れこむほどの勢いで殺到する。


………階段とドアをいくつか通り過ぎた結界の奥は、まるでお菓子の国だった。

クリームの大地、クッキーの壁面、キャンディの石ころ……それ以外に形容する表現が見つからないほどの、甘味の地獄。
病院と言うロケーションには全く似合わない。特に糖尿病患者の人にだけは見せちゃいけないよ、これ。

思わず足を止めて、しげしげと眺めてしまう。
そのおかげで、後ろの三人が追いついた。
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/24(火) 22:58:12.65 ID:I6bRqTRGo
追いついたのは良いが、こちらも足が止まった。
三人ともやっぱりこの空間に度肝を抜かれてるみたい。
「……ゴクッ」

「ちょっ…杏子!?何こんなの見て唾飲み込んでんのよ?!」

「え、…あ!?そ、そんな事ないぞ!さぁさぁ何立ち止まってんの!早く行くぜ!」
お前が言うな。…と言いたいが、早く倒したいのはその通り。あたし達は再び走りだした。

結界の奥に待っていたのは、丸っこくて可愛らしい使い魔と、負けず劣らず可愛らしい、まるでぬいぐるみみたいな魔女。…と、キュゥべえ。
なんだ、もう着いてたんだね。

「そいつがここの魔女ね?じゃ、いつもどおりにパパーっとやっちゃうからキュゥべえは下がって!」

「……その事なんだけどね、ごめんさやか。もう少しだけ待っててもらえないかな?」

―――え?何言ってんのよ……?
「そろそろ到着するはずさ。…あぁ、来た来た。待ってたよ!」
「暁美ほむら!」
「そして、海賊戦隊ゴーカイジャー!」
一瞬、その場の時間が止まる。

「……キュゥべえっ!?まさか貴方、裏切ったの?」
マミさんがいち早く動き出し、キュゥべえを問い詰める。

「裏切った?マミ、まだ僕にはそんな実感は無いんだけどな。」
「暁美ほむらと仲直りさせてあげようって言う話さ。”魔法少女同士”、ね。」
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/24(火) 23:00:55.02 ID:I6bRqTRGo
「…やっぱり、正義の味方同士で戦うなんて間違ってます。魔女相手になら協力を……!」

わけがわからない。あたし達を裏切ってゴーカイジャーに付いた?キュゥべえと転校生。
そしてキュゥべえのおせっかい。転校生の和解要求。

何より一番わけがわからないのは。

「おい、白いの、お前……!」
ゴーカイジャーも気づいたようだ。

なんで、魔女の結界の中に、ザンギャックの戦艦があるの?
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/24(火) 23:09:39.06 ID:I6bRqTRGo
―――side ジョー

まさに一瞬の早業だった。白い獣「インキュベーター」が両耳を一振りする。
たったそれだけの動作で、その場にいた5人の少女が一斉に苦悶の声を上げ始める。
それぞれ別々の位置に付けた宝石「ソウルジェム」が一際大きく光り輝き始めた。

「インキュ…ベーター……!?何を…!」
ほむらが苦しみながらも獣を詰問する。

「僕の名前、今言ったでしょ?それが何よりの答えさ」
「君達魔法少女を孵化させるのが僕の役目。それは魔法少女を魔女にするって事でもあるし」
「今回のように”完成したソウルジェム”を刈取る事でもある。君は何でも知ってると思ってたけど、これは知らなかったみたいだね、ほむら」

「おいザンギャック野郎!…魔法少女の変身アイテムなんか奪ってどうするつもりなんだ?」
マーベラスの詰問。

「そうか、君らは知らなかったよね……ゴーカイジャー諸君。」
「手短に教えてあげようか?」


―――それからこの白い獣が語った事は、非常に胸糞が悪い。その一言に尽きる。

曰く、自分達はこの星に生命が誕生してすぐにザンギャックの辺境探査隊として派遣され、地球の生命についての研究を行っていた。
曰く、その間に約1億7千万年前の「恐竜人」達と「魔女バンドーラ」との戦いを目撃した。

「魔女と戦う5人の戦士」の姿と、それに集まる感情エネルギーにヒントを得た自分達は、後年地球を支配する「人類」に対して「魔法少女作戦」を立案した。
概要は、魔力を授けて「魔女」と戦わせる事で希望の感情エネルギーを収集し、それを一気に絶望へと相転移させる事で多大なエネルギー資源を得ると言う物である。
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/24(火) 23:17:06.49 ID:I6bRqTRGo
その後、地球上やその他宇宙の彼方などで数々の「スーパー戦隊」が誕生し、彼らには多大な希望の精神エネルギーが集まっていった。

有史以前から生まれた数多くの魔法少女達に集まった精神エネルギーと同量同質、あるいはそれ以上の膨大なエネルギー。
そのエネルギーを強さの源の一つにする「スーパー戦隊」に、地球に対する数多の組織やザンギャック自身の攻勢は阻まれ続けてきた。

そして、そのパワーバランスが崩壊を迎えたのは、つい数ヶ月前の「レジェンド大戦」の事である。

一つの星を制服するには過剰とも言えるほどの戦力を注ぎこみ、全ての「スーパー戦隊」を相手取ったこのザンギャック最大の作戦。
星系一つを攻撃する為の大軍団を前にしては、さすがの「スーパー戦隊」も捨て身の攻撃に打って出ざるを得なかった。

……それからは、むしろ俺たちゴーカイジャーの方が良く知っている。
捨て身の大攻勢によってレンジャーキーとして散らばった「34のスーパー戦隊の力」は全てゴーカイジャーが受け継ぎ、結果的にだがこの地球を守っているからだ。

戦力を大幅に削りながらも未だに成功しない地球侵略に業を煮やしたザンギャックは、超古代にこの星へと潜入していたインキュベーター達の部隊に目を止めた。
同じ希望のエネルギーを利用した「擬似レンジャーキー」の精製を命じ、兵士の強化を謀ったのだ。

その対象が見滝原に集った5人の魔法少女であり、彼女らのソウルジェムが試験体第一号、と言う事なのだ、と。
奴がそこまでを語り終えた時、俺の周囲には白い骸が数え切れないほどに積み重なっていた。

ルカ・アイム・ハカセは未だ悶え苦しむ魔法少女達を介抱し、マーベラスは「結界」全体を抑えこむかのように強く睨みつけている。
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/24(火) 23:20:15.70 ID:I6bRqTRGo
「……元ザンギャック陸戦教導歩兵隊所属:ジョー・ギブケン。君もつくづく無駄な事が好きだね」
「僕はもっとクールな人間だと踏んでたんだけどな」
何十体目かのインキュベーターが現れ、自分の亡骸をむさぼりにかかる。

それをも「ゴーカイガン」で蜂の巣にしながら吠える。
「黙っていろ……どの道、怒りを発散させる先が無ければ最後まで聞けた話では無い……」
「やはり俺がザンギャックを裏切ったのは正解だったようだ。貴様ほどの下衆がいるような国で働けるものか!」

「……まぁ、いいさ。どの道ソウルジェムの回収は完了した」
「あぁ、安心してよ。彼女達の感情はキーを使う兵士にとって邪魔になるからね、返してあげたよ」
「それに計画が成功したからにはこの星もじき、ザンギャックの配下になる。その暁には彼女達も臣民として皇帝陛下に仕えるんだから」
「感情の篭った奉仕活動を期待してるよ?そうでなきゃ、僕達の数十億年の苦労も報われないからね」

ようやく、戦艦から戦闘員「ゴーミン」と下士官「スゴーミン」がわらわらと吐き出され、行動隊長を守るためにこちらへ向かってくる。
そして「魔女」も。奥の椅子に座っていたぬいぐるみもが、こちらへ歩き出した。

「……上等じゃねぇか」
マーベラスの瞳がまさに怒りに燃えている。それは俺を含めた他の4人も同じだろう。

「てめぇみたいな海賊以下のゲス野郎は、銀河のどこを探したっていやしねぇ。……派手に行くぜっ!」
「「「「「ゴーカイチェンジ!」」」」」

――――ゴォォォカイジャァァァァ!
気合の声が、結界内に響き渡った。
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/24(火) 23:23:05.48 ID:DEsazwcc0
やはりインキュベーターはインキュベーターか
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/24(火) 23:27:22.13 ID:I6bRqTRGo
次ィィィ回!海賊戦隊ゴーカイジャー!

「プロの海賊が、あんなお嬢ちゃんに負けてられねぇよなっ!?」

「……一人ぼっちは、さびしいもんな」

「マーベラス、ごめんっ!」

「わたし、結局何も出来なかった。マミさんの説得も、上条くんを助ける事も。……何もかも」

第13.50話「そんなの、無理に決まってる」




・CMのあと、みんなでスーパー戦隊の名前を憶えよう!
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/24(火) 23:31:52.37 ID:I6bRqTRGo
http://www.youtube.com/watch?v=D5HjzISjiT0
ED「スーパー戦隊 ヒーローゲッター」



この番組は

(株)東映

「魔法少女まどか☆マギカ」制作スタッフ一同&Magica Quartet

SS速報VIP板管理側の皆さん

読者の皆様

の提供で お送り致しました。



\ギャオーン!/
仮面ライダー・オーズ!この後すぐ(嘘)
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/24(火) 23:34:52.50 ID:I6bRqTRGo
つーワケで第二回投下これにて糸冬lノです。
どうも俺がまどっち書くと身勝手な人になっちゃうのがファンとして心が痛い。
第三回以降矯正出来れば良いんですが……
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/05/24(火) 23:36:13.69 ID:JwXCR0vi0
3!3!乙!
なるほど、インキュベーターはザンギャック側だったのか
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/24(火) 23:39:23.92 ID:b244PpHno
乙!
ゴーカイジャーならインキュベーターのやることなんざ派手にぶち壊してくれることを期待
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/24(火) 23:45:48.71 ID:DEsazwcc0
乙!!ジョーもマーベラスも格好いい!!
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/05/24(火) 23:50:56.86 ID:p5/nLrdn0
乙!
バンドーラは個人的に好きな敵役の一人だ
しかし成程、ジュウレンジャーの設定をこう繋げて来るとは良い意味で予想外
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/25(水) 08:11:32.51 ID:llAqAbgSO
乙!!
話の流れや台詞回しがちゃんとゴーカイジャーだったぞ。

次回も楽しみにしてます。
57 :1 [sage]:2011/05/28(土) 09:22:43.21 ID:tgaSTC0Ao
さぁーて、山登りしてきます。
少なくとも木曜日まで更新は無い、でしょう。でも見捨てないでー
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) :2011/05/28(土) 11:36:10.50 ID:tByWe1tAO
遭難だ
待ってる
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/29(日) 21:15:09.16 ID:9Dm39Pn50
質問だけど殿下はでないの?
60 :1 [sage]:2011/06/02(木) 22:56:25.38 ID:N53HAdf2o
いよいよ明日さえ乗り切れば休日と言うこの木曜深夜、皆様いかがお過ごしでしょうか。
こんばんわ、作者でございます。本日の更新は無理っぽいですが、現在鋭意書き溜め中です。長くとも一両日中には投下できるかと存じます、ハイ。



>>59
出しますよー!(頭)ワルズ・ギルもダマラス閣下も何とかサンもシドせんぱいも!
しかし……こいつら戦闘シーンがあんまり無いので……活躍は、お察し、かな?ゴメンナサイ
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/02(木) 22:58:50.30 ID:cYpA3Evoo
ひゃっほい。まってたぜ
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/03(金) 01:33:00.04 ID:9wZ0Eb3Ao
過去の歴代戦隊関係者が出てくるのか気になる、期待
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/03(金) 08:57:04.12 ID:YDLAGOEZo
ゴーカイオーでワルプルをぶっ[ピーーー]のを期待してる
64 :1 [saga]:2011/06/05(日) 07:27:19.58 ID:SLuABEEqo
作者です。皆様おはようございます。
思いっきり期限オーバー+今から本物の「海賊戦隊ゴーカイジャー」が始まると言う時間に恐縮ですが、
第三回を投下したいと思います。
って言うかこんな朝っぱらからSS速報なんか見てない、かな?

とりあえず次レスから、どうぞ
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/06/05(日) 07:32:53.79 ID:SLuABEEqo
―――前回の、「海賊戦隊ゴーカイジャー」はっ?

ザンギャック帝国の秘匿回線に侵入し、秘密作戦の盗聴に成功したゴーカイジャー。
向かった群馬県・見滝原市で彼らを待ち受けて居たのは、「魔法少女」と言う未知の戦士だったっ!

そして、彼女達に仕掛けられた運命とはっ!?
今、ザンギャック帝国にゴーカイジャーの怒りが爆発するっ!

冒険とロマンを求めて、宇宙の大海原を行く若者たちがいた。
宇宙帝国ザンギャックに反旗を翻し、海賊の汚名を誇りとして名乗る豪快な奴ら!
その名は、海賊戦隊ゴーカイジャー!
http://www.youtube.com/watch?v=dQta-fJobys
海賊戦隊ゴーカイジャー 第13.50話「そんなの、無理に決まってる」


66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/06/05(日) 07:34:20.12 ID:SLuABEEqo
―――side マーベラス

ジョーが斬る。
ルカが薙ぐ。
ハカセが投げる。
アイムが穿つ。
ついこの間のアイムの誘拐騒動。今、その時と同等の怒りが俺たち全員の心を満たしている。

目の前のゴーミンを手にした武器ごと切り裂く。後ろから迫るスゴーミン共をゴーカイガンの連射で防御した腕の装甲ごと打ち砕き、粉々にする。
無謀にも殴りかかるゴーミンの顔面を握り潰し、盾にしつつ突撃を掛ける!
結界のそこかしこで同じ様な光景が広がっていた。

結果、ザンギャックが展開したあれほどの大部隊は、ものの数分で完全に結界の一角に追いつめられていた。

67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/06/05(日) 07:34:50.78 ID:SLuABEEqo
「……止めだ!」
サーベルにゴーカイジャーのレンジャーキーをセットし、全員が必殺技「ゴーカイスラッシュ」を放つ。
斬撃波に切り刻まれ、瞬く間にザンギャック兵は壊滅した。

これで残るは戦艦に篭る奴一匹。……いや、もう一匹。
「魔女」と言う異形がゆっくりとこちらに迫っている。

外見は正直に言って、非常に可愛らしい。
が、裏に潜む実力はどの程度なのかまるで察しがつかない。

迷いが生まれたその一瞬に、戦艦が結界から離脱しようと動き始めた。
「……させるかよっ!」瞬時に「ゴーカイブラスト」の体勢に入り、戦艦を落としにかかる。

が、放たれた5色の弾丸はザンギャック艦ではなく謎の黒い怪物に飲み込まれ、咀嚼された。
地上のぬいぐるみ魔女が、瞬時に吐き出したのだ。
おそらくあれこそが奴の本体なのだろう、その黒くてフザけた顔の塊が一直線にこちらに迫る。
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/06/05(日) 07:36:11.42 ID:SLuABEEqo
「……早ぇっ!?」とっさに全員が15番目のスーパー戦隊「ジェットマン」へとゴーカイチェンジし、空中へ飛び上がる。
一瞬遅れて魔女が殺到し、先程まで俺たちが居た地面を貫いて、また反転する。

巨体に見合った破壊力と、それにそぐわないこのスピード。
おまけに地面の大部分はぬかるんで自由を奪う生クリームだと来ている。

言葉こそ喋らないが、こいつは中々の知恵者かもな……。

「おいお前ら!あそこで寝てる嬢ちゃん達は、毎日こう言うのを狩って来てんだ!…プロの海賊が負けられねぇよな!?」
おう、と4人が力強く応える。へっ、全く頼もしい事だ……!

「ジョー、ルカ!突っ込むぞ、付いて来い!アイムとハカセは撹乱しながら援護だ!」
5人の鳥人が、一斉に羽ばたいた。

69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/06/05(日) 07:36:45.22 ID:SLuABEEqo
―――side 暁美ほむら

最初に目を覚ましたのは、私だったようだ。
むくりと白い大地から顔を上げる。……三つ編みがベタベタ、でも今はそんな事言ってる場合じゃ無い。

魔法少女では無くなったからか、能力で盾に収納していた火器が足元に散乱していた。
インキュベーターが私達を騙していたって事はわかってた。でも、まさかこんな真相が裏にあったなんて……あいつの本性を見抜けなかった自分に歯噛みし、辺りを見回す。

周囲はまだ一面お菓子の地獄、魔女の結界の中みたい。結界が健在なのにも関わらず、ザンギャックに射殺された訳でも魔女に食われた訳でも無い。
あのイレギュラー達がきっちり守ってくれたみたいね。

牽制にマシンガンを連射し、空を見上げる。
私達を守ってくれた5人のスーパー戦隊は、上空で「お菓子の魔女」と激戦を繰り広げていた。
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/06/05(日) 07:39:53.45 ID:SLuABEEqo
巨大な魔女の周りを正しく縦横無尽に飛翔する「ジェットマン」…いえ、「ゴーカイジャー」。
並行して隊列を組んで居た5人が二手に分かれる。

白と黒の二人はより遠くへ飛び、残った三人はその場で剣を抜き放つ。
そして…「バードブラスター!」二筋の閃光が赤・青・黄の鳥人をかすめ、「お菓子の魔女」のふざけた顔面に肉薄する!

その刹那、すかさず魔女は大口を開けてレーザー光を飲み込む。しかし、歴戦の海賊戦隊から見れば、その一瞬すらも永劫に映るのだろう。
三人の鳥人が大口を開ける事で自ら前方の視界を閉ざした魔女へと肉薄する。
鳥葬のように冷徹に、迅速に、魔女の黒く巨大な身体は刻まれて行く。

「……飛行斬りッ!」赤い戦士が一声の気合を発し、最後の一閃が振るわれた。
まさに一瞬、正確に言えばほんの2〜3秒。たったそれだけで、魔女をぽん、と押せばバラバラと崩れ落ちてしまわせそうなほどの傷を負わせられるのだ。

「……すごい」
中学2年生にもなったのにこんな小学生並の感想しか出てこない自分を情けなく思う。
それでも、あの時の私はこう言うだけが精一杯だった。そう言わせるだけの凄まじい戦闘力。年甲斐もなく、思わず胸が弾む。
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/06/05(日) 07:41:03.60 ID:SLuABEEqo
……それだけの戦果、そして彼らの実力への信頼が隙を生んだのか。
私は後ろに迫る触手に気づきながらも、声が出せなかった。
「……逃げてぇっ!」叫んだ時には遅い。

最も肉薄した赤い戦士は、無数の傷口から生えた魔女の細い分身達の攻撃を全身に受けていた。

「……ぐあぁぁっ!?」
まどかの作った傷口を魔女に抉られでもしたのか、普段の不遜な態度からはそうそう聞けないであろう派手な苦痛を漏らし、赤い船長が落ちていく。
その姿は何時の間にか、ジェットマンからゴーカイジャーへと戻ってしまったようだ。修復を完了した魔女本体が、喜色満面で追いすがる。

―――間に合わない
私の直感は恐らく当たっている。残った4人も全速力でゴーカイレッドを目指している。が、黒と白の二人は距離が開きすぎ、また、牽制攻撃も今の魔女は興奮して意に介さない。
さりとてより近い青と黄の二人は、傷口から伸びるミニサイズの魔女達の相手に手間取っている。
そして、私自身は。
「痛いッ?……銃がっ、撃てないっ……!?こんな時にッ!」

そう。私は最早、誰かを守る魔法少女では無く。
ドジで、ノロマで、愚かなただの中学生「暁美ほむら」でしか無いのだった。肩から先、右腕がきしむ様に痛む。

先ほど魔女に対して行った89式小銃の無計画な連射は、もはや私の右腕から筋力のほぼ全てを奪い取っていた。
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/06/05(日) 07:43:48.07 ID:SLuABEEqo
誰も、何も出来ず、ただ赤い戦士が貪られるのを眺めるばかりなのかと。
私がそう諦めかけて、せめてと視界を閉ざした瞬間。

「暁美さんっ!支えなさい、早く!」聴きなれた誰かの声が響いた。
私は訳もわからず手を前に突き出し、その誰かの腰部分を抱く。この悪夢の中、ようやく頼る物が出来たような感覚。
ほっ、と一息ついた次の瞬間、耳をつんざく轟音が響き、ドチャァァァッと何かが落ちる。地面を抉り取る鈍い音が続く。

巴さん、否、巴マミが私のカスタムデザートイーグルで魔女の急所を狙撃したのだ。

怒りに燃えた瞳でこちらを睨む魔女の鼻のすぐ下、俗に言う「人中」の辺りに巨大な穴が穿たれている。
対戦車マグナム弾の一撃には、流石の魔女も耐えられなかったようだ。

「……巴さん、その……腕は」何の訓練も積まない少女の肉体で、ノーリスクであんな化け物を撃てるはずも無い。
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/06/05(日) 07:45:15.61 ID:SLuABEEqo
当然、巴マミの右腕は、肩口から痛々しく垂れ下がっていた。
思わず目を背けた私にすかさず次の命令が下る。

「やっぱり単発銃じゃあ、威力があっても再生されちゃうのね……暁美さん、あなたM249持ってたわね?早く貸しなさい。弾丸も、ありったけ」

「……!? 無茶ですよ、そんなっ!今の私達は魔法少女じゃない、普通の女の子なんです!ここは任せて皆と逃げましょうよっ!」

「黙りなさい。…やっぱりあなた、美樹さんの言った通りかもね。何もかも諦め切っちゃってる。」
「良いこと?私はあなたなんかよりずっと前から、この街を守る魔法少女なの。これまでも…そして、これからも!」

巴さんは外れた右腕をがごっと嫌な音をさせつつ無理やりに嵌め、こちらに伸ばす。
「……わかりました。でも、今のままじゃこんなの撃てませんけど」
「撃てないなら撃てるようにすれば、良いのよっ!」

そう叫ぶと、少女には長大すぎる機関銃を抱えて、巴さんは走りだした。そしてすぐに止まり、手近にあった巨大なマシュマロの置物に「埋まる」。

「私も、お菓子作りが上手なのよ?同じ趣味を持つ者として、食べ物で遊ぶような子にはお仕置きしてやらないと、ね!」
その手の内で、機関銃が存分に猛り狂う。
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/06/05(日) 07:47:32.84 ID:SLuABEEqo
連射された弾丸は全て狙い違わず魔女に命中。ゴーカイジャーに注意を向けていた魔女の魔眼が巴さんに刺さる。……!?ゴーカイレッドが居ない。

「よぉ、時間稼ぎご苦労。だがよ、怪物退治は戦隊の仕事なんでな!」
「ゴーカイチェンジ!」―――ダァァイナマァン!

ゴーカイジャーの姿が7番目のスーパー戦隊「ダイナマン」へと変わる。

この時間軸にたどり着いてから学習した事が一つ。彼らがこの形態を用いる場合、する事はほぼ決まっている。

「おいお前ら!爆風が行くぞ、さっさと逃げな!」
あぁぁぁやっぱり!結界の中なのにどこへ逃げろって言うのよぉっ!
……いや、手近にあるわね。

「美樹さやか、佐倉杏子、鹿目…さん!起きて、走るのよ!」
むにゃむにゃ…と、書き文字で擬音を付けたくなるようなのろい仕草で3人が覚醒する。

「暁美さん、何を……?…今二人を預けられても困るわ、私が撃てないじゃない」
まだ戦うつもりなのか。
「今は、そんなの、良いじゃないですか……鹿目さんも、すぐ連れてきます。吹き飛びたく無いなら、マシュマロに、入れてあげてください」
それだけ言い捨てて、私はまた走りだす。急がないと、結界ごと吹き飛ぶのはごめんだわっ!心臓が早鐘を打つ。

「鹿目さんっ!…走って!」

「ふぇぇっ!?ほ、ほむらちゃん!」
…こんな状況なのにやっと目を覚ましたみたい。この娘って、ほんと暢気よね……。
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/06/05(日) 07:49:00.39 ID:SLuABEEqo
―――side マーベラス

この「魔女」の能力はとてつもなく厄介だ。
口を開ければエネルギー波は飲み込まれ、物理攻撃をすれば外皮を脱ぎ捨てるか傷口から分身を出すかの二つで無効化される。
それにもちろん、パワーとスピードも折り紙付き。まともに戦えばとても適う相手では無い。

そんな強敵に対しては。「真っ向から叩き潰してやらねぇとなぁ!」
「ちょっ、マーベラス待ってよ!そんなの作戦って言わなモゴモゴ……」
ルカが即座にハカセの口をふさぐ。

「ダイナマンのキーを使ってるのにまだわかんないの?子供ねぇ〜」
「ま、良い考えだと思うよ?下手に攻撃すると、再生されるばっかりだもんね。それならいっその事!」
「おう、その通りだ!行くぜお前ら!」

「「「「「ニュー・スーパー・ダイナマイト!!」」」」」

ズドグォォォォォォォォォォォォォォォォォン!
ベギャァァァァァァァァァァァァァァァァン!
ドッガァァァァァァァァァァァァァァァァン!
バグォォォォォォォォォォォォン!
バシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!

子供じみた擬音だが、あの轟音を文字で表すならこう表現する他無い。
結界の中の物は一瞬でほぼ全て消し飛んだ。残ったのは半壊のザンギャック艦と、ほど良い色の焼きマシュマロ。
そして、そこから顔を出した5人の少女だけ。
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/05(日) 07:57:50.86 ID:SLuABEEqo
さて、短いですが今回はここまで。


今日のゴーカイジャーも面白かったですねー。
マジシャインとかシンケンゴールドとかアバレキラーとか、かなりの手練れを失ったはずなのにまだ余裕を見せるか、バスコ・タ・ジョロキア。

こういう軽いけど底の見えないキャラは大好きです。初期の海東とか、ね
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/05(日) 07:58:41.54 ID:SLuABEEqo
……って、次回もうシルバー登場!?
うわ、どうしよう 出せるかなぁ?
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/05(日) 08:30:33.30 ID:ebn7yJmQo
乙!
つ ムービー大戦2010のアクセル方式
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山形県) [sage]:2011/06/05(日) 10:39:40.80 ID:maS7HgCro
???「この地球に残った戦隊ヒーローはゴーカイジャーだけじゃないぜ」\シルバー/


こうですか?わかりません><
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/06/06(月) 06:19:45.87 ID:Fc/glTb40
それだと「仮面ライダーシルバー」っぽいな
81 :1 [sage]:2011/06/09(木) 17:51:39.77 ID:zgZDH5juo
よォし、ごくごく短い一編だけど書き上げたゾ
今週の投下は5レスで終わるかもです、マジでごめん

って言うか一ヶ月で終わらせるって言ったのに終わりそうにないや 創作って難しいね……


しかも今投下できないし。10時以降だし。俺ってほんとバカ
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山形県) [sage]:2011/06/09(木) 23:42:09.06 ID:UGmsZrpLo
>>81
貴様ッ!!

PCの前で続きを書いていたらいつの間にかエロい諸々をサルベージしてた病か

一緒に頑張ろうぜ…
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/10(金) 01:18:06.62 ID:D2aOjodwo
>>82
ふふふ……ちょっと追加要素入れたら予想以上に長引いちまったんだよ
ごめんなさい、本日の19:30までには必ず投下しますんで……


軽い気持ちで番外編なんかやめれば良かったなぁ
84 :1 [sage]:2011/06/10(金) 19:55:20.25 ID:D2aOjodwo
今更ですが投下します。



遅筆の上に度重なる約束破り、誠に申し訳ありませんでした。
ついでに今回戦隊があんまり関係ないです。
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/06/10(金) 19:56:48.83 ID:D2aOjodwo
Ex-side:α−01 「お菓子の魔女」

……絶望・苛立ち・怒り・悲しみ・妬み。マイナスの感情をたっぷりと吸込み、この世界へと「誕生」する。

なんや、ここ病院やないか。べぇはんも趣味が悪ぅおまんな、よりによってわいをここで孵化させようやなんてな。
文句言える身体なら言うとるやろな。

しかも何やねん、もう魔法少女おるやないか!サービス悪すぎやでほんま、あの白饅頭は営業マンの屑やな。
ご丁寧にグリーフシードを囲みよってからに、本気で潰す気か?はぁ…上等やで。お前らみたいなペーペー、何人でもわいだけでいてもうたるわ!


さー、結界張ったったで。どっからでも入って来なはれ……ってあれ。

…ザンギャックの皆さんやないの。ご機嫌よろしゅう……って、こいつらには念話でけへんのやったな。
しかし、なんでおるねん?

お、そうこうする間に一匹入って来よった。おいでおいで青いの、わいはもっと奥やでー。
お仲間はん達もはよおいでなはれや。何立ち止まっとんねん?

……なんや、わいの菓子食おうとしてるんか?
けったくそ悪い、泥棒が後輩におるなんてな!
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/06/10(金) 19:57:50.12 ID:D2aOjodwo
全く、わいが魔法少女やった頃はなぁ……って、べぇはんやないの。
これはどういう事ですのや?あんなザンギャックのおもちゃなんか連れ込んで?
え……?スーパー戦隊?35番目?ゴーカイジャー?
はぁ……時間は経つもんやなぁ。こないだ孵化した時は…えっと、冒険じゃあ?とか言う連中がわいわいやってた頃でしたなぁ。

……はぁ、そいつら絡みの作戦にわいらを使いたい、と。さいでっか。
どうせ拒否できる立場や無いですし、存分にやらせてもらいまっさ。



……安請け合いするもんや無いな。
なんやこいつら、滅茶苦茶強いやんけ。みんな殺られてもうた。
べぇはん、ほんまにえぇんですか?
まだ脱出に時間かかりまんのやろ?いくらわいが強化されてるからって、ちょびっと危ないんと違います?

……なんや、あの白饅頭念話切りよってからに。
やってられへんわ、あいつから食うたろか、ほんま……

あ、冗談でっせ?ほら、撃たれてますよー。ほらほら、わいがいないと危ない所でしたやん。気をつけへんとなー。
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/06/10(金) 19:59:34.25 ID:D2aOjodwo
さて……魔法少女やのうて、戦隊と戦うなんて思ってなかったけどな。
わいがやる事はかわらへん。食いちぎって、貪って、噛み潰すだけや。
行くで、「ゴーカイジャー」!

……躱されて思い切り顔ぶつけてもうたがな。あぁ、鼻いた。
しかし「ジェットマン」……どこぞで聞いた名前やな。スーパー戦隊の一つなのは確かやけど。

ッ!…レーザーか。んなもん飲み込んだるわ!

って、あぁぁ痛い痛い痛い。んな殺生な、今何度切りはった?


あぁ……こんなに傷ついとる。これだけやられちゃ……相当生まれるな。
それみんな、目の前の赤いのに噛み付いたり!

……どや、そこの黒い眼鏡のお嬢ちゃん。さっきから目ぇ丸くして見とったけど、これがわいの力やで。
安心しいや、腹ん中で10人仲ようさしたるからな。何や、物騒なもん持ってどうしたんや?構えもでけへん癖に生意気やな。
邪魔せずそこでじっくり見とけや。じゃ、赤いの頂きまーす!
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/06/10(金) 20:01:35.24 ID:D2aOjodwo
痛い!!

痛い痛い痛い痛い!な、何してくれる!わいの顔にこんな、こんな大穴開けよって!

許さん、絶ッッッ対許さん!ブチ殺したるわこの黄色!
頭から行ったる、噛んどるとこ見せつけたるからな!

なんやカラフル、邪魔するな、どけや!
……爆発!?



死んだ。あぁまた死んだ。どんどん「わい」が焼け死んでくわ。
あ、死ぬ死ぬ。一番長く伸びたわいが死ぬ。一番後ろで菓子食ってたちびっこいわいも死ぬ。
死んだ。死んだ。死んだ。あ、今度は二匹まとめて死んだ。あ、もうこのわいの番かいな。

はぁ、死んだ。
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/06/10(金) 20:06:51.84 ID:D2aOjodwo
『やっと、終わったの?……これでまた眠れるのね』
全てが終わった後、ほんの一瞬訪れる私だけの時間。
と言った所で、別にする事なんか何一つ無い。
再び悲しみの種に閉じこもるまでの数瞬、私は「何故こんな事になったのか?」
と、何十回目かの自問をする。





降り止まない雨の中から、白いアイツがやってきた。
私はお菓子の袋を「消す」。魔法のお菓子は素質有る人にしか見えないけど、食べながら話すのは悪いものね。

「……やぁ、―――!元気かい?」

「その名前で呼ばないでって、何回言ったっけ?あなたと契約した時から私は魔法少女、マジカル☆シャルロッテになったんだから」

「……確かに君を魔法少女にしたのは僕だけど。この病室の名札には別の名前が書いてあるよ?」
「僕も魔法少女を産み出して長いけど、君みたいな発想の子には初めて会うね。そんなネーミングセンスの持ち主にも」

「……黙んなさい」

呆れ顔から一転、もとの無表情に帰り、キュゥべえが問う。
「ところで、隣のベッドが空いたんだね。あの青年は退院できたのかい?ひどく重症だったみたいだけど」
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/06/10(金) 20:10:13.69 ID:D2aOjodwo
「あの人?あぁ、この間亡くなったわ。最後の最後まで誰かに怯え続けて。見る影もなくガリガリに痩せこけて、ね。」
「私、最後の瞬間にあんなにはなりたくないわね」

「……ね、ここだけの秘密、教えてあげようか。彼ね、『次元戦団バイラム』の幹部だったみたい。古新聞にあった顔写真とそっくりだったもの。」
「でもみんな現金なものね……バイラムの事も、ジェットマンの事も。みんな無かった事みたいに、今はジュウレンジャーとバンドーラ達の戦いに一喜一憂してるんだから。ヒーローも報われないよねぇ」

「……そうだね。しかし、ジュウレンジャーか。懐かしい名前だ」
「あれ、キュゥべえ、ジュウレンジャーの事知ってるの?宇宙人の癖に。その癖フラッシュマンも、デンジマンの事も知らなかったのに?」

「昔、少し世話になった事があるだけだよ。それより……君の、精神分裂症の方だ。治りそうなのかい?」
思わず押し黙る。
会話を絶やさないようにしてたのに……キュゥべえのバカ。
誰の声も響かなくなり、たちまち病院本来の静けさが部屋中を包む。
聞こえるのは降り止まない雨のしたたりと、切れかけた電球のじじじじ、と言う耳障りな音だけ。
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/06/10(金) 20:12:27.10 ID:D2aOjodwo
「……状況は好転したとは言いがたいわ」
「まず、そもそもこれは治るような病気じゃないのよ。ビリー・ミリガンの話は知ってる?」
「今でも一日に少なくとも30分は、もう一人の私が出てきてるらしいわ。その時はコテコテの関西弁になるんだって。今まで一度も行った事無いのにおかしいわね、ほんと」

キュゥべえが頷く。
「なるほど、そうなのかい。こんな特殊状態に陥った魔法少女なんて君が初めてだからね、参考として知っておきたかったのさ」

何こいつ、人の事をモルモットみたいに……同情する気なんてこれっぽっちも無いのね。
感情がない(笑)なんて馬鹿にしてたけど、こりゃ真性かも。

「ソウルジェムを見せてもらえるかな?」
「……見てどうするつもりなのよ」
「ソウルジェムは名前の通り、君の魂を写す鏡だよ。……もしかすると、二つに分かれてたりして」
「怖い事言ってくれちゃって……壊したら死ぬ、って言ったのはあんたでしょ」
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/06/10(金) 20:14:56.97 ID:D2aOjodwo
そう言いつつも、ソウルジェムを取り出してかざしてみる。
命と言えるこの宝石について、なんだかんだキュゥべえの方が詳しいのは事実なのだ。

久々に魂の宝石を眺めてみると、特に変わった様子は無かった。
ただ一点、ドス黒い染みが付いている以外は。
「あっちゃ……しばらくグリーフシードを補給して無かったからなぁ…」

私はぼやく。
キュゥべえもぼやく。
「……なんだい、そんな事だったのか。つまらないね、君も他の子達と同じじゃないか」



その後、あいつは何て、言ったんだっけ………駄目みたい、思い出すにはもう時間が足りないか。
このまま絶望から絶望へ、何時までも絶望まみれの泥沼を歩み続ける……そんな運命なんだから、もうちょっと時間をくれても良いじゃない




少女だったモノの呟きを聞く者はいない。
呪いの黒い宝石がクリームの地面に刺さり、一瞬後に真っ白い大地は漆黒のアスファルトに変わる。
暗黒の石はアスファルトの黒に紛れ、誰にも気づかれる事なく、何時までも、ただ突き立っているだけだった。
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/10(金) 20:25:48.86 ID:D2aOjodwo
番外編はとりあえずここまで。
後はキャラ紹介、弁解とか。


〜海賊戦隊ゴーカイジャー〜

ゴーカイレッド/キャプテン・マーベラス

戦隊側は基本的に元のキャラクターに忠実にしたつもりではあるんだけど……今の所ただイライラしてるこいつは一番犠牲になってるかも。
5人中一番の実力者なのに(多分)本SSではボコられる事多し。たぶん今脱いだらシンケン回より痛々しい。

ゴーカイブルー/ジョー・ギブケン

ゴーカイジャーだと彼が一番好きかも。キュゥべえを相手にさせた時、こいつなら100匹斬り敢行するだろうなと思った。
ザンギャック時代の階級は適当なオリジナル設定だから本気にしないように。

ゴーカイイエロー/ルカ・ミルフィ

今の所はただの空気A。剣をぐるぐる回してタメる動作が可愛い。

ゴーカイグリーン/ハカセ(ドン・ドッゴイヤー)

ちょっとヘタレにしすぎたかも知れない。本編同様のトリッキーなアクションを描写、したいけど……難しいね。

ゴーカイピンク/アイム・ド・ファミーユ

今の所はただの空気B。「無力だった」キャラとしてまどかと絡められるかなと思ったのがこのSSの始まり。
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/10(金) 20:37:19.23 ID:D2aOjodwo
〜魔法少女まどか☆マギカ〜

鹿目まどか

ご存知我らが主人公。でも現在理想と現実の間で迷走気味。
なんとか矯正したい。

暁美ほむら

多くのまどかSSに習った……訳ではないが、このSSのまど☆マギ側主人公はやっぱり彼女かと。
当SSは「一粒で五度美味しい暁美ほむら」を目指しています。

美樹さやか

「こころはタマゴ」が似合うキャラだなと思ったのがこのSSの始まり、でもある。

巴マミ

マイステディ。現在超・暴走中。
故意のキャラ改変の効果は絶大である。「ラインバレル」の「早瀬浩一」が乗り移ってると思ってください。

佐倉杏子

現状、空気C。杏子と言うキャラそのものがあまり理解できて無かったり。
なんとかしたい、なんとかしなくちゃ。

志筑仁美

正々堂々と戦いを挑んだのに結局勝負して貰えなかったある意味可哀想な人。
全ての真実を知ったら一番悲しむのはまどか、次点は彼女かも。


その他 モブだから良いよね、キャラ改変したってさ
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/10(金) 20:44:48.73 ID:D2aOjodwo
弁解編

ゴーカイ本スレでの考察を見ると、このSSとレジェンド大戦の時期が大分ズレるんですよね……
本編だと何年か経ってるみたいですけど、このSSだと起こってから半年も経ってないと言う。時系列は気にしちゃいけません。

同様に、ミリタリー描写も素人知識の滅茶苦茶な物です。こっちも無視していただきたい。
中三女子が対戦車マグナムなんか撃てるわけ無いじゃないですか。なんで俺は手榴弾を投げさせなかったんでしょうか。
考えなしに書き込みボタンを押したのを深く悔みます。


以上で、今回の投下は本当に終了です。
これからは一回の投下は一週間ごとになるでしょう……。自分の遅筆さを舐めきってました。
重ねて謝罪します。こんなちゃらんぽらんな奴の書くSSですが、読んでいただけたら幸いです。
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [saga]:2011/06/10(金) 21:27:49.85 ID:cjyYJFaF0
気にしませんから早く!
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/06/10(金) 21:37:16.23 ID:SSOVgGi2o
明日は映画館まで派手に行くぜ
投下乙
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/06/17(金) 20:32:57.54 ID:TYb4s+D+o
―――side アイム

ザンギャックの「魔女」との戦いが終わり、辺りの様子は一転して元の駐車場へと戻って行きました。
……それにしても、あの怪物も元は「魔法少女」だったなんて。
この事実を知ったら、あの元魔法少女達の心は持ちこたえられるのでしょうか……?
今しがた、唯一信じていた仲間に裏切られて、自身の存在意義すら失ったばかりだと言うのに……。



最初に動き出したのは……巴、マミさんでしたか。リーダー格だった金髪の少女でした。
彼女は「たとえ生身でも自分一人で魔女退治を続ける」とだけ言い残し、その場を走り去って行きました。
後ろ姿を見つめるほむらさんの瞳に諦観が滲んでいたのは、銃器を奪われたから、と言うだけでは無いのでしょう。

次に動きを見せたのは、意外にも、ゴーミン達を撃破されてから沈黙を守っていたザンギャック艦でした。
半壊状態で地に伏していた巨体がいつの間にか浮揚し、誘導ビームを病院に撃ちこむが早いか、人質にするのか数人の患者さん達を攫ってしまいました。
これではゴーカイガレオンや、ゴーカイオーでの大規模な攻撃は出来ません。……本当に卑怯な行動隊長。

その様子にいち早く反応したのは、青い少女。「美樹さやか」さんでした。
「恭介ッ!」と、あの中にいた誰かのお名前でしょうか?男の方のお名前を叫び、何か念じていたかと思うと、
「鹿目まどか」さんとほむらさんの必死な制止も振り切り、誘導ビームの光に飛び込んで行ってしまいました。

その姿が完全に消えるのと、ほむらさんが血を噴き出して倒れたのはほぼ同時でした。
回収を終えたザンギャック艦も徐々に透明になり、姿をくらましてしまいました。

最後に、今まで沈黙を保っていた「佐倉杏子」さんが
「これで名実共に魔法少女同盟消滅、か……ま、達者でやんなよ」と言い捨てて、足早に歩き出しました。

何時の間にか、立っているのは「鹿目まどか」さんだけになっていました。
そうだと分かった時の彼女の表情をわたくしは一生忘れられないでしょう。

まどかさんの顔に張り付いた「忘我」そのものの表情は、星を滅ぼされた日のわたくしの表情に余りにも似ていたのですから。
99 :1 [sage]:2011/06/17(金) 20:35:19.79 ID:TYb4s+D+o
本来なら今日ゆっくり投下したかったんだけど、残念ながら急用が入ったので前回との繋ぎ的内容を生存報告かねて1レスダイジェストで。
次回から某ディケイドばりの説教になります。

今回の投下も機会があれば他者視点でリメイクしたいかも……
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/06/17(金) 22:35:51.27 ID:hSjkdf/C0
>>100
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/20(月) 09:46:05.40 ID:lUdgcb+qo
102 :1 [sage]:2011/06/25(土) 23:10:08.81 ID:gfrLCcqUo
「日曜日」に投下が出来たなら、それは、とっても嬉しいなって。
ただしその場合今までと比べてとっても長くなるけど、もう何も怖くない?
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/26(日) 00:08:17.25 ID:6GBqp3PQo
楽しみにして待ってるよ。ファァイナルウェェェイブ!まで一直線なら尚更。
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山形県) [sage]:2011/06/26(日) 20:32:03.19 ID:9zW7n6eWo
お、そろそろ来る?
105 :1 :2011/06/27(月) 00:17:59.73 ID:0fY2IcwMo




―――シアターGロッソで、僕と握手ッ!



定番の台詞ですが、僕は嫌いです。
Cp.マーベラスのキャラで「僕」は無いでしょうと今でも思っています。

すいません、またタイムオーバーしちゃいました……しかも今回の投下大して長くないです、バトルパートも……
なので、今日の投下は二部構成になるかもです、申しわけございません。



では、例によって次レスから。
106 :と、その前に [sage]:2011/06/27(月) 00:26:53.23 ID:0fY2IcwMo
〜各キャラ状況表〜

「海賊戦隊ゴーカイジャー」

ゴーカイレッド/マーベラス
・「お菓子の魔女」戦で重症を負い、暁美ほむらと同室で入院中

ゴーカイブルー/ジョー
・魔法少女、特に美樹さやかの様子が気になっている?
・五人中でも特にインキュベーターに怒り心頭

ゴーカイイエロー/ルカ
・少女達が背負った宿命に同情
・これからの自分達の行動方針に迷い

ゴーカイグリーン/ハカセ(ドン・ドッゴイヤー)
・行動方針に悩み

ゴーカイピンク/アイム
・鹿目まどかに同情を寄せる

「魔法少女まどか☆マギカ」

鹿目まどか
・自分の無力さとそれが招いた結果に愕然。一人帰宅する。

美樹さやか
・キュゥべえに連れ去られた上条恭介を追いザンギャックの下へ。現在気絶中

巴マミ
・暁美ほむらの所持していた銃火器を奪い逃走、一人魔女との戦いを続ける
・ゴーカイジャー達とも交戦を辞さない構え?

暁美ほむら
・美樹さやかの行動を阻止しようとするも、心臓病の発作が再発し、再入院。現在はマーベラスと一緒

佐倉杏子
・???
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/06/27(月) 00:29:45.17 ID:0fY2IcwMo
―――side ルカ

「魔女」との激戦から数十分後。あたし達がほむらとマーベラスの負傷者二名をとりあえず病院に担ぎこみ、駐車場に戻って来て見ると「鹿目まどか」は姿を消していた。

言葉を失い、呆然と立ち尽くす姿が印象的だっただけに、良く動けたものだと感嘆してしまう。
いや、寄る辺を全て失ったからこその帰巣本能だろうか?

人間、やっぱり一番安心出来るのは自分の故郷であり、自分の家だ。
……まぁ、今のあたしには故郷なんか無いようなもんだけど。

「しかし、これからどうするのさ?ここら辺にはお宝も無いみたいだけど?」

「……その事なんだがな。俺は、あの少女達がどうしても気になる」
…は?ジョーさん、今なんておっしゃいました?

「ごめんジョー、あたしそっちの趣味にはついていけないわ」
「その通りですわ……ジョーさん、イエスロリコン・ノータッチって標語、ご存知ですか?」
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/06/27(月) 00:32:25.48 ID:0fY2IcwMo
「ば、馬鹿!茶化すな!……良いか、考えてみてくれ。」
「俺達が取り逃した艦はザンギャックの船でも特に隠密性の高い特殊工作艦だ」
「それに恐らく、奴らの言う”魔力”でバリアが張ってある筈だ。」
「それだけでもうガレオンのレーダーには映り込まないだろう」

「あの白い獣はソウルジェムをレンジャーキーと同じような物だと言っていた。」
「……つまりだ、あれがもし解析、量産でもされたらどうする?」
「数の優位があるとは言え、中学生をスーパー戦隊を倒すまでに強化する代物がザンギャック全軍に行き渡ったら?」
「……恐らく、残る大いなる力は総取りにされ、この星での仕事もしづらく…いや、完全に不可能になると見て良いだろうな」
「最悪、俺達も全滅させられるだろう」

「それを阻止する為にはあの船を沈めるのが絶対条件だが、あいにく俺達には行方が掴めない。」
「だからせめて、行動隊長と親交があった彼女達に動きを読んでもらえればだな……」

(必死になって否定する方が怪しいって気づいてるのかな?)
「……おい!聞いてるのかルカっ!」
「あ、はいはい!」
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/06/27(月) 00:34:09.18 ID:0fY2IcwMo
「まぁ……それは良いけどさ、あの娘達の行方、わかるの?」

「一人は敵中、一人は元から行方の知れないホームレス、一人は血を吐いて気絶中……」

「残りは一番こっちを敵視してたマミって子と、今行っちゃったまどかちゃんの二人だけだよ?上手く話を聞いてくれると良いけど、ねぇ…?」

ジョーがぐっ、と言葉を詰まらせる。
散々長文並べた割に。、そこまでは、考えて無かったと。
やれやれ、肝心な所でツメが甘いんだから……。しかし、これで振り出しに戻っちゃったか。
何か、何か手は……何をすれば


「そうだっ!」
突然、ハカセが大声で叫んだ。同時に、モバイレーツを物凄い勢いでプッシュしている。
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/06/27(月) 00:36:31.65 ID:0fY2IcwMo
「うわぁっ!?……いきなり何、電話?番号知ってたの?」
手が早いじゃん、何時の間に情報を…と、続けようとした矢先。

「ううん、『魔法少女』の番号は一つも知らない。僕はマーベラスと一緒に留守番してたからね?」
「でもこう言う時に最後に頼るべきは……」

「やっぱり、ガレオンのナビィだよね!さぁお告げを頼もう!」
「……何も知らない上に結局運頼みかいッ!!」

すッッッぱァァん、と良い音を立てて、あたしの平手がハカセの顔にめり込み、吹っ飛ばす。

あぁ、また反射的に手が……今日はいつもより心なしか強く入ったような…大丈夫かな?
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/06/27(月) 00:38:26.84 ID:0fY2IcwMo
「ったくもう……ま、良いや。ナビィー?そういう訳だから、またよろしく頼むよ」

「マータナグッタノォ?マッタクモォ…ランボウナンダカラ。」
「マ、イーヤ!ソレジャサッソク、レッツ!オタ……イヤ、チガウカ?」

「正確に言うなら、尋ね人ですわね」

「ソウ、アイム、ソレソレ!レッツ、タズネビトナビゲェートォーッ!」

どすんばたんがっしゃんがらがら、どごん。
ナビィの創りだした惨状が見えるかのような騒音が響いてから1、2、3秒。

「………キタキタキタキタキタァーーーッ!」

「トナリマチデトナリアウ、『シロイハイシャトクロイハイシャ』ニアウトキチ!ダゾヨ〜?」
はぁ?こないだのが嘘みたいな、今までに無いほど抽象的な予言じゃん

白い歯医者と黒い歯医者?何かの比喩?……わけわかんないよ……。

まぁ、でもやってみるしか無いかな?「やりたい事をやってやれ」ってね。
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/06/27(月) 00:43:02.58 ID:0fY2IcwMo
―――side ジョー

翌日。俺たちはマーベラスを病院に残し、一人ずつ分かれて見滝原の四方へと向かった。

俺がやって来たのはその内の「五郷(イツサト、と読むらしい)」と、言う街だ。
先ほどから俺はこの街中の歯科医と言う歯科医を虱潰しに渡り歩いている……いや、いた。

医学・工学・生物学……多種多様な分野における、この国の科学技術の粋が集められた特殊な、正に未来都市。
それが先ほどまで俺たちが居た見滝原と言う街の真の姿だったのだ。

当然、そこから一歩踏み出たこの街にある通常のテクノロジーのみ。俺たちが最初に降り立った街とさして変わらない。

……見滝原のように、地区ごとに大規模なメディカルセンターがあるような生やさしい作りでは無いのだ。
特に人口の多いこの地区には、街中至る所に町医者が点在していた。

要するに……足で稼ぐ方針で動いていた俺は、何時果てるかも知れない道程・季節にそぐわない炎天によって、気力と体力を相当奪われていた。
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/06/27(月) 00:45:26.16 ID:0fY2IcwMo
恐らくだが、他の3人も状況は同様。
俺でさえへこたれそうになっているこの猛暑、ハカセやアイムには相当酷だろう。

……やはり、行き当たりばったりでは破綻を招く事になる。
計画的思考と言う物は大事なのだ。

(……次に見えた通行人に聞いて見つからなければ)
(この街は諦めてガレオンに帰ろう……)

目前に迫った終末へ向け、額の汗を拭き、最後の気合を入れ直す。
我ながら、なんとも情けない海賊もあったモノだとは思う、が。
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/06/27(月) 00:48:27.79 ID:0fY2IcwMo
「……悪いが、道を訊ねたいんだが」
目の前を歩く二人の内、いくぶん背の高い少女の肩を叩き、声をかける。
が、彼女は胡乱(うろん)そうな一瞥をくれただけでまた視線を横の少女に向けてしまった。

どうやら俺の事が気に障っているようだが、あいにく周りには代わりになってくれそうな通行人の影は無い。

「……すまない、先ほどの行為が気に障ったなら謝る」
「この星にはまだ不案内なんだ、まだ文
                        化
                         系
                          統
                           へ
                            の
                             理
                              解
                               が、ぁ……?」



その時、不思議な事が起こった。
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/06/27(月) 00:52:32.12 ID:0fY2IcwMo
先ほどの少女に謝罪しつつ、もう一度質問しようと歩み寄った瞬間、俺の身体は

「極端に鈍重な動きしか取れなくなっていた」のだ。

そして、反応が取れずに足元の小石に蹴つまづいて顔面から倒れこもうと言う所を

「まるで、識っていたかのように」もう一人の「白い少女が」そっと受け止めた。

こんな超常現象を起こせる人種を、今の俺は知っている。

「……ごめんなさい、私達もこの街に来たのはつい先日の事でして……あら」
「……あなた、『鹿目まどか』を知っているの?」

「『鹿目まどか』?」
もう一人がやっとこちらを省みる。
その眼光はひどく鋭い。そしてその剣幕は……
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/06/27(月) 00:58:15.63 ID:0fY2IcwMo
「どー言う事かな……いきなり肩触って、声かけてきて……」
「わたしと識莉子の仲を引き裂こうとするただのセクハラ変態ヤローだとばかり思ってたけど」

「その名前を知ってるって事は、ただの人間じゃないよねェッッッ?」

……ひどくうるさかった。

正直に答えなければもっとうるさくなりそうだ。
直射日光とアスファルトの反射熱でハムエッグにされた頭にはキツすぎる。

「……その通り。俺も、とりあえず人間ではない。ゴーカイジャー、と言えば思い出せるんじゃないか?」
「そして……お前達も、魔法少女、なのか?」

白い少女が口を開く。
この炎天下、真っ白いローブに身を包みつつも、魔法の効能であろうか?その顔に疲労の色は無く、額から溢れる汗の筋一つない。
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/06/27(月) 01:00:33.63 ID:0fY2IcwMo
「……そう。貴方達が見滝原の街を」

「その通り。私達も鹿目さん達と同じく、魔法少女です。」

「私は美国識莉子。こっちの子が」

「……呉キリカ。なんだい、馴れ馴れしくしちゃってさ!」

「ゴーカイジャーだか炊飯ジャーだか知らないけどっ、識莉子との話の腰を折るような奴なんか嫌いだよッ!」

「はいはい、むくれないでキリカ……では、ジョー・ギブケン。今度は貴方のお話を聞かせてもらいます。」
「ここでは何ですし、私達の家においでください」

「……無論だ」
あからさまに怪しいが、正直今は少しでも涼しい所へ行きたい。

……そして。
ちらり、と彼女達の手を見る。二人の左手には、確かにそれぞれ白と黒の宝玉が嵌めこまれた指輪が輝いていた。

……この色について、彼女達なら何か掴んでいるはずだから。
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/27(月) 01:06:24.67 ID:0fY2IcwMo
……今はここまでです。
戦闘パートどころか、前半はろくにクロスもしてないってどう言う事さ……予定では今日、第二話Bパートが終わるはずだったのに
終わってみればいつもより圧倒的に短い上に尻切れトンボになっちまいました

白黒コンビがどうしても出たいと言っていた(出さないとやって行けなかった)物で……
さぁ、次回こそ戦闘書くぞぉ……クロスSSらしくするぞぉ…




次回の投下も予定は一週間後です。お休みなさいませ。
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/27(月) 01:09:34.51 ID:ym3Vw481o
乙乙。
戦隊物になぞらえて作られたなら追加メンバー必須だからしょうがないね。
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/27(月) 09:10:19.36 ID:NKX/oM/DO
おつおつ
今更気付いたが戦隊最古ってキングレンジャーじゃね?
121 :1 [sage]:2011/07/03(日) 23:38:15.77 ID:FlASI11No
>>120
ま、そこはチーム組んでこその戦隊って事で……



済まない、どうしても第二話(第13.50話)のまとめ方が思いつかない
明日中には何とかするからそこまで待って貰えないだろうか……ほんと、度々申し訳ない
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/07(木) 19:40:37.83 ID:rJd/QdN00
>>121
追いついた、乙!
とりあえず発想にワロタwwwwwwwwまど☆マギも戦隊物っぽいしねwwwwwwww

でもちょっと読み難いかもしれないです。
文体が詰め詰めなのもそうなんだけど、
視点がコロコロ変わり過ぎてて、感情移入が中々難しい。
感情移入したと思いきや、
視点が即変わったりと、こっちもそれに合わせないといけなくなって、
それで読み難いと感じてしまった。
こういう所で、読もうと思う気を無くす人もいます。
つまり、読者に優しくない、と言えるのかも。

途中の解説は有難い、
特撮よくわからない組はキャラがどんなのかも知りたいしね。
と、例のスレから参上。
発想はすごい面白い!VIPで続かなかったのは残念だろうけど、続きに期待。
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/20(水) 23:02:01.43 ID:pgKBD78/0
今シリアスだけど殿下来たらコミカルになるだろうな
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/21(木) 03:27:59.68 ID:nDAGaEbho
さやかとジョーで青剣士コンビとか、まどかとアイムで守られるばかりじゃいられないコンビとか、意外とハマる組み合わせ多いかも
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/07/23(土) 11:19:09.42 ID:33EBdvCao
ゴーカイジャー見てなかったけど、先週見たら結構面白かった
キャラがわかると楽しみが増すな
126 :>>1 :2011/07/26(火) 21:26:38.50 ID:dhAfaswoo
うおぉぉぉ……やっと、やっと方向性が見えてきた……
現在完成度90%、今日明日には投下可能……

今度は嘘じゃないです、ほんとごめんなさい……


>>123-125
ありがとうございます、更新しない間にもレスが付くだなんて……
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山形県) [sage]:2011/07/26(火) 23:26:41.42 ID:w3sSaDkYo
>>126
期待してるからがんばれ
128 :>>1 :2011/07/28(木) 00:57:23.00 ID:k2RTYia2o
終わったー!書き終わったでー!
待たせた分、おまけパート詰め込んだら伸びちゃってこんな時間……俺ってほんと無計画



どうしますかね?今から投下しましょうか?
1:20まで待つんで、それまでにレスがあれば即時、無いようでしたら好きにやらせて(具体的には28日夜)貰いたいと思います。
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/28(木) 01:21:40.39 ID:k2RTYia2o
 ┌┐    よし、   / //
 [二  ] __     〔/ /
   | |/,ー-、ヽ      /
  / /  _,,| |     ./            , -─-、
 レ1 |  / o └、  ∠          ,マミ-─-'、
   .|__|  ヽ_/^     ,/         ν*(ノノ`ヽ)
      __       /         ξゝ゚ ヮ゚ノξ      ))
   [二二_  ]    /          /つ( ̄`ヽO_ノ⌒ヽ
       / /     {          ノ   )#     # \ ))
     / ∠.____    ̄フ         レ  \ヽ ::    ノ:::: )
     ∠.___  /   /           丿 キ    ■ :'  ))
     _   / /  \        ((  (___,,.;:-−''"´``'‐'
    / o ヽ/  /   /
    ヽ__ /    \


good night and very sorry.
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/07/28(木) 06:09:37.15 ID:1O0U8OgSO
>>128

ファ〜〜ィナル乙ェィ〜ブ


投下は今晩ですか

楽しみにしてます
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/28(木) 19:55:33.63 ID:RoiHXRQCo
20:00より投下。
変身はするけど戦闘は無い。進まなさ加減に我ながらイライラ
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/28(木) 20:03:43.79 ID:RoiHXRQCo
―――更に数十分、炎天下を歩かされ、俺たちは美しい薔薇園を備えた巨大な洋館に辿り着いた。

ザンギャックでの兵卒時代にも、もちろん海賊稼業を始めてからも見た事の無いような、まさに『豪邸』だ。

何時ぞやの『金のなる木』を持つ親子の家よりも更に巨大だが、二人を出迎える使用人一人出てこない。
これだけの大豪邸に、たった二人だけしか住んでいないと言うのか?

疑念を抱く間もなく、黒い少女――キリカ、だったか。に、背中を押され、中庭の更に奥へと導かれる。



招き入れられた先には、真っ白いテーブルと椅子。そして、バラバラにされた鎧のような謎のオブジェ群。
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/28(木) 20:07:02.19 ID:RoiHXRQCo
白い少女『オリコ』は椅子に、俺はオブジェの内の一つに腰掛ける。
黒い方は俺に興味が無いのか、更に奥の薔薇園へと姿を消した。

「色々と聞きたい事はあるが……要件だけ言おう」

「俺達は『暁美ほむら』を除く4人の魔法少女の行方を探りに来た。何か知っているなら教えて貰いたい」

オリコが首をかしげる。

「知っている事は教えて差し上げたいのですが……私も、彼女達とは面識があると言う程度なので」
「連絡先は存じませんし、今どこに居るかなんて特定できませんけど……?」

嘘だ。こいつは自分の力を隠している。

「今更、シラを切るつもりか?お前に助け起こされたあの時、明らかに俺の動きを先読みして動いていただろう」

「察するにお前の能力は……恐らく、未来を予知する力じゃないのか?」
「その力さえあればあいつらの行動も予測出来るはずだろう。俺たちに力を貸してくれ」

俺の予想は的中したのか、観念したかのようにオリコが目を細める。
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/28(木) 20:08:51.29 ID:RoiHXRQCo
「流石に百戦錬磨の宇宙海賊ですね。……あの短時間で私の能力を理解出来るだなんて」

大胆不敵な白い魔法少女は、意外にあっさりと秘密を吐いた。

「でも、これだけは理解出来ない。なぜ、こんな星の普通の子供の為ににそこまで力を注ぐの?」
「力を貸してあげても構わないけれど、事情くらい聞かせて欲しいわ。もちろん見返りは別に欲しいけれど」

少女はそこまで言い終えると、何時の間に用意したのか、手元のティーカップの中身を啜った。
その眼光は以前鋭く、むしろ先程より強まったようにも感じられる。

彼女から漂うプレッシャーを、身体全体で受け止める。
時折じろり、と睨めつけられる今の俺はまるで卸売市場で競りにかけられた鮮魚同様。

ええい……正直に話せば良いんだろうが、正直に話せば……!
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/28(木) 20:11:52.98 ID:RoiHXRQCo
「レンジャーキーと『大いなる力』についての作戦阻止の為に、行動隊長の癖を知りたいのもそうだが」
「――お前は、美樹さやかを知っているな?」

「ええ。鹿目まどかの1の友人にして、剣を用いる新米魔法少女。素質とやる気はあるのだけれど、技術が身についていない」
「……そして、今はザンギャックに捕らえられている。こんな所かしら」

「美樹さやかが、何故ザンギャックに捕まっているか、わかるか?」

「私の能力は未来予知であって、過去視でも読心術でも無いわ。過去の出来事なんてわからない」

「……あいつはな、『キョウスケ』とか言う男を追って自分もそのまま牽引ビームの中に入って行ったんだ」
「ほむらの言う話では、さやかはその男を好いているらしい。いわゆる片思い止まりだったようだがな」

「何が言いたいのか、要領を得ないわ……」
オリコが口をはさむ。……こいつ、微妙にわがままな奴なんだな。
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/28(木) 20:17:43.53 ID:RoiHXRQCo
「良いから黙って聴いてろ。……俺にもかつて、大切な人と別れた経験がある」

「軍人時代の話だ。俺の仲間達は人を人とも思わない、まさにゴミ野郎共だった」
「だが、あの人だけは人間らしい温かみを持ちあわせていたんだ」

「それ故にあの人は……シド先輩は、帝国を裏切らずには居られなかった」
「そして俺と一緒に脱走する途中、二手に分かれて……生きた彼を見たのはそれきりだ」

「つい先日、先輩は無惨な死体として帰ってきた」
「魂も何もかも無くして、忌み嫌った帝国の操り人形となってな」

信じたくは無かった。腐った国の中で唯一輝いていたあの人が、ゾンビとなって帰って来たと言う事を。
だが、現実は残酷だ。

「……俺は二度とザンギャックにかけがえの無いモノを奪われたくは無い。そして、そうされた人をこれ以上見たくない」
「俺は守れなかったが、あいつはまだ守れるかも知れない。その為の力が足りないなら、俺が力になる」

何時の間にだろうか。話終えて一息ついた時には、俺の拳は硬く握りしめられていた。
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/28(木) 20:20:20.45 ID:RoiHXRQCo
オリコは、そんな俺を先程と変わらぬ瞳でただ、淡々と眺めていた。
ティーカップの中身が全く減らず、冷め切ってしまっている所を見ると真面目に聴いてくれてはいたようだが。

「……事情はわかりました。私も、大切な人と別れる辛さは知っているつもりです」
「だから、協力して差し上げます。4人の場所を見ますから、地図を用意して下さい」

そう言うと、俺が取り出した「グンマ」一帯の地図を広げ、紙上に視線を滑らせ始めた。

「……ペンを貸して」
眼球運動を絶やさず、紙面を睨んだまま声をかけられると、いくら見た目は可憐な少女でも気味が悪い。

「あなた、何考えてるの?」

「まぁ良いわ。これらの赤い印が佐倉杏子、こちらの黄色い印達は巴マミよ。……この二人は居場所を転々としているから、なるべく多くのポイントを見張った方が良いわ」

「こっちのピンクが鹿目まどか、ついでにこの緑色は……」
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/28(木) 20:22:42.74 ID:RoiHXRQCo
オリコの説明は、半分程度しか頭に入っていなかったように感じる。
俺の視線はただ一点、青い印に注がれていた。

「やっぱり気になるのね。そう、それが美樹さやかの所在を示す印。この位置だと……」

「JR見滝原駅の旧停車場かしら?インキュベーターも考えた物ね、あそこならある程度巨大な戦艦でも気づかれずに配置出来る」

「……そうか、それさえわかれば!じゃあな、世話になった」

そう言って歩き出した俺は、たった2秒後に「ぐぇぇ…」と無様な声を上げて突っ伏す事になる。

この白野郎、俺に何の恨みがあるんだ?いきなり襟首を引っ張るとは……!

「見返りが欲しいって、言ったはずよね?聞かずにバイバイってのは、無いんじゃないかしら」
客人に暴力を振るっておきながら、オリコは微笑していた。……地球のガキは悪ガキばかりだな。

「ちっ……何が望みだ。さっさと言え」
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/28(木) 20:24:26.59 ID:RoiHXRQCo
「簡単な話よ?鹿目まどかを守りきって貰えればそれだけで良い。あの娘は私達が確実に仕留めたいの」



地球で言う「全身が総毛立つ」と言う表現はこう言う場合に用いるのだろう。
目の前の少女は何時の間にか、冷徹な戦士の仮面を付けていた。その瞳には微塵の迷いすら無い。

「貴様……自分が何を言ってるのかわかってるのか?誰かを失う痛みを、知っているのなら、何故そんな事が言える!」

「あの娘は最強・最悪の魔女になる運命の魔法少女。今でこそ力を失っているけど、何時その力が利用されるかわかった物じゃないわ」

「私には見えます。見滝原の街をあの娘の魔女が覆い尽くす未来が」
「圧倒的な多数の為になら、一つくらいは犠牲にするしか無いじゃない」

「何かが欲しければ、他の何かを捨てなきゃ。この理屈、わからないかしら?」
少女は冷徹に言い切った。


正義の為になら、ここまで残酷になれる。……こんな奴らを守って”スーパー戦隊”は戦って来たのか?
……だが、今の俺に迷っている時間など無い。
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/28(木) 20:26:20.72 ID:RoiHXRQCo
「情報提供された恩もある、そして何より時間が無い」
「……だから今は何もしない。だが、お前達がそれを実行に移そうと言うなら俺は容赦しない。それだけは憶えておけ」

吐き捨てて立ち去る所に、後ろから声がかかる。
「出ていくなら裏口からどうぞ。海賊風情が、堂々と正門から出ようだなんて思わないでくださいな」

「ならばそうさせて貰おう。……もう二度と俺の前に姿を見せるな。次に会った時は俺に斬られる時だと思え」

「……望む所です」

今度は一切の妨害を受けず、俺は走り出した。
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/28(木) 20:27:30.43 ID:RoiHXRQCo
ちょっと休憩。
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/28(木) 20:43:52.15 ID:RoiHXRQCo
再開。
しくった、side ジョーを入れ忘れてましたね
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/28(木) 20:47:00.82 ID:RoiHXRQCo
―――side 美国識莉子

ゴーカイブルー=ジョー・ギブケンが進言通りに裏口から退出し、ようやくほっと一息つく事が出来た。

やはり現役で地球を守る海賊戦隊の一員と言うのは伊達じゃないのね……凄まじい殺気だった。

でも、あれだけの実力が無いと見滝原を任せる事なんて出来ない。

さっきはあんな事言ったけど、ほんとは期待しているのよ?ゴーカイジャー。

“初めからそうやって仲良くしてれば良かったのに”

キリカからの念話だ。

“あら、聴いてたの?……まぁ良いのよキリカ、「敵を欺くにはまず味方から」とも言うでしょう?”

“ザンギャックと私たち、2つの勢力を同時に敵に回しているって緊張感があった方が力が入るでしょうし、ね?”
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/28(木) 20:50:24.06 ID:RoiHXRQCo
“ふーん……そういう物なのかな。ところで識莉子、ザンギャックの新手を壊滅させたよ”

“やっぱり識莉子の作戦は完璧だ!……突然散歩に行こうだなんて言い出したのはびっくりしたけどね”
“まさか町内全体にわたしの魔方陣を張って、奴らを家に近づく前に全滅させる為だったなんて思わなかったんだよ”

"……ごめんね、識莉子……わたしは識莉子を誤解してた……”


“あらあら、気に病まないで。私の方こそ無理をさせちゃったわ。”
"あんな大規模な魔方陣を長時間維持したまま戦うのは疲れたでしょう?家に戻って、グリーフシードで回復しましょう。”

そう、まずは準備を整える。そしてその上で……

“そしたらその後は、この家を捨てて他へ移る。そういう手はずだったよね”
“でも本当に良いのかい?……この家は、ご家族との思い出が詰まってる大切な場所なんだろう?”
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/28(木) 20:53:15.09 ID:RoiHXRQCo
“ ……良いのよ。この家では確かに楽しい事もいっぱいあったけど、その分辛いことだって沢山経験したし。”
“ それに、この家に固執していては行動が制限される。そのせいで「恩人」を助けられないような事があったら一大事だもの”

“何より、今の私にはあなたが居るから。二人ならどこに行ったって大丈夫、そうでしょ?”

“う……うんっ!そうだよその通りっ!識莉子、わたしはこれからもっと、もぉぉっと頑張って識莉子を支えて行くからね!”
”二人でやれば何だって出来るよ!それじゃ、今すぐ戻るから!”
念話が中断され、キリカが走りだした。

本当に、私は良い仲間を持った。
キリカは辛い時も、楽しい時も、いつも私の傍に居てくれる。
辛い事は半分以下に、楽しい事は2倍以上にしてくれる。

私はこの二人だけの小さな幸せを守りたい。そして、そんな「最高の友達」を絶望から救ってくれた恩人に、何としても報いなければならない。
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/28(木) 21:06:39.51 ID:RoiHXRQCo
……お父様。お父様はこの国全体の「大きな幸せ」を作ろうとして戦い、挫折して歪まれてしまいましたね。
私も同じでした。

大きな滅びから全てを救おうとして、身近の小さな幸せを壊して、そしてその為に足元を掬われて負けてしまいました。

……だから、今度は身の周りの小さな幸せから守っていきます。
それが広がって、いつかもっと大きな幸せになると信じて。

ありがとう、お父様。そして、さようなら。






「……やっほー!識莉子識莉子っ、今帰って来たよーっ!」

「あら、キリカ……!?」
「ソウルジェムがこんなに濁ってる。可哀想に、ひどい事させちゃったわね……ごめんなさい」

「いやぁ……あはは。ザンギャックを倒すのは大した事なかったんだけどさ、ちょっと遠くまで行き過ぎちゃって」
「帰りの道にある信号機全部遅くして青信号のままにしたらさ、予想外に魔力使っちゃったんだよね……」

「……呆れた。そんな娘にはもうグリーフシード分けてあげませんからね」

「えぇっ!?……そんなのって無いよ識莉子、識莉子に嫌われたら私は、私は……」

「……冗談よ。今度からはあなた一人に任せたりなんてしないわ。二人で頑張りましょう?」

「うんうんっ!約束だよ、識莉子ッ!」



ああ、お父様。識莉子は今、幸せです……。


―――side 美国識莉子 fin
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/28(木) 21:07:09.23 ID:RoiHXRQCo
―――side 美樹さやか

……ここに詰め込まれてから、どれ位経ったんだっけ?

光の射さないこの船室には、時間の経過を示す物は無い。
時間を確認したくても、ケータイは既に取られて手元に無い。……こりゃ絶望って奴かなぁ。

そうで無くてもここは気が滅入る。
一緒に連れ去られて、さっきまで壁をドンドン叩いてたおじさんなんかは、今じゃすっかり意気消沈してぐったりうなだれるばかりだし。

聞こえる音と言えば、地獄から響くような「出してくれよぉ……」の合唱と、お年寄り達の読経の声ばっかりだし。
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/28(木) 21:08:01.58 ID:RoiHXRQCo
そして、恭介は……誘拐された当初から、うずくまって動かない。

「ねぇ、恭介……。元気、出してよ。わたし、恭介の悲しんでる顔なんか見たくないよ……」

「今はこんな所に閉じ込められてるけどさ……きっと、すぐ出られるって!」
「……ほら、ゴーカイジャーだってこの街に来てるんだから」
「あいつらだってさ、目の前でザンギャックに好き勝手させはしないはずだよ」
「だから大丈夫、きっとすぐ助けに来るって!」

わたしの声掛けに初めて恭介が顔を上げた。
そして、差し伸べられた私の手を………
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/28(木) 21:13:06.13 ID:RoiHXRQCo
―――勢い良く、弾いた。

「……恭介?」

「ねぇさやか……さやかはさ、僕を虐めてるのかい?」
「やめてくれよ、もううんざりなんだ!有りもしない希望なんか持たせないでくれよッ!」

恭介……?嫌だよ、そんな事言わないでよ。それじゃ、わたしは何の為に……!

恭介は、尚も堰を切ったように叫ぶ。

「希望をチラつかせて裏切るなんてのはもう充分だ……!」

「奇跡が起こって、確かに腕は完治したさ……!もうバイオリンだって以前同様弾きこなせる」

「――でもね、それじゃ駄目だったんだ。この脚さ。この脚さえ治っていれば、あの妙な光線に飲み込まれる事だって無かったんだ!」
「こんな脚さえ無かったら、こんな所に来る事は無かった!……さやか、君だって巻き込まずに済んだんだよ!」

「なんで、なんで、何で僕だけがこんな不幸に……?」
そしてまた膝に頭を埋め、嗚咽し始めた。
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/28(木) 21:14:09.12 ID:RoiHXRQCo
「ねぇ恭介、マイナス思考はやめようよ。そもそもさ、こいつらが見滝原に来るから悪いんだって」
「不幸だって言うなら、それは私達全体の不運だよ」

そう、これはわたしの戦いでもある。……今は、自分が出来るだけの事をするしか無い。
だとすれば……

「それに、奇跡は起こせないけど、頼るツテならまだ無い事も無いよ。ここはさやかちゃんに任せなさい!」

そう言って監視カメラに向き直ったわたしを、恭介が怪訝そうな顔で見つめる。
ま、何の事かわからなくて当然だよね……でも、これも恭介の、みんなの為だから!!
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/28(木) 21:16:01.54 ID:RoiHXRQCo
「ゴッゴッ……インキュベーター様と知り合いだと言うチーキュ人はお前か?」
「会われても構わないと仰っている。大人しくついて来い。ゴッゴッ……」

「さやか……?ま、待てよ!お前ら、さやかをどこへ連れて行くつもりなんだよ!」
恭介が不自由な身体を押して、兵士達に食ってかかる。

……やっぱり、恭介は昔と同じ。優しくて、他人想いの良いヤツなんだ。
長い入院生活とリハビリでちょっと疲れてるだけで、ほんとは真っ直ぐで思いやりがある。
まぁ、そうでもなきゃこんなヘタレにこのさやかちゃんは惚れないけど。

「あー……恭介?心配しないで。むしろ今回は、わたしの方から面会希望した訳だから……」

「ゴッゴッ……その通り。我々は面会を却下しても構わんのだぞ?」

「わぁぁ!それだけは勘弁して!早くキュ…おっと、あんたらの親玉に会わせて!」
「それじゃ恭介、行ってくるからねー!」

わたしは恭介がこれ以上反抗して傷つく前に、足早に部屋を出た。

前後に不恰好な兵士を伴っての行進はあまり楽しくは無いけど……しょうがないか。
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/28(木) 21:17:54.79 ID:RoiHXRQCo
―――どれくらい歩かされたんだろう?気がついた時にはキュゥべえが居ると言う「総司令室」の前にたどり着いていた。

ドアが開き、見慣れた白い獣が目に入る。

「ご苦労様。君たちはもう下がって良いよ、友人との会話に部外者は邪魔らしいからね」
そう言われた兵士達が、一礼して素直に立ち去っていく。こいつ、本当に偉いんだ……。

「やぁ、さやか。一日ぶりくらいかな?僕に何の用?」

これが絶対的立場の余裕なのだろうか。キュゥべえはいつもにましてニヤついていた。
……今となっては、その微笑は悪魔の嘲笑にしか見えないんだけど。

「良くもまぁ、友人だなんて言えるよね。わたし達を散々騙しておいてさ……!」

「心外だねさやか。僕らは確かに君たちを利用していたかも知れないけど、嘘をついた覚えは無いんだけどな」
「それに、『友人』だったからこそお願いを聴いてあげようって言うのに」

「さぁ早く望みを言いなよ、時間を無駄にするってのは一番無駄な事なんだ」
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/28(木) 21:25:59.53 ID:RoiHXRQCo
「恭介を……皆を、解放してあげて。人質なんかあたしだけで充分でしょ?」

「さやか、人質って言うのは多ければ多いほど良いのさ。例えば、一人とレンジャーキー一本で交換なんてしたら戦力を減らせるし」
「あぁ、でもこの船に乗せたのは殆どが病人か老人だったね……」
「どこにでもいるような弱い個体と大いなる力への手がかりとじゃ釣り合わないかなぁ?」

「そんなひどい事しないで!……お願い、キュゥべえ。『友達』だったんでしょ?あたし達」
「これが最後のお願い。聴いてくれたら、あたし何だってするから。頼むよ、キュゥべえ!」

わたしの懸命な願いは、冷徹な行動隊長に届いたのか?
キュゥべえは、手元(足元?)のコンソールを凄い勢いで操作し始めた。
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/28(木) 21:32:56.90 ID:RoiHXRQCo
「……さやか、今から僕は地球攻撃軍旗艦にいる僕の上司と通信する。彼女の承諾が得られれば、君の提案を呑んであげるよ」

「ほんとっ!?あ、ありがとうキュゥべえ!」

「まだ決まった訳じゃないんだけど……ほら、出てくるよ」

「ザ…ザザ…ザ…キュベーター。何の用件なの?」

大スクリーンが一瞬歪み、緑色の……女性?が現れた。……しかし、声が妙にセクシー。
彼女が、キュゥべえの言う上司なのかな?

「やぁ、インサーン。僕自身に用は無いんだけど……こちらの地球人『美樹さやか』が君に談判を持ちかけてるんだ」

「へーぇ……お嬢ちゃん、私に何か用かしら?」

「え、えぇっと……その……こ、この船に捕まってるわたし以外の人質を解放して下さいっ!」
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/28(木) 21:36:00.06 ID:RoiHXRQCo
「そーぉ……。貴女、思いやりのある子なのねぇ……。まるで、私の学生時代を見ているようだわ」
「でも、そのお願い、自分だけで思いついた物じゃないわね。……誰かを助けたくて、お願いしているんでしょう?正直にお話しなさいな」

……女の勘、って物は全宇宙共通なのかも。この女(ひと)、かなり鋭い……!
正直に話さなければ、一発でおじゃんになってしまいそう。

「……わかりました。話します。」

「実はこの船に、恭介が……あたしの好きな人が、一緒に捕まってるんです!」
「恭介は凄く良い奴なんです!バイオリンは上手いし、思いやりがあるし、努力家だし……。でも、今はちょっとだけ疲れてるんです。だから、閉じ込めないで、休ませてあげたいんです」
わたしの正直な気持ちは……えっと、インサーン、さんに届いたのかな?
彼女は黙りこくったまま、時折手を顎にやったり、口を隠したりとせわしない。
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/28(木) 21:37:41.60 ID:RoiHXRQCo
「……そう。貴女、恋をしていたのね。恋は良いわぁ、女を強くしてくれる最高のお薬よ」

「サヤカ、貴女もその男の子の為だから強くなれたんでしょう?私もわかるわぁ、その気持ち」

……やったっ!さやかちゃんやりました!ミッションコンプリートっ!



「……でもねぇ、恋する乙女って傍から見たらとってもウザったいのよ」
あれ?

「特に、出会いのない職場に閉じ込められたOLなんかにはね……!」
え、そんな。

「王室直属って言葉にさえ惹かれなければ、こんな辺境に来る事無かったのよッ!ああ、あたしってほんとバカ」
嘘でしょ?

「……男と言えばあのマヌケにジジイに、後はイエスマンしか居ないじゃない!!!こんなひどい職場って無いわ、あんまりだわ!」
これ、完全にとばっちり……。
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/28(木) 21:38:50.65 ID:RoiHXRQCo
「はぁ、はぁ……。そんな訳で地球人、あんたの厚かましい願い事は却下よ」
「あぁ、インキュベーター、こいつを始末しておきなさい。私に無駄なストレスを貯めた罰よ」
「今度から今みたいなどうでも良い連絡をよこしたらあんたも廃棄処分にするからね。それじゃ」

ぶつっ……と回線が切断され、暗い室内には相変わらず無表情なキュゥべえと、あんぐり口を開けたあたしだけが残った。


「……さやか、残念だけどこれも命令だ。……おい」

キュゥべえの合図と同時に、再び兵士達が部屋に入ってくる。
そんな、わたしはまだ何もしてない!これじゃ、恭介を救えないのにっ!?

「それじゃあさやか、さよならだ」
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/28(木) 21:40:50.80 ID:RoiHXRQCo
兵士達が一斉にマシンガンを構える。
あー……そっか、もうこれで終わりなんだ。

こう言う時って、意外と恐怖を感じないもんなんだね。魔法少女だった頃の経験が生きて、鈍くなってるのかも。
皆の姿が見えてきた。これが走馬灯って奴なのかな?

最初はお父さん、お母さん。
ごめんなさい。わたしは一足先に逝きます。二人が来るのはもっと遅くて良いからね。
……魔法少女稼業が忙しくて最近ろくに話もしてなかったから、きっと二人が知ってる最後の言葉は下らない内容なんだろうなぁ。

仁美、まどか、早乙女先生、そしてクラスの皆。
こんな事になる前の、皆との日々が今更になって懐かしいよ。
もっと一緒に居たかったな……って、遅すぎるよね。
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/28(木) 21:44:41.16 ID:RoiHXRQCo
マミさん。
正義感が人一倍強かったから、きっと一人でも戦ってるんだと思う。
でも意固地になってちゃ駄目なんです、誰かを頼って良いんだと思います……。

杏子。
正直、胡散臭い奴だと思ってはいたけど、その実力には一目置いてたよ。
意地を張らずに頼れてたら、今頃もっとマシだったかも。

転校生……いや、ほむら。
あんたには、ずっとひどい事ばっかり言って来たよね。
それでも、一番わたし達の事を思っていてくれたのはあんただった。
ほんとは自分で会って謝りたいけど、ごめん、もう無理みたい。

そして、最後に恭介。
ごめん、偉そうな事言っといて結局助けられなかったよ。
わたしが死んだって知っても、悲しまないで、前を向いて。
ザンギャックだって地球を滅ぼすつもりじゃないだろうから、何時かきっとバイオリンを弾ける日が来るよ。

……最後に、また聞きたかったなぁ。恭介のバイオリン。
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/28(木) 21:46:12.43 ID:RoiHXRQCo
「ごめんねさやか、もう君には作戦上一片の利用価値も無いからね。生かす理由も無いんだ」
「全く、わざわざ敵地に入り込むからこうなるのさ。わけがわからないよ」

兵士達が、引き金に手をかける。







……その瞬間、一斉に崩れ落ちた。
後ろに立っていた人影に一瞬で殴り倒されたみたい。

人影が口を聞いた。
「そいつには利用価値が無い、と言ったな?」

「なら、俺が頂いて行こう。……海賊らしくな」

……え?わたし、助かったの?って言うか……なんでこの人がわたしを?
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/07/28(木) 21:49:06.50 ID:RoiHXRQCo
そこに立っていたのは、4番目のスーパー戦隊『電子戦隊デンジマン』の一人。

『デンジブルー』だった。……もとい、レジェンド大戦で失われた、その力を受け継いだのは。

二段変身を解除し、ゴーカイブルーがその姿を現す。

「……?何でここに?と言うか、何故ここがわかったんだい?」
「アンチバリアは最大出力のはずだ。君達はおろか、全宇宙のどのレーダーでも察知出来ない筈なのに」
部下を一気に失った事より、そんな事を気にするのがこいつらしい。

「だいたいの位置さえわかれば、後はこいつの力で楽勝だ。……大昔からいる割には、学が無いようだな」
そう言ってゴーカイブルーは……ジョーさんは、先程使ったデンジブルーのキーを取り出した。

「『デンジマン』でデータベース検索……なるほど、異次元をも見通す[デンジスコープ]か」
「そんな能力を備えた戦隊が居たなんてね……確かに不勉強だったよ」

「……おい、何をしている。さっさと立て、『美樹さやか』」
どこか悔しげなキュゥべえを無視して、ジョーさんが私の手を引く。

「ただで逃げられるとでも思っているのかい、ゴーカイジャー?」

「なら止めてみれば良い。貴様ら如き、俺一人で叩き潰してやろう」
ジョーさんは、キュゥべえの捨て台詞を一言で切り捨てた。
そしてわたしの手を引いて走りだす。

そのエスコートぶりは力強く、荒っぽい。でも、不思議と不快では無かった。
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/28(木) 21:56:06.92 ID:h0JEKwkDO
貴様のものでは…あるまい…!
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/28(木) 22:04:40.91 ID:RoiHXRQCo
『海賊戦隊ゴーカイジャー「見滝原市……?」』!!
今回の3つの出来事ッ!

ひとォつ!白と黒の魔法少女から情報を手に入れたジョー・ギブケン。しかし、条件の食い違いで喧嘩別れしてしまう。
ふたァつ!しかし、二人の真意はゴーカイジャーと鹿目まどかに敵対する事では無かった。
そして、みっつッ!美樹さやかのピンチにゴーカイブルーが颯爽登場ッ!


今日の分これで終わりー。
以下キャラ紹介とか、SSオリジナル設定の紹介とか。
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/28(木) 22:08:09.05 ID:RoiHXRQCo
「キャラクター紹介 Vol2」

〜海賊戦隊ゴーカイジャー〜

インサーン
・ザンギャックのメカニック担当幹部。声優は永遠の17歳。
・嫁ぎ遅れっぽくしたけど早乙女和子先生みたいにモテない訳ではなさそう。

バリゾーグ
・元、ジョーの先輩。現在は改造されてザンギャック帝国の犬に。
・剣術の達人でもある。
・今回登場してないけど、まぁ一応。

ゴーミン
・ザンギャック帝国の雑兵。
・さやかは名前を知らない。
・戦闘員の御多分に漏れず弱い。

〜魔法少女まどか☆マギカ〜

キュゥべえ
・ある時はマスコット
・ある時は営業マン
・しかしてその姿はザンギャック帝国の泣く子も黙る鬼行動隊長
・でも戦闘能力は女子中学生以下
・中間管理職になってます。風当たり辛いです。
・デンジマンを知らない。たぶんフラッシュマンも知らない。
・デカレンジャーは知ってるかも知れない。

上条恭介
・ヘタレすぎて泣けるのでさやかにフォローさせた
・見せ場作りたいけど……たぶん_
・実は怪我を治したのはさやかでは無い
・事故に遭う以前から脚の骨が折れてる事にしてる。でもこの設定使うかなぁ?

美国識莉子
・バカップルA
・ゴーカイジャーと完全に敵対。仲直り出来たら良いね。
・出番あれば良いね

呉キリカ
・かわいい、でもキャラ掴めない
・だから出番極薄
・バカップルB
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/28(木) 22:13:53.29 ID:h0JEKwkDO

???「インサーン!僕がいるじゃぁないか!」
166 : ◆ZTD/8PGxpc [sage]:2011/07/28(木) 22:22:10.78 ID:RoiHXRQCo
「時系列」

「魔法少女まどか☆マギカ」は第10話「もう誰にも頼らない」から、『三周目』のif世界。
「海賊戦隊ゴーカイジャー」は第13話「道を教えて」終了直後から第14話「今も交通安全」開始直前のどこかの時点でクロスしています。

ジョーが人助けなんかやらかしてるのは12話で正体を知ってしまったバリゾーグ=シド・バミックの事を意識しているからなのでした。

ついでに、「魔法少女おりこ☆マギカ」は原作終了後からの参戦になります。

「オリジナル設定」

〜魔法少女まどか☆マギカ〜
・見滝原の5人の魔法少女はマミさんの家を溜まり場にしている
・その為、仲間の印として合鍵を渡されている
・魔女は倒されたらグリーフシードになる
・見滝原市の医療面の発達ぶり

〜海賊戦隊ゴーカイジャー〜
・ザンギャック艦には一般人の目やレーダーに映らなくなるアンチバリア機能が搭載されている




それじゃあ皆さん、お疲れ様でした。
何か疑問質問等ございましたら、遠慮なく突っ込んで頂けると>>1も嬉しいです。
トリップってこれでだいじょぶかな?
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/29(金) 05:10:04.28 ID:hmu3hy6SO
>>1


来週のゴーカイジャーは、ゴーゴーファイブのレジェンド回なのかな?
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/29(金) 13:52:58.54 ID:p1PjJlQFo
そして乙

これ最後になるのは、ゴーカイジャー終わるころになるのだろうか。
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/07/29(金) 21:03:24.47 ID:9UXHv04t0
乙。
だが一つ言わせてくれ。
早乙女先生だって別にモテない訳じゃない。ただ、つまんない理由で長続きがしないだけだ。
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/31(日) 02:28:15.39 ID:95WcusX+0
ワルス・ギル「素晴らしいぞぉ!インキュベーダー!!!この調子で暴れまくるのだぁああ!!」
って台詞が早く聞きたい
171 :1 [sage]:2011/08/01(月) 21:04:23.82 ID:2QI9E6/Jo
VIPでSSスレにレスしてたらうんこマンさんと間違えられた……





今日・明日には投下出来ると思います。
残念ながらゴーゴーファイブは出ない……
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [saga sage]:2011/08/01(月) 23:13:34.93 ID:WzzeFvOx0
乙乙
ほむほむがタイムファイヤーになる展開とかあったら俺得
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/01(月) 23:36:56.87 ID:2QI9E6/Jo
>>172
・「ファイヤー」=「焔(ほむら)」
・ループを経験
・時間つながり
・一匹狼の戦士

……共通点は多いし戦闘スタイルもどことなく似てる。
これ以上なく魅力的な組み合わせだと僕も思うんですが……。

残念ながら時系列の都合上、タイムファイヤーのレンジャーキーは未だバスコの手元にあるんです……
バスコ登場前なら海賊が手にしてるような話を書けたかもですけど……申し訳ない。

出せなくても面白くなるように頑張るので、もうしばらくお待ちください!
では、お休みっ
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [saga sage]:2011/08/02(火) 00:25:42.00 ID:H4mbrrAn0
そうかそいつは残念だ

けどいいや、そのうち俺がほむほむをタイムファイヤーにしてやる
別のSSでな!
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/10(水) 22:53:53.20 ID:gyC2rmn40
生きてる>>1さん
176 :1 [sage]:2011/08/10(水) 23:46:24.19 ID:+XGFnEB4o
……はい、生きてます
ごめんなさいごめんなさい、もうしばらくどころかめっちゃ待たせてます……。


今週中には絶対投下します、それまでもう少しだけお時間を下さい
177 :1 [saga]:2011/08/15(月) 00:38:39.66 ID:IbfMhlXlo
今週中に投下するって任務……「未完了」……。
それどころか……まだこの章半分までしか終わってない……。



それでも投下せずには居られない。
あんこ編マジ難産
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/08/15(月) 00:39:36.44 ID:IbfMhlXlo
―――side 佐倉杏子


見滝原市の中央部を南北に貫いて流れる川の河川敷。
風力発電用の風車が林立するこの土手は、見滝原市の風景の中でも1、2を争う程有名だ。
最近でもどっかの魔女っ子物アニメのモデルになった、らしい。


あたしは、正直ここが気に入っていた。
この街に知り合いの少ないあたしは、物言わぬ風車を見る事でリラックス出来たからだ。



その風車の向こうに、『あいつ』の無惨な姿が見えた。
「そんな……嘘だろ、こんなの……」

雨の日も、風の日も、あたしを守り、支えてくれたあいつが。
何時でも力強くそびえ立って居たあいつが。


骨抜きにされ、ぐしゃぐしゃに潰れた悲惨な骸を晒していた。

「あ、あぁぁぁぁ……うわぁぁぁぁぁっ!!」

不思議と涙はこぼれない。あたしは、ただ叫び続ける事で哀悼を表現した。
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/08/15(月) 00:40:49.62 ID:IbfMhlXlo
―――side ハカセ(ドン・ドッゴイヤー)


午前中ギラギラ照りつけ、僕をさんざん苦しめた太陽が昼下がりには急に弱まった。
おかげで少しは体力が回復したけど……それでも、これからの事を思うと気が重い。

一応おみやげは買ってきたけど……。つい先日戦った相手に、どんな顔で声かければ良いんだろ?

あーあ、せめて佐倉さんじゃなくて大人しそうな巴さんの担当にしてもらえれば良かったんだけどなぁ……。

「あ、あぁぁぁぁ……うわぁぁぁぁぁっ!!」

……なんだろ、今の叫び声?あの風車の方から聞こえたけど。




土手の向こう側に僕が見つけたのは、両手を衝いて慟哭する赤髪の少女だった。
……つまり、僕の尋ね人『佐倉杏子』その人。
そして、彼女の視線の先に見えるのは。
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/08/15(月) 00:42:22.20 ID:IbfMhlXlo
―――うず高くそびえるダンボールと中古家電・家具の山だった。
うわぁ……こりゃひどいな。どれもこれもめちゃめちゃに壊れてる。
高い所から落下でもしたのか、ちょっとやそっとじゃ直せないひどい損傷を負った物ばっかりだ。

「ええと……その、佐倉杏子、さん……ですよね?」
「何かあったの……あったんですか?」

僕の呼びかけに、ようやく顔を上げてくれた。その髪色と同じ位に真っ赤になってる。
何をそこまで悲しんでるんだ……?

「お前にわかるかよ……あたしの、痛みが……」
「この見滝原でずっと苦楽を共にした三階建て特製ダンボールハウス(庭付き)が帰った時にはバラバラになってた苦しみがッ!」

「え……はぁ?」

何その理由!?そんな事でさっきからこの人叫んでたのぉ!?
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/08/15(月) 00:46:20.78 ID:IbfMhlXlo
佐倉さんは更に続ける。
「お前にはわかんねぇだろうさ……そもそもこいつとはこの街に来る以前からの付き合いなんだ」

「それなのに、魔法が解けて骨組みが無くなったばっかりに……」
「……あたしが油断しちまったからだ」
「全部あたしのせいだ、全部あたしの……あぁぁぁっ!」

そう叫ぶと、ちくしょうちくしょうと地面に拳をぶつけ始めた。
……これじゃらちが開かないよ。最初に見た時はもうちょっとしっかりした子だと思ったんだけどなぁ?

「あー、佐倉さん、落ち着いてよ……ダンボールハウスなんてのはさ、安上がりに作れるのが利点なんだから」
「何時までも泣いてないでさ、また頑張って作ろうよ。ね?ほら、これハンカチ」

「グズ…ヒッグ……。ありがと……あんた良いヤツだね……」

ひとしきり泣いた後、佐倉さんはちゃんとハンカチを畳んで返してくれた。
なんだ、この前の印象よりもだいぶ良識も可愛げもある子だったんだ。
これなら話もさっさと済む……かな?

―――急に首元を引っ張られ、地面に転がされる。
……あんまり突然で全く反応出来なかった。

「……で、さっきから気安くあたしの名前呼んでくれてるるけど、あんた誰?」
「あたしさ、他人にペラペラ名前教えたりしないんだよねぇ……この稼業、顔が割れると何かと面倒だ」
「場合によっちゃあ黙らせる事になるけど……どう?」

どこから取り出したのか、僕の首元にナイフを突きつけて脅す彼女の顔は、先程と打って変わって狩人そのものだった。
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/08/15(月) 00:48:52.80 ID:IbfMhlXlo
……前言撤回。この子、筋金入りの肉食系じゃないか!明らかに僕よりマーベラスやルカ向きだって!

「さ、佐倉さん?ちょっ、落ち着いて!」
「僕だよ僕!ゴーカイジャーの!ゴーカイグリーンだよ!」

記憶の中の『ゴーカイグリーン』と目の前の僕がやっと一致したのか、佐倉さんがナイフを下ろす。

「あぁ、あの時の……」

そう言うと、またナイフを振り上げた。

「その節はまぁ、良くも痛めつけてくれたじゃん」
「あの耐え難い痛みと恨みを晴らすにはさぁ……もう、殺しちゃうしか無いよねぇっ!!」

雲の切れ間から挿し込む太陽光を反射し、白刃が眩く煌き……!



……そのまま、畳み込まれてポケットにしまわれた。

「……じょーだんだよ。あたしはね、我ら魔法少女同盟!なんてのはもう辞めたんだ」
「あんたらと敵対する理由は無い。この街からも出ていくつもりだしね」

そう言うと、佐倉さんは僕に背を向けて座り込み、ガラクタの山から使える荷物の整理を始めた。
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/08/15(月) 00:51:19.69 ID:IbfMhlXlo
ってちょっと待てよ、街を出ていくって!?

「ねぇ佐倉さん、魔法少女のみんなは良いの?それに、ザンギャックは、街の人は……?」

「はっ、何言ってんのさ。元々あたしとあいつらとの関係は完全なギブ&テイクなんだ」
「魔女を狩りやすくする為に戦力を借りてたってだけの話だよ」
「それに、あたし達はもう魔法少女じゃねーんだ。今更何が出来るっての?」
「キュゥべえ達が何企んでようが、他人を気にかけてやる余裕なんざ無いよ」

それ以降、佐倉さんは荷造りを終えるまで、僕を振り返りもしなかった。
『魔法は自分の為だけに使う』のが信条だとは聞いてたけど、ここまでドライだとは思ってなかったなぁ……。
どうにか仲良くならないと……あ、そうだそうだ。

「佐倉さん、その荷物重そうだよね。なんなら僕が持とうか」

「いらない」
……うわぁ、否定早っ。懐柔作戦その@は失敗かぁ。

「自分自身の問題は自分で責任をもって解決するのがモットーでね。でもその代わりに……これ貰ってくよ!」
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/08/15(月) 00:53:17.50 ID:IbfMhlXlo
「あ、ちょっとっ!」

声をかけた時には既に遅かった。佐倉さんは僕の手から土産物の菓子折りを……懐柔作戦そのAを、掠めとってしまった。

「お、これは……芋ようかんか。土産代わりに貰っておいてやるかな、うん」

「もう……まぁ最初からそのつもりで持ってきたんだけどさ。佐倉さん。勝手に取るってのは無いんじゃないの」

「へへ、悪い悪い。一切れやるから機嫌直しなって」
「あと、他人行儀に苗字で呼ばないで良いよ。杏子で構わないから」

そう言うと、佐倉さ……もとい、杏子ちゃんは、僕の口に芋ようかんを突っ込んで走り出した。

さっきの険悪さが嘘みたい。『食べる事が好き』だとは聞いてたけど、これほど効果てきめんだとは……。
これが結果オーライって奴?

……それにしても、この羊羹美味しいなぁ。
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/08/15(月) 00:54:14.37 ID:IbfMhlXlo




186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/08/15(月) 00:59:08.94 ID:IbfMhlXlo
「……ねぇ、佐倉さ……じゃない、杏子ちゃん?僕らさっきからどこに向かってるの?」
「って言うか、どこまで歩くのさ……!ちょっと、くらい、休ませて……うへぇ」

数十分後……見滝原の町外れ、どこに続くかも分からない木立の中の一本道を僕達はひたすら歩いていた。

「んだよ海賊の癖に。なっさけねーなー、ちょっとくらい歩いただけでへたばんないでよ」

「君が元気すぎなんだよ……ねぇ杏子ちゃん、街から出ていくなら逆方向の方が良いと思うんだけど」

「あぁ、ちょっと子供の迎えにね。……言っとくけど、あたしのガキじゃないからね」
「言うなれば戦友……の、見習いってとこかな。筋は良いけどまだまだ半人前さ」

「へー、それじゃもう一人魔法少女が……って、えぇぇぇ!?まだ居たの!?」
「って言うか、君が子供の世話ね……」

「悪かったね、イメージと合わなくてさ。……その子はさ」
「あたしがちょいとポカやらかしちまったおかげで魔法少女なんてやくざな稼業する羽目になっちまったんだ」
「別に罪滅ぼしって訳じゃあないけど、眼の前で死なれても後味悪いし」


「魔法少女として、一人の人間として自立して生きていけるよう……ちょっと、聞いてんの?」

……どうやら僕は、杏子ちゃんの話をまともな顔で聞いていなかったようだ。

だってしょうがないだろ!?あの【グリーフシードの為なら人も見殺しにする】はずの魔法少女佐倉杏子が、幼い子供を抱えていた上に、その子供の話で微笑んでるんだから。
暁美さんから事前に聞いたイメージと違いすぎて今は正直、笑いをこらえるのがやっとだ。

……何て事を口走ってみようものなら殴られちゃうかも。
ここは口をつぐんで耐えるしか無い……かな?
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/08/15(月) 01:00:50.37 ID:IbfMhlXlo
「……ま、良いけどさ。そんなこんなであたしは、二人分のグリーフシードを稼ぐ為にやむなく見滝原の魔法少女と組む事にした、って訳さ」

「なーんだ、杏子ちゃんにも優しい所あるんじゃない。その思いやりをもうちょっと周りにも「うるせぇ」……痛っ!」

あいたた……やっぱり要らん事口出すもんじゃなかったかな。デコピンの良いの貰っちゃった。


「……あたしの事冷血動物だとでも思ってたワケ?ま、見滝原の正義の味方気取りの連中は正直どうでも良いけど」
「キュゥべえのヤローにべったりだったマミとか、そのマミが大好きだったまどかやさやかは今頃悲惨だろうね」

彼女は、またぽつり、ぽつりと語り始めた。

「悲惨って言えば、ほむらの奴も可哀想だよな。だいぶ方向が違うとは言え、キュゥべえに皆騙されてるってのは同じだったんだ」
「それをわかってやらなかったってのは、ちょっと悪い事したかな」

―――この子は強がって、自分一人だけで生きているつもりなのかも知れない。
でも、心の底ではやっぱり他人を思いやれるし、年頃の少女らしく夢と正義を信じているのかも。
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/08/15(月) 01:05:09.97 ID:IbfMhlXlo
「でもなぁ、それもあいつら個人の問題さ。契約したその瞬間から一人で戦って生きていくしか無いのがあたし達魔法少女。

ただの人間になったっておんなじさ、生きている限り自分の為に精一杯にやるだけ。

そんな事もわかんねぇ奴がどうなろうと、あたしが知った事じゃないさ」

夢と正義を……信じているのかも……と、思ってたんだけどなぁー……。
彼女の心は予想よりひどく孤独で凝り固まって、他人を最初から拒絶してかかっている。

……やっぱり、僕よりルカの方が向いてたんじゃないかな?
僕なんかの言葉が、彼女の心を解きほぐす事が出来るのかな?

「そういう訳だからさ、あんたら海賊があたしに何かさせようったって、あたしは力にもなれないし言う事を聞くつもりだって無い」
「待ち合わせの場所もすぐそこだ。ご足労申し訳ありませんがね、あんたももう帰んなよ」

そんな事言われてもこっちだって帰れない。僕は、脚を早めた杏子ちゃんに懸命に追いすがった。
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/08/15(月) 01:06:56.77 ID:IbfMhlXlo
「ちょっ……ちょっと待ってよ!」

「何時までもしつっこいなぁ……そーいう奴は、どんな世界でも嫌われるよ?」
「ほら、あの建物が約束の……何っ!?」

林道を抜けた先には、地球で言う「ヨーロッパ」風の建物が建っていた。
ろくに手入れもされず長い年月を経たのか、外装はボロっちくなってるけど、それでも建物の体を保っている。誰かが手入れをしていたのだろうか?
おんぼろになってもどことなく厳かなのは、ここがもしかしたら以前地球の宗教施設だったからかも知れない。

その建物の半開きになった扉の前に、緑色の何かが転がっていた。
ぼろぼろになった服にちぎれたネコミミ、そして全身に裂傷を負い、もぞもぞともがくそれは……もう良く見なくてもわかる、魔法少女だ!

「〜〜ッ!ゆまァッ!」

杏子ちゃんが、弾かれたようにその子の下へ駆け出した。
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/08/15(月) 01:13:08.22 ID:IbfMhlXlo
「ゆま!おいゆま、大丈夫か!目ぇ覚ませ!」

「……くぁぁ、うぅん……キョー……コ……?」

「無理して起きるな、そのままで良いから。……中で何があったんだい?」

「ゆま……キョーコが来るのを、待ってたんだけど……」
「ザン……ギャックが……突然やってきて……。がんばったんだけど……」

「ごめん、ゆま、役に立たなくて……」

それだけを振り絞るように言うと、緑の少女は血を吐いて再び倒れ伏した。
すかさず杏子ちゃんが羽織っていた上着をかけてやり、グリーフシードで汚濁したソウルジェムを浄化する。

「……この子はね、あたしの傷を治すって言う願いで契約した魔法少女なんだ」
「だから人一倍、痛みに強いし回復力も高い」

「そんなゆまを動けなくするまで痛めつけたザンギャックにあたしは今めちゃくちゃむかついてる……」
「この手で100倍返しにしてやらねぇと気が済まないね……」

いつの間にか杏子ちゃんの腕には、ゆまちゃんの魔法で作った物だろうか、見慣れた例の槍が握られていた。
怒りのやり場を求めるようにそれを振り回しつつ叫ぶ!

「そしてもう一つ!あたしがかつて守りたかったこの場所を、ザンギャック野郎が土足で荒らしまわりやがるってのが絶対許せねぇ!」
「おいハカセ!あんたも『スーパー戦隊』なんだろ?あたしに、力を貸してくれ!」

……初めてかな、この子に頼られるのは。それ程に思い入れと怒りが大きいのか。

恐らくこの場所にとても大切な思い出があり、そして、今はゆまちゃんを守る事を生きがいにしていたのだろう。
その愛を踏みにじられたが故の怒り、と言う奴だろうか。

それでも……。
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/08/15(月) 01:15:12.98 ID:IbfMhlXlo
「断る。杏子ちゃん、君がやろうとしてる事は君の言う『個人の問題』でしか無いだろ?僕に戦う義理は無いよ」

「それでも僕を戦わせたいなら……一つ、条件があるんだけど」

大きく目を見開いて分かりやすく驚く杏子ちゃんに、切り札を突き付けた。

「戦いが終わったら、何でも一つ僕の言う事を聞いて貰いたいんだ」

杏子ちゃんの顔が苦々しく歪み、歯ぎしりの音が軋む。

「……あたしの知ってるスーパーヒーローって奴ぁ、もっとマシな連中だと思ってたんだけどね!」

「僕はヒーローじゃない、海賊だよ」

「そうかい……やってやるよ、やりゃ良いんだろ!その代わり、絶対にぶっ倒さないと許さねぇからな!」
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/08/15(月) 01:17:09.18 ID:IbfMhlXlo
僕達は建物の入り口前に立ち、閉ざされた扉を見据えていた。
先程から何故かザンギャックの兵士が全く外に出る素振りを見せない為、こちらから奇襲を掛ける手はずになっているのだ。

「……良いかハカセ、あんたが派手にぶっぱなして注意を惹いた隙にあたしが突っ込んで暴れまわる」
「あんたはそれを後ろから援護する。この作戦で行くからな」

「杏子ちゃん、それは作戦って言うにはちょっとお粗末すぎるような……」

「うるさい、つべこべ言うなぁ!」
「……ゴホン、それじゃ行くよ!」

「はいはい……ゴーカイチェンジ!」【マァァァジレンジャァァァッ!】
「そして……ジルマ・マジカ!」

僕=マジグリーンの魔法によって、古い木製の扉からみるみるうちに新芽が生え、蔦が伸び……。
瞬く間に成長した大樹は扉と周りの外壁を飲み込み、それらを破壊した。

「よっしゃぁっ!いくぞ、おらぁぁぁっ!」

杏子ちゃんが凄まじいスピードで内部に侵入し、すぐに見えなくなった。
援護しろったってどこに居るかわからなきゃ魔法の撃ちようが無いって言うのに……やれやれ、後を追うしか無いか……。
193 :1 [sage]:2011/08/15(月) 01:20:57.73 ID:IbfMhlXlo
一旦ここまで。
夏の間に終わらせたかったなぁ……もう無理っぽいなぁ……


後編はバトル満載!の予定!
お待たせした割に出来も量も中途半端で申し訳ないです、次回、杏子&ハカセ編クライマックス!
ちなみにこのスレ、30分番組のノベライズの体を取ってるんですけどどれだけ尺取ってるんでしょうね……
映像化すると意外とあっさりかも。


それではお休みなさいませ
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/15(月) 11:56:03.89 ID:YNv4br1D0
まさかここでやってるとは思わなかったがんばれ
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/08/19(金) 00:53:09.37 ID:X+1liWk3o
現在プロジェクト進行中...
本日中に何らかの形で示せると思います





あと何か全体的に凄ぉ〜く下がってるみたいなんでageますね、ごめんなさいね
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/19(金) 10:23:29.28 ID:VrNofCT9o
30分番組の体にしてはちょっと動きが少ないかな!
コラボならTV版よりVシネのVSシリーズじゃない?
なんにせよもっとヒーローヒーローしてて欲しいな
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山形県) [sage]:2011/08/19(金) 19:36:39.76 ID:xhwBph++o
やっぱ海賊ですおすし

映画以前の話ならヒーロー認定すらされてない
198 :1 :2011/08/20(土) 00:26:59.48 ID:jRR4Wgs8o
よっしゃ、やっと出来た。
本日22時に何かが起こるですよ。

>>196-197
鎧もまだ居ないし、この時点での海賊達はまだまだ宇宙人なんですね。
……そう言う事にしておいてください、ごめんなさい
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/20(土) 13:16:00.06 ID:xmeqrZqFo
まぁ本編でもまだ、一部のレジェンドを除いた地球人からはヒーローと認識されてなくて、
スーパー戦隊の力が使える宇宙海賊って認識だと思う
ハリケンジャーからも信用されてないしね
たぶん、一年かけてヒーローとしての自覚を持つと同時に、
地球人から認められる……てな話になるんじゃないかね

しかしデンジスコープで探索ってのは上手いな
本編ではサガスナイパーで探し物してたけど、あれには吹いたw
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/20(土) 18:39:00.81 ID:uikEZaKz0
実際に戦隊ヒーローについて一番詳しいのは碇だしな。
まぁ、色んな意味でビックリだったが。
201 :1 [sage]:2011/08/20(土) 22:14:37.35 ID:jRR4Wgs8o
ちょっとタンマ、22:15まで待って
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/20(土) 22:20:10.06 ID:jRR4Wgs8o
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1313846219/



VIPにリベンジがしたかったとです
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/20(土) 23:55:54.00 ID:erSC4n3Po
落ちてる?
リベンジとはなんだったのか・・・
204 :1 :2011/08/21(日) 01:16:51.54 ID:eHstkU8Jo
Ex−side-sp[いつかどこか、遠い場所で]

……あれから、どれくらいの月日が経ったんだろう?
力尽きた魔法少女の魂を掬い上げる、その為だけに存在するようになった『私』は、最早時間の流れさえも認識出来なくなっていた。

とはいえ、この生活(?)だって捨てたものではない。
『人間であった』頃には知り合えなかったであろう魔法少女とも会えるし、みんなを絶望のサイクルに巻き込まないと言うだけでもやり甲斐のある仕事だ。

それに、世界中の『いつ』でも『どこ』でも行く事が出来ると言うのも中々に役得だ。自分専用の図書館が出来たようで、飽きがこない。
その中でも、かつて自分が生きた祖国、日本の1900年代終盤〜2000年代序盤を良く訪れている。


魔法少女仲間だったマミさんや杏子ちゃん、最後にやっと分かり合えたほむらちゃんをこっそり応援したいって言うのも目的の一つだけど、この時代にはもう一つ楽しみがある。

『プエラ・マギ麻美☆魔義化』と言うTVアニメと、ネット上でそれの二次創作品を見る事だ。
辛い現実に耐えつつ正義を信じて戦う少女、麻美が志半ばにして倒れながらも、2人の後輩や元ライバルの少女によって救われると言う物語で、何か他人事では居られない。

陰惨な展開や演出から賛否両論の作品ではあるが、二次創作の小説などでは一転、少女達を救うような展開の作品が多い。
『私』は、数多あるその作品の中の一つを読んでいた。これはどうやら長寿特撮ドラマ「ウルトラ先輩シリーズ」の最新作「山賊先輩ゼンカイジャー」とクロスオーバーした物らしい。

文が固くて読みづらく、展開も遅い作品ではあったが……かつて自分も一人で、そしてタツヤと一緒に見ていたそれらのシリーズを思い出すと不思議と読み進める事が出来た。
まぁ、元から暇だったと言うのもあるけど。

「あれ……?」

『マミマギ』登場人物の一人、恭子が悪の組織『レーコック王国』の罠と化したお寺に飛び込む場面で中断したかと思うと、見覚えの無いURLが表示された。
どうやら、この小説が連載されている掲示板以外のURLで、内容もこの小説とあまり関係ないみたい。

「どうしようかな……?」

このまま書かせてしまえば、ただでさえ筆の遅いこの作者は更に麻美の物語を進めなくなるだろう。

悩んだ結果、向こうのスレッドに投下されるはずだった感想・支援レスの一部を『円環の理』へと導く事に決めた。
可哀想だけど、浮気は駄目だよね……。ティヒヒヒ、と久々の笑いがこぼれる。

改めて元のスレッドに戻ると、作者が謝罪文を投下していた。どうやらこちら一本で頑張ると誓っているらしい。
……どこまでがほんとか、怪しいなぁ?ちゃんと守ってくれなかったら、出て行ってお説教でもしてあげても良いかも。

「早く麻美さん達を救ってあげてよね!ほんと、わたし達にも、あんなヒーローが居れば良かったんだけどなぁ」

ふと漏らしたその言葉が、『1976年』から導かれた一人の魔法少女と入れ違いになって時空を飛び越えた。
図らずもそれが、『願い』の形になっていたのは……わたし自身、救われたいとどこかで望んでいたからかも知れない。

世界の歪みを急速に正され、歯車が逆に回り出し……!



「おぎゃぁ、おぎゃぁ!」

「おーよしよし、良い子良い子……トモくん、ちょっとTV点けてくれる?10チャンネルね」

「はいはい……しかし、女の子なのにこんなのが好きだなんて、まーちゃんは変わってるねぇ?」

「何言ってんのさ、これからは女だって強くないと駄目だって」

『そ、そんなぁっ!?俺も、泥人形だったのか……』

「びぇぇぇぇっ!?」

「あーTV消してTV!ジュンちゃん、やっぱ情操に悪いよこれ」

「ふぎゃぁぁぁ!ぐっ、ふぇっ……やー!やーのー!」

「あははは、怒ってる怒ってる。駄目だよ、好きな物は見させてあげないとねー?」

「わかったよ……すぐ泣く癖に、君に似て気が強いんだから。芯の通った良い子になりそうだ」

「当たり前さ、あたしとあんたの子供だもん」
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/21(日) 01:19:14.22 ID:eHstkU8Jo
>>203
ちょっとリベンジのつもりでSSスレ建てて爆死したので……
まど神様のせいにしちゃいました、ウェヒヒヒヒ


本編の前日譚(のつもり)に仕立てられたから一石二鳥かなーって
この家族が見てるのはダイレンジャーの最終回……なのかな?
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/21(日) 01:58:30.20 ID:xzwPDkVco
とりあえず……今度こそ、劇場版は観れたかい?
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/23(火) 17:10:51.37 ID:HOfFG5A50
ティヒヒヒで吹いた
文字だけだと悪役の笑い声にしか聞こえん
208 : ◆s1K44CJQqg [sage]:2011/08/24(水) 23:06:33.10 ID:31nAf0vJo
>>1です。こんばんわ。
突然ですがみなさんまどかの円盤は買われてますか?
より洗練された作画の本編はもとより、特典のサントラやドラマCDは一聴の価値ありですよ!

特に今回の「フェアウェル・ストーリー」は良かったですね……自分の中にマミあんと言う可能性を開拓してくれました。
ドラマCD後のマミさんを思うとなんか切なくなります 仮面ライダーBLACKとか電磁戦隊メガレンジャーのEDを聴かせてあげたいです、はい
俺の書くドンさんはスレてしまったあんこちゃんに仲間の大切さを思い出させてあげられるのでしょうか……自分の筆力にますます自信が持てなくなってきちゃいました

えっと、本題です
今月中に最低でも後二回の投下をすべく現在書きため中です
これが達成出来なければ「豚!」「ゴミ虫!」「阿呆!」「生ごみ!」とでも何とでもお呼び頂いて構いません……って言うか今までの時点でそう言われるような事をやって来てるんですけどね 本当に申し訳ございませんでした
209 : ◆ZTD/8PGxpc [sage]:2011/08/24(水) 23:08:04.10 ID:31nAf0vJo
はっ……酉ミスってやがんの……俺ってほんと……



>>206
……ソフト化を待ちませう
199ヒーローはそろそろ来ても良いんじゃないですかね?まだ早い?
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/31(水) 00:20:48.89 ID:THFXaZOko
次回投下は今日の21時から
あんこ編終わらせるのだけで限界でした…手
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211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/08/31(水) 22:57:09.73 ID:vUT6Bmpt0
作者生きてるかー?
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212 :1 ◆ZTD/8PGxpc [sage]:2011/08/31(水) 23:59:57.86 ID:tvuLVaOAo
……ノルマ……未完了……。
でもバトルだけは何とか入れました……受け取ってください……。
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213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/01(木) 00:00:56.96 ID:0yGb2Dvko
―――side 杏子

「―――ぉぉぉぉおらぁぁぁっ!……あぁ?」

もうもうと立ち込める土煙を駆け抜け、教会内部に入ったあたしが見たのは……

礼拝堂を埋め尽くさんばかりに展開した銀メットと青い鉤爪のザンギャック兵達。……ではなく。

もはや見慣れた空間の歪み……つまり、魔女の作る結界への入り口だった。

キュゥべえは……あのヤロー、あたしをどこまで怒らせたら気が済むんだ?

魔女の印―――鎖で作られた十字架の紋章が、怪しく光る。
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214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/01(木) 00:04:45.62 ID:0yGb2Dvko
この場所まで魔女に巣食わせるなんて、あの白饅頭、あたしをどこまで怒らせたら気が済むんだ?

魔女の印―――鎖で作られた十字架の紋章が、怪しく光る。

「上等だよ……それじゃあいっちょ、久々に我が家のお掃除と行きますか!」

生身で、人間のままで魔女と戦う事に戸惑いは無かった。
ただ一つの拠り所を穢された怒りは、そんな物で抑えられない。

今はただ……この魔女と、ザンギャックに一撃ぶち込んでやらない事には気が済まない!

あたしは、迷う事なく結界に飛び込んだ。
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215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/01(木) 00:08:28.98 ID:0yGb2Dvko
……はずなんだけどな。

「また礼拝堂……どうなってるんだ?ここって、結界だよな」

結界の中に広がっていたのは、先程入った礼拝堂の内部と寸分違わないように見えた。

椅子や教壇の配置、装飾品、細部のデザイン……。
多少、実物より小奇麗に整ってはいるが、殆どが丸で判を押したように現実世界を踏襲していた。
辛うじて言うなら、壊れたステンドグラスが直っている事くらいか?

「……こうもそっくりだと気持ち悪いな。さて、出てきなよ!パクリ野郎の魔女さんよ!」

返事は無い。さほど広くもない結界の内には、何一つ動く物が無かった。
あたしは祭壇から降り、本来信者達の座るべきベンチを覗いた。
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216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/01(木) 00:14:41.30 ID:0yGb2Dvko
「ひっ……!?」

ベンチの下を覗いた瞬間、思わず息を飲んだ。

その狭い空間は青と薄紫、そして銀色で埋まっていた。
ザンギャック兵の身体でぎゅう詰めになってやがる……。
ベンチの下の奴は既に息を引き取ったのかピクリとも動かず、足元に転がる青いのは蜘蛛の巣から逃れようともがく羽虫のように、弱々しく四肢をぶらつかせている。

ここの魔女に倒されたら、あたしもこの廃人達の仲間入りって訳だ。
槍を構え直し、周囲を睨みつけて気合を入れなおす。

死体の中には鋭利に切り裂かれたものもある、これを踏まえると生身の人間であるあたしは圧倒的に不利だ。
生身で魔女の斬撃を受ける事は即、死を意味する。
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217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/01(木) 00:24:24.42 ID:0yGb2Dvko
一瞬でも気を抜く事の許されない緊張が続く―――。

実際、大して長くはなかっただろう。しかし、あたしの体感では、それは何時間にも及んだ。

「―――はぁっ……」

結局、槍を杖にして大きく息を一つついた。
全身に張り巡らせた緊張の糸がほぐれる―――まさに、その瞬間だった。

“何か”が、あたしの肩を掴んでいた。
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218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/01(木) 00:30:28.40 ID:0yGb2Dvko
「ひゃあぁっっ!?」

我ながら柄にも無い声を上げ、握った槍を思わずめちゃくちゃに振り回す。
予測しきれない軌道のせいか、はたまた油断していたのか、石突きが良い勢いでめり込んだ。

手応えは充分。
それを証明するように、突いた先から「ぐぶぇっ.....」と鈍いうめき声が漏れる。

あたしは大股に3歩飛び退り、充分な距離を取って、痛みで無様にぴくぴく震えるそいつを見据えた。



……先程共闘を誓った緑色の男が、げほげほと咳き込みながらあたしを見上げていた。
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219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/01(木) 00:35:07.47 ID:0yGb2Dvko
「……おい、なんであたしを後ろから襲うような真似したんだ?」

「いてて……杏子ちゃん、誤解だって。ただ肩を叩いたってだけでここまでボコボコにするのはひどいよ」

緑色の男は、そう言ってさも痛そうに腹を撫でた。
そして、急に真顔になって続ける。

「それよりさ、杏子ちゃん……ひとつ、良いかな?」

「……ここから逃げよう。僕はこの有様だし、君はそもそも生身の人間なんだから」
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220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/01(木) 00:39:24.11 ID:0yGb2Dvko
「今戦ったって勝ち目なんか無いよ。それより……今この瞬間もザンギャックに多くの人が襲われてる」
「今は戦えなくても……僕達ならその人達を救ってあげられるんじゃないかな、杏子ちゃん」

「僕は今、ここで止まっている訳にはいかないんだ!頼む、一緒に来てくれよ……」

その言葉に、嘘はなかった。誰かを救いたいと言う願いで満ち、輝いているような気すらする。

【愛と正義のヒーロー】って言うのが居るなら、おそらくこんな事を言うのかも知れない。

「そうかい、わかったよ」
「あんたと……戦ってやるさ」
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221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/01(木) 00:40:40.45 ID:0yGb2Dvko
立ち上がるのも困難な様子なので、槍の柄を差し出す。

「ありがとう、杏子ちゃん……!」

手を差し出して答え、槍の端が力強く握りしめられる。



すかさずその手につま先蹴りを見舞い、手を離させる。
同時に、立ち上がりかけで不安定な姿勢にある所を足払いで薙ぐ。

最後に―――倒れ込んだそいつを、頭からまっすぐに巨大な槍の穂先で引き裂いた。
パリン、パリンと言う音がなんとも気持ちいい。

「ただし、『一緒に戦う』とは言ってないけどな。契約する時はちゃーんと条件聞かないと騙されるよ?」
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222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/01(木) 00:44:48.75 ID:0yGb2Dvko
「ハカセに化けてあたしを油断させようって腹だったみたいだけどね、あいつは結界の中で変身を解くような馬鹿じゃない」
「ついでに言うと変身してないあたしにボコボコにされるほど弱く無いし、約束を違えるような奴でもねーよ」
「……あぁ、仮にも海賊なんだから無条件で他人を救おうなんてお人好しでも無いだろうね」

「要するに、人を舐めすぎだし買いかぶりすぎ。見る目が無いお馬鹿な魔女さんよ、かかって来な!」

【ハカセだったもの】は、足元で色鮮やかなガラスの破片に姿を変えていた。
使い魔を殺られた怒りか、挑発に釣られたのか。
礼拝堂の客席が突然開け、ずんぐりとした魔女が姿を現した。

屈み込んで頭を垂れる姿は、祈りを捧げるようでここに妙に似合ってる。
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223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/01(木) 00:48:17.12 ID:0yGb2Dvko
先手必勝、バテてしまう前に勝負を付けるべく、あたしは意を決して斬りかかる。
……が、魔女の身体から飛び出した鎖に刃が食い込み、逸らされる。
止むをえず飛び退き、ベンチの間に降り立った所に―――。

「……のわっ!?」

頭上のステンドグラスが強烈な光を放ち、あたしの目を焼く。
目が眩み、動けなくなったその隙を狙ったかのように、鎖が蠢くじゃらじゃらと言う音が周りを囲む。

……くそっ、これじゃベンチが邪魔で逃げられやしない。
チッ、自分の無鉄砲さを恨むよ、ほんと……。
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224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/01(木) 00:53:51.24 ID:0yGb2Dvko
……いつまで経っても鎖が打ってこねぇ。
何があったんだ、これは……?

しょぼつく目を見開いたあたしの視界に最初に入ったのは……
杖から生やした蔦で鎖を抑えつける、深緑の背中だった。

「お待たせ、杏子ちゃん。でも勝手に走っていかないでよ、探したんだから」

「……ごめん」

そんな口調で妙に優しく言われると、どうも調子狂うんだよな……。
ま、頼もしい味方ではあるんだけど。
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225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/01(木) 00:58:19.67 ID:0yGb2Dvko
「ま、良いや!今は一緒に戦う仲間だろ?さっさとこいつやっつけちゃおうよ!」

「じゃあ僕から行くよ、ついて来て!……『マジ・マージ』!」
「ふんッ……おらぁぁっ!」

ハカセの身体がムキムキになり、腕の一振りで鎖を引きちぎる。
腕を返し、大振りで放った拳が魔女を打ち抜き、吹き飛ばした。

やばい、すっげぇ頼りになるけど笑える。
あの優男が、似合わねーにも程があるっつーの……ぷぷっ。

「……杏子ちゃん?」

攻撃の手を止め、ハカセが振り返る。
……そのガタイで凄まれるとあんたでも普通に怖いな。

「わかってるよ……魔法コンビ、結成と行こうじゃん!」
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226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/01(木) 00:59:29.87 ID:TgW5EAwEo
マッスルグリーン!マッスルグリーンじゃないか!役者さん1年で行方不明になったんだったか……。
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227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/01(木) 01:28:31.36 ID:0yGb2Dvko
>>226
ナニヲショーコニズンドコドーン!?
嘘だと言ってよ蒔人さん……



【魔女図鑑ex】

GS−5501 Charlotte−custom

・「執着」を性質とするお菓子の魔女が幾度かの撃破・復活を繰り返し、更にザンギャック帝国の技術で改造された事で生まれた実験体。
・食物を欲しがりたがるその大口には、実体の無い攻撃なら何でも吸収する機能が備わった。
・元から再生能力は高かったが、改造によって更に強化され、傷口から分身体を放つ事が可能になった。
・誕生したばかりなのにGSを産めたのは、QBやゴーミンの死骸を食べた為。たぶん。
・エセ関西弁は様式美。

プミラ

教会の魔女。その性質は慈愛。
自らの愛する人や、世界を傷つける者を許さないが、それすらも[ピーーー]事はせず、心を奪うだけに留める。
教会を模した結界で日々祈りを捧げ、世界の平安を祈る。
もちろんリンゴには目がない。

・元ネタはガイドブックに載ってた「教会の魔女」そのまんま。あと魔獣の設定もちょっぴりヒントになったかも。
・エルザマリア、クリームヒルトと被るなんて言わないで

クレア

教会の魔女の手下。その役割は献身。
弱いながらも魔女の為に尽くすが、空回りする事が多い。
それがわかってても二人は仲良し。

・名前の由来は999のクリスタルガラスの人



……今回の投下は以上です。
長々待たせた末に量も内容も中途半端な物になってしまいました。
書きなおす度に削るどころか文章量が増えてしまう……プロットをちゃんと作らなかったせいか、中々終わらない。
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228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/01(木) 01:33:38.94 ID:TgW5EAwEo
乙。
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229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/01(木) 01:53:41.20 ID:0yGb2Dvko
訂正
プミラ→プミラ・マルス



お休みなさい
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230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [saga sage]:2011/09/01(木) 03:06:14.64 ID:DUB+6Whl0
乙乙
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231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/01(木) 14:18:10.81 ID:VPC1AL9vo
え、マジグリーンの人行方不明になったの?
マジで?
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232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/09/06(火) 10:02:25.54 ID:4xcaSJA50
>>231
ここは兄貴牧場を開くためにブラジルへ行ったにしようよ
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/11(日) 09:55:02.67 ID:fW04zt5so
幸せの絶頂にある女性からエネルギーを奪い、廃人にする



……ダイヤールさんまどマギクロスにぴったりの逸材じゃないですかぁ
まぁ今回出しようがないんですけどね。鎧もまだいないし
234 : ◆ZTD/8PGxpc :2011/09/13(火) 22:40:10.92 ID:eK7W2GcAO
〉〉1です。
パソコンにお茶と言う名のビクトリースプラッシュをかけた結果、見事にクラッシュされてしまいました。

更新は更に遅くなるでしょうし、最悪エタる可能性もあり得ます。
しかしながら私個人はこの話を綺麗な形で終わらせる事を望んでいます。

これからも、当スレをよろしくお願い申しあげます。
235 : ◆s1K44CJQqg [sage]:2011/09/13(火) 22:42:38.36 ID:eK7W2GcAO
あれ、鳥こっちだっけ……?
236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山形県) [sage]:2011/09/14(水) 19:53:39.85 ID:wYkRy042o
待ってるから頑張って書け太郎
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/28(水) 22:37:45.67 ID:Fg/G6yqx0
諦めんなよ!
238 : ◆ZTD/8PGxpc [sage]:2011/10/01(土) 11:03:57.61 ID:p+pdD8Zuo
諦めませんとも、どんな星無き夜でも
……前回投下から一ヶ月ですか、やばいってレベルじゃ……ないですね


PCの目処が付いたので火曜までには何とか投下出来ると想います
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/10/05(水) 00:56:50.13 ID:mxCfL3hEo
もう予告に期待なんかしないんだからねっ





それはそれとして待ってるからな
240 : ◆ZTD/8PGxpc :2011/10/18(火) 18:52:33.24 ID:5AvpdOSpo
「火曜」とは言ったが何時の火曜とは指定していないッ





……なんて、どっかのCV:白龍みたいな言い逃れは致しません。
単純に書けませんでした。しかも杏子編まだ終わらないし……行き当たりばったりでSS書くとこうなるって好例ですね
241 : ◆ZTD/8PGxpc [saga]:2011/10/18(火) 18:53:37.51 ID:5AvpdOSpo
―――side ハカセ(ドン・ドッゴイヤー)


「ふんっ!でやぁっ、はっ!――おらぁぁっ!」

『魔法』で強化したラッシュで、また一束、魔女を守る鎖をへし折った。

「GUUUUGYAAAAAAAAAAA!!!??!?」

本体との繋がりを断たれた鎖の束がじゃらじゃらと床にばら撒かれ、彼女(?)自身の悲鳴と合わせて素晴らしい不協和音のハーモニーを形成する。
要するに、めっちゃうるさいって事。

「……うわたっ!?」

そう考えを巡らす内に、ふと蹴り上げた足先に妙な感覚が走る。
さっきみたいに容易く蹴り飛ばせるはずの鎖を破壊した感覚じゃなくて、もっと別の。

あ、そうか、脚を掴まれて……っ!?
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/10/18(火) 18:56:21.62 ID:5AvpdOSpo
世界が、ひっくり返った。

逆さまのまま叫ぶ赤い少女が目に入って、僕はやっと自分にこの戦法が向いていなかった事を悟った。


どがんっ 



気がついた時には目の前に魔女の鎖が何本も迫っていた。

さっき折った物より更に太い。
エッジが、この筋肉の鎧さえも切り裂けるように鋭く研ぎ澄まされているのがよくわかる。

観察する余裕はあっても、僕の身体は大の字に寝転んだまま言う事を聞かない。
正直……首がめちゃくちゃ痛くて、動けない。体重が増えた分ダメージが増えたのかな?
「セキツイ」を折ってたらちょっとヤバいかも。
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/10/18(火) 18:58:31.84 ID:5AvpdOSpo
「……ひゃあぁぁ!」

禍々しい銀色の光が目に入って、僕は反射的に目を閉じ……

「?……??」

おかしい、何も来ない。



ぺしっ 「あいたっ」

すると、額を軽くはたかれた。恐る恐る目を開ける。

「一人で突っ込むなって言ったばっかりだろうが、馬鹿じゃない?」
「……手ぇ貸すよ。こいつ相手じゃ一人は厳しい」

逆さになった視界に、赤い髪の毛とふりふり揺れる紺のリボンが見える。
鎖を切り落としてくれたんだ……助かったぁ。

「わかった、さっさと終わらせるよ!」

244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/10/18(火) 19:00:24.51 ID:5AvpdOSpo
「ノロいノロい!物足りないんだよっ!」

杏子ちゃんの槍が幾重にも迫る鎖の攻勢を切り払い―――

「マジスティックアックス!おりゃぁぁ!」

防御が手薄になった所に僕の斧が打ち込まれる。


全力の込められた一撃は魔女を周囲のベンチごと吹き飛ばし、勢い良く壁に衝突させた。
衝撃で破損したステンドグラスが、頭上から眩しい光と共にこぼれ落ちてとても綺麗。
結界の中で無かったら、さぞかし絵になっただろう。


しかし、さっきまであんなに苦戦した相手にここまで優勢に立てるなんて。
二人で戦ったから、と言う事もあるけど、改めて「佐倉杏子」の強さを実感させられる。

軽やかなステップと無駄の無い攻撃は、初めて会った時とは違い生身の人間だとは信じられないほどだ。
一度食らえば終わり、と言う条件がある以上、今の方が動きに隙が無いようにすら思える。

魔法少女として幾度も死線をくぐり抜けた経験がそれを創り上げたんだろう。

……常に一人だけで、自分の為だけに戦い抜いた経験が。
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/10/18(火) 19:01:54.24 ID:5AvpdOSpo
台風のように激しく槍を振り回して魔女を責めるせいでうかつに近づけず―――
かと言って魔法で援護射撃するにも密着状態が続くせいで打ち込むに打ち込めない。

「杏子ちゃん、ダメだ!もっと周りを見て!」





―――side 佐倉杏子

「心配無いっつーの!」

上下左右から迫る鎖の雨に対し、手の中で槍が踊る。
抑え切れない怒りが火に油を注ぐのか、生身の肉体は魔法を使えた頃より鋭く反応出来た。

気合と共に槍を一振りすると、多節状にばらけた。
普段からやりなれた戦法は、ゆまの魔力が込められた槍でも問題なく使えるようだ。

(これなら―――いけるかな)

風を引き裂き、鎖がうなる。

「間に合えぇぇぇっ!」


投げた槍は空を斬った。渾身の力が篭った穂先が、壁面に深く突き刺さる。
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/10/18(火) 19:03:40.36 ID:5AvpdOSpo
……狙い通りだ。

「はぁっ!」

もう一度気合を込めると、それに応えるように槍がうねり―――

ぐんっ

あたしの身体を壁まで勢い良く引っ張った。


一気に槍を引き抜き、壁を蹴り反動を付けて―――

「であァァァァッ!」



脳天から床板までブチ抜き、一撃で終わらせた。
傷口から染みでたドス黒く濁った体液……なのかはわかんないけど……が、ボロ靴に染み、靴下までも濡らす。

洗濯が大変だな、こりゃ。
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/10/18(火) 19:07:30.29 ID:5AvpdOSpo
その内に魔女の死体が薄くなって、グリーフシードを残して完全に消え去った。
辺りも元の古ぼけた礼拝堂に戻り、変身を解除したハカセが駆け寄ってくる。

「杏子ちゃん、お疲れ様。……でもさ、もっと僕を頼ってくれて良かったのに」
「僕ら、仲間だろ?」

「生憎だけど一度染み付いた戦い方は簡単に変えられないさ。……付きあわせて悪いけど、一人が向いてるんだよ」

言い終えて、さすがに心が痛む。
こいつは会って間もないあたしの我儘で戦ってくれた。……礼くらい言わないとな。

「……そっか。でも凄いじゃない、あんなに手こずったのに一人で倒しちゃうなんて」
「ねぇ、どんな裏技使ったの?」
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/10/18(火) 19:09:38.05 ID:5AvpdOSpo
「あたしの実力と経験の賜物……と言いたいけど、やっぱりこの槍のおかげだろうね」

「この槍はあたしのお手製じゃなくて、ゆまに作って貰ったもんだ」
「そしてあの子の得意は回復魔法……つまり」

地面に突き立った槍を強引に倒す。

ぱきり。

刃が欠けた。今度は先端部分に意識を集中する。すると、折れて晒された断面から銀色の液体が染み出し、ものの10秒かからず元の形に戻る。

「……この槍にも回復の性質があるって訳さ。あの戦法もそのおかげで使える」
「拾った時には厄介なもんが押しかけたと思ったけどさ、こうなると中々役立ってくれるよ」

「……おい、どうした?」
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/10/18(火) 19:12:33.10 ID:5AvpdOSpo
「君は……やっぱりそう言う人間なんだね」

「ハカセ?……どうした、お前……」

「仲間の事なんてどうだって良い、一つの道具としてしか見ていない……そうなんでしょ?」
「あの子だって今は利用してるけど、邪魔になったら捨てちゃうんだろ?」

つぶやきつつ、こちらに歩み寄って来る。
パーマのかかった髪に隠されて、瞳が見えない。


「……お前!何が言いたいんだよ!」
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/10/18(火) 19:16:32.39 ID:5AvpdOSpo
「とぼけるなよ人でなし。お前が何をしてるか、教えてやろうか?」

「【自分の為に魔法を使う】……そんな言葉で真実から逃げるな。お前は人を殺して、それを食らって生きている化物だ!」


「何言ってんだおい……他人の為に魔法を使ったって、良い事なんか無い!」
「あたしは、その事を身をもって……」

「違うね」

「佐倉杏子、お前は人殺しだ。それもただの人殺しじゃない、親兄弟をも巻き込む最低に下劣な部類のな」
「神の創りたもうたこの宇宙で、お前こそが一番醜く歪んでるんだよ」

「なんでそれを……糞ッ!宇宙人が、わかったような口を聞くなぁっ!」

家族の事を引き合いに出されたその時、身体の芯で何か"熱く”なった気がする。
気がついた時には槍を前に突き出していた。目の前の男の腹部に深々と突き立っている。

男の目線は微動だにせず、ただ自分の腹筋から生え、あたしの手元まで伸びる木の棒を見つめていた。
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/10/18(火) 19:21:17.90 ID:5AvpdOSpo
「―――はーっ、はーっ、はーっ」

【正義の味方】魔法少女として槍を取ったその日以来だ。こんなにも激しく心臓が動くのは。

仲間殺し……仲間殺しか……。ついにこのあたしも堕ちる所まで堕ちたって所か。
もう誰にも顔向け出来ないな、こりゃ。見滝原の連中にも、あのゆまにも軽蔑されるだろう。
元からソリの合わなかった連中だし、殺されたっておかしくない。マミの奴なんて真っ先に撃ちそうだ。


「はーっ、はーっ……」

いっそ自殺しちまうか?向こうに行っても地獄に堕ちるのが目に見えてるけど。
親父達に会おうだなんて虫の良い話は、何度生まれ変わったって不可能だろう。なんせ殺しすぎた。こいつの言う通りだ。

これからザンギャックに入って、海賊達に仇を討たれるまで悪の限りを尽くすってのも悪くないかもな。

ああそうだ、その前にこいつの血を拭わなきゃ……神聖な礼拝堂が……。
墓も掘ってやらないと、せめてゆまに見られないように……。
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/10/18(火) 19:23:31.61 ID:5AvpdOSpo
じゃらっ

ざらついた音が鳴った、と認識した時には、あたしは首根っこを掴まれて壁際に抑えつけられていた。

形相は怒りに満ちてコカ・コーラなんて目じゃないほど赤くなっている。
牙のような白い歯がギラギラと光った。

「ついに仲間殺し、か……不意討ち、騙し討ちはお得意ってわけだね」
「そろそろ自分の罪が理解出来たよね?今まで君のせいで傷ついた人間達は、皆こういう風に騙されて、裏切られて、死んでいったのさ」

……その通りだ。

「佐倉神父夫妻とその娘、モモ……君の妹さん。彼らが自殺したのは元はと言えば君の無責任な願いのせいだ」
「君が不当な願いと手段で集めた信者達が、生真面目な神父様の御心をどれだけ苦しめた事か」
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/10/18(火) 19:27:06.45 ID:5AvpdOSpo
「それだけじゃない。バレたらバレたで君はどうした?叱られて、不貞腐れて、家から逃げ出しただけじゃないか」
「君の能力なら3人を洗脳して操るのは容易かったはずだ。それもせず、中途半端に逃げ回った」
「自分の力が正しいと思うのなら、それを父親に訴えてみるべきだったはずだ。でも君は、ただ父親から逃げただけだ。」

「……違う、あたし、はッ……!」

反論の声を上げた瞬間に、首に回した両手が万力のように締まる。

「いいや違わない!君は家族を騙して希望を持たせ、種を明かし絶望させて殺した!」

「多くの人間を殺し、それを糧としてのうのうと生きてきた!」
「そして今、あのゆまって娘まで犠牲にしようとしてる……」

「気づいてるか?お前のしてる事は魔女と、そしてあのインキュベーターと同じなんだよ」
「魔女を倒すのは正義の味方って相場が決まってる……だから……僕が殺す」

「……死んじゃえよ」

ごきり、と無骨な音がした。
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/10/18(火) 19:27:33.78 ID:5AvpdOSpo
今回ここまでです。フェアウェルなんて無かった。
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山形県) [sage]:2011/10/18(火) 21:28:14.37 ID:et72gXZso
ハカセがなんだかダークサイドでカッコいいじゃない!嫌いじゃないわ!!

256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/18(火) 22:23:19.54 ID:w2fBaAvBo

もうタネが割れてる気がするww
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) :2011/10/19(水) 18:50:53.76 ID:hSagPPHAO
面白い展開だな
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2011/10/26(水) 18:57:08.22 ID:tspnmf0v0
おそらく>>1がVIPにいたので記念
259 : ◆ZTD/8PGxpc [sage]:2011/11/01(火) 11:10:25.84 ID:DocplPYOo
テステス。


10月中に投下するつもりだったのになぁ……それすら守れないなんてなぁ……

サーバを移転しました@荒巻 旧サーバ:http://vs302.vip2ch.com/
260 : ◆ZTD/8PGxpc :2011/11/05(土) 17:54:28.72 ID:qT/m2A9+o
23時〜AM3:00までの間に投下する。
絶対する。頑張る。
261 : ◆ZTD/8PGxpc :2011/11/06(日) 03:06:02.14 ID:+VhO9YDRo
男なら有限実行ですよね
シュシュトリアンじゃないけど


……投下します
262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/06(日) 03:11:21.26 ID:+VhO9YDRo
ん……?何か、聞こえる……?

――コ……! ……ョ……コ……!

……うるさい。人が気持ちよく寝てる所を邪魔すんな。

――ョーコ!キョーコ!

人を気安く呼び捨てにするんじゃねぇ、ウザい奴だ。……こらしめてやるか。


突き出した両手の指先が、むにむにとした物体を捉えた。
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) :2011/11/06(日) 03:14:41.78 ID:+VhO9YDRo
勢いに驚いたのか、全く抵抗しない。しばらく縦横に引っ張り、もちもちとした弾力を楽しむ。

数瞬遅れて、やっと小さな手のひらがあたしの手に触れる。
が、引き離そうとするわけでもなく、掴んで離さず動こうともしない。

小刻みな振動と嗚咽、そして顔を伝って手首を濡らす涙。
――そう、こいつは……

「お前、ゆまか……?……あたしは、一体……?」
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/06(日) 03:17:24.66 ID:+VhO9YDRo
「キョーコ……キョー…コぉっ!うぐ、うぇぇぇん!……ひぐ、よ、良か、良かった……生きてた……」
「すごく、すごく……びっくりしたんだよ?キョーコ、こんなに……ボロボロになって……」
「キョーコ、すごくこわかったよ……キョーコが、キョーコがね」
「傷だらけで、あの時の……ママみたいになってた。ゴーカイジャーのお兄ちゃんが呼んでくるのがあとすこし遅かったら、もう……」

「ゴーカイジャー」の一言を聞いた瞬間、濁ってぼやけた意識がはっきりと目覚める。
そうか、あたしはあの時……。

「ハカセは……その、ゴーカイジャーは?」

「キョーコちゃんをお願い、って言って行っちゃったよ」

「……キョーコ、あぶない!」
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/06(日) 03:23:38.48 ID:+VhO9YDRo
痛む身体を無理に動かして、礼拝堂の扉を破って飛んで来た“それ”を辛うじて躱した。

勢い良く叩きつけられた後二度、三度と床を跳ね、緑色の光と共に“それ”は一人の男に変わった。
濃緑色のジャケットが大きく裂けて、癖の強い金髪は赤黒い血で固まっている。

「――やぁ、杏子ちゃん」

「ハカセ。……お前、その傷は」

「いてて……やっぱり魔女は強いね、あの身体でも簡単に吹っ飛ばされちゃうなんてさ」
「でも、まぁ……」

傷だらけの痛々しい顔の筋肉を無理に動かして、ハカセが笑う。
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/06(日) 03:28:12.56 ID:+VhO9YDRo
なんでだ?

「無事で良かった」

なんでお前ら、あたしが生きてる事を喜んでるんだ?

「ふぅ、やっぱり一人じゃあいつの相手はキツいよ。でもさ、何とか二人を守り切る事くらいは出来たみたいだね」

お前達は、誰のせいで傷つく事になったのか―――わかってるのか?
いや、たぶんわかってないんだろう。結局あいつに言われたとおりだ。

「――もう、良い」

「……杏子ちゃん?」
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/06(日) 03:32:04.42 ID:+VhO9YDRo
「ハカセ、もう良いよ。そんなボロボロになってまで、魔女と戦う必要なんて無い」

「……杏子ちゃん?何言ってんの、だってここは君の」

「そうさ、ここはあたしの……あたし達家族の一番大事な思い出の場所だった」
「それを守るのは当然あたしのする事で、お前らを戦わせた事自体が間違いだったんだよ」

「ちょ、ちょっと待ってよ!キョーコ、どうして一人でやろうとするの?……今までだって、二人でやってきたのに」

再び結界に向かって歩き出したあたしに、ゆまが追いすがる。
こいつは何時だって健気なんだよな……。自分が頼ってる物の正体もわからずに尽くしてくれる。

だからこそ、もう巻き込んじゃいけない。
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/06(日) 03:34:41.73 ID:+VhO9YDRo
「ごめんなぁ、ゆま。――でももう良いんだ。お前が思ってるほどあたしはまともな人間じゃない」
「お前はこんな奴についてかないで、スーパー戦隊みたいにまっすぐ生きて行った方が良いんだ」

「……君が自分の事をそこまで言うなんて。……杏子ちゃん、一体君に、この場所に……何があったって言うのさ?」



ハカセの問いかけに、あたしは過去の全てを答えた。
親父の信仰の事、契約の事、妹の事、家族と別れたあの日の事……。
そしてその後の生活、闇の世界で生きていく為に何でもこなした事。
269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/06(日) 03:40:52.68 ID:+VhO9YDRo
どれもゆまには聞かせたく無かった話だが、今はもう仕方無い。
昔良く見た信者達の懺悔みたいなもんだ。もう諦めて洗いざらい吐き出すしか無い。

……あの頃は他人の悩みを真摯に聞いてやって晴れやかな表情で帰らせる親父を本当に尊敬してたっけ。

そういえばその親父が入っていた小さな懺悔室は、結界の中で当時の威厳のまま佇んでいた。
アホくさい、あれは親父が生きてた頃からボロボロになってたんだ。
何時だかいよいよ金が無いって時に焚き木に化けちまったのに。

あの頃の夢見る魔法少女杏子ちゃんは、今じゃ立派な人食い魔女ってか。

「そうさ、あたしはもう人間じゃ居られない。そうだと名乗るには、もう罪が重すぎるから」

そんな事を今更になって口にする時点で歪んでる、ってな。
270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/06(日) 03:53:31.84 ID:+VhO9YDRo
「今までさ、好きに使っちまって悪かったよ。それじゃな、もう会う事は無いと思う」
「ハカセ、見滝原の奴らによろしくな。……なんだかんださ、あたしと違ってあいつらは甘ちゃんの良い子だから。キュゥべえの件で悩んでるはずだから助けてやってくれ」

「それで?杏子ちゃん、君はどうするの」

「あたしは……この魔女を倒す。刺し違えても、必ずな」
「それがあたしが見殺しにした家族に出来る償いさ。親不孝な娘だったけどさ、それくらいはしてやりたいんだ」

「そっか……。なら、僕は止めないよ」

「……じゃあ、ゆまをお願い」

それだけ言い残し、再び礼拝堂の入り口に向かって一歩踏み出す。
その時、裾を掴む腕が一つ。
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/06(日) 04:10:57.78 ID:DKYEFbwpo
「もっともその子は僕に付いて来る気、ないみたいだけどね」

「嫌だよ……行っちゃ嫌だよ、キョーコ……!一人で行くなんて、死にに行くようなことでしょ?」
「ゆまは、あの日までママにいじめられてたけど……それでも、おわかれして嬉しいって思ったことなんてないよ」

「今だって思ってるの、もっとわたしを見て、話を聞いて欲しかったって。……キョーコだってそうだよ」
「キョーコ、わたしを見て。自分一人で背負わないで、もっとわたしを信じて」

服を掴む力が強まった。

「ゆまはここに居る!キョーコの隣にいるの!」
「だから行かないでよ、もう一人は……イヤなんだから……」
272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/06(日) 04:24:31.43 ID:+VhO9YDRo
「……ごめん」

これ以上は聞いて居られなかった。あれほど硬く決意した筈なのに、一歩進むごとに脚が鈍って行くからだ。
無理にでも振りほどかなきゃ、比喩じゃなくて脚に根が生えるような気さえする。

が、ゆまの手は緩まない。
両手で力いっぱいに服の裾を掴んだままだ。

「ゆま、もう良い。もうやめてくれよ。あたしは、もう汚れすぎた」
「これ以上お前と一緒だとお前まで汚れる……お前を見てるとさ、今の自分が惨めで仕方ないんだ」

「だからもうついて来るんじゃない!お前は魔法少女、あたしは魔女!……もうそれで良いんだよ」
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/06(日) 07:09:51.76 ID:+VhO9YDRo
「杏子ちゃん……そうやってゆまちゃんからも逃げるつもり?」

後ろからハカセの声が淡々と響く。

「違う、あたしはもうお前達を巻き込みたくなんて無いから……」

「違わないよ。自分を貶めて、ゆまちゃんから遠ざける事で逃げようとしてるだけじゃない」
「この子は君と向き合って、ちゃんと見てもらいたいだけなんだ」

「それでも……あたしは人殺しだ。自分の家族さえ手にかけた人間が、のうのうと生き延びるなんて……」


「……違うよ!」
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/06(日) 07:11:41.11 ID:+VhO9YDRo
「ゆま?……うわぁっ!?」

更に強く引っ張られ、倒れ込んだ所を抱き留められた。
ゆまの顔がより近くなり、大きな緑の目が視界の中で一際輝く。

「キョーコは……おとうさんやおかあさんにいじめられてきたわけじゃないでしょ?」
「ちがうよね。好きだったから魔女とも戦えたし、魔法だって使えたんだと思う」

さきほどとは打って変わった静かな口調。そのせいか、ゆまの話はあたしを引き込む何かがあった。
こうなった時、この子は年齢離れした知性を感じさせるようになる。

「だれかを好きになるのはまちがいじゃないよ。むくわれなくても、うらぎられても、好きなひとの為になら誰でもつよくなれる」
「キョーコはそのすきだーって言う気持ちを、キュゥべえにつけこまれちゃったんだよ」

「……それで、キョーコはだれかを好きになる事をやめた。好きになってもその分傷つくだけだって」
「でも、キョーコは優しさを捨てることなんてできなかった。だからゆまはここにいるの」
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/06(日) 07:15:23.70 ID:+VhO9YDRo
「キョーコの中の誰かを守れる、好きになれる優しい心がゆまに力をくれたんだよ」
「―――それでもまだ、キョーコが自分を魔女だって言うなら」

清々しい笑顔でゆまが笑う。あたしが目指した理想の魔法少女は、こうやって人を救う正義の味方だったっけな。

「その時は、わたしが優しい心を半分分けてあげる。……キョーコが、してくれたみたいに」

「行こうよ、キョーコ!二人なら出来るよ、絶対!」

ゆまが立ち上がり、右手を力強く差し出す。
……いつの間にこう成長したのかな?もう一人前の魔法少女みたいじゃないか。

「……おう、魔女退治のイロハから叩きこんでやるからな」

差し出された手に自分の右手を重ねると、横からもう一本の腕が伸びる。
一見華奢なようで、それでもあたし達二人のそれより大きくがっしりとした手が、二人の手を包む。

「杏子ちゃん、良い仲間が出来たね。……これで、自分の過去も振り切れそうかい?」

「あぁ、もうくよくよしてる暇なんて無い。ゆまが……仲間が、あたしと一緒に居れば、そんな事する必要ないからな」

「杏子ちゃん、それで良いんだよ。自分の為だけじゃなく仲間の為に、高みを目指して強くなる」
「僕が最初に学んだ大いなる力さ。悲しい過去も、仲間と一緒になら乗り越えられる筈。……出来るよね?」

「当然!」

ハカセの問いかけに、簡潔に答えた。
長ったらしい言葉はもう要らない。後は……あたしが、あたし自身を超えてみせるだけだ。
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/06(日) 07:20:46.41 ID:+VhO9YDRo
たったこれだけに4時間……
うとうとしながら書いても良い事なんて無いって事ですね。


午後にまた投下します
277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/06(日) 11:09:56.38 ID:Ywf21TAGo
乙!
楽しみにしてます
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(山形県) [sage]:2011/11/15(火) 17:43:16.40 ID:NycAqRhso
良い話だな

感動的だな

だが…投下はまだかい?

( ^U^)
279 : ◆ZTD/8PGxpc :2011/11/20(日) 05:46:12.61 ID:oghoMYDao
……ワルズ・ギル様の喪に服していた、と思っていただきたい



メガレン回終わったら投下いたします
280 : ◆ZTD/8PGxpc :2011/11/20(日) 10:10:16.28 ID:oghoMYDao
前言撤回。


6時30分からの投下になるかと
あぁぁぁどんどん伸びる、時間が消えて行く
281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(茨城県) [saga sage]:2011/11/20(日) 16:44:03.28 ID:MUjfNvZ00
投下時間が伸び上ってく
空の彼方に届くみたいさ

…焦らず自分のペースでね
282 : ◆ZTD/8PGxpc :2011/11/20(日) 18:38:31.68 ID:oghoMYDao
I.N,E.T.とデジタル研究会の謎技術力は不滅。
メガブルーの特殊能力使ってくれたのも◎な回でしたね。


……放映終了まで(最悪ギャバンまで)に終わらせるなら急いだ方が良いかも


参ります!
283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [saga]:2011/11/20(日) 18:40:48.18 ID:oghoMYDao
―――side 佐倉杏子


今しがた運び出された扉の前に再び立つ。
一度目の挑戦との違いは相棒がゆまである事、もうブチ切れてはいない事、そして……

「ねぇキョーコ……ほんとにだいじょぶなの?やっぱり槍つくる?」

「ああ、自分で魔法が使えない以上武器持ってようが丸腰だろうが変わらないからな」
「心配してんのか?大丈夫、勝てるよ。あたし達ならさ」

やっぱり自分だけの力で魔女との戦闘をこなす自信が無いのか、ゆまの声には震えが混ざっていた。
大丈夫だから、ともう一度念を押してわしゃわしゃと頭を撫でてやる。
284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [saga]:2011/11/20(日) 18:45:04.80 ID:oghoMYDao
「それじゃ行くよ、ゆま。……手はず通りにな」

「オッケー、キョーコ……ぇぇえいっ!」

力いっぱいに振るわれたハンマーが扉を砕くと、異様に美化された礼拝堂が姿を現した。
そろそろと、慎重に一歩ずつ歩を進めて、林立するベンチの中心部にたどり着いた。

魔女の姿は、ない。かと言って逃げ去った様子もない。姿を隠したのか。
結界の中にはさっきと変わらず、『殺気』のような物が満ちている。

「……ゆま、良く周りを見てな。こっからが正念場だ、注意を逸らすなよ」

「うん、わかった……」

ゆまがハンマーを逆手に構えて、床に向けて軽く突いた。
同時に周囲の風景がブレた。魔法を使う者にだけ見える、魔力を込めた結界の効果だろう。
今更ながらに自分が無力だ、と大声で責められているような気がする。

「んな事わかってるっつの……」
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [saga]:2011/11/20(日) 18:50:38.66 ID:oghoMYDao
「キョーコ?」

独り言を聞きつけたゆまが見上げる。
無駄にしゃべくってゆまに心配かける訳にいかないってのにな。

「いいよ、気にすんなって……うわっ!?」

「きゃぁぁっ!?……くぅっ」

バリアが軋み、ギリギリと音を立てて大気が揺れる。

あたしからしたらそれだけの現象だけど、実際にバリアの操作をするゆまからしたらぶっ壊される様が目に見えてわかる訳で。
286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [saga]:2011/11/20(日) 18:57:37.70 ID:oghoMYDao
哀れな緑のちびっ子は、傍目でもそうとわかるくらい怯えきっていた。
ゆまの視界には何が写っているんだろうか。
バリアを取り巻き風穴を開けようと迫る無数の鎖か、今にも破片になって飛び散りそうな痛々しいバリアか。

それともその両方かも。

とにかく恐ろしい現実から必死に逃れようと、両目を固くつぶってる。

……でもなゆま、それはお前が自分で乗り越えなきゃいけないんだ。

お前はあたしを助けてくれるって言った、だからあたしは昔の自分を越える決意が出来たんだ。
その為には皆のがどうしても必要だ、魔法少女と海賊とあたしの、三人の力が。
287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [saga]:2011/11/20(日) 19:06:14.94 ID:oghoMYDao
「ゆま、前を見るんだ!……逃げたって何にもならないって、教えてくれたのはお前だろ!」

「きょ……キョー……コ……。うん……わかった……」

あたしの声が耳に入って、恐る恐る顔を上げる。首にくくった鈴が、チリンと鳴った。
その肩を抱いて、姿勢を直させる。

「良いか、ゆま。魔女を相手にする時は逃げちゃ駄目だ。お前はまだ新米だからな、相手も見ないで勝てる訳がねぇ」
「……でもな、ここにあたしが居る事だけは忘れんな。この佐倉杏子がお前を支えてやってるって事を」

「それだけじゃない、あたし達には……スーパー戦隊だってついてるんだからな。これで勝てなきゃ嘘ってもんだろ?」
288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [saga]:2011/11/20(日) 19:11:41.58 ID:oghoMYDao
大船に乗った気でいなよ、と最後には軽くおどけて見せた。
しかしなんて言い草だ、さっきまでうじうじしてたのはあたしの方だってのにさ。

誰に説教してるのかわかったもんじゃない。




それでも、ゆまは笑ってくれた。

「うん……キョーコ、わかったよ!みんなの為に……ゆまは、どうすれば良い?」

「よし、まずは態勢を立てなおすか!」

「オッケー!」ゆまの目に光が戻る。
その勢いのままハンマーを振り下ろすと、バリア全体が白く輝いた。
同時にギシギシと軋む音も止む。どうやら完全に修復されたようだ。
289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [saga]:2011/11/20(日) 19:21:29.43 ID:oghoMYDao
「キョーコ、次はっ?」

「よし、これからあいつはたぶん一気に攻撃をかけてくる。……あたしが良いって言うまで、魔力を限界まで振り絞っても耐え切るんだ」

「……え?」
「ちょっ、無理だよキョーコぉ!無理無理無理っ!」

「無理じゃない!良いか、守る範囲全体に気を配るんだ。バリアと心を1つにするつもりになれば出来る!」

「簡単に言うけど……キョーコのそんな戦い方、見たこと無いよ?」

「……う、うるせぇ。相手の攻め方がわかれば対策もわかるんだよ!」
とにかく集中しろ!」

「うーん……まぁ良いや、やるよ、キョーコ!」

ゆまが返事したかしないか……と言う内に、攻撃が始まった。
バリア全体がたちまち白く染まり、そして――――。
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [saga]:2011/11/20(日) 19:33:15.49 ID:oghoMYDao
Side 千歳 ゆま


えっと……これで何回しのいだんだっけ……?
息もつかせない、って良く言うみたいだけど、これはそれよりもっとずっとすごいとおもう。

前から来たらつぎは右、上ばっかり攻めてたはずが床からのびてきたり……。
いくら初めてたたかうからって、こんなにつよいなんてないよ……。
ほんとに、キョーコが居なかったら絶対無理だと思う。

「ゆま、次は右だ」ほら、今みたいに。
まほうの使えないキョーコには魔女は見えないはず……なのに、ときどきくれるアドバイスはよくあたる。


291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [saga]:2011/11/20(日) 19:35:24.81 ID:oghoMYDao
だからって、魔女の攻撃が無くなる訳でもないけど。
防がれてムキになったのか、更に激しくクサリをぶつけてくる。

「わぁっ!?……ねぇ、キョーコ、まだ持たせるのぉっ!?」
「もうグリーフシードもないよ、やぶられちゃうよっ!」

それでも、キョーコは動かない。
目をつむってうでぐみしたまま、じっと何かを待ってる……ような?

「キョ……キョーコ?」

「ゆま、バリアを弱めてくれ」

「何言ってるのキョーコ、そんな事したら二人ともやられ……!」

「良いんだ、今こいつは調子に乗ってきてる。ここで弱みを見せてやればすぐにでも食いつくさ」
「あたしにはわかる、信じてみな」

キョーコがにっと笑って、八重歯の光が目に入った。
292 :失敬、長電話 [saga]:2011/11/20(日) 19:55:00.72 ID:oghoMYDao
「わかったけど……知らないよ!」

魔力を弱めてバリアをうすくした瞬間、クサリの海が視界いっぱいにうつる。




「……!」あわててハンマーを構えたわたしを……

「今だハカセ!―――ダイレンジャーで行け!!」

……結界いっぱいに響くキョーコの声が貫いたと思ったら

「天 幻 星 ・ 幻 山 手 線 ッ !」

見なれた緑の列車が目の前を通りすぎて……なにもかもがふきとんだ。
……もう、わけわかんないよ……。
293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/20(日) 20:01:27.46 ID:oghoMYDao
一番わけわかんないのは俺です


行き当たりばったり100%で行くとこうなりますよ、と
ちょっと休憩入れさせてください 申し訳ない
294 : ◆ZTD/8PGxpc [saga]:2011/12/06(火) 17:13:01.21 ID:2YRJTh4yo
「ちょっと休憩」とか吐かしたのはどこの誰でしたっけ
もう12月ですね、年内に終わるのは無理としてどこまで行けるか
295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [saga]:2011/12/06(火) 17:13:55.04 ID:2YRJTh4yo
Side 佐倉杏子


……これがスーパー戦隊の力って奴かよ。

目の前を緑と銀の“塊”が走り抜けた、と思った瞬間に、結界の最奥で猛烈な土煙が上がった。

弾き飛ばされた魔女が壁に激突したせいだ。ステンドグラスからの光に包まれていた結界全体が歪み、張り詰めていた荘厳な気配が一瞬で消滅する。

化けの皮が剥がれやがったって訳だ。

視界が晴れた頃には、結界は一面礼拝堂とリンゴ林、そして見滝原の街並みの悪趣味なコラージュに書き換えられていた。

「幻覚には、幻覚か。上手く行ったね、杏子ちゃん。……ところでこれは?」

ダイレンジャーの天幻星・シシレンジャーに変身したハカセが辺りをキョロキョロ見回している。
296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [saga]:2011/12/06(火) 17:17:45.67 ID:2YRJTh4yo
「……ここの魔女自身の『想い出』って奴だろ。傷めつけられたせいで、あたしを惑わす為に作った結界とごっちゃになっちまったのさ」

リンゴ林の中にチラチラと写ってはまた消える影から目を逸らしつつ答える。

「ちょ、ちょっと待ってよ杏子ちゃん。想い出だなんて、まるで魔女が元はヒトだったみたいな……」

ハカセの声が上づる。あのおぞましいバケモンが元は人間だなんて考えたら……そりゃな。

「理屈はわかんない。けどさ、この結界のヌシがあたしには、もう一人の自分みたいに思えてならないんだ」
「あいつのやることなす事一つ一つが予測出来るし、結界の中も見たようなもんばっかなんだ」
「キュゥべえの野郎とは付き合い長いし、ザンギャックの技術力なら出来なくも無いだろうしな」
297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [saga]:2011/12/06(火) 17:20:04.73 ID:2YRJTh4yo
こいつはまさに『佐倉杏子』にとってうってつけの罠だと、キュゥべえの奴も思ってたに違いない。実際、一度はコロリと引っかかっちまった。
それでも―――。

「ハカセ、ゆま、今度こそ終わりにするよ。あたしは自分の過去を越えて見せる」
「いつまでもキュゥべえの思い通りじゃねぇって事を思い知らせてやるんだ!」

「うん!」「オッケー!」

二人の声が重なり、なりふり構わず突進する魔女を迎え討つ。

「いつまでもしつこいよっ!キョーコをいつまでも縛りつけないで!」

「そうさ!杏子ちゃんはもう一人じゃない、仲間と一緒に戦っていけるんだ!……だから!」




「「邪魔、すんなぁぁぁーっ!」」

『ダイレンロッド』とハンマーの先端が同時に突き刺さり、魔女の突進が止まる。
魔女を覆う鎖の残骸がボロボロと崩れ落ち、より惨めな姿になる。
298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [saga]:2011/12/06(火) 17:30:26.11 ID:2YRJTh4yo
「qqweurrrryyyyyyahhhhhhhhhッッッッ!!」

違う、動きが止まったのは一瞬だけだった。甲高い叫びが上がると、ダメージなど何も無かったかのようにまた突進が始まった。
二人は受け止めきれずに吹き飛ぶ。

「―――ゆま!ハカセ!」

「だいじょぶだよ、キョーコ!」
「そういう事っ。じゃ、いくよゆまちゃん!……いっせーの、」

思わず叫び声をあげたあたしの耳に、存外冷静な声が返ってきた。

「「せっ!」」

二人が着地した瞬間に一人は前に、もう一人は後ろに跳ね飛んだ。
ゆまがハンマーでハカセを弾いたのだ。

「ゆまちゃん、ナイスバッティング!……ゴーカイチェンジ!」

くるりとトンボを切り、空中でハカセが紫に光る。
34戦隊でもただ一人の紫色、たしかあれは……。
299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [saga]:2011/12/06(火) 17:35:42.81 ID:2YRJTh4yo
「アイアンウィル・ゲキバイオレット!」
「激獣ウルフ拳ゲキワザ・狼狼蹴(ろうろうしゅう)!!えやぁぁぁっ!」

オーラを纏った右足が蹴り下ろされ、頭頂部の鎖を砕いて全身を床にめり込ませる。
露わになった鎖の下は、まだ燃えるような赤い髪の毛に覆われて何も見えない。

残り少ない鎖を振るって頭上のハカセに攻撃しようとする所を、「ki,kwiyyyyyyyyerrrrrrrhhhh……!?」
ゆまの放った衝撃波に抑え込まれる。

「よし、杏子ちゃん止めを!……ゆまちゃん!」

「うん!―――魔力!」
「―――激気!」

「「同時注入!合体ゲキワザ・創創槍ッ!」」

二人の拳から撃ちだされた紫と緑の光がぶつかり合い、一瞬眩い光が目を焼く。

……目を開けてみると、床に狼にを思わせるような槍が突き立っていた。
300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [saga]:2011/12/06(火) 17:42:36.00 ID:2YRJTh4yo
「サンキュ!それじゃあ今度こそこれで終わりにしてやるよっ!」

一息に引き抜いて身動きの取れない魔女に迫る。鎖の雨が迫るが、今のあたしにはかすりもしない。

不思議と身体が軽いのは、槍がゆまの回復性の魔法で作られたから、という理由だけじゃなくて―――。
すぐ後ろには信頼出来る仲間が居る、ってのもあるのかも知れない。

それだけに、今は絶対に負けられない。

「うらぁぁぁァッ!」

狼の顔面に似た刃が魔女の横っ腹を抉って半ばにまで達する。
……いや、そこで止められる。今まで鎖の奥に隠されていた両腕が解き放たれたのか。

片腕が槍をがっしりと掴み、もう片腕が今まで捧げ持っていたであろうロザリオを振りかぶってあたしを狙う。
凄まじい速度で振り下ろされたその手は……あたしを捉える事は無かった。

深く突き刺さった刃が開き、顎で咥えて魔女の身体を持ち上げていた。
思わず振り返ると、ゲキバイオレットがサムズアップで応える。

狼の形にはこういう意味があった、って事か。
301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [saga]:2011/12/06(火) 17:43:50.91 ID:2YRJTh4yo
力強い牙で持ち上げられた魔女はもはや身動き一つ取れずにただ咥えられている。
だが、最後まであたしに傷を付けようと新たな鎖を伸ばし続けていた。

……それもそうだろう。あの時見たあたしを責める幻影は、自分自身を責めるこの魔女の『良心』そのものだっただろうから。
こいつからしてみれば、悪事を積み重ねる『魔女』佐倉杏子は絶対に許せない極悪人だ。

それでも、あたしには仲間が居る。もうたった一人で悩む事も、間違いを犯す事だって無いって信じられる。

「だからさ……ずっと一人ぼっちのあんたが、勝てる訳なかったんだよ」

魔女を天井に向かって投げ上げ、それに向かって槍投げの要領で槍を投げつける。
ぴったり中心部を抉った槍は、結界と一緒に消滅した。
302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [saga]:2011/12/06(火) 17:55:36.61 ID:2YRJTh4yo
後に残ったのは元のみすぼらしい礼拝堂と床に突き刺さったグリーフシードだけ。
唯一の報酬を拾おう、と身体を屈めた瞬間……

『てれってれれれん』『てれってれれれん』

間の抜けたコール音が二度連続で響いた。

「はい、もしもし……あぁ、ルカ?どうしたの、良く聴こえないけど」
「……何?マミちゃんがどうしたの?……ちょっと、ねぇ、ルカっ!?」

ハカセが携帯電話(モバイレーツだっけ)を取り落とし、頭を抱える。
海賊の仲間が緊急事態にでも遭ったのか?

「……ごめん、杏子ちゃん、ゆまちゃん。せっかく教会も取り戻せた所だけど僕はもう行かなくちゃ」
「ルカが……ゴーカイジャーの仲間が危ないんだ。……僕が絶対何とかする、二人はここで休んでて!」

ハカセはそれだけを言い捨てると時間も惜しい、と慌てて走り出し……


横から突き出たハンマーの柄に引っ掛かり、顔面から扉に派手に突っ込んだ。
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [saga]:2011/12/06(火) 18:06:39.35 ID:2YRJTh4yo
「ゆ……ゆまちゃん。何してるんだよ、これは遊びなんかじゃ……」

ハカセが呻く。

「だからって、置いて行くなんてひどいよ!さっきはなかまだって、言ってくれたのに!」

「だからさ!……今君達が戦ったってなんにもならないよ。そんなに疲れきってるのに……なんで戦いたがるのさ」

ハカセの剣幕に、食ってかかったゆまの方がひるまされる。
確かに戦ったって、今のあたし達に何か出来るとは正直思えない。

襲撃を提案した張本人のマミの所に向かった、ってのも心配だし、ここみたいに魔女が送られた可能性もある。
何より、手練揃いの海賊一人を現に窮地に陥らせているってのが一番の証拠だ。

「それでも……理由ならあるよ」

「杏子ちゃん?……君まで何をっ」
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [saga]:2011/12/06(火) 18:24:58.19 ID:2YRJTh4yo
「あたし達は仲間だって。あんた、そう言ってくれたよね」
「なら、そのルカって海賊も仲間だろ」
「……ルカさんの相手は十中八九巴マミだ。あいつが襲撃を提案したんだからな」

「あたしらのリーダーだった巴マミと、海賊の仲間……仲間同士の殺し合いなんて見てられない、それだけさ」
「頼むよハカセ、マミを説得できるとしたら一緒に戦ったあたしら以外居ないんだ」

「あたしのせいで誰かを失うってのはさ……もう、うんざりなんだよ」


「……」

あたしが話終えても、ハカセは扉の方を向いたままだった。
物音一つ立てない重苦しい沈黙が続く。

「……行こう」

扉を開けて、そう切り出したハカセの声は、妙に低かった。

「絶対、約束して。……危なくなったら、すぐ、逃げるって」

そして、ブツ切れだった。
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [saga]:2011/12/06(火) 18:37:54.18 ID:2YRJTh4yo
「うん、約束する!絶対約束するから!」

ハカセに飛びついて二つ返事で答えるゆまは、猫よりもむしろ犬に見える。
ぶんぶんと尻尾を振る様子が目に見えるみたいだ。

両腕で抱きとめるハカセを顔は、扉の隙間から差し込む光で隠されていたけど。
あたしには、本心から笑っているであろう事が確信できた。







「――ところでキョーコ、見滝原の人とはわたし会ったことないけど……『巴マミ』ってどんなひと?」

「そうだね……一言で言えば『正義の味方』さ。お前みたいな子には優しいよ」

「そんなひとがどうして?わるものになっちゃったの?」

「違うだろうね。あいつは死ぬまで正義の味方さ。……だからこそ、って事もある」
306 : ◆ZTD/8PGxpc [sage]:2011/12/06(火) 18:46:03.57 ID:2YRJTh4yo
杏子篇・ようやく完結。
たったこれだけの分量に何ヶ月掛けてるんでしょうか私は。

「Ride on right time」を聞いて30分で考えたようなストーリーにすら手こずる自分の技量に絶望しかけている所ですが、以前に宣言した通りここで止めるような事はありません。
第20話「迷いの森」で窮地に陥ったキャプテン・マーベラスの台詞が心に染みます。
私は鎧になりたい……なんちゃって。



「師走」と言うくらいですし皆様方も私自身も忙しくなるとは思いますが、今後も長いお付き合いをお願い致します。
次回巴マミさん篇、お楽しみに。
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟県) [sage]:2011/12/06(火) 19:07:15.01 ID:DVclTnrWo
自分の書きたいようにかけばいいんです

乙 楽しかった
308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(山形県) [sage]:2011/12/06(火) 23:11:36.80 ID:EdEQVW7To
楽しい 頑張れ 乙
309 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 15:24:21.09 ID:eR1CGMJf0

そういや今度の劇場版にQBの中の人が怪人役で出演するらしいな
310 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 15:28:55.20 ID:eR1CGMJf0

そういや今度の劇場版にQBの中の人が怪人役で出演するらしいな
311 : ◆ZTD/8PGxpc [sage]:2011/12/20(火) 16:35:25.04 ID:HWjxDQ9Eo
マミさんの魔女発表ってどういうなん事ですの……
これではうかつにマミさん篇が書けませんわ……。


もう少しだけ、お待ちくださいませ。
312 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga sage]:2011/12/24(土) 23:02:46.53 ID:XXRDl8cY0
キャンデロロかわいいよね
待ってます
313 : ◆ZTD/8PGxpc :2012/01/04(水) 16:51:22.46 ID:Wdwn3YYBo
新年明けましたが今の所特におめでたくないです
明日本気出します
314 :以下、あけまして [sage]:2012/01/04(水) 16:54:42.01 ID:vvb/683Io
おう待ってる
315 :以下、あけまして [sage]:2012/01/04(水) 20:17:45.21 ID:0cA2vKQFo
いつまでも待つわ
316 : ◆ZTD/8PGxpc [sage]:2012/01/06(金) 07:58:06.16 ID:YN3+cLIoo
昨日の内には復旧してたんですねぇ……少々お待ちあれ
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2012/01/25(水) 22:01:06.11 ID:cQxktSpLo
待ってるからね
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/26(木) 21:36:37.52 ID:+4CrHkmmo
オエージ!!続きはまだか
319 :!incubator [saga]:2012/01/28(土) 16:07:54.25 ID:PKX/B7Ioo
♪英雄は 遅れてやってくる
らしいですよ?


……すいません、あんまりにも放置しすぎました。
自分で決めた事すら守れないのは人として最低だと思っています、誠に申し訳ない。
ともあれ投下出来るようになりました。


〜前回までのあらすじ:海賊視点〜
・海賊戦隊、見滝原市に現る
・駐留するザンギャック部隊、及びその傘下におかれて居た魔法少女部隊と戦闘になる
・正体を現した小動物の野望を打ち砕くべく、散り散りになった元魔法少女に協力を仰ぐ事に
・海賊戦隊4番目の戦士ドン・ドッゴイヤーは元魔法少女一人と現役魔法少女一人と仲間になったぞ

・その際に戦った魔女は相手の心に写った物を幻覚として投影して敵を惑わしてから攻撃を当てる、ようは「ゴレンジャーハリケーン」を使う強敵だったぞ
・しかし、激気と魔力を合わせて「五星戦隊ダイレンジャー」にて「気伝獣ウォンタイガー」を創った要領で魔法槍を創りだして撃破したぞ
・上記の説明は作中では為されなかったぞ……
320 : ◆bJPMxwu6ejEM [トリップ変えます 本来使う必要無いけど]:2012/01/28(土) 16:10:54.38 ID:PKX/B7Ioo
―――side 巴マミ


空の高い日だった。
車窓から見えた、抜けるような青空を、私は飽きる事なく眺めていた。

だから、車の中の事はよくわからなかった。
長いドライブにも飽きて、私はただパパとママの言葉にも生返事を返すだけだった……と思う。
だから、二人に関する最後の記憶は、後頭部だけ。
どんな表情をしたのかさえ、今はわからない。

次に見たのは、空を埋め尽くす黒雲。そしてそれを照らす血よりも赤い炎。
ひしゃげて原型を失った車内から、私はこの世の地獄を垣間見た。

あつい……いたい……くるしい……。

身動きの取れない状態で、それだけが頭の中をぐるぐると廻っていた。
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/01/28(土) 16:13:51.82 ID:PKX/B7Ioo
火の手はなお強まり、意識がだんだんと薄れてゆく。
ぼやける視界の中で、私は、急に差し込んだ強く白い光に手を伸ばしたような気がした。

そこから後の記憶は断片的な物になる。

事故の原因となった巨体を撃ち砕く鉄巨人とそのガトリング砲の真っ赤な嵐。
車から私を引きずりだしてくれた、力強く優しい黄色の腕。

そして、病室の白くて清潔なリンネの上で出会った、雪のように真っ白なあいつ。



『やぁ、お目覚めかい?災難だったね、マミ』

『誰……あなた……何なの……?』

『僕かい?僕の名前は―――』
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/01/28(土) 16:16:19.04 ID:PKX/B7Ioo
「インキュベーターッ!……っ、痛……」

机を力強く叩いた衝撃で、完全に目が覚めた。
分解整備中だった名前も知らない拳銃が、ゴトンと音を立てて床に落ちる。

「夢……なの?」

あの日の事を夢に見るなんて、私もつくづく弱気になった物だ。
変身出来ないからって、弱気になったのかしら。指輪の跡が薄く残った左手を見つめる。
やはりそこには見慣れた宝石は無い。

私達がソウルジェムを奪われた後、いち早く目覚めた私は暁美ほむらの銃器を持ち、一度自宅に帰った。
美樹さんは連れ去られ、鹿目さんはあの気性だ。自宅で震えているだろう。

佐倉杏子は元から一匹狼だ。恐らく今頃この危険な街を離れただろうか。

元より関係の良くなかった暁美ほむらには今更話を持ちかける気すら起きなかった。

……よしんば協力出来たとして、病弱だったと言う彼女が何の役に立つだろうか。
大部分の銃器を手に入れた以上、私に取って利用価値は無いと言って良い。
323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/01/28(土) 16:21:10.71 ID:PKX/B7Ioo
「……良し、流石に抜かりない子ね。これだけの武器を整備したのが中学生とは思えないわ」
「使い魔相手なら小銃で充分だけど……やっぱり決定打が足りないかしら」

整備を完了し、身支度を整えた私は、幼い日に通った「秘密基地」へと歩き出した。


まだ春だと言うのに、見滝原の空気は暑かった。
下はタンクトップに男の子の履くような短パンと通気性充分。
しかし、その上がパパの遺品のトレンチコートなのだから始末に負えない。

仕方がないとは言え、この格好は知人に見せたくはない―――思わず苦笑してしまう。

陽射しが強い。
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/01/28(土) 16:25:26.61 ID:PKX/B7Ioo
照りつける太陽とアスファルトからの反射でハムエッグにされた身体から絶え間なく汗が吹き出る。
蒸し風呂と化した道路を、私はひたすら歩き続けた。

工場地域を通過した後程無くして、高速道路の高架下、幼い私の「秘密基地」に辿り着いた。

持参のゴルフバッグを開き、折りたたみ式スコップを出して掘り返す事、およそ10分。
地下への階段が姿を現す。

階段を下り、薄暗い地下へと足を踏み入れる。
懐中電灯を点けると、多少黴くさいものの、昔の面影そのままに懐かしい一部屋が現れた。

壁にかかった絵、無造作に積まれたアルバム類、大小ばらばらな字で「ま法少女作戦ノート」と大書された数冊の自由帳。

想い出の品々が輝きを帯びて私の目に飛び込んで来るが、今はじっくりと感傷に浸っては居られない。
私は更に奥、地下貯蔵庫へと歩を進める。
325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/01/28(土) 16:31:09.44 ID:PKX/B7Ioo
「コホ、コホ……凄い臭いね、ここ……」

お目当ての物を発見し、そそくさと地上に昇る。

ほんの数分だけ潜った筈なのに、差し込む光に目が耐えられない。
目をしょぼつかせながら階段を昇る途中、

「――ッ!?」

いきなり何者かに手首を掴まれた。
息つく暇も無く、ただひたすらに走る。走る。走る。

私は足を前に出し続けるのが精一杯だった。ただ、転ばない為に。
足を踏ん張ってどうにか止まろうとした瞬間、大きく振り回されて地面に倒れこむ。
326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/01/28(土) 16:34:55.25 ID:PKX/B7Ioo
ちゅんちゅんと、軽い音と共に地面が弾ける。
私達が居た所に銃弾が撃ち込まれる音だ。同時に、廃車にでも当たったのか、爆発が起こる。
燃え盛る熱風に眼球を燻されつつも、私はその時初めて黄色い上着の颯爽とした後ろ姿を正面から見据えた。

「……ルカ・ミルフィ……さん。何をやってるんですか、こんな所で」
「海賊の、あなたが……?」

彼女は振り返らず、「ゴーカイガン」をやたらに撃ちまくる。

「決まってるでしょ?迎えに来たの。あんた達がザンギャックに狙われてるのが見過ごせない……ってのが居てさ」
「チッ、ここもすっかり包囲されたみたい。……あたしが先に出る、すぐ走りな」

有無を言わせぬ口調に気圧された訳では無いが、私はおとなしく頷いた。
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/01/28(土) 16:38:30.44 ID:PKX/B7Ioo
完全に包囲されていると言うのは嘘では無いらしく、ざっと見ただけでも10人は下らないであろう「ゴーミン」が目についた。

意外と統制が取れた行動をしている。ゴーカイジャーが味方に居るとは言え、脱出は難しいかもしれない。
雑兵と言えども、いざ眼の前にすればそれなりに強そうだ。
今までTVでしか見たことが無かったのだから、当然かも知れないが。

「……1」

が……、だからと言って私がここで死ぬ訳にはいかない。

「2ぃの……」

何故なら私は……

「3ッ!」

もっと強い、正義の味方になるのだから。
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/01/28(土) 16:42:00.36 ID:PKX/B7Ioo
背後で猛烈な銃声と、それが弾き落とされる甲高い金属音が鳴り響く。
それを合図に走り出した私を、前方から銃口の群れが出迎えた。

その数、およそ10。魔法少女では無い今の私を殺すには、充分すぎる威力を持っているだろう。
だからどうした。そんな物を怖がるヒーローなんて居やしない。

私は、自分を奮い立たせるように一歩前に踏み出すと、勢い良く走り出した。
身体が前に進む度に胸が高鳴り、勇気が湧き出す。懐に抱いた宝物をどう使えば良いか、様々な考えが浮かんでは消えていく。

私が突き進みながらも冷静なのと反対に、物陰から狙う敵―――ゴーミン達は、浮き足立っているようだった。
明らかな戦力差にも関わらず向かってくるのは想定外だろうけど、適当に撃って外しまくるのは逆効果も良い所だ。

味方からは信頼を損ね、敵から……つまり私からすれば自信に繋がる……いや、当然か。
正義の味方ならこんな弾に当たりはしない。そんな事はいまさら再確認する間でも無い。
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/01/28(土) 16:49:51.48 ID:PKX/B7Ioo
残りおよそ5メートルまで近づいた私に一人の兵が殴りかかり……あろう事か仲間の弾幕で倒れる。

良いタイミングじゃない、使わせてもらおう―――と思ったのが先だったか、動くのが先だったか。
とにかく、気づいた時には私は彼の亡骸の肩から更にジャンプする。

銃口より先に視線が私を追い……そして私自身から手に持った物に移り……。
その「何か」が投げられた、と思った時にはもう遅かった。

自家製爆弾は、それなりの年月を置いても充分にその任を果たした。
ゴーミンの集団の頭上で炸裂したそれは、一時的にでも彼らの戦闘能力を奪ったのは間違いない。

チャンスを逃さないように、私は右腿のホルスターから拳銃を引き抜き、安全装置を外した。
330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/01/28(土) 16:51:45.84 ID:PKX/B7Ioo
倒れ込んでもがく彼……なのだろうか?
目の前の一人を踏みつけて自由を奪い、無造作に一発撃った。

足の下でもがいていた『それ』は、ぴくっ……と最後に小さく蠢いて、それから微動だにしなくなった。
靴から伝わる熱が抜けていく生ぬるさと、力の抜けた感触が余りにリアルで、私は死体を蹴って更に跳んだ。

そのままの勢いで前方に飛び込んで行く。行く手を遮る兵士達は、改めて見れば私よりだいぶ大きい。
軍人と一般市民の差は大きいようだ。

それでもやはり負ける気は微塵も起こらなかった。

一番手に棍棒で大上段に殴りかかった所を左手一本でいなし、顔面に拳銃を突きつける。
引き金を弾こうとした瞬間、目の前が爆ぜた。
331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/01/28(土) 16:54:08.17 ID:PKX/B7Ioo
目の前を銀の閃光が飛び回る度に、一人、また一人と人影が倒れる。
私の後ろから援護をかけているのは間違いなくルカ・ミルフィその人だった。

止めとばかりに彼女が左手のゴーカイガンを乱射する。
間をおかずに数発の小爆発が起こり、そして全てが終わった。

棒立ちで見ていただけの私が行き場を無くしたようにでも見えたのか、彼女は私ににっと笑いかけた。

「あたしに囮を任せて、すぐ逃げれば良かったのに。地球人ってみんなこんなに無茶が好きなの?」

余裕を見せれば私が安心する、と思っているのだろうか。
自分は肩で息をして、無理したのが丸わかりな癖に。
332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/01/28(土) 16:57:58.62 ID:PKX/B7Ioo
「……ありがとう、と言っておきます。流石に海賊戦隊を名乗るだけの事はありますね」

それでも、私は頭を下げた。
戦う力を持たない現状、今は信頼を築いておかなければいけない。

「そーそ、素直が一番だって。ザンギャック相手の戦いは遊びじゃないからね」
「魔法少女だった時はいざ知らず、今はもう戦えないんだからあたしらに任せなさいって」
「何の為にこんな所で穴掘りしてたのかは知らないけどさ……もう良いのよ?」

あなたに説教される筋合いも無いけど。口には出さず、私は地面を掘る時に脱ぎ捨てたコートを羽織りなおした。

「そう……ですね。私どうかしてました」
「街を守る正義の味方って言うのをやってみたかっただけなんです」

「でも帰る前に、一つお願いがあるんですけど……」
「私、スーパー戦隊に憧れてて……ルカさんの変身アイテム、見せてもらえませんか?」

努めてしおらしくしたつもりだったが、彼女の目付きは鋭かった。
二人の顔から笑みが消える。
333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/01/28(土) 17:00:58.89 ID:PKX/B7Ioo
「それ、どっかでも聞いた台詞なんだよね……やめときな、あんたじゃゴーカイジャーは務まんないよ」

「そんな、ひどい……。私、ただ憧れのヒーローの力が見たかっただけなんです!」
「お願いです……レンジャーキーだけで良いですから、見せてください!」

最後の方になると、腰がほぼ90°に曲がっていたような気がする。
さすがにやりすぎだったか、と思いながら恐る恐る顔を上げる途中、困惑した顔の彼女と目が合った。
自然と、上目遣いの形になる。

その体勢のまま10秒(体感では一分以上だが)が経過した頃だろうか。
いつの間にか黄色い人型がこちらに突き出されていた。

本人は下を向いて私と目を合わせるのを避け、一本のレンジャーキーだけをこちらに差し出していた。
334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/01/28(土) 17:03:14.19 ID:PKX/B7Ioo
「ルカさん……」

厚いコートに覆われた私の右手がゆっくりと近づく。
人間なら『目』に相当する部分が特徴的な、199戦士の中でも異端的なデザインのキーだ。

キーを受け取った指が離れるか離れないかの微妙な隙を逃さず、私は袖の中に隠したもう一つの銃で手のひらを『刺した』。

「……!?」

彼女が苦悶の表情を浮かべたのはほんの一瞬で、次の瞬間倒れこむように飛びすさるとすぐに無事な左腕でゴーカイガンを突きつけていた。
同時に私も右腿の拳銃を再度抜き、2つの銃口が交差する。
流石に海千山千の女盗賊、油断は出来ない。
335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/01/28(土) 17:07:49.23 ID:PKX/B7Ioo
「あ……ンた…っ、ナんで……!」

「マヒした身体で無茶しない方が良いと思うわ。射撃には自信があるの」
「この距離ならまず間違いなく私の方が早い……いくら宇宙人でも、ヘッドショットには耐えられないでしょ?」

しおらしい『反省した自分』の仮面を外して言い捨てると、驚愕の色がより濃くなる。
海賊が人を信じるだなんて……馬鹿らしいわ。

「暁美さんが便利な物を持っていて助かったわ……テーザーガンって言うんですって、これ」
「身体は人間とそう変わらないんでしょ?効くはずよね」

「手荒な事をして申し訳なかったけど、これも、他のレンジャーキーも元々地球の物、私達の物なの」

「だから、モバイレーツも私にちょうだい?」
336 : ◆bJPMxwu6ejEM [sage]:2012/01/28(土) 17:12:54.19 ID:PKX/B7Ioo
本日分投下終了です。

マミさんのブッ壊れについては一応理由もつけてあるんですが……それがわかるのは予定だと投下2〜3回、ひょっとするともっと先の事になるかもです

以前「ギャバンまでには〜」なんて言ってましたが、あれがもはや不可能どころかvsライダーまで持ち越すかもわかりません。

杏子篇も見返すとキャラヘイト的な内容になってしまいましたし、これからも糞展開になりうる可能性大なのですが……
もはや軌道修正不能な以上、せめて最後まで見守って頂ければ幸いです。
337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/28(土) 17:16:29.42 ID:p+4midNAO
乙です
マミさん完全に悪役じゃん…
よく、これでまどかやさやかが付いていったな…
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/01/28(土) 20:06:38.09 ID:HNKEBKj10
おつかれ
楽しみに待ってるよ
339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/29(日) 22:50:30.81 ID:uY63TkrCo
マミさんのメンタルが強いだと…!?

いや、いつもの如く虚勢張ってるだけか
340 : ◆uYmtk0Dve2aX [sage]:2012/02/11(土) 18:17:06.34 ID:grbImybro
酉これで合ってたっけ?まぁ良いや



月・火と入試なんで水曜に投下します
ゴーカイ終了までに間に合わなかった事をお詫び申し上げます
341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/02/11(土) 20:56:06.51 ID:mLxhbuJ5o
ゴーバス終了に間に合えばいいよ
間に合わなくてもいいけど
入試頑張れ
342 : ◆uYmtk0Dve2aX :2012/02/17(金) 03:13:24.13 ID:yPHW7ZtMo
結局何もかも守れない……
もう下手に謝る事すら神経を逆なでしている気がします 恐らくその通りなのでしょう
淡々と書き進める事に専念したいです


※このスレに出てくるありとあらゆる軍事描写はぜーんぶ嘘っぱちと妄想です、信じると恥をかきます
343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/02/17(金) 03:14:09.55 ID:yPHW7ZtMo
―――side ルカ・ミルフィ


ほんの一瞬だった。何も見えず、何も感じず、終わった後ですら気づかない―――たった一瞬。

レンジャーキーを選び、掴み、そして渡す。
その一瞬の間に、あたしは手の甲に電撃の短針を撃ち込まれてしまっていた。

そう気づいた時には、あたしは自分の脚で立つ事が出来なくなっていた。
無防備な姿を向けるまいと必死に跳んでも、1メートルと下がる事が出来ない。

だから、「敵」の憎々しいまでの妖艶な微笑から遠ざかる事は出来なかった。
344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/02/17(金) 03:14:48.73 ID:yPHW7ZtMo
あんた、なんでこんな事したのか知らないけど……ただと済むと思ってないわよね!

せめて気合を入れる為に、そうすごんで見せた。……つもりだったのに、実際に口をついたのはその半分ほどだった。
舌が震える。無様な片手落ちの言葉は、今の自分そのものだ。
こんな所で、止まってる場合じゃないのに……。

「無力な一般人だと思って油断したんですかぁ?私が襲撃の指導者だって知ってるんでしょ?」

レンジャーキーを大事そうに握りしめながら、犯人―――巴マミは、あたしを見下ろした。

「もう一度お願いします。モバイレーツとレンジャーキーを渡してもらえますよね?」

友好的な仮面を脱ぎ捨てた、戦士の瞳で。
345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/02/17(金) 03:17:40.63 ID:yPHW7ZtMo
「なん……でよ?」

「――――?」

身体は動かない、相手は予想外の手練、そして目の前には拳銃……。
絶対絶命の状況でも、あたしは聞かずに居られない。

「なんで……力が……欲しいの!?」
「たった一人で……あいつらに勝てる訳……ない!なんで……戦い……たがるのさ?」

力を求めるその訳を。もつれる舌を懸命に動かす。
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/02/17(金) 03:18:46.71 ID:yPHW7ZtMo
「決まってるじゃないですか……。正義を成す力を取り戻す為、そして――」
「この街からザンギャックを、あのインキュベーター達を叩き出す為ですよ」

行動隊長の名前を口にした時、瞬間的に眉間に数本の皺が入る。
5人のリーダー格としてあの白いのの言いなりで動いていた、と言うのがショックなのか……。

「ところで、そうやって質問ではぐらかすのが海賊流なんですか?」
恨み骨髄、と言う表情のまま、銃口と一緒に最後通牒が突きつけられる。

……ヤバ、地雷踏んだかも。
347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/02/17(金) 03:19:42.91 ID:yPHW7ZtMo
仕方なしにゴーカイガンをしまい、代わりにジャケットの内側から『モバイレーツ』を取り出してみせた。

「……それで良いんですよ。聞き分けが良くて助かりました」

「……ッ」

「誰だって、自分の命の方が夢よりも大事ですからね……早く渡して下さい?」

後退ったあたしに合わせて、一歩、二歩とマミが近づいて来る。
更に一歩、もう一歩、ベストな位置に辿り着いた所で―――、
348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/02/17(金) 03:21:53.57 ID:yPHW7ZtMo
「……そうでも、無い、かもよっ!」
渾身の力で顔面にモバイレーツを投げつけた。咄嗟に掴もうと差し出した手に、『ゴーカイサーベル』で斬りかかる。
更にそのアクションに合わせて、マミがハンドガンを向ける。一瞬の交錯。

生死を懸けた緊張が作る天然のスローモーション。それには不釣り合いな速度で、サーベルのワイヤーが伸びた。

鋭い刀身を備えたそれはモバイレーツを上空に投げ上げ、そのままの勢いでハンドガンをも真っ二つに切り裂いた。

不自然な姿勢から受け身を取る事は出来ず、お互いが地面に倒れ込む。
短い戦いは終わった。
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/02/17(金) 03:24:33.15 ID:yPHW7ZtMo
倒れこんだあたしを、今度は同じく地べたからマミが睨みつける。

「もうここまでの動き!?なんて回復力、それに……」
「自分の変身アイテムにあんな扱い……!あなた、スーパー戦隊の力を何だと思って……!?」

「自分の掴みとったお宝の事くらい、わかってないとでも思ってんの?」
「やりたい事をやる前に壊れるようなヤワな出来じゃ、海賊は務まらない!」

「あんたも!本当に欲しいなら、力づくででも自分で奪い取ってみせな!」
「それが海賊の流儀ってもんよ!」
350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/02/17(金) 03:27:34.73 ID:yPHW7ZtMo
「くっ……、上等よ、宇宙海賊っ!」

宣戦布告と共に、短針銃を数発連射し、放り出されたゴルフバッグの所まで一旦退却していく。

好機を逃さず、あたしはレンジャーキーを変形させた。
聞きなれた叫びが辺りに響いて、見慣れた光があたしを包む。

「ゴーカイチェンジ!」
<ゴォォォッカイジャァァァッッッ!!>

「ゴーカイイエローッ!……っとっとっと、よっと!」

不可視の高速で飛来し、電撃を放つ厄介な短針もこの姿になれば呆気無く叩き落す事が出来た。
流石に全部とはいかないけど、逃した弾もスーツを貫通はしない筈。


それでも……あまりに上手く行きすぎた展開に、あたしはこの時一抹の不安を憶えていた。
351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/02/17(金) 03:34:28.16 ID:yPHW7ZtMo
本日以上です。
お待たせした割りに短すぎる……


ゴーカイジャー本編もいよいよ次回で終わりですね。
海賊戦隊ゴーカイジャー、そして35のスーパー戦隊と過ごして来たこの一年間、本当に楽しいものになりました。
未熟で非力な身ではありますが、この作品と出会えてこうして二次創作出来た事を幸せに思います。

そして、ここまでお読み頂いた皆様も。
お付き合い下さってありがとうございました。
巴マミさん編も「もうちょっとだけ続くんじゃ」ですので、今しばらくのご愛顧をお願い申し上げます。
それでは本日は失礼致します。
352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/17(金) 19:53:15.91 ID:4foR6GmVo
乙!!

面白かったぜ、ゆっくりでも良いから先に進めてくれて感謝

353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) :2012/03/08(木) 19:26:09.98 ID:VYRCr6Teo
354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/03/31(土) 22:43:36.46 ID:EeHATemPo
私待つわ
355 : ◆uYmtk0Dve2aX :2012/04/07(土) 16:43:12.09 ID:tZLgqgADo
>>1でございます。
私の至らない供養に長期間お付き合い頂き、誠に感謝の言葉もございません。

一身上の都合ではございますが、入試を完了して現在Web環境の無い所へ転居中であります。
よって今は書き溜めに専念、契約を完了次第「巴マミさん×ゴーカイイエロー編」をまとめて投下する方針で進行しております。
申し訳ありませんが、今しばらくのお付き合いとお待ちをお願いいたします。
さすがに私も一周年を迎えるのはまずいと思ってはいますので。
356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/08(日) 00:03:47.04 ID:Oea62Acvo
OCN「僕と契約して終わり無くSS投下を続けてよ!!」
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2012/05/01(火) 15:52:40.50 ID:lDddmTa2o
358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/05/25(金) 07:04:38.13 ID:T6F7Ey4lo
スレ立てから一周年記念カキコ
359 : ◆uYmtk0Dve2aX [sage]:2012/06/07(木) 23:59:13.86 ID:o+MmhCGfo
申し訳ありません。一部のみですが、投下させて頂きます。
360 : ◆uYmtk0Dve2aX :2012/06/08(金) 00:22:04.95 ID:UEv/QYero
※ここまでの(原作含めた)あらすじ

地球の平和と人々の夢と希望を守り、戦い続けてきた34のスーパー戦隊。
ある日、彼らの力は「宇宙帝国ザンギャック」との激しい「レジェンド大戦」によって失われてしまう。
そしてそれから数年……キーの形となって宇宙に散らばった彼らの力は、「海賊戦隊ゴーカイジャー」を名乗る宇宙海賊によって集められ、再び地球へと戻ってきた。
ゴーカイジャーは地球に秘められた「宇宙最大のお宝」を追い求め、「スーパー戦隊の大いなる力」の入手とその障害となるザンギャックとの戦いを始める……。

〜1話〜
「大いなる力」の存在を元マジレンジャーを名乗る男から知った海賊達。
「お宝」の為にはそれが必須だと知った彼らはその後、立て続けにデカレンジャー・ゲキレンジャー・ガオレンジャー・シンケンジャーの大いなる力を手に入れる。
次なる大いなる力を目指し、鳥型ナビゲートドロイド、ナビィに案内を頼んだ彼らは、ザンギャック側の不思議な通信を傍受してしまった……。

「ミタキハラ」にレンジャーキーに関わる「何か」がある。 無視出来ない情報に、海賊達は早速調査に向かう。
聞き込みを始めた海賊達の前に現れたのは、正体不明の白い獣「キュゥべえ」と謎の戦士、「魔法少女」達だった。

キュゥべえに唆されるまま海賊対魔法少女の変則バトルが始まる。しかし、チームワークと経験に欠ける彼女達は、5人揃ったゴーカイジャーに難なく退けられる。
魔法少女のリーダー、巴マミの行動に賛同しなかった魔法少女、暁美ほむらから魔法少女の事情を知る海賊達。そこへ、キュゥべえからの呼び出しが入った。

数日の後、人々を襲う怪物であり、魔法少女の敵「魔女」の反応を察知した4人の魔法少女は、市内1の大病院そばの魔女の結界の内部で海賊達、及び暁美ほむらと出くわす。
双方が臨戦態勢に入る中、キュゥべえが意外な奴らと一緒に現れた。

なんと、キュゥべえはザンギャック帝国のエージェントであり、一億数千万年にも渡って地球をフラスコとした実験を行なっていたのだ。
そして、魔法少女とはもっとも有望な実験素材であり、とりわけ見滝原の5人は長年の研究の完成形であったのだ。

5人の力の証、「ソウルジェム」を回収すると同時に「元」魔法少女であった5人が倒れる。
それに構わず、キュゥべえは今までの実験と魔法少女の真実を語る。

卑劣極まりない行いに激怒する海賊達。ザンギャック軍、及び強化改造を受けた「魔女」と海賊戦隊との戦端が切って落とされた……。
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2012/06/08(金) 00:58:09.21 ID:UEv/QYero
〜あらすじ2話〜
ザンギャック一般兵を掃討したゴーカイジャーだが、今までにないトリッキーな攻撃を繰り出す魔女相手に苦戦する。
なんとか撃破したものの、船長でもあるゴーカイレッド/キャプテン・マーベラスが負傷、病院行きを余儀なくされてしまう。

そして何より、見滝原のザンギャックが滅んだ訳ではなかった。結界の消滅と同時にキュゥべえが病院の入院患者を人質に脱出、逃走を許してしまう。
その上、連れ去られた幼馴染の患者、「上条恭介」を追って元魔法少女の一人「美樹さやか」が共に連れ去られてしまったのだ。

海賊の一人、ゴーカイブルー/ジョーは魔法少女の保護を提案、マーベラスと同じくほむらを病院に残し、残った4人の海賊は見滝原の各地へ散った……。


〜佐倉杏子&ゴーカイグリーン/ハカセ編〜
魔法少女の力を失い、街を出ていく事を考える杏子の前に、海賊の一人、ドン・ドッゴイヤー(通称ハカセ)が現れる。
彼のヘタレぶりに拍子抜けした杏子は、とりあえず「相棒」との待ち合わせ場所までの同道を許す。 しかし、ハカセはそこから中々打ち解ける事が出来ない。
長年一人で戦い抜いた杏子の心は予想以上に強固だったのだ。懐柔しあぐねた頃、杏子の目的地である古びた礼拝堂に辿り着く。

そこでは一人の魔法少女がボロボロに痛めつけられていた。
杏子の相棒とはその幼い魔法少女、ゆまだった。
怒れる杏子はゆまの造った槍を携えて生身で礼拝堂に突入する。しかし、内部に居た謎の魔女の精神幻惑攻撃によって窮地に陥り、ゴーカイグリーンの援護でようやく脱出に成功。

一人の力では無理だと悟った杏子は、今度こそ3人で協力し、魔女を撃破する。
喜び合い、労をねぎらう3人。そこへ、同じく海賊の仲間、ゴーカイイエロー/ルカからの急な通信が入る。
仲間の元へ向かうハカセに、二人の少女も同行するのであった。

〜巴マミ&ゴーカイイエロー/ルカ編〜 ←いまここ
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2012/06/08(金) 01:02:00.31 ID:UEv/QYero
―――side ルカ・ミルフィ

「……形成逆転、って感じ?」

難なく弾幕を凌ぎ切り、スーツを纏った手足に力を込める。

足は動く。走れるかはわからなくても、今この場でとりあえず追いかける事は出来る。
問題は腕だ。指先に感覚が戻らない以上、キーを変形させて再変身は出来ない。
引き金が引けないから威嚇射撃の一つも出来ない、って訳か。

それでも、諦める気はさらさら無かった。
「巴マミ」の意思はあたしの想像よりはるかに強固だった。ここで逃したら、それこそ他の誰かからキーを奪うかもしれないし、最悪生身でザンギャックに挑みかねない。
それだけは止めないと。
363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2012/06/08(金) 01:11:29.16 ID:UEv/QYero
「正義の味方だか……なんだか知らないけど」
「こんな小細工に失敗したらすぐ逃げ出すのが、あんたのやり方なの?」

マミ本人は荷物にたどり着くとすぐに物陰に隠れてしまい、姿が見えない。
あたしの挑発の言葉は、届いたのかすらわからないまま、不自然なまでの静けさに飲み込まれていった。

先程まで響いていた筈の車の音も、まだ大した時間でもない筈なのに、足音一つ無い。
聞こえるのは、あたし自身の心音と……盛大にぶっ壊れた廃車が時折立てる小爆発の音くらいだ。

何かがおかしい、と思うより早く、あたしは次の挑発をしていた。
364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2012/06/08(金) 04:13:56.34 ID:UEv/QYero
「正義の味方さんにしては、ずいぶん臆病じゃん……?」
「あんた、あたしと戦うよりおうちでママの料理でも手伝ってたら?」
「……その髪、一人でセットするのは大変でしょ」

手伝ってもらってるんなら親孝行でもしてあげな、と声をかける前に、円筒形の何かが飛んでくる。
とっさに弾き落とそうとしたあたしのサーベルは、右手に衝撃が走ると共にはたき落とされた。

宙を舞うサーベルと入れ違いに、円筒型の手投げ弾がこちらに向かってくる。
急所を守る余裕すら無いまま、あたしは轟音と超新星のような光を受け止めた。
365 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2012/06/08(金) 04:42:34.10 ID:UEv/QYero
閃光弾に視覚をやられた事に気づいたのは、機関銃の凶暴な弾丸が頭の横に殺到した時だった。
真っ暗な視界の中で、すぐ横の地面がえぐられる感触だけを身近に感じる。

唯一の武器すらも落とし、感覚さえ奪われて、あたしはただ這いつくばってうごめくしかなくなっていた。


もはやどこから響くのかすらもわからないが、マミの怒声が頭の中で乱反射する。

「正義の味方にしては……って言ってたわね……」
「ふざけるんじゃないわよ、私の正義を……」
「私の力を……あなた達が奪ったくせに!」

「良くも私を……絶対に許さない!」

カチッ と言うロックを外すような音の後に、何かが空を切った。
それを感じ取った次の一瞬……。

あたしの身体は大きくはじけ飛び、更に次の一瞬には強く叩きつけられた。
366 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/06/08(金) 04:45:54.58 ID:UEv/QYero
お読みいただいていた方がまだいらっしゃるか甚だ疑問なのですが、とりあえず一旦中座させて頂きます。
本日中に続きを投下いたします。
367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/08(金) 12:02:11.74 ID:526U80mI0
乙です
とりあえずこの黄色い糞[ピザ]はさっさと[ピーーー]
368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/08(金) 13:15:18.76 ID:N/BborhUo
おお、来てたか

待ってるよ
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/08(金) 13:30:20.96 ID:69kpPoy10
自分に従わない元仲間を締め上げようとするわ
自分達が仕掛けたくせに悪びれもせず騙し討ちてレンジャーキーを奪おうする
あげく仲間の事など殆ど考えず道具同然のような扱い
書いてて思ったが下手な悪役より悪役らしくてマミさん屑だなぁ…
370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/28(土) 12:18:27.88 ID:hfGNAo6ao
私待つわ
371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/30(月) 14:03:17.26 ID:ppTHFlKCo
いつまでも
372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/02(日) 12:47:18.37 ID:QIBl6mKZo
待つわ
373 : ◆uYmtk0Dve2aX [sage]:2012/09/06(木) 23:56:59.77 ID:r+vdMBBpo
01:00には投下します
374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2012/09/07(金) 07:03:19.02 ID:nLlRO341o
――Side ルカ・ミルフィ


絶え間ないエンジンの鼓動、やかましいクラクションの音。時に、甲高いブレーキの悲鳴。
騒音は、さっきより明らかにクリアにあたしの耳を打った。

まだ目をつむったまま、今度は両手に少し力を込めてみる。ずっしりと硬い手応えは無く、掴めたのはサラサラとした砂のひとつまみだけ。

それでも明らかに力を取り戻した両腕を顔に伸ばし、土埃を拭う。
薄目を開けた視界に、巴マミの作り笑いがいっぱいに映り込んだ。
375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2012/09/07(金) 07:05:42.81 ID:nLlRO341o
「『これ』に問題があるって事は無いと思うのよね……」
「暁美ほむらの所持品は見た所、来歴のはっきりした物と無い物に分かれてる。でもこれは信頼出来る、恐らく軍の物でしょうけど」
「それに比べてこっちの拳銃はダメね? どこの製品か知らないけど、さっきの戦いくらいでもう弾詰まりなんて、危なっかしいなんて物じゃない……」

「ねぇ……聞いてるの?」

あたしを廃車にもたれかけさせると、巴マミは持ち物の整理を始めた。

一方的なおしゃべりに、今のあたしは一瞥をくれてやる事しか出来ない。
武器も奪い取られた今は、相手の一挙手一投足を観察するのが先決だ。
376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2012/09/07(金) 07:07:40.45 ID:nLlRO341o
「ま、良いわよ。これだけ撃ちこんでまたヒョイヒョイ動き回られたらその時は」
「もっと素直な方法で相手するだけだから。いくらあなたでも、鉛の弾丸なら堪えるでしょ?」

わざとらしくガチャガチャと腕の中の鉄塊を鳴らす。スーツ越しにでも相当な衝撃はあるだろうそれを、あたしより圧倒的に幼い生身の少女が撃てるものだろうか。

「その目は何? まだ私をどうにか出来るって思ってるのかしら?」

睨みつける視線がふっと逸れていき、両手が不自然に垂れ下がる。

「そうね。確かに貴女達は強いわよ」
「たった5人で帝国に反抗する度胸がある、数々の星を巡って場数も踏んでる」
「腕前も信念も全てを備えて、だからこそ自信を持てるし強くあれるのでしょうね?」

淡々とした口調が徐々に震え出す。明らかにおかしい、と思った時には既に遅かった。
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2012/09/07(金) 07:14:56.62 ID:nLlRO341o
「だからこそ気に入らない!」

憎しみさえ篭った絶叫に、あたしは手をかざして身を守る事しか出来なかった。
鋭い痛みが手首から伝わり、異常な速さで薄れていく。また麻痺させられてしまったようだ。

震える脚で立ち上がり、逃げ出そうとする間にも連射が見舞われる。
視界が歪み、膝を着いたあたしには、彼女の喋る言葉だけが妙にクリアに聞こえた。
他の音は全てノイズがかって聞こえているのに。

「自由に、自分達の夢の為に……そんな事で戦ってるなんて甘いのよ」
「力を持つには、貴女達には覚悟も背負う物も足りなさすぎる……!」
378 : ◆uYmtk0Dve2aX [saga]:2012/09/07(金) 07:22:04.84 ID:nLlRO341o
ワンパ展開&ブツ切れで申し訳ありません。
再三の時間超過にはもはや自分でも言葉が出ませんので、これからは出来もしない投下予告は行いません。

しかし、「次回で敵を出す」「黄色編は後二回で終わらせる」と言う二点についてだけは確約出来ます。
何度もご迷惑をおかけした身ですが、何卒お付き合いいただければ幸いです。
379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/11(火) 14:09:06.46 ID:9cSLMlNco
おお!お?
380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/01(木) 21:18:17.57 ID:8pMkmX04o
まだかな
381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北陸地方) :2012/11/25(日) 03:33:41.48 ID:K/cJ8RhAO
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