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仮面ライダー ―『約束 2011』―(魔法少女まどか☆マギカ×小説版仮面ライダー) - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/22(日) 19:43:19.16 ID:r+8ZPoNy0


本SSは、アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』と、小説『仮面ライダー 1971―1973』とのクロスオーバーSSです。
以下の点に御留意頂いた上で、本SSをお楽しみ頂ければ幸いです。

・本SSはクロスSSです。故に、世界観の摺り合わせの為に、双方の設定の一部に変更、捏造、独自解釈が存在します。
・『まどか☆マギカ』は本編開始直前、『小説版仮面ライダー』はエピローグの2年後からの開始になります
・一部、平成ライダーシリーズ、映画the First、the NEXT、仮面ライダーSPIRITSからのキャラ・設定・ガジェットの借用があります
・連載速度はかなりの低速です

それでは、開幕で御座います
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小テスト @ 2024/03/28(木) 19:48:27.38 ID:ptMrOEVy0
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満身創痍 @ 2024/03/28(木) 18:15:37.00 ID:YDfjckg/o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1711617334/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part8 @ 2024/03/28(木) 10:54:28.17 ID:l/9ZW4Ws0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1711590867/

旅にでんちう @ 2024/03/27(水) 09:07:07.22 ID:y4bABGEzO
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にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:18.81 ID:AZ8P+2+I0
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にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:02.91 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459562/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:25:33.60 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459533/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:23:40.62 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459420/

2 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/22(日) 19:43:48.97 ID:r+8ZPoNy0


―――そこは…実に異様な空間であった


何処までも何処までも続く、白と黒、ただその二色のみで構成された空間。
チェッカーズフラッグを思わせる白黒の市松文様の、歪みきった螺旋階段、
錯覚かとすら考えてしまう程に長い長い廊下、宙に浮き回転する、複雑な文様を描く切り紙状のオブジェ……

ここは果たしてアントニオ=ガウディの作か、それともフリーデンスライヒ=フンデルトヴァッサーの作か、
兎も角、人智を大きく跳び越えたセンスによって満たされた、真っ当な人が造ったとも思えぬ、奇っ怪極まりない建築物であった。


―――その中を、一人の『少女』が駆け抜ける。


桃色の髪を、赤いふた筋のリボンで左右に纏めた、可愛らしい少女であった。
まだ発展途上ながら、ハリがあって、モチモチとした感触の少女の肉体を包むのは、
白いストッキングに、可愛らしい靴、クリーム色を基調とした、どこかの学校の制服と思しきスカート姿。

身長、体格、顔立ちから判断するに、年齢は十代の半ばであろうか。
だとすれば、彼女の体を包むソレは、何処かの中学校の制服なのであろうか。

「―――ハァ」
「―――ハァ」
「―――ハァ」

少女は、白と黒の陰陽二色が描く螺旋回廊を駆け抜ける。
口からは、過度の運動により上がり切った息が漏れ出て、頬や額には汗が伝っているにも関わらず、
少女は決してその足を止める事は無い。

―――行かなくては、ならない

少女の考える事は、ただそれだけであった。
その思いだけを胸に、少女は、走る走る走る。
白黒だけの世界で、引き起こされる目の錯覚に、目測の狂うこの世界を、この空間を、
それでも、何処とも解らぬ終着地点を目指して走り続ける。

自分が何処へ向かっているのか?
自分は何故、そこへと向かっているのか?

その両方ともが、少女には判然としていない。
ただ、行かねばならぬ、と言う強迫観念めいた衝動だけに従って少女は走る。

解らぬ筈の終着点、知らぬ筈の終着点。
しかし、不思議と、体は自然に動いた。
肉体が、何処へ行くべきかを知っているかの様だった。

その導きに従い、彼女は走り続け―――

「―――ハァ」
「―――ハァ」
「―――ハァ」
「やっと……見つけた」

そうして、彼女は辿り着いた。
目の前には、都合20段ほどの、やはり白黒文様の階段があり、
その先に、唯一この世界で『白』と『黒』以外の色を備えた、
緑色の『EXIT』の誘導灯と、その下の分厚く大きな金属製だと思われる扉が見えた。

乱れた息も、高鳴る心臓も鎮める事無く、彼女はそのまま階段を駆け足で昇って、

―――ガシャン

ドアノブを回せば、重々しい金属音が響いて、
その重厚な外見に反して、扉は軽い感触で開いた。

少女は扉を潜り―――そして見た。
3 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/22(日) 19:44:41.62 ID:r+8ZPoNy0


「――――ッ!?」

それは…『終わりの風景』だと言えた。

かつてはそこに林か森の木々の様に乱立していた高層ビルは、根こそぎになぎ倒され、
アスファルトとコンクリートで舗装され、適度に自然も備えた、実に綺麗に整備された地面は、
そのことごとくが、見渡す限り洪水でもあったかのように大水で覆われている。

世界は色を失い……空は黒雲で覆い隠され、ほんの僅かな陽光すら差し込む事は無い、暗黒の世界となっていた。

そして、この暗黒世界あって、ひときわ少女の目をひくのは―――


―――『キャハハハハハハハハハハハハハハハハ』

―――『キャハハハハハハハハハハハハハハハハ』

―――『キャハハハハハハハハハハハハハハハハ』

―――『キャハハハハハハハハハハハハハハハハ』


耳障りな甲高い哄笑を上げ続ける、宙に浮かんだ巨大なさかしまの『魔女』。
その大きな大きな濃紺のスカートの内側では、何重にも重なった歯車が回り続けている。

その周囲では、少女を模したと思われる『影』の『使い魔』達が、
『魔女』のあげる哄笑をBGMに、狂々狂々と踊り狂っていた。

少女には一目で理解できた。直感的に理解することができた。
この惨状は、この災禍は、この惨禍は、この空を覆い尽くす黒い『魔女』の仕業なのだと。

―――『キャハハハハハハハハハハハハハハハハ』

『魔女』の哄笑がまたも響いたかと思えば、それと同時に、
空の『魔女』を中心に七色の波動が辺り一面へと広がって行き、
その波動は、荒廃した風景をさらなる廃墟へと変えて行く。

「やめてっ!!もうやめてっ!!」

少女は思わず『魔女』へと叫んでいた。
しかし、少女の叫びは『魔女』には届かない。
『魔女』はさらに哄笑を上げ続け、虹色の波紋は黒い空を走り、
高層ビルが浮かび上がり、宙で弾け、折れ、微塵に砕けて行く。

その余波たる突風は、少女の所にも伝達し、その勢いの強さに、
少女は思わずその身を屈めていた。

―――その時であった

『赤』『青』『黄』『黒』の軌跡が、流星の様に絶望に塗り潰された天を翔ける。
その姿を、少女は確かにその目で目撃した。

それは、4人の仮面の騎士であった。
青と銀の鎧に身を包み、その手に両手剣を構えた騎士が一人。
赤と黒の鎧に身を包み、その手に大長槍を構えた騎士が一人。
黄と紫の鎧に身を包み、その手に大鉄砲を構えた騎士が一人。
黒と白の鎧に身を包み、その手に大円盾を構えた騎士が一人。

顔の上半分は誰も兜に覆い隠されて見る事が出来ないが、
露わになっているその顎の形、頬の形、唇の形から察するに、
騎士たちはいずれもが『女』だと思われた。

少女と騎士たちの間にはかなりの距離があり、
しかも、騎士たちはみな、驚くべきスピードで飛翔しているにも関わらず、
少女には何故か、そんな騎士たちの姿、動きの一つ一つが、静止画を見る様にハッキリと見る事ができていた。

おのおのが、おのおのの得物を手に、絶望の『魔女』へと立ち向かっていく。
これは果たして『御伽噺』の一場面か、さもなくば『黙示録』の情景か。

どす黒い絶望に支配されたこの空間において、その四色の騎士たちだけが、
最後に残された希望の光の様に、少女には見えた。

しかし――――

「――――っ!?」
4 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/22(日) 19:45:20.11 ID:r+8ZPoNy0

四騎士の攻撃は『魔女』の肉を裂けども、骨を穿つまでには至らず、
反撃の波動は、まるで嵐を前にした紙飛行機の様に、彼女達を吹き飛ばし、
彼女達の体は、残らず地へと墜落した。

彼女達のあらゆる技も、武器も、力も、あの『魔女』には通じなかったのだ。

「―――ひどいよ」
「こんなのって……ないよ!!」

少女は思わずそう叫んでいた。
地に伏した騎士たちは、尚も立ち上がって『魔女』に挑まんとするも、
その体は深く傷つき、血は流れだし落下した廃墟ビルの地面へとしみこみ、装甲にはヒビが走っている。
立ち上がるのがやっと……見るからに、そんな様相であった。

「(どうしよう)」
「(どうすれば)」
「(助けなきゃ)」
「(誰か―――)」
「(誰か―――っ!!)」

そんな彼女の祈りに応えたのであろうか
かくて『救いの騎兵』はその姿を現した。

「―――!!」

少女が最初に聞いたのはエンジンの爆音であり、
何かが風を切ってこちらにやって来る音であった。

少女は、音のする方を向いた。
そして見た。聞いた。

廃墟の街を駆ける、白い鋼鉄の騎兵。
『竜巻(サイクロン)』の冠する、白い鋼鉄の騎兵。

それに跨るのは、黒と緑の騎士。
その顔を包むのは、髑髏の様な、昆虫の様な複眼の仮面。
その首には、炎よりも紅いマフラーが風に棚引く。

―――この世界には『神』は居ない
―――『奇跡』も『魔法』も在りはしない
―――だが……それでも

―――時代が望む時
―――世界が望む時

―――誰かが救いを求めて叫ぶ時
―――少女が救いを求めて祈る時

―――『彼』は必ず蘇る
―――『彼』は必ず現れる

だから少女は、その名を呼んだ。




「――――『仮面ライダー』っ!!」



5 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/22(日) 19:45:46.69 ID:r+8ZPoNy0




―――そこで…『目が覚める』




「――――あふぅ?」
「……………」
「―――――夢オチぃ?」
少女、『鹿目まどか』は、寝ぼけ眼を擦りながら、そう呟いた。




6 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/22(日) 19:46:15.62 ID:r+8ZPoNy0








仮面ライダー ―『約束 2011』― 第1話『開幕』










7 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/22(日) 19:46:44.25 ID:r+8ZPoNy0


しゃかしゃかと、歯ブラシが歯を磨く音が二つ分響き、
それに合わせて、洗面台へと蛇口から水の落ちるジャバジャバという音が共鳴する、朝の風景。

鹿目まどかと鹿目詢子の母娘は今日も仲良く、朝の歯磨き。
これは、鹿目家の朝の恒例であり、朝の日課でもあった。

「ねぇママ?」
「んん〜〜?何〜〜?」

まどかは、自分の隣で、まだ少し寝ぼけた調子で歯を磨く母親に、ふと気になった事を尋ねた。

「ママは…『仮面ライダー』って単語に…聞き覚えがある?」

彼女が気になっている事、それは今朝がた見た夢の事であり、基本的に彼女は、
あの夢に対して『変な夢を見た』以上の印象を抱いては居なかったのであるが、
ただ一つだけ、気になり、引っかかっている事があったのだ。

―――『仮面ライダー』

まどかは、夢の中で出会ったあの奇妙なバイク乗りの事を、
自分が確かにそう呼んだのを覚えていたが、
実の所、まどかには『仮面ライダー』と言う単語に聞き覚えがなかったのだ。

一体、夢の中の自分は、何を思ってあの謎の人物を『仮面ライダー』と呼んだのか。
確かに、髑髏の様な仮面を被った、バイク乗り(ライダー)ではあり、そう意味では、
その有り様をありのままに形容し、読んだだけとも解釈できるのだが、
まどかには、どうにもそうではないような、そんな引っかかりを覚えていたのである。

何か…特別な意味を持った『単語/名前』であるような……そんな気がしていたのだ。

詢子ママは、歯ブラシを一旦口内から出すと、娘の質問に直ぐに答えてくれた。

「えぇ〜〜と……確か有名な『都市伝説』じゃなかった?」
「……『都市伝説』?」

詢子ママは、自分の知っている『仮面ライダー』についての情報を、
娘まどかに語って聞かせたが、その内容を簡潔に纏めてみれば以下の様になるだろう。

その顔を、髑髏、あるいは飛蝗を思わせるフルフェイスの仮面で覆い隠し、
その首には紅いマフラーを巻いて、白いバイクに跨った『正義の味方』。
毎晩、バイクで日本中を駆け巡り、闇の中に蠢く『怪物』達と、人知れず闘い続けているという、不死身の男。

それが『仮面ライダー』の伝説であった。

「なんか最近…これを元ネタにした特撮ドラマをやってるらしいよぉ」
「たっくんが喜んで見てるって知久パパが言ってたよーな〜」

「ふーーん」
8 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/22(日) 19:47:10.79 ID:r+8ZPoNy0

言われてみれば、毎週朝の日曜日に弟のタツヤが早起きしてテレビの前ではしゃいでたのを思い出した。
中学生ながら、若さに似合わぬのんびり屋さんのまどかは、日曜日に早起きする事は少なく、
例え早い時間に目が覚めても、たいていは二度寝をしてしまう為に、タツヤの見ている番組を一緒に見た事は無いのだ。
もしかすれば、あれが『仮面ライダー』を題材にした番組なのかも知れない。

「(でも……それだと……)」

不思議なのは、何故その『仮面ライダー』が自分の夢の中に出て来たのであろうか。
夢の中でヒーローとして出て来る配役としては、余りに自分と縁が薄い様な気がする。

「(……うーーーーん)」

まどかの夢の中であそこで出て来るのが適当なのは、
彼女の感覚的には『銀色の光の巨人』であるように思えた。

小さい時に見た、あのシリーズの主人公の1人が、自分と同じ名前だったから、
以来、まどかはあの特撮シリーズに何かと愛着があったのであった。

―――閑話休題

「んで……何でまどかがそんな事を聞くのさ?」
「んーーー……友達との話で名前が出て来て…何だろうなぁ〜〜って」
「ふーーーーーん」

そんな受け答えの後に、取り敢えずまどかは、
これ以上、あの夢の事を考えるのをやめにする事にした。

所詮は『夢』の話である。論理的に考えてどうにかなる話では、所詮ないではないか。
これ以上考えた所で、『答え』が出るとも思えない。

故にまどかは、直ぐに今朝の『夢』の事を忘却の彼方へと押し遣ってしまった。
夢に出た…『四色の騎士』の事も、『仮面ライダー』の事も。

この時―――まどかは知る由も無かった。

あの夢の出来事が…そう遠くない未来に…殆ど『正夢』の光景として、
現実に起きる出来事だと言う事を。

鹿目まどかは知らない。

『伝説上の存在』と…すなわち『仮面ライダー』と、
その『実物』と、自分が対面する事になるなどとは。

今、こうして、何気なく享受している日常が、
この日を境に、ガラガラと崩れてしまうという事を。

世界を隈なく覆い尽くす『闇』の一端が、
この『見滝原』を侵そうとしているなどと。

彼女は知る由も無かったのだ。
9 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/22(日) 19:47:41.11 ID:r+8ZPoNy0




綺麗に整備された、見滝原の朝の白い街並みを、
朝の通勤ラッシュ…には少し早い時間帯でありながら、
それでもそれなりに走っている自動車の群れの中を、一台のバイクが走り抜ける。

―――『ホンダ CBR1000RR』

それが、そのバイクの車種である。
白を基調としたこの大型バイクは、2004年から、
現在である2011年まで継続して発売され続けている人気シリーズであり、
その最新モデルの一つであった。

それに跨り、この鉄の馬を軽快に走らせているのは、
一人の男と、一人の少女であった。
運転手は男の方で、少女はその広く大きな背中にしがみ付いて乗っていた。

男の身長が2メートル近くはあると思われる大男で、
通勤しているのか黒色の革ジャケットの下は以外にも濃紺の背広姿で、
白いヘルメットの下からは、癖っ毛の黒髪と、引き締まった剽悍な相貌が見える。

美男子――では無い。では無いが、決して醜くは無く、むしろある意味『美しい』と言える。
ただしその美しさは、単純な顔かたちの良さ、と言うよりも、風雨にさらされて研ぎ澄まされた巌を連想させる、
そんな剛毅木訥な内面が滲み出す、そんな無骨な『美しさ』であった。

そんな彼にしがみ付いているのは、平均よりやや背が低めの、中学生ぐらいの年齢と思しき少女であった。
燃える様な紅い長髪が、ヘルメットの下から伸びて、風に棚引いている。
中々の美少女であるが、どこか野性的な、負けん気の強そうな顔立ちである。

その身を包むのは…鹿目まどかも通う『見滝原中学校』のクリーム色を基調とした制服であった。

「なぁ……本郷の旦那」

信号が赤の為にバイクが止まった拍子に、
その少女は、自身がしがみ付いている男へと向けて、何やら尋ね始めた。

「私……その…あのさ」
「学校……上手くいくかなぁ?」

少しはにかむ様な、不安な様な調子の声で、少女は『本郷』と呼んだ男へと向けて問うたのだ。
10 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/22(日) 19:48:10.53 ID:r+8ZPoNy0

「いや…そのさぁ」
「どうせ…通うのは『仕事』の一環だし」
「別に無理してクラスになじむ必要なんてねぇんだけどさ」
「その…やっぱり…学校に通うの自体…久しぶりだから…」

「色々と…その…」

そこから先は、声が急に小さくなり、何やらゴニョゴニョとしていて、
何を言っているのか上手く聞き取れなくなる。

『本郷』は、胆っ玉の強いこの少女が、珍しく緊張しているらしいのを、
その声の調子と…『心音』の高鳴りで理解し、クスリと小さく笑った。

この娘も…やはり『少女』であるのだ。
こういう所は、如何にも『年相応』で、何とも微笑ましい。

そう思えば『本郷』は、背後の少女を元気づけるべく。

「大丈夫だろう」
「君は明るいし…人の心が解る人間だ」
「クラスにも…直ぐに溶け込めるさ」

「えへへ…そうかな?」

背後の少女が、若干顔を赤くしているのを、
その心音と血流音から理解した『本郷』は、
信号が青に変わるのを確認すると、愛車のアクセルを踏んだ。

2人の向かう先は―――『見滝原中学校』。

男は『教師』として、少女は『生徒』として、
今日この日から、この中学校へと通う事になる。

それは…さる『目的』の為に。

男の名前は『本郷猛』。
そして少女の名前は―――

11 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/22(日) 19:48:54.39 ID:r+8ZPoNy0





長い黒髪の少女…『暁美ほむら』は、外見こそ努めていつもの鉄面皮を装いつつも、
その内心は、かつて無い程に動揺していた。

その理由は……『有り得ないモノ』を見たからに他なら無い。

「それじゃぁ…暁美さん」
「今日からあなた『達』が通うクラスへと案内するから…ついて来てくれるかしら」

本日より自分のクラスの担任となる早乙女和子女史が自分を呼ぶ声が聞こえるが、
その声も、動揺に支配された彼女の耳には、まるで届きはしない。

それでも、彼女の体が殆ど無意識的に早乙女女史の後をついていったのは、
この動作を、彼女がそれこそ『何十回』も『繰り返した』が故か。

「なぁなぁ…アンタも転校生なんだろ?」
「同じ日に…同じ学校に、それも同じクラスに転校して来るなんて奇遇だよなぁ」

隣を歩くの赤い少女が話しかけて来るに、ほむらはかろうじていつもの冷たい視線を向ける事が出来た。
望まぬ『繰り返し』の中で、否応なく顔に張り付いた、冷たい鉄面皮に、今は感謝する。

かつての『弱い自分』であれば、動揺のあまり、とっくに正体を無くしていただろう。

「(どういう…事なの?)」

ほむらの中で何度も繰り返された疑問が、またも立ち上がる。
何度となく続く『繰り返し』の中でも、こんな事は一度たりとも無かった事なのだ。

余りにも、余りにも突然の予期せぬ事態に、彼女の心は『不安』と『期待』に押し潰されそうになる。

『繰り返し』の中で手に入れた、編み出した『パターン』が、この『時間軸』では役に立たないのではという『不安』。
『繰り返し』の中では今まで見た事の無かったこの新たな『事象』が、この『時間の牢獄』を突破する『鍵』となるのではと言う『期待』。

この二つの感情を、決して表に出さぬように努力しながら、ほむらは隣の少女を見る。

今までの『繰り返し』の中で何度も出会って来た『彼女』は今、初めて見る格好に身を包んでいる。
自分と同じ…『見滝原中学』の女子用制服に……

「アタシは…『佐倉杏子』ってんだけど…アンタの名前は?」

そう問うてくる、この『時間軸』では予期せぬ形での『初対面』となった『魔法少女』に、
暁美ほむらは、自分の名前を名乗り返した。

「――――『暁美ほむら』よ」

いつもの…静かで冷たい声で、そう返したのであった。
12 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/22(日) 19:49:24.04 ID:r+8ZPoNy0



『監視対象「本郷猛」』
『ならびに「佐倉杏子」の』
『見滝原中学校への到着を確認』
『引き続き…監視を継続します』

「御苦労さま…ただし、無理はなさらない様に」

『監視員』からの無線連絡に『須藤雅史』はそう答えて通信を切り、
彼が腰掛けている椅子の背もたれに、その身を預けた。

見滝原中学校から少し離れた所に停車した大型トレーラーのコンテナーの中に今、須藤雅史は居る。
コンテナーの中には、数々の電子情報機材と、椅子とテーブルが置かれ、何人もの『監督官』が、
その機材を前にして、『監視員』や、『監視ロボット』へと指示を出し続けている。

「(全く……面倒な事です)」

須藤は、目前のコンソールの隣におかれていたマグカップを手に取った。
中のインスタントコーヒーは、ただでさえ味がイマイチな所に、冷めてしまっているが故に、
とても飲めたものでない『泥水』同然と化している。

故に、ゲェッと嫌そうな顔を一つして、須藤はひと啜りしただけでマグカップから口を離したのだ。

「(やれやれ…小娘一人見張って…時が来れば誘拐するだけの仕事が……)」
「(まさかあの…『仮面ライダー』まで絡んで来る事態になるとは……)」

須藤は、自分の前で明滅を繰り返すモニターの一つをぼんやりと眺めた。
その中では、桃色の髪を赤いリボンで左右二つに纏めた少女が、青の短髪の友人と笑い合っている姿が写っている。
『彼ら』の…『最重要監視対象』であり…『標的』である少女…『鹿目まどか』であった。

「こんな小娘が……ねぇ」
「『宇宙の行く末を左右する』などと」
「本当なんでしょうかねぇ?」

そうぼやきながらも、須藤は他の監督官と共に、監視対象の観察を続ける。
莫大な『見返り』を与えられるのと引き換えに…『指令』は必ずこなさねばならない。

それが…その一員である筈の須藤雅史にも、その実体を正確には捉える事が出来ない…『組織』の『掟』。


須藤の所属する『組織』……その名は『ショッカー』と言う。

13 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/22(日) 19:49:54.13 ID:r+8ZPoNy0





『鹿目まどか』を軸に絡みあった『因果の糸』は今、
この宇宙に無限の連なった『他の世界』の一つを引き寄せた。

その二つの『世界』が重なり合い、『同化』した時、新たなる物語は始まりを迎える。

『仮面ライダー』と『魔法少女』のモノガタリが―――今、始まる。


14 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/22(日) 19:50:33.41 ID:r+8ZPoNy0
以上、第1話でした。

第2話は、この1週間以内に投下したします。
それでは
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/22(日) 19:50:54.25 ID:YdeQKdTBo
特板まどスレにいた方ですか?
杏子ちゃん「同盟」かぁ
16 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/22(日) 19:54:00.74 ID:r+8ZPoNy0
>>15
そうです。長編化しそうだったので、こっちに来ました
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/22(日) 19:55:20.81 ID:YdeQKdTBo
>>16
って言うか、向こうにURL貼ってましたねwwwwwwww


他ライダーとのクロス要素も期待出来そうですね、乙でした!
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/22(日) 19:55:50.10 ID:OSjdL5HD0

あんこちゃんは同盟というよりは少女結社サクラの方か?
小説版ライダー好きなので続きが楽しみ
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/22(日) 21:47:26.26 ID:ax4aGvhSO
乙。

続きを楽しみにしてます。
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/22(日) 21:48:27.89 ID:dnx8YZSSO
乙乙!
小説版は未読だがライダー好きだから楽しみにしてる!
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/23(月) 15:07:02.69 ID:bqCbhEQs0

まさか小説版が来るとは!
22 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/24(火) 18:49:05.74 ID:oDBr7SCP0
感想レスの感謝を

それでは、第2話のAパートを投下いたします
23 :第2話Aパート ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/24(火) 18:49:57.25 ID:oDBr7SCP0



―――『魔法少女』『暁美ほむら』は『時間遡航者』である

―――彼女を『改造』した『インキュベーター』は

―――『宇宙』の寿命延長の為に暗躍する敵性宇宙人である

―――『暁美ほむら』はたった一人の親友たる『鹿目まどか』の為に

―――『運命』と戦うのだ!!



24 :第2話Aパート ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/24(火) 18:50:43.70 ID:oDBr7SCP0








仮面ライダー ―『約束 2011』― 第2話『変身』







25 :第2話Aパート ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/24(火) 18:51:33.81 ID:oDBr7SCP0



―――授業のまるで集中できない
―――教師の声も、右から左へと…まるで素通りしていく様だ

何度も繰り返した…同じ内容の授業故に、
殆ど聞き流しているのは前の『ループ』と変わらないながらも、
暁美ほむらが今、授業を聞き流しているのはそれとは別の理由であった。

ほむらは、何とももどかしい、焦燥にも似たもやもやした感情に意識を支配され、
その視線は、授業用のパネルでは無く、自分の右斜め前の席に座っている、
赤く長い髪をリボンで一つに纏めた少女の背中へと注がれている。

―――『佐倉杏子』
―――『一匹狼』の、ベテラン魔法少女

何度も見たそのスレンダーで活動的な肢体は今、
自分と同じ見滝原中学の女子用制服に包まれている。

見滝原中学の特徴である、平均よりも高レベルな授業内容についていけていないのか、
その背中には、彼女には珍しい、明らかな焦りの気配が見てとれた。

それもそうであろう。
自分の知っている彼女は…確か小学校までしか行っておらず、
天涯孤独の身の上で、その日の糧を求めて、流れる様に街々を彷徨っていた筈なのだから。

「(どうしても…気になる点はそこ…)」
「(どうして…どうやって佐倉杏子が)」
「(この見滝原中学に『転校』してこれたかと言う事)」

杏子が見滝原に来る事自体は珍しい事では無い。
来ない『パターン』もあったとはいえ、共闘した回数も決して少なくないのだ。
問題なのは、である。

『戸籍』も『家族』も無い筈の彼女が、どうやって『見滝原』に転校してこれたのか―――

「(彼女の家族は…彼女を残して一家心中している)」
「(それは……彼女が見滝原に来たどのパターンでも確かにそうだった筈)」
「(今回のループでは…そもそも彼女の家族が心中していない…そんな可能性…)」
「(ありえるのかしら…そんな事…)」

疑問点は、それだけでは無い。

「(それに…彼女が、クラスメイト相手に語っていた『経歴』…)」
「(あれは――――)」

ほむらの記憶が正しいのならば、彼女の父は教会の神父だった筈だ。
しかし、先の休み時間で、彼女がクラスメイトに色々と質問されていたのを盗み聞きした内容を纏めるなら―――

「(父親は『スマートブレイン』の社員)」
「(見滝原に来たのは…父親の仕事の都合上)」
「(彼女は…そう言っていたわね)」
26 :第2話Aパート ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/24(火) 18:52:06.57 ID:oDBr7SCP0

―――『スマートブレイン』
この会社の名前に…ほむらは聞き覚えがなかった。
しかし、杏子の口から出たその名前に対する、クラスメイト達の反応を見るに、
かなり有名な会社であるらしい。

気になった彼女が、携帯で検索をかけた所、

「(東京に本社を置く…世界的大企業)」
「(この見滝原にも…支社は確かにあった……)」

たまたま自分が知らなかったのか、
それとも、この『ループ』において突然に出現したのか、
それはほむらには解らない。

「(教会と世界的大企業)」
「(つながらないわね…この二つが…)」

そもそも…本当にこの佐倉杏子は、ほむらの知っている佐倉杏子なのか。
考えれば考える程、その部分すら怪しくなって来るが、
ほむらは確かに見たのだ、彼女の指に嵌められた、赤い宝石をあしらった『指輪』を。

「(佐倉杏子は…『魔法少女』)」
「(そこには間違いは無い様ね)」

『魔法少女』であると言うならば…出来るならば自分の側に引き込みたい。
『ワルプルギスの夜』を相手取るならば…どうしても戦力として『魔法少女』は2人以上は欲しいのだ。
しかし…以前の、自分の知っている佐倉杏子であれば、一匹狼の佐倉杏子であれば、
利害交渉で自分の側に引き込めたモノだが……

「(この佐倉杏子は…どうなのかしら…)」

明らかにこれまでの『ループ』の異なる『パターン』を見せつけられれば、
色々と不安を覚えてしまうのはしようのない事であろう。

「(まどかと…美樹さやかには変わりは無いみたいだけど……)」

佐倉杏子の事が気になって、まだまどかに『契約』について釘を刺しておく事すらしていないのであるが、
それでも、さりげなく2人の様子を観察してみた範囲では、今の所、2人に特に変わった様子は無い。

27 :第2話Aパート ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/24(火) 18:53:07.57 ID:oDBr7SCP0

「(いえ…即断は禁物ね)」
「(ひょっとすると…表では見えない範囲で何かが違っているのとか―――)」
「(しかし…そうなってくると気になるのは……)」
「(巴マミね…彼女も…今回は何処か違っているのかしら)」

ほむらにとっては『先輩の魔法少女』であり、実に『複雑な感情』を抱いている相手だ。
ベテランの『魔法少女』であり、その戦闘能力は非常に高く、正義感も強いが、
その精神の根底に『弱さ/爆弾』を抱えており、それ故にどうしても共闘を躊躇わざるを得ない相手であった。

今回のループでは、退院してからの数日は武器の調達やインキュベーターの『端末』を狩るのに集中していた為、
まだマミとは接触を持ってはいないが、この分では、念のために早めに接触を持って置いた方がいいかも知れない。

「(巴マミは3年生……)」
「(休み時間に探してみるかしら……)」

そんな事を考えていた時だった。

「それじゃぁ…転校生くん」
「この問題を解いてみてくれ」

教師に、佐倉杏子が指名されている所であった。

「えと……あの…その」

杏子の明らかに焦っている姿が見てとれる。

「解らんのか?」
「はい……その……すみません……」

「まぁ…転校してきてばかりで、前と勝手が違うんだろうから」
「今回は見逃しておこう。次までに、ちゃんと準備してくるように」
「………はい」

杏子がしゅんとなっているのを見て、ほむらは、
意外とかわいい所もあるもんだと、そう、思うのであった。







「(まさか巴マミに会えないとは思わなかったわ)」

『理科』の授業の為に、移動教室で理科室に移動していたほむらは、
先の休み時間に、三年生の教室を訪れた事を思い出す。

件の巴マミは今日は学校を『病欠』していた。
何でも、悪性の流行性感冒に罹って、ここ数日連続して学校を休んでいるらしい。

「(『魔法少女』が……『風邪』)」
「(おかしいわ…ありえない)」

『魔法少女』は『病気』に罹らない。
何を隠そう、ほむら自身、持病の心臓病が『完治』した人間なのだ。
『魔法少女』は常人よりも遥かに強靭な肉体を持つ。
そうそう病気などにかかる筈も無い。

「(ちゃんと学校に毎朝連絡は入れているらしいけど)」
「(恐らくは仮病ね…でも、学校を休んで何を?)」

やはり今回の『ループ』はどこかしこオカシイ。
巴マミが学校を休むなど、彼女が死んだ時を除けば一切無かった筈なのに……

そして、ほむらにとってのこの日の『異変』は、これだけに留まらなかった。

「(――――誰?)」
28 :第2話Aパート ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/24(火) 18:53:33.84 ID:oDBr7SCP0

チャイムの鳴った後、見覚えの無い教師が、理科教室に入って来たのである。
この日の四時間目が『理科』なのは以前のどの『ループ』とも変わりは無い。
しかし、この授業の担当教員は、『鳴滝』とか言う教師ではなかったか。

「誰あれ?」
「わぁ…イケメン」
「誰このイケメン」
「嫌いじゃないわ!」
「だが無意味だ」
「ボドボドだーーー!!」
「ウゾダドンドコドーーン」

と、その教員に若干ざわつく教室内。
成程、確かに「イケメン」である。

ただし、顔かたち自体はむしろ泥臭い、冒頓な感触である。
しかし、その身に纏った真摯そうで剛健なる気配が、
この人物を人間として『美しく』みせているのである。

まだ『若い』感じである。二〇代の半ば程であろうか。

身長は二メートル近くとかなり高く、体格も大きい。
濃紺のスーツをピシリと決めて、その姿勢は定規でも入っているかのように真っ直ぐだった。

「(俳優の『藤岡弘、』の……若い時の顔に似ているかしら)」
「(若い時の藤岡弘、の顔を少し細くした感じかしらね)」

教卓に立った、その教員が口を開いた。

「理科教員の鳴滝先生だが」
「ぎっくり腰により急遽学校を休む事になった」
「よって…本日より暫くの間…私が先生の代わりに理科を担当します」

その教師は、静かな、しかし良く通る声でこう名乗った。

「『本郷猛』と言う。よろしく頼む」

それが…『本郷猛』と、
『暁美ほむら』、『鹿目まどか』、
そして『美樹さやか』との最初の『出会い』であった。

29 :第2話Aパート ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/24(火) 18:54:19.39 ID:oDBr7SCP0





結局、教員が変わったと言う異変が在りながらも、
それ以外はこれまでのループ通りにこの日の授業は全て終了し、放課後の時間を迎えていた。

「佐倉杏子さん」
「放課後…少し時間があるかしら」
「へ?…って何だアンタか」

六時間目の終了後、ほむらは指定の紺の学生カバンを背に負う様にして持った杏子にそう声を掛けた。

「へぇ…転校生同士で…何か話でもあるわけ?」

そう言いながら2人の方へ近づいて来たのは、青の短髪の下に、快活そうな顔をした『美樹さやか』その人だ。
美樹さやかに出現に、ほむらは思わず『えんがちょ』と言いながら顔を顰めたくなったが、
自慢の鉄面皮の仮面でそれを抑え込んだ。

ほむらは美樹さやかが嫌いだ。大嫌いだ言っても良い。
『悪い人間』では無く、基本的に正義感もあって明朗快活な性格なのだが、
他人への『好悪』の差が非常に激しく、その上に、ほむらとは非常に性格の相性が悪い。
その上、『魔女』と化した彼女に、これまでの『ループ』の中で何度も散々な目にあわされて来たこともあり、
ほむらのさやかへの感情・印象はどん底のストップ安だと言っても良かった。

「ざんねーーーん。でもこっちのアンコちゃんには既に私達の先役が入ってるのでしたーーー」
「だからアンコじゃねぇ!!キョウコだ!!何度も言わせんな!!」
「へへぇ〜〜……いいじゃんかぁ、アンコの方がカワイイじゃん」
「うっせぇ黙ってろよテメェ!!」

転校して来て初日だと言うのに、早速仲良くなったのか、さやかが杏子にじゃれついている。
初対面の印象の悪さと、価値観の相違からさやかと杏子は当初は敵対関係になりがちであるが、
この2人、その実、実に相性が良く、以前のループの中では共闘関係を結んだり、友人同士になったりもしていた。

今回は『転校生』と言う立場で見滝原に杏子が来たせいか、生来の相性の良さもあり、早速接近していた様だ。

「ええっと……ほむらちゃん…もどうかな?これから…私達、一緒に遊びに行く所なんだけど」
「ほむらちゃんも…一緒に来ない?」
「それは良いですわね……暁美さんも…佐倉さんとご一緒してはいかが?」

加えて、以上の様な事を言いながら、まどかもテトテトと歩いて寄って来た。
その後ろには、若草色のウェーブのかかった髪をした、さやか、まどかの共通の友人、『志筑仁美』がいる。
『上条恭介』がらみで、さやかの問題をさらにややこしくする人物であり、故に、ほむらの印象はあまり良くない。
悪い人間ではないし、上品で礼儀正しい人物なのであるし、『魔法少女』では無い彼女は、
ほむら達の抱える事情など知る由も無いのであり、つまり彼女が何か悪い事をした訳ではないのだが、
ほむらのこれまでの苦労を思えば、多少の悪感情は仕方が無いだろう。

ちなみに、まどかがほむらの事を『ほむらちゃん』と呼んでいるのは、
殆ど恒例行事となったまどかへの『釘刺し』を既に行ったからだ。

その上で、こうしてほむらの事をわざわざ誘ってくれるのだから、まどかの人の良さは推して知るべし。
素は臆病な病弱娘、仮面はつっけんどんな鉄面皮の自分とは、えらいちがいだとつくづく思ってしまう。
30 :第2話Aパート ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/24(火) 18:54:47.89 ID:oDBr7SCP0

「…………」

思わず…『ぜひともご一緒させてください!!まどかさんは最高です!!』と言いたくなる所を、
ほむらはその言葉が出るのをぐっと抑えた。鹿目まどかは、ほむらにとって唯一の大切な友達であり、
同時に、永遠の憧れの対象でもある。そんな彼女にお誘いを受けたのだ。本当は直ぐにでも諾と言いたいのだが、

「(どうするべきかしら……)」

ここは冷静に、この誘いを受けた場合と、そうでない場合の『損得』を冷静に計算する。
自分の全ての行動の目的は唯一つ、『まどかを契約させずに、ワルプルギスの夜を乗り越え、まどかを生存させる』事にこそ、ある。

その為にも、『インキュベーター』の端末を虱潰しに殺害したり、武器を調達したり、などと、
様々な下準備に奔走していた訳だが……

「(『インキュベーター』の契約からまどかを守るなら…)」
「(むしろここで…まどかと親しくしておいた方が得策かしら)」
「(彼女と親しくなって…つきっきりで彼女を守ればいい)」
「(それならば…ついでに美樹さやかの方も監視できる)」
「(加えて……)」

ほむらはチラリと、杏子の方を盗み見た。

「(私の知っている範囲では…美樹さやかの契約に否定的な佐倉杏子がこの場にいる)」
「(彼女と親しくなる事…今回の彼女と、これまでの彼女の何処が違うのか…)」
「(それを確かめる為にも…)」

「そう…それなら…」
「私もご一緒させてもらって…いいかしら」

「えへへ…良かった」
「暁美さんとご一緒できるなんて……光栄ですわぁ」
「うーーーん…まどかがそう言うなら…じゃ、一緒に行こうか」
「転校生同士…仲良くしとこうじゃん(コイツのノート借りとけば勉強の手間減らせるかな?)」

かくして…五人は揃って出かける事となったのであった。

「おっと…あのさぁ…出かける前に、少し待ってくれねぇかな?」
「あれぇ?アンコちゃんどうしたのさ?」
「だからアンコじゃねぇ!!ちょいと野暮用。校門で待っててくれ」

そう言うと、杏子は少しだけ一行と離れた。
ある人物に、『経過』を報告する為に。

31 :第2話Aパート ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/24(火) 18:55:13.33 ID:oDBr7SCP0


「よう…旦那」
「杏子か」

教室から少し離れた場所にあるエントランスの一角に、壁を背にした男が一人。
言うまでも無く、『本郷猛』であった。

「上手い具合に…『鹿目まどか』と接触出来た」
「これから…一緒に遊びに行く所だ」
「そうか……一人で大丈夫か?」
「こう見えても…修羅場はくぐってんのさ…アタシは」
「旦那達に貰った『アレ』もあるしな?」

「『魔女』の方はマミの担当だっけ?」
「ああ…本人が出るってきかなくてな」
「ああ見えて…マミは結構負けず嫌いだかんな」
「やられっぱなしじゃ気が済まないんだろうなぁ」

「まあ…兎に角、当初の予定通り…出来る限り鹿目まどかと付きっきりで動いてみるよ」
「―――って…旦那?どうしたんだ?珍しくニヤけた顔して」

本郷は『報告』をする杏子の顔を見て、少し嬉しそうに顔を微笑ませていた。

「嬉しそうだな、杏子」
「え?ああ…いやさ…その…」

どうやら、本郷の笑みの意味は、『報告』の内容よりも、
杏子が無意識のうちに嬉しそうな気配を醸し出していたかららしい。
杏子は、少しはにかみながら、その理由を言った。

「友達と…遊びに行くとか…その久しぶりだし」
「そうか」

本郷は、杏子の頭に軽く手を乗せ、ポンポンと叩くと、

「なら…楽しんでくればいい」
「ただし…『目的』は忘れない様に…だ」
「わ…わかってるよ」
「それじゃ…な。また後で…」
「ああ」

まどか達に追いつくべく、走り出した杏子であったが、
少し行った所で、思い出した様に振り返ると、

「ああ後」
「暁美ほむらについて…もう一度調べる様に」
「滝のジイサンに言っといた方がいいと思うんだけど」

「どうしてだ」
「暁美ほむらは、君と同じ日の転校生だと言うから、念入りに調べた筈だ」
「経歴にも特に怪しい点は無かった」

そう返す本郷に、杏子の理由を曰くに、

「いや…ちょっと気になる所がな…色々」
「まぁ…今回の御誘いにもは、ヤッコサンも呼ばれるから」
「こっちでもついでに色々探りいれてみるけど」
「念には念を入れといた方がいいだろ?」
「何せ―――」

「『連中』の手はえらく長く広いみたいだしな」
「ま…もう負けてやる気はしねぇけど」

杏子は、そう、八重歯の先を光らせて野性的に微笑んだ。

32 :第2話Aパート ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/24(火) 18:55:40.43 ID:oDBr7SCP0





コーヒーショップで軽食を肴に談笑し、
取りとめのない四方山話や、杏子、ほむらの、
各々の『表向き』の自己紹介をしたりで時間を過ごした後、
一足先に『習い事』―――「赤心少林拳」なる中国拳法―――で志筑仁美が抜けた後、
さやかの希望で、一行はCDショップに居た。

「ねぇ…ほむらちゃん…この曲どうかな?」

と、視聴用のヘッドホンを、まどかが此方に手渡して来るのを、
ほむらは静かに受け取って、自分の頭に嵌め、曲を聞く。

―――きみはーーーみたかーーーあいがーーー
―――まっかにもえるのをーーーー

「(何と言うか…これは酷いわね)」
「(こんな音痴な歌の何処がいいのかしら…まどかの趣味は時々解らない時があるわ)」
「えへへ…どうかな?」
「悪くないと思うわ」

と、思った事とは正反対の事をシレっと言いながらも、
ほむらは珍しくまどか達と早くも打ち解けていた。

さやかが此方にあまり悪い印象を抱いておらず、
杏子が上手く場の中心点になってくれたおかげかもしれない。

「(おおよその性格は…私の知っている佐倉杏子とは表面上の違いは無かった…)」
「(『魔法少女』なのは…指輪を見れば解るけど…)」

あちらが、こちらが魔法少女だと気付いている様には見えないが、
時々、こちらを明らかに『観察』する様に見ている時がある。
何かしら、気になっている点はあるらしい。

―――そんな事を考えている時だった


『―――――助けて……』

「!?」
「(ッ!?)」
「(ありゃ?この声は―――)」
「んあ?どうしたのアンコ?」
「だからアンコじゃねぇ!!」

―――『悪魔』の囁きが、一行の脳へと直接語りかける
―――それは…暁美ほむらにとっては、闘いのゴングに等しかった

33 :第2話Aパート ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/24(火) 18:56:21.86 ID:oDBr7SCP0





「何よ……何よこれ!?」
「どうなってるの……ここ…どこなの?」
「(チッ―――マズッたな…こんな所で…)」

「―――――」

一行で…一番焦っているのは、ほむらであった。
ほむらが制止するのを聞かず『声の主=インキュベーター』を探しに行かんとするまどかを、
自分が一緒にいれば契約の妨害が出来る、と、さやか、杏子とも一緒に、
ほむらは例の『立ち入り禁止』の場所へと向かったのだが。

そこは突如―――『魔女の結界』へと変わったのだ。

「(こんな時に―――『魔女』だなんて…まさか!?)」

ひょっとすると『インキュベーター』は、ここを『魔女の結界』と承知でまどか達を誘導したのだろうか。
『使い魔』達に襲われると言う『ピンチ』を演出し、土壇場で出て来て、半ば成り行き任せの『契約』を迫る……
如何にもあの『外道』のやりそうな手口ではないかッ!!

『―――■■■■■■■■■■■■■■■■!!』

『―――■■■■■■■■■■■■■■■■!!』

『―――■■■■■■■■■■■■■■■■!!』

『―――■■■■■■■■■■■■■■■■!!』

『―――■■■■■■■■■■■■■■■■!!』

そんな事考えている内に、綿毛にカイゼル髯を生やした様な『使い魔』達が、
鋏を開閉する様な耳障りな金属をBGMに、名状しがたい、外国語の様な、そうでない様な鳴き声を合唱しながら、
こちらへと迫り、群れなして包囲を為して来る。

「(どうする―――ここで『変身』する?)」

チラリと杏子の方を見れば、彼女も変身するかどうかで逡巡している様に思われる。
まどかやさやかの前で変身すべきかどうか、その事で悩んでいるのだろう。

「(でも―――もう時間が無いッ!!)」

仕方がない。
正直な話。まどかの前の変身だけは絶対に避けたかったが、まどかを守る為にも、そんな悠長な事は言ってられないッ!!
――――そう思った時であった。
34 :第2話Aパート ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/24(火) 18:56:54.13 ID:oDBr7SCP0

―――ブロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ……

「え?」
「この音……バイクのエンジン音?」
「(確かに…バイクのエンジン音)」

まどかも、さやかも、ほむらも、そして『使い魔』達すらも、
一斉に、その『音』のする方向を向いたのだ。

その音は、確かに『バイクのエンジン音』。
この、精神病者の妄想をそのまま具現化した様な、
前衛的かつ狂気的かつドグラマグラ的空間には似あわない、
人間的生活臭のする文明の利器の音であった。

「(この音は―――間違いねぇ!!)」

その音を聞いて、ニヤリと笑ったのは佐倉杏子である。
彼女は、このエンジン音に、聞き覚えがあったからだ。

バイクのエンジン音は徐々に大きくなり…そして―――


『―――■■■■■■■■■■■■■■■■!?』

『―――■■■■■■■■■■■■■■■■!?』

『―――■■■■■■■■■■■■■■■■!?』

『―――■■■■■■■■■■■■■■■■!?』

『―――■■■■■■■■■■■■■■■■!?』


ヒゲの『使い魔』達を蹴散らし、轢殺しながら、
一台の大型サイドカーが、場へと乱入し、
まどか達の前でキキィーーっと急停車した。

黒と紫と黄色で塗装された、特徴的な鋭角的シェルエットの大型サイドカーである。
副座部分には、デカデカと『スマートブレイン』のロゴが入っている。

そのサイドカーの搭乗者に、まどか達は見覚えがあった。

「「本郷先生!?」」

まどかとさやかの声が唱和する。
それに続いて、ほむらが思わず声に出していた呼び声が響く。

「巴マミ!?」

サイドカーに乗っていたのは、
搭乗席にはスーツ姿に手袋、白のヘルメットの本郷猛であり、
副座に乗っているのは、本日学校を欠席している筈の『巴マミ』であった。

見滝原の制服ではなく、黒を基調とした動きやすそうな私服姿であった。
何故か、アビエイターのサングラスを掛けている。激しく似合っていない。
35 :第2話Aパート ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/24(火) 18:57:20.89 ID:oDBr7SCP0

「あら?…アナタ?何処かで会ったかしら」
「まあいいわ…聞くのは後にしましょう」

と、サングラスを外しながら、巴マミはヒラリと優雅に副座から飛び降りる。

「まったく……迂闊よ佐倉さん」
「悪ぃなマミ……ドジっちまった」

「え?アンコ…このお姉さんと知り合い?」
「アンコじゃねぇ!!いや…ちょいと、な」

「何で…本郷先生が?」

混乱し、混沌とした場において、静かに『使い魔』達の動きを見ていた本郷が、静かに

「マミ…」

と、その名を呼べば。

「大丈夫よ猛さん」
「『魔女』退治は私の専門よ…さっきも言ってたけど…ここは私一人に任せて」
「猛さんは、そこの後輩さん達を、佐倉さんと一緒にお願い」

「解った。だが無理はするな」

マミが上に着ていた黒のジャケットを翻させる。
その下には――――

「怖かったでしょう…でも大丈夫」
「私と猛さんが来たからには……ね」

そう、まどか達に語りかけるマミの腰には、
銀に輝く、大きく機械的なベルトが巻かれている。

さらにマミは、懐から一つの『携帯電話』を取り出した。
サイドカーと同じく、黒を基調とし、そこに紫と黄色を加えた特徴的なデザインだ。
36 :第2話Aパート ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/24(火) 18:57:58.75 ID:oDBr7SCP0

―――ガチャリ

と、そのターン式の構造を展開させると、出て来たダイヤルに、
素早く『コード』を打ちこんだ。

―――『9』
―――『1』
―――『3』

―――『 standing by 』

野太い男性音声の電子音が響くの合わせて、
マミはその携帯電話を高々と天へと掲げると

「――――『変身』」

そう唱えつつ、携帯電話をベルトのバックル部に装着する。
と、同時に

―――『 COMPLETE 』

と、再び電子音声が響けば
巴マミの指に指輪形態で嵌められていた『ソウルジェム』が一瞬、
例の卵型の宝石として展開されたかと思えば、瞬時に、無数の光の粒子へと分解、
バックル部の携帯電話へと吸い込まれ、今度はその携帯から、光の粒子ので構成された黄色の光線が、
瞬く間にマミの体の上に幾何学文様を描いた。

―――そして

「えぇ〜〜!?」
「へ……変身ヒーロー!?」
「(何……何なの!?こんなの―――)」

一同の驚きの中で、一人の甲冑騎士が姿を現した。
黄色と黒と、そして紫で彩られた仮面の騎士。
その仮面には…『X(カイ)』の字があしらわれている。

「―――フゥン」

と、仮面の下のマミが得意げに微笑めば、
腰のホルスターにおさめられた、十字状の『銃』を抜き放ち、

「―――それじゃ…さっさと一仕事…済ませないとね」

その銃口を、迫る『使い魔』達へと向けた。

37 :第2話Aパート ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/24(火) 18:58:36.68 ID:oDBr7SCP0
以上です。
続きのBパートはまた後日に。

それでは。
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/24(火) 19:05:39.68 ID:I6bRqTRGo
マミさん「私を好きにならない邪魔な奴は、みんな死ぬしかないじゃない!」


……なんて事は無いね、たぶん、うん。一旦乙です、やっぱ続きが楽しみ

NEXTの「どーてい!どーてい!」の恐怖が蘇る教師・本郷猛だけど小説版ep後って事はやっぱ「タイフーン」は三連仕様なのかしらん
しかし他ライダーとのクロス多いなwwwwwwwwいちいち探すのが楽しみになってくる
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) :2011/05/24(火) 20:23:18.10 ID:Jkcxl1Q70
草加マミ・・・だと!?カイザに変身できるってことはマミさんオルフェノク?
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/24(火) 20:41:36.59 ID:ytuKDCdSO
細かいライダーネタを見つける度ににやにやしてしまうwwwwwwww

今後も楽しみだな
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/24(火) 21:07:34.75 ID:oZqfViPDO
913なマミさんとか某MAD動画思い出すww
乙です
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/24(火) 22:31:26.64 ID:8idLU5hJ0

まさかのマミさんカイザとは
SGが一瞬展開して変身したってコトは、カイザシステムとSGに何らかの関連が?
次回が楽しみです
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/05/24(火) 22:36:31.62 ID:y8l/uwKAO


>>39
(首がマミられる音)
44 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/25(水) 00:16:09.86 ID:D/gpIayN0
ちょっとだけ書き上がったので、少しだけ投下します
45 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/25(水) 00:16:44.26 ID:D/gpIayN0





―――『魔法少女』…巴マミが
―――『仮面ライダー』こと本郷猛と行動を共にしている
―――その理由…その経緯

―――事の始まりは『2週間』ほど前にさかのぼる


その日……巴マミはその手にソウルジェムを輝かせながら、
一人夜間パトロールに出ていた。

家には家族は居ない。
父も、母も、彼女を一人残して先に逝ってしまった。
いや、彼女が一人、生き残ってしまったと言った方が正確だろうか。

あの時…キュゥべえに『助けて…』と祈った事を、彼女は後悔してはいない。
生きていなければ…自分は『寂しさ』すら感じる事が出来なかったのだから。

だが…時々…
部屋に一人でいると…孤独に耐えられなく時がある。
いたたまれなくなる時がある。胸をかきむしりたくなる時がある。

そんな時は…彼女は独り夜を駆けるのだ。
『魔女』を、『使い魔』を探しだし…戦う為に。

自分は…『魔法少女の使命』に生きている。
そう考える事で、戦いに、使命に没頭する事で、孤独を忘れる為に。

彼女は、自身の魂の光たる金色を纏いながら、夜の道を独り往くのだ。


一時間ほど歩きまわって…そろそろ帰ろうか…そう思った時であった。

「…………」
「(…尾行(つけ)られている?)」

『魔法少女』は、常人よりも遥かに鋭利な感覚を持つ。
その感覚が、彼女を背後より追跡する、何者かの気配を察知したのである。

「(やだ……痴漢かしら…?)」

46 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/25(水) 00:17:17.97 ID:D/gpIayN0

『魔女』や『使い魔』を認識できない一般人の目に写る自分とは、
中学生の分際でこんな夜更けに、不用心にも独りでほっつき歩いている不良娘、であろう。

別段、自分の容姿を特別誇る訳ではないが、それでも、それなりの自信はある。
妙なのが寄って来た所で、不自然では無い。

「(ちょっと……こらしめてあげましょうか)」

そう思った彼女は、悪戯っぽく笑う。
自分は『魔法少女』。痴漢如き何するモノぞ。
仮に、強盗追剥の類であろうとも、赤子の手を捻る様に返り討ちにしてくれる。
自惚れでは無い。『魔法少女』の戦闘能力ならば、常人の追剥強盗など、例え銃器で武装していても物の数では無い。
ましてやマミは…有数のベテランであった。

そう思えば、マミは、自分から人気のない廃工場へと足を踏み入れていた。

「もういいでしょ?出てきたらどうかしら?」

かつては資材置き場だったと思われる、適当な空き地に到達した時、
彼女はその場でクルリと優雅にターンを決めながら、闇へと向けてそう呼びかけた。

闇の中から、まるで溶け出る様に、幾人もの人影が姿を現した。
その数は、全部で『12人』。揃いの灰色のスーツを着た10人に、それとは別の恰好をしたのが2人。
全員、男であった。

別の恰好をした2人は、それぞれこれまた異なった恰好をしていた。

一人は黒のズボン、ジャケット、帽子の三つ揃えの男で、帽子の下のその顔は、何処となく田口トモロヲ似の顔立ちである。
目に下に酷い隈がある上に、顔色が妙に青白くて、薬物中毒者を思わせる、危ない印象を相手に与える男であった。
もう一人は、ベージュのズボン、靴、ロングのトレンチーコートに、同色のソフト帽、さらに手袋までしている。
コートの襟を立てた上に、そのソフト帽を目深にかぶり、首には厚手のネッカチーフまで巻いているので、その顔はまるで覗う事が出来なかった。

―――痴漢?
―――強盗?

何となく…違う気がする。
どちらかと言えば、ヤの字のつく自由業の方々か、借金取りだと言われた方が自然な連中であった。
それにしても―――

「(何者かしら―――)」
「(いやね……酷く不気味だわ)」

恰好の違う2人は別として、揃いの恰好の10人は、まるで人形の様に生気が無い。
顔色も青白く、無表情で、ゾンビだとか、実は蝋人形だとか言われても、思わず納得してしまいそうな程に、
その10人は人の形をしてながら、酷く非人間的であった。

その不気味さは、『魔女』と言う、超常の化け物を日々相手にしているマミでありながら、思わず背筋が寒くなってしまう程で、
思わず彼女が、調子に乗ってこんな人気のない所に来た事を、後悔してしまう程であったが、今更、もう遅かろう。
47 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/25(水) 00:18:12.64 ID:D/gpIayN0

「ずっと…私を尾行てたわよね」
「何か御用かしら?生憎…私には貴方達みたいな人に追いかけられる理由なんて見当たらないんだけど?」

そう、マミが追跡者達に話しかければ、田口トモロヲ似の男が一歩前に出て。

「夜分遅くに申し訳ない…」
「私達は…さる『組織』から派遣されて来た者です」

と、静かに話始めた。
顔だけでなく、声も田口トモロヲに似ている。
その静かな調子に、『プロジェクトX』のナレーションをマミは思い出した。

「『魔法少女』…巴マミさん」
「我々は…正確には我が『組織』には貴方に用があります」
「これより…我々と一緒に行動を共にして頂きます…」

『魔法少女』!?
この連中は、確かに自分をそう呼んだが、一体どこでそんな事を聞きだして来たのか…
ひょっとすると、何処かの国の特殊工作員か何かなのだろうか?それで…自分を軍事利用か何かしようとして、
自分をかどわかしにでも来たのだろうか?

そんな中学生らしい発想が、彼女の脳を支配する。
通常であれば…妄想を一笑にふすべき思考。
しかしこの場合、マミの発想は決して間違っていなかった。

「嫌だといったら?」

マミはそう問うた。
男は答えた。

「残念ながら……死んでもらいます」
「!?」

あんまりな返答に…マミは顔を顰めると、

「あら…穏やかじゃないわね…」
「私を殺すつもりなの?」

「ハイ」

あくまで静かな調子の、事務的な返答であった。
それに少しムッとした彼女は、この不遜な連中に、自分の力を少し見せてやる事にした。
どこの手のモノだか知らないが…『魔法少女』を舐めるにも程がある。
この時は…そう『うぬぼれていた』。

「じゃぁ……そうしてみなさいな。出来るモノならね」

その言葉と同時に、マミの体は金の光に包まれて―――『変身』していた。
『人間』から『魔法少女』へと。
48 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/25(水) 00:18:47.74 ID:D/gpIayN0

「―――残念です」

マミが『変身』したのを確認した男がそう言えば、
それを号令として、10人の灰色スーツ軍団が、
一斉に、それこそ軍隊の様に足並みのそろった動きで、ズッと一歩足を踏み出して来る。

それに対するマミは、直ぐにでもマスケット銃を召喚できる様、用意をしながらも、
相手が何を仕掛けて来るのか、その一挙一動を見逃すまいと、注意深く見に回っていた。
この時、彼女は、この灰色スーツ軍団は一斉に懐に手を入れて拳銃でも抜いてくるかと予想していた。

―――そして…その予想は大きく外れた

「―――――え?」

その光景を見た瞬間、思わずマミはポカンと口を開けたまま、茫然としてしまった。
『魔女』と言う、超常の魔物を相手とする『魔法少女』の彼女をしてすら、この光景は余りに常軌を逸していたからだ。

揃いの灰色のスーツの、10人の男達の顔が、一斉に…『縦に割れた』のだ。
比喩でも何でもない。言葉の通りに、縦に一本、鼻筋にそって顔に線が入ったかと思えば、
まるで紙でも破るかのように、顔が二つに、左右に、割れたのである。

そして、その下、割れた人間の顔の下から飛び出してきたのは――――

『――――ウジュルウジュル』
『――――ギギギギギギギギ』
『――――ギチギチギチギチ』
『――――ガガガガガガガガ』
『――――キリキリキリキリ』
『――――ガチガチガチガチ』
『――――ジグジグジグジグ』
『――――ゾリゾリゾリゾリ』
『――――ググググググググ』
『――――ビチビチビチビチ』

名状しがたい…明らかに人間の口から洩れる筈の無い…『異音』。
事実、そこにあった十の顔は、いずれも、人間の顔では無い。

―――血よりも紅い…三つの『複眼』
―――巨大な、縦に二つに割れた『口吻』
―――その下から覗く、巨大な二本の『牙』
―――ガチガチと音を鳴らす…鋭い犬歯が生えそろった『顎門』
―――顔の全体を隈なく覆い尽くす、針の様に先の尖った…黒くて太い『体毛』

そう…それは『蜘蛛』を思わせる…怪物の顔であった。

続けて、十人一斉に、灰色のジャケットが弾け飛ぶ。
何故?それは、『手』が、いや『脚』が生えたからだった。

その先端が槍の穂先の様に尖った、顔と同じ黒く尖った剛毛に包まれた、
上下二対の、つまりは合計四本の『脚』が。元々人間に備わった四本の手足と合わせれば、その数が合計八本になる。

―――丁度…『蜘蛛』と同じ様に。

「それでは…相手をして頂きましょう…『魔法少女/半端者/半覚醒者/ギルス』」
「我らが…新世代の『改造人間』シリーズの一種」

「『新式蜘蛛男(クモロイド)』の御相手を」

その言葉を再び号令として、未だ唖然としたマミに対し、
十人…いや十体の『蜘蛛男』は、その口より一斉に十条の『糸』を吐きかけた。
49 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/25(水) 00:20:00.32 ID:D/gpIayN0
ここまで。本当に短い更新。
本日の投下分に『ショッカー』成分が足りなかったので


それでは続きはまた後日
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/25(水) 00:22:17.48 ID:0n/ceHc90
おお、乙!
博士亡きショッカーで新たな怪人の開発がどのように行われてるのかとか、大使は出てくるのかとかつくづく楽しみです
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/25(水) 00:26:35.70 ID:IPJ2V3v+o
乙!

ライスピ的要素にも期待できそうな投稿でしたな
「流星 1973」にちょっと劇場版アギトに似た物を感じた俺としてはアギトの設定が出てくるとなんか嬉しいんだよなぁ


「GOD機関」は『アポロ』しか出なかったけど他メンバーに当たるメンツとかは出るのかしらん
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/05/25(水) 00:41:48.06 ID:HEGhSy7yo
乙!非常に楽しみにしてる!

だが、単車・バイクのアクセルは 手 で ひ ね る んだ。踏まないからな。
昔某作家も同じミスやってて作品世界に入りにくかったことあるんでな。
そういうとこ頼む。切に。
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/25(水) 05:00:44.24 ID:8nsMxmrQ0
バイクで踏むのはクラッチだぁね
54 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/25(水) 07:29:29.87 ID:D/gpIayN0
>>52>>53
煤i;0w0)<ウゾダドンドコドーーーン!?

いや…なんつーーミスを……申し訳無い。
橘さんの所で、基礎訓練を受け直して来ます
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2011/05/25(水) 08:54:15.63 ID:Pfr3vDMW0
クラッチも踏まねぇよww
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/05/25(水) 09:36:10.83 ID:HEGhSy7yo
クラッチ踏むイメージもあながち間違っては無いが、踏まずに切るものだわね


基本構造として

右グリップでアクセル・ついてる右レバーは前ブレーキレバー。
左は普通に握るだけのグリップ。左レバーはクラッチを切るレバー。

右足は足載せステップの先に後輪ブレーキを 踏む ペダルがある。
左足は足載せステップの先に ギアを変えるレバーがある。つま先で上下する。


右手でアクセル・前ブレーキ。右足で後ろブレーキ。

左手でクラッチを切って、左足でギアを変えるわけやね。

ニュートラルからクラッチ切って下に一段落としてロー・ギア。発進ギアだね
そこから逆につま先でかきあげてセカンド・サード・フォース・トップ。車種によって
5速と6速がある。大排気量車は5速かな?

あと大排気量車だとセカンドギアやサードギアでも発進できる。
長々とスマン。
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/25(水) 10:00:15.37 ID:F00qy+tNo
なんという俺得なSSなんだwwwwww
58 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/25(水) 18:02:51.73 ID:D/gpIayN0
>>56
色々と感謝です。

思ったより早く書き上がったので、キリの良い所まで投下します
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) :2011/05/25(水) 18:03:00.07 ID:xilNJGM90
虚淵「誰に殺されたくない?」
マミ「草加だけは絶対嫌です」
60 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/25(水) 18:03:44.33 ID:D/gpIayN0



「――――ハアッ!?」

茫然としながらも、自分へと向けて一斉に発射された十条の『糸』をマミが避け得たのは、
彼女が歴戦の『魔法少女』であり、その体が半ば反射的に動いたからであった。

とっさに右手の内より黄色のリボンを顕現させ、それを宙へと伸ばし、空を走らせる。
リボンの先は、手近な廃工場の屋根の出っ張りへと絡み付き、それを基点に、
彼女はリボンを操作して、素早く宙へと浮かびあがった。

つい、本の一瞬前まで、彼女がいた空間へと、十条の『糸』が殺到し、
相互に絡み合い、結びつきあい、巨大な『糸』のオブジェを造る。

もし、ほんの一瞬でも逃げるのが遅れていたならば、
今頃はあの『糸』に雁字搦めにされて逃げる事すら叶わなかっただろう。

―――しかし、最初の攻撃をかわしたからと言って、それはこの戦いの終わりを意味しない

十体の『新式蜘蛛男』達の内、マミから遠い方の五体は、
その口吻を一斉に廃工場の屋根の上のマミへと向けて、
コンマ一秒のズレも無く、一斉に『糸』を再び発射する。

「――――ッッ!?」

それに対してマミは再び自分の正面にリボンを展開、
渦を巻くように回転させ、即席の盾と為し、迫りくる五条の『糸』を防御する。

だが、それは最初から『囮(ブラフ)』であった。

マミが糸を防御している隙に―――

『『『『『ギシャァァァァァァァァァーーーーー!!』』』』』

名状しがたい叫び声を上げながら、前衛五体の『蜘蛛男』達は一斉に跳躍、
ひとっ飛びに、マミの立つ廃工場の屋根の上へと降り立ち、

「ッ」

マミへと肉迫するッ!!
あるモノは『糸』を吐き、あるモノは、その六本の『腕/脚』を翳し、マミへと襲い掛るのだッ!!

迫りくる『怪人』達の、生理的嫌悪感を呼び起こすそのキメラ的容姿、
昆虫的な(蜘蛛は昆虫ではないが)非人間的肉体の挙動、口から洩れる昆虫的芳香と、
ガチガチと鳴る金属牙の擦れ合う音、酸っぱい臭いの息……
その全てが、マミの精神に根源的な恐怖感を呼び起こし、
ゴキブリと台所で遭遇した女子中学生の様に、顔を嫌悪に歪ませ、口からはヒィっと、
常人的な悲鳴を漏らした。しかし、それでも彼女は『魔法少女』であった。

「――――舐めないでッ!!」

その両手には、文字通り『魔法の様に』…白亜のライフルドマスケットが姿を現した。
その銃口は、各々、二体の『蜘蛛男』の頭部へと向けられ、

―――ズドドォォンッ!!
61 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/25(水) 18:07:32.26 ID:D/gpIayN0

重なる二つの銃声が鳴り響いた。




マミは、手にした十字状の『銃』……『カイザブレイガン』の銃口を、
迫りくるヒゲの『使い魔』…『ANTHONY』へと向けて、引き金を引く。

銃口より、マミの『魔力色』である黄色の『魔力弾』が、高速で連続発射され、
『ANTHONY』達へと次々と突き刺さり、その肉体を微塵に爆ぜさせ、消滅させて行く。

しかし、数が非常に多い。張られる弾幕を諸共せず、尚も此方へと全身を続ける『ANTHONY』の群れを、
より効率よく殲滅すべく、マミは空いている左手を、ベルトのバックル部に装着された携帯電話型複合機能デバイス、
『カイザフォン』へと伸ばし、カシャリと動かして文字盤を展開させ、素早く

―――『1』
―――『0』
―――『6』

と、打ちこめば、

―――『 Burst Mode 』

と電子音声が鳴り、バックルから引き抜かれた『カイザフォン』は『拳銃』形態、
『フォンブラスター』へと変形、右手の『カイザブレイガン』と合わせて二丁拳銃となり、

―――シュパパパパパパパパパッ!!
魔力光弾の弾幕はマミの両手の動きと連動して扇状に広がり、
何とかマミを害さんと接近して来る『ANTHONY』達を瞬く間に殲滅していく。

「(凄いわ……体が凄く軽い……こんなに魔力の弾丸を連射してるのに……)」

まどか、さやか、そしてほむらの驚きの視線をその背中で感じながら、
マミは『魔力』で構成された仮面の下で、余裕の笑みを浮かべる。

―――『S.R.G.(システム・ライダーズ・ギア)』

『緑川財閥』から枝分かれした…『美崎百合子』をその首班とし、
『少女結社サクラ』をその起源とする、表向きは世界的大企業、
しかしその実体は『超能力者=新人類』の自立自衛の為の秘密結社『スマートブレイン』が、
元々は『ショッカー』に対抗する為に、『S.M.R.』を参考に製造し、
紆余曲折あって『魔法少女』用へと改造された、『魔法少女』の特殊支援ツールである。

『ソウルジェム』と言う形で外化顕現化された『魔法少女』の『魔力』を、
『ドライバー』に内蔵されたプログラムを通して最も効率の良い形で伝導・運用する為のツールであり、
これを用いて『変身』し、戦闘を行えば、通常の『魔法少女』よりも圧倒的に少ない負担で『魔力』を行使できるのだ。

単純な戦闘能力では…実は『魔法少女態』に劣る半面、
戦闘効率と言う意味においては『ライダーズギア』の方が遥かに上であり、
さらに、『魔法少女態』では剥き出しの『ソウルジェム』部分が、
『魔力光子(フォトンブラッド)』で形成された『装甲』に隠れる為、
防御力と安全性と言う意味でも『魔法少女態』よりも上であった。
62 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/25(水) 18:10:44.07 ID:D/gpIayN0

「(私の場合は…手数が少なくなっちゃうのが欠点だけど……)」
「(それでも……全然……)」

『ANTHONY』が殲滅されていくのに、『結界』の奥の『魔女』が焦りでも覚えたのか、
『ANTHONY』に続いて、三つの目を備えた『蝶』と『蜂』の合いの子の様な『使い魔』、
『GERTRUD』が援軍として、『空(?)』から大量に降下して来る。

「(負ける気がしないっ!!)」

それでもマミは怯まない。

「猛さんっ!!」
「お願いしますねっ!!」

「解った」

と、背後で『スマートブレイン』製の『仮面ライダー/魔法少女』用『支援マシン』、
『サイドバッシャー』に跨った本郷へと呼び掛けつつ、
自身は左手の『フォンブラスター』を『カイザフォン』へと再変形、
『ドライバー』へと戻しつつ、『カイザフォン』に取り付けられた『ミッションメモリー』を取り外し、
流れる様な動作で、『カイザブレイガン』に装着。そうすれば、

―――フォンフォンシュィィィィィィィィン
と音が鳴り、黄色に光り輝く『ブレード』が『カイザブレイガン』のグリップ下部に形成される。

「ハアッ―――!!」

マミは、その光刃を閃かせ、残った『ANTHONY』へと突撃する。
その背後で、本郷が『サイドバッシャー』を操作すれば、

―――『 Battle Mode 』

の電子音声と共に、『サイドバッシャー』が変形、
まるで恐竜の様なシェルエットの、二足歩行型特殊戦闘メカへと変形し、
右手に内蔵された4連装バルカン砲が火を噴き、上空から迫る『GERTRUD』へと対空射撃を展開した。


眼前で繰り広げられる、余りにも非常識な、
まるで特撮かアニメの世界の様な戦闘風景に、
まどかは目が点になり、さやかは瞳を少年の様にキラキラ輝かせ、
ほむらは余りにも想定をブッ飛ばす展開に思考停止し、
杏子はポケットから出したハイチュウをモグモグ噛んでいた。
63 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/25(水) 18:13:12.02 ID:D/gpIayN0





「―――はぁ…はぁ…はぁ…」

マミは息を切らしながら、その額に浮かんだ汗を、左手の甲で拭った。
必死に呼吸を整えようとするが、上がり切った動悸はまるで収まらず、
上下する肩は、今なお恐怖にも怯えている。

金と黒と白で彩られた、彼女の優雅で美しい『魔法少女』としての戦装束には、
所々『糸』が絡み付き、緑色の体液がべっとりと付着し、しみ込んでいる。

そんな彼女の周りには、廃工場の屋根の上には、
バラバラになったり、頭部を破壊された、『新式蜘蛛男』の残骸が、ゴロゴロと転がっている。

千切れた脚が、飛び出した内蔵が、『改造人間』であることを示す『金属骨格』の破片や、
『強化細胞筋』の断片が、まるで屠殺場の如き様相を呈していた。

―――凄まじい激戦であった

飛び交う『糸』の群れ、迫りくる尖り、剛毛に包まれた『脚』や『腕』、
耳障りな『歯軋り音』、鼻を劈かんばかりの『刺激臭』……

その全てが…全ての人間が備える『野性』への根源的恐怖を刺激する。

『蜘蛛男』の一体に組みつかれた時の、耳を引き裂かんばかりの『ギチギチ』とした耳障りな歯音や、
鼻が潰れてしまう程の酸っぱい刺激臭を伴った吐息を思い出すだけで、体から力が抜けてしまいそうになる。

しかし……彼女は生き残ったのだ。
それも…殆ど『五体満足』で。
掠り傷なども負ったが、それは、『回復魔法』により、殆ど既に『完治』している。

『油断』さえしなければ…彼女は有数の強さを誇るベテラン中のベテランの『魔法少女』なのだ。
その戦闘能力は…『ショッカー』の『改造人間』にも決して引けを取らない。

―――だがである

―――モゾリ…
「――――!?」

何かの動く音。マミがバッと効果音が鳴りそうな程の素早い身のこなしで、音の方へと視線を向ければ、そこには―――

『――――シェァァァァァァァ……』

と、苦しそうな呻り声を上げる『蜘蛛男』が、今まさに立ち上がらんとしている所であった。
生き残りがいたのだッ!!
64 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/25(水) 18:15:24.11 ID:D/gpIayN0

「う」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

マミは絶叫すると、右手に握りしめていたマスケット銃に逆向きに握って天へと翳し、
まだ立ち上がっている途中の『蜘蛛男』へと肉迫すると、

―――ぶぅぅん
と、唸りを一つ上げながら、その銃床部分を、

―――ごわしゃぁぁぁ
『ギガ!?』

『蜘蛛男』の頭めがけて思い切り振りおろしたのだ。
苦しそうな悲鳴を上げて、再び倒れ込む『蜘蛛男』へとマミは続けて

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
―――ごしゃごばごりぼりがりげりぼぐぼかどか……

と、何度も何度も、『蜘蛛男』目掛けて銃床を振り下ろす。
普段の、優雅な戦闘スタイルを誇るマミのモノとは思われぬ、凄まじい『滅多打ち』である。

『ショッカー』の『改造人間』の備える『おぞましさ』は、『魔女』のソレとは大きくその性質が異なるのだ。
それによる『生理的嫌悪感』と『生理的恐怖感』が、彼女にこの様な行動を取らせたのだ。

彼女は、もうとっくに『蜘蛛男』が死んでいるのにも気づかずに、
その顔に緑色の体液が付着するのも構わずに、『蜘蛛男』の体を殴り続けた。



―――パチパチパチパチ
「いやぁ…驚いた」
「まさか『蜘蛛男(クモロイド)』を十体全部斃してしまうとは」
「やはり腐っても…半端な『未覚醒者(ギルス)』であっても『新人類(オルフェノク)』だと言う事なのかな?」

ようやく『蜘蛛男』が死んでいるのに気付き、からりとその手からマスケット銃が力なく落とすマミの耳に、
背後より拍手の音と、そんな静かな賞賛の声が飛び込んで来る。

慌てて背後を振り返れば…十体の『蜘蛛男』部隊と行動を共にしていた、
黒尽くめの田口トモロヲ似の男が、何時の間にか、廃工場の屋根の上、
『蜘蛛男』達の中に月を背に立ち、拍手をこちらに送っているのが見えた。

その隣には、トレンチコートの男の姿も見える。

何時の間にか、わざわざ上まで登って来ていたらしい。
65 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/25(水) 18:17:24.19 ID:D/gpIayN0

「―――はぁ…はぁ…はぁ…」

「ふぅむ…しかしいくら『兵隊』とは言え…」
「仮にも『改造人間』を相手にここまでねぇ」
「前に仕留めた連中とは一味違うのかな?」

「!?………『前に』?」

「ああ……そうだよ」

男の物言いに、ぎょっとして聞き返したマミの言葉に、
黒尽くめの男は、今晩の夕ご飯について話す様な気安さで、
マミへと驚くべき事実を語った。

「私達のチームだけに限って言えば…これまでで5人かな?」
「これまでの『魔法少女』達はみな…『兵隊クラス』だけで料理出来たんだが……」
「君に関して言えば……私達が直接相手をしなきゃいけないかな?」

「――――ッッ!?」
「(まさか)」

マミは…前に『キュゥべぇ』から聞かされた、ある『噂話』を思い出していた。

―――『魔法少女狩り』が行われている
あの時は冗談だと一笑に付したが…やはりあれは本当だったのだ。
だが…その『下手人』たるこいつらは一体……

「貴方達……一体何者?」
「残念だけど…これから死ぬ人間に名乗る必要は無いな」

「私を殺すつもりかしら……でも貴方の兵隊は―――」
「言っておくが」

マミの言葉を、黒尽くめの男が途中で遮った。

「私達と……この使い捨ての量産型を一緒にしてもらっては困るね……」
「何せ私達は―――」

―――その言葉と共に

「『士官タイプ』なんだから」

―――男は『変身』した
66 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/25(水) 18:20:12.09 ID:D/gpIayN0

それは、マミの目には、映画特撮の『モーフィング映像』に見えた。
それほどのスムーズさで、男の顔がみるみる内に『変形』していく。

―――『骨格』が組み替わり
―――『顔面』を始めとするあらゆる『表皮』が『体毛』に覆われ
―――体内の『金属パーツ』が体表上へと励起して来る

―――頬が耳まで裂け、捲れ上がった口唇より鋭く巨大化した牙が覗き
―――瞳孔が鋭く集束し、『ネコ科動物』の様に縦に鋭く長く変形する

そして最後に……

―――ジャキキィィン!!

その両手にそれぞれ一振りずつの先の尖った鋭い『刃(ブレード)』が展開する事により、
黒尽くめ男の『変身』は完了するッ!!

―――『ショッカー』の『新世代改造人間シリーズ』の
―――『士官タイプ』が一体

―――『鋏豹男(シザースジャガー)』であった

「それでは……始めましょうか」
「ッッッ」

コンマ数秒の間に、異形の怪物へと変身を遂げた黒尽くめの男の喉より漏れる声は、
しかし変身前とは変らぬ、いたって静かで事務的な声であった。

だが…その体から放たれる威圧感は桁違いである。先程の…『蜘蛛男』達と比べてもッ!!
故にマミは、もはや出し惜しみは出来ないと判断し、

素早くその右手に長大なリボンを展開させ、それを渦巻かせれば、黄色く眩い光が閃き…
戦艦主砲以上の口径を誇る、超巨大な『マチロック』の大鉄砲が姿を現した。

嗚呼…これぞ…巴マミが誇る最強の『必殺技』―――

「『ティロ――――フィナーーレッ!!』」

『最後の一撃』を意味する、最大出力の魔力光線砲『ティロ・フィナーレ』ッ!!
その金色の怒涛たる光の奔流は、『鋏豹男』を飲みこまんと空を超高速で走り―――

「……………」

これまで終始無言であったトレンチコート男が、
やはり無言のままに、『ティロ・フィナーレ』の射線軸上へと、
『鋏豹男』を庇うように割り込んで来る。

『ティロ・フィナーレ』の魔力光線は、トレンチコート男へと直撃し―――
67 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/25(水) 18:20:48.51 ID:D/gpIayN0

「――――嘘」

『ティロ・フィナーレ』の放つ衝撃波の影響で巻き上げられた煤塵が晴れた後には、
『豹鋏男』とは別の……殆ど『無傷』の新たな『異形』が仁王立ちしていた。

ボロボロと地面へと広がり、宙を舞う、焼け焦げ、粉微塵になったトレンチコートの残骸の下から出て来たのは、
その全身を、メタリックシルバーの合金と強化プラスチックの複合装甲で一切の隙なく覆い尽くされた巨体であった。

奇怪な兜を被り、その三角形を為す頭部に備わった大口からは、巨大な四本の牙が、上下二本ずつ生えている。

腹部の装甲部には…多少の焼け焦げた跡が付いているモノの、殆ど無傷。
その背中に、巨大な甲羅を乗っけたその姿は……一言言えば『金属製の亀』、であった。

「成程…恐るべき威力ですね」
「それが……貴方の『奥の手』と言った所ですか」

『亀男』の後ろから、ニュッと姿を現した『鋏豹男』が、静かな口調に、若干の嘲りを交えながら、マミへと言った。

「私であったら……それを喰らえば危なかったかもしれませんが…」
「残念でしたね…君の『奥の手』も…この『電砲亀男(カノンタートル)』には通じない」

「…………」

『鋏豹男』に、『電砲亀男』と呼ばれた男は、不意に、その場で四つん這いになった。

―――ガシャン

と、金属音がすれば、背中の甲羅の一部が展開し、空いた空洞から、ニュッと、巨大な『砲身』が姿を現した。
その砲門は、マミへと擬されている。

「!?」
「では…お返ししなさい」

『電砲亀男』の背中の砲門が、黄色く輝いたかと思えば……そこから、恐るべき光の奔流が、
超高出力の『プラズマ・グレネイド・キャノン』が、マミへと向けて発射される!!

その、光線は、唖然としたマミを―――
68 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/25(水) 18:23:41.30 ID:D/gpIayN0
the next の最大の不満点は、カメバズーカが出て無い事でした。
つうか何でノコギリトカゲだったんだろう?
某映画では、デンライナーをブッ飛ばす役だったのでビビりましたが

所で、この『カノンタートル』ですが、外見的にはアギトのトータスロードみたいな感じです


本日、深夜にも、続きを投下するかも……それでは
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/25(水) 20:53:57.13 ID:IPJ2V3v+o
すげぇ、戦闘シーンの描写がほんとにリアル……
どちらも夢と希望のファンタジーものである「魔法少女」と「特撮ヒーロー」のクロスSSで言うの何ではあるんだけど。でもこうもありありと脳裏で描けるような濃厚な描写はリアルだとしか言えないよね


それにしても投下、乙彼様でございました。
トータスロードと言うと……無印G3の唯一の戦果たる彼でしょうか?アギトは良く憶えてなかったり
今夜にも次が投下されるのでしたら、期待しています
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/05/25(水) 23:10:26.29 ID:HEGhSy7yo
コレはマジ楽しみだ。乙!
71 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/25(水) 23:53:07.65 ID:D/gpIayN0
投下はちょいと無理です。申し訳ないです。
続きは、多分、金土日のいずれかに

>>69
そーです。G3が最初に斃したアンノウンです。
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/26(木) 00:27:04.67 ID:oukNLMKt0
>>62でゲルトさんが魔女じゃなくて使い魔ってのが気になったんだが、このSSでは使い魔扱いって事でおk?
描写が素晴らしくて続き楽しみです。期待しています
73 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/26(木) 00:37:17.04 ID:1kVF8WAL0
>>72
申し訳ない。単純にこっちのミスです。昆虫っぽい翅付きの使い魔の名前は『ADELBERT』だったね
『GERTRUD』→『ADELBERT』に脳内変換をよろしくお願いします

後、次回の更新でたぶん本郷さんのターンです
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/26(木) 23:30:31.58 ID:wDLOxaEDO
作者さんが凄いのは重々わかるが、
なんかちょっと恥ずかしい書き込みだな。
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) :2011/05/27(金) 19:27:29.40 ID:XZxyE0px0
>>69
G3でもゼクトルーパーよりは強いさ
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/05/28(土) 17:48:17.91 ID:K2gC1BHI0
本郷猛のルックスとか、
バイクのエンジン音が聞こえてくるあたりの描写が好きだわ。
ただ、やたらと『 』を多用するのは読みづらいかな。
中山文十郎もそんな感じだけど。
77 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/29(日) 20:20:59.87 ID:Kl87lDAH0
続きを投下いたします
78 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/29(日) 20:21:30.57 ID:Kl87lDAH0



―――風を切って
―――白い騎兵が、夜の駆け抜ける

全身を『装甲』で包まれて尚、『彼』の余りに超越的な触覚は、身に触れ、ぶつかって砕ける風の感触を感じ、
聴覚が、2輪のタイヤが地を蹴る音を、時速350キロのスピードを出すべく超回転する超電磁モーターの駆動音を、
そして、それに混じって聞こえる自身のなす風切り音を聞き、
嗅覚は、埃っぽい都市部独特の空気の臭いすら感じ取る。

―――この身を包む、この『うねり』…『嵐』と呼ぶにふさわしいだろう

『彼』の…愛車のハンドルを握る力が、本の僅かだけ強くなる。

闇を切り裂く白いヘッドライトを灯すのは、鋭角的なフロントに、生き物の目の様に配置された左右二連のライト。
リア部には左右三連ずつ、計六連放熱パイプが、月と星に照らされて輝いている。

白を基調とし、所々を赤色で塗装されたこのバイクのフロント部には、『スマートブレイン』のロゴが一つ。

度重なる改修、改造、代がわりを繰り返した『彼』の愛機。

―――その名も…『サイクロン14』
―――『嵐』の名を冠する…夜を裂く流星の如き、白の鉄騎兵

『偽装』を既に解かれた、フルカウルの『サイクロン14』を、
人気のない、夜の見滝原再開発地域にて走らせる『彼』の耳には、
『サイクロン14』の駆動音とも、風切り音とも違う、新たな『音』が飛び込んで来る。

―――それは確かに『銃声』であり、『獣』の雄叫びであった。

今、彼が身を置くこの『平和』な『見滝原』には、まるで似合わない、まさに『異音』。
それは、この闇夜の中、世の理より外れた誰かが、何かが蠢いている、確かな証拠。

―――誰だ
―――誰だ?
―――誰だっ!?

―――『悪魔』が、今夜も、騒ぐのか

―――『死神』が、歌い、踊るのか

―――『妖怪』が、獲物を、狙うのか……

―――『やつら』が、『やつら』が、『やつら』が!!
―――この闇夜の中、またも誰かを踏みにじろうと言うのか!?

「(だが――――)」

―――そうはさせない
―――その為に…その為だけに
―――『四十年』の長きに渡って戦い続けども
―――この命…尚も生きてあり

『サイクロン14』に跨る彼の腰元では、三つ並んだ赤い風車…『三連タイフーン』が、
膨大なる発熱を起こす彼の肉体を冷やさんと、今も唸りを上げて風を取り込んでいる。

その身を包むのは…黒と緑の異形の鎧。

黒と緑の装甲と兜。風を感じる二つの『触覚』
その中において、輝くのは仄かに紅く輝く、左右の複眼。

その双眸は『髑髏』の様であり、同時に『飛蝗』の様でもある。

―――『彼』は、急ぐべくさらにアクセルを吹かし、スピードを上げる
―――トップスピードたる時速450キロまで一気に加速した『サイクロン』は
―――走る。走る。走る。

―――『命』を守る為に
―――『生きたい』と思う者を救う為に

―――『神』も『奇跡』も『魔法』も無い闇の底に指す
―――最後に残った…一筋の『光』と成る為に

―――『彼』は走る
―――赤いマフラーを棚引かせ
79 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/29(日) 20:23:49.68 ID:Kl87lDAH0




「はぁ……いや……いやぁ……」

―――巴マミは追い詰められていた。
彼女の手には、大口径の白亜のライフルドマスケットが構えられ、
その銃口は小刻みに揺れつつ、左右に激しく、その照準が揺れる。

間一髪の所で、『電砲亀男』の『プラズマ・グレネイド・キャノン』の電子の奔流を回避し得たマミだったが、
逃げられたのは、そこまで。廃工場の屋根より飛び降りた彼女は、またも…異形の軍団に包囲されていた。

『イィィィィィィィィィィィ』

『イィィィィィィィィィィィ』

『イィィィィィィィィィィィ』

『イィィィィィィィィィィィ』

『イィィィィィィィィィィィ』

全身を、黒いラバーベースのコンバットスーツで覆い尽くし、
その顔面すらもミラーシェードのバイザーのガスマスクで隠して、
その手にはバチバチと放電音を立てる『電撃棒(スタンロッド)』を構えた、
あからさまに怪しげな異形の襲撃者達である。

その口から洩れるのは、異様に甲高い、実に人間離れした咆哮であり、
それは『電撃棒』の放電音とコーラスを為して、耳障りな合唱は、
根の部分ではまだ女子中学生に過ぎないマミの精神をじわじわと削り取って行く。

―――『ショッカー』謹製の『戦斗員(コマンドロイド)』である。

『蜘蛛男(クモロイド)』の様な量産型の『上級兵士型改造人間(レベル2)』にすら劣る、
彼ら以上の使い捨ての『下級兵士型改造人間(レベル1)』である。

サイバネスティクな改造は一切施されていない、超安価な量産式の生化学的強化改造を施された彼らは、
何処かから拉致されて来た飢餓難民やスラム民をその『材料』としており、
黒い戦闘服の下の肉体には、人間的精神や記憶はおろか、人間的肉体すら、もはや止めていない。

いわば…命令を理解する最低限の知能と、無理矢理に強化された身体機能以外の全てを斬り捨てた…『肉の塊』である。

彼らがもはや人間の体を為していない、その証拠は、マミのマスケットにより仕留められた『戦斗員』の死体から覗える、
漏れ出た『緑色』の体液や、飛び散って後に、グズグズと溶けだし、崩壊していく、斑文様の肉の破片であろう。

第3世界で問題となっている…人口爆発による大量の飢餓難民の発生。
これに対する、『ショッカー』なりの解答がこれであった。

そして…マミを包囲しているのは…彼らだけで無い。

80 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/29(日) 20:25:49.31 ID:Kl87lDAH0

宙を旋回し、やはり耳障りな鳴き声を立てながら、毒々しい鱗粉の雨をマミへと降らすのは、
4体の『新式毒蛾男(ドクガロイド)』である。

異様に軽い骨格と肉体を、その巨大な翅で滑空させるこの『毒蛾男』の『鱗粉』は、
非常に強力な毒素であり、風に乗せれば、容易く大量虐殺を為す『毒ガス』となる。

『魔法少女』はその肉体の特性上、毒は殆ど通用しないが、
それでも…人と蛾のキメラ的異形の怪物が、自身の上を旋回していると言うだけで、
マミには充分以上のプレッシャーとなっており、マミを追い詰めるのに一役買っていた。

―――『魔女』に比べれば
―――『ショッカー』の『改造人間』達は、余りに『人間的』である

『魔女』も…その『起源』を考えれば『人間的』であってしかるべきなのだろうが、
『魔女』という存在は悪夢的であっても、その存在は実に概念的であり、
相対する魔法少女達にとっては、亡霊と遭遇した様な心理的恐怖を与えるのである。

対して『改造人間』の持つキメラ的異形は…マミに対し生理的嫌悪、恐怖を与えるのだ。

コイツラの相手をするぐらいならば…マミにとってはまだ『魔女』の相手をしている方が気が楽であった。
正体不明の…このキメラの群れ達は…マミにとって如何ともし難い程に醜悪であり、恐怖であった。
『改造人間』の異形は、マミの『少女』としての感性を酷く攻撃するのである。

「あなた達は…『何』…?」
「一体……何だって言うの?」

純粋な…『戦闘能力』と言う見地では、今、マミを包囲する『改造人間』軍団は、マミの持つソレには遠く及ばない。
しかし…『ショッカー』の最大の武器とは…その名の示す通り『恐怖』である。

『改造人間』の持つ『恐怖』が…マミを追い詰めて行く。

「――――知る必要はありませんよ」
「言ったでしょう?今からアナタは死ぬからです」

ハッとしてこの方へと銃口をマミが向ければ、早くも追いついてきた、
『鋏豹男』と『電砲亀男』の姿が見える。

―――異形共の…夜の祭典
―――ある意味では…『魔女の祭典(ヴァルプルギスナハト)』以上の悪夢の光景が、マミを取り囲んでいる

「―――何なのよ」
「何なのよ…あなた達」
「何者なの?何が目的だって言うの?」

そんなマミの当然の問いに、『ショッカー』は答えない。
彼らが踏みにじって来た…数々の『必然の犠牲(コラテラルダメージ)』。
その数は余りに膨大である。故に、そんなモノにいちいち答えたりはしない。

『ショッカー』に狙われた者の辿る末路は……おおよそ一つだけ。
訳も解らず……ただ死ぬだけ。

―――ただ一つの

―――ブロォォォォォォォォォォォォォォ!!
「!?」
「!?」
「!?」

―――『例外』を除いて
81 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/29(日) 20:28:38.96 ID:Kl87lDAH0

それは、突然に、やって来る。
遠雷の様な響きを伝令の喇叭としながら、『嵐』を纏って……『彼』はやって来る。

『戦斗員』を轢き飛ばし、跳ね飛ばし、マミと、『鋏豹男』『電砲亀男』との間を塞ぐ様に、
その白いバイクは、超高速で割り込んで来た。

『鋏豹男』は、『電砲亀男』は、知っていた。

それは…生きる『伝説』であった。
『神』も『奇跡』も『魔法』もない世界に、ただ一つ…確かに現れた現代の英雄。

―――白と赤の『サイクロン』
―――黒と緑の装甲服
―――ヘルメットから伸びた触角、薄紅色の複眼
―――髑髏の様な、飛蝗の様な仮面

『四十年』もの長きに渡り……『ショッカー』と戦い続けて来た、ただ一人の男。

『鋏豹男』は、『電砲亀男』は、『彼』の名前を知っている。
故に…呻くようにその名を呼んだ。


「―――『仮面ライダー』……」
「―――『本郷猛』ッ!?」

「何故…ここにッ!?」

本郷は…『仮面ライダー』は答えた。

「お前達のいる限り…」
「俺は……必ず現れる」
「世界中の…何処であろうと」

―――深紅のマフラーが、闇夜に栄える
―――マミはその赤を…茫然と見つめた

82 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/29(日) 20:31:25.86 ID:Kl87lDAH0




―――『仮面ライダー』…本郷猛は『改造人間』である

―――彼を改造した『ショッカー』は、世界を陰から『死』と『恐怖』で支配する秘密結社である

―――『仮面ライダー』は踏みにじられんとする『生命』を守る為に、『ショッカー』と闘うのだ!



83 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/29(日) 20:33:15.59 ID:Kl87lDAH0


「―――あら…意外ね」
「てっきり…逃げるモノばかりかと思ってたけど」

『X(カイ)』を象った仮面の下から響く、マミのそんな声に、
正体を無くしていたほむらは、ようやく正気を取り戻していた。

見れば…手塩にかけて育てた薔薇園を荒らされた為か、
本来ならば『結界』の最奥に居る筈の『魔女』が、その異形をほむら達の前に曝している。

―――“薔薇園の魔女”『GERTRUD』

それがこの『魔女』の名前だ。
その外見は…どうやって形容したものだろうか。

簡潔に、ありのままに描写するならば、
緑色のタコ状の頭部に薔薇をあしらい、背中には蝶の翅、
ずんぐりとした茄子型の体型で、そのでんとした尻部には、
『根』を思わせる、幾本ものニョロニョロとした脚が生えている―――
と、こんな所であろうか。

『魔女』はその異形を深紅の玉座に据えて、こちらを睥睨している。
その周りには…小型の『ADELBERT』が羽虫に様に群がって飛びまわっていた。

それを見たさやかは

「グ…グロい」

と、万人が等しく抱くであろう感想を呟いていた。

この薔薇園の『魔女』とは、ほむらも以前の『ループ』で遭遇した事があり、勝利もしている。
決して、強い『魔女』では無い。マミであれば、文字通り楽勝の相手。
ただしそれは…ほむらの知るマミの話である。

この時間軸のマミは―――

「…………」

全身を、黒と黄色と紫の装甲で包み、その手には『X』字状の奇怪な剣と一体化した銃を構えた、
まるで…テレビの特撮ヒーローの様に『変身』する巴マミ。

見知らぬ教員『本郷猛』と、それが跨るのは、恐竜の様なロボットへと変形するサイドカー。
備えられた機関砲は、『魔女』の『使い魔』も容易く引き裂く―――

「(――――おかしい)」
「(――――こんなのぜったいおかしいよ)」

何と言うか…本当にコメントに困ってしまう。
もう、佐倉杏子が何故か見滝原中学に居るとかどうでもよくなってきた。
それぐらいに、この時間軸は、余りにも今までと違いすぎた。

84 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/29(日) 20:36:12.54 ID:Kl87lDAH0

「――――佐倉さん」
「あいよ」

マミに言われて、ここで佐倉杏子が初めて動きを見せた。
いつの間に取り出したものか、例の多節槍をその手に構え、
穂先を地面に突き刺せば、まどか、さやか、ほむら、
そして杏子自身を守る形で、赤い格子状の『防御陣』が出現する。

「それじゃぁ本郷の旦那、マミ…今回は任せるよ」

「て…転校生!?あんた……」

唐突に杏子のやってみせた異形の技に、目を白黒させるさやかへと、
杏子は、悪戯っぽく八重歯を光らせて、

「後で教えてやんよ……つーーか教えねぇ訳にはいかねぇし」

そんな彼女達を余所に…

「じゃ…始めましょうか」

『魔女』と…『巴マミ/カイザ』と、本郷の戦いが幕を開ける。

手始めに、その腰を据えた赤い玉座を放り飛ばし、マミと本郷を叩き潰さんとする『魔女』
いったい、どれだけの重さがあるのか、投げ飛ばされた玉座は煤塵をボワンと立てながら、
ゴロゴロと地面を転がり、その衝撃に、思わず『陣』の中のさやかとまどかが目を瞑る。

しかし、その玉座は―――

「生憎だけど……当たらないわ」
「…………」

マミにも、本郷にもかすりもしていない。
マミも、本郷を乗せたサイドバッシャーも、素早い機動で玉座の攻撃を逃れていたのだ。

「猛さん!!」

マミの呼びかけに、ただそれだけで何を為して欲しいかを理解した本郷は、
サイドバッシャーのコンソールを操作し、

―――ぼしゅしゅしゅしゅしゅしゅ……

サイドバッシャーの左手からは…膨大な数の多弾頭ミサイルが、薔薇園の『魔女』を目掛けて発射される。
これには流石に『魔女』もたまらんと思ったのか、その蝶の翅を動かして、明らかに物理法則を無視した機動で、
避ける、避ける、避ける……

ミサイルが次々と、結界内部の壁面や地面に着弾し、爆音と爆炎を上げる。
しかし、その一発たりとも、『魔女』には命中しない。

だが、かまわない。何故ならば―――
85 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/29(日) 20:39:20.17 ID:Kl87lDAH0

「御苦労さま…猛さん」
「後は…私が決めますね」

本郷の攻撃は最初から『囮』。全ては、『魔女』を誘導し

「佐倉さんも見てるんだし」
「恰好いい所を見せないとね!!」

マミが『必殺の一撃』を叩き込むの間合いに入りこませる為ッ!!

マミの手にしていた『カイザブレイガン』は、何時の間にかホルスターへと戻され、
取り外されたミッションメモリーは、『カイザポインター』と呼ばれる、腰部に取り付けられていた双眼鏡状のツールへと差し込まれ、
さらに『カイザポインター』は、右脚の脛の外側の部分にある、専用のコネクターに装着される。

マミの指が、展開されたベルトのバックル部の『カイザフォン』の『ENTERキー』を押すと

―――『 Exceed Charge 』

と機械音声が流れ、黄色い魔力が、マミの右足へと集束して行く。
そして、その右足が掲げられ、その脚先は、誘導されて来た『魔女』へと向けられ―――

発射される―――『金色の光線』

『■■■■■■■■■■■■―――――!?』

『魔女』が呻き、名状しがたい悲鳴を上げる。
その肉体は金の光に拘束され、そのタコ状の顔の前では、
黄金の四角錐が顕現、超高速で回転している。

マミは跳び、両足を揃え、叫んだ

「―――『スキアント=アウレーオ』ッ!!」

『金色の破砕撃』を意味するイタリア語を叫びながら跳び蹴りを放つマミの両足の底が、金色に光る。
そして彼女の体は…金の四角錐へと吸い込まれ―――

―――魔女に刻まれる…黄金の『X』の文字

金色の魔力光を放ちながら、『魔女』は爆裂四散した。

86 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/29(日) 20:44:06.41 ID:Kl87lDAH0



マミは呆然と…目の前の光景を眺めていた。
彼女を取り囲んでいた異形の群れは、今や、タダの一体を除いて、残らず怪人たちは殲滅されていた。
ぐるると唸りを上げる…『電砲亀男』のただ一体を除いて。

そんな彼も…最早『満身創痍』の有り様であった。
全身の銀の装甲は随所がひび割れ、砕け、口に生えた牙は全てが半ばで折れている。
甲羅は殆ど砕かれたも同然で、内蔵されていた砲身は、潰され、もはや砲としての機能を為していない。

それでも…『電砲亀男』は生きていた。
機動性を犠牲にする事で、限界まで高められた防御力が彼を生かしたのだ。
彼とは逆のコンセプトで造られた『鋏豹男』は、自慢の『シザース』を録に活かす事も無く、
両のブレードをへし折られ、頭部を粉砕されて、絶命し、地面に転がっている。

『戦斗員』や『毒蛾男』の辿った末路も…おおよどそれと同じであった。

「…………」

マミはただ…唖然とするしか無かった。
それほどまでに…この仮面の男は、素早く、そして強力であった。

圧倒的な戦闘能力とスピードで、殆ど反撃の、その構えすら許す事無く、
怪人たちを、文字通り叩き潰したのである。

味方…なのだろうか?

そんなマミの存在を気にしてすらいないのか、
『仮面ライダー』と『電砲亀男』は互いに向かい合う。

しかし…もはや『電砲亀男』には勝機が無いのは誰が見ても明らかであろう。
事実…『電砲亀男』も、最早これまでと、『仮面ライダー』に勝つことでは無く、
この場から何とか逃げ出す事だけを考えていた。

装甲の為に機動力を捨てた彼であったが…『最後の切り札』が残っていたのだ。
87 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/29(日) 20:47:19.29 ID:Kl87lDAH0

「…………」

『仮面ライダー』が、こちらへと仕掛けるべく微かに動いたのを、
『新世代改造人間』としての鋭敏な感覚で捉えた『電砲亀男』は、勝負に出た。

その残った胸部装甲の一部を展開、内蔵された小型『プラズマ砲』を、
『仮面ライダー』へと向けて―――発射!!

眩い光の破裂が、宵闇を引き裂くッ!!
その余りの眩しい閃光に、マミの方は思わず目を瞑っている。

最初から、それが目的の攻撃である。
スタングレネードの要領で、圧倒的閃光で『仮面ライダー』の目を塞ぎ、その隙に―――

頭部に四肢を、甲羅の内部へと格納し、手足が引っ込んで出来た穴には、ノズルが出現、
そこからは―――

―――ゴウッ!!

青白いプラズマジェットの輝きッ!!
高速回転する『電砲亀男』は、超高速で宙を舞う。
このまま飛んで、逃げるッ!!

―――しかし…彼のもくろみは外れる
『仮面ライダー』は…本郷猛は感づいていたのだ。
『電砲亀男』のもくろみに。逃がすつもりなど、毛頭ありはしない。

―――空に浮かんだ月に…染みた黒い人の影
それは徐々に大きさを増し、天から地へと落とされた…一本の怒りの『矢』と成ったっ!!

―――號ッ!!

違う『歴史』を歩んだ『本郷猛』…『仮面ライダー』においては、かくの如く呼ばれた『必殺技』…

―――『ライダーキック』

その必殺の一撃が、天から飛んで逃げる『電砲亀男』へと落ちて、その肉体を爆裂四散させた。

88 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/29(日) 20:51:04.26 ID:Kl87lDAH0


◆◇


「あなたは――――」
「何者…なの」

鹿目まどかは、除装し、人間の姿へと戻った巴マミへと尋ねた。
それと同じ問いを、過去の時間の巴マミは、本郷猛へと尋ねた。

それに対し、マミは、本郷は、こう答えた。

「―――『仮面ライダー』」
「『仮面ライダー』見習い…」

「それが…俺の名だ」
「それが…今の私よ」


―――物語は、赤い風車は回り始める…

89 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/29(日) 20:52:12.81 ID:Kl87lDAH0
以上で、第2話は終了です。

何故『ショッカー』が『魔法少女狩り』をしているのか、
杏子と本郷はどうやって出会ったのか、などについてはまた次回に


それでは
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/29(日) 21:07:55.98 ID:/pK1FnKTo


マミさんのセンスは相変わらずのようで安心した
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/29(日) 21:08:37.04 ID:c9EH6+mOo
お疲れ様でした。
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/29(日) 21:10:20.22 ID:AGulPWcho
乙彼様弟子太
杏子も「見習い」だったり?そうだったらファイズかな、ギャレンかな……?次回も楽しみです
93 :おまけ ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/29(日) 22:32:14.07 ID:Kl87lDAH0

【登場怪人・魔女一覧】

『Level.1(雑魚戦闘員)』
・戦斗員(コマンドロイド)
『Level.2(上級戦闘員)』
・蜘蛛男(クモロイド)
・毒蛾男(ドクガロイド)
『Level.3(怪人)』
・鋏豹男(シザースジャガー)
・電砲亀男(カノンタートル)

『使い魔』
・アントニー
・アーデルベルト
『魔女』
・『薔薇園の魔女』ゲルトルート
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/29(日) 22:46:16.90 ID:wP8Qye6i0
乙でした
怪奇大作戦ktkrと思ったらガメラで吹いた
この世界では魔女による集団自殺や行方不明扱いの魔法少女の捜査にSRIが動いていそうですな
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/05/29(日) 22:52:53.14 ID:94edZUsMo
こいつぁいい。いいぞ!楽しみにしてる!
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山形県) [sage]:2011/05/30(月) 20:49:18.56 ID:B/Hlq38Ro
やべええwwwwww かなり期待ww

97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/05/30(月) 23:03:22.39 ID:CS30ZYWmo
村枝版一号で再生される。First・Next成分も入ってるとか俺得。
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/30(月) 23:10:41.27 ID:varcbcECo
むしろ下口・清水のラインバレルコンビの絵で再生される俺。
ハイブリッドインセクター更新まだかな、まだかなっ
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/01(水) 21:32:41.52 ID:LHXe/fJDO
野獣狩りの時の藤岡弘はマジでいい男だからなー。
100 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/06/03(金) 22:58:04.12 ID:aDNxyGJF0
短めだけど、投下します
101 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/06/03(金) 22:58:30.21 ID:aDNxyGJF0


―――株式会社『スマートブレイン』

緑川財閥の子会社をその発祥とするこの大企業は、
暖簾分けの元である緑川と一定の関係を保ちつつも、
独自の事業を展開し、今や世界有数の規模を誇る、
重工業と電子技術を主力とする巨大コングロマリットであり、その経済力、影響力は、世界各地に及んでいる。

日本人であれば誰でも知っている様な大企業であり、
さらには世界各地でその名を知られた『スマートブレイン』。

しかしこの企業の持つ『裏の顔』を知る人間は、その知名度に反し、思いの外少ない。
総帥たる『美崎百合子』の指揮下、秘密組織『少女結社サクラ』を基に起業時した時より、
一貫して掲げ、実行してきた、『スマートブレイン』の理念、そして活動…それは―――

―――『新人類(オルフェノク)』たる『超能力者』の保護と、社会への復帰
―――そして…彼らの生存すら許さない『ショッカー』並びに『GOD機関』への抵抗運動

『新人類』による『秘密結社』……それが『スマートブレイン』のもう一つの顔。

そして、現在、『ショッカー』の魔の手から保護すべき対象として新たに加わった存在がいる。
人と創造主(インキュベーター)は彼女達を―――『魔法少女』と呼び、
『ショッカー/GOD機関』は、『未覚醒者/蛹体/ギルス』と呼んだ。

果たして…『魔法少女』をその主軸に新たに始まった、
二つの勢力の暗下での抗争の中心地は、『見滝原』なる地に集約されていく。

そこに居る…一人の少女―――『鹿目まどか』を中心に



102 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/06/03(金) 23:03:16.75 ID:aDNxyGJF0






仮面ライダー ―『約束 2011』― 第3話『理由』




103 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/06/03(金) 23:06:16.52 ID:aDNxyGJF0

―――本郷猛、佐倉杏子が見滝原中学校を訪れる『1週間前』

『スマートブレイン』の『見滝原支社』を訪れ、
その巨大なビルを正面入り口の近くから見上げる巴マミの表情には、微かな緊張の色が浮かんでいる

ここを訪れる様になって既に『1週間』経つが、多少裕福な家庭の生まれとはいえ、
一女史中学生に過ぎないマミが一人で訪れるには、『スマートブレイン』と言う企業は些か大きすぎ、
故に、未だに何となく肩を張ってしまい、緊張がほぐれる事が無い。

学校の帰りなのか…制服姿のままなので、余計にこの会社周辺の空気から彼女が浮いてしまっているのが、
余計に彼女の緊張を高めているらしかった。

大きなガラス張りの自動ドアを潜ると、やはり豪勢で清潔な造りのエントランスが迎えてくれる。
フロントにIDを掲示すれば、マミは難なく中へと通される。

途中すれ違う…スーツ姿の『普通の社員』には、何でこんな所に子供が、と言った視線に曝される為に、
何とは無い気まずさと緊張は、余計に強くなってしまった。

まあ良い。目的地に着くまでの辛抱なのだから。

乗り込んだ高速エレベーターが彼女を最上階まで運ぶ。
降りる階を指定するパネルにはカードスロットがあり、
エレベーターを一つ乗るだけでも、先程フロントで提示したIDカードとは別のカードを使わねばならない。

さらにはエレベーター内には監視カメラもあり、社内の随所随所には、
密かに銃器で武装された警備員も巡回しており、その警備体制は非常に厳重だ。

しかし、マミが伝え聞いた話によれば、これほどにも厳戒な警備体制も、
本気を出した『連中』には何の役にも立たないのだと言う。

さらに言えば…『スマートブレイン』の役員会にも、
『連中』の息の掛った人間が何人かいるという話であった。
『連中』との交渉用のパイプとして、敢えて黙認しているらしいが、
それにしても恐るべきは『連中』…『ショッカー』の手の長さよ。

如何に『魔法少女』…それもベテランのマミと言えど、
『スマートブレイン』の支援が無くば、当の昔に奴らに捕まるか、抹殺されるかしていただろう。

今、巴マミはこの『スマートブレイン』に保護される立場にある。
今より一週間程前、本郷に連中の魔の手から助けられた彼女は、この世界の裏側に蟠る『闇』の深さを知った。
そしてその『闇』が…自分達『魔法少女』をその標的とし始めた事も―――

「…………」

マミは、さる部屋へと通じる分厚い扉の前に立つ。
その扉には大きな金属プレートが取り付けられ、『支社長室』と、刻まれていた。

マミは、ノックして、ドアノブを回した。

104 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/06/03(金) 23:08:06.40 ID:aDNxyGJF0





『支社長』たる『村上峡児』氏の姿はそこには見えず、
巨大な白く現代的なデザインのシステムデスクには人の姿は無い。

その代わりに、部屋の中に設けられた大きな来客用のソファーには、
でっかりと腰を下ろした少女が一人おり、その対面には、黒っぽい服装の、
ゴマ塩頭の年七〇程の老人が一人座り、さらに壁にもたれ掛る様にして、一人の男が立っていた。

少女、佐倉杏子は、ズルズルと食していた『赤いきつね』から口を離して

「よぉ……学校終わったのか?」
「えぇ……それにしても佐倉さん」
「こんな中途半端な時間にお食事?」
「昼ごはんには遅いし、夜ごはんには早いんじゃないかしら?」
「こんなモンおやつだよ、おやつ」
「人間生きてりゃ腹だって減るもんだしなぁ〜〜」

そうマミへと答える杏子の前のガラスの机には、
既に食べ終わっている『緑のたぬき』と『どん兵衛』の空容器が置かれており、
つまりはこれで既に三杯目だ。おやつにしてはいささか量が多すぎる。

「そんなモノをこんな時間にそれだけ食べてたら……太るわよ」
「良いんだよ…どうせ後で体動かすんだから…これぐらい食っても大丈夫なんだよ」

「しかし何だな―――」

ここで、マミと杏子の会話に割り込んで来たのは、杏子の正面に座ったゴマ塩頭の老人だ。
顔かたちから察するに、前述したように年は七〇歳あたりと思われるが、
そんな高齢とは思われぬ程に背筋は定規でも入れた様にピンとして、
肩幅も大きく、かなりがっしりとした体格だ。黒色を基調とした服に全身に覆われた体には、
まだ中々に立派な筋肉が隠れている様に思われる。
ようするに、年齢よりも遥かに元気そうな老人であった。

「食費程度でぐちぐち言う会社でも無し」
「腹減るのは構わんが…別にもう少し上等なモノを食べてもいいんだぞ?」
「若い身空で、インスタントばかりじゃ体壊しちまうだろ」

そんな老人の言葉に対し、杏子。

「良いんだよ…別にこれで」
「あんまり美味しいモンばっかり食っちまうと、かえって舌が馬鹿になっちゃうんだよ」
「そんなもんかね?」
「そんなもんなのさ…滝のじっちゃん」

佐倉杏子は生まれが貧乏が為か、食い意地が張っている割には、
食べたいと望むモノは庶民的なモノばかりで、まるで高望みをしない。
殆ど路上生活同然の流離いの暮らしが長く続き過ぎた為か、貧乏性が板についてしまっているらしかった。
105 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/06/03(金) 23:10:07.58 ID:aDNxyGJF0

さて、杏子から『滝のじっちゃん』と呼ばれたこの男……正確にはその名を『滝和也』と言う。
年齢は今年で『70』。もう隠居してもいい年齢だが…その実、いまだ現役、戦歴『五十年』近くに及ぶ大ベテランの『兵士』だ。
かつては『アンチショッカー同盟』に所属したコマンド部隊の隊長であり、
はや『四十年』近く、本郷猛の『戦友』を務めてきたこの男は、現在では『スマートブレイン』に所属し、
その極秘私設戦闘集団である『S.W.A.T.(Smartbrain Weapon Assault Team/スマートブレイン武装突撃部隊)』の司令官を務めている。

熾烈を極める『ショッカー』との闘争における当事者の死傷率は非常に高く、
その最前線にありながら『五十年』もの長きにわたって戦い続けた滝の存在は、
もはや『奇跡』と言ってよく、彼自身、自分がこんな歳まで生き長らえた事を信じられず驚く程だ。

『アンチショッカー同盟』や『緑川財閥』…そして『スマートブレイン』の構成員には、
本郷とは違った意味で、『伝説の兵士』として畏怖と憧憬の対象となっている老兵であった。

「マミ」
「ごきげんよう…猛さん」
「紅茶でも入れます?」
「いや……いい」
「そう…滝さんや佐倉さんはどうかしら?」
「んーーー……それじゃもらおうか」
「アタシはいーや…ウドンノシルノムシ」

最後に残った壁にもたれかかった男は…言うまでも無く『本郷猛』。
『ショッカー』と戦う者にとっては…『抵抗』と『自由』の象徴とも言える存在…『仮面ライダー』その人である。

厚手のジャンパーに、濃紺のカーゴパンツと、地味な格好の彼だが、
ただそこに立っているだけで絵になるのは、その男前な姿の故だろう。

マミは彼の事を親しみを込めて『猛さん』と呼ぶ。
一週間前のあの夜の事は…今も鮮烈にマミの眼裏に焼きついている。
以来、マミとっての本郷は、強烈な『憧れ』の対象であった。
少なくとも…彼女が『仮面ライダー見習い』を名乗る程には、である。

ちなみに…杏子が『スマートブレイン』に拾われたのは今からさらに『一か月半』程前の事。
マミと同様に、『ショッカー』の『改造人間』部隊に襲撃され、
『魔女』との勝手の違いに苦戦を強いられていた彼女を、本郷が救出したのであるが、
実は彼女こそが、『スマートブレイン』の保護した最初の『魔法少女』であったのだ。

106 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/06/03(金) 23:26:24.03 ID:aDNxyGJF0




―――そもそもの事の始まりは『半年前』までに遡る。

『ショッカー』が…『超能力者』に続いて…新たな『標的』を狩り始めた、
と言う情報が緑川財閥経由で『スマートブレイン』に伝えられたのがソレである。

『ショッカー』の『超能力者狩り』に対し、
『スマートブレイン』は予知能力者や、テレパス能力者の会社職員を縦横無尽に駆使し、
出来るだけ、『ショッカー』が『超能力者』を割り出す前に保護する、と言う反抗作戦を長らく取ってきた訳であり、
その方法論は、長い闘争の歴史で、ある程度、定式が確立するまでに至っていた訳だが、
『ショッカー』のこの新機軸の『人間狩り』に対して『スマートブレイン』は、当初後手に回っていた。

この新たなる『ショッカー』の標的は、これまでの『スマートブレイン』の保護基準、
対『人間狩り』ドクトリンから大きく外れたモノだったからである。

そんな『スマートブレイン』も、超能力者達、並びに情報分析官達の必死の努力の末、
遂に『魔法少女』の存在を確認し、彼女達が…恐らくは『新人類(オルフェノク)』の一種、
『超能力者』とは違う進化の道を辿った者達であるという結論に至ったのである。

そして『一か月半』前、遂に佐倉杏子の保護に成功したのである。
現在では、杏子、マミを含めて、都合10人程の『魔法少女』が、『スマートブレイン』の保護下に入っているが、
『ショッカー』と『スマートブレイン』の抗争は熾烈を極め、救う事の出来なかった『魔法少女』も少なくない。

さらに…何処で聞きつけたか、第3勢力たる『ZECT』も、この『魔法少女狩り』に参加した為に、
状況はより一層、混沌としていた。

―――『ZECT』
『汎地球的文明防衛機構/Zareba of Every Cultural Terrestrial』を名乗るこの組織は、
『アンチショッカー同盟』を起源とする機関であり、『スマートブレイン』、『緑川財閥』とは、
非常に微妙な関係の間柄であった。

107 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/06/03(金) 23:30:10.74 ID:aDNxyGJF0
中途半端だけど、眠いのでここまでです。
続きは、来週にでも
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/03(金) 23:34:34.33 ID:IwzBZEDOo
お疲れ様でした。
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/03(金) 23:34:48.03 ID:nzRCLe4Mo

「ZECT」まで出てくるとは……いっそ「猛士」や「BOARD」「ミュージアム」とかもだしちゃって平成組織総結集とかなんて想像しちゃったり
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/03(金) 23:36:49.81 ID:nzRCLe4Mo

「ZECT」まで出てくるとは……いっそ「猛士」や「BOARD」「ミュージアム」とかもだしちゃって平成組織総結集とかなんて想像しちゃったり
111 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/06/03(金) 23:45:02.46 ID:aDNxyGJF0
>>110
「BOARD」「ミュージアム」「財団X」「鴻上ファウンデーション」は普通に出る可能性が高いです。
後、「猛士」は出ないかも知れないけど…『鬼』の方はでるかも、です

112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/06/04(土) 00:08:40.28 ID:TJxL/Skto
しっかりたのむぜ。乙。
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/06/04(土) 00:09:14.10 ID:TJxL/Skto
しっかりたのむぜ。乙。
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2011/06/04(土) 12:54:35.95 ID:6MHtapQ60
>>111
乙ですー。それにしてもなんとそうそうたる顔ぶれ…。
こうしてみると結構平成ライダーって味方側にも結構大きな組織あるよなぁ。(ミュージアムや財団Xは敵だけど)
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/04(土) 20:15:38.42 ID:ywnpq/JDO
乙乙乙

乙なんですが・・・
確かに『』が多すぎて読みにくいッス。
初めてでた固有名詞とか、ここぞというときに使うとかしたら、文章がスッキリするんじゃあないでしょうか。
116 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/06/10(金) 23:47:47.93 ID:mAhjrTiq0
生存報告も兼ねて、少しだけ投下します
117 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/06/10(金) 23:48:15.67 ID:mAhjrTiq0

かつて『アンチショッカー同盟』と呼ばれていた組織は現在、
『A.S.A.(Anti Shocker Alliance)』と総称され、その構成単位として様々な組織を内包している。

例えばそれは前述した『ZECT』であり、それ以外にも数多存在する、
『BOARD』、『素晴らしき青空の会』といった組織がそうである。

元々、寄り合い所帯であった『アンチショッカー同盟』は、
本郷が一時籍を置いた1971年以来の40年間で、大きく成長し、
こと冷戦終結後のグローバル化の時代においては、その規模の拡大は急激なものとなっていた。

その結果、『同盟』内部でのセクト間の対立や主義の違いが顕在化、
そうした派閥が各々組織を設立し、『同盟』はそれを纏める緩やかな紐帯へと変化したのである。

現在、旧『同盟』、現『A.S.A.』の日本地区における大きな派閥は、全部で4つ。
緑川ルリ子を総帥とする『緑川財閥』と、その系譜に連なる『スマートブレイン』。
高見沢逸郎を総帥とする『高見沢グループ』の息を受けた『ZECT』。
天王路博史を総帥とする『天王路コンツェルン』の息を受けた『BOARD』。
大富豪、嶋護をその創始者にしてリーダーとする『素晴らしき青空の会』。

かつての『アンチショッカー同盟』も、
あくまで出資者の『利益』を追求する為に『ショッカー』と戦う組織であった様に、
現『A.S.A.』もそれは変わらず、むしろ、規模大きくなる、セクト化が進んだ現在においては、その傾向が一層強まっている。

故に、セクト間で、水面下どころか、露骨な内ゲバを演じる事も少なくない。

『ショッカー』の『魔法少女狩り』に対し、
『ZECT』は『ショッカー』と裏取引でもあったのか、はたまた独自の理由があるのか、
同じ『A.S.A.』内の組織であり、『保護』を基本方針とする『緑川財閥/スマートブレイン』とは逆に、
『ショッカー』と同調して『魔法少女狩り』を推進する立場を取っていた。

緑川ルリ子自らが陣頭に立って『魔法少女狩り』から手を引くよう、
『ZECT』との交渉に当たっているらしいが、現状では余り芳しくは無い。

そして『BOARD』、『素晴らしき青空の会』は静観の立場を取り、
『スマートブレイン』、『ZECT』の両組織の趨勢を見て、どちらの立場を取るのかを決めるつもりなのだろう。

『スマートブレイン』程の大企業が動いていながら、未だに魔法少女を10人程度しか保護できていないのは、
こうした『A.S.A.』内部のセクト間の争いが大きな原因の一つであったのだ。
118 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/06/10(金) 23:48:52.50 ID:mAhjrTiq0

―――閑話休題

兎も角、こうした暗闘の中、杏子が本郷に保護されたのを切っ掛けに、
彼女の持つ人脈や風聞を頼りに、何とか『スマートブレイン』は、
杏子、マミを含む10人の魔法少女を保護した訳である。

一匹狼であり、故に警戒心が非常に強く、
また、生い立ちや性格の問題もあって、
本郷達にも当初は中々心を開かなかった杏子だが、
紆余曲折あって、今では本郷の事を『旦那』、滝の事を『じっちゃん』と呼ぶほどに、彼らになついていた。

ちなみに、杏子はマミと違って『仮面ライダー見習い』とは名乗っていない。

「―――それで…今日は何か、特別な御話があるって伺ってたんですけど?」

滝と自分の為に入れた紅茶を一通り楽しんだ後、マミは本郷の方を向いてそう問うた。
マミの紅茶を淹れる腕は中々のモノである。滝はその匂いと味にご満悦な様子だ。

「んーーー……そう言えばまだアタシも聞いてなかったな?」
「随分と重要な話だって言ってたけど…いい加減もったいぶらないで教えてくれよ、本郷の旦那」

うどんの汁も飲み終わった杏子が、空き容器を片付けながら、マミの問いに続いた。

「それは――――」

2人の問いに、本郷が答えようとした、その時である。

『その先は…私が話しますよ、本郷さん』
119 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/06/10(金) 23:49:36.54 ID:mAhjrTiq0

突如響いた、本郷のものでも、滝のものでも、
杏子のものでも、マミのものでも、つまりはこの部屋の人間の誰のものでもない、
本当に唐突で突然な女の声に、マミと杏子はガバッと声の方を向いた。

『魔法少女』2人の感覚を如何にして誤魔化したのか……

村上支社長の不在の為に、誰も座っていなかった支社長席に、
まるで『突然出現した』様に、妙齢の女性が独り、腰掛けている。

咄嗟に『変身』しようとするマミと杏子を、本郷が手で制した。

「大丈夫だ……彼女は敵じゃない」

その闖入者の女性を見る本郷の視線は優しく、
対して、本郷を見返す女性の視線には本郷への信頼があった。

「久しぶりですね…2週間ほどでしょうか?」
「本当は、もっと早くに彼女達とも顔を合わせるつもりだったのですけど…」
「花形さんや村上さん、そして滝さんに本郷さんに任せ切りになっていましたね」

「いや…問題は無い」
「それにしても…大丈夫だったのか?」
「今は、特に忙しいだろうに…」

本郷は、女性の名前を呼んだ。

「―――『美崎百合子』」

『超能力少女』…『美崎百合子』。
そして、『スマートブレイン』の現総帥こそが、彼女であった。
120 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/06/11(土) 00:04:03.25 ID:RqkVxt1U0



「―――うわぁ……素敵な部屋…」
「少し散らかってるんだけど…ごめんなさいね」
「最近は、少しどたばたしちゃってたから」

「…………」

ほむら、さやか、まどか、の三人は、
一先ず事情を説明したいからついて来て欲しい、と言うマミ、杏子、
そして本郷の言葉に従ってマミの住むマンションを訪れていた。

「…………」

ほむらにとっては、『魔法少女』のまどかと初めて出会った後に訪れた、
色々な意味で思い出深い場所である巴マミの部屋―――

ほむらがこの部屋を訪れるのは、本当に『久しぶり』の事であった。

「…………」

まどか、さやかに続いてほむらも玄関の敷居を潜る。
『魔法少女』であると言う事実は、まだほむらは誰にも明かしていない。
状況が状況だけに、迂闊に明かすのも危険だと判断したからだが、
『キュゥべえ』と遭遇していればどのみちバレる所も、幸か不幸か、
まどかを呼び出して置きながら、『魔女』を斃した後にも、奴は姿を現さなかった。

『本郷猛』というイレギュラーの存在が、奴に姿を現すのを躊躇わせたのか…
真相は不明だが、現状では好都合でもある。

121 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/06/11(土) 00:04:54.92 ID:RqkVxt1U0
すんません。眠いので、ここまで。

続きは日曜日にでも
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/06/11(土) 00:33:02.44 ID:5sWtr14Io
乙!
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/11(土) 00:34:19.25 ID:ub3KSeKdo
お疲れ様でした
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/11(土) 07:47:16.50 ID:tmx7hMIjo

タックル(違うけど)が来たか
蛇姫ちゃん出るの?
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/11(土) 20:41:29.30 ID:os2ymFqTo
乙ー
魔法少女の事情知ってると、ショッカーもZECTも行いとしては正しいんだよな。
『悪の魔の手に理不尽に殺される可哀そうな少女』
のまま、本当の理由知らない方が遥かに幸せだよな。

根本的な救いがない場合は特に。
126 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/06/17(金) 22:57:35.74 ID:pnixD85o0
短いですが、続きを投下します
127 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/06/17(金) 22:58:52.49 ID:pnixD85o0

さて、マミの部屋の中に入ったほむらであったが、
彼女の知る巴マミは孤児故の独り暮らしであり、
つまりは、こうして訪ねても、部屋の中にはマミ以外は居ない筈なのだが…

「おう……帰ってきたか」
「ととと…おまけにお客さんが……3人かな」

『先客』なのか、『同居人』なのかはほむらは知らないが、
ほむらの見知らぬ男が1人、マミの部屋の中に居た。

ゴマ塩頭の、黒い服の老人で、カーペットの上に胡坐をかき、緑茶を一杯啜っている所であった。

マミ、本郷を先頭に、杏子、さやか、まどか、そしてほむらの順にどやどやと入ってきた一行に、
老人は、湯呑をガラスの机の上に置いて、上の様に声を掛けた。

「ええ滝さん、ただいま」
「お客さんにおもてなしをしたいから、手伝って下さるかしら?」
「よしきた」

キッチンの方へと消えて行くマミの後を追う、
『滝』と呼ばれた老人の様子を見るに、彼とマミとは友好関係あるらしいとほむらは見る。

「あー…どっこいしょ」
「ちょっとアンコちゃん…いくら何でもその言い方はおばさん臭くない?」
「まだ若い身空でそりゃないよ」
「だからアンコじゃ―――もういいや、面倒クセぇ…アンコでいいよアンコで」

勝手知ったる、といった調子の自然さと気軽さで、杏子は長椅子にどっかりと腰をおろし、
それに続けて本郷はカーペットの上に胡坐をかいて、まどか、さやかもそれに倣った。
と言っても、女の子なので、女座り、あひる座りであるが、はむらもそれに続き、
彼女だけは背筋をただして正座した。

「――――それで……」
「説明…してくれるのかしら?」
128 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/06/17(金) 22:59:43.92 ID:pnixD85o0

さやか、まどかが何かを言う前に、ほむらが最初に口火を切る。
まどかと『魔法少女』―――あの『姿』を見て、そう言っていいものか微妙だが―――が接触してしまった以上、
今、ほむらの為すべき事は、彼女をこの陰の戦いから全力で遠ざける事である。
その為にも、この場での会話の主導権は、上手く握らねばなるまい。
この余りにも『不確定要素』の多い時間軸における、イレギュラー達の情報を、少しでも積極的に得る為にもだ。

幸い、あの厄介な白い獣はここに居ない。
まどかを自分から呼び出して来て置いて姿を現さないとは、一体どういう料簡なのかは知らないが、
こっちにとっては非常に好都合であった。

「あの空間は何?あの化け物は何?」
「巴先輩に、本郷先生に、佐倉杏子」
「貴方達は何者?」

「ちょ…ちょっと!!ほむらちゃん!?」
「ちょっと転校生!?助けてくれた恩人にそんな口のききかたが―――」

「あなた達は少しだけ静かにしてて……大事な事だから」

いつも通りの静かな、しかし険のある口調で、杏子、本郷に問うほむらの姿に、
まどかがおろおろと混乱し、さやかが『ナニッテンダ!?フザケルナ』な様子なのを片手で制しつつ、
ほむらは飽くまでその態度を変えない。

自分が『魔法少女』である事を、ここで明かすつもりはほむらには無い。
杏子あたりが気が付いているかもしれないが、あくまでシラを切るつもりだ。

あくまで『巻き込まれた一般人』の立場から、
その立場を盾にして彼らより情報を引き出し、
『魔法少女』の危険性を殊更に煽り立て、
まどか、さやかに契約の意思を、少しでも無くさせるのが、ほむらの狙いであった。
ほむらの知っている佐倉杏子は、そもそも『魔法少女』が増える事に好意的ではなかった筈である。
『いつも』とは違い、上手く行くかも知れない。そう、思った。
129 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/06/17(金) 23:02:31.68 ID:pnixD85o0

さて、そんな風なほむらの問いに対して杏子、本郷は、と言うと、

「………どーーしたモンかねぇ?旦那」
「…………」

と、ポケットから取り出したハイチュウをモグモグと噛みながら、
杏子は傍らの本郷へと意見を求める様に視線を向けた。
本郷は、腕を組みながら、何かを考えている様子であった。

「…………」

暁美ほむらは、注意深く、そんな本郷の様子を観察する。

―――マミの使っていた『ベルト』は何なのか
―――あの奇妙なサイドカーは何なのか
―――佐倉杏子とはどういう関係なのか

など、ほむらの聞きだしたい情報は数多くあるが……

「(それ以上に気になるのは)」
「(彼が何者かということよ)」

―――『本郷猛』
見滝原中の臨時教員であり、『魔法少女』の世界には本来居ない筈の、『大人』の『男』。
いまや、ほむらの関心の最大の焦点は、杏子やマミから彼へと移っていた。

『魔法少女の世界』は…徹頭徹尾『少女だけの世界』だ。
そこには被害者という形以外で、男性や、大人の入り込む余地は無い…筈だ。

しかし…その、これまでの全ての『ループ』内で絶対不変の摂理であった筈のモノは、今、ここで崩れ去った。
故に、ほむらは強い関心を向ける。本郷猛、ルールを破壊した、初めての存在に。

「――――」

本郷が、何かを言おうとした、その時であった。

「色々と話さなきゃならない事もあるし」
「色々と聞きたい事もあるでしょうけど」

滝ともども、ケーキと紅茶の入ったカップを乗せたお盆をもったマミが、

「まずは……お茶とケーキにしましょうよ」
「親睦を深める為に。それと、リラックスする為にね」

ほむらの良く知る余裕のある微笑みを浮かべながら、
お盆を、ガラスの机の上に乗せた。
130 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/06/17(金) 23:16:25.86 ID:pnixD85o0




『では……本郷猛は鹿目まどかと接触し』
『「魔女空間」に誘い込まれ…「魔法少女」とも接触した、か』
『そういう事でいいのかね』

「はい。現状ではそういう事になります」

『ショッカー』の構成員にして、表向きは見滝原警察署に所属する刑事である『須藤雅史』は、
モニター越しでも充分に自分を威圧する、濁った色の視線に、思わずハンカチで額の汗を拭っていた。

職業柄、それこそあらゆる職種の人間と、時には暴力団の構成員だとか、会社の社長だとかとも出会う事があり、
故に、どんな地位にあろうとも、どんな職種にあろうとも、大概の人間には常と変わらぬ平然さで付き合う事の出来る須藤であったが、
今、彼の眼の前の通信用モニターに映し出された、この老人と顔を合わせるのだけは未だに苦手であった。

『ショッカー』内部での地位の差、と言うのもあるが、それ以上に、
この老人の放つ、あらゆる意味で『人間離れ』した気配が、須藤は苦手であった。
『ショッカー』の上級構成員となれば、外見からして『人間離れ』した『改造人間』が多いのは当然で、
故に須藤も、大概の『改造人間』では驚かないが、この老人気配として放つまでのの『非人間性』は、
『改造人間』である、という事だけでは説明がつくまい。

恐らく須藤を恐れさせるのは…この老人の、気配として出る程の『精神の非人間性』であろう。
須藤も大概に『悪党』であり『外道』であるが、この老人には遠く及ぶまい。

自分など、この『怪人』を前にすればケチな小悪党に過ぎない。
この『怪老人』……『博士』を前にすれば。

131 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/06/17(金) 23:29:24.23 ID:pnixD85o0


まず、その容姿からして『怪物』染みている。
白髪の多い、オールバックの総髪は、後ろで渦を巻いて恐ろしげな様相を呈し、
尖った耳、尖った顎、濁った色の双眸などは、その襟の高い独特の裏地赤の黒マントと、
白い礼服と相まって、まるで『吸血鬼』とでも相対してるような印象を相手に与えるのだ。

事実…この『博士』は『吸血鬼』であった。
もはや数える事も出来ない人間を…その『実験』の犠牲にして来たという意味において……

『ふむ……「仮面ライダー」が絡んで来たのは面倒ではあるが』
『問題はあるまい。所詮は想定の範囲内だ』

手にしたステッキを弄ぶ…この『博士』と言う老人。
この老人こそが、現『ショッカー日本支部』の、二大巨頭とでも言うべき2人のリーダー格の片割れを為している。
秀才、天才の研究者ばかりを集めた『ショッカー』直属の研究機関に身を置きながら、
ただ一人『博士』と名乗る事を許されたこの男は、かつては『御子柴徹』と言う名の一研究員に過ぎず、
先代の『博士』の側近にして、二大巨頭のもう片方たる『大使』の部下に過ぎない男であったと言うが、
どういう紆余曲折を経たのか、ショッカー日本支部の指導者の地位に収まっていた。

かつては『ショッカー』所属の研究員にしては『常識的』で、比較的『良心的』な男だったと言うが、
時間が彼を変えてしまったのか、今のこの博士には、それを感じさせる要素は一切無い。

ここにいる『博士』は…冷酷無比な『吸血鬼』に他ならないのだ。


132 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/06/17(金) 23:33:29.07 ID:pnixD85o0

『よし……須藤君、君は現状維持で待機していたまえ』
『「仮面ライダー」が出張って来た以上、私が直接そちらにおもむいて、指揮を取ろう』

「『博士』が?」

須藤は内心で嫌そうな顔をした。
この『博士』の隣で仕事をするなど、まっぴらごめんであった。
こうして、モニター越しに会話するだけでも嫌なのに、直接顔を合わせるなど……

「了解しました。お待ちしております」

しかし、嫌と言えないのが、『勤め人』のつらい所であった。
133 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/06/17(金) 23:34:17.36 ID:pnixD85o0
短いですが、今日はここまで。
続きは、今度は出来るだけ早く、多くしたいです。

134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/17(金) 23:38:09.80 ID:sU+Hghbu0
乙でした
なんと、御子柴君が今代の「博士」か・・・そんな敬意が彼を変えたのか気になるところですな
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/17(金) 23:39:11.22 ID:PuJuXvDJo
乙、美代子さんとの約束守りながら摩耗してったんだな。
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/06/19(日) 11:18:05.13 ID:QWfz/bqko
待つぜ。乙!
137 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/06/29(水) 22:52:55.70 ID:MFJ+EKta0
久しぶりに投下します
138 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/06/29(水) 22:53:24.39 ID:MFJ+EKta0



「さて―――それじゃあ」
「そろそろ…お話と行きましょうか」

と、まどか、さやか、ほむらがそれぞれのケーキと紅茶を食べ終え、
飲み終えたのを確認すれば、マミは、パンと手を叩きながらそう切り出した。

滝、本郷はマミが話を始めんとするのを見て、それぞれのティーカップをガラスの机の上に置き、
真剣で真面目な面持ちとなったが、杏子だけは嬉しそうな顔でケーキのおかわりをパクついていた。
説明は、マミ達に丸投げするつもりであるらしい。

「ええ……さっきは中断されてしまったけど」
「色々と聞きたい事があるから」

と、そんなマミの切りだしにズズいと応じたのはやはりほむらであった。
ケーキを見て食べたそうな眼をしたまどかに押されて思わず自分も呑気にケーキを味わってしまい、
それでマミやまどかと『初めて』出会った時の事を思い出して、色々と胸が一杯になりそうになったり、
それを自慢の鉄面皮で必死に覆い隠したりと、やや本来の予定から脱線してしまったほむらだが、
それでも、自分の為すべきと決めた事を忘れた訳では無かった。

「あんた……ほんとに良く食うわねぇ」
「ん?…やらねぇぞ」
「いらないわよ!?さやかちゃんはそんなに意地汚くありません!!」

我関せずとケーキを頬張る杏子、それを横目に呆れた様子のさやか、
そんな2人を温かい微笑みと共に見守るまどか、と、
先程に比べれば明らかに場の空気は弛緩しているが、問題無い。

自分はただ、聞くべき事を聞くだけである。

「―――それで」
「結局……貴方達は何者、なの?」
139 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/06/29(水) 22:54:00.83 ID:MFJ+EKta0

そう聞くほむらに対し、マミはちょっとだけ考えた様子を見せつつ、
本郷の方をチラリと流し見た。本郷がそれに頷くのを見れば、マミは例の余裕の感じれる口調で、こう名乗った。

「そうねぇ……私達には色々と『肩書』があるけれども」
「強いて名乗るならば……」

「『スマートブレイン』の……『魔法少女』かしら」

―――『魔法少女』
成程、この名乗りには何の問題は無いが……

「(また…『スマートブレイン』……)」

これまでのほむらの経験してきた『ループ』の中では、
影も形も無かった筈の『要素』…大企業『スマートブレイン』。
佐倉杏子がこの見滝原に『転校』してきたのも、この企業が関わっていると言うが……

「『スマートブレイン』って……あの、テレビでもたくさんCMをやってる…」
「あの『スマートブレイン』?大企業の?それに…『魔法少女』?」

この時間軸のさやか、まどかにとっては自明の常識らしい大企業の『スマートブレイン』の名前と、
『魔法少女』なんていう言葉の響き『だけ』ならばファンシーな単語が一緒に出て来た事で、2人は若干混乱しているらしい。
ましてや…2人の見たマミの『変身』した姿は『X(カイ)を象った鎧騎士』の姿であった。
その格好で『魔法少女』などと名乗られても、頭に疑問符が浮かんでも仕方がないであろう。

「………『魔法少女』っても…お前らの想像する様なのとは違うのさ」
「特に、アタシらみたいなのはな」

と、ここでケーキのおかわりを食べ終えた杏子が、
つまようじでシーシーと歯の間を掃除しながら、話に参加してきた。
どうでもいいが、えらく仕草がオヤジ臭い杏子である。
仮に『オッサン臭い』などと言おうものなら、
『私は22だ。オッサンと呼ぶのはやめなさい。不愉快だ』と言った内容の事を、彼女の崩れた言葉遣いで返してくるだろうが。
140 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/06/29(水) 22:54:53.88 ID:MFJ+EKta0

――――閑話休題

「ていうか…マミさん、『仮面ライダー』の『変身ベルト』みたいのなので変身してましたよね?」
「つまり…あれですか?今時の『魔法少女』ってのは装備もハイテクって訳ですか?」
「て言うか…マミさん自身が…『仮面ライダー見習い』って名乗ってましたし」
「あんこも…何か変な…『魔法』というか…『超能力』みたいの使ってたし…」

「杏子ちゃんも…その…『魔法少女』…なのかな?」

2人は戸惑いつつも、それぞれの問いを発し、それに続けて…

「それも気になるけれども…」
「それよりも…本郷先生」
「貴方は…何者なんですか?」
「マミ…先輩や、佐倉さんとは…どういう関係なんですか?」

と、ほむらも問う。

3人、それぞれの問いに、まず最初に答えたのはマミであった。

「そうね……まずは…色々と見て貰うとこらから始めましょうか」

そう言うとマミは、背後より一つのトランクケースをいそいそと取り出し、ガラスの机の上に置いた。
銀と白と黒の意匠のトランクには、『スマートブレイン』のロゴがあしらわれている。

マミがそれを開ければ、中には先程までマミが腰につけていたベルト、携帯電話、
十字状の特殊銃、デジタルカメラ、デジタル双眼鏡の、以上の5点が納められていた。

「これは……『カイザギア』」
「『スマートブレイン』が『魔法少女』用に開発した支援変身ツール…」
「これと―――」

と、言いつつ、マミが懐より続けて取りだしたのは、黄金色に輝く小さな卵型の宝珠である。
その眩いばかりの輝きに、さやかとまどかの方からふぁ〜と感動の溜息が聞こえた。

「この『ソウルジェム』を組み合わせる事で…」
「私は『仮面ライダーカイザ(仮)』に変身する事が出来るの」

141 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/06/29(水) 22:55:44.15 ID:MFJ+EKta0

「………」

ほむらは『「変身ベルト」とは……興味深い』ってな視線で、『カイザギア』を凝視していた。
魔法少女歴の長さという観点では、恐らく史上最長であろうほむらであるが、こんな物を見るは初めての経験である。

「アタシら『魔法少女』は…『ソウルジェム』もしくは」
「『ライダースギア』によって……『変身』して」
「『魔女』と戦うのさ」

そう、マミに続けて言ったのは佐倉杏子である。

「『魔法少女』……」
「『アタシら』って事は…杏子ちゃんも……」

「『魔女』って……あの気持ち悪い化け物の事なの?」
「て、言うか『魔法少女』なのか『仮面ライダー』なのかハッキリしなさいよ」

「………」

それに対する反応は以下の通り。
上から順に、まどか、さやか、ほむら、である。
そして、ここで、ほむらも改めて口を開いた。

「巴先輩や、佐倉杏子が『魔法少女』とやらなのは解ったわ」
「それじゃぁ……本郷先生は何者なんです?」
「そちらの…滝さんも」

今、ほむらが聞きたい最大の関心事に関する問いである。
そんな問いを、ほむらが発した、丁度、その時であった。

『――――それは……僕も聞きたい所だね』
142 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/06/29(水) 22:56:24.59 ID:MFJ+EKta0

と、何の前触れも無く飛び込んで来たのは、
少女の様な、あるいは変声期前の少年の様な声である。

突然響いて来たその声に、
今、この場に居た全ての人間の内、滝和也を除く全ての人間が、
つまり、まどか、さやか、ほむら、杏子、マミ、そして『本郷』が、
一斉に反応し、その声の方向を向いたのだ。

一同の視線の先にあるのは、開け放たれてそよ風の入り込むベランダへと通じる窓の、
サッシの上に、何時の間にか、音も無く出現してた、白く小さな獣の姿……

ルビーの様に赤く、丸く、そして瞬かない瞳。
独特の質感を持った、白い毛並みの、猫を連想させる形質を持った体躯。

ほむらは、ソイツの姿を見た瞬間、思わず『盾』の内より拳銃を引き抜きそうになるのを、
まどか達の手前、抑えるのに必死であった。

この闖入者……言うまでも無い。

「お前は……」
「あら……随分と久しぶりね」

―――暁美ほむらの…いや、地球人類にとって怨敵たる敵性宇宙人

「『キュゥべえ』」

―――『キュゥべえ』こと『インキュベーター』
この世界における、ある意味『全ての元凶』たる存在が、その姿を鹿目まどか達の前に遂に現したのであった。
143 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/06/29(水) 22:57:20.51 ID:MFJ+EKta0
お待たせした割には短くて申し訳ない。
続きは、土・日にでも投下したいです

それでは
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/29(水) 22:59:30.47 ID:CC4NupAxo
乙っち乙マミ



SB側のべぇさんに対する扱いってどないなもんなんやろ
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/07/01(金) 23:58:44.98 ID:zykJEE4So
じっくり練りこんで書いてくれ。頼むぜ。
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/02(土) 00:27:33.30 ID:eX4gIw46o

だが、一人のセリフが分かりづらいんで行空けるときは閉じないで

「こうして」
「ほしいの」

「こうして
 ほしいの」
の方が遥かに分かりやすいと思うの。
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮崎県) [sage]:2011/07/22(金) 03:55:57.81 ID:pptepkzl0
仮面ライダーWの財団Xとかがお手もおかしくない気がするな。
多分ショッカーの別名だろうけど。
148 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/08/07(日) 21:03:12.65 ID:n5KrITTm0
test
149 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/08/07(日) 21:03:44.57 ID:n5KrITTm0
お久しぶりです

ここ数日中に再開します
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/07(日) 21:12:06.71 ID:P5Xvp4Zmo
待ってましたっ!



ヒーローは遅れてくるって奴だね、憎いよこのこの
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/08/07(日) 21:24:54.44 ID:BIKcNnbro
待ってたぜ
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/08/15(月) 00:51:15.63 ID:b6W1Q6N0o
盆で忙しいのか… 待ってるぜ
153 : ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/08/16(火) 09:59:48.48 ID:qS9nSAFz0
すみません。もう少し時間がかかりそうです
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/16(火) 12:10:28.09 ID:7MZOmeMSO
いくらでも待つぜ!
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/08/16(火) 23:16:13.54 ID:hA8OVdLyo
プレッシャーにするなってのは無理かも知れんが、質を上げることだけ考えてくれい

待ってる。
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/04(日) 12:57:13.66 ID:fPJcbNN5o
フォーゼが始まっても待ち続ける
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/15(木) 12:27:33.49 ID:isMadEtDO
再就職しても待ち続ける。
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/24(土) 17:24:13.29 ID:XaVB5MKDO
そろそろ生存報告だけでも……!
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/04(火) 19:04:42.81 ID:sMy7CqbDO
まだッスか・・・・・・・・・
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) :2011/10/06(木) 21:05:00.65 ID:Nih0IwGGo
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/10/17(月) 00:01:12.45 ID:5sx+beLlo
それでも、ただ待つ。
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/10/17(月) 00:02:44.33 ID:5sx+beLlo
それでも、ただ待つ。
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) [sage]:2011/10/30(日) 22:40:08.18 ID:aB5F7t7r0
SS著者はね・・・風のように現れて、嵐のように投稿して、朝日と共にネタを考えるんだよ・・・・・・
待ってます
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) :2011/11/01(火) 22:02:18.84 ID:ndBom0/20
続きまだなの?

サーバを移転しました@荒巻 旧サーバ:http://vs302.vip2ch.com/
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/01(火) 23:14:23.15 ID:DocplPYOo
>>163
ひとりでも ひとりでも 多々書く 多々書く 俺は
SS速報民(カメンライダー)

サーバを移転しました@荒巻 旧サーバ:http://vs302.vip2ch.com/
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(三重県) [sage]:2011/11/09(水) 22:14:38.43 ID:jiSRU2VU0
……嘘だろ?
俺得スレを見つけたと思って一気読みしたらこの有様だよ……
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