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一方通行「いい子にしてたかァ?」4 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/05(日) 23:50:22.00 ID:gv52cjXA0



それは本当にあっという間の、慌ただしい日々だった。

あっという間で、慌ただし過ぎて、

己の傷を顧みて、自分を可哀想がる暇など少しもなかった。

けれども、あっという間で、慌ただし過ぎて、気付かぬままに、気付かぬフリのままに、

何処かで逃げ続けていた答えも、其処には確かにあった。





流れは少しだけ穏やかに、緩やかになり、急だった流れを掻き分けて見た先は、答えを迫る日は、案外と近くに迫ってきていた。



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VIPでTW ★5 @ 2024/03/29(金) 09:54:48.69 ID:aP+hFwQR0
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小テスト @ 2024/03/28(木) 19:48:27.38 ID:ptMrOEVy0
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満身創痍 @ 2024/03/28(木) 18:15:37.00 ID:YDfjckg/o
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part8 @ 2024/03/28(木) 10:54:28.17 ID:l/9ZW4Ws0
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旅にでんちう @ 2024/03/27(水) 09:07:07.22 ID:y4bABGEzO
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にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:18.81 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459578/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:02.91 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459562/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/06/05(日) 23:54:30.89 ID:+yA2bRJCo
新スレ乙
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州・沖縄) [sage]:2011/06/05(日) 23:54:32.98 ID:0X9+nmMAO
>>1乙ゥ
4 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/05(日) 23:55:03.40 ID:gv52cjXA0
今までの流れです。


上条「約束したよな?例え地獄の底でも、お前を ――― 」※主人公は上条さんです。
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1297/12970/1297085602.html        
     ↓
一方通行「いい子にしてたかァ?」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1296/12960/1296040573.html
     ↓
一方通行「いい子にしてたかァ?」2
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1299/12999/1299954919.html
     ↓
一方通行「いい子にしてたかァ?」3
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1303142776/


となっております。これが最終スレです。
5 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/05(日) 23:56:01.29 ID:gv52cjXA0


雨の音は何処か心地良い。

倉庫のトタン屋根を楽器に見立てたように打つ雨の音も好きだが、アスファルトに落ちていくのを見るのも好きだ。
ぶつかり、細かな飛沫となって霧のように僅かに白く曇らせている様は見入ってしまう。
屋根から滴り落ちるのをぼんやりと見てるのも好きだ。
パンツが濡れてしまうことを考えなければ傘にぶつかるのを、下から覗き込むのも何だかわくわくする。


少しだけ日常から外れているようだから。


美琴はいつの間にか自分の服が完璧に乾いていることに気付いた。
隣の男はそ知らぬ顔で煙草をふかしているが、誰がやったかなど一目瞭然だった。


「あっという間だったわよね」

「ああ……あっという間だったな。五年。早過ぎるくれェだ。アイツがデカくなってなきゃ、一年も経ってねェンじゃねェかって思うくらいだ」


目まぐるしいというのは、正にこの五年間を指して言うのだろう。
親船との約束。滝壺 ――― 浜面理后を守る為に、自分と御坂を浜面達のマンションに住まわせる。
同時に、御坂親子を全力でバックアップする。学園都市としては、重要人物を一括で管理できるわけだ。
番外個体や打ち止めが知れば、さぞかし過保護だと笑うだろう。

6 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/05(日) 23:57:13.21 ID:gv52cjXA0


「あの子がさ ――― 」

美琴は、僅かに身体を一方通行に寄せた。
何故自分でもそうしたのかわからなかった。
甘えるつもりではなかった。少なくとも自分はそのような気は無いはずだ。
けれども、一方通行の肩と触れ合った瞬間耳の後ろが、首筋が、熱くなった。


「あの子がレベル0だって知った時、正直ホッとした」

一面灰色の空間のなかを紫煙が立ち上る。

「レベル5になった事を後悔してるわけじゃ―――多分無いと思う。積み重ねてきた努力は私の誇りだし、守れたものも沢山あるから。

 でも、自分がしてきた実験をあの子にもさせたいとは思えない。だから、もし想ちゃんがもっと大きくなって、それを望んだとしても私、きっと反対すると思う。

 ううん、絶対する電極やら薬やら、知った上でさせたいなんて思える親の気が知れない。」


自嘲とも、軽蔑とも付かぬ声だ。
酷く矛盾しているようにも聞こえるが、それは真理だろうと一方通行は煙草の煙を見つめる。
溶けていく白い塊、匂い以外呆気なく消えるそれを儚いと思ってしまうのは、此処がそういう場所だからだろうか。


「都合がいい話かな」

「いいンじゃねェのか?」


一方通行はエントランスの重苦しいガラスの扉から見える雨に視線を投げかけたままだ。
その横顔を、美琴はそっと見つめる。

「都合のいいのは今に始まったことじゃねェ。第一、都合のいい事抜かしてる筆頭は誰だと思ってンだよ」

声が微かに震える。
笑みが混ざり合った、からかうような、そんな稚気を秘めている。

7 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/05(日) 23:57:40.92 ID:gv52cjXA0

「お前の母親に尋ねたことがあった。どォして俺に優しくしてきやがる、ウゼェくらい構ってくるンだってな」

初めて聞く話に、美琴はちくんと胸の奥に引っ掛かりを覚える。
勝手にそんな深く重い話をしていた母親への反発と、自分に相談してくれてもいいのではという一方通行への不満。
しかし、文句を口にするよりも、息を詰めて言葉に耳を傾けることを美琴は選ぶ。


「もっとテメェ自身に優しくしてやれってよ。間違ってりゃ、幾らでも指摘してくれるお節介な奴等がウゼェくれェお前の回りには馬鹿面下げて揃ってンだからよ」





『だって、私は見た事がないもの。きっと目にしてたら、こんな風に出来なかったかもしれないわね。でも、この目にしてない。だから、憎めない。

でも、シロくんが美琴ちゃんも、妹ちゃん達も、それに想ちゃんも大事にしてるところはしっかりと見てきたから。だから私はシロちゃんがとっても大好き』


『都合の良いところだけ見てンじゃねェよ』


『わざわざ穿り返してまで都合の悪いことを直視しないといけないの?』


『俺のやったことはそォいうことだろォが』


『それはシロくんの中の理屈。生憎、美鈴さんは其処まで努力して人を憎む努力をする程暇じゃないの。やらなきゃいけないことばっかりだもん

 差しあたってはアンチエイジングかしら。孫も出来たし、老け込まないようにますますお手入れは欠かせなくなったからね』


そっと、美鈴は一方通行の頬を撫でた。


『いいじゃない。都合の良い事で。それが間違ってたら、間違ってるって、ハッキリ言ってくれる人が君の回りにはいるんだもん。

もっと自分に優しくなりなさいよ。私から見れば、君も美琴ちゃんも自分への優しさがちょっと足りないわよ?』



そう言ってウインクをしてきた美鈴の笑顔に不覚にも見惚れてしまった。



8 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/05(日) 23:58:15.06 ID:gv52cjXA0


何かを思い出しているのだろうか、僅かに口角の下がった表情を浮かべる一方通行に軽い疎外感を覚える。
コレは思い上がりだろうか。自惚れだろうか。美琴は己に問う。

自分が一番の理解者のような気になっていた。

自分が自分達が一番側にいるような気がしていた。

自分達親子が一番心を開いていると思っていた。

同時に、、美琴は己の心に戸惑う。
どうしてこんなことをイチイチ気にしているのだろうか。
もっと、自分と一方通行はさばさばとした、物分りの良い関係だった。
適度な距離感と、あっさりとした干渉。さっぱりとした好意。
そんな適切で、適度な距離感だったはずだ。

それでも確かに面白くないのだ。

美鈴に話すくらいなら、まず自分に話すべきだろう。



「ねぇ、アンタもさ」



手足が痺れる。何故自分は緊張をしているのだろうか。
美琴は自分自身の反応に戸惑いながらも続ける。



「自分に……少しは自分に優しく出来るようになった?」

「俺は ―――」


吸いかけた煙草を灰皿で押し潰す。
余韻となって甘い香りだけが残った。


「ああ、そうだな。俺も少し自分を甘やかすよォになった」

「それって」


僅かに、美琴や親しい者にだけわかる程度に僅かに唇が優しいカーブを描く。
不器用で淡く、綺麗な微笑みだ。美琴はこの笑みが嫌いじゃない。


9 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/05(日) 23:59:17.95 ID:gv52cjXA0


「お前等と家族なンだ。そォ勝手に思うよォになった。お前等には迷惑な話かもしれねェけどよ」




            ――― 家族になれるモンならなりてェよ!!!アイツ等の側にいて、幸せにしてやりてェェよ!!! ―――


美琴の脳裏に焼きついた叫び。
鮮烈に、目が覚めるような強さで心に刻まれた切実な叫び声は、今でも耳に残っている。


「馬鹿。迷惑なわけ、ないじゃない」


「ハッ――― ありがとうよ」



照れ臭そうに、一方通行が呟いた。



何故か美琴は泣き出したくなった。
悲しくてじゃない、嬉しいのだ。
そう自分達を思ってくれることに、そう思えるようになった一方通行に。



けれども、喜びの中心に、不機嫌にむずがる幼い感情にはたと気付く。


今まで、ずっと抑え込んでいた蓋の鍵が、あの叫びで壊されてしまった。
抑え込んできた何かに、気付かず、その名を知らぬとそっぽを向き続けてきたもの。
ずっと見てみぬフリをしていた「それ」は、主の意思をは裏腹に、勝手に育っていたようだ。


10 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/06(月) 00:00:24.05 ID:mcuAU2Vs0



「一つ、教えてくれる?」

「何だよ」

「家族って―――それで、どういうもの?」

「は?」

「家族で、それってどういうもの?」


羽織っている一方通行のジャットごと美琴は自分の身体を抱き締める。
既に用済みとなった一方通行のスーツ。黒い、彼の匂いのしみこんだジャケットを、美琴は強く握り締める。
皴になるかもしれないというのに、それは極自然な心の発露としての行為だからだ。


「ねぇ……教えてよ」

「おい」


肩が触れ合う。
間近に、見上げる位置に、一方通行の白く端整な顔があった。


煙草の匂い。甘い煙草の匂いが鼻腔をくすぐる。


甘い、アーク・ロイヤルの香り。美琴の好きな匂い。


想はブラックデビルの香りの方が好きだ。
母と娘で好みは似ているようで似ていない。何故か調子ハズレの事を頭の片隅で考えてしまった。

11 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/06(月) 00:02:36.50 ID:mcuAU2Vs0

以前冥土帰しと並んで吸っているのを見た時何となく面白くないと思った。
二人の間にある特殊な空気。自分達とは異なった信頼関係。
一方通行から向けられる彼を頼りにしているという冥土帰しに向けられる信頼感。
妙に悔しくて、煙草を覚えてみようとした。吸えることは吸えるが結局嵌ることはなかったが。


(……コイツが悪いのよ)


美琴は責任転嫁という自覚を抱きつつも、八つ当たり気味に紅の瞳を睨む。
鈍い鈍いと思っていたが、己の鈍さにほとほと愛想が尽きる。



「アンタにとって私って……家族で、それで」



ほとほと愛想が尽きた。自分の鈍さに、だ。
14歳の頃の比ではない。
何せ、自覚するまでに五年もの歳月を要したのだから。





「それで―――それで、何?」




12 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/06(月) 00:03:44.72 ID:mcuAU2Vs0



美琴は流れに身を委ねるように、夢に浸るように、甘く柔らかな風を受け入れるように瞳を閉じた。

それは、自然な仕草だった。

夜、眠りに就く為に、カーテンを閉じるように、そっとおろされた瞼。

注ぎ込みすぎたワインが、グラスの端からすぅっと零れるように、一筋の涙が零れる。

それを、一方通行は気付けば指先で拭っていた。

拭った手を何処に持っていけばいいのか、彼自身が戸惑うよりも早く、迷いを封じるように美琴の手がそっと重なる。

目に見えぬ、耳に聞こえぬ、痛みも不快感も伴わぬ何かに背を押されるように。

一方通行の顔が美琴に近付く。



13 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/06(月) 00:06:22.88 ID:mcuAU2Vs0


短い呼吸音。


甘い吐息。


戸惑いがちに、一拍息を吸う。


胸元のシャツを握る。


衣擦れの音。


革のソファーの擦れる音。


スプリングの軋み。


雨音。











刹那。


14 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/06(月) 00:07:09.41 ID:mcuAU2Vs0











距離が零になった。




15 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/06(月) 00:08:00.93 ID:mcuAU2Vs0
以上で本日の投下終了です。
gdgdなお話ですが、もう暫しのお付き合いを。

それではまた。 ノシ

16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/06/06(月) 00:08:30.03 ID:oHYEDun00
乙!なんだよこれ…眠れねえ…
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/06/06(月) 00:08:43.87 ID:RdxqJbgho

やっとか…
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/06(月) 00:09:26.78 ID:W0Jkiv/Zo
…時が来たのか
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州・沖縄) [sage]:2011/06/06(月) 00:10:29.02 ID:j46sd7JAO
うはぁ…なんとも言えん…>>1
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/06(月) 00:11:19.14 ID:NmJG42BDO
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/06/06(月) 00:11:30.13 ID:liexWlhMo

ついにか……
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/06/06(月) 00:11:30.26 ID:12Scx6eE0
わ〜ここで終っちゃうのかぁぁぁあ!!
乙!!><
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/06(月) 00:13:14.57 ID:j9qAqI5g0
>>1乙ううぅぅぅぅぅ!!
甘すぎるぜ……
24 :以下、名無しにかわりまして さくらぎ まつり がお送りします [sage]:2011/06/06(月) 00:16:05.71 ID:BBahDTcSO
>>1
みんなが幸せになってくれるのは嬉しいことだが、ずっと見てきたこのスレがもうすぐ終わると考えるとなんだかモヤモヤした気分だ…
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/06(月) 00:39:04.95 ID:4BqKQFzeo
お、おい・・・・
なんだこれ・・・・
気になってコーヒー飲んで読み直しちまったぜ・・・・
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2011/06/06(月) 00:45:00.57 ID:7iuM5sI40
そうか、初出は1月だからもう半年近くなるのか。
感慨深いものがあるな

楽しみにしてます
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] [sage]:2011/06/06(月) 01:27:07.84 ID:eoVTARJD0
これで終わりとなってしまうとは……
とても残念である
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県) [sage]:2011/06/06(月) 01:48:04.87 ID:Nt7a7Sz3o
まだ根性さんのターンが残ってる
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/06(月) 02:23:08.86 ID:TWyuQOJq0
根性さんってなにしたっけ?
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/06(月) 02:29:11.47 ID:KVFBIU1DO
1乙!
ずっと見ていたい優しい関係だな!皆幸せそうで何よりだ!
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/06(月) 02:58:41.79 ID:L47L4Tsto


ついにこの時が来たという事か・・・
佐天さんは俺に任せてくれ
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/06(月) 05:10:58.77 ID:oD63rhXIO

約半年も見届け、追いかけてきた作品に終わりが近付いてるんだな。最高にハッピーなフィナーレを期待してるぞ!
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/06(月) 06:14:27.88 ID:wuER8srDO
乙!!
これはやってもいいよな?ってことで



えんだああああああああああ
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/06(月) 07:09:20.03 ID:TCV0Pu6SO

乙!

絹旗ちゃんと家族になってくるわ
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/06(月) 09:49:25.49 ID:nk8kmXSIO
ここって全年齢対象だっけ?
違うならこの後の描写も是非お願いしたい
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/06/06(月) 10:44:02.70 ID:w28RyztAO
余った佐天さんは俺が責任もってもらっていきますね
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/06(月) 11:02:06.67 ID:td2ua8CT0
番外と打ち止めの暴走はまだですか?
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/06(月) 11:29:50.16 ID:9oef8lx20
このssの絹旗さんが好きなだけにこの展開は嬉しくも辛い…
パラレルストーリーはまだですか?
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] [sage]:2011/06/06(月) 12:47:56.72 ID:eoVTARJD0
これは公式で良いレベルだと思う……
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/06(月) 12:58:37.43 ID:VjpCBcygo
やっちゃうのか!?やっちゃったのか!!?
つか打ち止めと番外個体どうすんだろ
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [SAG]:2011/06/06(月) 17:56:52.26 ID:IFQDBcPw0
>>35
この話の雰囲気にエロはいらんと思う
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/06/06(月) 18:09:55.76 ID:EKz7GFzVo
10年ほど時を進めて親子丼編に行くに決まってる!
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/06(月) 18:17:09.92 ID:diiImelDO
>>39
そこまでじゃないだろ
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/06(月) 18:44:10.72 ID:UPOwkTdpo

ここまで美琴と一方通行の距離が縮まってわだかまりも自然と溶けたってのはいいんだけど
なんか美琴が無言で誘ってなしくずしみたいな雰囲気に引っ掛かってしまうのはDTだからか…
言葉がいらないくらい自然な関係ってことなのかもしれないけど一方通行がヤリチンなだけにもやもやしてしまった
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/06(月) 18:49:19.76 ID:2YeLKEJb0
これはアレか?前の冒頭みたいに冗談とかじゃないんだよな?
なら一言言わせてもらおう




描写kwsk
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/06(月) 18:55:07.46 ID:rOyKgUCno
>>44
というより、美琴から誘わない限り、一方さんからは絶対に手が出せなかったんだろうと思う。
色んな意味で。
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/06(月) 19:03:43.20 ID:0fGaBy6IO
>>44
ヤリチンだったのは過去の話だろ
今はそこらの分別はわきまえた上で美琴を一人の女性として受け入れたのだと思いたい
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/06/06(月) 19:17:56.37 ID:3RugzHQQo
前スレで美琴の心境変化についていけないと書いたんだけども、今回ので得心したわ。
好きや嫌いはどっちでもいいんだ。
美琴のなかで彼が、傍にいる人、一緒に歩く人、伴侶になっていったんだ。
その膨らんでいった気持ちの発露が集団墓地でのキスなんだな。
まあ、すんげえ羨ましいので10032号あたりにヲチされてればいいのにとおもいました。
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/06/06(月) 19:39:04.31 ID:LelZzCiAO
ヤリチン言ってもなぁ
そこらへんの描写もあるしそこまで気にはならないが
相手がいるだけで要は[田島「チ○コ破裂するっ!」]と同レベルだし
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/06(月) 19:55:27.58 ID:YyweSIAlo
後ろ向きな一方さんがヤリチンだったって事は
前向きになったら一方さんはマジ聖人になってしまう
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/06(月) 20:19:22.00 ID:6OY0dJ+io
一方パパなら想ちゃんが生まれてから五年間一回も出してない気さえする
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/06(月) 21:23:43.30 ID:wuER8srDO
>>51

朝起きたら想ちゃんの顔に白い液体が…………

ごめん、最近頭がおかしくなってきた、でもありえるよね
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/06(月) 21:32:51.44 ID:jokJKQOSO
>>44 というより女性が作者である場合の恋愛小説は、男がヤリチンであることはステータス扱いになることが多い。
モテ男の心をおとした唯一の女性がメインヒロイン…のような感じで、男性目線と違って重要視されない
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) :2011/06/06(月) 21:42:56.31 ID:lF3wTacpo
つか、女は相手をモノにするまでの行為は不問、モノにしたら不貞を許さん生き物
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) [sage]:2011/06/06(月) 21:43:48.64 ID:lF3wTacpo
っと、ageちまった、すまそ
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/06/06(月) 22:58:21.55 ID:zlXU6c6+0
とりあえず、全員落ち着け。
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2011/06/06(月) 23:15:35.18 ID:RzR0RlXYo
なんであれくらいでヤリチン扱いになるんだ?

しかし打ち止めやら番外個体やらの気持ちを知ってる美琴がこの後どうするのか気になる
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/06(月) 23:22:00.38 ID:XO039dzDO
別にヤリチンじゃなくね?
おまえらの経験数ごときを基準にすんなよ
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/06(月) 23:27:24.81 ID:W0Jkiv/Zo
とっかえひっかえしてたって描写があったと思うから一応事実なんじゃね
まあ今更つっかかるところでもないだろ
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/06(月) 23:29:02.29 ID:FWLIwZgc0
>>51
想ちゃんが居ても、彼女が居たような記述はあったぞ
むしろ来る者拒まずでヤってたからヤリチンって言われてるわけだし…。

ただ、どの彼女も
想ちゃん>(超えられない壁)>彼女
って事を隠そうともしないから長続きしてないわけで…。
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/06(月) 23:30:18.18 ID:FWLIwZgc0
>>51
想ちゃんが居ても、彼女が居たような記述はあったぞ
むしろ来る者拒まずでヤってたからヤリチンってむぎのんに言われてるわけだし…。

ただ、どの彼女も
想ちゃん>(超えられない壁)>彼女
って事を隠そうともしないから長続きしてないわけで…。
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/06(月) 23:30:28.42 ID:0fGaBy6IO
セフレがいる=ヤリチンの考えは既に古いのか…
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/06/06(月) 23:55:53.23 ID:KLF60kcdo
ヤリチンヤリチンうるせーよ黙れ。
64 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/07(火) 00:02:09.41 ID:UeP7M8L40
何か一方さんの女性問題が取り上げられていてビックリ。そこまで驚くものなのでしょうか。
やはりラノベのキャラは男も女も経験無しの方が良かったのかと思いつつ投下します。

短いです。
65 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/07(火) 00:04:33.55 ID:UeP7M8L40


「…………」

「オイ、いい加減機嫌直せよ」

「想だけおるすばん……あーくんのバカ」

「しゃあねェだろォが」

「しゃあなくないもん!」


座ると同じ高さになるラビ太郎のぬいぐるみを抱き締めながら、膨れっ面のまま想はそっぽを向く。


二日間連続で留守番を言い渡されて、少女は大層ご立腹である。
少女からしてみれば、自分を除け者にして、母親と一方通行が遊びに行ったように思えてならないのだろう。
少女の気持ちがわかるだけに、一方通行は困りきったように眉を寄せる。


幼い少女の相手ならば、打ち止めで慣れているはずの彼が時に戸惑うのはこんな時だ。

言動とは裏腹に、半ば人工的とはいえ精神年齢が大人びていた打ち止めは、人の感情の機微という点においては一方通行と対等だった。

しかし、今彼の目の前にいる少女は違う。五歳の身体には、五歳の精神が詰まっているのだ。
びっくりするくらいに物事を理解し、考えていると思いきや予期せぬことに臍を曲げる。
その理由も、子供ならではの難解な理屈なのだ。しかし、難解であれども、そこには子供なりの理屈がある。

いい加減にわかったフリをすればいいという大人の浅薄な考えなど、透き通るような瞳は簡単に看破する。

故に、一方通行は少女を納得させられるだけの理屈を自分のなかから掴み出そうと必死なのだ。


66 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/07(火) 00:05:37.03 ID:UeP7M8L40


基本真面目な男なのだ。美琴はテーブルに頬杖を付きながら、ぼんやりと思う。
死の匂いに、人の悲しみに敏感な少女に、あの鉛色の世界はそれだけで想の心を濡れた綿のように圧迫しかねない。
しかし、それを一方通行は上手く伝える術を持たない。だから、代わりに一方通行が彼女に示すのは、彼女のことを如何に大切に思っているのかという事の証明だろう。
向かいに座る10032号は、角が取れてすっかりと丸くなった白い青年と、小さな姫君のやり取りを楽しげに見ている。
献花を終え、美鈴達を見送ってきたのはついさっきのことである。
二日かかった恒例行事は、つつがなく終わり、それぞれは再び過去の残滓を振り払うように己の場所へと戻っていった。
それぞれの胸の中にある罪悪感、もしくは感傷を適度に慰め、刺激しながらも、少しずつ過去は思い出に変わっていく。


過去とは階段のようなものだと、美琴は思う。


休み休み、登っていくに連れて、最初に踏み出した一段一段の事など忘れてしまう。
途中でどんな思い出登ったのかも、薄ぼやけていき、最後には、振り返り登ってきた道のりの高さと長さだけが胸に去来する。
薄情な人間だと少し思うが、それは大多数の人間が持つ薄情さでもある。

漫画のように幼い頃に交わした約束を大人になっても覚えていることはまずありえない。
そんな約束は、幼稚園から小学校に上がる時に、或いは転校してしまう時に、仕分けした引越しの荷物と同じく不要なものとして捨ててしまう。

いつまでもいつまでも過ぎ去った恋人の事をありありと思い出すなどという小説のような美しく不変の感情など、保存しておくには日々は忙しい。
終わった過去を、わざわざ懇切丁寧に梱包し、手間隙かけて綺麗に保存するのは、代わり映えのない日々に飽いた人間だけの戯れだと思い知る。


大概の過去とは、適当に美化されて、暇つぶしに思い出すことがあるかもしれない程度の、他愛もない思い出の一つとして物置の片隅に追いやられるのだ。

今を生きている人間の心を占めるのは、否応に今、脈打つ感情でしかない。



「えへへへへ、あーく〜ん」


想が頬を林檎色に染めて、蕩けるような笑顔で一方通行の膝の上に座る。
向かい合うように座り、一方通行の腕の中に心地良さそうに丸まっている。
どうやら、交渉は身を結んだようだ。一体何で手を打ったのだろうか。10032号が小さく笑う。


「本当に相変わらず仲が良いのですね、お姉様」

「うん、そうね、相変わらずね」



67 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/07(火) 00:06:12.62 ID:UeP7M8L40



相変わらず。


何事も無かったように。




美琴は唇を押さえる。昨日のことを思い出す。

一体他人の唇の感触を感じたのは何年ぶりになるのだろうか。



美琴は一方通行とキスをした。


それだけだ。


たった一文。


たった一言。


それなのに、美琴の頬は熱くなる。


68 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/07(火) 00:08:47.03 ID:UeP7M8L40


キスをしたのは二人目だ。

まだ、というべきだろう自分の年齢では。

うなじから、耳の裏側まで熱が走る。まるで中学生のような反応だ。
初めて上条とした時でもそうはならなかった。今の自分はもっと初心な反応だ。
どうしてと自分に問い掛ける。

多分、冷静だからだ。流れに身を任せるには、少し美琴は大人になっている。

だからこそ、生々しい感情が、想いがハッキリと自覚出来て、言葉に出来ない恥ずかしさと切なさに身体が熱くなるのだ。

不意に一方通行が美琴の方を見る。彼女の様子を伺うというよりも、何となく目が合った、その程度のことだ。
その証拠に彼の視線はすぐに膝の上の少女が独占する。


(なんで、あんなに平静装ってんのよぉ……)


美琴は、今すぐ身悶えしてしまいたくなる。
一人であったら、すぐさまソファーにダイブして、クッションを抱き締めてゴロゴロと悶えているところだ。
そんな慌ただしい感情を噛み殺し、表面上はアンニュイな女を気取って気取ったように紅茶を飲む。
水出しのローズティーの爽やかな香りが、僅かに心を和ませる。


(そりゃあ、気まずくなるよりはいいけどさぁ〜〜、でも、もうちょっと、こう……)


恨めしげに自分の娘と戯れる一方通行の横顔を睨みながら、美琴は急に虚脱感に見舞われる。


自分は何を言ってるのだろうか。
そもそも、自分から求めて、それに、一方通行はとりあえず受け入れた。
受け入れたというよりも、ただ抵抗しなかっただけのことだ。

何故なら一方通行は決して自分を抱き締めはしなかった。

唇を離した瞬間の表情が忘れられない。
肩に優しく手を乗せられた瞬間、美琴の心音は確かに跳ね上がった。
けれども、美琴が少しだけ ―― 心のどこかで確かにしていた ―― 期待は裏切られる。
困惑を浮かべた紅い瞳。迷惑ではないが、どうすれば良いのかという躊躇と戸惑いを含んだ眉のライン。
聞き分けのない幼子を窘めるような一方通行の表情を見て、美琴は激しい羞恥に駆られた。


自分だけが思いつめている、そう思うと美琴は打ちのめされる。
何より美琴を打ちのめしているのは、それでも決して後悔が無いということだった。
一方通行にキスをしたことそのものは後悔などしていないということ。
後悔どころか、一日経った今でも、熱を帯びた幸福感と高揚感が下腹部から胸の奥にかけて広がっているのだ。


(来る者拒まずのクセに ――― 何であんなキスくらいで困った顔するのよアイツ)


自分のなかに起こっている変化、自覚した感覚と、変わらぬ振る舞いの一方通行との温度差が美琴を憂鬱にしているのだ。



69 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/07(火) 00:09:48.81 ID:UeP7M8L40


リビングでは、一方通行と想が仲良くテレビを観始めた。
膝の上から、あれこれと一方通行に話かけている想を見るに、恐らく想の好きな番組なのだろう。
一方通行は、舌足らずの説明を頷いて聞きながら興味薄そうにテレビに視線を向けている。
次第に想はそんな一方通行に不服なのだろうか、あれこれと文句を言い始めているようだ。
自分の好きなものを、自分の好きな人にも興味を持って欲しいのだろう。その気持ちは美琴にもよくわかる。



「お姉様」

「ん?」

「何かありましたか?」

「何のことかしら」

「あったんですね」


疑問形はすぐさま断定形になる。
真っ直ぐに向けられる硝子のように透徹した瞳に、あっけなく美琴は抵抗をやめる。
この妹に嘘を吐き続けられた試しは無いのだ。


「アイツとちょろっとねぇ〜」

「おや、やっと進展しましたか」

「――― ぇ、え?」


さらりと投げて寄越された言葉に、上ずった声で美琴はマジマジと妹を見た。
10032号は、自分の発言が姉にもたらしたダメージに気付いていないのか、ティースプーンでカップをかき混ぜている。
カロリーを気にしてか、半分残したスティックシュガーの口を捻っている。


「し、進展って何を ――― 」


何トンチキなことを言っているのだと、言いたげに露骨に不審な目を10032号は浮かべる。
まるで宇宙人を見るように、彼女にしては珍しいくらいに目を見開いているのが、美琴を萎縮させる。
何故か自分が悪い気がしてしまうのだ。


70 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/07(火) 00:10:34.15 ID:UeP7M8L40



「お姉様……貴女まさか最近自覚したのですか?」

「……自覚っていうか……その、、まぁ…」


頭に手を当てて、わざとらしく頭を振る。


「鈍い鈍いとは思ってましたが……まさか此処までとは」

「う、煩い!!っていうか、アンタこそ、気付いてたなら言ってよ」

「言えとは?」

「だって、私……打ち止め達の応援してたわけだし。今更……」

「アホくさ。とミサカは思わずお姉様の発言の下らなさに溜息を吐きます」

「下らなくないでしょ!可愛い妹の恋路を……」

「別にお姉様が自覚しようが、しまいが、あのモヤシが打ち止め達を娘だって思う限りあの子達は報われるわけありません。

 逆に、お姉様がフラれることだって十分あるのですから。見当違いの遠慮ですよ」


他人事のように紅茶を啜る様は、大人の女の余裕が滲み出ている。
実年齢は9歳程度のくせに。美琴は無性に敗北感を覚える。


「まぁ、頑張って下さい。問題はあのウジウジもやしの方でしょうが」



10032号の言葉の意味が測りかねているのか、美琴は腑に落ちぬ表情を浮かべる。
答える必要はないと、10032号は紅茶を啜りながら自分をじっと見る姉から顔を背ける。


姉はどうやら気付いてないようだ、彼女の横顔を時折一方通行が見ていることに。






71 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/07(火) 00:11:57.80 ID:UeP7M8L40
以上で本日の投下を終えます。ウチの一方さんは恋愛童貞。

それではまた。 ノシ
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/07(火) 00:14:49.89 ID:j+rGG4bN0
乙!
どこの一方さんも恋愛童貞ですよ!
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/07(火) 00:17:19.75 ID:LtFK9ioqo
乙!
男が恋をしたら誰だって童貞になるさ!
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2011/06/07(火) 00:18:05.58 ID:zZ/wM4qAO


片思いじゃ恋愛童貞喪失は出来んのか
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/07(火) 00:23:17.65 ID:qnAGw17q0
乙!
ホント描写が丁寧で大好きだわこの>>1

寧ろ恋愛童貞じゃない一方さんを見てみた………いや、見たくないな。何かこう、色んな意味で。
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/07(火) 00:33:20.58 ID:oD/N9KZ+o


俺は童帝だ!
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/07(火) 00:44:38.40 ID:wAh4hOgco
嫌リア充病たちの処女童貞廚は総スルーでいいよ
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/07(火) 00:51:11.84 ID:nGPP44wEo
自分がそうだからって、フィクションの登場人物にまで童貞や処女性求めるのは、ぶっちゃけ気持ち悪い。
>>1さんの好きなようにやればいいと思う
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/06/07(火) 01:06:08.38 ID:qhy8YLek0
記憶の風化か・・・
虐殺者としての記憶の風化
昔の恋人の記憶の風化


おっそろしー
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/07(火) 01:28:35.22 ID:9B1but1DO
乙!
キスまでしかしてなかったのかww
最後までしたのかと思ってましたwwww
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/07(火) 02:15:50.23 ID:89Hhl6svo
別にそこまで引っ張ってまで罵るほど荒れた話題でもないのに蒸し返す人がいるから余計に荒れてるように見える事もあるんですよ
妙にトゲがあるカキコをする傾向の人は書き込みボタンを押す前に一〜二時間位クールダウンする時間を設けて頂きたい
綺麗なお話に水を差さないためにもね
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/06/07(火) 02:18:27.56 ID:nNzpLtbco
想タンが小さい頃の話をもうちょい見たかったが
現在に戻ってこの展開、正直たまらんですたい
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/06/07(火) 06:51:20.20 ID:zA711xeAO
ええい、ボンバーちゃんの出番はまだか!?
ていうかいつまでパパセラさんに誤解させてんだwwwwwwww
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) [sage]:2011/06/07(火) 07:48:06.78 ID:tXOfUPCwo

一番混乱してるのは一方さんだろう
つか、告白されてうろたえる中学生みたいだww
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(西日本) [sage]:2011/06/07(火) 12:31:44.60 ID:vEHxlTypo
DTの一方さんだとこの雰囲気は出ないだろうから問題ないな
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(西日本) [sage]:2011/06/07(火) 12:32:47.40 ID:vEHxlTypo
DTの一方さんだとこの雰囲気は出ないだろうから全然問題ないな
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(西日本) [sage]:2011/06/07(火) 12:35:06.14 ID:vEHxlTypo
大事なことだったんで2回言いました。すみませんでした。
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) :2011/06/08(水) 19:44:58.31 ID:tt4afLyV0
10032号のSっぷりにゾクゾクするわ。
一方さんと相対した強烈な体験から目覚めちゃったのかな。
もっと罵ってください。
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/06/08(水) 20:29:02.63 ID:tt4afLyV0
あああごめんなさいsageてなかった。
職場から覗き見なんてするもんじゃないですね。
もっと叱ってください。
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/08(水) 23:09:13.72 ID:y6ZvfoNDO
そういう罵ってくださいって奴は反省してないように見えるしつまらないし質が悪いから一番嫌い、大嫌い
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/06/09(木) 01:22:31.72 ID:uz55ZyS7o
それじゃご褒美だろwwww
92 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/09(木) 05:33:06.89 ID:UlJAPMdR0



同じ映画を観ることはいい。
リビングの方から流れる音楽に耳を傾けながら、幾度も思ってきたことを改めて感じる。
同じ映画を観る事は安心に直結している。少なくとも一方通行はそう思う。


丁寧に洗ったサツマイモを細切りにして鍋に入れる。
沸騰したところでキャベツとタマネギと油揚げを共に湯に投入する。
サツマイモに十分火が通ったと確認してから合わせ味噌を溶かし鰹だしとしょうがを入れる。
サツマイモの味噌汁は余り好きではない。それでもよく一方通行がこれを作るのは至って単純な話、美琴と想が好きだからである。

料理をするようになって、一番良かったと思うことは自分の思考に没頭できるからだ。
考え事に没入し過ぎて料理を焦がすなどということは実際滅多にない。
ここ数日一方通行を悩ませる事柄は一つ、美琴のことだ。


一方通行は明確な形での恋愛感情を美琴に抱いていない。

正確には、自分の彼女への想いが恋愛色を帯びたものであるのかどうかわからない、と言うべきだろう。
自分には同年代が経験すべき程の恋愛経験が欠落していると、彼は自分をそう判断している。
8年も前に抱いた修道女への想いであるが、人生経験が浅い一方通行にも、あれが初恋であったことだけはわかる。
そして、、美琴に抱いている感情がそれとは異なることもわかる。
一方で、布束や芳川に抱いている感情とも異なる。だからこそ、一方通行は戸惑うのだ。
恋愛感情と一言で言っても、その形や温度、密度、そして質量とでも呼ぶべきもの、全ては同一であるはずがないのだが、
その事に気付けるほど彼は自分の感情というものに敏感ではなかった。

93 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/09(木) 05:33:51.16 ID:UlJAPMdR0

浜面一家からお裾分けしてもらった沢山のニラや白菜を使った餃子を作ろうとして、暫し悩んだ末に水餃子にすることにした。
汁物が甘いのだから、メインのおかずはさっぱり、そしてピリ辛の方が一方通行の好みだ。
ほうれん草のおひたしも用意できている。想の好き嫌いが少ないというのはこういう時ありがたいと思う。
浜面のところの息子は意外に偏食家である為、理后から献立について意見を求められることが結構ある。
なまじ体に良い、栄養価が豊富な食材は食べられるせいで怒るに怒れないのだそうだ。
理屈抜きに「好き嫌いは良くない」と頭ごなしに言うだけで納得はしない。大人が考える程子供は馬鹿ではない。

火を止めてやってから時計を見る。
美琴と想が浴室に向かってから10分経ったかどうかという時間だ。
あと3、40分は出てこないだろう。食べる直前になったらまた温めなおせばいい。
エプロンを取ると、アマレットを多めに入れたカップに珈琲を淹れる。
リビングに戻り42型のテレビで流しっぱなしになっている映画をぼんやりと眺める。
同じ映画を観る事が一方通行は好きだ。
それは帰ってきたという安心感に近い。予定調和の展開は、新鮮さこそ無いが、反面ヤキモキすることも無い。
アクション映画であれば、それは致命的であるだろうが、心地良い音楽と映像、台詞回しが肝であれば、問題は無い。
耳に心地良いテンポの良いセリフ。邪魔にならず、けれどもしっかりと存在を主張する音楽。
度々音楽を流す代わりに一方通行は好きな映画を流す。美琴はその度に呆れるのだ。「アンタまたそれ観てるの?」と。
ふと、テーブルの上に置かれたBRのディスクに目が行く。ドラえもん、それも古い時代のだ。
確かロボットたちが攻めて来るのを必死で食い止めるという筋書きだった。ラストはロボットの少女の自己犠牲によって世界は救われるという話である。
昨夜、想に付き合わされる形で観ていた。想はどうしてか、一方通行に似ているところがある。
これもそうだ。同じ映画を何度も観たがる彼女の為に買ってやったが、既に値段の元は十分に取ったのではないだろうか。
何度もこれを観る度に想は泣く。膝の上でつぶらな瞳からぽろぽろと涙を流すのを拭ってやるのが自分の役目だ。
そして、美琴は少し離れてそれを呆れたように、微笑ましげに観ている。それが、一種お決まりの光景だ。
一体どれくらい前からのお決まりなのだろうか。アマレット入りに珈琲を啜る。




『いい加減お姉様を子供扱いし過ぎじゃないですか?』


10032号に言われた言葉だ。確か想が保育園に入った頃だ。
あれこれと御坂母娘に世話を焼く一方通行に対して放った言葉。
過保護だとか、世話を焼くという意識は全くなかった。指摘されて初めてそうなのかと思ったくらいだ。

『上位個体とお姉様は違います。それは貴方とてよくわかってるはずです。寧ろ貴方の方がミサカ達よりも知ってるはずですが?』

何が言いたいのか、一方通行にはわからなかった。
それが伝わったのか、10032号はどうしたものかと、何処か彼女にしては珍しく途方に暮れたような、苛立ったような表情を浮かべた。

『家族でも何でもない男が側にいることを、他人が見てどう感じるか。考えられない貴方ではないはずだろうとミサカは無自覚モヤシを詰ってみます。

 もっとも、貴方がもし家族になりたいと思ってるのでしたら話しは別ですが』

94 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/09(木) 05:34:38.22 ID:UlJAPMdR0

他者から見た自分達の姿。
要は、他人が向ける好奇の眼差し、無責任な憶測、下卑た噂、その類の事を言いたかったのだろう。
家族 ――― その言葉の本当の意味、重みを自分は考えたことがあるのだろうか。




家族で、それで ――― それで、何?


美琴が投げ放った言葉の波紋がじわじわと自分の中に広がっているのがわかる。
『家族』、一番好きな言葉だ。
けれども、家族とは最小単位を指し示す言葉ではない。
酷く大雑把な言葉なのだと、そんな当たり前の事に自分は今まで考え付かなかった。考えようともしなかった。

打ち止めも家族。

番外個体も家族。

黄泉川も家族。

芳川も家族。

想も家族。

そして、当然美琴も家族だ。

昔、渇望して止まなかった家族が増えていくことに、確かな満足感を覚えている。
けれども、いざ聞かれたとき、一方通行は言葉に窮する。
同じ家族ならば、打ち止めや、番外個体に抱いている感情同じなのかということだ。
打ち止めや番外個体に抱いている感情と想への感情は似ていると思う。
もっとも、想への感情はもっと庇護欲が強く、第三者の言うところの「過保護」というものであるが。

では,美琴への感情とも同じであるのか。

それは、ずっと一方通行が自分に問い掛けることをしなかった、極当たり前の疑問であった。




95 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/09(木) 05:35:12.39 ID:UlJAPMdR0

他者から見た自分達の姿。
要は、他人が向ける好奇の眼差し、無責任な憶測、下卑た噂、その類の事を言いたかったのだろう。
家族 ――― その言葉の本当の意味、重みを自分は考えたことがあるのだろうか。




家族で、それで ――― それで、何?


美琴が投げ放った言葉の波紋がじわじわと自分の中に広がっているのがわかる。
『家族』、一番好きな言葉だ。
けれども、家族とは最小単位を指し示す言葉ではない。
酷く大雑把な言葉なのだと、そんな当たり前の事に自分は今まで考え付かなかった。考えようともしなかった。

打ち止めも家族。

番外個体も家族。

黄泉川も家族。

芳川も家族。

想も家族。

そして、当然美琴も家族だ。

昔、渇望して止まなかった家族が増えていくことに、確かな満足感を覚えている。
けれども、いざ聞かれたとき、一方通行は言葉に窮する。
同じ家族ならば、打ち止めや、番外個体に抱いている感情同じなのかということだ。
打ち止めや番外個体に抱いている感情と想への感情は似ていると思う。
もっとも、想への感情はもっと庇護欲が強く、第三者の言うところの「過保護」というものであるが。

では,美琴への感情とも同じであるのか。

それは、ずっと一方通行が自分に問い掛けることをしなかった、極当たり前の疑問であった。




96 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/09(木) 05:35:55.05 ID:UlJAPMdR0





「お目め瞑ってね」

「あ〜い」

舌足らずで元気の良い返事と共に力いっぱい目を瞑る娘は、それだけで抱き締めたくなる可愛らしさだ。
美琴はおでこや頬に所構わずキスしてやりたいのを堪えて、ゆっくりとお湯を泡だらけの頭にかけてやる。
泡が落ちたのを確認すると、そっと柔らかい髪をかき上げてやる。形の良いおでこが露わになり、愛しさからちゅっと口付けると少女ははにかんだ。
美琴は湯船に先に入ると、後から入る少女を抱きとめる。
幼い少女の弾力のある感触を感じながら、想を膝の上に乗せて抱き締める。
温かな湯の中にあって、尚幼い子供の体温は独特の温かさを持つ。
それが即ち幸せの温度のような気がして、美琴は抱き締める腕に力を込める。


「こうして想ちゃんと入るのひさしぶりね」

「ママけんきゅうでいそがしいもん」

「ゴメンね」

「ううん、いいよ。あーくんが言ってたもん。ママのけんきゅうはいっぱいの人を助けてあげるとっても大切なけんきゅうなんだって」

「そう……」


まだ年端も行かないというのに物分りの良い、優しい娘に思わず目頭が熱くなる。
殊、娘に寂しい思いをさせてしまっていると常々思っている美琴は想のこういったいじらしさに弱い。
同時に、少女が寂しくないように常に側にいてくれる一方通行に感謝する。
もっとも、感謝だけではなく、もっと胸を締め付けるような感情も存在する。最近になってようやく自覚するようになった感情だ。
美琴は想の頭に頬をくっつけながら、そっと囁くように尋ねる。

「ねぇ、想ちゃんはさ……あーくん好き?」

「うん!大好き!!」

「どんなところが?」

「んーとね、やさしいとこ。あとね、かっこいいの。でねでね、ホットケーキがおいしくてね、それでね、それでね」

子供特有の何を言っているのかわからない言葉が、想は極端に少ない。
明敏なのだろう。そして、何より一方通行をよく見ているのだ。
想の上げていく長所、彼女にとっての長所を美琴は楽しげに聞いていく。

97 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/09(木) 05:36:46.46 ID:UlJAPMdR0

「おねがいするとね、想をおひざにのせてぎゅーってしてくれるしね、いっしょに寝てくれるしね、頭あらうのとっても上手でね」
「髪の毛乾かすのも上手だもんね」
「うん!それでね、それでね、いいにおいがするしね、ウサギさんみたいだし ―――」

好きなところと聞かれて、躊躇なく指折り数えて上げられる想の無邪気さが羨ましかった。



「でね、でね、想とずっといっしょにいてくれるとこ」



美琴の喉が不自然に鳴った。
思いも寄らぬものを慌てて飲み下してしまったように、引き攣るように美琴の頬が強張った。
想が振り返り、きょとんと首を傾げる。


「どうしたの?」

「ううん、何でもないよ」


何でもなくはなかった。
吃驚した。想が最後に上げた点。
ずっといっしょにいてくれるとこ。それは、美琴自身が一方通行に惹かれることになった一番の切欠だったからだ。
上条のように一目惚れとは全く真逆の理由。
嫌悪から始まった感情が、徐々に裏返っていくことになった理由。
思い返すと、結局はそこに行き着く。
この五年間、いくつかの転機を覗いてみても、そこにはいつも一方通行の姿があった。
そして、彼の言葉が、思いが、いつも美琴を前に進めてくれていた。


「ママどうしたの?」

「想ちゃんはあーくんが本当に好きなのね」

「うん!!」

98 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/09(木) 05:37:20.28 ID:UlJAPMdR0


ぼんやりと考えに耽っていた母を心配そうに見つめる想を安心させてやるべく頭を撫でてやる。
気持ち良さそうに目を細めながら、想は他意の無い瞳を向ける。

「ママは?」

「なぁに?」

「ママはあーくん好き?」


自分そっくりの鳶色の瞳から視線を逸らすことなく、自然と美琴はにっこりと微笑む。


「うん、大好き」


自然と出た言葉だった。





99 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/09(木) 05:38:13.96 ID:UlJAPMdR0



いつの時だっただろうか。
研究室でまだ自分が妹達に関する研究に明け暮れていた頃だ。
美琴は想をお腹に宿し、産まれる日が来るのを刻一刻と待っていた頃。

「でよ〜そん時の飾利が可愛くてよ」

我が物顔でソファーに踏ん反り返り、勝手にコーヒーを淹れながら聞いてもいないことをぺらぺらと喋る垣根にウンザリしていた。
自分を殺した人間と交友を深めようという考えは一方通行としては甚だ理解しがたい。
しかし、一方で彼の回りに存在する関係、コミュニティーは暴力を経て形成されたものばかりである。
案外発端などどうでもいい事なのかもしれない。

「恥ずかしそうに真っ赤な顔で言うんだぜ?もう、何ていうか……なぁ?」

「知らねェよ」


とはいえ、鬱陶しいものは鬱陶しい。


「テメェ研究の邪魔するつもりだったら叩きのめして追い出すぞ」

「おお、物騒だねェ〜コレだから戦うことしか知らねぇヤツは困るんだよ」

「テメェが言うのか?散々第一位に成り代わるなンてほざいてたべジータ野郎が」


垣根は肩を竦める。

「アレイスターがくたばって、今更そんなもんに固執しても仕方がねぇだろ?俺は切り替えが早いんだからよ」


最もな意見だ。
アレイスターが支配する世界、学園都市であればこそ、垣根は第一位に、レベル6にこだわっていた。
しかし、それは崩壊をする。アレイスターの消失と同時に。崩壊した価値観にしがみつくのは愚か者のすることだ、と垣根は考える。
彼は別にこの世で最強の戦士になりたいだとか、自分より強い存在が絶対的に許せないという酔狂な人間でもない。
アレイスターの構築した世界において、自分を蔑ろにしてまで優先させる存在であった一方通行が許せなかっただけだ。
固執する価値基準が消えれば、一方通行を倒す理由もない。
それに何よりも、垣根にとって優先すべき事柄が出来たことが一番大きい。

100 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/09(木) 05:39:13.72 ID:UlJAPMdR0


「随分と花娘に執心じゃねぇか。散々女食い散らかしてきたテメェがあンなチンクシャに」

「オイ、それ以上言うってなら相手になってやるぜ?ま、ちんちくりんなのは確かだけどな」

苦笑を浮かべる垣根は、何処か幸せそうだ。
そして幸せ、それ以上に安心している。それが一方通行にはわからなかった。

「それに、言っておくがお前が思ってるほど女とどうこうしたことなんてねぇぞ。ぶっちゃけ一人か二人、それもナンパで付いてきた女とヤッたくらいだしな」


顔には出さなかったが、それは意外だった。


「心理定規とは完全なビジネスパートナーだしよ。ナンパした女も、ヤッたらウザくなって放り出したしな」

「最低だなテメェ」

「いいんだよ。ナンパでノコノコ着いてくる程度の女なんてそんな扱いで十分だろ」

「同じ口で惚気るとはなァ……」

「全然違うんだよ。お前には無いわけ?そういう経験」


無い、とは言えなかった。
嘗て想っていた少女。今は海の向こうで恐らく愛しい男と共に重責に耐え続けている少女。
一方通行の表情を見て取ったのか、垣根はにやりと笑う。


「いるんじゃねぇか」

「けどな……正直よくわからねェ。どういう感情が恋愛感情ってのか」


垣根は思わぬ質問に目を丸くする。
手にしていたカップを取り落としそうになる程に。


「布束と付き合ってるんじゃなかったのか?」

「アレはそういうのじゃねェ」

「――― ハァ……そういうことね」


呆れたというか、哀れむように垣根は唇の端を上げる。


「ま、俺だって経験は殆どねぇからエラそうに語れるわけじゃねぇけどよ、よく言うのはどうしても自分のものにしてぇって思うのが恋愛感情だって言うな」



101 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/09(木) 05:40:25.79 ID:UlJAPMdR0


その気持ちなら一方通行にもわかる。
あの無防備な少女を前にして、何度押し倒してやろうかと葛藤しただろうか。
無邪気に向けてくる笑みを自分だけに向けさせてやりたくて堪らなかった。
無神経で鈍感な同居人によって傷つく姿に、奪ってやろうかと思ったことなど数え切れない。
結局、そこまで踏み切れなかったが。
それは決して、彼女の同居人への友情ではない。
寧ろ、彼女の気持ちに気付かぬ男から奪い取って、その時にどんな表情を浮かべるのか見てやりたいというサディスティックな感情すらあった。
それでも一方通行が踏み切れなかったのは、恐かったからだ。
彼女が自分を見る目にもし軽蔑の色が浮かんだら。
信頼を裏切られたと、嫌悪と失望が刻まれた彼女の瞳が自分に向けられたら。
それは想像するだけでも恐怖を与えた。

結局、彼女をより幸せに出来るのが、あの男だったから身を引いた、というのは都合の良い言い訳でしかなかった。

得る喜びよりも失うことへの恐怖に一方通行は終ぞ勝てなかっただけだ。




「……けど俺の考えは違うな」

「違う?」

「ああ。俺が飾利に惚れた瞬間思ったのは焦りだったりするんだわ。本当のところ」

当時を思い返してか、垣根はうんざりするように眉を顰めた。

「アイツに惚れたと思った瞬間、すげぇ焦った。モタモタしてたらコイツの隣に俺以外のヤツがいるんだ、マジでやべぇ、ってな」

珍しく、真剣に自分の気持ちの奥を語る垣根を茶化す気にもならなかった。
一方通行には、垣根の語る言葉は興味深かった。

「結局よ、自分より相手を想ってやれるのが恋だなんて、綺麗事なんだよ。
 
 相手を想って身を引くとか、そういうのはテメェ自身への慰めだろ。要は ――― 」





浴室の方から、きゃっきゃと嬉しそうに笑う美琴と想の声が聞こえる。
火をそろそろ掛けておくべきだろう。
キッチンに立つと、殆ど冷めていない味噌汁に火を点ける。

思えば、自分と美琴の距離は曖昧だった。
家族だと意識してから、その距離の曖昧さが余計に心地良くなった。


「家族」と言う言葉で、一応の言い訳が立ったからだ。

一緒にいるための理由への言い訳だ。

しかし、所詮それは言葉だけのことであり、依然として曖昧なままであることには変わりない。

102 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/09(木) 05:41:43.19 ID:UlJAPMdR0

曖昧な距離が心地良いのは、そこには決して責任が伴わないからだ。

そして同時に権利も無い。

どれだけ家族だと思っていても、一方通行の中の使命感とは別に、法的に、社会的に、という話だ。
所詮、他者から見れば自分は御坂母娘の隣人に過ぎない。ただの他人だ。
初めて自分の居場所の脆さ、心地良いと思ってきた距離感の不安定さに気付く。



『要はソイツが欲しいとかじゃねぇ、そこに自分が居ないのに耐えられねぇっていうのが、本気の恋愛感情なんじゃねぇのか』




垣根の言葉を、どうして今になって思い出したのだろうか。
煮立つ鍋を見つめながら、一方通行は唇を噛む。リビングでは、映画が流れ続けている。
窓辺に腰掛けたヒロインが歌うラブソングが癇に障った。




103 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/09(木) 05:44:58.02 ID:UlJAPMdR0
途中二重投下してしましました、すみません……
以上で投下終了です。ていとくん、恋愛を語るの巻。

それではまた。 ノシ
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/09(木) 05:59:00.01 ID:nrFCmK94o
ていとくんマジイケメン
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/09(木) 07:41:01.96 ID:hJOGnkkDO
投下乙
朝っぱらからなんつう深いもんを読ませてくれるんだ…
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/09(木) 07:47:23.79 ID:zCpfTmRDO
乙!
しかるべき場所に落ち着くのか……
最愛ちゃんのことを考えると今から心が痛い。
保育士ってところとか、クラナドの杏を思い出すぜ。
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/09(木) 07:49:58.16 ID:VX0DNPbS0
安心のクオリティ、乙

しかし、ついに美琴も一方さんの家で風呂に入るようになったのか…
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/09(木) 08:06:11.11 ID:OAFWSaOy0
…あー
美琴さん一方さんの部屋で風呂入ってる…?
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/09(木) 08:06:48.11 ID:OAFWSaOy0
…あー
美琴さん一方さんの部屋で風呂入ってる…?
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/09(木) 08:23:58.56 ID:N6LTSu2IO
投下乙〜
美琴には幸せになってほしい反面、他のヒロイン達にもチャンスを与えてほしいと思ったり思わなかったり
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/09(木) 08:43:22.96 ID:N6LTSu2IO
>>82
ほい
TV 「ねことあひるが力を合わせて」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1297188449/

>>83
上条「約束したよな?たとえ地獄の底でもお前をーーー」
美琴→上条×インデックス←一方通行

一方通行「いい子にしてたかァ?」
↑の続編で電磁通行(時々窒素通行)
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/09(木) 08:43:48.46 ID:N6LTSu2IO
すみません誤爆しました…
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/09(木) 08:55:58.11 ID:to/mqko90
>>「でね、でね、想とずっといっしょにいてくれるとこ」

これ、なにげに美琴に残酷なこと言ってね?
もちろん想ちゃんに自覚はないだろうけど。
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/09(木) 09:31:23.02 ID:vAV8QqgX0
乙!
知らないうちに投下されてた!
学校なのにニヤニヤが止まらない。
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/06/09(木) 10:40:11.06 ID:uz55ZyS7o
電磁通行成立して一方さんの実の娘とか産まれたりしちゃったら
想が打ち止めポジになってグレてしまうな
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) [sage]:2011/06/09(木) 11:07:41.24 ID:UhvczBP8o
どうだろう
意外と妹or弟べったりなダメ姉になりそうな気がせんでもない
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/09(木) 11:10:22.51 ID:2T8D4evx0
打ち止めや番外個体も誰かと結婚して御坂家第二世代の交流も見たい。
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/09(木) 14:27:25.30 ID:WPWPhEUDO
>>117
俺はいやだ!!そんなのは許さないぞ!!

番外個体も打ち止めも結婚はしない方がいいに決まってりんだああああああああああ!!!!
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/09(木) 14:44:42.60 ID:R5+NUlQF0
>>118

最後のりんだああああああああああ!!!!にフイタwwwwwwwwwwwwww


でも確かにいやだな…打ち止めと番外個体が見知らぬ誰かと一緒に暮らしてるのなんて耐えられねぇや、なんでだろうね
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/06/09(木) 15:08:45.73 ID:0VPdb8hAO
余り者達の行方

打ち止め←→番外個体
絹旗←→ボンバー
コング←→アッークア

これで概ね平和じゃね?
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) [sage]:2011/06/09(木) 15:41:07.52 ID:UhvczBP8o
>>120
アーックアさんはすでに英国方面に売約ずみな気がせんでもないww
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/09(木) 15:56:34.82 ID:W/rdpIn1o
>>120
アッークアさんは初登場したタイトルが「奥様は第三王女」だったし既婚者だろwwww
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/09(木) 17:44:20.35 ID:to/mqko90
そういえば、現状の海原というかエツァリって出てきたっけ?
過去編に出てきたっきりだよな?
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/09(木) 17:47:30.21 ID:IDqFskap0
垣根の恋愛観だけどこういうので勘違いして振られて嫌がられて迷惑がられても言い寄りまくってくる奴がいるからなー
ここでの初春は満更でもないって感じだったけど
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/06/09(木) 19:19:10.88 ID:qqArcOe8o
相手の負の感情に気づかなかったらタダのバカじゃないww
それでも押し通す人は所有したいだけで一緒に居たいとは考えないんだと思う。

布束の涙の理由が気になって仕方ない。
一方通行が壊れてんのは良しとして彼女はどうだったのかつうのがなあ。
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/09(木) 19:50:15.66 ID:hJOGnkkDO
>>115
何を言っている?
あーくンと美琴に実の子供が出来れば、その子を通じて想との間にも
血の繋がりができるんだぞ?数奇な縁と絆だけじゃない、本当の家族になれるんだ。
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/09(木) 21:49:42.92 ID:U145XdUDO
妹達が可哀想だ…
上条も一方通行もオリジナルに取られる
特に打ち止めと番外個体は納得できないだろうな…
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/09(木) 22:36:51.19 ID:CrP5FAF30
姉より優れた妹など存在しねえ!!
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/09(木) 22:51:13.57 ID:nybMEX/go
>>128
フレンダさん、落ち着いてください
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/09(木) 23:04:08.24 ID:U145XdUDO
脳内で美琴の格好したジャギが出てきた
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/10(金) 04:21:12.09 ID:QkCFe65DO
打ち止め達の視点が無いからなんだか切なく見えてしまうけど
彼女らにもそれぞれ日常生活がある訳で
そっちで普通に男見つけるんだろうな
美琴さんに限らず、女の恋愛は上書き保存や……(´;ω;`)
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/10(金) 06:46:40.71 ID:799q39qDO
過去に作者が書いた短い電磁通行?SSが繋がってるなら、
打ち止めにもちゃんと恋人が出来て結婚するんだよね。
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/10(金) 15:46:05.55 ID:EBMHIsqDO
>>132
あれって電磁通行だっけ?
一方さんが結婚した人は分からなかったような…
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/06/10(金) 16:22:21.40 ID:SGxgtEIA0
オーソドックスに番外説、美琴と親友兼初作ヒロインもあって佐天説
他に初春説、黒子説と出てたけど>>1は特に誰とは決めてない風だったっけ
135 : ◆d85emWeMgI [sage]:2011/06/10(金) 18:17:31.88 ID:ZRlH50vM0

*報告*
こんばんは。以前書くと言ったねーちん小話は最終回後まで延期します。
というか後に続く雰囲気じゃなかったら無期延期にします。
やるやる詐欺になったらすみません。

136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/10(金) 20:43:44.86 ID:c2jWZLNQ0
総合に上げるって方法もぜひ考慮してみてください

どうか無期延期だけは・・・・
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/06/10(金) 22:31:46.23 ID:V06ZFwjAO
後日ソギちんネタでスレ立てします

まで読んだ
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/11(土) 12:46:00.39 ID:NAhW1VU/o
一方さんのちんこ無くなってしまうん?
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/11(土) 13:41:40.91 ID:7RHQ6U230
>>138
どういうこと?
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/06/11(土) 13:50:24.43 ID:urtkwvQ4o
>>137のソギちんを読んで、あっくんのちんちんをソグものの話だと勘違いしてるんじゃないすかね
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/11(土) 14:15:49.86 ID:NAhW1VU/o
>>140
まんまその通りに勘違いしてた
よく考えてみたらちんこは無事だった
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/06/11(土) 18:00:49.38 ID:br0XUMcE0
どう曲解したら、一方さんのチンコを削ぐ話になるんだww  お前、普段からエロイ事考えすぎだろ
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2011/06/11(土) 20:15:25.43 ID:GvqFuQVy0
ソギちんwwwww
144 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/12(日) 00:01:10.24 ID:ZcrZ38MY0
今から投下を開始したいと思います。よろしくです。
145 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/12(日) 00:02:12.81 ID:ZcrZ38MY0

「もう、想ちゃんったらご飯粒付いてるわよ」

言葉とは裏腹に美琴の声は何処か嬉しそうである。世話を焼けるのが楽しくて仕方が無いのだろう。
想もまた母親が構ってくれるのが嬉しくて仕方が無いので、あえて美琴がご飯粒を取ってくれるのに任している。
対面に座る似た顔を見ながら一方通行はサツマイモの味噌汁を啜る。
美琴が想に向ける柔らかい瞳や、想の嬉しそうな声。そして二人が時折自分にも向けてくる笑顔。
今日の自分は一つ一つに律儀に反応してしまっている気がするのは決して気のせいではない。
一つ意識すると、他のことも意識せずにはいられない。心地良いのだとハッキリと言葉を伴い自覚すると、一つ一つのことに目が行ってしまう。
垣根の言葉が脳内をグルグルと回っている。
酢と唐辛子をたっぷりと入れた醤油に着けて水餃子を放り込む。
意識すまいと思えば思う程に逆効果だった。





「オラ、口もっと開けろっての」
「あ〜ん」

やわらかい輪郭の小さな顎に手を添えると、僅かに自分の方へと傾けさせる。
一方通行の目が向くのは想の口の中。
きちんと歯磨きが出来ているのか、髪の毛は乾いているのか、それを確認するのは最早習慣と化している。
ヤングコーンのように、整然と並んだ幼児の小さな歯は作りものめいているといつも一方通行は感じる。

「準備できたわよ〜」

美琴は寝室から持ってきた布団をリビングに敷き終わる。
一方通行による入念な検査は、彼の納得したように頷くと同時に終了する。
想は遊びつかれた子猫のようにころりと真ん中に寝転がる。
テーブルを端っこに寄せ、フローリングに敷かれたのは三つの布団。
美琴は時計を見てから、一方通行に視線を向ける。
自分に向けられる二対の鳶色の瞳に観念したように一方通行の溜息がリビングに溶けて行く。
ランプシェードを消すと、想を真ん中にして横たわる。「川の字」というやつだ。

「それでね、ラビ太郎がね〜」

美琴が優しく想の胸の上に置いた手で穏やかにぽんぽんと叩いてやるのを、闇の中一方通行は黙って見つめる。

「そんでね、この前はまちゃんってばね〜」

想の右手は、しっかりと一方通行の右手を掴んでいた。
一方通行は左腕を枕に、幼い横顔に視線を注ぐ。
カーテンの間から差し込む月明かりにも、はっきりと浮かび上がるシルエット。

「きぬはた先生ね、ぷんぷんっておこってね〜」

美琴は想を寝かしつけようとする一方で、もう少しだけ、もう少しだけと想が起きていてくれたらとも思う。
自分を信頼しきったように無垢な瞳で話しかけてくる少女の愛しいこと。
互いのシルエット以外、境界の何もかもが曖昧になった闇の中で、幼い少女の潜めた声というのは何と言いがたい程愛らしいのだろうか。

「そんでね、そんでね、想ね〜」

話の飛びように慣れているとはいえ、一方通行は呆れる。
そもそも子供の話す内容には起承転結や、関連性などと言ったものは無い。無いのではなく、全ての納得の行く繋がりは子供の中のみで完結しているのだ。
端からわかるはずがないと理解を放棄することは、子供を不機嫌にするし、ナイーブな子であれば傷つけさえしてしまう。
けれども、無理に理解をしようと思えば思う程どつぼにはまることは美琴にはわかっている。
子供の親としてすべきは、一つ一つの話に真剣に耳を傾け、子供が何を感じているのかを漏らさず知ることだ。
子供は自分の話を真剣に聞いてくれているのならば納得する。

何より、一方通行は想の話が苦痛ではない。
楽しそうに、声を弾ませて内緒話を打ち明けるように枕元で囁かれる少女の声は耳にしているだけでも気持ちが安らぐ。


ころころと夜の中に心地良く響く鈴の音が止むように、少女の声が徐々に途切れがちになる。

やがて、子猫の鳴き声のように小さく、細くなり、寝息と入れ替わる。

すぅすぅと、美琴の手が置かれた胸が小さく上下していく。寝息すら幼く愛らしい。


146 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/12(日) 00:03:26.31 ID:ZcrZ38MY0


「うふふふ、寝ちゃったね」

「いつも思うが、電池でも入ってるンじゃねェかってくれェイキナリ落ちるな」

「こんな時間まで起きてたことが寧ろ奇跡だわ。よっぽどテンション上がってたのね」

三人で夕食から眠るまで一緒にいることはひさしぶりだった。
母親と一方通行を独占出来る夜を、出来るだけ長引かせたいと幼い少女なりに思っていたのだろう。
闇の中であるが、一方通行には美琴がどんな表情を浮かべているのかがわかった。
恐らく自分も似たような表情を浮かべているのだろうから。

「どォして急に三人で寝てェなンて言い出したンだコイツ?」

マシュマロのほっぺを軽くつついてやる。
むぐむぐと、口を動かすと、こてんと寝返りを打つ。
可愛い、と美琴が小さく呟くのが聞こえる。同感だった。言葉には出さないものの、一方通行の口元も自然と緩む。

「馬鹿ね、明日からお泊り保育でしょ?寂しいのよ」

そういえば、自分も美琴も居ない夜を過ごすのは初めてだったか。
一方通行は得心行ったように想を覗き込む。



「明日プール開きだからね、想ちゃんにとっても可愛い水着買ったのよ」

「俺はまだ見てねェぞ……」

「そうだったっけ?ってか、あはは、何アンタ。もしかして拗ねてる」

「……拗ねてねェし」

「機嫌直してよ。今度見せてあげるわよ」

本気で機嫌を損ねているのが、寧ろ可笑しかった。

「ねぇ……」

三人で並んで横になっていることが、夜の闇が、美琴の中にふと懐かしい思い出を呼び起こした。

「初めて三人で眠った日のこと覚えてる?」

「そうそうねェだろ、三人で眠ることなンざ」

「でもあったのよ。想ちゃんが三つくらいの時だったかな―――ほら、想ちゃんがカップ割っちゃった時」

「――― あァ……」


美琴が大学の研究室に入ったのは想が三歳の頃であった。
大学で習うレベルの教養は既に常盤台在学中に身に着けていた美琴は、大学としての体裁上必要とされる単位のみを通信制によって半ば事務的に取得していた。
まったく大学に通わないということは無かったが、主体はもっぱら産まれたばかりの娘に傾けていた。
どれだけ医療、科学分野においては有望な才女であろうとも、母親としては初心者の美琴にとって、慣れない育児は片手間に出来るものではなかったからだ。
しかし、三歳になり、ようやく一つの落ち着きを見せた頃になり、本来の夢を叶えるべく美琴は研究に生活の比重を徐々に移していった。
研究を家に持ち込み、徹夜が続くような日は一方通行が預かるなどして、美琴はとにかくそれまである意味休んでいた分を取り返そうとしていた。
そんなある日のことだった。
自室で論文を書いている美琴の耳に届いた音。
何かが割れる音に、咄嗟にリビングに駆け寄った美琴の見たものは、両手を真っ赤に染めた幼い娘の姿であった。
泣くことも忘れて呆然と座り込んだ娘の側には割れたカップの残骸。
すぐに美琴は状況を察した。そして、同時に美琴は三歳になろうとする娘を叱りつけた。


いや、アレは叱るというよりも怒ったと言うべきだ。

147 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/12(日) 00:04:16.04 ID:ZcrZ38MY0

美琴は苦々しく思い返す。
怪我をした娘に美琴が抱いたのは心配であり、恐怖であった。
しかし、同時に彼女は確かな苛立ちを抱いたのだ。研究の邪魔をする小さな存在に。
それが伝わったのか、想はすぐさま泣きながら飛び出した。
行く先は一つだけ。彼女が母親と同じくらい心を許し、甘えられる存在のいる場所だった。
驚いたのは珈琲を飲みながら久々の一人の時間を本を読みながら過ごしていた一方通行だった。
何せ、イキナリ可愛がっている少女が両手を血に染めて泣きながら部屋に来たのだ。
様々な事態が頭の中で想定された。銃を取りに寝室に行こうとさえしたところで、彼を止めたのは少女の嗚咽交じりの声だった。



『あーくぅん、ひっぐ、ママ、、えぐ、おこっ、そう、わるい子だから、ママ、きらいに、あぅう゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛』



最後は言葉にならなかったが、一方通行はおぼろげに状況を把握した。



固まりかけた血を洗い流してやると、傷口は案外浅く、胸を撫で下ろした。
消毒をしている間、消毒される傷口の痛みのせいもあって少女は泣き止まなかった。
断片として綴られる言葉を紡ぎ上げ、一つの形に組み上げる頃には少女は泣きつかれて一方通行に寄り掛かって眠っていた。
両手には絆創膏がパッチワークの如く不恰好に貼られ、一方通行は痛ましげなその手を、無意識に撫でていた。
毎日頑張る母親の為に温かい飲み物を作ってあげたい。
泣きながら少女が語ってくれたいじらしい理由は、一方通行の胸を打った。
子供の温かな体温を感じながら、眠りこけた想の赤い目尻の涙をそっと拭ってやりながら、沸々とした怒りを覚えた。

美琴が来たのは、それから暫くしてからだった。

言ってやりたいことは山ほどあった。それこそ、想がいなければ引っ叩いてやろうかとさえ思った。
その気が削がれたのは部屋を訪れた美琴の顔が怯えと自己嫌悪に歪み、余りにも哀れに見えたせいだ。
理由を告げると美琴は、硬く苦い塊を飲み下したように苦悶の表情を浮かべた後、そっと想の頬をなでた。

『ゴメンね……ゴメンね想ちゃん』

撫でながら美琴はぼろぼろと、涙腺が壊れてしまったように泣いていた。
それは、単に娘への罪悪感だけではなかった。
娘を心配していたという気持ちを上手く伝えられなかった自分自身に対する苛立ち、
自分で決めたこととはいえ、多くのことで手一杯になってしまっていることへのやり場の無い憤り、
色々な感情のこもった、重たい涙だ。
冴えた仲直りの方法を思いつくことも出来ず、いつしか一方通行と美琴は想をはさむ形で眠りに落ちていた。
言葉を尽くすことの出来ない未熟な二人には、結局少女の側にいてやること以外に、慰める手段がわからなかった。


危ない真似をして、怪我をすること。その事に美琴が抱いた恐怖と怒りを伝えるには美琴は余裕が無く。

自分が母親を想い慕い、喜ぶ顔が見たいという気持ちを伝えるには、想は今よりももっと幼かった。

そして、二人の気持ちを調節して繋いでやるには、一方通行はひたすら未熟であった。


結局のところ三人は三人とも、家族として今よりもっと幼く、不完全であったという、ありふれた理由だった。

148 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/12(日) 00:08:17.45 ID:ZcrZ38MY0



一方通行は美琴に促されるように思い出す。
眠ってしまった想を挟んで美琴と何を話したのか。
彼女の心配も、想の心配も、一方通行には理解出来た。
そして、それが二人の解決すべき問題だということもわかっていた。
けれども、二人は自分をその間に置く。ただの他人の自分を。

本来ならお前たちの問題だろうと突き放すべきだったかもしれないのにだ。


温かな想の体温に促されるように、いつしか三人揃って眠りに落ちていたのを認識したのは、夜中に目が覚めた時だった。
気付かぬウチに眠ってしまっていたのかと、些か己の腑抜けぶりに落ち込んだ。
しかし、次の瞬間そんな下らないプライドは彼方へと消え去った。
娘をしっかりと抱き締める美琴。
そして、自分の指をぎゅっと握り締める小さな手。
母娘のそっくりな寝顔を目にしながら、一方通行はひそやかに願った。
この時がいつまでも続けばいいのに、と。

あの日もそうだった。

朝目が覚めて、初めて三人そろって眠りこけていたと知ったあの瞬間、ふと思ってしまったのだ。

自分もこの場所にいたい、この母娘と世界を共有していたい、と。





「そういえば、あれからアンタ絶対想ちゃんから目を離さなくなったわよね」

「お前もだろォが……」


過保護っぷりが加速したのは間違いなく、目の前の男の方だ。
美琴は笑ってしまいそうになる。
この男は自分では何処まで自覚しているのかわからないが、相当に情が深いところがある。
そのくせ、踏み入ってこない。見守ろうとするのだ。恋心を抱いていた大切な少女に嘗てそうしたように。
幸せにしてやりたいと思っても、一緒に幸せになろうという発想に至れない。結局はそこに尽きるのだろう。
美琴は不意に込み上げる切なさをグッと飲み干す。




想の寝息と重なるように、美琴の寝息が一方通行の耳に優しく溶け込むようになっていた。
不思議と一方通行は眠れなかった。
緊張や、疲労が裏返ったわけではない。
美琴と挟むようにして抱いている想のやわらかく、熱いといってもいいほどの体温。
ミルクのような子供の甘い香りと、美琴の持つ柑橘類のような爽やかな芳香が自分を薄いヴェールのように包み込んでいるのがわかる。
自分が今、とても心地良い空間にいるのだと、再認識する。
夜の帳、夜の静寂は思考をクリアにしてくれる。


改めて思う。自分はこの母娘にどれ程救われてきたのだろうか、と。


149 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/12(日) 00:08:55.69 ID:ZcrZ38MY0
美琴は自分に甘えすぎていると常々気にしているようだが、それは寧ろ逆だ。
自分が彼女達によって支えられているのだ。
夜半に訪れる満ち潮の如く、気配無く忍び寄り、心の中を満たす罪悪感。
決して拭えない墨色の後悔に膝を折りそうになったのは幾度と無い。
妹達をとりあえず救えた、そう認識してしまったことが災いした。
贖罪という意識は一方通行を追い詰めると同時に、支えとなっていた。
それが無くなれば、ひたすら自分自身に執着も未練も無い抜け殻が残るだけだった ――― 本来は。


この母娘がいてくれたからだ。


確信をもってそう思える。
許しを拒む自分に、それでも尚何度も言って聞かせるようにありがとうを繰り返す美琴に救われた。
自分の指を掴む命の塊のような幼い少女を愛しいと心から感じた。
あの日誓った。無垢で温かな命を抱き上げた時、この母娘の笑顔を守ろうと。
贖罪としてではなく、己に貸した己の為の使命として。
不意に一方通行は恐ろしくなった。いつか、この空間が誰かに奪われるのだろうか、と。
それは覚悟していた筈の問いだというのに、納得していた筈の問いだというのに。


今は酷くそれが恐い。


一方通行は強く瞳を閉じる。
心の中にあるしこりが、何かがすぐそこまで込み上げてきているのだ。
圧迫されるような、込み上げる何か。答えがすぐそこにまで来てるような。



想の胸の上で、偶然美琴の手と触れ合った。



違う、そこまで来ているのではない。



多分、答えは ―――……





150 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/12(日) 00:10:44.99 ID:ZcrZ38MY0




頭から熱いシャワーを浴びる。

オートバスをオフにする。温いシャワーに肌は安堵の溜息を漏らすように徐々に弛緩して行く。
すぐさまシャワーは冷たい水となる。夏が近いとはいえ、すぐに肌が粟立つ。
それでも胸の奥に、張り詰めたものを感じる。可笑しくないのに少しも寒いとは思わない。
冷たいシャワーは寧ろ頭の中を冷やしてくれる。少しだけ心が落ち着く。
瞼を閉じてじっと、顔を滴が打つがままに任せる。
汗を流し、汚れも念入りに落とした。身体の奥が熱い。



自分は何かを期待しているのだろうか。



違うと言い切れない自分が酷く浅ましく思える。
美琴はようやくシャワーを止めると、顔を掌で拭う。


鏡を見れば、そこには見慣れた裸体がある。

少し痩せただろうか。

2月から伸ばし始めた髪の毛は、嘗て、中学生だった頃よりも僅かに長く、毛先が肩のラインに沿ってカーブを描いて流れる。

同年代の女に比べて、そこにあるのは贔屓目を抜きにしても遥かに肌理が細かく、瑞々しい肌が映っている。

元々の素材が良いというだけではない。身体に良い生活とはお世辞にも呼べぬまでも美琴なりに手入れはしてきたつもりだ。
だからこそ、ノーメイクであっても美琴の美貌は大学構内であろうと街中であろうと一目を惹く。
ケアを怠らず、化粧を過剰に施さないが故に肌そのものが美しく、眉のラインに至ってはそもそも殆ど手入れを必要とせずに整っている。
勿論、上条と別れて以来恋人などこの数年間いた試しはない。それでも、行き届いた手入れに、周囲は常に美琴の後ろに男の影を見ていた。
見られるという意識、見せたい相手がいるからこそ、初めて自発的に自分を磨くと知っているから。
人目を意識して自分を磨くというのならば、確かにその通りだった。

自分はあの男の前で無防備な格好を見せたこともあるが、決してだらしない、みっともない格好は見せなかった。
無意識に最後の最後の部分で境界線を越えないようにしていたのだろう。
今なら冷静に自分の気持ちを美琴は量ることが出来る。

151 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/12(日) 00:13:05.66 ID:ZcrZ38MY0

両手をついて、そっと鏡に額を当てる。鏡がひんやりとして気持ちいい。
そっくりの ―― 当然であるが ―― 顔が目の前にあるのが、まるで妹と額を合わせているような気がして思わず笑ってしまった。
浴室にくぐもった忍び笑いが木霊する。
吐く吐息の熱さに美琴は自分でも驚いた。




「んん――― 気持ちいい」


美琴が両手を上にして背筋を伸ばす。
撓る弓のようにしなやかな身体が強調される。


「生温い風って結構好きだな。台風って何かワクワクしてこない?」

「ガキみてェなこと言ってンじゃねェよ。まァ、木がへし折れるンじゃねェかってくらい風に揺れてンのを見るのは嫌いじゃなかったがな」

「アンタだって十分子供じゃないの」

「お前程露骨じゃねェよ。遠足前日のガキかよ」


楽しそうに笑う美琴に、一方通行は心外とばかりに眉間に皴を寄せる。
開けっ放しにしたベランダの縁に座る美琴が見つめているのは、七時を回り日が完全に沈んだ空だ。
気持ち良さそうに風を浴びている美琴の姿を視界の隅に留めながら、一方通行は何処か胸騒ぎを覚える。
胸騒ぎと呼ぶには悪い予感はなく、ただ漠然とした予感めいたものを覚えているのだが、上手くそれを把握出来ない。
デニムのショートパンツから覗く健康的な太腿が目の毒だった。
薄手のシャツといいどうしてこうも無防備になれるのだろうかと、憤りに近い感情が湧きあがる。


「飯はどォする?」

「別にお腹あんまり空いてないな。アンタもお腹空いて無いならさ、適当に摘みながらお酒でも飲まない?どうせ今日は想ちゃんが居ないんだし」

「チーズと後は生ハムか。後は朝飯のフルーツくれェしかねェぞ」

「いいじゃない。私ワインなら持ってきてるし」


一方通行がにやっと笑う。



「決まりだな」



152 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/12(日) 00:14:38.35 ID:ZcrZ38MY0



リビングのフロアランプは最低限の明るさに押さえられている。
互いの表情を辛うじて認識できる程度の明るさの中、ゆっくりとワインを飲む。
美琴の言う通り、微かに湿気を帯びた風が心地良い。
鉛色の空はすぐさま墨を垂らしたようなねっとりとした闇に覆われる。
ベランダの縁に座っている美琴に対して、一方通行は直にフローリングに胡坐をかいている。
彼女のグラスにワインを注いでやる。美琴のことは笑えないと一方通行は二杯目のワインを空けると空に目を向けた。
台風の前触れというのはどうしてこうも胸をざわつかせるのだろうか。



「想ちゃん、怯えていないといいけど」


一口サイズのクリームチーズを放り込むと、美琴は保育園のある方へと不安げな眼差しを送る。


「絹旗がいるンだから大丈夫だろ」

「信頼してるんだ」

「まァな」

含みのある美琴の言葉に気付かぬフリをする。

「何かさぁ、こうしてベランダに腰掛けて、お酒飲んでてさ。そこにギターなんかがあるとサマになるよね」

「ギター?弾けンのかよお前」

「ちょろっとね〜パパに教えてもらったことがあったの。お腹大きくなってから弾かなくなっちゃって、そのまま」

「まだあるのか?」


美琴は首を振る。


「あげちゃった。欲しいっていう子がいたから。でもちょっと勿体無かったかもね。結構練習してたんだよ、“Moon River”とか弾けるもん」

「タコ。ヘプバーン気取ろォなンざ片腹痛ェよ」

「いいの、そういうのって気分でしょ。気分。大体アンタがあの映画好きっていうのが既に似合わなさ過ぎて笑えるんだけど」

「ウルセェ。それこそデケェお世話だ」

酒の力もあってか、軽口の滑りが良くなっていることに、どちらからとも安心したような空気が流れる。

「昨日も流してたじゃん。お風呂入ってても聴こえてきたわよ」

「どっかの誰かみてェにジャケ借りして自爆すンのが嫌なンですゥ。それに、想だって同じの観るじゃねェか」

「そうなのよね。私もうあらすじどころかセリフまで覚えちゃった。『ボク、明日になると白猫になってると思うよ』」

「ぶはッ」


澄ました美琴の口調がツボに入ったのか、一方通行が咽る。
背を丸めて笑いながら咳き込む姿に、してやったりと得意げに笑いながら美琴はワインを飲む。

153 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/12(日) 00:15:52.14 ID:ZcrZ38MY0

「ホント、何でアンタの方に似ちゃったんだろ想ちゃんってば。同じ映画を観るとことか、食べ物の好みとか。ゲコ太好きじゃないとか」

「最後のはまァ、普通じゃねェの?」

「むぅ……」

「けど、仕方がねェだろ。一緒にいる時間が長ェンだからよ」

「ど〜せ私は減点ママですよ〜だ」

「ウゼェ……激しくウゼェ拗ね方すンな」

「フン。ところで今度さ、8月くらい海に行こうよ。妹達から誘ってきてるの」

「海ねェ」

レベル5が二人も学園都市を離れる。
そんな事は通常ならば許されない、というのは今は昔。
現在ではその規制は大幅に改訂されている。もっとも、許可を事前に貰う必要はあるのだが。
そして、親船最中の性格を考慮するに恐らく彼女は反対などしないだろう。

「いいンじゃね?」

「やった。私も水着買ったのよね、この前」

「しかし、勇気あンなァお前。わざわざ格差社会を……」

「ぶっ飛ばすわよ?」

「冗談ですゥ。とってもスレンダーで水着が映えると思いますゥ」


わざとらしい謝罪を口にする一方通行をじろりと睨みつける。


「8月が終わればあっという間に秋。運動会にも応援に行ってあげなきゃね」

「馬鹿みてェな大人数で行ってまた叱られなきゃいいンだけどなァ」

「何言ってるのよ。叱られたのは借り物競争でアンタが能力全開で突っ走ったからでしょ」

「忘れたなァ」

「嘘言いなさいよ……まったくもう」

「一年も前のことなンざ覚えてねェし」


一年。そう口にすると次々と懐かしさが込み上げる。



「そっか、一年過ぎたんだもんね。早いなぁ……てか、この五年、もう六年目か。ホント、あっという間だったわね」

「まァな」


154 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/12(日) 00:17:14.71 ID:ZcrZ38MY0




不意に沈黙が訪れた。

前触れも無く、会話が止む。

天使が通り過ぎた、そんな表現を一方通行は思い出した。



「…………」

「…………」



幕のようにすとんと落ちた沈黙は、気まずいものではなかったからだ。

互いに共有してきた時間の多さに、改めて気付いてしまったからだ。




155 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/12(日) 00:17:52.92 ID:ZcrZ38MY0



むず痒いものを胸の内に覚える。
ざわざわと、心の奥に生い茂る木々が風に揺れ、葉を擦り合わせるような。
鳥が突然群れを成して飛び立つ瞬前の如き予感。
甘さを何処かに秘めた沈黙の重苦しさを誤魔化すように美琴はワインを注ごうとする。
一口分に満たぬほどの量がグラスの底面をなぞるように満たしただけで瓶は空になる。
一方通行と美琴で一瓶を空けるのは決して早いペースではない。
二人の視線が中途半端に注がれたグラスを交点としてぶつかる。


「あ……私、新しいの取って来るわ」



そう言って立ち上がりかけた美琴の手を骨ばった手が押さえた。



細くしなやかな指、ピアニストがむいているのではないかと、冗談交じりにいつか美琴が言った指。
その長い指が僅かな躊躇を呑み込む様に美琴の手を絡め取った。
鶴が翼を折り畳むように、すっぽりと美琴の小さな手を隠すように包み込む。
生温い風が頬をくすぐる。
一方通行は胸の内に湧き上がる衝動に、自分の起こした行動に激しく動揺していた。
堪えきれなくなった、情熱に身悶えするように発作的に起こしたわけではない。
するりと、自分の手が動いた
一過性の熱などではない、もっと穏やかで、静かで、根深いものが、彼に促した。
理解出来ないわけではない。
一方通行がうろたえたのは自分を突き動かす『声』の抗いがたい力強さに対してでった。



ハッキリと今ならわかる。


この気持ちの名を何と呼ぶのか。


この気持ちの収まるべき場所が。



156 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/12(日) 00:20:07.45 ID:ZcrZ38MY0


美琴の瞳には不安や恐れはない。期待や欲情すらない。
もっと透き通った感情が、薄い膜一枚を隔てて鳶色の瞳に浮かんでいた。
一方通行の行動をただ、じっと見届ける為に。
覚悟をとうに決めた彼女らしい強い瞳だ。
こくんと、美琴が喉を鳴らす。
頬が紅潮している。
薄暗い部屋であっても、それがはっきりとわかる。
掌を通じて、美琴の熱を一方通行に伝えてくれるからだ。
喉が艶やかに揺らぐ。
美琴の肌理細かい肌が波打つのまではっきりと見て取れた気がした。
微かに力を込めただけで美琴の身体はあっさりと崩れた。

「あっ……」

短い悲鳴と共に美琴の身体が一方通行にしなだれかかる。
フローリングの冷たく、硬い感触はすぐに頭の外へと消え失せた。
身体を入れ替えた瞬間、一方通行が美琴の頭の後ろに右手を回していたから痛みはなかった。
結果、抱き締められる格好になる。
張り詰めたような、切実な瞳が真っ直ぐに美琴を見下ろしていた。


どうして?



そんな疑問は既に通り越していた。
理由を一から十まで説明してもらわなければ理解出来ない状況などではない。
寧ろ、逆だ。
一から百まで、全て出揃った状態でずっとほったらかしにされていたのだ。


何が?



多分全てが。



一方通行がこの期に及んで困惑しているのが薄明かりの中にも見えて、美琴は少しおかしくなった。
何だか不器用で可愛らしい。
口に出して言えば勿論、この男はへそを曲げてしまうだろうが。
そのことが美琴にようやく僅かな余裕を与えてくれた。

157 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/12(日) 00:20:49.27 ID:ZcrZ38MY0


不思議な気持ちだった。

頭はとても冷静なはずなのに、心は激しく高鳴り続けている。

走り出そうとする獣の鎖を、理性がしっかりと握り締めているようだ。

抑え込むためではない。

効果的なタイミングを見極めて放す為に。

嘗て上条とそうなった時のような勢いと衝動に任せてはいけない。

もっと、丁寧で、穏やかで、大切に扱わなければならない。

御坂美琴という女を。

一方通行という男を。


158 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/12(日) 00:21:57.68 ID:ZcrZ38MY0


闇の中で、一方通行が静かに動いた。
美琴は強く目を瞑る。
しかし、待っていた感触は一向に唇にやってこない。
代わりに、彼女の髪に何かが重なる感触がする。
薄く目を開けると、柔らかな夕日のような瞳がゆらりと揺れる。
今度はそっと自分の額に口付けを落とす一方通行の顎から首のラインが目に映った。

腕の中、美琴が肩を震わせているのに気付いた。
泣いているのではない。笑っているのだ。

「ふふふ……」


笑っているのだと気付くと、美琴は楽しそうに、今度ははっきりと声を立てて笑った。


「何笑ってンだよ」

拗ねた声が墨色のリビングに響く。
笑い声を収めると、美琴は空いている手で、そっと一方通行の頬を撫でた。


「だって……想ちゃん寝かし付ける時と一緒なんだもん」


妹達が初めて聞いたときには激しく動揺した。
何せ、この男が小さな少女を寝かし付けるだけでも信じられないというのに、その上額に口付けをするのだ。
恐らく美鈴が想に吹き込んだのだろう。
ある日、想は可愛らしくおねだりをした。
渋った一方通行は、しかし、結局は少女に勝てなかった。
躊躇し、照れながら落とした口付け。
味を占めた少女は、その日以来何度もおねだりを始める。
そしてそれはすぐに習慣となる。
美琴は、その光景がとても好きだった。
親子のようで微笑ましいとか、そんなレベルではなかった。
毛繕いをしてやる親犬のような、胸を甘く、強く締め付ける光景だった。


「バァーカ、似たようなモンだろォが」

「なにぉ」


同じつむじがあったから、思わずそこに口付けた。
いつもそうするように。
けれども寝かし付ける為ではない。
一息付く為の口付け。
間違えてしまわないように、ただただ、衝動に身を任せて美琴を傷付けてしまわぬように。



「似たような泣き虫で。ビビリで。ウゼェくらいに意地を張りやがる。そンでもって ――― 甘えたがりなところも似てやがる」



159 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/12(日) 00:22:25.08 ID:ZcrZ38MY0


こんな状況だというのに似つかわしくない。
憎まれ口を、信じられないくらいに優しい声で言う。
混じりけのない優しさは、銃弾のように真っ直ぐ美琴を撃ち抜く。
痛みすら伴う優しい声に、美琴は言葉を紡ぐことを忘れる。
短く息を呑んだ瞬間を逃さずに、一方通行はそっと顔を近づける。

想には決してしないこと。

唯一、美琴と想では違う場所。



桜の花びらのような美琴の唇を、一方通行の唇が塞いだ。



数拍。

間を開けて。

一方通行の唇が離れる。

けれども、一方通行の唇はそのまま、滑るように美琴の耳に当てられた。

こくっと、固唾を飲む音が耳朶を卑猥に揺らした。

そして、次の瞬間だった。

そっとノックするように小さな声がトンと美琴の鼓膜を揺らした。



160 : ◆d85emWeMgI [!orz_res]:2011/06/12(日) 00:23:18.44 ID:ZcrZ38MY0










「美琴 ――― オマエが好きだ」









161 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/12(日) 00:24:01.30 ID:ZcrZ38MY0




激しく燃え盛る炎のように、鮮やかに焼け付くような想いではない。
もっと穏やかで、確固たる感情だ。
長い月日を経て、少しずつ積み重なっていったそれは、やがて巨大な岩のように硬く、大樹のように深く根付いていた。
葛藤や迷いに削り取られ、それでも尚残り続けた想いは、削るところなど残っていない石のように穏やかな曲線を描き出す。
これ以上は無いほどのマイナスから始まった感情が、ここに来てようやく言うべき言葉を見つけ出した。
これほど陳腐で、ありきたりな言葉は無い。
極々標準的な男女で交わされる言葉。
拙い愛情表現の最たるものだ。


今も、世界中で何万人、何千万人が口にしている稚拙な愛の言葉。


けれども、二人にとっては特別な口当たりを残す。



162 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/12(日) 00:25:22.89 ID:ZcrZ38MY0



「ふ……ふぐッ―――ひッ、ひっく……」


子供のような嗚咽が静かに起こる。
美琴の耳元から顔を離すと、薄灯りの中、美琴は鳶色の瞳から澄んだ泪を流していた。
当然悲しいからではない。
けれども嬉しいというのではあまりにも言葉が足りない。
偽りのない、純粋な言葉。
初めて向けられた言葉の強さに翻弄されるように、美琴は感情の箍が外れてしまったのだ。


ようやくなのか、やっとなのか、とうとうなのか。


それは些末な言葉の違いなのかもしれない。
同じ場所に向かって歩き続けながらも、常に違う方を向いていた二人がやっと同じ方角を向いたのだ。
支え続けたのは一方通行。
俯いた彼の顔を掴んで引き寄せたのは美琴。
けれども、二人だけで辿り着いたわけではない。
一方通行が挫けぬように、美琴が力尽きないように、二人の間に小さな少女の存在があって初めてたどり着けたのだ。


だから、これは回り道なんかではない。



163 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/12(日) 00:26:10.84 ID:ZcrZ38MY0



傷ついた分だけ幸せになれるのか。

嘗て彼女はそう叫んだ。

たくさん踏みにじられないと駄目なのか。

嘗て彼女はそう嘆いた。

報われる方法があるのか。

嘗て彼女はそう尋ねた。

答えを教えてよ。

嘗て彼女はそう求めた。




答えは此処にある。
こんなところにあった。
言葉で上手く伝えきれたのだろうか。
一方通行は瞳から止め処なく溢れる美琴の泪を拭ってやりながら、ふとそんな不安に捕らわれる。
それは、しかし彼の杞憂だった。
一方通行に応えるように、美琴の腕が首に回される。
164 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/12(日) 00:27:33.77 ID:ZcrZ38MY0











「私も好き。アンタが ――― 一方通行が大好き」










165 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/12(日) 00:28:20.74 ID:ZcrZ38MY0


言葉にする代わりに一方通行は美琴の背に腕を回す。

初めて、彼は美琴を抱き締め返した。

そのことが、更に美琴の泪を誘う呼び水となってしまう。



「ホント……ヘタクソだな」



濡れた瞳を丸くして、美琴が見上げる。
一方通行が苦笑を浮かべる。


「泣いて欲しくねェヤツをいつだって泣かせちまう」

「バカ」


花が咲いたように笑うと、美琴は一方通行の唇にそっと口付けを交わした。









それが合図だった。




166 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/12(日) 00:29:08.66 ID:ZcrZ38MY0
以上で本日の投下を終了いたします。
大きな峠を超えたような安堵感があります。

それではまた。 ノシ
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/12(日) 00:31:43.34 ID:h7uDbDy0o
乙ッ!!!
来るか、来るか!? と思わず投下中に書き込みそうになった
自重して良かったぜ俺
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2011/06/12(日) 00:31:46.03 ID:OVxv+j9AO
えんだあああああああああああああああああ
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/06/12(日) 00:31:56.14 ID:l7BEJTsS0
乙だ
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/12(日) 00:37:15.04 ID:1xNcwkzIO
あああああとうとう結ばれてしまったのか……いやまあ祝福するけどさ

しかしこれからが大変だぞ一方さん
泣かれる人間は美琴だけじゃないからな
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/12(日) 00:38:38.64 ID:RCBKqUrMo
良かった、ホンットーーーーに良かった。

172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/12(日) 00:39:09.90 ID:RCBKqUrMo
追伸

打ち止めと番外が鎖鎌を握った!(ギラリ)
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/12(日) 00:43:52.84 ID:1aU7fntbo
イヤッフゥ! ついに、ついにだな
しかし6年か…不器用だなぁこいつら。回り道かもしれないけど、一歩一歩積み重ねてきた
それが良いね
乙!
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2011/06/12(日) 01:20:24.52 ID:NFGP4AU/o
ドキドキしすぎてちょっと読んでは止めてまた遡ってちょっと読んで…を繰り返した
二次創作でこんなに萌え転がったのはじめてだ
乙、本当に乙
結末が近いのかと思うと淋しいが、エンドマークがついたらまた最初から読み返したい
最後まで楽しみにしてる
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/12(日) 01:37:15.19 ID:qFHd7LJDO
気持ち悪……
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/06/12(日) 01:41:04.84 ID:ZAL5Wo0Z0
もうこれを超電磁砲の2期にして欲しいレベル。

最高だ。
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/12(日) 01:52:01.43 ID:J7o/rMNDO
なんという濃度……
色んな全部が今回で報われた気がしたわ
ホント乙、素晴らしかった

ここで打ち止めたち可哀想してる人はなんか違う気がする
つまりは美琴の再現だよ、彼女らはこっから前へ進むんだ
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/12(日) 02:21:36.05 ID:7xCyMHIVo
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/12(日) 04:04:06.78 ID:jcd4u1ADO
言うべきは一言のみ!

1乙!
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/12(日) 05:40:50.90 ID:XrYOT5tSO
想ちゃん可哀相、あーくんの鎖骨は想ちゃんのものなn(ry
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/06/12(日) 07:30:25.59 ID:d0ihwydto
ついに一通さんが自発しましたなあ。
今まで彼が欲したのって肉食いたいぐらいだったもの。
あー悶えるわー、想ちゃん帰ってきたらびっくりだよまた海原口調でママをなじっちゃうかもなー。
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/06/12(日) 10:05:01.06 ID:vkJzri0Mo
いちおつ

朝からニヤニヤしてる俺キメェww
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/06/12(日) 10:14:01.84 ID:kW4NZ7EAO
「まじかんべんしてくださいよみことさん」
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2011/06/12(日) 10:56:12.25 ID:VfISngMX0
えんだああああああああああああ
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) [sage]:2011/06/12(日) 12:03:31.92 ID:JVnJ2uDOo

まあ、他の連中はある意味覚悟完了してる気がするし、恨み言言うぐらいで揉めないだろうな
結婚式とかしたら黒子が暴れそうだがww
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2011/06/12(日) 13:41:57.23 ID:wRpu+Yy+o
乙乙
これは恥ずかしい読んでてなんか恥ずかしいwwww
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/12(日) 14:46:43.63 ID:Xp2EXB3l0
1乙!これぞSSやね。
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/12(日) 14:57:49.19 ID:74WRQvpDO
今さらだけど>>1の言葉回しが上手すぎる。
これをアニメ化なんかしても、面白さは100/1も伝わらないだろうな。
>>1の地の文があってこその物語だ。最高だ。
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/12(日) 15:11:08.97 ID:RCBKqUrMo
そりゃ、100倍は伝わらないだろ。
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/12(日) 15:16:04.54 ID:6l2ZOY1DO
100倍ワロタwwwwww
>>1
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/12(日) 16:29:24.46 ID:GLq98Bi70
オおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおつっゥゥゥウウウウウウウウウううううう
よかったなぁ、二人とも。こんなに心打たれるSSは他に無いよ。

合図だった??今から始まりですか? 18禁の第2部の開始ですか??エロを期待してる俺最低すぎる
一方さん「みことさァ〜ン、いい子にしてたかァ?」
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2011/06/12(日) 17:00:03.77 ID:G+8uqR+L0
あえて大切な言葉は書かないっていう演出なのかと思ったら…
また粋なことしやがってよお!!ほんとにこの>>1はよお!!
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) [sage]:2011/06/12(日) 17:14:14.90 ID:JVnJ2uDOo
>>191
最後2行でだいなしww
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/06/12(日) 17:34:28.22 ID:q+MNVOje0
ちょっと sistersが暴走しているんでとめてくるお
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/12(日) 17:38:57.81 ID:74WRQvpDO
>>189>>190
うぎゃあ恥ずかしいw まぁ言わんとする事は伝わるでしょw
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北陸地方) [sage]:2011/06/12(日) 17:44:27.09 ID:uwsGu4hAO
えんだあああああああああああああいやああああああああああああああああ!!!

ものすごく嬉しいが、この後に修羅場が待っているようで怖い
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/12(日) 19:52:57.95 ID:Xp2EXB3l0
修羅場だと? >>196 3rd Storyぜひお願いします。
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/12(日) 21:31:52.04 ID:MFijN6XD0
そんなにエロい描写はしてないのにここまでドキドキするなんて……素晴らしすぎる

だが惜しむらくは俺の使う端末がPSPだということだ!
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/06/12(日) 23:52:03.71 ID:Y4t9uV9j0
電車でPSP見ながらニヤニヤしてるお前きめェ
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/13(月) 00:43:23.75 ID:w2ivm15DO
ガキ同士の稚拙なやつなんかじゃあない、時を重ねた大人の恋愛なんだし、
セックス描写があったって全く不適切じゃないと思うな。
まぁこの>>1に書かせると、文章だけで抜けるくらい生々しいモノが
出来上がるのが確実なのだがw
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/06/13(月) 16:49:46.00 ID:UdoPXekX0
ちゃんと「好き」って伝えたり美琴を傷つけないように触れてる所がまた…
今までの一方さんの恋愛とは全然違くて、まさに恋であり愛だよなぁ たまらんっ

このあとの展開は描かれるのかしらん
書いてほしいなドキドキワクワク
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/13(月) 17:58:27.03 ID:BGAZQssIO
とりあえず全力でズボン脱いだがチャック壊れた
203 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/13(月) 21:03:12.73 ID:dN2u6IGU0
もうちょっとしたら投下します。
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/13(月) 21:06:17.81 ID:bPbbb2Wwo
よし脱いだぞ
205 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/13(月) 21:09:04.10 ID:dN2u6IGU0




雨が硝子を叩く音が心地良く響く。

かたかたかたかた。

たたたたたたたん。

小さな太鼓を打ち鳴らすような、耳に障らないのに、耳に沁み込んで行く自然のリズム。
雨は好きだ。濡れてしまうから出歩くのは好きではないが、こうして硝子越しで眺めているのは好きだ。
フローリングの生温い感触が背中にぴたりと貼り付く。
結局リビングでそのまま眠ってしまった。想と三人で寝た時のかけ布団がまだしまっていなかったのは幸いだった。
裸でいるのは好きじゃないはずなのに、何故か不快には思わない。
左腕にしっかりとした重みを感じる。
視線を下ろせば鳶色の髪が無防備に腕の中にある。雨の音に掻き消されそうな小さな寝息。
髪と同じく鳶色の瞳は今は瞼に隠れてしまっている。
時計を見る。短針が五時を指したところだ。丁度三時間弱眠っていたことになる。
身体にしっとりとした熱と疲労が溶け合って身体中に広がっているのがわかる。
それでも、ふと目が覚めてしまった。すん、と形の良い頭に鼻を付ける。
汗とシャンプーと、美琴の身体の内側から滲み出た香りが混ざり合った美琴の匂いがした。
それを、軽く吸い込む。甘さにむせ返りそうだ。

206 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/13(月) 21:10:05.30 ID:dN2u6IGU0


子供の頃、窓が風に軋む音に後ろめたい高揚感を覚えたことが誰しもある。
台風は何故かわくわくした。何気ない会話の折、懐かしげにそう漏らすのを色々な人間から聞いた。
打ち止めもよくそう言って、学校が休みになることを期待していた。
いつの頃であれば自分もそんな高揚感を抱いていたのだろうか。
能力に目覚めてからだろうか。違う。もっと前からだ。
学校が休校になって、家でぼぉっと台風が街中を闊歩していくのを眺めているのが楽しかった。
そう言っていた美琴の言葉で、ようやく思い出した。
思い出してみると、拍子抜けがした。

自分は高揚感を覚えたことはなかった。

学校に行っていた頃も、家で台風を眺めている、そんな穏やかな時間は無かった。
両親の顔は覚えていない。思い出したくもないし、必要も無い。
今何をしているのか、生きているのかさえも知らない。
調べようと思えば出来るが、そんな気も起きない。
だから、会いたいかと尋ねられれば会いたいとは思わない。
それを悲しいこととも思わないのは、多分、今の自分の環境に満足しているからだろう。
過去の残滓に、時間の流れと共に変化が起こっていることを期待して縋ろうとする程今の自分は暇ではない。

家族ならいる。この数年の間に沢山出来た。
誰とも血の繋がりなどないが、自分にとっては掛け替えの無い家族だ。


腕の中にいるこの女もそうだ。

裸で眠るのは好きじゃない。それなのに、不思議と離れようとは思わない。
べたべたに汚れた肌と肌が、ぴったりと貼り付いている。
何の抵抗もなく滑るような柔らかく滑らかな肌。
彼女は自分の肌を羨ましいといっていたが、彼女の肌は自分よりもずっと綺麗だ。
陶器のようだと言われる体温の低い自分の肌よりも、熱く、柔らかく、命の息吹が聞こえるような艶かしい彼女の肌はずっと素晴らしい。



勿論、そんな事を口になど出来るはずもない。しようものならば、格好のネタになる。


だからあくまでも心の中で留めておく。


207 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/13(月) 21:10:41.13 ID:dN2u6IGU0


「んん ――― 」


美琴が微かに身じろぐ。
あどけない。つくづく母娘だと思う。眠りに就くと普段よりも顕著に現れる。
幼い寝顔は、娘そっくりだ。


「マヌケな寝顔……呑気なツラしやがって」


目元が少し腫れている。散々泣いたせいで赤くなってしまった目元を指で撫でる。
六年以上もの歳月誰の手にも触れることのなかった身体は初めての時のように最初は頑なに自分を拒んだ。
苦痛に堪えながらも、自然と溢れた涙は、悲しくて泣いているとわかっていても強く自分の心を締め付けた。
だから口付けをした。少しでも気が紛れるようにする為、勿論それも理由だ。
しかし、それは建前でしかない。
気持ちを一度言葉に表現してしまうこと。一度舌の上に乗せてしまうこと。
それは一つのスイッチのように自分の感情から理性や誤魔化しをオフにしてしまう。
抑えが利かなくなった。何度も口付けをした。

額に、

頬に、

瞼に、

鼻に、

首に、

顎に、

耳に、

喉に、

掌に、

肩に、

頭に、


そして唇に。


自分が今まで他の誰かにしてきた回数を、たった一夜でしてしまったのではないだろうか。


208 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/13(月) 21:11:46.59 ID:dN2u6IGU0


「女の子の寝顔をガン見するのってシュミ悪いと思うんだけど?」

「起きてやがったのかよ」

「今起きたとこ」


確かにそうだろう。
美琴の声は寝起き特有のぼんやりとしたものだ。


「台風凄いわね……」


美琴がベランダの方に目を遣る。
頭をころんと動かす拍子に、しっとりとした髪が一方通行の腕をくすぐる。


「午前中には過ぎるみてェだな」

「そっか。いつの間にか眠っちゃったね」

「っていっても精々三時間くれェだろ」

「フローリングの跡付いちゃった」

「シャワー浴びてベッドで寝直せばいいだろ。まだ想の迎えの時間まで六時間くれェあンだ」

「うーん、やめとく。もうちょっとこのままでもいい?」

「好きにしろ」

「うん。そうする」

腕の上を滑るように、美琴が一方通行の胸元にまでにじり寄る。
そのまま胸に耳をそっとくっつける。
甘え方まで母娘で似るものなんだろうか、と不思議な心地がした。


209 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/13(月) 21:12:33.79 ID:dN2u6IGU0



ふと、美琴は思う ――― どうして自分なのだろうか。

嘗て、誰もが彼と打ち止めが結ばれることを期待している節があった。
少年を支え、一途に慕う少女と、少女を一心に守る少年。
その関係の美しさから、周囲はそこにドラマを銘々思い描いた。
「お嫁さんになりたい」と無邪気に言う少女に、誰もが相好を崩していた。
一方通行とてそれは変わらなかった。

しかし、彼にとっては、可愛い少女は、本当に可愛く、大切で、そして近過ぎた。

打ち止めだけではない。
家族というカテゴリーを大切にする彼にとって、妹達は彼の生き様、信念、存在理由に深く根差していた。
ある意味において、恋愛という感情の入る隙すらないほどに強固な想いであった。


ふと、一方通行は思う ――― どうして美琴なのだろうか。



一方通行にしてみれば、美琴はとても曖昧だった。
曖昧で、中途半端な存在。

中途半端な存在は酷く孤独だ。

明確に庇護してくれる存在が居ない。

はっきりと守るべき対象と受け止められず、それを割り切るほど強くもない。

ゆっくりと傷ついていくだけの彼女を、一方通行は放っておけなかった。

それは、ずっと前から抱いていた感情。
曖昧な存在であるからこそ、美琴は決して近過ぎる存在にはならなかった。
なりきれなかった。
その曖昧さが、時折一方通行に理解しがたい戸惑いを与えた。
その感情を、それでも気付かぬフリをしてきたのは、彼女の娘がいたからだ。
もしかして、この一夜がなければこれからも自分たちは今までのままだったのかもしれない。
よき友人、よき理解者として、美琴達を支え続けていたのかもしれない。
そして、美琴は他の誰かに恋をして、結ばれて、新しい家族を作っていたかもしれない。
そうなれば自分は少しずつ少しずつ距離を置くようになり次第に家族から友人、そして知人へと立ち位置を変えていかざるをえないだろう。
自分と美琴、想の距離は、互いに結ばれる相手が居ない今だからこそ成り立っていた仮初のものだ。
ずっと続くものではない。
だからこそ、一方通行は少しだけその距離を変えた。

いつ失っても良いと思っていた仮宿は、気が付けば誰にも渡したくない居場所になっていた。



210 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/13(月) 21:13:15.00 ID:dN2u6IGU0



「とくん、とくん、とくん……」



言葉そのものを楽しむように、美琴が嬉しそうに呟いた。

「何だ?それ」

「アンタの心音。知ってる?心音って心を和ませるんだって」

「ああ、赤ン坊とかそうらしいな」

「赤ちゃんに限ったわけじゃないけどね。きっとさ、自分以外にも生きてる人がいるっていう実感が安心できるんだよ」


寂しがり屋の美琴らしい考えだ、と思う。
けれど自分もそれは同じだ。自分も、こうしていることで酷く救われた心地になる。
救われた、いや、報われていると思う。
それは美琴も同じだった。明け方の薄い日の光に照らされ始めた横顔を眺めながら考える。
もしかして、何かが少しだけずれていれば、美琴は上条と一緒になっていたのかもしれない。
一方通行とは単なる顔見知り程度の関係だったのかもしれない。
彼のことを恋い慕う女は何人かいる。その内の一人と結ばれていたのかもしれない。
それはそれで、幸せな関係になっていたのかもしれない。
上条がずっと銀色の少女への想いを噛み殺したまま、それでも努力して自分を愛そうとして、自分もそれに満足したフリをして。
そうやってそれなりに幸せになっていたのかもしれない。
この六年間、全く幸せなまま楽しいことばかりで時間が過ぎていったわけではない。
年齢のこと、夫がいないこと、そこにレベル5であることや、研究で上げた名声が重なって厭な思いを幾度もしてきた。
そんな思いをしなくても良かったのかもしれない。
けれども、今こうして一方通行の腕の中にいることに、美琴は少しも後悔をしていない。


上条と偽りの恋愛関係になったことも。

上条と別れたことも。

一方通行に激情をぶつけたことも。

子供を身篭ったことも。

高校生で想を産む決意をしたことも。

それからの六年間の目まぐるしく慌ただしい日々も。


全てが、美琴には何故か後悔の理由には思えなかった。
それらが絡み合って、自分を“ここ”に連れてきてくれた。

正しいルートや間違ったルートがあるが、もしかして間違いだらけのルートかもしれない。

けれど、それは決して“無駄なルート”だとは思わない。


211 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/13(月) 21:13:58.24 ID:dN2u6IGU0


錆び付いたように、誰も受け入れてこなかった身体は初めてのように痛みを美琴に与えた。
それはまるで、美琴にもう一度初めから全てをはじめるための証のように思えた。
美琴は一方通行の身体に腕を回す。
華奢だと思っていた身体が、いつの間にかそれでも男らしいものになっている。
こうして抱き締めることで初めてわかった。
今までの関係だったらきっと知らなかった。
誰か他の事を思って囁かれるのではない、真っ直ぐに自分だけを思って囁かれる言葉の気持ち良さ。
それも初めてわかった。


一方通行が、美琴の額にそっと唇を落とす。


「……ったく、何回泣けば気が済むンでしょうかねェ美琴ちゃンは」

「う、うるさいッ。見るな、このバカ…ッ」


白い喉が妙にみだらに震える。
頭の上で、一方通行が笑っているのだ。
美琴は唇を尖らせて、慌てて一方通行の首筋に齧り付いた。




212 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/13(月) 21:14:35.91 ID:dN2u6IGU0



台風が去った空はからりとした晴天だ。
水で薄めた絵の具で描いたように涼しく透き通った空。
雲は塗り残した画用紙の白のように、控えめに額縁のように空をひっそりと漂う。



「あーくん!!ママ!!」

「想ちゃ〜ん」

一晩、大好きな二人と離れ離れだった少女は子犬のように駆け出すと、美琴のお腹に顔をグリグリと押し付ける。
可愛くて仕方が無いと、蕩けるような表情を浮かべながら、美琴がぎゅっと抱き締め返す。
一方通行は少し離れたところでその光景を眺めている。絹旗がそっと隣に立つ。


「想ちゃん、超寂しがってましたよ」

「だろォな。台風は大丈夫だったのか?」

「そっちも大変でした。恐がってる子達は先生が一緒に添い寝してあげてましたから。私も想ちゃんと超一緒に寝てました」

「そいつは世話かけたな」


そっけない言葉ではあるが、安心したのが声の緩みでわかる。
相変わらずの過保護さに、絹旗が忍び笑いを漏らしていると、美琴に抱きついていた想が不思議そうに何度も美琴のお腹に顔を擦り付ける。
まるで子猫が甘えるような仕草がくすぐったいのだろう、美琴が想の頭を撫でながら笑う。


「想ちゃんってば、くすぐったいよ、もう」


前髪を梳いてやると、想が首を傾げて美琴を見上げる。


213 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/13(月) 21:15:08.66 ID:dN2u6IGU0



「ママ、あーくんのにおいがする〜ど〜して?」


「ほぇッ!?あ、うう ――― ん、まぁ、ね」


一瞬、視線を彷徨わせてから、美琴は甘い秘密を手にした少女のように笑った。


「ナイショ」

「あ〜!ずる〜い!!想にも教えて〜」

「ダ〜メ」


御坂母娘が無邪気にじゃれあうのを、子供達の迎えに来ている保護者達は微笑ましげに見る。
一方通行も、溜息を吐きながらもその瞳は柔らかい。
ただ一人、絹旗だけは気付いていた。

ちらりと美琴が一方通行に視線を向けたのを彼女は見逃さなかった。


214 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/13(月) 21:17:38.57 ID:dN2u6IGU0
以上で本日の投下を終了します。
2スレ目の途中から考えてた話なのに4スレ目までかかりました。
きっと、上手い人が書けば1スレで終わらせられるんでしょうね。

ともかくそれではまた。 ノシ


215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/06/13(月) 21:18:35.77 ID:8RGbTgz90
乙!最愛ちゃん…
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/13(月) 21:20:36.01 ID:6TVEx6ot0
乙です。もあいちゃん…
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/13(月) 21:30:06.18 ID:dzb9oKEQo
乙です。

絹旗は鎖鎌を握っても良いよ。
218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/06/13(月) 21:42:46.11 ID:UdoPXekX0
乙です〜
美琴と一方さんのやりとりにニヤニヤしっぱなしや!
相変わらず描写が良いっすな

これからどうなるのやら…みんなに祝福してほしいけど難しいのだろうか…
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/06/13(月) 21:52:32.87 ID:hDyBZ++L0
ヤバイ、一方さんと美琴より、絹旗の方が気になる
チャイルドエラーで、学園都市の闇に埋もれてきた絹旗にも、あふれんばかりの愛をあげて下さい
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) [sage]:2011/06/13(月) 21:52:52.19 ID:ndx4SvkLo

なんか周囲で仕込みしてた疑惑が沸いてきた気がww
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/13(月) 21:54:25.25 ID:OA2RZbzc0
て、て、て…テクパトルゥゥウウウウ!!!
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/13(月) 21:57:55.74 ID:kZytS3SIo
もあいちゃーん
俺の嫁の席が空いてるから早くおいでよ^^
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/06/13(月) 21:59:55.15 ID:2J/8vMcAO

絹旗は養子に入って、想の姉になれば良いんだよ!
何がどう良いのか分からんが
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/13(月) 22:18:17.10 ID:66Hfhx+DO
モwwwwwwwwアwwwwwwwwイwwwwwwww
乙wwwwwwwwwwwwwwww

妹たちと違ってもう仕事してるから、出逢い少ないよなぁこの子
ちょっと心配だな将来
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2011/06/13(月) 22:33:00.37 ID:NEogq9Ov0
乙!
やべぇ、なんかパンダが発狂してる気がするwwwwwwww
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2011/06/13(月) 22:38:24.14 ID:wIxwRMkKo
モアイをいなしても、パンダに番外個体、ラスボス打ち止めまで潜んでるからな、一方さん大変だww
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/06/13(月) 23:09:08.17 ID:r1EbNtZa0
美琴よりもむしろ絹旗とか佐天とか打ち止めとか
出番少なかったけど結標とかの方が気になってた俺としてはこの後が気になって仕方がない
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/06/13(月) 23:17:07.93 ID:hDyBZ++L0
いまさらだけど、ハーレムエンドって可能性は無いよね...
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/06/13(月) 23:30:00.67 ID:aQvkHzxAO
モアイちゃん切ねぇ
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2011/06/13(月) 23:40:55.28 ID:wWfnw6jAO
>>1の次回作とかに窒素通行とか書いてくれないかなぁ

これじゃ絹旗が切なすぎて...
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/14(火) 03:21:47.32 ID:s7+32dCIO
ここまできてハーレムだったら誰も報われないだろうしな
でもなんでだろうか、二人には結婚とか明確な形でくっついて欲しくないという想いもあるのは…
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/14(火) 06:36:46.18 ID:9IjsijTDO
いまでも内縁の夫状態だし、変わらないんじゃ?
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) [sage]:2011/06/14(火) 07:17:58.40 ID:ZECzqBvGo
三人をずっと見てきた絹旗からすると、予想通りの結末だろう
というか、絹旗が一方さんの背中押さなかったらなかった未来なんだよな、今の状況





234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/06/14(火) 07:20:23.99 ID:j895dww3o
おかしい、いつの間にか尻に敷かれるルートじゃなくなってる。
小姑の皆さんにもっと頑張ってヘタレ部分を探してもらわなければ!
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/14(火) 09:54:45.29 ID:j4R9qdwIO
一方通行と美琴が結婚すると絹旗や佐天さんはどんな反応をするんだろうか。つか、想ちゃんの反応はどうなるんだろう?
236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/14(火) 10:10:55.26 ID:RfvXKvWIO
苗字はどうなる
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [sage]:2011/06/14(火) 10:57:31.93 ID:dCqezT2mo
婿養子で無問題
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2011/06/14(火) 11:58:38.42 ID:dhPo7x6mo
>>237
違和感がまったくない不思議
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/14(火) 12:28:21.57 ID:u74BLbp20
御坂一方通行?
御坂一方?
御坂通行?
御坂セロリ?
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/14(火) 12:35:15.09 ID:s7+32dCIO
鈴科でいいだろ。鈴科美琴

あれ?意外にも語呂がいい…
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/06/14(火) 15:52:06.02 ID:wRx7MeA60
>>231
同意
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/14(火) 20:45:26.77 ID:tyQ1Cb39o
想ちゃんの弟か妹が生まれたら、一方さんボロ泣きしそうだな。
色んな意味で感慨深すぎて。
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/14(火) 21:25:52.70 ID:OSdytL010
木はr……何でもない
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/06/14(火) 22:19:55.92 ID:Z3iZHd8A0
鈴科美琴・・・ 本当に以外だが、いいなぁ。上条詩菜と競えるくらいのいい響きだ。
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/16(木) 01:48:39.89 ID:jFjIBLaIo
お前ら打止や番外だけじゃなく
14510号の事も気遣ってやれよ。

いいか?14510号はなぁ、
一方通行のアドレスを聞き出すためだけに
わざわざ学園都市までやってきてなぁ、
一方通行のそばにいたいがために学園都市に定住してなぁ、
医学を学ぶ一方通行の力になりたいがためにナースにまで成ったんだぞっ…!!

こんな健気な子の想いが届かないなんて、
そんな馬鹿げたことがあってたまるかっ…!!

セロリ爆発しやがれっ、チクショウ…。
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/16(木) 02:06:31.75 ID:PN1AIynyo
14510号か……あれ妹達で本懐を遂げたの20000号だけじゃね?
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/06/16(木) 21:51:49.35 ID:kIitEXWAO
>>245
うむ
14510号にはくんかくんかする権利を与えるべきだな
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/17(金) 14:54:21.36 ID:e4zBGxJc0
以前、Pixivにイラスト投下したものです。
絹旗せんせいのターンに入る前に。

一方×美琴
ttp://iup.2ch-library.com/i/i0340667-1308289678.jpg
美琴×想
ttp://iup.2ch-library.com/i/i0340668-1308289678.jpg


249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/17(金) 18:29:33.23 ID:Cf08YWLV0
>>248
一瞬美鈴さんかと思ったが乳が違うことに気づいた
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/17(金) 20:23:47.95 ID:eMheFyLDO
>>248
癒された
251 : ◆d85emWeMgI [sage]:2011/06/18(土) 02:16:42.40 ID:J1a9NqZW0
こんばんは。投下まではもう暫くお待ち下さい。

>>248
いつもありがとうです。相当励みになりました。

ゴールはもう見えてるのでもう暫しお付き合い下さい。
余談ですが、一スレ目の頃の絹旗の美琴の出番を食いっぷりは没設定の名残です。

当初は、上条に先立たれた上条美琴を支える親友一方通行。自分放置して上条母娘にべったりの一方通行にヤキモチ焼く恋人絹旗。
という設定でした。主旨がぶれそうなので却下しましたが。



252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) :2011/06/18(土) 20:51:53.82 ID:9LU4Y20AO
>>248
もう消されたのか?
見たかった
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/18(土) 20:53:09.53 ID:j8ON8Bhqo
>>252
支部に投下されてるから探してみろ
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県) :2011/06/18(土) 21:49:46.67 ID:PsaxnTH40
>>251
正直それもみたい
255 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/18(土) 21:51:59.73 ID:l0Cl9oBL0
今から投下を開始します。よろしくです。
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県) [sage]:2011/06/18(土) 21:52:02.42 ID:PsaxnTH40
すいませんageてしまいました
257 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/18(土) 21:53:15.20 ID:l0Cl9oBL0


最初はぼんやりとした好意に過ぎなかった。
かっこいいなとか。
意外と話やすいなとか。
一緒にいると楽しいなとか。



「よォやく寝やがったか…どンだけバッテリー積ンでやがるンだよこのガキは」

白い髪の青年は言葉に不釣り合いな程抑えた優しい声を漏らす。
ようやく二歳を迎えたばかりの少女は思う存分動き周り、満足行くまで遊んでもらい、可愛らしい寝息を立て今は眠りに就いている。
触ると溶けてしまうのではないかと不安になってしまう程柔らかな髪をゆっくりと撫でる手つきは優しい。

「子供は身体全部が超エネルギーですからね。私より体力あるんじゃないかっていつも思いますよ」

少女にタオルケットをかけてやりながら絹旗は隣の青年の横顔を盗み見る。
カーペットに敷かれた布団の上で眠る少女に落とされる瞳は普段他者に向けられる警戒心や排他的な色をすっかり潜めている。



「笑えるだろ?」


「え?」


「散々ゴミのよォに殺しまくってきといて、そのガキの世話してるなンざ」


青年が少女に視線を向けたまま、自嘲混じりに呟く。


「自分でも自分の滑稽ぷりはわかってるつもりなンだけどな」



またか。

正直なところ絹旗はそう思った。
それは幾度と無く彼が口にする言葉。
彼自身同じ葛藤をグルグルと繰り返していると自覚しているだろう。
それでも口にしないではいられないのだ。
誰も彼を責めないことが、逆に彼をこれ以上なく苛んでいるのだと絹旗は確信する。
きっと、それはいつまで経っても振り切ることの出来ない自己嫌悪なのだろう。


「髪。縛らないんですか?」
「あァ?」
「髪ですよ、か・み。結構伸びましたよね。超邪魔くさいんじゃないですか」


肩よりも下になった毛先を摘むと、ようやく青年は思い出したようにまじまじと見下ろす。



「まァな。言われてみりゃ」

「ゴム持ってるから縛ってあげますよ」

「…ふつうにやれよ?」

「何警戒してるんですか…」

「この前クソガキどもに散々イジリ倒されたンだよ」

「しませんよ!!超失礼な人ですね!」


258 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/18(土) 21:55:14.53 ID:l0Cl9oBL0

少しでも関わっていたいという可愛らしい少女達の恋心など、きっとこの朴念仁はわかっていないのだろう。
少女達もそれがわかっているからこそ、腹いせにイタズラを仕掛けたのだ。
光景を見ていないにも関わらず、絹旗には容易にそれが想像出来た。

象牙のようにきめ細かく、どこか硬質な光を放つ白い髪を指先で掬うと、青年のうなじと、そこから背中にかけて伸びる細首が目に留まる。


こんなに華奢な男なのに、一体どれだけの物を背負っているのだろうかとふと思った。
勿論、自業自得で背負った業も山ほどあるだろう。
それでも、背負うには余りにもその背中は儚い。


「笑いませんよ」

髪をひとくくりに束ねて持っていた藍色のゴムで留める。


「だから、いい加減超キモい自己陶酔まじりの自己嫌悪は止めにしましょうよ。

 一方通行がどれだけ一生懸命なのか、みんな知ってます。もし笑う奴がいたら私が超ぶっ飛ばします。

 きっと、その前に超電磁砲が飛んでいくんでしょうけどね」


照れ隠しに、最後は笑ってごまかす。


「…ありがとうよ」


とんでもなく優しい声でそっと囁かれた言葉はするりと絹旗の中に入り込んだ。



今にして思えば、あの時自分は既に落ちていたのかもしれない。

俯きがちな彼の髪をそっと結ってやることに、堪らない幸福感を覚えていたあの時には既に。




失恋してはじめて初恋に気づいたように、二度目の恋心に気づくのも遅かった。
共通していたのは自覚が遅かったことだけではない。
明確な形で恋に落ちることになったきっかけが無いところも同じだ。
強いて言えば、真っ直ぐな瞳で守ろうとしている姿にだろうか、自分が心惹かれたのは。
そして、守ろうとしている一番の相手が自分ではなかったところも同じだ。

きっと自分はそういう性分なのだろうと、二十歳を迎える頃になってやっと気づいた。


259 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/18(土) 21:57:40.33 ID:l0Cl9oBL0



「やっぱり最後の大どんでん返しが最高ですね。組長の正体が実は古代ムー戦士によって封印されていた『ヤツ』で、最終決戦の場所が歌舞伎町から月面に大移動ですから」


梅雨を越え、季節は一気に夏へ向かって傾いている。
暑さを示すようにノースリーブから惜しげもなく肌を出した絹旗は感極まった声を上げる。
真上から差し込む昼の太陽の日差しを眩しそうに見上げながら一方通行はため息を付く。
勿論、絹旗に対してではなく、彼女のチョイスした映画によって与えられた精神的負荷によるものだ。


「あの伏線のまったく意味の無さ。あれ、スタッフ的には観客の予想を裏切ったってしてやったりなんですよきっと。単なる伏線放棄なのに」

「俺としては何でラスト30分になってラビ太郎が出てきたのかが腑に落ちねェンだが」


絹旗はわかってないなとばかりに、指を振る。


「クロスオーバーというやつです。古くは故・手塚治虫超先生が提唱されたスターシステムというやつです。

 ゲームでもあるじゃないですか。隠しボスがリョウ・サカザキだった的な」

「古過ぎンだよ例えが。つか、ラビ太郎が完全に主役になってるってどォいうことだよ」

「だって主人公は中盤に流れ弾で超死んでますよ」

「おかしいだろ!」
「おかしいことをおかしいと思わずに本気で作り上げた作品こそが至高のB級映画なんです」


ふふんと、得意げに胸を張る絹旗に、もはや何も言うまいと一方通行は何度目かの溜め息を吐く。
ふと、想と美琴のことが脳裏をかすめた。
今頃美琴は想を連れて白井達と会っているのだろう。
白井がようやく帰国してきたらしく、仲良しの四人で集まるのだと朝からうきうきと話していた。
気づけば絹旗は露店に並んだアクセサリーに見入っていた。
その露天商には見覚えがあった。
第六学区で見かける度に、常に人だかりが出来ているそこは、確かに凝ったデザインのアクセサリーが所狭しと並ぶ。
手に取って見ると、ますます目を引く。
露天商は一方通行よりも二つか三つ程度年上らしき、ヨーロッパ系の男だ。
この男独自のものなのだろう、滅多に見ない装飾が施されている。
男は強引に買うことを奨めることなく、彫りの深い顔に柔和な笑みを浮かべてアクセサリーに見入っている絹旗を見ている。
この店が流行っているのはこの男自身も理由の一つなのかもしれない。
そう思いながら絹旗を見れば、彼女はその内の一つに目を奪われている。


「それ、欲しいのか?」


その横顔があまりにもあどけなかったからだろう、気づけばそんなことを口にしていた。





指輪をプレゼントするということの意味を、この男はわかっているのだろうか
260 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/18(土) 22:00:01.86 ID:l0Cl9oBL0
絹旗は隣の男の横顔と、右手の薬指にはめた指輪をしきりに見比べていた。
立ち寄った公園のベンチで二人は缶コーヒーを片手に小休止していた。
確かに、この指輪に自分は目を奪われてはいた。
物欲しげな顔をしていたのはみっともない話だろう。
それでも、普通は買わない。いや、買うべきではない。


「一方通行超ありあとうございます」
「気にすンな。何だかんだで世話になってるしな」


素っ気なく返された言葉に、安堵と失望がこみ上げる。

やはりわかってなかったのだ。バカ…と口の中でつぶやいた声は掻き消える。



「女に指輪をプレゼントするって、どういう意味かわかってます?」

「指輪って言っても、露店で買ったモンだろうが。しゃちほこばる必要もねェだろ」


予防線ではなく、自分が重く受け止めないようにしているとわかることが寧ろ悲しかった。
本当は恋人でも何でもない女に、指輪を買うなんて、すべきではない。
自分のように一方通行に特別な好意を抱いている女に対しては特に。


なぜなら ―――


「ふぅ〜ん。それは超残念です。思う存分しゃちほこばってやろうと思ってたのに」

「何でだよ」

「だって、期待しちゃうじゃないですか。もしかして私に超惚れてるんじゃないかって」



 ――― 期待してしまうから。


例えどれほど見込みがなくとも、もしかして自分が抱いているのと同質の感情を抱いてくれているのではないかと。

それが自分の半分、四分の一だとしても構わない。

困惑とも焦りともとれる曖昧な表情を浮かべる一方通行に、いたずらっぽく笑う。



「嘘。超冗談です」


嘘を吐く。


余りにも鈍そうな、困惑以上に意味を把握していない間抜け面が気の毒になったからだ。


261 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/18(土) 22:07:50.93 ID:l0Cl9oBL0

「でも、他の女の子に同じことしたら御坂さんに超怒られちゃいますよ?」

「何で美琴が出てくるンだよ」

「あれ?付き合ってるんじゃないですか?」


ぎょっと、一方通行が目を見開く。


「もしかしてバレてないって思ってました?」

「まだ誰にも話してねェはずだが」

「“美琴”って、そう呼んでるのに気づいてませんか?」

臆面もなく、御坂を名前で呼べなかったというのに。
絹旗が知る限り、一方通行が唯一名前で呼ぶ女だ。

「っていうか、分かりやすすぎますよ。ぜんぜん隠せてませんから」

「チッ」


決まり悪げな舌打ちが、一方通行を幼く見せる。
イタズラがバレた悪ガキのようだ。


「でも、超良かったです。ようやくきっちり収まるべきところに超収まってくれて」
「オマエは息子の婚期を気に掛ける母親か」
「ああ、ちょっとそれ超近いかもしれません」
「10032号といい…どいつもこいつも…お節介な連中ばかりだ」
「貴方達、自分達で思ってるよりずっとじれったかったですから」

また、舌打ちをする。
絹旗は、こみ上げる気持ちからそっと目を逸らす。


「最後の最後で指輪をせしめれて超ラッキーでした」

顔を背けていた一方通行が怪訝な表情になる。


「最後?」

「だって、恋人がいる男と二人きりで出かけるわけにはいきませんよ。修羅場とか超勘弁です」
「別に俺たちはそォいうンじゃねェだろ」
「傍からはそういうのに見えるんですよ」

何より自分がそういう風に見られることを望んでいるのだ。
262 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/18(土) 22:08:25.29 ID:l0Cl9oBL0

「……一方通行」


最後、そう口にした瞬間自分の中から何かが溢れそうになった。


「もし…もしですよ?“もし”私が一方通行を ―――」

「そいつァ、困るな」


言い終わる前にブった切るような一言に、一瞬目の前が暗くなった。
しかし、続く言葉は絹旗予想を裏切る。


「決意が揺らぐ」

「え?」


ぽつりと零された言葉に思わず聞き返す。


「オマエが“もし”って言うからな。ここから先も、IFの話だ」


いつの間にか公園には、自分と一方通行以外誰もいない。


「もし、想がいなかったら…それでオマエに今の言葉、言われちまってたら ―――」



ゆっくりと唇が動く。


「           」



絹旗は唇を噛みしめると空を仰ぎ見る。

一つ、ゆっくりと息を吸い込み、吐き出すと同時に絹旗は声を立てて笑う。


263 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/18(土) 22:10:34.76 ID:l0Cl9oBL0


「なぁにマジ顔で言ってるんですか。超キモいです。モテ男気取りで超浜面並にキモいです。超キモすぎて、気を失っちゃいそうです」

「キモいキモい連呼すンじゃねェよ」


ふてくされた一方通行を、そっと瞳を細めて見つめる。

何て卑怯な男なのだろうか。
卑怯で狡くて、そして残酷だ。
そんな言葉を言われたら自分はきっとしつこいくらい思い返してしまう。
鬱陶しいくらい引きずってしまう。


バッサリ切ってくれればいいのに、最後の最後まで自分が期待する言葉をこの男は与えてはくれない。


何かを一瞬躊躇った表情を浮かべると、一方通行の耳元に顔を寄せる。

「ねぇ、一方通行」

思わぬ近い距離からそっと自分を呼ぶ甘い声。
反射的に振り向いた一方通行の顔に絹旗は吸い寄せられるように顔を寄せる。



小鳥が啄むように、小さな音を立てて絹旗の唇が離れた。





「…ばぁ〜か、何超本気にしそうな顔してるんですか」


絹旗は顔を背けて目元を擦るとベンチから立ち上がった。
何が起きたのか、一方通行は突然のことに停止した思考のまま、立ち上がった絹旗をただ見上げる。


「言っておきますけど、今のは超ほんの気の迷いです。一方通行のことなんて本当は好きでもなんでもありません」

「絹旗…」


「嘘です。超嘘です。本当は超愛してます」


絹旗はぺろっと舌を出す。


「それも超嘘です」

「なンだよそりゃ」

「全〜部、超嘘です。本当の言葉なんてあげません。せいぜい引きずって下さい。そのせいで御坂さんに捨てられたら超笑ってあげます」」

くるりと背を向ける。
背後で、一方通行が立ち上がる気配がする。
それを見ないようにして絹旗は後ろに向けて震える声で搾り出すように言う。


「でも、もし、本当に捨てられたら……胸くらい貸してあげます」


ごしごしっと、目元を拭うと絹旗は走り出した。

今の顔だけは絶対に見られたくなかった。

下らない意地と言えばそこまでの、小さなプライドだということはわかっている。







264 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/18(土) 22:11:23.59 ID:l0Cl9oBL0




麦野沈利は上機嫌だった。
ギリギリのタイミングを見極めて昨夜売り抜けた銘柄が今日になって一気に暴落したのだ。
上機嫌のまま浜面の半年分の給料が優に吹き飛ぶ値段のワインを開け、お取り寄せした高級スモークサーモンでプチ祝杯を上げようとしていたところで突然の絹旗の来訪。

可愛い妹分且つ数少ない親友を拒む程今の麦野は狭量な女ではない。
泣き腫らした絹旗の瞳で、すぐに来訪の理由を麦野は察した。


「へぇ〜ついにというか、まさかというかあの二人がね」

過去を考えればまさか、この数年を知っている者にとってはついにだろう。
御坂が一方通行に好意を持つことを麦野はあまり意外には思わない。
麦野自身、自分に今まで味わったことのない痛みと屈辱を与えた男への恋慕を未だに捨てきれずにいるのだ。


「まぁ、御坂の方は結構前からそんな感じしてたけどね。本人自覚なかったけど」

白ワインを飲む。
深い苦みと、爽やかさが舌の上に広がる。
絹旗はワインには口を付けずにグラスを両手で包み込む。
じっと透き通る表面を見つめている。


「だって2対1なんて…超勝てませんよ」

「2対1ね…」


麦野はスモークサーモンとトマトを口に放り込む。
どうやら今夜は相当長くなりそうだと、ひっそりと覚悟を決める。

「ま、飲みなさいよ。今夜はとことん付き合ってあげるわ」
「麦野…」
「ゆっくり考えましょうよ、次の恋を探すなり、略奪愛するなり」


自分自身の諦めの悪さはこの際棚に上げて、麦野はグラスの中身を一気に空けた。
くすりと、ようやく小さく笑うと、絹旗はワインを舐めた。












265 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/18(土) 22:14:03.75 ID:l0Cl9oBL0
以上で本日の投下終了。
少女マンガでも失恋する女の子の方が大概ヒロインより可愛く見えると思うのは私だけでしょうか。

それでは最終回まであと僅か、頑張りたいと思います。
それではまた。 ノシ
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/06/18(土) 22:28:43.61 ID:e0+RwsnXo
くそ…分かってたとはいえ絹旗辛いなぁ
ちょっと学園都市行ってあの白髪ぶん殴っ…いや、これで最愛たんがフリーに?
やっぱ学園都市行ってくる!
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/18(土) 22:31:23.78 ID:niccx3HXo
絹旗ちゃん…俺がいるぜ! へたれモヤシなんて忘れちまえ

まぁ判官贔屓ってやつだよな。弱いってわけじゃないが、恵まれない子こそ幸せにしてやりたくなるっていうか
でも自分が苦しくて、そこで輝きを見せれるキャラってのは俺も大好きだ

最終回が近いのは寂しいが、楽しみにしてる。おつ!
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/18(土) 22:57:02.89 ID:BnZlbg+SO
>>266
お前は天才か!

ちょっくらおいらも絹旗ちゃんに惚れられてくるわ
269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2011/06/18(土) 23:15:28.39 ID:UYaLtfeX0
俺も!
270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/06/18(土) 23:16:55.33 ID:Ky9xdNOAO
おまえら何いってんだ…
最愛なら俺の隣で寝てるぜ?
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/06/18(土) 23:28:13.21 ID:N8uE2KRAo
絹旗…切ねぇな…
272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/18(土) 23:40:02.22 ID:zqQcwAF/0
絹旗だって下の名前で呼ばれてるじゃないか…モアイってさ
佐天さんはいまいち一方さんに惹かれてるのか分からないけど、
打ち止めと番外個体がどういう状況になってるのか気になるなー

ところでこの二人に子供が生まれたとしたら、両親から考えるに純血統のツンデレなのか…(ゴクリ
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/18(土) 23:53:06.78 ID:SX4dhmR+o
次回が打ち止め、番外個体をはじめとするシスターズのターンなんやろか……
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/19(日) 00:09:01.65 ID:LfWnqwjao
自分以外の誰かを護ろうとしている男に惚れてしまうとか、最愛ちゃんのサブヒロインっぷりマジパネェ
女の武器は笑顔と涙、失恋した女の子に惹かれるのは仕方の無い事やでぇ
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/19(日) 01:54:58.80 ID:898pKSpp0
うわあああああああああん
絹旗ああぁあぁあああああ
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/19(日) 01:57:46.63 ID:0PKRRG7IO
あと残る問題は打ち止め、番外に我が子への報告か…
あと大体3話くらいか?
277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/19(日) 03:26:19.08 ID:FpoJK/hDO
じゃあ番外個体はいただきますね
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/19(日) 03:38:39.37 ID:31zUSFGDO
絹旗…(´;ω;`)
このままではかわいそうだから、次は窒素通行を書いて幸せにしてあげてほしい…
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/19(日) 04:07:26.90 ID:zVezxtIt0
>>1
結果が判っていても、読ませる。さすがだ、乙
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/19(日) 09:15:11.24 ID:mZUO8VZ50
麦野沈利&絹旗最愛による略奪愛コンビか……

怖くて敵対する気にすらならないな。

浜面まかせた
281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) [sage]:2011/06/19(日) 09:41:25.21 ID:NvayfVVeo

絹旗はなにげに想ちゃんへの思い入れ強い気がするわ、うん
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/06/19(日) 10:00:15.19 ID:bN0+xsqdo
失恋した子が可愛くみえるのは泣き顔や辛そうな顔にゾクゾク来るからだと言ってみるテスト。
絹旗は綺麗な形で区切りを付けられてよかったなと思う。
手に入らないとわかってるものをいつまでも追い求めるのは辛いし醜いことだもの。
283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/19(日) 10:21:05.43 ID:Ua6FZDiDO
>>272
ツンデレの妹(弟)にそれを包み込むように愛する想。
しかも全ての親達が一度は殺しあいそうになっているのに、姉妹の仲がとてもよければまさに平和の象徴だな。
電磁通行苦手だったけどここのは普通に読めたよ。ありがとう>>1!最終回まで頑張ってください。
284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/19(日) 11:09:01.35 ID:cSJ7Pexuo
「お父さんとお母さんって、初めてあったときはどんな感じだったの?」

「ン……殺そうとしたかなァ」
「殺されようとしたわね」



  ( ゚д゚)
 
  (゚д゚ )
   
  ( ゚д゚ )
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/19(日) 14:02:58.34 ID:mH01HIl8o
>>284
逆じゃね?
超電磁砲の初対面で美琴は[ピーーー]気でかかって行ってたけど、
一方さんは美琴の攻撃をそらすだけであしらってる状態だったし
286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/06/19(日) 16:10:41.80 ID:ZOj7X0A70
超乙です!!
ここの>>1の女の子って生々しい女の部分があるのに、妙に可愛いな。
しかし一方通行酷いよ。バッサリ振ってやればいいのに、想タンがいなかったら選んでたかもしれない的なこと匂わせたら諦めるに諦められないだろ……
287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/19(日) 18:00:31.51 ID:OWovAhFuo
>>285
別に逸らしたわけじゃなく自動反射じゃね?
一方さんとしちゃあ 興味なし→うざいから[ピーーー]か な感じを妹達に止められたからスルーって感じだからあながち間違っちゃ居ない
美琴側はその解釈で間違いないが、拡大解釈して「初めて会った頃」にすれば「殺されようとした」でも合ってるとおもうww

つか、失恋した〜の話題だが、そもそもの美琴もこの話じゃ失恋した女の子なのよな
しかもフラれ方も割りと救いが無い上に子供まで身篭ってたりで悲惨な感じだしww
288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/06/19(日) 18:04:36.12 ID:ZOj7X0A70
上インから見てると一番報われて欲しいしな。
1スレ目で空気ヒロインと呼ばれていた頃が懐かしい…
289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/06/19(日) 21:11:43.96 ID:j1awlRjw0
おい、どうやったらSSの中に入れるんだ?絹旗が俺を待ってるんだろ?
やばい、二次元よりさらに難易度が高いぞ
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/06/19(日) 21:59:47.45 ID:HJNNrPxF0
最終回が近いのか…
正直もうちょっと美琴と一通さんのイチャラブを見てみたいと思うのは贅沢なのだろうか
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/19(日) 23:51:12.22 ID:YagJQ7LDO
だよな
やっと思いが通じ合ったからこそ、この2人をもっと見ていたい
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/19(日) 23:52:06.31 ID:YagJQ7LDO
だよな
やっと思いが通じ合ったからこそ、この2人をもっと見ていたい
293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/19(日) 23:54:23.42 ID:YagJQ7LDO
だよな
やっと思いが通じ合ったからこそこの2人をもっと見ていたい
294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/19(日) 23:55:25.28 ID:YagJQ7LDO
だよな
やっと思いが通じ合ったからこそこの2人をもっと見ていたい
295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/19(日) 23:56:22.34 ID:YagJQ7LDO
だよな
やっと思いが通じ合ったからこそこの2人をもっと見ていたい
296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/19(日) 23:59:41.06 ID:x7+OjK03o
大事なことなので
297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/20(月) 00:02:09.78 ID:q+rEvPZIO
嬉しくて
嬉しくて
298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2011/06/20(月) 00:04:38.99 ID:d8wqVVYCo
書き込みに失敗した、と出ても大抵書き込まれてる
再度書き込む前にリロードした方がいいぞ
299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/20(月) 17:20:14.27 ID:kLbieBHDO
そうだったんだ 貴重な5レス使ってしまい申し訳ないです
300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/20(月) 23:53:39.94 ID:ynBNhbFro
気にすんなよ、>>1だって分かってくれるはずさ
301 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/22(水) 20:39:19.15 ID:NVpdgiXk0
今から投下を開始したいと思います。よろしくお願い致します。
302 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/22(水) 20:40:38.26 ID:NVpdgiXk0




人魚姫が恋焦がれていた王子様には友人がいました。

彼は王子様の隣国の王子であり、言葉の喋れない少女を気にかけていました。

少女が王子様と結ばれ幸福になることを祈っていた彼はある晩、散歩がてらに通りがかった海辺で少女と魚のお話を聞いてしまいます。

そして、王子様と結ばれずに少女 ――― 人魚姫が泡になった時、王子はすぐにその泡を掻き集めます。

そして、魔女にこう持ちかけます。

自分の人生を捧げますから、どうか泡になってしまったこの少女を助けてあげてくださいと。

そして、泡から元に戻った人魚姫は ―――




303 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/22(水) 20:41:59.28 ID:NVpdgiXk0







「今頃ピーピー泣いてるんだろうなぁ」

窓際に座りながら番外個体は宙に目を向けたまま呟く。
膝を抱えて椅子の上に乗りながら、こつんと窓ガラスにこめかみをくっ付ける。
硝子のひんやりとした感触が心地良い。
隣の部屋は防音設備がしっかりとしているからだろうか、すすり泣く声は届いてこない。
それでも、隣の部屋の、見た目は自分よりも幼い姉が泣き伏しているのが手に取るようにわかる。


番外個体は、彼女にとっても意外であったが、今になって初めてはっきりと恋心を自覚していた。


それまでも、周囲にからかわれたりする度に、真っ赤になって慌てふためいていたのだが、それがはっきりと恋なのだとはわからなかった。
好意であったり、独占欲であるというのは辛うじて理解出来るのだが、そこに『恋』と銘打つ確信が彼女の中には無かったのだ。
それが、今日初めて確信した。
皮肉なことに美琴の、否、美琴と想のモノになったと知った瞬間に走った強烈な胸の痛みが彼女にようやく恋心を認識させたのだ。


そうだ、自分は恋していたのだ。

一方通行という憎くて気になる保護者気取りのあの男に。



「バカじゃねぇの」


胸に手を当てて、ブラウスをぎゅっと握り締める。
皴になるなどどうでもいい。本当は掻き毟りたいのを堪える。
304 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/22(水) 20:42:31.85 ID:NVpdgiXk0


番外個体にとって、一方通行への感情とは不可解なものだった。

外部から与えられ続けてきた一方通行への憎しみ。

内部から育まれ続けていた一方通行への好意。

二つの感情が混ざり合った結果、『苛立たしくも気になる男』という天邪鬼なものへと恋心は歪に成長していった。

その歪さが、彼女に明確な自覚を促すことを阻害した。
元々彼への負の感情を抽出するように設定されていた精神構造は、ネットワークが切れてからも素直じゃない性格となって残ったことも要因の一つだ。
構って欲しいけれども、ソレを素直な甘えとして表現できず。独占したいという感情を粗暴な態度や挑発としてしか表わす事が出来なかった。
そのことが、彼女の心に更なる負荷となって一方通行への八つ当たりに転化させることとなった。
思考がぐちゃぐちゃになり、自分でも自分が何をしたいのか。何を言いたいのか。そして、どうして欲しいのかを見えづらくさせた。


しかし、一度自覚してしまえば、思考は一気に冷静に、単純に回り始める。


どうして自分や打ち止めではなかったのだろうか。
その答えはあっさりと出る。
確かに自分達は一方通行の背負うモノの重さを知っていた。
けれども、それだけだった。
知っていたけれども、背負う一方通行の見ているモノを見ていなかった。
だから、気付かなかったのだ。



彼の世界がどのように移り変わっているのかを。



いや、気付けなかった。
自分も、打ち止めも、それぞれ自分の世界が広がっていくことに精一杯だったから。

一方通行は様々なものを背負っていた。

勝手に、一人で、独断で。
様々なものを背負うということは、否応にも様々な人と関わり、様々なものを目にすることを意味する。
閉じた世界では、多くを背負うことが出来ない。彼が背負うと決めたものは、閉じた世界で、狭い視野で抱えきれるものではない。
彼自身が世界を広げ、成長していかなければとても背負いきれるものではない。

305 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/22(水) 20:43:12.15 ID:NVpdgiXk0



「あ〜あ、嫌だ嫌だ。初恋は実らないって……遺伝子レベルの呪いじゃね?」


痛みをしきりに訴えかける胸を抑える。
単価にして十数万の自分に搭載された心という機能。
けれども、それは普通の人間と何ら代わりが無い。






番外個体はある夜に、心について考えたことがある。アレは想が産まれる頃だった。

遠方から来た妹達 ――― 番外個体にとっては姉達だが ――― とお泊り会をした時のこと。

一方通行が、美琴に色々と世話を焼いているのを面白く思わない妹達が集まれば話題は次第に二人の関係を邪推するものへと変わっていく。
枕をくっ付けて、部屋の灯りを落とし、差し込む月明かりで辛うじて互いの輪郭が判別できるかどうかという闇の中で誰かが呟いた。


『アレだけ憎んでいた相手を、あんなにも信頼できるようになるものなのでしょうか?とミサカはお姉様の心を不思議に思います』


成長過程と一方通行に受けた恩が重なっていた妹達はともかく、既に確固たる自我を持ちつつある少女が、憎しみを信頼へと転化させるサマは不思議だった。
それは、一人の人間として感情が育っているからこそ、今になって彼女達が抱くようになった疑問であった。
見慣れた天井を見上げながら、番外個体は心とは何て不可解で厄介なものなのだろうかと、ぼんやりと考えていた。
心に明確な価値は無い。平等に喜びを感じる機能が備わり、悲しみも怒りも、愛することも出来る。
頭にも、胸にも、臓器として何処に存在するわけでもないのに、どうして存在するのだろうか。
如何なる製造過程で産まれるのだろうか。
そもそも、生まれながらに備わっているものなのだろうか。


『お姉様の心を傷つけたのも一方通行なら、救ったのも彼です。そして、受けた恨みよりも恩を心に留める、ミサカ達のお姉様はそういう人です』


妹の誰かが言った言葉に、番外個体はまたわからなくなった。
備わっているのではなく、救ったり傷つけたり、他者が自由に干渉できるものなのだろうか、と。


その疑問がわかったのは、想を愛しげに抱き上げる白い青年の横顔を見た瞬間だった。



306 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/22(水) 20:45:27.83 ID:NVpdgiXk0



心の底から、打ち止めに見せた、ロシアで見た時の少年のような笑みではなかった。


もっと、大きくて、温かくて、優しい。強くて、何処か感情に蓋をしたような歯痒さを覚える微笑。


そう、アレは少年の笑みではなかった。


抱えてきたものを、背負ってきたものを、決して投げ出さずに生きてきた青年の ――― 大人の男になろうとしている微笑みだ。




いつもの憎まれ口を利くことすら忘れて、息を止めてその顔をじっと見つめていた。

いつまでも見つめていたいという感情と、その笑みが自分以外に向けられていることへの煩わしさから一刻も早く目を逸らしたいという相反する感情。

307 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/22(水) 20:46:21.91 ID:NVpdgiXk0


心はきっと、生まれながら備わっているものではない。

自分の中から勝手に生まれてくるものでもない。

繋がった人から与えられるものなのだ。



――― あのバカがくれたんだ、ミサカに ―――



自分に心があるとすれば、きっとそうに違いない。
打ち止めや黄泉川、芳川、大切な家族と呼べる人たちとの繋がりが今の自分を作った。
けれども、その最初の、第一歩は、自分に種を植えたのはあの男だ。


あの手を握った瞬間かもしれない。

潰えるはずの命を救われたときだろうか。

それとも、培養液の中にいた時、彼への憎悪や怒りを植えつけられた時には既に芽生えていたのかもしれない。




「……何から何までホント……ムカつく奴」


こんな厄介なもの寄越しやがって。
自分の思い通りにならないものを、自分の中心に植えつけておいて、自分の側にはいてくれないのだ。
嫌な奴だ。気に食わない。大嫌いだ。
小さく、猫の抗議のように頼りなく呟く。


番外個体は抱え込んだ膝に顔を押し付ける。


308 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/22(水) 20:48:10.03 ID:NVpdgiXk0


「こんな、痛い気持ちになるんだったら……ミサカ……いらなかったよぅ…………一方通行ぁ……」


番外個体は生まれて初めて泣いた。
声を殺して、彼女は泣き続けた。










どれくらい時間が経っただろうか。
ベッドの上でウサギのぬいぐるみを抱き締めたまま打ち止めは体を丸める。
頭の芯が輪郭を失ってしまったみたいに置き所が定まらない。
シャワーを浴びて、眠ってしまえば気持ちをリセットできると思っていた。
実際には、真っ暗な部屋の中で、じっとカーテンの隙間から覗く星空を見上げている。
夏の訪れを告げる爽やかな星空が、今は少しだけ救いだった。
こうして視点を仮縫いするものが無ければ、不安定さにいよいよ自分は耐えられない。

友達と夕食を済ませたと言った自分の嘘を黄泉川は見抜いていただろうか。

心の機微に鋭く、対処の仕方も心得ている彼女だからこそ、今は自分をそっとしておくべきと判断したのかもしれない。

そっと瞳を閉じると、瞼の裏に焼きついているのは、慕う姉の頭。
自分に向けて深々と下げられた頭。
309 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/22(水) 20:48:59.66 ID:NVpdgiXk0










「ゴメン、私、アイツのことが好き」









310 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/22(水) 20:49:43.88 ID:NVpdgiXk0

彼女のそのひたむきな態度が、たった一言に込められた意味を否応に悟らせた。
単に自分の気持ちを告白したのではない。
その先の結果も含めて彼女はその言葉を言ったのだ、「ゴメン」と。
311 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/22(水) 20:50:13.54 ID:NVpdgiXk0




酷いよお姉様!!ミサカの気持ち知ってて…


ゴメン


あの人にそんなつもり無いって、そういうのじゃないって、前に言ってたよね!


ゴメン


ミサカに嘘吐いてたの?ホントはずっとあの人の事好きなの隠してたの?


そうじゃないの……ただ、私も気付かなくて……


信じられない…ズルイズルイズルイ!!ずっと、あの人独り占めして、それでもミサカ達は仕方が無いって、思ってた。お姉様だって大変なんだからって


…………


ねぇ、ミサカの気持ち知ってて、それでも、お姉様は何も思わなかったの?


…………


卑怯だよお姉様。こんなの、不意討ちみたいな……ズルイよ!!


ゴメン……


さっきからゴメンばっかりだよ。何か言ってよ。言い訳してよ。お姉様!!


…………


黙ってないで…黙ってないで何とか言ってよ!!!


……ゴメン……


――― ッ!!




312 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/22(水) 20:50:54.57 ID:NVpdgiXk0




彼女のそのひたむきな態度が、たった一言に込められた意味を否応に悟らせた。
単に自分の気持ちを告白したのではない。
その先の結果も含めて彼女はその言葉を言ったのだ、「ゴメン」と。
打ち止めはじっと己の右手を見つめる。
初めて人を叩いた。
じゃれ合いなどでなく、感情に任せて思い切り頬を引っ叩いた。
あの瞬間、自分は姉が憎くて憎くて仕方が無かった。
大好きで、母親のようにも思っている姉を。
一人の女として、その強さ、気高さ、賢さ、傷ついても立ち上がる姿に憧れていた。
そんな姉を、そんな美琴を自分は叩いたのだ。


「違う……卑怯なのはミサカだよお姉様……」


右手を抱え込む。

本当はわかっている。美琴は殆ど悪くないと。
彼女が謝るとしたら、自分が好きな相手と結ばれたことだ。
美琴は自分から男を寝取った訳ではない。自分がモタモタしている間に、さっさと距離を詰めてしまっただけ。
悪いのは今の距離を崩すことを恐れて何もしてこなかった自分だ。
意識する余り素直になることも出来ず、甘えられない八つ当たりのようにキツイ接し方しか自分は出来なかった。
女の子の気持ちに気付いてあげるべきと、友人ならば言うだろう。
けれども、それでも言葉に出さなければいけなかったのだ。
気持ちに気付いて欲しいならば、その気持ちを言葉にする義務がある。
仕草や雰囲気、表情で気付くべきというのは傲慢な考えなのだ。
何よりも自分はわかっていたではないか、このままではいけないと。
彼が自分を妹か娘のようにしか思っていないことを自覚していたのに、その距離を崩す勇気が自分には無かった。

いや、それすらも自分の弱さに言い訳をしている。

本当は何処かで期待していたのだ。
彼に初めて光を与えた存在が自分であるという自負。
彼は自分を選んでくれるのではないだろうかという、拭いきれぬ期待。
彼と美琴の間にある過去、忌まわしいソレに自分は何処かで頼っていた。
あんな過去があった二人が好き合うはずが無いと、彼には自分しかいないのだと、思い込んでいた。
自分が幼い頃から気持ちを温め続けていたのだから、彼もそれを待っているに違いないと、決め付けていた。


子供だった自分の成長を彼が待っていてくれると甘えていた。


自分が幼い子供から少女へ、そして女へと成長していく時間は、そのまま少年を青年へ、大人の男へと変えていく時間でもあるということに気付かなかった。
変わらないものなど何も無い、その事実だけが唯一変わらないものだというのに。
一方通行の世界は打ち止めから始まった。
打ち止めの世界は一方通行から始まった。
けれども、世界はそこでは決して完結しない。
広がっていく世界には、当然様々なものが流れ込む。
だから、自分は絶えず一方通行の瞳を向けさせ続ける努力をしなければならなかった。


絶えず彼の世界を変えていくようにぶつかる必要があった。



313 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/22(水) 20:52:11.36 ID:NVpdgiXk0



「お姉様のバカ……一方通行のバカ……ミサカの、バカ……」



形が変わるほど強くぬいぐるみを抱き締めると、打ち止めは胎児のように丸まる。


打ち止めに足りなかったものは、認識ではなかった。唯一つ。勇気が打ち止めには足りなかった。
世界が壊れてしまうかもしれないという恐怖を乗り越える勇気が彼女には欠落していた。
自分が一度心地良いと感じた世界が、例え一寸先に闇があろうと、土台が脆かろうと、そこから抜け出そうとする勇気が出せなかった。

そして、打ち止めが自分の居場所を臆病なまでに固持している間に、一方通行に全身でぶつかった少女がいた。

彼に怒りを吐き出し、弱音を漏らし、臆面も無く泣き喚いた少女。
彼の罪悪感をこれ以上ない程抉り、一方で癒した少女。
彼の価値観を揺るがす程の鮮烈な強さと美しさを見せ付けた少女。


そして、彼の罪を、彼がそれを望まぬからと言って打ち止め達が口にすることの出来なかった赦しを容赦なく与えた女。



いつのことだったか、人魚姫の童話を思い出した。
自分が泡になって消えてしまう人魚姫の一途さ、愚かさ、純粋さを哀れんだ彼。
六年の歳月を経て彼は人魚姫の結末を書き加えることにしたのだ。








泡から元に戻った人魚姫は ――― 自分をずっと見守ってくれていた王子を愛するようになります。

そして、人魚姫と王子は結ばれることとなったのです。




一方通行は選んだのだ。決めたのだ。強くて悲しいお姫様の手を取ることを。
お話として美しくなかろうと、人魚姫の美しい覚悟と鮮やかな恋心の軌跡を汚すことになろうとも、それでも人魚姫が幸せになれる為の結末を。




「それでもミサカはアナタのことがずっと……好きだったんだよ」



とうとう告げることの出来なかった言葉を、打ち止めはぽつりと零した。







314 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/22(水) 20:53:50.26 ID:NVpdgiXk0






「どうしてこうなったんだろうね」


手にした刀を撫でながら男は嘆くように、歌うように呟く。


「僕はただ貴方のようになりたかった。それだけなんだ。それだけだったのに…どうしてこんな所まで来てしまったんだろう」


戦場から戦場へと渡り歩いた末が、この場所なのか。
自嘲の笑みも痛々しげに、男は見渡す限りの平原を見回す。
まるでこの世の果てのような光景だ。


「仕方が無かった…なんて事を言うつもりはねェ。全てはオマエが選んだ道だ。オマエの前にはいつだって選択肢があった。

 不自由な二択かもしれない、しかし、選ぶことは出来たはずだ。

 選び続けた末に辿り着いた終着がここなら、全てはオマエの蒔いた種でしかねェ」


「フフ……容赦が無いね。貴方らしい物言いだ。冷徹で正しくて、歪みの無い…でもね、『彼女』はそんな貴方の正しさに傷ついたから貴方の下を去ったんだよ?

貴方の強さが、正しさが彼女を追い詰めた。彼女を殺したのは貴方だ ――― 兄さん」


男は瞳に狂気を宿しながら、刀をゆっくりと構える。
正眼。彼の兄が最初に彼に教えた構え。
幾千もの血を吸い続けた刃は、その切っ先を向けられるだけでも吐き気を催す程の圧迫感を与える。
染み付いた血と共に、その怨唆までが唸りを上げているように感じられるのは、此処が屍で敷き詰められた最底辺の戦場だからだろうか。
男は考えても答えの見えぬ問いを頭から振り払う。

315 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/22(水) 20:54:26.64 ID:NVpdgiXk0


「それでも―――アイツを失っても俺は俺の生き方を止めるわけにはいかない。共に戦い散って行った戦友(とも)のためにも。

 そして、俺が屠ってきた強敵(とも)のためにも」



対峙する男は紅い瞳を微かに眇めながら、手にしたM1873に弾を込める。

込める弾は一発。

それで十分だった。




「さぁ、終わりの終わりを始めようよ、ラビ太郎兄さん!!」



勝負は一撃。

決着は一瞬。



「終わらないさラビノ介…俺達の愛したタフでイカした日々は」




欲望も思想、大儀も打算も、無謀も謀略も。

憎悪も愛も、友情も嫌悪も、家族も恋人も。

全てを飲み込んだ世界の果てで、たった二人の最終決戦。

今、白と黒の獰猛なる草食獣の最後のワルツが始まる。









316 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/22(水) 20:56:25.75 ID:NVpdgiXk0





「ここで引きとか、あざといだろ」

「らいしゅうでさいしゅうかいなの?」


膝の上の想が一方通行を見上げる。テレビでは次回予告がタフでクールに語られている。
予告どおりならば来週で最終回なのだろう。しかし、一方通行の表情は優れない。
想の頭の上に顎を乗せながら、続きは劇場でなどという舐めきったラストにするんじゃないだろうかという予感をひしひしと感じていた。


「ママまだかな」

「打ち止めンとこ寄ってくって言ってたからな。そンなに遅くはならねェはずだけど…」

言いかけたところで、玄関からドアを開ける音がする。
ガチャガチャと慌ただしい音に、一方通行と想は目を合わせる。

「ほらな」

「うん!」


パタパタとリビングに向かって駆け込んでくる音を聞きながら想は一方通行の膝の上から降りる。
リビングのドアが開くのと同時に、少女が勢い良く駆け出す。


「たっだいま〜ぐふぅッ」

「ママ〜!!」

リビングに足を踏み入れると同時に、美琴のお腹に小さな弾丸がめり込む。
頭をグリグリとさせながら、存分に美琴のお腹に顔を摺り寄せる。
一瞬ぐらついたものの、美琴は両足で踏ん張ると、想の鳶色の頭を撫でる。
ゴールデンレトリバーにそうするように、わしゃわしゃと荒々しく撫でる。
美琴のお腹に顔をくっつけたままくぐもった想の嬉しそうな悲鳴に、美琴はますます頬を緩めた。
大型犬のじゃれ合いのような母娘のスキンシップを呆れたように眺めていた一方通行は、ふと怪訝そうに瞳を細めた。

「オイ……」

「ん、何?」


想をお腹にくっつけたままソファーにまで近付いてきた美琴は険しい顔で見てくる一方通行の顔を見つめ返す。
一方通行は美琴の頬を指しながら、怪訝な表情を崩さない。

「ココ、どォしたンだ?」

「あ、ママほっぺた赤いよ?」

一方通行の指し示した美琴の頬は、赤く腫れていた。

「えっと…ちょ〜っとぶつけちゃって…」

「もう、ママってばおっちょこちょいなんだから!」


「………」


痛い?と美琴の頬を背伸びしてさわりながら、想がお姉さんぶって眉間に皴を寄せる。
一方通行は無言のまま、美琴をじっと見つめていた。




317 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/22(水) 20:57:07.60 ID:NVpdgiXk0




流しっぱなしにされたスポーツニュースの映るテレビを見ながら一方通行は氷を浮かべた焼酎を飲む。
目はテレビに向いているが、ニュースの内容など殆ど頭には入ってこない。
背後に気配を感じ、一方通行がソファーにもたれるように首だけを後ろへ向ける。

「寝付いたか?」
「うん、ぐっすり」

一方通行の隣りに座りながら、美琴はテーブルの上に置かれたもう一つのグラスを手に取る。
グラスはたっぷりと汗をかいている通り、焼酎はやや美琴の好みよりも薄くなっていた。
しかし、夕食後のこの時間にはこれくらいの方が飲みやすいか、と特に何も言わずに飲む。
ニュースでは注目のエースが足に怪我をし、二週間は試合に出場出来ないといった内容をさも痛ましげに報道していた。


「治してやるよ、痣」


テレビに視線を固定したまま、ぶっきらぼうに言われた言葉に、美琴は苦笑する。
何かあったと察した上で理由を直接尋ねてこない気遣いへの申し訳なさと、一方通行の過保護っぷりに。


「いいわよ、別に。すぐ治るし……それに、ケジメだから」

「そォか」

興味なさ気に呟いたかと思うと、一方通行が美琴の肩を抱き寄せた。


「あンま一人で背負い込むンじゃねェぞ」


美琴の喉が小さくなる。
不意討ちのように耳元に囁かれた優しい音色に上手く呼吸が出来なかった。


318 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/22(水) 20:57:48.17 ID:NVpdgiXk0


「どうしてこういうタイミングで言うかな……甘えたくなるじゃない」

「わかりやす過ぎンだよ、馬鹿が。さっさと甘えろ」


鼻で笑う一方通行の横っ面が僅かに得意げなのが子供扱いされているようで、美琴は不服そうに上目遣いに睨む。
けれども、そんな小さなプライドよりも、甘い誘惑の方が美琴には大きかった。
美琴はグラスを置くと一方通行と向かい合うように彼の膝の上に跨る。
頭一つ分は高くなった目線で、美琴が目元を柔らかくして、一方通行を見下ろす。


「私、酷いお姉ちゃんだわ」


己の心を落ち着かせるように、一方通行の髪をゆっくりと撫でる。


「あの子達の気持ちを知ってるくせに、あの子達を傷つけるってわかってたくせに」


一方通行の頬に、自分の頬をぴたりと合わせる。
美琴の声が耳元で転がり、くすぐったい。


「いっぱい傷つけちゃったよ」


頬が冷たい。
美琴が泣いてるのだと気付き、一方通行は彼女の腰に手を回すと緩やかに力を込めて抱き寄せる。
泣き虫の扱いには慣れている。


「俺もだ。傷つけちまった奴がいる。泣かせたくねェって思ってたのによ」


一人の男として、少なからず好意を抱いていた女を泣かせた。
そして、美琴のことを思っている顔も知れぬ男達を自分は奈落に叩き落しているのだろう。


319 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/22(水) 20:58:44.82 ID:NVpdgiXk0


「上手くいかないね。皆笑って欲しいって思ってるのに……嫌になるね」

「美琴……」

「でも一番嫌になるのは自分。皆が悲しむって、あの子達が泣くってわかっていても、それでも手放したくないの」


美琴の縋りつく手に力がこもる。
熱い塊のようなものが胸の奥底からジワリと滲み出す。
一層力を込めて、細い腰を強く抱き寄せる。
美琴は頬を朱に染めると、ぎゅっと一方通行の頭を胸に抱えた。
一度腕を解くと、風に靡いてそのまま解けてしまいそうな絹糸の如き白い髪を何度も撫でてやる。


前髪をそっとかき上げると薄っすらと丸い痣が白い額に赤々と浮かぶ。


美琴はその傷痕を指でゆっくり撫でる。


美琴の大切な妹達を守る為に刻まれた痛々しい傷痕、それを撫でるのが美琴は好きだった。


やがて、吸い寄せられるように、美琴の唇が傷痕にそっと重なる。


一方通行の手が、腰から下へと滑り降りる。


美琴の喉から、熱い吐息が漏れた。


美琴の甘い香りを胸いっぱいに吸い込む。





320 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/22(水) 21:05:04.80 ID:NVpdgiXk0




誰も傷つかないという結末はない。

美琴もまた、嘗て手酷く傷付けられた少女の一人なのだ。
だから、一方通行は美琴が酷く心を痛めている姿を見たくなかった。
一番傷ついてきた女がこれ以上自分の腕の中で悲しい顔をするのを見たくなかった。




「じゃあ、放すンじゃねェ……それでも、俺はもうオマエの泣く面は見たくねェンだ」


「うん」




言葉は苦手だ。上手く舌の上を言葉は滑り落ちてはくれない。
映画のように、小説のように。
うっとりする愛の言葉も、安堵の笑みを引き出せるような力強い励ましも自分にはかけてやれない。
気の利いた優しい言葉一つかけてやれない自分にウンザリとする。



リビングの灯りを浴びて濡れた光を放つ美琴の涙を指で拭う。

目尻に残った雫の上から唇を散らす。




せめて少しでも気持ちが伝わるように、一方通行は指先に、唇に感情を込める。

わかっていると言うように美琴が小さく頷いた。







321 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/22(水) 21:06:49.90 ID:NVpdgiXk0
本日の投下終了です。
せっかく両想いになったんだから、イチャイチャが見たいという意見があったのでちょろっとイチャつかせました。
といっても、打ち止め&番外個体がメインなので甘さ控えめですが。


それではまた。 ノシ
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/06/22(水) 21:08:57.62 ID:n5s/zR1AO

切ねーぜ打ち止め&番外個体……
323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/22(水) 21:10:10.40 ID:lDP+mMje0
甘いじょっぱいぜ……乙
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/22(水) 21:24:23.96 ID:e4dIAru6o


またラビ太郎に騙されたぜ。
何故か海原かと思ってしまった自分。
325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2011/06/22(水) 21:38:54.39 ID:DfS6S8Dso
トライガンネタか
326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県) [sage]:2011/06/22(水) 22:03:23.60 ID:BWi5aJMi0
なんか心が痛い
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/22(水) 22:17:55.40 ID:i4PW8yD30
>>324
自分もですよ。自分がこのssに登場したと思いましたよ
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/06/22(水) 22:29:47.65 ID:ND74adV5o
おつです

不意打ちのラビ太郎は卑怯だろww
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/22(水) 22:32:23.80 ID:mQBQHr5DO
乙!
ちゃんと向き合ってケジメ付けさせるとはホント出来た人間だな美琴は
あと想ちゃんが着実に成長してて可愛すぎてもうね……

まぁ打ち止めと番外は泣き終わり次第さっさと他の男探せよwwwwwwwwww
330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/06/22(水) 22:50:10.41 ID:Jm1NJxfpo
汚いなさすが>>1きたない

番外個体と打ち止めのそれぞれの回想シーンがあんまりにも静かで綺麗で見入っちった。
なんの音もしねえしなんも壊れないし涼しい空気だけがある感じでいやーいいもん見た。
331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/22(水) 23:46:19.66 ID:5ExDVw7n0
>>327
こんな所にいたのかにゃ〜、さっさと帰るんだぜい
332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/06/23(木) 00:12:42.38 ID:o9i3SuN20
「治してやるよ、痣」が「治してやるよ、痔」に見えて、
コイツ何言ってんだと思ってしまった
333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/23(木) 00:24:09.18 ID:K7AckhDQo
アナ……ああ、いや、すまんかった。
334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/06/23(木) 00:50:13.50 ID:eKdB/ioNo
乙!
ダラダラ先延ばしにせずにケジメをつけるとは
美琴の精神的な成長を感じた

そして、ラビ太郎にやられた
335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/23(木) 05:56:27.88 ID:h1Se9cR+0
一方さんの「好みの女性」は長髪+料理上手という禁書の事だったわけだけど
結局、自分に本心をさらけ出してくれる人だったんだろうな
布束や芳川、名も無いコイビトも含めて品位や程度に違いはあれどその辺は一貫してるのか…
その辺は神上と正反対だな
内情を知らない人間からすりゃ「あれww一方さんww押しに弱いwww」ってなるな
336 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/23(木) 06:11:59.03 ID:h1Se9cR+0
結局、上条さんと同じようなけじめのつけ方をした美琴さん
口をつぐんだ上条さんとは反対にもしもの話をしてしまう一方さん
まぁ神上さんもところどころ本音を漏らしてるけどww
この三人はホント変わらんな…
浜面みたいにコミュ力高けりゃ自然と外堀は埋まってくのにな
337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/06/23(木) 12:52:17.31 ID:Gg7rbQgAO
つまり押し倒せば一方さんが手に入るってことかみなぎってきた
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/23(木) 17:32:33.75 ID:jv7cYOx0o
色んな人たちが、どんな形でもいいから、一歩歩いてくれることを願う。
339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) [sage]:2011/06/23(木) 17:45:41.40 ID:XR+Mh9hWo
後は佐天か・・・一番あっさりしてそうだなww
340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2011/06/23(木) 21:09:11.73 ID:TgoWOCpa0
修羅場や〜
341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2011/06/23(木) 21:34:04.35 ID:MuH3dtRI0
ラビ太かよ!!
342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/23(木) 22:08:55.08 ID:u6/J89f/0
ダメだwwwwwwww薄々気づいてはいたのにどうしてもラビ太郎で笑ってしまう
343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りしまう :2011/06/23(木) 22:15:10.19 ID:S2n1Wu1b0
>>332
おれも痔に見えた
344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/23(木) 22:53:19.66 ID:GfSvSi9DO
最愛→打ち止め、番外→佐天って流れできたら…



ラスボスは想ちゃん?
おい、これ一方さん負けるんじゃね?
345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/06/24(金) 07:11:16.66 ID:Yq55mI5AO
その前にコングを2秒で撃破する作業が残ってる筈
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/06/24(金) 07:22:02.58 ID:Be7Zk3GAO
美琴サイドはなあ
捨てられた美琴とその子供をずっと支えてきた一方通行が相手なら、何も言えないんじゃないかな

>>344
美琴が一方さんの義母になるのか…
347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/24(金) 07:37:44.78 ID:ZLPWP7TSO
誰も悪くないけど、事後報告で謝るのってなんか卑怯だよね
打ち止めは自己責任の話にもってっちゃうイイコだったけど、これほど手酷い裏切りもないだろ
「私は一方通行に恋愛感情抱いてないよー、だからほとんど同棲してるけど大丈夫だよー私はおまえらの恋を応援してるよー」て態度だったくせに
いざとなると「やっぱ好きだったわwwwwww出し抜いてごめwwwwww」
とか姉ちゃんそれはねえわwwwwww
質の悪い寝取りだわ
348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/24(金) 07:46:15.94 ID:4FUZ8BqE0
>>348
一方さんが打ち止めの彼氏だったら酷い裏切りだけど、恋人でも何でも無いんだから寝取りにはならないんじゃないの?
ぶっちゃけうかうかしてたらとんびに油揚げさらわれただけで。

まぁ、それでも気持ちを知ってた上でだから、裏切りにはなるんだろうけど。

349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/24(金) 08:55:24.73 ID:jLkD92cpo
>>347
卑怯もなにもこんなもんだろ、人の気持ちなんて。
少女漫画とかなら、あのコの方が(あなたを好きになってた)うんねんいうんだけどなー
350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/24(金) 10:35:15.07 ID:o5uVwDxDO
まぁ打ち止めにも慢心があった、で話まとめてあるのだからタッチの差だったって事で

むしろモーションかけて惜しい所までいってた最愛ちゃんの方が…
351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/24(金) 13:11:24.97 ID:VUjkW0/DO
>>348
人じゃなく関係に対する裏切りだね。
とにかく順番が不味い。仲を応援→気持ちに気づく→一方さんと結ばれる→事後報告だから裏切りになる。打ち止め逹も彼らの関係を知ってるからもはやなにも言えない。玉砕も恨みさえもできない。ただし佐天さんは……。

一方さんと結ばれる前に打ち止め逹に言えばまだ彼女等も行動出来たし、印象が違うはずなのに……。

たからこそこの物語は面白い。

乙です。あと少しなのが寂しい。
352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/24(金) 14:52:51.28 ID:12Yis1RZo
美琴は何も裏切ってないよ
ゴメンの言葉の意味を解すればね
353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/06/24(金) 15:23:56.29 ID:9mle8arL0
しかし20000号のポジションは安泰だった
354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) [sage]:2011/06/24(金) 15:27:57.71 ID:ZMIOZXLPo
>>353
ぶっちゃけご褒美ww
355 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/25(土) 03:17:37.53 ID:ZFCXpEmq0
こんな時間でアレですが。投下します。
本編の最終回です。時系列がバラバラで読みにくいかもしれませんが、ご容赦を。
356 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/25(土) 03:20:22.09 ID:ZFCXpEmq0



コンクリートとアスファルトに溜まっていた熱が夜の闇にゆるりと溶けているのを肌で感じる。
自宅から徒歩30分、決して近い距離にある訳ではないコンビニを選んだのは強制的に二人で話す時間が欲しかったからだ。
これで逃げ道はない。
そう、自分にだ。
頭の中で探り続けていた言葉の切れ端をようやく掴んだ後も、御坂旅掛はそれをどのように引っ張り出すべきか悩んでいた。
隣を歩く男を見る。
杖を突いているとは思えぬペースで歩くその男は片手にコンビニの袋を下げている。
500mlのビール瓶二本と、ウイスキーの小瓶が歩く度にカチンカチンと音を立てる。
旅掛けに至っては6本入りのビールを両手にぶら下げている。
補充分としては多すぎるだろうか。
沈黙を誤魔化すように無作為に籠に放り込んだ己の浅慮を呪いながら、帰り道の4分の1を通り過ぎたところでようやく決心する。



「以前君を殴ったことがあったろ」



男が立ち止まる。

闇の中で、白い顔が緊張にこわばるのを確認して、旅掛は少し気持ちが楽になる。
相手も緊張しているのだと気づいた。


「実験に関して部外者だったくせに訳知り顔で殴ってしまったね」

「アイツの父親だろォが。アンタにはそうする権利があるだろ」

「そうだ、父親だ。娘の身に降り掛かった事がすべて終わってからようやく動き出した情けない父親だ」



怪訝な瞳を向ける男 ――― 一方通行に自嘲気味に笑いながら、旅掛はガードレールに腰掛ける。


「あの時は心の底から君を憎んだ。君がした事に対してもそうだが、死にたがりぶりにも腹が立ったからだ。

 だがそんなものは全て体裁だった。それらしい言葉を並べているだけにすぎない。

 君を殴った後に、実感しちまったよ。そんな御大層な理由じゃねぇんだってな。

 本当はただ悔しかった、だから君を殴った」


「悔しかった?」


「娘を散々傷つけた男に、守ってもらわなければならなかった。

 駆けつけた時には、娘はとっくにその男とケリをつけ、信頼しさえしていた。

 置いてきぼりを食らった、何一つ力になれない役立たずな父親なのだと思い知った。

 悔しかった。率直に言えばそう思ったな。

 自分の不甲斐無さを思い知った。だから君に八つ当たりをした。父親らしい振る舞いをしたかった。
 
 何らかの形で関わらずにはいられなかった。わかってくれとは言わない。

 ただ、自分の関わりのないところであろうと、娘自身が納得していようと、娘が傷ついたことが我慢できない。

 それが父親というものさ」

357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(熊本県) [sage]:2011/06/25(土) 03:21:00.36 ID:e+eJHgzZ0
最終回・・・だと・・?
358 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/25(土) 03:22:16.93 ID:ZFCXpEmq0


旅掛は言い終えると、深く溜息を吐き出した。
心の隅々から吐き出し、そして吸い込む様は淀んだ空気を換気するようにも見える。


「ありがとう。今までずっとあの子たちを守ってきてくれて。本当にありがとう」


ガードレールから離れると、旅掛はまっすぐに一方通行の目を見てから、直角よりも身体を折り曲げるように頭を下げた。
一方通行はぎょっと目を見開く。


「オイ。止めろオッサン。俺に頭下げる必要なンざねェだろ!!俺はアンタの娘を…」

「ああ、笑顔にしてくれている」


一方通行の口から吐き出されるはずの自虐の言葉は、力強く、優しい言葉にあっさりと叩き潰される。
続く言葉を一方通行が失ったのは顔を上げた旅掛の瞳がすがるように切実な光をたたえていたからだ。

「そして、これからもあの子達を笑顔にしてやってくれ。美琴を、俺の娘を絶対に泣かせないでくれ。頼む」

懇願のはずの言葉は、ずっしりと重たく、あらがい難い圧力をもって一方通行に迫る。
嘘や言い逃れ、お為ごかしなど一切許さない、心からの言葉しか受け付けない圧力。
それは娘を他の男にやる“父親の圧力”だった。

一方通行は唾を飲み込むと、頷く。


「とっくに腹括ってンだよ。だから、アンタは余計な心配なンてすンなよ」







「もうご両親に報告に行ったんですか?」

思わず手からカップを落としそうになりながら佐天は素っ頓狂な声を上げる。
クリームソーダのアイスをスプーンでつつきながら初春がそろりと盗み見た白井黒子は文字通り真っ白な灰になる ――― こともなく、
澄ました顔でクロワッサンを小さくちぎって口に運んでいる。


口元がひきつっているのはご愛嬌というものだろう。


359 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/25(土) 03:24:30.62 ID:ZFCXpEmq0


「う、うん。先週ね。パパも家に帰ってきてたし。ひと段落着いてるけど、そのうちまた忙しくなるからね」

「どうだったんですか…ってその顔を見るに聞くだけ野暮ってもんですかね」


美琴ははにかむように小さくコクンと頷く。
佐天は一瞬寂しげな表情を浮かべるものの、すぐさまいつも通りのイタズラ好きな笑みに切り替わる。


美琴の研究によって筋ジストロフィー治療は十数年分は先に進んだと言われている。
しかし、美琴の発案した治療法では対処しきれない患者、
適応出来ない患者がでてくるのはこれからのことだ。
そして、それらのケースを一から調べ、新たなアプローチを模索する事に追われることになる。
あくまでも、一区切りなのだ。
だからこそ時間を惜しむべく、一方通行と美琴、そして想の三人がそろって美琴の実家を訪れたのは七月に入ってすぐ、先週のことであった。

美鈴と旅掛は急な来訪はもちろんのこと、一方通行が同行していることにも目を丸くしていた。
一方通行が美琴の実家を訪れることは少ない。
理由は様々にあるが、美鈴に絡まれるというのも理由の一つだ。
一方通行を気に入っている美鈴は酒が入ると確実に一方通行に絡む。
更に、近所にすむ上条詩菜を呼ぶ。不思議な押しの強さは決して不快ではなく子供扱いされるむずがゆさはあれども、一方通行はそれに逆らえない。
故に敬遠するのだが、一番の理由は美琴と想、妹達との家族水入らずを邪魔したくはないという思いが一方通行の中にあるからだった。
そんな一方通行の遠慮を肌で感じ取っていただけに、旅掛と美鈴の驚きようは無理もなかった。


「でも、付き合い初めて一月で報告って早いかな」

アイスレモンティーのグラスの水滴を指でなぞりながら、美琴は伺うように友人たちの顔を見回す。
美琴の予想とは裏腹に、友人たちは一様に「何を今更」と言いたげに苦笑いを浮かべていた。


「というか、今までがそもそも半同棲、内縁の夫婦みたいだったのに、今更そんな…」
「ふ、夫婦じゃないわよ!!まだ…」

顔を赤くしながあら、尻すぼみに言葉が小さくなる美琴に佐天は噴き出す。

「何で今になってそんな初々しい反応するんですか。結構今までべったりしてたのに」
「嘘…私そんなんだった」
「ええ、そうりゃあもうお兄様にナチュラルに甘えてましたの」

ジト目で見つめてくる白井にますます美琴は赤くなる。
今年には24歳になるというのに、それも一児の母であるとは思えない少女のような仕草で恥ずかしげに顔を伏せる。

360 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/25(土) 03:25:58.02 ID:ZFCXpEmq0

「なんか…もしかして、御坂さん逆に意識し始めてるとか?」

「うん…何かさ、今までのノリでいると急に我に返るというか、アイツは前と変わらないせいで困るのよ。距離が近すぎてテンパるっていうか…」


例えば風呂上がりに濡れたままの髪をタオルで拭かれることがある。
以前だったら、兄にそうされるようにくすぐったくも心地よいと単純に受け止めることが出来ていたのに。
自分の髪の上を滑る細い指の感触、微かに香るバニラの香りや、耳元すぐ近くで響く掠れ気味の甘い声に身体が熱くなる。
肩を並べて料理をしている時も、伏せ目がちの紅い瞳にかかる長い睫の影や、形の良い顎から喉に掛けて走るシャープなラインの横顔に目が行くのだ。
繊細な手つきで手際よく調理していく指先の動きに、自分に触れる時の優しい手つきが重なって、一人顔を火照らせてしまうことも多々ある。


「ま、まぁ、そんな感じ」


いくつかの具体例を述べた美琴が顔を上げると、佐天、白井、初春はそれぞれがそれぞれ形容しがたい顔をしていた。


呆れたような、居心地の悪そうな佐天。

苛立たしげな、うんざりした顔の白井。

赤くなった頬に手をあてて照れる初春。



「ああ〜〜何か私今すっごく苦いコーヒーが飲みたいかも」
「隊長の砂糖抜きのイタリアンコーヒーが恋しくなってまいりましたの」

「な、何よ」

「だって…ねぇ?」
「ええ、この年でそんな甘酸っぱいのろけを聞かせられるというのは…」


「の、ののののろけ?」


「何か恋する女の子ですね〜そんな顔の御坂さんすっごく久しぶりに見ました」
「う、初春さん!?」
「あ、御坂さん真っ赤」
「ホント、リンゴみたい」
「お姉様…そのお年でそういうリアクションは」


「もう、うっさい!!!」






「さてと、男衆が買い出しから戻ってくるまでまだ時間があるわね」

「ママってば、まだ飲むの?」

「そりゃあ当然!!こんなめでたい日だもん。何てったってシロくんが私の息子になるんだもん。詩菜さんに自慢してやろ」


美琴は行儀悪くイスの上で胡座をかく母親を半目で睨む。
想は退屈そうに足をぶらぶらとさせている。
母親達の会話はよくわからない上に、一方通行も旅掛もいないのだ。
旅掛がいれば「おうまさん」になってくれるというのに、とつまらなそうに想はオレンジジュースを飲む。


「こら、想ちゃん。あんまり飲み過ぎたら夜中におトイレに行きたくなっちゃうわよ?」

「へーきだもん」

「怖いから一緒についてきてって言ってもママついて行ってあげないわよ?」

「あーくんがいるからいいもん」

「そうやってすぐに甘えないの」


少し目尻をつり上げながら娘をじっと見下ろす美琴に、美鈴は小さく噴き出す。
美琴はムッとした表情ですぐさま視線を美鈴に移す。
361 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/25(土) 03:28:11.68 ID:ZFCXpEmq0

「なによママ」

「だって、小さい頃に美琴ちゃんに言った事と一緒のこと言ってるんだもん。おかしいの」

「ママも想とおなじなのみすずさん?」

興味を引かれたのか、想がイスからひょいと降りると、美鈴の膝元にくっつく。
幼子特有の柔らかな髪をくすぐるように撫でながら美鈴が懐かしげに目を細めて頷く。

「そうよ〜想ちゃんのママはね、大丈夫だもんって言ってはよくおねしょしてたのよ?」

「え〜ママおねしょしてたの?」

「ちょっ!?」

「六歳まで治らなかったのよね〜?」

「想よりおねえさんのときもまだおねしょしてたの?ママってば」

「ま、ママ!!何も想ちゃんの前で言わなくても良いでしょ!!」

「ごぉめ〜ん。美琴ちゃんがあんまりママしてるから、ついからかいたくなっちゃって」

「ついじゃないわよ!!」


母親の面目を思い切り潰された美琴が頬を振るわせて叫ぶ。
羞恥のあまり青白い火花が髪から立ち上る。


「ママほーでんだ〜」
「はっ!?」
「いけないんだよ。あーくんにおこられるのに」
「ううっ…」


「あらあら、仲良しじゃない。想ちゃん、あーくん好き?」

「うん!!大好き」

「へぇ〜そっか。美琴ちゃんはあーくん好き?」

「ほぇッ!?」


急に向けられた矛先に美琴の声がうわずる。


「ほらほら〜」

「す…好き…よ」

「想は大好きだから、想のかちだよ〜」

「ま、ママも大好きよ!!」

「あ〜らら〜。あの照れ屋の美琴ちゃんがあっさり言っちゃった」


微笑ましいじゃれあいをする娘と孫を楽しげに眺めていた美鈴の顔付きが急に引き締まる。


「でも、美琴ちゃん、ちゃんと覚悟はできてる?」
「え?」




「シロくんと一緒になるっていうことは、想ちゃんが血の繋がらないお父さんができるっていうことよ?」

美鈴の言葉に、美琴の顔が険しくなる。
362 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/25(土) 03:29:27.27 ID:ZFCXpEmq0


「想ちゃんがいずれ大きくなった時に、必ずその事で傷つく日が来るわ。シロくんに懐いている程ね。

自分で思い悩むかもしれないし、好奇心で周りが傷つけるのかもしれない。

そういう日が来るって、きちんとわかってる?」



恵まれた経済事情。

恵まれた社会的地位。

恵まれた容姿。


それらが備わるだけで、普通であれば触れられない家庭の事情一つであっても、誇張されて伝わる事がある。
口さがない風評で繊細な少女の心が傷つく時はきっとあると、美鈴は言いたいのだ。
しかし、美琴は臆することもなく、凛とした瞳に、笑みを浮かべさえする。


「当たり前でしょ。きちんと守るわよ。私も、それにアイツも。だって、私がアイツを好きになったのは、私とこの子を愛してくれるからだもの」


単に美琴に恋愛感情を抱いている男だから、美琴は一方通行に惹かれた訳ではない。
自分を支え包み込んでくれる一方で、自分の何よりも大切な宝物を慈しみ守ってくれる男だからだ。
自分達母娘を丸ごと守ってくれる不器用でひたむきな姿に、美琴は惹かれたのだ。


「そっか。じゃあ安心ね」

挑むような美琴の表情に、美鈴は満足げに笑うと、想を膝の上に抱き上げる。

「あら、前より重くなったわね」
「おもくないもん!!」
「重くていいのよ、それだけ大人の女の子に近づいてるっていうことなんだから」

美鈴は愛しげに想のミルクの香りのする頭に頬擦りをする。
祖母と孫ではなく、傍目には親子にしか見えない。

「ねね、想ちゃん。今日あーくんと一緒に寝るときにね…」


美鈴は、想を膝の上に乗せながらそっと言い聞かせる。

363 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/25(土) 03:31:09.84 ID:ZFCXpEmq0




「 ――― って呼んであげなさい」



「ちょ、ママ!?」
「いいでしょ?どうせ遅かれ早かれなんだし。絶対喜ぶわよシロくん」

想はぽかんと、美鈴を見上げている。
言われた言葉の意味が分からないのではない、彼女の教えた言葉を自分の中で整理しているのだ。

美鈴は顔を赤くしながら、何か言いたげな美琴にウインクをする。

「幸せにしてもらおうって思っちゃダメよ。自分も相手を幸せにしてあげなきゃ。一緒に幸せにならなきゃ、ね?」







「白井さんが反対しなかったのが意外でした」

一方通行と待ち合わせていると言って店を出た美琴の背中を、見つめながら初春が追加のパフェのウエハースをかじる。
白井はクロワッサンでべとついた指先を念入りに拭いながらアンニュイな溜息を吐く。

「反対したところでどうなるというのですの?一番お姉様が幸せになれる道が示されたというのに、

 その前に立ちはだかるなどという愚行、黒子には到底出来ませんの」

「そこが意外なんです。絶対『お姉様を一番に幸せに出来るのはこの黒子をおいて他にはおりませんの〜〜!!』とか言うと思ってたのに」

「その声真似に若干どころではない悪意を感じますが、まぁいいですの。私お姉様の幸せを願うことにかけては一番だと自負してますの。

 けれど、一番幸せに出来るかと問われましたら…悔しいですけれど、お兄様をおいて他にはおりませんわ、ええ、ホント悔しいですけれど」


初春も佐天もその言葉に関しては異論を唱えなかった。
美琴、そして一方通行の友人としてこの六年間をずっと見てきた者はわかっている。
あの二人の間に存在する絆。
六年間の月日をかけて培われてきたあの「世界」には到底立ち入ることが出来ないことを。


「ですね」
「ま、確かにね。でもな〜」


佐天が背もたれにだらしなく寄りかかる。
はしたないですわよ、と白井が窘めるが佐天はそれを聞き流しながら天井を仰ぐ。
切り起こした木目の幾何学的な模様を眺める。


「ちょっと残念〜」

「佐天さん?」

364 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/25(土) 03:32:52.24 ID:ZFCXpEmq0



恋愛だとかを超越したところにあるようなあの二人の関係が好きだった。

『家族』 ――― それ以外に当てはまる言葉のない関係はとても美しく見えた。




だからこそ、今自分は寂しいと思っているのだ。
名のある関係…「夫婦」とか、そういった関係に収まってしまった二人が。
勿体ないと思う。まるでドラマや小説のような不思議で穏やで調和の取れた関係が終わってしまうことを。


しかし、一方で当然たとも納得もしているのだ。

うまく言葉に出来ない関係とは、曖昧な関係ともいえる。
曖昧とは、中途半端ということだ。
あの二人がそれで良くても幼い少女にとって良い筈がない。
大人の自己満足の曖昧な関係に傷つけられるのは幼い少女なのだから。



あの二人は大切な少女を守る為に、形のある関係に身を置くことを選んだのかもしれない。


365 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/25(土) 03:33:53.48 ID:ZFCXpEmq0


「結局、プチ失恋して寂しいって事なんだけどね」

「失、しつれ…ぬっふぇ!?失恋って佐天さん!?」

「なぁ〜んでもないって。忘れてってば」

「聞き流せる単語じゃありませんでしたの!!」

「いいじゃん、いいじゃん」


胸の奥がチクリと痛む。
早い内に自分の中に予防線を張っておいて良かったと、佐天はひっそりと思った。










そこは何もない更地だった。
土地を仕切るように張り巡らされたロープと、総合スーパーの着工予定日が記されている。
嘗てそこにあったモノの名残は微塵も無い。
一方通行は、無感情にその看板を眺める。

366 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/25(土) 03:35:21.76 ID:ZFCXpEmq0





――― 『武装したクローン二万体を処理する事によってこの実験は成就する』 ―――




もし、実験をあの日拒んでいたとしたら。




――― 『なに 遠慮はいらんよ 相手は薬品と蛋白質で合成された ――― ただの人形なのだから』 ―――




そんなわけがないと、当たり前の事を言えたなら。




――― 『暗い 深い 海の底に沈むような…これが「死」です…か』 ―――




あの少女の死から目を背けなければ。




367 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/25(土) 03:36:30.11 ID:ZFCXpEmq0




「あのふざけたジジイ共は残らず処分してやったけどよ。それで何か取り戻せるわけでもねェ」



「そうでも無いですよ」

ベリーショートに髪をばっさりと切ったパンツスーツを着た女が涼しげな目元を微かに和らげていた。
片手にはスミレ色やピンク、黄色を使った鮮やかな花束。
一方通行と同じく、始まりの場所を覚えている女だ。


「少なくともミサカ達の気は晴れました。ぶっちゃけザマァ!!という奴ですとミサカは貴方にお礼参りされた研究者たちの顔を思い浮かべサディスティックな爽快感に浸ります」

「オイ」

「ミサカ達は別に善人でもありませんからね。自分たちをモルモット扱いしてきた科学者達の末路に気分爽快になります」


10032号は足下の小石を蹴り上げる。
小石は看板のポールにあたり乾いた音を立てる。
真夏の暑さを迎えようとする中で妙にその音が小気味良く響く。


「それに、こうして跡形もなくしてしまった方が踏ん切りも付くでしょう」

「……それは…まァな」

「しっかりしてくださいよ、とミサカはヘタレたお義兄様の背中を渾身の力を込めてたたきます」

「痛ェ!!つーか…あァ?お義兄様だァ?」


痛みを通り越して痺れ始めた背中を抑えながら、自分が不可解な単語を耳にしたとばかりに眉をひそめる。
10032号は何故そんなに一方通行が不思議がっているのかがわからないと小首を傾げる。


「お姉様の夫になるのですから、お義兄様でしょう?とミサカは五千人の義理の妹を持つことになったエロゲ主人公のごときモヤシを哀れみのまなざしで見つめます」

「夫って…まだ話してねェハズだが…」

「お母様が喜々として広めていましたが」

「あンのババァ…」



「…………アナタに恋焦がれていた妹が半分で良かったです。半分が慰め役に回れますから……」
「はァ?」
「何でもありませんよ、と鈍感モヤシ義兄に呆れつつミサカはそっと大人の意味深な溜息で誤魔化します」


10032号は一方通行に見えぬように、こっそりと笑う。
普段の口元だけを釣り上げるような笑みではなく、微笑ましそうに口角を和らげる笑みだ。

368 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/25(土) 03:39:28.43 ID:ZFCXpEmq0


「いい加減飽きましたか?ずるずる過去を振り返るのは」

「こォ見えて割り切りの悪さについては一家言持ちなンだよ。これからもしつこいくれェ思い出すだろォよ」

「果てしなく情けないことをキメ顔で言われたミサカのやり場のない憤りは一体何処へぶつければいいのでしょうか、

 とミサカは嫌な開き直りをした一方通行に冷徹なる眼差しを送ります」

「そいつはご期待に添えなくて悪かったなァ」



気取った仕草で肩を竦める。
口元に浮かべた笑みは自虐でも自嘲でもない。
悪戯が成功した悪ガキのような笑みだ。
何処か晴れ晴れとした笑みに、一瞬10032号は見惚れる。


「ま、けどいい加減立ち止まってまで振り返ってる余裕はねェからよ、歩きながら振り返ることにするわ」



「まったく……もう少し素直なセリフは出てこないのですか?」


二人は顔を見合わせて笑った。

嘗ては殺しあった二人。

笑顔の似合わない、笑顔のヘタクソな二人。

そのような過去が存在したことすら疑わしいほどに、二人は自然と微笑み合った。







しつこいくらいに自分に幸せになれと言ってくるお節介達が多すぎる。

余りにもがなりたてるものだから、とうとう観念せざるを得ない。

ヘタレで弱虫の自分でも、流石に重たい腰を上げざるをえなくなった。

しかも、ご丁寧に自分の手を掴んで強引に引っ張ってくる奴までいるのだ。

だから一方通行はグチグチと文句を口にしながら歩くことにした。



幸せになる為に未来に向かって。





369 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/25(土) 03:40:20.97 ID:ZFCXpEmq0




「想と美琴、今コンビニで待たせてるからよ。行くわ」

「どうしてコンビニに?」

「このクソ炎天下で熱射病になったらどォする」

「相変わらずの過保護で……」

「うっせェ」



ヒラヒラと手を振ると、一方通行は背を向ける。





妹と別れ、一方通行はゆっくりと歩き出す。
もし、あの日実験を拒んでいたら。
きっと、今自分はこうしてはいなかったかもしれない。
けれども、もし戻れたら自分は実験を拒む。
しかし、一方通行は今の自分の世界を否定する気もない。
もしかしたら自分は明日にもで殺されるかもしれない。
恨みは方々で買っている。
誰にも看取られずに、雨の日のゴミ捨て場に汚れ壊れた玩具のように惨めに死ぬ日が来るかもしれない。
それでも、今を否定するつもりはなかった。




一方通行は少なからぬ驚きと喜びを持って自分の変化に気付く。





「あー!!きたよ〜ママ〜〜」

「ホントだ。遅いわよ〜〜!!」

「デケェ声出してンじゃねェ。余計暑くなンだろォが。……ったくよ」






今の自分は、あの頃の自分よりも、自分の事が嫌いではない。







370 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/25(土) 03:40:56.12 ID:ZFCXpEmq0






あの夜、美琴の実家で一方通行と美琴は想を間に挟んで眠りに就いた。

想は自分の手をしっかりと握り締めながら、そっと確かめるように囁いた。






「――― パパ?」





声が出なかった。

自分に向けられた視線で、その言葉が誰に向けられたのかはすぐにわかった。

しかし、不意の言葉にすぐに反応することが出来なかった。

虚を突かれたというだけではない。

自分の中で常備されている器。

幸福を受け入れられる器の許容量を遥かに上回る幸福の量に圧倒されたのだ。




「パパ……?」




不安に顔を曇らせて一方通行のシャツをきゅっと握り締めて想がじっと見つめるのが寝室の薄明かりでもわかった。

想の向こうで美琴がじっと息を潜めて自分を見つめていた。

想によく似た瞳には、想によく似た不安が浮かんでいる。

二対の瞳に見つめられ、一方通行は小さく笑った。

今更何を怖気づいているのだろうか。



371 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/25(土) 03:41:43.25 ID:ZFCXpEmq0





「……あァ、そォだ。パパだ」


「――― ふぁ」


頬を撫でてやると、想はたちまち瞳を見開いた。

丸い頭を胸元にぐりぐりとくっ付ける。




「パパ……えへへへ……パパだぁ。あーくんが想のパパなんだ」





まるで砂糖菓子を口にした子供のように、頬を綻ばせる少女を愛しいと思った。




372 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/25(土) 03:42:53.93 ID:ZFCXpEmq0






「パパ」




少女はまるで飴玉を舐めるように、その言葉の感触を確かめ。




「ぱぱ」




その形を確かめ。




「パァパ」




そして、その甘さを確かめるように囁いた。





373 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/25(土) 03:43:47.23 ID:ZFCXpEmq0




「パパぁ」
「なンだよ」
「えへへへ。よんだだけ〜」
「ばァ〜か。呼び過ぎだろォが」


少女の額にこつんと自分の額を当てる。


「どォせこれからは毎日呼ぶンだからよォ……なァ?」

「うん!」




その夜、少女は眠りに落ちるまで、ずっと、たった一つの言葉を呟いていた。

飽きもせず、恥ずかしげに。

何度も何度も、嬉しそうに。

想はいつしか涙を流していた。

美琴もいつのまにか泣いていた。

同時に両方の涙を拭ってやる事も出来ず、暫し悩んだ末に。

一方通行は美琴と想を抱えこむように抱き締めた。



親子三人は、いつしか穏やかな寝息を立てていた。






374 :〜エピローグ〜 [saga]:2011/06/25(土) 03:44:54.44 ID:ZFCXpEmq0





「―――カ……」


遠くから自分を呼ぶ声が聞こえる。
自分の足元がふわふわとして、身体が不自然な姿勢で宙に浮くような感覚。
この感覚を自分はよく知っている。
コレは夢から覚める前触れだ。


「―――カ!」


声が近付く。
遠くはない。ただぼやけているだけ。
瞼が外の明かりを感知して、僅かな鈍痛をもたらす。
覚醒の兆候を感じとり、ゆっくりと瞼を持ち上げる。


「ん……」



それでも睡眠の心地良さに引き戻されるように、開きあけた瞼が再び落ち始めようとしたところで、耳元で最大音響が鳴り響いた。



「ミサカ!!!」
「わぅ!!」


少女はばねのように突っ伏していた姿勢から一気に飛び起きる。
目の前ではクラスメートの少女が腰に手を当てて呆れた顔で見下ろしていた。


「もう放課後よ?アンタ凄いわね。吹寄先生の授業を寝るなんて」

「放課後……?」

「そうよ。見て御覧よ、誰もクラスに居ない。可哀想に浜面なんてアンタ誘いに来たのにアンタ頑として起きないんだもん」

「放課後……放課後!?」


その言葉に少女の寝ぼけていた頭が一気に覚醒する。
机に引っ掛けてあるリュックを背負うと、勢い良く立ち上がる。
余りにも機敏な動きに友人が焦る番だった。


「ちょ、ちょっと、どうしたのよミサカ急に?」

「ゴメンね。今日私用事あるの。だからすぐに行かなくちゃ!!」

「行くって……何処に?」


教室のドアで振り返ると、にっこりと友人に笑う。

375 :〜エピローグ〜 [saga]:2011/06/25(土) 03:48:19.48 ID:ZFCXpEmq0



「弟の保育園。今日はね、あの子の誕生日なの〜」


心底幸せそうな少女の笑みに、二の句が告げられない友人を尻目に駆け出す。
スカートから覗くスパッツと、健康的な脚線美が思春期の男子の目の毒だということにも一行に気付かず廊下を走り抜ける。
置いてけぼりをくらった友人は、少女が蹴倒した椅子を起こすとその上に腰掛け、疲れたように苦笑を浮かべる。


「ホント、筋金入りのブラコンね」


そんなことだから中学二年生にもなって彼氏どころか、浮いた話一つとして出てこないのだ。
学校内で間違いなく一、二を争う美少女なのに。
10歳年の離れた弟を溺愛する少女――― 御坂 想の友人は溜息を吐いた。












指の間を砂が滑り落ちていく感触が好きで、少年は飽きることなく砂をスコップで叩く。
崩さないように、慎重に力を加減して形を整えていく。
先ほどまで一緒にお城作りに精を出していた友達はすでに母親が迎えに来て帰ってしまった。


それを寂しいと思うことはない。
それ以上に、目の前の作品を完成させることが少年にとっては重要な命題である。
嘗て打ち止めと呼ばれていた保育士は一丁前に真剣な少年の横顔を蕩けそうな笑みで眺める。


「きょうね、ぼくね、たんじょうびなの」

「四歳になるんだよね?ってミサ……おっとと」


時折、昔の口調に戻ってしまいそうになる。


「今日はママ迎えに来るの遅いね」

「きょうはね、おねえちゃんがくるの」

「百合ちゃんが?」

「ちいねえちゃんじゃないもん!!」




三つしか離れていない下の姉はただ可愛がり方がわからないだけなのだが、そんな事は少年にはわからないのだろう。
プンと色白の頬を膨らませる。
あまりにも愛らしい仕草に指でつんつんと突いてやる。柔らかい感触が心地良い。
姉と母親と、その妹達に溺愛されて育ってきたことを匂わせる甘えん坊な横顔が打ち止めの母性本能をきゅぅっと刺激する。
彼女とて溺愛する一人なのだから。

376 :〜エピローグ〜 [saga]:2011/06/25(土) 03:51:17.77 ID:ZFCXpEmq0
少年を見ていると、打ち止めは心の奥底がムズムズとする。
父親とは違って真っ黒な髪と瞳であるのは少年の父親自身先天的なアルビノではないからだ。
しかし、髪や目の色が異なっていてもその顔立ちはそっくりだ。
うっとりとその幼い顔を眺める。まるで少年の父親の見ることの出来なかった子供時代を見ているようで得をした気持ちになる。




不意に、少年がぴくんと顔をあげる。


打ち止めはその仕草だけで何が起きたかすぐに察した。




少年の視線の留まった先に、打ち止めもつられるように目を向ける。
まるで、遠くからの足音や匂いで、いち早く主人の帰りを察知する犬のように。


それは少女だった。


こちらに向けて一目散に走ってくるのは、可憐な少女だ。


短めのスカートからすらりと伸びた足。
彼女の父親から着用を固く言いつけられたスパッツがその脚線美を寧ろ引き立ててしまっている。
小さな影が、徐々に近付いてくるのにようやく少女であると打ち止めが気付くころには少年は子犬のように、弾むように駆けていく。


その後ろ姿を見慣れていても、打ち止めはつい顔が緩んでしまう。



「おねーちゃん!!」


少年が大好きなご主人様にぶつかっていく子犬のように思い切りぶつかる。
飛び込んできた少年を受け止めた少女は愛しげに少年を膨らみが目立ち始めた胸に抱き締める。

377 :〜エピローグ〜 [saga]:2011/06/25(土) 03:53:02.28 ID:ZFCXpEmq0





「おっ待たせ〜〜!!今日はお姉ちゃんがお迎えに来ちゃいました〜〜!!

  
   
                         ―――――― いい子にしてた?」










378 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/25(土) 04:01:15.44 ID:ZFCXpEmq0
というわけで、本編最終回の投下を終えます。
ホント長かったです……此処まで付き合ってくださって本当にありがとうございました。
番外編を投下しますが、本編はこれにて完結となります。

それでは。 ノシ


以下、見苦しいあとがきですので伏せます。
379 : ◆d85emWeMgI [!orz_res]:2011/06/25(土) 04:01:45.07 ID:ZFCXpEmq0

上琴から禁書に入ったので、最初に書いたSSで「アンチ美琴だろ?」的なことを言われたのが悔しかったのがこの話を書き始めた切欠でした。
書いていくうちに一方通行と美琴を扱うなら実験に関する確執を書かないといけないなとか、
美琴で恋愛するなら上条は外せないなとか、あれこれ考えていく内にここまで続いてしまいました。
電磁通行に方向を決めたのは、上インスレを書き終わったときです。
美琴は幸せにならないと駄目だろうと。


最後に、以前娘の名前を相談した時に、気の済むようにやれいという後押しを下さった方々には本当に感謝しております。

それでは。 ノシ


380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/06/25(土) 04:04:10.72 ID:T2uzui2AO


泣いた
381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(徳島県) [sage]:2011/06/25(土) 04:07:36.95 ID:DIu8+dm20
また楽しみにしてたスレが一つ終わってしまった
けど今まで凄い楽しませて貰ったので>>1に心から感謝
お疲れ様でした
382 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/25(土) 04:08:33.56 ID:1gYr+JuCo
乙ッ!!!

ラストシーン、最初の投下と被せた事に思わず涙が……くぅっ
心の内を全て書くとなると長文の上に1レスに納まるか分からないので省略しますが

電磁通行一家、そして全ての登場人物達、どうか末永くお幸せにっ
383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/25(土) 04:11:09.19 ID:bjx145bDO
全身全霊で乙

いやお疲れ様です。
384 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/25(土) 04:14:52.70 ID:0AKLZeSP0
最高の電磁通行をありがとう。マジ乙です。

次回作も期待してます!
385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/25(土) 04:16:47.96 ID:T3XW90ew0
終わっちゃったのか…乙です!
386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/06/25(土) 04:31:55.93 ID:fu6eEpGo0
お疲れ様
387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/25(土) 04:34:29.62 ID:88K1Viiqo
綺麗な終わりだ…
作品としても良いのはもちろん、電磁通行はあまりないので本当に良かったです
お疲れ様でした
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/25(土) 05:12:18.65 ID:KbZ/NxxDO
くそぅ、また巡回スレが1つ終わりのときを…

やはりというべきか、半数も妹達は一方派になってたのか…切ないな……
だけど、失恋しても10033号はいつも通りの画しか浮かばないww
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/25(土) 05:41:41.42 ID:LgtgPvCK0
乙です!!!

今までで一番の電磁通行でした
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/25(土) 05:44:45.56 ID:CWa9/xYIO
このSSは俺にとって初めてリアルタイムで1レス目から読み始めた作品だった。初めは恥ずかしながら、電磁通行というアンチが付きやすい題材に加えて、オリキャラの娘を話の中心に据えている点。そして、注意書きからハードルをやたらと上げる姿勢にイラっとしたのを覚えている。俺自身が上琴派なのもあり、もし変な所があれば細かく突っ込んでやろうとも思った。

でも、その考えは想ちゃんと絹旗先生の会話の場面により一瞬で変わってしまった。貴方のこの作品からは温もりと何よりも原作とキャラに対する愛情を感じられたし、以前書かれた作品と同じ様に文学部の自分が読み惚れる様な綺麗な文体だった。同時進行していた上条さんのスレも含めて、本当に終始素晴らしかった。俺の中で、最も支援をし、投下を心待ちにしていた作品でした。

本当にお疲れ様。近いうちにまた貴方の作品を読める事を楽しみにしています。長文によるスレ汚しとキモい感想を今回だけは許して下さい。

最高の電磁通行をありがとう。
盛大に乙!!
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/06/25(土) 07:09:47.95 ID:W8UqoB57o
美琴も一方通行も誰であっても突き詰めれば自分のためなんだけども、
それが想ちゃんを包みこんで彼女を幸せにしてしまってんだからたまんない。
父親を認識した場面はほんとにもう。涙が出たわ。
もう皆にも>>1にも幸あれ。めっちゃ好き。
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) [sage]:2011/06/25(土) 07:33:24.33 ID:tZNvrkSJo
完結、乙
想はいいお姉ちゃんに育ったようでなにより
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/25(土) 08:41:43.65 ID:ofhmuU9q0
俺このSSがなきゃシングルマザーになった元カノとやり直せなかったんだよなぁ

勇気をいただきました
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/25(土) 08:52:47.78 ID:ku8FkWNY0
美琴一方どちらにも何となく上条禁書の影響が残ってる感じが好きでした。
上条禁書もずっと美琴一方の事をちゃんと心のどっかに秘めてるんだろうなと、妄想できるこの雰囲気が好きでした。
経験を血肉にしているような。
もう交わることは無いのだろうけど、最強の矛と盾が向き合うのではなく同じ方向を見たとき物語は始まる!ってこたぁ無いんだろうな…
長い間追っかけさせてもらいました
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/25(土) 08:57:15.70 ID:PU82NGCIO
この作品はマジで商業とかで出しても文句ないレベルの作品だと思う
大学のゼミで家族愛の文学作品を題材に論文書かなきゃいけないんだけど、もし>>1がよかったらこの作品で書かせてもらいたいくらいだぜww

なんにせよこれだけ難しいジャンルの作品を完結させたことに最高の乙を贈りたい!
次回作も期待しています!!
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/25(土) 09:38:36.08 ID:49hsOraIO
苗字は御坂のままか
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/25(土) 09:48:01.04 ID:Sqeoe2zG0
>>1 乙
最後まで書き上げてくれて感謝。
自分的には何回も読み直せるので、この作品は好み。

次回作待っている。
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/06/25(土) 11:04:52.38 ID:7YZerID+o


個人的には最も良い電磁通行だと思うよ

番外編があるなら夫婦になった後の美琴、打ち止め、番外個体の話が見てみたい
399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2011/06/25(土) 11:46:00.46 ID:pzUbtVpJ0
乙!
本当に良かった



で、中学2年生の想の物語が始まるんですよね?
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/25(土) 11:48:00.13 ID:JpU7dvvEo
良いモノを読むことが出来ました。
ありがとうございました。
401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/25(土) 12:30:37.42 ID:7kOMT1eGo
毎回毎回楽しく読ませていただきました
本当に大好きなので次回作もあると嬉しいな
乙!
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/25(土) 12:53:02.98 ID:koSI6qVDO
やべー感動を上手く言葉に出来ねーwwwwwwww
言葉にしようとすると陳腐になっちまう気さえすらぁ
まぁとにかく登場人物全員に幸あれ!!



あんま二次創作ageとかしたくない派なんだが、この作品は本当に別格すぎたわ
かまちーはこの伏線消化力と描写の妙と説得力を見習えよwwwwwwwwww
もはや設定資料集と見なされてんぞwwwwwwww
403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/25(土) 13:07:57.34 ID:RRVtd3P8o
404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/25(土) 14:32:26.59 ID:1NIe7uTTo
もうほんと最高でした、乙
405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/25(土) 15:29:33.79 ID:cqReVupDO
すごく穏やかな気持ちになりました
最高無敵の電磁通行をありがとう
406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/06/25(土) 16:59:57.85 ID:emwcztql0
乙です。最高でした。
407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/25(土) 17:33:13.03 ID:M+yRV3QB0
ああくそ、ほんとヤバい
電磁通行最高傑作だったわコレ
>>1よ永遠に乙!!
408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/25(土) 17:35:41.48 ID:6TAPIAJ0o
至福の時間をすごさせてもらったよ本当に乙でした

真っ先に浮かんだ感想が一方さん種あったんだなーでしたwwwwww
409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/25(土) 18:14:20.28 ID:8LVhpISK0
1乙
また一つ良スレが終わりを告げたぜ……
今まで読んだ電磁通行の中であんたのが一番好きだ!!

まだレスも残ってるし……番外編書いてくれたらそれはとってもうれしいな。
410 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/06/25(土) 18:34:24.64 ID:s+c13d4F0
泣きながら良かった…!って笑ったの生まれて初めてだ

お疲れ様、そして番外編や小ネタ、次スレで会えることを信じて、
最高の感動をありがとう!
411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/06/25(土) 19:15:19.66 ID:sXAucx7R0
乙!!
番外編や次回作マジ楽しみっす
412 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/25(土) 22:01:26.95 ID:qE9XD2pd0
ここまで泣いて笑ってあれこれ考えさせられたSSは初めてでした。
電磁通行という未開(というか未完ばかり)の扱いづらいジャンルを見事に綺麗に終わらせた手腕に感服します。
本当に、最初から追い続けてきて良かった。

お疲れ様です。番外編楽しみにしてます。
413 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2011/06/26(日) 00:01:07.06 ID:O903LOB00
乙!
終わったのかぁー。
このssは面白かったなぁ。
電磁通行は前から好きだったが、このssは特に好きだった。
友達と話してるとこのssと原作がぐちゃぐちゃになって話が噛み合わなくなってしまった。
それぐらいすきだった!
次回作、期待してます。ニヤニヤをありがとう!
414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2011/06/26(日) 00:01:40.61 ID:O903LOB00
乙!
終わったのかぁー。
このssは面白かったなぁ。
電磁通行は前から好きだったが、このssは特に好きだった。
友達と話してるとこのssと原作がぐちゃぐちゃになって話が噛み合わなくなってしまった。
それぐらいすきだった!
次回作、期待してます。ニヤニヤをありがとう!
415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/06/26(日) 01:43:29.21 ID:LEduDOeN0
エツァリは今頃どこで何をしてるんだろう
それだけが気になる
416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県) [sage]:2011/06/26(日) 02:05:03.43 ID:04DmYeAEo
(`・ω・´)ゞ 乙であります!
番外編は根性さんか?
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/06/26(日) 02:05:28.98 ID:ra+ujN6u0
感情移入しすぎて辛かったよう。
もうね、すっかりやられてしまいましたよ。
お疲れ様でした。
そしてありがとうございました。
418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/26(日) 11:34:44.69 ID:UwS7lOs/0
さあ次は絹旗を幸せにする作業に取り掛かるんだ
419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/26(日) 11:35:15.66 ID:UwS7lOs/0
乙!!!
420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/26(日) 14:08:46.88 ID:w+R6bVFM0
最高でした!!
>>1乙!!
421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/06/26(日) 15:45:18.60 ID:S6RCwC2R0
支部に投下されてた絵で遂に終わってしまったんだと再認識した……(´;ω;`)
422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/26(日) 16:05:23.90 ID:aP6kqoEyo
ついに終わったのか・・・素晴らしい作品だった乙

よし次は根性とねーちんとショチトルと絹旗とフレンダを(ry
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/06/26(日) 21:42:27.97 ID:S6RCwC2R0

今やっと>>1の意図に気付いた。

この話は血の繋がりなんて絆には関係無いというテーマがある。

⇒百合ちゃんとやらも、弟君も苗字は出てない。

⇒そこから導き出される答え……二人の子供のどちらかの苗字は『絹旗』。





絹旗先生がラストで登場しない理由⇒産休中。




424 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/26(日) 22:26:46.46 ID:W1BO5M8u0
それはひょっとしてギャグで(ry
425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/27(月) 00:19:55.65 ID:af6hwH/50
毎日ここのスレをチェックするのが日課でした。
素晴らしい作品を残してくれて有り難うございます。
番外編も楽しみです。

全員集合ではないですが…
乙でした!!
ttp://iup.2ch-library.com/i/i0349648-1309101083.jpg

美琴×想×一方
ttp://iup.2ch-library.com/i/i0349649-1309101083.jpg

時間が経ったら消えると思います。Pixivにもあげてあります。
426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/06/27(月) 01:42:59.67 ID:MuvQNtmL0
>>425
全力で保存した
あと>>1乙!
427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/06/27(月) 01:44:35.11 ID:f2h1CvCF0
乙!
番外編も書いてくれるのか…
ありがてぇ
428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) :2011/06/27(月) 03:37:52.64 ID:NA9cNz0m0
暇人のSS日記で読んで、続きが読みたくてググって、見つけて、めっちゃ嬉しくて…
でもこれでこの作品を追っかけるのが終わりだと思うと死にそうです。ゲル状になりたい。貝になりたい。

素晴らしいもの、かけがえのないものをいただきました。ありがとうございました!!


429 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/27(月) 04:05:45.31 ID:Bm8hLX4y0
ageんな氏ね
430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2011/06/27(月) 10:32:47.82 ID:GBW5Zngt0
5000人の義妹だと…………
けしからん一方さん爆発しろ
431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/06/27(月) 11:41:02.12 ID:QzFqtTCP0
そのころのMNW。
「彼の幸せを祈りつつお姉様を祝(呪)うスレ」
「義兄との禁断の関係について」
「20000号は勝ち組か?」
432 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/28(火) 00:56:23.32 ID:Isl7SKVl0
本当にありがとう。本当に。
これい以外の言葉ないんだ。まあ俺の語彙力が低いだけなんだが。

番外編、楽しみにしてます。
打ち止めとか番外固体とかエツァリとかステイルとか気になりますし。
433 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/29(水) 00:07:13.39 ID:C1oRJCNUo
何気にアックアさんが一番気になる
434 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2011/06/29(水) 01:10:54.40 ID:m+EuQG6Q0
アッーーーー!!
435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/06/29(水) 01:14:00.86 ID:V/aPVGJv0
電磁通行夫婦のその後をもっと見たいという気持ちがある反面、終わり方がが綺麗だから番外編は他のキャラがいいなという気持ちもある。
この話のスレタイ回収は「上手い!」と思わず唸った。
436 :◇mirai [sage]:2011/06/29(水) 01:47:24.07 ID:/0tYCwyAO
番外編も期待!
437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) :2011/06/29(水) 05:24:32.14 ID:vJEiBq8AO
遂に終わってしまったのだね
こんなに良いSS、いや小説を読んだのは久しぶりだった
最後まで書いてくれて本当にありがとう
お疲れさまでした
パパセラレータ最高
438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2011/06/30(木) 11:18:59.98 ID:MdxkTK0Y0
番・外・編!番・外・編!
439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/06/30(木) 14:38:41.17 ID:2WSw9s2AO
あげんな
440 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/30(木) 21:55:28.53 ID:CYSBTQJX0
こんばんは。ちょびっとだけ投下します。
441 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/30(木) 21:56:46.76 ID:CYSBTQJX0


とある路地裏の打ち放しのコンクリートのマンション。


その五階の一室を改築した事務所に『それ』はあった。


あるときは学園都市に巣食う人非人に泣かされた弱者の涙を拭い。


あるときは日々をただ懸命に生きる無辜の人々を食い物にする外道を引き裂き。


そして、自らを悪党と嘯く捻くれ者達。



そこは、そんな不器用で少しだけ粋な連中の溜まり場―――……







「超暇なンですけどォ〜」

「超止めて下さい!!開口一番に私のパクリは……てかダラダラしないで下さい」

「コーヒーうめェ」

「聞け!!」



部屋の窓際に位置する机にだらしなく寝そべる白髪頭の青年を、呆れたように見下ろす少女。
ふんわりとカール気味のショートボブの髪の少女は机に腰掛けている。
角度的には青年の目の前に晒された健康的な太腿。
そして、その間からはパンチラが惜しげもな ―― いようでいて、絶妙な角度でガードが施されている。
そう、彼女こそが対アグネス最終兵器、絹旗最愛だ。


442 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/30(木) 21:57:14.91 ID:CYSBTQJX0



「依頼人は来ねェしよ。コンボイの謎はクリアしちまったし」

「依頼人が来ないのは貴方が黒翼でハッスルしすぎたからで……って超スゲェ!!コンボイノーミスクリアですか!?」


事務机の上には画用紙を三角に折り曲げただけのものに『所長』と書かれただけの投げやりな仕様。
白い髪の青年は片膝を立てて椅子に座りながらプレイしていたのは昔懐かしのファミコンである。
37型の液晶画面にレトロ。これが所長である一方通行の最近のトレンドだ。
尚、一方通行というのはくまでもペンネーム的なものであり、実際には鈴科という純和風の名がある。
下の名前は漢字三文字らしいので、十九郎とか総一郎とか海老蔵とか適当に想像すれば良い。


「オイ!!私にばかり雑用押し付けて呑気にだべってんじゃねぇ!!」




「なンだよ声デケェよボンバー」
「昼食は出来たんですか?超ボンバー」


「ボンバー言うな!!黒夜海鳥だ!!」


「わかったわかった、黒……ボンバー」
「ゴメンなさい黒夜―――ボンバー・海鳥(嘲)」


「何で言い直すんだよ。今言えたじゃん!それと絹旗ちゃん、お前後で屋上な」


真っ直ぐな黒髪を、料理の邪魔にならないようにとポニーテールに結んだ少女が地団駄を踏む。
イルカ柄のエプロンを身に着けた少女はそれでも手にしたフライパンを投げ出すことは無い。
華麗にトマトソースに絡んだパスタとウインナーが何度も宙を舞う。
一方通行の机に腰掛けていた絹旗は露骨に顔を顰める。人、それをうんざりと言う。

443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/06/30(木) 21:57:23.56 ID:NlWynWMp0
おおおおお!
なんかすっごい久々な気がしたけどそんなことなかった

しかしwktk!
444 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/30(木) 21:58:26.20 ID:CYSBTQJX0


「ウッセェなァ……じゃあもう面倒だから……“ペス”でいいだろ」

「何でペスになった!?」

「小さくてキャンキャンうるせェから犬みてェなモンだろォが」





「ぶふっッ!!ぺ、ペスて……ぷぷぷ……超犬です、調教されるんですか?」
「ち、ちょうきょ……」


何を想像したのか、黒夜の顔が茹で上がったように赤くなる。


「な、何超その気になってるんですか!!もしかしてマジで超ドMなんですか!」
「ど、どどどどど、ドMちゃうわ!!」
「大体料理って言ってもまたナポリタンじゃないですか。芸の無い奴ですね。得意料理がパスタですっていう女は超信用できないから一方通行、ちゃんと気をつけて下さいよ」
「パスタすらまともに出来ない女が何もっともらしいこと抜かしていやがる!!」
「ホント、ペスは超馬鹿ですね。台所に立てばキッチンが爆発する。カレーを作れば異界の生物が生まれる。ヒロインというものは料理が超下手だと相場は決まってるんですよ」
「うるせぇよ!女としては無能だってこと何誇らしげに言ってるんだよ」
「無能!?料理が女のスキルとか何年前の話ですか!!それを言ったらお前は無乳じゃねェのかァ!」
「テメェだってそンなに変わらねェだろォが!!私はスレンダー系だからいいンだよ!!」
「スレンダーwww超便利な言葉ですねェ〜〜」
「ウルセェパンチラ要員。知ってるかァ?パンチラの軽い女はなァ……サブキャラなンだよ」




いよいよキャットファイトに突入かという矢先に、一方通行の声が間に滑り込む。



「オイ、じゃれ合いはそこまでだ。今駄犬から連絡があった」



携帯の着信を二人に見せる。『着信:20000号』
その表示に、二人の表情が瞬時に切り替わる。
緊張感と高揚感を秘めた不敵な笑みに。


445 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/30(木) 21:59:01.16 ID:CYSBTQJX0







「さっさと行くぞ愚妹共。―――…… 仕事の時間だ」




「超了解です」

「フン。精々ウサ晴らしでもさせてもらおうかな」







探偵事務所『N3』 ――― そこは学園都市で最も危険な奴等の住処。



これは学園都市の最深の闇を自由気ままに、奔放に『遊び場』にするタフでデンジャラスな奴等のロクデモない物語である。





446 :次回予告 [saga]:2011/06/30(木) 21:59:55.67 ID:CYSBTQJX0






譲れない信念が故に、不器用な男達はわかりあえない。






「テメェもいい加減わかってンだろ。ジャッキーはいつだって俺達を楽しませる精一杯のアクションをしてきた。ただそれだけなンだ」

「ジャッキーは最高……わかってるさ俺にだって。けどよ……それでも俺は許せねぇんだよ第一位」

「垣根……」

「許せるわけねぇーだろ!!あんなもん、俺達の冴羽さんじゃ…リョウちゃんじゃねーだろ!!」







447 :次回予告 [saga]:2011/06/30(木) 22:00:41.41 ID:CYSBTQJX0





嘗ての仲間の、否、嘗ての仲間だからこそ、少女はその弱さを許すことが出来ない。







「平成ガンダムはとりあえず批判しておけば超にわか通ぶれる。種をメタ糞に言えば超敵は作らないで済む……」

「結局それが賢い処世術って訳よ……」

「フン、だから超三下だっていうんですよフレ / ンダ。どうして種すら楽しもうと思わなかったんですか?」




448 :次回予告 [saga]:2011/06/30(木) 22:01:23.02 ID:CYSBTQJX0





愛ゆえに、たった一つの真実から少女は目を背け続ける。






「オイ、ペス」

「ペス言うな」

「いい加減そのプリン頭直してこい。今なら俺しか気付いてねェから ―――」

「ファッションンンンンンンンンーーー!!!これ、ファッションンンンンンンンンンンーーーーーーーーーーー!!」


449 :次回予告 [saga]:2011/06/30(木) 22:03:33.84 ID:CYSBTQJX0





男の言葉が女の心を貫く時。物語は新たな局面を迎える。






「ロッキーって1とファイナルさえあればいいよな」

「一方通行、超表に出てください」










次スレ⇒ 【一方通行「探偵事務所!」絹旗「超!!」海鳥「N3!!!」】



不器用な奴等が交差する時、タフでロックな物語はスタートする。



450 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/30(木) 22:07:21.27 ID:zu/vCdN3o
黒よr、ペスェ……wwwwww
451 :バレバレでしょうけど。 [saga]:2011/06/30(木) 22:07:38.76 ID:CYSBTQJX0
まぁ、嘘なんですけどね。


番外編で本編の後日談はするつもりは無いのですが、その後どうなったかくらいは書いておこうと思います。


一方通行
厨二設定満載のラノベから料理本に至るまで幅広いジャンルに渡り執筆活動を行う。
結婚後いつの日か息子が生まれたらキャッチボールをするという密かな夢のためリハビリに励む。
その甲斐あって歩くだけなら杖無しでも可能に。
けど相変わらずのインドア。
鈴科の姓にいい思い出がないので躊躇なく御坂姓に。

御坂美琴
相変わらず研究に没頭しては旦那に叱られている。
想が小学校に入学後双子の女児出産。
母親譲りの容姿は御坂遺伝子の強さを改めて周囲に認識させる。
ただし目付きの悪さだけ父親譲りのため、プチワーストな外見に。
更に三年後に長男出産。
六年間の反動のようにお盛んなんです。
待望の男の子ゆえ末っ子溺愛。
たまに息子に注がれるあわきんの視線のガチさと、
娘達の中の自分のヒエラルキーの低さが頭痛の種。

御坂想
父親との仲は相変わらず良好。
先例から学んだのか、中学に上がっても反抗期知らずの甘えん坊。
短パン?ちょwマジ受けるんですけどw
とのたまう彼女はスパッツ装備。
ファザコンをこじらせてブラコンも併発した。
祖母の遺伝子は母親をスルーして受け継がれたらしい。

452 :人は疲れてるとロクなことを考えない。 [saga]:2011/06/30(木) 22:08:08.14 ID:CYSBTQJX0

絹旗最愛
相変わらず可愛い。
肩凝りが悩み。
御坂一家とは仲良し。
忙しい美琴に代わり一方通行とは子供たちを挟んでたまに出かけます。
新しい恋を見つけたのかどうかは―…

打ち止め
大学卒業後は保育士に。
御坂家の末っ子の面倒を見るうちに、あわきんの気持ちがわかるような気がする今日この頃。

番外個体
筋ジストロフィー治療の子供達のリハビリに従事。
開き直ったかのように義兄にべったり。


20000号
駄犬にしてある意味勝ち組。
指を鳴らせば飛んでくる。
手を叩いてもやってくる。
最近は末っ子が転んだ時に膝小僧をぺろぺろ消毒してあげるだけの簡単なお仕事に就いてる。
正直これって天職…とか思ってたりする。



453 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/06/30(木) 22:08:53.09 ID:CYSBTQJX0
以上で投下を終えます。ねーちん話はもう少し待って下さい。

それではまた。 ノシ
454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/30(木) 22:10:05.81 ID:SmKI9kn+o
黒夜・P・B・海鳥
455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/06/30(木) 22:13:09.59 ID:NlWynWMp0


>まぁ、嘘なんですけどね。
いいぜ、お前がそれをネタだって言うんなら、そげぶ

打ち止めェ…

番外さんと義兄のイチャイチャっぷりみてぇ!
456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/30(木) 22:14:02.13 ID:OKDn9B2io
マジかと思ってたぜ
乙乙
457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/30(木) 22:14:45.79 ID:okCSzvQlo
嘘か…畜生。次スレ約束された上に俺得な話かと思ったのに!
ねーちん話楽しみにお待ちしてますー
458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/30(木) 22:15:00.37 ID:zu/vCdN3o
乙ww
色々と各人の未来に思うところはあるが、その中でも打ち止めww
そっちの道はダメだwwwwww

それに対して開き直った番外個体
略奪愛ってのもイイよね、って事か
459 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/30(木) 22:25:51.23 ID:Wtev+HvDO
一方さんの夢、可愛過ぎんだろwwwwww
んでもって、美琴さんはお盛ん過ぎやwwwww
打ち止めァ…………
番外個体の甘え…………だと………?
相変わらずの20000号でほっとした
460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/30(木) 22:27:14.21 ID:ygERxaNVo
ロッキー3は必要だろ…
461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/30(木) 22:29:38.34 ID:YFOj4Lufo
やはり20000号は勝ち組だったか。
開き直った人間は恐えぜ
462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/30(木) 22:48:17.31 ID:hYx10Ip6o
『息子とキャッチボールがしたい』かぁ……
一方さんの夢は素直に叶ってほしいと応援できる
それにしても、御坂DNAの業の深さはガチだなwwwwwwww
ミサカ族がどんなにはっちゃけても「ミサカ族だから仕方ない」で通ってしまいそうな気がする
463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/06/30(木) 23:09:18.52 ID:0Wv/Q4T4o
黒夜ってパンストのストッキングと似てるな
髪型似てるし、口も悪いし、可愛い物好きだし。
464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/06/30(木) 23:14:20.60 ID:Rpgcvdga0
次スレはその路線でおねがいしますゥゥゥゥ!!


作者の佐天さんスレのような山盛りギャグが見たいぜ
465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県) [sage]:2011/07/01(金) 04:07:36.73 ID:F+Bm+9+bo
ねーちんは待てってことは書いてくれるんかあぁぁ
ありがとうぅぅぅ
466 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/01(金) 05:42:10.20 ID:kw3rllWDO
ねーちん通行もアリだと思います
467 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/01(金) 06:09:10.61 ID:Zb7bTb+DO
神浄さん達の……未来も知りたいです。
と思うのは俺だけ?

とにかく乙です。
468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/07/01(金) 06:32:22.96 ID:HQxStDSAO
きた!ボンバーきた!
469 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/07/01(金) 09:09:44.76 ID:+Tjt+CXG0
「今日からミサカ1xxxx号はミサカ二号です。二号さんと呼称されるべきだと……」

などと言い切る妹が一人は出ると思うんだ。
470 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/01(金) 18:46:01.51 ID:Gs3s4eKD0
ボンバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
471 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/07/02(土) 13:52:28.54 ID:PDNVzjHIo
ここの>>1は黒子とか黒夜とか猫っぽいのがあれか。
俺もあれだ。
472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/07/03(日) 12:14:55.24 ID:y5HFAENl0
>>1

このSS世界観が出来ているので、

外伝もありかな。
473 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/04(月) 04:51:06.57 ID:yZQRBv270
えっ?
普通にN3の続き読んでみたいんだがwwwwwwww
474 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2011/07/04(月) 18:40:04.66 ID:SfzThtUl0
>>473激しく同意
475 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/07/04(月) 22:30:54.96 ID:FCmzOer80
番外編を投下致します。
よろしくお願い致します。
476 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/07/04(月) 22:31:22.07 ID:2er+Jl1No
さあ早くしたまえ
477 :とあるアラサーの純情白書 [saga]:2011/07/04(月) 22:33:38.11 ID:FCmzOer80



「はぁ……」


神裂火織は身体中の憂鬱が収まりきらなくなったかのように深々と溜息を吐いた。
その後ろ姿は凛然とした普段の彼女から考えられない程弱々しい。
アンティーク調の椅子に腰掛け、目の前の丸テーブルには小さく愛らしいクッキーやスコーン、マフィンが並んでいる。
さり気無くお菓子が乗せられた食器もシンプルながらセンスの良いものが多いのはこの教会の主の趣味である。
アフタヌーンティーに似つかわしくないウエスタンスタイルの神裂とは対照的なのは、彼女の対面に座る女である。
薄桃色の修道服に、日の光を浴びてプラチナに輝く腰まで伸びた銀色の髪の女。
白磁のようなシミ一つない肌に抜けるような青空に、僅かな憂鬱を込めた碧い瞳を微かに細め、目の前の神裂を気遣わしげに見つめる姿を見て、果たして誰がわかろうか。
この教会の、否、このイギリスという国の魔術サイドの頂点に君臨する女だと。
迷える子羊たちの悩みを受け止め、一条の光を示す敬虔なシスターにしか見えない彼女こそ、二代目ローラ・スチュアート ――― 最大主教と呼ばれる現:魔術サイド最高権力者、
嘗て“インデックス”と呼ばれていた少女である。
実年齢に対して些か熟した感のする神裂と、実年齢に対して幼い外見の最大主教は、さながら年の離れた姉妹のようにも見える。


ちなみに実年齢と比べて、熟してるという事について言及するのは必要悪の教会において最大の禁句とされている。




「かおり、どうしたの?元気が無いんだよ」


普段は「神裂」と呼び、口調も改めている彼女が思わず素の言葉遣いになってしまう程今の神裂の憔悴ぷりは甚だしい。
そして、それは彼女達の傍らに控えていた天草式の面々も同じ意見であった。
戦乙女の肩書きを持つ(乙女というには少々年がアレだが)彼女の立ち振る舞いから掛け離れた姿に天草式の面々は心配気な表情を浮かべる。
気軽に声をかけることが出来ないのは、ひとえに自分達と女教皇である神裂との立場を慮ってのことだ。
勿論、そんなことを気にする神裂ではない。


「いえ、そのようなことはございません最大主教」

「そう」
478 :とあるアラサーの純情白書 [saga]:2011/07/04(月) 22:34:42.39 ID:FCmzOer80

勿論、神裂のそれは強がりだということなどインデックスは十分に承知している。
しかし、敢えて彼女が口にしないことに自分がとやかく問い詰める必要は無い。無邪気な女学生同士であればそれも良いのかもしれないが、今の二人には互いに立場というものがある。
それでも大切な親友であり、姉のようにも思っている神裂が自分に訳を話してくれないことが面白いはずも無い。
少し不機嫌そうに唇を尖らせるとインデックスはスコーンの一つを手に取り杏のジャムをたっぷりと塗ると、それを小さな口を開けてゆっくりと食べていく。
陽光を浴びながら、優美な調度品に囲まれて可愛らしくお菓子を頬張る姿は、それだけで見る者の心を蕩かす。
男も女も問わず。しかし、食べ方こそ上品になったものの、スコーンは気が付けばインデックスの手の中か消え失せている。
最も単に食いしん坊なのではなく、膨大な魔道書を内包する彼女の要するカロリーは高いからこそインデックスは多くの食事を必要とするのだ。
決して食いしん坊だからではない。


二つ目のスコーンに塗るジャムをインデックスが迷っていると、テーブルの上に置かれた白い携帯が小刻みに震えた。
かたかたとテーブルを鳴らす震動にインデックスの手が止まる。その表示を見て、インデックスの表情が花が咲くように綻んだ。
ぎこちない手付きで携帯を開くと、そっとボタンを押す。
彼女の瞳が携帯の画面に注がれる。神裂の位置からではわからないが、メールが送られてきたのだろうということはわかった。
インデックスならばメールの文面など一瞬にして覚えてしまえるというのに、宝石のような碧眼は何度もメールの文面の上をなぞる。
誰からのメールで、どのようなことが書かれているかなど、薔薇色に染まった白い頬ですぐにわかる。
インデックスの瞳が携帯と神裂の間を行き来する。幼い頃、おねだりをする時に見せた表情と同じだと思うと、神裂の頬が自然と緩む。


「もし宜しければ、お電話されたら如何ですか?お茶でしたら後で御自室に持って行かせますから」

「え、でも」

「私も鍛錬の予定が入っていたのをすっかり忘れていましたから」


勿論、それは神裂の咄嗟の嘘である。
インデックスにもそれはわかっている。わかっているが、神裂の気遣いもわかる。
結局迷った末にその厚意に甘えることにした。










「最大主教可愛いですね」

「ええ、あんな笑顔されてしまっては大概のことを許してしまいますよ」

小さなコンパスを懸命に回転させるようにパタパタと足早に駆けて行く可愛らしい主の後ろ姿を見ながら五和が微笑ましげに言う。
紅茶のおかわりではなく、濃厚な色の緑茶の注がれた湯のみを置く。
白い湯気から懐かしくも香ばしい香りが鼻腔をくすぐる。


「相手、上条さんですよね」


正確には神浄であるが、今は見知った人間しかいない。
五和の気の緩みを咎めるつもりもなく、神裂は五和の淹れてくれたお茶を啜る。
良い茶葉を使っているのであろう、苦くも青々とした爽やかな味わいが広がっていく。


「過保護というか、どうせ呆れるくらい甘ったるい愛の言葉でも記したのでしょうね」

「ああ、上条さんクサイ台詞とか結構好きですものね」



くすくすと五和が笑う。おそらく何か思い出して笑えてきたのだろう。
魔術の世界では誰もが名を聞くだけで震えあがる男が、己の主であり伴侶である銀髪の少女に対してだけは骨抜きであることは公然の秘密だ。


そのことを笑いの種にしても、胸に痛みが走らないくらいに、神裂も五和もそれぞれ嘗て抱いていた恋心は良き思い出になっている。
479 :とあるアラサーの純情白書 [saga]:2011/07/04(月) 22:35:36.78 ID:FCmzOer80
特に、一途でいつまでも想っていそうなイメージのあった五和の割り切りの早さには神裂は当時驚いた。
「吹っ切るまでに時間が掛かるが、吹っ切ってからは一切引きずらない性質なのよな」とは建宮斎字の言葉だが存外的を射ている。
というか、何となくいつの間にかフラグが立っていたという切欠が切欠なだけに、圧し折れるのも早かっただけと言ってしまえばそこまでの話だ。
吊り橋効果ではないが、ピンチをカッコよく助けてくれたことを理由に惚れた場合、情けない普段の姿を見て幻滅することが多い。
五和が、インデックスと上条のあれこれとしたゴタゴタを知って彼にすっかり幻滅したのかどうかは此処で記す必要は無いことである。



「ところで女教皇様はメールしなくてもよろしいんですか?」

「え?」

「溜息の原因……それじゃないんですか?」


五和が指さしたのは、テーブルに置かれた青色の携帯。
神裂が溜息を吐く度に向けられていた視線の先にあるものだ。


「な、何を根拠に……」

「あれ?女教皇様が学園都市で運命の出会いを果たしたって聞いてるんですけど」

「誰に!?」

「土御門さんとか。斎字さんも言ってましたよ?『女教皇様に春が来たのよな!!』って嬉しそうにしてましたけど」

「誤解です!!そんなものありません!」

「結構良い感じで、メールアドレスも交換したって……」

「べ、べべべ、別に削板とはそのような関係では」

「削板さんですか。斎字さんに教えてあげよう」

「五和!!」

「冗談ですって、女教皇様可愛い」


口に手を当てて、ころころと笑う五和にようやく自分が盛大にからかわれていたことに気付く神裂。
何だろう、段々この子彼氏に似てきてるんじゃないだろうか、とか、女教皇様への敬意とかぶっちゃけ無いよねとか、そういうことを思ったかはわからない。
そんな神裂の心境を知ってか知らずか、知ったこっちゃないのか、五和は神裂の携帯と彼女の顔を見比べる。


「連絡取ってるんですか?」

「メールを一回……」

「一回……それ以降は?」

「し……してません」


480 :とあるアラサーの純情白書 [saga]:2011/07/04(月) 22:36:23.44 ID:FCmzOer80


尻すぼみに小さくなっていく神裂の声に五和は初々しくて可愛らしいなと思う反面、二十台後半でこの初々しさはどうだろうとも思う。
手を繋いだら、それだけでショートするのではないだろうかこの女教皇は。
冗談抜きで心配になってくる五和は、駄目もとで尋ねる。


「電話とかは?」

「してません。というか出来ません」

「どうして?」

「絶対嫌われてます。っていうか引かれてます」



神裂の言葉に違和感を覚えたのか、五和は眉を潜める。
メールを一回したっきり恥ずかしくて連絡できないとばかり思っていたが、どうやら話が違うようだ。
したくても出来ない。相手が自分を嫌ってると思っている。どうして。




「女教皇様……何かやらかしちゃったんですか?」





結局、それしか理由は無かった。




481 :とあるアラサーの純情白書 [saga]:2011/07/04(月) 22:37:22.96 ID:FCmzOer80


「つ……」

「つ?」

「つ、つち」


搾り出すように神裂が声を上げる。


「口車に乗ってしまって……お酒が入ってたとはいえ、幾らなんでも、アイツに相談して、あまつさえあのような」



支離滅裂な言葉の切れッ端かを五和は自分の為に淹れたお茶を啜りながら頭の中で組み立てていく。



「酔った勢いでよりにもよって土御門さんに相談した挙句、口車にのってとんでもないメールを送ってしまったということですか?」


こくんと無言で頷く神裂。


「どんなメール送ったんですか?」

「え、でも……絶対引きますよ?」

「引きませんよ。同じ恋する女の子なんですから、笑ったりしませんから」


女の子というのは些か語弊があるが、まぁ、神裂の場合身体的に乙女なのだから間違っていないだろう。
本人が聞いたら確実に魔法名を名乗られることを思いながら渋る神裂の手から半ば強引に携帯を奪う。
とんでもないということは、相手が引いてしまうくらい大胆なメールを送ったということであろうか。
罵倒じゃないならそうなるだろう。
しかし、神裂のような美貌を持ち、凶悪なスタイルを誇示する女に多少大胆にアピールされたぐらいでは男は引いたりしないようにも思える。
携帯の送信ボックスから、『削板』の苗字を探していくと、すぐにそれは見つかった。
神裂に一応目で了解の合図を貰ってから、五和はメールを開く。




482 :とあるアラサーの純情白書 [saga]:2011/07/04(月) 22:39:05.55 ID:FCmzOer80


レよз〜軍覇。元気ιτナニ?'人'糸音戈レよね、正直元気ナょレヽカゝナょ。
ナニ″っτ軍覇レニ全然会ぇナょ<τ寂ιレヽωナニ″もω。軍覇カゞ居ナょレヽー⊂言周孑も出ナょレヽ。今日も手カゞシ骨っτぅっカゝ丶)ゥ二豆頁レニ七閃ιちゃっナニ、〒∧ッ☆。
'人'糸音戈っナニら朮・/├レニ├″゙/″ナニ″ょね。
ね─ね─、今度レよレヽ⊃会ぇゑ?一目τ″もレヽレヽカゝら軍覇レニ会レヽナニレヽょ。
ぁ〜ぁ、軍覇カゞ'人'糸音戈@イ貝リレニレヽτ<れナニらナょ。ξぅιナニら'人'糸音戈元気百倍。〒∠ス″マ|zolナょ@レニ。
軍覇カゞレヽナょレヽー⊂'人'糸音戈ナょωτ馬太目女孝攵皇。ぅぅω、ξれ以下。ナニナニ″@セ・/勺─ゥ─マ・/ナニ″ょ。

っτ、]″乂・/ね、小青レナナょレヽ⊇ー⊂レよ″カゝ丶)言っτ。
⊇れι″ゃぁ、木艮小生無レヽっτ軍覇レニ怒られちゃぅね。
τ″も、木艮小生入れナょぉιτゃゑ!!っτ軍覇カゞ馬区レナ⊃レナτ<れゑωナニ″っナニら木艮小生無ιτ″もレヽレヽカゝナょ……


ナょ─ωτね。ゥ`/ゥ`/。冗言炎ナニ″ょ。
ξωナょ⊇ー⊂言っτナニら軍覇レニ女兼ゎれちゃぅもωね。
τ″も、会レヽナニレヽ@レよ朮・/├@⊇ー⊂。ゥ廾″ィ孑ナょωτ思ゎナょレヽτ″ね。
軍覇@⊇ー⊂考ぇゑー⊂'人'糸音戈レヽ⊃も⊇ぅナょっちゃぅ@。
ξれι″ゃ、ξзξзξっちレよ夜ナニ″зぅカゝらぉゃすゐね。


483 :とあるアラサーの純情白書 [saga]:2011/07/04(月) 22:39:36.66 ID:FCmzOer80






「……うわぁ…………」



五和は引いた。





484 :とあるアラサーの純情白書 [saga]:2011/07/04(月) 22:41:03.61 ID:FCmzOer80


「やっぱり引いた!!引いたじゃないですか!!」

「ひ、ひひひひ、引いてませんって」

「今『……うわぁ…………』って!!三点リーダー六つも使って引いた!!」

「肩こりが最近酷くて思わず呻いちゃったんですって。っていうかギャル文字とか、いつの時代のですか!?これじゃあ元がまともな文章でも引きますよ」

「やっぱり引いたんじゃないですか!!」



最早涙目になりながら神裂が携帯を五和の手から奪い返す。
羞恥心と怒りと、自己嫌悪が4:3:3という絶妙なる混合比によって神裂の顔は最早トランザムだ。
ドン引きの限界を超え、小刻みに震えつつも五和は辛うじて微笑を浮かべる。
敬愛する女教皇の黒歴史を黙ってスルーしてやるのが恐らく自分の役目だからだ。
それでも、五和の中の一欠けらの好奇心が、ぽろりと口から出た。



「原文の方を送り直したらいいんじゃないですか?」



要は、原文を見たいということだ。
神裂はヤケクソ気味に携帯を押し付ける。
勝手に見ろということだろうか。そっと携帯を開く。


485 :とあるアラサーの純情白書 [saga]:2011/07/04(月) 22:41:33.68 ID:FCmzOer80






はろ〜軍覇。元気してた?火織はね、正直元気ないかな。
だって軍覇に全然会えなくて寂しいんだもん。軍覇が居ないと調子も出ない。今日も手が滑ってうっかりウニ頭に七閃しちゃった、テヘッ☆。
火織ったらホントにドジだよね。
ねーねー、今度はいつ会える?一目でもいいから軍覇に会いたいよ。
あ〜あ、軍覇が火織の側にいてくれたらな。そうしたら火織元気百倍。テレズマ120パーセントなのに。
軍覇がいないと火織なんて駄目女教皇。ううん、それ以下。ただのセンターウーマンだよ。

って、ゴメンね、情けないことばかり言って。
これじゃあ、根性無いって軍覇に怒られちゃうね。
でも、根性入れなおしてやる!!って軍覇が駆けつけてくれるんだったら根性無しでもいいかな……


なーんてね。ウソウソ。冗談だよ。
そんなこと言ってたら軍覇に嫌われちゃうもんね。
でも、会いたいのはホントのこと。ウザイ子なんて思わないでね。
軍覇のこと考えると火織いつもこうなっちゃうの。
それじゃ、そろそろそっちは夜だろうからおやすみね。






486 :とあるアラサーの純情白書 [saga]:2011/07/04(月) 22:43:32.49 ID:FCmzOer80







「うわ、キツ……」



五和は引いた。














五和はとても引いた。



487 :とあるアラサーの純情白書 [saga]:2011/07/04(月) 22:44:22.21 ID:FCmzOer80


「ちょっと首くくって来ますね……」

「待って!!待って下さい女教皇様!!落ち着いて。大丈夫大丈夫。まだ慌てるような時間じゃありません」

「明らかに引いてたじゃないですか!!もう終わりです。絶対向こうも引いてますって!!」

「いえ、ギャル語なんて解読できませんよ普通。だからどんなに痛い文章でも……」

「やっぱり痛いって思ってたんじゃないですか!!」

「ハッ!しまった……でも、ホラ、変なメール送ってゴメンね、みたいな電話する口実とか……女の子から電話くれるとそれだけで嬉しいって斎字さんも言ってましたし」

「うるっせぇんだよリア充が!!!余裕か?余裕なのか?センターウーマンだから駄目なんだとか思ってるクチか?」

「何でそんなに卑屈なんですか女教皇様!!」





五和は侮っていた。神裂火織という聖人の焦りを。


彼女は焦っていた。
アラサー間近であるというのに新品である自分に。
宗教上、それって当然じゃない?などと言う無かれ。結構それはそれ、これはこれと割り切っている修道女の多いこと。
というか、最大主教にしてそれを守っていないのだから、結構グダグダなのだイギリス清教は。


そして、そんなグダグダなイギリス清教に現在所属するクワガタ頭が、この場にノコノコとやってくる。
ここで断りを入れておくが、あくまで彼は善人であり、騒がしい物音を聞きつけて様子を見に来ただけである。



よって彼には何の非も無い。



非は無いのだが。



「何の騒ぎなのよ、五和」

「斎字さん!女教皇様が錯乱されて……」

「錯乱とな!?」




「出ましたねリア充の片割れ!!」



運も無い。


そして、この男その上、


「男の人にやらかしてしまって」

「女教皇様。男にフラれたからってそれが何だって言うんですかい?世の中の半分は男なんですよ。次がありますって次が」

「まだフラれてねーーんだよ!!!」




デリカシーも無かった。




488 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/04(月) 22:44:42.04 ID:FemiLSH9o
俺もきっつwwwwwwとか思ったわ
489 :とあるアラサーの純情白書 [saga]:2011/07/04(月) 22:44:56.88 ID:FCmzOer80


髪を振り乱し刀の柄に手を伸ばす姿は錯乱というか殿中である。
最早その気迫は七閃どころか唯閃すら出し兼ねない程凄まじく、建宮と五和は互いを庇い合うように相対する。


「五和、何としても女教皇様を此処でお止めするぞ」

「はい!」

「ただし、無理はするな。お前さん一人の身体じゃねーのよさ」

「斎字さん……」




「だぁかぁらぁ〜〜〜!!!そうやって見せ付けてんじゃねー!!!」




最早聖人を超え、一個の悪鬼と化した神裂火織。
その気迫、その闘気の強さは、全盛期の元聖人(現お色気担当)アックア隊長を遥かに上回るものだ。
余りにも般若の如き形相に、五和は


(『一怒一老、一笑一少』って言うのに……女教皇様、ますます……)



等とずれたことを考える。
人間余りにも凄まじい絶望的状況に立たされると返って冷静になるものだ。
というか、この五和相当良い度胸をしている。

いよいよ錯乱聖人の凶刃が振り下ろされんとしたその時、軽快な音、場違いな音楽が張り詰めた空間の中をするりと擦り抜けた。
これから不届きな背信者(リア充)に正義(と怒りと憎しみとルサンチマン)の刃を振り下ろそうとしていたところを水を差される形で中断された神裂。
とりあえず後回しという選択肢もあるのだが、生来の几帳面さから着信を確認する。




「!?」




刀を取り落とし、神裂は途端にオロオロとしながら携帯を両手に持ち右往左往する。
開いて、通話ボタンを押すという当たり前の動作がテンパった機械音痴の彼女には咄嗟に出来ないようだ。
それでもようやく、通話という行為に思い至った神裂は震える手でゆっくりと携帯を耳に当てる。

490 :とあるアラサーの純情白書 [saga]:2011/07/04(月) 22:46:18.01 ID:FCmzOer80










『オッス!!神裂、元気か!!!』









491 :とあるアラサーの純情白書 [saga]:2011/07/04(月) 22:46:56.23 ID:FCmzOer80

「お、お久しぶりですね、削板軍覇。あ、アナタこそお元気でしたか?」


電話相手には姿が見えないというのに、神裂は髪を手櫛で整え始める。


『俺はちょっと元気ねーかもなー!!根性が不足しちまってるな』


嘘付けと言いたくなる程に大音量の声は元気でなければ一体何だというのだろう。
しかし、神裂は言葉をそのまま受け止めてしまう。
眉を寄せ、心配そうに電話の向こうの削板に語りかける。


「アナタともあろう者がどうされたのですか?らしくもない」

『いや、お前がこの前送ってくれたメール読んだんだけどさ』

「はうッ!」

『何だかよくわかんなかったが、とりあえずお前が何故か元気ねーってのがわかって、どうやって元気付けてやればいいのかずっと考えてたんだ』

「削板」

『結局わかんなかったんだけどな。どうにも俺には根性が足りてねーみたいで、このまま根性無しにグダグダ考えてるくらいなら電話した方が早いだろってなった』

「アナタという人は……」





あっさりと、事も無げに投げかけられた削板の優しい心遣いに神裂の頬が熱くなる。
勿論、気の合う友達に対する男臭い優しさでしか無いことは神裂にも十分わかっている。
しかし、ずっと考えていたという、削板のその言葉だけで神裂の頬は自然と緩む。

自分が悶々と削板のことを考えていた間、方向性は異なれど削板もまた自分のことを考えてくれていた。

そのことに都合の良い運命的なものを勝手に見出して神裂は嬉しく思ってしまう。



「そ、その……削板」

『おう』

「も、もしご迷惑ではなかったら、その、め、メールをまたしても宜しいですか?」

『めーる?うーん、それはやめようぜ』

「えっ……」




神裂の表情が一瞬にして奈落の底に落ちたように青白く、血の気が引いていく。
胸に秘めた淡い期待が事も無げに摘み取られた ――― と思う前に、削板のからっとした声が神裂を掬い上げる。



492 :とあるアラサーの純情白書 [saga]:2011/07/04(月) 22:47:16.28 ID:FCmzOer80



『どうせなら電話で話そうぜ。メールなんてチマチマ打つなんて根性のねぇことするよりかよ』

「それこそ、ご迷惑じゃ?」

『何でだよ?俺好きだぞ』

「すッ!?」

『お前の声。ビッと芯が通った根性のある声でよ』

「ああ……」

『それに綺麗な声だからな』

「きれッ!?あ、あう……」

『おい、神裂どうした?』

「な、何でもありません!!」




モジモジと髪を弄りながら、百面相を繰り広げる神裂は、耳どころか首筋まで赤い。

まるで女子中学生の恋愛のような微笑ましさに、建宮と五和が顔を見合わせてニヤニヤとする。

二人がそんな目で自分を見ていることにも気付かずに、神裂は暫し電話に夢中であった。




科学と魔術の世界の架け橋のような関係にこの二人がなるかどうかは、とりあえずはまた別の話で。





493 :オチ?何ですかそれ? [saga]:2011/07/04(月) 22:50:54.28 ID:FCmzOer80
投下終了です。やはりギャグは苦手です。
苦手というかヘタクソです。テンポ悪過ぎて無理矢理終わらせました。
これって「軍火」とか「削神」だったらカッコいいですけど、断然『そぎちん』ですよね。

建宮×五和要素は趣味です。個人的にお似合いだと思ってるだけです。
五和は上条の嫁!!という方で気分を害されましたらすみません。


それではまた。 ノシ


494 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(徳島県) [sage]:2011/07/04(月) 22:53:12.79 ID:od7VwQWE0
>>1乙!でも『そぎちん』って……なにそれ酷い。そして痛い。なぜか股間が
495 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/07/04(月) 23:15:52.63 ID:SbiFZAxy0
そげーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーぶ
泣いた。削板の主人公っぷりに泣いた。。。
いやぁ、kjさんよりよっぽど削板の方が主人公だよ。
496 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/04(月) 23:17:02.63 ID:2rZuTTta0
うわあ…………ないわぁ……

ごっ、がああああああっ乙!?
497 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/04(月) 23:22:30.17 ID:jm3ApKw1o


そぎちんとか何それ超痛いんすけど(響き的に)
498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/07/04(月) 23:38:53.06 ID:ZrP2sfrYo
おつー
削板くんはやっぱ格好いいな…ねーちんは可愛いですよ。天草馬鹿夫婦にも笑ったぜ
499 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 00:08:50.39 ID:/I5M36aa0
くっそwwwwwwww
吹いたアクエリ返せwwwwwwww
500 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/07/05(火) 00:17:56.49 ID:pPQzG3WO0
次はペス通行だ。
501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/07/05(火) 00:49:16.08 ID:cn4Ln7+Ao

20代後半だってのに、ねーちん可愛いなぁ。
502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県) [sage]:2011/07/05(火) 00:51:55.60 ID:TZedbToWo
(`・ω・´)ゞ 乙であります!
次の番外編は何かな〜?
503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/07/05(火) 05:05:17.49 ID:ZgZw9WTi0
>>1
形容詞で”可愛い”と書かれるより、
会話動作描かれるとで具現化の威力がある。

楽しみ。
504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/07/05(火) 06:23:42.99 ID:Y5l1v/Wjo
見た目や年は関係ないよね行動が可愛ければ。
行動が可愛ければ。
505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/05(火) 09:02:35.75 ID:e/rVai02o
インデックスが新品じゃないだと
神浄さん聖人になったのかと思ってたら性人になってたでござる
506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/05(火) 09:24:19.42 ID:Q1aOsGZBo
インデックスに娘が産まれたら、と考えたら溺愛するマグヌスさんが目に浮かんだ
507 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/07/05(火) 11:27:40.29 ID:27J5V/sAO
そぎちんだなんて、まったくやらしいなさすが>>1やらしい。
508 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 00:14:46.68 ID:maiqYa7X0
佐天嫁スレと一方座標最近読んだけど、>>1文章の感じ変わった?
509 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/07/07(木) 11:00:32.30 ID:eD1hLdZAO
むしろずっと文章書いてて、変わらない訳はあるまい

N3見たいです
510 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/07/07(木) 20:01:01.71 ID:jECoT9oj0
もうちょっとしたら、番外編投下します。
ちょっと悪乗りですが、このスレ最後の投下ということでご容赦下さい。
511 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/07(木) 20:02:20.73 ID:dJ/Eucyg0
wktk
512 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/07/07(木) 20:16:02.69 ID:jECoT9oj0
それでは投下を開始します。
513 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/07/07(木) 20:17:45.39 ID:jECoT9oj0




そこはヨーロッパとアフリカに挟まれた忘れ去られた土地。
砂埃に塞がれた地の果てにある古代遺跡。
その更に奥深き地下において、ヨーロッパの、否、世界の命運すら左右する戦いがひっそりと行われている。
いや、行われているのではなく、もう既に、行われていたと言うべきだろうか。



戦いの決着は静かに付こうとしていた。





514 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/07/07(木) 20:18:18.61 ID:jECoT9oj0





「おやおや、ザマァないな。所詮は君とて一人の人間。裸にされれば相応に屈辱を感じ、羞恥に頬を染めるわけか」

ラヅゲ・ヒ・ジヤオ大佐はサディスティックな笑みを浮かべる。
それもそのはず、幾度も彼の前に立ち塞がり、野望を悉く打ち砕いてきた憎き仇敵。
そして彼が手にするはずであった幾多のプレシャスを保護という名の名目で奪ってきた簒奪者が目の前にいるのだ。
それも、手足を拘束され、身包みはがされたあられもない姿で。
その哀れで蟲惑的な姿に、大佐の嗜虐心が刺激される。
仇敵は健気にも敵対を止めぬ瞳を向けてくるが、それが精一杯の抵抗であるということは大佐が一番知っている。
今までであれば、その視線に晒されるだけで足の震えがとまらず、少しばかり下着を濡らすこともやむなしであった大佐だが、今ばかりはその視線が心地良くすらある。
心地良過ぎて、すっかり反抗期を迎えていたご子息も素直に起き上がっているほどだ。


「ん?何か言いたげな目だな。言いたい事があるならはっきり言ったらどうだ?そら!」


普段ならば専ら戦場での指揮と部下への折檻に用いられてきた乗馬用の鞭を目の前の身体に叩き付ける。
剥き出しの体が苦痛にうねり、仰け反った喉が不自然に震える。
白い肢体にムカデのように生じた赤い痣をうっとりと指先でなぞりながら、大佐は初めて自分がこの目の前の敵を憎んでいるばかりではないことに気付いた。
そう、憎しみは愛情の裏返しとはよく聞くが、今己の抱いているこの劣情こそがなによりの証なのだ。
鞭の柄でそっとなだらかな曲線を描く胸を撫でていく。
屈辱に微かに震えるのが柄を通して伝わってくる。


「いい目だ。その目でもっと私を見てくれ」



515 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/07/07(木) 20:19:04.95 ID:jECoT9oj0


白井黒子は唇を噛み締める。

屈辱に今すぐ叫び声を上げたいくらいだ。それはうら若き乙女には無理からぬことである。

裸体を晒すという特上の恥辱、舌を噛み切ってしまいたいくらい身もだえする程の怒りが彼女の中を駆け巡る。

しかし、それはサディズムの塊である髭面のこの外道を喜ばせるだけに他ならない。

だからこそ、白井は歯を食い縛るのだ。仲間を信じて。

今は怒りを溜め込む時なのだ。

じっと、堪えて怒りをエネルギーに、パワーに変えるべき時なのである。


516 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/07/07(木) 20:21:35.51 ID:jECoT9oj0


幾度鞭を振り下ろしたのであろうか。


腕が疲労に痺れ、嗜虐心は満たされつつあり、大佐の胸には徒労感すら募っていた。



既に打ち据えられていないところなど何処にもないのではないかという無数の赤い傷痕を晒して尚、悲鳴一つ上げず。
命乞いをする素振りすら見せぬ目の前の生贄に大佐は胸に期するものを覚えた。


唇を引き結び、殉教者の如き気高さに苛立ちと感動。


相反するはずの二つの感情に息を荒げながら大佐は戸惑う。

「……下らんッ」

大佐は己の感情から目を逸らすように吐き捨てると、懐から拳銃を取り出す。
汗と血により、白い裸体は背徳的な色香を放つ。
それに名残惜しさを覚えながらも振り切るように、撃鉄を上げた。


「私と君の因縁も、そろそろお終いにしよう。さようならだ」


銃口を突きつけられ、初めて獲物の顔に悔しげな表情が過ぎったことに、大佐は下卑た笑みを浮かべた。




517 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/07/07(木) 20:22:21.87 ID:jECoT9oj0


白井は思わず瞳を閉じる。
能力さえ使えれば。一瞬仲間を信じながらも否定出来ない悔しさが込み上げた。


しかし、その時であった。






待ち侘びた瞬間がやってきた。





518 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/07/07(木) 20:23:16.47 ID:jECoT9oj0


「な、何が起こった!?」


突如、腹の底から響きわたるような地鳴りがしたかと思うと、目の前にいた筈の獲物が姿を消した。
文字通り、煙のように掻き消えたのだ。
拳銃を手にしたまま、大佐は動揺を隠しきれずに辺りを見回す。


519 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/07/07(木) 20:23:42.82 ID:jECoT9oj0










「何が起こったか?随分とお眠いことを仰るのですわね、大佐」








520 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/07/07(木) 20:24:14.53 ID:jECoT9oj0


「貴様!!この神殿では能力が使えないはずでは……」



「確かに予想外でしたの。魔術も超能力も使えないとは。まさか、『アレ』を“あんな風”に配置することでアレなことになり、その副作用として能力が封じられるとは……

それも、『アレ』は、あの無数にある『他のアレ』と殆ど見分けの付かないアレだというのに。正直アナタ方に『あの』構築式を編み出せるような人材がいたことに驚きですの。

ですが、如何なる手品とてタネがわかってしまえば造作もないこと」

「解いたというのか!?アレを!?」

「私一人では無理でしたの。ですが、アックア隊は私と隊長だけではありませんの。アナタが戯れに残した『あの残骸』から導き出してくれましたの、私の仲間が」

「は、ハッタリを言うな!?あの残骸から一体何を……」

「黄金長方形……わかってしまえば答えは実にあっけないもの。アレを、ああいう按配でアレなことにするもの……イタリアで以前見た術式に近い発想ですのね」


白井は軽蔑の眼差しを隠そうともせずに、大佐に視線をくれる。


「獲物を前に舌なめずり……プロとしてはド三下なことをしてくださって本当に感謝してもしきれませんわ。おかげで時間が稼げましたの」


憔悴にやつれた表情は凛然さを際立て、乱れた髪は不思議な調和を見せる。
頬に張り付いた髪は、見苦しいどころか白井に獣の如き美しさを付加している。
目の前に立つ小娘が子猫などではないと人生の大半を戦場で過ごしてきた大佐には本能的にわかった。
目の前に立つ小娘は、小さくとも獲物にいつでも飛び掛ることの出来るしなやかな手足と、喉笛を食い千切る鋭い牙を持った雌豹なのだ。


521 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/07/07(木) 20:25:30.39 ID:jECoT9oj0


「白井 ――― 黒子……貴様」


大佐が震える声でかろうじてその名を呟く。
屈辱、怒り、或いは恐怖によってその声は震えていたのかもしれない。




「嫌ですわ。そんなに怒らないでくださいまし。



      ―――――― 寧ろ腸が煮えくり返っているのはこちらですのよ?」



「ひッ!?」

数十倍に膨れ上がったプレッシャーに、喉を絞められた鶏のように大佐が耳障りな声を上げる。



白井は、傍らに抱き寄せた裸の ―――


                 ―――― アックアにそっと自らのジャケットを着せてやる。







「白井……」

「お助けするのが遅れてしまって申し訳ありませんでしたの隊長。よくぞ、よくぞアレだけの責め苦を……」
522 :通常運行 [saga]:2011/07/07(木) 20:27:07.57 ID:jECoT9oj0



言い切ることが出来ず、込み上げた嗚咽を噛み殺す。
白井はずっと物陰から様子を伺っていた。能力の使えない自分が駆けつけて一体何が出来るのだと、必死に己を律しながら仲間からの連絡を待っていたのだ。
尊敬し、慕う上官の(主に性的に)いたぶられる姿はアックア隊にとって風物詩と化していても黒子には屈辱だ。
しかもモザイク無しの筋肉質の裸体を晒されれば、乙女としてはどうして良いのかわからない。悶々とするし。
そんな白井の頭をそっとなでながら、アックア(白井のジャケットが小さ過ぎるのでパッツンパッツン)は優しい瞳を向ける。


「侮るなである。これでも幾度となく修羅場(辱め的な意味で)を潜ってきているのである。それに……信じていたのである仲間を」

「隊長……」

「そうだ、なぜだ!?何故……貴様等以外のメンバーなど物の数ではないであろう!!二ヶ月前の戦乱でアックア隊は隊長と副隊長以外は全滅したはず……



 新米の雑魚共が……我等のアレをアレするあの術式を……」


「あら、雑魚とは一体どなたの事を仰っていますの?」



可愛らしく白井は小首をかしげる。
その仕草の可憐さ、上品さは、ここが薄暗い血と油の臭いのこびり付いた古代遺跡の地下であることを忘れさせる。
そう、あたかもパーティーで気の利かないエスコートに困惑する姫君のように白井黒子の仕草の全てに気品と余裕と愛嬌があった。



「私達アックア隊に、『雑魚』などという隊員はおりませんのよ?」





523 :黒子の裸は安くない [saga]:2011/07/07(木) 20:28:11.38 ID:jECoT9oj0




とびきりの軽蔑と優越感に満ちた華やかな笑顔に、一瞬だけ大佐は恐怖を忘れた。



「小娘が!!」




自分の三分の一を生きてもいない小娘にコケにされたことが、歴戦の戦士としての彼のプライドを著しく傷つけた。
屈辱が、怒りが、恐怖を凌駕する。
目障りな仇敵である小娘の眉間に銃口を向ける。
実戦から退いたとはいえ、元々叩き上げの軍人であった大佐の動作には一辺の澱みも無い。
まさしく一流の動きといえよう。





しかし ―――


「ぎゃああ!!!」


爆発音と共に大佐が片腕を抑える。
暴発した銃と共に、毛深く太い指が飛び散る。


「愚かですのね。申しましたわね。獲物の前で舌なめずりはド三下だと」




白井黒子は超一流であった。





524 :暴発したら死ぬよね?とかそういう野暮なツッコミは無しで [saga]:2011/07/07(木) 20:29:27.50 ID:jECoT9oj0



「私が何も考えず放課後ティータイムのごとく実のないおしゃべりをするとでも?既に下拵えは整っていましたの。ですからアナタがその引鉄を引く時がまさしく――― 」


白井は指に挟んだ矢をくるんと回し、大佐の眉間に突きつける。




「チェックメイトですの」



525 :事の発端はやっぱりコイツ [saga]:2011/07/07(木) 20:30:44.80 ID:jECoT9oj0




『ウチの可愛い想にそんじょそこらのランドセルなンざ背負わせてテメェは平気なのかァ?』


そういったのは、白井にとって女神に等しき敬愛する女性の傍らにいる資格を得た男。
超えるべき壁であり、同時に信頼できる兄とも呼べる男だ。
その男の言葉に、何度目になるのかわからない天啓をを受けた白井黒子は、敬愛と、僅かな淡い想いを抱く上官に連絡を取った。


『究極のランドセル?やっぱりドラゴンの革じゃね?である』


その言葉に導かれるままに戦いに再び身を投じて半年。



10枚から一枚抜いたら生まれた欲望の魔神達を再び封じ(その際紫のメダルが体内に八枚程残ったのであるがレントゲンには写らないので白井は気付いていない)、


旧世界を焼き尽くした巨神を巡る戦いに巻き込まれ(今度は早過ぎなかったので大層厄介であった)、


ファンシーな生き物に詐欺紛いの契約を結ばされそうになっているロリを救出し(その際謝ってアックアが契約してしまったのだが、何とかなった)、


そうして、今、世界を焼き払う古代兵器の設計図の描かれた神殿での戦いを終えた。


526 :テラー [saga]:2011/07/07(木) 20:31:36.52 ID:jECoT9oj0

国連軍によって護送ラヅゲ・ヒ・ジヤオ大佐と、彼の右腕であるゲマルハ・ツ・ルピカ中佐の背を見ながら、白井は憂鬱な溜息を吐く。
ようやく戦いが終わったという安心感はそこにはない。


「どうしたのであるか?白井」

「隊長」


白井の肩の上に逞しい手がそっと乗せられる。
敬愛する隊長(ピーチ姫ポジション)を見上げながら、白井はその手を取る。
温かく、硬い逞しい手に、少しだけ安堵する。


「あの言葉が気になっていたのであるか?」

「……バレてましたのね」

「白井のことなら何でもわかるつもりなのである」


アックアの男臭い笑みに、つられるように笑みを浮かべる。
大佐達を拘束し終えたヘリが砂埃を巻き上げながら離陸していくのを見上げながら白井は思い出す。
拘束される直前に呟いた大佐の言葉。



『あの術式は我等が構築したのではない。アレを我等に授けたのは ――― 』




白井は拳を握り締める。
安堵などできるはずが無い。戦いはまだ終わっていないのだから。
ここ一連の戦いの元凶であるあの男。『恐怖の帝王』という呼び名に、決して劣らない力を持ったあの男。

527 :戦いの時はツインテールです。 [saga]:2011/07/07(木) 20:33:55.83 ID:jECoT9oj0


「一人で背負い込むな白井」

「ですが……あの時私が逃がしさえしなければ……」

「だったら今度は逃がさなければいいのである。一人では勝てないなら二人で立ち向かえばいい。二人でも敵わないなら三人がかりでもいい。

 お前には仲間がいる。エーカーももうすぐ退院するのである。仲間を頼るのである白井。仲間がお前を頼り、お前が仲間を頼る。

 互いに背を預けあって戦うのがチームなのである」

「……はいですの」





裸にひん剥かれて、鞭で叩かれていただけのアックア隊長(ジャケットは黒子に返したので全裸)。
彼の何かよさ気な言葉に白井は瞳を潤ませる。



お前はもっとがんばれですの、とか、そういう無粋なツッコミはしないのが白井黒子なのだから。


決して淡い恋心でフィルターが掛かってるとかそういうのではない。


二人はオリオン座輝く星空を見上げる。
究極のランドセルを見つけ出す光明はまだ見つからない。
しかし、仲間達とならば、決して不可能ではないと、あまりにも眩しい星空に、何となく流されながら白井は根拠無く確信した。


アックア隊の戦いの日々はまだまだ終わらない。



528 :その後のコングさん [saga]:2011/07/07(木) 20:39:10.84 ID:jECoT9oj0

その後、白井黒子はそれまでの功績を讃えられ、異国の人間、それも女でありながら英国から『騎士』の位を与えられる。

その授与式の際、英国第三王女直々に抱擁と『この泥棒猫』というお言葉を頂戴する。



529 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/07/07(木) 20:41:52.36 ID:jECoT9oj0
以上で投下を終えます。
最後の投下なのでレスを思い切り無駄使いしました。
このスレの最後がこれというのもどうかと思いましたが、本編にずるずる後日談つけるよりもいいかなと。


次スレの予定は今のところはありません。着地できる目処がぼんやりと立ったら立てたいと思います。
多分、次はゆるくてだらだらとした小難しくない話にすると思います。

もし、またスレを立てた時は読んでやってくれると嬉しいです。


それではまた会う日まで。 ノシ


530 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/07/07(木) 20:42:19.58 ID:NBsgzYui0
>>1乙 と言ってよいのかな。

”ですの”好きなだけに、複雑なんだよ。
531 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/07/07(木) 20:46:46.67 ID:wat9Hqo1o
くっそwwwwww
ラビ太郎だと思ったのに

乙ですの!!
532 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/07(木) 20:49:20.02 ID:FS3Z7M4Vo
ヒゲヅラオヤジェ……
やっぱりアックアがお色気担当なのは変わらないんだなww

っつーか結局奪ったのか黒子wwwwww

そして>>1
次スレも見つけたら読むぜ
533 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/07(木) 21:00:18.81 ID:QjIkDrLDO
>>529
全力全開で乙ゥゥゥゥッ!!

次も応援するぜい!!
534 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/07/07(木) 21:28:06.90 ID:OYKvhR/Po
脳内ディスプレイのエラーがひどい
頬染めてんじゃねえよ……引き渡し時にもぶらぶらさせてたくせに……蠱惑的…
隊長……
535 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/07(木) 21:38:19.98 ID:02BvobE50

色々出てきてないキャラとか(主にエツァリ)の動向が気になるけど、妄想で補うとしよう
536 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) [sage]:2011/07/07(木) 21:40:51.49 ID:+L2qFJvBo
>>535
個人的にはショチトルと所帯持ってて欲しいにゃー
537 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2011/07/08(金) 00:31:47.49 ID:ZP3059yi0
もうツッコミ所だらけでどこからツッコめばいいのか分からんww
538 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/08(金) 01:07:03.47 ID:q8PuX/+Po
これはひどい泥棒猫wwwwww
539 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/08(金) 13:08:10.73 ID:Lma1jvf60
隊長ェ…
540 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 00:19:02.37 ID:r8Ztdutt0
メアリー・スーといい、オリキャラの名前をつくづく真面目に考えるつもりがないんだなww
さすが>>1!!常に俺達の予想の斜め上を行っている!!

ところでそろそろ通行止めとか書く気は無かったりしないか?

541 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2011/07/09(土) 04:38:13.03 ID:q79PwWnCo
乙!
自作も楽しみにしてる!

>>540
打ち止め結婚ネタで、「これが自分の中の通行止めの形」的なこと言ってた記憶がある
542 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 06:12:15.86 ID:eak6UBado

面白かったよ
別にN3の続き書いてもいいのよ?(チラッ
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