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「お姉ちゃん、遊ぼう」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆8S0pRhHoCE [sage saga]:2011/06/10(金) 22:22:39.63 ID:1RhinmiI0
そこは昼間の誰も居ない本屋での出来事だった。
店員が一人、ぽつぽつと本の整理をしている以外は何の音もしない。
だだっ広い店内に時計の針の音が聞こえるほどだ。

私はそんな本屋の片隅で、壁に寄りかかり特に読みたくも無い文庫本を見るともなしに見ていた。
読んでいるわけじゃなく、読んでいるとしても流し読み。
不意に、足音がした。私は追っていた文字から顔を上げた。小さな女の子が、にこにことした笑顔で立っていた。

「お姉ちゃん、遊ぼう」

制服のスカートの端を少しだけ掴み、純真無垢な笑顔で。
その女の子は言った。突然だった。私は、頷いてしまっていた。
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2 : ◆8S0pRhHoCE [sage saga]:2011/06/10(金) 22:29:13.58 ID:1RhinmiI0
元々、人付き合いがかなり苦手な性質だった。
だから高校に入学してすぐにこうして学校をサボるようになってしまっていた。
中学の頃からもともとサボり癖はひどかったのだけど、高校に入ってよけいにそれがひどくなってしまった感じだ。親は知っていてか本当に知らずにいるのか、何も言わない。

今日もだからサボるためにここへきたのだった。
ここは絶好のサボりスポットなのだ。広い本屋でゆっくりと時間を潰せる。店員も少ないので痛い視線も感じなくて済む。
いわば、私の楽園のようなもの。

そんな場所だから、話しかけてきた女の子に私は一瞬、軽い怒りを覚えてしまった。
3 : ◆8S0pRhHoCE [sage saga]:2011/06/10(金) 22:31:02.36 ID:1RhinmiI0
「ねえねえ、お姉ちゃん」

返事をせず固まる私に、女の子が急かす様にぱたぱた手を動かした。
スカートがひらひらと揺れる。

「お姉ちゃんってばあ」

幼い声が、私を呼ぶ。
私は無視することもできずに、文庫本を元の位置に戻すと溜息を吐きそっと女の子を窺った。
意外と可愛い顔をした女の子だった。
4 : ◆8S0pRhHoCE [sage saga]:2011/06/10(金) 22:35:34.32 ID:1RhinmiI0
同い年や先生、年上の人に好かれることのない私は、なぜか小さい子には好かれてしまうらしかった。本当に、それがなぜなのかはわからないのだけど。
私は今自分の持つ思いっきりの愛想を笑顔にして、屈みこんだ。
女の子と同じ目線になる。

邪険にして追い払っても良かった。
けれど、そうするにはあまりにも女の子は純粋すぎた。

「えっと……どう、したの?」

遊ぼう、と言われたのにどうしたのはないだろうと半ば呆れて自分に突っ込みながらも、女の子のほうはそんなこと気にしないというようにぱあっと瞳を輝かせた。私が返事をしたことが、そんなに嬉しいんだろうか。
5 : ◆8S0pRhHoCE [sage saga]:2011/06/10(金) 22:39:58.33 ID:1RhinmiI0
「あのね、お姉ちゃんあたしと遊ぶの!」

ぐいぐいっ。
さらにスカートの裾を引っ張られる。
女の子は、どう見たって幼稚園か、小学校低学年くらいだった。
今は平日で、学校はどうしているんだろう。私も人のことは言えないのだけど。
よく見れば、ランドセルも何も背負っていない。身一つ、しかも足にはサンダルだ。

「遊ぶ、か……でも、あなた学校は?」

「行ったよ。でも帰ってきたの」

悪びれもなく女の子が答えた。私は「そう」と返事。それ以外になんと言えばよいのかわからなかった。私が「ちゃんと行かなきゃ」と言うのも変だし。

「お母さんやお父さんとかは?」

さらに問いかけると、「お仕事」と。今度は少し寂しげに見える表情で女の子は言った。
6 : ◆8S0pRhHoCE [sage saga]:2011/06/10(金) 22:45:01.68 ID:1RhinmiI0
私にも女の子のその表情に覚えが無いわけではなかった。
そもそも、私がこんなふうになってしまったのも父と母の仕事のせいなのだ、と思っている。
仕事でまったく構ってくれないから、こんなにも不器用な子に育ってしまったんだ、と。
もちろん、そんなの自分のせいだと頭ではわかっているのだけど。

「……寂しいでしょ?」

言葉が、勝手に突いて出ていた。
それにも驚いたけど、もっと驚いたのは女の子はううんと首を横に振ったことだった。

「お姉ちゃんが一緒に遊んでくれるから寂しくないよ」
7 : ◆8S0pRhHoCE [sage saga]:2011/06/10(金) 22:48:42.54 ID:1RhinmiI0
随分と嬉しそうな声だった。
だから私は断るに断れなくなった。自分で自分の首を絞めてしまったように思った。

私は女の子の無垢な視線から逃れるように目を逸らすと、そっと溜息を吐いた。
今日はこの本屋に来なければ良かった、と。

◇◇◇
8 : ◆8S0pRhHoCE [sage saga]:2011/06/10(金) 22:52:38.44 ID:1RhinmiI0
「お姉ちゃん、これやろう、これ!」

きゃあきゃあとはしゃぐ声。
うるさいくらいだ。思わず耳を覆いたくなる。

小さい子に好かれるとはいっても、私自身が小さい子を好きだったことはあまりない。
可愛いとは思うけど、この甲高い声がどうにも苦手だった。
しかもそんな女の子の声が誰もいないから響くのだ。

私がのろのろと女の子の後ろを歩いていると、女の子は急に私のほうに戻ってくると「早く早く!」と私を急かした。うん、と言いながらも歩くスピードを早めない私に、女の子は頬を膨らませる。

怒らせちゃった、などとどうでもいいようなことを考えるように思っていると、手に何か柔らかい感触を感じた。女の子が、私の手を握っていた。
9 : ◆8S0pRhHoCE [sage saga]:2011/06/10(金) 22:56:16.47 ID:1RhinmiI0
誰かと手を繋ぐのなんて久しぶりで、しかも相手は知らない女の子だ。
私は少し焦ってしまった。相手は知らないとは言ってもだいぶ年下なのに。

「はーやーくーう!」

ぐいぐいっと。
さっきスカートを引っ張っていたように、私の身体を重そうに引っ張る女の子。
私は少しだけ、大またになった。少しだけとはいっても身長差がだいぶあるから、数歩歩けばもう女の子を抜かしてしまっていた。
女の子が慌てたように走って私の前に出た。もうすぐに行き止まりだった。
その行き止まりが、女の子の目的地らしい。

迷路やなぞなぞの置いてある小学生向けのコーナー。
10 : ◆8S0pRhHoCE [sage saga]:2011/06/10(金) 22:58:08.81 ID:1RhinmiI0
今日の投下はここまで
ゆっくりでしかも短くてすいません
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/10(金) 23:19:36.47 ID:+COVwoJto
期待
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/10(金) 23:20:19.68 ID:+COVwoJto
期待
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/11(土) 01:24:36.61 ID:pfmDzbZWo
乙です。
これは続きが楽しみな導入。
14 : ◆8S0pRhHoCE [saga]:2011/06/11(土) 14:03:33.69 ID:N4K6TPZ+0
こんなところ、最近まったく訪れていなかった。
確か私はこの子くらいの歳で卒業したはずだ、迷路やなぞなぞなんて。

「これ一緒にやるの!」

とりあえず、しゃがみ込む。
女の子は商品の置いてある棚に平気で腰掛けて私は少しむっとした。
本好きとしてはあまり好ましいことじゃない。けれど注意も出来ずに女の子から目を逸らした。
第一最近短いものすらちゃんと読んでいなかった、本好きと言えど。

「迷路めいろ!」

きゃあきゃあはしゃぐ女の子は、棚に腰掛けたまま壁に設置してある本棚から薄い迷路本を取り出した。それからぽいっと私に放った。慌てて受取る。
15 : ◆8S0pRhHoCE [sage saga]:2011/06/11(土) 14:05:34.52 ID:N4K6TPZ+0
小学校1、2年生向けと書かれたそれを見て私はあぁ、やっぱりと思いながらぱらぱらと捲ってみた。女の子が私の傍に寄ってくる。見た目どおり、小学校低学年の子らしい。

「いつもこんなの、してるの?」

「うん、そうだよ!」

訊ねると、女の子は元気良く頷き私の隣でしゃがみ込んだ。
ちょうどレジに背を向ける格好で。端から見ればかなり怪しいんだろうと思う。
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/25(土) 13:15:36.73 ID:b3pDTCSDO
気になる早く
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