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光成「パラサイトじゃと?」 -
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1 :
逶鈴崕shine
◆DaUG6Fo/Lc
:2011/06/11(土) 01:55:09.94 ID:1BAF2lZIO
都会の喧騒をししおどしが岩を打つ音がかき消す程の広大な庭園の中央の屋敷。
怪訝な空気と共に漏れた言葉はこの屋敷の主、徳川光成からだった。
「ミンチ殺人、ニュースや新聞などで御覧になられたことがあると存じますが」
向かい合う男は巨大な身体をダブルのスーツに詰め込み、また座布団の上に丸太のような脚を小さく折り畳んでいた。
「『口だけ頭』じゃな、髪の毛引っこ抜いて人間かどうか判別するんじゃ」
「お詳しいことです、それでその口裂け男ですが」
「『口だけ頭』じゃ、猪狩おぬしこそテレビみとるんか」
1.5 :
荒巻@管理人★
(お知らせ)
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/
笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/
【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/
トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713798788/
【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713788018/
ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713736565/
【安価】少女だらけのゾンビパニック @ 2024/04/20(土) 20:42:14.43 ID:wSnpVNpyo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713613334/
ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713522243/
2 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/06/11(土) 02:03:28.43 ID:jkiD9UjYo
バキかと思ったらバキだったので期待
3 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)
[sage]:2011/06/11(土) 02:12:35.18 ID:8NIXzSsAO
バキと寄生獣のクロス?
4 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2011/06/11(土) 08:56:04.07 ID:VLMSPL3DO
初回、1レスで終わる根性、スゲーョ!
5 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/06/11(土) 08:59:17.96 ID:tmx7hMIjo
やぁ、VIPでやってた人か
頓挫仲間として今後に期待
6 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
:2011/06/11(土) 11:42:22.10 ID:L62lHgxIO
「お恥ずかしい限りです」
「それに今髪の毛の話でワシの頭見たじゃろう」
「いえ」
「あの頭じゃ判別できんなあと思ったじゃろ」
その通りですの言葉を喉の奥に押し込むが、口角が意思と反して持ち上がる。
「ほら、笑っとる、ほら」
立ち上がり逞しい顎の端を握り引っ張る。
「御老公、パラサイトの話を」
「試合か」
指先が離されると同時に猪狩の言葉を食うように一言。
7 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/11(土) 12:47:56.62 ID:NJngR3QSO
もう一つ立てた方HTML化依頼出しとけよ
8 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/11(土) 18:49:06.83 ID:FRltomIDO
重複してるけどこっちでいいのか?
9 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長崎県)
[sage]:2011/06/11(土) 19:05:09.71 ID:vf4VHCD1o
結局VIPでやるのか?
10 :
盗電
◆DaUG6Fo/Lc
:2011/06/17(金) 22:01:21.02 ID:z5o3hGHIO
「化け物を捕まえて来てウチの闘技者と闘わせると」
「いえ、少し違います」
猪狩がおいと合図を出すと襖が開き、男達がいそいそと室内で作業を始めた。
「映写機をお借り致します」
「プロジェクターじゃ、おぬしは古いのお」
車一台程包み込めそうな巨大な布が天井から現れると室内の明かりが落ちる。
映し出されたのは高速で左右に振られる風景。
11 :
盗電
◆DaUG6Fo/Lc
:2011/06/17(金) 22:03:54.21 ID:z5o3hGHIO
「化け物を捕まえて来てウチの闘技者と闘わせると」
「いえ、少し違います」
猪狩がおいと合図を出すと襖が開き、男達がいそいそと室内で作業を始めた。
「映写機をお借り致します」
「プロジェクターじゃ、おぬしは古いのお」
車一台程包み込めそうな巨大な布が天井から現れると室内の明かりが落ちる。
映し出されたのは高速で左右に振られる風景。
12 :
盗電
◆DaUG6Fo/Lc
:2011/06/17(金) 22:07:29.04 ID:z5o3hGHIO
「酔ってしまいそうじゃ」
「咄嗟に撮影を始めたそうで、少々ご辛抱を」
もう一言苦言を吐こうと口を開くが、揺れの収まった画面がそれを制した。
「特撮じゃ、ないのう」
男、恐らく、服装や身体付きから察することが出来る。
問題は首から上。
血液が染み込んだワイシャツの襟から伸びていたのはこの世の物とは思えぬ物体だった。
例えるなら肌色の蛸の脚、その先端はナイフのように尖っている。
そして付け根から数本伸びる触角のような部位の先には、眼球。
特撮とは程遠いリアルを感じさせる、絶え間なく蠢き続けるそれ等。
13 :
盗電
◆DaUG6Fo/Lc
:2011/06/17(金) 22:10:51.83 ID:z5o3hGHIO
「パラサイト、『口だけ頭』どころじゃないのう」
「御覧頂きたいのはこの後です」
不意に蛸の脚が消え、それと同時に近くの大木が粘土に糸を巻き引っ張った時のように寸断された。
「なんと、見えんかった」
「異常な程のスピードです」
「ん、足元、死体か」
「恐らくこの生物に捕食されたものと」
14 :
盗電
◆DaUG6Fo/Lc
:2011/06/17(金) 22:11:51.96 ID:z5o3hGHIO
「パラサイト、『口だけ頭』どころじゃないのう」
「御覧頂きたいのはこの後です」
不意に蛸の脚が消え、それと同時に近くの大木が粘土に糸を巻き引っ張った時のように寸断された。
「なんと、見えんかった」
「異常な程のスピードです」
「ん、足元、死体か」
「恐らくこの生物に捕食されたものと」
15 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長崎県)
[sage]:2011/06/18(土) 16:13:10.15 ID:RxInszDXo
結局こっちでやるのか
保守の必要が無いから安心だ
16 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
:2011/06/21(火) 00:57:33.66 ID:kMSyuc3IO
「人喰い、これを捕まえて闘技場に放すと」
「いえ、それでは余りに色モノでしょう」
「なんじゃ、それでは誰を」
光成の言葉を遮る様に画面に現れた少年。
まさに目にも止まらぬスピードで蛸の脚を躱し続けていた。
やがて懐に飛び込み何やら右手の武器らしき物で人間の胴体から蛸の脚を切り離した。
「なんと、人間か」
「はい、いや、正確には半分人間でしょう」
「ん、どう言うことじゃ」
切断された蛸脚部分はアメーバの様に蠢き、少年に飛びかかった。
が、それを弾き飛ばしたのは右手。
そして落下したそれを地面に縫い付けた、右手。
17 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
:2011/06/21(火) 03:20:47.01 ID:kMSyuc3IO
「あれは、右手だけパラサイトか」
「その様です、本来この生物は人間の頭部に寄生し脳を支配し身体を乗っ取る物、しかしこの少年が寄生されたのは右手、人間の脳を残したまま共存していると見られます」
「そして人間部分の身体能力も桁外れておる、右手の影響かの」
「流石、お察しが早い」
「見たところ高校生、刃牙と同じくらいかのう」
「泉バーーーローー、都内の高校に通う少年です」
『ミギー、早く行こう』
『待てシンイチ、まだ生きている』
鋭い牙のようにその身を尖らせた右手はポコリと目玉と唇を出現させ、言葉を発した。
「そして、ミギーか」
夢見る少年のように瞳を輝かせた光成が再度立ち上がると、ししおどしが乾いた音を響かせ映像が終わった。
18 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
[sage]:2011/06/21(火) 03:22:37.28 ID:kMSyuc3IO
気迫、威圧感、オーラなど様々な言葉で形容される強者が発する、熱。
合気の達人は飛びかかる愛弟子達を次々と指一本触れずになぎ倒して行く。お約束の中で。
「師は偉大」「師に敵う筈も無い」「師に恥をかかせてなるものか」などなどの心積もりを抱きながら道場の床に投げ飛ばされてゆく愛しき門下生達。
並々ならぬ自己暗示は師範の「熱」を肥大させ最強の武闘家を作り出していた。
私達一般人には縁の無い話、テレビ番組の『世界の奇術』のそれを視て鼻で笑いながら憐れみの眼差しを送るのが常。
だが、お約束に縛られているのは私達も例外では無かった。
19 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
[sage]:2011/06/21(火) 03:23:30.19 ID:kMSyuc3IO
「身体の大きい男は強い」「反社会的な見なりの者は危険」
暗示と言うよりは暗黙の了解。
眼前よりそれらしき風体の者がこちらに歩みを進めて来たら当然、お約束の中放出される「熱」を肌で感じ、肩をすくめ道をあける。
合気道場の門下生が見えない力で投げ飛ばされるのと同じように、強面の男に道の端に追いやられているのである。
20 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
[sage]:2011/06/21(火) 03:24:18.46 ID:kMSyuc3IO
新宿歌舞伎町、日が落ちてからのこの通りを闊歩する筋者達に進路変更を余儀なくされた方もいるだろう。
この街で十年、クラブ『桜』の呼び込みを続ける小柄な中年、川本誠は誰よりも早く異変を察知した。
ネオンの影にある路地裏への入り口、それを中心に描かれる人垣の半円。
なんの事件かと身軽な身体を利用してひょいひょいと通行人の合間を縫ってその中心に近づいていくと不思議な状況に息を飲む。
誰一人立ち止まっていない。
そしてその流動する人垣の中心には、何も、無い。
「どう言うことだ、こりゃあ」
21 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
[sage]:2011/06/21(火) 03:24:55.68 ID:kMSyuc3IO
人々は無意識にこの路地裏を避けている。
目や耳で確認したわけでもなく、肌で「何か」を感じ回避している。
何度も肩をぶつかられながら、薄暗い路地裏の奥を凝視するが何も見え無い。
意を決し半円に足を踏み入れようと踏み出すと、背後から川本を追い越す形で乗り出す影。
「すっげえな、ここかあ」
自分より少し背の高い後ろ姿に待てと声を出そうと一歩踏み出すと、顔面が焼け焦げるかと思うような熱風に尻餅をついた。
22 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
[sage]:2011/06/21(火) 03:26:01.55 ID:kMSyuc3IO
「大丈夫かい、おっちゃん」
ティーシャツにジーンズのあどけない表情の少年が心配そうに手を差し伸べる。
咄嗟に握り締めた掌は、少年のそれとはかけ離れた雄雄しい闘士のものだった。
「よく気付いたね」
図らずも初対面の握手、悪戯に笑いながら親指で背後の「熱」が噴き出す路地を指刺した。
「こりゃあ、どう言うことだ」
眉間を通る油汗を拭うことすら許されぬ空気の中、絞り出したのは先ほどの自問。
少年は暫らく川本の瞳を見据え、やがてニコリと笑い話し始めた。
23 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
[sage]:2011/06/21(火) 03:26:49.04 ID:kMSyuc3IO
「小学校の頃さ、先生に怒られたことあるかい、教室で皆が席に座ってて」
諭すような涼しい口調が、高速で振られていた鼓動の針を遅めてくれた。
「ああ、しょっちゅうだったよ」
不意に蘇らされた、幼い頃恫喝された記憶。自らの頬を軽く張ってみせた。
「教壇の上から怒鳴るんだよね、これやったの誰だって、生徒達は目を伏せ身をすくめ、圧倒的な恐怖の前に事が過ぎるのを祈るように待つ」
振り返り背中を見せ、続ける。
「幾度もその試練を乗り越えやがて大人になる、本能的に学んだんだ、知恵を身につけ体力を養って、恐怖を遠ざけることを、でも、もし大人となった今、この知力と体力の鎧をいとも簡単に吹き飛ばす程の「熱」を感じてしまったらどうするかな」
24 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
[sage]:2011/06/21(火) 03:27:26.21 ID:kMSyuc3IO
川本が先程より一層強い熱風を全身に感じると共に人垣の半円が大きく広がった。
通り過ぎる人々はこちらを見向きもしない。
「意に介さない、いや、意に介せないと言ったほうが正確か、恐怖の度合いが強過ぎると、脳は現状を受け入れる機能をシャットダウンしてしまうんだ」
再度高まる鼓動は川本の言葉を詰まらせる。
「そ、それで、よく気付いたね、か、一体あの向こうに何があるって言うんだ」
「見るかい、喧嘩」
「喧嘩だと」
25 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
[sage]:2011/06/21(火) 03:28:07.95 ID:kMSyuc3IO
この熱風を生み出しているのが、そこらをうろつく街のチンピラだと言うのか。
怪訝な目で少年を見るが、発言を撤回する様子は微塵も無い。
喧嘩などこの街では日常、アクビが出る程見て来た。
馬鹿馬鹿しいと言い捨てようと口を開くと同時に響き渡る破壊音。
ビルの撤去作業などで聞く、崩れ落ちるコンクリートがぶつかり合う音。
「お、始まっちゃたかな」
少年はバッグでも小脇に抱えるように、川本の胴体に逞しい腕を巻き付けそのまま「熱」の中心、薄暗い路地裏へ突入した。
26 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
[sage]:2011/06/21(火) 03:28:41.75 ID:kMSyuc3IO
遠ざかって行くネオンに向かって喚く川本の声は、少年の恐ろしく速く回転する両脚を止めることは出来なかった。
細長い道のポリバケツやビールケースが何度も頬をかすめる中、いい加減にしろとなんとか手を伸ばし握りしめたシャツの背中を、渾身の力を込めて引くとそれはいとも簡単に裂かれた。
「あ、ひっでえ」
速度は緩まなかったが替わりに現れたのは異形の背中。
脅威的に発達した少年の広背筋は、鬼の形相を連想させた。
「化け物か」
観念した川本はバケツに掛けられた雑巾のように身を預けた。
27 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
[sage]:2011/06/21(火) 03:29:20.35 ID:kMSyuc3IO
みぞおちに感じる振動のリズムはピッチが弱まり、やがてアスファルトに擦られるスニーカーの裏の音と共に停止した。
この路地の奥はビルの背中に囲まれた袋小路、まさに都会の死角。
川本は、確かに喧嘩をするには格好の場所だと脳内の地図を広げた。
「おや、これは」
侠客特有の腹に響く低い声。
「木崎さん久しぶりです」
腕がほどかれ、声のするほうに尻を向けお辞儀をする形で着地した川本は、先程嵐のように吹き荒れるていた熱風が止んでいることに気付いた。
28 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
[sage]:2011/06/21(火) 03:30:05.26 ID:kMSyuc3IO
「終わっちゃたみたいだね」
あきれたような少年の声に振り返ると、スーツに金バッジ、オールバックの男と対面した。
見るからにヤクザ、みなりから見て幹部級だろう。
だが、その男にひるむ間もなく目に飛び込む光景。
男の数は十人。
崩れたブロック塀に埋もれた男、重なり合い呻き声を上げる男達、地面に五体で大の字を描いている男。など。
様々なスタイルで敗者を表現しているが、皆統一して、屈強な大男。
だが目を剥いた川本の焦点は、それらすべてをぼやかした。
「刃牙」
こちらに呟いた。
漢。
29 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
[sage]:2011/06/21(火) 03:30:47.02 ID:kMSyuc3IO
デカい、サイズはそこに転がっている男達と差程変わらないだろう。
しかし、違う。
ダブルのスーツの上からでも解る、質の違う筋肉。
斜め十字に傷痕が走る貌。
そして、拳。
今は握られていない、拳。
煙草を挟む指が雄の野性を物語る。
あの指達がついさっきまで圧縮されていた。それが凶器、いや兵器と化して。
川本は頬を伝う涙を感じた。
30 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
[sage]:2011/06/21(火) 03:31:19.09 ID:kMSyuc3IO
「忙しそうだね、親分」
少年の名は刃牙、先程と変わらぬ調子で話しかけると漢は口角を少し持ち上げる。
それが合図のように、木崎と呼ばれる男は話し始めた。
「いまどき果たし状も無いもんですよ、喧嘩日本一がナンボのモンですって、わざわざ来てみりゃこの様です」
親分、喧嘩日本一、この街でしのぎを削る人々がこの言葉から連想する人物は唯一人。
川本は目を見開いたまま、伝説を目の前にしていることに気付き、思わず口に出す。
「花山薫」
31 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
[sage]:2011/06/21(火) 03:31:56.45 ID:kMSyuc3IO
持って生まれた腕力だけで極道の世界をのし上がって来たと言う、受け入れ難いほどのシンプルなスタイル。
それゆえ、憧れる。
ただそこに立っているだけで跪き、地面に頭をこすりつけたくなる。
「たまにあるんです、噂を聞いた腕自慢からのお誘いが、今回はプロレスラーだったかな、いつもは相手にしないのですが、ご丁寧に余所の組の名前入れてたモンで、まあ、本職くずれの用心棒ってとこでしょう」
木崎の懐から雑に取り出された封筒には、二人の胸元で光る菱形の物とは異なる、円形の代紋が記されていた。
32 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
[sage]:2011/06/21(火) 03:32:46.50 ID:kMSyuc3IO
花山が足元でちょうど良い高さで重なり合う男達に腰かけると、漏れてくる呻き声。
「わざわざどうした」
「お使いだよ、徳川のじっちゃんの、花山は何処におるうって」
両拳を挙げてヒステリックな老人の形相を模写した刃牙に、軽く俯いて息を漏らす花山。
「事務所に電話したら何処にいるかわからないって、こういう時は大概街で腕ならしに行ってるもんですって言うからさ、探したよ、携帯ぐらい持とうぜ、花山さん」
33 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
[sage]:2011/06/21(火) 03:33:26.50 ID:kMSyuc3IO
不似合いとわかりつつ進めてくる刃牙に、肩をすくめて見せた。
「お連れさんは」
突然の木崎の一言に姿勢を正した川本は、適切な自己紹介をしようと脳内のありとあらゆる引き出しを引っ張り出し言葉に出そうとした。
だが、大太鼓を連打するような心拍に混乱し、結果唇を開け閉めするだけに至った。
「ああ、この人は」
刃牙の救いの一言にすがるように視線を贈る。
「誰だっけ」
花山の指先からフィルターだけを残して灰がアスファルトに落ちた。
34 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
[sage]:2011/06/21(火) 03:36:50.06 ID:kMSyuc3IO
>>17
うわ、なんだバーローって
「バーーーローー」です
35 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
[saga]:2011/06/21(火) 03:37:40.00 ID:kMSyuc3IO
あれ?
新一
36 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
[saga]:2011/06/21(火) 03:38:31.01 ID:kMSyuc3IO
ごめんなさい
>>17
のバーローは「新一」です
37 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
[sage]:2011/06/21(火) 03:41:00.83 ID:kMSyuc3IO
あと
>>17
と
>>18
の間で場面チェンジです
改行入れ忘れですorz
38 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長崎県)
[sage]:2011/06/21(火) 03:43:12.05 ID:lXtjrPJ/o
とりあえず落ち着け
39 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
[sage]:2011/06/21(火) 09:59:40.12 ID:kMSyuc3IO
一晩寝たら落ち着きました
40 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
[sage]:2011/06/21(火) 10:00:45.79 ID:kMSyuc3IO
水色一色の空。
耳触りのいい教壇の上から聞こえる数式らしき羅列は、教室窓際の席に座るバーーーローーを浅い眠りへと誘っていた。
「シンイチ、シンイチ」
不意に至近距離から呼ばれる自分の名に大きく返事をし立ち上がる、が、それが失態だと気付くのに時間は要さなかった。
「泉、なんだ、質問か」
「いえ、あの」
「夢の中でも尻に敷かれてるのか」
教師の一言にどっと盛り上がる教室、顔を赤らめながらすいませんと席に着く。
「急に話しかけるなよミギー、恥かいたじゃないか」
「居眠りなどする君が悪い、シンイチ正門の方を見ろ」
「すげえ車、なんだっけあれロールスロイスだっけ」
「そんなことではない」
「まさか、仲間か」
「いや、それとも違う」
「なんだ、それじゃあ平気じゃないか」
41 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
[saga]:2011/06/21(火) 10:01:37.28 ID:kMSyuc3IO
「あのような高級車がこのようななんの変哲もない学校を訪れることになんの疑問も沸かないのか」
「好奇心旺盛だねえ」
「気になる」
運転席から降りて来た黒服の男が手際良く後部座席の扉を開くと、紋付袴の小柄な老人が現れた。
目を見張る新一。
「あ、あれ、徳川、テレビで見たことある」
「嫌な予感がするな」
「予感、ミギー予感なんかするのか」
「当たり前だ、君達人間より優れている」
42 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
[saga]:2011/06/21(火) 10:02:20.89 ID:kMSyuc3IO
やがてグラウンドの中央を横切り全速力でそちらへ向かう二つの影。
「おお、校長と教頭が走ってるよ、無理しちゃって」
「身分の違いと言うやつか、あのように頭を上下させれば優位に立てる訳でもあるまい」
「ウチみたいなどこにでもあるような高校に一体何の用があるって言うんだろうね」
手首の関節で小さく開いていた目が見開いた。
「どうした、ミギー」
「シンイチ、あそこの会話聞き取れるか」
43 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
[saga]:2011/06/21(火) 10:04:06.58 ID:kMSyuc3IO
「今、あの老人の唇の動きを読んでみた、君の名前を言っていたようだ」
またまたご冗談をと言いたい所だが、ミギーがこんな嘘をつくわけが無いとシンイチは目を閉じた。
車道のトラックの走行音、木々の風に揺れる音を退かし会話に集中する。
『はい、泉新一は間違い無く我が校の生徒でございます』
『最近みなりが悪くなって来ていると聞いていますが、もしや徳川様に何か御迷惑になるようなことでもしでかしましたでしょうか』
44 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
[sage]:2011/06/21(火) 14:45:14.01 ID:kMSyuc3IO
「本当だ、しかし好き勝手言ってるなあ」
「悠長にかまえている場合か、あそこで君の名前が出ていると言うことはだな」
「泉、今度は目を開けたまま寝言か」
教室内の視線を一身に浴びていることに気付き、シャキンと姿勢を正した。
45 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
[sage]:2011/06/21(火) 14:46:19.94 ID:kMSyuc3IO
「成る程、いいだろう」
異様な光景。
筋者達の集まるビルの一室、いわゆるヤクザの事務所。
そして横一列に整列している組員達の前に前に立っているのは、言葉を発した制服姿の女子中学生。
ありがとうございますと深々と礼をする一堂の中には組長らしき男の姿もあった。
「食堂と餌の確保、迅速に行動を起こさねばこの場所をそれにする、すぐに連絡をしろ」
言葉を残し、ドアを開けその場を去った。
46 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
[sage]:2011/06/21(火) 14:47:23.38 ID:kMSyuc3IO
「兄貴、本当にあの娘が」
室内の沈黙に耐えかねたのは、一番下っぱの構成員中川良二。
「馬鹿野郎、どこかで聞いてたらどうする、ミンチにされちまうぞ」
「どうしても信じられないんですよ、あんな可愛らしい女の子が化け物だなんて」
「実際見たのはオヤジだけだ」
目を移すと顔を真っ青にして、ソファーにへたり込んでいる組長、遠藤宗吉が震える声を抑えながら呟く。
47 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
:2011/06/21(火) 14:48:14.37 ID:kMSyuc3IO
「言っただろう赤羽の須藤の所、息なり乗り込んで来て皆殺しだ、思い出したくもねえ」
「それじゃあテレビで言ってみたいに、でっかい口で飲み込んじまった訳ですか」
「そんな生易しいモンじゃねえ、俺がそこの扉を開けた時にはもう終わってたよ、そこらじゅうに首が転がってた」
冷静さを取り戻そうと遠藤は煙草に火を着けた。
「血の海の真ん中でこっちを見て『テストは終わりだ』だとよ、何がなんだかわからねえが必死で土下座して命乞いだ」
48 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
[sage]:2011/06/21(火) 14:49:13.84 ID:kMSyuc3IO
「よくご無事で」
「食うのが目的じゃ無かったようだ、出て行こうとする所を頼んじまったよ『うちの客人になってくれ』ってな」
兄貴と呼ばれた男が恐縮しながら一歩前に出た。
「人間を食う為の場所と、その人間、それが条件で怖い物無しの用心棒が手に入った訳です、感服します」
遠藤はまだ長いままの煙草を灰皿に押し付け、顔を上げた。
「これで、花山を始末できる」
襟元の円形の代紋が光った。
49 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
[saga]:2011/06/22(水) 18:46:41.98 ID:gigc7OkIO
校長室、二十畳はあるふかふかの絨毯の上に革張りのソファー、そして大理石のテーブル。
どこぞの社長室を思わせる設備に腰が落ち着かない新一。
そして何より落ち着かない原因は、目の前の異様なオーラを放つ老人、徳川光成である。
先ほど校長教頭両名は光成の「二人にしてくれんかの」の一言で渋々部屋を出て行ったところ。
「あの、一体僕に何の」
「二人きりじゃの、いや三人か」
思わず咄嗟に右手に目をやる。
「ど、どういう」
「警戒せんでもええ、君達のことを他所に話したりはせんよ」
「なんのことだか」
「まあ、そう来ると思っとった、おい」
光成の合図で先ほど運転席から降りて来た黒服の男が、ドアを開け入って来た。
手には何やら書類を持っている。
「君とミギー君がパラサイトと闘う姿を拝見した」
「え」
50 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
[saga]:2011/06/22(水) 21:55:33.95 ID:eWLTIzfIO
「経緯は端折るが要は君の、いや君達の闘う姿を直に見たい」
人々の好奇の目に晒されるモルモット。
新一は以前ミギーが危惧することを話したことを思い出した。
ある部分を観念し話すことにした。
「どこまで知っているかわかりませんがそれは無理です、人目に触れるのは僕は、いや僕達が最も恐れることだからです」
「君達がパラサイト達と闘うのは望んでいることでは無い、人食いのあやつ等が君達を発見すると強烈な敵意を持ち襲いかかって来る、そうじゃな」
答えず黙り込む。
「お母さん、亡くなったそうじゃな」
新一は光成を睨みつけ、立ち上がり部屋を出ようとした。
「君達を、いや、君達の周りの人々全てを徳川財閥が全力で保護する」
51 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
[saga]:2011/06/24(金) 09:24:40.26 ID:h+VCXZRIO
新一は足を止めた。
「パラサイトは不死身と言う訳では無いじゃろ、頭部を切り離せば絶命する、また人間部分の機能が停止しても同じ、つまりこちらが武力を持ってぶつかれば君達から遠ざけることはそう難しいことでは無いはずじゃ」
黒服の持つ資料は、新一の家周辺及び学校近隣や友人達の家などの近くに点在しているパラサイト達の情報だった。
「これで全てでは無いだろうが、とりあえず既に監視は付けておる」
新一は資料の中の一つに目を止めた。
「里美」
恋人、村野里美の住まい周辺に関する資料だった。
「闘う姿とは私達が君達の言うパラサイトと闘う所か、それともまた別か」
ミギーは親指の付け根部分を唇と化し、親指の先から目玉を覗かせた。
「おお、君がミギー君か」
52 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
:2011/06/24(金) 09:25:30.68 ID:h+VCXZRIO
「ちょっ、おまえいいのか」
「私は生きる為に生きている、身の安全の絶対的確保を約束出来るのなら条件を飲もう」
「ミギー」
「指一本触れさせんよ、世界屈指の金持ちが金に糸目を付けずに最強のボディーガードを雇ってやる」
「シンイチ、君も父親や村野里美の保護は最優先にさせたい筈だ」
53 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
[sage]:2011/06/24(金) 09:29:04.52 ID:h+VCXZRIO
バーーーローーは言葉を詰まらせたが、胸の中での答えはほぼ決まっていた。
「闘う相手はパラサイトでは無い、こちらで用意する」
「人間ですか」
「そうじゃ、只の人間じゃないがな」
54 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長崎県)
[sage]:2011/06/24(金) 14:50:39.64 ID:SiIZpFDYo
バーローwwwwwwwwwwwwww
55 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(北海道)
:2011/06/24(金) 15:42:03.23 ID:+BtGuljAO
最高だ
56 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/24(金) 21:30:08.37 ID:VbTN91UDO
なんかイヤだな。徳川サン。
ミギーもすんなりだな。
57 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
:2011/06/24(金) 23:40:49.52 ID:uymUDRnIO
「わかりました、なるべく早く済ませたいので」
光成は鼻の穴を膨らませドングリのような目を剥いた。
「舐めとったらいかんぞ、小僧」
光成の目玉がこぼれないのが不思議な程見事な真円を描いた。
58 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
[sage]:2011/06/24(金) 23:42:33.71 ID:uymUDRnIO
「相手、知りたいかい」
畳の上に腰を降ろして向かい合い数時間、刃牙は湯飲み茶碗のワイルドターキーを飲み干し、少し酔いの回った細めた目で言った。
花山は軽く掌を見せてそれを拒否。
刃牙の住む平屋は音も無く、ただ男二人の時間だけを流していた。
59 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
:2011/06/25(土) 00:00:26.51 ID:Lkebk24IO
「テスト、ですか」
付き添いを任されたのは、龍牙会の構成員中川良二。
隣には身長150センチほどの女子中学生。
「聞いている筈だ」
髪の毛はポニーテール、ブレザーに通学バッグの姿からは想像できない言葉使い。
事務所に連絡が入ったのは、彼女が訪れた次の日だった。
内容は、食堂と餌の準備は出来たかと言うこと。
もう見つかる所ですと言う答えに憤慨した様子も無く「これからいいモノを見せてやる」との返事だった。
60 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
:2011/06/25(土) 22:25:57.04 ID:Lkebk24IO
疑問符は拭えない。
どこからどうみてもただの女の子。
あえて違和感を挙げるなら整いすぎている容姿。
二重瞼に長いまつ毛、それに挟まれた鼻筋の通った顔。
おもちゃ屋に並ぶキャラクターの人形のような長い脚。
この子が人間を食べる化け物だと。
無理、受け入れられない。
「あのさ、タメ口でいいかな」
何故こんなことを。
良二は死を覚悟する程の後悔を冷たい汗と共に流した。
どう食われるか、頭をもぎ取られるか全身を八つ裂きにされるか。
しかしそのどちらでもない想像を絶する結果に至る。
「構わん」
61 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(空)
[sage]:2011/06/28(火) 23:46:15.04 ID:0TPVYGDL0
バーロー消すにはメール欄にSagaって書けば良かったはず
62 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長崎県)
[sage]:2011/07/01(金) 15:18:00.76 ID:SdbgSnEqo
VIPに投下した分はここら辺までだったかな?
63 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
:2011/07/01(金) 17:20:50.44 ID:Ur2DzxMIO
「え」
「シオリと呼べ」
「は、はい」
「敬語をやめるんじゃないのか」
「え、あ、お、おお、ええ」
「名前は」
「じ、自分は、いや俺は良二」
こちらに一度も目を向けずに話し続けるシオリと名乗る、娘。娘の姿をした人食い生物。
良二は考えるのを止めた。
64 :
盗電shine
◆DaUG6Fo/Lc
:2011/07/01(金) 22:17:55.28 ID:Ur2DzxMIO
「一体何処に向かってるんだ」
すんなりと出た良二の言葉に返事は無く、ただシオリは立ち止まった。
目線先を追うと街を見下げるように立ちはだかる大きな建物。
「神、心、会、館、これあの神心会の道場か」
65 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(空)
[sage]:2011/08/04(木) 16:30:43.66 ID:WpgThKPf0
ダヴァイッッッッ
66 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(空)
[sage]:2011/08/20(土) 02:52:51.12 ID:eGY04to60
投下がこねェな・・・・・・スレ放棄かな?
27.70 KB
[ Aramaki★
クオリティの高いサービスを貴方に
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