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唯「ギー太は電気マドレーヌの夢を見るか」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/14(火) 02:28:47.65 ID:pBVSW2Rno
SF企画だよ!

お題 SF
日程 7月9日(土・予定)
場所 SS速報VIP内

備考 ・内容はSFなら何でもあり
     パラレルワールド、タイムトラベル、[たぬき]クロス、パーまんクロス、ちょっと不思議な異世界、etc...
    ・むずかしく考えることないよ!
     適当に設定作っちゃえば何でもSF!空飛ぶじゅうたんもSF!浦島太郎もSF!エンドレスエイトもSF!
    ・むしろ設定なんてどうでもいい!話を広げるほうが大事!
    ・すこしふしぎ、くらいの気持ちでじゃんじゃん参加してね!

現在意見・参加者共に大募集中です
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ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713522243/

旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713353246/

木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1713351945/

いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713279251/

【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713277692/

こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713183168/

【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713091115/

アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713089503/

2 : ◆6Pl2lEaW1E [sage]:2011/06/14(火) 02:36:12.12 ID:IlKsz5REo
とりあえず参加表明しときます
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/14(火) 03:02:09.69 ID:xkjKNUIho
ひとりあたりの長さは?
4 : ◆JMIFPYygak [sage]:2011/06/14(火) 03:40:02.40 ID:pBVSW2Rno
地の文満載で100レス超など極端でなければ長さは縛らないでいようと思います
SFは軽い話からシリアスな長編まで受け皿の広いテーマですし

あと格付けは人数が集まればやりたいと思っています
5 : ◆/itmz27SJI [sage]:2011/06/14(火) 08:42:58.88 ID:rV3RsiHp0
参加希望
6 : ◆RcBucO91EsFq [sage]:2011/06/14(火) 08:47:24.15 ID:rV3RsiHp0
よくあるトリップだったのでこちらにかえます
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/14(火) 09:22:21.85 ID:pJyW2wJ8o
久々にやってみるかな
なんか書けたら参加表明しよう
8 : ◆JMIFPYygak [sage]:2011/06/15(水) 04:02:27.55 ID:eYf+0zPko
現在の参加希望者
◆6Pl2lEaW1E
◆JMIFPYygak
◆RcBucO91EsFq

参加希望の方は酉付けをお願いします
まだまだ参加者募集中!
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/15(水) 17:08:08.45 ID:WMQsULtGo
格付けやりたいなー
やる気出るし
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/15(水) 17:41:14.71 ID:uOuIYTWc0
最終的に3人でも格付けやりたい
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/15(水) 17:59:32.15 ID:nxCdyhzAO
参加したい
書きための目処が立ったら酉出しにまた来る
酉出しに来なかったら不参加ってことで
12 : ◆YgiDkxnzcI [sage]:2011/06/15(水) 21:13:23.37 ID:hGzCm+iAO
参加希望します!
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/06/24(金) 09:45:00.26 ID:EDSOcTwDO
age
参加者増えろー
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2011/06/24(金) 20:29:36.01 ID:1rag41zjo
参加するよー
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage ]:2011/06/25(土) 09:44:01.80 ID:QS7f1JhHo
きた!おでん来た!これで勝つる!
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/27(月) 02:26:41.23 ID:putyUqiwo
書き溜めすすまねー
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage ]:2011/06/27(月) 07:45:14.74 ID:0RL0V5W3o
逆に考えるんだ…
即興でいいさって考えるんだ
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/27(月) 10:20:16.78 ID:KpzPy3T5o
パクったようなネタでなおかつ即興でもいい?
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage ]:2011/06/27(月) 16:35:51.67 ID:PShBJfxeo
進行に支障を来さないなら大丈夫さ
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/01(金) 13:26:36.92 ID:Vg/teu/vo
7月だからまだ余裕っしょww
って思ってたらもう今週だと
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/01(金) 17:11:00.70 ID:DYVk7YV2o
あと一週間もあるさ
22 : ◆JMIFPYygak [sage]:2011/07/01(金) 19:11:51.90 ID:c95pdt5ho
現在の参加希望者
◆6Pl2lEaW1E
◆JMIFPYygak
◆RcBucO91EsFq
◆YgiDkxnzcI
田舎おでん(?)

即興予定の酉無しさんを含めても、まだまだ参加者が欲しいところ
あと一週間もあるのでSF企画参加者募集中です!
23 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/02(土) 22:59:20.21 ID:dikPCr0lo
一週間前なんで酉出しとくね
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/07(木) 20:17:14.23 ID:6LJNFyiio
投下時間の振り分けは?
25 : ◆JMIFPYygak [sage]:2011/07/08(金) 10:56:13.54 ID:nGoqM+D6o
投下時間の振り分けを忘れていました

明日の0時から、大体1時間か30分間隔で投下したい時間の予約をお願いします
もちろん時間に余裕のある方は予約なしでも構いません
26 : ◆YgiDkxnzcI [sage]:2011/07/08(金) 18:50:54.58 ID:oba3JunAO
朝の6時半くらいから希望
長めだから一時間の余裕をもってくれるとありがたいです
27 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/08(金) 19:19:03.80 ID:NEvPJ97Qo
一番手いきます
今夜0時開始で
現在製作中のが間に合ったら2本投下してもいいですか?
短めなので両方でも一時間かからないと思います
28 : ◆JMIFPYygak [sage]:2011/07/08(金) 20:10:05.55 ID:11BVurcjo
何本でもいいですよ、人も少ないみたいですし・・・
29 : ◆HBJa11Hm.c [sage]:2011/07/08(金) 20:49:23.28 ID:07eSppeko
パクり即興予定とか言っていた人です
そんな内容なんで人の少ないであろう朝が欲しいです 8時くらい

…一時間で終わるかなぁ
30 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/08(金) 23:59:19.57 ID:NEvPJ97Qo
続けて2本投下します
31 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:00:37.05 ID:8NOhjUsgo
唯「蜘蛛の糸」


平沢唯:オヤツスキー「うひょっ、ひょっ、ひょっ、このケーキちゃんたちは頂いていくよっ!」

田井中律:手下「残念だったなスパイダー梓、今日はあたしたちの勝ちだぜ」

平沢憂:手下「ごめんね、梓ちゃん、お姉ちゃんが食べたいっていうから」

鈴木純:手下「梓も食べたかったら一緒に来てもいいよーっ」


中野梓:スパイダー梓「ふざけるんじゃないですっ!」
32 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:01:08.09 ID:8NOhjUsgo

真鍋和:語り

『いつの時代のことでございましょうか、美味なる菓子ばかりを好んで狙う
 おやつはごはん団と名乗る女盗賊団が巷を騒がせておりました。

 しかし闇があればまた光もございます。
 彼女らの前にひとりの超能力少女が立ちはだかったのでございます。
 その名をスパイダー梓と申しました。
 
 両者の戦いは激しく火花を散らすこともなく
 それはもうまったりとしたものでございました。


 そんなある日の事でございます。
 彼女達の運命を大きく変える事件が起こったのでございました』
33 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:02:06.30 ID:8NOhjUsgo
唯「うひょっ、ひょっ、ひょっ」

憂「お姉ちゃん、その笑い方変だからやめたほうがいいよ」

唯「え〜、せっかく練習したのに〜」


梓「おのれっ!オヤツスキー!私の蜘蛛の糸からは逃れられないですよっ!」

唯「へへぇダメダメ、あずにゃんこれが目に入らないの?」

梓「そ、それはっ?!」

唯「動くとこの爆弾が爆発するからねっ」

梓「ぬぅ!」

律「おい、唯それ本物だから」

憂「お姉ちゃん取り扱いには気を付け……」

唯「大丈夫だよ、セーフティが掛かってるからここ押しても、ほら」

カチッ
34 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:02:53.97 ID:8NOhjUsgo
唯「へ?」

憂「あ」

純「あーっ!」

律「やべえってっ!!」



唯「あずにゃん逃げてっ!」

梓「あっ……」



どっかーーーーん!!!!!!

 パラパラ……

           シーーーン


和『轟音と共に辺り一面の物が消し飛び、後に残ったのは累々たる瓦礫の山ばかりでございました』
35 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:03:25.96 ID:8NOhjUsgo
ぢごく!

唯「みんな死んじゃったねえ、りっちゃん」

律「お前のせいだろがーっ!」

唯「うーん、こんなことになるとはね」

憂「地獄落ちちゃったね」

唯「仕方ないよ、いろいろ悪いことしてたから」

憂「私はお姉ちゃんと一緒ならどこでも楽しいよ」

唯「憂はいい子だねぇ、よしよし」

憂「えへへ」


純「平沢姉妹は脳天気でいいよねえ」

律「まったくよー」
36 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:04:00.91 ID:8NOhjUsgo
澪:獄卒「こらーっ!なにサボってるんだ!」

唯「あ、澪ちゃん」

澪「なれなれしく呼ぶんじゃないっ、さあ練習だ練習、始めるぞーっ」

唯「えーっまたぁ?

澪「あたりまえだっ、お前らは生前繰り返した罪の罰として、この練習地獄で永遠に楽器の練習をするんだ」

唯「ちぇ、楽しそうだからギター選んだけど、こう休みなしじゃ大変だよ」

律「あたしこのまま永遠にドラム叩くのかよ」

純「だって練習地獄だからしょうがないですよ」

律「んー?お前結構澪のこと好きだよな」

純「そ、そんなことないですよ」

律「そうか?同じベース選んだしな、ぐふふ」

純「なんですかその笑いは、やめてくださいよ」

憂「うふふ」

純「ちょっと、憂もやめてよっ」
37 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:04:39.60 ID:8NOhjUsgo
律「なあ澪、もう今日は終わりでいいじゃん」

澪「おいおい、なに言ってるんだ、ほら最初から通しでやるぞ」

律「やだよ、もう疲れたし。そうだっ、合宿で血の池温泉行くってのはどうだ?」

唯「いいね、行こう行こう」

純憂「さんせー!」

澪「おまえら、練習しようよ……」

純「澪さんも一緒に行きましょうよ〜」

澪「やだっ」

唯「じゃあひとりになっちゃうよ?」

律「寂しいぞー」

澪「ううっ……向こうでも練習だからなっ」

唯「はい決まり〜、うひょっ、ひょっ、ひょっ」
38 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:06:00.38 ID:8NOhjUsgo
血の池地獄温泉

唯「ふあー、いつ来てもここのお湯は鉄臭いねー」

憂「そうだね」

律「鉄分豊富だからな」

純「血だしね」

憂「純ちゃん、身も蓋もないよー」


澪「私は灼熱サウナ行ってくる」スタスタ

律「ほう、ナイスバディ維持も大変ですなぁ」

澪「うるさいっ」

純「あっ私もサウナ行きます。ほら憂も行こうよ」

憂「うん、お姉ちゃん行ってくるね、のぼせて湯あたりしないように気をつけるんだよ」

唯「わかってるよ〜」


律「おーい唯ー、ほらほらこうやってると浮いたり沈んだりして面白いぞー」

唯「おおっ、私もやるよー」


和『この様子を極楽浄土、蓮池の畔より見下ろしている者がおりました』
39 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:06:44.47 ID:8NOhjUsgo
和『極楽浄土の蓮の池、その池の中に咲いている蓮の花は、みんな玉のようにまっ白で、
  そのまん中にある金色のずいからは、何とも云えない好い匂が、絶間なくあたりへ溢れて居ります。
  極楽は丁度朝なのでございましょう』


梓「オヤツスキー、あんなところに……」

紬:お釈迦様「どうしたの?梓ちゃん」

梓「あ、お釈迦様」

紬「なにを覗き込んでるのかしら」

梓「ちょっと知ってる人が見えたんで……実は、私がここに来る原因になった人なんですけど」

紬「へえ、詳しく聞かせてくれるかしら」

梓「はい、私生前はスパイダー梓って呼ばれてて、悪と戦ってたんです……」

紬「それは知ってるわ」

梓「ええ、糸が出せるんですよ、それで悪党を捕まえてました」

紬「糸……それでスパイダー」

梓「あの人も悪党で、ある日〜……
40 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:08:41.01 ID:8NOhjUsgo
梓「〜というわけで間違って爆発しちゃったんです」

紬「それであなたは極楽へ、オヤツスキーは地獄へ落ちたのね」

梓「そうなんです、仲間といっぱい悪事を働いてましたから地獄へ落ちて当然なんです……けど」

紬「けど?」

梓「でもあの人、あの一瞬私を庇って、助けようとしてくれたんです……」

紬「ふうん……」
41 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:09:23.09 ID:8NOhjUsgo
梓「変な人なんです……」

紬「いいわよ、梓ちゃん」

梓「えっ?」

紬「糸を降ろしてあげて」

梓「でも……いいんですか?」

紬「ずっとそう思ってたんでしょ、顔に書いてあるわよ」

梓「……なんでもお見通しなんですね」

紬「降ろしてあげなさい、もしそれを上がってこられたならその人を極楽へお迎えしましょう」
42 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:11:04.26 ID:8NOhjUsgo
梓「じゃ、ちょっと失礼します……んっ」

プリッ

梓「んーっ」プリプリプリ……

紬(……)


紬(……糸ってお尻から出すのね……)
43 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:11:42.05 ID:8NOhjUsgo
和『さてこちらは地獄の底の血の池で、律達と一緒に、浮いたり沈んだりしていたオヤツスキーでございます。
  何気なく頭を挙げて、血の池の空を眺めますと、そのひっそりとした暗の中を、遠い遠い天上から、
  銀色の蜘蛛の糸が、まるで人目にかかるのを恐れるように、一すじ細く光りながら、
  するすると自分の上へ垂れて参るのではございませんか』


唯「うひょっ、ひょっ、ひょっ……あれ?この糸なんだろ?」

唯「紙がついてるや、りっちゃーん、ちょっと見て〜」

律「唯どうしたーっ?」

唯「うん、上からこの糸が下りてきたんだけどさ、この紙になにか書いてあるんだよね」

律「へえ?読んでみろよ」

唯「ええと、この糸は極楽浄土へ繋がっています上ってくればいいです、だって」
44 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:12:43.30 ID:8NOhjUsgo
律「マジかっ?」

唯「極楽へ行けるんだって、どうするりっちゃん?」

律「そりゃ行くっきゃねえだろ、唯上ってみろよ」

唯「よーし、ほいっと、んしょ」


唯「んしょ、んしょ」


唯「ふう結構簡単に上がれるよ!」

律「よーし、あたしも上るぞーっ」 グイッ

ミ……シッ

唯「んっしょ、んっしょ 」 
 
…シッ

律「よっ、よっ」

…シッ
45 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:13:26.11 ID:8NOhjUsgo
唯「んっしょ、んっしょ 」 

律「よっ、ほっ」

…シッ


ゆらっ ぐらぐらっ
 
ミチッ!

唯「わっ!なになに?」

律「なっ?!あっ下だ」


憂「おねーちゃーん!どこいくのーっ?危ないよーっ」  グイッ

純「私も連れてってくださいよーっ!」 グイッ

澪「こらーっ!」 グイッ

ミチッ!
46 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:14:19.25 ID:8NOhjUsgo
唯「ああっ糸がっ」

唯「そんなに引っ張っちゃだめだよーっ糸が切れちゃう」

ミチッ

唯「だめだってーーーーーっ!!」


 ミチミチッ……!


和『梓の糸は今にも切れんとばかりに悲鳴のような軋みをあげております。
  しかし極楽の蓮池の蓮は、少しもそんな事には頓着致しません。
  その玉のような白い花の何とも云えない好い匂が、絶間なくあたりへ溢れて居るのでございました。

   やがて……』
47 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:15:44.86 ID:8NOhjUsgo


律「よっこらしょっと!……おおっ、ここが極楽かぁー」

唯「ねっ、そっと上がれば糸切れなかったでしょ」

憂「お姉ちゃん、危ないことしちゃだめだよー」

純「うわぁきれいなところ」


梓「あのー、他の人もどんどん上がってきちゃってるんですけど……」

紬「あらあらまあまあ」
48 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:16:29.13 ID:8NOhjUsgo
憂「あっ梓ちゃん!」

純「梓!あんたこんなところでお尻出して!」

唯「えっ?あずにゃん?」


梓「ひゃっ!見ちゃだめですっ」 プツリッ

紬「はい終了〜ここまで〜」


和『糸は梓がお尻を隠した途端、急にぷつりと音を立てて断れました。
  後続いてに上ってきていた亡者共は血の池へまっさかさまに落ちてしまいました。
  後にはただ、糸はきらきらと細く光りながら、
  月も星もない空の中途に短く垂れているばかりでございます』
49 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:17:34.93 ID:8NOhjUsgo
唯「あずにゃん!元気だったー?」

梓「何言ってるんですか、死んでるんですよ、私達」

唯「んもう、あずにゃんったらあーっ」スリスリ

梓「よ、よしてくださいよ、お釈迦様の前ですよ」

紬「いいのよ、いいのよ〜」

唯「これあずにゃんの糸だったんだ、ありがとね〜」

梓「お礼ならお釈迦様に……」

唯「ほーい、みんなお礼言って〜」

律・憂・純「ありがとうございまーす!」


紬「うふふ、よかったわね、梓ちゃん」

梓「え、いやあの……」

紬「ねっ」

梓「……はい」
50 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:18:49.49 ID:8NOhjUsgo
澪「やあ、いいところだなぁ、花がいっぱいだ」

律「なんで澪まで来てんだよ」

澪「そんな冷たいこと言うなよ」

律「地獄の獄卒のくせに」

澪「だって寂しいじゃないか……お前らがいなくなっちゃたらひとりでバンドも出来ないしさ」

律「また他のメンバー探せばいいじゃないか」

澪「やだ、お前らがいい」

律「お、お断りだっ!」



憂「律さんなんか嬉しそうだね」

純「なんだかんだで一番仲いいしね」
51 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:20:00.17 ID:8NOhjUsgo
律「そこっなんか言ったか?」

純「何も言ってませーん」

澪「なぁいいだろ、なぁー、バンドやろうよー」

律「参ったな……唯、どうする?」

唯「私はいいよ〜、せっかくギター弾けるようになったし楽しいもん」

律「そりゃあたしだってドラム好きだけどさー、あの練習量はきついからなあ」

澪「あれは地獄の決まりだから仕方なかったんだよ、」

律「ちっ仕方ねーな、じゃ度を超えた練習はなしだぞ」

唯「澪ちゃん、お手柔らかにっ」

憂・純「お願いしまーす」

澪「あ、いや……こちらこそ」
52 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:21:04.40 ID:8NOhjUsgo
梓「あの……そのバンド、私も……そのう、一緒に」

唯「ほんとっ!?」

純「梓、楽器できるの?」

梓「ギターなら少しだけど……」

唯「いいよっ、ねっ、りっちゃん、澪ちゃん」

律「おういいぜー」

澪「もちろんだ、頑張って練習しような」

紬「私も私も〜」

梓「えっ?お釈迦様も?」


和『……往生後ティータイムの誕生でございました……』
53 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:22:09.46 ID:8NOhjUsgo
澪「よーしっ練習するぞー!」

梓「おーっ!」

律「えー?今からかよー、話が違うじゃんよー」

唯「ちょっと休んでからにしようよ〜」

紬「じゃあお茶にする?いいお供えのお菓子あるんだけど」


唯・律「おーっ!」

憂・純「おおーーっ!」

梓「えっ?お釈迦様?ちょっと獄卒さん、何とかいってくださいよ」

澪「お、おーっ」

梓「ええーっ?!」
54 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:22:47.95 ID:8NOhjUsgo

和『極楽も俄に騒がしくなってまいりました
  しかし極楽の蓮池の蓮は、少しもそんな事には頓着致しません。
  その玉のような白い花の何とも云えない好い匂が、絶間なくあたりへ溢れて居ります。
  極楽ももうひる近くなったのでございましょう』

唯「うひょっ、ひょっ、ひょっ」

憂「お姉ちゃん、その笑い方やめようよー」



                           おしまい〜♪
55 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:24:37.61 ID:8NOhjUsgo


2本目
56 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:25:10.29 ID:8NOhjUsgo
和「ある季節の終わりに」


「この頃面白い夢見るんだよ、和ちゃん」

思い出したように唯がそう言った。
あどけない笑顔は相変わらずだ。

「へえどんな?」

私はいつもどおり無関心そうに返事をする。
べつに本当に無関心ではないのだけれど。

そうそれはいつものやり取り。
私達が幼い頃から幾度と無く繰り返してきた、何気ない、でもかけがえの無い……

でもこんな時間はいつまで続くのだろう、最近ふとそんな事が頭を過る。
微かな胸のうずきと共に。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 00:25:16.68 ID:4iNFdVqnP
58 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:25:53.36 ID:8NOhjUsgo
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「え……唯がいなくなった?」

憂から着信があったのは、最後に唯と逢ってから二日後、早朝のことだ。

自室で眠っていたはずの唯が消えているという。
消えている……?
携帯の向こうで狼狽える憂をすぐ行くからと宥め、私は服を着替えだした。


静かに玄関ドアを閉める、外はまだ暗い。
焦る気持ちを抑えようと、意識してゆっくり歩を進めた。
しかし遠くない距離だ、そう時間もかからず薄暗い中に平沢家の街灯が見える。

チャイムを鳴らす間もなく憂が飛び出してきた。

「お姉ちゃんがっ……お姉ちゃんが、いないよっ」
59 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:26:47.06 ID:8NOhjUsgo
「憂、落ち着いて。律たちには聞いたみたの?」

憂を落ち着かせるため、判りきったこととは思いつつそう尋ねてみる。
しかし返ってきた答えは予想に反していた。
憂は私の他には誰にも知らせていなかった。

そしてさらに私を驚かせたのは
唯が外へ出た形跡がない、と言う憂の言葉だ。

靴は全てあるし、服を着替えた様子もない、玄関は施錠されていて、
唯の持っている鍵は財布ごと机の上に置かれている。
つまり外から施錠するのは不可能ということなどを考えても、唯が外出したとは思えないと。
本当に消えたのかもしれないと憂は言うのだ。
60 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:27:35.55 ID:8NOhjUsgo
「窓は確認した?」

「みんな内側から締まってたよ……」

さすが憂だ、取り乱していてもこれだけ状況を把握している。
その上で私だけに連絡してきたということか。


「唯の部屋見てもいいわね?」

まだ頭の中の整理が付かないままだったが、唯の部屋を確認することにする。
まずこの事態を把握しようと思った。


憂をリビングに待たせ、階段の上って唯の部屋の扉を開ける。
部屋の明かりを点けるといつもの見慣れた部屋。
何故か足音を外を[ピーーー]ように中に入る。

散らかった机、その上に置かれた財布、大事そうに立てかけたギター、空のベッド。

ベッド……
61 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:28:35.86 ID:8NOhjUsgo
ベッド?

その時突然
私はあの時の会話を思い出した。


 『この頃面白い夢見るんだよ、和ちゃん』

 『眠ってるとベッドの底が抜けてずぅ〜と沈んでいくんだよ』

 『そのうち上とか下とか、わかんなくなってね……』

 『どこかに着くと思うんだけど、そこからはよく覚えてないんだよねぇ』

 『でもすっごい楽しかったってのだけは覚えてるんだよ』

 『あれってなんなんだろうね〜』


唯は自分の夢の話を楽しそうにしていた。
何度も繰り返し同じ夢をみるのだと。
62 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:29:23.70 ID:8NOhjUsgo
そう、ベッド。

ベッドの底が抜ける、唯はそう言っていた。

「まさかね……」

ベッドに触れてみる、当然普通のベッドだ。
念のためベッドの下を覗き込むが異常などあるわけもない。


「夢の話なのよね……夢の中の……」

と考えながらも、
今はあの夢の話が気になって仕方がなくなっている。

「でも……そうね……」

私はそのベッドに横になってみた。
なにか考えがあったわけでもない。
ただそうしなければいけない、そんな気がしただけ。
63 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:30:30.13 ID:8NOhjUsgo

目を瞑る


唯の匂いがする……


頭の中でベッドの底が抜けるイメージを描く

私は宙に浮いている……


浮いている……


浮いている……

ふっ……と

…………ベッドの下に広大な空間の気配

いきなり

すうっと意識が吸い込まれるような落下感

そうして

私はその中へ深く沈み込んでいった……

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
64 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:31:33.56 ID:8NOhjUsgo

……
意識が薄れていたようだ。
ふと我に帰りあたりを見回してみる。
とても平穏な気持ちになっている、
まるで感情の起伏など忘れてしまったような不思議な気分。
足元がふわふわする。

「ここは……?あそこにいるのは……唯?」

私はゆっくり唯の方へ近づいて行った。


「あっ、和ちゃん!」

「唯、ここで何してるの?」

「あのねえ、女の子と遊んでるんだよ」

「えっ?女の子?」

「ほら、和ちゃんの後ろにいるよ」
65 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:32:31.63 ID:8NOhjUsgo
「こんにちは」

聞き覚えのある声に私は振り向いた。

「あなたは……」

「えっ?和ちゃんこの子知ってるの?」

「唯、あなた……この子が判らないの?」

「へえ?」

それは確かに幼い頃の、私が幼稚園で出会った頃の『ゆいちゃん』だった。


「あなた、ゆいちゃん……なの?」

「うんっ」

この無邪気な笑顔、こみ上げてくる懐かしさに声が詰まる。

「ゆ、唯、あなたこの子とずっと遊んでたの?」

「うんそうだよ、すごく楽しいんだ」

唯もまた無邪気に笑っていた。
66 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:33:55.66 ID:8NOhjUsgo
「おねえちゃんも、あそぼう」

ゆいちゃんが私の手を引く、その小さな可愛い手で。

思わずうんと答えそうになった言葉を飲み込み、そして彼女に告げる。

「ごめんね、私唯を迎えに来たのよ」

「ええっ、かえっちゃうの?」

途端にゆいちゃんはとても悲しそうな顔になってしまった。
そして唯のもとに駆け寄る。

「おねえちゃん、かえらないで、もっとあそぼう」

「そうだねえ、でも和ちゃんが迎えに来ちゃったから」

「だーめ、ねー、いっしょにいてよ」

しがみつかれた唯は困り顔だ。
67 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:34:59.82 ID:8NOhjUsgo
私はゆいちゃんの前にしゃがみ込んで目を見つめた。
そしてゆっくりと話して聞かせる。

「唯はね、あなたと遊ぶのが楽しくて帰るの忘れちゃってたみたい。でももう帰る時間なのよ」

「やだ、このままがいい、いまのままでいい」

「お願い、もう帰してあげて」

「だってゆい、わすれられたら、きえちゃうもん、さびしいもん」

その泣き出しそうな不安そうな、ゆいちゃんの顔
そして私は、理解できたような……気がした。

ここは、この子はきっと……
68 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:36:02.08 ID:8NOhjUsgo
「ここにはずっといられないのよ、居ちゃいけないの。唯は帰らなきゃいけないのよ」

「うそだよ、ずっとここにいたほうが、いいもん」

「唯はゆいちゃんのままじゃいられないのよ、いつまでも子供じゃ……」

「だって、だって、わすれられちゃうの、やだ」

悲しそうに言い縋るゆいちゃんを見かねたように唯が言った。

「和ちゃん、私もうちょっとここにいても……」

「だめよ、憂だって心配してるのよ、それにここは」


「え?うい?ういが、まってるの?」

憂の名前を聞いた途端ゆいちゃんの顔色が変わるのが判った。

「ええ、唯がいないって憂が探してるの」

「うい、さびしがってるの?」

ゆいちゃんは自分のことよりも心配そうな顔になっている。
69 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:37:14.63 ID:8NOhjUsgo
「うい、さびしいとないちゃうのに」

思えばこの姉妹は幼い頃からお互いのことを案じ合っていた。

「そうね、泣きそうになってたわ」

「ういがなくのだめ、ういのとこに、かえってあげて、ゆい、がまんするから」

私はゆいちゃんの頭に手をやり、その柔らかい髪をそっと撫でる

「いいお姉さんね、ゆいちゃんは」

「ゆいは、おねえちゃんだから、きえても……がまんする」

その眼から大粒の涙が零れだす。
私はその涙を指でそっと拭ってやりながら言った。

「ううん大丈夫、消えたりしないよ」

「ほんとに?ほんとにわすれない?」


「忘れないよっ」

問いかけるゆいちゃんを唯がそっと優しく抱きしめた。

「忘れたりするわけないよ、ずっと忘れない、絶対だよ」

その姿は母が子を愛おしむようにも見えた。
70 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:37:53.55 ID:8NOhjUsgo
「ありがと……あそんでくれてありがと」

ゆいちゃんの笑顔が霞んでいく

やがて……


「あ……消えちゃった」

「ううん、帰ったのよ」

「あの子、私だったんだね」

「ええ、あの頃の唯はほんとに可愛かったわ」

「えーっ、じゃあ今は?」

「さあ私達も帰りましょう、唯」

「ちょっと和ちゃん〜」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・
71 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:39:06.21 ID:8NOhjUsgo

気が付くとそこは唯のベッド。
時計をみる、私が唯の部屋に入ってから半時間も立っていなかった。

私の横には唯が眠っている、すやすやと。
その柔らかい髪をそっと撫でる。

「そうか、唯も大人になっていくのね」

ゆいちゃんの面影の残るその寝顔を見ながら呟いた
胸に微かなうずきを覚える。

「ゆいちゃん……」
心配しないでゆいちゃん、あなたは消えるわけじゃない。
子供の頃に得た、それだからこそ大切なものはずっと持ち続けられるの。
なにより唯はあなたが大好きなんだから。

そしてゆいちゃん、それは私もよ……

「私もあなたを、忘れない……」
72 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:39:44.86 ID:8NOhjUsgo
「んんーっ」

唯が呻いてもそもそっと身じろぎする

「ほら、起きなさい憂が心配してるわよ」

私がその柔らかい頬をトントンとつついてやると
眩しそうに目を開けた。

「ふぁ……え?和ちゃん?」

「おかえり、唯」

「あれ?和ちゃんどうしたの?」

きょとんとした顔で唯が尋ねてきた。
しかし、さてなんと答えようかと考える間もなく

「ん〜、まあいいや、ふわぁ〜」

と欠伸混じりに言われてしまった。
別段答えを期待していたのでもなかったようだ。
73 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:40:56.26 ID:8NOhjUsgo
「いいの?」

「うん」

「もっと驚きなさいよ」

「だって和ちゃんだし、いいよ」

言いながら唯はついっと手を伸ばすと
私のシャツの裾をそっと撫でて

「さわり心地いいね」

と微笑んだ。
74 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:41:45.49 ID:8NOhjUsgo
それから唯はシャツの裾をもそもそと指で弄びながら何か想い悩む様子。

やがてどこか言いにくそうにしながらも口を開いた。

「あのねえ和ちゃん、私夢の中にいてね……」

「知ってるわよ」

「小さい女の子がね……」

「知ってる」

「そっか、じゃあやっぱり」

「うん」


そして唯はどこか吹っ切れたようにこう言った、

「いつまでも子供じゃいられないんだね」

と……。

その表情が少し大人びたように見えた。
今、私達のひとつの季節が終わろうとしている。


また胸が少しうずいた。
75 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:42:36.70 ID:8NOhjUsgo
後を憂に任せ私は家路についた。

憂は何も聞かなかった、お姉ちゃんさえいてくれればそれでいいと、ただ嬉しそうにしていた。
勘の良い子だから何かを感じ取ったのかもしれない


朝の空気の中、銀色の空を眺めながらポツポツと歩く。
歩きながら考えた、この不思議な出来事を、その意味を。

あれは幼児期の唯、いつまでも子供でいたい唯の心の一部。
大人になろうとする唯を、子供のままでいたい唯が引き止めていた。

『いつまでも子供じゃいられないんだね』
唯の言った言葉が耳の奥で繰り返される。

今回のことで唯も成長するのだろうか。
昨日とは違う唯にまた驚かされるのかもしれない。
76 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:43:35.77 ID:8NOhjUsgo
そして私は近頃胸をうずかせていた想いに行き当たり、歩みを止める。

わかってる、私達ずっとこのままなわけじゃない。
大人になっていく不安は私の中にも、私の中にこそあったのかもしれない。

親友?友達?同級生?幼馴染?ご近所?昔の……知合い?
変わっていく、変わってきている、そして変わっていくかもしれない二人の関係への、不安。

そんな想いが胸を締め付けていた。

否応なしに時は流れ、人も街も変わっていく。
そして唯も、私も、いつまでも今のままじゃない。
77 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:44:18.75 ID:8NOhjUsgo

だから、と私は思った。

だからこそ、このかけがえのない今を大切にしたい。


そう、大切にするんだ、
二度と訪れることのないこの季節を。


この胸のうずきも懐かしく感じる時がきっと来るのだから……


そして私はまた歩き出した。


                     おしまい
78 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 00:45:23.37 ID:8NOhjUsgo
投下終了です
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 00:45:34.75 ID:4iNFdVqnP
乙!全然雰囲気の違うSSを書き分けてすごいと思う
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 00:49:48.71 ID:9Qf5SEqWo
読んでないけど凄くキモかったです!!!!!
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 00:55:16.11 ID:YyKCnQpSo
面白かったよ乙
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 01:00:23.67 ID:Fv8N9l91o
2個目いいな。しんみりした
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 01:01:37.68 ID:9Qf5SEqWo
今から即興で書きます><
二時間くらい借ります^^
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 01:03:39.37 ID:9Qf5SEqWo
律「じゃじゃーん見ろよこのキノコ!!!」どどろぱぱするろっぽーん!!

澪「うわ、なんだそれ!」

律「どうだグロテスクだろ〜」ぐいぐい

澪「やーめーろー」

律「でさ、このキノコを煎じて飲めば、同性愛者は異性愛者に戻れるらしいんだよ」

澪「はぁ? そんなの何につかうんだよ?」

律「だからぁ、こーれーを、唯と梓に飲ませるんだよ。あいつらガチっぽいだろ、あいつらの将来のためにも、ここで一度私たちが止めなければいけない」

澪「まったく話が飲み込めないんだけど」

85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 01:07:32.89 ID:9Qf5SEqWo
澪「大体、そんなキノコどこで手に入れたんだよ」

律「それはもちろんネットオークションだ」

澪「信憑性ないなぁ」

律「いやー、なんでキノコなんですか?って質問したら、『まぁつまり、そういうことなんでしょう///』って返ってきて、それでピーンときたんだよ。これは行けるって!」

澪「小学生じゃあるまいし……」ぼそぼそ

律「お、何だ、照れてるのか?」

澪「うるさいだまれ!」どぐわしゃあああ
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 01:10:12.44 ID:9Qf5SEqWo
澪「まぁオークション云々はいいとして、なんでそれを唯と梓に飲ませるんだよ。あの二人が同性愛者かわからないし、大体同性愛者だって……」

律「いーや、あの二人は絶対ガチだ!私の第六感が告げている。そして同性愛者は神に背く行為だ。故に私たちが矯正してやらなければならない」

澪「はぁ、何を大げさな……」

律「大げさなわけがあるかぁ!」どぐわしゃあああ

澪「うわ、やり返すな!」

律「神はなぜ生命を男と女に分けたか!なぜ同性同士で子供を作れないようにしたか!全ては凸凹のゲームのためだ!」

律「欠けていた窪みが誰かの愛で充足する時、そこに生命が誕生するんだ!」

律「それを何だ! 同性愛!? はん、欠けたまんまじゃないか! 神への冒涜もいいところだ!」

澪「……」

律「どうした、澪?」

澪「その通りだな、律!私が間違ってたよ!」がしっ!

律「おお!分かってくれたか!」
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 01:12:56.07 ID:9Qf5SEqWo
澪「そうだ!同性愛なんて反社会的もいいとこじゃないか!」

律「だろ、あんなふわふわな歌詞を書く澪なら分かってくれると思ったよ」

澪「うん。ピンクのロバにまたがる私を、いつか白馬の王子様が迎えにきてくれることを祈ってるんだ」

律「その域だー!!」

澪「よし、それじゃあ早速」

「ききましたよ」

律「はっ何奴!?」
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 01:16:18.04 ID:9Qf5SEqWo
梓「朝早くから部室でやけに二人がはしゃいでるなぁと思ったら。私達の中を引き裂こうたってそうはいきませんよ」

律「梓っ!くっ!聞いてたのか!だが私は、お前たちのためにだな!?」

梓「はん、余計なお世話ですよ。誰も頼んじゃあいません」

律「罵られたってかまわない。いつかお前が私に感謝する日がくる。そんなゴッホのような人生を歩みたいと思ってるんだ、私は」

梓「気取り屋もいいところですね。いいですよ。先輩方が私達の中を引き裂こうとするなら、私は唯先輩を奪って逃げるまでです」

梓「まぁ、力尽きた時はその時で笑い飛ばして下さい。私は決して後悔しませんから」

律「あんだとぉ!」

梓「大体、自分たちが倦怠期だからって、こっちも巻き込まないでくださいよ!このワルキヘッデファウスト!」

律「何の話だ」
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 01:20:10.20 ID:9Qf5SEqWo
梓「すたすたすた」

澪「おいどうするんだぁりぃつぅ」

律「なーにまかせろ。ムギに協力を仰いで、お茶の中に仕込めばいいだけさ。まさか梓もティータイムに攻撃を受けるとは思うまい」

澪「なるほど、心の鎧を脱いだ隙をつくわけだな」

律「ちょっと卑怯かもしれないが、正しい奴はいつだって卑怯だ」

澪「よし、そうときまればムギのとこだ!」
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 01:23:59.34 ID:9Qf5SEqWo
ムギ「えっと、話がよく飲み込めないんだけど」

律「飲み込めないなら咀嚼しろ。それが神の意思だ」

ムギ「要するに、同性愛はいけないから、梓ちゃんと唯ちゃんの仲を引き裂くのに一役買えってこと?」

澪「なんだ、わかってるじゃないか。その通りだよ」

律「だから、今日の梓と唯の紅茶に、このキノコの煎じ汁を仕込んで欲しいんだ」

ムギ「……」

律「あんだよぉ、ムギぃ」

ムギ「ちょっと、気がすすまないっていうか」

澪「お前も同性愛という名の病に冒されているのか!」

ムギ「だって、本人が良ければそれでいいでしょ!それを無理に引き裂くなんて!」

律「ちっ、澪頼む」

澪「よしきた」
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 01:26:35.82 ID:9Qf5SEqWo
クリスチーネ秋山の反同性愛教室

澪「つまりだよ。焼き方に生地をいれて焼けば、お菓子ができる。これは小学生でもわかる」

澪「同性愛は、焼き方が二つある状態なんだ。可愛い形がならんでいるが、お菓子はできない」

澪「お菓子ができないとどうなるか。私たちはパンを食べるしかなくなる」

澪「パンを食べるしかなくなると、主食に余裕がなくなる」

澪「主食に余裕がなくなると、アフリカに贈る食べ物がなくなる」

澪「私が説明している間にも、アフリカの子供は死んでいる」

澪「つまり同性愛者はアフリカの子供を殺して生きてるようなもんなんだよ!」びしぃ!

ムギ「感動したわ!」がしっ

律「よしきたぁー!」
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 01:31:43.28 ID:9Qf5SEqWo
放課後

さわ子「ちょっとあなたたち!掃除は!」

澪「先生、世の中には掃除よりも大事なものがあると気づいたんです」

律「埃だってゴミだって、クモの巣だってカビだって、私の大事な一部分なんだ!」

ムギ「綺麗になってなくなるものがあるなら、私達は汚いままでいいです!」

さわ子「あ、ああ、そう」

澪「いそげ!梓が来る前に!」

ムギ「なんか、マラソン大会を思い出すね!」

律「マラトンへの使者は命懸けだった、私たちだって命懸けだ!!!」
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 01:35:25.53 ID:9Qf5SEqWo
バッ

律「梓は、いない!」

澪「勝ったな!」

ムギ「まだよ!」

澪「さぁあー!煮るよ混ぜるよ!煮るよ混ぜるよ!煮るよ混ぜるよ!」

鍋「ぐつぐつ」

澪「できた」

ムギ「ちょっと不気味ね」

律「良薬口に苦しってな」

澪「あとはこれを紅茶にいれるだけだ」
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 01:39:58.36 ID:9Qf5SEqWo
ムギ「いれたわ!」

ガチャ!

梓「ちぃーす!」はぁはぁ

唯「みんな先にいっちゃうなんて酷いよぉ」はぁはぁ

律(とか言いつつてめぇらトイレでお楽しみだったんだろうが)

唯「あ、もう紅茶いれてくれたのー?」

ムギ「うん。冷めない内に」

梓「待ってください」

律ムギ澪「!!!!???
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 01:43:41.89 ID:9Qf5SEqWo
梓「……ムギ先輩は、味方だと思ってたんですけどね……」

ムギ「え、な、どういうこと!私は何もしてないよ!」

梓「気づいてないんですか?ムギ先輩は、嘘を付くと、眉毛が沢庵になる!」

唯澪律「!!!!!????」

ムギ「さっ」

ムギ「そ、そんなこと……」

梓「ええ……嘘ですよ、だが、間抜けはみつかったようですね」

ムギ「!!!!」

澪律「ちくしょぉおおおおおおー!!!!!」
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 01:46:55.34 ID:9Qf5SEqWo
梓「さぁ唯先輩、帰りましょう」

唯「え、でも部活は?」

梓「今日は私、特に唯先輩に教えて貰いたいことがあるので。ギターの練習だけなら、二人きりの方がはかどります」

梓「それに…」ぼそっ

唯「う、うん、そうだね///それじゃいこっか。ごめんねみんな、今日はあずにゃんと二人で練習するから」

律「あ、ああ……」

澪「うん」

ムギ「気をつけてね」

ガチャ

律「……負けた」ガクッ
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 01:49:28.51 ID:9Qf5SEqWo
律「だいたい、ムギが眉毛を触るから…」

澪「」ちらっ

ムギ「あ、ご、ごめんね。今日ちょっと私が受け取らないといけない荷物が届くから」ばっ

ガチャ

律「……」

澪「で、どうするんだよ」
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 01:51:25.95 ID:9Qf5SEqWo
律「はぁーあうまくいくと思ったのになぁ」

澪「大体こんなのほんとに効果あるのか?さっきはテンションフライハイだったからあれだったけど。やっぱりオークションなんて怪しさ満点だろ」

律「それもそうだなぁ。んじゃちょっと飲んでみるか」

澪「はぁ?危ないぞ馬鹿!」

律「ちょっとだけだよ。最悪お腹壊すくらいだろ。それにほら、私は異性愛者だから」ぴーす

澪「う……そ、それじゃ私も」

律「澪もやっぱり興味あるんじゃん」

澪「危ない橋をわたるときは一緒ってだけだよ」
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 01:54:51.38 ID:9Qf5SEqWo
澪「じゃあ、せーのでいくよ」

律「おう!」

律澪「せーの!」ちょぴ!

澪律!!!!!「!!!!!??????」?????
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
澪「はぁはぁ、りつぅ」
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
律「みぉ……///」
澪「んっ!!!!」
!!!!!!!!!!!チュパチュパ!!!!!!!!!!!!!!!
律「んああっあん」
???????????????????????
澪「あああmんn」!!!!??????????????
??????????????????????
????????????????????
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
〇〇〇〇〇〇〇〇♪♪♪♪♪♪
※BGMスピッツ/運命の人
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 01:58:46.35 ID:9Qf5SEqWo
澪「ん……り、りつ」

律「ああ、澪」

澪「私たち、どうしちゃったんだろ」

律「おぼえてねー。でも……まぁ」

澪「ああ、うん」

律「……」

澪「そ、そんなに見つめるなよ///」

律「……なんか、あのさ」

澪「ああ、うん、いや、でも、ほら……」

律「あのさ……」

澪「同性愛者が異性愛者になるなら、異性愛者は、って、ことか……」
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 02:01:18.22 ID:9Qf5SEqWo
律「なんとなく、あいつらの気持ちはわかるな」

澪「恋は麻薬ってことか」

律「好きって気持ちがあればさ、きっと社会とか、世間体とか、使命とか、そういうの、関係ないんだよ」

澪「みたいだな」

律「でもさ」

澪「うん。そうだな。矛盾した二つの精神は決して相容れないから」

律「終わらせよう」

ガラッ

ひゅうううううう

律「人間に翼がないのはさ、落ちられるためかもしれないな」

澪「鳥って自[ピーーー]るのかな?」

律「さぁ、調べたことないから、わかんないや」

バッ
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 02:04:42.49 ID:9Qf5SEqWo
唯「………みんな死んだ」

唯「みんな死んだみんな死んだみんな死んだみんな死んだみんな死んだみんな死んだみんな死んだみんな死んだみんな死んだ
みんな死んだみんな死んだみんな死んだみんな死んだみんな死んだみんな死んだみんな死んだみんな死んだみんな死んだみんだ
みんな死んだみんな死んだみんな死んだみんな死んだみんな死んだみんな死んだみんな死んだみんな死んだみんな死んだみんな死んだ
みんな死んだみんな死んだみんな死んだみんな死んだみんな死んだみんな死んだみんな死んだみんな死んだみんな死んだみんな死んだ」

憂「おねぇちゃん…」こんこん

唯「うるさい」

憂「ひっ!あ、で、もあずさちゃんが……」

梓「……唯先輩」

唯「……ああそっか、あずにゃんは死んでないんだね」
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 02:05:59.25 ID:9Qf5SEqWo
唯「でもさ、みんな死んじゃった、りっちゃんも澪ちゃんもムギちゃんもみんな死んじゃったよ、あずにゃん???」

梓「でも、私は生きてますよ」

唯「あずにゃんもどうせすぐ死んじゃうんだ。そしたら後、追うからさ」

梓「私は死にませんよ。力尽きるかもしれないけど、その時は唯先輩が私を引っ張ってくださいよ」

梓「辛い道でも、交代で走れば、きっと走り切れますよ」

唯「澪ちゃんとりっちゃんは、それができなかったのかな?」

梓「二人の前には、道がなかったんでしょうね」

唯「ムギちゃんは?」

梓「一人で抱え込む人でしたから……」

唯「私が、あずにゃんが、一緒に走ることはできなかったのかなぁ」

梓「……唯先輩には、私がいますよ。憂だっています」

梓「唯先輩は、誰かに頼って、誰かに頼られて、そうやって生きてきたじゃないですか」

梓「きっと、大丈夫ですよ」

梓「だからほら、一緒にこんな部屋から、抜け出しましょう……」
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 02:07:02.43 ID:9Qf5SEqWo
唯「みんなが死んで、もう5年か……」

梓「お墓参りも、久しぶりですね……」

唯「私達、なんとかやってこれたね」

梓「そして、これからもきっとやっていけますよ」

唯「そうかなぁ。そうだといいなぁ」

梓「きっとそうですって」

唯「デモの音が聞こえるよ」

梓「幻聴ですよ」

唯「あずにゃん、私たち、幸せなのかなぁ?」

梓「幸せですよ、きっと」


――二人の脳天に鉛玉が打ち込まれるのは、そう遠くない未来の話である


おわり
105 : ◆PyatAfq.54xf [sage]:2011/07/09(土) 02:08:08.25 ID:9Qf5SEqWo
2時間もかかりませんでしたね^^
まぁ、くらいなので^^:絶対二時間かかるとはいってねぇーからwwwwww
終わり
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [saga sage]:2011/07/09(土) 02:13:13.46 ID:6DjXxQtY0
9日か……。
遅刻OKなら参加したかったorz
107 : ◆6Pl2lEaW1E [sage]:2011/07/09(土) 02:25:24.93 ID:4iNFdVqnP
12:00開始に予約させてください
108 : ◆YgiDkxnzcI [sage]:2011/07/09(土) 06:34:29.19 ID:CdMzq2tAO
前の人たちお疲れ様です

では投下させていただきます

109 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 06:35:59.35 ID:CdMzq2tAO
………21XX年……まんがタイムきららに連載していた『けいおん』の人気はアニメ化をきっかけに急上昇、その勢いはまったく衰えず、アニメが終了し何十年も経ったあとでさえ、多くの人に愛されて続けていた。
そして、文明の発達にともない人間にほとんど近いロボットが産み出されたことで、半ば必然的にHTTの五人のロボットも製造、販売されるようになった。
しかし、その結果『けいおん』というものは本来の姿を失っていく。ユーザーそれぞれのニーズに合わせたキャラ改変、自らの好みに合わせた新たな設定。皆自分の思い通りにいくのだから、誰かの作った自分がいないような物語など必要なくなってしまうのだ。そして、いつしか『けいおん』は人々に忘れ去られ、道端に捨てられた古新聞のように踏みつけにされていった。

これはそんな歪んだ世界の物語
110 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 06:36:38.70 ID:CdMzq2tAO

澪「次、猫の真似!」

梓たち「にゃあ!!」

澪「一番大事なのは?」

梓たち「ご主人様の命令です!!」

澪「よーし、今日はここまでだ」

梓「あの、いいですか?」

澪「AZ‐753965、故障か?」

梓「いえ、相談があるんですけど…」

澪「わかった。あとで事務室に来るように」
111 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 06:37:30.32 ID:CdMzq2tAO

澪「あのさ、少し事務室を借りていいかな?」

事務員「バグでもあったのか?」

澪「まだ決まったわけじゃないんだけど」
事務員「そうか珍しいな。昔はともかく今は全然バグなんて見ないものな」

澪「だよな、書類とか面倒だよ」

事務員「まあ、バグには気をつけたほうがいいぞ」

澪「そう?」

事務員「ああ、1つバグがあると歯車がずれるように、そこから全部狂っていくからな」
112 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 06:38:04.08 ID:CdMzq2tAO

澪「それで相談というのは?」

梓「おかしいと思いません?」

澪「何がだ?」

梓「みんなまったく同じ。わたしって何なんでしょうか」

澪(これはバグってるのかな)

澪「そんなに深く考えないほうがいいんじゃないか?」

梓「いや、でもなんかバカらしくて」

澪「………」

梓「…どうしたんですか?」

澪「…いや、梓、お前はバグってるよ」
113 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 06:38:45.05 ID:CdMzq2tAO

梓「…バグって何ですか?」

澪「ああ、知らないよな。わたしも実際に見たことは一度しかない」

梓「澪先輩ってどのくらいこの仕事してるんですか?」

澪「二年前くらいからじゃないか。でも、仕事でってわけじゃないんだよ」

梓「それで何なんですか、バグって?」

澪「機械の故障だよ」

梓「でも、わたし前の健康診断では良好でしたよ」

澪「そうじゃない、人間でいう心の問題なんだ。」

梓「心?」

澪「なんというか、ショートケーキの苺の部分にきゅうりがのってたらおかしいよな?そういう感じなんだ」

梓「余計わかんなくなりました」

澪「…」

梓「…たぶん、喩えがまずいんじゃないですか?……2つの意味で」

114 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 06:39:40.80 ID:CdMzq2tAO

澪「…まあいいよ…それより、1つ訊いていいかな?」

梓「何ですか?」

澪「人間とロボットの違いって何だと思う?」

梓「えーと、死なないこととかですか?」
澪「死ななくても、電源がきれたらおしまいだよ。ロボットの死体処理場なんてのもあるんだ」

梓「じゃあ?」

澪「わたしが思うに人間は何にでも意味を求めようとするんだ」

澪「それに比べロボットはただただ自分の仕事をこなすだけだ」

梓「意味ですか」
115 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 06:40:07.75 ID:CdMzq2tAO

澪「…まあいいよ…それより、1つ訊いていいかな?」

梓「何ですか?」

澪「人間とロボットの違いって何だと思う?」

梓「えーと、死なないこととかですか?」
澪「死ななくても、電源がきれたらおしまいだよ。ロボットの死体処理場なんてのもあるんだ」

梓「じゃあ?」

澪「わたしが思うに人間は何にでも意味を求めようとするんだ」

澪「それに比べロボットはただただ自分の仕事をこなすだけだ」

梓「意味ですか」
116 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 06:40:46.52 ID:CdMzq2tAO

澪「…だけどさ、わたしと梓がここでこうしてることに意味なんてあるかな?」

梓「…あったらいいな、とは思います」

澪「そうか、梓は人間みたいだな」

梓「あの、澪先輩のほうが人間みたいですよ…澪先輩ってもしかして人間ですか?」
澪「…それがわたしにもよくわかんないんだよ………さ、もう行っていいよ」

梓「わたしはどうなるんですか?」

澪「追って連絡する」

117 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 06:41:16.08 ID:CdMzq2tAO

澪(あれは完全にバグだな)

澪「……バグ…か」カキカキ



個体識別番号 AZ‐753965
観察結果 『異常なし』

118 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 06:41:55.25 ID:CdMzq2tAO

憂「」

憂「…」ペラッ

母「憂、ちょっといいかしら?」トントン

憂「どーしたのお母さん?」ガチャ

母「何度も言うようだけど、学校行ったらどうかしら?」

憂「またそれ」ハァー

母「私は憂のために…」

憂「わかってるよ。だけど、高校なんていく意味あるの?」

母「だってあなたずっと家に引きこもってちゃ…」

憂「でも、わたし高校の勉強くらいならできるし、家事もちゃんとしてるよ」

母「人との関わりは本からじゃ学べないわよ」

憂「そんなの…」
119 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 06:42:31.00 ID:CdMzq2tAO

父「ただいま」

母「ほらっ、あなたからも言ってやってよ」

父「なんだ憂のことか。それなら今日友人にいいものをもらってきた」

憂「何これ?」

父「今流行りのYUI-ROBOTだ。しかも、明るい性格だっていうから憂にぴったりなんじゃないか?」

憂「…」

母「そうね、まずはロボットからでも…」
憂「…だよ」

母父「?」

憂「余計なお世話だよ!」バタン

母父「」
120 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 06:43:18.40 ID:CdMzq2tAO

憂「YUI-ROBOなんて、所詮はただのロボットだよ。ロボットなんか欲しくないよ」

憂「…」

憂「」チラッ

憂「す、すこしだけならね…」ポチッ

ウイーン

唯「こんにちは!!わたしは唯っていうんだ〜」ニコニコ

憂(テンション高い…)

唯「あなたの名前は?」

憂「憂だよ」

唯「憂かぁ〜いい名前だね!」

憂「ホントに?暗い名前じゃないかな」

唯「えー。なんか可愛い響きだよー。それにわたしと一文字違いだねっ」

憂「それって自分の名前を可愛いって言ってるんじゃ…」

唯「ぐさっ…バレちゃったかあー」
121 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 06:44:04.57 ID:CdMzq2tAO

憂「…ふふ、バカみたいだよ」

唯「えへへーやっと笑ったね?」

憂「あっ」

唯「そうだ!憂はわたしの何ってことになるのかな?彼女とか?」

憂(彼女…そっか、こういうロボットってそういう目的で買う人が多いんだった)

憂「えーと、唯はわたしの……お姉ちゃんがいいかな」

唯「じゃあ、憂はわたしの妹だね?妹よ、よろしく〜」ダキッ

憂「ちょっとやめてよ……お姉ちゃん///」
唯「いいではないか〜」

憂「もうっ//」
122 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 06:45:06.20 ID:CdMzq2tAO
グゥー

唯「あっ」

憂「ロボットってお腹すくの?」

唯「えーと、腹時計?」

憂「食べることってできるの?」

唯「うん!充電は別に必要なんだけどね」
憂「じゃあちょっと待ってて、ケーキ作るから」

唯「ケーキ?」

憂「得意なんだ…一応だけど」

唯「やったあ♪ケーキ大好き!」エヘヘ
123 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 06:45:35.28 ID:CdMzq2tAO

梓「はあー買い物面倒だなー」

梓「男さんも悪い人じゃないはずだけど……なんか違うんだよ……はあー、こんなこと考えちゃうなんて、わたしやっぱりおかしいのかな」

梓「あれっ、考え事してたら変な道にきちゃった。ここどこだろう?」

梓「あっ、あそこに人がいる。訊いてみよう」

梓「すいませーん……!!…何ここ…」

?「あれ?どうしたんだ?」

梓「律先輩!何ですかここ…って何してるんですか」

124 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 06:47:14.62 ID:CdMzq2tAO
律「ああ、わたしこいつらの処理まかされてるんだ」

梓「そういうことじゃなくてゆ、指」

律「ムギのこの指の部分まだ使えそうだからな」ボキッ

梓「ざ、残酷ですよそんなこと」

律「そうかー?もう壊れてるんだぜー。ここは壊れたやつを集める死体処理場だしな」
梓「でも…仲間ですし」

律「仲間?知りもしないのにおかしいだろー。そんなこ、わたしたちだって初対面なのになんでそんなに馴れ馴れしいんだ?」
梓「それは顔とか…」

律「顔はないだろー。だって、わたしの顔半分つぎはぎでフランケンシュタインみたいじゃん」

梓「でも…」

律「いいか梓、お前があいつらを仲間だと思うのはそういうふうにインプットされてるからなんだよ」

125 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 06:50:12.24 ID:CdMzq2tAO
律「それに比べてわたしは見てのとおり壊れてるからな。だから、こいつらを友達ともなんとも思わないよ」

梓「そんな…」

律「わたしの仕事はなあ。あそこのベルトコンベアまでこいつらを持っていって、プレス機でガシャンすることなんだぜ」

梓「お、おかしいですよ!そんなの」

律「だって見てみろよ、自分とまったく同じ顔のやつがこうやっていっぱいいる。こっちのほうがおかしくないか?」

梓「それはときどき考えますけど…」

律「考えるのかー、たぶんお前、いかれてるんじゃねー」

梓「わ、わたしもう帰ります。ここにいると変になりそうで」ダッ

律「……わたしと同じでな」

―――――――――――――――

――――――――――

―――――
126 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 06:50:44.21 ID:CdMzq2tAO

澪「ホントに行くのかよ、律」

律「ああ、バカらしいだろこんなの」

澪「でも、噂だろ?」

律「いや、わたしは見たよ。たしかに死体処理場の向こうにトンネルはあった」

澪「お前はバグってるんだ」

律「知ってるし。ムギはいくよな?」

紬「うん、わたしもおかしいと思うようになった」

澪「ム、ムギも前は行かないって」

紬「でも…りっちゃんの話を聞いてから」
律「そういうことだ。澪が行かないなら二人でいくぞー?」

澪「…わ、わかったよ」

律「よしっ、じゃあこれ」

澪「こ、これは?」

紬「ショットガンね」

澪「ど、どこでこんなものを」

律「それはいいだろ?これがあれば防衛ロボにも負けないぜ?」

127 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 06:51:16.32 ID:CdMzq2tAO

う゛ーう゛ー

ダッソウシャハッケン ダッソウシャハッケン

律「くそっ、くらえロボット」バンッ

ドンッ

澪「はあはあ、これで全部か」

律「あそこを抜ければ、ちゃんとした世界に行けるんだな」

紬「…待って、りっちゃん危ない!」

ドカーン

律「む、ムギ!」

澪「ま、まだいたのか!」

律「……ちっ」

128 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 06:51:48.98 ID:CdMzq2tAO
律「……澪、1人で行け、わたしが時間を稼ぐから」

澪「そんな…ムギや律をおいてけるわけ…」

紬「わたしのコト…ハ…イ……イ…」

澪「そんな…」

律「わたしも顔をやられちゃったみたいだしな」

澪「じゃあわたしも残る!」

律「ダメだ!!ここに残ってどうすんだよ、壊れたわたしたちはともかく、澪は記憶消されてまたもどるだけだろっ」

澪「………わかった」

律「幸せになれよ?」

澪「」ダッ

律「…さあロボットども、かかって来いよ」

ドカーン


タッタッタ

澪「はぁはぁ……バカ律………お前らのいない世界で幸せになれるわけないじゃないか…」

――――――――――――

――――――――

―――――

129 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 06:52:20.72 ID:CdMzq2tAO

梓(そういうふうにインプットされてるか……いったいわたしって何なんだろ…)

梓「この路地裏、近道なんだよね」

唯「た、助けて……」

梓「へ、唯先輩?」

唯「あ、あずにゃん、わたしもう一歩も動けないよ」

梓「ど、どうしたんですか?」

唯「エネルギーが切れちゃった」

梓「……バカですか?」

唯「だってー充電するの忘れてて」

梓「仕方ないですね、わたしのわけてあげますよ」

130 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 06:52:55.63 ID:CdMzq2tAO
ガコン

唯「あずにゃんもっとこっち寄ってよ」

梓「はずかしいですよ」

唯「だってーあずにゃんの短いから届かないんだよー」ギュー

梓「ちょっ、ちょっと///」

唯「ああっ、あずにゃんが入ってくるっ」
梓「変な言い方しないでくださいよ」

唯「よしっ充電完了!あのさ、お礼にケーキなんてどうかな?」

梓「少しなら平気ですけど」

唯「じゃあ、レッツゴー!」

梓「ゴー…?」

131 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 06:53:28.65 ID:CdMzq2tAO

梓「おいしいですね」モグモグ

唯「だねー。憂もここで働いたらいいんじゃないかなー」

梓「憂って?」

唯「妹なんだー。すごくおいしいケーキをつくるんだよ」

カランカラン

店員「いらっしゃいませー」

唯「あっまたあずにゃんだねー。もう三人目だよー。あずにゃんは人気者だ」

梓「…いや、違いますよ」

唯「そうだよ!あずにゃんはかわいいからみんな欲しがるんだねっ」

梓「そういうことじゃないです!!」バンッ
132 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 06:54:01.69 ID:CdMzq2tAO

唯「え?」ビクッ

梓「あっすいません…ただ、まったく同じ中野梓でもみんなそれぞれ違うんじゃないかなって…」

唯「…え、ええと?」

梓「例えば、今わたしと唯先輩が一緒にいて話をしてますけど、明日になったらまた唯先輩は別の中野梓を中野梓と思って話をするじゃないですか……だから」

梓「…えっと…自分で言っててわかんなくなってきました」

唯「わたしもよくわかんないけど……つまりあずにゃんはわたしに、覚えててもらいたいんだね!」

梓「そうです?……そうなのかなあ」

唯「そうだっ、いいこと考えたよ!あずにゃんマジック持ってる?」

梓「持ってないですけど」

唯「あのモフモフの店員ならかしてくれるかな?」

唯「あのーすいませーん。マジックありますか?」

店員「店の奥にあると思いますけど…取ってきますね」
133 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 06:54:36.38 ID:CdMzq2tAO

店員「あっどうぞ」

唯「ありがとう!」

梓「で、それで何をするんですか?」

唯「あずにゃん手出して」

梓「…?」スッ

唯「」カキカキ

唯「よしっ!できたあ」

梓「何ですかこのマーク?」

唯「この店のトレードマークのティーカップだよ」

梓「パクりですよ」

唯「いいんだよ!ほらっわたしにも描いたからこれでわたしたちはお互いを忘れないよ?」

梓「手のひらなんかに描かないでくださいよ………すぐ消えちゃうじゃないですか」
唯「えへへー明日もあずにゃんに会えるかな?……君だよ君」コツン

梓「はい、いいですよ」
134 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 06:55:46.25 ID:CdMzq2tAO

トントン グツグツ

梓(玉ねぎが目にしみるなー)トントン

男「お前最近よく出掛けてるがどこに行っているんだ」

梓「唯先輩と会ってるんですよ」トントン

男「……そうか。今日も行くのか?」

梓「はい、まずいですか?」

男「いや…いいんだ………」

梓「あっ、いったあ」

男「どうしたんだ」

梓「いや、指切っちゃいました」

男「なんだ、お前最近になってになってからなにするのもぎこちなくなってるな」

梓「あ…すいません」

男(……唯先輩、か)

135 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 06:56:16.52 ID:CdMzq2tAO

梓「唯先輩、ちょっとは待ってくださいよー」

唯「だって、あずにゃんに会えると嬉しいんだもん」ダキッ

梓「もうっ、抱きつかないでくださいよ」
唯「わたしだって、どのあずにゃんにも抱きつくわけじゃないんだよー?」

梓「やれやれ///」

唯「あずにゃん今日は向こうのほうに行こうよ」

梓「いや向こうは…」

唯「なんでさ?はやく行こ行こー」ダッ

梓「…」
136 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 06:56:51.35 ID:CdMzq2tAO

唯「わあ……あずにゃんここは?」

梓「死体処理場らしいですよ…わたしたちの」

唯「こんなところがあるんだね……あずにゃん何探してるの?」

梓「いや、前はここに律先輩がいたんですよ」

唯「あっ、あそこの小屋じゃないかな?行ってみようよ」

梓「そうですね」

トントン

梓「誰かいませんかー」

律「はーい…って梓かよ」ガチャ

梓「覚えててくれたんですか」

律「まあな、壊れてるからちゃんとわかるんだよ。それにこんなとこに来たのお前くらいしかいないからな」

唯「わたしもいるよー」ヒョイ

律「へえ、唯か」
137 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 06:57:38.58 ID:CdMzq2tAO
唯「」ジー

律「どうしたんだ?」

梓「中に入れてくれオーラですよ」

律「やだよ。帰れ帰れっ」

唯「りっちゃんとわたしの絆はそんなものだったの?」

律「いいか唯…唯とわたしは会ったこと……」

唯「知ってる!!でも、今からりっちゃんと仲良くなりたいんだよー」

律「ふうー勝手にしろよ」

唯「やったあ!」

律「なあ、お前あいつ改造でもしたか?」
梓「さあ」
138 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 07:01:08.57 ID:CdMzq2tAO

律「ムギーなんか唯と梓が来たからー」

梓「ムギ先輩なんてどこにいるんですか?」

律「そこ」

唯「パソコンみたいなのが置いてあるだけだよー?」

律「だから、それがムギなんだよ」

梓「えっ、それってどういう…」

紬「こんにちは♪唯ちゃん梓ちゃん」

梓「わわっ」

唯「すごいっ、しゃべれるんだー」

紬「ふふっ、声も聞こえるわよ」

律「目はみえないけどな」

唯「どうなってるの?」

律「ムギの人工知能をパソコンに移してあるんだ」

梓「…そんな」
139 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 07:01:40.92 ID:CdMzq2tAO

紬「梓ちゃん、これでも毎日が楽しいのよ」

梓「辛かったりはしないんですか?」

紬「ううん、ぜんぜんよ。だってりっちゃんが毎日わたしのためにお話してくれるんだもの」

紬「完全に壊れてたわたしをここまで直してくれたのもりっちゃんなのよ」

梓「へぇーけっこういい人じゃないですか」

律「う、うるせーし。わたし外にいるからな」バタン

唯「照れてる」

梓「照れてますね」

紬「うふふ、唯ちゃんと梓ちゃん息ぴったりね」

梓「えっ///」

唯「そうかな///」

紬「照れてるわよ〜」
140 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 07:02:09.99 ID:CdMzq2tAO

唯「りっちゃんここにいたんだー」

梓「見直しましたよ、律先輩」

律「そうだろ」

唯「また会いにきていい?りっちゃん」

律「りっちゃんになら道をぷらぷらしてれば会えるんじゃないか?」

梓「わかってるくせにです」

唯「りっちゃんにはしるしがついてるからすぐにわかるね」

律「しるし?」

唯「そうだよー。顔を見ればすぐりっちゃんだとわかるよ」

律「確かにそう考えればこの顔も悪くないかもなー」

唯「またねーりっちゃん!」
141 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 07:02:45.56 ID:CdMzq2tAO

唯「憂、ただいまー」

憂「おかえりーお姉ちゃん」

唯「いい匂いがしますなー」クンクン

憂「さすがだね?今日はお姉ちゃんの大好きなハンバーグだよー」

唯「やったあ!!」

憂「えへへ」ニコニコ

唯「早速いただきまーす」モグモグ

憂「どうかな?」

唯「言うまでもないね。憂の作ったものは世界一だよ!」

憂「ありがとー。今日も梓ちゃんと遊んでたの?」

唯「そうだよー」

憂「だって、お姉ちゃんは梓ちゃんのことが好きなんだよね?」ニコニコ

唯「うん!でも、憂のことも大好きだよー」ダキッ

憂「…」

唯「そうだ、今日りっちゃんとムギちゃんと仲良く…憂?」

憂「…嘘つき」
142 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 07:03:30.80 ID:CdMzq2tAO

憂「お姉ちゃん、嘘つかないでよ!!」

唯「う、ういぃ…」オロオロ

憂「なんでわざわざ嘘つくの?お姉ちゃんが梓ちゃんのこと好きなのは誰でもわかるよ?梓ちゃんが家に来たときだって……」
唯「…うぅ」

憂「……ロボットだからだよね。主人には逆らえないよね………だからロボットなんて嫌いなんだよ!!…わたしのこと好きなんて言わなくていいから」ポロポロ

唯「……ごめんね、憂」ギュー

憂(ロボットなのになんであったかいんだろ)

憂「……わたし…寂しくて、かまって欲しくてこんなことして……ホントにダメな妹だよね」

唯「そんなことないよ!憂は優しくて、料理も上手くて、いろんなこと知ってて…最高の妹だよ」

143 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 07:04:26.32 ID:CdMzq2tAO

憂「でもわたし…お姉ちゃんに友達ができたって聞いたとき嫉妬して、それで……」
唯「それはわたしが…」

憂「ううん、こういう時背中を押してあげるのが本当の妹だよ……どうしたらわたしたち本当の姉妹になれたのかな?」

唯「憂…」

憂「ごめんね、こんなに手を焼かせる妹で」

唯「大丈夫だよ!憂、わたしはロボットだからねっ。手が焼けたくらいなんでもないよ?」

憂「…比喩だよ?」

唯「知ってる」ニコッ

憂「…ふふっ、おかしいよ」

唯「えへへーでしょでしょー」

憂「……あのさ…今日は一緒のベッドで寝てもいいかな?」

唯「もちろんだよ!」
144 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 07:04:56.55 ID:CdMzq2tAO

男「梓、少しこっちにきてくれないか?」
梓「何ですか」トコトコ

男「悪いな」ポチッ

梓「」プシュー

男「このコードをコンピューターにつないでっと」

男「……あとは」カタカタ
145 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 07:05:49.16 ID:CdMzq2tAO
男「……これか」ポチッ

唯『あずにゃーん』ダキッ

男「ちっ…イチャイチャしやがって」

唯『この手のひらがあずにゃんとわたしのしるしだよー』

男「しるし?…たしかに唯と出会ってからの梓はぎこちなかったが」

男「あれは…絵が消えないように利き手を使っていなかった………俺はそんなこと気にもしなかった」

男「……」

男「くそっ、たかがロボットじゃないかなにを躊躇してるんだ?」

男「そう…たかがロボットだ」

ポチッ『消去』
146 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 07:06:23.29 ID:CdMzq2tAO

憂「いよいよだね、お姉ちゃん?」

唯「えっ、う、うん」

憂「緊張しちゃダメだよーリラックスリラックス」

唯「うん、リラックスリラックス♪」

憂「じゃあ、この信号渡ったらお別れだねー」

唯「…」

憂「そうだよね?絶対上手くいくよ!」

唯「憂……今までありがとう!憂は最高の…」

憂「お姉ちゃん!……信号青になったよ?」

唯「……」

憂「……?」

147 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 07:07:22.15 ID:CdMzq2tAO
唯「背中…」

憂「えっ?」

唯「背中押してよ……そしたら、本当の姉妹になれるから!」

憂「…それは比喩だよ?」

唯「知ってる」

憂「……背中押すってのはいいかも、涙を見せなくてすむから」

唯「…うん」

憂「いってらっしゃい」ポンッ

唯「いってきまーす!!」

148 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 07:07:51.32 ID:CdMzq2tAO

梓「気がついたらここに……何か忘れてる気がする…そうだ、今日は唯先輩が大切な話があるって」

梓「はあ、もう間に合わないだろうなー。何があったんだろ……あっ唯先輩が手に描いてくれたマーク見えなくなってる」

梓「たしかこんなんだっけ」カキカキ

梓「地面に1人で絵描いてると本格的にみじめだな………」

ダキッ

梓「?」

149 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 07:08:36.88 ID:CdMzq2tAO
唯「あーずにゃん」ニコッ

梓「わわっ、唯先輩?」

唯「ほらっ、ちゃんとマーク消えてないよ」ジャーン

梓「…よかったです」

唯「あずにゃん探したんだよ?」

梓「すいません……でも、わたし何してたか記憶がなくて…帰る場所もないんですよ」

唯「わたしも帰る場所ないんだー」エヘヘー

唯「じゃあ行こっか?」

梓「どこへ?」

唯「頼れる友達のところだよ」
150 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 07:09:11.55 ID:CdMzq2tAO
コンコン  ガチャ

唯「よっ!りっちゃん」

梓「こんにちは、律先輩」

律「また、お前らかよー」

梓「また、とはなんですか」

唯「実はかくかくじかじかで」

律「あーそりゃお前ら捕まるな」

梓「捕まる?」

律「基本ロボットは主人なしじゃその存在を認められないんだよ。ロボット二人なんかで暮らしてたら捕まるよ。捕まって、記憶なんかを消されて、さよならだ」

梓「じゃあ、律先輩は…?」

律「ああ、わたしはこの仕事があるからなー特別措置だ。」

唯「…そんな」
151 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 07:09:45.91 ID:CdMzq2tAO

律「まあ、方法がないわけじゃないけどな」

梓「あるんですか!?」

律「その向こうにトンネルがあるだろ、そこをくぐればいいんだよ」

唯「えっ!それだけで?」

律「ああ、それだけで別の世界に行ける」
梓「じゃあ、なんで誰も行かないんですか?」

律「普通のやつはその向こうに行こうとなんかしないさ。それをするのは頭がいかれちまったやつだな」

律「まあ、防衛ロボもいたことはいたんだけど今はいない」

唯「なんで?」

律「さあ、ヒーローがショットガンでブッ飛ばしたんじゃないか?」
152 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 07:13:42.58 ID:CdMzq2tAO
唯「じゃあ行くね!いろいろありがとう!」

律「ああそうだな。はやく行ったほうがいい」

梓「ムギ先輩にもよろしく言っておいてください」

律「りょかーい…」

唯「?」

律「なんというかさうまく言えないんだけど、例えば高校の廊下なんかですれ違ったりしたら、わたしたちいい友達になれたかもな」

律「つまり、まあ幸せにやれよってことだよ」

梓「律先輩!」

律「ん?」

梓「…今でも、わたしたちは友達ですよ」
律「ふふっ…そうだなーわたしたちは友達だ」

唯「じゃあねーっ」

梓「さようならーっ」
153 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 07:14:39.78 ID:CdMzq2tAO

憂「お姉ちゃん、行っちゃったなあー」

憂「うん、これからは気持ちを切り替えて強く生きてかないとね………はあ」

憂「あれっ?この店のマーク見たことある…うーん……そうだ!お姉ちゃんがよく手のひらに描いてたっけ」

カランカラン

店員「いらっしゃいませー……って憂じゃん!」

憂「え、えっと………」

店員「純だよっ純!…ほらっ中学のとき同じクラスで…」

憂「たまたま同じ高校だった……斉藤さん?」

純「わざとっ!?」

憂「うん」

憂「お、覚えてるよ…わたしたちの中学からあの高校行ったのわたしたちだけだもんね」

純「そうだよっ。それで憂には一度話しかけようと思ってたんだ……なのに不登校になっちゃうなんて」

憂「えへへ」
154 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 07:15:09.26 ID:CdMzq2tAO

純「まったく憂は勉強もできて、かわいくて、スポーツも万能でわたしの憧れだったのに……なんでなの?」

憂「それは……えっと」

純「やっぱ、嫌なら言わなくてもいいよ」
憂「でも、学校行こうって今日決めたよ」
純「よしっじゃあわたしが毎日迎えに行ってやろう」

憂「いいの?」

純「もちっ!よしっこのケーキはわたしの奢りだ」ドンッ

憂「純ちゃんが作ったの?」

純「まさか」

憂「ふふっ、よかったら今度一緒にケーキ作らない?」

純「お願いします!憂師匠!」
155 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 07:15:46.17 ID:CdMzq2tAO

事務員「何かあったのか?」

澪「いや、わたしの教育した梓が脱走したらしい」

事務員「そりゃ大変じゃないか」

澪「そうなんだよ。だから、今から死体処理場周辺を聞き込みだよ」

事務員「それにしては嬉しそうじゃないか」

澪「手のかかる子供ほどかわいいって言うだろ?」

事務員「そういう問題じゃないだろ」

澪「いや、そういう問題なんだよ」

156 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 07:16:16.36 ID:CdMzq2tAO

律「ムギー。唯と梓は行っちゃったぜ。よろしく、だって」

紬「うふふっ、あの二人なら大丈夫よ、きっと」

律「ああ、そうだな…」

紬「…澪ちゃんのこと考えてるの?」

律「まあな。ムギはなんでもお見通しだな」

紬「真っ暗な世界にいると、逆に目に見えないものが見えるようになるのよ」

律「残念だけど、もうすぐムギの体完成しそうなんだぜ……あんまりうまくないけどな」

紬「十分よ」
157 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 07:16:51.43 ID:CdMzq2tAO
コンコン

紬「あらっ、最近は来客者が多いわね」

律「あいつらのせいで、ノックがあるとなんかいいことが起きるんじゃないかって気がしちゃうな」

紬「今回もいいことがあるわよ♪」

律「じゃあそうなんだろうな。ムギはなんでもお見通しだからな!」

コンコン

律「ちょっと行ってくるよ」

律「はーい」ガチャ

律「………」

律「ってお前かよっ!!」

紬「ふふふっ」
158 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 07:17:23.75 ID:CdMzq2tAO
カツンカツン

梓「…どこまでいけば抜けられるんでしょうね」

唯「もうけっこう歩いたよー」

梓「暗くて、寒いですよね。1人だったら引き返してました」

唯「あずにゃんがいてよかったよ」

梓「わたしもですよ。唯先輩が…」

唯「あっ、あずにゃん見て!」

梓「もう…なんですか?」

唯「あそこ花が咲いてる!」

梓「よく見えますね」

唯「暗やみに目がなれちゃったよーほらっここ、ここ」

梓「なんで、こんな暗やみに花が咲くんでしょうね?」

唯「わかんないなーでも、きれいだよっ」
梓「たしかにすごくきれいです」
159 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 07:17:52.50 ID:CdMzq2tAO

唯「あっ、あずにゃん!」

梓「今度はなんですか?」

唯「光が見えるよっ!」

梓「やったですっ!これで抜けられますよ」

唯「ほらっ、あずにゃん手だして?」

梓「?」スッ

唯「じゃあ行こうかっ?」ギュッ

梓「はいっ」ギュッ

160 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/09(土) 07:19:40.77 ID:CdMzq2tAO
終了です
長々とすまん
161 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/09(土) 08:02:08.34 ID:vxxHoEm3o
やっべ時間だ
書き溜めしようとしたけど進まないや

人いる? 時間かけて大丈夫?
162 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/09(土) 08:14:19.93 ID:vxxHoEm3o
いないっぽいね
始めます


純「今時タイムマシンとかタイムトラベルとかないわー」
163 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/09(土) 08:18:09.18 ID:8NOhjUsgo
オハヨウゴザイマス
皆さんお疲れ様です

>>161

>>107さんが12:00からだからそれまではいいと思いますけど
164 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/09(土) 08:18:24.18 ID:vxxHoEm3o

……真っ先に、そう口にしたかった。
私のキャラとかそういうの関係なく、誰もが友人からそう話を振られたらまずはとりあえず笑い飛ばすだろう。
ただ、私は笑い飛ばせなかった。理由はたった一つ。眼前にいる友人は、そういう『意味のない嘘や冗談』とは無縁の存在だから。

憂「……本当だよ。私は、大切な人を守るために戻ってきたんだよ」

純「……まぁ、とりあえず話くらいは聞いてみてから考えるよ」

憂とは長い付き合いだ。大体のことは理解している。
決して『全く嘘をつかない』というわけでもなく、時には私や梓をからかったりするお茶目な面も見せる。
でも前述の通り、ついていい嘘とそうでない嘘はわきまえている子だ。だから結局、今の時点で私は『憂を疑いたい』だけであって、そして同時にそれが叶わぬ望みであることも既に理解している。

――楽しく生きれればいい私としては、面倒事はゴメンなんだけどなぁ。

165 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/09(土) 08:20:48.81 ID:vxxHoEm3o
>>163
ありがとうございます
時間ありすぎワロタ

なるべく早く終わらせますけど飛び入り希望の人とか居たら言ってくださいね
166 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/09(土) 08:28:09.63 ID:vxxHoEm3o


――金曜、朝のHR前。


憂「――じゃあまず見て、これ」

そう言って憂が私の手の平に載せたのは、円筒状のライターのようなもの。
サイズはまさにそれくらいのもので、違う所といえばライターで言う着火ボタンが上部全体に大きく一つあることと、本体の部分にダイヤルの目盛りとそれを動かすらしきツマミが縦に三桁分ついてることか。

純「これが…?」

憂「うん。タイムマシン」

純「……っていうかそんな無用心に渡していいの?」

憂「まだ動かないからね。好きにいじってみていいよ。そもそも純ちゃんなら大丈夫だし」

純「……んじゃお言葉に甘えて」

おそるおそる一番上のツマミを回そうとするがなかなか回らない。

憂「誤動作防止も兼ねてるんだろうね、もっと力入れてみて」

純「よっ……と!」

カシャン、と音がしてダイヤルが回る。三桁とも0だったものが一番上だけ1になった。
しかし、少し違和感を覚える。今の回り方……

純「……かなり勢いよく回ったんだけど……なんていうか、半周くらいしたような」

憂「うん。0と1しかないみたい」

純「マジですか」

もう一度回してみると表示される数字は0に戻ってしまった。確かにその二つしかないようだ。
二段目も回してみるが同じようだ。そして三段目は……

純「……ツマミがないよ?」

憂「…うん。昨日壊れちゃって」

純「ふーん……」

よく見てみると確かに根元からポッキリと折れている。ここまで綺麗に折れてるとラジオペンチか何かで摘んで回すのも無理だろう。

純「普通に考えると、このダイヤルで戻る時間を指定するんだよね?」

憂「うん……」

純「となると、このツマミが折れたのってすっごい勿体ないんじゃ……」

憂「うん。ホントに計算外だったよ……これのせいで三日しか戻れなくなっちゃったんだ」

純「三日? どういう仕組み?」

憂「うん、まずね、これは戻る『日数』しか指定できない。24時間単位。つまり戻っても時計の針は変わってない」

純「でもカレンダーは戻ってる、と?」

憂「そうそう。それで日数の指定法がこのダイヤル」

純「って言っても0と1だけじゃ――あ、出来るね」

憂「うん。二進法」

ということは『000』はもちろん0日。
一番上を1にすれば『001』となって1日。真ん中を1にすれば『010』で2日。両方1にすれば『011』で3日、ということか。
三桁目まで回せれば最大一週間の時間を戻れる。これは確かにもったいない。
167 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/09(土) 08:42:25.04 ID:vxxHoEm3o

憂「そしてこれが地味に面倒なんだけど、最低三日経たないと再利用できないの」

純「えっ、それじゃ一日とか二日だけ跳ぶのって無駄じゃない?」

憂「まぁそうなんだけど、どうしてもその日に直接戻りたいって思う時もあるかもしれないじゃない」

純「まぁ、ね。あー、だから最初に『まだ動かない』って言ったワケね」

まだ三日経っていないのだろう、憂が使ってから。
しかし、聞けば聞くほど不便な機械である。
そもそも三日しか戻れないというだけで使い道が限定されすぎている。せめてもっと戻れたら……

純「……ん? ツマミが壊れる前まで時間をさかのぼれば直るんじゃない?」

憂「直らなかったよ。私と一緒に時間を跳ぶんだから、この機械だけは時間が戻ってないんじゃないかな」

まぁ確かに、タイムマシンを使ってタイムマシンの無い時代に跳んで、挙句『戻れなくなりました』では笑えないし。
時間を操る機械は、時間に縛られることはないのだろう。この場合は不都合極まりないが。

純「とりあえず、今はまだ憂が跳んでから三日経ってないわけだ」

憂「っていうか今日に跳んだんだけどね」

純「つまり使えるのは三日後かぁ。ちょっと残念」

今日は金曜。三日後は月曜。土日を繰り返せるというのはちょっと嬉しい気もするけど。
……いや、喜んではいられない。憂が最初に言った言葉を思い出す。


純「……で、戻ってきた目的は?」

憂「…大切な人を守るため」

純「もっと具体的に」

聞かなくても、深刻な話であることなんて予想できる。憂の表情を見れば尚更だ。
でも、聞かないと始まらない。聞いて後悔することになろうとも、知ってしまった以上、それは義務だ。


憂「――明後日、梓ちゃんが死ぬの」

168 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/09(土) 08:53:00.48 ID:vxxHoEm3o

――私の胸中は複雑だった。

大切な友人である梓が死ぬと言われて、困惑するのは当然だ。
だがそれ以外に、『梓でよかった』という思いがあったことに、我ながら驚く。そして次にそんな自分に対する嫌悪感が襲い掛かり、まさに胸の中はぐちゃぐちゃになってしまう。

――決して、梓に死んでほしいと思っているわけではない。
でも、憂や唯先輩などの私と付き合いの長い人達に比べれば、まだマシかな、と思ってしまう。

私はこうも容易く命に優劣を付ける人間だったのか。そう考え始めると、どんどん心に黒いモヤがかかっていくようで。

――あぁ、でもこの感覚、覚えがある。

唯先輩に抱きつかれている梓を見る度に。
軽音部のことを楽しく話す梓を見る度に。

私も軽音部に入っていれば良かったな、と思ってしまう。
その度に、梓を見る度に、黒いモヤを感じる。

早い話が、私は唯先輩と近しい梓に嫉妬していた。

唯先輩とは、憂つながりで昔から何度か顔を合わせている。年上でありながら私達よりも態度が幼く見える先輩は、私が置き忘れてきたモノを全て持っているようで、どことなく暖かかった。
その感覚は憂もわかるようで、憂は私に唯先輩の入っている軽音部を紹介してくれた。というか一緒に見学に行った。

実は私は中学時代から楽器を(所持してこそいないものの)少しだけ齧っていて、その流れで中学卒業の時点で私は軽音部に興味を持ってはいた。
いたのだが、そこで見た光景はあまりにも適当で、マジメさの欠片もなくて。
中学から楽器を齧っていた私は、高校から楽器に触れた唯先輩はもっとマジメにやっているだろうと思っていたから、柄にもなく失望してしまって軽音部には入らなかった。
……今考えれば、あの唯先輩だからあれくらいが丁度いいのだとは思う。それにどんな形であれ、あそこで入部していれば唯先輩とセッションできたのだ。それこそあの時まで戻れるなら戻りたい。

……それ以来、現実逃避も兼ねて澪先輩に憧れてみたりもしたけれど、高嶺の花すぎて惨めになるばかりだった。

きっと私の澪先輩に対する憧れは『その背中を追いかけたい』のようなものであって。
そして件の唯先輩に対しては『隣で支えて欲しい』のようなものなのだろう。先輩らしくない距離感も、唯先輩の魅力だと思う。

だから、唯先輩と仲良くしている梓を妬む気持ちは多々あった。
もちろん表には出さない。梓はいい奴だから、表に出してはいけない。私だってこのいい奴の友人を失いたくはない。
だから、嫉妬の気持ちはほぼ完璧に抑えつけてきた。

……けれど、こういうふとした機会に、私の中で鎌首をもたげて暴れだそうとする。

憂「――純ちゃん?」

純「……今更だけど、信じられないよ。梓が死ぬだなんて…」

梓が死ねば、私はもうこの黒いモヤに悩まされることはなくなるのだろう。
でもそれは、大切な友人を一人失ってまで得る価値のある安息なのだろうか?
……答えが出せない私は、自分の心を置き去りに、常識に縛られた反応をすることしか出来ない。憂はこういう嘘を吐かないとわかっているのに。

憂「……信じてもらわないと困るんだけど……どうすれば信じる?」

純「それこそ、実際に死ぬまでは信じられない」

憂「そっか。じゃあ二日後には答えは出てるね」

純「……随分あっさりじゃん。大切な友人とか言っておきながら」

憂「……私一人じゃ、何度やっても救えなかったから。純ちゃんに縋るしかないから、だから、信じてもらうためには…仕方ないよ」

……なんだろう、この矛盾。違和感。
梓のことを助けるために戻ってきたはずなのに、今は梓を諦めると言う。しかも、本当にあっさりと。
どういうことなんだろう?

そういえば、と、少し前にやったタイムトラベルを題材にしたゲームを思い出す。
同じ時間を何度も過ごす主人公の心は次第に壊れていき、仲間の命を慈しむ気持ちすら忘れかける。どうせまた時間を戻れば生き返るんだから、と。
……今の憂も、同じようなものなのかもしれない。

純「……わかった。明後日に梓が死んだら、ちゃんと信じる」
169 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/09(土) 09:03:46.86 ID:vxxHoEm3o

それから、暇を見つけては憂からタイムマシン(というには小さすぎるが)の説明を聞いた。

純「っていうかさ、要は私の力を借りたい、ってことだよね? でも憂でダメだったんなら私でも無理だと思うけど、どうなの?」

憂「ううん、そうじゃなくて、二人ならなんとかできるかも、ってこと。これに触れてれば一緒に跳べるらしいから」

純「ふーん。じゃあ別の質問だけど、タイムパラドックス的なことは起こりうるの?」

過去の自分に遭ってしまって宇宙の法則が乱れる、的なアレだ。

憂「起こらないよ。私自身に遭ったことは一度もない、っていうかその時に私がいた場所に跳ぶから…」

純「ああ、意識だけが肉体に跳んでるって考えるのが自然か。時空跳躍じゃなくて時間跳躍、みたいな」

憂「たぶん。髪とか爪とかの長さも戻ってる気がしたし、実際そんな感じの説明をされたし」

純「…そういえば、どうやって手に入れたの? それ」

憂「……怪しいオジサンから貰った」

純「ちょっ」

憂「わ、私も怪しいと思ってたんだよ!? だから今まで使わなかったの! でもさすがに…大事な人が死んじゃったら、怪しい物にも縋りたくなるよ……」

純「……大事な人、か」

梓を指すその言葉が、憂の口から出たものであることに私は安堵していた。
唯先輩のではなく、憂の口からであることに。
もし眼前にいるのが唯先輩で、その口が梓のことばかりを案じていたら……

――いたら、私はどうするのだろう。
――いっそ、私が梓を…殺してしまうのだろうか。

……馬鹿馬鹿しい。私にそんな度胸はないし、あったとしても何度も言っている通り、梓も大事な親友だ。殺せるわけがない。
でも、それでも、それは『唯先輩の気持ちは私には向いていない』のと同義なのだから……やっぱり、嫉妬に狂って何かやらかしてしまう可能性は否定できない。
……だから、今はとりあえず唯先輩のことは頭の片隅に退けておこう。唯先輩が梓をどう思っているかなんて、今は考える必要はない。

梓「――二人とも、何話してんの?」

純「乙女の秘密の話を盗み聞きするなんてシュミが悪いぞ〜?」

梓「私も分類的には女だから聞いていいと思うんだけど」

純「まぁそうなんだけどね。どーでもいい話だし、無駄にハードル上げるのはやめときますか」

タイムマシン談義は、大抵こうして梓の乱入で打ち切られる。
別に焦って聞きだすような事は無いし、梓と話すのも楽しいからそれは構わない。

梓「どうでもいい話ならどうでもいいや。それより憂、唯先輩ちゃんと自主練してる?」

……構わないんだけど、やっぱり梓の口から唯先輩の話が出ると、少し気分が滅入る。
軽音部に入っていない私は梓よりも唯先輩との関わりが薄い。憂に至っては姉妹という、誰にも切り裂かれることの無い絆を持つ。
憂と二人でいた頃は、唯先輩の話題を振られても何とも思わなかったものだが。

憂「してるよー。部活でのお姉ちゃんはどう?」

梓「どうって言われても……答えにくいなぁ」

そして、軽音部の話題が出た場合は。
軽音部所属の姉を持つ憂に私が軽音部事情で勝てるはずも無く、軽音部に属している梓に対しては勝負にすらならない。

私は、唯先輩の、あるいは軽音部の話題が出る度に疎外感を感じてしまっている。そしてその話題がこの二人の口から出ない日なんて皆無なわけで。

憂「……純ちゃん? どうしたの?」

純「へ? 何が?」

梓「…なんか落ち込んでるように見えたよ? 珍しい」

純「私だって落ち込むことくらいあるよ」
170 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/09(土) 09:16:16.35 ID:vxxHoEm3o

梓「へぇー」

純「信じてないなー?」

梓「話してくれたら信じてあげるよ」

純「うっ」

……こいつ、部活でからかわれることが多いからってこれ見よがしに私に絡んできやがった。
まぁ、もしかしたら半分くらいは私を案じてくれているのかもしれないけど、それだったら素直に案じてくれ、と思う。
それこそ憂みたいにさ。

憂「」ニコニコ

純「……憂は何をニコニコしてるわけ」

憂「ん? 仲いいなーと思って」

梓「憂もちょっと唯先輩みたいな物の見方する時あるよね」

純「それは否定できない」

長い付き合いだし、憂にそういう一面もあると知ってはいる。勿論、それが悪いことだとは思わない。
でも。

純「…深い意味は無いよね?」

憂「深い意味って?」

純「いや…なんでも」

でも、今はちょっと事情が変わってくる。
何といっても、梓が二日後に死ぬと憂は知っている。いや、言っている。
その上でそんな笑顔を向けられると…深読みもしてしまうというものだ。

憂「あ、そういえばお姉ちゃん、学校来てるかなぁ」

梓「え、どういうこと?」

憂「朝起こしたんだけどね、なんかすごくしんどそうで」

純「置いてきたってこと?」

憂「むしろ休ませようとしたんだけど、学校には――っていうか部活には出たいから、って言ってて」

梓「ふーん……メールしてみようかな、次の休み時間でも」

憂「じゃあ、梓ちゃんに任せてみようかな」

純「憂も心配なんでしょー?」

憂「心配だけど……来るって言ったら絶対来るから大丈夫だよ、お姉ちゃんは」

……あれ? 唯先輩絡みの話をあっさり流すなんて憂らしくないなぁ。
あ、そうか、この日を何度も繰り返してる憂は唯先輩が大丈夫だということも知っているのかもしれない。
それこそ、いつごろ来るのかまで。
……休みならお見舞いとか行ってみようかと思ったけど。残念。


――結局、唯先輩は放課後に部活にだけ来る可能性が高いと梓から聞いた。
それってほとんどサボりじゃないですか、唯先輩……
171 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/09(土) 09:28:45.03 ID:vxxHoEm3o


――そして放課後。

憂「梓ちゃんは部活行ったよね」

純「うん。で、話って?」

憂「……明後日のことについて、だよ」

梓の死ぬ(らしい)日、か。
……まさか死ぬのを見届けろなんて言わないよね?

憂「梓ちゃんが死ぬのはね、夜の8時。20時」

まぁ日曜の夜8時といえば…ギリギリ外にいる時もあり、家で食事している時もあり、お風呂に入っている時もあり。
何が起こっても不思議の無い時間である。

純「……寸分の狂いも無く?」

憂「たぶん。それでね、私が跳んだのはそこからちょうど12時間後、月曜の朝の8時」

純「ふむふむ」

憂「だから、梓ちゃんが死ぬのに気づくまでの時間も含めて、そんなに猶予があるわけじゃないの」

まぁ確かに、下手すりゃ次の日の朝刊で気づくって場合もありうる。
そしてそうなってしまった場合、私がタイムマシンを使うかどうかを悩める時間はごく僅かとなる。
いや…まてよ?

純「……8時じゃないといけないの? それ以降ならいつでも使えるんでしょ?」

憂「そうだけど、24時間単位でしか跳べないんだよ? なるべく早く跳んだほうが対策を沢山練れるじゃない?」

純「あぁ、それもそうか」

極論、火曜まで私が決断できなかった場合は土曜に跳んでしまい、その日のうちに跳ばなかった場合と比べて丸々一日ロスしてしまう。
そして、3日経たないと使えないシステムのせいで、そのロスは二度と取り戻せない。
流石の私でも、そんなことをするくらいなら『跳んでから悩め』と言う。きっと憂もそう言いたいのだろう。

憂「だから、何があっても月曜の8時には私と一緒にいてほしいの」

純「……本当に、明後日に死ぬの?」

憂「うん。何回も見てきた」

純「…そして、今回は何もせずに見届けるの?」

憂「……そうしないと、信じてくれないって言ったじゃん」

純「…うん。ごめんね、酷い言い方した」

憂「ううん。きっと私もどこかおかしくなっちゃってる。それがわかっちゃってるから、純ちゃんを求めたのかも」

純「コラ、誤解されそうな言い方をするな」ポコッ

憂「あはは、ごめんね。でも案外間違ってないかも。純ちゃんといると、自然に笑えるから」

純「……やめなさい。恥ずかしいなぁ、もう」

それは親友として最大の褒め言葉。
中途半端な褒め言葉なら「唯先輩に言われたほうが嬉しい」と内心でひねくれてしまうものだけど、そんな隙すら与えない真っ直ぐな言葉は非常に気恥ずかしい。
……憂のこういうところは、唯先輩の影響を受けているんだなぁ、と思う。もちろんいい意味で。
172 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/09(土) 09:40:44.62 ID:vxxHoEm3o

――そうして憂と別れた後、一応梓に忠告をしようと音楽室を訪ねてみる。
……なんて、半分は建前だ。もちろん忠告はするが、本当の目的は唯先輩だ。ほんのわずかな時間だけだけど、唯先輩を見れるか見れないかでは随分と気分が違う。

純「失礼しまーす。梓、いる?」

梓「んー? 純じゃん。どしたの?」

純「ん、えっとね……ってあれ? 唯先輩まだいないの?」

唯先輩を見るために足繁く通ううちにいつしか見慣れてしまった、軽音部のティータイム。しかしそこには唯先輩の姿だけが無く。

梓「うん……遅いなぁって皆と話してたところ」

澪「鈴木さん、憂ちゃんあたりから何か聞いてない?」

純「いえ、特には。……でも体調悪そうだった…のは梓から聞いてますよね?」

律「らしいなぁ。それでも来るって言い張ってたとも聞いたけど」

純「体調戻らなくて今日は来ないんじゃ…?」

と言うだけ言ってみたが、その可能性は非常に低い。だって憂がまったく心配していなかったから。
未来を知る憂が心配していないということは問題ないということだ。もっとも、それは本来の憂から見れば『らしくない』とは言える。どんな些細な体調不良でも、きっと憂は見逃さないし心配する。
だから、その矛盾は回り回って『憂は未来から来た』ということを証明してしまっている。きっと憂は『唯先輩はここでは死なないし何事も起こらない』という未来――大袈裟に言うなら運命――を、知っているんだ。

――だから、きっと憂の言う事は全て本当。
でも、やっぱり親しい友人の死なんて、私は信じたくない。
でも、憂はこんな嘘なんて吐かないし。
でも、やっぱり認めたくなくて。

結局私は、子供っぽい意地を張って憂を困らせているに過ぎないんだな――とか思っていたら。

唯「あれー? 純ちゃん、どしたの?」

純「うひゃっ!?」

背中に唯先輩の重み。あるいは感触、肉感…って言うとちょっとやらしいか。
まぁ要するに、音楽室の入り口で固まっていた私に唯先輩が後ろからのしかかってきたワケで。

唯「おー、意外といいもたれ心地!」

純「嬉しくないです。っていうか小さい頃にも何度かのしかかってきたじゃないですか」

あの頃とは随分唯先輩の感触も違いますけどね。胸とか。

唯「いやぁ、久しぶりだったからどう変わってるかなって。ムキムキゴツゴツになってたらどうしようかと思っちゃったよ」

純「ムキムキな女の子は嫌いですか?」

唯「純ちゃんは好きなの?」

純「いえ全然」

唯「だよね。まぁ純ちゃんの感触が変わってなくてよかったよ。高校入ってからあまり遊びに来てくれなくなったからさ」

純「…憂が前にも増して家事に精を出すようになっちゃって行きづらくなったんですよ」

唯「? そーかなぁ?」

純「そうですよ」

憂のそれはもちろん、高校に入って打ち込めるものを見つけて頑張っている姉を、より良い気持ちで迎え入れてあげたいという妹の健気な思いからだ。
……そして実は、私があまり遊びに行かなくなったのもそっちが大きい。憂のほうではなく、誰かさんが高校に入って打ち込めるものを見つけてしまい、家にいることが少なくなったから、だ。

唯「で、純ちゃんここで何してるの? お茶してく?」

律「おー、いいぞいいぞ、一緒に茶ァしばいてくか?」

澪「誰だお前」

純「あー、魅力的な申し出ではありますが、ちょっとこの後用事が…」

梓「純って暇人だと思ってたけど」

純「ちょっとこの後梓の靴に画鋲を入れる仕事があって」

律「そりゃァ大変だ、頑張れよ」

梓「それって頑張ったら大変なことになるのは私の靴じゃないですかね?」
173 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/09(土) 09:48:07.68 ID:vxxHoEm3o

まぁ、実際用事なんて何もない。部員でもないのにお茶を貰うのはなんか気が引けるというだけだ。
それでなくても部活見学しておいて入部しなかった薄情者の立場なんだし、この人達でなければ顔を出すのさえ怖い。
いや、そもそも唯先輩と梓がいなければ顔を出すこともないんだけどさ。

……それより本題だ。唯先輩のほうは無事も確認できたことだし体温も感じられたことだしこれでいいとして。

純「――梓、日曜って何か用事ある?」

梓「え? いや、今のところは特に何も」

純「…そっか。気をつけてね?」

梓「いや何もないって言ってるじゃん。何に気をつけるのよ」

純「私にもわからんけど、危険なんてそこかしこに潜んでるんだから、気をつけといて損はないって」

梓「あーはいはい。せいぜい気をつけますよ」

純「むぅー……」

ダメだ、全然マジメに聞き入れてくれない。
まぁ具体的に例を出したわけでもないし、梓自身にも先の予定がわからないんだから当然なんだろうけどさ。
せめて外出するか否かだけでもわかれば、車に気をつけろとか言えたのに。

律「なんかアレだよな、唐突に心配されるとさ、死亡フラグみたいだよな」

澪「不謹慎なこと言うなよ…」

律「怖い? 怖いのか澪?」

澪「べ、別に怖くなんか――」

紬「脂肪フラグ」ボソッ

澪「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」ガクブル

純「………」

……誰一人としてマジメな話だとは思ってくれていないというのは、こんなにも心にクるものなのか。
いや、でもしかしこれ以上必死に言及すると余計にフラグに見える気も確かにする。ここは大人しく撤退すべきだろう。

純「じゃあ、そういうわけですので。部活頑張ってくださいね」

唯「………」

律「おー、んじゃなー!」

澪「またおいで」

唯「……待って、純ちゃん!」

純「…はい?」

唯「明日空いてる? 暇なら遊ぼうよ」

……唐突なお誘いに、思わず思考が停止する。
いや、そりゃ嬉しいし嬉しいんですけど! 嬉しいんですけど何故急に?

梓「いや、唯先輩受験生じゃないですか。早め早めのうちからちゃんと勉強しとかないとダメですよ」

唯「うっ……で、でも一日くらいいいじゃん! ね? 純ちゃんもそう思うよね?」

純「そこで私に振るんですか!?」

唯「久しぶりに遊ぼうよぉ、ね?」

はい、久しぶりに遊びたいですとっても!
でも梓の視線も鋭いのです。わかってる、わかってるよ梓。唯先輩のためを考えたら、選ぶべきはどっちかなんてわかってる。

純「……ちゃんと勉強してください。私と遊んだせいで大学に落ちた、なんて事になったら困ります」

唯「別に…純ちゃんを責めたりなんてしないけど」

純「私が気負っちゃうんですよ。明日はちゃんと勉強して、憂と梓のお許しが出たら改めて遊びましょう」

保護者の憂はともかく、梓の名前も出したのは……なんというか、当てつけに近い。
梓が余計な口を挟まなければ遊べたんだぞ、的な、ね。
まぁ、露骨に表すつもりはない。梓だって唯先輩のことを思っての言動だったんだから。
174 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/09(土) 09:54:02.01 ID:vxxHoEm3o

唯「うぅ……じゃあ純ちゃん、またね。今度は遊ぼうね?」

純「はい、次こそは!」


――そう約束を交わし、ウキウキ気分で帰路に着く。
唯先輩と昔を臭わせるトークをして、遊びに誘ってもらって、いずれ遊ぶ約束をして、そりゃ気分も上々ってモンですよ。あ

、もしかして梓は嫉妬してたのかな? なんちゃって。
っていうか、遊びに誘ってもらえるって事はそこまで悲観的になって梓に嫉妬しなくてもいいのかな?

純「……いやいや、思い上がっちゃダメだって。私みたいなキャラはそれで痛い目見るんだって」

きっとそんな深い意味なんてないんだ、唯先輩のことだから。
私に久しぶりに触れて、昔話を少ししたせいで懐かしい気持ちになっちゃっただけだろう。ノスタルジーな気持ちに。
……でも、逆に言えばそんな気持ちになってくれてる時こそアピールチャンスな気もする。明日はダメだけど、それこそ明後

日なら日曜だし――


純「………あ」

……バカか、私は。
何を忘れているんだ私は。明後日は……そんなことをしている場合じゃないだろう。
やっぱり、心のどこかで信じていない、信じたくないのだろう。梓が死ぬなんて。
こんな風に過ごす楽しい毎日が、明後日で終わりを告げるなんて。
……やっぱり、信じたくない。


175 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/09(土) 09:54:34.91 ID:vxxHoEm3o
改行orz
176 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/09(土) 10:01:33.33 ID:vxxHoEm3o


――土曜日。
宙ぶらりんな、どっちつかずの気持ちで、私は今日をどう過ごせばいいのだろうか。

明日、梓は死ぬ。そんなの信じたくない、けどきっと死ぬ、けど信じたくない……

朝から、いや昨日の夜からずっと、頭の中で堂々巡り。
憂は嘘を言わないから梓は死ぬ。そう考えているのも私で。
でも意地でも信じたくないし、常識で考えて信じられない。それももちろん私の出した結論で。

そして、梓が死ぬと思うなら、今日もまた梓に忠告くらいはするべきであって。
でも死なないと思いたいなら、忠告した時点で意地の張り合いで負けたことにもなって。

どちらも自分の出した答えであるからこそ、どちらかに傾倒した行動を取れば、それは私自身の否定なのだ。

だからこそ、私は動けず、一人で自室で膝を抱えているしかなかった。
何か他の事をしようとも思うのだが、何をしても身に入らないのが目に見えている。
……全ては明日になればわかること。だけど、それは逆に言えば明日になるまで、この私の心の迷いは――

純「……ん? メール?」

不意に震えたケータイ。相手は……憂だった。


憂「――お邪魔しまーす」

純「まったく、ビックリしたよ。いきなり『来たから開けて』なんてメールしてくるなんて」

憂「家に居るのはわかってたからね」

純「そりゃ未来から来た人にはわかるでしょうよ」

憂「ううん、純ちゃんのことだから迷ってるんじゃないかなぁと思っただけだよ」

純「……わかりやすい人ですいませんね」

憂「あぁもう、そうじゃなくって!」

純「はいはい、ありがとありがと。確かにずっと一人でいるのも暇だもんね」

わかっている、真剣に心配してくれていることは。
でもそれはとてもくすぐったくて、くすぐったいから笑わずにはいられなくて。
くすぐられるのは、どうも苦手だ。転じて、心配とか心細いとか不安とか、そんなシリアスな空気をぶつけられることも。
……要するに、シリアスな話の中心人物になるのはすごく苦手だ。
大丈夫かと誰かに問うことは出来ても、私自身はいざ問われたら、きっと相手が誰だろうとヘラヘラ笑って大丈夫と言い放つだろう。強がりではなく、苦手というだけの理由で。
でもそれでいいんだ、と思う。私はそういうキャラで、常にそういう立ち位置にいればいいんだ。何も困らないさ。

純「っていうかさ、唯先輩の勉強見てあげなくていいの?」

憂「え? あ、そっか、そういえば勉強だったね」

純「……? どうしたの? そんなに唯先輩に無関心なんて、憂らしくないね」

憂「無関心っていうか…お姉ちゃんだって、大学に行けばきっと家を出るんだよ?」

純「あー、いい加減憂離れしないとダメ、ってことか」

憂「まぁ、そんな感じかな」

純「………」

……一応、理屈は通っている。
少しだけ、ほんの少しだけ違和感を感じはしたけれど、それでも私のことを心配して憂は来てくれたんだから、あまり強くは言えない。

憂「……純ちゃんには、悪いんだけどね」

純「ん?」

憂「……お姉ちゃんと遊ぶ約束したらしいけど、明日、梓ちゃんが死んで、明後日にはまた昨日に戻るから、お姉ちゃんと遊べる日は来ないよ」

純「…うん。やっぱりそうなるよね」

あれは浮かれていた私が悪いし、どうかしてた。だからその事は覚悟済みだ。
っていうか唯先輩はそういう話まで家でしちゃうのか。まぁ憂と共通の友人だからっていうのもあるんだろうけど。
177 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/09(土) 10:09:28.03 ID:vxxHoEm3o

憂「もし…もしも、二回目の昨日に、同じようにまた誘ってくれたら…純ちゃんは遊べる?」

純「……無理、かな。梓のために跳ぶんなら、そんなことにうつつを抜かしてちゃいけないでしょ」

憂「…だよね。純ちゃんならそう言っちゃうよね。ごめんね?」

純「いいって。憂が謝ることじゃないし。それに梓を助ければ遊べるんでしょ? いや、っていうかそもそも私はまだ信じてないつもりなんだけど!」

憂「…それでも…ごめんね」

……憂は、勘付いているのだろうか。私が唯先輩に好意を抱いていることに。
恋愛感情だとは私自身ですら断定できないから、そこまで深読みはされていないだろう。それでも、他人のことをよく気にかけている憂なら私の想いが向けられている相手くらいは勘付いていても不思議じゃない。
……勘付いていたら、どうするのだろう? 友人である私を応援してくれる? 姉に相応しいか見定められる? それとも…キモチワルイ、と距離を置かれる?
……わからない。でも私の想いは、きっと憂が唯先輩に抱いている想いと同質であるように思う。だからきっと距離を置かれることはない。
……わからないことは多いけれど、それだけでもわかっていれば、憂とは変わらず友人としてやっていける気がする。

純「……あー! やめやめ! 湿っぽいのはやめて! 憂は湿気を持ち込みに来たの? 違うでしょ!?」

憂「う、うん。普通に遊びに来たんだよ」

純「じゃあほら、普通に遊ぼう! 今日は一日付き合ってもらうよ!」

憂「おぉー!!」

考えたくない事から逃げて、信じたくないことから逃げて、私は遊んだ。憂もそれをわかった上で全力で付き合ってくれた。
憂も、もしかしたらこうやって遊ぶのは久しぶりなのかもしれない。ずっと何度もこの三日を繰り返し、梓を救おうとしていたというのならば。
それだったなら私も憂の息抜きに一役買えたということになって嬉しいんだけど、それは同時にこれからは私もそんな『忙しい三日間』を繰り返すことになるということで。
きっとそれに対する憂なりの謝罪もあったのだろう。一方的な押し付けではなく、互いの事情を汲んだ上での行動。これなら後腐れもない。
表面には出さないけれど、憂はそういう気遣いは本当に良く出来る。さすがだなぁ、と思いつつ。

そうして、朝から夜までホントに一日中、憂と遊び倒したのだった。

178 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/09(土) 10:15:42.80 ID:vxxHoEm3o


――そして運命の日曜日。

梓にメールで予定を尋ねたところ、昼から軽音部の皆と遊びに行く予定だという。
先日は何もないと言っていたが、まぁおそらく唯先輩あたりが唐突に言い出したんだろう。うらやましい。
憂にメールしてみようかとも思ったが、昨日世話になったから言い出しづらく、諦める。

憂『――梓ちゃんが死ぬのはね、夜の8時。20時』

確かに一昨日、憂はそう言った。ならばまだまだ時間はある。

純「まだまだ時間はある…んだけど……ああああもう、やっぱ怖いなぁ!」

……昨日来てくれた憂には悪いけど、これ今日のほうが精神状態すっげー不安定になるんですけど。出来れば今日来て欲しかったなぁ、なんて。
でもまぁ、二日続けて世話かけるのもアレだし、それに梓の死を信じたくない私と知っていると言う憂が一緒にいると空気がギスギスしそうではある。昨日はそのへん抜きにして遊んだから上手くいっただけであって。
まぁ、そうは言うけど私達の『ギスギスした空気』なんて大したもんじゃない。気まずくなっても素直に『ゴメン』の一言さえ言えるなら許してもらえるし許したくなる、それが付き合いの長い相手の特権だ。
そして、憂相手に素直になれない人なんてそうはいない。私ももちろん、気まぐれネコのような梓だって。

……梓…か。

純「…あんた、本当に今日死んじゃうの?」

……空に問いかけても、無音の返事しかなくて。どうにも切なくなってしまった私は、夜に備えて昼寝としゃれ込むことにした。


――そして夜六時。夜というよりまだ夕方か――ってそんなことはどうでもよくて。
梓にメールしてみるがまだ外出中らしく。さすがに時間が迫ってきて不安になった私は憂にもメールしてみた。

『梓、大丈夫かな?』と送ろうとしたけれど、酷だなぁと思い留まる。
だって、そんなメールを送れば憂はまた私に『梓は死ぬ』という事実を告げなくてはいけなくなる。憂にとっての事実を。
梓は憂にとって親友――いや、もしかしたらそれ以上に大切な存在と思っているのかもしれない相手なんだ、憂の話が全て事実なら。そんな相手の死をまた語らせるのはあまりにも酷だろう。
というわけで悩みに悩み、『今何してる?』とだけ送ってみる。実に平凡、日々のよくある暇つぶしメール。

でも、返ってきたメールは全然平凡じゃなく、よくある内容でもなく。


『梓ちゃんを尾けてる』


純「……ちょ、えっ? それってまさか……」

まさかも何も、そんなことをする理由なんてそんなに思い浮かばない。

純『……見届ける気?』

憂『うん。純ちゃんは来ちゃダメだよ』

そりゃ見たくないし、そもそも信じてない立ち位置にいないといけないんだ、私は。だから行く理由は皆無だ。
でも憂は行っている。私と逆の立場なんだからわからないこともないけど、それでも…おかしい。

……つい先程の自分の仮定――憂は梓に好意を抱いている――さえ揺らぎかねない憂の奇行。
いや、奇行というのは大袈裟か。私に証明するために行っているんだと、理屈ではわかる。わかるんだけど。

それでも、普通は大切な友人の死の現場を見に行けるものか?
大切な友人の死を、それこそ『観察』するかのようなノリで見に行けるものか?

……いや、きっと憂はもう何度も目にしてきているのだろう。命の灯火が眼前で失われていく光景を、それこそ何度も。
でも、だからといって……理解は出来ない。少なくとも、まだ。

憂の心は、思ったよりヤバいくらいに壊れてきているのかもしれない。

憂、写メとかで変なモン見せないでよ…?
179 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/09(土) 10:26:15.16 ID:vxxHoEm3o

――梓の死に怯え、憂の心に恐怖し、気づいたらもう七時を大きく回っていた。

憂が梓を尾けている。それはつまり、梓が死んだら憂からすぐに連絡が入るということ。
ケータイを机の上に置き、じっとそれだけを眺めて身構える。身構え、心構える。心構えるって言葉あるのかな、今はどうでもいいか。
それより、ケータイが鳴ったら、私はどうすればいいのか。出なくてはいけないのは勿論だけど、出てどう反応すればいいのか。いっそ出ないという選択肢もアリじゃないか。憂を裏切り、一人でのうのうと生きるのもアリじゃないか。

純「……いや、冗談だけどね」

そうして何十分が過ぎただろう。
心臓は何回鼓動を刻んだだろう? 
汗は何滴滴り落ちた? 
室温は今何度? 
生唾を飲み込むのは何回目?

――今、何時?


純「ッ――!?」

ケータイが震える。電話かと思ったが……メールだった。
相手は…梓?

梓『さっき唯先輩たちと別れたよ。そろそろ帰るけど何の用?』

純「まだ…生きてるんだ。時間は…!?」

ホッとしかけたが、当然時間を見るまでは安心なんて出来ない。
そして時計は――ケータイを開けば、だいたい目に入る。

純「59分!? 嘘っ……」

そろそろ帰るということはまだ外にいるということ。外における危険なんて腐るほどある。

――私は……梓が死ぬなんて信じてない。信じてない…けど!

充分に気をつけて家まで帰れ。まだ近くに先輩が誰かいるなら送ってもらえ。
そんな旨のメールを高速で打ち込み、送信した気がする。

気がするんだけど。


――それに返事が返ってくることは、無かった。



『交通事故ですって?』

『お気の毒に……』

『即死だったそうですよ』

『いや、救急車が来た時はまだ生きてた』

『運転手からは完全に死角だったとか』

『急に飛び出してきたんじゃ?』

『車が赤信号で突っ込んだんじゃなかったの?』

……そんな会話を、私は何処で聞いたのか。
梓の搬送先の病院? それとも、憂からの電話越し?
……まぁ、どちらでもいいか。うん、どちらでもいい。

現場の近くに憂がいた。そこから伝え聞いた。そんな『設定』で、私は病院で梓の両親とも顔を合わせることになったけど。
二人とも涙を流すばかりで、きっと私の存在にすら気づいていない。

……それが、今日起こった全てのことを端的に、しかし如実に示していた。

180 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/09(土) 10:31:06.62 ID:vxxHoEm3o


憂「――お邪魔します、純ちゃん」

純「……うん」

憂「…あと30分はあるから、大丈夫だよ」

純「……うん」

憂「…昨夜は寝た?」

純「……うん」

憂「嘘だよね?」

純「……うん」

半分くらい、いや、半分以上はわかっていたようなものなのに。
それでもやっぱり私はショックを受けていた。
親友が死んだのだ、ショックを受けるのは当然だろう。けど、私の場合は事情が少し違う。

第一に、憂から伝え聞いていた。心の準備くらいは出来ていたはずなのだ。
そして第二に、私は梓を心のどこかで疎ましく思い、嫉妬していたはずなんだ。なのにこんなにもショックを受けている。

嫉妬する気持ちより親友としての気持ちが勝ったのだと考えれば少しは慰めにはなる。
でも、私自身は決してそうだと断言できない。わずか数日で二転三転する自分の気持ちが、何よりも誰よりも信じられない。
心の中がごちゃ混ぜすぎて、到底あと30分なんかで整理整頓なんて出来やしない。

だったら――

純「……跳ぼう、憂」

憂「…純ちゃん…」

――とりあえず、ロスタイムが欲しい。猶予が欲しい。今の私には、何よりも時間が足りない。
逆に言えば、一日で決断した憂はやっぱり強いと思う。

純「…金曜に跳ぶんだよね。悪いけど…金曜はそっとしといて欲しい…」

憂「……うん。ごめんね、つき合わせて」

純「それはいいよ。っていうか私もきっと…梓を死なせたくはない、んだと思う」

憂「……も、かぁ」

純「へ?」

憂「ううん、なんでも。純ちゃんは優しいね」

純「優しくなんて……ないよ」

自分自身の気持ちさえわからない私だけど、それだけは断言できる。
私は決して、優しい奴ではない。

純「だって、悩んでるもん。憂みたいになりふり構わず、自分の身を友人に捧げるなんてことは出来ないよ」

憂「……嘘。だって今、出来てるじゃない」

純「…出来てないよ。梓に関しては、まだ心の整理がついてない…!」

心の整理がつかないと動けない奴の、どこが優しいというのか。
たとえ他にどんな長所があろうとも、友達のために動けない奴を私は優しい人だとは思えない。
181 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/09(土) 10:34:51.28 ID:vxxHoEm3o
でも、憂は静かに首を振り、否定するんだ。

憂「……梓ちゃんのことじゃないよ。跳ぶってことは、私の言うことを迷わず信じてくれたってことでしょ?」

純「っ……それは、ううん、それも私はただ、時間が欲しいってだけの理由で!」

憂「理由なんてなんでもいいんだよ。そうやって悩んで、迷いながらも私に付き合ってくれる純ちゃんが、優しくない人のわけないよ」

……あぁ、ダメだこりゃ。何言っても無駄だ。
自分の欠点を見ている私と違い、たった一つの長所を見て、人を善く評しようとする憂。心から性善説を信じているのではないかと疑いたくなる、このあたりはやっぱり唯先輩に非常に似ている。
ともあれ、見ているところが違う以上、話は永遠に平行線だ。話題を引っ張るだけ無駄で、私が折れてやるしかないんだ。
……ま、そんなお人好し姉妹が、私はどうしようもなく大好きなんだけど。片方は親友として、もう片方は――

純「――そろそろ30分経つ?」

憂「もうちょっとあるけど、念の為もう一回説明しておくね。といっても私も試したことはないから伝聞になっちゃうけど」

純「触れてれば一緒に跳べる、だっけ」

憂「うん。ボタンを押すのは私だけでいいらしいよ。あ、あと目を閉じといてね」

純「ん、わかった。どんな感じになるの?」

憂「まぁ、ちょっとクラッとしてフワッとするくらいかな」

純「……全くわからん」

まぁ確かに、今の格好と跳んだ先の格好とかが同じな可能性は低いのでクラッとしてフワッとするくらいは起こり得るのだろう。よくわからんけど。

憂「……そろそろだよ、純ちゃん」

純「ん、わかった……よろしくお願いします」

憂「あはは、なんか変じゃない? それ」

純「そうかもしれないけど、これでよくない?」

憂「私達らしい、かな?」

純「うん」

憂「……ずっと、何度でも、付き合ってくれる?」

純「……唐突だねぇ」

不安…なんだろうか。
その不安を拭ってあげたいけれど、私より優等生の憂がいくらがんばってもダメだったんだ。今更私一人が増えたところでどうにかなるかは怪しい。
私にもアテがあるわけじゃない。人の死の運命を覆す方法なんてわからない。
それにそもそも……私自身、本当に覆したいのかさえわからない。きっとそうだと思いたいけど、自信はない。
今回の事も、自分のことはわからない事だらけで、ただ単に憂が私を求めてくれたから付き合うだけに過ぎない。流されているに過ぎない。
だから、変に希望を持たせることは言えない。

純「……イヤになるまでは、付き合うよ」

憂「……正直だね。ちょっと寂しいけど」

純「…ゴメン」

憂「ううん、正直なのは純ちゃんのいいところだし、正直になれる相手って思われてるのは嬉しいから」

純「……たはは。そんな憂となら、そう簡単にはイヤにならないと思うよ」

憂「…ありがと。じゃあ…行くよ?」

頷き、機械を一緒に握って目を瞑る。
――そしてしばらく後、本当にクラッとなってフワッとなって私はビクンってなってしまった。

182 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/09(土) 10:39:06.53 ID:vxxHoEm3o


憂「――純ちゃん、わかる?」

純「……うん。学校だね」

憂「よかった、成功したんだね。じゃあ……梓ちゃんのところ行ってるから」

純「……あ、うん。ゴメンね」

初めて跳んだ過去。言わば全く知らない世界。いや知ってはいるんだけどね。初体験なもので不安になるというか。
でもそうも言ってられない。憂だけは同じ境遇なんだから大丈夫。私は私の問題を解決しよう。


――授業の内容なんて一切聞いてなかったけれど、どうせこの前と同じなんだから問題ない。
とりあえず、そうして一日使ったおかげで結論は出た。

純「――梓を、助ける」

憂「……ありがと、純ちゃん」

純「…そういうのは助けてからにしようよ」

憂「ううん、手伝ってくれるだけで、一緒に居てくれるだけで嬉しいから、やっぱりありがとうを言わないといけないよ」

純「……はいはい。もぅ…」

結局私は、梓を助ける道を選んだ。
でも、憂ほどちゃんとした理由なんてない。私は梓が死んだと聞いて、理由はわからないけれどショックを受けたんだ。
だから助ける。理由はわからないけれど助ける。それだけに過ぎない。

いや、もっとそれらしい理由もあるにはある。憂に求められたから、だ。
憂が、親友としての私に助けを求めてきた。よく考えたらそれだけで理由は充分だったんだ。
……たとえ相手がどんな奴であれ、私に出来るだけのことをする理由はそれで充分。


――放課後に音楽室に顔を出したら、唯先輩がまた同じ時間に重役出勤してきた。
行動もやりとりも前回と同じだったけれど、遊びに誘ってもらえなかった。どのみち誘われても憂に告げた通り断るしかないんだけど、少し寂しかった。




――土曜日。
とりあえず私は憂から『前回』の梓がどう死んだかを聞くことにした。それを知らないことには対策を立てられないからだ。

憂「交通事故、だったのは覚えてるよね」

純「うん。でもそれだけだよ、私が知ってるのは」

憂「えっとね、場所は私達の中学から北に行った所のあの交差点。見通しが悪いって散々注意された場所」

純「あー、懐かしい。あそこホント事故多いよねぇ」

憂「霊の仕業じゃないかって言われてるよね」

純「話が逸れてきたね」

憂「……ごめん」

純「いや、いいんだけどね。じゃあとりあえずそこを通らせない方向で対策してみていい?」

憂「いいんじゃないかな?」

随分アッサリと言うね、この子は。
これくらいのこと、憂がチャレンジしてないとは思えないんだけど……

憂「私がやった場合と、純ちゃんがやった場合では結果が違うかもしれないし。純ちゃんのやる事に口出しはしないよ」

純「……でも、参考までに聞かせてよ。似たような方法を採ったことはある?」

憂「…あるよ」

純「その時はどうなったの?」
183 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/09(土) 10:42:51.71 ID:vxxHoEm3o
憂「……見通しのいい通りだったんだけどね。居眠り運転の車が…ね」

純「…時間通りに?」

憂「うん」

……なんか、今回もそうなりそうな気がするなぁ。
でも、あまり大きく梓の行動を変えるのもまだ怖い。未来にどんな影響を与えるかわかったものじゃないから。
過去に来ている以上、行動は慎重にならざるを得ない。私がサブカルから学んだ知識だ。

純「とりあえず、一回は…この手段でやってみたい。梓にメールするだけで変えられる未来だし、あまり大袈裟なことにもならないと思うから」

憂「うん。また私が尾けようか?」

純「っ………」

思わず息を呑む。
そうだ、忘れていた。私は前回は梓の死を直接見てはいない。
でも今回からは流石に憂に押し付けていてはいけない気がする。私の判断で、私の方法で梓の運命を変えようというのだ。見届けるのは私の義務だ。
頭の中ではそうわかっているんだけど…でも……

憂「……無理しないでいいよ。見るのも結構ショックだから」

純「…経験者は語る、って?」

憂「……見ないで済むなら、見ないほうがいいと思う。本当に、心から」

心配して言ってくれているのだというのはわかる。
でも、それは逆に言えばそれだけの重い事を押し付けようということであって。
かといって、それを憂も決意の上で。その心配を無碍にするのもなかなか難しくて。

純「……今回だけは…甘えていい、かな、憂」

憂「…うん、もちろん」

途切れ途切れの言葉。どうにか言い切っても、やっぱり憂に対する罪悪感は消えず。
甘えるのは今回だけにしようと、強く誓った。


――日曜。梓は前回と同じく、先輩達と遊びに行くらしい。
さすがに今回は羨ましいとか言ってる心の余裕はない。かといって梓を助けるために直接何か出来るわけでもなく、今はまだ梓に不自然と思わせない範囲で情報を引き出す『フリ』をしなくてはいけない。

いつくらいまで遊ぶのか、と送り。
どのへんで遊ぶのか、と送り。
終わったらすぐにメールしてくれ、と送り。

とりあえず、これで準備万端…だと思う。憂への連絡は…いいや。前回の件で、憂がちゃんと行動していることはイヤというほどわかっているし。

純「――こんなんで、助けられるのかな…?」

ふと口をついて出てしまった言葉。ずっと心に引っかかっていたソレは、言葉にしてしまうとより重みが増すようで。
言霊、とかいうやつだろうか。不安を口にするたび、現実になりそうで。だからこそ常日頃から私はお気楽な発言を繰り返してきたわけなんだが、さすがにこの空気ではそうもいかない。

純「………」

助けられないんじゃないか。確信めいた予感があった。
以前に憂が失敗したのもあるし、それ以上にかつてこれだけの簡単なことで成功したタイムトラベル作品なんて存在しない。
いろいろなマンガやゲーム、映画や小説に触れてきたが故、変に確信を持ってしまっていた。

純「……ん?」

悲観的な気持ちになっていると、ケータイが震えた。開いてみると、憂からのメール。

憂『尾行中です。どんな結果になっても誰も責めないから、あまり気負わないでね』

……これは、憂も失敗する可能性の方を多く見ているのだろうか。
そりゃそうか。信用されてないとかそういう話じゃなく、憂は実際、同じようなやり方で失敗しているから、そう思うのも無理はないんだ。
ふてくされたくもなるが、憂には憂の理由もあるし、何より私も失敗しそうだと感じている。

……そして怖いことに、私の考えは『次の三日で何をするか』にもう行ってしまっていた。
184 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/09(土) 10:44:48.99 ID:vxxHoEm3o

もう今回のことは諦めると、無意識にでもそう思ってしまっているんだ、私は。
梓を、親友を、命を諦めると、そう思ってしまっているんだ。

純「ッ……! わ、私は……」

……ダメだ。私はきっと命の重みを知らない。憂に甘えてしまって、眼前で死を見ていないから、重みなんて知りようがないんだ。
助けるとか言っておいてこのザマだ。とんでもない薄情者だ、私は。

……それとも、やっぱり私の本心は――

純「……次は…見届けるからね、梓…」


――そして八時少し前。
梓からのメールに『交差点を通らず、回り道して帰れ』と返したものの、やっぱり返信はなくて。
憂から予想通りの電話を受け、私は嘆息することしかできなかった。


――月曜。梓への謝罪を胸に、私はまた跳んだ。



――次の日曜日。
今度は私が梓を迎えに行くことにした。念には念を込めて、少しだけ早く解散してもらって、だ。
梓は怪訝に思っていたが、必死に頼み込んだのでどうにか条件は飲んでもらえた。


憂「早く解散するってことは、お姉ちゃんが早く帰ってくるんだよね。夕飯の準備しておきたいから、少し遅れるかも」

純「ふーん。お姉ちゃん思いだねぇ、ホント。八時までには合流してよ?」

憂「大丈夫。遅くても十分前までには行けると思う」

純「まぁ…ギリギリいいか、それくらいなら」


――とりあえず、今日は私も街のほうに繰り出して遊んで一日を潰して。梓と合流して。
そうしてどうにか十分前くらいには憂は合流してくれたのだが、そこで私の計算の甘さに思い至る。

……このままでは、八時までに梓の家には着かない。

迎えに行ってみるのが今回の作戦だったのだが、欲を言えば家まで送り届けたかった。
そもそももっと近くで遊んでいれば憂ももっと早く合流できたはずだが、それは今更言っても仕方ない。
なるべく車通りの少ない道を選んで帰ることにする。

純「……歩道が広いし、この道なら安心でしょ」

梓「何が安心なの?」

純「いやなんでも。車は怖いねって話よ」

梓「……なにか悪いものでも食べたの?」

純「なんでそこまで言うかなぁ」

まぁ、本人に伝えたところでどうにもならない話だ。ここは堪えよう。
広い歩道に三人、横に広がって歩く。車道側から憂、私、梓の順だ。これなら私達が壁になって車も突っ込んではこれまい。
いや、壁とは言うけど、私達は死なないはずだから。そういう運命になってるはずだから。いろんな作品でそうなってたはずだから。
……憂が一番外側にいるのは本人の希望であって、決して私が押し付けたわけではない。憂が車道を見て、私が梓本人を見る、という取り決めがあったんだよ、本当に。

……とにかく、これで車に対する安全は確保できたはず。
でも私の知識が、それだけでは安心できないと言っている。車の脅威を取り除いても、他の何かで死ぬ可能性が高いからだ。
鉄骨が降ってきたり、看板が降ってきたり。とにかく運が悪い事故のように見せかけた『運命』によって殺されてしまうことが多い。だから、私は警戒を怠るわけにはいかない。

純「……梓、もっとこっちに寄って」

梓「な、何で?」

純「いいから」

腕を引き、密着するほどに梓と身体を寄せる。これで事故のようなもので梓を殺そうとするなら私も巻き込んでしまう可能性が高くなり、運命様もそう簡単には手が出せないはずだ。

――もうすぐ八時。地面に、空に、四方八方に目を配る私はさぞ不審に見えただろうけど、仕方ないことだ。
185 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/09(土) 10:47:11.64 ID:vxxHoEm3o

憂「八時」

憂が呟く。周囲を見渡す。

上。何もない。下。何もない。後ろ、何もない。

――横。風が吹いた。

――前。一人の男が、走っている。風はあの男のものだろう、私達の横を走り抜けて――


憂「梓ちゃんッ!!!」


……憂の声に釣られて、横の梓を見る。

梓「…あ………」

一言だけ、何に対しての言葉かわからない言葉だけを残し、梓は崩れ落ちた。
その首から、止まることのない赤が地面に注がれ、池を作る。真っ赤な池を。

純「ぅ……あ、梓……? 大丈夫…? どうしたの…?」

私の問いかけに、言葉こそ返ってこないものの、梓は身じろぎで答える。
……いや、目を背けるのは止めにしよう。私の言葉なんか既に届いていないし、身じろぎなんかしていない。痙攣しているだけだ。

周囲の人達も理解したらしい。あちらこちらから悲鳴が上がり始める。
悲鳴と、怒号と、逃げ惑う人々。そんな中にあって、憂だけは冷静だった。

憂「純ちゃん! 救急車!!」

純「あ……う、うん……」

傷口を押さえる憂を尻目に、震える指で番号を押す。
しどろもどろになりながらも場所を伝え、そのまま電話先の人から応急処置の仕方を教えてもらうも、何一つとして私の頭には入っていなかった。

だって、きっと梓は助からない。
この時間に、梓が倒れたという事は。

……運命を、変えられなかったということだろうから。



――日曜。

私は思い知った。
もう、梓を家から出してはいけない。外は危険が多すぎる。

純「というわけで、何があっても外に出ちゃダメだかんね!」

梓「はぁ? なんで純にそんなこと言われなきゃ――」

純「いいから! 絶対! 見張っとくからね!?」


……梓の家の玄関前に隠れ、梓が外に出ないか見張ることにしよう。
という作戦を憂に告げると、じゃあ、と二つ返事で憂が梓に付いていることになった。一緒に遊ぶ体を装って。
まぁ、そういうことになったので実は私の意味はあまりないんだけれど、そのまま私のポジションは変えなかった。

……自分でもわかっている。梓がまた死んだら、と思うと怖いのだ。
憂と一緒に梓を目の前で見張っていればそれでいいんだ、本来は。でもそれだと、もしまた梓が目の前で死んだときが怖すぎる。

……憂の言う通り、見なくて済むなら見ないほうがいいものだった、人の死なんてものは。

だから今回は、見張りという体で梓の傍から逃げ出した。
……つくづく、自分が嫌になる。


――そして、また思い知る。
186 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/09(土) 10:53:12.06 ID:vxxHoEm3o


「きゃああああっ!!!」


純「――!? 悲鳴!?」

響いたのは、憂の悲鳴。
そして梓の家の中が騒がしくなる。ああ、親御さんも居たんだな……なんて、逃避している場合じゃない!!

純「すいません! 何があったんですか!?」

梓母「あなたは…鈴木さん!?」

純「はい! 一体何が!?」

梓母「わからないわ! 上が騒がしくなって、平沢さんの悲鳴が響いて…」

純「私も行きます! おじゃまします!!」

梓母「あ、ちょっと――!」


――そうして、駆け上がった先で梓の父親と一緒に見たものは。

ナイフを突き立てられた梓の死体と、腕を切りつけられた憂の姿だった。


憂「っ……ごめん、純ちゃん。鍵、ちゃんとしてたはずなのに、いつの間にか窓が開いてて……男の人が……」

強盗…だというのか。
憂が戸締まりの確認を怠るとは思えない。何らかの方法で外から開けたのだろうか。
それとも、梓が開けた? いや、まさか。それも憂がさせるとは思えない。
……でも、もしかしたらその辺も超越してしまうのが『運命』というものなのかもしれない。

純「……大丈夫? ごめんね、私も一緒にいれば……」

憂「…ううん、守りきれなかったのは…私の落ち度だよ」

……でも、憂が無事だったのは唯一の救いと言える。もちろん梓の父親がいる前で口にはしないが。
しかし、家に居てもダメだなんて……どうすればいいんだろう?

――簡単だ。もっと強引な手段に出ればいい。
これ以上ないくらいに梓の周囲を固めればいい。

どんな手段を使おうと、梓にどう思われようと、助けてみせる。

二人でそう誓い、また跳んだ。
187 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/09(土) 10:56:07.35 ID:vxxHoEm3o


――次の日曜。

半ば監禁のような状態で、梓を憂の部屋に閉じ込めることにした。戸締まりも完璧。二人で確認した。
あ、もちろん今度は私も一緒にいる。もう、目を逸らすわけにはいかない。憂ばかりに負担はかけられない。

今回は、何をするにも梓と一緒に動く。一瞬たりとも目は離さない。トイレでさえ危険だ。

梓「……一緒にトイレまで来る気なの?」

純「もちろん。イヤならここでしなよ」

梓「……憂、純はどうしたの? ちょっと怖いんだけど…」

憂「…まぁ、いろいろあるんだよ」

余談だが憂の怪我は三日前に跳んだ時点で治っていた。過去に跳んでいるんだ、そりゃそうだろう。

梓「ねぇ、喉渇いたんだけど」

純「ガマンしなさい」

梓「……憂…」

憂「ごめんね、梓ちゃん」

純「……あれ? そういえば唯先輩は?」

憂「軽音部の皆さんと一緒に遊びに行ってるよ」

梓「あぁ、やっぱりかぁ。いいなぁ……」

純「梓はダメ」

……梓に睨まれた。
ものすごく余裕がないな、私。ほら、憂も不安そうな目で見ている――

梓「……ああああ! もう限界! 喉渇いたぁー!!」

純「うおっ、びっくりした」

……さすがにトイレのような恥をガマンすればいいものとは違い、喉の渇きには耐えられないらしい。
でも、飲ませるわけにはいかない。もうすぐ八時だ。きっと飲み物に何かが混ぜられていて、血を吐いて梓は死ぬ。水道水でも一緒だろう。
だから、絶対に何もさせるわけにはいかない。


――そして八時を目前に控え、ふと、梓の様子がおかしいことに気づいてしまう。

純「……梓、大丈夫?」

梓「…大丈夫じゃ……ない……」

口は半開きで、喉から変な音を立てて呼吸している……ような気がする。
身体もだるそうだし、明らかに元気もない。

梓「み、水……」

純「だ、ダメだって梓!」

憂「で、でも……脱水症状…みたいにも見えるよ?」

純「そんな!? で、でも……」

でも、それでも水を飲ませるわけにはいかない。何かを梓に近づけるだけでもいけないんだ。
でも、このままだと梓は――

純「……我慢して、梓」

憂「…いいのかな…」
188 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/09(土) 10:58:17.33 ID:vxxHoEm3o

純「脱水症状ったって、今すぐ死ぬわけじゃない…はず。そもそもこんな短時間でそんな症状が出るわけもないし……八時を過ぎたら飲ませてあげれば――」

梓「はッ、ひ、ぐッ――!?」

純「ッ!?」

梓が妙な声を上げ、前のめりに倒れこむ。

憂「梓ちゃん!?」

純「梓!? 梓ッ!!!」


――脱水症状。極度の緊張状態によるパニック症状。心身衰弱。そして急性心不全とか、なんかそんな診断をされたらしい。

……私の判断は、間違ってなかったはずだ。あの状況で、何物であっても梓に近づけるわけにはいかなかった。それが一番安全だからだ。
なのに、それなのに、梓は死んだ。

純「……私は…どうすればよかったの?」

……その問いに、答えるものは誰も無く。


――もう、無理なんじゃないか。
梓を助けることは、死の呪縛から、運命から解き放つことは不可能なんじゃないか。

……もう、疲れた。

純「……憂、また行くの?」

憂「当たり前だよ……繰り返すよ、何度でも」

純「……もう無理だよ。何度やっても、どんな手段を選んでも、変わらないじゃん…!」

憂「…そうだとしても、やめないよ、私は」

純「……どうして、憂はそんなに強いの?」

憂「強いわけじゃないよ。死んでほしくないからダダをこねてるだけ。大切な人の死を乗り越える強さは、私にはないんだよ…」

純「………」

わかるような、わからないような。
どうしても引けないから意地を張っているだけ。意地を張らないと、砕けて壊れてしまうから。

だとすれば、強いのは私のほうなのだろうか。
命に順位をつけた私。梓が死んでも、憂や唯先輩がいれば生きていける私。そんな薄情な私のほうが強いのだろうか。
189 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/09(土) 10:59:54.89 ID:vxxHoEm3o

……そんなわけはない。強いわけがない。
これ以上、梓の死を見たくない。私の中では優先順位は低いはずなのに、これ以上は耐えられない。
いくら順位をつけようとも、やっぱり梓は――

憂「――純ちゃんにとって、あずにゃんは大切な人じゃないの? 見捨てちゃうの?」

純「……いえ。大切な仲間だから……もう、見たくないんですよ」

憂「そっか。梓ちゃんのこと、大好きなんだね」

純「大好きかどうかはわからないけど、好きだよ。何を今更――」

そうだ、やっぱり大事な仲間なんだ。
唯先輩の件で疎ましく思っていたとしても、そんなの関係なく、大切な仲間なんだ。
やっぱり私は、梓を嫌いになんてなれない。そう思ったら、胸の奥が熱くなり――


――あれ?


――何かがおかしい。



憂はさっき、何と言った?
私はさっき、何と答えた?


……憂は「あずにゃん」なんて呼ばない。
……私は憂に敬語なんて使わない。


あれ。
もしかして。



私の『温度』が、急激に引いていく――



純「――ゆい、せんぱい?」
190 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/09(土) 11:00:42.29 ID:vxxHoEm3o

憂「ッ!?」


やっぱりそうだ。眼前にいるこの人は、憂じゃなくて……

純「唯先輩でしょう!? あなたは!!」

憂「な、何言ってるの純ちゃん、そんなわけないじゃん」

純「さっき一回、あずにゃんって言いましたよね!?」

憂「こ、言葉のあやだよ。お姉ちゃんのが移っちゃったんだよ!」

純「じゃあ憂、あんたはクラスメイトの遠藤さんから何て呼ばれてる!?」

憂「え、えーっと、うーちゃん?」

純「……遠藤さんなんていませんけどね、ウチのクラスに」

唯「……あはは、バレちった」

髪留めを解き、困ったように笑う。
いつもの天真爛漫な笑顔でこそないけれど、それは間違いなく唯先輩の笑顔で。

純「……なんで……こんなこと」

唯「なんでって…憂のほうが純ちゃんに近づけるからね」

そうまでして私を巻き込みたかったのだろうか、この人は。
そうまでして……梓を助けたかったのだろうか。
……それなら私じゃなくて憂を頼ればいいのに。

純「……じゃあ、憂は唯先輩の方に?」

唯「ううん、憂はいないよ」

純「………えっ?」

唯「憂は、もう死んでるよ」

………は?
何を言っているんだろう、この人は?

……いや、でも待てよ。


――私は、ここ最近ずっと。

――唯先輩と憂が一緒にいるところを、見ていない。



純「っ……いつから入れ替わってたんですか!?」

唯「……金曜から、ずっとだよ」

純「じゃあ、憂はいつ死んだんですか!?」

唯「木曜。タイムマシンのことを話したらケンカになっちゃって……」

憂が、唯先輩の意思を否定したということだろうか?
珍しいこともあるものだ、と思う反面、それは正しい、とも思う。
梓の死を何度も見てきた私は『死』に触れすぎて、おかしくなりそうで。だからこそさっきまで憂――いや、唯先輩と口論していたのだから。
そして、それ以上に『死』に触れた唯先輩は、きっともう――

唯「私が、殺した」

純「……やっぱり」

唯「……殺すつもりはなかったよ。でも、憂はタイムマシンを壊した。三日しか戻れなくしたのは憂だ…! そう思ったら止まらなくなって…!」

……あれ、でもそれはおかしいんじゃないか?
タイムマシンを使わなければ、憂とケンカになることもなかった。つまり『元々の世界』では、金曜も憂は生きていたはず。
それに、私達が梓の『死』の運命を変えられないように、唯先輩も憂の『生』の運命を変えられるはずがないのだ、普通は。

なのに、唯先輩は憂を殺した。殺せた。これはおかしい。
そして、そんなおかしいことがまかり通るなら、私達が梓を救えないのもまたおかしいことになって。
191 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/09(土) 11:01:43.33 ID:vxxHoEm3o

パラレルワールド…なんだろうか。そうでもしないと説明がつかない。

唯「――そういう、運命なんだよ」

私の混乱を読み取ったのか、唯先輩が自論を語る。

唯「憂は『二回目のあの日』に、私に殺される運命だったんだ。そしてそれ以降、あの日に死ぬって『定着』しちゃったんだよ、私の中に」

純「唯先輩の中、に?」

唯「そしてたった今、純ちゃんの中にも、ね」

定着って…それは私が死を『認識』してしまったから、だろうか。
梓はあの日に死ぬと知ってしまった私が、何度あの日を繰り返しても梓を救えなかったように。憂があの日に死んでいたと知ってしまえば、憂はあの日に死ぬというのか。

純「でもっ! 根本的におかしいです! なんで最初は死んでなかった憂が、二回目の世界で死んだんですか!? 死ぬ運命があるなら、死なない運命もあるはずでしょう!?」

パラレルワールドと切り捨てれば、それはありうるのかもしれない。でも、殺すことは出来ても助けることは出来ないパラレルワールドなんて認められるわけがない。それは厳密にはパラレルじゃない。

唯「運命は変えられるっていうのは、皮肉にも私達が証明しちゃってる。純ちゃんは、どこまでを運命って言うの?」

純「どこまで、って?」

唯「過去にあったこと全てを運命として、その上で運命が変えられないっていうなら、私達が喋る一言一句まで同じじゃないといけないよ?」

純「っ……」

唯「仮に『喋る言葉』は運命じゃないとして、じゃあ『生』と『死』が運命に含まれるかと言われれば、誰にも証明できない。基本的には『結果』を運命って言いたがるから、死だけは証明できそうだけどね」

確かにそうだ。言ってしまえば、私達が過去に跳んだ時点で運命なんて在って無いようなもの。
どうしても覆せないと私達が実感、認識してしまった『死』以外に対しては、運命なんて言葉は使えない。

唯「まぁ、この説にも抜け道はあるよ。例えば、私達の感じている大前提が違っていた場合」

純「…大前提?」

唯「うん。過去は変えられない、全ての運命は変えられないという前提を置けば、『コレ』は何になると思う?」

唯先輩が摘んで見せる『それ』。プラプラと揺れる、ライターみたいな形状の機械。言うまでもない、タイムマシンだ。
でも、どういうことだろう。過去を変えられないという前提を持てば、変えている私達は今『どこ』にいる?
……いや、私達がいる場所は『今』なんだ。いくら過去に跳ぼうと、私達にとっては今。
そして、過去は変えられない。その上で、私達の感じている大前提が間違っているとすれば?

純「……もしかして、大前提って…私達が『過去に跳んでいる』ということが!?」

唯「………」

それはいわば『ヘンペルのカラス』のような論法。
『過去は変えられない』のだとしたら、『変えられる過去は過去ではない』ということになる。
もちろん、この場合は後者の中に簡単な矛盾が存在している。後者が成り立つならその中で使われている『過去』とは何か、と。
だからもっと言うなら、変えられる『過去っぽい時間』は、私達がそう『認識』しているだけで実は過去ではない、ということ。

純「だとしたら……だとしたら、それはもしかして…」

もしかして、唯先輩の持つタイムマシンは、時を遡る機械なんかじゃなくて。
過去を今に『持ってくる』機械なのではないか?

この機械に触れている人だけに『認識』できる『時間を作り出す』機械。過去から持ってきた『世界』を使って、『今』と『未来』の狭間に捻じ込む機械。
本来の未来を遠ざけ、今を薄く長く引き延ばす機械。

純「私達は『過去に跳んでいる』のではなくて、タイムマシンで作られた空白の時間で『過去に跳んだ気になっていた』だけ!?」

だとすれば、『過去は変えられない』という前提の下、私達が『過去にあったはずの事』を変えてしまったことも証明できる。過去を持ってくるとは言うけれど、持って来た時点でそれは過去ではなく未来になるから。
いや、むしろ私達が勝手に過去を追体験しているだけなのかもしれない。この機械はただ『時間』を作り出しただけで。
一般的な『時』の法則を捻じ曲げるという意味では、これでも立派なタイムマシンだ。
192 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/09(土) 11:02:19.86 ID:vxxHoEm3o


純「でも…でも、納得いきません! 梓を、そして憂を救えない理由にはならない!!」

唯「…なるよ。簡単なことだよ。結局過去は変えられない。それだけだよ」

純「なりません! これから三日前に跳べば、いえ、跳んだつもりの時間を作り出せば、確かにその時、今、梓は生きてる!」

唯「映像が光として目に届くまでには時間差があるんだよ? そして、その映像を脳が認識するまでにまた時間差がある」

純「っ……また『認識』ですか」

唯「そう。私達の世界は、すべて私達自身の『認識』によって成り立ってる。そして私達が認識できるのは結局、時間差のせいで過去だけになっちゃう。つまり私達の『世界』には過去と未来しか存在しなくて、未来を知ることは私達には出来なくて」

純「でもっ! 私達にはそれがあります! 三日だけなら未来を知れます!」

タイムマシンで三日を作り出すということは、転じてそうなるはずだ。

唯「じゃあ、その三日で何が起こる?」

純「ッ………」

答えられない。『梓が死ぬ』としか答えられない。
梓が死ぬ過去を変えるために来ている私達は、そもそも『梓は過去に死んでいる』という『認識』を持っているんだ。
梓が生きているという『認識』を持っていたならば、タイムマシンは使わない。結局、本質から矛盾してしまっているんだ。

純「……結局、何も変えられないと?」

唯「そうだよ。時間軸とかいう難しい概念は取っ払っちゃって、純ちゃんが『認識』してきた時間でだけ考えればいいんだよ」

私の感じる世界は、時間軸なんて関係なく、私の認識だけで成り立っている、ということか。同じように唯先輩の世界は唯先輩の認識だけで。
そしてそれは巡り巡って、自分の認識できないことは自分の世界に存在しないと同義になる。
一度『死』を認識してしまえば、相反する『生』は認識できない。死んだはずの梓が次の日に生きている、なんて光景は認識できない。ただの空想だ。

……この人は、本当に唯先輩だろうか?
あの天真爛漫で明るく、そして言っちゃ悪いが物事をあまり深く考えなかった唯先輩なのだろうか?

……一体、この人は何度この三日間を繰り返したのだろう?
私からは一つ年上にしか見えなくても、唯先輩自身はもしかしたら一年くらいは繰り返している可能性もある。いや、この知識量や考え方を鑑みるに、相当な年数を重ねているかもしれない。
付き合いの長い私に全く疑われずに憂になりきるあたりも、あの子供っぽかった唯先輩では不可能な芸当だ。

――不意に、唯先輩がすごく遠い人に見えた。
私の知っている唯先輩ではないような。モノの見方や感じ方さえも異なる、唯先輩とは異質の存在に。
だって、私の知る唯先輩なら……

純「……憂を助けようとは、思わなかったんですか?」

唯「…一回だけ、試してみたけど。やっぱりダメだったよ」

純「…なんで――」

ああ、待て私、それは聞いちゃいけない。いくら唯先輩のクオリアを確かめるためとは言っても、それだけは。
……いや、でも、既に答えは出ているようなものだ。聞いても聞かなくても……もうどうにもならないか。

純「なんで、一回だけなんですか。なんで憂の死ぬ三日間を繰り返さずに、梓を選んだんですか…!?」

唯「憂は、二番目だったから」

……ホラみろ、こうなるに決まってる。

唯「もっと死んで欲しくない人がいた。それに加えて、そっちに傾倒すれば憂の死は見ずに済んだから」

梓の死ぬ日は日曜。そこから三日でギリギリ金曜。これなら確かに、憂の死は見ずに済む。

唯「憂が死ぬのを何度も見るのは辛いし、何度も私が殺すのは余計に辛いから……」

純「……だから、憂は諦めたと言うんですか」

唯「……私は、死なせたくない人のために憂を犠牲にした。一生、背負うつもりだよ」

純「どんな綺麗事で繕おうと、貴女はただの…人殺しですよ。かけがえのない家族を、大切な妹を、殺した…!」

唯「…うん…っ、わかってる。わかってるよ……ごめんね、憂…!」
193 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/09(土) 11:03:01.56 ID:vxxHoEm3o

……一応、唯先輩は唯先輩のままだった。憂を殺してしまったことをちゃんと悔いて、涙を流せるくらいには。

でも。
それでも。

涙を流す唯先輩を、私は冷めた目でしか見れなかった。

……先程罵倒こそしたものの、別に唯先輩が人殺しだからこんな態度を取っているわけではない。

だって、憂が唯先輩であったということは。
梓のためにと三日を繰り返す憂が、唯先輩だったということで。
その流す涙も、憂に謝罪する姿も、結局全ては梓のためだったということで。

――それは、私の最も見たくない現実であって。

純「……もう、諦めましょうよ」

唯「え……?」

純「このまま、梓の死を受け入れて生きていきましょう」

……もういいよ。
もういいよ、唯先輩に愛される妬ましい梓。そのまま死んでいて。
お前が唯先輩の中から消えるまで、私が唯先輩の隣にいてやるんだ。もうそれしかできないんだ。

純「……タイムマシン、渡してください」

唯「だ、ダメ! もうすぐ八時だもん! また使わないと、繰り返さないとダメなんだから…!」

純「……死んだ人も浮かばれませんよ、そこまで執着されてると」

唯「いいもん! 一緒に居られるならそれでいいもんっ! ほら、純ちゃんも早く、一緒に跳ぼう? ね?」

泣き笑いの表情で、手を伸ばす唯先輩。
私は――その手を――


194 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/09(土) 11:05:11.08 ID:vxxHoEm3o


――その手を――掴むことは出来なかった。

純「……はぁ」

……聞く耳を持たない唯先輩に、諦めたように見せかけて詰め寄り――タイムマシンを奪う。

唯「あっ!?」

純「――こんなものッ!!!!」

全力で、床に叩きつける。
円筒状の本体は接着されていたであろう場所から真っ二つに割れ、いくつもの見知らぬ部品が飛び散る。

唯「あ……ああっ……あああああああっ!!!!」

四方八方に飛び散った部品を、全て回収することは不可能だろう。
仮に出来たとしても、それがどのように内部に納まっていたのかは知る術がない。事実上、タイムマシンはこれで失われたことになる。

唯「あぁ…ああっ、ダメ、ダメなのに………こんな、ぅぁあ……!」

涙と鼻水を溢れさせ、唯先輩はただ、部品を拾い集めている。震える指先で拾い集めた先から、掌から零れ落ちていることにも気づかずに。

……そんなにも、そんなにも梓との時間が大事か。心を壊してしまうほど、アイツとの時間に執着していたのか!

純「唯先輩の……バカぁっ!!!」



――愛しの唯先輩と同じように、惨めに涙と鼻水を垂れ流しながら、どこへともなく走っていた。

純(――何だったんだろ。何の為に、こんなに繰り返したんだろ…)

私がこれまでやってきたこと全てが、唯先輩の、梓に対する愛情から来ていた物だと思い知った。陳腐な言葉だけど、私はその瞬間に全てに絶望してしまった。

私には、もう何もない。
唯先輩の心は、梓に囚われていて。私の想いも言葉も届かなくて。
私の心も言葉も、唯先輩だけに向けているのに。全てを向けても届かないなら、私は、もう。

純「……生きてる意味、あるのかな……」

問うまでもない。何もない私なんだ、生きる意味すらあるわけがない。
……せめて最期まで、私らしく面白おかしく在ろうか。梓に踊らされてきた哀れな道化らしく、奇抜で滑稽な最期を迎えてやろうか。
全裸で対向車線でも走ってやろうか。撥ねられずにどこまでいけるか。なかなか面白そうじゃ――
195 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/09(土) 11:06:14.33 ID:vxxHoEm3o


「――純ちゃんっ!!」


純「ッ……!!」

振り返らず、私は走る速度を上げた。

純「何で……」

何で。
なんで今更。

その声を、私に向けるんだ。

純「唯先輩……何で……!?」

唯「純ちゃんっ……待って…! せめて、せめて……!」

何を、何が、一体何が「せめて」なんだろう。その先に続く言葉は、何なんだろう。
と、それに気を取られて振り返ったのがいけなかった。足を絡ませた私は、そのまま倒れこんでしまった。

――眼前に車の迫る車道に。

あー、死ぬね、こりゃ。
まぁ別に生きていても何もないし、それはいいんだけど。

でも……ちょっと心残りが出来ちゃったじゃないですか、唯先ぱ――

唯「っ――!!」


――撥ねられる直前に私が見た唯先輩は、必死な形相でこちらに飛び込んできていた。



純(あー………寒い)

どれくらい跳ね飛ばされたのかはわからないが、もう長くないことは自分でもわかる。
痛みはないが、ひたすらに寒い。自分の身体から血も温度も引いていくのがわかりやすいほどに伝わってくる。

純(……手だけを除いて、だけど)

私の隣に横たわる、私と同じかそれ以上の傷を負った唯先輩。
きっともう、既に息はない。だから本当はその握った手も、温かいはずはない。

――あの時飛び込んできた唯先輩は、私の手を握って、一緒に車に撥ねられた。

突き飛ばして助ける、とかいうドラマ的なものにも憧れはあったけれど。それでも唯先輩はそれをしなかった。
出来なかっただけかもしれない。でも、どちらでも同じなのかもしれない。
こうなった以上、それが私の『結果』なのだから。

でも、そうだとしたら。
唯先輩が、最期に私の手を握ってくれることを選んでくれたのだとしたら。

純(……もしかして、私って最低…?)

唯先輩を泣かせて、悩ませて、苦しませて、心を壊して、あまつさえ先に逝かせたのだとしたら。
それはそれで、ものすごく恵まれていた人生だったとも言えるけど。


……けど、向こうで唯先輩に逢ったら、まずは謝らなきゃいけないなぁ……

196 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/09(土) 11:07:26.14 ID:vxxHoEm3o

おわり

長くなりすぎた 吊ってきます
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 11:23:00.63 ID:x9+InwqBo
ここまで投下されたSSのまとめ

◆6Pl2lEaW1E 予定:12時〜
◆JMIFPYygak
◆RcBucO91EsFq
◆YgiDkxnzcI 四番手:>>109-159
◆Q9Tanlls9c 一番手:>>31-54 二番手:>>55-77
◆HBJa11Hm.c 五番手:>>162-195
◆PyatAfq.54xf 三番手:>>84-104
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 11:55:34.90 ID:m4GlMIS60
もし間に合えば参加します!

なぁに、まだ土曜日は11時間以上残っているんだ……
出だしの起が書き終わったんだから、あとは赤子の手をひねるようなものさ!

俺、このSSを書き終わったらムギちゃんとデートするだ……
199 : ◆6Pl2lEaW1E [sage]:2011/07/09(土) 12:06:16.85 ID:4iNFdVqnP
お疲れ様です。始めます
200 : ◆6Pl2lEaW1E [sage saga]:2011/07/09(土) 12:07:55.48 ID:4iNFdVqnP
タイトル:唯「ペンダント」


唯「はあ、はあ、やばいよー遅刻だよー」

おばあさん「あ!ちょっとそこの・・・お嬢さん!」

唯「え?私ですか?」

おばあさん「ここの住所にどう行ったらいいかわかる?」

唯「えーと、あーここ私の家の近くの公園だ!連れてってあげるよおばあちゃん」

公園

唯「ここだよー」

おばあさん「ありがとう。助かったわ」

唯「いえいえー。おばあちゃんはこんな公園に何か用なの?」

おばあさん「私も昔はこの辺りに住んでてね。この公園でよく遊んだのよ」

唯「へーそうなんだあ」

おばあさん「案内してくれたお礼にこれをあげるわ」

唯「わあ!綺麗なペンダント・・・でもこんな高そうなの」
201 : ◆6Pl2lEaW1E [sage saga]:2011/07/09(土) 12:08:22.33 ID:4iNFdVqnP
おばあさん「いいのよ。私が作ったものだから」

唯「えーすごい!おばあちゃん職人さんなの?」

おばあさん「まあそんなところね。これはね、特別なペンダントなの。
      あなたがもし何かに困って、やりなおしたいって思ったときに真ん中についているボタンを押すといいわ」

唯「??どういうこと?」

おばあさん「まあ、その時になったらわかるわ。ただし、使う時は本当に使うべきかどうかちゃんと考えるようにね」

唯「うーん、よくわかんないなあ。あ!そういえば学校!遅刻しちゃう!じゃあおばあちゃん、私もう行くね!」

おばあさん「ええ、案内ありがとう」
202 : ◆6Pl2lEaW1E [sage saga]:2011/07/09(土) 12:09:54.91 ID:4iNFdVqnP
唯「おはよー!」

律「おはよう・・・って遅いよ!もう1時間目終わったぞ!」

紬「どうしてたの?具合悪かったり・・・」

唯「違うよー!なんかね、おばあちゃんが道に迷ってて、一緒に目的地まで行ってあげたんだー」

紬「唯ちゃん優しいわね♪あれ?そのペンダントどうしたの?」

律「なんだ?制服にペンダントなんてつけて」

唯「そのおばあちゃんにもらっちゃったんだ」

紬「見たことない形ね・・・真ん中にスイッチみたいなのがついてるし」

律「それより唯、次の授業は小テストあるけど勉強したのか?」

唯「あ!忘れてたあ!」
203 : ◆6Pl2lEaW1E [sage saga]:2011/07/09(土) 12:12:36.27 ID:4iNFdVqnP
キーンコーン

律「ふう、終わった終わった。昨日澪と勉強しといてよかった。唯は・・・だめだったみたいだな」

唯「うう・・・オワッタ」

あれ、そういえばさっきのおばあちゃん、何かに困ってやり直したい時にペンダントのボタンを押せって・・・
今まさに困ってるよね。

唯「だめもとっ!えい!」

ポチッ

ギュオーーーン

律「おはよう・・・って遅いよ!もう1時間目終わったぞ!」

紬「どうしてたの?具合悪かったり・・・」

唯「え?一時間目?もう二時間目おわったのに」

律「何言ってるんだ?今一時間目が終わって、お前が今来たんだぞ」

紬「あれ?そのペンダントどうしたの?」

これって、さっき私が学校に来た時の会話・・・もしかして、時間が戻ってる!?てことは・・・
204 : ◆6Pl2lEaW1E [sage saga]:2011/07/09(土) 12:18:39.92 ID:4iNFdVqnP
唯「次って、もしかして小テスト?」

律「そうだぞー。ちゃんと勉強したか?」

やっぱり・・・さっきのテストならだいたいの問題は覚えてる。今からそこだけ勉強しておけば!

キーンコーン

律「ふう、終わった終わった。昨日澪と勉強しといてよかった。唯は・・・なんだその笑顔」

唯「ぐふふふふ、べつにい」

やった!やっぱりあのペンダントは時間を巻き戻す機械だったんだ!これでもうテストは怖くない!」
205 : ◆6Pl2lEaW1E [sage saga]:2011/07/09(土) 12:32:00.64 ID:4iNFdVqnP
それからの私は絶好調だった。テストを一回受けてから問題を覚えて巻き戻せばいいので、長々とテスト勉強をする必要は無くなった。
部活でも

唯「♪♪」

澪「唯、最近どんどん上達してるな」

律「成績もめっちゃ良くなってるんだよなあ。普段勉強してる感じしないのに」

梓「いいじゃないですか。唯先輩が上手くなって私は嬉しいです」

唯「ありがとーあずにゃーん」ダキッ

本来なら勉強をやらなきゃいけない時でも好きなだけギー太を弾けるから、自然と腕も上がっていった。

律「そうだ、唯。数学でちょっとわからないところあるんだけど」

唯「えー?そんなの私もわからないよ」

律「あんな成績いいのに?なんか妙なんだよなー」
206 : ◆6Pl2lEaW1E [sage saga]:2011/07/09(土) 12:41:40.46 ID:4iNFdVqnP

でもそうやってしばらく日々を過ごしているうちに、私はだんだん退屈になってきた。

唯「部活行こうよー」

律「今日はもうテスト前期間だろ?しばらく部活はなしだ」

唯「ええー」

律「お前と違って私たちは勉強しなくちゃいけないからな。じゃ」

紬「じゃあね唯ちゃん」

気のせいか、みんなもちょっと冷たくなった気がする。
なんの努力もしてない私がいい成績をとるのは気に食わないのだろうか

1人で部室に行ってもつまらないので、私も家に帰ることにした。すると、和ちゃんと澪ちゃんに出会った。

唯「和ちゃん!澪ちゃん!」

和「あら、唯」

澪「今帰り?」
207 : ◆6Pl2lEaW1E [sage saga]:2011/07/09(土) 12:45:03.53 ID:4iNFdVqnP
唯「そうだよー。2人は?」

和「これから澪の家で勉強会するのよ」

澪「律やムギも来るはずなんだけど・・・聞いてないか?」

唯「え・・・聞いてないし、私誘われてない」

和「まあ唯は最近勉強しなくてもなぜか成績いいから、誘う必要ないと思ったんじゃない?」

澪「2人も悪気があったわけじゃないと思うよ」

唯「私も行く!みんなといっしょに勉強する!いい?」

澪「うん。もちろんいいけど」
208 : ◆6Pl2lEaW1E [sage saga]:2011/07/09(土) 12:54:34.19 ID:4iNFdVqnP
なんか寂しかったので、私も勉強会にお邪魔することにした。りっちゃんとムギちゃんは気まずそうに謝ってきたけど。私は別に気にしてない

澪「この問題は・・・」

律「なるほどなるほど」

和「律・・・さっきから聞いてるだけじゃない」

でもやっぱり退屈だった。しなくていいとわかってるのに、勉強なんて真面目にできるはずがない。

ペンダントをもらうまでは、こういうテスト勉強もイベントみたいなものだったなあ。
りっちゃんと一緒に和ちゃんや澪ちゃんに泣きついて・・・みんなで一緒に勉強して、休憩のときのお菓子がすごく美味しくて

唯「うう」ポロポロ

和「唯?どうしたの?」

唯「ううっ和ちゃん・・・」グスッ
209 : ◆6Pl2lEaW1E [sage saga]:2011/07/09(土) 12:58:51.78 ID:4iNFdVqnP
澪「いきなりなんだ?」

紬「なんで泣いてるの?」

恥ずかしいところ見られちゃったな・・・時間を巻き戻してみんなに忘れてもらおう

唯「・・・」

ダメだ。そうやってすぐに時間を戻そうとするからこんなことになっちゃうんだ。
頑張らなかったらなにも面白くない。成功して嬉しいのは、その分頑張ったからなんだ。
私にはこのペンダントは必要ない。誰かにあげちゃおうか・・・いや、やっぱり・・・

唯「よしっ」

ポチッ

ギュオーン・・・
210 : ◆6Pl2lEaW1E [sage saga]:2011/07/09(土) 13:03:26.37 ID:4iNFdVqnP
おばあさん「案内してくれたお礼にこれをあげるわ」

唯「おばあちゃん・・・ごめんなさい!私にはそれは必要ないから!」

おばあさん「・・・そう、よかった」ニコッ

唯「ほえ?」

おばあさん「あなたならきっと、わかってくれると思ってたわ。唯」

唯「おばあちゃん、もしかして・・・」

おばあさん「その気持を、大切にね。じゃあ、また会いましょう」

唯「あ、待って!また会うってどこで!?」

おばあさん「未来で」

シューン

唯「消えた・・・」

ペンダント、無くなっちゃったかあ。でも、これでよかったよね?

唯「あ、そういえば今日って・・・やば!」

唯「遅刻だーーーー!」

ダダダダダダ

おわり
211 : ◆6Pl2lEaW1E [sage saga]:2011/07/09(土) 13:03:52.62 ID:4iNFdVqnP
読んでくれた人ありがとう。次の方いたらどうぞー
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 13:11:13.89 ID:9fy/tmZn0
面白かった!
俺も今書いてるやつ書き上げたら投下しようかなー
213 : ◆RcBucO91EsFq [sage saga]:2011/07/09(土) 13:41:20.07 ID:0t2BvalCo
乙です
今から2時あたりまで大丈夫でしょうか?
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 13:45:22.59 ID:a5h5NSvDO
企画なんてやってたんだ
参加できなくて残念

みんな頑張って
215 : ◆RcBucO91EsFq [sage saga]:2011/07/09(土) 13:55:12.24 ID:0t2BvalCo
予約ないようなので行きます
20レスほどです



「復活」
216 : ◆RcBucO91EsFq [sage saga]:2011/07/09(土) 13:55:43.06 ID:0t2BvalCo

   (覆された宝石)のような朝
   何人か戸口にて誰かとさゝやく
   それは神の誕生の日。


   御使、處女の許に来りて、言ふ。
   『めでたし、恵まるる者よ、主なんぢと偕に在せり』
   マリヤこの言によりて心いたく騒ぎ、……

……

18回目の朝、彼女はそれまでとはすべてが違っていることを知っていた。


217 : ◆RcBucO91EsFq [sage saga]:2011/07/09(土) 13:56:10.12 ID:0t2BvalCo

   1

「澪はムギの車に同乗してくるって。梓の愛すべき後輩もムギが拾ってくるってさ」

律は梓が助手席に乗り込んでしっかりとシートベルトを締めたのを確認すると、車を発進させた。

昨年と変わらぬツインテール姿の後輩は悠々と運転席でハンドルを切る律のようすに目を丸くした。

「律先輩が免許を取れたなんて、信じられないです」

「オートマだけどな」

軽口にも気分を悪くせず、律は返した。

「唯先輩の家まで20分くらいですか」

「ああ」

それきり会話は止んだ。
218 : ◆RcBucO91EsFq [sage saga]:2011/07/09(土) 13:56:54.87 ID:0t2BvalCo

同じ軽音部の部長と部員としてともに過ごした二年の間にも、律と梓が二人きりになる機会はあまり多くなかった。

いざ二人きりになると、どのような話題を振ればいいのか律にはわからなかった。

もとより気心のしれた仲だ、沈黙が耐えがたいというほどではない。

しかし律の気性からして、二人の人間がこれだけ狭い空間を共有しつつ無言でいるよりは、

なにか愉快な会話でも交わす方が好ましかった。

梓の方でもそんな気配を察したらしい。

会話の口火は彼女が切った。
219 : ◆RcBucO91EsFq [sage saga]:2011/07/09(土) 13:57:48.01 ID:0t2BvalCo

「唯先輩のお家に着くまで、なにか面白い話でもしましょうか」

「いいぜ。で、面白い話って、たとえばどんな?」

「そうですね……じつは私は宇宙人なんです」

「目的地を病院に変えようか」

「ひどいです。冗談ですよ、冗談」

「冗談に聞えなかったぞ、今の。まるで……」

「まるで私が本気で言ってるように聴こえました?」

「うん」

「その方が好都合です。まあ、退屈しのぎのお話ですよ。私が宇宙人だって前提で聞いてもらえます?」

「うん、まあ、面白い話ならなんでもかまわないけど」

「それで、私が宇宙人だって聞いてどう思いました?」

「ばかばかしい」

「やっぱり信じてないですよね。それはなぜです?」

「なんでって……そりゃ、確かに梓はちょっと人間離れしたとこが……いたた、冗談だって!

 嘘だよ、お前はどう見ても人間だ」

「そう、そうなんです。どう見ても私は地球人に見えるんです」

「うん、かわいい地球人だ」
220 : ◆RcBucO91EsFq [sage saga]:2011/07/09(土) 13:58:38.51 ID:0t2BvalCo

「律先輩は宇宙人ってどんなカタチをしてると思いますか?」

「タコ」

「それは昔の火星人……少なくとも地球人と同じ姿ではないと思っている、そうですね?」

「ああ」

「なぜです?」

「だって、宇宙人がいるとして……そいつらはようするに地球とは違う星で進化した生き物なんだろ?

 地球とは違う環境で育って、その、進化とかなんとか、そこの環境に適応した姿をしてるはずだから――」

「当然人間とは違う姿をしている。じゃあ、私の故郷が地球とほとんど変わらない環境の星なら?」

「それでもやっぱり地球人とまったく同じにはならないと思う。

 人類が海のプランクトンみたいな生き物から、今の姿になるまでには、

 何億年もかけて……ものすごい数の偶然を積み重ねて、進化してきたんだろ?

 地球と似た環境の星だからって、人間と同じ生き物が生まれるとは考えられないよ」

「もし人間が生まれたのが偶然によるものだとしたら、先輩の言ってることはほぼ正しいです」

「どういうこと?」

「人間がある必然のもとに、もっと言えば誰かの操作によって生まれたとしたら?」

「誰かって、神さまとか?」

「はい。私たちはその人を神さまと呼びます」

「アヤシイ話ならごめんだぞ」

「あはは」
221 : ◆RcBucO91EsFq [sage saga]:2011/07/09(土) 14:00:39.85 ID:0t2BvalCo

「だけど、宇宙人である私が地球人と同じ姿をしてるということ自体、神の存在の裏付けにはなりません?」

「ええー? ちょっとむりやりじゃないか、それ」

「まあ、お話ですから……」

「だいたいさ、梓が宇宙人だとして、どうやって地球まで来たんだよ? 宇宙船とか見せてくれるの?」

「私たちは移動をするのに乗物は使いません。

 重力波無限軌道支持体と言うのですが、ある端末を使って直接物体を目的地に輸送する方法があります。

 この方法だと、移動にかかるエネルギーは三次元的な距離に左右されないので非常に経済的なんです。

 地球に来て初めて自動車とか電車とかに乗った時は変な気がしましたよ」

「早口でさっぱりわからん」

「そこは、まあ、どうでもいい話です」

梓はそこで一つ息を吐いた。

「律先輩は信じてますか、神さま」

「さあ。会ったことないからどうにも」

「ええ。神さまって、どんな姿をしてると思います?」

「白いひげがもじゃもじゃ生えてる?」

「人間みたいな姿?」

「当たり前だろ」
222 : ◆RcBucO91EsFq [sage saga]:2011/07/09(土) 14:01:23.72 ID:0t2BvalCo

「当たり前でもないです。世界各地の宗教ではいろいろな姿の神さまがいるんですよ?

 象の形だったり、丸い円盤で表される神さまや、姿のない神さまもいます。

 そう、でも、律先輩が言ったので基本は正しいんです。おひげは生えてないですけど」

「梓は会ったことあるの?」

「ふふ。創世記には神は自分の姿に似せて人間を創ったと書かれてあります。

 つまり、人間とまったく同じ姿をしてるということです。

 また、真昼に庭を歩いたとの記述もあります……けっして神さまは形のない存在じゃないんです。

 人間と同じ、肉体をもっているんです。

 そういう方が、この宇宙を創り、星を創り、

 様々な惑星に生命と、自分に似た人間を生みだしました。どう思います?」

「すごい話だなあ」

「すごいですよね。たいへんなことです。でもね、死んじゃったんです」

「ん? 誰が?」

「神さま」

「神さまって死ぬの?」

「肉体があるんですから、死ぬこともあります。もちろん、普通そんなことないですよ。

 だけど、死んでしまったんです。愛のために」

「わからん」
223 : ◆RcBucO91EsFq [sage saga]:2011/07/09(土) 14:02:22.92 ID:0t2BvalCo

「私たちは、それからずっと、神さまを蘇らせようとしてるんです」

「どうやって?」

「神さまは、私たちと同じように肉体を持ってるっていいましたよね」

「さっき聞いた」

「手があって、指があって、胴体の中には内臓があって……

 それらすべてのものはすべて微小な細胞からできてます。

 ぜんぶ、私たち宇宙人やあなたたち地球人類と同じです。

 もちろん、私たちと同じで細胞の中には核があり、遺伝子が保存されています。

 ねえ、律先輩、DNAは四種のアミノ酸が膨大な数組み合わさってできたものだってご存知ですか?

 その組み合わせの可能性は天文学的な数字ですが、DNAの長さは有限で、ありうる組み合わせの数もまた有限です。

 つまりDNAの様々な組み合わせを試していけば、いつかは、おそらく世界の終わりまでには、

 神とまったく同じDNA配列を保存する細胞が生まれてもよいのです。

 完全に同一なら、その遺伝子保持者は神さまなのです。

 ――ここまで、分かります?」

「自信ない。なんとか……」
224 : ◆RcBucO91EsFq [sage saga]:2011/07/09(土) 14:03:10.10 ID:0t2BvalCo

「私たちは、私たちの星の人間は、その確率をもっと高めるための研究をしていました。

 それが私たちの宗教だったのです、そのように私たちは信仰の行為を定義づけました。

 それが私たちの神への奉仕。一刻も早く、神を復活させること、それが私たちの愛でした。

 方法は簡単です。遺伝子のなかに、特殊な方向付けを施された因子を忍び込ませるだけ……

 神の遺伝子に向けて方向付けされた……神そのものを創ることはできません、しかし、

 世代にわたって様々なパターンを作りだす遺伝子を、神に近い方向へそっと押しだすことは可能だったのです。

 見えない的がどこにあるか分からなくて、すべての方向に向けて矢を放つときと、

 大まかな方向が分かっていて、そちらへ向けてだけ矢を放つときと、

 そのどちらが的を射止める確率が高いか、考えるまでもないでしょう?」

「ううん、そうだな」

「私たちはそれを実行に移しました。そしてその実験場として、地球を、地球人を選んだのです」

「おいおい」

「地球人がいちばん条件がよかったから。一世代のサイクルが短くて、生殖の効率が最もよかったのです。

 他の星の人間は、一世代が地球で言う何世紀分にもあたりますから……私だってこう見えて、律先輩の何倍も生きてるんですよ。

 ……まあ、今お話したことはもうずっと昔のことです。

 地球人の遺伝子に神に向けた因子を忍び込ませ、果てしない未来に、神が再び生まれることを願ったのです」

「着いたぞ」

「え?」
225 : ◆RcBucO91EsFq [sage saga]:2011/07/09(土) 14:03:50.74 ID:0t2BvalCo

「いや、唯の家」

「あ、すみません」

梓は慌ててシートベルトを取ろうともがくが、金具がかたく、うまくいかない。

律はなにも言わずに手を伸ばし、さびついた金具を抉じ開け、梓を解放してやった。

「ありがとうございます」

「神さまが生まれたとしてさ、それが神さまだって、どうしてわかるの?」

「え?」

「続き、さっきの」

「ああ。神にふさわしいほどにその体が成長した時、自ら自覚すると言われています」

「ふーん」

「神さまですから」

「すごいなあ」

「私のお話、面白かったですか?」

「頭が痛くなった」

「あはは」

「お陰で退屈はしなかったよ」

「さ、今日は憂の誕生日です。日ごろお世話になってる分、気合い入れてお祝いしましょう!」

「おう!」
226 : ◆RcBucO91EsFq [sage saga]:2011/07/09(土) 14:04:31.79 ID:0t2BvalCo

   2

部屋はすっかり用意が整っていた。

憂はじっとしてて、という二人の言葉をうけ、姉と純が準備をするのを、すこしはらはらしながら平沢憂は見守っていた。

「さ、これですっかりできたね!」

「ええ」

唯はこの短い作業の間に、すっかり妹の友人と気があったようだった。

「ういー、お誕生日おめでとう!」

「ありがとう、お姉ちゃん。でも、もう何回も聞いたよ?」

「何回でも言いたいよー。おめでとう、おめでとう!」

「おめでとう、憂」

「うん、ありがとう、お姉ちゃん、純ちゃん」

「梓、先輩の車でこっち向かってるって。もうすぐ着くってさ」

携帯を見ながら純が言った。

低いバスの音が響いた。

気のせいかと思った矢先、同じ音がもう一度鳴った。

唯の腹の音だった。
227 : ◆RcBucO91EsFq [sage saga]:2011/07/09(土) 14:05:00.17 ID:0t2BvalCo

「お姉ちゃん、おなか減ったの?」

「うん……みんなが来る前に、ちょっとだけ食べちゃおっか」

「ええ!? だめですよ、唯先輩! もうちょっと待ちましょうよ」

「だってえ……ういー、そこのサンドイッチ取ってー」

「うん」

憂は姉に乞われるまま、テーブルの上の大皿に積まれたサンドイッチの山から、

フィッシュカツサンドを一切れ手に取った。

端を切りそろえた真っ白な食パンに、香ばしい白身魚のカツと瑞々しいレタスが挟まれている。

サンドイッチはすべて唯の好みに合わせてマスタード抜きで作られていた。

憂は大きすぎるカツサンドを、真ん中から手でふたつにちぎる。
228 : ◆RcBucO91EsFq [sage saga]:2011/07/09(土) 14:05:31.71 ID:0t2BvalCo

   3

「お邪魔しまーす!」

チャイムも鳴らさずに律は平沢家に踏み込んだ。

梓がなにか抗議の声をあげているが、気にせずにリビングに上がっていった。

「お祝い事はこのくらいでちょうどいいんだよ」

「礼儀作法のなってない人ですね」

「うるせえ」

「履物をちゃんと脱いでくださいよ?」

「当たり前だろ。もう脱いでるし」

「それから、頭が高いです」

「え?」

「お邪魔します。唯先輩、いますか?」
229 : ◆RcBucO91EsFq [sage saga]:2011/07/09(土) 14:06:03.97 ID:0t2BvalCo

静かな足取りで階段を上っていく。

二人とも何度も訪れた家だ、リビングの場所は承知している。

家の中は変に静かだった。

「ゆいー? いないのか?」

扉を開けると、唯と純、そして本日の主役の憂がきちんとその場にいた。

「なんだ、いるんじゃないか」

おかしなことに誰も律を見なかった。

憂は手にサンドイッチを持っている。

テーブルいっぱいにサンドイッチが積み重なっていた。

皿が足りなかったのか、テーブルクロスにじかに置いてあるものもある。
230 : ◆RcBucO91EsFq [sage saga]:2011/07/09(土) 14:07:04.25 ID:0t2BvalCo

「りっちゃん」

唯がようやくこちらを振り向いた。

けれども、なにも言わずにただ頷くと、その場に膝をついた。

傍らに立っていた純も、すぐに同じようにした。

――律には分からなかった。

いや、少しだけ分かりかけていた。

律は、自分が涙を流すのではないかと思った。

しかし、それはこの場におよそふさわしくないと考え直した。

崇高なものを前にして大いなるよろこびの感情が湧きおこった。


梓は歩み寄り拝跪する、そして言う。

「誕生おめでとうございます」



主は復活せり。

神に栄えあれ。


(2011年2月22日)

おわり
231 : ◆RcBucO91EsFq [sage saga]:2011/07/09(土) 14:10:10.13 ID:0t2BvalCo
以上です
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/09(土) 14:41:45.51 ID:pUjOdJejo
乙 これは長編で読んでみたいな。面白い
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 14:46:14.10 ID:9fy/tmZn0
つまり1発目の唯は失敗したけど、2発目で憂が生まれて成功したってことか。
234 : ◆rTGlWvG1Jo [sage]:2011/07/09(土) 22:52:50.23 ID:5xoCiHbSO
間に合うか分からないけど飛び入りで参加してみます
ギリギリになってしまうと思うのでトリでお願いします
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 23:24:17.68 ID:9fy/tmZn0
間に合いそうに無いんだけど日曜日になっても参加できる?
236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2011/07/09(土) 23:32:56.91 ID:8NOhjUsgo
企画の人がまだですし
それまではいいと思いますよ
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/07/09(土) 23:55:08.57 ID:4iNFdVqnP
参加者も少ないし、日付変わっても全然良いと思うよ
238 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/09(土) 23:56:30.17 ID:vxxHoEm3o
確かに、二人くらい来ていない気がするし
239 : ◆rTGlWvG1Jo [sage]:2011/07/10(日) 01:00:28.32 ID:SYt22na6o
後半即興ですが始めようとおもいます
計一時間ぐらいで終わる予定です

たいとる→ 紬「世界の終わりに口づけを」
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 01:05:09.26 ID:SYt22na6o

From: Tsumugi Kotobuki
To : Azusa Nakano
Date: 2011/10/13 17:40
Subject : 大事なお話

 突然こんなお便りを出してしまってごめんなさい。
 びっくりしちゃったかな。でも、いま伝えるしかなかったの。
 それに……梓ちゃんにだけは、この町の真実を知ってほしかったから。
 私と梓ちゃんだけでもどうにか、この町を脱出しなくちゃいけないから。

 いまから言うこと、信じられないかもしれないけど、聞いて。
 この手紙は菫ちゃんを通して送ってもらうし、分からないことも教えてくれるはずだから。
 いい? 心の準備できた? じゃあ、続きを読んで。

 あのね。実は私たち……記憶を操作されているの。
 梓ちゃんたちだけじゃなくって、この町のみんなが。
 私たちはいま桜ヶ丘だと思っている場所は実は富士樹海に作られた架空の都市で、
 寝ている間に連れてこられて、半年近くずっとこの架空の町に閉じこめられていたの。

 ……笑う?
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 01:07:40.36 ID:SYt22na6o

 それとも、びっくりしちゃったかな。
 たぶんこんなこと聞いても信じられないよね。
 私だって菫ちゃんから教えてもらうまで気づかなかったもの。
 大脳の海馬に制御チップを埋め込まれてにせものの桜ヶ丘に閉じこめられてるなんて、
 そんなSF小説みたいな絵空事を言われたって、私だって最初は信じられなかったから。

 ちょっと試しに最近の私たちのこと、思い出してみて。
 携帯の画面にはいま、10月02日って書いてある。今日の天気は曇りのち晴れ。
 午後三時頃から雲がすうっと消えて、向こうの水面にちぎれた夕陽が映るのが見える。
 沿道には生乾きの水たまりがいくつか見えて、
 部活動を終えて下校する中学生たちのはしゃぐ声が橋の上から聞こえる。

 いつもと同じ風景。いつも通りの日常。
 変わらないようで変わっていくことを無条件に信じてしまえる、ゆるい町。
 でもね、これって二週間前とまったく同じ景色なんだよ。
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 01:10:10.79 ID:SYt22na6o

 この世界は実は十四日周期で、それを過ぎると記憶がリセットされて10月1日に戻るの。
 この空も70メートル上空のスクリーンに上映されているだけ。
 だから、明日は晴れる。
 もう予言しちゃうね。明日確かめてみてよ。

 十時二十分頃から雲が差し始めて、でもそれは十四時四十分頃にまた晴れる。
 私は学校を休むけど、たぶん大まかな流れは変わらないはず。
 唯ちゃんは五限の授業で寝てしまって、放課後に澪ちゃんからたしなめられる。
 十六時十二分、私の持ってきたマドレーヌをりっちゃんがほおばるけど、
 りっちゃんは渇いた喉からわずかな水分を吸い取られてしまってむせちゃうんだ。

 私の予言、ぜったい当たるよ。だって事実だもの。
 もうね、何度も見てきたから全部覚えてるんだ。
 おかしくて、吹き出しそうになって、それからちょっと涙が出るの。
 気づいてからはいつもそう。最近は笑うのがへたっぴになっちゃったけどね。
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 01:12:41.64 ID:SYt22na6o

 最初このことに気づいたとき、疲れてるだけかなって思ってた。
 梓ちゃんはいつかに「この町に閉じこめられてる気がする」って言ってたけど、
 もしかしたら私がいま感じてる、こんな気持ちと似てるのかも。

 梓ちゃん、こう言ってたの覚えてる?
 大人になれる気がしない、って。このまま一生こんな日々が続きそう、って。
 でも、いつの間にか古びて、くさって、気がつく前に消えちゃうのかもって。

 あのとき、私はただ元気づけるつもりで「大丈夫、どこにでも行けるよ」って言ったんだった。
 だって軽音部に入ってから、私に見える世界はいつだって新鮮だったから。
 屋上から見える地平線の向こう、
 家並みが消える白いもやの向こうにはまだ見ぬ何かがたくさんあって、
 駅で千数百円払って終点まで乗れば東京にはいつだって、
 もっとお金を払えばストックホルムやサンフランシスコにだって二人きりで行けるって、
 ……だからいつか行けばいいやって、心の底から信じていられたんだもの。

 でも、本当は行けないの。いくらお金があっても同じ。
 梓ちゃんの言うとおり、閉じこめられてるから。
 私がこの町の秘密に気づいたのは、ふいに遠くに行ってみようって思ったからなんだ。
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 01:15:12.31 ID:SYt22na6o

 きっかけがなんだったかなんてもう思い出せない。
 記憶が真っ白に上塗りされ続けてきてるから、元の絵なんてもう見えないよ。
 だけど、違和感みたいなものがあったんだよ、きっと。
 だって唯ちゃんたち、いつも同じ笑顔だったんだもの。

 同じ笑顔で、同じ声を聞いて、同じ授業を受けて……そのとき、梓ちゃんの言葉を思い出したの。
 ……うん。ちょっとずつ、思い出してきたかも。
 この町から出たいって、このままじゃいけないって、そんな気がしたんだ。

 それでね、私、いつだかに登校する電車を降りないでみた。
 いつもの登校時間だから、桜ヶ丘を乗り過ごしたのは七時半ぐらいだったかな。
 なんとなく、隣でiPhoneをさわってるスーツ姿の女の人についていってみようなんて決めて。
 このまま終点まで降りずにいたら、どこかに行けるはずだって。

 そしたら、急にふっと眠くなってきて……気づいたら桜ヶ丘駅だったの。
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 01:17:43.30 ID:SYt22na6o

 それだけじゃないよ、乗ってる人も誰一人変わってなかったんだから。
 隣には相変わらずあのOLさんがいて、変わらずiPhoneをいじっていて。
 怖くなって、電車を降りちゃった。
 そしたら駅の時計、まだ七時半のままだったの。

 おかしいでしょう?
 だって桜ヶ丘で降りずにもっと向こうまで行こうとしたのに、
 着いた先が桜ヶ丘で、しかも時間も変わってないなんて。
 はじめは寝過ごして、終点まで行って、また戻って来ちゃったのかなって思った。
 けどそしたら時間があわないもの。

 私はあの日、わざとレールを踏み外してみた。
 けど、この世界は何一つ変わらなかった。

 駅のホームを出て空を見上げたら一面曇ってて、雲の薄いとこがわずかに明るいぐらいだった。
 無意識に腕を伸ばしてみたけど、あのぬるい雲がおりてきたようなぬるい空気に包まれただけだった。
 こんなことなかったのに、急に息が詰まりそうで、
 だけど空も地面も柔らかそうな水蒸気にぴっちりふさがれていて。
 ……こわかった。すごく。

 梓ちゃん。あのときはよくわかんなかったけど、いまならわかるよ。
 やっぱり私たち、この町に閉じこめられてるんだよ。
 子どもだからかな。いつかは外に出られるのかな。
 だけどね……いちばんこわかったのはね、

 出れなくてもいいかもって、思っちゃったことなの。
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 01:20:13.78 ID:SYt22na6o

 私は日記を付けてみたんだ。
 一日一日、今日の天気とか、唯ちゃんたちがどんな話してたかとか、
 梓ちゃんとどんな風に過ごしてみたかなんて、いろいろ。
 そしたらすぐにわかっちゃった。
 もう本当、いままでどうして気づかなかったんだろってぐらい。

 この世界、15日の金曜に行けないんだよ。
 14日木曜の夜に眠ると、朝起きたら同じ金曜でも1日の金曜になってしまうから。
 書いてきた日記も白紙になってて、また1日の日付を書き直さなきゃいけなくなるの。

 最初に相談したのはりっちゃんだった。
 ごめんね、梓ちゃんには心配かけたくなかったの。
 それに伝えて変な顔されるのが、伝わらないのがとっても怖かったんだ。
 ごめんなさい。

 りっちゃんだってはじめは信じてくれなかった。
 ムギ、それどこの映画だよーって。
 そりゃそうだよね。だから私はさっきみたいに、りっちゃんたちの行動を予言してみせたの。
 ……そのときは信じてもらえた。唯ちゃんも、澪ちゃんも、みんな驚いてた。
 だけど、いくら伝えても、14日の夜が過ぎればだぁれも覚えてなかったの。

 それに、りっちゃんたちは……ごめんね、この話は次のメールで話すね。
 梓ちゃんにはぎりぎりまで、りっちゃんたちを好きでいてほしいから。
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 01:22:44.40 ID:SYt22na6o

 ところでいま私は川のほとり、橋の作る影にかくれてこれを書いています。

 おぼえてるかな。あの、二人でキスしたところ。
 どしゃぶりの雨が晴れた夕方、二人で寄り道した帰り道のこと。
 つないだ手がやわらかくてあったかくて離せなくなっちゃって、
 頭の上で車のごうごう言う音に身をひそめながら、
 このまま世界が止まっちゃえばいいなんて思ったりして。

 書きながら、さっき空いた左手を一人でちょっとにぎってみました。
 手の感触を思い出してみたかったけど、やっぱりむずかしいな。
 この気持ち、梓ちゃんなら分かるかな。
 分かってくれたら、うれしいけれど。

 私ね、高校に入ってから出会えたすべてが本当に大好きだったんだよ。
 いままで鳥かごの中で育っていたみたいで、
 触れるもの全部が真新しくって、空気も感触もみんな新しく見えたの。
 軽音部のみんなが、同じクラスのみんなが、町を歩く人々と家並みが、
 この町が、本当にいとおしかったの。
 だからこんなことになっちゃったのかもだけど。

 ねぇ、今度会ったらひとつだけ私に教えて。
 梓ちゃんには、まだ“体温”は残ってるよね……?
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 01:25:14.86 ID:SYt22na6o

 ごめん、変なところで長くなっちゃったね。
 だけどこの感覚をどうにか信じてもらうには、こうするしかなかったの。
 ただ頭おかしいだけだって思われちゃうのが一番怖かったから。

 駅のことが会ってからしばらくして、菫ちゃんが来てくれた。
 そしたらいろいろなことを教えてくれた。
 この町はうちの会社によって作られていて、
 みんな大脳に記憶制御チップを埋め込まれていて、
 とくに私と菫ちゃんの間には監視用に脳波を同期するシステムが稼働していて、
(全部作ったのはお父様だと思う。ごめんなさい、迷惑かけちゃって)
 記憶容量がパンクしないように14日周期で頭の中のデータがリセットされるって。

 菫ちゃん、外に出たいってことを誰よりも早く気づいてくれた。
 そりゃ脳内の記憶の伝達を共有してたら当たり前かもね(難しいことはわからないけれど)。
 それでね。菫ちゃん……脱出に、協力してくれるって。
 見つかったら殺されちゃうのに、それでも私のために二重スパイを買って出てくれたの。
 不安でたまらないけれど、ちょっとおもしろそうだよね?
 なんて書いたら梓ちゃんに浅慮をとがめられそうだけどね。

 梓ちゃん。一緒にこの町を出よう。
 後で書くけど、もう残っているのは私と梓ちゃんだけなんだから。
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 01:27:45.53 ID:SYt22na6o

  ◆  ◆  ◆

梓「……なんなの、これ」

菫「すいません。……あの、紬お嬢様のお書きになった手紙です」

梓「書いたって、向こうの世界で?」

菫「はい。信じられないかもしれませんが、」

梓「いや、信じるしかないでしょ…」

菫「……よかった」

梓「?」

菫「だって、こんな話をいきなり信じてもらえるなんて……」

梓「そりゃこの手紙だけ見たらそうだけどさ、でも……信じるしかないじゃん」

菫「……」

梓「それにね、……ムギ先輩のこと、信じたいんだ」
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 01:30:16.21 ID:SYt22na6o

菫「……それは、判官びいきとかではないんですか?」

梓「ふふ、そうかもね。うん、きっとそうだよ」

梓「……もし世界中の誰もが頭おかしいって言っても、私はムギ先輩の方につきたいから」

菫「恋人って、そういうことなんですか?」

梓「どうだろ。単に、私がムギ先輩の感性とか考え方とかが大好きだったからかもね」

菫「やっぱり、私と違いますか?」

梓「そりゃ、菫とムギ先輩はぜんぜん違うよ」

菫「……そうですか」

梓「あ、ごめん、そんなつもりじゃ、」

菫「いいんです。……違うって言ってもらえて、うれしかったんです」

梓「……そっか」
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 01:32:46.82 ID:SYt22na6o

菫「あの、」

梓「うん。早く、二通目も」

菫「……一つ聞いてもいいでしょうか」

梓「うん」

菫「私のこと、やっぱり気持ち悪いって思います?」

梓「えっ……」

菫「正直な気持ちを聞きたいんです。……その、ことを起こす前に」

菫「気持ち悪いとか、怖いとか、おかしいとかって…」

梓「……そりゃ、おかしいかもね」
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 01:36:15.18 ID:SYt22na6o

菫「……そうですよね」

梓「だって、私が菫と同じ立場だったらこんな行動起こせないと思うもん」

菫「えっ?」

梓「天然だし、なんか加害妄想激しいし、私が言うのもあれだけど小動物っぽいし」

菫「……」

梓「菫も、ムギ先輩も、憂や純も、ていうか私の周りの人たちみんなおかしかったから」

梓「慣れちゃったよ。……だから、一人一人のことが好きなんだ」

菫「……結構、直球で言うんですね。梓先輩って」

梓「うん。ムギ先輩のことは、やっぱ結構お灸据えられたっていうか」

菫「……ふふ」

梓「それで、私はどうしたらいいの? どうすれば、ムギ先輩を――」

菫「あっその前に二通目です」

梓「ごめん、そうだったね」
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 01:39:15.52 ID:SYt22na6o

  ◆  ◆  ◆

From: Tsumugi Kotobuki
To : Azusa Nakano
Date: 2011/10/13 18:12
Subject : 脱出計画

 まだ橋の下にいます。
 そろそろ帰らないと家の人が心配しちゃう時間かな。
 もう私は家に帰らないから関係ないけどね。

 橋の方からは相変わらずごうごうと自動車の走行音が聞こえてきます。
 さっきまで騒がしかった中学生たちもピークを過ぎて、
 代わりに帰宅の車の量が増えたみたい。
 ちょっと向こう側を見上げてみたら、
 ちょうど頭の上をフロントライトの光がつうって抜けていく頃です。

 じゃあ、そろそろ本題に入らないとね。
 二通目は脳波通信の傍受の心配はないけど、文字数が限られてるから。
 と、その前にりっちゃんたちのことからだった。

 落ち着いて聞いて。
 りっちゃんたちは、この世界から連れていけないの。
 だってもう、りっちゃんたちには“体温”がなくなってしまってるから。
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 01:42:16.04 ID:SYt22na6o

 ごめんね、ひどいこと言ってしまう。
 けど、私がそれとなく肌に触れて確かめた人たちはみんな冷たくなってた。

 りっちゃん、唯ちゃん、澪ちゃん、さわ子先生、和ちゃん、憂ちゃん、梓ちゃん、純ちゃん。
 梓ちゃんなら、唯ちゃんの体温には気づいてたかもしれない。
 たぶん梓ちゃんだって意識しないようにプログラミングされてるから、
 わざわざ体温なんて気に留めたことなんてなかったと思うけど。

 りっちゃんたちはもう制御システムに乗っ取られてて、
 二週間ごとに記憶を塗りつぶされるだけの、
 予定された行動や反応しかしないゾンビになっちゃってるの。
 ちゃんとは確かめてないけど、この町にいる人々もみんなそうだよ。
 脳波を操作されて、同じ日々を繰り返すようにプログラミングされてる。

 気づいたとき、すごく怖かった。
 電車の中の誰にさわっても、学校で誰にふれても、
 誰一人として内から発する体温っていうのがなくなってたんだもの。
 過去に食べられちゃった、予定調和の世界。
 そんな、思い出の抜け殻だけで成り立つ世界だなって思った。

 だから、梓ちゃんに触れたとき……ちょっと涙がでちゃった。
 体温がね、あったんだよ。梓ちゃんは、ちゃんとあったかかったの……!
 もう覚えてないよね。梓ちゃんも記憶は塗りつぶされてるはずだから。
 でも確かめてみて。
 自分の手を、ぎゅうって。ね、あったかいでしょう?
 それはね、この町じゃ本当にもうわずかな、生きてるって証拠なんだよ。

 梓ちゃんだけは生きてるの。
 それだけが、梓ちゃんの体温だけが、私の生きる希望だったんだから。
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 01:45:16.54 ID:SYt22na6o

 じゃあ今度こそ本題ね。
 いま、私のカバンには紙パックのアップルジュースがひとつあるの。
 ローソンで売ってるのと一緒だけど、中身は実は劇薬なの。

 私はこれから一度死ぬ。菫ちゃんからもらったこの薬を飲んで。
 でも心配しないで、仮死状態……植物人間みたいな状態になるだけで、体温は残るから。
 死体になってこの世界を脱出して、外で落ち合うつもりだから。
 だから私の後なんて追っちゃダメだよ? 絶対だからね。

 死ぬ場所はここの近く。いまいるところから、ちょっと離れた目立つとこ。
 正確には花田橋の信号のすぐそば、二人で一緒に寄ったアイスクリーム屋さんの近く。
 そのあたりで私が下校途中に倒れて、
 小さい頃かかった心臓疾患が再発して、そのまま息を引き取ってしまう。
 大丈夫だよ。きっと、菫ちゃんがなんとかしてくれるから。

 梓ちゃんはなんにも気にしないで、そのまま学校に通って授業を受けて。
 ぜったいにこっちに来たらダメだよ。
 バレちゃったら、今度こそ本当にこっちの世界から出られなくなっちゃうから。

 時が来たら、菫ちゃんが迎えにくるはず。
 私より髪が短い、金髪で青い目のちっちゃな女の子。
 そしたら、あの子の言うことに従ってついてきて。

 ここまではいい?
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 01:48:16.91 ID:SYt22na6o

 じゃあ、最後にね……ほんとはちょっと気が進まないんだけど。
 私にどうしても伝えたいことがあったら、菫ちゃんに伝えて。
 前にも言ったけど、菫ちゃんと私は脳波を共有しているの。
 私たちは遺伝子レベルできわめて整合性が高いから……って、それはいいかな。

 とにかく、菫ちゃんに触れれば私に触れたことになるし、
 菫ちゃんの心を動かせば、私の胸もどきどきするの。
 言葉で伝えられることはメールなんかの機械を通さなきゃダメだけど、
 感覚でなら私の脳に直接伝わってくるから、安心して。

 だけどね、やっぱり本当は直接ふれたいんだ。
 私が脱出を決めたのだって、梓ちゃんとちゃんと熱を持って触れるためだったもの。
 いつだったか、梓ちゃんにキスしたの。
 そしたら……唇が、冷たくなってた。
 手や肩はまだまだあったかいのに、唇の感触はなくなってた。空気みたいに。

 もう、世界は梓ちゃんを忘れようとしてるの。
 だからここを出たら、真っ先に私にキスをして。お願いだから。
 梓ちゃんには体温が残ってるって、それを唇の感触で教えてほしいの。

 そしたら……私だって、生き返るはずだから。
 ふふ、眠りの森の女の子みたいだね。王子様のキスでよみがえるなんて。
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 01:51:17.44 ID:SYt22na6o

 うん。
 私たちが演じるのは、ロミオとジュリエットじゃないよ。
 白雪姫の方。……自分で美女なんてはずかしいけど、劇の題名だもんね。

 私は勇気を出して毒リンゴを食べる。
 だから梓ちゃんも、絶対に私を見つけだしてね。
 そしたら……せっかくだから、キスで起こしてほしいかな。
 はずかしいけれど、絶対目覚めてみせるから。

 じゃあね、梓ちゃん。
 外の世界でまた会おうね。
 そしたら、予言なんてできっこない未来を一緒に作るんだから。


P.S.
 じつは白雪姫、小さい頃に絵本で読んだころからあこがれてたんだ。
 私、愛する人の口づけで目覚めるの、夢だったの。

 ……笑う?
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 01:54:17.79 ID:SYt22na6o

  ◆  ◆  ◆


梓「……あは」

菫「……やっぱり、笑いましたね。ふふ」

梓「だって、こんな直球で……ああもうっ」

菫「さっきの梓先輩だって、結構恥ずかしいこと言ってたような…」

梓「やめて、忘れて。後生だから!」

菫「いやです、せっかくですし」

梓「ああもうっ、にやけないでよ・・・・!」

菫「それに、私の気持ちは紬お嬢様に伝わるんですよ?」

梓「あ、そっか……でもそれひっくるめても、やっぱやだなあ」

菫「私と紬お嬢様、ちがいますか?」

梓「ぜんぜん別だよ……うぅ」

菫「……ふふ、よかった」
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 01:57:18.18 ID:SYt22na6o

梓「じゃあ……私、どうすればいいの?」

 そう聞いたら、菫は向こう側の白いベッドを指さした。
 そこには、私の愛するムギ先輩が眠っている。
 手首と頭に機械をつなげられて、腕に点滴を付けられたまま。

菫「はい……脳波同期の処理は、私や斉藤が行います」

 ですから、梓先輩はお嬢様のところに向かってください。
 これから蘇生処理を行いますから。
 そう、どこか諦めたような口振りで菫は言う。
 しおれた花のような笑顔が気になって、思わず聞いてしまう。

梓「あの、本当に大丈夫なの……?」
260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 02:00:18.75 ID:SYt22na6o

菫「そ、それは心配ないです! ここまで来るのに、何度も準備やデモを行ってきたので――」

 さっきまでかすかに浮かんでた心配の色が、焦りに塗りつぶされる。
 私の言葉は菫をあわてさせちゃったみたい。

菫「あの、紬お嬢様のことは心配はいらないですから、」

梓「ううん、だったらいいんだ。……じゃあ、がんばって」

 そういって、元気づけるように肩をぽんとたたいた。
 相手はちょっとあっけにとられたような顔をして、だけど笑ってくれた。
261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 02:03:19.48 ID:SYt22na6o

 ムギ先輩の言ってたことは、私の世界ではまるっきり嘘だった。
 だけど、ムギ先輩が向こうの世界でそう信じてるなら、そっちを信じたいと思う。

 一年前……2010年10月13日、ムギ先輩はふいに心臓発作か何かを起こして花田橋の近くで倒れた。
 通行人がいち早く発見したおかげで死には至らなかったけれど、
 それからあの人はずっとこのベッドで眠り続けている。
 植物人間、というやつだ。
 元の状態に戻るのは難しいって、最初そう聞かされた。

 はじめはすぐに回復するだろう、じきに元気を取り戻すだろうって思ってた。
 けど、冬を越えてもムギ先輩の意識はもどらなかった。

 ほかの先輩方は受験で忙しくなり、病室に通うのは私だけになった。
 もっとも、通い詰めようとする唯先輩たちを追い返したのは私だったけど。
 それで受験に落ちたら一番つらいのはムギ先輩です、なんてわかった口をきいて。

 先輩方が無事に入学して、桜の花びらが作る絨毯を一人で踏んだとき、
 ふいに涙が止まらなくなって、病院の前の道路でしゃがみ込んでしまった。
 後を追おう。
 丸一年経ったらあきらめて、向こうの世界で落ち合おう。
 そんな風に思ってしまった後で、斉藤菫が入部してきた。
262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 02:06:20.84 ID:SYt22na6o

 はじめは何かの偶然かと思った。
 ムギ先輩と関係のある菫が、桜高の軽音部にわざわざ入部してくるなんて。
 だけど軽音部を再開してから一ヶ月ぐらい経ったころ、ムギ先輩のことを聞いてしまった。

 菫が言うには、ムギ先輩は自分の世界に閉じこもってしまっているらしい。
 外に出たい、つまり意識を回復したいって気持ちと同じぐらい、
 みんなと一緒にいたい、つまりこのまま夢の世界に浸っていたいって気持ちも強かったらしい。

菫「ドリーって、知ってますか。羊の名前なんですけど」

 あの日、ムギ先輩の病室で菫はそんな風に話を切り出した。
 なにも言えなかった。
 いきなりそんな話をされて、どんな答えが返せるというんだろう?
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 02:09:21.56 ID:SYt22na6o

 1996年7月5日、ムギ先輩の誕生日に四年と三日遅れて生まれたその羊は、
 いわゆるクローン技術によって生まれたものだった。
 このクローン羊の問題は科学だけでなく生命倫理の面でも問題になり、
 日本では2000年11月――ムギ先輩が8歳の時、ヒトクローン技術規制法が制定された。
 けれどもその五年前、ドリーが生まれる一年前には人間へのクローン技術が完成していたという。

 ――そのクローン人間が、私なんです。

 そういって菫は自分の服をたくし上げ、白くてきれいなおなかにうっすらと走る傷を見せた。
 もうすでに、いくつかの臓器を紬お嬢様に提供してしまいました。
 だから私は、紬お嬢様にとってのドリーなんです。

 あの日、ムギ先輩の病室で菫はそんな風に話を切り上げた。
 なにも言えなかった。
 ほほえみながら自分の運命を語るこの子に、どんな声をかけられたっていうんだろう?
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 02:12:22.15 ID:SYt22na6o

 菫はそれから、こんな風に説明した。
 彼女とムギ先輩がクローンである以上、大脳の記憶を直接リンクさせることも可能らしい。
 詳しいことはわからないけど、あの子がそういうならそうなんだろう。
 つまり、体温や感触やほかのいろいろが菫を通してムギ先輩に伝わるという。

梓「じゃあ……私が菫に触れたら、ムギ先輩に何か伝えることができるっていうの?」

菫「はい。……そのために、紬お嬢様を現実に連れてくるために、私は梓先輩の元に来たんです」

 言うなり、菫に抱きしめられた。
 不意打ちすぎてあらがうことも忘れてしまう。
 やがて彼女の言葉が頭をよぎって、抵抗することも忘れてしまった。

 髪の毛の匂い、腕の感触、触れあう肌……どれもが、ちょっとずつムギ先輩を思わせて。
 この子を通して私にムギ先輩の思い出が伝わってくるなら、
 私もこの子を通してムギ先輩に何か生きてることを伝えられるなら、

 それもいいかもしれないってふと思った。
 思ってしまった。
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 02:15:22.81 ID:SYt22na6o

 私のこと、気持ち悪いですよね。怖いですよね。
 たびたびそんな風にこぼす菫に、私はいつも「そんなことない」って返してきた。
 だってムギ先輩に体温を伝える、大事な存在だったから。
 人を手段として見なしてる時点でクローンを作った人たちと一緒で、
 自分が最低だなって思うことも多かったけれど。

 でも……一番怖かったのは、もっと違うことだった。
 このままでもいいかもって、思えてしまったことだった。

 私の言葉も、私の体温も、菫を通せばムギ先輩に伝えられる。
 病室でムギ先輩に直に触れれば、その体温だって伝わってくる。
 それに……菫を抱く感触は、あまりにもムギ先輩と酷似していて。
 慣れてしまうことが一番怖かった。

 夏の終わり、一年前に私がムギ先輩と初めて口づけを交わした頃。
 私は菫に唇を奪われた。
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 02:19:59.08 ID:SYt22na6o

 あの日の夜はうまく寝付けなかった。
 言い訳したがる気持ちと、
 それにかなうもっともな理屈と、
 ムギ先輩の不在を埋めてしまいたくなる弱い自分がぐるぐる渦巻いて。

 きっとあの人が夢から出られなくなって、私の時間も止まってしまっていたんだ。
 現実逃避の夢に閉じこめられてるのは、私の方だったかもしれない。
 そんな中、菫だけがいまも止まった私たちの時間を戻そうと動いてくれている。
 彼女は私のムギ先輩への気持ちを、一つ残らず受け止めてくれる。

 だからだんだん、二人への気持ちが混ざってわからなくなりそうだった。
 そんなこと、菫にさえも言えなかった。

 最初の手紙に書いてあった話を思い出す。
 あれはどういう気持ちから出た言葉だったんだろう?

 ……そうだ。
 先輩方がみんな上京していって、自分だけおいてかれる気がして。
 それが怖かったんだ。だから、あんな風に錯覚したんだ。
 思い出や過去の残る町につかまれて、一人だけ閉じこめられてるような。

 あの日のこと、本当の意味はわからなかったってムギ先輩は言うけど、
 それでも私の手を引いて連れ出してくれたのは覚えてる。

 だから、今度は私の番なんだ。
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 02:23:00.68 ID:SYt22na6o

斉藤「中野さん、よろしいですか」

梓「あ、はい」

 印刷されたメールを読み返していたら、ふと声をかけられた。
 琴吹家の執事で、名義上は菫の父親になってる斉藤さんだった。
 法制定の前に生まれたとは言ってもおおっぴらにクローン人間だとは言えない。
 だから菫は斉藤さんの養子、ということになっているらしい。

斉藤「……そろそろ、同期システムのシャットダウンにかかります」

梓「はい……大丈夫、なんですよね?」

斉藤「それはもう、何度も実験しておりますから」

梓「私にできることってありますか?」

斉藤「それはやはり、紬お嬢様に声をかけていただくことでしょうな」

 そう言って、斉藤さんはベッドの方へ促した。
 蘇生処置が行われるまで、ムギ先輩の見ていた夢の話になった。
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 02:26:01.37 ID:SYt22na6o

斉藤「本来なら、お嬢様はもう一周忌を迎える頃でした」

 斉藤さんは語ってくれた。
 夢の中の世界は、当人の記憶を元に再構成されているらしい。
 これはいわゆる“魂”を現世に保っておくための容れ物だという。

 臨死体験や奇跡の生還と呼ばれるケースでは、身近な人に呼び止められることが多いらしい。
 生と死の狭間をさまよっているとき、生者の声がよい影響をもたらすのだという。
 ムギ先輩はすぐにも死んでしまいそうだった。
 だから、大脳の記憶領域に直接「桜ヶ丘的なもの」を映写することで、
 思い出の居心地のよさを利用して意識をつなぎ止めた……そういうことらしい。

梓「でも、それだったらムギ先輩はじきに帰ってくるんじゃないんですか?」

斉藤「そのはずでした。ですがお嬢様は、桜ヶ丘という夢に依存してしまったのです」

 先輩の頭の中で流れる“桜ヶ丘”は、すでに先輩の生命維持装置になっていた。
 夢はあの人を生かすけれど、同時に現世からも引き留めてしまっていた。
 それに、過去の思い出が再構成材料になっている以上、いずれ限界もあった。
 「律先輩たちの体温や感触」というデータが少しずつ消えていったのがそれだ。
269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 02:29:01.91 ID:SYt22na6o

 そこで考えられたのが、菫を利用して生身の人間の感触を伝える方法だったらしい。
 同期装置を埋め込まれた菫は、ムギ先輩に私の体温を伝えるため私の元に来たという。

斉藤「……あなたには、菫を愛してもらう必要がありました」

梓「わかってます。わかってるんです、でも……やっぱり、菫とムギ先輩は違いますよ」

 菫とキスした日の夜、一晩考えて出た結論がそれだった。
 やっぱり私は、あの子をムギ先輩の代わりにすることなんてできない。
 だってムギ先輩はまだ生きてるもん。

梓「だから、代わりにしたくはないんです。菫は菫でいてほしい」

斉藤「……その言葉、菫が聞いたら喜ぶでしょうな」

 斉藤さんが静かにほほえんだ。
 菫のそれに似た笑顔の意味を問おうとしたとき――急に斉藤さんの携帯電話が鳴った。
270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 02:32:02.49 ID:SYt22na6o

斉藤「はい、はい……そうですか、では、……はい」

 斉藤さんが、みるみるうちに青ざめていく。
 どうしよう、ムギ先輩に何かあったのかも、でも私には、


菫「あずさ、せんぱい……!」

 病室の向こう側からうめくような声が聞こえた。
 菫だ。いつの間にか集まっていた白衣の人たちに囲まれて、むせぶように私を呼ぶ。

梓「ど、どうしたの?! しっかり、大丈夫? あの、菫は――」

菫「そんなことより! ……私より、つむぎおじょうさまを……けほっ」

 額の辺りを押さえながら吐き出した血が、白い床を小さく染める。
 それは白衣を着た医者たちの中ではやけに目立って見えた。

菫「……わたし、二人がっ、ちゃんとむすばれるようにって…それで、がんばって、きたんです…」

 ムギ先輩は至って変わらない。
 菫みたいに痙攣もしてないし、血も吐いてないし、まるで死んだように……って、こんな風に思っちゃいけない。

梓「誰か、早く菫を! なにしてるんですか!!」
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 02:35:02.87 ID:SYt22na6o

 声を荒らげてしまう私を斉藤さんが制した。
 気づくと同じ格好をした人たちがムギ先輩の方に集まって、
 モニターに繋げられた端末をなにやらいじっていた。

斉藤「仕方ないんです……脳波の同期は、この部屋にしかもう届かないですから」

梓「だったらこの部屋で、ムギ先輩も菫もたすけ…」

 そしたら、ぎゅって手を握られた。
 握ったのは菫だった。あったかかった。
 なんだよ、ちゃんと体温あるじゃん。
 あんただって、生きてるじゃん。人間だよ。なのに、どうして……

菫「……だめです。梓先輩は、私じゃなくって、ムギ先輩のために涙を流さなくちゃ、」

梓「クローンなんかどうでもいい! 二人とも人間なんだ、だから二人とも助からなきゃダメなの!」

 泣き叫んでいるのは私だけで、誰も私の話なんて聞いてない気がした。
 そしたら、菫が私に言った。
272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 02:38:03.31 ID:SYt22na6o

菫「梓先輩。私、本当によかったんです」

 なにが?
 ぜんぜんよくないよ、こんな運命!

菫「物心ついたころから、私は諦めてきました。人間じゃないって、そう思ってました」

 人間だよ……感じれるし、泣けるし、
 やさしくてあったかい菫が、人間じゃないワケないじゃん……。

梓「自分の命、粗末にしちゃだめだってば……!」

菫「いいえ、違うんです。……それを教えてくれたのは、梓先輩たちでした」

 菫は絶え絶えの声で、いろいろなものに感謝の言葉を残していった。
 憂、純、学校のみんな、それに……四季豊かな、桜ヶ丘っていう私たちの町に。

 ――紬お嬢様が愛したものを、肌で感じることができて、そしたら生きてるって思えたんです。

 そう、菫は言った。
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 02:41:04.02 ID:SYt22na6o

梓「生きてるよ、菫は人間だよ……だから一緒に、」

菫「行ってください!! 早く、夢の世界が終わって王子様がいなかったら、そしたら紬お嬢様が――」

 叫んだ拍子にせき込んだ。また血の滴がぽたぽた落ちる。
 私は――

梓「……ねえ。できること、あるかな。菫に」

菫「それは、……けほっ、あの、紬お嬢様に――」

梓「ちがう! 人間は自分のしたいことをするの! だから、私にできることなら……」

 言い終わらないうちに、首の後ろに手を伸ばされた。
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 02:44:05.94 ID:SYt22na6o

 けれど力がなくってすぐに腕がおりてしまう。
 私はそんな彼女の体を、ぎゅっと抱きしめた。

菫「……うあっ…えっ……」

 堰を切ったように泣き出す。
 向こう側でキーボードを叩く音、それからモニターの電子音が聞こえる。
 けど、私はいま菫の発する音を聴くので精一杯だった。

梓「……ねえ、もしかして、」

菫「……ありがとうございました。にんげんに、してくれて……あずさ、せんぱい」

 そう言うと菫はすっと唇を重ねて、背中に回っていた腕の力を抜いた。
 しばらく私は動けなかった。騒がしいのになにも聞こえなかった。
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 02:49:26.90 ID:SYt22na6o

斉藤「――中野さん、中野さん! はやく、紬お嬢様の元へ!」

 肩を揺り動かされて我に返る。
 そうだ、ムギ先輩……足がもつれて動かない。
 斉藤さんに体を預けて、どうにか連れていってもらう。

 涙と鼻水でぐちゃぐちゃな視界を右手で拭ってベッドにまむかう。
 そこには一年近く眠り続けている、愛する人の姿があった。

斉藤「呼びかけてあげてください、あと一歩の綱渡りの状態なんです」

 私は彼女の手を握り(当然体温だってあった)、
 彼女の細い息に耳を澄ませ(小さくたってちゃんと聴こえた)、
 何度も声をかけて(まるで一年前の放課後、うとうとするあの人を部室で起こしたみたいだ)、

梓「……むぎ、せんぱい…!」


 その瞬間、なにもきこえなかった。

 ただ、唇の熱だけが、手の熱だけが、かぼそい息の感じだけが、それから、

276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 02:52:56.89 ID:SYt22na6o

  ――おはよう、梓ちゃん。


 おはよう、ございます・・・・むぎせんぱい。

  ――梓ちゃん、……どうして、泣いてるの?

 だって、ムギ先輩が起きないから、……このままずっと起きないかって、


  ――ごめんね。でも、会えてよかった。

 はい。


 ……であえて、よかったです。
277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 02:56:27.85 ID:SYt22na6o

  ◆  ◆  ◆

純「はぁ……また部員一人かあ」

憂「しょうがないよ、スミーレちゃん転校しちゃったんだから」

梓「うん……そうだね」

純「ま、奥田ちゃんには梓並にがんばってもらうとしますか!」

梓「あはは……まあ、何かできることないか今から探しとこうよ」


梓「じゃあ、私はこの辺でね」

純「……あれあれー? あずにゃんちゃん、家こっちじゃなかったよねー?」

梓「うるさい純。どうでもいいじゃん、そんな――」

憂「梓ちゃんね、きょう紬さんと会うんだって!」

梓「ちょ……憂?!」

純「はっはーん、そういうことですかー。受験勉強しなきゃってさんざん言ってるのにぃ」

梓「う……きょ、今日だけだもんっ」
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 02:59:58.31 ID:SYt22na6o

純「まあー梓は考えすぎるとこあっから、ちっとはいやされてきなさい!」

梓「……なにその上から目線」

純「なっなによ、別にやましい気持ちとかないしっ」

憂「ふふ、純ちゃん嫉妬してるのかもね」

梓「……さいですか」

純「ちがうし!」
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 03:03:45.17 ID:SYt22na6o

梓「……そろそろ、駅つくかなあ」

 純たちと別れてロータリーの辺りで一人、ムギ先輩を待っていた。
 もう十一月、さすがにちょっと肌寒くなってきた。
 やせ我慢してないでコートを出した方がいいかもしれない・・・なんて考えていたら、
 一年前のこの頃もそんな話が出たのを思い出して、ちょっと笑ってしまう。
 変わってないなあ、私。

 斉藤菫は一身上の都合で転校してしまった。ということに、なった。
 ムギ先輩は菫のことを知らない。
 斉藤さんは知らない方がいいと言っていたし、
 あの人の性格なら自分のために命をなげうった人がいたなんて知れば、自分を責めてしまうだろうから。

 もちろん、あの二通の手紙のことだって知らない。
 あの出来事もムギ先輩にとって昨日の夜に見た夢みたいなもので、
 夢のことをとやかく言って不安がらせる、下手な霊媒師やカウンセラーみたくなりたくなかったから。


紬「――えいっ」

梓「ひえっ?!」

 ふいに目をふさがれてどぎまぎする。
 って、こんなことするのはあの人ぐらいだろうけれど。

梓「はぁ・・・ムギ先輩、大丈夫なんですかいろいろと」
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 03:08:41.77 ID:SYt22na6o

紬「退院したし、予備校にも通い始めたもの」

梓「そっか・・・じゃあ、私と同級生なんですね」

紬「ふふ。りっちゃんたちは先輩だね」

 なんだか同じ秘密を共有してるみたいで、ちょっと楽しくなる。
 けれども、二人で楽しくしているのが少しだけ申し訳ない気持ちにもなったりする。
 あの子のことを知ってるのは、もう私だけだった。
 忘れることもできるのかもしれないし、してしまえるのかもしれない。

紬「……どうしたの、梓ちゃん」

梓「あ、いえ。なんでもないです」

 梓ちゃん、むずかしい顔してたから。
 言われてしまって、つくづく隠せない性格だなって思い知らされる。
281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 03:12:47.86 ID:SYt22na6o

紬「でも、どうして東京に行ってみようなんて思ったの?」

 その足で電車に乗って、二人並んで席に着いて、桜ヶ丘の次の駅を発車した辺りで聞かれた。

梓「よくわかんないけど・・・二人で、出かけたくなったんですよ」

紬「そうなんだ」

 ムギ先輩はそっと手を伸ばし、私の手の甲に重ねた。
 私は手を返して、手のひら同士を重ねなおした。
 熱と、わずかな手の汗が伝わる。
 体温が流れ込むみたいだ。この感触が、いまはとてもいとおしい。

紬「……でもね、私も梓ちゃんと行ってみたかった気がするの」

梓「そうですか?」

紬「うん。・・・また、変な話になっちゃうけど」
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 03:17:16.83 ID:SYt22na6o

梓「いいですよ」

紬「寝てる間に見た、夢の話はしたよね?」

 はい。
 それはもう、隅々まで聞いてしまいました

紬「あのね、梓ちゃんと二人で、世界の終わりが来る前に逃げ出そうってする話」

梓「なんか村上春樹の小説にありませんでしたっけ、そういうの」

紬「そうかな? 私、読んでないから分からないけれど」

梓「実は私も読んでないんです。・・・それで、夢がどうしたんですか?」

紬「そうそう、それでね……だれか女の子が、私たちを助けてくれたの」

 知ってます。
 その子、金髪で青い目で、でも眉毛はムギ先輩みたく太くなくって、
 まじめで、熱心で、かわいい子なんでしょう?

紬「そこまで話したかな……でも、そんな子だった」
283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 03:24:17.01 ID:SYt22na6o

 私たちは夢で見た景色の話を、ちょっとずつ交わした。
 思い出したくないことを思い出さないように……そういう誘導も、あったかもしれない。
 けどそれよりも、記憶の奥底に残るものをいたわるように、
 夢で見た世界をまるっきり忘れないように、
 そんな、二人だけの世界の記憶をこの世に残すために、言葉を交わしていったんだと思う。

紬「……見て、もうそろそろだよ」

 言われて窓の向こうを見やる。
 急行列車に乗って一時間そこら、気づけば高台の下に家々やビルが立ち並ぶ別世界が広がっていた。
 東京だった。

 東京には何度も行ったことがある。
 両親に連れられて、サンフランシスコやニューオーリンズに行ったことだってある。
 実際、片道六百円ぐらい払えば行ける場所なんだ。
 なのに、忙しいとかこのまま桜ヶ丘でも遊べるからいいやって結局足を運ばない場所……それが、東京だった。

梓「……むぎ、先輩」

紬「なあに?」

梓「……私たち、どこにでもいけるんですね」

紬「うん。……どこにでも、行けるよ」

 ふと、東京に行きたくなった理由が分かった気がした。
 確かめたかったんだと思う。
 私の知らない新しさを。桜ヶ丘では味わえない空気を。
 あの子も、こんな風に桜ヶ丘を見ていたんだろうか。
 ムギ先輩と同じように、何にでも新鮮さや感動なんかを覚えていられたんだろうか。
284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 03:30:27.54 ID:SYt22na6o

紬「ねえ、そろそろ駅着くよ」

梓「そうですね」

紬「……降りたら、どうする?」

 聞かれて困ってしまった。
 何をしよう、なんて全然考えずに来ちゃったからだ。
 行くことが目的だったなんて、はずかしくて言えない。

 そうこうしているうちに車両は終点のホームにたどり着く。
 私は人並みに流されるようにして地下の改札を抜け、そこで立ちすくんでしまう。

紬「……じゃあ、ちょっとのど渇いちゃったから」

 そう言って自販機を指差すムギ先輩。

紬「あれでも飲んで、ゆっくり考えようよ」

梓「そうですね。はい」
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage saga]:2011/07/10(日) 03:33:49.34 ID:SYt22na6o

 ムギ先輩は一瞬迷って、アップルジュースを二人分買った。
 ストローを指して吸い込む。喉の奥にまで、冷たい感触が広がっていく。
 家を出て玄関先で当たる、ちょっと冷たくて気持ちいい風みたいだなって、なんとなく思った。

紬「……ところで、夢の女の子のことなんだけど」

梓「その話は置いときましょう。それより、どっか外に出てみませんか?」

 私はムギ先輩の手を引いた。
 それから、ちょっと吹きだしてしまう。

紬「? どうしたの?」

梓「いや、なんでもないです」

 ムギ先輩にはいわなかったけど、向こう側の監視カメラには私たちがばっちり映ってた。
 そこに映る二人を見ていたら、なんだか口元がゆるんできちゃったんだ。
 だって、カメラに映る私たちは変に田舎くさくって、
 まるでさっきおとぎ話から出てきたばかりの、外の世界に慣れない登場人物たちみたいだったから。


おわり。
286 : ◆rTGlWvG1Jo [sage]:2011/07/10(日) 03:34:34.62 ID:SYt22na6o
読んでくれた人ありがとう
思ったよりずいぶん長引いちゃってごめんなさい
それでは次の方、いらっしゃいましたらお願いします
287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/10(日) 03:37:27.42 ID:/8QRTGKVo
乙 読みごたえあって面白かった
しかし即興でこれはすごいな
288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/07/10(日) 03:39:17.80 ID:Imkhstz7o
よくわかんないけど面白かった
289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/10(日) 05:49:13.01 ID:z+em8yCAO
まだ間に合うっぽいので即興でちょっとだけ参加

290 : ◆NSHyhn/73TtE [sage]:2011/07/10(日) 06:00:29.80 ID:z+em8yCAO
タイトル 純「紙様から世界を救い出せ!」

朝、いつも通りに目覚めるとおでこの辺りに違和感が走った。

純「んぁ? なにこれ?」

私のおでこ辺りに貼られていたそれはどうやら紙のようで何やら書かれているようだ。

『今日中に中野梓に自分を好きだと言わせなければ地球滅亡』

純「は、こりゃ滅亡だわ」

寝ぼけ眼で見たそれを大して気にも止めず私は再び眠りについた……。


──学校

ガヤガヤ

ガヤガヤ


純「おはよー梓〜憂〜」

梓「あ、純、おはよ」

憂「おはよう純ちゃん」

純「あれ? なんか騒がしくない?」

梓「朝のニュース見てないの?」

純「ニュース見る暇があったらその分寝るよ」

憂「純ちゃんらしいね」

純「ははは。で、ニュースって?」

梓「なんか地球に向かって来てる隕石?」

憂「彗星だよ梓ちゃん」

梓「あんまり変わらない気がするけど」

純「へ〜それがどうしたの?」

梓「だから地球に向かって来てるんだって」

純「……え?」
291 : ◆NSHyhn/73TtE [sage]:2011/07/10(日) 06:07:33.83 ID:z+em8yCAO
純「や、やばくないそれ!?」

梓「だからみんな騒いでるんでしょ?」

憂「ねー」

純「なんで二人はそんな冷静なわけっ!? 彗星がぶつかったら地球がドーンってなってバーンってなってそんでそんで……」

梓「純の頭みたいになるかも」

憂「可愛くなるね」

純「じゃなくてぇっ!」

梓「私達が騒いだって彗星の軌道が変わるわけでもないしね」

憂「それに落ちるって決まったわけでもないから。まだまだずっとずっと遠くにあるから逸れる可能性は高いって言ってたよ」

純「そっか……ま、そうだよね。こんな何のへんてつもない日に地球滅亡で世界が終わるなんて……あるわけな」

純「……い」

梓「純?」

憂「純ちゃん……?」

純「(そんなまさか……いやいやありえないって……偶然だよね?)」

あんな紙切れ一枚のことで世界が終わるなんて……まさか〜……だよね?
292 : ◆NSHyhn/73TtE [sage]:2011/07/10(日) 06:14:37.49 ID:z+em8yCAO
その日、いつも通りに授業を受け、いつも通りに三人で昼ごはんを食べていた時だった。

ガヤガヤ! ガヤガヤ!

梓「なんか朝以上に騒がしくなったね」

憂「どうかしたのかな?」

純「……」

クラスメート「これマジでヤバくない? ソースNASAだよね?」

クラスメート「マジで落ちる気配なくない?」

携帯でテレビを見ていたクラスメートの声がやけに気になる。

まさかほんとにあの紙のせい……?

純「あっ、あずさぁっ」

梓「なに?」

純「……」

言えと? こんないきなり「梓〜私のこと好き?」なんて言えとでも言うのかあの紙切れはっ!

純「梓の携帯ってテレビついてたよね? ちょっと見てみない?」

適当にごまかす。そもそもあんな紙切れが関係あるわけがない。
偶然だ、偶然……!

梓「んー、別にいいけど」

携帯の小さな画面に映し出されたテレビには、緊急会見生放送と銘打たれた記者会見が放送されていた。
293 : ◆NSHyhn/73TtE [sage]:2011/07/10(日) 06:22:51.42 ID:z+em8yCAO
『彗星、JYUNは速度を更に増し、この地球へと向かって来ていることがわかりました』

『NASAの想定速度を上回る速度ですよね?』

『はい。まるで何かに引き寄せられているかのような速度で向かって来ています』

『対策の方はあるんですか!?』

『現在全力で当たっております』

『地球との衝突コースなんですか!?』

『それはわかりかねます』

『はっきり答えてくださいよ!!! 国民は不安になってますよ!』

『これにて会見を終わります』

『ちょっと!! まだ質問が……』


梓「……」
憂「……」
純「……」

憂「大丈夫……だよね?」

いつもは冷静な憂までが少し表情をひきつらせて言う。

梓「た、多分なんとかしてくれるよ! バリアーみたいなのでさ」アハハ……

憂「……」

純「……」

終わりが近づいていた。この地球の、私達の。

こんなあっけない日常が、人類歴の最後の1ページになろうとしていた。
294 : ◆NSHyhn/73TtE [sage]:2011/07/10(日) 06:29:25.49 ID:z+em8yCAO
放課後────

こんな時にもはや授業もへったくれもないがそれでも日常というやつは強く、いつも通りの時間割をこなした。

まあ私達が早く帰ったところで彗星がピンポンボールのようにどこかへ跳ね返ってくれるとは考えにくい。

お偉いさん達は立場上明言は出来ないのだろうけど未だにコースが変わったいう話は聞かない。

と言うことは落ちてくるのだろう。

そして地球は滅亡する。

私が何をしようがしまいが変わらずに、多分そうなるだろう。

こうなる歴史、運命、定め、デスティニー、……運命二回言っちゃった。

ま、どうしようもないか……こればっかりは。

終わるんだ、この世界は。

こんな当たり前の毎日の中で、
295 : ◆NSHyhn/73TtE [sage]:2011/07/10(日) 06:38:51.22 ID:z+em8yCAO
純「あれ? 梓今日部活は?」

梓「ムギ先輩がお父さんと一緒に地球防壁プログラムってやつに参加するからって、そういうことならって休みになった」

純「そりゃまた、すごいね」

梓「唯先輩は憂と家でゆっくりするって。澪先輩は律先輩の家に行くって言ってたっけ」

純「……そっか」

梓「なんかこう……実感沸かないよね。もしかしたら地球が終わります〜なんて言われてもさ。どうしたらいいのかわかんないよね……」

純「また落ちてくるか曖昧なとこがややこしいよね。まあ明言しちゃったら大パニックでそれこそ映画みたいに車が道路にぎゅうぎゅつ詰めでさ」

梓「そうそう。で、主人公がそこのけそこのけでバイクでヒロイン連れて……」

純「……帰ろっか」

梓「うん」
296 : ◆NSHyhn/73TtE [sage]:2011/07/10(日) 06:45:27.93 ID:z+em8yCAO
────

純「唯先輩達とお別れとかしたの?」

梓「ん〜……普通にばいばいしたぐらいかな。唯先輩はいつも通りに「きっとムギちゃんとムギちゃんのお父さんがなんとかしてくれるよっ!」とか言ってた」

純「唯先輩らしいね。澪先輩とかは? やっぱり腰抜かしてた?」

梓「澪先輩は「地球って宇宙から見たら凄く小さいんだぞ? 梓。言ったらグラウンドの小さな石ころに石ころが当たるようなものなんだ。な? 大丈夫だろ?」って震えながら言ってたよ」

純「澪先輩らしいね〜。律先輩は?」

梓「隕石を爆破する隊員になりきって唯先輩と遊んでたよ」

純「けいおん部はいつも通りだね〜」

梓「……みんな信じてるんだよ。ムギ先輩と今まで私達が暮らしてきた日常がこんな簡単に終わるわけないって」

純「……そうだよね。終わるわけ……ないよね」
297 : ◆NSHyhn/73TtE [sage]:2011/07/10(日) 06:53:20.80 ID:z+em8yCAO
梓「あ、私こっちだから」

純「ん……じゃあね、梓」

梓「うん」

手を振りながら別れる。

二人の口からは自然と「また明日」とは言われなかった。

私は、結局梓に何も言うことが出来なかった。
怖かったんだ、最後の日に自分の気持ちが受け入れられないまま死んじゃったらって思うと……。

このまま私と梓の関係は日常の中で完結するのが一番なんじゃないかって、そう思った。

────

夜、いよいよその時が来たかと言わんばかりにテレビは全チャンネル全て彗星の激突の規模やら専門家が語る激突後の地球やら地球最後の晩御飯! 三分クッキング!

などなど、どうやらぶつかるのは確定なようだった。

『彗星は更に速度を増し今日の時刻0:00には地球に激突……』

純「」ボリボリ

そんな世紀末なニュースを、私はせんべいを食べながら眺めていた。
298 : ◆NSHyhn/73TtE [sage]:2011/07/10(日) 06:57:16.26 ID:z+em8yCAO
「純……」
「純、愛してる」

純「わっ……」

左右から両親が私を抱き締めてくる。

「純……純っ……」

泣きながら私の頭を撫でる母親を見ると、いよいよ終わりが近づいて来たんだなという実感が私にもようやく沸いてきた。

純「お父さん……お母さん……今までありがとね」

そのありがとうには色々な意味を込めたつもりだった。

産んでくれてとか、育ててくれてとか、いっぱいいっぱい。

純「ありがとう……」

気づくと私は泣いていた。

そうだ……終わるんだ、もう。

死んじゃうんだ……私。
299 : ◆NSHyhn/73TtE [sage]:2011/07/10(日) 07:08:25.37 ID:z+em8yCAO
23:00───

彗星激突予想時刻まで残り1時間。

先ほど流れたテレビの情報によるとムギ先輩の会社の地球防壁プログラムは失敗したらしい。
まさに打つ手なし。

今流れているのは高台に避難だのなんだの。
こんなギリギリまでニュースをやるんだからテレビ業界の人達はまさに命をかけてるんだなぁと感心した。

別れは粗方済ませたはずだ。
憂に電話したけど反応はなかった。きっと最後は唯先輩と居たいのだろう。


予想推定規模──

地球半壊──

それによる被害──

人類絶滅──

まさに、人類に逃げ場なし──

純「さて、と」


私は朝ゴミ箱に捨てた紙を取り出し、もう一度眺める。

『今日中に中野梓に自分を好きだと言わせなければ地球滅亡』

もしさ、もしだよ?

こんな状況をさ……この紙切れに書いていることなんかで覆すことが出来たら……。

それって最高っっっっにカッコよくない!!??

純「まさに紙頼みってね」

私は急いで梓の元へ向かった。
300 : ◆NSHyhn/73TtE [sage]:2011/07/10(日) 07:18:40.62 ID:z+em8yCAO
────

映画のように並んだ車の列とは逆に滑車を回し、中野家にたどり着くと、

梓「〜〜〜♪」

梓「〜〜〜〜〜♪」

梓「〜〜〜〜〜〜〜♪」

純「はあ……はあ……」

梓は、歌っていた。

屋根の上にちょこんと座りながら、紅い空を見つめて歌っていた。

純「……やっほー、あーずさ」

梓「純。どうしたの? こんな夜中に」

純「ちょっとね。まだ言ってないことがあってさ」

梓「そっか。あ、そっから登れるよ」

純「ん」


梓「紅い空って初めて見た」

純「私も。綺麗だね」

梓「うん」

純「後30分ぐらいでぶつかるんだって。あのデカいのが」

梓「実感ないよね。ここまで近くに来てもさ」

純「うん。自分だけは大丈夫、なんて思っちゃうのは自分が特別だとか思ってるからかな?」

梓「私もおんなじだよ。みんなみんなそうだと思う。自分に来る終わりなんて……ないって思ってるんだと思う」
301 : ◆NSHyhn/73TtE [sage]:2011/07/10(日) 07:23:17.55 ID:z+em8yCAO
梓「そう言えばまだ言ってなかったことって?」

純「ん〜もうちょっとギリギリに言う」

梓「今だってかなりギリギリじゃない?」

純「じゃあギリギリのギリギリに言う」

梓「はいはい」

…………。

梓「純、ありがとね。今まで」

純「こっちこそ。ありがと、梓」

梓「まさか自分の最後の時に隣にいるのが純だなんて思わなかったなぁ」

純「唯先輩が良かった?」

梓「そういうわけじゃないよ。ただ意外だな〜って」

純「私は別にそうは思わないけど」

梓「? なんで?」

純「だってさ……」


──23:55
302 : ◆NSHyhn/73TtE [sage]:2011/07/10(日) 07:30:15.40 ID:z+em8yCAO
純「私、梓のこと好きだもん」

梓「えっ?」

純「なんていうのかな〜ずっと一緒にいたい!って思う」

梓「なにそれ」フフッ

純「なんか梓といるとさ……楽しいし、嬉しい」

梓「そっか」

純「うん」

梓「もうちょっと早く言ってくれたら良かったのに」

純「言えないよ。恥ずかしいじゃん」

梓「まあね、純のキャラじゃないし」

純「こんな時までキャラとか言うなー!」

梓「ありがと、純。もう大丈夫。これで怖くないよ、私」

純「……」

梓「誰かに好きって言われると凄い嬉しいよね。それが自分がいた証みたいになるっていうかさ……」

純「じゃあさ、私も残してよ、梓」

梓「ん?」

純「梓は……私のこと……」

空が、紅い──

もう、私が私でいられる時間はほんの僅かだろう。

そんな中でも、はっきりと、聞こえた。

私の大好きな、梓の声。

0:00──

「大好きだよ、純」


────
303 : ◆NSHyhn/73TtE [sage]:2011/07/10(日) 07:38:37.73 ID:z+em8yCAO
────

純「んあ?」

起きるといつもの自分のベッド上にいた。

ああ、夢か……と意識を睡眠に向けようとする……と。

おでこに違和感が。

純「っ!!!?」

急いで剥がし、書かれている内容を見ると

『今日中に中野梓に自分を好きと言わせなければ地球滅亡』

純「またぁ〜?」

そうして、また私の日常は始まる。

────

純「おはよう梓っ! 大好き!」

梓「はいはい」

憂「純ちゃん私は〜?」

純「憂も大好きだよっ!」

憂「えへへ〜。私も純ちゃん好きだよ」

純「梓は?」

梓「はあ〜……」

ちょっとだけめんどくさそうな顔をした後、少し照れながらこう答えた。

梓「じゃあちょっと好き」

これが現実、いつも通りの日常だ。

ずっと変わらない、いつまでも一緒……。
304 : ◆NSHyhn/73TtE [sage]:2011/07/10(日) 07:43:50.85 ID:z+em8yCAO
ん〜次は何がいいかな?

梓とデート?

それとも……う〜ん……。

え? 何を考えるのかって?

そりゃあ次の紙様から私への指令だよ!


純「う〜ん……決めたっ!」カキカキ


この変わらない日常を変えていけるのは自分次第だ。

だけど、この変わらない日常を守っていけるのも、きっと自分次第だろう。

『みんなといつまでも一緒にいなければ地球滅亡』


おしまい
305 : ◆NSHyhn/73TtE [sage]:2011/07/10(日) 07:44:27.00 ID:z+em8yCAO
終わりです!

即興で失礼しました!
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/10(日) 07:58:56.02 ID:gCA2lOTSO
おつ
うまくまとまっててよかったよ
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/07/10(日) 09:00:57.20 ID:091yzPhJ0
飛び入り参加ってまだ大丈夫ですか?
308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/10(日) 09:09:37.64 ID:3e1gF8jDO
ばっちこいや
309 : ◆R.nL8U4J/HB6 [sage]:2011/07/10(日) 09:18:24.13 ID:091yzPhJ0
では・・・飛び入りです。

唯「ダイブ」
310 : ◆R.nL8U4J/HB6 [sage]:2011/07/10(日) 09:19:05.52 ID:091yzPhJ0
ガッ、ガッ、ガッ、ガッ

澪「・・・・・・」

ガッ、ガッ、ガッ、ガッ

澪「・・・・・・」

ガッ、ガッ、ガッ、ガッ

澪「・・・・・・」

唯「・・・・・・」

ガッ、ガッ、ガッ、ガッ

澪「・・・・・・」

唯「・・・澪ちゃん」

ガッ、ガッ、ガッ、ガッ

唯「あの・・・、その・・・え、えっとね・・・」

ガッッ!!
311 : ◆R.nL8U4J/HB6 [sage]:2011/07/10(日) 09:19:33.94 ID:091yzPhJ0
唯「っっひっ!?」

澪「・・・・・・」

澪「なんだ、唯・・・私は忙しいんだ。たいした用じゃなければ話しかけないでくれないか」

唯「いや、あの・・・その、ね?」

ガッ、ガッ、ガッ、ガッ

澪「・・・・・・さっさよしゃべれよ。さっきも言ったけど、私は忙しいんだ」

唯「あ、・・・は、話聞いてくれる・・・の?」

ガッ、ガッ、ガッ、ガッ

澪「・・・・・・お前にちゃんと話す気があるなら、な」

唯「そ、そか・・・・あ、あのね」

澪「なんだよ・・・」

唯「・・・・たいした用かどうかはよく私にはわからないんだけど、・・・そのね」

澪「ん?」

唯「その・・・どうして・・・澪ちゃんはここでずっと穴を掘ってるのかなぁって・・・」

澪「・・・・・・」

唯「・・・思って」
312 : ◆R.nL8U4J/HB6 [sage]:2011/07/10(日) 09:20:05.44 ID:091yzPhJ0
・・・ガッ、ガッ、ガッ、ガッ

澪「悪いか?穴掘ってって」

唯「いや、悪いっていうわけじゃないんだけどさ・・・その、どうしてかなぁ・・・って思ってさ・・・ホントに」

ガッ、ガッ、ガッ、ガッ

唯「最近、・・・澪ちゃん学校にも、部活にもこなくなって・・・ずっと穴掘ってるし・・・」

澪「・・・・・・」

ガッ、ガッ、ガッ、ガッ

澪「・・・お前も私を笑いにきたのか?律みたいに、バカにしにきたのか?」

唯「ち、違うよっ!!笑いに来たとか、バカにしにきたとかそんなんじゃないよっ!!」

ガッ、ガッ、ガッ、ガッ

澪「・・・・・・」

唯「それに・・・りっちゃんたちだって、・・・みんな、澪ちゃんのことが心配で、だからあんな風にちょっと怒りっぽくなっちゃったからで・・・」

ガッ、ガッ、ガッ、ガキッ

澪「・・っ痛・・・・」

唯「だ、大丈夫っ!?」

澪「あぁ・・・土に隠れてた石にあたっただけだから・・・」

唯「・・・そ、そか・・・石が隠れてるんだね」

澪「・・・あぁ。たまにあるんだ。こんな風に石にあたってスコップから土に伝えたはずの力が全部石によって跳ね返されてさ・・・」

澪「・・・スコップを握るこの左手がすごく、しびれたようになるんだ」
313 : ◆R.nL8U4J/HB6 [sage]:2011/07/10(日) 09:20:35.50 ID:091yzPhJ0
唯「・・・・・・」

澪「・・・・・なぁ、唯」

唯「なに、澪ちゃん・・・・・・」

澪「作業が滞ったし、ちょうどいいからさっきの質問に答えるよ。左手も当分しびれたまんまで障るだろうし」

唯「え、あ、う、うん・・・・・・左手、大丈夫?」

澪「あぁ、大丈夫だ。土を掘ってたらよくあることだから。唯もしてみたらわかるよ」

唯「いや、・・・・・・私土を掘るより、ギー太を弾いてるほうがいいかな・・・ははは」

澪「そうか、それは残念だな。ところで、さっきの質問だけど唯は私に『どうしてここで穴を掘ってるのか』と尋ねたな」

唯「うん・・・・・・だって、もう3週間くらい、澪ちゃんここで穴を掘り続けてるでしょ?」

澪「そうか。もう3週間も経つのか。・・・・・・どうりで放課後のティータイムが懐かしいわけだ・・・・・・」

唯「でしょ?だから、もうこんなことやめて、また一緒にお茶飲んだり、みんなで話したり、演奏したりしようよ」

澪「いやいや、唯。それとこれとは話がまったく違うんだよ、話をすりかえないでくれ」

唯「ほぇ・・・?今、私、なにかおかしなこと言った?」

澪「・・・まぁ、いい」

澪「唯、私はさ、ふと思ったんだ」

唯「なにを?」
314 : ◆R.nL8U4J/HB6 [sage]:2011/07/10(日) 09:21:41.85 ID:091yzPhJ0
澪「このままこの平凡な日常の中で私は生きていくのかなぁ・・・って。ふと思ってしまった」

澪「最初はうっすらだった。本当に、気にも留める必要のないくらいのうっすらだった」

唯「・・・」

澪「ほんのちょっとの時間のすきまに頭に思い浮かんできただけのことだったのに、それはそれから私の頭に常に浮かぶようになったんだ」

唯「『このまま平凡に生きていくのかなぁ』って?」

澪「うん、そうだ」

唯「澪ちゃんにとって、私たちといる日常って平凡なの?平和とか、そういうのじゃないの?」

澪「私もそう自分に問うたさ。『平凡じゃないだろ?こんなにいい仲間にめぐり合えて、
  毎日楽しくすごして。今以上に最上級な日常なんてあるわけがないじゃないか』って」

澪「最初はそんな自問自答で自分を納得させることができた。
  だから、みんなと一緒にいることができたし、みんなと一緒に放課後を過ごすことになんの疑いもなかったんだ」

唯「・・・・・・」

澪「次はモヤモヤだった。その頃からそれは『白い』っいうことが認識できはじめた。」

澪「 だけど、それでも、私の頭の中にかかった霧はだんだんその濃度を増していったんだ」

澪「目を背けることができなかった。どうしてかって?目の前が霧で前が見えなくて、
  不安になって右を見るだろ?でも、そっちの方向も霧で覆われているんだよ。もちろん左も同じ。多少濃度に差はあるけど」

澪「気づいたときにはもう360度、私にとって道という道は全部、霧で覆われていたんだ」

澪「どっちか、前かも後ろかもわからない。
  そんな状態で日常はそれでも平穏を保つことが出来ていると思うか?できるわけないだろそんなこと」
315 : ◆R.nL8U4J/HB6 [sage]:2011/07/10(日) 09:22:16.60 ID:091yzPhJ0
唯「・・・澪ちゃん」

澪「ん・・・?」

唯「なに言ってるのかわかんないよ・・・」

澪「そうか・・・わからないか・・・・そうだな。たとえるなら、・・・ホワイトアウトだ」

唯「・・・ほわいとあうと?」

澪「そう・・・ホワイトアウトがぴったりだな、うん。今口から偶然でた言葉だけど、ホワイトアウトがしっくりくるな」

澪「もうどっちに太陽があるかもわからないんだ。あれだけなんの疑いもなく、私は太陽に照らされて、太陽の下で暮らしていけると思っていたのに」

澪「私を導いてくれていた光だって、今は乱反射して私の視界を悪くする」

澪「私の邪魔をする、自分がどこにいるのかわからない・・・・自分がいままでどこにいたのかさえも疑わしい」

唯「・・・・・・」

澪「もしかしたら・・・今までの日常が錯覚だったのかと疑わしくなるくらいに」

澪「だから、私は穴を掘るんだ・・・」

唯「・・・穴を?」

澪「自分の居場所がわかるように。今日が昨日になるように。明日が今日になるように。昨日が明日になるように」

澪「私に太陽の光はもう届かないかもしれない・・・それくらいもう霧は濃いんだ・・・白くて濃くて・・・もう何も見えないんだ」

澪「もう、なにも見えないんだ・・・掘るんだ・・・穴を・・・だから・・・」

ガッ
316 : ◆R.nL8U4J/HB6 [sage]:2011/07/10(日) 09:23:15.59 ID:091yzPhJ0
唯「み、おちゃん・・・?」

ガッ

澪「掘るんだ。掘るんだ、穴を穴を・・・・穴を・・・穴を・・・・穴・・・・」

ガッ、ガッ、ガッ、ガッ

澪「・・・・・・」

ガッ、ガッ、ガッ、ガッ

澪「・・・・・・」

ガッ、ガッ、ガッ、ガッ

澪「・・・・・・」

唯「澪ちゃん・・・」

ガッ、ガッ、ガッ、ガッ

澪「穴・・・穴・・・穴・・・穴・・・穴・・・」

ピーーーー

唯「あ・・・・・・・時間切れ・・・か」

唯「またくるよ、澪ちゃん」

ガッ、ガッ、ガッ、ガッ

澪「穴・・・穴・・・穴・・・穴・・・穴・・・」
317 : ◆R.nL8U4J/HB6 [sage]:2011/07/10(日) 09:23:56.97 ID:091yzPhJ0
―――――

唯「ふぅ・・・」

和「おつかれ、唯」

唯「あ!のどかちゃ〜〜ん!!」

和「わっ!?ちょ、ちょっと、いきなり抱きついたらあぶないじゃない!!」

唯「えへへ、ごめんごめん。でも、のどかちゃんに抱きつくのも私の大事な任務なんですっ!」

和「なにを言ってるのよ・・・」

唯「照れちゃって、照れちゃって!!この、この!!」

和「・・・ゆい、そろそろいいかしら」

唯「あ、うん。澪ちゃんはやっぱりもうダメかもしれないな・・・精神的にやられてる感じ」

和「そうなの。こっちでも一応モニターで様子は確認してたけど・・・」

唯「あ、まだ澪ちゃん、穴掘ってる・・・」

   

ガッ、ガッ、ガッ、ガッ

澪『穴・・・穴・・・穴・・・穴・・・穴・・・』



唯「・・・みおちゃん」

和「澪にとって、よっぽどショックだったのかしらね」

唯「・・・そりゃそうだよ。私もショックだったもん」

和「そうよね。唯のときも私が唯の精神世界に入り込んでいかなきゃ危なかったものね」

唯「澪ちゃんは『穴掘り』だったけど、私はなんだったっけ?」

和「忘れたの?『食べ終わったアイスの棒をひたすらしゃぶる』よ」

唯「うわ〜〜。澪ちゃんの穴堀りもそうとうひどいって思ったけど、私のほうがもっとひどい」

和「まぁ、でもしかたないわよ。そういうの、自分じゃ制御したり、決定できたりするものじゃないし」

唯「まぁ、ね・・・」
318 : ◆R.nL8U4J/HB6 [sage]:2011/07/10(日) 09:24:40.86 ID:091yzPhJ0
和「とりあえず、澪はまた明日かけあってみましょう」

唯「だね。今日は昨日より、自分のこと話してくれたから、・・・ちょっとだけよかったよ」

和「心配?」

唯「そりゃあね。まだ、憂もりっちゃんもムギちゃんもあずにゃんも寝っぱなしだからね」

唯「一番状態のいい澪ちゃんであれだから・・・他の4人はもっと大変そうだよ」

唯「それに・・・まだまだたくさん助けなきゃいけない人はいるし・・・」

和「そうね。でも、ここで唯がくじけたら、そこですべてが終わるわ」

唯「うん・・・そうだね。・・・のどかちゃん」

和「なにかしら、唯」

唯「私、みんなのためにがんばるよ」

唯「・・・また、みんなで放課後にお茶したり、演奏したり、どうでもいいことでもいいからたくさんたくさん話して・・・・」

唯「・・・みんなともっと一緒に居たいから」

和「・・・唯を一番に助けて、唯にはつらい思いをさせてるって思ってる。ごめんなさいね」

唯「ううん、そんなことないよ。たしかにたまに悲しくなることはあるけど、でも」

唯「いつも迷惑をかけてた私がこんな風にみんなにもしてあげられることがあるんだってわかったから」

唯「それが私にしかできないことだって思ったら・・・・なおさら、見捨ててなんておけないよ」

和「・・・・うん、そうよね。やっぱり、私、唯を一番に助けて間違いなかったわ」

唯「そんな・・・のどかちゃんも、ごめんね?私よりも助けたい人、いっぱい居たよね?」

和「唯・・・何回言ったらわかるのよ。私は唯を助けたかった。これは本当よ」

和「だって、自分が本当に大切だと思う人の精神世界にしかダイブできないんだもん。これ」

唯「・・・」
319 : ◆R.nL8U4J/HB6 [sage]:2011/07/10(日) 09:25:21.43 ID:091yzPhJ0
和「自分でいうのもなんだけど、
  私・・・HTTの、唯以外の人の精神世界にはきっとダイブできないって、なんとなく思ったの・・・思ってしまったの」

和「だから、・・・唯を一番に助けてよかった。もちろんHTTのみんなだって私には大切だけど」

和「唯は私以上にみんなを思ってるから、絶対大丈夫だって思った。昔から、私には出来ないことを無条件でなんなくやりとげちゃうから」

唯「・・・」

和「私には唯しか助けられなかった。唯の精神世界にしかダイブできなかった。
でも、それって、逆に『私は唯以外大切じゃなかったの』っていままでの自分の日常を疑うことになるんだけど」

和「それでもね、ねぇ、唯。私は、それでも唯を助けてよかったって本当に思ってる」

和「あなたはずっと、みんなに惜しみない愛情を降り注いでいたから。
  それの証拠に、あなたは、あなたがかかわったどんな人の精神世界にもダイブできるわ。それってすごいことよ」

和「でも、とってもかなしいことでもあるけど・・・」

唯「・・・」

ピーピー

和「あ」

唯「あ・・・りっちゃんの時間か・・・」

和「・・・大丈夫?唯」

唯「うん、大丈夫だよ。のどかちゃんのおかげですっごく元気でた。また、がんばるから、私。みんなを助けるために」

和「そう・・・」
320 : ◆R.nL8U4J/HB6 [sage]:2011/07/10(日) 09:26:00.09 ID:091yzPhJ0
唯「うん!りっちゃんは・・・え〜っと・・・なにしてたっけ?」

和「『ドラムのスティックででこを磨く』よ」

唯「あ〜〜、そうだった。油断したら私のでこまで磨いてくるんだよね、りっちゃん」

和「あらあら、唯はおでこ出すの苦手なのにね」

唯「そうなんだよ〜〜りっちゃんはあいかわらず、りっちゃんだよ」

和「ふふふ、・・・じゃあ、いきましょうか」

唯「うん!あ・・・ちょっと先に行ってて!すぐ追いつくから!!」

和「そう、早くしなさいね」

唯「うん。ありがとうのどかちゃん」

和「私のほうが、ありがとうよ、唯」

唯「えへへ」

澪「・・・・」

唯「澪ちゃん、・・・また明日くるよ。もしかしたらりっちゃんもつれてこれるかも!!」

澪「・・・・・・」

唯「たはは・・・穴堀りは私にはよくわからないけど、ホワイトアウトは後で調べてちゃんと理解しとくからね」

和「ゆいーなにしてるのーはやくー」

唯「あ、うん!今いくよ、のどかちゃん!!」

澪「・・・・」

唯「じゃあ、・・・ちょっと、みんなを助けてくるね!!」



おわり
321 : ◆R.nL8U4J/HB6 [sage]:2011/07/10(日) 09:26:53.46 ID:091yzPhJ0
急いで書いたので誤字があったらすいません。
読んでくれたかた、ありがとうございました。
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/07/10(日) 09:30:13.70 ID:Imkhstz7o
おつかれい
穴掘りはまだシリアスに見えるのにアイスの棒とかデコ磨きとかギャグにしか見えんw
323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/10(日) 09:36:20.33 ID:gCA2lOTSO
おつ よかった
このわけわからんのに成り立ってる感じはすごい好き
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/10(日) 13:15:56.70 ID:zM4rBqoDO
一番手 ◆Q9Tanlls9c 唯「蜘蛛の糸」 >>31-54
二番手 ◆Q9Tanlls9c 和「ある季節の終わりに」 >>55-77
三番手 ◆PyatAfq.54xf 「同性愛者は異常!」 >>84-104
四番手 ◆YgiDkxnzcI 「ロボットの私たち」 >>109-159
五番手 ◆HBJa11Hm.c 純「今時タイムマシンとかタイムトラベルとかないわー」 >>162-195
六番手 ◆6Pl2lEaW1E 唯「ペンダント」 >>200-210
七番手 ◆RcBucO91EsFq 「復活」 >>215-230
八番手 ◆rTGlWvG1Jo 紬「世界の終わりに口づけを」 >>239-285
九番手 ◆NSHyhn/73TtE
 純「紙様から世界を救い出せ!」 >>290-304
十番手 ◆R.nL8U4J/HB6 唯「ダイブ」 >>309-320


◆JMIFPYygak


まだ募集中…?
325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/10(日) 13:17:45.91 ID:zM4rBqoDO
改行ミスった
あとちょいちょい安価も跳べなくなってるなすまん
326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/07/10(日) 13:53:55.66 ID:Imkhstz7o
まさかの主催者不在?
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/10(日) 14:11:16.52 ID:gCA2lOTSO
18時とか20時ぐらいまで待って来なかったら、感想語り晒しその他を始めちゃってもいいんじゃないかな
もし格付けとかやるならそれもその時ってことで
328 : ◆JMIFPYygak [sage]:2011/07/10(日) 17:19:10.18 ID:/KFJFHLzo
主催者です
連絡も何もしないままですみません、今回は投下日までにSSを用意できなくなってしまいました

言い訳にしかならないのですが、ここ1週間ほど夏バテで体調を崩してしまって、
今のままSSを書いても面白いものが書けそうになく勝手ながら参加を見送らせてもらいました

主催者の仕事まで投げ出したのは完全に逃避です、ごめんなさい

投下されたSSをまとめてくださった>>324さん、ありがとうございます
本来は土曜日だけで投下の予定でしたし、もう参加者もいないようなので今から格付け、晒し、語りを始めたいと思います

一区切り
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/10(日) 17:23:45.47 ID:/KFJFHLzo
格付けの方法は、

◆投票◆
1位:A番手 感想うんぬん
2位:B番手 かんぬん
3位:C番手 すんぬん

のテンプレを使って投票をお願いします 参加者さんは自分のSSに票を入れてもらっても構いません
どうしても選べなければ同率や1位だけでもいいです

ちなみに1位に3.5点、2位に2点、3位に1点を入れる予定です
330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/10(日) 18:22:23.71 ID:zM4rBqoDO
>>328
主催してもらっただけでもありがたい乙
ゆっくり休んでから書けなかったネタをVIPで使え
331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/10(日) 20:12:10.97 ID:3e1gF8jDO
格付けくらい主催者が口火を切ればいいんじゃね
332 : ◆6Pl2lEaW1E [sage saga]:2011/07/10(日) 20:14:57.65 ID:5hFuIHFZP
感想、投票します

まずは感想から。ネタバレ含むので未読の人は気をつけて。

・唯「蜘蛛の糸」

可愛らしいお話だった。元ネタは読んだことないのでどの程度アレンジしてるのかわからないが、澪とムギが可愛かった。
ただ、もちろんSFの定義は人によって様々だけど、さすがにSFとは離れてるなあって思ってしまった。

・和「ある季節の終わりに」

良い雰囲気だった。こんな現象を経験したことなんてなくても、なんとなく感覚的に唯と和に共感できた。

・「同性愛者は異常!」

正直、妙なテンポの良さがあってちょっと笑った。
でもオチは安易すぎる。

・「ロボットの私たち」

読んでてワクワクした。世界観も好き。今回、一番続きを読みたいと思ったSS。

・純「今時タイムマシンとかタイムトラベルとかないわー」

タイムトラベルは大好きなテーマなので面白かった。純を主人公にしたのもなんか上手いなーと感じた。
長編じゃないし、「助けるまで頑張り続けるぞ!」的なENDだと思ってたら、最後の展開に驚いた。
あとタイムトラベル系はたくさん出ると思ったけど、今回はこのSS含めて2つだったのは意外。
333 : ◆6Pl2lEaW1E [sage saga]:2011/07/10(日) 20:29:31.14 ID:5hFuIHFZP
・唯「ペンダント」

自分のSS。一個前のSSと少しかぶってしまった。
タイムトラベル物が好きなので、SF企画でもタイムトラベルにしようとは思ってたけど、なかなか思いつかず結局無難な流れになった。
あと、短編にしなきゃと意識しすぎて、展開が早くなりすぎたように思える。

・「復活」

梓の話が、SF的な説得力があって良かった。でも律の話には若干違和感が。これも続きが気になる。

・紬「世界の終わりに口づけを」

設定を理解するのに少し時間かかった。紬の妄想の方の設定でも面白かったかも。
紬と菫が似てるって言われるのを逆手にとってSF的なネタにしたことに感心した。

・純「紙様から世界を救い出せ!」

個人的に梓純が好きだからってのもあるけど、最後の告白シーンはすごく良かった。
終末なのに終末感が感じられない雰囲気は読んでても伝わってきたので純に共感できた。

・唯「ダイブ」

読んでてなんかしみんみりした。でもさすがにもうちょっと説明が欲しかった。
334 : ◆6Pl2lEaW1E [sage saga]:2011/07/10(日) 20:40:58.59 ID:5hFuIHFZP
では投票。感想は上で書いたので省略

◆投票◆
1位:四番手 ◆YgiDkxnzcI 「ロボットの私たち」
2位:七番手 ◆RcBucO91EsFq 「復活」
3位:九番手 ◆NSHyhn/73TtE 純「紙様から世界を救い出せ!」
(4位:二番手 ◆Q9Tanlls9c 和「ある季節の終わりに」)

3位は4位のやつとどっちにするかかなり悩んだ。

総評:SF企画はまえからやりたいと思ってたので、参加できて良かった。
    参加者によって、全然内容が変わるのはSF企画の良いところだと思う。どれも個性的で読んでて退屈しなかった。
    俺も本当はもう一作書きたかったんだけど、うまくまとまらず断念。
    あと、やっぱり企画は別スレは投下だけで、雑談スレで進行してもいいんじゃないかと思った。企画の存在知らない人とか居たみたいだし、企画やらなくても荒れる時は荒れてるし。

皆様、おつかれさまでした
335 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/10(日) 21:45:22.15 ID:Imkhstz7o
酉付けたほうがいいのかな、参加した人は
っていうか理解力に乏しい俺としては細かいところ語ってほしい作品ばっかだった さすがSF
とりあえず投票


◆投票◆
1位:八番手 ◆rTGlWvG1Jo 紬「世界の終わりに口づけを」 >>239-285
なんかよくわからないけどそれ故に一番語って欲しいから

2位:十番手 ◆R.nL8U4J/HB6 唯「ダイブ」 >>309-320
序盤のビビり唯ちゃんが可愛すぎるから あとアイスとかデコとか

3位:九番手 ◆NSHyhn/73TtE 純「紙様から世界を救い出せ!」 >>290-304
結局自分で書いていた・・・のか?


っていうか語ってくれよ
336 : ◆RcBucO91EsFq [sage saga]:2011/07/10(日) 22:09:07.50 ID:U4KsxRCso
◆投票◆
1位:五番手 純「今時タイムマシンとかタイムトラベルとかないわー」
2位:八番手 紬「世界の終わりに口づけを」
3位:二番手 和「ある季節の終わりに」

八番手、二番手さんはどちらもすばらしい成長の話でした
紬「世界の終りに口づけを」の世界の暗さがよかったです
二番手さんは成長に伴う痛みとかかなしさとか、じんわりと胸にくるものがありました

五番手さんはもう、感想も言えないほど好きです
頭から終わりまで良かった


最後に、みなさまおつかれさまでした
主催者のかたはゆっくり養生してください
337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage ]:2011/07/10(日) 22:37:51.69 ID:WP6QjvM0o
企画には参加できなかったけど
せっかくだから投票するわ

◆投票◆
1位:九番手 紙様
うん、最高にかっこよかった

2位:二番手 和ちゃん
幼き頃の唯憂たまらん

3位:一番手 蜘蛛
うひょっ、ひょっ、ひょっ
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage ]:2011/07/10(日) 22:52:24.07 ID:WP6QjvM0o
そして企画への感想

今回の企画はSFと言うことで、
如何に設定を練るかが見所なんだと思うけど
やっぱり設定に引っ張られすぎて
「あれ、けいおんじゃなくてよくねぇ?」って思うことが少なからず

考えた設定の見せたいところ、
設定を通して何を見せたいのか
その辺の違いが面白かったわ

企画者、参加者の皆さまお疲れです
339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/10(日) 23:00:48.73 ID:OXUqNDsSO
◆投票◆
1位:四番手 「ロボットの私たち」
面白かった

2位:一番手 唯「蜘蛛の糸」
ほのぼのしてていい

3位:八番手 紬「世界の終わりに口づけを」
設定が好き
340 : ◆R.nL8U4J/HB6 [sage saga]:2011/07/10(日) 23:35:40.92 ID:llutZNKe0
◆投票◆
1位:五番手 純「今時タイムマシンとかタイムトラベルとかないわー」
正直、憂が唯だったって時点でオチ(唯が純を好きっていうこと)が読めたんですが、全然面白かったです。
  3日間後にしか時間逆行できないとことか、唯が憂を殺していたとことか。
  唯が本当は梓のことをどう思っていたのか知りたいとこですし、
  唯と純が2人で罪を背負って生き続けていくバージョンが読みたいです。
  
   
2位:二番手 和「ある季節の終わりに」
   この雰囲気はやっぱ、唯と和だからかなぁ、と。
   同じ季節を過ごしたのであれば、唯をむかえに行くのは憂でもよかったはず。
   だけど、和が唯の幼馴染で、和が同じ時期に
    唯を「おねえちゃん」ではなくて「ゆいちゃん」として接していたからこそ
   和ちゃんは唯をむかえに行くことが出来たし、
    ちょっとセンチメンタルになっている唯と一緒に和も成長していくんじゃないかなぁと、そんなことを思いました。

3位: 七番手 「復活」
   1回目読み終わったときになにがなんだか、(むしろ律が主なのか?と思ったくらい)だったんですが、
   2回目読むときに、冒頭にオチが!!ってびっくりしましたwww憂かよっ!!って。
   クラシック音楽でもそうですけど、「物語は主題に戻る」っていうのが貫いてあってすごくいい作品だなって思いました。
   レス番220−224までのやり取りはもう「うわっうわっすげっ本当だっ!!すげぇ」ってなりながら読みました。
   いい話を本当にありがとうございました。


途中参加でしたが、参加決意してよかったです。
参加者のみなさん、企画者の方、本当にお疲れさまでした。
企画者の方、身体の体調が戻られましたらぜひSF書いてください!!
では。
341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/11(月) 00:02:04.84 ID:Wh7R+Whb0
◆投票◆
1位:四番手 「ロボットの私たち」
設定が一番練られててSF好きにはたまらなかった

2位:九番手 純「紙様から世界を救い出せ!」
短いのに話がまとまってて終わり方もよかった

3位:一番手 唯「蜘蛛の糸」
可愛らしい話でよかった
342 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/11(月) 00:06:56.72 ID:5bh6hpngo
感想です。

・唯「蜘蛛の糸」
自作その1
SFネタに悩んで無理矢理こじつけて書いた。スパイダーとか名前付けたらSFっぽいかもとやってみたけどダメ
毒にも薬にもならない様な「楽しいけいおん劇」みたいなのを書きたかった。

・和「ある季節の終わりに」
自作その2
その1を読み返して、あんまりだと思ったので急遽書いた。しかしこれもSFになってない。
地の文は殆ど初めてなので、できるだけ読みやすさとリズムを心掛けたけど、
句読点とか判らないし、ぐだぐだ。読み返して赤面。後半説明ぽくなってる。もっと無駄を削れ俺のバカ

・「同性愛者は異常!」
揶揄するだけの道具にキャラを使うのは可哀想、どうせならもっと真剣に書けばいいのに。

・「ロボットの私たち」
やっぱりSFってこうでなくちゃ。各キャラにドラマがあって読み込まされた。

・純「今時タイムマシンとかタイムトラベルとかないわー」
時間移動が考証されていて感心した。「怪しいオジサン」はちょっと笑った。
ラスト機械を壊すことにも意味があって救いがあるのかと思ったけど、重かった。
でもそれは単なる俺の嗜好の問題
343 : ◆PyatAfq.54xf [sage]:2011/07/11(月) 00:08:12.55 ID:46kQxajso
キャラを自分の主義主張の道具にしてんのはみんな一緒だろカス
何で上から目線なんだよ
344 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/11(月) 00:08:19.54 ID:5bh6hpngo
・唯「ペンダント」
短いけど唯の心の動きや成長が上手く書かれていて、サクサク読めた。
おばあちゃんの正体を読む方に推測させるのもいい。

・「復活」
話の導入部が巧みで自然と物語に入っていけた。
この後唯と憂の関係がどうなるのかなんて心配してしまったくらい

・紬「世界の終わりに口づけを」
力作。こういうの書ける人凄いと思う。
設定を詰め込み過ぎて、誰に感情移入していいか迷わされるところも

・純「紙様から世界を救い出せ!」
純のキャラが生きてる。ラスト前少し繰り返す話の流れもオチもよかった。

・唯「ダイブ」
リズムで読まされていく、その後の展開も面白かった。
でもヘタレな俺は平穏な日常が何よりと思ってしまうんだ。
345 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/11(月) 00:09:01.08 ID:5bh6hpngo
◆投票◆
1位:九番手 ◆NSHyhn/73TtE 純「紙様から世界を救い出せ!」
2位:六番手 ◆6Pl2lEaW1E 唯「ペンダント」
3位:八番手 ◆rTGlWvG1Jo 紬「世界の終わりに口づけを」

みんなレベル高くてビビってます
なんか規格外の書いてゴメンナサイ
自分のレベルを棚にあげて感想で偉そうなこと書いてますが、むかついたらゴメンナサイ


参加してよかったです。こんなことでもなかったら地の文も書くことはなかったと思います。
皆さんお疲れ様、主催者さんありがとう。
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/11(月) 00:12:12.66 ID:NBibouyDO
みんな!晒してもいいんだぜ…?
347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/11(月) 00:34:21.14 ID:ZLAsPAMR0
◆投票◆
1位:九番手 ◆NSHyhn/73TtE 純「紙様から世界を救い出せ!」SFで尚且つけいおんっぽさもあってよかた。紙切れみたいなちっぽけなもので世界を救う純ちゃん可愛い!読みやすさもあって1位にした
2位:二番手 ◆Q9Tanlls9c 和「ある季節の終わりに」SFとしてはちょっと弱かったけどやっぱり唯和はいいね
3位:八番手 ◆rTGlWvG1Jo 紬「世界の終わりに口づけを」設定ならこれが一番面白かった。けど自分にはちょっと難しくて?なとこもあった。

皆さんお疲れ様でした

348 : ◆YgiDkxnzcI [sage]:2011/07/11(月) 00:48:17.44 ID:t+a9kGlAO
◆投票◆
1位:純「紙様から世界を救い出せ!」
純ちゃんの語り口とかすごくかわいくてよかった
2位:六番手 ◆6Pl2lEaW1E 唯「ペンダント」
テンポよくさくさく読めた
3位:一番手 ◆Q9Tanlls9c 唯「蜘蛛の糸」
ほのぼのした感じが好き


どの作品もレベル高くてすごかったー
自分はまだまだ甘いって気がしたよ…

書き手の皆さんと主催者の人、お疲れ様です!!
349 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/11(月) 00:54:16.10 ID:Y/ejZek9o
ロボットの人なら澪について聞きたい
350 : ◆NSHyhn/73TtE [sage]:2011/07/11(月) 03:02:41.88 ID:nHp8V2lAO
遅くなりました!
感想&投票を
専ブラじゃないからコピー出来ねぇwwww

一番手さん 唯「蜘蛛の糸」
SFと言うと結構重い感じの話が多そうなイメージだけど一発目がほのぼので企画全体がほぐれたと思う。
内容はSFよりファンタジーに近い気がするけど

二番手さん 和「ある季節の終わりに」
雰囲気がガラッと変わってビックリしました。
夢の中と書き方で怖い系なのかな? と思ったらそうでもなかったぜ!

三番手さん 「同性愛者は異常!」
人それぞれ考え方があってそれを絶対に許せないって人もいれば寛容な人もいる。
どこまでがそうって言う線引きが難しいと思いました。
でも自分が嫌いだからそれが正しいって言うこともまた違いますよね

四番手さん 「ロボットの私達」
まず設定が好き。最近アイロボットがあって見たからって言うのもあるけどそれが当たり前の世界で矛盾から産まれるSFは凄く好きです!
面白かったです!
351 : ◆NSHyhn/73TtE [sage]:2011/07/11(月) 03:18:56.95 ID:nHp8V2lAO
五番手さん 純「今時タイムマシンとかタイムトラベルとかないわー」
SFと言えばタイムトラベル! タイムトラベルと言えばSF!
タイムトラベルするにあたっての気持ちやしていくごとのズレとかこれぞタイムトラベルって感じで良かったです
全てが片付く前にタイムマシンを壊すって終わり方もそう選択した気持ちも描けてて良かったです!

六番手さん 唯「ペンダント」
便利道具アイテムをもらっても唯ちゃんならきっとそうしますよね
おばあちゃんなんていらんかったんや!

七番手さん 「復活」
書き方と雰囲気の出し方が上手いなぁと思いました。
SF風にするとこうなるわけですね

八番手さん 紬「世界の終わりに口づけを」
立ち上がりの設定から手紙のくだりから何から何まで面白い!
電脳世界的なものが好きな自分にとっては最初の導入文だけでもう全部読むの確定レベルでした!
面白かったです!

九番手 自作 後ほど

十番手さん 「ダイブ」
当たり前の日常にかかるモヤに取りつかれると精神世界に行ってしまうって感じかな?
同じことがずっと続くと不安になる現象みたいなのがあったけどまさにあれだなと思いました。
りっちゃん病みすぎだろwwww
352 : ◆NSHyhn/73TtE [sage]:2011/07/11(月) 03:37:29.06 ID:nHp8V2lAO
◆投票◆
1位八番手さん 紬「世界の終わりに口づけを」
2位四番手さん 「ロボットの私達」
3位七番手さん 「復活」
4位五番手さん 純「今時タイムマシンとかタイムトラベルとかないわー」

1.2と3.4がかなり迷いました。

今回かなりSFという題材でみんなどれだけ練り込んで来るのかなと思ったけどやっぱり練り込んで来ましたねwwww
タイトルと同じに紙のようにペラペラな自分のと比べるのも申し訳無い

九番手 「紙様から世界を救い出せ!」
ほんとは参加するつもりはなかったんですが日曜日もいけるってことになったんで急遽書きました。

SFと言われるとやっぱりタイムトラベル、な自分ですがタイムトラベルものの面白さは伏線と回収が巧妙なほどいい、しかし今回そんな長々考えてる時間はないってことで日常型SFにしました。

タイムトラベルものでも大好きな要素なんですがこうちょっとしたものが世界を変えるみたいなやつがかなり好みでよく使ってて今回も使いました。

ちなみに一回目のは明日それを慣行しようとした純が見た夢です。
いつもある日常を自分のちょっとしたことで変えようとして、それを目の当たりにしてどう思ったのか?ってSSでした。

あんまり長々と語るほど内容も詰まってないのでこの辺で

SF物は総じて長くて取っつきにくいってのがあったので読みやすくしてみて実際読みやすかったってレスがあったのは凄く嬉しかったです。

皆さんお疲れさまでした!
主催者さんも次のファンタジー(やるのか?)とかの企画には是非参加待ってます!

読んでくださってありがとうございました!
353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/07/11(月) 09:26:12.18 ID:Y/ejZek9o
>>290の学校から>>302まで全部夢ってこと?
すげぇな、供述トリックって言うのかな、とにかくわからなかったぜ
354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/11(月) 10:36:41.74 ID:NBibouyDO
一番手 ◆Q9Tanlls9c 唯「蜘蛛の糸」
みんながかわいい。
SFというより文学パロディだけど、かわいいから好き。


二番手 ◆Q9Tanlls9c 和「ある季節の終わりに」
話がまとまってて読みやすかった。
でも、少し説明っぽかったかも?シンプルながらまさにすこしふしぎな話。



三番手 ◆PyatAfq.54xf 「同性愛者は異常!」
SFなのか?
勢いはあって面白かったけど、作者の主張が強すぎて企画向きじゃないと思う。
こういう作者の代弁SSはVIPのほうがウケる。


四番手 ◆YgiDkxnzcI 「ロボットの私たち」
設定からその転がし方が良かった。
読者に考えさせるのも好き。
変に細かに説明されるより小難しいまま終わるほうが雰囲気残せるしいいよね。


五番手 ◆HBJa11Hm.c 純「今時タイムマシンとかタイムトラベルとかないわー」
話の流れはすごくよかった。
でも、後半の純の思考があまりに回りすぎて、キャラ崩壊していたように感じた。
『ヘンペルのカラス』らへんは、もはや作者が言わせたかっただけな気がする。
あっさりと解決(?)してキレイにバッドエンドになるのは素敵。
355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/11(月) 10:37:27.94 ID:NBibouyDO
六番手 ◆6Pl2lEaW1E 唯「ペンダント」
短作でしっかり盛り上がってよかった。
オチもスパイスになってていいね。
長編の壮大な話もいいけど軽くてまとまってるのもいい。


七番手 ◆RcBucO91EsFq 「復活」
面白い雰囲気。他には無い作品だった。
律梓の会話は違和感あるけども、繰り返し読むとそのうちなんとなく納得いってしまう気もした。
これも神の成せる業か。


八番手 ◆rTGlWvG1Jo 紬「世界の終わりに口づけを」
多分設定が一番細かくされてるように感じた。
それゆえに複雑怪奇になりすぎていて、読み手の中にはついていけなかった人もいそう。
話としてはすごく面白い。
紬と菫の関係、繋がり、そこから来る様々な人の葛藤などは素晴らしい。


九番手 ◆NSHyhn/73TtE
 純「紙様から世界を救い出せ!」
ほのぼのとしてて、かつ一ひねりしてるのはよかった。
後輩組が仲良しなのが好きなので、オチも好印象。



十番手 ◆R.nL8U4J/HB6 唯「ダイブ」
多くを語らないのが光ってた作品。
不思議な雰囲気なのに謎の説得力。
ダラダラ順番に続けるよりも、スパッと締めたのも素晴らしい。
356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/11(月) 10:41:33.90 ID:NBibouyDO
◆投票◆
1位:十番手 ◆R.nL8U4J/HB6 唯「ダイブ」
2位:六番手 ◆6Pl2lEaW1E 唯「ペンダント」
3位:八番手 ◆rTGlWvG1Jo 紬「世界の終わりに口づけを」



参加せずに読み手に回ったけど、今回はみんな気合い入ってるのが多かった印象。
単純なほのぼのにも少しスパイスとして一ひねり要素を入れるだけで、作品がこうも変わるんだと実感できた。
SFジャンルはやはり、とっつきづらくても人気ジャンルの一つなんだなぁと思いました。
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/11(月) 14:52:18.47 ID:IzityyXn0
感想長くなっちゃったけどtxtファイルでどっかに上げた方がいいかな
358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/11(月) 14:55:01.47 ID:jrJf8zw3o
ここに書き込んでいいよ
そんなに人いないし
359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/11(月) 15:44:32.08 ID:oFOdOfXDO
感想も人それぞれで面白いな
360 : ◆JMIFPYygak [sage]:2011/07/11(月) 22:31:03.14 ID:sBftD0YMo
投票開始からそろそろ1日経ったので、もう集計を始めてもいい頃かな?
ゆっくり読んでいる途中の方や感想をじっくり考えている方がいればまだまだ待ちますので
一言くださるとうれしいです
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/11(月) 23:02:48.50 ID:uJoIQX2S0
すいません遅れましたが感想書きます。

唯「蜘蛛の糸」
澪が普通に可愛かった。
面白いほのぼのってこういうSSなんだなって思った。

和「ある季節の終わりに」

唯と憂と和の関係をすごく上手く使ってる。
他のキャラじゃこの話は作れない。

「同性愛者は異常!」

梓「気づいてないんですか?ムギ先輩は、嘘を付くと、眉毛が沢庵になる!」
の流れが面白かった。

「ロボットの私たち」
けいおんSSで初めて男にGJと思った話だった。

純「今時タイムマシンとかタイムトラベルとかないわー」
タイムマシンとか時間移動とかの考え方が普通に面白かった。正統派SF?
何かの小説とか映画から借りてきたのだとしたら知りたい。
あと、唯がやたらペラペラ難しいこと喋ることに関しての違和感の無い説明も上手いと思った。

唯「ペンダント」
けいおん版「時をかける少女」って感じがした。
話としてまとまりがあって面白かった。短くまとめる上手さを感じた。
時かけばりにイベント盛り込んだ長編でもいけそう。

「復活」
唯と憂がかなり似てるっていう設定をうまく使ってる。

紬「世界の終わりに口づけを」
重い切ない話だったけど、最後の1文で何かわくわくさせるというか、さっきまでのSF的な無機質さからメルヘンな方へ脱出できた感覚があった。
あの2人もそんな気分だったのかなって思えて、意図したものかは分からないけど上手いなって思った。
穏やかなハッピーエンド感。

純「紙様から世界を救い出せ!」
終末のイメージが割とリアルで良かった。
みんなの動き方が某原発の時と被った。
純が活躍する話は好き。

唯「ダイブ」
カオス風だけど若干切ない。
一体なにが起こったんだろう。
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/07/11(月) 23:26:53.88 ID:Hu5gLwDAO
1位 紙様
2位 ある季節
3位 口づけ
363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/11(月) 23:30:12.73 ID:uJoIQX2S0
1位 紬「世界の終わりに口づけを」
シリアスな話はあんまり好きじゃないし、人が死んでるから単純なハッピーエンドじゃないけど、最後の1文で妙な開放感があった。

2位 純「紙様から世界を救い出せ!」
こういう話好き。純の初っぱなの 純「は、こりゃ滅亡だわ」 がツボ。

3位 唯「ダイブ」
よく分からないのにテンポが良いし では・・・飛び入りです。 って言ってからこの題名のSS書くところに変なセンスを感じた。

364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/07/12(火) 00:02:22.58 ID:8P7qR8EbP
>>357の感想が気になる
365 : ◆rTGlWvG1Jo [sage]:2011/07/12(火) 01:04:15.81 ID:8kKXwUGJo
夏風邪こじらせて寝込んでたらすっかり遅れました・・・
とりあえず先に投票を

◆投票◆
1位:十番手 唯「ダイブ」 これは自分には書けないから。
2位:五番手 純「今時タイムマシンとかタイムトラベルとかないわー」 一番SFだったので。
3位:四番手 「ロボットの私たち」 設定がとてもよかったから。

企画お疲れ様でしたー
また機会あればぜひ参加したいです
感想はもうしばらくしたら投下しようと思います
366 : ◆rTGlWvG1Jo [sage saga]:2011/07/12(火) 18:38:16.61 ID:2QCi6buSO
遅れて申し訳ない
では感想のようなものを

一番手 ◆Q9Tanlls9c 唯「蜘蛛の糸」
 SFというより童話かなあ。こういう妙な設定のほのぼのは好き。
 元ネタがアレだけに唯が独り占めしようとして落とされる気がしたけど違ってよかった。
 あと練習地獄って発想は笑った。くもの糸の設定にも。

二番手 ◆Q9Tanlls9c 和「ある季節の終わりに」
 うまくまとまってた。タイムスリップものじゃなくてパラレルワールドものと見た。
 話の流れが決まってるだけに、冒頭で“成長への不安”が出てたのが構成的にうまい。
 タイムマシーンの役割を果たすのが成長をともにしてきたベッドっていうのもなんか感慨深い。
 戻ってきた時に解説しすぎなのを抑えて、冒頭膨らませればもっとよくなると思う。
 あと文章で雰囲気出すには字の置き方や見た目も大事なんだなって再認識した。
 この辺は唯「ねえねえ、りっちゃん」律「んー?」とか唯海企画の唯和がうまかった。

三番手 ◆PyatAfq.54xf 「同性愛者は異常!」
 そんだけ鬱憤たまってんならSSにすりゃいいのにと常々思ってたから作品化したことはまず評価する。
 前半の書き方は悪くないし、老紳士シリーズみたいな「道具に振り回される話」だったと思う。
 ただ、作者の意図通りに「同性愛者きめぇ氏ね」を結論にするなら、
 逆に梓が「異性愛者を同性愛者にする薬」でも作って自滅してく話の方がよさそう。
 この話は作者の意図と逆に異性愛者が同性愛に傾いたところを無理矢理否定した感じなので。
 つーか“道具に振り回される話”として読むならこのSSが、
 むしろ書き手本人自体が「同性愛者非難」という道具に振り回されて自滅してく物語とも読める気が。
367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/12(火) 18:39:17.88 ID:97qW8XzR0
総評とか晒しとかしないの?
しないならHTML化依頼だしといていい?
368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/07/12(火) 18:39:58.53 ID:2QCi6buSO
四番手 ◆YgiDkxnzcI 「ロボットの私たち」
 これは設定の寓話性が非常に高い作品。
 オリジナル(≒人間?)⇔コピー(≒ロボット?)の話は、原作⇔無数の二次創作の対応とも読めるし、
 そっから二次創作がオリジナリティを持つという寓話としても読み解けた。
 (そうなると梓のデータをいじろうとする男が、キャラを都合よく改変させる書き手にも見えたっつか)
 というか“人間”(憂や男)が書き手で、“ロボット”が二次創作上のキャラだったのかな。
 だとするとこの辺は純「規制とけた!」とも同じような題材と読める。ネタバレだけど。
 ただ、設定ありきで物語の流れが薄かったのが残念。
 書き方を他視点にしたせいでオムニバスみたいになっちゃって、一貫した物語を読みづらかったというか。
 マンガではなく一枚絵として完成度が高かったと思う。

五番手 ◆HBJa11Hm.c 純「今時タイムマシンとかタイムトラベルとかないわー」
 一番SFらしいSFだったのがこれ。
 リセットものは何度やっても失敗するところまではセオリーだけど、落ちが難しくなる。
 その点、これは認識そのものをひっくり返すことで落ちの強度を保ててたのがよかった。
 伏線もうまく張られてるし、細部の設定の作り方もうまい。二進数とか、地味に。
 なにより、純の「梓の死を前提に行動することへの自己嫌悪」って気持ちの持っていきようがうまかった。
 タイムスリップものでは「自分の行為が徒労だったり、悪化させてるのでは」的な気持ちは描かれるけど、
 そういうのを前提視した上で他人を思いやった自責の念はなかなか書かれないからすごい。
 (前提視といえば表題からしてメタフィクションで、作中でもそういう表現があって、
 純の性格や(軽音部に対する)立ち位置にすごく似合ってるなあとも思った)
 とにかく、この話を書くとしたらこれがベストだろうなって形にはできてたと思う。

六番手 ◆6Pl2lEaW1E 唯「ペンダント」
 これこそまさに「道具に振り回される話」。ある意味で三番手と同じパターン。
 『週間ストーリーランド』のおばあさんシリーズを思い出した。
 魔法の道具が出る時点で自滅フラグみたいなものだからひやっとしたけど、
 唯ちゃんが自分で気づいて元に戻せたのがよかった。ほのぼのした。
 あと、やっぱあのおばあさんは唯の老後ってことでいいんだろうか。
 だとしたら乙一の某作っぽくていい締め方だったなあと。
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/07/12(火) 18:41:08.49 ID:2QCi6buSO
七番手 ◆RcBucO91EsFq 「復活」
 SFよりも神話っぽい話。の割に語り口が今風で、そのギャップが好き。
 宇宙人が出てくるものも読んでみたいけど難しいだろうなあ、と思ってただけに、
 本作で宇宙人が登場したのは結構うれしかった。
 欲を言うなら律たちが登場した時点で事後だったので憂が自覚する場面をもうちょっと見てみたかったかも。
 とはいえブラックボックスだからこそ神秘性が出るのも事実だし、悩むところ。
 ちなみにそういう大事な場面を隠さずに結果だけはつまびらかに明かして、
 それなのに訳の分からなさを見せてくれたのが十番手だったりする。

八番手 ◆rTGlWvG1Jo 紬「世界の終わりに口づけを」
 自作。町を書きすぎてディストピア脱出ものが上京ものに変わっちゃった話。
 『1984年』みたいな“支配社会からの脱出”を手紙で語りかける文体で見せたかったのと、
 「自分がこの世を支配してると思ったら結局夢でした」的な話を合わせたらああなった。
 今まで自分の狭い世界から脱出する話ばかり書いてきたから今回もそっちが主題だったはず。
 ただ、テーマが2つ(上京、クローン)になって分散したのは失敗だった。
 スミーレちゃんの設定が気に入ってるだけにクローンを生かせなかったのは残念。
 「菫も梓のことが好きだけど二人を想って略」って内容をもっとちゃんと書いてあげりゃよかった。

九番手 ◆NSHyhn/73TtE  純「紙様から世界を救い出せ!」
 うまい。構成も安定してて、うまく着地してる。なによりこの短さでまとまってるのが絶妙。
 こういう終末もの書こうとすると社会の反応と身近な人の反応の対比の描写に手間取ってしまう。
 そこを台本形式をうまく使って行間を想像させることでクリアしたのが大きい。
 なんとなく『天国に一番近い男』ってドラマを思い出した。
 あと>>361で「某原発の時と被った」と聞いて、これも震災体験以後の物語だったりするのかなあと。
 いま世界が終わるとか日常の崩壊みたいな話書こうとするとどうしてもあれを参考にしちゃうだろうし。
370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/07/12(火) 18:43:06.61 ID:2QCi6buSO
十番手 ◆R.nL8U4J/HB6 唯「ダイブ」
 今までさんざん“〜もの”とか“〜な話”ってジャンル分けしてしまった。
 というのも、SFってジャンルはどうしても題材ごとに流れの定石みたいなのが少なからずあって、
 それをいかに乗るか、逆にいかに外すか、みたいな面は結構出てしまうからだ。
 でも、これは分からない。分からないのに成り立ってる。すげえ。カフカみたい。
 設定をぼやかして夢心地のまま終わる話も多いしそういうのも好みだけど、
 これは明かすべきところをしっかり明かしておきながら、それでいて意味が分からない。
 なぜとかだれがって部分で物語を作らず、それでいて興味で読み手を引っ張るのはうまい手口。
 もしかして、澪が土に埋まったり穴にはまったりする話の人かな。
 この「説明しない感じ」は今後参考にしたい。というか作り方をご教授願いたいってレベル。

企画への感想
 なんだかんだで全作品見るところがあっておもしろかった。
 企画前にSFというジャンルに対して持ってた印象がいい意味で裏切られたものが多かったし。
 たとえばタイムスリップや宇宙人、魔法の道具なんかが出てくる話でも、
 みんなちょっとずつひねったものばかりでおもしろかった。

 次に企画やるなら内容でなくて形式とか読後感で縛る企画がいいかな。
 たとえば登場人物が二人だけにする企画とか、エロ企画や感動系企画とか。
 つーか謎の感動系企画やってほしい。
 「なんで最後いい話っぽくなってんだよwww」って言われるような設定崩壊の感動もの。


そんなわけで遅れましたが感想でした。
無駄に長くて読みも浅いとは思いますが、参考程度に聞き流していただければ幸いです。
あと、みなさんくれぐれも体調には気をつけて。ほんと長引くから。それでは
371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2011/07/12(火) 19:23:58.95 ID:Xc1X/FTko
他の感想ももちろん嬉しかったけど
このくらい長い感想もらうと感激しますね
自分の作品に関しての指摘の的確さにはションベンちびった
ありがとう、パンツ替えてくる
372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/07/12(火) 20:02:18.53 ID:1lkbD0YAO
こんな丁寧な感想貰えるなら企画参加すれば良かったな
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/07/12(火) 20:42:30.22 ID:9ZsLnv5So
誰が書いてるのか予想ついた気がする
当たっているならば俺の作品はもっと鋭い切り口で批判してほしかったな
374 : ◆PyatAfq.54xf [sage]:2011/07/12(火) 20:43:38.29 ID:JR3zZHcDo
カスベマジ大概にしろよ
375 : ◆PyatAfq.54xf [sage]:2011/07/12(火) 20:44:44.06 ID:JR3zZHcDo
>あと、みなさんくれぐれも体調には気をつけて。ほんと長引くから。それでは

ここまで特定されたがりぃだと失笑物だな
自己顕示欲が肥大化した化け物
376 : ◆PyatAfq.54xf [sage]:2011/07/12(火) 20:45:46.45 ID:JR3zZHcDo
ゴミクズキチベータの分際でいっちょ前に批評してんじゃねぇよクズ
377 : ◆PyatAfq.54xf [sage]:2011/07/12(火) 20:48:31.43 ID:JR3zZHcDo
つうかあのオチは
まともな感性もった人間が意思に反して同性愛者になったら
気持ち悪くて自[ピーーー]るしかなくなるってことを表してんだから
安易だと言われるのは納得できても無理やりだの振り回されてるだの言われる筋合いはねぇよ
本当に脊髄反射で批判してんのな
378 : ◆PyatAfq.54xf [sage]:2011/07/12(火) 20:51:18.49 ID:JR3zZHcDo
ていうかカスベって
しょっちゅう気に入らない話に対して
「ほら、ここをこうしたらよくなるんじゃね! こんな改善案思いつくなんて俺凄いだろ!?」
ってやってるけど
毎回その代替案が大したことないのが笑える
379 : ◆PyatAfq.54xf [sage]:2011/07/12(火) 20:55:11.03 ID:JR3zZHcDo
カスベマジふざけんなよ
380 : ◆PyatAfq.54xf [saga]:2011/07/12(火) 21:00:06.20 ID:JR3zZHcDo
カスベはちょっと一回マジで死ね
381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/12(火) 21:00:32.56 ID:2yiDCF+DO
この小物臭ハンパないな
382 : ◆PyatAfq.54xf [sage]:2011/07/12(火) 21:05:39.76 ID:JR3zZHcDo
エレベーターの口だけっぷりは異常
理念はいっちょ前で提案だけは人一倍するけど何一つ実行しない
企画案ドヤ顔で出してる暇あったら一つでも主催すりゃいいだろ
ほんとこの辺が
口はでかいけどやることもでかいギコギコや
実力に比べて気持ち悪いくらい謙虚なサラシとの違い
ひいては天才と凡人の違いなんだよな
こいつがいるからけいおんSS嫌いになった奴は相当いるだろ
383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/07/12(火) 21:06:43.61 ID:8za/BQHI0
◆PyatAfq.54xf
お前が唯一褒め称えるサラシは唯梓SS書き手だし
お前が書いたSSは唯と梓は支えあって最後まで同性愛貫いてるし
クズ唯梓厨死ねよ
384 : ◆PyatAfq.54xf [saga]:2011/07/12(火) 21:10:58.07 ID:JR3zZHcDo
>>383
いやだから同性愛者なんかいくら貫いたって不幸な運命しか待ってないよってことを表しただけだよ
別に唯梓に思い入れがあるわけじゃなくて
常識人自殺コンビと馬鹿はあがいて死んでゆくコンビの二つに分けるにあたって
常識コンビには律澪が合ってそうだから
消去法的な感じでもう一方が唯梓になっただけ
大体人間死んだらゴミだし最後まで貫くことに意味なんてないだろ
馬鹿だから死んだ、以外の含意はない
385 : ◆PyatAfq.54xf [sage]:2011/07/12(火) 21:11:54.62 ID:JR3zZHcDo
サラシだって話が面白いから好きなだけ
別に何書き手でもいい
386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/12(火) 21:46:25.55 ID:Ke5Q9noDO
なにこの雰囲気ワロタwww

>>385
同性愛嫌悪者でもなんでもいいからさ、今までに書いたSS他にないのか?
晒したら読むぞ?
387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/12(火) 22:25:59.27 ID:8eEvo63j0
>>367
もう一日以上経つし総合得点まとめるか
全部終わったら晒してくれる人もいるかもしれんし
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/12(火) 23:02:02.27 ID:8eEvo63j0
テテテーンーテーンテテテテーンー

唯「ブゥンブゥン!! シャキン! どふぁー!!」

和「唯・・・何やってるの?」

唯「今回はSF企画ってことでスターウォーズ的な登場だよ!」

和「……じゃあ結果見ていきましょうか」

唯「ぶぅん!!(わかったよ!)」

和「じゃあ第10位から」

唯「ぶぅん!!」

三番手 ◆PyatAfq.54xf 「同性愛者は異常!」 0ポイント

和「圧巻のドベね」

唯「SFって枠じゃなかったし仕方ないよ!」

和「こうやって訴えたいものがあるのならそれをどんどんssにしてみればいつかきっとわかってくれる人もいると思うわ。じゃあ次、第9位」

七番手 ◆RcBucO91EsFq 「復活」 4ポイント 1位 2位1 3位2

唯「ふっふふー私は何度でも甦るのだあー」

和「そういう話じゃないから。ポイントはそこまでだったけど作品としては凄く面白かったと思うわ。この作品が9位ってことでSF企画全体のレベルの高さが伺えるわね。じゃあ次、8位」

一番手 ◆Q9Tanlls9c 唯「蜘蛛の糸 5ポイント 1位 2位1 3位3

唯「私これ好き! 可愛かったよね!」

和「ええ。コメディ感があって良かったと思うわ。こんな地獄なら観光できそうね」
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/12(火) 23:26:13.49 ID:8eEvo63j0
和「じゃあ続いて第7位」

六番手 ◆6Pl2lEaW1E 唯「ペンダント」 6ポイント 1位 2位3 3位

唯「あったら便利だよねー」

和「そうね」

唯「でもそんな便利グッズをちゃんとおばあちゃんに返した私っていい子だよね!」

和「そうね。そうやって自分から言い出さなければね。次は第5位」

唯「あれ? 6位は?」

和「見ればわかるわ」

二番手 ◆Q9Tanlls9c 和「ある季節の終わりに」 9ポイント 1位 2位4 3位1

五番手 ◆HBJa11Hm.c 純「今時タイムマシンとかタイムトラベルとかないわー」 9ポイント 1位2 2位1 3位

唯「同着だったんだね!」

和「唯の夢の中にいけるなんて最高のssじゃない!和ちゃん賞を贈呈するわ。もっとも2位に選ばれたssでもあるわね」

唯「和ちゃんがこんなこと言い出す前に戻って口封じしないと・・・・!!」

和「悲しいけどこの作品よりももっと票を得た作品がまだ4作品もあるの・・・その現実が私には耐えられなくて…現実逃避するわ!!」

唯「じゃあ変わりに私が発表します! 惜しくも表彰台を逃した第4位は!!」

十番手 ◆R.nL8U4J/HB6 唯「ダイブ」 10ポイント 1位2 2位1 3位1

唯「1ポイント差で抜け出したね! こういうのを見ると1ポイント1ポイントが大事なんだなーって思うよねー和ちゃん?」

和「えへへ・・・唯〜・・・」

唯「和ちゃんが眼鏡ペロペロしてるよ!! それ私じゃないよ和ちゃん! 精神世界から帰ってきてー!」

スチャ

和「いよいよベスト3の発表よ」キリッ

唯「物語もクライマックスだね!」
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/12(火) 23:43:38.03 ID:8eEvo63j0
唯「ここからは私とりっちゃんの戦いと共に発表していくよ!」

律「ふはははかかってこーい」わきわき

和「…では第3位」

四番手 ◆YgiDkxnzcI 「ロボットの私たち」 13.5ポイント 1位3 2位1 3位1

和「リアルタイムで読んでたんだけど見たときは正直優勝かなって思ってたわ。設定や主軸になるストーリーが凄くSFっぽかったしSF特有の読み進める楽しさがあったから。上位に食い込んで来たのは頷ける作品ね」 

唯「私達は人形なんかじゃない!」

律「なにを言うか! 人間など所詮神のコピー、偽者ではないか!」

唯「くっ・・・!」

和「なんかやってるわね……ほっといて次行きましょうか」

八番手 ◆rTGlWvG1Jo 紬「世界の終わりに口づけを」 17.5ポイント 1位3 2位1 3位5

和「もっとも三位に選ばれた作品ね。入れられた票もトップと並んで9票とみんなに選ばれた作品とも言えるかしら。ここであれこれ言うよりは是非読んで欲しい作品ね」

唯「確かに私たちの体や記憶も誰かに作られたものなのかもしれない……けどそれでも私は私なんだよ! 平沢唯なんだよ!」

律「ならば証明して見せろ! この私に!」

和「なんか無駄に熱くなってるけどいよいよ第1位!」



391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/13(水) 00:07:00.46 ID:e2TSwHhk0
九番手 ◆NSHyhn/73TtE  純「紙様から世界を救い出せ!」 23.5ポイント 1位5 2位2 3位2

和「というわけで全10作品のトップはこの作品になったわ。短くてもまとまってて終末の雰囲気を出せていたところが大きかった気がするわ。SF=長くて難しいっていうネックになりやすい概念を打ち破っての1位、お見事ね。もっとも1位に選ばれたss、もっとも投票されたss、ポイントトップの三冠ね」

唯「これが私の切り札だよ!!」ササッ

律「なにぃ? 紙ごときで何が出来る!?」

唯「ただの紙だって思いを書くことでそれは伝わる……ならこの世界だって救えるはずだよ!」

律「世迷言を!! 消し飛ぶがいい!! りっちゃんビィィィーーームゥ!!」

唯「ぐふっ・・・」

律「なっ…あれだけ思わせぶっといて直撃だと!?」

唯「りっちゃんと戦えるわけないよ……だって」チラッ

律「この紙は…!!」

「りっちゃん大好き」

律「唯…ゆいいいい!! 私が間違ってた!!」だきっ

唯「わかってくれたらいいんだよ……りっちゃん」

律「死ぬなああああ!! ゆいいいいい!!」

唯「ああ、今日も空が青い……」

唯「というわけでSF企画いかがだったでしょうか?」

律「全10作品! 投票数15! 書いた人もそうだけど読んでくれたのことも忘れちゃあいけないぜ!」

唯「好きな作品のポイントが低くたっていいじゃない! 自分がその物語を好きならそれで世界は生まれていくんだよ!」

律「そうだな……物語はssがあるだけ無限に増えていくんだぜ!」

唯「では、また次の物語(ss)でお会いしましょう!」

律「まったねーん!」

和「……」

和「同性愛者は死ね!」

おわり 
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/07/13(水) 00:12:48.43 ID:GvNvbMVCo
みなさんお疲れ様でした。次の企画にも期待できる内容だった
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage ]:2011/07/13(水) 00:17:33.19 ID:DWac1OYfo
何気に唯律寸劇面白し、お疲れ〜
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/13(水) 00:51:52.56 ID:SW7YTlUL0
まとめお疲れ様でした!参加者もおつおつ!!
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/13(水) 04:00:29.38 ID:e2TSwHhk0
明日ぐらいにHTML化依頼するからそれまでに晒しとかあったら嬉しいなって!
参加者の皆さん気が向いたらお願いします!
396 : ◆HBJa11Hm.c [sage saga]:2011/07/13(水) 06:30:17.06 ID:s01M95rio
晒せと言われても知名度のある作品のない俺に隙はなかった


何はともあれ皆様お疲れ様でした 
五位ありがとうございます。五番手で五位。企画初参加でしたがいい思い出になりました。

タイムマシンを使ったにも拘らず二人の運命は変わらず、二人はそのせいで命を落とすというどうしようもないエンドの作品でしたがこんな良い順位を貰えたのはSF企画という場だったからだと思います
読んでくれた人、特に点数を入れてくれた人が『一番最初』の純、唯、梓に何があったのかまで考えてくれてたらそれはとっても嬉しいなって

余談だけどシュタゲ放送中にリピートものを書くのはすごく怖かった
全体的なキャラ崩壊についてはゴメンナサイ以外の言葉はありません
そして何よりあずにゃんとそのファンの方々には土下座しても足りないと思います。一番くじのあずにゃんフィギュアを神棚に飾りますので御怒りを静めてもらえると助かります。うち神棚ないけどな


最後になりますが、企画って周囲は良作揃いだし自分の作品に対する批評も聞けるしで実にいいものだと思いました。
次があれば内容次第でまた参加したいと思います。その時はちゃんと全部に感想書こうと思います・・・

それでは、本当にありがとうございました&お疲れ様でした。
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/13(水) 07:11:08.79 ID:xKZ2DpMIO
皆さん乙でした。
398 : ◆NSHyhn/73TtE [sage]:2011/07/14(木) 16:05:22.31 ID:UiuzSczAO
まとめお疲れ様でした

まさか1位を取れるとは思ってなかったんでビックリです。
と言うのも三位狙って書いた作品だったので。
即興で書く前に皆さんの作品を読んでこりゃ上位入賞は諦めよう、と思ってたのでwwww
三位と言っても勿論総合ではなくて個人がつけてくれる三位です。
1.2位は多分内容の詰まったまさにSF!って言うのが選ばれそうなので、じゃあ三位は気楽に読めるものを選んでくれるんじゃないかな?と思ってましたwwww

総合では下の方でも票を入れてくれた人の三位までにそこそこ入れば自分としては成功かな? な企画でした。

でも逆にそれが評価されてトップを取れたっていうのはまさに思わぬ誤算ですね。

投票してくれた方、読んでくださった方、企画に参加した方、主催者の方、まとめの方、お疲れ様でした、そしてありがとうございました。

次からも企画には積極的に参加したいと思います!
399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/14(木) 16:11:29.58 ID:R7d3BTcGo
で、晒しは?
400 : ◆NSHyhn/73TtE [sage]:2011/07/14(木) 16:18:02.89 ID:UiuzSczAO
晒すとまたかとか言われそうだけどまとめてくださった人に言われたら晒さないわけにはいかないぜ!
今回SF企画なのでSF物だけ

唯「タイムトラベル」紬「Look for」梓「memoriesです!」

最近ちょっと自信喪失気味で他のSSばかり書いてたりしてたけどこの企画で書く意欲が上がりました!

ありがとうございましたっ!
401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/14(木) 17:59:38.74 ID:jIa/t9SS0
あずにゃん王国の人か
タイムトラベルのやつも良かったよ
作品が進むにつれてよくなっていってる印象があるな
次の作品も期待してます
 
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage ]:2011/07/14(木) 18:02:57.65 ID:EjdzHXFxo
おつおつ
紙様は設定ではなくキャラを魅せていたので特に評価したい
403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/07/14(木) 19:02:46.63 ID:iuW6TYHAO
厨二病あずにゃんの人か
404 : ◆Q9Tanlls9c [sage]:2011/07/14(木) 19:08:15.79 ID:H01v5Fxmo
うひょっ、和ちゃん賞やった〜

最近はVIPでやる根性なくてずっと書いてなかったから
これだけ読まれて、感想まで貰える企画は楽しかった

自作はちょっと場違い感があったけど賑やかしにはなったかなと
お邪魔じゃなかったらまた参加したいです
お疲れ様でした〜
405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/14(木) 21:22:55.32 ID:9xO+DfjDO
参加した人みんな乙!面白かったよ
王国さんはこれからも有名作を書いておくれよ
406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/07/14(木) 22:46:12.57 ID:xfUIKYc30
もう終わりか?

>>404
晒せよ
407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/15(金) 16:54:08.84 ID:+QoZsyrlo
え?やだ
408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/16(土) 15:53:53.13 ID:pzWqrZGDO
企画者は削除依頼行かないのか?


荒しが出した依頼は無効にされてたと
記憶しているのだが
409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/07/16(土) 18:28:24.94 ID:Z4gUwzB9o
>>395さんが行くんじゃないの?
410 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/07/16(土) 20:01:50.83 ID:QyWJotXAO
企画者生きてんのかな
411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/16(土) 20:33:26.84 ID:KAjWkjO90
まとめたものです
企画者さんは見当たらないようなので出してきますね
お疲れ様でした
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