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男「百物語をしよう」友「二人で?」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/06/29(水) 00:06:09.98 ID:lrX7beMK0

男「細かい事は気にするなよ」

友「まぁ百行かなくてもいいよな。」

男「できれば行きたいけどな。」

友「無茶を言うなよ。作り話でも限界があるぞ」

男「まぁのんびり行こうぜ?夜は長いんだ」

男「まずは俺からな」
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全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/

トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713798788/

【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
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ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
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【安価】少女だらけのゾンビパニック @ 2024/04/20(土) 20:42:14.43 ID:wSnpVNpyo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713613334/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/06/29(水) 00:13:03.66 ID:lrX7beMK0


男「あれは1年くらい前か?部活の合宿で学校の宿舎に泊まった時の事だ」

男「その日は台風が接近してたから大雨でさ。涼しかったんだけど、俺は雨音で目が覚めたんだよ」

男「眠気も覚めてたし、部屋に居るのもなんだから宿舎のエントランスに下りてソファーに座ってたんだ」

男「非常灯だけで薄暗くて、音は壁越しの叩きつけるような雨音だけ」

男「俺はぼーっと壁の時計を眺めてたんだけど、突然備え付けの公衆電話が鳴ったんだ」

男「不思議に思いながらも恐る恐る電話に出ると女の子の声がしてさ……」
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/06/29(水) 00:15:23.11 ID:lrX7beMK0




女『わたくし、メリーさんと申しますの。今、校門に居ますわ…』



4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/06/29(水) 00:16:43.05 ID:lrX7beMK0



友「ちょっとまて、メリーさんの話は有名だけど、なんでそんな口調なんだよ」

男「知るかよ。育ちが良いメリーさんだったんだろ。」

友「育ちが良いったっていくらなんでもおかしいだろ!」

男「いいから黙って聞けよ。つづけるぞ」
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/06/29(水) 00:20:30.93 ID:lrX7beMK0


男「俺は怖い半面、今のお前同じで『おかしい』と感じて無視した」

男「そしたら10分後くらいにまた電話が鳴ったんだ」

男「話に聞く通りだとしたら近づいてきてるはずだ…そう思った俺は宿舎の入り口を見た」

男「ガラスの向こうには誰もいない」

男「言い忘れたけど、家の学校は宿舎は校門から見て、校庭を横断しなきゃいけないんだ」

男「少し待ったけど電話は鳴り続けてて、俺は恐る恐る出る決心をした」
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/06/29(水) 00:22:58.70 ID:lrX7beMK0





女『わたくし、メリーさんと申しますの。今、校門に居ますわ…』


男「同じ事を言われて拍子抜けだったから俺は思わず笑っちまったんだ」

男「すると電話先の女の子の声が震えてさ」

男「こう怒鳴るったんだよ」
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/06/29(水) 00:24:43.15 ID:lrX7beMK0





女『貴方ね。わたくしが校門前にいると言うのにどうして迎えに来てくださいませんの!』

女『それどころか笑っているなんて信じられませんわ!もう私から行くから結構です!』

女『あと、わたくしの電話にはすぐに出なさい!』
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/06/29(水) 00:26:59.98 ID:lrX7beMK0



友「まて、やっぱりおかしいだろ」

友「なんでメリーさんが迎えに来るの待ってるんだよ。しかも怒ってるし」

男「俺が聞きたいっての。こっちだって血は抜かれたくないから迎えになんか行きたくない」

男「まぁこの話はもう少し続くんだから聞いてろって」

友「本当にこれは百物語なのか?……」
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/06/29(水) 00:30:23.20 ID:lrX7beMK0


男「メリーさんに怒られた後、やっぱり少し怖くなったんだ」

男「話の通りならメリーさんに会うと血を抜かれるわけだから当たり前だな」

男「それで俺は部屋にかけ戻ると、自分の竹刀を手に取ったんだ」

男「ちなみに、俺の所属してた部活は剣道部な」

男「そのあたりで、遠くで電話の鳴る音が聞こえてきたんだ」

男「またメリーさんなのか、と思いつつ俺は無視することにして自分の布団に座った」
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/29(水) 00:35:05.79 ID:lrX7beMK0

男「しばらくすると電話の音が止んだんだ」

男「俺はほっとしたんだけど、それもつかの間でさ。鳴ってるんだよ…俺の携帯が」

男「番号は非通知。俺は非通知は着信不可にしてたはずなのになぜか呼び出された」

男「不気味になって恐る恐る出てみるとさ。やっぱり彼女なんだよ」
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/29(水) 00:40:06.00 ID:lrX7beMK0





女『わたくし、メリーさんと申しますの。今、校庭に居ますわ…』

女『わたくしの電話にはすぐ出るように…と言いましたわよね?』

女『でも、もう今後は携帯にかけるから良いですわ。これならすぐに出てくださいますわよね?』

男『はぁ、とりあえずアンタ誰ですか?』

女『だ・か・ら、メリーさんですわ。話くらい聞いたことが…きゃ!』

 『バチャ……ツーツーツー』
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/29(水) 00:42:06.29 ID:lrX7beMK0




男「おそらく転んだんだろうな。転倒する音の後電話が切れた」

友「メリーさんはお嬢な上にドジッ子か。むしろ可愛いな」

男「まぁそれは認めるが…その後の話だ」
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/29(水) 00:46:53.01 ID:lrX7beMK0


男「メリーさんからの電話が切れた後、俺はまたエントランスに戻ったんだ」

男「エントランスならある程度広いし、最悪部屋に逃げられるからな」

男「でもその後はしばらく電話はならなかった」

男「流石に眠くなってきて、気がついたら俺はソファーに眠っていた」

男「2時間くらいたってからか?急に携帯が鳴ったんだ。流石に跳ね起きたね」

男「番号ははやり非通知、片手に竹刀をきつく握って電話に出た」
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/29(水) 00:48:45.21 ID:lrX7beMK0





女『わたくし、メリーさんと申しますの。今、校門に居ますわ。』

男『さっきの電話じゃ校庭じゃ無かったか?』

女『しょ、所用でいったん家に帰ったんですのよ!』

女『間違っても転んだわけじゃないから勘違いしないでくださいまし!』
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/29(水) 00:53:11.26 ID:lrX7beMK0


男「どうやら家に帰ってたらしい。時間は3時ごろの話だ」

男「眠気も飛んじゃったし、自販機でジュースを買うと次の電話を待ったんだ」

男「相変わらず外は雨で、締め切ってるはずなのに強い雨音の他に風の音まで聞こえてきた」

男「台風がいよいよ直撃かな…そんなことを考えてると電話が鳴った」

男「またかと呆れる反面、慣れてきてちょっと楽しんでる自分が居て今度はすぐに電話に出た」
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/29(水) 00:55:06.10 ID:lrX7beMK0





女『わたくし、メリーさんと申しますの。今、校庭に居ますわ…』

男『外は強風みたいだけど大丈夫?』

女『大丈夫ですわ。必ずそちらに行きますので寝ないで…きゃっ!』

女『傘が飛ばされてしまいましたわ……』
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/29(水) 01:03:06.40 ID:lrX7beMK0

男「そこで電話が切れた」

男「俺は外の様子が気になって扉を少し開けてみたんだ」

男「宿舎の入り口には外灯があるけど、校庭は真っ暗で誰もいるようには見えなかった」

男「風は思ってたよりも強くて雨も想像してた以上でさ、こんな中来るんじゃ大変だよなとしみじみ考えたのを覚えてる」

男「その時俺は気がついたんだ。入口の鍵を閉めちゃえば良いってことにな。」

男「宿舎の入り口の鍵を閉めると俺も部屋に戻ることにした。」
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) [sage]:2011/06/29(水) 01:05:10.46 ID:c6Nm3ogPo
支援
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/29(水) 01:07:32.31 ID:lrX7beMK0

男「部屋に戻って持ち込んだ携帯ゲームをしてたんだけど。遠くから聞こえるんだ」

―――ドン、ドン、ドン―――

男「みんな寝てるからイヤホンしてゲームしたのにその音だけははっきり聞こえた」

男「安心だと思ってゲームをしてたもんだから余計に焦ってさ。とりあえず携帯を見たんだ」

男「着信…あり」
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/06/29(水) 01:07:39.21 ID:ReE4661y0
一話目から可愛すぎるww
超期待
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/29(水) 01:09:28.00 ID:lrX7beMK0





女『わたくし、メリーさんと申しますわ。今、宿舎の前に居ますの…』

女『わたくしが行くと言ってるのに鍵を閉めるなんて…酷いですのね』

女『でも、この程度じゃ意味ありませんわよ?』

『ガチャン――キィィ―――』

女『くしゅん…』
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/29(水) 01:13:53.91 ID:lrX7beMK0




友「あー、傘が飛ばされて体が冷えちゃったんだな」

男「みたいなだな。というか、幽霊も風邪ひくんだな。俺もこの時初めて知ったよ」

友「なんだろう。怪談話なのに微妙に暖かい気持ちになるのは…」

男「怖がってやれよ」

友「無理だな」
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/29(水) 01:21:49.17 ID:lrX7beMK0


男「俺は怖くなって、みんなを起こそうかと思った」

男「でも流石に幽霊が怖いから助けてなんて言えないだろ?」

男「だから瞑想して気持ちを落ちつけたんだ」

男「天清浄、地清浄、六根清浄…」

男「すると画期的なことを思い浮かんだ。携帯の電源を切れば良い」
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/29(水) 01:25:33.53 ID:lrX7beMK0

男「相手が幽霊でも、科学の摂理なら…そう思うやすぐに携帯の電源を切った」

男「ついでに電池パックも抜いておこう」

男「俺は携帯を手元に、電池パックは部屋にある小さな金庫の中に入れてロックをかけた」

―――『嗚呼、ふーくしゅうはつみがゆえーに…』―――

男「携帯が鳴った。しかもマナーモードが解除されてだ。思わずすぐに電話を取った」
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/29(水) 01:28:34.86 ID:lrX7beMK0





女『わたくし、メリーさんと申しますわ。今、エントランスに居ますの…』

女『電源を切っても無駄ですわ。ところでお尋ねしたいんですけど…どちらの部屋にいらっしゃいますの?』

男『さ、3階の一番奥の部屋だよ』

女『わかりましたわ。すぐに行きますわ…』
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/29(水) 01:33:43.17 ID:lrX7beMK0


男「俺はとっさの機転で嘘を教えた。ちなみに俺が居た部屋は1階の3番目の部屋だ」

男「ちなみに両隣は部活が部屋を分けて寝てる」

男「とりあえずマナーモードにするために再び携帯の電源を入れて、マナーモードにすると俺は部屋の入口にイスを置いた」

男「もちろん部屋には鍵をかけてある。開けたとたんに竹刀で倒してやろうと考えたんだ」

男「座って待つと、ようやく電話が鳴った」
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/29(水) 01:34:56.58 ID:lrX7beMK0





女『わた…くし、メリー…ぐすっ、さんと申します…わ。ぐすっ。今廊下に…ふぇぇぇん』




28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/29(水) 01:36:55.25 ID:lrX7beMK0




友「おい、メリーさん泣いてるじゃねーか。一体何を言ったんだ?」

男「宿舎は部室棟を兼ねててさ、3階の奥は理科準備室なんだよ」

友「理科準備室って言うと…あれか?」

男「あれだ。ホルマリン漬けのカエルとか、人体模型や白骨模型があるところだ」

友「鍵は?」

男「掛かってたけど、開けたんだろ?」

友「鬼だな」
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/29(水) 01:41:54.35 ID:lrX7beMK0





女『人間の死体や白骨が……ぐすっ、それにカエルやヘビが…えぐっ…』

男『わかったから今日はもう帰れよ?な?』

女『そういうわけには…いきませんわ……それに、騙しましたわね?』

女『改めてお尋ねしますわ。今はどちらですの?』

男『………』

女『そう、答えてはくれませんのね。じゃあ私が言いますわ。1階の3番目の部屋…ですわね?』
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/29(水) 01:44:30.15 ID:lrX7beMK0

男「まさか泣くとは思わなかったけど、くだらないいたずらをしたのは失敗だった」

男「大人しく逃げればよかったんだな。でも他の連中を見捨てるわけにもいかなかったしな」

男「俺は言い当てられて焦っているのを気取られないように冷静を装って聞き返した」
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/29(水) 01:46:04.75 ID:lrX7beMK0





男『どうしてその部屋だと思うんだ?また何か罠かもしれないぞ?』

女『どうしてその部屋なのか…簡単な答えですわ』



女『守衛室の帳簿に書いてありましたもの』

男『』
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/29(水) 01:49:20.05 ID:lrX7beMK0

男「俺がボー然としてる間に電話は切れた」

男「いよいよ覚悟を決めて立ち上がると竹刀を握ってかまえた」

男「足音が聞こえる。扉の前でとまる。ドアノブがひねられる…鍵で開かない」

男「携帯が鳴ってたけど無視した。どうせ彼女からだし油断はできないからだ」

男「案の定携帯が止んでドアノブが捻られた」

ガチャン――キィィ―――
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/06/29(水) 01:49:34.69 ID:C6AetHX60
かわいすぎるwwwwwwwwww
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/29(水) 01:50:13.42 ID:lrX7beMK0





女『わたくし、メリー…』
男『メーーーーーン!!!!!!!!!!!!』
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/29(水) 01:55:08.36 ID:lrX7beMK0

―――バチン!!!!――ドタッ――

男「思い切り振りおろした竹刀の手ごたえと、竹刀で叩いた打撃音が聞こえた」

男「今思えば部屋の連中がこれだけの音で起きなかったのもびっくりだけどな」

男「とにかく手ごたえがあった。でも開いたドアの向こうには誰もいなかったんだ」

男「驚いて廊下に出てみるとそこには―――」
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) :2011/06/29(水) 02:00:00.35 ID:VK/rZ9oOo
C
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/29(水) 02:07:45.75 ID:lrX7beMK0




友「どうせスイカの破片でも転がってたんだろ?」

男「いや、スイカのがまだマシだった」

友「じゃあ人体模型か?」

男「それはホラーだけど違うな」

友「まぁいいから結末を言えよ」
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/29(水) 02:12:58.94 ID:lrX7beMK0





男「廊下にさ…女の子が倒れてたんだ」




39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/29(水) 02:16:08.49 ID:lrX7beMK0

男「女の子はすぐに目を覚ましたから、俺はすぐさま聞いたんだ」



男『君は誰?』

女『だーかーらー、メリーさんですわ。貴方頭大丈夫ですの?いきなり殴りつけてくるし…』

男『いやそれはき…メリーさんが先にしてきたことで…』

女『言い訳なんて聞きたくありませんわ……くしゅん』
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/29(水) 02:23:03.92 ID:lrX7beMK0




男「結論から言うとさ、メリーさんはその後風呂に入って、着替えて帰った」

友「は?何しに来たんだ?」

男「よくわからんけど、不機嫌そうに『帰る』って言われたよ」

友「お前何かしただろ?」

男「覚えは無いけど、着替えを貸せと言うから俺の私服を脱衣所に持って行ったら出くわしたくらいか…?」

友「どう考えてもそれだな」
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/06/29(水) 02:25:41.75 ID:lrX7beMK0

友「というか、メリーさんが乙女過ぎるだろ」

男「俺に言われても困るな。まぁとにかくこれで終わりだ」


第1話『幽霊のメリーさんがこんなに可愛いわけがない』了
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/06/29(水) 03:01:08.81 ID:u8jHuuTIO
こんな夜中に好物に出会えるとはな
C
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/06/29(水) 03:05:14.60 ID:wFVJkvVoo
これが100も続くのか……期待

その内メリーさんも登場してくるのか?wwwwww
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/29(水) 09:11:53.78 ID:omrPuhWDO
乙!一日一話でこんな話が百話続くのかw
二話も楽しみだ、色んな意味で
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/06/29(水) 16:13:45.42 ID:C6AetHX60
これはとてもいいものを見つけてしまったかもしれない
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/29(水) 19:00:08.33 ID:Qu1d8+n10
可愛いしおもしろいし最高だった
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2011/06/29(水) 19:02:12.67 ID:Wnx4Dv7E0
これはなかなかほんわかできるSSを見つけてしまったな
とりまブクマしとくかな
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/29(水) 22:53:45.54 ID:JC5VhKSxo
メリーたんかわゆすなあ
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/30(木) 00:03:36.19 ID:Q0sy6okW0


友「じゃあ俺の番か…何が良いかな」

男「まぁあんまり気張らず、体験談とか聞いた話とかでもいいんだぞ?」

友「わかってるよ。少し待ってくれ…話をまとめるから」

・・・

・・



友「よし、始めるぞ」
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/30(木) 00:07:04.98 ID:Q0sy6okW0


友「あれは半年くらい前かな」

友「俺の住んでる街でこんな噂が流行ってたんだ」

友「曰く、夜な夜な徘徊する赤いドレスの女性が居る」

友「曰く、女性は顔を大きなマスクで隠している」

友「曰く、マスクの下は大きく裂けた口がある」

友「そう、口裂け女の噂だったんだ」
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/30(木) 00:10:48.38 ID:Q0sy6okW0

友「今さら何を馬鹿な…そんな風に俺も思ってたんだけど」

友「その目撃翌例は絶える事が無いどころか行方不明者まで出てきたんだ」

友「まぁ、夜に出歩かなければ良いわけだから気にしなければよかったんだけど」

友「つい怖いもの見たさでさ、その正体を確かめようとしたんだ」

友「夜の街は暗かった。いつもならもっと明るいはずなのに、噂の影響で店じまいが速まってたんだな」
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/30(木) 00:15:17.97 ID:Q0sy6okW0

友「目撃情報を昼間の内に集めて、地図にメモしておいたんだが」

友「歩けど歩けど誰とも出会わなかった」

友「そのくせ、意識が過敏なのか誰かにつけられてるような感じがするんだよな」

友「何度振り返った事やら…」

友「とにかく、その日は目撃情報をもとに街の中を大凡歩いたけど見つからなかったんだ」
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/30(木) 00:22:04.34 ID:Q0sy6okW0

友「二日目、前日と同じルートで歩きまわると巡回してた警察に会った」

友「当然追い返されたわけで、俺は帰ったふりをしてまた街を歩いたんだ」

友「今改めて思い出すとあの警察もおかしいな。噂があるのにひとりで自転車での巡回だぞ?」

友「しかもマスクしてたしな。男性だったけどさ」

友「その日も誰かに見られてる気配がずっとしてたけど、やっぱり誰にも会わずに帰宅することになった」
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/30(木) 00:24:57.79 ID:Q0sy6okW0




男「おいおい、まさかこのまま噂だけでおしまい…とか言わないだろうな」

友「流石にそれはねーよ。ついでに言うとお前のメリーさんほどぶっ飛んでも無い」

男「ぶっとんでる必要はないけどな。まぁとりあえずその先は?」

友「自分で中断したくせに…じゃあ続き、3日目の話だ」
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/30(木) 00:29:13.74 ID:Q0sy6okW0


友「3日目。俺はやはり街に出た。ここまで来るとちょっとした意地だよな」

友「相変わらず人を見る事は無く、その日に限っては車とすらすれ違わなかった」

友「しばらくするとさ、街灯の下に人影が見えた」

友「俺は通行人のようにさりげなく近寄ったんだけど、すると彼女が話しかけてきた」
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/30(木) 00:29:54.62 ID:Q0sy6okW0





女「貴方、私の事を探してたでしょ?」

女「私…きれい?」
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/30(木) 00:37:50.27 ID:Q0sy6okW0


友「赤いドレスに黒い髪で大きなマスク。さらに定番の質問と来た」

友「彼女が間違いなく噂の口裂け女だと確信した俺は深呼吸一つしてこう言ったんだ」


友『マスクをしてたんじゃわかりませんよ』
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/30(木) 00:42:05.01 ID:Q0sy6okW0

友「彼女はその答えを聞いてマスクを外すと、大きな口でニヤリと笑ってもう一度聞くんだ

友「『私…きれい?』ってな」

友「噂が本物だったのを喜べばいいのか、命の危機に嘆けばいいのか…たぶん俺はそうとうテンパッてたんだと思う」

友「つい言っちまったんだよ」

友「『いや、その顔で綺麗はないだろう』ってな」
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/30(木) 00:47:41.39 ID:Q0sy6okW0




男「いやいやいや、お前何を言ってるんだ」

友「自分でも何言ってるかよくわからなかったよ」

友「当たり前だけど、彼女は激怒して包丁を取り出すと俺に突きつけてきた」

男「むしろなんでお前それで生きてられるんだ?」

友「そこは俺の機転だよ。まぁ今から覚えてる限りで話した内容を説明する」
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/30(木) 00:50:37.24 ID:Q0sy6okW0




女『お前も同じ顔にしてやる!』

友『ちょっとまて、だって事実だろう。あんただって俺の立場なら同じ事を思ったはずだ』

女『だからって、物には言い方ってものがあるでしょ!』

友『流石に言い過ぎたとは思うけど、だからって危害を加えちゃダメだろ』

女『私だけこんな顔なのは納得いかないもん!』

友『もん!…じゃない。とにかく言い過ぎたのは謝るから包丁は下せ』
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/30(木) 01:03:40.71 ID:Q0sy6okW0





友『そもそも、なんでこんなことしてるんだ?』

女『だから納得いかないから』

友『そんな理由で殺されてたまるかっての』

女『殺さないって、ちょっとだけ口が大きくなるだけだよ』

友『なにが、ちょっとだっての…逆に言うとなんて言われたかったんだ?』

女『もちろん、綺麗だよって言って欲しかったかな。それを貴方は……』グチグチ
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/30(木) 01:12:48.56 ID:Q0sy6okW0





友『わかったわかった、それは悪かったよ。ごめんな』

友『でもだな、自分と同じ姿に相手を変えたところで問題は解決しないぞ』

女『解決しないのはわかってるけど悔しいじゃん』

女『生まれつきこんな顔で、好きな人が出来ても気味悪がられるだけなんてさ』

友『つまり、綺麗になりたいんだな?』

女『うん……』
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/30(木) 01:23:26.74 ID:Q0sy6okW0




男「お前は妖怪をナンパしてるのか?」

友「ナンパとかいうな。正直破れかぶれで必死だったんだぞ」

友「いやでも、話してみると意外と普通な人だった」

男「少し病んでる気がするけどな」

友「それはそれだ。つづけるぞ」
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/30(木) 01:33:18.89 ID:Q0sy6okW0





友『俺の家は美容整形の医者なんだけど整形してみない?』

女『え?それはどういう…』

友『だから、その口がコンプレックスなんだったら小さくしてみないかってこと』

女『そうじゃなくて、そんなことしたら私が口裂け女じゃなくなっちゃうじゃん』

友『』
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/30(木) 01:37:08.36 ID:Q0sy6okW0





友『今さらそこは重要なのか?』

女『むー、とっても重要な事だよ。まったくわかって無いんだから』

友『妖怪の事情なんてわかりたくないっての』

女『人種差別はよくないぞー』ブーブー

友『こいつマジでうぜぇ……』ボソッ

女『ん?何か言ったかな?口が大きくなりたい?』

友『わかったわかったから、包丁を持つんじゃない』
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/30(木) 01:42:47.06 ID:Q0sy6okW0





友『でもだな、二つは選べないんだし片方を選んで納得しないとだめだぞ』

女『だよねー。わかっちゃいるんだけど…なかなか踏み切れなくてさ』

女『………』

友『まぁ重要な事ならすぐに返事を返さなくてもいいんじゃないか?』

女『………決めた。私、整形してみるよ』

友『ずいぶんあっさりだな』

女『そろそろ決断しとかないと、年齢的にもイケメンがゲットできなそうだし』

友『存在意義がイケメンに負けた瞬間である…』
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/30(木) 01:53:08.16 ID:Q0sy6okW0




友「というわけで彼女は整形して、本当に美女になりましたって話だ」

男「ちなみに、行方不明者ってのはどうなったんだ?」

友「彼女とは関係なくただの家出だったそうだ」

男「なんだそりゃ?で、彼女のその後は?」

友「っと、メールだ……しかも件の彼女からだな」

男「なんだって?」
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/30(木) 01:54:21.41 ID:Q0sy6okW0





女『合コンなう。イケメンばかりなんだけどお持ち帰りできるかな?』




69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/06/30(木) 02:00:19.52 ID:Q0sy6okW0
友「だそうだ」

男「口裂け女って…なんなんだろうな?」



第2話『妖怪の口裂け女が合コンに行くわけがない』了
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2011/06/30(木) 02:14:13.39 ID:rauu2hl20
とんでもない良スレに出会ってしまったようだ
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/06/30(木) 02:20:54.45 ID:nxFjch/L0
やはりいいなここ
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/06/30(木) 02:22:44.34 ID:oqhn4bcAO
俺は運が良い
こんなSSを見つけることができた
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/06/30(木) 07:19:36.12 ID:gzkj4vOx0
乙!
次も楽しみだ
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/30(木) 09:00:50.23 ID:HhgIJsh1o
一日の楽しみが朝終わった
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/06/30(木) 12:32:09.77 ID:nryM39yAO
久々の良スレ
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/30(木) 20:52:32.33 ID:igz4yhI+0
ニ話目もおもしろかった
乙!
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2011/06/30(木) 22:44:54.24 ID:2n4i3Gjg0
今回もGJ!
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/01(金) 00:00:25.17 ID:C52A6h770

男「交代だな。さて、何にするかな」

友「お前はそんなに心霊体験してるのか?」

男「いやほとんど聞いた話だよ。流石に50は無いけどな」

友「俺もそんなに持ちネタないぞ?」

男「まぁ最悪、誰か呼んでみれば良いんじゃないか?」

友「深夜に呼び出す理由が百物語じゃなぁ…」

男「とりあえず始めるぞ」
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/01(金) 00:03:33.52 ID:C52A6h770


男「これは聞いた話だから、最初のより臨場感が伝えられるかはわからないけどな…」

男「俺の知り合いが昔、墓場に肝試しに行った時の話だそうだ」

男「そいつは割かし臆病だけど気の良い奴でさ」

男「脅かす役を頼まれて、断れなくて引き受けちゃったそうだ」

男「で、死に装束を羽織って墓石の間に隠れてたんだと」

男「いわゆる、通行人を脅かすだけの簡単なお仕事だ」
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/01(金) 00:08:21.67 ID:C52A6h770

男「その時の肝試しのメンバーはそいつの知り合いの知り合い…」

男「つまりそいつとは他人で初対面の奴も何人かいたらしい」

男「肝試し開始の合図があって、そいつは特に墓場の奥の方で脅かすのを担当してたそうなんだ」

男「グループで歩いてる連中を大声出して飛び出て脅かす。相手は悲鳴を上げて驚く」

男「で、しばらくそれを続けてたんだが、ついに待っても誰も来なくなったんだ」

男「もしかして終わったのか…と思って彼は墓場の最奥にあるお札を確認しに行った」
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/01(金) 00:11:29.69 ID:C52A6h770

男「ちなみに、その時の肝試しのルールは地図に沿って歩いて、最奥のお札を取ってくることだったらしい」

男「脅かす役をやってる奴らは、地図で示したルート上ならどこに隠れて脅かしてもよかったんだとさ」

男「で、お札を見たところあと1枚だけ残ってたんだ。つまり1グループが辿りつけてない」

男「最初に言ったけどそいつは気の良い奴で、まだ残ってるならって事でまた隠れたんだ」

男「しばらくまつと、ルートを白い服の女の人が歩いてきたそうだ」

男「見覚えは無かったけど、初対面の人もいたからそのいずれだろうと思い脅かすためにそいつは飛び出した」
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/01(金) 00:13:43.56 ID:C52A6h770





彼『うーらーめーしーやー!!』

女『きゃぁぁぁあああああ!!!お化け―!!!!!悪霊退散悪霊退散……』
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/01(金) 00:14:39.23 ID:C52A6h770





女『悪霊退散あk……あ、私も幽霊だっけ?』

男『へ?』
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/01(金) 00:16:42.74 ID:C52A6h770
一レス前の「男⇒彼」誤爆スマソ




彼『ぎゃぁぁああああ!お化けー!!!』

彼『すいませんでしたー!!』バタバタ

女『ちょっと、心細いんだから置いてかないでよー!!』ドタドタ
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/01(金) 00:20:43.87 ID:C52A6h770


男「彼は逃げ回った。無駄に広い墓地の中をむやみに走って思い切り迷ったそうだ」

男「渡されてる地図はルートの周辺しか書いてないし、暗くなってはどの墓石も同じに見えるからな」

男「懐中電灯は途中で落としたし携帯は電波も無い。」

男「息を整えて冷静になると来た道を帰ろうと振り返ったんだが…するとそこにはな」
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/07/01(金) 00:21:13.95 ID:p0xmReXAO
足があるのか
その幽霊
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/01(金) 00:21:38.64 ID:C52A6h770





女『やっほー。君は足が速いね♪』




88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/01(金) 00:27:15.56 ID:C52A6h770

男「彼はあまりの驚きに腰を抜かして座りこんでしまったらしい」

男「肝試ししてて、本物の幽霊が出てきたんだ、そりゃ誰だって罰が当たったと思うよな」

男「彼もやっぱりそうで、わなわな震えてその幽霊を見上げた」

男「死に装束に濡れた長い髪に額烏帽子、典型的にな幽霊だったそうだ。」
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/01(金) 00:29:17.06 ID:C52A6h770





彼『ど、どうか命だけは…』

女『へ?いや命なんていらないんだけど…』

彼『じゃあ僕は祟られるんですか?』

女『祟ってどうするのよ。ちなみに呪いもしないわよ?』

彼『じゃ、じゃあなんで追いかけてきたんですか?』

女『お酒に付き合ってもらおうと思って♪』

彼『は?』
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/01(金) 00:31:27.55 ID:C52A6h770




友「は?」

男「それは彼の言った台詞だ」

友「いやいやいや、飲み仲間探してる幽霊ってなんだよ」

男「俺が知るか。とにかくそういう人だったらしい」

男「それに、イケメンと付き合いたいからって整形する口裂け女に会った奴が何を言う」

友「た、たしかに…じゃあ続けてくれ」
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/01(金) 00:36:32.51 ID:C52A6h770





彼『お、お酒ですか?未成年なんですが…』

女『細かいこと言わないの』

彼『お酒も持ってないですし』

女『私は持ってるよ。お供え物だけどね』ニヒヒッ

彼『お供え物はとっちゃだめでしょう』

女『私へのお供え物だからいいのよ。さぁ付き合いなさい』
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/01(金) 00:38:41.92 ID:C52A6h770





彼『いや、友達が待ってるので……』

女『付き合わないと呪うよ?』

彼『お付き合いさせていただきます』

女『素直でよろしい。そういう子は好きだよー』

女『じゃあコップと、やっぱり供え物だけど肴も出して…かんぱーい!』カチン

彼『か、かんぱーい…』カチン
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/01(金) 00:44:46.09 ID:C52A6h770





女『いやー、やっぱり一緒に飲む相手が居ると違うね』グイグイ

女『そう言えば、君は何してたの?』

彼『肝試しで脅かし役をしてましたけど』チビチビ

女『それであんなに人が居たんだね』

女『それにしても君はなかなか迫力あるよー。良い幽霊になれるかもわからんね♪』

彼『いや、それは嬉しくないですけど…』
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/01(金) 00:51:15.38 ID:C52A6h770





彼『というか、飲みすぎじゃないですか?』

女『そう?そんな事無いって』

彼『僕がコップ1杯空ける間に、1升瓶が空になる勢いじゃないですか』

女『それは君が飲むのが遅すぎるだけだって』

彼『お酒は苦手なもんで』

女『いまどきの若い者はだめだねー。若年層の飲酒離れを見た気がしたよ』
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/01(金) 00:54:49.42 ID:C52A6h770





女『っと、もう空か…じゃあ次取ってこようかなっ……』フラッ

彼『あぶない……大丈夫ですか?』ギュ

女『あらら、カッコ悪いとこ見せちゃったね。ありがと』

彼『飲み過ぎなんですよ…それにしても、幽霊って触れるんですね』

女『あたりまえじゃないか。ちなみに足もあるよ』

彼『本当だ。それで、今度は何をしてるんですか?』カアッ

女『何って膝枕』ニヒヒッ
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/01(金) 01:01:02.29 ID:C52A6h770





女『いやー、幽霊だから夜にしか出てこれないんだけどさ』

女『最近は肝試しする人も減って人と会う機会がなかなか無いのよ』

女『そこに君たちでしょ?でもいざ出てきたら誰もいないし』

女『しまいには私が驚かさせられるしね』

彼『す、すいません』

女『いいのいいの、その分一緒にお酒が飲めてるわけだし♪』
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/01(金) 01:01:05.24 ID:LQbXI1RY0
どこの墓場行ったらこの幽霊に会える?
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/01(金) 01:05:59.76 ID:C52A6h770





女『こんな幽霊は変だと思う?』

彼『いえ、幽霊も元は人間だと思えば別に』カアァ

女『君は優しいなぁ…ん?顔が赤いけど……』

女『いま、私の胸見てたでしょ?』ニヤニヤ

彼『見てません。顔が赤いのはお酒を飲んだからで……』グイッ

女『あはは、君は可愛いなぁ』

彼『幽霊に弄ばれる僕って……』ズーン
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/01(金) 01:11:55.57 ID:C52A6h770





女『さてと……それじゃあそろそろ解放してあげようかしら』スッ

彼『え?』

女『何寂しいそうな顔してるのよ。友達が待ってるんでしょ?』

彼『そうですけど…』

女『出口まで案内してあげるから、行くわよ?』

彼『でも、今はもう少し幽霊さんと一緒に居たいかな…なんて』

女『』
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/01(金) 01:19:35.56 ID:C52A6h770

女『何言ってるんだか…でも、素直にうれしいよ』

女『じゃあもう少しお酒飲もっか♪』

彼『はい、お付き合いします』

女『でーも、あんまり幽霊と関わり持ちすぎると憑かれちゃうぞ』

彼『お札があるので大丈夫ですよ』スッ

女『紙切れで何ができるんだか』ビリビリ

彼『』
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/01(金) 01:25:42.76 ID:C52A6h770





女『お札は紙切れだし、念仏はただの言葉』

女『もっと現実を見ないとだめだぞー?』

彼『幽霊は信じるのに…ですか?』

女『幽霊はいるし、占いは時と場合によって信じる。ね?』ニヤッ

彼『ず、ずいぶんと都合が良いですね』

女『世の中これくらいじゃなきゃね♪』
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/01(金) 01:27:19.18 ID:C52A6h770




男「というわけで、彼は女の幽霊と一晩中酒の付き合いをしていたそうだ」

友「ただの惚気話にしか聞こえなかった気がするんだが気のせいか?」

男「大凡あってる。ちなみにその後彼は、よくその墓にお参りに行くそうだ」

友「リア充爆発しろ」
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/01(金) 01:33:30.78 ID:C52A6h770

男「ちなみに、最近の悩みは彼女の写真を撮りたいんだけど、めったに写らない事だそうだ」

友「聞いてない」

男「じゃあ別の補足だが、一緒に肝試しをしてた連中の話だ」

友「そうだ、一晩中相手をしてたんじゃ帰ったんじゃないか?」

男「うむ、途中で帰ってしまってたらしい、ちなみにお札が1枚余ったのは枚数の数え間違いだそうだ」

友「薄情な連中だな。人が足りない事に気がつかなかったのか?」

男「気がつかなかったんだろうな」
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/07/01(金) 01:38:01.73 ID:C52A6h770

男「とにかく俺の話はこれで終わりだ」

友「お疲れ様。寂しがり屋の幽霊なんているんだな」

男「あるいは、人にとりつく幽霊はほとんどが寂しいだけだったりしてな」



第3話『墓場の幽霊に恋をするわけがない』了
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/01(金) 01:47:39.01 ID:RXAbLKGOo
おつん!おやすみ!
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/01(金) 01:50:14.94 ID:LQbXI1RY0
今日も良スレだった
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/07/01(金) 01:52:04.47 ID:p0xmReXAO
百物語的にいくとまだ九十六話も楽しめるわけだ
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/01(金) 08:00:19.43 ID:3c76SabDO
今日で3話だからあと97話じゃね?

今日も面白かった、乙!
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/01(金) 12:36:56.62 ID:OPbaWaKDO
百物語は100を達成すると本当に怪奇にあうって事で、99でやめるのは間違いじゃないよ

もちろん、100を達成しても間違いじゃない
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/01(金) 16:19:13.08 ID:3c76SabDO
思い出した、ぬ〜べ〜の「青行灯」みたいなものか


呼ぼう、≫1ならやってくれるはずだ
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/01(金) 21:01:56.33 ID:tMgoe25fo
乙〜
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/01(金) 23:30:25.64 ID:LQbXI1RY0
待っとくか
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/02(土) 00:00:15.46 ID:556qS9iL0

友「寂しがり屋の幽霊と言えば、こんな話を聞いた事がある」

男「お?何かあるのか?」

友「といっても後輩なんだけどな」

友「後輩は1つ下で、まぁ背伸びだろうが学校でタバコとか吸ってたような奴だ」

男「未成年の喫煙は推奨できないけどな」

友「まぁそこは置いておこう。で、そんな奴が学校で体験した話だ」
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/02(土) 00:03:28.58 ID:556qS9iL0


友「そいつはその日の最後の授業を受ける気が無くてサボろうと決めたらしい」

友「といっても平日の学校だからな。下手気に屋上や外に出れば目立ってしまう」

友「そこで彼が選んだのは普段人が来ないような場所にあるトイレだ」

友「うちの学校は校舎と作業棟が渡り廊下でつながってるんだが…」

友「作業棟の3階一番奥のトイレは基本的に使われてないんだ。彼はそこに目をつけた」
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/02(土) 00:08:13.72 ID:556qS9iL0

友「トイレ付近の教室は文化部の部室ばかりだから授業中ならまず人はいないしな」

友「前の休み時間の内に移動すると彼は授業開始を待った」

友「チャイムが鳴って授業が開始すると窓の下からは元気のいい掛け声が聞こえてきたそうだ」

友「ちなみに、その窓は校庭側に面してるから体育でもやってたんだろうな」

友「そうそう、そう言えばなぜかそのトイレは個室は広めでかつ洋式なんだそうだ」

友「まさにサボるにはうってつけだな。彼はさっそく便器のふたをしめてタバコを吸い始めた」
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/02(土) 00:13:49.43 ID:556qS9iL0

友「そうしてどれくらい経っただろうな」

友「タバコと携帯で時間をつぶし続けてると、不意にトイレのドアが開く音がしたそうだ」

友「当然彼は焦った。幸いその時は火のついたたばこは無かったから息を殺したんだ」

友「足音がなり、扉の前でとまる。当然個室の鍵はかけてあったから扉は空けられないはずだけどな」

―――コンコン……コンコン―――

友「ノックの音が鳴る。彼は返事をした。」
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/02(土) 00:15:36.77 ID:556qS9iL0





彼『入ってるよ』

―――コンコン……コンコン―――

彼『入ってるって言ってるだろ。となり使えよ』

―――コンコン……コンコン……ガチャ―――

彼『ちょっと待ってr……え?』
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/02(土) 00:16:22.57 ID:556qS9iL0





女『お兄ちゃん。暇なら私と遊ぼうよ』




119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/02(土) 00:21:21.66 ID:556qS9iL0


友「そこに居たのは小学生くらいの女の子だったそうだ」

友「閉めてた鍵が急に空いたんだからそれは驚くよな」

友「だが同時に教師じゃなかった事に安心もしたらしい」

友「そこそこに厳しい学校だからな。タバコがばれたらその場で退学くらいは確定するし」

友「とりあえず、彼はその女の子の誘いを断ることにしたそうだ」
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/02(土) 00:23:55.74 ID:556qS9iL0





彼『何言ってるんだお前?勝手に入ってくるんじゃねぇよ』

彼『しかも入ってくるなり遊ぼうって頭大丈夫か?』ケラケラ

女『そういう事言うんだ?いいのかなー…』

彼『何がだよ?』

女『タバコ吸ってたでしょ?私知ってるもん』

彼『それがどうした?これで証拠は無いよな?』ジャー
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/02(土) 00:27:55.86 ID:556qS9iL0





彼『わかったらさっさと帰りな。ここは小学校じゃないし』ケラケラ

彼『ついでに言うとここは男子トイレだ。お前いちおう女だろ?』

彼『どうやって鍵開けたのか知らないけど、とりあえず出てけよ』

女『うー……』ウルウル

彼『なんだ泣くのか?すぐにそうやって喚くから子供は嫌いなんだよ』

女『………でやる』ボソッ
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/02(土) 00:30:07.29 ID:556qS9iL0





彼『は?』

女『助けを呼んでやる……』

彼『助けって、別に俺は何も知てないのに助けも何もないだろ』

女『本当にそう思ってる?』

彼『何が言いたいんだよ……』イラッ

女『男子トイレの個室に女の子と二人きり……先生はどっちを信じるかな?』

彼『』
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/02(土) 00:33:01.89 ID:556qS9iL0




男「腹黒少女って恐ろしいな」

友「まったくだ。下手すると怪奇ものよりはるかに怖い」

男「ちなみに彼女が幽霊なのか?」

友「そうだよ。それは続きで話す」

男「そうだな、ネタバレはよくない」

友「そういうこと。じゃあ続けるぞ」
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/02(土) 00:35:34.80 ID:556qS9iL0





女『外じゃ体育みたいだね。私声には自信あるんだ』スゥ…

彼『ま、まてよ。わかった遊んでやるから』

女『やった♪』どやっ

彼『こんな脅迫初めてだ…で、名前は?』

女『花子だけど?トイレの花子さん』

彼『いまどきの花子さんは脅迫するのか…斬新だ』
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/02(土) 00:36:04.74 ID:YiLq4UEr0
退学はないわwwwwwwww
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/02(土) 00:39:37.21 ID:556qS9iL0





彼『それじゃいよいよ女子トイレじゃないか?』

女『だってここの女子トイレ使う人いないもん』

彼『で、男子トイレに俺がいたから来たと?』

女『………』コクリ

彼『授業があるから戻っても良いか?』

女『………』スゥ…

彼『ごめんなさい』
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/02(土) 00:42:14.05 ID:q18Xy1oKo
>>125 上位私立だと割とよくある
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/02(土) 00:44:20.67 ID:556qS9iL0





彼『それで、何して遊ぶんだよ?』

女『首絞めごっk…』
彼『よしあっちむいてホイしよう』

女『むぅ……』コクリ

彼『ジャンケンポン!』

彼『あっちむいてホイ!』ミギ

女『ホイ!』ミギ
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/02(土) 00:46:28.73 ID:556qS9iL0





彼『まずは俺の勝ちだな』

女『三本勝負…ジャンケンポン!』

彼『あっちむいてホイ!』ウエ

女『ホイ!』ウエ

彼『俺の勝ちで決まりだな』

女『三本先取だもん』ジトー
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/02(土) 00:48:51.89 ID:556qS9iL0





彼『わかったわかった。ジャンケンポン』

女『あっちむいてホイ!』ウエ

彼『ホイ!』シタ

女『……』ミギ、シタ、シタ、ウエ、ヒダリ

彼『……』シタ、ミギ、ウエ、ヒダリ、ウエ

彼『じゃんけんで勝つだけじゃ勝てないぞ?』
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/02(土) 00:51:19.92 ID:556qS9iL0





彼『ようやく俺のターンだな。ホイ』ヒダリ

女『……』ヒダリ

彼『はい、俺の勝ち。今度こそ終わりだぞ』

女『うー、ずーるーいー』ジタバタ

彼『狭いんだから暴れるなっての』

女『もう一回する!』ビシッ
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/02(土) 00:53:04.95 ID:556qS9iL0





彼『じゃあ俺が勝ったら帰るぞ』

女『負けないもん』

彼『はいはい、じゃあジャンケンポン』

女『あっちむいてホイ』ウエ

彼『ホイ』ウエ

彼『………あれ?』
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/02(土) 00:55:09.22 ID:556qS9iL0





女『私の勝ちー』どやっ

彼『はいはい、よかったな』ハァ

女『えへへー』ニコニコ

彼『楽しかったか?』

女『楽しかったよ。次は何するの?』ワクワク

彼『お前本当に幽霊か?』
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/02(土) 00:58:25.92 ID:556qS9iL0




男「花子さんってこんなにフランクなのか?」

友「そういう子もいるってことだろう

男「そうは言ってもな。ただの小学生じゃないか」

友「いやいや、そうは言っても鍵くらいは自在に開け閉めできるらしいぞ」

男「能力がしょうも無さ過ぎるだろ」
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/02(土) 01:00:48.29 ID:556qS9iL0

友「そうは言っても後輩的には怖かったらしいぞ?」

男「それは怖いの意味がだいぶ違うな」

友「まぁいいや、あと少しだけ続きがあるんだけどな」

男「そりゃ中断して悪いな。つづけてくれ」
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/02(土) 01:03:03.66 ID:556qS9iL0





―――キーンコーンカーンコーン―――

彼『授業終わったから俺は帰るぞ』

女『もっと遊びたいー』ジタバタ

彼『知らん』

女『付き合ってくれたいいことしてあげるんだけど…』オシツケ

彼『いや、そんな洗濯板を押しつけられても困るし』

女『………』シクシク
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/02(土) 01:05:07.84 ID:556qS9iL0





女『これから大きくなるから良いんだもん』プイッ

彼『幽霊が成長するのかよ?』

女『するもん!……たぶん』

彼『たぶんかよ。とりあえず俺は帰るぞ』

女『また遊びに来てよ。お兄ちゃん』

彼『やだね』

―――ガチャ……バタン―――
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/02(土) 01:07:04.83 ID:556qS9iL0





女『………』シクシク

彼『あー…わかったわかった』

―――ガチャ…―――

彼『いない?本当に幽霊だったんだな』

彼『まぁいいや、帰るか』
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/02(土) 01:09:38.98 ID:556qS9iL0




友「というわけで、トイレで花子さんと遊んだって話だ」

男「あっちむいてホイで楽しめるのはすごいと思うが…」

友「ちなみにその後後輩は花子さんを見かけてないそうだ」

男「最後に突っぱねたからな」

友「ちょっと悪い事をしたと反省してるらしい」

男「一応反省はしてるのか」
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/02(土) 01:13:09.39 ID:556qS9iL0

男「とりあえず、花子さんは男子トイレにも現れるって覚えておくよ」

友「このロリコンどもめ!」


第4話『トイレの花子さんがこんなに子供なわけがない』了
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/07/02(土) 01:15:19.43 ID:4El677jC0
次回も期待してるよ!乙!
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/02(土) 01:35:29.34 ID:YiLq4UEr0
今回も面白かった!
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/02(土) 08:04:19.07 ID:hNjOctsE0
あれ?これ100話目終わったらこいつらのとこに幽霊が来るんじゃね?
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/07/02(土) 10:00:16.11 ID:15gosypz0
>>110はそれを期待してるんだろうな

ところで、「青行灯」って何?
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/07/02(土) 11:11:12.03 ID:LCMKGKqio
百物語全部終わったときに出るとされてる妖怪
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/07/02(土) 15:56:12.22 ID:kE75xT7+o
ドSの異形に「ほんとにこんなのがいるとおもったの?ばかなの?」と罵られながら干からびるまで搾り取られる>>110を幻視、ご褒美でした
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/02(土) 17:03:41.73 ID:PwBTLxxSo
100話目どころか最初の話が体験談だからなぁ
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/07/02(土) 19:37:30.26 ID:15gosypz0
>>145
ありがとう

最初どころか、ここまで全部誰かの体験談だww
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/07/02(土) 22:12:42.54 ID:51QkkA0AO
ここまでくると長崎屋の若だんなみたいのもいるに違いない
150 :NIPPER (岐阜人) ◆/DBeSKvRY6 :2011/07/02(土) 22:51:45.26 ID:DPi9vjRK0
これはいいものを(ry

とりあえず、ageとこ
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2011/07/02(土) 23:23:33.89 ID:ilvrAsBAO
>>150にお願いがあるんだ。決して強制ではないし、文句でもないから怒らないで欲しい。 期待してしまうからageないで欲しいんだ。
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/07/02(土) 23:46:31.49 ID:OJNP4WrE0
なんという良スレ
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 00:00:16.70 ID:VEXA3HmD0

男「さて、次は誰の話をしようか」

友「誰でも良いけど、そんなにたくさん体験談を知ってるのか?」

男「現実は小説より奇なり…気がつかないだけで誰だって一つくらいは心霊体験してもんだよ」

男「お前だって結構体験談とか経験談知ってるだろ?」

友「まぁ、確かにそうだな。百物語してるくらいだしな」

男「そういうこと。じゃあ始めるぞ」

男「」
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 00:03:08.05 ID:VEXA3HmD0

友「どうした?」

男「俺の実家が田舎の農家って話はしたっけ?」

友「いや、初耳だ。そうだったのか?」

男「そっか、じゃあ先に前提から話しておくんだが」

男「これは実家に戻ってるときに実家の近所に住んでる高校生から聞いた話だ」

友「了解した」
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 00:11:31.72 ID:VEXA3HmD0


男「その人は俺達と同い年なんだが、中学生の時に体験した話しなんだとさ」

男「季節は夏で、夏休みに畑仕事の手伝いをして一人で歩いて帰る途中の出来事だそうだ」

男「仕事もひと段落して、その日の夕食で家で食べる分の野菜を籠に入れて背負っていたらしい」

男「炎天下の中で仕事してたうえに、夕方になっても引かない暑さで流石に彼もばててしまったんだ」

男「幸いにも夕食まではまだ時間があるし、少し休憩して行こう」

男「そう考えた彼は、土手に座って川を眺める事にした」
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 00:18:37.39 ID:VEXA3HmD0


男「彼は休憩の暇つぶしに石切りをすることにしたんだ」

男「彼は石切りがとても上手くてこちら側から投げて、川を渡らせきることができた」

男「その日もいつもの調子で石を投げたんだが、どうにもうまくいかない」

男「そうなると意地になって気がついたら周りは薄暗くなってた」

男「もう集めた石も無くなってきたしこれを投げたら帰ろう。」

男「思い切り回転をかけて彼は石を水面に投げた」
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 00:25:25.96 ID:VEXA3HmD0


男「するとどうだろう。今までうまくいかなかったのに、今度はうまく行ったそうだ」

―――パシャ、パシャ、パシャ―――

男「4回、5回、6回と水を切った石はついに対岸…というか、対岸の土手の根元に群生した葦の中に消えて、変わりに声が聞こえたそうだ」

―――パシャ、パシャ、ガッ―――

男「痛い…石を投げたのは誰だ……ってな」
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 00:40:53.73 ID:VEXA3HmD0


男「当然、彼は驚いて声をかけた」

男「しかし返事は帰ってこない」

男「何度か繰り返して声をかけたんだがやっぱり結果は同じ」

男「そのうちに気のせいだったと結論付けると帰るために野菜籠を背負ったんだけど…その時だった」

男「川の水面が激しく揺れて何かが彼の前に飛び出してきたそうだ」
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 00:45:08.32 ID:VEXA3HmD0


男「飛び出してきた何かはよく見ると人らしく」

男「黒い短い髪にTシャツにハーフパンツ。同い年くらいに見えたって言ってたから中学生くらいの背格好だったんだな」

男「ただ、水から飛び出してきたはずなのに濡れてる様子は一つも無かった」

男「それに田舎は家同士が仲良いからな。同い年で知らない顔なんてあんまり無いもんなんだ」

男「そこで彼は驚きながらも訪ねた。」

男「お前は誰だ……ってな」
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 00:46:39.72 ID:VEXA3HmD0





?『ボクは河童だよ。先に言っとくけど女だからな?』




161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 00:50:06.06 ID:VEXA3HmD0





彼『河童?』

女『そう、河童。話にくらいは聞いてるでしょ?』

彼『あれって想像上の生物じゃないの?』

女『現にボクがここにいるのに?』

彼『そうだけど…納得できないね』ジトー

女『じゃあどうしたら信じてくれるのさ』ムスッ
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 00:53:51.45 ID:VEXA3HmD0





彼『それにどう見ても男な気がするんだけど…』

女『女だもん!この顔を指してどこが男なのさ』

彼『どこって…体型とか?』

女『う、そんなことないもん……』シュン…

女『それより!いきなり石なんか投げたら危ないじゃないか』

女『女の子の顔に傷をつけたらいけないんだぞ』
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 00:56:09.13 ID:VEXA3HmD0





彼『あ、それは…ごめん』

女『それだけ?お詫びのしるしとかあっても良いと思うんだけどなぁー』

彼『え?あ、キュウリでよけれああるけど食べる?』

女『いらない』

女『私キュウリ嫌いだし』

彼『』
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 00:58:30.74 ID:VEXA3HmD0





彼『河童…だよね?』

女『河童だけどキュウリは嫌い。誰だって好き嫌いくらいあるでしょ?』

彼『じゃあ何が好きなの?』

女『カップメン』どやっ

彼『』ポカーン
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 01:05:09.37 ID:VEXA3HmD0





女『その様子だと持ってなさそうだね』

女『じゃあ今回は許してあげるけど、もう石は投げないでよね』

彼『ちょ、ちょっと待った』

女『何?まだボクに何かよう?』

彼『いや、本当に河童なのかなぁと思って』

女『じゃあ疑問に答えてあげるから質問していいよ』
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 01:09:59.57 ID:VEXA3HmD0





彼『頭に皿は無いの?』

女『皿?あぁ、あれは皿じゃなくて男の河童は年をとるとハゲるから』

彼『昔お父さんが河童を捕まえた事があるって言ってたけど』

女『その捕まった人が頭に皿乗っけてたの?じゃあたぶんそれ河太郎さんだわ』

女『昔、人間の街に育毛剤を買いに行って捕まった事があるって言ってたしね』

彼『本当にハゲなんだ…』
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 01:12:59.90 ID:VEXA3HmD0





女『他には?』

彼『背中に甲羅をしょってるって聞いたんだけど』

女『あれは鎧みたいなものだよ。だいたいそんなの背負ってたら泳ぎにくいし』

彼『水かきは?』

女『水かきはあるよ。ほら』スッ

女『これで信じてくれた?』
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 01:15:27.47 ID:VEXA3HmD0





彼『最後に一つだけ…』

女『まだ何かあるの?』

彼『頭の皿?…が割れたら死んじゃうってほんと?』

女『………』ハァ

女『頭をたたき割られたら誰だって死んじゃうでしょ。』

女『なんなら君の頭を割ってみようか?』

男『で、ですよねー。死んじゃうよねー』
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 01:18:30.56 ID:VEXA3HmD0
上のレスの最後の行、男⇒彼。再び誤字スマソ




友「どこから突っ込めばいい?」

男「どこでも?」

友「河童の伝承って大概が間違ってるってことか?」

男「彼女の言い分が事実なら間違えだな」

男「誰だって好みくらいはあるしな。冷静になれば当たり前の事だ」

友「そうだな、じゃあ伝わってる事の大半はその河太郎さんの嗜好だった可能性があるわけだ」
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 01:20:49.48 ID:VEXA3HmD0




男「そういうこと、先に捕まったのが彼女だったら…」

男「河童の好物はカップメンとして伝承が残ったのかもな」

友「それはそれでシュールな光景だけどな」

男「言ったろう。現実は小説より奇なりって」

友「奇抜すぎるな……」

男「そうだな。じゃあ続きだ」
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 01:27:50.50 ID:VEXA3HmD0





女『他には何かある?』

彼『えーと…特にないかな』

女『そっか。それじゃボクは帰るよ』

彼『うん、さよなら』

女『またね。今度会うときはカップメン頂戴ね』

彼『用意しておくよ』
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 01:30:55.70 ID:VEXA3HmD0





女『やったね。他にもチップスとかチョコレートでも喜ぶよ』

男『お菓子好きなんだね。野菜とかは?』

女『お菓子は好きだけど野菜は嫌いー』

男『子供っぽい……』ボソッ

女『子供って言うなー。』プクー

男『あはは、じゃあバイバイ』
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 01:33:56.87 ID:VEXA3HmD0





女『うん、バイバイ人間。また遊ぼうね』

男『遊ぶのは良いんだけど…何しよう』

男『河童は相撲するんだっけ?』

女『女の子は相撲なんてしないもん』プイッ

男『あらら、じゃあ今度会ったときに決めよう』

女『うん!まってるぞ』チャプン
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 01:37:34.24 ID:VEXA3HmD0
またやってしまった…>>172-173は男⇒彼で





彼『うーん、河童ってよこわからないな』

彼『聞いてたのとは全然違うみたいだし…』

彼『女の子には見えなかったけどなぁ…服装も男っぽかったし』

彼『とりあえず急いで帰らなきゃ』スタスタスタ
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 01:41:02.53 ID:VEXA3HmD0




男「というわけで、彼は河童と会ったのでした。めでたしめでたし」

友「うぅむ、さっきから幽霊とか妖怪の認識を改めっぱなしなんだが…」

男「いかに伝わってる事が適当かがわかるってことさ」

友「そうは言ってもな。流石にボクっ子な河童ってどうなんだ?」

男「俺はそういう風に聞いたから話してるだけさ」

友「まぁ確かに。面白いから良いんだけどな」
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 01:42:58.25 ID:VEXA3HmD0


友「その後の河童はどうなったかわかるか?」

男「残念ながら最近は彼と連絡取ってないからな」

友「それは残念だ」

男「あるいは、試しに川に向かって石を投げてみるか?」

友「悪くは無いが、河太郎さんが出てきたら吹くから辞めておこう」

男「ははは、確かに誰得な状態にもほどがあるな」
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 01:48:47.01 ID:VEXA3HmD0


男「彼女に河童巻きを教えたらどうなるんだろうな」

友「偏見反対って怒るかも、知れないな」


第5話『河童の好物がこんなに偏食なわけがない』了
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2011/07/03(日) 01:52:17.49 ID:c+r0/YMso

おれって河太郎さんだったのか・・・
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2011/07/03(日) 02:20:12.84 ID:G2GfyCQE0
おつー!

1日の楽しみの一つです
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/07/03(日) 02:36:04.00 ID:FUkSyzGvo
乙〜
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/07/03(日) 09:47:38.08 ID:M9MuQxrS0

何気に父親も河童見てるのかよww
182 :NIPPER (岐阜人) ◆/DBeSKvRY6 [sage]:2011/07/03(日) 19:13:26.40 ID:998rslap0

楽しみに読ませてもらってるよ〜

>>151
勝手にあげてしまってってすまない。
一緒にこのSSを楽しもう
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 22:12:34.64 ID:VEXA3HmD0

友「しかし暑いな」

男「そうだな。節電で冷房をつけてないしな」

友「日本の夏は蒸し暑くて嫌になる」

男「こんな時はバイクででも走ってると涼しくて良いんだけどな」

友「そうだな。ん、バイクか……」

男「バイクがどうかしたか?」
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 22:16:18.64 ID:VEXA3HmD0

友「いや、さっきの花子さんの時の後輩から聞いた話なんだけどな」

友「正確にはそいつもまた聞きだから、信憑性はだいぶ薄いんだ」

男「まぁいいんじゃないか?それで、どんな話だ?」

友「あぁ、バイクがらみの話だからな。とある暴走族の話らしい」

男「暴走族?またいまどき珍しい」

友「だな。もはやあいつらが都市伝説みたいになってる気がする」
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 22:19:21.14 ID:VEXA3HmD0


友「とある暴走族が集会をしていた時の話だ」

友「そいつらはその県内じゃかなり有名なグループで」

友「特に走りに関しては素人とは思えないような運転技術だって話だ」

友「で、ある日の集会でそのグループのリーダーが抜けるって話になったらしい」

友「当然かなりもめたそうだ」

友「まぁ当たり前だな。後に続いて抜ける奴や、あるいは次期リーダーになると名乗り出るものもいた」
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 22:27:55.00 ID:VEXA3HmD0


友「その日の集会は荒れに荒れて収拾がつかなくなった」

友「困ったリーダーはこう言ったそうだ」

友「この中で一番技量の高いものを次期リーダーにする…ってな」

友「すると4人が名乗り出た。それぞれそのグループを代表するような連中だ」

友「他の連中は誰が勝っても文句なしって雰囲気だったらしく意見は出なかった」

友「結局その日はコースとルールを決めて解散した」
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 22:39:40.30 ID:VEXA3HmD0

友「さて、いざ当日になってみると開場はかなりの人数が集まったらしい」

友「グループ内はもちろん、他のグループの連中も観戦してきたっていうからかなり注目されてたんだな」

友「開始の時間になると1人目が合図と同時に走り出して行く」

友「2人目、3人目も同じだったんだが…4人目の時だけは違った」

友「4人目が走り出した直後、ギャラリーの一人が後を追うように走りだしたんだ」
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 22:52:32.04 ID:VEXA3HmD0

友「走り出したのが誰なのか特定しようとしたが何分人が多すぎた」

友「とりあえずゴールすればわかるってことで、見守る流れになったんだが…」

友「予想外にも4番目の男より先にゴールしたのはその乱入者だった」

友「開場は騒然となったが、一向にその乱入者の素生が判らない」

友「そこで誰かがそいつに直接話しかけたそうだ」

友「ところが、その乱入者は何もしゃべらないどころか…首から上が無かったそうだ」
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 23:03:49.66 ID:VEXA3HmD0

友「最初は全員が、黒いフルフェイスで見えないだけだと思っていただけにちょっとしたパニックだ」

友「普段は威勢が良い暴走族も、不慮の事態には弱いんだな」

友「言い忘れてたが、ルールはタイムアタック」

友「全員の中でタイムが一番早かった人物が勝ちと言うシンプルなもので」

友「4人目どころか他の3人よりもその首なしの乱入者は速かったんだとさ」
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 23:08:47.67 ID:VEXA3HmD0

友「どうするのかと大部もめたそうだが、結局…」

友「最初に決めたルールに従う」

友「ってことで、その首なしが新たなリーダーになったそうだ」

友「もちろん、その結果によって抜けた連中も大勢いたそうなんだけどな」

友「残った連中は全員が黒いフルフェイスをかぶり、夜な夜な街を走り続け」

友「それを見た街の人は彼らを『首なしライダー』って呼んだって話だ」
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 23:12:02.20 ID:VEXA3HmD0




男「なるほど、首なしライダーが率いた暴走族ってことか?」

友「街の人から見たら、全員首がないように見えてたわけだからそうとう不気味だったんだろうな」

男「でも確かに作り話っぽいな」

友「まぁそういうなよ。一つ面白い逸話があってな」

友「グループのメンバーから、そのリーダーの首なしは頭(ヘッド)って呼ばれてたらしい」

男「頭か…リーダーって意味で使うのが一般的だけど…なるほど。それは面白いな」
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 23:16:10.13 ID:VEXA3HmD0

男「きっとそう呼び始めたのは4人目の男だろうな」

友「かもしれないな。ちなみにそのグループは今でも夏になると走り回ってるそうだ」

男「それは怖いな。見てみたくもあるけどな」


―――ブォン、ブォン、ブォン、ブォン―――

『そこのバイク集団、止まりなさい』
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 23:18:20.35 ID:VEXA3HmD0

友「案外、あすの夕刊には載ってるかもしれないぞ」

男「まさか…な」


第6話『暴走族のリーダーが幽霊なわけがない』了
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/07/03(日) 23:22:58.24 ID:VEXA3HmD0
誤解と偏見しか生まない怪談話にお付き合いいただきありがとうございます。
さて、ちょっとした連絡なのですがリアルの方でいろいろありまして今後は更新時間を深夜0時ではなく
9時〜10時くらいに変更しようかと思います。


後、今回の話のように
女の子が出てこなかったり、再現シーンがなかったり、或いは10レス程度の短い話も含めての百物語とご了承ください。
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/07/03(日) 23:59:57.03 ID:kHT28VhZ0
今までで一番怪談らしかった、少し怖かったのがまた良し。
次も期待して乙!
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/07/04(月) 01:37:21.26 ID:jVcIjHvj0
乙!
デュラララのセルティみたいな奴か
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/04(月) 09:54:08.32 ID:6F5YA7wmo
首なしといわれると
天使のような悪魔の笑顔を思い出すな
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/04(月) 14:27:32.28 ID:vwy8ZfpQ0
乙!
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/04(月) 22:38:33.81 ID:4mTVOm010

男「ところで、山登りってした事あるか?」

友「ハイキングでくらいならあるけど、登山の話か?」

男「あぁ登山の話だ」

友「残念ながら無いな。一度やってみたいんだが、なかなかな」

男「そうか、うちの学校には登山部ってのがあってな」

男「そいつらが去年の夏に山に登った時の話だ」
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/04(月) 22:43:15.69 ID:4mTVOm010


男「その日は合宿と言う事で、山に登ることになってたんだ」

男「まぁ山と言ってもそこまで大したことなくて、初心者とかもけっこう来るらしい」

男「もちろん部内にも一年…初心者はいるしな」

男「部内でそれぞれチームに別れて、チームごとに登頂を目指すって流れだったそうだ」

男「チームリーダーを中心に、3年・2年・1年が均等に別れて助け合いながら活動し」

男「部内での結束を図ろうって言う、いわば恒例行事みたいなもんだな」
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/04(月) 22:50:17.92 ID:4mTVOm010

男「当然、この話をしてくれた奴のチームにも1年はいたんだが…」

男「そいつが少し危なっかしい奴だったらしい」

男「それでも素直と言うか…言いつけは基本的に守ってたからな、登山自体は順調だった」

男「ただ、ひとつ問題だったのはその日はとにかく暑かったらしいんだ」

男「慣れてない連中は水分を過剰に取りすぎてな」

男「トイレに立つ奴が多く、予定よりもそのグループは遅れてしまったらしい」
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/04(月) 23:02:11.42 ID:4mTVOm010

男「リーダーは念の為に無線機で他のチームに連絡を取ってみると」

男「他のチームはみんなだいぶ先を進んでるってことだった」

男「そこでそのチームは少し急ぐことにした」

男「1年の全員、2年の大半はかなりばててしまってたらしいんだが…」

男「それでも何とか脱落者なく全員が登頂まで登りきったんだ」

男「ようやく合流できた…そんな思いで登頂の展望台に上ったんだが異変があった」
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/04(月) 23:04:51.42 ID:4mTVOm010

男「展望台には誰もいなかったんだ」

男「無線機で話した時は全チームと連絡がついて、さらに自分たちよりも先に進んでいると言った」

男「その山は麓からの登山道はいくつかあるが、途中で1本に合流し」

男「合流した後はずっと1本道なんだそうだ」

男「でも、途中で他のチームは一人も見かけなかった」

男「先に下りはじめたのか…そう思ったリーダーは無線機を発信したんだが…繋がらない」
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/04(月) 23:14:32.49 ID:4mTVOm010

男「と言っても山で完全に通じるわけじゃないからな」

男「まだ日も高かったし、しばらく待つことにしたんだ」

男「天気は快晴、その山は高くない割に展望台からの見通しがすごく良いからな」

男「疲れてるとは言え、そういう自然の中で休憩してるとだんだんチームメンバーも元気が出てきた」

男「待っても来ないし、無線も通じないということで、リーダーは暗くなる前に下山することにした」

男「もちろん、後から来る場合に備えて先に下に戻るって旨のメッセージを残してだ」
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/04(月) 23:18:08.74 ID:4mTVOm010

男「下山の為に集合をかけて点呼を始めたが、一人足りない」

男「よくよく数えてみると、どうやらその危なっかしい1年が居ないということだった」

男「チームは二人一組であたりを捜索してみる事にしたんだが、一向に見つからない」

男「それが3年とかならまぁある程度は自力で大丈夫と言えるが、いかんせん不慣れな一年だ」

男「置いて行くわけにはいかないと、必死の捜索を続けるがついに見つからず、気がついたら霧が出てきてしまった」

男「リーダーは集合の笛を吹いた」
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/04(月) 23:23:38.92 ID:4mTVOm010

男「この話をしてくれた奴もその笛で集合しようとしたんだけどな」

男「木々の間に人影を見つけたんだ」

男「きっと1年に違いない。そう思った彼は、一緒にいた人をその場に残して呼びかけながら近寄った」

男「しかしいくら呼んでも1年はこちらに気がつかず、ついにそばに来た時には誰もいなかったんだ」

男「霧で見間違えたのだろう。そう思った彼は来た道を戻ろうと歩いた」

男「しかし、どうにも元に道に出る事が出来ない。深い霧で彼は迷ってしまったんだな」
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/04(月) 23:27:27.61 ID:4mTVOm010

男「途方に暮れていると、道の先に人影が見えた」

男「きっとさっき別れた奴が居るんだろうと思い」

男「おーい、今戻るぞ……そう叫びながら近寄ったんだ」

男「するとそこにいたのは、別れた人物じゃなく、白い浴衣を着た少女だったそうだ」

男「面くらっていると少女は彼にこう言ったんだ……彼の声でな」
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/04(月) 23:27:53.52 ID:4mTVOm010




女『おーい、今戻るぞ』



209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/04(月) 23:31:12.52 ID:4mTVOm010

彼『迷ってしまったんだけど道が判るかな?』

女『迷ってしまったんだけど道が判るかな?』

彼『あの、ふざけないでほしいな』

女『あの、ふざけないでほしいな』

彼『いい加減にしてくれないかな?』

女『いい加減にしてくれないかな?』
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/04(月) 23:35:11.64 ID:4mTVOm010


男「彼は何を言っても自分の声で反芻する少女にらちが明かないと思い、無視して先に住むことにした」

男「すると少女がようやく自分から口を開きこう言ったらしい」

男「この先は崖だから。そのまま行くと落ちるよ……ってね」

男「ばかばかしい…そう思いたいところだけど霧の山だからあり得ない話じゃない」

男「彼は深呼吸すると少女に聞いた。」

男「どうすれば戻れるのか……とね」
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/04(月) 23:38:37.28 ID:4mTVOm010




女『あたしと遊んでくれたら返してあげる』

彼『何すればいい?』

女『名前は』

彼『彼…だけど。君は?』

女『………』ジトー

彼『………!。名前は』

女『木霊。山彦って人間は呼んでる』
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/04(月) 23:41:07.15 ID:4mTVOm010

彼『それで、何すれば良い?』

女『早口』

彼『早口?』

女『赤巻紙青巻紙黄巻紙』

彼『……あか…ん?』

女『赤巻紙青巻紙黄巻紙』

彼『赤巻紙青巻紙黄巻紙』
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/04(月) 23:44:28.84 ID:4mTVOm010

女『………』ジー

男『隣の客はよく柿食う客だ』

女『隣の客はよく柿食う客だ』

女『カエルピョコピョコ、3ピョコピョコ』

男『カエルピョコピョコ、3ピョコピョコ』

女『彼は上手だね』ケラケラ

彼『山彦も上手だね』
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/04(月) 23:48:48.95 ID:4mTVOm010

彼『東京特許許可局』

女『東京特許きょきゃきょく……』

女『………』ジトー

女『東京特許きょきゃ……』

彼『東京特許許可局』

女『東京特許きょ…!……しははんだ…(舌噛んだ)』ヒリヒリ
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/04(月) 23:52:10.91 ID:4mTVOm010

女『悔しいから友達呼んでくる……』スッ

彼『繰り返すって事で会ってたみたいだけど、いつまでやればいいのかな…』

彼『俺まで置いて行かれなければ良いけど…』

女『連れてきた。リベンジ…』ヌッ

彼『来たね。リベンジ』

彼『輸出車、輸出湯、輸出酢』
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/04(月) 23:54:28.86 ID:4mTVOm010

女『輸出車、ゆしゅつしゅ…』ヒリヒリ

女友1『輸出車、輸出湯、ゆしゅしゅ…』ヒリヒリ

女友2『輸出車、輸出湯、輸出しゅ…』ショボン

彼『俺の勝ちだね』

女『彼の勝ちだね』

女『悔しいけど』
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/04(月) 23:56:38.84 ID:4mTVOm010




友「山彦って音響の反射現象じゃないのか?」

男「ところがどっこい、妖怪が居たんだろうな」

友「しかも微妙に口回らないんだな」

男「そういうわけでもないぞ?」

友「輸出車、輸出湯、輸出しゅ……」ズーン

男「な、意外と難しいだろ」
218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/04(月) 23:58:10.37 ID:4mTVOm010





友「まぁ難しいのはわかったけど…彼は口が回るんだな」

男「そうだな。かなり回る」

友「そんな特技がこんなところで役に立つなんてな」

男「どこで自分の特技が役に立つかわからないな」

友「まったくだな」

男「まぁいいや、続けよう」
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 00:01:20.65 ID:Dg0rkxMh0




彼『これで返してくれる?』

女『これで返してあげる』

女友1『輸出車、ゆしゅしゅ…』ヒリヒリ

女友2『輸出車、輸出湯、ゆしゅしゅしゅ…』ヒリヒリ

女『楽しかった。また遊ぼう』ニコリ

彼『楽しかった。また遊ぼう』
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 00:03:21.31 ID:Dg0rkxMh0

女『あっちに行けば帰れる』

彼『ありがとう。霧も晴れたみたいだし』

女『……バイバイ』フリフリ

彼『……じゃあな』フリフリ

彼『山彦ってあの「やっほー」って言うと返ってくる奴だよな』

彼『まさか人がやっていたなんて……人!?』
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 00:06:59.70 ID:Dg0rkxMh0


男「彼は疑問に思って振り返ったが、霧のない道なのに誰もいなかったそうだ」

男「そして記憶を頼りに道を戻ると、自分と一緒に捜索してた人とも合流して展望台に戻ったそうだ」

男「展望台も霧は晴れていて、戻ってみるとなんと自分のチームはもちろん…」

男「行方知れずだった1年も他のチームもいてにぎわった状況だった」

男「自分が知らない間に合流したんだろうか。そう思ったければリーダーに聞いてみた」

男「するとリーダーは、最初から全グループが居て、俺たちが一番あとだったじゃないか。と答えたらしい」
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 00:12:06.60 ID:Dg0rkxMh0

男「自分が夢を見ていただけなのだろうか…」

男「そう思った彼は展望に台に立って景色を見渡した」

男「もちろん何も無くて、霧がかかってた様子なんて一つもない」

男「言い忘れたが、その山は山彦で有名でな」

男「他の人たちはめいめいに叫んでは山彦での反射を楽しんでたそうだ」

男「そこで彼も叫んでみたそうだ。あの早口言葉をな」
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 00:15:36.66 ID:Dg0rkxMh0

男「するとどういうわけか彼の言葉だけは帰ってこなかった」

男「山彦に失敗したんだろうと他の部員は笑い、やがて下山の時間になってそれぞれのチームに別れた」

男「彼のチームは最後の出発で、他の班が居なくなるまで待っていたんだが…」

男「その時にそっと、風に乗って聞こえたんだと」
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 00:16:17.21 ID:Dg0rkxMh0




『輸出車、輸出湯、輸出酢……言えた』



225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 00:18:06.82 ID:Dg0rkxMh0




男「ってわけで、山彦…木霊の妖怪に会ったって話だ」

友「はは、それはまた面白いな」

男「だろ?一度やってみたいもんだ」

友「今度一緒に登山でもして試してみるか?」

男「悪くないな。だがその前に早口言葉を練習しないとな」

友「たしかに、それもそうだ」
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 00:22:49.17 ID:Dg0rkxMh0

男「生麦、生米、なまたみゃ……」ヒリヒリ

友「隣の壁に竹たてた……」ヒリヒリ

男「木霊と遊ぶには程遠いな…俺達」



第7話『山彦の呂律がこんなに悪いわけがない』了
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/07/05(火) 00:23:28.42 ID:x4+RTqlAO
確かに舌がもつれるわ
この早口言葉
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/05(火) 00:27:10.73 ID:ujDKJV1IO
こんな妖怪幽霊ならあってみたいわこわいい
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/05(火) 00:27:40.21 ID:ujDKJV1IO
かわいいだ間違えた
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/05(火) 00:40:10.83 ID:jLEzc1hDO
>>228
噛みまくってるが大丈夫か?wwww
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/07/05(火) 20:48:08.05 ID:1piU+Xqx0
相変わらずおもひろかった。乙!
失礼、かみまみた
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 22:19:16.50 ID:Jzf5Xu/l0

友「天邪鬼ってみた事あるか?」

男「いや、無いな。座敷童ならあるけど」

友「いや、その切り返しおかしいぞ」

男「今さら何を言ってるんだ。それで、天邪鬼がどうした?」

友「いや、そういえば昔に遭遇した事があってさ」

友「とりあえずその話をするぞ」
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 22:21:23.53 ID:Jzf5Xu/l0

友「あれはやっぱり暑い夜でな」

友「俺は涼むついでに散歩をしてたんだ」

友「知ってると思うけど、このあたりは住宅地だから街灯はあるけど何も無くてさ」

友「塀に囲まれた薄暗い道路ばかりだった」

友「ときどき猫なんかに出くわすと結構びっくりするよな」

友「まぁそんなわけでとりあえず近所の公園まで行ったんだ」
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 22:24:53.55 ID:Jzf5Xu/l0

友「近所の公園っても広さはそこそこにあってさ」

友「400mのトラックとか大きな池とかがあるんだ」

友「で、公園の中を歩いてたんだけど不意に人の声が聞こえたんだ」

友「こんな時間になんだろうと思ってそちらに歩いて行くと、ブランコで女の子が遊んでた」

友「顔は薄暗くてわからなかったけどな」

友「近くに保護者が居る様子もないし、誰かと一緒ってわけでもなく、その子は一人でブランコに座って揺れてるんだ」
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 22:28:46.93 ID:Jzf5Xu/l0


友「流石に放置するわけにもいかないし、俺は声をかける事にした」

友「近寄るとその子も俺に気がついたのかブランコを止めてこちらを見るんだ」

友「顔は…見た事ない顔だった」

友「俺はブランコの近くまで来て口を開いた」

友「こんな時間に何してるんだ?ってな」

友「すると彼女はじーっと俺を見てこういうんだ」
236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 22:31:01.69 ID:Jzf5Xu/l0




女『遊んでるんだけど?』

友『そりゃ見ればわかる。親は一緒じゃないの?』

女『一緒に居ないのは見ればわかるでしょ』

友『物騒だから帰った方が良いぞ?』

女『遊んだらちゃんと帰るよ』

友『あのな……』ハァ…
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 22:34:41.37 ID:Jzf5Xu/l0




女『混ざりたいなら、一緒に混ぜてあげてもいいよ』ブラーブラー

友『いいや、やめとくよ』

女『つまんないのっ』ブラーブラー

友『悪かったな』

友『君は家はどのへんだ?』

女『ひみつだよっ…っと………!』ピョン……ドテッ
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 22:36:47.56 ID:Jzf5Xu/l0




友『おいおい、大丈夫か?』

女『大丈夫…だもん』ジワッ

友『血が出てるぞ。水で洗うからおいで』

女『……やだっ』プイッ

友『やだじゃない、後で大変だぞ?』

女『う…ど、どうしてもって言うなら行ってあげても……』
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 22:38:48.93 ID:Jzf5Xu/l0




友『はいはい、アホ言ってるんじゃない』

女『ぷーっ…お兄ちゃんノリ悪い』ムスッ

友『生憎性分だよ。少ししみるぞ』

女『………っ!』

友『絆創膏あったかな…。ん、これで良し…』

女『………と』ボソッ
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 22:41:37.99 ID:Jzf5Xu/l0




友『ん?何か言ったか?』

女『な、なんでもない』プイッ…タッタッタッ

友『そうかい、じゃあ俺は行くけどきちんと帰るんだぞ』

女『ふんっ……勝手に帰ればいいじゃない』ブラーブラー

友『じゃあそうするよ』スタスタ

女『………』ジトー
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 22:45:19.17 ID:Jzf5Xu/l0




友『勝手に帰っていいんだろ?』

女『………』ショボン

友『わかったわかった、俺に何させたいんだ?』

女『………』パアッ

女『はっ!……別に嬉しくないけど、一緒に遊んであげても良いよ』ツーン

友『はいはい少し遊んだらちゃんと帰れよ?』
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 22:47:20.61 ID:Jzf5Xu/l0





男「お前って結構お人よしだよな?」

友「流石に子供が一人で公園に居たら心配にもなるだろ」

男「だからと言って構ってしまうあたりがすごいよ」

友「まぁお人よしなのは…そうかもしれないが」

男「まぁそれがお前の良いところでもあるんだけどな」

友「はいはい、言ってろ」
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 22:50:43.55 ID:Jzf5Xu/l0


男「それで、そのあとは何をしたんだ?」

友「基本的にはブランコだよ」

友「今思うとあれって何が楽しいんだろうな?」

男「さぁ?それを言い始めたら絶叫マシンも似たようなもんだろ」

友「そうだな。言ってもしょうがないか」

友「じゃあ続けよう」
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 22:53:12.29 ID:Jzf5Xu/l0




友『じゃ、押すぞ』ポンッ

女『ん………』ブラー

友『もう少しか?』グッ

女『………』ブラー

友『落ちないように気をつけろよ』グイッ

女『それくらいわかってるもん』ブラー
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 22:55:33.38 ID:Jzf5Xu/l0




友『どうだ?楽しいか?』

女「うん!」キャッキャ

女『はっ!……べ、別に。まぁまぁかな』プイッ

友『そうかい。もう押すのは止めるから自分で揺らせよ?』

女『ねぇ、お兄ちゃんも隣でやろうよ』

友『ブランコはもう卒業したよ』
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 22:57:14.39 ID:Jzf5Xu/l0




女『うー……』ジトー

友『わかったからそんな目で見るな。これで良いか?』ブラー

女『私と同じくらいまで揺らしてよ』

友『ったく……この年でブランコなんてな…』ブラーブラー

女『いいからやるの!』ギャーギャー

友『わかったから騒ぐんじゃない』ブラーブラー
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 22:59:09.79 ID:Jzf5Xu/l0




女『ねぇ、お兄ちゃんは楽しい?』

友『ブランコか?まぁ悪くは無いけどな……』

女『そうじゃなくて、私と遊んでて』

友『退屈はしないよ』

女『そっか……』ショボン

友『なんでそこでションボリするんだ…君は楽しいか?』
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 23:02:30.09 ID:Jzf5Xu/l0




女『たの……普通かな?』

友『そうかい。まぁなんでもいいけどな』

女『何か不満?』

友『不満は特にないな』

女『そっか。ならいい』プイッ

友『……?よくわからん子だな』
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 23:04:02.40 ID:Jzf5Xu/l0




友『さて……そろそろ帰るぞっと』ピョン…スタッ

女『もう少し遊びたい』

友『だめだ、親御さんが心配するぞ』

女『けち…』

友『俺はけちだからな』

女『つまんないのっ……』ピョン…ヨロヨロ
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 23:05:41.80 ID:Jzf5Xu/l0





女『わっ!………』ポスッ

友『おいおい、怪我は無いか?』

女『転ばないように抑えてくれたの?』ギュッ

友『ちょうどそこにいただけだよ』ナデナデ

女『……ありがと』ボソッ

友『どういたしまして』
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 23:07:43.81 ID:Jzf5Xu/l0




友『家はどこだ?送って行くよ』

女『しょうがないから送られてあげる』

友『素直じゃないな』

女『……ふんっ』ギュッ

友『ところで、裾掴まれてると歩きにくいんだが…』

女『だったら手を出しなさいよ』スッ
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 23:10:46.58 ID:Jzf5Xu/l0




友『……ほらっ』スッ

女『うん』ギュッ

友『………』スタスタ

女『………』スタスタ

女『あ、ここで大丈夫』スッ

友『そっか、じゃあ気をつけてな』
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 23:13:22.48 ID:Jzf5Xu/l0




女『あ、お兄ちゃん』

友『なんだ?忘れものか?』

女『遊んでくれてありがとう。楽しかったよ』ニコッ

友『……!どういたしまして』

女『………』カアッ

友『どうした?』
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 23:16:46.34 ID:Jzf5Xu/l0




女『な、なんでもないもん』

女『また気が向いたら遊んであげるから』

友『遊んで欲しいの間違いじゃなくて?』

女『私が遊んであげるんだもん!』タッタッタッ

友『おい?……行っちゃったか』

友『なんだかよくわからん子だな。遊んで欲しかったのかね』
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 23:20:02.28 ID:Jzf5Xu/l0




友『まぁいいや。涼むのもほどほどにして今日は帰ろう』

友『そういえば…名前聞き忘れたな。どこの子だったんだろう』

友『まぁいいか、またあったら聞けばいいし』

友『それにしてもあんなに小さい子が夜間で外出って…親は何してるんだか』

友『気にしてもしょうがないな。帰ろう』
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 23:20:30.05 ID:Jzf5Xu/l0




女『また遊んでね。お兄ちゃん』




257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 23:23:01.76 ID:Jzf5Xu/l0




友「と言う事があった」

男「で、その子が天邪鬼だと?」

友「その後も夜に何度か出歩いたんだが、やっぱりその子は公園にいてな」

友「聞いてみたら天邪鬼って名乗ったからたぶんそうなんじゃないかな?」

男「ふーん、なるほどねぇ」

友「最近はめっきりあってないけどね」
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 23:24:55.22 ID:Jzf5Xu/l0


男「案外、今日あたりその公園に行けば会えるかもな」

友「たしかに。あるいは毎日居るのかもしれないし」

男「お前の事待ってるんじゃないのか?」

友「でも、遊んでるときはよくつまんないって言われるけどな」

男「なんだろう。最近そういうのを聞いた事がある気がする」

友「天邪鬼を?」
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/07/05(火) 23:28:14.42 ID:Jzf5Xu/l0


男「思い出した。最近ちょっと話題だったじゃないか」

友「話題だったか?で、なんて言うんだ?」

男「ツンデレ」

友「………」


第8話『天邪鬼がツンデレなわけがない』了
260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/07/05(火) 23:35:53.43 ID:uiGJbsHF0
乙!
新解釈・ツンデレ天邪鬼……最高じゃないか
ぬら孫の設定と同じぐらい驚いたww

座敷童子の話も楽しみです
261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/05(火) 23:54:41.61 ID:GdzuCsuIO
かわいい話しだ
262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/07/06(水) 00:27:03.69 ID:olPom4wk0
なんかこいつら充実した生活送っててうらめしい
乙!
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国) [sage]:2011/07/06(水) 05:00:39.70 ID:3ov0dNOAo
乙!
たまにはロリコンもいいよね!
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/07/06(水) 11:19:06.50 ID:icUYk+VAO
>>263
まだ後九十二話もあるのでバックベアードさんはお戻りください
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/06(水) 22:13:46.53 ID:0OsyGXiO0

友「それで?座敷童子だっけ?」

男「あぁ、まぁ単純にいたずらされただけと言えばそうなんだけどな」

友「ところで座敷童子について大凡でいいから教えてもらえるか?」

男「俺も詳しくは知らないけどな」

男「一般的に言われてるのは…」

男「子供の姿をしており家の中に現れる」
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/06(水) 22:15:51.77 ID:0OsyGXiO0

男「あとは家の中でいたずらしたりするって事くらいか?」

男「出会うと幸運があるって話も聞くけどな」

友「なるほど。じゃあ逆にラッキーだったじゃないか」

男「そのすぐ後にメリーさんに出くわしたけどな」

友「それは幸運……なのか?」

男「そうとは思えないけどな……」ハァ
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 22:17:54.16 ID:oPwBdek1o
ktkr
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/06(水) 22:18:46.14 ID:0OsyGXiO0


男「その日は一人で家にいたんだけどな」

男「2階にある自分の部屋で本を読んでたんだ」

男「その日も確か雨が降っててな」

男「雨と言っても土砂降りじゃないから、音で言うならサーサーってところか?」

男「聞こえるのは雨音と時計の針くらいで、のんびりした休日のはずだった」

男「だが、突然1階のリビングから物音が聞こえたんだ」
269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/06(水) 22:22:29.90 ID:0OsyGXiO0


男「最初は聞き間違えかと思ったんだが、確かにドタドタと跳ねまわるような音がする」

男「泥棒か?そう思った俺は竹刀を手にすると足音をたてないようにゆっくりと部屋を出た」

男「昼間だったけど外は雨だから薄暗くてな」

男「誰もいないはずのリビングから明りが洩れているのに気がつくと、ゆっくり階段を下りた」

男「1歩1歩、微かに軋んだ階段の音がえらく大きく聞こえたのを覚えてる」

男「相変わらずリビングからは物音が聞こえる。きっと泥棒が物色しているのだろう」
270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/06(水) 22:25:13.59 ID:0OsyGXiO0


男「俺はそっとリビングのドアに手をかけると、一気に開け放って部屋に入った」

男「するとどうしたことか、部屋は荒れている様子は無かった」

男「それどころか、部屋の中には誰もいない」

男「部屋を開ける直前までは物音が確かにしていたのに、入ったとたんに止むなんてのは考えられない」

男「泥棒が隠れる暇があったとも思えなかったが、今度は俺が部屋の中を物色した」

男「もちろん、人を探してるだけだけどな」
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/06(水) 22:33:39.46 ID:0OsyGXiO0


男「すると今度はバタン!とドアが閉まる音が聞こえた」

男「開け放っておいたリビングのドアが閉まった音だ」

男「裏を書かれた気分で俺は後を追いかけた。しかし、廊下には誰もいない」

男「何となく遊ばれてる気がして少しいらだったんだが…」

男「とりあえず1階を隅々まで探してみる事にしたんだ」

男「改めてリビングから、キッチン、客間、トイレに風呂場ってな」
272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/06(水) 22:38:45.89 ID:0OsyGXiO0


男「家の中でも奥にある小さな物置を調べていると、今度は階段を駆け上がる音が聞こえた」

男「ため息をついて俺も追いかける。今度は足音を忍ばせる必要なんてないからな。駆け上がったよ」

男「階段から登って手前の部屋から一つずつ調べていく」

男「やがて自分の部屋を開けると彼はいや、彼女か?はそこにいた」

男「短い髪に白いシャツと黒いパンツ。俺がさっきまでそうしていたように、イスに座って本を読んでた」

男「俺が入って来たのに気がつくと顔をあげてこう言う」
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/06(水) 22:41:55.97 ID:0OsyGXiO0




彼『やぁ、難しい本を読んでるんだな』

男『そりゃどうも。で、君は誰だ?』

彼『ん?座敷童子さ』

男『とてもそうは見えないんだけどな』

彼『じゃ逆に聞くけど、座敷童子はどんな格好をしてるのさ』

男『おかっぱ頭に半纏かなじゃないか?』
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/06(水) 22:46:42.56 ID:0OsyGXiO0




彼『チッチッチッ…それ何年前の情報?』

男『知るかよ。で、何してるんだ?泥棒か?』

彼『まったく、いまどきオシャレの一つも出来ないようじゃモテないぞ?』ハァ

彼『で、泥棒かだって?だから言ってるじゃん?座敷童子だよ』ケラケラ

男『到底信じられないんだけどな』ギリギリ

彼『まぁ落ち着けよ。竹刀なんか突きつけられたんじゃビビッて話もできねぇ』OK?
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/06(水) 22:51:32.52 ID:0OsyGXiO0


男『………OK』スッ

彼『ありがとよ。で、だ……本題だけどどうしたら信じてもらえるんだ?』

男『知るかよ。何かないのか?』

彼『じゃあ、こんなのはどうだ?』パチンッ

―――ドタンッドタンッ―――

彼『さっきお前が聞いてた音だよ。こんなのもいける』パチンッ

―――ドタドタドタ―――
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/06(水) 22:53:02.04 ID:0OsyGXiO0

彼『誰かが階段を駆け上ったな』

彼『じゃあ、最後にこれだ』パチンッ

―――バタン!―――

男『……!ドアがかってに?』

彼『これで信じてくれた?』ケラケラ

男『いいや、トリックって可能性があるだろ?』
277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/06(水) 22:55:48.69 ID:0OsyGXiO0


彼『やれやれ。疑り深いな…じゃあこれで良いか?』スッ…スタスタ

男『何をする気だ?』

彼『壁のすり抜けマジックさ』スルー

男『……!人間じゃないのは本当っぽいな』

彼『いい加減信じただろ?』

男『とりあえずはな…』
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/06(水) 23:01:52.31 ID:0OsyGXiO0


男『で?なんの用なんだ?』スワリ

彼『いや雨で暇だから遊ぼうかと思ってさ』スワリ

男『あのなぁ…いきなり現れて遊ぼうと言われてもな』

彼『まぁそう固いこと言うなよ。もっとノリよく生きなきゃな』

男『………で、何するんだ?』

彼『OK、じゃあEカードしよう』スッ
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/06(水) 23:04:16.99 ID:0OsyGXiO0


男『ルールしってるのか?』

彼『今そこで読んだ』ユビサシ

男『却下だ』

彼『じゃあチェスにしよう』ガバッ

男『座敷童子なのに将棋じゃないんだな』

彼『将棋よりチェスのがカッコ良さそうじゃんか』ケラケラ
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/06(水) 23:06:29.59 ID:0OsyGXiO0


―――対局中―――



彼『今の待った』

男『待ったなしだぞ?』

彼『うー…』トンッ

男『チェックメイトだ』トンッ
281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/06(水) 23:08:40.18 ID:0OsyGXiO0


彼『もう一戦だ』

―――再戦中―――


彼『くそっ…勝てねぇな。もう一戦』

男『諦めろよ。諦めの悪い男はモテないぞ?』ニヤッ

彼『じゃ、チェスは負けで良いよ』

彼『将棋で勝負だ』ガバッ

彼『結局将棋か。まぁいいぞ』
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/06(水) 23:09:47.54 ID:0OsyGXiO0


―――対局中―――


男『今の待った』

彼『待ったなしなんだろ?』

男『くそっ…逃げの一手か』パチッ

彼『甘いな。王手だよ』パチッ
283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/06(水) 23:13:18.26 ID:0OsyGXiO0


男『なんだ、将棋は強いんじゃないか』

彼『そりゃ、座敷童子だしな』

男『これじゃ勝負にならないな』

彼『別の遊びにするか?』

男『もう何も無いぞ?』

彼『じゃあ将棋を鍛えてやるよ』
284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/06(水) 23:14:54.75 ID:0OsyGXiO0


男『しょうがない、お願いする』

彼『うむ苦しゅうないぞ』

男『調子に乗るんじゃない』パシッ

彼『イテッ。乗りの悪い奴だな…』

男『………』パチッパチッ

彼『………』パチッパチッ
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/06(水) 23:17:15.01 ID:0OsyGXiO0


―――ゴーンゴーンゴーン―――

彼『もうこんな時間か?』

男『そろそろ家の奴らが返ってくる時間だな』

彼『そりゃ残念。じゃあ帰る事にするよ』

男『そうか…気をつけてな』

彼『あはは、別に外に出るわけじゃねぇよ。人間じゃあるまいし』

男『そりゃそうか?まぁどうでもいいけど』
286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/06(水) 23:19:05.83 ID:0OsyGXiO0


彼『じゃあな。楽しかったぞ』

男『今度出てくるときは普通に出てこい。暇なら遊んでやるから』

彼『じゃあ、それまでに将棋練習しときなよ』

男『お前もチェスを少しは練習しとけ』

彼『なかなか手厳しいな。じゃ、またな』スッ

男『うん、また』
287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/06(水) 23:22:04.58 ID:0OsyGXiO0


男『あれが座敷童子ねぇ…意味わからん男だったな』

男『まぁ楽しかったと言えば楽しかったけど…』

彼『本当か?そりゃ嬉しいな』ヌッ

男『!!……地面から頭を出すんじゃない。かなり驚いたぞ』

彼『驚かせたかったからな。ちなみにあたしは女だよ』

彼『じゃ、今度こそまたな』ケラケラケラ
288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/06(水) 23:23:34.02 ID:0OsyGXiO0




男「なんことがあった」

友「その後彼…いや、彼女とはあったのか?」

男「たまに対局しにくるよ。決まって雨の日だけどね」

友「女だったのか?」

男「どうやらそうらしい…」

友「お前…生身の彼女はいない癖に、幽霊とか妖怪の女の子には持てるんだな」
289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/06(水) 23:25:41.38 ID:0OsyGXiO0

男「まったく嬉しくないんだけどな」

友「まぁお前の特性みたいなもんだろう」ケラケラ

男「座敷童子にかぎって言うなら外見も男っぽいしな」

友「外見なんて些細な事だろう」

男「何を言ってるんだか…」

友「まったくだ。何を言ってるんだかな」
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/06(水) 23:27:29.85 ID:0OsyGXiO0

友「ちなみに、将棋の対戦成績は?」

男「……64戦64敗」ガクッ

友「今度俺と将棋してみるか?」


第9話『座敷童子がこんなに現代っ子なわけがない』了
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:37:03.21 ID:t0H6tZgIO
いやーよかったわ
292 :NIPPER (岐阜人) ◆/DBeSKvRY6 [sage]:2011/07/07(木) 00:04:31.22 ID:1rCX9yJi0
乙です。

座敷童最高www
293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/07/07(木) 07:00:24.21 ID:uwjRfSc80
乙!

メリーさんと座敷童子が鉢合わせしたらどうなるんだろう
294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/07(木) 22:42:51.84 ID:Fq51+pt/0

友「まぁ将棋の話は置いといて…」

友「お前は落語とかは好きか?」

男「ん?いきなりだな。興味はあるけど見た事は無い」

友「そうか。じゃあ少しは楽しい話になるかもな」

男「よくわからんが楽しみにしておくよ」

友「まぁ落語はあんまり関係ないけどな。じゃあ始めるぞ」
295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/07(木) 22:45:53.36 ID:Fq51+pt/0

友「これは親戚から聞いた話だ」

友「その親戚があった話かどうかはわからないけどな」

友「まぁ休憩がてら気楽に聞いてくれれば良い話しだ」

友「あるところに一人暮らしをしてる男性がいたそうだ」

友「その人は皿とかの食器類が好きで、気に入ったものを見つけるとつい買ってしまうらしい」

友「もちろん一人暮らしだから大半は使わないんだけどな」
296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/07(木) 22:50:55.04 ID:Fq51+pt/0

友「ある時、その人が深夜に目が覚めたらしい。」

友「するとキッチンから、カチャリカチャリと陶器がこすれるような音がしたんだ」

友「不審に思った彼は当然、そちらを見に行った」

友「すると薄暗い部屋で白い着物の女の人がお皿を数えていたそうだ」

友「1枚1枚丁寧に数えては、首をかしげてまた数え直す。彼はしばらくその様子を眺めていたらしい」

友「どれくらいそうしてたか、皿数えにして3往復くらいてからようやく彼は声をかけた」
297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/07(木) 22:53:09.54 ID:Fq51+pt/0





彼『何をしているんだね?』

女『お皿を数えています。1枚…2枚…』

彼『それはわかるんだが、では君は誰だね?』

女『昔、この土地にあった家の使用人です。3枚…4枚…5枚…』

彼『ではなぜその使用人が私の家にいるのかね?』

女『それは私が成仏してないからでしょう。6枚…7枚…8枚…』
298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/07(木) 22:55:15.70 ID:Fq51+pt/0




女『9枚……1枚足りない』

女『このままでは旦那様に怒られてしまいます……』

彼『その旦那様ももう死亡してると思うんだが…どれ、少し休憩して私と話をしてみないかね?』スワlリ

女『それどころでは……いえ、はい』スワリ

彼『それで…君はなぜ成仏してないんだ?』

女『旦那様の大切にしていた10枚の皿が1枚行方不明だからです』
299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/07(木) 22:58:01.09 ID:Fq51+pt/0




女『私は1枚紛失してしまったので自裁しました』

女『けれど先日数えていた時までは10枚あったのでどうしてもそれが気がかりで、成仏できません』

彼『はぁ。そんなことで…いや、君には重要な事だったんだろうな』

女『しかし何度数えてもやはり9枚しかありません…』

彼『買い足すわけにはいかないのかね?』

女『とても高価なお皿だと聞いておりますので…私ではとても…』
300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/07(木) 22:59:45.72 ID:Fq51+pt/0





彼『それは困ったな……どれ、今一度数えてみてくれ』

女『はい。1枚…2枚…3枚…』

女『4枚…5枚…6枚…』

女『7枚…8枚…9枚…』

女『やはり1枚足りません。どうしましょう…』

彼『ふむ……どれ、私が探してみよう』
301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/07(木) 23:01:20.09 ID:Fq51+pt/0




女『本当ですか?それは助かります』

彼『うむ、だが今日はもう遅い。明日の夜もう一度話をしようか…』

彼『その時までには見つかっているはずだよ』

女『………はい。ではそうしましょう』

彼『ではお休み。幽霊さん』

女『おやすみなさい…』
302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/07(木) 23:02:09.69 ID:Fq51+pt/0




彼『さて……何とかなるものかな…』

彼『まぁやるだけやってみるさ』

彼『我が家に幽霊が出ると言うのもあんまり気持ちが良いものではないしね……』
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/07(木) 23:04:38.00 ID:Fq51+pt/0

―――翌日 19:39―――


彼『さて、そろそろだけど、いるかい?』

女『はい、いますよ』ヌッ

彼『しかし本当に君は幽霊なんだな』

女『えぇ、私を見て悲鳴をあげる人が大半なのに、貴方は驚かないんですね』

彼『十分驚いているよ』

女『そうですか。じゃあ始めましょう…』
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/07(木) 23:06:51.39 ID:Fq51+pt/0




彼『まて、もうちょっと話をしてからにしようか』

女『?……いいですが』

彼『君はどれくらい前からこれを?』

女『どれくらいでしょう?彼これ100年はたってると思いますが…』

彼『どうりで、ここが安いわけだ』

彼『この家を買ったとき、代々この土地に建てた家には幽霊が出るって言われてたんだが…君だね?』
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/07(木) 23:09:27.58 ID:Fq51+pt/0




女『えぇ、おそらく私だと思います』

彼『まぁこちらとしては安く買えたから良いのだが…君はきちんと10枚見つかったら成仏できるかい?』

女『わかりませんが、未練は無くなると思います』

彼『そうか。幽霊になるのはどんな感じかな?』チラッ

女『体はすごく軽くなりますよ。壁も抜けられますし…』

彼『こうして話もできるしな。よし始めようか』
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/07(木) 23:11:24.11 ID:Fq51+pt/0



―――カチコチ…カチコチ…カチコチ―――

女『始めます。1枚…2枚…3枚…』

彼『1枚、2枚、3枚…確かに』

―――カチコチ…カチコチ…カチコチ―――

女『4枚…5枚…6枚…』

彼『4枚、5枚、6枚。間違いないな』
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/07(木) 23:13:21.59 ID:Fq51+pt/0




―――カチコチ…カチコチ…カチリ―――

女『7枚…は……』
彼『ちょっと待った!』

女『はい?なんでしょう?』

彼『今何時だったかな?眼鏡を忘れてしまってね』キョロキョロ
308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/07(木) 23:15:13.12 ID:Fq51+pt/0




女『8時です』

彼『ありがとう。7,8と数えたから9からだな』

女『はい…9枚…10…枚!?』

彼『なんだ、ちゃんと10枚あるじゃないか』ニコッ

女『え?だって今まで……』

彼『2人で数えて10枚だったんだ。今までは1人で数えてたから焦って間違えてたんじゃないかな?暗かった事だし』
309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/07(木) 23:16:58.55 ID:Fq51+pt/0




彼『よかったな』ニコッ

女『………はい!ありがとうございました』ペコリ

彼『成仏できそうかな?』

女『えぇ、大丈夫です』

女『お礼にこの10枚のお皿を差し上げます』

彼『それは旦那様のなんだろう?いいのかな?』
310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/07(木) 23:18:43.36 ID:Fq51+pt/0




女『はい、旦那様はもう亡くなってますし…貴方は大切にしてくれそうですから』

彼『そう言ってもらえると嬉しいな。ではありがたく頂くよ』

女『本当にありがとうございました』

彼『いや、今度は迷わないように気をつけて』

女『………』スー

彼『………詭弁もたまには役に立ったのかね……』ハァ
311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/07(木) 23:20:40.87 ID:Fq51+pt/0




友「っていう話だ」

男「それで落語って事だったんだな」

友「流石に『時そば』は知ってたか」

男「まぁそれくらいはな」

男「しかし、無事に成仏できたならよかったじゃないか」

友「そうだな。本人も得して満足したようだしな」
312 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/07(木) 23:22:40.62 ID:Fq51+pt/0

友「しかし、皿が1枚なくて自裁ってのもすごい話だけどな」

男「その旦那様はよほど怖かったのかねぇ…」

友「むしろ彼女の責任感が強かったんだろう」

男「使用人の鑑って言うべきなのかな?」

友「今とは価値観が違うから何とも言えないな」

男「そうだな。今ならあり得ない話だしな」
313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/07(木) 23:24:29.35 ID:Fq51+pt/0

友「というわけで少し短いが俺の話はこれで終わりだ」

男「そういえば…その人さ、幽霊を初めて見ても驚かないというか騒がなかったのか?」

友「聞く限りだとあまり騒いだわけじゃなさそうだな」

男「相手が泥棒だったらどうするんだろうな」

友「食器集めが趣味なだけに器が広かったんだろうよ」

男「誰がうまいこと言えと……」
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/07/07(木) 23:26:47.04 ID:Fq51+pt/0

友「お前も座敷童子を疑ってないで器を広げようぜ?」

男「生憎と大器は晩産するもんだぞ?」


第10話「時さらで幽霊が成仏できるわけがない」了
315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/07(木) 23:40:07.92 ID:a7V0DC9Yo
わろた
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/08(金) 04:04:14.88 ID:cN9Z9/Cx0
乙!
とうとう10%か
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/07/08(金) 13:11:05.72 ID:qxAt/l+AO
番町皿屋敷と時そばを合わせてきたか
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/08(金) 22:24:57.04 ID:psM2S9v00

男「ようやく10話か。流石に二人だと辛いものがあるな」

友「そうだな。もうあんまりネタがないぞ」

男「そうは言いつつ、なんとか思い出したりするもんだけどな」

友「まったくだ。追いつめられると人は頑張れるな」

男「できれば追いつめられないで頑張りたいな」

友「そうだな。で、何かあるのか?」
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/08(金) 22:28:41.55 ID:psM2S9v00


男「そうだな……じゃあこの話で行こう」

男「人から聞いた話なんだが」

男「その人は健康の為に会社へは歩きで通勤してたらしい」

男「で、その日は残業でかなり遅い時間まで会社にいたそうだ…」

男「帰るころには日付は変わってたくらいにな」

男「荷物をまとめると急いで帰るべく会社を出たわけだ」
320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/08(金) 22:31:32.37 ID:psM2S9v00

男「その人の通勤路は街灯がほとんどなくてな」

男「住宅街ってわけでもないから夜になるとほとんど真っ暗なんだそうだ」

男「しばらく暗い道を歩いていると、突然ポッと2つの明りが浮かんだ」

男「最初は車かと思ったんたそうだが、一向に近づいてこないし…」

男「何より左右の高さが違う」

男「懐中電灯か何かだろうと思いなおすとは彼はその明りに近づいたんだ」
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/08(金) 22:35:24.08 ID:psM2S9v00

男「するとどうだろう。近づいてみると懐中電灯じゃなかった」

男「いや、それどころか明りの持ち主すら居なかった」

男「青白い二つの火球が中に浮いてたそうだ」

男「誰かのいたずらかと思ったけど、あたりには誰もいないし」

男「何より火球はメラメラと燃えて入るのに熱さを感じなかったらしい」

男「その人はただ首をかしげると無視して先に進もうとした」
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/08(金) 22:37:31.99 ID:psM2S9v00

男「すると火球はその人の後ろを追いかけるようにユラユラと動いた」

男「もちろん、立ち止まると火球も止まる」

男「誰かいるのかと問いかけても答えは返ってこないし」

男「耳を澄ましても物音なんてしない」

男「流石に不気味になって来た彼は走ってその場を立ち去ろうとした」

男「当然のように火球も追いかけて来たのだが…」
323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/08(金) 22:39:26.91 ID:psM2S9v00

男「どういうわけだろう。小さな交差点までくると火球は止まってしまったのだ」

男「彼は疑問には思ったが、その日は帰宅することにした」

男「そして次の日」

男「はやり残業で遅くなった彼は同じ道で帰路についた」

男「当たり前のように同じ場所で火球に出会い」

男「昨日と同じ交差点で別れる。そんな日を何日かつづけたんだ」
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/08(金) 22:42:06.79 ID:psM2S9v00


男「しばらくしてついに彼は決心したそうだ」

男「その日は休日。彼は懐中電灯やお札や塩なんかをかばんに入れると」

男「仕事帰りと同じように道を歩いた」

男「そして火球と一緒に進み、例の交差点で立ち止まってみた」

男「するとどうだろう。火球は道を曲がって先に進み始めたそうだ」

男「まるで彼を導くようにな…」
325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/08(金) 22:46:36.78 ID:psM2S9v00

男「彼はそれに続いて歩き、いくつかの交差点を曲がって立ち止まった」

男「と言うのも、古びた家の前で火球が止まっていたからね」

男「その家は少し前から空き家となってて、あたりは何もない一軒家だそうだ」

男「当然人のいる気配はしない。火球は玄関の引き戸をすり抜けるように中へと消えていった」

男「彼もまた、ガタガタと古い引き戸を引いて玄関に入ると家の中を探してみる事にしたらしい」

男「1階には何もない。人が住んでなくてどれくらいたつのか、調度品は埃まみれで、そして荒れてたそうだ。正確には荒らされた跡があった…かな?」
326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/08(金) 22:49:41.08 ID:psM2S9v00

男「足元に気をつけながら彼は2階に上がることにした」

男「そして2階の突き当りの部屋で見つけてしまったんだ」

男「2体の白骨をね」

男「火球はその白骨の上でフヨフヨと漂っていたそうだ」

男「流石に彼は驚いて声をあげたそうだよ。まわりが畑ばかりだから誰にもばれなかったそうだけどね」

男「その部屋もまた荒れていて、如何にも殺されましたって雰囲気だったらしい」
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/08(金) 22:55:22.09 ID:psM2S9v00

男「その日、彼はそのまま帰り」

男「改めて昼間にその家に行ったそうだけど、そうすると凄惨さが余計に目だったそうだよ」

男「布団は赤黒くなってたし、近くにはさびた包丁も落ちてたそうだしね」

男「彼は警察を呼んだんだが、どうやら1年以上前の死体だったらしい」
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/08(金) 23:00:10.13 ID:psM2S9v00




男「自分たちを見つけてほしくて、夜な夜な彷徨ってたんだな」

友「そう言うのを狐火っていうんだっけか?」

男「だったかな。まぁなんにせよ見つかってよかったな」

友「ちなみに、殺人だとしたら犯人は見つかったのか?」

男「さぁ?そこまでは知らんよ」

友「そうか。まぁ早く捕まってほしいもんだな」
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/08(金) 23:03:20.31 ID:psM2S9v00

男「こういう現象があると、完全犯罪って難しいのかもな」

友「まぁ幽霊もやはりさびしいんだろうな」

男「そうだな…」


第11話『狐火が案内してくれるわけがない』了
330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/08(金) 23:12:33.19 ID:8n8Tzj7IO
今までとは違った話だったな
331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/07/08(金) 23:24:41.98 ID:ZCFW66rN0
何か知らんが涙出てきた
332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 12:51:50.10 ID:bD1MJr8DO
『百物語』完
333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/09(土) 21:47:33.66 ID:piFFenLOo
おい










おい
334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 22:36:43.37 ID:GgtWt3cJo
IDも見れない奴はROMってろ
335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 23:07:20.78 ID:EdLfQsfIO
>>334
日付跨いでるからIDとかry
336 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 23:09:37.96 ID:GgtWt3cJo
末尾と名前欄の地域でも十分分かるだろ
337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/10(日) 00:06:30.04 ID:9cma/EsBo
>>335
携帯かどうかもわからんのかよ、これだから禿携帯は…
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/10(日) 01:44:39.36 ID:sXyIuO+w0
これは嘘だと信じる
339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/10(日) 08:27:40.56 ID:bk2qX2iIO
>>337
禿(はげ)か禿(ちび)かはっきりしろ
340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/10(日) 09:26:15.11 ID:9cma/EsBo
>>339
糞フトバンクなんだからハゲだろチビ
341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/10(日) 09:53:29.06 ID:mrmKhJHIO
荒れるから他でやってね
342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/11(月) 08:31:24.62 ID:NOSy1mrbo
本当に完のつもりなのかな?
343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/11(月) 12:52:46.78 ID:9gfUBFSEo
どうみても違うだろ
他のスレだと勝手にhtml化依頼する奴もいるし、こんなのは戯れみたいなもんだ
344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 21:17:06.02 ID:xgJ9wR0R0

友「しかし、ガチなホラーの後だと変わった話はし辛いな」

男「気にしなくて良いんだぞ?」

友「そうは言っても気分の問題だな」

男「そう言われるとそうだが…」

友「まぁいいや。じゃあ俺も真面目にホラー行ってみるか」
345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 21:19:17.07 ID:xgJ9wR0R0

友「テンプレと化してきたが、これは聞いた話で」

友「その人は夜間の警備員でな」

友「当然、昼夜が逆転した生活を送ってるんだけど」

友「その日は休みだったんだ」

友「で、蒸し暑い日が続いてて、夜でも室内は暑いもんだから散歩に出かける事にした」

友「外もやっぱり暑くてだるいけど、風がある分マシだったんだろうな」
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/11(月) 21:22:18.14 ID:vy2Kpno7o
キター
347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 21:22:58.52 ID:xgJ9wR0R0

友「その人が住んでる街には大きな神社があってさ」

友「久しく行ってないからって、その人は散歩がてら寄ってみたらしい」

友「街灯があるとはいえ、基本的に夜間の立ち入りを想定してないからな」

友「敷地に上るための長い階段も、砂利を敷いた広い敷地も薄暗い」

友「幸いに月がほぼ満月だったのと、夜に目が聞いたから立ち往生はしなかったみたいだけどな」

友「ちなみに、その人の街は街灯がそこそこに配備されてて大通り沿いの散歩なら懐中電灯はいらないそうだ」
348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 21:29:12.65 ID:xgJ9wR0R0

友「とりあえず彼はさい銭箱にお金を入れて」

友「一通りの手順、2拝2拍手1拝だっけ?をすませた」

友「で、本当はそのまま帰ればよかったんだけどな…」

友「その日は暑いからちょっとした段差に座って休憩することにしたんだ」

友「するとな。どこからともなく聞こえてきたんだ」

友「コーン、コーンって何かを叩く音がさ」
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 21:34:57.87 ID:xgJ9wR0R0

友「最初は気のせいだと思ったんだけど、神社ってのは得てして木に囲まれてるよな」

友「だから音が反射してよく聞こえたんだそうだ」

友「一定のリズムで3回叩く音、そのあとしばらく間があいてまた3回…」

友「こんな時間に何をしてるんだろう?当然誰でもそう思う」

友「まして彼は夜間の警備員だからな。とりあえず見ておこうって言うのは職業柄の癖みたいなもんだ」

友「彼は境内の後ろ側に回る道を歩いた」
350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 21:42:47.09 ID:xgJ9wR0R0

友「境内の真後ろに来ると、樹の間に人影が見えたらしい」

友「というか、月明かりと目で白い服が見えたそうだ」

友「何かを振り上げては下ろす。そんな動作をしてるから気になって彼は近づいた」

友「できるだけ足音をたてないようにしようとしてたんだけど、お決まりだな」

友「落ちてた木の枝を踏んでパキッて音が立ってしまったんだ」

友「当然、その人影はこちらを振り向いた」
351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 21:59:36.71 ID:xgJ9wR0R0

友「目があって数秒、その影はこちらに向かって走って来たそうだ」

友「彼はびっくりして逃げようとしたんだけど、後ずさった時に砂利に足を取られて尻もちをついてしまった」

友「近づかれてわかったんだが、白い服はいわゆる死に装束で人物は女性だったそうだ」

友「手にはハンマーらしきものを持って走ってくるんだ。彼は跳ね起きると踵を返して逃げ出した」

友「境内の裏から前に出て鳥居まで全力で走った」

友「はずだったんだけど、彼は髪を掴まれてしまった」
352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 22:03:14.05 ID:xgJ9wR0R0

友「彼は暴れるように振り払った。髪が何本か抜けた気がしたけど気にしてなんていられない」

友「相手を突き飛ばしているうちに自分はさっさと階段を駆け下りて、急いでその日は自宅に帰ったそうだ」

友「その次の日は当然仕事だ」

友「自分の担当のビルに宿直室に泊まって警備」

友「その次もその次もそうだな。そしてあの日から1週間がたった。休みの日だ」

友「またうなされる様な暑さで、逃げるように散歩に出る事にしたんだ」
353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 22:08:03.67 ID:xgJ9wR0R0

友「その日は満月からやや過ぎて、やっぱり明るかったらしいんだが」

友「流石に前回があるしな。懐中電灯を持ってくことにした」

友「大通りの街灯の下を歩いて、神社の階段の下まで来た」

友「時間は2時前。ここで別の場所に行けばよかったんだが、怖いもの見たさってやつかな?」

友「彼はもう一度神社に上った」

友「とりあえず手を清めて手順通りのお参り、そして耳を澄ましたんだけど…」
354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 22:12:46.63 ID:xgJ9wR0R0

友「やっぱり聞こえたそうだ。コーンコーンって何かを叩く音がさ」

友「彼は懐中電灯を握ると、足音を殺して境内の後ろ側へと回った」

友「月明かりで見る限りだと白い影はやはり何かを叩いてるように見えたそうだ」

友「ここまでは先週と何も変わらなかったんだけどな。問題はこの後だ」

友「コーンって音が鳴るたびに、突然胸が痛み始めたそうなんだ」

友「それこそ、胸を銃で撃ち抜かれた感覚だったらしいぞ」
355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 22:16:21.25 ID:xgJ9wR0R0

友「まぁ銃で撃たれた事あるのか?ってツッコミは受け付けないけどな」ケラケラ

友「調子が悪い…そう判断した彼は引き返そうとした」

友「ジャリ……歩くのに力み過ぎて砂利がなっちまったんだ」

友「当然、相手にも聞こえたんだな」

友「先週と同じようにまたハンマー片手に走りよって来たんだと」

友「彼は逃げようと思ったんだが胸が痛くて逃げられない。そうしてるうちにすぐ傍まで近寄られてしまった」
356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 22:18:03.40 ID:xgJ9wR0R0

友「その女性は血走った眼で彼を睨み無言で手を振り上げた」

友「そして頭にめがけて振りおろしたんだ」


―――ドゴッ!!―――
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 22:23:22.37 ID:xgJ9wR0R0

友「結果から言うと、彼は無事だったんだ」

友「警備員だからな。護身術と言うか、咄嗟に当て身をして女性を吹き飛ばしたんだ」

友「そのまま腕を後ろに組みふせる形で押さえつけたんだとさ」

友「といっても胸が痛いうえに相手が暴れて何度もはねのけられそうになったそうだけどさ」

友「とにかく、そのまま警察を呼んで、助けてもらったって話だ」

友「」
358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 22:25:25.26 ID:xgJ9wR0R0




男「それで、大凡見当はつくんだが、彼女は何をしてたんだ?」

友「いわゆる、丑の刻参り。藁人形だよ」

男「誰かを呪ってる間に彼に見つかったから、巻き添えってことだな」

友「あぁ、初日に髪を掴まれたのが致命傷だったんだろうな」

男「それで?その後彼は無事なのか?」

友「そうだな。その話も続けるか」
359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 22:28:23.13 ID:xgJ9wR0R0


友「警察が来た後、彼は彼女がいた場所を調べたんだ」

友「すると案の定、太い木に2体の藁人形が打ちつけられていたらしい」

友「2体とも釘を抜いたんだが、すると途端に胸の痛みがなくなったって話だぞ」

友「その後、その藁人形はしっかりとお祓いしてもらって処分したとのことだ」

友「で、もう1体の方だが、その女性と交際してた男性が突然胸の痛みを訴えて入院してたそうだ」

友「もちろん同じくその日を境に元気になったそうだけどな」
360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 22:30:22.13 ID:xgJ9wR0R0




友「そんなわけで、彼は元気に今日も夜間警備員をしてるとのことだ」

男「下手気な興味は身を滅ぼすな」

友「まったくだな。というかそれ以上に…女性の恨みは恐ろしいな」

男「あはは、確かにな」

友「とりあえず夜の神社は大みそか以外は近寄らないようにしようか」

男「同意だな」
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/07/11(月) 22:32:47.12 ID:xgJ9wR0R0

友「巻き添えで呪い殺されたんじゃやってられんよ」

男「それならまだ、メリーさんに刺された方がマシだな」

友「それもどうなんだ?」


第12話『丑の刻参りで呪われてるはずがない』了
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/07/11(月) 22:36:22.69 ID:Db+1AzWW0
乙!
人間がいちばんこえぇww
363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/07/11(月) 22:39:34.96 ID:L/lt8rw10
今回のも良かった!乙!
364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 22:44:18.28 ID:xgJ9wR0R0

男「さて、真面目にホラーしたところで今度は少し軽めで行くか?」

友「本来、怪談話に軽めも何もない気はするが……」

男「いいじゃないか。じゃあ貞子ってわかるか?」

友「あの映画のか?」

男「御名答。その貞子だ」

友「それならわかるぞ。一応映画は見たしな」
365 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 22:45:54.57 ID:xgJ9wR0R0

男「それなら話は早いんだが、一応おさらいがてら説明しとくか」

友「いらんと思うが…まぁ一応頼むよ」

男「なんだかんだで話を聞いてくれてうれしいぞ」

友「まぁ話を聞くのも楽しみの内だしな」

男「確かにそうだ」

友「とりあえず、はじめてくれ」
366 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 22:49:13.94 ID:xgJ9wR0R0


男「貞子っていうのは映画に出てくる存在で」

男「黒く長い髪で顔を隠し、白いワンピースを着た女性の幽霊だ」

男「呪いのビデオって言われるビデオを見たはそのビデオを1週間以内にダビングして他人に見せないと」

男「貞子の呪いによって命を落とす」

男「呪いのビデオの内容は井戸から這い出た貞子がテレビモニターから外に出て」

男「現実世界…つまり視聴者の前に現れるってものだな」
367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 22:51:32.29 ID:xgJ9wR0R0

男「作品によって細かい点や設定は違うが、大凡そんなところだろう」

男「さて、これらはあくまでも映画…フィクションの話だ」

男「現実的に呪いのビデオ…の映像は作れても」

男「ただのテレビから誰かが這い出るなんてありえないし」

男「もちろん、それが原因で死ぬ事はない」

男「まぁホラー映画を見たショックでショック死はあり得るかもしれないけどな」
368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 22:54:52.84 ID:xgJ9wR0R0

男「ところが、俺はこの呪いのビデオが実在するって話を知ってるんだ」

男「話の出所は友人からの聞いた話だから信憑度は薄いかもしれないけどな」

男「一応言っておくが俺はそのビデオは見たことないぞ?」

男「そうだな…どこから話そうか」

男「その話で聞いた男性…彼はビデオショップの店員だそうだ」

男「で、仕事で注文したビデオの品出しをしてたんだが……」
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 22:58:15.56 ID:xgJ9wR0R0

男「1つだけ注文した覚えのないビデオが入ってたそうだ」

男「というか、ラベルも貼っていなくてコンビニとかで売ってるような空のテープだったそうだ」

男「彼は仕入れ元に確認を取ったんだが、覚えがないから処分してくれと頼まれたそうだ」

男「店長もまた同じ回答だったので、彼はそのビデオを家に持って帰った」

男「録画テープが増えたんだからそれはよかったんだが、折角だからと彼はそれをビデオデッキに入れた」

男「再生してみて映ったのは砂嵐だった。あの、ザーってなるモザイク画面だ」
370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 23:00:43.19 ID:xgJ9wR0R0

男「何も入ってないのか…とも思ったんだが、それはそれで妙な話だよな」

男「何も入って無いテープなら砂嵐じゃなくて黒い画面が映るしな」

男「彼は録画に失敗したテープと判断して、ビデオの停止ボタンを押したんだ」

男「でも、テープは止まらない。砂嵐のザーって音だけが鳴り続けた」

男「あんまりあれは見てて気持ちよくもないし、不快に思った彼はテレビの電源を消したんだ」

男「それでも、砂嵐は止まなかった」
371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 23:03:49.26 ID:xgJ9wR0R0

男「リモコンの電池切れかとテレビやビデオ本体のボタンを押しても同じ」

男「試しにコンセントを引っこ抜いても同じ。彼はいらだったが突然画面は真っ暗になった」

男「ようやく止まったと安堵すると、また画面は切り替わり薄暗い井戸が映し出されたんだ」

男「彼はビデオショップの店員だけあって、当然この展開を知ってたんだが」

男「案の定、井戸の底から髪の長い女性が這い出て来て画面に向かって歩いてきた」

男「そして手を伸ばした瞬間……」


―――プチッ……ピンポーン―――
372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 23:06:36.42 ID:xgJ9wR0R0

男「テレビが切れて家のチャイムが鳴ったんだ」

男「彼は安堵して腰を抜かしたけれど、チャイムが鳴ってる」

男「もしかしたらこの来客のおかげで助かったのかも」

男「そんなのんきな事を考えながらテーブルで体を支えて立ち上がると彼は玄関を開けた」

男「するとそこには、先ほどまでテレビに映ってた女性がいたんだ」
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 23:07:25.97 ID:xgJ9wR0R0





女『はーい、こんばんはー』




374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 23:09:06.36 ID:xgJ9wR0R0




――――バタン!!――――

女『ちょっと閉めないでよ!』ドンドンドン

彼『お呼びじゃないから帰ってくれ』

女『お呼びじゃないってビデオ見て呼んだじゃない』ドンドンドン

彼『知らん。そんなものは知らん』

女『人を呼び出しといて家にも入れないなんて最低!』ドンドンドン

彼『最低と言われても居れないぞ』
375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 23:11:27.46 ID:xgJ9wR0R0




女『せめて話だけでも聞いてよ』ドンドン

彼『無理だ。帰ってくれ』

女『お願いだから…ねぇ…』トントン

彼『死にたくないんだから無理言うな』

女『ちょっとだけでいいから…』

彼『無理だってのに…』
376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 23:13:16.75 ID:xgJ9wR0R0




彼『帰ったか?』

女『………』シクシク

彼『』

女『………』シクシク

彼『わかった。少しだけだぞ?』

―――ガチャッ―――
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 23:14:16.62 ID:xgJ9wR0R0




女『わーい!』

彼『やられた……』ガーン

女『やっと入れてくれたね』

彼『出てってくれ』

女『やだ』

彼『じゃあさっさと用件済ませ』
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 23:17:40.90 ID:xgJ9wR0R0




女『じゃあ早速、説明なんだけど』

女『私は貴方を呪いに来ました』

彼『うん、で?』

女『呪いの期限はこの説明が終わってから1週間。168時間後に発動します』

女『この呪いは、誰か他人に呪いのビデオをダビングしてみせると解除できます』

彼『知ってる。他は?』
379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 23:20:31.60 ID:xgJ9wR0R0





女『あとはね…何かあったかな。』

女『1週間の間に呪いのビデオをもう1度みても、時間はリセットされません』

彼『当然だろうな』

女『でも、私に会う事は出来ます』

彼『あってどうするんだ?』

女『さぁ?ちなみに私は1週間経たないと何もできないから、途中であっても突然呪いが発動する事は無いよ』
380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 23:22:09.67 ID:xgJ9wR0R0





女『これくらいかな?』

彼『説明終わりで良いのか?』

女『最後に、説明受けましたって証明にここに名前とハンコ頂戴。認印でも拇印でもいいよ?』

彼『………』

女『あ、ごめんごめん、はい。ボールペンと朱肉ね』

彼『生前はセールスマン?』
381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 23:24:40.40 ID:xgJ9wR0R0





女『さぁ?どうでしょう』

彼『その前に質問良いか?』

女『いいよ?契約に関する事なら基本的にはちゃんと答えるから』

彼『契約って…今書かせようとしたの契約書か?』

女『答えはYESだね。ほら、ちゃんと書いてあるでしょ?』

彼『ちょっと見せてみな?』ピラッ
382 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 23:34:20.05 ID:xgJ9wR0R0

―――契約書―――

第1条(概要)
 この契約は呪われる対象者(以下甲とする)と呪う幽霊(以下乙とする)における
呪いのビデオの呪いについて定めるものである。

第2条(猶予期間)
 甲が受託のサインをして1週間(168時間)後に乙は甲を呪う事が出来る。
なお、乙は1週間より早く甲を呪う事は出来ない。

第3条(解約について)
 甲は呪いのビデオをダビングし、第3者に見せる事で呪いを解く事が出来る。
または、甲・乙の両者が同意した場合のみその場で契約を解約する事が出来る。

第4条(呪いのビデオについて)
 甲は契約締結後、呪いのビデオを再生する事が出来る。その場合乙は甲の元を訪ねなければならない。

第5条(違約事項)
 契約の締結に置いて、乙の説明に虚偽があった場合
または甲の同意なしに契約を締結した場合、甲は一方的に契約を取り消すことができる。


署名欄
甲_________
乙____女____
383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 23:36:13.07 ID:xgJ9wR0R0





彼『なるほどね…よくわかった』

女『説明はもういいかな?じゃあサインもらいたいんだけど』

彼『却下だ。俺は同意しないな』

女『え!?そこを何とか……』

彼『俺にメリットないし』

女『今ならテッシュ5箱つけるよ?』

彼『俺の命はテッシュ5箱ぶんなのか?』
384 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 23:38:22.67 ID:xgJ9wR0R0





女『じゃあペアで温泉ツアー御招待とか?』

彼『ふざけるなっての』

女『じゃあじゃあ……』アタフタ

彼『いや、もういいから帰れっての』

女『やーだー、サインしてくれるまで帰らないもん』

彼『じゃあ勝手にしろ。言っとくけど勝手にハンコ押しても取り消すからな?』

女『ちぇ………』
385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 23:40:20.35 ID:xgJ9wR0R0




友「あれってセールスのたぐいだったのか?」

男「そうだな。しかも悪質すぎる」

友「でもあの契約書だと誰もサインしないだろ」

男「ところがどっこい、結構サインするらしいぞ?」

男「正確には、無理やりサインさせてる」

友「取り消せるはずだろ?」
386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 23:41:48.73 ID:xgJ9wR0R0

男「取り消せはするが、1週間ばれなければ勝ちだしな」

友「なるほど、そう言う事か」

男「それに、みんな呪われたとわかったら解除方法ばかりみるらしいぞ?」

友「灯台もと暗し、馬鹿な話だな」

男「悪徳商法に掛かる人の大概はちゃんと契約書を読んでないからだ」

友「面倒でも読むことにするよ」
387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 23:43:58.44 ID:xgJ9wR0R0





彼「ところで、これにサインする奴いるのか?」

女「そりゃいるよ。映画とかでみたことない?」

女「あれ種明かしすると、びっくりさせて気絶させてる間に勝手にサインして」

女「1週間後に呪いに来るってパターンだよ。テレビから出てくるように見えるけど…」

女「あれは体を透明にしてテレビの前に居るだけだからさ」スッ

彼『酷い種明かしを見た』
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 23:45:48.59 ID:xgJ9wR0R0





彼『じゃあなんでお前はやらなかったんだ?』

女『あんまり好きじゃないんだよね。騙してるみたいでさ』

彼『だからって馬鹿正直に行ったら誰もハンコ押さないだろ』

女『そうなのよ。だからいまだに契約数ゼロで上から首にするって言われてるんだ』

女『だからお願い。人助けだと思って』ウルウル

彼『却下だ』
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 23:47:04.86 ID:xgJ9wR0R0





女『居座ってやる…』

彼『居座っても良いが、掃除と洗濯くらいはしろよ』

女『したら契約してくれるの?』

彼『いやだね』

女『ちぇ、やればいいんでしょ、やれば』

彼『そう言う事。じゃあ俺はもう寝るからな』
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 23:48:16.26 ID:xgJ9wR0R0

―――次の日―――



彼『ただいまー』ガチャ

女『あ、お帰り―』

彼『誰だお前って…あぁ、そう言えば居たんだっけ』

女『何それ酷いなぁ…掃除したのに』

彼『………!』

彼『めちゃくちゃ片付いてる』
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 23:50:48.15 ID:xgJ9wR0R0

―――次の日―――



彼『今日は休みだし洗濯かな』

女『昨日しておいたよ』スッ

彼『綺麗にアイロンまで掛かってるし』

女『へっへーん。見直した?』

彼『かなりな』

女『じゃあ契約……』
彼『だが断る』
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 23:52:22.82 ID:xgJ9wR0R0

―――次の日―――



彼『疲れた―』

女『お帰り―。ご飯で来てるよ』

彼『お、悪いな』

女『今日はお肉が安かったから焼き肉だよ』

彼『いいねぇ、楽しみだ』

女『もうちょっと待っててね』
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 23:53:43.67 ID:xgJ9wR0R0

―――3年後―――



彼『ただいま』

女『お帰り。今日は彼の好きな煮魚だよ』

彼『それは嬉しいな』

彼『………』

女『どうしたの?』

彼『なぁ、いつまでこうしてるんだ?』
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 23:56:30.37 ID:xgJ9wR0R0




女『それはもちろん契約してくれるまでだけど…』

女『もしかして契約してくれる気になったの?』スッ

彼『それは嫌だが、こっちなら契約してやる』スッ

女『えぇと……緑の書類…?』カアッ

彼『これならもう契約取りに行く必要ないだろ?』ポリポリ

女『………うん!』
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 23:57:56.47 ID:xgJ9wR0R0




男「というわけで、彼は今では2児の父だ」

友「ちょっとまて、落ちがおかしいにもほどがあるだろ」

男「同じ屋根の下で3年も男女が暮らしたらそうなるだろ?」

友「それもそうだな……」

友「って違う。そもそも相手は幽霊だろ」

男「あぁそれから。それはな?」
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/11(月) 23:59:55.95 ID:xgJ9wR0R0

男「人間と結婚するから幽霊辞めますって上に掛け合って」

男「退職金の代わりに受肉したんだとさ」

友「なんというご都合主義」

友「というか、契約ゼロのセールスマンでも退職金出るんだな」

男「そういえばそうだな。実に良い会社だ」

男「というわけでもう透明化は出来ないらしいが仲良く暮らしてるぞ」
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/07/12(火) 00:01:13.92 ID:Se4wO8nB0

友「呪いのビデが二人を繋ぐってか?」

男「呪いが祝いに変わるってね」


第13話『貞子が押しかけ女房なわけがない』了
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/12(火) 00:01:48.16 ID:sQtT+DBIO
正直かなりうらやましい
>>1乙面白かったよ
399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/12(火) 00:07:49.20 ID:HcUjVgL3o
発想が凄いなww
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/07/12(火) 00:09:24.65 ID:NGYJq/+6o
乙〜
401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/07/12(火) 00:16:45.61 ID:ko9QdgHAO
受肉で吹いた
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/12(火) 00:24:31.00 ID:Se4wO8nB0
>>1です。
訂正は出来るだけしたくないんだが、これだけは譲れなかった。

>>394
「緑の書類」じゃなくて「茶色の書類」

緑だと意味が真逆になってしまいます。
訂正ついでに書きますが、土・日と所用で書けませんでしたので今日・明日で2話ずつ書いて帳尻あわせします。
完結説が立ってますが、もう少しだけ続けようかとは思っていますので今しばしお付き合いください。
403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪) [sage]:2011/07/12(火) 00:36:53.37 ID:XPZvKgNIO
>>402
どうせなら100まで書いてくださいよ
404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/12(火) 00:39:38.84 ID:nO1OIDPIO
>>402
色については法で定まってるわけではない。一応。
405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/12(火) 08:19:33.77 ID:FBJTJacHo
>>402
少しと言わずに続けろ下さい
406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/12(火) 11:42:59.01 ID:sQtT+DBIO
完結なんて信じられない
407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/12(火) 18:24:54.66 ID:AyLi5GQVo
このSSが完結する訳ない
408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/12(火) 18:26:32.35 ID:Se4wO8nB0

友「13話まで話したけれど、いろいろな事があるもんだな」

男「まぁ人間が十人十色なら幽霊も十人十色なんじゃないか」

友「十人十色どころか、百人百色くらいの多様さだけどな」

男「まぁそれくらいじゃないと面白くないだろ」

友「そうだな。百物語とはいえ、一言二言の内容を百ならべてもな」

男「やるからには楽しくないとね」
409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/12(火) 18:49:57.25 ID:Se4wO8nB0

友「さて、というわけで俺の番だが…今度は何話すかな」

男「また都市伝説系で面白いのは無いのか?」

友「そうだなぁ……ん?」

男「どうした?あぁ…蜘蛛か?」

友「蜘蛛……蜘蛛女の話にするか」

男「そんなのあるのか?まぁなんでも良いけどさ」
410 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/12(火) 18:58:07.02 ID:Se4wO8nB0

友「まぁあんまり長い話じゃないんだけどな」

友「その蜘蛛の種類は知ってるか?」

男「いや、わからんな」

友「あれはアシダカグモ。見た目は不気味だが益虫だぞ」

男「害虫とかを食べてくれるってことか?」

友「そう言う事。しかも人間には基本的に近寄らないから迷惑をかけない」
411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/12(火) 19:02:20.58 ID:Se4wO8nB0

友「まぁ今から話す蜘蛛女はアシダカグモではないけどな」

友「とある町の自治会で、いわゆる農村地区があってさ」

友「町中に行けば発展してるんだけど、そのあたりは畑と田んぼしかなくてな」

友「家と家の間はお隣さんでも50m以上離れているのもざらだし、街灯も少なかったんだ」

友「で、その地区で一つ問題が起きてな」

友「野犬が多く出るようになったんだ」
412 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/12(火) 19:04:43.57 ID:Se4wO8nB0

友「追い払おうにも、何せ家々の間隔が広いからな」

友「家の中で犬の鳴き声聞いて外に出たんじゃ間に合わない」

友「かと言って外で番をするわけにもいかない」

友「そこに住んでる人たちはほとほと困った」

友「もちろん、罠を張ったり業者を読んでみたりはしてみたらしいけどな」

友「その野犬はもともと飼い犬だったのか頭がよくて器用に避けるそうだ」
413 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/12(火) 19:09:13.86 ID:Se4wO8nB0

友「そんな時、町から親子が引っ越してきた」

友「母親と娘の2人でさ。安い借家に住み始めたんだ」

友「年寄り的には少し気に入らない部分もあったらしいけど」

友「その親子はとても社交的であっけなく馴染めたそうなんだ」

友「しばらくはそう言う日常が続いた」

友「変化が現れたのは自治会での会議に初めて母親が出た時からだ」
414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/12(火) 19:12:55.52 ID:Se4wO8nB0

友「自治会の一員として参加したのはよかったけど議題は相変わらず野犬についてだ」

友「初めてという事もあり、その野犬の迷惑さについて母親はさんざん聞かされたらしい」

友「農家ではないし、聞き流せばよかったんだけど母親は熱心の話を聞いた」

友「そしてその日の会議が終了すると、彼女は家に電話した後で家とは別の方向へと歩いて行ったそうだ」

友「不思議がった近所の人が行き先を尋ねるんだが、彼女は曖昧に濁して答えない」

友「結局、しつこく聞くのも野暮かとそれで終わりだったんだが…次の日だ」
415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/12(火) 19:17:20.96 ID:Se4wO8nB0

友「会議を行った公民館の街灯に件の野犬が縛られてたんだ」

友「白いロープでな」

友「誰がやったのか?と話題になるも誰も知らないとしか言わない」

友「母親に聞いても当然、わからない…としか答えない」

友「みんな不思議がったけどとりあえずよかったって事で話はついたんだ」

友「それから数日が立った…」
416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/12(火) 19:20:53.70 ID:Se4wO8nB0

友「また野犬が現れた」

友「今度は3匹いて、件の野犬の子供だろうって話だった」

友「そしてまた会議だ。議題は3匹の野犬について」

友「といっても、1匹すら捕まえられなかったんだし、3匹なんて到底無理な話」

友「結局大した実りはなく会議は解散したんだが…」

友「また、母親は自宅とは違う方へ向かっていくのが目撃された」
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/12(火) 19:23:27.42 ID:Se4wO8nB0

友「あたりは真っ暗だし、母親が向かった道は山につながる道で街灯もない」

友「なんなのだろう…近所の人はその疑念だけだいて帰路へ着いたそうだ」

友「次の日」

友「やはり街灯に3匹の野犬が白いロープで縛られていた」

友「そして誰がやったかと聞いても誰も名乗り出ない」

友「前回の再現も良いところって感じだろうな」
418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/12(火) 19:25:24.44 ID:Se4wO8nB0

友「そしてしばらく月日が流れて…冬になったそうだ」

友「と言っても雪が降るほどじゃなかったみたいだけどね」

友「また畑が荒らされ始めて、今度の犯人はイタチということになった」

友「何せ冬で食べ物が少ないから、人里に下りてきたってことだろう」

友「ここまで来るともうテンプレみたいなもんだが……」

友「はやり会議が行われ、そして解散となった」
419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/12(火) 19:28:15.86 ID:Se4wO8nB0

友「やはり母親は家には帰らないでどこかに行こうとした」

友「ちなみん、別段こう言う事がないただの集まりの時はまっすぐ家に帰るのに…だ」

友「前回、前々回と疑念を持ってた近所の人はこっそり彼女のあとをつけたそうだ」

友「彼女は山の中に入ると、あたりを何度も見渡すと木と木の間にロープを張り始めた」

友「もちろん、どこかにそんなものを持ってた様子はないし、なによりそのロープは手首から出てたものだからな」

友「思わず近所の人は声をあげてしまって見つかってしまったそうだ」
420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/12(火) 19:32:38.71 ID:Se4wO8nB0

友「けれど、母親は誰にも言わないようにときつく口止めして」

友「家に帰したそうだ」

友「翌日、やはりイタチは捕まった」

友「それを見ているとなんだか怖くなってしまい…」

友「ついに言いふらしてしまったそうだ。あの母親は化けものだってな」

友「周りの人は馬鹿な…と笑い流していたそうだが、言われてみると白いロープは蜘蛛の糸に似てるし、他にも不思議な言動はあったからな噂はすぐに信じ込まれた」
421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/12(火) 19:38:43.58 ID:Se4wO8nB0

友「その結果、親子は迫害されるようになった」

友「そりゃ怖いからな。ある意味当然なのかもしれない」

友「道で会えば避けられるし、家に石が投げ込まれる事もあった」

友「協力した結果、迫害されるなんて皮肉な話だけどな」

友「結局、親子は引っ越すことになった」

友「その後二人がどこに行ったかは、誰も知らないそうだ」
422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/12(火) 19:45:08.45 ID:Se4wO8nB0





友「とまぁこう言う話だ」

男「なんだかせつないな」

友「ちなみに、その地区の山は都市開発で結構削られててな」

友「その結果として野生動物が人里に下りてきたってわけなんだが…」

友「今でも冬になるとやはり畑を結構荒らされてしまうらしい」

友「友好にしてれば有益なのに、不用意に怖がるから結局損をするわけだ」
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/12(火) 19:47:58.41 ID:Se4wO8nB0

男「で、今では『あの時追い出さなければよかった』とかか?」

友「御名答。都合が良いもんだな」

男「まったくだ。そういう大人にはなりたくないな」

友「同感だ。というわけで、このアシダカグモ君には何もしない」

男「ところで、娘はどうしてるんだろうな?」

友「関連性はわからないんだが……」
424 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/07/12(火) 19:50:20.37 ID:Se4wO8nB0

友「別の街で失踪が相次いだそうだ」

友「失踪した人の荷物が見つかるときはあるんだが、必ず蜘蛛の糸がついていたそうだぞ」

男「………関連性があるとしたら悲しい事だな」


第14話『蜘蛛女と共存できるわけがない』了
425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/07/12(火) 20:36:22.46 ID:NGYJq/+6o
乙〜
426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/12(火) 20:54:59.35 ID:vbQOMVxI0
Koeeeee!
乙です!
427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/07/12(火) 21:01:38.18 ID:b1V5zznwo
萌え路線で耳目を集めておいて悲しい話でしんみりさせる作戦か……
まんまと引っかかっています。
428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/12(火) 22:32:17.97 ID:Se4wO8nB0

男「人がせっかく明るい雰囲気にしたのにまた暗くしやがったな」

友「すまんすまん、蜘蛛が目についちゃったからな」

男「まぉいいんだけどな」

友「ここはまた男が明るくしてくれ」

男「うぅむ…そうだな」

男「じゃあ都市伝説にするか」
429 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/12(火) 22:33:22.57 ID:Se4wO8nB0

友「お?珍しいな」

男「都市伝説はお前のが詳しいから知ってるかもしれないな」

友「俺だって知らない事は多いさ」

男「そりゃそうだけどな」

友「それで?どんな話だ?」

男「物書きの話さ」
430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/12(火) 22:35:06.71 ID:Se4wO8nB0

男「正確には、製作者だな」

友「何かを作ってる人ってことか」

男「ネットにはさ。いろいろな制作物があるよな」

友「ホームページとか?」

男「広い意味では正解だけどちょっと違うな」

男「俺が言いたいのは娯楽の話だ」
431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/12(火) 22:37:53.11 ID:Se4wO8nB0

男「動画サイトに動画を投稿したり」

男「あるいは、自分でホームページ立ち上げてオリジナルの漫画を公開したり」

男「さらには掲示板とかに小説を書き込む人もいるな」

男「そう言ったものの中にはプロ顔負けの作品もあったり」

男「あるいは天才かってくらい奇抜な才能を発揮してる人もいる」

男「まぁ一言で言ってしまうととても良い作品があるってことだ」
432 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/12(火) 22:40:05.15 ID:Se4wO8nB0

男「受け手からすると、出来るだけ長くその作品を楽しみたい」

男「最低でも完結までは続けて欲しいと思う人は多いだろう」

男「そりゃ、好きで見てるわけだから当然だな」

男「でも、突然パタリと更新が止んでしまう事ってあるよな」

男「いくら待てども続きがない」

男「さて、なんでそんなことになるのかわかるか?」
433 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/12(火) 22:41:59.95 ID:Se4wO8nB0

友「普通に考えたら、ネタが無い、制作時間がとれないの2択だろうな」

友「いや、飽きたって部分も入れると3択だな」

男「それだけか?」

友「他に何かあるか?」

男「友の答えは大凡正解だが、一つだけ抜けてる部分がある」

友「ほぅ?聞こう」
434 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/12(火) 22:45:57.38 ID:Se4wO8nB0

男「凝った作品を作り上げる人って言うのは、その作品に並ならぬ愛情を持ってるってことだ」

男「それこそ、自己投影だったり理想の再現だったりな」

男「つまり…制作者でありながらその作品の一員でもある」

友「………?よくわからん」

男「いや、言い回しが悪かったな」

男「つまりだな…制作者としての愛情が強すぎると、本当に作品の中に入ってしまう事があるらしいんだ」
435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/12(火) 22:49:22.33 ID:Se4wO8nB0

男「それが体ごとなのか、あるいは精神だけなのかはわからないが…おそらく後者で」

男「制作者は自分の作品内の何かしらのキャラクターとして、作品の登場人物に入りこんでしまう」

男「当然、現実では制作者がいない…最低でも制作が続けられる状態じゃないわけだから続きは出来ない」

男「これが、作者失踪って呼ばれてる状態の一つだそうだ」

男「もちろん、制作者は死んでるわけじゃないぞ」

男「自分の作りだした世界の中で自由に生活で来てるわけだし、あるいは普通に生きてるより幸せなのかもしれない」
436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/12(火) 22:52:40.48 ID:Se4wO8nB0

男「もちろん、残された方はたまったもんじゃないけどな」

男「現実では時間は流れてるわけだし、家族も受け手も待ちぼうけになっちゃうからな」

男「まぁとは言っても、そういう説があるってだけだけどな」

男「実際のところは事実はわからない」

男「ネタ切れの作者のデマかもしれないし」

男「あるいは今、自分が読んでる小説のキャラクターもまた、作者のなり変わりなのかもしれない」
437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/12(火) 22:55:13.26 ID:Se4wO8nB0

友「なるほど、それは面白い説だな」

男「だろ?愛があるがゆえに起きてしまう現象ってわけだ」

友「しかし、当人がその状態だとするなら誰がその話を広めるんだ?」

男「む?たしかに…作品内に入ってるって知ってるのは本人だけだしな」

男「いや、下手すると本人も気がついてないかもしれない」

友「だろ?根本的に出発地点が不明瞭すぎるぞ」
438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/12(火) 22:59:12.69 ID:Se4wO8nB0

友「夢のある話だけどな」

男「まぁ夢でも良いじゃないか。心霊現象なんてみんなそんなもんだろ?」

友「一本返されたが確かにそうだ。じゃあ今度停止した作品を見つけたらキャラクターに注目してみるかな」


第15話『作者失踪の真実が夢物語なわけがない』了
439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/07/12(火) 23:24:28.85 ID:tsBKmNo60
乙!
蜘蛛の娘は最終的に、迫害された事で人間を恨んで襲ってる……という事か?
440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/13(水) 00:24:35.92 ID:Nep7kzfIO

>>1はこれを完結させるまでこのSSに入り込むなよな
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga sage]:2011/07/13(水) 00:43:35.29 ID:t04tfVfE0
そんときゃ引っ張り出せばいい
442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/13(水) 01:08:32.05 ID:Wc5xnu+DO
アメノウズメとタヂカラオを喚んで来なきゃいかんな。
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2011/07/14(木) 14:03:50.84 ID:Vn0g4psfo
入り込んだか・・・
444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/14(木) 22:20:18.80 ID:Na7spMrz0

友「………」

男「どうした?」

友「少し心霊話とは違うのかもしれないけど、こんな昔話があってな」

友「まぁいちおう妖怪の話ではあるんだけどな」

男「へぇ?どんなの?」

友「日本神話が前提なんだがな」
445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/14(木) 22:26:40.40 ID:Na7spMrz0

友「天照大神ってのが一度、引きこもってしまってさ」

友「その結果、世界が真っ暗になってみんな困ったわけだ」

友「そこで他の神様は考えた末に、その引きこもってる場所の前で宴会をしたんだ」

友「その時にアメノウズメって神様の芸が大層好評で大受けだったんだが…」

友「引きこもってた天照大神もあまりの盛り上がりに気になって扉を少し開けた」

友「そこをアメノタヂカラオって力の神様が引っ張り出して、事なきを得たって話があるわけだが」
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/14(木) 22:29:09.38 ID:Na7spMrz0

友「たぶんそれを基にしたんだろうな」

友「俺が小さい頃に似たような妖怪の話を聞いた事があるんだ」

友「今思えば、夜に不用意に扉を開けてはいけないっていう教育的な話なんだろうけどね」

男「幽霊や妖怪を教育に使うのはよくあるけど」

男「戸締りでなんて聞いたことないな…」

友「そうなのか?あるいは親の創作だったのかもしれないな…まぁ短いけど聞いてけ」
447 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/14(木) 22:32:52.02 ID:Na7spMrz0

友「むかし、夜遊びの好きな少年がいてさ」

友「その子は毎晩、毎晩出かけては友達と遊び歩いてたんだ」

友「周りが暗いともなれば当然物騒だし、教育上もよくない…」

友「と言うわけで、その子の親は厳重に注意して夜間の外出をやめさせたわけだ」

友「もちろん、友達が迎えに来る事もあるだろうってことで、夜の来客に応対させるのも禁止した」

友「少年は不満は多くても何とか我慢することにした」
448 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/14(木) 22:37:54.16 ID:Na7spMrz0

友「昼は自由に遊ばせて、夜は家の中で過ごすようにしてしばらくが過ぎた」

友「最初のころは家の中でも遊ぶものを見つけてられたんだが、流石にしばらくすると飽きてきてな」

友「親の目が無ければ今にも外に出て行きそうな状態だったそうだ」

友「ある日、親が急用で夜間に出かけなくてはならなくなってさ」

友「親は少年に絶対に家から出ないようにと改めて釘をさすと出かけて行ったんだ」

友「少年からしたらまさに好機ってやつだな」
449 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/14(木) 22:43:33.51 ID:Na7spMrz0

友「しかしいざ出かけようとすると不思議なもので、ばれたらどうするかって疑念がわくわけだ」

友「しばらく彼は悩んだ末に出かけるのをやめることにした」

友「そのまましばらく過ぎて、寝る時間になったころ急に来客が訪れた」

友「少年は扉は開けずに声だけで応対したのだが、どうやら祭りの誘いとのことだ」

友「遊ぶのが好きな少年の事だから、行こうかと大いに迷ったんだが…」

友「結局親がいつ帰ってくるかわからないってことで断った」
450 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/14(木) 22:50:17.97 ID:Na7spMrz0

友「しばらくすると外から愉快気な音楽と笑い声が聞こえてきた」

友「ずっと我慢してきた少年だが、ついに我慢が出来ずに家の扉を少しだけ空けて外を覗いたんだ」

友「そこには腹に大きな顔を描いた男が踊っていて、それをみた少年は思わず笑ってしまう」

友「すると踊りを見ていた鬼の一人が少年の方を向き、あっという間に彼を外に連れ出してしまった」

友「その後少年は家には戻らず、どこに行ったかはわからない」

友「なんていう話だ」
451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/14(木) 22:52:54.10 ID:Na7spMrz0

男「なるほど、典型的なお話だな」

友「ちなみに、踊っていたのは『はらだし』って呼ばれる妖怪で本来は害はない妖怪らしいぞ」

男「しかし本当に最初に聞いた神話のそのままな話だな」

友「まぁ大人の想像力なんてそんなところなんだろうよ」

男「もう少し捻りがあれば楽しいのにな」

友「仕方ないさ」
452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/14(木) 22:56:48.86 ID:Na7spMrz0

男「引きこもりたい神様と外出したい人間ねぇ…」

友「同じような話なのに目的が違うだけで真逆な意味になる」

男「そうは言っても神様と妖怪を入れ替えるセンスには脱帽だがな」


第16話『妖怪と神様が似た者同士なわけがない』了
453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/07/14(木) 23:37:20.89 ID:SzKXu3fI0
乙ー

なんか昔やってた学校の怪談っていうアニメのババサレって妖怪を思い出した
454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/14(木) 23:57:04.70 ID:WLRu2hRIO
きみのこーとー
455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/15(金) 21:34:41.29 ID:xyJCvLF40

男「流石にネタ切れか?」

友「だからそこまで話は持ってないって言ったろう」

男「まぁそう言ってる俺もそろそろ厳しくなってきたんだけどな」

友「それは困ったな」

男「もう少し俺はネタがあるから話すよ」

友「あぁそうしてくれ」
456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/15(金) 21:38:32.12 ID:xyJCvLF40

男「そうだな…お前は深夜に目が覚める事はあるか?」

友「いや、寝つきは良い方だからあんまりないな」

男「そうか。これは部活の奴の体験談なんだがな」

友「お前の部活は剣道部じゃなくてオカルト研究会か何かか?」

男「まぁそう言うなよ。類友って言うだろ?」

友「そうは言ってもだな……」
457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/15(金) 21:41:16.91 ID:xyJCvLF40

男「まぁとりあえずだ」

男「そいつは深夜に目が覚めた。時計を見ると午前四時だったそうだ」

男「その時期は冬だったらしく四時じゃまだ真っ暗だな」

男「いつもなら二度寝をするところだろうけど、妙に眼が冴えたらしく」

男「カーテンを開けて窓の外を見たんだ」

男「するとな、窓から見える道路に人が立っていたそうだ」
458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/15(金) 21:44:04.30 ID:xyJCvLF40

男「もちろん、普通は人が立っているような明るさじゃないし」

男「何よりその人影は明りなんて持っていなかったそうだ」

男「でも、なぜかそれが人だってはっきりわかったんだとさ」

男「その日、彼は怖くなってカーテンを閉めると無理やり寝つき朝になった」

男「明るくなってから通学途中に人影があった場所に行ってみたが、当然誰もいない」

男「見間違いだろう。そう思うと彼は1日を過ごした」
459 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/15(金) 21:48:20.63 ID:xyJCvLF40

男「次の日、やはり彼は深夜に目が覚めたらしい」

男「時計の時間は4時ちょっとすぎ、外は当然に暗い」

男「二日連続どうしたんだろう。そう思いつつ彼がカーテンを開けると…」

男「やっぱり人影は見えた」

男「顔をつねってみても、窓を開けてみて、あるいは目を凝らして見ても見間違いではなくな」

男「それどころか、その人影はこっちを見ている……つまり目があった気がしたらしい」
460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/15(金) 21:51:55.88 ID:xyJCvLF40

男「あわてて窓とカーテンを閉めて布団にもぐったらしい」

男「その日もそれで寝付く事が出来た。そしてまた1日が過ぎる」

男「もうわかると思うが…次の日もやはり目が覚めたんだ。時間は4時15分くらいだったそうだ」

男「カーテンを開けるのは怖いが、やっぱり怖いもの見たさだろうな。覗いてみたらしいんだが」

男「人影はやはりこちらを見てたそうだ。しかも……」

男「最初のに現れてた位置より遥かに自宅に近付いた場所でな」
461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/15(金) 21:59:08.16 ID:xyJCvLF40

男「彼は部屋の四つ角に塩を盛ってみたり、お札を張ってみたりと手を凝らしたらしいんだが」

男「当然のように深夜に目が覚めて、そしてその人影は少しずつ近寄ってきてたそうだ」

男「最初に人影が見えてついに6日目」

男「そのころになると彼の表情がだいぶやつれてたのを覚えてる」

男「顔色悪いし頬もこけ始めてたからな」

男「彼はいつもの時間に眠りに就いた。やっぱり日ごろの疲れがたまってたんだろうな。よく眠れたらしい」
462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/15(金) 22:02:00.75 ID:xyJCvLF40

男「が、やはり深夜に目が覚めた」

男「時間は4時半すぎたくらいで、竹刀を掴むと跳ね起きたそうだ」

男「そしてカーテンの隙間から窺うような事はしないで、思い切って全開したそうだ」

男「すると人影はついに家の前に立って、こちらを見上げていたそうだ」

男「おっと、言い忘れてたかもしれないが彼の部屋は2階な」

男「そこで初めて気がついたらしいんだが、人影は女性だったそうだ」
463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/15(金) 22:14:15.33 ID:xyJCvLF40

男「長い髪に白装束。典型的な幽霊のスタイルだったらしいんだが、唯一つ」

男「彼女は大きな鎌を背負っていたらしい」

男「漫画の死神キャラが持ってるようなアレな」

男「少し開き直った感があった彼もまたショックを受けてさ」

男「次の日は学校を休んだよ」

男「学校は休んでも時間は進む、彼はその日は寝ない事に決めたらしい」
464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/15(金) 22:16:25.42 ID:xyJCvLF40

男「寝ずに扉から一番遠い壁に背中を預けて、竹刀を抱えて待つことにしたそうだ」

男「9時、10時、11時。順調に時間が過ぎてたはずなんだが、12時になって変化が現れた」

男「今までは眼が冴えてたのに急に眠くなったらしいんだ」

男「それこそ、病気なんじゃないかっていう勢いだったそうだ」

男「………」

男「次に目が覚めたのは明け方……4時44分」
465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/15(金) 22:20:05.45 ID:xyJCvLF40

男「目を開けると、真っ暗ないつもの自室で、時計は4時44分」

男「やはり目が冴えていた」

男「彼はもう1週間くらい続けた癖で部屋のカーテンを開けたんだ」

男「外には誰もいない。その代わり、窓に映った自分の背後に人影が見えたそうだ」

男「あわてて振り向くと、さっきまではいなかったし部屋のドアが開いた音すらしなかったのに、そこに女性がいた」

男「長い髪に白装束で、大きな鎌を持った笑顔の女性がな」
466 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/15(金) 22:25:09.12 ID:xyJCvLF40





彼『お前、誰だ?』

女『ノンノン、名乗るときは自分からネ』

彼『え?あぁ…俺は彼だ』

女『OK彼ネ。私は女だヨ』

彼『じゃあ女はその鎌で俺を[ピーーー]気か?』

女『NO、殺してほしいなら殺しても良いけど私はあんまり好きじゃないヨ』
467 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/15(金) 22:28:53.56 ID:xyJCvLF40





彼『うそつけ、騙されないぞ』

女『彼はナンセンスだネ。そんな竹刀じゃこれは防げないネ』ヒュン

彼『………竹刀が切れちまった。しかも俺への手ごたえなしで』ヘナヘナ

女『そうやっておとなしく座ってるとイイヨ』

彼『お前…死神か?』

女『ノンノン、お前…じゃなくて女』
468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/15(金) 22:32:17.63 ID:xyJCvLF40





女『私が誰なのかは秘密だけど、とりあえず人間ではないヨ』

彼『じゃあお前は何しに……!』ヒュン

女『女…ネ?次はないヨ。彼』ニコニコ

彼『じゃ、じゃあ女……さんは何しに来たんだ?』

女『それはねぇ……連れて帰るためだヨ』

彼『連れて帰る?』
469 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/15(金) 22:34:55.53 ID:xyJCvLF40





女『YES、私たちはババサr……』コホン

女『私たちは人間の若者を月に数人、山に連れて帰らなきゃならないネ』

彼『で、なんでそれが俺なんだよ?』

女『だって、1週間くらい前に目があったからだヨ』ニコッ

彼『そんな満面の笑みで言われても困るんですけど…』

女『私としても手荒な事はしたくないし、デートだと思ってサ?』
470 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/15(金) 22:42:01.50 ID:xyJCvLF40





彼『いやいやいや、連れて行かれた先は?』

女『そんなの知らないネ。私たちは規則で連れて帰ってるだけで、食べたりはしてないからネ』

彼『んな無責任な……』

彼(鎌を持った女性で山に連れ帰る……それにさっきの言葉ってことは…)

女『ねーねー、人助けだと思って付き合ってヨ。今ならサービスするよシャチョサーン』

彼『古いっての…それに対処法わかったしね』ニヤッ
471 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/15(金) 22:45:21.96 ID:xyJCvLF40





彼『ババサレ、ババサレ、ババサレ』

女『…………』ピクッ

彼『もっかい、ババサレ、ババサレ、ババサレ』

女『良い度胸ネ。やっぱり首だけ持って帰る事にするネ』ヒュン

彼『え、ちょ……』ズバン!

彼『床に穴開いてるんだけど……』
472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/15(金) 22:47:46.27 ID:xyJCvLF40





女『………』シクシク

彼『なんで泣いてるし』

女『私はまだババアじゃないネ。彼はデリカリーが無さ過ぎるネ』エグエグ

彼『そこだったんだ……ごめんな。女さん』

女『………じゃあ一緒に来てくれるカ?』

彼『それこそ無理なんだ…だから、そうだな』
473 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/15(金) 22:48:21.49 ID:xyJCvLF40





彼『お帰りくださいお姉さん、お帰りくださいお姉さん、お帰りくださいお姉さん』ドヤァ




474 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/15(金) 22:50:33.68 ID:xyJCvLF40





女『………』

女『アハハハハハ、彼はとっても面白いネ』ケラケラ

女『残念だけどそれじゃ意味はないネ』

彼『なんだよそれ…正解を言ったら駄目だった癖に』

女『あれはあくまで自主判断なんだヨ。だから帰る人は帰るし、私見たいのは帰らない』

女『でーも、今のは面白かったから帰ってあげるネ』ケラケラ
475 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/15(金) 22:53:11.89 ID:xyJCvLF40





女『ハブァネクストナイト、彼ー』フリフリ

彼『もう来ないでくれよ?』

女『徘徊に疲れたら休憩しに来る事にするネ』

彼『やめてくれ……切実に』

女『冗談だヨ。じゃあグッドナイト』ケラケラ

彼『はいはい、じゃあな』フリフリ
476 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/15(金) 22:55:17.84 ID:xyJCvLF40




男「というわけで、ババサレに遭遇した話だ」

友「呪文の方は婆去れって意味から来てるみたいだな」

男「だからこそ、彼はとんでも呪文を思いついたんだろ」

友「だからって本当に言ってしまう彼もすごいと思うけどさ」

男「しかしそれ以上に、理不尽な逆切れは怖いな」

友「まったくだ。確かに若い女性に婆はまずいと思うが」
477 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/15(金) 22:56:58.06 ID:xyJCvLF40


男「まったくだな。ちょうど良い呪文を考えてみるか?」

友「女史去れ、女史去れ、女史去れ」

男「女子去れ、女子去れ、女子去れ」

男「お?同じかな?」

友「ニュアンスが違う気もするけどな」

男「まぁ出会わなければ良いんだけどな」
478 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/07/15(金) 22:59:06.61 ID:xyJCvLF40

友「それはそうと彼はどうした?」

男「ときどき深夜に起こされて彼女のお茶に付き合わされるんだとさ」



第17話『ババサレの正体がお姉さんなわけがない』了
479 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/07/15(金) 23:01:22.64 ID:Taq8EQKV0
乙ー

まさかババサレの話とは…
480 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/07/15(金) 23:05:08.18 ID:rhjE57G/0
少し前の話になるが、蜘蛛女の話を読んでキタ・ナオエという少女漫画家が描いた蜘蛛女の話を思い出した。
あれも異能の力で人助けをしたために迫害される話だったが、少女漫画(最近の少女漫画に詳しくないから、『昔の』と言う注釈が付くのかもしれないが)だからハーピーエンドだったな。
まぁ、そういう蜘蛛女もいたという話だ。
481 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/16(土) 00:01:23.55 ID:VnWR28HIO
いいよいいよ素晴らしいネ
482 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/07/16(土) 05:24:58.35 ID:0VuiFZ3ro
乙〜
もう残り83話しかないのか……
483 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/07/16(土) 12:01:28.99 ID:VQdS7nPYo
どっからハーピー出てきたんだよ・・・
484 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/16(土) 12:49:18.70 ID:6jHBhRODO
ハーピーだとファンタジーだが
鳥人とか鴉天狗って言うとちょっと心霊っぽい不思議
485 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/07/16(土) 21:16:24.14 ID:FTejYtcb0
一瞬、ハーピーに捕食されるエンドだと思った
486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/07/17(日) 01:15:59.86 ID:14kxoKC/0
ゴメン、ちょっと何かに操られながら書いてたから間違えた。
487 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/18(月) 17:34:37.57 ID:nbd3wJbDO


ちょっと妖魔夜行でも読み返したくなってきた気分
488 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 21:01:33.98 ID:6CbWOlLl0

友「今度はアレの話でもしようか」

男「アレ?」

友「まぁ今度も落語みたいな笑い話程度に聞いてくれよ」

男「笑い話ねぇ…大概が笑い話な気もするけどな」

友「そう言われると確かに」

友「学校の先輩に聞いた話だ」
489 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 21:04:05.30 ID:6CbWOlLl0

友「先輩は陸上…というか駅伝部?でな」

友「とにかく学校の外を走る事が多かったらしい」

友「一人ひとりだったり、あるいはまとまってだったり、それは日によって違うみたいだけどな」

友「その日は山道の方をそれぞれが走る日だった」

友「その先輩はそこまで早い方じゃなかったけど持久力があったらしくな」

友「他の部員を追いかけるように走ってたそうだ」
490 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/07/19(火) 21:05:21.52 ID:o/oruwyfo
きてた
491 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 21:07:59.90 ID:6CbWOlLl0

友「するとしばらく先に、部員が一人座りこんでるのが見えた」

友「部内でもトップクラスの俊足でこのコースの途中程度でへばるような人じゃなかったらしい」

友「疑問に思った先輩は声をかけたんだが、その人は怪我をしたようだと答えるんだ」

友「走ってたら足元がもつれて、直後足首が痛み出したと言うんだとさ」

友「しかしみると血は出てないし外傷の様子は無い」

友「転んだときに足をくじいたのだろうと湿布を1枚渡して先輩は先に進んだそうだ」
492 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 21:12:16.77 ID:6CbWOlLl0

友「そのまましばらく進むと、また一人部員が足を抑えて座っていた」

友「理由を聞くと、やはり足がもつれて転びかけたら足が痛くなった…と言うそうだ」

友「二人とも怪我なんてするような人じゃないから珍しいな…と思いつつ湿布を渡し、またさきに進むことにした」

友「その後も何人か同じように座りこんでる部員を見かけて、いよいよ疑問に思っていたんだが」

友「山道が下りにさしかかるとさらにその数は増えたんだ」

友「山道っても一応舗装された道路だしな。これほどの大人数の怪我はあり得ない現象と言って良い」
493 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 21:16:06.14 ID:6CbWOlLl0

友「流石に走るのを止めて歩いて座りこんでる部員に声をかけて歩いていたそうなんだが…」

友「急に風が吹いてその先輩も足元がもつれてそうだ」

友「前のめりに転びそうになったんだが、その先輩はそこでとっさに足を前に出して、なんとか踏み堪えた」

友「すると、その踏み出した足で何かを踏んでる感触が伝わってきたそうだ」

友「体勢を立て直しつつ、ネズミでも踏んだかと咄嗟に足をよけたんだが」

友「……そこにはイタチが居たそうだ」
494 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 21:21:20.49 ID:6CbWOlLl0

友「それに、なぜか前足に小さな鎌を左右に1本ずつ持ってな」

友「先輩は何事かとそばで覗きこんだのだが、するとさらに2匹のイタチが近寄って来た」

友「片方はL字の棒を、もう片方はクリームの瓶のようなものを持っていたそうだ」

友「先に行ってしまうとこの3匹は兄弟だったそうだ。そうだな…今後は」

友「鎌を持っていたのを鼬、棒を持っていたのを兄鼬、薬を持っていたのを弟鼬と呼ぶぞ」
495 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 21:25:07.68 ID:6CbWOlLl0





鼬『油断したっ…足が折れちまって鎌が握れねぇ…』

鼬弟『兄者、俺の薬は切り傷はふさがるが打ち身には効かねぇんだ』

鼬兄『おぉ、俺が上手に転ばせられなかったばっかりにすまねぇなぁ…』


彼『なんだお前ら……』

鼬兄『うるせぇ、あっちに行きやがれ』

彼『いや、そう言われてもな……』
496 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 21:30:26.61 ID:6CbWOlLl0





彼『そもそも…なんでイタチが喋れるんだ…』

鼬兄『イタチだぁ?俺らは鎌鼬だ。そこらの獣と一緒にするんじゃねぇ!』

鼬弟『お前ぇのせいで兄者は鎌が握れねぇんだ。どう落とし前付けてくれるんでぇ』

彼『俺は転びそうになったのを堪えただけで、そんなの知らないっての』

鼬弟『おぅおぅ、言い逃れとは見苦しいじゃねぇか。現に兄者は……』

鼬兄『まったくだ。これじゃ商売あがったりだぜ。1両2両の話じゃすまねぇぜ?』
497 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 21:33:43.29 ID:6CbWOlLl0





彼『街中でチンピラに絡まれた気分だな…』

鼬『……まぁ、待てよ二人とも。仮にもこいつは兄上の足払いを堪えたんだぜ?』

鼬『ここは俺達の負けじゃねぇかな』

鼬兄『それは…そうだがよぅ』

鼬弟『そうだぜ、このままじゃ俺達兄妹の面子が立たねぇよ』

彼『………!』
498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 21:37:34.28 ID:6CbWOlLl0





彼『ちょっとまて、お前ら今、俺の事を転ばせようとしたって言ったような』

彼『ってことはむしろ俺が被害者じゃないか』

鼬兄『あ?それがどうした?』

彼『いやいや開き直るなっての。それにその鎌。あいつらやったのもお前らだろ』

鼬弟『あのな、俺たちはなぁ―――』
鼬『いいからちょっと黙ってろ、俺が話す』
499 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 21:40:30.98 ID:6CbWOlLl0





彼『俺の話はまだ終わってないぞ』

鼬『いいから、まずは俺の話を聞きな若いの』

鼬『どうやらわからんようだから1から説明するぞ…』

鼬『俺たちは鎌鼬(カマイタチ)ってな。3匹一組で転ばせ、切りつけ、血止めする。そういう妖怪だ』

鼬『若いのの言う通り、今日はこの山を通る人間が多いから片っ端から切りつけてやった』

鼬『それが俺たちの仕事でもあるかな。それについて謝るつもりはねぇ』
500 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 21:43:09.98 ID:6CbWOlLl0





鼬『でだ、問題はここからなんだ』

鼬『お前さんは俺達の上昇気流の型…まぁさっき言った一連の動作だが…』

鼬『それを破っちまったんだ』

彼『そりゃ、これだけ周りで足元すくわれてりゃ用心くらいするからな』

鼬『その結果…俺を踏みつぶした…と?』

彼『そりゃ悪いが、でもお前たちが先にしかけた事だろ?』
501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 21:48:04.39 ID:6CbWOlLl0





鼬『その通りだ。だからこれについては何も言わねぇ』

鼬『問題はだな、俺たちはいわば負けたってことだ。負けたからにはこの山から出て行かなきゃならねぇ』

鼬『最近はどこの山も人間の手が入って行き場がねぇんだ。』

彼『そう言われてもな………!』

彼『お前のその薬は血止めじゃなくて痛みどめも出来ないのか?』

鼬弟『あ?もちろんできる。というか、痛みどめの薬を持ってるが…それがどうした?』
502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 21:51:21.39 ID:6CbWOlLl0





彼『それじゃ提案だ。この山で切った人間全員に痛みどめを塗ってくれたら、お前らの居場所を確保してやる』

鼬兄『何バカな事言ってんだ?人間の世話になんかならねぇ』

彼『でもここから出て行くんだろ?そいつは足が折れてるのに』

鼬『ぐ……だが妖怪の誇りってもんがあってだな』

彼『だったら、その足が治るまでってのはどうだ?』

鼬『………』
503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 21:53:12.74 ID:6CbWOlLl0





鼬弟『俺は賛成だ』

鼬『お前……』

鼬弟『恥かもしれねぇけど兄者の体が先決だ』

鼬兄『たしかに、一理ある。お前の体が戻ればどこにでも行けるじゃねぇか』

鼬『……わかった。二人に任せるぜ』

彼『決まりだな。じゃあ薬を塗ってきてくれ』
504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 21:56:08.53 ID:6CbWOlLl0





鼬『ッチ……二人とも弱気なもんだぜ』

彼『まぁそう言うなよ。お前の事を心配しただけだろ』

鼬『大きなお世話だぃ』

鼬『だが、世話になるぜ、若いの』

彼『ギブアンドテイクだろ』

鼬『………』
505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 22:02:14.78 ID:6CbWOlLl0





彼『ところで、こんなことしたって良いことないんじゃないか?』

鼬『そうかもしれねぇが他に何も出来ねえのよ』

彼『どうだろうな。お前の鎌は精密なのか?』

鼬『相手が動かなければかなり細かいレベルで調整して切れる自信はあるがな』

彼『弟の薬は強力みたいだし、いっそ動物の医者でもやればいいのに』

鼬『誰が他人のためになんか働くかよ』
506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 22:03:18.08 ID:6CbWOlLl0





彼『家の実家は動物の医者なんだ』

彼『家で養生してる間にいろいろ見てみれば良いさ。悪くないぞ?』

鼬『ケッ、余計なおせわでぃ』

鼬『………』
507 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 22:07:29.60 ID:6CbWOlLl0





友「というわけで、その先輩の家には今も3匹のイタチがいる」

男「それがその鎌鼬だってのか?」

友「可能性があるって話だよ。鎌鼬も見かけは普通のイタチみたいだし、わからん」

友「あと、先輩は卒業した後で獣医になったらしいんだが…」

男「はぁ…まぁよくある話だが」

友「治療の様子は誰にも見せなくて、切り傷の治療や切開ものの手術が偉く上手だそうだ」
508 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 22:09:44.13 ID:6CbWOlLl0

友「年齢から考えると天才の領域で……な」

男「改心したってことなのか」

友「さぁ?どうだろうな」


第18話『3匹の鎌鼬が獣医になるわけがない』
509 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 22:11:52.56 ID:6CbWOlLl0

男「んじゃ、今度はそうだな…」

男「普通に幽霊に遭遇したって話にするか」

男「思えばこれだけ話してもほとんど妖怪の類で幽霊の話はあんまりしてなかったな」

友「やぁつぱり妖怪物はキャラが立つ分印象に残るしな」

男「確かにそうだな。話しやすい部分は多い」

友「で、今度はどんな幽霊なんだ?」
510 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 22:14:34.26 ID:6CbWOlLl0

男「周りが畑とか田んぼだらけの道路ってあるよな」

友「よくあるな。この時期なら田植えはしてあるだろうから歩くと涼しくて良いな」

男「あはは、散歩はあんまりしないからわからんよ」

男「まぁとりあえずそういう道路でのミラーの話だ」

男「先に前提だと、そこは十字路なんだけど、ビニールハウスがあって見通しが悪いからとミラーがついてたそうだ」

男「あのカーブのつける大きい奴な。そう言う場所と想像して聞いてくれ」
511 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 22:19:37.56 ID:6CbWOlLl0


男「俺の知り合いなんだが、部活ですっかり遅くなって真っ暗な道を自転車で帰ってたそうだ」

男「その道は農道だからな。夜の街灯はないんだ」

男「で、そのミラーのある交差点だけ薄暗い古い街灯があるんだけど…」

男「その時はタイヤがパンクして途中で押しながら帰ってたんだ」

男「で押しながら交差点まで来た」

男「当然、見通しが悪いからミラーを見るんだが…そしたらな」
512 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 22:22:19.41 ID:6CbWOlLl0

男「自分の自転車の背後に白いワンピースを着た女の子が映ったそうだ」

男「もちろんここまで一人で来たのは間違いない」

男「耳を澄ませても誰かが居る様な息遣いとか衣擦れの音なんかしない」

男「振り向けばもちろん真相がわかる話だが、その時は首が動かなかったそうだ」

男「その日彼はそのまま知らないふりをして自転車を押して帰ったそうだ」

男「というか、見間違いと言う事で無理やり納得したんだな」
513 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 22:25:40.83 ID:6CbWOlLl0

男「数日後、また部活で遅くなってその道で帰っていたんだが」

男「その日は自転車のチェーンが突然切れてしまったらしい」

男「そしてまた例の交差点まで自転車を押した」

男「ミラーを覗くとやはり女の子は自分の後ろに立っていたそうだ」

男「やはり確認しようにも首は動かずミラーを見たまま固まってしまったそうなんだが…」

男「ふいに女の子がスッ…と右側を指差したんだ」
514 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 22:27:44.69 ID:6CbWOlLl0

男「人間の癖なのかな。そいつはミラーごしに指差されるまま右側を見てしまった」

男「当然、何も無い。」

男「そして彼が視線を前に戻すと……」

男「後ろにいたはずの女の子が目の前にいるんだ。本当にすぐ近くにな」

男「青白い肌に大きな目でジーっと彼を凝視してこう言ったんだ」
515 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 22:28:44.09 ID:6CbWOlLl0





女『ねぇ、見えてるんでしょ?』




516 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 22:31:30.48 ID:6CbWOlLl0




男「彼は驚いて押してた自転車を倒してしまった」

男「ガシャンって大きな音を立てて自転車が倒れたのに、女の子はやっぱり目の前から動かず」

男「それどころか彼に顔を近づけて何度も聞いてきたそうだ」

男「『見えてるんでしょ?』ってな」
517 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 22:36:45.33 ID:6CbWOlLl0

男「彼はようやく我に返ると、女の子を押し飛ばして自転車もそのままで走って逃げたそうだ」

男「で、後日の昼間に自転車を回収したんだが、チェーンの切れ方不自然なんだと」

男「サビや小さい傷からの劣化じゃなくて、無理やり引きちぎったような切れ方をしてたそうだ」

男「それからしばらく彼はその道を使うのをやめたんだが…」

男「休日に遊んで帰るとき、やはり自転車でその交差点を通ってしまってさ」

男「ミラーを見ると自分しか映らなかった。今回は大丈夫だと安心してこぎ出すと一つ異変が起きた」
518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 22:40:24.57 ID:6CbWOlLl0

男「自転車についてるサイドミラーを見たときに映ってたんだよ」

男「自分の後ろ…荷台に座ってる女の子がな」

男「それに気がつくや腹が急に冷えて来たらしい」

男「見てみると青白い腕が抱きついてたそうだ」

男「夜風なんかじゃなく、背中も寒い」

男「そして耳元に息を吹きかけられながらこう言われたそうだ」
519 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 22:41:29.36 ID:6CbWOlLl0





女『逃げても無駄だよ。ふふっ……』



520 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 22:44:30.38 ID:6CbWOlLl0





彼『お前……誰だよ……』

女『誰だっていいじゃない。そんなのはさ』

女『それより、私は君の事気に入ったんだけど』

彼『俺の事をどうするつもりだよ?』

女『お友達になろうよ』

彼『いきなりそんな事言われてもな…』
521 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 22:46:39.24 ID:6CbWOlLl0





女『私ね、とっても寂しいの。前みたいに毎日来て欲しいな……』

彼『毎日夜遅く通るわけじゃないし無理言うなよ』

女『前は来てくれてたじゃん。私に会いに来てくれてたんでしょ?』

彼『あれは部活が忙しかっただけでお前に会いに来たわけじゃない』

女『なんでそう言う事言うのかな……ねぇ?』

彼『………!』
522 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 22:49:25.65 ID:6CbWOlLl0





彼『そんなに腕を締められると苦しいんだけど……』

女『そう?君が寂しいこと言うからだよ?』

彼『わかった…悪かったよ』

女『わかってくれればいいんだよ。あとお前じゃなくて女って呼んで欲しいな』

彼『女?』

女『そうだよ。男君………ふふふっ』
523 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 22:51:05.86 ID:6CbWOlLl0





彼『っと、ここ曲がるともう家だからそろそろ………!?』

彼『どこだここ?』

女『交差点……ほら?』

彼『いやだって帰り道は間違ってないはず』

女『私ともっといてくれるように戻ってきてくれたんだよね?』

彼『いや帰らないと……』
524 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 22:52:32.55 ID:6CbWOlLl0





女『私の事を置いて帰るの?』

彼『そんないきなり無理をいうから…』

女『じゃあ、明日も来てくれるよね?』

彼『……わかったよ』

女『約束だよ?じゃお休み。男君…ふふっ』スッ

彼『消えた…?はぁ、助かった』
525 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 22:55:48.92 ID:6CbWOlLl0




男「このやり取りの後、無視しようとしたんだけどな」

男「彼は怖くなってまた次の晩もその道に行ったらしい」

男「で、当然のように彼女は現れて話をして」

男「という毎日を繰り返してたらしい。と言ってもこの間の話だけどな」

友「その幽霊はいわゆるヤンデレの類なのか?」

男「むしろ悪霊の類だろ」
526 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 22:57:30.17 ID:6CbWOlLl0

友「で、その後彼はどうなったんだ?」

男「電話してみるか?」

―――プルルルルル、ガチャ―――

?『邪魔…しないでね』

―――ツー、ツー――――
527 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 22:58:32.66 ID:6CbWOlLl0

友「どう考えてもまずそうだな」

男「無事を祈るしかないな…」


第19話『ヤンデレ幽霊に死ぬほど愛されるわけがない』了
528 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 23:07:54.30 ID:6CbWOlLl0

友「と、とりあえず次で20話だな」

男「そ、そうだな。何かあるか?」

友「テケテケってわかるか?」

男「上半身だけの幽霊か?」

友「正解だ。あれについて少し小話」

友「ネットでの話だから信憑性は薄いがな」
529 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 23:09:41.62 ID:6CbWOlLl0

友「テケテケっていうのは電車の事故で死んだ人の霊だそうだ」

友「その事故で上半身と下半身が切れてしまったからな」

友「それで上半身が下半身を探して飛び回ってるんだとさ」

男「なんでテケテケって言うんだ?」

友「テケテケって笑うそうだ」

男「変な笑い方だな」
530 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 23:12:55.24 ID:6CbWOlLl0

友「で、テケテケは自分にあう下半身を探してて」

友「鎌で人を真っ二つにしてはピッタリの足を探してるんだとさ」

男「良い迷惑だな。で、この話を聞くと出てくるのか?」

友「あはは、都市伝説としてはそうだな」

友「でも俺が話したいのはもう一つだ」

男「もうひとつ?」
531 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 23:14:41.43 ID:6CbWOlLl0

友「上半身のみの幽霊があるなら、下半身だけの幽霊もいると思わないか?」

男「あ…」

友「だろ?そちらもやはり上半身を探してて、常に歩きまわってるそうだ。名前は…」

友「トコトコ」

男「わかりやすいな」

友「喋れないんだから仕方ないさ」
532 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 23:17:03.08 ID:6CbWOlLl0

男「それで、トコトコに会うとどうなるんだ?」

友「どうにもならない」

男「は?」

友「だって、顔がないからな。何も認識できないんだ」

友「というか、ときどき壁にぶつかってるらしい」

男「なんだそれ?かっこ悪すぎるだろ」
533 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 23:18:42.50 ID:6CbWOlLl0

友「トコトコはひたすら歩き続けて、テケテケが見つけてくれるのを待ってるんだとさ」

男「なんともちぐはぐな奴らだな」

友「そうだな。テケテケは探してるとはいえ、他人から奪う気になっててあんまり自分の足に執着してないしな」

男「待ちぼうけを食らった男みたいだ……」

友「……悲惨だな」

男「全くだ…」
534 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 23:23:18.63 ID:6CbWOlLl0

友「でもトコトコも多少はユーモアがあるって話だぞ?」

男「へぇ、どんな?」

友「たまにムーンウォークしてるとか」

男「ねーよ」


第20話『テケテケの相棒がこんなに不憫なわけがない』了
535 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/07/19(火) 23:27:24.89 ID:6CbWOlLl0
>>1です
第19話の『男君』は全て『彼君』ですね。

そして少しネタ切れ気味で更新が遅くなりがちです。
何度かやってはいますが題材になりそうな妖怪や幽霊を書き込みしていただければ
可能ならば拾おうと思いますので是非お願いします。

といっても拾うかどうかはお約束できませんが…
536 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/07/19(火) 23:46:34.87 ID:gUz3muGAO
オバリヨンという俗に言うおんぶお化けがいてだな…

(詳しいことは忘れました。子供版の子泣きジジイだったかな?)
537 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(高知県) [sage]:2011/07/19(火) 23:50:23.86 ID:UixwTqOT0
灯り無蕎麦とかどうでしょう。詳しい話は忘れましたが
ヤンデレ幽霊はたから見ると可愛いけど彼クンにはなりたくない
乙!
538 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/07/19(火) 23:53:54.39 ID:hUsQmcono
もう20話!乙です。毎度バリエーションあってすげー
「コックリさん」お願いします!
539 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/20(水) 00:11:58.87 ID:9vAQewEgo
乙乙
ドッペルゲンガー位しか出てこ
540 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/07/20(水) 00:42:53.41 ID:uhMVRARe0
どうしよう、この妖怪や幽霊共微笑ましすぎる
呪いの音楽室とかお稲荷さんとか付くも神とか雪女とか
今から考えただけで楽しみすぎる

>>1乙!
541 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 00:53:54.11 ID:WFwlcLUKo
乙!

預かった赤ん坊を抱いているとどんどん重くなって
夜明けまで堪えると怪力を授けてくれる氏神の話しとか
542 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) :2011/07/20(水) 02:12:48.12 ID:LrVozOj40
乙!

アンサーさん、ひき子さん、吸血鬼をお願いします。
543 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/20(水) 02:14:52.18 ID:f2//2UgIO
奥多摩に出るオレンジ色のUMAの噂知ってる人いる?
544 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/20(水) 02:25:59.19 ID:hvPPtYyHo
ヤンデレいいなー
545 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/07/20(水) 03:02:19.93 ID:p+hGkGXAO


ガチで怖いんだけど八尺様とかは?
可能ならどうこねくりまわしてくれるか楽しみだ
546 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/20(水) 03:23:43.28 ID:CozJoAJQo
たしかに洒落怖なんかで有名な話をいい意味で台無しにしてほしい
クネクネとかヒサルキとか
547 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/07/20(水) 03:28:06.16 ID:uhMVRARe0
>>545
ヤタガラスとはまたマイナーな
でも確かに見てみたいな
548 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/07/20(水) 07:23:46.07 ID:mTqvmp4ho
洒落怖といえば
男「そういえば知り合いに寺生まれのTさんって人がいてな」 とか
友「『師匠』って呼ばれてる大学生の知り合いの話なんだが」
・・・・・・みたいな夢の共演とかきたら俺歓喜wwww

「ぬっぺら坊」「山姥」なんかの絶滅危惧種を保護して欲しいです
549 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/20(水) 07:55:58.25 ID:DlL96jKDO
>>548
懐かしいなぁ・・・


高速婆さんだか環八婆さんだか忘れたけど
それが読みたいでげしょ
550 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/07/20(水) 09:51:43.84 ID:sFNvmj+Lo
ぽっぽっぽっぽっぽぽぽ
551 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 20:31:44.56 ID:/zaygWqv0

男「もう21話か……」

友「そうだな。最初のメリーさんからだいぶ来たもんだ」

男「よし、じゃあここらでもう一度メリーさんの話でもするかな」

友「お?あれ以降もあってたのか?」

男「実は結構あってたりするぞ」

男「まぁあんまり同じ幽霊の話ばかりじゃつまらないからほどほどにしか話さないけどな」
552 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 20:34:06.45 ID:/zaygWqv0

男「あれはやっぱり雨の日だな」

男「家族はみんな出かけたものだから」

男「俺は部屋で将棋をしてたんだ」

男「座敷童子とな」

友「その地点で突っ込みどころ満載なんだがな」

男「まぁそう言うなよ」
553 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 20:39:43.36 ID:/zaygWqv0





彼『お?だいぶ強くなったじゃないか』パチッ

男『負けっぱなしは悔しいからな』パチッ

彼『でも、まだまだだな。王手だ』パチッ

男『む……詰んでるな』

彼『残念でした』ニヒヒッ

男『チェスならまだ負けないんだけどな…』
554 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 20:46:06.51 ID:/zaygWqv0





彼『そうは言ってももう少しで勝てそうな気はするんだけどな』

男『チェスまで負けたら立つ瀬がないから止めてくれ』

彼『おや、それは残念だね』ケラケラ

―――『嗚呼、ふーくしゅうはつみがゆえーに…』―――

男『おっと、すまん。電話だ』

彼『おや、彼女かい?』

男『いや…非通知だ……誰だ?』ピッ
555 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 20:48:20.13 ID:/zaygWqv0





女『わたくし、メリーさんち申しますの。今、貴方のお家の前に居ますわ…』




556 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 20:50:47.20 ID:/zaygWqv0





男『………』ピッ

彼『おや、切ってしまっていいのかい?』

男『あまりに厄介なあいt……』
―――『嗚呼、ふーくしゅうはつみがゆえーに…』―――

女『いきなり切るなんて酷いですわ!』

男『じゃ、こんな時間に何の用だ?』

女『退屈なのでお茶でもしようかと思いまして』
557 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 20:56:20.36 ID:/zaygWqv0





男『どうせ断っても入ってくるだろう?』

女『さぁ?どうかしら?』

男『わかったよ。ちょっと待ってろ』ピッ


彼『それじゃ、あたしはお邪魔かな』

男『いや、そのまま待ってて良いよ』

彼『おいおい、俺は人間じゃないし見られちゃ困るんじゃないのか?』ケラケラ
558 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 20:58:28.90 ID:/zaygWqv0





男『大丈夫、相手も人間じゃない』

彼『………は?』ポカーン

男『まぁ、漫画でも呼んで待っててくれ』パタン


―――ガチャ―――

男『あれ?帰ったのか?』

女『わたくし、メリーさんと申しますわ。今、貴方の後ろに居ますわ…』

男『はいはい、人の家にいきなり入るんじゃない』ペシッ
559 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 21:01:30.39 ID:/zaygWqv0





女『うー、2度もわたくしをぶつなんて…』

男『悪ふざけが過ぎるからだろう?』

女『そ、それは私が幽霊だからであって……』

男『わかったから早く着いてこい。玄関に居られても迷惑だぞ』スタスタ

女『ま、待ちなさい。置いてくんじゃありませんわ』スタスタ

女『あ、お邪魔いたしますわ』
560 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 21:05:48.83 ID:/zaygWqv0





―――ガチャ―――

男『待たせたな』

彼『いや、構わんよ』

女『あら、お友達が居ましたの?なら遠慮しましたのに…』オズオズ

彼『可愛いお嬢さんだな。はじめまして、あたしは座敷童子だ。よろしくな』ニッ

女『あら御丁寧に。わたくしはメリーと申しますわ。よしなに』ペコリ

男『俺はおとk…』
彼・女『知ってるよ『ますわ』』
561 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 21:08:48.01 ID:/zaygWqv0





彼『それにしても、メリーさんってことは…あの人形の?』

女『それはお話だけですけど、正解ですわ。座敷童子さんは家に出るって話の?』

彼『正解だ。この家を拠点に生活してる』

彼『それにしても、男がこんなに可愛い子を知ってるとは驚きだな。なかなかやるじゃないか』

男『馬鹿、そう言う関係じゃねぇよ』

女『………』カアッ
男『お前はお前で顔を赤らめるんじゃない』
562 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 21:11:19.30 ID:/zaygWqv0





彼『まぁ仲が良いのはいいことじゃないか』

男『まったく……で、何する?』

女『と、とりあえずお茶を入れますわ。キッチンをお借りしますわね』ガチャ

男『はいどーぞ』

彼『それにしても君は彼女に冷たいな』

男『そりゃ襲われればそうなるだろうよ』ハァ
563 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 21:16:46.08 ID:/zaygWqv0





彼『彼女も本来は悪霊の類だしな…』

彼『それで君はあたしが現れても驚かなかったんだな』

男『嫌な人生経験だよ』

彼『まぁいいじゃないか。ところで何をしようか?』

男『二人じゃ将棋は出来ないしな……困った』

彼『お、そうだ。そう言えば屋根裏の物置に何か……』スッ
564 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 21:22:07.74 ID:/zaygWqv0





彼『あったあった…こんなのどうだい?』

男『ずいぶん埃まみれだけど、こんなのあったのか?』

彼『昔に買って忘れてたんだろう』

男『そうだな。じゃあこれにするか』

男『戻ってくる前に整備しておかないとな』フキフキ

彼『頑張れ少年。あたしは漫画でも読んでるぜ』
565 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 21:25:26.91 ID:/zaygWqv0





男『手伝えっての……』

―――トントン―――

男『ん、戻ったか?』ガチャ

女『あら、ありがとう』ニコッ

彼『良い香りだな。アッサム?』

女『ダージリンですわ』

彼『なるほど。ほら、少年もお茶にするぞ』
566 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 21:29:18.55 ID:/zaygWqv0





男『お前ら家の人間は放置なんだな』

彼『まさか。ちゃんと呼んだじゃないか』ケラケラ

女『そうですわ。小さいことばかり気にしてては大きくなれませんわよ?』

男『腹立たしい連中だ……』

女『とにかくお茶に致しましょう。スコーンもありますわ』スッ

彼『おや、メリーさんは用意が良いな。ありがたく頂くよ』
567 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 21:36:42.63 ID:/zaygWqv0





―――そして小一時間―――


彼『さて御馳走様。美味しかったよ』

男『ん、御馳走様』

女『お粗末さまでした。お口に会ったようでなによりですわ』

彼『お茶もいただいたし遊ぼうか』

女『あら、いいですわね。何をしますの?』

男『ボードゲームだよ。古いけどな』
568 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 22:04:02.40 ID:/zaygWqv0





女『年季が入ってますのね。望むところですわ』

彼『決まりだな。じゃあ全員分の駒をセットしてっと』

彼『ゲームスタートだ』

男『じゃあ、まずは俺からだ。ルーレット回して…6か』

彼『では次はあたしで…4だな』

女『わたくしは……1?』ショボン
569 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 22:26:49.16 ID:/zaygWqv0





―――少し後―――

男『給与に賞与っと……』

彼『やるじゃないか。あたしは…宝くじに当選だな』

女『わたくしだって……しゃ、借金!?』

女『あんまりですわ……』ショボーン

彼『あはは、このゲームは最後に精算するからまだわからんよ?』

男『そう言う事だ。諦めるなよ』
570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 22:31:54.55 ID:/zaygWqv0





―――更に後―――

男『これで上がりだな。先着でボーナスだな』ニヤッ

彼『少年はこのゲームは強いんだな』ケラケラ

女『………自己破産…』ボソッ

女『も、もうこんなゲームはお終いですわ!』

男『お前は逆にめっぽう弱いのな』

女『うー、二人して酷いですわー』グズグズ

男『わ、わかったから泣くんじゃない』
571 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 22:34:20.27 ID:/zaygWqv0





男『まったく、ゲームくらいで……』

女『ふんっ!知りませんわ』プイッ

彼『あはは、ゲームじゃ少年の勝ちでも、現実じゃメリーさんの勝ちだな』

男『笑ってないでお前も助けろ』

彼『モテる男はつないな少年』ケラケラ

男『くそっ、なんでこんな目に…』
572 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 22:44:28.49 ID:/zaygWqv0





―――ゴーンゴーンゴーン―――

彼『おっと、もう少し二人のやり取りを眺めてたいが、もうこんな時間か』

女『うぅ……それではわたくしは帰りますわ…』

男『ん……気をつけて帰れよ』

女『………』プイッ

男『わかったよ。意地悪して悪かったな』

女『ふんっ、今日は調子が悪かっただけで次はお二人に負けませんわ』
573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 22:45:36.56 ID:/zaygWqv0





女『では、ごきげんよう』

彼『ごきげんよう』

男『じゃあな』


彼『じゃあ…行く事にしようかな』

彼『またな』

男『おぅ、またいつかな』
574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 22:47:45.43 ID:/zaygWqv0




男「と言うわけで、ボードゲームしたって話だ」

友「楽しそうで何よりだな」

男「そう言ってくれるな。二人とも自由すぎて苦労するんだぞ」

友「黙れリア充め」

男「こんなリア充なら譲りたいっての」

友「じゃあ譲ってくれ」
575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/20(水) 22:49:14.92 ID:byHy3EhZo
ボードゲームっていうからジュマンジでもくるのかと…
576 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 22:49:58.65 ID:/zaygWqv0





男「断る」

友「え?」

男「え?」

友「なんだかんだで満足してるだろ?」

男「まぁ楽しいしな」

友「はいはい…」
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/20(水) 22:50:55.92 ID:byHy3EhZo
ボードゲームっていうからジュマンジでもくるのかと…
578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 22:54:07.06 ID:/zaygWqv0

友「ちなみに、そのボードゲームって何かしたのか?」

男「どうやら改造してたらしくて悲惨なカードが異様に多かったくらいだ」

友「そりゃメリーさんじゃなくても泣くな」


第21話『メリーさんと座敷童子が一緒にお茶するわけがない』了
579 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/07/20(水) 23:00:39.46 ID:GurEW1Kd0
乙ー

遅いですが
合わせ鏡の悪魔を出して欲しいです
580 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/20(水) 23:03:44.34 ID:cqsDbNmFo
乙、毎回楽しみにしてる
ちょっと違うかもしれないが
ドッペルゲンガーとか提案しとく
581 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) :2011/07/20(水) 23:11:22.21 ID:LrVozOj40
乙ー
もう男と友の人(?)脈がやばいwww

髪の伸びる人形をお願いします
582 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 23:16:37.06 ID:/zaygWqv0

友「今度はちょっと有名な話をしてみるか」

男「口裂け女とかも有名だと思うんだがな」

友「まぁそう言うなよ。兄の話なんだけどさ」

男「お前、兄なんかいたのか?」

友「言わなかったっけか?」

男「初耳だ」
583 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 23:19:55.94 ID:/zaygWqv0

友「兄が友人の実家に行った時に見たそうなんだけどな」

友「まぁご多分に漏れない田舎で、この時期だから周りは田んぼばかりだ」

友「あとはトウモロコシ畑かな」

友「別に何か目的があったわけじゃないらしいんだが、兄は友人と騒いで回った」

友「騒いだところで誰にも文句は言われないしな」

友「そんな数年前の夏の話」
584 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/07/20(水) 23:21:03.84 ID:uhMVRARe0
乙ー
>>293の呟きが採用されてるとは嬉し恥ずかし

お稲荷様か>>545の怖いヤタガラスさまを希望します
585 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 23:24:57.32 ID:/zaygWqv0

友「夏休みだったからな。その日も外で遊んでいたそうだ」

友「空はまさに快晴。蝉が鳴いて、道路ですら陽炎が漂うような暑さ」

友「それでも風が吹いてたんだ。山から吹き下ろしだからそこそこに涼しい風だった」

友「で、そのまましばらく外に居たんだが…不意に風が止んだ」

友「それだけならよかったんだが、今度は逆に生温かい風が吹き始めたそうだ」
586 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 23:28:38.88 ID:/zaygWqv0

友「兄もその友人も暑い中でそんな気持ち悪い風じゃ不快にもなる」

友「まだ日は高かったけど今日は帰って涼もうって事になって、二人は家路へと着くことにしたそうだ」

友「しばらく歩くと、その友人は立ち止まって田んぼを見たそうだ」

友「兄が声をかけると友人は何かを指差してる」

友「視線を追うとそこにあるのはただの案山子だった」

友「『へのへのもへじ』が書かれたテンプレ―トのような案山子な?」
587 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 23:35:30.25 ID:/zaygWqv0

友「でもよく見ると友人が指差してるのは案山子じゃなくて…その後ろだったそうだ」

友「案山子の後ろに居たのは……白い何かだったそうだ」

友「遠目で見ると、白い服を着た人が両手を万歳して腰や腕をくねくねと振ってような様子だったとか」

友「二人はしばらくその様子を眺めた」

友「くねくね…くねくね…その白い何かはだんだんと近寄ってきたそうだ」

友「流石に不気味に思った二人はいい加減に帰ることにしたんだけどな」
588 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 23:42:00.68 ID:/zaygWqv0

友「いざ背を向けて歩き出すと、やっぱり気になるもんだ」

友「そこで振り返ったんだが…追ってきてたんだ」

友「遠くにいたはずが、いつの間にか道路に上がってくねくねと揺れながらな」

友「二人は走って逃げた。白い何かはすごい速度で追いかけてきた」

友「そしてついに二人は転んで…直視してしまったんだ」

友「その白い何か……クネクネをな」
589 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 23:45:19.02 ID:/zaygWqv0




男「ちょっとまて、クネクネの話は確かに有名だが…」

男「直視したら…というか正体を理解してしまうと発狂するんじゃなかったか?」

友「確かに、有名な説はそうだな」

男「と言う事は…お前の兄は……」

友「残念。普通に社会人してるよ」

男「は?」
590 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 23:47:20.31 ID:/zaygWqv0


男「おかしくないか?」

友「何事も抜け道や失敗、或いは未熟ってこともあるのさ」

男「なんだそりゃ?」

友「俺も聞いた話だから詳しくはわからんけどな」

友「まぁだからと言ってクネクネに会おうとは思わんのだが」

男「そりゃそうだが、とりあえず続きを頼む」
591 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 23:50:23.10 ID:/zaygWqv0


友「どこまで話したっけ…あぁ、直視したところまでだっけか」

友「今思えば舗装された道を二人同時に転ぶってこと自体が不自然なんだけどさ」

友「とにかく二人は見てしまったんだ。クネクネを……」

友「いや、クネクネが転んでるところをな」

友「地面に横になりながらくねくねと蠢いてる姿を見て二人とも流石に笑ったそうだ」

友「もちろん、二人とも発狂してないし、踊りだしたりなんてしていない」
592 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/20(水) 23:57:21.77 ID:/zaygWqv0


友「するとどうだろう。聞こえてくるんだ」

友「『起こして〜、起こして〜』ってな」

友「クネクネは手を上にして揺れてる物体らしいからな、手がつけないし足もないから自分ひとりじゃ起き上がれないんだとさ」

友「二人がクネクネを知ってたら間違いなくこの地点で逃げたんだろうけど、いかんせん子供だ」

友「そんなことも知らず二人はクネクネを起こしてあげる事にした」

友「するとクネクネは何度もペコペコと頭を下げて、お礼を言ったそうだ」
593 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/20(水) 23:59:02.51 ID:PmJOtDRMo
あれ?可愛くね?
594 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/07/21(木) 00:00:44.64 ID:fKeC1p9L0
可愛いのう( ´Д`)ハァハァ
595 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/21(木) 00:03:57.10 ID:Y1hSiQ+R0


友「いざ話してみると、クネクネは正体を見ると発狂するわけじゃなくて、その踊りを一連で見ると発狂するらしいんだ」

友「もっとも、遠くからだと細かい動作が判らないから双眼鏡でも使わないと効果がないみたいだけどな」

友「それを聞いて二人は驚きつつ、怖さを覚えたってことなんだが…子供特有の強さなんだろうな」

友「二人はすっかりクネクネと仲良くなって、危ない踊りはよくないってことで『阿波踊り』を教えたそうだ」

友「もちろん、二人は阿波踊りなんてテレビでしか見たことなくて、うろ覚えの適当なものらしいけどな」

友「それからというもの、帰る日まで2人と1匹?はひたすら阿波踊りの練習をしてたそうだ」
596 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/21(木) 00:07:04.45 ID:Y1hSiQ+R0


友「当然、そんな様子を見れば周りの大人たちは心配するのだが…」

友「当の本人たちは何ら問題なく生活で来てるわけだからな。まるで問題ない」

友「そしていよいよ兄が帰る日が来たわけだが…」

友「友人の親に駅まで送ってもらってる車の中、二人が外の景色を眺めていると案山子が見えたんだ」

友「そしてその背後にはあのクネクネもな」

友「クネクネは万歳した両手を少しだけ振ると、練習したチグハグな阿波踊りを踊ってくれたそうだ」

友「二人の友人を送りだすように、二人がみている間はずっと…な」
597 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/21(木) 00:11:01.68 ID:Y1hSiQ+R0




友「そんなわけで、思わぬ友達ができた良い夏休みだったよって…兄は言ってたぞ」

男「阿波踊りを踊るクネクネっていったい何なんだ…」

友「まぁいいじゃないか。それなら誰も困らないわけだし」

男「まぁそうだけど…シュールな話だな」

友「その後はその田舎には行ってないらしく、会えてないそうだけどね」

男「望んで会うものでもないっての……」
598 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/07/21(木) 00:12:53.77 ID:Y1hSiQ+R0


男「初めてお前の兄の話を聞いたけど、なんか納得だよ」

友「俺ならソーラン節を仕込みたいけどな」

男「そうじゃねぇよ」


第22話『クネクネが阿波踊りを踊るわけがない』了
599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/21(木) 01:02:36.83 ID:KWDmlWtw0
乙!クネクネワロタww
600 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/21(木) 01:03:49.21 ID:Y1hSiQ+R0
>>1です。
たくさんのご提案ありがとうございます。
自分の整理の為に提案されたものを一覧として書き込みます。

・おばりよん  ・燈無蕎麦
・コックリさん ・ドッペルゲンガー
・呪いのピアノ ・稲荷神
・付喪神    ・雪女
・産女     ・アンサーさん
・ひき子さん  ・吸血鬼
・八尺様    ・ヒサルキ
・八咫烏    ・ぬっぺら坊
・山姥     ・ターボばあちゃん
・ジュマンジ  ・合わせ鏡の悪魔
・お菊人形   ・鴉天狗
601 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/07/21(木) 01:33:53.29 ID:Mk2e47xAO
『よだそう』(話しによっては『あぎょうさんさぎょうご』とも言うらしい)とかどうだい?
『よだそう』は笑いにもホラーにも出来そうだしさ。
602 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/21(木) 01:45:41.03 ID:yR2ERNNwo
>>1がレスしてる最中はレスしないほうがいいとおもうんだ
603 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/07/21(木) 02:24:37.53 ID:BSiKm3ngo
この流れでこのまま行ったら男と友の友人は誤差考慮して45人ぐらい居るってことになるんだよね
友達100人も夢物語じゃないな
604 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/22(金) 00:08:23.96 ID:SCkiYg8yo
>>603
友達100人なんてまっとうに生きてたら普通にできるだろ
605 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/22(金) 07:45:55.61 ID:MbQjME3DO
>>604
察してやれよ
606 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/07/22(金) 08:53:17.15 ID:tpmlbA3fo
>>604
ぶん殴るぞ
607 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/07/22(金) 22:58:58.29 ID:MHgAKOSS0
>>603-606
未だに不思議なんだが、「一年生になったら」って歌あるよな?
何で友達100人作ったのに行動するのも100人だけなんだろう

後、>>600でヤタ様二柱いるぞ
608 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/22(金) 23:02:24.72 ID:EYNDGJM6o
101じゃあ半端だからなんじゃねーの
スルーしてやりなさいかわいそうに
609 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/07/22(金) 23:12:05.40 ID:tpmlbA3fo
100人いれば100通りの萌えキャラがいるんだ
その中にバイトなりなんなりやってて学校にもまともにコレない貧乳間違えた貧乏系な感じのキャラがいたっておかしくない
610 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/23(土) 01:34:31.36 ID:0Z0l4/+xo
間違えたわろた
611 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga sage]:2011/07/23(土) 13:28:30.04 ID:X2p1DeBp0
夏らしく熱くなってきたんで水神として祀られることも多い龍をば
612 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/07/24(日) 17:34:44.17 ID:IbLb3asH0
>>608-609
いや、学校で友達100人作ったのに富士山行くのも100人だったから
『学校にだけ存在する101人目がいるんじゃね?』って意味だったんだ
分かりにくくてスマン

後、もしかしてヤタガラスとヤタ様って別物なのか?
613 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/24(日) 19:20:18.62 ID:q9Rx3ifso
なんだっけな
「赤が好き?青が好き?白が好き?」って聞いてくるやつ
614 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/07/24(日) 20:22:20.90 ID:q9lhpArdo
>>613
あーあれなんだっけ、赤いチャンチャンコの亜種みたいなんだっけ?
615 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/07/24(日) 21:58:28.95 ID:IbLb3asH0
>>614
トイレの個室で声がする奴だな
色だったり紙だったりそもそも選択肢が違ったりとバリエーション豊かだが
赤と青で酷い目(最悪命に関わる)のは共通してる

まあ、このスレでは「ご飯・お風呂・私」になりそうだが
616 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/07/24(日) 22:55:12.97 ID:gb7yu/Gd0
赤紙青紙って、今はヤタ様って言われてるんだ…知らなかった…

そういえば色聞く系の怪談って色々呼び方とバリエーションがありますね

赤マント、赤いちゃんちゃんこ、赤紙青紙、赤い靴とか
617 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/07/25(月) 01:19:16.60 ID:XflRryMAO
元ネタは確かホラーでお馴染み稲川さんのラジオで出た『赤い半纏』でございます…後は現代人に分かりやすいように派生したかと思います。
因みに赤紙青紙は白と言えばトイレットペーパーが降ってくるだけなので安全なのであります!
618 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/25(月) 02:19:02.37 ID:1dPTMMrXo
>>613
ぬ〜べ〜思い出した
Aさんとか微妙に怖い名前だった
619 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/07/25(月) 14:52:30.86 ID:meqwjUMAO
八尺様…はっしゃくさま
名の通り背の高い女性の妖怪(神様?)
ヤタガラスとは何の関係もない

知名度低いのかな
620 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/26(火) 08:06:40.67 ID:cEuzPPpDO
知名度が低いのもあるけど、まず自分で調べてみようって常識が欠如してる奴が多いだけだと思う。

抽象的な提案も多いし
621 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/07/26(火) 22:04:53.61 ID:6CZ1xV4co
>>617
稲川さん出典だったのか、知らなかったありがとう

>ヤタガラスとは何の関係もない
あの洒落怖でのお話では明かされていないだけでさ
ほんとは関係あるかもしれないじゃないですかあ!……違うのか?

たとえば……
八咫烏=太陽→零落→八尺様
太陽神アマテラスの御篭もり→転化→問答で封を開けようとする
……スレチですね、この辺でやめますごめんなさい
622 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 20:40:42.81 ID:pRHwJR2q0

男「田舎の話と言えば……」

友「ん?霊の河童の人か?」

男「いや、俺の話だ」

友「またお前か…何かと幽霊に縁があるな」

男「一度お祓いしてもらいたいくらいだ」

男「まぁいいや。それでだ…実家に行った時の話だ」
623 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 20:46:22.82 ID:pRHwJR2q0

男「夕暮れ時に俺は縁側に座って涼んでたんだが」

男「庭の生垣の上に帽子があるのを見つけた」

男「生垣の上に置いてあったわけじゃない」

男「帽子はそのまま横に移動したから、垣根の向こうに帽子をかぶった何かが居たってことだな」

男「で、そのまま垣根の切れ目まで移動すると女の子が居た」

男「白い帽子に白いワンピース。垣根の上の帽子はその子がかぶってたわけだな」
624 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 20:49:41.50 ID:pRHwJR2q0




友「ん?その話聞いた事があるな」

友「確か…八尺様だったか?」

男「なんだ、知ってたのか。それは残念だな」

友「まぁ有名なところくらいはな」

友「ってことは、その女の人は背が八尺(240cm)くらいってことか?」

男「いや違うな」
625 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 20:52:45.05 ID:pRHwJR2q0


友「おや、違ったかな?」

男「その子の身長は120くらいだった」

友「いやいやいや…」

友「八尺様の根底から否定されたな」

男「俺に言われてもな……」

男「まぁ続けるぞ」
626 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 21:07:15.04 ID:pRHwJR2q0


男「その垣根の高さは120くらいだったんだ」

男「で、その垣根から見えた女の子はこっちを見て笑ってたんだが、まぁ身長が身長だしな」

男「誰か近所の子とかそのへんだろうと思ってたんだ」

男「結局その子はそのままどこかへ行ってしまって夜になったんだ」

男「その日はちょうど集会の日で祖父と祖母は出かけたし」

男「俺一人で行ってたから父と母も居ない。実家に俺一人と言うわけだ」
627 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 21:11:59.17 ID:pRHwJR2q0


男「実家で俺が滞在してた部屋は2階だったんだが、一人でテレビを見てるとふいに聞こえたんだ」

―――トントン…トントン…―――

男「玄関は引き戸だったから叩くともっとガタガタって音がなる」

男「それからするとたぶん窓を叩く音だと思ってな」

男「最初は風か何かだろうと思ったんだが…何度もなるもので気になってさ」

男「ついにカーテンと窓を開けた」
628 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 21:17:00.48 ID:pRHwJR2q0





女『やっと気づいてくれた―』

男『君は何をしてるんだ?』

女『んーっとねー。お迎えに来たの』

男『は?』

女『と言うわけで、私と行くのー』グイッ

男『こら、あぶなっ……』パシッ
629 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 21:18:24.64 ID:pRHwJR2q0





女『わわわ………』

男『おっと、あぶない…大丈夫か?』グイッ

女『うん、平気』

男『と言うか、君は梯子であんな危ないことしてたのか』ハァ

男『とりあえず入りなよ』

女『お邪魔しまーす』
630 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 21:21:03.00 ID:pRHwJR2q0





男『それで、君の名前は?』

男『あぁ、そこにでも座って』

女『んとねー、名前は女って言うの。人間は八尺様って呼んでる』チョコン

男『女ちゃんね。家はどのあたり?』

女『あっち』ユビサシ

男『あはは、送ってくにも暗くちゃわからなそうだな』
631 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 21:23:49.21 ID:pRHwJR2q0





女『お兄ちゃんは?』

男「あ、俺は男って言うんだけど、女ちゃんは何してたの?」

女『私は八尺様だから、男のこと連れてくの』

女『ぽぽ、ぽぽぽ、ぽ、ぽぽ』グイッ

男『はいはい、今日は暗いから明日ね』

男『家に泊めるように言っとくから』ナデナデ
632 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 21:25:22.81 ID:pRHwJR2q0





女『やーだー、今から行くの』

男『だからあしt…』
女『男のこと気に入ったからいーまーすーぐー』ジタバタ

男『困ったな……』

男『そうだ、女ちゃんおはぎ食べる?』スッ

女『おはぎ?……食べる―!』キラキラ
633 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 21:29:19.28 ID:pRHwJR2q0





男『お家の人の電話番号わかる?』

女『電話…?知らない』ハムハム

男『困ったな……』

女『食べ終わったら連れてく』ハムハム

男『それは明日だっての。口の周り汚れてるぞ』フキフキ

女『ん……ぶー』プクー
634 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 21:32:47.84 ID:pRHwJR2q0





男『むくれない、むくれない。テレビでも見るか?』ピッ

女『テレビ見る―!』ワクワク

男『連れてく気もあるんだか無いんだが…』

女『て、テレビみたら連れてくもん』

男『わかったよ。アニメでいいのか?』ピッ

女『うん!アニメー』
635 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 21:35:49.78 ID:pRHwJR2q0





―――小一時間後―――

テレビ『たーのしーなーかまーが……』

女『………』ウトウト

男『寝るか?』

女『連れてく……』ウトウト

男『はいはい、布団敷くから待ってな』バサッ

男『朝起きたら送って行ったやるからな』
636 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 21:38:13.67 ID:pRHwJR2q0





女『はーい……』モグリ

男『お休み』パチッ

女『うー…男も隣……』トントン

男『それは流石になぁ…』

女『とーなーりー!』バタバタ

男『……わかったよ』モグリ
637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 21:39:31.08 ID:pRHwJR2q0





女『…ん……』ギュ

男『おやすみ』ナデナデ

女『おやすみ……』スースー

男『さて、どうしたもんだか』

男『見られたら詰むな』

男『しかし掴まれてて動けないし…ほんとにどこの子なんだか…』
638 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 21:42:21.24 ID:pRHwJR2q0





―――翌朝―――

男『ん……』

女『………』スースー

男『誰だこの子!?』

男『あぁ、昨日いきなり現れたんだっけ』

女『んぁ……おはよー』

男『あ、あぁおはよう』
639 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 21:44:20.34 ID:pRHwJR2q0





男『さて、起きるぞ』

女『はーい……』

男『今日は送っててやるからな。家までの道はわかるか?』

女『うん、大丈夫』

男『じゃあ、家の人に見つからないうちに行くぞ』

女『はーい……』
640 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 21:47:48.18 ID:pRHwJR2q0





男『ちょっと出かけてくるから』ガラガラ


女『んじゃ、こっち』

男『まったく…親御さんに謝らないとなぁ…』

女『大丈夫だよー。あ、トンボー』パタパタ

男『おい、転ぶぞー』パタパタ

女『待て―…』ドテッ

男『言わんこっちゃない』
641 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 21:50:03.86 ID:pRHwJR2q0





―――また小一時間後―――

女『この変だよ―』

男『このあたりに家なんて……』

女『あ、いたよ!』パタパタ

女母『こら、勝手に出かけてはダメと言ったはずですよ?』

女『はーい、ごめんなさい』シュン

男『………』ポカーン
642 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 21:51:34.62 ID:pRHwJR2q0




男「その女の子の母親はえらく長身だった」

男「たぶんこれが本当の八尺様なんだろうな。2mは余裕で越えてたし」

友「じゃあお前は八尺様の娘と一晩過ごしたのか?」

男「そうなるな」

友「お前、なんで生きてられるんだ?」

男「俺も不思議だよ」
643 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 21:53:58.44 ID:pRHwJR2q0


友「実はもう死んでるとか?」

男「勝手に人を百物語の1話に組み込むんじゃない」

友「第23話 死人と語る百物語 了」キリッ

男「やめい」バシッ

友「まぁいいや、それから?」

男「まったく……」
644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 21:55:45.12 ID:pRHwJR2q0





女母『貴方がこの子を?』

男『えぇ、まぁ成り行きですが』

女母『それはそれはご迷惑をおかけしました』ペコリ

女『しましたー』ペコリ

男『えぇと…つかぬ事をお聞きしますが…八尺様で?』

女母『えぇ、八尺の女母と申します。ぽぽぽ……』

男『』
645 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 21:59:26.18 ID:pRHwJR2q0





女『ねぇママー。男のこと連れてきたいー』

女母『駄目です。恩人にそんな事はできません』

女『ぶー……』ムスッ

女母『まったくこの子は……』

女母『本当はしっかりとお礼をしたいんですけど…我々と人間が一緒にいるのはよくないですし…』

男『いえ、では俺はこれで…』
646 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 22:04:51.29 ID:pRHwJR2q0





女母『そうですか。ではいつかお礼いたしましょう』

男『あはは、見逃していただければそれで良いです』

女母『もちろんですよ。ではこれで』

女『残念だけどばいばーい』フリフリ

男『ん、じゃあな』フリフリ

男『………助かった……』ハァ
647 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 22:06:11.12 ID:pRHwJR2q0




女母『ぽぽ、ぽぽぽ、ぽ、ぽぽ』

女『ぽぽぽぽーん』

女母『なに?それ?』

女『昨日男と見たテレビでやってたの』

女『ぽぽぽぽーん』

女母『ぽぽぽぽーん』
648 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 22:09:00.10 ID:pRHwJR2q0




男「と言うわけだ」

男「最初の女の子が来たときに、本当に八尺様とは思ってなかったからあしらってたんだが」

男「本物に会うとは思わなかったな」

友「それ以上にCMに毒されてる方が心配だ」

男「俺に言われても困るがな。まぁ電波に境は無いってことで」

友「とんでもない仲間にもほどがあるっての」
649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/07/27(水) 22:10:46.11 ID:pRHwJR2q0

友「まぁなんにせよあれだな。お前にとっては…」

友「たーのしー」

男「なーかまーが」(幽霊が)

二人「ぽぽぽぽーん」


第23話『八尺様が楽しい仲間なわけがない』了
650 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/27(水) 22:17:52.90 ID:Tf7tlMzXo
命拾いww
651 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 22:32:44.49 ID:pRHwJR2q0


男「さてと、今度はお前の番だが。まだあるか?」

友「まだ何とかな」

友「有名どころで一つ思い出したのがあってな」

男「有名どころって言うと?」

友「本所七不思議って知ってるか?」

男「まぁ触りくらいならな」
652 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 22:34:41.07 ID:pRHwJR2q0


友「それはよかった」

友「俺の友人の話でな」

友「そいつはまぁいわゆるニートなんだが…」

友「遊び歩いたせいで手持ちの金がなくなってな」

友「大きいことやるって言って手前親にも援助を頼みにくいし困ってたわけだ」

友「で、ふらふらしてると路地裏に1件の蕎麦屋を見つけた」
653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 22:37:41.64 ID:pRHwJR2q0


友「あまりきれいとは言えない店構えで、外に出た提灯に灯りはない」

友「暖簾は掛かってるんだけど人の言える気配はしないんだ」

友「とっくにつぶれた店なのだろう。そう思ってたんだが…突然雨が降り出した」

友「いわゆるスコールみたいな、突然降るわりには滝のような雨ってやつだな」

友「そいつは困って、その蕎麦屋で雨宿りすることにした」

友「鍵が開いてたらしくすんなり店内に入ると微かに聞こえたそうだ『いらっしゃいませ』ってさ」
654 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 22:42:19.79 ID:pRHwJR2q0


友「彼が驚いて目を凝らすとカウンターの向こうに誰かが居る」

友「恐る恐る雨宿りをしたい旨を伝えると近くのイスに座ったんだが」

友「机もイスもホコリはなく、蜘蛛の巣も掛かってない」

友「到底つぶれた店には見えなかったそうだ。まぁ人もいたしな」

友「ただ一つ疑問なのは、店にはいっさいの灯りがなかった事か」

友「そこで彼は尋ねたんだ」
655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 22:44:56.26 ID:pRHwJR2q0





彼『あの、ここは営業してるんですか?』

?『しております』

彼『なんで電気を消してるんです?』

?『電気は止められてまして』

?『そんなもんだから燈無蕎麦だってお客さんも寄り付かなくて……もうお店を畳もうかと』シクシク

彼『ち、ちなみに味は?』
656 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 22:46:54.48 ID:pRHwJR2q0





?『それは自信があります。少々お待ちください』


?『どうぞ。かけそばです』カタッ

彼『あの、俺お金がないんですが』

?『サービスです。食べてみてください』

彼『じゃあ遠慮なく……ズズズ……』

彼『う、うまい!』
657 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 22:51:04.18 ID:pRHwJR2q0





彼『これまで食べたどの蕎麦よりもうまいよ』

?『味には自信があるんですが…先立つものが…』

彼『うーん……おしいな…』

?『もう少しお金があれば流行る自信はあるんですけど』

彼『………』

彼『そういえば、俺は男って言うんだけど店員さんは?』
658 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 22:53:12.48 ID:pRHwJR2q0





?『私は女って言います』

彼『女さんか…じゃあ今日のお礼代わりに友人にここを紹介してみるよ』

女『本当ですか?ありがとうございます』

女『あ、でも駄目です…』

彼『なんで?』

女『それは……』
659 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 22:55:06.26 ID:pRHwJR2q0





女『実は私、幽霊ですして…一般人には見えないんです』

彼『は?』

女『たまに人が入ってくる事はあるんですけど、私が見えないし声も聞こえないからつぶれてる店だと勘違いしてしまいますし』

彼『いや、俺は見えてるんですけど』

女『でも触れません』スッ

彼『』
660 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 23:02:13.86 ID:pRHwJR2q0





彼『ゆ、幽霊!!』

女『そんな驚かなくても良いじゃないですか…』ムスッ

彼『いやだって!』

女『もういいです。出てってください』

彼『あ、あぁ…』ガタッ

女『ふんっ』
661 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 23:03:59.31 ID:pRHwJR2q0




友「とまぁ、ほんとうに燈無蕎麦だったわけだが」

男「それじゃ不幸とかあったのか?」

友「いや?たぶん無いんじゃないか?」

友「というかそいつは七不思議なんて知らないからな。たぶん燈無蕎麦自体何かわかってない」

男「なんだそりゃ」

友「そういう俺もその店行ったことあるけどな」
662 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 23:05:17.46 ID:pRHwJR2q0


友「普通にうまかったぞ」

友「もっとも、その時は幽霊だなんて気がつかなかったけどな」

男「へぇ?お前なら気がつきそうだが…」

友「まぁちょっとしたトリックだろうな」

友「話には続きがあるし、続けるぞ?」

男「続きがあったのか……」
663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 23:06:44.80 ID:pRHwJR2q0





―――翌日―――

彼『あの……』

女『いらっしゃいま……なんでしょう?』

彼『いや、昨日はごめんな』

女『別に、良いです』

女『怖いなら無理に来なくていいですよ』

彼『そう言うなって…一つ提案があるんだ』
664 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 23:08:18.06 ID:pRHwJR2q0





女『提案?なんですか?』

彼『この店が流行らないのは、要は女さんの姿が見えないからだろ?』

女『まぁ原因としては一番にそこでしょうね』

彼『で、俺も職を探してたんだけどさ』

女『はい、で?』

彼『俺がここで店番したらいいんじゃないかな?蕎麦は女さんが作るってことで』
665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 23:10:33.01 ID:pRHwJR2q0





女『………な…』

彼『やっぱりなし…か?』

女『ナイスアイディアですよ!それなら行けます』

彼『そ、それはよかった…』

女『よし、じゃあ早速始めましょう』

彼『OK!じゃあとりあえず連絡取ってみる』カチカチ
666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 23:12:25.20 ID:pRHwJR2q0





彼『これでも顔は効く方だと思うからさ。来るようにメールしてみる』

女『はい、お願いします!』

彼『よし。完了』

彼『ところで、電気なしでどうやってお湯とか使ってるの?』

女『水は出ますし。火はかまどです』

女『ちなみに燃やしてるのは狐火ですけど』
667 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 23:14:00.68 ID:pRHwJR2q0





彼『そ、そうなんだ……本当に幽霊蕎麦屋なんだね』

女『幽霊ですから』

彼『改めて実感したよ』

―――ガラガラガラ―――

友『彼が言ってたのはこの店か?』

彼・女『いらっしゃいませー』
668 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 23:15:56.69 ID:pRHwJR2q0





友「という具合だ」

友「いまだ電気の問題も解決して、彼は立派な蕎麦屋の店主だ」

友「まぁ味は良いからな。あとは口コミで広がるってことさ」

男「そ、そうか…電気もない貧乏蕎麦屋から大出世だな」

友「世の中チャンスを活かせないとだめってことだろうな」

男「こんなチャンスは普通ないっての」
669 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 23:17:10.02 ID:pRHwJR2q0


友「まぁ今度連れて行くよ」

男「と、とりあえずよろしく頼む」


第24話『燈無蕎麦の正体がただの貧乏なわけがない』了
670 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 23:23:47.11 ID:pRHwJR2q0


男「そうだ。話は飛ぶが手紙将棋ってわかるか?」

友「お互いに手紙に書いて手を指しあうあれか?」

男「正解だ。今時はやらないけどな」

友「そりゃ、インターネットでのゲームもあるしメールも使えるからな」

男「で、これはその手紙将棋の話なんだが座敷童子から聞いたんだ」

男「正確には家にいる座敷童子の友人である座敷童子が住み着いてる家の出来事なんだとさ」
671 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 23:29:39.03 ID:pRHwJR2q0


男「その家に一通の手紙が届いたんだ」

男「手紙の内容はただ一言『2六歩』」

男「その座敷童子…彼にはその意味はわからなかったらしいんだが…」

男「その家族は何か感慨深げにその手紙を見詰め、それを仏壇へと供えたそうだ」

男「そしてしばらく…半年くらいたった日に、その手紙の主へこう返したそうだ」

男「『3四歩』ってな…」
672 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 23:34:25.97 ID:pRHwJR2q0


男「するとどうだろうまた半年くらい経って『7六歩』と返って来た」

男「また家族は仏壇にその手紙を供えると、半年くらい後に手を返したそうだ」

男「どうやらその手紙をよく見ると、宛名は仏壇の主にあたる人物だったらしい」

男「誰かがこの人物の死を知らず、手紙将棋を送って来たってわけだ」

男「じゃあなぜ家族はその人物の死を知らせずに将棋を指しているのかと言うと…」

男「どうやら遺言の一つだったらしいんだ。何も言わずに将棋を指してほしいってな」
673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 23:38:00.51 ID:pRHwJR2q0


男「それからかなりの年月が過ぎた」

男「お互いにその時に考える最良の一手を半年に一回指しあった」

男「俺だったら相手の事が気になるけどな」

男「まぁとにかくその家族は律義に遺言を守り続けたそうだ」

男「そして開始から何年もたったある日のことだ」

男「突然連絡が来たんだ。その対局相手からな」
674 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 23:41:41.02 ID:pRHwJR2q0


男「正確には、対局相手の孫…だな」

男「どうやらその孫が言うには対局してた人は数年前に亡くなってたそうだよ」

男「つまり、こちらの家族は亡霊と対局してた事になるな」

男「まぁ実際のところは、その孫が代理で対局してただけみたいだがな」

男「それに、相手からしたらそれこそかなりの年月を亡霊の相手をしてることになる」

男「結局のところ、お互いに代理で祖父の意思を継ぐ続けてたって話だ」
675 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 23:44:48.67 ID:pRHwJR2q0


男「あんまり心霊系の話じゃなかったかもな」

男「ちなみに、近いうちに決着はつきそうなんだとさ」

友「へぇ?どっちの勝ちで?」

男「さぁ?どっちが勝っても問題ないんじゃないか?」

男「二人の亡霊が楽しければ…さ」

友「なるほど。まったくだな


第25話『亡霊が手紙将棋を指すわけがない』了
676 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/07/27(水) 23:48:57.52 ID:qQbSiXhPo
なんか今までと違った感じでいいな
677 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/27(水) 23:49:20.77 ID:pRHwJR2q0
>>1です

第25話の補足をします。
この話は、件の洒落怖の師匠シリーズ『将棋』のオマージュ作品になります。
http://syarecowa.moo.jp/121/49.html
コラボを希望される方も何名か居ましたが、そもそも私自身が洒落怖をよく知らないですし
なかなか難しいものがあると痛感しました。

また、師匠シリーズファンの方等で不快に思われた方がいましたらここに謝罪いたします。
678 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/28(木) 00:03:17.99 ID:LjAM1ATj0


友「たまには息抜きがてら心霊っぽくないのもいいな」

男「そう言ってもらえると嬉しいぞ」

友「さて俺の番だが…そう言えばさ」

男「ん?」

友「心霊ってなんで学校物が多いんだろうな」

友「病院とか墓場はまぁ死体とかのこともあるからわかるんだが」
679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/28(木) 00:05:00.23 ID:LjAM1ATj0


男「そう言えばそうだな。なんでだろう?」

友「やっぱ子供が広めたりするからかね」

男「無難にそこだろうな。身近なものの怖さってことだ」

男「ジャパニーズホラーの真髄は、自分に起こりうる…だしな」

友「そうだな。確かにそうだ」

友「と言うわけで、学校物の話なんだが」
680 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/28(木) 00:11:03.42 ID:LjAM1ATj0


友「ある生徒が放課後教室で手紙を書いてたそうだ」

友「夕暮れの教室でテスト期間だからな。当然誰もいないはずだった」

友「で、彼が書いてた手紙がひと段落したものだからふと窓から外を見たんだが…」

友「逆さまの女子生徒と目があったそうだ」

友「正確に言うと、飛び降りた生徒と目があったってことだな」

友「彼はあわててベランダから見下ろしたんだが地面には何もない」
681 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/28(木) 00:13:46.56 ID:LjAM1ATj0


友「ちなみに彼が居たのは3階で、地面はアスファルトだ。落ちて助かるわけがない」

友「彼は屋上へ行ってみようと、先ほどまで書いてた手紙をポケットに入れると屋上に駆け上がった」

友「すると、そこには柵にもたれかかって夕陽を見てる女子生徒がいたそうだ」

友「彼は恐る恐る声をかけた。すると彼女は振り返って笑ったそうだ」

友「リボンから察するに3年生で同学年なんだが、どうにも見たことがない」

友「もちろん、知らない生徒の一人くらい居てもおかしくないけどな」
682 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/28(木) 00:16:28.57 ID:LjAM1ATj0





女『駄目だよ…自殺しちゃ』

彼『いや、俺じゃなくてさっきそこから女の子が……』

女『いや…じゃないでしょ。私が見えるってことは、貴方は自殺志願者だもん』

彼『俺の事はさておいてさっき誰かが飛び降りただろ』

女『あぁ、あれ?私だよ』

彼『』ポカーン
683 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/28(木) 00:18:14.21 ID:LjAM1ATj0





女『まぁ幽霊だから今さら死なないんだけどね』

女『それより貴方。自殺なんて考えたら駄目でしょ』

女『そのポケットの手紙は遺書?』

女『だいたい……』
彼『ちょっと待て』

彼『今飛び降りてたやつに言われたくはない』
684 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/28(木) 00:19:55.14 ID:LjAM1ATj0





女『そりゃそうだけで、私手遅れだし』ケラケラ

彼『そんな笑われてもなぁ…』

女『じゃあ……私手遅れなの…』シクシク

彼『笑顔で飛び降りてたやつのセリフじゃないな』

女『じゃあどうしろって言うのよ!』

彼『なんで怒られたし』
685 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/28(木) 00:23:00.86 ID:LjAM1ATj0





女『とりあえず、理由聞いてあげるから…』

彼『いきなりそんなこと言われてもな……』

女『じゃあ勝手に読む』スッ

彼『え?お前それ俺の……』

女『えーなになに?………』

彼『読むなって。返せ!』スカッ
686 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/28(木) 00:24:41.30 ID:LjAM1ATj0





女『むりむり、幽霊には触れないのは基本でしょ』

女『しかし……理由がしょうもない……』

彼『しょうもないとか言うな。俺には重要な問題だ』

女『全く、そんなんじゃ親が泣いちゃうよ?』

彼『だから、なんで俺が自殺した幽霊に説教されなきゃいけないんだ』

女『昔のことにこだわってるようじゃモテないぞ』ケラケラ
687 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/28(木) 00:28:29.93 ID:LjAM1ATj0





彼『くそっ…今日はもう帰る』

女『それは残念。またおいで―』フリフリ

彼『二度と来るかっての』

女『まぁそう言わず、お話ししようよぉ』

女『来ないと手紙を放送で読みあげちゃうぞ』

彼『そう言うのを脅迫って言うの知ってるか?』
688 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/28(木) 00:31:24.32 ID:LjAM1ATj0





友「その後彼は、授業中や昼休みに窓を眺めてると、彼女が降ってくるのを目撃するそうだ」

男「なんだそりゃ落ちはないのか?」

友「ない、と言うか…現在進行形だそうだ」

男「毎日その状況は答えるな」

友「今は夏休みだから安心だと言ってたよ」

男「むしろ幽霊が原因で自殺しそうな勢いだな」
689 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/28(木) 00:32:47.45 ID:LjAM1ATj0


友「でも、話す分には良好な関係だとさ」

男「それは何よりだな」

友「でもホント、自[ピーーー]る霊に自殺を引きとめられてもなぁ」

男「説得力皆無だな」

友「こう話してると幽霊もいろいろいるもんだな」

男「十人十色ってことだろうよ」
690 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/07/28(木) 00:35:52.28 ID:LjAM1ATj0

男「ところで、遺書には何が書いてあったんだ?」

友「遺書の内容は知らんが…彼女が居ないのを嘆いてたな……」

男「本当にしょうもないな。その幽霊と付き合えばいい」

友「お前もときどき薄情だな……それじゃ一緒に飛び降りちまうぞ」


第26話『自殺幽霊に引きとめられるわけがない』了
691 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/07/28(木) 01:22:49.09 ID:3T//nMCP0
八尺様の母娘に萌えた
692 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/28(木) 01:25:48.81 ID:Vr1r+0rIO
なんか一気にたくさん来た!
嬉しい反面なんかもったいないwww

上にもあった気がするけど、合わせ鏡の悪魔お願いします
693 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/07/28(木) 01:31:40.84 ID:Vlp4Yslmo
今夜も乙ぽぽぽぽーん
幽霊が打ってくれた蕎麦って細菌とか無縁そうで安心かも

師匠シリーズ絡めてくれてありがとう、めっちゃ読んだ時うれしかったwwww
SS形式というのを除いても>>1らしさが感じられる文で味わい深いです
694 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/07/28(木) 02:00:34.10 ID:DK34UY0ko
もう四分の一終わったのか
「まだ」と言うべきなのか「もう」と言うべきなのか
695 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/07/28(木) 02:11:14.96 ID:TQXte2xU0
蕎麦使ってもらえて光栄です!
将棋の話はリンク先を見てから見返すとさらに良かった。
次も期待乙!
696 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/29(金) 03:34:34.17 ID:f9GJHdDso
なにこれちょー面白い
萌え路線もいいがもうちびっとガチで怖い話を増やしてくれると
みんな喜ぶと思います。とくに僕が
697 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/01(月) 03:10:34.13 ID:mAqWiSUDO
たくさん出した分、しばらくは来れないってことかな?

楽しみに待ってる
698 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/01(月) 18:29:58.23 ID:jCSbUcr80

男「たまにはホラーにしてみるか?」

友「お、いいねぇ」

男「といってもあんまり引き出しはないけどな」

友「それは俺もだから気にするなよ」

男「じゃあヒサルキってわかるか?」

友「ヒサルキ?」
699 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/01(月) 18:31:27.61 ID:jCSbUcr80

男「イサルキとか、ヒサユキとか、まぁ呼び名は安定しないけどな」

友「よくわからんな。どんなんだ?」

男「小学校のときとかさ、学校で動物飼ってなかったか?」

友「あぁ、兎とか鶏とかか?」

男「そうそう、それだ」

男「で、その動物がいきなり死ぬ事は?」
700 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/01(月) 18:34:22.61 ID:jCSbUcr80

友「まぁ、あったな。誰かが殺したって集会開かれる事もあった気がする」

男「でもそう言うのは総じて犯人が見つからないんだよな」

男「飼育小屋の管理は教師がしてるし、子供じゃ無理だろうって結論になる」

友「そうだな。鍵は教師が持ってて、教師が帰るときには生きてたとなると犯行が可能なのは夜だけ」

友「翌日発見しても、鍵を壊して侵入した形跡がないなら鍵を使ったことになるわけだし」

男「そういうこと。子供だけでの犯行は無理なはずなんだ」
701 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/01(月) 18:40:19.95 ID:jCSbUcr80

男「で、じゃあ誰が殺したって話に戻るんだけど…」

男「その犯人がヒサルキだ」

友「どんな外見なんだ?」

男「それがな。残念ながら誰も知らないんだ」

友「なんだそりゃ。悪魔の証明か?」

男「いやいや、見たことがあるって人は居るんだぞ」
702 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/01(月) 18:43:01.02 ID:jCSbUcr80

男「ただ、ヒサルキを見た人は全員さ」

男「両目を潰されるんだと」

男「で。目が見えないからうまくイメージ出来なくて、表現できないそうだ」

友「そりゃたしかに厄介だな」

男「唯一わかるのは、黒くて大きな人だったって話だけどさ」

友「まぁ大人なら大きく見えるし、逆行とかなら全身黒いな」
703 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/01(月) 18:44:40.72 ID:jCSbUcr80

男「じゃあ重要なのは、どうやってヒサルキが小屋の中に侵入するか…だ」

友「確かにそれは気になるな」

男「鍵を開けたわけでも壊したわけでもない」

友「地面から入ってくるとか?」

男「もぐらじゃないんだから……」

男「簡単な答えでさ。影…なんだよ」
704 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/01(月) 18:47:59.73 ID:jCSbUcr80

友「影?」

男「地面から延びる人の影」

男「これなら小屋の中に入れるだろ?大きさも自由自在だ」

友「言いたい事はわかるが、犯行が行えないぞ?」

友「それに、自分自身ってことならわざわざ目を潰す必要もない」

男「影には目がないからな。目を潰したところで自分には被害はない」
705 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/01(月) 18:50:59.73 ID:jCSbUcr80

男「そして影がいきなり実体化するくらいありそうじゃないか?」

友「今までの話からして、ありそうだな」

友「じゃあ動機は?」

男「俺が思うにさ。ヒサルキの正体は、その人の中の負の感情なんじゃないかなと思うよ」

男「八つ当たりで自分より弱いものを[ピーーー]。それも無意識にさ」

男「自分の目を[ピーーー]のもそう。そういう弱いものを[ピーーー]自分を憎むなら、やるんじゃないかな?」

男「あるいは、弱い自分を見たくないのかも」
706 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/01(月) 18:52:33.22 ID:jCSbUcr80

男「とまぁ、こんな感じだ」

男「ちょっと落ちのない話になってしまったな」

友「まぁ良いんじゃないか?説としては面白いと思うぞ」


第27話『ヒサルキの正体が自分自信なわけがない』了
707 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/01(月) 18:56:36.25 ID:jCSbUcr80

友「ふむ…じゃあ俺はコックリさんにでもするか」

男「へぇ?日本版ウイジャ盤みたいなアレ?」

友「正解。紙にひらがなと数字、はい・いいえと鳥居を書く」

友「で、10円を鳥居に乗せて複数人で呼び出す」

男「やった事はないけどな。なんで複数人なんだ?」

友「一人でやると呪われるそうだ。概ね発狂する」
708 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/01(月) 18:59:08.33 ID:jCSbUcr80

男「それは怖いな」

友「でだ、俺の後輩が数人でやったそうなんだよ」

友「ただ、いろいろ間違えてる奴でな」

友「キーボード配列のアルファベットで紙を作ったそうなんだ」

友「まぁパソコン中毒な奴だったからな」

男「ウイジャ盤…とも言い難いし、本当に間違ってるな」
709 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/01(月) 19:01:01.96 ID:jCSbUcr80

友「ともかく、彼らは呼び出した」

友「こっくりさん、こっくりさん、お出でくださいってな」

友「で、本当に呼び出せたそうだ」

友「まぁその紙作ったやつのせいで質問の答えがローマ字で大変だったそうだけどな」

友「なんにせよこっくりさんにいろいろな事を聞いたらしい」

友「定番の『誰が好きですか』とか『今日の夕食なんですか』とかな」
710 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/01(月) 19:04:30.08 ID:jCSbUcr80

友「で、そろそろ帰ろうかって流れになった時に…」

友「一緒にやってた一人が指を離してしまったそうだ」

男「あれ?指を途中で離すと…」

友「あぁ、普通に言うなら祟られる」

友「焦った彼らはこっくりさんに謝りつつ、祟られない方法を聞いたんだ」

男「祟ってくる相手に聞くのもどうかとは思うが…」
711 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/01(月) 19:06:52.84 ID:jCSbUcr80

友「まぁそう言ってやるなよ」

友「とにかく、こっくりさんはしばらく停止した後で動き始めた」

友「みんな固唾をのんで見守るわけだが」

友「その指示したのがちょっとふざけてると言うか…」

男「なんだ?持ったえぶらずに教えろって」

友「……えぇとな?」
712 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/01(月) 19:07:33.07 ID:jCSbUcr80

友「g」

友「g」

友「r」

友「k」

友「s」

男「ん?どういう意味だ?」
713 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/01(月) 19:09:02.33 ID:jCSbUcr80

友「ggrks」

友「自分で調べろって言うネットスラグだよ」

男「なんだそりゃ。確かに意味が判らん」

男「いや、意味はわかるけどさ」

友「というわけで、彼らは自分で調べたそうだ」

男「見つかったのか?」
714 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/01(月) 19:10:08.23 ID:jCSbUcr80

友「あぁ、見つかった」

男「そりゃよかったな」

友「まぁそんな変なこっくりさんが居たって話だ」

男「ある意味で見てみたいもんだな」

友「まったくだな…やってみるか?」

男「いや、結構」
715 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/01(月) 19:11:12.37 ID:jCSbUcr80

友「まぁ時代の変化ってことだろう」

男「こっくりさんもインターネットするってか?」

友「あるいは、書き込みしてたりしてな」


第28話『こっくりさんがネラーなわけがない』了
716 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/01(月) 19:29:17.78 ID:jCSbUcr80
>>1です
何とかこのスレを1000までやろうかと思いましたが
どうにもうまく文が書けないので一度休止します。

申し訳ありません。
717 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/08/01(月) 19:50:52.41 ID:YmAK+7Ago
ま、まさか>>1が怪異に巻き込まれ……!?

無理はせずやりやすいペースでいってくれ、ここまで乙です
待ってるからなーー
718 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/08/01(月) 22:06:25.14 ID:P4GStE7K0
乙ですー

ふむふむ。自分のペースでゆっくりやってください
待ってますからー
719 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/01(月) 22:08:37.76 ID:Ikj0CJWIO

待ってるよー
720 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/01(月) 23:38:22.30 ID:yX54s85vo
良スレを見つけたと思ったら休止宣言が出されてたでござる
乙です。ゆっくり休んでください
721 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/02(火) 02:33:39.61 ID:Vk3LGu5IO
粋やな
722 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/02(火) 03:10:26.39 ID:4MR4HgDDO
乙。
休止というのは少々寂しいものがあるが、仕方ないな。
またいつか戻って来てくれることを願うよ。
723 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/12(金) 12:42:52.56 ID:lICYtepDO
そして>>1は物語の住民となり
数多の幽霊や妖怪と過ごす事となったのであった。

724 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/12(金) 13:11:16.24 ID:0L0QQzq/o
メトロポリタンミュージアムですねわかります。
725 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/08/21(日) 14:41:40.37 ID:eb3q57n20
>>723
やめろww
さすがに一週間音沙汰無しだと不安になるな
726 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/22(月) 01:02:10.15 ID:lVeAppcIO
>>1も忙しいんだろ
727 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/09/12(月) 18:37:26.13 ID:CzjTm0w6o
そろそろ生存報告くらいは欲しいかな
728 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国地方) [sage]:2011/10/01(土) 23:26:16.07 ID:qhpFa66Io
もう二ヶ月か……
物語の住人となったら勝手に本のページ数が増えていったりするんだろうか
729 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/10/15(土) 10:37:28.05 ID:JHWLyZLvo
大丈夫かな?
730 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/10/30(日) 18:27:58.36 ID:Neff/adko
そろそろ三ヶ月
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