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さやか「喧嘩だ喧嘩!喧嘩を始めようぜッ!」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) :2011/06/29(水) 01:51:27.60 ID:vzC+4W+po
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旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
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木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
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いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
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【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713277692/

こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713183168/

【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713091115/

アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/06/29(水) 01:52:33.17 ID:vzC+4W+po
 ――直視しているだけで精神を病んでしまいそうな情景が広がる空間。
そこに、息を切らし、必死の形相で佇む青髪の少女がいた。
両手に自らの得物である片刃の剣を携え、この空間の主である異形と対峙している。

少女の名は美樹さやか。
対峙する異形、”魔女”を狩る者。”魔法少女”である。

といっても、彼女はまだ魔法少女になって数日も経っていない新米。
故に、初めて相手にする自分の実力以上の力を持つ魔女との戦いに焦りを感じていた。

「はぁ……はぁ……! この程度の魔女にやられてたら……!」

「さやかちゃん逃げよう! これ以上戦ったら、さやかちゃんが死んじゃうよ!」

さやかの遥か後方。そこには彼女の親友である鹿目まどかの姿があった。
まどかはさやかが対峙する魔女に敵わないことを理解してしまっている。
だから親友に撤退を懇願した。しかし――

「……こんなところで」

少女は獲物を再び構える。
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/06/29(水) 01:54:26.25 ID:vzC+4W+po
「こんなところで退いたら、マミさんの意思なんて継げない」

眼前に迫る魔女を見据え、一撃一撃を持前のスピードで回避する。

「マミさんみたいな正義の味方にはなれない!」

魔女との距離が近づく度に、語気と拳に力が入る。

「だから私はこいつを倒す! 絶対にッ!」

魔女が放った大ぶりの一撃をかわし、自身の覚悟を剣に乗せた斬撃を放つ。
それはさやかの必殺の一撃であった。事実、魔女の左腕らしきモノが断ち切られる。

「やった……!」

ようやく入った渾身の一撃。
が、それは油断を生み、さやかの勝機は魔女の右腕が彼女を地面に叩きつけた衝撃で砕け散る。

「がッ……!」

「さやかちゃん! いやああぁぁぁぁ!」

今の攻撃で頭を打ったのか、視界が定まらない。
立ち上がろうにも全身が激しく痛み、指一本まともに動かせない。
あれほどの衝撃を受けて死なないのは、やはり魔法少女だからなのだろうかと、頭の片隅で考える。
親友の叫びが耳に入ってくるが、何を叫んでいるのかは理解できなかった。
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/06/29(水) 01:55:38.69 ID:vzC+4W+po
そうしているうちに、魔女の次なる一撃が彼女に迫っていた。

(呆気な……。こんなに早く終わるなんて……)

次の一撃が来る前に、魔法で自身の体を動ける程度に回復させることは不可能。
彼女が最もよくわかっているその事実は、すなわち彼女の死を意味している。
死の間際、さやかの思考を埋め尽くしたのは、諦め。

(……私なんかが、マミさんみたいになろうなんて、無理だったのかな)

(強くて、優しくて、かっこよくて……みんなを、大切な人を守れるようになんて……)

(はは、よく考えれば、私には荷が重かったのかもね)

(――……でも)

そして、志半ばで死ぬことへの後悔。

(でも、嫌だよ……こんなところで、死にたくないよ……!)

――私には、まだ。

嗚呼、しかし。その思いに彼女の体は答えない。
そして無情に振り下ろされる、魔女の鉄鎚。さやかは、動けない。
まどかは目の前に広がる惨状を想い、その目を絶望から逸らした。
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/06/29(水) 01:57:31.90 ID:vzC+4W+po
(マミさん、恭介……ごめん………)

迫る死の瞬間。すべての動きがスローになる。

『諦めんのか?』

(えっ……?)

スローモーションの世界で、さやかは確かに声を聞いた。
荒々しくも、芯の通った、そんな”男”の声を。

『おい、どうなんだ?』

(誰よ、あんた……)

『んなこたどうでもいいんだよ。諦めんのか、諦めないのか、それを聞いてんだ』

(諦めるもなにも、こんな状況じゃ、何やったって……)

『無駄だってか? でもな、それは弱い考えだ』

(……?)

『俺の兄貴が言っていた。強くなりたきゃ、弱い考えをしろってな』

『だが、その考えに流されたら終わりだ。その弱い考えに、自分自身に反逆しろッ!』
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/06/29(水) 02:00:26.08 ID:vzC+4W+po
(反、逆……?)

『もう一度聞くぞ。お前は諦めんのか、諦めないのか!?』

(……なんなのよ、いきなり出てきて、勝手なことばっかり言って。最悪)

『そいつは悪かった。ごめんな、悪りぃ、すまねえ。許せ』

(なによそれ)

『で、俺の質問はどうなんだ? そっちこそいい加減はっきりしやがれ』

(………私は)

奥歯をグッと噛み締める。
それは、まだ彼女の意志が死んでいない証拠。

(諦めたくない! 諦めたく、ないよ……ッ!)

嗚咽交じりに言う、諦めない。それがさやかの出した答え。反逆の決意。

『オッケー。刻んだぜ、あんたの覚悟』

声の主はさやかの答えに満足したのか、語気が緩む。
さやかは見知らぬ声の主が笑っているのを、本能的に感じ取っていた。
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/06/29(水) 02:01:37.14 ID:vzC+4W+po
『それじゃ、こっからは選手交代だ』

(え?)

さやかがその言葉の真意を知る前に、彼女の意識は闇へと沈んだ。
しかし、さやかの瞳には光が宿っている。ギラギラとした、凶暴な光が。

――次の瞬間、魔女の腕はさやかに直撃した。
いや、”さやかの手に掴まれて”いた。

「……正直、俺には何が起こってんのかさっぱりわかんねぇけど」

魔女の腕はさやかの手から逃れようとするが、それは叶わない。
さやかが、魔女の腕を放さないからだ。そればかりか、さやかはさらに力を入れる。
ゴキリッ、という骨の砕けるような音と共に、魔女の右腕はあらぬ方向へと曲がった。

「はっきりしてんのは、テメーが俺の敵だってことだッ!」

右腕を粉砕された魔女は痛みからか、人ならざる叫びを挙げて周囲をのた打ち回っている。
そんなことはお構いなしに、さやかは右手を魔女に向かって突き出す。
そっと左腕を添えると、さやかの体が輝きだした。同時に、周囲の地面が何かに抉られた
ように消滅する。
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/06/29(水) 02:02:47.56 ID:vzC+4W+po
「さぁ、始めようぜ! 喧嘩をよぉ!」

輝きが納まると、さやかの右腕は黄金の装甲に包まれ、背には三枚の赤いフィンが現れた。
青で統一された魔法少女の衣装に無理やりこじつける様に現れたそれは、その禍々しい
デザインも手伝って酷く異彩を放っている。
が、そんなことを考える気も、気にする暇もさやかには存在しなかった。
右腕を失った魔女が、さやかに向かって突っ込んで来たのだ。

「っと!」

右腕で地面を殴り、上空へ向け勢いよく跳躍する。
直線的な動きをしていた魔女は当然さやかの立っていた場所を通過し、勢いあまって壁へと
激突した。

「おいおいおい、それがお前の全力かぁ?」

余裕の表情で魔女の背後に着地するさやか。

「遅すぎて欠伸が出ちまうぜ。もっと楽しませろよ、化け物野郎ォ!」
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/06/29(水) 02:03:49.73 ID:vzC+4W+po
さやかの挑発に激昂したのか、先ほどの倍以上の速度でさやかへと向かってくる魔女。
捨て身ともいえるその攻撃に、さやかは慌てるでもなく、再び右腕を前へと突き出した。
人差し指から順に折り曲げ、最後の親指で強く力を込める。

「衝撃のォォ――」

腹の底から響くような声と、敵を射抜かんばかりの鋭い視線。
そのすべてが目の前の魔女へと向けられる。並の人間であれば、今のさやかに泣いて許しを
乞ったであろう。
しかし、相手は人ならざる者。そして例え許しを乞ったとして、”今のさやか”は聞いてやる
気など毛頭無かったのだ。

「ファァストブリットオオォォォォォッ!!」

さやかの背にあるフィンの一枚が砕け、後から大量の光が噴出する。
その勢いの全てを拳に乗せ、さやかは突進してくる魔女に真っ向から殴りかかった。

――ドゴォッ!!

骨の砕けるのも音すら生易しいと思える衝撃音が、魔女の結界内に響いた。
さやかの拳は魔女の顔面と思わしき部分に深くめり込んでいる。
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/06/29(水) 02:06:16.48 ID:vzC+4W+po
「うえ、なんだこりゃ! 気持わりぃ……」

力任せに右腕を魔女から引き抜いたさやかは、腕に付着した魔女の体液を必死に振り払っていた。

見るも無残な顔面になってしまった魔女は音もなく崩れ去り、主を失った結界もかすみと消える。
後には、ボロボロの魔法少女姿のさやかと、目の前の光景に理解が追い付いていないまどかのみ。

「さやか……ちゃん……?」

右腕、目つき、戦い方。すべてが豹変した親友の名をまどかは呼ぶ。
さやかはその声に気がついたのか、呼びかけられた方へと顔を向けた。
その顔はまどかのよく知るさやかそのものであったが、目の奥に宿る光がまったくの別人の
だとまどかは思う。

「あなた……誰?」

まず口をついて出たのは、そんな言葉だった。

「……俺かい? 俺は」

すべて言い終わる前に、さやかは再び意識を失った。

「さやかちゃん!」

倒れる寸前、駆け寄ったまどかがさやかを抱きとめる。
腕の中で静かに寝息を立てるさやかの雰囲気は、まどかがよく知る親友のそれだった。
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/06/29(水) 02:07:49.38 ID:vzC+4W+po
――

その男、ならず者。はぐれ者。

自慢の拳で、すべてを砕く。

その少女、正直者。愚か者。

自らの正義を、貫き通す。

異なる世界、異なる信念。

相容れぬはずの二人が出会うとき、願いは、エントロピーを凌駕する。
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) :2011/06/29(水) 02:08:56.29 ID:vzC+4W+po
以上第1話でした。
いきなり始まってぶつ切り感がするでしょうが、その辺の説明はおいおい。たぶん。

内容はもうお分かりかと思います。まどか×スクライドのクロスオーバーSSです。
文章の練習も兼ねているので、読み辛かったりキャラクターに違和感があった場合は
どんどん指摘していただけると幸いです。
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/06/29(水) 02:20:48.12 ID:sxWAUaSW0
10年以上経とうとも、世にスクライダーの種は尽きまじ
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/29(水) 02:23:32.53 ID:0RG3f0OZ0
期待
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/29(水) 03:23:13.92 ID:AnMCuZCSO
最後はちゃんと若本に聞こえた…。
頑張れうp主。
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/06/29(水) 03:24:11.74 ID:LTPmM5hAO

スクライド×まどかマギカこれを待っていた
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/29(水) 08:42:06.66 ID:oV3dVqZDO
反逆者ということは漫画版準拠か?
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/29(水) 09:03:16.14 ID:oEIyhaNDO
虚淵「マッド・スクリプト!」
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/29(水) 12:15:59.41 ID:P9PCFgdDO
乙!しかし漫画版のカズマなのかアニメ版のカズマなのか……
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/29(水) 17:59:00.84 ID:9Xvz6Bono
どっちもかっけぇから許す!
21 :>>10 カズマ分が足りないので訂正 [saga]:2011/06/29(水) 22:33:04.82 ID:Zy7KsGfv0
「俺の、勝だッ」

力任せに右腕を魔女から引き抜いたさやかは、不敵に笑いながら腕を振り払う。
腕に付着した魔女の体液が床へと飛散し、右腕の装甲が再び輝きを取り戻した。

一方、見るも無残な顔面にされた魔女は音もなく崩れ去り、主を失った結界もかすみと消える。
残ったのは、ボロボロの魔法少女姿のさやか。そして、目の前の光景に理解が追い付いていない
まどかのみだ。

「さやか……ちゃん……?」

右腕、目つき、戦い方。すべてが豹変した親友の名をまどかは呼ぶ。
さやかはその声に気がついたのか、呼びかけられた方へと顔を向けた。
その顔はまどかのよく知るさやかそのものであったが、目の奥に宿る光はまったくの別人。
直感的に、まどかはそう思った。

「あなた……誰?」

恐れとも動揺ともとれる感情を抱き、ようやく口をついて出たのはそんな言葉だった。
さやかはまるで、まどかが自分へ向ける視線に慣れているかのように、口角を釣り上げる。

「……俺かい? 俺は」

すべて言い終わる前に、さやかは再び意識を失った。

「さやかちゃん!」

倒れる寸前、駆け寄ったまどかがさやかを抱きとめる。
腕の中で静かに寝息を立てるさやかの雰囲気は、まどかがよく知る親友のそれだった。
22 :第2話 美樹さやか :2011/07/01(金) 02:02:05.70 ID:G8eOdUi4o
第2話 美樹さやか
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/07/01(金) 02:03:22.62 ID:G8eOdUi4o
 美樹さやかが目覚めた際、まず目に映ったのはよく見知った自分の部屋だった。

 上体を起こし、怪我の様子をを確認する。あれだけ魔女に痛めつけられたというのに、
目立った傷は頭にまかれた包帯位しかない。
この分ならあまり大きな騒ぎにはならなかったのだろうと一安心し、さやかは顔を上げる。

 しかし、安心もつかの間、また新たな不安がさやかを襲う。
 ――一体、自分が倒れてから何時間経ったのだろうか。
もし長い間眠っていたとしたら、その間にまた使い間や魔女の犠牲になった人が――

『安心しな。お前が眠ってから一日も経っちゃいねぇよ』

「ホント? 良かった……」

『それにお前の親も、えーと、なんつったっけ? あのちっこいピンク頭の……』

「まどか?」

『多分そいつだ。そいつが上手く誤魔化してたみたいだぜ』

「そっか。さっすがまどか、頼りにな、る……?」
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [saga]:2011/07/01(金) 02:04:52.07 ID:G8eOdUi4o
 普通に会話を進めていたさやかだったが、ここでようやく違和感に気がつく。
自分に対してこんなに馴れ馴れしく話しかけてくるこの声の主は一体誰だろうか。
声色から男ということは分かる。しかし、この家にいても不思議ではない男である自分の父は
こんな粗雑なしゃべり方をしたであろうか。それ以前に、自分の話し相手は本当に父なのか。

 ゆっくり、本当にゆっくりと、顔を声が響いてきた右斜め上へと向ける。

『よっ』

 一見してガラの悪そうな見知らぬ男が立っていた。

「キッ……」

『き?』

「キャアアアァァァァァァ!?」

『どぉわッ!?』

 布団を纏い、悲鳴と共にベッドから勢いよく抜け出すさやか。男も突然奇声を上げたさやかに
驚いたのか姿勢が仰け反っている。
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [saga]:2011/07/01(金) 02:06:13.89 ID:G8eOdUi4o
『い、いきなり大声出すんじゃねえよ! 驚くじゃねえか!』

「お、驚いたのはこっち! 誰よアンタ!?」

 さやかは部屋の片隅へと逃げ込み、包まった布団の中から顔だけ出して男を睨みつける。
よく見ると、開かれていない右目の下に傷があり、脱色しているのか前髪の色が一部他の個所
よりもだいぶ薄くなっている。見た目からしてかなり危ない人種だと判断されても仕方のない
風貌だった。

『カズマだ。苗字もねぇし、本名かどうかも分んねえけどな』

「カズマね。私は……って、名前を聞いてるんじゃなくて!」

『じゃあなんだよ』

「なんでさも当然のように私の部屋にいるの!?」

『さぁな、いるからいるんだろ?』

「いや、理由になってないから! も、もしかして、ストーカー!?」

『すとーかーってなんだ? 食えんのか?』

「だぁー! 話が進まないッ!!」
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [saga]:2011/07/01(金) 02:07:49.23 ID:G8eOdUi4o
 纏っていた布団を振り払い、オーバーリアクション気味に両手で頭を掻きむしる。
すでにさやかの”恐怖”は”鬱憤”へと変換され、それは加速度的に溜まっていた。

 一方、大声を出し怯えて逃げたと思ったら、これまた大声で騒ぎ始めたさやかに男――
もといカズマは戸惑いを通り越して呆れを覚え始めていた。
どうしたものかと頭を掻くが、どうしようもないのでとりあえず口を開く。

『何バカやってんだ? お前』

「バ……ッ!?」

 カズマから呆れたような表情を向けられ、さらにはバカそうなこの男(さやか視点)に
「バカ」と言われ、溜まっていたさやかの”鬱憤”は”怒り”へと変わる。
 バカにバカと言われることほど屈辱的なこともない。

「あんたに言われたくないわよこのバカッ!」

『なっ!? 誰がバカだ!』

「バカにバカって言って何が悪いのよ!」

『ンだとォ!? テメ、ガキだと思って下手に出てりゃ!』

「1+1は?」

『3』

「やっぱりバカじゃん!」

『違うのか!?』

 とても初対面とは思えない勢いで漫才を繰り広げるカズマとさやか。
元来、二人とも喧嘩っ早い性格であり、顔を合わせればこうなることは至極当然の結果と言えた。
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [saga]:2011/07/01(金) 02:08:54.65 ID:G8eOdUi4o
………

「はぁ……。もう、なんなのよ……」

 二人の終わりが見えない漫才を止めたのは、大騒ぎを聞きつけてきたさやかの母だった。
しかし、さやか母にはカズマの姿が見えていなかったらしく、娘が頭をぶつけて
おかしくなってしまったのではないかとかなり本気で心配されてしまった。
おかげで朝の貴重な時間を母の説得に使ってしまい、逃げるように家を出てきたため、
まともに朝食すら取ることが出来なかった。

『何辛気臭せえ顔してんだ。シャキッとしろシャキッと』

「半分以上あんたのせいでしょうが」

『そいつは悪かった。ごめんな、悪りぃ。すまねぇ、許せ』

「誠意が伝わってこないんですけど……」

 本日五度目となる大きなため息を吐き、恨めしげに隣を歩くカズマを見やる。
物珍しそうにあたりを見渡し、道沿いの川を泳ぐ魚を興味深げに眺めているその姿は、
見た目の威圧感に反して実に子供っぽい。
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [saga]:2011/07/01(金) 02:10:41.15 ID:G8eOdUi4o
「アンタ、ホントに何なのよ。もしかして幽霊?」

『幽霊に足があるかよ』

「それはそうだけど、だったらなんで私にだけあんたが見えんのよ?」

『わっかんねえ』

 カズマは立ち止り、自身の右腕を睨みつける。

『こちとら訳分んねえまま連れてこられて、訳分んねえうちにこうなってたんだからな』

「要するに訳わかんないのが分ってるってことね」

『そういうこった』

「威張らないでよ……」

 清々しいほどはっきりと答えるカズマの態度に、さやかは思わず眉間を抑えて俯く。
魔法少女として戦い始めたさやかにとって、今はあまり悩み事を抱えたくない時期だ。
だというのに、まるで狙ったかのようなタイミングで、それも超ド級の悩みの種が
降ってきたのだ。
こんな奴といては、魔女に倒される前にストレスで死んでしまうかもしれない。
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [saga]:2011/07/01(金) 02:11:49.86 ID:G8eOdUi4o
「あっ」

 ふと、”魔女”という単語から、さやかの脳裏に昨日の記憶が蘇る。

「ねぇアンタ」

『カズマだ! さっきから気になってたが、ガキが俺をアンタ呼ばわりすんじゃねえ』

「なっ! 私にだってさやかっていう可愛い名前があるんだからね!」

『さやか、ね。分かったよ、覚えとく自身ねえけど』

(こんにゃろ……)

 まともに人の名前も覚えられないカズマの方がよっぽどガキだと言い返してやりたかったが、
また話が進まなくなるのでぐっとこらえる。
 そう、さやかちゃんは大人なのだと自分に言い聞かせて。

「じゃあ、カズマ。昨日の事なんだけど……」

「さやかちゃん!」

 親友の呼び声に、二人の会話は中断された。
さやかが後ろを振り向くと、まどかともう一人の親友、志筑仁美がこちらに駆け寄って来ている。
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [saga]:2011/07/01(金) 02:13:05.03 ID:G8eOdUi4o
「まどか、仁美! オッス!」

「おはよう。良かった怪我は大丈夫みたいだね」

「大したことはないと聞いておりましたが、階段から転んで頭をぶつけたのでしょう?」

「あ、ああ、うん。まぁ、御覧の通り元気だから、心配しないで」

 まどかが額の怪我について用意してくれていた言い訳に感謝しつつ、口裏を合わせる。
実際、傷はもう完治に近いのだが、気絶について聞かれた時の言い訳として包帯は巻いてあった。

『ありがと、まどか』

『うんうん、気にしないで。私に出来るのって、このくらいだから』

『そんなことないって、現にすごく助かってるし。……ところでさ』

『あ、ご、ごめんね。さすがに階段から転んだっていうのはベタすぎたかな?』

『い、いや、まぁ確かにベタだけど……。やっぱいいや、なんでもない』

(……まどかにも見えてないのか)

 魔法少女としての素質のあるまどかなら見えるかもしれないと思ったが、どうやら彼女にも
カズマは見えていないようだ。
 こんな風貌の悪い男である。見えているなら、まどかが怯えない筈はない。
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [saga]:2011/07/01(金) 02:15:47.97 ID:G8eOdUi4o
『こんな風貌で悪かったな』

「うわっ!? か、勝手に考え読まないでよ!」

「? さやかさん?」

「どうかしたの?」

「えっ!? あ、うんうん! なんでもない!」

(とにかく、学校とかではあんまり話しかけてこないでよね!)

『チッ、あいよ』

そういうと、カズマはつまらなそうにそっぽを向き、また周囲の観察を始めた。

 奇行を悟られないようにまどか達を誤魔化し、カズマにはこれ以上悩み事を増やさないよう釘を刺す。
仁美はともかく、自分が魔法少女であることを知っているまどかに心配をかけるわけにはいかない。
以上の二重苦ですでにかなりの心労を背負っているが、さやかはそれを気のせいだと頭を振る。

(ま、なるようにしかならないか……)

 これから起こるであろうさらなるハプニングへの対処を想像し、さやかはまた一人眉間にしわを作る。
さやかの魔法少女としての日々は、まだ始まったばかりだ。

 魔法少女という運命への反逆も。まだ、始まったばかり。
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [saga]:2011/07/01(金) 02:18:28.13 ID:G8eOdUi4o
短いですが今回はこの辺で。
地の文入れるとやっぱり時間かかりますね。

このカズマはアニメ基準で、ちょくちょく漫画版が反逆してきます。
まぁそういうものなんだと思ってお楽しみください。
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/01(金) 02:19:42.67 ID:yMDvLC0Fo
乙っちまどまど!
スクライド懐かしいなー
当時小学生か……
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/07/01(金) 18:13:27.08 ID:8tiO7sLl0
乙!
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2011/07/01(金) 22:56:40.54 ID:U/dVWYvr0
正直超期待している
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/07/01(金) 23:51:00.24 ID:BUCGRJtF0
>>1乙 スレタイ読んで期待してたら、その通りでした俺得
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [saga]:2011/07/03(日) 02:08:23.59 ID:Jm0qpSvOo
――スクライド――
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [saga]:2011/07/03(日) 02:09:36.93 ID:Jm0qpSvOo
 時は流れ、鮮やかなオレンジ色が街を包む黄昏時。
放課後となり、学校をそそくさと後にしたさやかとまどかは、魔法少女になってからの日課である
パトロールへと繰り出していた。

『ふあーあ……。お前ら、よくあんな難しい話聞いてられんな』

 二人の少し後ろでは、カズマが大欠伸をしながら歩いている。

 傍から見ると女子中学生に付きまとっている如何にも怪しいチンピラなのだが、幸いにも
さやか以外には存在を認知することが出来ないため、警察のお世話になることはなかった。

『カズマはずっと寝てたでしょー?』

『お前だって半分寝てただろ』

『うっ』

 まどかに怪しまれないよう念話でカズマを非難するさやかだが、逆に痛いところを突かれた。
こういう時に反論できない自分の不真面目さを思わず呪う。

『わ、私はほら、魔法少女の仕事があるから疲れてるの!』

『魔法少女ねぇ……』

 ”魔法少女”という単語に、今度はカズマの顔が曇る。
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [saga]:2011/07/03(日) 02:11:10.05 ID:Jm0qpSvOo
 授業の間、寝るしかすることがなかったカズマは、起きている間さやかにいろいろと質問を
していた。最初は単なる暇つぶしで、ついでに今自分が置かれている状況も把握する出来れば
御の字だと思い話しかけた。しかし、話をしているうちにさやかの方がヒートアップしてしまい、
「昨日はどうやって魔女を倒したのか」、「そもそもあの力は一体何なのか」と逆に質問攻めに
されてしまった。

 ”魔法少女”は質問の中で、昨日の怪物――魔女について話をしていた時に出てきた単語だ。
さやか曰く、”正義のために人々に幸せを振りまく存在”だという。

 正義という名の大義名分を振りかざし、自分たちの居場所を荒らされた過去を持つカズマに
とって、魔法少女の第一印象はこの上なく胡散臭い物でしかなかった。
魔法少女について語るさやかの姿に、出会って間もない頃の好敵手の姿が重なる。
奴は最終的に信頼していた正義を間違っているとし、”自分自身の正義”を見つけ、貫き通した。

 だが、目の前の少女は完全に”魔法少女の正義”に心酔しているように見える。
カズマにはそれがどこか気に入らなかった。

『どうしたのよ、急に黙って?』

『いんや、なんでもねーよ』

 まどかと会話をしながら、さやかが視線を少しだけ後ろへ向ける。
カズマはそれに何度目かの大欠伸で答え、さやかの後を黙って歩いた。
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [saga]:2011/07/03(日) 02:12:48.28 ID:Jm0qpSvOo
 そういえば、彼女は出会って間もない自分に対して、もう警戒心を解いているように見える。
そういう所は奴と全く似ていないと、カズマは自分のくだらない考えを鼻で笑った。

「おや、面白いものを連れているね、さやか」

 さやかとカズマの会話が終わるのを見計らったように、カズマの足元から声がする。
カズマが足元を見ると、猫とも犬とも見分けがつかない良く分からない色い生物がいた。

「あ、キュゥべえ」

「やあ、まどか、さやか。見回りご苦労様」

『なんだぁ、この白団子は?』

「白団子は酷いな」

 キュゥべえと呼ばれた生物は軽く跳び上がり、本物の猫のようにさやかの肩へ飛び乗った。
全くと言っていいほど変化しないキュゥべえの表情に、カズマは気味が悪くなる。
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [saga]:2011/07/03(日) 02:15:02.23 ID:Jm0qpSvOo
『さっき説明したでしょ? この子はキュゥべえ。私たちを魔法少女にしてくれた子よ』

「よろしく、カズマ」

『! テメー、なんで俺の名前を』

「さっきのさやかとの会話を聞かせてもらってね」

「キュゥべえ? 誰と話してるの?」

『おっと、そういえばまどかには彼が見えていないんだったね』

 まどかの様子から、キュゥべえはカズマがさやかと自分にしか見えないことを悟る。
確かに、まどかから見ればキュゥべえが突然虚空へ話しかけているようにしか見えない。

 混乱を避けるため、キュゥべえはまどかとの回線を切り、何でもないと言って話を終わらせた。
さやかも空気を読んだのか、何事も無かったかのように今日回る場所の再確認を行う。

 表面上で今回は繁華街を回る旨を話しながら、裏で二人と一匹は話を続けた。

『キュゥべえにはカズマが見えるんだね。まどかには見えなかったから、正直期待して無かった
んだけど』

『僕も彼のような存在とは初めて遭遇するよ。見たところ、霊子体……ああ、君たち人類が”幽霊”
と定義する存在とも違うようだし』
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [saga]:2011/07/03(日) 02:16:32.36 ID:Jm0qpSvOo
『俺からしてみれば、お前みたいな訳分んねえ化け物の方が幽霊より不気味だぜ』

『おやおや、なんだか嫌われてしまったようだ』

『当然だ。テメーはなんか……臭うんだよ』

『臭う? んー、別に変な臭いはしないけど?』

『そういうことじゃねえよ!』

『それよりキュゥべえ、こいつの事なんだけど……』

 さやかの茶々が入ったことでスイッチが切れたのか、カズマは腕組みをしたまま話さなくなって
しまった。横ではさやかが、何故自分にカズマが取り憑いたのか、どうすればお祓い出来るのかを
相談し合っている。

 話さなくなった後も、カズマはキュゥべえに感じた違和感の正体について考えていた。

(知っている。俺はこいつと同じ臭いを。こいつはあいつと……無常の野郎と同じ臭いがしやがる)

 無常矜侍。本土が送り込んで来たアルター使いで、狡猾な手でカズマ達を苦しめた強敵。
姿はもちろん、性格もキュゥべえとは似つかないのだが、醸し出す雰囲気というのか、どこかに裏が
ありそうな含みのある言い方が気になった。というか、単純にムカついた。

『そんなぁ……』

 どうやらさやかの方は芳しい答えが返って来なかったようだ。過去を蒸し返して苛立ちを募らせて
いたカズマは、まるで自分は関係ないとでも言いたげに見て見ぬふりをした。
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [saga]:2011/07/03(日) 02:17:58.15 ID:Jm0qpSvOo
………

 繁華街に向かう途中、突然さやかのソウルジェムが忙しなく点滅し始めた。

「反応が!」

「それほど強くない。恐らく使い魔の反応だ」

「かなり近いね。まどか、私から離れないようにね」

「う、うん」

 ソウルジェムの反応を頼りに、路地裏へと入って行く一行。邪気は、すぐにやって来た。
魔女の結界ほど強力ではないが、さやか達の周囲に空間の歪みが生じる。

「さやかちゃん!」

「分かってる。まどか、離れてて!」
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [saga]:2011/07/03(日) 02:21:38.32 ID:Jm0qpSvOo
 右手に置かれたソウルジェムが光輝き、さやかを魔法少女へと変身させる。変身が終わると
同時に、おもちゃの飛行機に乗った使い魔がどこからともなく現れ、路地裏の奥へと飛んで行った。

「あっ、逃がすか!」

 持ち前のスピードを生かし、さやかは使い魔へ接近する。使い魔の移動速度はそれほど速くなく、
距離はあっという間に縮まっていく。

「速攻で決めるッ!」

 右手に魔法で生成した片刃剣を握りしめ、弾丸のように直進する。

「ッ!?」

 が、不意に殺気を感じ取ったさやかは急停止。一歩後ろへ跳躍する。
ついさっきまでさやかが立っていた場所には、長身の槍が地面を抉るように刺さっていた。
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [saga]:2011/07/03(日) 02:37:01.19 ID:Jm0qpSvOo
―――第3話 魔法少女

魔女を倒す存在、魔法少女。

彼女らの闘争に、絶対正義は存在するのか。

絶対正義を追い求める美樹さやかと、

佐倉杏子との衝突が、新たな闘争の物語を紡ぎだす。

そして少女の危機に目覚めるは、気高き獅子か、飢えた獣か。
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [saga]:2011/07/03(日) 02:42:57.01 ID:Jm0qpSvOo
第2話投下終了です。
また短いですね。小説形式で速く書ける方は本当に偉大だと実感しました。

次回予告は雰囲気なのであってないようなものです。
CV若本と例のBGMと一緒に脳内再生してください。

それでは、今回はこの辺で。
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/07/03(日) 05:36:50.06 ID:GK5mVGz3o
乙!
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/03(日) 09:53:29.32 ID:yf8UuQfRo
乙っちまどまど!
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/03(日) 11:51:47.33 ID:KS8I9uAd0
酷い[田島「チ○コ破裂するっ!」]スレを見た
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) :2011/07/03(日) 21:38:20.06 ID:+RoldTjAO
乙だ乙だ!

乙をしてやるぜぇ!
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/04(月) 02:32:43.17 ID:8qcCaAoro
何故、スクライドと魔法少女を合わせようと思ったのか臭わせてほしかった
何でカズマ出てきたの?

スクライドのストーリー半分忘れたからあれだけど、
その辺解説があったら嬉しいなと思う乙
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/07/04(月) 02:53:17.41 ID:K7WW7+7AO
どちらのアニメも知らないけど雰囲気は伝わってくるな。戦闘シーンをもっと見たい、次回に期待
乙です、先が気になるから頑張ってくれい!
53 :第3話 魔法少女 [saga]:2011/07/06(水) 01:13:26.42 ID:GKbMLGPEo
第3話 魔法少女
54 :第3話 魔法少女 [saga]:2011/07/06(水) 01:14:39.79 ID:GKbMLGPEo
「アンタ、自分たちの為に使い魔に襲われる人を見殺しにしろっていうのッ!?」

 さやかは不安げにこちらを見つめているまどかに目もくれず、自分目掛けて槍を投げつけてきた
紅い衣装に身を包んでいる魔法少女に向かって怒りを露わにしていた。いきなり槍を投げつけられた
から、という訳ではない。目の前の少女があろうことにも使い魔に人間を食わせるべきだと主張して
きたからである。

「分かってないねぇ」

 激昂しているさやかに対し、少女の方は非常に冷静だった。

 口にしていたたい焼きを一気に頬張ると、深いため息と共に話を続ける。

「この世は所詮、食物連鎖なんだよ。魔女が人間を食い物にして、その魔女を私たちが食い物にする。
ほら見ろ、上手く出来てるじゃないか」

「アンタ……!」

 さもそれが当然であるかのように言い放つ少女。その態度にさやかの怒りが爆発した。感情に
任せて少女へ肉迫し、例の如く直線的な動きで少女へと斬撃を繰り出す。

 が、少女はさやかの軌道を完全に把握していた。

 魔法で作り出した槍を少し傾ける最小限の動きで軽々とさやかの一撃を受け止めたる。さやかが
剣にいくら力を込めても、少女の槍が動じる様子は全くなかった。
55 :第3話 魔法少女 [saga]:2011/07/06(水) 01:15:47.95 ID:GKbMLGPEo
 たったこれだけの動作に、両者の力量差が如実に表れる。そんな中でも、意地になったさやかは
退き下がらない。

「そんなの、私は認めない! アンタみたいな奴がいるから、マミさんはッ!」

 歯を食い縛り真っ向から少女を打倒さんと力を入れるさやか。すると、先ほどまで涼しそうだった
少女の顔がだんだんと曇り始めた。”苦悶”ではなく、”呆然”という形で。

「巴マミ、ねぇ……。その正義の味方面すんの、いい加減やめてくれない? 正直……」

 急にびくともしなかった槍が引っ込められる。斬るべき対象がいなくなったさやかの剣は空を切り、
そこに大きな隙が生まれる。

「あ……!」

「ウゼェんだよッ!」

 何も遮るものがないさやかの背に槍の柄による打撃が迫る。

 本能的に危機を感じ取ったさやかは無理やり体をひねった。そのまま剣の腹で斬撃を辛くも防ぐ。

 直撃は逃れたものの、代償として剣は砕け、相殺しきれなかった衝撃がさやかの体を後方へと
吹き飛ばす。
56 :第3話 魔法少女 [saga]:2011/07/06(水) 01:17:01.41 ID:GKbMLGPEo
「くッ!」

 無様に地面を転がりながらも、さやかは勢いを利用してすぐに立ちあがる。砕け散った剣を再び
魔法で生成し両手で構えた。

「ったく、巴マミみたいな甘ちゃんは一人で十分だってのに」

 少女は頭を乱暴に掻きながら、うんざりした様子でさやかを見下す。その言葉が、さらにさやかの
怒りを煽る。何よりも、自分が最も敬愛する人に向けられている事実に腹が立った。

「マミさんを悪く言うなッ!」

「おっと」

 激情と共に放ったさやかの斬撃は再び軽くいなされる。火花が散る鍔迫り合いの中、さやかの眼には
少女を射殺さんばかりの気迫があった。

「ふーん、本気でやろうっての?」

 実力差を見せつけても挑み続けてくるさやかに興味を持ったのか、少女の顔に笑みが浮かぶ。
それは、新たな獲物を見つけたな邪悪な笑みだった。

「アンタは、アンタだけは……許さないッ!!」

 そんなことなどお構いなしに、さやかは何度も少女へ斬りかかる。

 さやか自身、この戦いが不利であることは分かっていた。だが、退けないのだ。

 自分が目指す正義、そして先輩が目指した正義のためには。
57 :第3話 魔法少女 [saga]:2011/07/06(水) 01:19:56.42 ID:GKbMLGPEo
………

 自分の意志を貫こうとするとき、目の前には大なり小なり壁が立ちはだかるものである。その時、
壁を乗り越える、または壊すためには”力”は必要になる。力のカタチは様々だが、どれだけ強い
意志があったとしても、それに見合った力がなければ、最終的には壁に屈するしかないのだ。

 さやかにも”目の前の少女”という壁を乗り越えるため、決定的に足りないものがあった。

 さやかに足りないもの、それは。情熱、思想、理念、頭脳、気品、優雅さ、勤勉さ。
そして何よりも――経験が足りないッ。

 優れた魔法少女は、皆最初から優れていたわけではない。元来の能力に因る所はもちろんあるが、
魔女との戦闘を重ねた”経験”が、戦士としての”センス”を生み出している。

 当然、魔法少女になって日の浅いさやかには絶対的に経験が不足している。そんな彼女がベテランで
ある目の前の少女と戦えばどうなるのか。それは火を見るより明らかだった。

「しまッ……!」

「オラ、よッ!」

 幾つもの関節に分かれた少女の槍は鞭のようにさやかに巻き付き、その体を軽々と宙へ持ち上げる。
少女が槍の柄本を大きく壁へと振りかぶと、槍の鞭は呼応するようにしなり、とてつもない勢いで
さやかを壁へと叩き付けた。
58 :第3話 魔法少女 [saga]:2011/07/06(水) 01:21:05.27 ID:GKbMLGPEo
「がはッ!!」

 激突の衝撃で壁を伝っていたパイプが拉げ、通っていた水がうつ伏せになったさやかに降り掛かる。

 あっという間にさやかの周りには、彼女の流血が混ざったうっすらと赤い水たまりができていた。

「ぁッ、ぁぐッ……うぅ……ッ!」

 水たまりの中で、さやかは必死に立ち上がろうともがく。

 拳をキツく握り締め、上体を起こそうと踏ん張りを入れた。しかし左腕の骨が折れているのか、
左手をついた瞬間激痛が走り、左肩から地面へ再び倒れ込んでしまった。

「へっ、弱いくせに出しゃばるなっての」

 さやかが戦闘不能と踏んだのか、それとも彼女への興味を完全に失ったのか、少女はさやかに背を
向け、路地裏の奥へと歩き始めた。

(待ちな……さいよ……!)

 少しずつ遠くなってゆく少女の背中を睨みつけながら、右手だけで立ちあがろうとするさやか。
自らの回復魔法で左手の痛みは無くなっていたが、今立ち上がれなければそれも意味がない。

(このままじゃ、このままじゃ……!)
59 :第3話 魔法少女 [saga]:2011/07/06(水) 01:22:31.77 ID:GKbMLGPEo
『ああ、終われねえよな』

(! カズ、マ……)

 先日の魔女戦同様、頭の奥からカズマの声が聞こえる。

 ――後に目覚めたさやかが覚えていたのはそこまでだった。

「……おい、待てよ」

 立ち去ろうとしていた少女の耳に、さやかの声が低く響いた。

 立ち止る少女。しかし、後ろは振り返らない。

「……おかしいなぁ。全治3ヶ月って位は痛めつけた筈だけど」

「へっ、こちとら丈夫なのが取柄でね。それより始めようぜ、喧嘩の続きをよぉ」

 少女の耳にはさやかが虚勢を張っているように聞こえたであろう。それはまるで、ライオンに
吠えかかる野良犬のようだ。格の差を理解できず、無謀に噛みついてくるうるさい野良犬。

 強者から見て、その姿は目障りなことこの上ない。

「ウゼェ……超ウゼェッ!」
60 :第3話 魔法少女 [saga]:2011/07/06(水) 01:23:18.57 ID:GKbMLGPEo
 振り向きざまに槍を構え、少女はさやかへと突進する。矛先は確実にさやかを捉え、その身を
貫かんとしている。

 が、槍はさやかの眼と鼻の先でピタリと止まった。

「なッ……!」

 今まで不敵な笑みを浮かべていた少女の顔が、ここで初めて驚愕の色に染まる。

 少女が驚くのも無理はないだろう。今まで格下だと思っていたさやかが右腕一本で槍を掴み、
少女の攻撃を受け止めていたのだ。

 少女の顔色を見て、さやかの口角が邪悪に吊り上がる。

「足りねぇ、足りねぇぞ!」

 さやかは槍を握る右手にさらに力を込める。

 すると、握っていた槍がまるで空中へ溶けるように少女の手から消え去った。代わりに、さやかの
腕に黄金の装甲。背には深紅の三枚羽が現れる。

 突然の事態にさすがの少女も後方へ跳躍し、さやかから距離をとる。
61 :第3話 魔法少女 [saga]:2011/07/06(水) 01:25:36.41 ID:GKbMLGPEo
「へぇ、まだ隠し玉を持ってたって訳? けど、さっき戦ってみてもまだ分からなかったのかい?
アンタとアタシは格が違うんだよ。アンタが逆立ちしたってアタシには」

「ゴチャゴチャうっせんだよ」

「は?」

 少女の言葉を遮り、さやかが乱暴に吐き捨てる。

「こいつは喧嘩だ。お前が売った、俺が買った! だからお前をボコる。徹底的にだッ!」
 
 少女の方は、もう何を言っても無駄だと悟ったようだ。軽くため息を吐き、さやかを睨みつける。

「……なるほど、なんとかは死んでも治らないってことか」

「そうらしいぜ。治す気もさらさらねえけどな」

「ふん、口が減らないね」
62 :第3話 魔法少女 [saga]:2011/07/06(水) 01:26:36.29 ID:GKbMLGPEo
 呆れながらも、再び笑みを張り付け槍を構える少女。さやかも右腕を少女に向かって突き出し、
装甲に覆われた拳をギリリと音を立てて握った。

「いいねぇ。久々に、グッと来てるぜ」

 これから殺し合いをするというのに、本当に楽しそうに笑うさやかを見て、少女はすこし
いぶかしげな顔をする。

「アンタ、本当にさっきと同じ奴か? 中身だけ入れ替わってるんじゃないのかい?」

「だったらどうする。尻尾でも巻いて、おめおめ逃げ帰るか?」

「バカにしてんじゃねえ。殺すぞ」

「はは、いいぜ、その意気だ。ここで白黒はっきりさせないと、自分の気が済ね筈がねえ……」


「――そう思うだろ? アンタも!」


 さやかのその言葉が、開戦の合図だった。
63 :第3話 魔法少女 [saga]:2011/07/06(水) 01:29:31.16 ID:GKbMLGPEo
一つ目の山場です。次回はあんこ戦の続きを予定。

最後にこのスレや他のスレでご意見を頂いたので、少しその返信をしたいと思います。
本編中に説明できないであろう設定もあるので、それも兼ねて。

・カズマがさやかに見えたら憑依モノじゃなくね?
このカズマは遊戯王の王様のように、『憑依している本人と少数の人間にしか見えない』という
分かりにくい設定を採用しています。本編中(さやかの目覚め)で説明しようと思っていたのですが、
説明を入れるタイミングを逃してしまったので、ここに表記しておきます。
やはり設定面の描写不足は駄目ですね。それによくある憑依モノの定義ともすこしずれているかも
知れません。次回からは描写や表記に気をつけておきます。

・なんでカズマはさやかに憑依したの?
この話の根幹……というほど重要ではありませんが、最後の方にカズマ憑依の理由を持ってくる
つもりです。ちょっと強引な理由になってしまうと思いますが、まぁそこはクロスSSということで。

・どっちの作品も見たことない
見なくても楽しめるようには心がけていますが、他のまどかSSで使い古されている本編展開をカット
(最低限の描写は入れるつもりですが)する予定です。もし分かりづらい点があったら、本編を
御覧になるか、Google先生までお問い合わせくださるようよろしくお願いします。

まとめが長くなってすみません。では、今回はこの辺で。
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/06(水) 01:32:57.12 ID:rTNgFmyJo



今の所肝心な部分はカズマに頼ってるけど、将来的にはさやかが独り立ち出来るようになるのを期待
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/06(水) 02:01:56.60 ID:/o18g5/xo
乙っちまどまど!
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/07/06(水) 08:13:13.95 ID:TwpZoqoAO

まさかのクーガー改変に吹いたwwww
カズマと杏子は何気に気が合いそうだwwww
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/07/06(水) 13:07:52.22 ID:cbEqrMMz0
さやかの回復力とカズマの意地が合わされば魔法少女組に負ける気しねえな
スクライドスレは珍しいし期待してる
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 13:13:37.98 ID:cBbCfm1IO
カズマァー!
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/07/06(水) 13:50:36.29 ID:HkcQhHxAO
>>68
リュウホウ!
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/06(水) 22:56:37.95 ID:Oqg5hfJt0
>>69
カズヤァー
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/07/07(木) 00:08:51.77 ID:sspMQCIAO
>>69
カズクゥン
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/07/08(金) 21:54:53.43 ID:pLiPNwmBo
ドラマティーック
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/07/09(土) 00:38:21.14 ID:1k/edeBI0
エキセンティーック
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 01:00:14.88 ID:EbL1IgD1o
ファンタスティーック
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 13:12:21.03 ID:wX0crInlo
ラブティーック
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/07/22(金) 22:06:30.63 ID:PAuaC89Lo
このスレがスロウリィ
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/23(土) 13:03:43.86 ID:8ducvdKDO
見下してるんじゃねぇ!!
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/08/01(月) 10:13:51.62 ID:ssuhT3MAO
お前が売った!
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/01(月) 14:15:29.45 ID:0xhhOYPJo
俺が買った!
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/02(火) 00:06:27.42 ID:5lgw0S7oo
だからてめぇをボコる!
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) [sage]:2011/08/04(木) 17:40:40.66 ID:B83rpfkao
そして>>1は消える!!
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/08/05(金) 22:13:06.20 ID:YOiPURzDo
んなこたァ分かってんだよこの蛇野郎が!
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/08/06(土) 05:55:31.06 ID:+f52Ke1AO
スクライドがゲームで出るぞー
http://yaraon.blog109.fc2.com/?mode=m&no=3168&cr=c5412e493d617daab8a3d21369466df4
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) [sage]:2011/08/06(土) 11:12:34.73 ID:VGWfd5uDo
オーフェンのが俺得だわ……
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/08/15(月) 03:49:20.99 ID:gaLOCtwC0
いつまでまたせんだとっとと書きやがれ
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/08/19(金) 19:52:03.70 ID:Em7DDMG/o
遅いですね
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2011/08/21(日) 22:42:36.97 ID:85PgWfmSo
俺が遅い? 俺がスロウリィ!?



…早く続き読みたいなぁ。
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/09/12(月) 22:03:33.75 ID:RFPtK0FPo
まだか
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