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上条「ザンヤルマの剣士?」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2011/07/03(日) 18:50:01.52 ID:e68eB6kq0
このSSはとある魔術の禁書目録とザンヤルマの剣士のクロスオーバーになります。
※とある科学の超電磁砲の設定もクロスするかもしれません。

ザンヤルマの剣士を知らない方へ
ttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B6%E3%83%B3%E3%83%A4%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%81%AE%E5%89%A3%E5%A3%AB

端的に申し上げますと、オーバーテクノロジー「イェマド」の遺産「ザンヤルマの剣」を主人公である矢上遼が手にして物語が進んでいくといった内容です。

SSでの時間軸は、
・ザンヤルマの剣士から約5年が経過(遼たちは社会人1年生とします)
・学園都市『正式』設立日はザンヤルマの剣士終了から約一か月後

注意事項
・主人公は上条当麻と矢上遼の二人でいく予定です(スタートは遼よりも万里絵が目立ってしまうかも…)。
・ザンヤルマの剣士は知名度が低いでしょうから誰得かもしれません。
・筆者はSSを書くのが何年振りかわからないくらい書いてないため文章がおかしいことも多々ございます。
・かまちーと麻生先生への科学に対する解釈が筆者とは全く違うかと思いますので、原作設定をわかってて無視する可能性もあります(学園都市設立日とか設立までの動きとかねww)。
・カップリングとか矢上遼×朝霞万里絵以外思いつきませんww


以上長々と失礼いたしましたが、開演したいと思います。
【 このスレッドはHTML化(過去ログ化)されています 】

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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
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【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713788018/

ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713736565/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2011/07/03(日) 18:51:27.51 ID:e68eB6kq0




学園都市、それは日本国内にありながら日本からは独立して運営を行っている科学の最先端都市である。
科学の最先端といわれてもピンとこない人が多いだろう。たとえば、物体の素粒子化に伴う3次元外への位相へ干渉を行うこと、自立AIを搭載した清掃用機械、時速7000キロで稼働する航空機などが具体的には上げられる。

では、なぜ科学都市と謳わず、学園都市なのか。
それは、地球広しといえどもこの学園都市でしか存在しない『科学』の内容にある。

『超能力』つまり Extra-sensory perception(ESP)、通常の感覚器による知覚を超えた知覚や念力 Psychokinesis(PK)の二種類を突き詰めて研究し、実用できたのだ。
この功績として、学園都市は国内から自治運営の許諾を勝ち取ったのである。
そんなことで自治運営の許可が取れるのかと言われると、通常は取れないと答えるだろう。しかしながら、こういった内容になったのはいくつかの理由がある。
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2011/07/03(日) 18:51:54.22 ID:e68eB6kq0

・ドイツの管財人特務部隊『FINAL』への対抗措置※学園都市設立時には『FINAL』は解散している。

・脳科学に基づく実験が超能力のほとんどを占めていたため、国で研究したくも政治批判が高まる可能性があった。

・他国で研究をされるよりはとの妥協点が自治運営であった。

・毎年ごとに、『卒業生』の幾人かと研究者を日本国へ帰属させる条件。
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2011/07/03(日) 18:52:25.32 ID:e68eB6kq0
主だった理由はこの4点になるが、ほかにも多くの利害があり今の形式へ至った。
そして、注目していただきたいのが、一つ目の理由で挙げられた『FINAL』という組織である。

この組織が行っていたことはかなり特殊である。が、日本で科学実験を行っていた学園都市の前身をかなり困惑させる組織であった。
その内容は、『遺産』の相続人の抹消である。

科学の最先端なのに『遺産』と疑問に思われる方もいらっしゃるだろう。
この『遺産』と学園都市の『科学』、アプローチ内容が全く違うオーバーテクノロジーと称するのが適切な回答だろう。
『遺産』とは、遥か古代にそんざいした『イェマド』と呼ばれた文明の人々が使用していた道具のことである。『遺産』はいくつも種類があり、不老不死に近づくことができる道具や、異次元カプセル発生装置など、人間を進化させず、外部機器を徹底的に進化させてきた。対する学園都市の『科学』は、ソフトである機械ではなく、ハードである人間を進化させてきた。ただ、学園都市の『科学』もソフトである機械も、ハードに合わせて進化させたため、この、『FINAL』に狙われる可能性が高かったのである。

『FINAL』側は、『遺産』所有者のみに焦点を絞っていたが、遺産所有者がいなくなった後、組織を解散しなかった場合、間違いなく科学の最先端を行く彼らを葬りに行ったであろう。
故に、学園都市は設立許可が出たのである。ただ、許可申請が受理された直後、『FINAL』は解散してしまったため、結果としては学園都市設立を早めるだけの内容となり、今日に至ったわけである。
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2011/07/03(日) 18:53:27.39 ID:e68eB6kq0





――――――――――――――――――――――――――――――――


6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2011/07/03(日) 18:54:05.45 ID:e68eB6kq0


「不幸だ・・・」

学生服を身に纏うこの男の口癖である不幸と出るときは、一般人なら人生で一度あればいい方である不良に絡まれた女の子を見つけたとか、後ろから自転車に激突され、レジ袋内の卵が全部割れたとか気の毒な内容が多い。尤も自身の不注意で起きる不幸も多いため、同情する人半分、あきれる人半分といったところだ。
さて、今日の彼、上条当麻の不幸は前者の内容であるが、少々内容が違った。どのように内容が異なったのか、時間を少し遡って振り返る。

「いよう姉ちゃん。今からちょいと遊ばないかい?」

閉店後の本屋の前に佇んでいたスーツの女性に、如何にもな不良集団が声を掛けるのを補習で帰りの遅くなった上条当麻は目撃した。

「人を待っているのでお断りするわ」

スーツの女性はそう言って笑顔で断った。が、彼ら不良がそのようなことで退く訳もない。それを察知した上条はすかさず集団の間を縫って女性に話しかけた。

「いやー、お待たせしてすみませんでした姉さん」
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2011/07/03(日) 18:54:31.59 ID:e68eB6kq0

女性は話しかけてきた高校生と思しき少年、上条に感心した。

―――よく集団に怯えることなく助けに来てくれるわね。もしかしなくてもこの学園都市なら『能力者』でしょう。

しかし女性の思惑とは異なり、上条は二人の不良に腕を取られ、正面にいた不良に思いっきり腹を殴られる。

「がはっ」

―――いけないっ!!

「女の前だからってチョーシに乗ってんじゃ…」
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2011/07/03(日) 18:55:19.32 ID:e68eB6kq0


上条を殴った不良が口上を垂らしながらもう一発彼を殴ろうとした矢先、女性に右手を持たれ、そのまま足払いをされた。
そして女性は不良の首を捻り、声を発した。

「それ以上彼を傷つけるなら、私もきちんとお相手するけどどうする?」

不良集団は、その手際を見てすぐに察した。この女は自分たち無能力者と同じだが、警備員らと同じように訓練された人間だということを。

「いっ痛い痛い!!」

「我慢なさい。それでどうするの」

「わっ、わかった。もうあんたには関わらない」

拘束された不良とは別の者が女性に返事をする。

「それだけじゃないでしょう」

「……そっちのガキも済まなかったな」

「あ、いや、どういたしまして?」

呆気にとられた上条は、勢いでよくわからない返事をしてしまった。女性に解放された不良らはそのまま走り去っていき、上条は改めて女性を見る。
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2011/07/03(日) 18:55:50.86 ID:e68eB6kq0

―――多分年上だと思うけど、きれいな人だなぁ。上条さん、こんなカッコ悪い姿を見せちまったから、フラグなんか…、っと助けてもらったお礼を言わないと。

スーツの女性は、少しだけウェーブのかかった肩口まで伸びた髪を揺らしながら上条が礼を述べる前に声を掛けた。

「大丈夫?助けに入ってくれてありがとね」

「いっ、いえいえ上条さんこそ助けようと思ったのに助けてもらって…その、ありがとうございます」

「上条君っていうのね。どういたしまして。でも能力を使えば彼らとも渡り合えたんじゃないのかな?」

「とんでもない。上条さんはレベル0の無能力者ですからー」

女性は驚いていた。この学園都市の中で無能力者なのに助けに来ることのできる少年の心の強さに。
一般的に考えれば助けに入る人間は少数ながらもいるだろう。だが、この学園都市は学生の大半が能力を所持している。彼ら不良の中でも『スキルアウト』と呼ばれる集団なら、能力に対抗できる武器などを所持しているケースもある。端的に言えば、厄介ごとに絡む人間の大半は銃火器並みの兵器を所有していると見た方がいいのである。故に、女性が驚くのも無理はなかった。

「凄いわね」

「えっ?」

「その心の強さが、よ」
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2011/07/03(日) 18:56:26.81 ID:e68eB6kq0

―――性格も顔も違うけど、少しだけ遼に似てるかもね。

そんなことを思いながら、上条を見つめていた。

「あー、そんなに見られると上条さん照れてしまいませうよ」

「あら、ごめんなさい。っと、待ち人が来たわね」

横を見ると眼鏡を掛けた、少しおとなしそうな男性が二人を見ていた。

「マーちゃん。そちらの人は?」

「上条君。私がナンパされてたところを助けに入ってくれたの。ていうか遼が助けに来るべきじゃない?」

「ごめんね。もう少し早く来れれば良かったんだけど…、でもまーちゃんのことだかrいや、何でもない」

皆まで言う前に、遼はマーちゃんと呼んだ女性の変化に気づく。さすがに長い付き合いであるため、危険回避能力は多少なりとも向上しているのである。

「えっと、上条君。僕は矢上遼といいます。マーちゃん、万里絵が世話になったみたいだね。ありがとう」

「あっ、こちらが逆にた「本当にありがとう。あ、名前を名乗ってなかったわね。私は朝霞万里絵よ。上条君とはまた会うでしょうからその時はよろしくね」…え?」

そういって、万里絵は遼を引っ張ってどこかへ行ってしまった。
冒頭の上条の不幸と言った台詞の理由は、きれいな女性の前でカッコが付かなかっただけでなく、彼氏だろう男とそのまま去って行かれてしまったためである。
矢上遼は優しそうな青年であったが、リア充もげろと呟きながら上条も帰途に付いた…。
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2011/07/03(日) 18:57:01.49 ID:e68eB6kq0



――――――――――――――――――――――――――――――――


学園都市の外から来た二人が出会うとき、科学に対する価値観が変化し、物語が始まる………。



12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2011/07/03(日) 19:00:04.90 ID:e68eB6kq0
一応一区切りです。
投下してみたらわずか10レスとかワロチwww
自分の中ではもっと書いたつもりなのに…。
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/03(日) 19:09:30.57 ID:sx0L9cCAO
超俺得wktk
ちょくちょく見に来るお
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/07/03(日) 19:15:05.01 ID:hyYPhx+q0
ザンヤルマの剣士懐かしいな。10年以上前の作品だよな確か。
とりあえず>>1がザンヤルマの剣士好き過ぎるってことと、俺も未だにザンヤルマの剣士を忘れられないってことがわかった。
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage saga]:2011/07/03(日) 20:12:41.46 ID:e68eB6kq0
>>13
あざっす。頑張って書きたいです>Д<

>>14
はい。あの頃アニメ化するのはオーフェンかザン剣かで盛り上がってたというに…、大きく水をあけられてしまった。麻生先生ェ…。
めっちゃ好きでSS書く前に三度目の買い戻しを行ってきたとこですw
まだ全巻は買い戻せてないので、今後の展開にどこまで反映できるかは謎ですw
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/07/03(日) 21:20:36.57 ID:nkjIVdPmo
ザンヤルマ読み返すか
期待
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/07/03(日) 23:46:14.11 ID:6+WlZ2yMo
>>1はいまホテルにでもいるのだろうか
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/07/04(月) 01:17:21.81 ID:bMzR/5a+o
ザンヤルマの剣士懐かしいな
5巻くらいまで読んだ記憶がある
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage saga]:2011/07/04(月) 04:29:17.80 ID:atwySPQD0

少々問題が発生。
2話目を推敲しているときに気づいてしまいましたが、ザン剣の7巻と9巻(最終巻)が手元にないため、
遼たちが学園都市に来ることになった経緯が、あいまいな状態になっています。
8巻の設定だけでゴリ押しもできますが、出来れば前後2冊の設定を用いたいと思っていますので、投下がかなり遅くなってしまうかもしれません。それこそ禁書と違ってレビューもほとんどないので-_-;
期待してくださってる方が意外といらっしゃって筆者は大変うれしく思っていますが、ご了承いただけると幸いでございます。

>>16
読み返したら『FINAL』、日本支部がありました…
SS設定早くもミスがありましたが、ドイツを主で活動している『FINAL』とでも
脳内保管していただけると助かりますw

>>17
自宅PCから書き込んでますよw

>>18
5巻はあの男がバッドエンド臭濃厚にさせられた巻ですねw
あの男、ザン剣とクロスさせた以上は出そうと思ってますよ^^
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/04(月) 21:24:55.65 ID:Lm0xLseAO
>>19
7と9というと、モノクロームの残映とイェマドの後継者だよね

ただひとつ言えることがある。
近場(関東)だったら提供したのに…

禁書とどう絡むか全然想像できないが期待。
遼は上条さんの良い相談役になれるかな?
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage saga]:2011/07/04(月) 23:07:18.11 ID:atwySPQD0

>>2>>3>>8を修正


>>2

学園都市、それは日本国内にありながら日本からは独立して運営を行っている科学の最先端都市である。
科学の最先端といわれてもピンとこない人が多いだろう。たとえば、物体の素粒子化に伴う3次元外への位相へ干渉を行うこと、自立AIを搭載した清掃用機械、時速7000キロで稼働する航空機などが具体的には上げられる。

では、なぜ科学都市と謳わず、学園都市なのか。
それは、地球広しといえどもこの学園都市でしか存在しない『科学』の内容にある。

『超能力』つまり Extra-sensory perception(ESP)、通常の感覚器による知覚を超えた知覚や念力 Psychokinesis(PK)の二種類を突き詰めて研究し、実用できたのだ。
この功績として、学園都市は国内から自治運営の許諾を勝ち取ったのである。
そして、学園都市という名称となったのは、『超能力』は、二次成長期が終了するくらいまで、つまり『学生』に現れるケースがほとんどという検証結果が出たためである。
そんなことで自治運営の許可が取れるのかと言われると、通常は取れないと答えるだろう。しかしながら、こういった内容になったのはいくつかの理由がある。


>>3

・ドイツを主に活動していた管財人特務部隊『FINAL』への対抗措置※学園都市設立時には『FINAL』は解散している。

・脳科学に基づく実験が超能力のほとんどを占めていたため、国で研究したくも政治批判が高まる可能性があった。

・他国で研究をされるよりはとの妥協点が自治運営であった。

・毎年ごとに、『卒業生』の幾人かと研究者を日本国へ帰属させる条件。

>>8

上条を殴った不良が口上を垂らしながらもう一発彼を殴ろうとした矢先、女性に右手を持たれ、そのまま足払いをされた。
そして女性は不良の首を捻り、声を発した。

「それ以上彼を傷つけるなら、私もきちんとお相手するけどどうする?」

不良集団は、その手際を見てすぐに察した。この女は自分たち無能力者と同じだが、警備員らと同じように訓練された人間だということを。

「いっ痛い痛い!!」

「我慢なさい。それでどうするの」

「わっ、わかった。もうあんたには関わらない」

拘束された不良とは別の者が女性に返事をする。

「それだけじゃないでしょう」

「……そっちのガキも済まなかったな」

「あ、いや、どういたしまして?」

呆気にとられた上条は、勢いでよくわからない返事をしてしまった。女性に解放された不良らはそのまま走り去っていき、上条は改めて女性を見る。
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage saga]:2011/07/04(月) 23:12:16.26 ID:atwySPQD0
>>20
愛知だからお借りしたいですが、難しいですねw
今日探しに行きましたが、買えたのは6巻とミュートス1,3,4,5巻って……。

禁書三巻分まではある程度構想ができてますが、遼よりも万里絵が好き勝手動いちゃうかなぁ…。禁書の設定をぶち殺しまくりなので、構想自体を修正しながら書いておりますw
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/07/04(月) 23:20:53.69 ID:bMzR/5a+o
ミュートスノート戦記のSSも読んでみたいな
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage saga]:2011/07/05(火) 23:39:12.86 ID:7Y4KM5mS0
なんとか最終巻を手に入れましたので、更新は早くできるかと思います。


>>23
ミュートスですか。
もしかすると出るかもしれませんよ?w

25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/07/06(水) 21:45:44.21 ID:F3RHYyA00
こんばんは。
2話目が推敲完了いたしましたので投下いたします。
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/07/06(水) 21:46:55.01 ID:F3RHYyA00

時は3年程前に遡る。

コードネーム『ジェネラル』、本名ヒルデガルド・ノイラートが、遼たちに改めてコンタクトを取りに来た。
ヒルデガルド・ノイラートは『FINAL』の元構成員であり、『筐体 複写型可変多用途モジュール実用試作品"ジェネラル(GT)"』の相続人でもある。この『遺産』の特性は、現代人が『工房』を利用しつつ、イェマドの『遺産』を研究し発明した量産可能な『遺産』であり、『遺産』の持つ能力をコピーできるのが最大の特徴である。
『ジェネラル』とは、遺産の名称であると同時に、彼女の組織内での名称でもあった。

また、『工房』とは『イェマド』の『遺産』を作成することのできる遺産である。『FINAL』も工房を所有していたが、現代人が『遺産』の知識が十分にあるわけでもないため、"工房"を使用して遺産を創造しても"筐体 ジェネラル"のような、他の『遺産』のコピーを取らねばならないほど不完全なアイテムとして作成されてしまった経緯を持つ。
そして、ヒルデガルド・ノイラートが、ドイツから日本へ訪問した際に偶発的とはいえコピーをした遺産が、初代『ザンヤルマの剣』であった。

『ザンヤルマの剣』、そもそも『イェマド』の『遺産』には名称などは存在しない。彼らの生活に密着しすぎていたからだ。その中でも唯一名称があるのがこの『ザンヤルマの剣』だ。『ザンヤルマの剣』は、『イェマド』を滅ぼしたとされる所有者に強大な力を与える剣である。
真実の機能からすれば、この表現は若干ニュアンスが異なるであろうが、その機能については改めて解説する。
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/07/06(水) 21:47:49.18 ID:F3RHYyA00

話を戻そう。

ヒルデガルド・ノイラートが遼へコンタクトを取った経緯は、学園都市の研究内容が、『遺産』とは異なるオーバーテクノロジーの産物であることが判明したからである。

「学園都市?」

「はい。あなた方日本で、つい先日自治運営を行いだした、あの学園都市です」

「『超能力』ね。俄には信じ難いけど、『遺産』の例もあるからあり得ない話ではないわね」

―――鷺澤啓那の持つチカラも超能力と言われたらそれまでなんだけどね。

この場にはいない、ヒルデガルドの同居人のことを遼も万里絵も思い浮かべていた。
彼女の場合は『超能力』と呼べるかは微妙ではあるが、相手の心理に簡素な質問と皮膚接触を図れば3割ほどの確率で、相手の考えが具体的に読むことができる。
このような人間との付き合いもあり、超能力を突き詰めていく科学の姿勢は僅かながらも万里絵は理解ができた。

「はい。我々『FINAL』は、『遺産』を認めなかったのは、特別…禁断の知恵を持つものを許さない組織でしたから、当然学園都市の動きも察知していました」

「……成程ね。『イェマド』とはオーバーテクノロジーへのアプローチは違うけど、似たような方向に向かうものね」

―――『イェマド』の人々と現代人では考え方、思想、多くの者が違うから人体(ハード)そのものを磨くことを選んだのか。

ふと遼はそんなことを思った。要は学園都市で行われているのは、『超能力』開発で、基本的には二次成長期程の若者にしか顕現しないということである。
勿論、ヒルデガルド・ノイラートの言葉をすべて信じたわけではないが、8割方間違いはないだろう。
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/07/06(水) 21:48:19.10 ID:F3RHYyA00


この話をヒルデガルド・ノイラートがしたのには、遼たちが思っていることと全く別の思惑があった。

―――表の世界は、マリエ達が知ってはならないパンドラの扉がある。ならばいっそ危険と分かりつつも、想定ができる危険な場所に行ってもらうべきだ。

彼女の思惑は、学園都市に遼たちの興味を引いておき、世界の裏や闇から遠ざけようというものであった。
科学も一枚岩ではなく、特に遺伝子分野については、学園都市よりも外部組織の方が詳しいこともあったり、『魔術』とよばれる神代や異界の法則を扱う連中が存在する。遼たちがこのまま成長すれば、彼らの目の前の景色はそれほど大きくなると予感しての、学園都市へ行くよう仕向けるのが、ヒルデガルド・ノイラートが心の中で誓った使命だった。

「自治領として運営しているので情報が少なすぎますが、その存在はあまりに危険ではないでしょうか」

「……ねぇヒルダ。あなた、何か隠してないかしら」

―――やはりマリエは気づきましたか。しかし……。

「…はい。この話はある筋の人間から二人に伝えるように言われていました。そのものからの伝言を私と啓那は預かっております」

「「『管理人』として動く日が近づいた。『学園都市』はお前たちに任せたい。『外』は私が面倒を見る」か…。丈太郎のやつ、私たちがいく前提になってるわよ」

今は狩羽仁という名前でルポライターを行っている男、氷澄丈太郎からのメッセージであった。彼は『イェマド』の生き残りの子孫である。しかし、現代人として生きるため、『遺産』を手放し、狩羽仁として活動を行ってきた。その彼が、『管理人』として動くと言ったのだ。万里絵が最後に彼に会ったのは、『FINAL』の一件がすべて片付いてからであった。それから2年ほどが経過したが、まさかもう『遺産』が必要になる段階に差し掛かっているとは遼も万里絵も俄には信じ難かった。
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/07/06(水) 21:48:48.49 ID:F3RHYyA00
「ヒルダさん、マーちゃん。実はその学園都市に行く機会を先日貰ったんだ」

「遼、どういうこと?」

「僕が生物学部に行っていることはマーちゃんも知っている通りだよ。それでそこの教授が学園都市にコネを持っていて、就職先として僕にどうかと勧められたんだ。そして、それとは別に気になることが学園都市にある」

「もしかして、シズミの事では…」

「ヒルダさんにはイヤな話かもしれないが、その通りです。志津見京史郎、彼が『学園都市統括理事会』の次期メンバーに選ばれる可能性がある」

志津見京史郎、自身と関わったものを裏切ることでしか自分を感じることができない男だった。日本『FINAL』に止めを刺したのもメンバーである彼である。弁護士の家柄ではあるが、決して上流階級というわけでもなく、鬱屈とした幼少時代の境遇により、成人し父と同じ弁護士となった後も先述のように、すべてを裏切って生きてきた。『FINAL』に所属したのも、より大きな裏切りを行いたいがためであった。
その彼が、『学園都市統括理事会』のメンバーに加わる可能性がある。遼としては、自治運営している学園都市と日本の紛争を危惧して、この話を聞いていた。

「学園都市は外部と遮断された鎖国に近い運営を行っていると聞いた。氷澄さんが学園都市を任せるといったのは、それが理由だと思う。今から約2年、こちらで学園都市の知識を取り入れるだけ取り入れて、僕は行こうと思う」

―――特に医学と生物学を一緒くたにして実験を行っているなんて言う噂も聞いた。それは許されることじゃない。だから、止めたい。あのころと違って考える時間もある。選択肢もある。
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/07/06(水) 21:49:22.27 ID:F3RHYyA00

矢上遼は『ザンヤルマの剣』の所有者であった。世界を終わらせる、強大な力を齎す。『ザンヤルマの剣』を手にしてから遼の生活は一変した。精神も肉体も限界まで追い詰められる。万里絵が人質として取られたこともある。剣を奪われたことだってある。友人の心を破壊した。同じ境遇の人間、初代『ザンヤルマの剣』の所有者だったものとのやり取り、『イェマド』終焉の真実。抱えるものが大きすぎて、自殺さえ試みようとしたこともある。すべてが限界に達しても、遼は戦い続けた。守りたいもののためでもあり、自らの矜持でもある。『ザンヤルマの剣』を所有してからわかったことは、人を殺す選択肢だけは選べないということだった。
殺す価値がある人間とは分かり合う余地がある。そうでない人間を殺す価値なんてない。
強引な理屈かもしれないが、それが遼が見出した真実であり、『ザンヤルマの剣』を手放してからも戦おうとする理由であった。

この時点では釈然としない万里絵であったが、一か月の後、学園都市に行くことを決意する。問題は遼と違い、入都するための理由を探すのが大変であったが、何とか学園都市内の職を見つけることに成功する。
そして、ヒルデガルド・ノイラート来訪から二年が経過し、遼は4月から、万里絵は7月から都市内での生活を行うことになった。尤も、遼の部屋に万里絵が転がり込む形であったが。
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/07/06(水) 22:02:36.26 ID:F3RHYyA00
短いですが、以上です。
禁書勢が全く出てこなかったのは気のせいじゃない。
次回はインダストリアルさんと臭い14歳を登場させたいなぁw

ヒルダと万里絵の外見描写を全く入れてなかった…。
原作と違って髪が伸びています。
美巨乳金髪碧眼です。啓那の下では巫女服着たりします。
万里絵は原作通りで服装が少し女らしくなったかなと。
戦闘が減ったからスカートとかはくようになったんだよ。色気のある下着をつけるようになったんだよと筆者は筆者は万里絵に脳内で萌えてみる。
ザン剣知らない人のために彼女らの容姿がわかる巻の表紙を紹介。
万里絵『フェニックスの微笑』 中央の女性
ヒルダ『ファイナルの密使』 左の金髪の女性
です。 ネットで表紙は検索すると出てくると思うので、気になる方は見てください。
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/07/07(木) 11:24:58.11 ID:gLMtQriAO
きっと啓那とセロリは友達になれる…

中坊の頃ザン剣読んでサバイバルスクールに通ったのはいい思い出だ…

>>1頑張ってくれ
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage saga]:2011/07/07(木) 19:38:20.99 ID:DsqCkE0n0
>>32
15巻セロリとは飲み友達になる勢いかと思っておりますw
一方通行と啓那は、互いの美学が似ていますね。
サバイバルスクール行ってたってカッコいいですね!!
ありがとうございます!
頑張ります。
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage saga]:2011/07/07(木) 19:39:08.06 ID:DsqCkE0n0

>>31を修正
修正が多すぎて涙目…。なんで描写がこんなにおかしくなるんでしょうか…。



矢上遼は『ザンヤルマの剣』の所有者であった。世界を終わらせる、強大な力を齎す、そんな力を所有するとされる『ザンヤルマの剣』を手にしてから遼の生活は一変した。精神も肉体も限界まで追い詰められた。万里絵が人質として取られ、剣を奪われたりもした。友人の心を破壊したことさえある。同じ境遇の人間、初代『ザンヤルマの剣』の所有者だったものとのやり取り、『イェマド』終焉の真実。このような一人の人間には抱えるものが大きすぎて、自殺さえ試みようとしたこともある。しかし、すべてが限界に達しても、遼は戦い続けた。それは守りたいもののためでもあり、自らの矜持でもある。遼が『ザンヤルマの剣』を所有してから学んだことは、人を殺す選択肢だけは選べないということだった。
殺す価値がある人間とは分かり合う余地がある。そうでない人間を殺す価値なんてない。
強引な理屈かもしれないが、それが遼が見出した真実であり、『ザンヤルマの剣』を手放してからも戦おうとする理由であった。

遼が学園都市入りを決めた時点では、色々な事が釈然としない万里絵であったが、一か月の後、学園都市に行

くことを決意する。問題は遼と違い、入都するための理由を探すのが大変であったが、何とか学園都市内の職

を見つけることに成功する。
そして、ヒルデガルド・ノイラート来訪から2年が経過し、遼は4月から、万里絵は7月から都市内での生活

を行うことになった。尤も、遼の部屋に万里絵が転がり込む形であったが。
こうして二人は、学園都市の深部へと触れていくことになる。

また、ヒルデガルド・ノイラート、氷澄丈太郎の思惑を裏切り、世界の深部にも加わっていくこととなるが、

この時誰も知る由はなかった。
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/07/09(土) 13:52:41.01 ID:ibFntz+l0
3話目が完成したので投下いたします。
ただ、14歳までたどり着かなかったアワワ ヽ(´Д`;≡;´Д`)丿 アワワ
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/07/09(土) 13:53:12.03 ID:ibFntz+l0

ピピピピピと時計の音が鳴る。
普段は壊れて鳴らない目覚まし時計が時間通りなったことに安堵しながら、不幸の絶頂を行く男子高校生、上

条当麻は布団から体を起こした。

「普通なら目覚ましが鳴らないということが不幸なのに、その不幸に慣れてしまったのできちんと鳴る日の方

が幸福だと思ってしまう上条さんは多分とてもかわいそうな人なのでしょ」

誰にともなく独りごちる。
昨晩のうちに回しておいた洗濯機から洗い物を取出しベランダへと歩を進め、窓を開けるとそこには、修道服

を着込んだシスターが、文字通りの意味で干された布団のように柵に引っかかっていた。
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/07/09(土) 13:53:52.06 ID:ibFntz+l0

―――ちょっ。一体どんなシチュエーションだよ。ていうかこの子めちゃくちゃきれいな顔立ちで髪もきれい

だ。

まるで美少女ゲームの主人公だと上条は自分のおかれた状況を評価した。鮮やかな銀色の髪に大きなエメラル

ドグリーンの双眸、あどけなさの残る可愛らしい顔つき。それが上条当麻のシスターに対する第一印象であっ

た。

「…おなかが減ったんだよ」

「えっ?」

「おなかが減ったんだよって言ってるんだよ」

とりあえず少し待てと言ってシスターを部屋に上げ、洗濯物を干すと今度は台所に行って朝食を準備する。
苦学生の上条にとって、シスターに渡す一食分は正直きついものだったが、そんなことは顔に出さずに白米、

みそ汁、もやし炒めを自分の分と一緒にちゃぶ台に並べた。

「それでなんでなんでお前はベランダなんかに引っかかってたんだ?」

「お前じゃなくてインデックス。インデックス・リブロールム・プロヒビトールムっていうんだよ」

「あ、自己紹介してませんでしたね。俺は上条当麻。ていうか変な名前」

「失礼だね。えっとトゥーマは」

「トゥーマってなんだよ。当麻だ」
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/07/09(土) 13:54:17.24 ID:ibFntz+l0

こんなやり取りをしながら食事を終える。後片付けをすると、時間も押してきたので最初の問いを再び上条は

インデックスにぶつけた。

「もう一度聞くぞ。インデックス、なんでベランダに引っかかってた?」

「私が魔術師で悪い魔術結社に追われているからなんだよ」

「は?ごめん。意味が分からない」

上条はぽかんとした表情でインデックスの顔を見る。魔術師などという言葉を科学の最先端、学園都市の学生

である上条が受け入れられる由もない。だから『マジュツシ』としての言葉として認識はできたが、言葉の意

味を理解することはできなかった。
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/07/09(土) 13:55:50.69 ID:ibFntz+l0

インデックスが説明するに『魔術』とは、既存の法則に当てはまらない異界の法則をこちら側に適用し、発生させる技術を指しているのだという。『超能力』との違いは、才能がなくても使えることだという。素人が使用することも可能であるが、異界とは宗教防壁が備わっていない信心浅き者が頻繁に行使すると、脳回路がマヒする可能性もあるそうだ。

その話を信じていない上条は、証拠を見せろとインデックスに言うと、自らの着ている修道服が魔術によって構成された礼装、『歩く教会』であることを伝えた。上条はそれを確認するため自らの右手を見つめ、視線を外すとインデックスに向けて自らの右手の効果を伝えた。

「俺の右手は『幻想殺し(イマジンブレイカ―)』って力が備わっている。こいつの効果はあらゆる異能を打ち消すってものだ。もしお前のいうことが本当なら、こいつでその『歩く教会』とやらに触れても、問題ないよな」

インデックスはインデックスで、そんな右手があるものかと思い、できるものならと両手を腰に当て、背筋を反らせてささやかな胸を張りながら答えた。

結果彼女の『歩く教会』が破損し、全裸になってしまうという嬉し恥ずかしハプニングを経て、上条もインデックスもお互いの素性を確認することができた。その後、クリップなどで『歩く教会』を補修してインデックスは身なりを整えた。
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/07/09(土) 13:56:42.72 ID:ibFntz+l0
「さてと、私もう行くね。ご飯ありがとう」

「ちょっと待て。狙われてるならうちに身を隠してればいいだろ?」

「ううん。そんなに厄介になるわけにもいかないんだよ。それにとうま、あなたは地獄の底まで私についてきてくれるの?」

返事に詰まる上条を見て、インデックスは玄関先で笑顔を見せた。

「心配してくれてありがとう。あなたも終業式があるんでしょ?遅れないようにね」

このやり取りをしてて、時間を失念していた。もう百メートルを10秒台で走り続けないといけない時間だ。能力者でない上条はこの時点で遅刻が確定していた。そのまま出て行ったインデックスがいた玄関を少しの間見つめ、あわてて家を後にした。

41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/07/09(土) 13:57:13.58 ID:ibFntz+l0

インデックスの行方を気にしつつも自らの事情を優先した上条は、遅れながらも学校につくと、教室にはだれもおらず、体育館で式を行っているためそちらに移動した。
体育館につくと担任である月詠小萌に発見され、少々の小言を貰った後、クラスの最後尾に並ばされる。ちょうど校長の話が終わり、2学期から勤務する新しい教員の紹介をすると司会の教師が進行を進めていた。
そして、壇上に登った教師を見て上条は驚いた。先日不良に絡まれていた猫を思わせる大きな瞳、肩口まで伸びたセミロングの髪、間違いなく朝霞万里絵である。

「紹介を承りました朝霞万里絵です。産休に入った河内先生に代わりまして英語を担当させていただきます。まだクラス担任などは受け持つ予定ではありませんが、皆さんと仲良くしていきたいと思っていますので、これからよろしくお願いいたします」

万里絵は、壇上から去る直前に上条のいる方に向けてウインクをした。

―――気付かれてますね上条さん。

そんな万里絵の仕草が、青髪ピアスをはじめとした男性陣のテンションを急上昇させたのはまた別の話である。

42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/07/09(土) 13:58:01.37 ID:ibFntz+l0


式を一通り終え、教室に戻って全員が解散した後、上条は小萌に職員室に来るよう促されたので、現在職員室扉の前に来ていた。

「上条ちゃん。成績も勤務態度もよくないとすけすけ見る見るの刑に処しますよー」

「小萌先生。それだけは勘弁してください…」

「それで呼び出したのはですねー。新任の朝霞先生が上条ちゃんとお話ししたいと言っていましたので来てもらったんです。本当に上条ちゃんの周りは女性が多いですね」

―――いやいや。上条さんに出会いなんて全くないですよ。朝霞先生と出会っていい出会いかもと思ったら男連れだったし…。

あぁ、気づかずは本人ばかりなりとは正にこのことを指すのだろう。他者(主に女性)に無償の手を指し延ばし続けるこの男は、自らが建てたフラグを全くと言っていいほど理解していなかった。それだけ困った人間に出会ってしまう上条自身が不幸なのかもしれない。少なくとも、幼少時代はこの不幸体質が良い方向に向いたことはなかった。彼の不幸体質がフラグ体質として確立できたのも、この学園都市に入都してからの事である。
それでもあえて言わせてもらおう。もげろ。
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/07/09(土) 13:58:34.10 ID:ibFntz+l0

「ありがとうございます月詠先生。上条君、改めて先日はありがとね」

「あっ、あのときにも言いましたがこちらが助けてもらったので何とも…。それにびっくりしましたよ。まさかうちの教師だったなんて」

「あの辺で近くの学校且つ学生服なのはここだけだからね。よっぽど離れた高校に行ってない限りは間違いないだろうと思ったのよ」

「上条ちゃんは相変わらずなのですねー。あ、補習は忘れずに来てくださいねー」

小萌と万里絵のかみ合わない会話に相槌を打ちながら上条は呟いた。

「不幸だ…」
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/07/09(土) 13:59:06.04 ID:ibFntz+l0
「それで上条君。あなた、何か悩みがあるんじゃない?」

―――なんでわかったんだ?

普段通り過ごしていたつもりだったが、まだ二度しか会っていない万里絵に看破されるとは思っていなかった。小萌も気がついてはいなかったようで頭にはてなを浮かべながらも万里絵の話を聞く。

「あなた、昨日よりも焦りが見られるわ。何かを探しに行かなければならないと考えてるんじゃない?」

当たらずとも遠からず。インデックスを探すか否か、それを考えていた。万里絵は探しに行くことを前提にしているが、上条は捜索そのものをどうするか考えていた。

「上条ちゃん、もしかしてまた女の子ですか?」

小萌も小萌で鋭い。どんなに見た目がチビッ子小学生だったとしても、彼女もまた人生の先達であり上条の性格なども熟知している。全く頭が上がらないなと思いつつ、上条は問いに答えた。

「深くは言えません。ただ、自分にとって何が正しいのか答えを出すのをためらっているんです」

―――インデックスは追われてると言っていた。だが、魔術結社?そんなものが本当にあるのかと思ってるんだ。だから何から彼女を助ければいいのかが分からないんだ。

「そういった時点で上条君はどうするのかを決めているんじゃない?誰かの力になりたい。原動力が自分のために人を助けるなら、それはすごく立派な事よ」
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/07/09(土) 13:59:32.45 ID:ibFntz+l0
万里絵に言われて自らの葛藤に気切りが付いた。

―――やっぱりほっとけねぇよ。事実がどうであれ、知っちまったんだ。インデックスが何かから逃げていることを。なら探しに行くしかないな。

「ありがとうございます。朝霞先生、小萌先生」

その後の言葉を聞かず上条は職員室を飛び出し、学校を後にした。

「青春ですね。月詠先生」

「本当に心配な迷い子ですよ、上条ちゃんは」

小萌と違い、上条の様子にきな臭さを感じた万里絵は従兄妹であり、彼氏でもある矢上遼の携帯へメールを送った。

<第7学区周辺で異変がないか調べて。杞憂かもしれないけど何かが起こる気がする…>
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/07/09(土) 14:05:47.28 ID:ibFntz+l0
以上です。
相変わらず短くて申し訳ございません。
ようやく次回で戦闘パートに移行できます。

ストーリー展開上、当面は再構成で進行いたしますが、所々変更点があります。
インデックスにカギを預けないとか、補習ではなく終業式から始まるなどですね。
SSなので、その辺はおおらかに見ていただけると助かります。
完全な矛盾や、明らかにおかしい点などはご指摘いただけると嬉しいです(特に禁書は登場人物が多くて性格や話し方が間違えることがあるかもしれないので)。

遅筆のため投下ペースが微妙かもしれませんが、今後もよろしくお願い申し上げます。
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/07/09(土) 15:32:17.97 ID:ZmHks+RAO
来てたっポゥ
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) :2011/07/09(土) 21:36:52.21 ID:TSlm6pYAO
>>1です。

携帯からえらいミスに気づいたのでカキコ致します

主人公の名前間違えるとかガイキチすぐる……

矢上ではなく矢神でした……

度々やらかしてしまい申し訳ございませんでした(T_T)
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2011/07/12(火) 18:49:48.03 ID:r2tE4ez10
ザンヤルマか、本当に懐かしい。
ザンヤルマの剣、未だ宇宙を飛行中だと思うが、
遼が呼び戻す展開はあるのか?
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2011/07/12(火) 18:50:20.83 ID:r2tE4ez10
ザンヤルマか、本当に懐かしい。
ザンヤルマの剣、未だ宇宙を飛行中だと思うが、
遼が呼び戻す展開はあるのか?
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2011/07/12(火) 18:51:29.14 ID:r2tE4ez10
ザンヤルマか、本当に懐かしい。
ザンヤルマの剣、未だ宇宙を飛行中だと思うが、
遼が呼び戻す展開はあるのか?
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2011/07/12(火) 18:52:33.16 ID:r2tE4ez10
ザンヤルマか、本当に懐かしい。
ザンヤルマの剣、未だ宇宙を飛行中だと思うが、
遼が呼び戻す展開はあるのか?
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2011/07/12(火) 18:55:02.66 ID:r2tE4ez10
ザンヤルマか、本当に懐かしい。
ザンヤルマの剣、未だ宇宙を飛行中だと思うが、
遼が呼び戻す展開はあるのか?
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2011/07/12(火) 20:30:08.87 ID:r2tE4ez10
何だコレ、何で連投されてんだよ……orz

スマン、半年ROMる
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/07/12(火) 21:16:39.06 ID:GY4r+4+AO
>>54
お気になさらず〜。
ステイル戦がストーリーに重要な要素(登場人物的な意味で)を含んでいるので中々筆が進まないです(汗

ザンヤルマの剣についてはこれからの展開を楽しみにしてて下さい。
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/07/14(木) 13:18:31.35 ID:V79aDBJAO
>>1です。急遽来週から入院することになりました(-.-;)
一月ほどで帰還するとは思いますが投下が出来なくなる可能性が御座います。ご容赦下さい
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/04(木) 17:11:44.97 ID:Vx0HZ0kS0
なんとか退院できましたが、全然血が止まらない。
退院した意味がないですね。

さて、では投下を始めたいと思います。
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/04(木) 17:13:40.33 ID:Vx0HZ0kS0
学校を出た上条は、第7学区を闇雲に走り続けた。インデックスを探すためだ。大通り、公園、路地裏。徐々に人通りの少ない場所、一般的にはスキルアウトのいる区画、とある廃ビルの前に来たときにその異変に気付いた。

―――人の気配が減っていくのと同時に、壁やらに貼り付いてる紙が増えていってる。これも魔術ってやつか?

人払いのルーンが刻まれたカードであるが、この効果はあくまで人間の認識や音などを阻害するものであり、禁止するものではない。確固たる目的のある人間の意識を遠ざけるには少々効果が薄かった。

「なっ!!『歩く教会』が壊れているなんて!!」

近くで女の叫び声がした。『歩く教会』と聞いた上条は、声のした方へと走っていく。

「やっちゃったねぇ神裂。まぁなんとかするよ。落ち込んでるなら邪魔だから引っ込んでてくれないかね」

「………わかりました。後を頼みます」

神裂という女がその場を後にし、暫くして上条が付くとそこには男と女が一人ずついた。女はインデックス、男は長身でまるで焔の様な赤い髪で、右目の下にバーコードがあり、多彩なアクセサリーに身を包み、更には煙草を吹かしている男の二名である。
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/04(木) 17:14:24.15 ID:Vx0HZ0kS0
「…インデックスッ!!」

「ん?誰かな君は」

赤い髪の男がインデックスの方から振り返り、学生服の男、即ち上条の方を見る。

「てめぇ!!インデックスに何しやがった!!」

激高した様子の上条に赤い髪の男はやれやれといった様子で彼を見た。どこから見ても平凡、精々が多少発達した筋肉くらいしか取り柄がなさそうだなと判断し、上条の問いに答えた。

「いきなりだね。そもそも彼女を傷つけたのは自分ではないし、神裂も『歩く教会』の防護があるからこそ切にかかったわけだからそれが破損しているだなんて見当もつかないさ」

「てめぇでなくても仲間がやったんだったら変わらないだろ!早く治療するからどけ!!」

「…といわれてもねぇ。どこから説明したものか。まず僕にはステイル=マグヌスという名前がある訳だが君には『我が名が最強である理由をここに証明する・Fortis931』と名乗っておこうか」
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/04(木) 17:14:58.94 ID:Vx0HZ0kS0
第一印象から踏まえてこの上条とは決定的な部分でかみ合わないとステイルは感じていた。それは上条も同じで、一向に自分の要求に返答を寄越さないステイルに苛立っていた。

「そんな名前の違いなんてどうでもいい!!早くしないと死んじまうだろうが!!」

「そうかな。『S(ソウイル)』のルーンは稼働しているから今すぐ死ぬことはないさ。それに彼女は元々僕らの魔術結社に所属しているんだ。イギリス精教の『必要悪の教会(ネセサリウス)』にね」

ソウイルとは太陽を示すルーンのことで、太陽は生命力の象徴である。24字のルーンを完全に解析し、新たに6つの文字を生み出した若干14歳にして天才と称されるステイルだからこそ、このルーンを応用して応急の治療にあたることができたためインデックスを誤って傷つけた神裂と呼ばれた女も彼に任せて退室できたのである。
尤も、魔術に疎い上条にとって今のステイルの言い分は、インデックスと同じ組織の人間が彼女を追って傷をつけたとしか解釈できなかった。
なぜなら、ステイルの話し方は明らかに上条を挑発していたからである。
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/04(木) 17:15:35.77 ID:Vx0HZ0kS0

「さて、こちらは彼女を回収しなければならない。いや、正しくは彼女の持つ十万三千冊の魔導書の回収だね」

「インデックスも言ってたがそんなもんどこにもないじゃねぇか!」

「君、そんなに怒鳴って疲れない?まあいいさ。魔導書がどこにあるか?君の目の前にあるだろう。あぁ、浅慮な思考をしてそうだもんね君。特別に教えてあげるよ。彼女の脳の中にソレはあるのさ。完全記憶能力、聞いたことない?」

―――授業中にうろ覚えだが聞いたことがある。確か見たもの聞いたものを全てそのまま脳に保管する人間を指すってそれじゃあインデックスは…。

「そういうこと。ほかの魔術結社に強奪される前にとっととイギリスに連れて帰りたいんだよね」

―――まぁ、『儀式』が終わるまでは連れて帰れないけどね。

「ステイルだったか。お前が嘘をついている可能性は?」

―――食いついたな。それでこそ魔法名を名乗った甲斐がある。

ステイルがもう一つの名、『魔法名』を名乗った理由は、単純に上条のことが気に入らないから痛めつけたかったという、極めて粗野な理由であった。
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/04(木) 17:16:18.76 ID:Vx0HZ0kS0
「そう思うなら彼女を自分から取り戻せばいいじゃないか。先ほど名乗ったもう一つの名は『魔法名』、相手を殺す際に名乗る『殺し名』さ」

言い放つと同時に上条の周りで焔が渦を巻き始めた。

―――なっ。これが魔術ってやつかっ!

上条を円錐状に包み込み、渦を巻いた火の先端から業火が降ってくる。

―――くそっ。『幻想殺し(イマジンブレイカ―)』が通じるかわからないが頼るものはそれしかない!

とっさに舞い降りた炎に上条は天に向けて右手を翳した。するとパキィンと音を立てて彼を包んでいた焔は消え去った。

「何っ!」

「ははっ。そうだよ、そうだよな。俺の『幻想殺し』は『歩く教会』とやらにだって通じたじゃねぇか」

―――これなら、戦える。

―――まさか『歩く教会』はこいつが壊したのか?

「行くぜ魔術師。インデックスを一刻も早く病院に連れて行くんだ!!」

「ふざけるな!!貴様なんかに、貴様なんかに!!『魔女狩りの王(イノケンティウス)』!!」
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/04(木) 17:16:46.52 ID:Vx0HZ0kS0
ステイルに向け特攻しようと突っ込んだ上条とステイルの間に突如炎でできた巨人が顕現した。上条はとっさに立ち止り、腕を振りかぶってきた『魔女狩りの王』に向けて右手の『幻想殺し』で殴りつけたが、『魔女狩りの王』は立ち消えることなく、そのまま君臨し続けた。

「ははっ。そうだよそうだよ。ここは学園都市で君には何か魔術を打ち消す類の能力があったとしよう。だがその『魔女狩りの王』はルーン設置によって出現させた魔術。故にルーンを刻んだ札を損傷させない限り再生し続けるのさ!!」

「はっ。ヒントをくれてありがとよ」

「ふん。敵にヒント?勘違いしてもらっては困るね。ここにどれだけのルーンを設置していると思っているんだい?」

―――くそっ。よく見たら見渡す限りカードが貼ってあるじゃねぇか。こいつを抑えながらどうにかする?無理だ。大体俺が命を懸けてインデックスを助ける理由がどこにある。今日会ったばかりのこいつに…。

右手の『幻想殺し』でどうにか『魔女狩りの王』を抑えつつも、絶望を上条は感じていた。ステイルは空いた両手で炎を生み出しているのが見えるし、こちらの『魔女狩りの王』は『幻想殺し』を外したら、たちまち自身の体を焼き尽くす。正に絶体絶命である。

「これでとど」

ステイルが上条に向けて火炎を放とうとした矢先、彼はその手を止めた。
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/04(木) 17:17:20.92 ID:Vx0HZ0kS0
「ちっ。わかった。仕方ない、この場は離脱するよ」

―――えぇ。そちらに向かっている人物は『イギリス精教』でも危険度の高い人物です。絶対に今やりあわないようにしてください。相打ちになって『儀式』ができなくなってしまっては元も子もありませんから。

通信礼装で神裂から連絡が入り、仕方ないとステイルは『魔女狩りの王』を解除した。

一瞬ほっとした上条だったが、今まさに殺されそうだった自分に対し手を止めたステイルの意図がつかめなかった。

「どういうつもりだ?」

「ふん。どうもこうもとりあえずこの場は君に彼女を任せることにしたのさ。『S(ソウイル)』のルーンで多少の傷は癒えているはずだが、このままでは彼女は失血死するだろう。急いで手当をするといいさ」

「ふざけんなっ!!渡さないと言ってみたり任せると言ってみたり」

「君の意思なんかどうでもいい。因みに一言言っておく。彼女を死なせたりしてみろ。どんな手を使ってでもお前を業火に焼かせて苦しませながら殺す」

そう言って赫の魔術師、ステイル=マグヌスはその場から消えた。
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/04(木) 17:17:57.44 ID:Vx0HZ0kS0
「ってインデックスを早く何とかしないと。でもどうすれば…」

「…上条君!!一体ここでなにがあったんだ!」

唐突に背後から声がした。

―――この声は…、矢神さん。

「矢神さん。インデックスが、インデックスが…」

現れた人間は先日朝霞万里絵と連れ立っていた矢神遼であった。遼は違和感のする方へと足を運び続けた結果、このビルへ辿り着いた。元々『ザンヤルマの剣』という超科学の産物を手にしていた彼は、違和感、即ち人払いの結界に対し直感ではあるが気が付くことができた。そうしてビルが炎上した様を外から見た彼は、万里絵から来たメールの意味を理解し、突入を鑑みた訳である。

「とにかく止血をして移動させよう」

そう言って遼は自らの服を使用してインデックスの傷口を圧迫し、応急処置を施すと上条の家がここから近いことが分かったので、インデックスを抱えて上条家へと向かった。
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/04(木) 17:23:58.03 ID:Vx0HZ0kS0
以上になります。

上条さん、原作と違って負けてしまったのとステイルに独自魔術を使わせてしまいました。
一応ルーンの解析ができているからこその魔術として使用させたわけですがね。原作でも火傷治療とかやってましたし。
で、また誤字がありましたが目につくほどでもないので今回は修正しません。
あと、遅筆なのはあれとしてもバトルシーンに緊迫感がなさ過ぎてすみません。
次回は神裂さんがきちんと登場できるかと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/08/04(木) 19:38:29.08 ID:CxU5QBuAO
生きてたッポ
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2011/08/05(金) 16:51:13.52 ID:mE4Zi2CH0
>>67
まだだ。まだ終わらんよ!
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/05(金) 16:52:44.59 ID:mE4Zi2CH0
さて、連日になりますが投下いたします。
美琴ファンの皆様、どうか投石はお止め下さい。
彼女の登場する機会はありますので…。
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/05(金) 16:54:05.36 ID:mE4Zi2CH0

遼がインデックスを病院へすぐ搬送しなかった理由はいくつかあった。
シスターの格好をしている時点で学園都市ではまともな事態ではない、これはオカルトと呼ばれる宗教思想を徹底排除した学園都市ならではの考えである。また、起きていた事態も普通ではなかったため、状態は芳しくないが何とか無難に事態を乗り切りたいといった思惑があった。
その話を上条も聞いたからこそ、一度自宅にインデックスを連れていく決心をしたのだ。それにどうも上条から見て矢神遼という成年は、トラブルに手慣れたような印象を受けた。
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/05(金) 16:54:32.84 ID:mE4Zi2CH0

―――大人だから、というには少し肝が据わりすぎてないか?

そう考えてるうちに二人は上条宅へ着き、インデックスを布団に寝かせた。

「さて、急ぐだろうからまず医者に連れて行くかもしくは君が学園都市の学生ならその手の能力を持った学生に心当たりがあるかを確認したい」

「医者に連れて行く方がいいかと思います。ただ、こいつどうもIDとか持ってないみたいですぐ治療を受けられない可能性があるんです」

「そうか。それなら…」

遼が今後の話を切り出そうとした途端、インデックスの雰囲気が変わったことに二人は気づいた。
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/05(金) 16:55:01.96 ID:mE4Zi2CH0

「インデックス?」

「はい。私はイギリス精教内第ゼロ聖堂区『必要悪の教会』所属の魔導書図書館です」

まるで別人のような、いや機械のような虚無感を纏う双眸は彼らを見ることなく横になったまま話し始めた。
上条が知るインデックスは快活な性格だったため、その様子をうかがい驚いた。が、インデックスは話すのをやめる気配はない。

「正式名称はIndex-Librorum-Prohibitorumですが、呼び名は略称のインデックスで構いません。現在、『自動書記(ヨハネのペン)』を強制起動しました。このままでは失血を続ければ、今から2時間後に私の肉体は必要最低限の生命力を失い、絶命します。それまでに適切な処置を施すため、魔術を使用できる人間を用意してください。上条当麻、あなたは自身の能力で魔術を使用できないのと、矢神遼、『超科学装置所持者記録(リストI)』に記載された人間も同様、魔術を使用することができません。また、学園都市の学生は魔術を使用すると開発された脳による宗教防壁への免疫力がマイナスになっているため、使用時に死亡するケースを聞き受けています」
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/05(金) 16:55:31.91 ID:mE4Zi2CH0

上条は魔術の存在を知っていたため、今の話を半分理解できたが、遼はまるでその話が理解できない。

―――魔術?魔術ってあの魔女とかが使う…。それよりもなぜ僕が『遺産』を所持していたことをこの娘は…。

「矢神さん。朝霞先生に連絡を取ってもらうことってできますか?」

遼が思案に耽る時間は与えられなかった。人命の方が優先されるのは当然だと遼も認識しているのでそのまま上条の問いに頷き、万里絵の携帯に電話を入れた。数コールの後、メゾピアノの遼に慣れ親しんだ声が聞こえる。
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/05(金) 16:56:01.34 ID:mE4Zi2CH0

<もしもし。遼がわざわざ連絡をしてくるってことはやっぱり厄介なことになってたのね>

「うん。上条君が変わってほしいと言ってるから変わるよ」

「上条です。朝霞先生、勤務終了時間って何時になります?」

<そうね。定時ということであればもうそろそろかな>

「小萌先生と一緒にうちに急いで来ていただくことってできますか?」

神妙な面持ちで話す上条と遼の声色に万里絵も何か急がなければならないと理解したため、隣席の月詠小萌に声を掛けると、即OKの返事が出たため、上条家までの大まかな目印を聞き通話を終了した。
上条が万里絵と小萌の両名を読んだのは、能力開発を受けてない大人であれば魔術を使用できる可能性があることと、どちらかがだめだった場合のリスクを考えての事だった。
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/05(金) 16:56:40.61 ID:mE4Zi2CH0

「とりあえず僕らには待つことしかできないけど、インデックスちゃん。それでも大丈夫かい?」

「規定時間に到達する前に魔術指示を出すことができるなら問題ありません」

こうして失血を抑えつつ、上条と遼、インデックスは万里絵らの到着を待つことにした。

76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/05(金) 16:57:25.27 ID:mE4Zi2CH0


――――――――――――――――――――――――――――――――

77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/05(金) 16:58:00.61 ID:mE4Zi2CH0

時を同じくしてTシャツに半分だけカットされたジーンズを身に纏う日本刀を所持したポニーテールの女性、神裂火織に撤退命令を出されたステイル=マグヌスは不機嫌そうな顔をして神裂を睨みつけた。

「神裂、どういうつもりで呼び戻した」

「あなたが交戦状態なのはこちらも確認していましたが、イレギュラーがそちらに向かったためです」

―――イレギュラー?『聖人』である神裂火織が慎重に事に当たるほどの人物がいるというのか。

ステイルは天才、神裂は『聖人』と持て囃されるほどの存在で、実質イギリス精教の中でもトップクラスのコンビである二人だ。ましてやこの『聖人』というのは、生まれながらにして神の力の一端、『天使の力(テレズマ)』を宿した人間であり、超人的な身体能力、耐久性、魔術機能を備えた科学における核兵器の様な存在である。だからこそ、ステイルは撤退に納得がいかなかった。
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/05(金) 16:58:36.21 ID:mE4Zi2CH0

「ステイル、『超科学装置所持者記録(リストI)』という言葉を聞いたことがありませんか?」

「あぁ、確か謎の機械の様なものを配る男、確かカーロフ=ウラジェロスキー、日本では裏次郎という男が配布していた『FINAL』解体時に十字教が奪取したあのリストだろ?」

万里絵に言わせれば遺産使用団体、企業として確立していた『TOGO産業』よりも『FINAL』という組織の方がおざなりだと評価していたが、各国家・組織からは『FINAL』の方が注目を集めていた。理由は彼らが上流階級に存在し、その力を奮っていたためである。十字教、宗教サイドも『遺産』という存在を認識はしていたが、誰がどこでその機械、『遺産』を所持しているか。またどのような力を持った『遺産』であるか理解することができなかった。そこに来て狩羽仁と志津見京史郎が各々で『FINAL』を瓦解させた。狩羽はドイツ、志津見は日本を、これにより各国の『FINAL』も空中分解したわけであるが、この際に各十字教が彼らの持っていたリストを回収している。現在、イギリス精教ではこのリストを『超科学装置所持者記録(リストI)』と呼び、保管をしている。
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/05(金) 16:59:22.23 ID:mE4Zi2CH0
「『超科学装置所持者記録(リストI)』、それもより詳しくデータが乗っている男。そしてオーキス・ムーブメントを解散させた『ザンヤルマの剣』の所持者、矢神遼がそちらに向かっていたからです」

「なっ!!いくらか『超科学装置所持者記録(リストI)』のデータで見たが、『ザンヤルマの剣』の能力は…」

「えぇ。身体強化、バリアー、重力制御、エネルギー放出、各敵対者及び生命体などの補足機能、自動防御、自己再生などが主ですね。そして一番問題なのがマインドコントロール。この剣を所持した人間にあなたなら無策で戦闘を挑みますか?」

『超科学装置所持者記録(リストI)』に書かれた『ザンヤルマの剣』の機能は、実際の『ザンヤルマの剣』の機能とは異なっており、目下彼らが問題としているマインドコントロール機能は存在しない。また、遼は『FINAL』解散後、暫くして『ザンヤルマの剣』を手放している。その情報を知らない二人は、ある意味無駄な警戒をしているが、『超科学装置所持者記録(リストI)』の情報を元に考えれば矢神遼、『ザンヤルマの剣士』は危険極まりない存在である。
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/05(金) 16:59:56.47 ID:mE4Zi2CH0
「差し詰め敵を操ることのできる『聖人』と言ったところか。くそっ。ふざけてる…」

「『ザンヤルマの剣』は刀身を出さない限り能力行使ができないそうです。それならこちらにも打つ手があります。インデックスを手負いで置いて行ったのも、彼らが目を離す時を見計らって最悪奇襲をかけることもできるようにとの計らいです」

極力戦闘になりたくないと神裂は考えている。彼らの行う『儀式』にも、自身の魔力を使用する必要があること、同レベルの戦力を持つ相手に操られる可能性があること。つまり分が悪すぎるのである。よって、奪還よりも対話による解決を望んでいる。

「ならば僕が上条家で待機をしよう。魔術を打ち消すあの学生、確か上条当麻とかいったかな。彼は間違いなく部屋から出るだろうし、矢神遼も同様だろう。その時に彼らと君が折衝するがいい」

「そうしましょう。最悪、呼び出せばいいですしね」

「決まりだ。なら僕は早速ルーンの設置を行う。神裂も手伝ってくれ」

「わかりました。では行きましょう」

そう言って彼らもまた、上条家へと向かって行った。
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/05(金) 17:00:36.19 ID:mE4Zi2CH0


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82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/05(金) 17:01:14.64 ID:mE4Zi2CH0
上条宅についた万里絵と小萌の二人は、上条たっての願いでインデックスの指示を聞いて動くこととなった。ただ、一名で良いそうなので小萌にその場を任せ、上条ら三人は外で待つことにした。

「事情を聞いてもいいかしら」

そう万里絵が切り出したが、上条は廊下からそのまま階段を降りようとする。

「上条君。またあんな騒ぎになる可能性は?」

上条からまだ詳しい事情を聞いてない遼も階段を降りて行こうとする上条を呼び止める。

「おおいにあります。でも俺の持ってる異能の事情でもう少しこの場を離れたいんです」

二人は上条の事情を考慮し、すぐ近くにあった公園で話をすることにした。
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/05(金) 17:01:56.90 ID:mE4Zi2CH0

「できればお二方、小萌先生も入れると三方か、を巻き込むつもりはないんですがそれでも聞かれますか?」

公園につくなり、上条は二人に向けて拒絶の言葉を放つ。しかし、万里絵は良しとしない。

「そうね。私も遼もこの手の事件には慣れてるつもりよ。月詠先生はわからないけどね」

「それに僕も無関係ではなさそうなんだ。『遺産』の情報を、それも僕を特定してインデックスちゃんは持ってた」

遼が言った言葉を聞いた万里絵と上条の反応は全く異なっていた。『遺産』を知らない上条ははてなを浮かべており、万里絵はかなり神妙な面持ちである。

「心当たりとしては『TOGO産業』か『FINAL』でしょうね。修道服を着ているところから考えると『オーキス・ムーブメント』辺りも怪しいわね」

当時相手取った事件を思い出しながら万里絵と遼が話を進めるが、事情を呑み込めていない上条が割って入る。
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/05(金) 17:02:31.19 ID:mE4Zi2CH0

「ちょっと。『遺産』ってなんですか?あいつが言ってた『超科学装置所持者記録(リストI)』とかいうのと関係があるんですか?」

「…『超科学装置所持者記録(リストI)』か。そう言うことなら『FINAL』からの情報流出が一番可能性が高いわね。丈太郎が『ドイツFINAL』を潰したと言っても各国に『FINAL』が存在した以上その存在が漏れても仕方ないか」

「まーちゃんまーちゃん。上条君がついて来れてないよ」

「失礼。どうする?私から説明した方がいい?」

「いや、僕からするよ。そちらからの話も聞きたいから手短にいこうと思う。上条君、君は学園都市以上の科学の存在を認めることができるかい?」

唐突な質問だが『超科学装置所持者記録(リストI)』に超科学と謳われている時点で、上条も質問の意図を自ずと理解した。

「自分は外から来たからここが最先端だと感じていました。が、インデックスが魔術を謳った以上その存在も考慮はしてます」
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/05(金) 17:03:03.02 ID:mE4Zi2CH0

逆に万里絵は魔術について上条宅で触れられることはなかったが、オカルトチックな指示を出す血まみれの修道女がやろうとしていたことが魔術なのだと結論付けた。

「うん。僕はかつてその超化学の産物、『ザンヤルマの剣』の所有者だったんだ。君と同じくらいの年齢の時の話だけどね」

「つまり、彼女が言っていた『超科学装置所持者記録(リストI)』の詳細を追う必要が出てきたのよ。上条君が巻き込む以前に私と遼も関わってしまっているわけ」

「朝霞先生もその『ザンヤルマの剣』を?」

「違う違う。私は遼の戦いのサポート。ただ、私を狙ってくることもままあったから『遺産』所有者でなくとも存在は知られているはずよ」

「さて、今度は上条君が知る魔術について教えてもらいたいんだけど」

『遺産』の話を細かく話すより、今起きている『魔術』の話をしようと遼が会話を転換させる。
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/05(金) 17:03:29.82 ID:mE4Zi2CH0

「俺が知ることは僅かですよ。まずあいつ、インデックスは魔術というオカルトの世界の人間で、同じ組織の人間に追われて逃げていたってことくらいしかわからない。あいつを探して辿り着いたのが、矢神さんと会ったあの廃ビルです。その時に俺、相対していたステイルとかいう火を使う魔術師に殺される一歩手前だったんですが、急にあいつが手を止めていなくなってすぐ、矢神さんが来たんです」

「…どうやら敵と称していいのかわからないけど、相手は複数いるわね」

上条の話を聞いて、思案した万里絵の結論は敵が複数いるということであった。

「根拠はいくつかあるわ。まずは追手が一人であることは想定しにくい。火を使う人間があんな刀傷を与えるとは考えづらい。そして『超科学装置所持者記録(リストI)』にある遼の記録を知っている可能性がある」

『遺産』を所持していなくとも、遼の戦闘をサポートし続けてきたのは他ならぬ万里絵である。学園都市で考えれば『無能力者』が『能力者』を相手取ることに等しい。しかも相手は組織だったものであるケースも多かった。そう考えると超兵器を所持していた急に剣士となった遼よりも、ブレインとして、またサバイバルスクールで培った経験を活かして多少の戦闘もこなせる万里絵の方が相手には厄介極まりなかったであろう。
上条は万里絵からステイルの戦闘方法、自身の能力を細かく聞かれ、それに答えていく。一区切りしたところで万里絵は戻ると宣言した。

「私は上条君の家に戻るわ。それと上条君、今後は君の能力は人には言わない方がいいわね。右手だけだとばれると戦闘の幅が狭まるわ。あと遼、あなたは上条君についててあげて。おそらく二手に分かれて襲撃されるから」

万里絵に忠告され、上条が頷くとその辺にあった石をいくつか拾って万里絵は上条家に戻っていった。
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/05(金) 17:03:59.69 ID:mE4Zi2CH0

「朝霞先生、一人で魔術師とやり合うつもりかよ」

「まーちゃんは護る為に戦うわけで、勝ち目がなかったらこちらにどうにかして応援を要請するさ」

携帯の機能で、ワンボタンで遼にアクセスできるよう設定をしている。これは遼も同様で、能力を行使するという学園都市の中で警戒した二人が上条と会った日の翌日にその機能を取り入れた。
それに遼も万里絵の戦闘面における状況把握能力を理解しているため、その辺は信頼していた。

「それならいいんですが…」

「そうですね。能力を持たない人間が護衛をしているのであれば、向こうはステイルに任せてもいいでしょう。尤も、こちらの対話の内容次第ですがね」

二人の会話に挟んであらわれたのは、Tシャツに半分だけカットされたジーンズを身に纏う日本刀を所持したポニーテールの女性で、明らかに周囲に異質な空気を抱かせている。

「まずは自己紹介をさせていただきます。イギリス精教『必要悪の教会』所属の神裂火織と申します。以後お見知りおきを。上条当麻、そして『ザンヤルマの剣士』…」

88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/05(金) 17:09:39.78 ID:mE4Zi2CH0
以上になります。
いろいろ無理が生じた今話ですが許していただけると助かります。
表現が拙さ過ぎて生きるのが辛い…。

とにかく遼と万里絵、二人並ぶと遼の出番とセリフを喰ってしまう万里絵ですが、かわいいので許してください。女性ファンは大概アンチ万里絵らしいですが…。アニメ化がなかった最大の要因がこれかもしれませんねwww

それでは次回もよろしくお願いいたします。
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage saga]:2011/08/06(土) 21:45:05.74 ID:Zx2n/JT20
>>1です。
再入院するかもしれないので、また更新が止まる可能性があります。
申し訳ございませんが、了承願います。
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/09(火) 21:38:30.89 ID:Vkix7iCA0
>>1です。
入院はとりあえずなくなったようですので投下をしたいと思います。
ていうか読んでる人が絶対的に少ないでしょうからあまり心配する必要がないのか?
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/09(火) 21:39:19.36 ID:Vkix7iCA0

『ザンヤルマの剣』、かつて矢神遼が所持していた『イェマド』という文明(正しくは文明というよりは表現として用いられていた)の超科学で構成された『イェマド』の『遺産』である。
この剣はかつて『イェマド』を崩壊させた『世界を終わらせる剣』として、生き残った『イェマド』の人間に語り継がれた。
事実としてみるのであれば、偽りなく『ザンヤルマの剣』は『最終法廷ザンヤルマ』により『世界を終わらせた』。確かに『ザンヤルマの剣』は強力な武器として見ることもできた。『イェマド』の人間が例外なく所持していた半不老不死を体現した『守護神』の防御機能を突破する事が出来たのだから。しかしその真価はコミュニケート機能を特化させた『イェマド』の概念にはないモノであった。

『イェマド』という世界について簡単に解説を加えるとこのようなものになる。
・『守護神』という機能により外敵による致命傷を負わない限りは死ぬことはない(半不老不死)。
・娯楽は『遺産』で全て実現可能であるため、他人との接触がほとんどなかった。
・これに伴い、自己完結の世界として『イェマド』の人々は永遠であり続けた。
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/09(火) 21:40:00.13 ID:Vkix7iCA0

では、『ザンヤルマの剣』が誕生した理由とはなんであろうか。全てが賄える不老不死の世界で『世界を終わらせる』必要が果たしてあったのだろうか。自分だけの世界で生きていく、そんな世界に疑問を抱いた一人の男が行動を起こす。それが『ザンヤルマの剣士計画』だった。全ての人間の意識を一同へ集め、『他人』がセカイに存在することを知らしめるために『最終法廷ザンヤルマ』を行ったのである。
これにより、他人の負の心が一つとなってしまい、各人に掛かる精神負荷により『イェマド』というセカイは終焉を迎えたのであった。

『FINAL』が所持していた『超科学装置所持者記録(リストI)』にマインドコントロール機能が存在すると記載があったのも、この機能を知らなかった人間が一方的に他人を操ることができると勘違いをしたためである。


93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/09(火) 21:40:34.11 ID:Vkix7iCA0



「『ザンヤルマの剣士』?」

上条は言ってそれが矢神遼を指すのだと理解した。そんな上条の様子を気にすることもなく、遼は眼鏡越しに映る女、神裂火織を見続ける。立ち振る舞いから突進力のある攻撃方法を行うだろうことを想定してのことだ。『ザンヤルマの剣』を所持した当初、遼は大人しく勉強も並み、スポーツもダメな青年であったが、数々の経験を経てレベルアップしている。また、『ザンヤルマの剣』を手放した後、万里絵からいくらかの手ほどきを受けているのも大きい。よって、彼女の動きに警戒をしている。
神裂も遼の佇まいを伺い、『ザンヤルマの剣』に振り回されている人間ではないと評価を下した。もし攻撃をするなら剣を抜かれる隙のある『七閃』よりも、一撃必殺の『唯閃』の方がいいと思い、初めからそう動けるよう心構えを行う。

―――いけませんね。ここまで警戒をしていると、ただ戦いをしに来たと勘違いされるかもしれない。それに上条当麻は魔術を打ち消す可能性がある。『唯閃』に頼り切るのも危ういですね。
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/09(火) 21:41:06.36 ID:Vkix7iCA0

神裂の警戒は遼に対しては当たっていたが、上条は雰囲気が険悪であることしか掴めていないため、危険度が高いことしかわかっていない。

「申し訳ございません。確かに彼女、インデックスを傷つけたのは私です。そこに弁明の余地はありません。現在もあなた方にその件で迷惑をかけていることは謝罪させていただきます。無論、彼女自身にも」

「その割には攻撃的な雰囲気だな」

謝罪を掛けた神裂に対し上条は思った通りの回答を返した。遼もこの意見には同意を示すが、何か深い事情があるのだろうと複雑そうな表情をする神裂の様子を見て感じた。

「そうですね。そこは否定しません。こちらの目的と理由を説明して、あなた方から理解が得られればそれでいいですのがね」

指摘を受けてもその態度を改めようとしない神裂に、上条は食って掛かろうとしたが、遼がそれを窘めた。
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/09(火) 21:41:44.64 ID:Vkix7iCA0

「それは聞いてみないことには僕も上条君もわかりませんよ。それにあなたの悲痛な顔を見れば、何か複雑な事情があるのでしょう」

「……わかりました。あなた方はインデックスの事情をどこまでご存知ですか」

神裂の問いに上条はこれまで聞いた彼女からの情報を伝えた。魔術の事、『必要悪の教会』所属であること、十万三千冊の魔導書を脳内に保管していること。

「彼女からの情報はそこまででしょうね。ではここからが私が伝えたかった彼女の抱える、私たち同じ所属の人間を知らずに逃亡を図った彼女の事情を説明させていただきます」

少し間を開けて神裂は説明を始めた。
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/08/09(火) 21:41:45.87 ID:EvI6DXDxo
数ヶ月かけてじっくり書いてる人もいるしマイペースでしっかり書ききってくれればいい
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/09(火) 21:42:39.97 ID:Vkix7iCA0

「彼女の持つ瞬間記憶能力。これのおかげで十万三千冊の魔導書の保管をすることができています。ただ、同時に彼女の記憶できる脳の容量が残り15%、約一年分しかないことが私たちから逃亡を図った原因です」

今一つ上条はこの内容が理解できていなかったが、遼は概ねインデックスの置かれた立場や悲痛な過去を理解した。

「つまり、君たち『必要悪の教会』に属する人間が一年毎にインデックスちゃんの記憶を消して15%を維持しているのが現状だということだね」

上条も遼の話を聞いてインデックスの置かれた状況を理解した。拳を握り締め、「畜生」と呟きながらも上条は打開策が思いつかない。

―――記憶を消す?そんなこと普通じゃない。だがあいつの脳が普通の状態じゃないなんて…。

だが、この時遼は別の理由で憤りを感じていた。それをどう神裂に伝えるか。どうすればこの問題が解決できるかが重要だからだ。『ザンヤルマの剣』を持っていると勘違いをしているからこそ、神裂はこちらと話をしてインデックスのことを諦めさせるのが目的である。それができないと聞いてこちらに攻撃を加えられたらおそらく死を迎える。
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/09(火) 21:43:10.01 ID:Vkix7iCA0

「なぁ。それは何ともならねぇことなのかよ。あまりにもインデックスが可哀想じゃねぇか」

「…私もステイルも何とかしようと努めてきましたよ。いや、彼女にかかわった過去の人間は須くして彼女の記憶を救う努力を繰り返してきました。……でも駄目だった。あなたにもこの気持ちがもうすぐわかります」

神裂の言わんとしていることは上条も分かった。神裂もあのステイルも彼女を救うために奔り続けたのだろう。その結果が報われなかったのなら、尚の事辛い。そしてそれが自分の身に降りかかるというのならなおさらだ。
そんなことを考えてる上条を余所に、これ以上考えても仕方ないと思った遼は神裂に科学的な事実を伝え始めた。

「神裂さん。これから僕のする話はあなたにとってつらい選択を強いることになるかもしれませんが聞いていただけますか?」

「……いいでしょう」
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/09(火) 21:43:44.31 ID:Vkix7iCA0

「なら失礼します。まず現在の僕の身の上が生物学を専攻している研究者であることからご説明をさせていただきます。あなた方は脳に対しいくらかの誤解をしている。サヴァン症候群、インデックスちゃんはこれに該当するかと思われます。この症状は通常、日常生活を満足に過ごせなくなる代わりに特異な能力、彼女の場合はフォトグラフィックメモリーを手にしているかと思います。ただ、『外』の世界でも数例ですが、資産家のバフェット氏などが特に日常生活に支障なく過ごすことができています。そしてここ『学園都市』での文献ならエピソード記憶の分割や最適化保存、その手の資料には事欠かしません。端的に言えば、過去から性格も変わらず現状まで日常生活を謳歌しているインデックスちゃんの脳が限界に達していることはあり得ません」

「なっ…」

これには神裂も上条も驚いた。というか上条自身はこの手の内容を授業で行っていたが全く覚えていなかった。

「それから僕が『ザンヤルマの剣士』であることを知っているのならその能力もある程度は知っている事でしょう。不老不死を体現できること。これによる脳のパンクがあり得ないことは体験として知っているつもりです。ただ、不老不死でいられるのは剣を抜いている間に限りますが」

「『ザンヤルマの剣士』、いえ矢神遼。貴方は私たちの持つ情報が根幹から間違っていると言いたいのですね」

「その通りです。もしそれでもインデックスちゃんの記憶に関して不安があるのなら、この学園都市にある良い医者のいる病院を紹介しますよ」
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/09(火) 21:44:39.22 ID:Vkix7iCA0

―――実際に自分が今やっている仕事は農作物及び畜産物の生産及び運営だけど、クローン化や寿命向上、脳移植の実験もやってるから基礎として学ばされたんだよな。

『外』でも『学園都市』は特定の大学などと提携して研究を行っているものもある。主に農産物や畜産物については、敷地的な都合で自給自足が限界であるため、『外』にいくらか遅れた情報を提供するケースも存在する。そうして『学園都市』に招致する研究者が基礎知識を学ぶ場を提供するわけだ。
これにより基礎実習として大学での研究時から脳科学についても専攻ではないが遼は習得していたのだ。
余談ではあるが、遼は現在業務と並行して、『AIM拡散力場』について講習を受けている。こればかりは『学園都市』の基礎であると同時に、『外』に出すことのできない特異な研究内容であるためである。

「しかしこれまで彼女は記憶を失う直前、一年が経過する時期に苦しみを訴えてきました」

神裂が遼の言っていることはインデックスには当てはまらないと訴えかける。

「それこそがあんたらが使う『魔術』の都合なんじゃないのか。俺なら、あらゆる異能を打ち消せる俺の『幻想殺し』ならインデックスに掛かった魔術をきっと打ち消せる」

万里絵にステイルの戦闘方法を伝えた際、『幻想殺し』の存在を遼も聞いているし、神裂も何となく想像がついた。
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/09(火) 21:45:13.17 ID:Vkix7iCA0

「……やはり『歩く教会』を破壊したのは貴方でしたか。私たちはどれだけ手を尽くしても彼女を救うことができませんでした。だから記憶を消すしか方法がないのだと、そう思っていました。だから貴方たちが言う事を信じることがどうしても…」

言いながら神裂はポロポロと涙を零した。魔術師の誰もが到達できなかった真実にこうもあっさりと到達された遼たちの言っていることが理屈では分かっても納得ができない。でも助かる方法はあるのだと思うと、救えなかった自分に対する自責の念が彼女を苛む。そんな神裂を見て上条は言葉を紡いだ。

「あんたらも、あいつを助けたいんだろ?俺も知り合ったばかりだがインデックスを助けたい。そうすりゃみんなが笑える、みんなが望む結果となるんだ。俺は矢神さんのように知識がある訳でもない。この『幻想殺し』だって誰かを助ける動機になったこともないくらい役立たずだったさ。でも、そんな『幻想殺し』だって女の子を助けることができるかもしれない。だから、俺は記憶を消さなくても済む選択肢を選びたい。だから、俺たちに賭けてみないか?『魔術』に関してはあんたらのが専門だから俺たちだけでインデックスを助けることはできないかもしれない。だから手を組もう。あいつの未来を救うために」

そう言われ、顔を手で覆い泣き続けながら神裂は静かに首を縦に振った。
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/09(火) 21:45:57.39 ID:Vkix7iCA0

―――これが上条君の強さか。僕だけでは恐らく彼女と戦闘になってた可能性が高い。理性的に彼女に詰め寄ったところで彼女の心をこちらに向けるには足らなかっただろう。自身の感情を強く訴えかけ、その為に自信を犠牲にすることを厭わない。マーちゃんが言ってた通りだ。でも、同時に危うい…か。僕たちの経験をそのうち彼に伝える必要があるかもしれないな。

そう考えながら、神裂が落ち着くのを上条も遼も待った。
やがて神裂も泣き止み、ステイルに通信礼装で連絡を試みたが、通信が取れなかったのを確認すると戦闘になっている可能性が高いと判断し、遼と上条にソレを伝えると3人は上条のマンションへ駆け足で向かっていった。

103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/09(火) 21:54:35.12 ID:Vkix7iCA0
以上になります。

ここから日程的な部分では結構なずれが出てきます。再構成といってもすべて準拠しているのだったら原作読んだほうが面白いでしょうから。

>>96さん
ありがとうございます。
あと2話ほどで原作一巻は終了する予定です。
完結がどこかはまだ確定させてませんが、なんとかそこまでたどり着く予定です。

あと、現在外伝的な短編(話によっては長編もあり)、具体的にはとある魔術の禁書目録SS的な番外編を執筆しています。書きたい放題書いてる内容になりますが、読んでらっしゃる方で希望があれば、そちらも書き込んでいこうと思います。
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage saga]:2011/08/11(木) 07:55:02.99 ID:S0lepcEH0
>>102を修正
―――これが上条君の強さか。僕だけでは恐らく彼女と戦闘になってた可能性が高い。理性的に彼女に詰め寄ったところで彼女の心をこちらに向けるには足らなかっただろう。自身の感情を強く訴えかけ、その為に自らを犠牲にすることを厭わない。マーちゃんが言ってた通りだ。でも、同時に危うい…か。僕たちの経験をそのうち彼に伝える必要があるかもしれないな。

そう考えながら、神裂が落ち着くのを上条も遼も待った。
やがて神裂も泣き止み、ステイルに通信礼装で連絡を試みたが、通信が取れなかったのを確認すると戦闘になっている可能性が高いと判断し、遼と上条にソレを伝えると3人は上条のマンションへ駆け足で向かっていった。
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/12(金) 11:54:14.52 ID:dpv8WDci0
今思えば『ザンヤルマの剣』ってすごく…厨二です。
あまりに遼君が暗すぎてそう思えませんでしたがw

それでは本日の投下を始めます。
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/12(金) 11:54:42.23 ID:dpv8WDci0


上条と遼が神裂と遭遇したころ、万里絵はちょうど上条のマンションについていた。が、そのまま部屋に向かうことはせず、まずはルーンが貼られていないか周囲を点検する。

―――やはり魔術師ってのがもう来ているわね。それっぽい怪しいやつを探しつつカードを破損していこうかしら。

漠然とではあるが、万里絵は『魔術』がオカルトではあるものの法則を操るものであると踏んでいた。『遺産』だろうが『能力』だろうが、起動をしなければ運用はできない。起動するためのスイッチがカードである場合が高いのだ。
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/12(金) 11:55:12.31 ID:dpv8WDci0

―――恐らくこちらに向かっているのがステイルってやつの可能性が高いわね。刀傷を負わせた人間が遼と上条君を相手取っている可能性が高い。複数人と言っても外部の人間がどこまで『学園都市』に入れるかわからないしね。ステイルさんとやらの攻撃特性や上条君からの性格印象も含めると大所帯という感じでもない。なら約5人くらいを想定しつつ、リーダー格を狙うつもりで行くべきね。

と、思った矢先に万里絵はちらりと赤い髪の長身の男を視界に捉えた。彼に気づかれないよう入口、階段、廊下などあらゆる箇所に貼ってあるルーンの札に傷を入れていく。これだけでうまくいくとは万里絵も思っていないが、スプリンクラーの配置確認、札の素材が髪であったことなどを考慮し、対策を練っていく。
発見できたルーンにすべて傷を入れると、バッグの中にしまってあった自動拳銃『Five-seveNR』を引き抜く。万里絵が学園都市に来て一番最初に調査を行ったのが能力者への対抗措置であり、『スキルアウト』や犯罪者らが使用していた拳銃の購入ルートの調査である。来て早々にルートを確保した万里絵は、非合法であると知りつつも拳銃の入手に着手する。こうして得たのが『Five-seveNR』である。F○社の『Five-seveN』を元に学園都市がタイアップ商品として開発した安価の『外』用モデルの拳銃である。ただ、性能は高く、貫通力に優れ、マガジン容量が20発+1発(自動拳銃は薬室と弾倉が分離しているための+1である)と他の拳銃を圧倒しているのが特徴だ。軍での採用期間が少なかったため、民間への販売を行いもしたが、業務拡大のためF○社が『学園都市』と折衝してこのモデルが誕生し、『F2000R(トイソルジャー)』などの多岐にわたる種類の生産を広げたのはまた別の話である。
兎にも角にも手に入れた『Five-seveNR』を構えながら上条家の前で煙草を吸い、ドアに手を掛けたステイルを呼び止めた。

「Freeze」

いきなり拳銃を片手に構えた女が現れたことにステイルは驚きつつ、ドアから手を放しポケットへ手を突っ込む。

「はっ。拳じゅ」

パァンとステイルの足元に銃弾が突き刺さる。学園都市の技術提供により『Five-seveNR』のブローバックは、ほとんど気にならないものとなっていたため、片手での牽制を可能としている。
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/12(金) 11:55:54.01 ID:dpv8WDci0
「You know understand what I mean.私の言ってること、わかるわね」

どちらが外人かわかったものじゃないが、万里絵は意思確認をする。仕方なくポケットからステイルは手を抜き、諸手を挙げた。

「ずいぶんといきなりだね」

「当然でしょう。あなたが魔術師と言われる存在であるならこちらも相応の対策をさせていただいたまでよ。情報と時間があるのなら何とでもなるしね」

どうやらこの女はこちらの事を正確に把握していると判断したステイルは、貼りつけたルーン札に魔力を通して遠隔制御で攻撃を鑑みるが、札に魔力が通らない事に気が付く。

―――くそっ。何かルーンに細工をされた?自身の魔力から攻撃をしようにも銃撃の方が早い。ならば…。
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/12(金) 11:56:50.23 ID:dpv8WDci0

急速に熱を持ち始めた『Five-seveNR』を万里絵は手放してしまう。
ステイルが行ったのは、熱を操っただけである。局所的に自信の周りに熱を持たせる。見た目には何も変わらないが、周囲は暑くなる。この熱を『Five-seveNR』へ集中させる。こうして万里絵は『Five-seveNR』を地面へ落してしまった。

―――よし。今だ!!

手に炎を顕現させたステイルだったが、突然肩口や膝に奔った激痛に苦悶の声を上げ発生させた魔力を霧散させてしまった。

―――ぐっ。何を食らった?

そう考えると同時に万里絵に距離を詰められるのを顔を顰めながらステイルは見据えていたが、次の瞬間に地面にたたきつけられる衝撃を味わい、彼の視界は暗転した。
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/12(金) 11:57:38.91 ID:dpv8WDci0

「どうやらここは一人だけだったようね」

呟いた万里絵が行ったのは極めて単純である。魔術師、ステイル=マグヌスが火を使う見た目も特徴的な男であると理解していたので、『Five-seveNR』へ何かしらの干渉をされるのは想定していた。素材のほとんどがプラスチックで構成されている『Five-seveNR』はいざ戦闘が始まれば頼りにならなくなるのを想定しての公園での石拾いである。
拳銃が脅威となっているのなら、それを手放した相手を見れば油断をする。その隙に石を当てまた隙を作る。詰め寄って投げて落とす。
天才魔術師と称され、多くの修羅場を経験した魔術師であるステイルであったが、ほとんどが殲滅戦であり、一対一での戦闘には慣れていなかったため、今回のような不覚を取る結果となった。また、魔術師同士での戦闘でないことも要因となった。アクションスピードの違う拳銃を切り札にしていると踏んでいたのだから隙もあるだろう。事前知識のなかった場合、間違いなく万里絵が焼き殺されていたことだけは記述しておきたい。

―――やっぱり『Five-seveNR』に干渉されたわね。熱で軽く溶解しちゃってるからもうこれは使えないか。新しいのを入手しましょう。

無論こんなところに放置することもできないので、『Five-seveNR』をタオルに包み、バッグの中へしまう。
そんなときに先に離脱した遼と上条、あと万里絵が見たことのない女、神裂が現れた。

「なっ。ステイルを倒したのですか」

これには上条も神裂も驚愕した。上条は炎の魔術で死ぬ寸前まで追い詰められたし、神裂は彼の実力が高いことを知っている。にも拘らず地に伏したステイルと目の前の女性、朝霞万里絵の存在が信じられなかった。
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/12(金) 11:58:15.01 ID:dpv8WDci0

「自身の攻撃する手札を公開した時点で彼の負けは決まっていたわ。上条君が戦ったからこその手柄であって私は仕上げをしたに過ぎないわ」

「あなたは一体…」

「『超科学装置所持者記録(リストI)』とやらを所持し、矢神遼を知る貴方たちなのに私の資料については記載がなかったのかしらね。好都合だったけど」

厳密には『超科学装置所持者記録(リストI)』の『ザンヤルマの剣』の欄に万里絵の記載もあったのだが、所有者しか脅威がないと思っていた魔術師勢は、朝霞万里絵には注目していなかった。というのも、『FINAL』解散時期に彼らが『超科学装置所持者記録(リストI)』を見た訳ではないことが発端である。入手した時点で資料を見ていれば、ステイルも万里絵に対して警戒ができたであろうが、当時10歳に満たない彼や『必要悪の教会』に所属していなかった神裂が『超科学装置所持者記録(リストI)』を見ることができたのはそれからずいぶん経っての事であった。

「朝霞万里絵と言います。あなたは?」

「神裂火織と申します」

「とりあえず中を確認してもらえないか?俺が入るとインデックスに掛かってる回復魔術が途中だったら中断しちまう」
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/12(金) 11:59:26.04 ID:dpv8WDci0

魔術に詳しい神裂が扉を開け、魔術が終了したのを確認し、上条たちもステイルを抱えて室内に入る。
その折に魔術を行使していた月詠小萌に『魔術』という事情を省いた上で、神裂らが同じ協会の人間で迎えに来たことを伝え、彼らに看病を代わってもらう旨と、念のため万里絵に残ってもらうよう事情を説明し、体質をしてもらった。小萌も何かあるとわかってはいたが「朝霞先生がいるのなら」と「上条ちゃんだから仕方ない」と言い、最後に「困ったことがあればいつでも言ってくださいね。上条ちゃんだけでなく迷える子羊ちゃんの相談は大歓迎なのですよ」と神裂に向かって言い残し、その場を後にした。
それから程なくして、ステイルが目覚めると神裂が遼たちのもたらした情報を伝える。

「それで、それで君は納得できるのか神裂。『最大主教』が嘘をついていると」

「まだ『儀式』まで時間はあります。ギリギリまで足掻いてみようと思っただけです」

「わかったよ。だが、ダメだった場合は…、わかってるね」

「当然です。彼らもそれは納得していただいてますよ」

短いやり取りではあったが、これで二人と共闘関係になった遼は、ようやく自身が『ザンヤルマの剣』を現在は所持していないことを打ち明けた。
警戒しすぎた二人は、残念がりつつも仕方がないと気を取り直し、上条とともにインデックスに賭けられたであろう魔術の源である刻印を探し始めた……。

113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/12(金) 11:59:52.10 ID:dpv8WDci0


――――――――――――――――――――――――――――――――


ヒルデガルド=ノイラートや氷澄丈太郎が最も矢神遼と朝霞万里絵に与えたくなかった情報、『魔術』の存在はこうして伝わってしまう事となった。現段階では彼らがそれを知る由もなかったが、丈太郎、そして一度はその任を、『遺産』を捨てたあの男も『魔術』に触れ、やがて物語は進んでいくことになる……。
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/12(金) 12:03:53.89 ID:dpv8WDci0
以上になります。
作中で謳っている通り、情報を知られていたのと油断でステイルは負けてます。
相手が自分のことを知って対応していることを知っていればこんな深くは取らなかったでしょう。
情報って怖いですね。

一応次回で第1巻は終了します。
ただ、プロットと内容がかなり変わってきているため、2巻目の再構成がめちゃくちゃ面倒な状態に…。3巻は楽勝なのになー。なんでだろ?

そんな状況ではございますが、よろしくお願い申し上げます。
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/08/13(土) 06:57:00.50 ID:NKw0yurAO
厨二性能なのは剣ってより守護神全般じゃないかな。
その守護神機能を含む剣を手放している遼が今後どう見せ場を持てるのか、興味深い。

乙乙でふ
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/14(日) 21:11:47.40 ID:pPAknuzQ0
>>15さん
確かにそうですね。
ただ、『守護神』にはアドバイザー機能とセンサー機能はなかったはずです。バリヤーとかエネルギー放出、局所重力制御などはあれですが。
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/14(日) 21:13:19.34 ID:pPAknuzQ0
それでは投下いたします。
今日の投下で一巻を終了します。
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/14(日) 21:15:31.87 ID:pPAknuzQ0
上条の自室で全員の意思が確認できたのが午後8時頃の出来事である。それまでにインデックに刻まれた魔術刻印を探す作業に上条、神裂、ステイルの3人は取り掛かった。『ザンヤルマの剣』もなく、魔術知識に乏しい遼と万里絵はこれまで起きた事象の分析を行っていた。
因みに、インデックスは消耗しているため継続睡眠ができるよう魔術的な措置を施した(と言ってもリラックスできる程度の内容である)。

「『魔術』に『超科学装置所持者記録(リストI)』ね。『学園都市』の『能力』だけならいざ知らず、こんな世界があるとはね…」

「もしかして氷澄さんが管理人に戻ると言ってきたのってこの『魔術』が関連してるんじゃ」

―――思えばヒルダも『FINAL』に所属していたからこの手の情報を持っていた可能性はあるわね。

「今はわからないわ。でもその可能性は捨てきれないかも」

仮定したところで『学園都市』から『外』へ連絡を取ることが困難な状況を二人は十分理解しているため、これ以上の想像は無意味だった。

「今はIDなしで彼ら魔術師がこの『学園都市』に入れる状況の方が問題ね。統括理事会が意図的に彼らを招き入れでもしない限り、確実に問題となるわけだから」

そう、外界への情報流出に特に気を使っている『学園都市』がIDのない人間を3人も入都させるほど警備がザルだとは到底思えない。詰まる所、この件は統括理事会の誰かが知ったうえで黙認している可能性が高いと万里絵は結論付けた。
この意見には遼も否定できる要素がなかった。ただ、実際のところは統括理事会を飛び越え、統括理事長が直接情報操作を行っていたことを二人は知る由もなかった。
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/14(日) 21:16:07.20 ID:pPAknuzQ0

室内では、上条たちによるインデックスに刻まれているであろう刻印の捜索が必死に続けられていた。蛍光カラーのように特殊な環境でないと見えない刻印である可能性もあるため、魔力探知よりも『幻想殺し』でなぞる方が早いと、素肌に触れることに毛恥ずかしさを感じつつも上条はインデックスの体に『幻想殺し』を当て、なぞっていく。ステイルも神裂も抵抗感はあるが、やれることは全力でやると決めた手前、仕方ないと割り切っている。体の外部については性感帯などを除けばほぼすべて触れてみるが、全く手ごたえがなかった。

「やはり、記憶を消す以外に方法はないんじゃないのか?」

ステイルが呟く。

「まだ『儀式』を行うまでには時間があります」

「……あのさ。インデックスってどこか手術とかしたことってあったりする?」

二人のやり取りを黙殺し、上条は質問をした。
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/14(日) 21:16:40.55 ID:pPAknuzQ0

「いえ、私たちが知る限りではそのような例はなかったと思います」

「…あとは咥内や体内しか残ってないと思うんだ。口の中から見るぞ」

そう言って上条はインデックスの口腔を開き、中を見た。
喉の奥に明らかに数字の様なものが浮かび上がっているのが見て取れる。

「ビンゴだぜ。魔術師」

「本当にこんなものがあったとは……」

「あの女狐め!!」
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/14(日) 21:17:09.77 ID:pPAknuzQ0

三様の声を上げつつも、魔術師二人はその刻印を破壊することに躊躇を覚える。自らを犠牲にすることを厭わない、快活で周りを明るくしてきた少女。いつだって自分たちは記憶を消すその状況に絶望を抱いてきた。一番辛いのはインデックス自身であると知っているからこそ、自分たちのその辛さを笠に着せるようなことはできなかった。
そして今、本当にこの刻印を壊すことで彼女の日常を取り返すことができるのか。それがわからない。

―――とりあえず彼女を生かすことのできる記憶を消去する方法の方がいいのではないか。

―――これを破壊することで彼女が死ぬことだってあるかもしれない。

「…おい。素人目に見ても普通じゃないぜ。禍々しいっていうかなんて言うか。専門のお前たちから見てこれはどうなんだ?」
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/14(日) 21:18:07.36 ID:pPAknuzQ0

答えは決まっている。どう考えてもこの刻印がインデックスの記憶を蝕む者であることは二人は気づいている。だが、過去に自分たちが気付くことができなかった。また、全く魔術に関係のない人間にそれを指摘され、発見するに至った状況に心が納得することができなかったからだ。
いつまで沈黙をしていただろうか。一呼吸入れてからステイルが口を開いた。

「……間違いなく破壊するべき対象だよ。神裂、君は今僕と同じことを考えているのだろう。だが、僕は進む。彼女が記憶をなくそうとも、敵として認識されようとも護り続けると決めた。こんな猿みたいな学生に頼るのは癪だが、それでも彼女のこれからが護れるのなら」

猿と言われたことに反感を上条は覚えつつも、どれ程の覚悟を持ってステイルがこれまで生きてきたのかを垣間見た。神裂は何も言葉を発することなく、ステイルと上条を見て首を縦に振った。これ以上言葉にすることはない。やってくれ。とそれだけで上条も理解した。

「わかった。じゃあ、壊すぜ」

インデックスの口内に指を突っ込み、刻印に触れる。すると『幻想殺し』が異能に触れたとき特有のパキンという音を発した。同時にインデックスから謎の衝撃波の様なものを受け、壁まで上条は吹っ飛ばされた。

「上条当麻!!」

神裂が叫び駆け寄る。ステイルは明らかに変わった彼女の雰囲気に警戒し、ルーン札を部屋にまき散らした。
それと同時に、インデックスはふわりと起き上がり、双眸に六芒星を宿し、3人を見据える。
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/14(日) 21:18:40.09 ID:pPAknuzQ0

「警告。第3章第2節第1から第3までのすべての結界の貫通を確認。再生準備…。失敗。自動再生は不可能。現状十万三千冊の書庫の保護のため侵入者の迎撃を優先します。書庫内の十万三千冊により決壊を貫通した魔術を逆算。失敗。該当する魔術は発見できず。術式の攻勢を暴き、対侵入者用のローカルウェポンを組み上げます。侵入者個人に対して、最も有効な魔術の組み合わせに成功しました。これより特定魔術、『聖ジョージの聖域』を発動。侵入者を破壊します」

ビキビキビキとインデックスの前の空間に亀裂が走り始めた。インデックスは魔術を使用することができない。それが『必要悪の教会』での常識となっていたため、ステイルも神裂も驚いた。すでに上条はこの辺を疑ってかかっていたため、インデックスが魔術を使えることにさして違和感を覚えなかった。
亀裂の中から覗くインデックスの身体が発光したかと思ったら極太の青白いレーザーの様なものが発射された。
何とか上条が『幻想殺し』でそれを食い止めたが、『魔女狩りの王』の時の様に殺し切れずその場で停滞している。

「『聖ジョージの聖域』の聖域は侵入者に対して効果が見られません。他の術式に切り替え、侵入者の破壊を継続します」

極光が強まり、『幻想殺し』をさらに圧迫する。『魔女狩りの王』の時は、再生を繰り返すだけで押し負けるという状況にはならなかったが、この『聖ジョージの聖域』から放たれる『竜王の殺息(ドラゴンブレス)』は、明らかに『幻想殺し』の処理速度を上回っていた。苦悶の声を上げながら上条も支えているが、明らかに限界に近づいていることに気付いた神裂とステイルは行動を起こした。
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/14(日) 21:20:07.61 ID:pPAknuzQ0
「『Salvere000(救われぬ者に救いの手を)』!!」

「『Foltis931(我が名が最強である理由をここに証明する)』!!」

神裂が七閃に用いるワイヤーでインデックスの足を引っ張り、射程を一旦上条から逸らす。その間にステイルは詠唱を始めていた。

「世界を構築する五大元素の一つ、偉大なる始まりの炎よ。それは生命を育む恵みの光にして、邪悪を罰する裁きの光なり。それは穏やかな幸福を満たすと同時、冷たき闇を滅する凍える不幸なり。その名は炎、その役は剣。顕現せよ、我が身を喰らいて力と為せ!!『魔女狩りの王(イノケンティウス)』!!」

天を仰ぎ、『竜王の殺息』を放ったままのインデックスが、振り返る前にどうにか『魔女狩りの王』を待機させることができた。この時、やっと神裂はそのレーザーのような光を放つ魔術が『竜王の殺息』であることに気が付いた。その理由は、天から降り注ぐ無数の光の羽根にあった。

「あれは…『竜王の殺息』!!伝説にある聖ジョージのドラゴンの一撃と同義です!そのにたった一枚にでも触れてしまえば大変なことになります!!」
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/14(日) 21:20:40.28 ID:pPAknuzQ0

インデックスが体勢を立て直し、再び上条を標的に『竜王の殺息』をそのまま彼に向けて放つ。とっさの判断が追い付かず、慌てた上条だったがステイルが待機させていた『魔女狩りの王』が、その一撃を食い止めた。

「しっかりしろ!!彼女を助けると言い出したのは貴様だろう!」

ステイルが上条に活を入れ、どうにか上条も持ち直してインデックスの方に歩み寄っていく。

「警告。第6章13節、新たな敵兵を確認。戦闘思考を変更、戦場の検索を開始…完了。現状最も難易度の高い敵兵、上条当麻の破壊を最優先します」

『竜王の殺息』から発生した羽根を避けつつ上条も向っていくため、どうにも時間がかかる。その間にインデックスは次の手を打っていた。

「警告。第22章第1節、炎の術式の逆算に成功。曲解した十字教のモチーフをルーンにより記述したものと判明。対十字教用の術式を組み込み中…。『聖ジョージの聖域』を第2段階へ移行。……第一式、第二式、第三式。命名、『神よ、何故私を見捨てたのですか』を発動」

そう言い終わると、今まで青白い光を放っていた『竜王の殺息』が、真紅の光へと変色する。すると途端に『魔女狩りの王』の構成に歪ができ、消失してしまった。
瞬時に防御術式を整えた神裂が受け止めるも、即座に貫通される。咄嗟に右手を伸ばした上条が再度『竜王の殺息』を受け止める形になったが、向こうの出力が単純にこちらの戦力を上回っている。神裂が先刻の様に行ったワイヤーによるインデックスの方向切換も、ワイヤー事態に何かしらの術式を組み込まれ、現在は思うように動かせなくなっている。
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/14(日) 21:21:21.66 ID:pPAknuzQ0

「絶体絶命…ってやつかな」

ぼそりとステイルが呟く。このままではインデックスを救うことができず、自分たちも死んでしまう。『幻想殺し』ももう限界を迎えている。

「ふざけんなよ!こんなところで終われるか。終わってたまるか。運命なんて神様が決めたものに逆らうことができないなんて言うのならそんな幻想はぶち殺してやる!」

もう気力だけで均衡を保っている上条だが、この中で唯一諦めてはいなかった。だが、右手は灼熱のように熱く、もう受け止めていられる時間はあとわずかだと訴える。それでも上条は吼えた。みんながハッピーエンドを迎えることが現実でこんなのは幻想にすぎないのだと。
そんなやり取りは玄関外にいる万里絵と遼にも聞こえていた。

「私たちじゃ完全に介入できそうにない雰囲気ね」

―――せめて『ザンヤルマの剣』があれば…。

今までこんな願いを遼が抱くことはなかったが、それでもこれだけの力を前に無力であり続ける自分が嫌だった。かつてあれほど必要のないものだと思っていた『ザンヤルマの剣』、この時代の科学を上回る超常の力、当時は確かになければ生きることすら難しかった。だが、今は?本当に必要なのか遼が葛藤する時間は今を以って終結することになる。

127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/14(日) 21:23:12.13 ID:pPAknuzQ0

それは突然の事だった。『竜王の殺息』によって穴の開いた天井、猛スピードで空から飛来した物体により上条が支えていた『竜王の殺息』が、その物体によって遮断をされた。

―――懐かしい、懐かしい空気がする。

横で万里絵が何かを言っているが遼の耳にはその言葉が今は届かない。遼は上条の部屋の玄関を開け、中にするりと入っていった。
室内で起きていることに集中している3人は遼が部屋に入ってきたことに気が付かなかった。
ただ、『竜王の殺息』を支えてる物体が、白い象牙を思わせる柄に『竜王の殺息』と同じような青白い光を1メートルほどの直刀であることに気が付いた。

「…ザンヤルマの、剣」

比較的玄関先に近い位置にいたステイルと神裂はその言葉を聞いていたが、上条は自分が支える必要がなくなったのを理解し、飛ぶようにインデックスとの間合いを詰め、インデックスの頭に右手で触れる。
その瞬間、インデックスから放たれていた『聖ジョージの聖域』並びに『竜王の殺息』は『幻想殺し』に触れられた時の特有の音を立てて霧散した。

「警…告…。最終章…第…零、首輪…致命的な……」

そのような言葉を続けながら静かに、静かにその場にインデックスは崩れ落ちた。
上条は倒れ伏したインデックスを抱き起こし、優しい顔をして彼女を見つめた。
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/14(日) 21:24:05.19 ID:pPAknuzQ0

―――やった。やったぞ。俺はこいつを救うことができたんだ。

「いけません!『竜王の殺息』から発生した羽根はまだ浮かんでいます!早くそこから離脱してください」

「能力者!そこは危険だ!早く退け!」

二人の声は上条には全く聞こえていない。達成感からなのか緊張の糸がほぐれたからなのかすでに上条の戦闘思考はスイッチが切れた状態になっていた。

「間に合え!!」

横で聞いていた遼は、宙に浮かんで『竜王の殺息』を支えていた『ザンヤルマの剣』を持ったイメージをする。するといつのまにか『ザンヤルマの剣』は遼の右手に収まっていた。手に吸い付くようななつかしい感覚。感慨に浸りたくはあったがそんな時間はない。限定された範囲の重力を制御し、斥力に変えて飛びながら敵対する情報を読み取るセンサー機能を駆使し、羽根を『ザンヤルマの剣』で撃墜していく。
『ザンヤルマの剣』も、この羽根が直接エネルギーを発している刀身に触れないよう、斬撃に二重のエネルギーコーティングを行っているからこそ、数の撃退を可能としていた。同じことを神裂が『七天七刀』で行えば、一回で投信が破損する。ステイルでは、局所的に魔力を発生させたりするほどの精密な魔力のコントロールは、その場にルーン札が貼りついているのが前提であるため、数多く降ってくる羽根を撃墜するのは不可能であった。
故に、『ザンヤルマの剣』を使った羽根の迎撃が一番適していた。
しかし、それでも間に合わなかった。

―――センサーに取りこぼしの反応!拙い!!

遼がそれを自覚した時には遅かった。すでに上条の後頭部に羽根が直撃していた。突然の痛みに上条は悲鳴を上げ、その場に倒れ伏した。
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/14(日) 21:24:51.01 ID:pPAknuzQ0



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130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/14(日) 21:25:29.97 ID:pPAknuzQ0

病室に佇む青年は無垢な顔をしていた。穢れのない、今日生まれ落ちたような、そんな表情を浮かべていた。

「えっと」

「朝霞万里絵。貴方の通っている高校の教師よ。そしてこっちは矢神遼。貴方は一人暮らしだから私たちがあなたの症状を説明するけど良い?」

病院で彼に手術を施した医者は現在、もういくばくかの連れ合いであるインデックスの健康調査を行っている。保護者代理として大人である二人は先に説明を受けていたため、青年に自分たちの口で説明することを決めたのである。

「あ、どうぞ。でも俺が入学してから見たことないですよ?」

「そうね。それも今から説明するわ。上条当麻君、あなたはここ一年分のエピソード記憶を喪失したわ」

青年、上条当麻は万里絵が何を言っているのかわからないといった表情を浮かべたが、自分が入院していること、エピソード記憶以外の記憶はきちんと残っているため、今日の日付を問われ、意味記憶に分割された割合を検索することで、自身の失った記憶と万里絵の言葉が一致することに気が付いた。
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/14(日) 21:26:24.47 ID:pPAknuzQ0

「上条君。一年分の記憶を失わせてしまったのは僕が助けられなかったからだ。本当に済まない」

万里絵の横にいた遼が、突如上条に向かって頭を下げた。言われても全く理解ができない上条は、とにかく頭を上げてくれと懇願し、遼は彼の瞳を見た。

―――あの場に、『ザンヤルマの剣』があったにも拘らず、僕は上条君を助けることができなかった。

「遼、断罪よりも入院に至った経緯を説明しなさい。私よりもあなたの方が詳しいでしょうし、罰を受けるにしても罪が分からなければそれは意味のない行為だわ」

万里絵に指摘され、遼は説明を始めた。インデックスと呼ばれた魔術師と呼ばれる組織の少女を助けるために奮闘したこと。助けることができたこと。そのせいで一部の記憶を失うことになってしまったこと。

「…記憶は戻らないんですかね」

「無理だと聞いたわ。脳に直接ダメージを受けた状態になっているらしいの。本当だったらエピソード記憶が完全にダメになってたらしいけど、外部からの干渉。遼が使用していた『ザンヤルマの剣』が咄嗟に羽根の残り部分を吹き飛ばしたことが一部で済んだ原因みたいよ」

そう。撃墜に間に合わなかった遼は、上条にあたった羽根を少しでも緩和するため、『ザンヤルマの剣』で切り裂いた。幸か不幸かそれが一年分の記憶破壊で済んだというのがカエルの様な顔をした『冥土帰し(ヘブンキャンセラー)』の異名を持つ医者の見解である。
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/14(日) 21:27:29.06 ID:pPAknuzQ0

「そうですか。そのインデックスって娘、この話は知ってるんですか」

「いえ、私たちから話すべきではないと思って伝えていないわ」

「…なら矢神さん。もし俺に負い目を感じているんだったら協力してほしいことがあります」

「…何でもする。それは約束するよ」

「俺がその子を助けたために、俺が傷ついてたんじゃきっと罪悪感で苦しみ続けてしまう。今の矢神さんの様に。だから、俺が彼女を傷つけなくてもいいよう、記憶があった時のようにふるまえるよう協力してください。それが、あなたへの罰です」

「……わかった。約束する」

「ならいいですよ」

「さて、上条君。補習を受けないといけない状態だったんだけど、その折に入院されたから困ってたのよね。エピソード記憶のみの喪失だから勉強の方は容赦しないわよ。あ、私7月に赴任してきたばかりだから上条君が知らなかったのよね」

自分の身体の心配よりも、進級の心配を真剣に始めた万里絵に対し上条は思った。

「…不幸だ」
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/14(日) 21:28:55.24 ID:pPAknuzQ0


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134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/14(日) 21:30:07.26 ID:pPAknuzQ0


こうして一部の記憶を失いつつも上条当麻は生還を果たした。
矢神遼も『ザンヤルマの剣』を偶然ながらも取り戻すことになった。
二つの力が揃ったことを遠くから見ていた緑色の服を着ていた男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも見える人間ががその空間の中で一人ごちる。

「これで『プラン』を進めることができるようになった」

彼が舞台に関わるのは、まだずいぶんと先の事である。
『科学』と『魔術』は交わり、『科学の到達点』も合わさった。
こうして新たな物語が幕を開けることになる……。


135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/14(日) 21:55:15.72 ID:pPAknuzQ0
これで一巻が終了となります。
プロットでは『ザンヤルマの剣』は一巻では登場しません。二巻でも遼が使用することはありませんでした。ただ、そうすると事件の『当事者』ではなく『観測者』となってしまいます。
それなら万里絵一人で充分だろとなってしまうので、一巻にて見せ場がやってきたというわけです(だって二人とも社会人ですもの)。

さて、統括理事会入りを狙う遼にとって今回の事件はプラスとなるのかマイナスとなるのか。
『超科学装置所持者記録(リストY)』ではなく『超科学装置所持者記録(リストI)』である理由はなんなのか
様々(笑)な伏線を残しつつ二巻へと進んでいく本編。

さて、本編と書いたのは、先日のあとがきに記載した外伝をやろうかと思ったからです。
ただ、外伝の中で『ミュートスノート戦記』をクロスさせていこうと考え始めました(一巻のプロットが崩れたときに生き始めてしまった)。

ただ、これについてはただでさえ禁書の登場人物が多いから反対だという意見が賛成派を上回った場合、『ミュートスノート戦記』の設定のみ削除して外伝を進めていきます。『もう一人』を登場させる理由づけに『ミュートスノート戦記』は非常に都合がよかったので。
尚、外伝投下時はサブタイトルを設けますので、本編とはそこで折り合いをつけていただければと思います。外伝は短編+連作のような形が多いので。一回の投下量も少ないです。

それでは次回投下は本編か外伝かは未定ですが、お付き合いのほど、よろしくお願い申し上げます。
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage saga]:2011/08/14(日) 23:14:33.53 ID:pPAknuzQ0
>>127
投信→刀身でした。
株でもやるのかこの状況で…。
失礼しました。
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/21(日) 00:40:06.53 ID:raUtcqgz0
とりあえず本編の更新を
ミュートスのクロスはまだ保留します。
というわけで投下。
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/21(日) 00:40:37.13 ID:raUtcqgz0

―――助けられなかった。望むべきじゃない力を心の中で渇望しておきなき、剰えそれを行使したにも拘らず助けることができなかった。

矢神遼は、上条当麻の様態を聞いた時からずっと後悔していた。一つには懐に収まった『ザンヤルマの剣』、二つには『上条当麻の記憶』。
上条たちが戦っているとき、自分に『ザンヤルマの剣』がないことに歯噛みした。本来この時代に必要のない力であるのに、それを所持してきた人間たちを止めてきたのに『望んでしまった』。
そしてそれを行使してまで上条を助けに行ったが、届かなかった。上条も万里絵も自分を責めることはしなかった。それが逆に遼にとっては辛かった。いっそ罵ってくれれば、お前のせいだと言ってくれれば懺悔もできよう。許されることが重たいことは嘗てこの剣を使ってた頃にも味わっていたはずなのに、その経験を活かすことは出来なかった。

「矢神。優性食品遺伝子のデータサンプル纏め終わったか?」

手の止まった遼を見て、上司が声を掛けた。そう、自分は仕事中だった。信念と後悔と義務の葛藤の中で、もがく様に義務へと手を伸ばし、作業を再開した。

139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/21(日) 00:41:09.84 ID:raUtcqgz0



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140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/21(日) 00:42:14.89 ID:raUtcqgz0


インデックスの記憶をめぐる事件から二週間ほどが経過し、ここ『学園都市』にステイル=マグヌスは再び足を踏み入れていた。そして現在いる場所はその中枢、統括理事長アレイスター=クロウリーがいる『窓のないビル』の一室、『統括理事長』が占める部屋だ。尤も、ステイルにはこの部屋への扉が見えない以上、『案内人』から連れ込まれたこの部屋以外は知ることはないのだが。男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも見える赤い液体に満たされた巨大な円筒器に逆さまで浸かっている緑色の手術衣を纏った人間がいた。その男こそ、アレイスター=クロウリーだった。

「先の問題については、さして問題にはなっていないし、こちらも騒ぐつもりもない」

開口一番言い渡されたのがこれだ。ステイルは思いを巡らせたが、報告書を受け取った自らの上司に当たる『最大主教』あたりが、すでに交渉を行っていたのだろう。呼ばれた理由は理解している。ここまでは世間話と同義だ。二人ともそれに時間をかけるつもりもない。ただ、ステイルはアレイスター本人から出るプレッシャーに押し潰されそうなので、一刻も早く話を終えたいという思惑があるのだが。
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/21(日) 00:42:43.26 ID:raUtcqgz0

「ご配慮のほど、ありがとうございました。『最大主教』含めお礼を申し伝えさせていただきます。して呼び出された理由については『吸血殺し(ディープブラッド)』の件で間違いないでしょうか」

「理解が早くて助かる。同じように『魔術サイド』の話を『魔術サイド』にて片を付けてほしい。こちらからの増援はできないが、君のプライベートに関わる『幻想殺し』と『ザンヤルマの剣士』は別だ。この件に協力させることは任意で任せる」

それで自分が派遣されたのかとステイルは納得した。何故かは知らないが『幻想殺し』はこの『学園都市』では『無能力者(レベル0)』として登録されており、『学園都市』に纏わる重要機密などは一切所持していない。『ザンヤルマの剣』についても、自分たちの所持していた『超科学装置所持者記録(リストI)』が古いものであり、一度『ザンヤルマの剣』が世界から消失しているのを確認されていたので、今回の事件で再所持となったことを知っているのは『イギリス清教』と『学園都市』だけなのだ。ただ、『イギリス清教』のみが知らない話になるのだが、この時点でローマ正教などは『ザンヤルマの剣』について『別口』の情報を所持している。公開しないのは、それを知るのが自分たちだけでいいというスタンスだからである。

―――任意か。問題点をすり替えるいい口実だな。仮に問題が起きてもプライベートの制限まではできないと触れ回りでもするつもりか…。

顔には出さずそんなことをステイルは思ったが、一人で行うのも少しばかり重たそうだ。内容だけ確認して必要であれば協力を要請しようと彼は心に決めた。

「わかりました。では所在や資料などのご説明を願えますか」

「わかった。では…」
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/21(日) 00:43:10.30 ID:raUtcqgz0


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143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/21(日) 00:43:42.42 ID:raUtcqgz0
上条当麻は結局自分が守ったインデックスという修道服の少女の事を思い出すことはなかった。だが、彼女には自分が記憶を失ったことは遼たちに協力を求めたこともあり、伝えることはなかった。

―――せっかく守れたとか言ってたのにそれで自分が犠牲になりましたーなんて言ったら絶対傷ついちまうだろうなぁ。

テレビ番組を見ながらそれとなくアイスアイスとねだってくるインデックスを見ながら、苦笑した。

「夕飯に霞を食う覚悟で行くのならオッケーだぜ」

「なっ!!それはひどいかも…でも食べたい」

「まぁ、7割冗談だから気にしなくてもいいぞインデックス」

「当麻のばかー!」

こんなやり取りをしつつも、クーラーの使用できない自宅から避暑地を求めてアイス屋へと二人は足を運んで行った。


144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/21(日) 00:44:13.04 ID:raUtcqgz0



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145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/21(日) 00:44:41.16 ID:raUtcqgz0
勤務先で万里絵は先日のことを思い返していた。

―――『イギリス清教』という組織が持っていた『超科学装置所持者記録(リストI)』、何故Iなのか。連中もイェマドはYで発音することくらいは知っているでしょうに…。キナ臭いわね。

「どうしたんですか朝霞先生。神妙な顔をして」

横から心配した月詠小萌が声を掛けた。

「えぇ。担当が英語なのにこんなこと聞くのもどうかと思いますが、Iから始まる英単語って何がありますかね」

「えぇっと、 ぱっと思いつくのはAIMのinvoluntaryにインデックスちゃんのindex、あとは偽物のimitationですかねー」

―――Imitation!!あり得るわね。『FINAL』から回収したリストを編纂して『超科学装置所持者記録(リストI)』にした。でも、あの時点では遼は確かに『ザンヤルマの剣』を所持していた。となると違うのかな…?

「あのー、朝霞先生?」

「あっ、すみません。解決できたみたいです。ありがとうございます」

軽く会釈をして怪訝な顔をする小萌の視線を尻目にするも、万里絵の顔は晴れなかった。
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/21(日) 00:45:21.80 ID:raUtcqgz0



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147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/21(日) 00:46:00.36 ID:raUtcqgz0


「カッミやーん。爆発するかもげるか選択肢は二つに一つやでー」

いきなり物騒な発言をされた上条が振り向いた先には、デルタフォースの一角、青髪ピアスがいた。デルタフォースというと大仰に聞こえるかもしれないが、高校入学時に上条当麻、この青髪ピアスともう一人がアホをやらかして結成されたのがそれである。
別名3バカとも言われており、上条は成績不良、青髪は無類の女好き、もう一人は出席率不良でツるんでいるため、そんな前で呼ばれるようになったとか。
ただ、上条が知る青髪ピアスとは若干相違がある。

―――これが一年分の記憶が欠落してる困った点の一つか。同じ人間でも成長してるから若干違うように見えてしまうし、何より高校の知り合いだと親密度がかなり下がっちまってるわけだもんなー。まぁ何とかなるか。

「どうしたんカミやん。まるで記憶を失ったように呆然とこっち見て」

「いや、そんなことはないぞ。てかいきなりなんだよ。爆発かもげるかって」

「冗談やて。あ、爆発ともげるのはは冗談やないで。こんな可愛らしい銀髪シスターちゃんなんて連れて歩いてる時点で爆発しろ」

「きゃー、とうまとうま、私可愛らしいって」

「まぁ小さいという意味で?可愛らしい?には同意するわ」
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/21(日) 00:46:29.54 ID:raUtcqgz0

インデックスにがぶりと頭に噛み付かれた上条を見てやっぱり青髪ピアスが思ったのはもげろだったが、気持ちを切り替え話をつづけた。

「で結局どういう関係なん?」

「あー、外国に住んでる親戚から預かった子だよ。ちっとごたついててな」

「そかそか。シスターちゃん、改めてよろしゅうねー」

「よろしくねー。あおがみぴあす」

アイスを食いに行こうという話で二人は外に出てきたのだが、青髪ピアスの情報によるとその店は本日休業とのことだったので、結局近隣のファストフード店に行こうという話になった。

149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/21(日) 00:46:56.73 ID:raUtcqgz0



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150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/21(日) 00:47:26.85 ID:raUtcqgz0
「矢神。今日はもう上がれ」

上司がふと声を掛けた。先ほど言われたデータ取りの最中であるし、特に問題があった友量は思っていなかったので、質問で答えを返す。

「何か問題が?」

「お前、今日おかしいぞ。それに顔が青ざめてる。データ取りはこっちでやっとく。だから今日中に直せ。プライベートで何があったかは知らんし『学園都市』なら何があっても不思議じゃない。だが俺たちは何だ。答えろ矢神」

「研究者です」

「馬鹿野郎。社会人だ。働いて金を稼いでる以上、甘え続けるのは無理だ。勿論偶にはそういうことも必要だ。それがお前にとっては今なんだろうよ」

「……お心遣い有難うございます。何とか今日中に区切りをつけます」

そういって遼は研究所を後にした。上司の気遣いに感謝をしつつも、それでも自身の心の晴れることはなかったのだが。

―――僕は志津見さんや他の人たちに反対する資格があるのだろうか。過ぎた力を渇望してそれでも届かなくて。誰かを助けることもできず、意思も貫けない。結局あの時から何も変わってないじゃないか!!

ずっと一緒に戦い続けてきたパートナーは現実的な部分を見て、今回の事件はもう見ていない。いや、責任を果たすために悩んではいるだろうが立ち止まらない。対して自分は何もできていない。そんな昔に感じた引け目を再び遼は感じてしまい、あれからこの悩みは万里絵に話していない。
万里絵もそれを心配して何度か声を掛けてきたが、自分がそれをはぐらかしてしまった。

答えはまだ見えない……。

151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/21(日) 00:48:00.87 ID:raUtcqgz0


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152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/21(日) 00:48:30.50 ID:raUtcqgz0
「朝霞先生。今日こそはいい返事をもらうじゃん」

そういって話しかけてきたのは同学校の体育教師である黄泉川愛穂だった。ジャージに適当に縛っただけの髪形をしているが、その豊満な胸に引き締まった筋肉、さばさばした性格で女子から主に人気がある。
男子からも人気がないわけではないが、スパルタなのと彼女が所属するもう一つの組織に問題があったため、関わろうとする男は少ない。

「黄泉川先生。以前もお答えしましたが私は『警備員(アンチスキル)』に入る気はありませんよ」

そう。彼女は『風紀委員』と双璧を成す『警備員』だ。『風紀委員』は学生が所属する治安維持機関であるのに対し、『警備員』は大人たちによる学園都市の治安維持機関である。
両者の明確な違いは装備品の支給だろう。
『風紀委員』は、学生有志の能力者が多数を占めており、そして学生に危険任務を多く与えることはないため、装備品などは最低限の供給になっている。
『警備員』は、能力開発を受けていない大人が能力者などの取り締まりを行うことも含め、最新鋭の兵器などを貸与される。これは都市内の警察機関として動くことや危険任務も含むためである。
どちらも原則はボランティアで志願制となっており、「9枚の契約書にサイン」「13種類の適正試験」「4か月に及ぶ研修」が必要なのだが、万里絵は「9枚の契約書にサイン」と「一部の適性試験」と「多少の研修」で済ますから『警備員』に入ってほしいと黄泉川の懇願を突っぱねる。

―――『組織』に所属した方が色々手に入るものがあるでしょうがまどろっこしい状態になるしね。それに調べなきゃいけないのは『魔術』だけじゃない。遼も今はあんな状態だし…。
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/21(日) 00:48:58.81 ID:raUtcqgz0

万里絵なりに遼の心配はしている。昔からお互いに精神面が達観しすぎて不器用な支え愛しかできなかった。その経験を活かそうと思ってもみたが、結果は惨敗。
それでも誰かが傷つき、傷をつける状況が生まれれば遼が立ち向かっていくことも知っている。だからこそ、サポートはできても彼を救う言葉が見つからなかった。

「なんでそんなに拒否するじゃんよ。アメリカのサバイバルスクールに行ってたんじゃん。その経験を活かそうじゃん」

そう、黄泉川が『警備員』に万里絵を誘った理由はこれだった。元SASの彼女なら、運動神経や根性が据わっており、人格も学内での内容をうかがう限り問題ない。故の推薦だった。

「昔の話ですよ。今はからっきしですし『学園都市』の最新の重火器や特殊な乗り物を使いこなす自信はありませんよ」

「むぅ。でも諦めないじゃんよ」

そう言って黄泉川は職員室を出て行ったが、まだまだ誘う気のようだ。

―――問題は志津見や『魔術』じゃない。この『学園都市』のシステムよね。ボランティアの二組織だけで『外』との情報を遮断しきれるはずがない。『警備員』に所属をしたらそれらには手を出せない状態になる。相手も組織でしょうが、システム上この『学園都市の闇』。遼が統括理事会参入を狙っている以上、これからの戦いも見据えておかなければいけない。それに上条君。彼も遼と同じでその手の事件に向かっていくタイプでしょうから二人のバックアップに情報の収集…。立ち止まってはいられないわね。

合理性や作戦立案といった戦闘面のサポートに長けている万里絵だが、彼女は自分の事が強いとは『遺産』と関わってからは一度もない。確かに無謀な戦闘を強いられることもあったりしたが、上条や遼のような心で訴えかける強さは持ち合わせていない。
いや、遼と出会ってからは強くはなったが、それでも彼らの様に無償で誰かに手を差し伸ばし、ただ助けたいと信じれる心の強さはいまだに抱けなかった。
それが今回の遼との確執だとは理解しているのだが、自分のスタンスを変えるのは難しい。だからこそ遼と共に歩んでいるのだが、なかなかうまくいかないようだった。
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/21(日) 00:49:25.22 ID:raUtcqgz0


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155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/21(日) 00:49:57.00 ID:raUtcqgz0

「相席か…、っつっても空いてる場所って……」

ファストフード店に着いた上条らは定員から申し訳なさそうな声色で満席だと伝えられた。よってどこかに相席で座ってほしいとのことだ。
一か所だけ一人しか座ってないテーブルが確かに存在する。だが、上条はその席を選びたくなかった。明らかに自分に不幸が降りかかる予感しかしない。
炎天下に晒され続けるのも苦痛なので、さっさと席を確保したい。室内は満席どころか待ち状態、オープンスペースのパラソルのある席を選ぼうとしたが、そこしか空いていない。

―――どうする。アレと一緒に座るのか?

そんな上条の葛藤など露知らず、インデックスと青髪ピアスはその問題の席へと突き進んでいく。

―――うっひょー巫女さんやで巫女さん。くーっ、シスターに巫女さんって超レアな組み合わせ!

そう。その席にはストレートロングの黒髪巫女服の女が突っ伏しながら大量のハンバーガーをテーブルに並べている席だった。
因みにインデックスは相手が巫女服だからなんてことで物怖じしたりはしない。それは自らが修道服を着ていることに起因するのだが。

―――こいつらはなんでそんなあやしげなって青髪はあれか。女好きだしインデックスは自分がシスターだし大食いだからか。

自分の記憶にはない『知識』と現在までの『経験』からひっぱり出した情報を元にインデックスの性格などを割り出していく。

「…食い倒れた」

突っ伏してた巫女服の女は、上条らが近づいていくと同時にそんなことを言った。

156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/21(日) 00:50:22.96 ID:raUtcqgz0


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157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/21(日) 00:50:57.19 ID:raUtcqgz0
「何だステイル。今日は予定があったんだが」

ステイル=マグヌスは上条家の隣室にいる土御門元春の家を訪ねていた。
土御門元春は件のデルタフォースの最後の一人であり、科学の都『学園都市』にいながら『魔術師』である変わり種だ。

「いや、済まなかった。それにしても偶然とは怖いものだね。君の家がまさかあの無能力者の部屋と隣り合わせだなんて」

「アレイスターの仕業だろうさ。偶然とは言えないさ。で、本題は?」

「隣室ならわかっているだろう。『ザンヤルマの剣士』、あまりにも情報がおかしかった。それと『吸血殺し』」

『超科学装置所持者記録(リストI)』の情報によれば、現役で矢神遼が『ザンヤルマの剣』を所持していることになっていた。が、事実は確認した時点では所持をしておらず、今回の事件が発端で再所持となった。
危険度が最優先になっている対象にこのような曖昧な情報を掲示するはずもない。だからこそ、スパイとして情報を多く持つ土御門の下を訪ねたのだ。

「『超科学装置所持者記録(リストI)』か。あれはイミテーションのIだ。ちっとばかし事情があってな。『ザンヤルマの剣士』についてはこれ以上は話せない」
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/21(日) 00:51:26.48 ID:raUtcqgz0
土御門は何かを知っているようではあったが、それは話せない内容とのことだった。

―――どういうことだ?

「言えることは、『超科学装置所持者記録(リストI)』を見直せ、くらいか。それと『吸血殺し』の件だが、アレイスターから情報を貰っているだろうがやはりアウレオルス=イザードだよ」

―――アウレオルス=イザード、か。

かつてはローマ正教所属の錬金術師で対魔術師用の魔道書を書く「隠秘記録官(カンセラリウス)」を務めていた男だ。
別の宗派の所属になるが一時期はあのインデックスの教師を行ってもいた。その後、ローマ正教を出奔。行方知れずとなっていたのだが、今になって彼は現れた。

「となると『吸血殺し』は目的の通過点で狙いは彼女になるんじゃないのか?」

アウレオルスはインデックスの完全記憶能力による記憶除去の必要性がなくなったことを知らないはずだ。『吸血殺し』を何かしらの方法で利用し、インデックスのそれを克服させるつもりなのだろう。
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/21(日) 00:53:39.77 ID:raUtcqgz0
「だが、『吸血殺し』をどう使うかが見当がつかないな」

「ステイル、恐らくだがあいつはインデックスを吸血鬼化させるつもりだ。でなけりゃ『吸血殺し』を利用する理由が思いつかん」

「…有り得るな。それで君は今回どうするんだ?」

「この事件においては俺は科学サイドに振られるらしい。どうもアレイスターは今回の件については俺を介入させたくないようだ」

「そうか。なら『幻想殺し』とあの『ザンヤルマの剣士』を利用させてもらうとするか」

「カミやんをあんまり苛めるなよ。あと『ザンヤルマの剣士』は殲滅やらと言った事件には介入しないかもしれないぜ」

「いや、矢神遼は恐らく断れないさ。上条当麻の負った負傷が自分の責任だと思い続ける限りはね…」

そういってステイルは席を立つ。何も言わず彼を見送った土御門はテーブルをおもむろに殴りつけた。

―――カミやん、済まない…。俺たちの事情に巻き込んじまって。

そう思ってみても、上条の価値を理解している土御門は今後も彼の力を借りなければならないことを理解しているため、余計に苛立ちを覚えた……。
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [saga]:2011/08/21(日) 01:03:33.50 ID:raUtcqgz0
以上です。
原作と違う大きな点は、ファストフードに屋外席があることと土御門がいないことでしょうか。
原作でもあの場に土御門がいてストーリーの動き方が少ないのがアレだったので今回はこんな結果に。そのせいで巫女さんの出番は次回に持ち越しです。

そして話を短くまとめようと思ったら意外と今回は纏まらず。
メガネの人がうじうじしてるからですがw

ていうかマーちゃんパートが遼パートを喰ってしまう。小萌センセやレンジマスターwがいらっしゃるからですねw
というわけで、各パートで動き始めましたがメインは原作通りの動きになるので上条・ステイル合流後は上条パートメインになります。
それでは次回もよろしくお願い申し上げます。
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [saga]:2011/11/08(火) 02:44:26.94 ID:H4rcHTHCo
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