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緒花「もう帰る」 -
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1 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(熊本県)
[sage]:2011/07/04(月) 01:28:49.87 ID:8Ghg/ltgo
緒花ちゃん緒花ちゃん
1.5 :
荒巻@管理人★
(お知らせ)
[
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]: ID:???
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/
笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/
【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/
トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713798788/
【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713788018/
ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713736565/
【安価】少女だらけのゾンビパニック @ 2024/04/20(土) 20:42:14.43 ID:wSnpVNpyo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713613334/
ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713522243/
2 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(熊本県)
[sage]:2011/07/04(月) 01:29:46.33 ID:8Ghg/ltgo
えwwwwww建ったwwwwwwwwww
やばいなにも考えていないどうしよう・・・
3 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長野県)
[sage]:2011/07/04(月) 01:34:20.03 ID:ygIqJrCYo
ミスなら依頼出しとけ
4 :
建ったならちょっと書かせて、詰んだら依頼出します
[sage]:2011/07/04(月) 01:48:11.88 ID:8Ghg/ltgo
菜子「え?」
緒花「うん……」
今、私は心に決めました。
一度誓ってここに身を預けたけれど後ろ髪を引かれる思いが、どうしても私をくよくよさせていたのです。
それはロマンチックな旅立ちとは裏腹なものを私に与え、苦しめました。
こんな苦しい思いをするくらいなら孝ちゃんの告白を快く受けていればよかったなと思うほどに。
こんな素敵な人たちとの出会いを、放ってしまわなければならないのなら……。
私が孝ちゃんのことをこれに勝るくらい好きになってしまったのが原因なんだけども……。
菜子「えっ……えっ?」
緒花「……」
なこちの目はとても綺麗な輝きをはなっていました。
それはダイヤモンドの原石のように……と、ベタな表現になってしまいましたが、
私は直感でこう、思ってしまったのです。
緒花「じょ、ジョーク!」
菜子「えっ……ど、どっちなの……?」
緒花「嘘に決まってるよ、もう〜!なこちったら、あはは……」
とても言えませんでした。
お別れだなんて。
5 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(熊本県)
[sage]:2011/07/04(月) 01:59:59.50 ID:8Ghg/ltgo
緒花「はぁ……」
緒花「……」
緒花「孝ちゃん……」
いつからかは覚えていません、勃然と私は強く孝ちゃんを想い始めていました。
以前は親友という認識でいました、断言できます、決して恋心を抱いていませんでした。
なのに突然、本当にいきなり好きになっていました。
やはり孝ちゃんの告白が原因なのだろうか……。とにかく私はここにきて数ヶ月もしないうちに、帰ってしまいそうです。
民子「ねぇ、あんた」
緒花「え?なに?どうしたの?」
民子「……」
民子「いや、元気ないわね」
緒花「あ……」
緒花「あは、そ、そんな!そんな事ないよ!ちょっと体調が優れないだけで……」
民子「そ、ならいいけど……」
緒花「……」
”ならいいけど……”
みんちとの出会いを振り返ってみると、まるで想像もつかないような言葉なのです。
これはつまり私のことを心配してくれていると解釈していいでしょう。
私はみんちとここまで関係を深めれるとは思いもしませんでした。
奇跡と呼んでいいと思います、だって最初は[
ピーーー
]って言われてたんですから。
6 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西・北陸)
[sage]:2011/07/04(月) 02:04:02.11 ID:kWdk0AbAO
なこちのワキ ペロペロしたいお
7 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(熊本県)
[sage]:2011/07/04(月) 02:16:50.09 ID:8Ghg/ltgo
緒花「……」
菜子「緒花ちゃん……?」
緒花「ほぇ……?」
菜子「それ、バケツだよ……御膳は……?」
緒花「はっ!いけない!なんで私バケツなんかあわわ」
仕事にみが入りませんでした、こんな調子で仲居さんの仕事が務まるわけありません。
そうなんです、私は速急に帰郷するべきなんです。
早くみんなに伝えなきゃ、そう急くけれど、私はとても迷っていました。
この日常と以前の日常、どちらかという究極の選択が私に突きつけられていました。
今戻っても、孝ちゃんにはもう別の女の人がいて私なんか眼中にないのかもしれない。
さよならを告げた喜翆荘にまた戻ってくるなんて見苦しい真似できるわけありません。
慎重に行動しなければならないのです。慎重に……。
〜♪
緒花「!!!」
民子「わっ!な、なに!?」
緒花「……」
緒花「なんだ……勧誘メールか……」
民子「な、な……び、ビックリした……」
二段ベットの下の居心地を知らないからこそ、人の迷惑を考えず騒動できるのでしょう。
私がメールの着信に飛び上がったせいで、みんちはびっくりして目を覚ましてしまいました。
緒花「ごめんね……はぁ……」
8 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(熊本県)
[sage]:2011/07/04(月) 02:28:51.93 ID:8Ghg/ltgo
後先を考えているわりには、いつまで経っても行動に移せずにいて、それで私は孝ちゃんからのメールを待っていました。
臆病も甚だしい、私は自分から孝ちゃんに連絡できずにいるのです。
民子「ねぇ」
緒花「なぁに……?」
私は寝ぼけた調子でみんちに返事をしました。
すると……。
民子「あんた、最近おかしい」
緒花「……」
緒花「そんな事ないよぉ……?」
民子「……」
民子「ここにいて楽しい?」
緒花「……ッ」
言葉に詰まってしまいました、まさかこんな直球で問われるとは。
よく考えてみる、私は孝ちゃんのもとへ帰りたいのだろうか、それともみんち達と一緒に働きたいのか。
私は実は帰りたがっている、じゃあ答えは「楽しくない」でいいのかな?
そうじゃないんだ、楽しくないんじゃない。楽しいんだけども……。
緒花「楽しいよ?なんで……?」
民子「……」
民子「なんで?」
緒花「……」
9 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(熊本県)
[sage]:2011/07/04(月) 02:41:22.39 ID:8Ghg/ltgo
なんで?と返したらなんで?と帰ってきました……。
それは私のなんで?に対するなんで?なのか、それとも楽しいに対するなんで?なのか。
鬱陶しいことばかり深く考えてしまう、これが哲学癖というかやつ?いや知らないけど。
恐らくなんで楽しいのか、聞いているんだろうと思います。
緒花「みんなと一緒にいることかな……」
民子「……」
民子「みんなって誰」
緒花「……?」
どうしたんだろう、みんち……。
ここまで詮索する必要あるのかな。
とりあえず一人ずつ答えていこう。
緒花「まずみんちでしょ、なこちぃ、あと――」
民子「……」
一人ずつ名を挙げていきました。
みんちは黙ってそれを聞いていました。
緒花「うん、とにかくみんなと一緒にいることが楽しいんだ」
緒花「……」
民子「……」
緒花「みんち……?」
民子「……」
民子「ふうん……で、トオルさんは?」
10 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2011/07/04(月) 04:38:23.62 ID:xFrJpA3wo
何も考えてなかったのに頑張ってるなw
11 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(熊本県)
[sage]:2011/07/04(月) 15:56:08.30 ID:8Ghg/ltgo
どうしよう、展開が思い浮かばんな……
というかこの県名表示恥ずかしい、どうやって消すんだ
12 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(熊本県)
[sage]:2011/07/04(月) 16:12:20.08 ID:8Ghg/ltgo
緒花「えっ?」
民子「……」
緒花「と、とおるさん……?」
みんちがとおるさんに想いをよせていることに関しては、既知のことです。
みんちの口からとおるさんの名が出てくることは、別になにもおかしなことではありません。
しかしこの状況、私の喜翆荘生活での居心地の件で何故、とおるさんの名前が?
緒花「まぁ……うーん……」
民子「……」
喉の鳴る音が聞こえた気がしました。
緒花「苦手ではあるけど、まぁ……とおるさんも入れてもいいかな」
民子「……」
民子「なにそれ……あんた、じゃあとおるさんには興味ないっていうの?」
緒花「……」
興味ですか。ずばり、あまりありません。
なんて言ったらみんちきっと怒るだろうなぁ。
だから言いませんでした、迫真なんだけれども。
緒花「ううん、あるよ」
民子「……」ドキッ
ドキッと言う音が聞こえた気がしました。
民子「え、え……?あ、あるって……あんた……」
緒花「あっ!違う!そういう意味じゃなくて!!人間としてね!!面白い人だなーって!」
13 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(熊本県)
[sage]:2011/07/04(月) 16:43:39.52 ID:8Ghg/ltgo
民子「……ッ」
緒花「あ、あは……変な勘違いはごめんだよみんち……」
いつ起き上がったのか、みんちはまるで足のないお化けのように、音もたてず私のいる二段目に顔をのぞかせていました。
その顔は暗くてよくわからなかったけど、噛みしめた唇が唾液で湿り、月夜に照らされていました。
眉間のしわが見えてきて、頬の朱色が微かに見えてきて、しばらくするとみんちの顔がはっきりと見えてきて……。
緒花「こ、怖い……よ……?」
民子「あ、えっと……あんたがとおるさんに気があるっていうからッ」
緒花「え、えっ!?そんなこと言ったっけ私っ」
民子「い、言ってはないけど……興味あるって……」
緒花「それは人間としてって意味!」
民子「つ、都合のいい言葉ね!そんなのいくらでも言い訳できる!」
なんでこんなに責めてくるのか、さっぱり理解できませんでした。
慎重になった結果、裏目に出たようです。本当、変な勘違い。
私があの人のことを好きになるわけがないよ。とおるさん、デリカシーに欠けるというか。
民子「ああああーもうホビロンホビロンホビロンほぼっ……ホビロン」
緒花「……」
噛んだ……。
民子「あんた、私の気持ち、し、しっ、知ってるんでしょ!?なのに……なのに……っ、ややこしい言い方して……ほんっとホビロン」
緒花「ご、ごめんーみんち……怒らないでー」
民子「ふんっ」
みんち、とおるさんの事相当好きなんだなぁ。
私はみんちの一連の振る舞いを見て、思った。
以前、みんちが同級生に告白されていたことを思い出した。
みんち、告白を受ける気がまったくと言っていいほどなかった気がする。
それは一途なとおるさんへの想いがそうさせたのだろう。
立場を私に置き換えてみる、もし孝ちゃんがいながらも別の人に告白されたらなんて言うかな。
とてもみんちみたいな拒否の仕方、できないだろうなぁ。拒否というか最早、拒絶もん。
14 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/07/04(月) 19:37:59.31 ID:CWXZ3rbq0
とてつもない見切り発車でよくここまで書けるな
15 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(熊本県)
[sage]:2011/07/05(火) 00:34:38.87 ID:majUMO1zo
鈍感というべき私の思考は、こうして片づけてしまい、これ以上みんちを疑うことはありませんでした。
にわかにみんちは物怖じせず、凛として私に一抹といえど、恋心を吐露したのですから、
私は明らかな変化に気付くべきであり、これをみんちの「一途な恋心」で片づけてしまったのはやはり、いささか所でなく鈍感というべきにあるでしょう。
みんちはある悩みを抱えていたのです、それは私に言えない悩みだったのです。だから一見無意味と思える応酬が続いたのです。
私は早く気付くべきだったと、後悔することになるのです。こんなことになるなら悩む前に東京へ帰るべきだったと。
まさかこの喜翆荘で、ドラマチックな展開が繰り広げられるなど思いもしませんでした。
それは決して、良いドラマではなかったのです。
私にとっては――そしてみんちにとって――。
孝ちゃんにとっても――。
16 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(熊本県)
[sage]:2011/07/05(火) 00:48:26.60 ID:majUMO1zo
緒花「うぅん……」
始まりの朝――すべてはここから始まりました。
正確にいえば昨晩の件ですでに始まっていたのですが、今日という日は始まりに相応しく、明らかに何かが動いた日でありました。
けたたましく鳴り響くアラームはみんちの睡眠を邪魔しないよう、最小音量におさえてあります。
しかし耳元で騒がれるとやはりうるさいのです、これはあまり心地よい目覚めとはいえない。
ここに来る当初はロマンチックな妄想ばかり働かせていましたから、このギャップに落胆の念を感じずにはいられません。
慣れてしまえば問題ない、と割り切って私はジメジメとした布団をたたむ作業にうつりました。
緒花「ふぅ……」
相当病んでいるように私は自分を綴っていますが、その感情を表には出しませんでした。
傍から見ると、一人だけ早起きして開店準備に励む私は毎日をエンジョイしているように見えたでしょう。
廊下の雑巾かけもすまし、私は一息ついて適当な椅子に腰掛けていました。
17 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(熊本県)
[sage]:2011/07/05(火) 01:17:26.59 ID:majUMO1zo
すると、
とおる「あ?お前……」
緒花「えっ?」
ヘルメットを片腕に抱いて、鞄のようなものを肩にかける長身の男性が、今来ましたと言わんばかりに立ってこちらを見下ろしていたのです。
その人はみんちの大好きな板前のとおるさんという人で、私の苦手なタイプの人です。
とおる「お前こんな朝からなにやってんだ」
緒花「あー……えっと、掃除です」
とおる「掃除?なんだ、特別な収入でもあんのか?」
とおるさんは、いかにも私が金目当てであるという言い方をして、鞄をテーブルに置いてシャツを扇ぎました。
緒花「違いますっ、そんなこといちいち考えて仕事なんかしたくありませんっ」
緒花「とおるさんはこそ、なんで今日はこんなに早いんですか?」
とおる「ああ、今日は調達の日でな」
緒花「調達?食材を?」
とおる「週に1、2回はこうやって早起きしないといけねぇんだよなぁ……ふぁあ、ねむ……」
緒花「……」
へぇ、とおるさん毎週こうやって来てたんだな。
私全然気付かなかった。
とおる「なんだ、民子の奴まーだ寝てんのか?」
緒花「え?あ、はい、確か」
とおる「ったく……もういい、じゃあお前ちょっとつきあえ」
18 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(熊本県)
[sage]:2011/07/05(火) 01:34:23.74 ID:majUMO1zo
緒花「へ?私……?」
今日は土曜日なので登校する必要はありません。
スケジュールは相変わらず空白でそれもその筈、お泊まりの予約が全く入っていないのですから。
断る理由がない私はとおるさんの運転する軽トラックの助手席でシートベルトをしめ、調達に付き添いました。
とおる「そろそろ慣れてきたか?」
とおるさんは窓枠に肘をかけて、左片手を脱力させ、悠々と運転をしながら私に問いかけてきました。
私は一言で「まぁ、はい」と返事をして、会話をぶち切りするとまた一時して、
とおる「お前、民子とあまり仲良くないみたいだな」
緒花「はっ、はぁ?そんなことないですよ」
とおる「この前、[
ピーーー
]って言われてたじゃねーか」
緒花「い、いつの話を……ッ、今ではもう普通に接してますよっ」
とおる「上辺だけだろ、どうせ」
緒花「なっ……!?」
とおる「あいつ、お前みたいなタイプ拒絶しそうだからなぁ」
緒花「〜〜ッ」
なんて事を言うんだ、この人は。
私は貴方みたいなデリカシーのない人を拒絶します!
と心で叫んでいたら、到着したようです。
19 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(熊本県)
[sage]:2011/07/05(火) 01:34:51.80 ID:majUMO1zo
駄目だもう寝る
20 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/07/05(火) 06:47:48.18 ID:uCchuS0IO
乙
続きが気になるのでぜひ頑張って欲しい
21 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(岡山県)
[sage]:2011/07/05(火) 10:44:31.89 ID:cnu13kNio
乙
即興でここまで書けるのは凄い
でも地の文って、緒花にしては妙に知的というか難しい言葉を使ってる気がする
一人称だからちょっと違和感
22 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(熊本県)
[sage]:2011/07/05(火) 19:35:17.87 ID:majUMO1zo
おおレスついてる、ありがとうございます
確かにこれは三人称視点の方が良かったですね
23 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(熊本県)
[sage]:2011/07/06(水) 01:49:38.38 ID:zERvu/azo
とおるさんはエンジンを切り、トラックから颯爽と降りて、お店へ向かって行きました。
私は着いてこいと言われ来たにも関わらず用無しと放置された感を身にひしひしと感じながら海の近いこの地へ降りたのです。
新鮮な感覚が私の全身を貫いた気がしました。
緒花「潮風……」
東京の空気とは一変して、どこか優しくて暖かい風はちょっぴり酸っぱい。
後ろからとおるさんの呼ぶ声が聞こえる、だけど私には孝ちゃんの声しか聞こえてきませんでした。
緒花「孝ちゃん……」
とおる「おい」
緒花「あだっ」
とおる「なにぼーっとしてんだ、ほら手伝え」
緒花「……む、はいはい……」
なにも後ろから引っ叩かなくても。
みんちはこの人が好きなんだよね、どこがいいんだかって感じ。
もうちょっと優しければいいお兄さんなのに。
とおる「ほれ、これとこれを荷台に」
緒花「はいはい……うんしょ」
トラックと積まれたビールケースとの距離は10メートルほどありましたが、これを12往復くらいした気がします。
想像以上の重労働です。
とおる「積み終わったかー?」
緒花「は、は゛い……はぁ……」
かくして私たちは軽トラックに乗り、帰宅の途をたどるのみとなりました。
24 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(熊本県)
[sage]:2011/07/06(水) 02:05:35.69 ID:zERvu/azo
緒花「……」
とおる「……」
気まずい。
話すことがない。いや、別に話したいわけではないけど。
ここまで気まずいとこちらからなにか話題をふりたくなります。
幸いこのトラックは近年流行りのハイブリッドカーとやらではないようで、走行中騒音が良い具合に気まずさを緩和してくれています。
ラジオもあったらいいのになーと、片手を伸ばしてスイッチオンを謀っていると、
とおる「……どっか寄るか?」
緒花「ひっ、へっ?はい?」
とおる「あ?なんだそれ」
緒花「い、いや何もしてませんよ?私はなにもしてませんよ?」
とおる「はぁ?」
緒花「よ、寄り道ですか?そ、そうですね……ええと……」
とおる「腹減ったんだよなぁ……どっかに食う所ねぇか……」
緒花「はぁ……食べるところ……」
こんな早朝からやってるお店なんてありませんよ。
というかとおるさんが私たちのご飯作ってくれるんじゃないんですか。
とおる「まぁな、ただ、あれだ」
緒花「ただ?」
とおる「……」
緒花「……」
25 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(熊本県)
[sage]:2011/07/06(水) 02:17:50.70 ID:zERvu/azo
とおる「ほら……」
緒花「……」
とおる「……たまには自分で作ったもん以外も食ってみたくはあるよな」
緒花「ああー、なるほど」
確かにそれはあるかもしれない、私も自分で作った料理ばかり食べていたからなんとなくわかる。
ちょっと悪戯心が湧いてきて私は、
緒花「この機会にみんちの作ったお料理を食べてみては如何ですか?」
とおる「はっ、馬鹿いうんじゃねぇ」
緒花「なっ、そんな言う事ないと思いますよ!みんちだって頑張ってるんですから」
とおる「なめんじゃねーぞ、料理作るもんはそんなに甘くねーんだ。民子みたいがもし短期間で上達してたら今頃俺は海外で一流の料理人になってるだろうよ」
緒花「でも食べてみようと思わないんですか?」
とおる「食べるまでもないな、見てわかる」
緒花「見てわかる?味がですか?」
とおる「ああ」
緒花「おいしかったですか?」
とおる「まずかった」
緒花「……」
つくづく、ひっどいなこの人は……。
もしかしてみんちって……もしかしてみんちってマ○よりなのかな。
26 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(熊本県)
[sage]:2011/07/06(水) 02:37:21.78 ID:zERvu/azo
というやり取りをしていたら、喜翆荘に辿りついてしまいました。
出発の風景と比べると、なにか見えない力が湧いているような、そんな感じの喜翆荘でした。
それは巴さんの姿が見えたからでしょう。
緒花「ッ〜〜、と」
私は両手を絡ませ大きく背伸びをすると、今日も一日頑張るぞという戒めを込めて頬を叩きました。
くよくよするのは仕事を終えてからで良いのです、私のモットーはこれでも前向きに過ごすことなので。
とおる「おい、運ぶの手伝え」
緒花「はい、よいしょっと」
さて、戻ってきてもビールケースを運ぶ作業です。
早くも私の上腕二頭筋、背筋、股がフルフルと震えだしました。
私は一応女の子なのです。
緒花「う、ぐっ……」
とおる「なんだお前、相当きつそうだな」
緒花「だ、大丈夫です……が……?」
一歩一歩、前へ進むたびに足が地面へのめり込む妄想を勝手に働かせながら私は厨房を目指しました。
と、その時
緒花「あっ……」
とおる「!!」
ガシャーン――!!
27 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(熊本県)
[sage]:2011/07/07(木) 21:33:36.78 ID:CtTMOCVfo
耳をつんざく、硝子の割れる音が私の足元で聞こえ、視界には黄色い液体と泡。
私の脚は地を踏みしめることなく、朝日に煌びやかな、散乱した硝子の海へ吸い込まれていく。
まだ私は、私の失敗に気づいておらず、状況を把握できていませんでした。
時すでに遅し、生命の危機まであと30cm程しかありません。
私はこの時、はじめて焦り、脳内シュミレーターが血にまみれた私を創造し、恐怖しました。
とおる「ッ!」
緒花「きゃっ」
すると、ちょうど真横から、まるで貨物列車に轢かれたと錯覚を起こすような衝撃が私の身をかばいました。
とおる「おい!お前、なにやってんだ!」
緒花「へ……?」
間一髪でとおるさんは私の体を抱きしめ、硝子の魔の手から救ったようです。
私はどうやら躓いて、ビールケースを放り投げ出してしまったらしい。
とおる「あぶねぇ……」
緒花「あ……あ……」
私はとっさにとおるさんから離れ、最敬礼よりも深く頭を下げ、
緒花「ご、ごめんなさい!!すいませんでした!!」
この時は本当に申し訳ないという気持ちでもって、謝罪の意を伝えました。
28 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(熊本県)
[sage]:2011/07/07(木) 21:49:25.59 ID:CtTMOCVfo
なんで躓いたのか、それは私の不注意が原因なのです。
怪我をけずに済んだ安堵感にまさる、商品を破損してしまった罪悪感は計り知れませんでした。
どんな言葉をあびせられても良いと、覚悟しました。
とおる「……」
緒花「ッ……」
10秒ほど沈黙に包まれた私の敬礼は、とおるさんの口も閉ざしてしまいました。
みんちへの指導を私は間近で見てきたので、とおるさんの厳しさは十分に承知しています。
慎重に言葉を選んで、もっとも残酷な説教を勘考しているのだろうと思いましたが……
とおる「ちっ……ほら、もういいから片づけ手伝え」
緒花「えっ……?」
とおる「割ってしまったのはもうしょうがねぇだろ、次は気をつけろよ」
そういうと、とおるさんは率先して、しかも素手で硝子の破片を拾い始めました。
緒花「待ってください!私が掃除します!それに素手じゃあぶn」
私の言葉は掻き消され、
とおる「開店まで時間がねぇんだ、妙なけじめよりもお客様をむかえるのが最優先だろ」
緒花「っ……」
その通り。その通りなんだけど……。
29 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(熊本県)
[sage]:2011/07/07(木) 21:58:38.09 ID:CtTMOCVfo
私がぼーっと、とおるさんを見つめている間に掃除が済んでしまったようで、
とおる「酒勿体ねぇな、でも流すしかねぇか」
緒花「あっ……そ、その……」
12本のうち、見て取れる破損の数は6本から10本。
改めて罪の重さを痛感し、私は返す言葉を失っておどおどしてしまいました。
とおる「あ?おい、お前なにやってんだ」
緒花「……?」
とおるさんは屋内の誰かに向かって話しかけ、こっちにきて手伝うよう指示を促しました。
出てきたのは厨房スタイルのみんち。
民子「あ、あの……」
とおる「お前今日の事、忘れてただろ」
民子「い、いや……忘れていたわけではなくて……」
とおる「言い訳を聞く気はない!板前の朝は早いって今まで散々言ってきただろ!?」
緒花「……っ」
いきなりの怒声に、私は体を硬直させてしまいました。
みんちも、体をびくっとさせて、2秒ほど間をおいて、
民子「す、すみません!!」
30 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(熊本県)
[sage]:2011/07/07(木) 22:25:00.26 ID:CtTMOCVfo
さっきの私と同じくらい深く最敬礼をして、とおるさんに謝りました。
その際、勢い余って頭にかぶせた帽子が落ち、ビールの海へ落ちてしまいました。
帽子はじわじわと浸食され、へなへなとゆっくりとした動作で、崩れていく。
その様はまるで温暖化の影響を受けた、氷山の一角のようにゆっくりと。
とおる「緒花」
緒花「は、はいっ」
とおる「この酒は水で流して、無事な酒は水で洗って、荷台の酒は厨房へ運んでくれ」
緒花「は、はい、わかりました……」
とおるさんはそれだけ伝えると玄関の方へ歩いて行きました。
私はチラっとみんちの方を窺うと、まだ頭をあげていないようでした。
とおるさんの姿が完全に消え、戻ってこないと確信した私は即座にみんちの濡れた帽子を取って、
緒花「み、みんち、帽子が落ちたよ」
濡れた帽子はもう7割ほど侵食されており、とてもかぶれるものではありませんでしたが、
怒鳴られたみんちを慰める目的で私は丁寧に帽子をさしだしました。
民子「……」
緒花「……」
みんちは無言で、帽子を受け取り、ホースへと向かいました。
31 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(熊本県)
:2011/07/09(土) 01:09:18.77 ID:jQDaWX6Ao
緒花「みんちっ……いいよ、私がするから」
私はみんちに駆け寄り、片手に握った水まきのホースを横領しようとしましたが、
みんちは私を退け、相手をしてくれません。
民子「……」
緒花「えっと……あっ、私厨房にお酒運ぶからっ!」
民子「いい」
緒花「え?」
民子「しなくていい」
緒花「えっ……」
普段より1オクターブ低い声だったと思います、みんちはしなくていいと言ったのです。
私は久しぶりに見るみんちの冷たい対応に我慢できなくなり、どうしてもご機嫌を取り戻したい衝動に駆られました。
緒花「いいからいいからっ、開店まで時間ないしっ」
半ば無理やりテンションをあげて、私は荷台のケースを掴みました。
民子「いいっていってんでしょ……」
緒花「うんしょっ」
みんちは独り言のように、いや敢えて私に聞こえないように言ったのかもしれません。
私にはそれが聞こえてきませんでした。
民子「いいっていってんでしょ!!」
緒花「ひっ」
32 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2011/07/09(土) 15:55:24.17 ID:BcFTKx6AO
これは良い
好きな文章だなぁ
33 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(熊本県)
:2011/07/12(火) 22:07:04.80 ID:q4JBJyRSo
錯覚でしょうが、ディストーションのエフェクトが声にかかっているように聞こえたのです。
例えるならば落雷に遭遇した、あの後を引く夥しい静電気。私は落雷にあったことないけれど。
自分で言うのは違う気がしますが、感受性豊かな私だからこそ、ここまで驚けたのでしょう。
ベタなリアクションを起こした後に、私はみんちを振り向きました。
民子「……いいって」
緒花「……」
みんちは水道水に侵されるビールの泡の行方だけを見つめて、見向きもしませんでした。
とりあえず不機嫌なんだと理解した私は、
緒花「ど、どうしたの……?」
と聞いて、詮索を開始したのですが、同じく相手をしてくれないので困りました。
結局なにも聞けないままみんちはビールを流し終わり、黙々とビールケースを運んでは私を無視するのです。
ちょっとだけ泣きそうになりました、これでも女の子なので。
巴「おはよ、二人とも」
民子「おはようございます」
34 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(熊本県)
[sage]:2011/07/14(木) 21:13:57.50 ID:7Z4hEOA6o
いかん、展開が思い浮かばない
浮かんだとしてもどれもありきたりで面白くない
ここまで読んだ人には本当に申し訳ない
削除依頼を出しました、調子こいてすんません
35 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/07/14(木) 21:21:19.68 ID:5MYR3tEDO
いろはのSSって少ないから期待してたが まあ次回作に期待してるよ
25.88 KB
[ Aramaki★
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