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さやか「あたしたちのアプリボワゼ」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 00:12:16.04 ID:odCMitvJ0
ヤノ・マミ「最初のレスくらいは解説やあらすじかと思った? ざ〜んねん。ヤノ・マミちゃんでした!!!


       ここは≪ さやか「銀河美少年…?」タクト「魔法少女…?」 ≫と≪ 杏子「綺羅星十字団…?」 ≫の完結編に当たるSSよ。


       まさか読みたいなんて奴がいるとは思わないけど、読む気なら「杏子〜」の方だけでもどうにかしないと意味わからないでしょうね。

       最も、この私を『立ち位置が微妙』で『絡めそうなミズノが不在』で『唯一の特徴と言える第一フェーズを使わせるのもしんどい』と、

       サイバディ乗りの中で唯一ハブった作者のSSなんて、読む必要なんてないけど!!!!!!!!!

       こんなモノ読まなくていいから、貝類食べなさい!貝類!!!!!!! 海藻もいいわよ!!!!!!!!」


ほむら「自棄にならないで頂戴。私だって出ていないわ」


ヤマ・ノミ「黙れ他所者! 声が同じだからって馴れ馴れしくするな!」


まどか「酷いよ!ノミさん! そんな言い方って無いよ!」


ヤノ・マミ「私はマミだ! ノミじゃない! 首あるし、厨二病でもないけど私だってマミだ!!!

       第一なんで同名キャラのマドカはあんなに、活躍したのにマミはダメなんだ! カタカナごと被ってるからか! え!?」



ルリ「…………この人は放っておいていいから、SSを読んでよ!!」
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ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
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旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713353246/

木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1713351945/

いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713279251/

【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
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こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713183168/

【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713091115/

アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713089503/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2011/07/05(火) 00:17:38.05 ID:vWQ1dYfho
お? 新スレかな
>>1
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 00:21:59.57 ID:pdVuaoLMo
>>1 乙です。今までの読んでないが後日読ませてもらいます
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) :2011/07/05(火) 04:36:07.31 ID:OmVKhJ6AO
>>1乙です。
マミで人魚で斎藤千和か…
5 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 21:10:04.84 ID:odCMitvJ0
綺羅星☆

新スレ立てました…。

長かった…。
だけど、1000スレ到達とスレ名変更は目標の一つでもあったんで、到達できてよかった…。



まずは、こっちのスレで最終章本編を投下します。
どっちから先に行くかとも考えたんだけど、番外編の方が後味すっきりな感じなんで、そっち後にする事にしました。

よって、こっちでの本編読み終わった後は、旧スレにて番外編投下するんでそちらも合わせてどぞう。



>>2
乙感謝

>>3
乙どもです。
ありがとうございます

>>4
マミ、さやか(オクタ)、ほむらの混合属性か…
敢えてネタキャラにしたけど、使いようはあったかもしれないな

さやかとカフラット戦わせて「なんとなく嫌な気分」とかやればよかったかな…?
でも、作中でもトップクラスに排他的なキャラだから扱いが難しいんだよね…



――旧スレ――

杏子「綺羅星十字団…?」http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1307372345/


――上記の前作――

さやか「銀河美少年?」 タクト「魔法少女?」http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1306308700/

さやか「銀河美少年?」 タクト「魔法少女?」後編 http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1306329055/l50
6 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 21:12:39.11 ID:odCMitvJ0
巴マミ「では、さんざん愚痴った>>1のマミさんに代わって、私が前スレのあらすじを解説しておくわね。

    万一、まだ前スレ見てないけどネタバレ勘弁って人は、この前にある作者のレスにあるリンク先へ向かってね。



    魔法少女まどか☆マギカ本編の八話の最後と同じく、美樹さんは魔女になろうとしていた…。でも、そんな彼女に奇跡は起きた。

    魔女化の瞬間に、サイバディ『レシュバル』とアプリボワゼした事により、溢れ出した負のエネルギーを壊れたサイバディが吸収…。

    彼女同様自棄になっていたレシュバルは、極僅かな美樹さんの希望のリビドーを吸わず、結果美樹さんは死も魔女化も免れ、レシュバルも再生。

    そのままゼロ時間に招集され、世界征服を目論む綺羅星十字団と戦う『銀河美少年』ツナシ・タクトさんと出会った。

    美樹さんは自分を救い、称えてくれた彼と共に『銀河美少年』としてレシュバルに乗り、綺羅星十字団と戦い続ける…。

   
    だけどゼロ時間、ひいては異世界にある南十字島に飛ばされたのは美樹さんだけじゃなかった。

    彼女の魔女化の際に付近にいた佐倉さんもまた、南十字島の別の場所に飛ばされていたの。

    彼女は美樹さんと一緒に元の世界に戻る手掛かりを得る為、綺羅星十字団へ加入。その中で仲間たちとの絆を深めながらも美樹さんと激突。

    結果敗れてしまい、美樹さんの覚悟の強さを知る羽目に。以後の二人はなんだかんだでうまく行っているように見えたんだけど…。


    ふとした事で元の世界に戻れない事、そしてこの世界の絶望を知った佐倉さんは、美樹さんと仲間達を守る為に取引を行う。

    その結果、様々な無茶をして美樹さんすら上回る強さを得た佐倉さんは、彼女のレシュバルを撃破して目的を無事に達成。

    美樹さんを足止めする為に未来予知の力を持つカタシロさんを差し向け、自分は絶望の元凶であるヘッドとの戦いに挑んだ…。


    こんな所かしらね。でも、美樹さんも佐倉さんも、なんだかんだで私の事気にかけてくれてて嬉しいわ。

    『アプリボワゼ』とか『銀河美少年』とか『ゼロ時間』とか『第一フェーズ』とか響きの良い語句もたくさんあるし、羨ましい世界ね。

    今からでも、どうにか出演出来ないかしら…?」


ナツオ「やりたい事とやるべき事が一致しても、さすがに死んだ人が復活するのは無理なんじゃないかな…?」


巴マミ「そう…。残念ね…」
7 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 21:15:10.72 ID:odCMitvJ0
ゼロ時間。

天に浮かぶ魔法陣。

残す封印はあと二つ。


この内一つを破れば夢が始まり、二つとも破れば永遠に夢の中にいられる。

その筈だった。


だが、その封印を守る障害を排除した存在が、今度は新たな障害となって立ち塞がっている。

そして、それすらも知らぬ観戦者達は、彼女と空に浮かんだ銀色のサイバディを見つめている…。




スカーレットキス「絶望…?」


頭取「ただ一人対抗できる…?」




スガタ「あの二人は何を言っている…」


ワコ「何が、起きてるの…?」
8 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 21:16:11.35 ID:odCMitvJ0
バンカー「あの『No16』の本当のスペックについてご存知の方は一人でもいますか…?」


それらを見つめる一行に全てを知る仮面の少年は問いかける。

居る筈もない隠された真実を知る者が一人でもいるかの最終確認…。

当然その答えは…。




スカーレットキス「本当の…?」


頭取「…………」


プロフェッサー・グリーン「非公式なスペックがあると言う事か…?」


ケイト(あの男が何かを企んでいる事はわかっていたが…)




杏子「代表さんたちがこぞってだんまり…。

    惜しかったな、ヘッド。あと少しだったのになぁ…!」


ヘッド「…………」
9 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 21:19:00.12 ID:odCMitvJ0
スカーレットキス「なんなんだよ、絶望って…?

          それに杏子だけが対抗できる…? わけわかんねーよ!」


杏子「慌てんなよ、先輩。バンカー、説明頼む」




バンカー「まず、アレについてです。

      あの男が今乗り込んだ『No.16』のカタログスペックは、ヘッド及びプロフェッサー・シルバーの手で改竄されていました。

      書類の類は後で僕の方で提示致しますが…」



プロフェッサー・グリーン「データの改竄…?」


レイジングブル「どう言う事だ…?」


セクレタリー「やっぱり、あの銀色のサイバディには隠すだけの何かがある…。そう言う事?」




プロフェッサー・シルバー「その通りです…」
10 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 21:20:27.11 ID:odCMitvJ0
サイバディのデータ管理の一任者である灰髪の仮面が返答する。

名前を上げられたデータ管理の担当者がこう言った以上、その不正の事実はもはや揺ぎ無い物となる。

血の気の多い者はその段階で既に怒りに駆られ、それに任せて男を怒鳴りつける…。




スピードキッド「てめぇ、よくもいけしゃあしゃあと…!」


レイジングブル「へぇ…! サイバディ関連の隠し事ってのは大事だよなぁ…!?」




ケイト「止せ…!」


セクレタリー「何故あなたがここに…!?」


ワコ(ケイト…?)



怒れる者達を制止したのは眼鏡をかけた気真面目そうな一般人…。

だが、その風貌は皆がどこか見覚えを感じている…。


そして、彼女を知るこの騒乱の中心人物がその正体の事も含めて口を開く…。
11 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 21:21:10.37 ID:odCMitvJ0
杏子「へぇ…、珍しいな。アンタが人を庇い立てするなんてさ。

   なぁ、イヴローニュ…?」



ワコ「ケイトが、イヴローニュ? 綺羅星…!?」


頭取(やはり、そうか…)


レイジングブル「仮面忘れてここにいるって事は、シルシ持ちって事か…?」


スピードキッド「そんな事は良い! それよりなんでそいつを庇うんだよ…!?

          そいつは重大な裏切り行為を…」





ケイト「私同様、奴に脅されていたのよ…。恐らくは…。

    彼が何を盾に取られていたかまではわからないけど…」


プロフェッサー・シルバー「………」


スガタ「盾…か」
12 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 21:24:15.12 ID:odCMitvJ0
スカーレットキス「下衆が…!」


ピンク髪の少女は空に浮かぶ銀色のサイバディを睨みつける。

同時に一行も同様にそれに注目する。


あの銀色のサイバディには隠し立てされるだけの何かがある…。

それを全員が確信する。


そして、今回の一件のもう一人の中心人物。

バンカーと呼ばれた仮面の少年が、その真実について語り始める…。




バンカー「話を戻します。次に、僕たちがアレを絶望と呼んだ所以をお話しましょうか」


頭取「絶望…と言えるだけの何かがある。そう言う事だな?」


バンカー「はい。あのサイバディは事実上、最強のサイバディ。

     他のどの機体もアレに勝つ事はできません」



スカーレットキス「は? なんだそりゃ…。そんな馬鹿みたいなモノがあって…」


杏子「ところがあったのさ。その馬鹿みたいなモノが…。

   他のサイバディとのパワーバランスを完全に崩壊させる恐るべき能力を持つ機体がな…」


プロフェッサー・グリーン「能力…だと?」


バンカー「はい。アレの恐るべき点は純戦闘力ではなく、固有能力にあります」
13 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 21:26:28.13 ID:odCMitvJ0
バンカー「あのサイバディの固有能力は『他のサイバディへのアプリボワゼ』。

     すなわち、他のサイバディを『強制制御』下に置く事が出来る能力を持っています」


プロフェッサー・グリーン「それじゃあ…」


バンカー「はい。事実上、アレに勝つ事は誰にもできません」


杏子「そして、そこには一部の例外すらない…」


ケイト「まさか…!?」




バンカー「そう。状況次第では、あの『ザメク』すら制御下における可能性が非常に高い。

     そう言う結果が出ました」


スガタ「…………」


ワコ「嘘…」


プロフェッサー・シルバー「事実です。シンパシーのスペックとヘッドのドライバーとしての資質を考えれば、ザメクの制御も可能であると…」




ヘッド「チッ…!」


暴かれた真実。

青年の野望と夢と切り札がベールを脱がされ、白日の下に晒される。

苛立つ青年と他に、その事実に取り乱す者がもう一人…。
14 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 21:28:25.10 ID:odCMitvJ0
ケイト「嘘だ…!」

ケイト「なんだ、それは…!!!」



ワコ「ケイト…?」


スカーレットキス「……………」



ケイト「そんな馬鹿な話があるか! 何故王のサイバディが、たかが戦士のサイバディに…!

    何故そんなモノが存在する…!?」





ヘッド「ザメク、いやザメクのドライバーが裸の王様だからさ」


それまで静観していた銀色のサイバディに乗り込んだ青年は、ここぞとばかりに口を開く。

バレた事実を隠し立てする気もなくなったのか…。

王と王のサイバディに強い憧れを抱く少女の思いを踏みにじる事で、少しでも鬱憤を晴らす為か…。
15 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 21:30:38.88 ID:odCMitvJ0
ケイト「何…!?」


ヘッド「何人ものドライバーのリビドーを食い潰してきた事からわかるように、ザメクの意思は凶悪にして強大だ…。

    そんなモノを資質があるとは言え、たった一人の人間が抑えられるとでも思うのか…?」


スガタ「………」




ヘッド「恐らく、そのザメクをどうにか制御すべく作られたのが、この『シンパシー』だ。

    中からでは満足に抑えきれない…。だから外から暴走する王を抑える存在が必要だった、と言う事だろう。

    故にこのシンパシーこそが『ザメク』のコクピットと言っても過言ではないな」



ケイト「う、嘘だ…」


ワコ「じゃあ…、ザメクのドライバーは…」
16 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 21:32:49.24 ID:odCMitvJ0
ヘッド「リビドーを食いつくされて死ぬか、乗り込んだ所で程なく取り込まれ、永遠にその暴走を眺め続けるか…。

    どちらにしても、生贄とでも言い直したほうが正確だろうな…!」


ケイト「そんな…。そんな…。

    じゃあ、私は…、私は…」





杏子「………まぁ、よかったじゃんか。そんなモノに乗らずに済んでさ」


スガタ「…………そうだな」


まだ顔色の優れない少年は、サイバディの姿をした少女の言葉に僅かに笑いながら頷く。

乗らずに済むモノなら…。

ずっとそう願ったそれの真実を改めて知った彼は、自虐気味に苦笑する事しかできなかった。
17 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 21:34:44.21 ID:odCMitvJ0
そして、王を操れる『絶望』。

それが意味するのは…。




バンカー「そして、さらに恐ろしいのはそのザメクを操れるほどのエネルギーを回せば、他の全てのサイバディを操る事すら造作もない…。

     と言う事実です」


セクレタリー「………」


頭取「まさに、最凶最悪…だな」



杏子「だが、そんなモノを持っていながらあいつは今日まで動かなかった。

   その答えは簡単だよな。なぁヘッド…!?」
18 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 21:36:58.07 ID:odCMitvJ0
ヘッド「クククククククククク!!!!」


ヘッド「アッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!」


その野望。

そして自らの手札の全てを暴かれ、青年は笑い狂う。


それに合わせるかのように銀色のサイバディはより高く浮き、より怪しく輝く…。




ヘッド「ここまでコケにされたのは、久々だ…!」


杏子「………」


バンカー「………」



ヘッド「シンパシーの能力は確かに強力。

    しかし、それを行使するにはやはりリビドーの消費が必要…」


ヘッド「そして、確かに俺はザメクとのアプリボワゼの負担を考えて、リビドーを温存する事を選んだ」


ヘッド「だが、馬鹿にするなよ、小娘が…! 

    だからと言って、お前一人操れないほどちっぽけなリビドーと言う訳でもない!」


ヘッド「今度こそ俺の手駒にしてやるよ! 佐倉杏子…!!!!」
19 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 21:39:20.05 ID:odCMitvJ0
ヘッド「アプリボワゼェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!!!!!!」


叫ぶ男に合わせ、銀色のサイバディは全身の各所から金色の針のようなモノを伸ばす。

そして、それは瞬く間に機体から離れ、杏子の姿をしたサイバディの方へと飛んでいく…。




アプリボワゼ。

本来はドライバーとサイバディがその関係を形成し、後にはそのサイバディ達を呼び出す為の言葉。


だが、銀色のサイバディが放ったその言葉は、通常のアプリボワゼとは勿論意味が違う。

人とサイバディのアプリボワゼが『同意』や『同調』なら、銀色のサイバディが行うアプリボワゼは『支配』や『隷属』。


金色の針のようなモノは少女へ向かい、彼女を従える関係を強引に形成するべく纏わりつく…。
20 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 21:40:46.34 ID:odCMitvJ0
セクレタリー「あぁ…!」


スカーレットキス「杏子ッ!」


プロフェッサー・グリーン「なんてことだ!」


銀色のサイバディの放った金色の何か。

それは佐倉杏子を強引に従える関係を形成した…。

誰もがそう思った。


それを知る三人を除いて…。




バンカー「僕は勝てないと思った勝負は最初から挑みませんよ…?」


プロフェッサー・シルバー「………」


だが、その能力の落とし穴を知る少年と灰髪の仮面は二人して笑う…。

そして、少女の姿をした紅の巨人はゆっくりと動き出す。



青年の意思に反して。
21 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 21:42:35.49 ID:odCMitvJ0
杏子「………どうした? アタシを操るんじゃなかったのか?」


ヘッド「効いていないのか…? 馬鹿な…!!!」


佐倉杏子の姿をしたサイバディは、中指を相手に突き立てて挑発をする仕草を取る。

そして、彼女もまた迂闊な青年を嘲笑う。


状況が飲み込めない一行は、目を丸くしながら少年を見たり、状況を見直したりしている…。




スカーレットキス「き、効いてないのか…?」


レイジングブル「ど、どうなってんだ…?」


プロフェッサー・グリーン「…………」


頭取(これがタカシが唯一対抗できる存在と言った理由か…?)
22 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 21:43:47.09 ID:odCMitvJ0
ヘッド「何故だ…!? シンパシーの能力を持ってすれば、あらゆるサイバディを制御下における…。

    その筈だ…! なのに何故あの女を操れない…!?」


杏子「間抜け…! お前はそのシンパシーの能力を過信しすぎたんだよ!」


ヘッド「何…?」




杏子「アタシが何故、わざわざこの『アインゴット』で『オーバーフェーズ』する事を選んだと思う?」


杏子「バンカーが前に言った通り『アインゴット』は、その乗っ取りを克服する事でリビドーの向上を図る、お前のスターソードの対策!」


杏子「そして『オーバーフェーズ』は、アタシの魔法少女の力を引き出す為なんかじゃない!

   サイバディと完全に一体化する『これ』は、そのシンパシーのアプリボワゼ対策だ!!!」
23 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 21:44:31.07 ID:odCMitvJ0
ヘッド「馬鹿な…。たかがフェーズ向上の筈のシステムにそんな…」


プロフェッサー・シルバー「申し訳ありませんね。ヘッド。

              私が作った研究の成果があなたの夢の邪魔をする結果になってしまいました」


夢を追い、その夢を遮る障害ばかりを見続けた青年は自らの足元を見ていなかった。

軽く見たシステムの意外な副産物に、青年の見た夢に大きな陰りが見え始める…。




『大切なモノが見えない事はよくある』

だが、青年はその教えを拒み、いつしか忘れてしまった…。

目先のモノばかりに捕われた青年に待つ、手痛い竹箆返し…。
24 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 21:45:21.87 ID:odCMitvJ0
バンカー「シンパシーが行うのは『サイバディへのアプリボワゼ』。

      すなわちサイバディ側のコントロールを乗っ取ることにある」


バンカー「『スタードライバー』や『銀河美少年』を乗っ取る訳ではない…。そこがポイントです」


バンカー「だから、それのデータの改竄を行ったプロフェッサー・シルバーを捕まえて調べさせたんですよ。

      ドライバーとサイバディが一体化する『オーバーフェーズ』へのアプリボワゼの実行が可能かどうかをね…」


バンカー「結果は見ての通りです。サイバディを侵食し、自らの体に変える『オーバーフェーズ』にそれは通用しない!」





プロフェッサー・シルバー「『No.16』が行うアプリボワゼは、あくまでサイバディに対する関係形成。人とサイバディが行うそれと同じです。

               ですから、既に通常のサイバディと別物になってしまっているオーバーフェーズに対しては無効なんでしょうね…。

               そう言った能力が抑えるであろう、制御系などもオーバーフェーズには存在しませんし…」
25 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 21:46:28.95 ID:odCMitvJ0
杏子「ただ、まぁ他の奴との共闘は一切望めない。まして、さやかのような馬鹿は論外だ」


杏子「だから、アタシ一人で来たんだよ…!」




セクレタリー「そんな…、じゃあ…」


プロフェッサー・グリーン「電気棺の爆破は、サイバディを操られる危険性のある私達をこの戦いに巻き込まない為…」


スカーレットキス「そして、銀河美少年攻略作戦は、美樹さやかを守る為…」




頭取「だから、今日まで誰にも言わなかったのね…」




バンカー「その通り。美樹さやかを含めた他の一切をこの戦いに介入させない。

     それが僕と彼女のした『取引』です」


少年は語りだす。

自らが知り得た真実。

そして、それを打ち倒す為に得た策謀の全てを…。
26 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 21:48:40.98 ID:odCMitvJ0
僕はふとした事からヘッドの野望、そしてあの『No.16』の真実を知ってしまった。

ですが、同時にそれを打ち倒す可能性も思いつきました。


だから、行動しました。

まずはヘッドの元へ行き、『銀河美少年攻略作戦』の名目で単独行動を怪しまれずに行う権限を得ました。

次にプロフェッサー・シルバーと接触し、彼を抑える事で僕の計画が実行可能か計算させると共に、その下準備をさせた…。

最後に、この計画の要となる彼女に全ての真実を告げ、取引を持ちかけました…。




杏子『本当か、それは…?』


タカシ『はい。全て彼の掌で踊っているに過ぎません。

    ツナシ・タクトも美樹さやかも、王も巫女も、そして綺羅星十字団も…』


杏子『そして、それには誰も勝つ事が出来ない。

   さやかは勿論、ツナシ・タクトやザメクさえ…』



タカシ『ですが、可能性が一つだけあります…』


杏子『…………』




タカシ『魔法少女であるあなたが、アインゴットを屈服させた上でオーバーフェーズする…。

    これならば、あるいはあの男を打ち破れるかもしれません』
27 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 21:49:28.24 ID:odCMitvJ0
杏子『それで取引か…』


タカシ『はい。ただし、これはあなた自身に多大な負担をかけます…。

    ですから…』




杏子『………やるよ』


タカシ『……良いんですか?』



杏子『良いも何も、お前もアタシが断る事は無いと踏んだ上で来たんだろ…?』


タカシ『はっきり言いましょう。その通りです』




杏子『…………良いさ。どっちみち先の長くない命だ。

    だったら、派手に使って最期にデカイ一仕事ってのも悪くねぇ…』




杏子『ただし、条件がある』
28 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 21:50:42.52 ID:odCMitvJ0
僕がその準備を整え、彼女が戦う。

『絶望』を倒す為の二人の『取引』はこうして成立しました。



彼女が出した条件は二つ。


一つ目は、もしも彼女が失敗しそうになったら、速やかに彼女自身を始末する事。

その為に僕は魔法少女の弱点を密かに教わりました。




もう一つが、美樹さやかを含む一切の他の人物を今戦闘へ介入させない事。


シンパシーの固有能力とあの男のスターソードの性質を考えれば…。

他の連中は人質や敵の戦力増強、仮にオーバーフェーズさせても動きが止まって足手纏い扱いと、どう考えても邪魔にしかならない。

ようするに、これはどちらにしても満たさなければならない条件だったのですが…。
29 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 21:52:34.61 ID:odCMitvJ0
杏子『シルシの無い奴は電気棺をどうにかすりゃ良いとして、問題はシルシ持ちだな…』


バンカー『バニシングエージの現メンバーは、僕がうまく言って介入しないようにしておきます。

      そうなると怖いのが、行方の分からないウインドウスターとニードルスターですが…。

      まぁ、恐らくは脱退後に島外離脱しているでしょうし、まさか今更ゼロ時間への招集を受けて来る事も無いでしょう』



杏子『と、なると残りはさやかとタクトを含むあの四人組か…』


バンカー『シンドウ・スガタは冷静な男なので、綺羅星同士の内紛に介入する事は無いでしょう。恐らくは皆水の巫女も同様。

      そして、ツナシ・タクトですが、彼は確かにサイバディ戦闘においては最強…。

      ですが、彼自身は一人の学生に過ぎません。打つ手自体は幾らでもある…』


杏子『問題はさやか、か…。アイツは魔法少女だからな…。

   話は聞く訳はねーし、ちょっとノしてやるにも体は人一倍、いや魔法少女一倍丈夫と来てる…』
30 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 21:54:08.30 ID:odCMitvJ0
バンカー「オーバーフェーズをして貰う様説得するのは…?

      あなたの負担も大きく減り…」


杏子「駄目だ。危険性や負担を考えれば、あいつにやらせる訳にはいかねぇ。

   それに説得も容易くは無い上に、迂闊に接触すれば奴に勘付かれる危険性もある」


バンカー「確かに…。厄介なキャメルスター辺りがどう動くかもわかりませんしね…」



杏子「とりあえず、レシュバルをブッ壊してその間になんとかするしかないか…?」


バンカー「ですが、彼女は設備抜きでサイバディの復元をやり遂げた実績もある…。

      それで安心と言うにはあまりにも…」




??「その件に関してだが、俺に提案がある…」


バンカー「あなたは…」
31 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 21:56:06.86 ID:odCMitvJ0
停止した南十字島にある山道。


杏子を助けたいさやか。

その杏子にさやかの足止めを託されたカタシロ。


一人の少女の為に戦う二人は、凍りついた世界の中でぶつかりあう…。




カタシロ「俺が佐倉杏子とした約束、そして役割はたった一つ。

      全てが終わるまでお前をここで足止めする事…。

      だからこそ、お前を行かせる訳にはいかない!」


さやか「あたしの友達の…、大事な奴の命が掛かってるんだよ…!

     そこを退け!!!!」


カタシロ
(良い気迫だ。確かに彼女なら…。だが)




カタシロ「お前では俺は倒せん! 諦めるんだな!」



さやか「諦める…?」
32 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 21:57:18.07 ID:odCMitvJ0
さやか「何べんも言わせるな! あたしは絶対に諦めない!!!

    タクトさんもワコ姉もスガタ師匠も、そして杏子も…。

    みんな、みんな助けてみせる…!!!!



カタシロ(諦めさせるのか…? お前はそれでいいのか…?)


さやかの動きはそれまでとは比べ物にならない程良くなっていた。

彼女の気迫、彼女の願い、彼女の覚悟。

彼女がプラスの選択肢を選ぶ度、そのリビドーは増し、ソウルジェムはより強く輝く…。


それでも、その彼女の強い思いも現実と言う壁は打ち破れないのか…。

男の輝く左眼が見せる未来を超える事は出来ていない…。




少女の思いを見つめる片眼の男は一体何を思うのか…。

停止した時間の中、二人の戦いは続いていく…。
33 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 21:58:42.32 ID:odCMitvJ0
ゼロ時間。


青年は一人憤慨していた。

そして、彼の激しい怒りは元々優れる彼自身のリビドーに力を与え続ける…。


こればかりは少年の計画にも無かったのか、あるいはわかっても捨て置くしかなかったのか…。




ヘッド「………この俺を舐めるな!!!! シンパシーだの、スターソードだの…!

    そんなモノの補助が無くても、この俺の力だけでお前程度葬れる!

    『オーバーフェーズ』はダメージがお前自身に跳ね返る! ここでお前を殺せば終わりなんだよ!!!」


杏子「ボンクラが…! お前こそ舐めるんじゃねぇ…!

   その無茶苦茶なオーバーフェーズで、お前と戦える唯一の存在が『魔法少女』のこのアタシなんだよ!」




ヘッド「ほざけ。この小娘!

    まずはお前を八つ裂きにして、その上でザメクを動かし、この俺の夢を叶えてやる…!」


杏子「来いよ、ヘッド! それだけは絶対にやらせはしねぇ!!!」






ヘッド「スターソード!! ディアマン!!!!」


銀色のサイバディは白く輝くスターソードを胸から引き抜いて構える。

青年の怒りと野望を映しだすその剣は、他のサイバディが持つどの剣よりも強く美しい輝きを放っている…。
34 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 22:00:24.71 ID:odCMitvJ0
ヘッド「消し去ってやるよ、この小娘!!!!」



銀色に輝くサイバディが迫って来る。

そして、同時にアタシに覚えのある感覚がやってくる。


そう。いつも当てにしてきたアタシの魔法少女としての勘だ…。




目に見えるようなドロドロした野心。

何かに対する執着。

全てに対して向けられている負の感情。

それら全てをリビドーと言う力に変えて纏い、襲い来るその姿…。


そのおぞましきモノに対していつも通りに勘が告げる。



アイツには勝てない。

今すぐに退けって…。
35 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 22:01:22.04 ID:odCMitvJ0
ずっと一番に信用してきた、魔法少女として培った生きていく為の勘…。



今日アタシは生まれて初めてそれに逆らった。

むしろ、この期に及んで臆病になるアタシ自身を鼻で笑った。



ここで逃げてどうすんだ?

ここでやらないでどうすんだ?

戦い方がわからない…?

じゃあ、我武者羅ででもやってみるしかねーだろ!




言い聞かせながらまたも笑う。

これが『強敵』相手に命懸けで戦う奴の気持ちだったんだなって…。

マミなんかはいつもこんな感覚で戦ってたのかなって…。


そう考えている内に銀色のサイバディはアタシの多節槍の射程範囲に入る。



こうして、アタシの最初で最後の死闘が始まった…。
36 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 22:02:28.47 ID:odCMitvJ0
アタシは射程に入った銀色のサイバディに向け、槍を伸ばして突き出す。

それを何事もなかったかのように自然な動作で回避する敵に追撃する為、槍をバラして多節槍へ変えつつ、それを操って襲わせる。


だが…。




ヘッド「フンッ!」


杏子「…………!」


バラした多節槍による攻撃は悉くこの男に通用しない。

シンパシーが飛行可能と言うのもあるが、繰り出す攻撃は全て掻い潜られ、

当てにいっても見切られ、力尽くで弾かれてしまう…。
37 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 22:03:41.12 ID:odCMitvJ0
ヘッド「案外大した事は無いな…」


杏子「な…!?」



ヘッド「取り囲まれないように注意さえすれば、避けるのは容易い…。

    気を付ける必要があるのもせいぜい槍先と分銅の二点くらいか…?」


杏子「コイツ…、化け物か…?」



敵の操縦センスは群を抜いていた。

銀色のサイバディは多節槍をひらりひらりと回避し続け、柄と鎖の陣の中を亡霊の如く進み続ける…。




スピードキッド「あの攻撃を大した事ないって…」


スカーレットキス「敵が飛行できるってのもデカイんだろうが…。それにしたって…」


バンカー「確かに彼は優秀なパイル捌きを披露する実力者でしたが…。

      ここまで空間把握能力が高いなんて…」


先刻、強敵であるさやかのレシュバルを圧倒した得意の多節槍を小技扱いするヘッドの強さ…。

綺羅星の一行も、改めてその実力の高さを実感する羽目になっているみたいだ…。
38 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 22:05:55.36 ID:odCMitvJ0
ヘッド「さて…! 今度はこっちの番かな!?」


杏子「戻れ…!」



ヘッド「遅いッ!!!!」


まるで風か空気のように、ごく自然に近接してきた銀色のサイバディだが、

接近してからは一転して文字通り化け物染みた力を見せ始める…。


アタシは急ぎ、槍を戻そうとするも間に合わない。

飛び込み前転の形となる緊急回避でどうにか敵の斬撃を避けるも、その斬撃は地を裂き、辺りを震撼させる…。

さらに敵の攻撃はそれでは終わらない…。




ヘッド「逃がすと思うのか…?」


敵が振るった斬撃は真空波のような剣圧となり、離れたアタシに追い打ちをかける。

威力も折り紙付で、剣圧が当った地面は抉ったような跡が残る…。
39 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 22:06:56.95 ID:odCMitvJ0
杏子「ちっくしょう…。アレじゃ間合いもクソもねーじゃねーかよッ!」


戻した槍で、敵の放つ剣圧を一発、二発と弾く…。

重すぎるそれはアタシの握力を削るが、両手に魔力を回して回復させ、どうにか耐えきる…。


だが、相手は遊ぶように剣をまた一振り、二振りと振るい、逃げ回るこちらを嘲笑い続ける。

対するこちらは宙を舞う敵に対抗するにはイチかバチか飛びかかるか、見切られている上に戻す前に接近を許しかねない多節槍しかない…。



実質こちらから打つ手は無いに等しい。

何年も綺羅星十字団の一線に居たって言うその実力は伊達じゃないって訳かい…。
40 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 22:07:56.65 ID:odCMitvJ0
ヘッド「どうした…? 大きいのは態度だけか!?」


杏子「こん…の…ヤロッ!」


さらに近接された場合の剣技はさやかのそれとはもはや次元が違う。

重く、速く、無駄がない。

修羅だか剣鬼だか知らないが、そう言う想像上の伝説の化け物のそれを目の前で繰り出してくる…。



受ける度に槍が軋み、アタシ自身の腕が、肩が、腰が、足が悲鳴を上げる…。

結局、痛み始める体のあちこちに魔力を回して回復させる為、こっちの打つ手はどんどん狭まっていく…。
41 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 22:08:56.40 ID:odCMitvJ0
結局、逃げ切れなくなり、多節槍を伸ばす…。

当然、それを避けて寄って来る相手の攻撃を下部のみを連結させた柄で受ける…。




杏子「槍が駄目なら…!」


ヘッド「つまらない小細工は、この俺には通用しない!」



重すぎる敵の剣を抑えながら、どうにか膝蹴りを繰り出す。

しかし、敵のサイバディはこちらの槍を力で弾いて半身になる事でそれをかわす。

そして、逆に回避の勢いを利用してそのまま横に一回転し、回し蹴りを繰り出してきた…。
42 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 22:10:20.02 ID:odCMitvJ0
杏子「ぐぉッ…」


ヘッド「ハハハ…! 無様だな!!!」



体術においても後れを取ったアタシは、地面に倒れ込む。

だが、相手の姿とその動きを確認すると、立ち上がらずにそのまま横に転がりつつ、地面を蹴ってさらに横に転がった。




言うまでもない。

アタシが飛ばされた位置に敵の飛び蹴りの追い打ちが来ていたのだ…。



どうにか追撃は避けたが、いつまでも転がってはいられない。

敵の蹴りが外れたのを確認しつつ、次の一撃を立って受ける為にアタシはバク転しつつ立ち上がる。


そして、案の定速攻の追い打ちに来た敵の斬撃を受ける形となり、そのまま鍔迫り合いとなる…。
43 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 22:11:20.41 ID:odCMitvJ0
ヘッド「非力だな…!」


杏子「な…に…!?」




ヘッド「ハァァァァァァッ!!!!」


杏子「かッ…!?」



鍔迫り合いの果てでそれは起こる。

いよいよ判断の遅れたアタシを嘲笑いながら、銀色のサイバディが放った気合の一撃は獲物の長槍を真っ二つに両断する。

同時にその斬撃はアインゴットの頭部を砕き、アタシ額を掠めていく…。




杏子「この…! 馬鹿力が…!!」


砕け散ったアインゴットの頭部は、アタシの視界を僅かに奪う。

だが、敵はその僅かな隙すら逃さない。


振り下ろした剣を握り直し、今度は斬り上げを繰り出そうとしている…。
44 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 22:12:11.62 ID:odCMitvJ0
アタシは短くなった槍先側を捨て、まだ柄の長い石突側で敵の斬撃を受ける。

が、一度砕かれた槍の柄は敵の剣の前で既に音を上げ始めている…。




ヘッド「悪足掻きは止すんだな…!」


杏子「やなこった…」



言うと同時にアタシは地面に落ちた槍先の柄の部分を踏みつける。

そして、その柄を踏んだ足先を通じて槍先に魔力を送り込む。


槍先は折れたモノであるのが嘘であったかのように伸び、敵のサイバディの足元を突き進んだ。
45 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 22:12:57.82 ID:odCMitvJ0
杏子「食らいなッ!」


ヘッド「!?」



アタシが放った文字通りの『悪足掻き』。

それは敵の足元を僅かに越えた辺りで地面を進むのをやめ、バラける。

槍先は鎖を伴いながら上を向き、背後から銀色のサイバディに襲いかかる。




その時だった。

銀色のサイバディは左手を剣から離し、叫ぶ…。
46 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 22:13:42.02 ID:odCMitvJ0
ヘッド「スターソード!!! テュルコワーズ!!!!!」


杏子「な…に…!?」



まるで手品のように、空いた左手に光り輝く剣を発生させる。

そして、その剣を用いて背後から来る槍先を切り払う。

それを切り払った水色の剣は、サイバディの銀色のボディに映し出され、一際美しく輝く…。






ヘッド「スターソードの二刀流がアイツだけだと思うな…!!!!」



セクレタリー「そんな…、二本目のスターソード…?」


バンカー「しまった…。それは計算の中に入っていない…!」


スカーレットキス「マジかよ…!? じゃあ杏子は…!?」



握られた敵の二本目の剣。

計算にない二本目のスターソード。

その強い輝きとは反対に、アタシ達の未来には暗雲が漂い始める…。
47 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 22:15:06.80 ID:odCMitvJ0
停止した南十字島にある山道。


止まった筈の世界でぶつかり合う二人。

思う事は同じ。

一人の少女の為。


だが、向いている方向の違う二人は互いの主張を受け入れる事が出来ない…。

出来る筈もない…。




さやか「何で邪魔すんのよッ!!!!」


カタシロ「それが約束だからだッ!!!!」



さやか「そんなにアイツを殺したいの!?」


カタシロ「お前こそ何故わからん!

      お前が行けば彼女は犬死になるだけだと言っている!!!」



さやか「犬死も何も…、アイツを死なせて…!

    アイツに全部押し付けて…! そんなやり方で…!!!!」


カタシロ「それだけが俺に出来る過去の清算だ!」
48 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 22:16:29.45 ID:odCMitvJ0
俺は敷かれたレールの上をずっと歩んできた。

許嫁、家、綺羅星、シルシ…。


決まった人生を憎んでいた訳じゃない。

だが、それは退屈だった…。

だから…。




トキオ『リョウスケさんか…』



奔放なアイツの生き方に憧れた。

いや、アイツ自身に強く惹かれた。


島の外からやってきたアイツは誰よりも自由で…。

そんなアイツの描く絵はどんな絵よりも魅力的で…。



だけど、それは陶酔に過ぎなかった。

だから、俺はアイツの闇と向き合わなかった。

向き合えなかった…。
49 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 22:17:18.69 ID:odCMitvJ0
過去を誇れない、今も流されているだけ、そして映った未来までも惨めな俺は、何とも向き合ってこなかった…。

だから…。



ヘッド『あぁ。これで君から貰った方はもう用済みだ』


アイツとも…。




ソラ『あなたは私の事なんて…!』


許嫁とも…。




トキオ『ありがとう。このシルシは俺が有効に使わせてもらうよ…!』


自分自身の運命とも…。


何とも向き合ってこなかった。
50 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 22:18:00.88 ID:odCMitvJ0
ずっとずっと流されてきた。

それで良いんだ、と言い聞かせてきた。

そうやって心を殺してきた。



俺自身の生き方も、アイツに見え隠れする野望も…。

間違いだったと…。

間違いであると知りながら…。



そして、その間違いが犯した業を背負うのは俺やアイツじゃなかった…。
51 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 22:18:36.41 ID:odCMitvJ0
議長『なんだ、それは…!? オーバーフェーズにアインゴット…!?

   そんな事をすれば…!』


バンカー『それでも、それが出来るのは魔法少女の彼女だけです。

      そして、それしかアレを倒す方法はありません…』


議長『しかし…』


杏子『気にすんな。アタシも了承してる。

   その上でやると決めたのさ…』


議長『…………』



俺に出来るのは俺のした事の業を背負った少女を見送る事だけだった。


その時から考えた。

間違いと知りながら、まだ流されるのかと…。

それで良いのかと…。


俺達のした事の業を背負うあの子の為に、出来る事はないのかと…。





そして、俺の出した答えは…!
52 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 22:19:29.80 ID:odCMitvJ0
さやか「お前の身勝手にアイツを巻き込むな!」


カタシロ「なんとでも言え! お前が何を言おうと俺は退きはしない!」



さやか「そう! でも、あたしもアンタが何言おうと絶対に退かない!

    アイツは助け出す!! 絶対!!! あたしが…、この手で!!!!」



美樹さやか。

確かにお前の力も可能性も認める…。

だが…。

それだけでは何も変わりはしない…。



彼女の強い思い…。

強い力…。

それはこのまま溢れ続けるだけなのか…?



それで、良いのか…?
53 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 22:20:34.97 ID:odCMitvJ0
ゼロ時間。


銀色のサイバディに握られた左手の剣。

だが、それは同時に今鍔迫り合いをしている白い剣の方を振り払える可能性が出来たということにもなる。


今がチャンスと言わんばかりにアタシは槍の柄に力を込める。

だが右手だけでも十分と言わんばかりに、その白い剣はビクとも動かない…。


そして、その左手の剣は鍔迫り合いをしている柄に向けられ…。




ヘッド「みすぼらしい武器にいつまでも縋るな!!!!」


杏子「チッ…!」



もともとボロボロだった槍の柄はいとも簡単に斬られ、柄を切り裂いた斬撃がアタシの顔を狙う。

左に顔を傾けて直撃を避けたアタシだが、走った斬撃は右肩を掠め、頬を深く引き裂く…。
54 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 22:21:51.11 ID:odCMitvJ0
獲物を失った丸腰の相手に次に来るのは当然、止めの一撃。

遮るモノの無くなった右の剣を思い切り振るうべく、回転しつつそれを繰り出そうとする。


勿論、それに気付いたアタシは回避を試みたが…。




杏子(な…? 反応が鈍い…!)



いち早く繰り出した筈の回避運動は、僅かなラグの末にその動きが反映される。

その差異は、丁度いつかページェントに乗った時のそれに近い…。


無理もない。

アタシが受ける筈だったスターソードは一本。

あいつが隠し持っていた二本目は計算にない。


敵の恐るべき武器が一つ。

スターソードの停止能力。

それが計算にない二本目の剣からも放たれているのだ…。
55 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 22:22:45.09 ID:odCMitvJ0
結局、その僅かな遅れが強敵との戦いでは致命的になる。

繰り出された敵の斬撃はアタシの腹の辺りを切り裂いた…。




杏子「ぐうッ」



右の脇腹に浅くない傷ができる…。

当然、その痛みはアタシ自身に跳ね返り、ダメージ自体も自分自身の肉体に反映される…。


それでも怯んでいる時間は与えられない…。




ヘッド「消えろ…! 薄汚い小娘が!!!!」


杏子「うわぁぁぁぁぁッ!」



大きく振りあげた左手の水色の剣が一際強い輝きを放ちながら、アタシ目掛けて振り下ろされる…。

いち早い回避でどうにか直撃は避けたものの、敵の剣は地を割り、辺りに砕けた地面と衝撃を捲き散らす…。



剣撃の副産物である筈のそれは、十分な威力を持ってアタシを吹き飛ばして地面へ転がした…。
56 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 22:23:56.26 ID:odCMitvJ0
ヘッド「ハハハハハハ…!!!! どうした!?

    その程度か! 魔法少女…!?」



杏子「畜…生…!」



銀色のサイバディは天に浮かぶ。

地面を這うような形になったアタシを見下し、嘲りながら…。


握られた白い剣と水色の剣。

あいつの邪な野望と憤怒の感情で出来ている筈のそれは、何よりも強く美しい輝きを放つ…。

魔性の剣に煽られるように、シンパシーの銀色のボディはより怪しく輝く…。




その強い輝きはアタシの体の自由を…。

そして、未来への希望を…。

少しづつ、だが確実に奪い去っていく…。
57 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/05(火) 22:27:29.82 ID:odCMitvJ0
っし。
本編側はここまで。

また中途半端だって…?
今日は本当にまだ続きが書けてないんです………。
投下しようにもできてないんです……。

本当にすいません…。



とりあえず、旧スレを埋めるためにそっちに番外編を投下します。
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/05(火) 22:32:57.15 ID:rT8NhcYco
乙星☆!!
いよいよクライマックスか…
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage saga]:2011/07/05(火) 22:34:40.51 ID:vWQ1dYfho
乙乙
ほ、本当にいい所で止まったNE!

さやかちゃんがひたすら前向きになってて眩しい
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/05(火) 23:41:52.06 ID:YqUAwhlBo
綺羅星☆!
クライマックスか・・・
続きは見たいが終わっちゃうのは寂しいな・・・

しかし、ヘッドが強いなww
いや、劇中でもタクトを追い詰めたりしてて強いんだが、それ以上にネタキャラなイメージのせいで違和感がw
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/07/05(火) 23:53:20.81 ID:VAHAvY94o
綺羅星☆
前スレの番外編についてだが、ダレトスが不完全なのはシモーヌが戦闘向けじゃないからと、
未来が不完全だから、ということらしい。
不完全と言うとアレだけど、要するにまだ定まってないってことだと考えると素敵な感じですね

本編は杏子の勘に逆らって戦う姿がいい。
以前の出げいこと違って負けられない戦いという感じで
ヘッドに勝てないのは未来の可能性(杏子の場合は自身の生存)を
信じないリビドーなら過去のことしか考えていないヘッドに敵うものはいないからか……

ところでさやかが頑張ってるが、タクトは寝たまんまっすかw
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/07/05(火) 23:56:40.54 ID:nVpds4mAO

番外編も面白かったぜ!
杏子ちゃんが健気過ぎて生きるのがつらい
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/07/06(水) 02:51:55.29 ID:q2MAsDQAO
綺羅星☆!!
熱い展開が続くな
64 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/09(土) 23:39:36.82 ID:YzFI70Tv0
綺羅星☆

日にち空いてしまってすいません。
連日夜勤の地獄シフトで書く時間も来る時間も無くて…

ぼちぼち投下します


>>58
乙星感謝
クライマックスにはクライマックスだけど、実はまだまだ続く
今日までは前中後編の前編って所かな?

故に切れ切れ多いのは御堪忍を…

>>59
乙感謝
自分も最近さやかちゃんが眩し過ぎて直視できない
ほのぼの?書きたくなって、眼鏡装備さやかのSSなんて書いちまったぜ…

>>60
綺羅星☆
なんだかんだで素の強さは綺羅星トップでしょ>ヘッドさん
暴れまわるレシュバルと「銀河美少年がお前だけと思うな」でドキドキした人は多い筈
普通のアニメだったら、主人公に一回勝って一週間はドヤ顔できた筈なんや…

>>61
綺羅星☆
自分もあぁ言う書き方したけど、スタドラ最終話で最初に声聞いたのもシモにゃんだし
ドライバーとして向いてないって事ではないのは見るからにわかるよね

タクトさんはほら…
出てくると「視えている」で他キャラいらなくなっちゃうんで、バンカーさんに強めに殴って貰いましたorz
理屈の上ではシンパシーされちゃうと困るからなんだけど、タクトさんならたぶん気合で無効化するとは思う

>>62
乙感謝
本編ではあんこに試練与えてすいません
でも、なんだかんだでさやか以上に主人公してるかも…
番外編は、当初は途中まで完全に主人公バトンしないつもりだったんで、その時のボツネタから来てたり

>>63
綺羅星☆
こっから怒涛の展開続きます
日常編見たい人はごめんなさい
65 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/09(土) 23:40:43.59 ID:YzFI70Tv0
ヘッド「這いつくばれ…!」



杏子「チッ!」



転がったついでに地面に手をつき、そこから槍を生成する。

それを見た敵は当然妨害を試みてくる。


剣圧が一発、二発、そして三発と飛ばされる…。



アタシは身を屈めて、生成中の槍の後ろにいる事でそれをどうにかやり過ごす。

途中で剣圧が当り、多少心許無いとは言え二本目の槍が出来上がり、それを構えて迫って来る敵を迎え撃つ…。
66 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/09(土) 23:41:16.04 ID:YzFI70Tv0
ヘッド「槍を作ったか…。なら、もう加減はいらないな?」


杏子「加減…? 手抜きってんだよ、お前のは…」




ヘッド「ふん…。ここから先は、さっきまでのお遊びとは一味違うぞ…!」


杏子「脳みそが天気なお前に遊び以外があるなら、見せてもらいたいねぇ…!」



口では挑発しても、相手の言う通りになる。

敵は本当の得手である二刀流になり、動きがキレを増したのに対し、

こちらはスターソードの停止能力の影響を受け、段々と動きが硬くなっていく…。


打ち合いとさえ言えない。

アタシは敵の攻撃を一方的に受けるだけになっていく…。
67 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/09(土) 23:42:18.07 ID:YzFI70Tv0
杏子「ぐうッ…!」


ヘッド「動きが鈍いな…!

    俺のスターソードの輝きに当てられたか…!?」



その通り…とは口が曲がっても言わない。

代わりに蹴りを繰り出そうとする。


が、それすらも反応が遅い。

後から繰り出した敵の蹴りが先にアタシを捉え、それに大きく飛ばされる…。



腹に入る痛みを堪えつつ、槍の石突を地面に突き立て、蹴り飛ばされた勢いを堪える。
68 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/09(土) 23:44:01.91 ID:YzFI70Tv0
ヘッド「辛そうだな…? なら、ここからの攻撃にしておいてやるよ…!」


杏子「ぐ…! クッソ…!」



敵はこちらの状態をわかって挑発を仕掛けてくる。

だが、その手は休めない。

離れつつも両手の剣を振り、次々に剣圧を飛ばしてアタシに息つく間さえ与えさせない…。


白と水色の剣気の嵐がアタシを襲う。

その攻撃は、アタシの体が満足に動いても避けられるかわからない程の量と威力で放たれ続ける。


当然今のアタシじゃ逃げる事すらできず、槍を立てて防御し続けるだけとなっている…。
69 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/09(土) 23:48:37.22 ID:YzFI70Tv0
調子に乗る敵にムカついてきたアタシはとうとう聞く必要のない事まで聞き始める。

頭に血が上ると、余計な事を言うのはアタシの悪い癖らしい…。




杏子「そうやって、お前は何もかも見下してきたんだな…!」


ヘッド「ハッ! それがどうした…?」



杏子「アタシやバンカーだけならともかく、ぶっちゃけりゃ綺羅星十字団さえ何とも思ってねぇだろ?」


ヘッド「そうだな…! その通りだ…!

    お前以上に使えない上に、どうしようもない馬鹿の集まりくらいにしか見ていなかったよ…!」



レイジングブル「テメェ…、舐めやがって!」


スピードキッド「言わせておけば…!」


プロフェッサー・グリーン「規約違反に暴言の数々…! お前などこちらから願い下げだ…!」




ヘッド「つくづくおめでたい連中だな…! 『旅立ちの日』を迎えるのは俺だけだ。

    お前達は俺がザメクを手に入れる為の使い捨ての駒…!」
70 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/09(土) 23:49:07.33 ID:YzFI70Tv0
やはりと言うべきか…。

何もかもを見下してきた男はアタシの仲間達の事も見下していた。



そして確信する。

アタシが負ければ、世界はこの傲慢な男が思うがままに荒らし、踏みつぶすと…。

さやか達は勿論、綺羅星十字団の未来も奪うと再認識する…。




負けられない…。


何度も繰り返した言葉だが、より強く自分に言い聞かせる。

同時に槍を握る手に力を入れ、銀色のサイバディのいる方向を強く睨みつける。




その様子が気に入らないのか、敵はさらにアタシを見下して言い放つ。
71 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/09(土) 23:49:56.57 ID:YzFI70Tv0
ヘッド「まだ足掻くのか…? 悪足掻きはやめろと言った筈だが…?」


杏子「やなこった…って返事したけどな?」



ヘッド「そうだったな…!」



剣気の雨の向こうに見える銀色の影が消える。

それが意味する事は勿論…。





杏子(来る…!)



わかっても飛んでくる剣圧を防御しつつ、回避運動を行うには反応が足りず、間に合わない。

結局、アタシは上空から繰り出される敵の水色の斬撃を槍で受ける羽目になる…。
72 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/09(土) 23:50:35.30 ID:YzFI70Tv0

杏子「うッ!」


ヘッド「ほぅ…、止めたか」



水色の剣を受けた槍に、まるで至近距離で地雷でも弾けたかのような衝撃が走る。

腕が痺れる。

いや、まるで腕が吹き飛んだかのような感覚に襲われる。

そして、同時にスターソードの停止能力の影響か、意識が吹き飛びそうになる…。


気合で持ち直し、そのまま意識を保ちつつ、右手の動きを追う。

奴の持つ白い剣は、左手の剣と鍔迫り合いをしている槍を向けれないよう、横側から迫ろうとしている…。





杏子「やられて………、たまるか!」



槍を中央から分割する。

そして、槍先の側の柄で鍔迫り合いを続け、石突の側の柄で迫る白い剣に備える。

腕の動きも鈍くはあるが、どうにかこうにか腕を動かしてそれを受ける…。
73 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/09(土) 23:51:07.62 ID:YzFI70Tv0
杏子「………ッ!」



先ほどの爆発のような衝撃が今度は左腕のみに来る。

腕が斬り飛ばされたかと錯覚するほどの強い衝撃と共に、またも意識が飛びそうになる。



スターソードの停止能力。

それの放つ強烈な輝きに負けないように自分の意識を保つ。

自分の後ろにあるモノの大きさを再度意識する…。




自分が負けたら…。


さやかは…?

綺羅星十字団は…?

この世界は…?



言い聞かせてその意識を強く保ち続ける…。

その間も両手で柄を強く握り、化け物のような剛腕との鍔迫り合いも続ける…。
74 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/09(土) 23:51:46.15 ID:YzFI70Tv0
杏子「負け…ねぇ…!」


ヘッド「負けない…ね。だが、苦しいだろう?」


杏子「あ…?」



ヘッド「いい加減、楽になったらどうだ?

    一瞬でも気を抜けば、そのままシルシが力を失って一気に楽になれるぞ?」


杏子「誰が…!」



敵の言う通り、こちらは常に意識を張り続けている。

一瞬、ほんの一瞬でも自分が弱気になれば、恐らくアタシのシルシは輝きを失ってその場で勝負がつくだろう…。

それだけは絶対にあってはならない。
75 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/09(土) 23:52:38.04 ID:YzFI70Tv0
ヘッド「無駄なのに…、ご苦労な事だ」


杏子「無駄かどうか…、終わるまではわかんねぇだろうがッ!」



敵のスターソードの輝きと、両手の鍔迫り合いで意識が狂いそうになりながらも、アタシは反撃に出る。


両手で持った柄の先を魔力で伸ばす。

伸びた柄は当然のように分解して鎖を出現させ、多節槍に変わる。


両手に握った柄で鍔迫り合いを続けながら、槍先と分銅に変わった石突が鎖を伴って敵を狙う。



だが…。
76 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/09(土) 23:53:08.64 ID:YzFI70Tv0
ヘッド「美しいねぇ…。勢いで何でも乗り切れると思っているその若さは!」



槍先と分銅が当るかと言う瞬間、敵の両手の剣が一回り大きく見えるほどの輝きを放つ。

そして、同時にその両腕の剛腕はさらに力を増し、鍔迫り合いを続ける両手の槍の柄を強引にへし折った。


当然、へし折られて地面に落ちていく側の柄の先にある槍先と分銅もその力を失って地面へ落ちる。





杏子「こいつッ…!」


ヘッド「だが、圧倒的な力の前では、これが現実だ!」



怯むアタシを嘲り、再度敵の蹴りが来る。

もはや反応すらできなかったそれは鳩尾に直撃し、思い切り吹き飛びながら悶える。

地面に当った衝撃で逆に意識が戻り、ぎこちなくはあってもどうにか受け身だけは取る…。
77 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/09(土) 23:54:41.31 ID:YzFI70Tv0
両手を地に付き、片膝を付いたままの状態で、そのまま立ち上がれない。

だが、敵に対する抵抗だけはやめない…。

地に伏せたのなら、伏せたなりの…。

体が動かないなら、動かないなりの戦い方をする…。




ヘッド「さぁ、今度こそ消えろ!!!!」


両手の剣を振り被り、アタシに向かって上空から斬りかかろうとする銀色のサイバディ。

だが、今度は敵が泡を吹く番だ。


両手を通じて魔力を地面に送り込んでいたアタシは敵の距離を見定め、その魔力の量を一気に増やす。
78 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/09(土) 23:58:53.57 ID:YzFI70Tv0
杏子「掛かったな…!」


ヘッド「何…!?」



その瞬間、アタシの周囲に無数の槍が一斉に地面に生成され、立ち並ぶ。

天に向けられた全ての槍先は、当然空に浮かぶ銀色のサイバディを捉え、映し出している…。




そう。

地上へ伏せたついでにアタシは罠を作り出した。

焦れた相手が止めを刺そうとやってくる瞬間に合わせて…。



無数の槍は、僅かにその向きを敵に傾けると…。

一斉に天へ向かって飛び交った。
79 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/09(土) 23:59:42.50 ID:YzFI70Tv0
ヘッド「この…!」



杏子「ぶっ潰れな! ヘッド…!!!!」



まるで弓矢のように、地上にあった槍は天に向かって突き進む。

その全てが一点を目指して。






ヘッド「お前はッ!!!!!」


杏子「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!!!!!」



アタシを仕留めようと接近していた銀色のサイバディ。

それらを避ける事が難しい位置まで引き付けられたそれは、槍の集中砲火を回避する事はさすがに叶わない。


最初の一撃を切り払うべく、両手の剣を構える姿までは確認するも、

槍の豪雨の中に消えたそれを目で追う事は出来ず、アタシはただ、それを見つめていた…。


地面に向かって魔力を込め続け、その槍の雨を引き延ばしながら…。
80 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:01:01.65 ID:9BNIT/2f0
天を舞う無数の槍。

それを見つめる観戦者達…。


強い少女に守られる事を自覚しながらも、何もできない彼女達はそれを眺めるしかできない…。





レイジングブル「すげぇ…」


スピードキッド「これなら、一溜りもねぇぞ…」



セクレタリー「でも、それはあの子だって一緒です…」


バンカー「……………」



レイジングブル「どう言う事だ…?」


頭取「あの子は魔法少女だ…。そして彼女達の魔力は寿命を使っているも同然…」



スピードキッド「あ…」


頭取「あの攻撃の一発一発が、彼女のその身を削って放たれてるのと同じなのよ…」
81 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:01:44.96 ID:9BNIT/2f0
レイジングブル「け、けどよ…。その寿命はなんたらかんたらって言う石があれば伸ばせるんだろ…?」


スカーレットキス「………間抜け」


レイジングブル「な…!?」


スカーレットキス「お前はアイツがそんな器用な奴に見えるのか…?」


レイジングブル「え…?」





頭取「……………バンカー、お前なら知っているな?」


バンカー「……………」




頭取「手持ちのグリーフシードは後幾つある…?」


バンカー「……………」
82 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:02:17.03 ID:9BNIT/2f0
頭取「今はまだ、お前は私の部下である筈だ…!

   答えろ…!」



バンカー「………………」





セクレタリー「お願い。答えて…!」


頭取「バンカー!!!!!!!」






バンカー「……………もう、ありません」



セクレタリー「そんな…!」


スカーレットキス「やっぱり…。あの…! 馬鹿野郎が!!!!!
83 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:02:44.47 ID:9BNIT/2f0
バンカー「この作戦には彼女に負担をかける事柄が多すぎた。

     アインゴットの部屋、サイバディの復元シーケンス、二度に渡るオーバーフェーズ。

     美樹さやかとの戦闘の負傷、そして彼女を足止めする為の議長の武装及び身体強化…」




スカーレットキス「それをわかってやらせたのはテメェだろうが!」





バンカー「僕だって言ったんだ…」



スカーレットキス「あ…?」


セクレタリー「え………?」


頭取(タカシ………?)
84 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:03:35.30 ID:9BNIT/2f0
バンカー「本当に美樹さやかと戦う必要性はあるのかって…。

     彼女にも力を借りれば…。

     魔法少女の彼女にも力を借りれば………」



バンカー「だけど、彼女は聞かなかった…」



彼女には三回同じ事を言った…。



最初は取引してすぐ…。

彼女が僕が口実に出したに過ぎない銀河美少年攻略作戦を本当にやると言った時…。
85 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:04:10.42 ID:9BNIT/2f0
バンカー『別の手を考えませんか? やはり彼女を使った方があなたの負担は確実に減る…』


杏子『もう条件を忘れたのか? あいつは巻き込まない。これは決定事項だ…』




バンカー『………では、せめて戦闘はやめましょう。

     第一フェーズの中には彼女の足止めに使えるモノだって…』


杏子『それも駄目だな。頼んだ奴がヘッドに狙われる危険性が出てくる…。

   失敗する気はないが、万一の時は足が付いてそいつも巻き込む事になる。

   だから、計画はあくまでアタシ達だけでやる。危険な目に会うのはアタシらだけで良い…』


杏子『それにな…』




バンカー『…?』


杏子『そう言うの効かねーと思うよ? あいつ馬鹿だから』
86 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:05:07.72 ID:9BNIT/2f0
二度目は具体的な打ち合わせをした時…。

彼女も戦力に出来れば、その負担が減るのは間違いないのに…。




バンカー『オーバーフェーズをして貰う様説得するのは…?

      あなたの負担も大きく減り…』


杏子『駄目だ。危険性や負担を考えれば、あいつにやらせる訳にはいかねぇ。

   それに説得も容易くは無い上に、迂闊に接触すれば奴に勘付かれる危険性もある』






そして、最後はアインゴットの復元の後…。

数が減っていくグリーフシードを見て不安になった僕は…。




バンカー『彼女との戦闘…、やはりやめましょう。

     レシュバルの眼を回収するだけなら、別に手だって…』


杏子『今の綺羅星で、あいつに対抗できる奴は恐らくいない。

   戦闘すらさせてもらえない事を考えれば、見方によっちゃタウバーンより厄介だ』
87 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:06:05.39 ID:9BNIT/2f0
バンカー『しかし…』


杏子『シルバーのおっさんも言ってたろ?

   スターソードの停止能力を本当に防げるかどうかを見る為にも、レシュバルとの戦闘は必須だって。

   ヘッドに挑んで失敗しました…は一番まずい。グリーフシードを使ってでもあいつと戦っておく価値はある』


バンカー『ですが…』



杏子『あいつは言っても聞かない。馬鹿だからな。

   だから殴って聞かせるしかないのさ…』


バンカー『そんな…………』




杏子『本音言うとな…。見ておきたいのかもしれない…。

   あいつの強さと輝きをもう一回…』


バンカー『…………』



杏子『喧嘩するのもたぶん、これで最後になるだろうから、さ…』
88 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:06:55.84 ID:9BNIT/2f0
セクレタリー「それだけの為にこんな………」


頭取「あの子にとって美樹さやかは一番大切な喧嘩友達であると同時に、

   自分自身の未来を託す相手…、だから…」


スカーレットキス「その目で見ておきたかったってか…? 馬鹿かアイツ…」


プロフェッサー・グリーン「だが、あのグリーフシードとか言う物体は地球上に存在しない物質で出来ていた。

               だから、どちらにしても遅かれ速かれあの子は…」



セクレタリー「でも…、だからって…、そんな無茶苦茶な真似…」



レイジングブル「無茶だとわかってもやりたかったんだろうさ…」


セクレタリー「……………」



レイジングブル「ダチとする最後の喧嘩をさ………」


セクレタリー「…………ッ」




スピードキッド「ホント、じゃじゃ馬だよ。アイツ…。

         こんだけ大勢を我儘で振り回しやがって…」
89 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:07:38.43 ID:9BNIT/2f0
無数に放たれた槍が止む。

勿論、アタシの魔力の限界が近いからだ。


手心は一切加えていない。

だけど、最後に別れの言葉くらいは…。

それが、自然とこの手を止めた…。


しかし、それが失敗だったと気付くには一秒もかからなかった…。







???「よくも……」


???「よくもこんな真似を………」



杏子「まさか…………」
90 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:08:45.55 ID:9BNIT/2f0
ヘッド「こんなふざけた真似をしてくれたな…!? この小娘!!!!」



槍の豪雨が消え、その喧騒から現れたのは言うまでもなく銀色のサイバディの姿…。


右腕と右足、さらに全身の至る所に破損を受け、怪しくも美しかったボディは見る影もないが、

それでも尚、未だ空に浮かび、こちらを見下している…。




セクレタリー「もう、やめて…………」


スピードキッド「畜生! なんでアレで倒れねぇんだよッ!!!」


スカーレットキス「化け物かよ…、アイツ…!」




バンカー「こんな、筈では……」



頭取(二本のスターソードから、他者を圧倒する輝きを放つ程のリビドー)


頭取(それが、耐えれる筈のない攻撃すら耐えさせた…と言う事か)


頭取(見誤ったわね…。タカシ…)




頭取(あんこ、ちゃん………)
91 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:09:21.68 ID:9BNIT/2f0
ヘッド「覚悟はできているんだろうな! 小娘…!?」


杏子「ハッ! それはあんたの台詞っしょ…!?」



耐えられたショックは大きい。

正直、これ以上魔力を使えばどうなるかわからない…。

それでも、アタシは両手に魔力を込め、敵に止めを刺すべく獲物の槍を生成する。


敵が受けたダメージは確実に大きい。

それに…。





杏子「二本目のスターソードが無けりゃ、てめぇなんかどうとでもできるんだよ!」



奴は右腕と白い剣を失っていた。

これで少なくとも、奴の停止能力に苦しむ事は無くなった…。


だが、奴はそんなアタシを嘲笑う。
92 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:10:29.62 ID:9BNIT/2f0
ヘッド「ククククククク…!」


杏子「何がおかしい…!」



ヘッド「スターソードは本来、シルシに受け継がれる固有技能だ。

    そして、ドライバーがそれを抜けるだけのリビドーと先天的な適正を以てして、初めて使用できる…」




杏子「何が言いたいんだよ…?」


ヘッド「スターソード『ディアマン』は、本来『レシュのシルシ』に付随する固有技能…。

    それを何故、俺が持っているかわかるか…?」
93 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:11:03.70 ID:9BNIT/2f0
杏子「…………」



ヘッド「俺がレシュバルからあの剣を奪い取ったからだ…!

    すなわち、あの剣だけはもう俺自身の手足に等しい!」



あの男が言い終える前にそれに勘付く。

だが、時は既に遅い。





ヘッド「やれ…!」



背後から白い閃光が走る。

反応の遅れたアタシは地面を突き破って現れた白い剣に、背後から貫かれた…。
94 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:11:48.00 ID:9BNIT/2f0
杏子「がぁッ……」



腹の真ん中を貫いて、白く輝く剣の刃が現れる…。

引き抜こうと右腕で握ろうとするも、見ているだけで気分が悪くなる特有の強い輝きを放ち始める…。




ヘッド「どうだ…? 美しいだろう…?

     スターソードの輝きは…!!!」


杏子「てめ…ぇ…!」



言いつつも自分はアタシの方に近寄ってくる。

左手の剣が近寄って来る事で、二本のスターソードの輝きによる二重の停止能力が再び働く…。
95 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:12:22.04 ID:9BNIT/2f0
飛ばされそうになる意識を強く持ちながら…。

腹部を貫いた激痛に耐えながら…。


アタシは眼前に現れた敵を睨みつける…。

破損した敵機の頭部は、まるで野心と怒りに燃えるヘッド本人を摸したかのような醜いモノとなっている…。





ヘッド「さて…、戦いに戻ろうか…?

    俺は片腕を失ってしまったから、その剣はハンデとでも思ってくれ…」


杏子「上等…だよ………!

   この野……郎………!」




左手から繰り出される水色の斬撃を受ける。

相変わらずの剛腕が、腕と心を刺激する…。

腹を貫いた白い剣と合わせ、激痛と意識を飛ばす圧迫感がアタシを襲い続ける…。
96 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:12:51.98 ID:9BNIT/2f0
停止した南十字島にある山道。



少女は思いと強さと輝きを増していく…。

ソウルジェムもシルシもこの上ない輝きを放っている…。

だが、その輝きにある影を見つめ、男は攻撃を回避する。


そして、それに対して苛立ちを隠せなくなる…。




さやか「絶対に…!」



カタシロ「…………」



さやか「助け出す…!」



カタシロ「チッ……!」




さやか「あたしはアイツを死なせない…!」


カタシロ「ここまで言わせて…」
97 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:13:34.55 ID:9BNIT/2f0
男の左眼は赤く輝く。

それは、素早く正確になったさやかの未来を映し出し、回避する結果を弾きだす。


越えられない壁。

越えられない定め



それを知る男の苛立ちは頂点に達する。




さやか「杏子を……助けるんだ。

    それまでは…絶対に諦めない!」



カタシロ「まだ…、応える気は無いのか!?

     これを見ながら、お前はまだやる気はないのか!?」




さやか「お前に応える気なんてないし、途中から超やる気だよッ!」
98 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:14:05.00 ID:9BNIT/2f0
カタシロ「お前が守らなくて誰が守る…?」


さやか「その通り! だから通らせてもらうって言ってる!」





カタシロ「敷かれたレールを歩むだけの無様な俺と同じでどうする…!?」


さやか「アンタの昔話なんか興味ないッ!」





カタシロ「やっと得た居場所なんだろう!? 自分を賭けるに値する者なんだろう!?

     選ばれたからと、そこに胡坐をかけばまた失うぞ!?」


さやか「うっさい!!!」



(……)
99 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:14:39.07 ID:9BNIT/2f0
カタシロ「これだけ言ってもまだわからないのか…?」


さやか「わかってるって言ってるでしょ!?

    反則技使って偉そうにッ!!!」


(…………)



男の動きが止まる。

同時にそれまではさやかの動きに合わせて輝いていた左眼が光ったままになる。


そして、それまでは持ちなかった殺意や敵意を放ち始める…。
100 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:15:18.92 ID:9BNIT/2f0
カタシロ「なら、俺が消してやる…!

お前が守るつもりでなく、守られるだけの立場であり続けると言うのなら…!!!」


さやか「させない! 杏子はあたしが絶対に救いだす!」



(………!)



男の姿が消える。

消えた殺意は相手を襲う一瞬だけ膨れ上がり、当然さやかもそれに反応できない…。


怒る男の一撃。

それはさやかが魔力で出来た刀剣を平然と叩き折り、彼女ごと吹き飛ばす。



それでも少女は諦めない。

定められた未来に抗い続ける…。
101 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:16:27.69 ID:9BNIT/2f0
ゼロ時間。


野望を追い、絶望とならんとする青年とそれを阻む希望となりたい少女の戦いは続いていた。

少女の姿をしたサイバディを、もはや銀色と呼べるかすらわからない満身創痍のサイバディが攻め続ける。


少女は青年のスターソードの輝き、そして激痛に苛まれ、その動きが段々に悪くなっていく…。

機動力を重視する彼女に現在の状態は不利その物だったが、それでも彼女は気迫だけで敵の斬撃を受け続ける…。





杏子「好き勝手………、やりやがって………!」


ヘッド「お前にだけは言われたくないな…!」



毎度の剛腕から繰り出される鬼のような一撃が来る…。

痛みかスターソードかはわからないが、一瞬だけ意識が飛び、敵はそれに気付く。


さらに力を込めた一撃を繰り出すべく振り被る…。
102 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:17:15.05 ID:9BNIT/2f0
ヘッド「さぁ…、俺の夢の礎となれ! デス・クリムゾン!!!」



杏子「な……にが、夢だよ……」



ヘッド「何…?」


杏子「何時まで…、夢だ、夢だって……。

   ガキみたいな事…、言いやが……って…。

   てめぇ………、親の顔…………、見てみたいぜ…」



ヘッド「親……だと?」


杏子「あ………、悪ぃ………。

   お前が屑でも………」



ヘッド「…………」


杏子「親がっ…、屑とは………」




杏子「限らねぇよ、な……?」
103 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:18:00.59 ID:9BNIT/2f0
ヘッド「黙れぇぇぇぇぇぇぇッ!!!!!!!!」



アタシがたまたま吐いた挑発の言葉は、敵の逆鱗に触れる…。

怒りに燃える敵は一瞬だけその動きを止めると、すぐにそれを晴らすべく暴れ始める…。

それまでの達人の剣と違い、まるで素人が振り回しているかのような適当で乱雑な攻撃を繰り出し続ける…。


だが、皮肉にも緩急を失くした感情的なそれは、かえってアタシを消耗させていく…。




ヘッド「アイツは屑だ! アイツこそが屑だ!!!!」


杏子「……………」



ヘッド「アイツが…! アイツがッ!」



杏子「てめぇ………、の屑を…っ…。

   親に…………、押し付け…、んな…!」



挑発に明確に反応した敵に対し、アタシはさらに嗾ける。

今は辛いが冷静な判断力を失わせれば、戦いには勝機が見えるモノだからだ…。


そして、アタシが行ったそれは、偶然にも男の持つ負の感情とその野望を全て吐き出させる…。
104 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:18:48.82 ID:9BNIT/2f0
ヘッド「お前に何がわかる!!!」


ヘッド「シルシを受け継ぐ家に生まれ、その為に生きてきた! そう聞かされていた!」



ヘッド「なのに、俺には渡さないと言った!

    あの糞親父!!!!」




ヘッド「俺は親からいらない、と言われたんだ! わかるか! この屈辱!!!!」



杏子「っく……!」



駄々をこねる子供のように、その感情を撒き散らしながら暴れる目の前の男…。

だが、その剣は相変わらず重く、停止能力のおまけ付き…。


思う所はあっても、言い返してやる事ができない…。
105 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:19:35.04 ID:9BNIT/2f0
ヘッド「それから先はもう何も上手くいかない! 手にしてもすぐに滑り落ちて行く…!」




ヘッド「だから俺はやり直すんだ!」



やり直す?

聞き捨てのならない言葉を聞いたアタシは気合を入れ直す。

勝機が見えるまでと温存していた魔力を腹の傷に回し、コイツへの問答と抵抗を再開する…。





杏子「やり…、直す……? 一体何を、だ…!?」



ヘッド「そうか…。ザメクの本当の力をお前らはまだ知らないんだったな…!」


杏子「本当の…、力…?」


ヘッド「今この場には、厄介なツナシ・タクトや美樹さやかがいないからな…!

    お前さえ消えればすぐにでも計画に移れる…! せっかくだから教えてやるよ…!」
106 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:20:44.69 ID:9BNIT/2f0
ヘッド「ザメクは今まで王のシルシを継ぐドライバー達を確かに食いつぶしてきた。

    だが、それでも未だ完全とは言えない」


ヘッド「奴は何時でも飢えているんだよ。完全復活に必要なリビドーを吸収したくて」




スガタ「……………」


ヘッド「そして、それを阻んでいるのがゼロ時間の檻だ…!」


ヘッド「ゼロ時間の封印を解けば、ザメクは本来のサイバディになる為に、

    この星のリビドーを全て食い尽す…!!!!」




スカーレットキス「何…!?」


ワコ「そんな事したらこの星が死んじゃう…」


頭取「何ですって…!」


プロフェッサー・グリーン「確かに…、ザメクのキャパなら十分に可能性はあるぞ…!」



バンカー「それって…」


セクレタリー「人類が滅ぶって事…?」
107 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:21:12.33 ID:9BNIT/2f0
『ザメク』

最強のサイバディの真実。

それは全ての命を踏み躙り、その上に君臨する最悪の暴君だった…。




アタシもタカシもザメクはただ強大な力を持つサイバディだと思っていた。

だから、それを使って世界を支配する…。

それがこの男の目的だと思っていた…。


だが、存在する王は圧政どころか、全てを蹂躙するだけの存在だった…。




それを知りこの男は何を求めるのか…。

それでも、それを求めるこいつの目的は何なのか…。


傷の痛みを堪えながら、それでも狂った目の前の男を睨みつけて言う…。
108 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:21:56.62 ID:9BNIT/2f0
杏子「意味わかんね―よ…! 人類を滅ぼして…、ザメクを手に入れて…!

   それでお前はどうなる…!!!!」


ヘッド「全ての封印を解き、第五フェーズになったザメクは時間を自由に操れる…!

    そして、そのスタードライバーである俺はタイムトラベラーとなる!!!」



杏子「は…!?」


ヘッド「好きな過去を何度も繰り返せるんだ…!」


ヘッド「俺が楽しかった時間だけ…! 俺が誇れる時間だけ…! 俺が満たされていた時間だけ…!

    永遠にそれを巻き戻し続ける…!! それこそが俺の夢…!!!」




ヘッド「それこそが『旅立ちの日』だ!!!!!!」
109 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:22:31.88 ID:9BNIT/2f0
『旅立ちの日』。

それは綺羅星十字団が掲げる目標の一つ。

サイバディの封印を解き、その力を持って、まずは未だに争いが存在するこの星を統治する。

そして、その力を解明し、やがてはそれらがやって来た銀河へと文字通り旅立つ…。



そんな浪漫に溢れた計画。

そう信じていた…。

だけど、あいつらの夢の正体は、未来と引き換えに永遠に過去へ遡る…。

目指した目標とは正反対のモノだった…。




プロフェッサー・グリーン「そんなモノが『旅立ちの日』だと…」


スピードキッド「結局、俺達は最初から最後まで騙されてたんだな…」


レイジングブル「その言葉の響きに酔って…」



スカーレットキス「どこまでも人を小馬鹿にしやがって…!」
110 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:23:05.08 ID:9BNIT/2f0
過去に捕われ続ける男は当然のように言い放つ。

未来を犠牲にしてでも、過去に戻る…。

過去を忘れられない愚者の選択…。


その歪んだ感覚を当然、他の者は理解できない…。


皆の思いを代弁するように、王のシルシを継ぐ男は壊れた敵に対して詰問する…。





スガタ「そこから先の未来は無くなるんだぞ…!?」



ヘッド「俺は全てを取り戻すよ…!」
111 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:23:43.36 ID:9BNIT/2f0
アタシだって、戻れるならあの頃に戻りたい…。

そう思うことだってあった…。



幸せな過去は確かに優しい。

縋りつきたくなるほどに…。

そう言う意味じゃ、この男の気持ちは全くわからないとは言えない…。



だけど、過去に戻ったってそれだけだ。

過去は自分を形造って来たモノに過ぎなくて、そこに戻ったって何も手に入らない…。



失ったモノはもう戻ってはこない。

だけど、その代わりにもっと素晴らしいモノを見つけられるかもしれない…。



何かを手に出来るのは…、どんなに苦しくたって…。
112 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:24:35.49 ID:9BNIT/2f0
杏子「やっぱ…、お前は馬鹿だよ…。ヘッド…!」


ヘッド「何…!?」




杏子「取り戻す…? それはまやかしと何が違うんだ…?」


ヘッド「黙れ…」



杏子「無くなったモノはもう帰ってはこない…。

   それに縋りついたって何にもならねーよ…。虚しいだけだ…」


ヘッド「黙れ…!」



杏子「前見ろよ…。神様だか王様だか知らねーけど、そんなモノに縋りついてないで…!

   歩きだせよ…、お前の足で…! 切り拓けよ…、お前の手で…!

   それだけの力がお前にはあるじゃねーか…」



ヘッド「黙れ………!!!」
113 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:25:23.82 ID:9BNIT/2f0
杏子「幻を追う夢に何の意味があるんだよ…? 取り戻せないモノだってあるけどさ…、

   歩き続けてりゃ代わりに新しいモノが見つかる事だってある。アタシがそうだった…」


ヘッド「黙れ……………!!!!!」

   


杏子「お前が進んだ先に会う『これから』は、取り戻すよりもっと素晴らしいモノが待ってる…!

   だから…!」






ヘッド「黙れェェェェェェェェェェェェ!!!!!!!!!!!!!!」



アタシを支えていた槍が真っ二つに折れる…。

そして、その槍を切り裂いた敵の剣は、本来の大きさよりも二回りも三回りも巨大な輝きを放って…。


アタシの意識を吹き飛ばす…。
114 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:26:14.77 ID:9BNIT/2f0
壊れかけたサイバディは、刃が刺さったまま動きの止まった少女を蹴りつける。

刃を使わないのは平静を失っているからか、自らの怒りを少しでも晴らす為か…。


もはや、その光景は戦いなどと呼べるものではなく、ただの私刑にしか過ぎない…。




ワコ「酷い…」


スガタ「くッ…!」


ケイト「無駄です…! ヘッドのシンパシーは第三フェーズ…。

    『王の柱』の影響は受けない…」





スカーレットキス「畜生…! 私にシルシがあれば…! シルシさえあれば…!!!」


スピードキッド「せめて、電気棺が壊されてなけりゃ…!」


プロフェッサー・シルバー「無駄でしょうね…」
115 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:26:43.67 ID:9BNIT/2f0
レイジングブル「そんなモンやってみなきゃ…!」


プロフェッサー・グリーン「もう忘れたのか!? シンパシーの能力は他のサイバディの『強制制御』!

               それを『オーバーフェーズ』で防いでも、奴は美樹さやかと同じスターソードを用いた停止能力の使い手だ…!」


プロフェッサー・シルバー「さらに『オーバーフェーズ』はダメージが使用者に跳ね返ってきます。

               やはり、それをまともに使いこなせるのは、魔法少女として人智を超えた能力を持つ彼女だけでしょう…」



レイジングブル「くっ…」


プロフェッサー・グリーン「悔しいし、手を貸したいのはここに居る全員が同じだ…。

              だが、行っても足手まといにしかならない…。それが現実なんだよ…」



スカーレットキス「畜生ッ!!!!!」


頭取「今日ほど自分の無力さを痛感させられる日は無いわ…」
116 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:27:25.76 ID:9BNIT/2f0
ヘッド「何が…! 何が魔法少女だよ、馬鹿馬鹿しい!!!」



ヘッド「お前程度に!」


ヘッド「この俺が!」


ヘッド「倒せるとでも!」


ヘッド「思ったのかッ!!!!!

    この小娘ッ!!!!!!!!!!!」



怒り狂う男も、ついに少女をいたぶるのに飽きたのだろうか…。

止めの凶刃を高らかに上げ、叫ぶ…。





ヘッド「さぁ、祭りは終わりだ!!!!!!!!」
117 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:28:10.46 ID:9BNIT/2f0
セクレタリー「お願い…、お願い! タカシ! あの男を止めて…!

        あなたなら出来るでしょ? シルシを持つあなたなら…」



バンカー「…………出来ない」


セクレタリー「何で! あなたなら…!」




バンカー「それで助けられるなら、とっくにそうしている!!!!」


セクレタリー「タカシッ!!!!!!」




少女の悲痛な願いは届かない。

彼女もまた、今は縋るしかできないから…。

だから、神は微笑まないのだろうか…?



そこにいる皆の期待と希望が絶望に降される…。

水色をした悪夢の刃が振り下ろされる…。
118 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:29:20.34 ID:9BNIT/2f0
停止した南十字島にある山道。


殺意を見せた男の猛攻に、さやかは自らの思いとは反対に苦戦を強いられていた…。


それでも、希望は捨てない。

それを捨てて、堕ちた自分を繰り返さないと自分に、大切な人に…、誓ったから。





さやか「こんのッ!!!」



カタシロ「無駄だ!!!!!!」


さやか「ううッ!!!」
119 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:30:10.56 ID:9BNIT/2f0
あたしの剣はまたも宙を舞い、男の木刀はまたも急所を捉える。

激痛に苛まれるも気合で振り切り、すぐに立ち上がる。


だが、その様子にとうとう男が痺れを切らす…。




カタシロ「ここまでしても駄目か…」


カタシロ「それなら、もう良い…」




カタシロ「お前は俺と同じと言う事だな!? なら、永遠に彷徨え!

     そして、あの時あぁしていればと後悔を続けろ!!!!」



男の木刀は真っ直ぐに向かって行く。

その石に向かって…。
120 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:31:06.44 ID:9BNIT/2f0
あたしは男に斬りかかる。

しかし、それよりも早く男は既に攻撃を繰り出していた。



油断をしたつもりはない。

だけど、男は完全にあたしの意表を突いてきた。

無理もない。

敵は未来が見えるんだから…。



それだけなら、さっきまでと同じく仕切り直せばよかった。

でも、それは運の悪い事に最悪の場所へ向かって行く…。





さやか(しまった…)



向かった先は魔法少女の唯一の弱点…。

赤い木刀が、あたしのソウルジェム目掛けて繰り出されようとした瞬間だった…。
121 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:31:45.81 ID:9BNIT/2f0
(…………!!!!!)




カタシロ「…………ッ!!!」



男の左眼の義眼が砕け、鮮血が溢れる。

男の体は強張って動きが止まり、そして…。








さやか「え……………?」



あたしの刃が男を切り裂いた。
122 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:32:26.81 ID:9BNIT/2f0
倒れた男に駆け寄る。


大切な人の一大事だから…。

手加減する事ができない強敵だった…。

これが戦いだって、わかってはいるけど…。



それでも…。

あたしは自分の在り方を一つ破ってしまった…。





さやか「ごめん…」


カタシロ「気に病むな…」



さやか「………」


カタシロ「行け…。彼女の所へ…」


さやか「……うん」
123 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:32:58.82 ID:9BNIT/2f0
さやか「アプリボワゼェェェェェェ!!!!!!」



レシュバルを選び、また選ばれた少女は男に背を向ける。

彼女が持つ本当のシルシは光を放ちながら、それを呼ぶ。



呼び出した『相棒』の元へ…。

救いたい大切な友人の元へ…。


シルシを持つ少女は望む場所へ向かう為に、光となって消えていく…。




そして、その様子を倒れた男は見送る…。

シルシを失い、周囲と同じく停止する存在になりつつも…。


その右眼だけは最後まで見開き続ける…。
124 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:33:32.56 ID:9BNIT/2f0
カタシロ「これで良い…」


カタシロ「あの娘だけでは無理でも…」


カタシロ「お前が……あの娘と向き合って……、共に闘う…のなら…」


カタシロ「奇跡…も…、起こせる…、も……しれ…」





カタシロ(お前は………、大切なモノを手放すな…)



カタシロ(向き合う事を恐れるな…)



カタシロ(レ………)
125 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:34:22.23 ID:9BNIT/2f0
ゼロ時間。


過去に縛られた男が、未来を望む少女に向けてその刃を下す…。

その剣が彼女の頭部まで迫った…。










ヘッド「死ね!!!!!!!」



祈りが通じたのか…。

奇跡が起こったのか…。



男の駆るその機体はそこで動きを止めた。
126 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:35:07.22 ID:9BNIT/2f0
ヘッド「な……、なんだ、これは…!?」



気付けば、何かが絡みつき、剣を持つ左手を含むサイバディの動きを完全に封じている…。

左腕に捲きついたそれは先ほどまでで、見飽きるほど睨みつけた柄と鎖…。


それが意味するのは勿論…。










杏子「…………お前には、やっぱりわからなかったみたいだな」




杏子「なら悪いけど…、お前は終わりだ…」



ヘッド「なんだと…!?」
127 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:35:53.21 ID:9BNIT/2f0
全身を柄と鎖が縛り、動けない青年の機体。

対して、足元に居た少女はゆっくりと立ちあがる。


辛そうに、だが一歩づつ歩んでいく。

敵のサイバディの顔を睨むその表情は、不敵にも笑っている。



全身が傷だらけ。

動く事はおろか、意識がある事さえ不思議な重症であるにも関わらず…。




ヘッド「何故だ…! 全身にそれだけの傷を負って…!

    お前自身にダメージの跳ね返るそのオーバーフェーズで…!?

    そんな状態で…!? なぜ、意識を保てる…!?」


杏子「アタシら魔法少女は、痛覚のON、OFFが自在にコントロールできるのさ。

   動きが鈍るから普通はやらないけどな…!」


杏子「最も、あちこちイカれてるわ、お前のスターソードは光るわでそれでもきついんだが…」



ヘッド「化け物が…!」


杏子「違うね…! アタシは魔法少女だ!!!!」
128 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:36:52.09 ID:9BNIT/2f0
ヘッド「糞ッ…、動け…、動け…!」



動く筈もない。

左手で槍の柄を握りしめた少女が最後の魔力で敵を縛りあげているからである。

幾ら動こうが、もがこうがそれが緩まる様子は無い…。





ヘッド「ディ…、ディアマンなら、遠隔操作で…」



だが、その白い剣も動く事は無い。

少女は腹部に刺さったままの剣を右手で握りしめ、完全に動きを封じてしまっているからである…。

多少左右にぶれさせ、その傷を抉る事は出来ても、少女は呻き声一つ上げないどころかよりその握力を強める。


自分を見据えたまま、瀕死の少女は一歩一歩近寄って来る…。
129 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:37:41.59 ID:9BNIT/2f0
睨み続ける少女のそれは、敵に勝とうとしている者のそれではない。

刺し違えてでも相手を消し去ろうとする者の眼だ…。


それを感じ取った青年も必死の抵抗を続ける。

だが、絡みついた鎖は男が離れる事を許さない…。





杏子「お前はゼロ時間に捕われてるってタカシに聞いたぜ…?」


ヘッド「やめろ、来るな……!」



杏子「お前を倒せるのは、唯一ゼロ時間だけなんだってな…?」


ヘッド「このッ! 離せッ!!!」




杏子「お前には消えてもらうぜ…。お前さえ消えれば綺羅星だって捨てたモンじゃない…。

   あいつの望む『これから』には、過去に縛られ続けるお前だけが邪魔なんだよ…」




杏子「心配すんな。一人じゃ行かせねぇ…。

   アタシも一緒に消えてやるよ…」


ヘッド「やめろ!! やめてくれ!!!」
130 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:38:47.93 ID:9BNIT/2f0
やがて少女の全身に、アインゴットの眼と同じ紫色の炎のようなオーラが現れ始める。

力強くも、どこか不安を煽られるその炎は少しづつその量を増やしていく…。


動ける筈のない少女が繰り出そうとしたそれ…。

その場に居る誰もが直感で理解する。


アレは『捨て身』の攻撃だと…。




スガタ「くっ…、離せ! あの子を止めなければ…!」


ケイト「駄目です…! そうしたら今度はあの男が彼女を殺すだけです…!」



ワコ「こんな…、こんなのって…!」




レイジングブル「あの野郎ッ! 馬鹿な真似は止せッ!」


スピードキッド「どこまで人を振りまわせば気が済むんだよ! あの馬鹿!!!」




スカーレットキス「馬鹿野郎ッ! お前は……、私の…片腕…、だって………!」


スカーレットキス「言ったじゃねぇかよッ!!!!」
131 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:39:43.68 ID:9BNIT/2f0
頭取「なんて………、なんて……不甲斐ない……!」



プロフェッサー・グリーン「打つ手は……ないのか?」


プロフェッサー・シルバー「あったとしても、今度はヘッドが残ります…。

               あの子は勿論、我々だってどうなるか…」



バンカー「…………………」






セクレタリー「お願い…」


セクレタリー「神様でも誰でも良い…」


セクレタリー「あの子を……、あの子を助けて…………」
132 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:40:11.48 ID:9BNIT/2f0
あ〜あ…。

みんな泣いたり、喚いたりしてら…。


こう言う辛気臭いのは苦手なんだけどな…。


けど、まぁ、仕方ないか…。



どっちにしろ…。

長居は出来ないんだよ、アタシは…。


このソウルジェムが穢れを溜めきれば、確実にあいつらに害を成す何かが起きる。

希望を残す為に戦った筈のアタシが、絶望を撒き散らす何かになるなんて飛んだお笑い草だ。



だから、これで良いんだ…。
133 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:41:08.08 ID:9BNIT/2f0
しっかし…。

アタシにはできないと思っていた『誰かの為』。


切羽詰まればできるモンなんだな…。

結局はアタシも甘っちょろい『誰かの為』に生きる一人だったよ。



そりゃ、そうか。

ずっとそんな奴が羨ましくて、そんな奴が好きで、それなのにそんな奴らを嫌いな振りをする捻くれた生き方をしてきたんだから。

最後にそこに戻るのは当然の事か…。


そして、そんな奴の末路はいつも決まっている。




だけど、それで良い。

『誰かの為』に生きる事に疲れたアタシは、『自分の為』に他者を傷つけて生きてきた。

そんなアタシに、この先の『これから』を見続ける資格は無い。


その『これから』は本当に『誰かの為』を想うあいつの、あいつらの物だ…。
134 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:41:52.16 ID:9BNIT/2f0
さやか…。

お前はもう…、大丈夫だよな?



一人ぼっちじゃ…、ないもんな?








杏子「終わりだ、ヘッド。

   『自分の為』に好き勝手生きた屑同士、一緒に地獄で夢を見ようぜ…?」





ヘッド「や、やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」
135 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:42:40.64 ID:9BNIT/2f0
全てが終わる…。

少女と言う希望も、野望に燃えたヘッドと言う絶望も…。


彼女の全身を目に余るほどの炎が包み込み…。

やがて弾ける…。

その直前…。

















さやか「いい加減にしろ、この馬鹿!!!!!!!!!!!」



杏子「さ…、やか?」
136 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:43:29.35 ID:9BNIT/2f0
アタシの前には映っていた。

来る筈のない奴が。

別れ代わりに喧嘩して、これでもう…。



そう思っていたあいつが…。

あいつの駆るレシュバルが…。

壊した筈のそれが…。





空を駆けてアタシの方へ向かってくる…。
137 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:44:22.80 ID:9BNIT/2f0
少女の纏った炎が、それを見て弱まっていく…。




希望の為に戦う少女と、少女を思う者達を救う筈の救世主。

だが、それは絶望を撒き散らす者の待ち望んでいる展開でもあった…。


そう。

その姿を見たそれは高笑いする…。

少女達の思いを踏み躙るように…。




ヘッド「ハハハハハハハハ!!!! 君は本当に良い友人を持ったようだな!

    デス・クリムゾン!!!!!!」


杏子「ヘッド…? 畜生! こいつまだ…!」




杏子「駄目だ! 来るな! さやか!!!!」


杏子「来るんじゃねぇ!!!!!!!!」




ヘッド「アプリボワゼェェェェェェェェェェェ!!!!!!!!!」
138 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:45:52.74 ID:9BNIT/2f0
全身がボロボロになり、かつその体を縛られた状態でも、その凶悪な固有技能は機能した。



シンパシーと呼ばれる機体のあちこちに金色の針が発生し、やがて放たれる。

目にも止まらぬ速度で駆け巡るそれは、もはや回避の類を一切許す事は無い。


瞬く間にさやかの乗るレシュバルに纏わりつき、そのコクピットを自らのボディカラーである銀色に染めた。





杏子「さやか!!!!」





ヘッド「ハハハハハハハハハハハ!!!!!!

    ここに来て最高の手駒が手に入ったよ!」


ヘッド「コイツが、あのツナシ・タクトや皆水の巫女の知人である事を利用すれば奴らを葬る事さえ容易い…!

    元の強さも申し分がない! なんなら、あのツナシ・タクトと殺し合わせるのも面白いな…!」



ヘッド「そうだ。そうしよう…! そう考えればこの現実もまだ捨てたモノじゃない…!」
139 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:46:37.83 ID:9BNIT/2f0
ヘッド「さぁ…。レシュバル! まずはこの小娘を突き殺せ!

    それが最初の命令だ…!!!!」


さやか「……………」





杏子「さやか………」




青と白の貴公子は空を駆け、杏子とヘッドの居る所へ…。

少女はその様子を見て、再度『捨て身』を考えたが、時は既に遅い。


今それをすれば、空を駆け、こちらへ近寄って来るレシュバルに乗る彼女を確実に巻き込むだろう…。



本当はそうしてでも止めねばならないかもしれない…。

だけど、少女にはそれが出来ない…。


だから、覚悟した。

彼女の手に掛かって死ねるなら…と。





そして、少女の駆る機体は、その願いを叶えた…。
140 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:47:22.72 ID:9BNIT/2f0
杏子「……」


さやか「……」




杏子「あ…」


さやか「…………」






杏子「あぁ……」


さやか「…………………」







少女の機体が抜いた黄金の剣。

その剣が貫いたのは少女ではない。



少女が縛りあげた、過去に捕われた絶望のサイバディだった…。
141 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:51:31.27 ID:9BNIT/2f0
ヘッド「馬鹿な…」


ヘッド「馬鹿な!!!!」


ヘッド「馬鹿なぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!!!」



全てを操る最悪のサイバディ『シンパシー』

男はそれの中で、手駒にした筈のサイバディに貫かれ、困惑しながら喚き続ける。

そして、その絶望の機体も腹部に突きたてられた剣の輝きに飲まれ、最後の輝きすら奪われていく…。



結局、他者を支配する間違った力は一度も効果を成すことなく、そのサイバディは終わりを迎えようとしている…。
142 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:52:15.74 ID:9BNIT/2f0
杏子「なんで………だよ。なんで、そんな事が…」



さやか「わかんない…。

    でも、レシュバルが…。なんか頑張ってくれたみたい」




そして…。


絶望を貫いた黄金の剣…。

その剣の輝きは、先ほどまでのヘッドのそれの輝きとは比較にならない…。

ゼロ時間全体を照らすような…、強い強い輝きを放ち始めた…。



その輝きは、野望に燃える男のサイバディの動きを止め、

少女を貫いた痛々しい刃を消し去っていく…。
143 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:53:01.42 ID:9BNIT/2f0
ヘッド「俺の…、俺のシルシの…、輝きが…!」


ヘッド「俺の夢が……、夢が…!」


ヘッド「消える…! 消えてしまう…!」



ヘッド「嫌だ…。 こんなの嫌だ…」


ヘッド「こんな……の……」





ヘッド「ソ……ラ………」


ヘッド「……ナちゃ……ん」



過去を見続け、未来を踏み潰してきた男のシルシは、

未来を望み、過去を乗り越えた少女の輝きの前に屈した。



その輝きに当てられた青年は、意識を失う…。

そして、それと共に男のシルシは、ただのシルシとなっていた。

輝きを無くした文字通りのただのシルシに…。



邪悪なサイバディを司る『シンのシルシ』。

それが誰かに継がれる事は二度となかった。

そして、そのシルシが輝く事もまた、二度となかった…。
144 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:53:52.04 ID:9BNIT/2f0
眩い輝きの足元で、想い合う少女達は再会を果たす…。


希望は守られた。

だが、その為に戦った少女の傷は深い…。

駆けつけた少女もその姿を見て、思わず嘆く…。




さやか「酷い傷……」



杏子「へ………、いつかのお前程じゃ…」


さやか「うっさい! 馬鹿…!」




杏子「なんで…、来たんだよ……」


さやか「アンタが…、死ぬつもりだって、聞いたから……」



杏子「アレがどんだけヤバイか…、聞かなかったのかよ…」


さやか「聞いたけど…。それだって、アンタを放っておける訳…」
145 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:54:35.46 ID:9BNIT/2f0
杏子「馬鹿だな……、お前……」


さやか「馬鹿って何よ…!?」






杏子「ほんとバカ……」


さやか「何よ…! せっかく来てやったのに…」


杏子「…………」




さやか「杏子………?」
146 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:55:04.98 ID:9BNIT/2f0
さやか「杏子? 杏子! 杏子!!!!」


杏子「……………」



さやか「寝た振り…? 嫌だな…。 こんな時に何やって…」


杏子「……………」



さやか「嘘でしょ…? 返事してよ……」


杏子「……………」













さやか「杏子ーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!」



動きを無くした杏子。

それを抱き、さやかは泣き叫ぶ。




彼女の悲痛な叫びが、騒乱を終えて静まったゼロ時間に木霊する…。
147 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/10(日) 00:58:27.52 ID:9BNIT/2f0
っし。
今日はここまで。


あと4回くらいの投下で終わると思われます。

問題はラストまで考えてるけど、次に投下する分もまだ書いてる最中と言う事…。




それでは、本日は閉会とする。

このスレを見てくれた者に栄光を…!
レスをくれた者達に祝福を…!

綺羅星☆
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/07/10(日) 05:42:42.71 ID:lOFnEZGAO
乙星☆!!
こっからの展開全く予想出来ないから続き滅茶苦茶楽しみだわ
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) :2011/07/10(日) 06:55:24.38 ID:ti5cAX3AO
「何が魔法少女だよ、馬鹿馬鹿しい!!!」

いつか言うと思ったよヘッド…
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/10(日) 08:40:40.89 ID:Wl41RbhNo
乙星☆!!
ヘッドさんついにソレを言ったかww
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/07/10(日) 10:35:30.19 ID:NiEtDycAO
乙!!
152 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:16:01.57 ID:oOhp1J3O0
綺羅星☆

次回投下分が思ったより長くなったので、半分だけでも投下します
しかし、暑さはSS書きの天敵ですな…


>>148
乙星感謝
予想裏切る為に脱線し過ぎてるのは感じてるけど、黒いバンカーさんやりたかった時点で諦めた

>>149>>150
杏子と戦わせる時点で言わせるつもりでした

>>151
乙感謝
153 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:16:43.97 ID:oOhp1J3O0
ゼロ時間。


戦いは終わった。

だが、その代償は大きい…。






さやか「杏子! 杏子…!」



さやか「お願い…。眼を開けてよ…。返事してよ…」



物言わぬ友の姿に涙する少女…。

そして、それを見つめる事しかできない一行…。

誰もが自分の無力を呪っている…。


ただ、一人を除いて…。
154 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:17:35.10 ID:oOhp1J3O0
さやか「そうだ…! グリーフシードは…?

    グリーフシードがあれば、きっと自己回復…」



スカーレットキス「もう…、無いんだそうだ…」


さやか「そんな…」



杏子の体はボロボロだった。

オーバーフェーズのダメージは肉体に跳ね返っているのだから、今ある傷は彼女自身の傷であると言う事になる。


ソウルジェムも濁り切っているのだろう。

本来はこのような状況では、すぐに行われるであろう自己回復の魔法も働く気配は無い。

それを使い、己が魔女になる事を無意識下で避けているのだろうか…。
155 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:19:14.75 ID:oOhp1J3O0
それを見る仮面の少年が口を開く。

無力さは感じながらも、彼だけは一人別の事で悩んでいたのだが…。




バンカー「プロフェッサー・シルバー……」


プロフェッサー・シルバー「やるんですか? 彼女の前で…?」



バンカー「オーバーフェーズの解除及びドライバーの緊急射出を…」


プロフェッサー・シルバー「最後の電気棺も、アインゴット自体も壊れ…」




バンカー「くどい……」


プロフェッサー・シルバー「………わかりました」
156 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:20:37.20 ID:oOhp1J3O0
少年の指示を受けた灰髪の仮面が、なにやらリモコンのようなモノを取り出す。

そして、それを一操作する。


さやかのレシュバルの腕の中にいたオーバーフェーズの杏子がアインゴットへ…。

そして、そのアインゴットが消え、仮面を付けた杏子自身がレシュバルの掌に収まる…。




プロフェッサー・シルバー「さぁ、後はあなたの仕事ですよ。バンカー」


バンカー「……………」


プロフェッサー・シルバー「何をやっているのですか? 彼女との約束を忘れたのですか…!?」
157 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:21:06.07 ID:oOhp1J3O0
杏子『もしもアタシが限界超えてるのに、生き残っちまってたら…』



少女との約束。

彼女とした『取引』の一つ目の条件…。







――お前の手で、アタシのソウルジェムを砕いてくれ――



無理をした魔法少女が、最期にどうなるか…。

それを考えれば、自分は消えるしかないだろう…。

でも、その時に自分が動けないなら申し訳ないけど汚れ役になってくれ、と…。


そう彼女に言われ、少年はそれを引き受けた筈だった…。




バンカー(何をやっているんだ。僕は…)


バンカー(そう言う約束だったろう…)


バンカー(…………)
158 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:22:05.51 ID:oOhp1J3O0
プロフェッサー・シルバー「バンカー!!!」


バンカー「………!」




セクレタリー「え…?」


スカーレットキス「バンカー! てめぇまさか…」



言われて初めて気付く。

そして、少年はようやく少女の元へと向かう…。

周りの者がそれに気付くも時は既に遅い…。




バンカー「……………」


さやか「何…? アンタは…」
159 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:22:45.02 ID:oOhp1J3O0
バンカー「彼女を助けます…」



もう無いと言った筈のグリーフシード。


杏子はそれを所持していた。

だが、それを見つけた仮面の少年の表情に喜びの類は見て取れない…。




レイジングブル「なんだよ…。あるんじゃねぇかよ…」


スピードキッド「アレがありゃ、杏子は魔法で体が癒せるんだよな…?」


頭取(知っていたなら、何故隠した…?)





だが、仮面の少年は杏子にその石を使わない。

代わりに、レシュバルのコクピットにいるさやかの方を向き、忠告する…。
160 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:23:29.40 ID:oOhp1J3O0
バンカー「さやかさん。絶対にレシュバルとのアプリボワゼを解かないでください」



少年の言った事の意図。

それを一人理解したさやかは喜びの表情を消す。

アプリボワゼを解くな。

それは、これから危険な事が起きると言う意味合いである…。


すなわち…。




さやか「…………わかった。それ、使いかけなんだね…?」


バンカー「はい…」



スピードキッド「使いかけ…?」


レイジングブル「それとアプリボワゼがなんかあるのか…?」
161 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:24:19.65 ID:oOhp1J3O0
バンカー「使いすぎたグリーフシードは魔女を孵化させます。

      魔女は僕達が思うよりも厄介なモノもいるから、必ず処分するよう言われていたのですが…」」



残った二つのグリーフシード。

本来は使用後に特殊な方法で処分していた筈のそれだが、最後の二つだけはその時間がなかった…。

バンカーがヘッドの暴走の監視に急ぎ向かった為である。



だが、それは杏子が自分のソウルジェムの穢れを取る為に使い、魔女が生まれる危険性から途中で使用を止めたもの。

言ってしまえば、使いかけである。
162 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:24:52.33 ID:oOhp1J3O0
バンカー「はっきり言ってこれを使っても応急処置にしかならない上に、魔女まで生まれます…。

     割には合わな…」




さやか「やって…。魔女はあたしが何とかするから」



バンカー「……わかりました」



仮面の少年は、黒く濁った杏子のソウルジェムにその黒い宝石を当てる。

黒い宝石は少しだけ、その穢れを吸い取るとすぐに変化を起こす。



ヒビが入り、中からエネルギーが溢れだす…。

そして…。
163 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:25:50.60 ID:oOhp1J3O0
杏子の穢れを吸い続けたグリーフシードは、魔女となって生まれ変わった。

サイバディに関わり続けた一行でも、その異形の存在に驚きを隠せていない…。





頭取「これが魔女………」


スピードキッド「ほとんど化け物じゃねぇか…」


セクレタリー「でもなんだろう…。アレを見ていると悲しい気持ちになる…」



現れた魔女は、やはり杏子の影響を受けているのだろうか?

どこか見た事がある外見や特徴が見て取れる。


白いマントで全身を隠し、その両腕からは手の代わりにランスと呼ばれる大型の馬上槍が装備されている…。

真っ黒いマネキンのような頭部に赤い眼はどこかレシュバルを連想させ、その頭は業火が燃え盛る。

サイバディと同程度の巨体で、乱暴そうな外見通り、レシュバルを見据えると早速そちらへ向かって行く…。
164 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:26:34.89 ID:oOhp1J3O0
魔女「!!!!!!!!」




さやか「アイツの相手はあたしが引き受けます。

    だから二個目のグリーフシードを使ってください」


バンカー「しかし…」




さやか「杏子があれじゃ、悠長な事言ってられない…。

    魔女はあたしが二匹とも相手するから…!」


バンカー「二匹同時に相手するなんて、大丈夫なんですか…?」




さやか「良いから。サイバディに乗ってるから何とでもなる…!」


バンカー「わかりました」
165 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:27:28.07 ID:oOhp1J3O0
さやかの指示で二個目のグリーフシードを使う仮面の少年。

しかし、さやかは魔女を甘く見過ぎていた。


この二個目のグリーフシードが生み出した魔女は危険な力を持っていた。

もしも、杏子がその魔女と出会っていたら撤退を選んでいたであろう程の…。


だが、この魔女の力は後のゼロ時間に大きな変化をもたらすことになる。






2匹目の魔女「………………」


バンカー「なんだ、コイツは………」



バンカー「く…、これは………」
166 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:28:06.90 ID:oOhp1J3O0
さやか「パイル・ソード!」


さやか「行くよッ!」



あたしは、パイルを刀剣に変えて魔女に一気に斬りかかった。

でも、魔女は両手の槍を交差させてそれを防ぐ…。





魔女「!!」


さやか「くっ…」



力技で押し切ろうとしたが、敵の槍は頑丈で結局弾き返される結果となる…。

着地し、後ずさりする形となるも踏ん張り、再度前に跳ぼうとした時だった。
167 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:28:35.29 ID:oOhp1J3O0
セクレタリー「さやかさん…! タカシが…!」


さやか「タカシさん…!?」



言われて振り向く。

振り向いた先には、さっきグリーフシードを使う為に杏子を引き取った仮面の人と杏子自身…。

そして、そのすぐ近くに半透明ピンクのゼリーで出来ているような、二匹目の魔女の姿が見える…。

その魔女は体もそこまで大きくなく、静かにたたずんでいたが…。


その体の中央にある白い何かだけはその中で回転し…。





さやか「目玉…?」



巨大な目玉だったそれと、目が合った。
168 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:29:02.08 ID:oOhp1J3O0
気が付けば戦闘は終わっていた。

再び静寂を取り戻したゼロ時間。


魔女もサイバディも既に姿は無い。

代わりに、魔力を使ってよくなったんであろうアイツの姿が見える…。




さやか「杏子……」


杏子「…………」



さやか「なんだ…。元気そうじゃない。心配して損しちゃった…」


杏子「なんで来ちゃうかなぁ…」




さやか「杏子…?」


杏子「見られたく………、なかった」
169 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:29:43.16 ID:oOhp1J3O0
さやか「アンタ何言って…」


杏子「………」



あたしが言い終わらない内に、杏子の胸にあるソウルジェムからエネルギーが溢れる。


忘れもしない。

あたしが見滝原で全てを諦めた時…。

魔女なると思った時に溢れたあの不快なエネルギー…。

それが杏子のソウルジェムから溢れていく…。





さやか「杏子ッ!」


さやか「杏子ーーーッ!!!」



さやか「そんな…、間に合わなかったの…?」
170 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:30:17.62 ID:oOhp1J3O0
エネルギーは形を成していき、やがて獣のような魔女が生まれる…。

そして、まるで本物の獣のように吠える…。


起こってしまった最悪の事態…。

だけど…。




杏子だった魔女「ウゥゥゥゥゥ!!!!!」





さやか「…………………違う」


???「………」
171 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:31:20.45 ID:oOhp1J3O0
さやか「何かが……、違う」


???「そうだね…」



さやか「あたしの目の前で杏子は魔女になった…」


???「でも、本当に君にはそれが『視えて』いるの?」





さやか「あたしには…」


???「大切なモノ見えない事はよくある…」
172 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:32:28.42 ID:oOhp1J3O0
聞き覚えのある声が消えていく…。

けど、その言葉はいつものようにあたしを導いてくれる…。



魔女はあたしを見つけ、獲物と定めたんだろう。

一睨み、そして一吠えすると跳躍し、あたしに向かって襲い掛かる…。


だけど、あたはそれに対して何の抵抗もしない…。

ただ、それを見据えて立ち尽くすだけ…。




杏子だった魔女「ウゥゥゥゥォォォォォォ!!!!!!」


さやか「無駄だよ…」


杏子だった魔女「ウゥゥゥゥゥゥゥ…」


さやか「あたしには見える…」


杏子だった魔女「ウォォォァァァァァァァァァァァァ!!!!!」
173 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:33:16.57 ID:oOhp1J3O0
さやか「視えているッ!!!!」



あたしは両腕を思い切り振るう…。

目に見える幻を切り裂く為に…。

その先に視える大切なモノを取り戻す為に…!








2匹目の魔女「……………!」



気が付いたあたしは、何時しかレシュバルに戻ってその刀剣を振るい、

目の前のゼリーのような魔女を中の目玉ごと真っ二つにしていた。
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2011/07/11(月) 00:33:55.43 ID:2tDa3r/Bo
これは……?
175 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:34:02.32 ID:oOhp1J3O0
さやか「目に見えるモノは全てじゃない…。

    ですよね? タクトさん!」



タクト「さすがだね。さやか!」



消えていく魔女の向こうに、白と赤の貴公子…。

タウバーンの姿がある…。



タクトさんが気を失ったあたしの代わりに、二匹の魔女の相手をしていたのだろうか…?

倒れた魔女の向こう側からさっきの槍を伴った魔女が、パイルの作るバリアに阻まれている…。
176 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:34:32.80 ID:oOhp1J3O0
例の魔女は相変わらずの暴れぶりで、その光の壁を殴りつけ続け…。

やがて、突き破る…。





さやか「タクトさんっ! 後ろ!」


タクト「大丈夫!」


魔女は背後からタウバーンを襲うも、既にその姿は無い…。

大きく空中で宙返りして逆に敵の背後に回ったタウバーンは、必殺の一撃を繰り出す…。







タクト「豪快!銀河!十文字斬りィィィィィィ!!!!!」


青と緑の剣先が走り、華麗なそれとは対照的な豪快な抉り傷が出来上がる…。

最強の銀河美少年の剣は、あたしを弾き飛ばしたあの槍ごと敵を切り裂いた。
177 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:35:14.68 ID:oOhp1J3O0
今度こそ本当に、ゼロ時間に静寂が戻る…。

当然、あたしはまずアイツの安否を確認する…。




さやか「杏子は…!?」


バンカー「……………」



さやか「……ちょっと!」


バンカー「………」



杏子の傍に居る仮面の少年は項垂れたまま、何も喋らない…。

その代わり、と言わんばかりにスガタ師匠の近くに居た眼鏡の女の人が口を挟む…。
178 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:36:19.04 ID:oOhp1J3O0
ケイト「どちらにしても、これ以上の治療は不可能だろう…」


さやか「あなたは…?」



ケイト「ニチ・ケイト。シンドウ・スガタやツナシ・タクトのクラスメートだ。

    そして、同時に綺羅星十字団の幹部、イヴローニュでもある…」


さやか「……………」




ケイト「まずはゼロ時間を解け。その後に綺羅星十字団の方で責任を以て病院へ送り、その上で君達に連絡する。

    彼女は今綺羅星の本部に居る。まさか君達をそこに案内もできないし、おいそれと来るつもりもないだろう…?」


さやか「その言葉を信用しろとでも…?」


ケイト「顔の割れている私の言葉を信用できないなら、彼女を安全に受け渡す方法は無い事になるが…?」


さやか「……………」



スガタ「彼女なら大丈夫だ」
179 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:37:06.23 ID:oOhp1J3O0
さやか「スガタ師匠…?」



スガタ「彼女の事は僕が保証する…」


ケイト「………スガタ君」



その女の近くに居るスガタ師匠が仲介に入る。

確かにあたしは師匠の事を信頼しているけど、綺羅星そのものに不信感を持っている。

だから、半信半疑だった。


だけど、ゼロ時間から戻った杏子は綺羅星十字団に居て、こちらからは容易に手出しができないのもまた事実だ…。







さやか「…………………わかりました」



渋々ながらもその提案を受ける。

実際、杏子の容体を考えるなら、迷っている暇は無かったからだ。


あたしとタクトさんがアプリボワゼを解除し、不安と不信に包まれたままゼロ時間が明けていく…。
180 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:38:00.81 ID:oOhp1J3O0
あれから半日。


実際、彼女は嘘を吐かなかった。

でも、それは事態が好転したって意味じゃない…。


それ以上悪くはならなかった。

それだけだった…。




杏子「…………」


さやか「杏子………」



グリーフシードは致命傷を重症に癒しただけ…。

全身に重傷を負った杏子は、未だに目覚める気配はなかった…。
181 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:38:54.10 ID:oOhp1J3O0
イヴローニュの口利きで、綺羅星から密かに技術提供を受けているらしい病院が手配された。

怪しくもあるけど、連中の技術力の高さは本物だ。

それを医療機器として扱って、人の為に役立ててるなら頭ごなしには否定できない。

そして、あたし自身も藁にも縋りたい気持ちだったから、それはありがたかった…。




シブヤ「手は尽くしますが、正直どうなってもおかしくない状態ですね…」


ミドリ「ここはまだ正式配備されていないような最新型の医療機器を扱ってる、その筋じゃ有名な病院なんだけど…」


さやか「そう…ですか」



それでも助かる見込みは非常に薄い。

そう言われた。

それに…。


その傷を治せたとしても、アイツは魔法少女だ。

ソウルジェムに限界が来てしまったら…。
182 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:39:21.78 ID:oOhp1J3O0
病室の外では三人が心配そうにあたしを待っていた。

たぶん、外から話を聞いていたんだろう…。

タクトさんがあたしを気遣うように声をかけてくれる…。




タクト「さやか…」


さやか「大丈夫です」


スガタ「……?」



さやか「あたし、まだ諦めてません。

    ………まだ、諦めません」



諦めるにはまだ早い…。

だって、アイツはまだ生きているんだから…。

だから、最後まで諦めない。

諦めてしまったあの時みたいに後悔しないように…。


迎えてくれた三人の前であたしは口に出して宣言し、自分自身にも言い聞かせる…。
183 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:40:38.66 ID:oOhp1J3O0
それを聞いた三人は少しきょとんとしたけど、すぐにその表情が変わる。

優しいけど、力強い…頼りになる三人の表情に…。




タクト「そっか…。そうだよね!」


スガタ「何か出来る事は無い…?」



さやか「はい。さっそくワコ姉にお願いがあるんだけど…」


ワコ「何…。何でも言って! 出来る事なら何でもするよ」




さやか「ワコ姉のお婆ちゃんに頼んで、知っている話聞けるように頼んで貰えないかな?

    あと、できれば古くから残ってる資料とかも目を通せると助かるんだけど…」



スガタ「サイバディやそれ絡みの力なら、魔法少女を癒す手掛かりになるかもしれない…か。

    わかった。僕の方も家に帰って色々と調べてみる」


ワコ「そう言う事なら任せておいて」


タクト「僕の方も爺ちゃんに連絡を取ってみるよ。あるいは何か知っているかもしれないし…」



さやか「ありがとう…。みんな…」
184 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:41:23.52 ID:oOhp1J3O0
その日のあたしたちは、学校もサボってそれぞれ手掛かりを探し続けた。

勿論、そんなにすぐに見つかる訳もない。

それでも、諦める訳にはいかない…。


あたしは徹夜で作業しようとしたけど、それはワコ姉に止められ、

結局今日の早朝から作業を再開した…。




さやか「ふぅ…………」


アゲハ「朝から精が出るね…」


さやか「お婆ちゃん。おはようございます。

    すいません……。朝から騒がしくしちゃって…」



アゲハ「謝るのはこっちさね。悪いね。力になってやれなくて…」


さやか「そんな…」
185 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:41:53.26 ID:oOhp1J3O0
アゲハ「どれ。私も手伝うとしようかねぇ…」


さやか「良いですよ! 無理しないで…!」


アゲハ「無理ばかりする若者を見て、私も久々に真似てみたくなったのさ…。

    どっこいせ!」


さやか「お婆ちゃん…。ありがとう…」





ワコ「ちょっと急にそんな事言われたって…!」


ワコ「私達にだって用事…!」


ワコ「切れちゃった…」



さやか「どうしたの…?」


ワコ「ごめん。私ちょっと出かけてくるね。

   部長がすごく大事な話があるから、すぐに来いって…」
186 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:42:50.26 ID:oOhp1J3O0
南十字学園部室。

電話を終えた少女がその携帯をスカートのポケットにしまう。

そして、その足元にひゅるりとキツネのような生物が現れ、一気に少女の肩に駆けあがった。


さらに、少女は誰かと会話を始める。

携帯はしまっているし、誰の姿も見えないのにどこからか声が響く…。




???「サリナ、君は僕達の役目…、そして犯してはならない事を忘れたのかい…?」


サリナ「知ってるよ。

    でも、その上でやらせてもらう……」



???「僕達にして良いのは見守る事だけだ…!

    どんな人間がそれを手にしようと、その力でどんな事をしようと、どんな結末を迎えようと見守り続けるだけと決めた筈だ…」


サリナ「わかってるよ。それが私達『エントロピープル』だから」


???「だったら…」
187 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:43:32.35 ID:oOhp1J3O0
サリナ「それでも私はやるよ」


???「サリナ…!」



サリナ「私達には『感情』が芽生えてしまった。だからこそ、彼らとは違い魔力を封じ、

    それに連なるモノを与えて回ったり、使い方を教えることを禁じた…」


???「そうだ。『感情』を以て、それらを行使したり、

    気に入った人間にだけそれを与えて回るのは、それこそ本当の『侵略者』と変わらない…」


サリナ「そうかな…?」


???「………」



サリナ「私達は『感情』があったからこそ、自らを犠牲にしてでも…。

    彼女を、仲間を、世界を守ろうとしたあの子の行動に心打たれた…」


???「それは僕だって同じだ。だけど…」




サリナ「それなのに何もしないの…?」
188 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:44:23.15 ID:oOhp1J3O0
???「僕達は…」


サリナ「それじゃ、『感情』を持っていない彼らと同じ。

    ううん…。それを知り、感じていながら何もしないなら、彼らと比較するのも失礼な最低な異星人だよ…」



???「だからと言って…」


サリナ「いいよ。あなたまで巻き込もうとは思わない。

    私の事は後で好きなように裁いてくれて良い…。それでも…」



???「どうしても、やるんだね…?」


サリナ「うん…」


???「………」



少女の肩に居た狐のような生物はひゅるりとその足元に降りると、

トコトコと駆け出して部屋のどこかへ消えた。
189 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:45:17.18 ID:oOhp1J3O0
数分後。

同じく南十字学園演劇部部室。

強引に集められた三人は呆れ半分、怒り半分と言った印象で元凶の少女を見つめる。




ワコ「さぁ! どういう用件で呼んだのか言ってください!

   急ぎの用事があるんで、手短にお願いします!」



サリナ「皆の為に頑張る子ってさぁ…、素敵だと思わない?」


ワコ「何を言って…!」






タクト「思います」


スガタ「僕も。だから、どうしても助けたくなる…」




ワコ「……………私も。その子を救いたいって頑張ってる子もいるし」
190 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:46:07.30 ID:oOhp1J3O0
サリナ「じゃあ、ここに居る皆が満場一致な訳だ…」


タクト「知ってるんですか? 助け方…」




サリナ「……………知ってるよ」


ワコ「教えて貰えませんか!?」




サリナ「すごく危険な賭けになるよ…?」


スガタ「それでもやる…。どうしても助けたい…」




サリナ「君達三人は勿論、さやかちゃんも、この世界すらも危険に晒すことになる。

    良いの? それでもやるの…?」



いつも気さくで明るいサリナ部長。

真剣な様子を見せるのはお芝居の中だけで…。


だけど、今日の彼女のその表情は演技などではなく、真剣そのもので…。
191 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:46:58.36 ID:oOhp1J3O0
タクト「やります…!」


サリナ「気軽に言うな…! 君達がやって来た事全てと相反する行為でもあるんだよ…!?

    関係のない全てを巻き込む危険性を孕んだ行為でもある…!

    それでも自分達を押し通して、それを成すと言えるの…!?」



部長の言っている事は最もだ。

部長が何を言いたいのかはわからないけど、

失敗すれば世界を巻き込むような事なら、場合によってはアイツのしようとした事と何も変わらなくなるかもしれない。

だけど…。




タクト「でも………、一人の女の子を犠牲にして助かる世界が正しいとも思えない。

    僕自身、そんな世界で甘んじていたくない…!」



サリナ「身勝手だと言う自覚はあるんだね…?

    失敗できないと言う危機意識はあるんだね…?」


スガタ「当然です…!」
192 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:47:52.22 ID:oOhp1J3O0
スガタ「それでも、あの子の事を無視する事は出来ない…。

    そもそも、この世界はあの子に救われた。だったら今度は僕らと世界であの子を助ける番だ…」


ワコ「巫女としては、こんな事言っちゃ駄目なんだろうけど…。

   手段があるのなら、賭けてみたい…。どうしても泣かせたくない子がいるから…」


タクト「やり遂げます。僕達で。さやかの力も借りればきっと…。

    いや、絶対にできる。だから………教えてください」





サリナ「君達は何時でも眩しいね…。

    だけど、今日は一際輝いてる…」



サリナ「よろしい。教えてしんぜよう」


サリナ「『ザメク』の使い方。そして、もう一つの隠された能力を…」
193 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:48:43.14 ID:oOhp1J3O0
『ザメク』

それは、先の騒乱、そして少女を傷付ける元凶ともなった存在。

恐るべき力と、恐るべき邪心を持つ、最高にして最強のサイバディ。

その力は時間すら操り、この星すら滅ぼす…。




サリナ「『時間操作』の話は、駄目親父に聞いたよね?

    それとは他に第五フェーズのザメクにはもう一つ操れるモノがある」


タクト「まさか…」


サリナ「そう。『空間操作』。

    第五フェーズのザメクの力を持ってすれば、次元の壁を操り、彼女達を元の世界に帰す事すら可能」



ワコ「だけど、第五フェーズのザメクは一度動き出せば、この星のリビドーを食い尽す邪悪な存在だって…」



サリナ「そうだね。だから、ゼロ時間の中でアイツと戦って勝っておく必要がある」


スガタ「ザメクに勝つ…? まさか、アレを制御する方法があるのか…?」
194 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:49:32.89 ID:oOhp1J3O0
それまでの真剣そのものだった部長の表情が見るからに崩れる。

どこかお茶らけたその顔はいつもの部長のそれだ。




サリナ「あるよ。最も、それをやり遂げた者は過去に一度もいないけどね…。

    だからこそ、シンパシーが存在する訳だし」


スガタ「その言い方じゃ、あのサイバディを使う…って言う片手落ちではなさそうですね」


サリナ「そらそうでしょ。アレを駄目親父が手放すならこんな苦労はしてない訳だし。

    それにアレはもう使い物にならないと思うよ」


タクト「……………」




ワコ「じゃあ、何を…?」



サリナ「簡単だよ。巫女の力を使うんだよ」
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2011/07/11(月) 00:49:43.67 ID:2tDa3r/Bo
あ、なるほど時空の「空」の方ね
196 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:50:22.70 ID:oOhp1J3O0
ワコ「巫女の力…?」


サリナ「格下である筈のシンパシーの能力が通用する事からわかると思うけど、案外ザメクは外部からの干渉に弱い。

    最も、そんな真似ができるのはシンパシーと…」


ワコ「巫女のサイバディだけって事ですか…?

   でも、そんな力聞いたことが…」




サリナ「何言ってるの…? いつもやってるじゃない。

    それの応用だよ。応用」


ワコ「いつも…?」


タクト「………まさか、ゼロ時間?」




サリナ「そ。アレの本来の性質は何…?」


スガタ「サイバディが外に出ないよう、その力を封じる…。

    そうか…!」
197 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:50:56.56 ID:oOhp1J3O0
サリナ「ぴんぽ〜ん! 巫女のサイバディには本来他のサイバディの力を封じる能力がある。

    そして、それは勿論ザメクも例外じゃない。と言うか、その主な対象がザメクだしね」


ワコ「それじゃあ、私のサイバディを使えば…」


サリナ「うん。だけど、それには幾つもの危険が付きまとう」



スガタ「…………」



そう言うと部長はまずスガタの方に顔を向ける。

その横顔はさっきまでの、どこかおちゃらけた何時ものそれとは違う。

真剣そのものな、ここで話を切り出した時の表情だった…。
198 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:52:05.58 ID:oOhp1J3O0
サリナ「一つ目はザメクのドライバーの危険。

    それに特化したシンパシーと違い、巫女のサイバディの制御能力はそう強くない。

    だから、内側と外側から同時に制御を掛けていく必要があるんだけど…」


スガタ「その間も当然、奴は暴れ、抵抗する。

    それはすなわち、戦闘中には都度リビドーを徴収される…そう言う事ですか?」


サリナ「そう、並大抵な事では耐えれない。

    君もそれこそ、彼女くらいの捨て身の覚悟がいるかもね…?」



スガタ「やります…。本来ならアレは俺の役目だった筈だ。

    だから…。だからこそ…」



スガタの返事を聞きつつ、部長は次の相手に体を向ける。

その相手はワコ。

心なしかさっきスガタを見ている時よりも、さらに真剣に見える…。
199 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:52:53.57 ID:oOhp1J3O0
サリナ「そう…。じゃあ、次にワコ。

    一番危険が大きいのが彼だとしたら、一番責任が重いのはアンタになる」


ワコ「私が途中で倒れれば、制御前のザメクが世界に出ることになる…。

   それは、人類が滅ぶ事に等しい…からですよね?」


サリナ「よくわかってるね。さすが巫女」



ワコ「でも、私がザメクの制御を行ってる限り、第五フェーズには行けないんじゃないですか?

   かと言って倒れたら、制御が…」



サリナ「あぁ…。それは大丈夫。アンタが行うのは正しくはザメクのドライバーの補助。

    だから、ザメクの方で制御に成功したなら、アンタのサイバディは壊しちゃっていい。

    と言うか、そうしないと第五フェーズにならないし」



そう言うと最後に部長は僕に顔を向ける。

改めて、その真剣な眼差しが向けられる…。
200 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:53:57.40 ID:oOhp1J3O0
サリナ「そして、最後にそのワコを守るのがタクトとさやかの役目。

    二人の強さは耳にしてるけど、今回のは難しいよ。

    今までと違って、ただ相手をぶっとばせば良い訳じゃないからね」


タクト「…………」


サリナ「ワコを守りつつ、ザメクを生かさず殺さずの状態にする…。

    やり過ぎればスガタが危ないし、やらな過ぎればワコや自分達が苦しくなる…」


タクト「それでも…、やってみせます」



サリナ「………言いきったね」


タクト「………はい」



そう。この戦いは僕の望む戦いでもあるから…。

失敗なんてしない。

出来る訳がない…。


その身を呈して、敵…あの糞親父と刺し違える形になった杏子ちゃんを救う…。

それが一つ…。



そしてもう一つ…。
201 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:54:34.79 ID:oOhp1J3O0
――あたしはタクトさんに夢を叶えて貰いたい――



あの子はずっとそう言って戦ってくれた。

勿論、それだけじゃないのもわかってる。


だけど、あの子が僕の為にずっと頑張ってくれたのは確かだ。

そして、僕がそんなあの子に助けられてきた事も…。



なのに、僕は今まであの子の為に何かをしてあげる事はできなかった。

ずっと『やりたい』と…。

ずっと『やるべき』と感じていた…。


だから、今の僕は負けない…。

絶対に成功できる…。

ようやく、あの子の為に戦えるんだ…。
202 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:55:06.40 ID:oOhp1J3O0
サリナ「良い顔してるね」


タクト「そうですか…?」



サリナ「うん。これなら話した甲斐もあったかな…?」



タクト「本当にありがとうございますッ!」

スガタ「感謝します…」

ワコ「ありがとう…。部長…」



礼を良い、頭を下げた僕達を部長は笑顔で見送る。

その表情は、いつものどこか悪戯なものじゃなくて、僅かに寂しそうにも見えた…。




サリナ「うん。じゃあ、頑張れ。

    きっと君たちならできる。やり遂げられるから…」


タクト&スガタ&ワコ「「「はい!!!!!」」」
203 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:55:43.40 ID:oOhp1J3O0
サリナは三人の後ろ姿を最後まで見送る。

そして、その様子を物陰から狐のような生物が見張っている…。

三人もそろそろ離れきっただろうと言う頃合いになってから、狐のような生物は机に登り、サリナを見つめる。




サリナ「見逃してくれてありがとう…」


???「…………」


サリナ「私のした事は重罪だ…。

    だから、いいよ。軟禁でも追放でも処分でも…。好きなようにして」



???「わかった」


サリナ「…………」
204 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:57:02.61 ID:oOhp1J3O0
???「君を『エントロピープル』から除籍する」



サリナ「え…?」



???「だから、これからはただの『地球人』として生きると良い…」


サリナ「そんな…、そんなの罰になってな…」




???「君は『地球人』として仲間の為に知った情報を伝えただけ。

    そして、僕自身は『地球人』を裁く権限は持ち合わせていない…」


サリナ「屁理屈だよ。そんな……」




???「………正直言うとね。同じ気持ちだったんだ。

    だから、これ以上気に止める必要はないよ」


サリナ「優しいんだね…」


???「僕にも『感情』はあるからね…」



一人と一匹は、今校門を出た三人を眺め続ける。

今度こそ彼女たちに出来る事は見守り続けるだけ…。

それでも、最後までそれを全うすると、異星人達は改めて誓った…。
205 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/11(月) 00:58:23.11 ID:oOhp1J3O0
っし。
今日はここまで。



と言う訳で、作ってみた魔女図鑑風解説。

本当に一度やってみたかったので、反省はしていない。



Joan。豪腕の魔女。その性質は粗暴。

暴れていないと死んでしまう為、見かけた者を手当たり次第に襲って回る。

結界を貼る事すら忘れるいい加減な性格。



Cerasus。幻惑の魔女。その性質は悲哀。

周囲を見渡せる巨大な目玉を持ち、目があった者の不安や悲しみを増幅させ、

その者にとっての最悪の結果が現実に起きたと錯覚させ続ける。

それは魔女を倒しても悪夢と言う残滓として残り、断ち切るまで消える事は無い。

この呪縛から逃れるには、一点の曇りもない強い心を見せなければならない。



それでは、本日は閉会とする。

このスレを見てくれた者に栄光を…!
レスをくれた者達に祝福を…!

綺羅星☆
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2011/07/11(月) 01:06:15.88 ID:2tDa3r/Bo
乙綺羅星☆
一人と一匹?をこう解釈して進めるのは予想していなかったから驚いたけど、結構ありなクロスだと得心。

ついでに言うと、タクトがこのまま寝て終わるんじゃないかと心配したが杞憂で済んだようだwwwwww ネタ狙いにいくかとヒヤヒヤした
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/11(月) 01:24:19.39 ID:h5FAMLk1o
乙星☆
ヘッドは前座で終わったか…
エントロピープルはリアルタイムで名前が出たときに「ちょwwQBwwwwww」ってネタになってたのを思い出したww
ザメク戦どうなる…?
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/11(月) 01:43:58.78 ID:GoUGQNGro
乙星☆

こんなの見かけたんで貼っておこう。
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm14299368
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/07/11(月) 02:08:16.25 ID:GzfbRrgAO
乙星☆!!
>>206
部長達は原作の裏設定でもこんな感じ、原作だと最後まで条約守ってたが

スタドラの人気投票の結果出たね、シルバーの悪ふざけ組織票がなければタカシが12位でヒラ団員トップだったのに許すまじ
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/11(月) 09:00:03.61 ID:HBpjrhpo0


セリフに「…!」が多いからなんかカイジとか思いだしてちょっとワロタ
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/07/12(火) 00:45:24.48 ID:3WnH0B+Yo
綺羅星☆

タクトさん間にあってよかった
せめて最後くらい活躍しないと味方側はまどマギキャラ以外戦闘で何もしてないという状況が生まれるからな
ザメクに挑む彼らの結末や如何に?
つか、部長たちがさりげにQBと関係してて笑った
212 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 01:34:05.54 ID:3f+diCCm0
綺羅星☆

凄く遅くなりましたが、ぼちぼち落とします。
今日逃すと二日は投下が出来なそうなので…。


>>206
綺羅星☆
QBとEPは元から相反するモノって解釈してて『感情』の有無で何かをしようとは思ってました

>>207
乙星感謝☆
それも含めて派手に大暴れして貰いました
まぁ色々罪全部被せたのは申し訳ない気もするも、元々ヘッドさんが大半の元凶なんで諦めました

>>208
乙星感謝
それは自分のテンションアップ御用達の曲
一応、さやか編はSHINING☆STAR、杏子編はPrideの歌詞をちょっぴり意識してない事もない…

>>209
乙星感謝
タカシさんは組織票無くても10位ギリ圏外だし、もう色々含めてらしい気がしてきた
双子使えなかったのが残念。やっぱ人気高いなぁ…

>>210
乙感謝 ざわざわ…
それは癖だから仕方ないっ…!
仕方ない…!

>>211
綺羅星☆
見ての通りタクトさんとワコさんはこれから出番でっす
ヘッド戦は杏子メインにした時点で、タクトさんに強行突破されると困るし…
213 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 01:35:53.55 ID:3f+diCCm0
綺羅星十字団アジト。


デコボコした卓を中心に、仮面達が集まってその方針を決める総会の会場。

たび重なる騒乱で、ここ最近は行われずにいたそれを、久々に行うべく一同は集められた。

だが、その中央に集まる三人の幹部の空気は思わしくない。


一人の為に結んだ結束は、その少女の姿と共に消え去ってしまい、再びその関係には綻びが生じていた…。




スカーレットキス「大物だな…。新代表様は…! 就任して最初の総会からお休みか…!?」


頭取「………」


プロフェッサー・グリーン「よさないか…」



先も言った通り、中央にあるデコボコ卓の周囲にいる幹部は僅か三人。

『おとな銀行』『フィラメント』『科学ギルド』の代表だけである。


そして、ピンク髪のフィラメント代表は、『バニシングエージ』の代表席を睨みつけた。
214 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 01:37:36.00 ID:3f+diCCm0
プロフェッサー・グリーン「お前の気持ちもわかるが…。彼は規約上違反している訳ではないし、実際功績も上げた…」


スカーレットキス「じゃあ何か? 規約さえ違反しなければ仲間売って昇進するのも正しいってか!?」




頭取「なら、お前に何ができた…?」


スカーレットキス「何…?」




頭取「悔しいが、彼の策や行動…、それによる成果は上々だった。

   リスクも考えれば、少数のみで行動した事も合点も言った…」


スカーレットキス「だけど、アイツは杏子一人に全部押し付…」




頭取「その点は私もお前と同じ気持ちだ。

   だが、それ以前に私達は奴の動きや『No16』の事に気付けなかった…。

   そう考えれば彼だけを責め切れないのさ…」


スカーレットキス「チッ…」
215 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 01:38:46.07 ID:3f+diCCm0
説き伏せられ、納得がいかない様子ではあるもようやくピンク髪は沈黙する。

不満を漏らしていた人間も黙り、時間もとうに超え、議会が始まる準備は整った。

だが、その開始の声は未だにかからない…。




プロフェッサー・グリーン「………まだ、始めないのか?」


スカーレットキス「議長!!!!」



議長代行「ひっ! ひぃぃ! 今始めますぅ…! 少々お待ちをぉ…!」





スカーレットキス「あ…? 今の声誰だ…!?」


頭取「忘れたか? 議長も先日の作戦で負傷して離脱している…。

   彼女はその代行だそうだ…」


スカーレットキス「だからって、なんであんなガキにやらせてんだよ…。

         電気棺も全部潰れたし、綺羅星もいよいよお終いか!?」
216 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 01:39:52.32 ID:3f+diCCm0
頭取「ところで、今夜ここに集まった目的ってなんなの…?」


プロフェッサー・グリーン「さぁ…? 私も知らないな…?」


スカーレットキス「イヴローニュもいないようだけど…。出欠自由なら帰っても良いかな?

           暇じゃないんだしさ…!」



議長代行「え…えぇとぉ! お待たせしまたぁ…!

      これよりぃ、綺羅星ぃ、十字団っ、総会をぉ始めますぅ!!!!!」


スカーレットキス(チッ…。イラつく喋り方だな…)



ピンク髪のイラつきに怯えながらも、議長代行が議会の開始を告げる。

同時に、そんな彼女を救うように会場が暗転する…。
217 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 01:41:17.31 ID:3f+diCCm0
議長代行「今宵ぃ、新たな仲間をぉ、迎えるぅ…!」


議長代行「綺羅星ぃ十字団っ…、第一隊『エンペラー』代表ぉ…! キーーーーーーーーング!!!!!!」



どこか頼りなくも大きな声で、議長の代行を任された者はそう告げる。


第一隊『エンペラー』。

それは、王のシルシを持つ者を迎える為に敢えて空席にしたえる隊…。

それは事実上…。



そんな事を考える時間さえ与えず、でこぼこ卓の中央の穴から煙が吹き上げる。

暗い会場の中に上がったそれは卓の中の様子を、より闇の中へと隠したが、

それでも中から何かが競り上げてきているのはわかる…。
218 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 01:41:53.36 ID:3f+diCCm0
???「…………」


イヴローニュ「…………」



影が十分な高さになった頃、丁度煙は晴れ、その中の人影の正体が現れる…。

現れたのは、派手すぎる衣装に王冠を伴った仮面を付け、堂々と競り上げた玉座に座った少年…。

そして、その傍らに付き添うように座るイヴローニュの姿だった…。



さらに、少年はその仮面に手をかけ、その素顔を晒す…。
219 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 01:43:11.39 ID:3f+diCCm0
スガタ「…………」



プロフェッサー・グリーン「キング『ザメク』のドライバー?」


頭取「シンドウ・スガタが何故…!?」


スカーレットキス「スガタ君が…。スガタ君が来てくれたんだ…!」



疑問、不信、喜悦…。

会場中の人間が様々な感情で入り乱れる中、少年は一人立ち上がる。

さらに周囲を一睨みして、その威圧感を見せ付ける事でざわめく一同を黙らせる…。


そして、会場が黙ったのを確認し、ポーズを付けつつ叫ぶ…。




スガタ「綺羅星……!!!!!」


一同「「「綺羅星!!!!」」」



その力も結束も失った綺羅星十字団にやってきた王のドライバー。

敵対する筈の人物…。

中央に陣取るその存在は彼らに何を齎すのか…。
220 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 01:44:19.17 ID:3f+diCCm0
南十字島。

とあるホテルの一室。


自らの策謀を全て思うがまま進め、望むモノを手にした少年…。

だが、彼はその日から見続ける悪夢に魘され続けていた…。




弱り切った少女…。

その胸の中央に飾られる赤き宝石…。


それを砕く。

それだけの夢だ…。


ただ、その瞬間に決まって彼女はこう言う…。








――ありがとな――
221 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 01:45:01.28 ID:3f+diCCm0
タカシ「あぁぁぁぁッ!!!!!!!」







タカシ「また……、あの夢か……!?」



あの時からずっとこうだ…。

毎日毎日毎日毎日…。

あの夢ばかりを繰り返してみる…。
222 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 01:45:32.17 ID:3f+diCCm0
全て…、僕の考えた通りになった。



全てを滅ぼしかねないあの男に、もう長くは保たない超人である彼女をぶつける…。

彼女の救いたいモノを救わせ、僕自身もその功績を得る…。




全てうまく行った…。

予定通り、『バニシングエージ』も手に入った…。




うまく行った…。

うまく行った筈なんだ…。


それなのに…。

なんだ。この感情は…?
223 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 01:46:16.02 ID:3f+diCCm0
タカシ「あの子の寿命は放っておいても、よくてあと約三月程度…。

    その間に世界が滅びるくらいなら、自分を犠牲にしてでも世界を守りたいと思うだろう…。

    実際あの子もそう言って、この件を引き受けた…」



タカシ「遅かれ、早かれ…こうなる筈だった。

    僕はそれを少し早めた代わりに、彼女の望む華を添えたに過ぎない…」



タカシ「なのに…、なのに…!」




何故、あの程度の夢でこんなにも迷う…?

あんな夢をみたくらいで…。


約束通り、僕が彼女のソウルジェムを砕いた……。

ただ、それだけの夢じゃないか…。
224 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 01:46:45.88 ID:3f+diCCm0
何故、迷っている…?

何故、こんなにも自分を悔いている…?


何故、あの時安堵した…?

何故、今こんなにも申し訳ない気持ちになっている…?


いつものように弱い僕が、強い奴にくっ付いて伸し上がろうとして…。

強い彼女が倒れ、僕が残った…。

それだけじゃないか…。




なのに…、何故…?

何時ものように割り切る事が出来ない…?
225 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 01:47:33.96 ID:3f+diCCm0
考え続け、またも錯綜していた時…。

部屋のチャイムが鳴る。

鍵は開いている旨を伝えると客人はそのまま入って来た…。


そう、扉を開けて来たのは来る筈のない客人…。

元同僚のシモーヌだった…。




シモーヌ「こんばんは。未だに体調を崩してると聞いたのでお見舞いに来ました…」



タカシ「…………何故、ここに?」


シモーヌ「お見舞いだと言ったでしょう? 他意はありません。

     これ、ここに置いていきますね」



彼女が来る事は無いと思っていた。

僕は彼女の親友をこの手で騙し、利用したのだ…。

そんな彼女がここへ来るなどあり得ない…そう思っていた。


だが、彼女はやって来た。

あるいは無様な僕自身を笑いに来たのか…。
226 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 01:48:26.31 ID:3f+diCCm0
タカシ「僕を………恨んでいるんじゃないの?」


シモーヌ「………少し」


タカシ「だったら………」



シモーヌ「あの子を利用したあなたは確かに許せない。

      だけど、それ以外の点は間違ってはいない。むしろ、あなたの行動に私達は救われたとも言える…。

     だから………、少し」


タカシ「…………………」



シモーヌ「それに………、無力だったのは私も一緒だから。

      あなただけを責める事は、できない」
227 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 01:49:09.53 ID:3f+diCCm0
シモーヌ「それじゃあ、私は行きます…」


タカシ「また、あの子の所…?」


シモーヌ「はい………」




タカシ「………すまない、と伝えてくれないか?」


シモーヌ「伝えたくても、目覚めてくれないから…」







タカシ「…………」
228 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 01:50:01.99 ID:3f+diCCm0
自分の唇を噛みしめる。

そして、彼女が扉を閉めて視界から消え去ると、堂々巡りが再び始まる…。



僕は悔いているのか、悲しんでいるのか、それとも気の迷いなのか…。

何をしたいのか、何をしたくなかったのか…。



回り続ける…。

そして、闇に落ちてまた繰り返されるんだ…。

彼女の魂を打ち砕く夢が…。
229 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 01:51:01.58 ID:3f+diCCm0
南十字島、ひが日死神社跡。


王となる事を決めた少年は、星の明るい夜を歩く。

行き着く先は島の端。


この島で一番早く朝日の登る場所…。

そこで彼に全てを捧げた少女
の元へと…。




スガタ「君の協力のおかげで助かった…。

    これで明後日には、確率を上げたうえで実行できそうだ…」


ケイト「それでも、肝心な電気棺の補修は間に合わない…。本当の意味であなたの力には…」


スガタ「仕方ないさ…。それをやったのは彼女自身、本当の意味で自業自得だろう…」



ケイト「でも、わかるような気がします」


スガタ「………………」



ケイト「大切な誰かの為に全てを投げ捨てるあの子の覚悟…。

    自分の好きな人や周りの皆を欺いても、嫌われることになっても…」




スガタ「君も……、同じだったな」
230 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 01:51:51.03 ID:3f+diCCm0
ケイト「はい…。私が『ひが日死の巫女』である事をヘッドに知られた時は、本当に怖かった…。

    アイツは直接脅したりはしないけど、その気になれば何時でもあなたを殺せる事を匂わせていた…」


ケイト「その時に私は気付いたんだ。アイツに従う振りをして封印を破れば良いって…。

    そうしたら、あなたは本当のあなたになれる…、そう思っていたのに…」



スガタ「…………」


ケイト「行かないで、と言っても止められはしないんでしょう?」




スガタ「………すまない」
231 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 01:52:34.18 ID:3f+diCCm0
ケイト「わかっています。私もそうだったから…。

    だからこそ、私は最後まであなたの為に…」




スガタ「………今日まで、俺を守ってくれてありがとう」



ケイト「……………その言葉だけで十分です」




少女が望んでいた時間。それはあと少しでやって来る。

それをもう彼女が望んではいなくとも…。


それでも彼女は彼を止めない。

止められない…。


『誰かの為』に尽くす者の気持ちを、誰よりも知っているからこそ…。
232 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 01:53:33.27 ID:3f+diCCm0
シンドウ流古武術道場。


朝日が昇り、標準的な一般家庭の人達でも、眠気と目覚ましの音と格闘しているであろう時間…。

あたしは、スガタ師匠と剣の稽古に励んでいた…。




さやか「はぁッ!」


スガタ「!?」



さやか「…………もうちょいだったのに!」


スガタ「いや、今のは良かった。今日はここまでにしよう」


さやか「え…? でも今日は休日ですから、もう少し…」



スガタ「客人が来る事になっている。その前に汗を流しておいで」
233 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 01:54:35.10 ID:3f+diCCm0
シンドウ家の広過ぎるお風呂を一人借りて考える。

途中でメイドさんが「お背中を〜」と言って来たけど、セクハラ攻撃を受けた事もあるので丁重にお断りした。

まぁ、それ以上に一人で考えたかった…って言うのがある…。






さやか「夢の終わり、か……」



夢の終わり。

それはそのままの意味。

あたしの過ごす夢のような今の日々が終わりを告げる、そう言う意味で…。


話を聞かされたあの時から、どうしても意識してしまう…。
234 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 01:55:48.46 ID:3f+diCCm0
さやか『杏子を助ける方法が見つかったって、本当ですか…!?』


ワコ『うん。ただし、問題が二つ…』


スガタ『一つ目は、それに失敗すればこの世界が滅びるかもしれない…。

    それぐらい危険な賭けになる…』



さやか『まさか、ザメク…? 封印を解除してザメクを解放する気じゃ…!?』




スガタ『君は鋭いね…』


さやか『駄目です…! そんなの…。アイツが聞いたらなんて言うか…。

    それに、タクトさん達が守って来たモノが全部無駄になっちゃう…』
235 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 01:56:40.99 ID:3f+diCCm0
タクト『良いんだ。一人を犠牲にして皆で生き残ろうって言う世界の方が、きっと間違ってる…』




スガタ『それに俺達が守ろうとしたモノの中には、あの子だって入っている…。

    だからこそ、成功させて一人残らず守ってみせる…』




さやか『ッ……! ワコ姉!』


ワコ『巫女としてはあの二人に反対』





さやか『だったらあの二人に……』


ワコ『けど、アゲマキ・ワコとしては二人の意見に賛成』



タクト『多数決で決まりだね』
236 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 01:58:05.70 ID:3f+diCCm0
さやか『そう言う問題じゃ…!』



スガタ『どっちにしろ。ザメクとはどこかで誰かが向き合わなければならない。

    そして、シンパシーなんてモノのシルシが完全に沈黙した今は、確実にチャンスだ』


さやか『だけど、第五フェーズになったら他のサイバディだって外に出て…』


スガタ『それについてもちゃんと考えている。君は心配をしなくていいんだ…』




タクト『それよりももう一つの問題を話すね…』



ワコ『ザメクの力を使ってやれるのはあなた達を片道通行で、送り返してあげる事だけ』



スガタ『いや、やって出来ない事はないだろうが、リビドー不足のザメクにできる空間操作は、せいぜい数回だろう。

    それに僕達はその力を多用するつもりはない…』





タクト『もう、わかるよね…?』
237 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 01:59:25.18 ID:3f+diCCm0
お風呂から上がったあたしは服を着て、タオルで頭を拭きつつ、師匠を探す。

けど、そこに居たのは…。




タクト「おはよう。さやか」


さやか「おはようございます。客人ってタクトさんだったんですね。

    今日は明日の打ち合わせか何かに…」




タクト「いや、今日はデートのお誘いに来たんだ」


さやか「デート? スガタ師匠とどこかに…」


タクト「いやいや…。僕がスガタとデートする訳ないでしょ…。

    今日はさやかを誘いに来たんだよ」


さやか「へぇ…。あたしを…、デートに……」







さやか「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!?」
238 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:00:08.67 ID:3f+diCCm0
南十字島街行きのバス。


タクトさんに連れられて、それに乗った。

明日の打ち合わせはどうするのかって聞いたら、そんなモノは今晩で良いって…。

師匠と二人して、あたしに気を使ってくれたんだろうなぁ…。




さやか「でも、嬉しいな。まさかタクトさんがあたしを誘ってくれるなんて…」


タクト「はは…。僕もそう言うのには慣れてないから、ちょっと緊張した」



さやか「………タクトさんて結構奥手ですもんね」


タクト「否定はしない……かな?」



さやか「誘われる専門…?」


タクト「…………そう言われると、ちょっと情けない感じだよね」



さやか(そこも否定はしないから、やっぱりモテるんだなぁ…)
239 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:00:58.36 ID:3f+diCCm0
街の映画館。

そこであたし達はバスを降りた。

チケット売り場には少し列が出来ていたから、二人してそこに並びながら会話を続ける…。




さやか「まずは定番の映画館……、ですか?」


タクト「うん」




さやか「…………デートプラン考えたのワコ姉だったりして…?」


タクト「…………バレた?」
240 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:01:39.97 ID:3f+diCCm0
さやか「もう! ワコ姉まで…。そんなにあたしに気を使わなくたって…」


タクト「使ってないよ」


さやか「………?」





タクト「僕がさやかを誘いたいから、どう言う風にすれば楽しんでもらえるかワコに相談したんだ…」



さやか「……真顔で言われると、さすがのさやかちゃんも照れちゃいますよっと///」


タクト「そ、それはごめん…///」
241 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:02:19.75 ID:3f+diCCm0
────────

────

──


さやか「あ〜! 面白かった!

    こう言う見てて燃える大作はやっぱり良いな〜!」


タクト「恋愛モノの方が雰囲気は出るって言われたけど…。

    あの映画見たがってたしね」



さやか「恋愛モノは恋愛モノで嫌いじゃないですけど…」


タクト「うん。知ってる。

    僕が寝ちゃうと行けないから、こっちにしとけってワコに言われたんだ…」




さやか「ぷっ……」


タクト「………///」


さやか「あはははははははははははははははは」


タクト「さやか笑い過ぎ…///」
242 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:03:20.44 ID:3f+diCCm0
映画の話で盛り上がりながら、あたし達は道を歩く。


時間はちょうど昼時で、お腹も空き、街の飲食店も活気づいている。

そして、あたしの趣味を理解しているワコ姉のプランにぬかりはなかった…。




さやか「おぉ…、ホットドッグ…」


タクト「お〜い。さやかちゃ〜ん。目が輝いてるよ〜」



さやか「う…。いけない、いけない…。タクトさんの前でとんだ醜態を…」


タクト「醜態って…。

    でも、良いと思うよ」


さやか「…?」




タクト「そう言う自然体の方が、さやからしくて」


さやか「………///」



これだもんなぁ…。

満面の笑顔でそれ言われたら、誰だって意識しちゃうって…。

あたしは頬を掻きながら、照れくさくなって目線を反らす…。
243 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:04:32.21 ID:3f+diCCm0
食事を済ませ、腹ごなしも含めて歩き続ける。

会話が切れて、たまたま目に入ったのは眼鏡屋。

勿論プランには入っていないけど、あたしは少しだけそれを眺めていた。




さやか「…………眼鏡か」



タクト「ん? 眼鏡になんか思い入れあるの…?」


さやか「いや、ちょっと前までは主に自宅で使ったりしてたんですけど…。

    こっち来てからは、コンタクトと魔法で誤魔化してたから…」



タクト「さやかって目悪かったっけ…?」


さやか「実はあんまり良くないんです。

    ただ眼鏡つけると野暮ったいし、ずっとコンタクト使ってたんですけど…」




タクト「眼鏡さやかか…。見てみたいかも…」


さやか「ちょっと…、タクトさん…!?」
244 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:05:15.57 ID:3f+diCCm0
子供のような目をしたタクトさんに手を引っ張られ、めがね屋へ強制入店。

その際、手を繋ぐ形になってドギマギしたのは勿論言うまでもない…。


で、そうした張本人は店員さんに一礼した後、人の気も知らずにめがねの物色を始めてる…。




タクト「…………う〜ん。これとかかな?」


店員「あなたが使うんですか…?」


タクト「いや、あっちの子に似合うモノはないかな〜と…」




さやか「…………」






店員「でしたら、意外性を持ってこれとか…!」


タクト「おぉ…、これは!」
245 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:06:15.60 ID:3f+diCCm0
タクトさんは楕円形の赤い縁のめがねを持ってくる。

野暮ったさは無いけど、これってあたしと正反対な頭よさそうな人が付けてそうな…。




タクト「…………」


さやか「あの………」




タクト「うん! イイ!」


店長「確かに!」


タクト「委員長眼鏡の意外性か…」


店長「これは素晴らしい! また一人偉大な眼鏡っ子が誕生しましたね!」



さやか「べ、べた褒めされても何も出ませんよ…!?///」
246 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:07:17.90 ID:3f+diCCm0
その後も二人に褒め殺しにされ、結局そのめがねを買う羽目になる。

タクトさんがお金を出すと言って来たけど、フレームだけでも結構なお値段なので丁重にお断りする。


あたしはそう言う所には妙にプライドがあるから、『女が奢られて当然』みたいな風潮はあんまり好ましく思ってない。

実際、あたしの親友のまどかの母親はバリバリのキャリアウーマンで、父親が専業主夫をしているし…。

それを見ると尚更、女が守られて優しくされて…、みたいなのは、さやかちゃん的には抵抗がある訳で…。




それは、置いといて…。

ここに来て、まさかこんなモノを買う事になるとは…。

あそこまで褒められて買わないなんて選択肢は、そりゃ出ないけど…。


ともかく、すっかりタクトさんペースになってる…。

あたしはこう言うのに慣れて無いから、無理もないには無いけど…。





はい…///

あたし、舞い上がっちゃってますね…///
247 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:08:20.94 ID:3f+diCCm0
次は、近くにあるゲームセンターに入る。

こう言うのが好きかどうかは、女の子によると思う。


けど、あたしはこう言うのは好きだから、勿論立ち寄ることになって…。

目が悪いのがそのせいかと言われると微妙な所…。

まぁ、その程度にはゲーム好きだったりする。





タクト「そう言えば、さやかはゲーム得意だったよね」


さやか「得意って言うか普通に好きなんで、それ相応には得意ですよ」




タクト「前に遊びに来た時もそう言いながら、相当な腕前を見せ付けてくれたよね…!」


さやか「お…。銀河美少年の時のタクトさんのお顔ですね…?」




タクト「十番勝負とか、行っちゃう?」


さやか「良いですね…! 負けた方がアイス驕りって事で!」
248 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:10:34.99 ID:3f+diCCm0
公園のベンチに座りながら、三段重ねのアイスを右手に持って頬張る。

左手にはもう一つの戦利品であるツーショットのプリクラ写真…。

結果は言うまでもないでしょう。




さやか「〜♪」


タクト「参りました……」



さやか「イッツアビクトリー♪」


タクト「はは…、お株まで奪われました…」



さやか「でも、プリクラはみんなで撮りたかったな…。

    また来れたらよか…」


タクト「そう言うと思ってました」



さやか「…?」
249 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:12:50.78 ID:3f+diCCm0
タクト「4時からはスガタとワコも来て、それからカラオケって流れになってる」


さやか「え………、でも………」



タクト「状況が状況じゃなかったら今度はみんなで来よう、で済ませたんだけどね…。

    だけど…」


さやか「ごめんなさい…」



タクト「さやかが謝る事じゃないよ。それに僕自身も四人の思い出も作っておきたいと思ってるから。

    だから、最初からワコに相談はしておいたんだ」


さやか「でも…」



憧れていたタクトさんが誘ってくれた初めてのデート。

凄く楽しい…。

楽しいのに…。


明日であたしは………。

そう思うとワコ姉や師匠の事も浮かんでくる…。


せっかくタクトさんがこんなに…。
250 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:14:33.69 ID:3f+diCCm0
タクトさんの前で余計な事を考えてたあたしに救い船が来る。


それは、こっちに来てから久しく聞かなくなったあの楽器の音色。

心を洗うように綺麗で、少しだけ切なくなるようなあの楽器が出す独特の旋律は、自ずとその場の流れを優しく変える…。




さやか「この音色…」


タクト「バイオリン……?」



さやか「懐かしいなぁ…。ちょっと前までほとんど毎日それを聞いて…。

    そのCDを探して回ったりして…」


タクト「さやか………」



さやか「あたし……。バイオリンの音色が大好きなんです。

    恭介も、仁美も、まどかも…、あの世界も…、全部恨んで魔女になろうとした時でさえ、

    アイツの弾いてくれたこの楽器の音色だけは忘れられなかった………」
251 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:16:07.69 ID:3f+diCCm0
さやか「心が真っ黒になって、何もかも拒絶してるのに、アイツの弾いてくれた曲だけは忘れたく無くて…。

    何もかも無くなっていくのに、頭の中でリピートされるそれだけはどんどん強くなっていって…」


さやか「かつて、自分が感動したアイツのバイオリン演奏…。

    幸せな気持ちで聞いたモノもいっぱいあった筈なのに…。

    どの曲を聞いても悲しくて、辛くて、もうどうしようもなくて…」


さやか「今思えば当然ですよね…。自分の心の寂しさを埋める紛らわしの為に、それを聞きたかったんだから…」





タクト「……………」



遠くを見つめ、あの時の事をゆっくりと思いだす。


後悔ともまた違う。

悔いている訳じゃないから、冷静に見つめ直せる…。

だけど、その表情はやっぱりいつものあたしのそれとは違って映るんだろう…。



不安そうにあたしを見つめるタクトさん…。


その彼のその表情が吹き飛ぶように、あたしは思い切り微笑む。
252 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:17:51.39 ID:3f+diCCm0
さやか「だから、この音色をこんな幸せな気持ちで聞く日がまた来るなんて思ってなかった…」



さやか「それも全部タクトさんのおかげです…。

    暴走したレシュバルからあたしを助けて…、魔法少女だったあたしを称えてくれて…。その後だってずっと…。

    今のあたしがあるのは…」



タクト「ストップ」


さやか「…………?」





タクト「それは、さやか自身が頑張ったからだよ。

    僕は時折少し手助けしたり、話を聞いたりしただけ…」
253 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:18:37.09 ID:3f+diCCm0
さやか「それは…」



タクト「それにね…。そんな事を言ったら僕だって同じだ。

    僕の為にって頑張ってくれる君を見て…。そして、前を見続ける強い君が居るから…。

    僕も負けられない、僕もその想いに応えたいって頑張れたんだ…」



さやか「タクトさん…………」



タクト「だからって訳じゃないけど……。

    受け取って欲しいモノがあるんだ……」
254 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:19:25.56 ID:3f+diCCm0
タクトさんが手渡してくれたのは、少し年季の入った金色の時計…。

中には綺麗な黒髪の女の人が写真が入っている…。

何時も肌身離さずタクトさんが持っていた時計……。




さやか「これ…」


タクト「それはね…、僕の母さんなんだ」




さやか「そんな! そんな大事なモノ受け取れません…!」



タクト「大事なモノだからこそ……、受け取って欲しい。

    大事な君に………」




タクト「強い君には必要ないかもしれない…。

    それでも受け取って欲しい…。僕と過ごした証として…」




さやか「嫌だな……、買い被り過ぎです…」
255 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:20:18.08 ID:3f+diCCm0
さやか「タクトさん…………、あたし全然強くなんて………」



さやか「本当は………、別れたくない………。

    タクトさんも、ワコ姉も、師匠も、この島も、住んでいる人達も……。

    みんな………、みんな大好きだから………」




タクト「わかってる………」


タクト「だから………、今日は思い切り泣いて良いよ………」




さやか「タクト………さんっ…………」
256 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:20:44.85 ID:3f+diCCm0
あたしは思い切り泣いた。

タクトさんと出会ったあの時と同じように……。

優しいこの人の腕の中で……。



後で思い出したら恥ずかしくなるくらい大泣きした。


あの時と同じように……、弱い自分をここに置いていく為に……。

タクトさんが認めてくれた強い自分として、明日の戦いをやり遂げる為に……。


杏子を救う為に……。
257 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:21:31.85 ID:3f+diCCm0
────────

────

──



スガタ「ほら、ワコ。あそこだよ」


ワコ「おっ。いたいた! お〜い!」



タクト「こっちこっち!」





ワコ「今日は楽しめたのかなぁ〜って、さやかの目腫れてない…?」


スガタ「タクト………?」





タクト「へ…? なんか僕が泣かせたみたいな流れになってる…?」


ワコ「泣かせたんだ…!」


スガタ「これはどう言う事かな…? タクト…?」
258 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:22:22.68 ID:3f+diCCm0
タクト「いや、違うんだって…! ねぇ、さやか…?」


さやか「えへへ…///」



スガタ「満面の笑顔…」


ワコ「なんか、それはそれで……」




タクト「そ、それは良いからさ! さぁ早くカラオケへ行こうっ」


さやか「そうですねっ。ほら、師匠とワコ姉も早くっ」




スガタ「お、おい…!」


ワコ「ちょ、ちょっと腕引っ張らなくてもちゃんと行くから…!」




あたしに許された最後の夢の時間。

今はそれだけを考えて、それを満喫しよう。


明日の事は明日考える。

だから、今日は…。

今日だけは…。



幸せな時間を…。
259 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:23:11.91 ID:3f+diCCm0
翌日。


南十字学園校庭。

あたし達が過ごした思い出の場所…。


その場所をその目に焼き付けながら、あたしは最後の戦いに挑む…。



『ザメク』

コイツに勝つ事が、杏子を救い、本当の意味でこの世界を救う事に繋がるのなら…。




タクト「……………」


ワコ「…………」


さやか「…………」




スガタ「よし。始めるぞ!」



タクト&ワコ&さやか「アプリボワゼェェェェェェェェ!!!!!!」
260 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:24:22.36 ID:3f+diCCm0
あたし達の叫びに合わせてゼロ時間が起動する…。

タクトさんはタウバーン、あたしはレシュバル…。

それぞれ次元を超えて現れたサイバディに乗り込み、さらにそのままスターソードを引き抜く。


そして、その間にさらに見慣れないサイバディが二機、天にある封印の祭壇から舞い降りてくる…。





ワコ「……………」


ケイト「……………」



一機は白と金色の女性的なサイバディ、皆水の封印を守るワコ姉の『ワウナ』。

そして、もう一機も女性的で薄緑の長髪が特徴的な、ひが日死の封印を守る『ケトナ』。


最後の戦いの為に、ゼロ時間を守る巫女のサイバディがその地へと降り立つ…。



さらに周囲に見えるのは、いつもと同じ仮面の群衆…。
261 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:25:35.65 ID:3f+diCCm0
スカーレットキス「……………」


プロフェッサー・グリーン「……………」


頭取「…………」





さやか「綺羅星十字団…!」


スガタ「気にするな…。彼らは味方だ…」


さやか「でも……」




ケイト「彼女を思っているのが、自分だけだとは思わない事だ。

    我々綺羅星十字団にとっても彼女は仲間であり、英雄に当る…」


さやか「…………」



ケイト「だから………、見届けさせてやってくれ」
262 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:26:27.71 ID:3f+diCCm0
綺羅星十字団。

あたしにとっては敵だったけど、アイツはずっと彼らと行動を共にしていた…。



あたしは彼らの事はわからない…。

けど、杏子にとっては、大事な居場所だったのかもしれない…。

実際、あの時のこの人達は倒れた杏子を本気で心配していように見えた…。



コイツらの事は信用はしきれない…。

でも、大事な人を思う…、その気持ちは理解できるから。


あたしは周囲を一度だけ見回し、目の前のサイバディに目を向けた。
263 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:29:35.32 ID:3f+diCCm0
ケイト「…………まずは、私の封印を壊して貰おう」



その意味は実に単純。

ひが日死の封印は『ザメク』の封印と直結している。

だから、彼女の助力は得られない。

それでも、この一件に協力的な姿勢を取ってくれているのは確かだ…。




ケイト「綺羅星十字団を代表して……、そして、綺羅星で無いニチ・ケイト一個人として言う…」



ケイト「佐倉杏子を……、

    そして、スガタ君を頼む………」




さやか「はいッ!」



あたしは黄金に輝くスターソードを用いて、その美しいサイバディの腹部を両断する…。

狙われるその役割からなのか、巫女のサイバディのコクピットはかなり頑丈らしい。

直撃さえ避ければ、中のドライバーにまず影響は出ないそうだ…。
264 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:30:21.40 ID:3f+diCCm0
ケイト「くぅぅぅッ……!」



復元が可能な戦士のそれと違い、巫女のサイバディとシルシは完全にリンクしている。

すなわち、サイバディが壊れればシルシも消え、そのまま封印も解かれる…。



シルシを失う時の独特な苦痛が、イヴローニュに呻き声をあげさせる…。

不安になったあたしを他所に、壊れた巫女のサイバディが放つ爆風の中からイヴローニュ本人が現れ、

すぐに、ゼロ時間特有の泡のような球体桟敷に包まれて、浮かぶ…。




そして、その向こうにある地面を捲き上げ、巨大な何かが競り上がって来る…。
265 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:30:59.74 ID:3f+diCCm0
ケイト「ザメク……!」




スガタ「いよいよ来たか…」


タクト「あれがザメクか…」


さやか「大きい…」



他のサイバディを完全に圧倒する蒼い巨体。

その肩周りには、柱のような巨大な何かを八つほど伴い、

金色の仮面のような頭部の額には、そのザメクのシルシの形を模した刻印がある。



見ているだけで他者を威圧するその存在…。

それはあたしの友人を救う存在と言うよりは、やはり世界を滅ぼす禍々しい存在として映っていた…。
266 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:31:42.34 ID:3f+diCCm0
そのザメクを背にし、残った三機のサイバディに乗り込んだあたし達に師匠が呼びかける…。

作戦を開始する為の最終確認だ…。




スガタ「…………始めるぞ」




タクト「あぁ……!」


ワコ「何時でもどうぞ………!」


さやか「………よろしく、お願いしますッ!」






スガタ「よし……!」


スガタ「アプリボワゼ…! ザメクッ!!!!!!!!」



アプリボワゼ。

それを望んでいなかった筈の師匠が、その言葉を発すると同時にその体が光となって飛んでいく。

そして、その光はザメクの胸の中央にあるコクピットへと飲まれた…。
267 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:32:29.11 ID:3f+diCCm0
ザメク「…………」



邪悪な暴君は完全に目覚めの時を迎えた…。


その両眼が輝き、少しづつ…。

少しづつ、その巨体が身震いをするように動き始める…。


右腕がぴくりと動いたけど、先に完全に動いたのは左腕…。

試すかのようにその掌を見つめ、握りしめる。


そうこうしている間に右腕も動き、やがてその両足で一歩、二歩と歩む…。


当然のようにその巨体の一歩は地響きを生み、ゼロ時間を震撼させる…。
268 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:33:09.17 ID:3f+diCCm0
ザメク「グォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!」





タクト「来るぞ!」



やがて、その暴君は最後に残った封印の残る空を見つめ、悪魔のような唸りを上げる。


その咆哮は、ゼロ時間の上空に無数の雷を呼ぶ。

勿論、自然界の雷とは地は違う。


次々に地上へ向けて突き刺さるそれは、多少雑ではありながらも確実にこちらを狙っている…。



タウバーンとレシュバルはパイルジェットで、ワコ姉のワウナは元々持っている飛行機能で飛んでいる。

そのまま上空に居ると回避が難しいが、ザメクの巨体と攻撃の威力を予想したら機動力は落としたくない。

結局、あたし達の三機は低空飛行で雷撃を掻い潜りながら、ザメクの元へと向かって行く…。
269 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:33:45.43 ID:3f+diCCm0
ザメク「グォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!」





タクト「来るぞ!」



やがて、その暴君は最後に残った封印の残る空を見つめ、悪魔のような唸りを上げる。


その咆哮は、ゼロ時間の上空に無数の雷を呼ぶ。

勿論、自然界の雷とは地は違う。


次々に地上へ向けて突き刺さるそれは、多少雑ではありながらも確実にこちらを狙っている…。



タウバーンとレシュバルはパイルジェットで、ワコ姉のワウナは元々持っている飛行機能で飛んでいる。

そのまま上空に居ると回避が難しいが、ザメクの巨体と攻撃の威力を予想したら機動力は落としたくない。

結局、あたし達の三機は低空飛行で雷撃を掻い潜りながら、ザメクの元へと向かって行く…。
270 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:34:19.72 ID:3f+diCCm0
ザメク「グォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!」





タクト「来るぞ!」



やがて、その暴君は最後に残った封印の残る空を見つめ、悪魔のような唸りを上げる。


その咆哮は、ゼロ時間の上空に無数の雷を呼ぶ。

勿論、自然界の雷とは地は違う。


次々に地上へ向けて突き刺さるそれは、多少雑ではありながらも確実にこちらを狙っている…。



タウバーンとレシュバルはパイルジェットで、ワコ姉のワウナは元々持っている飛行機能で飛んでいる。

そのまま上空に居ると回避が難しいが、ザメクの巨体と攻撃の威力を予想したら機動力は落としたくない。

結局、あたし達の三機は低空飛行で雷撃を掻い潜りながら、ザメクの元へと向かって行く…。
271 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:34:55.03 ID:3f+diCCm0
ザメク「グォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!」





タクト「来るぞ!」



やがて、その暴君は最後に残った封印の残る空を見つめ、悪魔のような唸りを上げる。


その咆哮は、ゼロ時間の上空に無数の雷を呼ぶ。

勿論、自然界の雷とは地は違う。


次々に地上へ向けて突き刺さるそれは、多少雑ではありながらも確実にこちらを狙っている…。



タウバーンとレシュバルはパイルジェットで、ワコ姉のワウナは元々持っている飛行機能で飛んでいる。

そのまま上空に居ると回避が難しいが、ザメクの巨体と攻撃の威力を予想したら機動力は落としたくない。

結局、あたし達の三機は低空飛行で雷撃を掻い潜りながら、ザメクの元へと向かって行く…。
272 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:35:51.45 ID:3f+diCCm0
タクト「まずは接近する…! 僕が切り拓…」


さやか「タクトさんはワコ姉を頼みます…!」




タクト「さやか!」


さやか「直線の速度だけなら、あたしの方が上です!

    逆にあたしの雑な動きじゃ、ワコ姉を守り切れないかもしれない!」



ワコ「さやか! 無茶だよ!」



さやか「百も承知です! でも、無茶するのがあたしの役目です!

    だから…!」



そう言って、一度地上に降りつつクラウチングのモーションを取る。

まずはあたしがザメクに近接して火器を潰し、とりあえずワコ姉とタクトさんが接近しやすいようにする…。


あたしのレシュバルの武装の多くは、パイルからの派生だ。

それをジェットに用いる以上、空中戦での戦闘力はタクトさんに大きく劣ってしまう。

それなら、多少体を張るくらいの事はやらないと足手まといになる。
273 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:36:59.10 ID:3f+diCCm0
右手に剣を握りつつも、クラウチングの構えをとる。

それを見たタクトさんが、タウ・銀河・ビームを敵の顔面に向けて放つ。


勿論、それを逃す手はない。

地面を蹴り、同時にパイルを最大加速させる。


低空飛行から、一気に高度を上げつつザメクへ向かって飛ぶ…。






さやか「はぁぁぁぁぁぁッ!」


ザメクはタウバーンのビームをその巨大な右の掌で受け止める。

だが、あたしはその右手に隠れるように高度を合わせる。



飛び出たタイミングがベターだった。

今の速度なら、丁度繰り出した奴自身のその右手がブラインドになる。


そう思いつつ、右手の剣を居合のように左の腰に回そうとした時だった…。
274 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:38:04.18 ID:3f+diCCm0
さやか「うぐぅッ」



ザメクの頭上から放たれた雷撃がレシュバルを直撃。

とっさにスターソードを構えて防御の姿勢を取るも、そんなモノで防げる筈もない。

防御した剣ごと大きな衝撃を食らい、押し返されるように大きく後方へ飛んでいく…。



さらに、それをザメクは逃さない。

降らせる雷と、自分の体の付近から放つ雷撃は別モノないし、性能が段違いなんだろう。

まるで狙撃手が狙ったかのように、吹き飛んだレシュバルにさらに直撃するであろう追撃が放たれる。



だが、それは途中でピンク色の球体に弾かれて辺りに拡散し、消滅した。
275 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:39:09.34 ID:3f+diCCm0
ワコ「もう! 無茶しすぎだよ…!」


タクト「焦っちゃ駄目だって」




ワウナが張ったピンク色のバリアはあたしに放たれた雷撃を…。

そして、タウバーンの二本の剣はワコ姉に向けられたんであろう、上空からの雷を受け止めて払う。



追撃が来ない事がわかったあたしは、ゆっくりとレシュバルの体を起こしつつお礼を言う。

だが、あたしを狙う追撃はまだ、終わっていなかった。


立ちあがりかけたあたしを背後から何かが襲い、あたしは派手に転がる。





さやか「痛…。何…!?」



ダメージはあるも、立ち上がれぬほど深いモノじゃない。

体を素早く起こしつつも、その顔を背後に向ける。


振り返った先には、あたし達の戦意を奪う悪夢のような光景があった…。
276 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:41:31.36 ID:3f+diCCm0
アインゴット「……………」



さやか「コイツ……、杏子の……」



杏子が合体先に選んで使っていたモノであろう、両肩と顔に目玉を伴っていたサイバディがあたしのすぐ傍に立つ…。



それはこちらを見下しつつも、ゆっくりと歩んでくる…。

全身を黒く染められ、ソウルジェムの汚れのような不快感なオーラすら纏うそれは、

もはやサイバディと言うよりは、魔女であるかのような異様な威圧感を放つ。


そして、ここに居たのはそいつだけじゃない…。
277 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:42:34.66 ID:3f+diCCm0
ページェント「…………」


アレフィスト「…………」


ヨドック「…………」




スカーレットキス「私のページェントが…」


レイジングブル「アレフィスト…」


プロフェッサー・グリーン「ヨドックもか…」



セクレタリー「サイバディ達が……」



そこに居たのは、かつてあたしとタクトさんが倒してきたサイバディ達…。

一機、二機、三機…。

数えている時間はくれないが、恐らく奴らの保持する10数機のほとんどがそこにいるだろう。
278 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:43:48.35 ID:3f+diCCm0
綺羅星の仮面共がそこらで見ている事を考えれば、アレを操っているのはザメクなんだろう…。

そうでもなければ、人類を滅ぼすザメクに手を貸す奴等わざわざ居る筈もない…。



それに、このサイバディ達はどうにも生気のようなモノを感じられない。

人が操っているのなら、幾らなんでもこんなに何も感じない筈もない…。



全ての機体は黒く染められた影のような機体色に変化し、その眼だけを不気味に赤く光らせ続けている…。

まるで、その姿は夜闇に紛れて獲物を狙う獣の群れのそれだ…。



そして、その狩りの対象は勿論…。
279 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:44:49.02 ID:3f+diCCm0
カフラット「…………」


さやか「くっ…!」



最初は見覚えのない人魚のような機体が襲いかかる。

見た瞬間、どこか不快感を覚えたけど、それを気にしている余裕はない。

相手の攻撃を見切って、まずは回避する。




ザイナス「…………」


ラメドス「…………」



お次は、大分前に三人がかりでやってきたスターソード使いの機体が二人がかりで迫る。

当然と言わんばかりにスターソードで斬りかかって来た為、右手のスィトリンヌと急ぎ作ったパイル・ソードでそれを受ける。
280 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:46:02.16 ID:3f+diCCm0
ヘーゲント「……………」



その次は、背後から。

両側で鍔迫り合いするあたしを、今だと言わんばかりにピンクの斬撃が襲う。

その剣の色、そしてその無骨なボディは忘れもしない。

マドカさんのヘーゲントだ。


ピンク色の斬撃を踵で受け、それを蹴った勢いを生かして鍔迫り合いを抜ける。

取り囲まれないよう、唯一空いたヘーゲントの反対に跳ぼうとするも…。




コフライト「…………」


さやか「うぅッ…!」


そこには人型の状態のコフライトが待ち構える。

力技であたしを剣ごと弾き、その勢いで地面に叩きつける…。
281 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:47:03.32 ID:3f+diCCm0
タクト「さやかッ!」


ワコ「アレじゃ、さやかでもどうしようもないよ…!

   私達も今そっちに…」



さやか「駄目…!」


ワコ「何を言って…!」



さやか「無茶をするのはあたしの仕事だって言ったでしょ…!

    だから、こいつらはあたしに任せて、制御を…」



言いつつも、飛んでくる車輪型の飛び道具を斬り払い、

さらに背後から来たライオンのような機体のパンチを大きく跳んで避ける…。
282 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:47:42.17 ID:3f+diCCm0
ワコ「みんなで生き残らないと意味ないんだよ…!?

   誰が杏子ちゃんを連れて帰るの…!?」



さやか「死ぬつもりだなんて一言も言ってない…!

    だけど、体張らなくちゃいけないのは、スガタ師匠だって一緒だから…!」


タクト「さやか…」




さやか「効率を考えても、二人はこっちに来ちゃ…」

    ワコ姉! 後ろ!」


ワコ「え…?」



敵の存在は、予想外の事態に対する打ち合わせすら許さない。


ワウナの背後に赤い三つ目が光る…。

両手を組み、その後頭部にそれを叩きこもうとしている…。
283 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:48:38.38 ID:3f+diCCm0
アインゴット「…………!!!」


ワコ「コイツ、何時の間に…!」



素早く反応したワウナは、球体バリアを展開して敵の打撃を防ぐ。

そして、タウバーンはそれを見逃す筈もない…。

だが…。




タクト「避けた…!?」


敵のサイバディは組んだ両手を解いて、バリアに対して両手を付く。

そして、体を大きく持ち上げ、逆立ちのような態勢になってエムロードを避ける…。


さらにそのバリアを使って、宙へと飛ぶと、

アクロバティックに回転しながら、タウバーンに踵落としを食らわせて蹴り飛ばす…。
284 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:49:34.27 ID:3f+diCCm0
タクト「コイツっ!」



タクトさんは素早く両手の剣を交差させてそれを防ぐも、その勢いは止められない。

大きく飛ばされワウナとは離れた地面の方へ…。

途中で、ジェットを噴射して堪えようとするも、ザメクの雷撃に襲われてさらに離される…。



タウバーンを蹴り飛ばした三つ目の機体もまた、そのまま地上へ落ちていく…。

だが、こちらの方は地上へ落ちながら体を丸め、何かを背中から引きずり出している…。





ワコ「あれは羽…!?」


アインゴット「…………」



三つ目の機体は背中から、その眼同様に赤く輝く悪魔のような羽を生やし再び宙へ…。

あくまでも巫女のワコ姉を狙うつもりなんだろう…。

飛翔した勢いに任せ、再度ワウナの作ったバリアの球体を殴りつけ、そのまま鬩ぎ合う…。
285 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:50:25.66 ID:3f+diCCm0
ワコ「この…!」


アインゴット「!!!!!」



抵抗するワコ姉を笑うかのように、あの赤い三つ目が煌々と輝く。

叩きつけた右手に何時しか左手も加え、行く手を阻むピンクの球体を無理やりに破ろうとしている…。




タクト「ワコッ!」



叫ぶタクトさん自身とその前方へ、嫌がらせのように無数の雷撃が降り注ぐ。

その量から察するに、ザメクは意図してタウバーンへ集中砲火をしているんだろう。

回避で手一杯になり、タウバーンは前へ進めない…。


そして、手一杯なのはあたしも同じ…。
286 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:52:12.32 ID:3f+diCCm0
さやか「ワコ姉…!」



飛び去ろうとするも、数で圧倒する敵はそんな事を許す筈もない。

いつしかやって来た牛のような角をした機体のパンチで大きく飛ばされ…。




さやか「ぐぅッ…」


足が針のようになった機体の長い腕に掴まれ、持ちあげられ…。

そして、叩きつけられる…。




さやか「げほっ、げほ…」


地上に叩きつけられて、大きくバウンドし、そこを今かとばかりに別の機体が追撃する。

やってきたライオンのような機体の強烈な一撃を背後から食らい、うつ伏せに倒れる…。
287 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:52:55.65 ID:3f+diCCm0
レイジングブル「あの子…、やられちまう…」


プロフェッサー・グリーン「皆水の巫女の方もまずい…。あのままじゃ落ちるぞ…」


頭取「さやかさん…。アゲマキさん…」




スカーレットキス「畜生! あいつらどうなっちまったんだよ!?」


ケイト「…………ザメクの僕にされた。と考えるのが自然だろうな」


スピードキッド「どうにかなんねぇのかよ! このままじゃ…」




セクレタリー「………………」


セクレタリー(このまま、みんなの『これから』が消えてしまうの…?)


セクレタリー(これじゃあ……)
288 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:53:45.71 ID:3f+diCCm0
ページェント「…………」



倒れたレシュバルの前に、かつてあたしを苦しめた赤い筈の機体が立つ。

今はその派手なカラーリングも他と同じ黒に染められてしまっている。

まるで斬首をする為の処刑人のような動きをするそれは、赤い剣を持った右手を上げ、止めの一撃を繰り出す。




さやか「誰が…」


さやか「そんなモン…」


さやか「食らってやるかってのッ!」



その剣を左手で受け止める。

そして、意表を突かれたのであろう棒立ちのサイバディに思い切り右手でパンチを浴びせる。

処刑人気どりのサイバディは派手に吹っ飛んで、自分の仲間のサイバディに叩きつけられた。
289 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:54:49.69 ID:3f+diCCm0
さやか「今度はこっちがお返し…」



吹き飛んだサイバディに追い打ちしてやろうとするも体が動かない。

気付けば、その背後にはゴーレムのような機体が立ち、レシュバルを羽交い絞めにしていた。



抵抗を試みるも、敵の力は強い。

力自慢のヘーゲントのそのパワーは、どうやらドライバーだけの力ではなかったらしい。


そして、あたしの足掻きを笑うかのように、コンビを組んでいたコフライトが剣を構えつつ突進してくる。
290 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:56:16.08 ID:3f+diCCm0
さやか「くッ…。このッ…」


ヘーゲント「…………」


コフライト「…………」




飛行形態ではないとは言え、地面を蹴って十分な速度で迫って来るコフライト。

そして、レシュバルをしっかりと羽交い絞めにして離さないヘーゲント。



パイル・ソードを強引に腰から飛ばして、コフライトを狙うも、そんないい加減な狙いでは当たらない。


コフライトが止まらないのならと、掌をヘーゲントに向け、強引に星型の光弾を撃ち込む。

だが、至近距離からの攻撃であるにも関わらず、見た目通り頑丈なヘーゲントはビクともしない…。
291 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:58:41.28 ID:3f+diCCm0
さやか「ッ………!」



タクト「さやかッ!」


ワコ「さやか!」



抵抗も虚しく、コフライトの赤い剣が目の前に迫り…。

貫かれる…。


その時だった。


















????「秘剣『崩氷柱』…………!」



影も姿も音もない。

ただ、その一声だけが凛と響き、突如その場にそれは現れた。
292 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 02:59:54.99 ID:3f+diCCm0
さやか「え…………?」



紫色の閃光が走る。


それはあたしの目の前に迫ったコフライトの胸を貫き、斜め下へ走る。

その有様は確かに『氷柱』のそれに見える…。



コフライトが剣を落とし、その眼の輝きを失うと同時に、

その閃光の輝きが落ち着きを取り戻して収束し、それがスターソードである事がようやくわかる…。


そして、そのスターソードが薄らともう一度輝くと、コフライトはそのまま爆散した…。
293 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 03:00:51.17 ID:3f+diCCm0
煙の中には、ピンク色の二つの閃光…。

それと先ほどのスターソードだけが輝き、それが刀のような形状がしている事だけがわかる…。

そして、どこか幻想的な光景を演出する煙が晴れていく…。




中から現れたのはサイバディ…。

それも周りに居るような黒いモノじゃない…。


爆風で後頭部にある薄紫の長髪のようなモノが揺れ、ピンク色の二つ目が輝く…。

オレンジ色を基調とした手足のそれはまるで着物のようで、その姿は歌舞伎役者のそれを思い出させる…。
294 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 03:03:08.47 ID:3f+diCCm0
あたしの見た事のないサイバディ。

刀のようなスターソードを返り血を払うように、一振りする。


そして、それの主は静かに…、

だけど決意を持った強い口調で、一言だけ発する。







バンカー「加勢します…………」



第三フェーズの証である球体状のコクピットから覗くその姿は…。

杏子にグリーフシードを使った仮面の少年だった…。
295 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/13(水) 03:05:21.09 ID:3f+diCCm0
っし。
今日はここまで。


さすがにこの時間は誰も見てないと思いますが、まぁ…。

ちなみに良い所ですが、ここから先がまだ書けてなかったり…。

最短の投下日は、15日の夜になりそうです。




それでは、本日は閉会とする。

このスレを見てくれた者に栄光を…!
レスをくれた者達に祝福を…!

綺羅星☆
296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/07/13(水) 08:49:23.10 ID:1uf8pMKAO
乙!
297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/13(水) 09:15:42.09 ID:fJy6eA4DO
乙!
つまんない君かっけー
298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/13(水) 09:16:33.58 ID:Ohjc7omSO
乙。投下量ヤバいな。
299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/07/14(木) 15:33:04.49 ID:WhR0yI0AO
乙星☆!!
タカシとても素敵で鼻血出そう
300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/07/15(金) 01:58:16.89 ID:2q1RJI1Lo
綺羅星☆

頑張れタカシ、今こそ自分の殻を破って一皮剥けるのだ
しかし悪夢見たり、シンパシー戦の時も杏子一人で戦う作戦の代替案を色々提案したり、結構杏子のこと気にしてるのね

さやかとタクトのデートもよかった。
途中経過もそうだけど、最後にワコとスガタと合流する辺りが。
陳腐ないい方になるが、思い出は永遠だよね
301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/07/15(金) 20:07:10.01 ID:5veQp9GAO
そういえば、杏子とバンカーの取引にホスト二人組が絡んでたんだな
302 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 22:30:23.00 ID:3b0eOXxk0
綺羅星☆

遅くなって申し訳ありません。
タカシさんをどうするかで三日も悩んでようやく書けました

>>296
乙感謝

>>297
乙感謝
つまんない君w

>>298
乙感謝
今日もマシンガンレスでお送りします

>>299
乙星
お待たせしました

>>300
綺羅星☆
デート描写は延々と悩ませてくれました

>>301
言われて初めて気が付く
ロックオン兄さんとカミーユさんなホストか…
それヤったさやかェ…
303 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 22:32:22.96 ID:3b0eOXxk0
セクレタリー「ツァディクト…? じゃあアレは…」




頭取(タカシ……)


プロフェッサー・グリーン「バンカー。来てくれたのか…」


ケイト「あいつ…。何故…?」




スカーレットキス「バンカー! てめぇ一体どういうつもりだ!?」


レイジングブル「なんで今更になって出てきた!? 」


スピードキッド「気をつけろよ。レシュバルのドライバー!

          コイツは杏子をハメて利用した野郎だ! 後ろからブスリってのもあり得ない話じゃねーぞ!」




バンカー「ふ………。酷い言われようだ」


さやか「……………」
304 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 22:34:15.67 ID:3b0eOXxk0
バンカー「どうします? あなたも…」



さやか「…………あたしは元より、アンタと敵対するつもりはない。

    今はそれどころじゃないからね」



バンカー「あなたがわかっているのなら、話は早い」



言いつつ、結果的に互いに背中を預け合う形になる。

そこまで信用している訳でもないけど、周囲は敵だらけ。

文字通り背に腹は代えられない。


「加勢する」と言っている以上、注意しつつも共闘するしかないのだ。
305 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 22:35:26.40 ID:3b0eOXxk0
さやか「で、具体的にはどうするの…? 

    アンタが半分引き受けてくれる?」



バンカー「………道を作ります。あなたは皆水の巫女の元へ」


さやか「は?」




バンカー「目的を履き違えてはいけない。巫女を守れなければ我々は敗北。

     そして、その巫女が補助してザメクを制御できなければ勝利はない…。それなら優先すべき事は?」


さやか「でも、アンタは…」


バンカー「…………捨て置いてください。戦いとはそういうものです」
306 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 22:37:34.16 ID:3b0eOXxk0
さやか「けど…!」


バンカー「ほら、行きますよ…!」



あたしからの返答すら待たず、歌舞伎役者のようなサイバディは動き出す。

刀を高く構えると、ワウナの居る方の敵陣へ突っ込んでいく…。





バンカー「秘剣『紙吹雪』…!」



その高く構えた刀から無数の突きを繰り出す。

まるで弾丸のように放たれるその突きの嵐は、立ちはだかった牛角と赤色だったサイバディを釘付けにする…。


敵の足が止まった。

それならばと、あたしはパイル・ジェットでその上を越えていく…。
307 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 22:38:57.75 ID:3b0eOXxk0
カフラット「………」


さやか「うっさい! どけっ!」



目の前に飛び出た人魚のようなサイバディを、何故か覚えた苛立ちにまかせて殴り飛ばす。

が、吹き飛んだ人魚の代わりと言わんばかりに今度はバイクのようなサイバディが空を駆けて猛追してくる…。





テトリオート「…………」


さやか「あ〜、もう! へんなのばっか…!」



その下にはレーザー攻撃が行えるヘーゲントや、いつかの球体を操るスターソード持ちが見える。

ようするにバイクに捕まれば、遠距離攻撃を持っている連中に狙い撃ちにされる…。


どうやって振り切ろうか考えていた所、バイク型の敵の後輪に当る部分が突如ひしゃげる。

そして、そのまま失速して落ちていく…。
308 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 22:40:13.09 ID:3b0eOXxk0
下を見ると歌舞伎役者のようなサイバディは刀を振り終えているのが見える。

様子から察するに、バイクを落としたのはあの仮面の少年だろう…。




バンカー「……………」


さやか「さんきゅ!」



お礼を言いつつも、レシュバルを加速。

あたしは一気にワコ姉を襲う三つ目の敵の元へ…。


どんどん離れて小さくなる、あのサイバディが敵に取り囲まれていくのを申し訳なくも思いながら…。
309 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 22:41:29.00 ID:3b0eOXxk0
レシュバルは高度を上げ、ヘーゲントやザイナスの射程からも逃れた。

追う事の出来ない空へ逃げられ、自ずと周囲の敵の注目がこちらに集まる。




ページェント「………」


ヘーゲント「………」


ザイナス「………」




バンカー「ふふ…………」



先ほどまでレシュバルを追っていた連中も動き始める。

逃げ腰を続けてきた自分の退路を絶つように、敵は自分を取り囲み始めた…。



だけど、それで良い。

『予定通りの最悪』を仮面のは鼻で笑った…。
310 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 22:42:26.08 ID:3b0eOXxk0
さやか「てぇぇぇいッ!」


アインゴット「……!」



ジェットの加速を活かしてそのまま斬り込む。

背後からの攻撃なのも含めれば不意打ちとしては上々なんだけど、敵は背中にも目があるかの如く回避。

さらに、逃げた敵に対して星型弾を撃ち込むも悉く回避される。


だけならまだしも、敵はその牽制を掻い潜りつつ、またもこちらへ向かおうとする…。

ワウナの前に出て、再度の近接戦を覚悟した時、青と緑の衝撃が三ッ目の機体が視界の外へ消した。
311 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 22:47:30.43 ID:3b0eOXxk0
タクト「お待たせ!」



さやか「タクトさん!」


ワコ「おっし。三人とも無事だね!」



青と緑…、言う間でもなくタウバーンの放つ斬撃の色…。

三ッ目の機体を弾き飛ばしたタクトさんの機体が、あたし達の前へと降り立つ。

分断された三機はようやく合流出来た訳なんだけど…。





アインゴット「…………」



タウバーンの目が覚めるような剣撃すら防いだ三ッ目にダメージは見えない。

どころか防御の為に丸めた羽を力強く開き、こちらを再度見つめている…。
312 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 22:49:20.90 ID:3b0eOXxk0
赤く不気味な羽根をはためかせ、再度こちらへ向かってくる黒いサイバディを三人で確認する。

アレをどうにかしなければ、ザメクの元で足元を救われかねない。

そう思ったのはあたしだけではなかったらしい。





タクト「さやか。アレの相手頼める?」


ワコ「…………そうだね。あんなのがいたら、こっちも作業に集中できないし」



二人の機体は目線をこちらへ向けている。

勿論、台詞通りの『頼む』の目配せだ。


そして、この二人に頼まれてあたしが断れる筈もない。





さやか「いぇ〜っす! ちゃちゃっとやっつけて、すぐに合流します!」



あたしは二人に背を向けつつも、空いている左手で手を振る。

そして、そのまま三ッ目の機体の元へと機体を飛ばした。
313 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 22:51:02.86 ID:3b0eOXxk0
ワコ「わざと行かせたでしょ?」


タクト「わかる?」



ワコ「そりゃあ、勿論」


タクト「体を張る役目を女の子に任せるのは、男として恥ずかしいからね」



ワコ「カッコつけちゃって」


タクト「それが今の僕の『やりたい事』だから…」




ワコ「そっか。じゃあ…、よろしくね。タクト君…」



そこまで話すと青い雷撃が二人を分断。

自ずと会話はそこで終了し、二人は降り続く雷の中を進みつつザメクの元へと飛ぶ。

そこで待つ友の元へと…。
314 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 22:52:04.06 ID:3b0eOXxk0
バンカー「秘剣『折鶴』…!」



頭の上で槍を回すと、そのリーチを最も活かせるであろう突きを繰り出すべくラメドスが突進.

こちらはそれに合わせるように左手を据え、抜き放つように刀を振る。





ラメドス「…………!?」



バンカー「……………三機」



刀からは遠い所に居たラメドスの腹から腰の辺りが深く裂け、お辞儀をするように折れる。


秘剣『折鶴』。

居合抜きの要領で剣を振るって、遠方に風圧や鎌居達を発生させ、敵の足腰を折る技。

間合いすら無視する強力な技である代わりに癖が強く、扱いも難しい…。



だけど、今日だけは失敗する訳にはいかない。


ようやく…。

ようやく、わかったんだ。

だから…。
315 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 22:54:34.98 ID:3b0eOXxk0
敵の数は全部で14機。

飛び去ったアインゴットと、僕が落とした三機を含めてもまだあと10機。

一人を取り囲むには十分すぎる。


円を狭めて、抜けた穴を埋めつつ、新たな敵が円の中へと躍り出る。





ベトレーダ「…………」


バンカー「………」



ベトレーダ。

良く見慣れた機体だ。


僕の仕えた…いや、僕が利用し続けた人の愛機。

強く気高い本当の獅子のような人。


そして、その獅子の威を借る狐が僕だった。
316 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 22:55:46.17 ID:3b0eOXxk0
そうだ…。

僕は何時だって…。



しがない両親を見限ったのから始まり…。

自分に様々な手ほどきをし、シルシすら渡した祖父を出し抜いて綺羅星へと向かい…。

その綺羅星の中でも発言力の強めの『おとな銀行』へ付いて…。

そして、それを踏み台にして『ヘッド』と接触して…。

最後は『ヘッド』の見せた尻尾を突いた…。
317 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 22:58:40.38 ID:3b0eOXxk0
誰かの威光を借りて…。

そして、それよりもマシな何かを見つけてはそれを切り捨てて…。

そうやってズル賢く生きてきた…。


勝てないから…。

負けないように…。



自分に力がないから…。

自信がないから…。


誰かに縋って…。

そして、それを使っては蹴落として…。
318 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 23:01:30.23 ID:3b0eOXxk0
だけど…。

だけど、あの子だけは…。





杏子『騙した? お前はアタシに現状の説明と協力の要請をしただけだろ…?』



杏子『だから、アタシの事は気にしてくれなくて良いぜ…?』



杏子『むしろ最後に大仕事をくれて、礼を言いたいくらいさ…』




騙され、蹴落とされると知りながらも笑って…。

綺羅星の…、この世界の生贄扱いだって教えられたのに…。

それでいて諦めている訳でも無くて…。
319 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 23:04:08.23 ID:3b0eOXxk0
杏子『心配すんな。アタシが全部終わらせてやるから』



全てを背負い、騙された馬鹿で良いと…。

誰にも迷惑をかけたくないと、僕に後始末まで頼んで…。

それなのに、最期まで笑い続けて…。






―――ありがとな―――


自分が死ぬ瞬間まで…。

それを言わなければいけないのは、本当は…。





約束通りの事をしただけなのに、それが夢とわかって何故あんなにも安堵したのか…。

今まで通り蹴落としただけなのに、何故あんなにも申し訳ない気持ちになったのか…。



彼女の魂を砕く悪夢を繰り返して、ようやく答えが見つかった…。
320 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 23:05:34.25 ID:3b0eOXxk0
僕はあなたに憧れていたんだ…。



強く気高いあなたに…。





そして、思ったんだ…。


死なせたくない…。

死なせてはいけない、と…。






だから…!
321 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 23:07:00.67 ID:3b0eOXxk0
いつものようにガードを固めて突っ込んでくるベトレーダ。

そして、いつもならそれがわかりながらも勝てなかった相手だ。


だけど今日だけは…。




バンカー「ほんの少しで良い…」


ベトレーダ「………」



バンカー「僕に…」


ベトレーダ「……!」



バンカー「前に進む為の勇気を…!」


ベトレーダ「…!?」






バンカー「秘剣『紙吹雪』ッ!!!!!」
322 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 23:08:50.06 ID:3b0eOXxk0
敵がガードから攻撃に切り替わる一瞬に突きを始め、開いた腕を突いて、突いて、突いて、突く…。

現れた本体をさらに、壊れるまで突く…。


元上司の愛機の姿をした偽物は、音を立てて爆発していた…。



そして…。





バンカー「次ッ!」


ページェント「………!?」



ベトレーダの爆風と煙に紛れて現れたページェントを両断する。

同じ剣道部として面倒を見てくれたスカーレットキスことシナダ・ベニオ先輩の愛機…。
323 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 23:09:49.20 ID:3b0eOXxk0
バンカー「四機…、五機…!」



元上司、部活の先輩、同僚達…。

もう一度だけあなた達を踏みにじるのをお許しください…。



何を犠牲にしても…。

どうしても…。

どうしても、やり遂げたい事が見つかったんだ…。
324 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 23:10:26.61 ID:3b0eOXxk0
ヘーゲント「…………」


バンカー「甘い…! 秘剣『霙草子』…!」



背後から放たれたレーザーを見切りつつ、その一つに焦点を合わせて突く…。

刀がレーザーに触れた瞬間に突きの加減を調節し、打ち返すレーザーをうまく飛び散らせる…。



弾き返されたレーザーは無数に拡散し、相手の目を眩ませつつ被弾させる。

生じた隙は、相手を斬り伏せるには十分過ぎる…。





バンカー「六機…!」


ヘーゲント「…!?」



苦し紛れに繰り出されたピンクの剣を半身になってかわしつつ、自分は踏み込んで刀を前へ…。

繰り出された刃は胸の中央を貫き、それをすぐさま引き抜く…。


言うまでも無く致命傷を受けた敵機は、僅かによろめいた後に爆散した…。
325 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 23:12:23.17 ID:3b0eOXxk0
プロフェッサー・グリーン「凄いな…」


スカーレットキス「なんだ、アイツ…。やればできるんじゃねぇかよ…!」




頭取「ようやく、見つけたのね…。タカシ…」


セクレタリー「見つけた…?」



頭取「あの子にずっと足りなかったモノよ…」





セクレタリー(タカシ……。あなたも彼女の事を……)



セクレタリー(誰かの為に戦う人はこんなにも強い………)



セクレタリー(タクト君………。だから、あなたは………)
326 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 23:13:51.29 ID:3b0eOXxk0
タクト「うぉぉぉぉぉッ!」


ザメク「……………」



バンカーのツァディクトが奮戦している頃、タウバーンとワウナはザメクに肉薄していた。



ワウナの制御行動の射程範囲に入ったと言えば聞こえはいいが、そこはまさに地獄。


より正確性を増した雷撃に加え、8つの大型パイルから放たれる誘導レーザー。

さらに、ザメク自身の両手を使った格闘攻撃。



最強のサイバディの繰り出す猛攻。

タウバーンはそれを捌き続けていた。
327 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 23:15:39.64 ID:3b0eOXxk0
ワコ「タクト君、それ以上は無茶だよ!」


タクト「スガタだって無茶してるんだ…。僕がしない訳にはいかないさ…」



本来なら二人で行う筈の防衛行動をタウバーンは一人で行っていた。


タウバーンの動きは完璧だった。

だが、一度に8発掃射されるレーザーに、雷撃。

ひいては格闘攻撃と、一人で捌ききるには無理のある量の攻撃の嵐。

まして、それを防衛対象であるワコを守りながら行っているのだ…。



四肢こそ無事であるものの、タウバーンのダメージは見るからに深刻だった…。
328 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 23:18:57.03 ID:3b0eOXxk0
ワコ「やっぱり無茶だよ…」



タクト「でも、近づかないと制御行動は実行できない…。

    そして、それの最中はバリアも張れない。

    なら、僕が体張るしかないでしょ…?」


ワコ「だけど…」



タクト「………大丈夫」


ワコ「大丈夫じゃないよ!」




タクト「スガタがいない以上、君は絶対に僕が守る…!」


ワコ「タクト君……」




タクト「それに……」
329 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 23:21:30.61 ID:3b0eOXxk0
タクト「僕らには頼りになる子がいるのを忘れた…?」



ワコ「…………そうだったね」




迫りくる雷撃を避けながら、レーザーを払う。

その衝撃で揺れる中波したタウバーンの中で、タクトの口元は笑っていた。


そして、そのタクトと同時に再び制御行動に入ったワコも笑う。


誰よりも明るく…。

誰よりも強く…。

誰よりも輝きを放つ彼女なら…。



きっと、すぐに駆けつける…。

そう、『確信』していた。
330 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 23:27:16.46 ID:3b0eOXxk0
さやか「このッ!」


アインゴット「…………」



あたしは苦戦していた。

目の前の敵機はこっちをあくまで遮蔽物程度にしか見ていない。

その理由はわからないが、この三ッ目の狙いはあくまで巫女のサイバディなんだろう。


あまり深い打撃を食らうとそのまま振り切られる。

そう考えれば、迂闊な行動には出れない。

でも、だからと言って消極的な行動では足止めにしかならない。



あたしがしなければ行けないのはコイツの足止めじゃない。

できるだけ早期に撃墜する事だ。


いくらタクトさんとは言え、あのザメクの攻撃から一人でワコ姉を守りきるのは無茶だ。

だから、あたしが早く駆けつけて手助けをしないと…。
331 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 23:28:20.80 ID:3b0eOXxk0
だが、焦りは確実にその手を鈍らせる。

剣撃はかわされ、代わりに敵の蹴りがレシュバルの顔面に入る…。




アインゴット「………」


さやか「ぐぅ…!」



重い打撃。

身軽な動き。

華麗に見えて、無駄のない一つ一つの行動。


獲物がなく、代わりに飛行しているけど、この動きには覚えがある…。

この三ッ目を好き勝手使いまわしたアイツ…。
332 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 23:29:32.29 ID:3b0eOXxk0
さやか「杏子の動きを覚えてる訳か…」


アインゴット「………」



人を足蹴にした衝撃を活かし、飛び去っていく敵機を睨みつけながら呟く。




杏子。

佐倉杏子。


その言葉を口にした途端、我慢できない感情が込み上げてくるのを感じる…。

人の事なんかこれっぽっちも考えてない…。

あのウスラトンカチ…!
333 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 23:30:53.79 ID:3b0eOXxk0
さやか「ったくさ…。アイツは…」


さやか「人の迷惑や気持ちも考えずに…、勝手な事やってくれちゃって…」


さやか「おまけにこんな面倒なお土産まで残して…」





さやか「人がどれだけ心配してると…、思ってんのよッ!」




クラウチングの構えを取る…。

その視界には三ッ目の赤い不気味な羽根は見えない…。


代わりに見えているのは、ワコ姉の駆る白と金のサイバディ『ワウナ』。



その美しい姿を目標にし、空に向かって駆けだす…。

その勢いにパイルジェットも加味し、さらに加速する…。

そして、スターソードを左の腰に構える…。
334 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 23:31:26.91 ID:3b0eOXxk0
来ない…。

まだ、来ない…。



もう少し…。

もう少し…。


もう少しだけ…。





今!










さやか「杏子のッ…、大馬鹿野郎ッ!!!!!!」


アインゴット「…!?」
335 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 23:33:06.80 ID:3b0eOXxk0
さやか「豪快!銀河!一文字斬りィィィィィィ!!!!!」




三ッ目の行動は杏子のそれだけど、結局はワコ姉を狙い続けるだけのワンパターン。

それなら、あたしから離れれば必ずワウナの元へと向かう。

それも最短距離で。



単細胞よりも単純。

杏子の動きを覚えても、基本パターンがこれではお話にならない。


隙だらけの背中を晒した三ッ目の機体は、左腹から右肩に掛けて真っ二つにされ、空中で爆散した。
336 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 23:34:12.89 ID:3b0eOXxk0
さやか「お待たせしました!」




タクト「お疲れ様…!」


さやか「お疲れ様って…、タクトさんの方が…」


ワコ「若気の至りだから、気にしないで上げて」




さやか「若気の…?」


タクト「ほら、来るよ!」



タウバーンの機体コンディションを見て驚くも、それを敵のレーザーに遮られる。


よくよく考えれば無理もない。

制御の為に満足な防御や回避のできないワコ姉を庇い続けたんだ…。



だけど、その無茶はもうさせはしない…。

今度はあたしが体を張る番だ…。



合流した三機。

勝利に近づいた瞬間。

だけど、同時にそれを脅かす存在が少しづつ動き始めていた…。
337 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 23:35:36.93 ID:3b0eOXxk0
バンカー「………………」



バンカー「………………」



バンカー「…………見切った!」




カフラット「……!?」



クナイのような形状になり、背後から迫ったカフラットが真っ二つになる。


地中に潜り、その中を海のように自在に泳げる特性を持つカフラット。

その特性を活かして、暫くはバンカーを掻きまわしたは良いモノの、何時までもそれが通用する筈も無く、



とうとう見切られ、振り向きざまに両断された。
338 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 23:36:22.26 ID:3b0eOXxk0
バンカー「七機…!」



バンカーのツァディクトを取り囲んでいた機体も大分物寂しくなってきていた。

残る機体は、五機。


元々意識されていないのもあって複数機での連携を行わず、単機での撃破を試み続けたのが仇となる。

最も、意志などない暴れるだけの存在にそんな意識などある筈もないが。





ギメロック「…………」


ザイナス「…………」



それまでと変わらず、二機の機体だけが前に出る。

そして、残る機体はそれまでと同じく、あくまでツァディクトを囲む。

だが、心の無いそれらだが、物を学ぶ力はあったのか…。
339 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 23:37:21.47 ID:3b0eOXxk0
バンカー「…………数任せか」



ザイナス「…」


ギメロック「…」



ザイナスが、四個の球体を。

そして、ギメロックも首から上を分離させ、二機で迫る。


一機ごとに挑んでも勝機がないと察したのか、それとも単純にそれが連携のパターンとして存在していたのか…。



球体と分離したサイバディ。

それらは七方向からツァディクトに迫っていく…。
340 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 23:38:31.38 ID:3b0eOXxk0
先行した四個の球体に襲われる。

だが、彼は刀を上段に構えたまま崩さない。

やがて、高い攻撃力を誇る三機のサイバディが襲いかかる…。





バンカー「………愚策」



七方向からの同時攻撃。

だが、仮面の少年はそれを笑った。


球体の全てが歌舞伎役者のような機体のその身を離れた瞬間…。















全身が穴だらけになった三機のサイバディが宙に浮き、倒れた。
341 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 23:39:26.40 ID:3b0eOXxk0
バンカー「……………奥義『乱れ紙吹雪』」



ツァディクトを中心に、紫色の無数の雨霰が周囲を駆け巡る。

ザイナスやギメロックは勿論、球体をも撃ち落としたそれは、一見すると針鼠のようにも見える…。



全方位からの一斉攻撃。

それこそが彼が望んでいた最大の展開だった。



彼の持つ最高の剣技。

それは一瞬で放つ全周囲への乱れ突き。


最も活かされる場面は勿論…。
342 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 23:40:07.50 ID:3b0eOXxk0
プロフェッサー・グリーン「全方位からの一斉攻撃を対策する為の技か…」


レイジングブル「全員で一斉に嬲りに行ってたら、アレで全滅してた訳か」




スカーレットキス「見た事のない技だな…。アイツあんなモノ使えたのか…?」



頭取「使えなかったんでしょうね…」


スカーレットキス「……?」


頭取「あの技も、他の技も…。迷う彼では使いこなせなかった…。

   迷いを捨てた今のあの子だからこそ…」




スピードキッド「ともかく、これで行けるぞ!」






バンカー「残り三機…!」



減った敵陣に対して、ツァディクトはいよいよ攻勢に出る。

その戦場の外れで、静かに何かが蠢いているとも知らずに…。
343 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 23:40:43.69 ID:3b0eOXxk0
タクト「はぁッ!」


さやか「やぁッ!」



背中合わせになった白と赤、白と青の貴公子が別々の方向へ飛ぶ。

そして、それぞれがその中央に居る白と金の機体を狙うように飛び交うレーザーを撃ち落とし続ける。



それぞれは右と左に緩く飛んだレーザーをまずは切り裂く。

それがフェイントなのはわかっている。


続けてやってきた三発のレーザーをタウバーンが払い、彼を背後から狙ったレーザーをレシュバルが払う。

そして、残った一発にレシュバルの平手から放たれた星型の光弾が当り、飛び交ったレーザーはまたも全て消失する…。
344 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 23:41:45.66 ID:3b0eOXxk0
さやか「大丈夫ですか…?」


タクト「勿論…。さっきよりも元気出てきたかな!」


ワコ「両手に花、だもんね? タクトさん」




タクト「そうだね。この状況で燃えない男なんていないさ…!」



猛者揃いの綺羅星十字団を打ち倒してきた二人の連携は完璧だった。

次々と放たれるレーザーも雷撃も悉く払い、防ぎ、受け流す。


ワウナは制御動作さえ解けば、強力なバリアを持っている上に、中に居るのは高い技能を持つ皆水の巫女のワコ。

よほどの事がない限り、そのまま作戦の失敗はあり得ない。




………よほどの事がない限り。
345 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 23:42:58.91 ID:3b0eOXxk0
さやか「三発…、四発!」


タクト「こっちも四発。今回の攻撃もどうにかできたね…」



さやか「この調子ならどうにかなりそ…、ワコ姉?」




ワコ「き……が…」


タクト「ワコ………?」



またも放たれたレーザーを落とした時、異変は起きた。

それもザメクや外部からではなく、制御行動を行っていたワウナがそれを起こした…。
346 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 23:43:41.41 ID:3b0eOXxk0
ワコ「き…いの、コン………ルが…」


タクト「どうしたの!?」



ワコ「きか……!」


タクト「ワコ!? 何を!」



制御行動を行っていたワウナが最大速度でタウバーンへと突撃。

そのままタウバーンに抱きつく形となる。

どころか、ワウナはそのまま組み付き、ザメクの方へとタウバーンを押しやっていく…。





ワコ「駄目! はな…て…!」


タクト「ワコッ!!!!」



さらにその速度を増し、ザメクの方へと向かって行く…。
347 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 23:44:27.89 ID:3b0eOXxk0
さやか「ワコ姉…!? タクトさん!」





タクト「さやか! お前は来るなッ!!!!!」


ワコ「…………」



近寄ろうとしたさやかのレシュバルを制止する。

唇を噛みながらもさやかはその指示に従う…。



振り切ろうとするもしっかりと組みついたワウナは離れない。


それだけでない。

無理をしたせいもあるのか、タウバーン自体が明らかにパワーダウンを起こしている…。


そして…。
348 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 23:45:07.51 ID:3b0eOXxk0
差し出された生贄のように不用意にザメクの前に立った二機。

そして、それを見逃す筈も無く…。






ザメク「グァァァァァァァッ!!!!!!」




タクト「くッ!」


ワコ「ごめ……な……」



二人は暴君の放った青白い光の中に消えた。



さやかの目の前で。
349 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 23:45:35.03 ID:3b0eOXxk0
さやか「タクトさん!!!!! ワコ姉!!!!!!!」




『王の柱』

それは王のシルシを持つドライバーの第一フェーズであり、同時にザメク自身の最大の武装でもある。



ドライバーの陳腐なリビドーではなく、機体そのものが蓄えた大量のリビドーを消費して放たれるそれは、

一人の人間が放つモノとは、もはや比べ物にはならない。



ザメク本体を包み隠すほどの巨大な光の柱は、さやかの大切な二人…。

そして、この戦いの勝利を一瞬にして消し去った…。
350 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 23:48:59.00 ID:3b0eOXxk0
頭取「タクト君……!」


ケイト「ワコ………、なんでこんな……」


スカーレットキス「皆水の巫女が、タクトを裏切ったのか…?」




セクレタリー「違う……」


レイジングブル「あ、あれは……」




異変を感じた一行の、遥か遠方にそれは不敵に浮かんでいた。

鳥の羽のような鎧を纏う黒い機体。




かつては銀色に輝いていた最悪のサイバディ。


その姿が…。
351 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 23:50:05.81 ID:3b0eOXxk0
スカーレットキス「なんで、あいつが…!」


プロフェッサー・グリーン「あり得ない事は無いが…、何故このタイミングで…?」


頭取「マークを外し、勝機を見出した今になっての台頭…。

   狙ってやられたかのような最悪のシナリオね…」」







シンパシー「…………」



バンカー「『No16』!」



仮面の少年は、上空で腕を組んで浮かぶそれを睨みつける…。

来る筈のないそれは確かにそこに浮かんでいる…。



勿論、誰もがそれを意識していなかった訳ではない。

全てのサイバディがザメクの元へ下った時、多くの者はそれの姿を探した。

だが、その時にそれは確かに存在しなかった。
352 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 23:53:12.10 ID:3b0eOXxk0
タクトやスガタも、それに対しては甘く見ていた節がある。

最大の情報提供者であるサリナが、『シンのシルシ』の状態からそれの乱入はまずあり得ない…。

そう言ったからである。

そもそも、彼らやサリナからすれば、倒れたサイバディが全てザメクの僕になると言う事態そのものが想定にない。



バンカーや他の綺羅星十団員も、その特性故に巫女のサイバディ同様復活はしなかった。

そう解釈してしまった。


仮に意識し続けていた者がいたとしても、この戦力難で来る事のないであろうそれにだけ意識を裂く事は出来なかっただろうが…。





ザメク自身がそれを復活させるのを遅らせたのか、それとも何らかの不都合が生じたのかはわからない。

だが、その気まぐれは結果的に一行のマークを外し、最悪の結果を招いた。
353 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 23:53:41.62 ID:3b0eOXxk0
バンカー「………お前は」


バンカー「……………お前だけは!」




バンカー「お前だけはッ!!!!!」



自分と彼女が打ち倒したモノ。

それの亡霊が浮かび、彼女と彼女の救ったモノを悉く壊そうとしている。


杏子の戦いを嘲笑うかのように浮かぶそれを、彼女の為に立ちあがった少年が許せる筈もない…。



立ちはだかったサイバディを踏み台にして、宙に浮かぶそれに一気に斬りかかる。
354 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/17(日) 23:55:55.09 ID:3b0eOXxk0
シンパシー「………!」



バンカー「はぁぁぁぁッ!」



さやかのレシュバルを眺め続けるシンパシーは、十分な高さに上がったそれを見て、始めてツァディクトの存在に気付く。


だが、その程度の反応でも十分だった。

レシュバルに対して放つ為のそれは、同時にツァディクトにも放たれた…。



本体と違い、変わらずに輝く金色の針のようなそれは、レシュバルとツァディクトに向けてそれぞれ飛んでいく。

回避する事すら許さない針のような物体は、ツァディクトの制御を確かに奪い取った。






だが、バンカー自身は敵の眼前に迫り、己の行動を既に済ませていた…。
355 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/18(月) 00:01:10.72 ID:CXix/oec0
バンカー「無駄だ…!」


バンカー「彼女の救ったモノに、泥を塗るお前だけは…」



シンパシーの眼前まで迫ったコントロールを取られ、既に一切の行動が行えない…。

それを意識し続けた少年は、自分の剣が敵に届かない事も悟っていた。

だから…。







バンカー「この僕が…!」



紫色の刀は彼の駆るツァディクトの腹部を確かに貫いていた…。

それが意味する行動はただ一つ…。
356 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/18(月) 00:02:07.29 ID:CXix/oec0
シンパシー「…………!」



眼前まで迫った歌舞伎型のサイバディが行った自滅行動。

それは彼が、途中でコントロールを取られる事も含めて、丁度のタイミングでそれが起こるように計算されていた。


あるいはシンパシーが最初に目を向けたのが地上だったら、その結果は変わったかもしれない。

だが…。





バンカー(奴自身と戦う危険な目に会うのは僕と、あなただけで…)



バンカー(そう……、でしたよね…?)



バンカー(約束は……まも…)








ツァディクトが起こした爆風は、確かにシンパシーの上半身を吹き飛ばした。
357 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/18(月) 00:04:31.60 ID:CXix/oec0
粉々に砕け散り、愛刀だけを残して消滅したツァディクト。

そして、それに巻き込まれ下半身だけを残したシンパシー。


残った両者の残骸は、地上に落ち、砕け、そして突き刺さった。





セクレタリー「タカシッ!!!!!!!」





頭取「あの子………」


スカーレットキス「あの馬鹿! 杏子に感化されやがって…!」


スピードキッド「死んじまったら文句も言えねぇだろうが!!!!」






だが、状況は一行が悲しむ暇さえも与えない。

最期の封印を破られたゼロ時間の空は赤みを増し、裂けるように溶けて消え去っていく…。



ゆっくりと…。

だが、確実に…。
358 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/18(月) 00:07:08.76 ID:CXix/oec0
消えていくゼロ時間。

自らを縛る檻が破れ、その時を待ち構えた暴君が空へと昇り始める…。


上空にはもう僅かではあるが、南十字島の上空が映り始めている…。






さやか「やらせるもんか…」


さやか「やらせてたまるか…!」



さやか「杏子が…、ワコ姉が…、タクトさんが…!

    皆が守ろうとしたモノを壊されてたまるかッ!!!!!」



逃げるように宙へ向かって行くザメク。

奴を追うように、あたしは一人レシュバルでザメクへ向かって行く…。


放たれる雷撃を避け、レーザーをかわし、奴自身へ斬りかかった…。
359 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/18(月) 00:07:58.67 ID:CXix/oec0
空へと向かって行く最悪の存在。

だが、最悪の事態は地上にも起きていた…。





スカーレットキス「そんな……」


レイジングブル「マジかよ…」



地上に巨大な黒い影が現れ、そこから巨大な泥人形のような人影が上がり始める…。

泥で出来たマネキンのような形状をしたそれらは、徐々に自らを形作っていく。

その姿は勿論…。
360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/07/18(月) 00:08:28.14 ID:CXix/oec0
コフライト「…………」


テトリオート「…………」


ラメドス「…………」


ベトレーダ「…………」


ページェント「…………」



バンカーが全身全霊を賭けて破壊した、ザメクの僕となったサイバディ達…。

倒した筈のそれがゾンビのように立ち上がり、やがては自らを完全に形作って何事もなかったようにしている…。



彼の決死の行動を嘲笑い、立ち上がったそれらもまた、ゼロ時間の外を目指すように外を眺める…。
361 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/18(月) 00:09:24.90 ID:CXix/oec0
プロフェッサー・グリーン「このままでは…」


レイジングブル「畜生…、もう俺達にはどうしようもないのかよ…!」



頭取(最悪の場合を想定して、綺羅星の団員以外は島の外へ退避させておいてよかった。いや…)


頭取(このまま行けば何もかもが関係が無くなるのか…)




ヘーゲント「………」


カフラット「………」


ザイナス「………」


ギメロック「………」



次々と立ち上がり、その姿を取り戻していくサイバディ達…。

その中には勿論…。
362 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/18(月) 00:11:25.51 ID:CXix/oec0
シンパシー「…」



下半身だけになったそれは、少しづつその上半身を再生させていく…。

杏子が、そしてタカシが決死の思いで倒したそれがまた立ち上がり、全てを奪おうとしている…。





セクレタリー「そんな………」


セクレタリー「タカシとあの子が守ったモノが……、倒したモノが…」


セクレタリー「みんな、みんな消えて無くなっちゃう…」






セクレタリー(力が………欲しい)





セクレタリー(みんなを守る力が……)
363 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/18(月) 00:12:16.20 ID:CXix/oec0
(……)



セクレタリー(声が聞こえる……)





(………)


セクレタリー(まさか……)





少女の祈り。

それは、彼女を求める者の声を呼び寄せる。


自分が求め、また自分を求める声…。

初めて聞く声。

だけど、聞きなれたそれに耳を傾ける…。



そこには存在しない…。

失われた何かが、少しづつ蘇っていく…。
364 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/18(月) 00:13:12.12 ID:CXix/oec0
頭取「人間がサイバディに関わった事が……、そもそもの間違いだった…。

   そう言う事なのかしらね……」






セクレタリー「違う……。もしかしたら、私達には早過ぎたのかもしれないけど…。

        サイバディは私達は私達が辿り着く可能性の一つ…」


頭取「シモーヌ…?」




セクレタリー「レシュバルと美樹さんのように…。タクトさんとタウバーンのように…。

       互いの力を引き出し合うパートナーとしている人達だって…」


スカーレットキス「お前は……」







セクレタリー「なれるよ……。私達もあの二人のように…!

        ううん。なろう…」




セクレタリー「守りたいモノがあるのは、お互いに同じだから…!」
365 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/18(月) 00:13:52.90 ID:CXix/oec0
サイバディの声を聞いた少女。

そして、同じ願いを持ち、それ故に互いを求めた二人…。


それは確かな絆となり、失われた筈のモノをその胸に宿らせる…。





セクレタリー「……………」



頭取「それは……」


スピードキッド「シルシが…」


スカーレットキス「失われたシルシが蘇ったのか…?」



シモーヌの胸に輝くシルシ。

その輝きは、彼女の仮面と己の弱さを砕いていく…。
366 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/18(月) 00:14:31.98 ID:CXix/oec0
セクレタリー「アプリボワゼ…!」



彼女の声は、主を無くして暴れることしかできない孤独なサイバディに響く。

そして、結んだシルシに導かれるように、光となった彼女はダレトスの胸へと吸い込まれていく…。


同時に、ダレトス自身も変化を起こしていく…。





力がないと嘆き、見出せなかった不確定な未来。


そんな彼女に身を持って強さを教えた二人の友人…。

その二人の守ったモノ…。

守りたいモノ…。


その存在が彼女自身と、彼女のサイバディの姿を変化させていく…。
367 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/18(月) 00:15:28.22 ID:CXix/oec0
セクレタリー「ダレトス……。これが本当のあなた…。

         ううん。これが本当の私達なんだね…」



素体そのもののような外見だった黒い本体は、

輝くような純白へと変わり、各所にふわふわとした衣が纏われる。

腰回りには、四基の金色の輪型のパイルが浮かぶ。


各所にある緑の半透明のパーツは、彼女自身の可能性を示すかのようにそのまま残り、

それと同じ色をした妖精のような羽根が生えている…。

仮面のような顔も僅かながらに人型に近づき、その瞳は他機にない青色に変わっている。




未だ完全とは言えない。

それでも、もう欠陥品などとは呼べない新たなサイバディがそこにあった。
368 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/18(月) 00:16:28.07 ID:CXix/oec0
シンパシー「……………」



セクレタリー「シンパシー………!」



黒く変わったその機体は、それが本来持つ禍々しさを放つ…。

シモーヌのアプリボワゼ、そしてダレトスの変化の間に復活を遂げたそれは、当然のようにダレトスに狙いを付ける。

羽根のように伸びた各部のパーツの先に、金色の針のようなそれが発生し始める…。





頭取「シモーヌ! 無茶よ…!」


プロフェッサー・グリーン「忘れたのか…! あいつの能力は…!」





セクレタリー「大丈夫です…!」



シモーヌの返事と共に、腰回りに浮かぶ金色の輪の一つが回転し、黄緑色の光を放つ。

そして、その黄緑色の輝きはシンパシー周囲にも発生し、金色の針を消滅させた。
369 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/18(月) 00:17:06.86 ID:CXix/oec0
セクレタリー「他者を無理やりに虐げるその力は…、もう使わせない」



シールド・パイル。

周囲の敵の固有能力を封じる力。

その力がダレトス自身の本来の力なのか、シモーヌの願いが作り出した力なのかはわからない。


だが、その力は確かにシンパシーのアプリボワゼの能力を完全に封じ込めた…。



そして、その輝きは…。
370 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/18(月) 00:17:58.33 ID:CXix/oec0
スピードキッド「眩しいな…。杏子も…。バンカーの奴も…。あの嬢ちゃんも…」


レイジングブル「あぁ…、負けてらんねぇよな…! 俺達も…!」



シモーヌとダレトスが放った輝き。

それは、他の綺羅星十字団員が僅かに足りなかった輝きを取り戻させる…。

そして…。





プロフェッサー・グリーン「ヨドックが……、呼んでいる……」


スカーレットキス「そうだよな……。ページェント。私らの方がもっと…!」



その輝きは、暴れることしかできないサイバディと心を通わす為の確かな力と変わる。

ドライバーとサイバディ。

本当の意味での関係が形成された時、失われた筈のシルシはその胸に蘇る…。
371 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/18(月) 00:18:45.25 ID:CXix/oec0
頭取「どうやら、まだ私達にも輝きが残っているようね」



レイジングブル「おぅ…!」


スピードキッド「これなら、あいつらを助けに行ける…!」


プロフェッサー・グリーン「あぁ…」


スカーレットキス「やってやろうぜ…!」



シルシを胸に宿し、同時にその素顔を晒した一行は、互いの顔を見合わせて不敵に笑う。


そして、右手の人差し指と中指、そして親指を開き、それを目の間に置く。

それは彼らの挨拶にして絆の言葉。

彼らを奮い立たせる力の言葉。

彼ら自身を指し示す輝きの言葉。






―――――綺羅星!!!!!―――――――



放たれた言葉と共に本当の星のように飛んでいく…。

己が絆を結んだ相棒の元へと…。
372 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/18(月) 00:19:59.39 ID:CXix/oec0
セクレタリー「くっ…!」



シンパシー「…………」



幾らダレトスがその姿を完全に近づけたと言っても、シモーヌ自身が未だ力不足なのは変わらない。




まして、相手はあのシンパシー。

妄執に捕われた輝く剣を振るった男の力を宿す亡霊…。


水色の剣が放つ鋭い剣先を避けつつも、掌から放つ光弾で反撃を試みるも、それは全て受け流される…。

飛行技能を活かして空中で戦い続けるも、その剣技に押され続ける。


やがて、高度が下がった所を球体に襲われ、完全に地上へ落とされてしまった…。
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/07/18(月) 00:20:42.92 ID:CXix/oec0
シンパシー「…………」


セクレタリー「きゃあッ!」





セクレタリー「………しまった」



シモーヌを取り囲むサイバディ達。


やがて、その内の五機がダレトスに向かって直進を始める。

攻撃を覚悟し、構えるシモーヌ。

だが、その様子には変化が訪れる。



ダレトスに向かって直進した五機に向かって何かが飛んでくる。

五つの星のようなそれはサイバディの胸に走り、それぞれの胸へと吸い込まれる。

そこに水色の輝く球体を得たサイバディは、自らの色と輝きを取り戻していく…。
374 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/18(月) 00:21:20.05 ID:CXix/oec0
セクレタリー「皆さん!」




レイジングブル「おぉよ…!」


スピードキッド「杏子の為にも…! バンカーの奴の為にも…!」


スカーレットキス「この戦いだけは負けられないよな…!」


プロフェッサー・グリーン「もうすぐゼロ時間が完全に消失する。

               それまでにコイツらをもう一度潰し、その修復時間で一気にザメクを叩きに向かう…!」



頭取「行くわよ! みんな!」



シモーヌのダレトスを取り囲むように並んだ五機のサイバディ。

アレフィスト、テトリオート、ヨドック、ページェント、ベトレーダ。


永き年月を経て、シルシと真のドライバーを得たサイバディ達は未だ戻れぬ暴君の僕へと向かって行く…。
375 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/18(月) 00:22:23.80 ID:CXix/oec0
開いていくゼロ時間の穴。

段々とその面積を広げる南十字島の夜の空。


世界を滅ぼす凶悪な存在『ザメク』。

その邪悪な存在は、まだその巨体を外へは出せずに空中で停止している…。






さやか「絶対に行かせない…!」



こちらを見下しつつ、ザメクは得意のレーザーを八基の巨大なパイルから放つ。

高速で誘導するそれをどうにか掻い潜りながら、再びザメクの元へと近寄っていく…。



誘導レーザーを引きつけて避け続けて、加速を続ける。

ザメクの元へと一気に迫ったまでは良かった。

だが、ザメクはこちらの手一杯の動きを完全に見越していた…。
376 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/18(月) 00:23:20.96 ID:CXix/oec0
ザメク「グォォォォッ!」



さやか「しまった!」



レーザーを避けながらも強引に加速した態勢崩れのあたしをザメクは見逃さない。

頭部の付近から、雷撃を降らせる。



あたしは、どうにかそれを避ける為に加速を止めて回避を行おうとするも、当然ながら無理が祟る。

止まり切れなかった機体に雷撃が掠め、バランスを崩して降下していく…。




そして、それを待っていたかのように敵のサイバディがあたしを狙ってくる…。
377 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/18(月) 00:24:08.08 ID:CXix/oec0
さやか「まずい…!」



カフラット「……………」



クナイのような形になったそれは、落ちていくレシュバルとは逆に上へと向かってくる。

空に向けて放たれた矢のような敵機に貫かれる…。

その時…。






???「よろしくないわねぇ…! 美樹さやかッ!」



地上から放たれた無数の赤いレーザーがクナイ型のサイバディを吹き飛ばした。
378 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/18(月) 00:25:02.94 ID:CXix/oec0
さやか「その声…、まさか…!」



地上にはゴーレムのようないかつい外見をした機体…。

あたしを苦しめたあのヘーゲントがいた。

緑色のいかついそれは、あたしをさっき襲った時とは機体色が異なっている…。


そして、耳に通るプライドの高そうなあの声…。





マドカ「全く…。休暇中の私達を駆りだすなんて…!

    今度こそ死にたいのかしら…!」



さやか「すいません…」
379 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/18(月) 00:25:43.41 ID:CXix/oec0
マドカ「しっかりなさい。お友達を助けるんでしょう…?」


さやか「………はい!」






マドカ「コウちゃん…! お願い!」



彼女が呼ぶと、飛行形態のコフライトが高速で接近してくる。

その位置は丁度、レシュバルの真下くらいに合わせている…。





コウ「私の機体を踏み台にして態勢を立て直せ!」


さやか「あなたは…」




コウ「行け…!」


さやか「はいッ! ありがとうございます!」



言われるがまま、コフライトを蹴ってあたしはもう一度空へと上がっていく…。

かつては敵だった二人に感謝の言葉を送りながら…。
380 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/18(月) 00:26:30.19 ID:CXix/oec0
マドカ「さて、と…。マスコットガールちゃんも行った事だし…」


コウ
「久々にやるかい…?」




マドカ「あんまりやる気は無いんだけどね…。

    ただ…」


マドカ「挑まれた決闘を受けないのは、流儀に反するの…!

    そして…、やるからには思いっきりやらせてもらおうかしら…!」




コウ「そうだね…。やるからには楽しもうか!」





裂けたゼロ時間を登っていくザメクと、それを追う青と白の貴公子を見ながら二人は語りあう。

狂気に酔う二人の戦士が戦うのは、『好敵手』の為か…。

それとも、己が休息を妨げる邪魔者を蹂躙する為か…。



南十字島。

この世界を賭けた最後の戦いの幕が下ろされた…。
381 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/18(月) 00:27:51.63 ID:CXix/oec0
っし。
今日はここまで。

前にあと四回くらいで終わると言ったな。あれは嘘だ。
だけど、今度こそ後三回(確定)の更新で終わると思います。


それでは、本日は閉会とする。

このスレを見てくれた者に栄光を…!
レスをくれた者達に祝福を…!

綺羅星☆






――――ちょっとしたお遊びの類――――


隠しキャラ

ケイ・マドカ&ヘーゲント アタリ・コウ&コフライト


【加入条件】
@第二話で、さやかでヘーゲントの止めを刺す
A第十九話到達時点で、タクトからさやかへの好感度が10以上
B第二十話の戦闘で、さやか一人でコフライトを撃墜
C第二十三話で、レシュバルのHPを30%以下にしてイベントを発生させる
DCの後にさやかとマドカが二回戦闘

上記の条件を満たすと、第二十八話の12ターン目の味方増援として登場

【総評】
加入条件は色々と面倒くさいが、魂、脱力を持つマドカと、破格の機動力を誇る囮役に最適なコウ。
仲間にさえできれば、厳しいザメクの僕との戦闘で大いに役に立ってくれる。
382 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/18(月) 01:10:20.45 ID:ICVBeslCo
>>381
うはー!!乙星☆!!
シンパシーが再生するとこうなるか!ダレトス完全体とか退場組の駆けつけとか熱すぎる!!
383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/07/18(月) 01:29:30.65 ID:TPy1uVoAO
綺羅星☆!!

この高ぶりは最早言葉になど纏められない

スパロボで完全体ダレトスやバニシングの隊服で戦うタカシ見たいよね
384 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/07/18(月) 07:42:11.38 ID:DiHCXvIAO
>>306
「牛角」でちょっと吹いてしまったww

アレフィストと牛角さんってどことなく似てるな…
385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/07/19(火) 02:57:06.08 ID:+pcfxAJoo
綺羅星☆

マドカとコウも参戦か
最終決戦ってかんじじゃないですか

しかしタカシさんかっけー!
ザメクによる復活サイバディとはいえ、一人で10機撃破……!
王の柱食らったタクトやワコと共に安否が気になるが、多分、おそらく、大丈夫だろう
さやかがザメクに勝ちさえすれば……!
386 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:00:31.29 ID:rK20IwZB0
綺羅星☆
お久しぶりです
お待たせいたしました…

さっそく投下します


>>382
乙星感謝
退場組は最初っから出すつもりでした
マドカさん微妙に良い人にしたのはその為

>>383
綺羅星☆
まずスパロボに出て欲しいですよね
タウバーンは多分避けられるスーパーロボット

>>384
タイバニ見てないんよ…
失敗したと思う事の一つ

>>385
綺羅星☆
スーパータカシタイム
本編じゃシルシ持ってたのに、その他大勢と一緒に参戦が色々とアレだなと思ったので…
387 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:02:21.95 ID:rK20IwZB0
ラメドス「…! …! ………!」


レイジングブル「………」



ラメドスの突きが一段、二段、三段と決まる。

圧倒的なパワーと鉄壁のボディを持つアレフィストだが、槍の名手のデータが反映されたラメドスの技に苦戦していた。


本来、剣と槍が戦った場合、剣が勝利する為には槍使いの三倍の技量がいると言われる。

リーチとは本来、そのくらい圧倒的なモノ。

まして、アレフィストは飛び道具はおろか獲物すら持っていない。


潔い無骨なアレフィストの仕様を小馬鹿にするように、ラメドスはその技を披露し続ける。

そして、さらに得意の突きをアレフィストの顔面に放った。
388 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:04:52.26 ID:rK20IwZB0
レイジングブル「……………りか?」


ラメドス「…………!?」



レイジングブル「…………終わりか?」



止めのつもりで放ったんであろう顔面への一撃を受けつつ、その柄を右手で掴む。

相手に人が乗っていたんなら、さぞかし爽快な気分で放ったんだろう一撃。

だが、それもそれ以前の攻撃も全く持って論外だ。

ガキのじゃれ合いにしか感じねぇ…。



笑えるぐらい痒い攻撃だ。

何十発食らってもあの二発に遠く及びやしねぇ…!
389 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:06:25.42 ID:rK20IwZB0
レイジングブル「…………俺が教えてやるよ」


ラメドス「……………!」



槍の柄を握りつぶし、同時に左手で敵の右手を掴む。

自分の間合いに逃げたいんだろう。


だが、その為に足掻く無様な姿は、さらに『話にならない』。

醜態を晒し続ける敵意に溜息を吐きながら、俺は右手を大きく引く。
390 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:07:52.59 ID:rK20IwZB0
レイジングブル「攻撃ってのはなぁ…」




レイジングブル「こうやるんだよッ!!!!」


ラメドス「!?!?!?」



渾身のストレートが、敵の腹部に入る。

メキメキと音を立て、その腹部の装甲が裂ける。

やがて、その右手は内部をも抉っていき、敵の腹部に完全にめり込む…。



それでも、敵はへなへなとした抵抗を続ける。

が、俺がその右手ごと敵を持ち上げてやると、さすがに限界を迎えたのかそのまま宙で四散した。
391 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:08:56.48 ID:rK20IwZB0
レイジングブル「だらしがねぇ…。鍛えてから出直してこい…!」



無様に散った敵機に背を向け、俺は左手で刺さったままの槍先を引き抜いて捨てる。



俺程度のパンチ一発で沈む雑魚に構っている余裕はねぇ。

せっかく、シルシを得てアイツを助ける戦いに参加できるんだ。


最後くらい格好付けさせて貰うぜ。

なぁ………杏子?
392 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:10:01.37 ID:rK20IwZB0
スピードキッド「ヒャッホ〜イッ! 今日の俺には誰も追い付けねぇッ!」


ザイナス「…………」



空を疾走するバイク。

それを追う四つの赤いボール。


ザイナスの固有武装『ザインスフィア』。

幾つもの敵を捉え、翻弄してきたそれも空を駆けるそれには追い付けない。


速度に劣るからと回り込み、挟み込みしようとするも、巧みなドリフトテクニックでそれは全て避けられる…。
393 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:11:00.18 ID:rK20IwZB0
スピードキッド「どうしたッ!? 遅すぎんぜ!?」



悪いが、今日の俺は本気モード。

最初っからアクセル全快で行くぜ…!


あんなモンは勿論、他の誰にも何にも俺は止められねェ…!







スピードキッド「ヘイヘイヘイ! そんなウスノロっぷりじゃ話になんねぇぜッ!」



バイクから人型へ変形。

落下しつつ、両腕を振るって光輪を放つ。

置いてけぼりを食らった赤い球体へ目掛けて、一発、二発と次々にそれを飛ばす…。


杏子のアホにへたっぴと言われたこの攻撃だが、今日の俺は一味違うぜ…!?
394 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:12:38.03 ID:rK20IwZB0
スピードキッド「どうしたッ!? 遅すぎんぜ!?」



悪いが、今日の俺は本気モード。

最初っからアクセル全快で行くぜ…!


あんなモンは勿論、他の誰にも何にも俺は止められねェ…!







スピードキッド「ヘイヘイヘイ! そんなウスノロっぷりじゃ話になんねぇぜッ!」



バイクから人型へ変形。

落下しつつ、両腕を振るって光輪を放つ。

置いてけぼりを食らった赤い球体へ目掛けて、一発、二発と次々にそれを飛ばす…。


杏子のアホにへたっぴと言われたこの攻撃だが、今日の俺は一味違うぜ…!?
395 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:13:36.26 ID:rK20IwZB0
ザイナス「……!」


スピードキッド「タコが! 面喰ってんじゃねぇ!

        後輩が成長してんのに、先輩の俺らがアホ面してる訳ねーだろうが!」



放たれた4発の光輪は、全ての球体を捉える。

ちょろちょろと飛び交うあの赤い煩い奴を手軽にお掃除って訳だ。


アイツが見てたらどんな顔するんだろうな…?

全く、残念で仕方がねぇ…!



俺は笑いながら、テトリオートをバイクの形態へ戻す。

喧しい球体が消えたから、一気に勝負に出る…!
396 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:15:12.42 ID:rK20IwZB0
スピードキッド「口の減らねぇ奴だけどよ…!」


スピードキッド「やっぱり可愛い後輩なんだよ…!」


スピードキッド「だからよッ!」




ザイナス「……!?」


敵は、エリート様らしく光り輝く剣をカッコ良く構えたてやがった。

が、その剣は振り下ろされる事はない。


奴のそれよりも速く、俺のテトリオートの前輪は敵の胴体を捉えた。
397 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:17:00.15 ID:rK20IwZB0
直撃に近い形になり、敵機は前輪に巻き込まれて持ちあがる。

そのまま上空へと連れて行かれ、そこで爆散した。





スピードキッド「退きな…! 今日の俺の道を阻むんじゃねぇ…!」



杏子もバンカーの野郎も…。

どいつもこいつも格好付けやがって…!

気にいらねぇ…。

誰がてめぇを悲劇のヒーロー、ヒロインにしてやるかよ…!


俺みたいな三下に助けられて、苦虫潰したみたいな顔でもしてろ…!
398 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:17:51.26 ID:rK20IwZB0
コウ「相手はあの『バニシングエージ』の生え抜き組の機体…」


ギメロック「…………」



二機の漆黒のサイバディは、互いに斬り合う。

同じ色彩の機体だが、片方は光沢を持って光に照らされ、もう片方は闇のように暗く光を飲み込む。


同じ黒でも正反対の性質を持っている…。


そして、そんな二機の中央では赤く輝く二本の閃光が輝き続ける…。
399 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:18:40.17 ID:rK20IwZB0
コウ「正直、期待していたんだがな…」


ギメロック「………………」




コウ「つまらない。所詮は人形か……」



二つあった赤い閃光の片方が、空高く舞い上がる。

言うまでも無い。

私のスターソードで敵の剣を跳ね上げた。


こんな魂の通わぬ人形は遊び相手にもならない。

ちゃんばらごっこをするくらいなら、退屈をする方がマシだ。


私は、獲物を失って棒立ちになった敵機の胴体を横に斬りつけた。
400 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:20:11.60 ID:rK20IwZB0
ギメロック「……………」



爆散しそうな体部分を切り離し、敵の頭部から上が浮く。

落ちてきた赤い剣を、触手のようなサブアームで握るとそのまま空へと昇っていく…。






コウ「…………見苦しい。無様なのを通り越して滑稽だな」



逃げるつもりなのか、そこで私と張り合おうと言うのか…。

やはり人形風情は話にならない。

空は私の狩り場。


そこでの敗北は、『あの二人』以外には経験していない…!
401 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:21:52.48 ID:rK20IwZB0
コウ「空に逃げた時点で、貴様は終わりだ…!」



ふらふらと飛んでいくギメロックの半身に金色の針が突き刺さる。


蜂の一刺し。

綺麗にコクピット部を失った、ギメロックはそのまま落下。

地面へと落ちる直前に爆発した。





コウ「…………やはり、つまらない」


わかってはいる。

彼女ほどの力量を望むのは、高望みが過ぎると。

だが、それでもあの戦いに並ぶそれを求めてしまう…。


やはり、私は普通には生きられないらしいな…。
402 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:23:00.57 ID:rK20IwZB0
カフラット「…!」


マドカ「……………また、外れかぁ」



人魚のようなサイバディはまた地中へと消える。

潜っては消え、現れては襲う。

トリッキーな戦法はなかなか新しく面白い…!

モグラ叩きをリアルにやっているみたいで、案外楽しい…!





と、思っていたんだけど…。
403 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:23:59.88 ID:rK20IwZB0
マドカ「いい加減に飽きて来たわね…」


カフラット「…………」



敵の攻撃を受けながら、溜息を吐いた。

トリッキーって言うのは自分に自信のない軟弱者の戦法だから、突き詰めていないと退屈なのよね…。


モグラ叩きだ、かくれんぼだと、最初は面白がってみたけれど、長く楽しめるモノじゃないわ…。



あ〜あ…。

状況が状況じゃなかったら、マスコットガールちゃんとやりたかったのに…。

せめて、空に向かったあの大きいのを狙えば良かった…。
404 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:25:47.57 ID:rK20IwZB0
マドカ「…………」


カフラット「……………」



背後から迫った人魚モドキを殴って伏せる。

敵はまたもするっと地面へ消えていく。

ワンパターンの繰り返し。

呆れてモノも言えない…。



でも、倒すのは簡単なだけど、それじゃますますつまらない。

何か面白い倒し方はないかしらねぇ…。




そうねぇ………。

泳いでる海が突然干上がったら、魚ってどうなるのかしら…?
405 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:27:15.10 ID:rK20IwZB0
マドカ「ウフフ…」



マドカ「良い事思いついちゃった♪」



ヘーゲントの全身のレンズカバーを開く。

やる事は勿論一斉掃射…♪

この辺りの地上がまるまる吹き飛んだら、あの人魚モドキはどうなるのかしら…?



考えたら、少しだけゾクゾクしてきちゃった…!
406 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:28:27.26 ID:rK20IwZB0
マドカ「ウフフフフフフフ! さぁ面白い姿を見せて頂戴!!!!」



ヘーゲントは周囲の地上へ向けて赤いレーザーを一斉に放つ。

いえ、放ち続ける。


周辺の地上が、ボロボロになって、真っ黒になって、抉りとれるまで…!

撃ちこんで、撃ちこんで、撃ちこむ…!


周囲が炸裂していく感覚…!

それを楽しむ…!



エネルギーの無駄使い…?

周囲への被害…?

そんなの知らない。

私が楽しめなければ、意味はないもの…!
407 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:30:13.39 ID:rK20IwZB0
カフラット「………」


マドカ「…………あら、やっぱり途中で一緒に焦げちゃったのね」




辺り一面は黒く染まり、その中からようやくそれの残骸を見つける。

途中で、耐えきれなくなって飛び魚みたいに跳ねてくる…。

な〜んて、予想したけど、買い被りだったみたいね…。



ちょっぴり爽快な気もしたけど、やっぱり全然駄目。

モグラ叩きよりは幾らかマシだったけど、ただ壊すだけってのはスリルに欠けて楽しめない…。
408 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:32:09.54 ID:rK20IwZB0
コウ「………また、派手にやったね」


マドカ「だって、つまらないんだもの」



コウ「まぁ壊した地上が、残ったゼロ時間の適応範囲だったのが幸いだね……」


マドカ「どうでもいいわ。それよりも他の獲物を探しましょ。

    そうねぇ…、次は…」



私は空を見上げる。

雑魚を狩っても楽しめないなら、雑魚じゃないのを狩れば良い。


少なくともあのデカブツなら、壊しがいくらいはあるでしょう…。



獲物を横取りした時のマスコットガールちゃんの反応も面白そうだし♪
409 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:33:01.26 ID:rK20IwZB0
コウ「あくまで、彼女には手を出さないんだ…?」


マドカ「…………やりたくないって言うんだもの。

    仕方ないじゃない」


コウ「…………」


マドカ「それに……」



これが終われば、あの子も礼のお友達に会える、みたいなのよね…。

それを邪魔するのは、さすがにね…。


らしくないとは思うけど…。

まぁ、それもたまには良いでしょう。



何かに捕われることほどつまらない事はない…。


だから、私はやりたいようにやる…。

それが最も、自由で楽しい生き方だとわかったから…。



結果的にとは言えそれを教えてくれたあの子には、御褒美くらいあげないと、ね。
410 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:34:13.67 ID:rK20IwZB0
プロフェッサー・グリーン「チッ…!」


アインゴット「………!」



プロフェッサー・グリーン「強い………!」



違う…。

敵は確かに強い。

あの杏子の動きを参考に襲いかかって来るのだ。

魔法少女としての次元の違う動きをまざまざと見せつけられる。



だが、違う…。

それ以上に私が弱いのだ…。
411 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:35:07.94 ID:rK20IwZB0
プロフェッサー・グリーン「プレコグ・モードの無い戦闘がこんなに面倒だとはな…」


アインゴット「…………」



私は基本的には研究者に過ぎない。


リビドーや理論展開には自信があるが、本来戦闘が得意と言う訳でもない…。

言ってしまえば、頭でっかち。

それでも、その頭でっかちを武器にして今日までは戦ってきた。

だが、今日はその頭でっかちが使えないのだ…。


私がアテにしていた『プレコグ・モード』。

勿論、私は当初はそんなシステムに頼らずにドライバーになったのだ。

それなりに心得はある。


だが、それなりがあの超人的な戦闘力に届く筈もない…。
412 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:36:06.31 ID:rK20IwZB0
プロフェッサー・グリーン「クソッ……。私は……」



敵は身軽な動きで、防御自慢の球体状態のヨドックを平然と蹴り飛ばす…。

さすがのヨドックも立て続けにダメージを受けて装甲が限界に近い…。



対する私は、反撃の糸口すらつかめず、ただ丸まっているだけ…。

悔しいが、文字通りの達磨…。
413 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:37:29.25 ID:rK20IwZB0
プロフェッサー・グリーン「く…」


プロフェッサー・グリーン「このままでは…」


プロフェッサー・グリーン「このままでは、やられる…!」



抵抗できない…。

ヨドックの装甲の破損状態が80%を超えた…。

次を食らえば、もうただでは済まない…。



そうだ…。

今の私はシルシ持ち…。

倒れても帰還できる電気棺からの起動とは訳が違う…。

ここで倒れれば、あのバンカーのように…。


いや、バンカーと違って何も成し遂げられぬまま…。
414 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:38:16.43 ID:rK20IwZB0
アインゴット「…………!!!!!」


プロフェッサー・グリーン「く……」



敵の飛び蹴り…。

次はもう受けられない…。




死ぬ…。

あれを食らえば…。



死ぬ…。

死ぬのは嫌だ…。


死んだら…。
415 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:39:33.62 ID:rK20IwZB0
プロフェッサー・グリーン「ツバサ君に会えなくなるだろうがッ!!!!!」


アインゴット「……!?」



敵の蹴りを咄嗟に両腕の爪で受ける。



そうだ…!

死ねない…!


せっかく、イケメンの男子をゲットしたんだ…!

こんな所で死んで…!

死んでたまるかッ…!



だが、敵の蹴りは重い…。

そして、その蹴りが少しづつヨドックの腕の耐久を削っていく…。

元々、球体形態の装甲代わりを務めているのがこの両腕だ…。

長く持つ筈もない…。




殺られる…。

そう思った時だった…。
416 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:41:42.37 ID:rK20IwZB0
敵が消えて、代わりに赤い斬撃が横に走る。

ヨドックの両腕はどうにか保たれ、私自身も命拾いする…。

助けられた相手が相手だから、後が怖いが…。




スカーレットキス「良い気迫じゃねぇかよ」


プロフェッサー・グリーン「まずは感謝する…。だが、お前の担当は別の機体だろう…?」



スカーレットキス「よくわからんが、ウインドウスターとニードルスターが私の担当機とやりあってた」


プロフェッサー・グリーン「相変わらず訳のわからない連中だな…。この場合は地獄に仏と言った所だが…」




スカーレットキス「ここから先は任せな。ウチの後輩の後始末は、ウチで付けるさ…」


プロフェッサー・グリーン「わかった。悪いが、それならここは任せるぞ。

             私はバックアップに回らせてもらう…」
417 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:43:58.52 ID:rK20IwZB0
スカーレットキス「さって…。どう料理するかな…」



アインゴット「…………」



右手でスターソードを構えながら、頭を掻く。

目の前に居る目玉のサイバディは、あの杏子の身体能力や技を会得している。


槍や剣を持ってないのは幸いだが、そもそも私は本気を出していないアイツに勝った事すらない。

さらにそこに魔法少女だった時の力が加わるんなら、それはもう出鱈目な性能なんだろう。




でも…。

正直、プロフェッサー・グリーンがコイツを落とさずにいてくれて安心した。
418 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:44:54.85 ID:rK20IwZB0
杏子は私の部下だ。

だからこそ、コイツを片づけるのは私じゃなくちゃならない。


この目玉野郎は、アイツが懸命に戦ってその結果に残った残り滓だ。

なら、その滓の掃除くらいは上司である私が見てやらねぇとな…!





スカーレットキス「…………来な!」


アインゴット「…………!」



相変わらずの出鱈目な脚力。

一瞬で間合いを詰めた敵の蹴りが飛んでくる。


だが、それは食らってはやれない。

頭を狙った回し蹴りを、状態を反らして回避する。
419 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:45:41.99 ID:rK20IwZB0
それで終わる相手なら苦労はしない。

回避された回し蹴りに続けて、踵落とし繰り出す。


当たり前のように地面を吹っ飛ばす相手の攻撃を目暗ましにして、姿を消す…。

それは、私にとっての最大の攻撃のチャンス…。

いや、最大にして最後のチャンスとでも言うべきか…。




アインゴット「……………」


スカーレットキス(……………)



気配を殺しつつ、動き続ける…。

狙う技は勿論、私の十八番…。

『俊足の剣』。
420 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:46:38.47 ID:rK20IwZB0
気配を殺す…。

魔法少女の並外れた気配察知にも掛からない程に…。



躊躇うな…。

迷うな…。

心が曇れば、気配が表に出る…。



機会は来る…。

必ず…。



出来る…。

この技は杏子やタクトにだって通用したんだ…!
421 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:47:41.17 ID:rK20IwZB0
アインゴット「…………!」


スカーレットキス(かかった!)



あの杏子のコピーなんて図々しいにも程があると思ったら、案の定だったな…!


いくら、能力や技の上辺だけ真似ようが、無駄だ!

アイツの強さはそれだけじゃない…!





スカーレットキス「初太刀で一本ッ!」



アインゴット「…!?」



遮断した気配を追い切れず、痺れを切らしたか…。

あるいは、コイツらのシステム的に敵の逃亡と判断し、別の敵を探したか…。


コイツの持ってた集中みたいなのが切れるのを感じる…。
422 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:49:01.03 ID:rK20IwZB0
その一瞬の隙…。

それが命取りになる事をアイツはよく知ってる。

だから、本当にアイツそのものをコピーしているなら、そんな隙なんて生じる筈がない…!





スカーレットキス「はッ!」


アインゴット「…!」



背後から斬りかかるも、敵はそれに反応。

振り向きざまに繰り出したパンチが、ページェントの顔面を吹き飛ばす…。
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/07/24(日) 23:49:47.42 ID:rK20IwZB0
とでも、思っているんだろう。

だが、甘い…!




敵機に鋭く赤い線が走った…。






スカーレットキス「終わりだよ…!」


アインゴット「…!?」



目玉の機体は真っ二つになって、その上半身がズレる…。

そして、そのまま崩れ落ちて弾ける。


杏子を助け、同時にその杏子に負担を与え続けたアイツの戦いの残滓…。

それは今度こそ粉々になって砕けた…。
424 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:50:26.87 ID:rK20IwZB0
スカーレットキス「さて…、これをもう一度立ち上がらせる訳には行かないからな…」



アインゴットの残骸を見ながら知らずに呟く。

そして、その目を空へと移す。







スカーレットキス「残り滓の掃除の次は尻拭いか…。全く、世話を焼かせる奴だ」



ザメク。

アレを止めて、杏子も救いだす。


私達が時間を稼げば…。

きっと…、

きっとスガタ君がどうにかしてくれる…。



もう少しだけ待ってろ、杏子…。

それまで、絶対に死ぬなよ…。
425 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:52:27.68 ID:rK20IwZB0
頭取「はぁぁぁぁぁッ!!!!」


シンパシー「………!」




セクレタリー「奥様!」


頭取「シモーヌ…。あなたは下がっていなさい…」



シモーヌのダレトスは確かにその力を開花させた…。

だけど、やっぱりその力は戦闘向きじゃない…。


あの子とサイバディを結びつけたのは今でも失敗だとは思わない…。

むしろ、戦闘用のサイバディに新しい可能性を見出すなら、この子しかいない…。



そして、そのシモーヌを失う訳には行かない…。
426 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:54:19.12 ID:rK20IwZB0
頭取「はぁッ!」


シンパシー「………!」



あのヘッドの強さは、綺羅星十字団の中でも群を抜いていた。

そのヘッドの能力や力が、反映されているであろうシンパシーはやはり手強い。

あの男の固有能力も、この機体自体の固有能力も発動できないのに…。



だらしがないと言う自覚はある…。

私は部下と友人が、二人だけで戦っている事も知らずに…。

そして、どちらも守ってあげる事が出来なかった…。


だから、最後に残った私の宝物だけでも守ってみせる…。

この子はきっと、人とサイバディの関係をより良く導く何かがある…。

そのシモーヌを守る為なら…。
427 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:56:07.73 ID:rK20IwZB0
頭取「捨て身、か…」



約束は違える事になるけど、それでも…。

大切なモノを失って夢だけ追うよりはきっと良い…。


それに今の綺羅星十字団なら、シモーヌなら…。

私の夢は自ずと継いでくれる。


それなら…。



私は、この状況を打破する為なら、この命を賭けないと。

それが、あの男の野望に気付かずにいた我々幹部の責任でもある…。
428 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:57:24.26 ID:rK20IwZB0
頭取「だから、あの男の亡霊は刺し違えてでも私が…!」



敵の放つ真空波の中に突っ込む…。

フットワークを活かし、できるだけ敵の攻撃を避けながら…。

それでも、かわし切れない部分は諦めて、ガードして受ける…。


機体にかかる負荷はもう関係ない…。

最悪の時は…。



敵の真空波が直撃し、ベトレーダの左手が破損する。

それでも、コイツだけでも…。


タカシもあんこちゃんももう戦えない…。

それなら、これを倒さなければならないのは…。




さらに飛んできた真空波を受けようとした時、紫色の剣先がそれを払った…。
429 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/24(日) 23:58:24.93 ID:rK20IwZB0
セクレタリー「駄目ですよ…。奥様…」


頭取「シモーヌ………」



私の前に立ったのは、黄緑色の光を放つ機体…。

シモーヌのダレトス…。


あの子の機体が、紫色の剣を持ち、敵の真空波を払い続ける。

守る立場にある私を、逆に守るように…。
430 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:00:22.11 ID:nAp6ZD1N0
頭取「その剣は…」


セクレタリー「『アメティスト』。タカシのスターソードです…」



頭取「…………」


セクレタリー「奥様………。今まで私を守ってくれてありがとう…。

        でも、もう大丈夫です…。今は私も戦えます…」



頭取「でも、あなたは…」


セクレタリー「奥様は、この世界の『これから』に絶対に必要な方です…。

        だから、死なせない…」




セクレタリー「私達二人で奥様を守って見せます!」
431 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:02:47.43 ID:nAp6ZD1N0
そうか…。

この子はもう…。



私の手など無くても…。

私が守らなくても…。




もう、自分の力で前へ進める…。

進んでいける…。



それなら…。
432 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:03:45.39 ID:nAp6ZD1N0
頭取「一人で無理なら二人で…。二人で無理なら三人で…」


セクレタリー「え…?」



頭取「そして、私達三人が揃えば負けない…。負ける気がしない…!

   違う、シモーヌ…?」



セクレタリー「はい…!」



そうだ。

私は『おとな銀行』の『頭取』。


全サイバディの所有権を得て、それを平和的に運用していく夢が…。

責務がある…。


それを果たす為にも…。

倒れる訳には行かない…!


そう、だったわね。
433 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:05:36.57 ID:nAp6ZD1N0
頭取「シモーヌ…。どうにかして、あの剣を抑えられる…?」


セクレタリー「はい…! やってみせます…!」




頭取「………期待しているわ」



言いつつ、奥様は回り込むようにサイバディを駆けさせる…。

そして、私は奥様のベトレーダを狙わせないよう、敵機に向かって前進する…。


言ってしまえば、囮役。

ずっと、奥様に守られてきた私が、初めて奥様を守る役目を請け負った。


それなら…!
434 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:07:48.67 ID:nAp6ZD1N0
セクレタリー「やり遂げます…!」


シンパシー「…………!」



バリアを前面に展開しつつ、剣圧を放ち続ける敵へと特攻していく…。

重すぎる敵の放つ剣圧はバリアの耐久を見る見る削り、あっと言う間にヒビを作り出す…。





シンパシー「………!」


セクレタリー「そう来ると思ってました」



中距離まで迫ったダレトスを一気に仕留めるべく、シンパシーは距離を詰め、直接剣を振るう。

ヒビだらけになったバリアは崩れ、その中に剣が振り下ろされる…。


そして、眼前まで迫った水色の剣を紫の剣で受け止める…。
435 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:09:03.04 ID:nAp6ZD1N0
セクレタリー「来ましたね…!」


シンパシー「…………!」



思い切り繰り出された振り降ろし…。

その一撃は重く、それを受けた瞬間両腕が吹き飛んだかのような錯覚に襲われる…。



あの子でさえ、苦しんだこの攻撃…。

私如きじゃ、そう長くは持たせられない…。


だけど…。
436 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:10:31.00 ID:nAp6ZD1N0
セクレタリー「私は一人じゃない…!」


シンパシー「………!」



黒く染められたかつては銀色のサイバディの後ろに、赤い二つの眼光…。

獅子を摸したサイバディ『ベトレーダ』。

奥様の愛機の右手にある鉤爪が、鈍く輝く…。





セクレタリー「奥様!」


頭取「えぇ!!!」



シンパシー「…!?」



鍔迫り合いを続けるシンパシーには対応できない。

速く鋭い一撃が、敵機の胸の辺りを貫く…。


捉えられた敵機は、そのまま放り投げられように空中へ飛ばされ、花火のように宙で散った。
437 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:11:52.17 ID:nAp6ZD1N0
セクレタリー「……………ごめんね。戻れなかったサイバディ達」



宙で散ったシンパシーを始め、ザメクの僕に堕ちたサイバディ達の残骸を見て、思った…。

この子達も自分の信頼するドライバーがいれば…。

シルシを持つ者と心が通じ合えば…。


ひょっとしたら、こんな無残な姿にはならないで済んだのかもしれないのに…。

苦しまずに済んだかもしれないのに…。



でも…。

それでも…。

あなた達を傷つけてでもやらなければ…。
438 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:12:43.08 ID:nAp6ZD1N0
空を眺め、そこに居る筈のそれを睨みつける。



最後の敵『ザメク』。

あの子を救う鍵にして、世界を滅ぼす最悪の存在…。

それは、もうゼロ時間と言う檻から解き放たれ、何時何をしてもおかしくない状況にある…。


リビドー供給を行ったであろうザメクとの距離が遠い今なら、倒されたこの子達の再生も遅い…。

やるなら、今しかない…。
439 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:14:50.30 ID:nAp6ZD1N0
頭取「さぁ……、もう一仕事よ…」


セクレタリー「はい…!」




スカーレットキス「さぁ行くぞ。綺羅星十字団のしてきた事の落とし前を付けるよ!」


レイジングブル「おう…!」


スピードキッド「ついでにあの馬鹿も助けないといけないしな!」




プロフェッサー・グリーン「行くぞ! みんな!」





マドカ「さて…、暴れ足りないし、私達も行きましょうか!?」


コウ「あぁ…。最後の獲物は狩りがいがありそうだ…!」



それぞれがそれぞれの輝きを放ち、飛び立つ。

まるで流星のように。

だが、それとは違い、天へ天へと昇っていく…。
440 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:15:29.37 ID:nAp6ZD1N0
さやか「はぁぁぁぁぁッ!」


ザメク「………」



敵の雷撃を避け、レーザーを避けて迫る…。

元々タクトさんと協力してどうにかしていたモノが、全て自分に向かって放たれる…。


勿論、避けきれる筈もない…。

それでも、前へ…。
441 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:16:20.19 ID:nAp6ZD1N0
さやか「くッ」


さやか「まだまだ!」


さやか「アンタが止まるまで…! 師匠がどうにかしてくれるまで…!

    あたしは諦めない…!」



そうだ。

諦めない…!


諦めないって決めたんだ。

前に進むって…。
442 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:18:33.11 ID:nAp6ZD1N0
さやか「まだまだッ!」



??「さすがに大した気迫だね」


???????「あの杏子が惚れてるだけの事はあるじゃねぇか…!」


さやか「みなさん…」



それぞれが、それぞれの輝きに包まれて…。

彼らは虹色の流星のようにそこに現れる…。



綺羅星十字団。

その姿は本当の星々のように輝いていて…。
443 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:19:19.23 ID:nAp6ZD1N0
頭取「助太刀するわ。美樹さん…!」


さやか「あなたは…、ワタナベさん?」




セクレタリー「だけじゃ、ありません」


スピードキッド「おぅよ!」



スカーレットキス「全員で一気にザメクの動きを止めるぞ…!」


マドカ「さぁ…! 楽しませて貰おうかしら!」



輝きを放ち続けるサイバディ達。

それはあたしの周囲を突きぬけると、各々がザメクに向かって突き進んでいく…。
444 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:21:38.27 ID:nAp6ZD1N0
ザメク「グゥゥゥゥゥォォォォォォォ!!!!!」




コウ「そんなモノで…!」


スピードキッド「いっくぜぇ!!!」



蜂のような姿をした飛行形態のコフライト、そしてバイク型の機体がザメクに向かって突っ込んでいく…。

他の機体もそれに続くも、先陣を切った二機はホーミングレーザーに狙われてしまい…。


避けようとするも、避けきれない…。

結局は直撃して、機体が大破する…。
445 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:22:23.42 ID:nAp6ZD1N0
レイジングブル「うぉぉッ」



セクレタリー「きゃあッ!」



牛のような角を持つ機体、そしてその後ろでバリアを展開していた薄緑の発光している機体が大破する。

ザメクの雷撃の直撃した二機の後ろに居た、三機が代わりと言わんばかりに、ザメクに取りついていく…。





ザメク「グゥゥゥゥァァァァァァァッ!!!!!」



スカーレットキス「クソッ!」


頭取「厄介なモノを…!」


マドカ「だけど……、アレの連射は出来ない筈……よ…」



王の柱に三機は吹き飛ばされ、押し出される形で大破した機体が飛び出してくる…。
446 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:24:20.08 ID:nAp6ZD1N0
プロフェッサー・グリーン「残ったのは、私達だけか…!」


さやか「でも…!」



プロフェッサー・グリーン「あぁ…! 私にも守りたいモノがある…! その為にも…!」


さやか「はい!」



プロフェッサー・グリーン「私の機体を盾にしろ。お前は隙を見て前に出て、一気に決めるんだ!」


さやか「はい!」



残った最後の一機が球体型に変わり、レーザーの雨の中へ突っ込む…。

あたしもそれの後ろに隠れるように一緒に進んで行く…。
447 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:25:23.19 ID:nAp6ZD1N0
プロフェッサー・グリーン「くッ! くぉのッ!」


さやか「機体ダメージが…!」



プロフェッサー・グリーン「なんのこれしき…!」


さやか「無茶です…!」



プロフェッサー・グリーン「愛の為ならッ……!!!!!!!」


さやか「……………」



どう考えてももう無茶だ。

球体を形作っていた両腕がもげ、右足から火を吹き、顔面も破損している…。


これ以上やったら…!
448 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:27:18.95 ID:nAp6ZD1N0
さやか「あとは、あたしが…!」


プロフェッサー・グリーン「駄目だ! まだ…!」







さやか「はぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」



盾になってくれた機体を飛び越え、一気に前へ…。

そしてザメクに斬りかかる…!


勿論、それを許すザメクじゃない…。

突如現れた雷撃はレシュバルの真正面に発生…。


急ぎ、振り被ったスターソードでそれを受け止める…。
449 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:28:40.71 ID:nAp6ZD1N0
激しい雷撃に当てられ、機体のあちこちが溶け始める…。

それでも、剣を握った両手は離さない…。

これを切り払って、あいつの顔面まで迫れば、あるいは…。




さやか「くッ…!」


さやか「まだ…!」




さやか「諦めない…!」
450 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:29:51.26 ID:nAp6ZD1N0
雷撃は力を増す…。

右足が吹き飛び、さらに剣を支えていた左手が溶けて無くなる…。

それでも、まだ…!





さやか「あたしには……、視えているッ!!!!」



その一言とともに雷撃が吹き飛んでいく…。

晴れた視界の先に映るのはザメクの顔面と、レシュバルの握る金色のスターソード。

そして、白い刃…。
451 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:31:22.04 ID:nAp6ZD1N0
白い刃を握る手はレシュバルと同タイプの右腕…。

そのラインは赤く塗られている。


いや、そんな事を言うまでも無い…。

背中にあるこの心強くて、温かい雰囲気は…。





さやか「タクトさん!」
452 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:32:59.86 ID:nAp6ZD1N0
タクト「うん…! 遅れてごめん!」


さやか「大丈夫です。それに、さっきも言いましたよ…?」


タクト「そっか…」




タクト「僕には…」


さやか「あたしには…」



タクト&さやか「視えているッ!!!!」
453 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:33:44.74 ID:nAp6ZD1N0
タクト「うぉぉぉぉぉぉッ!!!!」



そうだ。

視えている…。

さやかと同じ未来が…。



あの子の望む未来…。

この世界を救い、杏子ちゃんの為に行く『旅立ちの日』。




それが視える…!


それなら…!
454 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:34:54.80 ID:nAp6ZD1N0
タクト「無駄だ…!」



迫るレーザーを白く輝くランスを回転させて払う。

角度を付けて襲ってきた分はパイルで撃ち落とす…。


さらに放たれた雷撃を、突き飛ばし、相手の右足に直撃させる…。



エムロードとサフィールを連結させて作り出した白いランス。

一層切れ味を増したそれは、彼女に迫るそれを全て撃ち落とす…。


やりたい事…。

やるべき事…。


彼女の望みを叶える…。

そして、彼女を守る…。



その二つは…!
455 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:36:02.24 ID:nAp6ZD1N0
さやか「タクト………さん?」


タクト「大丈夫…! 僕に任せて!」



両側から迫るレーザーを、ランスの回転払いとパイルのバリアで受けきる。

その僕の側面、彼女の駆る機体の背後が影に染まる…。


開いた五本の指が、彼女を狙う…。





さやか「タクトさんっ!」


タクト「大丈夫だって言ったよ…!」



レシュバルを突き飛ばし、代わりにその右手に掴まれる。

サイバディを一握りに出来る巨大なザメクの右手が、タウバーンを握り潰すべく力が込められていく…。
456 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:36:56.07 ID:nAp6ZD1N0
タクト「タウッ! 銀河……! ビィィィィィィィィム!!!!!!!」



ザメク「!?」



掴んだザメクの右手の中からそれを放ち、敵の右手を破壊する。

拘束を解いたビームはさらにそのまま直進し、相手の左肩の辺りを焼き払う…。


拘束を解かれたこちらへ敵のパンチが入るが、その程度は問題にならない…。


すぐに持ち直して反撃し、敵の左手を斬り落とす…。
457 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:38:04.09 ID:nAp6ZD1N0
タクト「負けないさ……。今の僕は絶対…!」



視える…。

今の僕には。




そして、聞こえる…。

『世界の声』が。



だから、今の僕は負けない…。

絶対に成功できる…。

ようやく、さやかの為に戦える…。



僕の為に戦ってくれた彼女の為に…!
458 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:42:25.80 ID:nAp6ZD1N0
タクト「さぁ来い! ザメク…!」




ザメク「………か」


さやか「え…?」





ザメク「タクト……。さやか……。聞こえるか……?」


さやか「その声…」


タクト「スガタか…!?」



敵の攻撃自体は止んでいない…。

放たれるレーザーを払い続ける…。


それでも、敵から聞こえるその言葉は間違いなく…。
459 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:44:56.81 ID:nAp6ZD1N0
スガタ「時空操作及び、機体制御のコントロールは取った…。

    後は、残った武装を潰せば…」


タクト「武装の場所はどこだ…!」



スガタ「本体に付いた八基の大型パイルと雷撃発生のコントロールを持つ頭部…。

    やれるか…?」


タクト「まかせ…」


さやか「任せてください!」




僕の言葉を遮るように、自信満々に彼女は言う…。




そっか…。

この子はそうだったよね。


凄く真っ直ぐで…。

自分で決めて、突き進んでいける子だから…。

だから、誰よりも輝いていて…。
460 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:46:25.64 ID:nAp6ZD1N0
タクト「さやか…」


さやか「はい…?」




タクト「あの技やっておこうか…!」


さやか「………いぇ〜っす! やってみましょうか!」



レシュバルが右で、タウバーンを左にしたフォーメーションが組まれる。

二機はエネルギーを溜めるような動作を行い…。



互いに分断されて戦う事が多かったから、今日まで使わなかったこの技…。

前にやった練習の時は失敗した…。


だけど…。

今日はうまく行く…。
461 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:47:08.57 ID:nAp6ZD1N0
タクト「銀河の光よ!この身に集え!」


さやか「猛る流星! ブルーティッシュ・タウ・ミサイルッッッッ!!!」



それぞれが輝きを纏い、駆ける。

それは、ミサイルと言うよりは流星のようで…。





――そんな闇の中に埋もれて、声も出さずにいる必要はないさ…!――


あの時、苦しんでいたあの子がこんなに強くなって…。

そして、今僕と一緒に宇宙を駆けている。



――あはは…。なんで…?  おかしいな…、こんなつもりじゃ…――


今の彼女は前を向いて進んでいける。

僕がいなくても…。



だから、僕はただ祝福しよう…。
462 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:48:29.20 ID:nAp6ZD1N0
輝く二つの流星は、ザメクの両側から迫る。

輝く二人は、放たれたレーザーを華麗にかわし、美しい軌道を描き続ける…。


駆け廻るレーザーを避け続け、二つの光はそれを放ったパイルを一つまた一つと貫いていく…。





さやか「やれる…! できる…!」


タクト「あぁ…!」




さやか「タクトさんとなら…!」


タクト「さやかとなら…!」




さやか&タクト「どんな事でも!」



輝きの一つがザメクの正面で動きを止める。

今だと言わんばかりに放たれる雷撃。

しかし、それを現れたもう一つの輝きが払う…。
463 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:49:22.81 ID:nAp6ZD1N0
さやか「いっけぇぇぇぇぇぇぇ! タクトさん!!!!!!!」



タクト「あぁ…! これで、止めだッ!!!!!」



放たれた雷撃をレシュバルが払い、タウバーンはその上へ…。

白く輝くランスをザメクの顔面に向かって投げつける…。




やりたい事。

やるべき事。


タクトとさやかのそれら全てが一致した瞬間…。

投げられた槍は、まるで太陽の如く輝き…。




気付けば、ザメクの頭部を貫いていた…。
464 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:50:52.44 ID:nAp6ZD1N0
さやか「……………やったの?」


タクト「スガタ………!」



スガタ「……………」






さやか「スガタ師匠…………」


タクト「スガタッ!!!」



スガタ「………だ」
465 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:52:07.93 ID:nAp6ZD1N0
スガタ「制御成功だ…! 二人とも…。

    いや、綺羅星のみんなも、本当によくやってくれた…!」



さやか「やった! やったよ…! タクトさん!」


タクト「あぁ…!」



コクピット越しに見える彼女の笑顔…。

僕は無事に彼女を守り通せた…。




でも、それは…。

同時に別れを意味していて…。


いや、やめよう…。

今は良い…。



それよりも今は…。
466 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:53:17.46 ID:nAp6ZD1N0
さやか「凄い空…」



戦いの果て…。

僕達をの足元にある地球…。

青く輝くそれは、まるで僕達を祝福するように煌めいていて…。





タクト「あぁ…。だけど、僕達はこれとは違う。もっと凄い空を…」


タクト「きっと見るさ…」




さやか「はい……!」



二人に許された最後の時間…。

それなら、今は彼女の笑顔の事だけを考えよう…。


今だけは…。
467 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/25(月) 00:55:45.62 ID:nAp6ZD1N0
っし。
今日はここまで。


スランプやら体調不良やらあって、中々来れませんでした。
すいません。

次の投下が27日の夜、最終話の投下が31日の夜、になると思います


それでは、本日は閉会とする。

このスレを見てくれた者に栄光を…!
レスをくれた者達に祝福を…!

綺羅星☆
468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2011/07/25(月) 00:59:37.77 ID:DDSJdVVSo
乙綺羅星☆
ちょっと胸に込み上げるものががががが
469 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/07/25(月) 03:43:53.96 ID:u298pqoAO
綺羅星☆!!

こみ上げてくる感情を文に出来ん、乙
470 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/07/25(月) 07:26:16.63 ID:zVPD9zqAO
乙星ッ☆

ついに来たぜ合体攻撃
必ずやってくれると信じてた!!
471 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/07/25(月) 07:27:33.10 ID:zVPD9zqAO
乙星ッ☆

ついに来たぜ合体攻撃
必ずやってくれると信じてた!!
472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/25(月) 10:49:23.04 ID:Q2fR8yFBo
乙星ィ☆!!
ついに「視えているッ!!」来たか!!
それぞれの心情と戦いが熱すぎる!!
473 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/25(月) 11:09:35.26 ID:6bNtdHhSO
乙。マジで鳥肌もんだったぜ〜。
474 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/07/27(水) 01:24:50.31 ID:PmzqkfgDo
綺羅星☆

合体攻撃で銀河美少年大勝利!
「視えている」タクトと共に駆け抜けるとはさやかも強くなったもんだ
タクト、スガタ、ワコはもちろん、彼女とアプリボワゼしたレシュバルの感動もひとしおだろう

綺羅星十字団の独白も輝いてたけど、
>>プロフェッサー・グリーン「ツバサ君に会えなくなるだろうがッ!!!!!」
途中のこのミドリ先生の叫びがなんか一番こう、切実な響きがあったw
475 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/27(水) 23:08:22.99 ID:8ILuWuJL0
綺羅星☆

今日も投下します
夏バテ寸前でちょっときつく、まだラストを大分書き終えてないのが…
どうにか7月中に終えたいところ


>>468>>469
綺羅星☆
どうにかここまで来れました
完成は間近なんですが、EDがまだ…

>>470
乙星感謝
合体技はここまで取っておくと決めてました
けっして個人戦メインで使い所がなかったわけでは…

>>472>>473
乙星感謝
ザメク戦は書きたかった箇所の一つだったんで、どうにか辿りつけて良かったです

>>474
綺羅星☆
もともとは、さやかは銀河美少年ならこうなってた筈なんすよ…
ミドリ先生は、ほら…。ミドリ先生ですから
476 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/27(水) 23:11:04.81 ID:8ILuWuJL0
南十字島裏山。

綺羅星十字団所有敷地内。


青い衣装の少女が巨大な何かの前に立っている…。

そして、その傍らには担架のようなモノの中で眠り、未だ目覚めぬ赤髪の少女がいる…。


そして、その彼女達を見送る為の面々もまた、彼女同様寂しさを隠せていない…。





さやか「マドカさん達は、やっぱり来てないんですね……」



イヴローニュ「…………厳密には、彼女達はもう綺羅星十字団ではないからな。

         連絡の取りようもないのさ」



さやか「残念です…」
477 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/27(水) 23:12:26.75 ID:8ILuWuJL0
さやか「コイツが目を覚ましたら伝える事ってあります?」


頭取「これを…」




さやか「ビデオカメラ…?」


プロフェッサー・グリーン「録画再生機能付きだ…。そっちの世界で同じ規格とは限らないからな…」


スカーレットキス「言いたい事は全部そこに入れておいた。

           本当は文句の一つも言ってやりたかったが…」


さやか「それもそのまま伝えますよ…?」




スカーレットキス「じゃあ、一言言っておいてくれ。『大馬鹿野郎』ってな」


頭取「じゃあ、私からも。

   『ちゃんと勉強するのよ』って伝えてあげてくれる?」


セクレタリー「…………二人とも相変わらずです」




さやか「ふふ…。わかりました」
478 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/27(水) 23:14:11.22 ID:8ILuWuJL0
さやか「ところで……。

    シルシ……。レシュバルは……」



さやかは自分の胸の中央を見ながら言う。

彼女の胸に宿る『レシュのシルシ』。

すなわち、『レシュバル』の事…。


それを綺羅星十字団へ渡す義理はないのだが、だからと言って向こうの世界へ自分の都合で持ちこんでいいのか…。






????「あいつ自身は何と言っている…?」



さやか「あなたは……」
479 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/27(水) 23:15:14.33 ID:8ILuWuJL0
悩むさやかの前に肩目に眼帯をした車椅子の男が現れる。

その体はまだ重体らしく、灰色の髪の仮面の男がその車椅子を押している…。




さやか「無事だったんですね。よかった……」


カタシロ「どうにかな……。

      それより、あいつ自身はお前と行きたがっているんじゃないのか…?」



さやか「はい。でも……」


カタシロ「なら、それが全部だ。

      共に居る事を望むモノを引き剥がすほど、俺達は野暮じゃない…」



さやか「…………」


カタシロ「連れていけ。きっとお前自身の力になる。

     そして、あいつ自身もそれを望んでいる…」



さやか「はい………!」


カタシロ(俺も………、お前になら任せられる……)
480 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/27(水) 23:19:58.35 ID:8ILuWuJL0
本当の意味で『レシュのシルシ』が受け渡しが成される。


だけど、彼女にはそれ以外との別れが待っていた。

この世界で出会った大切な者達との別れが…。




さやか「じゃあ……。今度はあたしが挨拶する番ですね…」




さやか「まずは………スガタ師匠。お願いします」


スガタ「あぁ」



さやか「未熟だったあたしを優しく、時に厳しく指導してくださって本当にありがとうございます…。

    出来の悪い弟子で、苦労させちゃってすいません……」


スガタ「いや、君は最高の弟子だった……」




さやか「スガタ師匠………」


スガタ「僕が教えた事を忘れないようにね? 特にさやかは焦ると周りが見えなくなる悪い癖があるから……」
481 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/27(水) 23:25:35.46 ID:8ILuWuJL0
さやか「はい…。気を付けます……」



スガタ「うん。ご武運を……。さやか」


さやか「ありがとうございましたッ!!!!」


自分に剣を教え、戦いの厳しさを教えてくれた師匠へ一礼する。

そして、その視線を今度は姉代わりの親友へと向ける…。



さやか「じゃあ…、次はワコ姉!」


ワコ「うん…!」



さやか「一緒に居て凄く楽しかった。いつも二人ではしゃいで…」


ワコ「そうだったよね…。デートも楽しかったよね…」


さやか「うん…」
482 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/27(水) 23:28:09.95 ID:8ILuWuJL0
さやか「飾り気のない笑顔でいつも私を向かえてくれて…。

    それでいて、何時も最初にあたしの心配をしてくれる…。

    ワコ姉はまるで、あたしのお姉ちゃんみたいだった…」


ワコ「私も………明るくて可愛いさやかは、本当の妹みたいだなって思ってた…。

   だから……」


さやか「うん………」


ワコ「本当はね……、ずっと一緒に居たかった……」




さやか「ごめん…………」


ワコ「謝る…とこじゃない、ぞ?」




さやか「ごめん………。うん。ありがとう、ワコ姉………」


ワコ「うん………。私こそありがとう………。ずっと私を守ってくれて………」
483 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/27(水) 23:30:41.33 ID:8ILuWuJL0
師匠と姉代わり……。

仲の良かった二人との別れの言葉を済ます……。


涙を拭い、彼女が最後に向かったのは勿論………。






さやか「タクトさん…………」


タクト「うん…………」




さやか「きっと困ると思います………。

    だけど、それでも敢えて言います………!」


タクト「……………」






さやか「すぅ……はぁ………」



さやか「タクトさん……。

    出会った時からずっと、あなたの事が好きでした」
484 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/27(水) 23:32:35.46 ID:8ILuWuJL0
さやか「いつも元気なタクトさんが大好きでした………。

    いつもあたしを守ってくれるタクトさんが大好きでした………」



タクト「さやか………、僕は…」




さやか「ストップ………。それ以上は言わないでください」


タクト「さやか………」




さやか「その先を聞いたら、きっと揺らいじゃうから………」


タクト「………」
485 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/27(水) 23:34:32.22 ID:8ILuWuJL0
さやか「身勝手ですよね………。でも、伝えておきたかった…。

    前に好きだった奴には、その言葉さえ伝えられなかったから………」


タクト「さやか」



さやか「はい?」


タクト
「なら、そんな顔しないで欲しい」




さやか「え…?」


タクト「最後は、笑顔でお別れしたい………。

    僕は、君の笑顔が大好きだったから………」





さやか「ふふ……。敵わないなぁ、タクトさんには………」



頬を涙が伝う。

けれど、彼女は笑っていた。


満面の笑顔で………。
   
最後の最後まで…。
486 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/27(水) 23:35:31.04 ID:8ILuWuJL0
スガタ「もう、良いのか…?」


さやか「はい………。あたしの思いは伝えられました。

    だから……」



大切な親友を抱きかかえ、彼に背を向ける。

少年の目に映るのは、彼女の背中とその彼女を送る為の半壊した巨人…。



笑顔で別れた筈の彼女の寂しそうな背中…。

そして、自分自身の最後の想いを伝える為に、少年は彼女を引き止める………。
487 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/27(水) 23:38:34.30 ID:8ILuWuJL0
タクト「さやか!」


さやか「はい……?」



タクト「もう会えないかもしれない……。

    だけど………」


さやか「はい……! あたし達は……」




タクトの言葉に呼ばれ、振り返ったさやか。

伝えようとした言葉は、虚しくも途切れる。

答えようとしたさやかを光が包み、
その姿は消えてしまったから…。



それでも、この二人はその言葉の先がわかっていた…。

信頼し合えた二人だからこそ…。




出会った二人の銀河美少年。

二人はそれぞれの軌道を描く……。


例え、もう会えなくても………。
488 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/27(水) 23:39:35.22 ID:8ILuWuJL0
見滝原市。


青いドレスを纏う巨大な魔女。

逆さになって浮かぶ武器なそれは、少女の願いを踏みにじり嘲り笑う。

地上にある街は魔女の力で壊滅に近い被害を受け、空は曇り、まるでこの世の地獄のような光景である…。



越えられない絶望。

何度繰り返しても越えられぬそれの力の前に少女は倒れ、その魂は絶望で濁り始める…。


そして、白い珍妙な生物を連れ、その少女の前に現れたもう一人の少女。

自分を守る為にずっと戦ってくれていた…。

少女の思いを知った、もう一人の少女は決意を胸に、その言葉を口にする。


それが、自分を守る為に戦い続けた少女の望まぬ決着の形であると知りながら…。
489 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/27(水) 23:41:02.93 ID:8ILuWuJL0
まどか「もういい。もういいんだよ。ほむらちゃん…」



ほむら「まどか…? まさか…!?」



まどか「ほむらちゃん、ごめんね…。あたし魔法少女になる…」


ほむら「まどか……、そんな…!」




まどか「私、やっとわかったの。叶えたい願いごと見つけたの…。

    だからそのために、この命を使うね…」


ほむら「やめて…! それじゃ私は…」




???「そう、やめよう…」








まどか「え…?」


ほむら「今の声…」



???「まどかに死なれちゃ、あたしが困るんだ…」
490 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/27(水) 23:43:38.62 ID:8ILuWuJL0
ほむら「あなたは……」


まどか「ウソ……」


QB「まさか……」



一行は声の元を追う。

聞きなれた声。

懐かしい声。

もう聞く事が出来ない筈の声…。

その声の元を追う…。

そして…。



その場に居る二人と一匹は、その声の主を見て目を疑う…。

もう、居る筈のない人物。

魔女として生まれ変わり、そのまま消滅した筈の魔法少女の姿がそこにあったのだから…。
491 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/27(水) 23:44:37.97 ID:8ILuWuJL0
さやか「…………ただいま」



その表情は何時も見せていた明るく無邪気なモノでも、魔女になる直前の病みきったモノでもない。

どこか寂しげで、それでいて達観したような落ち着ききった表情…。

その両腕で、敵対していた筈の佐倉杏子を抱き、静かに歩む姿は風格さえ感じる。


それでも、左右の長さの違う水色のボブカット…。

青い騎士のような衣装、白いマント…。

その口、鼻、瞳…。


その姿はどう見ても彼女そのもので…。
492 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/27(水) 23:46:34.60 ID:8ILuWuJL0
まどか「さやかちゃん…、だよね…?」


さやか「うん…」



まどか「魔女になって……、もう消滅したって……」


さやか「………その筈だったんだけどね。色々あったんだよ」




まどか「さやかちゃんっ!」


さやか「……………」


まどか「良かった……。良かったよぉ……。さやかちゃん生きてて……」
493 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/27(水) 23:48:40.47 ID:8ILuWuJL0
泣きついてくるまどかに、顔を向ける。

頭でも撫でるなり、胸を貸すなりしてあげたいけど、杏子を両腕で抱いている今はそれをしてやる事が出来ない。


本当は、まどかに会ったら真っ先にしようと思っていた事がある。

しなきゃならない事がある。


だけど、異常な状況はそれを許してはくれない。

久しぶりにも戻った見滝原は、廃墟に変わり、空には魔女らしきモノの姿が見える。

それを捨て置いて、自分の事情を優先することなど出来る筈も無くて…。

あたしは事情を確認する為に、廃墟の近くで座り込んだもう一人に目をやる。
494 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/27(水) 23:50:16.65 ID:8ILuWuJL0
さやか「何が……、あったの?」


ほむら「…………」


QB「ワルプルギスの夜だよ」


さやか「ワルプル…?」


QB「伝説や伝承として伝えられる規格外の魔女の事さ。

   それが、今こうしてこの街を襲っている」



何も言わないこの女に変わり、いつものしれっとした口調でQBが割り込んでくる。

コイツはあたし達を魔法少女にした張本人で信用のならない奴だけど、

事こう言う説明に関しては嘘を言わない。

それに、もう一人の情報を持ってる奴がこの様子じゃ、あたしはコイツから状況を聞きだす他にない。
495 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/27(水) 23:51:32.76 ID:8ILuWuJL0
ワルプルギスの夜。

数十年に一度現れる規格外の魔女。



あまりの強さ故に結界の中に籠る必要性がなく、

現実の世界に現れて、通り過ぎた場所を滅ぼして回る最悪の存在。

その凶悪さは語り継がれ、少し教養のある魔法少女であれば誰もが知る、生ける伝説と言える化け物…。



それが、あたしの故郷である見滝原を襲っている…。
496 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/27(水) 23:52:54.93 ID:8ILuWuJL0
さやか「……………」


QB「そして、ほむらはそれに挑み、勝つ事が出来なかったという訳さ。

   だから、まどかがようやく僕と契や…」


さやか「わかった」



ほむら「……どこへ行くつもり?」


さやか「言われなくても、わかるでしょ……?」




ほむら「やめなさい…! まどかを連れて、すぐに逃げなさい…。

    ひょっとしたら、逃げ切れるかもしれない………」



まどか「ほむらちゃん……」



ほむら「もう、私には………」
497 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/27(水) 23:54:32.04 ID:8ILuWuJL0
あたしは、目の前でボロボロになっている魔法少女を見つめ続ける…。



暁美ほむら。

あたし達のクラスに最近やって来た転校生。


そして、あたしやマミさんと敵対していた魔法少女。

冷たい瞳、空っぽの言葉、不審な行動や言動…。

終いには、グリーフシード欲しさにマミさんを見殺しにした…。


あたしは冷酷で利己的なコイツをずっと敵視していた。

だけど…。


その冷酷で利己的な存在である筈のコイツはここで、ボロボロになって倒れていて…。

あたしが駆けつけた時には、目に涙まで浮かべていた。


それが何を意味するかは言うまでも無い…。
498 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/27(水) 23:56:09.79 ID:8ILuWuJL0
さやか「ねぇ…、転校生。アンタ一体何考えてるの?」


ほむら「………あなたに答える必要はない」




さやか「アンタにもそんなになるまで戦ってでも、守りたいモノがあったんじゃないの…?」


ほむら「消えなさい。すぐに。まどかを連れて…」



さやか「……………」



空っぽの言葉。

全てを諦めた瞳。

コイツ自身は以前と何も変わっていない。


けど、何故だろう…。

今のコイツの姿は物凄く悲しく、切なく見えて…。
499 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/27(水) 23:57:04.88 ID:8ILuWuJL0
まどか「もう良いよ。ほむらちゃん…」


ほむら「…………」



まどか「そうやって自分を悪者にしなくても良いんだよ…?

    ちゃんと話せば、さやかちゃんはわかってくれるよ…?」


ほむら「駄目よ! 彼女の性格なら、それを聞いたら…」




まどか「さやかちゃんは、ほむらちゃんを誤解してる…」


ほむら「まどか! それよりもすぐに…」




まどか「ほむらちゃんはね…、すっと…。

    ずっと私の為に戦ってくれてたの…」
500 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/27(水) 23:59:01.89 ID:8ILuWuJL0
ボロボロの転校生の制止を聞かず、まどかは彼女の弁解を始める。



何でも彼女は時間回帰の能力の使い手何だと言う。

一定の時間を何度も繰り返す…。

どこぞで聞いたばかりの話だ。


だけど、その話と決定的に違うのはコイツの見る夢はずっと悪夢だったって言う事…。



楽しい夢になどなる筈もない。

何時も最後には大事な人の無残な結末が待っていて…。

思い出を作っても時間を巻き戻せば、それが残っているのは自分だけ…。

そんな虚ろな日々をコイツは繰り返し続けた…。



たった一人の親友。

まどかを救う為だけに…。
501 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/27(水) 23:59:57.54 ID:8ILuWuJL0
まどか「私の為にって…、ずっと頑張ってくれてたの…。

    ずっと苦しんでたの…。だから…」


さやか「そっか…」



何を犠牲にしても、まどかを救う。

コイツはその為にずっと拷問のような日々を繰り返してきた…。


その結果、かつての仲間であるらしいあたしやマミさん、時にはまどか自身すら傷つけてでも…。

たった一つの目的の為に自分の心を殺して…。

たった一人の為に自分の全てを投げ打って…。

そうやって、心をすり減らして…。



正直、杏子の時と同じ。

共感は出来ない部分もたくさんあった。

だけど、その思いはやっぱり…。


気付けばあたしは彼女の前に立ち、その言葉を発していた。
502 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/28(木) 00:02:28.24 ID:17eus1VM0
さやか「よく…、頑張ったね」




ほむら「…………」



潰れそうなあたしに、あの人がくれた言葉。

あたしを救ってくれたあの言葉。


あるいは、まどかを救う為の障害だったあたしに言われたくはないかもしれない…。

だけど、その言葉は自然とあたしの口から溢れていた…。



同時に覚悟が決まった。

さっきまでよりも、ずっと強く…。
503 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/28(木) 00:06:26.58 ID:17eus1VM0
さやか「一人ぼっちで辛かったよね…? 苦しかったよね…?」


ほむら「私は……」



さやか「でも、もう良いよ」


ほむら「…………」




さやか「バトンタッチしよう。ここからはあたしが引き受ける…!」



もう戦えないのなら、あたしがコイツの代わりに戦おう…。

あの魔女を倒す事が、コイツの長いループを終わらせる事になるのなら…。

まどかを苦しめる因果とやらを断ち切る事に繋がるんなら…。



あたしが、アイツを倒せば良いんだ…。
504 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/28(木) 00:07:24.75 ID:17eus1VM0
ほむら「何、馬鹿な事を…」


さやか「幸いな事に、あたしの守りたいモノの中に、アンタの守りたいモノも入ってるからさ…」


ほむら「勝手に話を進めないで…! あなたはアイツの強さがわかっていない…」




さやか「大丈夫。今のあたしは一人じゃない。だから、絶対に負けない…!」


ほむら「美樹さやか……」



さやか「その代わり、と言っちゃなんだけどコイツの事頼む」



あたしは近くの瓦礫の平坦な所に、そっと杏子を置くと、刀剣を右手に作り出す。

そして、その刀剣を振るって転校生の足を縛る瓦礫を斬り壊した…。



異常な事態に面食らったが、元々は杏子を助ける為に戻って来たんだ。

その杏子が戦いに巻き込まれてぺしゃんこになってしまった…ではお話にならない。


だから、あたしは杏子を守る役をコイツに任せることにした、と言う訳だ。
505 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/28(木) 00:09:09.57 ID:17eus1VM0
さやか「それで貸し借りはなし。文句ないでしょ…?」


ほむら「……………」



痛めた足を引きずりながらも、杏子の元へと歩く転校生。

納得していると言う様子にも見えないけど、時間もそう残っていない。

面を食らったような表情をした転校生から、あたしの元にいるまどかに目線を移す。





さやか「だから、まどかも考え直してくれないかな…?」


まどか「さやかちゃん…」



その瞳にはまだ涙が残っているけど、その表情はあたしの知る可愛くて優しいだけのあの子じゃない…。

何か強い意志を感じさせる…。


それでも…。

この子にそれをさせる訳には行かない…。
506 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/28(木) 00:10:41.69 ID:17eus1VM0
さやか「安直な奇跡に頼れば、後でどうなるか…。

    それはあたしが身を持って教えた筈だよ…?」


まどか「わかってる…。それでも、私は…」



さやか「わかってないよ。アンタじゃなくて、コイツが困るんだよ。

    まどかの為に頑張って来たコイツに、アンタの命以上に価値のあるモノなんてあると思うの…?」


まどか「大丈夫。ほむらちゃんの思いも無駄にしない…」




さやか「じゃあ、あたしが認めない。まどかの命を捨てなきゃいけない願いなんて却下」


まどか「さやかちゃん…!」




さやか「良い瞳…、してるじゃん…」
507 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/28(木) 00:14:34.91 ID:17eus1VM0
まどか「…………え?」


さやか「アンタにも見つかったんだね。

    やりたい事…。やるべき事…」


まどか「やりたい事…? やるべき事…?」








さやか「良いよ。それも含めて後でゆっくり話し合おう。

    それ以外にも…」


まどか「…………」



さやか「たくさん話したい事があるから…。

    言わなきゃいけない事がたくさんあるから…。

    だから…」
508 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/28(木) 00:16:48.35 ID:17eus1VM0
さやか「もう少しだけ待ってて。

    全部終わらせて、必ず戻って来るから!」


まどか「うん…………!」



まどかの頭を軽く撫で、そのまま背を向ける。

空に浮かんだ青い魔女を見つめ、そちらへ行こうとした時に声をかけられる…。




ほむら「美樹さやか………」


さやか「何………?」


ほむら「気を付けて………」




さやか「オッケー!」



見送られて、あたしは二人に背を向ける。

そして、未だ前進を続けようとする逆さの化け物に向かって歩き出す…。
509 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/28(木) 00:18:23.47 ID:17eus1VM0
さやか「付き合わせちゃって悪いね…」



(………)




さやか「そっか。ありがと…、相棒」


(………)





さやか「じゃあ、やろうか…!

    見滝原市の平和はこのさやかちゃんが、ガンガン守りまくっちゃいますからね!」



(……………!)
510 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/28(木) 00:19:52.95 ID:17eus1VM0
さやか「アプリボワゼェェェェェェ!!!!」



あたしの体は光となり、次元を割って現れた相棒の胸の中へと吸い込まれる…。


頭部のパーツから、ピンク色の煙のようなエネルギー状の飾りが吹き出し、

腰にくっ付いていた4基のパイルが、離れて浮遊する。

サイバディの全身が一瞬だけ眩く輝く。


そして、胸のパーツがほんの少し開き、覗いた球体状のコクピットの中央で叫ぶ。





さやか「颯爽登場! 銀河美少年!! レシュバル!!!」



あたしの相棒。

白と青の巨人が、ボロボロになった見滝原の地に立った。
511 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/28(木) 00:21:18.72 ID:17eus1VM0
ほむら「あれは…。魔女…?」


まどか「銀河………、なに?」



QB「なるほどね…。そう言う事か…。

   魔女になったにしては、回収できたエネルギーが随分少ないとは思っていたんだよ」




まどか「QB…! 何なの、アレは…」


QB「サイバディ…。僕らと同じ異星人が作った産物の一つさ」



QB(何がどうなったかは知らないけど…)


QB(彼女は謀らずも、彼らと僕らの力を併せ持つハイブリットになった訳か…)


QB(確かに…。その因果は素晴らしい…。だけど、まどかにはまだ及ばない…)


QB(結果は…)
512 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/28(木) 00:24:53.08 ID:17eus1VM0
ワルプルギスの夜「アハハハハハハハハ!!!」



空に浮かぶ逆さの魔女。

青いドレスを纏い、下半身は巨大な歯車のような形状をした化け物。

熱い口紅を付けた口と鼻しかない顔。

不気味に笑い続けるその巨体を見上げる。


煌めく魔法陣のようなモノを体に纏い、触れただけでビルが火を上げて吹き飛ぶ。

その口からは業火を撒き散らし、奴の周囲にビルやそれの残骸が浮かび上がっては飛び交う。

世界の終りのような光景…。


だけど…。
513 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/28(木) 00:25:57.36 ID:17eus1VM0
さやか「終わりになんかしない…! させないッ…!」


ワルプルギスの夜「アハハハハハハハハ! ア〜ハハハハハハハハハ!!!!!」



さやか「いくよッ!」



掛け声と共に、パイルを大型化させ、それを腰に装備する。

パイル・ジェットの力に任せ、そのまま敵のいる上空へ…。


迎撃の火炎放射を避けつつ、敵の体の少し上でパイルを二つほど取り外し、刀剣へと変える。





さやか「パイル・ソードッ!」


残った二つのパイル・ジェットで加速を付けつつ、二本の刀剣で敵へ斬りかかる。

が、あまりの敵の防御力に、あたし達は剣ごと弾き飛ばされてしまった…。
514 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/28(木) 00:27:14.25 ID:17eus1VM0
さやか「こんのッ! 止まれッ!」



弾かれたからと、そのままでは終われない。

腰のパイルもソードに変え、手持ちのモノと合わせて四本全部を一斉に放つ。


苦し紛れの攻撃。

それは、やはり苦し紛れにしかならず、機体も放ったパイルも地上へと落下していく…。






ワルプルギスの夜「アハッ! アハハ! ハ〜ハハハハハ!!!!」



敵の笑い声と共に、無数のビルの残骸がこちらに向かって飛んでくる。

運の良い事にそう大きいのは飛んできていない。

あたしは落下しながらも両掌を前へ向け、星型弾を連射して、それらを撃ち落とし続ける…。
515 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/28(木) 00:28:45.31 ID:17eus1VM0
ワルプルギスの夜「アハハハハハハハハハハ! ハハハハハハハハ!!!!」



敵の禍々しい笑い声と共に周囲が突然暗くなる。

ズンと鈍い音と激しい振動を伴い、次の瞬間には辺り一帯がぺしゃんこになった…。

ワルプルギスの夜が当たり前のように放った巨大なビルは、あたし達の居た辺りに突き刺さっている…。



勿論、そう語る以上は食らっちゃいない。

あたしとレシュバルは突き刺さったビルの上で、パイルを配置する…。





さやか「いい加減に…! 止まれって言ってるでしょ…!」



さやか「パイル・バインド!!!!」



レシュバルより僅かに前面に出た四機のパイルが緩めの弾頭をそれぞれ放つ…。

途中でビルの残骸に当って弾けた弾頭は無数のリボンとなり、逆さの巨体に向かって走ってゆく…。
516 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/28(木) 00:30:06.56 ID:17eus1VM0
ワルプルギスの夜「アハ…? アハハ…?」



エネルギーで出来た黄色いリボンはワルプルギスの夜の巨体を捕らえ、縛り上げる…。

リボンは、限界まで伸びきっているも、前進を続けようとする敵を確かに繋ぎ止めている。

放った武器の効果を確認しつつ、あたしは胸の中央に手を当てそれを引き抜く…。





さやか「スターソード! スィトリンヌ!!!」


黄色を帯びた金色、あたしの先輩であるマミさんの髪と同じ色の剣。

あたしのリビドーで作り出された光の剣を…。
517 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/28(木) 00:31:48.86 ID:17eus1VM0
ワコ『スターソードは本来、シルシに属する特殊能力の筈なんだけど…』


さやか『それがどうしたの…?』


スガタ『レシュのシルシに属する剣は「ディアマン」。ヘッドと言う男が持ち逃げした白い剣だったんだが…』




さやか『じゃあ、レシュバルがタウバーン同様に二本の剣を持ってなかったら、あたしはスターソードを使えない所だったんですね』



スガタ『それにしては、腑に落ちない点がある』


タクト『ヘッドって男は間違いなく二刀流の使い手なんだ。

    なのに、あの男の乗るレシュバルと以前戦った時は、白い剣しか使ってこなかった…』




さやか『え…? じゃあ、「スィトリンヌ」って何なんですか…?』


ワコ『レシュバルの隠し武装…?』


タクト『そうかもしれないし、あるいは……』



タクト『さやかの強い願いが、その剣を生み出したのかもしれないね…』


さやか『……?』
518 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/28(木) 00:32:43.59 ID:17eus1VM0
引き抜いた光の剣を右手に持ち、そしてそのままクラウチングの構えをとる…。

同時にバインドを放ち終えたパイルを腰に集めて装備しつつ、大型化させる。



誰よりも速く敵に斬り込む。

あたしの数少ない取り柄。

それを活かして、バインドを破られる前に仕掛ける…!





さやか「はぁぁぁぁぁぁぁッ!」



さやか「豪快!銀河!一文字斬りィィィィィィ!!!!!」



耐久の限界を超えたバインドを引き千切り、逆さの魔女は動き出す。

でも、それ以上は行かせない。


千切れたバインドと入れ替わる形で、あたしは魔女の巨体に斬り込む…。
519 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/28(木) 00:33:50.66 ID:17eus1VM0
金色の剣は、確かに敵の胴体を捉えている。

が、妙な手応えの敵には満足にダメージが入っているのかさえ良くわからない。

一応は剣を振り抜き、回転しつつもう一撃を加える…。






ワルプルギスの夜「アハッ! アハ…ハ…ハハ…」


さやか「連撃…! 二文字…!」


ワルプルギスの夜「ハハハ………ハ……ハ!」




さやか「三文字ッ!!!!」



さらに二撃、三撃と振り抜く。

敵がサイバディであれば、確実にバラバラになっている筈だが、

目の前に居る魔女は手触りが明らかにおかしく、ダメージが通っているのかどうかまるで見当もつかない。
520 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/28(木) 00:35:39.96 ID:17eus1VM0
使い魔A「キャハハハハハハハ…!」


使い魔B「キャハッ! キャハハハ…!」




さやか「くぅっ…!」



三撃目を振り抜く前に、突如背後から何かに襲われる。

後ろを見れば、まるで漆黒の影のような何かが背中にぶち当たっている…。

まるで槍か何かのように伸びたそれだが、その周囲には人型の何かが浮いている。


恐らくコイツらは魔女の使い魔。

あたしが斬りつけて怯んだワルプルギスの援護に現れたんだろう…。
521 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/28(木) 00:36:52.59 ID:17eus1VM0
使い魔の攻撃は、特攻のそれに近い、体を高速で伸ばしての体当たり。

避けきるには数も多く、速い割に一撃が重い。


三匹、四匹、五匹とミサイルのように突っ込んでくる使い魔に押され、レシュバルはとうとうワルプルギスから離される。

さらに、それを待っていたかと言わんばかりに敵がこちらを向き、業火の追い打ちを吹いてくる。





さやか「く…、熱ッ…!」



前方で剣を構えて、その火炎を少しでも防ごうとするもその熱量も噴射量も圧倒的。

あたしとレシュバルは灼熱の業火に飲まれた火だるまになりつつ、地上へと押し戻されていく…。
522 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/28(木) 00:38:53.69 ID:17eus1VM0
スターソードに力を入れて、思い切り振り抜き、火炎を払う。

着地を狙って影のような使い魔がふよふよとこちらへ向かい、急に加速する。

追い打ちをかけにやって来た連中を斬り払い、左手から出した星型の光弾で撃ち落とす。





さやか「邪魔……すんなッ!!!」


使い魔A「キャハ…?」


使い魔B「キャハ〜!」



スターソードを戻し、代わりに二本のパイル・ソードによる二刀流で敵へと駆け込む。

魔女へ向かおうとするあたしを阻むように立つ使い魔共を切り裂きながら前へ…。

パイル・ソードによる二刀流は切れ味や出力は弱いけど、

その分小振りで取り回しやすく、こう言う煩い連中の対処には最適だった。

パイル・ジェットも二つ分しか使わない為、小回りも効きやすい。


流れるように使い魔の群れを払いつつ、再度ワルプルギスの射程範囲へと入る。
523 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/28(木) 00:40:16.84 ID:17eus1VM0
さやか「さ〜て、ここからが問題だよね…」


ワルプルギスの夜「ア〜ハハハハハハハハハ!!!」



射程に入れば、当然敵に捕捉される。

痛めつけたせいか、興味をもったのか、何故かこちらへと向かってくる…。


そして、同時にビルが浮かび上がって飛んでくる。





さやか「ったく…。非常識な攻撃を平然とやって来るなっての…!」



一発目のビルは倒れ込むようにして、強引に避ける。

続けて飛んでくる二発目が来る前にパイルをジェットに戻し、その加速でその場を離脱する…。
524 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/28(木) 00:41:55.78 ID:17eus1VM0
相手も巨体の割には遅くはないけど、ジェットも使った加速ならこちらの方が完全に上。

突き抜けるように、相手の攻撃を避けながら背後に回り込む。


足を使って加速のブレーキを掛けながら、パイルを通常の状態に戻す…。

そして、振り向きざまに簡単な狙いを付け、再度それを放つ。





さやか「パイル・バインド!」



同じ攻撃の二度目。

さらに、敵は既にこちらに向き直っている。

そこまでの状態になって、それに対する対処をしないものなのどいる筈もない。





ワルプルギスの夜「アハハハハ! アハ! アッハハハハハハ!!!」



花開く様に拡散し、敵に向かって走るリボンは放たれた火炎の吐息に焼き払われて消える。

リボンの燃え滓は、敵の視界を覆うようにバラバラと落ちていく…。



そして、それこそがあたしの狙い。
525 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/28(木) 00:43:23.19 ID:17eus1VM0
さやか「せっかくのとこ悪いけど、一気に決めさせて貰うよ…!」



視界を遮るリボンの灰と炎に隠れ、あたしは四機のパイルを大型化させ、連結させる。

砲台のようになったそれは、前方へと配置されレシュバルはそれを構える…。



灰と炎が少し、晴れてこちらの姿を視認した時には既に遅い。

敵の行動よりも速く、それの引き金を引く…。





さやか「ティロ・フィナーレ!!!!!!!」



四つの砲門から一斉に放たれたそれは、曇天を照らすように輝く。

圧縮されたエネルギーの砲撃は、逆さの魔女の腹部の辺りに直撃。


暫くは魔女も堪えてはいたものの、結局耐えきれず吹き飛ばされていく…。
526 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/28(木) 00:45:22.85 ID:17eus1VM0
地面に落ちたその巨体。

あたし達は、それの上空へと飛んで見下ろす…。

右手の大型化したパイルを回転させながら…。




さやか「まだまだ…! 射撃が最後だからって、攻撃は終わりじゃない…!」




さやか「続けていくよ! 最後の打撃!」


さやか「パイル・クラッシャァァァァァァァッ!!!!!!」



回転したパイルは、繰り出した拳に合わせて離れ、弾丸のように飛んでいく…。

ドリルのように激しく旋回し、空を裂きながら進むそれは再び魔女の腹のあたりへ…。


若干右に反れてはいるモノの、クリーンヒットしたと言えるだろう…。

実際、魔女は呻き声一つ上げていない…。
527 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/28(木) 00:46:30.00 ID:17eus1VM0
敵の動きが止まっている。

それならと、一気に畳みかける…。

落下しつつも、スターソードを引き抜いて振り被る…。




終わらせる…。

ここで全てを終わらせるんだ…。


まどかを助けて…。

この街も助かって…。

アイツも苦しみから解放されて…。

杏子の命も救える…。



アイツを倒せば…!

あたしが、あの魔女を倒せば…!

守りたいモノを全部守れるんだ…!

だから…!




さやか「星の輝き……! あたしの剣に集って………!」
528 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/28(木) 00:48:14.33 ID:17eus1VM0
青と白の巨人は黄色みを帯びた金色の剣を大きく振り被りながら、魔女の方へと落ちていく…。

そして、その剣は振り被った段階で爆発的に力を増していく…。


彼女のリビドーに呼応するその剣は、彼女自身の強い気持ちの象徴…。

かつて、全てに嘆いて絶望して落ちた少女が、自ら得た希望の輝きで闇に包まれた空を照らしていく………。





まどか「綺麗………」


ほむら「何て輝きなの………」



QB「これは予想外だね……。

   彼女はあっち向けの人材だとは思っていたけど、ここまでとは……」
529 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/28(木) 00:49:25.43 ID:17eus1VM0
さやか「止めの一撃ッ!」


さやか「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!!!!!!!!」







光の剣は、まるで柱のように巨大な輝きを放つ…。


そして、その柱が倒れ込むように……。


地上へ落ちた悪夢を切り裂く様に………。

雲に覆われた不吉な大地を照らすその剣は、彼女の掛け声とともに魔女へと振り下ろされる。



さやかの希望の輝きは、絶望の魔女へ………。

その瞬間だけ、大地は輝きに包まれて真っ白になり、幻のようにそれはすぐに晴れた…。
530 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/28(木) 00:50:48.84 ID:17eus1VM0
さやか「はぁ………はぁ………はぁ………」





さやか「へへ……。やったよ……。タクトさん………」



さやか「あたし一人でも、できたよ………」



力を使い果たし、よろめくさやかをトレースするレシュバル…。

朦朧とする少女は、疲労感と達成感に満ちている。



だが…。
531 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/28(木) 00:53:29.74 ID:17eus1VM0
希望と絶望は差し引き0。

佐倉杏子が信条としている嘆きの言葉。


しかし、それはこの世…。

特に、魔法少女と言う悲しい存在の真理そのものと言える…。



そして、それは『魔法少女である美樹さやか』も例外ではない…。





絶望に堕ちて立ち上がり、その胸を希望で満たした少女。

それを嘲笑う絶望が今、産声を上げる。
532 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/28(木) 00:54:44.05 ID:17eus1VM0
ワルプルギスの夜「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!」


さやか「何…?」



傷つき、痛みきった魔女が突然奇声を上げて立ちあがる。

そして、聞くだけで意識が吹き飛びそうな奇声を発しながら、起き上る。




先ほどは違い、逆さではない…。


全てを嘲笑するように……。

全てを威圧するように……。

全てに対して憤怒しているかのように…。


絶望の魔女は直立の形に向き直り、さやかの前に立っていた……。
533 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/28(木) 00:55:48.78 ID:17eus1VM0
ワルプルギスの夜「アァァァァァァァァァァ! アァァァァァァ!!!!!!」


さやか「あ…」



気付いた時にはもう遅い。

魔女の周辺は、隕石でも落ちた後のような衝撃波が放たれ、辺りにあったモノは全て粉々になって吹き飛ぶ。



例外的に『粉々にはならなかった』レシュバルも、まるで風に飛ばされた紙屑のように吹き飛んで転がる…。

手足がもげて吹き飛び、まるで子供に投げられたゴムまりのようにあちこちにぶつかっては跳ねる…。
534 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/28(木) 00:57:36.87 ID:17eus1VM0
さやか「あ…………が………」



ワルプルギスの夜「アァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!」



敵の周囲からは吹き飛ばされたレシュバルとさやか。

だが、怒り狂う魔女は当然んのように暴れ続ける。


鼓膜を握りつぶすかのような叫びと共に、地面やビルであったものの残骸が周囲へと飛び交う…。

そして、その一つが動く事の出来ない彼女の周囲を暗転させ…。

辺り一面を押し潰した。
535 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/28(木) 00:59:15.19 ID:17eus1VM0
さやか(杏子………)



さやか(まど、か……)




さやか(タクト…………さん……)





さやかの視界がモノクロームへと変わる…。

そして、凄まじい衝撃と共にその意識は消し飛んだ。
536 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/28(木) 01:00:41.19 ID:17eus1VM0
ほむら「さやかッ!!!!」


まどか「さやかちゃん!!!!!」




QB「やはり、超えられなかったようだね」


ほむら「QB、あなたは…!」



QB「勿論知っていたよ。美樹さやかのサイバディの力を持ってしても勝てない事も…。

   だけど、君達は聞かなかったじゃないか。僕が聞かれない事を答えないのはもう知っているだろう?」


ほむら「お前はッ…………!」
537 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/28(木) 01:01:35.07 ID:17eus1VM0
QB「それも無意味な行為だ。

   それに、ここでそんな事に時間を取られれば、この街だけじゃなく世界が滅びるだろうね」


まどか「どう言う……」


ほむら「………美樹さやかの頑張りは、結果的に最悪のケースを招いてしまったのよ」




QB「その通り。気まぐれに暴れまわるだけのワルプルギスの夜が、正常の姿を取り戻した…。

   今はまだ止まってるからいいけど、アレが一度動き出せば瞬く間に、この星は壊滅的な被害を受けるだろうね…」



まどか「……」



QB「さぁ…………」















――――――――契約をしようか、まどか―――――――――――
538 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/07/28(木) 01:04:17.00 ID:17eus1VM0
っし。
今日はここまで。

次回でラストです。

更新は7/31の夜を予定してますが、執筆があんまり進んでないので8/1の夜になるかも…。
オチの中で一つ迷ってる所もありますし…。


それでは、本日は閉会とする。

このスレを見てくれた者に栄光を…!
レスをくれた者達に祝福を…!

綺羅星☆
539 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/28(木) 01:10:19.52 ID:bAvDvy1bo
乙星☆!!
ああ…これはアイツが復活するアレですね!!
ワルプルギス固すぎだろ…
540 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/07/28(木) 01:12:44.68 ID:yH+Q/EyAO
おつおつ
541 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/07/28(木) 01:28:35.92 ID:mdk1CV7so
乙星☆
なんかすごいラストがwktkするぜ
542 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/07/28(木) 05:19:23.24 ID:qOEEf4SAO
綺羅星☆!!

ワルプルギスはてっきり書かないと思ってたからビックリ






だけど正直話の決着よりタカシの安否が気になる自分はかなりのタカシ厨ww
543 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/07/28(木) 21:24:33.03 ID:9e0IoEiVo
綺羅星☆

タクトが最後言おうとしたであろうことはスタドラの参考の一つに星の王子様があることを考えると興味深いですね
確か「遠く離れてしまって、もう会えなくても『アプリボワゼした(≒仲良くなった、絆を結んだ)』相手を想うことができれば近くにいるのと同じように感じられる」という趣旨のことが書かれていたはず。

そしてそこからさらにレシュバルVSワルプルギスの夜とは……!
まどかが契約すればそれで決着ではあるんだが(どんだけすごいんだまどかさん)、それだと原作と大して違いがない
どうなるのか、楽しみにしてます
544 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/01(月) 23:42:39.34 ID:Ih6fWc/a0
綺羅星☆

ようやくラストが書き終わりました…。

大変遅くなりましたが、最後の投下を始めます。


>>539
乙星感謝
ディフェンスに定評のあるワルプルギス

>>540
乙感謝

>>541
乙星感謝
その期待に応えられると良いのですが…

>>542
綺羅星☆
気持ちはわかるw
まぁ、もうしばしお待ちを…

>>543
綺羅星☆
スタドラはタクトの格好や副部長と良い、思いっきり星の王子様ですしね
その辺はモノクロームの歌詞にも繋がってますよね

レシュバルvsワルプルはスタドラとのクロス的には蛇足気味ですが、
これは一応さやかの物語なんで、ラスボスはザメクではなくワルプルってのはずっと念頭にありました
案外、ソロ縛りワルプルってないみたいですし
545 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/01(月) 23:45:27.83 ID:Ih6fWc/a0
QB「さぁ、僕と契約しよう。まどか」


まどか「私は………………」


ほむら「駄目よ。まどか………!」




QB「あぁなったワルプルギスの夜はもう誰にも止められない。

   君以外にはね…」


まどか「………」


ほむら「黙りなさい…!」



QB「僕は構わないよ? ただ、このまま捨て置けば…」


ほむら「黙れッ!」


QB「さぁ………、まどか」







まどか「私は…………さやかちゃんを信じる」
546 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/01(月) 23:46:23.58 ID:Ih6fWc/a0
QB「アレを見ただろう? 美樹さやかの生存は絶望的だ。

   仮に生きてたって、もう戦闘が出来る状態である筈もない…」



QB「それなのに何を信じるって言うんだい? わけがわからないよ」


QB「滅ぶんだよ? この星が」



まどか「わかってる…。でも…」


まどか「まだ、もう少し…」


まどか「最後の最後まで、さやかちゃんを…、信じさせて…」





まどか「約束、したから…!」


QB「好きにすると良いさ」
547 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/01(月) 23:47:44.81 ID:Ih6fWc/a0
ほむら「……………」



私は……、どうする?


最後に残ったグリーフシード…。

これを使えば、また過去へと戻る事が出来る…。

だけど…。



私は勝てるの…?

イレギュラーな力を手にした美樹さやかでさえ勝てないアイツに…。

そして、またまどかを苦しめる因果を増やすの…?



私は…。

どうすればいい…?


私は………!
548 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/01(月) 23:49:25.08 ID:Ih6fWc/a0
気付けば、あたしは暗闇の中に居た。


何も見えない。

何も聞こえない。

何も感じない。

真っ暗闇。



あたしは、その中を歩く…。

いや、歩けているのかさえわからない…。

なにせ、感覚が全くなかったりする…。


それでも、あたしは…。
549 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/01(月) 23:51:32.44 ID:Ih6fWc/a0
そんな事を考えて歩き続けたあたしの前に、光がチラリと見える。


あたしは当然のように、そっちへ向かって歩いていく。

いや、あるいは向こうの方からあたしに近づいてくるのか…。


確かなのは、その光は段々と近寄ってくると言う事だけ…。

そして、近寄って来たそれが人の形をしていると言う事だけ…。

いや…。

この姿は…。




??「美樹さん………」


さやか「あなたは………」
550 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/01(月) 23:53:48.32 ID:Ih6fWc/a0
さやか「マミ……さん……」


マミ「お久しぶりね。美樹さん」



さやか「あはは…。参ったなぁ…。

    わざわざ迎えに来てくれたんですか…?」



マミ「そう思う…?」


さやか「………」




マミ「もし、そうだと答えたらあなたは一緒に来てくれるの…?」


さやか「………いいえ」




マミ「なら、何故こんな所でボーっとしているのかしら?」


さやか「だって、あたしは……」
551 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/01(月) 23:55:07.49 ID:Ih6fWc/a0
マミ「あの魔女にやられて死んでしまった…?」


さやか「…………」



マミ「そう思うのに、何故私と行くのを拒むの…?」


さやか「諦めないって、決めたんです…」




マミ「………」


さやか「あたしは諦めて魔女になりそうになって…。

    それをタクトさんに、杏子に、みんなに救って貰ってここに居る……」


さやか「絶望したあたしに待っていたのは、それを塗り替えるような希望に満ちた日々だった…。

    そして、あたしと違って何にも負けず、ただ前に進む強い人に出会った…」


さやか「そんな日々に…、そんな人といる内に気付いたんです…」
552 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/01(月) 23:56:36.67 ID:Ih6fWc/a0
さやか「結局は希望も絶望も、自分自身で定めるモノなんじゃないかって…」



さやか「仮に、どうしようもない絶望があっても、それを超える方法は必ずあって…。

    それを信じている限りは、その先に必ず希望はあるんじゃないかって…」


さやか「だから、あたしは…」




マミ「諦めないって決めた…?」


さやか「はい…!」
553 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/01(月) 23:57:32.09 ID:Ih6fWc/a0
マミ「ふふ…。無茶苦茶な理屈ね」



さやか「でも、出来ないとは思えないんです。

    あたしの憧れたあの人は、何時でも胸に希望を持って、どんな絶望でも乗り越えてた…」


さやか「そして、あたしもあの人と同じ『銀河美少年』だから…。

    きっと…。うぅん、絶対にあの人みたいになれる筈なんです…」



マミ「それなら、立ち上がりなさい…。

   こんな所で燻っている時間はない筈よ…?」



さやか「……はい! ありがとうございます、マミさん!」



優しい先輩の姿が消えていく…。

同時にあたしの視界が少しづつ戻っていく…。



マミさんの立っていた所。

そこには、金色に煌めくスターソードが突き刺さっていた…。
554 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/01(月) 23:58:54.29 ID:Ih6fWc/a0
さやか「ははは………。ひっどい状態……」



金色の剣に照らされる自分の身の回りを確認する。



全身のあっちこちがぐっちゃぐちゃ。

まどかが見たら、恐らく卒倒するであろう凄惨な有様だ。


それでも、あたしはまだ生きてる…。

そして、生きてる限りは諦めない…。

諦める訳には行かない…。



だって、あたしには…。


みんなで笑い合える…。

そんな未来が…。
555 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 00:02:02.94 ID:uh12nPbT0
さやか「視えている!!!!」



レシュバルを潰したビルから輝く光。

それが突如激しくなる…。


そして、溢れんばかりの光はやがてそこにあったビルを粉々に吹き飛ばした。






QB「な…! そんな馬鹿な…!?」


まどか「さやかちゃんっ!!!!」


ほむら「…………!」



そこに居たのは、半壊したレシュバルの姿。

今にも崩れそうなボロボロの姿なのに、その体からは力強い輝きを放ち続ける…。
556 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 00:03:30.27 ID:uh12nPbT0
さやか「やりたい事とやるべき事が一致する時、世界の声が聞こえる…」


さやか「やっとわかった…」


さやか「あたしにも聞こえたよ…。タクトさん…!」




さやか「『世界の声』が……!!!!」



眩い光はその中心へと…。

レシュバルの元へと集まっていく…。


金色に輝くそれは、レシュバルの体を修復、そしてさらに力強く作り変えていく…。



コクピットにあたる球体が赤く染まり…。

四基のパイルは全て修復し、さらにその上に四基のパイルが追加で現れ、どことなくマントのような配置となる…。


肩や腿の辺りが青く変わり、どことなく魔法少女のさやかの姿に近い意匠へと変わっていく…。
557 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 00:04:50.74 ID:uh12nPbT0
さやか「あたしはなるんだ。今度こそ…!」


さやか「大切な人を守る…! 誰も見捨てない…!」



さやか「そんな魔法少女に…!」



赤く強い輝きを放つレシュバルのコクピットの中でさやかが叫ぶ。

その姿は、青い騎士のような魔法少女のそれに変わり、彼女の憧れた少年の纏う白い貴族のようなそれに変わっている…。




やりたい事とやるべき事…。

銀河美少年と魔法少女…。


二つの力を一致させ、『世界の声』を聞いた少女。

彼女のシルシとソウルジェムは、溢れんばかりの輝きを放っている…。
558 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 00:06:42.42 ID:uh12nPbT0
サリナ「交わる事のない二つの力が一致した時、世界に奇跡が起きる…」


???「なんだい、それは…?」


サリナ「私が今作った言葉。ほぼパクリだけどね」


???「彼女の事か…」




サリナ「うん…。合わさる筈のないモノを併せ持った彼女の事をね、考えてたんだ…」

    
???「感情がなく、力を行使し、人を利用する道を選んだ彼ら…。

    そして、感情を得て、力を封じ、人に全てを委ねる道を選んだ私達…」


サリナ「交わらぬように進んだ二つの力が、奇跡とも言える偶然の末に交わった。

    その影響か、あるいは彼女自身の資質かはわからない。

    でも、二つの力を併せ持った彼女は、結果的に究極の第一フェーズを生みだした…」
559 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 00:07:54.81 ID:uh12nPbT0
???「『星の魔石』。リビドーを生み出し続ける最強の第一フェーズ」


サリナ「体と魂が切り離された魔法少女だからこそ得る事が可能だった、その力は圧倒的…。

    ソウルジェムの穢れを癒し、サイバディに乗ればその力を増し続ける…」


???「彼女が立ち上がる度、前を向く度、進もうとする度にリビドーを生み出す第一フェーズ…。

    でも、代わりに彼女が絶望すればする程、マイナスのリビドーが満ちて、その穢れも圧倒的な速度で増す両刃の剣」


サリナ「だけど、彼女はもう魔女へと堕ちる事はないだろう…。

    だって今の彼女は…」










―――誰よりも輝いているから――――
560 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 00:09:47.06 ID:uh12nPbT0
さやか「行くよ…! ワルプルギス…!」




ワルプルギスの夜「ギャァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!」



さやか「ツイン・パイル・クラッシャー!!!!」




両手に四基づつのパイルが集まってロの字を描く。

そして、ドリルのように高速回転を始める…。


敵の放つ衝撃波に正面から立ち向かうように、まずはその左手を繰り出す…。

衝撃波に穴を開けるように突撃を続け、レシュバル自身は敵の眼前へと迫る…。






ワルプルギスの夜「アァァァァァァァァ…!」


さやか「吹き飛べッ!!!!!」



勢いの死んだ左に変わり、未だ回転を続ける右手でアッパーを繰り出す。

ダメージのかさんだ敵の胴体を捉えた拳は、竜巻のようにその巨体を宙へと舞い上げる…。
561 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 00:11:17.45 ID:uh12nPbT0
さやか「さぁて…! 続けてやっちゃいましょうか!」



両手を大きく広げ、腕に纏わりついたパイルを飛ばす。

ひゅんひゅんと飛び交った後、パイルは再び集まってロの字を描く…。



宙に浮かんだ二つのそれは、大型化して巨大な二門の砲台となる…。

そして、その二門の砲台は、両手を交差させたレシュバルに合わせ、宙に居る魔女に砲口を向ける…。





さやか「グランデュオ・フィナーレ!!!!!」



二つの砲門から、収束されたエネルギーの束が放たれる。

空を裂くように放たれた二つのラインは、敵の位置で交差し、天に巨大な斜め十字を作る…。
562 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 00:12:30.19 ID:uh12nPbT0
さやか「ストリーム・パイル・ジェット…!」



八基のパイルが、砲台から分離。

それぞれ、レシュバルの背中と腰に装着される。


そして、クラウチングの構えから一気に加速。

敵の眼前へ…。






さやか「豪快!銀河!一文字斬りィィィィィィ!!!!!」



繰り出される一閃。

それは確かに魔女を捉える…。

先ほどまでの不確かな感触と違い、勝利に近づく手応えを感じ取る…。
563 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 00:13:35.42 ID:uh12nPbT0
さやか「えぇぇぇぇぇぇぇいッ!」



両手で剣の柄を強く握り、その刃をより深く、深くめり込ませていく…。

ジェットの力も使い、さらに奥へ奥へと踏み込む…。

だが…。





さやか(駄目だ…。あと少し…)


さやか(あと少し押しが足りない…)


さやか(あと少し…!)
564 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/08/02(火) 00:14:09.72 ID:uh12nPbT0
ワルプルギス「アァアァァアァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」


さやか「まずい…! このままじゃ…!」



その刃は確かに敵に深く食い込み、確実に大打撃を与えている。

だが、それでも致命傷には届かない…。



深手を負っているであろう敵の抵抗。

先ほどの衝撃波を放とうとしているのはどう見てもわかる…。

それを至近距離で食らえば今度こそ…。
565 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 00:15:49.48 ID:uh12nPbT0
ワルプルギスの夜「ァァァァァァァァァァァァァァァ」



さやか「くっ…!」



あの衝撃波が放たれる…。

その時…。










ワルプルギスの夜「…!?」



何かに弾き飛ばされた魔女が、後方へと吹き飛んで地面を転がる…。

そして、何の気配も無く現れたそれが、魔女の代わりにさやかの前へで回転する。




さんざん自分の前に立ちふさがったアイツの槍…。

幾度ともなく、自分と刃を交えたあの槍…。








佐倉 杏子の槍が。
566 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 00:17:04.71 ID:uh12nPbT0
さやか「杏子…?」



振り返った先…。

巨大なビルの屋上に彼女は立っている…。



未だにその体はボロボロで、隣に居る暁美ほむらの肩を借りている状態ではあるが…。

それでも、いつもの…。

いつもの不敵な笑顔で…。
567 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 00:18:30.31 ID:uh12nPbT0
杏子「使いな! さやか!!!!!」



さやか「うん…!」





向き直り、目の前に刺さった赤い槍を左手で掴む。



救いたかった大切な親友の笑顔。

それはさやかに更なる力を与える。



小さく鼻で笑った彼女は、その左手の槍を強く握りしめる。


そして、ワルプルギスの吹き飛んだ方向へと向かって行く…。
568 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 00:21:58.09 ID:uh12nPbT0
杏子「………ありがとな。アイツの事信じてくれて」


ほむら「…………私は、この方法が最適であると判断しただけ。

    それに……」



ほむら「私達の共同戦線は、まだ生きているんでしょう…?」


杏子「そんなのもあったなぁ…」



黒髪の少女が髪を直すと、その横の赤髪の少女は静かに笑った。

そして、二人は決着を見届ける…。


この戦いに勝てる最後の可能性に賭けて…。
569 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 00:22:54.65 ID:uh12nPbT0
さやか「杏子…」



本当に良かった…。

アイツ、やっと目覚ましたんだ…。


たぶん、これがあたしの最後の憂い…。

それが無くなったなら…。





さやか「これで…」


さやか「これであとは…」


さやか「あたしが勝って終わらせるだけ!」




さやか「それなら…!」
570 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 00:25:14.95 ID:uh12nPbT0
ワルプルギスの夜「アァァァァァァァァァァァ………」




さやか「逃がさない…!」


さやか「パイル・ソード・レイン!!!!」



逃げようとする敵へパイルを放つ。

刀剣に変わった八基のパイルは、浮かびあがろうとした魔女に次々と突き刺さり、

地上へと押し戻し、その場に磔にする。



そして、上空からあたしは両手の武器を構える。

杏子の槍と、マミさんの輝きを持った剣…。



そして、背中に大切な人達の存在を感じる…。

力強い…。

負ける気がしない…。



だって、今のあたしは…!
571 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 00:26:38.71 ID:uh12nPbT0
――この世界って守る価値あるの?――


そんな事も言ったっけな…。





――あたし何の為に戦ってたの?――


あはは。これも言ったね…。

何の為だって…?

そんな理由なんて…。
572 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 00:29:46.72 ID:uh12nPbT0
――結局私は、一体何が大切で何を守ろうとしてたのか、もう何もかも、わけ分かんなくなっちゃった――


今ならわかるよ。

何が大切か…。

何を守ろうとしているのか…。




――希望と絶望のバランスは差し引きゼロだって――


そうなのかな…?

タクトさんもそうだったのかな?


だとしたら、これは間違いだ。

そう言い切れる。

だって、あの人は希望に満ちてた。

絶望なんて微塵も見せなかった。

だから、あたしは…。
573 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 00:30:53.64 ID:uh12nPbT0
――確かに私は何人か救いもしたけどさ。だけどその分、心には恨みや妬みが溜まって――


でも、今はもう、そうはならない…。

何人、助けたとか。『誰かの為』だとか。

くだらない…。



妬み?

恨み?


そんなモノ…。

今のあたしなら鼻で笑ってやれる。


何にも見えないで戦ってるから、そんなモノが溜まるんだって。
574 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 00:32:31.04 ID:uh12nPbT0
――誰かの幸せを祈った分、他の誰かを呪わずにはいられない――



そんな馬鹿な結末にすら至った…。

幸せを祈って、恭介は幸せになった。

誰かを助けて、その人達は救われた。

それでいいじゃない…。



そこから先はあたしの問題。

見返りなんて、いらない。

そんなモノを求めなくても、あたしにはもっと大事なモノがあるから…。



あたしには、あたしを支えてくれる人がいる。

あたしの戦いを称えてくれる人がいる…。

それで良い…。



救った誰かに見返りなんて求めない…。


あたしには、あたしで幸せな思い出がある…。

今でもあたしを思ってくれている人達がいる。


あたしの為に、笑って、泣いて、尽くしてくれる友達だって…。

その為なら…。
575 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 00:35:24.94 ID:uh12nPbT0
――あたしってほんとバカ――



そうだね…。

でも、バカでいいじゃない。


戦えるだけ戦って…。

救えるモノを救って…。

でも、何も求めないバカみたいな生き方…。



そして、自分の居場所で少しだけ癒される…。

そんなバカなら…。



バカみたいに『誰かの為』に戦える…。

そして、そんな生き方を『自分の為』と誇れる…。


そんな正義の味方に、あたしはなりたかったんだから…。

ううん…。
576 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 00:36:46.74 ID:uh12nPbT0
今、なるんだから…!





さやか「銀河に疾れ! 希望の煌めき!」




さやか「豪快!銀河!十文字斬りィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!!!!」




赤と黄色いの剣先が走る。

金色の剣と、真紅の豪槍。


その名の如く、豪快に刻まれた二つの太刀筋は、

まるで星の煌めきであるかのごとく、鮮やかな斜め十字を描く…。



そして…。
577 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 00:38:54.64 ID:uh12nPbT0
ワルプルギスの夜「アァァァァァァァ……ァァァァ…………」




自らの耐久を超える攻撃を受け続けたワルプルギスの夜が、漏らすような悲鳴を上げる。

大きく開かれた傷口から、人の影のようなモノが溢れ落ちては消える…。


他者を呪い、襲ったモノ達を取り込んできた歴史に残る最悪の魔女。

その存在が、音を立てて消え去っていく…。



そして、その光景を眺める者達の中、只一人それに涙する…。
578 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 00:40:29.46 ID:uh12nPbT0
まどか「ごめんね…」


まどか「助けて、あげられなくて…」




優しい少女の声だけがその場に静かに響く。

何十、何百と言う年月を苦しみ続けた魔女。

優しき少女はその最期を看取りながら、涙する…。


そして、もう一人…。
579 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 00:41:58.10 ID:uh12nPbT0
さやか「悪い、ね………」


さやか「でも、こうしないと…。

    アンタはあたしの大事なモノ…、全部持ってっちゃうから…」


さやか「だから……」




さやか「ここで………、眠って………ね?」




相手を嘆く様に、悲しげに微笑んだ少女。

眠れ、せめてここで…。

その願いだけを口にして…。



そして、疲れ切った自らも微睡へと落ちていく…。

自らが口にした願いに、煽られるかのように…。

長い長い戦いを終えた安息の中で…。
580 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 00:44:05.04 ID:uh12nPbT0
────────

────

──




さやか「ここは……?」


杏子「よう…。ようやくのお目覚めかい?」



あたしは、どこか見覚えのあるベッドで目覚めた。

来た事はあるけど、使った事はほとんどない…。

覗きこんだアイツの表情を見つつ、ここが見滝原中学の保健室である事がわかる。


そして…。

目の前には、未だあちこちに傷が見えるモノの大分元気そうになった杏子の顔…。

そして、あたしの看病でもしてくれていたんであろう、傍らで眠るまどかの姿がある…。
581 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 00:45:05.67 ID:uh12nPbT0
さやか「あの、魔女は…?」


杏子「覚えてないのか…?

   倒したよ。お前の手で…。お前が、やり遂げたんだ…」


さやか「…………そっか」




杏子「あぁ…。何時かの甘ったれが、まさかあのワルプルギスを倒すまでに至るとはね。

   さすがのアタシも考えもしなかったよ…」


さやか「………少しは、あたしの事認める気になった?」






杏子「…………認めてたさ」


さやか「…………杏子?」



杏子「でも、認めたくなかった」
582 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 00:47:00.10 ID:uh12nPbT0
杏子「お前は理想に酔っている時のアタシそのものだった。

   人の為だと願いを叶えて、正義の味方だなんて調子に乗って戦って…」


杏子「アタシはその先に待っている結果を知っていた。

   だから、出会った時の甘ったれたツラをしてるお前を認めたくなかった…。

   そして、案の定堕ちていくお前を放ってはおけなかった」


さやか「…………」


杏子「でも、お前はどん底まで堕ちても這い上がって帰って来た。

   どころか、アタシが夢や幻だと鼻で笑った理想を今度こそと進もうとする…」


杏子「たまらなく眩しかった。でも、同時に怖かった。

   せっかく帰って来たあんたが、また堕ちていくんじゃないかってそんな気もしてたから…」




杏子「だから、認めてたけど、認められなかった…」


さやか「杏子………」




杏子「だけど、あんたは本当になっちまった。

   アタシがずっと夢や理想だって笑ってたモノに。

   それをさすがに認めない訳にはいかないだろ…?」
583 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 00:48:44.08 ID:uh12nPbT0
さやか「ふ〜〜〜ん」


杏子「な、なんだよ…?/// ニヤニヤしやがって…///」



さやか「べっつに〜。アンタがそんな風にあたしを見てたとは知らなかったからね」


杏子「ちっ…。ったく、だからって調子に乗るんじゃねーぞ。

   さやかは調子に乗るとすぐに…」



まどか「ん………」


杏子「お姫様もお目覚めみたいだ。

   アタシは一旦お暇するよ」



ぼんやりと目を開けたまどかに気付き、隣のベッドに座っていた杏子が背中を向けて歩き出す。

そのまま部屋のドアを掴んだ所で振り返り、もう一度あたしの名前を呼んだ。




杏子「さやか……」


さやか「何…?」
584 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 00:50:06.68 ID:uh12nPbT0
杏子「お疲れさん。それと……」


杏子「ありがとう」



そこまで言うと扉を開け、やや足早に去っていく。


たぶん、照れくさくなったんだろう。

再び背中を向けて言ったお礼の言葉は、やや小さくて聞き取りづらかったから。


そして、あたしはそんなアイツの様子を小さく笑ってから呟いた。





さやか「どっちも、あたしの台詞だよ。杏子」



ワルプルギスの事はともかく…。

今回あたしが頑張ったのは、アンタを絶対に死なせたくなかったから。

そして、そのアンタが瀕死の重傷を負ったのは、あたしの守りたいモノを守ってくれた結果だから…。




だから、ありがとう。

アタシの大切なモノを守ってくれて。

アタシの傍に居てくれて。


その思いを後で伝える事を誓いながら、アイツの閉めた保健室のドアから目を離した。
585 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 00:51:22.71 ID:uh12nPbT0
まどか「さやかちゃん……」



寝ぼけ眼をこすり、あたしの姿を確認したまどかの顔が変わる。

もう叶う事のないと思っていた謝罪の時間。


それを迎えたあたしはいつにもなく緊張していた。

下手したら、ザメクやワルプルギスの夜と対峙する前よりも…。



でも、言わなきゃ…。

やっと…。

会えたんだから…。
586 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 00:53:07.54 ID:uh12nPbT0
さやか「ごめんね…。まどか…」


さやか「ずっと…、ずっと…、謝りたかった…」



まどか「さやかちゃん……」



さやか「あたしの事ずっと考えてくれて…。ずっと傍に居てくれたまどかに…。

    あんな酷い八つ当たりして…」


さやか「自分が苦しいからって、優しいまどかに…」




まどか「もういいよ」
587 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 00:54:39.18 ID:uh12nPbT0
さやか「まどか……」


まどか「大丈夫……。全部わかってるよ。

    どうしようもなく苦しくて、あんな事言っちゃった事くらい…」



まどか「私こそごめんね…。私はさやかちゃんの力になってあげられなかった…」



さやか「うぅん…。そんな事しなくて良いんだよ…。してくれないでよかった…。

    まどかが…、まどかだけでもこうして普通で居てくれる…。

    だって、あたしが守りたかったものは…」


まどか「でも、私は…」



さやか「良いんだよ、まどか…。まどかがそのままで居てくれる…。

    たぶん、それが今の私の…」




さやか「一番の『願い』だから…」
588 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 00:56:04.96 ID:uh12nPbT0
まどか「さやか……ちゃん……」


さやか「でも、その上で聞かせて…?」


まどか「…?」



さやか「魔法少女になってでも、叶えたいまどかの『願い』って何…?

    そうまでして、まどかがやりたいと…、やるべきだと思った事って何…?」


まどか「私の『願い』はね…」





??「さやかさんッ!!!!!!!!」
589 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 00:58:01.28 ID:uh12nPbT0
まどかがそれを言う直前に、ドアを乱暴に開けて人が入って来る。

泣き腫らした目。

可愛らしい顔はやつれてしまっていて、目の下には隈ができてしまっている…。


でも、その姿は間違いない…。



あたしが堕ちる引き金となったもう一人の親友…。

志筑仁美…。





仁美「さやかさん…。本当に……、さやかさんですわ………」



さやか「仁美…」


まどか「仁美ちゃん…」



ここまで走って来たのか息も荒い…。

驚くあたしを、どこか病んだその目で見つめると…。


飛びかかるように駆けより、あたしを抱きしめ、涙を流し始めた…。
590 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 00:59:42.15 ID:uh12nPbT0
仁美「さやかさん…! よかった…! よがっだぁ…」


さやか「ちょ…、ちょっと仁美…?」




仁美「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」


さやか「仁美……」




仁美「私…、知らなぐで……。さやかざんが……、そんなに…………。

   そんなに……、悩んでたなんて……」


仁美「なのに、私は………、自分の我儘を………、押し…、通じでっ…。

   さやかさん……、追い詰めて……」



可愛い顔がこんなになっちゃって…。

こんなぐちゃぐちゃになるまで泣いちゃって…。


心配、してくれてたんだ………。


あたしの事…。
591 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 01:01:09.03 ID:uh12nPbT0
もし…。

もしも…。

魔法少女のシステムの問題か、恭介の事故がなかったら…。

あたし達もなれたのかな…?


タクトさんたちみたいに、相手の事もわかり合える素敵な三角関係に…。





三人で笑って…。

最後にどちらが選ばれても、相手を祝福できるような…。

そんな関係に…。
592 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 01:02:50.71 ID:uh12nPbT0
まどか(仁美ちゃん……。よかったね)


まどか(私の話は急ぐ事でもないし、少し二人きりにしてあげよう…)




??「よぅ………」





まどか「ママ……」


詢子「終わったのか…?」


まどか「うん………」



詢子「ったく心配かけさせやがって…」


まどか「ごめんなさい…」




詢子「よかったよ…。戻って来てくれて……」


まどか「うん……」
593 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 01:05:14.97 ID:uh12nPbT0
ママ…。

あったかいな……。



そっか…。

私、もうこの温もりすら感じられなくなる所だったんだ…。




酷い子だな…。

私…。


苦しんで魔女になった子達を…。

あの魔法少女のシステムを…。

変えたかったのに…。


一人でも多くの魔法少女を救いたかったのに…。
594 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 01:06:47.63 ID:uh12nPbT0
ごめんね…。

苦しんでいるみんな…。



でも…。

私はもう…。

できないかもしれない…。



『生きている』って感じられる居場所があるから…。

『生きて欲しい』って戦ってくれた人がいるから…。

『生きたい』って思っちゃったから…。



だから、私は…。
595 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 01:08:29.32 ID:uh12nPbT0
あれから一日。


まどかや仁美の口利きもあって、あたしの休んでいた見滝原中学にクラスメイト達がわんさか押し寄せてきた。

騒がしいのは少々参ったけど、あたしは自分が守り通せたもの、そして自分が帰る場所がある事を実感していた…。


そして、その中には…。




さやか「あはは…。そんなに心配しなくても大丈夫だって…」


クラスメート「でも…」

クラスメート「あんなに長い間行方不明ってやっぱり心配だよ〜」

クラスメート「私達で良かったら何でも相談に…」



??「ごめん。ちょっと良いかな…?」
596 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 01:10:24.21 ID:uh12nPbT0
恭介「やぁ」


さやか「恭介………」


恭介「少し話があるんだ。付き合ってもらっても大丈夫かな…?」




上条恭介。

あたしがずっと大切に想って来た人…。


自分自身の命を賭けて、彼の左手を治した…。

そのくらい、ずっと大事だった人…。
597 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 01:13:01.23 ID:uh12nPbT0
恭介に呼び出されて、向かった屋上。

それはまどか達と過ごしたあの時とは全く違う風景のようだった。


ずっと好きだった人と二人きりでいる時間。

やっぱりどこか気まずい。

恭介からすれば、ただの幼馴染と過ごす時間なのかもしれないけどさ…。






恭介「君が無事でいてくれて…本当に良かった」


さやか「………ありがと」


恭介「心配…したんだよ?」


さやか「………ごめん」


恭介「い、いや…。責めてる訳じゃないんだ…」
598 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 01:14:21.83 ID:uh12nPbT0
あたしの表情を見た恭介の表情が変わる。

それはどこか真剣な表情で…。

何か大事な報告でもするんだろうか?と他人事のようにあたしも恭介を眺めた。





恭介「君が居なくなって…、ずっと考えてたんだ」


さやか「………」


恭介「いつも僕の事支えてくれて、辛い時に傍にいてくれて…。

   八つ当たりしても笑って許してくれて、僕が苦しい時には一緒に泣いてくれた…」


恭介「どれだけ君が僕にとって大事だったか…。

   どれだけ僕が君に頼りっぱなしだったか…。

   だ、だから…、ぼ、僕は…」




恭介「さやか、僕は君の事が好きだ」


さやか「………へ?」
599 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 01:15:36.45 ID:uh12nPbT0
さやか「だって、恭介は仁美と…」


恭介「志筑さん…? 彼女がどうかしたのかい?」



仁美…。

結局言えなかったんだ…。

それとも、あたしが途中で失踪したから言えなくなっちゃったのか…。





さやか「…………恭介。一つ、質問しても良い?」


恭介「な、なんだい?」


さやか「もしもさ、あたしがとっくに死んで、今のあたしは空っぽの抜け殻で、

    そんな姿さえ明日には失って、醜い姿の化け物になるかもしれない…」


さやか「それでも……、同じ事言える?」


恭介「何、言ってるんだよ?」
600 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 01:17:22.64 ID:uh12nPbT0
さやか「答えて」



恭介「うん。関係ない。

   僕は抜け殻だろうと、化け物だろうと君が好きだって…、言い切れる!」



さやか「………」



恭介の真剣な表情…。

嘘を言ってる人の顔じゃない…。

本当にあたしを…。



嬉しいな…。

でも…。




あたしは……。
601 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 01:19:37.18 ID:uh12nPbT0
さやか「……………ごめん」


さやか「あたしは、恭介の思いには応えられない」





恭介「…………そうか」



恭介「それでも、一つだけ言わせてほしい」






恭介「ずっと僕を支えてくれて、ありがとう」



ズルイなぁ…。

恭介は…。

今更になってそんな事言って…。


零れそうになった涙を堪えて、あたしは去っていく恭介の背中を見つめた。

そして、聞こえないように…。

でも、それを確かにする為に敢えて口にして言った。












―――――――さよなら、恭介――――――――
602 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 01:21:11.89 ID:uh12nPbT0
ずっと大好きだった人に、大好きと言われたのは嬉しい…。

だけど、あたしは……。


その悲しそうな背中…。

今度それを支えて、笑顔にするのはあたしじゃないけど…。





さやか「お〜っす。仁美」


仁美『さやかさん? どうしましたの? 突然連絡して来て…』


さやか「あたしにフラれた恭介が、落ち込んでると思うからさ…。

    慰めてやってくれないかな?」


仁美『なんで、さやかさんが上条さんを…?

   だって、さやかさんは…』



さやか「良いから」


仁美『でも…』
603 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 01:22:33.41 ID:uh12nPbT0
さやか「じゃあ、親友としてお願い。恭介の事頼む。あたしには勿体無いくらいの良い奴だから…。

    仁美が幸せにしてあげて」


さやか「あたしにはもう出来ないから…」


仁美『さやかさん…』



さやか「仁美になら…、任せられる」


さやか「だから、お願い……」



仁美『はい。わかりました…!』




さやか「うん。頼むね。仁美……」




恭介の事を仁美に託したあたしは携帯の電源を切り、あたしは空を見上げた。


そして、そんなあたしを見ていたアイツが物陰から出てくる…。



不機嫌そうな顔、それでいてどこか寂しそうな…。

いかにもあたしの行動が気に入らない…、そんな顔してる。
604 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 01:25:08.42 ID:uh12nPbT0
杏子「………良かったのかよ?」


さやか「勝手に諦めて、勝手に居なくなって、挙句他の男を好きになった尻軽女に…」


杏子「そんなモノはどうだっていいだろ!

   大事なのは今、あの坊やがお前の事が好きで、お前だってまだ…」




さやか「あたしは魔法少女だよ」


杏子「あの坊やは、それを関係ないって言ったんじゃねぇか…」




さやか「そうだね…。でも、そんな重荷を恭介に背負わせる訳にはいかないからさ…」


杏子「お前は………」

605 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 01:26:24.01 ID:uh12nPbT0
さやか「だから、捨てて来た」


さやか「あの人に告白して、その返事を聞かなかった時に、そう言う幸せは……全部。

    それが魔法少女になったあたしなりの生き方。そう決めた」




杏子「………バカだよ、お前」


さやか「そうかもね。でも、それで良いと思ってる」


杏子「………」




さやか「安心しなよ。もう絶望したりなんてしない。

    全部受け入れた上で、言ってるんだからさ」






杏子「……………………それでも、お前は一人じゃない」
606 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 01:28:12.66 ID:uh12nPbT0
さやか「ん…? 何か言った?」



杏子「アタシが居てやるよ」


さやか「…………?」



杏子「さやかの隣には…、ずっとアタシが居てやる。

   だから……」





さやか「……そうだね。アンタと一緒なら退屈もしないだろうしね」



杏子「人を賑やかしみたいに言うんじゃねぇ!」


さやか「あはは……。ごめんごめん」





さやか「ねぇ…………、杏子」


杏子「あぁ……?」












――――ありがと――――
607 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 01:31:08.30 ID:uh12nPbT0
一週間後。


見滝原駅。

一度、あたしが終わった場所。

だけど、今度はそこが新しい事を始める為のスタートラインになろうとしていた。



絶望に満ちて終わった筈の場所が、希望を求める新しい道の始まりになる。

何とも皮肉な因果だろう。


だけど、あたしはその駅の入り口で確かに立っていた。

見つけた新しい一歩を踏み出す為に…。





ほむら「本当にやるつもりなの…? えぇと、その…」



さやか「魔法少女お助け出張サービス! 

    やるよ。今更あとには退けないし…」



まどか「さやかちゃん…。それってやっぱり…。

    私の『願い』が原因だったりするの…?」



さやか「関係ない………、とは言えないかな?」
608 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 01:32:34.95 ID:uh12nPbT0
まどかの『願い』。


それは、『全ての魔女を生まれる前に消し去る』。

すなわち、『絶望』に満ちた魔法少女のシステムから、『絶望』を取り除くシステムの改良。

悲しい魔法少女たちの宿命を変える希望に満ちた『願い』。

だけど…。




QB『そんな祈りが叶うとすれば、それは時間干渉なんてレベルじゃない。

   因果律そのものに対する反逆だ』


QB『君という存在は一つ上の領域にシフトして、ただの概念に成り果てるだろうね…』
609 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 01:34:35.16 ID:uh12nPbT0
まどか『…………』


さやか『やっぱり、却下だね』


ほむら『えぇ……』


杏子『だな。アンタの優しさはわかるが、その全部をアンタ背負いこむ必要性がないね』



まどか『でも、こうしている間にも魔女になった子たちは苦しみ続けてて…。

    私はそんな…、そんな残酷な魔法少女のシステムを変えたくて…』





さやか『…………QB、他に方法はないの?』


QB『…………』


さやか『聞かれた事は応えるんでしょ?』




QB『ないね………と言いたいけれど、本当に僕にも予想のつかない不確定な要素が一つだけある』


さやか『へぇ…。教えなさいよ』


QB『君だよ。美樹さやか』
610 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 01:35:44.81 ID:uh12nPbT0
さやか『あたし………ね。そのハイブリットとやらがそんなに凄いの?』



杏子『まぁ、こいつのソウルジェムは色々とおかしな事になってたから、考えなかった訳じゃないが…。

   そんなになのか…?』


QB『さやか、君のソウルジェムを見せてごらん』




さやか『……………』


まどか『綺麗……』


ほむら『ソウルジェムが輝きに満ちてる…?

    なんなのこれは…?』


杏子『心なしか、あの時よりさらに派手になってる気がするな…』




QB『そう。そこなんだ』


QB『本来なら穢れを溜め、汚れるだけのソウルジェムが逆に輝きを増していく…。

   そんなのは前代未聞だ』


QB『だから、その輝きが満ちた時に何が起きるかは僕にもわからない』
611 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 01:36:54.41 ID:uh12nPbT0
QB『もっとも、それが満ちるまでにどれだけ時間がかかるかは見当もつかないし、満ちたとしても何も起きないかもしれない。

   はっきり言って効率の良い賭けとは言えないね』



さやか『でも、そんな可能性があるんだ…』


QB『…………』






さやか『なら、決めたよ。あたしのやりたい事…!』



まどか『さやかちゃん…?』


ほむら『ふ……』


杏子『ま〜たお前は「誰かの為」か。ほんと物好きな奴』
612 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 01:38:28.36 ID:uh12nPbT0
まどかの『願い』。

優し過ぎるその『願い』は、あたしにも理解できた。

叶えるだけで何の代償も無いのなら、あたしはまどかを全力で抱きしめてあげただろう…。


だけど、その『願い』を叶えるにはまどかの犠牲が必要…。

そんなのは認めないし、認められない…。


けど、その『願い』をひょっとしたら、あたしが叶えられるかもしれない…。

それなら…。




さやか「一人で戦って絶望しかけてる魔法少女の元に行って、助けたり、励ましたりすればさ、

    あるいは、魔女化しないで済む子もいるかもしれないから…」


さやか「だったら、行ける範囲だけでもあたし達で助けてさ…! ついでにあたしのソウルジェムの輝きも増したら一石二鳥じゃん!

    こういう展開ってさ、やっぱりさやかちゃんとしては燃えてきちゃうんだわ〜!」




ほむら「…………佐倉杏子」


杏子「あぁ………?」


ほむら「ちゃんと面倒見るのよ。

    美樹さやかは口では調子の良い事を言うけど、打たれ弱いから…」



杏子「………わかってるよ。まぁ、今のアイツなら大丈夫だとは思うけどな」
613 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 01:40:16.84 ID:uh12nPbT0
まどか「あのね……、さやかちゃん…」



さやか「今のあたしの『願い』、ほむらとの約束、忘れてないよね…?」


まどか「うん……」



さやか「なら、よし…! 帰ってきたらあたしの嫁が居なくなってました、なんてなったら泣くになけないからね…」


まどか「さやかちゃん…………」




さやか「あんまり気にしないでよ。あたしもほむらも好きでやるんだからさ…」


まどか「でも、私は何もできないのに…」




さやか「まどかはそれで良いんだよ…。こんな世界に足を突っ込んじゃ駄目…。

    平和な世界でずっと笑っててよ…」


さやか「それが、あたしやほむらの戦う理由になるんだから…」
614 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 01:43:25.76 ID:uh12nPbT0
ほむら「そうね。今日は珍しくさやかの言う通りよ」


さやか「珍しくとか言うな…!」




まどか「け、喧嘩は…」


杏子「あぁ…、大丈夫大丈夫。

   アンタが無事な限りはあの二人は、もう揉めたりしないだろうさ」




ほむら「ふ…」


さやか「ふふ…」




さやか「まどかの事、頼んだよ…。

    もし、まどかに何かあったら…」


ほむら「わかってるわ…」
615 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 01:45:06.90 ID:uh12nPbT0
さやか「じゃあ、行ってくるね」



まどか「うん。いってらっしゃい。さやかちゃん」


ほむら「気を付けてね…」




杏子「さやかの事は任せとけ。

   あたしが無茶やらかさないように、ちゃんと見張っとくからさ」


さやか「なんでアンタが保護者気どりなのよ…!」


杏子「先輩だからな。アタシの方が」


さやか「ないわ〜。アンタに先輩としていろはを教わるなら、ほむらに教わるし」


杏子「んなっ!?」




あたし達は歩き出す。

たぶん、銀河美少年であり、魔法少女でもあり、どちらとも違う新しい道を…。


これは最初の一歩。

新しい未来を迎える為の…。
616 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 01:46:53.20 ID:uh12nPbT0
――エピローグ――


南十字島の少し北。

孤島『気多島』

半壊したシンパシーが打ち上げられ、その傍らには青年が一人空を見上げていた。

大切なモノが見えず、それ故に取り零すことしかできなかった青年…。

物憂げに空を眺める瞳は、まるで…。





―――野心に溺れ、止まり続けた男の末路―――



ヘッド「これでこの計画も失敗…」


ヘッド「そして、シルシも輝きを無くしてしまった…」



ヘッド「もう、どうでもいいか…。

    思えば馬鹿馬鹿しい人生だったな…」


ヘッド「一番欲しかった物を与えられなかった悔しさと虚しさから始まって…。

    その後どれほど何かを求めて足掻いて手にしても、最後は全てすり抜けて落ちていく…」




???「そんな事は無いよ」
617 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 01:48:58.66 ID:uh12nPbT0
彼の後ろに白いワンピースを着た、水色の長い髪をした儚げな少女が立っている。



ヘッド「君は…、どうしてここに…」


???「なんとなく、ここにいる気がしたから…」



ヘッド「だって、君は…」


???「お話を聞いてきたんだよ。今度のお話はきっと気に入ってくれると思うの…」




ヘッド「ありがとう。サカナちゃん…。でも、その前に歌を聞かせてくれないか…?

    君の綺麗な歌声を…」



少女は歌う…。

儚くも美しい歌声で…。

遥か遠い銀河のどこかに響くように…。
618 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 01:50:49.20 ID:uh12nPbT0
―――驕り、それ故に悲しき少女の逆鱗に触れた愚者の改心―――



とある病院の一室。




???「あれから、考えてたんだよ…」


??「何をすか…?」


???「俺が女を捨てた話をした時の…あの中房の女の言った事だよ」


??「俺らを半殺しにしたあの怖い中学生の事すか…?」


???「あぁ…」


??「怖い女でしたよね…。しかもなんか力も凄い強くて…。

   悪い夢でも見てたみたいだ…」


???「怖い…か。だけど、あいつ泣いてたんだぜ?」
619 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 01:52:44.55 ID:uh12nPbT0
??「そう…なんすか…?」


???「あぁ…。だから、アレは俺がゴミのように捨ててきた女達が見せた悪夢なんじゃねぇかと思ってる…」


??「………」


???「信じられないって顔だな? 俺だって信じられねぇよ…。

    だけどさ、あいつの泣き顔が今でも浮かぶんだよ…」


??「……」


???「それがどうって訳じゃねぇけどさ…」


??「はい…」


???「もう少しマシな生き方、してみようと思うんだよ…。

    もう、あんな目に会うのも、あんな泣き顔見るのも、御免だしよ…」




??「………俺にも、できますかね?」


???「俺に出来るなら…、お前にも出来るさ。

    お前は俺ほど腐っちゃいないだろ…?」


??「ショウさん…」
620 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 01:54:03.12 ID:uh12nPbT0
―――薄暗い研究室から―――



綺羅星十字団アジト『科学ギルド』研究室



プロフェッサー・シルバー「やはり……。やはりだ!」


プロフェッサー・シルバー「魔法少女とオーバーフェーズ。このデータの組み合わせは素晴らしい。

               これを応用すれば、医学を中心にさまざまな技術が数十年分は先に進むぞ」



プロフェッサー・グリーン「……………」



プロフェッサー・シルバー「それだけではない。ようやくゼロ時間から解放されたサイバディの本格的な調査。

               ここまでの活動データを応用したさまざまな科学技術の発展…」



プロフェッサー・グリーン「………………」
621 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/08/02(火) 01:54:51.34 ID:uh12nPbT0
プロフェッサー・シルバー「さぁ、これからは綺羅星十字団、いや我々『科学ギルド』の時代だ!

               力の見せ所ですよ! プロフェッサー・グリーン!」


プロフェッサー・グリーン「…………」


プロフェッサー・シルバー「プロフェッサー・グリーン…?」




プロフェッサー・グリーン「あぁ…。申し訳ないですが、私はこのデータの整理が終わったら、そのまま休暇に入ります」


プロフェッサー・シルバー「……………は?」



プロフェッサー・グリーン「ちょっと、知り合いと一緒に旅行に行ってくるので暫くは留守にします。

               なので、作業はお一人でどうぞ。プロフェッサー・シルバー」



プロフェッサー・グリーン「よし、終わり! 待っててね。ツバサく〜〜〜ん!!!!」






プロフェッサー・シルバー「……………………」


プロフェッサー・シルバー「私もたまには実家に帰るかなぁ………」
622 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 01:56:38.02 ID:uh12nPbT0
―――不幸背負いし教師の安堵――――


見滝原中学職員室。



早乙女「はぁ……」


早乙女「あのスーパーセルのせいで、自宅がめっちゃくちゃ……」


早乙女「まだ、ローンが残ってたのに……!」



早乙女「愛もない……! 家もない……! お金もない………!」


早乙女「これから私はどうすればいいのよ〜〜〜〜!!!!」




早乙女「でも、まぁ………」


早乙女「大事な教え子が帰って来てくれた事だけは、感謝しないとね…」



早乙女「さやかちゃん……。無事で本当に良かった………」
623 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/08/02(火) 01:57:44.42 ID:uh12nPbT0
早乙女「それにしても、失踪してた理由はわからずじまいか…」


早乙女「恋愛絡みってだけじゃないみたいだけど……」



早乙女「それに、戻って来た彼女、どこか大人びたような……。

    前と同様、明るくてはっちゃけた性格自体は変わってないみたいだけに、何か不思議よね…」


早乙女「失踪中に何か怖い目にあって無ければ良いんだけど…。

    当人も特にそう言った目にはあってないって言うし…」



早乙女「そう言うことでないなら、まぁ、良くある話か……。年頃の女の子だもんね…」





早乙女「頑張るのよ。さやかちゃん…。

    男なんて星の数ほどいる! 一つや二つの失恋くらい、どうと言う事はないわ!」


早乙女「どうと言う事は……」




早乙女「うぅ…………」
624 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 01:59:17.00 ID:uh12nPbT0
―――狂者達の狂詩曲―――


南十字島、とあるホテルの一室。




マドカ「さすがね、コウちゃん。

    バイオリンを弾く姿もサマになってる…♪」


コウ「そうかい? これでも大分腕が鈍っているんだけど…。

   まぁこの程度で良いならお手の物かな…?」



マドカ「綺麗な音色……」


コウ「そう言って貰えると嬉しいね」



マドカ「だけど、やっぱりそれだけね……」


コウ「…………」




マドカ「もう、飽きちゃった!」
625 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/08/02(火) 02:00:15.67 ID:uh12nPbT0
コウ「ふふ……。マドカらしいね。

   じゃあ、次はどうする? そろそろ新しいゲームでもする?」



マドカ「いいわねぇ…。せっかくサイバディの封印も解けた事だし!」



コウ「ただ、サイバディ関連は綺羅星の連中が煩いからね…。

   彼らの敵に回るなら、相応の策を考えた上で動かないと…」



マドカ「そう言えば、アレの安全管理があの女の夢だったわね…」


コウ「…………」



マドカ「いいわ。なら、狩りをしましょう。サイバディを狙ってくるゴミを見つけてはひたすら狩るの!」


コウ「なうほど、そう言う狩りか。たまには面白いかもしれないね」



マドカ「でしょ? じゃあ、さっそく行きましょうか…!」


コウ「あぁ……。楽しい戦場へ…!」
626 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 02:01:40.52 ID:uh12nPbT0
―――父と子の昼下がり―――


鹿目家自宅。




知久「じゃあ、そろそろお昼御飯にしようか」


タツヤ「ごはん。ごは〜〜〜〜ん」



知久「ははは。すぐに作るから待っててね」


タツヤ「む〜〜〜」




知久「う〜〜ん。昼はまぁ適当に済ませるとして、夜はまどかの好きなクリームシチューを作ろうかな」



タツヤ「まどか! まどか〜〜〜!」
627 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/08/02(火) 02:02:34.99 ID:uh12nPbT0
知久「こら! 駄目だぞ。タツヤ。

   ちゃんとお姉ちゃんって言いなさい」



タツヤ「む〜〜。まどかお姉ちゃん」


知久「うん。そうだね」



タツヤ「まどかお姉ちゃ……大好き!」




知久「そうだね。僕もママもタツヤと同じ気持ちだよ。

   みんなまどかの事が大好きだ」


知久(だから、みんな無事で良かった………)




タツヤ「まどか! まどか〜!」


知久「こら、言った側から…!」
628 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 02:04:35.45 ID:uh12nPbT0
――消えた奇跡の語り部――



南十字島の遥か西にあるホテル。



ミズノ「ねーねー、マリノ! マリノ!

    最近ボクが見た夢の話、聞いてみない?」


マリノ「あら、どんな話なの?」


ミズノ「えっとね。とある才能をもった女の子の前に白い猫兎がやってくるんだ。

    そしてその猫兎と契約すると、一つだけ願いが叶って、さらに魔法少女になるんだ」


マリノ「良い事づくめじゃない」


ミズノ「違うよ〜。魔法少女になると一生魔女と戦わなきゃならないし、自分はゾンビの体になって、

    さらに心が闇に染まると魔女になっちゃうんだ」
629 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/08/02(火) 02:05:37.01 ID:uh12nPbT0
マリノ「酷い話ね…」


ミズノ「ね? 猫兎は悪い奴だった。しかも倒せない。無限に湧き続けるからね」


マリノ「ゴキブリみたいな物なのかしら…?」



ミズノ「うん。でも、とある優しい女の子がね、自分の周りで頑張る魔法少女達を見て、

    こんなの嫌だ、自分はどうなっても良いからこんな魔法少女のルール変えてくださいって言ったんだ」



マリノ「その子はどうなったの…? 死んじゃったの?」


ミズノ「……神様になったんだ。

    ずっとずっと世界を優しく見守り続ける。女神様に」

630 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 02:07:39.54 ID:uh12nPbT0
――― 子を失いし筈の母の胸中―――


見滝原のとあるオフィスビル





部長「鹿目君、とりあえずこの書類を最優先で頼む」


詢子「はい。すぐに片づけて持ってきますよ」




詢子(なんだかんだで会社の方は無事健在…)


詢子(しかも、さっそくお仕事と来たもんだ)


詢子(まぁ路頭に迷うよりはマシなんだろうけどさ…)




詢子(みんなまとめて生き残った事を考えりゃ、人遣いの荒さ程度は贅沢な悩みか…)


詢子(あの日、下手すりゃアタシは家族を失ってたかもしれないんだよな…)
631 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 02:09:08.53 ID:uh12nPbT0
詢子(特にまどか……。最終的に事無きを得たから良い物の、あの日のあいつは何かおかしかった…)


詢子(さやかちゃんが戻ってきたって聞いて、あの張り詰めた様子も戻ったから、やっぱ原因はそこか…)


詢子(一回、面と向かって話さないと駄目かもしれねぇな…)


詢子(頼りにゃ、されてねーにしてもよ…)




詢子(でも、まぁ無事に帰って来てくれてよかったよ…)


詢子(アイツがもしも居なくなっちまってたら、アタシは…)




部長「お〜い!鹿目君。まだかね?」


詢子「は〜い。今持って行きま〜す!」



詢子(いいさ。生きてりゃ何度だって話は出来る。帰ったらゆっくり話そう)


詢子(アタシがどれだけ、まどかの事を大事に思っているかを)
632 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 02:10:34.09 ID:uh12nPbT0
―――影を歩む戦士の旅路―――


綺羅星十字団アジト付近の森。




カタシロ「これで良いのか…?」


???「お手数をおかけします。

    さすがにこの剣は持っていかないと落ち着かないモノで…」



カタシロ「ふ………。生きているなら、生きていると言えば良いだろう?

     なぁ、バン…」



???「申し訳ないですが、僕にはやりたい事がある。その為に今の状況は色々と面倒がなくて良い…」


カタシロ「やりたい事…?」




???「今の僕は弱い。だから、強くなりたい…。

    他者に縋るのではなく、自分で何もかも勝ち取れる、彼女のような強さが欲しい…」
633 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/08/02(火) 02:11:42.67 ID:uh12nPbT0
???「だから、行きます…」


カタシロ「行く…? どこにだ…?」


???「どこへでも……」



カタシロ「…………」


???「自分で選んで進むことに意味がある。そんな気がするから…」




カタシロ「ふ………」


???「それでは、僕はもう行きますので…」




カタシロ「行ったか………」


カタシロ「羨ましいな。俺達にはもう見えないモノが見えている若者と言うのは…」
634 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 02:13:19.00 ID:uh12nPbT0
―――魔法少女の救世主―――


見滝原の隣町にある魔女結界内。




魔女「オォォォォォォォ!!!」


??「もう…動けないや…」


??「魔法少女になっても……、何もできなかった……。

   わたし、やっぱりいらない子だったのかなぁ…」



魔女「オォォォォォォォ!!!!!」


??「………っ」





??「………あれ?」


杏子「おい、何ボーっとしてんだ。死ぬぞ?」


??(助けて…くれたの?)



杏子「それと、自分で自分の事いらないとか言うな。そう言うの聞…」


???「杏子…」
635 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/08/02(火) 02:14:07.44 ID:uh12nPbT0
杏子「げっ…。さやか…」


さやか「何時まで時間かけてんのよ…。

    一人しかいないみたいだから、救出はアタシだけで十分さ…とか言ったのは誰…?」


杏子「いや、思ってたよりもちんまくて…」




さやか「言い訳しない!」


杏子「はい………」



さやか「……じゃあ、行ってくるね」


杏子「おう。気を付けろよ…!」




さやか「アプリボワゼ…!」




??「え…? 今のお姉ちゃん、魔女になっちゃったよ…?」



杏子「魔女? あぁ、ありゃ違う。魔女どころか…」


杏子「アタシらの『救世主』になるかもしれないぜ?」
636 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 02:15:36.53 ID:uh12nPbT0
―――優しき魔王と、それを慕う従者の午後―――


サンダーガール号カナコ自室。




シモーヌ「グラントメール財閥本部への報告要領の作成、終わりました」


カナコ「御苦労さま。シモーヌ…」



シモーヌ「『アメティスト』の件、聞かれましたか…?」


カナコ「えぇ。これで確信に変わったわね」



シモーヌ「タカシ……。今どこで何をしているんでしょうか…」


カナコ「十中八九生きている、とわかっただけでも良いじゃない」



シモーヌ「それは、そうですが…」


カナコ「それよりも、これから私達は忙しくなるわよ」
637 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 02:17:13.70 ID:uh12nPbT0
カナコ「ようやく、全てのサイバディの所有権の主張が認められた。

    でも、それは同時に綺羅星十字団の全サイバディの管理責任が『おとな銀行』にあると言う事でもある…」


シモーヌ「そうですね。でも、綺羅星十字団自体が、サイバディを平和運用する為の機構になりつつある…」



カナコ「新代表の手腕とカリスマには助けられっぱなしね…」


シモーヌ「でも、それで良いんじゃないでしょうか?」


カナコ「…………?」


シモーヌ「あんこさんが私達の為に戦って、逆にあの子を助ける為にザメクと戦ったあの時みたいに…。

     助けたり、助けられたりして生きていくのが仲間なんじゃないかな…と」



カナコ「そうね……。あの子には最後まで教えられっぱなしね…」


シモーヌ「『そーでもねぇよ』とか言って謙遜するんでしょうけどね」



カナコ「ふふ……。そうね。そんな子だったわね」



カナコ「今頃、何をしているのかしらね…」
638 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 02:18:57.94 ID:uh12nPbT0
―――奇跡の代償に思い破れた少年と、彼を託された少女の始まり――――


見滝原中学屋上。



恭介「………用って何、志筑さん?」


仁美「上条恭介さん…」


恭介「なんだい…?」


仁美「ずっと前からあなたの事お慕いしておりました」



恭介「…………」


仁美「……好きです。私とお付き合いしてください!」




恭介「………ごめん。

   僕も好きな人がいて、フラれたけどまだその人の事を諦められないから」
639 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 02:20:19.36 ID:uh12nPbT0
仁美「さやかさんですね…?」


恭介「………」




仁美「わかりました。でも、私も諦めません」


仁美「あなたの心が変わるまで待ちます。

   ずっと…」



仁美「だからせめて…」



恭介「…?」


仁美「さやかさんのようにお友達、として始めさせてくださいませんか…?」


恭介「………わかった」




恭介「これから、よろしく。志筑さん」


仁美「はい!」
640 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 02:21:33.97 ID:uh12nPbT0
―――紅の女王――――



綺羅星十字団総会会場。



議長代行「綺羅星ぃ十字団っ! 副団長ぉ スカーレットぉ、キぃスぅぅぅぅぅ!!!!!」




スカーレットキス「議長代理! いい加減その間の抜けた声をどうにかしとけって言ったろ!」


議長代行「は、はいぃ…。申し訳ないですぅ…」



スカーレットキス「チッ! まぁ良い。それよりも今日みんなに集まって貰った理由についてだが…」




レイジングブル「…………副団長就任以来、やけに気合入ってるよな…」


スピードキッド「仕方ねぇだろ。ずっとアイツの目指してきたものにようやく手が届いたんだからよ…」



レイジングブル「気合入り過ぎな気もするけどな…」


スピードキッド「まぁ、そこらは俺らでうまく手綱取るしかねぇだろうな。

          杏子が居りゃ楽だったんだろうが、居ない以上、水着逆上がりの隠しビデオでも使って黙らせるしかねぇだろうなぁ…」


レイジングブル「…………で、一応聞くがあの噂は本当なのか?」
641 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 02:23:04.92 ID:uh12nPbT0
スピードキッド「答えるまでもねぇがデマだ。たぶん、俺らフィラメントが台頭してるのをやっかんでるんだろうよ」



レイジングブル「だよな……」


スピードキッド「あぁ…。アイツは、人を操るあの第一フェーズはもう使わないと決めたんだそうだ。

          杏子みたいに自分の力で全部ねじ伏せてやるんだと…」


レイジングブル「物騒な話だ…」


スピードキッド「全くだ」


レイジングブル「だが、アイツらしくて良…」




スカーレットキス「そこ! 何時まで私語を続ける気だ! この恥晒し…!」



レイジングブル「やっべ…」


スピードキッド「あちゃ〜…。まずったか…」




スカーレットキス「誉れある『フィラメント』の幹部がそのザマとは良い度胸だ! 後で覚えてろよ…?」


レイジングブル&スピードキッド(あ〜あ…。マジで杏子戻ってこねぇかなぁ…。今のアイツは俺たちじゃ止め切れねぇよ…)
642 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 02:24:50.80 ID:uh12nPbT0
―――見守る者、守る者――――



見滝原中学校門。



まどか「お待たせ。ほむらちゃん」


ほむら「さして待っていないから平気よ」



まどか「そっか…。じゃあ、帰ろう」


ほむら「えぇ……」



ほむら(ようやく、長いループを抜ける事が出来た…)


ほむら(だけど、これは終わりじゃなくて一つの通過点に過ぎない…)
643 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 02:26:32.40 ID:uh12nPbT0
ほむら(まどかには、私が溜めてしまった因果と言う名の呪縛が残り続ける…)


ほむら(そして、それがある限りQBはきっとまどかとの契約を諦めない…)



ほむら(対して、ループを抜けた私はもう時間回帰も時間停止も使えない…)


ほむら(どころか、ここから先に起こる事はもう予想もつかない…)


ほむら(だけど…)





まどか「どうしたの? ほむらちゃん…?」


ほむら「何でも無いわ…」



ほむら(私は守り通して見せる)


ほむら(きっと大丈夫…)


ほむら(今の私は、一人ではないから……)
644 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 02:29:01.61 ID:uh12nPbT0
―――王としての責務――――



綺羅星十字団所有輸送機内。




ケイト「………今日の取引もうまく纏りそうですね」



スガタ「さすがにグラントメールの本格的な支援が受けられると違うな。

    商売敵以外は、大概話に乗って来る…」



スガタ「最初は大変だったよ…。

    高校生風情が代表かと、鼻で笑われたものだ…」



ケイト「しかし、それでも…」


スガタ「まぁ茨の道だと言う事はわかっているよ…」




スガタ「それでも、やり遂げなくては…」


ケイト「なぜ…、そこまで…?」


スガタ「…………あの子達に申し訳が立たないから。

    だから、彼女達が去ったあの日、三人で誓った」
645 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/08/02(火) 02:30:06.70 ID:uh12nPbT0
スガタ「自分達に出来る事は全てやろう、と……」


スガタ「そうでなければ、この世界の為に戦ってくれたあの二人に申し訳が立たない、と…」




ケイト(三人………。いや、結局はワコの存在が大きいんだろう)


ケイト(だけど、今回ばかりは文句も言えないか…)


ケイト(彼を自分の元から解き放ち、その力がに役立てられるように提案したのも、恐らくは彼女なのだろうから…)




スガタ「何か不服か…?」


ケイト「いいえ……」



ケイト(いいさ…。彼がどこを向いていようと関係ない…)


ケイト(私に出来るのは彼の為に尽くす事だけだ…)


ケイト(この人の為に生きる事が出来る…)


ケイト(それだけで私は幸せなのだから…)

646 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 02:31:42.27 ID:uh12nPbT0
―――守る者、見守る者――――



まどか「ねぇ、ほむらちゃん……」


ほむら「何…?」



まどか「………うぅん。何でも無い」


ほむら「そう………」




まどか(私はみんなに守られてばかりだな…)


まどか(ずっとさやかちゃんに守って貰って…。長い間、ほむらちゃんにも守られてきたんだ…)


まどか(私はまた、ほむらちゃんに守られて、代わりに願いを叶えると言ってくれたさやかちゃんにも甘えてる…)


まどか(本当は力になりたい…。でも、さやかちゃんもほむらちゃんもそれを望んでいない…)


まどか(だから…)
647 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 02:33:48.55 ID:uh12nPbT0
まどか「ねぇ ほむらちゃん…?」


ほむら「何……?」



まどか「辛い事があったら何時でも頼ってね」


ほむら「私は……」



まどか「わかってる。二人が望んでないから、魔法少女にはならない。

    でも……」


まどか「魔法少女じゃなくても二人を支える事は出来ると思うから…」



まどか「だから、これからは辛い事も苦しい事も全部教えてね…。

    力になれるかはわからないけど…。でも、私も一緒に悩むくらいの事はしてあげたいから…」


ほむら「えぇ。ありがとう。まどか……」




まどか(私は、私の為に戦ってくれる二人を支え続けよう…)


まどか(それが、たぶん私のやるべき事だと思うから…)
648 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 02:35:52.11 ID:uh12nPbT0
――異星人達の眺める空――



南十字学園屋上。



サリナ「彼、驚いてるかな…?」


???「いや、彼には驚くと言う感情がないよ…」


サリナ「あれだけ長い間人に触れていながら感情の芽生えない彼らと、すぐに人に感化された私達…。

    その差は何なんだろう…」



???「さぁ…? わからないし、わかりたくもない。

    ただ、一つだけ言える事があるとすれば…」


サリナ「うん…。きっとこんな気持ちも理解できないんだろうな」




すごく心が清々しい…。


『インキュベーター』、あなたにはわからないんだろうな…。

『魔法少女』の輝きも、彼女達を思うみんなの優しくて強い心も…。


毎日が『楽しい』。

皆の心に触れる事が出来るから…。
649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/08/02(火) 02:37:33.42 ID:uh12nPbT0
どこかのビルの上…。



QB「全く困った事をしてくれたものだよ…」


QB「彼女がワルプルギスの夜を倒してしまったせいで、僕はまどかとの契約に失敗。

   結果、エネルギー回収に大幅な遅れが生じてしまった」


QB「おまけにその後の彼女の活動が予定通りに進めば、僕のエネルギー回収を大きく阻害する可能性すらある。

   穢れを溜めずに魔女を倒し、グリーフシードを他の魔法少女へ与えて回る…、そんな彼女は芳しくない存在の筈なんだけど…」



QB「ただ、彼女のソウルジェムは実に興味深い…。

   僅かとは言え、段々と輝きを増していくそれは、穢れを溜めて輝きを失う本来のソウルジェムとは真逆の存在と言える…。

   穢れきったソウルジェムが魔女になるのとは反対に、彼女のソウルジェムの輝きが極みに達したら…?

   やはり、その興味は尽きない…」




興味…?

いや、関心…?

これが『感情』…?


まさか、僕にこんなモノを芽生えさせるとはね…。


なるほどね、『エントロピープル』。

君達の言う『銀河美少年』とやらのおかげで、僕も『感情』と言うものの一端を知る羽目になったみたいだ…。


おかげで、毎日が『楽しく』なりそうだよ。
650 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 02:40:57.04 ID:uh12nPbT0
―――視えるモノ、視えないモノ―――



南十字学園演劇部部室。





タクト「…………」


ワコ「…………ふっふ〜ん」


タクト「どうしたの? ワコ」




ワコ「寂しいんでしょ? さやかが帰っちゃって…」


タクト「そうだね。何か張り合いが無くなったってのは感じてる」


ワコ「……………」






ワコ「ねぇ…タクト君」


タクト「何…?」
651 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/08/02(火) 02:42:10.02 ID:uh12nPbT0
ワコ「…………何でも無い」



あの時、さやかが止めなかったから何て答えるつもりだった…?


だって…。

タクト君はさやかの事、好きだったでしょ…?



今ならわかるかな…?

タクト君にも…。

二人の相手を同時に好きになっちゃった苦しみ…。



それとも……。

タクト君は私とは全く別の答えを出せていたのかな…?
652 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/08/02(火) 02:43:16.17 ID:uh12nPbT0
タクト「さて……、そろそろ時間だ」


ワコ「時間…? あぁ、スガタ君のお手伝いするんだっけ…?」




タクト「そ。何時までも呆けてたら、あの子に笑われちゃうからね…」


タクト「ずっと……。あの子に誇れる僕でいないと……」


タクト「僕とさやかは、ずっと繋がっているから……」




ワコ「そっか……」



敵わないなぁ…。

『銀河美少年』同士の『アプリボワゼ』ですか。



それとも、あるのかな…?

私とさやかにも…。


それなら…。
653 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 02:44:58.67 ID:uh12nPbT0
ワコ「私も信じてみようかな」


タクト「ワコ……?」



ワコ「二人だけで同じモノが『視えて』いるのってなんか羨ましいし…!」


???「それなら、僕も混ぜてもらおうかな…?」




タクト「わざわざ迎えに来てくれたの…?」


スガタ「時間が余ったからね。

    それより、そう言う話なら僕も興味があるな…」


ワコ「だよね〜。タクト君の一人占めって面白くない」



タクト「わかったわかった。でも、今は先にやる事があるでしょ…?」


スガタ「そうだったな…」


ワコ「よし! それなら、まずはそっちを頑張っちゃいますか!」



タクト「あぁ…!」
654 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/08/02(火) 02:45:58.66 ID:uh12nPbT0
さやか…。

出会ったばかりの君は全てに絶望してた。

だけど、君は僕のたった一言ですぐに立ち直って、強くなった。


君は優しいから、きっと目に見えるモノ全てを受け入れて、言われるがままの全てを信じて…。

背負わなくていいモノまで背負いこんで、そうやって自分で自分を傷つけたんだろう…。



でも、もうわかったよね…?

目に見えるモノは全てじゃないんだ。

唱えられた現実は全てじゃないんだ。


大人や世間や世界が言う全部なんて、所詮は目に見える一端にしか過ぎなくて、

本当に大事な物は心で見ないとわからない…。


まして、自分自身の事は尚更見えない…。

特に君は自分自身を見つめるのは苦手だったよね…。

だから、君に見えない君を伝えられて良かったと思ってるし、僕の見えない僕を見てくれる君に感謝していた…。



これから先、僕は君に君を伝えてあげる事は出来ないけど…。


それでも、僕達は…。
655 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 02:47:29.69 ID:uh12nPbT0
―――優しい思い出の中で―――


見滝原市隣町???




杏子「脳筋…」


杏子「バイク馬鹿…」


杏子「空回り先輩…」


杏子「色ボケ教師…」


杏子「無表情メイド…」


杏子「天然お嬢…」




杏子「ちぇ…。なんだよ…。

   こんなビデオだけ残して、一方的にメッセージ送り付けやがって…」


杏子「文句の一つや二つ言いてぇのに、もう会えないのなんて…」



杏子「そんなの……、ありかよ…」
656 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/08/02(火) 02:48:50.80 ID:uh12nPbT0
結局、大事なモノはなくなってから気付くんだ。



あそこが…。

綺羅星十字団がどれだけ、アタシにとって居心地が良かったか…。

それを思い知るのもやっぱり、もう戻れないと知った後だ…。



ミドリの無茶苦茶に呆れた時間も…。

ジョージやテツヤとつるんで馬鹿やった時間も…。

上司様の空回りに付き合った時間も…。

カナコにからかわれてた時間も…。

シモーヌと遊びに行った時間も…。


もう、戻りはしない、過去のものだ…。





だけど…。
657 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/08/02(火) 02:49:36.49 ID:uh12nPbT0
杏子「でも、さ…」


杏子「こんなモン作る余裕があるって事は…。

   元気だって事だよな」



あいつらは生きてる。

なら、それだけで良いさ。


会えないのは寂しいけど、あいつらを救ってアタシも生きてる。

それ以上を望むのは野暮ってもんだ。



寂しい…?

そんなモン菓子でも食ってりゃすぐに忘れる。


楽しい思い出が辛い思い出に変わらない。

これだけで、アタシにゃ十分だ。



それに今のアタシは…。


もう一人じゃないしな。
658 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 02:51:42.57 ID:uh12nPbT0
―――銀河のどこかで―――


見滝原市隣町???




さやか「…………」



満面に輝く星空を見上げる。


凄く綺麗…。

そりゃ、あの時にタクトさんと見たアレほどじゃないけど、それでも心奪われる光景があって…。



あたしは、きっとこの世界が好きだったんだ…。

恭介の事とは関係なく…。

でも、それすらもわからなかった…。

見えるモノ全てで蓋をして、聞こえた現実で耳栓をして…。


そんなことすら、どういうことかわからなかったんだ…。
659 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/08/02(火) 02:52:41.23 ID:uh12nPbT0
だから、あたしは魔法少女の現実を全てだと思い込んだ。

希望を抱き、その希望を抱いた分だけの絶望を食らって消えていく…。


人間じゃなくなったあたしは、もう誰にも愛されない…。

そうやって絶望して堕ちようとした…。

それが見えて、聞こえた全部だから、それが全部だと思いこもうとしたんだ…。



でも、違った。

あたしが見ていた物は、ちっぽけな世界の一端に過ぎなかった。

世界どころか、あたしはあたし自身の価値すら見えてなかった…。



タクトさんは教えてくれた。

目に見えるモノは全てじゃないよって…。
660 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/08/02(火) 02:53:34.81 ID:uh12nPbT0
その通りだと思う。

それどころか、一番大事なモノってほとんど目には見えないと思うんだ…。


奇跡の代償も、魔法少女の真実も、魔女の正体も…。

杏子の過去も、ほむらの願いも、まどかの思いも…。

ワコ姉の優しさも、スガタ師匠の強さも…。

そして、タクトさんとの絆も…。



だから、あたしは教えてあげたいんだ。


今もそれに捕われて泣いている子達を…。

それに気付かずに空回りしている子達を…。

それが今あたしが『やりたい事』。



そして、その子達を救ってあげたい。

それが今『やるべき事』。
661 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/08/02(火) 02:54:14.12 ID:uh12nPbT0
今のあたしはまだ力が足りないから…。

それは一致しないけど…。


でも、いつかきっと来ると思うんだ…。

魔法少女のみんなの絶望が無くなって、希望だけを胸に戦える日が…。


だから、あたしは…。




杏子「何時まで耽ってんだよ…」


さやか「うっさいなぁ…。そう言う時もあるんだよ」
662 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/08/02(火) 02:55:16.28 ID:uh12nPbT0

杏子「アイツの事思い出してたのか…?」


さやか「うん……。でも、大丈夫」


さやか「今のあたしには、色んなモノが視えてるから」






さやか「それに………、アンタもいるしね」


杏子「お、おう…!」




さやか「じゃあ、行こっか。杏子」


杏子「あぁ、行こうぜ。さやか」
663 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 02:56:19.25 ID:uh12nPbT0
進み続けよう。

前へ…。

あたしの憧れたあの人のように…。


もう、あたしは一人じゃないから。

心に残り続ける幸せな思い出があるから。

あたしを支えてくれる人たちがいるから。




そして…。


あたしとあの人は繋がっているから…。


あたしが諦めない限り…。

あたしが生きている限り…。

それはずっとそこにあるから…。


だから、あたしの…。











―――――人生と言う冒険は続く――――――
664 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/02(火) 03:00:49.78 ID:uh12nPbT0
っし。
終わり。

と言ってもこの時間じゃ誰も見ていないだろうけど…


途中色々と展開悩んだり、全く文が書けなくなったりもしましたが、どうにか終えられて良かった…

長い間お付き合いしてくれた方々本当に感謝します



それでは、本日は閉会とする。

このスレを見てくれた者に栄光を…!
レスをくれた者達に祝福を…!

綺羅星☆
665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/02(火) 03:02:39.71 ID:k/GopxR5o
完結乙、さやかちゃんマジ輝いてた!

……そういやスレタイの台詞は結局言ってない?
666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/02(火) 07:41:44.23 ID:AuNY65Yuo
君の乙はもう輝いている!!
お疲れ様でした!エピでまさか出番のなかった人たちが出てくるとは…!!
667 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/08/02(火) 08:21:39.41 ID:FmKz8oMAO
乙な銀行☆

うん、つまんなかった
(つまんない君カッコ良かったの意味)

第一フェーズ来ねえなと思ったらココで来たか…!

さやかちゃん流浪人にでもなったかと思ったけど、
先生のセリフを見るにちゃんと学校行ってるみたいですね
668 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/08/02(火) 08:55:40.63 ID:nvNIn3k9o
乙です
最初は超無理なクロスかとおもったけどここまで綺麗に纏まるとは驚嘆でした
669 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/08/02(火) 23:14:43.97 ID:XbOYI1Ouo
綺羅星☆
そして乙!!

スタドラ、まどマギ両方への愛を感じるいい作品でした
さやかちゃんマジ銀河魔法少女。
エピローグの様子を見るにみんな(タカシ生きてた!)未来を感じさせるエンディングに終わってよかったよかった
とりあえずサカナちゃんが戻ってきてくれるのに過去に戻ろうとか考えてたヘッドは猛省すべき

最後まで完走できるか心配だったがこれだけの長い、そして面白い話をコンスタントに書き続けたのはすごいことです
楽しませてもらいました
>>1の銀河はもう輝いている!!
670 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/03(水) 08:44:29.40 ID:EhO5QB7SO
超乙。二つの作品の魅力を良く生かしたSSでした。とても面白かったです。ありがとうございました。
671 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/08/03(水) 16:15:48.45 ID:umsjvnDAO
綺羅星乙☆!!
良いもん読ませて貰い感謝感激だわ
672 : ◆.2t9RlrHa2 [sage]:2011/08/07(日) 12:07:59.69 ID:z/dU/Zpj0
綺羅星☆
最初はさやかをどうにかして輝かせたくて
似合いそうだし同時期放送で一番の主人公補正を持つタクトさんを支持させるだけのSSのつもりが
杏子と綺羅星絡めたりして、なんか凄いボリュームになって>>1自体が一番戸惑っています
まぁ何にしても綺麗にまとめれて良かった

ここまで読んでくださった皆さんありがとうございました
応援レスがなかったらたぶん途中で折れてエタってたでしょう…

>>665
あれはスタドラの最終話とかけただけなんで…
でも、言えそうな雰囲気だったから言わせなかったのはちょっと失敗だったかも

>>666
ワルプル戦〜出番ないキャラも含めた個別エピの流れは、実は最初から決めてました
本当はマンティコールなマリノや天然なサカナちゃんはもっと使いたかったんですが…

>>667
輝きのタカシはやりたくて仕方なかったんで自分も満足ですww
さやかは本当は流浪人にしたかったんですが、中学生で親居て流浪人?って感じなんで諦めました

>>668
どうにか着地できました
オチは決めてたんですが、実は杏子の立ち位置で凄い悩んだ時期があったり…

>>669
さやか愛とスタドラ愛から作ったSSなんで、その二つの愛は自信あります
それ故に、さやかに主人公補正を与え、アニメで不遇な割に魅力的+色もバッチリなレシュを当てる一発モノのSSがこんなに長く…

>>670
ありがとうございます
もともと異星人設定やらエントロピーやら絡める要素はあったんで、これは誰かにやって欲しいなと思ってました
他にさやか+Fateのアーチャーとか思いつきましたが、原作未プレイの俄かなんで断念
「理想に溺れて〜」とか無限の剣製とか合い過ぎてて面白いと思うんだけど、出て来ないなぁ…
誰かやらないかなぁ…

>>671
こちらこそ、最後まで読んでいただきありがとうございました
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