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澪「ギャンブルゲーム」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:08:57.65 ID:56zTZ7GAO
空虚───────

友A「じゃあね〜澪」
澪「うん、また明日」

ただ時間だけが過ぎて行く。大学へ行きバイトをし、お風呂に入り、ご飯を食べて寝る。

そんな在り来たりが毎日を支配する

今年で二十歳になる私は、この人生に少し嫌気が差していた。

何が不満と言うわけではない。高校を卒業し、入りたかった音楽大学にも入れた。

両親に懇願し一人暮らしを始めてもう一年と7ヶ月ほど。
最初は張り切ってしていた自炊も最近は疎かにしている。

澪「お腹減ったな…」
私は人生に、渇望していた。

刺激と言う名のスパイスを──
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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714054765/

渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714052788/

二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714049241/

佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/07/06(水) 23:12:33.38 ID:mWE4HTS/o
秋山さんスレか
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:13:20.58 ID:cClvjANSO
なんで最初からこっちでやらなかった?

すごく時間を無駄にしたとは思わなかったのか?
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:13:46.73 ID:56zTZ7GAO
全部コピってるのでとりあえずパッパと貼って行きます。
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:14:20.11 ID:56zTZ7GAO
─────────

「ありがとうございましたー」

今日は近くのコンビニのお弁当で済まそう。いや、今日も…か。

澪「でも新作のお弁当だからちょっと期待だ」

ほんの少しだけ足取りが軽くなった気がする。これくらいの日常変化にも敏感になるぐらい今の私は毎日に退屈していた。

高校の頃ひたすら音楽に打ち込んでいた頃が懐かしい…。

澪「律…元気にしてるかな」


遠藤「…………彼女が秋山澪か。なるほど…確かに餓えている。刺激に……。
ならば渡そうではないか、その餓えを満たす絶望への切符をな…ククク」
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) :2011/07/06(水) 23:14:22.64 ID:7X6cSt4p0
終わってくれたらそれでいい
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:14:53.86 ID:56zTZ7GAO
テレビのニュースを見ながら夕御飯を食べる。

澪「また麻薬使った芸能人の話か……最近多いな」

なんて独り言を漏らすが、他人のことにあまり興味はなかった。
人見知りな性格も大学に入って一年もすれば消えていた。
いや、本質は変わらない、ただ私は誰かに興味を持たなくなっていた。
本気でわかろうとする人間は大学にはいない、それがわかってしまったからだ。

だから人見知りする必要なんてないのだ。ただ何となく体裁を整えて会話しているだけでいい。
それで私は、秋山澪という人間は確立されて行くのだから……。

ただ一人、例外を除いて。
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) :2011/07/06(水) 23:15:23.31 ID:4PRjQi0AO
マジうぜー
俺は途中まで読んだんだから続きから貼れよ
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:18:28.69 ID:56zTZ7GAO
テレビを消し6畳半の一間に横になる。

田井中律

彼女は唯一私を理解してくれた。私も彼女を理解しているつもりだ。
本当は私と同じ大学へ行く筈だった、けれど彼女は落ち、滑り止めの大学へ行くこととなった。彼女曰くヤマがれたらしい。
私もその大学には受かっていた為、そっちに行こうとした……しかし彼女はそれを許さなかった。

「私みたいなバカのせいで澪の足を引っ張りたくない」と言い、私達は別々の道を行くことになった……。

そんな私のたった一人の友達。本当の自分を心配してくれ、本当の自分を見せられる存在……。

澪「律……何で……」

トントン────
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:20:31.81 ID:56zTZ7GAO
不意に玄関のドアが鳴る──

綺麗に二回、インターホンがついていない訳ではない。
それでもその来客はノックを選択してきた。

澪「は、はい…どちら様ですか?」

Tシャツ一枚に下はホットパンツなんてだらしない家着を焦って着替える。
こういう身嗜みに気を遣う自分が嫌いではなかった。

秋山澪という女性は表向きは謙虚でしっかり者、成績も優秀で人には優しく振る舞う、がモットーなのだ。
その役割を演じなければならない。私が私で在るために…。

トントン────

来客は何も言わず、またノックをする。
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:20:47.24 ID:B8Q7MgbRo
10分で落ちるとはなあ
続き読みたかったんで期待してるよ
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:21:07.07 ID:56zTZ7GAO
どうやらこちらが開けないと気が済まない様だ。仕方なしに私はドアまで行き開けることにした。

澪「今開けまーす」

チェーンロックはしっかりと掛けたままだ。私が部屋選びに重点を置いたのはこのチェーンロックが有るか否か。
何故チェーンロックを必要としたかは、都会は物騒というイメージと、変な宗教やしつこい新聞勧誘などをシャットアウト出来る優れものだからだ。

チェーンロックをしたままの扉から恐る恐る覗くと……。

澪「あの……どちら様ですか?」

そこには黒いサングラスを掛けた如何にも怪しげな男の人が立っていた。
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:22:06.88 ID:56zTZ7GAO
「すまないなこんな時間に。混み入った話でね。中、いいか?あまり目立ちたくはない」

澪「はあ……でも……」

いきなりこんな怪しげな人を女の一人暮らしの家にあげるバカはいないだろう。
私は何を言っているんだと言った風な目で彼を睨み付ける。

「遠藤金融の者だ。田井中律について…と言えば中に入れてくれるかな? 心配するな、話をするだけだ」

澪「律の!?」

この人を見た瞬間嫌な予感はしていた。十中八九当たりだろう。
とりあえず私は話を聞くことにした。

澪「近くのファミレスで話しましょう。いいですか?」

「いいだろう…」

男はそう言って踵を返し、階段を降りて行く。
私は出掛ける準備を粗方済まし、男の後を追いかけた。
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:23:07.67 ID:56zTZ7GAO
ファミレス─────

「ねぇちゃん、コーヒーでいいか?」

澪「はあ…」

男はそれを肯定と受け取ったのか男はコーヒーを二つと店員に言い付ける。

「さて、と。とりあえずは自己紹介からしとくか。俺は遠藤金融の遠藤だ」

澪「金融……」

遠藤「あんたは秋山澪、だったよな?」

澪「はい…」

遠藤「でだ。話と言うのはあんたの友達、田井中律だっけか?そいつがちょっと金返せなくてな」

やっぱりだ……。嫌な予感はしていた。

三ヶ月前から。

遠藤は話を続ける。
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:24:28.36 ID:56zTZ7GAO
遠藤「で、君が確か保証人になってたよな?え〜と…、これだこれだ」

遠藤はわざわざカバンから連帯保証書を出して私に見せてくる。
それは確かに私が三ヶ月前律に頼まれて書いた保証書だった。

澪「それで…私に払えと? 律はどうしたんですか?」

律が私を裏切って逃げる筈がない。確か額は30万ほど、それぐらいで私達の絆は切れるわけがないと云う自信があった。
だから律の身に何かあったからこそこうして私に言いに来たのだ。そうに違いない。

遠藤「まあ…簡単に言えばそうだ。これを君が払ってくれるなら彼女は嫌な思いをしなくて済むな」

その言葉で一気に悪寒が走るのがわかる。

澪「律に変なことしたら許さない…警察へ行きますよ!? 最近じゃ過剰な債権回収をすれば違法になるんだから!」

思わず立ち上がりながら声を荒げてしまう。

遠藤「落ち着け、目立つのはお互い好ましくないだろう?」

遠藤が顎をしゃくる方を向くと、大声を出した私の方を何事かと何人かが訝しげに見ている。
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:27:31.33 ID:56zTZ7GAO
>>3
まさかあんな早く落ちるとは思わなかったもんで

>>6
必ず最後まで書きます

>>8
こっちで初めて目にしてくれた人の為にもやっぱり最初からやりたいので
すみません

>>11
自分もびっくりしました

ありがとうございます
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:29:42.09 ID:56zTZ7GAO
澪「……」

黙って席に座る。確かにこんな話を周りに聞かれたくはない。

遠藤「まあ別に払わなくてもいい。そうなった場合、金は田井中に作らせる」

澪「くっ……!」

作らせるなんて体の良い言い方しているがつまりは金を払わなければ律の体を売ると言っているのだ、こいつは。

女が金を作るためにすることと言ったら……世間に疎い私でも容易に想像がつく。

澪「払います……いくらなんですか?」

確か律から聞いた額は30万……三ヶ月経っているから利子を合わせると……どれぐらいになっているのだろう。想像がつかない。
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:30:47.26 ID:56zTZ7GAO
遠藤「煙草、いいか?」

澪「……どうぞ」

そう言うと遠藤は胸ポケットから煙草を取り出す。それを自分が吸う前に私に勧めて来たが、微かに首を振りそれを拒否した。

そう言えば自分も煙草を吸える歳なんだと実感させられる。

火をつけ、最初の一服が空気中を漂っている最中だった。

遠藤「……5000万」

澪「は?」

耳を疑う。正しく言えば疑うしかない。
何故なら男の口から出た金額があり得ないものだったからだ。

それでも、遠藤はもう一度同じ言葉を告げる。

遠藤「5000万だ。田井中の借金は」

トントン、と、遠藤が灰皿に灰を移す様がやけに遠く見えた。
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:31:53.02 ID:56zTZ7GAO
澪「そんなわけっ……! 律は30万って」

遠藤「最初はな。まあ聞け」

澪「……」

遠藤「田井中、と言っても親父の方だがな。そいつの会社が倒産したとこから始まる」

澪「倒産……?」

そんなこと一言も……。

遠藤「田井中の親父は結構なポストにいたらしく事業の失敗で結構な借金背負わされたらしい」

澪「そんな……。じゃあ律はその借金を?」

遠藤「ま、きっかけはそうなるか。しかし親父さんの借金はあっても2000万、家を差し押さえられるぐらいですんだ……が、だ」

澪「……」
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:32:50.73 ID:56zTZ7GAO
遠藤「必死になって返そうとはしたんだろうがな、運がなかった」

遠藤はニヤリと微笑み、煙草を灰皿に押し潰す。

遠藤「FXって知ってるか?」

澪「……外国の通貨売買ですよね」

遠藤「お、知ってたか。さすがはいいとこの学生だな」

澪「……」

遠藤「睨むな睨むな。こっちもこれが仕事なんだからよ。悪く思わんでくれ」

遠藤「まあその為替取引で失敗しちまってあれよあれよと転落人生、借金は5000万まで膨れ上がった。
こうなるともう家を売るだけじゃどうにもならん。そんで田井中の親父さんは家族を見捨て雲隠れ、借金は嫁に残されたってわけだ」
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:33:48.87 ID:56zTZ7GAO
遠藤「まあ大元はこんな感じだ」

事も無げにそう言う。良くある話だ、とでも言わんばかりの口調だった。
こんな絵に描いたような不幸が、不遇が、自分のもっとも大切にしていた友達に降り注いでいるなんて考えたくなかった。

遠藤「ここからが本番何だがな。その田井中の母親に背負わされた借金をお前の友達、田井中律が何とかしようとしてな」

澪「なんとかって……5000万なんて学生の私達にどうにかなるわけ…」

遠藤「冷静に考えりゃそうなんだろうが毎日取り立てに追われて精神イカれちまってる奴にそんなこと言っても無駄だろう」
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:35:29.60 ID:56zTZ7GAO
遠藤「追い込みかけてたのはタチの悪い噂しかない最高ファイナンスの奴等だしな……ククク」

澪「どうしようもないなら自己破産すれば良かったのに……」

何で私に相談してくれなかったんだ……バカ律。

遠藤「自己破産なんて関係ないな。こっちは法律なんざ無視して返すまで永遠に取り立てる。
まあ大方自己破産したら周りの奴等にも危害を加えるとか何とか言ってたんだろ。これがまたお前らぐらいの若者には効くんだ……変に仲間意識を持つ甘ちゃんにはな」

澪「っ……」

だから相談出来なかったのか……。
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:36:11.81 ID:56zTZ7GAO
遠藤「こっちは借りた金を返せと言ってるだけ何だがな。最近やたら世間は借りた方は悪くないみたいな言い方をするが……なもんあり得るかよっ……!」

遠藤「借りたら返すっ……当たり前だろうがそんなもんっ……! 小学生にだってわかる……!」

澪「それは……」

遠藤「金利も含めて承知で借りてる奴らがほとんどだ! それを返せないだぁ〜? クズっ……! ゴミばっかっ……! 」

澪「律は違います!!」

遠藤「ああ……確かに違うな。あいつはちゃんとそれを受け止めて返そうとした……自らの体を賭けて、な」

澪「!!」
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:37:16.86 ID:56zTZ7GAO
遠藤「ここでやっとお前を保証人に借りた30万が出てくる。どこでその話を聞いたかは知らんが田井中はあるところの裏カジノに顔を出してな」

澪「……それでその30万で5000万を何とかしようと?」

遠藤「さすがに奴もそこまでバカじゃない。いくら裏カジノと言ってもレートはせいぜい100〜500……それで30万から5000万に増やそうとしたら何回神憑り的なことをしなきゃいけないかぐらいわかるだろう。
お前の30万はそこの会員費だ」

澪「はあ……会員費って……じゃあどうやって稼ぐつもりだったんですか? 空手で……」
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:39:24.75 ID:56zTZ7GAO
遠藤「そこのカジノにはタダで出来るギャンブルがあってな……売買ゲーム……それが田井中が挑戦したギャンブルの名前だ」

澪「売買ゲーム……」

遠藤「買うか、売られるかを決めるゲームでな。売買ゲームと言ってもそれは枠の話で実際勝敗を決めるギャンブルの種類は複数ある。
今回はルーレット、プレーヤーは赤か黒を選び当たれば買い、つまりは勝ち、負ければ売りってことだ」

澪「勝ち負けはわかりますけど……買いとか売りって…?」

遠藤「挑んだ方は自分の決めた条件をカジノ側に買わせることが出来る。つまり田井中の場合借金の権利、5000万をカジノ側に買わしに行った……!」

澪「なっ……!」

律が……そんな大胆な事を。
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:40:09.84 ID:56zTZ7GAO
遠藤「逆に売り……これはその買いに対して見合ったものじゃなけりゃまず通らないんだが……今回の場合は田井中の身柄だ」

澪「勝てば5000万が白紙、負けたら5000万で律が店側に買われるってことですか……?」

遠藤「ククク……そんな甘くねぇよ……この世の中。売り、つまり負けたらただ売られるだけっ……! 店側はタダで田井中を得る……!
それが売買ゲーム……! 負ければ終わりのデスゲーム……!
まあこれぐらいは当然だよな……そもそも何も持ってないスカンピンが5000万を得ようとしたらこれぐらいのリスクは当たり前……」
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:41:23.55 ID:56zTZ7GAO
澪「それに律は……」

遠藤「ああ……負けた。そして今やつの身柄は帝愛が預かってる」

澪「帝愛ってあの?」

遠藤「日本でも三本の指に入るトップ企業……あの帝愛だ」

澪「何でそんな大会社が……?」

遠藤「帝愛も一枚岩じゃない。色々な派閥やビジネスを介してデカく。裏カジノも人身売買もその一環さ」

澪「……律は、無事なんですか?」

遠藤「今のところはな。お前さんの返答次第じゃ死ぬよりも辛い目に会うかも……だが」

澪「くっ……私にどうしろって言うんですか!?
5000万なんて大金はらえるわけ……あっ……!」

だからこいつは長々とこんな説明を……。
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:42:30.35 ID:56zTZ7GAO
遠藤「ククク……気付いたか……?」

澪「……私にも挑戦しろって言うんでしょう……? その売買ゲームに」

遠藤「ご名答。だがお前にはもっといい話を持って来た……!」

澪「いい話……?」

遠藤「登り詰めれば5000万どころじゃない…億って金も掴める特別な売買ゲームだ」

澪「……」

遠藤「そう渋い顔するな。リスクが同じなら見返りはデカい方がいいだろう?
それにあのカジノは会員制で30万……今すぐお前に用意出来るのか?」

澪「それは……」

遠藤「それに比べこっちは参加無料、完璧無料だ。体一つで乗り込める」
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:43:26.04 ID:56zTZ7GAO
澪「……」

遠藤「勿論参加は強制じゃない。今のお前の借金は田井中がお前を担保にして借りた30万だけだからな。こっちとしてはそれさえ払ってくれればいい……残りの金は嫁の方にタカるさ」

澪「30万……」

学生からすれば30万でも十分な高なのだが数千万単位の話をした後ではこれも霞んで見える。

遠藤「まあおいそれと決められるもんじゃねぇよな……下手すりゃ自分も売却だ……」

澪「っ……」

5000万も稼げるギャンブル……裏返せばそれほど過酷と言うことだろう。
負ければ売却……そうなれば律と一緒に奈落行きだろう……。

それでも……。
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:44:12.99 ID:56zTZ7GAO
澪「なんで……こんな話をわざわざ持ってきたんですか?」

言ってみればおかしな話だ。私をそこに招待したとして得られる金がそこまで莫大だとは思えない。
それにこの人は参加は自由と公言している。

来なければ招待もクソもないだろう。

遠藤「ククク……今回は特別だ。田井中の勇気に免じてのチャンス……ってところか」

澪「……」

遠藤「お前がもし5000万をうちに返せば田井中の身柄も返すよう言ってある」

澪「……じゃあ返せばいいのはその5000万だけですね?」

遠藤「ああ。田井中は売買ゲームに参加する参加賞ってとこか。
ククク……金の出てこない巣をつつくよりお前さんに賭けてみたくてな」
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:46:26.45 ID:56zTZ7GAO
澪「……わかりました」

遠藤「おおっ、参加してくれるか!」

そうにこやかに言うと似合わない笑顔のままペンを取り、ファミレスのアンケート用紙の裏に何やら書き列ねている。

遠藤「これが日時と場所だ。遅れるなよ?」

私は、差し出された紙を無言で受け取った────


──────

澪「スターサイドホテル完成記念式典……か」

表向きは、だろうな。
世間に告知されているオープン日よりも一週間は早い日にちだった。

澪「待ってろよ……律」

ちゃんと会って、それからいっぱい文句言ってやらなきゃ気がすまない。

一週間後に控えた売買ゲーム……それまでにやらなきゃいけないことは山ほどある。

私に今ある気持ちは、間違いなく不安だけじゃなかった。

渇望していたものが、すぐ側に迫っている悦びも、確かに胸の中にはあったのかもしれない。
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:48:08.39 ID:56zTZ7GAO
某日 夜9:00 スターサイドホテル前────

澪「ここか……」

スターサイドホテルと言えばちょっと前に作業員の転落死が新聞の紙面に乗っていたっけ。
あんな大きな事件だったのに紙面じゃかなり小さかったのが今となって理由が浮き彫りになる……。

おそらく前にもこんな頭のおかしいギャンブルを行なったのだろう……。

黒服「」

澪「あ、あのぉ〜……」

黒服「名前は」

澪「あ、秋山澪です」

黒服「……お前が最後だ。これをつけて中に入って説明を待て」

そう言われて渡されたのは143と入ったゼッケンだった。
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:48:56.36 ID:56zTZ7GAO
中に入ると広々としたエントランスに……

人、人、人っ……!

おそらくこの売買ゲームに参加する参加者、143名が犇めく。

「絶対勝つぞぉ……勝つんだぁっ」

「神様アアアアアッ」

「ふっ……どうやらエスポワール組はいないようだな」


などと一様不乱にことを述べている。

澪「(さすがに女の人は私だけかな……)」

しかし、澪の予想に反して一人……支柱にもたれ掛かってただその時を待つものがいた。

和「……」

澪「(あれ……もしかして!)」
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:50:36.91 ID:56zTZ7GAO
澪「和! 和じゃないか!」

和「っ!? 澪……? 」

澪「まさかこんなところで会うなんて! 奇遇というか……あはは」

和「……あなた、わかってないわね」

澪「えっ……?」

澪「あっ」

ここで目に入る、和のゼッケンの番号、一番を。

和「理由は聞かないわ……けど遊びに来てるじゃないのよ」

澪「うん……」

和「私は……唯の為にも勝たなきゃならない……絶対に」

澪「えっ?」

和「何でもないわ。いくら知り合いでも久しぶりの再会でもここじゃ敵同士よ。それを覚えて起きなさい」

澪「和……」


「えーそれでは説明を始めさせて頂きます」
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:51:22.32 ID:56zTZ7GAO
「その前に自己紹介を。私このホテルを任された黒崎と言うものです。以後お見お知りを」

黒崎「説明は一回しかございませんので良くお聞きになってください」

黒崎「当ホテルのゲーム、売買ゲームは自らを賭けて行なってもらうゲームなのはもう皆様ご存知でしょう」

「「「……」」」

澪「(驚きがない……ってことは紹介者から先に話されたのか。それを承知しても尚参加するってことは……ここに集まってるのは100や200の借金で来てる人達じゃないってことか……)」

黒崎「簡単に言えばただこのホテルを登り、最上階のスイートルームに来てもらえればゲームはクリアです」

澪「(たったそれだけ……?)」
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:52:13.42 ID:56zTZ7GAO
「それだけで借金はチャラなのか!?」

黒崎「いえいえ、最上階はただの換金所、換金するためには景品が必要でしょう?」

「どういうことだ!?」

黒崎「このホテルは後一週間もすれば一般の方達に来ていただく場所……そこを君達の為にあれこれ改造して登りにくくするなんて真似は出来ません。
よってパチンコ屋の様なシステムにさせて頂きました」

「つまり……?」

黒崎「このホテルの中には様々なギャンブルがご用意されています。そこに入り支配人と勝負をし、勝てばこのリングがもらえます」

澪「(リング……?)」

黒崎「これを頂上で換金するシステムです」
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:55:19.08 ID:56zTZ7GAO
黒崎「持てる上限はございません。この銀のリングが1つ1000万、金のリングが1つ2000万で買い取らせて頂きます。
ただし一回参加し、勝たれたギャンブルは二度と参加出来ませんのであしからず」

澪「(つまり私の場合5000万に届くリングを得てから最上階に行けばいいのか……)」

「おい! これって1億も夢じゃないってことか!?」

「いやいや金のリング10個で2億だぜ? ギャンブルがいくつあるかしんねーけどよ!」

騒ぎ立つエントランス、しかし

黒崎「なお、一度でも敗北した場合、こちら側との売買成立となり、あなた達の身柄は確保、こちら側の自由になりますのでご了承ください」

それを聞いた瞬間、鎮火────

さっきの勢いはどこへ行ったのか、会場は静けさに包まれている。

澪「(欲張って次に次に行けば台無し……か)」
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:56:12.41 ID:56zTZ7GAO
黒崎「説明は以上となります。尚、リングの強奪等を避けるためホテル内には至るところに監視カメラが設置、その様な行為に及んだものは即売買が成立するのでご了承ください」

「……」

黒崎「制限時間はこれより6時間。では、良い時間をお過ごしになってください」

一礼し、即席に用意された壇上から黒崎が去ると、いよいよ始まる、売買ゲーム。

だが、一同どうしていいのかわからず、ただ呆然としたり、キョロキョロしたりするものばかりだった。

その中でいの一番にギャンブルを始めた者がいた、

和「……やるわ、これ」

真鍋和──

黒服「さようで」

唯一エントランスにあったギャンブル、その名も……。

黒服「エレベーターくじ引きにようこそ」
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:56:57.07 ID:56zTZ7GAO
黒服「ルールは簡単。このホテルのエントランスにあるエレベーターの数は7つ。その内の4つが正解、3つはハズレ、どこに乗るのかはこのくじで決めてもらう。
成功すれば銀のリング1つ。
ハズレはその降りた先に俺の仲間が待ち構えていて力ずくで強制ログアウトだ」

和の前にある横に綺麗に並んだ10本の線。

和「……7つのエレベーターなのに10本?」

黒服「エレベーターに乗れない残念賞もある。ちなみに場所が決定してからも乗る乗らないはギリギリまで本人が決めていい。ただ、くじを引けるのはこの一回のみだ」

和「ふ〜ん……」

澪「先に上の階を見て、黒服の人がどこにいるか確認してからやれば……」

和「澪、あなた聞いて……」
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:57:37.68 ID:56zTZ7GAO
黒服「ははは、いいとこに目をつけるな。だが仲間が配備されるのは君達が乗って10階を押す直前だ。
当然通しなども防ぐ為エレベーターの扉は閉めてから、だがね」

澪「なるほど……」

和「澪も参加するの? お勧めはしないわよ……これ。
くじ引きで場所が決まるんだから運に身を任せる競馬や宝くじと一緒よ。確率性がないわ」

澪「でも、和は参加するんだろ?」

和「ええ。とりあえずくじ引きをしてどこの場所に当たるか確認だけ……ね」

澪「……じゃあ私も参加するよ」

和「言っとくけど……どうなっても責任は取れないわよ」

澪「わかってる」

黒服「お二人様参加ですね?」

和澪「はい」
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:59:09.53 ID:56zTZ7GAO
その澪達がそのギャンブルを受けると宣言した途端、他にも何人かがそれに便乗する形で参加。

このゲームの参加者で唯一女性の二人が参加した、という何の根拠もない印象に導かれた者達8名と、澪、和が加わった計10名でエレベーターくじ引きは開始されることとなった。

黒服「参加した順番でどうぞ」

和「なら私からね、一番左で」

黒服「まだ引き抜かないでください。当たりが出きったらくじ引きの楽しさがないのでね、一斉にでお願いしますよ」

和「わかったわ」

澪「次は私か……じゃあ……」

澪「(和の隣だけは駄目だな……恐らく和は確信があってあそこを選んだ。なら……)」

澪「左から三番目で」
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 23:59:52.11 ID:56zTZ7GAO
決まる、乗るエレベーターを決めるくじ引き。

黒服「では、引いてください」

一様に紐を引っ張ると、その先には紙が結びつけられていた。

黒服「紙がついてる方は当たりです。エレベーターに¨乗れる権利¨が与えられました」

和「……」

澪「(和は当たりか……そして、私も)」

黒服「こちらに見えます東側のエレベーター、左から、A、B、正面玄関の奥にあるのが左からC、D、E、ここの正面にある西側のエレベーターが左からF、Gとなっております。
その紙に書いてあるエレベーターにしか乗る権利はありません。乗る乗らないは自由です。
残り5分以内に決めてください。では、計測開始」
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/07(木) 00:00:43.24 ID:pFllPlfAO
和「……」

澪「和も当たったんだ。どこ?」

和「Bね。この隣」

澪「私はCだったよ」

和「……そう」

澪「……どうするの? 私は……」

和「澪、さっきも言ったでしょ。ここじゃ敵同士だって。余計なものを抱えてる余裕はないの」

澪「和……」

和「ごめんなさい。私もいっぱいいっぱいなのよ。それじゃあね……お互い生きていたら最上階で会いましょう」

澪「乗らないの?」

和「ええ。多分ハズレだから。そしてあなたのは多分……いえ、自分で考えて決めなさい」

そう言うと和は人混みに消えて行った……。
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/07(木) 00:02:00.21 ID:pFllPlfAO
黒服「時間です。乗りますか? 乗りませんか?」

澪「……乗ります」

結局乗らなかったのは和、一人。
残りのくじ引き当選者は全員が自分が当たりだと信じてエレベーターに乗り込んだ。

「いいよな〜お前当たりで。俺なんて乗る権利すらなかったんだかよ。4/7で1000万ならかなりの確率だろ。
いいな〜おい」

「へへ、悪いな。お前が女の子達に挟まれたいとか言って二番目選ぶから悪いんだよ」

「ちっ……二兎追うもの一兎も得ずかよ」

澪「(これから売買されるかもしれないのに余裕だな……負けたことをまるで考えていない、典型的なギャンブラーか)」

黒服「では、閉めます」

澪「ふふ」

私も、人のことは言えないか。
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/07(木) 00:02:36.07 ID:pFllPlfAO
黒服「では、10のボタンを押してください。尚、10階以外に停止した場合即失格、即売買となりますのでご注意を」

私は言われた通り10のボタンを押す。しばらくするとエレベーター特有の上昇感が体に伝わる。

2...4...6...8...10

到着。

このまま開けずに待っていてもこの先に黒服がいるなら無理やりにでもこじ開けて、私と律をバイバイさせてくるだろう。

でも、エレベーターの中は穏やかなぐらい静けさを保ったままだった。

私一人が、今、この中で生きている。

その実感を噛み締めながら……外に出た。

和「」

澪「っっっっっ!!!?」

和「私よ」

澪「なんだ和か……びっくりさせないでよ」

和「あの黒服と間違えられるなんて心外ね」

澪「どうしたの?」

和「……ちょっとした確認と、1000万獲得のお祝いにね」
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/07(木) 00:03:50.38 ID:pFllPlfAO
澪「じゃあ……!」

白服「おめでとうございます」

差し出されたのは銀のリング。

澪「あ、ありがとうございます」

それを首にかけるとようやく一息つけた。

和「しかし、お隣は悲惨ね」

「離せ!!! 嫌だぁぁぁっ!!! 死にたくないっ!!! たすけ……ああああああっ」

黒服数人に囲まれなすすべなく運ばれていくさっきの男。

和「あれが売買成立、負けた者の末路よ……」

澪「……」

和「これからどうなるのかは知らないけど……多分良くて借金の額を返すまでか……悪ければ一生奴隷の様な暮らしでしょうね」

和「私達も負ければああなる、いえ、女としての尊厳なんて吹き飛ぶぐらいおぞましいことをさせられるわ……」

澪「……」
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/07(木) 00:04:27.44 ID:pFllPlfAO
和「悪いことは言わないわ。それを換金してここから出」

澪「まだ……無理なんだ」

和「ほんとにわかってるの!? 失敗すれば死ぬと同じなのよ!? 自分の命より大切なものなんて……」

澪「あるよ、私には」

和「……まさか」

澪「うん……。律を取り戻す為ならどんな怖くたって……どんなに危なくったって……私は渡るよ」

和「澪……やっぱりあなた変わってないわね」

澪「そうかな?」

和「ええ」

和「さっきの撤回するわ。自分の命より大切なもの……確かにあるわよね」

澪「和……」
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/07(木) 00:05:20.73 ID:pFllPlfAO
和「協力したいのは山々だけど、ここはさっきの以外完全一人用ギャンブルばっかりみたい」

澪「もう見回って来たの?」

和「ある程度はね。だから一回やったギャンブルのゲームの内容くらいしか教え合えないわね」

澪「それで十分だよ。何より私は和と敵同士なんて……嫌だから」

和「澪……。そうね、こんな地獄の底で会ったのも何かの縁だし、協力して行きましょう」

澪「うん!」

和「……じゃあ行きましょうか」

澪「そうだな」

変わってない、か。

残念だよ、和。

和はすっかり変わったみたいで。
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/07(木) 00:06:05.69 ID:pFllPlfAO
澪「なあ和、さっきのエレベーターくじ引き、なんで自分はハズレだってわかったんだ?」

和「言ったでしょ? 何となくよ」

澪「そっか……」

澪「(嘘が下手だな、和は)」

さっきのエレベーターくじ引き、あれはどう考えても運なんかじゃない。
仕組まれていた。

引いた順番は関係ない、問題は引いた場所と当たりの有無、そして何故7つのエレベーターに対して10本のくじ引きがあったか……それらを考えたら必然的に浮かび上がる。
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/07(木) 00:07:38.18 ID:pFllPlfAO
まず引いた場所がこう

12345678910
和男澪?男?????

さっき話していた私と和に挟まれてくじ引きを引いた男は左から二番目、その男と話していた男は確か左から五番目のくじ引きを引いていた。

そして結果はこう。

12345678910
○×○×○?????
B C D?????

五番目の男はくじ引きでは当たりを引いたが場所はD、そして売買された。
こうして見れば明らかだ。
つまりあのくじ引きは引いたくじ引きが当たりの場所のエレベーター=当たりになっていたと見て間違いない。

私の隣のくじを引いた人はハズレだったことを見てもほぼ間違いないないだろう。
だから和はくじ引きで当たりを引きながらもBが出た瞬間、勝負から降りたのだ。隣のくじ引きがハズレ、つまりBは売買とわかっていたんだ。
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/07(木) 00:12:50.31 ID:pFllPlfAO
そう、この売買ゲームはギャンブルに見せ掛けただけの……言い換えるならギャンブルゲーム……!

確率などではなく必然で辿り着ける仕様になっているのだ。

それを和は私に隠している。

多分和も感じているんだ、この先こんな簡単に行くわけない、と。
だから残している、手札を。
自分の有能さを見せない、彼女らしいと言えば彼女らしいがそこに優しさはもうない。

悪いな、和。

さっき和は私のこと変わってないって言ったけど……そんなことないんだ。

澪「……」

外側は高校の時の私で、

裏側は大学で培われた私を、

この二面性を利用してここを突破する……律の為に、他の誰を犠牲にしても。
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/07(木) 00:14:52.10 ID:pFllPlfAO
落ちる心配もないので今日はこの辺りで

エレベーターくじ引きの仕掛けがイマイチわからないって人がいたら詳しく解説なんかもしていきたいと思います。

一週間以内には完結させるよう頑張ります!
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/07(木) 00:19:41.85 ID:sOT6pmcLo

楽しみに待ってる
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) :2011/07/07(木) 00:24:22.28 ID:s6yXcXB90
おつ
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/07(木) 00:48:41.14 ID:7CvAD81zo
おつ
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/07(木) 02:16:00.27 ID:KaoT6WhWP
1→○→B→2→×
2→×
3→○→C→3→○
4→×
5→○→D→4→×

ってことでいいのかしら?
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/07(木) 20:59:10.31 ID:7CvAD81zo
つまり、数字であたりのクジとアルファベットの順番が連動してるってことかな

1=Aとか3=C

クジであたりでも、そのあたりくじの順番のアルファベットじゃなければアウトみたいな
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/09(土) 06:24:17.59 ID:o4YKvoJIO


しかし唯の為なら和より憂が参加しそうだがな
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/19(火) 19:11:23.87 ID:jS7hIzfDO
続かないのか…
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/19(火) 19:13:21.71 ID:MeZINdYio
一週間以内に完結させえるんじゃないのか
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/21(木) 16:55:14.48 ID:wBJhTO5AO
和「さすがオープン前のホテルだけあって綺麗ね。そこに集まったのが借金まみれの奴らって言うのはかなり皮肉だけど」

澪「うん……」

和「こんな綺麗なホテルを汚す理由……。ちょっと考えてみたのよ……あっち側のメリットってやつを」

澪「……私達を借金の担保代わりにしたいから……じゃないの?」

和「それが七割ぐらいでしょうね。数千万に利子が乗った借金なんて普通にじゃ返せないもの。
けど考えてみて。さっき澪がやったギャンブルは4/7で1000万、仮にと言えど4000万は持って行かれてるのよ?」

澪「そっか……そのままこれを持って最上階に行く人だっているかもしれない」
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/21(木) 16:57:47.85 ID:wBJhTO5AO
和「そう。そうすると主催者側は単純に1000万を失うだけ……。元々売買ゲームなんて銘打ってはいるけど負けたら主催者側はタダで人材を得られはするもののその参加者の借金は丸残り。
参加者をタダで買い取ったんだからその参加者の家族を取り立てることは出来るけど手間も費用もかなりかかるわ」

澪「……つまりどういうこと?」

和「簡単に言えばこのゲーム……私達が負けること前提なのよ」

澪「でもっ……さっき和が言ったみたいにこれを換金して出ていく人もいるんじゃ……」

和「……じゃあ聞くけど澪、あなたの目標額はいくら?」
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/21(木) 17:00:08.59 ID:wBJhTO5AO
澪「……5000万」

和「私と同じね。これも推測でしかないけど……多分ここに連れて来られた人達の借金の額は1000や2000じゃないと思う……。
最低でも3000……銀のリングをもらえるギャンブル三回か銀と金のを一回づつか……」

澪「主催者側はその二回か三回で私達を売買させる自信があるってこと……?」

和「その可能性は高いわ」

澪「ってことはもしかして……イカサマ……?」

和「私も最初はそう思ったけど……幸か不幸かその心配は薄いわ」

澪「どうして……?」

和「ここに参加するって決めた時、何か書かされなかった?」

澪「そう言えば何か色々書いた紙を渡したような……」
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/21(木) 17:16:23.58 ID:wBJhTO5AO
和「私も書いたわ。ここを紹介してもらった人に書けって言われてね」

澪「それが何か関係あるの?」

和「さっき七割は私達の借金を私達で回収するためって言ったじゃない?」

澪「うん……」

和「残り三割……いえ、もしかしたらあっちがメインかもしれないわね」

澪「……?」

和「多分……私達は……!」

賭けられている────

その生存を────

カメラの奥、奥の奥ゥ!
暗闇の中に浮かぶいくつものモニター!
それは143個に分けられおり、参加者一人一人が伺える様になっている!
中には既に砂嵐と化しているモニターもある、つまりは失格者!

その隣には巨大なモニター、1〜143番人気までありそれぞれオッズつけされている!
横にはプロフィール、好きなものから嫌いなものまで連々と書きつられいる!

これは賭けるものが一回のゲームを受けるまで変動し、ゲームが始まればストップ、その者が勝てば払い戻し、負ければ全額没収!

澪達の生存を賭けたギャンブルを、賭ける!!!

そんなことが許された人物達は、当然のごとく持っている……!

金!金!金!!!

そんなVIPのみが許された場所で賭けたは行われていた!
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/21(木) 17:21:19.05 ID:wBJhTO5AO
「お嬢様。どうぞ」

「ありがとう斎藤」

「どうですか? 彼女は」

「銀のリングを1つ手に入れたわ。でも偶然と見られて倍率はかなり低いわね。和ちゃんの方はリングをとってもいないのに逆にうなぎ登りよ。今六番人気かしら」

斎藤「さようで」

「次も彼女に5億。いいわね?」

斎藤「はっ、かしこまりました」

「ふふ……りっちゃんの為に頑張る澪ちゃん……素敵ね」

「でもどこまで持つかしら……? この地獄で」
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/21(木) 17:29:01.94 ID:wBJhTO5AO
────

和「つまり私達の渡した紙は詳細データを取るためよ。それが倍率に関わって来るものもあるだろうし。ゼッケンもその為に配られたんだわ」

澪「そんな……」

和「でも逆に言えばチャンスよ。イカサマなんてすれば当然賭けている富豪達は反発する……それは主催者側としても好ましくないはず」

和「それでももし仕掛けて来るとしたら……それはそのイカサマを見破る為のギャンブル……ってことになるわね」

澪「……」

和「まあ私達に出来ることは1つだけ。ギャンブルに勝ってここを出るとこ、それだけよ」

澪「……うんっ!」

和「探しましょう……私達が勝てるギャンブルを……!」
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/21(木) 17:38:44.20 ID:wBJhTO5AO
それから二人は十一階、十二階、十三階を歩き、様々なギャンブルの名の部屋を見るも参加はせず。

エレベーターくじ引きのように誰からでも見えるギャンブルはほとんどなく、大体は入り口の上にそのギャンブルの名前のプレートが書かれた部屋がいくつもある、という様になっている。

参加者は、自分が挑戦したいギャンブルを探し、ノック、あちらから声が聞こえて来たら入室、扉を閉めた瞬間ギャンブルスタートとなる取り決め!


和「……50階もあるのにこの辺りにやけに集中してるわね」

澪「うん……この三階だけで5個はあったかな」

和「難易度はこの銀か金のプレートでわかるってわけね……」

澪「和は……どうするの? 受けるギャンブル……」

和「……銀を五回か金を挟むかってこと?」

澪「うん……」
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/21(木) 18:04:18.65 ID:wBJhTO5AO
和「当然金額的には金を受けたいとこだけど……逆にそれがあっちの狙いかもしれないわ」

和「エントランスにあった銀のギャンブルを見た感じじゃかなり優しいみたいだし、受けるとしたら回数を考えても銀五回の方がいいかもしれないわね……」

澪「……(ふぅん……」

和「難易度がわからない限り危険なことは避けたいわ。だから私は銀のギャンブルを……」


ひいいいいいい────

和「!?」
澪「!?」

澪達がいるすぐ近くの部屋から呻き声をあげながら出てきた男!

顔は憔悴しきっており、唇は紫、額には大量の汗!

まるで銃撃戦でもやって来たような顔つき!!!

その男は一瞬その部屋から生還して来たかのように見えた、しかし!!!

黒服「抑えろっ……!!! そいつは失格者だ……!!!」

すぐさま浮き彫りになるっ……!

地獄からの脱出に失敗したことが……!

「は、離せぇぇぇぇぇぇ!!!!! 死にたくねぇぇぇぇ!!! やめろぉぉぉぉぉ!!!」ガタンッ

澪「(何か落とした……?)」

──連行。

澪は、その男が落としたものを拾い挙げると同時に、その男が出てきた部屋の名前を確認する。

an exchange of shots

澪「撃ち合い……」

第二のギャンブル 撃ち合い
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/21(木) 18:51:20.71 ID:wBJhTO5AO
澪「────!」

澪「…………」

澪「和……私このギャンブルにするよ」

和「澪……? !? あんたそれ……!」

そのプレートは金、勝てば金のリングが貰えるギャンブル!!!

和「悪いことは言わないわ! やめておきなさい!」

澪「……もう決めたから」

コンコン────

躊躇なく、ノック

和「澪っ!!! あんた死ぬわよ!!? 失敗したら死んだも同じなのよ!!? それでもいいの!!?」

澪「大丈夫」

──どうぞ

扉の向こうから声が聞こえ、入室。

澪「絶対勝つから。和も頑張って」

ガチャリ──

扉を閉め、ギャンブルを受諾!!!

撃ち合いへ身を投じる澪。

和「澪……」

和「あんな怖がりだった澪が撃ち合いなんて部屋に行くなんて……」

和「変わったのはお互い様なのかもしれないわね……」

扉にそう話しかけるとその場を後にする和。

和「確認しようにも……多分もう……二度と会うことはないでしょうけど」
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/21(木) 19:05:34.76 ID:wBJhTO5AO
「やあ。ようこそ、撃ち合いへ」

澪「……」

中には机と椅子が一つづつ、向き合って置かれている。
片方にはこの部屋の支配人が既に座っており、にこやかにこちらを見ている。

机には何やら手元を隠すような仕切りが施されているようだった。

「女の子が参加しているのは知っていたけど、まさかこんな可愛いい子だとはね。ここに来てくれる何てラッキーだな。
そこに座りなよ、ゲームの説明をするから」

澪「……」

白髪の男に従い、向かい側の椅子に腰を掛ける。
座ってみると、やはり机に施された仕切りが気になる。

丁度私の肩より少し下までを被っている仕切り、一体これは何のためだろう。

「あ〜残念。せっかくの眼福が隠れちゃった」

澪「……早く説明を」

「おっとそうだった。まあお互いまずは自己紹介と行こうよ。僕の名前は白(ハク)、君は?」

澪「秋山澪……」

白「そっちの子か〜。え〜っと……確か怖がりで血とか見るの無理〜って子だよね?」

澪「……」

白「あれ? それにしては随分冷静っぽいんだけどな〜……」

白「今から血を大量に見るかもしれないって言うのに」ニコニコ

澪「ぐっ……!」
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/21(木) 19:18:56.85 ID:wBJhTO5AO
白「な〜んてね。女の子は希少価値があるから[ピーーー]なって言われてるんだ〜残念!」

澪「(こいつ……!)」

白「じゃあ説明を。おい」

黒服「……はい」

横に立っていた黒服が何やら持って来る。

白と言う男のところに何かを置くと、こちらにもそれを持って来た。

澪「これって……」

拳銃、真っ黒な拳銃が二丁。

確かドラマで警察官の人がよく持ってる拳銃がこんなやつだった気がする……。

黒服「こちらもどうぞ」

そう言うと黒服は机にもう一つ何かを置く。

それは一発の弾。

白「もうわかったかもしれないけど一応説明しとこうか。今からやるのは文字通り撃ち合い……1ターンに支給される弾は一発、それをこの二丁の拳銃どちらかに込め、相手はそのどちらかを選び……引き金を弾くっ……!」

澪「なっ……!」

白「安心しなよ。今回のは麻酔弾だから。死ぬことはないよ……? 君が泣いちゃうぐらいには痛いだろうけどね……!」

澪「っ……!」
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/21(木) 19:20:02.15 ID:wBJhTO5AO
白「な〜んてね。女の子は希少価値があるから殺すなって言われてるんだ〜残念!」

澪「(こいつ……!)」

白「じゃあ説明を。おい」

黒服「……はい」

横に立っていた黒服が何やら持って来る。

白と言う男のところに何かを置くと、こちらにもそれを持って来た。

澪「これって……」

拳銃、真っ黒な拳銃が二丁。

確かドラマで警察官の人がよく持ってる拳銃がこんなやつだった気がする……。

黒服「こちらもどうぞ」

そう言うと黒服は机にもう一つ何かを置く。

それは一発の弾。

白「もうわかったかもしれないけど一応説明しとこうか。今からやるのは文字通り撃ち合い……1ターンに支給される弾は一発、それをこの二丁の拳銃どちらかに込め、相手はそのどちらかを選び……引き金を弾くっ……!」

澪「なっ……!」

白「安心しなよ。今回のは麻酔弾だから。死ぬことはないよ……? 君が泣いちゃうぐらいには痛いだろうけどね……!」

澪「っ……!」
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/21(木) 19:39:32.82 ID:wBJhTO5AO
白「まあ起きた時にはもっと痛いことになるから……どっちにしろ一緒だけどねぇ」

澪「……」

白「ルールは簡単。この弾の入った拳銃を相手に弾かせれば勝ち。それだけさ」

白「撃つ順番はターン制。先攻後攻は……そうだな、コインの裏表ででも決めようか。それでいいかな?」

静かに頷く。

白「黒服さん、頼むよ」

黒服「はい……」

黒服が100円玉を取り出すと、「絵柄の方が表です」と前もって確認、コイントス……。

黒服「どちらに?」

白「レディーファースト、先にどうぞ澪ちゃん」

澪「じゃあ裏で」

白「じゃあ僕は表だ」

黒服「……表です。白様から選択を」

白「あちゃ〜……悪いね〜澪ちゃん。じゃあ先攻で」

澪「後攻……」

いよいよ始まる……金のリングと自らの生存を賭けたギャンブルが……!
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/21(木) 20:01:52.93 ID:OlAqrCTuo
おお!来てた
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/21(木) 20:54:29.58 ID:wBJhTO5AO
弾が出る確率は1/2……ここで決まってしまう可能性もある……。

白「さ〜て、どちらにしようかな〜と」

仕切りの奥で弾を込める仕草を見せる白。

白「こっちかな? やっぱこっちかな〜?」

澪「……どっちを選んでも一緒なのに……」ボソ

白「ふふ、ふふふ。澪ちゃん……それはちょっと違うかな」

澪「えっ……?」

白「人は50%って言われると、不思議ともう何も見なくなる……ただその二つに一つを50%と言う数字に身を任せて選ぶ……おかしなもんだよね」

澪「……」

白「ま、いいや。こっちにしよっと」

カチャリという音が聞こえ、白が黒服に拳銃を二丁渡す。

白「そのどちらでもいい、選んで引き金を引いて見せてくれ。弾が出なければ君の勝ちだ」

黒服「どうぞ」

ゴトリと鉛めいた音を立てて置かれたのは二丁の黒い拳銃。
このどちらかには白が込めた弾が入っており、私はこれを回避することで次は相手にこの選択を迫れる。

言うなれば野球のようなもの、攻守がはっきりとした撃ち合い。

私は、このどちらかを撃って見せなければならない。
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/21(木) 21:25:06.42 ID:wBJhTO5AO
白「言っとくけど、見えないからって弾を抜くのはルール違反だからね? ま、そんなことしても音でわかるけど」

澪「……一ついいですか?」

白「ふふ、憎い借金取りが持って来たギャンブルのゲームの支配人に敬語なんてね。君はいい子だな〜澪ちゃんは。
で? なんだい?」

澪「……ここはそっちが支配してる場所、そんな中で公平なギャンブルなんて出来るとは思えない」

白「ま、そうなるよね。でもそこは信じてもらうしかないよ。安心して、そこにいる黒服さんはイカサマしようもんなら僕だって連れていかれる。
そういう取り決めなんだ」

澪「……」

なるほど、和の言ってたことは当たってたってことか。
なら下手なことは出来ないだろう……。

澪「……わかりました」

白「一応制限時間があるから。5分以内に選んで引き金を引いて見せてくれ」

澪「……じゃあこっちを」

白「おっ? 早いね〜。いいの? そんな簡単に選んじゃって? 失敗して弾が出たら澪ちゃんの人生終わっちゃうよ?」

ニコニコとそう告げる男を見て、内心でほくそ笑む。

引くのはお前だよ────

カチリッ────

澪「」ニヤッ

その時、私は確かに微笑んでいた。
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/21(木) 21:39:28.62 ID:wBJhTO5AO
白「へ〜……やるね。ま、50%だからね。1.2回なら避けられても不思議はないか」

澪「次は私のターンだな」

空砲を確認したと同時に黒服がやってきて、私の持っていた二丁の拳銃を回収。
そして新たな黒い拳銃を二丁用意してきた。

白「さ、次は君が弾を込める番だ。当たることを祈りなよ」

澪「……」

カチャリ────

白「ふふ、思ったよりサバサバした性格なのかな? それとも決断力があるのか……怖がりな澪ちゃんはどこに行ったのかな?」

澪「……どうぞ」

黒服「はい」

弾を込めるところは黒服の人にも見えていない……ここだけは私だけが知っている事実。
正解は引き金によってのみ明かされる……。

引いた方の敗北と言う名の事実と共に……。

黒服「どうぞ」

白「サンキュー」

持って来られた拳銃を見るや否や、白は驚くべきことを告げた。

白「澪ちゃんが弾を込めるまでに左を見た回数6、右は3。肩の動き、視線の落とし方からして拳銃は弾を込める方にしか触っていない……」

澪「なっ……!」

白「黒服の人は僕の方を向いたまま澪ちゃんの拳銃を回収していた……ならここに持って来た時に黒服さんが左手に持っていた拳銃は澪ちゃんの机の上の左にあった公算大……」

澪「っ……!」

こいつ、悪魔か……!
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/21(木) 21:51:21.09 ID:oKsKdGq50
相手に向けてうてばいいんじゃね?
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/21(木) 21:54:30.09 ID:wBJhTO5AO
白「そして極めつけは……よっと」

澪「なにを……!?」

黒の拳銃を光に当て何やらしている。

白「フフフ……指紋だよ。黒い拳銃だからね、わかりやすいんだ。ほーら、弾装の部分に君の可愛いい指紋がたっぷりついてるよ……ククク……!」

澪「なっ……そんな……」

白「言ったよね〜僕? 人は何故か50%と言われるとその確率に身を任せるって……」

白「こうやって小さなヒントをたどって行けば……99対1にもなるのにさ」

白「フフッ、こっちにしよっと」

迷わず選ぶと白は引き金を引く……。

カチリッ──

鉄が動いただけの渇いた音が、次の私の死を予感させた。

白「さっ、次は澪ちゃんの番だよ〜?」ニコニコ

この男……悪魔じみている……。

発想の外……確率外を突いてきたっ……!

白「僕は澪ちゃんと違って優柔不断だから〜いっぱいベタベタ触っちゃうんだ〜。わかるかな〜? なんて」

澪「……」

そうか、これは……。

確率を埋めるゲーム……!

そしてそれを如何にして引かないかという勝負……!
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/21(木) 22:08:31.39 ID:wBJhTO5AO
白「安心してよ澪ちゃん……もうこれで終わりだから、さ。フフフ……!」

澪「っ!!!」

澪「あのっ!!」

黒服「はい」

澪「あの黒い拳銃じゃないやつにして欲しいんですけど……」

白「ふふ、今更そんなことしても無駄なのに……ま、いいんじゃない?」

黒服「了解しました」

黒服が奥へ行くと、現れたのは先ほどとは違う白銀の拳銃。

白「おっ!? もしかしてコルト? そんなもんでこめかみに撃ち込んで大丈夫? 死んじゃわない?」

黒服「このゲーム専用に作られておりますので、大丈夫かと」

白「ならいいんだけどさ! 澪ちゃんに死なれても困るしね〜。ああ別の意味では死んでもらわないと困るんだけど」

澪「……次からこの拳銃で勝負ってことでいいですね?」

白「わかったよ。そこまで指紋を気にするかな〜普通。僕みたいにベタベタ触ればわかんないと思うんだけど」

澪「……選択を」

白「全く急かすね〜君は。じゃあこっち」

カチャリ──

白「はいこれ澪ちゃんに」

黒服に手渡しする白。先程の私のミスを全て潰している……。
垣根なしに50%勝負と言うわけか……。

黒服「……どうぞ」

机の上に置かれる二丁の拳銃……。

澪「……」
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/21(木) 22:17:25.68 ID:wBJhTO5AO
二ターン目、同じ50%という確率の中で行われていた筈のゲームで……何故か私が圧倒的に追い込まれているかのような感覚……。

確率支配ゲーム、とでも言おうか……。

何故だろう……このまま選択すれば、私は間違いなく自分を撃ってしまう……そんな気がする。

白「選択を」

澪「……」

それでも、選ぶしかない。

50%を。

澪「……」

仕切りの中、私しか選べない中、私は一つを選び出し……それをこめかみに当てる。

白「じゃあね、澪ちゃん……楽しかったよ」

ヒラヒラと手を振る、何か確信でもあるのだろうか……。

私はただ、黙ってその白銀の拳銃の引き金を引いた────
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/21(木) 22:26:46.63 ID:wBJhTO5AO
カチリッ────

白「なっ……!」

白の顔が驚きに歪む。

そう、弾は出なかった。

私は選ばなかった、50%を。

澪「……さ、次はあなたの番ですよ?」ニコリ

黒服にさっきの拳銃を渡し、今度は撃つ為の拳銃と弾を一発もらう。

カチャリ──

迷わず選択。

澪「お願いします」

黒服「はい」

それを白の元へ。

黒服「白様、どうぞ」

白「バカなっ……! バカなバカなバカなっ……! 出ないわけがないっ……! あり得ないっ……! だってあの拳銃には……!」

澪「両方弾が入ってた────」

白「なっ……!」

澪「そうでしょう?」

白「なんで……?」

澪「私もあなたと同じことをしていたからです」

澪「さ、引き金を引いてください」

澪「弾が入っている確率、50%と50%を……ね?」ニコリ
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/21(木) 22:40:29.52 ID:wBJhTO5AO
白「イカサマだっ……! やつはイカサマをしたぞっ……! 黒服っ……!」

黒服「いえ、私が見ていた範囲で、彼女にイカサマは認められません」

白「な、ならさっきの拳銃を持ってこいっ!!! 両方に弾が入っているはずだっ……!
それか奴を今すぐ身体検査しろっ……!」

黒服「どうあれ彼女は拳銃を選んで引き金を引いた、それでそのターンは終了となります。次は白様、あなたが引く番です。五分以内に引き金を引いて見せてください」

白「ぐっ……!」

白「(バカな……! バカなバカなバカなっ……!
バカっぽい女だと思って軽く捻れると思っていたのに……!!!
この俺が……!!! こんな女にっ……!!!)」

澪「ほら、指紋とかさ、私の動作とか思い出して……? 何かヒントが得られるかもしれないよ?」

半笑いでそう告げる澪。

白「くううっ……!」

黒服「残り1分! さあ、早く!!!」

白「うおおおおおおお!!!!!!!」

白は無造作に拳銃を掴み上げ、こめかみに当て、そのまま引き金を引いた、、、


パァーンッ────と、渇いた音が、澪に勝利を運んできた。
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/21(木) 22:56:21.37 ID:wBJhTO5AO
黒服「どうぞ。金のリングです」

澪「ありがとう」

そのネックレス式リングを首にかけると、澪はまた大人しい雰囲気を取り戻す。

澪「良かった……勝てて」

黒服「……ちょっといいですか?」

澪「は、はいっ」

黒服「色々と気になることがあるんですが……勿論今更何があっても勝ちを取りやめ何かには致しませんから。話してもらえないでしょうか?」

澪「……なら、ちょっとだけ」

黒服「ありがとうございます。じゃあ順を追って。いつから気がついてたんですか?
この支配人必勝のゲームに」

澪「必勝、はどうかな……? 最初の私の攻撃の時、弾をいれてたらわからなかったよ」

黒服「まあキレるものならこのゲームが確率の支配だとすぐにわかるとは思いますが……普通のものならまず気づきませんよ」

澪「それにそうすると必ず指紋が二つについちゃうから最高でも50%でしか勝てる機会がなかった……」

澪「だから私はこれを見て、この部屋に入って、逆に必勝を作り上げた……」

黒服「それは……変えた時の拳銃。それで支配人のを凌いだんですね」
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/21(木) 23:17:20.49 ID:wBJhTO5AO
澪「最初の流れから言うと私は部屋の前でこれを拾った。そしてこのギャンブルを承諾」

澪「ルールを聞きあっちの不正なしでの必勝パターンを考えた場合一回目は抜いてくると思ったんだ。だから一回目は迷わず引いたよ」

黒服「確かに。引き金を引く側が弾を抜くことは禁止されていますが込める方が弾を入れるか入れないかは自由……」

澪「そう。50%二回で運否天賦するより二回目で100%の確実に殺せる方を取った方が勝率は高い」

澪「だから私も一回目は弾を入れなかった。その弾を次に入れる為にね」

黒服「つまり両方とも初めは空撃ちだったってことですか……」

澪「うん。でも見た目上は駆け引きが成り立っていた……」

黒服「二ターン目、支配人は一回目に込めなかった弾と自分からもらった弾を込めて澪さんに渡した……」

澪「そう。このゲーム圧倒的に先攻が有利。もし後攻なら二回も50%を潜らなきゃならない。しかも二回目はノーヒントで。
だから先攻だけは譲るわけには行かなかった……」

澪「だからこのゲームは元々支配人が先攻スタートという設定のゲームなんでしょう?」

黒服「はは、そこまで見破られていたか。支配人に先行を取らすように言われていたんでね。ちょっと細工させてもらったよ」
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/21(木) 23:33:13.48 ID:wBJhTO5AO
澪「普通ならここで私の負けは確定していた……けど私にも確率の外の出来事があった」

黒服「それが拾った拳銃かい?」

澪「うん。この仕切りのおかげでバレずにすんだよ」

黒服「いくら支配人が弾を二発入れたと言っても引き金を引いた、という事実確認しか出来ない自分にはそれを見届けるしかないからね」

澪「三人が三人とも第三者だったからこそ勝てたってことかな……。そして二回目、私は二発弾を入れ、白は引くしかなかった……あなたが味方じゃない限り弾の入っていない拳銃は降ってこないんだから」

黒服「……ということはもしかして勝負は君がその拳銃を手に入れた時から決まって……?」

澪「……しいて言えば、この白銀の拳銃をどうやって引っ張りだすか、それだけかな……私が勝負していたのは」

黒服「っ……!!!」

澪「じゃ、次のギャンブルに行かないと」

ガチャリ──


斎藤「……お嬢様のお友達は化物かもしれませんよ……」

斎藤「次のギャンブル……か。ゲームの言い間違いじゃないのか……?」

斎藤「ギャンブルゲーム……彼女にとって確率などないのかもしれないな……」
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/21(木) 23:44:40.09 ID:wBJhTO5AO
本日はこれにて

>>56>>57
それで正解です。

一週間以内に終わらせるとか言いながらこの体たらくっ……!

モチベーションが上がらないと中々書けませんね……。

でも何とかがんばって完結だけはさせるので感想とか色々もらえたら嬉しいです!

ギャンブルの内容がカイジと零と嘘喰いを混ぜて3で割ったようなやつなのでちょっとわかりにくいかもしれません

簡易的に書くと

澪、拳銃入手

バトル開始ー

相手の先攻! 両方弾なし 相手弾のストック1

澪のターン! 両方弾なし 澪に弾のストック1

相手のターン! ここでさっきの一発を含めた計2発を込め込め(どっち撃っても負け)

澪がここで拾った拳銃(勿論弾は抜いてある)を空撃ち

黒服は拳銃を撃った、と言う事実のみ反応するので支配人が二発入れたとか言っても無駄

澪のターン! 二発弾を入れて勝利!

って感じです

弾を込める為に置いた仕切りが仇となったわけですね
こういうわかれば単純なトリックの勝負が後3.4回あるって感じなのでそれでも良かったら読んでください!

ではまた!
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/21(木) 23:49:04.21 ID:21u0gcPSO

今回も面白かった
続き待ってます
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/21(木) 23:50:55.90 ID:9ZiH9TODO
おつです
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/23(土) 09:45:02.76 ID:LIHXy/8Ao
おーつ
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/02(火) 02:03:48.67 ID:J4QDh1tXo
次はいつごろ来るのだろうか
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/24(水) 03:22:14.63 ID:aH/L5PMDO
まだか
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/10(土) 00:23:00.22 ID:LLJtEGi/0
面白い・・・けど続きがなかなか来ないー
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/17(土) 03:33:02.22 ID:j7CyC0Kbo
圧倒的•••っ!圧倒的なまでの空間制圧能力••••••っ!
化物•••っ、この女、まごうことなき化物••••••っ!!
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/09/23(金) 00:54:53.46 ID:/wewG/K+o
続きマダー?
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/10(月) 14:23:16.25 ID:DPwRlzZIO
続きは無いのか
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/10/24(月) 22:02:32.28 ID:VOzsrM5SO
三ヶ月ルールで依頼出したから
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