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けいおん!っぽいIF物:唯「せ〜の…」 憂和紬律澪「いふおんっ!!」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :いふもの [saga]:2011/07/08(金) 00:08:31.22 ID:I7lrUpaAO

☆:けいおん!を久しぶりに見たら、何やらマターリした物を書きたくなりました。

☆:憂や和以外に、紬律澪が高校前から唯と知り合った設定。

☆:唯がギー太と出会い、ギターを始めたのは原作より三年前の中学入学時。
和の"ニート発言"が三年早まったと思ってくだせぇ。

☆:唯、三年もギー太に熱愛の首ったけ(笑)
原作よりギターに詳しいので、音楽用語がより出てくるかも…

☆:物語のプロローグは、原作より前から始まります。

☆:タイトルに梓や純の名前が無いのは、ハブにしてる訳ではなく、単に唯達が二年に進級するまで書くか、作者が決めかねてるからです。

☆:百合分は、微妙…



無駄に拘る裏設定(楽器変更)


同じチェリー・サンバーストのギブソン・レスポール・スタンダードだけど、2005モデルの"1960ヒストリックコレクション"。
理由はその内、本編で。


KORGの"TRITON Extream"から、同じKORGの"M3 Xpanded"に。
こちらは、時代的に考えて。TRITONは今は二世代前のキーボード。


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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
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全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
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ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
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2 :いふおん [saga]:2011/07/08(金) 00:11:38.81 ID:I7lrUpaAO

では、とりあえず5レスほど投下を開始します。

中身は、プロローグみたいな物です。

3 :いふもの [saga]:2011/07/08(金) 00:14:08.74 ID:I7lrUpaAO

「にひひっ…むにゃむにゃ…すぴ〜」

平沢家の朝は早い…という訳ではない。
しかし、いくら夏休みとはいえ、朝10時までベッドの中で安らかな寝息というのは、些か緩み過ぎではないだろうか?

そんな無防備な姿をいつまでも晒していると…

「ダイビング・セントーン!」

"どすんっ!"

「ぐえっ!」

案の定、侵入者…こっそりと部屋に入ってきたヘアバンド少女の前方宙返り体落としなんてルチャ系大技が、綺麗に決まってしまう。

「やりすぎだバカ律っ! ああっ!? 唯が踏み潰されたカエルみたいな声&状態にっ!?」

目の前で起きた友人の凶行(?)に思いっ切り焦る黒髪の少女だったが、ヘアバンドの少女…律は、平然とした顔でベッドで寝てる少女に馬乗りのまま、

「あ〜、だいじょぶじょぶ。唯の事だからきっと…」

"むくっ"

「おはよ〜、りっちゃん、みおちゃん」

上半身だけをおこした唯は、何事もなかったように…というか、まだ半分以上寝惚けた調子でそう返したのだった。

平沢唯…そのタフさ頑丈さは、ギターテク以上のようだ。


4 :いふもの [saga]:2011/07/08(金) 00:15:26.84 ID:I7lrUpaAO


「のどかちゃん、むぎちゃん、それにういもおはよー」

「おはよ、唯。というか、やっぱりまだ寝てたのね?」

「まあまあ。唯ちゃんおはよう♪」

「お姉ちゃん、おはよー♪」

リビングに降りてきた唯を迎えたのは、最も古い幼馴染みの真鍋和と琴吹紬、そして妹の平沢憂だ。

これにヘアバンドの元気娘の田井中律と黒髪美人の秋山澪を加えたのが、平沢唯を取り巻く友人達だった。

時は、唯和紬律澪が中学三年生の夏休み。
場所は、お馴染みの溜まり場と化してる平沢家のリビング。

広さや快適さなら、紬の家…というか屋敷が一番なのだが、いかんせん敷居が高すぎだ。

第一、正門から噴水が鎮座する正面玄関まで車で行けるような家なんて、中三の女の子じゃなくても庶民じゃ気後れするだろう。


5 :いふもの [saga]:2011/07/08(金) 00:17:11.82 ID:I7lrUpaAO


蛇足ながら、先に出てきた名前の順番は、唯と出会った順番だったりする。

一つ年下の妹の憂はともかく、真鍋和は言わずとしれた幼稚園の頃からの親友という名の腐れ縁で繋がれた"保護者(笑)"

琴吹紬は、幼稚園の時に出会い、小学校の後半にブランクがあるものの、中学の中盤に帰国し、唯とは別の中学だが、今でも大の仲良し。

田井中律と秋山澪は、中学一年の時に同じクラスになったのが、仲良くなる切っ掛けだった。

それぞれに出会い物語は有るのだろうが、それはおいおい語られるだろう…多分。


6 :いふもの [saga]:2011/07/08(金) 00:18:13.95 ID:I7lrUpaAO


さてさて、こうして唯の友達一同が集まったのは、何もゴロゴロしながら親睦を深め、中学最後の夏休みを有意義に過ごそう…なんて訳では断じて無い。

「さて、大して分量無いんだから、ちゃっちゃっと宿題終わらせちゃうわよ?」

と、音頭を取るのは委員長とかその手の肩書きがひどく似合いそうな和だ。

というか夏休み入って以来、ほぼ連日開催されてる休みを謳歌したい学生の天敵"夏休みの宿題"を強行終了させる為のグループ学習スケジュールを組んだのは、他の誰でもない和だった。

ちなみに、真っ先に賛成したのは澪で、最後まで抵抗したのは唯と律なのは、お約束。

「はぅ〜…のどかちゃん、厳しいよぉ〜」

「そーだそーだぁ」

涙ぐましい最後の抵抗を試みる唯律だったが、

「甘えないの! 紬の別荘に行く前に、夏休みの宿題を終わらせるって決めたでしょ? そうして、何の愁(うれ)いもなく思い切り遊んで、思い切り演奏するって」


7 :いふもの [saga]:2011/07/08(金) 00:19:06.95 ID:I7lrUpaAO


「はぅぅ〜」

涙目になる唯だったかが、澪はウンウンと頷き、

「唯、今年の"合宿"の目標って、何か言ってなかったっけ?」

「はいは〜い! チョーキングを完璧にする! ダブル、ハーフ、クォーター、ハーモナイズド、ポルタメント、ユニゾンをマスターできれば、かなり演奏の幅広げられると思うんだよね〜♪」

いきなり復活した唯に、憂はクスクス笑いながら、

「チョークダウンもだよ? お姉ちゃん、いつも進むばかりで止まるの上手じゃないんだから」

「め、面目ないッス」

『そこがまた可愛いんだよねぇ〜♪』と、憂は心の中で付け加える。

「なら、今のうちに終わらせた方が、好き放題"ギー太"とギグれるだろ?」

澪の言葉に大きくウンと頷く唯。

「そうだねっ! ギー太の為なら、わたし頑張れるよっ!」


8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/08(金) 00:21:32.57 ID:g8P5Xx8ho

とりあえず5レスほど投下ってことは今日はここまでなのかな
これからの展開を楽しみにしてます
9 :いふもの [saga]:2011/07/08(金) 00:22:27.17 ID:I7lrUpaAO

投下終了。
まだ書き貯め量が心許ないので、次回は未定という事で。

とりあえず、こんな感じの話ですが、気に入ったのなら、レスとか貰えると嬉しいです。


10 :いふもの [saga]:2011/07/08(金) 18:00:05.10 ID:I7lrUpaAO

これより、5レスほど投下します。

過去編を含むプロローグは、まだ少し続くのでとりあえずアップ。

今回は、ギー太に続く唯の相棒が登場!
その名は…"QB"?

11 :いふもの! [saga]:2011/07/08(金) 18:01:03.13 ID:I7lrUpaAO


唯の現金な反応に律は苦笑いしながら、

「ホ〜ント、唯はギー太の事となると人変わるよなぁ〜」

「付き合い出して今年で3年目になる恋人ですからっ!」

実はその表現、あながち大袈裟とは言い切れない。
中1の春にギー太と出会ってから2年と3ヶ月…唯とギー太は、常に共にあった。

なんせ、時間ができればひたすらギー太を弾いていたのが唯という生き物だ。
弾くのに熱中しすぎて、気が付けばいつの間にか深夜なんてことは珍しくも何ともない。

おかげでここ二年、成績は低迷に低迷を続けたが、反比例してスポンジが水を吸収するように、唯は次々にギターテクをマスターしてきた。

もっとも唯本人としては、ギターを練習してるという意識は全くない。
どちらかと言えば、"ギー太と一緒に遊んでる(あるいは、イチャイチャしてる)"って感覚が強いだろう。
テクが上がり、ギー太から新しい音が生まれる度に、唯は実に嬉しそうに笑い、その感覚をもう一度味わいたいから、ますますギー太にのめり込んだ。


12 :いふもの! [saga]:2011/07/08(金) 18:01:54.84 ID:I7lrUpaAO


「くすくす♪ 唯ちゃんったら、本当に妬けちゃうぐらいギー太と相思相愛ね♪」

「でへへ〜」

と、一頻り照れた後、

「むぎちゃん、実はギー太は更なるパワーアップを果たしたのだよ!…じゃっじゃ〜ん!!」

唯が効果音(笑)と共に取り出したのは…

「おおっ! 新品のマルチ・エフェクターじゃんかよっ!」

「しかもそれ…ZOOM社の"G9.2tt"じゃないか!? いいなぁ〜…」

そりゃあ、実売価格3万超のエフェクターなんて、中学年にはおいそれと手が出せる代物じゃないだろう。
澪はベース用のエフェクターを新調しようかどうか迷ってたみたいなので、余計に羨ましそうだ。

唯はマルチエフェクターとしてはかなり高級なZペダル付きの黒いボディを抱きしめ、

「お小遣いとお年玉貯めて、ようやく買えたんだよぉ〜! ん〜♪ "キューべぇ"〜♪」

おそらく、エフェクターの名前に9が入ってるから"キューべぇ"なのだろうが…

「…何となくだけど、何故か物凄く縁起の悪い名前のような気がするのは、気のせいかしら…?」

和の言葉に、不思議と全員が頷いた。

「なぜにっ!?」


13 :いふもの! [saga]:2011/07/08(金) 18:02:41.08 ID:I7lrUpaAO


「いいもんいいもん! 今年はギー太とキューべぇの最強コンボで、思い切りギグって遊び倒すんだもんねーだ!」

どうやら、ギー太への熱愛はまだまだ冷める様子はない…というか、夏の暑さに負けないぐらい、ますます燃え上がってるようだ。

すると、澪は何かを思い出したように、

「あれ? 唯、前のやつもマルチエフェクターじゃなかったっけ? アレはどうしたんだ?」

「確か…"ToneLab ST"だったかしら? VOX社の?」

こんな所まで持ち前の抜群の記憶力を発揮する和だが、

「あっ、それ私が貰っちゃいました♪」

「ういにお嫁入りしたんだもんね〜♪ ういなら"トラ吉"を可愛がってくれそうだし♪」

"トーン・ラボ"だからトラなんだと思う。
多分だが…

「てへへ♪ お姉ちゃんからもらった子だもん。い〜っぱい可愛がるよ〜♪」

「唯ちゃん、太っ腹♪」

「もっとほめてほめて♪」

「澪も太っ腹だぞ〜」

「なんでだよっ!?」


14 :いふもの! [saga]:2011/07/08(金) 18:03:36.31 ID:I7lrUpaAO


「ほらほら! はしゃぐのは、それぐらいにしなさいって。いつまでたっても宿題、終わらないわよ?」

「うぬぅ〜…のどかちゃんのいけずぅ〜!」

「何言ってるのよ。合宿が終わったら、今度は受験対策が待ってるわよ?」

「しょ、しょんなぁ〜」

"げんなり"という文字が、今にもバックに浮かびそうな唯だったが、

「大体、紬と同じ高校に、みんなで行きたいって言い出したのは唯でしょ?」

「唯ちゃん、ごめんね…私のワガママに付き合わせちゃって…」

「ああっ! むぎちゃん、気にしないで! というか、むしろ高校はむぎちゃんと一緒にいたいっていうのは、わたしのワガママだから!」

前に少し書いたが、実は和と同じく紬も唯とは幼稚園以来の仲良しだ。

だが、腐れ縁的にずっと一緒にいた和と違い、紬は少々変則気味だ。

幼稚園の時に知り合い、小学校の前半までは一緒だったけど、高学年に上がる頃に両親の都合で、紬は海外へと行ってしまう。

別れの日、唯憂和と一緒にわんわん泣いたのは、恥ずかしいけど紬にとっては大切な思い出だ。


15 :いふもの! [saga]:2011/07/08(金) 18:05:43.54 ID:I7lrUpaAO


そして、中学の時に無事に紬は帰国を果たした。

だけど、入れられてしまったのは、良家の子女御用達の天下に名高いお嬢様学校…
売りの一つは、ありきたりだが中高大のエスカレーター式一貫教育だった。

そこの生徒が悪いとは言わないが、"マリみて"的な育ちのいい娘だけで構成された"女の園"は、紬にはどこか物足りなかった。

それは、程なく再会した唯を見て、紬はますますそれを強く感じるようになった。

自分が知らない間に、ギターを初めていた唯は、前よりずっと自由で気ままで眩しくて…そして、何より惹かれた。



唯達が通っていた中学に軽音楽部は無く、思い切りギターを鳴らせる練習場所に困っていた唯に自分の家でセッションするように勧めたのは、憧れる唯と一緒にいたかったからっていうのが、本当の理由だ。

琴吹屋敷には、個人邸宅とは思えない立派な防音設備と音響機材の整ったスタジオが完備されていた。

これは、本来は紬のピアノ・レッスン用に用意されていたものらしい。
唯が新品のギターケースを抱えてやってきて、スタジオでファースト・ギグを披露した時、紬は初めて自分の家が裕福である事を感謝した。


16 :いふもの! [saga]:2011/07/08(金) 18:09:11.84 ID:I7lrUpaAO

とりあえず、投下終了。

何となくラストは唯×紬っぽいですが、作者は特にカプは意識してません(笑)

次回は未定ですが、上手くいけば本日中にはアップできるかもです。

多分、次回でプロローグは終わるのでは?と思ってます。

17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/08(金) 21:48:42.07 ID:dlWCTxG00
期待
18 :いふもの! [saga]:2011/07/09(土) 00:37:54.84 ID:DrXku67AO

書き貯めの一掃投下を開始します。

今回は、プロローグの完結の為にやや長いです。

全部、投下し終わるまで、少し時間がかかるかもしれないッス。

なんか、原作よりかなり和や紬が目立ってる気がします(笑)


19 :いふもの! [saga]:2011/07/09(土) 00:38:48.18 ID:DrXku67AO


そして、いくらも経たないうちに…


『私もお姉ちゃんや紬ちゃんと一緒にいたいし、ギグしたい♪』


『だって、唯をほうっとけないでしょ? それに私だって、楽しそうな幼馴染みの寄り合いには、普通に混ぜて欲しいわよ?』

と、唯と色違いでお揃いのギターケースを抱えた憂と、ベースを背負った和が合流。

それを契機に、紬も買ったばかりのKORGの真っ白なキーボード"M3 Xpanded"を相棒に参加する事にした。

最初はなんて事は無い、自由に楽器を弾くだけの気ままなジャム・セッションだった。
けど、それが何となく形になり、四人が合わせられるようになった中二の頃。
まだ自称"ドラマー(笑)"だった律と、真新しいベースを大事そうに抱いた澪が、唯に誘われて屋敷にやってきた。


20 :いふもの! [saga]:2011/07/09(土) 00:39:43.99 ID:DrXku67AO


適当に楽器を鳴らすジャム・セッションから、全員の音を合わせた普通の意味でのセッションになる切っ掛けは、琴吹家所有の別荘で行われたその年がスタートになった、最初の"合宿"だと全員が思っていた。

そして、バンドとして"プレイ(演奏)"できるようになった中三の頃、紬の思いはピークに達した!


『私、これからもみんなと一緒にいたいっ!! これからはみんなと一緒の学校に行きたいっ!!』



それが、小さなドラマの始まりだった。
滅多に強い自己主張をしない紬が、一大決心で両親の説得に出たのだ。

まずは、両親の前で唯憂和律澪と全員でフルプレイ!

まだ当時はオリジナル曲は無かった…というか、バンドとして活動すらしてなかった。
なので、ナンバーは「フレディはわたしの嫁!」と言い切るぐらい唯の大のお気に入りのオールド・ブリティッシュ・ロックバンド【Queen】より、"We are the Champion"!!

まだまだ粗削りだが、それでも天井を突き抜ける程、どこまでも伸びるボイスとギターサウンドが、琴吹家のスタジオに響いた!!


21 :いふもの! [saga]:2011/07/09(土) 00:41:21.97 ID:DrXku67AO


立て続けに、"エリック・クラプトン"のいわく付きの名曲【愛しのレイラ】から、スローテンポに落として"イーグルス"の【ホテル・カリフォルニア】に繋げ、ラストは唯の十八番、80年代を代表する"スターシップ"の【セーラ】で締めるという構成を、MC無しでぶちかました!

いずれも大ヒットし、世代を超えたファンを持つメジャー・ナンバーばかりだ。
70年代や80年代の洋楽が中心なのは、紬の両親がわかりやすいように配慮した…というより、単に唯の趣味(笑)だった。



いずれその経緯は書かれるかもしれないが…
ギー太と"お父さんルート(?)"で出会った時、一緒に給わったのが、平沢父が若い頃に聞いていたというCDやミュージック・クリップの数々だった。

ギー太…即ちチェリー・サンバーストのギブソン・レスポール・スタンダード"1960ヒストリックコレクション"を手に入れた唯は、それを聞きまくり観まくった。
ぶっちゃけ、ハマりまくっていた。

そして、画面の中のミュージシャン…ギタリストのようにギー太を弾いてみたいと思うようになったのだ。

そう、それが平沢唯の"音楽への覚醒"の第一歩だった!!


22 :いふもの! [saga]:2011/07/09(土) 00:43:04.97 ID:DrXku67AO


それはさておき、中3の女の子がンバーの中心の、名前すらない即席バンドとは思えない演奏を両親に魅せた後、紬は大演説をぶちあげた。


『私は、唯ちゃん達と同じ高校に行きたいっ!!』

初めて自分達に堂々と意見を言う娘の成長に、琴吹夫妻は一見すると厳しい顔をしながらも、頬や目尻を緩ませていたらしい。



紬には、勝算があった。
紬の両親…特に父親は、趣味が高じて楽器店グループを経営するほどに音楽好きで、造詣も深い。

普段から『演奏を聞けば、そのプレイヤーの大体の人間性がわかる』と豪語する人物だ。

紬は、自分が幼稚園の頃から惹かれ憧れてきた唯…その自由奔放で優しく強い彼女の演奏を聞けば、絶対に両親を説得できると見込んでいたのだ。

しかし、演奏の後に何故か唯が両親に別個に呼ばれ、困ったように『てへへ』と笑いながら帰ってきたのが、やけに印象に残った。


『大した事じゃないんだよ。ただ、ちょっと身に余る過剰な期待をされちっただけで…』

23 :いふもの! [saga]:2011/07/09(土) 00:43:48.60 ID:DrXku67AO


されど、相手は外洋航海もできる大型クルーザーや幾多の別荘を私有する程の大企業グループのオーナー。
当然、一筋縄じゃいかない。

確かに今、紬が通う名門女学院は、高い学費や家柄審査が有り、おいそれと庶民の娘が入学するのは難しい。

だから、外部の高校への外部進学は認められたけど…

琴吹父
『わかったよ、紬。だが、琴吹家の子女として恥ずかしくない高校へは、私としては行って欲しいな? それも、女子高限定だ』

目が楽しげに笑っていたのは気にかかるが、過保護気味の発言の後に、提示されたのが…

24 :いふもの! [saga]:2011/07/09(土) 00:48:04.89 ID:DrXku67AO


「"桜ヶ丘女子"かぁ…」

「ぶっちゃけ、私達にはレベル高いよなぁ〜」

唯の発言に追従する律。
正直、ギー太に会ったあの日以来、勉強そっちのけでギターに打ち込んできた唯と、琴吹家のドラムを今は存分に叩けるようになった律には、桜ヶ丘は成績的にかなりの難関だった。

「ふふん♪ そんなこと無いって。いいこと、唯…あなたはギー太に全ての時間を捧げただけで、中学入ってから…一度たりとも本気で勉強なんかしたことないわよね?」

「はうっ!?」

律はその瞬間、唯の心臓に深々と突き刺ささる、"図星"と彫られた短剣を見たという…

「勘違いしないで。別に責めてる訳じゃないわよ? ただ、事実を述べただけで」

「のどがぢゃ〜ん…」

本気で涙目になる唯に、和はコホンと軽く咳払いして、

「たった二年と少しよ? ねぇ、唯…たったこれだけの時間で、ズブの素人だった自分が、どれだけ常人離れしたスピードでギターテクニックを習得、上達させたのかって自覚…ある?」

「へっ?」


25 :いふもの! [saga]:2011/07/09(土) 00:48:50.55 ID:DrXku67AO


「ああっ! そういう事かっ!」

澪が何かに気付いたように素っ頓狂な声を上げた。
和は、和が意を得たりと頷き、

「憂、あなたが唯を言い表す時の決め台詞って、なんだっけ?」

「"お姉ちゃんは、やれば出来る娘"ですっ!!」

シュタッ!っと挙手してまで宣言する憂に、和は満足げに頷き、

「そうね。その通りよ」

「えっ? えっ? えっ?」

言葉に頭の処理が追いつかない唯は、思わずキョロキョロするが、

「唯、あなたは憂の今の台詞を、この二年で実践して、私達にに証明してみせたのよ?」

「ほえ…?」

和はクスリと笑い、

「いい加減に自覚なさい。自分がどれ程チートじみた"異常な集中力"を持ってるかってことぐらい、ね?」


26 :いふもの! [saga]:2011/07/09(土) 00:50:05.07 ID:DrXku67AO


「異常はヒドイよぉ〜」

「あら? 私に言わせれば、そうとしか言い様が無いわ。唯は昔から集中するまでは大変だけど、いざ集中したらそののめり込み方は生半可じゃないし、何よりその継続時間が桁違いに長いのよ。専門家じゃないからハッキリ言える訳じゃないけど…」

和は赤いハーフフレームの眼鏡をかけ直すと、レンズをキランと輝かせ、

「私見だけど…私は、唯が集中してる時のそれは、エンドルフィンなんかの脳内物質の過剰分泌による、軽い一種の"トランス状態"にあると思ってるわ」

「唯ちゃん凄いっ!!」

なんか無邪気に喜ぶ紬に…

「えっ? えっ? てへへ〜♪ そ、そうなのかな?」

和の言葉の意味が、半分も理解できないので、とりあえず微笑んでみる唯であった。


27 :いふもの! [saga]:2011/07/09(土) 00:51:04.92 ID:DrXku67AO


「という訳で、唯が本気で紬やみんなと一緒の学校に行きたいと思うのなら、自ずと集中するでしょうし…集中した時の唯は、"無敵"よ。でしょ?」

「う、うんっ! わたし、バカだけど頑張ってみるよ! みんなとの高校生活の為に、頑張って集中してみるよ!」

「そんなに気負わなくても平気よ♪ それと、自分をバカと言うのは、およしなさい…」

和は、唯の鼻先を人差し指でツンとつっつき、

「ふみゃっ!?」

「唯は断じてバカなんかじゃないわ。勉強時間が足りてないだけよ。時間をかけて必要な知識を取り込めば、唯は誰にも頭で負けたりなんかしないわ」

と、悪戯っぽく笑い、

「だって唯は…」

「「「やれば出来る娘だからっ♪」」」

和憂紬の声が、ハイタッチと共に綺麗にハモった。


28 :いふもの! [saga]:2011/07/09(土) 00:55:50.72 ID:DrXku67AO


「な〜んかさ…私のこと、『忘れられてるんじゃね?』とか思うんだけど…」

と、律はジィ〜ッと澪を見ていた。

「わ、私に何を期待してるんだよっ!?」

「いやぁ〜、唯ほどじゃないけど、私も成績がさぁ〜」

澪は少し考えた後、

「…いざとなったら、私か和がドラムに転向するか…ツイン・ベースに拘らなければ、ベースは一人で十分だしな」

「ヒドッ!!?」





夏の強行軍を乗り切り、秋に驚異的な追い上げを見せた唯と律…

そして元々、成績安全圏にいた和紬澪…

この五人が、揃って桜ヶ丘女子高等学校の合否掲示板の前で嬉し涙を流す風景…
それを見るのは、翌年の冬と春の境目の時期まで待つ必要があるのであった。





プロローグ
おしまいっ!



29 :いふもの! [saga]:2011/07/09(土) 01:08:08.68 ID:DrXku67AO

とりあえず、プロローグ全編を投下完了。

そして、書き貯めの残弾もゼロになりました。

原作より少しだけガールズバンドっぽい話を作りたいなぁ〜っと書き始めたこの話…
ですが、想像通りに需要が希薄だった(苦笑)

次回より原作合流ですが、まだ一文字も書いてもいませんが構想はあるんで、せめて一年生の終わりくらいまでは、のんびり書いてみようかなぁ〜とか考えてます。



あっ、一応この後にオマケ…というか、設定資料風味の何かを投下しておきますね〜。



30 :いふもの! [saga]:2011/07/09(土) 01:12:00.84 ID:DrXku67AO

オマケ
多分、需要は無いだろうけど…


追加設定資料
"がっき!"

平沢憂(サイドギター)
エレキギター:
フェンダー・ストラトキャスター(カスタムショップ"エリック・クラプトン"シグネイチャーモデル)
備考:
色は、限定色の"ダフネブルー(空色、水色)"。
唯がヴォーカルと兼任なので、曲によっては憂がメインギターを担当する。
一本一本、専門の工房(カスタムショップ)で職人により作られる為、実売価格は29〜40万円ほどもする。
だが、本人はそれにどうやら気付いてない模様(笑)
それでも、唯のギー太比べれば、まだ安い(唯のレスポール・1960ヒスコレは、普通50万円以上する)のだから驚きである。
憂が手に入れたのは唯と同時期らしいが、なぜ平沢家に二本も高価なギターがあったのか…?
その謎は、いずれ本編で明かされる…かもしれない。



真鍋和(2ndベース)
エレキベース:
ヤマハ"BB714BS(LR)"
備考:
色は、LRが示す通り"ラヴァレッド(熔岩の赤)"と呼ばれる鮮烈な赤色。何気に和の眼鏡とお揃いの色だったりする。
澪も唯と同じくヴォーカル兼任なので、和のポジションは重要。
末尾のBSは、超有名ベーシストの"ビリー・シーン"のイニシャルで、憂のストラトと同じくシグネイチャーモデル。
だが、大量生産の廉価版なので、実売価格は8万円前後と、ギー太なんかに比べればまだ常識的。


31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/07/09(土) 07:48:34.09 ID:WTWmUCyAO
がんばれ
個人的には梓や純も出してほしいな
32 :いふもの! [saga]:2011/07/09(土) 16:43:26.39 ID:DrXku67AO

>>8,>>17
ありがとうございます。レスがあるだけで励みになります。

>>31
純はともかく、梓は話の展開によってはフライングの可能性があります(笑)

33 :いふもの! [saga]:2011/07/09(土) 16:46:54.02 ID:DrXku67AO

これより投下を開始します。

いよいよ今回から、原作の開始。

ご都合主義覚悟で、唯和紬律澪は同じ"1-3"となっております(笑)


34 :いふもの! [saga]:2011/07/09(土) 16:48:09.47 ID:DrXku67AO


季節は春。
時は朝。
霞の中で、はしゃぐ声。
真新しい制服が、咲き誇る桜並木に映える。



そんな春の良き日…わたし達新入生と、在校生や先生達が集う体育館。
今は、入学式の真っ只中の筈なんだけど…

「わたしは、何をする人ぞ?」

「答辞! 新入生代表、平沢唯!」

えっ?
なんで、わたしの名前なんかが、司会の先生に呼ばれてるんだろ?
普通、新入生代表って…入試とかで主席をげっとした人がやるんだよね?

のどかちゃんならともかく、わたしなんて有り得ない…よね?

「そ、そっかっ! きっとこれは夢なんだ! 本当のわたしは、まだお布団の中でヌクヌクしてて…」

"コホン!"

あれ?
なんで夢なのに、のどかちゃんが隣に座って咳払いなんかしてるんだろ?

「唯…気持ちはわからなくはないけど、そろそろ現実逃避はおしまいにしなさいよ?」

「唯ちゃん、ガンバレ♪」

あれれ?
左から、今度はむぎちゃんの声が…

「えっと…その…」

ど…どどどうしてこうなったぁ〜っ!!?


35 :いふもの! [saga]:2011/07/09(土) 16:49:02.42 ID:DrXku67AO



いふおんっ!

第1話:"にゅうがくっ!"



36 :いふもの! [saga]:2011/07/09(土) 16:50:12.81 ID:DrXku67AO


「いや〜、まさか唯が主席たぁ驚きだぁ〜ねぇ〜」

どうやら夏休みの後、唯は成績優秀な和紬澪の指導の元、チート技能"トランスじみた超集中力"を連発させたらしい。
それの成果なのだろうが…

「りっちゃん、言わないで…何かの間違い、"キャラじゃない"って事は、自分でもわかってるからぁ」



入学式も無事終わり、唯達は今日から自分達の教室…"1-3"に案内されていた。

精魂尽き果てたのか、机に突っ伏したまま起き上がろうともしない唯である。
勿論、お約束で真っ白に燃え尽きている。

「そう落ち込むこと無いわよ? gdgdっぷりも、十分に想定の範囲内だったし」

「いや和、それフォローになってるか微妙だぞ…」

和の台詞に透かさずツッコミを入れる澪。

「でもでも、私は唯ちゃんらしくて、とっても良かったと思うんだけど!」

と、正真正銘のフォローを入れる紬であった。


37 :いふもの! [saga]:2011/07/09(土) 16:51:28.90 ID:DrXku67AO


入学式回想


『凄くいい祝辞をありがとうございました! 先生方や先輩方には、これからお世話になりますってご挨拶やお願いとか、一緒に入った新入生のみんなには、一緒に頑張ろうね!って激励とか、立派な言葉を言わなければならないのでしょうが…』

唯は壇上でいつもと同じように、ほにゃ♪っと柔らかく照れ笑いを浮かべ、


『テヘヘ…実はここに立った途端、頭の中が真っ白になっちゃいまして』

そう言った途端、会場のアチコチから唯に釣られるように失笑が上がった。


『それにわたしの場合は、言葉を重ねれば重ねるほど、なんだか伝えたい事がぼやけていくような気がして…だから、』



「驚いたわよ。流石の私も、まさか唯が突然…」


38 :いふもの! [saga]:2011/07/09(土) 16:54:18.04 ID:DrXku67AO



『だから、歌で伝えたいと思います!』

そう言い切る唯の表情からは、ほんの少し前まであったオドオドした様子は綺麗に消え去り…


『ナンバーは、ベット・ミドラーより"The Rose"…』

そして、静かに流れ出すシンプルなピアノの伴奏。
弾いてるのは…どんな魔法でも使ったのか? いつの間にかピアノの前に陣取っていた紬だった。



"Some say love, it is a river that drowns the tender reed."

唯の溶けるように甘い…だが、よく伸びる声でつむがれる、シンプルなスロー・バラード…
その歌詞は、最後にこう締め括られる…



長い孤独の夜を過ごす日もあるかもしれない

長い道のりを独りで歩かないといけないかもしれない

でも、これだけは覚えていて欲しい

冬、深い雪の下で寒さに耐えていた種は

春、暖かな陽光の中で薔薇を咲かせるということを


39 :いふもの! [saga]:2011/07/09(土) 16:57:14.32 ID:DrXku67AO


「あぅぅ〜… だってだって! どうしても答辞が思い浮かばなかったんだもぉ〜ん!」

和は呆れたように苦笑し、

「しかも、まさか紬まで共犯だなんて、ね」

「う・ふ・ふ〜♪ だって、お堅い言葉を並べるより、ずっとずっと唯ちゃんらしいって思ったんだもぉ〜ん♪ それに私も聴きたかったしぃ〜」

「流石は、自称"唯のファン一号"だなぁ」

「えっへん♪」

律の言葉に胸を張る紬だったが、

「ところで、いつの間にどうやってピアノの前に潜り込んでいたんだ?」

と、澪は不思議そうな顔した。

「なんというか…"蛇の道は蛇"と申しますし〜♪」

"オホホ〜♪"と口元を押さえて笑う紬を見て、澪は『この娘だけは絶対、敵に回すまい』と胸に誓ったという。


40 :いふもの! [saga]:2011/07/09(土) 17:01:39.21 ID:DrXku67AO

これにて本日の投下は終了です。

残弾も尽きたので、次回は未定ですが、次回はTVシリーズの第1、第2話なんかをフォローできたらなぁーと。

41 :いふもの! [saga]:2011/07/11(月) 05:34:13.64 ID:bt958huAO

変な時間になってしまいましたが、今から投下を開始します。

ちょうど、アニメ版第1話にあたる部分の、再構成になるエピソードです。

42 :いふもの! [saga]:2011/07/11(月) 05:35:18.24 ID:bt958huAO


お約束の自己紹介も終わり、必要事項もサクサク進んで放課後。

唯和紬律澪の五人は早速、音楽室へと向かう。


理由は勿論…

「軽音部、楽しみだね〜♪」

「桜高の軽音部ってのは、ちょっと前までかなり有名だったからな…」

澪の言葉に、唯は一層顔を輝かせ、

「ねぇねぇ! 今はどんなカラーなのかなっ!?」

「昔はハードロックとか、ヘヴィやスラッシュ、デスなんかのメタル路線だったらしいぜぇ〜」

律がそう大雑把に言うと、

「唯は、ロックバラード…メロディアスロックがメインだったかしら? 60's〜80'sのブリティッシュや、80's〜90'sのアメリカ・ロックバブルの頃のよね?」

「あとあと、スキャグスやコールドウェルなんかのAORとか、プログレも好きよね?」

「のどかちゃん、むぎちゃん大正解♪ よく憶えてるね〜♪」

「まぁ、よく聴いてるからね。クィーンとかエアロスミスとかオズボーンとかツェペリンとか」

「唯ちゃんのことだもの♪ 最近は、ザ・フーとかウォレントとかバッドイングリッシュもよく弾いてるわよね〜♪」


43 :いふもの! [saga]:2011/07/11(月) 05:38:02.65 ID:bt958huAO



第2話:"さいきどう!"



44 :いふもの! [saga]:2011/07/11(月) 05:39:04.22 ID:bt958huAO


何となく紬が和が張り合ってるような気もするが…きっと錯覚だろう。

「改めて考えると、わりと唯の趣味って偏ってるよな?」

「ヲイヲイ…それって、路線がかなり違わねぇか?」

少し心配そうな律澪だったが、

「大丈夫だよぉ〜。やっぱりハード過ぎなのは苦手だけど、メタリカとかメガデスぐらいまでなら、十分に許容範囲だもん」

そんな話をしながら、音楽室に着いてみると…



"がら〜ん"

「ありゃ? 誰もいない…」

物の見事にもぬけの殻だった。

「え〜っと…」

「しばらく、人が使った気配や痕跡が見当たらないわね…」

リアクションに困る律と、冷静に分析する和。

「う〜ん…先生に聞きに行った方が早そうね?」

「そうだな。職員室に行くか」

紬の言葉に、澪は頷いた。


45 :いふもの! [saga]:2011/07/11(月) 05:40:08.47 ID:bt958huAO


職員室にて

「「「「「廃部っ!?」」」」」

担任、"山中さわ子"から事実を聞かされた時、五人の声が綺麗にハモった。

さわ子は、内心で『随分、気の合う五人ね〜』と感心しながら、

「正確には、廃部寸前ね。部員が全員、卒業しちゃってね…今月中に最低でも部員が四人揃わなければ、廃部が確定するわ」

だが、その途端…

「な〜んだ。そんな事なら、四人どころかすぐに五人集まるよ〜♪」

と、唯はホッと控え目な胸を撫で下ろした。

「だなぁ〜。もう、条件クリアされてるし」

と、律。さわ子は興味津々を隠そうともせず、

「ふ〜ん…という事は?」


46 :いふもの! [saga]:2011/07/11(月) 05:41:27.81 ID:bt958huAO


律は、よくぞ聞いてくれましたとばかりに、ニヤリッと笑い、

「先ずは、ヴォーカル兼ギタリスト! 感覚だけでギー太を自在に操るレスポールのトリックスター、平沢唯!」
「必殺! えんげつさっぽぉ〜っ♪」

律の煽りに唯はエアギターを披露。
台詞通りに腕の動きは、タウンゼントばりのウィンドミルだ。

「お次は、多彩な音色とコーラスは私にお任せ! キーボード使いのお嬢様、琴吹紬!」

「ポロポロポロ〜♪」

「そして、パワーと手のデカさが自慢の黒髪のデンジャラス・クィーン! ヴォーカル兼1stベーシストの秋山澪〜!」

"ごん!"

「あいた〜っ!」

「誰がデンジャラス・クィーンだっ!? それに人が気にしてる事をズケズケとっ!!」

だが、憤慨する澪に意外な人物からフォローが入った…

「あら? ベーシストなら、パワーや手の大きさは凄い武器じゃない。そこは怒るところじゃなくて、誇るところよ?」

「「「「「えっ?」」」」」

その声の人物…さわ子に、五人の視線は釘付けになった。


47 :いふもの! [saga]:2011/07/11(月) 05:42:25.41 ID:bt958huAO


「山中先生…もしかして、軽音楽…バンドとかに詳しいんですか?」

不思議そうに聞く澪に、さわ子は優しく微笑み、

「昔、少し友達とね。それより紹介の続き続き♪」

妙にノリノリなさわ子に、違和感を覚えなくも無かったが、律は軽くコホンと咳払いして、

「お次は、切れ味鋭いツッコミとベースとは思えぬ速弾きが売り! ガネっ娘2ndベーシストの真鍋和!」

「えっ!? 私にも何かパフォーマンスを要求するの?」

「和ぁ〜、ノリ悪いぞぉ〜」

「わくわく♪」

律の煽りに加え、唯の期待を込めた視線に根負けしたのか、

「あ〜もう。わかったわよ」

と、和も目を瞑り、何かをイメージするようにエアベースを披露。
しかし、それを見てさわ子は、ポツリと呟いた。

「スリーフィンガー・ピッキング…"ビリー・シーン"ね」

「えっ…!?」

和は心底驚いた顔をした。
さわ子の出したの名は、ドンピシャに和が憧れ、お手本にしてるベーシストだった。

「…よくわかりましたね?」

怪訝な顔をする和に、さわ子は誤魔化すように笑い、

「や、や〜ねっ! 少しでも音楽をかじったら、そんなの常識よ常識!」


48 :いふおん! [saga]:2011/07/11(月) 05:45:58.77 ID:bt958huAO


「ん、んじゃあラストは私!」

何か妙になってしまった空気を払拭するように律は、

「スティック握らせれば天下一品! 容姿端麗才色兼備! 天才美少女ドラマー、田井中律とは私の事だぁーっ!!」

"ごぉん!"

「あいたぁ〜っ!」

「自分だけ持ち上げ過ぎだっ!」

怒りの澪を涙目で見ながら、律はポツリと、

「…やっぱデンジャラスじゃん」


49 :いふもの! [saga]:2011/07/11(月) 05:49:18.69 ID:bt958huAO

今回の投下は、これにて終了。

まだ、書き終わってないので予定は何とも言えませんが、出来れば本日中に第2話の残り後半部分を投下したいと思ってます。


50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/07/11(月) 06:21:05.61 ID:qPiOB44AO


専門ネタが多くなるのかな?
イージーモードなけいおん!って感じだ
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/11(月) 10:49:59.38 ID:c6TaCsaDO
早い時間に乙!
期待してるけど、もっと投下多くすれば目立ってレスも増えやすいんじゃないかな?勿体ない
52 :いふもの! [saga]:2011/07/11(月) 23:13:04.47 ID:bt958huAO

>>50
ども。
かなり音楽関連ネタは増えると思います。
確かにイージーモードっすね(笑)

>>51
ども。
確かにそうなんですよね〜。
1レス辺りの文字数減らしてレスを稼ぐ手もありますが…そうすると、今度は読み応えが減るジレンマがあるような…

53 :いふもの! [saga]:2011/07/11(月) 23:16:30.81 ID:bt958huAO

何とか本日中に続きを書き終わったので、これより投下します。

第2話:"さいきどうっ!"
の後半部分で、前半より少しだけ長くなってます。


54 :いふもの! [saga]:2011/07/11(月) 23:17:20.34 ID:bt958huAO


「わかったわ。五人もいるなら、軽音部の再開にも問題ないだろうし…」

すると、さわ子は何かを確認するように、

「それにしても、ツイン・ベースなんて面白い構成ね? 普通、ツインにするならギターじゃないの? リードとリズムやセカンドに分けて」

「あ〜っ、それは憂がいるから」

「"うい"?」

律の言葉に、さわ子が首をかしげると、

「はいはぁ〜い! ういは、わたしの妹だよ♪」

「まだ中三なんですが、時計のように正確にリズムを刻む娘ですよ」

と、和は唯の舌っ足らずな台詞をフォローした。



「なるほど。本来は、六人グループって事ね? 納得したわ」

ウンウンと頷くさわ子に和は、

「ところで、軽音部の顧問の方はどちらでしょう? 部を再開する許可を戴きたいのですが…」

「え〜と…実は、決まってないのよ」

「ほぇ? な、なんで?」

「まさか、新年度にいきなり部を再開できる人数の入部希望者が来るなんて、誰も思ってなかったから…実は、このまま廃部って方向で話が進んでたのよ」

55 :いふもの! [saga]:2011/07/11(月) 23:18:04.53 ID:bt958huAO


「それは…困りましたわね…」

思わず言葉に詰まる紬。

「新しい顧問の先生を見つけないとね…出来れば、音楽に詳しい」

と、和が呟いた途端、五人の視線が…

「へっ? えっ?」

さわ子に集中する。

「山中先生、その…顧問をやって貰えないでしょうかっ!」

と、珍しく澪が大きな声を上げた。

「「「「よろしくお願いしますっ!」」」」

と、唯和紬律も頭を下げる。

「なってあげたいのは山々だけど…私、吹奏楽部の顧問もしてるから、掛け持ちはちょっと…」

「決して手間はとらせませんっ!」

「自分達の事は、練習も含めて一通りできるからっ!」

紬の言葉に、律も追従する。

「お願い! さわ子先生!」

必死の唯の言葉…
すると、さわ子は、

「ねぇ、平沢さん…一つ聞いていい?」

「はい? はい!」

「どうして、入学式の歌、"The Rose"を選んだの…?」

「ほぇ? ただ、好きな曲だからって言うのもあるけど…」

唯は、テヘヘと照れ笑いを浮かべて、

「凄く感動した映画…"ジャニス・ジョプリン"の生涯を描いた映画の、メインテーマだったから…かなぁ?」

56 :いふもの! [saga]:2011/07/11(月) 23:19:05.65 ID:bt958huAO


「平沢さん…あなた、"ジャニス・ジョプリン"のこと…知ってるの?」

さわ子は、何故か信じられない物を見るような顔をする。

「やだなぁ〜♪ わたし、バカだけどそれぐらいは知ってますよ〜」

と、唯は笑いからふと真面目な顔になり、

「才能や実力があっても生きるのが下手で、若くして死んじゃったのは残念だけど…でも、それでも」

唯は、さわ子を真っ直ぐに見て、

「"自分"っていうのを、不器用なぐらい最後まで貫き通した生き方は、スゴくあの時代のロッカーらしいって思うんだ」

「平沢さん…あなた…」

「わたしも、あんまり器用じゃないけど、ジョプリンみたいに貫ける自分は、まだ無いから…ちょっとだけ羨ましいかも」

そう最後は呟くような声の唯を、和と紬は一瞬だけ…まるで、迷子の子供を見るような心配げな顔で見た。


57 :いふもの! [saga]:2011/07/11(月) 23:20:18.47 ID:bt958huAO


「え〜っ! いい作品は、いつ観ても何度観てもいいんだよぉ〜」

「うんうん♪ 唯ちゃんと映画鑑賞楽しかったなぁ〜♪」

どうやら唯は、大画面高音質で観たくなり、ソフト持参で紬の家のホームシアターまで押し掛けた事があるようだ。

ちなみに、琴吹家のホームシアターは、掛け値なしに、街の小さな映画館が裸足で逃げ出す規模と設備を誇っている。

「いや紬の場合、映画の内容云々以前に唯と一緒にいることが目的でしょうが?」

と、律の言う通り鋭い和のツッコミに、紬はニコニコと微笑み、

「うん♪ 映画鑑賞って言うより、唯ちゃん鑑賞だったかな?」

そして、不意に頬を染めると、

「だって…ウッドストックを観てる時の唯ちゃんって、表情がコロコロ変わって、とぉ〜っても可愛いから♪」

やんやんと頬に手をあて首を振る紬に、和は軽い頭痛を感じながらも、

「まったく、この娘は…まぁ、気持ちは分からなくもないけど」

「「わかるんかいっ!?」」

律澪のハーモニクス・ツッコミ(笑)が綺麗に決まったのだった。


58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/11(月) 23:22:48.83 ID:vA7JYriSO
「の前の名前なくして、地の文混ぜて小説っぽくしてるけど、

台本形式の方がテンポ良く見えるよ

小説家気取りかは知らんが
59 :いふもの! [saga]:2011/07/11(月) 23:23:25.98 ID:bt958huAO

投下ミスって、1レス抜かしました!
なので、第2話の後半の最初から投下し直します。
60 :いふもの! [saga]:2011/07/11(月) 23:24:45.99 ID:bt958huAO



「わかったわ。五人もいるなら、軽音部の再開にも問題ないだろうし…」

すると、さわ子は何かを確認するように、

「それにしても、ツイン・ベースなんて面白い構成ね? 普通、ツインにするならギターじゃないの? リードとリズムやセカンドに分けて」

「あ〜っ、それは憂がいるから」

「"うい"?」

律の言葉に、さわ子が首をかしげると、

「はいはぁ〜い! ういは、わたしの妹だよ♪」

「まだ中三なんですが、時計のように正確にリズムを刻む娘ですよ」

と、和は唯の舌っ足らずな台詞をフォローした。



「なるほど。本来は、六人グループって事ね? 納得したわ」

ウンウンと頷くさわ子に和は、

「ところで、軽音部の顧問の方はどちらでしょう? 部を再開する許可を戴きたいのですが…」

「え〜と…実は、決まってないのよ」

「ほぇ? な、なんで?」

「まさか、新年度にいきなり部を再開できる人数の入部希望者が来るなんて、誰も思ってなかったから…実は、このまま廃部って方向で話が進んでたのよ」

61 :いふもの! [saga]:2011/07/11(月) 23:25:53.07 ID:bt958huAO


「それは…困りましたわね…」

思わず言葉に詰まる紬。

「新しい顧問の先生を見つけないとね…出来れば、音楽に詳しい」

と、和が呟いた途端、五人の視線が…

「へっ? えっ?」

さわ子に集中する。

「山中先生、その…顧問をやって貰えないでしょうかっ!」

と、珍しく澪が大きな声を上げた。

「「「「よろしくお願いしますっ!」」」」

と、唯和紬律も頭を下げる。

「なってあげたいのは山々だけど…私、吹奏楽部の顧問もしてるから、掛け持ちはちょっと…」

「決して手間はとらせませんっ!」

「自分達の事は、練習も含めて一通りできるからっ!」

紬の言葉に、律も追従する。

「お願い! さわ子先生!」

必死の唯の言葉…
すると、さわ子は、

「ねぇ、平沢さん…一つ聞いていい?」

「はい? はい!」

「どうして、入学式の歌、"The Rose"を選んだの…?」

「ほぇ? ただ、好きな曲だからって言うのもあるけど…」

唯は、テヘヘと照れ笑いを浮かべて、

「凄く感動した映画…"ジャニス・ジョプリン"の生涯を描いた映画の、メインテーマだったから…かなぁ?」

62 :いふもの! [saga]:2011/07/11(月) 23:27:11.10 ID:bt958huAO


「平沢さん…あなた、"ジャニス・ジョプリン"のこと…知ってるの?」

さわ子は、何故か信じられない物を見るような顔をする。

「やだなぁ〜♪ わたし、バカだけどそれぐらいは知ってますよ〜」

と、唯は笑いからふと真面目な顔になり、

「才能や実力があっても生きるのが下手で、若くして死んじゃったのは残念だけど…でも、それでも」

唯は、さわ子を真っ直ぐに見て、

「"自分"っていうのを、不器用なぐらい最後まで貫き通した生き方は、スゴくあの時代のロッカーらしいって思うんだ」

「平沢さん…あなた…」

「わたしも、あんまり器用じゃないけど、ジョプリンみたいに貫ける自分は、まだ無いから…ちょっとだけ羨ましいかも」

そう最後は呟くような声の唯を、和と紬は一瞬だけ…まるで、迷子の子供を見るような心配げな顔で見た。


63 :いふもの! [saga]:2011/07/11(月) 23:28:19.27 ID:bt958huAO


「それに、"ウッドストック"に出た有名なシンガーじゃないですかぁ〜。ロックファンなら当然、知ってますって♪」

"ウッドストック"というのは、ヒッピー文化華やかかりし頃の1969のアメリカで行われた野外ロックフェスティバルで、大規模野外ロックフェスの元祖とも言える。

その出演アーティストもあまりにも豪華で、今風に言うなら、ロックファンにとっての"神イベント"とでもなろうか?

実際、"ギターの神様"と言われる"ジミ・ヘンドリックス"が出演していたりするので、あながち間違いな表現ではないだろう。

「"本物"のウッドストックも知ってるのね…」

「記録映画、飽きるぐらい観ましたから♪」
すると、和はハァと小さく溜め息を突き、

「確かに飽きる程…よね? 実際、付き合わされただけなのに、私は飽きたわ」

一時期、唯の部屋のTVには延々とウッドストックが流れていたらしい。


64 :いふもの! [saga]:2011/07/11(月) 23:29:52.57 ID:bt958huAO


「え〜っ! いい作品は、いつ観ても何度観てもいいんだよぉ〜」

「うんうん♪ 唯ちゃんと映画鑑賞楽しかったなぁ〜♪」

どうやら唯は、大画面高音質で観たくなり、ソフト持参で紬の家のホームシアターまで押し掛けた事があるようだ。

ちなみに、琴吹家のホームシアターは、掛け値なしに、街の小さな映画館が裸足で逃げ出す規模と設備を誇っている。

「いや紬の場合、映画の内容云々以前に唯と一緒にいることが目的でしょうが?」

と、律の言う通り鋭い和のツッコミに、紬はニコニコと微笑み、

「うん♪ 映画鑑賞って言うより、唯ちゃん鑑賞だったかな?」

そして、不意に頬を染めると、

「だって…ウッドストックを観てる時の唯ちゃんって、表情がコロコロ変わって、とぉ〜っても可愛いから♪」

やんやんと頬に手をあて首を振る紬に、和は軽い頭痛を感じながらも、

「まったく、この娘は…まぁ、気持ちは分からなくもないけど」

「「わかるんかいっ!?」」

律澪のハーモニクス・ツッコミ(笑)が綺麗に決まったのだった。


65 :いふもの! [saga]:2011/07/11(月) 23:32:53.64 ID:bt958huAO


「平沢さん、ウッドストックの出演者の中で、特に好きなアーティストって誰なのかしら?」

「ほえ? 一応、ギタリストだからジミ・ヘンドリックスは、デフォで好きですけど…それ以外だと、ありきたりだけどザ・フーとか、ジョー・コッカー…あとあと、"ジェファーソン・エアプレーン"!」

「また渋いところに来たわねぇ〜」

呆れてるのか、感心してるのか微妙な表情のさわ子だ。

「にひひ〜。あっ、でも基本的に一番好きな曲は、スターシップ時代の"Sara"だから、純粋なエアプレーン・ファンの人から、ミーハーだって怒られちゃうかも」

細かい説明は省くが、時代と共のメンバーの脱退や加入で、ジェファーソン・エアプレーンはジェファーソン・スターシップ→スターシップと名を変えている。


66 :いふもの! [saga]:2011/07/11(月) 23:33:49.75 ID:bt958huAO


「そんなの勝手に怒らせておけばいいわよ。それはともかく…」

さわ子は、唯を真っ直ぐに見ると、

「結論を言えばね…平沢さん」

「はっ、はいっ!」

「あなたの音楽センス…というか趣味は、今時の女子高生のソレじゃないわ」

「がぁ〜ん!!」

何やらさわ子の言葉に、涙目になる程のダメージを受ける唯。

和と紬が何かを言おうとするが、さわ子はそれを手で制して、

「でも、同時に本物の"ロック・フリーク"でもあるわ。たがら…」

さわ子はたおやかに笑うと、

「顧問、引き受けてあげるわよ♪」

「ふへっ…?」

鳩豆な顔をする唯。
そして、一瞬の沈黙の後…

「「「「「ええぇ〜〜〜っ!!?」」」」」


67 :いふもの! [saga]:2011/07/11(月) 23:34:41.94 ID:bt958huAO


「あ、あの…引き受けてくれるのは嬉しいけど…なんで?」

キョトンとした顔をする唯に、さわ子はクスクス笑い、

「昔からロックファン同士は、横の繋がりが強い物なのよ? つまり…」

"ぴっ!"

さわ子は、周りの先生に気付かれないよう、こっそりとVサイン…いや、"ピースサイン"を出した。

「ああぁ〜っ! "らぶ&ぴーす"♪」

唯はその意味が分かったのか、元気良くピースサインを返す。

そして、和紬律澪もその意味を悟り、四人同時に頷くと…

「「「「ぴーす♪」」」」

さわ子は、生徒であり同時に"後輩"でもある娘達に最大限の笑顔を魅せながら、

「そういう事よ♪」



だが、この時の唯達は知らなかった…

お淑やかさが売りの女教師、山中さわ子の正体が…
桜高軽音部史上もっとも過激なギタリスト、【DEATH DEVIL】の"キャサリン"だということを…!!


68 :いふもの! [saga]:2011/07/11(月) 23:41:40.46 ID:bt958huAO

本日の投下&第2話はこれで終了。

実は、アニメ版5話の"こもん!"も入り、さわ子の軽音部顧問も前倒しです。

第3話は、投下日時は未定ですが、ややオリジナルエピソードの予定で、続く第4話でTV版2話の"がっき!"のフォローを書く予定です。

69 :いふもの! [saga]:2011/07/12(火) 15:42:45.50 ID:huoQEtZAO

今から、第3話を投下します。

今回は短め。
和と紬が唯にダダ甘…ってのが好みなら、少し得なショート・エピソードになっとります。

70 :いふもの! [saga]:2011/07/12(火) 15:44:15.11 ID:huoQEtZAO


部室(音楽室)にて

「ところでさぁ…さわ子先生が顧問引き受けてくれたのはいいけど、部長はどうするの?」

「そういえばそうね…」

唯の言葉に和が頷く。

「普通に和でいいんじゃないのか?」

と、澪が言うが…

「あっ、それ無理」

あっさりと…まるで、眉毛がチャームポイントのバックアップ宇宙人(笑)のような口調で、和は言い切った。

「何故にっ!?」

「だって私、生徒会の仕事もあるもの」

「のどかちゃん、もう生徒会入ったんだぁ〜♪」

「って、ヲイヲイ!…兼任とかって大変じゃないのかよ?」

驚く律だが、和は平然と、

「私、中二の時に生徒会入りして、中三は生徒会長やってたけど、普通に皆とギグってたわよ?」

「和ちゃん、凄い♪」

「そんな大袈裟な物じゃないわ。慣れよ慣れ。それに入った理由の半分は好きでだけど、もう半分は…」

和はクスリと笑い、

「軽音部を裏側…事務手続きとかの面からも、バックアップするつもりだからよ? そうね、例えば…

和は言葉を選ぶように、

「ビートルズにとっての"ブライアン・エプスタイン"みたいに存在になりたいわね」


71 :いふもの! [saga]:2011/07/12(火) 15:45:24.46 ID:huoQEtZAO


第3話"ぶちょう!"


72 :いふもの! [saga]:2011/07/12(火) 15:46:25.29 ID:huoQEtZAO


"ブライアン・エプスタイン"とは、万人が知る"ビートルズ"の産みの親とも言える、デビュー前からの名マネージャー&敏腕プロデューサーだ。

ただの世話人や調整役に留まらす、何かと世間て隔絶されがちなメンバーの、公私を問わない相談良き役でもあった。

ビートルズが音楽活動に集中できるよう、あらゆる面倒事を引き受け、便宜をはかり、メンバーからの信頼は極めて厚かったらしい。
一説によればビートルズ解散の最大の原因は、エプスタインが事故死した後、誰も彼の代わりにビートルズをコントロールできなくなり、グループ内の意見対立が一気に表面化したから…と言われている。

「和が駄目だとすると…唯は、」

澪の台詞が言い終わる前に、和と紬は打てば響くように、

「断固反対よ。唯は、ギタープレイに集中すべきよ」

「はんたぁ〜い♪ 唯ちゃんは、ギー太と戯れてる姿も可愛いで〜す♪」


73 :いふもの! [saga]:2011/07/12(火) 15:47:37.80 ID:huoQEtZAO


「のどかちゃん、むぎちゃん♪」

「お前ら唯に対して過保護すぎだっつーの!」

思わずツッコむ律だったが、

「? 当然の意見だと思うわよ?」

「うんうん♪ だって唯ちゃんだし♪」



「とにかく、唯もNGってんなら…紬とかか?」

律の台詞に紬はキョトンとし、

「私はいいけど…きっとみんなが困ると思うの」

「えっ? どうしてだ?」

紬は澪ににこりと微笑み、

「だって、部長になったら…きっと、ここぞとばかり唯ちゃんを贔屓するもん♪」

「言い切りやがったよ、この娘っ!?」

「確かにそれは問題ね…部長というか、長とつく役職に求められるのは、公平性だもの」

「ちょっ!? 紬の発言に対し、他にコメントは無いのっ!?」

すると、和は不思議そうに澪を見て、

「はぁ? 澪、何を今更でしょ? 相手は紬よ?」

「はぁ〜い♪ 唯ちゃんの一番の親友は和ちゃん、妹は憂ちゃんだけど…」

紬は、ふんっ!とガッツポーズをして、

「唯ちゃんの1番のファン&ファン第1号の地位は、誰であろうと譲りません♪」


74 :いふもの! [saga]:2011/07/12(火) 15:48:45.17 ID:huoQEtZAO


「唯は論外。私は無理で、紬は問題有りすぎ。残るは、澪と律しかいないんだけど…」

「私は無理だって! 第一、キャラじゃないし!」

突然、和に話を振られて大慌ての澪に、律はニヤニヤと笑い、

「み〜おちゅわ〜んは、人見知りでちゅからね〜♪」

「ほっとけ! というか、そんなら律がやれよ!」

「へっ? 私? いいよ」

「えっ? 自分で振っておいてなんだけど…正気か?」

「オイコラ! そーれはどういう意味かにゃ〜?」

ガチッと澪にヘッドロックをかける律だったが、

「いやだって! 律、お前みたいに大雑把で面倒臭がりなのが部長に立候補するなんて、想定外だったから…つい本音が」

「言ってくれるじゃあ〜りませんか! み〜おちゃん!」

"ぎゅ〜っ"

「ギブギブ!」

律の腕をタップする澪を見ながら、和は溜め息をつき、

「皆、律が部長でいいわね? 生徒会方面からフォローはするから。紬と澪は、律のサポートをお願いね?」

「はぁ〜い♪」

「わ、わかった…って、律! いい加減離せ!」


75 :いふもの! [saga]:2011/07/12(火) 15:51:00.82 ID:huoQEtZAO


「りっちゃんとみおちゃんって、いっつも仲良しだよね〜」

唯の暢気な言葉に、律はニカリと笑い、

「そうだぞー。澪は、こうやってイジメればイジメるほど喜ぶからなぁ〜」

「あら? 人の趣味をとやかく言う気は無いけど…澪、あなたってソッチ系だったの?」

「わぁ〜♪ 澪ちゃんって、"えむっ娘"だったんだぁ〜♪」

冷静に返す和に、妙に嬉しそうな紬。

「どうしてそうなるっ!? というか、私はどんな変態キャラだっ!?」

「軽い冗談よ」

「本当じゃないのかぁ〜…残念」

「ムギ…頼むから、本当に残念そうに言わないでくれぇ…」

何か今にも泣きそうな澪であった。



「ねぇねぇ、のどかちゃん」

「なに? 唯」

「"えむっこ"って、なに?」

無邪気に小首をかしげる唯に、和は少し考えてから…

「唯には、まだ少し早いわね? そうねぇ…18歳になる頃に教えてあげるわ」


こうして、軽音部の平和な午後が過ぎてゆくのだった…


76 :いふもの! [saga]:2011/07/12(火) 15:56:33.39 ID:huoQEtZAO

今回の投下と第3話は、これにて終了。

書き貯めが尽きたので次回は未定ですが、第4話は、"がっき!"のパロディになると思います。


それにしても…
この作品って、マヂに需要無いのかな?


77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/12(火) 17:22:11.42 ID:ptHFOixSO

自分はけいおん未読だけど応援してるよ、続き楽しみです
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/12(火) 21:26:32.14 ID:LT+GySUNo
なんという俺好みのけいおん
続き期待してます。

紬のキーボードOASISでいいんじゃないかってくらいみんなの楽器のランクが高えww
79 :いふもの! [saga]:2011/07/12(火) 21:30:55.78 ID:huoQEtZAO
>>77
どうも。
けいおん!を未読でも、ガールズバンド物として楽しんで貰えれば嬉しいッス。



何となく文章が出来たので、第4話の前半を投下します。

原作みたいにさわやかじゃないですが、一応TV版1期の第2話"がっき!"のオマージュです。
ただ、今回の投下分その導入部みたいな感じですが(笑)

80 :いふもの! [saga]:2011/07/12(火) 21:31:52.33 ID:huoQEtZAO


琴吹邸
とある日の朝

「紬、少し相談が有るのだが…いいか?」

「はい、お父様」

「実は…」

父の言葉は、かなりポジティブな内容なのか、普段よりにこやかな紬の顔は益々上機嫌になってきた。

「…という訳なんだ。で、是非に唯君達にも参加して欲しいと思ってね」

「そういう事なら、喜んで協力させて頂きます♪ ちょっと絡め手になるけど…こんな方法はどうでしょう? お父様のサポートが必要なのですが…」

紬が即興で考えたアイデアを披露する。
琴吹父は、娘のアイデアに頷きながら、ぽわぽわしてるように見えても娘にもしっかり"琴吹の血"が受け継がれてる事を再認識し、心内で歓喜した。

「その程度なら、いくらでも協力するさ。そこそこ有名なアーティストを呼ぶのに比べるなら、それでも安いもんさ」

「うふふ♪ お父様、ありがとうございます」

紬は、通学鞄を持ち、

「これでまた、唯ちゃんの可愛い姿が見れそう♪」


81 :いふもの! [saga]:2011/07/12(火) 21:34:28.00 ID:huoQEtZAO


第4話:"ぶつよくっ!"


82 :いふもの! [saga]:2011/07/12(火) 21:35:26.08 ID:huoQEtZAO


場所はお馴染みの音楽室、時は放課後

「う〜ん…こんな感じかな?」

ソファーに腰かける唯は、調整を終えた足元のマルチ・エフェクター、ZoomのG9.2tt、通称"キューべぇ"のZペダルを踏みながら、軽くギー太…レスポールの1960ヒスコレを鳴らしてみる。

"キュキュギュィーーーン♪"

BOSSのMT-1やKlonのCentaurなんかをイミュレートして生み出した、弾き出しは乾いてるけど不思議と甘く歪んで伸びるディストーション&オーバードライブ・サウンドを聞いて、唯は満足げな表情で、

「うんうん♪ なんか、いい感じになってきた〜♪ 後は、リバーブいじって…いっそBIG MUFFも被せてみようかな? サスティーンもちこっと上乗せしたいし…」

「唯ちゃ〜ん、お茶はいったわよ〜♪」

紬の言葉にパブロフちっくに唯はピクッと反応して、

「今いく〜っ!」


83 :いふもの! [saga]:2011/07/12(火) 21:36:29.76 ID:huoQEtZAO


「唯、【自分らしい音】は固まってきたの?」

マイセンのティーセットに注がれるハロッズのダージリン・ティー。
登る上質な茶葉の香りを楽しむ為に、注がれるのはストレート。
ミルクや砂糖はお好みで。

紅茶というのは飲むにはやや熱すぎるぐらいに煎れるのが、本場の慣わしだ。
それは、冷めて飲みごろになるまでお喋りを楽しむ為という意味らしい。

その古式豊かしい時代のオールド・イングランドの風習に、軽音部も素直に従ってるようだ。

というか、優雅に午後を楽しむ…放課後のティータイムこそが、今の軽音部の日常だった。

「あはは〜…実はこれが中々難しくてねぇ〜。ボンヤリと"音のイメージ"はあるんだけど…」

「唯ちゃんの"自分らしい音"?」

と、聞いたのは顧問になってすぐに常駐するようになったさわ子だ。
ちなみに、部室にいる時に全員を下の名前+ちゃん付けで呼ぶようになっていた。


84 :いふもの! [saga]:2011/07/12(火) 21:38:14.15 ID:huoQEtZAO


「うん。ギー太と出会った頃は、ただ一緒に遊べれば良かったんだけど、そのうちギー太で出せる音を色々試してみたくなって…今は、ギー太と一緒に出せる"わたしらしい音"を追求したくなっちゃって…」

まるで恋人とのノロケ話をするように、唯はテヘへ〜♪と照れ笑いをして、

「駄目だよね〜。付き合いが長くて深くなればなるほど、わたし、どんどん贅沢になってくよ♪」

「いや、そういう姿勢は凄く大事だと思うぞ? 律も見習って、もう少し練習を熱心にしたらどうだ?」

「なんでそこで私を引き合いに出すんだよぉーっ!」

チラッと見る澪に、ブーブーと唇を尖らせる律。
だけど、唯は…

「ほぇ? みおちゃん、わたしも別に練習してないよ? ギー太やキューべぇと遊んでるだけだし」

「うふふ〜♪ 唯ちゃんらしいなぁ♪」

「唯の凄いとこは、そういう所よね?」

ニコニコ顔の澪に、小さく苦笑する和。

「努力を努力って思わないタイプかぁ〜…いるとこにはいるものね」

『"音楽の申し子"っていうのは』という台詞を、さわ子はあえて飲み込んだ。


85 :いふもの! [saga]:2011/07/12(火) 21:47:24.23 ID:huoQEtZAO
>>78
ありがとうッス。
実は天下の名機"OASYS"も紬の相方に考えてんですが、さすがに初めてのキーボードな人に、あのシーケンサー系は(笑)
それにTRITONの後継は、M3っぽいですし。
ただ、紬も新装備イベントは有ります。



本日の投下は、これで終了。
2話ぐらいの少し長めの話になりそうなので、次回は未定です。


86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/13(水) 06:06:31.29 ID:0CbjgIfDO
練られてるみたいだし期待してるから>>76みたいなことは書かないで淡々としてればいいのにと思う

レスがつかないのは投下量が少ないからまだ様子見って人が多いからだし、三桁越えれば自ずと増えるよ

偉そうなこと言ってごめん とにかく期待してるのがここにいるので頑張れ
87 :いふおん! [saga]:2011/07/14(木) 15:00:37.46 ID:yGOvq6PAO
>>86
いえいえ、寧ろそういう指摘は有難いッス。
どうも、レスが少ないと自分の書いてる作品の判断迷ってしまいます。





これより、投下を開始します。
第4話が想定してたより長くなってしまったので、今回は中盤って感じで。



88 :いふもの! [saga]:2011/07/14(木) 15:02:00.52 ID:yGOvq6PAO


「ねぇ、ところでさわ子先生も顧問で来てくれた事だし、そろそろ新しい機材とか欲しくならない?」

お茶のお代わりを持ってきた時、不意に紬はそう切り出した。

「そりゃ欲しいよ〜。そろそろ新しいヘッドアンプとか欲しいし、試してみたいエフェクターとかあるしぃ〜」

「あら? 買い替えたいの?」

「うん♪ 新しいの買ったら、"マー吉"をういにあげられるし」

と、唯は自分の中学時代から愛用するヘッドアンプのマーシャル社"MA50H"とスピーカー・キャビネット"M412A"を見る。

"マー吉"という愛称は、おそらく系番の"MA"から来てるのだろう。

「ほら、ういの使ってるのって、スタックって言っても15Wの初心者向けマイクロ・スタックでしょ?」


89 :いふもの! [saga]:2011/07/14(木) 15:02:57.49 ID:yGOvq6PAO


少し音楽専門用語を書くと、ヘッド・アンプ(アンプ)とスピーカー・キャビネット(キャビネ)の二つを合わせると、"アンプとキャビネを積み重ねる"という意味で"スタック"と言う。

また、アンプ1台にキャビネ1台が基本中の基本だが、ライブなど音の広がりを求められるステージでは、キャビネを二台(Aキャビ、Bキャビ)縦に重ねて、その上に乗せるアンプに接続する事が一般的だ。
例えば、名前が出てきたM412AのはAは、"Aキャビ"という意味で、重ねる場合は上に乗せるキャビネだ。

憂が使っているのは、唯と同じマーシャル社の物だが、お得な入門者向け廉価版で、出力とサイズが全体的に小さいアンプとAキャビ、Bキャビのセット販売のマイクロ・スタック"MG15FXMSDM"だった。


90 :いふもの! [saga]:2011/07/14(木) 15:03:38.55 ID:yGOvq6PAO


「姉としては、ういにもそろそろフルサイズのヘッドアンプとキャビネの本格的スタックを使わせてあげたいのだよ」

「唯は、相変わらず憂ちゃん思いだな」

と、感心する澪。唯は、
「そんな立派な物じゃないよ〜」

と照れてから少し考えて、

「あとあと、ライブとかやるなら、412のBキャビも追加したいなぁ〜。Line6のエフェクターとかも使ってみたいし」

紬はうんうんと頷き、

「ねぇねぇ、みんなは他に欲しい楽器とか機材とか無いのかな?」

「う〜ん…私は新しいアンプとかマルチ・エフェクターが、今は一番欲しいかな? BOSSのGT-10Bとか」

と、澪が言うと和は、

「エフェクター、結局マルチにするんだ? 唯の影響?」

「どちらかと言えば、和の影響だよ。和、BOSSのME-50B使ってるだろ?」

「ああ、なるほど」

和は、少し嬉しげに笑い、

「私はエフェクターなら、そっちよりZoomのB9.1utを使ってみたいわね。値段も大分、こなれてきたし…それに唯のキューべぇ見てたら、なんだか欲しくなってきちゃったわ」

『それにボディカラー、"赤"だもの』と、和は心の中で付け加える。


91 :いふもの! [saga]:2011/07/14(木) 15:04:48.96 ID:yGOvq6PAO


すると澪は身を乗り出すように、

「だ、だったら! 二人揃ってエフェクター買ったら、お互い使い比べしてみないかっ!」

澪の勢いに和は一瞬キョトンとするが、自分の突発的行動が恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にする澪にくすくす笑いだし、

「ええ。いいわよ」

さて、こんな美味しいシチュエーションで大人しく黙っている筈もないのが、律である。

「はいはぁ〜い! せんせぇ〜っ! ツインペダルとタムとフロア・タムとスプラッシュ・シンバルを追加したいです!」

「いや、私に主張されてもね〜」

「ねぇねぇ、のどかちゃんはエフェクター以外に欲しい物、無いの?」

「あるに決まってるでしょ? 唯に付き合って音楽始めたその時から欲しいのは…」

と、和は一度言葉を区切ると、

「"ビリー・シーン"のシグネイチャー・モデル、YAMAHA"Attitude Limited II/LR"の一本よ」


92 :いふもの! [saga]:2011/07/14(木) 15:05:17.48 ID:yGOvq6PAO


すると澪は身を乗り出すように、

「だ、だったら! 二人揃ってエフェクター買ったら、お互い使い比べしてみないかっ!」

澪の勢いに和は一瞬キョトンとするが、自分の突発的行動が恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にする澪にくすくす笑いだし、

「ええ。いいわよ」

さて、こんな美味しいシチュエーションで大人しく黙っている筈もないのが、律である。

「はいはぁ〜い! せんせぇ〜っ! ツインペダルとタムとフロア・タムとスプラッシュ・シンバルを追加したいです!」

「いや、私に主張されてもね〜」

「ねぇねぇ、のどかちゃんはエフェクター以外に欲しい物、無いの?」

「あるに決まってるでしょ? 唯に付き合って音楽始めたその時から欲しいのは…」

と、和は一度言葉を区切ると、

「"ビリー・シーン"のシグネイチャー・モデル、YAMAHA"Attitude Limited II/LR"の一本よ」


93 :いふもの! [saga]:2011/07/14(木) 15:05:59.40 ID:yGOvq6PAO


すると澪は身を乗り出すように、

「だ、だったら! 二人揃ってエフェクター買ったら、お互い使い比べしてみないかっ!」

澪の勢いに和は一瞬キョトンとするが、自分の突発的行動が恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にする澪にくすくす笑いだし、

「ええ。いいわよ」

さて、こんな美味しいシチュエーションで大人しく黙っている筈もないのが、律である。

「はいはぁ〜い! せんせぇ〜っ! ツインペダルとタムとフロア・タムとスプラッシュ・シンバルを追加したいです!」

「いや、私に主張されてもね〜」

「ねぇねぇ、のどかちゃんはエフェクター以外に欲しい物、無いの?」

「あるに決まってるでしょ? 唯に付き合って音楽始めたその時から欲しいのは…」

と、和は一度言葉を区切ると、

「"ビリー・シーン"のシグネイチャー・モデル、YAMAHA"Attitude Limited II/LR"の一本よ」


94 :いふもの! [saga]:2011/07/14(木) 15:07:22.74 ID:yGOvq6PAO


すると澪は身を乗り出すように、

「だ、だったら! 二人揃ってエフェクター買ったら、お互い使い比べしてみないかっ!」

澪の勢いに和は一瞬キョトンとするが、自分の突発的行動が恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にする澪にくすくす笑いだし、

「ええ。いいわよ」

さて、こんな美味しいシチュエーションで大人しく黙っている筈もないのが、律である。

「はいはぁ〜い! せんせぇ〜っ! ツインペダルとタムとフロア・タムとスプラッシュ・シンバルを追加したいです!」

「いや、私に主張されてもね〜」

「ねぇねぇ、のどかちゃんはエフェクター以外に欲しい物、無いの?」

「あるに決まってるでしょ? 唯に付き合って音楽始めたその時から欲しいのは…」

と、和は一度言葉を区切ると、

「"ビリー・シーン"のシグネイチャー・モデル、YAMAHA"Attitude Limited II/LR"の一本よ」


95 :いふもの! [saga]:2011/07/14(木) 15:10:15.03 ID:yGOvq6PAO


エラー表示が出てやりなおしてたら、四重書き込みになってしまいました!

流石に読みにくいので、もう一度最初から再投下します。

96 :いふもの! [saga]:2011/07/14(木) 15:12:40.45 ID:yGOvq6PAO


「ねぇ、ところでさわ子先生も顧問で来てくれた事だし、そろそろ新しい機材とか欲しくならない?」

お茶のお代わりを持ってきた時、不意に紬はそう切り出した。

「そりゃ欲しいよ〜。そろそろ新しいヘッドアンプとか欲しいし、試してみたいエフェクターとかあるしぃ〜」

「あら? 買い替えたいの?」

「うん♪ 新しいの買ったら、"マー吉"をういにあげられるし」

と、唯は自分の中学時代から愛用するヘッドアンプのマーシャル社"MA50H"とスピーカー・キャビネット"M412A"を見る。

"マー吉"という愛称は、おそらく系番の"MA"から来てるのだろう。

「ほら、ういの使ってるのって、スタックって言っても15Wの初心者向けマイクロ・スタックでしょ?」


97 :いふもの! [saga]:2011/07/14(木) 15:14:19.37 ID:yGOvq6PAO


少し音楽専門用語を書くと、ヘッド・アンプ(アンプ)とスピーカー・キャビネット(キャビネ)の二つを合わせると、"アンプとキャビネを積み重ねる"という意味で"スタック"と言う。

また、アンプ1台にキャビネ1台が基本中の基本だが、ライブなど音の広がりを求められるステージでは、キャビネを二台(Aキャビ、Bキャビ)縦に重ねて、その上に乗せるアンプに接続する事が一般的だ。
例えば、名前が出てきたM412AのはAは、"Aキャビ"という意味で、重ねる場合は上に乗せるキャビネだ。

憂が使っているのは、唯と同じマーシャル社の物だが、お得な入門者向け廉価版で、出力とサイズが全体的に小さいアンプとAキャビ、Bキャビのセット販売のマイクロ・スタック"MG15FXMSDM"だった。


98 :いふもの! [saga]:2011/07/14(木) 15:15:15.48 ID:yGOvq6PAO


「姉としては、ういにもそろそろフルサイズのヘッドアンプとキャビネの本格的スタックを使わせてあげたいのだよ」

「唯は、相変わらず憂ちゃん思いだな」

と、感心する澪。唯は、
「そんな立派な物じゃないよ〜」

と照れてから少し考えて、

「あとあと、ライブとかやるなら、412のBキャビも追加したいなぁ〜。Line6のエフェクターとかも使ってみたいし」

紬はうんうんと頷き、

「ねぇねぇ、みんなは他に欲しい楽器とか機材とか無いのかな?」

「う〜ん…私は新しいアンプとかマルチ・エフェクターが、今は一番欲しいかな? BOSSのGT-10Bとか」

と、澪が言うと和は、

「エフェクター、結局マルチにするんだ? 唯の影響?」

「どちらかと言えば、和の影響だよ。和、BOSSのME-50B使ってるだろ?」

「ああ、なるほど」

和は、少し嬉しげに笑い、

「私はエフェクターなら、そっちよりZoomのB9.1utを使ってみたいわね。値段も大分、こなれてきたし…それに唯のキューべぇ見てたら、なんだか欲しくなってきちゃったわ」

『それにボディカラー、"赤"だもの』と、和は心の中で付け加える。


99 :いふもの! [saga]:2011/07/14(木) 15:16:25.44 ID:yGOvq6PAO


すると澪は身を乗り出すように、

「だ、だったら! 二人揃ってエフェクター買ったら、お互い使い比べしてみないかっ!」

澪の勢いに和は一瞬キョトンとするが、自分の突発的行動が恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にする澪にくすくす笑いだし、

「ええ。いいわよ」

さて、こんな美味しいシチュエーションで大人しく黙っている筈もないのが、律である。

「はいはぁ〜い! せんせぇ〜っ! ツインペダルとタムとフロア・タムとスプラッシュ・シンバルを追加したいです!」

「いや、私に主張されてもね〜」

「ねぇねぇ、のどかちゃんはエフェクター以外に欲しい物、無いの?」

「あるに決まってるでしょ? 唯に付き合って音楽始めたその時から欲しいのは…」

と、和は一度言葉を区切ると、

「"ビリー・シーン"のシグネイチャー・モデル、YAMAHA"Attitude Limited II/LR"の一本よ」


100 :いふもの! [saga]:2011/07/14(木) 15:17:15.04 ID:yGOvq6PAO


シグネイチャー・モデルというのは、有名プレイヤーとタイアップした製品の事だ。
その範囲は、プレイヤーが監修しただけの物から、メーカーが特別仕様のプレイヤー使用楽器のレプリカとして販売する物まで幅広い。

例えば、和が今使ってる"BB714BS/LR"は、ビリー・シーンのレプリカではなく、監修した方の廉価版シグネイチャーモデルだ。


レプリカにしても、販売促進の為にネーミングだけ借りたようなモデルから、本物と同じ職人が同じ材料/工程で作った物まで、再現率はピンキリだが、和の欲しがってる"Attitude Limited II"は、かなり本物に近いレプリカだった。

「のどかちゃん、相変わらずビリー・シーン好きだねぇ〜♪」

唯の言葉に、和は赤いセミフレームの眼鏡をかけなおし…

「シーンは…神の子よ」

眼鏡のレンズが、キランと光った!


101 :いふもの! [saga]:2011/07/14(木) 15:20:21.60 ID:yGOvq6PAO

ちょっとエラーが多いので、今回の投下は終了にします。

時間も無いので、残りは夜に行う予定ッス。


102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/14(木) 15:30:36.11 ID:B/+hCHfDO
103 :いふもの! [saga]:2011/07/14(木) 21:07:45.32 ID:yGOvq6PAO
>>102
ども!

昼間、エラー出まくった為に中断した第4話中編の続きを投下します。

数は4レスで内容はある意味、"和無双(笑)"で、作者を含む和好き得な内容となっております。

104 :いふもの! [saga]:2011/07/14(木) 21:08:39.67 ID:yGOvq6PAO


「あれ? ビリー・シーン・モデルって、確か"Attitude Limited 3"って後継モデル、もう出てなかったっけ?」

流石は同じくベーシストと言うべきか?
澪の言葉は事実だったが、

「…Limited3には"LR"、ラヴァレッド(熔岩の赤)のカラー設定が無いのよ」

「相変わらず好きだなぁ〜…赤。和はキャスバル兄さんかよ?」

と、呆れ気味の律に、

「いっ、いいじゃない! 澪の3倍速く弾けるんだからっ!」

"がぁ〜ん…!"

和のど真ん中ストレートに、思い切りダメージを受ける澪だ。

「ううっ…どぉ〜せ、私のベースさばきはドン臭いですよぉ〜だ」

しくしくと泣き出しそうな澪に和は、

「あら? 澪、気にすること無いわよ? たまたま私がトリッキーなベースプレイが得意ってだけの話だもの」

「でも、和のがベース上手いの事実だしさ…」

「そうじゃなくて、住み分けって話。そうね…例えば、私は澪が得意なスラップ奏法って苦手よ? ベーシックテクなのにね。それに…」

和はニコリと優しげに澪に微笑み、

「コーラスが精々な私に、ヴォーカルなんて出来ないわよ?」


105 :いふもの! [saga]:2011/07/14(木) 21:09:23.43 ID:yGOvq6PAO


『『『『それ、ベーシスト関係無いじゃん…』』』』

と、二人を除く皆が思ったが、誰も口に出す者はいなかったという。

「ま、まあ、和はベーシストというよりベース・ソロもこなす、弾いて聴かせる"ベース・ギタリスト"って感じだから、ちゃんと住み分けは出来てるって!」

と、フォローを入れる律に和は頷き、

「確かにね。"バンドの音を、低音から下地を作って支える"ってベースの本来の役割を考えるなら、間違いなく澪の方がベーシストとしては正統派だわ」

意外や意外。和は普段の理知的な言動や洗練された物腰から、優等生のいい子ちゃん型に思われがちだが、実は真逆なベクトルな部分がある。

そう、シールド(ケーブル)まで派手な"赤"にしてる事からわかるように、存外に自己主張の強く、目立ちたがり屋な側面があるのだ。

「私は、物理的立ち位置はともかく、音では前に出たがるから…本当ならベーシストには、あんまり向かないのかもね」

「そんなこと無い! 私、和のベーステクは凄いと思う! 憧れるし、目標なんだ!」


106 :いふもの! [saga]:2011/07/14(木) 21:10:52.89 ID:yGOvq6PAO


「ありがとう。少し照れるけど、素直に嬉しいわ」

と、本当に照れ臭そうに和は鼻の頭をかいて、

「でもね…極論すれば結局、私は"アストレイ"であって"オルタナティブ"じゃないのよ」

つまり、"王道に非ず"であるが故に"既存の物に代わる何か"ではない…和は、そう笑った。

「シーンのベースプレイは、他のベーシストの目標や憧れになっても、決してベーシストの主流にはならない…だって、技巧や演奏の個性が強すぎるもの」

そして、和はしっかりと正面から澪を見て、

「私の目指すプレイスタイルがシーンである以上、逆にアストレイである事…非王道であり続ける事は、曲げられないのよ」

澪は、レンズの奥にある強い意思の宿る和の瞳に、何か吸い込まれそうになる感覚を感じた。


107 :いふもの! [saga]:2011/07/14(木) 21:11:30.52 ID:yGOvq6PAO


(和は、本当に凄いな…)

「でも、それを言ったら、私はヴォーカルとの兼任だし…やっぱり、正統派じゃない気がする」

「ならいいじゃない」

和はカラッと笑い、

「非王道を走る私と、兼任ベーシストの澪…二人合わせて一人前って事で、ね?」

「和…」



「ふ〜ん。和ちゃんは、ビリー・シーンがそこまで好きなんだ? 世代的には、再結成した後の"MR.BIG"あたりだろうけど…」

さわ子は信念とすら言える和の思いに、半ば感心しながら、

「趣味渋そうだから、"ナイアシン"辺りからのプレイが好きだとかかな?」

と言うが、和は再び眼鏡を直すポーズで、キラリとレンズを煌めかせ、

「…"デイヴィッド・リー・ロス・バンド"にいた頃のプレイからです。タラスの頃のプレイは、中々映像が手に入らなくて」

さわ子の想像の右斜め上を行く渋さの和であった(笑)

蛇足ながら、ビリー・シーンがデイヴィッド・リー・ロス・バンドに在籍していたのは、第一期MR.BIGの更に前…1988年以前の話だ。

108 :いふもの! [saga]:2011/07/14(木) 21:15:25.16 ID:yGOvq6PAO

以上で本日の投下終了です。

日時は未定ですが、次回の投下で、第4話は終わる予定。



蛇足ながら、ラヴァレッドのベースをステージで派手に掻き鳴らす和を想像すると、やけに萌える今日この頃(笑)


109 :いふもの! [saga]:2011/07/15(金) 15:41:11.47 ID:CSZVTuqAO
これより、5レス投下します。
これで、第4話は終了ッス。

先に書いておくと、実際に買物に行くのは、次の第5話からです。

110 :いふもの! [saga]:2011/07/15(金) 15:41:58.12 ID:CSZVTuqAO


「そう言えばさぁ、むぎちゃんは欲しい楽器とか機材とか無いの?」

「当然、あるわよ? そろそろキーボードプレイにも慣れてきたし、一台新調したいなぁ〜って思ってたから。それに、ちょうど欲しいキーボードが出たの♪」

「ほぇ〜! あんなにいっぱい鍵盤ついてるの、もう一台使うのっ!?」

唯の驚嘆を愛らしく思ったのか、紬は柔らかく微笑み、

「狙ってるのは、今使ってるM3と同じKORGの製品なんだけど、過去のキーボードの音源の大半は入ってる出来のいい子らしいのよ♪」

「な、なんだかスゴそうだよっ!」

「実際、"お化けシンセの後継者"って呼ばれてるらしいわ♪」


111 :いふもの! [saga]:2011/07/15(金) 15:42:28.33 ID:CSZVTuqAO


「なんか、ムギのもメッチャ高そうだなぁ〜」

名前を聞いただけで汗タラ状態の律だったが、紬は事も無げに、

「確かに、安くはないと思うけど…でも、30万円くらいよ? 憂ちゃんのギター(クラプトン・シグネイチャーモデル)と大体同じくらいで、唯ちゃんのギー太と比べるなら、まだ安いわ」

「それ比較対象間違ってるからっ!」

と、澪の当然と言えば当然過ぎるツッコミに和も頷き、

「少なくとも、一般的な女子高生の金銭感覚じゃないわね?」

「でもでも、ロゴマークを入れて限定版と銘打っただけで、原材料費無視のプレミア値段に吊り上げたブランドバッグに同じお金を出すよりは、ずっと健全で有意義な使い方だと思うの!」


112 :いふもの! [saga]:2011/07/15(金) 15:43:14.64 ID:CSZVTuqAO


「それってLV社を筆頭に、C社とかG社とかのこと?」

「コラコ〜ラ! そういう事は言わないの…夢が無くなるから」

と、思わずツッコむさわ子。
まぁ、彼女もそね手のアイテムには、興味が全くない訳じゃないらしい。

「わたし、むぎちゃんにさんせ〜♪ 同じお金出すんだったら、絶対に楽器とかに使うもん。だって…」

唯はあまりに無邪気に紬に微笑んだ。

「そっちの方が夢があるもんね♪」

「ん〜っ♪ 流石、唯ちゃん! よくわかってるぅ♪」

"むぎゅっ!"

「うきゅ!? むぎちゃん、そんなに強くギュッってされたら苦しいよぉ〜」

「うふふ、ごめんなさい♪ なんだかつい嬉しくって♪」

少し腕の力は緩めたが、それでもハグした唯を解放する気は無いらしい紬は、上機嫌に微笑んだまま、

「クスクス♪ みんな欲しい物があるみたいだし…そうだっ! 今度、うちの楽器屋さんに機材とか見に行きましょうよ♪」


113 :いふもの! [saga]:2011/07/15(金) 15:44:33.97 ID:CSZVTuqAO


「「「「えっ?」」」」

一様に驚いた顔をする面々。

「それは構わないけど…ちょっと寂しい気分ににゃるかも。値段とお財布の中身を比べた途端に」

「確かに…」

唯の言葉に、澪がどこか憂いを帯びた表情で呟いた。

「それでもいいじゃない? 見るだけなら、無料(タダ)だもの。今、自分が欲しい物を確認するだけで、励みになると思わない?」

「まぁ、そりゃ確かにな…」

紬の言葉に軽く納得する律。

「じゃあ、みんなでウィンドショッピングけって〜い♪ あっ、勿論憂ちゃんも誘ってね♪」

そう盛り上げた紬に…

「………」

和だけは腕を組み、何かを考えていた。


114 :いふもの! [saga]:2011/07/15(金) 15:45:24.64 ID:CSZVTuqAO


そして、唯律澪がアレが欲しいコレが欲しいと盛り上がる中、

「…紬、一体今度は何を企んでるのかしら?」

「流石に和ちゃんは誤魔化せないわね〜♪」

ニコニコしたままの紬に、和は半分ほど呆れ、

「話の展開がかなり強引だったもの。私じゃなくても気づくわよ」

と溜め息を突く。

「否定する気はないって訳ね? まぁ、あなたの事だから、唯のマイナスにはならないのは、間違いないだろうけど…」

「う・ふ・ふ〜♪ むしろ素敵な事じゃないかな? 唯ちゃんは勿論だけど、みんなにとっても…ね?」

ウインクの紬に和は苦笑しながら、

「わかったわかった。とりあえず、信用しておいてあげる」

「きっと高校生活は、すごくすごぉ〜く楽しくなるわよ〜♪」


115 :いふもの! [saga]:2011/07/15(金) 15:51:27.98 ID:CSZVTuqAO
投下と第4話終了。

使わせたい機材が多杉(笑)て、まだ第5話がわずかしか書いて無いので、次回投下は未定ッス。
ただ、今日は無いです。



蛇足的仕様変更(笑)


ヘッドアンプ
マーシャル MA50H→MA100H

ギター
レスポール1960ヒスコレ
2005年製→2006年製

いや、本当に読者さん達にはどーでもよいかもしれない、作者のこだわりなんです(笑)


116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/16(土) 03:47:11.19 ID:ENLP8gXDO
乙 楽器うんちく楽しい
それを絡めるのが難しいのは分かるんだけど、もっと一話あたり長くすれば読みごたえが……レス数じゃなくて話自体のことね
117 :いふもの! [saga]:2011/07/17(日) 10:59:42.11 ID:4UmRfXfAO
>>116
ども!
確かにその通りなんですよね。
ただ、携帯書き故の様々な制限なんかがあるので、中々上手くいかないッス。
今から投下する分は、かなり楽器&機材ネタですよ〜。



今から第5話の投下を開始します。

今回は、かなり楽器&機材ネタが多いですが、けいおん!に出てくる楽器が分かるなら、音とかをイメージすると、かなり愉快な事に(笑)



118 :いふもの! [saga]:2011/07/17(日) 11:00:48.42 ID:4UmRfXfAO


第5話:"かいましっ!"


119 :いふもの! [saga]:2011/07/17(日) 11:01:50.41 ID:4UmRfXfAO


数日後…
"コトブキ楽器店"

「すっご〜い! JVM210HCFが半額になってる〜♪ 外箱が痛んでるってだけで、こんなに安くなるんだぁ…」

「ねぇねぇ! このC412Tってキャビネ、中身は1960Vとおんなじスピーカー入ってるよ〜♪ しかもちびっと安い」

「このJS2400-HWってギター、なんかギー太みたいに丸っこくて白くて可愛い〜♪」

多分、系番だけじゃ何が何やら分からないと思うので、少し補足しておくと…

JVM210HCF→マーシャル社のヘッドアンプ。
1960V→マーシャル社のスピーカーキャビネ。
C412T→カービン(Carvin)社のキャビネ。
JS2400→アイバニーズ社のエレキギター。

ちなみに1960VとC412Tは、"セレッション・ヴィンテージ"という知る人ぞ知る高級スピーカーが4基詰まっている。

「唯〜、あんまりはしゃぐと転ぶわよ〜」

「お姉ちゃん、楽しそう♪」

「唯ちゃんにとって、ここはパラダイスですもの♪」

ギー太と共に唯にとって、音楽機材の山は宝の山に等しいのだろう。

「それにしても、JVM210HCFにC412T、JS2400か…なるほど、流石に唯。大した嗅覚だわ」

120 :いふもの! [saga]:2011/07/17(日) 11:02:31.07 ID:4UmRfXfAO


「えっ? どういうこと?」

意味が分からず、思わずキョトンとする紬。

「憂…もしかして最近の唯って、デイヴ・ムステインとスティーブ・ヴァイ、あとジョー・サトリアーニなんかの演奏を見たりとか、参考とかにしてない?」

「えっ…?」

憂は一瞬、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして…

「和さん大正解! どうしてわかったのっ!?」

「あ〜、やっぱりね」

驚く憂に、和はクスクス笑い、

「唯が食い付いたギターと機材って、全部シグネイチャーモデルなのよ。まあ、唯の事だから一々調べたって言うより…」

「きっと、何となく憶えてたのね♪」

「しかも、"実戦"で十分に使える機材ばかりピックアップしてるわね」

「お〜っ♪ このどっかで見たことのある"取っ手の付いたギター"、なんか投げ売りしてるよ〜♪ なんか、持ち運びしやすい」

「アイバニーズのJEM7V…スティーブ・ヴァイのシグネイチャー・モデルね。それにしても取っ手付きって…ポットとかじゃないんだから」

と、和は苦笑気味に溜め息を突き、

「真面目なヴァイのファンが聞いたら、それこそ絶句しそうね」


121 :いふもの! [saga]:2011/07/17(日) 11:03:45.29 ID:4UmRfXfAO


「さて、私も自分の試したい機材でも漁ってこようかしら?」

「私は、お姉ちゃんに付き添いますね♪」

憂が元気に手を挙げると、和は紬を見ると、

「もう一度確認するけど…本当に、好きに機材を試して良いのね? 値段に上限とか無しに」

「勿論よ♪ 店にある試演スタジオも、今日は貸し切りでいいってお父様の許可も取ってるわ。後でみんなで機材や楽器を持ち込んで、ジャム・セッションでもやりましょう♪」

「わ〜い♪ 楽しみ! 私、平日はみなさんと気軽にセッションできないから、すっごく嬉しいです♪」

「いいわ。せっかくだし、私も色々と試してみることにするわね」

なんのかんの言いつつも楽しそうな和である。
ビリー・シーン(正確にはMr.Big)の"To be with you"を鼻歌で歌ってるあたり、まず間違いないだろう。

「さて、私も選ばないと♪ 73鍵と88鍵どっちにしようかな〜♪」

と、紬がストーンズの"Satisfaction"を口ずさみながら向かったのは、当然のようにキーボード売り場だった。

122 :いふもの! [saga]:2011/07/17(日) 11:04:33.05 ID:4UmRfXfAO


そして一方その頃、試演ルームでは…

律の今使ってるドラムセットは、基本的な物で、タム×2、バス、スネア+シンバルのクラッシュ、ライド、ハイハットで構成されてる。

「まぁ、こんな物かな?」

そこで律が持ち込んだのは、今使ってるのと同じヤマハのフロアタム、ジルジャンのスプラッシュ・シンバル、そしてずっと憧れていた、単品価格4万を下る事の無いツインペダル…名門Tama社のHP910HLF"スピード・コブラ"だ。

そこまでは、先にルームに入っていた澪にも理解できたのだが…

「律! お前、エレドラ(電子ドラム)のタムなんて持ってきてどうするんだよっ!? それも二つも!」

律は、更にヤマハの電子ドラムのタムを二つ持ち込んでいたのだ。

「ん〜…タム×3、バス、スネア、フロアタム、シンバル×4をツインペダルで叩くのが、私の理想なんだけどさ…」

律は頭を掻きながら、

「…唯の奴、けっこう80'sのヤンキーロック演りたがるじゃんか?」

「う、うん…」

「あれって結構、エレドラの音が多いんだよな〜ってさ」


123 :いふもの! [saga]:2011/07/17(日) 11:05:37.11 ID:4UmRfXfAO


「そりゃ、エレドラの音なんて、ムギのキーボードにかかれば一発再現だろうけどさ…」

律はふと真顔になり、

「でも、なんかそれって…ドラマーとしてスッゲー悔しいじゃん?」



「まぁ、そんな訳で前はタム×2&エレタム×2って感じにしようかってな!」

「律…」

「あ〜、それとエレタムは軽いし、静音でも使えるから持ち帰って家でも練習できるなぁ〜って考えもあるぞ?」

と言う律は、どこか照れ臭そうだった。

「と〜ころで、澪ちゃんの機材は、見事に"アンペグ"だらけでちゅね〜。そ〜んなになごみたんハァハァなんですかい?」

アンペグは、和の嫁(笑)であるシーンのお気に入りのメーカーで、そのせいで和のヘッドアンプとキャビネもアンペグだ。

「誰がだっ!? そりゃあ、和の演奏は凄いとは思うし、憧れもするけどさ…」

そして律の言う通り、澪の持ち込んだベース用のヘッドアンプはアンペグのSVT-450H、キャビネは同社のSVT-410HLFだった。


124 :いふもの! [saga]:2011/07/17(日) 11:09:23.49 ID:4UmRfXfAO


「だけど、私だってそれだけじゃないぞ。唯の台詞じゃないけど、なるべく多くの音を試して、自分だけの音を見つけてみたい」

そう言って澪が見せたのはBOSSのベース用マルチ・エフェクター"GT-10B"だ。

細かい話は省くが、GT-10Bは、現時点では全てのベース・エフェクターの中で最も"多彩多芸"な物の一つなのは、確かだろう。

「やっぱり、和と私は求める方向が違うからさ…私はもっと地道に、正確に音を築いていこうって思うんだ」

「ふ〜ん…例えば、"ジョン・エントウィッスル"のように、か?」

「エントウィッスルかぁ…」

エントウィッスルとは、バンド"ザ・フー"のベーシストで、ピート・タウンゼントやキース・ムーンといった超個性派揃いの初代ザ・フーのメンバーが、"破壊活動(笑)"の異名をとるド派手なステージ・パフォーマンスを魅せる中、我関せずの顔で淡々と凄まじいテクで低音を刻んでいたのが、エントウィッスルだった。


125 :いふもの! [saga]:2011/07/17(日) 11:10:07.70 ID:4UmRfXfAO


「和がシーンなら、私はエントウィッスルか…」

派手さはないが、演奏では確かなプレイテクで誰よりも魅せた…それが、一つにして最大の個性になった伝説のベーシスト…

「そうだな…例えば、エントウィッスルのようにか…」

何かを確認するように澪はもう一度、口の中で呟くと、

「悪くないな…!」



「でもウチって、"ザ・フー"に影響受けてるヤツ、多くね? 唯のウィンドミルはタウンゼントばりだし、私の好きなドラマーはキース・ムーンだし」

「確かに。言われてみればそうだな…」

律は苦笑しながら、

「とても21世紀のじょしこーせーバンドとは思えないって」

「違いない♪」

そして、試演ルームに、二人の笑い声が重なるのだった。


126 :いふもの! [saga]:2011/07/17(日) 11:14:22.44 ID:4UmRfXfAO

これにて本日の投下は終了です。

書き貯め尽きたので、次回は未定。
何となく、今回も前回と同じくらいの長さになるか、それ以上になる予感が(笑)

既にギー太が出てきてる時点ど大幅に乖離してますが、かなり原作と異なる展開になります。


127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/17(日) 14:29:13.94 ID:HfbUFHnDO
ビリーシーンのアンプの類いはハートキーじゃなかったか?
128 :いふもの! [saga]:2011/07/19(火) 22:02:31.07 ID:nzHs5MhAO
>>127
ぶっちゃけ、そういうツッコミは歓迎ッス!
その通りで、今年シーンが来日した時の機材はHartkeに変わってまして、ヘッドアンプがHA5500で、キャビネがAK410&115でしたっけ?

実は、これには裏設定があり、【いふおん!】は、2010〜11年をイメージして書いてますが、設定では和がベースを始めたのは唯と同じ三年前…つまり2007〜2008年になります。
んでもって、この時期…例えば、2008年に来日した時の機材は、アンペグのSVT-2、810、410なんかがメインだったんですね。
だから、和の機材はアンペグのマイクロVR+SVT-210のミニスタックになったって訳です。



これより、投下を開始します。
今回は、紬と和とその楽器がメインっぽいです。



129 :いふもの! [saga]:2011/07/19(火) 22:03:38.41 ID:nzHs5MhAO


「ねぇ、お姉ちゃん…"フルスタック"、本当に組むの…?」

フルスタック→ヘッドアンプ+A,Bキャビネをスタック(積み重ね)した物。

「う、う〜ん…」

"ずぅ〜〜ん"

まさに聳え立つという表現がぴったりのフルスタックを見て、唯は思わず固まってしまう。

普通、12インチ級スピーカー4基が収められたキャビネは、正面から見るとほぼ正方形で一辺の長さが70cm以上〜80cm前後もある。
また、重さも30kg台後半から物によっては50kg超まで…

「あぅ〜。こりゃ無理だよ〜」

A,Bキャビネにアンプのフルスタックにすると、高さは唯達の身長を越え、重さは下手すれば自分の体重の倍以上…

正直、とても唯達に扱いきれる代物じゃない。
音的な意味でなく、主に移動面や積み重ねる時とか。

かといって、50W〜100W超のアンプを使うなら、このクラスのスピーカーは是非とも持っておきたい。
特に、狭い部室以外でライブを演るなら尚更だ。

「ハーフスタックとかで我慢するしかないよね?」

ハーフスタック→ヘッドアンプ+Aキャビネのスタック。

憂の言葉に唯は頷き、

「だねぇ〜。だとすると、アンプとキャビネの組み合わせを考え直さきゃな〜」


130 :いふもの! [saga]:2011/07/19(火) 22:04:23.43 ID:nzHs5MhAO


「うふふ〜♪ あったあった♪」

キーボード売り場に来た紬が愛しそうに鍵盤をなぞるのは…

「会いたかったわ。"KRONOS(クロノス)"」

それは、ガイアとウラヌスの子、古きギリシアの神の名…
そして、その名を冠されたKORG社の超弩級最新鋭キーボードの名だった。

紬は、おもむろその88key(鍵盤)モデルに電源を入れる。

「………」

販売店のスタッフによれば、KRONOSの弱点は二つ。
一つは重い事。紬の前にある88鍵盤モデルで23kgもある。
もっともその程度の重量、軽音楽部最強(もしかしたら桜高最強)の力持ちの紬の前では、デメリットにもならない。

「前評判通り、確かに立ち上がりは遅いわね…」

もう一つは、"カップラーメンが作れそうな待ち時間"と比喩される起動時間だ。

そして、待つこと3分弱…

「やっぱり、いい音…」

いくつかの鍵盤を押すと、つむがれる電子的に再現されたとは思えないクリアな音…

それは、ピアニスト出身の紬さえも、十分に満足させるクオリティを誇っていた。


131 :いふもの! [saga]:2011/07/19(火) 22:05:11.08 ID:nzHs5MhAO


KRONOSの立ち上がりが遅いのは、それなりに理由がある。

KRONOSは、KORGの歴代キーボードのデータを含む9つもの音源を搭載した複雑な複合音源部分のセットアップに時間がかかるのだ。

特に鍵盤楽器…例えばピアノ、電子ピアノ、オルガン等の充実ぶりは生半可ではなく、それ専門にSGX-1、EP-1、CX-3というそれぞれの専用音源が用意されている。

紬がKRONOSを狙っていた理由は、まさにそれだった。

さっきも述べたが、キーボードへのタッチ(指捌き)からも分かるように、紬はピアノ出身だ。
そうであるが故に、ピアノを中心とする鍵盤楽器の音には拘りたい…しかも、紬が使用してるのは、KORGのM3Expantedだ。いくら相手が最新鋭機といっても操作系やインターフェース周辺の造りは似通っている。

まさにKRONOSは、紬の為に設(しつら)えられたような、真新しい"エモノ"だった。


132 :いふもの! [saga]:2011/07/19(火) 22:06:02.42 ID:nzHs5MhAO


「あら? 澪達はもう選び終えたの?」

そう言いながら試演奏ルームに入ってきたのは、和だった。

右手で抱えてるのは、前話で宣言した通りのビリー・シーンの一つ前のシグネイチャー・モデル、ラヴァレッドが際立つYAMAHAの"Attitude Limited II/LR"だ。
そして、左手に持っているエフェクターは、Zoom社のベース用フロア型マルチ・エフェクター"B9.1ut"。
カラーは当然のように赤。

(和の奴、ぜってー色でエフェクター選んでるよなぁ〜)

と、律は内心で思う。
他に選択要素として考えられるとすれば、唯が今使ってるマルチエフェクターが同じZoom社のG9.2ttってな事ぐらいだろうか?

和に続いて入ってきた店員達が運びこんだのは、ベース・ヘッドアンプとキャビネだ。

「あれ? アンペグじゃないのか?」

店員にご苦労様と言った後に和がセッティングを開始したのは、和が愛用していたアンペグ社の製品ではなく、澪には見慣れないHartke社の500Wヘッドアンプ"HA5500"、10インチスピーカー×4を備えた同社のキャビネ"HX410"だった。


133 :いふもの! [saga]:2011/07/19(火) 22:10:22.49 ID:nzHs5MhAO


「ええ。この間、シーンが来日した時とかにも確認したんだけど…機材、ハートキー(Hartke)のHA5500とAK410&115に変わってたの。だから、前から試してみたかったのよ」

和はクスリと笑い、

「でも、ちょうどAKよりハイエンドのHXが安売りしててね、値段に大差ないからこっちにしちゃったのよ。我ながら貧乏性よね?」

「み〜おちゃん、残念だったにゃあ〜。和タン、既にアンペグは用済みらしいじょ〜」

「うっ、うるさいっ!」

「あのねぇ…そう簡単に買い換えられる物じゃないでしょ? それに、例え買い換えたとしてもアンペグのキャビネは、暫くは使うつもりよ?」

「どうしてまた?」

不思議そうな律に、和はベースのピンジャック部分を指差した。

「あれ? 出力が二つある…?」

澪の言葉に和は頷き、

「"Attitude Limited"シリーズは、初代の頃から二つピックアップの信号を別々のジャックで出力する構造なのよ」


134 :いふもの! [saga]:2011/07/19(火) 22:11:12.04 ID:nzHs5MhAO


「簡単に言えば、ディストーションをかけるかけないとか、エフェクターをかますかまさないとかで繋ぎ分けるのね。それに、ピックアップの位置も面白いでしょ?」

「あっ!? ピックアップが、凄く近い位置に置かれてる!?」

和は二つの出力にそれぞれシールド(耐ノイズ処理ケーブル)を繋ぎながら澪の言葉に頷き、

「澪のジャズベースもピックアップは同じく二つだけど、フロントとリアに間を置いてるじゃない…この違いの意味って、わかる?」

「え、え〜と…」

「ほほ〜う。み〜おちゃんが、和に追い付くにはまだまだでござんすなぁ〜」

「うぐっ!」

二人の軽妙な掛け合いに和から笑みが零れ、

「律、ある意味は答えにかすってるわ。このピックアップの配置こそが、そのまま私と澪の演奏スタイルの違いを表してるのよ」


135 :いふもの! [saga]:2011/07/19(火) 22:12:18.66 ID:nzHs5MhAO


「どういうことだ?」

「このピックアップ配置って、ある奏法がとてもやりにくいの」

と、和が始めたのは、彼女にしてはぎこちない指捌きの弾き方だった。

「スラップ奏法…?」

「そういうこと」

和は『よくできました』と言わんばかりに澪に微笑み、

「逆に、こういう弾き方には凄く向いて、音がクリアに拾いやすいのよ」

魅せたのは、スリーフィンガー・ピッキングによるライトハンド奏法(ギターで言うタッピング)による速弾きやベンディング(チョーキング)だった。

「シーンは、スラップ奏法が苦手だからね…だから、いっそスラップは切り捨てて、他の自分を生かせる奏法に特化したベースを発注したの。それが、」

和は嬉しげにベースをそっと撫で、

「"Attitude Limited"シリーズって訳なのよ」


136 :いふもの! [saga]:2011/07/19(火) 22:19:05.27 ID:nzHs5MhAO

本日の投下はこれにて終了。

次は平沢姉妹のメインになる予定なんですが…

ここのところカキコに使ってる携帯がやたらフリーズするって現象が頻繁してて、もしかしたら近々修理に出すかもしれません。

という訳で、投下予定は未定です。

137 :いふもの! [saga]:2011/07/20(水) 22:22:37.92 ID:DOYzyvPAO
これより、5レスほど投下します。

今回は、唯と憂とアンプの話。

機材の選択は知らない人にはマニアック、本気でロックやってる人には失笑モノのミーハーな路線を狙ってたりして(笑)

138 :いふもの! [saga]:2011/07/20(水) 22:23:56.96 ID:DOYzyvPAO


「お姉ちゃん、どれにする?」

「う〜ん…こっちは、ちょびっと高いなぁ…」

「クスクス♪ 試すだけなんだから、値段の事はそんなに気にしないでいいんじゃない?」

「それはそうなんだけどねぇ〜…でも、やっぱり安くていい物を使ってみたいんだよぉ」

「お姉ちゃんらしいね♪」

「だってだって、お手頃なのにいい音がすれば、ドキドキするよね?」

そう言う姉の姿を、微笑ましげに見る憂であった。

「基本はマーシャルなんだけど…BlackstarとかCarvinなんかの3Chも使ってみたいし…いっそ、JVM410Hで4Chって路線もいいなぁ…あと、JetCityのソルダーノ系の分厚い音も好みだし、Line6ならむしろギミック・アンプよりエフェクターの方が面白いかもだよ…あっ、PeaveyのJSXってモデルが投げ売りしてる」

(お姉ちゃん、生き生きしてるなぁ♪)


139 :いふもの! [saga]:2011/07/20(水) 22:24:55.28 ID:DOYzyvPAO


「ういには、マーシャルのJMD100とかお勧めだよ〜♪ プリ部はソリッド(電子部品)で、パワー部だけがチューブ(真空管)だから、チューブのヘッドアンプ初心者でも扱いやすいよ〜」

チューブ(真空管)・アンプは、音はいいし大きな出力も出るが、少々神経質なところがあり、昔の物ほど手間はかからないにしても、普段から小まめにメンテナンスをした方がいいに決まってる。

普段はおっとりのんびりマイペースな唯だが、実は機材のメンテは頻繁に行なっている。

無論、『いつでも最高の音が出るようにしていた方がギー太も喜ぶんじゃない?』とか何とか言って、メンテ癖がつくようになるまで誘導したのは和だろうし、お姉ちゃんとの時間が欲しくて、『お姉ちゃ〜ん♪ 一緒にやろ♪』って感じで率先して一緒にメンテしてたのは憂なのだろうけど。

「私は、やっぱりお姉ちゃんのお下がりがいいなぁ〜」

『三年分のお姉ちゃんとの思い出と、あったかい匂いが染み込んだあの子が欲しいんだよ…』と、憂は心の中で付け加えた。


140 :いふもの! [saga]:2011/07/20(水) 22:26:04.96 ID:DOYzyvPAO


「私が新しいアンプを買ったら、それでも良いよ♪ マー吉も余計なの何にもついてないから、使いやすいもん」

唯はニコニコしながら、少しだけ過去を思い出し、

「それに真空管を一緒に交換したりもしたから、ういもいじりかた知ってし思い出がいっぱいあるもんね〜」

平沢姉妹はギターと出会ってから、その持ち前の好奇心旺盛さが全開になったのか、色々と機械にも強くなってるようだ。
少なくとも、アンプやギターのメンテを自前でできるぐらいには。

「うんうん♪」

「う〜んと…じゃあ、わたしが試したい奴だけでいいのかな?」

「もっちろんだよ♪ お姉ちゃん♪」


141 :いふもの! [saga]:2011/07/20(水) 22:27:23.09 ID:DOYzyvPAO


「まさか、JVM210HCFだけじゃなくて、JVM410Hまでアウトレットしてるなんて思わなかったよ〜」

外箱がかなりのボロボロや外見のちょっとした傷で半額…
楽器店に行くと、そういう驚くような理由の激安商品とエンカウントすることが、ままあるものだ。

「良かったね♪ それと…それは? コンパクト・アンプ?」

「うん! ちっこくても中身は、本格的な造りのチューブ・アンプみたいなんだよ〜。しかも、しっかり3Chだしぃ〜」

「Carvinの"V3M"っていうんだ〜」

アンプのCh(チャンネル)というのは、一般に"回路を切り替えて出る音のパターン"の事だ。

例えば、3Chの場合は…
クリーン→ギターの音をそのまま増幅したクリアな音。
クランチ→激しい音。いわゆる"ロックらしいサウンド"になる。
オーバードライブ→重く歪んだ音を強く出力する。重低音が腹に響く。

メーカーによって各モードの呼び方や音の作り方に差はあるが、大体こんな感じと思えばいい。


142 :いふもの! [saga]:2011/07/20(水) 22:31:33.83 ID:DOYzyvPAO


これが2Chなら、クリアとクランチ、クリアとオーバードライブのような組み合わせが多く、唯が持ってるJVM410Hに至っては、オーバードライブが1と2の2系統ある4Ch仕様で、しかも1Chに3パターンが用意されていて、細かく音を選べる。

「でも、どうして急にコンパクト・アンプなんて?」

「小さくてもふるぱわー50Wあるから、そこそこ大きなライブハウスぐらいまでなら十分に使えるし、7Wモードも付いてるから家での練習もできそうだし…」

唯はテヘテへ笑うと、

「どこでも、ギー太と一緒に持ってけるかなぁ〜って」

(ああっ! 人目が無ければ、この場でいっそお姉ちゃんを抱き締めてしまいたい!)

ま、まぁ憂の姉妹愛はさておき…

「だったら、キャビネも試したいなぁ〜。音は、のセレッションのヴィンテージが好きだから…でも、できれば4発で10万円以下がいいなぁ〜」

すると候補は、Carvinの"C412T2"やLine6の"Spider Valve412T"…

「あ〜っ! 1960AVとHUK-CC412AVが1台限定で安売りしてる!」

1960AVはマーシャル、CC412AVはヒュース&ケトナー社のキャビネで、それぞれセレッションのヴィンテージを搭載している。

「あとあと、エフェクターとかも一緒に試しちゃおう〜♪」

「うんっ!」


143 :いふもの! [saga]:2011/07/20(水) 22:34:35.66 ID:DOYzyvPAO

以上、投下終了。

誰も来ないなぁ〜。
機材ネタは、書いてる分には楽しいけど、好きな人はやはり少ないかな?


144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/20(水) 22:55:16.81 ID:FDvAErsSO
お疲れさん

ここまで来たんだし、もう需要云々を気にせず突っ走ろうぜ


需要気にするようなら、最初からやらない方がマシだぜ
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/07/20(水) 23:08:34.99 ID:70g0T+iR0

話は楽しく読ませてもらってる
ただ楽器とかロックとか詳しくないのでどう反応していいものかわからない
結果読むだけで満足しちゃってる感じ
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/20(水) 23:27:34.33 ID:mD9ZsIJwo
>>1
趣味でバンドやってる俺にとってはなかなかおいしいSSだ
陰ながら応援してる

俺も今けいおんSSを投下してるが
お互い頑張ろうぜ
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/20(水) 23:58:22.96 ID:M7aOLMTSO
    | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
    |  アナログ放送  |
    |終了まで あと3日|
    |________|
     _     ||
.    ,^   `ヽ ||
   <h>〃ハヽ〉 ||
   | |(l ゚ ヮ゚ノi| ||
.   j /   つΦ
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/21(木) 20:02:36.88 ID:GskaaxOSo
ひとつ質問なんですが、>>123
なごみたんというのは和ちゃんのこと
なんでしょうか?
149 :いふおん! [saga]:2011/07/23(土) 06:14:15.77 ID:1N+BiiQAO
>>144
ども!
そりゃそうでさぁねぇ。
ただ、反応が無いと書き手は、「誰も読んでないんじゃないかい?」と不安になったりするんスよ(笑)

>>145
ども!
そう言って貰えると嬉しいッスよ。
一応、原作より音楽ネタに特化した話ですが、出来ればロックや音楽を知らない人にも楽しめる話にしたいです。

>>146
ども!
うおっ! 作者も元そっち系な人なんで、そういう反応は嬉しいッス!
あっ、タイトルを教えて貰えれば、読みにいきますよ〜。

>>147
今日からフル地デジかぁ…

>>148
あっ、そうです!
律が初めて和と会った時、律は名簿でしか和を知らなかったので"のどか"と読めずに"なごみ"と呼んだ…というエピソードを入れてたつもりが、入れてませんでした(汗)
そのうち、ちゃんと過去編でも書こうかな?


150 :いふおん! [saga]:2011/07/23(土) 06:23:02.07 ID:1N+BiiQAO


これより早朝投下を開始します。

ちょっとプライベートで色々あり、書く時間と投下がかなり不安定になりそうなんで、とりあえず書き終えた10レスほど投下。

何やら今回は、いつも以上に楽器ネタ…特に後半は殆どギターネタになりますので、楽器とか音楽とかが好き、もしくは興味がある人以外は、ちょい注意です。


151 :いふもの! [saga]:2011/07/23(土) 06:24:33.64 ID:1N+BiiQAO


再び舞台は、試奏ルーム…

「みんな早いね〜。もう選び終わったんだ〜」

相変わらず呑気な唯の声に、和は軽い頭痛を感じながら、

「唯…運びこんだ機材の量とか色々ツッコミたいとこは多々あるんだけど…」

平沢姉妹が運びこんだ(実際に運んだのは店員だが)のは、ミニ・アンプを含むアンプが3台にキャビネが3台。
具体的に名前を上げるなら…

アンプ
マーシャル"JVM410H"
ジェットシティ"JCA100HDM"
カービン"V3M"(ミニ・アンプ)

キャビネ
ヒュース&ケトナー(Hughes&Kettner)"HUK-CC412AV"
マーシャル"1960AV"
ゲンツベンツ(Genz-Benz)"GB412 G-FLEX"

JVM410Hが14〜15万の間のプライス・タグを付けてるだけで、残りの品々は限定安売りの10万以下。
特にキャビネは、前者が在庫処分、後者二つがアウトレットの為、半値かそれ以下のお得感の強い値札がさがっていた。

高っ!と思うかもしれないが、野外も含めたライヴで本格的に使える機材を考えるなら、これでもまだ安い方だ。
何しろ、これ全部が束になっても、唯のギー太が最高値だった時のがまだ高い。

それはいいにしても…

「唯…あなたが抱えてる、その"ど派手ピンク"なギターは、一体なんなの?」


152 :いふもの! [saga]:2011/07/23(土) 06:25:36.39 ID:1N+BiiQAO


「てへへぇ〜♪ 可愛いでしょ〜♪」

と、唯が嬉しそうに見せたのは、本当に…問答無用のピンクに塗られたボディに、エイジド・ホワイトのピックガードが組み合わされ、白木という表現が似合う明るいメープルのフレットボードが貼られた同じ色のメープルがはめこまれたギター…

恐ろしい事に"トランス・ルーセント・ピンク(TRP)"とボディ・カラーが表記されるこのモデル、作者のフィクションではなく実在する。
しかも、2011年度版のフェンダー・ジャパンのカタログに2種類も記載されてる、立派なレギュラー・ラインのモデルだ。

その正体は、フェンダー・エレキギターの代表格"ストラトキャスター"のアッシュ材を用いたモデルで、1つが"ST57/ASH"、もう一つのモデルが"ST62/ASH/MH"という。

ちなみに"ST"は、ストラトキャスターの略"ストラト"を意味するようだ。

そして、唯が持ってきたのは、前者のST57/ASHの方だ。


153 :いふもの! [saga]:2011/07/23(土) 06:26:29.89 ID:1N+BiiQAO


ちなみに2つのモデルの差は主にネックに集中していて、形や素材自体は同じだけど、表面に貼られてるフレットボードの木の種類が違ってて、前者は書いた通りにメープルで、後者はローズウッドという濃い焦げ茶色の木だ。
加えて後者が"MH"と付いてる理由でもあるのだが、これは"マッチヘッド"の頭文字で、簡単に言えば、ギターの先端…ヘッドの部分が、ボディと同じ色に塗られているという意味になる。

「た、確かに色は可愛いわね…?」

(ただし、ギターに使う色って考えるなら…)

「インパクト有り過ぎのような気がするわ…」

「ほえ?」

不思議そうな顔をする唯だったが、律と澪はうんうんと頷いていた。

「クスクス♪ でも、数有るギターの中からピンクを選ぶなんて、何だかとっても唯ちゃんらしいと思うわ♪」

と、紬は楽しげに微笑んだ。


154 :いふもの! [saga]:2011/07/23(土) 06:27:36.84 ID:1N+BiiQAO


「試演奏用に持ってきたのは判るけど…いいの? ギー太と同じレスポールじゃなくて?」

書き忘れていたが、今日は機材の"お試し会(?)"なので、基本的にそれぞれの愛用の楽器は、持ち込んでない。

「大丈夫! ストラトはたまにういのを弾かせてもらってるから! ね〜、うい♪」

「うん♪」

憂の愛用するギターは、同じくストラトキャスターだ。
正確に言うなら、本家フェンダーUSAの"カスタムショップ"の職人が作ったダフネブルー(空色)の"エリック・クラプトン・シグネイチャー"モデルだが。

仕様や部品の違いに唯のストラトとの価格(定価)差約3倍というのを無視すれば、まぁ、色違いの同じギターと思っていい。

「それに一度"アッシュ"のギター、使ってみたかったんだぁ〜♪」

アッシュというのは、木材の一つで、近年ではもっともギターに使われるアルダーに比べるとより高音(中高音)がよく響き、これでボディを造ったギターは一般に明るく華やかな音がする。


155 :いふもの! [saga]:2011/07/23(土) 06:28:18.65 ID:1N+BiiQAO


少しギター用素材(木材)の話をすれば、前述のアルダーは中音が強く、"乾いた(枯れた)重厚な音"を出しやすい木材だ。
また、レスポール(ギー太)に使われるマホガニーは、低音(中低音)に強く音が柔らかく暖かいと言われている。

また、よくネックに使われるメープルは、ソリッドで輪郭のハッキリした音を出すが、木材としてはかなり硬い上に重く、ギター全体をメープルで造るというのは、あまり前列が無い。

語弊を恐れずに言うなら、例えばストラトキャスター等は、様々な素材のボディで響かせた音を、硬くて重いネックで余計な振動を消して整えるとイメージして良いだろう。

蛇足ながら、中高音とか中低音とわざわざ注釈を入れてる理由は、エレキギターという楽器自体がバンドの楽器群の中だと、"中音域"を担当する楽器だからだ。
例えば、本当の低音は、弦楽器ならベースが担当する。

「なるほどね。色だけで選んだって訳じゃないのね」

「もちろん、可愛いからっていうのが、一番の理由だよ〜♪」

「まぁ、そんなとこだろうな〜」

「やっぱり唯は唯だよ」


156 :いふもの! [saga]:2011/07/23(土) 06:35:38.88 ID:1N+BiiQAO


「そういえば、憂ちゃんも、ギター持ち込みなんだな?」

澪の言葉に憂は頷き、

「ええ♪ 前からギブソンの"レスポールJr"使ってみたかったんですよ〜」

一言で表すなら、"ちびギー太(色違い)" だ。
もう少し細かく言えば、唯のレスポールより1回り以上小さく、またピックアップの数も半分の1つしかない、全体的に操作も造りもシンプルなギターだ。

基本的な材質はレスポールと同じだが、その造りのせいで、アコースティック・ギターをそのまま電化したようなレスポールがしっとりとした甘い中低音を奏でるのに対し、どちらかと言えばそれより高い音で賑やかに歌う…
レスポールが甘い声で歌うベテランシンガーなら、レスポールJrは若さと元気溢れる新人シンガーといったとこだ。

色も"TVイエロー"と名付けられてる淡く薄い黄色で、丸っこくて愛らしい小柄なボディと相まって、憂によく似合っていた。

すると、ふと和が何かを気付いたように…

「あら? でも、それもしかして…"ヒストリック・コレクション"じゃないの?」

「和さん大正解!」

「さっすがのどかちゃんだよ〜!」

と、大絶賛の平沢姉妹だったが、律と澪は顔を見合わせ、

「「ヒスコレっ!?」」

157 :いふもの! [saga]:2011/07/23(土) 06:36:25.33 ID:1N+BiiQAO


特別解説企画(笑):"ひすこれっ!"

"ヒストリック・ヒストリック(Historic Collection)"とは?

前にギー太の解説で触れたような気もするが、とりあえずおさらい。

世界的な規模で有名なエレキギター・メーカーと言えば、まず米国の"ギブソン"と"フェンダー"の二大巨頭が、まず挙げられる。

日本にも"アイバニーズ"や"フジゲン"という世界的に売れてるメーカーや、総合音楽企業として有名な"ヤマハ"があるが、品質や製造数ならともかく、エレキギター/ベース界での知名度から言えば、ギブソンとフェンダーには遠く及ばないだろう。

そして、この2つの企業の特色の一つとして"カスタム・ショップ"の存在が挙げられる。

世界的なメーカーともなれば当然、要求される生産数も生半可じゃないし、厳しい価格競争もある。
だから、企業がまだ小さかった頃のように、創業者や家族的な付き合いの職人仲間達が、材料選びから自分達で行い1本1本手作業でギターを組むなんてのは、土台無理な話だ。


158 :いふもの! [saga]:2011/07/23(土) 06:37:34.59 ID:1N+BiiQAO


その解決策として労働賃金の安い国に工場を建てて、手頃な素材と安い賃金でコストダウンを図り、ローコスト・ギターを大量生産して市場に送り出すという図式が成立する。

そうなれば、当然のように品質は著しく劣化する…そりゃもう、加速度的に。

よく他の物と同じく『ギターも昔に比べて品質が落ちた』と言われ、ヴィンテージ(年代物)・ギターに冗談みたいな値段がつくのは、そんな裏事情がある(他にも、輸出入制限や伐採禁止で昔のように質のいい木材が手に入らなくなったとか色々他にもあるが…)。


それが消耗品や日用品ならまだしも、ギター…というか、楽器全般は趣味の道具だ。

人間というのは、懐に余裕があるなら際限なく趣味に金を注ぎ込みたくなる生き物であるらしく、だからこそ、"いくらかかってもいいから、昔と同等あるいはそれ以上のギターが欲しい"という市場が確かに存在する。

んで、そんな欲求を満たして、尚且つ企業収益を増やす為に生み出されたのが"カスタム・ショップ"という訳だ。
何の事はない。
昔のやり方…熟練工が職人芸を使って、丁寧に1本1本ギターを手作業で造ってる"工房"が、"カスタム・ショップ"だ。


159 :いふもの! [saga]:2011/07/23(土) 06:38:21.03 ID:1N+BiiQAO


それで、その両社のカスタムショップの売りというのが、有名ミュージシャン使用モデルのレプリカ…いわゆるシグネイチャー・モデルの製造とか、かつて名器だの傑作だのと吟われた楽器に可能な限り似せた"復興版"を造ることだ。

例えばそれが、フェンダーなら"タイム・マシン"シリーズ、ギブソンなら"ヒストリック・コレクション"となる。

まぁ、コストダウンの結果として今の量販ギターがあるのだが、過去と同じ製法で、尚且つ劣らない材料を使えば、その製造コストは同じ形の…というか、形だけ同じな量産品の数倍、下手をすれば10倍以上に跳ね上がる。

特にギブソンのヒストリック・コレクション、通称"ヒスコレ"はその傾向が強く、高級品の代名詞だ。

例えば、唯のギー太の兄弟達…同じ"1960レスポール・スタンダード・チェリー・サンバースト"だって、入手できた素材の質やその時の出来、もしくは買付業者や為替レート(笑)で値段はまちまち、新品価格は40万弱〜70万超という具合にまさに"時価"だ。


160 :いふもの! [saga]:2011/07/23(土) 06:48:17.73 ID:1N+BiiQAO
>>157
なぜか"ヒストリック・コレクション"に書いてたつもりが、"ヒストリック・ヒストリック"になっておりやした…

まさか、投下して初めて気付くとは…泣ける。



とりあえず、今回の投下はこれで終了。
9レスでしたね(笑)
次回は前にも書いたように予定が不安定なので未定ッス。

何となく、けいおん!SSで、ヒスコレとか書くのは、作者ぐらいだろうな〜とか思いつつ、実は更にマニアなネタを用意してたりして(笑)

それよりも、あずにゃんをフライング出演させるかどうかを検討中…

というか、原作よりイベント盛り沢山の一年をあずにゃんからませないのは惜しいなぁ〜とか思いつつ、この"ギター・モンスター・ガール"な唯だったら、梓がメチャクチャ懐きそうだなぁ〜とか妄想してみる(笑)



161 :いふもの! [saga]:2011/07/23(土) 22:57:57.64 ID:1N+BiiQAO

読み直したら、前回の投下はギターネタばかり…これじゃああんまりにも"けいおん!臭(笑)"が低いので、会話中心の追加分を、5レスほど投下しやす。

それで、"買物イベント"自体がかなり長くなりそうなので、分割。
とりあえず機材選びは今回の投下で終わるので、これにて第5話を終了させます。

162 :いふもの! [saga]:2011/07/23(土) 22:58:54.21 ID:1N+BiiQAO


「でも、ヒスコレって言っても、この子は売れ残り&傷物のアウトレット品みたいだし、多分、ヒスコレの中でも最も安い方ですよ?」

確かに、付いてるプライス・タグは、ヒスコレには大変珍しく20万円を割り込んでいた。

この位の値段ならギブソンより価格帯が安めなフェンダー、フェンダーUSAより更にお手頃なフェンダー・ジャパンの中でも、まだ高いモデルがある。

「さもありなん、ね。レスポールJrって、元々ギブソンの"ステューデント・モデル(入門者モデル)"でしょ? 小さいし造りも簡素だしね」

「あはは♪ なんか最初は40万円以上だったみたいだったけど…」

「間違いなく売れないわね、その値段じゃ」

、憂の台詞に和はそう言い切った。

「なんせ、見た目がいかにも工芸品チックなギー太と違って、シンプル過ぎるもの」

ヒスコレの購買層は、何も実際に弾くギタリストだけじゃない…というか、寧ろどちらかと言えば少数(プロアマ問わずギブソン好きで懐があったかいミュージシャンって意味だし…)で、実際にはギターをろくに弾けない裕福層や好事家のコレクター・アイテムになってる場合も多い。


163 :いふもの! [saga]:2011/07/23(土) 22:59:47.66 ID:1N+BiiQAO


まぁ、そんな人種にとっては、実際の音色どうこうより、見た目が命…良く言えば、コレクションする悦びがあるかどうかだ。


「この子だけにしか出せない、いい音色があるんですけど…」

「実際、弾かない人間にとっては、それはどうでもいい話よ。それより、傷や汚れや色褪せがあるかどうかとか、高級そうに見えるかどうかとかの方が、問題なのよ。きっと」

「TVイエローは、詳しくない人間から見たら、確かに"色褪せた黄色"に見えなくもないからな…」

澪の言葉を補足するなら、レスポールJrの専用カラーである"TVイエロー"は、生産開始された時代に主流だった"白黒TV"に映された時に鮮やかに映えるよう考案された色で、レスポールJrの代名詞とも言える。

だが、であるが故にカラーや肉眼で見た場合、必ずしも見栄えのする美しい色合いではない。
口の悪い者は、"プラスチックの安物オモチャみたいな色"とさえ言う。

小柄なボディと、"弾く為の最低限の装備しかない"と表される程の全エレキギター有数のシンプルな外観が、その印象に余計に拍車をかけているのかもしれない。


164 :いふもの! [saga]:2011/07/23(土) 23:00:45.48 ID:1N+BiiQAO


「やれやれ、和も澪も手厳しいやねぇ〜」

と律は苦笑するが、実はあんまり深いとこまで分かってないのはお約束。

まぁ、ヴィンテージ・ギターやレプリカの値段等どこ吹く風の元気印なドラマーだ。
当たり前と言えば、当たり前だろう。


「ぷれみあとか価値とかって話だと思うんだけど…それって、そんなに意味あるのかな?」

そう不意に口を開いたのは、唯だった。

「わたし、頭良くないから、あんまり上手く言えないけど…大事なのって、今、ういが"じゅにあ"を持ってるって事なんじゃないかな?」

「唯ちゃん、それってどういう意味?」

そう聞く紬に、唯はキョトンとして、

「えっと…"じゅにあ"は、ういに弾かれたかったから、今まで売れないで…今、ういの手元にあるって思っただけなんだよ♪」

「お姉ちゃん…」

「だから、売れ残りとか価値とかって、人間が勝手に決める事で、楽器は誰かに弾かれたい…ただ歌いたいから、生まれてきたんじゃないかなって♪」

そう唯は、てへへ〜♪と頬を緩めて笑うのだった。


165 :いふもの! [saga]:2011/07/23(土) 23:01:50.93 ID:1N+BiiQAO


「私、そういう考え方すごく好きだ!」

ギュッと唯の手を握ったのは、意外な事に澪だった。

実はこの六人の中で、ワタアメ的(ふわふわで甘々)思考と指向のメルヘン度ランキングをつければ、一位と二位が澪と唯だったりするのだ。

面白い事に最下位が同じベーシストの和で、澪とは対照的に堅実なリアリスト(現実主義者)という判定だ。

「長い付き合いになるけど…」

(唯は、本当に不思議ね…あんなにポワポワした地に足が付いてないような性格なのに…)

「60年代から90年代の洋楽大好きなロック少女だものねぇ…」

「そこが唯ちゃんの可愛いとこでしょ? え〜と…確かこういうの"ぎゃっぷもえ"って言うんだったかしら?」

と、いつの間にか隣に来ていた紬が、頬に手を当て微笑んでいた。

「…人のモノローグに勝手に侵入しないの」

「くすくす♪ 和ちゃん、声に出てたわよ?」

少しばつが悪そうな顔をする和だったが、

「いつも私を驚かせてくれる…何者にも囚われず、自由奔放に色んな扉を開いてくれた唯ちゃん…そんな唯ちゃんだから、」

紬は、まるで我が娘を見るような慈愛に満ちた視線で唯を見て、

「私は憧れて、惹かれたんだから…ね♪」


166 :いふもの! [saga]:2011/07/23(土) 23:02:45.53 ID:1N+BiiQAO

「ところで、みおちゃん…」

「ん?」

唯は周りをキョロキョロ見回して、

「ベース、無いみたいだけど…"エリザベス(澪のベース【JB62/LH】の愛称。命名は唯)゛って持ってきてたっけ?」

「ハッ!? しまったぁーっ!!」

どうやら、アンプにキャビネ、エフェクターを選ぶのに夢中で忘れていたらしい。

落ち着いた物腰で、しっかり者に見える澪だが、実はわりと所謂"ドジっ娘"で、そういう意味でも天然&ギターと音楽以外はドジを標準装備している唯との相性は、存外にいい。

他に澪のパーソナリティを付け加えるとすれば、人見知りの恥ずかしがり屋で、ついでに怖がりってとこだろうか?

「ベース・コーナーの奥から2番目のラックに、澪に似合いそうな"PB70/LH"があったわ。ボディは白で、ピックガードは黒のツートン。"プレシジョン・ベース"タイプだけど、構わないわね?」

*プレシジョン・ベース
フェンダーの最も代表的なエレキベースで、原型は世界最初の量産エレキベース。
ちなみに、"プレシジョン"とは"正確な"という意味。

「和、感謝! レフティ(左利き)・モデルがあるだけで有難いよ。この際、贅沢は言わないさ!」


167 :いふもの! [saga]:2011/07/23(土) 23:10:08.20 ID:1N+BiiQAO

という訳で本日の投下&第5話終了ッス。

次回からは第6話ですが、シーン的にはこの続きからで。

それと、残弾が完全に尽きたので、予定は未定です。

本当は、買物イベントはこんなに長くなる予定は無かったんですが、趣味が暴走(苦笑)したのと、今後も連載を続けるなら、入れておきたいちょっとした伏線やフラグが有りまして…とりあえず、次話も読んで貰えると嬉しいッス!



168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/24(日) 03:55:10.23 ID:Q10cYTZIO
乙です。
頑張って
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/24(日) 09:11:27.84 ID:pS1vKUDDO
りっちゃんにはビスタライトなぞどうだろう 琥珀色もあることだし
9mmなんたらのドラムみたいな要塞仕様で嵐を呼んでほしい
170 :いふもの! [saga]:2011/07/24(日) 11:02:31.69 ID:0cjR8JdAO
>>168
ども!
ちょいプライベートが時間的にヤバいですが、何とか更新してきたいと思ってます。

>>169
ども! そういうアドバイスは、実に参考になるッス!
ラディックのあの派手さいいですよね〜♪
今回は、あくまで"Hipgig"のブーストが目的なので、意図的にヤマハ縛りにしとりやすが、でもいい"次期りっちゃんウエポン"の候補を教えて貰いました!
今回のアップで、今回のりっちゃん装備改(笑)が出てきますよ〜。



これより、5レスほど投下します。
レス数はしょぼいですが、もはや移動中とかに書いてる有り様なんで、ご勘弁。

今回の主役は、唯憂と…トレモロ&ペグ?



171 :いふもの! [saga]:2011/07/24(日) 11:03:56.61 ID:0cjR8JdAO


第6話:"せっしょん!"


172 :いふもの! [saga]:2011/07/24(日) 11:04:44.01 ID:0cjR8JdAO


「ごめん! お待たせ!」

レフティ仕様のプレシジョン・ベース片手に戻ってきた澪を待っていた6人は、それぞれの機材に楽器を繋ぎ、軽くチューニングを始める。

中でも苦戦してるのは、律だ。

なんせ、ルーム備え付けのドラムセットに、持ち込んだフロアタムやスプラッシュ・シンバル、そして扱い慣れないエレタム(電子ドラムのタム)を合わせ、自分のドラムセットをシミュレートしつつセッティングせねばならない。

律は、何とか自分の愛用のドラム、"Hipgig"を中心にしたイメージに近づけるべく、奮闘していた。

ギターやベースと違い、ドラムの専門家は律一人なので中々大変そうだ。

そういえば、律の追加機材について詳しく触れてなかったので、書いておけば…

フロアタム
ヤマハ・ステージカスタム"BFT616/RB(レーベン・ブラック)"

電子ドラムセット
音源:ヤマハ"DTX-500"
タムパッド:"TP-120SD"&"TP-100"

スプラッシュ・シンバル
ジルジャン"Z3"シリーズ

であり、これにTAMA社のツインペダル"スピード・コブラ"を組み合わせ、電子とフロアを含む5タム、4シンバル、スネアとバスの2ドラムという中々パワフルなセットが完成する。


173 :いふもの! [saga]:2011/07/24(日) 11:05:42.04 ID:0cjR8JdAO


一方、ツーマンセルを組むのが、ギターとベースのストリング・チームだった。

「えっと、ストラトの場合のチューニングの癖はね…」

「アンペグのアンプは面白い癖があって…」

唯憂&澪和は、ペアでのセッティング出しに勤しんでいた。

特に普段からストラトを使う憂と、アンペグが愛機の和は、唯と澪のアドバイスに忙しそうだ。

例えば、唯憂のギターペアは…

「うい〜、トレモロってアームを動かす度に、チューニングってこんなに狂うんだっけ?」

と、涙目の唯がいじってるのは、ST57/ASHのトレモロ・アームのようだ。

「ま、まあ量販モデルは強度とか色々足らないから…だから、トレモロ・アーム・プレイを頻繁に使うプレイヤーが真っ先に交換するのって、ブリッジなんかのトレモロ・ユニットなんだよ?」

ブリッジ→ギターやベースの弦の後ろにある留め具。
単純に弦を引っ掛け止める機能しかない物から、"トレモロ"と呼ばれる一種のビブラート装置を内蔵した物まで、様々な種類がある。

174 :いふもの! [saga]:2011/07/24(日) 11:06:29.69 ID:0cjR8JdAO


メーカーの名誉の為に言っておくが、フェンダー・ジャパンのギターは長野県にある某ギターメーカーが作ってる国産品なので、まだマシな方だと追記しておく。

多分、凄まじい精度の絶対音感の持ち主で、半音の半音を聞き分ける特別に鋭敏な耳の持ち主である唯だからこそ、余計に看過できないチューニングの狂いなのだろう。

「"レイラ(憂のストラトの愛称)"のトレモロって、ウィルキンソンだっけ?」

"レイラ"というペットネームは、憂のストラトのオリジナルを持つエリック・クラプトンのいわく付きの名曲"いとしのレイラ"が由来らしいが…

その"いわく"というのは…実は、若い頃のエリック・クラプトンが、元ビートルズのジョージ・ハリスンの奥さんに横恋慕してしまい、その狂おしいまでの思慕を歌ったラブソング(曲自体は正統派ロック)が、"いとしのレイラ"…なんてエピソードがあるのだ。

結局、クラプトンはハリスンから奥さんを寝盗った訳だが…

「ううん。今は"フロイド・ローズ"の方だよ。SDS510MGを組み合わせると、どれだけアームを動かしても殆どチューニング狂わないんだ」

レイラと名付けた憂に、特に他意や深い意味は無いと信じたい…


175 :いふもの! [saga]:2011/07/24(日) 11:07:16.71 ID:0cjR8JdAO


「いくらヒスコレでもノーマルのペグは、ロック精度とか甘いね〜」

「それはある程度、しょうがないって諦めるしかないよ、お姉ちゃん」

ペグ→ギターやベースの先端(ヘッド)部分で弦を引っ張り止める金具。

「やっぱり、ペグは"ゴトー(GOTOH)"じゃないとねっ! マグナロックさいこぉ〜っ!」

どうやら唯、今度はレスポールJr…正式には、
"Gibson Custom Shop Historic Collection 57 Les Paul Jr Single Cut VOS/TV Yellow"
なんてバカ長い名前が付けられてる憂の持ってきたギターのペグを回し、弦をチューニングしていた。

「ギー太のペグって、GOTOHのSDS510MGだったっけ?」

「惜しい! HAPMも一緒に付いてて、高さ調節も一緒にできるのだよ〜。系番だと、"SDS510MG-HAPM-M5-L3+R3"だったかな?」

ゴトーのペグの場合、MGはマグナロックと呼ばれる高性能ロック機構を、HAPMはペグの高さ調節装置を内蔵という意味になる。

「この子も、そうしたら喜ぶかな…?」

「多分だけどね。少なくとも、ノーマルより確実にチューニングは狂わなくなるよ〜」

メンテの時の事でも思い出したのか、その唯の満面の笑顔は、まさに『ギー太に首ったけ』と表現したくなる。

176 :いふもの! [saga]:2011/07/24(日) 11:15:00.44 ID:0cjR8JdAO

投下終了。
とにかく、書き終えたとこまでの投下です。

一応、次回は澪和とベースの話の予定ですが、アップタイミングは未定ですが、間違いなく今日は無理ッス。



ちょっと前に参考にけいおん!の百合物をいくらか読んだんですが、ウチは唯が原作以上にギー太と音楽にのめり込んでるせいか、ホント百合度が低いッスね〜(苦笑)

音楽中心ガールズ・バンド路線は止める気毛頭無いけど、少しは百合色を入れた方がいいですかね〜。



177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/24(日) 11:37:23.50 ID:pS1vKUDDO
むしろ百合はカットでよくね? たまには硬派に
178 :いふもの! [saga]:2011/07/25(月) 08:08:05.85 ID:xPBjIG3AO

>>177
確かに。
というか、この面子で百合物を書くのは、無理な気がしてきた(笑)
纏めると…

唯→ギー太と音楽(特にロック)
和→無自覚に頑張る唯が好き。応援したい。紬→唯ちゃんは、私の憧れ。あの自由奔放さが眩しい。
憂→お姉ちゃん、大好き♪

ゆ、百合的恋愛フラグ臭がねぇ〜。
律澪は、完全に友情フラグ以外は立ちそうもないし(苦笑)





さて、本日も出かける前に投下します。
書き上がった分だけなので、6レス程度と短いですが、ご勘弁。

今回は、予告通り澪和のベースペアの話ッス。



179 :いふもの! [saga]:2011/07/25(月) 08:08:53.09 ID:xPBjIG3AO


では一方、澪和のベースペアと言えば…

「やっぱり、そのベースに、黒のピックガードはイマイチね…曲面が多いから、なんだかパンダを連想するわ」

「そ、そうかな?」

と、少し困ったような顔をする澪だった。

澪の持ってきたフェンダー・ジャパンのエレキベース、プレシジョン・タイプの"PB70/LH"は、専用カラーの白(OWH:オリンピック・ホワイト)に塗られたアルダー材製のボディに黒のピックガード組み合わせ、表面に焦茶色のローズウッドのフレットボードが貼られたメイプル・ネックが差し込まれるという構造だ。

「もし、仮に澪がそのプレベ(プレシジョン・ベースの略)を買うなら…」

と、和は同じKORGのキーボードを使ってきた強みからか、鼻歌混じりにセッティングをしてる紬をチラリと見ると、

「是非、私にいじらせて欲しいわね」


180 :いふもの! [saga]:2011/07/25(月) 08:10:24.51 ID:xPBjIG3AO


和は、ジッとPB70/LHを見ながら、

「そうね…とりあえず、ピックガードをPB57/LHの白い奴に取り替えちゃいましょう。ついでにピックアップもセイモア・ダンカンの"SPB-3クォーター・パウンダー"辺りに交換するのもいいわね…どうせフェンダー・タイプは、ギターもベースもピックアップがピックガードに張り付いてるんだから、手間は大して変わらないわ」

「えっ? えっ?」

ベースの色でなく目を白黒させる澪に構わず、

「う〜ん…出来れば、ネックもPB57/LHのメープルの白木フレットボードにしたいわね…ネックだけ注文して、GOTOHのペグは自前で組み込んで…なら、その時はブリッジも一緒に変えた方が、バランス取れそうね」

「ちょっ、ちょっと待て和! 一体、何の話をしてるんだ!?」

慌てる澪に、和は事も無げに、

「何って…そのベースの改造プランだけど?」

「えっ…?」

「フェンダーの製品はジャパンもUSAも問わず、パーツもアチコチから出てるし、元々構造が分解結合しやすいように出来てるから、いじりやすいのよ」


181 :いふもの! [saga]:2011/07/25(月) 08:11:24.33 ID:xPBjIG3AO


実はこれ、フェンダー社の創業者レオ・フェンダーが起こした"エレキ楽器界の産業革命"の産物と言っていい。

それまでのギター…例えば、ギブソンのレスポール等は、従来のアコースティック・ギター等と同じ伝統的な作り方をしてきた。

つまり、工房や工場で、職人達が複数の工程を経て作り上げる"工芸品"だった。

しかし、フェンダーは新時代の楽器である"エレキ・ギター&ベース"は、"工業品"であるべきと考え、それに相応しい、大量生産に向く画期的な構造を持つべきとして設計した。

それが、電装系をピックガードの裏にに集中させてボディにネジ止めし、更にネックも別に作りボディに差し込みネジ止めする"セットアップ・ネック(もしくはボルトオン・ネック)"という、今のフェンダー・ギター&ベースの基本構造となったのだ。

それまで非常に高額だったエレキを、工場分業制にすることにより大量生産を可能にし、同時に品質管理や工員の育成も楽になり、結果としてコストダウンを図れたのだ。

この事実こそが、収入が少ない若者にも手が届く"庶民の楽器"としてエレキ・ギター&ベースが世界に広がり、ひいては大量のロック・スターを生み出した要因なのだった。


182 :いふもの! [saga]:2011/07/25(月) 08:12:18.29 ID:xPBjIG3AO


オマケに、フェンダーのUSAとジャパンとの製品の間には、部品やネジ類、サイズ表記などインチとセンチの違いで微妙な部分でズレていたりするが、フェンダー・ジャパンの製品同士であれば、同じ型式なら部品は原則として共用化できる。

例えば、澪が今手に持ってるプレベ・タイプの"PB70/LH(Left Hand)"だが、同じPB型番のレフティ・モデルには、和が言っていた"PB57/LH"以外にも"PB62/LH"というモデルが存在している。

この70/62/57の違いは、ボディやピックガード、ネック表面に貼られたフレットボード(指板)の素材や色の違いだけで、各パーツのサイズや形状、取り付け位置は原則として全く同じだ。

詳しく言えば、57と62はボディ素材が同じでフレットボードの木材が異なる。62と70はフレットボードは同じでボディ木材が違う。

57と62は同じメーカー小売規模価格で、57と70は約13000円の差があるが、これはボディ材の違いという意味だ。
逆に言えば、それ以外に違いは、それぞれに用意されたカラーぐらいだ。


183 :いふもの! [saga]:2011/07/25(月) 08:13:33.69 ID:xPBjIG3AO


「まぁ、ブリッジ交換は置いておくとしても…」

と、和は視線をベースから澪に移し、

「ピックアップとペグを換えるだけでも、随分と音が良くなるものよ? 実際、パーツ自体が同じでも、中のリード線を品質のいい物にして、良質なハンダで丁寧に配線し直すだけでも、エレキギターやベースって、音が良くなるものよ?」

そう言い切る和を澪は半ば唖然と見て、

「なんか、和…まるで自分でカスタムや配線やってるみたいだな…」

「あれ? 言ってなかったっけ?」

和は意外そうな顔で、

「私の"タラス"…ああ、念のために言っておくけど、今使ってるベース"BB714BS/LR"のペットネーム(愛称)の事よ?」

"タラス"とは、ビリー・シーンが駆け出しの頃、ベーシストとして初めて正式に参加したバンド名から由来してるようだ。

「タラスは、ネック交換した時にペグを取り換えて、リア・ピックアップ交換の時、ついでに中も再配線してるんだけど…」

と、和は一旦言葉を切り、

「私が、自分で全部やったんだけど?」

「…へっ?」


184 :いふもの! [saga]:2011/07/25(月) 08:15:18.53 ID:xPBjIG3AO


「和…お前は、ベース職人か何かかっ!?」

軽いフリーズから復帰して、思わずツッコむ澪であったが、和は涼しい顔で…

「そんな大した物じゃないわ。ペグとリア・ピックアップは、"この子"の補修部品として発注した物を流用しただけだし」

と、和夏は喋りながらチューニングしていた"Attitude Limited II/LR"を澪に見せた。

「ああ、この子のピックアップはディマジオとヤマハが共同開発した特製で、ペグは"ヒップショットDチューナー"って少し特殊な仕掛けがあるから、どっちも使ってみたかったのよ。それに、ハイカットスイッチに繋がってるフロント・ピックアップには、手を付けてないし…そうね、」

和はくすりと笑い、

「基礎的な電気工学の知識と、道具と素材が揃ってれば、きっと小学生程度でも出来るようなライト・カスタムよ?」

「いやっ! それ絶対に有り得ないから!」


185 :いふもの! [saga]:2011/07/25(月) 08:22:10.75 ID:xPBjIG3AO

とりあえず、今回の投下は終了ッス。

次回は、澪と和の会話がもう少し続きますが、ちょっと時間が読めないので投下は未定です。
なるべく早いうちに投下したいなぁ〜と。



今回もマニアネタ&和ちゃんの"隠し技能(笑)"が判明。

それにしても、本来なら500レス、悪くてもこのスレで1年目を終わらせて、2年目をどうするか考えるつもりだったけど…
この展開の遅さを考えると、大分、雲行きが怪しくなってきたような…?(汗)



186 :いふもの! [saga]:2011/07/25(月) 21:38:10.67 ID:xPBjIG3AO

明日は予定が詰まってしまい、投下できるかどうか分からなくなってしまったので、これより緊急投下を開始します。

とりあえず、澪和のシーンの最後まで書き上がったんで、そこまで投下。
過去バナとか入れたので、前の投下分より長くなりやした。



187 :いふもの! [saga]:2011/07/25(月) 21:39:00.18 ID:xPBjIG3AO


「頭脳明晰成績優秀、オマケに抜群のトリッキー・ベーステク…これでベースのカスタムやチューンまで出来るなんて、和ってどんだけ万能チートなんだよ…」

妙な汗をかく澪であったが…

「私がチート? 澪…冗談にしては笑えないし、洒落にしてはあまり面白くないわよ?」

「えっ?」

「ギターとベースのプレイテクは、確かに単純に比べられないけど…」

和は極めて真面目な顔で、

「ことエレキ系のチューンだったら、私の腕前なんて、憂にも及ばないわよ?」

「…憂ちゃんも、もしかしてギターのチューンとかカスタムとかって、できるのか…?」

「できる…なんてもんじゃないわね。ほとんど玄人裸足よ」

「うそっ…」

「唯がいるのは、更にその先…洒落でも冗談でもなく、コトブキ楽器店にアルバイトでいいからギター職人で入らないか?ってスカウトされるレベルよ?」

188 :いふもの! [saga]:2011/07/25(月) 21:39:39.46 ID:xPBjIG3AO


澪は、半ば信じられないという顔で、

「憂ちゃんはともかく…それって、本当に唯の話なのか?」

すると、和は珍しく心外という気持ちが露骨にわかる表情で、

「なんだったら、紬やここの店員さんの誰でもいいから捕まえて、唯のこと聞いてみたら? 多分、知らない人っていないと思うし」

「それってどういう…」

「澪も律も、中学の時に紬のコネで"原価(卸値)"で、ベースやドラム揃えたでしょ?」

「あっ、ああ…」

「それは私も同じだけど…唯や憂はアンプやキャビネを一通り揃えた後は、買うのはパーツがメインだったのよ」

と、和は少し昔を思い出した。

「それで、お小遣い貯めてパーツを買って…そして、澪達と知り合った頃には、ここの工房を借りて自分達のギターをカスタムしてたたのよ」


189 :いふもの! [saga]:2011/07/25(月) 21:40:38.15 ID:xPBjIG3AO


「ちょっと待て! まさか、いきなりギー太をバラしてパーツ組み込んでカスタムしたなんてことは…」

「そんな訳ないでしょ? いくら唯が破天荒でも、物理法則や経験則までは天元突破できないわ」

和は、そうバッサリ切り捨てた。

「…どこから話したものかしら?」

話したくないのではなく、軽く迷った表情の後、

「例えば、こんな話はどう? 澪達と合流する前から、私と唯それに憂は、普通の女の子が興味を持ちそうな事は眼中に無くて、インターネットを見ながら、電動ドライバーやハンダゴテ片手に壊れたギターと格闘してた…なんていうのは?」

「えっ、えっと…」

突拍子もない切り出しに、リアクションに困る澪であったが、

「簡単な話よ。ある日、唯がこんな事を切り出したのよ…」




『のどかちゃんのどかちゃん!』

『なに? 唯?』

『わたし、ギー太がどうして歌うのか、知りたいんだよっ!』



190 :いふもの! [saga]:2011/07/25(月) 21:41:46.41 ID:xPBjIG3AO


「唯は、昔から何かに夢中になってのめり込むと、信じられないぐらいのコンセントレーション(集中力)を発揮して、それが異常な程長続きするのよ」

「???」

「例えば、澪…あなたベースを練習してたら、気付くと6時間過ぎてたなんてこと…一年に何回ある?」

「えっと…」

思わず言葉に詰まる澪…確かに即答できる人間はそういないだろう。

「唯はね…ギー太に出会ってから半年以上、そんな状況だったのよ」




『のどかちゃん、わたしは"空っぽ"なんだよ…』

『何かしなくちゃいけないのに、何をしていいのか分からないんだぁ…』

『でもね…ギー太と出会って、初めてやりたい事がみつかった気がするんだよ…』




「ふふ…」

「ん? ど、どうしたんだ和? 突然、笑いだして?」

「ちょっと昔を思い出してね…」

和は優しく微笑み、

「我が娘の成長を垣間見た母親の気分に浸っていただけよ…バーチャルにだけど、ね」


191 :いふもの! [saga]:2011/07/25(月) 21:43:01.71 ID:xPBjIG3AO


「話を戻すけど、唯は一度何かにのめり込むと際限なく熱中するの。そして、何処までも貪欲に追求し、探求しだすのよ…しかも本人、無自覚なままね」

和はクスクス笑い、

「それで、ギー太がどうして音を出すのかにも興味を持ったって訳。でも、50万円もするギターを、いきなりバラす訳にもいかないでしょ?」

(というか、唯はその値段も知らなかったみたいだけど…)

と、和は心中で付け加えてから、

「だから、私がこう提案したのよ」



『インターネットで安いギター探しましょ。多分、音が出なくなって廃品回収に出すしかないような代物なら、きっとオークションで格安で手に入る筈だし』



「ってね。それで、中学生の懐が痛まない程度のギターを買い漁って…」


192 :いふもの! [saga]:2011/07/25(月) 21:51:26.53 ID:xPBjIG3AO


「大半はジャンク品だったけど、中には掘り出し物があったり、時には信じられないぐらい貴重なパーツなんか混じってたりしててね…あれはあれで楽しかったわ」

ギターにはズブの素人だった唯や憂、和がウィルキンソンやGOTOHにフロイド・ローズ、セイモア・ダンカンやディマジオなんて有名所のパーツを知ったのは、ちょうどこの時期だった。

「壊れたギターやベース…どうして音が鳴らなくなったのかが分かれば、逆の手順で音の鳴る理屈が判る…我ながら単純な理屈だけど、中々いい経験だったわね」

本当に楽しげに語る和を…

「三人でギターやベースを分解して、時折、紬が差し入れ持って合流して」

澪は、どこか羨ましそうに見ていた。

「使えそうなパーツを選別して、あーでもないこーでもないって、配線図とか回路図とか、インターネットから仕入れた情報を頼りに、思考錯誤しながらアチコチ入れ替えて…」

和は、当時を思い出しながら、そっとベースを撫でた…

「そういえば、4人がかりで丸1日かけて、10本のジャンクから1本の音の鳴るギターをレストアしたなんてこともあったっけ…」


193 :いふもの! [saga]:2011/07/25(月) 21:52:27.50 ID:xPBjIG3AO


「なんかいいな…そういうの…」

「ええ、そうね。パーツを一つ一つ組み込んで、初めてレストア・ギターから音が出た時は、私も柄にもなく感動したわ」



『この子は、もうジャンク品なんかじゃないんだよ! もう立派なギターなんだよ! のどかちゃん、すごいよねっ!!』



(どちらかと言えば、子供みたいに無邪気に感動する唯に、感動したのかもしれないけど…)

「"Eternal Child like Wonder"…さしずめ、"永遠に続く子供のように不思議な感覚"ってとこかしらね?」

「なんだ、それ?」

「何でもないわ。ともかく、私達は澪達に出会う前から、そんな中学時代を送ってたのよ。特に唯は、あの通りの超集中型でしょ? 私がいない時も色々やってたみたいで、ギタープレイの腕前もギターのチューンやカスタムの腕前も、メキメキ上がったわね〜」


194 :いふもの! [saga]:2011/07/25(月) 21:55:22.61 ID:xPBjIG3AO


「憂ちゃんも、そんな風にのめり込んだのか?」

和はプッと吹き出し、

「憂の場合は、少し事情が違うわ。憂、あの通りの重度のシスコ…もとい。お姉ちゃん子でしょ?」

なんだか、本音が見え隠れする和である。

「家事の時とか以外は、基本的に唯にべったりじゃない?…ギー太に夢中の唯のそばにいるには、同じフィールドに入るしかないから…」

「もしかして、"門前小僧習わぬ教を読む"ってやつ…?」

和は小さく頷き、

「そういうこと」

「平沢姉妹…どれだけ、ギター・チート・スキルなんだ…?」

「それに関しては、私も同意だわ。まぁ、その代償として、唯の成績は中学時代全般を通じて低空飛行を続けたけどね」

その瞬間、二人は小さく声を上げて笑った。

「同じ中学で、一緒にプレイしてきたのに、まだまだ私達って知らない事が多いなぁ…」

「それはそうよ。私だって唯と幼稚園の頃から一緒で、家も目と鼻の先じゃなければ、ここまで唯の事は知らなかったと思うもの」

そして、和は素直な笑顔で、

「逆に私も澪や律のこと、まだまだ私も知らない事が多いから…だから、」



「これから知っていけばいいんじゃないかしら?」



195 :いふもの! [saga]:2011/07/25(月) 22:07:32.08 ID:xPBjIG3AO

これにて、本日の投下終了の残弾0。

しかも、今日の予定が明日にズレたんで次回の投下はマヂ未定ッス。



いつもと路線変えて、平沢姉妹と和の過去エピソードとか入れてみたけど、どうだったでしょうか?

いや〜、いきなり唯憂和がギターやベースのカスタムやチューン持ってますとか言われても納得できないだろうな〜とか思ったので、少し予定を前倒しして、過去設定をエピソードに織り混ぜてみた(笑)

やはり、この面子で百合は難しいなぁ〜、どう転んでも友情物語になってしまふと思いつつ、特に今回はレスしてもらえたら嬉しいッス!



196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/26(火) 02:58:31.47 ID:dpVlxrQu0
別に、むりやり百合要素を詰め込む必要はないと思う。
>>1のやりたいようにやればいいんじゃね?

ところで、>>1って何歳?
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/26(火) 10:46:11.32 ID:jp7MBuB/o
音楽要素に特化したのも悪くないと思うけどな
自分が書きたいと思ったことを書き続けてくれ
198 :いふもの! [saga]:2011/07/26(火) 11:53:25.41 ID:AyiOPIQAO

>>196
ども!
とりあえず、現状で百合は無理っぽいですしね(笑)
具体的な年齢をネットで晒すのは問題なんで、ヒントを…音楽の趣味は、実年齢じゃ有り得ないほど古いです。
同年代で音楽の趣味が合う人間と会った試しが殆どなく、合うのは世代の違う年上の人達ばかりッス(笑)

>>197
ども!
そうですね。元々、自己満足の世界だし、趣味丸出しの音楽特化っていうのが、1作品ぐらいあってもバチは当たらないでしょうし(笑)





これから、投下を開始します。
5レスと短いですが、睡眠時間や飯時を削ったり、移動中に書くのも限度があるって事でご勘弁。

今回は、律紬のシーンです。



199 :いふもの! [saga]:2011/07/26(火) 11:54:23.71 ID:AyiOPIQAO


「りっちゃん、手伝うわね♪」

「あれ? ムギ、もうキーボードのセッティング出し終わったのか?」

「うん♪ "KRONOS"は"3(さん)ちゃん"と同じKORG製のキーボードだからね♪ 基本的な操作系は似てるから、無問題(マウモンタイ)よ♪」

『何故に中国語?』と律は思いもしたが、

「なるほどねぇ〜。そういや、ムギのキーボーのペットネーム(愛称)って"3ちゃん"だったっけ?」

「うん♪ KORGの"M3"だから、"3ちゃん"。唯ちゃんが名付けてくれたのよ♪」


「やっぱり名付け元は唯かいっ! てか、そもそもペットネームを始めたのって唯だったもんな〜」

言うまでもなく、最初に愛称を持った楽器は"ギー太(レスポール・ヒスコレ1960)"だ。
そして、少し前に出てきた憂の"レイラ(ストラト・クラプトン・シグネイチャー)"に和の"タラス(BB714BS/LR)"と続く。

そして、澪の"エリザベス(JB62/LH)"と紬の"3ちゃん(M3Expanted)"は、唯が名付親だ。

厳密には、紬はM3を入手した時にお願いして名付けて貰い、澪は気が付いた時には、勝手に名付けられたという差はあるが。


200 :いふもの! [saga]:2011/07/26(火) 11:56:03.72 ID:AyiOPIQAO


「りっちゃんのドラムの愛称は、確か"ムーン"よね?」

「ああ。私が"キース・ムーン(ザ・フーのドラム)"が好きってのもあるけど…色が何となく月っぽいだろ?」

律のコンパクト・ドラムセットの"Hipgig"は、"メローイエロー"って、何やら某清涼飲料水みたいな名前の専用カラーで、実際にあの缶の色によく似てる明るい黄色だ。

「そういえば、りっちゃん、フロアタムをなんでそれにしたの?」

「ん? ムーンは、バーチとマホガニーの7プライ(7層張り)だろ? ステカス・シリーズはバーチの6プライだから、似たような作りだし音的に合わせやすいかなぁ〜ってさぁ」

「あっ、そういう意味じゃなくて、なんで黒にしたのかってこと。YAMAHAの電子ドラム・パッドは、白と黒しかないし、白のは厚いのしかないから、黒を選んだんじゃないかな〜って想像できるけど…」

YAMAHAのステージ・カスタムというのは、ドラムセットの中でも廉価なシリーズで、いわゆる売れ線の商品だ。
その為、カラーバリエーションも4色あり、黒(レーベン・ブラック)以外にも赤/木目/燻し銀が用意されている。

「う〜ん…まぁ、主にビジュアル的な意味なんだけどさ」

「ビジュアル?」


201 :いふもの! [saga]:2011/07/26(火) 11:57:28.20 ID:AyiOPIQAO


「ほら、ドラムセットも黄色でシンバルは当然、金色だろ? これでまた派手系の色を入れたらケバくなって打消し合うんじゃね?とか思ってさ…だから、エレタムとフロアタムを黒にして全体の印象を引き締め、尚且つ対比色になるから、互いが引き立つんじゃね〜かなと」

「りっちゃんって、結構色々と考えてるんだね〜♪」

皮肉では無く、本当に感心したような紬の口調に、律は照れ臭そうに、

「よ、よせやいっ! まぁ、確かに私のキャラじゃないんだけどさ…唯の奴見てたら、なんか私も色々と考えねぇといけないんじゃね?とか思ったんだよ」

「唯ちゃん?」

「ああ…まぁな。唯ってさ、中学の頃、私達とのセッション以外にも、結構、アチコチのバンドからお呼びがかかってスポット参戦してたじゃん?」

これには、少し説明がいるだろう。

それは、唯がギー太と出会って、約一年…唯達が二年生に進級した頃だろうか?

そのぐらいの年頃になると、そろそろロックとか音楽の格好良さに目覚めて、にわかアーティスト(笑)達が中学でもチラホラと出てくるものだ。


202 :いふもの! [saga]:2011/07/26(火) 11:58:26.80 ID:AyiOPIQAO


無論、唯自身はそんな"ファッション・ロッカー"と無縁なのだが、そんなにわかアーティストの中にも、ほんの一部ではあるが本当に音楽の楽しさに目覚めて、実際にバンドを組んだり、あるいは入ったりする者もいる。

その手の覚醒をするのは、大半は男子であるのだが…そこはそれ、相手は物怖じや人見知りという単語が辞書に無い唯だ。

男子生徒相手にも普通にギター談義で盛り上がり、それが積もって唯はある日、ゲストとしてとあるジョイント・ライブにゲスト・プレイヤーとして呼ばれた。

勿論、色んな意味で唯の身を案じた憂に和、紬がついていき、ついでに琴吹家黒服隊(笑)が見つからぬように身辺警護をしていたのは言うまでもない。



そして、ライヴハウスから戻ってきた唯の携帯には、見覚えのないの電話番号やメアドに溢れていた。

なんでも、ステージの上で魅せた唯のギターソロがアチコチのバンドから注目を浴び、ライブ後に声をかけられたというのだ。


203 :いふもの! [saga]:2011/07/26(火) 11:59:31.66 ID:AyiOPIQAO


その人柄や性格から、打ち解けすぐに場に馴染んでしまうのは、紛れもなく唯の美点である。
それが遺憾なく発揮された結果、唯はアマチュア・プレイヤーに期せず人脈が出来てしまったのだ。

それでもヤローは丁重にお断りして、番号&メアドの交換を同姓に絞った辺り、和と憂のマネジメント能力(と、琴吹家の力とか…)は高く評価されるべきだろう。

それはさておき中学の後半戦、唯は時折、助っ人を頼まれ、時には憂と和も飛び入り気味に巻き込み、ライヴハウスのステージに立った。

今日は家に置いてきたギー太のハードケースに貼られた二桁近いステージパスのステッカーが、彼女の"戦歴"を物語る。

「そりゃあ、紬のおじさんやおばさんを説得した時は、人前で全員が演奏したけど…」

律の言葉に、コクリと紬は頷く。

「唯や和、憂はともかくさ…私達って"バンド"ってより、身内で演奏を楽しむ"セッション・グループ"だったじゃん?」

「うん。確かにそうだったわ」

「何となくだけど…唯は、無意識でもっと先を目指してる気がするんだよなぁ…私だって、前へ進めるなら進みんでみたい」

「りっちゃんにとって、前へ進むっていうのは…どういう意味なのかな?」


204 :いふもの! [saga]:2011/07/26(火) 12:09:20.22 ID:AyiOPIQAO

投下終了。
今日は、もう帰宅するまであまり書く時間がとれそうも無いので、本日中の再投下は厳しいッス。
次は、まだ書い初めてもいないので、未定って事で。

とりあえず、唯達の捏造過去への批判とか拒絶とか無いみたいなので、今回も少し設定から引き出してエピソードに混ぜてみました。

それと、まだまだ先の話になると思いますが…
純の設定も、回りに合わせて少しいじってみようと思うんですが、どうでしょう?

改造の結果→出番が増える。



205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/26(火) 12:36:31.19 ID:4IN4GH1DO
ぶっちゃけSSはつまらない
唯が露骨なチートキャラで気持ち悪いし、周りも唯を持ち上げすぎ
なんでここまで改悪したんだろう

批判とかがないのはただ単に読む人がいないからだと思う
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/26(火) 21:33:06.97 ID:f6O4yuun0
たしかに過去の捏造よりも唯のチート改悪の方が酷いな
どいつもこいつもただの太鼓持ちか金魚の糞に見える
唯が凄いとわかってんなら他のメンバーはそれに負けずないよう努力しろよといいたくなる
207 :名無しNIPPER [sage]:2011/07/26(火) 22:08:57.58 ID:xmxJOZfAO

別に唯のチート化についてはそれほど不快には感じなかったけどな
主人公だしたまにはええやん

レスが少ないのは、専門的な話が多くて、どうコメントしていいか分からないって人が多いからじゃない?

ただ、過去を改変した意味があるのかについては少し疑問
原作通りの設定でも専門的な話はできるんじゃないかなと個人的には思った
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/26(火) 22:14:24.45 ID:03ZEOPXSO
疑問に思うことを指摘するのはいいと思う。

指摘されて気付くこともあるし、肯定ばっかってのもね



ただ、それで「書き手のやる気を削ぐようなことをするな」と喚く奴はアホだけどね
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/26(火) 22:33:01.42 ID:dpVlxrQu0
SS製作者総合スレ9
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1310902881/472-


472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) :sage :2011/07/26(火) 13:37:26.04 ID:AyiOPIQAO
というかついさっき見たら、200レス越えて初めて嵐がでてた。
嵐にすらスルーされてた作品なんで、喜んでいいのやら悲しんでいいのやら(笑)

って、よく考えたらもう夏休みじゃん!

はぁ…
日本の夏の風物詩ですなぁ。
蚊が増えるのと同じ意味で、嵐が増えるのは。



501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) :sage :2011/07/26(火) 20:22:17.76 ID:AyiOPIQAO

>>490
禁書じゃなくてけいおん!書きだけど、楽器名とかならリアルにある奴、バンバン出してる。
事実無根の誹謗中傷書く訳でないし、何より音を実際に知ってるから、読者さん以上に俺自身がシーンをイメージしやすいから(笑)

全レス返し…
それをやれる程度しかレスが無い我が作品でも、現実には不可能。
というか、「つまんね、気持ち悪い」だの書きこんでくる嵐相手にレス返す義理無いし、何より「だったら読むなよ」としか言い様ない(苦笑)



505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) :sage :2011/07/26(火) 20:50:04.99 ID:AyiOPIQAO

>>503
とりあえず、「だったら読むなよ」としか返し様のないのは、全部嵐でよくね?
夏だし。

512 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) :sage :2011/07/26(火) 21:10:32.41 ID:AyiOPIQAO
むしろ、「つまんね」「きめぇ」「改悪」「読む奴いねぇ」の典型的4連コンボでワロタ。
つか、どこの嵐テンプレだよ(笑)
んで、つい夏を感じた。
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/26(火) 22:35:19.98 ID:dpVlxrQu0
>>1に取っては>>205は荒らしなのか
結構やんわりと指摘していると思うけどな



「俺は俺のやりたいように書くから、ちょっとでも文句ある奴は見るな!」

まあ、>>1のスレだし、そういう読者ガン無視スタンスでやるもの>>1の勝手だと思うけどさ。



・レスが付かない。読者が少ない。
そういう>>1がそういうスタンスなら、そら当然の事だろうな
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/26(火) 22:50:38.08 ID:dTUuDwFYo
まぁ春でも秋でも同じような批判はされてると思うけどね
SS作者の愚痴スレのレスを抽出して張るのもどうかと思うけど
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/26(火) 22:54:33.12 ID:03ZEOPXSO
毎回、お情け程度にレスしよ
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/27(水) 01:07:28.87 ID:khS2N7Bto
>>209を見てもこのSSを楽しめるやつはいるのだろうか
書き手の性格の汚さが出てて萎えた
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/27(水) 01:21:55.08 ID:nMhmkIpM0
「俺ってこんなに音楽詳しいんだぜ。すげーだろ」
「萌えとか百合とかしか見てないお前らとは違うんだよ」

そんな思想が作者からにじみ出ている。全体的に
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/27(水) 09:25:59.32 ID:ZYBkZVCY0
          _
          \ヽ, ,、
            `''|/ノ       ∞ . . .
             .|
        _    |
        \`ヽ、|
          \, V
             `L,,_
             |ヽ、)
            .|
           /    ,、  ,
           /    ヽYノ
          .|   r''ヽ、.|
          |    `ー-ヽ|ヮ
           |       `|
          ヽ,  __,|
           ´       ` <⌒
        /     l ト、  、 \
.        /     l. _/リ! ヽ _}  寸¬
             l'´/ ,リ  ̄V\ ヽ
        { /|   |/         {:.ヽ !
       X  l   l◯    ◯ l:.:.l V
      / ヽ (|   !    _   }:.:.!
           . |   !、_( __) イj\|        ┼ヽ   -|r‐、.  レ |
           }/,レヘ/─-\   ′          d⌒)  ./| _ノ   __ノ
216 :205 [sage]:2011/07/27(水) 10:07:20.75 ID:zLHK/b2DO
荒らし扱いワロタ
もしかして自分のSSを否定するやつは全員荒らし扱いなの?
ていうかこの場合は荒らしじゃなくて、アンチ扱いにするのが正しいんじゃないかな?
荒れるようなレスをしたつもりはないし


でもまあ、たった1レスの否定的な感想で夏厨どころかそれ以下の虫に例える>>1も大概だと思うよ
217 :いふもの! [saga]:2011/07/27(水) 10:36:26.60 ID:wA9rltTAO

>>206
なるほど。
それにしても、妙に表現がいい…。
太鼓持ちなんて単語、久しぶりに見た気がする。

>>207
ども!
最早、趣味全開の作品でっから。
捏造過去ってのは、唯だけに限らず、話の展開的にどうしても最終話近くの腕前とかが必要なんで、設定にしました。

>>208
確かにその通り。
良質な批判者は、確かに貴重。

>>211
ごもっとも。
時間があるのは、正直羨ましい。

>>212
それでも無よりはいい。

>>214
思想というより楽器は趣味。
ちなみに萌も百合も大好物。…自分で書けないだけで。





今から4レスほど投下します。

なんか、日に日に書く時間が無くなってくるような…



218 :いふもの! [saga]:2011/07/27(水) 10:38:12.27 ID:wA9rltTAO


「全員で、ちゃんと"バンド"を組みたい…!」

その瞳には、確かな覚悟があった…

「軽音部を、ただの"中学の時のセッション"の延長で終わらせたくない…せっかく、みんな揃って同じ高校にこれたんだ。そりゃあ、憂を1年待たなければ全員とは言えないけどさ…」

律は、確かな覚悟を宿した瞳で、

「もう1ステップ前に進んで、大勢の前でプレイしてみたい…!」



「そっかそっか♪」

その言葉を聞いた途端、紬は何故だかひどく上機嫌になる。

「やっぱさ…ステージで楽しそうな唯を見てると、そりゃあ羨ましくなるさ」

律は、ペンのようにクルクルとスティックを回し、

「私だって、"魅せるプレイ"ってのを奏ってみたくなるんだ」

「それは私もよくわかるわ。出たのは、ピアノのコンクールだけど…」

紬は、かつてのとある日を思い出し、

「観客の視線をステージで一身に浴びた時に感じる、あの高揚感と万能感…」

そして、悪戯っぽく笑うと、

「ちょっとクセになるわよ♪」


219 :いふもの! [saga]:2011/07/27(水) 10:38:59.34 ID:wA9rltTAO


「ところでさ、紬…」

「なに?」

「エレドラ(電子ドラム)の配線の仕方教えてくれ〜! どこに何を繋いで良いのかさっぱりだ! ていうか、ジャック多すぎ!」

紬は、プッと吹き出し、

「りっちゃん、機械とか苦手だもんね♪ ちょっと待ってて」

と、紬は慣れた手付きでジャックで音源ユニットとドラム・パッドを繋ぎ始める。

「へぇ〜。マニュアルも見ないで、よく分かるもんだなぁ〜」

「えっへん♪ 基本的に電子楽器は、インターフェースの違いだけで、作りが似てるの」

「インターフェース?」

「そっ♪ え〜とね、私の使ってる3ちゃんとかって一つに見えるけど、中身は大雑把に言えば音源ユニットと、シーケンサーって言う記録装置、音を入力するピアノ型のキーボードの三つから構成されてるのよ」

「へぇ〜」

「キーボードって一体型だけじゃなくて、実は音源ユニットだけでも売っててね、それに"MIDI鍵盤"っていうのを繋いで、演奏したりできるの」


220 :いふもの! [saga]:2011/07/27(水) 10:39:51.53 ID:wA9rltTAO


「み、みでぃ…?」

「簡単に言っちゃえば、"電子楽器専門のデジタル信号"のことよ。それでね、その音源ユニットと3ちゃんの中に入ってる音源は、記録されてる音の種類と数が違うだけで構造は一緒だし、さっき言ったMIDI鍵盤とドラムパッドは、機能的には一緒なのよ」

「ほぇ? どういうこと?」

「指で鍵盤を叩くのか、あるいはスティックでドラムを叩くのかって違いだけで、それをデジタル信号で送って、音源ユニットから音を出すってプロセスは、全く一緒なの♪」

すると、律は妙に納得した顔で、

「ややこしいようで単純なんだな〜」

「そういうこと♪ だから、一度使い方を覚えちゃえば、思ったよりも扱いは簡単よ?」

「ふ〜ん…」

「それとねりっちゃん、音源の3Ch回線が一つまだ空いてるから、そうねぇ…"エレバル(電子シンバル)"を一個、追加したらどうかしら?」


221 :いふもの! [saga]:2011/07/27(水) 10:40:39.85 ID:wA9rltTAO


少し紬の発言を補足すると…

YAMAHAのドラム音源ユニットや、電子ドラムのパッドやシンバルには、面白い機能がある。

普通のドラムやシンバルを叩いた時、叩く強さだけでなく、叩く場所によっても音は変わる。

それを精密に電子ドラムで再現すべく、ヤマハはパッドを3ゾーンに分けて認識し、そのゾーン毎に音色を細かく変えるシステムを開発した。
3ゾーンに分けるから3Chとなる訳だ。

そして、律が持ち込んだ音源ユニット(正式にはドラム・トリガー・モジュールと呼ぶらしいが…)の"DTX500"には、その3Ch対応ジャックが3つ付いてるのだった。

「エレバルかぁ…」

紬は、ポンと手を打ち、

「だったら、チャイナとかトラッシュとかEFXとかカウベルとか、色々な鳴り物を試せるし、曲によって色々使い分けられるしね♪」

「…紬、お前はみょーにドラム、詳しいな?」

律のジト目に、紬はテヘッ♪と笑い、

「実は、家でシーケンサーに色々なドラム系の音を打ち込んで、"りっちゃんごっこ"って遊んでたりして〜♪」

「ヲイヲイ…問題は、私にそいつを使いこなせるかどうかだなぁ…」

「うふふ♪ きっと、慣れちゃえばいいのよ♪」


222 :いふもの! [saga]:2011/07/27(水) 10:47:04.46 ID:wA9rltTAO

以上、投下終了。
律紬のシーンは、終わりです。

次回は、時間が読めないので、全くの未定。


>>216
アンチか…なるほど、それは気が付かなかった。



それにしても、まさかのこのレスの数。
意図せず大した宣伝効果があったもんだなぁ〜。



223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/27(水) 12:41:07.10 ID:XrDg9kER0
強がりで言ったんだろうけど、宣伝効果なんてないだろ。
だってこのSSつまらねーし。
つまらない物はつまらないってハッキリ言ってあげなきゃ、この>>1はこのSSが大絶賛されてると勘違いしたまま書き続けちゃうよ。

あー、でも、>>209を見るとこの>>1は「夏厨が大量に湧いて気持ち悪いな」
「蚊が寄ってきてウザすぎる」としか考えないんだろうなぁ。
なんか>>1自身が夏厨っぽいよネ!
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/27(水) 22:14:12.48 ID:cKIiLajMo
わざわざつまらない作品を読んで
感想まで投下してあげるって
ずいぶん親切なんですね。
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/07/28(木) 17:40:07.53 ID:z/aPg3W1o
うーん……。折れない>>1は良いんだけど、意識せずにやってるのかな……?

早漏はいくないって。無駄に煽るヤツもだけど
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/28(木) 21:08:03.86 ID:XXqsl4Ss0
ここまで夏厨の影響が…
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/28(木) 22:34:56.17 ID:W3swt3OCo
自業自得な部分もあるだろ
>>1>>205をスルーできていればここまで騒がれることもなかった
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/29(金) 05:22:11.96 ID:qGlUmMHDO
俺は普通に楽しんでたわ、だから和紬の唯に対しての態度は違和感あるが、チートに関してうんたらかんたらほざいてるのが唯アンチにしか見えない。
どうせ唯の立場が梓や澪ならマンセーだろ氏ね。
229 :いふもの! [saga]:2011/07/29(金) 18:22:41.71 ID:jW5zHMoAO

>>225
意識するも何も、そっちではなく時間の無さで心が折れそうなんで、気にしてる余裕が無いってのが本音ッス。

>>228
ども!
違和感…違和感ですか。
それを払拭できるような展開を書かないと。
それとも過去話が先か…
これからも楽しんでもらえた嬉しいッス。





これから4レス程投下します。

分量少ないですが、ご勘弁。



230 :いふもの! [saga]:2011/07/29(金) 18:23:50.01 ID:jW5zHMoAO


「あら? 唯、そのエフェクターは?」

「TCエレクトロニクスの"Nova System"だよ〜♪ 音、スッゴくいいんだぁ♪ しかも、思いっ切り安くなってたし」

「そういえば、前に欲しいって言ってたわね? でも、高くて手が出ない〜とか言ってたような…?」

「うん! 出た時は、10万円以上してたのは、今は懐かしい話だよ〜」

唯の言葉にウンウンと憂は頷き、

「というか、定価は12万円以上してたよねぇ〜。お姉ちゃんと一緒に驚いたもん」

「それが今は、5万円以下の大特価か…なんか時の流れを感じる話よね?」

平沢姉妹は、コクリと同意して、

「お父さんからギターを貰って、お姉ちゃんと一緒に初めて、もう三年かぁ…」

「色々あったよね〜。むぎちゃんが日本に帰国してて訪ねてきてくれて」

「和さんがベースを初めて、紬さんがキーボードで参加してくれて…」


231 :いふもの! [saga]:2011/07/29(金) 18:25:19.47 ID:jW5zHMoAO


すると、唯は何かを思い出したように、

「そういえば、むぎちゃんがキーボードのシーケンサーの使い方を覚えたのって、ドラムがいなかったからって言ってたっけ?」

「うん。最初は単純な打ち込みしかできなくて、悪戦苦闘してたよね〜」

その時の事が脳裏に浮かんだ和は、フフッと小さく笑い、

「そうこうしてる内に憂が中学に入ってきて…そういえば、憂が私を"和ちゃん"や"紬ちゃん"じゃなくて"和さん"や"紬さん"って言い出したのは、その頃だったかしら?」

「流石に、先輩相手にちゃんは有り得ませんから♪」

「うい〜、むぎちゃんが寂しがってたよ〜」

「そ、そう言われても…」

少し困ったような憂に、和は助け船を出すように、

「そういえば、ちょうどその頃よね? 律と澪が声をかけてきたのって?」

「そだよ〜♪ そうしたら、いつの間にか6人で演奏するのが、当たり前になってたよねぇ〜」

「そうね…うん。確かにそうだわ」

「うん♪」

唯の言葉に応えた二人は、とても嬉しそうな顔をしていた。


232 :いふもの! [saga]:2011/07/29(金) 18:26:15.76 ID:jW5zHMoAO


「それじゃあ、そろそろテスト・セッションを始めましょうよ♪」

ある程度全員の準備が調った時、紬はそう声をかける。

いくら今日は休日で、朝から来ているとはいえ時間は有限だ。
他のメンバーに異論が有るわけはない。
というより、早く憧れの装備を試したくてしょうがない。

しかし、その前に…

「あの〜、すいませ〜ん」

と、ひょっこりと顔を出したのはコトブキ楽器店の店員さんだ。

「あら? どうしたの?」

疑問顔の紬に店員は、

「セッション中にすいません、紬お嬢様。実は、皆さんの演奏を商品の販促デモの一環で、できれば店内に流させて欲しいのですけど…」

「ええ〜っ!?」

開口一番に驚きの声を上げたのは、一番の恥ずかしがり屋で照れ屋、ついでに人見知りの澪だった。

「その代わり、皆さんのセッションの録画した物、DVDに落としてお渡しできますが…」

「りっちゃん、どうする?」

小首をかしげるのは唯だ。

「えっ? 何故に私?」

「律が部長でしょ?」

と、和。

「う〜ん…」


233 :いふもの! [saga]:2011/07/29(金) 18:27:39.05 ID:jW5zHMoAO


「よしっ! 受けるぞ!」

「りっ、律っ!?」

思わず首が千切れんばかりの勢いで律に向く澪であったが、

「いいじゃねーの。タダで楽器と場所借りてんだしさ。いくらムギんちだって、何も返さないってのは、流石に気が引けるだろ?」

「そりゃそうだけどさ…」

「それに、わざわざ録画してくれるってんだ。後でプレイ・チェックも出来るし、断る理由はないんじゃね?」

「律、今日はやけに積極的じゃない?」

と、感心するように微笑む和だ。

「まぁ、成り行きでなったモンだけどさ、一応部長は部長だかんなー」

律は紬をチラッと見てからニヤリと笑うと、

「たまにはそれらしいフリでもしないと、格好つかねーじゃん?」

234 :いふもの! [saga]:2011/07/29(金) 18:31:54.59 ID:jW5zHMoAO

投下終了。
ちょっと予想外の事が起こり、今は正直、移動時間とか細々した時間を使って書いてる感じなんで、次回は完全に未定です。


235 :いふもの! [saga]:2011/07/30(土) 10:33:17.94 ID:mfOg1odAO

時間が不意に出来たんで、5レス分ほど書き終わったんで投下します。

236 :いふもの! [saga]:2011/07/30(土) 10:34:21.35 ID:mfOg1odAO


「でも、私達の演奏で販売促進とかになるんでしょうか?」

と、憂は思わず疑問を口にするが、

「大丈夫よ♪ 私達って、みんな楽器始めたばっかりの女の子グループに見えるし、宣伝効果はバッチリよ♪」

紬は、妙に自信ありげに答える。

「確かに私達ってオーラっぽい物、欠片程も無さそうだものね」

「のどかちゃん、そんなにハッキリ…」

「事実よ。そういう空気は、それが身に付く活動しないと纏えないものよ?」

「オーラかぁ…」

何かを噛み締めるように、その単語を呟く澪…

「無いものねだりしたってしょうがねーだろ? んで、何を奏るんだ?」

律の言葉に真っ先に反応したのは、言うまでもなく唯だ。

「じゃあじゃあ、レパートリーの中から、定番だけど"いとしのレイラ"とかどうかな?」

と、憂が自分のギターに付けるぐらいお気に入りのクラプトンの名曲を、唯は告げる。

「お姉ちゃん♪」

「悪くないんじゃね? ロックの王道みたいな曲だもんな。しょっぱなには丁度いい」

と、顔を綻ばせる憂にしっかりと頷く律だ。

237 :いふもの! [saga]:2011/07/30(土) 10:35:25.86 ID:mfOg1odAO


「そうしたら、次は"ババ・オライリー"だね♪」

唯の出した曲名は、律と澪がお気に入りの"ザ・フー"の、長く特徴的なイントロが耳に残る代表曲の一つだ。
「おっ! よくわかってんじゃん!」

「和は、何を弾きたいんだ?」

澪の言葉に和は少し考え、

「…"コロラド・ブルドッグ"ね」

「あ〜♪ あのワンちゃんの鳴き声から始まる曲だねぇ♪」

能天気に言う唯の台詞を聞くと、ひどくほのぼのとした曲に聞こえるが…

「「「「無理無理無理」」」」

と、唯と和を除く全員からダメ出しを食らってしまう。

それもその筈、"コロラド・ブルドッグ"は、"Mr.Big"の中でもプレイ難易度がトップクラスの"速くて難しい曲"だ。

「冗談よ。ここは手堅く"トゥ・ビー・ウィズ・ユー"で手を打ちましょう」

"トゥ・ビー・ウィズ・ユー"は、"Mr.Big"をスターダムに押し上げた、最初期のグレイトナンバーだ。

「紬のオーダーは?」

と、今度は和が紬にリクエストをふる。

「とりあえず、4曲やれば、テストには十分だろうから…ラストは、しっとりと最近の唯ちゃんのお気に入りのナンバー、スターシップの"セーラ"にしましょうよ♪」


238 :いふもの! [saga]:2011/07/30(土) 10:36:45.06 ID:mfOg1odAO


「えっ!? むぎちゃん、いいよぉ〜。わたしのリクエストは、もう出したし…」

「んふふ〜♪ 実は、この選曲って唯ちゃんの為ってだけじゃないのよ?」

と、紬はイタズラっ子のように笑い、

「まず、イントロから私のキーボードのエレピ(電子ピアノ)や"典型的なシンセ・サウンド"と、りっちゃんのエレドラが印象的なの。いかにも電子音がまだ目新しくて、それ自体が大きな主張をした80年代のロックっぽくね」

シンセサイザーがソフトウェアとハードウェアに別れ、それぞれ別の方向を歩み始めた昨今、各メーカーは"電子的にプログラムされたデジタル信号を、いかに生音に近付けるのか?"に熱を上げている。

シンセサイザーに詳しくない人も、"ヴォーカロイド"は聞いた事があるだろう。
実際、あの手のソフトウェアは、人の声をサンプリングしたデータを、シンセサイザーの技術を応用し、"擬似的な肉声"へと仕立てている。

実際、人の声は生音の一つの究極なのだ。

しかし、シンセサイザーがまだ全てのバンドに行き渡っていなかった80年代は、シンセサイザーが出始めた70年代に続いて、"いかにも電子的な合成音"が新たな音の可能性としてもてはやされた時代でもあった。


239 :いふもの! [saga]:2011/07/30(土) 10:43:01.85 ID:mfOg1odAO


「だから、セーラはキーボードとドラムとヴォーカルが主役で、その次に目立つのはベース。ギターの見せ場は、サビぐらいでしょ?」

「い、言われてみれば…」

「まぁ、そうなるな」

と、頷くのは紬と同じく作曲を少しずつ始めてる澪だ。

ただ、澪と紬は少し方向性が違っていて、澪がヴォーカル兼作詞作曲…所謂"シンガー・ソングライター"を指向してるのに対し、紬は作曲とアレンジ、つまりアレンジャーに興味を持っている。

実際、3ちゃん(コルグM3Expanted)のシーケンサーや、ソフトウェア・シンセ・プログラムが詰まった愛用のノーパソの中には、アレンジ(編曲)中の曲が何曲もあった。

「それに、今回の選曲って、期せずに一つのドラマになってるのよ♪」

「どういうこと?」

と、珍しく疑問形の和に、

「だって、"レイラ"は狂おしいぐらいの片思いを歌ってて、"トゥ・ビー・ウィズ・ユー"は、"君とずっと一緒にいたい"でしょ?」

紬はニコリと笑い、

「"セーラ"は、『恋は終わってしまった。君ほど好きな人とはもう会えないかもしれないけど、でも僕はもう後ろを振り返らないよ』って歌だもの♪」


240 :いふもの! [saga]:2011/07/30(土) 10:44:05.62 ID:mfOg1odAO


「なるほど…つまり、紬は今回の選曲、一つの恋の始まりから終わりまでフォローしてるって言いたいのね?」

と、宣う和に紬はぽんっ!と手を打ち、

「和ちゃん、大正解♪ 中々、ロマンチックな解釈でしょ?」

クラシック出身の人間は、曲の解釈に趣きを置くものだが、紬も例外じゃないらしい。

「恋…」

何やら口の中でモゴモゴ呟き、顔を赤くする澪に…

「でも、なんだか切ないなぁ…私だったら、そんな結末は嫌ですよぉ…」

と言う憂に、唯はポンと肩に手を置き、

「うい、わたしもハッピーエンドが一番だと思うよ♪」

「お姉ちゃん…」


何となくしっとりした空気が流れるかと思いきや…

「もしも〜し! 私と澪の"ババ・オライリー"が、完全にハブられてるんッスけどぉー」

と、空気を読まないんじゃなくて、意図的に空気を無視して乱入する律。

「あら? だったら、好きな人の名前が"ババ・オライリー"だった…で、いいんじゃない?」

「「ヲイッ!!」」

律と澪の声が綺麗にハモった。


241 :いふもの! [saga]:2011/07/30(土) 10:47:53.19 ID:mfOg1odAO

投下終了。

電車の中からだと、繋がる地点と繋がらない地点が極端だなぁ〜。

次回は、まだ書き始めてもないんで、投下は未定。


242 :いふもの! [saga]:2011/07/31(日) 06:20:19.66 ID:yNfBwxbAO

地震で起こされ、眠れないので勢いで書き上げた4レスぐらいを、今から早朝投下します。

243 :いふもの! [saga]:2011/07/31(日) 06:21:13.29 ID:yNfBwxbAO


「1、2、1.2.3.4!」

律のスティック・タップから唯と憂のギターが走り出す!

メイン・セクションとリズム・セクション、いつもとは逆にフェンダーが生み出す主旋律とギブソンが生み出す副旋律が見事なユニゾン・ハーモニーを魅せ…

スローテンポの曲の時は、走り気味と言われる律のドラムも、こういうアップテンポの時は、ゴキゲンだ!

澪のベースが文字通り低音の素地を創り、その上を和のハイテンポ・ベース・サウンドが駆け抜け、紬の選んだクラシカルなピアノサウンドが、更に華やかさを与える!

2ギター、2ベース、ドラムとピアノのメロディが重なり、混じり合い、かつてエリック・クラプトンが胸に秘めた凶暴な程の思慕を奏でる!



バカみたいに僕は君に恋をして

君は僕のセカイを塗り替えてしまったんだ

HEY、レイラ!
君は、僕を跪けさせたのさ

HEY、レイラ!
お願いだから

HEY、レイラ!
僕の心を楽にしてくれよ


244 :いふもの! [saga]:2011/07/31(日) 06:22:25.23 ID:yNfBwxbAO


最初の曲が終わった瞬間、唯は一息吐くと…

「音、軽いね…」

「うん…」

それが平沢姉妹の正直な感想だった。

実は殆ど同じ感想を、二人のプレイを聴き慣れた残る四人も持っている。

それもその筈で、唯のギー太(1960ヒスコレ・レスポール)は、マホガニー・ボディと"Burstbucker"ハムバッカー・ピックアップ×2から響かせる甘く柔らかい重厚な中〜低域を誇る、ギターとしては低音よりの味付けを持つ。
"ヴィンテージ・ノイズレス"シングル・ピックアップ×3を持つ憂の"レイラ(ストラト・クラプトン・シグネイチャー)"は、中域〜高域までが担当だが、アルダーという中域に強いボディ材やBTXにミッドブーストというデバイスを搭載してる関係で、特に中域に分厚いパワーバンドがあるセッティングだ。

華奢な体つきで、意外なほどパワー・プレイヤーな二人であるが、アッシュをボディ材に使うST57/ASHは、特に中域以上の高域がよく響く"華やかなサウンド"が持ち味。
そして、憂の持ち込んだレスポールJrも名前こそレスポールを継いでるが、立ち位置はフェンダーで言えば"ムスタング"と同じステューデント・モデル、同じくかなりのじゃじゃ馬…"賑やかなサウンド"が売りだった。


245 :いふもの! [saga]:2011/07/31(日) 06:23:18.69 ID:yNfBwxbAO


語弊を覚悟で言うなら、ST57/ASHもレスポールJrも実に特徴に溢れた個性的ないい音だが、唯や憂のプレイスタイルから考えれば、いかんせん"パンチに欠ける"のだ。



勿論、このご時世はエフェクターやアンプを使えば、音はある程度は"作れる"。

ギターの音は簡単に言うと、まず弦の振動(振幅)をピックアップと呼ばれるセンサーで拾い、それを内部の回路を通しながら電気信号に変換。その後、ジャックに繋いだシールド(耐ノイズ・ケーブル)から外に出力する。

ただ音を出すだけなら、シールドをそのままアンプに繋ぎ、アンプでギターの電気信号を増幅して、その増幅された電気信号を更にキャビネに収められたスピーカーに流せばいい。

エフェクターとは、ギターとアンプの間に挟む機器の事で、ギターから出た素の信号に様々な"効果(エフェクト)"を与え、効果を与えて"加工した電気信号"をアンプに出力するのが、エフェクターの役割となる。

逆に言えば、エフェクターが効果を付与して加工できるのは、あくまでギターからアウト・プットされる電気信号…"素の音"だ。


246 :いふもの! [saga]:2011/07/31(日) 06:24:16.37 ID:yNfBwxbAO


デジタルであれアナログであれ、エフェクターは素の音を基準にしてしか音をいじれず、元々の音が分からなくなる程いじりすぎれば、ギターの音として破綻してしまうのは、さほど珍しい話じゃない。

いかにギターの素の音色を殺さず、曲に応じた…あるいは、自分好みの音色に仕立てあげるかが、音作りの大変だけど楽しみな部分で、尚且つ腕の魅せ所なのだが…

「アッシュ材の綺麗な高音の響きは好きだけど、もう少し落ち着きがあった方がいじりやすいかなぁ…? 色はスッゴく可愛いけど」

と、唯はじぃ〜っと手元のST57/ASHを見た。

「唯ちゃん、もう一本♪」

「はぇ?」

紬の言葉に、チョコンと小動物チックに首をかしげる唯。
『お姉ちゃん萌え〜♪』という声が聞こえたような気がしたが、多分気のせいだ。

「確かもう1本、ピンクのストラトキャスターがあった筈よ♪ チラッと見ただけだけど、ネックが焦茶色だったから…」

「同じフェンダー・ジャパンのストラトなら…多分、フレットボードがローズウッドとかだよ、お姉ちゃん♪」

「ローズウッド・フレットのストラトなら、62年型…ST62シリーズなら、」

和から在処を聞いた唯は、急ぎ足で売場に向かった。


247 :いふもの! [saga]:2011/07/31(日) 06:30:44.74 ID:yNfBwxbAO

投下終了。
なんか最近、時間の関係で、細切れにしか投下できない上に、時間が不規則なような?

書き貯めしてからだと、今度はいつ投下できるか、余計に分からなくなりそう。

次回の投下は、時間に空きが出来たらという感じで。

それにしても、楽器ネタばっか(笑)

248 :いふもの! [saga]:2011/07/31(日) 18:31:05.17 ID:yNfBwxbAO

今日の予定が明日にズレたんで、書き終わったとこから、臨時投下を開始します。



それと、第6話が長くなりすぎたんで、無理矢理区切って今回から第7話って事で。

今回のメインは、唯憂と指板とアンプ・シミュレータ?

249 :いふもの! [saga]:2011/07/31(日) 18:32:36.37 ID:yNfBwxbAO

第7話:"さうんどっ!"

250 :いふもの! [saga]:2011/07/31(日) 18:34:26.27 ID:yNfBwxbAO


「ただいま〜! あのね、もう1台エフェクター持ってきちゃったけど…むぎちゃんいい?」

と、少し遠慮がちの唯に、紬はお気楽な調子で、

「良いわよ♪ それだけ、商品プロモーションにもなるし」

「さしずめ、"女子高生にも扱える、簡単で使いやすい機材"ってとこかしら?」

「あっ! 和ちゃん、それいいキャッチフレーズよ♪ 今度は全員、制服でプロモやりましょうよ?」

ニコニコの紬に、憂は小さく手を挙げ、

「あの〜、私一人だけ制服違うんですが、いいんですか?」

「逆に宣伝になりそうじゃん? 中学生の女の子でも使えますってさ」

と、律は冗談めいて言うが、

「でも、それって何て言うか…」

澪が首をかしげるのは、先程和から聞いた中学時代のエピソードを思い出したからだ。

あの話が事実なら、唯と憂はギタリストとしてだけに限らず、ジャンク品のそのまた残骸の山と引き換えに、ギター・チューナーやビルダーとしても相応の腕前を得たというのだ。

少なくとも、"ただの女子中学生"とは言えないだろう。


251 :いふもの! [saga]:2011/07/31(日) 18:35:13.71 ID:yNfBwxbAO


さて、ローズウッドのフレットボード(フィンガーボードとも呼ばれるが)は、メイプルに比べると幾らか柔らかく、アタック感は心持ち弱くなるが、その分音に落ち着きが出る。

唯が持ってきたギターは、前にチラッと名が出た同じくフェンダー・ジャパンの"ST62/ASH/MH"というモデルだ。
型番に付くASHというのは、ボディ材のアッシュの事を指してるのは察しが付くと思うが、MHとはなんだろうか?

答えは、"マッチヘッド"の略だ。
マッチヘッドというのは、ネックの先端に付くヘッド部分が、ボディと同じ色に塗られているという意味で、一つのステータス…というか"目立ち要素"ではある。

当たり前と言えば当たり前だが、バンドの花形と言えるギタリストは、自己主張の激しい目立ちたがり屋が多い。
それはさておき…

「ういは、これを使うといいさ♪」

と、唯が差し出したのは持ってきたマルチ・エフェクターだった。

"LINE6"社の製品で、名を"POD HD500"という。
一見すると、何度か名前が出てきた唯のZoomのG9.2tt(通称:キューべぇ)と同じスタンプ・ボックス・タイプのマルチ・エフェクターに見えるが…


252 :いふもの! [saga]:2011/07/31(日) 18:36:07.52 ID:yNfBwxbAO


「あれ? LINE6のHDシリーズって、確か"アンシュミ"じゃなかったっけ?」

アンシュミというのは、"アンプ・シミュレータ"の略だ。
本来なら、"アンシミュ"と略すのが正しい筈だが、韻を踏んでて言いやすいので、"アンシュミ"と略すミュージシャンが多い。

読んで字の如く、アンプをシミュレートする装置もしくは回路の事で、エフェクターで効果を加えた電気信号に、更に"○○社の○○アンプを通したような電気信号"に再加工する物だ。

理論上、どんなアンプに繋いでも、"アンシュミで設定したアンプでギターを鳴らしたような音"が出る…筈。

まぁ、実際には擬似的に再現してるだけだし、繋ぐアンプやスピーカーによってかなり音の差が出るのは確か。
とりあえず、平凡なアンプやスピーカーから、設定したアンプ"っぽい音"が鳴る程度に考えた方がいい。

HD500はエフェクターとしても十分にハイレベルだが、アンシュミ機能がかなり強化されていて、単体でかなり高度な加工が可能だった。

実は唯愛用のG9.2ttもエフェクターとアンシュミ双方の機能はあるが、開発時期の違いからかエフェクター部分はともかく、アンシュミ能力に関してかなりの開きがある。


253 :いふもの! [saga]:2011/07/31(日) 18:36:55.57 ID:yNfBwxbAO


「これを繋げれば、かなり音を変えられるしね〜♪」

要するに、レイラの1stセッションでは、憂はレスポールJrを唯が持ってきたヘッドアンプのJCA100HDに直付け(ギターをエフェクターを通さず、直接アンプに繋ぐこと)してたのだ。

「ここをこうやって…」

「お姉ちゃん、ここの設定はこうじゃないかな?」

LINE6のHDシリーズのインターフェースはかなり作り込まれていて、エフェクターをいじった事のある人間なら、かなりの部分を初見でも動かせる。

ましてや、唯は違うメーカーとはいえ同種の"キューべぇ"を普段から使ってるし、憂は憂で姉がG9.2ttを買った時に譲り受けたVOX社のマルチ・エフェクター"トーンラボST"を愛用してるのだ。

マルチ・エフェクターに慣れた二人にとっては、どうという事は無い操作だった。

そして、何度かのトライアル&エラーで、"美味しい音色"を見つけた唯と憂は、

「「やったぁ♪」」

姉妹息ピッタリのハイタッチ。
それを和をはじめとする四人は、微笑ましげに見ていた。


254 :いふもの! [saga]:2011/07/31(日) 18:41:44.05 ID:yNfBwxbAO

以上、投下終了。
相変わらず投下量が少ないですが、ご勘弁。

とりあえず、今のところこの7話で楽器屋編は終わりで、次のエピソードに移る予定。

というか、移れて書ければいいなと。


255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/31(日) 19:38:02.33 ID:piwEhtNIo
とりま乙乙
256 :いふもの! [saga]:2011/08/01(月) 11:18:19.22 ID:YR94aMIAO
>>255
ども!



5レスと短いですが、時間があるうちに投下します。

今回は、最近じゃ珍しく楽器の話は少なめかな?



それにしても、いくら田舎とはいえ、一番時間が取れるのが電車の待ち時間と電車の中とは、これいかに…


257 :いふもの! [saga]:2011/08/01(月) 11:19:05.15 ID:YR94aMIAO


「んじゃあ、続きやっぞ〜! 1、2、3、4、1.2!!」

再び、律のスティック・タップが響き、"いとしのレイラ"のイントロ・ギターが流れ始める。

流石に、ギー太とレイラの本来のコンビほど"自然な厚みを持つ、パンチの聞いた低〜中音"とはいかないが、それでも先程のプレイよりは明らかに迫力が増した。
更に、唯の高音に抜けのいい華やいだアッシュ・サウンドと、時計のようにリズムを刻む憂にしては珍しい賑やかで荒々しいサウンドは、何となく二人を新鮮に魅せた。



それに気を良くした律は、"いとしのレイラ"からストップ無しに"ババ・オライリー"へと繋ぐ。

最初に長い単調だけど不思議なイントロを刻むのは、3ちゃんこと紬のKRONOSのシーケンサー・ユニットだった。

"ババ・オライリー"は、6人のスタンダード・ナンバーで、紬が打ち込みデータを持っていてもおかしくないのだが…

3ちゃんことM3に入っていたデータを、USBメモリーか何かで運んできてKRONOSにコンバートでもしたのだろうか?


258 :いふもの! [saga]:2011/08/01(月) 11:20:40.86 ID:YR94aMIAO


そのシーケンサーの奏でる"いかにもシンセサイザー臭い音"の自動演奏に、最初に音を被せたのは、同じくKRONOSから発せられた専用の独立音源まで用意された自慢のピアノサウンド。
ただし、プログラミングではなく紬の生演奏だ。

クラシックでは考えられないぐらいハードな鍵盤タッチで歯切れのいいサウンドをつむぐ紬に負けじと、律が力強いビートでリフに乗る!

澪のハスキーで艶やかなヴォーカルが、こんな歌詞をつむいだ。



ありったけの力で今を生きてやる

自分が正しい事を証明したい訳じゃない

誰かに許しを乞うつもりもないのさ



最初のフレーズが終わった後に、いよいよギターとベースの出番だ。

パワフルなメロディが重なり、更に沸き上がるように曲のパワーが跳ね上がる!


259 :いふもの! [saga]:2011/08/01(月) 11:21:33.61 ID:YR94aMIAO


(いい…)

自分も含めたツイン・ベースとツイン・ギターで編み上げられるパワフルなメロディ・ライン…

人一倍恥ずかしがり屋で照れ屋の澪が、何故唯と並ぶツイン・ヴォーカル…曲によってはメイン・ヴォーカルを務めてられるのかと言えば、

(気持ちいいっ…!!)

六人が集まり、溢れ出す音の奔流…

その激流に身を任せながら、その流れに自分の声を歌として乗せる快感…

その酔いしれるような陶酔感…

肢体の芯から熱を帯び、じわっと濡れるように拡がる快楽を、心が体が忘れられないから…

だから、澪は今も高らかに歌うのだっ!


260 :いふもの! [saga]:2011/08/01(月) 11:22:36.47 ID:YR94aMIAO


"ババ・オライリー"が終わった所で、

「そろそろ、一旦休憩にしない? お店に来てから、みんなずっとノンストップだったし」

集中もしくは熱中するまではムラがあるが、一度そうなってしまうと中々抜け出せない面子ばかり。
なので、何となくタイム・キーパー役を買うようになってしまう事の多い一人…紬が、そう切り出した。

「"ノンストップ?"」

すると、唯は口の中で何かを呟き、インスピレーションの赴くまま弦を弾いた。



ノンストップ・エキスプレス

わたし達は、ただ駆け抜ける事しか知らないから

ミッドナイト・エキスプレス

振り返らず、夜の闇をを駆け抜ける

明けない夜はないと信じて

夜はいつか終わると信じて

いつか来る朝に向かって



何となく、"プリンス"の"パープルレイン"を連想させるシンプルなロック・バラードを奏でた。

「う〜ん…これだったら、ロック・オペラ風に仕立てた方がいいかなぁ? いっそ、テンポを上げてシャウトを入れてハード・ロックにしても…」

と、小声で呟く。
唯には有りがちな事だが、のめり込み過ぎて回りの声が聞こえない状態…どうやら、軽いトランスにあるようだった。


261 :いふもの! [saga]:2011/08/01(月) 11:23:48.06 ID:YR94aMIAO


思わず顔を見合わせて苦笑する紬と和。
ままある事とはいえ、唯のトランスはいつも突発的だ。

そして、憂は『しょうがないなぁ〜』という表情をしてるが、口元や目元が弛んでいる。

憂は、そっと姉に近づくと…

"Chu!☆"

頬に優しく口づけた…



「ほぇ?」

と、頬の柔らかい感触で、現実世界に無事帰還する唯。

「くすくす♪ お姉ちゃん、お帰りなさぁ〜い♪」

「うい? えっと…もしかして、またわたしトリップしてた?」

「うん♪」

(普段のお姉ちゃんも可愛いけど、一心不乱な時のお姉ちゃんも、横顔もキリッって引き締まって…)

「格好良くてドキドキするんだよねぇ〜♪」

と、小声で呟きニンマリ笑った。

「ふぇ? うい、何か言った?」

「う、ううん! それより、紬さんが休憩しよだって」

「あっ、うん♪」



「うわぁ…うわぁ…!」

キスシーンを目の当たりにしたせいか、顔を真っ赤にしてしまう澪だったが、

「いい加減、慣れろって。いつもの事じゃん?」

と、相方の律は呆れ気味だ。

「う、うん。でも…唯の真剣な顔を見てると、」

(胸がドキドキする…かぁ)

その時、澪は頭の中で"何か"が閃いた気がした…!


262 :いふもの! [saga]:2011/08/01(月) 11:28:29.63 ID:YR94aMIAO

投下終了。
貯め弾無いんで、次回は未定ですが、本日中は厳しいッス。



ママ、ボクにも百合が書けたよ!(笑)

と言い切るには、全く刺激が無いですが、ちょっとだけ百合っぽい物を含ませてみました。

ついでに澪は歌う事が快感になってる模様。

ラストは、あからさまな"あの歌"への伏線ですな。


263 :いふもの! [saga]:2011/08/02(火) 19:13:28.88 ID:yew+AjNAO

これより4レスほど投下します。

相変わらず短いですが、ご容赦。

今回は、少し場所を変えたティータイムみたいなもんです。

264 :いふもの! [saga]:2011/08/02(火) 19:14:27.09 ID:yew+AjNAO


流石に、電気機器と電子機器のるつぼである試奏ルームで飲食することは憚られたのか、6人がやって来たのは、バックヤードにある来客用の応接室だった。

普段は取引先や琴吹社長来店のおりに使われる部屋であるが、現在はかなり異彩を放っている。

この部屋に10代の女の子が集まり、華やいだキャッキャッウフフの空気をかもしだす事など、開店以来無かったのではあるまいか?

しかし、上質なダージリンの香りとザッハトルテの甘い匂いの中で飛び交う言葉は、彼女達なりに真剣なそれであった。

「今日は珍しく和のベースが走り気味だったなぁー」

と、切り出すのは部長の律。

常に最後列に陣取る彼女は、意外なほど後ろ姿を見ながら、全員の音を聞き分けていた。

「ごめんなさい。"Attitude"の使い心地が良すぎて、自分でも知らない内に、つい柄にも無くハシャいでたみたいだわ」

と、自分の存外に子供っぽい部分をさらけてしまい、少し恥ずかしそうに頬を染める和だ。

これはこれで、レアではある。


265 :いふもの! [saga]:2011/08/02(火) 19:15:10.23 ID:yew+AjNAO


「ま、それを言うなら私も課題山積みだけどな〜」

「そういえば律、勢いはいつもとあんまり変わらなかったけど、オーバーランしなかったな?」

「いや…フロアタムとかのタイミングもイマイチだったけど、エレタムやエレバルの使い所を色々考えててさぁ〜。おかげで、ちょい抑え気味になっちゃったんだよ」

と、澪の言葉に自分苦笑する律だった。

「まずはフロアを使えるようになって、エレドラ系はそれからだな…多分」

「澪は、始めてのマルチ・エフェクターに戸惑ってたみたいだけど…それ以外は、これと言って問題無いのは、大したものだわ」

和の素直な感心に、澪は照れながら、

「い、いや、その肝心のエフェクターが、和みたいに中々上手くコントロール出来ないって言うか…」

「慣れの問題ね」

「慣れの問題ですよぉ」

と、ハモるのはマルチ・エフェクター使いとしては先輩の和と憂。
そして、唯はにこやかに、

「今のマルチ・エフェクターはよく出来てるから、感覚だけでも使えるようになるよ〜♪」

「「「いやいや、それは流石に唯だけだって」」」

今度のユニゾンは、律澪和の三人だった。


266 :いふもの! [saga]:2011/08/02(火) 19:16:28.06 ID:yew+AjNAO


唯はゲームを買っても説明書を読まない…というか、分からなくなって初めて説明書を読むタイプだ。

そして、同時に好奇心の塊みたいなとこがあり、買った機械は徹底的にイジるタイプだ。

この手の人間は、機械を壊すリスクは高いが、半面扱いを覚えるのが早く、また頭を捻りながら体で覚えるから、経験の蓄積も人一倍多かったりする。



「私は、やっぱりまだ"KRONOS"の能力を、全然引き出せてないって言うか…」

「むぎちゃん、それは仕方ないよぉ。ボタンやダイヤルやスライダーがいっぱい付いててややこしいし」

どうやら唯の判断基準は、とことん直感的らしい。

「私の使い方からすると、同じKORGならシンプルな"SV-1"とかの方が向いてるのかもしれないけど…」

「SV-1…? ああ、あの悪くないヴィンテージ風の電子オルガンね? 特に73鍵がいいわ」

和の言う通り、"SV-1"はシンセサイザーというよりは、トラディショナルな"電子オルガン"という分類になるキーボードだ。
デザインも今をときめくソフトウェア・シンセが影も形も概念も無かった、そんな時代のヴィンテージ風だ。


267 :いふもの! [saga]:2011/08/02(火) 19:17:13.44 ID:yew+AjNAO


ちなみに"SV-1"は、88鍵と73鍵がモデルアップされてるが、73鍵の方はボディカラーに"赤"が多用されていたりする。

「でも、殆ど同じ音源が、KRONOSに入ってる事を考えちゃうと…えっと…」

上手く言葉に出来ないようなもどかしさ満点の紬に、

「もしかして、"何だか負けた気がする"って言いたいのか?」

「そうそれ! りっちゃん、ナイスなフォロー♪」

サムズアップする紬に律は笑い、

「あ〜、わかるわかる。私もエレドラ系の音をムギに丸投げしたりしたら、なんか負けた気がするだろうしなぁー」



「ういは、いい音出してたね〜! ワイルドな音を出すういって、新鮮だったよぉ〜♪」

「てへっ♪ ありがと、お姉ちゃん♪」

と、大好きな自慢の姉に誉められ、歓喜を隠そうともしない憂だ。

268 :いふもの! [saga]:2011/08/02(火) 19:23:27.32 ID:yew+AjNAO

投下終了。
とりあえず、書き終わった分から投下ってスタイルなんで、次回は不明って事で。

餅部よりも、最近は時間がヤバい気が…

一応、この作品でのティータイムはこんな感じで。


269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/03(水) 11:20:06.47 ID:TxwSneAMo
ほうほう、憂のギターはレイラか…
憂には是非ストラト+SLO-100で弾き倒してもらいたいけどJCA100Hが今時の子のセレクトっぽくていいのかな。

>>1とは音楽の趣味が合いそうだ
乙乙

次の更新も楽しみに待ってる

270 :いふもの! [saga]:2011/08/03(水) 17:34:33.44 ID:YgApZbvAO

>>269
どもども!
ソルダーノ系のアンプは、クリアなのに分厚くて、本当にいい音しますよね〜!
4×12のセレッション・スピーカーとかから鳴らすと、たまりません♪

音楽の趣味が合うって言われるのは、本当に嬉しいですね〜♪
けいおん!のヒットがあっても、60〜90年代の洋楽正統派ロックは、聴く人がどうにも少ない気がしてたので。





これより5レス程投下します。
お茶会…というか、ミーティングの続きです。



271 :いふもの! [saga]:2011/08/03(水) 17:35:17.05 ID:YgApZbvAO


「あれは、確かに私達の"新しい音"だったな…」

唯の出す音は、どんなに歪ませワイルドに弾いても、どこか隠し味的な"甘さ"が残る。
それを基点に、赴くままに自由なメロディ・ラインを構築するのが、唯のスタイルだ。

一方、憂はミッドレンジが厚い造りのアルダー・ボディ・ストラトに詰め込まれたTBXやミッドブーストを多用し、後乗せのフロイドローズ・トレモロを駆使したビブラート・アームプレイで個性的な技巧派サウンドを生み出し、魅せる。

しかし、憂のギタープレイの原点…そもそも、ギターを始めたきっかけは…

「でも、お姉ちゃんを上手くフォローできたか、少し心配かも」


272 :いふもの! [saga]:2011/08/03(水) 17:36:13.81 ID:YgApZbvAO


『お姉ちゃんと一緒ににプレイしたい。お姉ちゃんを演奏でもフォローしたい』

それが、憂のギターを始めた理由だ。

だから、年齢に見合わないテクニカルなプレイを魅せ、様々なギミックで個性を演出しても、指運びや音が乱れる事はない。

また、憂の"レイラ"…フェンダー・カスタムショップ謹製のダフネブルーのストラトキャスター、"エリック・クラプトン・シグネイチャー"は素性の良さに加え、憂が自分のプレイスタイルに合うように手を加えたせいもあり、どんな激しいアーミングをしようが、複雑なリフを奏なでようが、決して息を切らす事はない。

例えるなら、よく調教の行き届いた血統書付きの名馬…勝利を約束された"サラブレッド"だろう。

憂のテクニックと総合的な音感、それにレイラが組み合わさる事により、初めて実現するのが、"時計のように正確な"と称されるギタープレイだった。


273 :いふもの! [saga]:2011/08/03(水) 17:37:07.67 ID:YgApZbvAO


では一方、レスポールJrと言えば…

「リズムラインを刻むだけでも、大変な子だよ。コントロール・ノブとか操作系が、ギー太の半分しかないから、他で何とかするしか無いしなぁ〜」

同じ名門ファクトリー"ギブソン・カスタムショップ"が出所とはいえ、姉のテノールで歌うオペラ歌手のようなレスポールとは、全く違う味付けの…そう、Jrはまるで新人のロッカーだ。

あるいは、エフェクター&アンシュミという"鞍や手綱"の力を借りて、どうにか扱えるように持って行く…まさに"ガチの力業で乗りこなすしかない野生馬(ムスタング)"というのが、レスポールJrへの憂の正直な感想だった。

「でも、だからこそ不思議な魅力があるのも、確かなんだよね…クランチもいい感じだし」

その粗削りな若々しい音色は、まるで自分の中に眠る荒々しい何かを刺激するような手応えを、憂は感じていた。
そして…

(貯金おろしてお小遣い前借りして、お年玉まで合わせたら、買えるかな…?)

と考えるぐらいに、レイラとはまた違う魅力に惹かれてるようだった。


274 :いふもの! [saga]:2011/08/03(水) 17:38:00.04 ID:YgApZbvAO


「唯は、最初の方はともかく、途中から上手く纏めていたよなぁ〜」

「ありがと、りっちゃん♪ でも、えっと…ネタばらししますと、ういのレイラちゃんをたまに弾かせて貰うのから、使い方とか特性とかはある程度知ってましてぇ」

「素材違うし、あれだけカスタムしてあれば、既に別のギターのような気がするけど…」

あれだけ→フェンダー・カスタムショップによるシグネイチャー・モデル化+憂のカスタム(フロイドローズ・トレモロとか…)

「ん〜…でも、おんなじストラトだしね♪」

「唯のそういうアバウトで大丈夫なとこ、素直に凄いと思う」

と、妙なとこに感心する澪。

「高音とかはスゴく綺麗に出るけど、でも流石に中音とかは細くなっちゃうよね〜」

と、唯はピンクのストラトに思いを馳せながら、

「エフェクターで誤魔化してるけど、やっぱり限界はあると思うんだ。いじり過ぎると、今度は"あの子の声"じゃなくなっちゃうし…せっかくのソプラノなんだから、台無しにしたら可哀想だよ」

「ソプラノ?」

と、首をかしげる紬。

「うん! "ピンクのワンピースを着て、市場で歌ってる女の子"ってイメージが、弾いてる時にずっとあったんだよ」


275 :いふもの! [saga]:2011/08/03(水) 17:38:55.47 ID:YgApZbvAO


「まるで、"オ・ブラディ・オ・ブラダ"に出てくる"マリー"ね」

と、苦笑する和。
"オ・ブラディ・オ・ブラダ"とは、かの有名なビートルズの名曲で、"働き者のデイズモンド"と、"市場の歌姫マリー"との恋愛模様と結婚等を歌った、比較的ほのぼの路線のナンバーだ。

もっとも歌の最後は、働き者だったデイズモンドはマリーと結婚すると仕事を止め、家事と子育てに専念。
稼ぎは、マリー任せという、なんとも微妙なエンディングだ。

しかも、歌詞の最後を『幸せになりたけりゃ、"オ・ブラディ・オ・ブラダ"スタイルで♪』で締めくくるなんて、気が効きすぎてる。

「のどかちゃん、いいインスピレーションだよぉ♪」


276 :いふもの! [saga]:2011/08/03(水) 17:44:25.55 ID:YgApZbvAO

投下終了。
とりあえず、残弾0になったんで、今日のアップは終わりッス。

次回は、また4レス以上程度には書けてからって感じで。

とりあえず、これだけティータイムの内容が濃けりゃ、いずれ合流するだろう黒仔猫も文句なかろうと妄想してみる。


277 :いふもの! [saga]:2011/08/04(木) 19:11:53.24 ID:nXZxxsgAO

短いですが、これより4レスほど投下します。

性懲りもなくギー太ではなくギターネタですが、ご勘弁。

作者は音を想像して楽しんでます。


278 :いふもの! [saga]:2011/08/04(木) 19:12:38.81 ID:nXZxxsgAO


「仮にだけど、唯ちゃんならピンクちゃん、どんなステージ衣装にするの?」

と、興味津々に聞いたのは紬だ。

「とりあえず、ジャック・カバーとかストラップ・ピンとか外から見えるメタルパーツは、ゴールド系にするよ〜♪ クロム・シルバーより似合いそうだし〜」

と、ニコリと笑う唯。

「さっき、一緒に並んでた子達も見てきたんだけど、ゴールド系のパーツを使ってるストラトってあるから…それを移植したら、もっと可愛くなるかなぁ〜って」

「確かにクロームより金色の方が、あったかそうだね♪」

ピントがずれてるのか合ってるのか微妙な憂の意見だったが…

「唯、まさかコスメ・チェンジだけ考えてたって訳じゃないんでしょ?」

と、キランとメガネを輝かせる和。
どうやら、和もかなりの"数奇者(すきもの)"のようだ。

「ピックアップは、カスタムショップの"テキサス・スペシャル"にするよ♪ 後はそうだなぁ…ペグは、使い慣れてるGOTOHの"SDS510-HAPM-M5-L6"にして、ナットをLSRローラーナットにして…トレモロ・ブリッジは憂とお揃いでフロイドローズもいいけど、アーム・プレイで遊びたいから"EV510T-SS"とかにした方が面白いかな?」


279 :いふもの! [saga]:2011/08/04(木) 19:13:37.83 ID:nXZxxsgAO


唯は、でへへ〜♪と笑うと、

「本音は、使ったことないから使ってみたいだけなんだけどね。あっ! もっちろん、色はゴールド! ジャックはスイッチ・クラフトでリード線はWEの22GA、ハンダはケスター44なのは、お約束だよ♪」

「ちょっと待て! 唯、いつの間にそんなカスタム・メニュー考えてたんだっ!?」

かなり明確なカスタム・アーキテクト…いや、出したい音から逆算したカスタム・マップが頭の中で構築済みらしい唯に、澪は素直に驚嘆した。

「ほぇ? ババ・オライリーを演奏しながらだけど?」

「んなっ!?」

「別に驚くにはあたらないわ。集中さえすれば、そのぐらい唯は平気でこなすわよ?」

「だって唯ちゃんですもの♪」

と、唯の幼馴染み(紬にはブランクがあるが)二人の言葉は、妙な説得力を帯びていた。

「それに唯の表情を見る限り、0から考えたってより、何となくイメージの元ネタとかありそうだし…でしょ?」

和の言葉を頷いて肯定すると、唯はイタズラっぽく笑い、

「はいは〜い♪ ここでクイズで〜す。では、お手本にしたモデルは、なんでしょう?」


280 :いふもの! [saga]:2011/08/04(木) 19:14:37.43 ID:nXZxxsgAO


唯のクイズに憂は首をひねりながら、

「アッシュ・ボディにローズウッドのフレットボード、それにテキサス・スペシャルのピックアップ…あれ? どこかで聞いた事あるような…あっ!?」

答えを閃いた憂は顔を輝かせ、

「わかった! "マーク・ノップラー(Mark Knopfler)"のシグネイチャー・モデル!」

"ダイアー・ストレイツ"の凄腕ギタリストの名を聞いた唯は、にはは〜♪という感じにサムズアップして、

「うい〜、大正解だよぉ〜っ♪」

ちなみに、"ダイアー・ストレイツ"というバンド名は、意訳すると"金が無い!"的な意味になるらしい。
70年代に"サルタン・オブ・スイング(邦題:悲しきサルタン)"というヒットナンバーを飛ばしている。

「同じ音になるわけじゃないけど、あんな感じの音なら、ういの音も邪魔しないしね〜♪」


281 :いふもの! [saga]:2011/08/04(木) 19:15:27.50 ID:nXZxxsgAO


元々アッシュボディのストラトは、高音の華やかな鳴りが美味しいのだが、標準的なピックアップだと中音以下が痩せて聞こえがちだ。

そこで、上は標準的だけど中域をよく拾い、結果として音を厚くする"テキサス・スペシャル"ピックアップの出番という訳だ。

ロック機能付ペグやLSRローラーナット、強化トレモロ・ブリッジの組み合わせは、トレモロ・アームを動かした時の狂いを極力抑えるセッティングなので、もし唯がこのストラトを買うなら、アーミングで遊び倒すつもりで考えてるのだろう。

ギー太(というかレスポール)は、基本的にアーミング・プレイにはあまり向いてないギターだ。
憂の影響なのは、間違いないだろう。


282 :いふもの! [saga]:2011/08/04(木) 19:21:56.35 ID:nXZxxsgAO

以上、投下終了。
次回はまだ書いてないんで、未定です。



作中で唯の語るギターのカスタムは実際に十分可能ですが、くれぐれもギターをいじった事がない人が、自分でやるのは止めましょう(笑)

ギターのチューンやカスタムは、信頼できる店に任せるのが無難ッス。
サイフは軽くなるけどね。


283 :いふもの! [saga]:2011/08/05(金) 18:58:00.16 ID:4nhNtoaAO

これより、5レスほど投下を開始します。

今回は珍しく楽器ネタは無いけど、軽めの音楽ネタかも。

というかこの面子に、梓が加入した時の事を想像すると、どういう反応を示すか割と愉快。



284 :いふもの! [saga]:2011/08/05(金) 18:58:40.89 ID:4nhNtoaAO


「話はちょっとズレたけど…律、とりあえず2曲の反省は、これぐらいでいいんじゃないかしら? 残る"To be with You"と"SARA"を、どんな風に演奏するかだけど…」

「はいは〜い♪ わたしから、一つ提案なんだけど…"To be with You"は、のどかちゃんが歌ってみない?」

「ちょっ!? 唯、いきなり何を言い出すのよっ!?」

珍しくも慌てる和だが、回りの反応はと言えば…

「悪くないんじゃねーか? 私も実は、前から和もヴォーカルした方がいいんじゃね?とか思ってたし」

「律まで何を言い出すのよっ!?」

「は〜い♪ 私も和ちゃんが歌うのさんせ〜い♪」

「紬! そこで軽い感じで裏切らないっ!」

鋭くツッコむ和に、紬は涼しい顔で、

「別に裏切ってはないわよ? だって私、前から和ちゃんに歌うの勧めてたし〜♪」

「ぐっ…」

「私も賛成です♪ だって、一番"To be with You"…というか、"Mr.Big"を歌えるのは誰?って考えたら、間違いなく和さんだろうし」

「憂、あなたまで…」

285 :いふもの! [saga]:2011/08/05(金) 18:59:53.16 ID:4nhNtoaAO


「のどかちゃんの声って、みんなの中で一番色っぽいって思うんだよ♪」

「はい…?」

唯の口から飛び出した言葉に、思わずフリーズする和である。

「のどかちゃん、自分で気付いてないかもしれないけど…のどかちゃんの声って、みおちゃんとは違うハスキーの魅力があるんだよ?」

「えっ? えっ?」

知らない国の言葉を聞いたような反応を示す和とは対照的に、澪はウンウンと頷いていた。

「みおちゃんの声は、艶があってハスキーなのに綺麗に伸びるんだよ。淀みのない、透明な声♪」

「い、いや、唯、それ褒めすぎだって!」

思い切り照れて口調が片言気味になる澪である。

「のどかちゃんの声は、スゴく大人っぽいの。なんていうか…何だか、ちゃんと恋してるなぁ〜って感じの声なんだよ♪」


286 :いふもの! [saga]:2011/08/05(金) 19:00:40.58 ID:4nhNtoaAO


律が思わずヒュ〜♪と口笛を吹いた。

「なっ!? 何を言ってるの! 私、別に恋愛経験なんて…」

「そうかもしれないけど、不思議とそう感じられるの。だから、"甘いだけじゃないラヴソング"を歌ったら、きっと似合うと思うんだよ♪」

「それに関しては、私も唯に完全同意だ。前から和はいい声してると思ってたし、憂じゃないけど"To be with You"を一番聴いて、歌いこんでるのは和だろ?」

「聴くのはともかく、別に歌いこんでは…」

「のどかちゃん、機嫌がいい時、よく"To be with You"口ずさんでるよ?」

「うっ…鼻歌とヴォーカルやるのとじゃ、天と地ほども差が…」

「同じさ。別にライヴハウスで客の前で歌えって言ってる訳じゃないんだぜ? 身内の前で、軽く歌うぐらいでケチケチすんなって」

カラカラと笑う律に、和は軽く溜め息ついて、

「簡単に言ってくれるわねぇ…でも、確かにそこまで深く拒絶する話でもないか」

「そうそう♪ 和ちゃんの美声、本邦初公開〜♪」

と、やけに嬉しそうな紬と期待に満ちた瞳の平沢姉妹。
そんな幼馴染み'sを見ながら、和は苦笑し、

「まぁ…そういうのも、たまには良いかもしれないわね」


287 :いふもの! [saga]:2011/08/05(金) 19:10:11.81 ID:4nhNtoaAO


「"SARA"は、オーソドックスに唯がリードヴォーカルで良いわね? さっき紬も言ってたけど、ギターパートはそんなに難しくないことだし」

「「「「異議なーし」」」」

と、和の言葉に憂紬律澪がシンクロで返す。

「えへへ〜っ♪ わたし、頑張るよ♪」

「なら、少し変則的だけど、たまには憂ちゃんがサイド・ヴォーカルでどうだ?」

と、提案したのは澪。

「えっ? 私ですか?」

「澪、あなたの事だから思い付きじゃなくて、何か理由があるんでしょ?」

和の言葉に澪は小さく頷き、

「私はまだ"SARA"をちゃんと歌えるほど歌いこんでないし、曲調から考えると、ハイトーン・リード&サブのツイン・ヴォーカルの方が歌映えすると思うんだ」

「な〜るへそ。ハスキー・ベース組は、コーラスに徹するってか?」

律の要約がツボだったのか、和はクスッと笑い、

「中々上手い事、言うじゃない? 確かに私と澪は、楽器も声も担当パートは、ロー・トーンよね」


288 :いふもの! [saga]:2011/08/05(金) 19:11:39.50 ID:4nhNtoaAO


「"SARA"は、たしかに家でお姉ちゃんとよく歌ってるけど…でも、和さんの台詞を借りますが、とてもヴォーカルを務められるレベルじゃないですよ?」

「いや、それでいいんだ。せっかくの機会だし、試せる可能性は試しておきたいんだよ」

その言葉の後、澪はたおやかに笑い、

「それにいつも同じ事をやってたら、そのうち飽きるだろ? 奏る方も、聴く方もさ」

「澪ちゃん、誰かに聴かせること、しっかり考えてるんだ?」

と、興味深そうに紬が聞けば、

「そりゃあ、さ…私達は"軽音部"なんだから、文化祭でのステージくらいは私だって考えてるぞ?」

澪の返答に満足そうな笑顔を見せる紬…

彼女は声に出さず、『これは事の他すんなり話が進みそうね♪』と独りごちた。


289 :いふもの! [saga]:2011/08/05(金) 19:23:22.06 ID:4nhNtoaAO


投下終了。

残弾0なんで、次回は未定…

というより、もうすぐ終わるこの第7話が終わったら、連載計画を見直そうと考えてます。

このスレが作者以外は無人の荒野と化してる…からではなく、問題は執筆と投下に使ってるこの携帯。

まぁ、かなり古い機種なんですが、最近は特に調子が悪く、やたらとバッテリーが発熱するんです。
しかも、その度に中の回路が熱暴走でもするのかフリーズしてしまうんですよ。

実は、今日の投下中も二回もフリーズして、その度にバッテリーを取り出し、本体共々冷ましてから再起動…なんて面倒な事をやってたんです。

そんな訳で、一度オーバーホールに出さざるえない状況で、最悪買い替えになるやもしれません。

そうなれば、更新一時停止になってしまうかもしれないッス。
一応、まだ連載打ち切りは考えてはいませんですが。


290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/05(金) 20:05:06.43 ID:TnQTen6Wo
おつおつ。
何だかんだ言って毎日投下してるんですね。
ご苦労様です。
291 :いふもの! [saga]:2011/08/06(土) 10:30:16.37 ID:k1kuMD7AO

>>290
どもども!
タイムアップか、携帯が再起不能になるまで、なるだけ書いておこうと足掻いとりやす。





今からいつものように短いながら5レス投下します。

なんか、携帯がフリーズしがちなんで少し間があいてもご勘弁。


292 :いふもの! [saga]:2011/08/06(土) 10:31:17.57 ID:k1kuMD7AO


失恋もそう悪いもんじゃない

こっちにおいでベイビー

俺の気持ちを伝えたいんだ



キミと一緒にいたい

キミもそう思ってくれたらってさ

どうしようもないヤツラばかりだけど

キミと一緒にいたいんだ



意外なほどにパンチに溢れた和のリードヴォーカルに、サイドヴォーカルの澪が唱和し、唯達のコーラスが重なり、"Mr.Big"のスロー・ラヴソングが流れてゆく…



「のどかちゃんとみおちゃんのハスキー・ツインヴォーカル良かったよぉ〜っ!!」

曲が終わった途端、大興奮なのは唯だ。

「やっぱり、のどかちゃん色っぽいよ! みおちゃんも綺麗! はぅ〜っ、絶対わたしには真似できない歌い方だよぉ〜っ」

唯の声は本来、声楽で言うところのソプラノだ。
ロックを歌いこなすには、やや高い声域に美味しい部分がある。

もっとも唯はギー太を弾く度に気が付いたらロック・バラードを歌っていたし、それを重ねる事で"自分なりのアレンジ"を自然とできるようになっていた。

まさに"好きこそものの上手なれ"と言ったところだ。


293 :いふもの! [saga]:2011/08/06(土) 10:31:58.99 ID:k1kuMD7AO


とはいえ、やはり唯にとっては"オリジナルに近い音域"で、尚且つ女性らしい艶やかさを失わずに歌いきる二人は羨望らしい。

「それほどでもないわよ。逆に言えば私や澪は、唯のような上に伸びるアップトーンの歌い方はできないしね」

なんてクールな台詞とは裏腹に、少し頬が紅い和だ。

「やっぱり、和の歌唱力はかなりのものじゃないか? いっそ、トリプル・ヴォーカルっていう路線もイケるかもな…」

「…澪、冗談にしてはあまり笑えないわ」

ゲンナリする和に、今度は紬が、

「立ち位置の調整とかいるわね〜。今は演奏する時、フロントが唯ちゃんと澪ちゃんが定位置だから…フロントでツイン・ベースって、かなり個性的で良いかも♪」

バンドとして活動はしてないが、バンド・スタイルでセッションをする事は多々ある6人だ。

では、少しポジションを見てみよう。


294 :いふもの! [saga]:2011/08/06(土) 10:33:29.30 ID:k1kuMD7AO


客席から見ると、最前線(フロントライン)にいるのが、右のギター&ヴォーカルの唯と、左のベース&ヴォーカルの澪。
ヴォーカルは、曲によってメイン(あるいはリード)が変わるようだが、立ち位置は同じ。

ヴォーカルの二人がフロントにいるのは当たり前としても、次列(ミッドライン)にいるのが、まずは唯のやや右の後方にいるのが2ndベース(あるいは"ベース・ギタリスト")の和。
そして唯の左後方、つまり唯より少し奥まったややステージの中央よりで、ドラムの律と重ならない位置にいるのが、リズムギター(サイドギター)の憂。
そして、澪の後方にキーボードを置くのが紬で、ステージ中央最深部にドラムセットで陣取るのが律だ。

また上から見るなら大体フロント、ミッド、エンドのほぼ三本のラインで表現できる。

唯と澪はほぼ同じライン上のツートップ、セカンド・ベース&ギターの和憂コンビはミッドラインで、紬と律がエンドラインに位置している。
厳密に言うなら紬は律より少し前で、垂直方向で言うなら、ミッドラインとドラムの間でやや律寄りと言った所だ。


295 :いふもの! [saga]:2011/08/06(土) 10:34:32.37 ID:k1kuMD7AO


「和がヴォーカルの場合、唯と入れ替わればいいんじゃね? んで、次が憂ちゃんとツインヴォーカルで"SARA"やるなら…そうだな、」

律はスティック・スピンさせながら少し考え、

「よし! 唯と和の立ち位置を入れ換えた後、唯と憂ちゃんは、少し左にずれて私を左右から挟むような位置に来てくれ。そんで、澪と和は心持ち外側に広がれ。イメージは、私を底部にして"V字"を描くような感じで」

「うふふ♪ まるで、"鶴翼の陣"ね〜」

と、紬。唯はしきりに感心するように、

「おお〜っ! りっちゃん、まるで名武将みたいだよぉっ!」

「そんなんじゃねぇって。ただ、ここにいると、みんなの背中がよく見えてさぁ…」

と、律は照れを誤魔化すようにスティックで頭をかき、

「つい、色々とポジションとか思い付いちまうんだよ」


296 :いふもの! [saga]:2011/08/06(土) 10:35:26.03 ID:k1kuMD7AO


「まぁ、それはおいといてだ。"To be with You"から"SARA"にMC無しで繋ぐなら、そのまま唯が和と、憂ちゃんが澪と入れ替われば、いくらかスマートに見えんだろ?」

「へぇ〜っ! 律、それかなりいいアイデアなんじゃないか?」

澪が感心しながら言えば、

「律を部長にしておいて、存外に大正解だったみたいね?」

と、和。
では、憂と言えば…

「お、お姉ちゃんと並んで歌えるんだぁ…♪」

実に夢見心地な表情だった。


297 :いふもの! [saga]:2011/08/06(土) 10:40:51.93 ID:k1kuMD7AO

以上、投下終了。
書き貯め無いんで、次回は未定ッス。

とりあえず、今回はバンド・プレイした場合(まだ、バンドという形では活動してないので)のポジション立ちを書いてみました。

そこまで書くかは分かりませんが、一応、梓とかの参入を意識した立ち位置となってたりします。


298 :いふもの! [saga]:2011/08/23(火) 21:57:18.33 ID:r8lVAJLAO

お久しぶりです。
携帯ごとデータが吹き飛んだり、新盆だったり、研修入ったり、入院したりと色々あったんで、しばらく書く時間が取れませんでした。

お待たせ…いえ、待ってた人がいるかは定かではありませんが、久しぶりに投下します。

3レスと過去最小量ですが、ご勘弁。

299 :いふもの! [saga]:2011/08/23(火) 21:58:55.17 ID:r8lVAJLAO


そして、演奏が始まる次の曲、"SARA"…

紬の選んだキーボード"kronos"からシンプルなエレピ・サウンドが紡がれ始める。

穏やかなメロディーに律のエレタムの音色が重なり、曲がロック・バラードの表情を見せる。



さあ、二人で引いたラインから旅立とう

もう振り返ることなく

君のような娘を再び出会うことは叶わないだろうけど

俺達はまるで炎と氷

ハッピーエンドになるわけなかったんだ



澪と和のベースがメロディー・ラインを刻みはじめた時、唯と律の意見通りに澪とポジションを入れ替え、姉とツイン・ボーカルの位置についた憂の息の合った歌声が流れはじめた…


300 :いふもの! [saga]:2011/08/23(火) 22:00:30.68 ID:r8lVAJLAO


Sara, Sara, storms are brewin' in your eyes

Sara, Sara, no time is a good time for goodbyes



『さよならを告げるのにいい刻なんてないさ』
そんな切ない歌詞が、姉妹の美しいハーモニーで唄われ、バラードは紡がれてゆく…

そして、SARAの中で数少ないギターの見せ場であるサビも終わり、いよいよバラードも最後へと向かい、



Ooh Sara, why did it, why did it
Why did it all fall apart…

どうして、こうなってしまったんだろう
どうして
どうして、全てが粉々に砕け散ってしまったんだろう…



憂の透明感のあるサイドボーカルに導かれるように、甘くどこまでも高く伸びてゆく唯の声…

その歌声に乗せられたのは、一つの恋の終わり…
もう戻れない、幸せだった日々への想いだった…


301 :いふもの! [saga]:2011/08/23(火) 22:01:43.84 ID:r8lVAJLAO


「ふぃ〜…気持ち良かったよぉ〜♪」

と、うっすらと汗をかきながら、誰もが見惚れるような満面な笑顔を見せるのは唯だ。

きっと、お気に入りの曲をみんなでプレイ出来たのが、よっぽど嬉しいのだろう。

「お姉ちゃんと歌えたお姉ちゃんと歌えたお姉ちゃんと歌えた♪」
と、レスポールJrを握り締めながら至福と恍惚の表情を浮かべる憂。

「この一体感、クセになりそぉだよ…」

「うふふ♪ 憂ちゃんたら♪」

更に同じくらい嬉しそうに微笑む紬。

「さっすがにこれだけ叩けりゃ、余は満足じゃぞ〜い」

なんて感じに律はおどけるが、確かにその顔は言葉通りに満足そうだ。
でも、澪は対照的に少し心配そうな顔で、

「でも、こんなに派手に使ったりして大丈夫だったのか? 商品なんだろ、コレ…」

「澪、心配いらないわよ」

と、冷静な声で言い切ったのは和だ。

「でしょ? 紬」

そう言葉を向けたのは、意味ありげに微笑を浮かべる紬にだった。


302 :いふもの! [saga]:2011/08/23(火) 22:16:33.29 ID:r8lVAJLAO

なんか、少なくてすみません。
このまま放置するよりマシかなと、とりあえず書いた分だけ投下しました。

前書きにも書きましたが、前々から調子の悪かった執筆に使ってた携帯が、データごと吹き飛びました。

現在、偉く使いにくい代替機で書いてるのですが、問題は修理に出した携帯が基盤交換が必須で、データのサルベージが絶望的なこと…
つまり、書き溜め分や設定が、全部パアッってことなんすよ。

とりあえず、この6話は記憶を頼りに完成させるつもりですが、それ以降は正直、どうしたもんかと思ってます。

一応、キリのいいとこまで書いたら、番外編とかを書きながら、今後の方針を決めようかと考えてます。

303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/23(火) 22:48:08.05 ID:es0h5Hew0
うわっ
こいつまだ消えてなかったのか
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/23(火) 23:00:43.36 ID:S4WDMAeSO
ケチつけるワケじゃないが

これ地の文、そんなにいらなくね?

台本形式の方がテンポよく見えるぞ
305 :いふもの! [saga]:2011/08/26(金) 06:05:38.40 ID:JIT5X5rAO
>>303
うわっ
いつ消えても誰も困らない奴発見
と、とりあえず似たような文でかまってみた。

>>304
ぶっちゃけてしまうと、完全に書き手の問題っす。
台本形式にすると、何故か書いてるうちにテンポ悪くなる不思議が…



何やら昼間から夜にかけて忙しくなりそうなので、今から4レスほど投下します。
この時間なら空いてるだろうしね。

306 :いふもの! [saga]:2011/08/26(金) 06:06:46.51 ID:JIT5X5rAO


「うふふ♪ みんな、楽器の使い心地とかはどうだったかしら?」

和の言葉に答える変わりに、紬はたおやかな微笑みでそう切り出した。

「スッゴく良かったよぉ〜♪ やっぱりTCのエフェクターは、音いいね!」

「それは何よりだったわ。唯ちゃんは、気に入った? そうね…欲しくなるぐらいに」

「うん!」

「みんなはどうだったかしら?」

「そりゃまあ、欲しいかと聞かれたら、当然欲しいさ」

と、律儀に答える律にコクコクと相槌を打つ澪。

「紬、まどろっこしいわよ? 腹芸は趣味じゃないわ」

「クスクス♪ 和ちゃんてばせっかちさんね♪」

「気が長い方じゃないって自覚はあるわよ」


307 :いふもの! [saga]:2011/08/26(金) 06:08:00.36 ID:JIT5X5rAO


和はスッと真顔になると、

「何故、私達を誘って楽器や機材を選ばせたのか…そろそろ、手札を明かしてくれないかしら?」

「簡単な話よ♪ 端的にまとめちゃうとね…」

対して紬は、実に楽しそうに、

「ウチ(琴吹グループ)とディール(契約)しない?ってこと♪」



「えっ? むぎちゃんとカードバトルするの?」

「お姉ちゃん、それはデュエルだよ〜」

「それってどういう意味だ…?」

と、困惑気味の澪の肩に、和はポンと手を置くと、

「紬、はしょりすぎよ?」

少し呆れた表情で、

「某外道宇宙ペットじゃないんだから、契約を望むなら、条件をきちんと提示なさい」

「それもそうね。ウチが望むのはね…」

紬はニコリと微笑み、

「私達のセッション・グループとして以上のアクティビティー…本格的な"バンド活動"よ」


308 :いふもの! [saga]:2011/08/26(金) 06:09:15.68 ID:JIT5X5rAO


「あん?」

思わず首を捻るのは律だ。

「最初から、私らってバンドやる予定なんじゃねーの? その為に軽音部に入ったんだしさ」

「うん。それはそうなんだけど、部活動って形だと、まず全員でプレイするには、あと一年待たないといけないでしょ?」

「あっ、憂ちゃんか…」

澪の言葉に紬は頷いた。

「なにか、私の為に…すみません」

「気にしちゃ駄目よ♪ 私達はみんな大事なお友達で仲間なんですもの。むしろ、当然の配慮よ?」

「そうだよ、憂」

「紬さん、お姉ちゃん…うん!」

少し瞳を潤ませながら、それでも笑顔の憂だった。


309 :いふもの! [saga]:2011/08/26(金) 06:10:15.89 ID:JIT5X5rAO


「口ぶりからすると、憂の為だけって訳じゃなさそうね?」

「ええ」

和の言葉に紬は頷き、

「部活動に限定しちゃうと、原則として活動できるのは学校行事だけ…具体的には、文化祭とかだけでしょ?」

「多分、そんな感じじゃねーのか?」

「りっちゃん…せっかくバンド組むのに、発表の機会がそれだけって、なんだか寂しくない?」

「う〜ん…」

「私は、どうせならもっと多くのステージに立って、もっと沢山の人に演奏を聴いて欲しいな。りっちゃんには、そういう欲ってない?」

紬は真っすぐに律を見ると、

「もっと大勢の人の前で、ドラムを響かせたいって」


310 :いふもの! [saga]:2011/08/26(金) 06:13:44.89 ID:JIT5X5rAO

以上、投下終了。
どうにも借り物の携帯だと、書きにくい上に文章量がわかりにくいなぁ。

次回は、今のところ未定です。

311 :いふもの! [saga]:2011/08/26(金) 11:41:16.32 ID:JIT5X5rAO

とりあえず、予定が後ろ倒しになったんで、空いた時間で書いた8レスを投下します。

それにしても、筆が進む時と進まない時の差が、我ながら極端だな〜。
312 :いふもの! [saga]:2011/08/26(金) 11:42:14.03 ID:JIT5X5rAO


「正直に言えば…私はそういう欲、あるよ」

と、発言したのは意外な事に、照れ屋の恥ずかしがり屋、ついでに人見知りと三拍子揃った澪だった。

「澪?」

「自分の腕がまだまだだって自覚はあるけど、それでも大勢の前でプレイしたい…自分の演奏がどこまで通じるのか、」

澪は明確な意志の宿った瞳で、

「試してみたいって気持ちも、確かにこの胸にあるんだ」

と、自分の豊満な胸にそっと触れたのだった。



(まさか、一番尻込みしそうな澪ちゃんが真っ先に賛成してくれるなんて、嬉しい誤算だわ♪)

紬は内心でほくそ笑みながら、

「琴吹グループからの条件提示は、極めてシンプルよ」


313 :いふもの! [saga]:2011/08/26(金) 11:43:38.69 ID:JIT5X5rAO


「望む楽器に機材、その他の消耗品の提供と、必要なら運搬や搬入、設置までも受け持つわ」

紬はそう指折り数えて条件を示すと、

「そのかわり、私達はGWと夏の終わり、それに年末の計3回開催される販促イベントにバンドとして参加して欲しいんだって」

「販促イベント?」

不思議そうな顔をする唯に、

「うん♪ 簡単に言えば、幾つかの楽器店や企業が協賛して行う、プロアマ合同のライヴ・イベントよ。場所はまだ決まってないけど、多分市民公会堂辺りを借り切って行われるんじゃないかしら?」



「ふえぇ〜! ず、随分大掛かりにやるんですねぇ〜…」

素直に驚く憂だったが、紬は何食わぬ顔で、

「そんなに大きくはないわ。1イベント辺りの来場者総数は、万には届かないだろうって規模だもの♪」


314 :いふもの! [saga]:2011/08/26(金) 11:45:05.51 ID:JIT5X5rAO


「ふ〜ん…GWのイベントは、春の新商品のお披露目と夏のボーナス商戦への伏線。夏は、多くの音楽イベントが開かれるから、それに影響されるだろう新ユーザーや帰省でお小遣をたんまり持ってるだろう若年層目当て。冬はボーナス商戦の後の年末商戦の駄目押しとお年玉ユーザーへの商品デモ…販売サイドとしては、こんなとこかしら?」

寧ろ淡々と語る和に、

「さっすが和ちゃん♪ 大体正解よ♪」

綺麗な笑顔で、紬はポンと手を打ち鳴らした。

「つまり、楽器とかはイベントの出演料代わり…って事か?」

と、少し言葉を選ぶような律。
大雑把で思い切りのいい元気娘とイメージされがちな律だが、どうやらそれだけじゃないようだ。

「プロじゃないのにお金を支払うっていうのは、後々何かと問題になりそうでしょ?」

「だから、必要な楽器や機材を現物支給か…うん。悪くない条件なんじゃないかな?」

と、澪は寧ろ乗り気に頷いた。


315 :いふもの! [saga]:2011/08/26(金) 11:46:32.93 ID:JIT5X5rAO


「名前も決まってないけど、私達のバンドに楽器や機材を提供してるってかけば、いい宣伝になるだろうしね♪」

「でも、今ここにある機材だけでも、軽く100万以上あるわよ?」

和は腕を組み、

「私達に、それだけの宣伝効果…価値があると琴吹は考えてるのかしら?」

「少なくとも、お父様はそう考えてるわ。それに…」

紬は、実にいい笑顔で控え目にサムズ・アップで、

「無名の女子高生バンドが、素人っぽい容姿に見合わないレベルの演奏をすれば、やりようによっては、それだけで話題性は高くなるわ♪」


316 :いふもの! [saga]:2011/08/26(金) 11:48:21.53 ID:JIT5X5rAO


「…琴吹グループの思惑はわかったわ。じゃあ、もう一つだけ質問よ」

「和ちゃん、なんでも聞いて♪」

「紬…貴女の本音は、どこにあるの?」

「私の…本音?」

「そう。グループの利潤とかに興味の無い紬が、ここまで計画に執心してる理由を聞いておきたいの。勿論、興味本意でね」

「そうねぇ…」

紬は少し考えるそぶりをすると、

「一番キラキラしてる唯ちゃんを、特等席で見てみたいから…かな?」


317 :いふもの! [saga]:2011/08/26(金) 11:49:18.78 ID:JIT5X5rAO


「ほぇ? わたし?」

「うん♪ 唯ちゃんが一番キラキラしてるのって、やっぱりステージの上なの…」

紬は、まるで夢見るような表情で、

「いつもの唯ちゃんも、勿論とっても可愛いけど…ライヴ・ステージに立つ唯ちゃんを初めて見た時の驚きと感動は、今でも忘れられないわ」

紬が記憶を戻したのは、受験が終わったばかりのまだ肌寒い頃。

唯が中三から本格化させた他バンドへの"ゲスト参加"も、秋口から受験に備えて自粛してた為、本人も外部進学に備えて何かと忙しかった紬は、この時になって初めて唯のステージを見る事が叶ったのだった。


318 :いふもの! [saga]:2011/08/26(金) 11:50:56.44 ID:JIT5X5rAO


「ステージの上は眩しくて、みんな輝いてたけど…私には、唯ちゃんが一番輝いて見えたの。まるで、唯ちゃんから音と一緒に光が溢れてるみたいで…」

うっとりとした表情で思い出を語る紬は、

「その時からかな? 一番近い場所で…同じステージの上で、唯ちゃんを見ていたくなったのって」

「むぎちゃん…」



「なあ、澪…」

「なんだ?」

「私には、なんだか性別の垣根を超えた愛の告白とかに見えるんだけど…?」

"ぺしっ!"

「あいたぁーっ!」

「おかしな事を口走るなっ!」

と、宣う澪の頬もちょっぴり紅いのは、お約束。


319 :いふもの! [saga]:2011/08/26(金) 11:51:49.61 ID:JIT5X5rAO


「スッゴく同意しますっ! ステージの上のお姉ちゃん、絶対に誰よりもキラキラなんですっ!」

ギュッと紬の手を握り締める憂に、

「でしょでしょ♪」

と、はしゃいだ表情で握り返す紬。

「それに、どうせならみんなで一緒に輝けたら、もっといいと思わない?」



「紬がそういうつもりなら、私は特に反対する理由はないわね」

和は、そう呟くと律を見て、

「律、どうするの?」

「えっ!? 私が決めるのかよっ!?」

「律が部長でしょ?」

「う〜んう〜ん…え〜と、それはだなぁ…」



桜高軽音部を中核とするバンド(今のところ名称未定)が文化祭以外にもステージに立つ事が決定したのは、それから約3分後の事だった。



320 :いふもの! [saga]:2011/08/26(金) 12:02:43.48 ID:JIT5X5rAO
これにて、本日の投下と、間は開いてしまったけど第7話は終了。

>>302等で触れたように、データが吹き飛びサルベージ不可能な為、読んでいただいた皆様には申し訳ないですが、"いふおん!"本編は、投下を無期限停止します。

次回からの投下は、いふおん!の設定の一部を使った番外編っぽい物を予定してますが、これもまだ文章化してないので、投下時期は未定です。

321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/27(土) 02:57:53.47 ID:96c9vKrJo
そんな嘘くせえ言い訳しないで正直に続けるのがしんどいのでやめますって言えばいいのに
需要も全くないし、>>209で中の人のクズっぷりが暴露されたから続けたくないんだろ
322 :1 [sage]:2011/08/27(土) 23:18:44.78 ID:r5ZpSi3AO
>>321
論理矛盾おこしてんぞボケナス
それに気付かない程度の頭で、まともに人間扱いされる訳ねーだろ?
わざわざ、んなネタ発掘してくるって事は、俺にこうかまって欲しいのか?

虫扱いされるだけ、ありがたいと思えよチンカス
323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/27(土) 23:23:31.09 ID:eW21rtEVo
これは酷い偽物
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/28(日) 13:00:19.17 ID:7/aCM5dDO
この>>1なら偽者を装ってこれくらいするだろ
>>303に挑発的なレスしてるし、この>>1はスルースキルないじゃん
325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/28(日) 13:39:44.88 ID:Ob+EYpLzo
Mr.句読点主義者の>>1とレスの仕方が違う……気がする
あと>>1にしてはキレ方がストレート過ぎる……気がする。こうヌメッと感が

そこまで狙ってるか、偶然そうなってるならシラネ
326 :1 [sage]:2011/09/02(金) 22:58:00.38 ID:jWfkeWOAO
どっちでもいいよ
>>213>>216>>223>>321みてーに>>210の粘着行動に疑問もたねーゆとりの弊害丸出しの知恵遅れだか黄色い救急車だかにどう思われようが知ったこっちゃねーし

大体>>209程度の愚痴でガタガタ抜かすなんざ社会も世間も知らねークソジャリってこったろ?

自分らが蚊扱いされてキレたみてーだが蚊どころかその手前
ボウフラかそれで悪けりゃ蛆虫だ
腐った能無しにはお似合いだろ?
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/03(土) 18:34:45.56 ID:JJU+POWIO
やだ、気持ちの悪いスレ開いちゃった("q")
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/09/08(木) 20:16:21.16 ID:xpxESqVe0
池沼唯スレから来ますた
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/08(木) 23:35:07.71 ID:rqzQYo+DO
作者が糞とか以前に、出来る唯だとアンチと池沼厨が湧くようだ、それが証明されただけでも、これから唯をどうメインにすれば良いか分かったぜ。胸糞悪い
330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) :2011/09/10(土) 13:11:20.58 ID:DIOCGOZq0
偽物消えろ
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