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おわる魔術の禁書目録【パルプフィクション】 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/07/21(木) 00:24:22.85 ID:8xU+yza20











何かが完全なまでに一方的に無くなるということは無い。






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いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
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こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
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【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
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アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
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エルヴィン「ボーナスを支給する!」 @ 2024/04/14(日) 11:41:07.59 ID:o/ZidldvO
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2 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/07/21(木) 00:25:05.80 ID:8xU+yza20



氷を溶かせば水になるが、凍らせれば再び氷となる。

水を加熱すれば蒸発するが、冷やせば再び水となる。




無くなったように見えても、それは形を変えているだけに過ぎない。



鉛筆で書けば鉛筆は磨り減っていくが、磨り減った芯は紙の上の軌跡となる。

消しゴムで消せば軌跡は消えるが、黒鉛の付着したかすが残る。



それは目に見えるものだけとは限らない。



3 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/07/21(木) 00:27:22.80 ID:8xU+yza20


人を殴れば相手だけが傷つくわけではなく、殴った拳も傷つき、或いは痛みを感じる。

物を叩いた衝撃は物だけに伝わるわけではなく、叩いた方にも同様に伝わる。

水を蒸発させるのに用いられる熱エネルギーの存在。

鉛筆用いて書く為の力。




能力者は綿あめ職人に似ていると、誰かが言った。

彼等は決して無から有を作り出しているわけではない。

視認し辛い砂糖の糸を手繰り寄せ、絡め、束ね、固め、そして形作る。

能力の高い者ほどその作業が恐ろしく緻密で早いから、何も無いところから綿飴を生み出しているように見えるに過ぎない。

彼等は能力者であって、錬金術師ではないのだから。




明確に存在するエネルギーの概念。
つまり、一方的に存在が消えるということはあり得ない。
何かを消す、或いは形を変えるには、それ相応の代価が必要になり、影響は双方向に働くこともある。



拙い言い方をすれば、存在するだけで一方的に何かを作る、或いは消すということはあり得ない。




4 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/07/21(木) 00:28:28.29 ID:8xU+yza20




――― なぁ、お前ってさゲームとかする?


――― あァ?


――― いや、睨むなよ……


――― 漠然としすぎなンだよ。人生ゲームだったらクソガキ共に昨日付き合わされたばっかりだけどな。


――― そういうのじゃなくてさ、テレビゲームだよ。


――― 格ゲーなら結構やるな。レースとかもそれなりに。


――― じゃあさ、RPGは?



5 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/07/21(木) 00:30:20.93 ID:8xU+yza20






それでは、例外というものはあるのだろうか。


例えば、


例えばだ。


あらゆる異能の力 ――― 幻想を消してしまうとある右腕の場合はどうなのであろうか。







6 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/07/21(木) 00:32:02.44 ID:8xU+yza20





――― 暇な時くれェならな。ドラクエとかFFとか……マジそういうベタなとこくれェしか知らねェぞ?


――― へぇ〜お前がやるとことか想像つかねえな。


――― そォいう三下クンはどォなンですかァ?金欠だからやるゆとりもねェか?


――― 失敬な!これでも今はそれなりに人間らしい生活してますことよ。俺は結構やるな〜美琴が好きなんだよRPG。


――― ベタな感動大作モンとかで泣いてそォだな……それで、RPGが何だってンだよ?


――― いや、ああいうのってさ、プロローグ進めると名前入力画面になるだろ?『主人公の名前を入力してください』って。


――― FFしかわかンねェけど、そうだな。


――― あれって、お前名前って自分で考えてる?


――― 小学生か。ドラクエじゃねェ限り大概ああいうのはデフォルトであるだろ。クラウドとかザックスとか。


――― だよなー。雰囲気ぶち壊しだもんな。


――― ライトニングにさいあいって名付けてンの見た時にはもォ限りなくそっくりの別人にしか見えなくなっちまったぜ。


――― ………………


――― ティファにうみどりって付いてるの見た時には……何か泣けてきたけどな。


――― ………………


――― どうした?


――― いや、元々名前があったらそりゃ、その名前つけるよな。


――― あァ?


――― ああ、悪い。何でもない、何でもない。ところで、今日はこれを教えて欲しいんだけどさ。


――― お前…受験近いのに…大丈夫なのかよ。


――― わかってるから上条さん大焦りなのですよ!!





7 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/07/21(木) 00:32:39.68 ID:8xU+yza20



これは単なる疑問である。


夜、普段より30分だけ早く床に着いた少年が濃紺の天井を見上げながら思うような。


鞄にいつも入れていた文庫本を忘れてしまったから時間を潰す為の空想にふと浮かび上がるような。



そんな些細な疑問に過ぎない。




8 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/07/21(木) 00:34:05.97 ID:8xU+yza20







上条当麻の『消した』幻想は何処へ行ったのだろうか。





上条当麻は、消した幻想に対価を払っていないのだろうか?






9 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/07/21(木) 00:36:31.11 ID:8xU+yza20

以上で投下終了です。
暗い話に挑戦するつもりなので、読まれる方はそれだけは念頭に置いていただけるとありがたいです。
会話では出てきましたが一方通行の出番は少ないです。
週一くらいで、ちょろちょろと投下できたらと思っております。

それではまた。 ノシ

10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/07/21(木) 00:47:30.00 ID:6LZvlZbSo
乙〜

いい雰囲気だ
期待して待ってる(  ̄ー ̄)ノ
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/21(木) 00:57:45.44 ID:fBWZhRoA0
上琴?で鬱SSだと……





何という俺得ッッッ
期待するぜ!!
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/21(木) 00:58:54.79 ID:fh1piue3o
全裸待機期待
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/21(木) 01:03:06.62 ID:pxVruwhb0
例えでFF7だすとはこの>>1わかってる

期待してるぜ!
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/21(木) 01:08:42.79 ID:6ZcoQCYDO
期待
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(香川県) [sage]:2011/07/21(木) 01:29:16.74 ID:r3cG32Zy0
窒素姉妹でるのか!
期待
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/07/21(木) 02:04:42.82 ID:Y7oUClmUo
これは期待
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/07/21(木) 02:10:42.50 ID:UM/VsbGeo
自分が3年温めてたネタを使われる気がする
期待
18 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/07/27(水) 19:23:06.76 ID:KPI8ucZu0


スパルタな家庭教師、一方通行からようやく解放され(といっても俺から頼んでいるのだが)、
俺はフラフラとした足取りで帰路につく。
足にまで来ている疲労の原因は勿論、頭脳労働のせいだ。


恐いお兄さん方や、能力者同士のジャンプ真っ青なバトルに、痴話喧嘩、暴走トラックに果ては暴れ牛などに巻き込まれるという不幸はめっきり数を減らし、
わたくしこと上条当麻は中々に健康且穏やかな日々を送っていたりする。
不幸が減ったというかこの学園都市が随分と平和になったというのが主な理由だろう。
数を減らしただけで、ゼロになったと言えないのは何とも切ないものがあるのだが……

うん、いいもん。

多くを望めばバチが当たるってばっちゃが言ってた。

ばっちゃなんて覚えてないけどね!




自分の部屋が見えてくるにつれて安心する。
自分の部屋の灯りが既についている。
換気扇から洩れる食欲をそそる香ばしい匂い。


ふむ、豚肉の生姜焼きか。


一つ頷いてからドアを開ける。



「おっかえり〜当麻」


玄関でシューズを脱ぎ終わるより先に声がする。
行儀悪いと叱られないように靴をそろえてからキッチンに足を運ぶと、空色の制服の上にエプロンを身に着けたなんとも男心をくすぐる女の子。
というか、まぁ、ぶっちゃけ彼女だ。


「何だよ来てたのか」

「何だよじゃないわよ。ちゃーんと私は連絡したわよ。アンタったらいくらメールしても返事が無いんだもん」


言われてから携帯の電源を切っていたことに気付く。
受信メールボックスの横に表示された未読メールの数字に若干引く。

19 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/07/27(水) 19:24:55.28 ID:KPI8ucZu0



「お前幾らなんでも30件って……」


5分に一通くらいの頻度じゃねーか。


「だって……なんかあったんじゃないかって心配だったんだもん ……」


そう言って俯きがちに顔を下げる。
目だけが此方を向いているのだから、上目遣いの格好になるわけで。
目の前の少女は、頭に『美』が付く少女であり、彼氏の贔屓目承知で言えば更に冠に『超絶』を付けてもいい。
そんな上条さんには勿体無い美少女が寂しげに上目遣いで見てきたら上条さんとしてはもう答えは一つだ。





「悪かったよ、心配させちまって。ゴメンな美琴」


折れるしかないっていう訳よ、結局。


「うん、許す」



打って変わってにっこりと真夏の太陽の下のひまわりのように笑う美琴。
テメェ、演技だったかやっぱり。
とは言うものの、正直悔しがるほどの事でもない。

20 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/07/27(水) 19:26:18.79 ID:KPI8ucZu0



「どう?勉強のほうは?」

生姜焼きを一つ摘みながら美琴が伺うように視線をよこす。
長点上機の制服の上にエプロンを着けたままなのは、制服が汚れない為。
何だか新妻チックで上条さん的にも問題ナッシング。
でもそれを口にするときっと照れまくってエプロンを脱いでしまうだろうから言いませんとも。


「まだまだ先は長いな。遅れてた分を取り返すのに必死ですよ上条さんは」

「いっそ留年してた方が良かったんじゃない?」

「それは…同じ学校に通うためとか、そういう…」

「バカ、自惚れてんじゃないわよ」


ぴしゃりと額を叩かれる。


あれ?

上条さんの方が年上ですよね?

何で叱られてるんでせうか…


などという疑問を抱いているとは露知らず、というか知ったこっちゃなさそうに美琴は眉間に皺を寄せ寄せに睨む。


「もう一度やり直した方がしっかり勉強できたんじゃないの?付け焼き刃で誤魔化して。

 結局ついて行けずにひーこら言ってるじゃないのよ」

「お前な、ダチがそろって上の学年とか泣きたくなるだろ。想像するだけでもう耐えられねー」


ああ畜生、容易に想像出来すぎて腹が立つ。


ニヤニヤ笑う土御門と青ピ。

自分が不甲斐無いからだと責めまくる小萌先生。

黒真珠のように透明な瞳でじっと哀れみの目を向ける姫神。

排水口に絡まった髪の毛を見るような軽蔑しきった目で見てくる吹寄。



あ、涙出そう。



「じゃあさ就職でもしたら?浪人する余裕なんて無いでしょアンタ?」

「うぐ…」

「手っとり早く一人立ちするっていうのも手よね」

「でも、やっぱり大学くらいは出ておきたいというか、上条さん的には行かないとマズイわけで」

「でも、現実問題行けるわけ?学園都市の大学って基本レベルそこそこ高いわよ?一般の大学も含めて。

 公立なんて学費安いから、能力無くて学力ある奴が集まるし」


21 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/07/27(水) 19:27:49.24 ID:KPI8ucZu0


生姜焼きを飲み込む。
美琴の正論が痛い。
本当にその通りなわけで。
外と科学技術も教育レベルも10年の開きがあると言われている学園都市の大学のレベルは高い。
外からも入ってくるわけで競争率はハンパない。
今でもかつかつなのに、その上浪人することになったら一体どうなることやら。
そもそも勉強が遅れに遅れてるのは俺がやっかいごとに首を突っ込んだ結果でもあるし、自業自得といえば結構自業自得だ。

記憶を失ってから勉強する暇なんて…




「って記憶無くす前から俺劣等生だったよ」

「え、イヤだ、マジで?」

「…マジで」

「………就職か…」

「投げた!?」

「あ、でもそれもどうだろ…アンタこの前スーパーをクビになったっけ?」

「何というか、転んだ拍子に陳列棚倒して、

 そうしたらそれがフライパンの実演販売してる人のところまで絶妙なドミノ倒しで行っちゃって、

 ぶつかったら油ごとコンロが倒れて、そこから特売の垂れ幕に偶然引火しちゃって…」

「うん、わかった。もう言わなくていいから」

「はい、すみません」

「そうすると死んでも学力上げないとだわ」


そもそも、記憶が飛ぶ以前から俺の学力は非常に残念であったことは部屋に残っていたテストやらでわかる。
つまり、ああいうもめ事に関わっていなくても、上条さんは何というか非常に残念なおつむをしていたようであるし…



あれ?

どっちにしろ自業自得?

残念な頭脳で生まれてきたこと自体が不幸とかそういうオチ?




「ちょっと、何沈んでるのよ」

「すみません。生まれてきてすみません」

「卑屈過ぎでしょ」

「卑屈だなんて滅相もない。妥当な姿勢でございますですのよ。ホント情けない彼氏ですみません」


言ってて悲しくなってきた。
自分の言葉で結構テンション上がるタイプなのは、まぁ、今までの説教歴から自覚してたけど、
自分の言葉で死にたくなるのは知らなかったなぁ。
ダブりの危機を回避したと思えば今度は浪人の危機で、甲斐性無しでしかも、不幸体質のせいで就職してもクビになる可能性が高い。

22 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/07/27(水) 19:29:18.43 ID:KPI8ucZu0



「てい」
「あ痛っ!」


いきなりでこぴんを食らった。
それもかなり痛い。
思わず涙が出た。


「アンタさ、せっかく美琴さんが作ってあげたんだから感想くらいいいなさいよね」

「あ、悪い。うん、美味い美味い」

「遅いわよ。っていうか、無理矢理言ってない?」

「いや、マジでうまいってこれ」


本音だ。

話に気が行っててきちんと味わうことをすっかり忘れてた。
ご飯に丁度合う濃いめの味付けはばっちり俺の好みを把握している。
味に気づくと同時に食欲がむくむくと沸いてくる。
あっと言う間にご飯を平らげておかわりを差し出すと美琴が嬉しそうに笑いながら「まったく」とつぶやく。


「大体スタミナ付けさせようって生姜焼き作ってあげたのを一体なんだと思ってるわけ?」

「え、それは…夜の三本勝負の為に…へぶっ!!」




殴られた。
思い切り殴られた。
フルスイングで殴られた。
フルスイングですよ奥さん?



「し、死ね!!」

「照れ隠しに死ねって」

「あ、ああ、アンタの頭の中にはそれしかないの!?この性獣!!」

「ヒドい!思春期なら仕方がないのに…」

「うるさい馬鹿!そうじゃなくて、文脈から察しなさいよ」

「え?」

「勉強教えてあげるっていうのよ。しっかりスタミナ付けて」

「美琴が?」

「そうよ。一方通行だけじゃアンタの馬鹿さをフォロー仕切れないっていうなら、私も加わるっていうの。

 レベル5が二人がかりなら気の毒なアンタの頭も人並みにはなるでしょ、まったく…」

「美琴……」

23 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/07/27(水) 19:32:17.63 ID:KPI8ucZu0


言葉は確かに臓腑を抉るように容赦が無いけれど、その気持ちはしっかりと伝わった。
目の前には、すっかりと林檎色になった美琴の顔があるのだ。
流石にそこで気づかなければ彼氏じゃない。


「サンキュ」
「うん」
「俺頑張るよ」
「うん、頑張れ」
「それで絶対大学行く」
「当然でしょ。第一アンタ教師になるって夢があるんでしょ?ぐじぐじ弱音吐いてるんじゃないっつーの」
「だよな」



さっきまでの情けない自分を誤魔化すように笑うと、手が掛かるなと言いたげに美琴が小さく優しく笑う。


俺は自分の恋人の顔を見つめながらしみじみと思う。
信頼と、自信に満ちた美琴の笑顔はいつも俺に勇気をくれる。
彼女が淹れてくれたお茶を啜りながら、先ほどまでの弱音を吐いていた自分がいつの間にかどこかへ行ってしまったことに気づく。
今日みたいな弱音だって初めてじゃない。


この笑顔でいつも俺は沈む度に浮上させられているのだ。



「美琴様には上条さん一生頭が上がりそうにありませんねぇ」

「一生!?な、何言ってるのよイキナリ!!」

「え?何か変なこと言ったか?」

「何でもないわよボンクラ!」

「酷いッ!?」

「アンタが悪いんでしょうが!!…… ったく期待しちゃうじゃないの、もう……」

「?」





24 : ◆d85emWeMgI [!orz_res]:2011/07/27(水) 19:35:47.47 ID:KPI8ucZu0










あの子が笑っている。



アイツと食卓を挟んで楽しそうに笑っている。



どうしてそんな笑顔をアイツに向ける?



本当にお前を、君を、貴女を大切に思っている者は此処にいるのに。



彼女は俺に気付きもしないで無邪気に微笑む。



愛くるしく、そして芯に強さを秘めた笑みを向ける。



俺を魅惑する笑みで、アイツに微笑む。









25 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/07/27(水) 19:38:03.58 ID:KPI8ucZu0

以上で投下終了です。
短いです。
すみません。
言い訳は色々あるのですが、早い話が鈍ってるんです。色々。

それではまた次回。 ノシ
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/27(水) 19:44:26.55 ID:DOmg9mgDO

これは期待できそうですな

これ鬱?
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/27(水) 20:19:05.65 ID:blMeVZz50


これは……エツァリか?
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/28(木) 00:12:51.03 ID:3g28IfCIO
乙〜
うわーなんか怖いな
エツァリとはなんか少し違う気がするし…
次も期待です
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/28(木) 08:16:19.54 ID:wd7g69k3o
初代上条さんに一票
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/07/31(日) 18:55:44.76 ID:FmLYsUhBo
パルプフィクションてーとエゼキエル書なんたらってやつですね。
どんな便所臭い話になるんでしょうか。
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/01(月) 00:01:44.39 ID:6+zT0mhIO
中条さんかな
32 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/08/03(水) 19:31:00.49 ID:H1odej8o0
投下します。
33 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/08/03(水) 19:32:12.80 ID:H1odej8o0




「カミやんどうしたんだにゃー?眠そうってか辛気臭い顔だぜい」
「夢見があんま良くなかったんだよ」
「そんなこと言ってカミやん、ホントは御坂ちゃんと朝までイチャイチャして寝れてなかっただけなんやないの?」

青ピの発言に、朝の喧騒の只中にあったはずのクラスがしんとなる。



『御坂ちゃんってあの常盤台の超電磁砲だろ…?』


『今は長点だとよ』


『マジかよ!?すげえな』


『前に正門のとこに来てた子だよね?』


『上条君ってやっぱり面食いなんだ……ちょっとショック〜』


『ああ、あの可愛い子か』


『クソ…やっぱり上条かよ』


『死ねよ。氏ねじゃなくて死ね!つーか爆発しろ!!』




んなわけあるか、と言い切れなかった俺もちょっぴり非があるかもしれないけど。



34 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/08/03(水) 19:33:08.96 ID:H1odej8o0



「当麻〜」

「美琴どうしたんだよ」

「えっへへ〜来ちゃった。なんてね迷惑だったかな…」

「全然」


若干背後から主に自分のクラスから矢のように飛んでくる視線が痛いのだが……可愛い彼女の可愛さの前ではまぁ、些細なでありますですことよハイ。





「まだパスタも余ってるし今日はパスタにしよっかな」

「いつも悪いし、今日は俺が作ろうか」

「いいのよ当麻は勉強があるでしょ」


それを言われると痛いありがたいことに小萌先生を始めとする教育心熱心な先生方による『バカミジョウ補完計画』などと呼ばれる特別カリキュラムの自宅学習分を頂いてきているのだ。
要は、補習じゃ追いつかないくらいの選りすぐりの馬鹿の為のメニューというわけなんですけどね…
でもそれにしたって…毎日参考書20ページっていうのはオニチクだと思…いえ、何でもありません…



「この子ってホントいい子ね」

美琴は膝の上にスフィンクスを乗せて遊んでいる。
結構わんぱくな奴だと思うのだが、実際スフィンクスの奴は殊勝に美琴の膝の上でお腹を晒している。
電磁波に緊張してるせいかもしれないが、それでも服従の意を示しているのは、自分の生命線を握っているのかというこの場におけるヒエラルキーを小賢しくも理解しているのかもしれない。
いすれにせよ、存分にモフらせてくれるスフィンクスは美琴にとって十分にいい子なのだ。

「ねぇ、当麻」

「ん?」

「この子って記憶失くす前から飼ってたの?」

「いや、コイツは拾ってきたんだよ」

「あら、アンタ野良だったの?毛並みが良いから貰ってきたのかと思ってたわ」


にらめっこするようにスフィンクスの顔を見つめると、何?と言うようにスフィンクスは小首を傾げる。
飼うつもりはなかったんだけどいつのまにか居着いてさ
本当、何時の間にか、いつしか、さも当然のように我が物顔でベッドで寝ていたのだ。
そのふてぶてしさが憎めなくて飼うことに何故か決まってしまったのだが…


35 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/08/03(水) 19:33:37.99 ID:H1odej8o0


「当麻がスフィンクスって…ふふ」

「何だよ」

スフィンクスの前脚を優しくつまみながら美琴がからからと笑う

「似合わな〜い」


確かに、俺だったらそんなヘンテコっていうか、変わった名前は付けないと思う。
それでも、俺が拾った猫なんだから、俺が当然つけたわけで、上手く言えないそういう説明困難なことについてはこう言うしかない。


「自分でも何でか不思議なんだよな〜」




36 : ◆d85emWeMgI [!orz_res]:2011/08/03(水) 19:34:41.27 ID:H1odej8o0





あの子が笑う



無邪気に笑う



あの子が無邪気に猫と戯れる。



まるで子猫がじゃれ合っているみたいで



俺は、もうそれだけで、俺は、もう、本当に何も言えなくなる



息が止まる



胸が詰まる



喉が渇く



あの子が笑う



無邪気に笑う



子供のように、童女のように



そう、彼女は子供だ



まだ子供なのだ



例えその体が大人になりつつあろうとも



例えその心に跪きたくなる強さがあろうとも



例えその瞳に目も眩む程の気高さがあろうとも



彼女はまだまだ子供なのだ





37 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/08/03(水) 19:35:27.00 ID:H1odej8o0



鍋で余ってた舞茸をバターで炒めてパスタと絡めて同じく中途半端に余ってた麺つゆと混ぜ合わせた和風パスタが今日の夕飯。
朝の味噌汁で入れ忘れた油揚げと大根の残りをレタスに刻んで合えたサラダとスープを手早く作り終えてしまう頃にはすっかり上条さんの可哀想なオツムは動作不良を起こしていた。
本当なら美琴の常盤台仕込の腕前があれば、もっと豪華な料理を作ることも出来るし、一日に必要な21種類の食品を摂れるバランスの良い献立も可能なのだ。
しかし、健康かつ若者に必要な摂取カロリーを摂る為の食生活には何をおいても先立つものが必要である。
そう、野口先生どころではない、樋口大先生にわざわざ出向いて頂かなければならないし、それに合わせて調理器具を揃えようとすれば福沢名誉教授にまでお出まし願わなければならない。


「馬っ鹿ね、私が全部払ってあげるわよ」


等と男らし過ぎる美琴の言葉に誘惑されそうになるのを堪えたのはなけなしの意地。
ちっぽけな男の子のプライドである。
夕飯を作ってもらう上にお金まで出してもらっては最早ヒモ同然。
二人の話合いの結果、上条さんが捻出したなけなしの予算を、やり繰り上手の美琴姫が有効活用するという形に落ち着いたのである。
よって、食材もいたって普通のスーパーで買ったものであるし(オーガニック?何それおいしいの?)、量も潤沢というわけには行かない。
白菜なら芯まで刻んで漬物に。大根なら皮と葉っぱで炒め物に、という節約生活に至る。
何だか、常盤台出のお嬢様に極貧生活を強いているようで大変心苦しいのですが、そこは、その……まぁ、上条さんの将来性に期待ということで。




「ねぇ、今週の土曜日映画にでも行かない?」

「土曜日かぁ…」


絶妙な塩加減の舞茸のバター炒めを口に放り込みながら考える。スケジュールと言えば聞こえはいいが単に補習が被ってなかったかどうかということだ。


「多分大丈夫だな」

「ホントッ!?やった」

「何ですか、もしやまた美琴さんの愛するゲコ太の映画ですか?」

「違うわよ!止めてよゲコ太のことしか頭に無いとか思ってない?」


正直思ってました。

とか言えない。言えば多分超電磁キャッチボールだろう。
容易に想像が付き過ぎて、とりあえず笑って誤魔化した。
美琴は「もう、すぐ誤魔化すんだから」と唇を尖らせる。
贔屓目を除いても子供っぽく上目遣いで不満を訴えてくる表情はくらっとなるくらい可愛い。
何も付けてないのに貝のように鮮やかで瑞々しい唇も思わずつまんでしまいたくなるくらい美味しそうに見える。


38 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/08/03(水) 19:36:13.28 ID:H1odej8o0


「何笑ってるのよ…」

「いや、別にたいしたことじゃないって」

「その割にニヤニヤして…イヤラシイ」

「イヤラシイッ!?」

「そうよ」


美琴がスフィンクスを抱き寄せながらジト目を向けてくる…って、スフィンクスちょっとそこ替われこの野郎ーじゃなくて、もしかして何か勘繰られてる?


「アンタのことだもん、どうせまた誰かに告白されて、それがまた可愛い子っていうお約束で思い出しニヤニヤなんでしょ」


やっぱり勘繰られてる!!


「当麻は彼女といても他の女の子とフラグ立てに勤しむもんね」

「言い掛かりだぁー!!大体いつの話をしてるんでせうか」

「この前の夏祭りの時よ。ちょっと屋台に行ってた隙に見知らぬ女の子を抱きしめてるし」

「いや、あのですね美琴さん。あれは鼻緒が切れたとかで転びそうだったのを受け止めただけでして…」

「そうそう、買い物に行った時もお茶に誘われてたよね〜」

「あれは前に不良の方々から助けた子に偶然会って、お礼にお茶でもという、ただそれだけの事の次第に過ぎないと申しましょうか」

「ふ〜ん」

「…美琴〜機嫌直してくれよ〜」

「…プッ…」

「へ?」

「プッ…ハハハハ!ゴメンゴメン、冗談よ」


そう言ってペロリと舌を出した美琴
俺はからかわれたという怒り ――― ではなく、これで一体何度目になるんだと自己嫌悪に陥る

39 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/08/03(水) 19:39:14.49 ID:H1odej8o0



「そんなマジに泣きそうな顔しないでよ。私がいじめたみたいでしょ?」

実際イジメられてたんですがね…という言葉は呑み込んだ。

「だって当麻ってばモテるんだもん。付き合うようになれば大丈夫かなって思ってたら

 相変わらず女の子に告白されてたり、デートしてても声掛けられてるし……」


美琴が不安で淋しそうに俯いていたからだ。


「別にモテてなんて…」

「モテてるの!!」

「ハイ…」

「だから時々、ううん、毎日不安なんだもん。私ホントに当麻の彼女なのかなって」

「そんな事で悩んでたのかよ」

下らない、なんてあっさりは言えなかった。
少なくともコイツに淋しい思いをさせちまってる自覚は少なからずあった。
そして、大部分を占めるのが俺の不甲斐無さにあることも。
だから俺がしなきゃならないことはただ一つだ。

「美琴」

亜麻色の髪を撫でる。
俺のと同じ「髪」と括って良いのかと聞きたくなるくらい細く、コシがあって真っ直ぐなサラサラとした髪を撫でていく。

「俺が“そういう意味”で好きなのは美琴だけだから、だから…」

「だから?」

「だから私が彼女だ!って堂々としててくれよ。俺も誰に何言われても彼氏だ!って堂々としてやるからさ」

「うん!」


かなり恥ずかしいセリフだった気がしないでもないけど、まあいいか。

「えへへへへ〜当麻ぁ〜」

いつの間にかテーブルから回り込んできた美琴に抱きつかれる。


「大好き」


この笑顔が見られたんだから。


40 : ◆d85emWeMgI [!orz_res]:2011/08/03(水) 19:42:40.43 ID:H1odej8o0



大人であらねばならない。



そんな強迫観念に追われながらも



彼女はいつだってタイミングを伺っていた



子供に戻るタイミングを



子供だった自分を取り戻すタイミングを



失ってしまったから



沢山甘えて、他愛ないことに涙して、些細なことに怒って、ささやかなことに声を上げて喜ぶ



そして、自分のせいで困らせて、



自分の為に悩ませたことに後悔しながら



それでも確かめずにはいられないのだろう



自分が愛されているということを



だから彼女はアイツの前では時折り厄介なくらいワガママになる



それがどれほど幸福なことなのか



どれほど俺が妬ましく思っているのか



アイツはわかってない





41 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/08/03(水) 19:43:48.85 ID:H1odej8o0



「随分マシになってきたじゃねェか」


一方通行が視線をノートに落としたままぽつりたまと呟く。

思わず自分の耳を疑う。

だってあり得ない。

この一年、カスだの虫ケラだの、可哀相なウニだの散々な言葉の数々。
人間扱いされてないとか散々どころのレベルじゃない罵声を浴びせかけてきた白い悪魔からのよもやのお褒めの言葉。
ていうか貴方上条さんに憧れてた設定何処行ったんですか…?
一方通行は鼻で笑うと採点を終えたノートを放り投げる。


「っつても、やっと普通の落ちこぼれになれた程度だけどな」

「普通の落ちこぼれ…あの、ちなみに今までは一体…」

「………聞きてェか?」

「………止めときます…」

「賢明な判断だな」


ズズッとコーヒーを啜る鬼軍曹。
良かった…きっと聞けば死にたくなるような事を言うに決まってる。


42 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/08/03(水) 19:44:27.99 ID:H1odej8o0



「ところで上条…」


本日の『学園都市第一位様によるありがたい個人レッスン(命名:一方通行)という名の一方通行の七色の罵声アワー(命名:上条さん)』が終わり、
メロンソーダのわざとらしいメロン味にひと息吐いていると、一方通行が妙に神妙な顔で声を潜めた。


「まだ超電磁砲と、付き合ってンだよな?」

「何だよ出し抜けに、そりゃまあ」

「そうか、それで、どうなンだ?」

「は?」

「だから、上手くいってンのかって聞いてンだよ!!さっさと答えろ三下ァァ!!」


苛立たしげにテーブルを叩かれた。

イキナリ切れられてとりあえず周囲のお客様方に謝っておく。
何かジロジロと視線が集まりがちなのは、ひとえにこの驚きの白い奴のせいだろう。


「ボリュウム、ボリュウム下げてくれ一方通行。周囲の皆さんが不審な目で見ていらっしゃる」

「話逸らしてンじゃねェ!!ハッ……テメェ、さてはアイツのこと弄ンでンじゃねェよなァ!?」

「止めて!!上条さんを見る皆さんの目が一気に汚物を見るような目に早変わりしちゃったから!もうこの店来れなくなっちゃうから!!」

「チッ……少し取り乱しちまったか」

「え?少し?」

「あァ?」

「いえ、何でもありません」


煙草を取り出すと、一方通行は眉間に皴を浮かべたまま火を点ける。
ここ喫煙席だったよな、という確認をする前に、停滞した空気の中を、我関せずとばかりに細長い紫煙が延びていく。
途端にバニラのような甘い香が漂う。吸わないからメーカーはわからないが、ステイルの吸っているのとは全然違う。
一方通行は気を落ち着けるように二、三吸うと、まだまだ吸えそうだなという貧乏臭い俺の感想など露ほども知ったこっちゃないように灰皿で捻り潰す。


43 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/08/03(水) 19:45:13.47 ID:H1odej8o0


「俺がよ、今更こンなこと聞ける義理じゃねェのは……まァ、それくらいはわかってンだよ」


捻り潰された煙草の吸殻を見下ろしながら、決まり悪そうに一方通行がぼそりと呟く。


「けどよ、だからって知らぬ存ぜぬって訳には……いかねェだろ。あいつ等の姉みてェなモンだしよ」


えっと……何ですか、このまるで離婚した妻が連れて行った娘に気まずくて会いにいけないけれど、心配で仕方が無いお父さんみたいな雰囲気。
けれど、一方通行自身はかなり真剣に悩んでいるようで、多分茶化すような一言を言った瞬間に黒翼が迫ってきそうだ。
というか、レストランだってことも気にせずに発砲しかねない。現に以前浜面が酔った勢いで打ち止めに抱きついた瞬間に発砲したっけ。
浜面よく助かったよな、マジで。



「今のところとりあえずは心配無用かな。今度も映画行くしさ」

「そうか……」



表情こそ変わらなかったものの、明らかに安心したような声。
改めて仕切りなおすように、二本目の煙草に火を点けると、さっきよりもずっとゆっくりと、優雅に吸い始める。
家計を圧迫すること、部屋に匂いが付くこと、そして健康の為美琴にはキツク釘を刺されてるけど、こういうのを見ると吸ってみたいな、という好奇心が沸いてしまう。
一本だけくれと頼んでみようかと迷っていると、一方通行の口元に意地の悪い笑みが浮かんでいた。


「何だよ」

「ま、オマエが側にいてやる限りはアイツは幸せだろォから、余計なお世話だったかもな」


甘い香のする煙を口の端から仄かに漂わせながら、喉を震わせるように笑う。
コイツは含みのある笑顔しか出来ないのだろうか。

44 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/08/03(水) 19:45:50.84 ID:H1odej8o0


「上条さん達のことはいいんですよ。そっちこそどうなんだよ、あの子とは」

「ま、オマエの言葉を借りるなら『今のところとりあえずは心配無用』って奴だな。ただし、俺との関係においてだがよ」

「っていうことは……」

「ああ……打ち止め達がイマイチ懐かねェ」

「ああ、それはだってお前……打ち止め達の気持ちになれば、仕方が無いっていうか」

「何で仕方が無ェンだよ。きっちり紹介してるし、真っ当な世界の女だし、問題ねェだろ」

「だから、それが一番……まぁ、いいや」



学園都市で一番頭がよくても朴念仁っていうのはありえるんだな。
と、一つ賢くなったところで、話題を打ち切る。徒労感を覚えるのが目に見えてる。


「あいつ等的には、寧ろ能力者でも何でもねェ女ってのが逆に引っ掛かるみてェなンだわ」

「番外個体の奴には妙な釘刺されちまったけどな。『ミサカ達にやったことも無かったことにして忘れちゃおうなんて思ってないよね?』ってよ」

「そんなことないだろ?」



答えずに、一方通行はゆっくりとした仕草で煙草を吸う。視線は斜め上、天井扇に向けられてる。



「アイツ等と離れて暮らすようになって、少し楽になってるのを感じる時が、無ェとは言えないな」



からんと、重なったグラスの氷が溶けて崩れる。



45 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/08/03(水) 19:49:11.77 ID:H1odej8o0



「たまにあるンだよ。背負っちまったモンの重さから目を背けたくなる時がよ。

 あのガキの言うとおりかもしれねェ……無かったことにして忘れちまいたいって、何処かで思ってるのかもなァ」


月日と共に、磨耗し不純物が蓄積しきったドロリとした血ののように濁った紅い瞳が本当は何処を向いているのはわからない。


「オマエは……無さそうだなァ、オマエは」



皮肉なのか、羨ましいのか、判別のしにくい声が乾いた音を立ててテーブルにい落ちた気がした。
俺は何て答えればいいのかわからなくて、グラスの溶けかけた氷を口に流し込んだ。
一方通行の吐き出す紫煙を目で追いながら、音を立てて噛み砕いた。

少し頭痛がしたのは、多分氷のせいだろう。






46 : ◆d85emWeMgI [saga]:2011/08/03(水) 19:49:47.53 ID:H1odej8o0
以上で投下終了です。
それではまた。 ノシ
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/08/03(水) 19:52:43.33 ID:TCZZcXHY0


おかしいな誰か忘れてるような……
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/03(水) 20:46:41.20 ID:FtiFiqLDO

なんか不思議な雰囲気だなこれ
誰か忘れられてるやつなんていたか?
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/08/03(水) 21:18:38.64 ID:bY5REFZh0
一方さんの彼女は佐天さんかな?
>>1
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/04(木) 21:41:01.96 ID:q88hUtB40
>>1乙 今作にも超絶期待!
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/05(金) 00:11:22.41 ID:5ytRp5M/o
お勧めスレ見てやっと酉に気付いたぜ
インさんが出てこないだけなのがこんなに怖いとは‥‥‥
てかゆるくてだらだらしたの書くって言ってたやないかい
>>49
吹寄を忘れてもらっちゃ困るぜ‥‥‥ないか
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/08/05(金) 09:54:12.58 ID:BdE/YQHU0
「同じ世界観」−「インさん」 ってことなのかな?
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/08/05(金) 09:55:45.84 ID:BdE/YQHU0
「同じ世界観」−「インさん」 ってことなのかな?
54 : ◆d85emWeMgI [sage]:2011/08/10(水) 08:31:34.51 ID:InxUyslIO
中途半端なモチベーションで中途半端な出来になりそうなので、一度打ち切りにします。期待してくれている方がいらしたら誠に申し訳ありません。m(_ _)m
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/10(水) 09:16:38.96 ID:7oL0VUPWo
ざんねん
依頼忘れずにな
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/10(水) 10:36:36.58 ID:bZiemM1IO
(´・ω・`)
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/10(水) 17:58:32.74 ID:GGkdapaJo
待ってるよ
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/08/10(水) 20:49:20.05 ID:cG5845cVo
ありゃりゃ。三回目の投下でも迷ってる風だったし仕方ないかなー。
何か書きたくなったらまた読ませてね。黒子隊員とか。
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/10(水) 21:51:34.82 ID:K/eFbikqo
Oh…
次回作期待してますぜ
60 : ◆d85emWeMgI [sage]:2011/08/11(木) 00:16:16.81 ID:VMUVgdxX0

もうホントにグダグダですみません。
電磁通行終わってで思っていた以上に気が抜けていたようです。
もう、シリアスは当分無理です。
嘘なしで、次回スレを立てることがあったら頭空っぽな話にします。
モアイちゃんが一方さんをクンカクンカしたり、一方さんがモアイちゃんをぺろぺろしたり、
そういうありふれた日常生活を繰り広げる、極々普通の探偵モノとかでしょうか。

そういうわけで、此度のスレでは戦略的撤退をさせていただきます。 ノシ
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/11(木) 10:30:26.39 ID:W5PrBKS3o
頭空っぽのほうがゆめ詰め込めるさ

ノシ
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2011/08/11(木) 15:05:22.31 ID:qpn17LSio
おつ
黒夜ちゃんハブらないであげてー
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