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まどか「バビル2世?」 -
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1 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 15:43:32.36 ID:DNOa7QlF0
こちらで投稿し直します
雑に絵にするとだいたいこんな感じの内容になります↓
http://up3.viploader.net/anime/src/vlanime055671.jpg
バビル7割 ジャイアントロボ2割 まどマギ1割ぐらいの配分
バビル2世を知らない方は↓ぐらいの認識でお願いします
バビル2世:正義?の最強の超能力少年。とにかく強い。冷徹無慈悲にして万事周到。
目的のためなら民間人の犠牲も何とも思わない。敵対したものは皆死ぬ。
異星人の末裔で、強力な三つのしもべを持っている。空条承太郎の元ネタという噂も。
ヨミ様 :悪?の帝王。バビル2世の宿敵で同等の力を持つ。どうも人類愛豊からしく、また部下思い。
宿敵に止めを刺す絶好のチャンスより、助けを求める部下の命を優先するほど。
(その部下を人質にとったのはバビル2世)
1.5 :
荒巻@管理人★
(お知らせ)
[
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]: ID:???
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■ 萌竜会 ■ @ 2025/04/02(水) 21:48:47.60 ID:N/ZU8bZIo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1743598126/
旅にでんちう @ 2025/04/02(水) 06:55:19.04 ID:YEmuqsNkO
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1743544519/
■ 萌竜会 ■ @ 2025/04/01(火) 21:19:02.52 ID:eHLSpy5Lo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1743509941/
(・ω・) @ 2025/04/01(火) 06:02:48.47 ID:9EGjLzPQO
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1743454968/
【遊戯王SS】デスガイド「A.うれしいから(使われるとうれしくないあたりまえだろ)」 @ 2025/04/01(火) 02:15:03.50 ID:ao/gLU/u0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1743441302/
【俺レベ】水篠「S級とS級の子供は最強のハンターになると思うんですよ」 @ 2025/04/01(火) 00:45:51.96 ID:aUIP6KnqO
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1743435951/
〜魔王城〜 男「死にたくない……。せや、命乞いしたろ」 @ 2025/03/31(月) 03:45:31.74 ID:MXp56eHz0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1743360331/
HTML化依頼スレッド Part56 @ 2025/03/29(土) 04:59:47.67 ID:oC8IgT4HO
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1743191987/
2 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 15:44:09.20 ID:DNOa7QlF0
中東の砂漠、その奥深くに静かにそびえたつ巨塔―――バベルの塔―――
砂の嵐に隠され、コンピューターに護られたその塔に、一人の少年がいた。
―――その名はバビル2世―――
『バビル2世に報告。過去十年の統計と比較したところ、特別な異常は見られませんでした』
バビル「そうか……たしかに何か嫌な予感がしたんだが……よし、もう一度ここ最近のデータを挙げてくれ」
『了解しました。……行方不明者数、自殺者数共に若干の増大は見られるものの、これは誤差の範囲内です』
バビル「うぅむ。では年齢と地域ごとにデータをバラしてもう一度解析にかけよう」
『……行方不明者の内、十代女性の数が比較的多く、地域に限定すると日本の一部地域に数が集中しています』
『しかし、それも些細な差異であるといえます。他の項目について分析を続行しますか?』
バビル「いや、その地域について分析を続けてくれ。……小さな異変とは言っても気にはなる……」
バビル「ふむ、日本か。因縁浅からぬだな………………ロデム!」
ロデム『……ハイ、こちらに』
3 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 15:44:48.98 ID:DNOa7QlF0
バビル2世と呼ばれた少年の傍らに姿を現した黒豹―――ロデム。
その正体はいかなるものにも変形することができる不定形生物。
バビル2世の忠実なるしもべの一つである。
バビル「日本に向かうぞ。ついて来てくれ」
ロデム『ご主人様自ら出向かれるということは、やはり、『あの男』が?』
バビル「いや、そうじゃないんだ。ただ、言い知れぬ悪い予感が、僕に動けと告げているんだ」
ロデム『なんであれ、ワタシはあなたにどこまでもお供いたします』
バビル「よし、コンピューター、ロプロスの具合はどうか」
『修復も完了し、状態は万全と言えます。飛行はもちろん、戦闘にも問題はないでしょう』
バビル「どうも嫌な予感がしてならない。気を引き締めていこう」
4 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 15:45:25.98 ID:DNOa7QlF0
―――日本 見滝ヶ原
バビル「いや、日本もこの40年で随分様変わりしたもんだ。僕が暮らしていたころとは何もかもが違う……」
バビル「さて、調査と言っても何から手を付けたものか」
バビル「……人が何かに飲み込まれるようなイメージと世界中の命が吸い上げられるようなイメージ……」
バビル「この感覚が正しければ、行方不明者が集中している異変と僕の予感には何か関係があるはずだ」
何気なく辺りを見回したバビル2世の目に映ったのは、ビルの屋上からフラフラと身を投げ出そうとしている人の姿であった。
バビル「むっ、やめんか!!」
バビル2世の制止もむなしく地面へとまっさかさまに落ちていく人の影。
周囲の人々もその様子に目を覆う。誰しもが最悪の事態を思い浮かべていた。
しかし、寸でのところでバビル2世によってその体がしっかりと受け止められる。
一瞬にして風のように素早く動ける俊敏性。これもバビル2世の持つ特殊な能力の一つである。
バビル「ふぅ、間一髪だな。しかし……」
「ウー……」
バビル「眼が虚ろで意識も曖昧だ。頭の中も霧がかかったようになっている。催眠術にでもかかったか?」
5 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 15:46:18.18 ID:DNOa7QlF0
バビル「でもそれほど深いものじゃない。しばらくもすれば目を覚ますはずだ……」
???「……………………」
バビル「うん? なにか視線を感じる。この人との事と関係があるのか?」
???「彼はやはり…………なるほど……」
バビル「あれか。白いネコかウサギのような生き物。見たことがないな。改造生物か?」
バビル「むっ、走り出したぞ。すぐに捕まえてみるか……いや、しばらく追って様子を見よう」
バビル2世は白い生き物を追って走り出す。しかし、あえて全速力は出さない。
バビル「……あいつ、方向を変えるときにわざわざ立ち止まっているな。どこかへ誘い込もうというのか?」
しかし白い生き物は思いのほか素早い。
バビル「いかん……この路地に入ったはずなんだが……僕が見失うとは……」
バビル「ややっ、どうもあたりの様子がおかしいぞ……」
バビル2世の足もとから空間が歪んでいく。歪みは瞬く間に広がり、あたりを異様な景色で包み込む。
6 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 15:46:53.08 ID:DNOa7QlF0
バビル「幻術か? しかしそれにしてははっきりとしている……それに、ここは悪意や憎悪に満ちている……」
バビル「とりあえず先へ進んでみよう……」
バビル2世は注意深く異空間の奥へと歩みを進めていく。広い場所に出るとそこにはうごめく異形の姿があった。
バビル「バラの化け物か?……っと、あぶない。敵意はむき出しのようだな」
長く伸ばしたツタのようなもので打ち据えられそうになるが、持ち前の反射神経で軽々これをかわす。
バビル「これを倒さんことにはここから出られそうにないな……えいっ!」
バビル「殴ったぐらいじゃ堪えんか……仕方がない、エネルギー衝撃波を浴びてもらうぞ」
襲い来るツタを手刀で切って落とし、時には交わし、隙を狙って異形の懐に飛び込む。
異形に組み付いたままのバビル2世の体が強烈な光を放つ。
エネルギー衝撃波。バビル2世の持つエネルギーを直接相手に流し込む最大最強の攻撃手段である。
異形は苦しむように暴れまわり、終いにはもんどり打った。
バビル「挨拶程度に食らわしてやったが、さすがにこれには参るようだな。しかしなかなか骨が折れるぞ」
バビル「えらく丈夫だ。こちらが参るのが先か、あちらが参るのが先か……むっ、空間が元に戻っていく」
7 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 15:48:03.04 ID:DNOa7QlF0
バビル「ふぅ、逃げてくれたということか。さて、これで異変が起きていることは明らかになったな」
バビル「そうすると先ほどの白い生き物、あれがカギを握っているはずだ。まだこのあたりにいるなら……」
???「(ここはひとまず撤退だ)」
バビル「そこっ逃げるか!!」
物陰からこちらの様子を伺う白い生き物の姿を認めるや否や、バビル2世は足元に転がる小石を拾い、これを指ではじく。
小石は弾丸のように勢いよく白い生き物の額をめがけて飛んだ。
身をひるがえすも間に合わず、小石の直撃を受けた生き物は幾度か手足を痙攣させた後、力なく地面に伏した。
バビル「いかん、殺してしまったか……」
まるでウサギ猟の獲物のようにひょいと足をつかんで持ち上げると、しばしそれを見つめて思案する。
バビル「うぅむ、生き物のようでもあるが機械のようでもある」
バビル「さっそく塔に持ち帰ってバラバラにして調べてみよう」
バビル「ロデムはいるか!」
ロデム『ハイ、こちらに異変は見当たりませんでした』
バビル「そうか、僕の方は収穫アリだ。いったん戻ろう」
8 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 15:49:33.17 ID:DNOa7QlF0
路地から踵を返そうとしたとき、バビル2世は不意な声に呼び止められる。
???「待ちなさい!! キュゥべえをどうしようというの!!」
歳の程は十四五といったところの少女が、制服姿のまま手に持った宝石から銃を出し、バビル2世を正確に狙っていた。
???「(何者なの……キュゥべえが見えているのだから……魔法少女、いえ、魔法少年??)」
バビル「ロデム、先に戻ってコイツをロプロスに届けろ」
ロデムは一瞬スライムのような不定形に戻り、白い生き物を包み込むと再び豹の姿に戻り、素早い動きでその場から姿を消した。
???「なっ!? (あの黒い豹……使い魔!? なら目の前にいるのは人の形をした魔女ということも)」
バビル「キュゥべえとはあの生き物の事か。使い魔、それに魔女とはなんだ?」
???「えっ……(まさか、私の心を読んで!?)」
常人には至ることのない発想。特異な能力を持ち、幾度も戦いを経験し、異常な世界に身を置く彼女だからこそ思い至った正しい答え。
あるいは、日ごろから様々な妄想で学校での時間を潰している彼女だからこそ至る答えか。
9 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 15:51:32.51 ID:DNOa7QlF0
???「(危険すぎる……得体のしれないこの感じ、この人は危険よ)」
???「(なによりこのままじゃキュゥべえが危ない。私のたった一人の大切な友達なのに……)」
少女の脳裏に我が家での白い生き物との楽しい日々の記憶が走る。
???「キュゥべえを返しなさい……(相手は人間かもしれない。それでも私は引き金を引けるのかしら)」
バビル「僕に敵意を持つのはよせ。死ぬことになるぞ」
『死』というワードを合図に少女は引き金を引く。が彼女の正確な狙いとは裏腹に弾丸は標的の足もとに外れる。
それもそのはず、引き金を引く寸前のところで彼女は気を失い、力なく地面に倒れ込んでしまっていたのだ。
バビル「僕のテレキネシスを脳に受けても生きている。魔法少女とやらの丈夫さには感謝しなくちゃな」
テレキネシス、念力、精神動力。ビルすら軽々と持ち上げるその力もバビル2世の誇る超能力の一つである。
バビル2世は少女の体を軽々持ち上げ肩に担ぐと、そのまま路地を後にした。
この少女の体重はとても軽いのだ。
10 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 15:53:06.42 ID:DNOa7QlF0
―――マミハウス
バビル「どういうわけか自分の家を思い浮かべていてくれて助かった。名は巴マミというのか」
玄関の鍵を内側から念力で強引に開けると、そのまま少女の家にずかずかと入っていくバビル2世。
リビングに気絶した少女を横たわらせると、その姿を見ながらしばし思案する。
バビル「さて、話を聞くにしても心を読むにしても目を覚ましてもらうわけだが……暴れられてもかなわんな」
ロデム『ただ今戻りました』
バビル「いいところに帰ってきた。首尾はどうか」
ロデム『今頃ロプロスも塔に着いている頃かと』
バビル「そうか、ではそこな少女を拘束してくれ」
どこからともなく現れたロデムは、主人の命令に従い不定形な姿を取り少女の体に絡みつく。
バビル2世が少女に気合を入れると、彼女はふらふらと頭を二三度振ってからはっきりとした意識を取り戻した。
マミ「くっ……ここは……私の家……」
11 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 15:55:00.71 ID:DNOa7QlF0
バビル2世が少女をわざわざ家に送り届けたのには訳がある。
そちらのテリトリーであるところをこちらは押さえているのだぞ、という牽制の効果が大きい。
交渉を優位にすすめるための策であった。
マミ「私を一体どうしようっていうの!! キュゥべえはどこなの!!」
喚き散らす少女は動揺しているように見えて、その実したたかだった。
後ろ手に指輪を宝石の形に変えてなにやら操作する。
マミ「(……ソウルジェムには反応がない。魔女じゃない、魔法少女でもない……なら一体……)」
バビル「ふむ、そのソウルジェムとはなんだ」
マミ「っ……(やっぱり心を読まれてる……いけない、この底の知れない感じは……)」
マミ「(相手の正体も目的もわからない。でもこれ以上心を読まれては取り返しのつかないことになる気がする……)」
マミ「すぅ…………も〜♪ なにも〜♪ こわ〜くな〜い〜こわくはな〜い〜♪」
唐突に気でもおかしくなったかのように高らかに歌いだす少女。しかしとっさの判断としては冷静でかつ正確。
普通の人間が読心能力に対抗するのには、何か別の事に意識を集中させることが一番妥当だ。
中でも思考を言葉で埋め尽くす歌はその策としては最良。
まるで日ごろから超能力者と戦うことを妄想、もとい想定しているかのような迅速で確実な対処であった。
12 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(群馬県)
[sage]:2011/07/28(木) 15:55:09.29 ID:VwF/CpQVo
この移動した対応はとても好感がもてるし支持するよ
13 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 15:55:52.50 ID:DNOa7QlF0
しかし今回ばかりは相手が悪い。
バビル2世が読み取るのは心の表層部分だけではない。
バビル「契約、奇跡、ソウルジェム、グリーフシード、魔女、結界、使い魔、魔女の口づけ……なるほど」
マミ「うそっ、私は何も考えていないわ!……考えていないはず……」
マミ「(キュゥべえ、どこにいるの……無事なら返事をして……キュゥべえ!!)」
次はテレパシーに全力を注ぎ、頭の中を心の声で満たす。これこそ読心能力を完全に遮断する方法である。
バビル「テレパシーが使えるのか。やっかいだな。なら直接『話を聞かせてもらおう』」
マミ「話すことなんてないわ! 早くキュゥべえを返しなさい!!」
バビル「催眠術にも耐性があるのか。ますますやっかいだ。しかたがない、ロデム、拘束を解け」
するするとロデムが少女の体から離れていき、また豹の姿に戻る。
マミ「どういうつもり」
バビル「おとなしくしていれば君に危害を加えるつもりはない。僕は話を聞かせてほしいだけだ」
マミ「危害ならもう加えたじゃない!!」
14 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 15:56:35.95 ID:DNOa7QlF0
バビル「…………君はあの生き物を取り戻したい。僕は魔女や魔法少女について知りたい。利害の一致だよ」
マミ「違うでしょ!!」
バビル「なら言い換えよう。あの生き物は人質だと思ってもらっていい」
マミ「くっ、わかったわ……」
このバビル2世、人質を返すとは一言も言っていない。
バビル「よろしい。君の心を読んで大体のことはわかった。でも肝心なところがわからない」
バビル「ソウルジェムが濁りきるとどうなるんだ? 魔女とやらは一体どこから来るんだ?」
マミ「それは…………私にも」
バビル「どうも本当に知らないようだ」
マミ「………………」
一瞬の沈黙を破るように、バベルの塔に連れていかれたはずの白い生き物が窓をすり抜け部屋に入ってくる。
QB「おや、マミ、お客さんかい? めずらしいこともあるもんだね」
マミ「キ、キュゥべえ!? 無事だったの……」
15 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 15:57:45.34 ID:DNOa7QlF0
QB「無事?」
マミ「えぇ、この人たちにひどいことされなかった??」
QB「あぁ、『僕は』大丈夫だよ(先ほどの端末のロストのことか?)」
心からの安堵でマミはバビル2世への警戒を弱める。キュゥべえが解放されたと思ったようだ。
バビル「…………ふむ……おかしいな、目印に額に大きな傷をつけておいたんだが」
QB「大丈夫だよ。傷なら他の魔法少女に治してもらえるからね」
マミ「他の? あの子のことかしら……」
バビル「なるほど、知能も高い。それにウソも付けるようだ。えいっ!!」
バビル2世はキュゥべえの首に軽く手刀を加えると、倒れた体をぽいと放り投げる。
それをロデムが口でキャッチしそのまま飲み込む。
バビル「こいつは生け捕りだ。さぁ帰るぞ」
16 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 15:58:27.73 ID:DNOa7QlF0
マミ「なっ!! まちなさ……」
バビル「とうっ」
マミは腹に重い拳の一撃を食らと、そのまま力なく前のめりに崩れてしまう。
バビル「さすがに頑丈だな。[
ピーーー
]気でかからんと気絶もしない」
ロデム『ご主人様にしては手ぬるいですね。以前なら邪魔するものは有無も言わせず始末していたでしょうに』
バビル「いや、なに、調べたいことがあるからな。まだ数を減らしてもらっては困る」
―――バベルの塔 コンピューター制御室
バビル「今言ったキーワードを加えて状況を分析してみてくれ」
バビル「それと、そのあいだに送っておいたものについて報告も頼む」
『……送られたサンプルを分解してみたところ、コレは生物でないことがわかりました』
『昔風に言うと改造生物。今風に言えば生体端末です』
バビル「なるほど。この四十年で人類も進歩したとはいえ、果たしてそこまで高度なものがつくれるかどうか」
17 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 15:59:29.69 ID:DNOa7QlF0
『これは地球外の技術によるものだと考えられます』
バビル「やはりな」
『持ち帰ったデータと統合すると、複数の端末が情報を送り合い、定期的に同期し合っているようです』
『また、体の組成そのものが情報記憶素子であるらしく、先ほどの残骸を生きた端末に与えたところ』
『コレを食ベ始め、その情報を取り込んでいました』
バビル「道理でアレは僕を知らなかったわけだ」
バビル「それで、その端末とやらが人間の少女の死体を改造して、兵器人間にしているのか」
『端的に言えば、そうです。しかし今風に言うと……』
バビル「それより、その端末をここに連れてきてくれ」
キュゥべえが入った透明なカプセルのようなものが地面からせりあがる。
QB「…………」
バビル「心が読めないから直接聞くぞ。なぜ僕を罠にかけようとした」
QB「一番初めの質問が、自分に手向かった理由とはね。まぁいいだろう。この状況だ、質問には答えてあげよう」
QB「日本に降り立つ君と怪鳥を目撃した僕は、君が五千年前に地球に漂流した宇宙人の末裔であることがすぐにわかった」
18 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 16:00:15.94 ID:DNOa7QlF0
QB「昔は随分とご活躍だったじゃないか。アレは目立ちすぎるよ」
QB「それにね、極稀にいるんだよ。僕たちとの契約を必要とせずに妙な力を使う人間がね」
QB「そう、君のように半端に力のあるものは僕たちの計画の障害になる」
QB「僕たちの計画は綿密に計算しつくされたものだ。些細なイレギュラーの存在も許されない」
バビル「だから魔女と戦わせて僕を始末しようとしたのか。ではその計画とはなんだ」
バビル「あの少女もお前たちがなぜ魔法少女を作っているのか知りはしなかったぞ」
QB「さぁ、君はどう思うんだい?」
バビル「彼女が否定しながらも心の奥にしまいこんでいた考え、『ソウルジェムはいずれグリーフシードになる』」
バビル「これがカギを握っているんじゃないか?」
QB「さすがはマミだ。長い経験からすでにそこに思い至っていたようだね」
QB「とはいっても彼女の精神力では、それを認めても受け止めることはできないだろうけど」
バビル「ふむ、精神力か……なるほど……お前たちは魔法少女ではなく魔女を作っていたのだな」
QB「おや、ずいぶんと頭の回転が速いね。そう、彼女たちの精神性が正から負へと転化するとき、魔女が生まれる」
バビル「ソウルジェムの発生の仕方とグリーフシードの発生の仕方とを比べれば、どちらを量産したいのかはすぐにわかることだ」
バビル「では、なんのために魔女を作るんだ」
19 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 16:01:02.19 ID:DNOa7QlF0
QB「魔女が生まれるとき、僕たちは膨大なエネルギーを回収することができる」
QB「先細っていく宇宙全体のエネルギー問題を解決するためには、そうしたエントロピーを凌駕したエネルギーが必要なんだ」
QB「たしかに、彼女たちが魔女となり、その生涯を終えるというのは人間からすれば悲劇的に思えるかもしれない」
QB「でも、宇宙には数えきれないほどいくつもの命がひしめきあっている」
QB「そのすべての未来を救うためには小さな犠牲だとは思わないかい?」
QB「宇宙人の末裔である君にならわかるだろう?」
バビル「なるほど、たしかに一理ある。しかしその方法で本当にエントロピーを凌駕しているんだろうか」
QB「どういうことだい?」
バビル「いや、それについてはまだ調べが足りない」
ある程度話の区切りがついたところで、キュゥべえを捕えたカプセルが再びどこかへと送られる。
ロデム『やけにあっさりと口を割りますね』
バビル「大方僕からも情報を引き出したいだけさ。僕の知能とか、力とか、そういったものを測っているんだろう」
バビル「気の許せん相手だ。ウソそのものはつけないようだがごまかすことはできるようだし」
バビル「うん、もう一度日本に行ってみる必要があるな。なぜだかあそこが一番状況が集中している」
20 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 16:01:31.65 ID:DNOa7QlF0
バビル「それについても調べなくてはならないか」
バビル「契約宇宙人と敵対するにしても協力するにしても、まだまだ情報が足りない」
―――日本 見滝ヶ原 ショッピングセンター地下
???「(くっ……逃がさない。今日ここでヤツを始末してしまえばまどかは巴マミと接触しなくなるはず……)」
???「(また失敗すれば巴マミとの関係は悪化して、いつものパターンになってしまう……)」
???「(手負いだからきっとそう遠くへは行っていないはず……)」
狩人の目をした少女が息も切らせず何かを探して暗い地下通路を駆けていた。
が、すぐにその足を止めることとなる。
???「(ヤツがいる。そして傍に学生服の男の……ヤツの事が見つかった?……)」
???「(……これは状況が変わってきたわ……うまく立ち回らないと……)」
???「(……ちがう……そもそもどうしてヤツが普通の人間に見つかるの!?…………)」
バビル「傷を受けているな。これは銃創か。となるとすでに契約宇宙人と敵対する者がいるということか」
バビル「わざわざ銃を使うのだから相手は人間か? これは大切なことだ。ロデム、しっかり記録しておけ」
21 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 16:02:03.08 ID:DNOa7QlF0
少女は状況を把握しきれず、ただ息を殺して男の様子を伺っていた。
暗くて初めは分からなかったが、目を凝らして見ると少年の傍らには黒い豹が寄り添っているのがわかる。
そして、そこへ二つのかしましい声が近づいてくる。
???「ちょ、ちょっとまどか! 一体どうしたって言うのよ。ひっぱらないでって」
???「こっちこっち、さやかちゃん急いで、って……あれ?」
まどかと呼ばれた少女は、先ほどまで探していた声の主よりこちらの方を無表情でじっと見つめてくる少年に気を取られた。
しかし、しばらくしてからその傍らで傷つき横たわる何かに気付き、その様子に慌てる。
さや「うわっ、なにこれ、ぬいぐるみ?? 生きてるの?」
まど「たいへん! 怪我してる……あ、あの、え、えと……」
こちらをじっと見つめる少年は自分よりいくらか年上に見え、手を借りようと声をかけようとするも、ついためらってしまう。
バビル「ふむ、二人ともテレパシーの素養があるな。魔法少女のタマゴとはこういうことか」
まど「ふぇ?」
さや「(こ、この人やばいかも)」
22 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 16:02:53.58 ID:DNOa7QlF0
じっと状況を伺っていた少女も、まどかと呼ばれた少女が現れたことでで焦りを見せ、
ついに堪え切れずに飛び出してしまう。
???「だめよまどか! そいつらから離れて!」
まど「ほ、ほむらちゃん!?」
マミ「キュゥべえ! 大丈夫!?」
さらに別の方角からもう一人の少女が走り来る。
一人の超能力者、不定形生物、傷ついた宇宙人、二人の人間、二人の魔法少女。状況は複雑を極めた。
マミ「あ、あの男……またキュゥべえをひどい目に!」
マミはいつぞやの失敗を反省し、躊躇うことなくバビル2世の頭に弾丸を見舞う。
マミはすでに魔法少女の姿になっていた。
彼女はその豊富な戦闘経験から、バビル2世の本質的な異質さに気づき、打倒すべき敵と断じることができたのだ。
この判断は後に、ここにいるすべての人間が正しいものだったと思い知らされることとなる。
弾丸は、バビル2世の眉間すれすれで止まって落ちる。はずだった。
23 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 16:03:54.25 ID:DNOa7QlF0
ここでバビル2世は大きなミスを犯す。迫りくる弾丸を人間が使う普通の弾丸とみて念力をかけたのだ。
しかし実際は魔翌力で強化された弾丸、魔弾。9ミリやそこらのものとはわけが違う。
バビル2世は、止めきるには間に合わないと、すぐに軌道をそらす方へと念力をかけなおすが時すでに遅く。
魔弾はバビル2世の頭蓋を斜めに貫いた。
血しぶきが辺りに飛び散る。
まど「きゃぁっ!!!」
二人の人間の少女、まどかとさやかは目の前で繰り広げられた惨劇に体を震わせることしかできなかった。
もう一人の魔法少女、ほむらも状況を測りかねている。
既にこの超能力者と対峙したことのあるマミは、本能的にバビル2世がこの程度は死なないということを感じており、
ライフルを持ち替え、続いて何発もの銃弾を浴びせる。
しかし、広い布のように形を変えたロデムが盾となり、マミの弾丸を悉く防いでしまう。
マミ「またあの使い魔……あなたも魔法少女なのでしょう!! 手を貸して!!」
ほむ「えっ!?」
柄になく唖然としていたほむらは、マミからしばらく聞いたことがなかった類の台詞を耳にし正気に戻る。
依然として状況は不明瞭なままだったが、まどかが危ない、ということだけははっきりとしていた。
マミとちょうど挟み撃ちにするような位置取りだったので、ほむらからは無防備なバビル2世の姿が見えていた。
24 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 16:05:23.49 ID:DNOa7QlF0
されど状況はさらに急変する。
地面が揺らぎ、歪み、それが広がる。魔女の結界である。
マミ「こんなときに……」
QB「(これは仕込みが裏目に出たな……)」
一瞬銃撃がやんだことで、ロデムはバビル2世全身を包み込むような形に変化し、攻撃に備える。
が、主の声を受けて再び豹の姿へ戻った。
バビル「大丈夫だ。遊んでいる場合でもない。行くぞ」
ふらふらとよろめきながらもしっかりと二の足で立つ少年。
その頭には大穴があき血が噴き出していたが、みるみるうちに傷はふさがり、組織は再生されていく。
グロテスクとしか言いようのない光景であった。
魔女の結界をよそに、一同はバビル2世の蘇生の様子に目を奪われる。
さや「ば、化け物……」
ほむ「人間じゃ、ない」
まど「ひっ……」
マミ「…………」
25 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 16:06:02.98 ID:DNOa7QlF0
いくつもの世界を経験しているほむらも、魔女のようにメルヘンでもファンタジーでもない目の前の出来事に戦慄する。
頭を撃ち抜かれたはずの人間が、すぐに起き上がり、眼にもとまらぬ速さで結界の奥へと跳んでいったのだ。
それよりも恐ろしかったのは、一瞬こちらを見据えた冷たい目。
何もかもを見透かすようでいて、諦めの色さえ見えるその目に、一同は恐怖と嫌悪を覚えた。
その目が特に、まどかの事をじっと見つめていたのをほむらは見逃さなかった。
ほむ「今のは一体……」
マミ「あっちは手負い。それよりも今は魔女よ。関係のない子たちもいるし。手伝ってくれるわね?」
ほむ「ええ……」
マミ「キュゥべえ、少し我慢して待っててね」
一方、バビル2世はぴょんぴょんと元気よく飛び跳ね、既に結界の奥、魔女の待つ広間へと進んでいた。
バビル「こうして見るに、前のやつと同じだな。それか魔女とはどれも同じ様なものなのか、あるいは……」
魔女はツタの鞭でバビル2世を迎撃するも、攻撃はすべてかわされ次第に距離を詰められていく。
バビル「どれ、今一度魔女がどの程度のものかしっかり見極めておく必要がある」
26 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 16:06:56.03 ID:DNOa7QlF0
手刀でツタを斬ることはできても、肝心の本体をどれだけ蹴ろうが殴ろうが全く手ごたえがない。
鋼鉄をアメのようにひきちぎる怪力をもってしてもコレである。
テレキネシスで体の内部から破壊しようと透視をするも、中身はがらんどう。
今度はそのまま地面や壁にぶつけてやれと、念力で持ち上げそこらに投げつけるもこれといった効果はない。
バビル「頑丈だなぁ。うぅむ、どうしたものか。なら火はどうだ!」
バビル2世の体が紅い炎に包まれ、炎はそのまま大きく広がる。周囲に1000度をゆうに超える熱風がもれ出る。
パイロキネシス、発火能力。全身に高温の炎をまとうこの能力もバビル2世の強さの一つである。
火が地面に燃え広がり、使い魔を次々と焼き尽くしていくが、魔女は健在。
その身を高熱の炎に包まれているにもかかわらず一向に参った様子を見せない。
バビル「これはいかん。どうもエネルギー衝撃波しか食らわんようだ…………うん?」
繰り広げられるは灼熱地獄。そこに遅れて魔法少女達も到着する。
ほむ「なに、この熱さ……」
マミ「ティロ・フィナーレ!!」
ほむ「えっ!?」
27 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 16:07:27.58 ID:DNOa7QlF0
マミは早くも自身最大の火力を放ち、いとも簡単に魔女を消し飛ばす。
魔女に組み付くバビル2世ごと狙った砲撃であったが、これは一瞬早くバビル2世に気取られてしまっていた。
魔女を仕留め、結界が崩壊し、辺りに元の景色が戻っていった頃には、すでにそこには超能力少年の姿はなかった。
マミ「逃がした、と言いたいところだけど、逃げてくれた様ね…………」
マミ「キュゥべえ! いま助けるからね!!」
マミは来た道を少し引き返し、相棒の元へ向かう。
マミがキュゥべえを治療している間、ほむらは状況を思い直して考えを巡らす。
ほむ「(結局、あの男はいったい……わからない……)」
ほむ「(けれど、巴マミがどうしてあそこまで敵対するのかは分かった気がする)」
ほむ「(戦いに身を置くものならわかる。あの得体の知れない恐怖。アレは人間じゃない……)」
ほむ「(それだけじゃない。アレは私たちの事も人間とは思っていない……)」
ほむ「(やらなければいつかこちらがやられる。そう思わせる何かを、アレは持っている……)」
マミ「ありがとう。あなたがいてくれたおかげであの男も逃げたのかもしれない。助かったわ」
ほむ「そう……」
28 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 16:08:15.92 ID:DNOa7QlF0
さやかと抱き合い小さく丸まりながら体を震わせていたまどかに、そっと寄り添うほむら。
まどかの髪にべたりとついていたバビル2世の血を、頭をなでるように優しく拭ってやる。
ほむ「もう大丈夫……大丈夫だから……」
まど「うんっ…………うんっ…………」
マミ「とりあえずこの子たちを家まで送り届けましょうか。あなたにはそのあと少し付き合って欲しいのだけれど」
ほむ「ええ」
QB「(これじゃあ今日は契約どころではないね……バビル2世……アレは一体何を考えている……)」
―――街角
バビル「見たかロデム。魔女とやらはそうとう厄介だ。魔法少女でなければ相手は難しそうだな」
バビル「それにあの魔法少女の力もすごい。正直驚いた。瞬間の力では僕なんかよりよっぽど上かも知らん」
バビル「はやく詳しい分析が見たい」
ロデム「それより驚いたのはあなたのことです」
ロデムは街中で騒ぎにならないよう、いかにもエコバッグを持っていそうな西洋人男性の姿を取っていた。さすがにこの姿で「ご主人様」は気味が悪い。
29 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 16:08:51.62 ID:DNOa7QlF0
ロデム「以前ならあれほどのダメージを受ければ、すぐにも戦闘不能になってしまっていたでしょうに」
バビル「ああ。ヨミとの戦いの中で急速に僕が力を付けたように、この40年で僕の力も上がっているのかもしれない」
ロデム「そうですね、今ならアメリカ軍とだって独りで渡り合えそうです」
バビル「うん? まぁいい。僕は一度塔に戻るが、ロデム、お前には仕事がある。しばらくここに残ってくれ」
―――まどハウス
マミ「それじゃあえーと、鹿目さん? 今日は大変な目にあったわね。ゆっくり休んでちょうだい」
マミ「私達はこの子を送っていくから」
さや「あっ。あたしは別に大丈夫ですよ?」
マミ「まぁそういわずに」
玄関の前でなにやら恥ずかしそうにもじもじとしているまどか。なにかを言いよどむ。
まど「えと……その……」
ほむ「どうしたの、まどか」
30 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 16:09:17.45 ID:DNOa7QlF0
まど「ほむらちゃんって強いんだよね?……あんなのがまた来ても、やっつけられるんだよね?」
ほむ「そうね。それが仕事だから」
まど「だったら……その……できればでいいんだけど……今日はウチに泊まっていってくれないかな」
ほむ「…………(へっ!?)」
まど「まだ会って間もないのにこんなことお願いするの、非常識だとは思うんだけどね……私怖くって……」
まど「やっぱり……迷惑かな?」
上目づかいでほむらの顔をのぞきこむまどか。ほむらは一瞬くるりと身を翻し、まどかに背を向けぐっと拳を握る。
ほむ「……………………YES!!」
まど「え?」
ほむ「なんでもないわ。あなたがそこまでいうのなら仕方がないわね」
ほむ「巴マミ、あなたとの話はまた明日、ということにさせてもらえないかしら」
マミ「ふふっ、そうしましょうか。じゃあ私たちは行くわね。えーと」
さや「さやかです。美樹さやか」
31 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 16:09:51.88 ID:DNOa7QlF0
―――バベルの塔 コンピューター制御室
バビル「魔法少女と魔女そのものについては大方出揃ったな。コンピューター、どうみる」
バビル「あの異次元空間も気になる。僕は一度、異次元から生き物を呼び出す能力を持った老人と戦ったことがある」
バビル「そういった類か?」
『今までのデータからすると、アレはテクノロジーによって作られた異空間であると思われます』
『それから考えるに、あの宇宙人の技術は我々のものより遥かに進んだものであることが伺えます』
バビル「となると、少しでもみくびれば軽く足をすくわれてしまうだろうな」
バビル「あの生き物が普通の人間には見えないのも、存在を無視させる弱い催眠波を常に出し続けているからだな」
バビル「魔法少女やその候補は、その素養から無意識に催眠波を無効化しているというわけか。よく出来ている」
バビル「では魔法少女や魔女についてはどうだ」
『サンプル巴マミのデータを標準の魔法少女の能力だとすれば、その脅威レベルは非常に高いと言えます』
『威力、手数、応用性、どれもバビル2世の力を超えています』
バビル「それは僕も感じたよ。こちらも一杯食わされた。あの魔女も一撃だったしな」
『魔法少女は対魔女戦闘に特化して作られているようです』
バビル「すると、契約宇宙人と敵対するにしても、魔女も魔法少女も僕が全て始末するというのは無理そうだな」
32 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 16:10:24.71 ID:DNOa7QlF0
バビル「魔法少女の強さについては巴マミを最低基準に考えておこう。用心に越したことはない」
バビル「さて、ロデムの報告を待つ間、僕は僕で契約宇宙人が信頼に足るか見極めてやろう」
―――後日 マミハウス
マミ「……ということなのよ。あなたたちには怖い思いをさせたわね」
さや「魔法少女に魔女。まるで信じらんないって言いたいところだけど……あれをみちゃったらねぇ……」
QB「勿論君たち二人にもその素質がある。僕と契約してくれたらなんでもひとつ願いを叶えてあげられるよ?」
さや「いやいや、どー考えてもイヤでしょ」
まど「うん……」
まどかはほむらのすぐそばにちょこんと座って、ほむらの服の裾をずっとつかんだままでいる。
マミ「まぁしょうがないわよねぇ……あんな思いをしたら」
ほむ「(まどかは魔法少女の戦いと死を身近なものとして結び付けて、魔法少女への憧れを抱いていない……)」
ほむ「(思わぬところでこれはいい方向に転んだみたいね……)」
33 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 16:10:58.23 ID:DNOa7QlF0
QB「い、いや、あんな化け物のようなものと戦うことは通常ない。あれはイレギュラーさ」
QB「魔女との戦いはもっと楽なものだよ」
マミ「ちょっと、そういういい方はやめて欲しいわ。魔女との戦いの中で命を落とす子だっていくらでもいるのよ?」
まど「ひっ……」
ほむ「まどか……よしよし、大丈夫。…………巴マミ、これ以上まどかを怖がらせないで」
マミ「あら、ごめんなさい」
さや「んで、結局あの学ランは誰だったんですか?」
マミ「わからないわ……使い魔を持っているということと、魔女を追っている時に遭遇したってことと」
マミ「キュゥべえを二度もさらっているってこともあるし、あんな形でも魔女なのかもしれない……」
ほむ「…………」
マミ「魔法少女と魔女について調べまわっていたみたいなの。そういうことだから二人とも一応気を付けてね?」
さや「はぁ……なんでこんなことに……」
ほむ「(いつぞやの魔法少女狩りのようなことが起きているのかも……)」
ほむ「(なんにせよイレギュラーはいつも世界を動かす起点になる……注意しておかないと……)」
QB「僕としては二人の安全も含めて、君たちには契約を結んでほしいと思っているんだけどね」
34 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 16:11:37.37 ID:DNOa7QlF0
さや「うぅん……かなえたい願いがないってわけじゃないけど……とりあえずあたしはパスさせてもらいたいな」
ほむ「まどか、あなたの安全は私が保障する。だから何も心配いらないわ」
まど「ほむらちゃぁん……」
さや「…………えらく仲がよろしいようで……」
マミ「そうね、暁美さんもいることだし、この街にこれ以上魔法少女がいる理由もあまりないんじゃないかしら」
マミ「グリーフシードだって限りがあるわけだし」
QB「(ぐぬぬ……)」
マミ「そう、暁美さん」
ほむ「なにかしら」
マミ「こんな状況だから、これからはなるべく行動を共にして、お互い密な連携をした方がいいと思うのだけれど」
ほむ「ええ」
マミ「あの男は本当に危険。あちらがその気なら私はもう二度は死んでいたわ……」
マミ「といっても、本当はハナから相手にされていなかったようだけど」
ほむ「そう…………またその辺の事情についてもあとで詳しく教えて」
ほむ「私もアレについて知っていれば、二人でなら渡り合えるかもしれない……」
35 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 16:12:03.94 ID:DNOa7QlF0
ほむ「(まどかのことをずっと見つめていたのも気になる…………)」
マミ「ふふふっ、じゃあ二人で魔法少女コンビの結成ねっ!」
ほむ「そ、そうね(思わぬ形で巴マミとの共闘が実現してしまった…………)」
困惑するほむらとは対照的に、マミはにこにこと喜色満面の笑みを浮かべていた。
―――数日後 病院
さや「えへへ……それでね、ワルシャワフィルハーモニー、これなんて結構あたし好みなんだけど……」
さや「恭介もきっと気に入ってくれるかなって思って」
さやかは自分のカバンから嬉しそうに何枚かのCDケースを取り出したが、恭介とよばれた少年は不機嫌そうな、
あるいは憂鬱そうな表情で窓の外を見ているばかり。
恭介「さやか……しばらくそっとしておいてくれないかな……」
さや「恭介……」
この様子を遠くから聞き耳と読心と透視を駆使して観察する超能力者がいた。バビル2世である。
36 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 16:12:43.96 ID:DNOa7QlF0
バビル「なるほど、あの少女はあの少年にホの字なわけか。しかしあの少年の方はなんとも思っとりゃせんぞ」
バビル「ふむ。契約宇宙人はそこに付け込んで契約をしようというのだな」
バビル「叶えたい願いは少年の腕を治す、か…………」
バビル「じゃああの少女が願いを叶える必要がなくなれば、奴らがどう動くか、すこし見せてもらおう」
病院に入ったバビル2世はそのままナースステーションに向かい、無造作に扉を開ける。
「ちょ、ちょっと君!? 勝手に入ってきたらダメじゃない」
バビル「『僕は医者だ。だから何の問題もない』」
バビル2世の鋭い眼光が、彼を制止するナースを貫く。ナースはぼうっとした様子でバビル2世の言葉を繰り返す。
「そうね、あなたは医者だから、何の問題もないわね」
強力な催眠術。強く相手の目を見るだけで、その精神を自らの支配下に置くこの能力もバビル2世の特技の一つ。
バビル「どれ、簡単なものでいい…………最近は注射器も皆使い捨てなのだな………………」
37 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 16:13:48.92 ID:DNOa7QlF0
物色を終えたバビル2世は恭介とさやかのいる病室を目指した。
またもがらりと無造作に扉をあけると、当然のようにさやかは驚愕し、恭介は怪訝そうにする。
恭介「君は、いったい……」
さや「あ、あ、あ、あ…………」
バビル「『僕は医者だ。ここにいても不思議に思わない』」
恭介「なんだ……お医者様か……」
さや「なら別に不思議じゃないか……」
バビル「魔法少女候補には催眠術は効くようだ。耐性があるのはアレが死体だというのと関係してるのか?」
バビル「まぁいい。今は輸血だな。やりすぎには注意せねば」
バビル2世は先ほど拝借した注射器で自分の血液を採ると、恭介の腕に注射した。
彼の血液を大量に輸血されたものは、彼と同じ能力を受け継ぐことができる。
過去にアメリカCIAがその血で大量の能力者を作り出した時、バビル2世はその能力者達と血みどろの死闘を演じ、
これらをすべて始末してまわったことがあった。
しかし、量を少なく絞れば、一時的に彼の治癒能力の恩恵だけを受けることができる。
過去にもそうして飛行機事故にあった大量の重傷者を治療した経験がある。
もっとも、彼らもCIAの能力者に皆殺しにされてしまったわけだが…………
まったくもって不吉な血である。
38 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 16:14:33.35 ID:DNOa7QlF0
バビル「…………こんなものか」
恭介「腕が……腕が動く!! ありがとうございます! 先生!」
さや「ほんと!? やったっ!! やったね恭介!!」
バビル「うん、『君たちは今の出来事を忘れる。僕の事も見ていない』」
さや「今起こったことは忘れる……」
恭介「あなたの事はみていない……」
バビル「さて、一体どう出るか」
―――隣街 コンビニ
ロデム「(人間に紛れて調査をするというのもなかなか……この機会に料理でも始めてみるか?)」
「袋、お入れしますか」
ロデム「いや、エコバッグ持ってるよ」
隣のレジでは、紅い髪の少女がカゴいっぱいに詰めた菓子の清算をしていた。
39 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 16:15:06.14 ID:DNOa7QlF0
ロデム「あと缶コーヒーももらおうかな。ブラック」
時間がかかる彼女の清算に合わせるかのように、わざわざ店員に追加注文をするロデム。
少女が先にコンビニを出る格好にして、そのまま後をつける。
コンビニを出たあと、ロデムは一瞬彼女を見失う。
が、すぐにビルの屋上にいる彼女を見つけ、体を不定形に戻し、あたりの景色に溶け込むよう隠密に彼女を観察する。
少女はうまそうな棒状の菓子を頬張りながら、どこか遠くを、それでいて確かな一点を見つめていた。
ロデム『またマークしておいた使い魔の様子を見ているのか。人が襲われても一向に動く気配を見せない』
ロデム『これで犠牲者は五人目……むっ、ようやく動きを見せるようだな。いや、使い魔の様子もおかしいぞ』
ロデム『なるほど……使い魔と魔女の関係。これはなかなか複雑だ』
ロデム『もういくつかの例を観察してからご主人様に報告しよう』
―――数日後 見滝ヶ原 路地裏
先ほどまで辺りを包んでいた異空間が消え、元の景色が戻ってくる。
40 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 16:15:46.39 ID:DNOa7QlF0
マミ「調子に乗っているわけじゃないけれど……楽勝だったわねっ!」
ほむ「ええ」
マミ「私のティロフィナーレとあなたの『瞬間移動』、相性はバツグンよ」
ほむ「そうね(今の彼女は私に信頼を寄せてくれている。もう手の内を明かしても問題はないのかも知れない)」
マミ「お菓子の魔女のときはさすがに肝を冷やしたけれど……って、あら?」
マミは何かを探しているようだったが、お目当てのものが見つからずに苦い顔をする。
マミ「残念、ハズレだわ。落とさなかったみたい」
ほむ「大丈夫。グリーフシードが足りなくなっても私の分を使えばいい。そんなに切羽詰まってもいないから」
マミ「暁美さん……」
じんと感じ入る少女を冷静に観察している目があった。ロデムである。
ロデム『ほう。魔女を倒してもグリーフシードが手に入らないこともあるのか……』
そこへ突如間抜けなメロディが流れた。
『テ〜ケテ〜ケテケテケテン〜テ〜ケテ〜ケテッテッテ(゚∀゚)ラヴィ!!』
41 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 16:16:40.32 ID:DNOa7QlF0
マミ「あらまた電話?」
ほむ「ごめんさない……」
マミ「気にしないで」
ほむ「……ええ、私よ……大丈夫、なんともないわ……ええ、すぐに戻るから……」
ほむ「大丈夫よ、心配ないわ…………ええ、何かあったら飛んで戻ってあげるから……」
ほむ「……ええ……そうね…………じゃあいい子にしていてね……」
ほむ「ふぅ」
マミ「また鹿目さん?」
ほむ「そうよ。まどかにも困ったものだわ。あれ以来、私がいないとすぐにこうなんだから……まったく……」
マミ「暁美さん……顔がにやけてるわよ」
42 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 16:17:10.51 ID:DNOa7QlF0
―――さらに数日後 公園
さや「ちょっとちょっと、見せたいものってなんなのよ。こんなとこまでつれてきてぇ」
QB「こっちさ」
さや「えっ、うそ……あれって」
さやかがキュゥべえに促されて見たものは、自らの想い人と自らの親友との密会の様子であった。
さや「そんな……仁美がまさか……そんなことって…………そんな……ははっ、夢かな……」
QB「ところがどっこい、これが現実だよ」
さや「………………」
QB「でも君が望むなら、一人の人間の心を変えてしまうことぐらいわけもない」
QB「さぁ、今君は何を得たい? 僕に願いを言うといい」
さや「そっか…………あたしは純粋に恭介の腕を治してあげたかったんじゃない……」
さや「だって……恭介の腕は治ったんだからあたしの願いはかなったはずなのに……」
さや「違うんだ……そんなこと利用して……あいつにただ振り向いてほしかっただけだったんだ……」
さや「卑怯だなぁ……あたしって…………あたしってほんと…………」
43 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 16:17:44.70 ID:DNOa7QlF0
QB「(やりすぎたか。もうすでに絶望しきっている。これでは役に立たないな)」
QB「(『彼女』を追いこむには、また別の手段を考えなければならないみたいだね)」
膝から崩れ落ち、声も出さずに泣くさやかを置いて、キュゥべえはどこかへ消えてしまった。
そしてそんな様子を遠くからバビル2世が観察していた。
バビル「契約せざるを得ない状況を、宇宙人自らつくりだしているのか」
バビル「この調子だと魔女になるような状況もヤツらが作っていると思っていいな」
バビル「ふむ、これでヤツらの言葉も動きも、まるで欺瞞だらけだということが分かった…………」
さやかは目の前が真っ暗になったような気持ちで、しばらくその場から動くことができなかった。
ひとしきり涙を流した後、背後に人の気配があるのを感じて、さやかは顔を上げる。
???「あんた、さっきキュゥべえと話してたろ」
さや「えっ、キュゥべえって……じゃあ、もしかして……」
???「そういうことさ。あたしは佐倉杏子ってんだ。よろしくな、魔法少女見習いさん?」
さや「ごめん……今人と話す気分じゃないから……」
44 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 16:18:16.23 ID:DNOa7QlF0
杏子「まったく…………眼がそんなになるまで泣くようなことがあって、あいつに契約迫られてって……」
杏子「さすがのあたしも、そんなやつを放ってはおけないよ」
さや「……………………」
杏子「今流してる涙を、奇跡なんかで取り戻そうったって、結局いつか倍になって返ってくるだけさ」
杏子「後悔なんざ先には出来るもんじゃないんだ。忠告しておくよ。魔法少女になんて、なるもんじゃない……」
さや「別に…………あたしは……」
杏子「ま、まぁ、あたしとしては? 競争相手が増えて得することなんてなんもありゃしないってだけだけどなー」
杏子と名乗った少女は、照れ隠しか、大げさに手を頭の後ろに組んでくるくると回って見せたりした。
バビル「なるほど、魔法少女に改造されても人間性は残るものなのだな」
45 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 16:18:44.91 ID:DNOa7QlF0
―――バベルの塔 コンピューター制御室
ロデム『……報告は以上です』
バビル「ふむ。やはり魔法少女は人間性を失っていないんだな」
ロデム『そうですか? 私は驚きました、自分のグリーフシードのためだけに何人もの人間を見殺しにするなんて』
ロデム『やはりアレらはただの改造人間でしか……』
バビル「どうして驚く。まさに『人間』らしいじゃないか」
ロデム『…………』
バビル「それよりも、契約宇宙人、お前たちのやりようはみせてもらったぞ」
QB「そうかい」
籠の鳥のように透明なイレモノに閉じ込められたキュゥべえがバビル2世をじっと見つめる。
バビル「魔法少女達は仕方なしにでる犠牲ではないな?」
バビル「お前たちは彼女らを意図して騙し、追い込み、魔女に仕立て上げているんだ」
バビル「それだけじゃない。魔女が自動的に増えるような仕組みは、後々魔法少女を作るための仕掛けになる」
QB「その話なら以前したじゃないか。だからどうだというんだい? 僕たちに悪意があるとでも言いたいのかい?」
46 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 16:19:24.05 ID:DNOa7QlF0
バビル「そんなことはどうだっていい。問題はこの先だ。魔女が自動的に増える仕組みにある」
バビル「コンピューター、データを出せ」
古めかしいモニターに古めかしいフォントでデータが挙がる。
バビル「見ろ、見滝ヶ原をモデルに魔法少女の仕組みをまとめたデータだ」
『このデータは見滝ヶ原市の人口を、魔法少女一人が受け持つ最小単位と仮定して計算しています』
『エリア内の魔女の現存数、魔女の発生速度、グリーフシードの発生確率を入力し』
『巴マミの戦闘スタイルをベースにグリーフシードの消費速度と年間に必要なグリーフシードの数を算出』
『一人の魔法少女が魔女化するまでに、何人の人間が死ぬかを割り出します』
バビル「使い魔が魔女になるまでに平均四から五の人間を食う」
バビル「ここ数年見滝ヶ原に魔法少女はマミ一人しかいなかったのに、街は常に魔女だらけだ」
バビル「そうなるとどうだ、行方不明や自殺だけじゃない、交通事故死のほとんども魔女の餌食と言えるぞ」
47 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 16:19:57.95 ID:DNOa7QlF0
QB「そうだね。じゃあなにかい? 僕たちが人間を殺しすぎだとでも言うのかい?」
バビル「そうだ」
QB「まさか君にもそんな人間らしい……」
バビル「お前たちは損をしている」
QB「は?」
バビル「犠牲者の内、魔法少女になりえる歳の女がこれだけのパーセンテージいるんだ」
バビル「素養のなかったものが後になってそれに目覚めることもあるらしいな」
バビル「すると、魔法少女ひとりを魔女にするために、何人もの魔法少女候補が失われていることになるぞ?」
バビル「これじゃあ、これっぽっちも効率的じゃない。どれだけのエネルギーを無駄にしてるんだ?」
QB「いやはや……恐れ入る」
QB「魔法少女の真実を知って、激しく憤り僕らを責め立てる人間も、逆に絶望してしまう人間もいたよ」
QB「けれど、それを知ってなお、僕らに『損をしている』と説いてみせた人間は君が初めてだ」
QB「バビル2世、君の道徳観からはなにかがごっそり抜け落ちている」
QB「訂正しよう、君は人間じゃない……もはや人間に似た別の生き物だよ…………」
バビル「うん? 当たり前のことを言うやつだな」
48 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 16:20:48.35 ID:DNOa7QlF0
―――数日後 見滝ヶ原
バビル「あのあと契約宇宙人ははっきりと『自分たちのシステムに不備はない』と言い切った」
バビル「たしかにそうだ。あれだけ高い知能を持った者が、あんな簡単な勘定ができないとは思えない」
バビル「それに魔女も魔法少女もずっと長い間存在してきたんだ」
バビル「いまさらになってどうして僕が予感めいたものを覚えたのか……」
バビル「飲み込まれる人のイメージは魔女にまず違いない、しかしもう一つがわからない」
バビル「吸い上げられる世界中の命……これと奴らの言った不備のないシステムとが関係しているはずだ」
バビル「うぅむ…………」
ついつい考えていることを口に出しながら、バビル2世は見滝ヶ原の町を散策していた。
そのあいだもどんな小さな異変にも気を配ろうと細心の注意を払っている。
それ故に後ろから唐突にかけられた声に一瞬ぎょっとして体をこわばらせそうになった。
???『久しいな、バビル2世よ』
49 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 16:21:45.01 ID:DNOa7QlF0
バビル2世はその声を聴くや否や、体術でもってその声の主を地面に引き倒し、全力のエネルギー衝撃波を浴びせる。
ずたずたの黒焦げになった人型が持っていたのだろう拳銃を奪い取り、頭に向かってすべての弾を撃ちきった。
無論、街は騒然とする。
バビル「はぁっ…………はぁっ…………」
???『相変わらず容赦がないな。恐ろしい限りだ』
バビル「ちっ、ロボットの木偶人形か……ヨミ! どうした、出てこい!! 出てきて僕と戦え!!」
ヨミ。バビル2世と同じ力を持ちながら、バビル2世とは逆の道を歩む男。
孤独なバビル2世と違い、多くの心酔者を抱え、国家を超えた巨大な組織を持っていた。
また、力を使うのに明確な意思を持ち、世界を自ら導くために世界全体に号令をかけるという野心の元に動いていた。
そうした二人は互いに交わることなく、常に死闘を繰り広げてきた。
度重なる互角の戦いも、最後にはいつもバビル2世が勝利し、ヨミという男はその都度敗北と死を重ねていたのだ。
そして今、再びヨミは動き出す。
バビル「…………これはテレパシーの中継機か。そう遠くにはいないはずだ。どこにいるヨミ!!」
ヨミ『わしを[
ピーーー
]ことしか頭にないか……お前はなにも変わっていないな』
ヨミ『バビル2世よ、わしに力を貸せ』
50 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 16:22:44.89 ID:DNOa7QlF0
ん??このピーってなに??
51 :
まぁいいか
:2011/07/28(木) 16:23:38.08 ID:DNOa7QlF0
バビル「何を言うかと思えば……ふざけるな!!」
銃声に怒声。あたりにはだんだんと人が集まってくる。
ヨミ『お前がインキュベーターを追っていることは知っている。インキュベーター打倒に手を貸すのだ』
バビル「インキュベーターとはあの宇宙人の事か……」
バビル「やつらのやり方は間違っているが、やろうとしていることは正しい」
ヨミ『やつらは万物の霊長たる人類を、まるで家畜同然に扱っているのだぞ?』
バビル「宇宙全ての命のためだ。人間だけがわがままを言うわけにはいかない」
ヨミ『ではそのためには地球人類は犠牲となってもいいと言うのか』
バビル「なに、地球人類だと?…………たとえ奴らと敵対することになっても、それは僕独りでやらせてもらう」
バビル「僕がお前と共に歩むことはない!」
ヨミ『いいだろう。しかしお前はすぐに考えを改めることになるだろう。なぜなら……』
バビル「そこかっ!!」
議論に興じる振りをしながら、バビル2世はテレパシーを送ってくる元を探っていた。
遠巻きにこちらを野次馬する群衆の中に、地面から拾った弾丸をはじいて飛ばした。
するとほどなく、コートを着込んだ人型が頭に穴を開けて倒れ、同時にバビル2世の頭に響く声も途切れる。
52 :
まぁいいか
:2011/07/28(木) 16:24:30.37 ID:DNOa7QlF0
バビル「またロボット。僕を監視しようというのか。そうはさせるか」
さらに騒動は大きくなり警察もでてきたのか、収拾がつかなくなり始めている。
バビル2世は全速力で飛んで跳ね、一気に街を抜けだした。
―――マミハウス
マミ「あら、美樹さんが他の魔法少女を紹介していっていうから誰かと思ったら、あなたの事だったの」
さや「なんだ、知り合いだったんですか」
杏子「そんな言うほどの事でもないさ……」
マミ「あなたまさか……まだあんなやり方を続けてるんじゃないでしょうね」
杏子「はんっ、だったらどうだっていうのさ」
さや「ちょ、ちょっと杏子……」
杏子「綺麗事並べたって、あたしら魔法少女が独りで生きていくには、ああでもするしかないじゃないか…………」
マミ「…………なら私たちのところに来ない? 今結構グリーフシードにも余裕があるのよ」
杏子「冗談はよせよ……いまさらあたしが……」
53 :
まぁいいか
:2011/07/28(木) 16:26:04.86 ID:DNOa7QlF0
シリアスな雰囲気を壊すようにメルヘンな姿をした生き物が不意に現れる。
QB「二人とも大変だ! すぐに来てくれ!!」
―――公園
バビル「ヨミが動き出すとは……この40年まったく動きがなかったのが不気味なほどだが…………」
バビル「こんなことならポセイドンを呼んでおくんだったな」
バビル「しかし、やつの言った『地球人類』という大げさな言い方は引っかかるぞ」
バビル「物言いの大きさで言えば僕の予感と合致する」
バビル「でもあと何が残っている……魔法少女、契約、勧誘、不備のないシステム……」
バビル「こうなってくるとあの少女が気になるな。高い素養を持っていたのに奴らが積極的に勧誘しなかった」
バビル「たしか、鹿目まどか…………」
バビル「彼女からは大きな力を感じていたのに……奴らが消極的だったから警戒し損ねたな……いや……」
バビル「それが狙いだとしたら…………なんにせよ一度彼女を調べる必要があるぞ」
54 :
まぁいいか
:2011/07/28(木) 16:27:48.62 ID:DNOa7QlF0
想いを巡らすバビル2世は、幸運にもその少女の声を遠くに聞くことができた。
ほむ「まどか、そんなに引っ張っては服が伸びてしまうわ」
まど「えへへ」
ほむ「もう。ふふふ………………まどか?」
先ほどまでにこやかだったまどかの表情が一変、凍りつく。
まどかの視線の先に向き直ると、ほむらも同じく戦慄する。
そこには無表情でこちらを見つめる例の学生服の男がいたのだ。
ほむ「あの男!!(まずい……こんなにも接近を許すなんて……時間を停め……)」
ほむ「くっ……」
まど「ほむらちゃん!!!」
ほむらの体は宙に持ち上がり、見えない手で首を絞められてるように苦しみだす。
バビル「妙なまねはするなよ。殺しはしない。すこし心を読ませてもらうだけだ」
バビル「お前の中はまだ見ていなかったな。先に覗かせてもらうぞ」
55 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
:2011/07/28(木) 16:28:27.91 ID:DNOa7QlF0
戦闘能力のあるほむらの心を先に読み、そのあとで気絶なりなんなりさせるつもりだったのだろう。
バビル2世はほむらの心の深いところにまで踏み入り、さまざまな記憶や感情を読み取っていく。
バビル「時間停止……時間遡行……ワルプルギスの夜……まどか……最悪の魔女……」
バビル「地球の……滅び……」
バビル「なんということだ……やつらの狙いは最初からこれだったのか」
バビル2世のテレキネシスから解放され、ほむらは地面に落ち、しきりに咳き込む。
まど「ほむらちゃん!!!」
まどかはほむらに駆け寄り、体を抱き起す。そんなまどかをバビル2世が鋭い目で見おろしていた。
バビル「そうとわかればこの娘、生かしておくわけにはいかん!」
バビル2世がさらに眼光を強め、まどかは覚悟を決めて目をつぶる。
と、同時に、辺りに数発の銃声が鳴り響く。
まどかがうっすらと目を開くと、バビル2世のこめかみあたりにいくつもの銃弾がぴたりと止まっているのが見えた。
56 :
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(チベット自治区)
[sage]:2011/07/28(木) 16:29:05.93 ID:DNOa7QlF0
マミ「暁美さん!! 鹿目さん!! 大丈夫!?」
ほむ「巴…………マミ……」
ぐったりとしていたほむらはマミに目で合図を送ると、まどかと共にその場からぱっと姿を消した。
バビル「時間停止か……厄介な」
杏子「こいつが噂の怪物くんか……ふんっ!」
マミのすぐ後から杏子も現れ、威嚇の意味か気合の表れか槍を一回振り回す。
バビル「今お前たちに構っている暇はない。死にたくなければそこをどけ」
バビル2世の一本調子なようでどこかドスの効いた声が二人に刺さる。
マミ「(さっきの様子じゃ、能力を二つ同時には使えないのかもしれない……)佐倉さん!!」
杏子「おうさ!」
共闘経験のない二人ではあったが、両者ともに練達した魔法少女である。
とっさの作戦も阿吽の呼吸で成立するのだ。
57 :
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(チベット自治区)
[sage]:2011/07/28(木) 16:29:34.49 ID:DNOa7QlF0
杏子の槍が多節棍に変形し、バビル2世に叩きつけるとこれをぐるぐる巻きにして拘束する。
しかしすぐにバビル2世が多節棍をつかんで引きちぎり始める。
マミ「ティロ・フィナーレ!!」
そこにすかさず小細工なしの最大火力を叩き込む。
が、至近距離で放った最終砲撃も、念力によっていとも簡単に軌道をそらされてしまう。
引きちぎるのが面倒になったか、バビル2世は全身に力をこめて体を拘束する多節棍を粉々に砕く。
マミ「う、うそ……」
杏子「だろ……」
バビル「どうした、魔法少女の力とはその程度か」
バビル2世は無表情だった口元をにぃとゆがませる。初めて見せる表情の変化であった。
その微笑に二人は恐怖を覚える。
『今は退くのだ』
マミ「えっ、頭の中に声が……テレパシー?……」
杏子「構うな! あいつの仕業だろ!!」
58 :
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(チベット自治区)
[sage]:2011/07/28(木) 16:30:24.73 ID:DNOa7QlF0
一方で、バビル2世も急いているのか余裕がないらしく、二人を捨て置いたまま、あたりをきょろきょろと見まわし、
ほむら達がどこへ逃げたか探っていたようだった。
杏子「ちっ……なめやがって! よそ見してんじゃねぇぞ!!」
マミ「佐倉さん! いけない!!」
杏子は槍を再召喚し、鞭のように変形させてバビル2世を強烈に打ち据える。
鞭の先端の速さは常人では目に捉えることすら出来ぬほどのものだ。
しかし、バビル2世はそれをこともなげに手で掴んで見せる。
バビル「警告はしたぞ」
言うなりバビル2世の体が強い光を放った。エネルギー衝撃波を撃つのだ。
マミ「だめぇぇぇっっ!!!」
祈り半分諦め半分のマミの絶叫は、なにか別の大きな音にかき消される。
杏子「な、なんだこれは……」
59 :
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(チベット自治区)
[sage]:2011/07/28(木) 16:30:57.74 ID:DNOa7QlF0
杏子の目の前には身の丈2メートルはゆうに超えようという大男の後ろ姿があった。
大男足もとにできたクレーターは、それが空高くから落ちてきたことを物語っていた。
マミの前にもまったく同じ姿をした大男の姿がある。
『今は退き、来るべき戦いに備えるのだ』
マミ「また、さっきの声!?」
『戦いの勝敗は能力の大小で決まるものではない。今のお前たちでは、決してあやつに勝つことは出来ぬ』
杏子「ちっ、なんだか知らないが、どうも言うとおりにした方がいいみたいだな」
マミ「ええ、ここは暁美さんたちと合流しましょう!」
二人はバビル2世の相手を大男たちにまかせ、その場から足早に退く。
バビル「バランか……こんな骨董品で僕を止められると思っているのか、ヨミ」
バラン。かつてヨミの組織が作り上げた戦闘ロボットである。
対バビル2世を想定して作られているのか、発火能力にも念力にもエネルギー衝撃波にも耐えうる強靭さを誇る。
バビル「時間がない、地割れに叩き落としてやる」
60 :
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(チベット自治区)
[sage]:2011/07/28(木) 16:31:34.39 ID:DNOa7QlF0
バビル2世は腕を交差させると、強力な念力を発して地面を真っ二つに割り、そのまま二体のバランをそこへ沈めた。
バビル「しかし……これで完全に見失ってしまった。どうも僕の目から逃れられる能力を持っているようだな」
バビル「結界というやつか…………やはりポセイドンを連れてくるべきだった」
―――ほむホーム
杏子「なるほど、ここにはいるまいっていう穴をついた手だな」
ほむ「ええ。結界でいつまでごまかせるかはわからないけれど……」
さや「ちょ、ちょっと、どうして私まで連れてこられたの?」
マミ「だって、あなたも素質がある以上、いつあの男の標的になるかもわからないじゃない?」
マミ「それに人質にだってされるかもしれないしね」
さや「うーん……」
杏子「とはいっても、あの化け物の目的もまったくわかりゃしないってんだろ? これからどうするんだよ」
ほむ「目的はだいたいわかってきたわ。まどかよ」
さや「まどかが?」
61 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/07/28(木) 16:32:13.60 ID:DNOa7QlF0
ほむ「ええ、理由は言えないけれど、アレはまどかの命をねらっている(あの世界と同じ事が起きてしまう……)」
まど「ほむらちゃん……」
ほむ「まどか? 泣いているの? ごめんなさい……怖がらせるつもりは……」
まど「ちがうの、私……ほむらちゃんが死んじゃうんじゃないかって……それで……」
まど「でも、こうして生きてくれてて……それで……」
ほむらはまどかの頭をやさしくなでてやる。
ほむ「大丈夫、私は死なないわ。あなたを護るために……」
ほむ「…………皆、言いにくいのだけれど、敵はあの男だけじゃないわ」
マミ「それってまさか」
ほむ「そう、この街に、ワルプルギスの夜がやってくる……」
杏子「なんであんたにそんなことがわかるんだよ」
ほむ「信じてもらえないかもしれないけれど、詳しい話は今からさせてもらうわ」
ほむ「(……あの時同じ失敗はもう犯さない。まどかが犠牲になって幸せになる世界なんて、私は認めない)」
ほむ「(……そしてインキュベーター、お前たちがいつ仕掛けてくるつもりでも、まどかと契約は絶対にさせない)」
ほむ「(まどかも……まどかの世界も……私がこの手で護って見せる)」
62 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/07/28(木) 16:33:29.57 ID:DNOa7QlF0
―――バベルの塔 コンピューター制御室
バビル「コンピューター! ポセイドンの整備をしておけ」
『すでに完了しています』
バビル「いいだろう。ロデム、また戦いが始まるぞ」
ロデム『やはりヨミが……』
バビル「そうだ。契約宇宙人、いや、インキュベーターを出せ」
QB「ここにいるさ……」
バビル「よくも僕を騙してくれたな」
QB「だましたわけじゃない。君が気付かなかっただけだろう?」
QB「君は非常に優秀だったが、君ひとりの力には限界があったということさ」
バビル「まったくだ」
ロデム『どういうことです?』
バビル「こいつらの目的はただ一つ、それは鹿目まどかから得られる膨大なエネルギーだ」
バビル「もし彼女が魔女になってしまえば、この星は十日やそこらで壊滅するらしい……」
バビル「そのエネルギー量に比べれば、それまでに何人魔法少女を作ろうが、作れなかろうがどうだっていい」
63 :
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(チベット自治区)
[sage]:2011/07/28(木) 16:34:06.05 ID:DNOa7QlF0
バビル「それほどの絶大なエネルギーを秘めているようだな」
バビル「十年かかろうが百年かかろうが、そうやって稀に現れる膨大なエネルギーさえ手に入れられれば」
バビル「こいつらの目的は果たされるんだよ」
バビル「まったく効率的だよ。他の魔女も魔法少女さえも、それを待つ間の維持活動でしかないとはな」
QB「どうだい、僕らのシステムに不備がないということがわかってもらえたかな?」
バビル「いや、だからこそだ」
バビル「ほむらという少女の記憶から推測すれば、まどかのエネルギー量はとてつもなく膨張している」
バビル「いいか、鹿目まどかはあきらめろ。お前たちとの契約次第では宇宙そのものをひっくり返されてしまうぞ」
バビル「まさか宇宙存続のために働いているお前たちが、宇宙を脅かすかもしれない契約はしないだろう?」
QB「するよ?」
バビル「なぜだ!」
QB「僕たちは『エントロピーを凌駕したエネルギーを集める』というシステムの一部にすぎない」
QB「エネルギーを集めたことによる結果なんて僕たちには意味をなさない」
QB「そのエネルギーがなんであれ、僕たちは定められたノルマを達成すべく働き続けるだけだ」
QB「善悪も真偽も功罪も、僕らには一切関係のないことだ」
64 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/07/28(木) 16:34:42.55 ID:DNOa7QlF0
バビル「なるほど、お前たち相手では話にもならないということか」
QB「もうひとつ教えてあげよう。いまから見滝ヶ原に星の危機ほどではないが、とても大きな災厄がやってくる」
バビル「ワルプルギスの夜というやつか」
QB「知っているのなら話は早い。出来るだけ急いだ方がいいよ?」
バビル「街に壊滅的な被害を与えて、契約を迫る状況を作ろうというのだな」
QB「ああ、もっとも君がワルプルギスを無視してまどかを排除しようとすれば、そのあいだに街は壊滅し」
QB「彼女は心の底から僕たちとの契約を望むだろう」
QB「もちろん、君がワルプルギスとやり合うとしても、その隙に僕らはまどかと契約を結ばせてもらうさ」
バビル「してやったりと思っていることだろうな」
バビル2世がインキュベーターの入った容器に手をかざすと、その体がぽんと爆ぜる。
バビル「…………僕は今の今まで、この力を人類のために使うか、あるいはこの力で人類を支配するか……」
バビル「ヨミとの戦いに明け暮れ、その答えさえ出せずにいた…………だが今こそ僕は決意する」
バビル「僕はこの力を人類のために……人類を救うために使う!!」
65 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/07/28(木) 16:35:11.11 ID:DNOa7QlF0
バビル「行くぞロデム!」
ロデム『ハイ』
バビル「ワルプルギスは潰す。契約も阻止する。絶対にだ」
―――見滝ヶ原 港
魔法少女たちは街への被害を考慮し、建設途中の港湾施設を決戦の場に選んだ。
辺りに瘴気が広がり、次第に災厄がはっきりとした形を伴って現れる。
杏子「どうやらあれがワルプルギスの夜らしいな……今度ばかりは生きて帰れないかもしれないな……」
マミ「佐倉さん。本当はね、私、あなたがこうして一緒に戦ってくれるなんて思ってもなかったのよ」
マミ「自分かわいさに逃げ出しでもするんじゃないかって」
杏子「あぁ。いつものあたしならそうしたかもな……でもさ、柄じゃないかもしれないけどさ……」
杏子「こんなあたしにも友達ができたんだ…………そいつを護るためなら、あたしは……」
ほむ「不吉なことは言わないでちょうだい。私たちは必ず勝つ、そして生きて帰る……」
杏子「わかってる、心構えを言ったまでさ。戦うとなればあたしは全力で敵を迎え撃つだけだ」
66 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/07/28(木) 16:35:47.65 ID:DNOa7QlF0
マミ「ふふっ、私、あなたのそういう割り切った性格、嫌いじゃないわ」
杏子「はんっ、ぬかせ」
ワルプルギスの夜からいくつもの影のようなものが飛び出し、街を目指してこちらへ押し寄せてきた。
ほむ「来た!!……本体が上陸するまで使い魔を水際で食い止めるわ」
ほむ「マミ、あなたは作戦通りに魔翌力を温存。杏子は私と使い魔の対処を」
杏子「任しとけって」
マミ「私は責任重大ね。心しなくちゃ」
―――太平洋上空
鋼鉄で出来た怪鳥が、巨大な羽を広げ、全速力で空を駆けている。
怪鳥ロプロス。バビル2世の貴重な空の戦力であり、また移動手段としても重宝されるしもべのひとつである。
その首元には学生服の少年と、一匹の黒豹の姿があった。
バビル「ポセイドンはついて来ているか」
67 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/07/28(木) 16:37:49.04 ID:DNOa7QlF0
ロデム『おそらく』
バビル「よし、ロプロス! 僕はここで降りる。お前は上空に待機してポセイドンを待て」
バビル「お前たちは切り札だ、別個に対処されてはかなわんからな。敵の様子は僕が見る」
バビル「ロデムは娘のところへ行け。ゆめゆめしくじるなよ」
ロデム『お任せを』
バビル2世はみっつのしもべにそれぞれ指示を言い渡すと、はるか上空からためらいなく水面へ飛び降りた。
逆さのままくるくると回る巨大な魔女をにらみつける。
バビル「あれがそうか。なるほど手ごわそうだ……しかし足止めはさせてもらう」
腕を交差させて力をため、ワルプルギスの夜に全力全開のテレキネシスをかける。
するとワルプルギスの夜はくるくる回るのもゆらゆらと揺らめくのもやめ、金縛りにあったかのように動かなくなる。
バビル「僕の全力でも動きを止めるだけとは…………辺りを飛んでいるのは使い魔か。街へ行ったな」
バビル「いかん、手が足りん…………くっ……ポセイドンはまだか!」
68 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/07/28(木) 16:38:23.50 ID:DNOa7QlF0
―――港
ほむらと杏子は迫りくる使い魔たちと素早いドッグファイトを演じていた。
そんな様子を作戦とはいえ、マミは黙ってみているしかなく、つい助けに入りたくてうずうずしてしまう。
マミ「これはこれでつらいわね…………あら?……暁美さん! 本体の様子がおかしいわ!」
ほむ「たしかに……ぴたりと止まったまま一向に動きを見せようとしない……」
杏子「なんなら先に本体を叩いちまうか? いや、それで挟撃されてもバカみたいだな……どうするか……」
マミ「見て! 海の中から何か現れるわ!!」
―――海上
バビル「うぐぐ……これ以上は抑えてられん……ポセイドン!! まだか! 僕を助けろ!!」
バビル2世の足もとの海がぶくぶくと泡を立て始め、ほどなく巨大な頭が海から顔を出す。
そのままゆっくりと鋼鉄の巨人がその姿を現した。
強靭な装甲と絶大の破壊力を持った海の神、バビル2世のしもべ、ポセイドンである。
バビル2世はポセイドンの肩につかまり、力を使いすぎて乱れた呼吸を整える。
69 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/07/28(木) 16:38:50.59 ID:DNOa7QlF0
バビル「よし、ポセイドン、やつを叩きのめせ…………どうしたポセイドン。なぜ戦わない」
主人の命令に反してポセイドンは棒立ちのままとなっている。
バビル「まさか奴のことがわからないのか……ロプロス!! 奴に攻撃しろ!」
上空を待機しているロプロスも攻撃する対象がわからず、命令を保留したままにしているようだった。
バビル「人工知能にはわからないのか。ならば僕の言うとおりに動け。パンチだ! ポセイドン!…………」
バビル「だめだ、うまくは決まらんか…………」
金田正太郎か草間大作のようにポセイドンに指示をだすが、慣れないことになかなかうまくいかず、
ポセイドンの鉄拳はむなしく空を切る。
念力による拘束も解け、ポセイドンの攻撃もかわしたことで、ワルプルギスの夜はこの防衛線を突破し、
一気に街を目指して飛ぶ。
バビル「いかん、抜かれた…………ロプロス! デタラメでいい、とにかく攻撃しろ!」
ロプロスは命令通り当てもなく、口からロケット弾とフォノンメーザーをランダムに発射する。
何発かはワルプルギスに命中するも、これをよろめかす程度に終わってしまう。
70 :
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(チベット自治区)
[sage]:2011/07/28(木) 16:39:32.99 ID:DNOa7QlF0
バビル「ぐぐ、万事休すか……いや、ロプロス! 戻れ!」
バビル「全力のエネルギー衝撃波なら、なんとか相打ちになれるかも知れん……」
バビル「……ロプロス?……どうしたロプロス、早く戻ってこい!」
―――港
マミ「なんなのあれ……私は怪獣映画でも見ているの?」
ほむ「でもこの機を逃す手はないわ。デカブツ同士がつぶし合っているところで一気に決められるかもしれない」
ほむ「先にアレをつかってもいい……ここは作戦を変更しましょう」
『早まるな』
杏子「この声はあの時の!」
『お前たちはわしの指揮下に入れ』
ほむ「テレパシー……でもこんなものに構っている暇は……」
マミ「待って。私たちは一度この声に助けられているの。ここはひとつ話を聞いてみましょう」
杏子「ああ、聞く価値はあるかもな」
ほむ「……あなたたちがそう言うのなら……」
71 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/07/28(木) 16:40:28.94 ID:DNOa7QlF0
『よかろう。暁美ほむら、お主はここら一帯に武器や兵器を隠しておるな?』
ほむ「どうしてそれを……」
『それらをすべて展開し、わしの合図で一斉に魔女をめがけて発射しろ』
『勿論、“時間を停めて”同時に着弾するよう撃つのだ』
ほむ「なっ!?」
ほむらは自分がひた隠しにし、ここにきてようやく仲間に打ち明けることのできた能力を言い当てられ、寒気のような
ものを感じる。
『佐倉杏子、お主はこれよりやってくる者たちと合流し、存分に暴れまわれ。そうして魔女を目いっぱい攪乱しろ』
杏子「囮役ってわけか」
『巴マミ、お主は空へあがれ。止めの一撃はお主だ。これだけはお前たちの策と変わらんがな』
マミ「空へって言ったって……」
『案ずるな。すぐに迎えをやる』
72 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/07/28(木) 16:41:23.45 ID:DNOa7QlF0
―――海上
上空から厚い雲を裂き、巨大な翼が姿を現す。
バビル「遅いぞロプロス!……いや……あれはV号!?」
V号。ヨミの組織がロプロス計画により40年前に作り上げた巨大な怪鳥ロボである。
バビル2世のみっつのしもべに対抗するべく作られており、過去にはロプロスとポセイドンを相手取って圧倒した。
バビル「ヨミめ……あんなものをいまさら持ち出してどうしようというのだ」
雲の中から現れたのはV号だけではなかった。そこにはV号の後ろにつき従うようにして飛ぶロプロスがいたのだ。
ヨミ『いいかロプロス、おまえはわしの操縦するV号の動きを真似ろ』
ヨミはバビル2世と同じ力を受け継いでいる。ゆえにバビルの後継者の守護者たるみっつのしもべは、
2世同様、ヨミの命令通りもに動いて見せるのだ。
ロプロスはV号の動きそっくりそのままに飛ぶ。
二機は複雑な機動でワルプルギスの夜を牽制するように、その周りをぐるぐると旋回して飛んだ。
バビル「なるほどそれでV号か。ヨミのやつうまいこと考えたな。くやしいが今はお前の好きにさせてやる」
73 :
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[sage]:2011/07/28(木) 16:41:51.57 ID:DNOa7QlF0
V号とロプロスが熱戦砲とメーザーを魔女に浴びせ続ける。魔女はその攻撃に耐え兼ね暴れまわって逃げ出そうとするが、二機の動きが巧妙にその行く先を絞っていく。
バビル「ようし、お前の考えに乗ってやろう。ポセイドン! ロプロスの超音波を目印にレーザーを撃て!」
ヨミ『やはりそうきたか、バビル2世よ。いいかロプロス! 射線上にポセイドンがいれば撃つのはやめるのだぞ』
海上と上空からひっきりなしの砲撃を受け、ワルプルギスの夜はいよいよ受けたダメージを隠しきれなくなる。
バビル「そのまま距離を詰めて格闘戦だ! 同士討ちを気にすることはない、超音波の先を滅多打ちにしろ!」
よろめく魔女に接近し、ポセイドンは蹴る殴るの打撃を加える。
相変わらずぐるぐるとまわりながらひっきりなしに砲撃を続けるV号とロプロスだが、そばで戦うポセイドンを誤射す
ることだけはなかった。
そうこうしているうちに、弱った本体を守護するためか、街の方へ行ったはずの使い魔たちが一か所に集まり、踵を返
して戻ってこようとする。
ヨミ『今だ、行け! 我が魔法少女隊よ!!』
74 :
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[sage]:2011/07/28(木) 16:42:26.73 ID:DNOa7QlF0
―――ほむホーム
まどかとさやかはほむらの家に敷かれた結界の中で、ただ戦いが無事に終わることを祈ることしかできないでいた。
家の中にいても時折響く爆音は耳をつんざくほどだ。
さや「だ、大丈夫だって、杏子たちならやってくれるって!」
まど「うん……」
さや「あんなやつって思えるかもしれないけどさ、落ち込んでるあたしのこと慰めてくれたりしたし……」
さや「悪い奴じゃ、ないんだよ。きっと今頃一生懸命に戦ってくれてるよ!」
QB「たしかに、そうだといいね」
まど「キュゥべえ……」
さや「あんたいつのまに!」
QB「君たちに悪いニュースを持ってきたよ。彼女たちが戦っている現場に、なんとあの男が姿を現したんだ」
さや「それって……」
まど「っ!?」
QB「想像のとおりだ。もしアレがワルプルギスの夜に乗じて彼女たちを攻撃すれば……」
QB「きっと彼女たちはなすすべもなく、無残な姿をさらすことになるだろうね……」
75 :
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[sage]:2011/07/28(木) 16:42:55.95 ID:DNOa7QlF0
QB「今も聞こえるだろう? この爆音はあの男の仕業さ」
まど「私は…………」
まど「ほむらちゃんが帰ってきてくれるまで、私は絶対にここをうごかない、そうほむらちゃんと約束したから」
まど「ほむらちゃんは絶対に生きて帰ってきてくれるって言ってくれたから……私はそれを信じてる!」
QB「君が本当に彼女を大事に思ってるなら、そんな約束を優先するよりも君の大切な……」
キュゥべえは甘言を吐いている途中で、突如床に広がった大きな黒い染みにずぶずぶと飲み込まれていく。
しばらくした後、キュゥべえは見るも無残な姿となって染みの中から吐き出された。
すると黒い染みは一か所にあつまり、形を持ち、凛々しい黒い豹の姿となった。
さや「そんな! どうしてここが……ぐっ……」
まど「さやかちゃん!!!」
さやかはまどかを庇うようにして前へ出るが、ロデムの頭突きを受けてその場へ倒れ込む。
ロデム『ご主人様が街中をしらみつぶしに透視し、それが届かないところがあればだいたいの居場所の目星はつく』
ロデム『あとはワタシが探し回ればいいだけの事…………』
76 :
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[sage]:2011/07/28(木) 16:43:33.70 ID:DNOa7QlF0
まどかは後ずさりすることもなく、ほむらの言葉を信じて結界から一歩も出ない心でいる。
ロデム『気丈な娘だ。しかし、かわいそうだがこれも主の命令……』
―――港
海上でのヨミの号令に合わせて、まるで忍者のようにどこからともなく、二十人ばかりの魔法少女達が姿を現した。
魔法少女達は今川ライクな装束に身を包み、一か所に集まった使い魔たちを取り囲むように仁王立ちをしている。
杏子「おいおい、またずいぶんと妙なやつらがでてきたもんだな。こんなやつらがまともに戦えるのか?」
「「「天に聞こえし黄帝の!!」」」
「「「武勇を汚すは配下の名折れ!!」」」
「「「元より死したるこの身なら!!」」」
「「「塵となるまで倒れはしない!!」」」
杏子「な、なんなんだよこいつらは……」
「「「我ら黄帝直属!! 魔法少女隊!!」」」
77 :
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[sage]:2011/07/28(木) 16:44:06.50 ID:DNOa7QlF0
杏子「は……はは…………まぁ気合は十分みたいだな。ならいっちょ仕事と行きますか!!」
「いざ!」「いざっ!!」「いざぁぁっ!!!」
魔法少女隊は各自長い六角棒を召喚し、これを得物に次々と使い魔達を追いたてる。
その戦闘スタイルはどこか杏子のものと似通っており、なるほどこれは相性が良い。
魔法少女達が二人一組になってそれぞれ敵を追い詰めていく。
それをそのまま、一人自由に動ける杏子が漏らさず止めを刺していく。
こうしてあっという間に使い魔たちは駆逐されていった。
杏子「すごいな……やるじゃんお前ら!」
「「「雑魚にもつかない使い魔ならば!!」」」
「「「我らが刃の錆ともならぬ!!」」」
「「「忠義の義士たる…………」」」
杏子「あぁ、はいはい、わかったわかった。話しかけたあたしがバカだったよ」
そうして杏子たちが使い魔と戦っていた間に、ワルプルギスの夜は三機の鉄の巨体に抑え込まれ、
次第に港の方まで追いやられていっていた。
78 :
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[sage]:2011/07/28(木) 16:44:38.14 ID:DNOa7QlF0
ヨミ『うむ、よい具合だ。ロプロス、いったん上昇するぞ』
バビル「むっ、ポセイドンも後退だ」
ヨミ『魔法少女隊! 前へ!』
ヨミの号令を受けて、ぴしゃりと魔法少女達が背筋をただす。
杏子「お前らかしこまってる場合か? あたしは先に行かせてもらうからな」
「「「武人の誉れは一番槍ぞ!」」」
「「「誰にも渡してなるものか!!」」」
杏子を先頭にして、魔法少女達が一斉にワルプルギスに襲いかかる。
一見デタラメのように見える攻撃だったが、その実綿密に計算された動きで、さらに魔女を港へと追い込んでいく。
バビル「細かい搖動はあいつらの仕事というわけか。確かによく訓練されている」
バビル「しかしなぜヨミが魔法少女を……」
ヨミ『わしは世界中の能力者を集めて回っておるのだ。配下に魔法少女がいくらいてもおかしいことではあるまい』
バビル「ふむ、ポセイドン! 誘い込んだ先では大きな仕掛けがあるはずだ。それに合わせるぞ!」
79 :
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[sage]:2011/07/28(木) 16:45:10.80 ID:DNOa7QlF0
ヨミ『お前にはわしのやり様が手に取るようにわかるのだな。やはりわしとお前は通ずるものがある』
ヨミ『だがそれ故に、お前はわし最大の敵なのだ』
バビル「無駄口はよせ。たしかにあれらはよく動くが力が足りん。僕らの兵器でも魔女は倒しきれんぞ」
ヨミ『わかっておる。散開しろ!』
魔女は、杏子と魔法少女たちによって建設中の埋立地の真上に誘い込まれていた。
群がっていた魔法少女達がぱっと散ると、上空からV号とロプロスが急降下してくる。
ヨミ『ロプロス!』 バビル「ポセイドン!」
V号とロプロスの砲火を目印に、ポセイドンが魔女を地面にたたきつける。
ヨミ『今だ!!』
このヨミの号令と共に、あらゆるものが凍りついたように動きを止めた。風も、波も、何もかも。
魔法によって疑似的に停止した時間の中で、ほむらは一人いそいそと作業を始める。
ほむ「これはっ、随分っ、地味でっ…………ふぅ…………本当にっ、目立たないっ……」
ほむ「損な役回りね……」
80 :
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[sage]:2011/07/28(木) 16:45:42.07 ID:DNOa7QlF0
時間が再び動き出し、港の周辺に配備された迫撃砲や対艦ミサイルが計算しつくされたタイミングで一斉に発射され、
まったく同時に魔女に命中する。
それに合わせて遅れることなく、埋立地に無数に設置されたプラスチック爆弾も全て一度に起爆する。
埋立地には巨大な魔女を飲み込んでもまだあまりある大きさの火球が生まれた。
しかし、ほどなく火球と砂煙が収まったところで、魔女がその健在な姿を現す。
バビル「とことん弱ってはいるが、やはり兵器では殺しきれないぞ」
ヨミ『策はある』
埋立地へと急降下していたV号が機首を上げ、機体が水平になったところで魔女の真上で爆雷投下口を開く。
マミ「ティロ!! フィナーレ!!!」
巨大な大砲を抱えたマミと共に、無数の爆弾が投下されていく。
爆弾は薄く黄色い光を放っており、マミの魔翌力で強化されているのがわかる。
それらが次々と降り注ぎ、魔翌力が込められた爆発によって巨大な魔女の体を削り取っていく。
そうして露出したコア、あるいはグリーフシードとも思えるものに、マミは正確な砲撃を加える。
マミ「ジャックポット!!」
81 :
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[sage]:2011/07/28(木) 16:46:19.86 ID:DNOa7QlF0
コアを砕かれ、その体を失い、ワルプルギスの夜はここにきてようやく完全に消滅することとなった。
杏子「やったか!!」
マミ「やったわ!!」
ほむ「やったのね……」
ヨミ『えぇい、不吉なことを言うでない…………しかし、おぬしらも見事であったぞ。魔女めは死におったわ』
杏子「ぃぃぃよっしゃぁぁぁぁ!!! やったなぁ! お前ら!」
「「「我らまことの忠臣なれば!!」」」
「「「勝利の誉れも主のものなり!!」」」
杏子「そうかそうか、よくわからないけどお前らもうれしいんだな、うんうん」
上空では凱旋するかのようにV号とロプロスがゆっくりと旋回を続けていた。
ヨミ『いやはや、お前たちが我が配下であったなら、たくさん褒美をやったものを。惜しいことだ』
マミ「まったく、調子のいいこと。顔も見せずに人を顎で使ってくれて」
マミ「あれだけの爆弾に限界まで魔翌力を込めるなんて……それだけで死ぬかと思ったわ」
ほむ「あなたなんて見せ場があっただけまだいい方よ」
82 :
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[sage]:2011/07/28(木) 16:46:50.23 ID:DNOa7QlF0
ヨミ『なに、魔翌力の大小を適切に配分しただけの事だ。お前の力もまた、使いようでは強力無比なものとなろうて』
ほむ「そういうことにしておいてあげましょう………」
杏子「んで、オッサン誰だよ」
「「「!?!?!?」」」
ほむ「くっ」 マミ「ぷふふふっ」
戦いが終わり緊張が解けたのか、二人は何でもないようなことで吹き出してしまう。
なんとも微笑ましい光景であった。
しかし、こうした勝利の余韻も、一人の少年が巨神の肩から降りてきたことで、すっかり台無しにされてしまう。
ほむ「あ、あの男…………」
マミ「うそ、あのロボットを操っていたのは彼だったの?」
一転して漂う剣呑な雰囲気を気にも留めず、バビル2世はほむらの方へずかずかと近づいていく。
彼女をしばらく睨みつけると、どこか得心のいったような顔をした。
バビル「………………ロデム!!」
83 :
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[saga sage]:2011/07/28(木) 16:47:48.68 ID:RoiHXRQCo
メ欄にsagaを入れればフィルター機能をオフに出来ますのよー
魔力
オナニー
殺す
84 :
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[sage]:2011/07/28(木) 16:47:52.02 ID:DNOa7QlF0
バビル2世の足もとに黒い染みが広がり、そこから二人の少女が吐き出される。
美樹さやか、そして鹿目まどかだ。ふたりはぐったりと地面に横たわっていたが、幸い息はあるようだった。
ほむ「ま……まどか……」
ヨミ『なんと抜け目のない奴よ。すでに本丸は押さえておったか…………いや……』
バビル「暁美ほむら。お前はいくつもの世界を渡るたびにあの魔女に敗れ、結局この娘を失ってきた」
バビル「そしてその度にこの娘の蓄え続けたエネルギーが、今ようやっとあの魔女を倒すことで解放されたようだな」
バビル「そうだろう! インキュベーター!」
QB「やれやれ、あれほどの逸材を逃してしまうとは……残念極まるよ」
QB「並行世界と因果が絡み合うだなんてケースは初めてだからね。僕もこんな結末は予想できなかった」
QB「因果のくびきから解き放たれた彼女と契約したところで、精々才能のある魔法少女ぐらいにしかならない」
QB「君たちには随分と骨を折らされたが、僕はまた次の機会を伺うことにするよ……」
どこからともなく姿を見せたインキュベーターは、それだけ言い残すとまたすっと居なくなってしまった。
バビル「僕はもう、この星のために僕の力を使うと決めたんだ……」
バビル「たとえお前たちが何を企てようと、お前たちが作り出したものはすべてこの手で破壊してやる」
85 :
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[sage]:2011/07/28(木) 16:49:12.33 ID:DNOa7QlF0
そういうことだったのか。ありがとうございます。
危うくバビル2世のセリフが伏字だらけになるところだった
86 :
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[sage]:2011/07/28(木) 16:49:46.30 ID:DNOa7QlF0
バビル2世もまた、インキュベーターへの宣戦布告とともに、ロデムを伴いどこかへ跳んで姿を消した。
マミは、バビル2世の残した物騒な物言いにぶるっと背筋を震わせる。
マミ「あ、あれってつまり……」
ヨミ『安心せい。奴の動きに無駄はない』
ヨミ『魔女を殺して回りたいのに、魔女を狩らずに生きてはおれんお主らを殺したとて、やつの苦労が増えるだけだ』
ヨミ『もしお主らが奴の標的になるとしても、それは奴が魔女を殺しつくし、さらにお主らが魔女となった時だ』
杏子「安心していいやら悪いやら……っと、こうしちゃいられない」
杏子「さやか、おいさやか!」
さや「う、う〜ん……きょ、杏子?」
杏子「ったく。目が覚めたらすべて解決してるってのが許されるのは、おとぎ話のお姫様だけだぞ?」
さや「ん? じゃあ杏子は王子様だね」
杏子「なっ!?!?!? ば、馬鹿なこといってんじゃねーよ!! ばーかばーか!」
さや「あっはっはっは!! こいつ赤くなってやんの!!!」
87 :
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[sage]:2011/07/28(木) 16:50:47.75 ID:DNOa7QlF0
ほむらもまどか元へ行き、彼女を抱きかかえる。まどかはすでに意識を取り戻していた。
ほむ「まどか……終わったわ、何もかも……」
まど「そっか…………じゃあこれからはずっとそばにいてくれる?」
ほむ「ええ、約束するわ」
まど「ほんとだよ? 約束破ったら私、魔法少女になっちゃうからねっ」
ほむ「ふふっ、それでは本当にあなたのそばを離れられなくなってしまったわね」
まどかとほむら、杏子とさやかの様子を見て、マミは深く感じ入っていた。
マミ「これぞまさしく大団円といったところね…………でもなんか私あまってない?」
杏子「んなことねーっての!」
マミ「ちょ、ちょっと佐倉さん、そんなにしたら苦しいわ」
杏子はマミの背後から半ば抱きつくように肩を組ませる。
88 :
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[sage]:2011/07/28(木) 16:51:24.30 ID:DNOa7QlF0
杏子「あー、ところでマミ。あの『ジャックポット』ってのはなんだ?」
マミ「えっ……それはその、その場の流れというかなんというか……言ってみたかったというか……」
杏子「なんかの意味があるのか?」
マミ「そ、そういうわけじゃ…………」
杏子「あと、前々から気になってたんだけどさ、マミがいつも……」
さや「んー、なになに?」
マミ「わー! わー! わー!」
杏子「いや、あのな、マミの奴が最後の決めにこう、カッコよくだな……」
マミ「っ!!!!」
さや「あ、逃げた……」
89 :
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[sage]:2011/07/28(木) 16:51:54.13 ID:DNOa7QlF0
―――少女たちのエピローグ 日々はつづく
決戦から数週間の後も、巴マミの自宅の玄関の鍵はいつぞや壊れたままになっていた。
その扉をがちゃりと無遠慮に開く者がいる。
さや「ジャーン!ジャーン!ジャーン! さやかちゃん一番乗りー!」
杏子「あたしも来たぞー」
扉を開けた先にはジトリとこちらを見据える目があった。
さや「げぇっ、ほむら」
ほむ「なにが一番乗りよ。遅刻よ遅刻。罰としてあなたはマミの相手をしなさい」
さや「マミさんの?」
リビングの方でマミが卓上カレンダーとにらめっこをしながらうんうんと唸っている。
マミ「あー、ほんとこまったわー。どうしましょう、本当にこまったわー。あー困った困った」
ほむ「ほら、いかにも何か聞いて欲しそうでしょう? 早くなさい」
さや「う、うん……あのーマミさん? なにか困ったことでもあったんですか?」
90 :
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[sage]:2011/07/28(木) 16:52:28.53 ID:DNOa7QlF0
マミ「え? 困ってるように見えた? あらごめんなさい。あまりに忙しくてつい雰囲気ににじみ出てしまったのね」
さや「……で、一体どうしたんです?」
マミ「それがねぇ……ここ最近、テレビでどこもかしこも魔法少女とか魔女とかの特集やっているでしょ?」
さや「うーん、確かに不自然なぐらいやってますね。都市伝説だとかアンビリーバボーな感じで」
マミ「他にもネットとかでもかなり有名になってるじゃない? はぁ〜本当に困ったことになったわぁ〜」
さや「…………」
マミ「いえね、クラスの皆に私が魔法少女してるってこと、バレてしまったのよ」
マミ「別にわざとじゃないのよ? ついもののはずみで、ちょっとした事故というか……」
マミ「皆の目の前で変身するところを見られてしまったのよねぇ……不覚だったわ……でもそうしたら大変!」
マミ「急に皆から質問攻めにはあうわ、連絡先教えてって言われるわ、写メバシバシ撮られるわで困ったものよ」
マミ「『友達になってもらっていい?』なんて言われても、友達ってそんな簡単になるものじゃないじゃない?」
マミ「でもまぁ無碍に断るのもかわいそうだからってOKしていたら、ほら見てよ、これ」
マミはぎっしりと書き込みのされたカレンダーをさやかに突き出す。
91 :
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[sage]:2011/07/28(木) 16:53:07.00 ID:DNOa7QlF0
マミ「毎日誰かと遊ぶ予定ばっかりになってしまって……まったく……私の体は一つしかないよ?」
マミ「私はあなたたちとのお茶会を優先したいって言うのに……人気者はつらいわぁ……」
マミ「普通の人にはこの苦労は分からないでしょうねぇ……静かで孤独な日々が懐かしいぐらいよ……」
さや「……は、……はぁ……」
ほむ「というわけでしばらくあなたはマミ係ね。まぁ二三か月の辛抱だとは思うけれど」
さや「そだね……」
杏子「ん? 友達たくさんできたんだろ? よかったじゃんか!」
92 :
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[sage]:2011/07/28(木) 16:53:41.97 ID:DNOa7QlF0
―――街角
まど「いっけない、遅刻遅刻ー。やっぱりほむらちゃんのそばを離れるといいことなないぁ」
まどかはどこぞのウサギのように時計を気にしながらお茶会へと急いでいた。
まばらに歩く人の中から、まどかは忘れもしない学生服のあの少年の姿を目撃する。
まど「あ、あの人…………」
しかしその少年は、最初からまどかの方を見もせず気にも留めず、何かを探してまたどこかへ走り去ってしまった。
まど「結局なんだったんだろう…………」
運命に翻弄され続けた少女たちは、ついに日常を取り戻した。
93 :
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[sage]:2011/07/28(木) 16:54:15.59 ID:DNOa7QlF0
―――超人たちのエピローグ 戦いはつづく
ワルプルギスとの戦いの後、バビル2世はしもべ達の修理を兼ね、一時バベルの塔へと帰還していた。
バビル「今回ばかりはヨミに完敗したな。僕が独りで何日もかけて手に入れるような情報を」
バビル「ヨミは組織の力でいとも簡単に調べることができるんだ」
バビル「もし本当に僕独りが今回の事に挑んでいたら、今頃取り返しのつかないことになっていたはずだ……」
『バビル2世に報告があります』
バビル「どうした」
コンピューターは大きなモニターをいくつも分割し、さまざまな映像を映し出した。
またさまざまな国の言葉も制御室の中をやかましく飛び交う。
そこで彼は予想だにしていたなかった光景を目撃する。
「「今回の騒動について、先ほど国際警察機構のトップに就任したライセ氏からの声明が……」」
バビル「あやつめ……この上何を企んでいるというのだ」
『これは世界各国のニュース映像です。これとは別にこのようなライブ中継も行われていました』
94 :
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[sage]:2011/07/28(木) 16:54:46.45 ID:DNOa7QlF0
バビル2世や魔法少女達が必死の戦いをしている頃、V号から撮られたと思しきワルプルギスとの決戦の模様が
世界各国同時生中継で放送されていたのだ。
しかもすべてのテレビ局がそろいもそろって同じ映像を流していた始末である。
バビル「………………しかし今はインキュベーターだ。ロプロスは行けるか!」
―――見滝ヶ原 街中
インキュベーターと戦う意を決し、まずすべての元凶であるインキュベーターの端末を破壊しつくすために
バビル2世は見滝ヶ原の地へ舞い戻ってきていた。
今まで一番状況の集中していた場所だったことから、端末の数も極端に集中していたので、本来ならば格好
の狩場になるはずだった。
しかし、バビル2世がどれだけ探し回ろうと、インキュベーターを見つけることはできなかった。
バビル「もはやこの地は用済みということか。あやつら引き際も早いようだ……」
『インキュベーターは世界中におるのだ。お前独りでどうして探すことができよう』
声はバビル2世の目の前にいる厚くコートを着込んだ男から発せられていた。おそらくロボットなのだろう。
バビル「探すだけならできる。が、僕が一匹始末する間に、また魔法少女は生まれ、魔女は人を食うだろう」
95 :
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[sage]:2011/07/28(木) 16:55:20.77 ID:DNOa7QlF0
ヨミ『ふんっ、どうした、襲いかかっては来ないのか?』
バビル「今はお前とやりあう気分じゃない」
バビル2世は初めて経験する敗北に、ヨミとやり合う気合を無くしていた。
バビル「テレビ局の様子がおかしいのはお前の仕業だな。また改造人間でも送り込んだか」
ヨミ『いつまでもそんな古めかしい手を使うわしではない。あやつらはあやつらの意思でわしに従っているのだ』
バビル「なにっ、性懲りもなくまた世界征服をたくらむか! また僕に手ひどくやられたいのか!」
ヨミ『世界征服なぞとうに終えたわ。この40年で世界は大きく変わったのだ。もはや世界を支配するのは力ではない』
バビル「…………もしや、サルタンブラザーズカンパニー!!!」
ヨミ『その通り。あの時わしが手中に収めた多国籍企業を使い、わしは世界経済を表だって支配する力を手に入れた』
ヨミ『改造人間なぞ必要ない。武力もだ。わしが世界に号令を出すという野望はついに成し得たのだ』
バビル「そうだとして、ならなぜ僕にそんな話をする。僕に仲間になれとでも言うのか」
ヨミ『分かっているのなら話は早い。バビル2世よ、わしの同志となれ』
ヨミ『この期に及んでわしを打倒しようというのは、それは世界経済を崩壊させるのと同じことだ』
バビル「そんなことは知ったことか! 僕がお前と手を取り合うことは未来永劫にないと知れ!」
96 :
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[sage]:2011/07/28(木) 16:57:25.50 ID:DNOa7QlF0
注 サルタンブラザーズカンパニーとは原作中に登場する世界第一位の国際企業
ヨミの遺体を回収し蘇らすことでその力を利用しようとしていたが、
逆に復活したヨミにその経済力を乗っ取られてしまうだろうとバビル2世は予言していた。
97 :
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[sage]:2011/07/28(木) 16:57:58.26 ID:DNOa7QlF0
ヨミ『ではインキュベーターはどうするつもりだ』
バビル「…………おまえこそ魔法少女を集めてどうしようというのだ。あれらはいずれ魔女になるのだぞ」
ヨミ『お前はつくづく人を使うということ知らん。なに、十四かそこらの小娘ごとき、御するに容易いわ』
ヨミ『大人がしっかり面倒さえ見てやれば、絶望するどころか、子供なぞまったく能天気なものよ』
悪役らしからぬありがたいお言葉である。
―――数年後 アメリカ ニューヨーク
有名なコンサートホールから、日本人の少女と女性が仲良く談笑しながら出てきていた。
杏子「結構よかったじゃん」
さや「あんた途中から寝てたでしょ?」
杏子「め、目を閉じてしっかり聞いてたんだよ!」
杏子「お、お前こそサインなんてもらっちゃってさぁ……結局未練タラタラなんじゃないか?」
さや「いやいや、またネットで高く売り裁こうと思ってね。いやー幼馴染に有名人がいるとお財布が温かいわぁ」
98 :
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[sage]:2011/07/28(木) 16:58:38.51 ID:DNOa7QlF0
さや「それにさぁ、もう十年近く経つんだよ? あんな男、全然気にもしてないって」
杏子「ならいいけどな……」
さや「なによぅ、妬いてるの?」
杏子「ば、ばっかいうなよ!! ど、どうしてそういう話になるんだよ!!! アタマおかしーんじゃねーの!!」
さや「あっはっはっは!! あんたってば本当に変わってないわねぇ。本当に……あの時のまま…………」
一瞬さみしげな顔をした女性のすぐ近くに、コンサートホールの奥、演者の楽屋を透視している少年の姿があった。
無論、バビル2世である。
バビル「あの男、僕の血で力をつけて悪用するようなら、この手で始末しようと思ったが……」
バビル「どうも僕の輸血の悪い影響は出ていないようだな。これより後は放っておいてもよさそうだ」
99 :
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[sage]:2011/07/28(木) 17:09:22.90 ID:DNOa7QlF0
この数年の間で魔法少女達をとりまく状況は大きく変わっていった。
まず、世間一般の認知。
最初は都市伝説や怪しいうわさ程度のものだったが、しきりにテレビやインターネットで扱われるようになった
魔法少女や魔女の話題は、次第に人々の記憶に深く残っていった。
世の人々が彼女たちの存在をぼんやりと認識しだすと、今度は問題の深いところが明らかになった。
インキュベーターの存在である。
魔法少女や魔女は実在する。ならばそれらは一体どこから来てどこへ行くのか?
その当然の疑問が人々の頭に残る。
そこでライセなる人物が指揮する国際警察機構が表舞台に登場する。
国際警察機構は、人類に干渉する異星体、インキュベーターの存在を公表したのだ。
彼らのやり様を実際に魔法少女達の口から語らせ、人類をないがしろにする宇宙人の存在を知らしめる。
勿論彼女たちの存在を懐疑する人々もいたが、実際彼女たちの魔法を目にしてしまえば
それが超能力ショーの類でないことをすぐに思い知らされ、皆一様に考えを改めた。
こうして魔法少女、魔女、そしてインキュベーターの存在は全世界の人々の周知するところとなったのだ。
そして状況はさらに変化する。
国際警察機構が世界各国に散らばる魔法少女達を招集し始めたのだ。
自由意志のもとに集められた彼女たちは、練達した魔法少女の指導の下、まず十分な戦闘訓練を施される。
そうして力を付けたのち、優秀な大人たちのサポートの元、国際警察機構のエキスパートとして活躍する。
彼女らはAからCまで能力別にランク付けされ、それぞれの力に見合った任務に就いた。
また、彼女たちは然るべき待遇と報酬を与えられ、世の人々からは英雄として羨望の眼差しを受けることとなる。
100 :
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[sage]:2011/07/28(木) 17:09:57.20 ID:DNOa7QlF0
このように、力をつけ組織的になった彼女たちの働きは、瞬く間に全世界の魔女を駆逐してみせる。
そもそもの魔法少女が魔女と化す例が稀となっていたのだから、魔女の全滅は時間の問題でもあった。
―――国際警察機構 シベリア支部
QB「こんなところまで出張らなくてはならないとは……任務とはいえ過酷だね、マミ」
QB「いや、国際警察機構のA級エキスパート、『魔弾のマミ』とお呼びすべきかな」
マミ「あなたは……キュゥべえ……」
QB「キュゥべえか……まだ僕の事をそう呼んでくれる子がいるとは、『感動』的だな」
QB「と、言えるような感情を僕らが持っていれば、こんなことにはなっていなかったんだろうけどね……」
マミ「…………他の子に見つかる前にどこかに行きなさい。あなたの事は報告しないでおいてあげる」
QB「優しいね、君は……今日は君にお別れを言いに来たんだ」
マミ「お別れ?」
QB「そう、もはやこれ以上この星で活動することに意味がなくなってきた。僕たちはお役御免になったのさ」
マミ「そうなの………………じゃああなたこれからどうするの?」
101 :
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[sage]:2011/07/28(木) 17:10:25.67 ID:DNOa7QlF0
QB「どうもこうもない。僕たちはただのシステムだからね。君の方こそ、こうやってずっと戦い続けるのかい?」
QB「A級エキスパートより上の地位、断ったそうじゃないか」
マミ「私はね、『戦場の死神』に魅せられてしまったのよ……」
QB「相変わらず好きだね、そういうの」
―――バベルの塔 コンピューター制御室
『あれ以来インキュベーターの活発な動きは見られません。脅威は去ったと言えるでしょう』
バビル「そうか。結局僕には何もできなかったな」
バビル「ヨミより僕の方が力がある。でもヨミが持っていて僕が持っていないもの、それが勝敗を分かったんだ」
バビル「…………しもべ達の改良はすすんでいるか?」
『ほぼ完了しました。バビル2世の念波だけに反応するようにし、装甲や出力も高めてあります』
『またこの改良に際し、ロプロス、ポセイドン、ロデムの呼称をそれぞれ…………』
『ガルーダ、ネプチューン、アキレス、と改めます』
バビル「よし。そうだな、出来れば僕の命令で動くのでなく、僕の意思のままに動くロボットも必要だ」
102 :
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(チベット自治区)
[sage]:2011/07/28(木) 17:10:57.12 ID:DNOa7QlF0
バビル「人工知能では対処できない敵だっていると思い知らされたからな」
『それを見越し、塔に残されていた“ガイアー”の設計図を再利用し、その開発を始めています』
バビル「よろしい……しかしこうして戦力だけを強めていってもダメだ」
バビル「僕独りでは結局あの時のように最後には手が足りなくなってしまう」
バビル「だが、僕は決めたんだ。僕の力でこの地球に平和の火を灯すと……」
バビル「決して消えることのない『大きな火』を灯すんだ」
バビル「そのためには僕も人の力を借りねばなるまい」
バビル「しかし、僕にはヨミのような人脈も人望もありはしないぞ……」
『ご心配なく、それもすでに計画の内でございます』
『こちらであらかじめ、バビル2世の思想に賛同するような、十人の傑物と接触を果たしておきました』
バビル「おっ、やはりお前は策士だな。僕もお前に騙されていたことがあった程だ。だが頼もしいぞ」
『このまま組織作りの計画はこちらに一任されますか?』
バビル「ああ、頼む。細かい仕事は任せるよ」
『では組織の名称もこちらで考えておきます』
バビル「そうだな………いや、こういうのはどうだろう」
バビル「ビッグ ファイア」
戦いはつづく
103 :
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(チベット自治区)
[sage]:2011/07/28(木) 17:17:54.10 ID:DNOa7QlF0
一応これで終わりです。
バビルが好きな人にはバビルが手ぬるすぎて申し訳ない。
ガチバビルならたぶん20行ぐらいで魔女もなにも皆殺しにしてQBを宇宙に放り出してるでしょう。
今ヤングチャンピオンかどこかでリメイクというかスピンオフみたいなものもやっているので
興味のある方は是非。でもできれば原作が最高に面白いのでそちらを読むのをお勧めします。
104 :
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(群馬県)
[sage]:2011/07/28(木) 17:20:02.47 ID:VwF/CpQVo
我らがビッグ・ファイアのために!
105 :
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(チベット自治区)
[sage]:2011/07/28(木) 17:20:37.49 ID:RoiHXRQCo
ぽつかれー
魔法少女vs十傑集は是非とも見てみたいな……
106 :
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(チベット自治区)
[sage]:2011/07/28(木) 17:22:20.56 ID:DNOa7QlF0
来るべき近未来
人類は第三のエネルギー革命 ソウルジェムの発明によって かつてない繁栄の時を迎えていた
だが、その輝かしい平和の影で、激しくぶつかり合う二つの力があった。
世界征服を策謀する秘密結社 『QB団』
「我等! インキュベーターのために!!」
かたや 彼等に対抗するべく世界各国より集められた 正義の魔法少女たち
『マジカル警察機構』
そしてその中に 史上最強の百合っ娘 『ジャイアントホム』を操縦する 一人の少女の姿があった
名を 鹿目まどか
「砕け!ジャイアントホム!」
「ホムゥゥゥゥッッッ!」
まどか「ジャイアントロボ!」に つづかない
今からまた絵を描いたらその間に落ちてる、なんてことなないのかな?ここは
107 :
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[sage]:2011/07/28(木) 17:23:53.45 ID:E//xhhIIO
乙だぜ
おもしろかった
ここは依頼しないとスレが消えないようになってる
108 :
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(群馬県)
[sage]:2011/07/28(木) 17:24:22.68 ID:VwF/CpQVo
むしろ自然に落ちることがない
109 :
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(チベット自治区)
[sage]:2011/07/28(木) 17:33:44.90 ID:DNOa7QlF0
なるほどそれは便利。
一度VIPでマミさんがダイエットするSSをやったときに、あとがきにスレンダーなマミさん絵を描こうとしたら
瞬く間に落ちたことがあって悲しい思いをしたことがありました。
ここは非常に快適だなぁ。ダブルオーとのクロスもこちらで投稿させていただくことにしよう。
110 :
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(群馬県)
[sage]:2011/07/28(木) 17:43:14.23 ID:VwF/CpQVo
>>83
がしてくれてる助言は見間違いやすいけど saga(さが) だからね
111 :
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[sage]:2011/07/28(木) 18:14:32.32 ID:JKjsBTQh0
乙でした
>>103
ぶっちゃけバビルはここまで鬼畜じゃないだろwwwwと思いながら101読み返したら、割と鬼畜だった
『101―リターナー』のルートを辿ったバビルならこんな感じかもね
ヨミとバビルと魔法少女達の共闘が地味に熱かったし、予想外のハッピーエンドにもほっこりさせられました
なにはともあれ、乙
112 :
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(チベット自治区)
[sage]:2011/07/28(木) 19:01:23.48 ID:DNOa7QlF0
>>111
101でバビルが自分を助けに来てくれた救急隊員をおとりにして見殺しにしたシーンはガクブル
しかもわざと。
そういうところをあまり書けなかったのはちょっと残念です。
113 :
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[sage]:2011/07/28(木) 20:11:56.43 ID:M+CcHWs8o
乙です。
やっぱりヨミ様は凄いお方。
けど将来、九大天王とマミ杏ほむが一緒にいる所想像したら何とも言えない気持ちになるのはなぜなんだろう。
114 :
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(新潟・東北)
[sage]:2011/07/28(木) 20:18:52.68 ID:qOEEf4SAO
乙
我らがビッグ・ファイアのために!
115 :
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[sage]:2011/07/28(木) 23:56:19.39 ID:0MWziYeDO
いや懐かしい面白かった乙
スピンオフやってるのか
116 :
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[sage]:2011/07/29(金) 14:31:31.70 ID:DzdnB/+w0
糞おもしろかった!
117 :
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(神奈川県)
[sage]:2011/07/30(土) 17:05:06.38 ID:92cBPdAAo
ヨミ様が「鷹の爪団」の総統閣下と被って見えてしまったのだが・・・・
118 :
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[sage]:2011/08/05(金) 01:49:39.68 ID:ESSRV8two
乙
人類の守護者且つ管理者のビッグ・ファイア様の目線は人間のソレじゃないね。
ヨミ様と違って完全に人間をやめちゃってるから超非情。
119 :
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[sage]:2011/08/05(金) 19:52:08.23 ID:gNoNLgvSo
アニメ版しか知らんのだけど、原作のバビルって外道なのな……
120 :
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(関東・甲信越)
[sage]:2011/08/20(土) 09:03:24.82 ID:f7BxB33AO
むしろ漫画版しか知らんがここまで人間やめてたか?
普通にいい人だった気が……
101読んでないからアレだけど
しかし、ヨミ様は普通にいい人だよな
バビル2世は世界征服って言葉で反発したとしか思えん程に
121 :
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(東日本)
[saga sage]:2011/08/21(日) 00:09:54.93 ID:YCYDPame0
少年チャンピオン時代のものしか知らないw
纏まってスイッと読めました。作者乙です。
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