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IS三巻再構成 「だったら行かなきゃね」 -
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1 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2011/08/06(土) 14:34:28.28 ID:e/0Wv889o
IS(インフィニット・ストラトス)の原作三巻の再構成ものです。
再構成ものですので台詞が変わっていたり、ありもしないシチュエーションが起きたりします。
登場人物は一夏、箒、セシリア、鈴、シャル、ラウラ、千冬姉、山田先生です。
それと再構成ものとして白い騎士の女性とワンピースの女の子を一夏が覚えてたりします。
予定としては、三巻が終わり次第、四巻、五巻……と続けれたらいいなぁと思います。
では、次レスからスタートです。
1.5 :
荒巻@管理人★
(お知らせ)
[
Twitter
]: ID:???
【 このスレッドはHTML化(過去ログ化)されています 】
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もし、探しているスレッドがパートスレッドの場合は次スレが建ってるかもしれないですよ。
ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713522243/
旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713353246/
木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1713351945/
いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713279251/
【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713277692/
こんな恋愛がしたい 安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713183168/
【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713091115/
アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713089503/
2 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/06(土) 14:35:17.97 ID:e/0Wv889o
「呼んでる行かなきゃ」
「え?」
ふと横を目にすれば既に少女の姿はいなくなっていて、辺りを見回すけれど姿はない。
数秒ほど辺りをくまなく見回した後、ゆっくりと体を反転させる。
一歩目を踏み出そうとしたところで後ろから声が投げかけられた。
「力を欲しますか?」
「え……」
急いで振り向くと、波の中膝元までを海に沈めた女性が立っていた。急に目の前に現れたことに驚きつつ目の前の女性の姿を見た。
その姿は、白く輝く甲冑を身に纏った騎士さながらの格好だった。
大きな剣を目の前に立ててそれに両手を預けている。その顔は目を覆うカードで半分以上が見えない。
何故かその人の事を知っている気がした。
「力を欲しますか……? 何のために……」
「……そうだな。友達を――いや、仲間を守るためかな」
「仲間を……」
「あぁ。なんだかんだでさこの世界には理不尽な事が多いだろ。それらからさ仲間を守りたいと思うんだ」
3 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/06(土) 14:36:10.41 ID:e/0Wv889o
思い描くはあの時の自分を助けてくれた姉の姿がある。二連覇を破棄してまで助けてくれた姉の姿。
せっかくISという守れる力を手に入れたんだそれを上手く使いこなしたい、そのために力が欲しかった。
「そうですか。ならもう私からは言うことはありません」
何故かカードで顔が半分も見えないはずなのに目の前の女性は微笑んでいる気がした。
そして女性の姿はうっすらと見えなくなっていく、もう既に半分以上が見えない。
けれど、口の動きで大丈夫、大丈夫と言ってる気がした。
「だったら行かなきゃね」
「えっ?」
声に気付いて後ろを振り返ると白いワンピースに麦わら帽子を被った女の子が立っている。
人懐っこい笑み。無邪気そうな顔でじいぃと俺を見つめている。
「ほら、ね?」
腕を取られて、にこりと微笑みかけられる、そのしぐさに何だか照れくさそうになりながら
「あぁ」
と頷いた、するといきなり世界が白く輝き始める。
「なっ?」
「心配しないで。大丈夫、君なら彼女達を助けられる」
「え? 今何て―――
答えは返ってこなくて、でも俺は夢から覚めたように起き上がる。
右腕にある白いガンレットは先ほどより輝いているように見えた。
「待ってろ箒、俺が助けてやるからな」
そういえば、夢の中に出てきた女性は誰かに似ていた。
4 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/06(土) 14:36:47.46 ID:e/0Wv889o
白い――騎士の女性。
5 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/06(土) 14:37:42.17 ID:e/0Wv889o
「ぐぅぅぅ」
およそ女の子には似つかわしくない声を上げていると思いながらも、喉から苦しげな声が漏れてしまう。
福音の手は首を掴んで離さず、更にエネルギー状へと進化した『銀の鐘』が機体をほぼ全て包み込んでいた。
無様だな私は。新しい力におぼれ結局は、一夏や仲間を傷つける結果となってしまった。
死へのカウントダウンが始まる中、心の中はある一つの事でいっぱいになっている。
会いたい。
一夏に会いたい。
すぐに会いたい、今会いたい。
あぁ、あぁ、会いたい。
「いち、か……」
しらずしらずの内に自分の口は彼の名前を呼んでいた。
6 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/06(土) 14:38:18.74 ID:e/0Wv889o
「一夏……」
もう一度呼ぶけれど、輝きが増す翼を前に私は覚悟を決めて目をつぶることしか出来なかった。
ィィィィンッ……!
『!?』
福音は私の首正確に言えば、紅椿の首を掴んでた手を急に離した。
まるで機械なのに危機を察知した動物のような動きで、
そしていきなりの事に驚いてる私の目に映ったのは強力な荷電子砲を受けて吹き飛ぶ福音の姿だった。
(何が、起きて――)
戸惑ってる私の耳に届いたのはさっきから思って止まない声だった。
「俺の仲間は、誰一人としてやらせねぇ!」
私の視線の先には何よりも、白く、輝きを放つその機体がある。
「あ……あ、あっ……」
じわりと目じりに涙が浮かんでく。
わずかに潤んでる視界に見えるのは、白式第二形態・"雪羅"を纏った一夏だった。
7 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/06(土) 14:39:06.85 ID:e/0Wv889o
何かに導かれるように俺はISを起動させ、白式第二形態・雪羅で福音を探していた。
途中、何人かの先生に待ってと言われたが無視してきたので千冬姉に怒られるであろう。
けれどそんな事をしても、頭の中は仲間を助けたいという一つしかなかった。
何故第二形態になってるのかも、体の傷が治っていることも分からない。
でもそんな状態でも箒、セシリア、鈴、シャル、ラウラを助たいという気持ちだけはあった。
『複数のISの反応を確認、その内五機はプライベートチャンネル登録者と確認』
ハイパーセンサーで確認するとセシリアとシャルとラウラと鈴は戦闘に参加していない。
ただ唯一箒の機体、紅椿だけが福音と戦っているというより追い詰められていた。
「荷電粒子砲に切り替える、目標は福音に設定」
雪羅がゆっくりと量子変換し荷電粒子砲へと姿を変える。
マニュアルでもう一度標準を定めてから解き放つ。
見事命中し福音を紅椿から離れさせる、その隙をつくように俺は紅椿に接近しながら言う。
「俺の仲間は誰一人として、やらせねぇ!」
8 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2011/08/06(土) 14:41:28.96 ID:e/0Wv889o
「一夏っ、一夏なのだな!? 体は、傷はっ……!」
「おう。待たせたな」
「よかっ……よかった……本当に……」
「なんだよ、泣いているのか?」
「泣いてなどいないっ!」
ぐしぐしと目元をぬぐう箒に、俺はやさしく頭を撫でてやる。
「心配かけたな。もう大丈夫だ」
「し、心配してなどっ……」
どうも強がりばかり出てくる様子の箒らしい。
俺はポニーテールではないその髪型がやっぱり気になった。
「ちょうどよかったのかもな。これ、やるよ」
「え……?」
俺は手にしている物を箒に渡す。
9 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/06(土) 14:42:12.13 ID:e/0Wv889o
「り、リボン……?」
「誕生日、おめでとうな」
「あっ……」
七月七日。今日が箒の誕生日。
とは言っても誕生日プレゼントに何を買っていいか迷った俺は、シャルに買い物を付き合ってもらったわけなんだが。
「それ、せっかくだし使えよ」
「あ。ああ……」
「じゃあ、行ってくる。――まだ、終わってないからな」
言うなり、俺はこちらに向かってきていた福音へと急加速、正面からぶつかった。
「再戦と行くか!」
《雪片弐型》を右手に構え、斬りかかる。
それをひらりをのけぞってかわした福音を、左手の新兵器《雪羅》で追う。
第二形態に移行したことで現れたこの設備は、状況に応じていくつかのタイプに切り替えれるらしい。
俺のイメージに応えるように、その指先からはエネルギー刃のクローが出現する。
10 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/06(土) 14:43:04.15 ID:e/0Wv889o
「逃がさねぇ!」
一メートル以上に伸びたクローが福音の装甲を斬る。
シールドエネルギーに阻まれはしたが、その福音は確実に福音を捉えていた。
『敵機の情報を更新。攻撃レベルAで対処する』
エネルギー翼を大きく広げ、さらに胴体から生えた翼を伸ばす。
そして次の回避の後、福音の掃射反撃がはじまった。
「そう何度も食らうかよ!」
俺は避けようとせず、左手を構えて前へと飛ぶ。
―雪羅、シールドモードへ切り替え。相殺防御開始―
キンッ! という甲高い音を鳴らして、左手の雪羅が変形する。
それから光の膜が広がって、福音の弾雨を消していく。
・・・・・・・・・
そう、これはつまり、エネルギーを無効化する零落白夜のシールド
11 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/06(土) 14:43:37.40 ID:e/0Wv889o
当然エネルギー消耗は激しいが、完全に攻撃を無効化できる以上、圧倒的にこちらが有利となった。
福音に実弾兵器がないのは、スペックカタログで確認済みだ。
「うおおおっ!」
強化され、大型四機のウイングクラスターが備わった白式・雪羅は。二段階瞬時加速可能にしている。
複雑な動きをする福音も、最高速での回避が可能な訳ではないのだから、これで十分追いつける。
『状況変化。最大攻撃翌力を使用する』
福音の機械音声がそう告げると、それまでしならせていた翼を自身へ巻き付け始める。
それはすぐに球状になって、エネルギーの繭にくるまれた状態へと変わった。
――まずい。イヤな予感がする。
それは、最悪なことに的中した。
翼が回転しながら一斉に開き、全方位に対して嵐のようなエネルギーの弾雨を降らせる。
それはつまり、ダメージから回復しきっていない鈴たちにも攻撃が及ぶということだった。
(くっ! 守り切れるか――!?)
俺はすぐさま仲間の盾に走ろうとするが、それを怒鳴り声に蹴飛ばされる。
「何やってんのよ! あたしたちは腐っても代表候補生よ?
余計な心配してないで、さっさと片付けちゃいなさいよ!!」
「鈴……わかった!」
仲間を信じる。今の俺にはそれしかない。だったら、どこまでも信じきってやる。
俺は右手の雪片と左手の雪羅、それぞれから零落白夜の光刃を作り出して、再度福音へ飛び込んだ。
12 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2011/08/06(土) 14:45:32.93 ID:e/0Wv889o
投下終了です。意見等ありましたらお願いします。
次回投下は月曜日辺りになると思います。
ではでは。
13 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage saga]:2011/08/06(土) 16:31:28.44 ID:Nwa1yhsy0
なんで同じスレもう一つ立てたんだ?
どっちか削除依頼だしといてね
14 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/06(土) 17:47:43.96 ID:/vL+Z/cAo
>>13
いや、出してあるよ
15 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2011/08/06(土) 22:45:41.60 ID:e/0Wv8890
すいません。
同じスレを立てたのは、スレタイが分かりにくかったという理由です。
月曜に用事が出来てしまったのでこれから月曜の分を投下します。
IDが変わってますが1です。
16 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2011/08/06(土) 22:47:53.94 ID:e/0Wv8890
(一夏が駆けつけてくれた……!)
それはもう、嬉しいを飛び越えていた。
心が躍動する。熱を持って、跳ねる。
そして戦う一夏の姿を見て、何よりも強く願った。
(私は、ともに戦いたい。あの背中を守りたい!)
強く、強く願った。
そして、その願いに応えるように、紅椿の展開装甲から赤い光に混じって黄金の粒子が溢れ出す。
「これは……!?」
ハイパーセンサーからの情報で、機体のエネルギーが急激に回復していくのがわかる。
――『絢爛舞踏』、発動。展開装甲からのエネルギーバイパス構築……完了。
項目に書かれているのはワンオフ・アビリティーの文字だった。
(まだ、戦えるのだな? ならば――)
一夏に渡されたリボンで髪を縛り、気を引き締めて福音を見る。
(ならば、行くぞ! 紅椿!)
赤い光に黄金の輝きを得た真紅の機体は、夕暮れの空を裂くように駆けた。
17 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2011/08/06(土) 22:49:00.03 ID:e/0Wv8890
零落白夜の光刃がエネルギー翼を断つ。
しかし、両方の翼を斬るのは至難の業で、またしても二撃目を回避されてしまう。
そうしている間に失った翼は再構築されて、こちらへと強力無比な連続射撃を行ってきた。
「くっ!」
――エネルギー残量二〇%。予測活動時間、三分。
(くそっ! このままじゃ……)
リミッターなしの軍用ISがどれほどのエネルギーを持っているのか、見当もつかない。
対して自分の機体は稼働限界が近づいている。それは焦燥へと変わって、じわじわと俺の心を焼いていく。
「一夏!」
「箒!? お前、ダメージは――」
「大丈夫だ! それよりも、これを受け取れ!」
箒の――紅椿の手が、俺の白式へと触れる。
その瞬間、全身に電流のような衝撃と炎のような熱が走り、一度視界が大きく揺れた。
「な、なんだ……? エネルギーが――回復!? 箒、これは――」
「今は考えるな! 行くぞ、一夏!」
意識を集中させ、雪片弐型のエネルギー刃を最大出力まで高める。
巨大な光の刃を、俺両腕で支えて振るった。
「うおおおっ!」
福音は俺の横薙ぎを縦軸一回転して回避、こちらを捉えると同時に光の翼を向けてくる。
18 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2011/08/06(土) 22:49:27.97 ID:e/0Wv8890
―かかった!
「箒!」
「任せろ!」
俺の方に向けられた翼を、紅椿の二刀が並び一断の斬撃で断ち切る。
「逃がすかぁぁっ!」
さらに脚部展開装甲を開放し、急加速の勢いを乗せた回し蹴りが福音の本体へと入った。
予想外の攻撃に大きく姿勢を崩した福音を、俺はしたから上へ返す刃で残りの光翼もかき消す。
そして、最後の一突きを繰り出そうとする俺に、福音は体から生えた翼全てで一斉射撃を行ってきた。
(ここまで来たら、もう引かねぇ!!)
全身にエネルギー弾を浴びながら、俺は福音の胴体へと零落白夜をの刃を突き立てた。
「おおおおおっ!!」
エネルギー刃特有の手応えを感じながら、さらに俺は全ブースターを最大出力まで上げる。
押されながらも、俺の首へと手を伸ばす福音。
その指先が喉笛まで食い込んだところで、銀色のISはやっと動きを停止した。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」
アーマーを失い、スーツだけになった操縦者が海へと堕ちていく。
「しまっ――!?」
「――ったく、ツメが甘いのよ、ツメが」
ようやくダメージから回復したらしい鈴が、海面接触ギリギリで操縦者をキャッチした。
同じく、セシリアとシャルとラウラも無傷とはいかないが無事のようだ。
「終わったな」
「ああ……。やっと、な」
あれほどまでの青さを誇った空はもうすでになく、夕闇の朱色に世界は優しく包まれていた。
19 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2011/08/06(土) 22:51:01.58 ID:e/0Wv8890
「作戦完了――と言いたいところだが、お前たちは独自行動により重大な違反を犯した。
帰ったらすぐ反省文の提出と懲罰用の特別トレーニングを用意してやるからそのつもりでいろ。
そしてそこで縛られている織斑一夏は――後でもう一度説教だ」
「はい」
勝利した俺達を待っていたのはそれはそれは冷たいものだった。
腕組みで待っていた千冬姉に俺たちはきつく言われ、勝利の感触さえおぼろげだ。
大広間に正座。この状態で三〇分は過ぎた気がする。
セシリアの顔色が真っ赤から真っ青になりはじめているのが、危険信号の目安だ。
「あ、あの、織斑先生。もうそろそろそのへんで……。け、けが人もいますし、ね?」
「ふん……。ではこれにて解散。織斑、ちょっと来い」
「えっと。俺動けないんですけど……」
「ほう? なら引きずっていってやろう」
「すいませんでした。自分で歩きます!」
腕を使わずに足の力だけで立ち上がる。
しかし、正座をしていたせいもあってか足の感覚が無かった。
「とりあえず、私達の部屋で待っていろと言いたいところだがスポーツドリンクを飲んでから来い」
「分かりました」
「では先に戻っておく。まぁ、よくやった。全員、よく無事に帰ってきたな」
20 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2011/08/06(土) 22:51:51.92 ID:e/0Wv8890
襖を開けようとしてその手を止めながら、こちらを見ずに千冬姉は言った。
そしてみんながあっけに取られている中、千冬姉は大広間から出て行った。
「で、では、みなさん。スポーツドリンクです」
しどろもどろになりながら山田先生は言う。
それをまだ夢を見ているような感覚で俺たちは受け取った。
「では診察をしますので、みなさん服を脱いでください」
「いた。これ口の中切れてるな」
さっきの戦闘中に切ったものだろう。でも戦闘中は興奮してたのか全く気付かなかった。
俺は千冬姉が出て行った襖を見ながら、心の中で感謝をしておいた。直接言ったら嫌がるだろうから。
しばらく見つめてた俺だったが後ろからの若干きつい五つの視線に気付いて振り返る。
「「「「「…………」」」」」
「あの、織斑君? みんなの診察しますから、ええと――」
「「「「「とっとと出てけ!」」」」」
声の勢いに押されるように、慌てて閉め忘れていた襖から廊下に脱出。
ぴしゃりと閉じられた襖に、俺は背中を預けて深く息を吐いた。
「ふぅ……」
ともかく、今回の戦いは終わった。
考えなければいけないこと、整理しなければならないことが山ほどあったが、とりあえず――
(仲間を、守れたよな。俺は)
俺と――白式は。
それにガントレットが光って応えてくれた気がした。
21 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2011/08/06(土) 22:56:12.51 ID:e/0Wv8890
投下終了です。
ID変わってるとか言ったのに同じとか……。
多分次回投下は火曜日だと思います。
ではでは。
22 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/07(日) 00:01:14.05 ID:AQ3e3g4uo
おつ
23 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(九州)
[sage]:2011/08/07(日) 00:26:40.28 ID:g41iXnaAO
自演乙ww
24 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2011/08/09(火) 09:35:19.87 ID:gIQWo4IJ0
投下しに来ました。
25 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2011/08/09(火) 09:37:36.77 ID:gIQWo4IJ0
「ね、ね、結局なんだったの? 教えてよ〜」
「……ダメ。機密だから」
お膳を挟んで向かい側、ぱくぱくと夕飯を食べるシャルに一年女子が数名群がってあれやこれやと訊いている。
おそらく一番取っつきやすいシャルになら訊けると思ったのだろうが、それは判断ミスってやつだ。
あの子は専用機持ちの中じゃ一番責任感が強い。それは間違いない。
と、冷静に判断しているがもはやそれ以上の事について考えられなかった。
その理由については先ほどまで続いていた、千冬姉の説教が関係している。
まぁ、あれは思い出すだけちょっとしんどいので割愛しておく。
「な、なにかな?」
ふと、俺の視線に気付いたシャルが尋ねてくる。
別段用事は無かったんだけど、ここで何もないと言うとなぜか不機嫌になるので……えーと。
「シャルロット、浴衣の胸元ゆるんでる」
ぼそぼそと隣の女子が何か吹き込んでいる。
うぬ、すごくイヤな予感がする。当たるんだ、最近。女子関係のイヤな予感。
「っ……!!」
案の定、シャルは真っ赤になって浴衣の合わせ目を慌てて手で防ぐ。
……ん? なんですか、シャルさん、その抗議一〇〇パーセントの瞳は
26 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2011/08/09(火) 09:42:56.65 ID:gIQWo4IJ0
「い、一夏のえっち……」
「なあっ!?」
いきなり免罪だ。ていうか何々何で? え? え? え?
「……うっそー。浴衣はゆるんでません」
「!!」
またなにやら隣の女子がぼそりと言っている。
それを聞いた途端、シャルは耳まで真っ赤になって立ち上がった。
ど、どうした!?
「…………」
「やー、お刺身がおいしいなぁ。あはは、うふふ」
シャルの抗議の眼差しは俺から隣の女子へと移動した。
しかし、当人は意に介さずといった調子でぱくぱくと料理をつまんでいる。
「それにしても、シャルロットてば、えっちいなぁ」
「ち、違うよ!? ぼ、僕は、ただ、そのっ……!」
今度はわたわたとしだしたシャルが、女子の言葉に翻弄されている。
……うーん、状況が全くわからんぜ。
27 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2011/08/09(火) 09:46:29.86 ID:gIQWo4IJ0
「い、い、一夏……? あの、さっきは、ごめんね……?」
「ん? うん」
よくわからんけど、素直に返事。よくできました。
それからすとんと着席したシャルは、にこりと笑顔を見せた後さりげなく隣の女子の横腹をつねっていた。
……うぉ、なぜか怒ってる気がする。
――まぁ、それはそれとして。問題は俺の隣なわけで。
「…………」
ぱくぱくもぐもぐ。
さっきからせわしなく箸を動かし続けているのは、ポニーテール復活の箒だ。
どうも、俺に話しかけられないようにずっと食べている気がするんだが……気のせいか?
「あー……箒?」
ぱくぱくも……ぴた。
「えーと、体は大丈夫か? ケガしてないか?」
……こくん。
一呼吸置いてからうなずいて、また食事を再開。ぱくぱくもぐもぐ。
…………。うーん。
28 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2011/08/09(火) 09:50:52.38 ID:gIQWo4IJ0
「なぁ箒」
ぴくっ。
一度身をすくめてから、箸を置いてゆっくりこっちを向く。
その動きは妙にぎこちなくて、俺でなくても箒がおかしいことに気づくだろう。
「な、な、何か……?」
「いやな、どうも様子がおかしいからどうしたのかなーと」
「お、おかしい……ですか?」
ずるっ。
いかん、素でずっこけた。な、な、なんだその敬語は……?
(いやいやいや、変だろう。どうも作戦終了からこっち、
箒は不可思議なくらいおとなしいな。借りてきた猫でももう少し活発だろ……)
29 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2011/08/09(火) 10:00:27.10 ID:gIQWo4IJ0
しかし、なんと言うかここ最近の反応でわかったのだが、
『おかしいことをおかしいと言うと女子はなぜか怒る』ということだった。
うん、全くもって意味がわからん。……だがしかし、事実なのでツッコミは遠慮しておこう。
「えーと。やっぱり何でもない」
「え……。あ、う……ん」
うっ、猛烈に言葉を間違った気がする。
隣の箒は見るからに肩を落として、さっきよりも半分以下の速度で食事を再開した。
……す、すまん……。
「…………」
「…………」
それから俺と箒は特に会話もなく、黙々と食事を続けた。
正直、おいしくてたまらないはずの料理は、その味がどんなであったかもおぼろげだ。
30 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2011/08/09(火) 10:05:11.59 ID:gIQWo4IJ0
投下終了。
続きは明日の夜にでも投下しに来ます。
ではでは。
31 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/09(火) 10:06:15.70 ID:/WkRtOADO
乙でーす
32 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)
[sage]:2011/08/09(火) 23:22:23.06 ID:Ukdomj2R0
参考になるのがあるぞ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1301452583/
33 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海・関東)
:2011/08/10(水) 02:37:00.70 ID:5bvm9LPAO
凄い自演が始まると聞いて来ますた
34 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/10(水) 14:51:51.48 ID:G09+kxVe0
1だけど、自演に見えたのなら反省はしてる。
専ブラで投下した後、普通のブラウザで書き込んでもIDが同じなんて知らなかったんだ。
投下は19時ごろ行う予定です。
35 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/10(水) 16:15:53.01 ID:cdqaT7j/o
専ブラで末尾oになってても0になるだけだからな
36 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2011/08/10(水) 19:15:25.46 ID:G09+kxVe0
35さん、そうなんですか、情報ありがとうございます。
では続きを投下していきます。
37 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2011/08/10(水) 19:16:21.00 ID:G09+kxVe0
ざあ……。ざぁん……。
「ふぅっ……」
海から上がって、俺はとんとんと頭を叩く。
右に左に首を傾けて耳の中の水を抜くと、俺は近くの岩場に腰を下ろした。
食事の後、俺は軽い休憩を取ってから旅館を抜け出して夜の海へと繰り出した。
満月の今日は、真夜中であっても明るい。俺は穏やかな波の音を聞きながらぼんやりと空の月を見上げた。
(そういえば俺、夕方になんか夢を見た気がするんだが……どんなんだっけ?)
ゆっくりと思い出す、すると突然白式のガントレットが光って、その光は俺を包み込んだ。
(あぁ。そうだ、確か白い騎士に会ったんだっけ、それと白いワンピースの少女に)
少女の方は思い出せるのに、その白い騎士の方は性別すら思い出せない。
まるで、最初から覚えていなくてもいいようにと言われたかのように。
そしてだんだん、ガントレットが放つ光は弱くなり元に戻ってしまった。
38 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2011/08/10(水) 19:22:11.37 ID:G09+kxVe0
「い、一夏……?」
突然名前を呼ばれて振り向く。
月明かりに照らされて姿が浮かんだのは、水着姿の箒だった。
「そういえば、昨日海でいなかったな。……今の見た?」
「? あ、あんまり見ないで欲しい……。お、落ち着かないから……」
「す、すまん」
慌てて体をの向きを元に戻す。
数秒だったがはっきりと見えた箒の水着姿は鮮烈で、脳裏に焼きついている。
白い水着――それも、箒にしては珍しいというか、絶対着なさそうなビキニタイプ。
縁の方に黒いラインが入ったそれは、かなり肌の露出面積が広く――なんというか、その、セクシー……そう、セクシーだった。
(い、いかん、これはかなり気恥ずかしい)
ひどく落ち着かない気分をどうにかごまかそうとするが、あまりうまくはいかない。
さらに一メートルほど間を開けて隣に座った箒がどうしても気になってしまって意識はますます乱れていった。
39 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2011/08/10(水) 19:29:32.33 ID:G09+kxVe0
「………………」
「………………」
「え、えーと……だな」
「う、うん……」
なぜかドキドキと高鳴ってしまう胸を極力意識しないようにしながら、俺は他愛もない話をしようと考える。
それなのに、出てきた言葉は考えていたものとかなり違っていた。
「そ、その水着、似合っているな。……うん、いいんじゃないか?」
「っ……」
ぴくっと箒が身をすくめたのがわかる。
ちらりと顔を盗み見ると、かーっと赤く染まっていた。
「こ、こ、これは、その……い、勢いで買ってしまって……い、いざ着ようとすると、恥ずかしくて……だな……」
40 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2011/08/10(水) 19:39:13.56 ID:G09+kxVe0
初日の自由時間に見かけなかったのは、どうもそういうことらしい。
それにしても、向こうもこっちを見て話すのは恥ずかしいのか、俺と箒は背中を向き合わせたような格好で会話を続けた。
闇に浮かぶ月が、煌々と俺たちを照らしている。
「……なあ、箒」
「な、なん……です、か?」
「いや、その変な敬語はどうしてなんだ? 普通に喋ろうぜ」
「う……」
とりあえず夕飯からずっと気になってたことを訊いてみた。
箒はしばらく黙っていたが、言いづらそうにしながらもぽつぽつと話し始めた。
「お、お前が……おとしやかな女がいいと言うからだろう……」
――うぐ、しまった。それか……。
あれはラウラに向けて言った言葉なんだが、箒がそういう態度だとどうも調子が狂うな。
41 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2011/08/10(水) 19:44:49.31 ID:G09+kxVe0
今日はここまでです。
書き溜めが消えてしまってやばいけど何とか明日の夜に続き投下します。
ではでは。
42 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/11(木) 20:53:47.50 ID:n9aUFi0W0
さてとりあえず、昨日言ったとおり投下しに来ました。
43 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/11(木) 20:55:08.62 ID:n9aUFi0W0
「いや、まあ、なんだ。箒はいつも通りの方がいいと思うぞ。そんなに無理して合わせることないだろ、な?」
「う……む」
渋々といった様子ではあったが、箒はごほんと、咳払いしておしとやかなモードを解除した。
「こ、これでいいか……?」
「おう。いつもの箒だな。そういえば、髪大丈夫だったか? ちょっと焼けてただろ?」
「あ、ああ。リボンがなくなっただけで、大事ない。そ、それに、リボンも……その、新しいのを貰ったしな」
「お、おう。改めて、誕生日おめでとうな」
「う、うむ……。あ、あ……ありが……とぅ……」
最後の方はかなり小さな声になって聞こえなかったが、言いたいことはわかっている。
それにしても――うん。やっぱり箒には、ポニーテールがよく似合う。
「そ、その……だな。お、お前こそ大丈夫なのか? その、ケガしていただろう」
「ん? あー、なんか、治ってた」
「な、なに?」
「えーと、目が覚めてIS起動して、気がついたら治ってたぞ」
「ば、馬鹿なことを言うな! そんなことありあえるわけ――」
そう言って箒は俺の肩を掴むと、ぐいっと背中を月光へと向ける。
44 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/11(木) 21:04:35.19 ID:n9aUFi0W0
「消えている……。本当になんともないのか……?」
「ああ、うん。治った。えーと、ほら、あれじゃないのか? ISの操縦者保護機能」
「あれは保護するだけだろう。傷が治るなど、聞いたこともないぞ……」
おそるおそる箒は俺の背中に触れ、そこに傷がないか指先で何度も確かめる。
そのたびに「おかしい、おかしい」とつぶやいていたのが、なんだかおかしかった。
「まあ、治ったしいいじゃないか。な?」
「よ、よくない! 私のせいで、お前が……一夏がケガしてというのに……」
「なんだよ、治らない方がよかったのか?」
「そ、そうではない!」
言ってから、自分の大声にはっとする箒。
「そうではない……そうではないが……。こんな風に簡単に許されると、困るのだ……」
その声がひどくしょんぼりとしていて、俺はどうしたもんかなぁと考える。
どうも、俺が負傷したことについて責任を感じてるらしいのだが、
それが傷が消えてしまったことによって特にお咎めなしに許されるのもイヤのようだ。
45 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/11(木) 21:11:07.89 ID:n9aUFi0W0
なんというか、難しいヤツだなぁ。
(けどまあ、本人がすっきりしないようだし)
仕方ない。俺は、箒に罰を与えることにした。
「じゃあ、今から罰をやる」
「う、うむ……」
俺は箒の方に向き直って、その顔を直視する。
ぎゅっと閉じたまぶたが、覚悟を表していた。
(しょうがないなぁ、コイツは)
俺は、その額をぴしりと指で弾く。
「っ……!?」
「な、ない?」
困惑顔の箒は二回まばたきしてから、真っ赤になって俺に詰め寄った。
「ば、バカにしてるのか!? あんな、デコピンくらいで……!」
46 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/11(木) 21:15:34.65 ID:n9aUFi0W0
「まあまあ、落ち着け。興奮するな」
「だ、黙れ! 私は武士だ! 誇りを汚されて落ち着いているなど――」
「いや、その……一回離れないか? えーと、当たっているんだけども……」
胸が。
「!!!!」
かなり密着していたことに気付いた箒がぱぱっと俺から離れる。
そして距離を置いてから、胸を抱くように腕を組んで、混じりっ気なしの抗議一〇〇%の眼差しを送ってくる。
うわぁ。
「お、お前は……! 人が真面目に話してるというのに、ふ、不埒だぞ!」
はい、そうですね。すみません。男に生まれてきて申し訳ない。
「……その、なんだ……い、意識するのか?」
「はい?」
がしっ! 腕を捕らえられて、そのまま――んなっ!? 胸の谷間に引っ張られてしまう。
……あの、箒……さん。
「い、異性として意識するのか、訊いているのだ……」
47 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/11(木) 21:19:49.31 ID:n9aUFi0W0
さっきまでの威勢の良さとは打って変わって、ぼそぼそ声で言ってくる箒。
その顔は耳まで真っ赤になっていて恥ずかしそうにしている。
「う、ん……」
勢いに押された訳ではないが、ついつい肯定してしまう。
けれど、近く遠くに聞こえる波の音、目の前にはセクシーな水着姿の幼馴染、
空から降り注ぐ月明かりとくれば、雰囲気にぐらりと来てしまっても不思議ではないと思う。
それに……なんというか、そのー……箒は、正直可愛いと思う。
「そ、そうか……。そう、そうなのだな……」
咀嚼するように何度も言葉を噛み砕いては、それを飲み込む箒。
密着した状態で、相手の体温が伝わってくる。
つい、自分の胸の鼓動が聞こえてしまわないかなんて心配してしまうほど、俺と箒は近い距離にいた。
「………………」
ドキドキと、うるさいくらいに自分の心臓の音が響く。
ふと、俺と箒の視線が合った。
(あ……)
見とれて、しまった。
その月明かりに照らされた顔があまりにもきれいで。
(ま、まずい……よな。うん、まずい……ぞ?)
そんなことを考えながら、ますます胸の鼓動は高鳴って――
48 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/11(木) 21:27:23.18 ID:n9aUFi0W0
「せ、セシリア!? なんでこんなとこにいんのよ!」
「鈴さんこそ! か、勝手に旅館を抜け出して、怒られてもしりませんわよ」
「さて、私の嫁はと……」
「え、ラウラに……鈴とセシリア? な、なんでここにいるの……?」
ドキィッ!!
い、い、今の声は、間違いない鈴とセシリアとラウラとシャルだ。
声の大きさからしてちょっと距離があるが、このままだとすぐに見つかってしまう。
しかも、今は箒と二人っきりなのだ。何を言われるかわっかたもんじゃない。
「ほ、箒……向こうに行こう」
「え? きゃっ……」
すぐ近くまでやってきていた声から逃げるように、俺は箒の手を引いて岬の方へと向かう。
大きな岩石の上を俺と箒は渡っていく。
(ふう……。少し隠れているか。ちょっとしてから旅館に戻れば大丈夫だろう)
「い、一夏……。いきなり、だな……。その、人気のない場所に連れて……わ、私とて困る」
「う?」
箒がぼそぼそ言っていたので、そちらに顔を向ける。
「ん……」
49 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/11(木) 21:41:42.42 ID:n9aUFi0W0
――え。
ええええっ!? ほ、箒、さん?
なんで目を閉じて、やや唇を上向きに突き出すんですかね、出すんですかね!?
「……………」
静かに待っている箒の顔は、やっぱりきれいだった。
――う、まずい……まずい、まずい……。
(やばい……、これは、引き込まれる……)
俺が肩に触れると、ぴくんと箒が一度震える。
それから改めて身を預けてくる箒に、俺はゆっくりと顔を近づけて――
ごつっ。
(……ん? なんだ?)
改めて顔を近づけて――
ごつっ。
(ああもう、さっきから何だよ。何が額にぶつかってんだよ)
50 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/11(木) 21:46:43.33 ID:n9aUFi0W0
そう思って目を開ける。――開けなきゃよかった。
待っていたのはフィン状の浮遊物体。その先端が四角いスリットになっている。
「……ブルー・ティアーズ……」
その、ビット。
それが俺の額に砲口を押し付けている。
キュィィィ……。
「ぬあああっ!?」
ズバシュッ!!
間一髪、BTレーザーがのけぞった俺の髪を焼き切る。
「ほう……」
「――よし、殺そう」
「一夏、何をしているのかな……?」
「ふふっ。うふふふっ」
回避運動で振り向いた俺を待っていたのは、四人の突き刺さるような視線。
ちなみに順番はラウラ、鈴、シャル、セシリア。
「ほ、箒っ! 逃げるぞ!」
「えっ、あっ。きゃあっ!?」
いきなり抱きかかえられて悲鳴を漏らす箒だが、ええい構ってはいられない。
俺はすぐさま脱兎へジョブチェンジ。四人の専用機持ちから逃げ出す。
(……ああ)
なんか、先月もこんなことがあったなぁ。
――そんな感慨に耽る俺を、銃声だけが追ってきた。やめて死ぬ。死んじゃう。
51 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/11(木) 21:54:46.37 ID:n9aUFi0W0
今日はここまで。
明日午前中に投下して、週末は休みます。
では皆さんおやすみなさい。
52 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/11(木) 22:00:54.79 ID:M/Tr2BwHo
乙
53 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/12(金) 11:46:20.40 ID:kTCfvlBV0
すみません、今日の投下は出来ません。
54 :
◆CAZtyR9xLg
[sage]:2011/08/12(金) 12:10:02.39 ID:kTCfvlBV0
あれ? 途中送信されてますね。
土曜と日曜は投下できないので、そしてそろそろ三巻も終わるので
ここで、三巻と四巻の間に挟むイベントを募集します。
これは番外編ですので全く本編には関係ありません。
募集は日曜の21時までです。
55 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/15(月) 23:59:49.93 ID:0f88K5ts0
ケガしてしまったので、もうしばらく投下には時間がかかりそうです。
まだまだ、募集してます、それでは。
56 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/16(火) 00:01:15.74 ID:Sv20EDi6o
待ってはいるけどイベントなんぞ思いつかんよ…
57 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/16(火) 00:17:32.48 ID:cVkLSKeK0
そうですか?
何でもいいですよ、本編で省かれてるとことか、○○と○○の会話とか。
SSですし、三巻の時点で出てないキャラを登場させたりとか。
とりあえず、続きは明日の午後にでも投下します。
58 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(九州)
[sage]:2011/08/16(火) 00:35:36.86 ID:7fQvmKBAO
まぁ、自分で考えろってこった。甘えんな
59 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/16(火) 00:49:54.69 ID:cVkLSKeK0
そうですね。
三つほど考えているので明後日にでも投下します。
足首と左手の手首が痛い……。
それでは。
60 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(九州)
[sage]:2011/08/16(火) 09:25:22.16 ID:7fQvmKBAO
てか三巻再構成なんだから、もう完結でいいんじゃない?
61 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/16(火) 12:11:06.81 ID:cVkLSKeK0
そうなんですけど、1にも書いた通り続けて行きたいと思ってます。
今更ながらIS原作再構成にすればよかったと思う。
投下は今日の19時頃に。
62 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(九州)
[sage]:2011/08/16(火) 12:26:17.45 ID:7fQvmKBAO
読んでないからわからんけど再構成が60レス程度で終わるってすげーな
63 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/16(火) 22:11:03.29 ID:cVkLSKeK0
ケガしてる俺に仕事させるってどうなの。
というわけで予定より遅くなりましたが投下します
64 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/16(火) 22:12:42.85 ID:cVkLSKeK0
「紅椿の稼働率は絢爛舞踏も含めて四二パーセントかぁ。まぁ、こんなところかな?」
空中投影のディスプレイに浮かび上がった各種パラメータを見ながら、その女性は無邪気に微笑む。
子供のように。天使のように。
月明かりが照らすその顔は、いつもと変わらない。
いつだってどこか退屈そうな顔の、篠ノ之束その人だった。
「んー……ん、ん〜」
鼻歌を奏でながら、別のディスプレイを呼び出す。
そこでは白式第二形態の戦闘映像が流れていた。
それを眺めながら、束は岬の柵に腰掛けた状態でぶらぶらと足を揺らす。
目の前にはただ海が広がり、高さは三〇メートルと高い。
落ちれば無事に済まないその場所でも、束の表情は変わることがない。
「は〜。それにしても白式には驚くなぁ。まさか操縦者の生体再生可能だなんて、まるで――」
「――まるで、『白騎士』のようだな。
コアナンバー〇〇一にして初の実践投入機、お前が心血を注いだ一番目の機体に、な」
森から音もなく千冬が姿を現す。
漆黒のスーツに身を包んだその姿は、夜の闇すべてを引き連れているような威厳に満ちていた。
「やあ、ちーちゃん」
「おう」
65 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/16(火) 22:22:22.52 ID:cVkLSKeK0
ふたりはお互いの方を向かない。
背中を向けたまま、束はさっきまでと同じようにぶらぶらと足を揺らし、千冬はその身を木に預ける。
どんな顔をしているのか、別に見なくてもわかる――。
そんな確かな信頼が、ふたりの間にはあった。
「ところでちーちゃん、問題です。白騎士はどこに行ったんでしょうか?」
「……白式を『しろしき』と呼べば、それが答えなんだろう?」
「ぴんぽーん。さすがはちーちゃん。白騎士を乗りこなしただけのことはあるね」
かつて『白騎士』と呼ばれた機体は、そのコアを残して解体され、第一世代に大きく貢献した。
そしてそのコアは、とある研究所襲撃事件を境に行方がわからなくなり、
いつしか『白式』と呼ばれる機体のコアとして組み込まれていた。
「それで、うふう。たとえばの話、コア・ネットワークで情報のやりとりをしてたとするよね。
ちーちゃんの一番最初の機体『白騎士』と二番目の機体『暮桜』が。そうしたら、
もしかしたら、同じワンオフ・アビリティーを開発したとしても、不思議じゃないよねぇ」
「………………」
千冬は、答えない。
しかしそんな反応はお構いなしに束は続ける。
「それにしても、不思議だよねぇ。あの機体のコアは分解前に初期化したのに、なんでだろうねー。
私がしたから、確実にあのコアは初期化されたはずなんだけどなぁ」
「不思議なこともあるものだな」
66 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/16(火) 22:32:50.27 ID:cVkLSKeK0
確かにそれについては、わからないというのが本当のところである。
それは、束にとっても同じ。
しかし、束は別にわからなくても問題はない。
「そうだな。私も一つたとえ話をしてやろう」
「へぇ、ちーちゃんが。珍しいねぇ」
「例えば、とある天才が一人の男子の高校受験場所を意図的に間違わせることができたとする。
そこで使われるISを、その時だけ使えるようにする。そうすると本来男が使えないはずのISを使える、ということになるな」
「ん〜? でも、それだと継続的に動かないようねぇ」
「そうだな。お前は、そこまで長い間同じものに手を加えるようなことはしないからな」
「えへへ。飽きるからね」
「……、で、どうなんだ? とある天才」
「どうなんだろうねぇー。うふふ、実のところ、白式がどうして動くのか、
私にもわからないんだよねぇ。いっくんはIS開発に関わってないはずなのにね」
「ふん……。まあいい。次のたとえ話だ」
「多いねぇ」
「嬉しいだろう?」
67 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/16(火) 22:42:18.37 ID:cVkLSKeK0
違いないね、と返して束は千冬の話に耳を傾ける。
「とある天才が、大事な妹を晴れ舞台でデビューさせたいと考える。
そこで用意するのは専用機と、そしてどこかのISの暴走事件だ」
束は答えない。そして、千冬も言葉を続ける。
「暴走事件に際して、新型の高性能機を作戦に加える
そこで天才の妹は華々しく専用機持ちとしてデビューというわけだ」
「へぇ、不思議なたとえ話だねぇ。すごい天才がいたものだね」
「ああ、すごい天才がいたものだ。
かつて、十二ヵ国もの軍事コンピューターを同時にハッキングするという歴史的大事件を自作した天才がな」
束は答えない。千冬も、もう言葉は続けない。
「ねぇ、ちーちゃん。今の世界は楽しい?」
「そこそこにな」
「そうなんだ」
岬に吹き上がる風が、一度強くうなりを上げた。
「……近い内にまた来るね……」
その風の中、束は千冬に聞こえないよう、つぶやいて……束は消えた。
忽然と。突然と。
「…………」
千冬は息を吐き出して、後頭部を押し付けるように木に寄りかかる。
「……いつか、必ず……」
その口元から漏れる声は、潮風に流れて消えた。
68 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/16(火) 22:50:14.90 ID:cVkLSKeK0
投下終了。明日には三巻を終わらせる。
それでは。
69 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(九州)
[sage]:2011/08/16(火) 22:55:28.81 ID:7fQvmKBAO
そういやなんで怪我してんの
70 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/16(火) 23:08:33.49 ID:Sv20EDi6o
乙
71 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/16(火) 23:19:13.47 ID:cVkLSKeK0
そのですね、会社の入り口は自動ドアじゃないんですよ。珍しく。
それでドアを開けて体半分まで入ったんはよかったんですけど、
突風?みたいのが吹いて左手の手首を挟んだです。
足首については聞かないで下さい……。
72 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/17(水) 21:18:28.20 ID:PbHU1MPt0
今日で三巻が終わります、そして原作にはなかったイベントを投下して四巻に入っていきます。
四巻からは少し原作と話が違ってきます、では続きを投下します。
73 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/17(水) 21:19:59.07 ID:PbHU1MPt0
翌朝。朝食を終えて、すぐにIS及び専用装備の撤収作業に当たる。
そうこうして十時を過ぎたところで作業は終了。全員がクラス別のバスに乗り込む。
昼食は、帰り道のサービスエリアで取るらしい。
「あ〜……」
座席にかけた俺の状況は、一言でいうとボロボロだ。
機能は一時間近く追い回されたあげく、旅館を出たのがばれて千冬姉に大目玉。
実睡時間が三時間強、それでいて、あの重労働なのだから、もう死にそうだ。
「すまん……誰か、飲み物持ってないか……?」
「……ツバでも飲んでいろ」
とラウラ。
「しりませんわ」
とセシリア。
「あるけどあげない」
とシャル。
鈴は二組なのでいない。俺は最後の望みを託して箒へと視線を向ける。
「なっ……何を見ているか!」
ボッと赤くなったと思ったら、いきなりチョップを出してきた。ぐあ、地味に痛い。
「ふ、ふんっ……!」
74 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/17(水) 21:22:03.99 ID:PbHU1MPt0
どうやら、誰も飲み物はくれないらしい。これも俺の不徳のなすところか。うー……。
(うーん、ちょっと可哀想だったかな……?)
さっきは冷たく返したものの、シャルロットは一夏のぐったりとした様子にちくちくと良心の呵責を感じていた。
(まぁ、昨日は結局何も無かったんだし、そろそろ許してあげようかぁ)
荷物からお茶のペットボトルを取り出す。
乗り込む前に自販機で買っておいたのが役に立ちそうだった。
(みんなは動かないみたいだし……よしっ!)
(さすがに冷たかったかしら……?)
セシリアは、一夏ががっくり肩を落としたのを見ながら、すこしそわそわとしていた。
せっかく優しくするチャンスだったのに、つい昨日のことを思い出してあんな態度を取ってしまった。
よくよく考えれば、他の女子が好意的なのだから、千載一遇のチャンスである。
(そうと決まれば――)
鞄の中で横になっているペットボトルへと手を伸ばす。
元々自分用に用意していたものだったが、思わぬところで使えそうだった。
(善は急げですわね。……コホン)
75 :
エラー出るのでこれの後少し時間を空けます
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/17(水) 21:23:27.91 ID:PbHU1MPt0
(さっきは、何か別の言い方があったのではないか……?)
そんな自問自答を、繰り返しているのは、今回のビーチで新しい一歩を踏み出したラウラだった。
昨夜のことが引っかかって真っ先に冷たい反応をしてしまった自分が恨めしい。
あそこで、笑顔を見せてこそいい女というものではないだろうか。
そんなことを考えながら、ではどう巻き返すかと考えるラウラ。
(そう……だな。どうも喉が渇いているようだし、朝方に買ったお茶が使えるか)
さっき取り出しておいたペットボトルをもてあそびながらどう渡したものかと考える。
せっかく他の女子が引っ込んでいる今こそ、チャンスだと見据えながら。
(うむ。さりげなく隣に座って渡すか。……そ、それなら帰りはずっと隣にいられるな)
(あああ、やってしまった)
せっかく昨日まではいい雰囲気いったのに、結局何かしらの結果を得ることはできなかった。
それどころか他の女子から逃げ回る一夏に内心ムッとしてしまって、ついさっきはあんなことをしてしまった。
(い、いかんな。私はすぐに手を出すクセがついているのではないか……?)
正直、それはまずい。
先々月までならまだしも、今はクラスにシャルロットがいる。
あの強敵に暴力一辺倒では、おそらく後手に回ってしまう。
(よ、よし! 今こそ優しさをもって接するべきか!)
バス移動までの間に買ったペットボトルのお茶を握り締めて、箒は立ち上がった。
76 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/17(水) 22:03:02.97 ID:PbHU1MPt0
「うー……しんど……」
「「「「い、一夏っ」」」」
「はい?」
四人の声が同時に聞こえて俺は振り向く。
それと同じタイミングで、車内に見知らぬ女性が入ってきた。
「ねぇ、織斑一夏くんっているかしら?」
「あ、はい、俺ですけど」
一番前の席にいることが幸いした。俺は呼ばれたまま、素直に返事をする。
その女性はたぶん二十歳くらい。少なくとも俺達よりは確実に年上で、鮮やかな金髪が夏の日差しで輝いて眩しい。
格好はというと格好いいブルーのサマースーツを着ている。
とはいっても千冬姉みたいなビジネススーツではなく、おしゃれ全開のカジュアルスーツ。
開いた胸元からは大人の女性特有の整った膨らみがわずかに覗いている。
その胸の谷間に持っていたサングラスを預けると、腰を折って俺を見つめてきた。
「君がそうなんだ。へぇ」
女性はそう言うと、俺を興味深そうに眺める。
品定めしているというわけではなくて、どうも純粋に好奇心で観察しているという感じだ。
わずかに香る柑橘系のコロンが、ひどく女を意識させて、俺は途端に落ち着かなくなる。
77 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/17(水) 22:41:23.31 ID:PbHU1MPt0
「あ、あの、あなたは……?」
「私はナターシャ・ファイルス。『銀の福音』の操縦者よ」
「え――」
予想外の言葉に俺が困惑していると、頬にいきなり唇が触れた。
「ちゅっ……。これはお礼。ありがとう、白いナイトさん」
「え、あ、う……?」
「じゃあ、またね。バーイ」
「は、はぁ……」
ひらひらと手を振ってバスから降りるナターシャさんを、俺はぼーっとしたまま手を振り替えして見送る。
……。えーと。
「…………」
なんとなく、なんとなーく、イヤな予感がして、俺は振り向いた。
78 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/17(水) 22:52:29.35 ID:PbHU1MPt0
「浮気者め」
「一夏ってモテるねえ」
「本当に、行く先々で幸せいっぱいのようですわね」
「はっはっはっ」
すたすたと歩いてくる四人。
あぁ、……軍歌の音が聞こえる気分だ。
「「「「はい、どうぞー」」」」
投げつけられるペットボトル×四。
内容量五〇〇ミリリットルは、正直死ねる。
「…………」
バスから降りたナターシャは目的の人物を見つけそちらへと向かう。
「おいおい、余計な火種を残してくれるなよ。ガキの相手は大変なんだ」
そう言ってきたのは、千冬だった。
ナターシャは、その言葉に少しだけはにかんで見せる。
「思っていたよりもずっと素敵な男性だったから、つい」
「やれやれ……。それより、昨日の今日で動いて平気なのか?」
「えぇ、それは問題なく。――私は、あの子によって守られてましたから」
79 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/17(水) 23:01:09.45 ID:PbHU1MPt0
ここで言う『あの子』とは、つまり暴走によって今回の事件を引き起こした福音のことを指していた。
「――やはり、そうなのか?」
「えぇ。あの子は私を守るために望まぬ戦いへと身を投じた。
強引なセカンド・シフト、それにコア・ネットワークの切断……あの子は私のために、自分の世界を捨てた」
言葉を続けるナターシャはさっきまでの陽気な雰囲気など微塵も残さず、その体に鋭い雰囲気を纏っていく。
「だから、私は許さない。あの子の判断能力を奪い、全てのISを敵に見せかけた元凶を――必ず負って、報いを受けさせる」
福音はそのコアこそ無事であったが、暴走事件を招いたことから今日未明に凍結処理が決定された。
「……何より飛ぶことが好きだったあの子が、翼を奪われた。相手が何であろうと、私は許しはしない」
「あまり無茶なことはするなよ。この後も、査問委員会があるんだろ? しばらくはおとなしくしてたほうががいい」
「それは忠告ですか、ブリュンヒルデ」
IS世界大会『モント・グロッソ』、その総合優勝者に授けられる最強の称号・ブリュンヒルデ。
千冬はその第一回の受賞者であったが、正直その名前で呼ばれることは好きではなかった。
「アドバイスさ。ただのな」
「そうですか。それでは、おとなしくしてましょう。……しばらくは、ね」
一度だけ鋭い視線を交し合った二人は、それ以上の言葉無く互いの帰路に就く。
――またいずれ。
そんな言葉が、二人の背中にはあった。
80 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/17(水) 23:20:55.22 ID:PbHU1MPt0
投下終了です。
明日には番外編を投下します。
それでは。
81 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/18(木) 21:53:55.06 ID:gx9Ry5ML0
やっと帰って来れたぜ。
右手しか使えないというのは実に不便です。
では投下。
82 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/18(木) 21:54:56.29 ID:gx9Ry5ML0
「さて全員いるな、今から学園へと帰るわけだがくれぐれも迷惑をかける行為だけはするなよ」
「「「「「「「「「「はいっ!」」」」」」」」」」
「では、とりあえず昼食を食べるためにSAへ向かう。そのまえに気分が悪くなったりしたら私か山田先生に報告するように以上だ」
そう千冬姉が言った後車内は先ほどまでの喧騒を取り戻す。
その様子を見て千冬姉は顔をしかめた後、俺の隣へ座った。
「あの千冬姉? なんで俺の隣に座ってんの?」
「学校はじゃない行事中も織斑先生と呼べ。それは……気にするなただの偶然だ」
偶然で鬼教師もとい千冬姉なんかに座られたら精神が持たない気がする。
するとそんなことを考えたのが読まれたようにきつーい一発を喰らってしまった。
くぅ、かなり痛い。
「私は少しの間仮眠を取る、全くどっかの馬鹿のせいで睡眠時間が一時間ほどしかなかったのでな」
「す、すいませんでした」
謝ったものの、既に千冬姉は寝息を立てていた。
その様子を見て何でここに座ったか気付いた、この座席はみんなより座席一個分前に離れており
通路側とはいえ千冬姉が寝ているという様子は山田先生を除き他の生徒は見ることが出来ない。
となると、千冬姉の弟として出来ることは一つ邪魔しないように座ってることだけだ。
83 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/18(木) 22:04:38.51 ID:gx9Ry5ML0
(ふぁああ、てか俺も寝てないから少し寝るか……)
あくびに誘われるように俺は意識を手放した。
それが後にシャル、セシリア、ラウラ、箒に誤解される原因を作るとも知らずに。
「ふぁあああ。よく寝た〜。
あれ? ラウラ、セシリア、シャル、箒じゃん。何してんの?」
「えっ、あはは。何にも無いよ。何にも。行こうよ、みんな」
「あぁ、別に私は教官となら……」
「よくありませんわ! 姉弟なんて……」
「う……む。私は別に構わない……ぞ」
「?」
四人が自らの席へ戻った後、何やら山田先生がジェスチャーしてることに気付く。
人差し指で、俺の隣の席を指差して、そして口元に人差し指を当てた。
その様子を見て俺は隣に座っている千冬姉のことを見る。
「何じゃこらーーーーーーーーーーーーー」
ふぅ。あやうく、別の人になるところだった。
さて状況を整理しよう、今千冬姉は寝ている。しかしそこまでは別に問題ではない。
その体勢というか、行動というか、とりあえずそれが問題なのだ。
何故か俺と千冬姉はしっかり手を握り合っていたのだから。
幸いにしてあの四人以外は眠ってるか、おしゃべりに夢中でこっちには気付いてはいない。
84 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/18(木) 22:15:00.36 ID:gx9Ry5ML0
「どうしてこうなった」
いきなり、初期装備で魔王と戦う事になった勇者みたいな気分だ。
何とかしてあの四人の誤解を解く、そして千冬姉を起こさないように手を外さないといけない。
そのためには協力者が必要だ、下手すれば即ゲームオーバーなミッションに一緒に挑む協力者が。
「や、山田先生」
「はい。どうしたんですか?」
「あの、ちょっと手を外すの手伝って欲しいんですけど」
「わ、分かりました。……別にそのままでも……」
「へっ? 何か言いました」
山田先生が何か言いかけたらしいのだが俺の耳には届かなかった。
山田先生は静かに首を振り、姿勢を正した。
「いえ。織斑君、ちょっと自力で外そうとしてくれませんか?」
「了解です」
ゆっくりと力を抜いて、千冬姉の手から俺の手を抜こうとする。
しかし、それは逆効果だったようでさっきよりきつく握り締められてしまった。
85 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/18(木) 22:25:09.14 ID:gx9Ry5ML0
「あっ…………」
「握り締められてしまいましたね。動かせそうですか?」
「そ、それは、何とか」
「そうですね〜。じゃ織斑君、脇腹をこちょばしてみてください」
「分かりました」
山田先生の指示通り俺は左手で千冬姉の脇腹をこちょばしてみた。
反応は無く、何故か先ほどより俺の手がきつく閉められる事になった。
「あの、先生。さきほどより悪化したんですけど」
「う〜ん。じゃあ思い切って、頭を撫でるというのは、どうでしょう?」
「えぇぇ」
思いっきり声を出してしまい、場がシーンとなる。
俺は不自然に立ち上がりながらも、みんなに何でもないと報告した。
86 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/18(木) 22:35:20.96 ID:gx9Ry5ML0
「や、山田先生。それはまずいですって」
「大丈夫です。多分、変わりませんから」
「じゃあ、余計にダメじゃないですか」
「試して下さい、責任は私が持ちますから」
「そうですか……」
空いてる方の手つまり左手で千冬姉の頭を撫でる。
逆は小さい時に何度かあったが、こうして自分がするのは初めてだった。
優しく、子犬を撫でるような気持ちで撫でていく。すると少しだけ、頬が緩んだ気がした。
「ダメじゃないですか」
「へっ? そうですね。じゃぁ次は「山田先生?」えっ?」
「山田先生? まぁ、弟を使ってたのはいいだろう。しかし、それで私を遊ぶとはどういうことだ?」
「い、いえ。別に好奇心があったとかそういうんじゃありませんよ」
「そうか。好奇心があったんだな。織斑、すまない手を握ってしまったようだ。
オルコット、デュノア、ボーデビッヒ、篠ノ之。お前達も見たんだろう?」
「「「「はい……」」」」
87 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/18(木) 22:45:28.99 ID:gx9Ry5ML0
「お前達は来いそれと山田先生もだ。織斑ちょっと話があるからあいつらの席に座っててくれ」
「はい」
少しばかり後ろ髪引かれる思いで気をつけながら車内を移動する。
その横をちょっと気分が落ちているいつものメンバーが通り過ぎる。
「大丈夫か」
「大丈夫ではない……」
と答えを返してくれたのは。箒ただ一人だけだった。
他の三人はまるで死刑台に向かうような顔をしていた。
「山田先生も含め、お前達は誤解しているようだ。
しかし、あいつは手の焼ける弟だ、それ以上でも以下でもない。まぁ、簡単にはやらんがな」
「じゃぁっ」
「精進しろよ小娘。山田先生はまだお話がある。
お前達は戻っていい、だが一切この事を他にはしゃべるな。お前ら以外がしゃべっているのを聞いたら特別な罰をくれてやる」
「「「「はい!」」」」
千冬は来る時より活気に溢れている生徒達を見る。
私に勝つ事が出来たらなと思いつつ、犯人もとい山田先生の方へと向き直る。
88 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/18(木) 22:55:22.56 ID:gx9Ry5ML0
「山田先生には昼食抜きか、寮の見回り番二日間かどちらかを選ばせてやろう」
「昼食抜きでお願いします」
「いいのか? 今から行くSAは道の駅で有名なところだぞ?」
「うっ」
「どうする? 私には食べ盛りな弟がいるのでな。二人分ぐらいは与えてもいいかと思っているのだが」
「ううう」
「あと5秒で決めてもらおう。5、4、3、2、1」
「見回りにします……」
「そうか。山田先生、次はない」
「はい!」
ここからでも分かるように山田先生が顔が強張っていた。
千冬姉、何を言ったんだろう。気になるけど聞いたらダメなんだろうな。
89 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/18(木) 23:05:13.29 ID:gx9Ry5ML0
「やりましたわ、やりましたわ」
「教官から、教官から」
「るるるーるるるー」
「やった。やったぞ」
それは置いといて、気になるのは俺の周りの席に座っているいつもの面子である。
さきほどから、同じ言葉しか口にしてないため。みんな前の席へ移ってしまった。
そのため前は結構席が埋まってるのだが、このまわりだけ不自然に席が空いている。
「お前らどうしたんだよ」
「お許し、お許し。良かったよ」
シャルが答えるものの、その目の焦点は合ってはいない。
どうやら、バス酔いしてるらしい。さきほどまで普通だったのに何があったのだろうか?
とりあえず、千冬姉と山田先生が座るのが見えたので俺も席に戻る。
「どこへ行く? 浮気者ー」
「あれは、いきなりだったから」
「ふふー。でもそのわりには嬉しそうな顔してましたわねー」
「うっ」
90 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/18(木) 23:15:46.87 ID:gx9Ry5ML0
「いいよねぇ。そりゃぁ男としたら嬉しいよ」
「不埒だぞ。私もゴニョゴニョ」
「お前ら、いつまで惚けている。専用機持ちともあろう者が、織斑早く元の席に戻れ」
「は、はい」
どうやら近くまで来ていたらしい千冬姉がそんなことを言った。全く気配に気付かなかった。
戻れと言われたので素直に戻る、最後に振り返ると千冬姉は何やらみんなに話しかけていた。
「で? お前らはそんな姿を見せてあいつに嫌われてもいいのか?」
「い、いえ」
「そんなわけありませんわ」
「そうです。教官」
「そんなわけありませんっ」
「それなら、周りの様子にも目を配れ。そしてお前達は私が最初に言った事を忘れているようだな?」
「はっ。しまった」
「気付いたか、だがもう既に遅い。お前らには懲罰用のトレーニングを追加してやる」
「「「「そんな〜」」」」
91 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/18(木) 23:19:08.78 ID:gx9Ry5ML0
終了〜。
番外編でした。
明日は投下できません、明後日には続きを投下します。
それでは。
92 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/18(木) 23:29:25.92 ID:UiOHn6Ago
乙
そして
>>89
の下のほうが分からんかったんだが
93 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/18(木) 23:46:04.78 ID:gx9Ry5ML0
とりあえず一夏は立ったけど(元々は空いていた席)
けれどバス酔いしてる、ラウラ、セシリア、シャル、箒に絡まれてる
という説明で大丈夫ですか?
ぐぅ、やっぱり難しいな。
94 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)
[sage]:2011/08/19(金) 00:28:50.51 ID:uEkN3w8AO
乙
95 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/19(金) 00:57:03.45 ID:V0A5HItbo
>>93
誰が何を言ってるのかが分からないので前に名前付けたverが出来れば欲しいです
96 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海・関東)
:2011/08/19(金) 01:04:28.44 ID:ZFgCxstAO
誰かレスしてやれよ
本人以外で
97 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/19(金) 01:07:32.48 ID:V0A5HItbo
IP同じだと専ブラから変えても末尾以外変わらん事ぐらい知っとけ
98 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)
:2011/08/19(金) 01:19:28.45 ID:Cd3wjk8l0
>>97
知ってるだろ
99 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/20(土) 23:26:26.13 ID:AaGzU0A40
風邪を引いてしまった。
投下はもうちょいかかりそうです。
100 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/08/21(日) 01:20:41.16 ID:KkcYodbl0
いままでほとんど文庫から丸写しだったツケがここにきてでてきたなwwww
101 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)
:2011/08/27(土) 00:17:46.38 ID:EKUKVJiy0
踊り子さんに手を出してないのになー
風邪早く治せ
皆まってる
102 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/27(土) 00:56:47.04 ID:KWSMLe340
待っててもらえてありがとうございます。
今日の20時頃には、第四巻オリジナルを投下します。
お待たせして申し訳ありませんでした。
103 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海・関東)
[sage]:2011/08/27(土) 01:48:03.06 ID:PeptC8FAO
>>101
お前性格最低だな
104 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/27(土) 20:09:22.18 ID:KWSMLe340
お待たせしました。
四巻スタートです。
105 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/27(土) 20:10:06.92 ID:KWSMLe340
暑い、暑い、暑い、暑い。
クソ暑いったらありゃしない。昔からこの国は嫌いだ。大ッ嫌い。
「あっつぅ」
なんやかんやで、もう八月、今IS学園は遅めの夏休みに入ったところだ。
そのせいで世界中からやってきてる学園生は現在ほぼ半分が帰省中。
あたしも本国に帰ろうと思ってたんだけど――
「二人はもう一緒にはいないし。訓練もダルいんだよね」
両親は離婚してる、国の代表候補生ということもあって厳しい訓練を受けるのもヤダという理由で私はここにいる。
もちろん、別の理由もある。
(あいつ、いるんでしょうね。全く。何で私から誘わないといけないんだろ)
あいつはあいつ。一年の専用機もちのなかで唐変木、オブ、唐変木と影で言われてるあいつ。
制服の内ポケットに二枚のチケットがあることを確認しながらあたしは寮の廊下を歩く。
(ったく、なんでエアコンはいってないのよ!)
暑さのせいもあってかだんだん腹が立ってきた。
――そう、そうよ、あいつから誘いにくればいいのよ。
そう思って足をUターンさせたところで、ばったりと会った。
「お、鈴じゃねーか。どうした?」
「い、い、一夏!? な、なんでアンタここにいんのよ! へ、部屋じゃないの!?」
「いや、レポートの提出忘れてたから。ん? 何持ってるんだ?」
「な、なんでもないわよ!」
106 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/27(土) 20:20:18.11 ID:KWSMLe340
反射的に持っていたチケットを後ろに隠してしまう。
……あああ、しまった。
『ふふん、気付いた? 実は――』
って流れなら自然に言えたのに! 言えたのに!
「……?」
ぐ……『何してんだ、コイツは』って顔してるわね……。
あー、ごほんごほん!
「きょ、今日は暑いわね」
「ん? そうか? 涼しい方だぞ」
「暑いのよ! この国の夏は昔から!」
「あー、そういやお前昔から暑いのダメだっけ」
あ、う。
昔のことをちゃんと覚えていてくれたのが、ちょっと嬉しい。
――あ、ダメダメ! こいつは、肝心な約束を忘れるようなやつなんだから!
107 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/27(土) 20:32:54.54 ID:KWSMLe340
「ま、いいや。それなら俺の部屋でも行くか? エアコンつけるぞ」
ん? もしかして、これってチャンス……?
「ま、まあ、そうね。じゃああんたの部屋に行ってあげる。飲み物出しなさいよ?」
「へいへい。麦茶でいいだろ」
「冷たけりゃなんでもいいわよ」
そう言いながら胸の鼓動は激しさを増していく。
今は寮も閑散としていて、ちょっとしたふたりきりだった。
(そ、そういえばあたしって汗臭くないわよね……?)
急に頭の中にそんなことが浮かぶ、それであたしは半歩一夏からずれる。
大丈夫。大丈夫……だとは思うんだけど、この暑さならちょっとぐらい汗かいてても仕方ないわよね。
「鈴、おいってば」
「!? な、何よ!?」
ずいっと一夏がこっちに顔を寄せてきた。
――わあっ、近い、近いっ!
あたしは反射的に、その顔を押し返す。
108 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/27(土) 20:42:06.92 ID:KWSMLe340
「……あのなぁ、何回も呼んでるのに返事しないからだろ」
「う、うん!? そ、そう! それは悪かったわね! か、考え事してたのよ!」
「鈴が考え事か。ふぅん」
「な、何よ……」
「いや、別に。まぁ、あれだ。誰かに相談できるならそうしろよ。独りで抱え込むとロクなことにならねぇぞ」
「ふ、ふん……。わかってるわよ……」
う、やばい……。ドキドキする。なによ、バカ。
しばらくぶりに会ったら背は伸びてるし、IS操縦者になんかなってるし、それに……格好良くなってるしさぁ……。
そんなことを考えていると、
どうもまた黙りこくってしまったみたいで、またしても一夏があたしの顔をのぞきこんでいた。
「鈴?」
「なっ、なによ!」
「なによって、部屋に着いたぞ。入れよ」
「わ、わかってるわよ、バカ……」
あたしはそう言いながら一夏のあとについて部屋に入る。
別に何回も入った事のある場所なのに、どうしてだがドキドキしてしまった。
109 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/27(土) 20:45:44.09 ID:KWSMLe340
今日はここまでです。
次回更新は月曜日に行います。
それでは。
110 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)
:2011/08/27(土) 22:42:26.04 ID:EKUKVJiy0
オリジナルの鈴いいなー
月曜日待ってる
111 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)
[sage]:2011/08/28(日) 12:29:50.23 ID:g/rs9w410
この鈴かわええ
乙
112 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)
:2011/08/28(日) 23:03:09.97 ID:Tx/rHWvc0
>>110
お前最悪だな
113 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海・関東)
:2011/08/29(月) 00:16:53.67 ID:rWUwRyAAO
>>112
余計な事書くな
馬鹿
114 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/08/29(月) 02:26:14.98 ID:blKSFonAO
まだ書いてんのかよwww
もうやめとけって
115 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/29(月) 20:34:52.91 ID:fzLSm8zn0
では、この間の続きを投下します。
116 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/29(月) 20:39:02.05 ID:fzLSm8zn0
あたしはそう言いながら一夏のあとについて部屋に入る。
別に何回も入った事のある場所なのに、どうしてだがドキドキしてしまった。
(あー……うー……。なによ、もう)
まずい。部屋に入ってベットにかけて早速まずい。
(一夏ってなんか……いい匂いするわよね……)
そしてここは一夏の部屋なので、当然その『いい匂い』というものをより強く感じる。
まずい、やばい、落ち着かない。
(あ〜……うー……)
ばたばたと足を動かしてもがきたいけれど、
そんな動きを一夏に見られたくなくて、結局あたしはもぞもぞと体を小さく揺すった。
それからふと、テーブルの上に置かれた本に気付く。
本……というか、アルバムだった。
「あぁ、記念写真ってまだ続けてたの?」
「ん? まあな。でもここ数年は千冬姉がいなかったから――あ。
鈴と三人で撮ったのが最後になるのか。覚えてるか? 中二の時の、鈴が引っ越す直前ぐらいのやつ」
117 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/29(月) 20:46:02.05 ID:fzLSm8zn0
「なんとなくわね」
――ウソだ。
なんとなく、なんていうものじゃない。しっかりと覚えている。
「しかし、よくわかんないわね。これって千冬さんが始めたやつなんでしょ?
定期的に写真撮るっていうの。結構そういうのにこだわるタイプには見えないのにね」
「ん、まあ。たぶん、俺とふたりだけじゃない写真が重要なんだよ。過去に誰が側にいたか、
ちゃんと覚えておけって前に言ってた。――ほれ、お茶。ちゃんと冷えてるぞ」
「ありがと」
受け取った麦茶を飲みながら、あたしはさりげなく制服の上からサイフを確かめる。
……うん、大丈夫。ちゃんとある。
「これ、見ていい?」
「あぁ、いいぞ。ちょうど整理も終わってるし」
あたしはできる限り『近くにあったから気になっただけ』を装いながら、アルバムをめくる。
そういえば、ちゃんと見るのって初めだっけ。
最初の一ページ目は、やっぱり一夏と千冬さんのツ−ショットだった。
何歳頃の写真なんだろう。
千冬さんは中学の制服を着ていて、一夏は今よりずっと小さい。
「それは小学校一年のやつだな」
「あれ? これが一番最初なの?」
「ん、まぁな。そういや、これより前のは無いなぁ」
なんでだろうな、と付け加えた一夏にあたしも同意する。
あんなに弟大好きな千冬さんが、どうして一夏が小学校からの記録なんだろうか。
118 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/29(月) 20:57:25.62 ID:fzLSm8zn0
――あ。
(もしかして、これより前の写真には両親が写っていたのかな……)
一夏の両親がいつ蒸発したのかは、あたしは詳しく知らない。
でも、あたしの考えた通りなら千冬さんには敵わないと思った。
「まぁ、昔の事はいいだろ」
そう言って一夏はアルバムを次のページにめくってしまう。
(あ、照れてる顔だ)
やっぱり一夏も小さい頃の写真は恥ずかしいらしい。
そんな様子はちょっと可愛くて、あたしは自然と嬉しい気持ちになっていた。
(最近こうやってふたりきりになることってなかったしなぁ)
――あ。
(ふ、ふたりきり……? う、ヤバ……ヤバいって……。ドキドキしてきた……)
自覚するともうダメだ。あたしの顔は赤くなって、熱を持ち始める。
「えーと、こっちは二年のときか。たしか遠足でブドウ狩りに行ったんだよ」
119 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/29(月) 21:08:05.70 ID:fzLSm8zn0
いきなり。
いきなり、一夏があたしの隣に座った。
心臓がどきんと跳ねた後、ベットのきしみが大きく聞こえた。
(あ……。汗臭くないわよね……。ていうか、ベットで並んで、す、座るって、つまり……。あ、うー……)
昔の歌で、『思考回路がショートする』ってフレーズを聞いたとき馬鹿にしたのをよく覚えている。
でも自分が、そうなってみたら。案外簡単になると分かる。
――なによ、思考回路って簡単にショートするわけ?。とんだ不良品じゃない、作った奴出て来い。
「鈴」
「ふぇっ!?」
――あぁあ、どっから出た声よ、今の。うぅ、格好悪いったらないわ。最悪……。
「欲しいか?」
――え。
え? え? え? 一夏が――え? なに、なんなの、どうなってんの? 5W1Hを求めたいんだけど。
ちょ、まって。え? 一夏が――え?
(ほ、欲しいかって……なんかものすごい直球……)
ていうかあたしに答えさせるとかどんなサディストなのよ、こいつ。
好きな子にイジワルしたい心理なわけ? ――え、好き? 好きなの? 一夏が、あたしを?
120 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/29(月) 21:10:44.54 ID:++OWlAfdP
三巻再構成で始めたなら原作から少しずつ違いを大きくしていったほうが良いんじゃないか?
まだ原作二巻までしか読んでないけど
121 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/29(月) 21:17:53.06 ID:fzLSm8zn0
「いらないのか?」
「え、あ、いや、ちょ――ちょっと待ってっ」
「おう」
うそっ、何この展開!? どうなってんの!?
さらにあたしの心臓は大きく脈打って、今にも爆発しそうなくらい暴れだす。
顔はもう痛いくらいに熱くなっていて、どっと汗が噴き出してきた。
(う〜っ! ヤバい、ヤバい、ヤバいって……!)
ふと感じた汗の匂いにあたしは異常なまでに狼狽してしまう。
う……。やっぱり一回シャワー浴びてから来ればよかった……。
(――でもそれって、なんか……初めから何かを期待してたみたいでさぁ。なんか、なんかさぁ……。ねぇ?)
「別に遠慮しなくていいんだぞ」
ひぇっ!?
さっきよりも更に近くに一夏の声を感じて、あたしは数センチ飛び跳ねた。
ドキドキ。
ドキドキと。心が鳴りやまない。
土砂降りのように、おさまらない。
「いち、か……」
おそるおそる一夏を見ると、まっすぐ……ただまっすぐにあたしを見つめていた。
マズい……。
これは、引き……込まれ……る……。
122 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/08/29(月) 21:20:54.02 ID:fzLSm8zn0
>>120
さんに、思考を読まれた!?
といわけで投下終了です。
ずれは大きくします、まずは一夏と鈴のデートイベントをお送りします。
戦闘シーンが四巻にはないので、それについては五巻からです
それでは。
123 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(九州)
[sage]:2011/08/29(月) 22:10:11.38 ID:blKSFonAO
とりあえず、原作なぞりすぎるのやめたほうがいいぞ
ある程度自分で考えた文章にしたほうが面白くなるはず
124 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)
:2011/08/29(月) 23:38:01.03 ID:olr/NtlU0
次はいつかな?
125 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)
:2011/08/29(月) 23:59:08.04 ID:olr/NtlU0
このSSで良かった所
54 : ◆CAZtyR9xLg [sage]:2011/08/12(金) 12:10:02.39 ID:kTCfvlBV0
あれ? 途中送信されてますね。
土曜と日曜は投下できないので、そしてそろそろ三巻も終わるので
ここで、三巻と四巻の間に挟むイベントを募集します。
これは番外編ですので全く本編には関係ありません。
募集は日曜の21時までです。
55 : ◆CAZtyR9xLg [saga]:2011/08/15(月) 23:59:49.93 ID:0f88K5ts0
ケガしてしまったので、もうしばらく投下には時間がかかりそうです。
まだまだ、募集してます、それでは。
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/16(火) 00:01:15.74 ID:Sv20EDi6o
待ってはいるけどイベントなんぞ思いつかんよ…
57 : ◆CAZtyR9xLg [saga]:2011/08/16(火) 00:17:32.48 ID:cVkLSKeK0
そうですか?
何でもいいですよ、本編で省かれてるとことか、○○と○○の会話とか。
SSですし、三巻の時点で出てないキャラを登場させたりとか。
とりあえず、続きは明日の午後にでも投下します。
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/08/16(火) 00:35:36.86 ID:7fQvmKBAO
まぁ、自分で考えろってこった。甘えんな
59 : ◆CAZtyR9xLg [saga]:2011/08/16(火) 00:49:54.69 ID:cVkLSKeK0
そうですね。
三つほど考えているので明後日にでも投下します。
足首と左手の手首が痛い……。
それでは。
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/08/16(火) 09:25:22.16 ID:7fQvmKBAO
てか三巻再構成なんだから、もう完結でいいんじゃない?
61 : ◆CAZtyR9xLg [saga]:2011/08/16(火) 12:11:06.81 ID:cVkLSKeK0
そうなんですけど、1にも書いた通り続けて行きたいと思ってます。
今更ながらIS原作再構成にすればよかったと思う。
投下は今日の19時頃に。
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/08/16(火) 12:26:17.45 ID:7fQvmKBAO
読んでないからわからんけど再構成が60レス程度で終わるってすげーな
63 : ◆CAZtyR9xLg [saga]:2011/08/16(火) 22:11:03.29 ID:cVkLSKeK0
ケガしてる俺に仕事させるってどうなの。
というわけで予定より遅くなりましたが投下します
68 : ◆CAZtyR9xLg [saga]:2011/08/16(火) 22:50:14.90 ID:cVkLSKeK0
投下終了。明日には三巻を終わらせる。
それでは。
91 : ◆CAZtyR9xLg [saga]:2011/08/18(木) 23:19:08.78 ID:gx9Ry5ML0
終了〜。
番外編でした。
明日は投下できません、明後日には続きを投下します。
それでは。
99 : ◆CAZtyR9xLg [saga]:2011/08/20(土) 23:26:26.13 ID:AaGzU0A40
風邪を引いてしまった。
投下はもうちょいかかりそうです。
102 : ◆CAZtyR9xLg [saga]:2011/08/27(土) 00:56:47.04 ID:KWSMLe340
待っててもらえてありがとうございます。
今日の20時頃には、第四巻オリジナルを投下します。
お待たせして申し訳ありませんでした。
122 : ◆CAZtyR9xLg [saga]:2011/08/29(月) 21:20:54.02 ID:fzLSm8zn0
>>120
さんに、思考を読まれた!?
といわけで投下終了です。
ずれは大きくします、まずは一夏と鈴のデートイベントをお送りします。
戦闘シーンが四巻にはないので、それについては五巻からです
それでは。
126 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/08/30(火) 00:06:21.76 ID:A7eQGJAlP
___ ━┓
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127 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/08/30(火) 01:12:14.36 ID:k1MCLYlR0
◆CAZtyR9xLgァ! 今何キロォ!?
128 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)
:2011/09/01(木) 23:58:35.36 ID:Nqq4rA/b0
>>1
は確かにイラっとするが、この扱いは酷い
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
129 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/09/08(木) 22:29:44.22 ID:Z7q/FzM40
久々に明日更新します。
ぶっちゃけ自己満足ですよ。
130 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)
[sage]:2011/09/09(金) 00:18:31.77 ID:nMkof/7Co
期待
131 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/09/09(金) 22:24:14.80 ID:6gSfI/uh0
申し訳ないです。
予定が変更となりました。
明日の夜か日曜日の朝に投下にしきます、。
132 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/09/11(日) 10:57:40.47 ID:pzB010SY0
更新開始します
133 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/09/11(日) 10:58:26.19 ID:pzB010SY0
「で、どうする?」
そんなこと聞かれてもまともに答えれる訳がない。
恐る恐る一夏の顔を見ながら蚊の鳴くような声であたしは言った。
「欲し……い……」
「ん」
一夏はうなずいて、あたしのほうへ手を伸ばし、そして――
「了解。じゃぁ。おかわり入れてくるから」
そんな事を言いつつ冷蔵庫へ向かって行った。
そんな一夏を見送りながらあたしはさっきの言動を振り返っていた。
(あうあうあう。ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、大丈夫よね!? 変な子に思われてないわよね?)
そんなあたしの心情を汲み取ったのか一夏はこんな事を言った。
「まだあるからさ。そんな小さな声で言わなくてもいいぜ」
そんな唐変朴な台詞を返す一夏に心の中でため息をつきながら。
あたしはポケットからチケットを取り出した。
「それ、何のチケットなんだ」
いつもはここでお金を請求するところだけど今日は違う。
この間、シャルと二人で出かけてたみたいだしあたしもいいよね。
134 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/09/11(日) 11:24:06.22 ID:pzB010SY0
「新しく出来たプールのチケットなんだけど。明日までだったのよ」
「それは急な話だけど、多分明日は予定は無かったはず」
「そう。なら一緒に行ってもいい?」
そう言ってあたしは目を閉じた。
心臓はさっきよりうるさいし、何より一夏の顔を見るのは恥ずかしかったから。
「いいぜ。幼馴染なんだし確認なんていらないだろ」
それであたしの心の中は嬉しさでいっぱいになった。
今なら、多分誰に何言われようが耳には聞こえない。
「そ、そっか。なら明日の午前九時にゲート前でいいわよ」
「ん。了解、もうそろそろ遅いし。また明日だな」
「う、うん。じゃ、また明日」
にやけてしまう顔を何とか抑えようとするのを諦める。
こんな顔を見せたらルームメイトには絶対何か言われるだろう。
それでもいい。少なくとも翌日のプールの帰りまではそう思ってた。
135 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/09/11(日) 11:53:00.93 ID:pzB010SY0
「たっだいまぁ!」
バンッ! と自室のドアを吹き飛ばしかねない勢いであけると、
ベットの上で寝転がっていたルームメイトが目を丸くしていた。
「お、おかえり」
「ふ、ふっ、ふっふっふっ……」
「え、あの、鈴? ついに暑さでおかしくなった」
「そうよね!」
もうルームメイトとの会話なんてどうでもいいや。
明日に向けての逸る気持ちを何とか抑えようとしながら私は眠りについた。
136 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/09/11(日) 12:02:44.89 ID:pzB010SY0
――明日は自分にとって最悪な日になる事を知らないで。
137 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/09/11(日) 12:11:17.92 ID:pzB010SY0
「鳳鈴音の両親は確認できたか?」
「えぇ。でも貴方達が私の前に現れるのは珍しいわね」
「まぁ。今回はそれほど急ぐということだ」
「そうなの。私にはこの子がどうこうしようと関係無いように思えるんだけどね」
「さてな。私も上層部が考える事は分からんよ」
ISの発表と共に男という存在価値が破綻寸前の会社の株価みたいに暴落した世の中にあって
互いが互いを認めてるように思うと、バーのマスターは思った。
時折聞こえてくる声は内容こそ聞き取れないものの明るい話題のように感じられる。
グラスを洗っていると、男の方が先に立ち上がりお金も置いて行かずに出て行った。
138 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/09/11(日) 12:34:57.02 ID:pzB010SY0
「どうされたのですか? 相手の方は?」
思わず言葉が出てしまったという感じだった。
それを後悔しようと思わないほど彼女は魅力的に見えた。
「いつもどおりよ。相手は上司だから、お金を払うのはいっつも私」
「そうですか。では、これは店からのサービスです」
「ありがとう。おいしいわね」
「ありがとうございます」
すると彼女はおもむろにサイフを取り出し、一枚の金貨をくれた。
私がそれを確かめる間も無いまま、彼女は代金と言葉を残し店を出て行った。
「素敵な時間をありがとう。また来るかもしれないわ」
後日、知り合いの鑑定士に見せたこの金貨はかなり希少な物という事が分かった。
139 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/09/11(日) 12:41:07.36 ID:pzB010SY0
投下終了です。
次回は水曜あたりになると思います。
140 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海・関東)
:2011/09/13(火) 00:34:09.22 ID:Ncxli6ZAO
誰かレス
141 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海・関東)
:2011/09/15(木) 00:11:10.48 ID:3UkJAphAO
楽しみにしていたのに
142 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/09/15(木) 12:35:20.68 ID:MpeujerAO
>>140
と
>>141
は
>>1
なのか?
143 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海・関東)
:2011/09/18(日) 06:04:45.74 ID:3j9/W5cAO
>>1
ウジ虫!
こんな事言われて恥ずかしくないの?
144 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海・関東)
:2011/09/28(水) 00:46:14.07 ID:LAb0o9zAO
ほ
145 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)
[sage]:2011/09/28(水) 01:04:09.84 ID:vHf0x2tAO
楽しみにしていたのに
↑じわじわくる
笑ってしまったが、
>>1
のレスなんだろうか
146 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海・関東)
:2011/09/29(木) 02:28:33.96 ID:wjppETiAO
あんまりイジメんなよ
見ない振りも大事だ
でもジワジワ来るのは同感だよwww
147 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海・関東)
:2011/10/06(木) 00:34:11.86 ID:nK+US+mAO
楽しみにしていたのに
みんながイジメるから
148 :
◆CAZtyR9xLg
[saga]:2011/10/07(金) 02:10:42.18 ID:YvXWN70y0
皆様お久しぶりです。
言い訳はしません、次回の投下は来週の月曜になると思います。
>>140
,141は
>>1
ではありません。
では、月曜日にまた来ます。
149 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/10/07(金) 02:18:42.46 ID:GsWFtm0AO
言い訳もなにも、待ってないからねwwwwww
150 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海・関東)
:2011/10/07(金) 02:32:53.40 ID:PTxVx7hAO
やった!待ってた!
151 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/10/07(金) 14:56:32.01 ID:GsWFtm0AO
また自演かww
152 :
◆CAZtyR9xLg
[saga sage]:2011/10/07(金) 16:40:31.95 ID:YvXWN70y0
マジでテメェはこのスレから消えろ。
どこに自演の証拠なんかあるんだよ。
>>150
に謝れ名無しNIPPER。
153 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/10/07(金) 17:38:53.86 ID:GsWFtm0AO
とりあえず駄スレをageるな
sage進行で頼むわ
154 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海・関東)
:2011/10/09(日) 03:35:22.12 ID:crESkcPAO
自演ではありません。
本当に待ってます。
別の意味で。
この人の投下した後のウザさが好きなんです。
155 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海・関東)
:2011/10/12(水) 02:02:18.12 ID:+hOWYKbAO
来なくなっちゃった…
156 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)
[sage]:2011/10/20(木) 21:54:25.58 ID:EuG9A9w50
誰も自演なんかしてないのにな…
157 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海・関東)
:2011/10/27(木) 01:00:52.16 ID:zMOBKwxAO
本当に来ないのかな?
せっかく面白くなってきたのに。
158 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)
(中国地方)
[sage]:2011/11/02(水) 00:37:48.40 ID:0G4ldush0
久々に面白いISスレなのにクズが湧くんだな
かまってちゃんキモい
サーバを移転しました@荒巻 旧サーバ:
http://vs302.vip2ch.com/
159 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)
(東海・関東)
:2011/11/03(木) 00:55:02.36 ID:sg3psrnAO
おかえり
160 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)
(東海・関東)
:2011/11/04(金) 01:35:03.37 ID:ctm7oqaAO
>>158
面白いか?
161 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)
(東海・関東)
[age]:2011/11/10(木) 01:22:28.49 ID:KncAwRpAO
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