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蒼衣「箱庭学園?」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :断章×めだか [sage]:2011/08/06(土) 18:33:44.78 ID:UphaSpO+0
ふと思いついた小ネタ(タイトル含む)書き込むスレ7に>>1が投稿した蒼衣「箱庭学園?」のスレです。

内容は箱庭学園の生徒の蒼衣が<騎士>として活動する傍ら、学校では不知火と生徒会の案件に首を突っ込んだり
します。

断章のグリム×めだかボックスのクロスオーバーなので、読むときは両方知っといた方がいいかも。

初ssです。荒らしはお断り。

投下します。
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こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713183168/

【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713091115/

アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713089503/

エルヴィン「ボーナスを支給する!」 @ 2024/04/14(日) 11:41:07.59 ID:o/ZidldvO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713062467/

さくらみこ「インターネッツのピクルス百科辞典で」大空スバル「ピクシブだろ」 @ 2024/04/13(土) 20:47:58.38 ID:5L1jDbEvo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713008877/

暇人の集い @ 2024/04/12(金) 14:35:10.76 ID:lRf80QOL0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1712900110/

ミカオだよ。 @ 2024/04/11(木) 20:08:45.26 ID:E3f+23FY0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1712833724/

アルミン「どうやら僕達は遭難したらしい」ミカサ「そうなんだ」 @ 2024/04/10(水) 07:39:32.62 ID:Xq6cGJEyO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1712702372/

2 :断章×めだか [sage]:2011/08/06(土) 18:35:38.29 ID:UphaSpO+0

クリック?
 クラック!

 ――これは、二つの物語が交差するお話。

 主役は二組の少年少女。
 
 少女は『異常』。

 どちらも類稀な美貌を持ち、他とは違う異能を有する。

 己の痛みを断罪の炎に変える黒装束の少女。
 他者の才能を使い使いこなす完璧生徒会長。 

 少年は『普通』。

 どちらも普通の少年で、少女を守ろうと奮闘する。

 ただひたすら『普通』であろうとする<アリス>。
 少女の番犬であろうとする真の『普通』な庶務。
3 :断章×めだか [sage]:2011/08/06(土) 18:36:22.80 ID:UphaSpO+0

 ―――ここから先は、『異常』な物語。


 脚本はない、監督はいない、客席は満員御礼のぎゅうぎゅうづめ。

 作者も違う、出版社も全く関係ない、混沌と混乱の舞台裏。

 <葬儀屋>と『枯れた樹海』は睨み合い、<刀山劍樹>と『創帝』はいがみ合い、<名無し>と『知られざる英雄』は互いに

自分を投影する。『黒い包帯』は『理詰めの魔法使い』と話している<黄泉戸契>の狂気を見抜き、<雪の女王>の姉は『大嘘憑き』と

静かに嗤い会う。

 おっとこちらでは『荒廃した腐花』が<グランギニョルの索引ひき>の面倒を見、<聖女ギヨティーヌ>は心療外科医と議論を

交わしている。『モンスターチャイルド』は無邪気な<食害>に振り回され、<アンデルセンの棺>は理事長の理想を嘆く。

 『悪平等』はそんな彼らを平等にカスだと蔑む。 

 ―――――――――――――――そして、
4 :断章×めだか [sage]:2011/08/06(土) 18:36:58.75 ID:UphaSpO+0

「まさかお前らと共演とはなあ・・・ま、よろしくな」

「うむ。お互い精進しようではないか!」

 『普通』人吉善吉。『異常』黒神めだか。

 この劇の主演にして、とある物語の“王道な”主人公。

「えっと・・・こちらこそ、よろしくね」

「貴方達とは仲良くする気は毛頭ないわ」

 <目醒めのアリス>白野蒼衣。<雪の女王>時槻雪乃。

 この劇の主役にして、とある物語の“邪道な”主人公。
5 :断章×めだか [sage]:2011/08/06(土) 18:37:25.52 ID:UphaSpO+0

 さあ役者は揃った。これより舞台を始めよう。

 全てがアドリブの一発勝負。失敗は許されない。

 これは誰の物語か?

 不思議の国に迷い込み、数々の怪奇に遭遇するアリスの物語か。
 全ての人間を幸せにしようとする、容姿端麗聖人君子の物語か。
 完全な人間を創造しようとする、哀れで愚かな悪平等の物語か。

 ――――幕を上げよう。

 例えハッピーエンドになってもバッドエンドになっても、それでも、物語は始まるのだから。
6 :断章×めだか [sage]:2011/08/06(土) 18:37:56.40 ID:UphaSpO+0

 ――国内でも名門校と言われる箱庭学園。今、体育館では新しく生徒会長に就任した一人の少女が壇上に上がっていった。

「世界は平凡か?未来は退屈か?現実は適当か?」

 凛、とした、自信に満ち溢れる声。

「安心しろ。それでも、生きることは劇的だ!」

 その声に迷いや戸惑い、躊躇は一切なく、聞く者達を圧倒させる。

「そんなわけで、本日よりこの私が貴様達の生徒会長だ。

学業・恋愛・家庭・労働・私生活に至るまで、悩みごとがあれば迷わず目安箱に投書するがよい。

 24時間365日、私は誰からの相談でも受け付ける!!」

     ・・・・・・・・・・
 箱庭学園1年生にして生徒会長・黒神めだか。

 断言するように、宣言するように、彼女はそう言い放った。
7 :断章×めだか [sage]:2011/08/06(土) 18:38:27.89 ID:UphaSpO+0
――1年1組の教室にて

「ねえ、聞いた?新しい生徒会長の噂――」

「私達と同じ入学したての1年のくせに、冗談みたいに態度エルな奴なんだって――」

「引くほど美人なんだけど、やることなすこと滅茶苦茶に型破りでさ、先生もビビって手ェ出せないそうだぜ――」

 箱庭学園。一学年に13クラス存在するという巨大マンモス校である。

 広大な敷地に充実した設備、30以上の部活に独自の特待生制度をもつここは屈指の人気校であった。

 そんな数多の倍率を潜り抜け、箱庭の制服を着ることを許された勝者達。

 ようやく周りと打ち解けたばかりのクラスは新しい生徒会長の噂で持ちきりだった。

「・・・・・うわあ」

 そして、そんな彼女の『普通』とはかけ離れた噂に、どこか顔が引き攣っている生徒が一人。

 この年頃の男子にしてはやや線が細い顔立ち。いかにも自分は平凡ですと言わんばかりの、どこまでも『普通』な生徒。

 白野蒼衣。それがこの男子の名前である。

「・・・『天才』っているもんだなあ」

「あひゃひゃ!どーしたの白野!?もしかしてお嬢様に嫉妬?」

「って不知火!?」

 思いがけなく独り言を聞かれた挙句「嫉妬?」という自分の願望とは正反対の疑問を聞かれた。

 不知火半袖。どう見ても小学生にしか見えない女子生徒は蒼衣の前の席に座っており、入学式の時からこんな風な

調子なので、そのまま友達付き合いを続けている。

「しっかしあのお嬢様。全校生徒を前によくあんな啖呵が切れるもんだよ。人前に立つのに慣れてるっつーかさー♪」

 不知火はぴょんっと蒼衣の隣の席の机に突っ伏している男子生徒に話しかけた。
8 :断章×めだか [sage]:2011/08/06(土) 18:39:22.88 ID:UphaSpO+0

                          ・・・・
「カッ!ありゃあ人の前に立つのに慣れてんじゃねーよ。人の上に立つのに慣れてんだ!」

 隣の生徒――人吉善吉。名は体を表すと言う様に、お人よしな性格の彼は起き上がって蒼衣と不知火に言った。

「へえ・・・。まあそうでなきゃ1年生で生徒会長になるなんて普通はできないよね」

「それも支持率98%!ぶっちぎりのナンバーワンだもんねー!」

 支持率98%。通常の統計学では有り得ない数値だ。

「かくゆうあたしと白野も、あのお嬢様に清き1票を捧げたわけですが♪」

 蒼衣に机に勝手に腰掛け、左手を胸に、右手を天に掲げる不知火。どこか後ろにキラキラマークが見える。

「全国模試では常に上位をキープ!偏差値は常識知らずの90を記録し!

 スポーツにおいてもあらゆる記録を総なめ状態!

 手にした賞状やトロフィーは数しれず!

 実家は世界経済を担う冗談みたいなお金持ち!」

「あらためて聞くとホントにハイスペックだ・・・」

 言葉が出ない。普通の家庭に生まれ、普通の環境で生きてきた蒼衣にとっては、その高すぎるステータスは

もはや『天才』を通り越して既に雲の上の存在である。

 一体どんな環境で生きてきたら、あのようになるのだろう。凛、とした、己に恥じず、他人の役に立つ為に生まれてきたと豪語する

あの少女は。

 『完璧超人』――それが生徒会長・黒神めだかに対する蒼衣の印象である。恐らく大多数の生徒が同じような印象を抱いてるだろう。

 ふと、思い出す。めだか程ではないが、恐ろしく聡明で、しかし性質は全くの正反対の幼馴染を。

 彼女は今――どうしているのだろう?
9 :断章×めだか [sage]:2011/08/06(土) 18:40:01.72 ID:UphaSpO+0

「全長263.0メートル。高度8万フィートをマッハ2で飛行!インテル入ってる!」

「・・・いや冗談だよね不知火?いくら黒神さんでもそこまでは出来ないよね?」

「・・・いや、途中から人類じゃなくなってる」 

 二人で突っ込みを入れた後、不知火が「で?人吉はどーすんの?」と問いかけた。

「お嬢様が当選したってことは、とーぜん人吉も生徒会に入るわけ?」

「あ、それ僕も気になってた。どうするの?」

「カッ!なわけねーだろ!これ以上、あいつに振り回されてたまるかっての」

 確かにしつこく誘われちゃーいるが、と付け足す善吉。

「俺は絶対!」

 ビシッ!と二人を指差す善吉。

「生徒会には入らない!!」

 断言する。だが、



 何故、後ろに噂の人物がいるのだろう。

 一体いつから、そこにいたのだろう。

 そして何故、善吉と全く同じポーズをしているのだろう。



「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 沈黙の蒼衣と不知火。そして、

「まあ、そうつれないことを言うものではないぞ。善吉」

 噂の人物――黒神めだかは、ガッシィィ!と女子ではまず有り得ない筋力で善吉の頭を掴む。

 教室中に悲鳴が響き渡った。

「ギャアアアア!」

10 :断章×めだか [sage]:2011/08/06(土) 18:40:33.03 ID:UphaSpO+0
「あれ?白野、人吉の奴どこ行った?」

「・・・さっき、黒神さんに連れて行かれたよ。女子とは思えない程の力で」

「あ、そう・・・」

 先程までの状況を見てやや元気がない蒼衣。間違いない、完全に黒神めだかは蒼衣と同じ世界の住人ではない。

 そんな蒼衣の気持ちが通じたのか、同じクラスの日向は何も言わなかった。

「・・・そーいやなんか選挙活動も手伝ってたみたいだけど、人吉と例の新会長ってどういう関係なんだ?」

 と、日向が以前から思ってた疑問を口に出す。

「あー。いわゆるひとつの幼馴染って奴ですよ」

 疑問に答えたのは何故か蒼衣の机に寝転がってる不知火だった。足が邪魔だ。


「ま。あたしに言わせればただの腐れ縁なんだけどね♪」 
11 :断章×めだか [sage]:2011/08/06(土) 18:41:18.59 ID:UphaSpO+0
投下終了。疲れた・・・。書きだめがどんどんなくなっていく・・・。
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/06(土) 19:27:57.37 ID:4FSSGnj70
続けていいよ
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/08/06(土) 23:03:33.45 ID:nMLxOIjAO
乙!グリム好きとして期待。
敷島と佐和野は出る予定?
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/07(日) 16:53:42.01 ID:v8eIEEaSO

どっちも好きだから期待
15 :断章×めだか [sage]:2011/08/09(火) 14:01:39.89 ID:LpQb+7Np0
おまたせしました。少ないですが投下します。
16 :断章×めだか [sage]:2011/08/09(火) 14:02:36.10 ID:LpQb+7Np0
 ――翌日。

 近隣の高校と比べ、メニューが豊富で財布にも優しい箱庭学園の食堂は生徒でいっぱいだった。

 その一角には三人の生徒が座って食べている。その内の一人の食事がやけに多い。

「前から思ってたんだけどさー、人吉ってひょっとして頭悪くない?」

 食事の量が多い生徒――不知火はもっしゅもっしゅと目の前の食事を食べる。

「なんで毎回毎回お嬢様のシゴキに付き合ってるんだよ。部外者のくせに」

「うるせえ」

 不知火と向かい合わせに座っている生徒、善吉は顔に昨日まではなかったガーゼや湿布を貼っている。

「何だかんだいって人吉って面倒見いいよね」

「ほっとけ」

 残りの一人、蒼衣は不知火の隣に座って日替わりランチを食べている。

 今二人は善吉から目安箱に投書された剣道場の件について聞いたばかりだった。

 その感想が、さっきの発言である。
17 :断章×めだか [sage]:2011/08/09(火) 14:03:35.82 ID:LpQb+7Np0
「昔っからどっかずれてんだよ、あいつは。自分の優秀さにまるで自覚がなくて、そのくせ周囲には自分と同じレベルを強要しやがる」

「・・・それ、どういうこと?」

 なにやら聞き捨てならない事を聞いたような気がして、善吉に問う。

「ああ、中学校の頃な・・・」

 なんでも。

 黒神めだかは中学生の時、全国模試での結果を買われ夏期講習の講師を担当したことがあるらしい。

 が、その時教えたのは

『1と7の紛らわしくない書き方』とか、
                        ・・・・・・・・・・・・・・
『はみ出さないマークシートの塗り潰し方』などの、どれも採点ミスを回避する方法ばかりだったのだ。

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 彼女にとってペーパーテストとは間違われるものであって間違うものではなかったのだ。

 満点を取ることがまず前提。ただそれだけの話ではあるのだが。

「何で黒神さんって自分の能力に自覚がないの・・・?」

 前代未聞、空前絶後の能力を持ち、選挙でも支持率98%をたたき出す彼女。どこまでも普通な蒼衣にとって

めだかが自分の才能に気付かないことは、驚愕の言葉しか出ない。

「自分もできるから相手もできるだろうって思ってるんだよ。だから、あいつには一生かかってもわかんねーだよ。

 努力が実らねー奴の気持ちとか、わけもなくへこんじまう奴の気持ちとかな」

 ガタッとご飯が入ったお椀を手に取る。
18 :断章×めだか [sage]:2011/08/09(火) 14:04:32.45 ID:LpQb+7Np0
「ま、今回はそれがたまたまうまく転んだわけだ。あんなヒデェ目に遭っちゃ、あいつらもう剣道場には近寄らねェだろ」

「そっか。そうだといいね」

 ひょいパク、ひょいパクと食べる善吉。幼馴染の彼が言うからにはそうなのだろう。蒼衣も食事を再開する。

 だが、それに異を唱える人物がいた。

「・・・・・・・・・・・・・・どーだろうね?」

 不知火だった。何故か楽しそうにケラケラと笑っている。

「ああ?」「へ?」

 善吉と蒼衣から疑問の声が上がる。

「白野はともかく人吉って、付き合い長い割に案外わかってないよね〜♪あのお嬢様のコト」

 グサグサと善吉の頭に矢印が刺さる。

「『ワルい奴やっつけてめでたしめでたし』。あれがそんなカンタンな女だったら、あんたもそんなに苦労しなくて

済んでるでしょ?」


        ・・・・
「冗談じゃない。めでたくなってもらわなきゃ困るんだよ」


 ボソッと善吉のみ聞こえた独り言。だがその言葉は明らかに不良を追い出したいという思惑が込められていて――

「んん?今、後ろの席に誰かいなかったか?」

「え?うん。日向がうどん食べてたけど」

「日向?」

「それがどうかしたの?」

「・・・・・・・・・・・いや、別に」

 蒼衣の返事にたぶん気のせいだ。と呟く善吉。
19 :断章×めだか [sage]:2011/08/09(火) 14:05:10.54 ID:LpQb+7Np0
 食事が終わり、食器を片付けに行く。

「ま、いーんじゃない?もうすぐあんたもお役御免なんだし」

「あ?」

「知らないの?今日の放課後、学園側主催の役員募集会があるんだよ。二年三年の特待生集めてね」

 ガコンと缶を捨てる不知火。

「生徒会メンバーさえ決まっちゃえばもう人吉も振り回されることはなくなるし、よかったじゃんさ!」

 明るい声で言う不知火。だが人吉は、

「・・・・・・・・・・・」

 と晴れない顔で黙り込むのであった。
20 :断章×めだか [sage]:2011/08/09(火) 14:09:50.92 ID:LpQb+7Np0
投下終了。少ないのは勘弁してください。
敷島と佐和野ですが、奴らのポジションは善吉と不知火にとられました。ので本編には出てきません。
でてくるとしてもオマケとか番外編?書けたらですけど。
雪乃嬢の出番は2巻になってからなのでしばらく出てきません。
後、気付いたことがあるんですけど、不知火が蒼衣の机に寝転がってるシーン、あれ完全に見えて
ますよね・・・。投下したあと気付きました。
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/11(火) 14:46:02.97 ID:Fg/4wDdm0
面白い
から早く続きを投下してくれ…
22 :断章×めだか :2011/10/20(木) 16:08:57.76 ID:zOXNEkis0
本当にお待たせしました。投下します。コメント欲しいです・・・。
23 :断章×めだか :2011/10/20(木) 16:10:08.76 ID:zOXNEkis0

 ――放課後、剣道場に行く善吉と別れ校舎内を散策する蒼衣と不知火。

 廊下を歩いていたところ、なぜか剣道場にいるはずのめだかがスタスタとどこかへ向かっている。

「あれ、黒神さん?剣道場にいるんじゃ・・・」

「お嬢様ァ。どこ行くんですかぁ?」

 二人の呼び声に気付いたのか、めだかが立ち止まって振り向く。

「・・・・・・・・・・・ああ、白野同級生と不知火か。役員募集会で演説を打たねばならんので、南校舎の第四会議室へ

向かうところだよ」

「ああ、あの二年三年の特待生集めて行うっていう・・・」

「得意の演説!あたしも聞きたいなぁ〜♪」

「私としてはそんな方法で人員を増やす気はないのだがな。気を遣ってくれた先生方の顔は立てねばならん」

 いくら支持率98%とはいえめだかはまだ一年生。役員を全員集められるか不安なのだ。

 ならば少しでも集めやすいようにと主催して役員募集会を開いたのだろう。

「あひゃひゃ♪けど人吉の奴は生徒会に入る気なんて更々なさそうですけど?」

「・・・・・・・・・・・なんだ不知火。私のことが心配なのか?」

「まさか!完璧超人の黒神めだかを心配する無礼者なんてこの世にいるわけないじゃないですか!」


            ・・・・・ ・・・・・・・・・・・
「・・・・・・だろうな。だからこそ、私には善吉が必要なのだ」


「・・・・・・・・?」

 その言葉に、何故かデジャヴと不吉な予感を覚える蒼衣。

 ざらりと心の中の嫌な部分に触れ、思い出す間もなく霧散する。

 不吉な予感を振り払って、蒼衣はめだかに質問する。

 ――その違和感が、後に大きく関わってくるとも知らぬまま。

「そう言えば黒神さん。剣道場はどうしたの?」

「私が戻るまでの間、自主練を言いつけておる。一刻も早く連中を剣道少年に戻してやらんといかんからな」

「・・・ああ、そうなんですか」

 どうやらまだ勘違いしたままらしい。『黒神めだかの真骨頂・上から目線性善説(by善吉)』は伊達ではないらしい。
24 :断章×めだか :2011/10/20(木) 16:11:20.96 ID:zOXNEkis0
「そーいや投書の差出人って一体誰だったんでしょうね?」

 唐突に不知火がめだかに質問する。

「確かに迷惑っちゃ迷惑でしたけど、使ってない剣道場に不良が溜まってたトコで実際困る生徒なんていないはずなのにねぇ?」

                          ・・・・・・・・・・・・・・・・・
 首を傾げながら疑問を口にする不知火。言われてみれば誰も寄り付かない場所に不良がいても自分達に関わってくることは

ないだろうに、投書人はわざわざ「不良を追い出してください」と依頼した。普通なら放っておくだろう。

 だが、黒神めだかは、

「知らん。知る気もない。匿名性がなければ目安箱の意味がないし、私は誰からも相談でも受けつける」

 パチンと扇を閉じながら事も無げに言う。本当にどうでもいいようだ。

        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「じゃ、たとえばあたし達のクラスメイトで剣道の腕前は全国クラスだけど性格に問題があって中学時代暴力事件ばっか起こしてたって

・・・・・・・・・・・・・・・
過去を持つ日向くんが差出人でも?」

 ペラペラと不知火が日向の個人情報を話す。そうか暴力事件を・・・・え?

「ってええ!?日向ってそんなことやってたの!?」

「一向に構わん」

「って黒神さん!?」

 蒼衣には信じられなかった。最初に会った時からそんな不良みたいなイメージはなかったし、むしろ優等生的な印象を

抱いていたのだ。しかしそういえば善吉が日向の席気にしてたような・・・。

「だったらさぁ・・・」

 不知火が舌を出しながら言う。


「あたしからの投書でも、受けつけてはくれるんですよね♪」


 ――確実に何か企んでる!

 蒼衣は直感でそう思った。
25 :断章×めだか :2011/10/20(木) 16:12:55.55 ID:zOXNEkis0
待たせた上にこの量の少なさ・・・ごめんなさい。つーか傍点がずれる。
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/20(木) 16:50:32.60 ID:9GK+nMPSO
断章SSとはめずらしいな

めだかは分からんが期待してる!
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/21(金) 17:05:28.40 ID:LnT5RLs40
おぉ!!
投下されていたか

28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/10/22(土) 18:38:53.39 ID:ToA878PAO
グリムのノリで進めたら阿久根さんとかが死んじゃう
29 :断章×めだか [sage]:2011/10/28(金) 16:50:06.56 ID:r2P6f8X30
投下します。
30 :断章×めだか [sage]:2011/10/28(金) 16:51:07.31 ID:r2P6f8X30
 ――時は過ぎ夕暮れ、善吉にボコボコにされた日向は傷だらけの体でよろよろと構内を歩いていた。そこに優等生の印象はない。

「くそ・・・人吉善吉・・・。滅茶苦茶できるじゃねぇかよ・・・。不知火の奴大ボラ吹きやがって!畜生!」

 ミシミシ痛む体を叱咤し一歩一歩歩く。傷口が空気にしみて痛い。一瞬でも気を抜いたらたちまちその場に崩れ落ちるだろう。

(考えてみればあいつあのバケモン女とずっとつるんでやがるんだよな・・・・・・・・・・・・。ただの雑草なわけがなかった!!)

 今まで自分が侮っていた人吉の顔を思い浮かべる。幼馴染という時点で警戒するべきだったのに、何の突出していない普通の

男子、という印象しかなかったので舐めていた。思わず心の中で舌打ちする。

 だが、この日向という男は諦めが悪かった。

「だが絶対にこのままじゃ済まさねえ!いつかギッタンギッタンにしてやるぜ!!」

 グググと左手を握り締め決意を新たにする。はっきり言ってしつこい。

 ・・・・・が、日向は気がつかない。


 自分の真後ろに、全く同じポーズをしている“バケモン女”がいることを。


 そして、

「まあ。そう荒れるものではないぞ。日向同級生」

 “バケモン女”に声を掛けられ、調子に乗っていた日向はサーッと顔を青くする。

「ひっひいいっ!せっ生徒会長!?」

 後ろを振り返り、思わず後ずさりしてしまった。傷口にアスファルトが当たり更に痛みが増す。

「なななっ何で!役員募集会はどうしたんだよ!?」

 まるでどこかのかませ犬みたいな台詞を口にする。一方“バケモン女”こと黒神めだかはそんな日向の態度を意に介さず、

仁王立ちで答える。
                ・・
「うむ。心配には及ばん。ちゃんと代理を置いてきた」

「だ・・・代理?」
31 :断章×めだか [sage]:2011/10/28(金) 16:52:05.03 ID:r2P6f8X30
 一方、第四会議室ではちょっとした騒ぎになっていた。

「えーっと。それでは最初に質問させてください」

 生徒会希望の生徒を代表して眼鏡をかけた真面目そうな男子生徒が手をあげる。

 
「あなた達は一体誰ですか?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・大統領です!(精一杯のギャグ)」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・生徒会長代理です・・・・・・・」

 もう帰りたい、泣きたい。蒼衣は心底そう思った。さすがの不知火も冷や汗をかいている。

 あの後不知火の依頼を受けつけためだかはこともあろうか、なんと演説の代理を二人に頼んだのだ。

 ものすごく断りたかったが、不知火が承諾したことでもしやいらぬ事をやらかすのではないかという不安、そして

他人からの頼みを無碍にできない蒼衣の性格がこの状況を作っている。ああなんで僕断れないのかな。

 今この瞬間にも壇上に立っている蒼衣と不知火は多数の生徒の注目を浴びている。注目されるのが大の苦手な蒼衣にとって

もはや処刑台に立たされているのと等しい。改めてめだかは自分と違う世界の住人だと思う。段々同情の視線が多くなってきた気

がする。


 だ・・・・・・

 誰か助けてえええええええ!!


 そんな蒼衣の悲痛な心の叫びは、誰にも届くことはなかった。
32 :断章×めだか [sage]:2011/10/28(金) 16:53:04.53 ID:r2P6f8X30
 翌日。

「お、おはよう・・・・人吉」

「おお、おはよう・・・・ってどうしたんだ白野!?そんな疲れきった目は!」

「人吉・・・・・もう黒神さんが・・・理解できない・・・・・」

「一体何があった!?」

 教室で机に着きぐったりしている蒼衣。もはや生気の欠片もない。

「・・・ってあれ?人吉、その腕章・・・」

「ああ、これか?」

 しかし、善吉の腕に昨日までなかった腕章が目に留まり、少しだけ回復する。

「ああ、ほら。めだかちゃん昨日演説ブッチったせいで役員一人も増えなかったからさ。

い、いや、別に勘違いすんじゃねーぞ。この箱庭学園をお花畑にする為であって別にめだかちゃんが好きだからとか

そんなんじゃねえから!」

「あーはいはい」

 勝手にわたわたと慌てる善吉を見て、おかしくなる蒼衣。

 やっぱり日常はいいなあと思ったのだった。






「でも庶務(ドンケツ)なんだね」

「手柄を立てて這い上がれだとさ」
33 :断章×めだか [sage]:2011/10/28(金) 16:56:51.83 ID:r2P6f8X30
投下終了。これにて第一箱「『天才』っているもんだなあ」は終わりです。
今のところ蒼衣はめだかに圧倒されっぱなしです。巻き返しは断章発覚後だろうなあ・・・。
雪乃登場は阿久根生徒会入り後喜界島前です。それでは、また。
34 :断章×めだか [sage]:2011/11/10(木) 16:26:40.38 ID:C2jdjQjZ0
投下します。
35 :断章×めだか [sage]:2011/11/10(木) 16:28:15.57 ID:C2jdjQjZ0
第二箱「それでよいのだ」


 人吉善吉が生徒会役員になって一週間が経過した。最初はもの珍しかった黒の制服もいつしか見慣れたものになった。

「・・・やっぱ俺黒いの似合わねーな。だから制服白のこのガッコ来たってのに」

「そんなことないよ人吉。結構似合ってるよ?」

「そーだよ人吉。馬子にも衣装っていうじゃん☆」

「それフォローになってないよ不知火・・・」

 あひゃひゃと笑いながら教室でパンを齧る不知火。大量の菓子パンがおやつ代わりというのだから驚きだ。

「だけど生徒会用制服ってあるんだね。そっちに驚いたよ」

「生徒の自主性を重んじる学校だからなー。たしか風紀委員会も専用のがあるとか」

「へえー」

 そんなとりとめない話をしながら次の授業の準備をする。次は数学だ。

 キーンコーンカーンコーンとチャイムが鳴る。

「おらお前ら席つけー」

 中年の男性教師が教室に入ってくる。席に着くクラスメート。


(・・・やっぱり『普通』っていいなあ)


 その風景を見ながら蒼衣は思った。気の合う友人。楽しいお喋り。真面目な授業。静かになる教室。その全てが『普通』であり、

自分もその『普通』の一員なのだと蒼衣は心から満足する。まあ善吉は幼馴染に振り回されているがそこに蒼衣は入ってないので

問題ない。


 ――この日常が壊されるなど、有り得ない。


 この時の蒼衣は心から、そう信じていた

 その確信が1ヶ月後に根底から崩されるとは、知らぬまま。
36 :断章×めだか [sage]:2011/11/10(木) 16:29:17.61 ID:C2jdjQjZ0
――放課後、グラウンドにて。

「陸上部所属、三年九組諫早先輩。有明先輩と同じ短距離専門とするアスリートで、利き腕は左。同じスパイク履いてるのは
見てのとーり!お住まいは23地区で3年前から文車新聞を購読中――だってさ♪」

「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 現在何故か蒼衣は不知火と共に目安箱の案件に首を突っ込んでいた。

 事の発端は1時間前、目安箱にスパイクを駄目にした犯人を捜してほしいという投書をした有明先輩が生徒会室に訪れた。

 三日前にボロボロのスパイクが発見され、それと一緒に「リクジよう部ヤめロ」という新聞記事で切り抜かれた脅迫状がロッカーの中に

入ってたらしい。

 ほぼ手がかりが無いに等しい状況だが、完璧超人の生徒会長・黒神めだかはスパイクの状態と使用された新聞記事から『陸上部女子』

で『陸上歴はそれなりに長く』『短距離走を専門』とし、『有明先輩と同種のシューズを愛用』『左きき』で『文車新聞を購読』し、

『23地区に住んでいる』誰かと推理した。

 その根拠として、まず的確に縫い目に刃を入れていること。履き古した靴がどこから傷んでいくか自分の足で長期間履いていないと

難しい。更にメーカーのロゴに全くハサミが入っておらず、犯人はこの靴に対して愛着を持つ者であることが推測される。

 左ききというのは、切り口から左きき用のハサミが使われていることから。

 『文車新聞を購読』、『23地区に住んでいる』というのは脅迫状から。

 脅迫状の文字に使われているのは1文字だけだが、記事は『オモテ』だけでなく『ウラ』にもある。

 それぞれの切り抜きの裏面の十数文字から特定する限り、ここ1週間の文車新聞がアトランダムに使用されていることから、犯人は

わざわざ新聞を買ったりせず家にある古新聞を使ったと見るのが妥当。最後に、新聞というのは印刷する時間帯によって記事の差し替え

が行われる場合があるが、切り抜かれた新聞は23地区にのみ配られた14版、ということらしい。
37 :断章×めだか [sage]:2011/11/10(木) 16:30:34.97 ID:C2jdjQjZ0
 それを聞いた善吉の感想。
 
 ・・・・・・・・・・・・・推理力がありすぎて、気持ち悪い!!

 もはや推理小説の名探偵顔負けである。

 推理後、善吉は不知火に上記の条件に当てはまる人物を知らないかと訊ねた。その人物が冒頭で不知火が話してた諫早先輩である。

 蒼衣は善吉達の邪魔にならないようさっさと帰るつもりだったが、「白野も一緒に行こーよー♪」と言い方こそ小悪魔的だが制服

の袖をガッチリと掴んで離さない子泣きじじいのような不知火に捕まり、今こうして校舎裏から彼女を見てたのである。蒼衣としては

脅迫の犯人より何故善吉がブレザーの下にジャージを着ているのかそちらの方が気になるのだが、まあ本人嫌がってる様子はないし

いいだろうと放置した。 

 時間を現在に戻して。

「いつも思うんだが不知火、お前どっからそういうの調べてくんの?」

「あひゃひゃ。人吉が正義側のキャラでいたいならそれは知らない方がいいね♪」

 蒼衣の下と上から疑問の声とからかうような声があがる。

「ちなみにあの諫早先輩、有明先輩が代表に選ばれたせいでレギュラー落ちしてます♪」

「そうなの?」

 レギュラー落ち。なるほど、動機としても十分だ。

「・・・・・・・・・・そりゃ決まりだな。三年が二年に抜かれちゃ屈辱だろうし、犯人ほとんど彼女で間違いねーだろ」

 意外とあっけなかったなと呟く善吉。その視線の先には水分補給をする諫早先輩の姿が。

「しかしな、善吉」

 ひょいと、唐突に善吉の上にめだかが顔を出す。
38 :断章×めだか [sage]:2011/11/10(木) 16:31:23.66 ID:C2jdjQjZ0
「実質的な証拠はまだ何もないのだ。ほとんどという言葉の意味は絶対ではない。状況証拠だけで他人を悪人と決め付けるのは

よくないな」

「・・・上から目線性善説もいーけどさ、物的証拠なんて集めようねーだろ。俺ら警察じゃねーんだからよ!」

「本人に直接聞くわけにもいかないし・・・。どうするの?」

「どーしよかねえ・・・ん?」

 善吉が何か気付いた様子だった。つられて蒼衣と不知火もその方向を見る。

 そこには。


「ふぅー」

「諫早三年生。貴様が犯人か?」

                              ・・・・・
 水分補給を終え、汗を拭く諫早先輩と同じポーズをし、犯人かと直接聞いためだかの姿がそこにあった。

「!!」

 ドクッと振り返った諫早先輩。

「いや、このスパイクの件なのだが・・・・・」

 と両手にはめたスパイクを見ながらめだかが問う。

「「・・・・・・・・・・・・・・!」」

「あーひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」

 善吉は古いギャグ漫画のようにひっくり返り、蒼衣はいらぬ事を言ってしまったと自責の念から四つんばいになって拳を地面に

叩きつけ、不知火は腹を抱えて爆笑していた。
39 :断章×めだか [sage]:2011/11/10(木) 16:32:03.06 ID:C2jdjQjZ0
 さて、犯人かと聞かれた第一容疑者・諫早先輩の反応はというと、

「しっ知らないっ!!」

 タオルを投げ捨て、日々陸上部で鍛えた俊足でめだかから逃げたことであった。

「?」

 突然逃げた第一容疑者に疑問顔のめだか。

「あっ逃げた!」

「いやまあ、そりゃ逃げるだろ。追うぞ!そして白野大丈夫だ気にするな!お前が言わなくてもめだかちゃん直接聞いてたから!」

「え・・・あ、うん。ありがとう」

 善吉に慰められようやく復活した蒼衣。ぶっちゃけまだ罪悪感があるのだが、さっきよりは少し回復した。
40 :断章×めだか [sage]:2011/11/10(木) 16:33:17.81 ID:C2jdjQjZ0
中途半端ですが投下終了です。なんでLR変えるかな・・・。
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/11/19(土) 12:48:10.39 ID:D1pI66Rz0
久しぶりに来たら投下されていた
乙ー
42 :断章×めだか [sage]:2011/12/01(木) 16:50:09.17 ID:qKkcmEcX0
途中までですが投下します。諫早のターンです。
43 :断章×めだか :2011/12/01(木) 16:51:06.14 ID:qKkcmEcX0

 諫早は混乱していた。

 休憩中に水分補給に行き一息ついてたら、いきなり後ろから声をかけられた。しかもその内容は「このスパイクをボロボロに

した犯人か?」というものだった。

 思わず、

「しっ知らないっ!!」

 とどもりながらタオルを投げ捨て、彼女は逃げ出してしまった。


 タッタッタッタッタッタ・・・。


 リズムよく走りながら、彼女は考える。

(ど・・・どうして、こんなに早く私のことが・・・)

 諫早は中学の頃から短距離走をやっている。毎日遅くまで走りこみ、自主練だって積極的にやっている。部活に燃える学生の

典型的なタイプだといえるだろう。大会にも何度か出ているし、その度に優秀な成績を叩き出した。
44 :断章×めだか :2011/12/01(木) 16:51:53.94 ID:qKkcmEcX0
 だから今回も。

 今度の大会の短距離走の代表も、自分が選ばれるだろうと思っていた。彼女にはそれだけの実力がある。

 しかし、顧問の先生は3年の諫早ではなく、2年の有明を選んだ。彼女が選ばれ、自分が代表に選ばれなかったと理解した

瞬間の絶望と、有明の嬉しそうな顔は今でも胸に残っている。


 私の方が、速く走れるのに。

 私の方が、長くやっているのに。

 私の方が―――頑張っているのに。


 2年が代表に選ばれることは滅多にないから自分が選ばれるだろうと思っていたのに、有明はその『滅多にないこと』に選ばれて

しまったのだ。

 今までの努力を、根こそぎ否定された気分だった。

 お前の努力などこんなものだよ、大したことないのだよ、その程度の努力で代表に選ばれるのかと思ったのかい――そんな負の声

が頭の中にガンガン響く。

 だから――やってしまった。
45 :断章×めだか :2011/12/01(木) 16:52:52.24 ID:qKkcmEcX0

 家の古新聞を漁り、推理小説にでてくるような脅迫文を作り、数日前の部活後に誰もいないことを確認してからハサミで彼女のスパイク

を切った。

 これで彼女が辞めればいい。そうすれば自分が代表に選ばれる。そうなる筈だったのだ。しかし――


 後ろから髪の長い女生徒がスパイクを手に持ったまま、凄まじいスピードで諫早を追いかけて来た。


「えっ、えええええっ!?」

 グンッと女生徒の端整な顔が目の前に迫ってくる。

「ウッウソでしょ!?あたしっ、100メートル走12秒フラットなんだよ!?」

 思わず叫んでしまう。しかし、追いかけてくる後ろの女生徒は、

「そうか、やるではないか。私は42.195km(フルマラソン)を2時間フラットだから、100メートルあたりは17秒以上
かかるぞ!」

 17秒。確かにそれだけ聞くと諫早の方が速いが、フルマラソンの女子の最高記録は2時間15分25秒。男子でも2時間3分38秒

だ。2時間!?秒どころか分以上上回っている。

 そして諫早は――彼女の名前を思い出した。

(どうしようどうしようどうしよう!?このコ、確か新しく生徒会長になった黒神めだかじゃん!就任していきなり剣道場にタムロ
してた不良達を粛正したって噂の!!)

 必死で逃げているにも関わらずどんどん近づいてくる生徒会長。

(あんなこと・・・、あんなことバレたら殺される!!)

 今でも覚えている。ロッカーの前に立ち、ドクンドクンと煩いまでになる心臓、ハサミを持つ震えた左手。

 
 じょぎ、ばちん。じょぎ、ばちん。


 分厚い布を断ち切る度に自分の体の中も切られるような恐怖。今すぐやめるべきだと理性が叫ぶが――感情がそれを許さない。
46 :断章×めだか :2011/12/01(木) 16:54:12.43 ID:qKkcmEcX0
投下終了。一応html化される前に投下しとこうと思ってやりました。
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/01(木) 21:30:17.46 ID:SqoK4nMSO
投下きてた!乙!

ハサミと聞くとあの断章を思い出すなぁ。
今はめだか勢がメインだけど、これから断章がどう絡んでいくのか期待。
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/02(金) 17:00:30.26 ID:xm/vIZmi0
乙!
49 :断章×めだか [saga]:2011/12/24(土) 15:45:57.31 ID:YwD8vTbW0
終わりまで投稿します!
50 :断章×めだか [saga]:2011/12/24(土) 15:48:53.36 ID:YwD8vTbW0
「もっとも個人的な好みでいえば」

 タンッと地面を蹴る音。そして――

「競走(ラン)よりは高跳び(ジャンプ)の方が私は好きでな」

 瞬間、めだかは空中で綺麗な一回転し、唖然としている諫早の前に立った。

「さて、聞こえなかったようなのでもう一度、聞こう」

 背中を見せたままのめだか。顔がゆっくりと、こちらに向けられる。


「諫早三年生、貴様が犯人か?」


 ガガガッ!と効果音が聞こえてきそうな迫力のある顔。殺される!!そう思った諫早は、

「ちっ違う違う!知らないってあたし、そんなの!」

 慌てて否定した。だが次の発言で彼女は墓穴を掘ることになる。

「有明さんのスパイクにハサミなんて入れてないし!『陸上部やめろ』なんて手紙もだしてない・・・っ!」

 めだかに恐怖するあまり、彼女は被害者の有明と犯人しか知らない情報を言ってしまった。

 つまりこの瞬間、犯人=諫早の方程式が成立したのである。

(あああああああ何言ってんのよあたし!!聞かれてもないこと自分から、わざわざ・・・!!)

 どうしようどうしようどうしよう!!死ぬ!殺される!

 心臓がバクバクと大きな音をたて、大量の冷や汗が分泌され、気分はもはや死刑執行寸前の囚人。つい数分前までは平和に

部活をしていたというのにえらい違いだ。
51 :断章×めだか [saga]:2011/12/24(土) 15:50:04.83 ID:YwD8vTbW0
「・・・・・・・・・・・・・・・そうか。知らないと言うか」

 黒の美しき死刑執行人はゴゴゴゴゴゴと雰囲気をだしながら、ゆっくりと言う。

 もう心臓が動きすぎて逆に止まりそうだ。せめてもの抵抗にぎゅうううううと目を瞑る。

(殺)



「知らないのならばそれでよいのだ。練習の邪魔をして悪かったな」



 ぽんと軽く肩を叩かれ、穏やかな声で謝罪された。

「・・・・・・・・・・・・・・・え?」

 いやちょっと待て。つい数秒前まで冗談抜きで死を覚悟していたのになんだこの差は。

 目に涙で歪んだ景色が映る。見慣れているはずなのに酷く美しいと思うのは何故だろう。

「あ、あのちょっと・・・」

「? どうした、何か用か?」

「い、いやそうじゃなくて・・・」

 さっき犯人しか知らないこと言ったじゃん!それなのになんで・・・?
52 :断章×めだか [saga]:2011/12/24(土) 15:51:09.35 ID:YwD8vTbW0
そんな諫早の疑問を遮るように、「ああ、そうそう。言い忘れていた」。

「さっきは本当にいい走りであったぞ。貴様の普段からの鍛錬の程がうかがえる。その調子で精進し続けるがよい!」

 ニコッ、とそこには恐怖の死刑執行人ではなく、生徒の実力を純粋に喜ぶ生徒会長の姿があった。
 

「私はがんばる人間が、大好きなのだ!」


 そう言って――彼女は立ち去った。

 遠ざかる彼女をみて、思わず呟いた。

「な・・・なんなの、あのコ。わっけわかんない。人を疑うってことを知らないの・・・?」


 何故、簡単に人を信じることができるのだろう。

 何故、他人を疑うことをしないのだろう。

 何故―――


「違いますよ、諫早先輩」


 その疑問に答えたのは、黒のブレザーを着た見知らぬ男子生徒だった。

 

「めだかちゃんは人を疑うことを知らないんじゃない――。人を信じることを知ってるんだ!!」

 

 他人を犯人だと疑うのは誰でもできる。だが「犯人じゃない」と信じることができる人は一体どれぐらいいるのだろう?

 どんな状況下でも人を信じることをやめない――。それが、黒神めだかなのだ。

「・・・・・・・・・・・・・きみは・・・」

 諫早は、頭の中の疑問を彼にぶつける。
53 :断章×めだか [saga]:2011/12/24(土) 15:51:57.20 ID:YwD8vTbW0
「きみは、どうして制服の下のジャージを着てるの?ヘンよ」

「・・・カッコイイって言え!!」

 親切心からいった言葉だが、どうやら逆効果になったようだ。

「・・・めだかちゃんは行為を嫌うことはあっても、人間を嫌うことはないんですよ」

 顔を赤らめながらチャックを閉める男子生徒。それなりに気にしたらしい。

「ま、中学までならあいつが見逃した悪党共をぶちのめすのが俺の仕事だったんですけど。今の俺の仕事は目安箱の管理らしいんでね。
今回だけは俺も会長の流儀にならっときますよ。

 ・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・
 あんたは、もう二度とあんなことしねえって―――――――信じといてやる!」

 そして彼の元に友人らしい線の細い男子生徒が駆け寄り諫早に会釈した後、二人は立ち去った。

 ――結果、なんの咎めも受けずにすんだ諫早は、

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あたし」

 もう、何も考えたくなかった。

 あの二人は犯人ではない、もうこんなことしないと言ってくれた。信じてくれた。

 なのに、自分ときたら――!

 後輩の血の滲むような努力を認めず、嫉妬して、恨んで、憎んで、妨害したのだ。それが正しいと思って。

「うぅ・・・・・・・・!」

 ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、有明・・・・・・!

 諫早はその場に座り込んで、部活終了の時間まで、泣き続けた。
54 :断章×めだか [saga]:2011/12/24(土) 15:54:06.43 ID:YwD8vTbW0
 ――翌日、

「おーっす、白野」

「おはよう、人吉。そういえば昨日の事はどうなったの?」

「ああ、それがな。今度は代用してたスニーカーがなくなってて・・・」

「・・・・・・・・え?」

「代わりに新品のスパイクと謝罪の手紙がはいってたんだってさ」

「あ、なんだ・・・。よかったね。これで先輩も今夜から眠れるし」

「そうだな。ただ・・・」

「ただ?」

「・・・・・・めだかちゃんがそれに気付くのはいつなんだろうなって・・・・」

「・・・どういう意味?」

 めだかは手紙に対して、「今度はスニーカーを盗むとは・・・!」と大変ご立腹だったそうな。






「そういえば昨日なんで制服の下にジャージ着てたの?」

「今頃それ聞くのかよ!」
55 :断章×めだか [saga]:2011/12/24(土) 15:58:48.61 ID:YwD8vTbW0
投下終了。やっと投稿できた・・・!
ああ心理描写難しい西尾先生甲田先生並みの文才がほしい・・・。蒼衣ほとんど出てきてない・・・。
早いとこ雪乃出したいなー善吉とコンビで出したい。
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/25(日) 10:10:22.24 ID:yJx/Wmid0
乙乙
57 :断章×めだか [saga]:2012/01/23(月) 15:14:00.64 ID:yR+/WExk0
お待たせしました。途中までですが投下します。コメントありがとうございます。
58 :断章×めだか [saga]:2012/01/23(月) 15:14:34.28 ID:yR+/WExk0
 第三箱「無理しなくても」


 箱庭学園第九十八代生徒会長黒神めだかが設置した目安箱。生徒の間では『めだかボックス』などと呼ばれ、早くも好評を博していた。

 その目安箱の管理をするのがめだかの幼馴染でもある生徒会庶務・人吉善吉のメインの仕事である。

「今日は三通も入ってやがる。みんな色々悩んでんだなー」

 朝、生徒達が続々と登校してきている時間帯に、善吉は目安箱に投書されていた要望をチェックする。

 嫌だ嫌だと言っていた割りに真面目に仕事をするのが善吉の性分である。

 二通の要望を確認し、最後の紙を開いた時、善吉は呟いた。

「・・・しかも今回に関して言えば、どうやら異彩を放つ相談がひとつあるようだぜ・・・」

 ――その手紙には「探して下さい」と書かれた言葉と共に、可愛らしい子犬の絵が描かれていた。
59 :断章×めだか [saga]:2012/01/23(月) 15:15:42.03 ID:yR+/WExk0
「ふーん、意外だね!あの無敵のお嬢様にそんな弱点があったなんてさ!」

「ほんと、意外だよね。まあ一つぐらい弱点があったほうが『普通』だしね」

「まあな。完璧超人みたいに言われてっけど、めだかちゃんにも色々あんだよ」

 昼休み、またしても蒼衣と不知火は目安箱の案件に首をつっこんでいた。

 三人は去年の冬、学園内ではぐれた子犬を探してくれという案件の為、少し前から犬が住み着いているという場所に向かっている。

 小学生が蝶や虫を捕まえる為に使う虫取り網を持つ善吉は、心なしかいつもより張り切って見える。

 ここにめだかの姿はない。他の案件で動いてるからというのもあるが、それが一番の理由ではない。

 子犬探しを善吉に任せた最大の理由、それは・・・


『動物が、苦手なんだよ』


 ふうっ、とどこか遠い目をしていためだかだった。

 話を戻して。

「あいつ、小学一年の頃に飼育係やったことがあってさ。その時、色々あったんだよ。トラウマじみたことがな」

「へえ〜」

 かなり意外だった。完全無欠に見えるめだかにトラウマ。この数週間彼女と接触していた蒼衣だったが、動物が苦手という『弱点』

には心底驚かされた。彼女の性格から動物に好かれ好いているのだろうなと思い込んでたぐらいだ。

 ・・・・・・・・とはいえ、いくら一部の生徒に『バケモン女』と呼ばれるめだかでも人間だ。天才も人の子。このぐらいの弱点は

普通でむしろ蒼衣にとっては微笑ましく思える。意外と人間らしいところあるじゃん、と。まさか動物に避けられるなんて

ことはないだろう。漫画じゃあるまいし。

 手紙に描かれた子犬はとても可愛らしく、飼い主の愛情が伺える。これなら今日中に返せる。蒼衣はそう思った。
60 :断章×めだか [saga]:2012/01/23(月) 15:16:52.61 ID:yR+/WExk0
「だけどさ、そんなこと言ってちゃ業務に支障をきたさない?」

「だーかーら!そういう時のために俺がいるんだろうが!」

 グッ!と親指で自分を指差す善吉。めだかに巻き込まれ、いやいや首を突っ込んでいた頃とはえらい違いだ。彼女に任せられた

のが余程嬉しいのだろう。

「さあ不知火!わかったら早く俺を案内するんだ!その心当たりの場所とやらにな!!」

「うわあ・・・すごいやる気だね、人吉」

「ああ・・・うん・・・。いいんだけどね、別に」

 そのテンションキモいな〜・・・・と不知火が引くが、すぐに調子を取り戻す。

「まあ心当たりっていうかさー。ちょっと前から学園内に住みついてる犬がいるらしいってだけなんだけど」

 ガサガサと植木を掻き分け、角を曲がったところに例の犬がいるらしい。

「えーっと、確かこの辺に・・・」

 ひょい、と角から顔を出すと、

「「・・・・・・・・・・・・・・え?」」


 、、、、、、、
 巨大な犬がいた。



 背丈1メートルを軽く超え、グルグルと唸り声をあげ、気に入らないものを躊躇なく噛み殺そうとする威圧感はまさに
『王者』『暴君』。その言葉が相応しい。その両目は獲物を見つけようとギラン!と不気味に光り、その脚は逃げる獲物を
捕らえようと筋肉が盛り上がり、その口は捕らえた獲物を骨の髄までしゃぶりつくさんと牙が鋭く―――

「あーーいたいた!ね、あの犬、そのイラストと模様とか一緒じゃない?」

 犬が恐くないのかはたまた空気が読めないだけなのか、不知火は固まっている二人に無邪気に声をかける。

「「・・・・・・・・・・・・!」」
61 :断章×めだか [saga]:2012/01/23(月) 15:17:57.71 ID:yR+/WExk0


 バッ、と手紙の犬を見る。とても可愛く描かれている“子犬”だ。

 バッ、と本物の犬を見る。完全に野生化した恐ろしい“巨犬”だ。


「・・・不知火さん、あれは違うよ。あれは散歩中に飼い主とはぐれちゃった可哀想な犬とかじゃねーよ。
あれはあれだよ。大都会に住んでる無責任な金持ちが飼いきれなくなって手放したワシントン条約で保護されてる何かだよ!!」

「・・・そうだよ不知火。あれは飼い主さんが探してる犬じゃないよ。だって探してるのは子犬だよ。あんな恐ろしい犬捕まえた
って違いますって言われるだけだよ絶対。だって逸れたのは最近・・・」

「スマン、白野・・・・・。逸れたのは最近じゃねえ。去年の冬休みだ・・・!」

「んなっ・・・・・!?」

 去年の冬休み。犬の成育は早いので半年もあれば十分成長するだろう。・・・・・成長しすぎたと言いたい。

「やだなぁ二人とも。あれはボルゾイって種類のれっきとした犬だって!別名ロシアンウルフハウンド!」

「ほら!ウルフって入ってんじゃん!!」

 ボルゾイ。かつてロシアで狼狩りに使用されていた大型の視覚ハウンドである。
ロシア革命以前はロシア国犬として皇帝や貴族の庇護を受けた事でも知られ、皇帝の犬舎には多くのボルゾイが飼育されていた。
・・・が、ロシア革命後貴族の象徴として多数の固体が民衆に虐殺された。しかし、海外の王侯貴族が進呈されたボルゾイを飼っていた
ことから純血種として復活。現代にも人気の犬である。
62 :断章×めだか [saga]:2012/01/23(月) 15:19:35.66 ID:yR+/WExk0
投下終了。遅くなり申し訳ございません。最後のボルゾイの解説はネットで調べただけなのでご容赦を。
扉絵のめだかちゃんが好きで仕方が無い。
63 :断章×めだか :2012/02/23(木) 15:35:02.43 ID:ctrhvYQy0
遅れましたが、投下します。
64 :断章×めだか [saga]:2012/02/23(木) 15:36:00.43 ID:ctrhvYQy0
「嘘だろ?俺、今からあいつ捕まえるの?マジで?」

 タラ・・・と冷や汗を流す善吉。急に手に持っている虫取り網が頼りなく見えてきたのは気のせいだろうか。

 しかし、めだかに一任された以上この任務を投げ出すわけにはいかない。助けが必要だ。そう思った善吉は、

「白野、不知火、お前ら手伝ってくれるんだよな?」

 同行した二人に助けを求めた。

「え!?あたしが!?なんで!?やだよ!!あたしは親友のあんたが酷い目に遭うのを安全圏から眺めていたいだけの人間なんだから!!」

「・・・いや、お前は人間じゃねえよ」

 どうやら不知火は傍観らしい。友人が今まさに危機に瀕するというのにこの躊躇いのなさ。非情を通り越して感嘆の一言である。俺友人
に恵まれてねえのかな・・・。そんなことまで思ってしまう。

「へ?僕?うーん・・・」

 蒼衣は悩んだ。善吉は助けたい。あの犬を一人で捕獲するのは至難の業だ。というか一人でやらせる方がどうかしている。どんまい善吉。

 チラッと巨犬を見る。件の犬は蒼衣達に興味を示すことなく悠々と寝そべっている。意外と穏やかなのかも・・・。そんな淡い
期待まで持ってしまう。

 いけるかもしれない。
65 :断章×めだか [saga]:2012/02/23(木) 15:36:39.06 ID:ctrhvYQy0
「えーと・・・。大怪我しない程度ならいいよ」

「サンキュー白野!恩に着る!」

 ガバッ!と凄まじい勢いで手を握られた。幻覚か善吉にしっぽが生えブンブンと凄い勢いで振られているようにも見えた。

 まあ蒼衣も人に頼られるのは好きだし、頼まれたら断れない性格だ。剣道場はそれが仇になって穴があったら入りたい気持ちになったのだが。

「二人の勇姿を写メで撮って待ち受けにするの!気に入ったのがあったら送ってあげるよ☆」

 えっへんと携帯をスタンバイしている不知火。完全に助ける気は0らしい。

「・・・なあ白野。もし俺が死ぬことがあったらめだかちゃんに犯人は不知火だって、言っといてくれ・・・」

「え?ああ、うん・・・」

「白野ー。その時は50万あげるよ」 

「じゃ黙っとく」

「お前ら二人とも地獄に落ちちまえ!」

 善吉が叫んだ。

 だが、その後ろで善吉の声で目を覚ましたのか、ボルゾイが

 、、、
 むくり、


と起き上がり、
66 :断章×めだか [saga]:2012/02/23(木) 15:37:42.83 ID:ctrhvYQy0



 ガウガウ!


と眠りを邪魔された怒りの彷徨をあげた。

    、、、
 途端、ビクッ!となった三人。ボルゾイはまた目を瞑ってその場に伏せた。

「・・・ほら☆『お兄ちゃん達こっちにおいでよ。一緒に遊ぼうよ』って言ってんじゃん☆」

「不知火・・・僕と人吉には『ヒト共!次に俺様の眠りを妨げれば容赦なく喰い散らかすぞ!』って聞こえたんだけど」

「ああ・・・」

 ダラダラと冷や汗を流す三人。これで『実は性格はとても穏やか』という薄氷にも似た期待はあっけなく破れた。

「じゃあもう帰る?すごすご帰っちゃう?せっかく人吉がお嬢様にいいトコ見せるチャンスなのに?」

「ぐ・・・」

 善吉の脳裏に、今朝の生徒会室での会話が蘇る。


『動物が、苦手なんだよ』


 どこか寂しそうに言ってためだか。完璧超人の彼女は他の誰でもない自分にこの案件を託した。


 なら―――――――――大切な幼馴染為にも、逃げるわけにはいかない!


「あー、わかったよ!行きゃーいいんだろ行きゃー!!」

「人吉・・・・・!」

「別に不知火に言われたからじゃねーからな!めだかちゃんの為に行くんだからな!」

「・・・うん、わかったよ人吉。黒神さんの為にも、早く捕まえよう!」

「おうよ!」
67 :断章×めだか [saga]:2012/02/23(木) 15:40:16.92 ID:ctrhvYQy0
「あっ待って二人とも!行くんだったらこれを持っていくんだ!」

 あたしのお昼ごはん!と言いながら不知火が出してきたのは、

「あん?ソーセージ?」

 何故か数本のソーセージだった。

「あ、そうか。これを餌付けに使うんだね、不知火!」

「おお!冴えてんじゃん!」

 つまりボルゾイが餌に夢中になっている間に二人が捕獲すればいいということだ。何だかんだ言って不知火も協力してくれ・・・

「んーん、そうじゃなくってさ、これをおなかのトコに仕込んでね、

『ぎゃああ!内臓を喰われたー!・・・と見せかけて実はソーセージでした☆』

ってギャグやってほしいの☆」

「そのギャグさあ、やった2秒後に本当に内臓喰われるよな?」

「うん・・・不知火に期待した僕達がバカだったよ」

 ただ単に自分が楽しみたいだけだった。

 しかし、ソーセージの提供がありがたいことに変わりなく、

「よし白野。俺がソーセージ持って囮になるからその間に捕まえるんだ!」

「わかった。気をつけて!」

「おうっ!」

 目安箱解決、協力してくれる友、そして大切な幼馴染の為にも、人吉善吉、ここで諦めるわけにはいかない!

「うっ・・・うおおおおおっ!」
68 :断章×めだか [saga]:2012/02/23(木) 15:41:06.19 ID:ctrhvYQy0
本能的恐怖心を抑え、善吉が勇敢にボルゾイの元へ走る。 

 しかし、ボルゾイの目が

 、、、
 ギンッ!


と心地よい眠りを妨げられた怒りで光り、

「え?」
       、、、
 善吉のどこかサーッと顔中の血の気が引いたような声をだして、


 ボルゾイは、その驚異的な脚力をもって善吉に―――


「ぎゃああ!内臓を喰われたー!と見せかけてじつはソーセー・・・


ってまじでぎゃあああっ!!」

 、、、、、、
 ガウガウガウ!とここら一帯の食物連鎖の頂点を怒らせてしまった善吉。手加減を知らぬ野生の怒りをその身に一身に受けてしまう。

「人吉ィィィ!え?なんでほんとにやったの!?」

「ああステキ!ステキ!人吉くんてば超ステキ☆」

「ちょ・・・人吉ーーーーーっ!」

 ・・・その時間帯、学園中にア〜レ〜という叫び声とその声の持ち主を救出しようとする二人の男子生徒の声が響きわたった。
69 :断章×めだか [saga]:2012/02/23(木) 15:41:53.44 ID:ctrhvYQy0
投下終了です。なんか更新が月一になってる・・・。
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/23(木) 23:04:10.27 ID:aprothiY0
乙です。善吉のキャラwww

面白いけど、投下速度がなぁ……

早めの更新に期待したいなぁ〜(チラッ

71 :断章×めだか [saga]:2012/03/12(月) 14:23:40.84 ID:R54DTjIN0
お待たせしました。生徒会室のシーンだけですが投下します。
72 :断章×めだか [saga]:2012/03/12(月) 14:24:42.56 ID:R54DTjIN0
 ――翌日、生徒会室にて。

「えー、というわけでございまして、白野と不知火と一緒にターゲットを発見するも捕獲には失敗。その後の逃走を許してしまいました」

 よく整理整頓された明るい室内。そこには呆れ顔で報告を受ける生徒会長めだか、目の前には満身創痍の庶務善吉がいた。

 あの後、例のボルゾイに襲われた善吉は必死顔の蒼衣に命がけで救助され(不知火はずっと写真を撮ってた)、保健室で治療を

うけた。全身傷だらけの二人を見た保健委員長は呆れながらも的確な治療を施してくれた。

「・・・・・・・・・・そうか。まあ、なんというか、アレだな。白野同級生はともかく不知火との仲の良さは不愉快だな」

 ため息をつきながら吐き捨てるように言うめだか。「要するに」と話を本題に戻す。

「行方知れずになっていた約半年間に子犬は成犬になってしまったというわけか?犬の成長は早いからな」

「あー・・・まあ、そんなトコだ。いや、それどころかありゃあ、完全に野生化しちまってるよ」

 頭をポリポリ掻きながら昨日の奮闘を思い出して言う。

 
 ざわっと暖かくなる顔。

 犬の湿った獰猛な息。

 鼻にかかるくしゃみが出そうな臭い。

 大の男と同じぐらいの重さ。

 絶対に退いてくれないボルゾイ。

 折れた虫取り網、喰われたソーセージ。

 腕に引っかかる鋭い爪。

 完全に「噛み殺す」顔。

 頭に残る歯の感触。

 助けてくれない不知火。

 そして、涙目になりながらも一念発起の思いで救助してくれた蒼衣。

73 :断章×めだか [saga]:2012/03/12(月) 14:25:49.59 ID:R54DTjIN0
 あの時助けてくれなければ今頃・・・と思うと背筋が寒くなる。

「一応白野と一緒に投書主にも会ってみたんだけど。それがいかにも感じやすそうな娘さんでさ(先パイだけど)。
とてもじゃねーが現状は報告できなかったよ」

 投書主、三年二組秋月先輩(趣味:スイーツ作り 将来の夢:お嫁さん 挨拶:ごきげんよう)は百獣の王と見紛うかのごとき覇気の

持ち主の飼い主だが、当の本人はぽわんぽわんした大和撫子系のお嬢様。そのあまりにも天然の雰囲気にお人よしの善吉と蒼衣は無慈悲に

『今あなたの犬は完全に野生化してて捕まえるのは困難です恐いです』とは言えなかったのだ。

「ボルゾイとはロシア語で『俊敏』を意味してな。もともとは狼狩りのための狩猟犬なのだ。生半な猛獣よりよほど獣性が高いぞ」

 ボルゾイを解説するめだか。何故秋月先輩は狼を狩る犬(ウルフ・ハウンド)を飼おうと思ったのか・・・。子犬が可愛かったから

だろう。多分。いや絶対。

「カッ!どーりで手も足も出ねーわけだよ!内臓は出たけど。まあ、つってもほっとくわけにはいかねーよな。このままじゃ保健所
が動きかねねーし」

「・・・・・・・・・・・・・・・保健所?」

 ピクンッとめだかのアホ毛が揺れる。それに気付かない善吉は言葉を続ける。

「ま、心配しなくていーよめだかちゃん。こっちは俺と白野と不知火で何とかするからさ」

「・・・・・・・・・・・・・・・不知火と?」

 ピクピクンッとまたアホ毛が揺れる。何故か不知火というワードに反応する。
74 :断章×めだか [saga]:2012/03/12(月) 14:26:50.12 ID:R54DTjIN0
「ああ。まああいつは絶対嫌がるだろうが。頼めば協力くらいはしてくれるはずだし。めだかちゃんは知らないと思うけどさ。

不知火は、あれで結構頼りになる奴なんだぜ?」

「・・・・・・・・・・・・・・」

 めだかの眼が不機嫌そうに細くなる。不知火に頼るというのが気に入らないようだ。

「そんなわけでお前は自分が担当してる案件にだけ集中して――」

「待て、善吉」

 生徒会室を出て行こうとした善吉を、めだかが止める。

「やはりその件、私が動こう!」

 何を思ったか、苦手な動物の案件に乗り出すと言っためだか。事情を知っている善吉は止めないが心配する。

「いいけど・・・つーかいいのかよ。相手は動物だぜ?」

「構わんさ。私の方の案件は既に、あらかたカタがついておるし」

 スーッと、扇を少しだけ広げる。

「何より!私の不甲斐なさが原因で貴様が、他の誰かに頭を下げるなど我慢ならん!!」

 パンッ!と勢いよく扇を閉じる生徒会長(めだか)。

 そこにいたのは幼馴染(めだか)ではなく、人の上に立つ者としての責任を全うせんとする王(めだか)の姿があった。

 あのボルゾイが恐怖で政治を敷く暴君なら、めだかは弱き民の声を聞き決して蔑ろにしない名君。

 
 人の王(めだか)は、獣の王(ボルゾイ)に決して屈しない。


 声を高らかにあげ、めだかは宣言する。


 「ゆえに改めて!目安箱への投書に基づき、生徒会を執行する!!」
75 :断章×めだか [saga]:2012/03/12(月) 14:29:24.39 ID:R54DTjIN0
投下終了。今回は早く・・・?できました。めだかのアニメが楽しみだ。

傍点テスト

、 、 、 、 、 、
ガウガウガウ(半角)

、 、 、 、 、 、
ガウガウガウ(全角)
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/03/15(木) 14:39:16.75 ID:x3SAgqoS0
乙〜
77 :断章×めだか [sage]:2012/04/14(土) 20:41:37.36 ID:wLjcgLlR0
お待たせしました。少しだけですが投下します。
78 :断章×めだか [saga]:2012/04/14(土) 20:43:15.16 ID:wLjcgLlR0
そこにいたのは、犬の着ぐるみを来た不審者だった。

「誰だ!?」

「誰!?」

「当然、私だ!」

 善吉と蒼衣の叫びに、がぽっ、と口の部分を開いたそこには秀麗な顔をした我らが生徒会長・黒神めだかがいた。

「お前じゃなければよかったのに・・・」と善吉の心からの呟きが聞こえたのは気のせいではあるまい。

「・・・・・・・・お嬢様。つかぬことをお聞きしますが、


 なんですか、その格好は?」

「ん?見てわからんか?演劇部から拝借してきた」

「・・・俺は見て、わかるけど聞きたいな」

「うん、僕も・・・」

 三人の当然の疑問に、めだかは体をフリフリしながら自信満々に答える。


「ターゲットに私を仲間だと思ってもらう作戦だ!動物と触れ合う時はこちらから歩み寄ってやることが大切だからな!」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・つまり、だ。

 あのボルゾイは凶暴だから人間では歯が立たない→だから善吉と蒼衣がやられた→じゃあ人間ってばれなければいい→
それじゃあ同じ犬になって仲良くしよう!→ということで着ぐるみ着てきたよ。

 ということになったのか、彼女の脳内で。
79 :断章×めだか [saga]:2012/04/14(土) 20:44:00.72 ID:wLjcgLlR0
「・・・・・・・・・・・・そうなんだ」

「うむ!」

 気持ちはわからなくもなかったので、とりあえず蒼衣はそう答えるしかなかった。

「・・・ねぇ、人吉。このお嬢様ってひょっとしてさぁ・・・」

「あ、気付いた?うん。一周回って基本バカだよ」

 後ろで二人がヒソヒソと話している。何気に善吉がひどいことを言っているが、これも二歳の頃から彼女の幼馴染を
やっている彼だからこそ発言できるのだろう。他の人だったらこうはいくまい。

「さてそれで、あやつがターゲットか」

 チラッと目をむけたその先には、


 ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・と心なしか昨日よりも威圧感が増したボルゾイが、いた。


 君臨。

 支配。

 統治。

 圧倒。


 何者にも従わず、何者も恐れず、ただただ己の敵を蹂躙する孤高の王が、そこに存在した。
80 :断章×めだか [saga]:2012/04/14(土) 20:45:12.16 ID:wLjcgLlR0
投下終了です。早く・・・早く十三組の十三人編に入りたい・・・!
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/04/15(日) 10:16:39.45 ID:+Hwu7Ij60
82 :断章×めだか [saga]:2012/07/15(日) 14:54:40.48 ID:nq+W6miq0
遅くなり大変もうしわけございません。ギリギリですが投下します。少量ですが。
83 :断章×めだか [saga]:2012/07/15(日) 14:57:04.37 ID:nq+W6miq0
「うわあ・・・」と顔を引き攣らせる蒼衣。

「うげっ!」と昨日の捕獲作戦(の名を借りた戦争)を思い出した善吉。

「・・・・・・・・・・・・・」特に何も言わないがニヤニヤと食えない笑みを浮かべた不知火。

「ふぅむなるほどな。なかなかどうして可愛らしいワンちゃんではないか!」

「どこが!?」

 思わずツッコミをいれてしまった。先日の襲撃(?)の件もあってか心なしか不機嫌・・・というより殺気がチラついているのは
蒼衣の気のせいだろうか?いや絶対違う。

 と、ここで思い出した。めだかは――


『動物が、苦手なんだよ』

 
 善吉から聞かされた完全無敵な彼女の唯一の弱点。

 つまり、今彼女は案件の為、拒絶する体に鞭を打ち、恐怖する精神を捻じ伏せながらこの場に立っているのだ。


    、 、 、 、 、 、 、 、 、
 そう、ボルゾイの、目の前に。



 さて行くか、とずかずかボルゾイの方へ向かおうとするめだかに善吉が嗜めるような口調で、蒼衣は慌てた様子で言った。
84 :断章×めだか [saga]:2012/07/15(日) 14:58:57.88 ID:nq+W6miq0
「いや、あんま強がんなよ。やめとけって。お前が無理しなくてもこれくらいは俺達が責任持って解決してみせるって。

  、 、 、 、 、 、 、 、 、 、
 不知火と白野の三人で!」


「そ・・・そうだよ黒神さん!動物が苦手なら僕達に任せてもいいんだよ?

  、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、
 そんなに無理しなくても大丈夫だよ!」


 そんな二人の心からの気遣いに、めだかは、

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・何だその顔?」

 後ろに黒い靄がかかり、なんとも形容しがたい表情で振り返る。ジトーッっとした眼で睨まれる善吉。

「ふん!いいから貴様達はそこで見ておるがよい!私がいつまでも過去に囚われるような女でないことを証明してくれる!」

 そう言い放ちザッザッと早足、不機嫌オーラでボルゾイの元に向かう。

「・・・・・・黒神さん、もしかしてムキになってる?」

「妬いてんじゃないのー?あたし達と人吉が仲良すぎるから☆」

「あ?白野はともかく俺はお前と友達なのかどうかも微妙だと思ってんだぜ」

 的外れにも程があるだろ、と疲れた顔で突っ込む善吉。
85 :断章×めだか [saga]:2012/07/15(日) 15:40:42.05 ID:nq+W6miq0
 それを余所に不知火はあひゃひゃ!と実に楽しそうな笑みを浮かべる。

「いずれにしてもお嬢様って案外人間味があるんだね。バカだったり妬いたり、動物のこと苦手だったりさ。ねー白野!」

「そうだね。僕黒神さんって動物好きかなって思ってたんだけど、人って見かけによらないね」

「うんうん☆」

 その超人ぶりで一部から「近寄りがたい」「高嶺の花」と評されているめだかだが、こういう一面もあるんだと皆が知れば

今より親近感が沸くんじゃないか、と思う。

 そしてそうなればいいなと思う蒼衣。可能性は非常に低いものの彼女には、幼馴染のようになってほしくないのだ。


 ―――何になりたかったか分からなかったが故に、世界を憎悪した、あの少女のように。


「・・・あれ?お前ら、なんか勘違いしてねえ?」

 蒼衣を思考の海から浮かび上がらせたのは、何故か善吉の疑問の声だった。

 その間にもめだかはどんどんボルゾイに近づいていく。そこに躊躇はない。

「・・・勘違い?黒神さん、動物苦手じゃ・・・」

「ちげーよ。めだかちゃんは動物のこと苦手なんかじゃねーよ」

 めだかの影が、ボルゾイにかかる。

「むしろお前の言うとおり」

 凶犬の眼が、うっすらと開き―――

「半端なく大好きだ」


 ―――その瞳が、恐怖と驚愕で見開かれる。
86 :断章×めだか [saga]:2012/07/15(日) 15:45:40.31 ID:nq+W6miq0
投稿終了。学業で疲れててあまり来れませんでした。ごめんなさい。
蒼衣がめだかを気にかけるのは「年に似合わぬ聡明さ」で幼馴染を思い出したから。善吉がいるから大丈夫だとは頭で納得してもそれに心がついていけない、という感じ。
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/15(日) 19:30:54.83 ID:cInXbXfC0
両方好きだから止めないでねー
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/29(水) 22:31:15.38 ID:QNPmfCfKo
待ってるよ
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