このスレッドはSS速報VIPの過去ログ倉庫に格納されています。もう書き込みできません。。
もし、このスレッドをネット上以外の媒体で転載や引用をされる場合は管理人までご一報ください。
またネット上での引用掲載、またはまとめサイトなどでの紹介をされる際はこのページへのリンクを必ず掲載してください。

女「この帝国に革命を!」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/06(土) 21:28:58.76 ID:3DYnwWy5o
雑談やら、感想批判はいつでもどうぞ
長くなると思いますが、お付き合いください
【 このスレッドはHTML化(過去ログ化)されています 】

ごめんなさい、このSS速報VIP板のスレッドは1000に到達したか、若しくは著しい過疎のため、お役を果たし過去ログ倉庫へご隠居されました。
このスレッドを閲覧することはできますが書き込むことはできませんです。
もし、探しているスレッドがパートスレッドの場合は次スレが建ってるかもしれないですよ。

A Day in the Life of Mika 1 @ 2024/05/09(木) 00:00:13.38 ID:/ef1g8CWO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1715180413/

真神煉獄刹 @ 2024/05/08(水) 10:15:05.75 ID:3H4k6c/jo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1715130904/

愛が一層メロウ @ 2024/05/08(水) 03:54:20.22 ID:g+5icL7To
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1715108060/

ハルヒ「最近わたしのss見かけなくなったわね」 @ 2024/05/07(火) 15:04:17.64 ID:FJQjQ6ct0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1715061856/

孤独のエレナ Season3 @ 2024/05/06(月) 23:06:58.73 ID:mOA71iC60
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1715004418/

雑談はヒーローごっこじゃない @ 2024/05/06(月) 20:39:20.98 ID:e5NXmnk+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714995560/

朝顔 @ 2024/05/06(月) 00:25:05.84 ID:AB/bv7Jv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714922705/

オゾン層依存症って3回 @ 2024/05/05(日) 18:17:43.14 ID:JwHCDSU70
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714900662/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/06(土) 21:30:43.73 ID:3DYnwWy5o
「弱さを胸に」






この大陸を総べる、帝国
建国から千年が過ぎる歴史ある国だが、今代の王の治世により、国は乱れていた

欲におぼれた王、媚びへつらう悪臣。平民は虐げられ、世の中には盗賊が跋扈していた
反乱は、いまだ起きない
軍を総べる元帥の、強大なカリスマによって軍の強さだけは維持されていたからだ

重税のため反乱の資金すらままらないため、王の暴政を妨げるものはいない

元帥も、職務の上では高潔で厳しい人物であったが、私生活は乱れていた
彼は王の古くからの友人でもあったが、性質は似ていたのだ。諫めはしない

王を鎮める者はおらず、わずかに残った臣下が何とか国を崩壊させないようにとがんばっていた

そんな、滅び行く時代だった
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/06(土) 21:31:46.32 ID:3DYnwWy5o
大臣邸

王女「えいっ、やっ!」

女「はっ!とおっ!」

よく手入れされた庭に、年頃の女の声が響く。2人の女が、片方は盾と剣、もう片方は両手剣を持ち、戦っていた
女の鋭い一撃を、王女が盾で受ける。そして、片手剣を横なぎに振るう
しかしその一撃は、女が剣筋を予想して振るわれた、腕のガントレットでうまく受け流される
一時的とはいえ、女は片手で両手剣を持ち、盾を抑え込めるだけの力を出していた
女の手が両手剣に戻され、力が増加。王女は片手の盾で受けるのも限界と、女の剣を弾き、距離をとる
対して、女は両手剣を即座に双剣へと解体。体勢を低くして、飛燕の速度で王女を急襲する
女の剣は、特注品の可変式だったのだ

女「やああああっ!」

王女「えええいっ!」

衝突。お互い両手で相手の武具を防ぐ。片手剣で双剣の1本を、盾で双剣の片割れを。
王女にとって、必殺の盾の一撃を放つ時間がなかったのは不幸だった
双剣では、大振りの一撃を防ぐことは不可能。放てば戦況は大きく王女に傾いたはずだ
しかし、女の予想外の速度が、盾の攻撃を許さなかった。強引に放っていても、良い結果にはならなかったのは確かだが
互いに一歩も引かず、じりじりとせりあいを続け、ある瞬間に同時に力が抜かれる
もちろんこれは模擬戦闘――――本当の戦闘ではない
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/06(土) 21:33:56.00 ID:3DYnwWy5o
侍女「お疲れ様です」

控えていた侍女が、タオルと飲み物を差し出す。王女と女は武具を置き、それを手に取った
よく冷えた飲み物が、2人の体の火照りを冷ましていく

王女「ふう。終始押されっぱなしでしたわ」

王女はしみじみと言った。銀の盾の表面の塗装は、女の攻撃でほとんど剥げてしまっている
どころか、盾自体に大小数えきれないくらいの傷がついている。戦闘前の見る影もない

女「でも、私の攻撃はほとんど通りませんでした。そして、王女様の攻撃は、私を何度か捉えました」

女は軽い笑顔で返す。頬や足などに細かい傷がついている。細い線のような傷から、たらたらと赤い血が流れている
よく見ると、髪も不自然に短いところがある。斬られてしまったのだろう

王女「女は大けがにならなければ、あえて攻撃を受けてチャンスを作ろうとするからでしょう」

王女の指摘。確かに、女はギリギリで避ける、あるいはかすり、相手の攻撃後の隙をつくのがうまかった
受けた怪我も、放っておいても問題の無いような物ばかりだった

侍女「女様、手当てを……」

女「ごめんね、お願い」

侍女が治癒の魔法を発動。紙に書かれた線が消えるように、女の肌から切り傷が消えていく
侍女はこの場では唯一、治癒魔法に適性があった。女は攻性魔法、王女は防性魔法の適性がある
治癒魔法の適性者は少なく、その適正がある者は貴重な存在であった

5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/06(土) 21:37:16.44 ID:3DYnwWy5o
侍女「相変わらずの重い一撃ですね。いまだに手が痺れています」

女「侍女はなかなか攻撃に転じさせてくれないから、たまの打ち込みには普段より力が入るんだよ」

模擬戦後の、ティータイム。今の戦闘を批評しながら、紅茶とクッキーを楽しむ
貴族の女と、平民の侍女。しかし、2人きりの時に、そんな身分は関係ない
女も侍女も、遠慮なく接している

侍女「その、可変式の剣は相手をするのは面倒ですね」

女「そうかな?」

ええ、と侍女が頷く

侍女「両手剣の重く響く一撃と、双剣の速く、鋭い連続攻撃。その二つが、くるくる入れ替わりますから」

防御ごと断ち切ろうとするような、両手剣の重い一撃と、防御をすり抜けるような、双剣の速い連撃
戦闘のリズムの主導権を完全に握れるほどの技量で、真逆のスタイルを女は両立させる
それが一瞬のうちに変化するとなれば、相手は常に対応に気を払わなくてはならない

侍女「疲れる戦闘です」

長剣と短剣の双剣を扱う侍女だが、どちらかと言えば防御的なスタイルである
その彼女でも、女の攻めは一瞬の油断が命取りになる
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/06(土) 21:41:05.20 ID:3DYnwWy5o
女「でも、侍女の戦闘の組み立てはさすがに上手だよ。見習わないと」

侍女も押されっぱなしであったわけではない。いや、むしろ攻めていた時間は侍女の方が長い

侍女「最大の防御は攻撃ですからね」

攻性防御。防御を目的とした攻撃。侍女は後手後手に回っていては押し切られると、この特異な防御法をとっていた
相手に防がれることを前提とした、隙の少ない攻撃。相手に防御行動をさせることにより、強制的に攻撃をつぶす
今回の戦闘においては、果敢に攻めていたのはむしろ侍女だったといってもよい
戦闘リズムを女が支配していたのなら、戦闘の流れは侍女が支配していた

女「やっぱり侍女は強いね」

侍女「いいえ。まだまだですよ」

侍女は薄く笑い、紅茶を口に含む。女も笑い、クッキーをとる
その後は女の子らしく、服やら花やらの話が続く
庭には二人の笑い声が響いていた
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/06(土) 21:41:48.94 ID:JlYVMvgzo
ワクテカ
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/06(土) 21:42:42.05 ID:3DYnwWy5o
ミスッた。ごめん、4と5の間にこれ


女は、大臣の一人娘で、幼いころから王女の友達役として育ってきた
侍女はその世話係として仕えている。王女は王位継承権一位であり、将来この帝国の王となるべき人物であった
現王の先代の妃の娘である王女は、現妃との関係が悪く、ここ大臣邸で暮らしている
三人は身分の違いこそあれど、互いに互いを信用、信頼していた
王女は女や侍女が生きるこの国を背負えるよう、日々の勉強を欠かさなかった
女は王女のためにも、自らの腕を磨き、さらに軍略や統治論をも勉強していた
侍女はそんな二人を手助けし、最高の環境を与えるべく日々の仕事をこなしていた

侍女「そろそろ、お時間になりますが」

王女「もう?女、私は大臣とのお話があるので……」

女「はい。私はまだ、鍛練をしていますから」

王女「分かったわ。行ってくる」

王女はスタスタと歩いて行った。大臣から、政治の話でも聞くのだろう

女「付き合ってくれる?」

女は剣を示しながら聞く。侍女も戦闘訓練は受けている

侍女「私でよろしければ」

侍女は長剣と短剣を拾いながら言った。女も、自分の剣を抜く
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/06(土) 21:46:42.52 ID:3DYnwWy5o
>>6の続き


王女「確かに、女の一撃は重すぎですわ」

侍女「私の申しあげたとおりでしょう」

夕食後、王女の部屋で3人は過ごしていた。3人だけの時は、身分も何もない

女「そうかな?切断と同時に衝撃の魔法も加えているから、そのせいかも」

侍女「高い魔法の才能を、うまく使っていますね」

王女「後半になればなるほど手が痺れて受けられなくなっていくものね」

今日の話題は、模擬戦闘についてだった

女「王女は、今日は片手剣を使ってたね」

侍女「そうですね。いつもは槍ですのに」

王女「たまには剣も使わないと、習った意味がありませんから」

女「そっか。初めはみんな剣だったもんね」

王女「そのうちに私は主に槍と大盾に。侍女は……」

侍女「長剣と、短剣の二刀流ですね」

女「私は双剣と、両手剣だね」

王女「あら、侍女はまだあるじゃない」
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/06(土) 21:50:37.78 ID:3DYnwWy5o
侍女「ああ、暗器ですね。ええ、最近ようやく慣れてきました」

女「やっぱり侍女って器用だよね」

王女「ですわ。技の侍女、ですね」

侍女「ふふ、技巧を磨いているかいがあるというものです」

女「王女は……防御がうまいよね。鉄壁だもん。守りの王女」

侍女「ええ、毎回攻めきれません……ああ、攻め、つまり力と言えばやはり女でしょうね」

王女「攻めの女…と言ったところですか。カッコいいですわ」

女「そ、そうかな……?」

侍女「ふふ、照れてますね」

王女「照れてますわ」

女「うぅ……からかわないでよ」

王女「ふふふ……あら、もうこんな時間ですわ」

侍女「そろそろ部屋に戻りましょうか」

女「おやすみなさい」

侍女「おやすみなさいませ」

王女「ええ、おやすみなさい」
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/06(土) 21:52:57.75 ID:3DYnwWy5o
騒がしい声で、女は目を覚ました。傍らの時計を見ると、まだ深夜だ
再び寝ようとしたが、どうも声が気になる。女は服を着替え、見に行こうと、ベッドから出た。その時だった

侍女「女様!起きてください!」

いきなり扉が開かれ、侍女が焦って入ってくる。そのただならぬ顔に、女の眠気は吹き飛んだ

女「なに?何があったの?」

侍女「説明は、後です。早く、服を着替えてください……ああ、戦闘用の服です。外套もお忘れなく」

そこで、女は気づく
侍女のメイド服には、点々と赤い染みがついており、それに加えて手には長剣。腰には短剣。腕には暗器の鎖が巻き付いている
侍女は明らかに、戦闘の、死と血の匂いを放っていた。女は急いで自分の装備を整える

侍女「まだ、余裕はあります。どうぞ」

差し出されたのは、サンドイッチ。食べて、力を出せということか。女は着替えつつ頬張る

女「いったい、何が?」

侍女「何者かによる、強襲です。下では、すでに戦闘が始まっています」

女「王女様は?大丈夫なの!?」

侍女「今のところは。戦力がそろうまでは、果敢にも前線を支えておられます」

女「そんな、急がなくちゃ!」

屋敷の奥が、女の部屋である。戦闘地からは遠い。女はもっと入り口近くに自分の部屋があれば、と顔を歪めた

12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/06(土) 21:56:31.94 ID:3DYnwWy5o
侍女「お急ぎください」

廊下を走る。血の匂いが流れてくる。王女は無事だろうか。心が痛む

女「ごめんね、先に行く!」

魔法を発動。攻性魔法に適性がある女は、他の魔術師よりも高い水準での身体強化が可能だ
体が軽くなる。走る、というよりは跳ぶようにして加速する

侍女「お待ち、くださ………」

廊下を疾駆する。王女を守るために磨いた力だ。今使わなくてどうするというのか
前方に、王女の後ろ姿が見える。衛兵と、メイドたちを率いて、勇猛果敢に侵入者を迎撃している

女「おおおおおおおっ!!!」

咆哮する。敵味方が、疾駆してくる女の姿に、一瞬動きを止める
その一瞬は、女が接近しきるには十分すぎる一瞬だった
地をける。空中で体を回転。天井をける。三角跳びの形で、頭上から侵入者を攻撃する

女「覚悟しろっ!」

落下の勢いも加えて、侵入者を脳天から股間まで一刀の元、両断する

女「王女様、お怪我は!?」

王女「ええ、私は平気」

細かい傷こそあれ、治癒魔法の前では意味をなさない程度
ただ、周りには侵入者の死体に混じり、衛兵やメイドの死体も転がっている

女「くそっ!」

吐き捨て、侵入者を睨む。侵入者が、仮面の向こうでにやりと笑った気がした
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/06(土) 22:04:19.54 ID:3DYnwWy5o
仮面の侵入者が繰り出すダガーを、女は双剣で受ける。小回りが利くダガーに、重い両手剣で相手はしたくない
明らかに訓練を受けている攻撃の仕方。しかし、実力はそれほどでもない

不自然なことに、帝都の貴族街での戦闘にもかかわらず、軍の援護は来ない
屋敷には火も放たれ、ここはまだ平気だろうが、門の方では業火が天を舐めているというのに
つまり、これは……

女(王女殺害のための……王家が仕向けた部隊!)

王位継承権一位の王女がいなくなれば、現妃の息子が王位継承権第一位に繰り上がる
妃にとっては、自分の力の及ぶ息子が王になるのを望むのは当然だろう
王女が王位についた途端、自らの影響力は激減するからだ
また、現王は王女よりも息子を気に入っており、高潔で民衆思いな王女を疎ましく思っているのは周知の事実だった

女(勝手な……)

乱れた世の中を治めるには、高貴で高潔な精神が必要だと、女は思っている
それを兼ねそろえた王女には、ぜひ王座についてもらいたい
その為の力になろうと思ったのが、女が剣を握った理由だ
侍女が到着し、戦線に参加。戦闘は激化の一途をたどる
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/06(土) 22:06:28.21 ID:3DYnwWy5o
侍女「ふっ!」

長剣と短剣で、刺客の二刀のダガーを受け止めた侍女が、短く息を吐く
それと同時にスパン、と刺客の頸動脈が血を吹く。わけがわからないといった表情で、刺客が崩れる
攻撃の正体は、暗器。極細の鎖に薄く鋭い刃が連結されており、魔法で自由に制御する
侍女は両手に3本ずつ、計6本の鎖を装備しており、一定の範囲内の刺客の急所を的確に切り裂いていく

「な、何が起きたんだっ……!?」
「ごは、ええっ……?」

戦闘範囲が狭く、相手と接近しがちな室内戦において、侍女の暗器は圧倒的な優位性を誇る
夜間ということで室内といえども薄暗く、つや消しされた鎖は視認が困難で、回避はほぼ不可能だ

侍女「はぁっ!」

かといって強引に距離をとれば、短剣で防御をはがし長剣での一撃という、高度な技術に裏打ちされた華麗な攻撃が襲ってくる
多人数で襲いかかっても、六条の死線の前では無駄。軽装で戦闘を挑んだ時点で勝つ見込みは限りなく低い
暗器に、短剣と長剣。三つの武器を華麗に使いこなし、侍女は敵を捌いていく

15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/06(土) 22:07:00.13 ID:QtSfNjKho
期待する前に飽きそう
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/06(土) 22:07:37.99 ID:3DYnwWy5o
王女「えーいっ!」

女と侍女を主とする前衛の攻撃を抜け、後衛の王女を狙いに行った暗殺者が吹き飛んでいく
王女の大盾による強力な一撃のせいだ。強固な大盾は、遠心力を利用することで巨大な鉄槌へ変貌する
王女は防性魔法に適性があるとはいえ、攻性魔法が使えないわけではない。強化された力での一撃は、全身粉砕骨折程度は軽い

「く、くそぉっ……」

刺客は、王女を攻められない。じりじりと、隙を窺うように見せて、ただただ、攻撃をためらうのみ
ダガー程度では防げない。いや、そもそも防ごうという考えが甘い。しかし、回避しようにも大盾の攻撃範囲は広い
王女はそんな、ためらい、怯える刺客を伸縮式の槍で牽制し、強引に隙を作り上げ、大盾による強烈な一撃で葬っている
優雅な外見とは裏腹に、豪快な戦闘法だった

王女「勢いが足りませんわね!」

短槍状態での連続突き。ダガーで何とか防いでいく刺客の体勢は、ガタガタに崩れていく
もちろん、連続突きは刺客が防げる程度に手加減された攻撃だ
王女は機を見て、短槍を一回転。柄が引き伸ばされ長槍状態に変化。回転の勢いと踏み込みを入れた雷の一撃を放つ

「ごはっ……」

心臓を貫通。長槍に貫かれた刺客を、槍を振って器用に飛ばし、別の刺客にぶつける
盾の一撃を警戒し、距離をとれば流れるような槍の一撃。接近すれば、必殺の大盾による死の鉄槌
遠近両方を、万能かつ優雅に王女はこなしていく
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/06(土) 22:11:24.32 ID:3DYnwWy5o
女「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄っ!!!」」

女は両脇から来た刺客に対し、両手剣を解体。双剣で切断する。同時に、前方に盾と剣を構えた刺客を確認する

女「うおおおおおっ!」

気合いとともに、攻勢に転じる。反撃の立場に甘んじている女ではない
双剣を結合。両手剣にし、盾を掲げて踏み込む刺客に対して、全力の上段斬り。当然盾で防がれるが、刃は止まらない

女「甘いっ!」

魔法が発動。両手剣に刻まれたラインが発光し、その効果を増幅する
攻性魔法による、切断対象の硬度弱体。盾をまるで薄紙のように両断して、刺客をも切断する

女「ぞろぞろと……」

魔翌力が女の中で渦を巻き、暴れる。生来の高い魔導力は、魔法戦のみならず、武器を利用する白兵戦でも大きな有利となる
女を中心に暴風が発生。漏れ出る魔翌力が逆巻き、室内に強風が吹く

女「うっとうしいんだよ!」

両手剣の刃が伸びる。魔翌力による切断フィールドが、両手剣のリーチを大幅に強化する
強大な魔翌力を利用した、死の光。一時的に、室内が明るく照らされる
女は魔剣を横なぎに一閃。前方の刺客は、例外なく両断されていく
双剣と両手剣を切り替え、各種攻性魔法による攻撃とサポート。とにかく攻めることに特化したバトルスタイル
この戦闘域で最大の攻撃翌力を誇る女は、刺客を紙切れのように切断していく

18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/06(土) 22:16:56.37 ID:3DYnwWy5o
敵は数で押し切るつもりなのか、実力は大したことがないとはいえ、その人数は膨大だ
真綿で首を絞められているような、じわじわとした苦しみ
あきらかに戦果はこちらが上とはいえ、それはそれ。全滅は時間の問題だった

女「くそっ、らぁっ!」

女は、やけくそのように両手剣を振る。その勢いのみで、迫っていた刺客を吹き飛ばす
体が、磨いた技量を発揮できなくなってきている。集中力も魔力も切れてきており、魔法の効果も落ちてきている
侍女も疲れているのか、短剣のみで防御に徹し、暗器による攻撃で刺客を牽制しているのみ
王女も盾の一撃を繰り出せない。伸縮槍であしらうに留めている

侍女「くぅ……」

ぱっと赤が散る。とうとう、侍女の左腕がダガーを受けたのだ。だらん、と力を失う左腕を侍女は苦い目で一瞥した
腱が切断されたのなら、治癒魔法でも回復に時間がかかる。もちろんその時間を与える刺客ではないだろう

侍女「王女様!」

覚悟を決めたように、侍女は叫ぶ。それが何かの合図だったのか、王女は女に言った

王女「撤退します!女、ついてきて!」

女「はいっ!」

ここは、王女を逃がすことが先決だ。侍女も、そのつもりだろう
女は侍女の性格と、この状況からそう判断し、王女の後に続く
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/06(土) 22:20:58.32 ID:3DYnwWy5o
大臣邸 裏庭

大臣「おお、よく来てくれた」

王女が目指した場所は、裏庭。そこには馬が何頭かと、女の父親である大臣がいた

女「父様、無事でしたか」

大臣「ああ。それよりも、だ」

大臣は丁寧な手つきで、女の前に黒い剣を差し出した

女「これは……?」

王女「おそらく、これが奴らの目的でしょう」

王女は言った。奴らの目的は、王女殺害ではなく、この黒い剣だという
見たところ、名剣ではありそうだが、強襲してまで手に入れるものではないようにも思う
特に、魔法の反応も感じない

大臣「この剣を渡すわけにはいかんのだ。絶対に守り切ってくれ」

女「はい」

大臣の力強い言葉とともに、女は剣を受け取る。その間に王女は馬に乗っていた。促され、女も騎乗する

王女「ひとまず、ここを離れなくてはなりません」

邸宅を守る外壁が、逃げ道としてか中から壊されているのが王女の視線の先に見えた
逃げ道として、強襲の後から壊されたのだろう
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/06(土) 22:24:23.34 ID:3DYnwWy5o
剣が狙いと王女と大臣は読んだが、王女殺害の可能性も依然として高い
外に刺客が控えている可能性を考え、女が先に出ることになった
刺客の目当てだという剣は、女が持っている

刺客「逃がすか!」

女が振り返ると、邸宅から出てきた何人かの刺客が迫ってきている
大臣が、刺客の凶刃を受け、倒れる

女「父様!」

王女「行きなさい、女!父の死を無駄にしないで!」

王女は叫ぶと転身、刺客に向かって馬を走らせる。足止めをするつもりのようだ

王女「あなたは逃げなさい!その剣は、奴らに渡してはいけないものなのです!」

女「王女様を置いてはいけません!」

王女「行きなさい!これは命令です!」

王女の聞いたことのない鋭い声に、女の体は知らずのうちに従っていた
馬が、邸宅の外へ駆け出す。振り返ることができない
王女が戦う音を聞きながら、女は夜の帝都を駆けた
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/06(土) 22:28:15.30 ID:3DYnwWy5o
帝都中央広場

そこには、昨日までなかったものが存在していた
死体である。磔にされ、心臓を槍で貫かれた、幾人もの死体
大臣邸での戦闘による、死者であった

女「ああ……王女様……」

そこには王女の姿もあった。手足にはダガーが刺さったままで、最後の最後まで戦っていたことが容易にわかる
大臣、自らの父の姿も確認し、女の顔から表情が消える
貧民街で一夜を過ごし、こっそりと戻ってきた女が見たのは、絶望

自分は、大切なものを守れなかった

磨いた剣の腕は、何の役にも立たなかったのだ

女「うう……うぁぁぁぁぁ……」

ポロポロと、涙がこぼれる。無力感に、打ちのめされる
死体が磔にされている柱には、女の特徴が書かれた紙。どうやら、指名手配されているようだ
あまり、ここにいるのはよくない。女は涙を流しながら、広場を離れる
カラスが、死体に集まってきていた。カーカーと、上空で喜ぶように鳴いている
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/06(土) 22:31:29.81 ID:3DYnwWy5o
夜 大臣邸跡


刺客が放った火によって、大臣邸は見る影もなくなっていた
しかし、そのおかげか誰もいない。女にとっては、そちらの方が都合がよかった
ふらふらと、しばらくの間跡地を歩き回る

女「あった……」

手に握っているのは、王女が愛用した伸縮式の特注槍。大盾が見つからなかったのは残念だが、仕方がない
槍が見つかっただけでも、良しとしなくてはならない
反対の手に握っているのは、侍女が使っていた長剣。柄の部分には、暗器の鎖が2本、巻き付けられていた

女「ごめんなさい……王女様……侍女……私に、もっと力があれば……」

幼いころからの友人は、もういない。自分だけが、すべてを犠牲にして生き残ったのだ

王や、妃の下らぬ欲望が、王女や侍女を殺した。生き残った自分が、どうするべきなのか。考えるまでもない

23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/06(土) 22:35:58.90 ID:3DYnwWy5o
力が欲しいと願った
あの戦闘で、私にもっと力があれば
ああ、今の私はどこまでも無力で、磨いた力は役には立たなかった

女「うう……うぅぅぅぅぅぅぅ…………」

泣いても何も変わらない
何もできない自分だけが、一人生き残った
ダガーを何本も受けても、逃げる時間を稼いだ王女
王女と自分が撤退した後の廊下の戦闘区域を支えたのは、侍女
自分よりよほど、生きる価値があっただろうに

女「く、ぅっ……うううううう………」

がくり、とひざが折れる。背中に背負った黒の剣が重い
腰にある愛用の可変剣が重い
両手の遺品はそれらを超えて、重すぎる
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/06(土) 22:37:17.52 ID:3DYnwWy5o
しばらくして、女は立ち上がった。泣いていたため眼は赤かったが、先ほど違う目つきだった

女「私は……復讐する……」

女の瞳に、黒い炎が燃え上がる

女「反乱を起こし、王女と侍女の敵を討つ!」

女「そして!私が、王女が目指した幸せな国を作る!私達のような、不幸な目に合う人間が誰もいないような国を!」












女「この帝国に、革命を!!」

月明かりが総べる静かな夜に、女の叫びが響き渡った







「弱さを胸に」 終
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/06(土) 22:41:03.39 ID:3DYnwWy5o
今日はいったん終わりにします

批判感想質問なんでもどうぞ
26 : ◆F/9N9rwECM :2011/08/06(土) 22:41:54.54 ID:3DYnwWy5o
一応つけておく
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/06(土) 22:48:22.36 ID:QtSfNjKho
既に飽きた戦闘中の説明長すぎ
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/08/06(土) 23:12:51.56 ID:punATCTDo
それ以前に帝国なのに国王って…
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/06(土) 23:25:49.33 ID:ndLdx8mO0
なんか惹かれない
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/07(日) 03:46:38.76 ID:g3UykQTIO
俺は好きだ
頑張ってくれ!
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/07(日) 12:36:30.41 ID:osOe+d14o

俺は応援するぜ!
32 : ◆F/9N9rwECM :2011/08/07(日) 13:15:58.90 ID:mw3kqw9Po
再開



「回り始める歯車」


規則正しく地を蹴り、馬は走る。女が王都を出てから、すでに1週間が経過していた
女は最南端の街を目指していた
この大陸は大雑把に平行四辺形であり、左上の角のあたりに王都がある
最南端の街は、その対格。王都から最も遠い街だ

女「そろそろ……近くまで来ているはず」

女がこの街を目指す理由は、この近辺には反乱勢力が多いという噂を聞いたからだ
ただ、今のところはこの地方の駐屯軍に押さえつけられ、目立った行動はしていないようだが

女「ん……?なんだろう、あれ……」

平原に、視界を遮るものはない
強化した視力がとらえたのは、三頭の馬。明らかに旅装でない女性が、鞍にうつ伏せになっている
残りの二頭には、いかにもガラの悪そうな男。誘拐だろうか

女「……誘拐なら、許せない」

女性の服は、高級品。十中八九誘拐だろうが万一もある
女は馬を走らせた
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 13:20:48.58 ID:mw3kqw9Po
女「そこの2人、止まって!」

女は少し離れたところから声をかけた

「げっ!もう追手がきやがったか!?」

「落ち着け、ただの女みてーだぜ」

「ふぅん、そうみたいだな。結構好み。ついでにとっつかえまえていこうぜ」

「悪かねーな。よっしゃ!」

女「全部聞こえてるわよ……」

口の中でつぶやく。魔法で強化された五感は、男どもの会話をしっかりととらえていた

女(追手を警戒してる。ついでにとっ捕まえる。気絶した女性。誘拐犯だな……)

女は腰の剣に手を伸ばす。馬上戦闘も、しっかりと訓練を受けてある
抜剣する。男たちも、それに対応し剣を抜く

「ぶっそうだな、おい!」

「へへ、おとなしくしてりゃイイコトしてやるよ」

女「ゲスが!身の程を知れっ!」
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 13:25:03.25 ID:mw3kqw9Po
接近しきるまでに、魔法を発動。光球が、女の前方に出現した
女は剣で片方の男を指す。光球は男に向かって無秩序な軌道で飛翔する

「なっ、魔法!?」

魔法攻撃に動揺した男は、回避もできなかった。光球が全段命中。絶命する

「お、おい!ちくしょう!」

女「覚悟はいいか!」

もう片方の男がパニックになっている間に距離はつめ終わっている。とっさに剣で防御をする男

女「無駄だ!」

「ばかな……」

両断
防御の剣すら切断し、女の剣は男の首を落としていた
首なしの死体が、地に落ちる

女「賊が……」

吐き捨てる。女は随分と性格が変わったように思える

女「この人は、無事なの……?」
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/07(日) 13:30:12.99 ID:mw3kqw9Po
女は馬から降りて、女性に近寄る。薬か何かで眠らされているようだが、怪我などはない
女はこの女性が起きるまで、ここで休憩していくことにした
遮蔽物がなくどこからでも丸見えだが、昼間ということと、こちらからも見通しが利くということ
この2つから短時間なら平気だろうと、女は携帯食料の包みを開く

「ううぅ……」

しばらくして、馬から下ろし寝かせていた女性が起きる。女と同年齢か、一つ二つ上くらいのようだ

「っ!」

即座に女性は警戒の体勢を作る。やはり、誘拐されてきたのだろう

「あなたは……?盗賊団の人ですか……?」

女「いいえ、私の名前は女。盗賊団らしき男なら、そこ」

少し離れた場所には、男の死体がそのままにしてある。墓を作るのも面倒なのだ

嬢「助けてくれたんですか、ありがとうございます。私は嬢といいます」

よろしくおねがいします、と嬢は笑った。女も会釈を返す

嬢「私は、最南端の街から誘拐されたのです。最近、盗賊団が力をつけていて……」

女「力をつけているといっても……所詮盗賊でしょ?駐屯軍にでも、討伐を要請すればいい」

嬢「それが……」

ダメなんです、と嬢は首を横に振った
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 13:33:35.23 ID:mw3kqw9Po
嬢「駐屯軍は腐っています。まともに助けてはくれません。莫大な代償を払え、と」

女「じゃあ、街の兵力は?盗賊は、それほど大きな集団に?」

いいえ、と嬢は再び首を振る

嬢「恐ろしいのは数ではなく、最近リーダーになった男性の技量です。魔法も使いますし、用兵も見事です」

なるほど、と女は頷いた

女「その男のせいで、盗賊が盗賊らしかぬ力をつけたわけね」

嬢「ええ。盗賊どもも、リーダーを信用しきっているようで……」

信頼というのは、用兵においては重要である。指揮官を信頼し、全力を尽くさせれば弱兵は消える
統率がとれ、個人の技量も上昇した盗賊団なら、街の兵力程度なら苦戦して当然か

女「とにかく、今は嬢を街に帰すことが先決かな」

嬢「ありがとうございます」

女は気にせずに、馬に乗りながら言った

女「私のついでだから。馬には乗れるよね?」
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 13:38:31.13 ID:mw3kqw9Po
嬢「女さんは……どうしてこんな辺境に?」

馬を走らせながら、嬢は聞いた。女が少し先を行っているため顔は見えない
もし見えていたら、女が顔を歪めるのが分かっただろう

女「うん……そうだね、力をつけようと思って」

嬢「ああ、修行ですか。近くの大森林には、色々なモンスターがいますからね」

辺境の街近くには、大きな森林がある。そのまま大森林と呼ばれ、モンスターが多数生息している
修行場として、訪れるものも多いという

女「そんなとこかな」

違うが、本当のことを言うわけにもいかない
勘違いしているなら、そのままにしておこう。そう思った女は否定せずに濁した

女「ん。見えてきた」

遠くに城門が見える。ただ、強化された視力と、遮蔽物がない平原地形だ
じっさいは、みえているより遠いのだろう

嬢「本当ですね。結構連れ去られていたんだ……」

嬢も反応を返す。まだ強化視力でなければ見えないはずだが、嬢も魔法の心得があるのだろうか

38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/07(日) 13:43:57.69 ID:mw3kqw9Po
それからしばらく馬を走らせ、ようやく街の城門が近づいてきた

嬢「もうすこしですね」

女「うん……でも、簡単には入れなさそうだ」

嬢「え?」

女「後ろ。油断してた」

嬢は振り返る。後方には、馬が五頭。騎乗している男どもは、武器を構えて追ってきている

嬢「あれは……!」

女「盗賊ね。死体を放っておいたのはまずかったか」

嬢「先頭の男、あれがリーダーです!」

盗賊たちの速度は速い。このままでは、街につく前に追いつかれてしまうだろう
訓練を受けていない嬢の技術で出せる速度では、逃げきれないのだ

女「嬢、先に行って。私が時間を稼ぐ」

嬢「そんな、リーダーは本当に強いんですよ!?」

女「早く行って。嬢が街から援軍を呼んでこれば、私にも逃げるチャンスができる」

すでに馬を方向転換させようとしている女を見て、嬢は唇をかんだ

嬢「すみません……お願いします」
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 13:46:02.67 ID:mw3kqw9Po
リーダー「俺の手下を殺したのはオマエか?」

女が近づいていくと、リーダーは手をあげて部下の馬を止めた
女も一定の距離を開けて馬を止める

女「だとしたら何なのかしら?」

リーダー「やっぱりか。あいつと逃げてるからそうだと思った」

リーダーは女の先、走っていく嬢を見ながらつぶやく

リーダー「まあいいや。お前がどんな奴だろうと関係ない。落とし前はつけてもらうぜ!」

女「盗賊風情……まとめてかかってこい」

女が抜剣。5対1の戦闘は、圧倒的に不利だが、この場はやるしかない

リーダー「いくぜ!野郎ども!」

「おおおおーっ!!!」

女「切り刻んでやる!」

互いに、馬を走らせ接近する
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/07(日) 13:47:16.62 ID:osOe+d14o
見てるからな!
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/07(日) 13:55:18.56 ID:mw3kqw9Po
女「てやっ!」

女は先ほどと同じ光球の魔法を発動する
発射後の誘導性はないが、弾数と速度に優れる攻性魔法だ

リーダー「魔法が来るぞ!狙われた奴は射線から退け!追っては来ない!」

女「ちっ」

魔法の内容がバレていた。女は苛立ちまぎれに、剣を横なぎに振るう
光球はそれに従い、扇の形に飛んでいくが、かすりもしない

リーダー「ざまあねえな!当たらなきゃ意味ねえぜ!」

女「このおっ!」

リーダーと女が交錯。互いの武器がぶつかり合い、火花が散る

「おらよっ!」

「スキだらけだぜ!」

交錯しすぐに、手下の2人が武器を構えて両側から攻撃を仕掛ける
武器で防ごうにも、両方の攻撃を同時に防げない
両手剣を解体しようにも、手綱を握った状態ではすぐにはできない
避けようにも、リーダーとの交錯により体勢が崩れている
強引に方向を転換することもできない

リーダー「悪く思うな!手を出してきたのはオマエだからな!」

42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/07(日) 13:57:20.40 ID:mw3kqw9Po
女「この程度の攻撃!」

女は手綱から手を放し、手下の攻撃が当たる瞬間、

「消えた!?」

「なにい!?」

攻撃を回避。急に女を見失った2人は、思わず馬を止めてしまう
女が乗っていた馬は、そのまま直進を続けている

リーダー「バカ野郎!上だ!」

リーダーの怒声。慌てて上を見た手下は、落ちてくる黒い影が最後の景色となった

「ぐえっ!」

女「邪魔!」

脳天を両手剣で切断しつつ、女は手下の馬に着地。死体を落とし馬を奪う

「な、なにが……」

急にあらわれた女に対し、もう1人の手下はとっさも判断ができない
その間に、女は伸縮式の槍を展開。長槍状態にし、馬を走らせる

女「やっ!」

一閃。手下の胸を、槍が貫通。心臓を貫かれ、手下は絶命した
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 14:01:01.82 ID:mw3kqw9Po
リーダー「なろう、野郎ども、さがってろ!」

手下があっという間に2人やられ、リーダーは手下をさがらせる

リーダー「やるじゃねえの!」

リーダーが、女に接近。女は両手剣から槍に持ち替える

女「ていっ!」

リーダー「そらよっ!」

女の長槍と、リーダーの剣が打ち合う。馬の力も利用して繰り出される一撃は、必然的に威力が高い
互いの体にかかる負担や、打ち合いの衝撃も大きい

女「無駄っ!」

リーダー「おらよ!」

馬上の戦闘ならばリーチや取り回しに優れる槍が優位だ
次第にリーダーは攻撃を受けきれなくなっていく

リーダー「くっ、相性が悪い……」

女「所詮は盗賊ね。そこそこやるようだけど、軍人崩れ?」

リーダー「っち。安い挑発にのるかってんだ」

リーダーが転進。手下を率いて離れていく
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 14:04:57.46 ID:mw3kqw9Po
女「ふう」

長槍を回転。短槍状態に戻す。王女の遺品のおかげで助かった

女「私の馬……」

奪った馬から降りる。女の馬は、自ら近くまで戻ってきていた

女「よしよし……」

騎乗する。盗賊が去った以上、また街を目指すことに問題はない
女は馬を走らせる

女(それにしても、あいつ……リーダー)

女(手を抜いてたな……侮られた?まあいいか……)

城門の本当にすぐ近くまで来た頃、ようやく街の兵が出てきた

女「遅いって……」

女はつぶやくと、馬を加速させた
嬢が馬上から、こちらに手を振っていた
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 14:07:53.44 ID:mw3kqw9Po
辺境都市
市長邸


市長「有難う御座います、嬢さまを助けていただいて」

女「偶然です。そう、気になさらず」

嬢の案内で通されたのは、ここ辺境都市の市長邸だった
辺境都市とはいえ、大森林がもたらす資源と、海の恵みの両方が取れるこの近辺は人が集まる
旅人や買い付けの商人が多く、季節によっては人が激減するが、定住者もそれなりにはいる

嬢「それにしても女さんは強いですね」

城壁からあの戦闘を見ていたものがいたらしい
嬢はキラキラとした目で女を見ている。女は目をそらした
この街は高い城壁に守られているせいか、守備隊の練度は低いようだ
だからこそ、盗賊どもがのさばっているのだが

市長「街にこそ入ってこないが、盗賊団は外を歩くものを容赦なく襲う」

市長はやれやれと首を振った

嬢「私も、今日はキノコを採りに行こうとしていたところでした」

46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/07(日) 14:33:07.98 ID:mw3kqw9Po
女「制圧のための作戦は?ほったらかしというんじゃないでしょうね?」

嬢「リーダーが来る前まではおさえこめていたんですが……」

女「あの男がネックなのね……」

ふうん、と女は頷いた。そして立ち上がった

女「私にもやることがありますので。失礼いたします」

市長「ありがとう。君のおかげで、嬢さまにけがはなかった。方伯も喜びになるだろう」

女「いえ……それでは」

女はお辞儀をすると、部屋を後にした

嬢「これからどうするんですか?」

女「……何でついてくるの?」

足を止めて、女は聞く。嬢はきょとんとした顔で首をかしげた

嬢「なにか、力になれることだったら手伝おうと思いまして」

女「………」

厄介な性格だ、と女は思った

47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/07(日) 14:38:01.26 ID:mw3kqw9Po
辺境都市
商業区


女「コレと……コレ。それも。そっちは……いや、いらない」

商人「毎度!」

女は商業区で、簡単に武装の手入れの品を買った
大森林で修行をする人を対象としているのか、中々いい品がそろっている

女(反乱組織についてのうわさを集めないと……)

女の目的は帝国に対する革命。王権打倒。そのためには、反乱組織を見つける必要があった

嬢「他に買うものはありますか?」

女(いつまでついてくるんだ……)

隣を笑顔で歩く嬢に、女は何度目かのため息をつく
うわさを集めようにも、嬢の存在は邪魔だった

女(なんとか追い払えないかな)

考えながら、女は嬢と歩いていく
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/07(日) 14:42:28.59 ID:mw3kqw9Po
女「わっ」

「きゃ」

思考に注意が払われていたせいか、前から来た女性とぶつかってしまう
女は軽くよろけるだけで済んだが、相手は手に持っていた杖で自らの足を払ってしまったらしく尻もちをついていた

女「ごめんなさい。怪我は?」

「大丈夫です。こちらこそ、ぼーっとしていて」

女が差し出した手につかまり、女性が立ち上がる。拾い上げた杖には、よくわからない模様が走り廻っている
魔術師なのだろう。ただ、普通の魔術師とは少し違うように女は感じた

「それでは……」

女性は去っていく。女はなんとなく足を止め、後姿を見送った。見覚えのある模様だった

女(なんだったかな。見覚えがあるにはあるんだけど……)

そこで、ふと思いつく

女「……あ。宿をとらないと」

嬢「それなら、良い所がありますよ!」

嬢が嬉しそうに言った

49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/07(日) 14:49:32.98 ID:mw3kqw9Po
辺境都市
方伯邸



嬢に案内されてきたのは、ここ辺境都市一帯の領主、方伯の邸宅だった
嬢は方伯の娘なのだから、ここは嬢の家ということになる

女「ここが、宿?」

嬢「助けてもらったお礼です」

やっと離れられると思ったのに、と女は内心落胆する
だが、宿代やその他が浮いたのは純粋に嬉しい。あまり路銀は豊富でないのだ

メイド「おかえりなさいませ、お嬢様」

嬢「うん。こちら、女さん。私のお客さん」

メイド「女様ですね。お話は伺っております。お嬢様を助けていただき、ありがとうございます」

メイドは深くお辞儀をした

女「……気にしないで。私は偶然助けただけだから」

女はそっけなく言う。落ち着かないのか、右手で腰の剣をカリカリとひっかいていた

メイド「それでは、お部屋にご案内いたします」

50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/07(日) 14:58:04.95 ID:mw3kqw9Po
女「豪華な食事ね。いつもこんなの食べてるの?」

嬢「あはは。特別な時だけですよ」

部屋に荷物おいた女は、嬢とともに食事をとることにした
テーブルには料理が並べられ、メイドたちが控えている
貴族の出である女だが、食生活は平凡だったため、少しばかり圧倒された

嬢「いただきましょう」

女「いただきます」

焼き魚を切り分けながら、嬢が話しかけてくる
女はサラダを取り分ける手を止める

嬢「女さんは、どの位ここにいるのですか?」

女「目的が達成できるまでね」

反乱軍とのコンタクトを取り、次の行動につなげなくてはならない
王女や侍女の仇をとらなくては
女は脇にたてかけてある黒剣をちらりと見た。託された剣。これも、守らないといけない

嬢「修行……でしたっけ。明日から、大森林へ?」

女「……いや、明日は街にいる」

しまった、と女は考えた。面倒なことになったかもしれない

女「修行だけが、目的ってわけでもないから」
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/07(日) 14:58:42.26 ID:mw3kqw9Po
嬢「女さんの目的が済むまで、いてくれてかまいませんよ」

女「……分かった」

女はサラダを食べて、話を一時中断する
嬢も、切り分けた焼き魚を頬張った

嬢「女さんは、どこから来たんですか?」

女「……北部地域から」

しばらくして、また嬢が口を開く
帝都からとは言いにくい女は、地方だけ言って濁す

嬢「北部……帝都の方ですね」

嬢は困ったように言った

嬢「また、税が上がるそうですよ。王は何を考えているのでしょう」

女「さあね」

嬢「いつ、反乱が起きてもおかしくない……嫌な感じですね」

女「王に、人の心はない。まわりも、きっとそうだろう。だから……」

嬢「だから?」

女「だから……だから、国が乱れる」

女は言いかけた言葉を強引に飲み込んだ。窓の外は、ゆっくりと暗くなっていた

52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/07(日) 15:03:54.46 ID:mw3kqw9Po
辺境都市
守備隊練兵場


朝早く、女は呼ばれ練兵場へとやってきた
この都市に来て、はや一週間半。反乱軍の情報はいまだない
そのせいか、女は少しイラついているようだった

女「何の用ですか?」

隊長「早くから呼んで済まない。女さんがこの都市に来る直前に、盗賊に襲われたでしょう」

女「ええ。嬢が目当てだったみたいね」

隊長「ええ。その時女さんは、あのリーダーと互角に戦っていましたね」

女「………」

隊長「我々では、リーダーの技量にはかないません。そのため、討伐作戦は延期されていましたが……」

女「私に、リーダーの相手をしろって言いたいわけね」

隊長「話が早くて助かります」


53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/07(日) 15:05:50.56 ID:mw3kqw9Po
隊長「盗賊自体は遅るるに足りません。脅威はリーダーのみなのです」

女「私がリーダーを殺せば、あとは自分たちで平気ってことね」

隊長は頷いた。女に、盗賊団討伐を手伝ってほしいようだった
女はすぐには返事を出さずに考える

女(受けておけば、この街での知名度が上がり、情報が入ってくるかも)

女(でも、リーダーは手を抜いていた。私より強いかもしれない)

女(私は[ピーーー]ない。あんまり、目的以外の危ない橋は渡れない)

女(でも……これは、目的に繋がらないとも言えない。だったら)

隊長「手伝ってもらえませんか?」

女「分かった。私がリーダーを抑える」

隊長「おお、ありがとうございます!」

女「具体的な作戦は?以前の討伐作戦を流用するの?」

隊長「いいえ。リーダーを抑え込める以上、奴らを徹底的に叩きます」

女「強気で行くのね」
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:06:43.79 ID:mw3kqw9Po
隊長「偵察部隊が、奴らのアジトを発見しています。そこを強襲します」

女「相手の規模と、こちらの兵力は?」

隊長「盗賊団は大体二十〜三十程度です。こちらは三十から、新兵も加えて四十です」

女「数の上ではこっちが多いけど。あいての拠点の設備は?」

隊長「いや、それは確認できていません」

女は大きくため息をついた
攻撃側は防御側より兵力が必要だ。相手の拠点で戦うならなおさらである

女「魔法を使える団員は?」

隊長「いや、いません」

女「あ、そ」

がっかりだ。魔法は基本、魔法でしか防げない。盾や武器を壁には出来るが、技術が必要だ
盗賊にはおそらくない技術だろう。だからこそ、期待したのだが

隊長「詳しい話は、また文書を送ります」

女「よろしく頼むわ」

女は強く言った。この作戦の結果次第で、自分の目的に大きく近づくかもしれないのだ
成功させる、と女は固く心に決めた


「回り始める歯車」終
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/07(日) 15:08:20.64 ID:mw3kqw9Po
今日はこれで終わり
ありがとうございました
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/07(日) 15:53:08.47 ID:osOe+d14o

楽しみにしてるぞ
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/07(日) 20:48:28.05 ID:a2gDwX6IO
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/08/10(水) 07:54:23.91 ID:ymxZzSjN0
帝国なのに王なのか?
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/09/12(月) 00:29:21.93 ID:mD/b2ciko
まだか
43.45 KB   
VIP Service SS速報VIP 専用ブラウザ 検索 Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)