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勇者「国王を殺したのは、誰だ……!?」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/07(日) 01:19:37.43 ID:thPQf9bDO
深夜、王城、王の寝室―――

カツカツカツ…


勇者「勇者、お召しにより参上しました」サッ


勇者「…………」



勇者「……国王?」
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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
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渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
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二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
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全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
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笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/07(日) 01:24:51.43 ID:thPQf9bDO
勇者「……変だ。周りに護衛の気配がない……。まさか!!」

勇者「失礼します!!」ガチャッ!


勇者「…………、国王!?」

国王「…………」

勇者「しっかりして下さい!お気を確かに、国王、国王!?」ユサユサ


勇者「……駄目か、既に事切れておられる……。くそっ!!」
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/07(日) 01:28:09.24 ID:thPQf9bDO
勇者「しかし、誰が……」ギリッ

カツカツカツ…

勇者「ん、人か?」

王女「失礼します、お父さ、ま……?」

勇者「これは王女!陛下が大変な事に……」

王女「…………」
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/07(日) 01:31:04.21 ID:thPQf9bDO
王女「ひっ、」ガタッ


王女「ひっ、」ガタガタッ


王女「ひとごろしーーっ!!」



勇者「お、王女!?」
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 01:35:57.23 ID:thPQf9bDO
勇者「王女!どうか落ち着かれて下さい!!」スッ

王女「いやっ!触らないで、人殺し!!」パシッ!

勇者「お、王女……」


衛兵「如何なされましたか、王女!?」ドヤドヤ

王女「あ、あ、この者が父を……」ブルブル…

衛兵「……は?」
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/07(日) 01:42:11.99 ID:thPQf9bDO
王弟「どうしたのだ、一体……」フゥ…

王女「お、おじさま。この者が父を……」

王弟「……ほう?」ジロッ


勇者「…………」

王子「ちょっと通してくれ、早く!!」

王女「お兄様!!」バッ!

王子「どうしたんだ、王女!?」

王女「お父様が、お父様が……」ブルブル…

王子「……そんな」
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/08/07(日) 01:45:06.73 ID:se4mirQmo
    ∧_∧
    ( ・∀・)ワクワク
  oノ∧つ⊂)
  ( ( ・∀・)ドキドキ
  ∪( ∪ ∪
    と__)__)
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/07(日) 01:48:31.94 ID:thPQf9bDO
王子「誰が一体……」ギリッ

勇者「……私が参った時には既に……」グッ

王女「うそ!貴方が殺したに決まってるじゃない!貴方が!!」

勇者「そんな……」

王弟「まあ待て。ここで言い合いしてても始まらん。王の御体を移さねばならんしな……」

勇者「……はい」


王弟「で、勇者よ。貴殿は何故ここに参ったのだ?」

勇者「……は?」
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/07(日) 01:52:45.86 ID:thPQf9bDO
勇者「それは、王からお召しを……」

王弟「さて、その様な話は聞いておらんのだがな……」

勇者「そんな……」

王弟「……衛兵」

衛兵「はっ!」

王弟「連れて行け」

衛兵「はっ!」

勇者「そんな……」
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/07(日) 01:57:26.21 ID:thPQf9bDO
衛兵「さ、こちらへ……」ザッ!

勇者「まっ、待って下さい!?せめて話を!!」

王弟「……いくらでも聞いてやる。但し、檻の中でな!!」

勇者「そ、そんな……」


衛兵「では……」ガシッ

勇者「……くそっ」

ザッザッザッ……
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/07(日) 02:01:33.32 ID:thPQf9bDO
王女「お父様、お父様ぁ……」ウッウッ…

王子「……大丈夫、僕がついてるから……」ギュッ

王女「……はい」グスッ




――――こうして俺は国王殺しの罪で投獄された。無論、無実の罪で……。


勇者「くそっ!!」


勇者「一体、誰が国王を殺したんだ……!?」
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/07(日) 02:06:36.05 ID:thPQf9bDO
今日は終わります。

また明日の夜とかに書きます。
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/07(日) 04:50:33.06 ID:a2gDwX6IO
しえん
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2011/08/07(日) 07:57:32.50 ID:a0MAeEWN0
おつ
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/08/07(日) 08:05:41.88 ID:v0mhQIPI0
ほう
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/08/07(日) 10:24:38.60 ID:aUI2yajAO
あの世で俺になんたらかんたら
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/08(月) 23:35:30.03 ID:UFtQ9gTDO
投下します。


勇者逮捕の翌日――――――

コンコン

「……どうぞ」

私が返事を返すより先に扉を乱暴に開け、ドヤドヤと乱入するように入って来た衛兵達。

隊長「……女賢者様ですね?」

その中の隊長が確認のため、声をかける。

私は黙って頷いた。
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/08(月) 23:37:55.09 ID:c0cnJKEqo
キター
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/08(月) 23:44:00.00 ID:UFtQ9gTDO
隊長「もうご存知かと思いますが、勇者が昨晩、国王をあやめたとの由でございます」

隊長が言い立てる台詞を黙って聞く。

――勇者が国王に害をなす?そんな事があるはずがない。そんな簡単な事も分からないのかと、私は隊長の顔を睨みつける。

隊長「つきましては、貴方にも事情を聞くようにとの命令であります」

しゃあしゃあと宣う機械的な男の口に私は毒づくように言った。

女賢者「……好きになさい」
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/08(月) 23:50:54.52 ID:33de1rrDO
この手の話見る度に思うけどわざわざ勇者とか設定してるくせにただの雑魚レベルな実力なのが笑える
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/08(月) 23:54:51.77 ID:UFtQ9gTDO
私の言葉を合図に衛兵達が周りを取り囲み縄をかける。

女賢者「どういう事!?」

私の抗議を無視して衛兵達は部屋から強引に連れだそうとする。

女賢者「これじゃ罪人扱いじゃない!?」

隊長「……罪人扱い、ではなく罪人なのだ」

女賢者「そんな……」

冷たく言い返す男に私は言葉を失った―――
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/09(火) 00:01:12.30 ID:la44msrDO
――――牢獄

勇者「…………」

俺は冷たい牢獄の中で鋼鉄の手枷をはめられたままごろん、と横になる。

頭の中ではぐるぐるぐるぐるあの事が回る。

勇者「くそっ、誰が国王を……」ギリッ…

爪をかみながら何百と呟いた台詞をまた口にした。
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/09(火) 00:06:56.05 ID:la44msrDO
勇者「…………」

再び頭の中で整理する。


まず、誰が国王を殺したのか、についてだ。

……国王が私怨で命を狙われる事は考えにくい。人の良さと気遣いで地位を保ってた人だ。裏の顔も知ってる仲としては、それは断言出来た。

なら、政治的にはどうだ?この方面だと途端に心当たりが増える。
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/09(火) 00:12:01.00 ID:la44msrDO
まず考えられるのは、あの王弟だ。

彼は魔族に対しては、和平派である国王とは違い主戦派だ。

彼はその戦争において巨大な利権を有している。なので和平を成立させた国王に対しては深い怨みがある。
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/09(火) 00:19:06.86 ID:la44msrDO
そして、次に考えられるのは、あの王子だ。

王子も王弟と同じく主戦派で数多くの戦功を立ててきた。と、言っても戦場では単なるお飾りだが。

しかし、彼の下につけられた家臣の功績を吸い取って国一番の勇者だと言われ、本人もその気になっていた。

その彼に降って湧いたのが魔族の王女との婚姻話だった。
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/09(火) 00:29:04.07 ID:la44msrDO
国王が和平のためにと、魔族の王女を王子に嫁に迎えようとしたらしい。

それは途中で立ち消えになったものの、その事で王子は恋人との仲が随分ギクシャクした時期がある。

甘やかされきった王子がその事で国王を随分怨んだらしい。

何せ、その事で公然と王子が国王の事を罵る場面が増えたからだ。

その度に、国王の悲しげな顔と、俺を含む周りのあの胃に穴のあく痛みを思いだす。
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/09(火) 00:35:22.93 ID:la44msrDO
しかし一番濃いのは、やはり魔族主戦派による暗殺だろう。

幾ら和平派とは言え、国王も何度か魔族と戦を繰り返した。

その度に大きな戦果を上げ、遂には魔族主戦派の有力者を討ち取るに至ったのだ。

その後、その魔族の亡骸を丁重に扱い、その事をきっかけに和平にまでこぎつけたのだから、その政治能力は計り知れない。

だが、魔族主戦派からは明らかに怨まれていたのも事実だ。
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/09(火) 00:40:27.37 ID:la44msrDO
しかし、これには決定打に欠けるところがある。

魔族主戦派もまた和平のお陰で随分と得したところがある。

それに、魔族和平派の監視の下そんな行動を取ってくるとも思えない。

勇者「あーあっ!くそっ!!」

またしても入り込む思考のループ。

晴れない苛立ちに思わず壁を殴り砕いた。
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/09(火) 00:45:28.70 ID:la44msrDO
コツコツコツ…

殴り砕いて亀裂を走らした牢の傷を隠そうとしていると、俺の牢にまたあの人がやって来る。

「……何をしているのですか?」

あからさまに怪しい俺の挙動に不思議そうな顔をして尋ねる貴婦人。

勇者「いやぁ……」ハハハ…

俺は気まずそうにこの国随一の貴婦人―――王妃殿下に笑いかけた。
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/09(火) 00:54:50.54 ID:la44msrDO
勇者「どうされたのです、また?」

俺が何とか背後を隠しながら問いかけると彼女は秋眉を寄せ、悲しげに呟いた。

王妃「……あの人がなくなって、もうどうしたら……」

堪えきれず、その大きな瞳から涙を一筋伝わせる。

随分と泣いたのだろう。まだ赤い目を腫らしながら、それでも彼女は悲しさを隠そうとはしなかった。
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/09(火) 01:04:00.25 ID:la44msrDO
勇者「……すみません」

俺はそんな彼女を慰める事ができなかった。みなが犯人だと言い立てる中、唯一かばってくれた人を。

王妃「……いいえ」

そう言って彼女は涙を拭う。

王妃「少し愚痴を聞いてもらって、随分気が楽になりましたから」

ニコリ、と笑う彼女の優しさと美しさにふと胸がなる。

彼女が発する無防備な色気に思わず動揺した自分をこの上なく恥じた。
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/09(火) 01:09:00.92 ID:la44msrDO
カツカツ…

「またこの様なところに……」ハァ…

呆れたと言った顔で王妃に告げたのは、あの王弟だった。

王弟「いけませんな、この様な重罪人と何度も会われるとは」

王妃「……彼が重罪人であるはずがありません」

王弟「おやおや……」

キッ、と睨みつける視線を嘲笑い王弟は彼女に語りかける。
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/09(火) 01:18:14.23 ID:la44msrDO
王弟「今は国が大変な時なのです。感傷に浸られてる暇は……」

王妃「分かっています!!」

彼女にしては珍しく声をあらげる。

王弟「分かって頂けたら、さぁ……」

男は親しげに彼女の腰に手を伸ばし、引き寄せる様にして連れ添っていく。

陰で悔しそうに唇を噛むその美しい横顔を満足気に眺めながら、勝ち誇った顔で薄暗い牢獄を後にする。



勇者「くそっ!!」

腹いせに思わず檻を蹴りつけると、


ガシャン!!

勇者「あっ、やべ」

勢いで外れた檻が向こうの壁に持たれ掛ったのでとりあえず直しておいた。
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/09(火) 01:19:39.20 ID:la44msrDO
今日は終わりです。

また。
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/08/09(火) 01:26:27.19 ID:MrlLoBeAO
乙、世界は色々あったが一応は微妙なバランスの平穏を保った状態らしいな
続きの展開に期待
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/09(火) 08:31:49.86 ID:BPTQIUfWo
乙した
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/08/09(火) 22:41:22.87 ID:x6a5xw2ro
女賢者はれいーぷ中か?
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/09(火) 23:52:47.42 ID:la44msrDO
こんばんわ。投下していきます。


>>35
う〜ん。これからのストーリーで少しずつ明らかになっていきますので応援お願いします。

>>37
今回はその女賢者の話になりますので、見ていただければと思います。
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/09(火) 23:57:24.22 ID:la44msrDO
※15R注意!!

―――――――

――あれから何日か立った。


――そうだ、10日立ったんだ。


――私は勇者と親しい人物として捕縛された。

……勿論、国王殺しの共犯として……。
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/10(水) 00:16:33.35 ID:wS9w4lTDO
――彼等は尋問を理由に私を拷問した。

――ある日は一枚一枚生爪を剥がされた。

――ある日は三角木馬に乗せられ挙げ句、何度も鞭で打たれた。

――ある日はろうとで口に自分でひりだした汚物や小水を無理矢理流し込まれた。

――ある日は天井から吊り下げられたままで獣面の怪物に犯された。

――ある日は得体の知れない触手に穴という穴、腸や胃の中までじっくりとまさぐられた。

これらの拷問は私が気を失うまで続けられるのだ……。

41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/10(水) 00:18:00.56 ID:wS9w4lTDO
気を失った後、私は牢に戻される。そして、またしばらくして拷問が始まるのだ。

その際に塗り込まれる媚薬が私の体を熱らせる。

肉欲にうずく体を恨めしく思いながらまた再び犯されるのを待つ。

何処かでそれを待ちわびる自分がいると知った時、薄暗い牢獄の中で私は声を押し殺して泣いた……。
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/10(水) 00:28:23.13 ID:wS9w4lTDO
……私が牢の中で再び目を覚ますと、そこには毎日執拗に尋問をかける調査官がいた。

調査官「ご機嫌いかがかな、女賢者殿?」ニコニコ

女賢者「…………」

良いはずがなかった。この若い男はにこやかな笑みで、まるで友人にでも話しかける様に拷問を指示する。


その度に私は気絶させられ、あられもない恥態を晒させられるのだから……。
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/10(水) 00:34:48.93 ID:wS9w4lTDO
女賢者「…………」

私は黙ってその男を睨みつける。

この程度の事で根を上げる気は無かった。勇者との旅の中ではこれよりも過酷な目を見た。

この程度の拷問で、私は屈服する訳には行かない。

彼の無実と潔白が証明されるまで耐える事が私にかせられた使命なのだから……。
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/10(水) 00:45:44.62 ID:wS9w4lTDO
私の中の揺るがない決意を見てか、男はふーっ、と溜め息をつく。

調査官「やれやれ、君は本当に強情だね。あれだけの苦痛と快楽に責められれば、どんな悪党も諦めるのに」

クスクスと苦笑しながらも、妙な関心をして私を見つめる。

調査官「でもね、僕にも立場がある。何としても君を落とさないといけない」



調査官「――だから、今日は少し違う方法を取らせてもらうよ」


…ゾクリ


冷めた目で私を見る男の自信が、私にいつもと違う不安を感じさせた……。
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/10(水) 00:53:51.28 ID:wS9w4lTDO
――カツカツカツ

両側を屈強な男に挟まれ、いつもの様に拷問部屋へと向かう。

……いつもならこの重苦しい空気の扉を開き、私を拷問するのだが、今日は違う。

すでに先客がいるのか、拷問部屋の中から苦しげな声が聞こえてくる。

……その事が私をいつも以上の不安を感じさせた……。
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/10(水) 01:03:25.64 ID:wS9w4lTDO
調査官「――どうぞ」

ガチャリ、と扉が開いた瞬間、私の目はその信じられない光景を捉える。

天井から吊り下げられた一人の淑女が、苦しげに化物共にその熟れきった体の隅々を責めたてられる。

「ングッ!?ウオッ!!アオオォォーー…ッ!!!」

口枷を填められたまま悦びの悲鳴と共に果てたのは、私の母だった……。
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/10(水) 01:12:40.19 ID:wS9w4lTDO
女賢者「……どういう事です」

自分でも顔から血の気が引き、膝が震えてるのが分かる。

調査官「やだなぁ。簡単な事ですよ」ハハハッ

調査官は何気ない様に歯を見せて笑う。

調査官「いや、ね。貴方がしでかした事について、貴方の母上である賢者学院の理事殿にお手数いただいてる訳ですよ」

カラカラと笑う男の横顔に、私はその狂気を見た気がした……。
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/10(水) 01:18:36.50 ID:wS9w4lTDO
調査官「――さてと」ズイッ

調査官「――本当の事を話して頂けますかね?」

今までとは違う迫力で私に自白をせまる。

――冗談じゃない。

彼等が欲しいのは、勇者を陥れるためだけの都合のいい証言なのだ。

そんなものに首を縦に振る事なんて出来ない!!

――いつもならそうやって拷問を受ければ良かった。

でも今は―――
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/10(水) 01:21:48.47 ID:wS9w4lTDO
悩む私を見てか、母はゆっくり微笑んだ。

――私の事は大丈夫だから、貴方は自分の信じる道を――

……そう弱々しく微笑む母の優しさが、私の胸を締め付けた……。
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/10(水) 01:33:26.92 ID:wS9w4lTDO
調査官「さて、まだ話してくれませんかね?」

女賢者「…………」ギリッ


悩む私を見透かす男が更に追い討ちをかける。

調査官「では仕方ない」サッ

男の合図と共に、最早力尽きた母に二人の拷問官が駆け寄り一本の注射を用意する。

女賢者「あっ、あれは――」

私が声を上げる間もなく慣れた手つきで母の体に注射針を差し込んだ。
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/10(水) 01:35:09.99 ID:wS9w4lTDO
賢者母「!?〜〜〜!?」ブンブンブン!!

母が打たれたのはいつも私が使われている媚薬だ。

でもある程度、耐性がある私ではなく母がそんなものを使われたら――

調査官「どーなるんでしょうかねー?」クックックッ


男は、悪ふざけするチンピラの様な顔で平然と言い放った……。
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/10(水) 01:43:48.32 ID:wS9w4lTDO
賢者母「〜〜〜!!!」


ぞわぞわと沸き上がる快感に翻弄されながらも必死に耐える母の姿をもう正視出来なかった……。

調査官「さて、ここにこいつを仕掛けたら」

フンフンと鼻歌を歌いながら男はガラガラと鎖を引く。

ぽっかりと開いた穴の中には無数の触手がうごめいている。

私は男の企みに顔色を失った……。
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/10(水) 01:50:06.78 ID:wS9w4lTDO
ガラガラ……

男が引く鎖に、母の体が吊りあげられる。

そのままあの穴に落とすつもりなのだ。

賢者母「〜〜〜っ!!」モゾモゾ

体を必死にくねらせて何とか抵抗しようものの、最早どうする事も出来ない。

調査官「――では」

男が母を穴に落とす為に鎖をひこうとした瞬間、

女賢者「待って!思い出しました!!私が、私が勇者に指示したんです!!」

私は、あらん限りの声で叫んだ……。
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/10(水) 01:58:12.67 ID:wS9w4lTDO
調査官「……何を指示したのですか?」

……その問いかけに、やっと聞こえる程度の声でボソボソ呟いた。

女賢者「…………私が国王の暗殺を指示しました……」


――そう言った途端、ボロボロと涙が溢れでて止まらなかった。

男は、そうですか、と言うと私から調書を取るべく別室へと向かった。

55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/10(水) 02:05:17.95 ID:wS9w4lTDO
――私は泣いた。

――母を助けるためにと、勇者を売った。

――そう、私は負けたのだ。



……その後の事はよく覚えていない。



何を聞かれて何を答えたのかはっきりとは分からない。

ただ、どうやら主犯は勇者で私は協力者という事になったらしい。

どうでもいいと、再び牢に戻された時、牢の中で私を迎えてくれたのは母だった。

私のせいで捕まったのに、何も言わずに抱きしめてくれた。

――私はその胸の中で子供の様に泣きじゃくった。
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/10(水) 02:08:49.97 ID:wS9w4lTDO
今日はここで終わりです。今回はちょっと15Rになってしまいました。

それにしても全然、話が進まない……。

もうちょっとペースをあげて行きたいと思います。

では。
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/08/10(水) 02:20:11.83 ID:C5QetLaAO
乙、なんともゲスたわな
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/08/10(水) 04:39:00.21 ID:wdWsbTug0
女賢者と15ラウンドとかたまらんな
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/10(水) 23:41:01.99 ID:wS9w4lTDO
こんばんわ。

投下します。

勇者「……もうニ週間か」

俺はぽつりと呟いた。

あれから、俺の牢には特に誰も訪れない。

取り調べも尋問も行われず、ただただ日が過ぎていく。

たまに訪れてくれたのは、俺を心配してくれる王妃様だけだった。
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/10(水) 23:49:16.51 ID:wS9w4lTDO
看守も訪れず水も食料もないままで俺は放置されていた。

当然、便所などなく大小便の処理には頭を悩ませた。

何とか地面を刳り貫いて、そこに流れる水脈を利用することで解決出来たが、衣服は拘束された時のままだ。

髪は乱れ髭も伸びきったその姿を誰も勇者だとは思わないだろう。

そんな俺にせめてもの救いになったのは、王妃様が運んでくれる心ばかりの差し入れだった。
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/10(水) 23:56:00.10 ID:wS9w4lTDO
彼女が運んでくれる食料をガツガツとむさぼる俺を、悲しみと慰めの入り混じった視線でじっと見つめる。

そして、別れ際いつも、彼女は檻の外から俺を抱きしめてこう言うのだ。

王妃「貴方だけは守ります。何としても」

そう言って抱きしめてくれる彼女の手は、思ったよりも小さかった。
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/08/10(水) 23:57:43.66 ID:GIRscFQh0
勇者は本気だせば逃げられるだろうにな
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/11(木) 00:05:30.50 ID:9/MeEqrDO
だが、その王妃でさえも最早姿を見せない。

――俺の相棒である女賢者はどうなったのだろう。彼女の身内に迷惑はかかってないだろうか……?

心配と焦りばかりが募っていく。

だが国王殺しの嫌疑が晴れないければ動く事さえ出来ない。

俺は薄暗い天井を見つめながら、思わず溜め息をついた……。
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/11(木) 00:09:08.51 ID:9/MeEqrDO
カツカツカツ……

勇者「……うん?」

久しぶりの来訪者の足音に思わず目が覚めた。

しばらくすると、足音の主が俺の前に現れる。

目の前に現れたのは、見た事のない女だった……。
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/11(木) 00:13:49.61 ID:9/MeEqrDO
女?「……随分とのんびりしているのだな」ハァ…


女は呆れた目で俺を見る。

女?「明日には処刑が迫ってる身だというのに……」

勇者「……は?」

……俺は彼女の呟きの意味がとっさには理解できなかった。
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/11(木) 00:23:37.65 ID:9/MeEqrDO
勇者「何で俺が処刑なんだ!?」

思わず声を荒げる。

女?「……お前が国王を殺したという容疑が固まったらしい」

勇者「そんな!?俺は一度も取り調べを受けてないんだぞ!!」

女?「……だが、お前の犯行を証明する人間がいる」

勇者「……誰だよ、それ?」


女?「聞いて驚くな。……お前の相棒の、女賢者だ……」

女が発した台詞に、俺は思わず目の前が真っ暗になった……。
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/11(木) 00:27:05.22 ID:9/MeEqrDO
勇者「は、ははは……」


そうだ、思えば変だった。俺が投獄されたというのに、あいつは一度も面会に来なかった。

女?「……まあ、気の毒ではあるがな」

勇者「……ああ」
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/11(木) 00:31:06.70 ID:9/MeEqrDO
勇者「……で、あんたは何者で、一体何しにきたんだ?」

女?「……決まっているだろう?」クスッ…


女?「私は、お前を助けにきたのだ」

勇者「……は?」

女のその言葉に、俺は再び耳を疑った……。
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/11(木) 00:36:02.56 ID:9/MeEqrDO
勇者「どういうつもりだ、あんた?あんたの言う通りなら、俺を助けるメリットなんて……?」

女?「さあな。私はある方に命じられただけだ」

勇者「ある方って誰なんだよ?」

女?「……さあな」クスッ…

勇者「…………」
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/11(木) 00:40:52.73 ID:9/MeEqrDO
女?「で、どうする?私と共に行くか?」

勇者「…………」

女?「まあ、いやだと言っても無理にでも連れて行くが?」フフッ…

勇者「行かないとは言ってないだろ!?」

女?「そうか、では早速ここを出るとするか」

勇者「…………」
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/11(木) 00:48:08.97 ID:9/MeEqrDO
女?「待ってろ。今、鍵を開ける」チャラッ

懐から取り出した鍵で牢の扉を開けようとするが、

勇者「……その必要はない」

ガッ!

女?「なっ!?」

ズズズズズッ!!

俺は鍵を開けようとしていた女の首を檻の隙間から捉え、檻の枠ごと女を向こうの壁に押し付ける。
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/08/11(木) 00:56:09.48 ID:KCVXFx4Bo
首謀者を探すのか暗黒面に堕ちるのか気になるところ
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/11(木) 00:56:48.56 ID:9/MeEqrDO
女?「な、何で……」カハッ

女は信じられないといった表情をする。

勇者「……出来すぎなんだよ、お前の話は」グググッ

女?「がぁっ……、はっ……」ググッ…

首を締め付ける俺の手を何とか退けようとするが、彼女の力程度ではびくともしない。

勇者「……もしお前が誰かの回し者だと取り返しが効かねーからな」


勇者「だから、試させてもらう」

ドスッ!

女?「ひっ!?」ビクッ

俺の爪が鋭く伸び、彼女の細い喉に食い込む。

勇者「…………」ニヤリ

74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/11(木) 01:07:41.48 ID:9/MeEqrDO
俺は食い込ませた爪に力を走らせる。すると、女は目を剥き体をのけぞらして悶絶する!!

女?「あがががががっ!?」

ビクビクと体を振るわせる女の姿に俺は唇を吊りあげながら言う。

勇者「これは一応魔族用の尋問術だが、結構効くだろ?」ニタニタ

女?「あががーーっ!?」ヒィィーッ!!

直接神経をもてあそばれ、俺の言葉も聞こえないくらいに吠え狂う!!
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/11(木) 01:14:34.85 ID:9/MeEqrDO
女?「あおおーーーーっっっ!!!?」プッシャァーーッ!!

女は盛大に失禁しながら気絶する。

小便以外のものも垂れ流しながら果てた女を見て、俺はその力をしまう。

女の素性や思考を直接探ろうと思ったが、直接思考にガードがかかっている。これだけで彼女がタダ者ではない事が分かる。

そして肝心な方はと言うと、そちらは白。

どうやら王弟や王子の回し者ではないらしい。
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/11(木) 01:19:11.39 ID:9/MeEqrDO
勇者「じゃあ、誰が一体……?」

考えを巡らすが、今はそんな暇はないだろう。まずここを出る事が重要だからだ。

勇者「……にしても」チラッ

勇者「……女賢者ならこの倍以上は耐えるのにな」

あられもない姿で気を失っている女を見て、俺はふーっ、と溜め息をついた。
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/11(木) 01:36:01.89 ID:9/MeEqrDO
勇者「……それで、これからどうするつもりだ?」

女?「……これから、か?」

俺の問いかけに女はオウム返しで返す。

さすがに良く考えられていた計画らしく、牢獄からの脱出は思いのほかに順調だった。

取り立てた騒ぎも起こらないまま外まで出られたのだから、この脱出劇の黒幕は余程の大物である事が分かった。

勇者「で、どうするんだ?」



「決まっているだろう?捕えられた仲間を救いに行くに」


……俺の問いに答えたのは全身を黒いローブで包み顔さえ伺う事の出来ない、魔術師の様ないでたちの奴だった。
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/11(木) 01:46:23.92 ID:9/MeEqrDO
勇者「……誰だ、お前?」ギロッ

魔術師「さあ?」クスクス

くぐもった声で人を食った答えを返す。

魔術師「今は仲間の方が大事じゃないかね?」

勇者「…………」

その至極まっとうな意見に言葉が出ない。
79 :以下、VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/11(木) 01:52:41.01 ID:WdiGGOteo
見張りもいないし抜けられるなら最初から賢者助けにいけばいいのに
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/11(木) 01:53:40.69 ID:9/MeEqrDO
魔術師「もしそうなら力を貸すが?」ニタニタ

仮面の上からでも分かるニヤケ顔が勘に障る。

女?「……待て、仲間とは一体なんの事だ?」ギロッ!

女が魔術師に詰め寄ると、そいつは鼻で笑う。

魔術師「決まっておろう。そやつの相棒、女賢者に」ニヤニヤ
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/11(木) 02:02:04.65 ID:9/MeEqrDO
今日はここで終わりです。

この先、色々と話がこんがらがってくるので、何とかまとめながらやって行きたいと思います。


ではー。
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/08/11(木) 02:07:59.94 ID:DupFRXlC0

勇者も結構エグいことすんのな…てか女賢者にやってたんかいwwww
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/11(木) 02:32:00.55 ID:rtLil05vo
乙した
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/08/11(木) 14:59:51.67 ID:i0SGatsX0
>>79
捕まってたなんて知らなかったんだろ
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/11(木) 23:48:28.31 ID:9/MeEqrDO
こんばんわ。投下していきます。


―――西の牢獄

勇者「ここにあいつが捕まってるのか……?」

魔術師「そうだ」

勇者「…………」

主に政治犯が収容され拷問を受ける死の牢獄だが、ここに女賢者が捕まってるとは未だに信じ難かった。
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/11(木) 23:55:17.72 ID:9/MeEqrDO
勇者「せいぜいどっかの城で一室で幽閉されてるもんだと思ってたんだがな……」ハァ…

思わず溜め息をつく。

女賢者も学院ではかなりの地位を持っている。まして、母親はその理事の一人だ。易々と捕まえられる人間ではない。

その二人が捕まっていると言うのなら、予め二人の逮捕も計画の内だと言う事になる。

そう考えると益々頭が痛くなってくる。
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/12(金) 00:02:18.32 ID:BRyBw8/DO
この牢獄の管轄は王弟の一派なのだから、彼が国王殺しに関与しているのは間違いないだろう。

勇者「それにしても、何でここに二人が捕まっている事が分かったんだ?」

魔術師「さぁ?」

クスクス笑いはぐらかす。胡散臭い魔術師だが、とりあえず手を差し出す。

勇者「あんたが何者か知らねーか、味方なのは確かみてーだ。ま、よろしく頼む」

魔術師「くふふ、よろしく頼むぞ勇者殿」

そう言って俺の差し出した手を魔術師は何気なく握った。



――――引っかかった。
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/12(金) 00:11:30.92 ID:BRyBw8/DO
魔術師「!!?」ビクンッ


俺は女に仕掛けた様に手のひらから力を流す。その瞬間、魔術師の体がブルブルと大きく揺れた。

魔術師「……何の真似だ?」

ギロリ、と明らかに怒気を孕んだ声で威嚇する。

勇者「悪い悪い、一応な?」ケラケラ

魔術師「……ふんっ」

魔術師は、俺の軽く笑って誤魔化した態度に気分を害した様だが、だがそれよりもいくつもの情報が俺にもたらされる。
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/12(金) 00:19:57.82 ID:BRyBw8/DO
一つはこいつの着けていた手袋や装飾品からこいつの地位や身分が分かる。

俺の力をかなり相[ピーーー]るものを普段着の様に身につけていられるのはかなり地位のある貴族だ。

それに、材質や装飾から、恐らく魔族の名のある職人のものだという事がわかる。

また、こいつは俺が不意に力を放ったのにほとんど思考に触れさせなかった。かなり高い魔術の使い手だ。とっさに力を体の方に誘導したのだから。
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/12(金) 00:28:50.67 ID:BRyBw8/DO
また、あの怒り具合は警戒を解いていたところに不意打ちを喰らったからだ。もしこいつが敵ならば、もう少し警戒してただろうに。

勇者「いや、試す様な事をして悪かった。謝るよ」

魔術師「……謝ってすむ問題ではないっ」

頭を下げた俺に未だに怒りが収まらないのは、そいつの足元に答えがある。

魔術師「…………」ホカホカ


……どうやら力を逃した反動で失禁したみたいだった。

勇者「……代えの下着はいるか?」

魔術師「いらん!!」

その虚勢が、魔術師の精一杯の抵抗だった。
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/12(金) 00:35:10.25 ID:BRyBw8/DO
魔術師「……おい、さっさと助けに行くぞ。このままでは……」

もぞもぞと足を擦る魔術師。どうやら濡れた下着が気になるようだった。

勇者「……そうだな」

このまま手をこまねいてる時間はない。俺もその後に続く。

女?「おい!何処に行くつもりだ!?」

女は思いのほか大きな声で叫んだ。
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/12(金) 00:41:45.18 ID:BRyBw8/DO
女?「そんな奴を信用する気か!?大体、私の聞いた話では彼女は保身のためにお前を売ったと!?」

勇者「あいつは保身のために俺は売らねーよ」

女?「どうして言い切れる!?」

勇者「……そりゃ、信じてるからに決まってるだろ?」

女?「はあ!?」

勇者「まあ、お前みたいな奴には分からねーだろうけどな」

女?「……ふんっ!?」
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/12(金) 00:46:05.35 ID:BRyBw8/DO
勇者「て、お前はどうするんだ?一人でそこで待ってるつもりか?」

女?「……お前ではない。女剣士と呼べ」

勇者「……いいのか?」

女剣士「どのみち、お前を連れて帰らねば使命を果たした事にはならんからな……」

勇者「……そっか。じゃあ、さっさと来い!」

女剣士「言われんでも分かってる!!」
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/12(金) 00:49:16.80 ID:BRyBw8/DO
魔術師「…………」

勇者「どうした?」

これから勢いよく乗り込もうという時に、

魔術師「……何処から入るんだっけ?」

俺と女剣士は思わず、ずっこけた。
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/12(金) 01:08:02.00 ID:BRyBw8/DO
コツコツコツコツ……

細い岩穴を抜ける足音が響く。

昔から使われている抜け穴を使い、俺達は地下から牢獄を目指していた。

女剣士「しかし、よくこんな道を……」

勇者「まあ、何回か使ったことがあるからな」

女剣士「……お前という奴がいまいち分からん」ハァ…

勇者「一応誉め言葉だと思っておくよ」

女剣士「全然誉めてないんだが……」
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/12(金) 01:14:10.13 ID:BRyBw8/DO
魔術師「なあ、あとどれくらいだ?」

勇者「あともうちょっとだ」

魔術師「早くしないと、そろそろ股が……」ブツブツ…

ブツブツ言いながら先頭を歩く魔術師を、


シュルル…


不意に数本の触手が襲う!!
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/12(金) 01:22:10.21 ID:BRyBw8/DO
魔術師「ちっ!!」

飛びかかる触手を炎でなぎ払う。

焼かれた触手は苦しげにのたうち回るが、奥から更に数本の触手が飛びかかってくる。

女剣士「なんだ、これは!?」

鮮やかな剣で次々と断ち切っていく女剣士。

勇者「気をつけろ!!巻きつかれて体液を送られたらヤバいぞ!!」

ブォン

右手に溜めた力を触手の飛んでくる方向に投げつける!

ぐしゃっ、と西瓜でも叩き割るような音と共に、襲いかかっていた触手が次々と地面に落ちていく。
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/12(金) 01:28:06.28 ID:BRyBw8/DO
女剣士「なんだったんだ、あれは?」

こびりついた油を振り払いながらぽつりと言う。

勇者「あれはモルボルだな」

女剣士「モルボル?」

魔術師「聞いた事がある。触手を生やした毛玉の様な魔法生物がいると」

女剣士「ほう」

勇者「あいつはちょっとヤバいからな。男は普通に絞殺だが、女、特に美人はあいつに捕まると一生犯されまくるから」
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/12(金) 01:32:08.65 ID:BRyBw8/DO
女剣士「……へえ」ジリッ


魔術師「……ふうん」ジリッ…

勇者「……何で俺の陰に隠れる」

女剣士「いや……」コソッ

魔術師「別に……」コソソッ

勇者「……一応丸腰なんだけど」ハァ…

そんな事がありつつ、俺達はようやく牢獄の中へと辿り着くのだった。
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/12(金) 01:37:20.61 ID:BRyBw8/DO
勇者「なあ、一応牢獄にたどり着いたんだが」チョイチョイ

魔術師「ん?何だ」

勇者「女賢者は何処らへんなんだ?」

魔術師「知らん」

女剣士「……へ?」

魔術師「なんせ私はここに捕まっていると言う事しか聞いてないからな」

勇者「何だと!?」
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/12(金) 01:46:20.42 ID:BRyBw8/DO
女剣士「じゃあ、どうやって助けるつもりだったんだ!?」

魔術師「まあ、適当に」

勇者「あのなぁ……」ハァ…

その無計画ぶりに頭が痛くなってきたが、

女剣士「……誰かくる!!」

それでも何とかするしかない。

勇者「とりあえず、あいつに聞いてみるか……」

何も知らずに近づいてくる衛兵に、俺は後ろから静かに近づいた……。
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/12(金) 01:58:18.41 ID:BRyBw8/DO
勇者「…………」スッ…

ドスッ

衛兵「うっ!?」

後ろから忍びより、その首筋に中指を突き立てる。食い込んだ爪から力を放出し、男の思考を洗っていく。

勇者「…………成程ね」


指を放すと男は夢遊病者の様にフラフラと立ち去っていく。

女剣士「……どうだった?」

勇者「ああ、あいつの居場所は分かった」

おーっ、と感嘆の声を上げる。着いてこいと二人に促すと、関心した様に二人は俺の後を追った。
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/12(金) 02:06:40.78 ID:BRyBw8/DO
――幾重にも張り巡らされた結界の中、粗末な牢に押し詰められた親子が肩を寄せあい眠りについていた。

コツコツコツ…

いつもの様にやってくる男達の足音に二人は目を覚ましびくり、と身を震わせる。

だが、今日の足音は何処か違う。聞き慣れた音だがいつもの男達とは違い彼女達に安心を与えた。

勇者「大丈夫か――」

久しぶりに見たその顔に、思わず涙をこぼした。
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/12(金) 02:11:54.83 ID:BRyBw8/DO
勇者「だいぶ酷くやられたな……」

俺は女賢者の体をギュッと抱きしめてやる。

女賢者「ううん……。私なら……」

その後何か言葉を続けようとしたのだろうが、最早言葉になっていない。

「うっ」ボロッ

「うわあああんっ」

そういって抱きついてきたのは、

勇者「おっ、おばさん!?じゃなくて、理事!?」

彼女は、娘以上に俺の胸で子供みたいに泣きじゃくった。
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/12(金) 02:19:21.51 ID:BRyBw8/DO
賢者母「でも、どうやってここに……」

ようやく泣きやんだ理事が顔を上げて尋ねてくる。

勇者「そこの胡散臭い奴のお陰ですよ」

チラッ、と視線を送ると理事も魔術師に軽く会釈をする。

女賢者「でも、本当に良かった、本当に……」

俺の体を抱きしめてくる女賢者の体を名残惜しいがひとまず放す。

女剣士「積もる話も有るだろうが、まずはここから出る事だ」

彼女の言葉に誰ともなく頷き、牢獄からの脱出が始まった。
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/12(金) 02:24:40.18 ID:BRyBw8/DO
勇者「……おかしい」

俺は二人を抱え、町の路地を走りながら呟く。

勇者「何でこんなに警備が……」

俺達の牢獄脱出は思いのほかスムーズに進んだ。だが、いくら慎重に進んだからといってここまでスムーズに行くはずはない。

既に牢から脱出し、女剣士の勧める脱出路に向かいながらそう思った。
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/12(金) 02:29:29.93 ID:BRyBw8/DO
女剣士「あともうちょっとで――」

路地を抜け、少し広い場所に出た時、

カッ!!

俺達は無数の光に囲まれた。

「ご苦労だったな……」


そう優しげに話しかけてきたのは、

勇者「……やっぱりあんたか」

俺を牢に入れた本人―――王弟だった。
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/12(金) 02:32:26.31 ID:BRyBw8/DO
今日はここまでです。

ちょっとは話が進んできました。

では、おやすみなさい。
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/12(金) 03:01:09.22 ID:2X0JjWgSO

魔術師は♀?
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/08/12(金) 03:19:00.26 ID:9GxPfbFAO
乙、さて果てどうするのやら
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/12(金) 12:35:04.04 ID:ID19qz0mo
乙した

賢者母かわいい

勇者かっこいい
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/08/12(金) 22:28:10.30 ID:AO+OIL35o
勇者って特技が勇者ぽくないというか少々エグいな
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/12(金) 23:19:39.07 ID:BRyBw8/DO
こんばんわ。レスありがとうございます。

それでは投下します。

―――――――


王弟「……最早これまでだな」

王弟は支配階級らしく俺達を見下して言う。

女剣士「……しかし、ここで貴方を倒しさえすれば!!」

ビュンッ!

女剣士が取り出した短刀を王弟に投げつけるが、

王弟「おっと」ユラリ…

女剣士「何!?」

彼女の短刀は男の姿を揺らめかせそのまますり抜ける。

魔術師「ほう?幻影魔術か」

魔術師がくぐもった声で愉快そうに笑った。
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/12(金) 23:25:40.45 ID:BRyBw8/DO
女剣士「部下ばかり危険な目に合わせて自分は高見の見物か!!」

そう彼女は憤るが、世の支配者なんてそんなもんだ。

王弟「貴様らの様な狂犬につまらん事になっても仕方ないからな」クククッ

人を馬鹿にした薄ら笑いを残し、男の幻影が消える。

王弟「まあ、せいぜい悪あがきでもする事だ……」


あたかも全てが終わったと言わんばかりの声を残して……。
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/12(金) 23:33:13.05 ID:BRyBw8/DO
魔術師「さて、どうするね?」ニヤニヤ

魔術師が辺りを見回して楽しげに笑う。

勇者「そうだなぁ……」

辺りを取り囲むのはせいぜいニ百程度。それなりの猛者揃いだろうが、如何にも統一感のない寄せ集めだ。

勇者「蟻の様に蹴散らすか、蝿の様に叩き潰すか……」ポリポリ…

どちらにしろ、あっという間に終わる数だった。
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/12(金) 23:43:08.29 ID:BRyBw8/DO
ジリジリと相手が包囲を狭めるが、


ドオォォオンッッ!!!



鳴り響いた轟音が数人を吹き飛ばし包囲に穴を開ける!!

「こっちだ!!」

見知らぬ男が声を張り上げ俺達を導く。

乱入してきた何人かが敵を混乱させている隙に俺達を包囲の外へと脱出させる。

女賢者「あの、残っている人は……?」

包囲から脱出した俺の背中で女賢者がおそるおそる尋ねる。
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/12(金) 23:47:34.85 ID:BRyBw8/DO
「彼らの仕事は君達を無事に救い出す事だ。君達が気にする事じゃない」

賢者母「そんな……」

事務的な答えに俺の背中で理事が絶句する。

しばらくすると、喧騒が収まり辺りが静かになる。


それは戦っていた彼らが全滅したという事を示していた。
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/12(金) 23:55:13.65 ID:BRyBw8/DO
―――

下町の安宿の一室。

あの場から逃れた俺達が匿われたのは、埃っぽく狭苦しい部屋だった。

女賢者と理事を粗末なベッドに寝かしてやると、二人はすぐに、くうくうと寝息を立てる。

……これまでの事で余程疲れていたのだと思うと胸が痛む。

女剣士は椅子に座り、ぐったりとしている。

魔術師は退屈そうに窓の外を眺めているが、


トントン


誰かがドアを叩いた。
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/12(金) 23:58:31.20 ID:BRyBw8/DO
女剣士「……どうぞ」

彼女が応えると、ドアがゆっくりと開く。

中に入ってきたのは以外であり、この国の誰もが知っている人物。

女剣士「……まさか、王子……!?」

彼女の驚きに、彼はにこやかに微笑んだ。
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/13(土) 00:06:22.51 ID:DOXsszBDO
畏れかしこまる女剣士を前に、俺はジロリと王子を睨みつける。

勇者「……何故、貴方が?」

王子「この様なところに僕は似合わないかな?」クスッ

女剣士「いえっ、その様な事は!?」

片膝をついてかしこまる女剣士に優しく語りかける。
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/13(土) 00:12:54.04 ID:DOXsszBDO
魔術師「で、貴様は何をしにきたのだ?」

仮面の下であくびをしながら魔術師が退屈そうに問いかける。

王子はやや機嫌を損ねるが、すぐに表情を切り替えしいつもの笑顔で俺達に語りかけた。

王子「実は、君達に頼みがあるんだ」

魔術師「頼みとは?」

王子「……正直に言うよ。僕に力を貸して欲しい。そして、僕が王位に即く為に叔父――すなわち王弟殿下を倒すんだ」

その余りにも率直で軽率な答えにみんな声を失った。
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/13(土) 00:20:17.06 ID:DOXsszBDO
魔術師「王弟を倒すとは、また大胆な」クックッ

女剣士「となると、やはり国王を弑したのは……?」ゴクッ

女剣士の言葉に王子は首を振り、

王子「それはまだ分からない。でも、このままだと叔父は後見人としての地位を振るい僕の権力をも押さえつけるだろう」

王子は一気にまくしたて、

王子「王室の嫡流を守る為にも力を貸して欲しいんだ!!」

少年は力を込めて、俺達に言った。
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/13(土) 00:50:26.49 ID:DOXsszBDO
勇者「…………」

急な言葉に俺達が言葉を失っていると、

王子「……力を貸してはくれないのか?」

力なく問いかけてくる。

勇者「いや、急過ぎて……」ハハハ…

曖昧に言葉を濁すと、

王子「……そうか」

とだけ呟き部屋を後にする。

勇者「……どうしたもんかね?」ハァ…

誰に問いかけるでもなく、俺はぽつりと呟いた。
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/13(土) 00:55:27.03 ID:DOXsszBDO
女剣士「……まあ、急な話だからな……」


魔術師「まだまだ時間はあるのだ。ゆっくり考えようではないか?」ニマニマ

勇者「……そうだな」

勢いで決められる様な問題ではない。

勇者「とりあえず、ゆっくり考えるか……」

そう言って俺はとりあえず体を伸ばしてみた。思ったより骨が鳴った。
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/13(土) 01:00:38.54 ID:DOXsszBDO
それから数分としないうちに不意に睡魔に襲われる。

勇者「……疲れてるからかな?」

思わずあくびをすると、妙な事に気づく。

勇者「……空気が甘い?」

漂う強烈な香気。回りを見てみると倒れ込む様に女剣士が眠りについている。

勇者「しまった―――!?」

俺はあの王子を見くびっていた。まさか、こんなに強引な手段に訴えるとは――!?
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/13(土) 01:05:32.51 ID:DOXsszBDO
誘眠魔術の香気に襲われながら、俺は女剣士を呼び起こす。

勇者「おいっ、しっかりしろ!!」

ゆさゆさ揺さぶっても瞼を下ろしたまま起きる気配がない。

勇者「くそっ!おい、お前は大丈夫か!?」

魔術師「ふえっ!?だ、大丈夫だ大丈夫!!」ジュルッ

勇者「…………」

もうちょっとで完全に眠るとこだったな、こいつ。
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/13(土) 01:10:05.54 ID:DOXsszBDO
勇者「畜生っ、脱出するぞ!!」

賢者親子を背中にくくり、女剣士を脇に抱えたまま魔術師に言う。

が、

魔術師「……まずい。相当眠い」フラフラ…

おぼつかない足取りの魔術師だった。
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/13(土) 01:14:32.82 ID:DOXsszBDO
勇者「くそっ!しっかりつかまってろ!!」ダキッ!

俺は空いてる手で魔術師を抱きしめると、

勇者「うりゃあああああ!!!」

ドッガッアアアアアンッ!!

盛大に窓ぎわの壁を突き破り、そのままの勢いで地面に着地すると、一目散に城門に向かって走りだした。
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/13(土) 01:19:18.84 ID:DOXsszBDO
―――――

勇者「……ねみぃ」ファ…


夜明けの太陽が昇るのを見ながら思わず呟いた。

夜明け前、まだ開門前で警備の厚い城門を勢いまかせに突き破ったお陰かこれといった追撃はまだなかった。

そのお陰でこうしてみんな無事に朝を迎えられたのだが。
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/13(土) 01:23:18.03 ID:DOXsszBDO
魔術師「どうした、そんな顔して」クックック

勇者「うるせー…」

一番最初に目を覚ました魔術師が起きぬけに声をかけてくる。

勇者「一晩中寝ずの番だったんだから……」フアア…

俺の止まらないあくびを見て、この魔術師は再びいやらしく笑うのだ。
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/13(土) 01:27:09.22 ID:DOXsszBDO
魔術師「しかし、何故王子の誘いに乗らなかったのかね?」

魔術師は厚い仮面を被ったまま、俺の顔を覗きこんでくる。

勇者「乗れるかよ、あんな餓鬼の戯言に」

魔術師「ほう?」

その台詞に魔術師は面白そうだと反応した。
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/13(土) 01:36:00.68 ID:u+PTnybbo
ワクワク
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/13(土) 01:36:02.18 ID:DOXsszBDO
今日はここで終わりです。

確かにあんまり勇者っぽくない技かもしれません、あの技は。

魔術師の正体はまだもうちょっと先になります。もうちょっとお待ちください。

ヒロインの中でも今のところあんまり出ていない賢者母の出番はなんとか確保……できるかな?フェードアウトしないようにがんばりたいと思います。

ではでは。
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/13(土) 01:36:36.90 ID:u+PTnybbo
乙した

勇者の技かっこいいから好き
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/08/13(土) 02:06:51.62 ID:g9B4y9sAO
門突破したりやれば出来るのに安易に力に走らない感がイケてるよ勇者は
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/13(土) 22:06:43.41 ID:DOXsszBDO
ちょっとだけ更新。

徐々に明けて行く空を見上げるながら、あくびを押さえて言う。

勇者「大体、俺達が力を貸さなかったら王子にとって俺達の利用価値は一つなんだから」

魔術師「ほう?その利用価値とは」

勇者「決まってるだろ。国王殺しの罪人として処刑に」

魔術師「なるほど」

最もだとうなずく魔術師。
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/13(土) 22:11:19.12 ID:DOXsszBDO
勇者「それに、俺達が力を貸すって言っても王子が考えてたのはせいぜい王弟の暗殺くらいだろうし」

魔術師「そうかもな」

勇者「そうじゃなきゃ、あんな事仕掛けてこねーよ」

魔術師「……だろうな」ククッ

勇者「ククッ、じゃねーよ。ったく」
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/13(土) 22:19:40.37 ID:DOXsszBDO
勇者「それに王弟には俺達と王子との接触もばれてるだろうし」

魔術師「ばれてたら何か不自由でもあるのか?」

勇者「多いにある。……はっきり言って、俺の脱走は予想外だったんだろう。でもなきゃ、もっと大掛かりな罠でも用意してたと思う」

魔術師「ほう」

勇者「でも、王子がちょっかいだしたお陰で向こうの形勢は一気に挽回しちまった。なんせ向こうにしたら、王子は罪人を匿っている国王殺しの黒幕なわけだし」
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/13(土) 22:25:37.79 ID:DOXsszBDO
魔術師「となると、向こうは遠慮無しに王子を攻撃出来るわけか」

勇者「そうだな、わざわざ敵に塩を送る様な真似をしたわけだ、あの王子は」

魔術師「なるほどねぇ」


勇者「それに、だ。あの様子からして王弟は既にある程度人数を集めてるみたいだし」

魔術師「しかし、王子は一応王位の後継者だろう?いざとなれば国軍を動員出来るではないか?」
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/13(土) 22:37:56.75 ID:DOXsszBDO
勇者「そこが甘いんだよ。もし国王殺しの黒幕だって言われて、そいつに国王の仇を討てって言われて、はいそうですかって言う馬鹿がいるか?」

魔術師「そりゃそうだ」


勇者「どんだけ頑張っても中々諸候を動員出来ない状況になっちまったんだよ、王子は」

魔術師「では我々で王弟を倒せば済む話じゃないか?」

勇者「んな事したら王弟派の連中を王子派がしょっぴくだろうし、王弟派は別の人間を担いで反乱するのが目に見えてら」

魔術師「……なるほど」
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/13(土) 22:43:20.87 ID:DOXsszBDO
魔術師「……何かめんどくさい事になったな」

勇者「ああ、めんどくさい事になった」

勇者「大体、どっちも国王殺しの犯人を捕まえようとせずこの期に乗じて権力争いしてやがる」

魔術師「それが我慢ならないか?」ニヤニヤ

勇者「当たり前だろうが」フンッ

魔術師「うぶな奴め」ニタニタ

勇者「ほっとけ」
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/13(土) 22:51:11.26 ID:DOXsszBDO
魔術師「それで一体どうする気だ、うぶな勇者殿?」ヘラヘラ

勇者「……とりあえず北を目指す」

魔術師「ほう?」

勇者「国王殺しは誰だか分からねーし、恐らく王弟派と王子派とで内戦が起こるだろう」

魔術師「止めはしないのか、ん?」

勇者「……残念だけど、俺にはそんな力はねーよ。王弟派、王子派、どっちに肩入れしても余計状況を混乱させるだけだ」
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/13(土) 22:57:11.82 ID:DOXsszBDO
勇者「それよりも、この状況を魔族側が知ったら……」

魔術師「そりゃ攻勢に出てくるわな」

勇者「そうなりゃ今の平和も一気に帳消しだ」

魔術師「うむ。魔族側は敵の援軍を気にせず戦えるからな」

勇者「……そうなりゃ魔族の和平派も苦しいだろうしな」

魔術師「……かもな」
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/13(土) 23:01:50.97 ID:DOXsszBDO
勇者「まあ、そうさせねー為にも魔族との国境へ向かうが、お前はどうする?」

魔術師「私か?」

勇者「はっきり言って、王弟派と王子派の追撃があるだろうし、結構大変な旅になるぞ」

魔術師「だから何だ?」


勇者「……着いてくる気か?」

魔術師「当たり前だ。こんなに愉快な事はたまらんからな!!」ククククククッ!!

145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/13(土) 23:13:53.33 ID:DOXsszBDO
勇者「……そうか。後悔するなよ?」

魔術師「貴様こそ、私の様な大魔術師と旅を出来るのだ。感謝するがいい」

勇者「言ってろ」


こうして俺はこの胡散臭い魔術師、未だ身元不明の女剣士、さっきまで捕えられていた美人親子と共に北を目指す旅をする事になった。


……果たして無事にたどり着けるのだろうか?

やれやれ……。
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/13(土) 23:16:39.71 ID:DOXsszBDO
今日はちょっと短めですが、これで終わりです。昨日の書き残しを書いたみたいになりました。

明日からちょっと所用でしばらく更新出来ないかもしれません。

一週間以内には必ず更新しますので、どうかよろしくお願いします。

では〜。
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/08/14(日) 03:37:59.16 ID:Cl+U+56AO
乙、投げなきゃ一週間程度は構わんよ
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/14(日) 11:49:36.89 ID:E6Rmfvuuo
乙した
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/08/16(火) 02:03:44.01 ID:jXtaTLIb0
久しぶりに来たら拷問とか
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/08/16(火) 13:27:45.06 ID:TeRniXPG0
え?打ち切り?
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/18(木) 00:44:06.26 ID:ztK+P0r+o
ワクテカして待ってます
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/20(土) 03:08:25.33 ID:bI+VZqmY0
一週間たったか
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/08/21(日) 23:43:26.59 ID://0AhM5k0
投げては・・・いないよな?
154 :VIPに代わりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/22(月) 02:17:25.21 ID:XS3UhtvLo
実はHTML化依頼はすでにされてるけどね

■ HTML化依頼スレッド Part2
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1310647825/302

302 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 2011/08/16(火) 13:24:54.30 ID:ASXihgVDO
勇者「国王を殺したのは、誰だ……!?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1312647577/l50

打ち切り
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