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勇者「…それでも俺は…。」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆SYuEG8SCREjT [saga]:2011/08/10(水) 18:02:19.93 ID:1d+/BFpAO


一人の男が歩いていた。
ただ淡々と歩いていた。


目的のある旅の筈なのにその足取りはどこか寂しげで


力強く意志のある風貌なのにどこか近寄りがたい雰囲気を持つ


そんな男が歩いていた。








「…見えてきたな…。」


独りぼっちで呟いて
矛盾した男は歩みを進める。


次の町へ、次の次の町へ。
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空を自由に飛びたいな @ 2024/11/22(金) 15:47:22.22 ID:UV495csLo
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■ 萌竜会 ■ @ 2024/11/22(金) 07:20:24.33 ID:WpWM+xYMo
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■ 萌竜会 ■ @ 2024/11/22(金) 07:18:35.89 ID:Vr506SRJo
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■ 萌竜会 ■ @ 2024/11/22(金) 07:17:49.87 ID:t6dKBjAuo
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■ 萌竜会 ■ @ 2024/11/22(金) 07:17:17.71 ID:/UbTl3Hgo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1732227436/

■ 萌竜会 ■ @ 2024/11/22(金) 07:16:22.54 ID:Un8tNByuo
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ミア「歩夢・・・辛かったな・・・」ナデナデ歩夢「ミアちゃん・・・うぅ・・・」 @ 2024/11/22(金) 00:59:47.53 ID:w7bhdEV4O
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ちんぽいぬ @ 2024/11/21(木) 22:13:45.60 ID:BuRqeSctO
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2 :depression4989 [sage saga]:2011/08/10(水) 18:46:52.20 ID:1d+/BFpAO
男がその町に到着する頃、もう日は暮れかけていた。

商品の町。


林と砂漠を越えた隣街、商業都市と区別する為にそう呼ばれている。


商品の町最大の特徴、それは売られている商品にある。


偽ブランドの武器・防具・アクセサリーや、
どこから採ってきたのかも分からない薬草、
ハネ品ばかりを集めた農産物に古びた肉類。



しかしそれらを押し退けて、ひときわ際立っていたのは

生き物の売買である。


動物の隣に魔物が並び、はたまたその隣に人が並んでいる異様な光景。


そんな異様な光景が日常となったこの町に

その男は訪れた。
3 : ◆SYuEG8SCREjT [sage]:2011/08/10(水) 19:01:37.65 ID:oYRoRJ+DO
これかな?
当たってたら酉変えろよ
4 :間抜け(変えました) ◆/QmNa/cU6Y [sage saga]:2011/08/10(水) 19:40:30.48 ID:1d+/BFpAO
「いらっしゃい!いいのがそろってるよ!」


商品の一人が声を声をあげた。


「さぁさぁよっといで!今回はいい声で啼くクヌキマ人がそろってるよ!」


そう言って商人は布切れを巻いただけの人々に鞭を打ちつけた。


歓声と悲鳴が喧騒に掻き消され、何事もなかった様に商売が進められる。


そんな惨劇を目の当たりにしながらも、男は歩みを止めなかった。
5 : ◆/QmNa/cU6Y [sage saga]:2011/08/10(水) 20:28:01.11 ID:1d+/BFpAO
「ここに泊めろだと!?」


声を荒げたのはこの町の町長で、ふくよかな体つきにアゴヒゲを蓄えた気性も肌も荒い。


結局町には宿がなく、男は仕方無くやって来たのだ。


「使っていない部屋のぐらいあるだろう。どうか一晩泊めてはくれないか。」

言うなり男は頭を下げた。


「何を馬鹿な!どこの誰とも知らない奴をホイホイ泊めるとでも思ったか!!」


町長の怒声を聞きつけ、妻と息子らしき二人が部屋から出てきた。

「私は反対だわ!第一余っている部屋なんてありませんもの!」


「そんなわけだからさあ、さっさと出てってくんない?残念でしたー!」


着飾った女は顔の皺をさらに増やす勢いでまくし立て、
散々甘やかされたであろう醜い青年は顔を近づけ罵った。


男はため息をつき、小さな袋を一つ取り出した。


「これでもダメか?」


中には金貨がぎっしりと入っていて、その重量感ある小袋を見た途端、
家族全員の顔色が変わった。


「ふん!金を持っているならさっさと出せ!まったく、要らん手間を掛けさせおって!」

言いながら町長は袋をぶんどった。


「アナタの部屋に泊めなさい。」

「イヤだね!なんでオレの部屋にこんなヤツをいれなきゃいけないんだよ!セキの部屋でいいだろ!?」


「まあ!こんなのをセキちゃんの部屋に入れるワケにはいきませんわよ!」


セキとは、町長夫人のペットのブルドッグのことだ。


(ペットの部屋があるくせに客間は無しか…)


犬以下の扱いにも動じる事なく男はただ黙っていた。


「仕方がない…オイ!」


町長が手を打ち鳴らすと、奥から一人の少女が出てきた。
6 : ◆/QmNa/cU6Y [sage saga]:2011/08/10(水) 20:44:27.45 ID:1d+/BFpAO
その少女は痩せこけていた。


希少な青みがかった髪は手入れされずにいたのか傷んでおり、
エメラルド色の大きな目の下にはクマがあった。
ボロボロになった服に、所々見え隠れするアザが痛々しく、足取りもおぼつかない。


この家の人間ではなく、奴隷なのは明らかだった。


「ソイツをお前の部屋に案内しろ。」


少女は無言でうなずくと、男の手を掴んだ。


「………こっち…です。」


か細い声と手にひかれ、男は小さな部屋へと案内された。
7 : ◆/QmNa/cU6Y [sage]:2011/08/10(水) 20:46:51.64 ID:1d+/BFpAO
こんな感じで書いてきます。
グダグダです。


二日に一回の更新ペースの予定です。



それでは。
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/10(水) 20:50:33.58 ID:4OO+1124o

見てるからな!
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/08/10(水) 20:52:31.13 ID:kY7SBxA/0
面白い面白くない以前にスレ立てる前に書き溜め位しとこうよ
酉つけて書き溜めなしの人ってほぼ失踪するからそれだけが心配
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/08/10(水) 21:14:21.56 ID:GIRscFQh0
支援
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2011/08/10(水) 22:08:33.78 ID:8HNzGmnZo
ヤバい
どストライクかもしれない
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2011/08/11(木) 09:14:13.03 ID:aTHqfAOXo
ひょっとしてコザカシイことってこれのこと?ww
続き楽しみに待ってます

>>9
たぶんこの男を捜してる女勇者の話も書いてるから消えることは無いと思うよ
13 :(ひっそり再開) ◆/QmNa/cU6Y [sage saga]:2011/08/12(金) 16:59:33.03 ID:sY7AwMIAO
狭い部屋だった。犬のよりも断然。
何もなかった。あるのは小さな窓だけ。


ただ少女がそこに居る為だけの部屋に、この日は男と少女の二人が入る。




案内されると、男は直ぐにゴロリと寝転がった。それだけの事で部屋の半分が占拠された。


少女は何をするでもなく、隅で立っていた。




沈黙。




何も話す必要がないと思い口を開こうとしない男と
何を話せばいいか分からずに口を閉ざしている少女。



同じようで全く異なる二つの沈黙が、狭い部屋の空気を更に息苦しいものにした。
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/12(金) 17:20:33.54 ID:/Bt0S41pP
あ〜なるほどあのスレの書き手なら期待できないか
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/12(金) 17:28:12.13 ID:2eOi8wS2o
期待できないと思うならなにも言わず閉じれよ
16 :(この後ちょっと休憩) ◆/QmNa/cU6Y [sage saga]:2011/08/12(金) 18:59:23.22 ID:sY7AwMIAO
長いながい沈黙を破ったのは少女の呟きだった。


「…そろそろ、ごはんのじかん…です…」


「…もうそんな時間か。」


眠っているように見えた男は、その一言で目を開け、
むくりと立ち上がると部屋をあとにした。


少女の手をひきながら。
17 : ◆/QmNa/cU6Y [sage saga]:2011/08/12(金) 22:26:46.65 ID:sY7AwMIAO
テーブルの上には色とりどりの料理が並び、男が見たこともない食材がいくつもあった。


既に家族三人は席に着き、残りのイスは一つだけだった。


男が少女に席に着くよう促したが、少女は首を横に振るばかりで一向に動こうとしない。


「何してんの?そんなヤツとは一緒に飯食いたくないんだけど。」


「早く座れ。それともいらないのか?」


「せっかく多めに作っておいたのよ。早くたべなさい。」


これらは全て男に向けられたセリフだ。誰も少女の方は見向きもしない。


いつもこうなのだろう。

いつも一つは空席で、今日はたまたまそこに男が座っているだけ。




少女は四人が食べ終わるのをただじっと待っていた。
18 : ◆/QmNa/cU6Y [sage saga]:2011/08/12(金) 22:51:17.06 ID:sY7AwMIAO
食事が終わり、家族が席を離れたところで、ようやく少女が席に着いた。


家族の食べ残しをかき集め、残飯を静かに口へ運ぶ様を、男は席に着いたまま眺めていた。






少女は食べ終わると無言で席を立ち、全部の皿を洗い場まで運び、洗剤をつけて擦って洗い流し、
光沢が出るまで拭いた食器を棚に戻した後、フラフラと部屋に戻っていった。


男は家族の様子を一頻り眺めた後、少女の部屋へと歩いていった。
19 : ◆/QmNa/cU6Y [sage saga]:2011/08/12(金) 23:27:49.90 ID:sY7AwMIAO
ドアを開けると、最初に来たときと同じように少女が隅に立ち尽くしていた。


男もこれまた最初と同じようにゴロリと寝転がった。



またもや沈黙…とはならなかった。



少女が男に寄り添うように寝転がり、何も言わずに目を閉じた。



男が頭を撫でてやると、少女は一瞬顔をほころばせてから元の表情に戻り、そのまま寝息をたて始めた。



もう一度頭を撫でた後、男もゆっくり眠りについた。
20 : ◆/QmNa/cU6Y [sage saga]:2011/08/13(土) 01:06:58.17 ID:z6aJPeMAO
次の日、男が目を覚ますと既に家族も少女も朝食を済ませていた。


町長は仕事に出向き、町長夫人は(多分犬を連れて)どこぞにお茶会でもしに行ったのだろう。




とにかく家には、男の他に
部屋でがらくたをいじくりまわしている息子と、
居間の掃除をしている少女しか居なかった。



男は自分の朝食が無いのに気付いき、仕方がないので町のどこかで食べることにした。


「………。」

少し考えてから、男は少女の前に立った。


「町を案内してくれ。」


「…でも、まだ掃除が…。」


「頼む。」


少女は迷う素振りを見せたが、やがて何か決意をしたのかコクリと頷き、男の手を引いて玄関を出た。



息子はがらくたいじりに没頭して気がつかなかったようだ。

21 : ◆/QmNa/cU6Y [sage]:2011/08/13(土) 01:11:10.25 ID:z6aJPeMAO
今日はこれまで。


明日も書けそうなので早めにキリがイイトコまで終わらせたいです。


それでは。
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2011/08/13(土) 03:37:41.75 ID:d69Or9AYo
少女可愛過ぎだろ支援
23 :(ギリギリ今日!) ◆/QmNa/cU6Y [sage saga]:2011/08/13(土) 23:35:25.74 ID:z6aJPeMAO
少女が言うには、宿屋と同じく飲食店までこの町には無いらしい。


男は呆れたように小さくため息をつき、食材を買うため待ちを廻ることにした。






ある程度の食材を揃えた時、少女がふと立ち止まった。


男がそちらに視線をやると、少女はドラム缶の様な物を凝視していた。


よく見ると値札までついていて、先程買ったスジ肉と大差ない値だった。


「こんな物まで売っているのか…。」


「………。」


少女は動こうとしない。


「…こんなの買ってどうするつもりだ?」


「………おふろ………。」





買い物リストにタオルと着替えが追加された。
24 :(でもって次の日に!)greedy763 [sage saga]:2011/08/14(日) 00:44:52.56 ID:sNTA6RNAO
男と少女は一度町を出ることにした。


半時間程ドラム缶を転がしながら歩き、林の奥の河原で風呂を作り始めた。


剣で木を薪と底板に切り分け、売ってあった鉄の台でドラム缶を固定し、
男が魔法で水を注ぎ火を起こして、即席五右衛門風呂が完成した。


男が額の汗をぬぐいながら完成の喜びに浸る矢先、
既に少女はボロボロの服を脱いでいた。



「……入っていい?」


「…湯が沸くまで待っててくれ。」


「どれぐらい?」


「もう少しだ。」


そう言いながら男は少女にタオルを渡した。


「…まだ?」


「まだだ。」


こんなやりとりを何度か繰り返す内にようやくお湯が適温になった。


「…入れて…?」


「…わかった。」


梯子がないため、男は少女を抱えてそっと底板の上に乗せ、ゆっくりと手を離した。




「〜〜〜っ!!」


「熱かったか?」


「ちがう…きもちいい…。」


そう言って少女はほうっとため息をついた。



「…一緒に入る…?」


「狭いから遠慮しておく。」


男はようやく遅めの朝食を作り始めた。
25 : ◆/QmNa/cU6Y [sage saga]:2011/08/14(日) 01:06:12.29 ID:sNTA6RNAO
トントンと包丁で野菜を切る音が響く中、ふと少女が口を開いた。


「…あなたも、魔法を使えるの…?」


「…あなた『も』?」


「そう。これで、二人目。」


時々頭を揺らしながら、少女は色々なことを語った。







私がまだ奴隷になる前、小さな村に住んでいた頃、山を降りてきた山賊に襲われて両親が殺されたこと。



珍しい髪と瞳だという事で私だけが生かされ、売りに出される為に連れていかれたこと。


運ばれる途中で銀色の髪をした青年に助けられ、山賊は壊滅。その青年は強力な魔法を使っていたということ。



その後山の上の屋敷に案内されて、他の二人の男女と合わせて四人でご飯を食べたこと。



「そこに入るには合言葉がいるの。」


「…どんな?」


「えっと…『われしんかととうそうをのぞむものなり』って…。」


「…なるほどな。」
26 : ◆/QmNa/cU6Y [sage saga]:2011/08/14(日) 01:27:17.79 ID:sNTA6RNAO
少女は話を続けた。



何日か過ごす内にふと村に帰りたくなり、夜に屋敷を抜け出したこと。その時誰かに見られている様な気がしたこと。


「…気のせいだったのかな…。」


(見逃したんだろう)




そして村に帰る途中に商品の町の商人に捕まったこと。


「…その後は、売られて…買われて………あっ…。」


「そろそろあがるか。のぼせるからな。」


男は盛り付けを一旦中止し、少女を風呂からあげ、タオルで拭いてから新しい服を着せてあげた。
27 : ◆ymwt8/vqpY [sage]:2011/08/14(日) 01:31:58.97 ID:sNTA6RNAO
寝ます。


おやすみなさい。
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/08/14(日) 01:33:51.42 ID:rt54IYu6o
乙した
29 :間抜け ◆/1D/7Oju4Q [sage]:2011/08/14(日) 01:37:24.41 ID:sNTA6RNAO
また#入れるの忘れた。


また酉変えるハメになったよ。


自業自得ですね。


てなわけで↑のでお願いします。
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2011/08/14(日) 01:46:11.72 ID:R/yP3Si0o
乙した
男が紳士過ぎて変な妄想をした自分が憎い
それにしても>>1の酉はスラッシュが多い
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/08/14(日) 02:20:55.98 ID:hqK/gN2Mo
乙でした
度重なる酉変更にめげず頑張ってください
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/14(日) 18:29:39.83 ID:V56t3hU6o
乙〜

「売られて買われて」のくだりで心臓爆発するかと思った。続きワッフル
33 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/08/15(月) 16:53:58.97 ID:d5RU792AO
「…できたぞ。食べようか。」


肉と野菜を炒め、調味料で簡単に味付けしたもの取り分けた皿をもち、
切り株で作ったイスにちょこんと座っている少女の基へと男は歩いていった。



新しい服を汚さないように少女は皿を慎重に受け取り、男もイスに座り、一度皿を置いてから両手を合わせた。



「いただきます。」


「いただき…あっ…とと。」


男の真似をしようとしたが、膝の上に乗せた皿を途中で落としそうになったため、
少女の挨拶は中途半端に終わってしまった。


「………。」


「スプーンだ。使いな。」


「………。」


「…うん、なかなか上出来だな。」



「………ほんとだ。おいしい…。」


少女は申し訳なさそうな目で見ていたが、男が気にせず食べ始めるのを見てから、緩慢な動きで食べ続けた。


「…ほんとに、おいしい…。」


「…それは良かった。」


どうやら町長夫人はロクな食事を与えていなかったらしい。
34 : ◆/1D/7Oju4Q [sage]:2011/08/16(火) 01:28:32.17 ID:ZnjyeQVAO
ダメだ寝ます。

明日またぼちぼち書いて来ます。


それでは。
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/16(火) 03:04:38.65 ID:+r2+rqsJo
乙した
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/16(火) 10:52:34.51 ID:q1Y6ws8v0
まあ、がんばれ。
37 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/08/16(火) 15:00:18.45 ID:ZnjyeQVAO
「さて、このドラム缶をどうするか…。」


食事を済ませ、後片付けも終えた男が悩むように呟いた。



「…ここに、おいとく。」


「そうか。まあそうだよな。」


そう言って男は町へと帰るために歩きだした。少女も後に続く。




「いい加減あの息子もお前が居ない事に気付いただろう。探されでもしたら後々面倒だな。」


「…掃除、途中だったの…バレたら…大変…。」


「そうだな。急ごうか。」





小走り気味になりながら、少女と男は町へと向かった。
38 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/08/16(火) 15:25:03.73 ID:ZnjyeQVAO
町長の家に帰ると、家族全員が玄関前で待ち構えていた。



「オイどういうつもりだ!人の家の奴隷を勝手に連れ出して!!」

顔を真っ赤にして町長が叫ぶ。
よっぽど自分の所有物を勝手にされたのが嫌だったのだろう。


「町を案内してもらった。あの金まだ足りなかったか?」


「最初に渡されたアレか!アレは宿泊代と食事代だ!」


「そもそも、その子ロクな案内も出来なかった筈よ。ずっと店につながれてたのですもの。」


確かに夫人の言うことは正しかった。少女が案内出来た場所は限られていて、一度迷った事もあった。


「そうでもない。ちゃんと案内してくれたぞ?」


「とにかく、さっさとソイツを返せよ!…ん?その服はなんだ?」


息子が少女の服が変わっているのにいち早く気が付いた。
ボロボロの服が打って変わって、肌の色に近い白のワンピースになっていたのだ。
むしろ真っ先に触れられなかったことに男は疑問をもった。
39 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/08/16(火) 17:02:18.77 ID:ZnjyeQVAO
「ずいぶんとキレイな御召物ですなあ〜…奴隷のくせに…」


息子は言いながら少女に掴み掛かった。


「生意気なんだよ!!」


拳を振り上げ、少女に殴りかかろうとして






男に腕を掴まれた。


「離せよ!コイツをどうしようが俺の勝手だろ!?」


「キサマ!息子に何をするつもりだ!!」


「早く手を離しなさい。他所の家の事情や奴隷に手出ししないでほしいわ。」


男は無言で掴み続けた。
息子も振り払おうとしたが無駄だった。


「クソっ、いいから離せ!」


「…やめて。私のことは…もういいから…!」


少女が男を止めに割って入ろうとしたその他、 一人の商人が町長宅へ入って来た。



「ちょ、町長!大変だ!魔物共が攻め込んできたぞ!!」


町長以下全員の顔色が変わった。

一人の男を除いて。
40 : ◆/1D/7Oju4Q [saga]:2011/08/16(火) 17:26:55.11 ID:ZnjyeQVAO
といった所で今日はこれまで。

また明後日に。
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2011/08/16(火) 19:22:26.21 ID:2S1bJN8Zo
乙した
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/16(火) 22:46:44.17 ID:6ksAlWj60
男△
明後日楽しみにしてます
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/18(木) 01:55:20.42 ID:ztK+P0r+o
ワクテカ
44 : ◆/1D/7Oju4Q [saga]:2011/08/18(木) 23:22:20.63 ID:brH6e/pAO
其は唐突にやって来た。


衛兵を瞬く間に退け、逃げ惑う町人を押し退け、刃向かう者には容赦なく死をもたらした。


人語を話す高位の魔物達の軍勢が町の中央を占拠するのに、そう時間はかからなかった。





一匹の人妖が、人の絵の描かれた紙を持って叫んでいた。



「この男がここいら周辺に姿をみせているのは知っている!この町に訪れてはいないか!」


そう言いながら紙に書かれた男を頻りに指差していた。


その絵の男は、つい先日この町に訪れた黒髪の男そのもので、町中を町長の所の少女と歩くのを見た人も少なくなかった。








誰一人、男を庇う者などいなかった。
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/18(木) 23:54:40.33 ID:S8q7nGSG0
おっ来たか。
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/19(金) 00:51:13.60 ID:vILy8+ejo
ワクワク
47 :(寄り道) ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/08/19(金) 01:28:37.14 ID:CjzQzfMAO
「町長!奴等は町長とソイツを捜していました!早く中央広場へ行きましょう!!」


「ふざけるな!!バケモノ共には俺たち家族は居ないと伝えろ!」


「それじゃあ俺達が殺される…!!」


「知るか!とにかく留守だ!いいな!?」


言うだけいって町長とその家族は逃げていき、男と少女が残された。


「…アンタは来るよな?」


「………。」


男は無言で広場へと歩きだした。
少女が何の躊躇いもなくついていった。

その様子を大勢の町人達が恨みを込めた視線で見送った。


広場につくまで、ずっと。
48 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/08/19(金) 02:10:55.11 ID:CjzQzfMAO
男と少女が中央広場につくのと同時に、馬車を二つ列ねたよりも大きな黒い龍が舞い降りた。



「捜しましたよ。こんな所にいたのですか。」


黒い龍に乗っていた女が飛び降りてそう言い放った。腰まで伸びた白髪を揺らしながら男へと近づいていく。


「…魔王の側近と軍団長…副将『二人』が揃ってご登場とはな。」


「ホントだよー。全く魔王様もなに考えてるんだか。」


翼を畳んだ黒い龍は音を立てながら、人間の子供の姿に変わった。


広場の周りで様子を伺っていた人々は息を呑んだ。そんな二大勢力がこんな所になんの用があるのだろうか。



「やはり一人ですか。かつての仲間と別れて旅をしているという噂は本当のようですね。」


「………。」


「…てことは今がチャンスだね!ね、ね、殺っちゃおうよ!」


腕を伸ばし、人間の姿になってもなお残っている牙をちらつかせてはしゃぐ少年を、
さっきまで男の目の前にいたハズの白髪の女が、少年の後ろから肩に手を置いてこう諫めた。



「あなた一人じゃやられちゃいますよ?」




男は何かを思い返すようにポツリと一人の名を呟き、
自分が数に入っていないことに少女は苛立ちをおぼえていた。
49 : ◆/1D/7Oju4Q [sage]:2011/08/19(金) 02:13:11.20 ID:CjzQzfMAO
今日はこれまで。
なかなか思うように進まないな。

ではまた明後日に…。
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2011/08/19(金) 02:52:45.39 ID:Gw5ORVlEo
乙した
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/19(金) 02:57:07.06 ID:vILy8+ejo
乙した
52 :(遅れました) ◆/1D/7Oju4Q [saga]:2011/08/21(日) 23:26:41.24 ID:eExj4iJAO
「…さーてっと、そんなひとりぼっちな君をこの町の人は匿っていたワケかな?」


髪と同じく拘束具のような黒い服を着た少年が、
くるくると回りながら辺りを見回す。


男の表情は冷ややかだった。


「もしそうなら、庇うようなら…殺しちゃうよ?」


町の人々はぎょっとした。驚きと焦りで口を開かない…のではなかった。


 冗談じゃない  ふざけるな  
   誰が庇うものか  俺達は悪くない



 出ていけ そうだ出ていけ!


出ていけ!! 出ていけ!! 出ていけ!!

この疫病神が!  お前だけ死ね!!




広場を囲う市民達の大合唱。全て男を非難し、自分達は助かろうとする、殺意のいりまじった怒号。


それを一身に受けても、男は身動ぎもせず、表情を変えずにただ立ち尽くしていた。



 コイツを捕らえろ!突き出してやれ!


血の気の多い若い男達が群衆の輪から飛び出し、男に向かって駆け出した。


途中で少女が身を乗りだし立ち塞がったが、横に突飛ばされてしまった。
53 : ◆yQLEuUpj2w [sage saga]:2011/08/21(日) 23:38:16.75 ID:eExj4iJAO
六人の男達が四方から向かっていった。

男へと一直線に。






魔物達は道をあけた。

どうなるか分からないから。



黒い少年は嬉しそうに眺めていた。

面白そうだから。



白い髪の女は呆れていた。

どうなるか予想がついているから。



少女は目を息を呑んでいた。

男に危害が加わると思ったから。
54 :(あれ?) ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/08/21(日) 23:47:00.03 ID:eExj4iJAO

そうして六人の内五人がほぼ同時に男へ掴みかかり、












胴から上がずり落ちた。


「え…?」


唖然として棒立ちになった残り一人も、気が付いたら胸から血が吹き出していた。



群衆が、一瞬にして静まり返った。
55 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/08/22(月) 00:21:18.17 ID:VL0vXFcAO
「あーらら…やっぱそうなっちゃう?」


少年は相変わらずにこやかで、
白髪の女は溜め息をつき、
少女は恐怖のうちに安堵した。


「全く、アナタも冗談が過ぎますよ。」


「だってさ、面白くなかった?」

「思いません。」


「ちぇっ…残念。」


藍色の服をなびかせて、女が男に歩み寄った。


「この町は最初から侵略するつもりでしたから。そこに貴方がいただけです。偶然ですよ。」



その一言で、今度こそ町人たちは絶句した。どのみち自分達は助からない、そう知ったからだ。


「山の向こう側から来る者は必ずこの町を通るので、ここを抑えておくのはとても重要なのです。」


山脈を越える道は一本しかなく、それ以外は海から遠回りしなければならないのだ。


故にこの町の占拠は山のにそって人の流れを分断する事になる。



「なりよりさー、仲間が奴隷として売られてるし。潰したかったんだー♪」


人々の顔が青ざめてゆく。



そこへ一匹のガーゴイルが女の前までやって来て跪いた。



「側近殿、町長一家を捕らえました。」


「連れてきなさい。」



そうし、縄で手を縛られた三人が魔物達の前まで連れて来られた。
56 : ◆/1D/7Oju4Q [sage]:2011/08/22(月) 00:24:11.25 ID:VL0vXFcAO
今日はこれまで。
更新ペース遅れて申し訳ないです。


次も明後日を予定していますが、大丈夫だろうか。


それでは。
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/22(月) 00:59:00.39 ID:9KAd8R9A0
乙だよ。男やるな。
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/08/22(月) 01:49:15.11 ID:bs9k8K1AO
これって何かのスピンオフ?
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/22(月) 03:57:30.17 ID:2EYuBDvTo
乙した


奴隷売買してたヤツらザマァな展開クルー⁈
60 : ◆/1D/7Oju4Q [saga]:2011/08/24(水) 08:12:30.76 ID:iCPgJAyAO
「…具体的にはどうするつもりだ?」


連れて来られた町長一家を完全に無視して男は聞いた。


「手っ取り早く皆殺しかな?」


「いいえ、それではここが町として機能しません。何人かは残しておくべきとの命令でした。」



町長は目の前の光景が信じられなかった。

昨日泊まりに来た、どことなく妙な雰囲気の男が、
魔物達を統べている女や少年と気兼ねなく会話をしていることが。


「でもさー、ここの奴らって僕達の仲間まで売りに出す様なゲスなんだよ。
そんなのを従えるのは、みんなも嫌じゃないかな?」


「それもそうですが…。」



そして何より、男が魔物に意見し、






「なら奴隷とされていた者達を従えるといい。
仮にも解放された身なら、よっぽどの扱いをしない限り反乱もしないだろう。」




こんなとんでもない事を提案したことが、何よりも信じられなかった。
61 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/08/24(水) 09:07:47.85 ID:iCPgJAyAO
「キサマ!裏切ったのか…!!」

顔を真っ赤にして、声と体を震わせて、町長が男に近づいていく。




「…なかなか良い考えですね。それなら魔王様も納得するでしょう。」


「でもさ、一々区別するのが面倒…でもないか。服みりゃ分かるよね。」


「見張りの魔物は少数でいい。それで充分だろうからな。」





「………ッ!!オイ!!」



誰も取り合わないことが、町長の怒りを更に激しいものにした。
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/24(水) 10:00:50.91 ID:EZllDEFIO

これはスカッとするな
63 :VIPに変わりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/24(水) 10:12:36.99 ID:HpJoKSrVo
まだ投下終わってない気がする
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/24(水) 12:59:40.96 ID:3YMBNe5Ko
乙した
65 :(亀なので、投下中でも書いて結構です) ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/08/24(水) 14:11:10.11 ID:iCPgJAyAO
町長は憤怒に満ちた視線を

少女は恐怖よりも尊敬の眼差しを

それぞれ向けながら男に近づいていく。



這って、駆けて。





「…可愛いお仲間ね。」


「なんだ、ぼっちじゃないのか。」


二匹は見定める。ただじっと。
66 : ◆/1D/7Oju4Q [sage]:2011/08/24(水) 14:13:43.02 ID:iCPgJAyAO
これにて終了。

また明明後日。
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/24(水) 15:12:06.90 ID:nDyZ+4JU0
誰が話しているのかわかりにくいです
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2011/08/24(水) 17:09:30.22 ID:wjc93p1Vo
流れで大体誰のセリフか判るから誰のセリフか無くても問題無いと思ってたし
雰囲気を考えれば個人的には無い現状のほうが作風にあってて良いけどね
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/27(土) 18:10:09.43 ID:tDZ6ymk80
ちょっと分かりにくくても今のほうがまだいい。
70 : ◆/1D/7Oju4Q [saga]:2011/08/28(日) 21:32:48.08 ID:j3p1hN9AO
遅れましたが再開します。
71 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/08/28(日) 21:39:36.51 ID:j3p1hN9AO
「はいはーい!それじゃあそんなカンジで殺っちゃおうか!」


黒い少年は魔物達へと向き直り指示を出す。


気楽な指令にも関わらず、魔物達は速やか、しかしながら荒々しく散っていった。


そんな中、一匹の魔物が男へと迫ってくる。


「ふざけるなよ…。」


両手に持った木槌を振り上げ、


「なんで皆殺しにしない!?なんでそんなヤツの意見に従う!?」

男の前まで来ていた少女と町長に向かって降り下ろした。





駆ける少女は難を逃れ
這った町長は砕かれた。
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/28(日) 21:56:40.46 ID:MYY9+mJio
イイヨイイヨー
73 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/08/28(日) 23:10:45.18 ID:j3p1hN9AO
驚いて抱きつく少女を無視して
男はその魔物に目をやった。



木槌を持った鬼の向こうでは、町長夫人と息子が震えていた。


「…それが魔王様の考えに近かったからです。」


白髪の女が告げる。より冷酷な声で。


「だが、それでも人間ごときの意に従うなど高貴な魔族のする事では…!」


「人間ごとき…魔族のする事…。その古い思想が貴様等自身を滅ぼすんだ。」


猛る鬼の言葉を遮り、男がはっきりと言った。


「黙れ!そもそもお前が」






鬼がそれ以上叫ぶ事はなかった。


いつの間にか後ろに回り込んだ白髪の女が、鬼の背中に腕を突き刺したからだ。


「ガッ…ッ!?」


「あーあ。やっちゃった。」


黒い少年は肩をすくめた。
なんだかんだ言って、殺すのは大抵白髪の方なのだ。


「…貴方が邪魔しなければ、私達も手出ししません。勿論、その子にも。」


刺した腕を引き抜き、着いた血を見えない何かで弾きながら、女は男へと提案した。
74 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/08/28(日) 23:33:27.39 ID:j3p1hN9AO
「…いいだろう。」



男は提案を呑んだ。あっさりと。


「じゃあ決まり!とっととこの町から出ていきなね。それとも仲間になる?どうせ一人でしょ?」


「…それは遠慮しておく。」


「ふーん、そう。
まっ、どっちでもいいけどさ。」


黒い少年は適当に男と言葉を交わした後に後ろを振り返った。


夫人と息子の方へと。


少年の顔に笑みが広がる。
無邪気なものとは程遠い笑顔を浮かべて一歩、また一歩と迫っていく。




息子が、震える唇を動かして声を男に向かって張り上げた。


「なあ、お前強いんだろ!?助けろよ!同じ人間を見殺しにするのかよ!!」


男はその叫びを気にも留めず、少女の頭を撫でていた。


少女は、自分の『元』主人の残骸が気になりつつも、男に撫でて貰えて喜んでいた。


黒い少年が息子の目の前に来た所で、漸く男が口を開いた。
75 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/08/28(日) 23:48:45.14 ID:j3p1hN9AO








「たとえ俺が勇者であっても、お前等みたいな人間を助けたいとは思わんよ。」



言って男は背を向けて少女の正面に立った。


後ろでは魔物達が民を殺し尽くしている。
数々の悲鳴の中に息子のもいりまじっていた。


その惨劇を少女に見せない様な位置に立った男は、ただ一言少女に告げた。





「お別れだ。」
76 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/08/28(日) 23:54:48.27 ID:j3p1hN9AO
また明後日。
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/29(月) 09:01:22.11 ID:LaE0+2XZ0
乙でした
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/29(月) 12:34:35.86 ID:bTSG7zZJo

少女ちゃんとはお別れか・・・
79 :VIPに変わりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/29(月) 19:53:08.82 ID:xuoByDQZo
嘘だっ!!!
80 : ◆/1D/7Oju4Q [saga]:2011/08/31(水) 01:11:12.56 ID:ewQBigQAO
「…どうして…?」



頭から手を離された少女の表情が更に曇る。


これからも一緒にいられると信じていたから。


「危険だからだ。」


対して男は寂しさなどおくびにも出さずに、淡々と告げる。


「お前を巻き込みたくない。」


「いや…、私も行きたい…。」


「それは出来ない。」


少女が愕然とした表情のまま男を見つめる。




そして男はここで気付いた。何故この少女には優しく出来たのかを。




ずっと守りたいと思っている、とある女の面影があったからだ。
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81 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/08/31(水) 02:10:32.77 ID:ewQBigQAO
だが、だからこそ。
一緒には行けない。



「あなたは…わたしを…救ってくれた…。だから…」



「…足手纏いはいらない。」


突き放す様な言葉を投げ掛けても、少女は歩み寄って来る。


「…それでも…いっしょに」


「…ゴメンな…。」


少女は男へ手を伸ばし、
男は少女へ手をかざす。



言い終わる事なく少女はフラリと倒れそうになる。眠らされたのだ。



「…その優しさは、彼女の為になるのでしょうか。」


少女が後ろに倒れ込むのを支えた白髪が、
少女の顔を覗き込む様にしながら囁いた。


「…もう終わったのか。」


「ええ、これで奴隷として扱われる事もないでしょう。」


男が町を見回すと、抵抗した後だろうか、所々で火の手があがっていた。


奴隷商人の家や店に火をつけたのは、果たして魔物達だったのか。

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82 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/08/31(水) 02:25:00.09 ID:ewQBigQAO
「そうか。なら俺は行く。」


「用も済みましたから私達も行きます。奴隷となっていた人達は抵抗する意思のカケラもありませんでしたし。」


そう、これでいい。
男は自分にそう言い聞かせた。








男は町から去っていった。
また独りで、後悔せずに。


白髪の女も去っていった。
多くの仲魔を引き連れて。


だから町には数匹の女の部下の魔物と、少女を含めた元奴隷達だけが残っていた。




そうなるハズだった。


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83 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/08/31(水) 02:58:57.27 ID:ewQBigQAO
魔王の根城へと戻る一団のうちの一匹が、ふと顔を上げた。


「…どうかしましたか?」


白髪の女に尋ねられても暫く黙っていたが、やがてこう言った。


「面白そうな事がおきる予感がする。だからちょっと戻るねー。」


黒い少年は目を瞑っていた。何かを見据えているかのように。


「また未来を観ているのですか?」


「うん、ちょっとね。魔王様には2、3日で戻るって伝えといて。」


彼にはちょっとした未来を観る能力がある。最大で15日先の。



当然、預言者の様な精度はなく、断片的な事柄しか分からないがそれで充分だった。



ただ『面白い事がありそうだ』というのが分かればいいからだ。



「それじゃ、ちょっと行ってくるね。」


少年は元の姿に戻り、空を覆うような巨大な翼を広げて飛んでいった。







かくして『災厄』の象徴とされる黒龍は町へと帰っていく。
他人の不幸を楽しむ為に。
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84 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/08/31(水) 03:05:40.83 ID:ewQBigQAO
ようやく一章(?)が終わったところで今日はこれまで。


ホントはこんな長くなる予定じゃなかったのにな。


それではまた明後日。


↓に引っかからないよう頑張って生きたいです。



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85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/31(水) 03:09:55.78 ID:ebLooEfBo
乙した!
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86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2011/08/31(水) 06:39:02.81 ID:79d63/wfo
乙!
こんな感じのは好きだな

そういや↓のはなんなんだ?

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87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/31(水) 13:17:43.23 ID:nYevQVHKo

楽しみにしてるよ


自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
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88 : ◆/1D/7Oju4Q [saga]:2011/09/03(土) 22:59:10.67 ID:tVnr+0QAO



雨が降っていた。


小雨程度だった雨脚は徐々に強くなり、やがて雨音以外が殆ど聞こえなくなる程にまでなった。


そんなどしゃ降りの中を、一人の男が歩いていた。


雨具に身をつつみ、雨降る夜を淡々と歩いていた。



ぬかるむ道を、悪くなりつつある視界をものともせず。



次の町へ。次の次の町へ。
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
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89 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/09/04(日) 20:18:09.65 ID:CEgnV4+AO

そんな道中に、男は自分以外の足音を聞いた。それも複数の。


雨の中、これほどに多くの足音を響かせて、男の方へと近づいて来る。



商人の一団、などではなかった。


全員がそれぞれ武器を持ち、鋭い眼光で男をを見ていた。


迎撃しようかと腰の剣に手を伸ばしかけたところで、ふと違和感を憶えた。


誰一人構えていない。


弓矢にボウガンなどの遠距離武器を持つ者までも、だ。


見た目は盗賊の一団といったところだが、何かが違った。



と、一団が中央で割れて、一人の女性が歩いて来た。身の丈三メートルを超す大男を引き連れて。



黒に近い灰色の髪の女性は、開口一番にこう言った。




「君が勇者くん…であってるっさ?」


90 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/09/04(日) 21:13:53.55 ID:CEgnV4+AO
男は眉をひそめた。


単に女性の口調がおかしかったからではない。


その言い方が、まるで誰かから男の事を聞いたようだったからだ。


「……………。」


「だんまり、か…。ますますそれっぽいっさ。だよね、のんちゃん。」


「ウス。」


女性の問いかけに、のんちゃんと呼ばれた大男が低い声で応えた。


「だとしたら…どうする?」


言いながら男は柄を握る。


「いや、別にどうこうしようって訳じゃあないけどさ。」


女性は両手を上げた。大男もそれに続く。敵対する意志は無いようだ。


「情報収集の途中で見つけたからさ。一応お知らせ?って感じっさ。」


そこで一拍置いてから、さらに女性は告げる。



「捜してたよ…って、もう知ってそうな顔っさね。」


91 : ◆/1D/7Oju4Q [saga]:2011/09/04(日) 21:16:35.14 ID:CEgnV4+AO
本日(?)はこれまで。

不定期な上に途中で消えて申し訳ないです。


次は…三日以内です。期待せずにお待ち下さい。

では。
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/09/04(日) 21:20:32.23 ID:FB480rMyo

ゆっくり書いてけよー
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/09/06(火) 11:48:40.71 ID:3FsmwAIjo
乙した
94 : ◆/1D/7Oju4Q [saga]:2011/09/07(水) 21:45:51.55 ID:MKltR8kAO
短く、要領の得ない言葉。
だが、それだけで充分。
そう、捜してるのだ。
まだ、こんな男を。
けど、何の為に?
ただ、正直に。
今も、なお。
解らない。




男の思考は一度停止したが、立ち直る迄にそう時間はかからなかった。


「…そいつは、今何処に?」


理由が分からなくても、状況は分かる。


「んっと…。別れたのがこっから西に六里先の林道だったから、多分前の町くらいだと思うっさ。」

唇に指を当てて女性が答えた。


存外に近い。『彼女達』はもうすぐそこまで来ていたのだ。




「そうか…。わざわざありがとうな。」


言って男は踵を返した。
更に先へ進む為に。



『彼女達』から逃げる様に。


95 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/09/07(水) 22:43:54.86 ID:MKltR8kAO
「おや、行っちゃうのさ?何なら案内してやってもいいっさ。」


女性が残念そうに眉を曇らせる。他の、特に女の団員からは非難の声すらあがった。


「……………。」


「まあまあ落ち着け皆、分かるけどさ。 
無理に連れてく気はないんだけどさ、ただ個人的には会ってほしいかなー…ってさ。」



「…悪いが、そのつもりはない。」


背を向けて、男は歩く。


96 : ◆/1D/7Oju4Q [ sage saga]:2011/09/08(木) 03:16:20.97 ID:SLcoUqnAO
「…はぁ…お前さんも変わってるっさね。」


歩き続ける背中に女性は言葉を投げかける。


「なんでそんなに会いたくないのか知らないけどさ…会いたがってたよ、特に活発そうな子とかさ。」



男は答えないまま、雨の中に消えていった。






「…いいさ。こっちで勝手に調べるからさ。ね、のんちゃん。」


「…ウス。」



その宣言を聞く団員は、大男以外にはいなかった。


97 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/09/08(木) 03:19:19.69 ID:SLcoUqnAO
今日はこれまで。

また三日以内に。

98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/08(木) 09:15:23.52 ID:tn1IyFipo

99 :VIPにかわりましてPEPPERがお送りします [sage]:2011/09/08(木) 21:25:21.24 ID:I8TPzhoAO
>>1


なんか勇者さんがせっちゃんで再生されるwww
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/09/09(金) 05:42:23.75 ID:qIDoYaU1o
乙した
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2011/09/09(金) 08:46:42.47 ID:Z3sIEyiko
>>99
これが再生厨という奴らか・・・
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/09/09(金) 18:25:12.32 ID:LE+bOwdAO
面白い。これスピンオフなの?本編も読みてえな
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/09/09(金) 19:00:19.71 ID:oEh+j4HAO
>>102

本編?はこちら

女勇者「また一緒に旅しようよ。」
http://ex14.vip2ch.com/test/mread.cgi/news4ssnip/1312023573/-20
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/09/09(金) 20:06:07.16 ID:LE+bOwdAO
>>103

お、ありがとう。
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山梨県) [sage]:2011/09/10(土) 20:55:07.28 ID:7HtwCg9v0
乙です。
女勇者が探している人の話なのですね
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/09/10(土) 21:08:23.61 ID:U2zCNC3Io
あっちと繋がってたのか…知らずに読んでた…
107 : ◆/1D/7Oju4Q [saga]:2011/09/11(日) 20:34:35.33 ID:45j2E/GAO

雨が上がった次の日の朝、既に男は歩みを進めていた。


盗賊の一団と別れ去った後、一度休憩をとり、夜明け前にまた出発したのだ。



しかし男の顔に疲れは見えない。


そもそも男は基本的に無表情で、感情や身体の不調を余り表に出さない事が多い。




だからこれは珍しい事なのだろう。


男の表情が、明らかに変わった。


何かを踏みつけたのでも、誰かに出会ったのでもなく、唐突に。


男は顔を上げ、独り言を呟いた。




「…繋がった…のか?」

108 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/09/11(日) 22:34:06.36 ID:45j2E/GAO
何が繋がったのか、何と繋がったのか、どうしてそれが分かったのかも解らない。


歩む内に忘れてしまうような奇妙な感覚。


それでも確かに感じた『繋がった』という確信。



それが 何であったかを、後に知ることを男はまだ知らない。


男は、ただ歩いているだけだからだ。

109 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/09/11(日) 22:40:30.30 ID:45j2E/GAO

てな訳で、こっちは短めで終了。

さっさと向こうを進めなきゃいけないから許して下さいね。


それではまた明後日…ぐらい?
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/09/11(日) 23:47:22.42 ID:nf7sKI5Yo

のんびり書いてくれや
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/09/12(月) 09:07:45.15 ID:hrHmpjMxo
乙した
112 :(以下、不定期更新) ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/09/20(火) 07:51:45.57 ID:IhHhteaAO
次の町に着く頃には、もう日が傾きかけていた。


奇妙な形をした町だった。


直径が600〜700mの巨大な穴の側面に道を作り、人々はその外側に家を掘って暮らしていた。


螺旋状になった道を下へ下へと下っていくと、底には直径100m程の広場があり、半分は農園であった。


大穴の深さは50〜100m程で、傾斜的にどの家からもこの農園が見える様になっていた。


広場で子供たちと遊んでいた青年が男へと歩み寄った。


「ようこそ、勇者様。」
113 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/09/20(火) 17:52:01.85 ID:IhHhteaAO
別に隠している訳ではない。


ただ、名乗る前に言い当てられた事に男は少し驚いていた。


「この人が勇者様なの?」


一人の少年が鬼ごっこを中断して青年に話しかけた。


「そうだよ。ほら、あの人の左手を見てごらん。」


青年は言いながら男の左手を指差した。


「あの複雑な紋様が勇者である証拠だよ。ですよね、勇者様。」


「…ああ、そうだが…何故知っている?」


そう、模様のことはこの辺りには知れ渡っていない筈なのだ。


その理由を、青年はあっさりと答えた。


「この町には何度か勇者様が来ているのですよ。勿論、私よりもずっと前の代に。」


勇者とは血の繋がりで選ばれるのではない。


『神の啓示』によって、それぞれの大国の王に伝えられる。


時には一国の王妃だったり、時には奴隷の子だったり、一介の老兵だった時もあった。


そんな統一性のない勇者達の唯一の共通点。


それが紋様。


「私は祖父から聞きました…。」


まじまじと見つめてくる青年と少年に加え、それまで遊んでいた子供たちも集まり、男の周りが大分賑やかになった。

114 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/09/21(水) 08:16:54.32 ID:xd9L2lDAO
「どこか泊まれる所はないか?」

男がそう切り出したのは、子供たちの質問攻めから解放された後だった。


ここからでは見えないが、もう日は沈んでいるのだろう。


「そうですね…、では私の家で。ちなみに農園に一番近いとこですよ。」


帰っていく子達に手を振りながら青年が答えた。


男は農園近くの道を上がった直ぐにある穴に目をやった。


外から見ると、他の穴(家)と変わらないように感じた。


町の長でも他と平等、不自由を物ともしない民の性格、子供たちの笑顔。


いい町だな、と男は思った。
115 : ◆/1D/7Oju4Q [saga]:2011/09/21(水) 08:18:29.88 ID:xd9L2lDAO
暫くあけます。


では、また今度。
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/09/22(木) 10:53:42.53 ID:MkuLOHI+0
期待あげ
117 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/01(土) 01:28:46.42 ID:TDjC22lAO


夜、豪華とは言えないが温かい夕食を頂きながら、男は疑問を口にした。


「農園の近くに開いていた穴…住まいでは無いようだが、あれはなんだ?」


「ああ、あれはですね…。」


青年はそこで一度口をつぐんだ。
沈黙が、二人をだけの部屋を支配する。




ようやく青年が話を始めたが、口調が真剣になっていた。


「…元・坑道、現・ダンジョン…としか言い様がありませんね。」


青年曰く、数年前から魔物が住み着いて坑道は機能しなくなったのだという。


何度か討伐隊も出したもののことごとく打ち負かされ、坑道から町へ出てこない事もあり半ば放っておかれていた。


「ですが不安である事には変わりありません。そこで相談なのですが…。」


「…俺に魔物達を討伐しろ、と?」


「話が早くて助かります!」


青年が声を上げ、男は肩をすくめた。
118 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/01(土) 01:55:44.64 ID:TDjC22lAO
「気乗りはしないが…明日の昼でいいか?」


そう言ってすっくと立ち上がると、男は部屋の端に座り込んだ。


「食事はもういいのですか? それに寝るのなら私のベッドを…」


「 いい。」


色々と気配りをしてくれる青年を男は一言で制し、壁に背を預けたまま眠りにつこうとする。


「…勇者というよりも、旅人っぽい人ですね…。」


「どちらも大して変わらないさ。」


「そうですか?でもほら勇者のイメージ的には…。」


今度は朝まで返事がなかった。
119 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/02(日) 21:36:34.67 ID:b2d2bWyAO
翌日、日の出を大分過ぎた頃に目を覚ました男は、何やら広場の辺りが騒がしくなっているのに気付いた。


どうやら栽培していた農作物のことで一悶着あったらしい。


「おいお前、お前が盗ったんじゃないか!?」


「そういうアンタこそどうなんだ!」


「まあまあ落ち着いて。」


取っ組み合い寸前の農夫二人を青年が宥めていた。


「どうしたんだ?」


「ああ、勇者さん。聞いて下さい、私達の野菜が…!」


青年が指差した方向を見ると、土を踏み荒され実も盗られた無惨な畑が広がっていた。



男は一つため息をつくと、畑に足を踏み入れた。


「おい! 一体何を…!」


「黙っていろ。」


男性の制止を振り切って、男は倒された作物を調べ始めた。


「だいたい、作物を奪うだけならまだしも、畑までメチャクチャにするメリットなぞどこにも無いだろ?」


「そうだな…この町にはそんな無駄な事をする奴はいない…。」


「…俺を疑っているのか?」

120 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/02(日) 22:31:49.13 ID:b2d2bWyAO

疑惑の込められた目、目、目。


男には理解出来なかった。


「俺はこんな足の形をしているのか?」


こんなにも簡単な事なのに。


「これは…なんということだ。」


明らかに魔物のモノだと分かる足跡がいくつもあるのに気付かないことに。


「信じられん…だって今まで…。」


「そ、そうだ!どうして今になって…!」


辺りがまたざわめき始めた。


「そんなに重要な事では無いだろう?」


そう言って男は坑道へと歩き出す。


「畑が荒され、その原因が向こうにいる。それだけ解れば充分だ。」


それ以上は何も言わず、男は穴の中へと消えていった。


町の人達は男の迫力に押され、ついていくことも出来ずにただ立ち尽くしていた。
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/03(月) 06:43:46.45 ID:9LLMjbySO
122 :(人がいた…だと…?) ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/04(火) 08:00:24.91 ID:MgkKjAGAO
暗がりの中を男は灯りも着けずに進んでいく。


周囲には魔物のものと思われる気配がしたが、襲ってくる事はなかった。




暫く歩くと、妙に明るい場所に辿りついた。


広間の様な空間で、地上まで伸びる幾つもの大穴によって日の光が差し込み、その天井の高さを物語っている。


地面から乱立している水晶が光を反射して、辺りを仄かに照していた。


自然に出来たとは思えない幻想的な光景に心を奪われていると、照された場所よりも更に向こうから


「ん…町の者ではないようダナ…。」


の太い声を響かせて、3メートルを越す牛鬼が姿を現した。

123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2011/10/04(火) 08:32:57.71 ID:6opbjFDEo
|´・ω・)ミテルヨー
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/04(火) 12:29:15.61 ID:UpcO714IO
おっつん!
125 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/04(火) 17:12:17.97 ID:MgkKjAGAO
「お前がここの長か?」


「ああ、そうダ。」


身の丈程もある大斧を引きずりながら、牛鬼がゆっくりと近づいてくる。


「…やはり駄目だナ。野菜では力が出なイ。」


「あの足跡はお前のか。」


「たらふく喰ったが全然駄目ダ。我の食い物ハ…。」


振りかぶり、男目掛けて大斧を振り下ろす。


地面を砕く音が響いた後、牛鬼は静かに続けた。


「人間に、限ル。」


咆哮。坑道中に響き渡り、先まで様子見していた魔物逹が男を包囲するように駆け寄った。


「…大した趣味だな。」



無表情だった男の顔が変化した。


但し恐怖にひきつった訳でも焦りでしかめた訳でもない。




引き裂くような笑みを浮かべたのだ。
126 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/04(火) 20:23:30.67 ID:MgkKjAGAO

「気でも狂ったのカ?この状況で笑うなド…。」


「いや、この状況だからだ。」


そう言って男は鞘からゆっくりと剣を抜き、そのまま腕をダラリとさげたままこうも続けた。


「どうして人間なんだ?大した栄養にもなりはしない…魂を喰うってクチか?」


「それもあル。だがなんといっても殺り甲斐がナ。」


周りの魔物逹と共に牛鬼も声をあげて笑う。さぞ愉しそうに。


「そうか。」


ツカツカとワザと音を出しながら、男はばか笑いしている蛙男の側まで近寄り、


「はははは――――はっ!?」


振り上げた剣で両断した。


倒れた『ただの肉塊』に剣を突き立て、なお笑顔のまま男はこう言い放った。




「遠慮する必要はなさそうだ。随分と楽な依頼で助かった。」


周囲の魔物が襲いかかるのと、男が右手に剣を構え、左手に炎を宿すのがほぼ同時だった。

127 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/04(火) 23:04:09.64 ID:MgkKjAGAO
――――――――――

――――――――

――――――

――――

――




「馬鹿な…こんな事があってたまるカ…。」


襲い来る敵を切り裂き、蹴り飛ばし、焼き尽くし、両断し、焼き払い、一閃し、みるみるうちに命が減っていく。


斬―蹴―炎―閃―倒―奏―叫―弾―断―穿―斬―斬―斬―斬―斬―…。


舞うように、踊るように、男は魔物の命を刈り取っていく。


「あってたまるカ…! あってたまるカ!!」


最後の一匹になってしまった牛鬼が男目掛けて飛び上がった。


落下の勢いをつけて大斧を振り下ろす。


「ぬうううン!!」


鉄の柱をも真っ二つにする程の一撃は、しかし男には当たる事はなく、


「甚振る趣味はない、早々に果てろ。」


男の剣撃によって、牛鬼の頭が宙を舞った。

128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/10/05(水) 00:41:23.77 ID:byl8xqIl0
乙!!
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鳥取県) [sage]:2011/10/05(水) 18:38:19.86 ID:7htcfk/j0
乙は今日だけだかんナー
130 :↑どういう意味? ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/05(水) 20:36:53.47 ID:6Enfo0WAO

首を撥ね飛ばされた牛鬼の躰は崩れ落ち、頭は暗がりへと転がっていった。


と、何かにぶつかったのか、急に止まって頭は喋りだした。


「…何ダ…お前等ハ。 アイツの仲間カ?」


「…そうだよ。」







現れたのは、良く知った顔の女だった。


かつて苦楽を共にし、男が命を懸けてでも護りたいと今でも思う女が、仲間を引き連れて男の眼前までやって来たのだ。


彼女は、彼女達は。


魔王を倒すという目的以外に、もう一つの目的を持って旅をしてきた一団は、


『目的』を前にして、各々の表情を顕にし、


先頭にいた『右手に証を持つ』女が、静かに口を開いた。
131 : ◆/1D/7Oju4Q [saga]:2011/10/05(水) 20:43:16.49 ID:6Enfo0WAO







「…久しぶりだね、ゆうしゃ。」







「…ああ、半年前に別れて以来だな。」


132 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/05(水) 22:13:50.57 ID:6Enfo0WAO

「あァ…本当に、久しぶりだな…。」


顔に『怒り』を顕にした先程とは違う女が男との距離を一瞬で詰め、背にさしていた大剣を引き抜き振り下ろした。


甲高い響きの後、ギチギチと音をたてて男と『怒り』がせり合う。



「会いたかったぜェ…! 殺してしまいたいぐらいになァァァ!!」


相手を押し退け、一旦男は距離をとった。


「そうか? 俺は逢いたくなかったがな。」


「そうかよ!!」


言葉を切り、再度剣を交え始める。


その速度を『怒り』は徐々に吊り上げていく。

133 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/05(水) 22:46:46.21 ID:6Enfo0WAO
金属がぶつかり遭う最中、弱々しい声が男の耳に届いた。


「な…なんでこんな所にいるんですか〜…。」


やって来た五人の中で一番小さな、『困惑』を浮かべた少女の呟きだった。


台詞を盗られたな、と男は思った。


もう二度と逢わない様に。


最悪な別れ方をしたというのに。




「余所見してンじゃねェよ!」


『怒り』の剣撃で現実に戻され、乱雑に、しかし恐ろしい速さで振り回される大剣を捌いていく。



そして、男は左手を前に突き出す。


トンッ…と、先までのせり合いにそぐわない優しい音と共に『怒り』の体が後ろに押され、


「……………ッ!」


男が右手で素早く切り上げて、『怒り』は頬を浅く斬られた。


「ほう、退くことを覚えたか。だいぶ強くなったんじゃないか?」


「…ほざけ…。」

134 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/05(水) 22:48:56.07 ID:6Enfo0WAO
また明後日。交互に読めば一番いいのかな?

おやすみなさい。
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/10/05(水) 23:43:44.14 ID:byl8xqIl0
明後日かぁ・・・遠いな
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山梨県) [sage]:2011/10/06(木) 05:50:35.53 ID:6wE0Qx4+0
乙です
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鳥取県) [sage]:2011/10/06(木) 21:58:25.77 ID:/QHmF1tM0
>>129はストライクウィッチーズというアニメのエイラ・イルマタル・ユーティライネンちゃんという子のセリフ
牛頭の口調にカタカナがついてるのを見てつい


気に障ったならすまんこ
138 :↑後で調べてみよう ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/07(金) 23:11:50.31 ID:owH3MCxAO
頬から流れる血を拭いながら、『怒り』は尚も闘志を剥き出しにし、大剣を構えていた。


「チッ…かすり傷つけた位でいい気になってンじゃねェよ…!」


剣を地面に突き刺し、首を回す。


「そうだな。かすり傷一つ負わせられないお前と大差無い。気を引き締めなければ。」


「……………ッ!」


歯ぎしりする音が聴こえた。彼女も本当は分かっているのだ、彼我の実力差を。


すかさず仲間の一人が彼女を諫める。


「熱くなっちゃ駄目よ!」


対して、先程まで『困惑』を浮かべていた少女が一歩前に出た。


「見え透いた挑発ですね〜。そんなのに引っ掛かるひとなんて…。」


少女の服がフワリと舞い、短い言葉を紡いだあと、


「案外いたりして〜?」



瞬間、少女の杖から青白い光が男へと一直線に向かっていった。


勇者「!」


男は、初めこそ驚きはしたものの、冷静に雷を剣で薙ぎ払った。


「…驚いた。よくそんな顔で高位の魔法が放てたものだ。」


そう、彼女の顔には、先と同じ『困惑』がはりついたままだったのだ。


「友達を馬鹿にした、それだけの理由があれば充分です〜。」


更に一歩前に踏み出し、『怒り』と並んだ。
139 :一旦寝ます ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/07(金) 23:28:53.24 ID:owH3MCxAO

「震えてるぞ?」


口の端を吊り上げて、男は『困惑』を見やる。


「…ぅ…。」


それでも構えた杖を降ろそうとしない。


「あー、女の子を泣かしたな?ヒドイんだー、だーめなんだー。」

二人を諫めていた女が、『困惑』の肩に手を置いて男を見た。


軽々しい口調とは裏腹に、その顔に貼り付いていたのは『敵意』だった。


「…本当に、イケナイ奴…。」


そう言って『怒り』と『困惑』の間に立つ。ダラリと両手をさげて、何も持たずに。






次々と、対立していく。


そんな中、まだ一歩を踏み出せない者と、踏み出さない者がいた。


「…ゆうしゃ…。」


「…やれやれ…。」


二人はまだ、動かない。
140 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/09(日) 00:03:02.16 ID:5E24P35AO

「私は…未だにお前の考えがわからねェよ…。」


『怒り』を顕にしてした女が、そこで初めて悲痛な表情を見せた。


「いきなり何だ? 別に分かってもらおうとは思ってないが。」


「じゃあ…! どうしてあんなヒドイ事をしたんですか〜!?」



半年前、仲間と決別するために男がした行為。多分その事だろう。


「お前に話す必要はない。」


分かってもらおうとは思わない。
理解も共感も要らない。

反省も後悔も、していない。


「そう…。 でもどんな理由であれ、貴方を許す気はないわ。」



無論、意志を曲げるつもりもない。



「…そうか…。」


男が武器を構え、それに応じて三人の『敵』も身構える。



どちらも暫く動かず、男が今まさに一歩踏み出そうとした時、





後ろにいた女が駆け寄って男の前に立ち塞がり、三人を守るように両手をひろげた。


「…そこをどけ。」


「…いやだ。」


女が下を向いていたので、表情は分からなかった。
141 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/09(日) 02:06:41.36 ID:5E24P35AO

俯いたまま、女は静かに喋りだした。


「喧嘩する理由なんてないよ…。」


表情が険しくなる。この話を聞いてはいけないと、心のどこかで言っている。


「私はもう気にしてないからね? ゆうしゃ。」


違う。俺がお前に思わせたかったのはそんな事じゃない。それではやった意味がない。


女が言った言葉は男にとって予想外で、思わず口から否定がもれる。


「あの時だって、ちゃんとした理由があっての事なんでしょ?」


「…違う…。」


そんな大層な理由じゃない。非常に身勝手な、しょうもない理由だった。
割り切るまでにだいぶ時間が掛かる程の、そんな理由だった。


「…寂しいよ。 あんなに一緒だったのに居なくなっちゃってさ。」


「違う…!」


止めろ、聞きたくない。そんなことを言われる為にお前を傷つけた訳ではない。違うんだ。


「あれからね、私ちょっとは強くなれたんだよ? もう心配いらない、足手まといにはならないから。 だから…。」


外傷の一切ない男の心が安定を失っていく。


「違う! 勝手な勘違いをするな! 俺はただ…!」


聞きたくない、違うだろ、そうじゃないだろ!
もう止めろ、止めてくれ、こ
142 :あれ? ◆/1D/7Oju4Q [saga]:2011/10/09(日) 02:29:41.70 ID:5E24P35AO

もう何も言わないでくれ。
優しい言葉をかけないでくれ。


「…だから…。」




『これでよかった』と、そう思ったままでいさせてくれ。
俺を庇う様な事を言わないでくれ。






「また一緒に旅しようよ。」






 決心が、鈍る。
143 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/09(日) 02:32:36.84 ID:5E24P35AO
連休中に終わりたいけど無理かもです。 頑張ってみます。

おやすみなさい。
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/09(日) 02:36:21.96 ID:QHKPBtj7o
両方更新してるんだなおっつん!
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/09(日) 02:36:55.66 ID:QHKPBtj7o
両方更新してるんだなおっつん!
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage saga]:2011/10/09(日) 23:01:57.12 ID:y+lhDBG50
乙です。
147 :お粥うまー♪ ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/11(火) 21:32:10.22 ID:TGqpxu3AO

それは希望に満ちた言葉。

長い付き合いの女から『いっしょにいたい』と言われ、男は内心ぐらついていた。


飛び上がるほど嬉しくも、同時に危険を孕んだ言葉。


勇者の旅は決して楽なものではない。


困難に立ち向かい、救えなかった者の責を負い、身も心もボロボロになっても、魔王を倒すまで終わらない。


死すらも許されない旅は、仲間を増やしても癒しきれない傷を幾つもつけていく。




そんな役割を負うのは一人でいい。


今回に限って『神の啓示』によって選ばれたのが二人だったとか何だとか言ってるが知ったことか。


自分の大切な人を、危険な旅へは連れていけない。



そう思って半年前に、着いていく気を起こさせないような『最悪な別れ』を演出したというのに。








男は一度深呼吸をし、表情を消した。


もう一度、演じなければいけないのか。


気が重い。周りの声が聞こえない。でももうそれでいい。
聞きたくないから。





「…認めない。俺はお前を認めない! 絶対にだ!!」


左手に炎を宿し、右手に剣を構える。


仕方ない、もう一度、打ちのめそう。
148 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/11(火) 22:52:20.85 ID:TGqpxu3AO
『敵』を打ち砕く決意をした時点で、最早勝負は決まっていた。


弾丸の様に突っ込み、剣と炎と拳と脚で相手を行動不能にしていく。


『怒り』を突き崩し、『困惑』を蹴り飛ばし、『敵意』を焦がし、
召喚された氷の化身も、善戦したが一歩及ばず、男の前に倒れ伏した。


そして男は、最後に『決意』の意識を刈り取った。


これで『敵』は居なくなった。


残ったのは、信念とエゴのために仲間を斬った男と、







仲間のピンチに一切手を出さなかった、かつての朋友の二人だけだった。



「…で、いつまでお前は傍観者気取ってるんだ?」


「貴方の我儘が終わるまで、ですよ。」


壁に凭れて遠くから眺めていた『理解者』が、ようやく姿が見える位置にまで歩いてきた。


「私が傍観者なら、貴方は役者ですね。」
149 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/12(水) 23:48:22.14 ID:1JmDIHBAO

「どういう意味だ。」


ピクリと眉を動かし、男は漸く光の当る場所まで来た『理解者』に尋ねた。


「勇者さんを危険に捲き込まないために、敢えて憎まれ役やっている所とか。まさに役者ですよ、貴方は。私には真似できません。」

やはりコイツには見透かされてるか、と男は改めて感じた。


「…全く、相変わらずお前には隠し事は通用しないな。」


そして、次の一言で更に男の顔は曇ることになる。


「何も私だけではありませんよ、大根役者さん?」


どういう意味か、思考が廻らなかったのではなく、理解したくなかった。


「勇者さんにもバレてますよ、貴方の決意。」




景色が、ぐらついた。


きっと今の自分は、誰が見ても動揺していると答えられるのだろう。



そう思える程、衝撃的だった。
150 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/13(木) 08:21:52.57 ID:HuOMmFIAO

「だから突き放しても追い続ける。貴方を助けようと、ね。」


「そう…なのか?」


情けない声が出てしまった。たったこれだけの言葉で、揺れてしまう決意ではない筈なのに。


「貴方の選択は、彼女を傷つける道なのです。」


『理解者』は、男に更に追い討ちをかける。故意にかどうかは解らないが。


「それでも貴方は、彼女の敵で在り続けられますか?」


「だが、しかし…俺は…。」


迷いを追い払う様に、ごく小さな声で紡いでいく。



崩れかけた意志を、もう一度固める様に呟いた。
151 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/13(木) 08:34:59.92 ID:HuOMmFIAO








「…それでも俺は…。」






152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/10/13(木) 15:15:13.75 ID:QkrwSRnwo
それでもなんだよてんぽわりーな
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/10/13(木) 16:43:37.90 ID:6U/2PwAPo
こっちでもスレタイの台詞がきたか
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage saga]:2011/10/13(木) 20:22:13.96 ID:uN2ERSQX0
乙です。
使い分ける>>1に脱帽
155 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/22(土) 22:42:52.80 ID:hcAz4J0AO
絞り出された意志は男自身も驚く程に弱々しく、要領を得ないものだった。


それを聞く『理解者』の表情も陰り、


「…もう、結構です。」



役者云々の話はそこで終わってしまった。



その後男が『理解者』と交わした内容は実に他愛もない事ばかりだった。



男と別れた後、先程まで斬り合っていたかつての仲間のこれまでとこれから、そして自分のこれまでとこれから。


笑い話では遠慮なく互いに笑った。


そうでなくても、自然と顔が綻ぶのを感じた。



半年間一人でいた男にとってはかけがえのない時間だった。






だから、油断していたのだ。

156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/10/23(日) 11:39:03.35 ID:EiaDj+oS0
寝ちゃったのかなぁぁぁあああぁぁぁあああぁぁぁぁぁあああ!?
157 :ごめんなさい ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/23(日) 11:58:10.56 ID:n/mIzPLAO

ふと後ろから声が聞こえた。


呪文の様な、短い言葉が。


振り返ると女が一人、巻物を手にして立っていた。


『敵意』の口元には悪戯な笑みが浮かんでいる。


何をした、と問いただすより早く、男を除く全員が光に包まれていた。


『敵意』が、唄う様に何かを言った。


呆然としていて聞こえなかったが、多分からかう様な内容なのだろう。



何が起きるのか男が理解した直後に、彼等は光と共に




消えた。
158 :また夜に ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/23(日) 14:40:17.82 ID:n/mIzPLAO
――――――――――――
――――――――――
――――――――
――――――
――――
――



ふと顔をあげると、上から差し込む光がだいぶ傾いていた。


それほど長い時間立ち尽くしていたのだろうか。


男は一度目を閉じて深呼吸した。


再び眼を開いて一番最初に視界に入ったのは、物言わなくなった牛鬼の頭だ。



仕方なしに牛鬼の首を、ついでに得物の大斧を掴み、男はもと来た道を帰っていった。


洞窟を出る頃には日が暮れているだろう。


そう思いながら、疲労ではなく重くなった足を引きずっていった。
159 :で、夜である ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/23(日) 22:06:47.81 ID:n/mIzPLAO
――――――――――
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「あ、戻ってきた! おーい!」


「お帰りなさい勇者さ…って、なんですかソレ?」


子供逹の声を聞きやって来た青年町長が男の持ち物を見て、思わず語尾が上がってしまった。


「戦利品だ。 …飾っておくか?」


「私の家にですか!? うーん…。」


想像。大斧が玄関に飾ってあり、室内には魔物の首。ちなみに目は血走ったままである。


「せっかくですが、その魔物の頭は捨てておいて下さい。」


「まあ討伐の証として持ち帰っただけだからな、気に病むことはない。」


と言いつつも肩を落とす男を見かねた青年が、討伐祝いとしてご馳走を振舞うことを提案し、男はそれに甘えた。




子供の一人が男に駆け寄り質問をした。


「ねー勇者さん? 勇者さんの後に女の子逹が洞窟に入ってったんだけど、どこいったか知らない?」


「ん? ああ…別の出口から帰っていったよ。」


「へー、でもそんなのあったかな…。」


「あったんだなあこれが。さ、今晩はご馳走だぞ?」


大斧を持ち、男は青年の家へと歩いていった。
160 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/23(日) 22:28:21.25 ID:n/mIzPLAO

夜、元々活気があった町がお祭り騒ぎで更に賑やかになった。


飲めや歌えや騒げや…討伐した本人そっちのけで大盛り上がりで、大人も子供も踊っている。


自身に注目が集まらなかったのは男にとって好都合だった。


身支度を済ませ、なんとなく気配も消して広間を出て、町の外へと上がっていく。





螺旋の一本道の中間辺り、前方に人の気配を感じた。


「…もう、行かれるのですか。勇者ってどうして別れの挨拶をしないのでしょうか。」


「その口振りだと、前もそうだったようだな。」


はい。と、町長の青年が答えた。


「次の日の朝にはドロン…でした。恥ずかしいのですか?」


「あの騒ぎ様だと、俺もそうなりそうな気がするのだが。」


「ふふ、きっとそうでしょうね。」


含み笑いをした後、青年の表情が少しだけ陰った。


「先程洞窟内にいった人達…知り合いですよね?」
161 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/23(日) 23:52:26.12 ID:n/mIzPLAO
嘘を吐いても仕方ないので、男は正直に話した。


「ああ、かつての仲間だ。」


「どうりで…『右手の証』なんて伝記にもありませんでしたよ。」


勇者が同時期に二人いるというのは前例がないらしい。男も初めて知ったのか、表情が固まった。



「その人達とは…洞窟内では何があったのですか?」


「……………。」


「…すみません、忘れて下さい。」


青年は道の脇に寄った。


「貴方の旅路に幸多からんことを。」


男は頭を下げると、青年の横を通ってまた上がっていった。


「…貴方の道が、もう一度彼女達と交わらんことを…なんてね。」

青年は道を下り、広間の喧騒へと消えていった。
162 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/24(月) 00:34:44.59 ID:ObL3/mgAO




雲一つない夜空の下を、一人の男が歩いていた。


いつもなら野営の準備に取り掛かる頃だが、町で腹ごしらえも済まし、月明かりで道も見える。


別に急いでいる訳ではない。


ただ歩きたい気分だっただけだ。

いつもどうりに。

163 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/24(月) 00:46:44.80 ID:ObL3/mgAO

暫く歩くと、樹の生えていない広い場所に出た。


近くには湖もあり、鏡のように星空を映している。


絵に描いたような風景だった。


男は今日の野営場所をここに決め、離れた所にあった木を切り薪にして、魔法で火を灯した。



そうして火の近くに寝転がると、疲れがドッと出たのか、男はそのまま眠ってしまった。

164 : ◆/1D/7Oju4Q :2011/10/24(月) 00:59:10.79 ID:ObL3/mgAO
おやすみなさい

またこんど。
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山梨県) [sage]:2011/10/24(月) 06:28:30.55 ID:IPjVJE7r0
乙です
166 : やっと ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/24(月) 22:34:10.01 ID:ObL3/mgAO




――――― 音が、聴こえた。


何かが羽ばたく様な音が。


男が目を開け音のする方向を向くと、何かがこちらに近づくのが見えた。


立ち上がり、愛用の剣に手を伸ばす。




膨大な魔力を秘めたソレは、羽ばたきながら降下して来る。


翼の大きさに対して体は小さく、男の位置からはよく見えなかった。


巻き起こる風で焚火が消えた。


残されたのは月と星の光だけだった。




舞い降りたソレは体を翼で覆い、そのまま動かない。



男は鞘から剣を抜き、片手で構えたままソレに近づく。




一足で斬撃をいれられる距離まで男が来たときに、ようやくソレは翼を広げた。






そこにいたのは…。

167 : ここまで ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/24(月) 22:49:24.20 ID:ObL3/mgAO






その少女は痩せていた。

希少な青みがかった髪は流れる様に風に靡き、

エメラルド色の大きな目はじっと男を見つめ、

肌の色に近い白のワンピースから伸びる手足には何も纏っていない。




「…やっと…みつけた…。」



商品の町で別れたあの少女が、



背中から真っ白な翼を生やした少女が、




男の前に、立っていた。

168 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/24(月) 22:52:55.20 ID:ObL3/mgAO

来たよ!

あー長かった、あー疲れた。

スレ立てる前最初に頭に浮かんだのがこの場面なのでした。


おやすみなさい、 また今度。
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/25(火) 18:24:25.71 ID:HGSZ/E770
少女たんキターー!!
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山梨県) [sage]:2011/10/27(木) 00:13:34.80 ID:KhIeitcU0
乙です
男に新しい仲間かな?
171 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/28(金) 08:05:34.65 ID:IT1OhItAO

少女の翼が水に落とした墨の様な靄となって消えた。


何も言わずに、男を見ている。


男は剣を鞘に戻し、直ぐに出せるようにしていた炎の詠唱を止めた。


何も言えずに、少女を見ている。



お互いに動かず、ただ木の葉が風に揺れる音以外は聴こえなかった。

172 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/28(金) 20:24:30.63 ID:IT1OhItAO

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


目の前の光景が信じられなかった。

あの時置いていった少女が、自分を追って翔んで来たのだ。

それも、見た目からは考えられない多大な魔力を内に秘めて。

こんな自分に、会うためだけに。



何が彼女をそこまでにしたのか解らないが、こうなってしまった原因の一端は自分にある。

多分、きっと、恐らく。

なら、これから俺がする事は、決して間違いでは無い筈だ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



不意に男が両手を広げた。

ゆっくりと、あくまでも自然に。


少女はキョトンとして小首を傾げる。

何を意味しているか解らないから。



そんな彼女に男は一言、





「おいで。」
173 : ◆/1D/7Oju4Q :2011/10/28(金) 20:27:54.13 ID:IT1OhItAO

今日はこれまで。

ボキャブラリーの少なさに絶望したっ!


また今度ね。
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/28(金) 20:37:04.10 ID:YxZL6W1M0
ねぇぇぇるぅぅなぁぁぁあああ!!
いや乙だよ!?乙だけど!
もおチョイがんばれよおおおお!!
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山梨県) [sage]:2011/10/29(土) 23:32:30.59 ID:AdNLZqml0
乙です
男がカッコよすぎです
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/30(日) 02:25:43.87 ID:+0RBMeyM0
久しぶりにキタと思ったら少しだけかよ(;_;)

177 :(色々と申し訳ないです) ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/31(月) 18:17:40.65 ID:nqgzDkuAO
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――――――
――――
――



月は尚も夜を照らす。


その空を鏡の様にうつす湖の畔に、焚火に木を放り込む一人の男が座っていた。


その傍らには、一人の少女。


男に体をを預けてすやすやと寝息をたてていた。






歓迎発言の直後に少女に抱き付かれて
頭をなでようとして逆に撫でられて
ただ『ありがとう』と『ごめんなさい』とだけ言われて
自分の横に座らせていたらいつの間にか寝てしまっていて



ようやく静かになってから、男は今日を振り返る事が出来た。




かつての仲間逹と再会し別れた。
気にかけていた少女とも再会した。
そしてその少女が新しい仲間になる。
これだけの出来事が一日で起きたのだ。


これを奇縁と呼ばずして何と呼ぶか。


まるで仕組まれたかの様ではないか。





もっとも、悪い気はしないけれども。


そこで男は思考を止め、眠りについた。


夜が明けるまで、二人は寄り添ったままだった。

178 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/31(月) 18:36:10.64 ID:nqgzDkuAO
朝霧が消え、見通しの良くなった林道を、一人の男が歩いていた。


否、彼はもう一人ではなかった。


左手が、小さな手に繋がれていた。


魔族の刻印を包帯で隠した右手を男の左手ごと振りながら、笑顔を浮かべた少女が



男の隣を歩いていた。




『彼等』は歩く。目的を持って。



先へ、ずっとずっと先へと。

179 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/10/31(月) 18:37:36.64 ID:nqgzDkuAO






   続く???



180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) :2011/11/05(土) 11:36:04.90 ID:yv+gNm4A0
乙かれさん。

しかしその?の数はなんだ?
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(山梨県) [sage]:2011/11/06(日) 03:14:18.99 ID:OPmwKBDg0
乙です
182 : ◆/1D/7Oju4Q :2011/11/07(月) 17:55:49.55 ID:fY2U87iAO
一週間程考えてみましたが、ここで終わっておくのもいいかなと思い始めました。

優柔不断で申し訳ないですが、どうすべきでしょうか?
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) :2011/11/07(月) 21:51:01.54 ID:IAzNWRwy0
向こうが一段落したらこっちに…てのはどうよ?
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(神奈川県) [sage]:2011/11/07(月) 22:22:14.75 ID:RLDdF/wO0
>>182
せっかく少女が再登場したのにそれはあんまりだよ・・・
まだ3ヶ月まで時間はあるし ゆっくり考えて書いてくださいお願いします
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/07(月) 22:34:19.88 ID:kgiKtEwDO
読んでる奴に聞いたら続けてって言っちゃうよ
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(千葉県) [sage]:2011/11/09(水) 02:18:54.95 ID:7uqIsTTvo
広げすぎてどうにもならなったんだろ
どうせまた同じようなこと繰り返すんだろうしもうSS書くのやめとけ
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(北海道) [sage]:2011/11/09(水) 18:03:08.96 ID:6EFlsEiAO
この2人の話も読みたいから続けてほしいよ
あっちが一段落してからでもいいからさ
188 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/11/21(月) 21:14:02.71 ID:Lf+sCPYAO
雪の様に白く塗られた家々に、道の脇に植えられた木々の緑が映える。

町の中央に鎮座する噴水からは絶えず水が湧き出で、その中心に位置する女神像の頬を濡らしていた。



一見するとただ小綺麗なだけの町だが、そこにはどうしても拭いきれない違和感があった。


一つは、さほど高地でもないのに昼間から霧がかかっていること。

もう一つは、人が住む環境としては良好であるにも関わらず誰一人と姿を見せず、水をうった様に静まりかえっていること。



「…だれもいないね。」


「そうだな、気配すらない。」



男が少女と合流してから初めて訪れたのは、そんな奇妙な町だった。

189 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/11/21(月) 22:23:33.96 ID:Lf+sCPYAO

朝と昼の境目頃に町の入り口を潜って暫く歩き続けてみたものの、誰とも、そして何ともすれ違う事なく今に至る。

風はなく、ただ噴水の音だけが広い町に谺する様は神秘さを通り越して不気味さすらあった。



「なんか…このまちヘンだよ。」

恐怖からか、少女は男と繋いだ右手を更に強く握る。


男は歩く速度を徐々に落として立ち止まった。

少女の真向かいに立つと、畏れを取り除く為にか少女の頭を撫でた。


恥ずかしそうに照れる少女を撫でつつ、男は思案をめぐらす。


「……………。」


自分が先程発した言葉に、ふと心に引っ掛かるものを感じたのだ。


『気配すらない』とは言ったが、それはあくまで『人間の』である。

そして『魔物の』ものも感じなかった。

しかし何の気配もしないのかと言われるとそうではない。


『何か』いる。だがそれがなにかは解らない。



いいようのない不安が男を襲う。


「……はあ……。」


溜め息をつき、頭を振る。 直ぐに答えは出そうにない。


「飯にするか。」


時間的にも丁度よく、少女の態度も賛成を示していたので男は昼食作りに取りかかった。

(考えて調査するのは昼食後でもいいだろう)
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]:2011/11/21(月) 22:59:38.39 ID:J8PBE76ko
キターーーーーーー!!
191 :(バレるのはやーー!?) ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/11/21(月) 23:31:14.81 ID:Lf+sCPYAO
遅めの昼食…といっても携帯食料と水だけである。


質素だが栄養は十分に足りる。なので男にとっては何も問題なかったが、



「……おいしくない。」


味を考慮されていない粘土さながらの食感は、初めて食べる少女の口に合わなかったようだった。


(調味料をかけるだけでは駄目か)



誰もいないとはいえ町中の往来で火を焚くのには抵抗があった。

ここが廃墟らしからぬ清潔感を保っているのも要因のひとつだ。

故に男は火を使わない携帯食料に味を加えただけで遣り過ごそうとしたのだ。



「完食出来そうか?」


「……がんばる。」


懸命に塊を口に運び咀嚼する少女を見て、夜までに人を見つけられなければ火を焚こうかと割と本気で悩み始めた男であった。
192 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/11/21(月) 23:40:58.41 ID:Lf+sCPYAO
寝ます。
今週中にはこの町の話は終わらす予定です。

それでは、また明日。
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/22(火) 14:12:17.63 ID:ZKwXtkON0
続けることにしたのな。
不安もあるが期待大。
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) :2011/11/22(火) 19:27:05.14 ID:1zLjZg0L0
こっちの方が好きです
195 :(両方頑張ります!) ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/11/22(火) 22:03:12.40 ID:iBcj+IiAO

食事を終え、男と少女は町を調べてまわった。


人の居なくなった原因を突き止めようとしてみたものの、かえって謎は深まるばかりだった。



大規模な反乱の跡はなく、集団失踪かと思われたがそうでもない。


幾つかの家々にお邪魔してみた男と少女だったが、家具や絨毯に道具、工芸品に至るまで全てがそろっていた。



そうこうして、只今八軒目の邸宅にお邪魔中である。



「……これはなにかな?」


「どうした?」


少女が何か見つけたらしい。

手掛かりになる物かもと男も期待する。


「……………。」


「……………。」


壁の端に置いてあった壺の中から出てきたのは……。


「……なんでここにおかねが?」


「へそくり…とかいうヤツか?」



  200ゴールドをてにいれた!



「戻しておこうか、泥棒になるからな。」

「うん、そうだね。」



頷き少女は掴んだお金を壺に戻した。




…勇者らしからぬ(?)行為である。
196 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/11/22(火) 23:12:41.72 ID:iBcj+IiAO
その後も何軒か回ってみたものの、何も得る事は出来ずにいた男と少女は噴水の場所まで引き返した。


「さてどうしたものか…。」


もう一度思索に耽ろうとする男の耳に、聞き覚えのある羽音がとどいた。



「そらからなら…なにかわかるかも…。」


見ると、少女が魔力によって具現化させた純白の翼を広げ、更にその大きさを拡大させていた。


「…頼めるか?」

「もちろん。」


片翼で自身の丈を超える大きさにまでなったところで一度羽ばたき調子を確かめると、




少女は男に手を差し伸べた。


「………?」

「つかまって。」



どうやら一緒に空へ行きたいらしい。



「疲れはしないか?」

「たぶん…だいじょぶ。」



男は少女の細く小さな手に手を預け、そして地を蹴った。


勢いよく飛び出した二人は徐々に高度を増していく。


町の全体を見れる程の高さに差し掛かった辺りで停滞し、男は下を見た。見てしまった。



「…落ちたらタダじゃ済みそうにないな…。」
197 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/11/23(水) 00:10:29.01 ID:rRfeGLhAO

太陽が地平へと引き摺り込まれ、空の色が冷めていく。


見慣れた筈の光景も視点を変えればこうも違うものかと男は息を飲んだ。


「…きれい、だね。」

「…ああ。 世界はこうも美しい、そう感じさせる光景だ。」


余所見はそれぐらいに、と一言付け加えてから男は町へと視線を戻す。







そして、それは直ぐに訪れた。



「………見つけた!人がいたぞ!」

「え? どこどこ?」


すぐさま旋回し、その場へ急行する。



地に降り立った時、既にそこに人は居なかった。


二人が辺りを見回してみたが、男が発見した『中背で黒い短髪の男』は見つからなかった。



「おかしいな…確かにいたと思ったのだが…。」


振り返り反対側に歩いていこうとした男の腹の辺りの位地に何かがぶつかった。







「いたっ。もー…そんなとこでつったってないでよね!」


声を発したのは、男でも少女でもなかった。
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(山梨県) [sage]:2011/11/23(水) 00:32:41.02 ID:89+o8oIC0
続きが読めるのはありがたいです
199 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/11/23(水) 01:09:53.04 ID:rRfeGLhAO
少女よりも小さな子が尻餅をついていた。


薄着で活発そうな…近くにいたら直ぐに気付きそうな…そんな印象的な子が。


「…あれ、きこえてたー?」

「ん? ああ、すまない…。」


とりあえずと謝った男であったが、表に出さないだけで動揺の度合いは隣で絶句している少女とさほど変わらない。




そして彼と彼女は、更に言葉を失うことになる。



「まったく…きをつけてよねもう!」


その子は元気よく立ち上がると男と少女に背を向けて、



「……………ッ!?」

「うそ……どういうこと…?」









人混みの中へと、紛れていった。


  ヒトゴミノ、 ナカヘト。
200 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/11/23(水) 01:11:23.52 ID:rRfeGLhAO

にひゃくッ!

お休みなさい。
201 :VIPに変わりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/11/23(水) 04:49:30.39 ID:YZk2FiQYo
にひゃくいちッ!
頑張ってー
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) :2011/11/23(水) 09:34:53.60 ID:a78NxVx+0
にひゃくにッ!
つまり…どういうことだってばよ?
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方) [sage]:2011/11/24(木) 02:10:31.15 ID:wTm2uTAp0
……にひゃくさん
やっと追いついた。乙です。頑張って完結して下さい。 
204 :(今日はこれだけ) ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/11/27(日) 22:39:59.56 ID:lfmNTzLJ0

ざわめきに反応し、男と少女はほぼ同時に振り返る。

そこにいたのは、男と女と中年と青年と幼女と老人と家族と一人と夫婦とカップルと…。

「どうなっている…。」

「さっきまで、いなかったよね…?」

あまりの出来事に硬直する二人を余所に、突如として現れた『町人達』は二人を素通りし、

嬉々として町の中心へと歩いていく。




何時の間にか、星が煌めいていた。

しかしその光は街明かりに薄れ、静寂など入り込む余地すらなく、人々は騒ぎ立てる。

まるでその様は…。


「おまつり…なのかな?」

「屋台…いつからあったのだろうか。」



祭、それ以外に形容しがたい雰囲気だった。
205 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2011/12/08(木) 11:52:06.61 ID:vNYKo+360
誰もかれもが一方向へと進んでいく。

男と少女もその流れに逆らわずにゆっくりと歩く。

奇しくも空を飛ぶ前にいた、町の中央の噴水の方へと。


耳を澄ませば音楽が聴こえてくる。

横に眼を逸らせば必ず誰かは笑っていて。

食べ物を焼く香ばしい匂いを感じ取れたところで、


男は隣にいた少女が、匂いを発っしていた屋台の真ん前に居ることに漸く気が付いた。

「速い…そして夕飯の時間にも少し早い。 さてどうするか…。」

駆け足で向かう男の先では、少女が屋台を食い入るように見つめている。

「………。」

「い、いらっしゃい…。」



物言わぬ少女に、屋台の主人、困惑中。
206 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 05:05:47.80 ID:vH8QIzLho
応援してる
207 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/16(金) 07:01:01.30 ID:BiMpLcNB0
いい感じですさ
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/07(土) 13:04:38.45 ID:XB7jEyWt0
よっしゃ
209 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2012/01/07(土) 13:28:16.71 ID:XB7jEyWt0
「おう兄ちゃん、旨いし安いし買ってかないかい?」

男がやって来たことにより少女の視線から解放された主人が饒舌に喋りかける。

「そうだな、ひとつ貰おうか。」

そうして手渡された見慣れぬ食べ物を男はそのまま少女に手渡す。

少女と、なぜか屋台の主人の表情が晴れやかになる。

「……おいしい……。」

「だってよ兄ちゃん! 人にやるだけじゃなく自分も食ったらどうだい?」

「おいしかったよ? いっしょにたべようよ。」


どうやらおなかを空かせた少女には、分けあうという発想は消えてしまったらしい。

かくしてもうひとつ買う羽目になった男だが、あまり後悔はしなかった。

「確かにうまいな、これは。」

なるほど少女が薦めてくるのにも頷けると、男は舌鼓をうった。



その後再び人の波に乗った二人の手には、また新しく買った食べ物がそれぞれ握られていた。
210 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2012/01/12(木) 00:32:13.49 ID:kx91cl330
手に持った食べ物を食べ切れないままに着いた噴水前には、響く音色に合わせてゆったりと踊る人々が輪を造っていた。

その中央、他より高くなっている場所で楽器を打ち鳴らす青年に男は見覚えがあった。

中背で、黒い短髪の……服も同じな事からも町で最初に見かけた青年だと分かる。

青年も男の視線に気付いたのか、笑顔のまま振り向き、男と少女を発見したところで



表情も、それまで一定のリズムを刻んでいた体も、凍りついたように動きを止めた。



周りの人間に文句を言われて、青年は気を取り戻し、楽器を預けて男へと向かっていく。

男と少女の前まで来ると嬉しそうに、そしてどこか悲しそうに青年は口を開く。


「よう、あんたら。この町の人間じゃねえな。」

その問いかけに、少女はこくりと頷いた。

「そっか。驚いたろ? いきなり人が湧いて出てさ。」

その問いかけに、男は無言で肯定した。

「泊まる所ないだろ? 家に来て話し相手になってくれるかい?」

返事を待たずに歩きだす青年に、断る理由のない二人はついていった。
211 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2012/01/13(金) 01:33:04.12 ID:KTEH0InC0

「さて、何から話そうか……。」

青年の家は偶然にも男と少女が訪れた(侵入した)、壺の中にへそくりのあった家だった。

「ある時この町に原因不明の病が蔓延した。人間の成長が逆行するという病がな。」

テーブル越しに向かい合って座る二人に、青年はゆっくりと語る。

「逆行速度には個人差があってな、ゆっくりと若返る奴もいれば一瞬で消えた奴もいた。」
「町の医師も色々と手を尽くしてはみたが、とうとう匙を投げた。この町の技術では不可能だ、とね。」
「そこで町の長が一つの提案をした。何人かを旅に出し原因を探らせる、もしくは治療可能な人間を連れてこさせようとしたのさ。」

「そしてお前もその一人だったと?」

「良く分かったな、その通りだ。」

男の質問に答えた後、青年はさらに続ける。

「旅立ちの前夜、成功を祈ってこの町はお祭り騒ぎだった。調度……こんな具合にな。」

青年は親指で窓の外を指さした。

家の外では、尚も皆が笑顔で踊り、騒いでいた。
212 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2012/01/15(日) 01:17:48.55 ID:O4SY1znS0
「さて……そうして旅立った俺の冒険譚は長いので割愛するが、なかなかに大変だった。何度も死にかけてな。」
「で、原因も分かず旅にも慣れてきたある日、ふと気が付いたのさ。あれは病気ではなく、町にかけられた『呪い』ではないか、と。」
「だってそうだろ? 町を離れた俺には、何年たってもその兆しが見えないのだからな。」
「さっそくそっち方面で調べてみると……ドンピシャだった。解呪法は今までの苦労が何だったのかと思うくらいあっさりと見つかったさ。」

青年はそこで一旦話を切った。薬缶の鳴る音が、湯が沸いたと知らせている。

「紅茶と珈琲、お好みは?」

「すまないな。じゃあ珈琲を頼む。」

手伝おう、と短く言って男も席を立つ。

一人ぼーっと座ったままの少女に青年が優しく聞いた。

「お嬢ちゃんはどうする? 珈琲はまだ早いかな?」


「わたし……おゆでいい。」


「「…………。」」



こうしてテーブルの上には温かい三種類が並び、三人の表情もそれぞれだった。

一人は申し訳なさそうに、一人は気まずそうに、一人は満足そうに、席に着いた。
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/18(水) 17:40:26.84 ID:sgpp+ELgo
頑張れ
214 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2012/02/04(土) 00:53:02.34 ID:sPJ1UrDX0

「その『かいじゅほう』ってなんだったの?」

一息ついたところで少女が首を傾げた。

「ん? ああ、噴水のトコに祈りを奉げる女神様の像があったろ? あれがそうだよ。」

「あれか……また別の呪いを込めた像により相殺する、か。考えたものだな。」

「ネタばれするなよぉ……。その通り、高名な呪詛師に造らせた一級品さ。奇麗だったろ?」



町の中心に鎮座する女神像……確かに解呪という観点では納得がいく。

自分の故郷にも似たようなものがあったな、と男は回想した。



「その時は意気揚々としてたから、重さとかあんまり感じなかったけどさ。あれ背負って、ひずって、抱えて……帰って来たわけ。」




青年がそこで一呼吸置いた。そして重々しく、告げる。




「ここに残った奴みんなが逆行して無に還った、そのくせ他はすべてあの日のままの、変わらない町に、さ。」



青年が俯き、目を閉じた。


「ておくれ……だったの?」

頷く。

「あの日とは出発した時のことか?」

また頷く。そして笑う。ひどくかわいた声で。


「遅すぎたのさ、なにもかも。そりゃそうさ、探し歩きまくったもんなぁ。」
215 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2012/02/04(土) 01:49:06.23 ID:sPJ1UrDX0

「泣いて、喚いて、叫んで、呻いて、……どんくらい経ったかな、背中の重みを思いだしたんだ。」

ぽつぽつと、俯いたままで青年がつぶやく。

「奇跡に賭けたってより、自分の苦労を無駄にしたくなかった。だから手遅れの町で、教わった手順で、教わった場所に像を設置した。」


自分の背よりも大きな像の重さを感じなくさせるほどの絶望を二人は二人なりに思い浮かべ、二人とも共感『出来た』。


「それで、どうなったの?」

「……中途半端に成功した。いや、奇跡的な軋轢って言うべきか? 要するに……失敗、大失敗。」

「中途半端とはどういう意味だ?」

「予想以上に呪いが強くてな。一方的な解呪ではなく、ある時をループしちまう様になったんだ。」

「るーぷ?」

「女神像の方の呪いは『夜空の光』なんてよく解らないチカラで発動するんだと。で、夜に設置してみたのさ。」
「女神像は効力を発揮し、戻りすぎた時を押し戻した。みんなが、戻ってきたのさ。」
「みんなは俺を認識してくれた。結構経ってたから分からないと思ってたのにな。嬉しかった。」


「ここまでなら成功だと思うだろ? でも違ったんだよ。そんなうまい話、なかったんだ。」
216 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2012/02/13(月) 22:03:48.56 ID:th/9yVv20
「夜が明け日が昇り……夜の光は薄れていった。そして気付いたのさ、町の呪いは『抑えられていた』だけだって。」

「そんな、それじゃあ……!」

「……また俺は一人に戻っちまった。朝起きた時の静けさが恐ろしかった。」

「………。」



女神像が効力を失い拮抗が崩れると再び時は逆行する。そしてまた夜になると、


「何の因果か、あの夜以降進まないんだよ。何度も何度も繰り返しても一向に……。」






しばらくして、男が青年に質問した。


「それ程繰り返しても進展しないと分かっているなら、何故像を外さない?」

「独りが嫌でね。そんな気にすらならなかったよ。」


続けて少女も問いかける。


「みんなにはいわなかったの?」

「何がだい?」

「もうしんでるって。」

「言えなかったよ。信じてもらえないだろうからね、『貴方はもはや幽霊です』なんてさ。」
「それに皆は死んではいない。戻り過ぎただけだよ。そうさ、それだけさ……。」


青年は窓の外を見遣る。外は相変わらず賑わっていた。
217 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2012/02/13(月) 22:29:08.12 ID:th/9yVv20

「………もう夜も遅い。そのコ、もう寝る時間なんじゃないか?」

「……うん……ぁふ……。」


少女の欠伸から青年は話に区切りをつける。


男は少女を抱きかかえ、ソファに寝かせた後壁に寄りかかり、一言。

「俺も寝る。起こさなくてもいいからな。」


青年が何かを言う前に二人は眠りについた。


「変わった人たちだな……立ったまま寝る人なんて初めてみたよ。」


青年は眠らない。隣部屋から持ってきた毛布を少女に掛け、家の外へと消えていった。



218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/13(月) 23:36:18.17 ID:H/pByZL9o
乙!
あっちとは随分違うシリアス?展開ね
219 : ◆/1D/7Oju4Q [saga]:2012/02/15(水) 21:48:32.21 ID:BAFedjOG0


朝、日の出前。徐々に白んでいく空の下に、男と少女は立っていた。

旅人の朝は早い。既に身支度を済ませ、直ぐに出れるようになっているのだ。

もっとも、そんな二人でも今日はずいぶんと早かった。


「もうでるの?」

「留まる理由はない。それにしても……ものの見事に消え失せているな。」

「………そだね。」


昨夜までの喧騒は嘘のようで、町はしんと静まり返り、

遠くから歩いてくる青年の足音が良く聞こえる程だった。


「あれ、もう行っちゃうのかい?」

「うん。ばいばい、おにいさん。」

「世話になったな。話を聞けてよかった。」

「はぁ……寂しくなるな。これでまたこの町の生存者は俺一人か。」


名残惜しそうな言葉を残した青年に背を向けて、二人は町の外へと歩きだした。

その途中で少女が振り返り、青年に最後の問いを投げた。


「あの……。 あなたは、いまのままでいいんですか? かわろうとはおもわないんですか?」

「ああ。俺は今の状態にけっこう満足してる。なかなかに楽しいしな。」

「……そうですか。」



朝日が昇り、歩く二人と立ち止まる一人に光が当たる。






伸びる影は、二つ。
220 : ◆/1D/7Oju4Q [saga]:2012/02/15(水) 22:07:14.44 ID:BAFedjOG0


「最後、どうしてあんな事を聞いたんだ?」

「……もしかしたらきづくかなっておもって。でもだめだった。」

「他人に関しても諦めていたんだ。自分のことを気付けるとは思えないけどな。」

「それであのひとはしあわせなのかな……。」

「さあな。」



町の外に続く林道で、歩を進めながらに二人は話す。

少女は男を見ていたが、男の首は前を向いていた。


「おなかすいた。なんでかすごく。」

「携帯食料しかないぞ?」

「……あのやたいのあれをたべたい。とってもおいしかったから。」

「あれで腹がふくれないのはもう分かっているのだろう?」

「……はぁ……。」





『誰もいない賑やかな町』の思い出を話しながら、二人の旅人は歩みを進める。



次の町へ、次の次の町へ。
221 : ◆/1D/7Oju4Q [saga]:2012/02/15(水) 22:08:17.89 ID:BAFedjOG0





   続く?



222 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2012/02/15(水) 22:12:40.16 ID:BAFedjOG0
これだけ書くのにこんなにかかるなんて思いませんでした。
続きは……未定ということでどうかひとつ。
『書きたいのに書けない』をリアル体験中です。 どうしよう。

それでは、またこんど。
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/15(水) 23:51:41.34 ID:5caO+Hyso
乙であります
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/16(木) 00:57:17.32 ID:CtM12ep2o
乙!
結局何も無い寂しい町だったか
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/16(木) 19:53:57.59 ID:UXaXvOaq0
頑張れや
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/01(木) 23:44:30.26 ID:VPPYTFv30
まだか
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/03/03(土) 23:42:33.40 ID:xg1+FICco
バンバンバンバンバンバンバンバンバンバン
バン       バンバンバン゙ン バンバン
バン(∩`・ω・)  バンバンバンバン゙ン
 _/_ミつ/ ̄ ̄ ̄/
    \/___/ ̄

  バン    はよ
バン(∩`・д・) バン  はよ
  / ミつ/ ̄ ̄ ̄/   
 ̄ ̄\/___/

      ; '     ;
       \,,(' ⌒`;;)
       (;; (´・:;⌒)/
     (;. (´⌒` ,;) ) ’
(  ´・ω((´:,(’ ,; ;'),`
( ⊃ ⊃ / ̄ ̄ ̄/__
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          /\
     . ∵ ./  ./|
     _, ,_゚ ∴\//
   (ノ゚Д゚)ノ   |/
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ポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチ
ポチ     ポチポチポチポチポチポチ
ポチ(∩`・ω・) ポチポチポチポチポチ
 _/_ミつ/ ̄/_
      /_/
228 : ◆/1D/7Oju4Q [sage]:2012/03/14(水) 11:07:40.41 ID:ACy6fJ6J0
生存報告です
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/14(水) 11:09:30.62 ID:lQu/1D+9o
続けるの?
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/14(水) 20:24:57.55 ID:rJHqxDiIO
つづけろし
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/03/14(水) 22:12:54.97 ID:mNocZDVg0
>>228
こっちだけでいいから続けてくれ…たのむ
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/19(木) 19:42:15.36 ID:MnX/2tpIO
生存報告だけでもしてくれ
233 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2012/04/20(金) 23:00:25.00 ID:o3beT4P80

所々に木々の生えた広野に、一人の男が座って空を見ていた。

その傍らには小さな少女が、男に寄りかかって先を見ていた。



白い町を離れてから数日、歩き疲れた少女を気遣っての休憩中である。


「………………。」

「………………。」

「……まだまださきだね……。」

「ようやく半分ってところか。」

「………………。」

「………………。」


二人の会話は続かない。

沈黙が苦にならない(ならなくなった)二人は互いに話を広げようとしないのだ。

昨日など昼に一言二言の言葉を交わした後、次に口を開いた時には陽が傾いていた程だ。




だがそんな寡黙な二人に転機が訪れた。


実際に迫って来た。



「グルルルルルルルルルル……!」

「…………!」

「……下がっていろ……」



少女が男と合流してから魔物と遭遇したのは、これが初めてである。

234 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2012/04/21(土) 00:00:34.42 ID:15a9VFZW0

――――――――――
――――――――――
――――――――――


「この辺りの魔物はそれ程の脅威では無いようだな」

「……やっぱりすごい……」


剣を鞘に収め一息つく。

襲い来る魔物の群れを全て一刀のもとに斬り伏せたにも関わらず、男に疲労の色は見えない。

彼は只の旅人ではない。様々な責を背負いながらも魔王を討つべく歩き続ける勇者なのだ。

故に人語も解さない低級の魔物など相手になる筈もなく、ものの数秒で屍と化した。



「さて、充分休憩出来たか? そろそろ行くぞ。」

「うん……あ、あの……かっこよかったよ……。」

「……いきなり何だ。褒めても何も出ないぞ?」

「その……こわく、ないの? まものとたたかって……。」

「……怖い、か……今はもう怖くないが、最初は足が震えてまともに立っても居られなかったな。」

「……そうぞうできない……。」

「だいぶ昔の話だからな…………ん? どうかしたのか?」

「えっと……たたかってるあなたはかっこよくて……だから……。」



今日の少女はよく喋る。それに挙動もいつもと違い、どこかそわそわとしていた。

そんな様子を見て、男は何となくだが少女の言いたい事が解ったような気がした。


「……ただ後ろで見ているのは嫌か?」

「………………。」


少女は無言で頷く。



「…………どうしたものか…………」

「……あなたのやくにたちたいから……」


男はしばらく少女を視てから、やがて背を向け歩きながらこう言った。


「次に魔物に出会った時、お前一人で対処してみろ。指導はその後だ。」

「………………!」


先を行く男に、少女は小走りでついて行った。

235 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2012/04/21(土) 00:19:41.70 ID:15a9VFZW0


少女念願のエンカウントが実現したのは、結局翌日の明け方にかけてだった。



男の半分ほどの大きさをした、丸い毛糸の塊に手足を生やした様な見た目の魔物が三匹。

ひょっこり生えた牙をむき、少女に向かってじりじりと距離をつめていく。


「来たぞ……くれぐれも油断はするなよ。」

「うん……わかってる……!」


少女は何も持たずに魔物と向き合っていた。

剣か短刀を貸そうかという提案も断って。


男は傍観の姿勢でいる……少なくとも本人はそう思っていた。

但し右手が剣の柄に伸びているのは誰が見ても明らかだった。


236 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2012/04/21(土) 00:37:30.38 ID:15a9VFZW0

「ギ、ギギギギギィィイイ!!」


少女との距離を僅か数メートルの距離まで魔物達が一斉に襲いかかる。

細い手足で跳ねるように迫る魔物に対し、少女の取った行動はシンプルだった。


「…………はッ!」


両腕を前に突き出し、魔力を込め、それを撃ち出した。


「……これは……!」


透明な塊はふわふわと漂いながら前へ進んでいく。




その中に魔物達が突っ込んだ瞬間、三体は例外なく四散した。



「やった……!」

「……………。」



こうして少女は初陣を勝利で飾る事が出来た。



だが安堵した少女とは対照的に、男の表情は険しかった。

237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東日本) [sage]:2012/04/21(土) 22:31:50.89 ID:MXjsuCrJo
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/04/24(火) 06:25:13.05 ID:38K9RHivo
乙乙!
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山形県) [sage]:2012/05/13(日) 00:58:50.59 ID:h9HViDJ+o
     ...| ̄ ̄ | < 続きはまだかね?
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240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/05/13(日) 13:22:58.12 ID:Q/bam9aFo
>>239
Σ(゚д゚lll)
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/21(月) 22:40:54.71 ID:6NKSTKTJ0
まだかな
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/12(火) 07:00:22.84 ID:P94nscXko
243 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2012/07/21(土) 20:00:48.07 ID:mZItvZsF0

「あれは魔法でも何でもない……魔力の塊だ。」


少女がした事は、例えるなら液化燃料をただ勢いよく浴びせるようなものだった。


「戦い方を教える前から嗾けたこちらに非があるとはいえ……ふむ」

「……そんなにだめだった?」

「いいや、ただ驚いてはいる。普通あんな風にしたら魔力があっという間に枯渇してしまうからな」


それだけお前の魔力総量の高さが窺えるとういものだ、と男は続けた。

244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 21:07:42.65 ID:sVG111L+o
!?
245 : ◆/1D/7Oju4Q [sage saga]:2012/07/21(土) 22:23:54.81 ID:mZItvZsF0

「あんな不安定な魔力放出だと、みすみす相手に力を渡すのと同義だ」

「それじゃあなんでやっつけれたの?」

「あの低級の魔物達は塊を吸収して我が物にしようとしたが、量が多過ぎた。だから破裂した。」


男は飛び散った魔物の破片を拾い上げ観察した後、少女に向かって放り投げた。


「見てみろ、毛並みが鋭く変質しているだろう?」

「……ほんとだ」

「どれだけ今放ったものがとんでもないか、分かるな?」


男は手に持った肉片を元の塊へ投げ、左手で魔物の死体を指さした。

指先が淡く揺らめき、少女と同じ様に魔力の塊が現れた。だがその大きさは爪にも満たないほどだった。


「ちっちゃい……」

「だがこの魔力をただの炎に変えるとしたら、あの死体を焼きつくすのには充分過ぎるぐらいだ」


手をついと振るい揺らぎを放つ。死骸の目前で半透明が大火となり、動かぬ魔物を灰に変えた。


「じゃあ、さっきのわたしのだったら……」

「魔物ではなくこの森が消え去っていたかもな」

「……なんと……」


改めて自分が人間離れしてしまったと自覚した少女の顔が少し強張るのを男は見逃さなかった。

246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/29(日) 05:31:59.93 ID:FpNdIJTCo
うっつんがんばれ
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/29(日) 07:36:54.12 ID:ARfr4dfmo
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山形県) [sage]:2012/08/15(水) 01:32:12.36 ID:Zh+LhBa9o
おいィ!?本スレが落ちたんですけどォ!?
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/08/15(水) 22:39:32.69 ID:9GI/XKuWo
需要があるなら立て直せばいいし、
需要が無ければ、他人の尻馬に乗って小銭稼ぎたいどっかの馬鹿がまとめてるトコで参照すればいいだけだろ。
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/08/15(水) 22:40:37.05 ID:9GI/XKuWo
いや、要するに慌てるなと言いたかっただけ。
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/09/05(水) 22:49:26.86 ID:0N/5R3jWo
うっつん‼うっつん‼うっつん‼
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/17(月) 22:32:19.58 ID:SQY7zgBI0
test
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/24(月) 22:16:50.57 ID:qGKBTuDDo
てs
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/10/01(月) 01:26:33.02 ID:eFhOA3WLo
うっつうううううん
255 : ◆/1D/7Oju4Q [sage]:2012/10/01(月) 22:42:51.33 ID:QDhWM1oK0
test
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/10/03(水) 10:17:49.98 ID:WXUX/XFoo
キター(°∀°)
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/10/22(月) 00:22:06.11 ID:YQddMprt0
tes
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山形県) [sage]:2012/11/16(金) 18:51:39.58 ID:ITN59/TKo
     ♪    /.i   /.i  /.i
   ♪     ∠__ノ ∠__ノ ∠__ノ   エーライヤッチャ
        〈,(・∀・;)ノ・∀・;)ノ・∀・;)ノ     エーライヤッチャ
         └i===|┘i===|┘.i===|┘        ヨイヨイヨイヨイ
           〈__〈 〈__〈 〈__〈
踊る阿呆に見る阿呆同じ阿呆なら 踊らにゃ損々
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/11/27(火) 01:12:13.31 ID:9rWposY20
ポッチャマ・・・
260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/17(月) 06:25:34.14 ID:+4xAjejM0
2カ月か
261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/17(月) 09:40:02.58 ID:e8Qtd6Xmo
     ...| ̄ ̄ | < 続きはまだかね?
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262 : ◆/1D/7Oju4Q [sage]:2013/01/01(火) 22:35:31.28 ID:5MIwEr/L0

「魔法の才はあるようだ。これなら少し練習すれば実戦で役立つ事も出来るだろう」

「ほんとに?」

男の推測に少女の顔が嬉々と輝く。

「ああ……一応、剣も試してみるか?」

みたい! と二つ返事の少女に男は愛用の剣を投げ渡した。

「存分に来い」

男は目を瞑り魔翌力を掌に集中させると、虚空より同じ剣を作りあげた。

(あいつの様に上手くはいかないな)





263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/01(火) 22:47:40.31 ID:b7xr8ntno
きたか(ガタッ
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/02(土) 15:33:10.22 ID:wHaDfmIIO
一応保守
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/10(日) 21:39:09.98 ID:mpWDMrV5o
きたー!!!!
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/23(土) 10:18:43.18 ID:us5bff7do
もうすぐですね…
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/02(土) 02:16:22.95 ID:EGtEA49G0
続きまだー...
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/25(月) 19:39:30.40 ID:tcPgkX+ao
まつわ
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