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さやか「よろしくね、相棒」 まどか「うん!」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/16(火) 21:52:11.79 ID:9gIdisr90
・1周目っぽいけど、ちょっと違うifモノです。ほむループが無い世界とだけ思っていただければ

・スレタイの通り、まどさやを前面に出していくつもりです。ただし友情

>>1の独自解釈、稚拙な文章、キャラの違和感に耐えられない人はそっとブラウザを閉じてください
 まどマギ再構成SSはレベルが高いの多いから、何度も投下するかやめるか考えました。よってクオリティには期待しないで…

・投下速度はたぶん遅め。投下量もそう多くなさそうです

・小説版の前バレから作り始めたSSですが、未読です
 読めって? オクタ関連で魔女化しそう…。書いてる時は良いんだけど…。おまけに高いし…

>>1はさやかスキーですが、SSの為なら容赦はしない。かもしれない

・台詞用括弧一覧。「」=台詞 『』=回想台詞 ≪≫=念話 ()=非念話の思考
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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714054765/

渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714052788/

二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714049241/

佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
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笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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2 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/16(火) 21:53:53.96 ID:9gIdisr90

『鹿目のち〜び!』

『や〜い、や〜い』

『ほ〜ら、すぐ泣く! 泣き虫まどか〜!』




いつも泣いているばかりのわたし。

弱虫で、臆病で、大嫌いだった惨めなわたし。


魔法少女になって、やっと変わったと思ったのに…。
3 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/16(火) 21:54:40.67 ID:9gIdisr90

――まどかをいじめるなぁッ!!!!!――





あぁ…。

わたしはまた、この人に守られてる…。
4 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/16(火) 21:55:16.86 ID:9gIdisr90





【第一話】よろしくね、相棒




5 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/16(火) 21:56:25.61 ID:9gIdisr90
わたしを取り囲んだ使い魔を、駆け巡る疾風が切り刻む。

やがて孤立した魔女をも両断したあの人は、振り返って微笑み、いつもの台詞を言う…。




さやか「大丈夫? まどか」


非日常の世界に放り込まれても、この人の笑顔は変わらない…。

優しくて…。

力強くて…。


でも、その笑顔はわたしの無力感を刺激して、かえって苛立たせた…。
6 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/16(火) 21:57:47.73 ID:9gIdisr90
まどか「QB! いるんでしょ!?」


QB「どうしたんだい? いつも穏やかな君がそんなに苛立ちを見せるなんて…」


まどか「これはどう言う事なの!?」

QB「さやかの契約の事かい?」

まどか「そうだよ! わたし、なにも聞かされてない!

    そもそも、さやかちゃんに資質があった事自体知らなかった!」



さやか「お、落ち着いてよ、まどか」

まどか「落ち着けないよ! なんで、さやかちゃんはいつもいつも…!

    一言くらい相談してくれたって良かったのに…!」

さやか「あ、あたしもそうしたかったんだけどさ…」


まどか「もう知らない!」





さやか「………久々に見た。怒ったまどか」

QB「やれやれ。ほとぼりが冷めるまで、僕は彼女には近寄らない方がよさそうだね」
7 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/16(火) 21:59:15.61 ID:9gIdisr90
美樹さやかちゃん。

私の大切な親友。

凄く優しくて、凄く面倒見のいい人なんだ。


でも…。

意地っ張りで無鉄砲な所があるから怖いんだ…。

正義感が強くて、誰かの為だとすぐに無茶するから心配なんだ…。




だから、なって欲しくなかった…。

魔法少女になんて…。


命懸けの魔法少女の世界で無茶なんかしたら、下手したら死んじゃうかもしれない…。

自分の事より、人の事を先にする悪い癖があるから…。

だから、これだけは絶対に止めたかったんだ…。




違う…。

この気持ちはそれだけじゃない…。
8 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/16(火) 22:00:10.28 ID:9gIdisr90

翌日になっても憤りに近い、わたしの感情は収まらなかった。

そして、何事も無かったかのように何時も通りに能天気に挨拶するさやかちゃんの姿が見える。




さやか「おっはよぉ。まどか! 仁美!」


仁美「おはようございます」

まどか「…………」



さやか「きょ、今日のあたしの嫁は機嫌が悪いなぁ…」

仁美「……………」


仁美ちゃんがいなければ、たぶん昨日の口論の続きを始めてたと思う。

でも、仁美ちゃんにそれを知られる訳には行かないし、かと言って念話を使う気分でも無いし…。
9 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/16(火) 22:01:13.33 ID:9gIdisr90
まどか「……………」

仁美「何かあったんですの?」


まどか「知らないっ。そっちの人に聞いて」



さやか「が〜ん…。そ、そっちの人…」

仁美「まどかさんがここまで怒るなんて、初めて見ましたわ…。

   本当に何をしたんですの? さやかさん…」



さやか「ん…。ちょっと内緒で突っ走ったのがバレちゃってさ…」

仁美「あぁ…、何か納得が行きましたわ」


仁美「細かい事情は知らないので口出ししづらいですけど、きちんと謝った方が…」

さやか「だよね…。だから謝ろうとは思ってるんだけど、昨日からずっとあの調子でさ…」
10 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/16(火) 22:02:21.00 ID:9gIdisr90

あ〜あ…。

わたし、駄目だなぁ…。



わかってるんだ。

八つ当りだって…。


わたしだって魔法少女の事、さやかちゃんに話さなかった。

だったら、さやかちゃんが魔法少女の事をわたしに話してくれなくたって仕方ないよね…。



でも…。
11 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/16(火) 22:03:26.89 ID:9gIdisr90
悔しいんだ。

わたしはやっぱり、さやかちゃんの力にはなれないんだって…。

さやかちゃんは、わたしの事なんて頼ってくれないんだって…。


そう思ったら、わたし…。




本当は言わなきゃいけないのに…。

助けてくれてありがとうって…。



でも、自分の無力感が、悔しさが…。

そして、さやかちゃんが魔法少女になってしまった心配が…。


それの邪魔をする…。
12 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/16(火) 22:04:35.92 ID:9gIdisr90

仁美ちゃんと話すさやかちゃんをちらちらと見ながら、ぼんやりと歩き続ける。

そんな時に聞き覚えのある声が頭の中に響いた。




QB≪大変だよ。まどか! さやか! この近くで魔女の反応だ≫


さやか≪マジ…? まずいじゃん!≫

まどか≪マミさんは…?≫

QB≪連絡はしてるけど、ここからだと位置が大分遠いね…≫



さやか≪この辺は人通り多いから、さっさと片付けないとまずいか…≫


さやか≪おっけー! すぐ行く!≫

まどか≪わかった。すぐ向かうね!≫
13 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/16(火) 22:05:22.72 ID:9gIdisr90
さやか「仁美、あたし急用思い出したから、今日学校サボるわ!」

まどか「仁美ちゃん、わたしも用事思い出したから家帰るね! ごめん!」




仁美「ちょ…! ちょっと二人とも…?」



仁美「行ってしまいましたわ…」

仁美「くすっ。でも、仲直りできそうだから、これも良いのかもしれませんわね」




仁美「……ん? でも、これってひょっとして逢引きでしょうか…?」

仁美「禁断の恋…!?///」
14 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/16(火) 22:06:30.67 ID:9gIdisr90
────────

────

──


さやか「悪いけど、先行くね! まどか!」


まどか「は、はやっ!」



QB≪仕方ないよ。さやかはより身体能力を必要とする近接特化タイプの魔法少女だ≫

QB≪さらに言えば、もともとまどかとの身体能力の差もあったんじゃないかな…?≫


まどか「うぅ…。さやかちゃんは運動神経、結構良かったもんなぁ…」


まどか「また、さやかちゃんに守られるだけなのかな…?」




まどか「なんて、考えてる場合じゃないよね。急がないと!」
15 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/16(火) 22:07:42.47 ID:9gIdisr90
―魔女の結界内 最深部―




さやか「まどかが来る前に終わらせる!」


自慢のスピードで敵の攻撃を掻い潜り、魔女に斬撃を浴びせ続けるさやか。

傍から見れば、完全に優勢。

そのまま敵に止めを刺そうとしたのだが…。




さやか「えぇいッ!」


さやか「…………あれ?」


乱雑に振るい、弱り切った刀剣。

それは力任せに繰り出したさやかの止めの一撃に耐えきれず、

その刀身はぼっきりと折れて地面に転がった。
16 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/16(火) 22:08:30.62 ID:9gIdisr90
さやか「これ…、やばっ!?」


手持ちの武器を失い、敵の目の前で丸腰同然になるさやか。

止めを刺したつもりであった為、回避行動も出遅れてしまっている。


隙だらけのさやかを魔女が攻撃しようとした時…。




三発のピンクの矢が、魔女に次々と刺さり、

そのまま弾けて、魔女をよろめかせた。
17 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/16(火) 22:09:44.75 ID:9gIdisr90

まどか「大丈夫? さやかちゃん」


さやか「まどか…」



言う間にもまどかは、次々に矢を射る。

見た目はボロボロなのに、それでも魔女は倒れる気配はない。


恐らくは最後の力を振り絞り、魔女はまどかの方へと向かって行く…。
18 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/16(火) 22:12:21.98 ID:9gIdisr90
QB「しぶとい…。まどか、回避を…!」


まどか「大丈夫だよ、QB…!」

まどか「わたしには…」




まどか「さやかちゃんがいるから!」



次々と矢を受けながら、わたしへと迫った魔女はその直前で足を止めた。



宣言通り。

ダメージを受け続け、限界を迎えた魔女の丁度ど真ん中に、鋭く輝く刃。

さやかちゃんの作り直した刀剣の刃が貫いた。


致命傷を負った魔女は結界もろとも消えさり、戦利品のグリーフシードだけを残した。
19 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/16(火) 22:13:32.01 ID:9gIdisr90

グリーフシードを拾ったさやかちゃんと向き合う。

そして昨日言えなかった事、昨日から言いたかった事をようやく口にした。



まどか「さやかちゃん、昨日はありがとう。それと、ごめんね」


まどか「危ない世界だから、ホントはさやかちゃんには来て欲しくなかったの…。

    だからってあんな言い方ないよね…。ごめんね…」


さやか「良いよ。まどかは心配して言ってくれたんだから。

    それより、こっちこそありがとう」



まどか「うん! これで仲直りだね」


さやか「じゃあ二人で倒した事だし、これも二人で使おっか」

まどか「そうだね。グリーフシードも半分こ。なんか良いね」
20 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/16(火) 22:14:54.32 ID:9gIdisr90

グリーフシードでソウルジェムの穢れを取りながら、さやかちゃんはわたしにいつもの笑顔を向ける。

飾り気のない、大好きな笑顔を。



さやか「やっぱりまどかは優しいね。それに…」

さやか「頼もしくなった」


まどか「そ、そうかな…?」


さやか「うん。間違いないよ」

まどか「え、えへへ…///」



さやか「だからさ…、あたしの背中はまどかに預ける」

まどか「それって…」
21 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/16(火) 22:15:50.34 ID:9gIdisr90

さやかちゃんは、わたしにグリーフシードを手渡す。


そして、その笑顔をもう一度わたしに向けつつ、その一言を言ってくれた。

多分、わたしが欲しかった一番の言葉。

さやかちゃんから、わたしへの信頼の言葉を。



さやか「よろしくね、相棒」

まどか「うん!」


さやか「さ〜て、魔法少女コンビ結成記念だ!

    サボりついでに、今日はあたしん家でパーっとやりますか!」
22 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/16(火) 22:16:41.08 ID:9gIdisr90

魔法少女になると言う事は、さやかちゃんが決めた事。

なってしまった以上、どうしてあげる事も出来ない。



だったら、これからの事を考えよう。


わたしは、さやかちゃんと同じ魔法少女だから。

肩を並べて歩けるから…。


今度は…。

今までさやかちゃんが守ってくれた分まで、わたしがさやかちゃんを守るんだ。



わたしは駄目だから、またさやかちゃんに守られたり、甘えちゃったりするかもしれないけど…。

でも、その分、わたしもさやかちゃんを守って、甘えさせてあげるんだ。


わたしとさやかちゃんは…。

今日から相棒<パートナー>同士だから。



だからね…。
23 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/16(火) 22:17:18.89 ID:9gIdisr90

まどか「ねぇ、さやかちゃん」

さやか「何、まどか…?」


まどか「これからはさ、何かあったらすぐにわたしに相談してね。

    何があっても。どんなことでも」

まどか「そりゃ、わたしじゃあんまり頼りにならないかもしれないけど…」



さやか「急にどしたの…?」


まどか「魔法少女の事、相談してくれなかったから…」

さやか「ほ〜ぅ? まどかの昨日今日の態度は心配の裏返しですかぁ〜?」
24 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/16(火) 22:18:18.28 ID:9gIdisr90

まどか「茶化さないで聞いて。

    今回の件もそうだけど、さやかちゃんはいつも一人で決めて、一人で突っ走って行っちゃうから…」


さやか「……わかった」




まどか「うんっ。約束だよっ」

さやか「おっけ〜! 約束っ!」






交わした約束。

それは…。
25 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/16(火) 22:19:46.02 ID:9gIdisr90
―next episode―


「この人が巴マミさん。わたしの魔法少女の先生だよっ」





―【第二話】マミ先生の魔法少女教室―
26 : ◆.2t9RlrHa2 [sage]:2011/08/16(火) 22:23:11.02 ID:9gIdisr90
はい。今日はここまでになります

書き溜めが全くと言って良いほどないので、次の投下はしばらく時間がかかりそうです
一週間以内にはなんとかしたいですが…


投下時間はだいたい何時もこの時間帯〜深夜2時くらいまでになりそうです
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/16(火) 22:30:04.94 ID:LB4sruBlo
乙乙乙


やっぱりさやかはまどかにとってのヒーローなんだよなぁ
何を願ったのかが気になる所ー
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) :2011/08/16(火) 23:28:44.38 ID:OOGGkkEXo
期待してるぜ!
小説版良かったよなー
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/16(火) 23:40:49.71 ID:Ztec/JlDO
メガほむの予感!
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/16(火) 23:42:15.22 ID:Ztec/JlDO
メガほむの予感!
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/08/16(火) 23:47:46.95 ID:ESj4Jp0/0
乙!>>25が無かったら「良い最終回だった」と言うところだったぜ!
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/08/17(水) 00:46:00.92 ID:VMQ2VrJw0
さやか「よろしくね、相棒」
まどか「うん!」

これを本編で言ってくれれば、運命は変わったよな〜。
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/08/17(水) 10:29:15.50 ID:xbN3dIIOo
乙っちまどまど!
小説版は読むべきだと思う
34 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/21(日) 00:44:38.45 ID:NV+kz/T80
はい。投下します
レスしていただき、ありがとうございます

色々と案はあるのにまとまらない
資料集とか警戒してるってのもある…


>>29
もち、メガほむ出ます
主な役割はヒロイン…?

>>32
本編まどかはコンプレックス強そうだし、さやかは魔法少女になっちゃってたし…
その辺を魔法少女という対等な立場に立たせて…ってのが書いた理由です
まぁ、大層な話抜きにすると平和組が魔法少女してるのが書きたかっただけなんですが

>>33
ですよねぇ…
ただ、お値段の壁が高い…
35 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/21(日) 00:45:40.87 ID:NV+kz/T80
さやか「それ、本当なの…?」

QB「あぁ、まどかの事を考えるなら一刻の猶予も無いね」


さやか「わかった。じゃあ、契約しよう」

QB「本当に良いんだね?」


さやか「うん。やって…!」



目の前に現れた白い謎の生物。

あたしはそいつに急かされるまま、魔法少女とやらになった。


本当はゆっくり考えたかったけど、急ぐ代わりにあたしは二つの願いを叶えた。

大切な人の手を契約の願いで治して、大切な親友を魔法少女の力で救えた。


そのままのあたしだったら、叶えられない筈の奇跡を二つも叶えたんだ。




後悔なんて、あるわけない…。
36 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/21(日) 00:46:29.87 ID:NV+kz/T80





―【第二話】マミ先生の魔法少女教室―



37 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/21(日) 00:47:19.30 ID:NV+kz/T80

魔法少女コンビ結成記念の翌日。

サボリついでにと遊び通した先日と違い、今日はさすがに真面目に登校。

朝から仁美のテンションがおかしかったが、まぁその辺は面倒なので以下省略…。


で、あたしも魔法少女としては新人だし、まどかがいつもお世話になっている魔法少女の先輩を紹介して貰い、

あたしも師事させて貰えるよう、話を聞いてもらう手筈になっていた。


で、今日一日はその魔法少女の先輩と言うのがどんな人かずっと考えていた。

一応、まどかにも聞いてみたんだけど…。
38 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/21(日) 00:47:54.22 ID:NV+kz/T80

まどか『えへへ〜。凄い人だよっ』

とか…。


まどか『会ってみてのお楽しみ』

とか…。


まどか『さやかちゃんにも良くしてくれると思うよ』

とか…。




なんかそれっぽい事しか言わない。


まどかが良い人だっていうんだから、そりゃ天使みたいな人なのかも…とも思うけど、

『魔法少女』の先輩ってのがどうにも引っ掛かる。


そう言うのの先輩って、やたらクールだったり、なんかスケバンっぽいイメージが何故かあって…。

たぶん、魔法少女がなんだかんだで、肉体労働だったってのも関係してるんだろうけど…。

まぁそれは行き過ぎにしても、まどかママみたいな豪快だけど面倒見の良い人ってイメージの方が先行していた。



ともかく、そんな先入観はものの見事にぶち壊されることになった。
39 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/21(日) 00:48:33.13 ID:NV+kz/T80

まどか「この人が巴マミさん。わたしの魔法少女の先生だよっ」


マミ「こんにちは。あなたが美樹さんね? 鹿目さんから話は聞いているわ。

   これから、よろしくね」


放課後。

まどかが紹介してくれたのは、あたしの先入観とは真逆。

本当に天使みたいな美人さんだった。


ツインテールの金髪。

全身から何故か漂う優雅で、物腰柔らかそうな雰囲気。

少し垂れ目気味の同じく金色の瞳は、さらに優しそうな印象を植え付ける。

おまけに中学生には見えないスタイルの良さ…。


不公平だ〜!

と叫びたくなるほどのスーパー美人が、そこに立っていた。
40 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/21(日) 00:49:14.22 ID:NV+kz/T80

さやか「は、はいっ。美樹…、さやかですっ! よろしくお願いします!」



見惚れてしまった分、どもってしまい、さらに空元気が炸裂した挨拶を返す。

初対面の人に返す挨拶としては恥ずかしい部類だけど、目の前の美人さんはそんなあたしにも笑顔で返す。




マミ「ふふ。話には聞いていたけど、元気いっぱいなのね」


さやか「あ、あはは…/// それだけが取り柄なんで…」



照れくさくなって頭を掻く。

同時にテンションの上がったあたしは、まどかに対して念話を送る。
41 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/21(日) 00:49:55.47 ID:NV+kz/T80

さやか≪すげーよ! まどかっ! 天使じゃん! 天使がいるよ!≫


まどか≪さ、さやかちゃん…!?≫

さやか≪いや〜、どっちかと言うと体育会系のノリのイメージしてたから、意外だったよ〜≫


まどか≪あ、あのね…。さやかちゃん…≫


さやか≪逆に魔法少女として戦ってる姿が想像できないと言うか…≫

さやか≪でも、まどかも可愛らしく戦ってるくらいだから…≫


まどか≪あのね…。マミさんも魔法少女だから、念話も全部聞こえてるんだよ…≫




さやか「あ…………」


マミ「ふふ…。面白いのね。美樹さんは」



テンションの上がったあたしは、こうして色々な醜態を晒す。

苦笑する二人に連れられ、あたしはマミさん宅へと向かう…。
42 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/21(日) 00:50:29.93 ID:NV+kz/T80

マミ「独り暮らしだから遠慮しないで」



マミさんの自宅だと言う高級マンションの一室。

綺麗に整理されているのは勿論、趣味の良い家具の数々。


そして、食べるのが勿体無いくらい可愛らしいケーキと良い香りのする紅茶。





さやか「ん〜♪ めちゃウマっすよ!」


マミ「今日は美樹さんが来るって言うから作っておいたの。

   張り切っちゃった」


まどか「マミさんは料理も上手なんだよっ」


さやか「すげー…。どこまでキャラ立てすりゃ気が済むんだ…」
43 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/21(日) 00:51:30.11 ID:NV+kz/T80

和やかに始まったお茶会。

あたしがマミさんを質問攻めにしたり、まどかをからかったり、

そのまどかに反撃されたりと、楽しい時間が過ぎていく。




マミ「本当に二人は仲がいいのね」


さやか「はいっ。なんたってあたしの嫁ですから!」

まどか「よ、嫁じゃなくて相棒でしょ。

    もう、さやかちゃんったら…」



マミ「相棒…か」


その一言を聞いたマミさんの表情が真剣なものに変わる。

重たい空気を感じ取ったあたしとまどかは、ふざけあうのをやめてマミさんの方を見つめる…。


マミさんの視線は、あたしの方を向いている…。
44 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/21(日) 00:52:19.90 ID:NV+kz/T80

マミ「美樹さん。あなたに一つだけ確認したい事があるの」

さやか「はい…。なんでしょう…」


マミ「魔法少女は一つの願いと引き換えに、魔女と戦う使命を背負う。

   そして、その戦いは命懸けよ」

マミ「あなたは魔法少女になったばかりだと聞いたけど、その覚悟は持っていると見て良いのかしら」



まどか「マミさん…」

マミ「ごめんね。鹿目さん。

   でも、これはとても大事な事だから…」
45 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/21(日) 00:52:58.91 ID:NV+kz/T80

さやか「QBから聞きました」

さやか「影に潜んで人を襲う魔女。それと戦っているのが魔法少女だって…。

    でも、それがどんなものかは想像しないまま、あたしは魔法少女になりました」


さやか「はっきり言います。あたしは勢い任せで契約しました。

    だから、契約した時はマミさんの言う覚悟は無かったかもわかりません」



さやか「でも…」

さやか「あたしは守りたいです」

さやか「あたしの育ったこの街も、その街を人知れず守ろうとした親友の事も…」



さやか「だから、今は後悔してません」


さやか「覚悟だってあります」
46 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/21(日) 00:53:58.28 ID:NV+kz/T80

まどか「さやかちゃん…」


マミ「ごめんなさい。聞くだけ野暮だったみたいね」

さやか「いえ…。あたしもマミさんが、ただ優しいだけの人じゃないってわかって良かったです」


マミ「…………」

さやか「必要な時には厳しくしてくれる。

    あたしの先生はそんな頼りになる人だって、わかりましたから」


マミ「私も、あなたに認めてもらえたみたいね」


さやか「ごめんなさい…。偉そうなこと言っちゃって…」



マミ「良いのよ。私としても、そのくらいはっきり言ってくれた方が助かるわ」
47 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/21(日) 00:54:33.96 ID:NV+kz/T80

さやか「まぁ何はともあれ…」

マミ「よろしくね、美樹さん」


さやか「こちらこそ、よろしくお願いします! マミ先生っ!」

マミ「ま、マミ先生は照れるからちょっと…」



まどか「わたしも…。改めてよろしくお願いしますね、マミ先生♪」

マミ「もう…/// 鹿目さんまで…」



照れるマミさんをからかう形で、お茶会は和やかな形に戻る。


これからは、マミさんの指導の元で…。

まどかと二人でコンビを組んで頑張っていくんだ。

三人でこの街を守っていくんだ。


そんな最初の時間は緩やかに過ぎていく…。
48 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/21(日) 00:55:13.02 ID:NV+kz/T80

────────

────

──


マミ「さて、それじゃ魔法少女教室一時間目、張り切っていってみましょうか」


と張りきった甲斐の無い地味な結界探しが始まる。

ただ、さすがはベテランのマミさん。

そこら辺もお手の物みたいで、割とすぐに結界を見つけ出した。

さて、ここからが本番なんだけど…。



マミ「ここから二時間目になるんだけど、今回は二人とも見学してもらってもいいかしら」


まどか「どうしてですか…?」


マミ「美樹さんは勿論、鹿目さんも戦いをゆっくり見学する機会なんて無かったでしょう?

   人の戦い方を見てるのも結構勉強になるものよ」
49 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/21(日) 00:55:53.44 ID:NV+kz/T80

と言う事で、あたしとまどかは完全に見学者扱い。


あちこちにある薔薇を、髭の使い魔が管理する結界の最深部。

先日に戦った魔女の結界に負けず劣らず、異様な光景が広がっている。

そこに舞い降りたマミさんは、使い魔共々、薔薇の混じったぐちゃぐちゃ頭と蝶の羽根の魔女を完全に圧倒した。



さやか「無数の銃を作り出して、舞うように撃ちまくる…」


まどか「と思えば、空中に銃を大量に召喚しての一斉掃射…」


さやか「んでもって…」


まどか「敵を拘束魔法で縛り上げての…」






マミ「ティロ・フィナーレ!!!」
50 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/21(日) 00:56:44.60 ID:NV+kz/T80

さやか「すげー…。これが本物の魔法少女かぁ…」

まどか「ね? 凄いでしょ? マミさん」


さやか「うん。あれぞ魔法少女って感じだねぇ。

    あたしなんかただ斬りつけてるだけだから、剣闘少女とか戦士少女とかの方が違和感ないし…」

まどか「さやかちゃんは近接タイプだから尚更顕著だよね…。

    あたしは魔力で出来た矢を使うから、さやかちゃんよりは魔法っぽいけど、地味な物は地味だし…」



マミ「最初は誰だってそんなものよ」


まどか「そうなんですか?」


マミ「そうよ。私だって何度も戦ってる内に色々工夫して、今の戦い方になったの」

さやか「じゃあ、あたし達もやってる内にうまくなる…、そう言う事ですか?」



マミ「そうね…。今日は早く片付いたし、そう言う練習もやってみましょうか」

まどか「…?」


マミ「今日手に入れたグリーフシードは二人にあげるから、少し練習してみると良いわ」
51 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/21(日) 00:57:39.64 ID:NV+kz/T80
────────

────

──



さやか「って、突然言われても…」

まどか「難しいよね…」


マミ「そうね。でも、今の内に練習してコツを掴んでおけばいざという時、役に立つかもしれないから…」





まどか「む〜〜〜〜ん」

さやか「ぐぬぬ………」


マミ「イ、イメージするだけじゃ駄目よ?

   ちゃんと、それに合わせて魔力を使うようにしないと…」
52 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/21(日) 00:58:06.76 ID:NV+kz/T80

さやか「そっか…! それなら…!」



さやか「む〜〜〜〜!」

さやか「マミさんの〜〜〜〜!」


さやか「技っ!!!!」



マミ「!」

まどか「すごいよ、さやかちゃん!

    剣がいっぱい! マミさんの銃をいっぱい出したあれにそっくりだよ!」


さやか「へへへ〜! 来ちゃったかな〜? あたしの時代!」




マミ(良いセンスね…。僅か二日で、もうそれができるようになるなんて…)
53 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/21(日) 00:59:33.25 ID:NV+kz/T80
まどか「よし、じゃあわたしも…!」



さやか「おっ。なんかまどかの矢が…」

マミ(魔力の収束…?)



まどか「………」


さやか「どんどん光が大きくなってく…」

マミ
「…………」




まどか「……………」


さやか「まぶしー! やるじゃん、まどか!」

マミ「………まずいわ」





まどか「いきますっ! ティロ・フィナー………」


マミ「いけない! 鹿目さんっ!!!!!」
54 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/21(日) 01:00:23.00 ID:NV+kz/T80

ドン!と爆発音が響く。


溜まりに溜まったピンクの光。

その許容量はとうとう限界を超え、暴発した。


そして…。



まどか「し、失敗しちゃった…」



さやか「ま、まどか、その頭…!

    ぶっ! あははあははははははははは!!!!!!」

マミ「ア、アフロ……」



まどか「ひ、酷いよ! さやかちゃん!

    そんなに笑わないでよ!」

さやか「だって…、だってさ…、ほら鏡…!

    あははははははははははは!!!」


まどか「ひ、酷い…。こんなのってないよ…。

    あんまりだよ…」


マミ(あれだけの魔力を集めて暴発させて、まだ平然としてるの…?)

マミ(やっぱり鹿目さんは、魔力の大きさが武器みたいね…)
55 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/21(日) 01:01:46.32 ID:NV+kz/T80

失礼と思いながらも、ツボにはまって笑ってしまったあたしを他所に、

マミさんはまどかの指導をしつつ、魔力でちりちりになった髪の毛を直していく…。

確かにあの状態のまま帰ったら、色々な意味で大惨事になるだろうし…。



マミ「はい。これで、どうかしら?」


さやか「おぉ…。髪の毛が直った」

まどか「魔法ってそんな事も出来るんですね…」



マミ「気を取り直して、もう一度やってみましょう。

   さっき言った通りにしつつ、今度は溜めすぎないようにね」


まどか「はい…!」
56 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/21(日) 01:02:16.77 ID:NV+kz/T80

先ほどと同様にまどかの矢にピンク色の光が集う。

ただ、その光は途中で止まり、それと同時にまどかは矢を放った。


大きめのピンクの矢は壁に着弾。

先ほどよりも激しい爆発を持って、廃ビルの壁を吹き飛ばした。



まどか「やった! できましたっ! マミさんっ!」


マミ「よかったわね。鹿目さん」

まどか「はいっ。ありがとうございます!」



さやか「炸裂弾かぁ…。でも、よくそんなアイデアが出てきましたね」


マミ「炸裂弾は私も時々使ってるから、もしかしたらと思って。

   鹿目さんの矢は魔力を直接放ってるみたいだから、やっぱり形状や性質の応用はしやすいみたいね」
57 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/21(日) 01:03:09.74 ID:NV+kz/T80

────────

────

──


マミ「じゃあ、二人ともお疲れ様」



さやか「はいっ! 今日はありがとうございました!」

まどか「また、よろしくお願いします」



とまぁ、魔法少女教室の一日目が終わる。

まどかと二人歩く帰路での話題は、当然さっき別れた先輩もとい先生の話となる。



さやか「かっこいいなぁ、マミさん」

まどか「そうだね〜。やっぱり憧れちゃうよね」


さやか「なんかさ、実力とかそう言うのだけじゃなくてさ…。

    考え方とかも大人でさ、やっぱり尊敬しちゃうよ」


まどか「そうだね。でも…」
58 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/21(日) 01:04:14.48 ID:NV+kz/T80

まどか「…………かっこよさだけなら、さやかちゃんも負けてないと思うな」





さやか「ん〜? なんか言った?」


まどか「何でも無いよっ」



さやか「なんか、かっこよさがどうとか聞こえた気がしたんだけど〜?」


まどか「マ、マミさんってかっこいいね〜って」


さやか「そうだね。なれると良いよね。

    二人でマミさんみたいな魔法少女にさ…!」



目標となる憧れの人。

未熟だけど、前に進めると信じた今日。


部活動の延長みたいなノリだった。

まだ、この時は…。


命懸けの戦い。

そして、あの人の強さと弱さ。

それを知る事になる…。



―to be continued―
59 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/21(日) 01:05:02.42 ID:NV+kz/T80

―next episode―



「嫌な予感がする…。今回は私一人でやるわ。二人はおとなしく見ている事」





―【第三話】対決。お菓子の魔女―
60 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/21(日) 01:06:38.66 ID:NV+kz/T80
はい。投下終了です。
次の話が書けていないから、次の投下が何時になるかは不明
明日か明後日には投下したいところ
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/21(日) 01:21:34.20 ID:eHstkU8Jo
乙乙!
OPネタだと後はあの魔物(?)と風船まどかが……



さぁ、そして次は例の一大イベントだ
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/21(日) 01:49:05.89 ID:Xkh0XAago
キャーマミサーン
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/08/21(日) 02:14:53.48 ID:mKSJz/vUo
乙っちまどまど!
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/08/21(日) 09:02:43.96 ID:24W/DXAAO
マミさぁぁぁぁぁんんん!!!
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/08/22(月) 09:35:16.42 ID:V0okWWa10
嫌な予感がするぅうううううう
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/08/22(月) 09:37:14.71 ID:V0okWWa10
嫌な予感がするぅうううううう
67 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 21:25:27.49 ID:kXQ9vZU+0
投下の時間がやってきました

9話の特別EDに涙腺破壊され、ペースが最悪でしたがどうにか書けました
おかげ様で、相変わらずストックはなし…
今日中に第4話は書き終えるつもりだったのに…
68 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 21:27:01.61 ID:kXQ9vZU+0

まどか「今日と言う今日は、成功させるよ!」

さやか「ま、まどか…。その魔力の溜め方は…!?」


まどか「てぃひひっ! 今度こそやるよっ…!」

マミ「か、鹿目さん…!?」




まどか「いくよ! ティロ・フィナー…………あれ?」



マミ「鹿目さん…………」

さやか「ぶっ…! あははははははははははは!!!!」
69 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 21:27:47.75 ID:kXQ9vZU+0

例の如く矢に魔力を溜めたわたし。

が、その魔力は何故か別の方に向かってしまったみたいで…。


衣服が風船のように膨れ上がってしまいました。



まどか「なにコレ! 服が…、膨らんで…!?」


マミ「ちょ…、鹿目さん動かないで!」




まどか「あ、あれ…? と、飛ばされる〜!」


さやか「ははは…………ってオイ! 本気でヤバイんじゃないの! あれ!」

マミ「と、とりあえず拘束魔法で…!?」




まどか「助けて〜! さやかちゃん!! マミさ〜ん!!」
70 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 21:28:20.19 ID:kXQ9vZU+0

────────

────

──


マミ「ティロ・フィナーレ禁止!」



まどか「はい………」

さやか「ま、まぁ元気出しなって、まどか…」


マミ「美樹さんは美樹さんで、敵陣に突っ込み過ぎてピンチになったばかりなのを忘れたのかしら?」

さやか「ぐっ…」




マミ「ふぅ…」

マミ「二人とも頑張るのは良いし、真っ直ぐなのもとても良い所だと思う」


マミ「だけど、頑張り過ぎて空回りするのは二人の悪い癖。

   もう少し落ち着いて、周りを見るようにしてね」


まどか「はい…!」

さやか「了解です! マミさん!」



とまぁ、わたしもさやかちゃんも失敗ばっかりですが、どうにか魔法少女やってます。

マミさんには迷惑かけっぱなしだから、その内お礼しないといけないなぁ…。
71 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 21:29:25.60 ID:kXQ9vZU+0





―【第三話】対決。お菓子の魔女―



72 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 21:30:28.19 ID:kXQ9vZU+0

マミ「上条恭介君…?」


まどか「はい。さやかちゃんの幼馴染で、すごくバイオリンが上手だったのに事故にあっちゃって…」


今、わたしとマミさんはとある喫茶店でお茶をしている。

いつもならマミさんの自宅で行われるお茶会をこんな所でしているのは、さやかちゃんを待っているから。


そのさやかちゃんは、今名前の挙がった上条君のお見舞いに行ってて、

自ずと話題もその事になったんだけど…。
73 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 21:31:25.95 ID:kXQ9vZU+0

マミ「その子の手を契約の願いで治したの…?」

まどか「そうだって、さやかちゃんは言ってました」


マミ「一応確認するけど、その子と美樹さんは幼馴染以上の関係ではないのよね?」

まどか「え? はい…」


マミ「でも、美樹さんはその子に好意以上の感情を抱いてる、違う?」

まどか「………はい」



マミ「………」

まどか「マミさん………?」


マミさんの表情が曇る。

眉を潜め、ティーカップを見つめる瞳は、戦いの時に近くて少しだけ怖くなる。
74 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 21:34:06.92 ID:kXQ9vZU+0

マミ「真っ直ぐなのは良い事だけど、彼女は思っている以上に危なっかしいわね…」

まどか「え…?」



マミ「美樹さんは、自分の本当の願いに気付いているのかしら、と言う事よ」

まどか「はい…?」


マミ「他人の夢を叶えてあげるのと、他人の夢を叶えた恩人になるのとでは、似ているようで全く違う…。

   その差が、後々悪い影響を及ぼさなければいいんだけど…」


まどか「さやかちゃんは…」


マミ「わかってる…。美樹さんはそんな子じゃないって…」

マミ「でも、だからこそ不安なの…」


マミ「その違いに気付かずに苦しんだ…、

   いいえ、苦しみ続けている子を私は知っているから…」


寂しそうな目をしたマミさんはわたしを見ずに下を向く…。

そんなマミさんにその話を開こうとした時だった。
75 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 21:35:08.50 ID:kXQ9vZU+0

さやか≪まどか、マミさん。聞こえます…?≫

まどか≪さやかちゃん、どうしたの?≫


さやか≪病院で、孵化しかけのグリーフシードを見つけました≫

マミ≪本当…?≫



さやか≪はい。様子がおかしいから、恐らく結構まずい状態なんじゃないかな、と≫

まどか≪大丈夫なの…?≫


さやか≪平気平気。それより、どうしましょう? 力任せに壊していいなら、あたしが…≫

マミ≪ちょっと待って…。今対処の方法を…≫



さやか≪!?≫

さやか≪な、なんか光って…!≫

さやか≪う、うわ…!? ちょ…≫
76 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 21:37:11.81 ID:kXQ9vZU+0

マミ≪美樹さん…!?≫

まどか≪さやかちゃん!?≫



まどか≪さやかちゃん!≫

まどか≪さやかちゃん!!!!≫

まどか≪…………≫



まどか「何も聞こえなくなっちゃった…!

    どうしよう、マミさん…!」」

マミ「落ち着いて。恐らくは結界が出来て、それに巻き込まれたのよ」


まどか「じゃあ、さやかちゃんはまだ…」

マミ「えぇ。病院の近くでお茶にしたのは正解だったみたい。

   私達も急ぎましょう」
77 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 21:38:12.58 ID:kXQ9vZU+0

────────

────

──


マミさんの言う通り、病院の外周に魔女の結界の反応があった。

さやかちゃんも、やはりこれに巻き込まれたようで、中で使い魔と戦っていた。



さやか「おっ、来ましたか!」


まどか「よかった〜。急に連絡が無くなったから心配したんだよ〜」

さやか「まどかは心配し過ぎ。そんなに簡単にやられないって」


マミ「私は一人で魔女に突っ込んで行ってないか心配だったけど、そう言う無茶はしないみたいね」

さやか「あはは…。まどかにも、マミさんにもさんざん釘刺されてますし…」


マミ「わかってくれたのなら一歩前進ね。

   まぁ、とりあえず使い魔を倒しつつ進みましょうか」
78 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 21:39:24.50 ID:kXQ9vZU+0

お菓子と薬品だらけの結界内。

可愛らしいお菓子とその匂いに、薬品の独特の匂いが混じり合う中を進む。

さすがに三人も魔法少女が揃えば、道中の使い魔は全く相手にならず、あっと言う間に最深部へ辿り着いた。



定例の大部屋にあるのは、やけに長いテーブルと椅子。

そこには可愛らしいぬいぐるみのような存在が、椅子にだらりと腰かけている。

他にそれらしきモノが見当たらない以上、あれが孵ったばかりのこの結界の魔女なんだろう。



まどか「可愛い…」

さやか「しかもちっちゃい…」


マミ「油断しないで…!」


さやか「マミさん…?」




マミ「嫌な予感がする…。今回は私一人でやるわ。二人はおとなしく見ている事」
79 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 21:40:34.31 ID:kXQ9vZU+0

まどか「でも…」

さやか「強力な魔女なら尚更あたし達も…」



マミ「今のあなた達が戦ったら、命を落とすような危険な相手かもしれない。

   とりあえず下がっていて」



まどか「マミさん…」

さやか「本当に大丈夫なんですか…?」



マミ「大丈夫よ。可愛い後輩にかっこ悪い所見せられないものね」



あの魔女はまずい。

私の中の何かがそれを告げる。

だから、私は二人を魔女から遠ざけた。



だって、あの二人は…。
80 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 21:41:30.05 ID:kXQ9vZU+0

魔法少女は使命に生きる孤独な存在。

それは理解していた。


私達が魔女や使い魔を倒さなければ、多くの人達が犠牲になる…。

そんな事をさせない為に、私達魔法少女はいる…。

それは理解してた…。


でも、いくら凄い力を手に入れても心は人間のままで…。

魔女と戦う恐怖…。

一人で戦い続ける孤独…。


それは何時でも私に纏わりついて…。

私はそれに押し潰されそうで…。



けれど、そんな私にも救いの手は差し伸べれらた。
81 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 21:43:32.23 ID:kXQ9vZU+0

??『アタシをマミさんの弟子にしてくれないかな…?』


ようやく出来た初めての理解者。

自分を慕ってくれる笑顔。

一緒に戦う仲間。

可愛い後輩。



私はずっと欲しかったものをようやく手に入れた…。

だから、浮かれていた…。
82 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 21:44:50.66 ID:kXQ9vZU+0

??『みんなアタシが壊したんだ…! アタシの願いが…! みんなみんなッ!』



あの子は大切なモノを全部失った。

そして、そんなあの子は私を頼りにしてきた。

だけど、私の言葉は上っ面の慰めにしかならなかった。


正義だの使命だの誰かの為だの謡っても、一番身近にいた人さえ救えない…。

魔法少女としての私の言葉はその程度のものだった。


あろうことか、そんな状況でも私はあの子に魔法少女としての在り方を説こうとした。

少し考えれば、それが彼女にとっての苦痛になってるか、わかったかもしれないのに…。
83 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 21:46:26.47 ID:kXQ9vZU+0

??『さよなら、巴マミ…』


やがて、あの子は自暴自棄になり、私を見限った…。

同時に、誰かの為に祈り、その現実に敗れた彼女は誰かの為に戦う事を放棄した。


私は、あの子の事を支えられなかった…。

私は、あの子を守ってあげる事が出来なかった…。



それでも私は魔法少女だから…。

あの子が使命を破棄して生きると言うなら、その分まで戦う責務がある…。

だから、また一人で戦い始めた…。



再び訪れた孤独と戦いながら…。

あの子はもっと苦しいんだと言い聞かせて…。


そうやって戦って…。

疲れ切って…。

また孤独に潰されそうな弱い心に呆れていた時、あの子達は現れた。
84 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 21:47:53.64 ID:kXQ9vZU+0

まどか『もし、良かったらで良いんです…。

    戦い方を教えて貰えたらって…』


さやか『こちらこそ、よろしくお願いします! マミ先生っ!』



世の中は不公平だ。

こんな私に再び仲間を……。

欲しかったものを与えてくれるのだから…。


何故、あの子ではなく私なんだろう…?

そう思いながらも、私は彼女達の望む先生として、先輩としてあろうと思った。
85 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 21:50:11.03 ID:kXQ9vZU+0

今度こそ…。

立派な先輩として後輩を守りたい…。


違う。

守らなければならない…。



私はもう…。

私の仲間を失いたくない…。



だから…。

あの二人はわたしが守る…。



私はもう…。

一人ぼっちじゃないもの。
86 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 21:51:46.83 ID:kXQ9vZU+0

マスケット銃を両手に作り、ぬいぐるみのような魔女を撃ち抜く。

椅子から落ちてくる魔女が地上に転がるまでに、さらにもう数発弾丸を撃ち込む。


それでもこの魔女は何も動きを起こさず、転がっているだけ。

まるで本物のぬいぐるみのよう。


勿論。そんな筈はない。

その動きの無さは却って私に危機感を抱かせた。




マミ「…………」



被っていたベレー帽を手に持って二振り。

その後に首元のリボンを解いて、それから今までのモノとは比較にならない巨大な銃を作り出す。
87 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 21:52:47.22 ID:kXQ9vZU+0

マミ「ティロ・フィナーレ!!!」


大砲のような大口径の銃が、魔女を撃ち抜く。

そのダメージを以て、いよいよ魔女が動き出す。



にゅるり、と気味の悪い音を立てて……。

ぬいぐるみの口から、明らかにその中に収まりきらない大蛇のような生物が飛び出す。


物凄い勢いで飛び出したそれは、巨体からは信じられない速度で私に迫った。
88 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 22:01:52.75 ID:kXQ9vZU+0

マミ「………」




さやか「あぁっ!!!!」


まどか「マミさん!!!!!」



高速で迫る魔女。

が、それを遮るように、さらに速い速度で無数のリボンが伸びる。


遥か右の地面、そして遥か左から斜め上へ向かって伸びたそれは、魔女の前で交差し、

網状の防壁となって、突進してくる魔女を受け止めた。
89 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 22:02:42.08 ID:kXQ9vZU+0

マミ「………用心と言うのは、やはりしておくものね」



反撃を想定して、敵が近接してきた時に発動する妨害用の魔法を先に用意しておいた訳だけど…。


これが正解だったようね。

もしも用意を忘れていたなら、私はあの魔女に頭から食い殺されていたかもしれない。
90 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 22:03:18.89 ID:kXQ9vZU+0

魔女はその巨体を活かした馬力で、強引に網状の防壁をぶち破る。

用途を違う魔法を応用しただけに過ぎないから、

長時間の足止めは期待していないものの、あまりの突破の早さにさすがに肝を冷やす。


もっとも、その僅かな時間があれば、十分だった訳だけど…。




マミ「今度こそ終わりよ!」


大きなバックステップと共に、出せるだけのマスケット銃を空中へ召還。

向かってくる魔女に向かって一斉に掃射。


魔女の巨体は、弾丸の雨で蜂の巣となった。
91 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 22:04:19.75 ID:kXQ9vZU+0

穴だらけになった魔女。

だけど、それは次の瞬間にただの抜けがらに変わった。


深手を負った古い体を脱ぎ捨てるように、その口から無傷の大蛇が飛び出す。




マミ「思ってたよりも遥かに厄介ね…」


飛び出した魔女の体は、先ほどのダメージが嘘のように動き回る。

その様子から、脱皮の目的は予想の通りと言った所でしょう。


赤い水玉のある黒い大蛇のような魔女に追われ続ける。

先ほどまでとは打って変わってコロコロ変わる無邪気な敵の表情は、却って恐怖を煽っていく…。
92 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 22:05:30.08 ID:kXQ9vZU+0

マミ「これで静かにして貰えると助かるんだけど…!」



私が得意とする拘束魔法が魔女を縛る。

が、縛り付けた位置から押し出されるように新しい中身が飛び出した。

馬鹿にしたように笑う魔女の顔に僅かに苛立ちつつも、その攻撃を走って避ける。




マミ「これも駄目か…」


近接タイプの魔女の相手をこれで対処してきた私には、大きな痛手だった。



先制攻撃を乗り切られ…。

得意としている拘束魔法は無効化。

高火力の攻撃の使用を許さない、高速の突進。

また、ちょっとやそっとのダメージなら脱皮で回復されてしまう…。


まさに私の天敵と呼べるほど相性の悪い魔女と言えた。
93 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 22:07:03.37 ID:kXQ9vZU+0

マミ「参ったなぁ……」


マミ「私が守らないといけないのに……」


マミ「私が………」


位置取りには気を付けていたつもりだった。

でも、相手の魔女の攻撃は激しく、それすらもままならない…。


何時しか私は逃げ場を失い、壁際に追い込まれていた。
94 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 22:07:42.10 ID:kXQ9vZU+0

マミ「しまった…」



魔女はにやりと笑う。

不気味な青い舌を舐めずる敵の無邪気な表情に、冷や汗が流れる。



次の瞬間…。
95 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 22:13:15.36 ID:kXQ9vZU+0

ピンク色の爆発が上がる。


それを食らった魔女はたまらず吹き飛ぶ。

例の如く、その途中で口から吐き出される形で魔女の新しい体が飛び出す。

それが意味する事は一つしかない…。



まどか「マミさん! 大丈夫ですか…!」


マミ「鹿目さん…?」



あの矢は私が先日に教えた炸裂弾。

たまらなくなった鹿目さんが私を援護したんだ。


でも、そんな事をすれば今度は鹿目さんが魔女の標的になってしまう。
96 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 22:14:47.02 ID:kXQ9vZU+0

マミ「逃げて! 鹿目さん!」


まどか「逃げません!」


マミ「あの魔女は今度はあなたを…!」




???「このあたしを忘れてもらっちゃ困ります!」


底抜けに元気な声と共に青い魔法少女は、魔女の顔面を切り裂く。

その一撃は脱皮を行わせるには及ばないまでも、魔女の怒りを買うには十分だった。



さやか「よっし。狙い通りこっちに来たね!」


まどか「気を付けてね。さやかちゃん!」


さやか「オーライ! まどか!」



私は助けられていた。

自分が守るべき二人の後輩に…。
97 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 22:15:43.41 ID:kXQ9vZU+0

マミ「あなたたち、何をやって…!」

まどか「ごめんなさい…。見てられなくて…」



まどか「お説教は後で受けます。だから…」


マミ「わかったわ…」


もう手を出してしまったんだから仕方がない。

情けないとは思いながらも、私は鹿目さんと美樹さんを戦力に数えた上での分析を始める。


魔女の動き自体は単純そのもの。

見えた標的ないし、攻撃を行った対象を追いまわすだけ。


問題はそのスペックの高さ。

あの巨体から繰り出す攻撃は、一撃でも受ければ即死確定。

それにも関わらず、あの動きの速さ。

さらには、受けたダメージを即座に修復する脱皮能力。


特に脱皮能力をどうにかしない限り、私達にはまったく勝機がない…。

あれを破るには…。
98 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 22:17:57.98 ID:kXQ9vZU+0

マミ≪美樹さん、ほんの少しで良いの…。そのままその魔女の足止めをお願いできる?≫


さやか≪了解っす。お任せあれ!≫



まどか「マミさん…?」

マミ「試したい事があるの。協力して貰える…?」


まどか「はい…!」


魔女の相手を美樹さんに任せ、私は鹿目さんの元へと走る。

少し心配ではあるけど、美樹さんとあの魔女の相性は悪くないと思う。

だから、多少の時間なら…。


そして、その間に鹿目さんに念話で作戦を説明する…。
99 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 22:18:52.35 ID:kXQ9vZU+0

まどか「わ、わかりましたけど、大丈夫なんですか…?」


マミ「大丈夫よ。細かい事は全部私がやるから…。

   鹿目さんは、指示通りに」


まどか「わかりましたっ! やってみます!」


マミ「えぇ! それじゃ始めるわよ!」


私は鹿目さんに抱きつく形でその後ろに立ち、彼女の右手を握る。

そして、左手で魔法を使う。


美樹さんを追いまわしている大蛇のような魔女を引き付ける為に…。
100 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 22:21:03.07 ID:kXQ9vZU+0

マミ≪美樹さん。もう良いわ! すぐに引いて≫


さやか≪了解です、マミさん!≫


マミ≪できるだけ離れてね≫


さやか≪…?≫



美樹さんへ合図を送りつつ、私は拘束魔法を魔女へ放つ。

リボンに絞め付けられた魔女は、口から新しい体を吐き出す。

それだけではまだ美樹さんを追うのをやめないので、

もう一つ、さらにもう一つとそれを伸ばして執拗に脱皮をさせる。



マミ≪来るわよ、鹿目さん!≫


まどか≪は、はい…!≫


美樹さんを見失い、こちらを見つけた魔女が迫る。

嫌がらせにむっとした魔女の表情が即座に大きくなる。
101 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 22:22:10.04 ID:kXQ9vZU+0

まどか「あぁッ…!」


鹿目さんの目の前に迫った魔女が、その口を開く。

後ろにいる私ごと飲み込めそうな大口には、どんな物でも噛み砕けそうな牙が並ぶ…。


眼前に迫った魔女。

攻撃をしようと開いたその大口。




死と隣り合わせの絶好の機会。

私はその瞬間を逃さずに魔法を放つ…!
102 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 22:23:47.54 ID:kXQ9vZU+0

マミ「今よ…!」


魔女の口の中、そして鹿目さんの前に黄色いリボンが溢れる。

それはあっと言う間に形を作り、やがてあるモノを成して消える。



私の放った武器生成用のリボン。

それは私の切り札にあたる、大砲のように巨大なマスケット銃を作り出す。


そして、その巨銃は魔女の口内に砲口をねじ込み、鹿目さんの目の前にトリガ―を向けていた。




マミ「鹿目さん!!!」


まどか「…! はいっ!!!!」


恐怖で固まった鹿目さんに合図を送る。

その小さな体に秘めた大きな魔力を乗せつつ、目の前の巨大なトリガーを力いっぱい引く…。

禁止した筈のその技の名前を叫びながら…!
103 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 22:24:38.38 ID:kXQ9vZU+0

まどか「いって!!!!!」


まどか「ティロ・フィナーレ!!!!!!!!!」



暴発しないよう、鹿目さんの魔力を私が後ろから制御する。

それでも溢れんばかりの魔力の供給を受けた巨大な銃が魔女の口内で火を噴く。


放たれたその弾丸は鹿目さんの魔力を存分に纏い、圧倒的な出力の魔力光と共に放たれた。



まどか「っく………!」


マミ「大丈夫…! 反動で吹き飛ぶなんて間抜けな事絶対にさせないから…!」



強烈な反動と共に放たれたビーム砲のようなピンクの光。

それは魔女を貫くどころか、その顔の部分だけを残し、跡形もなく消し飛ばした。


勿論、脱皮など出来る筈もなく、魔女の顔面だけが無残にもそこに残った。
104 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 22:25:33.36 ID:kXQ9vZU+0

まどか「へぇぇ……」


マミ「ふぅ………」


強烈な反動が消え、魔女の残骸が消えるのを見て、ようやく私達は安堵する。

へなへなと腰を落とした所に、元気いっぱいのもう一人の後輩が駆け寄って来る。



さやか「やった! やりました!」


さやか「さっすが、まどか! マミさん!」


手を伸ばした彼女に起こされながら、私達は消えていく結界を眺めた。
105 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 22:26:51.27 ID:kXQ9vZU+0

マミ「…………私は、大人しくしてなさいと伝えた筈よ?」


まどか「ごめんなさい…」

さやか「すいません…」


変身も解け、病院の外周に戻って来た私達は、人目に付かない物陰でお説教タイム。

助けられた以上、心苦しいけど言わない訳にもいかない。

彼女達は指示を無視した事実は変わらないのだから…。




さやか「ち、違うんです! まどかは全然悪くなくて…!

    あたしが何時もみたいに飛び出そうとしたのを、フォローしてくれただけで…!」


まどか「そんな…! さやかちゃんが一人で怒られる事ないよ!

    そもそも最初にわたしが…!」


マミ「ふぅ……、もういいわ」


溜息を吐いた私は、肩を落とす二人の間に入ると…。

その両腕で彼女達を抱きしめた。
106 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 22:28:20.26 ID:kXQ9vZU+0

まどか「マ、マミさん…?」

さやか「ちょ…、どうしたんですか…?」


マミ「あなた達が思っている程、強くも立派でもないのよ…」


マミ「震えてるでしょ…?」

マミ「本当はね…。二人が助けに入ってくれなかったら、どうなってたかわからないと思うと少し怖かった…」

マミ「それに、私一人だったらあなた達を守れたかもわからない…。

   おまけにね、一人寂しさで泣いてた事だってあるの…」



マミ「私はね、あなた達の思うような立派な人間じゃ…」



さやか「それ、誰だってそうだと思います」


マミ「美樹さん…」


さやか「誰だって一人は寂しいし、死ぬのは怖いと思います。

    そんなの当たり前だと思います…」


さやか「それでも『誰かの為に』って頑張って来たマミさんを、あたし達は尊敬してるんです」
107 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 22:30:39.93 ID:kXQ9vZU+0

まどか「わたしはマミさんの優しさに助けられてきました」


まどか「イヤなら捨て置く事だってできたのに、親切に色々教えてくれて…。

    魔女との戦いではいつもサポートしてくれて…。今日だって私達を守ろうとしてくれた…」


まどか「だから、今日の事はわたし達の気持ちなんです。

    マミさんを絶対に失いたくなかったから…」



マミ「二人とも……」

マミ「参ったなぁ…。まだまだちゃんと先輩ぶってなきゃいけないのになぁ…。

   やっぱり私ダメな子だ…」



さやか「十分、先輩らしいですよ、マミさん」


まどか「あたし達、未熟だからまだまだ迷惑かけちゃうかもしれないけど…。

    これからも、よろしくお願いします。マミさん」



鹿目さんに、美樹さん。

今日は二人に情けない所、見せちゃったな…。

でも、凄く良い子だ…。


今度こそ私が守って、支えてあげたい…。

もう、あんな悲しい別れはしないように…。
108 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 22:32:33.87 ID:kXQ9vZU+0

────────

────

──


マミ「〜♪」


??「随分とご機嫌だね。マミ」



マミ「QB…。あなた、今までどこ行ってたの?

   新人の美樹さんを放ったらかしにして」


QB「その点に関しては反論のしようがない。ただ、色々と急用があってね。

   さやかには最低限の事は教えたし、この街にはマミもまどかもいたからね」


マミ「あなたが急用…? 珍しいわね…。

   何かあったの…?」


QB「まだ、何とも言えない。ただ用心してくれ、とだけ言っておくよ。

   君はともかく、まどかやさやかは魔法少女になったばかりだからね…」


マミ「わかったわ」


QB「じゃあ、僕はこれで」
109 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 22:34:15.09 ID:kXQ9vZU+0

マミ「待って…」

QB「まだ何かあるのかい?」


マミ「あの子は…?」


QB「これから行く所だよ。

   最も彼女の実力も確かだから、君同様に余計なお世話だとは思うけどね」


マミ「…………」



わかってる。

今の彼女はもう、私の知ってる彼女じゃない。

実力も確かだし、何よりあの子を支えられなかった私にそんな資格がない事くらい…。


でも…。

あなたは今どうしてるの…?



佐倉さん…。





―to be continued―
110 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 22:35:00.89 ID:kXQ9vZU+0

next episode―



「私は、鹿目さんみたいに強くないですから」





―【第四話】何の役にも…―


111 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/24(水) 22:37:37.76 ID:kXQ9vZU+0
はい。投下終了です。

マミさんの安否はドラマCD前から決めてました
が、あれは結果的に自分としては良い流れになりそうです

次は明日…、はちょっと無理かな?
明後日にはどうにか
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/08/24(水) 22:43:39.76 ID:JFvQZTZ10
乙!次回は杏子回と見せかけてメガほむ回だと…!
そして何気に奴らが狩リノ時間を満喫しているかも知れないだと…!?
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/24(水) 22:44:16.94 ID:+tqTK31po
お疲れ様でした。
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/08/24(水) 23:09:00.48 ID:r41gj7CAO
追い付いた乙
コンボ技上手かったよ!!!
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/08/25(木) 00:34:02.56 ID:qVPYc0Fro
乙です!
マミさん生き残ってくれてよかった…
構成が上手いなあー
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/25(木) 13:02:40.43 ID:TU4jnmIro
おお、早速フェラウェル・ストーリーの設定が導入されてる
あれ、良かったよねぇ……

杏子とマミのコンビが公式でフォローされるなんて胸熱
117 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:14:40.91 ID:jvv3dnE70
投下です
なんか最近ペースが凄まじく遅い…

いつも乙感謝です

>>112
活躍キャラの都合とかで順番入れ替えちゃってる話もあります

>>114>>115
そう言ってくれると嬉しいです
マミさん単機でシャル倒すのも考えましたが、勝ち筋が見えなんだ…

>>116
あれは杏マミだ〜ってバレ聞いて三話完成を少し遅らせました
今だから言いますと、目指すべきはホムマドマミアンサヤエントロピーのこのSSに最高級の燃料だったり
が、それをうまく絡めた構成に悩みまくり、杏子回の筆が進みませんorz
118 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:16:50.41 ID:jvv3dnE70

猫「にゃあ〜」


???「こんなに小さいのに一人ぼっちなの…?」


猫「にゃあ…?」


???「私と、同じだね…」



そう…。

私はいつも一人ぼっち。

でも、それは仕方のない事なんだ…。


潰れた空き缶や、穴の空いたビニール袋を好んで持ち帰る人がいないように…。

何の価値も無くて…。

何の役にも立たない人間に、手を差し伸べる人なんていない…。



だから、私はきっと…。

ずっと一人ぼっちなんだ…。
119 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:18:05.82 ID:jvv3dnE70





―【第四話】何の役にも…―



120 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:18:43.49 ID:jvv3dnE70

さやか「おっはよぉ! まっ!どっ!か〜〜〜!!!」


まどか「ひゃあぅ! もう! さやかちゃんのエッチ!

    さすがに人通りが多い所では勘弁してよっ///」


さやか「あ………。そっか、ごめんごめん」




まどか「………何かあったでしょ?」


さやか「いや〜、ないよ? 何も」



まどか「………嘘吐き」


さやか「…………」
121 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:19:50.70 ID:jvv3dnE70

まどか「…………」

さやか「…………」


まどか「…………」

さやか「………あ〜、はいはい。わかった、わかったって」


さやか「昨日さ……、まどかやマミさんと別れた後、もう一回恭介のお見舞い行ったんだ」

さやか「そしたらさ、もう退院してた。

    それにちょっと頭に来てた」


まどか「それは酷いね…」



さやか「でしょ〜? 失礼しちゃうわよねぇ」

まどか「そうだねぇ。だったら直接聞いてみれば良いんだよっ!」


まどか「お〜い、上条く〜ん!」

さやか「またまた〜。そんな手に引っかかる訳が……って本当にいるし!」
122 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:20:41.07 ID:jvv3dnE70

恭介「やぁ。さやか、鹿目さん」

まどか「おはよう。今日から登校なんだね」



恭介「まぁ、どうにかね。寝てるばかりなのも、もうウンザリだし…」


まどか「ところでさ、なんでさやかちゃんに退院したの教えてあげなかったの?

    昨日もお見舞い行っちゃったんだよ?」


さやか「ちょっと、まどか!」



恭介「そうなのかい…? ごめん、さやか……」


さやか「いや、良いんだけどさ…。やっぱり一言くらい知らせて欲しかったな…。

    な、なんてね……」


恭介「いや、実は一度は君の家にも行ったんだけど、留守でね…。

   その後、電話でおばさんには話しておいたから、てっきり伝わってるものだとばかり…」
123 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:22:04.73 ID:jvv3dnE70

さやか「って言う事は何ですか…。ウチのいい加減な親が、聞くだけ聞いて忘れた、と……」

恭介「ははは…。おばさん、忙しいからね」



まどか≪よかったね、さやかちゃん≫

さやか≪ん……。まぁ、ありがと。まどか≫


まどか「うんうん。じゃ、お邪魔虫は退散するんで、後は二人でゆっくり登校すると良いよっ」


さやか「な、何言ってんの、まどか///」



まどか≪うまくやるんだヨ!≫


さやか「もう…。まどかってば…」

恭介「ふふ…。相変わらず仲良いんだね、二人とも」
124 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:22:37.58 ID:jvv3dnE70

と言う訳で、今日は久々に相棒と別れて登校する事となりました。


突撃ムードメーカーなさやかちゃんだけど、中身はわたしより女の子だったりする。

いつもはぐいぐい引っ張ってってくれるのに、こう言う事には奥手だから…。

それなら、相棒のわたしがサポートしてあげないとね。



とか、考えて歩いている内に、見かけない女の子を追い越す。


何か気になって振り向いてみると、顔色があまり良くなくて、足取りもどこか重くて…。

大丈夫なのかな?とも思ったけど、具合が悪そうにしている訳でも無い。


結局、心のどこかに引っかかりながらもわたしはそのまま歩いた。




最も、この子とはすぐに再会する事になる…。
125 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:23:09.79 ID:jvv3dnE70

――教室――


ほむら「暁美ほむらです。どうか、よろしくお願いします…」


早乙女「暁美さんは心臓の病気でずっと入院してたの。

    久しぶりの学校だから、みんな助けてあげてね」



心臓の病。

その病気のせいで行く事が出来なかった学校。

ずっと、ずっと来たかったはずの場所なのに、私の心には不安以外の感情がない…。


私は人の目が怖い。

自分自身がどうしようもない人間だって知っているから。


それでも、心のどこかで期待してしまう。

今度こそ、友達を作って、普通に勉強して、普通に運動して…。

そんな毎日を…。
126 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:23:38.98 ID:jvv3dnE70

女子A「暁美さんって前はどこの学校だったの?」

女子B「前は部活とかやってたの?」

女子C「すっごい長い髪だよね〜」


ほむら「えと……、あの………、その……」



休み時間になると、私の周りには人だかりができていた。

次々に飛び出す質問。

それを綺麗に捌いていけたら、一人くらいは友達になってくれるのかな…?



でも、それは私にはできない。

質問の答えを悩んでいる間に、次の質問を聞き、頭の中で混ざっていく。



結局、何時も通りしどろもどろになるだけ。

何も喋れずに、虚しい時間だけが過ぎて行く…。


私を中心に話が進んでいるのに、その私が取り残されている…。

恥ずかしくて、情けなくて、逃げ出したい…。


そんな時だった。
127 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:24:22.22 ID:jvv3dnE70

まどか「みんな、ごめんね。

    暁美さんって休み時間には、保健室でお薬飲まないといけないの」



ピンク色の髪を赤いリボンで纏め、ツインテールにした小さくて可愛らしい女の子が助け舟を出してくれる。


確かに薬は飲まなければならないけど、それは何もこの休み時間である必要はない。

ようするに、彼女は保健委員と言う立場を利用したそれらしい建前を用意してくれたのだった。
128 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:26:06.00 ID:jvv3dnE70

まどか「わたし、鹿目まどか。まどかって呼んで」


彼女は満面の笑顔と共にそう言った。

そして…。



まどか「だから、わたしもほむらちゃんって呼んでいいかな?」


親しげに私を下の名前で呼ぼうとする…。

コンプレックスのある自分の名前。

私は、この名前が大嫌いだから、そう呼ばれる事を拒んだ…。



まどか「そんな事ないよ〜。なんかさ、燃え上がれ〜!って感じでカッコいいと思うな」


彼女は私の嫌いな自分の名前をカッコいいと言った。

見方によってはそうなのかもしれない。

だけど、こんな私がそんな名前を持ったって、名前負けするだけで…。



まどか「そんなの勿体無いよ。せっかく素敵な名前なんだから、ほむらちゃんもカッコよくなっちゃえばいいんだよ」


カッコよく…。

そうなれたら…。
129 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:26:37.56 ID:jvv3dnE70

でも、私がなれるわけがない…。

カッコよくどころか…。



ほむら「…………」


教師「君は休学していたんだったな。じゃあノートを借りておく様に。

   じゃあ、美樹。代わりに答えてみろ」



さやか「えぇ!? そこであたし!?」


教師「はぁ……。お前は暁美と違って、毎日授業に出ているだろう…」


クラスに笑いが溢れ、雰囲気が明るく変わる。

同じわからないにしても、あの子のように明るく振舞えれば…。
130 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:27:43.78 ID:jvv3dnE70

情けないのは何も勉強に限った話じゃなくて…。

やってきた体育の時間でも準備運動の段階で体が音をあげる。



ほむら「はぁ……はぁ……」


女教師「暁美さん、大丈夫?

    随分と顔色が悪いわね…。貧血かしら…?」


ほむら「はぁ…あ…、先生…、私…、大丈夫です…」


女教師「本当に顔色が悪いわよ〜?」



ほむら「でも……、あ…」


まどか「ほむらちゃん!」



女教師「やる気はわかったから、今日はもう見学してなさい」


強がりすら見破られるほどにふらふらで…。

付き添ってくれる鹿目さんに連れられて、みんなが走り回る姿を見学する事になって…。
131 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:28:17.89 ID:jvv3dnE70

ほむら「私、最低ですね…。

    転校初日から勉強は付いていけない。体育もまともに参加できない…」


まどか「初日なんだから仕方ないよ…」


ほむら「明日からだって一緒です。

    何の取り柄もないし、誰かの為になる事も、何の役に立つ事もないまま、ただ生きて行くだけなんです。

    今日も、明日も、ずっと…」


まどか「ほむらちゃん、そんな事ないよ。自分を信じてあげようよ。

    頑張ってたら、きっと変われるから…」



鹿目さんの優しい言葉。

だけど、それは私の胸に突き刺さる。

きっと変われる?


そんな筈はない。

だって、私は…。
132 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:29:51.50 ID:jvv3dnE70

ほむら「無理ですよ…」


ほむら「私は鹿目さんみたいに強くないですから」



私は弱くて駄目な子なんだ…。

鹿目さんみたいにはなれない…。


でも、何もそこまでを望んでる訳じゃない…。



ほむら「強くなんてなれなくていいです…。ただ、普通になりたい…」


ほむら「普通に授業を受けて、普通に体育がしたい」


ほむら「あぁやって笑ってみたいだけなのに…」



体も弱い、頭も悪い…。

おまけに気弱で要領が悪くて…。

こんな私には過ぎた願いなのかもしれないけど、それでも…。
133 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:30:37.06 ID:jvv3dnE70

そんな私のささやかで出過ぎた願い…。

彼女は真剣な瞳で見つめ返して言った。




まどか「できるよ。ほむらちゃんは出来る子だよ…!」


力強く言う彼女。

普通だったら、建前とか慰めとかそういう言葉に過ぎないんだろう。

だけど、彼女の言葉はやけに力強くて、その瞳はやけに真っ直ぐで…。



そんな彼女を見ていたら、不思議と本当に私にも何かできるような気がした…。

そして、驚くべき事が起きた…。
134 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:31:13.51 ID:jvv3dnE70

ほむら「はぁ……、はぁ…」


私の体調は急によくなり、体育に参加している。

それどころか…。



女子A「え? 暁美さんもクリアー?」

女子B「ひょっとして、暁美さんって凄く運動できる?」

女子C「ねぇねぇ、もう一度やって見せてよ」



なんと、走り高跳びで驚くべき結果を出してしまったらしい。

おかげで、何かすごい注目をされて、もう一回やってくれとせがまれている…。



夢みたい…。

普通に運動ができる…。

それどころか、あんなに高く飛んで…。


本当に夢みたいだ…!
135 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:31:52.29 ID:jvv3dnE70

ほむら「暁美ほむら、再び行きますっ」


まどか「ほむらちゃん、ふぁいとっ!」



良かった…。

ほむらちゃん、すごく楽しそう。

これで、少しでも自信を付けてくれたら…。


そう思いながら、再び走りだすほむらちゃんを見送る。



ほむらちゃんを見ていると、何か放っておけなかったんだ。

昔の何もできなかった時のわたしみたいで…。


だから、何とかしてあげたかったんだ。

どうにかして元気づけてあげたかったんだ。


でも、わたしはそのやり方を間違えてしまった…。
136 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:32:18.37 ID:jvv3dnE70

ほむら「あ、あああ、ああ、足が…! 足がっ、止まらないっ!

    た、助けて! 鹿目さん!!!!!」


走りだしたほむらちゃんは、物凄い勢いで足を動かして校庭を駆け巡り始めた。

明らかな異常事態。

そして、これを引き起こしたのはわたし…。



そう。

わたしは、あろうことか身体強化の『魔法』をほむらちゃんに使ってしまったんだ…。
137 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:32:53.27 ID:jvv3dnE70

まどか「ほ、ほむらちゃんっ!」


魔法が暴走して、凄まじい砂煙を巻き上げながら校庭を爆走するほむらちゃんを追いかける…。

魔法が完全に暴走状態になって、今のわたしでは追い付けない…。


そうこうしてる内に、目の前には体育館の壁が見えてくる…。

あれにぶつかる前に止めないと…。

ほむらちゃんが大怪我しちゃう…。
138 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:35:45.77 ID:jvv3dnE70

追い付けない…。

追い付かない…。


どうしよう…。

どうしよう…!



わたしのせいだ…。

わたしが余計な事をしたから…。




ほむら「ひぃっ! ぶ、ぶつかるっ!!!!!!!」


まどか「ほむらちゃん!!!!!!!」


ほむらちゃんが壁にぶつかる…。

思わず目を背けようとした時だった…。
139 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:36:38.41 ID:jvv3dnE70

私の横を何かが凄い速度で通り抜ける。

その誰かは、ほむらちゃんを抱えつつ、自分自身もブレーキをかける…。




???「ふ〜っ…。間一髪セーフってとこかな?」


目の前に立っていたのは、脇にほむらちゃんを抱えたさやかちゃんだった。



まどか「さやかちゃん…? ほむらちゃんは…」



さやか「ん? 気絶してるだけ。急いでマミさん呼んで。

    無理やり抱き抱えただけだから、足の動き自体は止まって無いんだ」


まどか「うん…、ありがとう……。さやかちゃん……」



さやか「今朝のお礼。あんま気にすんなっ!」


まどか「うん…!」
140 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:37:23.42 ID:jvv3dnE70

────────

────

──


まどか「…………」

さやか「どうだった…?」


まどか「ほむらちゃんは落ち込んで帰っちゃったし、マミさんには怒られちゃった…」

さやか「そっか…」



まどか「さやかちゃんは何も言わないの?」


さやか「魔法についてはマミさんからお叱り受けたんでしょ?

    なら、さやかちゃんが言う事は何もないですな〜」


まどか「…………」
141 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:38:02.04 ID:jvv3dnE70

落ち込んだわたしに何時もの笑顔を向けると、さやかちゃんは語りだした。

少しだけ気恥ずかしそうに…。



さやか「あたしもそうだったよ」


さやか「まどかの為だって言って…。やり過ぎて無茶やって…。

    却って困らせたりもしたじゃない…」


さやか「ほら、川に飛び込んでみたりとか、上級生と喧嘩になりそうになったりとかさ…」

まどか「あぁ…。あったよねぇ…。そんな事も…」




さやか「だからさ。今回のまどかの事言えないんだ、これが」

まどか「あはは…」
142 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:38:47.76 ID:jvv3dnE70

さやか「でもさ、それで良いんじゃない?」


さやか「そりゃ今回は失敗しちゃったし、方法も間違ったかもしれないけどさ…。

    そうやって相手の事を思って、一生懸命に頑張ってる内に友情とかって深まるもんなんじゃない?」



まどか「そうだよね…」

まどか「ありがとう、さやかちゃん」


さやか「どう致しまして」


さやかちゃんがしてくれた事がわたしに伝わったように…。

わたしの気持ちも、ほむらちゃんに届く日が来ると良いな…。


そんな事を考えている最中、ソウルジェムに反応が発生する…。

勿論、それは魔女の反応…。

わたしとさやかちゃんはマミさんと連絡を取りつつ、反応の元へ向かった。
143 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:39:22.12 ID:jvv3dnE70

私、何にもできない。

人に迷惑ばっかり掛けて、恥かいて…。


どうしてなの…?

私、これからも、ずっとこのままなの…。


死んだ方が良いかな…。

死んでしまえば……。



ほむら「はっ…!? 」


ほむら「ど…どこなの、ここ…?」



いつの間にか私は不気味な世界に迷い込んでいた。

そのどこか違う風景の聳え立つ凱旋門。


やがて、自分の周囲に抽象画で描かれた人のようなモノが私を取り囲んでいた…。
144 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:40:11.13 ID:jvv3dnE70

ほむら「何? 何なの!?」


ほむら「え…? 嫌ぁぁぁぁぁっ!」


私を取り囲んだ人のようなモノがピンク色の矢に撃ち抜かれて消えていく…。

そして、後ろに立っていたのは…。




まどか「もう大丈夫だよ、ほむらちゃん」


ピンクと白の可愛らしいコスプレ衣装に身を包んだあの子…。


鹿目さんだった…。
145 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:40:43.39 ID:jvv3dnE70

まどか「いきなり秘密がバレちゃったね」


まどか「クラスのみんなには、内緒だよっ」



笑顔と共にそう言った彼女は、私の元へ駆け寄りつつもピンク色の光の矢を放つ。

他に、白いマントと青を基調とした騎士のような衣装を着た見覚えのある子が剣を振るい、

金髪でスタイルは良い物のやはり他の二人同様コスプレ風の女子も居て、この人も何やらやっているようで…。



やがて三人は周囲にいた人のような何かを蹴散らす。

そして、鹿目さんの放ったピンク色の光の矢が事の元凶だったらしい凱旋門を破壊した。



私は突然、放り出された非日常に目を丸くするばかりだった。
146 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:41:29.67 ID:jvv3dnE70

────────

────

──



非日常には秘密が付き物。

それを知った私は他の二人と共に、先輩の巴さんの家に招かれた。

その説明を受ける為に…。




ほむら「魔法少女…?」


巴さんの口から語られる非日常の世界。

どんな願いでも一つだけ叶えてもらえる…。

その代わり、人を襲う魔女と戦う宿命を背負った魔法少女の事。


そして、鹿目さんとクラスメイトの美樹さん、巴さんがその魔法少女である事を聞かされた…。



ほむら「鹿目さん、何時もあんなのと戦ってるんですか…?

    平気、なんですか…? 怖くないんですか…?」


まどか「平気って事はないし、怖かったりもするけれど…。

    魔女を倒せばそれだけ大勢の人が救われる訳だし、やりがいはあるよね…」


さやか「そうだね〜。まさに正義の味方!って感じだしねぇ」


マミ「ふふっ。二人にはワルプルギスの夜が来る前に頑張って、一人前になって貰わないとね」
147 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:42:19.56 ID:jvv3dnE70

ほむら「ワルプルギスのよる…?」


マミ「ちょっとね…。魔法の世界のお祭のようなものよ。

   それより、鹿目さんは暁美さんに伝える事があるんじゃないかしら…?」




まどか「ごめん、ほむらちゃん…。

    今日の体育の事なんだけど、わたしがほむらちゃんに魔法を使ったせいなの」

まどか「すごく落ち込んでたから元気づけてあげようと思ったんだけど、うまく行かなかったの…」



申し訳なさそうに言う鹿目さん。

この人はすごく優しい人だと言うのが伝わってきて…。

その言葉は私の口から自然に出ていた。
148 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:43:15.03 ID:jvv3dnE70

ほむら「ありがとう、鹿目さん…」


まどか「ほむらちゃん…」



ほむら「足が止まらなかった時はどうしようかと思ったけど、高跳びが出来た時は凄く嬉しかった…」


ずっと憧れていたから…。

普通に運動して、普通に笑って…。

そんな時間に…。


それが僅かな時間でも叶って嬉しかった。

そして、そんな時間をくれた鹿目さんの優しさもとても嬉しかった…。




ほむら「だから、ありがとうなんです」


さやか「………良かったね。まどか」

まどか「うん…!」


たぶん、失敗した事の方をずっと気にしてたんだろう。

私の言葉で、少し目が潤んだ鹿目さんをあやすように美樹さんが言う。
149 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:44:16.21 ID:jvv3dnE70

ほむら「魔法少女になれば、色々な場面で誰かを幸せにしてあげる事が出来るんですね…」


まどか「ほむらちゃん…?」



私は魔法少女に興味を抱いていた。


何も勉強も、運動もできなくて、その上弱気で臆病でどうしようもない自分…。

そんな私も魔法少女になれれば変われるかもしれない。

何より、私も鹿目さん達の友達になれるかもしれない…。


そう思った私は、実に私らしく小さくそれとない声で三人に訊ねていた。





ほむら「私も…、魔法少女になってみたい、です……」


三人が沈黙する…。

こう言うのには慣れているからすぐにわかる。


これは反対の空気を出している雰囲気だ…。
150 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:45:42.98 ID:jvv3dnE70

さやか「ねぇ暁美さん……。

    暁美さんには命を懸けるような戦いをしてでも、どうしても叶えたい願いってある?」


ほむら「私は……」


さやか「願いの代価だからって、頑張れる所も大きいんだよ…」



マミ「それに、あなたが思っているほど簡単なものでもないの…」


マミ「魔法少女になると言う事は、普段の生活とは別に魔女と戦う宿命を背負うと言う事よ。

   その戦いは何時終わるかもわからない…。危険な事だってたくさんある…。

   生半可な覚悟で魔法少女になれば後悔する事になるわ…」



ほむら「…………」
151 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:46:22.44 ID:jvv3dnE70

まどか「ちょっと前だったら、わたしも勧誘しちゃってたかもなぁ…」


まどか「でも、ここ最近何度も危ない目にあったから、今はお勧めは出来ないかなぁ…」


ほむら「鹿目さん…」



まどか「実際…。つい昨日戦ったばかりの魔女が凄く手強くてね…。

    三人とも死ぬかと思ったんだ…」


ほむら「そんな……、だってあんなに凄かった鹿目さん達が……」



まどか「うん……。だから、なるなとは言えないんだけど良く考えて決めて欲しいな…」

ほむら「………」



マミ「そろそろお開きにしましょうか。随分夜も更けてしまったし」



まどか「わたし、ほむらちゃんを送ってきますね」
152 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:47:05.65 ID:jvv3dnE70

────────

────

──


まどか「わたしね…。本当はほむらちゃんの気持ちもよくわかるんだ…」


ほむら「え…?」


まどか「何の取り柄もないし、誰かの為になる事も、何の役に立つ事もないまま、ただなんとなく生きていくだけだって…。

    そんなわたしが魔法少女になって、魔女を倒す事で誰かの役に立ててるんだって…」


まどか「でもね……、わかったんだ………」

まどか「魔法少女の戦いは死と隣り合わせだって…。

    今日、明日にもどうなるかわからない世界だって……」


ほむら「鹿目さん…」



悟った様な目をした鹿目さん…。

どこか痛々しい彼女の表情が突然、明るいものに変わる。
153 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:48:03.65 ID:jvv3dnE70

猫「にゃ〜」


まどか「あっ、エイミー!」

ほむら「この子、今朝の…」


まどか「お〜、よしよし」

ほむら「凄く懐いてるんですね…」


まどか「実はね……、この子わたしの目の前で車に撥ねられちゃったの。

    それでね、それ以来の友達なんだ…」


ほむら「もしかして……」

まどか「うん。この子を助けてもらう為にわたしは魔法少女になったんだよ…。

    猫を助ける為に魔法少女になったなんて聞いたら、マミさんに叱られちゃうかもしれないけど…」


ほむら「そんな事ないと思います。鹿目さんのそう言う所、凄く素敵でカッコいいと思います…」



まどか「ありがとう。ほむらちゃん。

    わたしはね、このお願いで後悔してないの……」
154 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:48:56.27 ID:jvv3dnE70

まどか「だからね…。もしも、ほむらちゃんが魔法少女になる時は、後悔しないお願いを見つけて欲しいなって…」


ほむら「願い、ですか……」


まどか「うん。さやかちゃんも言った通り、魔法少女になって魔女と戦っていけるのは、

    その願いと引き換えだからって所が大きいと思うんだ…。

    そして、それを見つけられないで魔法少女になれば、きっと後悔すると思うから…」


まどか「だから、ほむらちゃんが魔法少女になりたいって思っても、

    その時はその事も含めてよく考えて、自分で自分の未来を決めて欲しいなって…」



ほむら「………約束します。けして軽々しい気持ちで魔法少女になったりしません」


まどか「うん……。ありがとう」
155 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:49:32.77 ID:jvv3dnE70

これが、私と鹿目さん…。

魔法少女との出会いだった。


そして鹿目さんとの約束…。

何の取り柄も、何の役にも立たない私…。

そんな私が、軽々しい気持ちではなく抱く心から叶えたい願い…。

それが何を齎すのか、この時の私にはわからなかった…。


でも…。

この時から私は…。

確かに、その願いに至る一歩を踏み出していた…。
156 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:50:10.04 ID:jvv3dnE70

―next episode―


「なっさけねぇ奴。後衛を守れない前衛なんて連携する意味ねぇじゃんかよ」





―【第五話】紅の影―
157 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/08/26(金) 22:52:15.26 ID:jvv3dnE70
はい。投下終了です
次はドラマCDの設定ねじ込みもあるから、ちょっと投下に時間かかるかもです
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/26(金) 23:29:28.11 ID:pmXwuGx3o
乙彼ー!
……一周目から全員集合か
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/08/27(土) 00:56:25.26 ID:nKM3xnMro
乙!
まどっちらしい願い事だったね
メガほむはどんな願い事になるんだろうか…
杏子回も楽しみだ
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/27(土) 01:01:22.46 ID:K+FYFWERo
8時だョ!
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/08/28(日) 01:21:51.97 ID:B0CDpA1AO
乙、なんか温まるSSだな…
162 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 22:17:41.24 ID:35sSptg80
こんばんは
告知にかまけて、全く進んでいません
告知が消えるまではどうせ投下しないよ〜とか言ってたら五話の完成に一週間かかったと言う…

本当は告知消えるまで待つつもりでしたが、この後数日投下できなくなるので、無理やり投下してみます


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163 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 22:18:51.47 ID:35sSptg80

まどか「やっと授業終わったねぇ…」

ほむら「疲れました…」


結局、私はあれから魔法少女になる事をあまり考えなくなった。

願い事はたくさんあるけれど、あの恐ろしい魔女と戦うと言う事を考えるとやっぱりそこで思考が止まる。

それに…。



さやか「二人ともだらしないぞ〜!

    元気いっぱいのこのさやかちゃんを見習いなさい!」


まどか「さやかちゃん、五時間目の授業寝てたじゃない…」

ほむら「ご、午後の授業って眠くなりますよね…」

仁美「人間の体って、食後は多少眠くなるように出来てるって聞いた事がありますわ」


私にも鹿目さんを始めとする友達ができた。

相変わらず何をやっても駄目な自分には呆れるけれど、友達と過ごす時間はそれを忘れさせてくれた。



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164 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 22:19:28.30 ID:35sSptg80

まどか「そうだとしても、さやかちゃんは寝過ぎだよ〜。

    ほどほどにしないと先生に怒られちゃうよ?」


さやか「あ〜、早乙女先生機嫌悪いしなぁ…。気を付けないと…」


ほむら「『バニラ味でもココア味でも、どっちでも良いと思います』と答えただけで、中沢さんは罵られてましたね…」


魔法少女の秘密を知っていると言う事で、相変わらず巴さんの家にお呼ばれしたりもしている。

魔女との戦いには連れて行って貰えないけど、その作戦会議でお話を聞く事が出来る。

皆が知らない秘密を共有できているのって何か嬉しかった。



まどか「じゃあね。ほむらちゃん、仁美ちゃん」

さやか「ばいば〜い!」

仁美「はい。また明日」


目配せでサインを送る鹿目さん達。


今日は、魔女を探して街外れまで足を伸ばしてみると言っていた。

魔法少女の中には、縄張り意識の強い人や好戦的な人も多いらしい。

うっかり他の街に足を踏み入れて、トラブルにならなければ良いんだけど…。



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165 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 22:20:10.32 ID:35sSptg80





―【第五話】紅の影―



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166 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 22:21:05.49 ID:35sSptg80


さやか「あぁ!? また逃げた!」


まどか「すばしっこいなぁ…」


普段あまり来ない街外れには、案の定魔女の結界があった。

で、魔女を倒したは良いものの…。

その使い魔に逃げられたあたし達はそれを追う羽目になる。

より対処の面倒な人通りに逃げた奴をマミさんに任せ、あたしとまどかは裏路地に逃げたのを追っていた。


逃げ足の早過ぎる使い魔を追って、追って、追って…。

ようやく追い詰めた、と言う訳でして…。



さやか「そっち行ったよ!」


まどか「よし! 今度こそ!」


あたしが追い込んだ使い魔に矢を放つまどか。

タイミングは完璧だったんだけど…。



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167 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 22:21:37.48 ID:35sSptg80



??「ちょっと、ちょっと! 何やってんのさ!」


響いた声と共に伸びた何かに弾かれて、まどかの矢は掻き消される。

そして、声の主が逃げる使い魔を庇う形で舞い降りて、手持ちの槍をこちらへと向けた。



??「ありゃ魔女じゃ無くて使い魔だよ。

   グリーフシードを持ってる訳ないじゃん」


赤い髪をポニーテールにし、赤い装束を纏い、背丈よりも長い槍を持った魔法少女。

使い魔を庇いだてし、あたし達に槍先を向けて威嚇の姿勢を取ったばかりか…。

人に話をしているにも関わらず、同時に物を食っている、そのふざけた態度。


目の前の魔法少女の主張や行動に、あたしは不信感を募らせていく…。



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168 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 22:23:18.24 ID:35sSptg80

さやか「だって、アレ放って…!」

まどか「…………」


苛立ち始めたあたしの様子に勘付いたんだろう。

まどかが遮るようにあたしの前に立つ。


昔からこう言う時は必ず後ろにいたまどかが、あたしの前に立った。

恐らくは喧嘩っ早いあたしが、相手の魔法少女と衝突するのを避けようとしてくれたんだろう。

あたしは驚くと同時にまどかの成長に感心して、事態を静観することにしたんだけど…。



まどか「すいません、わたしたちアレを追わないといけないんです。

    そこを通してもらえませんか?」


??「だから、見てわかんないの? アレは魔女じゃなくて使い魔なんだって」

まどか「わかってます。でも、魔女になる前の使い魔でも人を襲うから、その前に倒しておきたくて…」


??「だからさぁ…、4、5人食って魔女になるまで待てっての」

まどか「え…?」



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169 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 22:26:21.77 ID:35sSptg80

まどか「その言い方って…。魔女に襲われる人達を見殺しにするの…!?」


??「な〜に、アンタ?

   まさかとは思うけど、やれ人助けだの正義だの、その手のおチャらけた冗談かます為に契約した訳じゃないよね〜?」



まどか「はい。そうです…」

??「…………」


まどか「あなたには冗談みたいに聞こえるかもしれないけど…。

    守りたい人や守りたい物がたくさんあるから…」


まどか「だから、わたしはなりたいんです。

    大切な人達を守れる魔法少女に」


何時になく強い口調のまどか…。

だけど、相手はそんなまどかの話を相変わらず物を食いながら聞いている。

そして、食べていた鯛焼きを平らげつつ、そのまどかの思いを笑い始めた。



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170 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 22:26:58.21 ID:35sSptg80

??「アッハハハハハハ…!!!」

??「くっそ真面目な顔して何言うのかと思ったら、本気で頭がお花畑だった訳…?」


まどか「…………」



??「アンタさ…、馬鹿じゃないの?」


??「弱い人間を魔女が食う。その魔女をアタシたちが食う。ただの食物連鎖と変わらないんだ。

   魔法少女なんて、ただそれだけなんだよ」


??「そこにくだらねぇ幻想持ち込んで、漫画とか映画の主人公にでもなったつもり?」



まどか「わたしは…」


??「やめときなよ。アンタみたいなのには、この世界向いてないよ」


??「さっさと帰って、そう言うモノでも見ながら妄想に耽ってた方が良いんじゃない?

   夢見がちの幸せバカに、相応の場……」


我慢の限界だった。

相手を見つめたまま黙るまどかを見てて、居た堪れなくなった。

このふざけた女は、魔法少女として最低の発言をした上に、まどかの気持ちまで踏みにじったんだ。


気付いたら、目の前の女に殴りかかっていた。



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171 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 22:27:47.65 ID:35sSptg80

まどか「さやかちゃん!?」



??「何…? やる気?」


さやか「何時までも、ふざけた口聞いてんじゃないわよ…!」


それなりに力を入れて繰り出した拳は、さっきまで鯛焼きを持っていた手になんなく受け止められてしまった。

拳を止めた相手の手を力づくで払いつつ後ろへ飛び、あたしと赤い奴は絶妙な間合いで睨み合う形となる。



まどか「やめて! わたしの事は良いから!」


さやか「良くないでしょ…! 

    なんで、まどかがこんな最低な奴に馬鹿にされなきゃいけないのよ…!」


まどか「だからって、駄目だよ…。魔法少女同士争うなんて…!」


さやか「まどかの事だけじゃない! 使い魔の味方をするような奴、見過ごせる訳ない…!」


心配そうに見つめるまどかから目線を赤い奴へ移す。

さっきまでの飄々として人をナメた態度と違い、あたしに対する苛立ちが見え隠れし始めている。

その様子は魔法少女と言うよりは、まるで不良だ。



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172 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 22:28:13.94 ID:35sSptg80

??「はぁ…? アンタもコイツと同類…?」


さやか「だったら…、何だってのよ!」



??「ウゼェ! カッコつけてんじゃねぇよ!」


赤い魔法少女があたしを睨みつつ、その槍を構える。

それを見て、あたしも左手に持っていた刀剣を両手で握って構えなおす。


相手も獲物を構えた以上、遠慮はいらない。

あたしも本気で打ち込んだ。


つもりが、あたしの体は大きく弾き飛ばされ、壁に激突した。



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173 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 22:41:07.04 ID:35sSptg80

さやか「っぐ…」


まどか「さやかちゃん!」


今のぶつかり方は明らかにまずい…。

実際に意識が飛びそうな激痛が背中に走った。


が、あたしのダメージは思っているよりも軽かったらしい。

背中の痛みも引いてきたので、どうにか立ちあがる。



??「……おっかしいなぁ」


??「全治三ヶ月ってくらいには、かましてやった筈なんだけど」


その様子を見ていた赤い奴が不思議そうに言う。

が、あたしが剣を構えたのを見ると、その槍を構えなおしつつ、八重歯を見せつつ不敵に笑った。



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174 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 22:42:04.22 ID:35sSptg80

まどか「さやかちゃん、もうやめて!」


さやか「あたしは退く気はないよ…!」



まどか「そっちの人も…、やめてください!」


杏子「冗談きついね。人の縄張りに入ってデケェ面してんのはそいつだろ…?

   痛い目会いたくないんだったら、アンタはさっさと退くんだね」



まどか「二人とも!」


さやか「まどかは下がってて…。

    これはあたしの問題だから…!」



まどか「…………」


まどか「………そうは、いかないよ」


沈黙の後、呟くようにまどかが言う。

そして、右手に光り輝く矢を作り出すと、その矢を赤い魔法少女に向けて構える…。



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175 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 22:43:09.20 ID:35sSptg80

さやか「まどか! アンタは関係ないから下がってなさいって…」

まどか「さやかちゃんがやめるなら、何時でも下がるよ…?」


さやか「これはあたしの問題だから、まどかは下がっててよ…!」


まどか「さやかちゃんがあの人に突っかかってったのは、わたしの為だし…。

    それに、さやかちゃんが危ない目に会うのは見過ごせないから…」



??「あぁぁぁぁッ!!! ウゼェ! 超ウゼェ!!!!!」


??「結局、今度は仲良く二人がかりってか…」

??「そもそも…。人の縄張り入っただけでなく、糞生意気な口まで聞いてくれちゃってさ…!」



??「アンタらさぁ…! ちょっと痛い目見ないと、わかんないみたいだね!!」


言っても聞かないまどかを説得する時間も無く…。

弓を構えたまどかに反応してか、赤い魔法少女は敵意をむき出しにし、臨戦態勢となる。

やむを得ず、あたしも剣を構えて敵に向き直る…。



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176 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 22:44:25.55 ID:35sSptg80

あたしが飛びこんで引っ掻き回し、まどかが仕留める。

何時ものあたし達の連携パターン。

でも…。



??「二人がかりなら勝てるとでも思ってんのか…?」


??「どこまでベタでおめでたいんだよ…」



??「アタシにとっては一人も二人も変わらないってのにさ!!!」


突如、強烈な衝撃に襲われたあたしとまどかの体は宙を浮き…。

数回の連撃を受けた後、そのまま落下して地面に転がった。



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177 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 22:45:50.85 ID:35sSptg80

??「正義の力とか友情パワーなんてありはしない。

   弱肉強食。これだけが現実なんだよ!」


さやか「っぐ……」


目の前の魔法少女は、あたしが奴の間合いに届くか届かないかの時点で槍を振るった。

振るわれた槍の柄はバラけ、中から鈍色の鎖が現れてしなる…。

多節槍へと姿を変えた敵の獲物は、同時にあり得ない速度で伸びると…。


まるで生き物のように暴れまわり、あたしと後方に居たまどかをまとめて叩きのめしたのだ。



まどか「…………」


さやか「まど、か……………」


ボロボロになったまどかの姿が見える…。

頭から血を流すまどかを見て、あたしは事態の重さにようやく気付いた…。



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178 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 22:46:45.39 ID:35sSptg80

あたしのせいだ…。

あたしが何時もみたいに、考えなしに相手に突っかかったから…。

まどかはそれを止めようとしてくれたのに…。


無鉄砲はやめろって、あれほどまどかやマミさんに言われてたのに…。

そうやって、まどかに迷惑をかけてきたのに…。


あたしはバカだ…。

結局、何も学べてないんだ…。



それでも、無理やりに体を持ち上げて立ちあがる。

そのまどかを侮辱したアイツだけは許せないから…!



さやか「…許さない」


??「へぇ…、アンタはまだ立ち上がるんだ…。しっかし…」


??「なっさけねぇ奴。後衛を守れない前衛なんて連携する意味ねぇじゃんかよ」



さやか「お前だけは…! お前だけは絶対に許さない!!!」


怒りに任せ、あたしは三度敵に斬り込んだ。

本気で打ち込んだ筈の斬撃は届かず、またも金属音が響く…。



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179 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 22:47:19.53 ID:35sSptg80

??「つまんねぇ善意は身を滅ぼすって、よくわかっただろ!?」

さやか「何ッ!」



??「魔法ってのはな、徹頭徹尾自分だけの望みを叶えるモンなんだよッ!」

??「それを馬鹿みたいな理屈こねて、正義の味方ごっこなんてしてるからこうなるのさ!!!」


さやか「黙れぇぇぇぇッ!!!」



??「あっそ…」


??「言って聞かせてわからねぇ…、殴ってもわからねぇ馬鹿とあっちゃ…」



??「もう殺しちゃうしかないよねぇッ!!!!」


そこから明らかに攻撃の質が変わった。

こちらの剣を平然と受け流しつつ、コイツは石突側の柄を伸ばしながらバラす。

分銅状に変化した石突を伴った多節槍は、鍔迫り合いに負けて弾き飛ばされたあたしに巻きつく。


巻きついたそれを今度は急速に解くように力が加えられ、あたしは回転しながら地面に叩きつけられた。



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180 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 22:51:37.17 ID:35sSptg80
さやか「痛っ…!」


仰向けに倒されたあたしは、咄嗟に上体だけを持ち上げるも敵は既に視界に無い…。


ひゅんひゅん、と音のする上を見上げれば紅の影が舞い踊る…。

あたしを地面に叩きつけた多節槍の柄をまとめつつ、槍を連結させると…。

その槍先をあたしに向け、空中から突進する姿勢を取った。





??「終わりだよッ!」


あたしを終わらせる為の凶刃が迫る。

地面に倒れ込んだあたしは、無駄のない動きで行われる追撃を避ける事はできそうにない…。


空を裂き、突き進む槍とそれを持つ魔法少女。

だけど、その突進は現れた妨害によって阻まれた。

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181 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 22:52:17.11 ID:35sSptg80

空から黄色い残骸がハラハラと落ちてくる…。

赤い魔法少女を捉えるべく襲いかかった無数の黄色いリボンは、反応した敵の槍先に悉く切り払われた。

が、赤い魔法少女もあたしへの攻撃を中断された形になり、そのまま地上へと着地した。



??「久しぶりね。佐倉さん…。

   それとも、『佐倉杏子』と他人行儀の方が良いかしら…?」


杏子「巴…、マミ……」


マミ「………」


後ろから聞こえる足音が近くなる。

そして、現れたマミさんはまどかの前でしゃがみ、回復魔法を使う…。



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182 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 22:53:28.43 ID:35sSptg80

さやか「マミさん……、まどかが……」


マミ「大丈夫。見た目ほど傷は酷くないわ。あなたの方はどう…?」


さやか「あたしは大丈夫です…。

    それよりもアイツ…!」


マミ「………………そうね」


マミさんは回復を終えて立ちあがると、事の元凶の方へゆっくりと向かって行く…。

あたしの横を通り過ぎつつ、さりげなく指を振って防壁らしきものを作り出すも、視線はそのままで…。

その目は相手を睨みつけているように見えたのに、その背中はどこか寂しそうに見えて…。


防壁に阻まれたあたしは、離れた位置で対峙した二人の会話を聞く事すらできなかった…。



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183 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 22:57:03.78 ID:35sSptg80

杏子「ウザったいな、と思ったらアンタの弟子だった訳だ…。

   納得がいったよ…」


マミ「あなたがそれを言うのね…」


杏子「もうアタシはアンタとは関係が無いからね…」



佐倉杏子。

かつての私の弟子にして、親友だった魔法少女…。

ずっと会いたくて、だけど絶対に会ってはいけない筈だったのに…。


私と彼女は再び出会ってしまった。

それも仲間を傷つけた敵と言う最悪の形で…。



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184 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 22:58:06.75 ID:35sSptg80

マミ「一応確認するけど、何をしていたの…?」


杏子「縄張り荒らしの排除」



マミ「こちらの非を認めた上で言うけれど、最後のは明らかに過剰よね……。

   反論はある…?」


杏子「ないね。気に入らないから潰そうとした。

   そんだけだ…」



マミ「魔女であろうが、魔法少女であろうが、人であろうが関係ない…。

   それが今のあなたなのね…?」


杏子「前に言った通りさ…。アタシは自分だけの為に生きてる。

   だから、立ちはだかるなら誰だろうと関係ないのさ…」



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185 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 22:58:44.42 ID:35sSptg80

杏子「悪いけど、これが今の佐倉杏子だ」


杏子「アンタの好きだった良い子ちゃんはもう、この世にはいないよ…」



マミ「………」


聞きたくない言葉を繰り返して、私の心を抉る彼女…。

だけど、それを責める事は出来ない…。


彼女の悲しみを私はよく知っている…。

そして、それを知りながら彼女を一人にしてしまったのは私なのだから…。


だけど…。



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186 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 22:59:15.27 ID:35sSptg80

杏子「………さぁ来いよ」


杏子「今のアタシを…。

   可愛い弟子を痛めつけた悪者を……、見逃す訳には行かないだろ…?」


マミ「佐倉さん………」



杏子「アタシにはアタシの覚悟があるように、アンタにはアンタの覚悟がある筈だ…」


マミ「そうね…。そうよね………」



逃げようと思えば逃げれた筈なのに、そうしないのは彼女なりのけじめのつもりなのか…。

それとも、私の仲間を傷つけた事をきっかけに、私とも完全に決別しようとしているのか…。


どちらにしても…。

彼女の言う通り、己の為に他者を傷つける今の彼女を見過ごす訳にはいかないんだろう…。

まして、その矛先を向けられたのは私の後輩なのだから…。



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187 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 23:00:03.16 ID:35sSptg80

私は両手にマスケット銃を作り出す。

そして、その銃口を静かに相手へと向ける…。



杏子「それで良い。アンタはそれで……」


マミ「…………」



銃を向けた私に対し、彼女も獲物の槍を構える…。


こうならないようにと、袂を分かった私たちなのに…。

運命の悪戯に弄ばれたのか、結局はこうなってしまった…。


望まぬ再会を、私は心から呪った。

同時にこうなるかもしれない事を考慮せずに、高をくくった魔女探索を行った自分自身にも…。



それでも、私は彼女を見逃す訳には行かない。

魔法少女として。

傷つけられた後輩の仲間として…。


それが、私なりの覚悟だった筈だから…。



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188 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 23:00:57.49 ID:35sSptg80

杏子「悪ぃけど、行くぞッ!」


一瞬で距離を詰め、槍を繰り出す彼女。

わかってはいたけれど、手加減をしてくれる気は全くないらしい。


速度は完全にあっちの方が上。

敵の攻撃を受ける事を前提にし、マスケットに魔力を回して強度を上げる。

片手で受けて、もう片方で…とも思ったけど、考えが甘いと一蹴して両手のマスケット銃を交差して攻撃を受ける。



杏子「さすがに一撃で決めよう…ってのは甘すぎるか」


マミ「何時かのようには行かないのよ…」




マミ「私にも倒れる事が出来ない理由が…、覚悟があるから!」


佐倉さんの背後から、リボン状の拘束魔法を伸ばして襲わせる。

すぐに勘付いた彼女は、槍に力を込めて鍔迫り合いを脱し、拘束魔法から逃れる。


だけど、接近戦を捨てると言う事は、射撃武装のこちらとしてはやりやすくなると言う事でもある。

私は距離を離した彼女を、両手のマスケット銃で素早く追撃した。



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189 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 23:01:49.25 ID:35sSptg80

杏子「チッ…!」


私の放った銃は一発はかわされ、もう一発は彼女の左頬を掠めた。

裂けた傷口が深いのか、血がだらだらと流れている…。


それに情をかければ、何時かのように返り討ちにあう…。

私は拘束魔法を再度起動して追わせ、同時に追撃を仕掛けた。




マミ「ティロ・ボレー!!!」


杏子「容赦ねぇな、オイ…」


次々に襲う弾丸を駆けて避けたり、弾いたりしてやり過ごす佐倉さん…。

本当はこれではいけないのだけど、彼女が私の攻撃をやり過ごして安堵している自分が居る…。


そして、その油断は確実に相手に付け入る隙を与える。



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190 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 23:02:27.98 ID:35sSptg80

杏子「だけどな…! 狙いが甘いんだよッ!」


マミ「ッ…!」


佐倉さん得意の多節槍が伸びる。

周囲に作った追撃用の銃はその攻撃に払われてあちこちに散らばるも、私自身はそれからどうにか逃れる。


先ほどまでとは逆…。

今度はこちらが暴れまわる多節槍に狙われる…。



マミ「厄介な攻撃…」


マミ「でも…!」


地面に手を伏せて陣を作り、そこから無数のリボン状の拘束魔法を放つ。

放たれたリボンは、蛇のように伸びて暴れる槍の柄の各部を捉え、リボンと多節槍は絡み合う形となった。



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191 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 23:03:07.24 ID:35sSptg80

杏子「ちくしょう…!」


伸びきった状態の槍を戻せない彼女。

獲物を封じた今を逃さぬよう、私は再度周囲にマスケット銃を召喚する。


だけど、そのまま終わる程相手も甘くはなく…。



杏子「それはやらせねぇッ!」


マミ「獲物を捨てて…!?」



杏子「肉弾戦なら負ける気はしねぇからな!」


拘束魔法で絡まった槍を捨て、伸びた多節槍とリボンの合間を縫うように駆けてくる彼女。

私は急ぎ、銃を構えようとするもその時には既に遅く、

身体能力に優れる近接タイプの彼女に接近を許してしまっていた。



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192 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 23:03:47.46 ID:35sSptg80

マミ「くぅッ…!」


杏子「そらぁぁぁぁぁぁぁッ!」


右手に持った銃を手刀で弾かれ、続けて繰り出された回し蹴りを咄嗟に左腕で受ける…。

防御には成功したものの、その衝撃に耐えきれずに後方へ蹴り飛ばされる形となり…。

左手に僅かな違和感を覚えつつも、両手に迎撃用のマスケット銃を作りつつ、着地した。



対する彼女はゆっくりとこちらを睨みながら歩みつつも、私が仰け反った隙を利用して新しい槍を作り出していた。



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193 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 23:04:46.75 ID:35sSptg80

マミ「…………」


杏子「…………」



二人の間に冷たい空気が流れる…。

間合いで言えば私に有利だけど、彼女にはそれを一瞬で詰める機動力がある。


私の手持ちは両手の二丁のマスケット銃。

おまけに左手の調子は少々怪しい。

それでも、私はこの二丁で彼女を仕留めなければならない…。



私の後ろには、傷ついた私の後輩たちが居る…。

彼女はこれ以上の危害を加えない、と信じたいけれどそれは甘い憶測に過ぎない…。


実際、さっきの光景を見てしまった今では、彼女がどう動くか本当に予想が出来ない。


それなら、やるしか…。



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194 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 23:05:26.30 ID:35sSptg80

杏子「いくぞッ……!」


マミ「いくわよ……!」



私も、多分彼女も…。

明確な殺意を持って対峙し、武器を向ける…。

彼女の足が動き、私の手が動き…。


互いがその決着を付けようとした時だった。



ピンク色の閃光が、私達二人の間に割って入り、弾けた。



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195 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 23:06:57.37 ID:35sSptg80

杏子「くッ…! これは…!?」


マミ「鹿目さんの炸裂弾…? いえ、違う…」


二人の丁度真ん中で眩い光を放つように弾けたピンク色の矢。

それは、私が以前彼女に教えた炸裂弾の着弾時のそれによく似ているも、明らかに破壊力が無い…。



マミ「これは閃光弾…?」


私はその閃光をまともに見てしまい、目が満足に見えない。

そして、彼女も似たような状態なのだろう。

攻めてくる気配はもう感じられない…。



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196 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 23:08:10.52 ID:35sSptg80

杏子「アイツ、逃げ道を作ってくれたって訳か…………」


マミ「鹿目さん………」


杏子「どっちにしても、こんなん食らったら退くしかねぇな…」



薄らと見える閃光の向こうの人影が動く。

その人影は少しづつではあるも、段々と小さくなっていく…。




杏子「…………」

杏子「……………」


その人影が消える際に小さく呟かれたその言葉。

それでも、私は彼女のその言葉を聞き逃さなかった…。


ゆっくりと視界が元に戻った時、当然彼女はそこには居なかった。



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197 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 23:09:21.38 ID:35sSptg80

さやか「マミさん、大丈夫ですか…!?」


マミ「えぇ………、大した事ないわ…。

   私の事より、二人は大丈夫……?」


さやか「あたしはこの通りなんですが……。

    まどかは………」



まどか「いたたたた…………」


さやか「御覧の通りダメージ大きかったのに、無茶しちゃって…」


まどか「いてて…。だって、マミさんとあの子、二人とも悲しそうな顔してたから…」



マミ「…………」


さやか「『二人を止めたいの…! だから手伝って!』とか言い始めて…。

    『なら、あたしがどうにかする』って言ったのに防壁壊した瞬間に、勝手に弓矢放ってのた打ち回って…」


まどか「だって、さやかちゃんにまた無理させても悪いし…。

    それより……」



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198 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 23:10:15.59 ID:35sSptg80

まどか「マミさん………」

マミ「なぁに?」


まどか「わたしみたいな部外者が口を出す事じゃないのかもしれないけど…」


まどか「今日あの子と戦ってるマミさんは本当に辛そうで…。

    でも、マミさんだけじゃなくて、なんとなくあの子もそうなんじゃないかって気がして…。

    それがどうしても気になって…」


さやか「まどか………」

マミ「鹿目さん………」



まどか「よかったら、話してもらえませんか…?

    その………、力になれるかはわからないけど………」


マミ「…………わかったわ」

マミ「ただ、鹿目さんのダメージも大きいみたいだし、一度私の家に戻りましょう。

   長い話になることだしね…」


まどか「はい。わかりました………」

さやか「…………」



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199 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 23:11:32.16 ID:35sSptg80

さやか「よし。じゃあ、あたしが肩貸すよ」

まどか「さやかちゃん…。わたし以上にやられてた筈なのになんでこんな元気なの…?」


さやか「え? だって、それだけがあたしの取り柄じゃん」

まどか「元気が取り柄ってレベルじゃないと思う……って、いてて…」



さやか「立てそうにない…? ならいっそお姫様だっこで…」


まどか「ふぇ!? い、いいよぉ!/// 恥ずかしいから…///

    って、うわぁ!?」


さやか「よ〜し、まどかの為にも急いで帰ろう!

    …………気になる事もあるし」




マミ「………………」



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200 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 23:12:32.68 ID:35sSptg80

『マミさん、よかったね……』

『良い仲間が出来て……』



小さくて聞き取りにくかったけど、あの子は確かにこう言った。


結局、あの子はあの子のまま…。

優しい佐倉さんのままだったんだ…。


だけど…。

仮にそれを知ってても、結果は変わらなかっただろう…。


私はあの子と向きあう事が出来なかったのだから…。

あの子を救う言葉を見つけられずに、あの子を支える方法がわからずに、今日まで来てしまったのだから…。


だから、せめて…。

私は祈ってるわ…。


佐倉さん…。

あなたを救ってくれる『誰か』が、現れますように、と…。



―to be continued―


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201 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/03(土) 23:13:30.42 ID:35sSptg80

―next episode―


「アンタの悲しみも、苦しみも、全部あたしにぶつければ良い…!」





―【第六話】帰る場所はここだよ―



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202 : ◆.2t9RlrHa2 [sage]:2011/09/03(土) 23:20:12.81 ID:35sSptg80
はい。投下終了です

次の投下は最速で水曜……のつもりですが、
書きあがってなかったり、告知が健在だったりしたら、もう少し伸ばすかもしれません…


あ、それと告知と投下時の鯖不調で忘れてましたが、乙感謝です

>>158
あくまでほむループなしって設定だから、一周目とまるっきり同じと言う訳でもないです

>>159
まどかの願いは一周目のそれと同じです
ベースはやっぱり一周目なんで
ハシャイジャッテるまどかさんのキャラがなかなか難しい…

>>161
「日曜朝とかにやってそうな魔法少女モノ+サニーデイ+まどか」を目指してますからね
だからと言って、まどからしさを出さないと言う訳ではないですが…
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203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/03(土) 23:25:23.86 ID:jaL+Hjyko
お疲れ様でした。
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204 : ◆7oWiJj9WF6 [saga]:2011/09/03(土) 23:36:57.86 ID:IaaN4BPM0
乙!
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205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/03(土) 23:42:38.12 ID:YYEoyLoFo
乙!
しかし下にでる変なのが邪魔でしょうがないな
いつになったら消えるんだ
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206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/09/04(日) 04:05:37.63 ID:sSzTTdJao
さやかあああああああああああ!!
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage ]:2011/09/04(日) 05:33:05.92 ID:xsvmBeTT0
乙です
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/09/05(月) 10:03:19.46 ID:m7WG3gcu0

さやかの気になることってのは最後の杏子の言葉が聞こえてたのかな
死ななければいくらでもやり直すことは可能なんだからぶつかり合って関係深めていってほしいな
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/12(月) 18:39:53.65 ID:eraysm4L0
来ないね
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/14(水) 22:26:07.96 ID:OizIXpAp0
更新遅れて申し訳ありません
色々あって中々筆が進まず…

今週の土曜には更新します……
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/09/16(金) 03:28:11.89 ID:wm3j2PjAO
待ってるよ
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/16(金) 21:35:57.25 ID:8ZY5mCGVo
生きてるよ 絶対そこに辿りつ(ry



……おとなしく待ってます
213 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:14:06.87 ID:Smo9u8Vq0
はい。こんばんは
驚異の連日夜勤やら、単純な絶不調やらでなかなか投下できず申し訳ありません

今回は序盤の山でして、それ故に延々とドツボにハマっておりました
理由は投下後にでも


>>211>>212
応援感謝です
214 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:14:49.95 ID:Smo9u8Vq0

杏子『ちくしょう…! なんなんだよ、アイツら!

   ちょっと強い魔女が出たからって、さっさと逃げちまうなんて!

   自分が今まで守って来た場所は大事じゃないのかよ!』


マミ『仕方がないわ。みんながみんな誰かの為に体を張れる訳じゃないもの』


杏子『だからって…! アイツらマミさんの事まで馬鹿にして!

   何が『格好付けの偽善者』だよ! マミさんは…! マミさんは…!』


マミ『ありがとう。さっきはトラブルになるのを避けるために窘めてしまったけれど、

   佐倉さんが私の為にって怒ってくれたのは嬉しかったな』



杏子『え…? えと、あはは…』


杏子『でもさ、本当に許せなかったんだ…。

   何時もみんなの為にって戦ってるマミさんを、あんな奴らが馬鹿にするのは…!』


マミ『ふふ…、ありがと。

   でも、みんなの為に頑張ってるのは佐倉さんも同じだと思うわ』
215 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:15:44.72 ID:Smo9u8Vq0

杏子『そ、そうかな…? アタシはマミさんに比べたらまだまだ…』


マミ『謙遜する事はないわ。実力も申し分ないし、志だって…。

   特にさっきの『アタシはなってやる! 大切な人達を守れる魔法少女に!』は感激しちゃったな』


杏子『そ、それは…/// 恥ずかしいから忘れてよ…///』


マミ『照れなくても良いのに。

   でも、冗談じゃなくて、あなたはもう立派な魔法少女よ』



杏子『ホ、ホント…?』


マミ『えぇ。師匠のお墨付き』

杏子『…………じゃあ、アタシの目標には届いたのかな?』
216 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:16:28.75 ID:Smo9u8Vq0

マミ『目標…?』


杏子『………マミさんと肩を並べて戦えるような魔法少女になる。

   そう思って頑張って来たからさ…』


マミ『佐倉さん……』


杏子『………///』



マミ『えぇ……。その目標にはもう届いていると思うわ』


マミ『私の背中はもう、あなたにしか任せられないもの』



マミ『正直言うとね。あの魔法少女達は逃げてくれても全く問題なかったと思っているの』


杏子『どう言う事…?』



マミ『私達二人の力を合わせれば、あんな魔女には負けない。

   強がりとか、気休めじゃないわ。本心でそう思っているの』


杏子『………そっか。確かにそうだよね』


杏子『アタシ達二人ならあの魔女………。

   いや、どんな奴にだって負けたりはしない! そうだよね。マミさん!』
217 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:17:08.97 ID:Smo9u8Vq0

懐かしいな……。

まだ、アタシが何も知らない馬鹿だった時の夢か…。


理想に酔って、それを我武者羅に追いかけて…。

誰かの為だの…。

正義の為だの…。

本気でそんな事の為に戦ってた…。


見もしなかった夢を急に見るなんて…。

やっぱり、アイツらのせいなんだろうな…。
218 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:17:55.11 ID:Smo9u8Vq0

『だから、わたしはなりたいんです。 大切な人達を守れる魔法少女に』


アイツは何の躊躇いもなく、何の疑いもなく、そう言った。

アタシがそれを笑って否定しても、自分が正しいとでも言わんばかりに




『なんで、まどかがこんな最低な奴に馬鹿にされなきゃいけないのよ…!』


もう一人の奴は、その友人を蔑み、傷つけたアタシに本気で怒っていた。

痛めつけても、立ちあがって食らいついてきた…。
219 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:19:55.49 ID:Smo9u8Vq0

アイツらの姿はまるで、昔のアタシそのものだった。

そして、それは今のアタシにとっては毒以外の何物でもない…。

昔の自分に今の自分を否定されているような、妙な錯覚に陥った。




それでも…。

認められなかった。

認めたくなかった。




『誰かの為』

そう願い、その為に戦って、アタシは全てを失ったんだから…。
220 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:20:32.19 ID:Smo9u8Vq0





―【第六話】帰る場所はここだよ―


221 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:21:00.04 ID:Smo9u8Vq0

杏子「あ〜、最悪の気分だ」


目覚めて時計を見れば、時刻は昼時すら遠く過ぎていた。

もっとも、今のアタシにはあまり関係ないし、よくある事なのだが。

それよりも…。


見た夢が最悪なら、やはり寝覚めも最悪。

残り続ける憤りとそれに連なる空腹感を満たす為、フラフラと歩いて大型スーパーへ。

菓子を中心に買ってすぐ食える物を適当に買い漁る。



イライラする時は、食って飲んで遊んで忘れるに限る。

そうこうしてる間も耐えきれず、会計を済ませてすぐの菓子の箱を一つ開けて、中身を食らう。
222 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:21:45.81 ID:Smo9u8Vq0

辿り着いたのは、そのスーパーを出てすぐ近くにある公園のベンチ。

三つ並んだベンチの右側に乱雑にビニールを置き、自分も乱暴にその横に座る。


そのまま適当に物を飲み食いして時間を潰そうと思ってたんだが…。



??「…………」


杏子(ガキ、か………)


トボトボとガキが歩いてくる。

緑色の髪をしたそいつは、どうにもしょぼくれた雰囲気をしている。

それだけなら気にも留めなかったんだが、あろうことかそいつはアタシの真横に座った。


他にも公園内にベンチはたくさんあったし、この付近にしたって横の二つがまるまる余っているにも関わらず、だ。
223 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:22:21.42 ID:Smo9u8Vq0

杏子(一人になりたい時に限ってこれだ)


どうするか考えたが、このガキがどこに座ろうがコイツの勝手だ。

そして、アタシが一人になりたいのもアタシの勝手。


なら、アタシが他のベンチに座れば良い。

そう思って立ちあがったんだが…。



??「…………」


ガキの目が僅かに潤んだのが見える。

その様子に何故か罪悪感を覚えたアタシは、溜息を吐いて再びベンチに座った。
224 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:23:02.96 ID:Smo9u8Vq0

杏子(やりづれぇな……)


と思いつつもハンバーガーの袋を開けて、食らう。

ちらり、と横を見ればやはりガキはこちらを物欲しそうに見ている…。

手に持ってるバーガーに目線が行く所を見ると多分…。




杏子「腹減ってるのか?」


返事をせずに首を縦に振って頷く。

アタシは頭を掻きながら、ビニール袋から別のバーガーを取り出してガキに差し出した。
225 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:23:37.99 ID:Smo9u8Vq0

杏子「くうかい?」


言い終わる頃にはガキはハンバーガーを受け取り、物凄い勢いで食い始めた。

やっぱりと言うか、なんと言うか腹が減っていたらしい。

そして、そんな勢いで物を食えば起こるお約束と言えば…。



??「うぐっ!」


杏子「ったく、しょうがないな…」


喉に詰まらせたガキの為に飲み物も渡してやる。

たくさん買い込んだから、このくらいはどうという事はないんだが…。




杏子「お前がっつき過ぎだろ。ちゃんと飯食ってるのか…?」


一人で過ごすつもりが、ガキのペースに乗ってなんだかんだで世話を焼いてる。

自分自身でも呆れるザマだが、こんな時に限って会いたくない奴に会ったりするもんだったりする。
226 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:24:50.28 ID:Smo9u8Vq0

???「へぇ…。良いトコあるんじゃない」


杏子「お前は…!」




さやか「よっ。先日は世話になったね」


現れたのは、先日のマミの弟子の一人。

やたらと打たれ強く、喧嘩っ早い青髪ショートの女だった。


しれっと話かけてきているが、アタシとコイツは先日の一件から敵同士の筈だ。

だからこそ、威嚇も兼ねて思い切り睨みつけてるつもりなんだが、先日とは別人のようにこの女はにやにやとしているだけである。

所構わず喧嘩を吹っ掛けられるよりはマシだが、これはこれでイラつく。
227 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:25:34.73 ID:Smo9u8Vq0

杏子「何しに来やがった…?」


さやか「あんなの見せた後にそんな顔したって無駄だよ。

    怖くもなんともない」


杏子「あんなの…?」


さやか「子供に食べ物奢ったり、飲み物あげたりして面倒見ている所」


杏子「こ、これは……。

   ただの気まぐれだろ………」


杏子「ほら、お前からも何か言って………」


先日とは違う意味でこちらの調子が崩される。

掌を返したかのように、どこか友好的に接して気味が悪い。

恐らくはマミに何か吹き込まれたんだろうが…。


どっちにしても横のガキを始め、あちこちに人影の見えるここで暴れると面倒だし、何より相手に敵意が見えない。

ある意味ふざけた態度ではあるが、そのくらいでやり合っちまうほどアタシの沸点は低くはない、つもりだ。


とまぁ、この女への対応を考えながら、適当に話を振った相手から思わぬ声が掛かる。
228 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:26:27.33 ID:Smo9u8Vq0

??「ゆま……」


杏子「あ…?」

さやか「………?」



??「お前じゃなくて…、子供でも無くて『ゆま』」


さやか「だってさ、杏子」


杏子「…………なんで、アンタがアタシの名前を?

   いや、マミから聞いたのか」



杏子「まぁいいや。丁度良いからアンタこのガキの相手でも………」




さやか「と言う訳には行かないみたいだよ?」
229 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:27:07.43 ID:Smo9u8Vq0

ゆま「……………」


ウザイ奴にガキを押し付けてトンズラ……と言う作戦も失敗に終わる。

何をどう間違えたのか、このガキはアタシに懐いてしまったらしい。


別にだからって何て事はない筈なんだ。

何時ものように、『他人なんて関係ない』の一言で切り捨ててしまえば良いものを…。

しょぼくれたガキの表情と、さっきとは打って変わってどこか真剣なこの女の表情にアタシは折れちまった。



杏子「あぁぁぁ、もう! わかったわかった!

   だから、泣くんじゃねぇよ」


ゆま「うん……! ありがとう、キョーコ!」




さやか「よかったね、ゆまちゃん!」

ゆま「うん。お姉ちゃんもありがとう」


さやか「あたしはさやか。『美樹さやか』だよ。

    改めてよろしくね、ゆまちゃん、杏子」


ゆま「うんっ!」


杏子「…………ふん」
230 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:27:59.40 ID:Smo9u8Vq0

ゆま「ねぇキョーコ? これ貰って良い?」


杏子「ん? あぁ良いよ」


さやか「おっ。『Rocky』か〜、良いね。あたしも一つ…」


杏子「誰がお前にやるって言った?」




さやか「む〜…、じゃあ…!

    『ねぇキョーコ? これ貰って良い?』」


杏子「ウゼェ!!!!」



さやか「ひどっ!」


ゆま「あはは…! サヤカって面白いね!」
231 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:28:48.67 ID:Smo9u8Vq0

杏子「つーかさ、アンタは何しに来たんだよ?

   妙に馴れ馴れしいし…」


さやか「ちょっと遊びに、ね」



杏子「冗談も大概にしねぇと………!」


さやか「いや、ホントだって」



杏子「冗談にしか聞こえないね。

   アタシが先日アンタやその友人にした事を考えれば、慣れ合うなんてとてもできる筈がない」


さやか「あたしの事はともかく、まどかの事はまだ許してないよ。

    でもさ………」



ゆま「……………」


さやか「後にしよ。ゆまちゃんが退屈してるから」


杏子「………」
232 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:29:35.60 ID:Smo9u8Vq0

杏子「で、お前はどうしたいんだよ? ゆま」


ゆま「お家に帰りたくないの……」


杏子「……………」




杏子「ハァ……。仕方ねぇな………」


杏子「来いよ。特別に『今日一日だけ』付き合ってやる」


ゆま「うん……!」


ガキってのは本当にわかりやすい。

さっきまでの落ち込んだ表情が嘘みたいに、妙に嬉しそうな顔に変わりやがった。

横になんかニヤニヤしてる鬱陶しいのがいるが、まさか暴れる訳にもいかないから捨て置くしかないな……。
233 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:30:20.86 ID:Smo9u8Vq0

杏子「昼飯も食ったし、どっか遊びに行くか?」

ゆま「うん」


さやか「え…? あたしお腹減ってるんだけど…」




杏子「知るか。行くぞ、ゆま」


ゆま「どこ行くの…?」



杏子「時間潰しの定番って言えばゲーセンっしょ」


さやか「不良っぽい………」

杏子「ウゼェ!」



さやか「ま、あたしも結構好きだけどね。ゲームは。

    ゲーセンはあんまり行かないけど」


ゆま「ゲームしに行くの?」

杏子「あぁ」


嬉しそうな顔しちゃってまぁ…。

ガキってゲームとか好きだもんな。



アイツも………。

そうだったしな………。
234 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:32:51.90 ID:Smo9u8Vq0

────────

────

──


ゆま「うぅ………、全然勝てないよぉ……」


さやか「ちょっと杏子、手加減してあげなさいよ…!」



杏子「嫌だね。ガキに現実の厳しさを教えるのも人生の先輩の仕事だろ?」


ゆま「む〜〜〜……」

さやか「…………」



杏子「勝てない相手には挑むなってのまた社会勉強だって………。

   あ? 動きが変わった……?」


ゆま「………」

さやか「………」


杏子「ちょ、おい! なんだこのコンボ…!?」
235 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:34:16.64 ID:Smo9u8Vq0

さやか「〜♪」

ゆま「やっちゃえ! サヤカ〜!」


杏子「てめぇコラ! 何やってやがる!」



さやか「え? ゆまちゃんが杏子が負ける所みたいって言うから」

杏子「ゆまッ!」

ゆま「だって、キョーコ意地悪なんだもん」



杏子「ゆま、お前そこで人に頼ったら意味がな……うぉっ!?」


さやか「ほらほら…! 偉そうに説教垂れてると負けちゃうよ? 杏子?」

ゆま「おぉ! サヤカすご〜い!」


杏子「凄くねェ! こんなのただのハメ技……あっ、ちくしょー!」



さやか「ざまーみろ」

ゆま「みろ〜」


杏子「…………次は潰す!」

さやか「受けて立つ!」
236 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:35:14.65 ID:Smo9u8Vq0

────────

────

──


杏子「指が痛い…………」

さやか「あたしも………」


杏子「誰かさんの往生際が悪いからだろうが…」

さやか「倒す寸前からひっくり返されて負けちゃったもんね〜」


杏子「ムキになってんじゃねーよ! ガキじゃあるまいし…!」

さやか「アンタこそ、やられる度に不機嫌になっていくとか、思考が子供のそれじゃない!

    偉そうに『人生の先輩として〜』とか言ってたけど、ゆまちゃんの方がよっぽど……」



杏子「そういや、ゆまはどうした?」


さやか「え〜と。あ、いた」
237 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:36:06.43 ID:Smo9u8Vq0

ゆま「ね〜、キョーコ。あれは?」


杏子「DDRだな。画面と音楽に合わせて下にある矢印を踏むんだ。

   結構有名なゲームの筈なんだが、こう言うのは知らなかったか?」


ゆま「ゆまは…………」


杏子「あ〜、まぁいいや。話したく無い事もあるよな」




杏子「それよりもさ、やってみろよ。

   結構面白いぜ。良い運動にもなるし」


ゆま「うんっ」
238 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:36:43.19 ID:Smo9u8Vq0

ゆま「キョーコ、これっ! むずかしっ、よぉ!?」

杏子「あぁ、喋るな! 舌噛むぞ? 落ち着け落ち着け」


ゆま「あぁ、どんどん流れてく…!」

杏子「一端落ち着けって」




ゆま「う〜。全然駄目だったぁ………」


杏子「まぁ最初はそんなもんだろ。

   ちょっと手本見せてやるから、そこで見てな」


ゆま「うん…」




杏子「よっ、ほっ、よっと」

ゆま「キョーコ上手…」


さやか「ふふ…………。ホントに良いお姉ちゃんしてるじゃない」
239 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:39:35.77 ID:Smo9u8Vq0

────────

────

──


さやか「あ〜〜、遊んだ! 財布の中身が結構ヤバイけど」


杏子「へったくそだったもんな、クレーンゲーム」

さやか「うっさいなぁ……」


ゆま「キョーコは上手だったよね」

さやか「正直ちょっと意外だった」



杏子「昔よくやったんだ。

   ただ、それだけの事さ………」


親父もお袋もこう言うのは苦手だった。

それでも、やっぱり年頃の女の子はこう言うのを欲しがるから…。


躍起になってやったもんだよ…。

小遣い全部使い果たして何も取れなかった時は、しばらくヘコんだりしたっけな…。
240 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:40:10.13 ID:Smo9u8Vq0

ゆま「キョーコ、くまさんのぬいぐるみ取ってくれてありがとう」

杏子「礼はさっき聞いたよ。それよりも……」




杏子「そろそろガキは帰る時間だぜ?」

ゆま「ガキじゃなくて……」



杏子「そう言う問題じゃない。言ってる意味はわかるよな?」

ゆま「…………」


今日一日遊んで戻った笑顔も一瞬で潰れ、出会った時のしょぼくれ顔に戻る。

が、辺りもぼちぼち暗くなってきているし、これ以上ゆまを連れ回すのは芳しくない。
241 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:41:03.75 ID:Smo9u8Vq0

杏子「今日はもう帰れ。お前には、帰る場所あるんだろ?」


ゆま「うん……………」



さやか「ねぇ、杏子」

杏子「あ?」


さやか「今日一日って言ったんだし、家までは送って行ってあげようよ」

杏子「…………そうだな」



さやか「これで良い、ゆまちゃん?」


ゆま「うん……。ありがと………」
242 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:41:53.58 ID:Smo9u8Vq0

ゆまの表情は晴れない。

まぁ簡単に予想できる事だが……。

帰りたくない何らかの理由があるんだろう。


でも、だからと言って他人のアタシが気を揉む事じゃない。

そもそも、アタシは『誰かの為』とか言うのはもうやめちまってる身だしな。


それでもまぁ……。

コイツの言った通り、今日一日の口約束くらいは守って家まで送るくらいの事はしないとな。


それにコイツらのおかげで、アタシも久々に………。
243 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:42:37.15 ID:Smo9u8Vq0

────────

────

──


ゆまの自宅に辿り着く。

そこに着いても暫く項垂れて中へ入ろうとしなかったが、アタシらもその場に留まっていたからか、

やがて諦めて家へと帰って行った。



杏子「…………」

さやか「……………」


さやか「これで良いの?」

杏子「何がだ?」


さやか「感じなかった? あたしは何か嫌な予感がするんだよ……」

杏子「…………」



コイツの言う事はよくわかる。

ゆまの様子のおかしさを考えれば、自宅で何かあったのは明白だ。
244 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:44:15.91 ID:Smo9u8Vq0

『誰かの為』

やめた筈の事だった。


それを認めたく無くて、先日はコイツらと…。

マミと敵対した筈だったのに…。



まして人様のお家事情に首突っ込むなんて、馬鹿のやる事だ。



でも………。

馬鹿馬鹿しい……。

そう思いながらもアタシは、ゆまの家のチャイムを鳴らしていた。
245 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:45:12.87 ID:Smo9u8Vq0

杏子「…………」

さやか「…………」



杏子「なんで、誰も出ねぇんだよ…!」

さやか「おかしいね…。少なくともゆまちゃんが中に居る筈なのに」



玄関で往生しているアタシ達。



これが刑事ドラマだとかなら無理やり中に入るんだが…とか馬鹿な事を考えていた時だった。

中で何かが倒れる大きな音が響いた。

そして同時に響く罵声、悲鳴。


どうして、この世界ってのはこうも救いが無いんだろうな……。

その騒々しい声は、アタシやコイツが考えていた最悪のケースを決定付けてしまった。
246 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:46:05.04 ID:Smo9u8Vq0

杏子「悪ぃけど、勝手に入るぞ!!!!」


大きく一声してから、ドアを開ける。

幸いかどうかはともかく、鍵はかかっていなかった。

もっとも、鍵なんぞ掛かっていようと力尽くでぶち開けてやるつもりではあったが。



ゆまの母親「何!? あなた達は!?」


ゆま「う………」



杏子「ゆま!!!!!」


さやか「ゆまちゃん!!!!」


強引に入った家の中には……。

いかにもヒステリーを起こしました、と言った印象の年増の女と…。

床に横たわり、鼻と口から血を出し、その顔を腫らしたゆまの姿が映る。


悪い予感は完全的中。

さっきの物が倒れた音は、ゆま自身が倒れた音であることが判明する。

それが意味する事はもう言うまでも無いだろう。
247 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:46:50.81 ID:Smo9u8Vq0

ゆまの母親「勝手に人の家に入ってッ!!!!」


杏子「うるせぇよ……。ちょっと友達の家にあがっただけだろうが…!」



ゆまの母親「私はそんな事を許した覚えはないッ!

      そこで待ってろ! 今警察に突き出して……」


杏子「ハッ…、警察? 上等だよ……。

   だけど、その前にさぁ………」





杏子「これが親のやる事かよッ!?」


顔を歪ませ、あたしと一緒に中に入ったさやかとか言う奴の腕の中で泣くゆまを指して、目の前の女を問い質す。

もし、これでわかってくれたなら釘を刺してここで話は終わったかもしれない。


だが、その女は悪びれる様子もなく、さも当然のように言い放つ。
248 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:47:36.91 ID:Smo9u8Vq0

ゆまの母親「これが我が家の躾なのよ…。人の家の事に口を出さないでくれないかしら…!」



躾。

明らかに過剰な暴力行為をこの女はその一言で済ました。

そして、その一言はアタシの堪忍袋の緒を切るには十分だった。



杏子「……………躾、か」


杏子「じゃあ、仮にアタシがアンタに同じ事をしても、そう文句は言えねぇよな…?」



さやか「杏子……?」


ゆまの母親「な、何を…?」


魔法少女ってのは魔法で体を強化している。

魔法少女の状態だとそれはより強化されるが、平時ですら並大抵の大人以上の力が得られる。



そう。

ただの癇癪持ちのババァに一気に近寄り、

その首元を左手だけで掴んで持ち上げる程度は造作も無かった。
249 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:53:14.57 ID:Smo9u8Vq0

ゆまの母親「ぐぅ……あ………」


杏子「大した事はないんだよな? ただの躾なんだからさ…!」



ゆまの母親「ぐ……ぇ……」


首元から持ち上げられ、宙に居る女の顔から血の気が引いている。



当然だろう。

そんな怪力を中学生程度の女子が持っている筈もない。

そう考えるのが普通だ。


だが、普通じゃないものが目の前に居て…。

その普通じゃない奴が自分を殴る為に拳を引いているのだから。


自分が誰かにしている最低の行為。

それを今、逆に自分が受けようとしているのだから…。
250 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:53:49.72 ID:Smo9u8Vq0

アタシは本気でこの女を殴るつもりだった。


別にゆまの為ってわけでもない。

こんなことしたって、ゆまの境遇が改善される訳でもないしな。


気に入らない奴だから殴り飛ばそうってだけだ。




杏子「その調子に乗った面ッ……!」


ゆまの母親「ッ……!」




だけど、殴れなかった。

心底ぶっ飛ばしたいと思った相手へ繰り出した拳は途中で止まってしまっていた。
251 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:54:28.85 ID:Smo9u8Vq0

杏子「……………何すんだよ」




さやか「……………」


杏子「離せ………」



右手に組み付いたのは、先日のあたしの敵…。

美樹さやか…。


何を思ったのか
、この女はアタシの腕に組み付き、その動きを止めていた。

そして、怒りと言うよりはどこか悲しそうな目をして言う……。
252 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:55:18.41 ID:Smo9u8Vq0

さやか「もう十分だよ……」


杏子「十分じゃねぇよ。こんなんじゃアタシの気が収まらない」


さやか「それ以上するのは、誰も望んでない…………」


杏子「だから、誰の為だとか関係な……」



コイツの腕を払おうとした際に思わず振り向き、その際にゆまの顔が見える…。


驚き、怯えたようなアイツの表情……。

それを見て、ようやくアタシは正気に戻る。


相手の胸倉を掴んだ左手を離し、年増女が床に落ちた音だけが響いた。
253 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:56:04.42 ID:Smo9u8Vq0

────────

────

──



さやか「顔、もう痛まない?」


ゆま「うん……。でも、どうやったの?

   サヤカは魔法使いなの?」


さやか「…………まぁそんな所かな。

    それより、何かされたらすぐに連絡するんだよ?

    怯えるほど怖がってた杏子に釘刺されたから、幾らかは大丈夫だとは思うけど……」


ゆま「うん……。ありがとう。サヤカ」



杏子「…………」
254 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:56:45.42 ID:Smo9u8Vq0

ゆま「キョーコもありがとう」


杏子「アタシは、アイツが気に入らないから殴ろうとしただけだ。

   お前に礼を言われる事は何もしてない」


ゆま「そんな事ないよ……」


杏子「…………」



ゆま「キョーコはわたしの為に怒ってくれた。

   わたしの為に怒ってくれる人なんて、ずっといなかったのに……」


ゆま「だから、ありがとう。キョーコ」


涙を流しながらもゆまは笑顔で言った。

ただキレただけのアタシに対して、『ありがとう』って。


その笑顔とその言葉は、頭からこびり付いて離れなかった。

アイツの家を渋々離れて歩いてもずっと…。
255 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:57:29.16 ID:Smo9u8Vq0

杏子「…………」

さやか「…………」


杏子「何時まで付いてくる気だ?」

さやか「そうだね……」


人気のない静かな夜道を二人で歩く。

沈黙を続けながらも付いてくるコイツをいい加減疎ましく思い、遠回しに『帰れ』って声を懸ける。

が、そう言いながらもこの女はアタシから離れようとしない。


しかし、ここは今日コイツと出会った時の状況とは逆に、ここは人通りが無く、何をするにも持って来いだった。

それを利用してアタシは振り返って、コイツを睨みつつより強く脅しをかける。
256 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:58:18.38 ID:Smo9u8Vq0

杏子「いい加減目障りだって言ってんだよ。

   ま、アンタが消えないってんならそれも良い」


杏子「ここなら人目も付かないからな……。

   この前みたいにボコボコにしてやったって良いんだぜ?」




さやか「やっぱり、まどかやマミさんの言った通りだった」


杏子「何…?」



さやか「アンタは確かに乱暴で口も悪いけど、そこまで腐った人間じゃないって…」


杏子「ハッ! なんだそりゃ? おめでたすぎるだろ。

   アンタの友人を馬鹿にしてボコった事は忘れちまったのか?

   使い魔を逃がすようなロクデナシだって事は?」
257 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 21:59:21.09 ID:Smo9u8Vq0

睨むアタシを睨み返すでも無い。

それでも強い目をしたアイツは、アタシが怯むほどの強い意志を持って見つめ返す。

だが、この間のようにそこに戦意は一切感じない…。



さやか「アタシは馬鹿だからね…。

    そう言うアンタの言動や行動を鵜呑みにして、それがアンタの全てだって決めつけてたよ」


さやか「まどかにもマミさんにも『視野が狭い』って散々怒られてきたのにね」


杏子「………」



さやか「アンタは去り際にこう言った。『よかったね、マミさん』って……」


さやか「これを聞いた時に、さすがのあたしでも自分の無鉄砲を悔いたよ。

    戦う事を躊躇って、それを止めたまどかが正しかったんじゃないかってすぐに思った。

    そして、マミさんに昔のアンタの話を聞いて、それはますます大きくなった」


さやか「だからね……、今日あたしはアンタがどんな人間なのか知りに来たんだ。

    知りもしないで相手を一方的に敵視するのは違うって、そう思ったから…!」
258 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 22:00:21.76 ID:Smo9u8Vq0

杏子「いい気なもんだな…!

   それで今日ちょっと良い所を見たからって、勝手に人を良い奴でしたって思いこみたいってか!?」


杏子「今日の行動はただの気まぐれだ」


杏子「アタシは『自分の為』だけに生きる。

   その為に必要なら、アンタは勿論、マミも、ゆまだって潰せる!」



さやか「できないよ。アンタには」


杏子「できるさ!」



さやか「できないよ。

    大切な物を失って傷ついても、アンタは根っこじゃ優しいままだった。

    そんなアンタに、そんな真似が出来る訳が無い…!」
259 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 22:01:18.12 ID:Smo9u8Vq0

杏子「そんな事までマミから聞いたのか……」


さやか「ごめん……。あたしがマミさんにどうしてもって頼んで聞かせて貰ったんだ…」


杏子「まぁ良い……。だったらわかる筈だ。

   『誰かの為』なんて言ってる奴の末路は!」



アタシの親父はとある教会の神父だった。

だけど、優し過ぎる親父はある時から教義に無い事まで教え始め、やがて破門された。


間違った事は言ってなかった。

だけど『教義に無い』、それだけの理由で親父は世間の鼻つまみ者になり、アタシ達家族も貧困に苦しんだ。


それがたまらなく悔しかったアタシは願った。

『みんなが親父の話を聞いてくれますように』って。


結果、親父は新たな宗派を作る程となり、アタシはマミと出会って正義の魔法少女を目指した。


『誰かの為』に祈ったアタシは『誰かの為』に戦い続けた。

それが正しいって信じてた。

だけど…。
260 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 22:02:17.29 ID:Smo9u8Vq0

何かがおかしいって感じ取ったんだろう。

事のカラクリを知った親父はショックからおかしくなっちまった。


そしてそのまま、お袋と妹と一緒に無理心中…。

アタシを『魔女』って罵りながら……。


実際その通りだと思った。

アタシの勝手な願いが…。

アタシの一番大事な家族を壊したんだから……。


その後はお察しの通り。

『誰かの為』に生きる事の虚しさを知ったアタシはマミと決別し…。

『自分の為』だけに生きることを決めた…。
261 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 22:04:05.11 ID:Smo9u8Vq0

杏子「『誰かの為』なんて言っても、それで相手が救われるとは限らない!

   むしろ、それが原因で相手を破滅させる事だってある!

   だから、アタシは『自分の為』だけに生きるって決めたんだ!」


さやか「それがアンタの生き方だって言うなら否定はしないよ…!

    だけど……」


さやか「だったら、何であの時ゆまちゃんの家に押し入ったの?」


杏子「…………」


さやか「何で、ゆまちゃんの母親にあんなに怒っていたの…?」




杏子「それとこれとは…!」


さやか「同じだよ……。

    ゆまちゃんの母親が魔女や使い魔に置き換わるだけ…」
262 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 22:04:52.64 ID:Smo9u8Vq0

杏子「………」


さやか「確かにアンタの願いは結果的にアンタの家族を壊してしまったのかもしれない。

    でもさ…、アタシはアンタがお父さんや家族の為にって願った気持ち自体は間違いじゃないって思うんだ」


杏子「違う…! アタシが余計な事を考えなきゃ…!」



さやか「ねぇ杏子……?」

さやか「誰かの為に何かしたい……。そう思う事はそんなに悪い事なの?」


さやか「アンタが、ゆまちゃんに向けた優しさも間違いなの…?」



杏子「……………」




杏子「…………あぁ、間違いだ」
263 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 22:06:03.09 ID:Smo9u8Vq0

杏子「悲しみも苦しみも絶望も知らない幸せ馬鹿が、偉そうに語るな!」


さやか「イヤだ…!」


杏子「…………」



さやか「あたしさ……。お節介なんだ」


さやか「だから、今のアンタを一人にする事なんてできない…!」



杏子「あくまで『誰かの為』に生きる自分が正しいって言いたいんだな……」


杏子「それなら…、力尽くで教えてやるよ…!

   何時までも舐められてる訳には行かないからさ!」



アタシはソウルジェムに力を込め、自らを魔法少女の姿に変え、戦闘態勢を整える。

そして、獲物の槍をこの女に向ける。
264 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 22:06:52.53 ID:Smo9u8Vq0

杏子「アンタも構えな…!

   『誰かの為』なんて言っても、何もできない事を今証明してやるよ…!」



さやか「上等……!」


さやか「殴り合ってわかり合うベタな展開とか、望む所だよ…!」



さやか「アンタの悲しみも、苦しみも、全部あたしにぶつければ良い…!」


さやか「幸い…、打たれ強さには自信があるから、さ」



アイツも言われるがままにその姿を魔法少女へと変える。

互いに準備が整えばもう遠慮はいらない。


アタシは自分に感じた違和感を打ち払うように、この女に襲いかかった。

殺さない程度に痛めつけた……つもりが、心のどこかで手心を加えていたのか……。

倒れたアイツはゆっくりと立ちあがって来る。
265 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 22:08:17.99 ID:Smo9u8Vq0

杏子「やっぱり立ちあがるんだな……」


さやか「………あたしの願いは『癒しの願い』。その特性は『治癒能力』」

    打たれ強さには自信があるんだ…!」



杏子「………そうかい」


杏子「だったら、アタシはアンタを徹底的に打ちのめして、

   『アンタがアタシの為にしている行動が無意味』って証明してやるよ!」



実力差は明白だった。


いや、そもそもアイツ自体はこちらに対して攻撃の意思があったかもわからない。

それでも、その目は輝きを失わずに…。

打ちのめしても立ちあがって来る。
266 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 22:09:20.54 ID:Smo9u8Vq0

杏子「いい加減諦めたらどうだ…?」


さやか「却下……。あたしさ、諦めの悪さには定評があるんだよ……」




杏子「やってる事が無意味だって言ってんだよ!

   他人のてめぇ如きが、殴られてるだけでアタシの考えを変えられる…! 本気で思ってんのか!?」


さやか「わかんないよ…。わかんないけど…。

    あたしは誰かの為に魔法を使うって決めたから…」



さやか「でも、あたし馬鹿だからさ…。

    こんなやり方でしか、アンタの為にしてあげられる事が思いつかないんだ…」



杏子「ハハハハハハ! なんだそりゃ! アンタの考え甘すぎるだろ!」


杏子「アタシは、アンタを殺そうと思えば何時だってできるんだぜ…?」




さやか「それが出来たなら、あたしの負けだね。

    ………絶対に出来ないって確信しているけどね」


杏子「ッ…! どこまでも馬鹿にしてッ!」
267 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 22:10:30.98 ID:Smo9u8Vq0

だけど、アイツの覚悟は本物だった。


何度も…。

何度も……。


何度も打ちのめしたのに……。


その度に立ちあがって来る……。




杏子「馬鹿か…」

杏子「お前は馬鹿か!」


杏子「なんで立ち上がるんだよ…!」

杏子「なんで見ず知らずのアタシの為に、そこまでやろうとするんだよッ!」


さすがに限界が近いんだろう。

治癒能力も満足に働かなくなり、やっとやっと立ち上がり、

息も絶え絶えになりながらも、アイツはあたしに返してくる…。
268 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 22:11:05.65 ID:Smo9u8Vq0

さやか「あ…はは…。なんで…だろ…」


さやか「でもさ…。あたしは…」

さやか「似てるような……、気がしたんだ…」

さやか「あたしとアンタ…」



さやか「だから、きっと友達に…、なれる…」

さやか「そんな気が…」

さやか「するんだ…」


杏子「うるっせぇッ!!!!!

   そんなモンいらねぇっていってんだよッ!!!!!」


??「そこまでよ。佐倉さん…」



その目はいよいよ虚ろになり、膝を着いたアイツに槍を向けようとした時…。

背後から声が響く。


そのまま倒れ込んだ目の前の女に変わり、アタシは背後に居る聞き覚えのある声の主の方へ振り返る。

そして、不可解な行動を倒れるまで繰り返すこの女に対しての疑問を感情のままぶつけた。
269 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 22:12:14.49 ID:Smo9u8Vq0

杏子「マミ…、なんなんだよ。コイツ」

杏子「頼んでもいないのに勝手に人の事…」


杏子「挙句、馬鹿みたいに一方的にボコられやがって…!」

杏子「いったい……、なんなんだよ! コイツは……」




マミ「多分、今のあなたと向き合えるたった一人の人よ……」



マミはアタシの方へは目を向けず、倒れたさやかって女にグリーフシードを使ったり、

治癒魔法をかけたりしながら、アタシへの応対を続ける。


穏やかに瞑った目は落ち着いているようにも、後輩を痛めつけたアタシに対して怒っているようにも見える。

アタシはその顔を横目で見ながら、疑問とも罵倒とも言える言葉をマミにぶつけ続ける。
270 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 22:12:51.84 ID:Smo9u8Vq0

杏子「アタシは一人で生きるって決めたんだ…!」



杏子「誰の為にも生きない…!

   自分だけの為に生きるんだ…!」


杏子「なのに、何でアタシに関わろうとするんだ!」



杏子「もう放っておいてくれよ!!!!」



マミ「誰かの為に生きられないあなた…。

   それでも、そんなあなたの事を思う人がいた…。

   それだけの事じゃない…」


杏子「それが余計なお世話だって言ってんだよッ!」
271 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 22:14:15.68 ID:Smo9u8Vq0

マミ「本当に…?」


杏子「…………」


さやかの方から目を反らし、その目をアタシに向ける。

その目は殺意こそ籠っていないが、先日アタシとやり合った時のそれによく似ていて…。



マミ「佐倉さん……。私は魔法少女…。

   いいえ、私の都合を押し付けて、あなたの気持ちとは向き合えなかった。

   だから、私にあなたをどうこう言う資格はない…」


マミ「でも、美樹さんは違う…。

   あなたの気持ちと向き合う…。あなたと向き合いたいって…。

   体を張ってでも、あなたの前に立った…」


マミ「そんな彼女の気持ちすら、あなたは拒むの?

   そうやって何もかもを拒み続けるの…?」



マミ「断言するわ」


マミ「ここで彼女の手を拒んだら…。

   きっと、あなたは一生一人ぼっちよ…?」
272 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 22:15:17.06 ID:Smo9u8Vq0

杏子「アタシは…」

杏子「だって、アタシの魔法は……」

杏子「父さんを……、母さんを……、モモを………」



マミ「前にあなたが言った通り」

マミ「自分の願いで家族を失ったあなたの気持ちは、私にはきっとわからない」



マミ「でもね、私にもわかることがあるわ」

マミ「無くなった居場所に縋っても、それを悔い続けても、何も起きはしない…。

   誰もいないの。誰も帰ってはこないのよ…」


マミ「だから、新しい居場所を探すの…。

   探すしかないの…」
273 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 22:16:15.49 ID:Smo9u8Vq0

杏子「……………………」



マミ「一人で生き続けるのなら、それも良い」


マミ「だけど、寂しいものよ。

   帰る場所に誰もいないのは……」


マミ「あなたは、きっと理解しているとは思うけど、ね…」



マミはそこまで言うとアタシに背を向け、手当てを終えたさやかをゆっくりと背負う。

そして、そのままゆっくりと立ち去った。






そして、アタシは…。


アイツらが去っても、そこで立ち尽くしていた…。



ずっと、一人で……。
274 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 22:17:52.02 ID:Smo9u8Vq0

「さやかちゃん、大丈夫なの!?」


「サヤカ、怪我は大丈夫!? 平気!?」



さやか「あ〜、はいはい…。

    大丈夫だから…。大丈夫だから……」




気が付いたら、あたしはマミさんの家のベッドで寝ていた。

どうも状況を察したマミさんが助けてくれたんだろう…。


そして、何をどう言う訳か、まどかやゆまちゃんに居場所や状況が伝わっており、

ベッドでのんびりしている所に、二人がやって来て叩き起こされた形になったと言う訳だ。
275 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 22:19:00.64 ID:Smo9u8Vq0

まどか「もう! どうして何時も何時も一人で突っ走って行っちゃうの!」

ゆま「ねぇサヤカ…? サヤカはキョーコと喧嘩したの?」



マミ「はいはい。二人とも。

   心配なのも聞きたい事があるのもわかるけど、一応美樹さんは怪我人だからほどほどにね…?」


まどか&ゆま「は〜〜〜い………」




さやか「……………」



杏子…。

あたしがここでこうしているって事は、アイツの説得には失敗してしまったって事になる。


説得、か…。

いや、そんな大層なものじゃないかな…。
276 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 22:20:00.17 ID:Smo9u8Vq0

本当はね…。


ただ、アイツと友達になりたかった。

きっと、それだけだったんだ…。


でも、あたしもアイツも素直じゃないから…。

あんな馬鹿みたいな事になっちゃってさ…。




さすがにマミさんに怒られちゃったよ。

『治癒能力』があるとは言え、もっと自分を大切にしなさいって…。
277 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 22:20:43.48 ID:Smo9u8Vq0

あたしの気持ち、少しはアイツに届いたかな…?

ちょっと自信無いけど…。

それでも…。





待ってるよ、杏子。

あたしは、ここにいるよ。

マミさんも居るし、ゆまちゃんとだって…。



だからね…。

アンタの、帰る場所は…………。



―to be continued―
278 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 22:21:41.23 ID:Smo9u8Vq0

―next episode―


「最初に会った魔法少女がマミさんで良かった。そう思うんだ」





―【第七話】魔弾の舞踏―

279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/09/17(土) 22:24:37.91 ID:wGSGmxcEo
おっつ
280 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/17(土) 22:25:29.33 ID:Smo9u8Vq0
はい。投下完了です。

自分にとって、杏さやはコンビの中でもやっぱり一際特別なポジションにありまして…
この二人の話にはその分プレッシャーみたいなものが…
どうするか、こうするかと延々と頭を悩ましてました


さぁ投下も済んだので、グリーフシンドロームやらTOXやらで息抜きしてきますw
281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/17(土) 22:42:07.10 ID:VNE+bPdSO
グリーフシンドロームはわかるけどTOXってなんじゃらほい
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/17(土) 22:43:28.96 ID:VNE+bPdSO
調べたらテイルズのことか
無駄レススマソ
283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/17(土) 23:41:47.68 ID:lyix6PCpo
お疲れ様でした。
284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/09/18(日) 00:24:17.59 ID:zw+25ugAO
乙!前回とその後のシリアスな雰囲気は何処へやら、ゲーセン編がほのぼの過ぎる。昨日の敵は今日の友か…
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/09/18(日) 09:28:49.46 ID:5VK9TqHAO

良かったです
286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/18(日) 09:43:43.99 ID:zVecdyat0
なんかマミさんに死亡フラグの影が・・・
気のせいだよな?
287 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/22(木) 19:31:32.54 ID:fGsO3TcG0
投下します

二期説浮上ですか…
逆に不安なのは俺だけでしょうか…?



>>284
素の状態だと対立しがちな杏さやの緩衝材として、ゆまちゃんに活躍して貰いました
杏さやゆまは前からやってみたかったトリオでもあります

>>286
マミさんとさやかはちょっとした事でも危険なフラグに見えますよね
色んなSS見て来ましたが、この二人の扱いは本当様々で…
288 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/22(木) 19:32:23.21 ID:fGsO3TcG0

さやか「やっぱりさ、剣もカッコいいけど時代は銃だと思うんだよ。

    いや、剣と銃の合わせ技。コレだね!」


まどか「さやかちゃんはそう言うの好きだよねぇ」


さやか「だって、カッコいいじゃん!

    剣で切り払ってからさ…! 『バイバイ!』って言って銃で追撃すんの!」


まどか「でも、それだったらいっそ連結も出来て、弓にも変形できる方が…」

さやか「いや、ダブルセイバーは駄目だ。長い棒であれの真似事やったら頭ぶつけたし…!」


マミ「…………」

ほむら「あの…………」


まどか「どうしたの? ほむらちゃん?」



ほむら「私達、ここに勉強しに来たんですよね…?」
289 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/22(木) 19:32:55.89 ID:fGsO3TcG0

マミ「……………」

さやか「う…………」

まどか「あぅ…………」



さやか「え〜〜〜〜と、と言う訳で次の魔女退治でマミさんの銃を貸して欲しいな〜………なんて?」

マミ「勉強会の最中に雑談を始めちゃうような人には貸せないかな?」


さやか「ぐうっ……!」



マミ「冗談よ。でも私の銃は単発式だから美樹さんの思ってるような使い方はできないと思うわよ?」


さやか「やっぱりうまくは行きませんかぁ……」

まどか「う〜ん…。銃剣使いのさやかちゃんもカッコいいと思ったんだけどなぁ…」


ほむら「あの………勉強を………」

マミ「いいわ、暁美さん。そろそろ良い時間だし、休憩にしましょう。

   私は夕食を作って来るから適当にくつろいでてね」
290 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/22(木) 19:34:09.87 ID:fGsO3TcG0

さやか「おっ! マミさんの手料理と聞いてなんかやる気出てきた!」

まどか「今更遅いよ、さやかちゃん………」


ほむら「巴さんって料理もできるんですか…?」

さやか「ん? 出来るなんてもんじゃないよ。絶品だよ、絶品!」

まどか「特にお菓子系が凄いんだよ。今日も何か作ってあるって言ってたから期待していいと思うよ」



さやか「美人だし、優しいし、スタイル良いし、勉強できるし、魔法少女としても一流だし、料理も得意…!

    くぅ〜! 嫁にしたい! 割とマジで!」

まどか「むぅ〜。わたしはマジじゃなかったんだね?」



さやか「え………? まどかさん、ひょっとして嫉妬してます?」

まどか「いいもん、いいもん、わたしはほむらちゃんを嫁にするから。

    ねぇ〜、ほむらちゃん」

ほむら「え…、えと…///」
291 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/22(木) 19:34:58.39 ID:fGsO3TcG0

さやか「まぁ嫁議論はさておき、実際マミさんって何でも出来るよね。

    逆に恐ろしくなる時があるわぁ」


ほむら「何か苦手なものとかないんでしょうか…?

    お化けが怖いとか、犬が苦手……とか?」

さやか「魔女退治できる時点で、その辺は纏めて削れちゃうなぁ…」




まどか「…………苦手なものは知らないけど、『困った癖』なら知ってるかなぁ?」


ほむら「あの、巴さんに困った癖…?」

さやか「何それ何それ! すっげー聞きたいんですけど!」


まどか「ん〜、二人がマミさんに余計な誤解をしないように話すとなると、結構長い話になっちゃうかも。

    わたしがマミさんに会った時の話からしなきゃいけないし…」


さやか「むしろ、それは聞きたい!」

ほむら「私も興味あります!」


まどか「………じゃあ、どこから話そうかな…」
292 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/22(木) 19:35:26.24 ID:fGsO3TcG0





―【第七話】魔弾の舞踏―


293 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/22(木) 19:36:23.22 ID:fGsO3TcG0

まどか『どうしよう…。このままじゃ…!』

まどか『どうしよう、息してない…。どうしよう、どうしよう…』


まどか『お願い…、誰か…! 誰かこの子を……助けて!!!』


??『その願いは君にとって、魂を差し出すに足る物かい? 』


まどか『あなたは…?』

QB『僕はQB。魔法の使者さ』


まどか『魔法の…?』

QB『資質ある少女達を魔法少女へと導く役目を持っている。

   魔法少女は魔女と戦う宿命を背負う…。その代わり、僕は君たちの願い事を何でも一つ叶えてあげる』


まどか『なんでも…? じゃあ、この子を助ける事も…!?』

QB『勿論だとも。どんな奇跡でも…』


まどか「奇跡でも魔法でも何でも良い! お願い、この子を助けて!!!!!!」



QB『死すら凌駕する絶対的な「奇跡」。

   鹿目まどか、それが君の願いだね…?』
294 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/22(木) 19:36:54.25 ID:fGsO3TcG0

こうして、わたしは車に轢かれて死んでしまった猫のエイミーを助ける為に魔法少女になったんだ。

でも、魔法少女がどう言う物なのかよくわからないまま魔法少女になったから、最初は凄く苦労してね…。



まどか『あ、当らない…!?』

QB『落ち着いて!まどか!』


まどか『う、うわわわ…!? く、来るよ…!?』

QB『もっと良く狙って…!』


まどか『きゃあっ!』

QB『…………駄目か』


QB『才能も魔力も確かなんだけどなぁ…。やっぱりそれだけじゃ魔法少女は務まらない、か』
295 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/22(木) 19:37:52.03 ID:fGsO3TcG0

まどか『だ、駄目だ…。囲まれちゃった…』



QB『魔法少女の初陣の戦死率は非常に高い…』


QB『魔法や武器を使いこなせなかったり、上がった筈の身体能力を活かせぬ内に敗れる者が多いからね』

QB『鹿目まどか。本来であれば君もそんな一人に仲間入りする所だった。だけど君は運が良い』

QB『来たみたいだね』



??『お待たせ、QB』


QB『報告通りだよ。急いでまどかを援護してあげてくれ』

??『わかってる』
296 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/22(木) 19:38:27.45 ID:fGsO3TcG0

QBが誰かを呼んで念話やら独り言やら言ってたのはわかってた。

ただ、段々と追いつめられたいったわたしは、もうQBの方を確認する余裕なんてなくて…。

聞き慣れない声と人影にそれとなく気付いた次の瞬間には、響いた銃声に驚いてた。



まどか『な、何…?』

??『あなたが噂の新人さんね』


次々に放たれる銃弾は、わたしの周りにいた使い魔を次々に撃ち倒す。

何時しかわたしの周りに敵はいなくなり、代わりに金髪ロールでスタイルの良い美人さんがこちらへやって来る。

その人は会話をしながらも、迫って来る使い魔を撃って、銃を捨て、代わりの銃を作り出す…。



まどか『あなたは…?』

??『QBから救援要請を聞いて来た魔法少女よ』


すばしっこい敵を確実に捉える正確な攻撃。

落ち着いた物腰と柔和な笑顔、敵を倒しながら会話ができる程の余裕。

なったばかりのわたしにさえ、実力のある魔法少女だってわかる何かが感じ取れた。
297 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/22(木) 19:39:22.63 ID:fGsO3TcG0

??『とりあえず、この場は私が引き受けてしまっても良いかしら?』


まどか『すいません…。お願いできますか…?』


??『………悪い子じゃないみたいね』


まどか『え…?』



??『うぅん…。本当はゆっくり自己紹介したいんだけど…。

   でも、その前にちょっと一仕事…』



??『片付けて来るわね!!!』
298 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/22(木) 19:40:22.73 ID:fGsO3TcG0

彼女の戦い方はまるで魔法そのもので…。

どこからともなく銃が現れ、それを取って迫り来る敵を撃ち抜く。


取り囲むように迫る敵に対抗するように、自身も回りながら…。

それでいて、射撃の狙いは正確無比。

時には銃で殴り飛ばし、蹴り飛ばし、撃ち捨てた銃を自然な動きで交換。


それを繰り返し、次々と迫る使い魔達を返り討ちにして減らしていく…。



華麗な舞踏のような美しさに、銃弾を織り交ぜたそれは、

今まで見たどんな見せ物よりも惹きつけられて…。


止めと言わんばかりの派手な砲撃。

その魔法の名前を叫びながら放たれたそれは、魔女を打ち倒し戦いは終わってしまった。

本来であれば、良い事の筈なんだけど…。



気付けば、わたしは…。

彼女が魔女を倒し終えた時、「残念だな」と思っちゃった程、その戦いに魅せられてた。
299 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/22(木) 19:40:58.18 ID:fGsO3TcG0

魔女が消えて結界も消える。

ほぼ同時に魔法少女の変身も解ける。

その制服を見て、人がわたしと同じ見滝原中学の生徒だってわかった。


もう言うまでも無いよね?

その人こそが…。



??『改めて自己紹介するわね』

マミ『私は巴マミ。あなたたちと同じ、見滝原中の3年生。

   そして、キュゥべえと契約した魔法少女よ』


まどか『わたしは鹿目まどか。見滝原中学の二年生です。

    助けてくれてありがとうございます。わたし昨日魔法少女になったばかりで…』


マミ『聞いてるわ。あまり気にしない方がいいわよ。最初は誰だって苦労するものなんだから。

   あ……、グリーフシードはどうすれば良いかしら? あと一度くらいは使えると思うけど』


まどか『グリーフシード…?』
300 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/22(木) 19:41:54.94 ID:fGsO3TcG0

マミ『………魔女の卵の事よ。そのままなら害は無くて、むしろ私たち魔法少女が魔法を使うのに必要な物なの』

まどか『そうなんですか?』


マミ『えぇ…。あなたのソウルジェムを見てみなさい』

まどか『あ…、なんか濁ってる…』


マミ『ほら、こうやって近づけると…』

まどか『綺麗になった』


マミ『私たち魔法少女の魔力の源であるソウルジェムは、魔力を消費する度に穢れを溜めるの。

   グリーフシードがあれば、その穢れをそっちに移す事が出来るわ。まぁ穢れを溜めきると魔女が孵化しちゃうんだけど…』


まどか『そ、それってまずいですよね…?』


QB『あぁ、それは大丈夫。穢れを溜めすぎたグリーフシードは僕が処理するから。

   それも僕の役目の一つなんだ』
301 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/22(木) 19:42:50.33 ID:fGsO3TcG0

マミ『ともかく穢れを溜め過ぎると魔法が使えなくなるから、それの状態を保つのは魔法少女の基本中の基本よ』


まどか『そっか…。何から何までありがとうございます』


マミ『いいえ。気にしないで。それよりもQB?』


QB『睨まないでくれよ。君の時程ではないけど、まどかとも急な契約だったんだ。

   その事よりも前に教える事が山ほどあったのさ』


マミ『そんな子を魔女退治に連れ出さないの。

   鹿目さんも暫くは無理はしなくていいわよ。困ったら何時でも私を頼ってね』


マミ『あなたがどんな魔法少女を目指すかは知らないけど…、できれば仲良くやっていきたいから』


優しく微笑み、そのまま去っていこうとするマミさん。

わたしは思わず彼女を引き止めていた。



まどか『…………あの、巴さん!』


マミ『何かしら?』


まどか『もし、良かったらで良いんです…。

    戦い方を教えて貰えたらって…』


迷惑かも…と思いながらも、開いた口はマミさんに戦いの指導を頼んでいた。

マミさんは一瞬だけ戸惑ったような表情を見せたけど、すぐに快く承諾してくれた。

その時の笑顔が少しだけ寂しそうだったけど、今思えばそれはきっと杏子ちゃんとの事を思い出してたんだと思う…。
302 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/22(木) 19:43:57.97 ID:fGsO3TcG0

次の魔女退治の前には、マミさんはわたしを招き魔法少女の知識を教えてくれた。

お茶とケーキのおまけ付きで。

そして、約束通り戦い方を教えてくれた。




まどか『…やっぱり当らない!』

マミ『何故当らないかわかる?』



まどか『わたしが、下手で才能も無いから…ですか?』

マミ『そうね。その通りよ』


まどか『…………』

マミ『そう言う風に「無理」とか「自分にはできない」と思いこむから出来ないの』



まどか『え………?』


マミ『鹿目さん、よく考えてみて? 「魔法」って言うのは本来出来ないような事を起こす力なのよ』

マミ『そんな力が「無理」とか「自分にはできない」と思っている人に使えるかしら?』



まどか『そっか……。そうですよね』
303 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/22(木) 19:44:33.22 ID:fGsO3TcG0

まどか『理屈は納得できるんだけど…』


――「魔法を使っている自分」をイメージするの。これが上手に魔法を使うコツの一つよ――



まどか
『そう言われても、魔法で凄い事やってるわたしなんて想像できないよ…』



わたしはあんまり自分に自信がないから…。

それも手伝って、なかなかマミさんの言う「魔法を使っている自分」がイメージできなかった。

魔法って言う凄いモノと、自分って言う平凡な存在がどうしても結びつかなかったんだ…。



まどか(イメージ……。やっぱりできないや)


まどか(わたしが魔法…? やっぱり考えれないよ…)


まどか(マミさんみたいに美人でカッコいい人ならともかく…)



まどか(マミさん…?)
304 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/22(木) 19:45:23.22 ID:fGsO3TcG0

まどか『………』


マミ『…!』


まどか『あ、当った…! 当りました、マミさん!』


マミさんの言う通りだった。

イメージしたら、体の方が矢を当てる為の手助けをするように自然に動いてくれて…。

放たれた矢は見事に使い魔を撃ち抜いていた。



マミ『油断しないで。まだ敵の数は…』


まどか『もう大丈夫です…! コツがわかりました!』


言いつつ、次々と矢を射る。

使い魔は先日のと比べれば大分遅いけれど、それでもわたしは矢を外す事はなかった。

マミさんの支援もあって、次々に使い魔が片付き、やがて周囲は静寂を取り戻した。
305 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/22(木) 19:46:34.99 ID:fGsO3TcG0

まどか『あれ…? 今日の敵はグリーフシードを落とさないんですね…』


マミ『今日の相手は魔女から生まれた使い魔だけだったから…。

   それよりも凄いじゃない。バッチリ出来てたわよ』


まどか『はい、何もかもマミさんのおかげです』


マミ『私は助言をしただけよ。それをやり遂げたのはあなた。

   もっと自分を誇って良いと思うわ』



まどか『いえ…。本当にマミさんのおかげなんです』

マミ『…?』


まどか『わたし、結局出来る自分なんてイメージ出来なくて…。

    それで、その代わりにイメージしてみたんです』


まどか『魔法を使ってるわたしはイメージできなかったけど、

    魔法を使っているマミさんなら簡単にイメージできたんで…』



まどか『そしたら、物凄くうまく行っちゃって…』
306 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/22(木) 19:47:29.51 ID:fGsO3TcG0

最初に出会った時に見せてくれた、美しい舞踏のような戦い方。

あれを筆頭に、親切で優しい先生としての姿。

日夜、この街の為に戦おうとしている強い正義感。



わたしの中にある魔法少女像は「マミさん」で固まってしまってた。

だから、わたしはそれをそのままイメージした。

それを話したらマミさんは凄く照れくさそうにしていたけど。



マミ『なんだか照れ臭いわね…///』

まどか『そんな事ないですよ』


マミ『やっぱりこう言うのって自分自身は投影しづらいのかしらね…?』


まどか『え…? マミさんは魔法を使う自分自身をイメージしてるんじゃ…』



マミ『笑わないで聞いてね…?』
307 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/22(木) 19:48:17.98 ID:fGsO3TcG0

まどか『昔見ていた漫画やアニメのノリで…ですか?』


マミ『えぇ…。漠然と「魔法」なんて言われてもイメージが湧かなくて…。

   今でこそ幾らか自分自身でイメージできるようになったけど、最初はもっと、その、ね…』



まどか『くすっ…』

マミ『あぁ! 笑わないでって言ったのに…』


まどか『いえ…、マミさんって案外可愛いなって思って…』

マミ『もう…///』



マミ『……願いを叶え終えて、私達が希望を振りまく側になったのだから、当然なのかもしれないけれど…』


マミ『子供の頃に見た魔法少女のそれは夢や希望に溢れてた…。

   対して、私達は何時どうなるかもわからない夢も希望も無い世界…』


マミ『それでも、夢や希望を捨てない…。昔見た魔法少女のようになりたいから…。

   せめて真似事だけでも、と思ってね…』
308 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/22(木) 19:48:58.51 ID:fGsO3TcG0

まどか『マミさん…』


マミ『そうやって戦闘後の紅茶やら必殺技の名前やら、色々とオーバーになっていった訳だけど…。

   まぁ、こんな世界に居る訳だから、自分の気持ちを高めるにはちょうど良くて…』


まどか『そうやって自分を鼓舞してたんですね』



マミ『普通でガッカリした…?』

まどか『いいえ…』


まどか『むしろ、マミさんも普通の女の子なんだなって親近感が湧きました』


マミ『普通、か…』


失礼なのかな、と思ったけどそれを聞いたマミさんは何故か妙に嬉しそうだった。

良く考えればマミさんってずっと一人暮らしだし、魔法少女としても一人の時間が長かったから、

普通と呼ばれるような事はなかったんだと思う…。


そんなマミさんがマミさんらしく居る為には…。

やっぱり一人じゃ駄目だったんだな、って思うと…。

魔法少女になってよかったって改めてそう思えたんだ。
309 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/22(木) 19:49:44.07 ID:fGsO3TcG0

まどか「これがわたしとマミさんの出会った時の話」


さやか「うん…。良い話だし、マミさんの魔法が派手めな理由もわかったんだけどさ…」

ほむら「今の話のどこに困った所があったんでしょうか…?」


まどか「あぁ…、それはね…」



マミ「さぁ後はお鍋が温まるのを待つだけだから…。

   この間に鹿目さんの新技の技名を考えましょうか」



さやか「技名…?」


マミ「えぇ。その技や魔法を使う時にはその名前を力強く叫ぶの。

   魔法に名前を付けて叫べば、その魔法をよりイメージしやすいし、自分の気持ちも高まって一石二鳥になるのよ」


まどか(困った所…、出てきちゃったみたいだなぁ…)
310 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/22(木) 19:50:20.59 ID:fGsO3TcG0

ほむら「でも……、そんなの…、恥ずかしいんじゃ……」


マミ「何も恥ずかしい事はないわ。それに連携する時に呼称が付いているって言うのは便利なものよ。

   『鹿目さん、アレやって』『美樹さん、あの魔法でお願い』じゃ相手には伝わらないでしょう?」


ほむら「それは確かに……、そうだと思いますけど…」




マミ「鹿目さんは何か考えてあるの…?」


まどか「いや、わたしはその……」


マミ「それなら『フィニトラ・フレティア』はどうかしら?」


まどか「舌噛んじゃいそうですね…」


マミ「そう…? なかなか良い感じだと思うのだけど…。

   だったら…」


まどか「いや、マミさん…。せっかくなんですけど、わたしは…」



さやか「『フィニトラ・フレティア』かぁ…。結構良い響きだと思うけどな〜」
311 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/22(木) 19:51:15.04 ID:fGsO3TcG0

まどか(さやかちゃぁん………)



マミ「美樹さん、わかってくれる?」

さやか「えぇ、勿論!

    技や魔法を使う時は、やっぱりその名前をカッコよく叫んでこそ魔法少女ってもんでしょう!」

マミ「そうよね…! せっかく凄い魔法を使うのだから、それに見合った名前を…」



ほむら「困った所…、美樹さんも共通だったみたいですね」

まどか「あはは……。さやかちゃんらしいや」


ほむら「二人がこのテンションだと、鹿目さんは大変そうですね」

まどか「そうだね…。でも…」


まどか「最初に会った魔法少女がマミさんで良かった。そう思うんだ」

ほむら「…?」


もし、最初に出会った魔法少女がマミさん以外だったら、わたしはどんな目にあってたかわからない。

自分の事は自分で何とかしろって助けてくれなかったかもしれないし、もっと酷ければ対立することだってあったかもしれない。


でも、マミさんは違った。

嫌な顔一つせず、わたしの為に戦い方を教えてくれた。

魔法少女としての在り方を示してくれた。


だから、ありがとう。

マミさん。

これからもよろしくお願いします。


―to be continued―
312 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/22(木) 19:51:49.08 ID:fGsO3TcG0

―next episode―


「多分、私は嫌われてるんだと思います」





―【第八話】互いの距離―
313 : ◆.2t9RlrHa2 [sage]:2011/09/22(木) 19:54:03.21 ID:fGsO3TcG0
はい。投下終了です。

大筋は決まってるんですが、肉付けが全くうまくいかない為
最近SSの筆の進みがよくないです

投下感覚はやや空き気味になるかもしれませんが、御容赦ください…
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/09/23(金) 00:11:01.71 ID:yErNRn/AO
お疲れ様でした。正直漫画やアニメが魔法少女のイメージを作ってたのもQBの仕事がはかどる一因だよね。
315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/23(金) 00:13:52.08 ID:6VPfBRNIo
お疲れ様でした。
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/24(土) 02:35:49.55 ID:LeHYpdpko
というか実はQBが文明の発達に正義のヒーローのイメージを植え付けて・・・
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/09/24(土) 12:00:05.47 ID:vH1Rt1IAO
>>316そういえば見滝原町って近年になって急速に開発が進んだ設定らしいけどまさか…
318 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 21:38:21.56 ID:vDolw1gr0
投下します
一時期に比べるとだいぶ筆の進みが落ちてるよなぁ
ペースを上げねば、とは思ってるんですが矢先に体調を崩す始末…


>>314
一時期は信仰や神話を、近年ではそう言ったアニメや漫画を逆手に取って奴は契約を推し進めていた…と
なんかSSが一本作れそうなネタですね…
やっぱりFate辺りとクロスさせると面白そうだよなぁ…

>>316
QB「それは私だ」

>>317
QB「それも私だ」
319 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 21:39:36.00 ID:vDolw1gr0

さやか「へ〜い…。美樹ですけどぉ…」

??「はははははっ。相変わらずだなぁ、さやかちゃんは」



朝っぱらから携帯に連絡が入る。

その連絡相手が『鹿目まどか』ではなく、『鹿目まどか自宅』であった事にあたしは気付くべきだったのだが、

朝の寝ぼけたテンションで電話を受け、それにすぐさま後悔する羽目になる。



さやか「うへっ!? すいません…。

    あたし、失礼な電話の出かたして…」


詢子「いやいや、良いって良いって。

   それにしても久しぶりだよな〜。元気?」


電話してきたのはまどかのお母さん。

鹿目詢子さん。


美人でバリキャリで、さばさばしてる大人の女性って感じで、昔から憧れてる人の一人だったりする。


あんまり朝は強くないって話だけど、たまにまどかが体調崩すと連絡してくるのは大抵この詢子さんだったりする。

まぁ、ようするに電話の内容は容易に想像ができた。
320 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 21:40:10.40 ID:vDolw1gr0

さやか「風邪ですか…」

詢子『うん…。悪いなぁ、さやかちゃん。

   そう言う事だから色々と頼むわ』


さやか「先生には?」

詢子『あいつ、また男と別れたろ?

   駄目だ、ありゃ。一方的に朝っぱらから惚気るな〜とか言いがかりつけてきて、話になりゃしない』


さやか「あちゃ〜…。わかりました。あたしから説明しときます」

詢子『頼むわ。っと、そろそろ行かないと…。

   じゃあ、また遊びに来いよ』


とまぁ、親友のいない一日はこうして始まった。

寂しい一日になる、とかこの時のあたしは思ってた訳なんだけど…。
321 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 21:40:48.95 ID:vDolw1gr0



―【第八話】互いの距離―

322 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 21:41:22.67 ID:vDolw1gr0

気持ちまで萎えてくるどんよりとした曇り空。

こんな日は良い予感はしないもので…。



ほむら「じゃあ、鹿目さんは今日はお休みなんですか…?」


さやか「うん…。熱がちょっと高いから、大事を取ってって事みたい」


一番親しくしている鹿目さんは、今日は風邪で休みだと彼女の親友の美樹さんから伝えられる。

私は他にも美樹さんや志筑さんとも一緒に居る事自体は多い。

でも、それは鹿目さんを通じた「友人の友人」と言った印象が強くて…。


人見知りの私が勝手に距離を感じているだけなのかもしれないけれど、それでも不安は募っていく…。
323 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 21:41:55.59 ID:vDolw1gr0

ほむら「…………」

さやか「ほ〜ら、そんな顔しないの」


暗欝な表情を表に出したまま沈黙してしまった私。

その私を彼女はいつもの様子で窘める。


さやか「だいじょ〜ぶ。微熱だって言ってたから明日には良くなるって」


さやか「……どうしても心配なら帰りにお見舞いでも行こ?」

ほむら「………はい」


感じた不安はすぐに飛んでいった。

思えば美樹さんはこう言う気さくな人だし、志筑さんも面倒見のいい人だ。

なんだかんだで、何時も接している二人なのだから不安がる必要はないのかもしれない。

そう思っていたのだけど…。
324 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 21:42:28.79 ID:vDolw1gr0

さやか「おっはよぉ! 仁美!」

ほむら「おはようございます…、志筑さん……」


仁美「……………おはようございます」


何時もなら美樹さんの元気な挨拶に対し、志筑さんはいかにもお嬢様と言った上品な挨拶で返すのだけど…。

今日の志筑さんはどこか態度がおかしく、冷淡で暗く小さな声でぼそりと挨拶を返した。

機嫌が悪いのか、どこか冷めた今日の彼女の表情は、近寄りがたいものを感じた。
325 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 21:43:11.90 ID:vDolw1gr0

ほむら「あ、あの志筑さん………」

仁美「…………」


さやか「………あぁ、そうだ! 今日まどか休みなんだよ〜。

    何でも風邪ひいたみたいでさぁ」


仁美「…………そうですの」


さやか「仁美……?」


私の言葉に反応しなかったまでは良い。

でも、志筑さんははっきり聞こえた筈の美樹さんの言葉も冷淡に返した。

鹿目さんの体調不良と言う、何時もの志筑さんならもっと気遣いある態度を見せそうな話題なのに、

彼女はどうでもよさそうに素っ気なく返した。


そこからはムードメーカーの美樹さんも黙ってしまい、

まさか、そんな空気なのに私から話題提供など出来る筈もなく、凍りついたような登校時間は過ぎて行った。
326 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 21:43:47.69 ID:vDolw1gr0

────────

────

──

ほむら「朝から体育なんて……」


前にも言った通り、私は運動も勉強も苦手だ。

それでも事前に予習したり、周りがサポートをしてくれる勉強はまだ幾らか良い。


でも、体育だけはどうしようもない。

最も準備運動だけで音をあげた退院したての頃に比べれば、随分動けるようにはなったんだけど…。




体育教師「じゃあ、二人組作って〜」


二人組。

となると何時もなら私は鹿目さんが手を取ってくれた、が勿論今日彼女はここに居ない。

それでも二人組は作らねばならないので、辺りを見回す…。
327 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 21:44:27.29 ID:vDolw1gr0

ほむら(悪いけど……。今日の志筑さんは近寄りづらいな…)


そう思った私は美樹さんに声をかける。

珍しくどこか真剣な表情をした彼女は、私の蚊の泣くような声に気付かなかった為、二、三度呼ぶ羽目になる。

ようやく、彼女はこちらに気付いたものの…。



さやか「え? あぁ…」

さやか「仁美、今日は暁美さんと組んであげて」


美樹さんは返答を私には返さずに、志筑さんへと返すと、

自分自身は一人余ってしまったのか、体育教師の元へと走って行ってしまった。


志筑さんは相変わらずの調子で、潰れてしまいそうな重い雰囲気が授業の間ずっと続いた。

そして、同時に私は「美樹さんや志筑さんに嫌われているのでは?」と言う疑念を抱き始めてしまった…。
328 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 21:45:09.55 ID:vDolw1gr0

ほむら(違う…)

ほむら(美樹さんも志筑さんもそんな人じゃない…)


さっきの美樹さんや志筑さんの態度や行動に対する自問自答を繰り返す。

美樹さんは私に何時も声をかけてくれたし、さっきの事だって自分を一人にして私と志筑さんに気を使ったとも取れる。

志筑さんだって、ついこの間まで勉強を教えてくれたり、ノートを見せてくれたりと親切にしてくれた。

でも…。


ぐるぐると回る思考に決着を付ける為に、私は美樹さんの席の元へと歩いた。
329 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 21:45:44.88 ID:vDolw1gr0

ほむら「あの………」

さやか「……………」


ほむら「あの…………、美樹さん………」

さやか「……………」


ほむら「あ、あの!」



さやか「あぁ! もう…! どうしてこんな時に…!」

ほむら「………!」


美樹さんの言葉はそう大きな声ではなかったものの、その言葉に怯んでしまった私はその場を去り席に戻った。

そして、さっきまでの思考がよりネガティブになって戻って来た。

美樹さんの苛立った背中と、志筑さんの冷たい表情…。


「私はあの二人に嫌われている」

そんな感情が浮かび上がってはそれを否定する…。

そんな事を頭の中で繰り返している内に午前の授業は終わっていた。
330 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 21:46:16.90 ID:vDolw1gr0

ほむら「あの………、美樹さん、昼食は一緒に……」


さやか「ごめん! あたしちょっと急用があるんだ。

    ちょっと行ってくるね!」


そう言うと美樹さんは教室からそのまま飛び出していった。

自問自答の答えの一つは、最悪の形で決定付けられてしまった…。



仁美「………さやかさんに置いてけぼりにされてしまったんですのね」


ほむら「へ? …………はい」

ほむら「……………」


ほむら「多分、私は嫌われてるんだと思います」


今日一日様子がおかしかった志筑さんに急に話しかけられて驚くも、

私は自分でも驚くくらい反射的に対応できていた。

その代わり、感じてしまった自問自答の答えがぽろりと口から零れていた。


そのまま私と志筑さんは二人で昼食を取った。

何の会話も無い虚しい時間だった。
331 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 21:47:06.99 ID:vDolw1gr0

教師「ん? なんだ、美樹はどうした…?

   休みなのは鹿目だけの筈だろう?」


仁美「………いい加減な女」



ほむら「……………」


そうだ…。

私は美樹さんにとって邪魔者なんだ…。


暗いし…。

勉強も運動もできないし…。

仲の良かった鹿目さんの前をちょろちょろしてて…。
332 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 21:47:55.60 ID:vDolw1gr0

自業自得、なんだろう…。

美樹さんは何時も明るく話しかけてくれたのに、私は鹿目さんを通じてしか美樹さんと接してこなかった…。


美樹さんがあぁ言う人だから…。

「思っているよりも距離が無い」「きっと何時か友達になれる」って私が勝手に思ってただけで…。

本当は…。



うぅん…。

美樹さんだけじゃない…。

志筑さんも…、巴さんも…。

ひょっとしたら鹿目さんだってそう思ってるのかもしれない…。
333 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 21:48:40.06 ID:vDolw1gr0

────────

────

──


ほむら「…………」




仁美「…………随分暗い顔ですのね」

ほむら「志筑、さん…………」


仁美「………そうだ。よろしかったら、暁美さんも一緒に行きません?」

ほむら「え…? 今日は志筑さんは習い事…」


仁美「そんなものよりも優先すべき事だってありますわ」


ほむら「はぁ………。でも、どこへ……?」


仁美「どこって、それは…………」



仁美「ここよりもずっといい場所、ですわ」
334 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 21:49:30.34 ID:vDolw1gr0

志筑さんに連れられてやってきたのは、街外れの廃工場。

そこにはどこか狂気を感じる数人が居るのみで、本当に他に人の姿は見えない。



ほむら「あの……、志筑さん。ここは…?」

仁美「しっ…! 静かに…! もうじき儀式が始まりますわ」


ほむら「儀式…?」

仁美「そう、私達が旅立つ為の儀式ですわ…!」



どこか様子がおかしい…。

そう思っていた矢先に、志筑さんの首筋に見られない印が見える…。
335 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 21:50:07.40 ID:vDolw1gr0

ほむら(あ、あれって………!)



マミ『「魔女の口づけ」って言ってね…。魔女が人を襲う為に使う呪いの一つなの』

マミ『それが付けられた人は魔女に操られて様子がおかしくなり、最終的には自殺しようとする…』

マミ『理由のはっきりしない自殺や殺人事件は、かなりの確率で魔女の呪いが原因なのよ』


心の弱った人間を襲い、自らの糧にする為に魔女が付ける呪いの印。

それが『魔女の口づけ』だって以前、巴さんが言っていた。


一度付けられてしまうと、魔女の思うがままに操られ、さまざまな奇行を取る事もあると言う。

それが志筑さんの首筋にあった。


その意味は…。

今日一日の志筑さんらしくない言動は全て、この『魔女の口づけ』のせいだった、と言う事なんだろう。


そして、それを付けられた人達が最後に向かうのは…。
336 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 21:51:04.51 ID:vDolw1gr0

女性「……………」


集団が作った輪の中央に居る女性が、バケツに洗剤を入れる。

そして、もう一つ…。



ほむら「その洗剤の混ぜ合わせは…、駄目です!」

ほむら「『混ぜるな危険』って書いてあるじゃないですか!」



あの洗剤の組み合わせは毒性の強いガスを発生させるもの。

もし彼女がそのままもう一つの洗剤とバケツの中身を合わせたら、大惨事になってしまう。


私はバケツを取りあげ、窓の外へと捨てる。

確かに有毒ガスの脅威からは逃れた。


でも、「これで安心」と言う訳には行かなかくて…。
337 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 21:51:56.04 ID:vDolw1gr0

仁美「なんで…!」


仁美「なんで、邪魔するんですの!」


仁美「このまま旅立ってしまえば…!」


仁美「もう悩まなくて済むのに!!!!」





集団自殺を止められ、行き場を失った人達に囲まれた私。

その人達の輪を割って私の前に立ちつつ、喚くように言いつつ、ゆっくりと志筑さんが迫る。




仁美「クラス委員なんてやってても……。どれだけ努力しても……。

   結局みんなは、私よりあの子に微笑みかけるんですわ……。

   あの人だって……!」


仁美「失敗したって笑って許されて……。その癖いざという時は誰よりも先に前に出て…!

   そんな子だから……。だから仕方ないって……、言い聞かせてましたのに……」


仁美「でも、我慢しきれなくなって思ってしまいましたの……」



仁美「『あの子がいなければ』って……」
338 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 21:52:37.97 ID:vDolw1gr0

ほむら「志筑さん……?」


仁美「酷い女ですわよね…? あの子と私は親友なのに…。

   あの子には私だって助けられてきたのに……」


仁美「だから、こんな私は旅立つんですわ! この醜い心を洗いに行く為に!」


あの優しく、温厚な志筑さんの内面。

誰も見せたくない醜い一面を、彼女は『魔女の口づけ』によって暴露されてしまっている。


私は身の危険を感じながらも、彼女の心から漏れた隠し事を聞いてしまっている事に罪悪感を覚えていた。

本当はそんな余裕なんてなかったと、次の瞬間に知る事になりながらも…。



仁美「ほら……、迎えが来ましたわ」


ほむら「え…? なにコレ…!?

    いや…! 何! なんなの…!?」


気付けば、私の体には無数の天使のようなデク人形が無数に張り付いていた。

本当に人形程度の大きさなのにその力は強く、私は身動きが取れない…。



仁美「御機嫌よう……、暁美さん。私もすぐに後を追いますわ……」
339 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 21:53:28.00 ID:vDolw1gr0

私は一瞬だけ意識を失い、気付けば見知らぬ奇妙な空間へと飛ばされていた。


重力が無いのか、体がふわふわと浮き、周囲にはメリーゴーランドの馬のような物がモニターを乗せて走っている。

そして、そのモニターに映っているのは……。



ほむら『すいません………。わかりません……』



授業での質問に答えられない私……。



ほむら『はぁ…あ…、先生…、私…、大丈夫です…』


運動が苦手どころか、準備運動で息をあげている私…。



ほむら『…………え、えと。あの…その…』


誰かから話しかけられても結局どもって何も言えず、鹿目さんにフォローして貰う私…。



惨めな私が、回り続けるモニターの中で次々に映し出されていた…。
340 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 21:54:31.67 ID:vDolw1gr0

ほむら「い、いや……見せないで」

ほむら「こんなの………見せないで!!!」


「キャーハハハハハハ!!!!」


不気味な笑い声と共に映っていたモニターの映像が変わる。

その内容は…。



マミ『正直……鬱陶しいのよね。あなたがいると空気が暗くなるし』

仁美『私が幾ら話しかけても、どもるか鹿目さんの後ろに隠れるばかり…。

   いい加減目障りですわ……』


さやか『アンタさぁ……、邪魔。

    せっかくまどかやマミさんとよろしくやってるのに入って来ないでくれる』



ほむら「そ、そんな……!」


男子『なんなんだよ、アイツ』

女子A『暗いし、話しても満足な反応返って来ないし…』

女子B『鹿目さんも大変よね〜。あんなのの御守り押し付けられて…!』
341 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 21:55:34.40 ID:vDolw1gr0

ほむら「そ、そんな……」

ほむら「私……、鹿目さんにも迷惑を……」


???『うん。迷惑……』



ほむら「鹿目……さん……」


まどか『縋らないでよ……。何時も何時も迷惑なんだ』



まどか『だってさ……、ほむらちゃんはこんなに何もできないんだよ?』


鹿目さんを映したモニター以外が全て私の醜態を映したモノに戻る。



そうだ…。

これは魔女の呪いで映し出されているものには違いないけど…。

でも、私自身が迷惑しかかけないどうしようもない人間なのは事実なんだ…。
342 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 21:56:30.26 ID:vDolw1gr0

モニターを乗せたメリーゴーランドは回り続ける。

そして、映し出される映像と共に私を嘲る笑いと罵る声が響く…。


マミ『暁美さん……』


ほむら「………」


仁美『あなたみたいに何もできないどうしようもない人は……』


ほむら「……………」





まどか『死んじゃえば良いよ……!』






???「あたしの友達に、勝手な事言うな!!!!!」
343 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 21:57:22.57 ID:vDolw1gr0

ほむら「この声……」


言う間にも上から現れたデク人形の天使に青い閃光が走り、次の瞬間にバラバラになる。

何時の間にか現れた羽根の生えたモニターから湧き出たデク人形達は次々に切り刻まれ、周囲にはその残骸だけが浮いた。


そして、青い閃光は私の前で立ち止まり、羽根の生えたモニターを睨みつける。



さやか「仁美に口づけして好き勝手やって…!

    こんな時に限ってマミさんと連絡取れなくて、苦労させてくれちゃって…」


さやか「散々走り回って見つけてみれば…」


さやか「暁美さんにまで手ぇ出しやがって…!

    アンタ、覚悟はできてるんでしょうね!!!!」


その言葉で、ようやく今日の美樹さんの不可解な行動の謎が解ける…。

彼女は、朝の段階で志筑さんの『魔女の口づけ』を見つけ、志筑さんが自害する前に魔女を倒そうと奔走してたんだ。


それを私は勝手に嫌われているものだと勘違いして…。

彼女自身は私を『友達』だとはっきり言ってくれたのに…。

私は何時ものマイナス思考で、勝手に彼女を疑ってしまっていたんだ…。
344 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 21:58:13.27 ID:vDolw1gr0

魔女「キャハハハハハ!!!!!」


笑い声と共に、周囲の馬に乗せれらたモニターと羽根の生えたモニター自身から映像が流れる。

先ほどまでとは違い、男子の姿を映し出したモニターは、どうやら美樹さんの動揺を誘っているようで…。



恭介『さやか……』

恭介『ありがとう、さやか…』

恭介『何をやっているんだい、さやか……』

恭介『ねぇ、さやか…』



ほむら「これ……、上条君?」

さやか「…………」


モニターに映っているのは同じクラスの上条君。

美樹さんの幼馴染だと聞いている彼が、しきりに美樹さんの名前を呼んでいる…。
345 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 21:59:01.51 ID:vDolw1gr0

さやか「あっそ……」

さやか「これが何だって言うのよ…」


さやか「あたしはね…! 怒ってんのよ!!!」


周囲に映し出された映像に美樹さんは全く動じることなく、再び青い閃光となって羽根の生えたモニターを切りつける。

その勢いに弾き飛ばされたモニターの中に、黒く長いツインテールに前髪で表情の見えない女の人形が見える。

美樹さんが、執拗に追い回している事からも、あれがこの結界の魔女である事は明らかだろう。


そして…。



さやか「これで、止めだぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!!」


ちょこまかと逃げ回る羽根付きモニターに狙いを定め、美樹さんはその剣を思い切り突き出す。

突き出された剣からは刀身が放たれ、その刀身はモニターの中央を捉える。


それでも勢いよく放たれた刀身は勢いを止めず、モニターを地面へと叩きつけた後、そのまま爆散。


黒焦げになって潰れたモニターの中から、ボロボロになった魔女が飛びだし、やがて結界もろとも消滅した。
346 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 21:59:47.55 ID:vDolw1gr0

────────

────

──


魔女を倒し、廃工場に匿名で警察と救急車を呼んだ私達はやむなくその場を去った。

魔女がいなければあの場で危険な事はないから、余計な疑いを持たれたり、状況をややこしくしないようにとあの場を離れたのだ。


そして、その帰りは自ずと二人で歩く事になって…。



さやか「その………色々とごめん。

    あたしも、今日はいっぱいいっぱいで……」


ほむら「そんな………。美樹さんは言ってくれました。

    私の事を『友達』だって…。なのに私は勝手に嫌われてるなんて思いこんで……」


さやか「………ごめん。

    それもだけど、暁美さんの見せたくない部分を見た形になっちゃって……」


ほむら「良いんです…。美樹さんのせいじゃないですし…。

    それにあれの一部は、私の勝手な思い込みだって、わかりましたから…」
347 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 22:00:37.67 ID:vDolw1gr0

あの魔女は人の心を読み取って、それをモニターに映して動揺させる魔法の使い手だった。

私達は互いの読み取られた映像を見た訳だけど、私の悩んでいる部分を見てしまった形になった美樹さんは、それを気にしていた。


私としては自分が何も出来ないのなんて今更で、美樹さんが「友達」と言ってくれた時点で十分だった。

でも、納得がいかない様子の美樹さんは暫くうんうんと唸った後、急に如何にも「閃いた」と言った感じで手を打ってから言った。



さやか「よし! 代わりと言ってはなんですが、さやかちゃんのコンプレックスの事も話してあげよう!」

ほむら「美樹さんが自分にコンプレックスを…?」


さやか「意外…?」

ほむら「はい…」


美樹さんは私に笑いかける。

その笑顔は、いつもの無邪気なものじゃない。

溜息を吐きながら、変わったその表情はどこか儚げな笑顔で…。
348 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 22:01:34.67 ID:vDolw1gr0

さやか「そっかぁ」

さやか「やっぱりあたしは、そう言うのとは無縁に見えるかぁ」


さやか「でもね、持ってるよ」



ほむら「美樹さん……」


さやか「理想の自分、それに近い誰か。

    そんな何かに近づきたくて、近づけなくて悩んでる…」


さやか「それは何も、暁美さんだけじゃないよ…」


美樹さんは語ってくれた。

いつもの自分と、その中に隠している弱い自分の事。


どこまでも突き進んでいける勢い任せの自分と、何故かそれができなくなる弱気な自分…。
349 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 22:02:36.10 ID:vDolw1gr0

うまく説明できないって、所々で自分を茶化すように笑うけど…。

美樹さんが何を語ってるのかはだいたいわかった…。



好きな人がいる。

でも、自分はその人に想いを伝えられない…。

こんな自分じゃ…。


もっと女の子らしく、可愛くありたい…。

でも、自分じゃ…。




私と同じような劣等感に悩む彼女は、いつもの快活で面倒見の良い彼女じゃなくて…。

もっと脆い、別の誰かに見えた…。
350 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 22:03:17.59 ID:vDolw1gr0

ほむら「美樹さん……」


さやか「ま、そんな訳だからさ。

    あんまり暁美さんも思い詰めないで…」


ほむら「美樹さん!」

さやか「はい…?」


ほむら「み、美樹さんは今のままでも、十分魅力的だと…私は思います」


きょとん、とした美樹さんが棒立ちになる。

言われるとは思っていなかった台詞が私から飛び出したので、驚いていると言うのがありありとわかる。


何でこんな事言ってしまったんだろう。

と言う後悔が、少しづつ私を襲い始める。


でも…。

私は、こんな私みたいな美樹さんを見ているのは、居た堪れなくて…。
351 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 22:04:24.22 ID:vDolw1gr0

顔が赤く染まり、自分の目線が泳いでいるのがわかる。

だけど、そんな様子を見ていた美樹さんはいつもの笑顔で笑う。



さやか「ありがと。暁美さん」


さやか「でもさ、それ言ったら暁美さんもそんなに自分を卑下する事ないと思うよ」

さやか「少なくとも、こうして励まされたあたしって言う一例がいる訳だしさ」


ほむら「そう……、でしょうか…?」

さやか「そうだよ。だから、暁美さんも…。

    ん〜…」


ほむら「美樹さん…?」


言いかけた美樹さんが突然、その口を人指し指で押さえて何かを考えるような仕草をする。

その様子は何時もの彼女の調子そのものだ。
352 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 22:05:05.12 ID:vDolw1gr0

さやか「何時までも暁美さん、暁美さんってやっぱりしっくり来ないなぁ…」

さやか「だから、あたしもまどかみたいに『ほむら』って呼びたいんだけど良いかな?」

ほむら「え…? あ、はい……」



さやか「うん。改めてよろしく! ほむら」


ほむら「はい。こちらこそ、よろしくお願いします…」


さやか「よし。これからよろしくね。ほむら」

ほむら「はい。こちらこそ、よろしくお願いします。美樹さん」



さやか「……じゃあ、ちょっと遅くなっちゃったけど、まどかのお見舞いにでも行っときますかぁ?」

ほむら「はいっ…!」
353 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 22:05:55.84 ID:vDolw1gr0

―翌日―



さやか「それで、もう体は大丈夫なの?」

まどか「うん。でも、昨日はごめんね。

    せっかく二人でお見舞いに来てくれたのに、わたし寝てて…」


さやか「まぁ良いって。ほむらが心配そうにしてたけど、今日のまどかの元気そうな顔見れば…と噂をすれば!」

まどか「ん…? 今なんて…?」



さやか「ほむらっ。おはよっ!」

ほむら「おはようございます。美樹さん」


まどか「え…? ほむらって…?

    さやかちゃん、いつの間にほむらちゃんとそんなに仲良くなったの…?」


さやか「いやいや〜、あたし達超仲良しだしっ。

    ね? ほむらっ!」

ほむら「え? 超かどうかはわからないですけど…」



さやか「な〜にをっ! だったら、ほむらもあたしの嫁にしてやる〜!」

ほむら「え? ちょっと美樹さん…!?///」


まどか「あ〜!!!! 駄目だよ!!! さやかちゃんったら!!!!」
354 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 22:06:31.60 ID:vDolw1gr0

ふとしたことで知った美樹さんの裏側…。


私のように強い劣等感を持つ意外な一面。

それは互いの秘密となって、私達の友情を深めた。

でも…。



彼女の淡い恋心

そして、コンプレックス。

それは、この時既に彼女自身を縛り付けていた…。

彼女自身を含む誰も気付く事が出来なかっただけで…。


―to be continued―
355 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/09/29(木) 22:07:15.61 ID:vDolw1gr0

―next episode―


「天才、か…。この程度の才能の持ち主なら、幾らでもいるって事みたいだね…」





―【第九話】理想と現実の壁(前編)―
356 : ◆.2t9RlrHa2 [sage]:2011/09/29(木) 22:10:36.78 ID:vDolw1gr0
はい。投下終了です
風邪のネタを書いてて、本当に風邪をひくとは思わなんだ…


しかし、グリーフシンドロームのエリーさんはワルプルさんより強い気がする
未だに安定しない…
どうせ、さやかのごり押しプレイしかできないヘタレなんで関係ないですが…
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/09/30(金) 00:58:37.27 ID:mo2KvzuAO
お疲れ様でした。
相変わらずみんなが仲良くしているのがいいですね。
エリーって魔法少女時代はもしかしてサイコメトリーなのか…その結果他人の嫌味や嫉妬ばかり読み取ってしまいそのまま引きこもって魔女化…そんなことを今回は考えさせられました。
358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/30(金) 01:19:55.71 ID:ixYhyLOlo
お疲れ様でした。
359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/09/30(金) 05:09:47.00 ID:XsnZUs7fo
乙です
そろそろさやかにとっての佳境がきそうでドキドキです
360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/10/01(土) 00:21:06.44 ID:ePoCiinV0
なんかペルソナ4のシャドウとの対面みたいだったな。

ところで、魔法少女が風邪ひくとは思えないだけど(心臓を患っていたほむらは魔法少女になったら病気を克服してたし、それ以前に魔法少女は人間やめているし)
マミさんは別の魔女でも追っていたの?
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/01(土) 21:22:10.60 ID:FvD42q/IO
>>360

治すのには魔翌力使うんじゃね?だから魔翌力の節約の為に自然回復をまってた的な
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/10/07(金) 20:58:03.51 ID:lmqVZKB4o
さやか☆マダカ
363 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/07(金) 23:54:01.87 ID:zyGd9G8a0
遅くなりました。
投下します。
体調も少し良くなってきたので、ぼちぼちペースを上げる…つもりです。


何時も乙感謝です。

>>357
徹底的なすれ違いと不幸の連続で潰れた本編とは反対の方向性を目指したSSですから…。

読心術は強力ですがそれ故の弊害ですよね。
某漫画では相手の下心まで読み取って自滅した女読心使い、某アニメでは周囲の心の声が聞こえまくってトチ狂った奴がいましたっけ。

>>359
自分からバレする訳にもいかんですが、激しい展開はこれからの予定です。


>>360
その辺りは書きながら気にはなったんで、まどか自身の描写を避け、好きなように解釈できるようにしたつもりです。

が、敢えて>>1なりの答えを返すと…。
>>361の方の考えに近くて「病にかからない」のではなく、「魔力を回せば治せる」と解釈したのと、
非変身時は魔力節約の為、身体能力は凡人よりは高くとも、超人ではない…と捉えている為です。

>>362
すいません。
大変お待たせ致しました
364 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/07(金) 23:55:41.62 ID:zyGd9G8a0

マミ「暫く留守をお願いね」


まどか「…………本当に行っちゃうんですか?」

さやか「ぶっちゃけると、あたし達だけだとまだ不安と言うか何と言うか…」


マミ「大丈夫。今のあなた達は随分戦い方が上手になったわ。

   特に連携の質の高さは私が保証する。あなた達が力を合わせれば、並の魔女は対抗できない筈よ」


まどか「でも………」

マミ「不安なのはわかるわ。でも、私もできるだけ早く済ませて戻るつもりだから…」


QB「この間からすまないね、マミ。あの周辺に魔法少女が居なくなった所に強力な魔女が出ているものだから…。

   代わりの子も探してはいるんだけど、そうそう見つかるものでもなくてね」


マミ「気にしないでQB。

   それよりもここの所多いわね。魔法少女の戦死の話」


QB「…………」
365 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/07(金) 23:56:30.30 ID:zyGd9G8a0

マミ「QB?」


QB「いや、前にも言ったけど用心してくれ。

   もう感じているとは思うけど、どうも様子がおかしいからね」


マミ「と言う事よ。二人とも十分に気を付けてね。

   念を入れるまでも無いとは思うけど、出来るだけ二人で行動するよう心掛けた方がいいかもしれないわね」


さやか「その点は心配ご無用っす! あたしがまさか嫁から離れるなんて、ある訳ないじゃないっすか!」

まどか「もう…/// さやかちゃんったら///」


マミ「その調子なら大丈夫そうね」



マミ「じゃあ、私達はそろそろ行くわね」


まどか「はい。行ってらっしゃい。マミさん」

さやか「マミさんも気を付けてくださいね」
366 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/07(金) 23:57:24.70 ID:zyGd9G8a0





―【第九話】現実と理想の壁(前編)―


367 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/07(金) 23:58:18.58 ID:zyGd9G8a0

さやか「よ〜し、じゃあ張り切っていきますか!」

まどか「うん。明日から頑張ろうね」


さやか「え…? マミさんにあぁ言って、いきなりサボるのはちょっと…」


まどか「でも、さやかちゃんは前から楽しみにしてた予定があったでしょ?」


さやか「…………」

まどか「上条君のコンクール。行こ」


前にも言った通り、さやかちゃんは上条君の為に祈って、何時どうなるかもわからない魔法少女になった。

そして、今日はその上条君が半ば無理やりとは言え、参加させて貰ったコンクールの日。

さやかちゃんがずっと望んでいた、上条君の本気の演奏が聞ける晴れ舞台だから…。
368 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/07(金) 23:59:15.20 ID:zyGd9G8a0

さやか「でも……」


まどか「ずっと楽しみにしてたんでしょ?

    なら、行こっ。わたしも久しぶりに上条君の演奏聞きたいしっ」


さやか「ちょっ、まどかっ…!」


確かにわたし達は使命を背負った魔法少女なのかもしれない。

でも…。


魔法少女である前にわたし達も一人の女の子だから…。

好きな事をしたり、大切な人の近くで過ごす時間がやっぱり必要で…。


特にさやかちゃんは、こんな世界に身を置いてまで魔法少女になったんだから、こう言う時くらいは楽しんで欲しい。


そう思ったわたしは、さやかちゃんの手を引いてコンクールの会場へ歩いていた。

こうでもしないと、さやかちゃんは自分の気持ちを隠して、他の事を優先する悪い癖があるから…。
369 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/08(土) 00:00:07.23 ID:LEZfknAa0

―コンクール会場―


さやか「……よ、よっ」

まどか「こんにちは。上条君」


恭介「…………やぁ、さやか。鹿目さん。

   来てくれたんだ」


さやか「…………」

恭介「…………」


まどか「…………」


まどか≪もう! さやかちゃん!≫

さやか≪な、何よ…!?≫

まどか≪上条君緊張してるんだよ? 何か一声かけて励ましてあげなきゃ!≫
370 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/08(土) 00:01:46.60 ID:LEZfknAa0

さやか≪いや、でも…≫

まどか≪は・や・く! 上条君行っちゃうよ?≫


さやか「……………」


さやか「えと、その、さ…………」

恭介「ん………?」


さやか「頑張って………ね?」

恭介「………あぁ」



恭介「じゃあ、そろそろ時間だから…」

さやか「うん………」


まどか(焦れったいなぁ…)
371 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/08(土) 00:08:40.45 ID:LEZfknAa0

そんなこんなでコンクールは始まった。

そして、他の出場者達が次々に
演奏を終え、いよいよ待ちに待った上条君の番。


さやかちゃんは勿論、わたし自身も「天才」と呼ばれた上条君の演奏を期待していた…。

でも…。




恭介「くっ……」



まどか「あれ…?」

さやか「恭介……」


「天才」上条恭介君の演奏。

それは大分前とは言え、わたし自身も聞いた事があって、その実力も演奏の素晴らしさも知ってる。

でも、今日の上条君の演奏はその「天才」の異名を感じさせるものじゃなかった…。


演奏自体もどこか冴えないうえに途中でミスをしてしまって…。

思えば上条君自身も最初から浮かない顔をしていた…。
372 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/08(土) 00:10:00.11 ID:LEZfknAa0

────────

────

──


さやか「恭介……」

まどか「上条君……」


恭介「ごめん……。期待に応えられなくて……」


さやか「それは良いの……。でも、やっぱりまだ手の調子が悪いの…?」

恭介「いや、手の調子は良いよ。

   事故に会う前よりも良いかもしれないくらいだ…」


まどか「だ、だったら次はうまく行くよっ!

    ブランクもあったんだし、今回は仕方ないと思うな…」

さやか「そうだよ! 誰だって調子の悪い時くらいあるって。

    だから、次はきっと…」



恭介「…………それは僕が『天才』だから?」
373 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/08(土) 00:12:54.92 ID:LEZfknAa0

まどか「上条君…?」



恭介「天才、か…。この程度の才能の持ち主なら、幾らでもいるって事みたいだね…」

恭介「あるいは、僕にそんな器は無かったのか…」


さやか「そ、そんな事ないよ。恭介のバイオリンは…」

恭介「今日のコンクールの演奏を聴いてればわかる筈だよ」




さやか「それは今日は調子が悪かったからで……」


恭介「次も変わらないだろうね」

さやか「…………」


恭介「確かに僕は怪我をして、それによるブランクがあった…。

   でも、手の調子自体はもう悪くないし、たくさん練習して感覚も取り戻したつもりだった…」


恭介「でも、結果はあの様。そして、それが今の僕の実力だ…」

さやか「恭介………」
374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/10/08(土) 00:15:29.55 ID:VQTmvMGUo
甘ったれてますねー
375 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/08(土) 00:22:30.78 ID:LEZfknAa0

恭介「バイオリンをまた弾ける事自体は嬉しいんだ…。

   でも、思い通りに弾けないんだ…。腕の調子は決して悪くないのに…」


恭介「理由もね……、それとなくわかっているんだ」

さやか「…………」


恭介「怪我をする前の僕は、きっと子供だったんだと思う…」

恭介「バイオリンを弾くのが楽しい。だから、このままバイオリンを弾き続けて将来はバイオリニストになりたい。

   そんな事を考えていた。いや、多分それだけを考えていたんだ」


恭介「だから、夢と現実の境が、その間にある壁が見えていなかったんだと思う…」


さやか「そんな……の……」



恭介「今回のコンクールはレベルが高かった。だからこそ思い知らされたよ…」

恭介「現実の……、自分の実力と言うものをさ……」


さやか「恭介………」
376 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/08(土) 00:24:03.97 ID:LEZfknAa0

まどか「そんな……、そんな事上条君が言ったら、さやかちゃんは…!」

さやか「まどか!」



まどか「でも…!」

さやか「良いの…」



さやか「良いんだ…」

まどか「さやかちゃん……」


恭介「…………ごめん」


申し訳なさそうにしながら上条君は、静かに去っていく。

さやかちゃんの願いを否定するような残酷な弱音を吐きながら…。


うぅん、さやかちゃんの願いだけじゃない…。




「理想と現実の壁」

それは…。
377 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/08(土) 00:25:16.87 ID:LEZfknAa0

────────

────

──

まどか「…………」

さやか「…………」


まどか「あの、さやかちゃん………大丈夫?」

さやか「ん? 心配してくれるんだ。

    相変わらず優しいねぇ、まどかは…」


まどか「当たり前だよ……」

さやか「そっか…………」


さやか「ありがと……」

まどか「うん…………」
378 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/08(土) 00:26:50.57 ID:LEZfknAa0

さやか「でも、さ…。実際きつい言葉だったよね……」


さやか「夢と現実の境が見えてないから……か」


まどか「……………」



さやか「あたしも……、そうなのかな?」

さやか「子供だから……、それが見えて無かったから、魔法少女としてやっていけるかも、なんて…。

    そんな気がしたのかな……」

さやか「マミさんみたいに一人前の魔法少女になって、みんなを守りたい……。

    そんなの……、夢なのかな……」


まどか「さやか、ちゃん………」



さやか「あ……、ごめんごめん。

    こんな事言われたって困るよね?」


さやか「忘れて、忘れて!」
379 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/08(土) 00:29:02.92 ID:LEZfknAa0

まどか「…………」


願いを否定されたも同然の上に、上条君の事に自分自身も重ねて弱気になっているさやかちゃん…。

何時もなら自分の弱い所をあまり見せようとしないさやかちゃんが、わたしを頼ってくれてるのに…。

でも、わたしはさやかちゃんに掛けてあげる言葉が無かったんだ…。


わたし自身も同じ事を考えていたから…。




「夢と現実の壁」「それが見えていない子供」


わたしもそうなんじゃないのかな…?

そう考えてしまって、言葉が詰まった…。
380 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/08(土) 00:29:59.74 ID:LEZfknAa0

魔法少女になって、誰かの役に立っている。

つもりでいた…。


でも、実際にこの街を守っていたのはマミさんだ。

マミさんが居なければわたしは最初の魔女と戦った時に、やられていただろうし、

そもそも今だって、マミさんやさやかちゃんが居なきゃ一人で魔女と戦うなんて出来ないかもしれない…。


そう考えたら、わたしの中にあった確証のない自信や、感じていた妙な達成感のような物が崩れた、気がした。


同時にマミさんの姿が浮かび、わたしはマミさんのようになれるの…?

そんな疑問と不安が頭を埋め尽くした。
381 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/08(土) 00:30:49.78 ID:LEZfknAa0

さやかちゃんもきっと同じだったんだと思う。

わたし達二人は、帰路で全く会話をしなかった。


そして、そんな時でも…。



さやか「!?」

まどか「魔女の反応……?」


さやか「こっちの事情なんてお構いなし、か…。

    どこまでも迷惑な奴ら…!」


さやか「行こう、まどか」


まどか「うん………」


事態は止まる事を許してくれない…。

わたし達の居る世界は、そんな迷った心を整理する時間さえ与えて貰えない厳しい世界で…。



わたしとさやかちゃんは、そんな状態のまま魔女の結界へと向かう事になってしまって…。
382 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/08(土) 00:32:24.44 ID:LEZfknAa0

魔女の結界の中は全てが真っ黒。

その深い闇は自分たちの姿まで黒い影のように染めてしまい、互いが互いを視認するのに苦労するほど。


おまけに結界内では、蛇のような体から地面から生え、その先端に他の生物の頭を付けたような薄気味の悪い使い魔が無数に犇めいる。

ざっと確認しただけで犬、猫、鼠、兎、馬、熊のような頭部があり、

人間の頭部らしきものを持った使い魔も居たから、これに関してははっきりと姿が見えなくてよかったと思った。


使い魔達は数に任せて直接飛びかかってきたり、口から何か吐き出したりして襲いかかって来る。

はっきり言って、今まで戦ってきた使い魔達とは比べ物にならない攻撃の激しさだった。


それでも…。
383 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/08(土) 00:33:28.98 ID:LEZfknAa0

まどか「使い魔になんて負けてられないよ!」

さやか「そうだね…!」



まどか「さやかちゃん、纏わりついてくる敵はお願い!」

さやか「オッケ〜! 任せといて!」


迫って来る使い魔と、使い魔の放った攻撃をさやかちゃんが全て切り払う。

その数は多く動きもなかなかに速いけど、さすがに速度自慢のさやかちゃんの動きには付いてこれず、

次々にその頭部が斬り落とされ、残った触手のような体は次々に消えていく…。



まどか「さやかちゃん!」


さやか「おっし! 頼むわ!」


わたしの掛け声で、さやかちゃんが大きく後ろへと跳躍、わたしはそれに合わせて矢を放つ。

溜めた魔力によって無数に分裂した矢は、雨霰のように無数の使い魔に迫り、前方の敵を壊滅させた。


そして、その先にようやくこの結界を作り出した存在を見つける。
384 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/08(土) 00:37:38.33 ID:LEZfknAa0

まどか「あれがこの結界の魔女…」

さやか「ようやく出て来たね…!」


祈りを捧げる長髪の聖女……と言った外見をしているものの、

周囲にはさっきまでに倒したモノと同タイプの使い魔が犇めき、さらに辺りの地面からさらに現れ続けていて…。

聖女のような外見に似合わない異様な光景が、彼女が魔女である何よりの証明になっていた。



さやか「また、うじゃうじゃと…。

    どうする、まどか…?」



まどか「手順は途中までさっきと一緒。で、その後は何時も通り…」


さやか「あたしが魔女に張り付いて、二人で畳みかける…、と」


まどか「うん…!」

さやか「オッケー! じゃあ、頼むね。まどか!」
385 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/08(土) 00:39:47.53 ID:LEZfknAa0

さやかちゃんが襲ってくる使い魔や攻撃を払い、わたしが魔力を溜める。

前方と周囲の使い魔が片付いたのを見て、わたしが指示を出してさやかちゃんに一端下がって貰う。

そして、同時にわたし自身は使い魔の群れに矢を放つ…。


打ち合わせ通り、さっきの使い魔を倒した時と同じ戦法…。

魔女に向けられて放たれた矢の嵐を、身を呈して受ける使い魔達。



さっき同様に、使い魔達が次々と貫かれて消えていく…。
386 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/08(土) 00:43:30.84 ID:LEZfknAa0

まどか「今だよっ!」

さやか「よっし! いくよ!!!!」


わたしの合図でさやかちゃんが駆け出す。

消えていく使い魔の残骸の中から僅かに見える、背を向けて祈る聖女のような魔女に向かって飛んでいく。


自慢の圧倒的な速度で、間合いを詰めたさやかちゃん…。

でも、その動きはどこかキレが悪くて…。


過った不安と、さやかちゃんの精神状態を省みた時には、既に全てが遅かった。
387 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/08(土) 00:45:52.85 ID:LEZfknAa0

さやか「っぐ…! これ、は…!?」


まどか「さやかちゃん!!!!!!!」


後一歩、と言う所でさやかちゃんの動きは止まった。


後ろを向いて祈るような態勢を崩さなかった魔女。

その姿をそのまま捉えたのが、そもそもの間違いの始まりだった。


常識から外れた存在である魔女は攻撃方法も普通である筈が無い。

魔女は背中から樹のような物を突如生やし、さやかちゃんを巻き込むと…。

そのまま樹は急成長し、その中にさやかちゃんを封じ込めてしまった…。
388 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/08(土) 00:47:41.48 ID:LEZfknAa0

まどか「さやかちゃん!!!!」


瞬く間に成長した魔女の背中の大樹は、力強く大きい。

自力での脱出は難しいと考えたわたしは、さやかちゃんを助ける為に弓を構えるも…。



まどか「………今助けて……、きゃっ!」


まどか「うっ……く……使い魔……?」


新しく現れた使い魔に背後から襲われたわたしは、地面へと叩きつけられてしまった。

そして、態勢の崩れているわたしに使い魔が次々に襲いかかってくる…。
389 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/08(土) 00:49:57.35 ID:LEZfknAa0

態勢を崩したわたしに、苦手な近接戦を仕掛けてくる使い魔達。

絶好の機会と言わんばかりに畳みかけられたわたしは、弓矢の狙いを付けようとする間に、再び倒されてしまった。


まどか「痛………」


まどか「………しまった」


襲われて転んだ際に弓を手放してしまい、丸腰となって再び地面に突っ伏すわたし。


そのわたしの周りで嘲笑うように立ちふさがる使い魔。

何時の間にか数を増やして並ぶその姿はまるで壁…。


上条君の言う、夢と現実の間に立ちふさがる壁のようだった…。
390 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/08(土) 00:50:34.15 ID:LEZfknAa0

やっぱり、無理なのかな…?

わたしには…。


魔法少女としてみんなを守りたい…。

これもやっぱり子供の見る夢なのかな…?

そして、この結末が現実なのかな…?


みんなどころか…。

大切な友達一人守れずに…。

こうやって死んでいくのが…。



現実なのかな…?
391 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/08(土) 00:51:44.01 ID:LEZfknAa0

厳しい現実は、甘ったれたわたしに考える時間を与えはしない。

群れの中から抜けだした数匹の使い魔が牙をむきつつ迫る。


別々の方向から迫ってくる使い魔達に息を飲み、諦めかけた時だった。



??「な〜にボサっとしてんのさ?」


響いた声と共に迫った使い魔は、纏めて斬り裂かれ、

次の瞬間に周りにいた使い魔達の群れも、生き物のように暴れまわる範囲攻撃にまとめて掻き消された。



まどか「この攻撃……」

まどか「まさか……」


まどか「杏子ちゃん!?」



杏子「よっ、久しぶりだな」


―to be continued―
392 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/08(土) 00:52:32.09 ID:LEZfknAa0

―next episode―


「大丈夫だよ! 二人でなら出来る…! 絶対!」





―【第十話】理想と現実の壁(後編)―


393 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/08(土) 00:56:41.87 ID:LEZfknAa0
はい。投下終了です。

バイオリンを取り戻した筈の上条君の甘ったれっぷりは、チョップ前にさやかが腕を治した弊害とお考えください。

煮詰まる前に腕が治ったから、治った感動自体は薄れている感じです。
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/10/08(土) 01:06:56.06 ID:6agWgUIHo
お疲れ様でした。
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/08(土) 01:14:42.17 ID:gq09wDkd0
やばい、最後鳥肌立った。
死亡者ゼロでこの感動なんだからもうこっちが本編でいいだろ。

次回予告の台詞は上条のだったのか、てっきりQBの台詞かと思っってたよ。
さあ上条早く元の才能を取り戻すんだ、お前の幼馴染の期待に応えてやれ。
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/08(土) 01:18:31.51 ID:gq09wDkd0
あ、言うの忘れてた。

>>1お疲れ様でした。
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/10/08(土) 08:48:28.57 ID:281OAOOAO

相変わらず良いですな
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/10/08(土) 23:02:39.16 ID:DNorS+DZo
乙乙
とうとうエルザマリアまできたか
BD版だとやたら強く見えるよねこの魔女
上条は腐ってるけど今後なにか立ち直るきっかけでもあるのかな
399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/09(日) 00:13:06.60 ID:M6bqcmyc0

最後やべー
400 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 20:56:11.11 ID:pBlLjz+30
はい。投下します。
なんだかんだでまた投下遅くなってすいません。
体調治ったら治ったで、仕事がガチで忙しい……。

皆さん何時も乙感謝です。
それだけが励みになります。


>>395
そう言ってくれると幸いです。
実はまだここで話の半分くらいだったりしますが…。
このSSで一番やりたい展開はここからだったり……。

>>398
エルザさんは小説かなんかで、QBさんお墨付きの強敵認定された筈。
とりあえず、このSSでマミさんが言ってた「並の魔女」には当て嵌まらないつもりで書いてます。
401 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 20:57:14.36 ID:pBlLjz+30

鞭のように伸びて暴れた槍を元に戻し、長いポニーテールを揺らす…。

影の世界でも見違える事のない特徴的なシルエット。


佐倉杏子ちゃん…。

かつてのマミさんの弟子にして、主張の違いから一度はわたし達と敵対した魔法少女。

彼女がわたしの前に立っていた…。



まどか「やっぱり……、杏子ちゃん…」


杏子「なんだよ…、その情けない声は……。

   こっぴどくやられちまったってとこか?」

まどか「…………杏子ちゃん」



杏子「あぁ?」

まどか「お願い…。さやかちゃんを……、助けて……」
402 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 20:58:05.80 ID:pBlLjz+30

杏子ちゃんは誰かの為に戦って傷ついて、今はそれを否定している。

そんな杏子ちゃんにお願いする事じゃないのはわかってる。

それでも…。


杏子「わかってるよ」

まどか「え…?」


杏子「見捨てると寝覚めが悪そうだからな…。助けには行ってやるよ。

   ただ、その代わり……」


杏子「それ以上の面倒は見ない。

   アタシもさっき魔女と戦ったばっかで疲弊してるからな…。

   それでも良いか?」


まどか「うん…。ありがとう、杏子ちゃん……」
403 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 20:59:13.79 ID:pBlLjz+30

わたしがお礼を言い終わらない内に、杏子ちゃんは魔女の背中に生えた大樹へ向かって飛んでいく…。

そして目にも止まらぬ槍捌きで樹を切り裂き、中に居るさやかちゃんを救出して受け止めると、

あっと言う間にその場を離脱して、わたしの元へと戻って来た…。



杏子「予想通り、ノびてるな…。

   まぁコイツは頑丈さだけが取り柄だから、多分大丈夫だろ。

   それより…」


杏子「アタシは退くが、まどか…。

   お前はどうする?」


まどか「…………」


杏子「勝てない相手に『見過ごせない』って理由で挑んで死ぬか…。

   ここは目を瞑って一旦退くか…。好きな方を選びな」
404 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 21:00:20.85 ID:pBlLjz+30

まどか「わたしは………」


杏子「………」

まどか「………」



杏子「ったく………」


杏子「特別に答えを教えてやる……」

杏子「命懸けってのはな、そうするしか他に方法が無い時にやることさ。

   そうじゃない時にそれをやるのは、自棄っぱちになって体をビルから放り投げて死ぬのと変わりはしない…。

   かっこ良くも何ともない。ただのおふざけだ」


まどか「うん……」


杏子「よし…。わかったなら、ここは退くぞ。付いてきな」
405 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 21:00:59.04 ID:pBlLjz+30





―【第十話】理想と現実の壁(後編)―



406 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 21:02:32.93 ID:pBlLjz+30

さやか「ん………」

まどか「さやかちゃん!」


さやか「まど………か……? ここは…?」

まどか「魔女の結界の近くに会った公園のベンチだよ。

    さやかちゃんは魔女の攻撃を受けて気絶しちゃって……」

さやか「そっか………」



杏子「もう目ぇ覚ましたのか。

   さすがに頑丈さだけは一級品だな」


さやか「杏子! なんで、アンタがここに………」


杏子「そんな事はどうだって良いんだよ…。

   それよりもまどかから、全部聞いたぜ?」
407 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 21:04:48.60 ID:pBlLjz+30

杏子「ざまぁ無いな」


さやか「…………」

まどか「杏子ちゃん!」



杏子「人に偉そうに語った割に、自分の番になったらそれか?」


さやか「くっ………」

まどか「杏子ちゃん、やめて!」



杏子「やめねぇよ。

   つぅかさ、まどか…。アンタもアンタだよ」


まどか「……………」
408 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 21:06:40.79 ID:pBlLjz+30

杏子「アンタさ、アタシに言ったよな?

   『大切な人達を守れる魔法少女になりたい』って。

   アレは嘘か?」



杏子「『守りたい物や守りたい人がたくさんいる』…。

   アレも口から出た出任せか?」


まどか「それは……」




杏子「アタシは言ったよな? 向いてねぇって…!

   それでも続けてんのはどこのどいつだ?

   そんなアタシに腹立てて、喧嘩売って来たのはどこのどいつだ!?」


まどか「……………」

さやか「……………」


杏子「あの時のお前らは嘘だったのか?

   そんなくだらねぇ事で諦めちまうようなちっぽけな覚悟だったのか?

   えぇ!?」
409 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 21:07:31.30 ID:pBlLjz+30

まどか「違うよ…」

杏子「…………」


まどか「嘘なんかじゃないよ…。

    今でもそう思ってる……、けど……、わたしは……」


杏子「さやか! お前は!?」


さやか「あたしだって違うよ…。でも…」




杏子「その坊やに願いを否定されたってか…?」

さやか「…………」



杏子「願いの事はさておくとしても、お前が守ろうとしたのは坊やだけか?

   まどかの考えを否定した時に突っかかって来たアレは気の迷いか…!?」


さやか「違う…。あたしは確かに恭介の為に契約した…。

    でも、魔法少女を続けているのは………」



杏子「だったら………!」


杏子「壁だの…、現実だの……、くだらねぇ事でウジウジ悩んでんじゃねぇよ!!!!!」
410 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 21:11:52.42 ID:pBlLjz+30

まどか「だけど……」

さやか「あたし達じゃ、あの魔女に太刀打ちできなかった………」



杏子「『弱くて悔しい』。そうなら、そう言え馬鹿!」


杏子「弱いなら強くなりゃ良い……。そんだけの事だろ?」


まどか「杏子ちゃん………?」



杏子「アタシが戦い方を教えてやる」


杏子「ただし、アタシはマミみたいに甘くねぇ。

   お前らが潰れるくらいのスパルタで行くから、覚悟しておけ」


さやか「杏子………」

まどか「ありがとう………」


結局、その日は受けたダメージの大きさから杏子ちゃんの指示で家に帰された。

魔女の事は気がかりだけど、今のわたし達にはどうする事も出来ないから…。

その代わり………。
411 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 21:13:19.46 ID:pBlLjz+30

杏子「ふぁぁ………。朝早くから叩き起こしやがって………」

杏子「でもまぁ、やる気はあるみたいだな」


さやか「当然」

まどか「勿論だよ」



杏子「………今の所、魔女に動きはないな」

さやか「何でそんな事…?」


杏子「昨日からここを動いてねぇからな……」


まどか「じゃあ……」

さやか「今の所、魔女による被害者は出てないって事?」


杏子「先に口づけされた奴が居ないとも限らないから、何とも言えないが……。

   まぁその可能性は高いな」


まどか「よかった………」
412 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 21:14:01.37 ID:pBlLjz+30

杏子「三日だ」


さやか「ん……?」


杏子「宿代が勿体無いから三日だけ、ここで寝泊まりしてやる。

   だから、その間に……」

さやか「あの魔女と戦えるくらい強くなれって事だね」


杏子「そう言うこった」




まどか「何から何までありがとう、杏子ちゃん………」

さやか「ほんとにありがと……、杏子……」


杏子「………ふん。礼なんて言った事を後悔するくらい扱いてやるからな。

   覚悟はできてんだろうな?」


さやか「おう!」

まどか「よろしくお願いします!」
413 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 21:14:44.52 ID:pBlLjz+30

杏子「じゃあ始めるか……。

   まずは………、さやか!」


さやか「はいっ!」


杏子「お前走ってこい。ちょっと行くと陸上トラックがあるから、そこを100周な」

さやか「は………?」


杏子「返事は?」

さやか「えと………、それだけ?

    特別な特訓とかは……?」


杏子「口応えすんな! 行け!」


さやか「くぅぅぅ! なんか理不尽だぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
414 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 21:43:49.98 ID:pBlLjz+30

杏子「さて……、うるさいのも行ったし……」

まどか「杏子ちゃん………、さすがにそれは酷いと思う……」


杏子「やかましい。

   それより、ここに残されたって事は現状さやかよりもお前の方が問題が大きいって事だぞ、まどか」

まどか「うん………」


杏子「これは指導したマミにも責任があるが………」

杏子「コンビネーションってのは確かにメリットも多いが、それを主としてる当人自体は対応力が欠如してる例が多い。

   相方に頼ったり連携したりすれば、苦手な状況や厳しい状況も対処して貰えるからな」


杏子「この欠点は後衛タイプに顕著だが…。

   まどか、特にお前の近接対処の下手糞っぷりは致命的だ」


まどか「うん……。自分でもまずいんじゃないかとは思ってたよ…」


杏子「丁度良い前衛特化タイプのさやかが居たり、お前の魔力の高さを活かすとなると移動砲台みたいにするのが善策……。

   とでもしたんだろうな、マミは。自分も近く居るつもりだったんだろうし、実際それはそれで間違いじゃないんだが……」



杏子「まぁ良い。とりあえず変身してみな」
415 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 21:45:02.17 ID:pBlLjz+30

わたしは変身して魔法少女に姿を変える。

そのわたしの変身に合わせ、先端にピンク色の蕾を伴った樹の枝のような杖が現れる。


杏子「………その杖、前見た時は弓だったよな?」


まどか「うん。こうやって魔力を通すと……」


わたしが魔力を杖に込める。

先端は三つに枝分かれし、その中央の蕾が花開き、柄は僅かに撓って弧を描き、弓へと姿を変える。



まどか「弓になるの。杖は待機状態って感じかな?」

杏子「へぇ………、そりゃ都合が良い」


まどか「そうなの…?」

杏子「あぁ。そんだけ変形が早いなら、武器を持ちかえずにうまくクロスレンジに対抗できそうだしな」


まどか「うん………?」

杏子「杖の状態に戻して、そのまま魔力を込めな」
416 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 21:45:50.68 ID:pBlLjz+30

まどか「こうかな…?」

杏子「違う違う、弓にするんじゃない。

   杖の状態のまま魔力を込めて強度を上げるのさ」


まどか「………そっか! 杖を打撃武器として使うんだね?」


杏子「そう言うこった。やってみな?」

まどか「うん!」


最初はやり方がよくわからず弓に戻してしまう失敗を繰り返した。

でも、マミさんが前に金属バットを強化して、メルヘンチックな打撃武器に変えたのを思い出す。


それを意識したら、段々とうまく行くようになってきて、最終的に杖にピンク色のオーラが纏うようになって、

杏子ちゃんが繰り出した攻撃を受け止めても破損しない立派な近接武器になった。
417 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 21:47:01.91 ID:pBlLjz+30

杏子「よし…、上出来だ」



さやか「お〜い……。グランド………、100周……、終わった……、よ………」


杏子「丁度良い時に来たな。よし、そのまままどかと打ち合え」



まどか「へ…? いきなりさやかちゃんとやるの?」

杏子「さやかは多少なりとも息上がってんだろうし、

   アタシもその方がお前らの動きを見やすいからな」


さやか「自分が………、楽したいだけじゃ………、ないでしょうね………?」



杏子「だとしてもお前らに拒む権利はないよね〜?

   じゃ、始めろ」

さやか「ちっくしょ………、覚えてなさいよ…………」


まどか「あはは………」
418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/14(金) 21:51:27.46 ID:4FgC7IU0o
ただ話の邪魔で追っ払うためだけかと思ってた
織り込み済みとはあんこちゃんまじトレイナー
419 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 22:20:09.91 ID:pBlLjz+30

こうして……。

わたしとさやかちゃんは、杏子ちゃんの特訓を受け続けた。

杏子ちゃんの特訓はマミさんの優しい指導とは正反対で……。



さやか「ちょ…! 死ぬって! マジで死ぬって!」

まどか「杏子ちゃん……。これはさすがにまずいんじゃ………」

杏子「続けろ。当てるつもりで良いぞ」


ひたすら厳しく……。

宣言通り、本当に死ぬんじゃないかってくらいのスパルタで……。



さやか「ぐぇっ……」

まどか「いった〜〜い……」


杏子「早く立て。敵はアタシと違って待っちゃくれねーぞ?」


わたし達はボロボロになりながら、その訓練を受け続け……。

約束の三日が過ぎた。


そして……。
420 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 22:21:01.84 ID:pBlLjz+30

まどか「戻って来たね、あの魔女の結界に……」

さやか「…………」


まどか「さやかちゃん……?」

さやか「できるかな、あたし達に……」




まどか「大丈夫だよ! 二人でなら出来る…! 絶対!」

まどか「それでさ…、教えてあげようよ、上条君にも」



まどか「越えられない壁なんて無いって!」




さやか「うん…! ありがと、まどか!」


まどか「お互い様だよっ。じゃ、行こっか!」
421 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 22:22:31.63 ID:pBlLjz+30

再びやってきたあの魔女の結界。

呆れるほどに犇めいていたあの使い魔達の姿が一切なく、わたし達はすぐに最深部へと辿り着く。

ただ、そこには…。



まどか「あの使い魔達…」

さやか「結界全域を守れるほどの数が居なくなったから、親玉を守る事に専念したって訳ね」


まどか「それでも、前回よりは数が少ない…、これなら!」

さやか「オッケー! 一気に行くんだね?」


わたしは、さやかちゃんに目配せして合図するとわたしは右手に魔力を込めて巨大な矢を作り出す。

そして、それを使い魔の群れの間にちらりと映る魔女目掛けて放つ。

わたしの手元を離れた光の矢は、さらに何回りも大型化して飛んでいく…。
422 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 22:23:16.98 ID:pBlLjz+30

使い魔達は当然のように、魔女を守るべく壁になる。

でも、わたしの放った矢はその使い魔達の壁の真ん中に大穴を開けた。



まどか「無駄だよっ!」


わたしが放った矢は貫通弾。

今回の特訓で作り上げた出来たての新技。


この前使った拡散弾が広範囲の敵を狙うのに向いてるのに対して、こっちの貫通弾は敵の密集地や防壁を破るのに向いている。


さらに…。
423 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 22:24:05.74 ID:pBlLjz+30

さやか「続けていくよッ…!」


新技を獲得したのは何もわたしだけじゃない…。

わたしの足もとでさやかちゃんが、陸上のクラウチングのような構えをとり…。

矢の着弾に合わせて、魔力を込めて地面を蹴った。


魔力を伴ったクラウチングスタートは、一瞬で爆発的な加速を生み、

わたしが作った使い魔達の壁の穴が塞がる前に潜り抜け、さやかちゃんは一気に魔女の懐に入る…。



さやか「一閃!!!!!」


さやかちゃんはその加速を活かした居合のような横一文字の斬撃を繰り出し…。

その動きに対応しきれない魔女の首を跳ね飛ばした。
424 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 22:27:36.46 ID:pBlLjz+30

さやか「やったの…?」

まどか「…………」


まどか「まだだよっ!!!!」

さやか「!?」


首を落とされ、溶けるように形を崩した魔女が動きを見せる。

ゲル状になった体の首元から、先端に人の手を伴った無数のおぞましい触手が飛び出し…。


近くに居たさやかちゃん目掛けて襲いかかる…。
425 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 22:28:12.89 ID:pBlLjz+30

さやか「くっ…! また厄介な攻撃を…!」


まどか「さやかちゃん! 今援護を…!」

さやか「いい! まどかは自分の方に集中して!」



まどか「…だね。個々でも戦えるように杏子ちゃんが特訓してくれたんだから!」


わたしの側面と背後の地面を突き破り、使い魔達が首を出す。

貫通弾で撃ち漏らした残りが、地中を通って現れたんだろう。


これで、わたしとさやかちゃんは完全に分断された形となる。

でも…。
426 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 22:28:51.58 ID:pBlLjz+30

まどか「数に任せた一斉攻撃…」

さやか「確かに厄介だけど…」


わたしは、弓を杖に変え、魔力を回して強度を上げ…。

さやかちゃんは添えていた左手を離して、そちらにも剣を作り出す…。



まどか「杏子ちゃんの特訓に比べれば…!」


さやか「大した事ない!!!!」


杏子ちゃんとの特訓でも最も厳しかった、敵の範囲攻撃の対処の練習。

恐らくは使い魔の動きを見て、重視してくれたんだろうその特訓を思い出す。


周囲をよく見つつ、足をフルに使って、囲まれないように動きつつ…。

わたしはオーラを纏った杖で、さやかちゃんは二刀流で少しづつ敵の攻撃を対処していく…。
427 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 22:30:59.81 ID:pBlLjz+30

杏子「…………」

杏子「ふん…………、やれば出来るじゃんかよ」


??「どう言う風の吹きまわし…?」





杏子「マミ、か…。どうもこうもねぇよ。ただの気まぐれさ」


マミ「素直じゃないのね」

杏子「うっせ。それより、どこ行ってたんだよ…?」


マミ「ちょっとね…。魔法少女が不在になった所の魔女討伐を頼まれて…」
428 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 22:32:03.22 ID:pBlLjz+30

杏子「あぁ…、最近多いんだってな…。何が起きてんだ…?」


マミ「………魔法少女狩り」

杏子「………何?」


マミ「ようやくQBが犠牲者から証言を聞けたらしいの。

   黒い魔法少女に襲われたって……」




杏子「あ〜、ちょっと待て。今良い所なんだ。これ終わったらゆっくり聞くわ」

マミ「ふふ…。ほんと、素直じゃないのね」
429 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 22:41:11.12 ID:pBlLjz+30

さやか「いい加減、しつこい!」

さやか「アイツにさんざん走らされたせいか、どうにか振り切れてるけど…」


さやか「さすがにこれ以上は……」




まどか≪大丈夫…!≫


さやか≪おっ…! ようやく片付いたかっ≫

まどか≪うん…! 遅くなってゴメン…!≫


さやか≪じゃあ、あたしは…!≫

まどか≪うん! 頼むね!≫
430 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 22:44:31.51 ID:pBlLjz+30

厄介な触手から付かず離れずの距離を保ちつつも常に動き、最低限の迎撃をして触手を引き付けてたさやかちゃん。

『よく動く前衛タイプは足腰と体力があってこそ』と言う理由から、あの後も杏子ちゃんにさんざん走らされただけあって、

使い魔よりさらに厄介な敵の触手から、うまく逃げる事が出来ていた。



でも、急にさやかちゃんはその足を止めてしまう…。





さやか「……………」


素早く動き回っていた対象が急にその動きを止め、一瞬だけ魔女の触手に変化が見えるも、

すぐに、「今!」と言わんばかりの一斉攻撃を仕掛け始める。


無数の触手がさやかちゃんに当るその瞬間…。






さやかちゃんの姿が完全に消えた。
431 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 22:45:57.47 ID:pBlLjz+30

さやかちゃんの居た一点に集った触手。

敵を捉えられなかった触手の大群は、突如起こった爆風に巻き込まれ、まとめて吹き飛んだ。



まどか「今だよ! さやかちゃん!!!!」


さやか「おっけー! 決めさせて貰うよ!!!!!」


わたしの放った炸裂弾は魔女の攻撃手段である触手をまとめて焼き払った。

さすがの魔女も次の触手を作るのに手間取っているのか、いまのさやかちゃんを追う存在はいない…。


敵の触手を避ける為、上空へ飛びあがったさやかちゃんは華麗に宙返り。

逆さに近い姿勢になりつつも、足元に魔法陣を作り出し、それを蹴って急加速し、再び魔女の元へ…。
432 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 22:51:25.10 ID:pBlLjz+30

さやか「必殺…! さやか流二刀剣!!!!!」


触手をまとめて失い、それを魔女はそれを戻そうとする動きが見て取れる…。

しかし、高速で迫る魔法少女の動きに対し、うねるだけの魔女の反応はまたも間に合わず…。

懐に入ったさやかちゃんは交差するように、二本の剣を豪快に繰り出す…。




さやか「はぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!」


必殺の斬撃をまともに受けた魔女に斜め十字の剣閃が走り…。

軟体状の体もその一撃に耐えきれず引き裂かれ、文字通り四散した。
433 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 22:52:48.85 ID:pBlLjz+30

まどか「………」

さやか「はぁ……はぁ……はぁ……」


さんざん苦戦させられた魔女だけに、相手の動きが無くても警戒を解く事が出来ない。


『グリーフシードになって転がるまで、警戒は解くな』

これは杏子ちゃんから教わった事でもあるけど、それ以上にこの魔女への恐怖感からも来ていた。

でも…。


まどか「グリーフシード……」

さやか「結界も消えた………」


まどか「やった…! やったよ! さやかちゃん!

    あの魔女…、倒したよ!」

さやか「うん…。うん…!」


さやか「そうだ…。アイツにもお礼……。

    杏子は…? 近くで見てるって言ってたけど…?」


まどか「まさか、もう行っちゃったんじゃ…」



??「大丈夫。ここに居るわよ」
434 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 22:53:43.68 ID:pBlLjz+30

まどか「マミさん…、杏子ちゃんも…」

さやか「お帰りなさい、マミさん!」


マミ「ただいま」

杏子「ちょっとおい! 離せって…!」


まどか「何で杏子ちゃん、掴んでるんですか…?」

マミ「ん…? あぁ…。こっそり帰ろうとしてたから、ちょっと強引に引っ張って来たの。

   お礼されるのが照れ臭かったみたい」

杏子「はぁ…? 照れ臭くねーし! つーか離せ!」


まどか「もう、ちゃんとお礼ぐらいさせてよ〜」

さやか「ったく、ガキかっつーの!」

マミ「そうね、今回は私からもお礼させて貰わないとね」


まどか「ありがとう、杏子ちゃん」

さやか「さんきゅ、杏子。ほんと助かった」

マミ「この子達がお世話になったわ。佐倉さん。本当にありがとう」
435 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 22:55:23.45 ID:pBlLjz+30

杏子「う…///」

杏子「こ、言葉なんて貰っても何の足しにもならねーし!///」


さやか「ほぅ…? その割には顔が真っ赤ですけど〜?」

まどか「杏子ちゃん可愛い」

杏子「るっせぇ!」



マミ「そうね…。夕食くらいは私が御馳走するわ。

   なんなら、久しぶりにピーチパイでも焼きましょうか」


杏子「…………ごくり」



さやか「杏子、杏子! 涎出てる…!」

杏子「あ…? 何だよ、何も出てねーじゃねぇか!」


さやか「ぷっ!ひっかかってやんの!」

杏子「てめぇ! 騙したな!」


マミ「はいはい…。二人とも喧嘩しないの」
436 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 22:56:37.91 ID:pBlLjz+30

まどか「…………ねぇ、さやかちゃん」



さやか「うん…?」

まどか「一つ越えれたね」


まどか「理想と現実の壁」

さやか「………そうなのかな?」



杏子「越えたさ」


杏子「勝てない筈の相手を努力して超えた。

   現状を嘆いて足踏みせずに、努力して先に進んだ。

   これは確かに前進してる証拠だよ」


さやか「でも………」


杏子「遠くばっか見つめて、そこになかなか届かなくてもどかしいのが夢ってもんだが…。

   焦ったって何にも成りはしない…」

杏子「だから、今回のお前らみたいに我武者羅に足掻いて、都度どうにかするしかないんだよ」


杏子「魔法少女が起こせる都合の良い奇跡は契約の時の一回だけ。

   そこから先は、自分の力で少しづつ精進していくしかない」


杏子「そこは人間のままでも、魔法少女になっても変わりはしないから…。

   『やめた』って投げ出さない限りは負けじゃないのさ」

マミ「佐倉さん…」
437 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 22:57:40.31 ID:pBlLjz+30

まどか「そっか…」

まどか「そうだよね…!」


さやか「…? どしたの? まどか、人の顔見て…」


まどか「…何でも無いよっ」

さやか「…?」


それでも、今のわたしに点数を付けるとしたら50点だろう。

転んだのも、立ち上がったのも、辛い特訓も、壁を越えたのも…。

みんな、さやかちゃんと一緒…。

さやかちゃんが居たから頑張れて、さやかちゃんが居たから前に進めて、さやかちゃんが居たからあの魔女を倒せた…。


それでも…。

支えられるばかりだった0点のわたしに比べればきっと…。

少しづつだけ進んでいるんだと思うから…。


だから…。

ゆっくりだけど、歩み続けよう。

そして、何時か…。
438 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 22:58:41.30 ID:pBlLjz+30

―翌日―


恭介「………」


さやか「お〜〜〜っす、恭介!」

まどか「おはよう、上条君」


恭介「やぁ…、おはよう。二人揃って休んでたから心配したんだ…。

   いや、それよりもごめん…。僕は…」


さやか「恭介」

恭介「…?」


さやか「あたし達は一つ越えたよ、理想と現実の壁」

恭介「…………」
439 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 22:59:30.80 ID:pBlLjz+30

さやか「あたし達に出来て、恭介に出来ない訳ないよ」

さやか「だから……さ……」




恭介「三日だ……」


さやか「え…?」

恭介「三日間だけ待って欲しい…」


恭介「三日間死ぬ気で練習してみる…。

   だから、三日経ったら、もう一度僕の演奏を聞いて欲しい…」

さやか「恭介…」
440 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 23:01:06.09 ID:pBlLjz+30

恭介「さやかに八つ当たりして、おまけに先を越されたんじゃカッコ悪過ぎるからね…」


さやか「うん…! 楽しみにしてる…!」



まどか(よかったね…。さやかちゃん)


こうして、上条君もさやかちゃんの一言で、もう一度立ち上がれたみたい。

みんなこうやって、自分一人じゃどうにもならない時は、誰かに頼って立ち上がる…。

でも…。



以前のわたしや上条君みたいに、さやかちゃんに支えられるんじゃなくて…。

わたしが、さやかちゃんを支えられるようになりたい…。



その夢が叶う日まで、わたしは歩み続けよう。

他ならぬさやかちゃんの隣で…。


―to be continued―
441 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 23:02:06.94 ID:pBlLjz+30

―next episode―


「本当にまどかの婿に来るかい? アタシは大歓迎だぜ?」





―【第十一話】鹿目家だヨ!全員集合!―
442 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/14(金) 23:02:42.53 ID:pBlLjz+30

はい。投下終了です。


実は次回分はほぼ書き上がっている為、日曜には投下できそうです。

明日はちょっと仕事の都合で不可能なので…。


以後のペースも上げて行きたいな〜とは思っているのですが、なかなか…。


ちなみに杏子の台詞の「『やめた』って投げ出さない限りは〜」の一文はひだまりの宮ちゃんの台詞から来てます。
台詞の絞めに詰まってる最中に、丁度良い事思い出したんで採用してみました。

つーか、宮ちゃんは鋼メンタル過ぎて魔法少女になったら確実に最強だと思う…。
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/10/14(金) 23:13:10.12 ID:HalkhymHo
お疲れ様でした。
444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/10/14(金) 23:28:03.02 ID:VqA8KYPf0

なんか日曜午前8時頃に放送出来そうな内容だな

ところで、「魔法少女狩り」って1週目だから、まどかの因果は並だから起きないはずだけど?
445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/15(土) 00:05:48.43 ID:tePnpChI0
乙!
杏子がかわいかった
上条君もよかったな
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/10/15(土) 06:14:01.67 ID:9G4KzRm/o
乙乙
次回はオリジナル話なのかな、楽しみだー
しかもアニメでいうお遊び回みたいなノリっぽいとはww
ストパン7話とか思いっきり遊んでるよねwwww
本家まどマギにはお遊び回なんてありませんでしたが…
447 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/10/15(土) 09:40:21.47 ID:yDY9IomAO

これはプリキュア枠で放送できるレベル
448 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/10/16(日) 00:04:18.78 ID:7Vr33OoAO
お疲れ様でした。
とうとう彼女が動き出したか………。
とにかくみんな死にませんように………。
449 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/17(月) 00:38:16.03 ID:7bhwiUKD0
はい。投下します。

大遅刻……。
最後の最後が書き終わらずに結局日を跨いでしまった……。
色々とすいません……。


何時もレス感謝です。

>>444
一応は一周目っぽい設定とは言え、さやか契約の時点で本編一周目と比べると色々な変化が生じており、彼女達の契約はその変化の一つです。
魔法少女狩りの理由は一応考えてありますが、ネタバレになるのでここでは伏せておきます

>>445
本編杏子も和解すればこんな感じだろう、と思うのですが……
上条君は良い人にも駄目な人にも取れますから、あちこちでブレまくってますよね

>>446
お遊び回と言うか、だらだら回と言うか…
自分的にも話的にもちょっと小休止のつもりで気楽に書きました

本編は展開が展開だから仕方ないですが、サニーデイ的な平和な時間軸の話のOVAがあったって良いじゃない…

>>447
王道大好きな自分としては、そんなまどマギが見たくて…
それとまどマギを足して2で割るのを当初の目的として書き始めました

>>448
ネタバレは避けますが…、話がシリアス気味に寄ってくのは確定です
450 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/17(月) 00:39:51.68 ID:7bhwiUKD0

さやか「マドカァァァァァァァァ!!!!」

まどか「サヤカチャン!」


さやか「…………」

まどか「…………」



まどか「……何?」

さやか「いや、退屈だから呼んでみただけ」


まどか「そっか」

さやか「うん…」


さやか「まどかこそ、どした?」

まどか「わたしはさやかちゃんが叫んだから返しただけだよ」


さやか「そっか…」

まどか「うん………」
451 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/17(月) 00:40:44.26 ID:7bhwiUKD0

さやか「……………」

まどか「……………」


さやか「あ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」

さやか「ひ〜ま〜で〜す〜よ〜〜〜〜!」



まどか「ゲームでもやる? そろそろみんな来るだろうし」




さやか「いや………、襲う」

まどか「は…?」



さやか「退屈過ぎて鬱屈した気持ちを抑えきれなくなり、さやかちゃんはまどかに襲いかかるのであった、まる」
452 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/17(月) 00:42:04.12 ID:7bhwiUKD0

さやか「と言う訳でさやかダーーーーーイブっ!!!」

まどか「きゃー!」

さやか「えへへ〜!あたしの嫁の成長具合は〜!どうかっ!!?」

まどか「さやかちゃん、またそう言う悪ふざけを…!

って、ちょ! そこは…!?」



マミ「こんにちは〜」

杏子「お〜〜〜っす!」

ほむら「お、お邪魔します…」


ゆま「あれ〜?二人ともなにしてるの?」
453 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/17(月) 00:43:39.81 ID:7bhwiUKD0

マミ「」

ほむら「」


まどか「あ………」

さやか「え、え〜っと…」



ほむら「え…!?/// その…/// お二人は…、あの…////」


マミ「こ…、後輩達が不純異性交遊してるなら、止めるしかないじゃない!!!」


杏子「同性な。つーか落ち着け。魔法少女に変身しようとすんな」

ゆま「二人ともなかいいね〜」




まどか「もう…! さやかちゃんのせいだからね…!?」

さやか「う…、反省しまーす……」
454 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/17(月) 00:44:42.73 ID:7bhwiUKD0





―【第十一話】鹿目家だヨ!全員集合!―



455 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/17(月) 00:48:11.17 ID:7bhwiUKD0

マミ「ご、ごめんなさいね…? 取り乱してしまって…」


杏子「ったく…、ガキ同士じゃれて遊ぶなんて、よくある事じゃねーかよ…」

ゆま「マドカおねぇさんはちっちゃいからいいけど、サヤカはおおきいのに子供なんだね」


杏子「あぁ、さやかは体ばっか成長して頭パーのガキそのものだ。

ゆまは気をつけろよ。良い子にしてないと『さやか』になるぞ」


まどか「ち、ちっちゃい…」

さやか「く…。今日ばっかりは反論できな……ってちょっと待て!

何『さやか』になるって! さすがに馬鹿にしすぎだろ!?」


杏子「え…?だってお前馬鹿だろ?」

さやか「確かに馬鹿だけど…、アンタには負けるわ!」


マミ「もう…、喧嘩しないの!」

ほむら(佐倉さんも結構子供なんじゃ…って言ったら荒れそうだからやめよう)
456 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/17(月) 00:50:06.12 ID:7bhwiUKD0

マミ「ご、ごめんなさいね…? 取り乱してしまって…」


杏子「ったく…、ガキ同士じゃれて遊ぶなんて、よくある事じゃねーかよ…」

ゆま「マドカおねぇさんはちっちゃいからいいけど、サヤカはおおきいのに子供なんだね」


杏子「あぁ、さやかは体ばっか成長して頭パーのガキそのものだ。

   ゆまは気をつけろよ。良い子にしてないと『さやか』になるぞ」


まどか「ち、ちっちゃい…」

さやか「く…。今日ばっかりは反論できな……ってちょっと待て!

    何『さやか』になるって! さすがに馬鹿にしすぎだろ!?」


杏子「え…?だってお前馬鹿だろ?」

さやか「確かに馬鹿だけど…、アンタには負けるわ!」


マミ「もう…、喧嘩しないの!」

ほむら(佐倉さんも結構子供なんじゃ…って言ったら荒れそうだからやめよう)
457 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/17(月) 00:51:23.16 ID:7bhwiUKD0

────────

────

──

さやか「誇っていいよ、杏子。あたしが『マルス様』を使うって事はそれなりに本気って事だから!」

杏子「はッ…!誰だろうと関係ねぇ!アタシのPKサンダー体当たりで、まとめて粉々にしてやんよ!」


ほむら「ゲームでもさせて血の気を押さえてもらおうと思ったのに…」

まどか「なんかより殺気立ってるような…?よかったのかなぁ、これで…」



ゆま「マミおねぇさんは、そのゴリラさんで良いの?」


マミ「え、えぇ…」

マミ(何かよく動かし方がわからなくて、いじってたら決定しちゃったのよね…)
458 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/17(月) 00:52:13.51 ID:7bhwiUKD0

さやか「マミさん…」

マミ「何かしら…?」


さやか「コントローラの持ち方逆です…」

マミ「そ、そうなの…?///」



杏子「ぶっ…アハハハハ! ま…、マミ…、今のは良いボケだ…っハハハハ!」

ゆま「マミおねぇさんかわいい」


マミ「そんなに笑わないでよ…///」
459 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/17(月) 00:53:46.02 ID:7bhwiUKD0

マミ「このゴリラ…、動くわ…!」


杏子「っくく…、笑わせんなよ、マミっ。ゲームなんだから動くに決まってるだろ…」

マミ「む…、仕方ないでしょ。ゲームなんて始めてやるんだから…」


さやか「杏子! アンタ、あんまりマミさん馬鹿にすんな!

    ……確かに可愛いけど」

杏子「だ、だってさ…、ドンキーが動いただけで目ぇキラキラさせてんだぜ…?

   可愛…っと面白過ぎるだろ?」


マミ「もうっ! あんまりからかわないで!///」



ほむら「巴さんのおかげで和やかな雰囲気に…」



ゆま「離れたら『でんげき』、近寄って来たら『かみなり』だね?」

まどか「うん。頑張ってね」



ほむら「あの…鹿目さん? 私達はその間、ポケモンの対戦しませんか…?」

まどか「そうだね。ちょうど良い機会だからやろっか」
460 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/17(月) 00:55:13.60 ID:7bhwiUKD0

マミ「ひ、酷いわ…。集中攻撃するなんて…」

ゆま「だって、サヤカのキャラよけるの上手で、うまく当てられないんだもん」


さやか「杏子! よくもマミさんを…!」

杏子「ふん! アタシの前に立ってる奴が悪いのさ!」



さやか「アンタはぁぁぁぁぁぁ!!!」

杏子「うぉっ!?」


杏子「て、てめー! 復帰に合わせて物ぶつけんじゃねー!」

さやか「やーだよ! 馬鹿杏子ー!」

杏子「潰す!」



マミ「仲が良いんだか悪いんだか…」

ゆま「でも、二人とも楽しそうだよ?」
461 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/17(月) 00:56:36.41 ID:7bhwiUKD0

ほむら「盛り上がってますね、美樹さん達」

まどか「こっちも盛り上がっちゃえば良いんだよ〜」


ほむら「そうですね。それでは…」

まどか「か、カウンターゲンガー…」


ほむら「一匹いると便利ですよ。サブウェイでも役立ちますし」

まどか「え、エメラルド持ってないし…」


まどか「ガブリアスが倒せない…」

ほむら「私のガブは5vです!」


まどか「く…、アンコールかぁ」

ほむら「繰り返す…。鹿目さんのポケモンは何度でも…」

まどか「それなら交代…って、トゲキッスのトライアタック!?」



まどか「ほむらちゃんって、最高の廃人だったんだね…」

ほむら「入院してた時に時間がたくさんあったので…」
462 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/17(月) 00:58:07.72 ID:7bhwiUKD0

まどか「ボ、ボロ負け………」


まどか「こんなのってないよ…。あんまりだよ…」

ほむら「ご、ごめんなさい…。ごめんなさい…」


まどか「なんてね? 楽しかったよ、ほむらちゃん」

ほむら「はい! 私もです!」



さやか「はぁー!はぁー! いい加減諦めなさいよ…!」

杏子「てめぇこそ…! 200%越えて何時までも粘ってんじゃねぇよ…!」


ゆま「マミおねぇさぁん! 退屈だよぉ!」

マミ「うん。ごめんね。もうちょっとだけ待とうね」




タツヤ「おねぇちゃ〜〜!」

まどか「どうしたの、たっくん?」


タツヤ「ママ帰ってきた。ご飯だよ〜って…」

まどか「うん。わかった。じゃあ二人ともゲームやめて、ご飯食べに行こ」


さやか「くっ…! 覚えてなさいよ!」

杏子「そりゃ、こっちの台詞だ!」

マミ「はいはい。二人とも行くわよ〜」
463 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/17(月) 00:59:22.35 ID:7bhwiUKD0

────────

────

──

マミ「あの…、何かお手伝いできることはありませんか…?」

知久「君が巴さんだね?気が利くんだね。

   でも、大丈夫。お客人は座ってて」



さやか「たっくん。おひさっ!」

タツヤ「さやかおねえちゃ、おひさ!」


さやか「おっ、相変わらずたっくんは可愛いな〜。やっぱ鹿目姉弟はたまんないわ〜!

    パパは優しいし、ママはかっこいいし、あたしも鹿目家に生まれればよかったよ〜」

??「またまた〜」



さやか「あっ、お久しぶりです。詢子さん!」

詢子「よっ」


詢子「しっかし、さやかちゃんが鹿目家になりたいねぇ…。

   なんなら…」


詢子「本当にまどかの婿に来るかい? アタシは大歓迎だぜ?」

ほむら「!?」
464 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/17(月) 01:01:05.52 ID:7bhwiUKD0

ほむら「だ、駄目です! そんなの!!!!」

詢子「ん…?」


さやか「いやいや…、ほむら…? まさか本当に嫁にする訳無いじゃん…。

    詢子さん流のジョークだって…!」

ほむら「え…? そうなんですか…?///」


ほむら「じゃ、じゃあ、今の忘れてくださいっ!///」

詢子「あっはっは!こりゃいいもん見れたわ〜」


詢子「ほむらちゃん…だっけ?」

ほむら「はい…」



詢子「娘をそこまで慕ってくれてありがとな」

まどか「えへへ。ありがと、ほむらちゃん」

ほむら「そ、そんな…///」
465 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/17(月) 01:01:47.89 ID:7bhwiUKD0

杏子「ゆま、行儀よくしろよ?」


ゆま「む〜! ゆまはお行儀いいもん。キョーコの方が心配だよ!」

さやか「そうねぇ…。あたしも同感だわぁ…」



杏子「な、なに…!?」

マミ「私も佐倉さんの方が心配ね」



杏子「な、てめー!マミまで…!」

知久「まぁまぁ…。料理も並んでみんな揃ったことだし、話は食べながらにしよう」

杏子「っし…、それじゃ…!」



一同「いただきます!」
466 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/17(月) 01:02:48.21 ID:7bhwiUKD0

マミ「お招きいただいて本当にありがとうございます」

知久「まどかが何時もお世話になってるみたいだからね…。

   このくらいの持て成しはしたいな…って考えてたんだ」



タツヤ「パパのごはんおいしいよ〜」

ゆま「ほんとだ〜!すごくおいし〜!」

タツヤ「ね〜?」

ゆま「うんっ」



杏子「………」

さやか「………おほんっ」

杏子「…!」
467 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/17(月) 01:03:31.69 ID:7bhwiUKD0

さやか「妙な事考えてない?」

杏子「………あ?」


さやか「ご両親や妹さん差し置いて自分だけ幸せで良いのか…?

    とかさ?」

杏子「………」


さやか「いいんだよ。アンタは。生きてるんだから、その分楽しみなよ。

    アンタの家族だって悲しい思い出としてばっかり見られたら、やってらんないって」


杏子「はッ…!わかってるよ、そんなモン。それよりも…、いただきッ!

   うん。美味ぇ!」

さやか「あ〜〜〜〜っ!!!? ちょっと何人の皿から取ってんのよ!? 

    楽しみに取っておいたのにぃ…」


マミ「佐倉さん………!」

ゆま「キョーコ………!」

タツヤ「きょ〜こ………?」


杏子「はい…。スイマセン…」
468 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/17(月) 01:04:53.31 ID:7bhwiUKD0

さやか「ったく…!杏子の奴!」

ほむら「よかったら、私の分を差し上げましょうか?」


さやか「ほむらは確かに何時も少食だけど…、良いの?」

ほむら「はい。せっかく作っていただいたのに、残してしまう方が悪いですから…」


さやか「ほむらは良い子だな〜。

    杏子! アンタはほむらの爪の垢でも貰って飲んだら?」

杏子「うるへ〜! おはえには、おはへひはひはれたふへ〜!」


マミ「佐倉さん…! 食べるか喋るかどっちかにしなさい!」



詢子「っはは! 良いねぇ。退屈しなくていいわ〜。この子達!」

まどか「今日は何時もより、はしゃいじゃってるみたいだけどね」


詢子「でも、みんな良い子だな…」

まどか「でしょ?」


詢子「あぁ。大事にしろよ、まどか」

まどか「うん…?」
469 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/17(月) 01:05:35.33 ID:7bhwiUKD0

詢子「友達ってのもな、二種類あるんだ」

詢子「ただ、なんとなく付き合って、別れてそれっきりになる奴…。

   そして、すごく気が合ってずっと一緒にやっていきたいって奴。この二種類だ」

詢子「特に後者の奴は『親友』って言ってな…。何か理由付けて馬鹿やったり、時には助け合ったり…。

   居ると居ないとじゃ人生の楽しさが変わってくるのさ」


まどか「ママで言うと…、早乙女先生みたいな?」

詢子「……認めたくない点もあるが、まぁそうだな」

まどか「そっか…」


詢子「最近のお前は楽しそう…。いや、どこか充実してるように見えるからな。

   それ、みんなのおかげでもあるんだろ?」

まどか「そうだね…。そうだと思う」


詢子「なら、大事にしな。友人はともかく、親友ってのはそうそう巡り逢えるもんじゃねーからな?」

まどか「うん…!」
470 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/17(月) 01:06:43.79 ID:7bhwiUKD0

────────

────

──

ほむら「無駄です…!」

さやか「なん…だと…?」


まどか「こ、こうなったらストーンで強引に…!

    え? 地雷…? いつの間に…!」


さやか「つ、強すぎる…」

ほむら「え、えへへ///」


杏子「文字通り、ほむらのショータイムだったな…。

   アタシはほとんど何もしてねぇ…」



マミ「みんな、お風呂が沸いたから順番に入ってくれって」


杏子「おしっ。じゃアタシらから行くか、ゆま」

ゆま「うん。じゃあ、あとでね、たっくん」

タツヤ「うん。あとで〜」



まどか「パパからレシピ教われました?」

マミ「うん。バッチリ。今度作ってみるから、その時は試食お願いね」


さやか「わぉ! ヤバイ! 楽しみ過ぎて興奮して来た!」

まどか「さやかちゃん…。幾らなんでも気が早すぎるよ…」
471 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/17(月) 01:07:48.65 ID:7bhwiUKD0

────────

────

──

杏子「ほら…、しっかり頭洗わねぇと…。

   あぁ、もう良い。アタシが洗ってやるから、じっとしてな」


ゆま「わぁ…、人に洗って貰うのって気持ちいいね」


杏子「………随分汚れてるな。やっぱり、あんまり風呂入れて貰ってないのか?」

ゆま「…………」


杏子「やっぱ、まだ酷い仕打ち受けてんのか…?」

ゆま「………うぅん。あれから、ひどいことされなくなったよ。

   ほら、あたらしいケガないでしょ?」


杏子「アレは親として最低の行為。論外だ。

   だけど、最低の事をしなきゃ良いってもんじゃない…」


ゆま「それでも、痛い事されなくなったから大丈夫だよ。

   ご飯とかお洗濯とかは、あんまりやってくれないけど…」

杏子「…………」
472 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/17(月) 01:08:50.14 ID:7bhwiUKD0

杏子「アタシもマミみたいに甲斐性がありゃ、な…」

ゆま「かいしょー?」


杏子「………マミくらいしっかりしてりゃ、お前を守れるのに……って意味さ」

ゆま「キョーコはゆまを、守ってくれてるよ」


杏子「…………」

ゆま「キョーコがママに怒ってくれたから、ママはゆまに乱暴しなくなった。

   それにゆまもみんなと出会えて、一人じゃなくなったんだよ…?」

ゆま「そのあとも、よくゆまのところに遊びに来てくれて…。

   優しくしてくれる…。ゆまは、そんなキョーコが大好きだよ」


杏子「…………」

ゆま「だから、ありがとう。キョーコ」


杏子(ったく……、どいつもこいつも…)




杏子(『ありがとう』か…)

杏子(多分アタシが……、一番聞きたかった言葉だ)

杏子(全部諦めて、全部投げ出して……、もう聞く事は二度と無いと思ってたが…)



杏子「わかんねぇもんだな……」

ゆま「…?」
473 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/17(月) 01:10:08.00 ID:7bhwiUKD0

────────

────

──

ほむら「…………」

マミ「…///」


ほむら「巴さんはすごいですね……」

マミ「じゃ…、邪魔なだけよ…?///」


ほむら「は…?」

マミ「え、え〜っと胸の話じゃないの…?///」


ほむら「ちっ、違いますっ!!!!」

マミ「…///」



ほむら「私と一つしか違わないのに…、勉強も運動も料理も魔法少女も…、何でも出来て…。

    みんなのお姉さんとして、しっかりしてて面倒見も良いし…。中学生なのに一人暮らししてて…。

    魔法少女としても……」


マミ「………そうならざるを得なかったのよ」

ほむら「……?」

マミ「暁美さんには話してなかったわね…。

   私が何で魔法少女になったのか」
474 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/17(月) 01:12:14.51 ID:7bhwiUKD0

マミ「私はね、事故に会って死に掛けて……、その時にQBと出会ったの」

ほむら「じゃあ………」


マミ「そう…。私の契約の際の願いは『助けて』。

   私は魔法少女になる事によって、『自分だけ』助かったの。

   もっと他の願いなら、両親を救えたかもしれないのに……、『自分だけ』」


ほむら「そ……、そんなの……」

ほむら「巴さんは悪くないです。

    生きるか死ぬかの状況で、まず助かりたいなんて誰だって……」



マミ「ありがとう、暁美さん」


マミ「でも、私にはそれがどうしても許せなかった」

マミ「そして、そんな私に人の為に戦う魔法少女の使命は打って付けの罪滅ぼしで…。

   訪れた孤独は、自分自身に対する罰同然だったから……」


マミ「受け入れざるを得なかったのよ…。

   そんな生き方を…」


ほむら「…………」
475 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/17(月) 01:13:50.70 ID:7bhwiUKD0

マミ「でも、私は弱いから…。

   結局それに押し潰されそうになって、みんなに支えられてここに居る……」

マミ「駄目な子よね? 誰よりも気丈な先輩でなくちゃいけないのに…。

   本当はみんなに誰よりも寄りかかっている…」


ほむら「孤独は…」

マミ「…?」


ほむら「孤独は辛いです…。心のどこかが壊れない限り、きっとそうそう耐えられるものじゃない…。

ほむら「少なくとも私は…、そう思ってます…」

マミ「………」


ほむら「だから、巴さんはきっとそれで良いんです。

    誰かに縋っているとしても…。縋った相手を正しく導いているんだから…」



マミ「………ありがとう、暁美さん」


ほむら(そうだ…)

ほむら(それでも、巴さんは魔法少女として戦い続けている…)

ほむら(それは、巴さんの強さであり、功績だ…)


ほむら(対して、私はどうだろう…?)

ほむら(巴さんと同じ…、鹿目さんやみんなに寄りかかる人間なのに…)

ほむら(私はただ、寄りかかることしかできない…)


ほむら(私は……)
476 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/17(月) 01:15:22.99 ID:7bhwiUKD0

────────

────

──

まどか「久しぶりだね。こうして一緒にお風呂はいるのも」

さやか「だね〜。そもそも、まどかん家来るのが結構ご無沙汰だったしなぁ…」


まどか「………大変だったもんね」

さやか「まぁ、ね」


まどか「上条君の事故に始まって、さ……。

    あの時のさやかちゃん、ほんと辛そうで見てられなかった」


さやか「あぁ…、まぁ…、その辺りは……、色々とご心配おかけしましたっ」


まどか「ほんとだよ…」

まどか「いっつもいっつも心配ばっかりさせて…」

まどか「なんか、わたしの知らない間に勝手に魔法少女になっちゃうし…!」


さやか「うっ…。結構根に持つなぁ…。まどかは……」



まどか「…………約束、忘れて無いよね?」


さやか「それは勿論」
477 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/17(月) 01:16:49.34 ID:7bhwiUKD0

まどか「ほんとだね…?」

さやか「お、おぅ…!」


まどか「ほんとにほんと?」

さやか「ちゃ、ちゃんと覚えてるって!

    なんかあった時は突っ走らずにまどかに相談する、だよね?」


さやか「ほ〜ら、さやかちゃん、きちんと覚えてますよ〜!」



まどか「………でも、杏子ちゃんの時は、わたしに何も話さずに行っちゃったよ?」

さやか「う………、それは……」



まどか「守れてないよ………?」

さやか「く………。ま、まどかがこ、怖い………!」
478 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/17(月) 01:17:43.00 ID:7bhwiUKD0

まどか「…………はぁ」


まどか「わたし、心配なんだよ……。

    そうやって、さやかちゃんが無理ばっかりしてる内に、取り返しのつかない事になるんじゃないかって…」


さやか「だ、だ〜いじょうぶだって!

    も〜、まどかは心配性だなぁ………!」


まどか「…………約束、忘れないでね」

まどか「絶対、だからね!」


さやか「おぅ! さやかちゃんと約束だっ!」


さやか「では、こっちのお『約束』も……」

まどか「………?」




さやか「成長した嫁を直に味わう、さやかちゃんボディチェーーーーーック!!!!」

まどか「ちょ…! 結局それ!?」


さやか「へっへっへ〜…、覚悟しろぉ、まどか〜〜〜〜!」

まどか「も、もう! さやかちゃんったら〜〜〜!!!!」
479 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/17(月) 01:19:11.12 ID:7bhwiUKD0

────────

────

──

さやか「も、もう駄目だ………」

まどか「さやかちゃんの……………、馬鹿ぁ………」



マミ「全く………、逆上せるまでお風呂で遊ぶなんて…」

さやか「こ、これから……、枕投げ大会か怖い話で、盛り上がる………、あたしの計画がぁ………」



杏子「修学旅行に行ったガキかよ……」

マミ「近所迷惑になるから、どっちにしろ私が許しません!」



さやか「そ、そんなぁ〜〜〜、がくっ」


ほむら「くすっ…。まぁ少し早いですけど、休んでてください」


ゆま「zzz……」

杏子「ゆまももう寝てるし……、ほんとに騒ぐなよ?」



さやか「わ……、わかってら〜」

まどか「ふぃ〜……、おやすみぃ……」
480 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/17(月) 01:20:09.83 ID:7bhwiUKD0

────────

────

──

まどか「…………」

さやか「…………」

ゆま「……Zzz」


まどか「ねぇ、さやかちゃん…?」

さやか「…………」


まどか「寝ちゃったか……」


まどか「…………何時も一緒に居てくれてありがとう」

まどか「何時も、守ってくれてありがとう」


まどか「……………わたし、今はまだ頼りないかもしれないけど」

まどか「必ず………、さやかちゃんを支えられるようになるから………」

まどか「だから…………」
481 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/17(月) 01:21:09.25 ID:7bhwiUKD0

さやか「まどかぁぁぁぁぁぁ!」

まどか「ひっ…!」


さやか「むにゃむにゃ………、あたしの嫁ぇ……」

さやか「……Zzz」

まどか「なんだ、寝言か……」



さやか「まもるのだぁ……、あたしがぁ……」

さやか「……Zzz」



まどか「くすっ…」

まどか「ありがと、さやかちゃん」



まどか「それと……」

まどか「これからも、よろしくね」


―to be continued―
482 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/17(月) 01:21:52.50 ID:7bhwiUKD0

―next episode―


「暁美ほむらさん、だよね? 悪いけど…、死んでくれないかな?」





―【第十二話】夜闇の襲撃者―
483 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/17(月) 01:24:17.78 ID:7bhwiUKD0
はい。投下終了です。

全員集合と書いたから、仁美ちゃんや上条君、ひいては中沢君や早乙女先生の登場も考えたんですが…
仁美ちゃんはともかく、上条君から先を登場させる理由が全く思いつかなくて断念

魔法少女および、その候補が「全員集合」って事でご勘弁を…
484 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/10/17(月) 02:37:32.23 ID:JgF2bhuc0
杏子はネス使いなのか、それともリュカ使いなのか
ものぶつけるなってことはネス?
485 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/10/17(月) 06:59:34.87 ID:bMbiMieAO

ほむほむマジ廃人
まあ入院中って確かに暇だよな
486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/17(月) 07:33:24.23 ID:PbT5mO+to
乙〜
追いついた。これは良い
487 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/10/17(月) 17:24:09.30 ID:8drO7rBCo
乙乙
今回はお泊り回だったか
それにしてもあの約束がさやかちゃん死亡とかのフラグにならないことを祈る
竜騎将戦のポップみたいなことしでかさないよね
あったらあったで燃えそうなのがまたww

次回はキリカ登場かな
でもメガほむを狙う理由はなんなんだろう
488 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/10/17(月) 20:40:08.96 ID:ofvmrJ5AO
コントローラを逆さまに持つマミさんかわいい
みんないい子供ばっかやな
489 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/10/18(火) 22:47:07.01 ID:6Anddbs5o
5vガブリアスとカウンターゲンガーは良いとしてもトラアタキッスは入院中じゃ厳選出来ないだろw
ほむほむマジ廃人
490 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/10/18(火) 23:04:14.11 ID:FRFIqLqDo
トラアタキッスはゲームキューブ使わないといけないやつだっけ?
あれ個体値粘ってもゲームボーイに送ったときに特性が変わったりして面倒だった気が
ほむほむ頑張りすぎだろ
491 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/19(水) 01:24:55.58 ID:uItCPkIpo
このほむほむなら神速マッスグマ持っていてもおかしくないなww
492 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 20:50:46.03 ID:aN0Htkig0
はい。投下します。
形式的にはここから第二部って感じになるかと。

のんびり気味だった雰囲気もシリアス寄りになりそうです


いつもレス感謝です。
それを励みにさせて貰ってます


>>484
はい。杏子ちゃんはネス使いです。
杏子ちゃんのお家事情と現状からして最新作をやっているかは怪しいと思った為、旧作キャラのネスになってます。

一応正解は…。
まどか=カービィ、さやか=マルス、マミ=ドンキー、ほむら=スネーク、ゆま=ピカ となっております
他のキャラはだいたいのイメージからですが、マミさんだけ某クロスSSが面白かったのでそこから来てますw

>>485>>489>>490>>491
入院中は暇だったと言いつつ、入院中だけでは入手できないトラアタキッスを使うほむらェ…。
コツコツ積み重ねる孵化作業は、ほむらさんの得意分野と思われます。

しかし、みんなポケモン好きですねw
これ終わったらやるかどうか考えてた、まどか×ポケモンのSSも形にできるよう構想してみるか…

>>486
そう言ってくださると幸いです

>>487
はい。あの人の登場です
でも、程良く厨二だけど子供な台詞が難しいのなんのって…
能力も強過ぎるし…

おかげで毎度毎度の週一更新です…

>>488
マミさんって色々できるイメージですが、出来ない事はとことんできないイメージあったのでw
てか、機械とか弱そう
493 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 20:51:31.73 ID:aN0Htkig0

???「やぁ、どうしたの? こんな時間に連絡をくれるなんて…」

???「もしかしてっ! 私の声が聞きたくなった!?」


???『ふふっ…。あなたの元気な声が聞けて嬉しいわ』

???『でもね、連絡したのはそれだけじゃないの。今回の件は特に大事だから、念を押しておきたくて…』

???「な〜んだ、やっぱりそっちの話か。面白くない…」



???『ごめんなさい…。そんなに拗ねないで。キ…』

???「拗ねてないよ! 拗ねてないけど…!

    キミはまた、そーやって子供扱いするんだッ!」


???『………嫌い?』

???「………………」


???「………だいっっっっ好き!!!!」
494 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 20:52:20.12 ID:aN0Htkig0

???「でも、さすがに心配のしすぎだよ。

    だって今回の相手は、ただの人間なんでしょ?」


???『そうだけど…。万一失敗して彼女が…』

???「その万一が無いように、アイツの相手はキミがしてくれる。問題はないよ」


???『…………』

???「大丈夫だよ」


???「『一人たりとも』逃がすつもりはないから」


???(そうさ、一人たりとも逃がさない)

???(私の存在が奴に知られればいずれ………。それだけはあってはならない)

???(汚れ役は私一人で良い………。いや、私一人じゃなきゃならない……)


???(その為にも逃がさない)

???(人間だろうが魔法少女だろうが、強かろうが弱かろうが、正しかろうが間違ってようが関係ない)

???(必ず殺す。そして彼女の理想は必ず叶える。そうやって私は彼女に無限に尽くす)


???(愛は……『無限に有限』なのだから!)
495 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 20:52:56.75 ID:aN0Htkig0







―【第十二話】夜闇の襲撃者―






496 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 20:53:58.42 ID:aN0Htkig0

月明かり一つない雲に覆われた夜空。

魔女が出たでもないのに、こんな時間に三人並んで道を歩く。


理由は勿論、私にある…。


さやか「一時はどうなるかと思ったけど」

まどか「見つかってよかったね、ほむらちゃんの家の鍵」


ほむら「ごめんなさい……」



さやか「使う言葉が違うぞ、ほむらっ」

ほむら「え………?」


さやか「こう言う時は『ごめんなさい』じゃなくて…?」

ほむら「あ、ありがとう……ございます……?」


さやか「うんうん。困った時は助け合うのが友達ってモンでしょ〜。

    で、そう言う時は『ありがとう』。それだけで良いって。お互い様だし」

ほむら「はい……」


さやか「もうちょい自分に自信を持ちな、ほむら。

    じゃ、あたしはこっちだから! また明日ねっ!」
497 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 20:54:51.52 ID:aN0Htkig0

ほむら「…………」

まどか「さやかちゃん、相変わらずだなぁ」


まどか「わたしも昔は助けて貰ってて、その度に言われてたよ。

    『ごめん』じゃなくて『ありがとう』だって」


ほむら「………鹿目さんも、そうだったんですか?」

まどか「………そうだよ」


ちょっと照れ臭そうに俯き気味になりながら、鹿目さんは口を開く。


自分の昔の事。

今の私のように悩むばかりだった日々の事を。
498 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 20:56:12.13 ID:aN0Htkig0

まどか「わたしもほむらちゃんみたいに転校してすぐの時は、色々あってね…。

    今よりずっと人見知りだったし、今よりもっと泣き虫で弱虫で、ドジで…」


ほむら「鹿目さんが……?」

まどか「そんなに意外かなぁ…? まぁいいや…」


まどか「でも、そんなわたしにさやかちゃんは手を差し伸べてくれた…」

まどか「何時も一緒に居て、笑ってくれた。困った時は当たり前のように助けてくれた…。

    でも…」


まどか「わたしはほむらちゃんに前に言ったように、悩んでた。

    何の役にも立たない。何の取り柄も無いわたしはただ生きて行くだけなんだって…」


まどか「そんな自分は、さやかちゃんに迷惑をかけることしかできないんだって、申し訳なく思ってた…。

    気にすんなって笑うさやかちゃんに憧れる一方で、いつも…」


ほむら「…………」

まどか「でも、今ならわかる」

まどか「友達を大切だと思うのに取り柄があるとか無いとか、関係ない。

    そして、その大切な友達を助けるのに理由なんていらないんだって」
499 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 20:59:01.76 ID:aN0Htkig0

ほむら「でも、わたしは…」


まどか「じゃあさ…? ほむらちゃんはわたしが突然、泣き虫で弱虫でドジな昔のわたしに戻ったら友達やめる?」

ほむら「そんな…! そんなことしないです!」


まどか「わたしが今ここで急に倒れたり、落し物したから一緒に探してって言ったら迷惑だから放っておく?」

ほむら「助けます……」


まどか「ね? わたしやさやかちゃんもそれと同じ」


ほむら「あ………」

まどか「わたしもそうだったから、気持ちは凄くわかるけど……。

    ほむらちゃんはさ、焦り過ぎなんだよ」

まどか「自分を信じてあげよう? そして、じっくり考えて、ゆっくり進んで行けばいいんだよ」



まどか「わたしもそうしている内に、こうやって自分に自信を持てる事が見つかったんだから」

ほむら「はい…………」


優し過ぎる鹿目さんの言葉…。

それに寄りかかり続ける駄目な自分のままでいるのは心苦しいけれど…。

それでも、彼女の優しさが嬉しくて、別れ際には彼女に合わせて大きく手を振った…。


500 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 21:01:02.86 ID:aN0Htkig0

ほむらちゃんと別れてひとりになったわたし。

実はこの時点で、マミさんとの約束を一つ破っている。



まどか「さぁ…、急いで帰らないと…」

まどか「マミさんの言ってた『魔法少女狩り』が出ない内に……」


『魔法少女狩り』。

QBが瀕死の犠牲者から聞きだした『黒い魔法少女』の一言で明らかになったその存在は…。


鋭利な刃物で切り裂かれた、その犠牲者と同じ武器で斬られたらしき死体が幾つか出てきている事から、

ここ最近多発している、魔法少女の殺害及び行方不明となっている事件の実行犯らしき危険人物の仮称。


この『魔法少女狩り』への警戒から、夜間の出歩き、特に単独行動は絶対避けるようマミさんに言われていたんだけど…。

まぁ、事情が事情だからやむを得ないよね…。


恐怖心も合わさり、せめて駆け足でと帰路についていたんだけど…。
501 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 21:01:44.88 ID:aN0Htkig0

???「うわぁぁぁぁーーーーーーっ!!!!!」

まどか「ひっ!?」


突如あがった奇声に、恐怖と警戒でめいっぱいだったわたしの心臓が一瞬止まる。

すぐに身構えて魔法少女に変身しようと、指輪状のソウルジェムに力を込めようとするも…



???「………」


まどか(びっくりした。何だ、魔法少女じゃないんだ………)


そこに立っているのは、魔法少女でもなんでもない黒髪のショートカットの女の子。

頭を抱えてうろついたり、その頭を掻きむしったりと、何やら近寄りがたいもののごく普通の女の子のようで…。

わたしは、落ち着きの無いその子の横を通り過ぎつつも、さりげなく様子を眺めた。




???「……しよう」

???「どうしよう。どうしよう!」

???「こ、このままじゃ…!?」


???「こ、このまま、ここがどこかわからないまま夜が明けて…!

    私の愛は終わってしまうんだ!!!!」


その落ち着きのない行動は、どうも困り果ててるが故の動きらしい……と言うのが伝わる。

諦めが強くなってきたのか、忙しない動きがしょんぼりとした動きに変わる。

そして、その様子が居た堪れなくなったわたしは、彼女に声をかけていた。
502 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 21:02:45.74 ID:aN0Htkig0

まどか「あの……」

???「ん…?」

まどか「どうかしたんですか…?」


???「あぁ…。携帯の電池が切れてしまって…。

    これを頼りに歩いていたから……、ここがどこだかもうわからないんだ…」


まどか「でしたら、わたし案内しますよ…? この辺りには詳しいですし」


???「いいよ…。こんな時間だからキミにも迷惑をかけてしまう」

???「でも、口頭で良いんだ。見滝原第二児童公園にはどう行けば良いかだけ、教えてくれないかな?」


まどか「あぁ、それならここからすぐですよ。

    あそこの信号で左へ。そのまま進んで二つ目の十字路を右に進めばすぐ見える筈です」


???「ホント!? よかったぁ……。

    キミのおかげで愛は死なずに済みそうだよ」



キリカ「私は呉キリカ。恩人に礼をしたい」


まどか(え? 愛? 恩人? なんかやっぱり変わった子だなぁ…)
503 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 21:03:46.71 ID:aN0Htkig0

キリカ「あ…。でも、あまり時間が無いんだった…」


まどか「あ、いえ。わたしは道をちょっと教えただけなんであんまり気にしないで…」

キリカ「ダメだよ、恩人!」


キリカ「恩人は、私の愛の手助けをしてくれた恩人なんだよ!?

    その恩人に何の礼もせずに去るなんてそんなの間違ってる!!」


まどか「はぁ…」


キリカ「そうだ! これをあげるよ!

    愛の手助けをしてくれた恩人に渡す礼が、こんな物で申し訳が無いんだけど…」


手渡されたのは『特濃練乳入苺ジャムジュース』。

見るだけで喉が痛くなりそうな甘さが伝わってくる、わざとらしい赤とピンクが毒々しささえ感じる缶ジュース…。



キリカ「それ、甘さが足りないから、砂糖を5杯程入れてから飲む事をお勧めするよっ!」

キリカ「じゃあね、恩人っ! また会う事があったらちゃんと礼をするからねっ!!!」


と、恐ろしい甘党発言と同時に道順を忘れ、わたしに聞き直す始末…。

その慌しさとそそっかしさは見てて、どうにも不安にさせられる。


結局わたしは一回り考えた後、彼女が向かおうとした公園へと足を向けていた。
504 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 21:04:22.97 ID:aN0Htkig0

―ほむら自宅―


ほむら「自分を信じて、か…」

ほむら「鹿目さんの言葉は信じられる…。でも……」


ほむら「私自身を信じられる日なんて来るのかな…?」


鏡に映る自信のなさげな自分を見ながら思う。

自分を信じてくれる友達に寄りかかるばかりじゃなくて、友達を助ける自分になれる…。

何時か、そんな日は来るのだろうか…。



そんな事を考えて、俯いた顔を再び上げる。

再び鏡に映る自信のない私…。

その姿自体に変化はない。

でも…。
505 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 21:05:07.42 ID:aN0Htkig0

ほむら「これ…、もしかして…」

ほむら「魔女の結界……!?」


私の周囲は、何時の間にかあの異様な空間。

魔女の結界へと変化していた。


その話を何度も聞き、体験した事もある私はその恐怖をよく知っている。



ほむら「に、逃げなきゃ……」

ほむら「ここから出なきゃ…!」


この中でじっとしていれば、私はあの恐ろしい魔女や使い魔に捕まって殺されるだけ。

どちらともわからないとは言え、私はこの異様な空間から逃げるべく駆け出していた。
506 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 21:06:12.13 ID:aN0Htkig0

ほむら「はぁ…、はぁ…」

ほむら「やっぱり抜けられない…」


元は私の家だと思っていた場所はすっかり魔女の結界となっており、幾ら走っても出口はわからない…。

やがて横を向いた化け猫の顔を二つ繋げ、先端に棘のような爪を伴うやけに長い腕を無数に持つ魔女が現れる。


当然のように私を狙おうとする魔女から逃げる内に、この異様な空間に違和感ない独特の衣装を着た少女を前方に見つける。

それは恐らく…。



ほむら「あ、あの!」

ほむら「魔法少女の方ですよね!?」


???「…………」

ほむら「お願いします、助けてください!」




???「…………やだ」
507 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 21:07:02.37 ID:aN0Htkig0

ほむら「え……?」

???「だって、そんな事したらキミを閉じ込めた意味が無くなるじゃないか」


ほむら「え? え……?」

???「せっかくグリーフシードに穢れを吸わせて魔女と結界を生みだしたのに…。

    キミが逃げてしまっては、その意味が無くなっちゃうじゃないか…!」



眼帯と前髪で、その魔法少女の表情はそこまで見れなかった…。

でも、二言目を発したその少女の口元は笑い、私の背筋に凍るような寒気が走る。


そして、前方の魔法少女は右手を顔の高さ構え、その手に三本の鋭利な鉤爪を作り出し…。

後方から迫る魔女以上の怖気を誘う狂気の表情を浮かべ、言い放つ。



???「暁美ほむらさん、だよね? 悪いけど…、死んでくれないかな?」

ほむら「ひっ………!?」



???「ほむらちゃん、伏せて!!!!」
508 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 21:07:54.96 ID:aN0Htkig0

その声を聞いた私はすぐにその場にしゃがみこみ、そのまま見上げるように黒い魔法少女を見つめる形になる。

私の頭上を大きめのピンク色の閃光が走り、それが黒い魔法少女の顔面に迫る。

が、黒い魔法少女は体を大きく反らしてそれを避け、そのまま両手を床に付いてバク転し、ゆらりと不気味に構えた。


私は思わずそれが放たれた後方へと目を向けると、頭部を撃ち抜かれた魔女が倒れ…。

その後ろから、ピンクの衣装に身を包んだ魔法少女…。


珍しく強い怒りの表情をした、鹿目さんの姿が現れた。



まどか「道に迷ってるんじゃないかって、心配して後を追ってみれば…」

まどか「これはどう言う事なの? 呉さん!!!!」


キリカ「恩人は魔法少女だったのか……」

キリカ「えぇと、こう言うのって何て言うんだっけ…。

    えぇと、え〜っと…」


まどか「その衣装、鋭利な鉤爪、他者を平然と傷つける行動…!」

まどか「黒い魔法少女、呉キリカ…。

    あなたが『魔法少女狩り』の犯人だね!?」


キリカ「うんっ」
509 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 21:10:27.13 ID:aN0Htkig0

鹿目さんに目配せを貰い、私は彼女の後ろへと走る。

恐らくはその間も、そして、私が鹿目さんの後ろへと退避した後も、彼女はその姿勢を崩さない。


無邪気と狂気を合わせた笑みと、怖気と寒気を誘うゆらゆらした動きを…。



まどか「何で、こんな事を!」

まどか「まして、魔法少女に関係の無いほむらちゃんまで巻き込んで…!」


キリカ「それはね…、『愛は無限に有限』だからだよ?」

まどか「は…?」



キリカ「だから、私は彼女に『無限』に尽くす」

キリカ「魔法少女を狩るのも…、暁美ほむらを殺すのも…。恩人を故人にするのも…!」


キリカ「全ては……、『無限』の中の『有限』に過ぎないよ!!!!」
510 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 21:11:50.44 ID:aN0Htkig0

言っている事は支離滅裂。

それを語る彼女自身は、どこか壊れている…。

その壊れた精神が生み出す無邪気を伴った狂気は、恐るべき速度で迫る。




まどか「は、速い…!」

キリカ「速い? 速くないよ?」


キリカ「もっと速くできるんだよ?」

キリカ「もっともっともっともっともっともっと…!」


その動きは、まるで獲物を見つけた獣のように速く…。

以前見た同タイプの前衛の美樹さんと比べ、柔軟さと豪快さを伴ってトリッキーそのもの。


鹿目さんは、近接用のロッドを使って防いでいるものの、本来苦手な距離なのもあってか対処しきれていない…。

致命傷でないとは言え、あちこちに傷を負い、場所によっては派手に血を流している。

途中、消えかけの魔女の死体に敵の攻撃がまともに入り、ズタズタになった所を見て、私は震え上がった。
511 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 21:12:50.57 ID:aN0Htkig0

身軽な動きを活かした型破りな動き…。

まるで曲芸師のように、跳んで跳ねて回って相手を掻き乱し…。

間合いに入る度に素早く右に左に、時に両手に鉤爪を作り出して、荒々しくも鋭い攻撃を繰り出し続ける…。



キリカ「ダメダメ! それじゃあ話にならないよ、恩人ッ!」

まどか「きゃあっ」


同タイプの美樹さんともまるで違う、予測不能な猛攻に鹿目さんは追い詰められ…。

力を込められた強烈な一撃を受け、鹿目さんは大きく態勢を崩す…。



ほむら「鹿目さんっ!!!!」


キリカ「キミはあと! どうせ逃げられやしないし…!」

キリカ「どうせ一人も逃がすつもりもないし!!!」



まどか「………」

キリカ「『愛は無限に有限』なんだ…!」

キリカ「だから、恩人。キミには感謝と謝罪を…!」


???「愛は無限に、ねぇ…。良い言葉じゃん。

    今度あたしも使わせて貰おうかな…?」
512 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 21:13:49.57 ID:aN0Htkig0

さやか「よっ、お待たせ。まどか」


まどか「さやかちゃん!」

ほむら「美樹さん!」



私の真横に立った青い衣装の騎士は白いマントを翻して立っている…。

覚えたてらしい結界をややぎごちない手つきで、私の周囲に作り出しつつ会話を続ける…。



キリカ「増えた………」

キリカ「うん。でも、ま、その、あれだ。ささいだ」


さやか「……………ほむら」

ほむら「はいっ」


さやか「黒い魔法少女…。コイツってもしかして…」

ほむら「はい。噂の『魔法少女狩り』の犯人みたいです…」


さやか「そっか…。なら…!」



さやか「容赦はしない!!!」


美樹さんは、ボロボロの鹿目さん、そして動きを止めてこちらを眺める敵を見回しつつも私に確認を取ると…。

高速の踏み込みで、黒い魔法少女の間合いに入りつつ斬り込み、一気に鍔迫り合いとなった。
513 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 21:14:46.04 ID:aN0Htkig0

キリカ「へぇ…、やるね」


さやか「内心頭来てたんだよね! アンタには!!」

キリカ「恩人の友人は中々素早いんだ…!」


さやか「魔女じゃなくて、魔法少女を狙う最低のアンタにはさ!!!!!!」


美樹さんは鍔ぜり合いしていた相手の爪を強引に弾き、そのまま横に一回転。

円心力を生かした追撃を行う。

さらに…。



さやか「まどかっ!」

まどか「うんっ!」


同時に鹿目さんも矢を放つ。

息の合った二人の攻撃は、別々の方向からほぼ同時に敵を襲う。


二人の得意とするコンビネーション攻撃。

しかし、それにも関わらず敵の魔法少女は平然と二人の攻撃を受け切った。
514 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 21:17:52.92 ID:aN0Htkig0

まどか「なっ…!?」

さやか「くそっ…!」


キリカ「すごいあれだね…! えぇと、そう!『挟撃』!!」

キリカ「良い『挟撃』だったとは思うよ? 

    ただ…」


キリカ「私を仕留めるには、遠く及ばない!」


黒い魔法少女は体勢を低くしつつ、美樹さんへ迫る。

見えにくい足元から来る不意打ち同然の一撃を、美樹さんはどうにか防ぐ。

でも、敵は反撃を許さず、相変わらずの動きで美樹さんを翻弄しつつ攻め続ける。



キリカ「すごいッ! 止めたッ! でも!」

キリカ「次もあるよ。次々次次次ッ!」


さやか「くっ…!この…!」


激しい連撃に曝される美樹さん。

敵のスピードは、同じく高機動が売りの前衛タイプの彼女を上回っているようで、一方的に押され続ける。


その美樹さんへの攻撃を止めるベく、鹿目さんはまた矢を射るも、放たれた光の矢は難無く避けられ、叩き落とされてしまう。
515 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 21:20:13.30 ID:aN0Htkig0

キリカ「だから無駄だって」


まどか「当たらない…!」

さやか「なんてスピード…! おまけに攻撃が読みづらいったら…!」


まどか「それならこれで…!」


鹿目さんは三つの矢を束ね撃ちにして放ち、さらに続けてもう三発放つ。

それに気付いた敵は、行おうとした攻撃をやめ、大きく跳躍して光の矢を回避した。

しかし…。



キリカ「矢が軌道を変える…!?」


光の矢はその先端を突如斜め上へ向け、別々の方向へ散りながら上空へ…。

さらに、美樹さんも跳躍し、矢の着弾に合わせて追撃へ向かう。

取り囲むように各方向から迫る光の矢と、それに合わせて飛んだ美樹さん。

素早い敵を追い込む形で繰り出した先ほどを上回る強力な連携攻撃。


でも、敵はその状況に怯む事なく笑い、叫ぶ。
516 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 21:22:09.60 ID:aN0Htkig0

キリカ「思念操作による誘導矢…! やるじゃないか、恩人!」

キリカ「私に『コレ』を使わせるなんてッ!」


言うと同時に両手に爪を作り、その一組の爪の本数が三本から五本へ増える。

そのまま五本に増えた爪を伸ばし、大きく広げ、攻撃範囲を増やすと…。


回転しつつ全ての矢を切り払い…。

直後に来た美樹さんに蹴りを浴びせて地面へ蹴落とし、自身は華麗に着地した。



まどか「ウソ…」

さやか「ぐっ……、何て奴なのよ……!」


キリカ「私に『コレ』を使わせた魔法少女は君達が初めてだよ。

    新記録だ。おめでとう。でも…………」


キリカ「あきた」


黒い魔法少女は相変わらず支離滅裂な言動を繰り返しつつ、美樹さんの元へ…。

本数を増やし、激しさを増した凶爪が再び彼女を襲う…。
517 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 21:23:38.87 ID:aN0Htkig0

キリカ「オナカもすいたし」

キリカ「そろそろ倒れてよ、恩人の友人!」


さやか「何がお腹空いただよ! ガキかってのっ!」



キリカ「が、き…?」

キリカ「ガキ! ガキ? ガキだって!?」


キリカ「誰がガキだッ! 誰がッ! ガキだッ!!!!」


さやか「く……、ちっくしょうっ!」


美樹さんに襲いかかる敵の猛攻。

彼女の言葉に苛立ったのか、その攻撃はますます激しさを増している…。


美樹さんも左手に剣を作って対応するも、防戦の形は変わらない。

持ちこたえては傷を負い、傷を負っては回復する…。

それの繰り返し。


致命傷を負うか、美樹さんの魔力が尽きるか…。

どちらにしても美樹さんの戦局は最悪だった。
518 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 21:24:22.49 ID:aN0Htkig0

まどか「何か……。何か手はないの……。

    何とかしないと、さやかちゃんが……」


ほむら「鹿目さん……」


悉く矢を避けられた鹿目さんは弓を構える事もせず、立ち尽くしている。

高速の敵を対処する為の誘導矢を平然と潰されてしまい、彼女自身も成す術を失っているんだろう。

焦りきった様子が伝わってくる…。



まどか「炸裂弾ならあるいは…。

    いや、駄目だ。さやかちゃんが相手を振り切れない以上、巻き込んじゃう…」


まどか「そもそも他の矢より、弾速の遅い炸裂弾じゃ…」

まどか「遅い……?」


何かに気付いた鹿目さんの様子が変わる。

睨むように見ていた美樹さん達の戦いから目を離し、周囲を見渡し始める。
519 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 21:25:19.67 ID:aN0Htkig0

まどか「そう言えばおかしいよ…」

まどか「何で、魔女を倒したのに結界が残ってるの……?

    それに、さっきだって何で『あれ』がまだ残ってたの…?」


そう言えば、その通りだ。

私が見た時も、聞いた話でも、魔女を倒せばすぐに続けて結界も解ける筈である。

なのに、この結界は鹿目さんの言う通り、魔女が既に倒れて消滅しているにも関わらず、まだ消えていない。



まどか「多分……、いや、間違いないよ」

まどか「それなら………!」


鹿目さんは突如何か思いついたかのように声をあげると、弓を構えて次々と矢を作っては放ち始める。

狙いも碌に付けず、滅茶苦茶に。
520 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 21:26:16.71 ID:aN0Htkig0

キリカ「自棄撃ちかい…? 数撃っても無駄だって」

キリカ「この通り私は、防御に回ればキミの攻撃を避けながら、恩人の友人を相手にする余裕がある」


まどか「………」

キリカ「だから無駄だよ…?」


まどか「そう……」

キリカ「そうさ。だから、こんな面白バカみたいな真似止めて…」


まどか「………」

キリカ「やめ………」


まどか「…………」

キリカ「鬱陶しいッ! やめろッ! 目障りなんだよッ! 人の話を聞けッ!!!!!」


まどか「あなたにだけは、言われたくないよ」

まどか「あなたみたいな……」



まどか「大きいだけの『子供』には!!!!」
521 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 21:27:10.44 ID:aN0Htkig0

キリカ「だ、だ…、だ、だ…!」

キリカ「だ、れ、が、こっここ…」



キリカ「『子供』だァ!!!!!!」



さやか「くっ! 行かせ…」

まどか≪ここは任せてッ!≫


さやか≪まどか…?≫


黒い魔法少女は美樹さんを力尽くで弾き飛ばす。

美樹さんは受け身を取れずにそのまま倒れ、敵は鹿目さんに狙いを付ける。



キリカ「散ね!!!!!」

まどか「…………」


まどか「今だ!!!!!」


怒りを顕にする敵が鹿目さんの元へと飛んだ時、鹿目さん自身も後ろへ大きく飛ぶ。

そして、気付けば彼女の弓の上部の華が強い輝きを放っており…。

その光に呼び寄せられたように舞い戻っていたそれは、黒い魔法少女に一斉に襲いかかった。
522 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 21:28:13.05 ID:aN0Htkig0

キリカ「これ、は……!」


黒い魔法少女を襲ったのは、全方位から迫り来る光の矢による一斉攻撃。

誰もいない筈の方向から飛んでくる無数の矢が敵を取り囲み…。

さらに鹿目さん自身も弓を構え、一本の光の矢を放つ。



キリカ「舐めるな…! この程度ッ…!」

キリカ「もう一度『アレ』をかけて…!」


まどか「無駄だよ…!」


周囲から迫る矢を回転を主とした攻撃で薙ぎ払おうとする黒い魔法少女。

何やら魔法陣のような物が見え、敵の攻撃速度が上がるも、それは無駄だった。

美樹さんを伴わず、敵の足止めが成功している時点で鹿目さんには十分だったから。




キリカ「な、あっ………!!!!」


鹿目さんの放った矢は地面に着弾。

自らを襲う矢の群れを落としていた黒い魔法少女の足元で爆発し、敵ごと吹き飛ばした。
523 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 21:29:40.57 ID:aN0Htkig0

鹿目さんの魔力切れが近いのか、爆風自体は前に見た時と比べてそう大きくなかった。

それでも鹿目さんは、地面へ叩きつけられた敵の魔法少女を見逃さない。

転がった彼女の右足を撃ち抜き、動きを封じた。


キリカ「…………」

キリカ「驚いたよ…。こんな奥の手が使えたなんてね」


まどか「うぅん、使えないよ」

キリカ「………?」


まどか「わたしが未熟なのもあるだろうけど…。

    非物質の状態で放つ魔力攻撃ってすぐに減衰しちゃって、あまり長持ちしないんだ。

    でも………」

まどか「ここにはあなたの魔法『速度低下』が満ちている、違う?」


キリカ「ふむ。すっごいね。正解だ…。恩人!」

まどか「だよね。結界の崩壊がやけに遅かったり、倒されて動かなくなった魔女の死体に攻撃が当たったり…。

    おかしいと思ってたんだ」


『速度低下』

その魔法を敵が使っているとしたら、ここで起きた様々な事の理屈がまとめて通る。

黒い魔法少女が自分以外を遅くするのなら、鹿目さんや美樹さんにとって黒い魔法少女は速いも同然だし…。

さらに魔女の死体消滅や結界の崩壊がやけに遅いと言う、よくよく考えれば不可解な点にも説明は付くからだ。
524 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 21:30:31.30 ID:aN0Htkig0

キリカ「だからって、あれだけの量の矢をコントロールするとは…!」

まどか「確かに難しいね。わたしにはできないよ」

キリカ「………?」


まどか「わたしがしたのは、Uターンをかける操作だけ。

    だから、後方へ移動しつつ、わざとあなたを挑発して攻撃の射線軸上に呼びこんだの」


キリカ「くふふふふ! ふふふあっはははははは!! 私はまんまと嵌められたのか!!!!!」


倒れていた美樹さんも起き上って、黒い魔法少女の元へ。

そして、鹿目さんは険しい表情をして相手に弓を構える。

先ほどまでよりは落ち着いているとは言え、鹿目さんにしては珍しい、怒りの様子が見て取れる。
525 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 21:31:25.70 ID:aN0Htkig0

まどか「さぁ呉さん…。今度はこっちの質問に答えて貰うよ」

キリカ「…………」


まどか「何故、魔法少女を狙ったの…?

    と言いたけれど、こっちはグリーフシードって見返りがあるにはあるよね…。

    それよりも…」


まどか「なんで、無関係のほむらちゃんを狙ったの!?」

キリカ「…………」



まどか「呉さん!!!!!!」


キリカ「いやだね」

さやか「ちょっとアンタ…! 喋んないって言うなら治療しないよ!?

    その怪我、その出血! 放っておいたらアンタ死んだって…」



キリカ「結構だ!」

キリカ「たかだか死ぬ程度で私のすべてが守れるなら…、大いに結構!!!!」


まどか「そ、そんな…。どうして……」


黒い魔法少女の剣幕と覚悟に怯む鹿目さん…。

でも、反対にその様子を見た美樹さんの表情が変わる。

静かに持っていた剣を持ち直すと、それを敵の首元に突き付けた。
526 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 21:35:58.64 ID:aN0Htkig0

さやか「そこまでの覚悟なんだ…」


キリカ「そうさ」

さやか「…………」


キリカ「質問は受け付けない。私に対するすべての要求を完全に拒否する!」

さやか「ここで、死んでも?」


キリカ「そうだ……! さっきも言った通りその程度で済むのなら、構いはしない!!!!」

さやか「あっそ。なら………」


まどか「ちょっと、さやかちゃん!」

さやか「最初に杏子に会った時の行動…。あれはあたしなりの覚悟なんだ」

まどか「…………」


さやか「あたしはね、大切な人を守る為にこの力を望んだの」

さやか「だから、もし魔女より悪い人間がいれば、あたしは戦うよ」


さやか「それが魔法少女であっても……!」
527 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 21:37:26.08 ID:aN0Htkig0

美樹さんの目はどう見ても本気だった。

剣を突き付け、相手を睨んだまま微動だにしない。



まどか「っ………!」


キリカ「くっくく…」

キリカ「恩人の友人……。キミも良い覚悟の持ち主だね……。

    できればもっと、違う形で会いたかったよ」


さやか「そうだね」

さやか「あたしもアンタが何かに向けている『愛』だけは理解できるよ。

    それを肯定する気は全くないけどね………」


キリカ「ま、いいよ。そんな事はさ。それよりも…」


キリカ「さぁ、やれ! やってみてくれよッ!!!」

キリカ「キミがやらないんならッ、私が自分でッ!!!!」



???「その行為は不要よ、キリカ」


突如響く透き通るように綺麗な声…。

それと同時に巨大な爆風が広がり、美樹さん達を包む…。
528 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 21:38:19.16 ID:aN0Htkig0

まどか「くっ」

さやか「しまったッ…!」


キリカ「な……んで……?」

???「あなたをここで失う訳には行かないから」


ほむら「あ……、あぁ……」


煙幕の中から現れたのは、栗色の髪に宝石のような碧眼、さらに白い装束を纏った天使のような魔法少女…。

でも、その天使のような魔法少女は、悪魔のような殺人鬼である黒い魔法少女を抱きかかえ…。

強烈な威圧感を以て、こちらを威嚇している…。



キリカ「でも…、でも…!」

???「大丈夫。アイツには良い餌を『教えて』あげたから…。

    その子の勧誘に掛かりきりで、今暫くはこちらには来ないわ。

    だから、新しい動きが『視える』まで、ゆっくり対処しましょう?」

キリカ「ッ…! ごめん……」


???「さて……」
529 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 21:40:28.54 ID:aN0Htkig0

まどか「ッ…!」

さやか「……お前っ…! 黒幕…かッ…!?」


???「これだけ威圧している中で、よく…。

    それに中々鋭いのね…」

織莉子「今更隠し立てしても無意味なので、名乗りましょう…。

    私は織莉子。三国織莉子」

織莉子「そしてご想像通り、この一件をキリカに指示していた者です」


まどか「な……んで……?」

織莉子「それについてはまた、別の機会に」

織莉子「………貴方達とは、またお会いする事になると思いますわ」


織莉子「御機嫌よう…」


さやか「くッ…! 待…」


白い魔法少女はまるで仇を見るような目で、私を一睨みするとゆっくりとその姿を消した。


疲労、恐怖、疑問、無力感、威圧から解放された安堵…。

他の二人はわからないけど、私の中にはそれらの感情が一辺にやってきて、ただ混乱し、呆然とするしかなかった。


そのまま私達三人は結界が消えても、そこに座り込んでいた。

巴さんが、この場に駆けつけてくれるまで、ずっと…。
530 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 21:41:04.66 ID:aN0Htkig0

―next episode―


「神にでもなったつもり? あなたは罪を『犯すかもしれない』と言うだけで人を裁くの?」





―【第十三話】預言者からの招待状―

531 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/10/24(月) 21:43:43.02 ID:aN0Htkig0

はい。投下終了です。

あ、―続く―入れ忘れた…。
たまに忘れるんだよなぁ

先にも書きましたがキリカが本当に曲者で…。
強いわ厨二だわ何やらで…。

まさか>>1ごと苦戦させてくれるとは…。


まぁ大好きですけどね、おりキリ。
532 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/10/24(月) 21:45:40.62 ID:y/Yrmo8xo
お疲れ様でした
533 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/10/24(月) 23:02:25.28 ID:bc9tZdmzo
乙ー
物語の転換点って感じの話でしたねー
おりこ勢の魔法少女はまどさやと同じくらいしか経験ないのになかなかにチート集団ですよね
ゆまちゃんはこっちじゃ魔法少女になってないけど、これから話に絡んでくるのかな
次も楽しみにしてます
534 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/24(月) 23:41:35.75 ID:DZ1u8MjZ0
乙!キリカが傷付いて内心焦ってたからって名乗りで自分の名を間違えちゃう織莉子かわいい
535 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) :2011/10/25(火) 04:35:05.39 ID:bDy80D+AO
お疲れ様でした
まどかまさかのホーミングミサイル
それにしても結構やばかったね、まあこっちにはまだベテラン二人が控えているから大丈夫だろうけど

536 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/10/25(火) 04:36:05.42 ID:bDy80D+AO
ごめんなさい、下げ忘れ失礼しました
537 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/25(火) 08:07:23.32 ID:ksVOVBXDO
確かにほむらはクリーム以上に危険な存在だからオリコが目をつけるはずた
いくつ平行世界を滅ぼしたことか
538 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/10/25(火) 22:35:45.59 ID:ZMwELg560
オリキャラが出てきたということはそろそろ魔女化発覚も近いか・・・まぁゆま出てくるだろうし問題ないだろうがww
539 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/10/26(水) 02:53:57.95 ID:vGuMoACYo
ポケモンss期待
ほのぼのもシリアスも面白いとはこの>>1やりおる
540 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/10/26(水) 02:53:57.88 ID:vGuMoACYo
ポケモンss期待
ほのぼのもシリアスも面白いとはこの>>1やりおる
541 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/02(水) 00:09:11.67 ID:C5TEHcIv0

はい。投下します。
とうとう週一更新さえ破ってしまった…
だいたいの流れは頭にあるんですが、そこから形にならなくて…


みなさん、いつもレス感謝です
それを励みに続けさせていただいています

>>533
キリカは基礎スペックも高そうですが、それ以上に広域スローがどう考えても反則
基礎スペックだけなら、さやかだって滅茶苦茶高いように見えますが、悲しいかな、それだけでは戦いは決まらない…

ほむらが良い例ですが、スペック云々よりも特殊能力の強さの方が重要ですよねぇ…
ジョジョでも僅か数秒停止できるザ・ワールドやスタープラチナが最強クラスなのに無制限とかもうね
さやかの自己修復も結構強力な能力に見えますが、育つ前に散っちゃあチートだろうがなんだろうが…

おりキリの能力は単体でも強力無比な上に、合わさるとさらに強くなると言うチートっぷりw
あのほむらの能力考えたら、そんぐらいしなきゃ相手にならんかったのでしょうが…


>>534
しっかり者に見えてドジッ子な織莉子超可愛いですよね!

はい、すいません。
次からは間違えないようにします………

>>539
ありがとうございます
ポケモンSSも考えてみます
並行投下は無理なんで……、だいぶ先になりそうですが


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542 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/02(水) 00:10:05.14 ID:C5TEHcIv0

キリカ『暁美ほむらさん、だよね? 悪いけど…、死んでくれないかな?』

ほむら 『ひっ…! た……助けて…!』


キリカ『無駄だよ…、キミは逃げられない…! だって、ほら…!』

ほむら『あ、ぁ……』


織莉子『どこへ逃げようと言うのかしら?』



ほむら『い……ぃや…』

キリカ『くくくあははっ! 震え上がって動かなくなったよ!?』

織莉子『そうね。とても都合が良いわ』



ほむら『あ………あぅ……ぁ………』


キリカ『そのまま』

織莉子『じっとしていて』

キリカ『今』

織莉子『殺してあげるから…!』



ほむら『いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!』





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543 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/02(水) 00:11:22.66 ID:C5TEHcIv0

ほむら「はッ……はぁ……はぁ……」

ほむら「ゆ……め……?」

ほむら「もう……、嫌だ……。怖いよ………」


マミ「…………大丈夫?」

ほむら「巴………さん……」


マミ「悪い夢を見たのね…?」

ほむら「はい…………」


マミ「こっちへいらっしゃい…。私が一緒に寝てあげる。

   それなら、少しは怖くなくなるでしょう…?」


ほむら「でも………」


マミ「悪夢に苛まれて一人で、それに苦しむ事の辛さ…、私にもわかるの」

マミ「だから…、力になりたいの」


ほむら「ありがとう、ございます……」


マミ「うん。遠慮しないで、こんな時くらい先輩に甘えなさい」





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544 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/02(水) 00:12:16.04 ID:C5TEHcIv0







―【第十三話】預言者からの招待状―






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545 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/02(水) 00:12:55.26 ID:C5TEHcIv0

目が覚めて何時もと違う天井を見るのも、これで四日目。

あの恐ろしい二人の魔法少女の恐怖も少しづつ薄れていた。


巴さんや鹿目さんが近くにいてくれる安心感か、非日常の話を毎日聞き、巻き込まれる内にそう言う感性が鈍ったのか…。

こんな状況でも平然とできる自分がどこか恐ろしいけれど、それでも打ちひしがれているよりはマシだと思う事にした。



ほむら「あ、おはようございます。佐倉さん」

杏子「ふぁ〜あ……。おぅ…」


杏子「……その調子だと、あの後はちゃんと寝れたみたいだな」

ほむら「はい。巴さんと佐倉さんのおかげです…。

    本当にありがとうございます」


杏子「……あたしは宿とタダ飯が魅力的だから引き受けてるだけだ。

   礼ならマミに言ってやりな」


廊下の途中で眠たげに欠伸をする佐倉さんに挨拶とお礼を言う。


理由は今、口にした通り。

巴さんは謙遜するし、佐倉さんは否定するけれど、私が安眠できるのは二人のおかげだから…。





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546 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/02(水) 00:13:45.78 ID:C5TEHcIv0

思えば巴さんはともかく、佐倉さんへ私が抱いた第一印象は『苦手なタイプの人』だった。

鋭い目付き、乱暴な口調や言動のそれが、どうしても不良やそれに近い印象を持ってしまっていたから。

初めて紹介された時に素っ気ない態度を取られたのも一因ではあるんだけど…。


ほむら『あの………、暁美ほむらです。よろしくお願いします』

杏子『あぁ…。よろしく…』


さやか『ちょっと、杏子! ちゃんと挨拶ぐらいしろって!』

杏子『あぁ、もう! うるせぇな、お前は…! 必要無いから省いたんだよ』

さやか『自己紹介が必要無いって……。

    アンタ、ひょっとしてほむらの事馬鹿にしてる? だったら…!』


杏子『馬鹿にしちゃいねーよ!

   ただ、コイツはお前やまどかから、自己紹介以上に相手を理解しやすいアタシの評価を聞いてる筈だ。

   だったら今更、自己紹介なんてすることもねーだろ』

杏子『その上で聞きたい事があるなら、アタシに聞けば良いし、アタシの態度が気に入らないなら嗜めれば良い。

   違うか?』

さやか『違くはないけど……。だからってねぇ…!』


まどか『気を悪くしないでね、ほむらちゃん。杏子ちゃんは色々と厳しい人だから…』

まどか『でも、本当は優しい子なんだよ。

    色々あって素直になってくれないから、わかりづらいとは思うけど…』





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547 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/02(水) 00:14:28.55 ID:C5TEHcIv0

以来、ずっと苦手意識を持っていた。

鹿目さんからはそう言われたし、二人を特訓した話も聞いていたけれど…。

正直イマイチ、ピンと来なかったから。

でも……。


佐倉さんは巴さんに続き、黒い魔法少女の襲撃のあった私の家に駆けつけてくれた。

元々の目的は鹿目さんや美樹さん、巴さんの援護の為だったのかもしれない。

それでも……。


杏子『アタシがほむらの家に泊まり込んで、夜間の護衛をするよ』


ほむら『え…?』

まどか『杏子ちゃん…?』

さやか『杏子、アンタ…』


杏子『どうせアタシは宿なしで流離ってる身だ。

   家族と暮らしてるお前らと違って、四六時中コイツの家に居たって大きな問題はないからな』


杏子『そうでもしなきゃ、コイツも気が気じゃねーだろ。

   自分を狙ってる魔法少女が、何時襲ってくるかわかんねー状況なんてさ…』





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548 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/02(水) 00:15:20.02 ID:C5TEHcIv0

その申し出自体は襲撃のあった私の家に居座る危険性と、佐倉さんの生活力の問題から却下されてしまい、

結局、私は巴さんの家にお邪魔する事になった。

でも、戦力は多い方が良いし、日常生活のある巴さんじゃ寝ずの番は出来ないと同行を申し出てくれた。


そして、そこまでされてようやく鹿目さんの言う事がわかった。

佐倉さんも結局は鹿目さん達と同じで…。

誰かの為に戦える強くて優しい人だって…。

だから…。



ほむら「それでも、私は佐倉さんの行動に助けられています。

    だから……、ありがとうございます」


杏子「ふん………。言ってろ」


ほむら「はい。そうします」


御覧の通り。

彼女自身が認める事は、絶対にないだろうけど。





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549 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/02(水) 00:16:16.67 ID:C5TEHcIv0

そのまま一度部屋に戻って制服に着替えて、居間へ。

居間には、制服の上にエプロンをつけたままの巴さんと佐倉さん、卓に並べられた朝食が待っていて、

私が席に着くなり、朝食の時間となった。



ほむら「あの……昨晩はごめんなさい。それと、ありがとうございました」


マミ「気にしなくていいわ。

   昨日も言った通り、辛い時くらい先輩に頼りなさい」


マミ「それよりも……、今日は鹿目さんと美樹さんに家に寄るように言ってあるから、二人と登校してくれる?」


ほむら「はい、それは構いませんけど…。

    何か用事でもあるんですか…?」


マミ「えぇ。ちょっとね」

杏子「…………」


その時に巴さんは、ちらりと佐倉さんの姿を見たような気がしたけれど、その意図は私にはわからない。

恐らくは魔法少女としての何かだろう…と言うのは予想が付く。

あるいは例の黒い魔法少女の件かもしれないとも思ったけれど、違っていたら申し訳が無いし、深くは追求しなかった。


そのまま私はそれを追求せず朝食を終え、迎えに来た鹿目さんや美樹さんと登校した。





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550 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/02(水) 00:17:15.99 ID:C5TEHcIv0

暁美さんを見送り、私と佐倉さんは居間へと戻る。

彼女も初日は怯えて学校へ行く事もままならなかったが、少しづつ落ち着きを取り戻している。

ただ、夜に見てしまう悪夢はどうしても避けられないようで、今朝も心配していたのだけど…。

顔色もよく、声にも元気があった。

どうやら本当にきちんと眠れたらしい



杏子「…………で? なんだ、用事って」

マミ「こんな物が届いたのよ」


せっかちな佐倉さんは、私が席に着く事すら許さずに質問を促した。

私は今朝届けられていた封書の中に入っていた手紙を彼女に手渡す。

手紙も封書もそこらで買える安っぽい物ではなく、送り主の格式の高さを感じさせる。



杏子「なになに…」

杏子「『拝啓。桜舞う爽やかな風を感じる今日この頃。

    理想の為に日々邁進し続ける貴女と、魔法少女の在り方について語る場を…』」


杏子「なんじゃこりゃ。お茶会のご案内か…?」

マミ「送り主の名前を見てみなさい…」



杏子「…………………美国、織莉子!」





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551 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/02(水) 00:20:26.43 ID:C5TEHcIv0

杏子「まさか…!」


マミ「えぇ…。同姓同名の別人とかなら、面白おかしい冗談で済むけど…。

   魔法少女について書いてる事からも、例の白い魔法少女に違いないでしょうね…」


届けられた招待状の送り主は、美国織莉子。

先日、暁美さんを襲った『魔法少女狩り』を援護し、それを指示していたと語った白い魔法少女の名前。


敵と密接な関係にある人物から、本日の午後から一緒にお茶をしないかと言う内容の文書が届いたのだ。



杏子「お前とまどか達の関係を知ってか知らずかはわからねぇが、キナ臭いにも程があるな…」

マミ「『魔法少女狩り』なんてする連中だから、どっちに転んでも罠か…。

   少なくとも、文面通りの楽しいお茶会にはならないと思うべきね」


杏子「…………どうすんだ?

   敢えて乗るのか? 見え見えの罠だって蹴るのか?」


マミ「待っていても後手に回るしかない以上、少しでも相手の情報が欲しい…。

   QBとの連絡も付かない以上、行くだけ行ってみるつもり」



杏子「そうか、なら……………」





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552 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/02(水) 00:21:50.13 ID:C5TEHcIv0

────────

────

──


―見滝原市街外れ―



マミ「初めまして。今日のお茶会の招待を受けた巴と言う物です」

織莉子「いらっしゃい。歓迎するわ」


招待状に同封された地図に記された箇所にあった洋館。

その建物の入口から送り主らしき人物は現れた。


変身していない為、天使のような純白の衣装は纏っていないものの、

ふわふわとした栗色の髪、整った顔立ち…。

碧眼と言われた眼はエメラルドのような緑色であったものの、宝石みたいと言う比喩がよくわかる…。



織莉子「こちらへ…」


優しげな笑顔で案内する彼女に合わせ、私も可能な限りの作り笑いで返す。

勿論、その間も警戒は怠らない。

罠や『魔法少女狩り』がどこに潜んでいるかわかった物ではないから。





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553 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/02(水) 00:22:36.79 ID:C5TEHcIv0

織莉子「さぁ、どうぞ。召し上がって」

マミ「えぇ。ありがとう…」


結局、警戒は杞憂で終わる。

彼女に案内されている間も、お茶の支度を待つ間も異変が起こる事はなかったからだ。

もっとも、あくまでも『ここまでは』の話ではあるけれど…。



マミ「…………」

織莉子「どうしたの? 紅茶はお嫌いかしら…?」


マミ「いえ……」


織莉子「あぁ…、警戒されているのね。

    大丈夫よ。何も入っていないから…。

    紅茶は私も頂くし、カップやお茶菓子は交換しても…」


マミ「そこまで言うのなら、とりあえずは信用させて貰うわ」





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554 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/02(水) 00:23:42.78 ID:C5TEHcIv0

様子を見る限り、紅茶や菓子に何かを仕込んでいると言う訳でもないようだ。

そうなると、ますます訳がわからないけど、とりあえずは勧められるままに紅茶を楽しみ事にした。

思えば、普段私が飲んでいる紅茶からは感じる事の出来ない高級感溢れる芳香が部屋中に溢れている。


   
マミ「この独特な香り…。

   相当良い茶葉を使っているんじゃないかしら…?」


織莉子「気付いた? 貴女もお茶に詳しいみたいね」

マミ「紅茶は好きで、よく嗜むの」


織莉子「そう。なら、せっかくだから当ててみて」

マミ「家計に響くから、高価な物はあまり飲まないんだけど…」



マミ「そうね…。キャッスルトンのセカンドフラッシュ……かな?」

織莉子「当たり! すごいわ…」


織莉子「せっかくのお茶会だから奮発したの。

    おかげでお茶菓子までお金が回らなかったから、こっちは手作り。

    よかったら、こちらも召し上がって」





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555 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/02(水) 00:24:56.45 ID:C5TEHcIv0

マミ「美味しい…。サクサクしたパイ生地が中のアーモンドクリームとよく合う…」


織莉子「ピティビエと言ってね、フランスの伝統的な焼き菓子なの。

    シンプルだけど、紅茶との相性も良いし作ってみたのよ。

    気に入ってくれたなら嬉しいわ」


マミ「えぇ。お菓子も紅茶も…、すごく気に入ったわ。

   最高のお持て成しありがとう…」

マミ「でも……」


マミ「そろそろ、このお茶会の趣旨を聞かせて貰えないかしら…?」


彼女を纏う空気が一瞬だけ変わる。

それでも彼女自身は物腰柔らかい笑顔の仮面を崩さずに、静かに私に返す…。



織莉子「もう少しゆっくりお話をしながら……、と思ったのだけど…。

    せっかちなのね」


マミ「申し訳ないけれど………、

   得体のしれない相手とニコニコ笑ってお茶を続けられる程、人間が出来ていないの」


マミ「相手が魔法少女なら、尚更ね」





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556 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/02(水) 00:26:24.04 ID:C5TEHcIv0

睨むように相手を見つめる私に反応し、彼女は瞑っていた眼を開き、カップを置く。

先ほどまでの優雅で温和な表情が打って変わり、強い意志を秘めた瞳で見つめ返しながら返答を始める。



織莉子「では、単刀直入に言うわ」

織莉子「私と手を組みまましょう 巴マミ……」


マミ「…………」

織莉子「貴女の噂は伺っているわ。

    他者の為、人知れず魔法少女と戦い続ける正義の魔法少女として、ね」


マミ「魔女と戦うのは魔法少女の使命……、当然の事よ」


織莉子「いいえ。私達が契約で成されるのは、『願いを叶える』代わりに『魔法少女になる』事まで。

    その後の生き方は特に定められてはいないわ」


織莉子「実際の所、素行の悪い魔法少女にQBが罰則を加えると言うのを聞いた事がある?

    無いでしょう?」

マミ「…………」


織莉子「彼自身、魔法少女の在り方に干渉する資格はないし、興味も無い。

    仮に人間に害なす魔法少女がいたとして、せいぜい情報を流して助力を求めるだけ。

    それをどうこうする力は持ち合わせていないのよ。彼自身が魔女をどうにもできないように、ね」





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557 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/02(水) 00:27:23.38 ID:C5TEHcIv0

マミ「仮にそうだとして、私と手を組む事になんの意味があるの…?

   真面目に魔女を狩る者同士手を結んで、不真面目な魔法少女の尻でも叩こうと言うのかしら?」


織莉子「さすがね。ほとんど正解」


マミ「……………」




織莉子「私はね……、魔法少女の世界に秩序を作りたいの。

    その為に、貴女のような高い理想と確かな実力を持つ魔法少女と手を組みたい……。

    それがあなたをここに招いた理由」


マミ「イマイチ話が見えてこないのだけど………」



織莉子「いいえ、貴女はうすうすながらも勘付いている筈よ」


織莉子「私の行っていた『魔法少女狩り』もその一環であると」





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558 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/02(水) 00:28:35.54 ID:C5TEHcIv0

白々しい芝居を止め、いよいよ敵が自らの招待を自ら明かす。


彼女の表情は変わらない。

でも、私は温和で物腰柔らかいお嬢様としての仮面が完全に外れ、冷酷な魔法少女の一面を覗かせたのを感じ取る…。

同時に感じていた不安感が、威圧感と言う形を取り、周囲の空気を重くしていく…。



織莉子「貴女も聞き及んでいるんでしょう?

    私が『魔法少女狩り』を指示していた者であると……」


マミ「しらばっくれていたから何も知らないのかと思った」


マミ「でも、それを知りながら、よく私と交渉する気になったわね。

   よほど自信があったのかしら…?」


織莉子「………無駄よ」


私は指輪に魔力を込め、座っている椅子に静かに手を着く。

魔力は椅子を伝い、床を伝い、リボン状の高速魔法となって四方八方から敵を襲う…。





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559 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/02(水) 00:29:47.10 ID:C5TEHcIv0

マミ「な……!?」

織莉子「無駄だと言ったのに……」


完全な不意打ちであった事も含め、敵を囲むように放った拘束魔法の回避は極めて困難な筈だった。

しかし、敵の魔法少女は拘束魔法の陰から、その眼を青白く輝かせつつ、ゆっくりと姿を現す。



織莉子「何故避けられたのかわからない……、と言った顔ね。

    種明かしをしましょうか…?」


マミ「………随分と余裕なのね」

織莉子「余裕? そんなものはないわ。

    ただ、交渉と言うモノはこちらの手もある程度明かして、信用されなければうまく行くモノではない…。

    まして、私の能力は自らの行動指針にも直結する能力なのだから………」


マミ「行動指針に……、直結する能力って………」



織莉子「………私の能力は『未来予知』」

織莉子「私自信が見る筈の『これから』。そして、私が今見ているモノの『これから』。

    それらのすぐ後から、遥か遠い未来まで見通す事が出来る力。それが私の能力」


織莉子「最も色々と扱いが難しい力だから、全知全能と言う訳にはいかないのだけれど…」





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560 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/02(水) 00:31:53.36 ID:C5TEHcIv0

マミ「未来予知…、魔法少女の秩序…、魔法少女狩り…、そして無関係の暁美さんへの襲撃…」


マミ「あなたが行っているのは、『罪を犯す者』を『罪を犯す前』に裁く……。

   そんなところかしら……?」


織莉子「その通りよ」

織莉子「私の予知は、このまま『何もしなければ』起こる結末を映す…。

    でも、結末が絶対でない以上、その要因の『今』に積極的な干渉をする事で変化を促す事が出来る…」

織莉子「ただ、定められた未来を変えるには、そうそう生易しい干渉ではいけない…。

    だから………」


マミ「相手を殺す、と言うのね………?」

織莉子「そうよ……。

    そうでもしなければ、定められた結末は変わらないから……」


マミ「傲慢だわ」

マミ「神にでもなったつもり? あなたは罪を『犯すかもしれない』と言うだけで人を裁くの?」






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561 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/02(水) 00:33:53.02 ID:C5TEHcIv0

織莉子「じゃあ、逆に聞くけれど……。

    貴女は人を襲う魔法少女がいたらどうする? 魔法少女を襲う魔法少女がいたら……?」


マミ「愉快な皮肉ね。答えるまでも無いわ」


織莉子「では、貴女がその魔法少女に勝てると言う保証は?

    力を付けて増長した魔法少女は恐らく、そう簡単には止まらない…。

    対して、貴女のように命懸けで、それを対処する献身的な魔法少女がこの世にどれだけいるかしら…?」


織莉子「そもそも……、強大な力だけを与えられ、後の事は当人のモラルに委ねらるのみ。

    その割に魔法少女が一度暴走すれば、それを止めるのもまた魔法少女の自由意思に委ねられている……」

織莉子「事を起こすも、それを止めるも全ては魔法少女の意思一つのみ……!

    これほど危険なモノは無いわ………!」


マミ「だから、建前を並べて、そうなる前に裁くと言うの?

   まだ、何もしていないのに……!」





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562 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/02(水) 00:35:50.89 ID:C5TEHcIv0

織莉子「力を付けてからでは全てが遅いの。

    強い力を持つ可能性を秘める魔法少女を確実に裁くには、先手を打つしかない……」

織莉子「そうしなければ………、魔法少女のエゴで世界は滅びるわ。必ずね」


マミ「大げさな言い回しをして、自分達を正当化しても…」


織莉子「いいえ。大げさではないのよ」

織莉子「暁美ほむら……。既に彼女がそれそのものと言えるわ…」

織莉子「彼女の『願い』…。そして、そこから生まれる『エゴ』は世界を滅ぼす……。

    そして、私は己のエゴで世界を滅ぼすような存在を、絶対に認める訳にはいかない…!」


マミ「一方的な言いようね」

マミ「貴女達に襲われた暁美さんがどんな思いをしていたかわかる…?

   道を歩く時、学校で家で、普通に過ごす間も怯え続けて、夜は悪夢に魘されて…!」


マミ「何もしていないのに、その罪を問い……。

   何もしていないのに、その罪を裁く……!

   そんなモノは、あなたのエゴ以外の何物でもないわ…!」


マミ「そして、私はあなたのような存在を、絶対に認める訳にはいかない…!」





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563 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/02(水) 00:37:25.91 ID:C5TEHcIv0

織莉子「…………」

マミ「…………」


織莉子「交渉は決裂、ね…」

マミ「えぇ…」


織莉子「貴女とは手を組めたら良かったけど…」

マミ「それは無理だとわかったでしょう…?」


織莉子「貴女は」

マミ「だって」


織莉子「咎人を守ろうとしている…!」

マミ「罪なき人を殺そうとしている…!」




織莉子「残念ね」

???「全くだよ……! 客人ッ!!!!!」


気配を殺していた強烈な敵意が突如迫る…。

まるで弾丸のように、二つの影が私の背後で交差した。





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564 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/02(水) 00:39:12.14 ID:C5TEHcIv0

マミ「用心と言うものはやはりしておくものね…!」



キリカ「くっ…!」

杏子「伏兵を潜ませてるのが自分だけだと思ったか…?

   考えが甘ぇよ!!!」


紅の影と漆黒の影…。

二つの影が斬り結ぶ中、私と彼女は互いに変身し、戦闘の準備を整える…。



マミ「悪いわね…」

織莉子「お互いにね」


互いの周囲にマスケット銃と、青白く輝く球体が浮かび…。

やがて、それらが飛び交った。





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565 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/02(水) 00:40:15.25 ID:C5TEHcIv0

マミ「ティロ・ボレー!!」

織莉子「無駄よ……!」


マミ「レガーレ・ヴァスタリア!!!」

織莉子「それも無駄ね……」


普通の人間なら回避できない弾幕の雨霰。

そして、その着弾点から派生する暴れまわる拘束魔法。


しかし、白い魔法少女は、回避の難しい圧倒的な物量の攻撃を、平然とかわす。



織莉子「そして、拘束魔法を囮にしての再度の一斉射撃…。

    これはもう『視る』までも無いわね…」

マミ「くっ…!」


織莉子「わからない? 先が『視える』以上、あなたがどれほど連携を組み立てても、弾道を計算しても…」

織莉子「それは全て意味を成さない…!」


織莉子「こんな風にね」





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566 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/02(水) 00:41:47.28 ID:C5TEHcIv0

飛んでくる球体をかわし、両手を振るう。

勿論私の魔力を以て、無数のマスケットの弾幕を作る為だ。

幾ら無駄と言われても、私にできるのは弾幕を張って敵の足止めをする他は無いから…。


私の付近の空中が歪み、魔力がマスケットを形成する…。

筈だった。



織莉子「ふふ…………」

マミ「な………?」


私の周囲には何時しか、敵の青白い球体が浮かび…。

その存在が、魔力の収束を妨害。

生成される筈だったのであろうマスケット銃達は途中で壊れ、出来損いの残骸だけが地面に転がった。





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567 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/02(水) 00:42:58.93 ID:C5TEHcIv0

織莉子「………何の事はない」

織莉子「あなたの銃の発生位置に、私の魔力球を配置しただけの事よ…」

織莉子「そして………」


マミ「くっ……!」

マミ「ぐぅッ……、あっ……、がっ…、あぁッ…」


敵の放った球体を回避したと同時に背後の球体に当たり…。

後は、それに弾かれ、弾かれた先に球体があり、また弾かれ…、それの繰り返し。

ピンボールのように弾き飛ばされた私の体は、床に叩きつけられる事でようやく動きを止める…。



織莉子「今のは、あなたの移動先に魔力球を置いてみただけ。

    まるでお手玉ね」


マミ「げほっ………けほ………」


圧倒的な強さだった。

攻撃でも防御でも圧倒的なアドバンテージとなる『未来予知』。

さらにそれに加えて、相方の黒い魔法少女のエリア魔法『速度低下』も生きているんだろう。

相性の良い二つの魔法が合わさる事で、彼女はほぼ無敵の存在となってしまっている…。

唯一欠点があるとすれば、攻撃が軽く、持久戦に持ち込むくらいできそうなくらい、か…。


申し訳ないけれど、ここは佐倉さん任せかな…?





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568 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/02(水) 00:44:45.76 ID:C5TEHcIv0

杏子「はッ…!」

杏子「どうした! どうしたッ!?」


キリカ「チィッ……!」


杏子「さやか達から随分な使い手だって聞いたが…、この程度か?」

杏子「それとも………、右足でも痛むか!?」


キリカ「コイツっ!」


杏子「申し訳ないが……、アタシらがやってんのは殺し合いだからな。

   欠点突いて、負担かけるのは当たり前なんだよ!」


キリカ「くッ……そッ……!」


杏子「さて、アタシはともかく、アタシの家主様はいっぱいいっぱいみたいだからな…!

   悪いが、ここらで決めさせて貰うぜ!」



キリカ「冗談じゃない……! 私が粘れば織莉子がお前程度…!」


織莉子「キリカ、そのまま動かないで…!」

キリカ「織莉子…? わかった!」





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569 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/02(水) 00:46:02.75 ID:C5TEHcIv0

杏子「なんだなんだ? お仲間にも見捨てられちまったか!?

   だったら…!」


マミ「いけない! 佐倉さん!!! それ以上踏み込んでは駄目!!!!」

杏子「あ…? マミまで何言って…!」


動きを止めた黒い魔法少女に向かい、突進しようとした佐倉さん。

しかし、その動きは私の声に阻まれ、僅かに緩む…。

そして、それが功を奏した。



杏子「うぉ!? 危ねッ!!」

キリカ「惜しいな……。もう一歩踏み込んでれば、今頃キミはぐちゃぐちゃになっていたのに!」


佐倉さんと黒い魔法少女の間に、強烈な衝撃が走り…。

その砂煙の中から、その攻撃を行った一つ目の鎧の魔女が静かに顔を出す…。


周囲は、妙な文様と折れた無数の石柱が浮かぶ静かすぎる風景に変わり…。

四人の魔法少女とティーセットを乗せたテーブル、椅子のみを残してその魔女の結界へと移された。





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570 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/02(水) 00:49:26.81 ID:C5TEHcIv0

杏子「こんな時に、邪魔しに来やがったってのか!」


マミ「こちらだけを向いた魔女の視線……。

   そして、その魔女の背に隠れるようになった二人の位置…」


マミ「やられたわ…。これじゃ、魔女が敵の増援に来たような物ね…」



織莉子「さぁ、キリカ…、撤退しましょう」

キリカ「良いのかい…?」


織莉子「えぇ。ここで戦っても良い結果は『視えない』から…」


キリカ「私の為……だね。ごめん」

織莉子「貴女が傷ついたのは、私の身勝手に付き合って貰っているから。

    だから、気にしないで」


キリカ「…………うん」





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571 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/02(水) 00:51:24.63 ID:C5TEHcIv0

織莉子「…………さて、申し訳ないけれど、私達はここでお暇させて貰うわ」


杏子「ちっくしょう! やっぱ逃げる気かよ!」

マミ「………美国織莉子!」



織莉子「巴マミ…」

織莉子「貴女はご自分の愚かさに気付くでしょう」


織莉子「全てを識った時に、ね……」


マミ「何を………!」



織莉子「また、そのときにわかるでしょう。

    私のやり方が最も正しいとも………」


織莉子「それでは、また。いずれ」



マミ「くっ……! 待ちなさい!!!!!」


魔女の背後で魔力球が弾けて煙幕となり、二人の魔法少女はそのまま姿を眩ました。

私と佐倉さんは、圧倒的な速さで魔女を倒して、その周辺や洋館を探索したけれど、

当然ながら、その姿は愚か、手掛かり一つ見つかる事はなかった…。





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572 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/02(水) 00:52:54.67 ID:C5TEHcIv0

────────

────

──


織莉子「大丈夫……? もうそろそろ彼女の作った試薬が届くと思うのだけど…」


キリカ「問題無いよ。足や体の痛みより、不覚を取った事の方がよほど悔しい…!」

キリカ「それよりも………、今日の交渉を何故行ったのか聞いても良いかな?

    結果は『視えて』いたんでしょ……?」


織莉子「………そうね。親近感を覚えたんでしょうね」

キリカ「………?」


織莉子「同じような未来を目指す為に、自分を省みず、進み続ける彼女…。

    そんな彼女を討つ事に躊躇いを覚えてしまったんだと思う…」


織莉子「相手が『死』にでもしない限り、『未来が変わらない』と言ったのは他ならぬ私なのにね…」



キリカ「……………織莉子には私がいる」






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573 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/02(水) 00:54:17.80 ID:C5TEHcIv0

キリカ「誰も理解しなくても……、世界中の人間全てが織莉子を恨もうとも……!

    私だけは絶対に織莉子の傍に居る……!」

キリカ「織莉子に尽くし、守り、愛し続ける事を誓うよ………!」


織莉子「ありがとう、キリカ………」



織莉子「そうね……。私の理解者は貴女一人で十分……よね?」


キリカ「そうだよ。そもそも巴マミが仲間になるなんて言ったら、私は嫉妬で腐って果てていたね!」


織莉子「ふふっ。もう、貴女って子は…」


そうだ…。

もう迷う事は許されない…。

アイツがもうじき戻ってくる…。

それまでに何としても暁美ほむらを仕留めなければ…。


その為なら、私はどんな手でも使おう…。

どんな卑劣な手段でも…。

どんな凄惨な犠牲を出そうとも…。


私の理想とする救世の為なら…!


―to be continued―



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574 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/02(水) 00:54:54.23 ID:C5TEHcIv0

―next episode―


「潰れてしまった薄っぺらな信念と共に消え逝きなさい」





―【第十四話】魔法少女の真実―


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575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(長野県) [sage]:2011/11/02(水) 20:49:39.01 ID:ulEsODSfo
乙ー
そろそろオリジナル展開になってきましたねー
彼女ってのは誰だろう?かずみの魔法少女か?

どうでもいいけど、次回予告の台詞で某弓兵さんをなんとなく思い浮かべてしまうww
576 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(九州) [sage]:2011/11/04(金) 06:23:21.08 ID:g6pWMNPAO
お疲れ様でした
彼女の正体が気になる
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/08(火) 22:07:50.53 ID:l580BFTc0
乙乙〜
完全に理想主義のマミさんだな、原作で現実主義っぽい部分もあったけど
すでに仲間になってるからか甘いな

織莉子は世界をマミさんは仲間を守るために戦ってる、ある意味主人公っぽい2人だww







そしてスレタイをみてマミさんは一応サブ枠だということを思い出した
578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/09(水) 07:34:14.52 ID:uHN3vceDO
狂信的な理想主義ほど恐ろしい物はないな
579 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(長野県) [sage]:2011/11/09(水) 22:13:42.59 ID:nlZtcDYa0
理想主義でもなんでもないだろ
このマミさんはただ問題から目を背けて、自分の意見を通そうとしてるだけで
理想主義どころかただのわがままなお子様
580 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/10(木) 06:40:29.06 ID:tHuJR0aa0
そりゃまだマミマミはあのナイスバディでまだ中学生ですおし というかオリコさんが他と比べて大人の考えなだけ
581 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/14(月) 00:13:26.47 ID:TVMcFP480

はい。投下します。
時間掛かってしまって申し訳ないです。

レス感謝します。
おりこ問題でやっぱりレス来てますね。
やっぱりと言うか何と言うか、マミさん側が不利なんで擁護も兼ねてレス返します。

つっても、オチに関わるから深い擁護はまだ出来んのですが…。


>>578
マミさんの事ならば、できるだけ多くを救いたいけど具体案は無い甘い理想主義。
おりこの事なら、多を救う為なら少が犠牲になっても仕方ないと言う狂信的な現実主義ですかね。

>>579
おりこのやり方は確かに、掲げた問題点に対する最大の解決策なんですが、道徳的に見れば問題がありすぎる極論なんですよ。

まだ何もしてないのに「君は罪を犯す予定だから今すぐ死刑」となったら、納得できるでしょうか?
まして、危険である事を証明する証拠が、他者にとってはイマイチ信憑性に欠ける予知のみで。
そりゃ世界滅ぼされるかもしれない第三者としては危ないから殺せってなるでしょうが、当人や身内にそれだけで納得しろってのは無理です。

本編三周目のほむらもそうでしたが、真実でも真実と証明できなければ、真実としては認識されないものです。
だからこそ、このSSのおりこも失敗前提で交渉してますし、おりこ本編の彼女は実力行使に出たのでしょうが…。

ようするにマミさんは予知に対して懐疑的な立場ないし、
それが正しいとしても、有無を言わさず暗殺ってのはどうなのかって立場から反論させています。
582 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/14(月) 00:14:27.63 ID:TVMcFP480

織莉子「………薬が届くのは、今日の夜。

    アイツがここに戻るのはそれより少し早い………」


キリカ「つまり、薬は間に合わない。

    まぁいいよ。動かない訳じゃないんだ。どうにかするよ」

キリカ「それより………、勝機はあるの?」


織莉子「巴マミに加え、彼女と互角かそれ以上の佐倉杏子。二人揃えば彼女にも見劣りしない弟子達。

    貴女の状態もあって、この間のように内二つが揃えば互角が良い所。

    一つしかない状況で仕掛けてもそうそう後れは取ってくれない上に、手間取ればすぐに増援が来る。

    そして、恐らく巴マミはそれを意識して全員を行動させている」


キリカ「各個撃破が成功する未来は『視えない』、か」

織莉子「そうなる前に、必ず誰かが駆けつける事が出来る位置に常に全員を配置している…。

    ただ……」


織莉子「彼女の理想は綺麗だけど、それだけだから…」

キリカ「それが…?」


織莉子「夢見がちな少女達も現実を叩きつければ、夢から覚める。

    そして夢から覚めた魔法少女に待っているのは……」
583 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/14(月) 00:15:39.30 ID:TVMcFP480







―【第十四話】魔法少女の真実―







584 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/14(月) 00:16:38.71 ID:TVMcFP480

マミさんが白い魔法少女と戦ってから丸三日。

わたし達はこの二日間、マミさんや杏子ちゃんと行動を常に共にしていた。


二人の体感だと、相手はかなり手強いけど、四人掛かりならどうにかなる。

逆に言えば一人でも欠ければ勝機が薄れるから、各個撃破を狙った襲撃を警戒。

わたしとさやかちゃんもマミさんの家に泊まり、学校の時間は杏子ちゃんも近くで待機させる等、集団行動を徹底していた。


そして今は、魔女退治をしている杏子ちゃんを待ちつつ、杏子ちゃんが襲撃されないよう魔女の結界の入口を見張っている。



さやか「お泊り兼ねた集団行動ってのは良いんだけど、雰囲気が重過ぎるって…」

ほむら「状況が状況だけに仕方ないかと…。

    と言うか美樹さんは緊張感なさすぎでは…」

さやか「何をっ!物には限度ってもんがあって…。ね、まどか」

まどか「………」


さやか「ま〜ど〜かっ!」

まどか「…え? 何?」

さやか「………」
585 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/14(月) 00:18:55.40 ID:TVMcFP480

さやか≪マミさんに言われた事、また考えてたの?≫

まどか≪うん…≫


マミさんに聞いた敵の能力と目的。

それは『未来予知』の力で、将来に悪行を成す魔法少女や候補を先んじて倒す、と言うモノだった。

多少の問題に目をつむれば、被害者を出さずに加害者を倒せる効率的な手段。

だけど…。



まどか≪ねぇ、さやかちゃん≫

さやか≪ん〜?≫


まどか≪やっぱりわたし達が間違ってるのかな…?≫

さやか≪………≫


さやか≪だとしたら諦められる?≫
586 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/14(月) 00:19:30.36 ID:TVMcFP480

まどか≪それは…≫

さやか≪あたしは無理≫


まどか≪さやかちゃん…≫

さやか≪大事な友達を、『かもしれない』で見捨てるなんて≫

さやか≪何が正しいか間違ってるか…、自分で見るまでは信じない。そう決めた≫

さやか≪だから、今はほむらを信じる≫


まどか≪さやかちゃんはすごいね…≫

さやか≪単純なだけだよ≫



???≪泣かせてくれるわね≫
587 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/14(月) 00:20:18.31 ID:TVMcFP480

まどか≪この声…!≫

さやか≪盗み聞きとは良い趣味してんじゃん…!≫


???≪聞かれたくないなら、もっと精度を上げる事ね。最も…≫



織莉子「そんな練習をする機会はもうないでしょうけど…」



川岸にある結界の入口を見下ろせる、この人通りの無い大きな鉄橋の遥か先。

既に変身を終えた純白の衣装を纏う魔法少女が静かに立ち塞がっていた。


離れていても伝わる強い威圧感。

そして、それを放ちながらも凛とした表情を崩さない歪な存在感は、恐怖心をより強く煽る…。
588 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/14(月) 00:21:28.14 ID:TVMcFP480

ほむら「あ、あ…」


マミ「あら、美国さん。待ちきれなくて出てきてくれてのかしら?」

織莉子「えぇ。貴女達に真実を教えに、ね」


さやか「な〜にが真実だ! 何時までもアンタの与太話に付き合うほどこっちは暇じゃないっつの!」

まどか「話は聞かせて貰いました。

    でも、やっぱりほむらちゃんを渡す訳にはいきません…!」


織莉子「愚かね…。目先のモノばかりに捕われて…」

マミ「そうでもないわよ」


マミ「例えば、そこの柱の影に隠れた彼女なんて、見えずともわかるわ」


キリカ「………くっく。やっぱりバレてたか。

    でも………」



キリカ「コイツの気配は、さすがに感じ取れなかったんじゃないかな?」
589 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/14(月) 00:24:47.10 ID:TVMcFP480

黒い魔法少女、『魔法少女狩り』の呉キリカ。

現れる魔法少女は一人である筈だった。


でも、柱の影から現れた人影は二人分…。

呉さんに引きずられる形でもう一人、魔法少女が姿を現した。

前に一緒に遊んだゆまちゃんと変わらないくらいの年頃の、まだまだ小さな女の子。

そんな幼い子があちこちを痛めつけられ、体を拘束され、引きずられている…。



マミ「その子は………」

織莉子「見ての通り、ただの魔法少女」

織莉子「言うまでも無く、後に多くの被害をもたらす、どうしようもない悪い子よ…」


キリカ「そして、『人質』ってヤツでもあるね。

    私には理解できないけど、君達はこう言う赤の他人でも捨て置けないんだろ?」
590 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/14(月) 00:26:00.54 ID:TVMcFP480

マミ「その子と暁美さんを交換とでも言いたいのかしら?」

織莉子「そこまで簡単に行くとは思っていないわ。

    そうね…。あなたのソウルジェムをそこの川に捨てる、と言うのはどうかしら?」


マミ「そうこうしてる内に、二人や暁美さんを倒す腹積もりでしょう?

   舐めないで…! 取捨選択くらい私にも出来るわ」


キリカ「取捨選択、ね。それをしているのは織莉子だって同じだよ」

マミ「………」

キリカ「助けられない相手を捨てるのは互いに同じ。

    じゃあ、キミと織莉子は何が違うんだい…?」


マミ「くっ…」

??≪ったく、甘ったれが…≫

マミ≪…!≫


??≪良いよ。ここは話に乗っておけ≫

??≪アタシが下でアンタのジェムを回収しつつ、そのまま合流する。さやかとまどかだけでも、アタシが上がる数十秒程度なら保つだろ≫

??≪その代わり、奴らが約束破っても、その時は割り切れよ≫


マミ≪ごめん。佐倉さん!≫
591 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/14(月) 00:26:47.32 ID:TVMcFP480

織莉子「わかったでしょう? 全てを救うなんて事は誰にも出来ない。

    だから、どこかで何かを諦めるしかないのよ」

マミ「そうね。そうかもしれない…」


マミ「でも…!」

マミ「私は出来る限りは、それを諦めない!」


さやか「ちょっ…!」

まどか「マミさん!?」


そう言うとマミさんは、ソウルジェムを指輪から変化させ…。

敵の指示通り川に放り投げた。



そして、その直後。

マミさんの足の力が抜け、その場に崩れ落ちた。
592 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/14(月) 00:27:39.81 ID:TVMcFP480

まどか「え…?」

さやか「マミさん! どうしたんですか!?」

ほむら「巴さんっ!? 返事してください!」


織莉子「………」

キリカ「ふふ……」



まどか「だ、大丈夫ですか!?」

まどか「………嘘」

まどか「息してない。…………心臓も動いてないよ!」


さやか「な…!? お前らッ!マミさんに一体何をしたッ!」

キリカ「別に何も」

織莉子「見ての通りソウルジェムを捨てさせただけ」


さやか「だったらなんで! マミさんがこんなッ…」

まどか「さやかちゃん! そんな事良いから治癒魔法を…!」


織莉子「不要よ。今元に戻る。本体が帰って来たから…」
593 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/14(月) 00:31:18.62 ID:TVMcFP480

白い魔法少女の言った事は本当だった。

鉄橋の柱に伸ばした多節槍を巻き付け、それを利用して上に跳ね上がって来た杏子ちゃん。

彼女の登場に合わせるように、マミさんは息を吹き返し、目を覚ました…。


予想だにしない事態。

わたし達は錯乱し、マミさんは何が起きたのかわからず呆け…。

あの杏子ちゃんでさえ、マミさんにソウルジェムを渡しつつも、混乱を隠せていない…。



マミ「何…、どうしたの…?」

ほむら「巴さん!よかった!よかった…!」

まどか「し、死んじゃったかと思ったんですよ…!?」

マミ「死…んだ…? 私が…?」


杏子「何があった…?」

さやか「わかんない…。マミさんが川にソウルジェム投げて…。そのまま息も心臓も泊まっちゃって…!

    でも、アンタが来たら元通りになって…」


杏子「へぇ………」


杏子「……なんか知ってんだろ?」

織莉子「………」



杏子「答えろ!!!」
594 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/14(月) 00:32:45.35 ID:TVMcFP480

キリカ「うるさいな。大声を出さなくても答えるよ」

キリカ「言ったろ?真実を教えに来たって」


まどか「真実…?」

織莉子「えぇ…。魔法少女の真実…」


織莉子「ソウルジェムこそが私達魔法少女の本体…。

    肉体はそれに動かされる屍同然である、と言う知られざる真実をね」


まどか「な、何それ…」

さやか「て、適当な事を言うな!」


織莉子「適当な事だと思うのなら、仲間のでも自分のでも良いから、もう一度川へ投げてみたら?」

キリカ「ソウルジェムと肉体の接続範囲を越えればさっきと同じ事が起きる。

    何度でも気の済むまで試すといいよ」


さやか「う…、嘘だ!」

織莉子「私の言葉が信じられないなら、彼に聞いてみる?」


織莉子「ねぇ、QB。いいえ…」

織莉子「インキュベーター」


QB「お見通し、と言う訳か。さすがだね」

織莉子「あなたの帰りに合わせて、話を進めさせてもらっていたから…」
595 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/14(月) 00:34:00.13 ID:TVMcFP480

白い魔法少女の呼び掛けに応えるように…。

どこからともなく、あの白い妙な生き物『QB』が久々に姿を表す。

彼女の言うような行動をする悪意はとても感じれないその姿を見つけた私は、縋るように問いかけていた…。


まどか「QB! 今のって…!」

QB「織莉子の言った事かい? 訂正するほど間違いではないね」


さやか「そ、そんな…、じゃああたし達…」

杏子「テメェは…何てことを…。ふざけんじゃねぇ!!

   それじゃアタシたち、ゾンビにされたようなもんじゃないかッ!!」

マミ「なんで、そんな酷い事を…」


QB「酷い?」

QB「酷いと言うなら、生身の体のまま魔女との戦いに放り込む…。

   そちらの方がよほど酷いと思うけどね」

QB「知っての通り、魔女との戦いは過酷だ。

   ただの人間と同じ、壊れやすい身体のままで魔女と戦ってくれなんて、とてもお願い出来ないよ」
596 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/14(月) 00:34:59.57 ID:TVMcFP480

QB「魔法少女との契約を取り結ぶ僕の役目はね。

   君たちの魂を抜き取って、ソウルジェムに変える事なのさ」

QB「そもそも君たち人間は魂の存在なんて、最初から自覚できてないんだろう?

   そのくせ、生命が維持できなくなると、人間は精神まで消滅してしまう」


QB「そうならないよう、僕は君たちの魂を実体化し、手に取ってきちんと守れる形にしてあげた」


QB「むしろ便利だろう?

   心臓が破れても、ありったけの血を抜かれても、その身体は魔力で修理すれば、すぐまた動くようになる」


QB「ソウルジェムさえ砕かれない限り、君たちは無敵だよ。

   弱点だらけの人体よりも、余程戦いでは有利じゃないか」


まどか「そんな………。じゃあ、わたし達は本当に………」

さやか「……………」


キリカ「とまぁ、こんな感じなんだって」

QB「それよりも驚いたよ。君達が魔ほっ…」


キリカ「解説ご苦労様。だからもう消えて? ね?」
597 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/14(月) 00:37:11.50 ID:TVMcFP480

キリカ「キミの存在は! とても! 不快! だからさっ!」


一通りの説明を終えたQBは、呉さんの鉤爪に引き裂かれた。

八つ裂きになった死体をそれでもまだ切り裂き、肉片になったのを見て、ようやく手を止める。


怖気すら走る狂気の沙汰。

人間ではないし、騙していたとは言え、知り合いが惨殺された事。

でも、それら全てが今のわたしには他人事だった。


動く死体。

それこそが魔法少女の正体…。

その事実を受け止め切れず、わたしは愕然とする事しかできなかったから…。
598 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/14(月) 00:38:06.39 ID:TVMcFP480

杏子「まどか…」

まどか「……」


杏子「さやか!」

さやか「……」


杏子「チッ…!」

杏子「もういい。お前らは、ほむら連れて逃げろ」


まどか「え…」

さやか「だって…」

杏子「そんなんじゃ戦えねぇだろ…」

さやか「でも…」


杏子「足引っ張りは邪魔だ、消えろ!」

さやか「ごめん…」

まどか「行こう、ほむらちゃん…」


ほむら「………はい」

ほむら「巴さん、佐倉さん…。二人ともご無事で…」


事実に耐え切れず立ち尽くしていたわたし達は、杏子ちゃんに言われるまま、ほむらちゃんを連れてその場を離れた。

すぐにそれを後悔すると考える事さえ、出来ないまま…。
599 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/14(月) 00:39:16.31 ID:TVMcFP480

杏子「異論ないな、マミ…」

マミ「………えぇ」


杏子「悪いけど、アンタには付き合って貰うぜ」

マミ「………わかってる」


とは言ってるが、マミも内心は穏やかじゃないだろう。

正直、アタシも結構きついが…。

あの二人と違って、状況を目の当たりにした訳じゃないから、混乱の度合いもまだ薄い。

だから、頭の理解が完全に追いつく前にコイツらを始末するっきゃないだろう…。


あっちの黒いのはまだ足に包帯巻いてる所を見ると、怪我は完治していねぇ。

マミの精神状態が不安だが、どっちにしてもアタシがアイツを手早く始末できなきゃ勝てない相手だ。



先手必勝。

そう考えている所だったんだが、敵にまたも先手を打たれる。

しかも、考えうる限り、最悪な形のものを。
600 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/14(月) 00:40:58.85 ID:TVMcFP480

織莉子「さすがに、貴女達二人はこの程度では沈まないのね。

    新人さん達と違って、化け物染みてる力に自覚を持っていたのか、状況を直視していないから飲み込めていないだけか…」


キリカ「さ〜て、ここからは第二幕。

    今度は君達も『気に入って』くれると思うよ?」


そう言うと黒いヤツは、右手の鉤爪を一本だけ発生させ…。

それを人質に…。

年端も行かない魔法少女に向かって振りあげると……。



マミ「!?」

杏子「てめぇ、何をッ…!」


人質の魔法少女「た……助け……」


キリカ「ごめんね?」

キリカ「でも、この世界の為に………」


キリカ「『絶望』してくれ」


その首を綺麗に跳ね飛ばした。
601 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/14(月) 00:42:15.53 ID:TVMcFP480

マミ「あなた達はッ…!」

杏子「上等だよ! それがテメェらのやり方かッ!」



キリカ「言ってろ。すぐにどちらが『正しい』かわかる筈さ」


マミ「そんなものッ!」

杏子「わけわかんねぇ事言ってんじゃねぇッ!」


少女の生首が転がり、自分の体と対面する。

吐き気を催す凄惨にして、残酷な光景。

それを見て、アタシの中で沸騰したお湯のように、怒りの気持ちが煮えたぎった。

だが…。


それすらも忘れる『変化』はすぐに訪れた。
602 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/14(月) 00:43:38.58 ID:TVMcFP480

マミ「え……?」

杏子「ちょっと………、待てよ……。

   あれって………」


マミ「グリーフシード………!?」


首を失くした少女の胸の位置にあったソウルジェム。

穢れきったそれは砕け散って、見覚えのある『魔女の卵』へと変化する…。


そして、そこからは穢れきったただの『グリーフシード』と何ら変わりはしない。

物凄い衝撃を伴いながら、結界を作り出し…。






魔女「麩giィィィぃぃぃぃゐ鋳ィィ!!!」


当然のように『魔女』へと姿を変えた。
603 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/14(月) 00:44:35.20 ID:TVMcFP480

マミ「これ………」

杏子「なんだよ……。これ………」


杏子「一体、なんなんだよッ!?」



キリカ「見ての通りさ」

キリカ「絶望した魔法少女の末路…。

    それが『魔女』だって言う事だよ」


マミ「う……そ………」

マミ「じゃあ、私は……?」

マミ「今まで何をやって来たの………?」


マミ「私自身は……!?」

マミ「私も……? 魔女に……?」


織莉子「魔法少女そのものでも危険なのに…。

    その末路に待っているのは、私達が敵とするあの邪悪な『魔女』」

織莉子「魔法少女自身が邪な心を持たなくても……、全ての魔法少女は人の害となる可能性を秘めている」



織莉子「理解していただけたかしら」

織莉子「魔法少女と言う存在の真実。危険性。

    そして、私の決断の『正しさ』を」
604 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/14(月) 00:45:42.08 ID:TVMcFP480

マミ「あ………ああぁ……」

杏子「くそっ…………」



キリカ「無様だね、巴マミ」

キリカ「織莉子はその『真実』を知って尚、揺らぐ事はなかった。

    それがキミと彼女の差だよ」



織莉子「みんな、真実を受け入れられないのね」

織莉子「異物のように、毒のように……。

    えづき侵され、壊れていくだけ」

織莉子「だから、心乱れてもうまともに戦えない」


織莉子「私は真の『恐怖』を識っている。

    こんな『真実』、恐れる事はないわ」


織莉子「自らの運命すら受け入れられず、ただ立ち竦む哀れな魔法少女達…」

織莉子「潰れてしまった薄っぺらな信念と共に消え逝きなさい」



織莉子「貴女達の目指した理想は、私の目指す形で叶えてみせるから」
605 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/14(月) 00:48:14.35 ID:TVMcFP480

魔女「尾ッほ頬ォー! 肺ホー!」

マミ「………」


キリカ「さて、どうする?

    魔女をうまく利用してコイツらを仕留めておく?

    それとも戦意喪失した新人二人と一緒にいる目標を叩く?」


魔女「あ亜冷ひゃヒャHya〜♪」

杏子「くっ……」


織莉子「…………」


織莉子「この魔女はかなり手強い。利用しようとすれば足元を掬われて、酷い損害を伴って後に支障が出る。

    そして、目標に中途半端に手出すのも駄目ね。こちらも行けば最悪の事態が訪れる…」


キリカ「どちらも今は対処すべきじゃない、か」

織莉子「勿体無い気もするけれど…、このまま撤退しましょう。

    そうすれば薬も届くから、次回からは貴女もベストな状態で戦える」


キリカ「……………わかった」



織莉子「………ごめんなさい。巴マミ」

織莉子「そして、さようなら」
606 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/14(月) 00:49:56.14 ID:TVMcFP480

士気って言葉がある。

戦いにおける気の入り方みたいなもんの事だ。

そんな言葉がある事からも、命のやり取りにおける精神状態の大切さは言うに及ばない。


そして、その精神を見事に叩き折られたアタシ達は、

目の前にいるくしゃくしゃのドクロみたいなふざけた魔女に、一方的に押されていた…。



魔女「浮鵜爬ハha破は羽ァぁぁぁa!!!!」


杏子「ちくしょ…!」

杏子「おい、マミ…! とりあえずどうにか脱出だけでも……」


マミ「………」


杏子「マミッ!」

マミ「…………もういいわ」


杏子「馬鹿野郎! お前、何言って……」

マミ「もういいと……、言ったのよ………。

   だって…………」


マミ「ソウルジェムが魔女を産むなら、みんな死ぬしかないじゃない…」
607 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/14(月) 00:51:17.92 ID:TVMcFP480

失意に満ちた顔で、アタシをただ見つめるマミ。

ただ、アイツの言ってる事もわかる。


将来、魔女になる事が約束されてるアタシらが足掻いて、生きて、それで何になるってんだ…?

それなら、いっそ…。



魔女「蘭、卵、覧♪」

魔女「乱!!!!!!!」


マミ「……………」



杏子「ッ……! やらせるかよッ!!!!!!」


それでも、諦めかけたアタシの体は動いてた。

魔女に襲われたマミを突き飛ばし……、同時に槍を繰り出した………。
608 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/14(月) 00:52:00.93 ID:TVMcFP480

目の前で、大切な人を………、失いたくないって、事なんだろうか…?


化け物かもしれないけど…。

化け物になるかもしれないけど…。

それでも、この人は……。


マミは尻もちをついてるが、どうも無事みたいだ。

ただ、足を止めていた代償は大きかった。

マミを庇うように飛んだアタシと魔女は刺し違えた形になり、互いに深手を負った……。



杏子「がはッ……、あ………」

マミ「佐倉さん………」


杏子「いけ…………」

マミ「もう……いいって……」


杏子「アンタが死ぬとこなんて……、あ、アタシが見たくないんだ! 行けッ!!!!」


マミ「ッ……!」
609 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/14(月) 00:53:58.79 ID:TVMcFP480

杏子「へっ……」

杏子「い、行ったか…………」


さて、アタシはどうするか…?

ここで、諦めるか?

それとも、まだ……。



魔女「ウぐ虞…。ヒ魏ぎぎ…」


杏子「……さ…、さっきのが効いてんのか?」

杏子「なら、テメェっ……を倒せば……!」


目の前にいるくしゃくしゃドクロはさっきの一撃が効いたのか、苦しそうに血反吐を吐いている…。

勝機が見えたら、多少なりとも心が切り替わる。

我ながら現金なもんだ


正義の味方をやめちまった影響もあるんだろうか?

どうも、アタシはマミほど、おセンチにはできていないらしい…。
610 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/14(月) 00:55:53.26 ID:TVMcFP480

杏子「とりあえず……、生きて……」

杏子「それから、ゆっくり考えりゃ……」



魔女「O嗚汚エ餌ぇェぇぇeェ…」


杏子「なっ…!?」


アタシが魔女に斬り込もうとした時だった。

魔女の撒き散らした血反吐が、突如アタシの両手足に巻き付き…。

そのまま、溶解させた。


両手足を失い、達磨となったアタシは勿論そのまま地面に転がる。



杏子「なん……だ……」

杏子「やっぱ……」

杏子「終わり……か………」



まぁ良いや……。

どうせ、アタシらに待ってる結末なんてのは、コイツらと同じふざけた存在になるだけなんだ。


だったら、もう………。


―to be continued―
611 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/14(月) 00:56:48.10 ID:TVMcFP480

―next episode―


「恋の相談ですわ」





―【第十五話】悲劇の序曲―

612 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/14(月) 00:58:05.85 ID:sNCFzyRIO
あんこおおおおおおおおお
613 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方) [sage]:2011/11/14(月) 08:35:00.36 ID:LrlPp74G0
ソウルジェムの有効範囲は100Mだから近くに投げ捨てただけじゃあ仮死状態にならないような…

それはともかく、杏子がピンチを切り抜けるには?
1.ゆまが魔法少女になって助けに来てくれる、ついでに「いつかは今じゃない」と言われて精神も立ち直る。
2.マミさん達が助けに来てくれる。
3.どうにもならない、現実は非常である。

事態を把握したQBがゆまを魔法少女にしようとすれば先回りした織莉子達に殺されるだろうし
マミさん達も逃げるのに精一杯、どうあがいても絶望…。

次回のサブタイトルのセリフは仁美?
事情を知らないから言えるだろうが、空気読めと言いたくなる…。

狂信的な現実主義と言うと、織莉子が衛宮切嗣のように思えてしまう。
彼も目的のために手段を選ばないし、
営利誘拐やバイオハザードを防ぐ為とはいえ旅客機を撃墜等、本物のテロリスト。
甘い理想主義のマミさんは衛宮士郎と言ったところか、
彼女も心が擦り切れるまで戦ったら髪が真白になったりするんだろうか?
614 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岩手県) [sage]:2011/11/14(月) 12:41:40.97 ID:fSS04Rxgo
過去のトラウマによって完成した彼らの正義と
ただ雰囲気に酔ってるだけの彼女らの正義(笑)は一緒にできないと思うの
615 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/14(月) 19:41:18.08 ID:FaVsyM9b0
恋の相談キターーーーーーーーwwwwwwww
そしてゆまぁあああああああああ早くきてくれえぇえええええ!!

>>613
織莉子が切嗣っぽいとは確かによく聞くな、2人とも悪いことだとわかりながら自分を殺して行うところとか
とはいえ別に狂信的な現実主義化といわれると微妙なんだよ、むしろ人を救う立場であったら当然の判断でもある
ただ確かに道徳的にはかなり問題があるから生前のセイバー見たいに仲間から見捨てられ孤立して最後は死ぬ運命でもある、アーチャー(英霊以前の士郎)も似たようなことやってて最後は自分が助けた相手に裏切られて殺されてるしね
616 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/14(月) 20:35:29.71 ID:rp07zyvDO
主人公がもしかしたら全人類を滅ぼすウイルスになりますってラストで
自ら師の墓で命断った時のその主人公と半生を共にした親友の台詞が全人類としては正しい選択だ見たいな内容の映画あるけど
実際危機を知った人が限られているなら、可能性でも摘むもんだろ
617 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(大阪府) [sage]:2011/11/14(月) 22:38:19.95 ID:0MoIr7Rno
織莉子は世界を救いたいんじゃなくて世界を救うことで誰かに認めてもらいたいだけのお子様です
教育が悪い。親が悪い
618 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長野県) [sage]:2011/11/15(火) 06:41:37.78 ID:KGb/Uv1s0
>>617
作中でそんなこと言われて無いけどな

>>616
もし保守ではなく前に進もうとするならそれだけの覚悟と意思が必要だけど
このスレはどちらかというとプリキュア枠だから、仲間を信じてそれで成功する感じの
619 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/15(火) 06:49:17.94 ID:kFACDVjDO
まぁプリキュア枠じゃなけゃマミさんこそ切嗣見たいになりそうだけどな

過去の切嗣は危ない存在になるかもしれない少女を殺せなくて
結果として島ひとつ壊滅
その後今の切嗣のようになった訳だし
620 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/23(水) 07:43:33.84 ID:pkxJZka+o
議論すんなうぜぇ
621 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/26(土) 00:09:50.59 ID:LEsOYMVs0
はい。投下します。
割と軽はずみな気持ちで出したおりこちゃんがハードルを高く高くしてくれてる
困った困った

みなさん、レス感謝します


>>613
あ〜、そう思って大きな鉄橋って書いたんですが、調べたら高さ100m級の鉄橋は思ったよりも多くないんですね…。
落下の衝撃を和らげるとかの描写もやってないし、ここは会話と描写を面倒くさがらずにアニメ本編通りトラックに運ばせりゃよかった。
でも、アニメのあのシーンって戦闘になれば、車乗ってる方々が上見て色々と不思議がるのでは…?と思ったけど、
よく考えれば聖杯戦争とかと違って、秘匿義務もないんだった…。

まぁ高さ100mの橋からジェム落として、落下の衝撃うんたらは杏子ちゃんにお任せって事で…。


>>616
その映画を自分は知りませんが、それはその主人公がそれを知って自分で死を選んだからこそ意味があると思うのですが。
仮に相手が大きな危険性を孕んでるとして、その相手を一方的に蹂躙する事を常々肯定するなら、この世界は戦争で滅びてますね。
622 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/26(土) 00:11:10.96 ID:LEsOYMVs0

織莉子「あら、おはようキリカ。もう少し待っててね。

    朝ごはんが出来るから」

キリカ「この匂いは……、ホットケーキだね!

    ハチミツとバターとシロップはたっぷりで頼むよっ!」

織莉子「はいはい」


キリカ「昨日飲んだ例の薬がとんでもなく不味かったから、口直ししないとね。

    あ〜、まだ口の中に残ってるようだよ。一体何を入れたんだか…」


織莉子「彼女の固有魔法を回復に応用する為に作った試薬って話ね。

    一応、薬の知識をある程度持った仲間の協力は得ているみたいだけど、多分聞かない方がいいと思うわ…」


キリカ「でも、まぁそのおかげか体調も随分良くなった。今日からは織莉子の役に立てそうだよ?」



織莉子「…………今日はまだ、様子を見ましょう」


キリカ「何故? 悪いモノでも視えた?」

織莉子「昨日と同じ。今、目標に手を出すと勢い任せで契約をされる恐れがあるから…」


キリカ「でも……、だったら何時動くの?

    時間はまだあるけど………、のんびりしている程の余裕はない筈だよ?」

織莉子「もう少し………もう少しだけ待ちましょう」


織莉子「もう少し待てば………」
623 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/26(土) 00:11:48.86 ID:LEsOYMVs0







―【第十五話】悲劇の序曲―









624 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/26(土) 00:12:22.32 ID:LEsOYMVs0

真実を知った衝撃の一日が終わり、夜が明け、朝がやってくる。


あの場に残ったマミさんと杏子ちゃんはとうとう帰って来なかった。

今朝早くさやかちゃんが、二人を探しに行ったみたいだけど、連絡が来ないと言う事は言うまでも無いんだろう。


仲間を見殺しにしてしまったかもしれない罪悪感と、大切な人を失ってしまったかも知れない不安。

辛い事実が重すぎる真実に苦しむわたし達の心に上乗せされた…。


それでも、わたし達は学校に向かう。

ほむらちゃんの安全を考えれば、人の多い所の方が敵もやりにくい筈だから…。



さやか「おっはよぉ、ほむら」

ほむら「おはようございます…、美樹さん…」


さやか「相変わらず、ほむらは可愛いな〜。あたしの嫁になるかぁ?」

ほむら「そ、そんな…」


まどか「…………」
625 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/26(土) 00:13:02.02 ID:LEsOYMVs0

さやか「おっす、まどか」

まどか「うん………」


さやか「何、その顔? ひょっとしてほむらに嫉妬?

    大丈夫ですよ〜、さやかちゃんの一番の嫁は…」

まどか「そうじゃなくて…」



さやか「あたしなら平気。見ての通り、さやかちゃんは元気いっぱいですよ〜!」

まどか「さやかちゃん………」

さやか「おっ、あそこに居るのは仁美! お〜い、ひっと、み〜!」



ほむら「思ってたよりも元気そうですね。美樹さん」


まどか「ほむらちゃんにはそう見えちゃうんだ……」

ほむら「え………」


まどか(さやかちゃんは、空元気が上手なんだ……)

まどか(でも、わたしにはわかっちゃうから…)
626 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/26(土) 00:13:35.17 ID:LEsOYMVs0

平気なわけ、ないよ………。

いつもいつもムードメーカーに徹してて…。

自分で勝手に諦めたり、否定したりするけど…。


さやかちゃんは、本当は誰よりも純情で一途な女の子だもん………。



だから………、平気なわけ、ないよ……。

すごく辛い筈だよ。

すごく苦しい筈だよ。


好きな人がいるんだもん。

ずっとずっと好きだった人がいるんだもん…。


わたしなんかより、何倍も苦しい筈だよ………。
627 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/26(土) 00:14:07.16 ID:LEsOYMVs0

さやか「おっはよぉ〜! 仁美」

仁美「おはようございます。今日は随分テンションが高いんですのね。

   良い事でもありましたか?」

さやか「ん? いや、全然」



仁美「……………今日なら、良いかもしれませんわね」

さやか「ん? 何か言った?」

仁美「さやかさん、放課後少しお時間よろしいでしょうか?

   大事なお話があるのですが……」



ほむら「何話してるんでしょうか…」

まどか「……………」




さやか「良いけど。何、話って?」

仁美「………………」


仁美「恋の相談ですわ」


さやか「え………」
628 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/26(土) 00:15:04.69 ID:LEsOYMVs0

ほんの少しの距離が…。

ほんの少しの強がりが…。

ほんの少しの傲慢が…。


互いの関係を壊していく…。



わたしは、この時はほむらちゃんといて、二人の会話を聞いていなかった。

さやかちゃんは、辛い精神状態を笑顔で誤魔化した。

仁美ちゃんは、そんなさやかちゃんを見て今なら大丈夫と高を括り、自分の気持ちを押し通そうとした。


結果、親友と呼べたわたし達三人は大きくすれ違い…。

その関係に大きな亀裂を生じさせていく…。
629 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/26(土) 00:15:58.11 ID:LEsOYMVs0

――放課後――



ほむら「遅いですね、美樹さんと志筑さん…」

まどか「うん………」


ほむら「鹿目さん」

まどか「……………」


ほむら「鹿目さん!」

まどか「え、何?」


ほむら「美樹さん、来ましたよ…?」



さやか「…………」


まどか「さやかちゃん……?」
630 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/26(土) 00:16:43.68 ID:LEsOYMVs0

さやか「………さ、帰ろっか」

まどか「何かあったの?」


さやか「…………何もないよ」

まどか「嘘だよ! わたしにはわかるもん…」


さやか「……………」

まどか「約束………したじゃない………」


さやか「…」

さやか「………」


さやか「…………しよう」

まどか「え…?」



さやか「どうしよう、まどか…」


さやか「仁美に恭介を取られちゃうよぉ……」
631 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/26(土) 00:17:27.27 ID:LEsOYMVs0

魔法少女の真実を知って尚、明るく振舞っていた今朝とは一転。

突然の涙を流すさやかちゃんを抱きしめる…。

普段見せない弱気なさやかちゃんに心が締め付けられそうになりながらも、事の顛末に耳を傾ける…。



まどか「どう言う事…?」

さやか「仁美に言われたの……。

    前からずっと恭介の事が好きだったって……」


ほむら「そんな………」


さやか「それで、あたしは恭介の幼馴染だから一日だけ待つって……。

    でも、あたし何も出来ない…」

さやか「だって、あたし死んでるんだもん…。ゾンビだもん…」


さやか「こんな身体で抱き締めてなんて言えない。キスしてなんて言えないよ…」



まどか「さやかちゃん……」

ほむら「美樹さん………」
632 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/26(土) 00:21:44.89 ID:LEsOYMVs0

なんて残酷なんだろう…。

さやかちゃんはずっと上条君を想ってて…。

危険を承知で魔法少女になって、その腕を治してあげるくらい、好きだったのに……。


さやかちゃんはもう、人間じゃなくなってるなんて……。




「他人の夢を叶えてあげるのと、他人の夢を叶えた恩人になるのとでは、似ているようで全く違う…」


マミさんの言葉が頭をよぎる…。

そして、他人の為に願い、その願いで何もかもを失った杏子ちゃんの姿が浮かぶ…。

他人の為の願いに苦しんだ杏子ちゃんと、その杏子ちゃんと親しかったマミさんなら、さやかちゃんを救えるんだろうか…?

そんな事を考えると同時に、二人の事を思い出して情けなさと悲しさと不安が心を満たす。



このまま、さやかちゃんの願いや気持ちも裏切られちゃうの…?

そんなのって…。
633 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/26(土) 00:22:51.10 ID:LEsOYMVs0

まどか「そうだよ!」

まどか「わたしも一緒に行って、上条君に事情を説明すれば……」


さやか「言えないよ…。だって、わたしはもう………」

さやか「それに、何て言えば良いの…?」


さやか「『あたしは実は恭介を助けました。だから、あたしの彼氏になってください』

    そんな……、そんな卑怯な事を言うの?」

まどか「………」


まどか「だったら…!

    わたしが仁美ちゃんにうまく言って、告白を待ってもらえば…」

さやか「そんな時間は、ないみたいだね…」



まどか「魔女の反応……、こんな時に………!」


さやか「行こう」

まどか「でも、さやかちゃんは…」

さやか「もう大丈夫。スッキリしたから」


さやか「さあ、行こう。今日も魔女をやっつけないと」

まどか「さやかちゃん………」
634 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/26(土) 00:24:59.75 ID:LEsOYMVs0

本当は止めるべきだったんだと思う。

さやかちゃんの精神状態が最悪なのは、わかっていたから。


でも、時間の無いわたしは焦っていた。

さやかちゃんの為にも早く戦闘を終わらせたかった。

だから、さやかちゃんを止める事まで頭が回らなかった。


そして……。




まどか「当たって…! 当たってよ!」

まどか「早くしないと……、早く……」


さやか「まどかっ、焦り過ぎだよ…!」


まどか「あ………」


さやか「危ないっ!!!!」


焦るわたしは攻撃を外し続けて、大きな隙を作る。

敵の魔女は当然、大きすぎるその隙を見逃さず、攻撃を仕掛ける。

そして、その攻撃はわたしを突き飛ばすようにして庇ったさやかちゃんを貫いた…。
635 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/26(土) 00:26:14.11 ID:LEsOYMVs0

さやか「…………」

まどか「さやかちゃん!!!!」


さやか「アハハハハ……。ほんとだぁ……!」

まどか「え………?」



さやか「その気になれば痛みなんて、完全に消しちゃえるんだ!!!!!」


普通だったら助からない重症だった。

左肩が裂け、右足からは骨が飛び出し、右の脇腹、さらに左眼を中心に頭部を貫かれていた…。


でも、さやかちゃんは狂ったように笑いながら振り向き…。

そんな状態でありながらも何事も無かったかのように、敵へと向かっていく…。


さやかちゃんが敵へと届く僅かな時間で見る見る内に傷は塞がり、肉体的なダメージはすぐに消えた。
636 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/26(土) 00:28:02.44 ID:LEsOYMVs0

さやか「アハハハハハハ!!! 何もかもQBの言った通りだぁ…」

さやか「もう……、何も感じない…!」


まどか「さやかちゃん……、そんな戦い方じゃ………」

ほむら「………」


さやか「えッ! えいッ! アハハハ! アハハハハハハハハ!!!!!」

まどか「駄目………だよ……」


わたしを庇った際に負った死に至る筈の重傷。

でも、どこか壊れてしまったのか、さやかちゃんはその痛みを感じていなかった…。


そして、それを目の当たりにしたさやかちゃんは多分、わたしと同じ事を考えたんだろう。

わたし達、本当に人間じゃなくなったんだ……って。

この事実はさやかちゃんに改めて現実を突きつけ、心には致命的なダメージを与えてしまった…。


そこから先のさやかちゃんは自暴自棄になって、自身を傷つけるように戦い続けた。

顔に、目に、胸に、腹に、手に、足に傷を負い、穴が開き、時には無残に裂けて…。

それでも、殴りつけるように剣を振るう動きは止めず、そうこうする内に傷が治り、また敵の反撃でダメージを負う。

それの繰り返し…。


やがて魔女の方が力尽きる。

それでも、さやかちゃんは止まらず、結界が消えるまで剣を振るい続けた…。
637 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/26(土) 00:29:10.26 ID:LEsOYMVs0

まどか「さやかちゃん、グリーフシード…」

さやか「いらない」


まどか「さやかちゃん!」

さやか「本当にいらないから、まどかが使って」


まどか「駄目だよ…」

さやか「何が」


まどか「グリーフシードいらないって言ってみたり、あんな戦い方したり…。

もっと自分を大事にしなきゃ…」



さやか「いいんだよ。本当に必要ないし、痛くも無いんだから」

まどか「よくないよ…!」
638 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/26(土) 00:30:07.49 ID:LEsOYMVs0

まどか「痛く無いなんて、ウソだよ…。見てるこっちが痛かったもん…。
    
    何も感じないから、自分を傷付けていいなんて駄目だよ…」


さやか「だったら、どうすれば良かったのよ!」

さやか「マミさんも杏子もいない! アンタは当てにならない!

    こんな状況で他にどうすれば良かったのよ…!」


まどか「ごめん…」

さやか「良いも駄目も無いんだよ…。

    アンタもさっきの見たでしょ…?」


さやか「今のあたしは魔女を倒す為の道具なんだ。それだけしか価値の無い石っころ」


さやか「この剣が反り血で汚れても、粗雑に扱って痛んでも、誰も気にしないでしょ…? 

    それと同じ」


さやか「戦いの道具がどんなに傷付いても、誰も、何も、気に止めない…!

    なら、戦いの道具は道具らしく、壊れるまで敵を倒し続けるしか価値なんてないんだよ!」
639 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/26(土) 00:31:06.04 ID:LEsOYMVs0

まどか「違う…。違うよ…。さやかちゃんは…」


さやか「何が違うのよ」

まどか「それは…」

さやか「答えなさいよ…」

まどか「………」


さやか「何で答えないのよ…! 違うんでしょ?

    何が違うのよ!」



まどか「………」

さやか「………」

さやか「そっか…」



さやか「答えられるわけ、無いよね。

    だって、アンタもあたしと同じ…」


さやか「『化け物』なんだから!!!!!」
640 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/26(土) 00:31:47.67 ID:LEsOYMVs0

まどか「ッ…」


ほむら「美樹さん!」

さやか「………」


ほむら「今のは酷過ぎます! 鹿目さんは美樹さんの為を思って…」

さやか「そうだね…」



さやか「アンタだけは、まどかを裏切らないであげてね…」

ほむら「美樹さん、何言って………」



まどか「さやかちゃん…」

さやか「ついてこないで」


さやか「一人に……、してよ……」



まどか「………」

ほむら「………」
641 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/26(土) 00:32:35.17 ID:LEsOYMVs0

最低だ…。

何言ってんだよ、あたし…。


まどかだって…。

まどかだって辛いのに…。当たり散らして…。


それにほむらだって、また何時襲われるかわからないのに…。

置いて…、来ちゃって…。




もう救いようがないよ…。

もうどうしようもないよ…。
642 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/26(土) 00:33:28.91 ID:LEsOYMVs0

わたしは、さやかちゃんを追えなかった。

うぅん、追わなかった。

また、拒絶されるのが怖くて…。


さやかちゃんの言う通り『化け物』のわたしが、掛ける言葉なんて無くて…。

『戦いの道具』としても、さやかちゃんの役に立てなかったわたしが言える言葉なんて…。


だから、答えられなかった…。

泣きそうな顔をしたさやかちゃんの問いかけにも…。





わたしは、すぐにそれを後悔した。

でも、それでも遅すぎた。


マミさんや杏子ちゃんと一緒…。

一日経っても、二日経っても、三日、四日と経っても…。



さやかちゃんは戻ってこなかった。
643 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/26(土) 00:34:14.47 ID:LEsOYMVs0

――見滝原市内廃墟――



マミ「………」


魔法少女は魔女になる。

それは私自身も魔女になる卵も同然と言う事。

また、魔女と言う存在も魔法少女の成れの果てだと言う事。


そして、それは私がやってきた魔女退治も、美国織莉子達の魔法少女狩りも、結果としては大差がないという事…。



私はたくさんの命を奪ってきた罪人で…。

それに何時魔女になるかわからないから…。


だから、そうなる前にって…、そう思ったのに…。

でも、佐倉さんはそんな私を庇って…。
644 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/26(土) 00:35:09.71 ID:LEsOYMVs0

マミ「もう…、わからない…」

マミ「何が正しくて…。どうすれば良いのか…。

   もう、私には…」


???「そう、それは良かった」

???「随分長持ちしたようだけど…。醜態を曝し続ける貴女は見るに堪えない…」


織莉子「だから、私がこの手で葬ります…。後回しにして、多くの被害を出す魔女になる前に、ね」



マミ「貴女…達」

キリカ「わからないんだろう? 考えたくないんだろう?

    なら、もう何も考える必要はないよ」


キリカ「善も悪も全て織莉子が決めてくれる。そして、キミは悪として裁かれろ!」



織莉子「安心していいわ。寂しい思いはもうさせない。

    ………ある事をきっかけに貴女の後輩達も直に全滅する」

マミ「まさか…」



織莉子「えぇ。美樹さやかは魔女になる」



―to be continued―
645 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/11/26(土) 00:35:39.79 ID:LEsOYMVs0

―next episode―


「未来? 運命? そんなモンで勝手に決められて、それだけの為に殺されてたまるか!」





―【第十六話】それぞれの選択―

646 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/26(土) 05:08:37.50 ID:bp1AZBT60
お疲れ様でした
みんなには頑張って乗り切って欲しいな…
647 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]:2011/11/26(土) 07:01:02.17 ID:zsQDmvWho
乙〜
648 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/27(日) 13:45:04.96 ID:z1RmOnat0
乙カレー空間
さやかが自棄になってまどかにあたる→後悔する→絶望の流れがきてしまったか・・・
ほんの少しのすれ違いですべてが終ってしまうシステムは恐ろしい

しかし>>1には悪いが世界でも割かしあるんだよなぁ、危険を排除する風潮は
ただ最近は国際批判が多くなってきたから少なくはなって来たが、あとは核抑止や金銭問題で目をつぶってたり大人って汚い!
649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/27(日) 14:46:54.81 ID:z0Y6g2aDO
乙乙

そういう背景で小さい国が消えてたりするのに
某国があそこの国は核など作っていないって主張する背景では2つの国で金が動いてましたとか頭が痛くなる話だ
というか>>1はそんなこと気にする必要ないと思うぞ
正義なんて立場や背景で全然違うし一つの正義が他では受け入れられないなんてよくあることだしさww
>>1の思ったままのストーリーが変わらないように頑張れ
650 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/28(月) 23:51:27.56 ID:hpW9NOeS0
乙です。

織莉子は他の誰よりQBに似てる気がするな
少数の犠牲を良しとして、世界(地球)を救おうとする織莉子
少数の犠牲を良しとして、世界(宇宙)を救おうとするQB
スケールの違いこそあれ、本質は大差無いよね

おりこ本編読んでないけど、もし織莉子が魔法少女の魔女化によるメリットを知ったとしたらどうするのか……
真の救世のために魔法少女達の魔女化に励むのか?
あるいは、自ら魔女化して救世の礎となるのか?
それとも、目先の危機回避のために進路変更無しなのか?


全く関係ないけど、未来予知による悲劇の予防って「マイノリティ・リポート」を思い出すな〜
651 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/29(火) 07:54:58.46 ID:VlshbZnDO
どうだろうな、オリコ週の時点でまどかは世界壊滅レベルに因果が達してたから
オリコが世界が滅ぶのを見てる以上平和策が取れなかっただけかもしれないし
652 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/30(水) 09:52:37.14 ID:V2TxsSj30
よほどまどかと親しくない限り
まどかを殺して止めようとする方が無理のない思考だと思ってしまう
653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/30(水) 21:49:29.63 ID:LgPBYz1N0
実際オリマギだとそうだろうなぁ

例えるなら近くに住んでる科学者が一瞬で止めるまもなく地球を壊せる爆弾を作ってしまいました
科学者が使おうと思う、または科学者の願いを何でも一つかなえる代わりに爆発します
その科学者が生きている限りその爆弾は作動するかもしれません
なおその科学者と爆弾を認識できるのは貴方だけです

こんな感じだからな
654 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方) [sage]:2011/12/01(木) 09:10:09.21 ID:eyNWrm560
さやかが痛覚遮断をしていたけど、QBは痛覚遮断の説明をいつしたんだ?

おりこ☆マギカでゆまに「いつかは今じゃない」と言われてマミさんと杏子があっさり
説得されたのをみると考え方次第なんだなと思った。
人間と同じく魔法少女もいつかは死ぬ、死に方が人間とは違う死に方をするというだけの事。

ソウルジェムが本体にしても戦闘なら有利と言えるし(逆にそこに攻撃が直撃したらアウトだけど)
日常生活にしても取り上げられたり、壊されたりしない限り、問題ない。
強制的に人間を止めさせられたり、目的の為に人間を止めるキャラはフィクションにはいくらでもいる。

Nierというゲームの主人公達は人間に作られた人間もどきだと知り、今まで殺してきた
敵(マモノ)こそが人間だった者の成れの果てだと知るが、特に気にする事は無かったりする。
655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/02(金) 07:40:19.67 ID:jMQi+X7DO
マミと杏子が説得されたのは初めてだしもともと立ち直れる要素はあったんだろうな
よく考えたらさやかでさえ説得されてたら大丈夫だとかインタビューで言ってたしな
656 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/02(金) 12:35:23.42 ID:ApXJszWXo
言われてたっけ・・・?
657 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/02(金) 20:53:40.25 ID:LwRAd5u+0
皆で慰めれば大丈夫だったかもねーとは言われてたね
658 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 00:17:49.25 ID:Wtqdz5oh0
はい。投下します。
最近、投下速度が激減してるな…
大変、申し訳ないです

おりこさんを動かし過ぎて少し悩みましたが、大筋に変更なしです
受け入れ難い人は回れ右していただけると…

二つの正義ってのはどっちも正しく見せないといけないのに
片方ばかり擁護つくのは全部>>1の未熟故…
ご勘弁を…


みなさん、レス感謝します

>>648
挫折して成長は漫画やアニメの醍醐味なのに、その挫折を完全否定ですからね

>>649
ありがとうございます
結局、書きたいままになってしまいました


>>653
爆弾って見ればそうなんですが…
正しく言えば爆弾をいつでも作れる、ないし爆弾のスイッチを握ってるって感じなんだよなぁ

最も危険物の排除もまた、必要な行為だとは思っています

>>654
問題は、そこを立ち直る過程での挫折で心が折れた際
上手く立ち直れないとそのまま魔女化してしまうシステムなんですよねぇ

アニメや漫画の王道を否定する、残酷なシステムだと思います
659 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 00:18:31.35 ID:Wtqdz5oh0

それが起きたのは突然だった。


チャイムをならしたのは、いつもの宅配のおにいさん。

それを取りに行ったのはママ。


受け取りに出たママは、そんなのたのんでないとおにいさんと言いあってた…。

その時だった。



なにかがピカっと光ったと思ったら、知らない場所にいて……。

そこには宅配のおにいさんとママと、すんでいるマンションのみんなもいて…。


そして、みんなそこに居たこわいこわいお化けにおそわれた。
660 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 00:19:02.09 ID:Wtqdz5oh0

ママも、宅配のおにいさんも。

おうちに入れなくて泣いていたわたしに親切にしてくれたおじいさんも。

昔はよく遊んでくれたおねえさんも。

たまに作りすぎたと煮物をもってきてくれるおばさんも。


みんなみんなこう言った。


「苦しい」

「助けて」

「死にたくない」




いつもいつもわたしに冷たかったママもそう言った。

ママは初めて、わたしを必要としてくれた。


ママだけじゃない。

苦しそうにしてるみんなみんな、わたしにそう言った。




「力になりたい」

そう思ったとき、あの声は聞こえてきた。
661 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 00:19:30.34 ID:Wtqdz5oh0







―【第十六話】それぞれの選択―









662 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 00:23:03.37 ID:Wtqdz5oh0


――使い魔結界内――



さやか「アハハハハ…! ハハハッ!!!!!」


さやか「やり方さえわかっちゃえば簡単なモンだね。

    これなら負ける気がしないよ」


薄暗い結界の闇の中、使い魔が一匹、また一匹と切り裂かれる。

魔女になれる日も近かったのか、やたら攻撃が激しい。

が、今のあたしにはそんなモノは意味を成さない。


攻撃が直撃しても……。

傷を負っても、穴が開いても、止まらない……。



なぜなら……。

今のあたしは痛みと言うモノを感じないから…。
663 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 00:24:01.92 ID:Wtqdz5oh0

全ては…。

あの夜、アイツが言った通りだった。



さやか『こんな身体になっちゃって…』

さやか『あたし、どんな顔して恭介に会えばいいのかな…』


QB『随分と荒れているようだね』


突き付けられた真実に苦しむあたしの前に、あの白い生き物が現れる。

黒い魔法少女にグチャグチャにされて死んだ筈の、あのQBが…。



さやか『QB、アンタ生きて……』

さやか『うぅん、それより……。何で教えてくれなかったのよ!』


QB『聞かれなかったからさ。知らなければ知らないままで、何の不都合もないからね。

   実際、戦いにおいては便利だろう?』



さやか『大きなお世話よ! そんな余計な事……!』


QB『君は戦いという物を甘く考え過ぎだよ。

   例えば体を貫かれた場合、肉体の痛覚がどれだけの刺激を受けるかって言うとね』
664 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 00:24:44.31 ID:Wtqdz5oh0

その声、姿、しぐさ。

今となっては全てがわざとらしく見えるアイツは、机に置いてある私のソウルジェムに触れる。

そして、その瞬間、私の体に激痛が走る……。



さやか『うぐぁぁぁぁぁぁッ!!!!!』


QB『これが本来の痛みだよ。ただの一発でも、動けやしないだろう?』


QB『君が今まで戦って来れたのは、強過ぎる苦痛がセーブされていたからさ。

   君の意識が肉体と直結していないからこそ可能なことだよ』



さやか『ぐ………ぅ……』

QB『慣れてくれば、完全に痛みを遮断することもできるよ。

   最も、それはそれで動きが鈍るから、あまりオススメはしないけど』



さやか『何でよ……。どうして私達をこんな目に……!』


QB『戦いの運命を受け入れてまで、君には叶えたい望みがあったんだろう?

   それは間違いなく実現したじゃないか』
665 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 00:25:25.03 ID:Wtqdz5oh0

願いは実現した。

その点だけは、間違いなくアイツは正しかった。


あたしが勝手に『その願いの先』を期待しただけで…。

あたしが思うよりも遥かに、願いの代償が大きかっただけで…。

恭介の願いが叶う代わりに、あたしの願いは絶対に叶わなくなっただけで………!




結局、薄ら綺麗な事を言いながら、あたしは恭介に見返りを求めてただけなんだ。


だから、仁美に嫉妬した。助けなければよかったなんて最低な事まで思った。

それだけに飽き足らず、あたしはまどかにまで八つ当たりをした。


最後まであたしの事を心配してくれたあの子に…!
666 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 00:26:24.72 ID:Wtqdz5oh0

こんな最低なあたしは、あそこには戻れない。

戻ったらきっと、みんなを傷つけちゃう。

だから…。



さやか「あたしは戦い続ける………」


さやか「使い魔も………、魔女も………、

    悪い魔法少女も………、あたしが全部倒す………」


さやか「そう………、決めた…………」



化け物は化け物らしく、道具は道具らしく。

戦って、戦って、戦って、戦って、戦って…。


そうやって、ずっと戦い続けよう……。



きっと、それだけが…。

あたしに残った存在意義だから………。



667 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 00:26:54.38 ID:Wtqdz5oh0

不気味な月が輝き、道行く人の姿も見かけなくなった夜遅く…。

美樹さん達を探すも、見つけられなかった私達二人は、鹿目さんの家へと帰宅する。

あれから私は、鹿目さんの提案で、ずっと彼女の家にお邪魔になっている…。



まどか「…………ただいま」

ほむら「すいません。今日もお邪魔します……」


最初は、前に来た時のような温かい家庭だった。

でも、今はその玄関の扉が重い…。



知久「いらっしゃい。ほむらちゃん。

   …………まどか、君は言う事があるだろう」


まどか「…………」

知久「遅くなる時は連絡くらい……」


詢子「いいよ。そんな事は後回しだ」

詢子「それよりも、まどか………。

   お前、本当にさやかちゃんの事、何も知らないのか?」


まどか「………………知らない」


詢子「あの子が行方不明になって4日…。

   いい加減、洒落じゃ済まない事くらいはわかるよな…?」
668 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 00:27:30.91 ID:Wtqdz5oh0

詢子「ご両親も、和子も心配してる。

   何でも良い。何か知らないか?」

まどか「……………」



詢子「まどかッ!!!!!!」


まどか「…………知らないって言ってるでしょ!!!!

    いい加減しつこいんだよッ!!!!!!」


詢子「ッ…!」

詢子「………しつこくもなるだろ! あのさやかちゃんの行方がわかんねぇんだぞ!!!!」



まどか「うるさいなぁ……! そんなに知りたいなら教えてあげるよ……!」

ほむら「鹿目さん…?」


まどか「わたしも、さやかちゃんもね……! もう人間じゃな……」

ほむら「鹿目さんッ!!!!!!!」


まどか「ッ………」


ほむら「す、すいません。私、忘れ物を思い出しました!

    ちょ、ちょっと鹿目さんと一緒に取りに戻りますね!」


詢子「ちょっと待て! おいッ!!!!」
669 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 00:28:17.08 ID:Wtqdz5oh0

病みきった鹿目さんと、頭に血が上った鹿目さんのお母さん…。

この二人を一緒にしておけば、さっきのように鹿目さんが自棄を起こしてもおかしくない。

そう思った私は、鹿目さんの手を取り、全力で駆け出していた。



ほむら「はぁ…、はぁ…、はぁ…」

ほむら「逃げて…来ちゃいましたね…」

まどか「…………」


息が上がり、立ち止まっても、鹿目さんのお母さんが来る様子はない。

玄関で大きな音がしたから、そっちも心配だけど、引き返すわけにもいかない…。

それならば…。



ほむら「このままもう一度、美樹さんを探しましょう」

まどか「いいよ。もう無理だよ………」


まどか「本当はあの時、わたしはさやかちゃんを支えてあげなきゃいけなかった……。

    でも………」


まどか「わたしには言えなかった……。

    さやかちゃんの言う通り……、戦うことしかできない道具で……」

    その道具としてもさやかちゃんの役に立てない、中途半端なわたしには……!」
670 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 00:28:57.02 ID:Wtqdz5oh0

ほむら「そんな事…」


まどか「結局、わたしは……、駄目なわたしのままだった…。

    魔法少女になって変わった気になっていただけで…。


まどか「さやかちゃんのように優しくも、マミさんのように強くもなれなかった…」


まどか「自分が辛いからって…、マミさんと杏子ちゃんを見殺しにして…。

    そればかりか…」


まどか「一人ぼっちのわたしに手を差し延べてくれて…。ずっと傍にいて、支えてくれた大切な人一人…、

    支え返してあげることさえ出来なかった…!」




ほむら「鹿目さん…、それって…」


まどか「さやかちゃんはね…。

    転校して来たばかりで、一人ぼっちで不安だったわたしに手を差し延べてくれたんだ…」


まどか「それからずっと傍にいてくれて…。いつもわたしを守ってくれて…。

    こんな何も出来ないわたしを友達だって言ってくれた…。なのに…!」


まどか「わたしはそのさやかちゃんを守ることも…、助けることも…。

    言葉一つ掛けてあげることさえできなかった…!」
671 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 00:29:28.07 ID:Wtqdz5oh0

鹿目さんの悲痛な嘆き…。

私はそれに少しだけ驚く。


強い口調に怯んだんじゃない。


彼女は何もかも…。

本当に何もかも、私と一緒だった。

だから…。



ほむら「鹿目さんの気持ち、わかります…」


まどか「知ったような事言わないでよ!!!

    わかるわけ…」


ほむら「わかるんです」



ほむら「鹿目さんが美樹さんに感謝し、想っているように……。

    私は鹿目さんに感謝し、想っているんです」


ほむら「だって、私は……、鹿目さんに手を差し延べてもらって…。

    傍にいてもらって……、支えてもらったんですから………」


ほむら「だから、今の私は鹿目さんと全く同じ思いを抱いているんですよ…?」
672 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 00:31:22.34 ID:Wtqdz5oh0

まどか「ほむらちゃん…」


ほむら「だからこそ言えます…。鹿目さんは、今ここで立ち止まっちゃ駄目です…」


ほむら「美樹さんに感謝しているなら…。

    大切に思ってるなら…、今こそ美樹さんを支えてあげるべきです…」


まどか「でも、わたしは『化け物』だから…。

    こんなわたし、さやかちゃんはもう…」


ほむら「関係ないです! 鹿目さんは鹿目さんです…!

    それは魔法少女がなんであろうと変わらない…」


ほむら「私を救ってくれて…、私が憧れてて…、私が大好きな…、鹿目さんである事には…!」


ほむら「だから……、こんなわたしなんて……。

    もう……、言わないで…」
673 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 00:31:52.69 ID:Wtqdz5oh0

思わず溢れてしまう涙。

そして、私の言葉はそのまま止まってしまう。


もっと言いたい事があるのに…。

言わなきゃいけないことがあるのに…。

私の言葉は涙に塞き止められてしまう…。


喋りたいのに言葉が出ない。

それが堪らなく悔しい。


鹿目さんが苦しんでるのに…。

鹿目さんが悲しんでるのに…。

私こそ鹿目さんの力になってあげなきゃいけないのに…。

その言葉が出せない…。



結局、力無く泣くことしか出来ない私。

でも、鹿目さんはそんな私を見て、ゆっくりと顔を上げた。
674 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 00:32:31.57 ID:Wtqdz5oh0

ほむら「うっ…く……、ひっく…、ぐす…」

ほむら「かなめさんっ……、わたし…」


まどか「ほむらちゃん……、ごめん……」




まどか「それと…、ありがとう…」

ほむら「え…?」



まどか「ほむらちゃんに言われて…、想いを聞いて…、その涙を見て…。

    やっと……、わかった…」


まどか「わたしはわたしで…、さやかちゃんはさやかちゃんで…。

    そして、わたしはさやかちゃんが大好きで…」

まどか「その気持ちは人であっても、そうでなくても、変わらないんだって…」


まどか「だから………」



まどか「『化け物』でもなんでもいい。

    わたしは、『さやかちゃん』を失いたくない…」
675 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 00:33:06.39 ID:Wtqdz5oh0

まどか「マミさんと杏子ちゃんの事だって……、何もわからないまま諦めたくない」

ほむら「ぐずっ…、それなら…!」


まどか「うん…! 我が儘でごめん…。だけど、わたしみんなを探しに行きたい…!

    そして、出来るなら助けたい…!」

まどか「ほむらちゃんを危険な目に会わせちゃうかもしれない…。

    でも、わたし必ず守るから……。だから……」


ほむら「はいっ! 付き合いますっ…!

    私も…同じ気持ちですからっ…!」


まどか「ありがとう、ほむらちゃん…!」


涙を拭うためのハンカチを貸してくれた鹿目さんは、いつもの…。

強い意志と優しさを宿す鹿目さんの姿で…。


私はその背中を追うように、一緒に走り出した。
676 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 00:34:31.37 ID:Wtqdz5oh0

見滝原市内の廃墟。

絶望し、そこで佇むだけの私の前に現れた白と黒の魔法少女は…。

駄目押しと言わんばかりにさらに冷酷な現実を突きつける…。



織莉子「もう一度だけ言ってあげるわ。美樹さやかは魔女になる。

    そして、それを救おうとして鹿目まどかと、その場に居合わせる暁美ほむらも倒れる」


マミ「そんな………」

キリカ「これでいいんだよ。これが正しいんだよ。

    世界を滅ぼす存在が消えるんだ。たくさんの人が救われるんだ」


マミ「こんな………、こんなのって……」

キリカ「いい加減認めなよ。織莉子の言葉の正当性はわかっただろう?」


織莉子「無理でしょうね」

キリカ「………」

織莉子「それを受け止めれば、暁美ほむらを裏切る事になり、受け止めなければ、暁美ほむらに裏切られる。

    手詰まりなのよ。彼女の正義も思いも」


キリカ「少しだけ同情するよ。

    だから、最期はこの手で……!」


???「させないよ…………!」
677 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 00:35:13.27 ID:Wtqdz5oh0

振りあげられた凶爪を妨害するように揺れる大地。

走った衝撃に足を取られ、黒い魔法少女は態勢を崩す。



キリカ「ちっ…! 誰だ!」


???「………そっちのおねえさんは、よく知っている筈だよ」

???「なぁ? 美国織莉子ッ!!!!」



キリカ「ぐぅッ! お前は……!?」

織莉子「……………間に合わなかった」


大地を揺らす攻撃を行ったんであろう魔法少女が私を守るように立ち…。

もう一人、別の魔法少女が黒い魔法少女へ追撃を仕掛ける。


一人は、猫耳に尻尾、そして可愛らしい衣装と小柄な背丈に似合わないハンマーを持つ、

見慣れない姿と聞き慣れた声の少女………。


そして、もう一人は………。
678 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 00:35:52.37 ID:Wtqdz5oh0

ゆま「助けにきたよ、マミおねえちゃん」

マミ「やっぱり、ゆまちゃん………。

   それに………」





杏子「いつまでヘタレてんだよ、バ〜〜〜カ」

マミ「佐倉さん…………!」


夢でも見ているんじゃないかと思った。


私を庇い、死んだと思っていた佐倉さんと………。

魔法少女ではない筈のゆまちゃんの二人が、私の危機を救うべく駆けつけてくれたのだから。


残酷な現実ばかりが突き付けられる中、ようやく訪れた一筋の奇跡と希望。

それは確かに嬉しかった。

でも………。



それでも、私達魔法少女の危険性と存在意義は…………。
679 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 00:42:47.49 ID:Wtqdz5oh0

杏子「ゆまに助けられてね。

   ただ、体は癒えても、ジェムの穢れがなかなか落ちなくてな……。

   遅くなっちまった。悪ぃ……」


マミ「うぅん……。いいの……、いいのよ……。

   無事で居てくれたなら、それで……」



杏子「さ〜て、感動の再会と行きたいが、その前にけじめ付けて貰いたい奴がいるんでね」

杏子「なぁ………?」


織莉子「…………」


杏子「覚えていないとか、ふざけた事は抜かさないよな?

   テメェがゆまにした事………、知らないとは言わせねェぞ!!!!」
680 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 00:43:38.25 ID:Wtqdz5oh0

マミ「何があったの……?」

杏子「簡単に言えば、コイツはグリーフシードをゆまの家に送り付け、魔女に襲わせたのさ」

マミ「暁美さんの時と同じ……。でも、何故……」



ゆま「あれをゆまの家に送ったのはおねえさんでしょう?」

織莉子「………」




ゆま「おねえさん……」

杏子「答えろよッ!!! このイカレ野郎!!!!!!」



織莉子「えぇ……。それを送ったのは私です」



マミ「美国さん、あなたは………!」

杏子「何の為にそんな真似をした!?」
681 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 00:44:37.96 ID:Wtqdz5oh0

織莉子「足止め」

杏子「は……?」


織莉子「インキュベーターと暁美ほむらを接触させない為の足止め」


織莉子「その為に、私は彼に素質のあるその子を紹介した。

    そして契約が難航し、一旦その場を離れようとする彼を再びその子の元へと戻す為に、

    到着する頃に孵化するであろう、穢れを溜めきったグリーフシードを送り付けた」


杏子「足止めだと………。

   たった、それだけの為に…!」



織莉子「ありがとう。貴女達の『犠牲』で、世界は救われるわ…」



ゆま「たくさん……、死んだんだよ……。

   ゆまも……、頑張ったけど、それでもたくさん死んだんだよ……?」


織莉子「暁美ほむらを止めなければ、未来には全てが滅ぶ。

    全てが滅ぶなら、その人達の迎える結末は変わらない。それがその人達の運命だったのよ」


杏子「ふざけんな………」

杏子「未来? 運命? そんなモンで勝手に決められて、それだけの為に殺されてたまるか!」
682 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 00:46:17.37 ID:Wtqdz5oh0

織莉子「決めているんじゃない。決まっているのよ」


杏子「違ぇだろ! 殺してるんだよ! 他ならぬテメェが!

   まだ死んでいなかった奴を、何時かは死ぬ、やがては殺される、それだけの理由で!」


キリカ「救えないものは切り捨てて、より多くを救う。

    10を守る為に1を、100を守る為に10を犠牲にしても、10の内9、100の内90が助かる。

    子供にでもわかる単純な計算だよ?」



杏子「…………その1や10に選ばれた奴は塵同然ってか。

   上等だよ!」


杏子「だったら、アタシは世界なんてもうどうでもいい!

   切り捨てられる奴の代表として、徹底的にお前らに抗ってやるよ!!!!」



織莉子「自分達が生き残るためだけに、世界を……、多くの人々を犠牲にするというの……?」


杏子「ハッ! 知るか! 生憎とアタシは正義の味方はとうに卒業しててね]


杏子「『守りたいモノを最後まで守り通せばいい』。

   それだけが今のアタシの信条さ」



杏子「その守りたいモノが切り捨てられる世界なんて………、クソ食らえだ!!!!」
683 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 00:47:53.20 ID:Wtqdz5oh0

織莉子「何が……、何が守りたいモノだ……!」

織莉子「その身勝手が……、あなたのような存在が……、人々を苦しめ、世界を滅ぼす!」


織莉子「貴女は、生かしてはおけない……!」


キリカ「くくくあっはははは!!!! 面白馬鹿みたい!!!」


佐倉さんの言葉に怒りを顕にした白い魔法少女、そしてそれに付従う黒い魔法少女。

二人は魔力を以て各々の武器を作り上げると………。

一気に佐倉さんに向かって襲い掛かる。



キリカ「キミのような奴は逆に良い! 織莉子が良心を痛める必要が無いからね!」


織莉子「魔法を使った暴力、窃盗、破壊行動……、自分本位の犯罪の数々!

    魔法少女だの危険思想だのの以前の問題……!」


織莉子「貴女のような害虫は、この世界に必要無い!!!!」


動きの読みにくいトリッキーな爪攻撃。

そして、予知を用いた的確過ぎる援護。

型破りと型通りが合わさり、完璧なコンビネーションを生みだす。


速度低下の魔法も手伝っているのか、佐倉さんは一方的にダメージを受け続ける。

それでも、彼女は逆に不敵に笑う……。
684 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 00:49:27.45 ID:Wtqdz5oh0

杏子「害虫ね……。良いじゃねぇか、アタシらしくてさ」

杏子「神様気どりの糞野郎よりは、よっぽど気分が良いね!」


織莉子「黙りなさい! 自分の事だけを考え、ただただ周囲に害を及ぼす害悪がッ!!!!」

杏子「ぐっ…、かはッ……!」


両手の爪による激しい攻撃の果てに槍を弾かれ、そこへ当然のように魔力球が叩きこまれる。

血反吐を吐き、背中に重傷を負った佐倉さん。

それを見て小さな魔法少女が駆け寄る……。



ゆま「キョーコは、ゆまが守る……!」

杏子「悪ぃ………」


立ち上がろうとする佐倉さんの傍らに来たゆまちゃんは、治癒魔法で彼女を癒す…。

しかし、その背後には…。
685 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 00:50:19.55 ID:Wtqdz5oh0

キリカ「邪魔だよっ!」

ゆま「うわぁぁぁぁっ!!!」


杏子「ゆまッ!!!!」

織莉子「彼女の事を気にする必要はないわ。

    先に終わるのは貴女なのだから…!」


佐倉さんが治癒魔法で癒えた直後、彼女達に迫った黒い魔法少女が笑う。

ゆまちゃんは咄嗟に反応し、その攻撃を受けるも止め切れず、大きく吹き飛ばされる。

そして、それを視ている佐倉さんは魔力球に襲われる…。


圧倒的不利。

この状況を変えられる存在は、この場にたった一人しかいない。
686 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 00:51:15.25 ID:Wtqdz5oh0

ゆま「マミおねえちゃん! おねがいだよ……、キョーコをたすけて!」


マミ「戦いに……」

マミ「生きる事に……、意味が見出せないのよ……」


マミ「私達魔法少女はいつかは魔女になる存在で………。

   私が守ろうとしたあの子は、やがて世界を滅ぼす存在………」


マミ「なら、生きる事に意味はあるの……?

   生かす事は正しいの……?」


ゆま「マミおねえちゃん………」



杏子「わかるよ………」

杏子「アタシも同じ事考えた。将来魔女になるのに、何一生懸命になってんだ……って」

杏子「でもさ………、アンタはさっきアタシの姿を見て喜んでくれたろ?

   魔女になるから死んでも良いって思わなかったろ?」


杏子「アンタだって同じだよ」

杏子「アタシがずっと憧れて……、離れても忘れられなかった大切な人……。

   『巴マミ』のまま………」


杏子「『いつかはいまじゃない』。

   だから今はまだ、アンタは『巴マミ』なんだよ」
687 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 00:51:51.76 ID:Wtqdz5oh0

杏子「なんて……、全部ゆまの受け売り……」

キリカ「ペラペラ喋る余裕がどこにあるッ!!!」

杏子「くっ…!」



ゆま「ゆまもね、ママにいじめられたとき、考えたよ。

   このまま死んじゃった方がいいって」


ゆま「こうやって、ずっと痛くて、苦しくて、寂しいのがつづくなら……って思ってた。

   でも………」

ゆま「ゆまはあきらめずに生きたから、みんなに会えたんだよ。

   キョーコにも、サヤカにも、マミおねえちゃんにも……!」


ゆま「このままマミおねえちゃんが何もしなかったら、いつかはいまになる……」

ゆま「マミおねえちゃんは、ほんとうにいま死ぬの?」



マミ「いつかは…………、今じゃない………」

マミ「じゃあ、私は…………」



織莉子「………このままではまずい。キリカ!!!!!」

キリカ「一気に勝負を付けるんだね! わかったッ!!!!!」
688 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 00:52:32.53 ID:Wtqdz5oh0

状況が変わる前に、と白と黒の魔法少女が先手を打つ。

黒の魔法少女は、その爪の数を3本づつから5本づつへと増やし、佐倉さんに攻撃を繰り出す。



キリカ「さぁ、散ね!!!!!」


杏子「踏み込みが浅ぇッ!」


攻撃は避けられるも、その隙に白の魔法少女は周囲に無数の魔力球を発生させ始め……。

いつも繰り出す倍以上の数になると、一斉にそれを放つ。



織莉子「受け入れなさい! 貴女の運命を……!」


キリカ「そうさ、これがキミの運命だ!!!!」


魔力球は佐倉さんの全周囲から迫り、取り囲むように飛び交う……。

そして、その中に十本の魔力爪を携えた黒い魔法少女が向かっていく……。
689 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 00:53:33.44 ID:Wtqdz5oh0

杏子「どうせ織莉子の攻撃は切り払えねぇ……」

杏子「なら、一か八かだ………!」


佐倉さんの周囲を舞う魔力球は、思念操作系の動きを見せている。

それは、黒い魔法少女への誤射はまずあり得ないと同時に、

予知の力を持つ彼女自身が操っている以上、多節槍による範囲攻撃を出しても当たらないと言う事になる。


だからこそ、佐倉さんは槍を真っ直ぐ構え、黒い魔法少女を迎え撃とうとしている。

でも………。



マミ(相手を取り囲む包囲攻撃……)

マミ(でも、魔力球を同時突撃させることはしない……)

マミ(させたくないのは回避…? したいのは足止め…?)


マミ(まさか……!)

マミ(だとしたら、それは駄目………!!!!)
690 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 00:54:53.88 ID:Wtqdz5oh0

キリカ「終幕だよッ!!!!!」

杏子「終わるのは、お前だけどな!!!!」


先手を仕掛けたのは、武器のリーチに優れる佐倉さんの方。

魔力球の包囲からの脱出を捨て、予知の影響を受けない前衛へ攻撃を集中する。


でも、それこそが敵の狙い。

最も、その狙いに気付いていたとしても、佐倉さんにはどうにもできなかったんだろう…。



佐倉さんの槍が届く前に…。

敵は両手の5本づつの爪を1本づつへと束ねる。


一点へと収束された魔力爪は迫った槍へと向けられ……。

その槍をいとも簡単に真っ二つにした。



キリカ「束ねた十手は、一手で百手の強さとなる……!

    さよならだ!!!  罪人!!!!!!」


杏子「クソッ……!」


敵の右手の一撃で獲物を失った佐倉さんは丸腰となり…。

続けて繰り出された左手の一撃で、その体も横に両断された。
691 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 00:55:56.83 ID:Wtqdz5oh0

杏子「かぁッ………」

ゆま「キョーコッ!!!!!! 今治すよ!!!!!」


切り離された佐倉さんの体を繋ぎ合わそうと、佐倉さんへ駆け寄ろうとするゆまちゃん。。

しかし、黒の魔法少女はそれを許さない。


まだ浮いたままの佐倉さんの上半身の前で、両手の爪を振りあげ…。

さらに、両手の爪を一本に収束させ始める。



キリカ「その隙は与えない!!!!!

    次は一手で千手だッ!!!!!!!!」


杏子「………!」

ゆま「ッ………!」


キリカ「じゃあね! ばいばい!!!!!!!」



















マミ「ティロ・フィナーレッ!!!!!!」
692 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 00:57:37.35 ID:Wtqdz5oh0

間に合え……!

そう念じた甲斐があったのだろうか。


私の攻撃の中で、唯一あの収束された魔力爪を破壊できる可能性を持つ切り札…。

『ティロ・フィナーレ』の生成、砲撃がギリギリで間に合う……。


大出力の魔力を放つ砲撃は、敵の二つの爪が一本になるギリギリで左の爪に直撃。

収束されて強度も増している筈の爪をへし折り、さらにその衝撃を以て彼女自身も吹き飛ばした。



キリカ「ッ! く…ぁ…!」

織莉子「巴マミ、貴女はッ………!」



杏子「集中を解いたな? 隙だらけだ…!」

織莉子「!? しまった……!」


怒る白い魔法少女の隙を、ゆまちゃんの魔法で体を戻した佐倉さんが突く。

繰り出された多節槍による範囲攻撃は、予知による回避を行う前に、瞬く間に魔力球の包囲を薙ぎ払った。
693 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 00:59:07.19 ID:Wtqdz5oh0

杏子「ったく………、遅ぇよ」

マミ「ごめんなさいね……」


マミ「でも………、もう迷わない。

   私は私で………、私の信じたやり方で、前に進むわ」




織莉子「ふざけた………、ふざけた事を……!」


織莉子「魔女へ変わる魔法少女! 世界を滅ぼす暁美ほむらの存在!

    その危険性……! なぜ、それがわからない!!!!!」


マミ「わかっているわよ。あなたの言葉も、その行いの意味も。

   でも………」


マミ「やはり、私はあなたの傲慢なやり方を肯定する事は出来ない」



織莉子「傲慢? 傲慢なのは貴女達でしょう?

    何時か世界を滅ぼす存在を守る貴女達こそが……!」


マミ「何時か、やがて、未来は、運命だから」

マミ「あなたが見ているのは結果ばかり。過程がまるで見えていない」


マミ「だから傲慢だと言っているのよ……」
694 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 01:00:11.69 ID:Wtqdz5oh0

織莉子「なら、平和的に話し合う? それでは元凶を消せない以上、根本的な解決にはならない。

    そもそも、一人の人間の為に世界を滅ぼすリスクを背負うなど…」


マミ「世界を滅ぼすリスク自体は、あなたの行動にだってある」


織莉子「………」


マミ「あなたが止めようとしているのが物ならば、それが正解でしょう。

   でも、相手は感情を持った人間なのよ」


マミ「非道な行いをされれば苦しみ、大切な人を傷つけられれば悲しむ……。

   そして、追い詰められた人間は何をするかわからない。大切なモノの為なら尚の事…」


マミ「事実、暁美さんに契約の意思はなかった…。

   でも、あなた達はその彼女を追い詰め、契約してもおかしくない状況を作っている…」



マミ「世界を滅ぼす存在を消す事に捕われすぎて、一つ間違えば世界を滅ぼす状況を作り出しているのよ!」
695 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 01:00:59.32 ID:Wtqdz5oh0

マミ「あなたの行っている行為はね……。どうしてもわかりあえない相手に降す最後の手段…。

   でも、それを行えば、そこから憎しみの連鎖が始まる…」


マミ「敵意を以て向かえば敵意で返される。そうやって人は憎みあい、滅ぼしあって来た。

   それを魔法少女の力で行いあえば、どうなるかわからないあなたではないでしょう…?」


マミ「加害者になる筈の者をあなたが狙っても、今度はその人やその周囲が被害者になって、結局憎しみは広まる。

   魔女になると言う結末だけを視て相手を一方的に狩れば、別の誰かが憎しみに満ちた堕ちやすい魔法少女になるだけ」

マミ「そして、そんなやり方を続けるのなら、

   ここで暁美さんを殺しても、また他の誰かが世界を滅びへ導く未来が視えるでしょう」


マミ「必要だったのよ、あなたにも。

   言葉で語り合う事こそが……」



織莉子「くだらない……」

織莉子「そんな甘く、くだらない道徳に感けている間に状況と言うものは悪化する。

    そうやって後手に後手に回り続け、やがて取り返しのつかなくなる前に……」


マミ「ねぇ、美国さん」


マミ「そのくだらない道徳を捨てた魔法少女は…………、魔女と何が違うの?」
696 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 01:01:33.79 ID:Wtqdz5oh0

織莉子「……………」


織莉子「……構わない」

織莉子「私は魔女で構わない」


織莉子「救世を成し遂げる事が出来るのなら…………!

    心を失くした魔女になっても、私は私の目指す救世を成す……!」


マミ「…………」



織莉子「………やはり、わかりあえないのね」

マミ「そうね………」



織莉子「なら……」

マミ「私は……」



織莉子&マミ「勝って、自分の道を進む……!」
697 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 01:02:18.85 ID:Wtqdz5oh0

キリカ「ねぇ、織莉子。何故言わなかったの…?」

織莉子「何を…?」


キリカ「予知で視た時、暁美ほむらを説得する方法では、結果は変わらなかったって…」


織莉子「私と『あの時点での彼女』では、結果を変える未来は視えなかった。

    でも、『今の彼女』ならどうなるかはまだ視えていない」


織莉子「そして、視えていないモノを頭ごなしに否定する事は出来ないから…」

キリカ「………」



織莉子「それでも、そんな不確かな可能性に全てを預ける事は出来ない…。

    だから、私は彼女を倒し、全ての元凶を取り除く……!」


キリカ「わかった…。なら、私はアイツを刻もう…」


キリカ「全力を以て……!」
698 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 01:02:56.14 ID:Wtqdz5oh0

マミ≪ゆまちゃん、あなたは下がって≫

ゆま≪ゆ、ゆまも戦える……。戦えるよ…!≫


マミ≪わかってる。だから、合図をしたらさっき繰り出したあの攻撃をお願い≫

ゆま≪うん…!≫



杏子「マミ…。何考えてやがる?」


マミ「佐倉さん、アレやるわよ…」

杏子「アレ、だぁ…?」




マミ「『ステルミニオ』」


マミ「アレなら速度低下の影響を受けた上でも、彼女を確実に撃破できる…!」
699 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 01:03:57.99 ID:Wtqdz5oh0

杏子「ちょっと待て…! アレをやるには…」

マミ「頼んだわよ」

杏子「ちょ…、おい!」

   
杏子「無茶苦茶言ってくれるよ……」



キリカ「最後の会話は楽しんだかい…?」

キリカ「でも、続きは『死んでから』にしてくれるかなッ!」


直進してくる黒い魔法少女。

そして、その黒い魔法少女を追う形で飛んでくる魔力球。


予想通り、後衛の私を狙ってきた敵に合わせ、私はゆまちゃんに指示を出す…。




マミ「ゆまちゃん!!!!」

ゆま「えぇぇぇぇぇいッ!!!!!」


先が丸い、どこか可愛らしいハンマーで地面を叩き、大きく揺らす。

当然、それに足を取られるのを避ける為、敵は跳躍して宙へと逃げる…。
700 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 01:05:04.75 ID:Wtqdz5oh0

キリカ「二度も同じ手にかかるもんか…!」

キリカ「上から行って、切り刻んでやるッ!!!」


私は揺れる地面に残り、片膝と片手を付き、揺れに耐えながらも魔力を地へと放つ。

そして、直進してきた魔力球が当たる直前で、それを食らいながらも後ろへ飛び、魔法を発動させる。



マミ「今よ! レガーレ・ヴァスタリア!!!」


私の一言を以て、仕掛けた拘束魔法が、地面のあちこちから吹き出す。

無数の黄色いリボンは、敵の行く手を阻むように、そして敵を封じるかのように……、

次々と空に向かって伸びて行く…。



キリカ「こんなモノ…! 目暗ましにしかならない…!」


杏子「そりゃそうだ。それは目暗ましと移動範囲に制限を掛ける為だけに放ったんだ」

杏子「アタシが十分にコレを使えるようにな…!」



織莉子「……!?」

織莉子「いけない! キリカ、戻ってッ!!!!」


杏子「もう遅ぇ……」







杏子「ロッソ・ファンタズマ………!」
701 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 01:06:00.08 ID:Wtqdz5oh0

何かを視たのであろう、白い魔法少女の言葉が響く。

けれど、その言葉が手遅れだと言う事は、僅か数秒後には誰の目にもわかった。


佐倉さんが静かに、けれど力強く放ったその名に呼ばれるように…。

紅の影が一つ、また一つと増え……。


黒い魔法少女のいる、拘束魔法で出来た陣を取り囲むように……。

13人の佐倉さんが、そこに立っていた。



キリカ「なんだ、これは……」


杏子「『ロッソ・ファンタズマ』」

杏子「アタシが昔使ってた…」

杏子「錆びついちまった得意技さ」


杏子「出せるかどうか不安だったんだが…」

杏子「やってみるモンだな」


杏子「どうだい?」

杏子「なかなか壮観だろ?」
702 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 01:07:48.95 ID:Wtqdz5oh0

分身魔法『ロッソ・ファンタズマ』。

佐倉さんの得意技にして、その願いを映した固有魔法。

彼女の願いと悲劇の元となった『幻惑』の魔法……。



彼女の父親は、教会の聖職者だった。

でも、優し過ぎる彼女の父親は、その思いが強過ぎるあまり、

やがて教義に無い事まで説き始め、教会から破門された。


間違った事は言っていないのに、その言葉には誰も耳を傾けてくれない。

そんな状況を悔しく思った彼女は、『父親の言葉を聞いてくれますように』と願って魔法少女になった。


願いの通り、彼女の父親は新興宗教の一派を築くまでに至るも…。

その全ては魔法の力によるモノだったと知ってしまい、錯乱…。

やがて、佐倉さんだけを残し、彼女の父親は母親と妹と共に一家心中してしまった。


そこで彼女は、自分の願い、そして『誰かの為』に戦う生き方を否定し、一度私と決別した。

そして、同時に彼女はこの技も使えなくなった筈だった。



でも……。

今の彼女は間違いなく『誰かの為』に戦っている。

だから、私は賭けてみたのだ。
703 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 01:08:52.53 ID:Wtqdz5oh0

キリカ「たかが分身で良い気になるなッ…!

    織莉子の力なら、本体を見切る程度、造作も無いんだよ…!」


キリカ「織莉子っ!」

織莉子「駄目…。脱出する方法が…」


キリカ「織莉子…?」


杏子「そいつに聞くまでもねぇよ」

杏子「そんなに知りたいなら」

杏子「教えてやる」


杏子「アタシが本物だ」

杏子「最も、そんな事がわかっても意味はねぇけどな…!」


自ら本物を名乗った佐倉さんが指を鳴らし…、分身の内の三体が多節槍を伸ばす…。

黒い魔法少女の動きはあまりに速く、それらの攻撃を掻い潜り、本物へ向かうも…。

さらに次の四体が放った多節槍はさすがに振り切れず、左肩と右脇に命中した。
704 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 01:10:58.93 ID:Wtqdz5oh0

キリカ「くふッ……」


黒い魔法少女は直撃した左肩と掠めた脇腹から血を流す…。

そして、一旦戻されていく多節槍を驚嘆の目で見る…。



キリカ「この分身…。攻撃力、いや…。実体があるのか…?」


杏子「いいや、そいつは幻さ」

杏子「ただ…、お前の頭は、体は、目は、耳は、鼻は…」

杏子「この幻と幻のした事を『実在するモノ』として認識する」


杏子「だから見えるし、聞こえるし、触れるし、当たれば痛みも感じる」

杏子「さらに見てわかる通り、幻はアンタ自身にも作用して…」

杏子「攻撃を食らえば、血が出て、骨が折れ、肉が裂け、臓器が潰れる…」

杏子「そう………、錯覚する」


杏子「実体はないが、実体があると感じる幻」

杏子「ま、そこまでくると実体と変わらないかもな」


杏子「って事で、本物じゃない12人も本物と同等の戦力ってわけさ」

杏子「さらに………」



マミ「この攻撃はフォーメーションなの」

マミ「敵を『殲滅』する為の……ね」
705 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 01:11:45.44 ID:Wtqdz5oh0

黒い魔法少女を取り囲んだ拘束魔法の陣。

そして、それを見つめる佐倉さん達の付近の空間に、無数の円形のゆがみが発生する。


それは次々と数を増やしながら、黒い魔法少女のいる陣の周囲を一周し…。

次の瞬間、その歪みの中から私の獲物であるマスケット銃が一斉に姿を現す。


数え切れない程の量の銃は、当然のようにその中心に砲口を向けている。



マミ「フォーメーション『ステルミニオ』」

杏子「元々は数にモノ言わせてくる使い魔に対する、掃討殲滅用の連携だが…」

マミ「この物量なら、速度低下を受けた上で、あなたを仕留められる…!」


キリカ「こんな……、こんなところで…」

織莉子「キリカをやらせて………、たまるかッ!」




杏子「さっきも言ったろ。もう遅ぇ!!!」


マミ「一斉掃射!!!!!!」
706 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 01:13:15.68 ID:Wtqdz5oh0

私の掛け声に合わせ……。

マスケット銃による弾丸の雨霰と、13人の佐倉さんによる多節槍の範囲攻撃が同時に繰り出される……。


殺傷力の高い槍先、破壊力に優れる分銅、鎖を伴う柄による打撃…。

飛び交い、弾け、貫き続ける弾丸の嵐…。

おまけに拘束魔法で作られた陣と伸びた多節槍の柄が、その動きを制限する。


逃げる事も防ぐ事も許されない一斉攻撃。

それは、獣のように身軽だった黒い魔法少女にさえ、回避を行わせない。



キリカ「う……あ……ぁ……」


織莉子「キリカぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!!!」


無数の弾丸に貫かれ、多節槍の槍先に裂かれ、それでも可能な限りの防御と回避を行おうとする…。

その彼女を救うべく、白い魔法少女は魔力球を中に飛ばすも、そんなモノが届く筈もなく…。

やがて、黒い魔法少女は無残な姿となり、地面に転がった。



宙には無数の拘束魔法のリボンの切れ端が、返り血で赤く染まりながら舞っていた…。
707 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 01:14:58.22 ID:Wtqdz5oh0

織莉子「キリカッ! キリカぁぁぁぁッ!!!!」

キリカ「………」


本来なら肉塊になってもおかしくない量の攻撃を受け、尚も体が原型を残したのは彼女の実力の賜物だろう。

ただ、それでも全身がボロボロになった黒い魔法少女に意識などある訳もなく…。

彼女を呼ぶ白い魔法少女の悲痛な声だけが、その場に響き続ける……。



マミ「…………さぁ、撤退しましょう」


杏子「あ…? 見逃すのか、織莉子を…」

マミ「逆よ。見逃してもらうの」


マミ「私は、ここ数日穢れの除去を行っていない…。そして、佐倉さんは元々かなり消耗の激しい分身を久々に繰り出している…」

マミ「対して、あっちは美国さんがまだ余力を残している上…、呉さんが今だ魔女にならず、

   ソウルジェムが破壊できたかもわからない以上、速度低下は持続している可能性がある…」


杏子「速度低下と予知が合わさってる織莉子は、ほぼ無敵。

   おまけに、戦ってる途中で呉キリカが魔女化して、さらに大乱戦になる危険性まである…か。

   確かに消耗しきった今のアタシらじゃ荷が重いな……」


マミ「それに彼女の言葉が本当なら、急がないと美樹さんが手遅れになるかもしれない」

杏子「了解。ここは撤退する」

ゆま「…………うん! 急ごう!」
708 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 01:16:34.89 ID:Wtqdz5oh0

――??線車両内――



さやか「はぁ……、はぁ……」


さやか「さす…、がに…、しんどい…、な…」


休む事なく敵を探しさまよった弊害か…。

あたしは意識を朦朧とさせながら、ふらふらと歩き…。

辿り着いた電車の席に座りこむ。


席に座った瞬間、状態はますます悪くなり…。

くるくると視界が回り、暗転する。



真っ暗な闇。

何一つ見えない闇。

そして、その闇の中で何故かあたしの声をした幻聴が聞こえ始める…。
709 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 01:17:32.26 ID:Wtqdz5oh0

さやか?『ねぇ…、疲れてるんでしょ? もうやめちゃいなよ』

さやか『…………』


さやか?『アンタにはもう守るモノなんてないじゃない』

さやか『うるさい…』


さやか?『共働きの両親はアンタなんか見向きもせず…、恭介と仁美に裏切られて…、

     杏子とマミさんを失って…」

さやか?「最後には、まどかとほむらにも失望されて…!』


さやか『ほら、もう何もないじゃん』


さやか『うるさい!!!!! それでも、あたしは…』


さやか?『そんな事したって、何にもならないってわかったじゃない』

さやか?『誰かの為に幾ら頑張ったって…、その想いは唾を吐くように否定される。

     そんな腐った世界だってわかったじゃない』


さやか?『もう一度考えてみなよ』



さやか?『こんな世界、本当に守る価値あるの…?』
710 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 01:18:16.29 ID:Wtqdz5oh0

さやか「あたしはっ…!」


言おうとした時、薄ぼんやりとした視界に光がさす。

同時に入って来た電車内の光景を見て、全てが夢だったと理解する。


でも…。

夢の中で言われた言葉は、頭にこびりついて離れず…。

あたしは自問自答を繰り返し始めた…。



さやか(価値はあるんだ……)

さやか(あたしにはもう……、何も無いだけで……)

さやか(だから、守るんだ……)

さやか(マミさん……、みたいに……、一人でも……)



ホストA「言い訳とかさせちゃダメっしょ」

ホストA「稼いできた分は全額きっちり貢がせないと。

     女って馬鹿だからさ。ちょっと金持たせとくと、すぐ下らねぇことに使っちまうからねぇ」




さやか「……」
711 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 01:19:31.49 ID:Wtqdz5oh0

何を……。

何を……、言ってんの?

女って………、馬鹿なの?


だから、あたしも………?



ホストB「いや〜、ほんと女は人間扱いしちゃダメっすね。

     犬かなんかだと思って躾けないとね。アイツもそれで喜んでる訳だし。

     顔殴るぞって言えば、まず大抵は黙りますもんね」


ホストA「けっ、ちょっと油断するとすぐ付け上がって籍入れたいとか言いだすからさぁ…。

     甘やかすの禁物よ」




さやか「……」


さやか「…………」


さやか「………………」
712 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 01:20:21.31 ID:Wtqdz5oh0

あぁ…、そっか。


頑張っても踏みにじられて。

尽くしても捨てられて。

犬のように、塵のように、平然と切り捨てられる。


見向きもされず、裏切られ、奪われ、見捨てられる…。





これが………。

あたしが守ろうとした…。




『この世界』なんだ………。
713 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 01:21:03.72 ID:Wtqdz5oh0

ホストA「ったく、テメェみてぇなキャバ嬢が、10年後も同じ額稼げるかってぇの。

     身の程弁えろってんだ。なぁ?」

ホストB「捨てる時もさぁ、ホントウザいっすよね。
   
     その辺、ショウさん巧いから羨ましいっすよ。俺も見習わないと」


さやか「ねえ、その人のこと、聞かせてよ」

ホストB「あ…?」

ホストA「お嬢ちゃん中学生? 夜遊びはよくないぞ」


さやか「今アンタ達が話してた女の人のこと、もっとよく聞かせてよ。

    その人、あんたの事が大事で、喜ばせたくて頑張ってたんでしょ?」

さやか「アンタにもそれが分かってたんでしょ? なのに犬と同じなの?

    ありがとうって言わないの? 役に立たなきゃ捨てちゃうの?」



さやか「ねえ、この世界って守る価値あるの? あたし何の為に戦ってたの?」

さやか「教えてよ。今すぐアンタが教えてよ! でないとあたし…!」















???「いいよ…。わたしが教えてあげる」
714 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 01:21:48.07 ID:Wtqdz5oh0

まどか「わたしが…、教えてあげるよ…」

さやか「まどか…………」


まどか「この世界の価値も、さやかちゃんのした事の価値も、さやかちゃん自身の価値も…。

    だから…」


まどか「帰ろう…」




さやか「………なぁ」

まどか「え…?」


さやか「……ガタガタうるさいなぁ」

まどか「………」

ほむら「美樹さん…?」


さやか「とりあえず、次で降りよっか…。

    満足に話も出来やしない…」




ホストB「おい……」

ほむら「す、すいません、すいません……」

ホストA「よせよ、ガキの悪戯に構うな」
715 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 01:22:31.38 ID:Wtqdz5oh0

――見滝原市内某駅――



さやか「で…、何が…、なんだっけ…?」

まどか「………」

さやか「この世界の価値とか…、あたしの価値とか…、だっけ…?」


まどか「うん…。それはね…」

さやか「あぁ…、いいよ。答えなくて」



さやか「何もかも全部、価値なんて無いってわかってるから」


ほむら「美樹さん、そんな………」

まどか「さやかちゃん…」



さやか「正直、今すぐジェムを砕いて死んでもいいんだけどさ…。

    死ぬ前にやりたい事があるんだ…」


さやか「杏子とマミさんの仇…、討たないと死ねないよね…?」



まどか「さやかちゃん…、そんなの…、そんなの違う…!」




さやか「だからさ…」

さやか「アンタ、邪魔」
716 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 01:23:08.06 ID:Wtqdz5oh0

さやか「そこ………、どきなよ」


まどか「嫌だ…」

まどか「もう、絶対さやかちゃんを一人になんてしない…!」



さやか「………魔法少女は多少痛め付けても死なない。ジェムが無事ならいい」

さやか「そうわかってる以上、アンタでも容赦しないよ?」


まどか「わたしは…、さやかちゃんを傷付けたくない」

まどか「でも、ここで行かせたら、さやかちゃんはまた自分を傷付けて……。

    そのまま死んじゃう気なんでしょ…?」



まどか「だったら、行かせない…! わたしがさやかちゃんを止める…!」

まどか「だって、わたしは………」





まどか「さやかちゃんが大好きだから!」


―to be continued―
717 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/07(水) 01:23:37.04 ID:Wtqdz5oh0

―next episode―


「あたしって、ほんとバカ…」





―【第十七話】いつか救えなかったあなたを―

718 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(愛知県) [sage]:2011/12/07(水) 01:59:46.53 ID:UQAlBqv/o
>>1

熱い熱いぜ、熱いぜ杏子
719 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(大阪府) [sage]:2011/12/07(水) 02:49:23.40 ID:VbWDf8350
>>1乙 杏子も熱いが、ほむら凄ぇカッコいいよ
720 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/07(水) 07:59:37.60 ID:I2+qpRqDO

ほむほむと杏子が輝いて見えるぜぇ

あと何故かまどっちがエロくみえた俺はやばい
721 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/08(木) 21:06:44.65 ID:VaYVRLq1o

さやかちゃんがまたまどっちにひどいこと言いながら自分で傷ついてると思うと辛いね
ここしばらくは杏子とマミさんとターンだったが次回はまどさやほむで熱血展開になりそうでwwktk
722 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 01:36:48.35 ID:RTA60rl50
乙です
オリコ勢にはACfaのオールドキングの「戦争や風情が・・・偉そうに。 選んで[ピーーー]のが、そんなに上等かね?」という台詞を投げかけたくなるな

まどさやの方は中々熱い展開になりそうですな。続きに期待
723 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/10(土) 17:55:15.56 ID:R+ZyltBAO
>>722
おりキリの発想はORCAそのものだよな
現在における少数の犠牲で来るべき全体の破滅を救うっていう
傲慢で酔ってはいるかもだけど、無碍にはできないと思う

と、毎回ORCAルートな俺が言ってみる
724 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/10(土) 21:50:51.09 ID:3EFHnxBS0
思いこんだら一直線
いっそ、地球に見切りをつけて、信じてみた木星の正義
でも、それは私たちの正義ではなかった
熱血、友情、努力、人の数だけ正義はあった
                            ※機動戦艦ナデシコ
つまりは唯単に自分自身が信じる正義同士がぶつかっているだけで、どっちが悪いかなんていえないんだろうな
725 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/10(土) 22:57:49.71 ID:jDqkwmBj0
おりこたちは今回のゆまの件で越えてはいけない一線を越えてしまったな
魔法少女に全く関係ない一般人を巻き込んだ時点でそこいらのテロリストレベルに堕ちた感じ
いかなる理由があっても故意に民間人を巻き込んだ時点でアウトだと俺は思う
726 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/10(土) 23:37:49.66 ID:gknbwFMXo
>>725
おりマギでもゆまの両親が死んだ原因作ったのっておりこ勢じゃなかったっけ?
気のせいかそんな記憶がある
727 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/10(土) 23:54:58.15 ID:jDqkwmBj0
>>726
おりこは漫喫で読んだっきりだからあんまり覚えとらんです
明日買って来て読み直すか
728 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 00:16:20.71 ID:vcH7uQnio
>>727
読み直してみたらそういった表記がまるでなかった・・・
アッレーなんでこんな記憶があるんだ
なんかのSSとかの設定と混ざってんのかな・・・
気にしないでくれ

でもおりマギはキリカが格好いいから読み直す価値はあると思うよ!
729 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 00:29:30.25 ID:fU/ZgIfDO
でも目的のためならテロでもしかねないのよな>おりこ
ゆま生贄はあながちじゃないし
実際切羽詰まって学校テロもやったし
730 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 01:31:40.91 ID:Z3BxvCy40
おりこは目的のためには手段を選ばない点ではFate zeroの衛宮切嗣に似てるよな
違う点は切嗣は極力無関係な人間を巻き込まない様にしている点か?
731 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 09:15:42.36 ID:oA8mvf520
>>730
お前はFate/zeroの何を見ていたんだ?
普通に民間人一挙殺しとかもやったわ
732 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 12:30:13.80 ID:7udj8paDO
原作だと様々な検証を未来予知でして変える方法がオリコからのアプローチだと殺害しかなかったみたいだがな

そもそも本編まどかの願いもマミ、さやか、杏子死亡の偶然の産物だし
時間的猶予から見て切嗣の航空機爆破並みに適切な判断だった
最後のさやかと仁美には哀しさしか無いだろうが・・・
仁美「こうなったらもうなんでもこい! ですわ」

とかの台詞と共に印象的だったまどさや仁の三人娘
733 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 17:22:29.27 ID:xEc61he50
>>731
小説の方は未読だけど今やってるアニメじゃランサー組をビルごと爆破する時に民間人逃がしてたやん
734 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 18:08:29.10 ID:7udj8paDO
>>733
いや二人ともより多くの人を救う為に少数を犠牲にできる奴らなだけ
助けれる人が居たら普通に助けるよ(ただし時間がない、多数の中の少数だと容赦なく殺害する 切嗣の航空機乗客皆殺しのように)

さらに言うとオリコも元々学校襲撃はほむらやキュゥべえが居なければする必要が無かったらしいし
735 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 20:43:52.16 ID:nB71D6p40
今回の話で思ったんだけど、破滅の予言を覆そうとして、皮肉にもその行動自体が破滅にいたる
行動だったりするのはよくある話。

神話などでよくある話だけど、その人物達も大抵の場合、結果ばかりに囚われてそこに至る過程が見えていない。
結果論で言えばヘタな行動を起こさなければ(破滅を招く人物を排除するなど)、さらに言えば
そもそも予言さえ聞かなければ特に何も起きなかったと言う場合が多い。

織莉子の予知も結果だけで未来日記みたいに過程がわからないうえに予知とは違う行動した場合、
どんな結果なるのかすぐにはわからないし。
736 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 20:54:26.85 ID:Lh16MmI+0
>>734
積んでた山から掘り起こして該当の部分と思われるところ読んだがあれ乗客は切嗣が打ち落とす前に全員死んでるし実質切嗣が直接殺したのって切嗣の師匠だけじゃないんか?
違う部分だったらゴメン
737 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 22:06:17.84 ID:oA8mvf520
>>735
少なくともマミ、杏子、ゆまが復活したあたりでは未来は結局変わってなくて、結局クリーム全滅エンドだったみたいですね
あと未来予知しながら色々試してたーってことを織莉子さんが言ってる

>>736
実質ってそもそも切嗣てんてーは父親殺した後から暗殺者やってて世界中を飛び回ってたような・・・
実際人は一杯助かってるし、ある意味では正義の味方
あーでも困ってる人を助けるためにもう独りの困ってる人を[ピーーー]のは果たして正義の味方と呼んでいいかは迷うところだな・・・
zeroが出る以前の情報で切嗣は敵マスターを騙すわ恋人を人質にするわ建物ごと爆破するわの大暴れだったらしいとかあったけど割とそんな感じだったしww
建物爆破は冬木ハイアットホテル爆破のことだろうなぁww
738 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 09:15:33.91 ID:eq4O8vG00
そろそろFateの話してる人は黙ろうよ
739 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 22:47:34.36 ID:iUfLrNez0

申し訳ありません。お待たせいたしました。
今から投下いたします。
さすがに中盤戦の山だけあって、中々筆が進まず…。


皆さん、レス感謝します。
それを励みにさせていただいてます。


>>722
>>723
立場柄、おりこさんには敵の立場を取ってもらっていますが…。
>>1としても全体を救う為の汚れ役、否定する気はありません。
正義と言うよりは、必要悪とでも言うべきなんでしょうが…。


>>725
そうでもしなければ、結果が成せないのが視えている。
だから、おりこ達にはそれ以外に選択肢がない。
でも、他者には理解されづらい為、ただの凶行に見える。
それが悲しいところですね…。

>>735
おりこの予知は未来日記の予知同様、過程が見えず、予知に携わる状況の変化に弱いんじゃないかってのは>>1も感じてました。
故にこのSSのおりこの能力はそれを参考にしてる感じです。
740 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 22:48:20.35 ID:iUfLrNez0

まどか『だいじょ…ぶ……、わたしは……大丈夫…、だから…』


さやか『結局あたしは、一体何が大切で何を守ろうとしてたのか……』


さやか『もう何もかも…、訳わかんなくなっちゃった…』





まどか『駄目……、さやか…、ちゃん……、自分…、責め、ちゃ…』


さやか『確かにあたしは何人か救いもしたけどさ…。

    だけどその分、恨みや妬みが溜まって…。一番大切な友達さえ傷つけて…!』


さやか『誰かの幸せを祈った分、誰かを呪わずにはいられない…。

    あたしたち魔法少女ってそういう仕組みだったんだ』





まどか『わたしは…、大丈夫だから……ね…?

    も…、もう……、自分をっ…、責めないで……!』





さやか『あたしってほんとバカ』
741 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 22:49:10.63 ID:iUfLrNez0







―【第十七話】いつか救えなかったあなたを―







742 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 22:49:49.86 ID:iUfLrNez0

わたしは一人ぼっちだった。




見滝原に来てすぐの時だった。


人見知りだったわたしは、転校してすぐに友達なんて出来なくて…。

家でも、たっくんが生まれたばかりで、パパもママも掛かりきりで…。


学校にも、家にも、どこにも…。



わたしの居場所はない。

わたしは一人ぼっちなんだ…。


そう思っていた。
743 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 22:50:28.24 ID:iUfLrNez0

俯き気味に歩く、覚えたての通学路。

沈みきった気持ちで歩くその道は、足取りも重くて…。

何かに足を掛けたきっかけに、勢いよく転び…。

拍子に閉め忘れたランドセルの中身を辺りに散らす………。



雨上がりの水たまりに落ちた教科書やノートやお弁当を見て……。

涙で視界が滲んだ……。

そんな時だった。



???『大丈夫?』


まどか『あ………』


そう言いながら、彼は手を差し伸べてくれた。

短い髪に、半袖半ズボンと、男の子のような格好…。

でも、しゃがみこんだ際に映った赤いランドセルから、彼は彼女であると気付く…。


そして、彼女はポケットからハンカチを取り出すと…。

躊躇う事なく、汚れたわたしの教科書を拭き始めた。
744 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 22:51:29.44 ID:iUfLrNez0

まどか『あ……、ありがとう』


???『教科書とか拭けば大丈夫だよ。ノートは染みが残っちゃうかもしれないけど…。

    お弁当も大丈夫。包んでる布巾は汚れちゃったけど洗えば落ちるよ』


ハンカチで濡れた教科書やノートを拭きながら…。

太陽のように明るくて、優しい笑顔を向けながら彼女はそう言った。


その優しさはわたしの涙腺を刺激して…。

堪え切れなくなった涙は、溢れだしていた。



???『あーあー、泣くなって! 全部大丈夫だから!』


わたしの涙に少しだけ困った表情をしたけれど、彼女はまた微笑み…。

また、持ち物を拭き始めた。
745 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 22:52:12.73 ID:iUfLrNez0

???『これで最後、かな。他に落とした物はない? 痛いとこない?』


まどか『ないです…』

???『そっか。じゃあ、いこう。

    遅刻しちゃうし』


まどか『ごめんなさい……』

???『あ、謝らなくていいって』


???『じゃ、いこっか』


まどか『あ………、わたし、鹿目まどか………です』


???『知ってるよ。つか、同じクラスなんだけど』



まどか『え………?』



さやか『美樹さやか。よろしく』
746 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 22:52:59.80 ID:iUfLrNez0

これが、わたしとさやかちゃんの出会いだった。


さやかちゃんは孤独だったわたしに手を差し伸べてくれたばかりか…。

その手を引いて、引っ張り上げてくれたんだ。


そして、その後も…。



さやか『まどか、これあげる』


何時も構ってくれて…。



さやか『まどか、今日、遊ぼうよ』


ずっと一緒にいてくれて…。



さやか『まどかをいじめるな!』


どんな時だってわたしを守ってくれた。


わたしが辛い時、苦しい時、悲しい時…。

さやかちゃんはわたしを支えてくれた。

傍にいてくれた。


でも………。
747 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 22:53:56.37 ID:iUfLrNez0

『あたし? 全然平気』

『やだな〜、まどかは心配し過ぎ』

『さやかちゃんはこんな事でヘコたれたりしないのだっ』


その逆はなかった……と、思う。


さやかちゃんは何時もわたしを助けるばかりで…。

滅多にわたしに弱い所なんか見せてくれなくて…。

見せたとしても、何時も何時も『平気だよ』って笑って誤魔化してた…。



上条君が事故にあって入院した時だってそう…。

結局、わたしはさやかちゃんの力にはなれなくて…。
748 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 22:55:11.66 ID:iUfLrNez0

でも、思えばそれは当然のことだった。

わたしはさやかちゃんを守って、支えてあげるだけの器が無かった。

何も出来ない、価値のない人間が、優しくて強いさやかちゃんの力になろうなんておこがましいんだって…。

そう思ってたから…。



だから、わたしは魔法少女になれた時、本当に嬉しかった。

自分に自信が持てた。

やっと、誰かの役に立つ事が出来る。

そう思った。


そして…。
749 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 22:56:09.45 ID:iUfLrNez0

まどか『これからはさ、何かあったらすぐにわたしに相談してね。

    何があっても。どんなことでも』


さやか『おっけ〜! 約束っ!』


これからわたしは…。

やっと、さやかちゃんと肩を並べて歩けるから…。

これからはさやかちゃんを守って、支えてあげられるから…。


そう思えたから、あの約束をしたんだ。



それなのに…。







さやかちゃんが一番苦しい時に、わたしはその手を離してしまった。
750 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 22:57:11.96 ID:iUfLrNez0

さやか「あぁ…、いいよ。答えなくて」

さやか「何もかも全部、価値なんて無いってわかってるから」


さやか「正直、今すぐジェムを砕いて死んでもいいんだけどさ…。

    死ぬ前にやりたい事があるんだ…」


さやか「杏子とマミさんの仇…、討たないと死ねないよね…?」



そして、これが孤独に堕ちたさやかちゃんの答えだった。


上条君が入院した時も、魔法少女になった時も、杏子ちゃんの時も…。

苦しい時も、辛い時も、困難な壁にぶつかった時も…。

何時だってさやかちゃんは、わたしなんかに頼らずに答えを出していた。

そして、その答えは多少荒っぽかったりはしても間違いと言えるものはなかった。



だけど…。

この答えだけは……。

絶対に違う。
751 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 22:58:16.37 ID:iUfLrNez0

まどか「さやかちゃん…、そんなの…、そんなの違う…!」


何時も何時も支えてもらいながら…。

さやかちゃんが一番苦しい時に手を離したわたしが、何を今更って思うかもしれない。


でも、この答えだけは認めない。

この答えだけは絶対に間違ってるって……、そう言い切れる。



まどか「ここで行かせたら、さやかちゃんはまた自分を傷付けて……。

    そのまま死んじゃう気なんでしょ…?」

まどか「だったら、行かせない…! わたしがさやかちゃんを止める…!」


そして、それ以上に認めたくない。

認める訳にはいかない…。

だって…。




まどか「だって、わたしは………」


まどか「さやかちゃんが大好きだから!」
752 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 22:59:27.92 ID:iUfLrNez0

さやか「大好き、か……」

まどか「………」




さやか「でも、あたしは大嫌い…」



さやか「あたし自身も、この世界も、そして………」


さやか「アンタの………、事も………」



まどか「…………」

ほむら「美樹さん………」


さやか「だから、もう放っといてよ……

    でないと…………」






さやか「本当に潰すよ?」
753 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:00:27.56 ID:iUfLrNez0

強い威嚇と拒絶の言葉と共に、さやかちゃんのソウルジェムは光を放ち…。

魔法少女の姿へと変わる。


青い衣装に、白いマントに手に握られた刀剣。

ずっとわたしを守ってくれた優しい青の騎士。


でも、その刃の矛先を今は………。






それでも、わたしの答えは変わらない。

754 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:01:45.64 ID:iUfLrNez0

まどか「放っとけないよ…」


まどか「放ってなんておける訳ないよ……。

    だって、さやかちゃんは今……」


説得の言葉は、そこで遮られる。

さやかちゃんはわたしが言い終わらない内に、その刀剣を前へと繰り出すと……。

その刀身を打ち出して放った。





まどか「………」


ほむら「そ、そんな………」


放たれた刀身はわたしの顔の横を通り過ぎ、掠められたピンク色の髪が宙を舞う…。


その視線の先では、何時もの笑顔が嘘だったかのように…。

悲しく、冷めきった表情をしたさやかちゃんの姿があって…。
755 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:02:55.29 ID:iUfLrNez0

さやか「次は当てるよ…、早くそこをどいて」



ほむら「美樹さん………、どうして………」


さやか「あたしはもういらないんだ」

さやか「あたし自身も、この世界も、アンタ達も………。

    だから………」



さやか「もうあたしの前に立つなッ!!!!!」



悲しいんだね…。

辛いんだね…。

何を信じたらいいかわからないんだね…。



ごめんね。

苦しんでいるさやかちゃんを支えてあげられなくて…。

こんなになるまで放っておいて…。


そう、伝えてあげたいよ…。



でも、言葉はもう…。

さやかちゃんには届かないみたいだから…。
756 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:03:46.89 ID:iUfLrNez0

まどか「ほむらちゃん、下がって」

ほむら「え……? でも、それってまさか……」



まどか「うん…。そうでもしないと、今のさやかちゃんは引き止められそうにないから……」


ほむら「そんな…! そんなの駄目です!

    二人が殺し合いをするなんて、そんなの……」


まどか「わたしも嫌だ。さやかちゃんに嫌われちゃうのも、さやかちゃんと争うのも。

    でも………」




まどか「さやかちゃんがいなくなっちゃうのは……、死んじゃうのは……。

    もっと嫌だから……」


まどか「今は、やれる事をやるよ」





まどか「今のわたしには、それが出来るだけの力があるんだから!」
757 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:04:50.12 ID:iUfLrNez0

指輪状のソウルジェムに魔力を込めつつ、翳す。

眩い光に包まれ、わたしもまた魔法少女の姿へと変わる。



魔法を行使しやすい姿へと変わったわたしは…。

まず左手で離れた後方にいるほむらちゃんを指さし、結界を作り出す…。


続けて、その左手を戻しつつ両手で自分の武器である先端に蕾を伴った木の枝のような杖を生成。

さらに、そのまま魔力を込めて弓の形状へと変化させた。



そして…。

一人静かにそれを見つめるさやかちゃんと向き合う…。
758 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:05:44.94 ID:iUfLrNez0

まどか「お待たせ」


まどか「わざわざ、全部終わるまで待っててくれたんだね」

さやか「…………」


まどか「今ので確信したよ。

    さやかちゃんは優しいさやかちゃんのままだって…」


さやか「何それ…」

さやか「アハハハハハハハハ!!!!! 馬鹿じゃないの!!!!!」


さやか「丸腰のアンタの前で変身して、攻撃を放って殺そうとして……。

    そんな最低な奴があたしだよ。何勝手な事を…」



まどか「わたし、思うんだ…」


まどか「言葉にしないと伝わらない事って、たくさんあるけど…。

    その逆で、言葉にしなくても伝わる事もあると思うんだ…」


まどか「今みたいにね」






まどか「だから、最後まで諦めないよ」
759 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:06:50.78 ID:iUfLrNez0

さやか「……………」


さやか「馬鹿じゃ……ないの?

    そうやって勝手に相手に夢見て………」




さやか「それなら…、教えてあげるよ……」


さやか「あたしがどんな奴かなのかを………」




さやか「アンタの体にさ!!!!!!」


一触即発の状況がとうとう崩れ、さやかちゃんがその剣を構える。

そして、わたしも右手に矢を作り出して、その弓を引く…。


誰も望んでいない戦いが、静かに幕を開けていた。
760 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:08:14.98 ID:iUfLrNez0

さやかちゃんはわたしに向かって真っ直ぐ突進し…。

わたしはそれに合わせて即座に弓を射る。


放たれた矢は、遥か前方で弾け…。

無数の魔力弾となり、さやかちゃんに襲いかかる。


足の速いさやかちゃんはそうそう捉える事は出来ない。

だからこそ、回避の難しい拡散弾を突進に合わせて放ったんだ。





ほむら「美樹さん!!!!!」

まどか「大丈夫。練習用の矢だから」


さやかちゃんに放ったのは、魔力を絞って殺傷力を落とした模擬戦用の矢。

それでも直撃すれば悶絶するほどの激痛を伴うほどのものだ。

そんなモノを全身で受ければ、ただで済む筈もない。




でも………。
761 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:09:19.59 ID:iUfLrNez0

さやか「今のあたしは何も感じないんだ…」


無数に弾けた魔力弾は、確かにさやかちゃんの全身に命中した。

しかし、さやかちゃんは止まらない…。





さやか「そんなモノじゃ…」


さやか「あたしは止められない!!!!」



痛覚遮断。

別れる前に見たあの痛々しい技を完全にモノにしたようで…。


自らの高機動とそれを合わせた圧倒的な突進力を以て、魔力弾の弾幕を通り過ぎると…。

次の瞬間には、わたしを間合いに捉えていた。
762 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:10:18.62 ID:iUfLrNez0

繰り出される斬撃。

しかし、わたしはその斬撃をギリギリの所で受け止める…。



さやか「よく止めたね」

まどか「まぁね…」


さやかちゃんの機動力の高さ…。

うぅん、さやかちゃんの実力はわたしが一番よく知っている。


矢を掻い潜られれば、一瞬で間合いを詰められるのは明白。

だから、予め矢を放った直後から弓を杖へと戻していたのだ。




さやか「でも、非力な後衛のアンタは、鍔迫り合いになったらもうどうしようもない…!」


まどか「そうだね…。

    そうならないようにって、いつも守ってくれてたよね…」

さやか「…………」


まどか「でも、そんなさやかちゃんの負担を少しでも減らせるようにって、これも生まれたんだよ…」

さやか「……!」



まどか「吹き飛べ…!」
763 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:11:00.63 ID:iUfLrNez0

さやか「くッ…!!!!」


わたしの握る杖を纏う輝きが、刃の当たっている一点に収束し、弾ける。

その衝撃に足を取られたさやかちゃんは…。

そのまま発生した爆風に運ばれ、勢い良く後方へ吹き飛んでいく…。



杖先に込めた魔力の衝撃波で、敵と距離を置く為だけの技。

発生する衝撃も爆風も威力はほとんどない、本当にそれだけを目的とした魔法。


近接対処能力を上げて、さやかちゃんの負担を減らしたい。

そう思って作られた技が、さやかちゃんとの鍔迫り合いを制する事となる。

何とも皮肉な話だ。
764 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:11:56.91 ID:iUfLrNez0

さやかちゃんは体勢が崩れたまま飛ばされて転がるも、途中で左手を地についてバク転を行いつつ勢いを殺し、

そのまま左手と両足を地につけたまま低く構え、いつでも飛びかかれる状態へと体勢を整える。


そして、わたしは睨むような目付きのさやかちゃんを見つめ、再び言葉を投げかける。



まどか「さやかちゃん…、『アレ』やっぱりまだ続けていたんだね……」

さやか「痛覚遮断の事…? だから、何…」


さやか「言ったでしょ…。あたしは魔女を倒す道具…! それしか価値が無いんだ…!

    だから、道具は道具らしく…」


まどか「違うよ…。例え何になっても、さやかちゃんはさやかちゃんだよ」


さやか「そんな屁理屈、何の意味もない…!」


まどか「そうかもしれないね」

まどか「でも、やっぱりわたしは……。

    さやかちゃんが、そうやって自分を痛めつけているのを見ると胸が苦しくなるんだ…」


さやか「だったら何よ…!」


まどか「もう、使わせない」




まどか「さやかちゃんを傷つけるだけの魔法は…!」
765 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:13:14.47 ID:iUfLrNez0

さやか「アハハハハハ!!!!!!」

さやか「やれるもんなら、やってみなさいよ!!!!」


まどか「…………」



さやか「そもそも、ちょっと鍔迫り合いに勝ったくらいで逆上せ上がって…!」




さやか「あんなモノ…! 鍔迫り合いにさせなきゃいいだけだろ!!!!!」


地面を蹴り、さやかちゃんは再びわたしへと接近する…。

そして、自分の間合いへと入るか入らないかの時、その姿を消す…。



さやかちゃんのその速度を活かし、一瞬で背後へ回り込む強襲攻撃。

並の魔法少女や魔女であれば、そうそう対処できないであろう超高速の斬撃。










しかし、わたしの杖は、再びその斬撃を受け止めていた。
766 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:14:25.18 ID:iUfLrNez0

さやか「な…!?」

まどか「無駄だよ……」


先ほどと違い、完全に不意を突いた筈の攻撃を止められ、さやかちゃんも動揺の声を上げる…。

それでも、そのまま立ち尽くしている程さやかちゃんは馬鹿じゃない。



さやか「なら…! これで…! どうだッ!!!」

まどか「無駄だって言ったよ…!」


状況を立て直す為に、一度剣を弾いて強引に連撃しようとするも……。

一撃、二撃、三撃と…。

その連撃は悉くわたしの杖に阻まれる。




さやか「見切られてるって言うの…? それなら…!」


大きく後方へ飛び、さやかちゃんは再度姿を消す。

だけど、結果は同じ。

さやかちゃんの繰り出した背後からの剣撃は杖に阻まれ、わたしには届かない。
767 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:15:48.59 ID:iUfLrNez0

さやか「こんな…、こんなの……」


まどか「なんで、当らないかわかる?」

さやか「ッ………」



まどか「それはね……」


さやか「何時までも舐めるなッ!!!!」


煽られたさやかちゃんは意表を突こうと一旦横に跳び、そこから踏み込んで剣を繰り出す。

そして、わたしはさやかちゃんの剣先を見つつ、その表情を見る…。


剣を見るよりもわかりやすい…。

その真っ直ぐ見ているようで、どこかズレた視線…。

その時は多分…。
768 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:16:26.74 ID:iUfLrNez0

キィン、と音が響く…。

ピンク色の魔力を纏うわたしの杖は、さやかちゃんの剣をまたも見切り、受け止めた。



まどか「やっぱりフェイント、だね」


さやか「また、止められた……!?」


まどか「わかるんだよ。

    さやかちゃんの事は全部…」


一緒に特訓して来たから…。

うぅん、ずっと一緒にいたから、わかる。

さやかちゃんの癖も傾向も得意技も全部。


走っている時に牽制されると、右に避けようとする癖…。

焦ってる時の連撃のパターン。

フェイントの際の視線…。



何もかも全部知ってる。

だって、わたしは…。
769 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:18:00.23 ID:iUfLrNez0

まどか「よく見てるでしょ、さやかちゃんの事」


さやか「馬鹿にしてッ!」


さやかちゃんは大きく跳躍して距離を置く。

これもわかってる。


これは癖と言うよりはマミさんからの教え。

相手に攻撃を見切られたら、一旦距離を置いて牽制。


マミさんに素直なさやかちゃんは、確実にそれを守って来る。


そして、焦りで周りが見えなくなっているさやかちゃんは、そこに気付いていない。




距離を置いてしまった時点で、わたしの得意な距離に持ち込まれていると言う事に。
770 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:18:52.12 ID:iUfLrNez0

さやか「…!?」


まどか「ごめんね」


射撃型のわたしに対していきなり大技を出そうとするほど、さやかちゃんは馬鹿じゃない。

それなら繰り出してくるのは間違いなく、隙の少ない刀身射出。


だから、わたしはそれを繰り出そうと突き出した刀剣に目掛けて矢を放ち、弾き飛ばした。



さやか「ッ! この程度…!」


まどか「それもやらせないよ」


刀身を失った剣の柄を捨てつつ、その手で次の剣を作ろうとする。

だけど、体を盾にして作られかけた次の剣もまた、同じ末路を辿る。
771 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:20:04.44 ID:iUfLrNez0

さやか「!?」

さやか「まだだ…、まだッ…!」


今まさに生成されたばかりの刀剣が、思念操作された魔法ならではの矢に撃ち抜かれて弾かれる。

さやかちゃんはわたしを睨みながら、再度刀剣を作り出そうとするも、わたしはそれをさらに射抜いて、弾く。

今度は両手でそれぞれ剣を作ろうとしたけど、結果は同じ。


わたしは同時に二発の矢を放って、それぞれ出来たての刀剣を弾き飛ばした。



まどか「無駄だよ」

まどか「さやかちゃんの剣の生成より、魔力を直に飛ばすわたしの矢は生成が早いんだ…」


さやか「それにしたって、そんな嘘みたいに正確な早撃ちが…」


まどか「これでも鍛えてるからね…」

さやか「…………」



まどか「さっきも言ったよね…」


まどか「もう使わせない…。

    さやかちゃんを傷つけるだけの魔法は…!」
772 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:21:34.58 ID:iUfLrNez0

さやか「まどか……、アンタは…!」


あらゆる攻撃を見切られ、行動を封じられ……。

動揺と苛立ちから来る混乱を隠し切れずに立ち尽くすさやかちゃん。

そして、わたしはそんな姿を見つめながら、左手に矢を作り、弓を引く。



ほむら「鹿目さん? まさか……」



まどか「終わりにしよう。さやかちゃん」

さやか「………」



ほむら「駄目ですッ! 鹿目さんッ!!!!」


結界を叩きながら叫び、わたしを制止しようとするほむらちゃんを他所に…。

わたしは右手を離し、丸腰のさやかちゃん目掛けて矢を放つ。


矢は直進し……。

動く事なく、それを見つめるさやかちゃんの目の前で炸裂した。
773 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:22:18.72 ID:iUfLrNez0

ほむら「駄目ぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!!!」


響く慟哭。

それに呼応するかのように…。


さやかちゃんを飲み込んだ魔力の光が広がっていく……。



ほむら「あぁ………あ……」


ほむら「もう………やだ……、こんなの……」


ほむら「やだよぉ……」


一面に広がった眩い光。

辺り一帯を照らすその光が減衰していく……。



そして……。

その光が完全に明けた時…。





















わたしは、押し倒したさやかちゃんをしっかりと抱きしめていた。
774 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:23:39.65 ID:iUfLrNez0

ほむら「美樹さんっ!!!、鹿目さん………」

ほむら「よかった…、よかったよぉ……」




まどか「さやかちゃんっ、やっと捕まえた………」


さやか「離して……、離してよ!」

まどか「イヤだ。もう絶対離さない…」


さやか「どいてよ……、あたしはもう……!」

まどか「やめて!」


まどか「聞きたくないよ……」


さやか「…………」



まどか「ごめんね」


まどか「さやかちゃんが辛い時に一人にしちゃって……。

    偉そうなこと言いながら、結局何の支えにもなってあげられなくて……」


まどか「だけど、わたしもう迷わない。

    今度こそ……、さやかちゃんを守るから…。もう一人になんてしないから…」


まどか「もう自分を責めないで……。傷つけないで……」
775 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:25:18.01 ID:iUfLrNez0

さやか「…………」

さやか「なんで…」


さやか「なんでアンタは構うのよ……」

さやか「アンタを傷つけるあたしなんかに……」



まどか「もういいよ。それも全部わかってる」


まどか「さやかちゃんは、わたしに嫌いだって嘘言ってでも……、傷つけてでも遠ざけたかったんだよね?

    そうやって美国さんと刺し違えて、罪滅ぼししようと思ったんだよね?」


まどか「死んじゃう前に………、せめて死ぬのならって………」


さやか「…………」


まどか「でも、わたしいらないよ。そんなの嬉しくない…。

    そんな事よりも、わたしはさやかちゃんに生きてて欲しい…」
776 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:26:24.31 ID:iUfLrNez0

さやか「わけ……、わかんないよ……」

さやか「なんで…? あたしはアンタに八つ当たりするような……。

    そんな最低な奴なのに…」


まどか「それを言ったら……、さやかちゃんはなんでわたしなんかに構ってくれたの?」

まどか「わたし…、ずっとさやかちゃんに迷惑ばかりかけてた。お世話になりっぱなしだった。

    けど、わたしからはさやかちゃんに何もしてあげられなかった……」


まどか「それなのに、どうしてわたしの友達でいてくれるの…?」



さやか「それは………」


まどか「それと同じだよ。小難しい理由なんていらない」

まどか「わたしはさやかちゃんが大好き。だから助けたい。

    それだけだよ」


まどか「だから、全部話してよ。全部わたしにぶつけてよ。

    今度はちゃんと受け止めるから……」


さやか「…………」





まどか「そう言う……、約束でしょ…………?」
777 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:27:54.17 ID:iUfLrNez0

さやか「ふ………」


さやか「あっはははははは…」

さやか「アンタには敵わないわぁ……」


それまで、ただ辛そうで悲しそうだったさやかちゃんの表情が変わる。

一瞬だけ目を丸くして、そのまま笑いながらそう言う。

それは少しだけ寂しそうだけど……、いつものさやかちゃんの笑顔そのもので……。


やっと、いつものさやかちゃんが帰って来た気がした。




さやか「まずは……、あたしも謝んなきゃだね。

    ごめん、まどか。それにほむらも……、ごめん」



さやか「でもね……」


さやか「もう何もかもわからなくなったんだ」


寂しそうな…、それでいてどこか吹っ切って笑ったような……。

見た事のない表情をしながら、さやかちゃんは胸中を語る…。


わたしは、そんなさやかちゃんをまた抱きしめようとしたけど、それはもうしなくていいって拒まれてしまい、

そんな様子を、ほむらちゃんに笑われた。

ほむらちゃんはもう結界から出てもらっていて、今は駅のベンチに三人並んで座っている。
778 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:29:23.06 ID:iUfLrNez0

さやか「結局あたしは恭介に見返りを求めてて……、事情を知らない仁美を妬んで恨んで……。

    まどかに八つ当たりした……」

さやか「こんなあたしはもう、みんなの所に帰る資格はないってそう思った。

    そして、そんなわたしが出来る事、すべき事を考えた……」


ほむら「それって、魔法少女の使命…、魔女退治ですか?」



さやか「そう…。あたしはマミさんを見殺しにしてる。

    だから、マミさんの代わりに守らなきゃって思った」


さやか「まどかも、ほむらも、この街の皆も………」


さやか「だけど……、『誰かの為に生きる馬鹿は犬も同然』って言ったあのホスト達の話を聞いて……。

    どうしようもなく虚しくなったんだ………」


さやか「うぅん、それは引き金に過ぎなくて……。

    戦い疲れたあたしは、どこかで薄々感じてたのかもしれない…」


さやか「同時に、そこにいたホストもこの世界もどうしようもなく憎くなった。

    でも、それ以上にそんな事を考えたあたし自身はもっと許せなかった……。

    だから、もう……」



さやか「消えちゃいたかったんだ………」
779 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:33:06.45 ID:iUfLrNez0

まどか「さやかちゃん………」


さやか「あたし、嫌な女なんだ……」


さやか「勝手にした事の見返りを求めて……、得られなかったって妬んで……。

    そして、友達に八つ当たりして……。最後には全部嫌になって……」


さやか「ほんと、どうしようもないくらい最低だよね……。

    救えないくらいバカ……、だよね………」




??「そんな事ないんじゃないかしら」


さやか「え…?」

まどか「その声………」


??「誰だって、した事の見返りくらい欲しい。当然だと思うわ」

??「すべき事をしたから見合った報酬が欲しい。そして、それが得られずに他人を妬む…。

   どれも人として自然な…、当然の感情よ」



??「それでも『誰かの為に』って頑張れるあなたを、私は尊敬しているわ」


??「そもそもさ…。人間なんて、本来そんなもんだろ?」



??「なぁ……、さやか」
780 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:34:44.79 ID:iUfLrNez0

聞き覚えのある声。

見覚えのあるシルエット…。

間違える筈が無い……。


振り返った先に立っていたのは…。

死んだと思っていた二人の姿で…。



まどか「マミさん!」

さやか「杏子………」

ほむら「二人とも、無事だったんですね…!」


マミ「ごめんね。遅くなって」


杏子「とりあえずは…、まどか。これを使ってやりな。

   さやかの奴、その様子じゃ相当まずい事になってんだろ?」


まどか「うん……」


わたしに向かって、グリーフシードを投げて渡す杏子ちゃん。

まずい事、と言う言い方が少し引っ掛かったけど、その場は聞き流しつつ、

さやかちゃんからソウルジェムを預かり、その穢れを移す。


元の色がわからなくなるほど真っ黒に染まったソウルジェムは、ようやく元の輝きを取り戻していく…。
781 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:38:52.57 ID:iUfLrNez0

さやか「悪いね……、手間かけさせちゃって」


杏子「ふん…。それ見た事か。

   だから『誰かの為』なんて、どうなるかもわからねぇ格好付けはやめとけって言ったんだよ」


さやか「ほんとだよね……。

    あたし、アンタに偉そうな事言いながら、結局はこんなになってさ…」


杏子「チッ……。ウゼェ! 何時までもうじうじすんな!」


杏子「誰かの為に何かしたいって事は間違いじゃないんだろ?

   じゃあ、少なくともお前の行動自体は正しいんだ。胸を張れ」


さやか「うん………」


杏子「ったく…。世話が焼けるよ」

杏子「そうだ…。なんなら、特別にアタシの面貸してやろうか?

   ぐだぐだうるせぇ奴をボコボコにするだけでも、結構すっきりするもんだぜ?」


さやか「…………バカ」


目を潤ませながら………、けれどさやかちゃんは笑ってそう言う。

頭を掻き、少し照れくさそうに明後日を向く杏子ちゃん。


そして、そんな杏子ちゃんの後ろに居た小さな人影が、ひょっこりとさやかちゃんの前に出てくる。
782 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:40:30.90 ID:iUfLrNez0

ゆま「サヤカっ」

さやか「ゆまちゃん、どうしてここに……」


ゆま「サヤカにありがとうを言いに来たの」

さやか「…………」


ゆま「サヤカはゆまを助けてくれたよ…。

   そのことをゆまはいつもいつもありがとうって思ってるよ」

ゆま「ゆまのありがとうじゃ、足りないかもしれないけど……。

   でも、ゆまもたくさんありがとうするから……、消えちゃヤダよ……」


さやか「ゆまちゃん…………」



ほむら「じゃあ、私からも。

    美樹さん、今までありがとうございます」


さやか「ほむらまで………。あたしはそんな事言われる資格…」


ほむら「私、美樹さんが居なかったら魔女か、あの魔法少女に殺されてとっくに死んじゃってます」

ほむら「それだけじゃないです。私も美樹さんにはたくさん優しくしてもらって……。

    たくさん元気をもらいました……」

ほむら「私は、鹿目さん達と違って美樹さんの力にはなれないけど……。

    それでも、お礼くらいは言わせてください」
783 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:42:30.14 ID:iUfLrNez0

さやか「でも、あたし………」

ほむら「コンプレックスがあるのは美樹さんだけじゃないです。

    誰でも皆、それを隠したり、ごましたりして生きてるんです…」


ほむら「それを理由に死ななきゃいけないなら、私なんか何回死んでるかわかりませんよ?」

ほむら「それに……、負の感情を覚えたり、その感情に悩んだりするのは、化け物や道具なんかじゃない何よりの証…。

    美樹さんが、私と同じ人間である証拠だと思うんです」


さやか「ほむら………」




まどか「ねぇ、さやかちゃん」


まどか「わたし達は上条君じゃないから、さやかちゃんが一番に望むモノをあげる事は出来ない。

    でもさ………」

まどか「さやかちゃんが頑張って来た事は知ってるよ。

    上条君の為に自分の身を捧げた事も、わたしや皆の為にって戦ってくれた事も……」


まどか「だから、そんな自分を否定しないで。

    何もかも自分一人で背負おうとしないで」


まどか「さやかちゃんが誰かを救ってきたように……。

    今度はわたし達で、さやかちゃんを支えるから」
784 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:43:52.44 ID:iUfLrNez0

さやかちゃんを取り囲み、みんなが支えている。

それは多分…。

さやかちゃんが望む光景の一つなんじゃないかなって……、そう思う。


そして、その中でさやかちゃんは…。



さやか「あたし……、一人じゃなかったんだね…」


さやか「なのに一人で恨んで、妬んで……。

    勝手に何もかも嫌になって……」


さやか「みんな……、こんなに…、あたしの事見ててくれたのに……。

    それなのに……、こんなになっちゃうなんて……」


さやか「あたしって、ほんとバカ…」





まどか「帰ろ、さやかちゃん」

さやか「うん……。うんっ……」


泣きじゃくるさやかちゃんをもう一度だけ抱きしめる。


そして、そのまま…。

さやかちゃんが泣きやむまで、ずっと抱きしめていた。
785 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:45:48.17 ID:iUfLrNez0

────────

────

──



さやか「ねぇ…、まどか」

まどか「なぁに?」


さやか「実はね…、あたしの願いって恭介の腕を治す以外にもう一つあったんだ」



マミ「…? おかしいわね。QBは魔法少女が叶えられる願いは一つだって言ってた筈だけど…」

ほむら「何かを満たすと二つになるとか、隠し条件でもあるんでしょうか…?」


ゆま「あ〜っ! サヤカばっかりズルイ! ゆまも二つめのお願い叶えたいよ〜!」

杏子「やめとけやめとけ。仮に叶うとしたって、その分あの白饅頭になんか持ってかれるぞ。

   つーか、そう言う事じゃなくて、魔法少女になって出来た事とかそんなんだろ?」


さやか「うん」

まどか「それって………」


さやか「そう。あたしは恭介の腕を治すのと同時に、ピンチだって聞かされたまどかを助ける事が出来たんだ」

さやか「そして、あたしは今日まどかに救われた……。

    だから、しっかり見返りを受け取る事が出来たんだなって、そう思ったんだ」
786 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:46:50.84 ID:iUfLrNez0

まどか「その願いの見返りはそのくらいじゃ終わらないよ」

さやか「え…?」


まどか「わたしはこれからもずっと、さやかちゃんを助けちゃうからね」



さやか「ぷっ…、あははははははっ」


まどか「もうっ、どうして笑うの!」

さやか「ははははっ……。いや〜、見返りは無限大ですかぁ!

    我ながらお得な願いをしたもんだなって」

まどか「でしょ…?」


さやか「うん…。なら、これからも頼むね。

    あたしは弱いから、またまどかに迷惑かけちゃうかもしれないけど…。

    その分、あたしもまどかを守るから…」



さやか「改めて…、これからもよろしくね、相棒」

まどか「うんっ!!!!」



交わした約束。

それは…。

わたし達の辿るべき運命さえも変えていく…。
787 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:47:54.75 ID:iUfLrNez0

――見滝原市内???――



織莉子「ふぅ……、あと……少し……」

キリカ「………」


織莉子「重いわ……、キリカ……」

織莉子「ふふ……、後ろから抱きつかれた事はあったけど……。

    貴女をおんぶする日が来るとは思わなかったな」


キリカ「ぅ…………」

織莉子「ごめんね。もう少しだけ頑張って……」


織莉子「あの薬……、多めに貰っておいてよかった……。

    あれを全て使えば………」



織莉子「……………」


織莉子「本当に容赦が無いわね、この力は………」


織莉子「希望に縋る時間すら、満足に与えてくれない…」




織莉子「え………?」


織莉子「何故、『美樹さやか』がキリカの前に現れるの……?」
788 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:49:18.17 ID:iUfLrNez0

織莉子「こんな……、こんな馬鹿な……!」

織莉子「彼女は今日、鹿目まどかを倒したショックで魔女化して……。

    満身創痍の鹿目まどかはそれを説得しようとして戦死、そこに居合わせる暁美ほむらも魔女の手によって死ぬ……」


織莉子「その………、筈だったのに……!」


織莉子「何故…」

織莉子「どうして……?」

織莉子「私が視た未来は……」


織莉子「私が視た『いつか』はどこへ行ったの!?」



織莉子「巴マミ達を逃がしたのが大きかったの……?」


織莉子「違う………。足止めは十分だった。

    あそこまで足止めすれば、彼女達は間に合わない。

    状況を変える因子が無い以上、もう未来が変わる筈は無い…!」


織莉子「では、何故!? どうして…!?」




織莉子「……………」


織莉子「キリカ………。どうやら、私の『運命』も決まったみたい……」
789 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:50:15.39 ID:iUfLrNez0

――見滝原市内廃墟――



QB「一足遅かったみたいだね。

   戦闘の痕跡があるから、ここに彼女達が居たのは間違いないんだけど」

???「……………」


QB「念の為、もう一度彼女達の特徴を説明しておくよ」

???「必要無い」


QB「それは困る。彼女達以外の魔法少女に手を出されると……」


???「くどい! 一度聞けば覚える!」

QB「…………」



???「絶対に許さない」

???「おまえたち……、おまえたちだけはッ………!!!!」


QB「全く………、頼もしい限りだよ。

   性格には難があるけど、実力と目的に対する執着は折り紙つきだからね」


QB「さぁ………、役者も揃ったし、始めようか」

   

QB「『魔法少女狩り』を」


―to be continued―
790 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/18(日) 23:50:48.30 ID:iUfLrNez0

―next episode―


「愛は無限に有限か。良い言葉だよ。だけどね…!」





―【第十八話】白と黒(前編)―

791 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 00:27:29.68 ID:hlx1BJOa0
乙ですたー!
QBが連れて来たのって、まさか・・・・・・
792 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 00:31:18.35 ID:o3Ky+lS90
更新乙です

最後の???が誰か気になる。魔法少女狩りという点でかずみ勢の誰かなんだろうけど
793 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 02:10:37.00 ID:ffk44ll7o
やばい、まどマギとおりこしか読んでない
明日にでも買ってくるか
794 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 21:59:28.27 ID:Kp9giCqBo
今見つけたのでとりとめもなく感想

おりこに焦点を当てるとデッドゾーンが思い起こされるにゃー
いろいろと失った人間が自分の存在意義を未来予知による歴史の改変に見いだすってのが特に
まだ犯してない罪で裁かれるなんて遡及適用も真っ青の外道っぷりだが
その辺はファンタジーである予知能力の扱い次第

あとこのSSの特徴としては何故かおりこの標的がほむらってところか
読者視点で見れば因果の起点をまどかじゃなくほむらと解釈するのもそれほど不自然ではないが
メタ的に言うと作者が何故設定を変更したのかが興味を引くところ
邪魔する気はないので予想はするけど書き込まない
795 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/20(火) 00:31:24.03 ID:aR6mPsOh0
>>794
っく・・・そこまで語られると逆に気になる・・・
796 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 15:49:04.90 ID:LoWvQ5wi0
まどか達が悲鳴合唱団になるのか
797 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 18:59:42.20 ID:I8N2qasK0
おりこの方かも知れんぜ
798 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 10:13:57.69 ID:g8NNWSxm0

はい。投下します
大変長らくお待たせして申し訳ありません
実は大筋に結構大きな変更があって修正に手間取りまくりました

まして、こんな時間に更新って人いるわけねーじゃん…


年末年始は忙しいので、これが今年最後の投下になりそうです
少し早いですが、皆さんよいお年を



いつもレス感謝します
いつもそれを励みにさせていただいています


>>794
読んでいただき光栄です
が、深読みのし過ぎっすw

おりこの登場は中盤以降に敵の魔法少女を出して話を盛り上げる為。
予知問題は彼女を出すのなら、形をどうするかはともかく、手を付けない訳にもいかないでしょう
まぁ、話に出すのが早過ぎて、少しもてあましてる面もありますが…

ほむらに関してはもっと簡単
まどかとさやかのパワーバランスを取る為、一般的にあるループほむらは使えない
ループしてない=魔法少女でないほむらに役割を与えるとしたら…と言う理由からです
799 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 10:14:52.71 ID:g8NNWSxm0

???『ほっといて…。もって三ヶ月。終わったの。私の人生』


???『終わってなんかない』

???『アンタが生きたいと思うなら…、アタシはどんな手を使ってもあんたを助ける』


???『助けて………。私死にたくない。もっと生きていたい』

???『夢色のお守り。アタシが戻るまで持ってて』




???『ねぇ…、やったよ! 私治ったんだって…! 病気…!』

???『お守り効いたでしょ…?』

???『うん…! あ、このお守り返しておくね』


???『今度は…をお守りください』




???『どこ行ったの…? この中で迷ってるのかな…?』

???『え…? このお守り………、まさか…!!!』

???『う、うわぁぁぁぁぁ!!!!!!』


???『酷い……、酷いよ!!!! なんで? なんで…がこんな目にあわされるの…?』

???『許さない…』

???『絶対に許さない…………!!!!』
800 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 10:16:37.88 ID:g8NNWSxm0







―【第十八話】白と黒(前編)―









801 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 10:17:21.00 ID:g8NNWSxm0

――見滝原市内 人里離れた家屋――




織莉子「ここに籠ってほぼ丸一日、か……」


例の薬の効力もあり、ボロボロだったキリカの肉体も幾らか回復した。

しかし、その傷は未だ深く、左腕は欠損したまま…。




織莉子「けれど、この薬はもう使えない…」


理由は二つ。

この薬は、『肉体の再生』と言う形を取った薬の製作者の固有魔法を服用者に発動させるモノ。

魔力消費は服用者のモノで賄われるのは勿論、無茶な仕様から消費量は著しく大きい。

その副作用は今のキリカには重すぎるほどに…。


そして、もう一つ…。

802 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 10:18:13.08 ID:g8NNWSxm0

織莉子「ソウルジェム………」


魔法少女の本体にして、唯一癒す事の出来ない弱点。

それをキリカは破損してしまった。


本来、普通に過ごせばそうそう溜まる筈の無いソウルジェムの穢れ。

その穢れが破損した箇所から次々に溢れ続ける。

これは魔法少女として致命的な状態と言えた。




織莉子「キリカ……、本当にごめんなさい…」

織莉子「私はずっと、貴女に助けられて来たのに…」


織莉子「私は貴女に何も…………」


織莉子「…………」



織莉子「追手、か…」





織莉子「…………そんな!?」


織莉子「何故、彼女が……、ここに………!?」
803 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 10:19:52.86 ID:g8NNWSxm0

突如起こった爆発で、私達の居た家屋が粉々に吹き飛ぶ。

予知により脱出した私は、キリカに結界を張りながら、爆風の向こうにある影を見つめる。


長い金髪のツインテール、やや釣り上がった金色の目、見覚えのない露出の多い紫の衣装。

全ては予知の通り、家屋の残骸と爆煙の向こうから現れたのは怒りを狂気に変えて笑う復讐者。



織莉子「何故………」

織莉子「何故、貴女が………!」


???「よう、美国織莉子。このユウリ様のことが気になるご様子で!」


彼女の名は飛鳥ユウリ。

魔女になり、多くの犠牲を出す運命から、私が始末させた魔法少女の一人。

つまり、とうに死んでいる筈の人物…。

804 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 10:20:33.54 ID:g8NNWSxm0

織莉子「その貴女が、何故生きている…!?」


ユウリ「へぇ……、意外。ちゃんと覚えてるんだ」

ユウリ「アタシにとっては唯一<オンリーワン>でも、あんたたちにとっては十把一絡げ…」


織莉子「答えなさい…!」



ユウリ「答えはか〜んたん」


ユウリ「アタシはあんたたちに復讐するために還ってきたんだ!!!!!!」


見てわかる通り、私は驚いていた。

自分に対する復讐者が現れた事に対してではない。


多くの者を救う為とは言え、私は人殺しを繰り返している。

私に恨みや憎しみを向ける者が現れる事は当然だろう。


けれど…。

まさか、殺した当人から復讐されるであろう事は考える由もなかったのだ。



驚愕。

それと同時に、予知を持っていながら、こう言った事態を見切れなかった自分の未熟さを痛感していた。
805 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 10:28:35.88 ID:g8NNWSxm0

織莉子(半狂乱の敵は有無を言わさず仕掛けてくる)

織莉子(武器は二丁のハンドガン。射程はそう長くない…)

織莉子(回避コースは右、右、左、下、右…)


ユウリ「はッ! 避けた!」


私の固有能力『未来予知』。

以前、私が言ったようにこの力は確かに全知全能ではない。


それでも、極めてそれに近い力であると自負している…。




織莉子(弾丸はこのまま走っていれば当たらない。けれど背後から伏兵)

織莉子(召喚済みの魔牛…、弾丸の事も含めれば、今大きく飛んでもギリギリか…?)


ユウリ「コルノ・フォルテ!!!!!」

コル「オォォォォォォッ!!!!!!!」


織莉子「ッ…!」



ユウリ「これも避けたか。すごいなぁぁぁぁぁぁぁ」


織莉子(弾丸はまだ切れない…!? 次の攻撃は食らったらまずい拘束弾。でも、この体勢じゃ…)




ユウリ「よく頑張りました。あはっ」
806 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 10:29:58.43 ID:g8NNWSxm0

織莉子「くッ…!」


けれど…。

残念ながら、それを使うのは所詮人の成り上がりに過ぎない私。

予知と言うのは、正確な未来が書き連ねられた分厚い本のようなもの。

戦闘などの積極的な干渉を受ければ、多少の歪みが生じるとは言え、即座に予知自体もそれに対応してくれる。

それでも…。


今日起きる事を視る事が出来るとしても、視ているとは限らない人並みの視野しか持たず…。

どれだけ起きる未来が正確でも、それに対応できるとは限らない程度の器しかない…。


力を使っているのが私である事。

それがこの力の欠点だった。



織莉子(左肩、右手首)


ユウリ「あははっ!」

織莉子「ぐッ…! うぅ…」



織莉子(左脇腹、右胸)


ユウリ「あははは! うふ!」

織莉子「かぁはッ! あぐ…く…ぅ…」



織莉子(また腹……、そして左眼…)


ユウリ「あはははははッ! ひゃーはははははははは!!!!!!」




織莉子「あっ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
807 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 10:32:08.16 ID:g8NNWSxm0

ユウリ「悲鳴の独唱? 最高!」


織莉子「はぁ…はぁ……、はっ…」



ユウリ「でも、許してあげない」




織莉子「はっ……はぁ……………」


ユウリ「あんたはアタシの一番大事なものを奪った」

ユウリ「だからね、アタシはあんたの一番大事なモノを…………」



ユウリ「殺すの!!!!!」


そう言って、血まみれの私を見下すのをやめ、敵は視界をずらす。

ずれた視線の先に居るのは勿論…。
808 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 10:32:59.76 ID:g8NNWSxm0

キリカ「………」



ユウリ「うふふふふっ! あはははははははははは!!!!!!」


織莉子「それだけは……させ…、ない……!」


その右手とソウルジェムを重ねて魔力を放ち、キリカの周囲に魔法陣を展開し始める敵…。

それを止めようと放った魔力球は悉くかわされ、代わりに右肩にも銃弾を受ける。



織莉子「うぅッ!」



ユウリ「しゃらくさいんだよ」


ユウリ「さぁ………、死ね!!!!!!!」




織莉子「ごめん……なさい。キリカ…」
809 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 10:34:06.96 ID:g8NNWSxm0

ユウリ「イル・トリアンゴ…」


ユウリ「かッ…!」


敵が言おうとした魔法の名は遮られ、その発動を止められる。

さらに振り向けば、あり得ない速度で魔力球を炸裂させ、拘束を解いた私が立ち上がる姿。


復讐の妨害と、起こりうるはずの無い事態に相手は再びその苛立ちと狂気を私へと向ける。



ユウリ「鬱陶しい、うっとうしい、うっとお! しいッ!!!!!!」


織莉子「………行きなさい」




ユウリ「そんななまくら玉…………、速い!?」


違う。

魔力球自体の速さは、先ほどと変わらない。

しかし、それを知る筈もない敵はゆっくりと攻撃を避けようとし、魔力球の直撃を受ける。
810 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 10:36:47.45 ID:g8NNWSxm0

ユウリ「うぉッ…! おまえぇぇぇぇぇ!!!!!」


織莉子「……………」


ユウリ「当たらない…! 見切られたのか!?」

ユウリ「なら…、コルッ!」


コル「オォォォォォッ! オォ…!?」

織莉子「…………無駄よ」


ユウリ「馬鹿な…!? くぅおッ…!」


形勢は完全に逆転した。

敵の放った攻撃は全て当たらず、魔牛を使った連携でも変わらない…。

対して、こちらの攻撃だけが一方的に敵に命中し続ける。



ユウリ「くそッ、糞…! 待てよ………」

ユウリ「あはははッ! それなら、あいつだけでも……!」



ユウリ「やれッ! コルノ・フォルテ!!!!!」


コル「オォォォォォォォォォッ!!!!!!!!!!」


指示を受けた魔牛は、右の後ろ足で地面を二度ほど蹴ると…。

ミサイルのような速さで、キリカのいる結界に突撃、それを粉砕し……。




血飛沫と共にバラバラに解体された。
811 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 10:38:14.59 ID:g8NNWSxm0

コル「ォォォァァァァァァァ……………」


ユウリ「コルッ!!!!!!」



???「牛かぁ…、今夜の晩御飯はステーキかな…?」

???「いや、もっと細かく刻んで潰してハンバーグにしよう! それがいいなっ。

    そうしようよ、織莉子」


キリカ「牛の肉も、そこのふざけた奴も…、今私がミンチに仕立てるからさ!!!!!!」




ユウリ「チッ…!」


返り血のシャワーが染める赤一色の闇から、怒りの表情を見せながら現れるキリカ。

さすがに状況を悟ったのか、敵はハンドガンを地面に向けて放つと…。

煙幕を発生させ、そのまま行方を眩ませた。
812 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 10:39:18.56 ID:g8NNWSxm0

キリカ「逃がしたか」

キリカ「……………八つ裂きにしてやろうと思ったのにッ…!」



キリカ「織莉子、大丈夫…?」

織莉子「私は………」



キリカ「織莉子?」

織莉子「私は……無力だ………」


織莉子「貴女をあんな目に遭わせたのに、世界を救うどころか敵の一人も倒せていない…」

織莉子「今の敵のように……、他者から憎まれるしかない茨の道を共に歩ませて……」


織莉子「そして、今も傷付き、弱り切った貴女にまた無理を強いている…!」



キリカ「そんなこと……。織莉子は気にしなくていいんだ」

織莉子「良いわけが無い! 私は貴女を傷付けることしかできない…!」


キリカ「いいんだ」

織莉子「よくないわ!」


キリカ「本当に…………いいんだ」



キリカ「それが………、それだけが、私の望みなんだから」
813 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 10:40:26.85 ID:g8NNWSxm0

キリカ「そもそも……、謝罪が必要なのは私の方なんだ」


織莉子「キリカ……?」



キリカ「うん…、そうだね。良い機会だ」

キリカ「私の告白をきいてほしい」


織莉子「…………」



キリカ「私はね…………」


この世の全てがキライだった。

いいや、嫌うよりもっと酷い。

私は何もかもに興味が無かった。


いつもバラバラで家に居た事なんてない、あるだけ無意味な家族ごっこも。

「そうなんだ」で返せるようなスカスカの会話を繰り返す、バカ丸出しの友情ごっこも。

下心が透けた盛った猿共の間に合わせにしか見えない、薄ら寒い恋愛ごっこも。


全部。

くだらない、つまらないって何もかもを見下していた。
814 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 10:41:21.56 ID:g8NNWSxm0

そんなある日の事だった。

私は列を成したコンビニのレジで、財布の中身をひっくり返した。


飛び散った小銭、お札、カード。

けど、自分の事しか見えていない周囲の人間はただ冷たい視線を送るだけ。

「邪魔だ」「早くしろ」と、隠しすらしない声が漏れてさえいた。


そんな時だった。



???『よいしょ…』

キリカ『…』


???『これで全部かしら?』


天使のような姿をした女の子が、私の財布の中身を拾うのを手伝って…。

微笑み返して去っていった。


それが織莉子。

キミだったんだ。
815 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 10:42:44.18 ID:g8NNWSxm0

些細な出会いの筈だった。

だけど、私にはそれが何時までも引っ掛かった。


たったそれだけの事で惹かれるなんて、私はどれだけ希薄な日々を歩んでいたんだって笑えてくるけど…。

それでも、私はキミの姿を探し続けて、やっと見つけたんだ。




キリカ『偶然を装って声を掛ければいい。一度あったことあるんだし…』


キリカ『そして、聞けばいい。私のこと……、覚えてますかって……』


そう呟きながら、遠くに見かけたキミに近寄ろうとした。


でも………、出来なかった。

「私のことなんか覚えてるわけがない」そう思ったから。


その時、気がついた。

何もかも興味がないなんてウソだ。



何にも興味がないフリをして…。

みんなを見下したフリをして、妬んでたんだ。


私なんかの事を気に止めてくれる人なんていないって…。

そして、願った。



「変わりたい。違う自分になりたい」って。
816 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 10:44:10.71 ID:g8NNWSxm0

織莉子「………」


キリカ「ゴメンよ。織莉子が知ってる私はニセモノだったんだ」

キリカ「本当の私は嫌われるのが怖くて、友達も恋愛も何も出来ないいじけた子供なんだ」


キリカ「織莉子、私のウソに付き合わせてごめんね。ありがとう」


織莉子「キリカ………」



キリカ「でもね、何もかもウソで出来た私が、ただ一つ誇れるモノがあってね…」

キリカ「それがキミへの思い……、キミへの『愛』なんだ」



キリカ「だから、キミの為に戦い、キミの為に恨みを買い、キミの為に傷つく事は全て私の誇り…。

    そして、私の望みなんだ……」


キリカ「でも、私にはもう時間が無い…」

キリカ「死ぬのなんて怖くない。だけど、ただ死ぬのは絶対にイヤだ……」


キリカ「だから、お願いだ、織莉子。最後まで私を使って…」


キリカ「織莉子の為に生きて…、織莉子の為に死ぬ…。

    私の望みを最後まで叶えさせて…」
817 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 10:48:06.37 ID:g8NNWSxm0

織莉子「本当…………、困った子…、ね……」


キリカの告白。

そして、その思い。

それに打たれた私は涙をこらえ、懸命に顔をあげる…。




織莉子「わかったわ…。キリカ。貴女は最期まで私の為に在りなさい…。

    例えどんな姿になっても、私に尽くし護りなさい…」


織莉子「それが私を欺いた貴女に課せられた罰よ」



キリカ「わかった。約束する」


キリカ「そんな罰なら、喜んで受けるよ……」

818 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 10:50:19.81 ID:g8NNWSxm0

違う…。

お礼も、謝罪も…。

そして、罰を受けるのも…。


本当は全て私の方なんだ。



キリカ、私の身勝手に付き合わせてごめんね、ありがとう。

私は何も与えられないばかりか、貴女が傷つくような事ばかりさせているけど…。




それでも…。

私を慕う貴女を駒として使い続けよう。

憎しみも悲しみも怒りも全て踏みにじる冷酷な私であり続けよう。

救世を成す事だけを考え、他の全てを切り捨て続けよう。




そう在る事を貴女が望んでくれるから…。

そして、それが私が貴女にしてあげられる唯一の事だから…。
819 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 10:52:07.88 ID:g8NNWSxm0

――見滝原市内道路――



ほむら「今日からは美樹さんも来れるんですよね?」


まどか「うん。さっき連絡あったからそろそろ…、あ、来た来た」


行方不明になっていた美樹さんが戻って来て二日目の朝。

敵への警戒から私と佐倉さん、ゆまちゃんは鹿目さんの家に泊まり…。

同じ理由から、学校近くで待機する為に佐倉さんとゆまちゃんも含めた四人で通学路を歩いていた。



あの夜戻ってからは大変だった。

鹿目さんのお母さんは真っ赤になって怒っており…。

私も含めてそれはそれは壮絶なお説教の時間が朝まで続いた。

最も…。



さやか「お〜っす」

マミ「おはよう、みんな」


当然ながら、美樹さんはこの比ではなく…。

捜索願が出されていた事もあり、昨日一日先生や親御さんにこってり絞られた様子で…。

今日から久々の登校となる。


巴さんはその美樹さんが一人になる危険から、彼女の家の近くに張り付いていた、と言う訳だ。
820 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 10:54:29.53 ID:g8NNWSxm0

まどか「てぃひひ。大変だったね」

さやか「ほんとよ、も〜! 同じような話を延々と繰り返され…。

    同じような事を何度も聞かれ…」


さやか「でもさ…。実際悪い気はしてなかったんだ」

さやか「怒られてるんだけどさ、なんか嬉しいんだよ。

    本気で自分の事を思ってくれてる……、それが端々から伝わって来てさ…」


まどか「あぁ…、なんかわかる」


さやか「今になって思えば馬鹿だったってよくわかるよ」

さやか「アンタがいて…、ほむらもいて…、ウチの親だって何だかんだであたしの事思っててくれてて…。

    先生もなんか本気で泣いてくれて…。杏子やマミさんも帰って来て、ゆまちゃんも来てくれて…」


さやか「あたしはまだ、こんなに必要とされてるんだって気が付いた」



杏子「………ようやくわかったか馬鹿」

マミ「全くね」

ほむら「です」

ゆま「そうだよ〜」


さやか「たはは…」

さやか「正直……、まだ色々とモヤモヤしてる事はあるけど…。

    とりあえず馬鹿やって自分を傷つけたり、捨てたりしようって気だけはなくなったよ…」
821 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 10:55:17.84 ID:g8NNWSxm0

そう言いながら、どこか遠い目で話す美樹さん。

その顔は居なくなる前のような鬱な様子は見て取れないけれど、晴れきった爽やかなものとも言えない…。

太陽のような笑顔と、底なしの元気を誇る美樹さんのモノとはほど遠い何とも複雑な表情だった。


けど、当然だろう。

あれだけの事があった以上、美樹さんにだって心の整理は必要なんだ。

少しづつでも、いつもの美樹さんに戻れるように、今度は私達で支えてあげよう。


そう思い直した矢先だった。



さやか「あ…………」

まどか「…………」


美樹さんの表情が一辺に曇る。

それもその筈だった。


視線の先に居たのは、美樹さんがあぁなってしまった一因を作りだした彼女…。

志筑さんだったのだから。
822 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 10:56:26.82 ID:g8NNWSxm0

さやか「…………お、お〜」

まどか「いいよ」


さやか「な、何言ってんの…? 仁美もこっちに誘って一緒に…」

まどか「無理しなくていいよ」


まどか「まだ、気持ちの整理付いてないんでしょ?

    だったら、そんな時くらい無理しなくていいんだよ」


さやか「でも………。そうだ! まどか、アンタだけでも仁美の所にいって…」

まどか「いかない」



さやか「な、何でよ………。仁美の事嫌いになったの……?」

まどか「ちょっとだけ怒ってるけど、嫌いにはなってないよ」


まどか「だから、一人でいる仁美ちゃんを見るのは心苦しいけど…。

    それでも、わたしが仁美ちゃんの所へ行ったら、さやかちゃんが寂しい思いをするから、いかない」


まどか「仁美ちゃんが上条君とさやかちゃんで、上条君を取る事を選んだのと同じ。

    わたしも、さやかちゃんと仁美ちゃんのどっちかしか取れないなら、さやかちゃんといる」


さやか「まどか………」

まどか「さやかちゃんはね…、人の事考え過ぎだよ。

    自分が辛い時くらい、自分の事考えようよ…」
823 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 10:57:45.29 ID:g8NNWSxm0

薄らと目に涙を浮かべる美樹さん。

その美樹さんに微笑みかける鹿目さん。


人の為ならどこまでも強くも優しくもなれる美樹さんだけど…。

代わりに自分の事を省みない悪い癖があるから…。

鹿目さんの判断はきっと正しいんだろう。

でも…。



ほむら「どうにかならないんでしょうか…」

杏子「何がだ」


ほむら「志筑さんの事です…」

ほむら「元々鹿目さんや美樹さん以外の人とは、あんまり話が合わないみたいで…。

    そこに美樹さんの行方不明の件と、上条君の件の噂も広まって、尚更他の人との折り合いが悪くなってて…」


杏子「さぁ…? 知らね」



ほむら「そんな…。そうだ! なら、せめて私だけでも……」


杏子「死にたいのなら、そうしな」
824 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 10:59:22.49 ID:g8NNWSxm0

ほむら「え…? なんで…、死…?」

杏子「何時もだったらそうしてやるといいさ、とでも言ってやってたよ。

   けど、お前は今の状況わかってんのか?」


ほむら「あ………」


杏子「まどかやさやかに守られてる身の癖に、折り合いの悪いお嬢の方に行く…。

   まぁそれはそれでお前の勝手だけどさ…」

杏子「その代わり、二人から離れた隙を突かれて死んじまっても、二人を絶対に恨むなよ?

   ただの自業自得なんだから」



ほむら「自業……、自得……」


杏子「先に断っておくとな、別にアタシはさやかの肩持ってる訳じゃねーぞ?

   恋愛騒動に関しちゃモタモタやってたさやかにも非があるし、むしろそのさやかに断り入れたお嬢に関心してるくらいだ」

杏子「ただな、お嬢の行動は、自身の思惑はどうあれ…。

   まどかの言う通り、さやかを切り捨てて、その上条って坊やを選んだ事には違いないんだ」


杏子「で、その結果が今の現状だって言うんなら、それはお嬢自身が受け止めるしかないだろ」

杏子「それが、お嬢の起こした行動の結果なんだから」
825 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 11:01:40.54 ID:g8NNWSxm0

ほむら「…………」


杏子「ほむら。お前もよく覚えとけ。

   自分の行動の先にあるのが、今考えてたり、そこで見えた結果だけだと思うな」


杏子「思わぬものが思わぬ絡み方をして、思わぬ方向に進んだり、転んだり…。

   それが現実ってもんだ」


杏子「だから、行動する時はよく考えろ。よく周りを見ろ。

   起きた結果や、自分の望みや目的だけを見るな」


杏子「動いた後に、気付いたらもう取り返しがつきません、じゃ遅い事なんて山ほどあるんだからな」




杏子「まして、予知の事があるお前は尚更………、な」


ほむら「はい。わかってます…」




杏子「まぁあんな話聞かされて、今更魔法少女になるなんて思わね―だろうけどな」
826 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 11:02:59.37 ID:g8NNWSxm0

昨日の帰り道だった。

みんなが別れる頃になって、巴さんと佐倉さんが顔を合わせ、

突然、みんなに大事な話がある、と切り出した事から始まった。


真剣な顔をした巴さんの口から語られたのは…。



ほむら『魔法少女が魔女に……』


マミ『えぇ。実際にそうなる瞬間を私は見た。確定情報よ』


さやか『…………』

まどか『…………』


杏子『お前らがおかしくなるのを一番警戒してたんだが…。

   案外驚かないんだな?』



さやか『ん…。まぁ何となくわかってたって言うか…。

    ほら、あたしはさっきまで穢れ溜めて暴れまわってたじゃない』

さやか『でさ、その時になんか自分の中にモヤモヤした……、こう……。

    なんかうまく説明できないけど、とんでもなくヤバくて悪いモノが吹き出そうになった…。

    そんな感じがしたんだよ』


杏子『な〜る。魔女になる直前まで行ったお前は、感覚的にそれがまずいのがわかってたってか。

   まどか、お前は?』
827 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 11:04:38.87 ID:g8NNWSxm0

まどか『わたしは……、さやかちゃんほど確信があった訳じゃないんだけど…。

    やっぱり、さやかちゃんの様子からしておかしいって思ってた』


まどか『傷心から来る自虐、ネガティブ、八つ当たりや威圧的な態度。

    どれもさやかちゃんの性格や精神状態からして全く無いとは言えないし、

    実際それら全てさやかちゃんの意思で行ってたってのは嘘ではないと思う。けど…』

まどか『それにしたって、何かネガティブ過ぎるし、何か攻撃的過ぎる…。

    なんとなく、そんな気がしたんだ…』


まどか『だから穢れが溜まった先に悪い事が起こる……ってまでは考えてたから…。

    その結果が魔女だって言うんなら、やっぱり納得しちゃうって言うか…』


まどか『そもそも……、ずっと引っ掛かってはいたんだ。

    ソウルジェムが魔法少女の本体なら………、そのジェムに溜まる穢れって何なのか。

    その穢れが溜まったら何が起きるのかって………』



杏子『そう……か。二人ともジェムの事は知ってたからな。

   そっから碌でも無い答えを予想はしてたってとこか』


まどか『まぁ、ショックじゃない訳じゃないんだけどね…』

さやか『でも、もう色々起き過ぎて頭がパンク寸前って言うか…』


マミ『……災い転じて福となる、か。

   今回の一連の事件が結果的に良い方に転んだのね』
828 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 11:05:35.81 ID:g8NNWSxm0

願いを叶えて魔法少女になる。

みんなそれだけが望み、考えた結果だった筈だろう。


でも、佐倉さんの言う通り、現実は違う。

願いを叶え、魔法少女になると言う行動は…。

誰も予想だにしない…、魔女になるかもしれないと言う結果を突きつけている。



行動の結果に起きる事が、自分の望むモノだけとは限らない。

自分の悲しい過去の体験談から、それを語る佐倉さんの悲しそうな表情を見た私は、改めて肝に銘じた。



いや、銘じざるを得なかった。

だって、私は…。

世界を滅ぼすと予知された存在だから…。


佐倉さんの言う通り、いや佐倉さんが言う以上に…。

もっと、より慎重に行動しなきゃいけないんだ…。



ほむら(けど……)

ほむら(このまま志筑さんを放っとかなきゃいけないなんて…)

ほむら(私は……、志筑さんにもお世話になったのに…)


ほむら(こんなの……嫌だな……)
829 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 11:06:53.01 ID:g8NNWSxm0

仁美「…………」


今日もまた一人きりで通学路を歩く。

途中、さやかさんが私に声を掛けようとしていたけれど…。

その声を受ける訳にはいかない私は、少し早足になってその場を通り過ぎた。



仁美「こんな状況になってまで、私に声を掛けようとするなんて…」


仁美「どこまで………、お人よしなんですの………?」


私がやったのは横恋慕。

さやかさんの気持ちを知りながら、それでも自分の気持ちを抑えきれずに優先した。


それがどれだけ残酷な事か、私はそこまでは考えなかった。

どころか、さやかさんは許してくれる。

そんな甘い気持ちまで…。


だけど、実際は…。

彼女が失踪するまで、私はさやかさんを追い詰めた…。

彼女が大事にしている物を、私は奪い取ろうとした…。

さやかさんは強いから大丈夫だって、勝手に決め付けて…。



仁美「最低ですわね…、私……」


























???「良いモノ見ぃつけた♪」
830 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 11:08:03.09 ID:g8NNWSxm0

――見滝原中学教室――



ほむら「…………志筑さん、遅いですね」


さやか「…………」

まどか「うん…………」


ほむら「私達の先を歩いてたのに…」

まどか「…………」


さやか「…………」

さやか「………………」

さやか「……………………」


さやか「あ〜〜〜〜〜!!!!! もうッ!!!!!」

さやか「やっぱり、こんなのあたしらしく無い!!!」



さやか「今朝は気使ってくれてありがとう、まどか。

    でも、やっぱり、あたしはこう言うモヤモヤしたのって好きになれそうにないわ」


まどか「うん。それで?」



さやか「だからさ…、ちょっと一っ走りして仁美見つけて、腹割って話してくるよ!」
831 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 11:08:57.27 ID:g8NNWSxm0

早乙女「ちょっと美樹さん、どこへ…!?

    もう出欠取るわよ…?」


さやか「ごめん、先生! 青春にはわかってても止まれない時があるんですっ!」

早乙女「もう…! また後でお説教ですからね!」


な〜にが青春だ、とクラス中に笑いを起こし…。

早乙女先生と入れ替わる形で教室を出て、そのまま走り去っていく美樹さん。


その元気な様子とオーバーな台詞を聞いて、私と鹿目さんは少し呆れながら笑う。

早乙女先生も、駆けて行く美樹さんを叱りつけたものの、それを追ったりはせず、そのまま教壇に立った。


そして、もう一人…。



恭介「うん。それでこそ、さやかだ」

ほむら(……上条君?)


小さく呟いただけだから、その言葉は私にしか聞き取れなかったけど…。

どこか嬉しそうな顔をして、彼がそう言ったのを私は聞き逃さなかった。
832 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 11:13:08.70 ID:g8NNWSxm0

早乙女「さぁ…、問題児は放っといてみんなは席に座って。

    そろそろ朝礼のアナウンスが…」


教壇に立った早乙女先生が手を叩き、生徒たちを席に座らせた時、それは起きた。

本来であれば、朝礼のアナウンスと放送が流れる筈の時間…。


代わりに流れたのは…。



???『あ〜、あ〜、テステス。マイクテス〜』


???『こほんっ…。

    この放送はッ…、私とッ、織莉子がッ、占拠した!』


聞き覚えのある無邪気な声。

聞き慣れた私達の敵の名前…。


ざわめく教室に応えるように現れた立体映像には…。

美国織莉子と呉キリカ。

白と黒の魔法少女のそれぞれの学校で制服姿で映っていた。
833 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 11:13:41.29 ID:g8NNWSxm0

早乙女「さぁ…、問題児は放っといてみんなは席に座って。

    そろそろ朝礼のアナウンスが…」


教壇に立った早乙女先生が手を叩き、生徒たちを席に座らせた時、それは起きた。

本来であれば、朝礼のアナウンスと放送が流れる筈の時間…。


代わりに流れたのは…。



???『あ〜、あ〜、テステス。マイクテス〜』


???『こほんっ…。

    この放送はッ…、私とッ、織莉子がッ、占拠した!』


聞き覚えのある無邪気な声。

聞き慣れた私達の敵の名前…。


ざわめく教室に応えるように現れた立体映像には…。

美国織莉子と呉キリカ。

白と黒の魔法少女のそれぞれの学校の制服姿で映っていた。
834 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 11:14:57.43 ID:g8NNWSxm0

まどか(あの二人…!)


まどか≪杏子ちゃん…!≫

杏子≪マミから聞いた。ゆまも連れてすぐそっちへ…。チッ!≫


まどか≪杏子ちゃん…!?≫



織莉子『皆さんには愛する人がいますか?』

織莉子『家族、恋人、友人。心から慈しみ、自らを投げ打ってでも守りたい人がいますか?

    そして、その人達を守るに至らぬ自分の無力を嘆いた事はありますか?』


まどか「何を……、言っているの…?」

マミ≪時間稼ぎね≫

マミ≪仕掛けてくる。鹿目さんも先手を打って変身しなさい…!≫



織莉子『私には……います』


織莉子『けど、それを捨てて……。

    ここに居る方々全員を犠牲にしてでも…』


織莉子『私は戦う!』


彼女の宣告と共に…。

周囲の景色が歪み、教室の壁が消え、白と黒のチェック柄の床が広がっていく…。


この嫌な感じ、間違いない。

彼女達は、ここに魔女の結界を展開したんだ…。
835 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 11:16:29.02 ID:g8NNWSxm0

早乙女「み、みんな落ち着いて…」

ほむら「せ、先生ッ! か、肩に…!」


まどか「先生、動かないでッ!!!!!」

早乙女「ひッ!」


ほむらちゃんの警告通り。

シルクハットを被った綿で出来たいも虫のような使い魔が、早乙女先生の肩に乗って牙を向く。


その牙が早乙女先生の肩に触れた時…。

わたしの放った光の矢が、その使い魔を討ち抜く…。



早乙女「は…、はひ…」

まどか「大丈夫ですか…?」


中澤「な…、なんだよ。鹿目のあの格好…」

クラスメイトB「それより、この周りに居るの何なんなの…!?」

クラスメイトA「は…? 何か居るか…?」

クラスメイトB「いるでしょ、そこいら中に!」


中澤「それよりも鹿目…、先生に何やったんだ…?」

クラスメイトA「なんかぶっ放してなかったか…? まさか…!」

クラスメイトB「馬鹿! 見て無かったの! 鹿目さんはその変なのに襲われそうな先生を助けたんだよ!」

クラスメイトC「何でも良いわよ! 誰かどうにかしてよぉ!!!!」
836 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 11:18:33.74 ID:g8NNWSxm0

突然訪れた非日常にパニックを起こすクラスメイト達。

クラス同士を隔てる壁が消え、その混乱はますます大きくなる…。


使い魔を見る事の出来る者は見えないモノに混乱し…。

見る事の出来る一部の人は、それに恐怖する…。


泣き叫ぶ人。

逃げようとする人。

訳もわからず、立ち尽くす人。


みんながバラバラになって、ますます喧騒は大きくなる…。

けど、このままじゃ使い魔達の思うツボだ。

だから…。



まどか「みんな、静かにしてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!!!!!!!!!!!!」


クラスメイトA「…!」

中澤「あ…」

クラスメイトB「鹿目さん…」


今までの人生で出した事の無いような大声を出して、喧騒を鎮める。

そして、同時に使い魔を討ち落とし、みんなを一ヶ所に誘導し、結界を作る準備をする。


まだ結界が出来たばかりで使い魔の数が少なく、戦闘力が低かったのと…。

授業前で大半の人達が密集してたのが幸いし…。

ほむらちゃんや使い魔が見えている人や先生の協力の元、わたしのクラスと隣のクラスのみんなを集める事に成功した。
837 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 11:20:03.19 ID:g8NNWSxm0

まどか「今、結界を張ります。ここの中に居れば安全ですから、みんなは絶対にここを出ないで…」


早乙女「鹿目さん…、これはどう言う…」

まどか「後で必ず説明します。 けど、今は事態を収拾する事を優先させてください…!」

早乙女「わかったわ…」



ほむら「鹿目さん…、私も連れてってください…!」

まどか「ほむらちゃん…? 駄目だよ…!」


ほむら「ここに居たら、みんなを巻き込んでしまうかもしれない…。

    だって、私は…」


まどか「わかった。わたしの傍を離れないでね」


ほむらちゃんがみんなの中から離れたのを確認し、わたしは結界を作る。

正直、わたしの未熟な結界では多少心許無かったけど…。


それでも、あの使い魔達には十分だったらしく…。

結界に阻まれて勢いよく弾き飛ばされる姿を確認し、わたし達はその場を離れた。
838 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 11:21:07.81 ID:g8NNWSxm0

――見滝原中学魔女結界入口――



ゆま「杏子、これ…」

杏子「あぁ…。連中…、やっぱり形振り構わない腹積もりらしい」


アイツらの居る学校のすぐ近くで待機してたのに…。

駆けつけた時にゃ既に遅い。

マミ達が通う見滝原中学がまるまる魔女の結界に収まっていた。




ゆま「助けに行かないと、人がたくさん死んじゃう…!」


杏子「…………」



ゆま「杏子…?」


杏子「ゆま、お前先に行け」
839 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 11:22:48.33 ID:g8NNWSxm0

――見滝原中学魔女結界入口――



ゆま「キョーコ、これ…」

杏子「あぁ…。連中…、やっぱり形振り構わない腹積もりらしい」


アイツらの居る学校のすぐ近くで待機してたのに…。

駆けつけた時にゃ既に遅い。

マミ達が通う見滝原中学がまるまる魔女の結界に収まっていた。




ゆま「助けに行かないと、人がたくさん死んじゃう…!」


杏子「…………」



ゆま「キョーコ…?」


杏子「ゆま、お前先に行け」
840 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 11:24:41.91 ID:g8NNWSxm0

ゆま「へ………? どうするの?」


杏子「アタシらは五人。対して防衛対象はこの学校中の人間数百人。

   普通にやったんじゃ、10分の1も守れやしない」


ゆま「だったらはやく………」


杏子「まぁ聞けよ。アタシらがここで頑張って10分の1を助けたって…。

   そのほとんどは救えない。何もかも全部アイツらの思うつぼだ」


ゆま「…………」

杏子「それでも、それしか救えないってんなら仕方ない。

   けどさ、それじゃ面白くないだろ…?」



ゆま「キョーコ、まさか…!」


杏子「あぁ。全員とは言わないが、9割助けられるかもしれないとっておきがある。

   ただ、それをやるには時間がちょっとばかし時間が掛かるんだ…」


ゆま「だから、ゆまたちが中で、その時間をかせぐんだね…?」

杏子「あぁ、頼む!」


ゆま「うんっ! たのむね、キョーコ!」
841 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 11:25:46.20 ID:g8NNWSxm0

杏子「………さ〜て」


あぁ言っちまった以上、もう引き返せない。

それに、失敗も許されない。




杏子「はぁ…、何でアタシは得意げに言っちまったかなぁ…」


杏子「半ば、賭けみたいなもんだってのに…」



一応、そのとっておきってのは嘘じゃない。

ただ、試した事も一度もない。


だから成功する保証も無ければ、自分に掛かる負担も想像できない。
842 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 11:26:44.42 ID:g8NNWSxm0

杏子「………下手すりゃ回復する間もなく、ソウルジェム真っ黒で即お陀仏。

   どころか、魔女になってむしろ被害拡大、全員全滅ってか…?」


杏子「冗談じゃねぇよ…」


正義の味方。

そんなもんに戻るつもりはない。

だけど、それを目指している奴がいる。


そんな奴に、頑張ったけど9割助けられませんでしたって結果を見せるのか?

それが現実だって、ここで全部諦めさせるのか…?



杏子「できねぇよな、そんな事…」

杏子「甘っちょろい事を言うマミやさやか、まどかの事は気に入らねぇ…。

   けど…」


杏子「何もかも織莉子の思い通りってのもまた、面白くねぇ…!」



杏子「なら…、やってやるよ…。

   あっと驚く奇跡って奴を起こしてやるよ…」


杏子「そういうもんじゃん? 最後に愛と勇気が勝つストーリー、ってのは!」
843 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 11:28:22.35 ID:g8NNWSxm0

――見滝原中学結界内1F――



見滝原中学生徒「た、助けてぇぇぇぇぇ!!!!」

さやか「早く、こっちに来て!」


見滝原中学生徒「はぁ…はぁ…はぁ…」

さやか「よし、結界張るよ!」



さやか「じゃ、ここの中に居る間は安全だから!」


仁美を探す為に、校庭の階段を下り、下駄箱へ向かっている時だった。

突如、発生した魔女の結界に捕われる混乱に巻き込まれる。


いや、今回ばっかりはむしろ幸いと言えるかもしれない。

あたしはまだ結界を出る前で、かつまどかと別動する事で、

まどかやマミさんの居ない一階に居る人達の救助を迅速にこなせている。
844 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 11:30:12.32 ID:g8NNWSxm0

さやか「けど、全員助けられるって訳じゃない…」

さやか「むしろ、分断されてるって意味じゃ結構まずいのか…」


この現状を対処する方法は一つ。

魔女を倒して、あたしらがみんなに張った結界が壊れる前に、この状況を打破するしかない。

だだっ広い上に入り組んだ魔女結界さえ無くなれば、みんなを襲う使い魔の動きも見やすくなり…。

あたし達の合流も楽になって、犠牲も減って、アイツらに対抗する手段も生まれる。




さやか「魔女が直接見つかれば良いんだけど、そううまくも行かないか…」


さやか「なら、とりあえず放送室に行ってアイツらを問い…」



???「放送室には誰もいないよ」


さやか「アンタは…」






キリカ「やぁ。ご機嫌はいかが」
845 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 11:31:52.51 ID:g8NNWSxm0

そこに立っていたのは、黒いショートカットに黒い眼帯、黒い装束…。

黒の魔法少女、呉キリカ…。


杏子達との戦いで負った傷が癒えなかったのか、左腕を失っており、

あの魔力の爪は右手から伸びる五本のみである。



さやか「最悪よッ!」


キリカ「そうか…。なら、わたしは最高だ!」


最大の速度を以て敵に踏み込み…。

斬撃を浴びせるも…。

平然といなされ、蹴りによる反撃を脇腹に受ける。


最も、そんなものを物ともしないあたしは、続けて斬撃を繰り出し…。

相手の左肩の辺りに掠り傷を付ける。
846 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 11:32:52.35 ID:g8NNWSxm0

キリカ「へぇ…、やるようになった」

さやか「こっちは急いでんのよ!」


キリカ「ふぅん…。なら、焦りなよ。私の役割は足止め。

    キミがここに居る時点で私の、そして織莉子の思惑通りなんだから」


さやか「挑発のつもり? 舐めんな…!」


ヘラヘラと笑いながら挑発する敵。

だけど、それには乗らない。

敵のフェイントを見切って、本命の攻撃を剣で止め、逆に相手を腹から思い切り蹴り飛ばしてやった。



キリカ「くっ…ふ…。案外冷静なんだ」


さやか「冷静? 全然冷静じゃないわよ!

    むしろ滅茶苦茶苛立ってるっての!」


さやか「これから喧嘩した友達と仲直りしに行くとこだったのに…!

    このモヤモヤした気持ちをどうすればいいのよ…!」
847 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 11:34:41.12 ID:g8NNWSxm0

キリカ「喧嘩した友…? あぁ志筑仁美の事かい? へぇ…」


さやか「なんでアンタが…、って例の予知の力か。

    うざったいなぁ、プライベートも筒抜けな訳…?」



キリカ「ふむ。しかし、また…なんでかな?

    キミは彼女を恨んでいる筈だろう?」


キリカ「もう少しで魔女になる程にさ…!」




さやか「…………また、挑発?」


喋っている間も敵は動きを止めない。

あたしは、その攻撃を受けながらも要所要所で反撃を仕掛ける。


戦いは拮抗していたけれど、それは敵がそれだけ弱っている事を意味していた。
848 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 11:36:41.89 ID:g8NNWSxm0

キリカ「いいや、単純に興味深いだけだよ」

キリカ「彼女がやったのは言わば愛の略奪だろ…?」


キリカ「なんで、そんな相手とのやり直しを望むのか…。

    私には理解できないからさ」

さやか「…………」


キリカ「愛してたんだろ? 自分の身を捧げてまで彼を救う事を願うほどに」

さやか「わかんないけど…、多分そう」


キリカ「なら…、何故その彼への愛に横槍を入れる輩を許そうとする?」

キリカ「許し難いじゃないか。そんなの…、そんな奴…!」



さやか「簡単だよ…」


さやか「このまま腐って、仁美を恨んで妬んで、モヤモヤしてたら…。

    あたしがあたしで無くなる。そんな気がする…」


さやか「ただ、それだけ!!!!」


鍔迫り合いの末、互いの武器が弾き合い、大きく距離が離れる。

あたしはその隙を逃さぬよう、足先に魔力を込め…。

空中に魔法陣を作り出し、それを蹴って再加速して切り込む。


相手は回避が間に合わず、防御しながら吹き飛んでいくも、その口調を強めていく…。
849 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 11:38:00.40 ID:g8NNWSxm0

キリカ「なんだい、それは…」


キリカ「キミの愛はその程度のモノなの…?」

キリカ「キミの深い献身は、愛では無かったの…?」


キリカ「キミの愛は無限に有限じゃなかったのッ…!?」



さやか「恭介の事はまだ好きだよ。多分、忘れられない」


さやか「けど、あたしが愛しているからって…、それを恭介に強要する事は出来ない。

    だから、あたしの愛を邪魔されたからって…、仁美を恨むのもなんか違うんじゃないかなって思うんだ」


さやか「それにね…」


さやか「愛はあたしに振り向いてはくれなかった。でもね…」

さやか「代わりにもっと良いモノを見つけたんだ…!」



互いの速度を最大限に活かし、すれ違いざまに打ち合いを続ける。

治っていない傷口が開いたのか、あたしが攻撃をした覚えのない箇所からも血が滲む…。


それでも、敵は自分の信じるモノを語る口調を強めると共に、少しづつ動きのキレを増していた…。
850 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 11:38:47.26 ID:g8NNWSxm0

打ち合いの末に離れた距離。

その絶妙な距離を好機としたあたし達は互いに決着の為の、大技を繰り出そうとする…。


あたしは地面でクラウチングの構えを取りつつ、足元に魔力を溜め…。

敵は右手に魔力を収束させ、恐らくは速度低下の重ねがけを狙う…。



キリカ「くくくっ、くくっ、あっはははははははッ!!!!!!」


キリカ「愛は無限に有限なんだ…! その愛に勝るものなんて…!」




さやか「愛は無限に有限か。良い言葉だよ。だけどね…!」



さやか「友情は無限に無限…!」





さやか「無限大だよッ!!!!」
851 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 11:40:04.66 ID:g8NNWSxm0

互いに狙ったのは先手…。

最大限まで速度を活かす、ないし殺す事で相手より早く斬りつける。


これだけの事。

しかし、結果は互いの考えていた通りにはならなかった。



さやか「んッ…!」


キリカ「ちぃッ…!」


互いの攻撃はほぼ同時に繰り出される。

同時に繰り出された攻撃同士は当然のようにぶつかり、鍔迫り合いとなる。


その結果…。




さやか「はぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!」


キリカ「くぅッ!!!!!!!!!」


身体中のダメージが響く黒の魔法少女は、力比べではあたしには敵わず…。

速度の乗ったあたしの攻撃を受ける事が出来ずに、そのまま大きく弾き飛ばされて壁に激突した。
852 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 11:41:36.35 ID:g8NNWSxm0

叩きつけられた壁を背にして、座りこむ敵。

あたしはその敵へ剣を向ける。


あたしの剣の刀身は射出する事が出来る。

つまり、この微妙な距離から行ったホールドアップと言う訳だ。



キリカ「やる………ね……」

さやか「勝負あったね」


キリカ「くっくくく…、それでいい…。それで…」

キリカ「やっぱり……、キミは愛の何たるかを理解しているよ……」


さやか「…?」



キリカ「愛ってのはね……、好きとか…、大好きとか…、単位で表すようなモノでも無ければ…。

    奪うだの、横槍だの…、そんな小さな事に拘るモノでも……無い……」


キリカ「見返りを……求めず………、ただ相手を愛し、尽くす……!

    それが……、それこそが『愛』……」


さやか「見返りを求めず…、尽くす……」



キリカ「美樹さやか、キミは誇っていい…。

    キミが彼に行った行為は……、願いは………、紛れもなく『愛』そのものだ…!」
853 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 11:43:52.04 ID:g8NNWSxm0

さやか「なんで………、なんで敵のあたしにそんな事を…?」



キリカ「敵、か…。くくっ…、確かに敵だね…」


キリカ「だけど、私はキミの事だけは…、最初から嫌いじゃなかった…」



さやか「…………」


キリカ「愛に生きて、愛故に苦しみ、愛に死ぬ…。そんな面白い生き方を…、覚悟をするキミは……。

    ある意味では成りたい私であり…。興味深い存在であり…、同士とも言えた……」



さやか「あたしはアンタの事が嫌い」

さやか「けど、やっぱり…。

    アンタの言う『愛』だけは理解できるよ…」


キリカ「くくっ…。本望だ。

    『私』の最期を看取るのが、キミで……」






























???「そんなキモチのイイ終わらせ方、させると思ったのか?」


???「バーーーーーーーーーーーーカ!!!!!!!」
854 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 11:46:10.56 ID:g8NNWSxm0

キリカ「この声と陣…! 離れろ!」

さやか「え…?」



???「イル・トリアンゴロ!!!!!!!」


黒の魔法少女を中心に金色の魔法陣が展開すると…。

謎の声の掛け声とともにその周辺が炸裂した。




キリカ「うッ…く…」


さやか「くっそッ…!」



???「あはははははははっ! キレイに飛びましたぁぁぁぁぁ」



ユウリ「けど、息はあるようで関心かんしぃぃぃんッ」



炸裂して吹き飛んだ壁の向こうから現れたのは…。

金髪のツインテールに金色の釣り目、さらに紫の際どい衣装を着た見慣れない魔法少女。


両手にハンドガンを持ち、明らかに気が狂った笑みを満面に浮かべている。
855 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 11:48:13.47 ID:g8NNWSxm0

ユウリ「よぅ…、探したぜぇ…。

    な〜に、勝手にキモチよく死のうとしてるんだよ?」


ユウリ「困るんだよなぁぁぁぁ。勝手なことされちゃあ」


ユウリ「お前は、アタシがぐちゃぐちゃにしてやるって決めてるんだからさぁ!」



キリカ「また…、キミか…。せっかくいい所だったのに…」


ユウリ「そう言うなよ! 今度はお前を蜂の巣にしてやろうと思ってきたんだから!

    ほら、あの白いのみたいに良い悲鳴あげてくれよっ!」


キリカ「…………」



ユウリ「乗らないか。けど、ボロ雑巾をもっとボロくしてもつまんないなぁ…。

    もっと面白いモノないかなぁ…?」


黒い魔法少女と話す気が狂った紫の魔法少女が突然、その向きを変え…。

視線をあたしへと合わせる。


そして、ここに来た時と同じ狂った笑みを満面に浮かべると…。



ユウリ「そうだぁ…! あんたがやけに気に入ってるあの子にも悲鳴で歌ってもらおうかな!」


標的をこちらに定めた。
856 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 11:50:03.82 ID:g8NNWSxm0

ユウリ「さ〜て、そうと決まれば…。お〜い、魔女のお嬢さん!」


ユウリ「あんたの出番だ!!!!!」


紫の魔法少女の呼び声に合わせ…。

全身が金色のマネキンのような魔女が姿を現す…。


壊れた壁の向こうの闇から這い出たその姿はどこか神々しく、登りかけの朝日のように見える…。




ユウリ「そっちの黒いのの相手を頼むわ」

魔女「…………」



ユウリ「かなり弱ってるけど、殺すなよぉ?」

魔女「…………」


魔女に指示を出す紫の魔法少女。

そして、それに黙って従い、縦に首を振るだけの魔女。

その光景は奇怪そのものだけど、そう言う能力だとすれば頷けなくもない。

それよりも…。
857 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 11:55:05.06 ID:g8NNWSxm0

ユウリ「全部終わったらあんたの探し人も見つけて一緒にボコし…」


さやか「この結界を作ってる魔女を倒せば…!!!!」


あたしは状況を打破するために魔女へ向かって駆けだす。

結界を作っているであろう魔女が自ら出てきてくれたのだ。

それを逃す手はない…。



さやか「はぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!」

魔女「…!」


もう少しで間合いに入るかと言う時、その全身が金色の魔女の緑色の瞳と目が合う。

どこか見覚えのある瞳をしたその魔女は突如、苦しそうに頭を抱えると…。

周囲に高熱と炎を伴う衝撃波を発生させ、あたしと隣に居た紫の魔法少女を吹き飛ばした。


そして、さらに全身の炎を魔力で吹き飛ばした紫の魔法少女に、魔力爪の追い打ちが入る。



ユウリ「何やってんだッ!」

ユウリ「…!?」


キリカ「残念だったね…! 思惑が外れて!」




ユウリ「くッ…!」


キリカ「どこの誰だか知らないが……、キミの相手はこの私だ!!!!!」
858 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 11:57:10.34 ID:g8NNWSxm0

紫の魔法少女同様、軽い火だるまになりながら吹き飛んだあたしは…。

受け身を取りながらも、その勢いを殺し切らずに技と転がり、体中に付いた炎を消す。


それでも炎の消えないマントを捨てつつ飛び起き、追撃に来た金色の魔女を迎え撃つ。

つもりだった。



さやか「上等…! あんたからこっちに来てくれるなんて願ったり叶ったりだね…!」

魔女「サヤ…カ………」



さやか「気持ち悪い奴だな…! なんであたしの名前を…」

魔女「サ…ヤ………サ………」


敵の両掌に発生した小さな太陽の如く燃える炎の魔力球を受け流しながら、敵の様子のおかしさに気付き始める。

いや、正しくはこの敵に戸惑っている自分に気付く……。

その声、その瞳、そして…………。



魔女「サヤカ…………サン………」


さやか「その呼び方…」


さやか「アンタ、まさか…」





さやか「仁美?」


気付いた戸惑いは、最悪の確信へと変わる。
859 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 11:58:10.85 ID:g8NNWSxm0

――見滝原中学結界内2F――



まどか「ほむらちゃんが説明と誘導をやってくれるから、助かるよ」

ほむら「いえ………」


まどか「…………でも、わたしの傍を離れないでね」



まどか「怖い人も来たみたいだし」




???「あら…? もう気付かれてしまったのね」




織莉子「御機嫌よう」


今や薄気味悪さしか感じない綿の山の物陰から…。

白い装束、栗色の髪、そして美しい碧眼をした…。

天使のような魔法少女が現れる。


中身は悪魔のような、と言いたいけれど…。

彼女の目的を考えれば…。

ある意味では、中身も冷酷な天使のようであるとも言えるだろう…。
860 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 11:58:53.79 ID:g8NNWSxm0

まどか「この結界を解いて…!」

織莉子「何のことかしら?」


まどか「しらばっくれるの?」

織莉子「あらあら、怖い子ね」



織莉子「はじめから話しあうつもりなんてなかったのでしょ?」

まどか「ッ…!」


矢を即座に作り出しつつ、早撃ちを狙っていた事を見透かされる。

それでも、わたしはそのまま弓矢を構える…。

今のわたし一人では敵わないかもしれない。

それでも…。



まどか「ほむらちゃんはわたしが守る…!」



織莉子「心配しなくても大丈夫。貴女の相手はあとみたい」


織莉子「ねぇ…、巴マミ?」





マミ「…………決着を付けましょう。美国さん」



―to be continued―
861 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2011/12/30(金) 11:59:21.24 ID:g8NNWSxm0

―next episode―


「その時は、わたしが命に代えても責任を取るよ」





―【第十九話】白と黒(後編)―

862 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/30(金) 20:55:31.70 ID:dxZJI0iJo
大ボリュームの更新乙

数の論理を持ち出す人物は
身内を切り捨てられるかどうかが一つのポイントになりますが
おりこはまあまあ一本筋が通っていると言えますね
(もっとも、失いたくない身内を既に失った後だから自棄になれるだけだとも言える)
まあこの論法を突き詰めると
インキュベーター最強になってしまうので感情的には受け入れがたいですがww

予知能力者の倒し方には幾つか定番パターンがあるので頑張れマミさん
そして仁美ェ…
何が起こったのやら気にしつつ次回を楽しみにしています

良いお年を〜
863 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2012/01/02(月) 00:29:00.30 ID:Z4OVD74B0

ボリューム多目で嬉しいね
864 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2012/01/02(月) 12:19:26.77 ID:/u53sRXy0
>>862
クロスボーンガンダムのキンケドゥ曰く「自分の命を大事に出来ない者は他人の命だって大事に出来ない」だし。
織莉子もルルーシュの「撃っていいのは、撃たれる覚悟のあるやつだけだ」論理に近いものがあるかな。

予知能力者の攻略法としてはわかっていても回避不能、ガード不能攻撃をしかけるか(キリカの速度低下が無ければほむらの時間停止攻撃を回避出来ないらしい)
攻撃を予知されるのを前程で一手さらなる攻撃パターンを加えるか。
865 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 22:59:11.28 ID:NxI63QRO0

はい。大変お待たせいたしました
今から投下します

またも長い間更新できず申し訳ないです

本当は日曜には更新したかったんですが………
よく見たら、いつもの二倍近く………
こりゃ終わらない訳だ…………

前回と言い、数回に分けようかとも思ったんですが、次回予告詐欺したくなくて…
このくらい半日で書ける時もあったんですが、最近はなかなか…


>>862
乙感謝します
間違い、ではないんですよね
まどか、おりこの本編に置いて間違った主張をした人はいなかったと思います
けど、正しいモノ同士が手を取り合えるとは限らない
難しい物ですね

>>863
乙感謝です
大ボリュームしても次が遅れてりゃ世話が無い…
以後気を付けます……


>>864
乙感謝です
クロボンは名台詞多いですよねw
「なら、海賊らしく頂いていく!」とか「人間でたくさんだ!」とか「決着は人間の手でつけます」とか…

まぁ一番好きな台詞はトビアでもキンケドゥでもなく、カラス先生の「敗者の分際で勝者の行く手を阻むでないわ!」ですがw
866 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 22:59:42.96 ID:NxI63QRO0

『美国久臣がこの政治腐敗に一石を投じます』

『この国が幸せになる為にはまずこの街が幸せにならないとね』

『勿論、織莉子の幸せの為にも』


お父様は立派な人物だった。

家でも、外でも、何時も人の為、国の為、世界の為と…、よりよい世界を作ると日々勤しんでいた。


そんなお父様は私の憧れであり、そんなお父様の力になれるようにと務め、精進を続けた…。

そして…。



『ほら、あの人よ。生徒会長で学年トップの美国織莉子さん』

先生やクラスメイトも…。


『本当に気持ちのいいお嬢さんね。親切で礼儀正しくて何でも出来るのにお高く止まっていなくて』

ご近所の人々も…。


『とても聡明なお嬢さんだ。これからも父上の名に恥じぬよう頑張りたまえ』

お父様と親交のある政治家の方も皆、そんな私を褒め称え続けた。


だから、私はそれで良いんだと思っていた。

いや、そんな風に疑う事さえしなかった。

あの時までは…。
867 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:00:34.04 ID:NxI63QRO0


『本日未明××党 美国久臣議員が自宅で首を吊っているのが発見されました』


お父様は死んだ。

それも、行っていた不正の疑惑の追及を避ける為だと言う。


綺麗事を並べていたお父様の手は、真っ黒だった。

私はお父様に裏切られたんだ…。

さらに…。



『くすくす。よく学校に来れますわね』

『やぁねえ! まだ住んでるんですって!』

『先生はお会いにならないと言っています。選挙も近いと言うのに不正議員の娘に纏わりつかれたら堪らないでしょう?』


私の築き上げてきたモノは、お父様の死、裏切りと共に全て崩れて無くなった。

そして、その時にようやく気がついた。
868 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:01:18.70 ID:NxI63QRO0

周囲や世間から見れば…。

美国織莉子と言う人物は、美国久臣の娘以外の何物でも無く…。

誰もが私個人ではなく、お父様の一部としてしか私を見ていない事に。


お父様に裏切られ、残された私は誰にも必要とされていないばかりか…。

世間から疎まれる存在の残り滓に過ぎない事に…。




だから、私は呟いた。


『みんな私の事をお父様を通してしか見てくれない…』


『私がお父様の一部だと言うのなら、何故私は生きているの?』








『私は………、私が生きる意味を知りたい』


溢れ出た嘆きは、私の全てを変えた。
869 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:01:48.43 ID:NxI63QRO0







―【第十九話】白と黒(後編)―









870 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:02:40.39 ID:NxI63QRO0

――見滝原中学結界内2F――




マミ「…………決着を付けましょう。美国さん」


暁美さんを守る為に弓を構える鹿目さんと、その前に立ち塞がる美国さん。

私が来る事を予知していたのか、あるいは本当に手を出す余裕がなかったのか…。

何にしても二人の戦いが始まる前に制止する事に成功する…。


そして…。

彼女との決着を望む私は、変わり果てた階段の踊り場の上から、白の魔法少女を睨みつつ…。

踊り場から跳躍して床へ着地しつつ、そのまま歩いて鹿目さんのすぐ後ろに立った。




まどか「マミさん、わたしも…」


マミ「あなたは下がってて。

   彼女の事だから、隙を見て暁美さんを狙わないとも限らないしね」


まどか「はい…」
871 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:03:54.53 ID:NxI63QRO0

私の指示に従い、暁美さんの元まで後退していく鹿目さん。

その足音を聞きながら、私は再び白の魔法少女を睨みつつ、告げる。




マミ「………最後の警告よ。今すぐこの結界を解きなさい」


織莉子「そうして欲しいのなら、暁美ほむらを今すぐ差し出しなさい」


無駄な事だとはわかっていた。

彼女が学校を巻き込んだのは、それを含めての行動なのだろうから。


彼女の狙いは、私達の倫理や道徳に付け込む事。

ここに居る人達を見捨てきれずに疲弊し、また事の早期解決に焦るであろう事を色々な意味で見据えているのだろう。

かつ犠牲を認めきれず、一人でも多く助けたいと欲張る私に対する当てつけでもある。

だから…。



マミ「そう…。なら、もう躊躇わない.

   今ここであなたを倒し、全てを終わらせる」


織莉子「………来なさい。貴女は私の手で引導を渡してあげる」


迷う事、躊躇う事、焦る事。

それは全ての敵の思うつぼなんだ。

だからこそ、私はそれらの邪念を捨て、銃弾と言う形を以て彼女に応えた。
872 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:05:29.26 ID:NxI63QRO0

織莉子「…………」

マミ「………」


両手に握られたマスケット銃から一発づつ…。

さらに右手を振って、素早く空中に作られた四丁のマスケット銃から一発づつ…。


計六発の銃弾が、ものの数秒の間に間髪いれずに放つ。

けれど、その銃弾はいずれも虚しく空を裂く…。




織莉子「なかなか速いわね。それに正確…」


マミ「まだ、終わりじゃないわ」


白の魔法少女が全ての攻撃を回避する僅かな隙を活かし…。

私は周囲の空間を歪ませ、無数のマスケット銃を発生させ始める…。

しかし…。



織莉子「勿論知っているわ」


織莉子「だから………、それは撃たせない」


一瞬で発生した無数の敵の魔力球が放たれ…。

武器の生成で動く事が出来ない私目掛けて飛んでくる…。
873 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:06:51.44 ID:NxI63QRO0

周囲に展開した無数のマスケット銃を打ち倒すべく迫る魔力球。

後一歩で魔力球が届く、と言った瞬間…。




マミ「…………」


織莉子「……やるわね」


地面を突き破って、数巻の魔力のリボンが出現する。

天へと伸び、私を守る壁となったそれに阻まれ、軌道を変えられた魔力球達は明後日の方向へと飛んでいく…。


さらに…。



織莉子「…………」


織莉子「大盤振る舞いね」


魔力のリボンは白の魔法少女の四方八方からも現れて、取り囲み。

一斉に襲いかかる。

しかし…。
874 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:07:28.32 ID:NxI63QRO0

織莉子「けれど、それも…」


白の魔法少女はその眼を青白く輝かせると…。

まるで生き物のように四方から迫るリボンを平然とかわしつつ…。

魔力球を纏めて撃ちこんでリボンの一画を崩して、包囲網を抜け…。




織莉子「それも…」


さらに、その間に生成された無数のマスケット銃の弾丸の追撃をも平然と回避し…。




織莉子「それも………。全て無駄よ」


その弾丸を縫うように進む魔力球を、当たり前のように私に命中させ…。

私が作ろうとしていた巨大な砲身を破壊しつつ、その衝撃を利用して私自身も吹き飛ばした。
875 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:08:41.49 ID:NxI63QRO0

マミ「くッ…、まだ…」


織莉子「全ての小細工は私の前では無意味…」



織莉子「そして…。先が視えていると言う事は、無駄は一切必要ないと言う事…」


片膝を付くも、立ち上がろうとする私を指さす白の魔法少女。

それに合わせるように彼方から現れた魔力球が、私目掛けて飛び交う。


いや、現れたと言うよりは舞い戻ったと言うべきなのだろうか。

あの魔力球は恐らく、リボンに阻まれて軌道を反らされたモノであろうから。




織莉子「もうわかっているとは思うけれど、回避は出来ないわ。

    私には貴女の行動が全て視えている」


彼女の思念で操られ、不規則な動きを繰り返して飛び交う魔力球は…。

私の回避行動や、弾を撃ち終えたマスケット銃を使っての振り払いをかわし…。

悉く直撃し続ける…。


けれど、私は攻撃が着弾すると同時に防御や回避を諦め…。

三度、周囲に無数のマスケット銃を展開していく…。
876 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:10:09.49 ID:NxI63QRO0

織莉子「私の予知は絶対。貴女の行動の全てを私は先んじて知る事が出来る」

織莉子「戦いに置いて先を読む事、先手を取る事…。その大きさが理解できない貴女ではないでしょう?」


織莉子「なのに、立ち上がる。無駄とわかりながらも繰り返す。理解が出来ないわね」




マミ「諦めがよくないのよ…。あなたと違ってね…」


織莉子「減らず口を…」



マミ「私は諦めない…。暁美さんの事も、ここに居る人達の事も、魔法少女達の事も…!」


マミ「そして、認めない! 多数の為なら少数は切り捨てられて当然と不幸を強いて、

   憎しみや悲しみを撒き散らすあなたのやり方は…!」


子供染みた綺麗事だと言うのはわかっている。

それでも、私にはこの道しかない。

だって、私の守りたいモノは………。



展開されたマスケット銃を強引に撃つも、平然とかわされ、また魔力球を受けて倒れる。

それでも私はまた立ち上がりつつ、マスケット銃の展開を続けていく…。


そして、白の魔法少女はその様子を忌々しそうに見つめながら…。

魔力球を撃ち込み、再び私を地面へと叩きつけた。
877 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:10:56.09 ID:NxI63QRO0

織莉子「…………」


巴マミのその姿。

それはかつての私を思い起こさせる。

魔法少女になったばかりで、まだ何も知らなかったあの時の事を…。



『私の生きる意味を知りたい』

その願いに応え、現れたあの嘘吐きと契約した。

私の願いは、強力な固有能力と言う形で叶えられ、その先で見たモノこそ…。



『私契約します。だから、お母さんを助けてください』

『凄いじゃん。魔法少女の力って! これなら私を馬鹿にした奴らに一泡吹かせられる!』

『ありがとう、QBのおかげで歌手になる夢が叶いそうだよ』


知らずとは言え、自分を売り渡し、強大な力を得て災いの種となった見知らぬ魔法少女達の姿と…。



『痛い…、苦しい…、誰か………、助けて』

『違う…、違う! 私はこんな事望んでない!』

『もう、何もかも……………消えちゃえば良いんだ』


その真実と末路…。
878 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:12:04.53 ID:NxI63QRO0

魔女と言う不幸の塊を生みだす根源を知った私は…。

その存在の発生を阻止し、被害を未然に防ぐ事を決意した。


そうやって、『人』も『魔法少女』も『この世界』も救う…。

お父様とはまた違う形だけど、お父様の成せなかった救世を成す。


それが『私の生きる意味』だと…。

そして、そんな綺麗事が成せると、本気で信じていた。

けれど……。



織莉子「無駄よ……」

織莉子「貴女の足掻きなど、定められた未来にひびを入れる事さえ無い無意味な行動…。

    貴女の語る理想や道徳は何も救わない、救えはしない、綺麗なだけの無謀な幻想…!」


マミ「そうかも……、しれない………」

マミ「でも、私には…、未来は見えないから…、信じて…、足掻くしかないのよ……」

マミ「私の守りたいモノは…、その先にしか、ないから………!」


決意と共に放たれた無数の銃弾と魔力球は一切ぶつかる事はなく…。

巴マミの弾丸だけが外れ、私の魔力球だけが命中する。


もがき、足掻く者の都合など無視して…。

私の力は彼女の未来を視せ続ける…。
879 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:12:46.86 ID:NxI63QRO0

――見滝原中学結界内1F――



さやか「そんな…」

さやか「なんで…、なんでよ……」


ずっと彼女を羨んでいた。

殺したいほど憎んだ時もあった。


けど…。

ようやく向き合おうって、そう思ったのに…。




さやか「なんで、仁美が…!

    魔女なんかになってんのよッ!!!!!!!!」


その相手は今…。

化け物へと姿を変え、あたしに襲いかかっている。
880 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:13:30.48 ID:NxI63QRO0

壁に大穴の空いた、結界内の広い空間の中で虚しく木霊するあたしの叫び。

魔女に変貌したあたしの友人は、勿論答えない。


代わりに…。

その様子を嬉しそうに、横目で見る紫の魔法少女が笑いながら語りだす。





ユウリ「今まで大人しかったのに、なぁにを突然暴れ出したのかと思ったら…。

    そうか、そっかそっか…」


ユウリ「そいつが探し人の『サヤカサン』かぁ!!!!!!!」


既に満足な動きが出来ていない黒の魔法少女を軽くあしらいながら…。

壊れた笑みを浮かべ、紫の魔法少女は嬉しそうに喋り続ける。


その様子と言葉に激怒したあたしは、魔女の相手をしながらも怪しいその女を問い質す。
881 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:14:59.39 ID:NxI63QRO0

さやか「アンタ、仁美に何やったの!?」

ユウリ「いや、何…、悩んでたみたいだからな…」


ユウリ「心を解き放ってやったのさッ!!!!」



さやか「訳わかんない事を!」

キリカ「心を………、まさか………」


キリカ「『悪の果実<イーブルナッツ>』か…?」



ユウリ「御名答! 暗い気分がすっきりする最高の特効薬!

    この『悪の果実<イーブルナッツ>』を頭に埋め込んでやったのさ!」


紫の魔法少女は敵を左手のハンドガンで牽制する片手間で…。

どこからか取り出した、右手のそれぞれの指の隙間に挟んだグリーフシードによく似た何かを見せつける。


『悪の果実<イーブルナッツ>』

そう呼ばれたあのグリーフシードもどきは恐らく…。
882 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:16:50.22 ID:NxI63QRO0

魔女「………カ………ン………」

さやか「アレが仁美をこんな姿に…!」


キリカ「間違いない。あれが人を魔女へと変える呪いのアイテム…」

キリカ「私も噂で聞いただけだったけど、誰の得にもならない傍迷惑な物が本当に実在するとはね…」



ユウリ「傍迷惑ねぇ。そうでもないんだよなぁ、これがさ」

ユウリ「コイツの特徴は、個人差はあれど本来の魔女と違って、ある程度理性を残せる可能性がある。

    例えば……」


ユウリ「そのお嬢さんはここに来るまで、人殺しはおろか、器物破壊や暴力行為の素振りすら見せず、

    移動以外の一切の行動を行っていない。本人の理性がそれを望まなかったんだろうなぁ…」


さやか「魔女になってるのに…、それらしき行動はしてない…?」


でも、今目の前に居る仁美らしき魔女は、ひたすらあたしに対して攻撃行動を繰り返している。

矛盾…? いや…。



ユウリ「もうわかったんじゃないのかぁ?」

ユウリ「人を襲わない程の理性が残ってるそいつが、アンタにだけは襲いかかる。

    その意味…、すごくわかりやすいよなぁ…?」


ユウリ「そいつが探し出してでもぶち殺したかったのが、アンタって事だよ!!!!!!!」
883 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:18:32.31 ID:NxI63QRO0

魔女「サヤ……カサ……」

さやか「あたしを………」


その言葉に固まった一瞬を逃さず、魔女はあたしに一撃を入れる。

咄嗟の防御には成功するも、紫の魔法少女の口は止まらない。




ユウリ「アタシもちょいと手駒が欲しくてなぁ…」


ユウリ「適当に物わかりがよくて、利害が一致する奴に当るまで手当たり次第に行こうと思ってたんだが…。

    いきなりそのお嬢に当たってさぁ…! ラッキーだったよ!」


ユウリ「で、そのお嬢ときたらアタシに刃向わないどころか、人探しなんて始めようとするんだ。

    笑っちまうだろ?」


ユウリ「そんなその大人しい魔女のお嬢が、アンタを見た途端にこれだ!

    もうたまんないよ!!!! なぁ!!!!!?」


さやか「ッ…」



ユウリ「よかったじゃないか! 思われてるみたいで!」


ユウリ「しっかりそいつの憎しみを受け止めてやれよ、サヤカサン!

    あはははははははははははははははは!!!!!!!!!!!」

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884 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:19:21.33 ID:NxI63QRO0

魔女「サヤカ………サンッ…!!!!!!!」

さやか「…………!」


紫の魔法少女の歪んだ笑い声に反応するように…。

魔女となった仁美の右手が強く燃え盛り…。

その拳を受けたあたしは、防御の際に発生した爆発によりその身を飛ばされる。



さやか「憎しみ、か………」


そりゃそうだよね。

仁美だって、多分ずっと恭介の事が好きだったのに我慢して…。

付き合ってもいないあたしが幼馴染だってだけでウロウロして、目障りだったよね。

見せつけるようにあたしがする恭介の話なんか、聞きたく無かったよね。

告白した後に騒動を引き起こして有耶無耶にしたんだろうあたしが、鬱陶しくて仕方なかったよね。


アンタさえ居なければって、そう思ったんだよね…?



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885 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:20:22.58 ID:NxI63QRO0

空中に投げだされたあたしに止めを刺すべく…。

両手に纏う炎を更に強めながら、魔女となった仁美は地面を蹴って跳躍する…。




さやか「仁美の気持ち…、わかる………」


さやか「あたしだって………、そうだったから………」


美人で、頭がよくて、優しくて、お金持ちで…。

あたしは、そんな女らしくて完璧な仁美がずっと羨ましくて…。

そんな仁美が恭介を好きだと言った時、すごく苦しくて嫌な気持ちになった…。


知らないとはいえ、あたしがどうしようもなくなった時を狙ったように、恭介との間に入って来て…。

何もしてないアンタが全てを横から奪い去ろうとするのが、憎くて憎くて仕方なかった…。


アンタなんか居なければ、ってそう思った。


だから…。


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886 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:21:19.92 ID:NxI63QRO0

さやか「あたしだって恨んだんだ。

    仁美だって憎めばいい。憎んでくれて構わないよ。

    けどさ………」



さやか「こんなのは………、違うよ………」


さやか「またやり直せるにしても、もう戻れずに憎みあうしかないとしても…。

    こんな所で……、こんな終わり方をするのは違う………」


止めを刺そうと迫る仁美。

けれど……。




さやか「そうでしょ!? 仁美ッ!!!!!!」


魔女「…………!」


拳が届く直前に、あたしの言葉に反応した仁美は…。

急に頭を抱えて、地面へと落下…。

あたしと少し離れた位置に着地し、そこで苦しそうに炎を撒き散らしながらのた打ち回り始めた。



887 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:22:23.93 ID:NxI63QRO0

魔女「ア…アァ……ァ…」

ユウリ「何が……どうなってるッ!!!!」


魔女「ウゥ……ウァ…ア…アァァ!」

ユウリ「どうしたんだよ! やれよッ! やっちまえよッ!!!!」


魔女「チガ………ウ………」

ユウリ「何が違う! 探してたんだろ! いきなり襲いかかるほど憎んでたんだろ」


魔女「憎ンでる……、だカラ……、止め…れなかっタ……」

魔女「で…モ、探しテタノハ……違…」


魔女「たダ……、謝りタかっ………タから……です…の……」


ユウリ「なにをだッ! 憎む相手に謝る事なんて…!」



魔女「ワタ…し……は……、何ハ…どうアレ……、サヤカさんノ……。

   大切ナ人……、奪おウとしたン…、ですの……。

   さやかさんの………、気持ち……知ッテ…いなガラ………」


魔女「傷つける……ッテ…、わかってたノに……。

   それでも…、さやかさンは強イから…、だいじょうブだって……、言い訳…シテ……。

   コンなに傷つクなんテ…、苦しめルなんて……、思わなクテ……」


魔女「ごめん…なさい……。ごメンな……サい……」
888 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:23:17.68 ID:NxI63QRO0

さやか「仁美………」


魔女「ごめ………ん……なサ…」

さやか「もう、いいよ………」



さやか「あたしこそ………ごめんね」


さやか「あたしが弱かったから、アンタを苦しませた。

    こんな目に……、遭わせた…」




さやか「責任……、とんなきゃね…」


苦しそうに頭を抱えながら、それでも謝罪の言葉を繰り返す仁美…。


そして、あたしは…。

苦しむ仁美を見つめながら、その左手を強く握って刀剣のパーツを砕き…。

剣を左腰に収めつつ、左手でその刀身を握って構え…。



苦しむ仁美の懐に、一気に飛びこんだ。
889 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:24:08.46 ID:NxI63QRO0

ユウリ「ハッ! アイツ斬る気か…!? 

    あははははは! ひゃははははは!」

キリカ「…………」



さやか「まどか…………」


アンタの気持ち、やっとわかったよ。

目の前の友人がおかしくなって…。

それでも諦めきれなくて、止めようとして…。


すごく、しんどいね。

すごく、苦しいね。

けど、それでもアンタはあたしの事、諦めないでくれたんだよね。


ごめんね。

それと、ありがとう……。




さやか「あたしもさ……」


さやか「アンタみたいに、強くなるよ!」


鋭く振り抜かれた居合の如く横一閃。

その一撃で動きを止めた相手にさらに三閃。


計四度の斬撃を受けた魔女は、血飛沫をあげて地面へと倒れた。
890 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:25:27.03 ID:NxI63QRO0

さやか「……………ごめん」

さやか「結局、あたしはまたアンタを傷つけてる…」


さやか「でも、その手足は後であたしが治すから………。

    アンタが治る方法をすぐに聞きだして戻るから………。

    仁美の事、絶対諦めないから………」


さやか「少しだけ、そこで待ってて!」




ユウリ「鞘代わりに自分の手を傷つけて繰り出す、居合染みた強烈な一撃…。

    だが、それによる外傷はない…?」

ユウリ「ナックルガードを砕いたのは、峰打ちの邪魔だからか…!」


キリカ「そして念を入れて、気絶しなかった時や手早く起きた時の為、手足だけ斬り落として戦闘力を封じておく、か……。

    彼女を救いたいなら正解だ、美樹さやか。アレが噂どおりなら………」



ユウリ「けど、考えが甘かったみたいだなぁぁぁぁぁぁぁ!」





魔女「ァァァァァ…………ァァァァァァァアアアアアア!!!!!!」

さやか「…!?」


最初の峰打ちが失敗したのか、あるいはその後の追撃の激痛で起こしてしまったのか…。

どちらにしても、手足を失って尚、魔女に変えられた仁美は意識も戦闘力も失っておらず…。


ここからでは回避も防御も間に合わないだろう、巨大な火球を口元に作り出していた。
891 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:26:45.26 ID:NxI63QRO0

――見滝原中学結界内校庭?――



ゆま「はぁ……はぁ……はぁ……」


キョーコに言われて、ひと足先に結界に入ったゆまは…。

そこにいた人たちを狙う使い魔と戦ってた…。

けれど…。




ゆま「まだ………出てくるの…?」


敵はたおしてもたおしても出てくるのに…。

みんなは何も無い広い場所の真ん中にいて、進むことも戻ることも隠れることもできない…。


せめて、ゆまがキョーコの使ってたバリアみたいなのが使えればよかったんだけど…。

それのできないゆまは、みんなの周りを走り回りながら、守るしかなくて…。
892 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:27:19.30 ID:NxI63QRO0

見滝原中学生徒A「こ、こっちからも来たよ…!」


ゆま「うん。今いくから…」



見滝原中学生徒B「う……うわぁ! なんかいっぱい出てきた!」


ゆま「ちょっと待って…! 今こっちを…」



見滝原中学生徒C「いい加減にしろよ! 何にもいねーじゃねぇか!」

見滝原中学生徒D「馬鹿! この辺に見えない何かが居るのは確かだろ! 先生がどうなったのか忘れたのかよ!」


見滝原中学生徒C「う、うるせぇッ! ここに居たって同じだ! 俺はもう行く!」

見滝原中学生徒E「待てよ! 俺も行くぜ!」



ゆま「あ…! ダメだよッ!!!!」



一ヶ所に固まっておしくらまんじゅうのようになったみんなの中から…。

混乱しきった数人が飛び出す。


そして、飛びだしたその人たちを待っていたかのように、わたがしのような使い魔が現れ…。
893 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:28:01.52 ID:NxI63QRO0

見滝原中学生徒C「う、うわぁぁぁぁぁ! い、痛い、痛いよ! 助けて!」

見滝原中学生徒E「ぎゃああああぁぁぁぁッ!」



ゆま「待ってて、今助けに…!」


見滝原中学生徒D「それよりもこっちだよ!」

見滝原中学生徒A「また、こっちも出てきた…!」


見滝原中学生徒C「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!」


あの人たちのところに行かないとあのまま使い魔に食べられちゃう…。

だけど、ここをゆまが離れたら…。



見滝原中学生徒E「死に………たく……ないよ…」


見滝原中学生徒B「お、おい…! こっちはまだなのか! たくさん湧いて出て…!」



ゆま「あ……あ……あぁ………」


ダメだ…。

あっちもこっちも使い魔だらけ…。


どうしよう…。

どうしよう…!





ゆま「助けて、キョーコッ………!」
894 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:28:57.01 ID:NxI63QRO0

頭がいっぱいになったゆまは、思わず目をつむってさけぶ。

そんなことしたって何も変わるはずはない。

はずはないんだけど…。


目を開けて見直したゆまの周りは…。

奇跡か魔法で、使ったかのように…。


何もかもが動きを止めていた。



ゆま「何が………、起きたの……?」


突然のことにわけがわからないゆまは、とりあえず辺りを見渡す。

山のように溢れる使い魔も、真ん中でおしくらまんじゅうしてた人たちも…。

逃げようとした人たちも、みんな動きを止めてしまっている。




ゆま「みんな……、死んじゃった……の………?」


止まってしまった周囲に、混乱して泣きそうになったゆまの頭を…。

なにかがそっと撫でた。
895 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:29:48.19 ID:NxI63QRO0

――見滝原中学結界内1F――




魔女「アアアアアアアアア!!!!!!」


さやか「しまっ……」


魔女の口元に出来あがった巨大な火球。

あたしは察した気配から、首だけ振り向いてそれを確認するも…。


今この体勢で、ほとんど離れていないこの距離から、それが放たれれば…。

絶対に回避できない。


そして、その火球が今魔女の口元を離れるかと言う時…。




何故か火球は力を失い、急速に収束して…。

消滅した。
896 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:31:52.34 ID:NxI63QRO0

さやか「な、何…………」


ユウリ「何が、起きた…!?」

キリカ「死んだのか………? いや……」




??「眠ったのさ」


突如攻撃を収め、そのまま動きを止める魔女…。

その状況に戸惑うあたし達三人に、しれっと現れた四人目の声が響く…。



??「そいつだけじゃない。一般人然り、使い魔しかり…。み〜んなぐっすり夢の中さ」


キリカ「キミは…」




??「学校中を巻き込んで、やりたい放題やってたみたいだが…、それもここまでって訳さ」




杏子「なぁ、呉キリカ!!!!!!」


ゆま「もう好き勝手させないよ!」


眠りに付いたらしい魔女となった仁美の横を通り過ぎて…。

紅の影と緑色の小さな影が、あたしを守るように目の前に立った。
897 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:35:14.51 ID:NxI63QRO0

さやか「杏子! ゆまちゃん!」


ゆま「助けに来たよ。サヤカ」

杏子「結構派手にやられてんな…、と思ったら見覚えないヤツまでいるな。

   織莉子の仲間か…?」


さやか「うぅん。けど、敵なのは間違いないよ…。

    だって、アイツは仁美を…!」


杏子「そうかい。まぁこっちの狙いは………」




キリカ「やられたね…。キミの固有魔法は幻惑。それを応用したってところかな…?」


杏子「あぁ…。お前らのような実力者まで錯覚させるロッソ・ファンタズマが、幻惑魔法の一点集中なら…。

   今回やったのは、幻惑魔法の広域拡散」


杏子「効果を催眠に限定し、一般人やここに溢れる雑魚みたいな魔力の低いヤツがかかる程度に力も弱めて…」


杏子「そうやって薄く伸ばした魔法を、この結界中に広めてやったって訳だ」




杏子「まぁ、実は最中にソウルジェムが濁れ切ったり、

   一般人だけが寝ちまってアウトって可能性もあったりして、ヤバイ賭けだったんだけどな」


杏子「まぁ何にしても………。

   お前らの目論見は全部潰れたって訳だ!」
898 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:36:56.11 ID:NxI63QRO0

キリカ「……………」


美樹さやかの仲間が駆けつけた。

おまけに結界中の使い魔を機能停止させると言う荒業をやってのけて。


佐倉杏子のせいで、せっかく『体を張って』作った結界が台無しだ…。



ただ…。

代わりに、ここに連中の内『三人』が集まってくれた。


体ももう満足に動きやしないし…。

潮時、なんだろう…。



キリカ「……………そろそろだ」


ユウリ「何がだ! 追い詰められ過ぎて頭でもイカレたのか!」



キリカ「イカレてるのはキミだけだよ…。どこかの誰かさん」


挑発、のつもりもない…。

ただの言い返しのつもりだった。


だけど…。

その一言は、結果的に『私』を終わらせる口火となった。
899 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:39:54.01 ID:NxI63QRO0

ユウリ「誰かさん………。誰かさん…………!

    あっはははははははははっ!!!!!!!」


キリカ「くぅッ…」



杏子「なんだ、アイツ! 壊れてんのか…!?」

さやか「何でもいい! やめさせないと結界を解く手掛かりが無くなる…!」



ユウリ「失礼な……、ヤツだな…!」

キリカ「ぐッ…、くふっ…」

ユウリ「お前の…! ご主人の白いのは……! ちゃんと! 覚えてたのにッ!!!!」


『誰かさん』

その一言に猛烈に反応し、その感情に任せる事で…。

さっきまでの遊びとは違う苛烈な攻撃を、突如繰り出す紫の魔法少女…。


だけど…。



キリカ「失礼なのは………、キミ…だろ…?」

ユウリ「何…?」


キリカ「キミが『飛鳥ユウリ』だとでも言うのか? ふざけるなよ…」


キリカ「彼女は他者へと尽くす献身の中で力尽きる…、運命だったんだ…」

キリカ「その彼女の名をキミのような下衆が語る。それこそ失礼…。

    いや…」


キリカ「彼女に対する侮辱だよ…!」
900 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:42:01.61 ID:NxI63QRO0

飛鳥ユウリ。

契約の願いは『不治の病にかかった親友を救いたい』。


そして、魔法少女になった後も他者の病を癒して回り、かつ魔女とも戦い続け…。

そうやって自分を省みずにいた無理が祟り、やがて魔女となり、多くの人間を殺す…。


そんな報われない運命を変える為に、織莉子は私に彼女を始末するよう指示を出した。

そして、彼女も…。



キリカ『言い残す事は…?』

ユウリ『特に……ないや……』


ユウリ『アタシの存在が…、あの子と……たくさんの人を……殺すんでしょ…?』


キリカ『信じろとは言わないよ。だけど、私がキミを手に掛けた理由はそれ以外にない』


ユウリ『なら……いいや。あの子を………助けたくて……魔法少女になったのに……。

    そのアタシが………、あの子を殺すなんて……、格好付かないもん……ね…』


キリカ『…………』



ユウリ『でも………』


ユウリ『最後にあ……と………、バケツパフェ……、食べたかった…、な…』
901 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:43:25.02 ID:NxI63QRO0

その彼女が復讐のためとはいえ、他者を踏み躙る?

そもそも復讐なんて薄ら寒い事を思いつく…?

そんな訳が無い…。


だから、これは…。



キリカ「彼女に対する侮辱なんだよ! 偽物め!!!!!」



ユウリ「うふふふふ! あぁぁぁぁははははははははははッ!!!!!!」



ユウリ「そこまで……、わかってたか…」


ユウリ「それでも、お前はユウリを殺したのかぁ……」



キリカ「………」



ユウリ「その通り。アタシは飛鳥ユウリに救われた者…。

    そして……」


ユウリ「ユウリを殺したヤツへ復讐する為、『飛鳥ユウリ』を継いだ者だッ!!!!!!!」
902 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:44:29.79 ID:NxI63QRO0

なるほど…。



ユウリ「だから、許せないんだよ! お前はッ!」


彼女は、恐らく『飛鳥ユウリ』に救われ、そして『殺される筈だった親友』か。

全てに納得が言った…。




ユウリ「お前たちだけはッ!」


重たいな…。

彼女の思い…、憎しみもまた『愛』だったのか…。




ユウリ「ユウリが何をした!?」


何もしていはいないさ。

する筈だっただけで…。




ユウリ「一人でも助けたいって、毎日頑張ってただけのユウリが、お前に何をしたんだッ!」


その頑張りを無駄にしない為に、織莉子は…。

けど、やっぱりそれは誰にも……。

理解はされないんだね…。
903 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:45:17.96 ID:NxI63QRO0

でも…。

それでも、いいさ。

私だけは知っている。


そして、そんな織莉子に対する私の愛は…。

誰にも……負けない。



美樹さやかの献身や自己犠牲も…。

飛鳥ユウリの親友の愛が故の憎しみも…。

それ以外の純粋な魔法少女や罪なき人々も…。


何もかも全て、踏みにじってでも…。



キリカ「私は………、私の愛を成す……」


ユウリ「な、何だ…! 何を…」




キリカ「愛は………、無限に……有限なんだ…、から……!」



織莉子…。

キミの為に在り続ける事が出来るのなら…。

キミを護ることが出来るのなら…。

私は…。







安らかに『絶望』出来るよ。
904 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:48:21.21 ID:NxI63QRO0

黒い魔女「……………」


ユウリ「な……。コ、コイツ、魔女を召喚したのか…!?」




傀儡の魔女。性質は『虚偽』。

操られてると知りながら、それを望む変わり者。

体を重ねて背丈を伸ばし、周囲の動きを遅めては、他者を見下して嘲笑う。

そうやって弱い自分を偽るも、一番大切なものには触れる事すらできない臆病者。



傀儡の魔女の手下。役割は『数合わせ』。

傀儡の魔女が馬鹿にされないように居るだけの存在。

中身は綿しか入っていない出来損ないで、品性の欠片もなく、

魔女が蔑む者達よりもさらに救いようが無い。
905 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:51:19.32 ID:NxI63QRO0

敵の攻撃を受け続け、とうとう限界を迎えた黒の魔法少女のソウルジェムはグリーフシードへと変わり…。

そのグリーフシードは、女性の体を縦に重ね、上がった頭部に一つ目のついたシルクハットを被った…。

どこか妖艶ながらも悪趣味な姿をした魔女を生みだす。



黒い魔女「……!」

ユウリ「くそッ………」


銃弾や蹴りで仇敵を嬲っていた紫の魔法少女は、当然真実を知る筈もなく、事態に驚愕し…。


その隙を突かれてしまい、見かけに反して高速で動く魔女に踏み込まれ…。

魔女の伸ばした鎌の直撃を受けた。



ユウリ「げほッ…、がッ…! こいつ…! 速い…!」

ユウリ「けど…、アタシは……、仇を…取らな…」


ユウリ「いけ……ないのに……」


最初の一撃で深く腹を抉られた紫の魔法少女は、そのまま動きを鈍くした事で敵に捉まり…。

まるで先ほどまでの仕返しが如く繰り出される、両手を回転させての連続攻撃を受けてズタズタになり…。




ユウリ「うごぉああぁぁぁぁぁッ!!!!」


遠心力で力を増した敵の止めの一撃を受けきれず…。

自らが開けた壁の向こうへと弾き飛ばされ、そのまま姿が見えなくなった。
906 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:54:36.69 ID:NxI63QRO0

黒い魔女「…………」


さやか「くッ…! アイツを逃がしたら仁美が…」


杏子「後回しにした方が都合がよさそうだぜ。さやか」

さやか「なんでよ…!?」


杏子「周りを見てみろ。魔女が現れたのに結界が書き変わらない」

ゆま「それって………」


杏子「あぁ…。この結界を作ってたのは、あの呉キリカだったって訳だ」



さやか「…………そうまでして、愛する人を守りたかった。

    うぅん、今も護ってるんだね…」


ゆま「サヤカ…?」


さやか「アイツ、言ったんだ。『愛』ってのは例え見返りが無くても、相手をただ愛し、尽くすことだって…」

さやか「だから、魔女になってでもあたし達を足止め出来てるアイツは…。

    今も自分の『愛』を貫き通してる…」


杏子「そんなアイツは可哀想だから、殺せないとでも言う気か…?」

さやか「そんな事しないし、できないよ」



さやか「愛とは違うかもしれないけど………」


さやか「あたしにはあたしで護りたいモノがあるから!」
907 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:56:23.10 ID:NxI63QRO0

あたし達三人は一気に決着をつけ、結界を破るべく…。

黒の魔法少女から生まれた魔女へと向かっていく…。



黒い魔女「…………!」


杏子「てめぇが速い? アタシらが遅い…? どっちにしても…」

ゆま「避けられない攻撃を繰り出せば…!」


あたしと杏子はひと足早く跳躍し…。

その後ろに隠れていたゆまちゃんが大きく振り被って地面を叩き、衝撃で地面を揺らす…。


それに足を取られる事を避けた魔女は、その縦長の背丈を感じさせない身軽な跳躍を披露する。

だけど…。



杏子「飛んだな? 狙い通りだ…!」

杏子「おっらぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」


杏子の槍が多節槍へと変わり、逃げ場のない空中へ飛んだ魔女へと追撃する…。

そして…。



さやか「時間が無いんだ! 一気に決めるよ!」


空中に魔法陣を作る事で、それを足場にできるあたしが空中でそれを蹴って…。

撓りながら疾る多節槍を追うように、空中を駆け抜ける。
908 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:57:57.63 ID:NxI63QRO0

防御が難しい杏子の多節槍を空中で受ける敵に合わせて、あたしが切り込む…。

その筈だった。


しかし…。



黒い魔女「…!!!!」


杏子「なッ!?」



ゆま「嘘…!」


敵の右手の鎌とぶつかった杏子の多節槍の鎖は、いとも簡単に切り裂かれ…。

槍先を伴った柄は回転しながら派手に地面に落下、そうでない方の柄も斬られた箇所から項垂れるように落ちて行く…。



よくよく考えれば…。

今日の杏子はこの戦闘の前に慣れない広域魔法を使っている。


そもそも…、幻惑魔法自体が元々は杏子が一度は否定したモノ。

使うだけでも負担が掛かるモノを、さらに拡張、応用までしているんだ。


その負担で疲弊して、獲物の生成すら満足にできない程だったとしても不思議じゃない。


問題は…。
909 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/11(水) 23:59:04.88 ID:NxI63QRO0

敵を防御させつつ、その隙に横から潰す連携は失敗。

相手の獲物が生きている以上、速度で負けてるのに突っ込んでも返り討ちにあうだけ。


…………………………本当に?



杏子「馬鹿! やめろ!!!!」

ゆま「無茶だよ! サヤカ!!!!」


連携が失敗したのに、敵に斬り込むあたしを制止しようと叫ぶ二人…。


けど、杏子が弱ってるなら、どっちにしろ気張らなきゃいけないのはあたしだ。

そして、敵の速度低下は敵の周辺に居る限り永続的に発揮されるだろう。

なら…。



さやか(単純な速度ではアイツには敵わない…)

さやか(けど、何も徒競争やってんじゃないんだ…)



さやか「それならッ…!」


あたしの体は敵の間合いへと入り…。

杏子の槍を切り裂いたのとは逆の、左手の鎌が動く…。


動き始めると同時に、信じられない程の速度で繰り出された敵の左手の鎌は…。






















突如姿を消したあたしを捉えられずに、虚しく空を切った。
910 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/12(木) 00:00:14.04 ID:n4duvZC50

黒い魔女「…!?」


敵の左脇付近に入りこんだあたしは、そのまま上から二段目の体の脇腹を切りつける。

当然、それに反応した敵は、あたしを斬りつけようと動くも…。


またも姿を消したあたしに背中から斬りつけられる。

そして…。

人形か何かの無機物を斬りつけたような感覚が手から消えない内に、あたしはまた姿を消す…。



姿を捉えても動こうとした時には見失い…。

斬りつけられた痛みで、ようやく気付き、今度はそれに任せて攻撃するも…。

当たる瞬間に消えて、当てられず、また斬りつけられた瞬間に気付く…。




それを繰り返され、魔女の体は次々に傷を負い…。

やがて見る影もないくらいボロボロになっていき…………。


とうとう両足を失い、その体が宙へ浮いた所に首を跳ね飛ばされ…。

力を失った魔女は尻餅を突き、あたしは背中合わせになるような形で地面に着地した。
911 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/12(木) 00:02:38.63 ID:n4duvZC50

さやか「スクワルタトーレ」


さやか「アンタに見つかった、攻撃が当たる…、その一瞬だけ速度向上を掛けて捕捉させず…。

    直撃を避けつつ攻撃を当て、また一瞬だけ速度を上げて、アンタの死角に入る…。

    それを繰り返すだけのつまらない技だけど…」


さやか「アンタに速さで勝ち続ける事の出来ないあたしが、アンタを超える為に使った苦肉の策」



さやか「そして、護りたいモノを護る為のあたしなりの悪足掻きだよ…!」


ズタボロになった後ろの魔女はあたしの言葉に応えたかのように…。

その身を崩してグリーフシードへと姿を変わる…。


あたしはそれを拾って、少しだけ見つめた後…。

強く握りしめながら、静かに呟いた。



「さよなら」

「それと、あたしの生き方を認めてくれてありがとう」って。
912 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/12(木) 00:04:35.77 ID:n4duvZC50

杏子「速度低下が効いてる中、あれだけの動きが出来てんのが『つまらない技』ねぇ…」

杏子(こりゃ、速さだけなら完全に抜かれたな…)


さやか「何?」

杏子「いいや、何でも」


さやか「…………紫の魔法少女は?」

ゆま「今見てみたけど、いない。血が垂れてるし、こっちから逃げたんだと思う」

さやか「と、なると急いだ方がいいね。マミさんやまどかにも手を付けるかもしれない。

    ごめん、仁美。もうちょっと待ってて…!」





??「…………」

??「よし、行ったよ…」


???「どうにか見つからずに済んだね。

    一番実力の高そうな子が疲弊してるのは助かったよ…」


??「酷い傷だ…。早く薬を…」

???「待て待て。魔力ない子にそんなモン飲ませるな…!」


??「いやいや、冗談だぞ?」

???「あのな…。まぁ手足は私の方で治すから良いとしても…。コレ治すにはあの子を…」

??「その必要はないみたいだね…。勘の良い子だ」



???「はぁ…はぁ…はぁ…! 二人とも、キリカは…!?」


??「たった今倒れた」

???「それに、言ったでしょ? 彼女達の問題にこっちは首を突っ込まない。あっちも同様。だから………」


???「だけど………、織莉子もキリカも……。二人は、わたし達の友達だったんだよ!?」
913 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/12(木) 00:06:53.92 ID:n4duvZC50

??「君は優しいね…。でも……」

??「友達だからって何でも背負ってあげられる訳じゃないし、必ずしも同じ道を歩む訳でも無い」


???「彼女達は、私たちの忠告を押し切って自分達の道を歩んでいた。

    そして、どんなに苦しくても私たちの手を借りようとする事はなかった」

???「何故だかわかる?」


???「……………」


???「彼女達の選んだ生き方は過酷だから、例え友達でも歩ませたくはなかったんだ。

    それが………、彼女たちなりの覚悟だったんだよ」



???「別々の道を歩んでいても、共にある事…。それが、友達なんだね…」


???「そうだよ。だから、私たちは彼女達の戦いに直接手を出す事は許されない。

    他ならぬ彼女達の頼みだからね」


??「でも、せめて…。彼女達の汚名は少しでも減らしてあげたい。

   だから、こうしてこっそり救助活動に来てるんだ」


???「それが、わたし達に許された、ギリギリの………、二人にしてあげられる事なんだね…」

???「でも………わたし………」


???「悲しいよ……、悔しいよ………、こんなの………」


??「…………」

???「…………」
914 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/12(木) 00:07:59.95 ID:n4duvZC50

――見滝原中学結界内2F――



マミ「かはぁっ……」


ほむら「巴さん!!!!!」


激しい抵抗も虚しく、マミさんはひたすら敵の攻撃を受け続ける…。


倒されても倒されても、立ちあがって銃を放つマミさんだったけど…。

さっきの攻撃でとうとう力尽きてしまったのか…。

壁にもたれかかったまま動かなくなった。



ほむら「鹿目さん! お願い、私の事は良いから…! 巴さんを…」

まどか「…………」

ほむら「鹿目さんッ!!!!!!」




織莉子「ここまでね」


マミ「えぇ……………」







マミ「私の………………………勝ちよ」
915 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/12(木) 00:08:55.89 ID:n4duvZC50

織莉子「減らず口もそこまで叩けると…」


織莉子「…!?」


去っていく不気味な気配。

消えていく見慣れない風景。


異様な存在は消えて行き…。

わたしを包んでいた魔女の結界は、元々ここにあった見滝原中学の2Fの廊下へと戻り始めていた。




織莉子「キリカ……!」


マミ「呉さん………、やはり………ね」


織莉子「…………」


マミ「あの…ダメ―…ジで戦える…筈ないと…思ってた…。

   けど…、彼女の……性格からして……魔女になっ…てでも…、戦おうと、する…でしょ…」


マミ「ならば…、その前、に…、戦場になる…、所を……、予知で知って…、予め…速度、低下を…張らせておけ、ば…。

   結界を作り…、戦えない…呉さん…足止めに……、速度低下も…維持、し…、あなた一人でも……、呉さんと…連携…できる…」

   
マミ「最高の…、舞台の出来……上がり」


マミ「違う………?」
916 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/12(木) 00:10:11.66 ID:n4duvZC50

織莉子「何時から気付いていたの…?」


マミ「最初…から…。

   あの…賢いあなたが………、力量を…弁えずに、一人で…、現れる、なんて愚行…、する…、筈が無い……」


マミ「そして…、だから…こそ、私は…、一人で…、あなたに挑ん…だ……。

   それも………、あ…なたの予知が……、なる…だけ…、私だけ……、に向くように…」



織莉子「まさか、自分との戦闘だけに予知を使わせる為に、あんなにしつこく苛烈な攻撃を…!」




マミ「あなたと…、違って………。

   弱い…、私に…できるのは……、信じる事……、くらい……」


マミ「だから…、私は……、仲間が………、速度低下を…、消して…くれるまでの……、時間稼ぎ」


マミ「私の…、本命、は…………」














まどか「はい…! マミさん!」
917 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/12(木) 00:11:46.71 ID:n4duvZC50

織莉子「鹿目…、まどか……!」




マミ≪ごめん…。後……頼む…わね≫

まどか「はい。任せてください…」



ほむら「鹿目さん………」

まどか「照れ臭いけど、もう一度だけ言うね」



まどか「ほむらちゃんは私が守る…!」


そう言いつつ、怯えきったほむらちゃんへ笑顔を向けてわたしは振り返り…。

再びその弓を構え…。


ほむらちゃんだけじゃない。

さやかちゃんも、マミさんも、杏子ちゃんも、ゆまちゃんも、みんな…。

わたしが、守る…。


身勝手なのかもしれない。

だけど、大切な人を切り捨てるなんて、やっぱり出来ないから…。

だから、わたしは…。



白い魔法少女へ向けて、その矢を放った。
918 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/12(木) 00:14:09.69 ID:n4duvZC50

織莉子「鹿目まどかッ!!!!」


まどか「美国織莉子…!」


放たれたわたしの矢は、美国さんの衣服の左肩の辺りを掠め…。

後ろにあった校舎の壁を貫いて、大穴を開ける。


その結果に舌打ちをしながら、美国さんは移動しながら魔力球を作り出し、半ば苦し紛れに放つ。

けれど、魔力球は先ほどとは比較にならない程速度が落ちており…。

さっきまでの攻撃で目が慣れたのもあって、わたしは魔力球の回避に成功する。



織莉子「すぐに貴女を倒しさえすれば、私の目的は成される…!」


まどか「そんな事…」


敵はそのわたしに魔力球を次々に放つも…。

元々威力の低い魔力球を即席で作って放っても、捨て身で突っ込んだわたしを止め切れず、踏み込まれ…。



織莉子「くッ…!」


まどか「させない!!!!!」


勢いに任せたわたしの杖の一撃をどうにか防御するも…。

そのままわたしに押し切られ、壁に空いた大穴から二人揃って落下した。
919 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/12(木) 00:16:09.48 ID:n4duvZC50

織莉子「よくもッ…!」


やはり、そうだ。

呉さんが倒れた事で、速度低下の効果が消えて…。

予知で先がわかっても、攻撃や回避にそれが追い付ききらないんだ…。


これなら…、勝機は十分にある。




織莉子「なんで……、あなた達は…! いつも…!」

織莉子「私達の邪魔をするんだッ!!!!!」



まどか「あなたが奪おうとしてるモノが、わたし達の守りたいモノだからだよ…!」


わたしは、少し大きな光の矢を…。

美国さんは、無数の魔力球を生成し、互いに放つ。


わたしの放った矢は途中で拡散するも、美国さんは体勢を崩しながらもギリギリでそれを回避し…。

美国さんの放った魔力球は、拡散された矢とは一つもぶつかる事なく、悉くわたしに撃ち込まれる。


けれど怯んでいる暇はない…。

魔力球を受けながらも、わたしは右手で矢を生成し…。

弓を離さぬよう、左手を強く握り、隙を見て矢を放つ…。
920 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/12(木) 00:17:29.70 ID:n4duvZC50

放たれた矢は途中で拡散し、広い範囲を攻撃する。

それがわかっている彼女は急ぎ回避行動に移り、どうにか回避するも…。


続けて放たれた早撃ちには反応しきれず…。

左肘を撃ち抜かれる。



織莉子「暁美ほむらが世界を滅ぼす存在と知りながらッ!!!」」



まどか「それでも、ほむらちゃんはわたしの大切な友達だから…」


まどか「何も知らない内に…、何もしない内に…、勝手にほむらちゃんの未来を諦めるなんて…」


まどか「そんな事、出来ない!」



織莉子「なら、彼女が世界を滅ぼすのを黙って眺めると言うの…!」


まどか「それも違う。それは全部諦めるのと同じだよ…」



まどか「わたしが欲しいのは、みんなで迎える明日だから…」


まどか「この世界も、ほむらちゃんも、さやかちゃんも、マミさんも、杏子ちゃんも、ゆまちゃんも…。

    パパもママもたっくんも先生もクラスのみんなも、誰が欠けても嫌だから…!」


まどか「その為なら、どんなに困難な道でも絶対に諦めないよ…!」
921 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/12(木) 00:18:19.70 ID:n4duvZC50

織莉子「真の絶望も知らない小娘が…!」


私も信じ、探していた。

巴マミや、この鹿目まどかのように…。

『それ』を知ってしまうまでは…。


私はお父様とは違う。

お父様の並べた綺麗事、掲げた理想を本当に叶えて見せると…。

私はその綺麗事を嘘にはしないと…、叶えられると…。

けれど…。



『痛い…、苦しい…、織莉子さん………、助けて』

『なんで邪魔するんだよ、織莉子! 私はこんな事望んでいないのに!』

『織莉子か…。もう今更遅ぇよ…。もう、何もかも……………』


私がどれほど未来を見直しても…。

実際に動いてみても、何も変わらず…、変えられず…。

結局は最後の手段を使い続ける…。


そんな事を繰り返す内に、私の手はお父様と同じ真っ黒に染まっていた。



それでも、まだ変えられると信じ…。

綺麗事を並べ、全てを救う等と言う、その綺麗な理想を追い、足掻き続けた。



だけど、もがき続ける私を嘲笑うかのように、アイツは現れた。
922 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/12(木) 00:19:10.80 ID:n4duvZC50

『た、助けて…!』

『イヤだ…、死にたくない、死にたくないッ!!!!!』

『この世の………、終わりだ』


誰も対抗できない…。

出来る筈など無い、悪夢のように強大な力を持った魔女に…。



『知らないし、知った事ではないわ』

『私の戦場はここじゃない』

『繰り返す。私は何度でも繰り返す』


その魔女やそうなる前の種の傍らに現れても、結局何も出来ず…。

最悪の存在を生みだしては逃げ、それを繰り返し続ける魔法少女の姿…。



『お手柄だよ、ほむら』

『君がまどかを最強の魔女に育ててくれたんだ』


そして、その魔法少女こそが最悪の存在を育て上げた元凶だと言う事実を…。
923 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/12(木) 00:19:58.71 ID:n4duvZC50

暁美ほむら。

全ての元凶…。


奴を倒すには力も、時間も足りなかった。

だから、私は奴を探し出し、『救う』のではなく、『討つ』為の術を模索し続け…。

時間を稼ぎ、奴を守る者を討てるだけの力を付けさせる為、キリカに魔法少女狩りをさせ続ける必要があった。


その必要な犠牲の山に私は、驚愕し…。

同時に、私の追い続けた綺麗な理想はこの瞬間に潰えた。



この時に悟った。

綺麗事では結局、何も変えられないのだと。

変わりはしないのだと。



そして、私は覚悟を決めた。

自分の手を汚しても、自分を慕ってくれる大切な者を利用しても、どれだけ残虐だと罵られようと…。

汚れ役としてでも、救世を成すと。


それが、未来を視る事が出来る私の『生きる意味』なのだと、そう信じた。



だからこそ…!
924 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/12(木) 00:21:09.27 ID:n4duvZC50

放たれ続ける矢と魔力球の応酬…。

けれど、互いの限界が近づいてきたわたし達は…。


互いに動きを止め、相手が動くギリギリまで、大技を繰り出す為の魔力を溜め続ける…。



織莉子「諦めなければ変えられる…?」


織莉子「魔法少女は………、いや、この世界の全ては希望の後に絶望に沈む。これは運命だ!

    絶対に変える事の出来ない…!」


織莉子「そうやって、弱い貴女達は彷徨い、やがて世界を滅ぼすモノを見届ける羽目になる。

    その放浪の果てには何も無い。破滅しかない。だからこそ…」


織莉子「先に絶望しかない昏い道を自らを燃やす事で、陽となり陰となる事を私は決めた!」




まどか「きっと、あなたの言う事は全部正しいんだろうな…」


まどか「だけどね……、みんながみんなあなたのように強くはなれない。

    大切な人を切り捨てて、世界の為だと歩んでいけるほど強くない。

    そして、わたしもそれをみんなに強要できるほど、立派にはなれない!」


まどか「だから、探し続けるよ。絶望するギリギリまで…」


まどか「大切な友達も、世界も……、大きな悲劇も、小さな悲劇も……」


まどか「みんな救える道を…!」
925 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/12(木) 00:21:49.62 ID:n4duvZC50

織莉子「暁美ほむらは最悪の魔女を作り出す。生かしてはおけない…!」


まどか「ほむらちゃんを魔法少女にはさせない。わたしが…!」


互いにありったけの魔力をつぎ込んで繰り出した最後の大技。

全ての決着を付けるべく一撃を、今互いに放った。






まどか「いっけぇぇぇぇぇぇぇッ!!!!!!」


わたしは、魔力を可能な限り魔力を集束させ、圧倒的なまでの魔力を伴った光の矢。

魔力を集め過ぎたのか、弓の方が弱っていたのか、放たれた際に反動で弓が砕け散る…。







織莉子「自らの過ちを認める事すらできない愚かな魔法少女よ…。

    せめて安らかに眠りなさい…!」


対する敵は、百には届かないだろうけど、数十の魔力球を押し固めて作った巨大な魔力球…。


二つの魔力の塊は互いの中央辺りで、正面からぶつかる。

そのまま暫く拮抗するも、状況に変化が訪れるまでそう時間はかからなかった。
926 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/12(木) 00:27:14.62 ID:n4duvZC50

織莉子「…!」


魔力球の塊の中央を貫く光の矢。

光の矢より、一回りは大きかった魔力球はその大半を失うも、周囲に残った僅かなその名残を散らす…。



わたしが放ったのは最大限まで魔力を集束した貫通弾。

貫く事に特化した矢を限界まで強化したモノであるのに対し…。


相手の放った魔力球は、複数の球体を一ヶ所に強引に纏めた継ぎ接ぎだらけのモノ。

魔力を用いて多少の補強はしているんだろうけど、普通それを重視するくらいなら数を増やして威力を上げるだろう。

攻撃力の低さが欠点の白の魔法少女の大技は所詮即席に過ぎず、相手の大技にぶつけられる程の耐久は持ち合わせることができなかった。


つまり最終的には、その攻撃の性質の差が明暗を分けた。





だけど、突き進む光の矢の向こうで………。

彼女の口元は僅かに笑った。
927 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/12(木) 00:27:58.31 ID:n4duvZC50

織莉子「…………」


集束された貫通弾の直撃を受け、左足を中心に下半身を失い、倒れる。


だけど、『それで良い』。

その果てに『暁美ほむらを撃ち抜く結末』が映ったのだから…。



負けるとわかっている大技の撃ち合いに応じた私の狙いは、三つ。


以後の追撃が出来ないように、彼女の獲物を破壊させる事。

次に、敵を倒したと言う事実から発生する、一瞬の隙を作り出す事。

そして………。



まどか「……!?」


まどか「魔力球が…!」


私の放った大技そのものがフェイクであり…。

撃ち貫かれた後に残った数発の思念操作弾こそ、本命であると悟られない事。



その全てを満たした私は…。

予知された結末を成し遂げる為に…。


暁美ほむらのいる校舎の2Fの壁の穴へと、残った十発弱の魔力球を疾らせていく。
928 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/12(木) 00:28:44.06 ID:n4duvZC50

織莉子「これで…………、世界は救われる」


まどか「こんなの………ダメ! ダメぇッ!!!!」



鹿目まどかの両横を通り抜ける魔力球。

唯一の障害を避けた今、彼女の開けた校舎の壁の大穴に向けて、一直線に魔力球を疾らせる。


急ぎ振り向いた彼女もそれを追おうとするも…。

速度低下が無くとも、ただの魔法少女が後ろから追い付ける程鈍いモノでもない。

その距離は確実に離され、高度も既に彼女の手に届くものでは無くなった。


巴マミは未だダメージで体が動かず、それが見えても何も出来ない…。

美樹さやかと佐倉杏子は、魔力の応酬の際の光や騒音を元に、今こちらに向かっており、辿り着くのはもう二十秒ほど先。

千歳ゆまは、唯一2Fに向かうけれど、まず巴マミに目が行き、そもそも辿り着いた位置が遠すぎて届かない。

暁美ほむらには周囲には障壁が張ってあるも、あの数を一点にぶつければギリギリでそれは崩壊する。


全ては………私が視た未来の通り。



これで………。



織莉子「私の勝ちだッ!」



まどか「こんなの……………駄目ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!!!!!!!」
929 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/12(木) 00:29:37.77 ID:n4duvZC50

織莉子「な…」

織莉子「こんな………、こんな……」


織莉子「こんな馬鹿な事が……!」


追い付けない足、届かない手、鹿目まどかの叫び、嘆き…。

ここまでは全て私が視た未来の通りだった。

だけど………。




まどか「間に合って…………!」


今、鹿目まどかはその背中に輝く翼を生やし…、空に向かって…。

舞いあがった。




まどか「お願い…、届いて…!」


まるで天使のように美しい翼を生やし、空を駆ける彼女。

魔法少女自体が常識から外れた存在だ。

外見がいかに威圧的だったり神々しくあても、いっそ神や悪魔のように映ろうとも、それはどうでもいい。


そんな事よりも…。

彼女は、今目の前で…。




私の視た未来を覆したのだ。
930 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/12(木) 00:30:56.52 ID:n4duvZC50

力強く羽ばたき、魔力球へと追い付いた彼女は…。

その翼を叩きつけるように横回転し、全ての魔力球を悉く打ち落とした。


暁美ほむらを討つ筈の未来。

それが今…。

何の大きな変化もなく突如書き変わったのだ。



織莉子「何故……、何故!」


織莉子「何故、未来が……、書き変わった!? こんな馬鹿な事が…」



??「知りたいかい?」


静かに響くどこか愛嬌のある『悪魔』の声。

希望をちらつかせ、絶望を突きつける、姿も言葉も嘘の塊がそこに立っていた。



QB「物凄く単純な事だよ」


QB「単にまどかの力が、君より上だった。

   ただ、それだけの事さ」
931 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/12(木) 00:33:18.37 ID:n4duvZC50

織莉子「そんな………、そんなふざけた理由で…!」


QB「そうだね。それで納得しろと言うのは無理があるね。

   じゃあ、もう少し詳しく教えようか」


QB「言ってしまえば、魔力の資質の差、とでも言うべきかな」


QB「例えば………、『大金持ちになりたい』、と言う願いがあったとするだろう?

   それを才能ある君と、そこらの少女が叶えた場合どうなるかわかるかい?」


織莉子「……………」


QB「君は一生遊んで暮らせるだけの富を得て、才能なき少女はまぁ…、遊んで暮らせば数年分程度の富となるかな」


QB「とまぁ、君がうん兆のお金を望んでも、それが叶えられるだけの才があるから僕は見えるけど、

   その逆は無い。願いに見合わない才しか持たない少女に僕は見えないんだ」




QB「話が逸れたから、簡潔に纏めようか。

   君の能力は未来を視る力、『定められた運命を見る事が出来る力』なのに対し…」


QB「まどかの固有能力は、死と言う結果さえ覆す『奇跡』。すなわち『定められた運命さえ変える力』なのさ」



QB「最も本人に自覚が無く、強力すぎてアンコントローラブルな能力だから、知った所で自在に扱えるとは思えないけどね」

QB「そのまどかよりも上はいるけれど………、それは君にはどうでもいいかな」
932 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/12(木) 00:34:44.78 ID:n4duvZC50

織莉子「変える力……。変えられた……、運命を……」


QB「相当ショックみたいだね。だけど、それは当然の摂理だよ。

   君達の大好きな、誰が正しいだの、間違ってるだの、そんなモノよりもずっと当然の摂理」


QB「強いモノが弱いモノを淘汰する。この星はおろか、僕達の間でさえ変わらない当然すぎる摂理。

   この国では………弱肉強食と言ったかな?」



織莉子「運命を変えられるのなら………、私のやって来た事は……」


QB「もちろん、無意味な事だよ。君の…」




まどか「そんな事ないよ」


まどか「誰かの為に誰かを殺す………。そのやり方が正しいとは言ってあげられないけど……。

    この世界を救いたい。みんなを守りたいって戦ったあなたが間違ってるなんて………」


まどか「それは違うって………、言い切れる」
933 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/12(木) 00:35:44.94 ID:n4duvZC50

織莉子「鹿目まどか…………、それに………」


わたしの前に立つ鹿目まどか。

少し後ろには多少傷を癒していはいるも、満身創痍の巴マミ…。

その右後ろに美樹さやか、左後ろに佐倉杏子…、さらに後ろに千歳ゆま…。

そして、彼女達が取り囲まれ、守られるように暁美ほむらがいる。


四方を障壁より遥かに厄介な魔法少女に囲まれている上に…。

私の魔力は完全に尽きている上、何かしようと下手に動けば鹿目まどかがわたしに止めを刺す…。



織莉子「完敗………ね……」

マミ「いいえ、私達はまだあなたに勝っていないわ」


マミ「暁美さんを生かし、その上で世界も滅ぼさせない。

   あなたの予知が間違いであることを証明する」


マミ「そこまでやって、初めて………、あなたへ勝利したんだと言えるわ」



まどか「見ていてください」

まどか「わたし達が、みんな救える道を探します。

    世界も魔法少女の事も向き合って行きます」


まどか「そして、もしそれが見つかった時は……………」
934 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/12(木) 00:36:22.38 ID:n4duvZC50

そう言って手を伸ばす鹿目まどか。


私の進んだ道が間違いではないとした上で…。

自分達がより良い道を探す…。


そして、それが叶った時は…。


『この手を取ってもらえますか?』

そう言う意味だろう…。




織莉子「一つだけ質問があるわ………」


まどか「なんですか…?」



織莉子「もし……、あなた達が進み続けた先に絶望しか無かったら……。

    特に、暁美ほむらが世界を滅ぼす存在である事が確定した場合は……、どうする………?」



まどか「……………」


まどか「その時は…………」



まどか「その時は、わたしが命に代えても責任を取るよ」
935 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/12(木) 00:38:44.40 ID:n4duvZC50

強い意志を秘めた瞳。

小さいけれど、私が視た絶望の未来を覆す可能性を持つその存在…。


あまりにも頼りなく不確実だけど…。

それでも…、賭けてみよう。


私の代わりに……。

私より正しい道を…、より多くを救えるのか…。

私がかつて見て、理想や幻想だと諦めた道を成せるのか…。


もう、私にはできないから…。



織莉子「暁美ほむら…」

ほむら「はい…」



織莉子「貴女はどうしようもなく、弱く、脆い」

織莉子「その貴女の歩みは世界を滅ぼす…………」



ほむら「……………」


織莉子「だから、貴女は前を向くな………」


もう少し…。

もう少しだけ時間が欲しかった。


だけど、全ては予知の通り。



私のソウルジェムは、体ごと銃弾に貫かれ………。

その言葉は、そこで潰えた。
936 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/12(木) 00:40:15.65 ID:n4duvZC50

まどか「え……………?」

ほむら「あぁ………………」



ユウリ「あはははははははは!!!!! あはははははははっ!!!!!!」


ユウリ「やった…! やったよ…、ユウリ………。私…、やったよ…?」

ユウリ「仇………取ったよ……、ユウリの………」


憎しみに捕われた少女は仇敵を倒し、その場で泣き崩れる…。

彼女が善意でばら撒いた悪意が、復讐と言う魔弾となり、彼女を撃ち抜いた。



さやか「お前はッ…………!」

マミ「美国…………さん………」


杏子「…………」

ゆま「…………」



まどか「あんまりだよ………」


まどか「こんなのって……、ないよ……」


最後に彼女が抱いたのは希望か、絶望か、それはわからない。

けれど、その亡骸は、安らかに眠るように横たわっていた。
937 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/12(木) 00:41:57.03 ID:n4duvZC50

────────

────

──


???「ン? どうしたの? キミ?』


織莉子『…………私は何も成せなかった』

織莉子『より多くを救う為と称して……、たくさんの人を殺したのに………。

    結局は何も…………』


???『よくわかんないけど…………』

???『思う通りの事が成せなかったからって、何も成せなかった事にはならないんじゃないかな?』


織莉子『…………』


???『そりゃ殺された人からすれば、たまんないよ? 

    でも、それはキミが何やったって殺された人からは変わらないよ。人殺しめ〜ってそれでおしまい』


???『けど、それで救った人が一人でもいるんなら、その救われた人にとっては意味がある。

    少なくとも「何も」成してない事にはならんじゃないかな?』


???『なんて………、私みたいなのが偉そうに言う事じゃなかったね。ごめん』



織莉子『いいえ…………』

織莉子『そうね……。そうかもしれない……』
938 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/12(木) 00:43:27.82 ID:n4duvZC50

???『じゃあさ……』

織莉子『でも………いけないの』



織莉子『私は多くの人を犠牲にしたから…。

    こんな所に居てはいけないの……。償わなきゃいけないの……』


織莉子『なのに………立てないの………』

織莉子『覚悟………した筈なのに………。許されるとも思っていないのに………。

    でも、重いの………』


織莉子『こんなになって………、やっと……、私が奪って来たモノの重さが……、わかったの……』




???『それなら…、それは私が半分持ってあげよう』

織莉子『え…………?』


???『そしたら、キミも立つ事が出来るでしょ?』




???『だから…………、一緒に行こう』

    
???『私は…………、どこでも、どこまでもキミに付いていってあげるから』




織莉子『うん…………、ありがとう』




織莉子『キリカ』



―to be continued―
939 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/12(木) 00:44:19.05 ID:n4duvZC50

―next episode―



「ふんだ! キョーコなんかに頼らなくたって、ゆまは魔法少女できるもん!」






―【第二十話】魔法少女ゆま☆マギカ―



940 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/01/12(木) 01:44:17.92 ID:BSJ6J0Gno
おりこぉ・・・いいキャラだった・・・
乙です( ;´Д`)
941 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/12(木) 08:29:17.00 ID:q0RF/KGDO
魔女「………カ………ン………」

アカンかと思った
おつ
942 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/12(木) 20:31:10.68 ID:MErlRJIyo


おりこさん散ったかー
確かこのSSでは予知能力で魔法少女を統治したいとか
成功させようのないこと言ってたと思うんだけど
いつの間にかほむほむの抹殺がその一環でなく主目的になってた?
ちょっと読み返してこよう

ほむほむが標的の理由は予想の範疇でした
次はゆま編か
楽しみです
943 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/14(土) 11:00:54.97 ID:NrIFcCu/0
織莉子戦の最後でまどかの覚醒パワーでなんとかしてしまったのは、御都合主義に感じられて少し残念思った。
まどかの願いの「死者蘇生」⇒「運命を変える力」と説明されているんだけど、もう少し伏線が欲しかった。
ユウリに邪魔されて失敗の方が良かったかも(織莉子はユウリの存在を認知していないからイレギュラーに邪魔されれば未来が不確定になると思う)。

ほむらが狙われた事について疑問に思うだけど、彼女が契約する時の願い事が原因なんだし、願い事の内容を変えてしまえばいいだけ事じゃあ?
または契約する瞬間を狙って暗[ピーーー]るとか。

魔法少女狩りでユウリ(本物)が狙われたのは何故?
彼女は生前、犯罪を犯していたわけでもないし魔女になれば人間を[ピーーー]のは魔法少女全般の業だし。
魔女になってから人間を襲う前に殺せば何も問題無かったような(グリーフシードも獲得できて一石二鳥)。
944 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/01/15(日) 02:16:14.55 ID:i91edoRMo
>>578
遅レスだが...
全体主義を押し進めていくとナチスやらマルクスやらになるしな。
主人公ではなく、打倒すべき敵にこそふさわしい属性だと思う。

まあ、過去に多くのアニメで敵として葬られ続けてるけどな、全体主義者は。

>>618
自分が生まれてきた意味を〜 という願いを曲解すれば617の解釈になるんだろうとは思う。
んだが、「誰かに」というか、他者からではなく、自分がみんなの役に立ったんだと自分で認めれたら充分な気がするが。

>>649
そうだよなあ。
現代の戦争とか紛争とかは、双方が正義を主張する形で衝突するんだし。

>>654
自分が魔女になって他者を傷つける事への恐怖、という一点を除けば、
戦闘で魔女に倒されるのと、戦いで魔翌力を使い切って魔女になるのは大差がない。
いずれの場合も、魔法少女と魔女が戦って、あとに魔女が残るだけだ。
まあ、戦闘以外の場面で絶望した場合には、魔女が新規出現するわけだが。

自分が魔女となって呪いを撒き散らすのが嫌、という感情面を除けば、気にする必要はない。
まあ、大破壊、破局をもたらす特殊例は別として。
945 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/01/15(日) 03:19:17.16 ID:i91edoRMo
>>725
単に正義正義というだけなら、テロリストだって自分の信じる正義のために戦ってんだよ。
自分の信じる正義はテロリストとは違うんだと、声を大にして言えるようにならないとダメだ。
それを、何度でも言い張れるようにならないと。

>>862,864
予知ではないけど、読心術を使うサトリを退治するお話しが、
故人の著「風の聖痕」の短編集にあったっけ。
A案:回避することで逃げ道が減っていくように攻撃して、最後には回避不能になるまで追い込む。
B案:周囲何キロの範囲を火の海にして、回避しても意味がないほどに焼き尽くす。
って

>>943
予知の力を活用できるようになった当初の行動じゃない?
それか、魔女になった直後に人を[ピーーー]と予知された場合だけ、魔女化前に殺してたのか。

それはともかく。
いま追いついた。1さん、乙です。
946 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2012/01/15(日) 16:48:13.00 ID:GzCUsCFAO
この織莉子には毒と執念深さが足りないと思う
最期まで納得せずに、まどか勢を挑発して、敵意のまま逝って欲しかった
あくまでも主人公とは相容れない正義の、自己の信念を貫き通そうとする「敵」として扱うなら尚更

あと>>1
ゆまちゃんの暴走か…
この子も色々抱えてるよねぇwwww

>>944-945
まぁ、織莉子は全体主義な考え方をするから、どっちかって言うと敵のポジションだよね
だからこそ「ラスボスみたいな主人公」な訳で
ただ社会秩序のためには、ある程度個を切り捨てる必要があるから、彼女の考え方も間違ってはいない
もちろん全肯定は出来ないし、行き過ぎれば危険な事も明らかだけれど
まぁそのせいで敵にしやすいからこそ、色んなSSでポコポコ殺されてるんだろうけどなwwww
まぁ今回は作者が言うように、異なった正義のぶつかり合いを描いているから、片一方を誤謬認定はできないでしょ
世界への脅威度だったら、ほむらとそれを守るまどか勢の方がはるかに危険
おりこ本編でもそうだけど、いつか必ず爆発する不発弾を抱え込んでいるようなものだし
947 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/17(火) 21:56:09.77 ID:kACL+McA0
>>945
725がテロリストといったのは国内法と照らし合わせると合致するように見えるからそう言ったんじゃね?
どんな内容は貼ると長くなるから検索してね
948 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 00:25:57.95 ID:+oJd6Wjk0

はい。投下します

毎度毎度遅くなって申し訳ありません
色々今後の展開で迷っていまして…
スレも丁度切れるし、このまま落とそうかとも考えました

正直な話、着地地点を見失いつつありますが、どうにか完結させたいと思っています
これまで以上に迷走し続ける駄文ですが、できましたら大きな心で見守っていただけると幸いです



みなさん、いつもレス感謝です
それを励みにさせていただいております

>>942
統治自体は当初からの変わらない目的です
ただ、ほむらを倒さなきゃこの先が無いならと、統治よりも優先順位を上げました

さらに先日の戦闘で自分達の末路が視えたのでしょう
最後はそれだけでも成しとげんと躍起になっていました


>>943
すいません
ちょいちょい伏線捲ければよかったんですが…
QB辺りに臭い台詞言わせる案もあったんですが、入れる場所考慮してる間に流れ流れてしまいました…


ほむらの件に関しては、基本臆病であり、かつまどか達にも制止されてる彼女がそうそう契約する事はなく、
契約する際には必ず、『仲間の為』の『やり直し』になったのでしょう

ユウリの件に関しては、>>945の後者ないし、QBを見滝原から遠ざける為のおりこ本編と同様の内容と取っていただければ


とまぁここで捕捉してしまってますが、描写としては何れも弱かったですね…
色々と申し訳ないです


>>946
おりこの最後に関しては、猛省してます
一応、まどかの運命変化で精神へし折られるまでは、足掻かせたつもりでしたが
やっぱりオチがいかんかったですね…
949 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 00:27:21.14 ID:+oJd6Wjk0

住宅街から少し離れた静かな山奥…。

二つの墓石が寄り添うように立っていた。


『美国織莉子』と『呉キリカ』。

世界の為にと戦い、その果てに散った二人の魔法少女の墓。


アタシとマミは、その二人の墓の前で黄昏ていた…。




マミ「彼女は本気で、魔法少女やこの世界の事を考えていた…。

   なのに私は、その彼女と敵対し、突き離す事しかできなかった…」


杏子「仕方ないさ。アイツらが守ろうとする世界に、アタシらの大事なモンは入って無かった」

杏子「互いに譲れないモノがある以上、戦るしかなかったんだ。

   例え、アイツらの方が正しかったとしても、な………」



マミ「わかってる。だけど……」

マミ「その正しい彼女を倒した私達は……。

   彼女とは違うやり方で、多くを救える道を探さなきゃいけない」


マミ「それが彼女達を倒した私達の、しなければならない事だと思うから…」
950 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 00:28:35.31 ID:+oJd6Wjk0

杏子「未来が視えるアイツにだって、見つけられなかったんだ。

   そんなモン、ないかもしれねぇぞ…?」



マミ「そうかもしれない」

マミ「でも、やらなくちゃ…。

   今の私は彼女のように強くもなく、無力だから、時間はかかるかもしれないけど…」


マミ「それでも、知った以上は見て見ぬ振りは出来ない……」





杏子「マミ……」



マミ「だから、私は彼女と戦い続ける」


マミ「彼女とは違うやり方で、多くを救える道を探し続ける…。

   世界を滅ぼすって言う暁美さんの予言も実現させない…」



マミ「道を違えた私が言うのは、身勝手かもしれないけど…。

   彼女の目指したモノや、その意思だけでも引き継ぎたいから……」
951 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 00:30:22.59 ID:+oJd6Wjk0

杏子「…………ふん」


杏子「どいつもこいつも、世の為、人の為って物好きな事だよ」




杏子「だけどさ…、頑張るのはいいが、生き急ぐなよ」


杏子「世界ってのはお前や織莉子が思うよりももっと単純にできてんだ。

   例え、お前らが気張らなくても回るモンは回るし、潰れるモンは潰れる。そんな風にね」


杏子「より良くしようと思うのは結構だが……。

   その為に、お前が親父や織莉子のように、その歪みや矛盾に飲まれちゃしょうがないからさ……」



マミ「心配してくれるの?」


杏子「………まぁな」




マミ「ありがとう…。でも、大丈夫」


マミ「私が一番に守りたいモノは…、ここにある。

   それを捨て、自分を捨てる事が出来るほど、私は強くはないから…」



杏子「そうかい。なら、一先ずは安心だ」
952 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 00:30:50.63 ID:+oJd6Wjk0






―【第二十話】魔法少女ゆま☆マギカ―









953 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 00:32:13.00 ID:+oJd6Wjk0

「ここ見滝原中学校で生徒、教師が多数失踪した事件ですが…」


織莉子の学校襲撃から三日。

戦いの傷跡はそう簡単に消える筈もなく…。

世間では謎の失踪事件? それとも襲撃事件?と好き勝手騒いでいたようだった…。



謎、と言えばアタシ達にもよくわからない事が二つ。

一つ目は、巻き込まれた奴らの当時の記憶が綺麗に抜け落ちていた事。

もう一つは、魔女になったさやかの友人を始め、覚えのない救助活動の跡が見られた事。


どちらもこちらに取っちゃありがたい事だから、会って礼でもしたいくらいだが…。

それは同時に、アタシらの知らない何かが動いていたって事にもなる。

どうにも胡散臭い話でもあった。


だからと言って、何をどう出来る訳でも無いんだが…。
954 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 00:35:26.33 ID:+oJd6Wjk0


「現在確認された所…、死者は24人、行方不明者は89人。警察では身元とその行方を…」


アタシらの善戦も虚しく、当然のように多くの犠牲者が出た。

それでも、あの学校に出入りしてる人間が500人程度と仮定すると、数だけ見れば上々の戦果だ。


だが、アタシ以外の連中はそんな単純には出来ていないらしい。




マミ『状況が状況だけに犠牲が出る事はわかったはいたけど…、実際に見ると遣る瀬無いものね…』


杏子『あんだけ派手に巻き込まれた状況で犠牲出すなってのが無理だ。よくやった方だと思うけどな』


マミ『わかってる…。だけど、それは犠牲を悲しまない事の理由にはならないでしょ…?』



こうは言っているが、さすがにマミは冷静だった。


長い事魔法少女やってる以上、手が届かないモノだってあると知っている。

だからと言って犠牲を割り切る事も出来ないからと、わかった上で悲しんでいた。


優しさと甘さは紙一重。

ずるずる引きずるなと言いたいが、そう出来るならそもそも織莉子と対立していないだろう。

それを必要だったと割り切れるのが織莉子だったのだから、割り切りきれずに心痛めるのはマミがマミである為に必要なものなのかもしれない。


どちらにしても…。

悲しみこそすれど、事実を受け入れる事が出来ているマミはまだ良い。



問題は…。
955 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 00:37:03.60 ID:+oJd6Wjk0

まどか『…………』


優し過ぎるまどかは、その事実を受け止めきれずに沈黙し…。



さやか『悔しい…。悔しいよ…! これが現実だって…、わかってるけど…!』


潔癖過ぎるさやかは、壁を殴りつけ、無力さを嘆き…。



ゆま『ごめんね…、ゆま、助けてあげられなかった…』


まだ幼いゆまは、守れなかった者を思い出し、涙を流した。



三人とも頭じゃわかってるんだろう。

たった五人で、400だの500だのの人数を守り切るなんて出来はしないって。

どんなに頑張ったって守れないモノだってあると。


だけど、それをコイツらは初めて知った。

失う事を知らない年頃の小娘に、こう言う事を簡単に割り切れってのはなかなか酷だろう…。




それでも、これはコイツらが乗り越えなきゃいけない壁だ。

魔法少女として、誰かを守る為に生きようとするコイツらが何時かは知らなきゃいけない現実だった。

それが今、やって来ただけの事…。
956 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 00:38:14.97 ID:+oJd6Wjk0

だからこそ、アタシはコイツらを諭した。

魔法少女にとって精神状態がいかに大事かってのは知ったばかりだし、それに…。

やっぱり、コイツらにはこんな所で立ち止まって欲しくないから…。



杏子『魔法少女っつったって、人より出来る事がちょっぴり増えただけに過ぎないのさ』


杏子『何もかも全部守れる神様やヒーローなんてのは、この世界にはいない。

   だから、自分が出来る事をやるしかないんだ』


杏子『そんな中でお前らはベストを尽くしたんだろ? 守りたいモノだって守り通せたんだろ?』


まどか『うん…』

さやか『そう…だけどさ…』

ゆま『でも………』


杏子『じゃあ、それ以上を望むのは傲慢だよ』


まどか&さやか&ゆま『……………』



杏子『その悔しさは忘れなくていい。でも、それに捕われるな』

杏子『守れなかったモノばかり見るな。嘆いたって、そいつらは帰って来ない。

   それよりも次はいかに犠牲を減らせるか、それを考えろ』


杏子『失ったモノと違って…。

   守ったモノは、これからまた守り続けなくちゃいけないんだから』
957 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 00:39:09.29 ID:+oJd6Wjk0

らしくもないクサイ説法をしてみたものの…。

アイツらは、そのまま黙ったまま。

アタシの言葉が届いたかはわからずじまい。


ただ、一人を除いて…。




ゆま「キョーコッ!!!!! またボーっとしてる!」


杏子「あぁ…」


何をどうしたのか、ゆまだけがやる気を出して、アタシの前に現れ…。

こうして、アタシに教えを請うている…。



いや、やる気を出しているのともまた違うか。

コイツは多分焦ってるんだ。


思えば自分が契約した時と今回、コイツは二度も目の前で人を見殺す羽目になってる。

大人でもトラウマになるであろう瞬間を、二度もだ。

むしろ、よく保ってると思う。


だけど、だからってここで焦ったって何にもならない。

まどかとさやかの時と違って、状況が切迫してる訳でも、明確な目標があるでもないのに…。

自分を追い詰める為の特訓、ましてそれを幼いゆまがやるのは、芳しいとはとても言えなかった。
958 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 00:40:06.39 ID:+oJd6Wjk0

杏子「…………やめだ。今日はもうやめ」


ゆま「なんで!? 続けてよ! じゃないとゆまは…」



杏子「昨日も夜遅くまで相手したし、今日も朝早くからぶっ通しだろ。

   そんなに焦って、お前は何を得たいんだよ?」

杏子「気にしてた結界に、盗聴されない高精度の念話、物質の耐久強化、簡易催眠と教えたし、後は一朝一夕にはいかない事ばっか。

   ここから先は今焦ったってどうにもならねぇよ」


ゆま「だけど…、ゆまが弱いうちにまた敵が来たら…。

   キョーコだって言ったよ! 次はギセイ減らせるようがんばれって…」



杏子「『次はいかに犠牲を減らせるか、それを考えろ』。確かに言ったよ」

杏子「けど、こうも言ったぞ? 『何もかも全部守れる神様やヒーローなんてのは、この世界にはいない』って」



ゆま「でも、そんな事言ってて、また守れなかったら………」



杏子「そん時はそん時。そこで死んだ奴の運が悪かった。そう思いな」


杏子「何から何まで背負う訳にはいかないし、そんな義務もねーんだから」
959 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 00:41:03.99 ID:+oJd6Wjk0

ゆま「………………よ」


杏子「あ…?」



ゆま「冷たいよ……!」


ゆま「冷たすぎるよ! キョーコは!!!!」


ゆま「なんでそんなかんたんに割り切れるの! なんでそんな平気な顔していられるの!」

ゆま「たくさん…、たくさん死んだんだよ……!」



杏子「…………」




ゆま「もういいよ、だったらキョーコには頼らない!」

杏子「あっそ…。勝手にしろ」




ゆま「キョーコの………」


ゆま「ばかぁ!!!!!!!!!!!!!!」
960 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 00:41:45.86 ID:+oJd6Wjk0

杏子「…………」

杏子「………………」


杏子「………ハァ」


ったく…。

ゆまの疲弊っぷりが心配でやめさせようとしたのに、喧嘩してどうすんだよ…。


おら…。

早く追っかけろよ…。

じゃないとアイツのジェムの穢れが………。


だけど…。





杏子「…………冷たすぎる、か」



杏子「仕方ねぇじゃん…」


杏子「他人どころか大切な人すら守れなかったアタシは…。

   そうなるしか、やってられなかったんだから、さ…」
961 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 00:42:32.97 ID:+oJd6Wjk0

ゆま「ふんだ! キョーコなんかに頼らなくたって、ゆまは魔法少女できるもん!」

ゆま「できるもん………」

ゆま「…………」


ゆま「言いすぎ………ちゃったかな…?」

ゆま「でも………、ゆまはやらなきゃいけないんだ…」




ゆま「ゆまは………、ゆまは………」

ゆま「役立たずのままじゃ………、ダメなんだ………」


ゆま「だから、やらなきゃ…。がんばらなきゃ………!」



だけど、どうしよう…。

もう、キョーコにはたよれない…。

だけど、ゆま一人じゃどうしていいかわかんない…。



ゆま「う〜〜〜ん……」



ゆま「そうだ!」

ゆま「マミおねえちゃんに教わろう!」


ゆま「マミおねえちゃんはキョーコの先生だったし、キョーコよりもすごいこと教えてくれるよね!」
962 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 00:43:23.70 ID:+oJd6Wjk0

――マミのマンション自室前――


ゆま「…………」

ゆま「む〜〜〜〜〜」

ゆま「チャイム何回も押したのに出てこない〜」



ゆま≪マミおねえちゃ〜〜〜〜ん!≫

ゆま≪いないの〜〜〜〜!?≫


ゆま「…………」

ゆま「…………念話でもダメって事は、いないのかぁ」



ゆま「どうしよう………」

ゆま「キョーコに………」


ゆま「………ダメダメ! キョーコに教えなくちゃ!

   ゆまは役立たずじゃないって…!」




ゆま「……………まどかおねえちゃんのお家に行こう」


ゆま「まどかおねえちゃん優しいから、キョーコよりもていねいに教えてくれるよね!」
963 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 00:44:05.09 ID:+oJd6Wjk0

――まどかの家――


知久「やぁ、いらっしゃい。ゆまちゃん」

ゆま「こんにちは。まどかおねえちゃん居ますか?」



知久「居るには居るんだけど……」

ゆま「どうかしたんですか…?」


知久「まぁ上がって。見てみた方が早いよ」





まどか「ちょっとたっくん…。重いよ。離れて〜」

タツヤ「や!」


まどか「おねえちゃん、おトイレ行きたいんだけど…」

タツヤ「やー!」


まどか「もう……、たっくん!」

タツヤ「ねえちゃ、いなくなっちゃうの、やー!」

まどか「困ったなぁ………」
964 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 00:46:04.51 ID:+oJd6Wjk0

ゆま「…………」

知久「例の事件の怖さが、子供ながらにわかったんだろうね」


知久「あれ以来、まどかが居なくなる事をすごく怖がってて…。

   詢子さんがちょっと状況が落ち着くまでと幼稚園を休ませたのをいい事に、ずっとまどかにべったりなんだ………」


知久「でも、あの事件以降暗い表情ばかりだったまどかも、タツヤと遊んでる内に段々元気が戻って来ててね。

   引き剥がす理由もないし、まどかの心の傷も癒せるならと、あのままにしてるんだ」



まどか「たっくん! ほんのちょっとだから!」

タツヤ「む〜」

まどか「ほら、戻ってきたらまた続きしよ?」

タツヤ「うん…。わかった…」



ゆま「…………帰ります」

知久「悪いね」


ゆま「いいなぁ、たっくんは。

優しいおねえちゃんがいて…………」


知久「君の身近にもいると思うけどなぁ」

ゆま「え…?」


知久「君と杏子ちゃんは、血の繋がりはなくても…。

   まどかとタツヤ以上に仲が良くて、お互いを大事に思ってる、本当の姉妹みたいに見えたんだけどなぁ」
965 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 00:47:25.14 ID:+oJd6Wjk0

ゆま「…………」


ゆま「キョーコとゆまが仲良し…? 姉妹みたい…?」


ゆま「そんなはず……ない……」


ゆま「ゆまはキョーコに迷惑ばっかりかけて…。いつも助けられて……。

   なのに、ひどいこと言って………」



ゆま「つづき……、やらなきゃ。

   キョーコやみんなに………、役立たずって思われないように………」



ゆま「うん…! 頑張らなきゃ!

   もう、あんなのヤダもん……!」



ゆま「今度はサヤカのところへいこう」


ゆま「サヤカって面倒見いいから、きっとゆまの悩みや特訓も、真剣に受け止めてくれるよね」
966 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 00:48:33.30 ID:+oJd6Wjk0

――さやかの家近所の公園――



ゆま「あ…、きた! お〜い、サヤカ〜!」

さやか「おう、お待たせっ」



さやか「で、用事って何?」


ゆま「戦い方を教えて…?」


さやか「別にいいけど………。

    何でまた、あたしに?」

さやか「マミさんとか杏子とか適任者がいると思うんだけど……」



ゆま「マミおねえちゃんは居なかったし、キョーコは………」


さやか「………………」



さやか「わかった。引き受けるよ」


ゆま「うん…! ありがと!」



さやか「ただ、保障はしないよ…?」


ゆま「うん! だいじょーぶ! じゃあさっそくやろう!」
967 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 00:49:29.41 ID:+oJd6Wjk0

────────

────

──


ゆま「ぜんっぜんっっっっっっっ、わかんない!!!!!!!」



ゆま「サヤカ、教え方ヘタ!」


さやか「やっぱし?」



ゆま「『ピシっとしてパーン』とか『ビュッと来てバッ』とかそんなのでわかるわけないじゃん!」


さやか「あっはははははは…。ごめんごめん……」



さやか「あたしってさ…、頭で考えるよりも先に、身体が動いてるタイプって言うかさ。

    あんまりモノ教えるの得意じゃないんだな、これが」


ゆま「む〜〜〜〜」
968 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 00:50:19.89 ID:+oJd6Wjk0

さやか「やっぱり杏子に教わりなよ」


さやか「アイツあれで案外物教えるの上手でさ、あたしやまどかもお世話になったりしてるし…。

    ちょい厳しいけど、その代わり身になる特訓が出来ると思うよ」

さやか「マミさんは多忙だけど、アイツは基本暇人だから、アイツの為にも誘ってやった方がいいよ」


ゆま「…………」



さやか「それに、ゆまちゃんの頼みなら断らないと思うけどな」


ゆま「そんなこと…………」




さやか「…………ほ〜ぅ」


さやか「さては、杏子と喧嘩でもしたな〜?」



ゆま「喧嘩って言うか………」


さやか「話してみなよ。戦い方は教えられないけど…。

    そっちの相談では力になれるかもしれないよ?」
969 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 00:51:39.76 ID:+oJd6Wjk0

────────

────

──

さやか「なるほどね…」


ゆま「うん、それでキョーコに冷たすぎるって言っちゃったんだ…」

ゆま「でも……、しかたないしかたないって諦めてるキョーコを見てたらなんかガマンできなくて…」



さやか「あたしもね……、どっちかと言うとゆまちゃん寄りの考えなんだ。

    助けられなかった人は仕方ないって割り切れない…」

さやか「死んだ人たちにもやりたい事があって、死んだ人たちにも大切な人が居て…。

    そう思うとやっぱり、アイツみたいにそう簡単には割り切れない…」


さやか「それでも…、アイツの…、杏子の考えも否定はしない」



ゆま「なんで……?」


さやか「アイツの過去の話は聞いた?」

ゆま「うん……。マミおねえちゃんに聞かされたよ…」



さやか「なら、わかるとは思うけど…。

    アイツはそうやって戦った先で、大事なモノを失った過去があるから…」


さやか「何もかもを守る事より……、大切なモノを失わない事の方に必死なんだよ…」
970 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 00:52:52.70 ID:+oJd6Wjk0

ゆま「何もかも、より……、大切な……モノ……」


さやか「アイツは不器用で乱暴なところがあるから、誤解されやすいけど…。

    今回もそうやって無茶するゆまちゃんを止めなかったんじゃないかな?」


さやか「見知らぬ誰かよりも、ゆまちゃんの方が大事だから…」



ゆま「…………」



さやか「アイツは確かに冷たいよ。と言うより考え方が大人なんだ」

さやか「無理なモノは無理って割り切ってるし、出来ない事をやろうとするような熱苦しい考えも持たない。

    けど…………」


さやか「そうすることで、一番大事なモノだけは守ろうとしてる」

さやか「それを冷たいって言い切る事も出来るけど…。

    あたし達はそんな杏子に守られてるんだって思うと…、アイツの考えを否定する気にはなれないんだよね」



ゆま「……………」

ゆま「ゆま、キョーコにあやまってくる!」


さやか「うん。それが一番だね」



ゆま「教えてくれてありがと、サヤカ!」
971 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 00:53:27.48 ID:+oJd6Wjk0

キョーコは…。

キョーコは、ゆまの事を思って言ってくれてたんだね…。


ゆまは…。

目の前でだれかが死にそうなのに、守れないのはもう嫌だから…。

役立たずなのがつらかったから…。

だからがんばろうと思ったんだ…。


でも、そうやってムリするゆまを見てられなくて…。

遠まわしだけどムリするなって、言ってくれてたんだ…。



なのに、ゆまは…。

冷たすぎる、なんて言っちゃった…。



いつもゆまを助けてくれて…。

いつもゆまの相談にのってくれる優しいキョーコに…。

冷たすぎるって……。
972 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 00:54:32.93 ID:+oJd6Wjk0

ゆま「あやまらなきゃ…、キョーコに…」


ゆま「ん…? これ、魔女の………反応!?」



ゆま「もう! こんなときにこなくてもいいのにっ!」


それでも、魔女をほうってはおけないから、ゆまは魔女の結界へとむかう…。



ほんのいっしゅんだけ、先にキョーコに会いにいくことも考えたけど…。


『自分にできる事』をしないで、自分のことを優先したら…。

ゆまは『役立たず』の中の『役立たず』になっちゃう気がするから…。
973 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 00:56:14.19 ID:+oJd6Wjk0

ゆま「どいて! ゆまは急いでるんだから!」


結界の中はせまくて、途中にいた男の人の体に鳥頭と羽をはやした変な使い魔も、怖いのは見かけばっかり。

使い魔をたおしながら進んでも、すぐに魔女の元についた。






ゆま「魔女…、見つけたよ!!」


ゆま「ゆまの……、ジャマしないで!!!!!」


たくさんの使い魔が飛んでいる中、その真ん中でぷかぷか浮かぶ体が鳥かごに入った魔女。

魔女は怒ってるのか、かごをけとばしながら使い魔に命令して、ゆまを攻撃させようとしたけど…。

あの使い魔が怖くないのはもうわかってる。



魔力を込めたハンマーを思い切りふって、すごい風をおこし…。

使い魔たちごと魔女を吹き飛ばして地面へ叩きつける。


飛ばされなかった使い魔たちも魔女のところへ近よって、そこでタイミングよく魔女が大爆発。

魔女も使い魔もすごいいきおいで燃えはじめる。


そして、その炎の中からなぜか足音と拍手が聞こえてきて…。
974 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 00:57:23.96 ID:+oJd6Wjk0

??「お見事です…」


ゆま「………誰?」



双樹「申し遅れました。私は双樹ルカと申します」


双樹「小さいのに素晴らしい戦いぶり…。

   よろしければ、お名前を教えていただけませんか?」




ゆま「千歳ゆま、だけど………」


出てきたのはまっ赤なドレスの女の人、まちがいいなく魔法少女だと思う。

でも、外の魔法少女はいい人ばっかりじゃないってキョーコやマミおねえちゃんがいつも言ってた。

ひどい人はグリーフシードを狙って、相手を傷つけることだってあるって…。


だから、ゆまはその人を注意しつづけた…。




ゆま「ゆまに、なにか用? グリーフシードが欲しいの…?」


双樹「そんなに怖い顔をなさらなくても、こんなモノは必要ありません。

   その代わり、と言っては何ですが…」







双樹「あなたのソウルジェムをいただけませんか?」
975 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 00:58:15.19 ID:+oJd6Wjk0

ゆま「…!」


赤いドレスの人は、やっぱり悪い魔法少女だったみたいで、剣でいきなりゆまを攻撃してくる。

あぶないところだったけど、ゆまはギリギリでその攻撃を止める…。




ゆま「っ…、何するの…!」


双樹「ほぅ…。良い反応です。けれど…」

双樹「あなたはもうお終いです」


ゆま「…!?」


剣を受けているハンマーから順番に…。

手、ひじ、肩、体、足とどんどんゆまの体を凍らせていき…。


とうとう全身が凍りついて、ゆまは動けなくなった。
976 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 00:58:48.99 ID:+oJd6Wjk0

双樹「あら…、怯えてしまって可愛そうに…」


双樹「ご心配なく。『大切に』致しますから」



やだ…、やだよ…。

こんなところで…、終わるなんて……。


役立たずのまま……なんて…。

あやまれ……ない…まま……なん…て……。


たすけて…?

だけど、またキョーコにたすけてもらうの…?

役立たずのまま…?


そもそも、キョーコはゆまのこと怒ってるはず…。

きてくれるはず…ない…。
977 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 00:59:37.09 ID:+oJd6Wjk0

ゆま≪聞こえる……わけ…ないと思うけど……≫


双樹「あなたの体は永久にここで、美しいまま………」



ゆま≪ごめんね…、キョーコ…。ひどいこと言って……≫


双樹「そして、あなたの美しいソウルジェムは私達と…」



ゆま≪ゆま、くやしかったの…≫

ゆま≪みんなはたくさんの人を助けてるのに、ゆまは目の前の人すら助けられないから…≫


双樹「美しいモノが二つになる…。あなたは芸術を二つも生み出し…」



ゆま≪ゆま、ね…。キョーコみたいになりたかったんだ≫

ゆま≪なんだかんだ言いながらも、いつもみんなを助けて、それをいばったりしないカッコいいキョーコみたいに…≫


ゆま≪でも、ゆまはなれなかった…。役立たずのままだった…≫

ゆま≪それどころか……、いつもゆまに優しくしてくれたキョーコに冷たいって…≫


双樹「では、行きましょう。共に」



ゆま≪最後にもう一回だけ………≫


ゆま≪ごめんね………、キョーコ………≫















??≪そう言う事は………≫


双樹「……?」



杏子「口で言え! 馬鹿!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
978 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 01:00:41.04 ID:+oJd6Wjk0

双樹「ぐあぁぁぁッ!!!」


凍りついて動けないゆまに、何かしようとした赤いドレスの人が吹き飛んでいく…。

そして、遠く見えなくなったその人の代わりに…。

泣きそうなような、ほっとしたような顔をしたキョーコの顔が見えた…。



杏子「待ってろ……。今治す…」


ゆま≪キョーコ…。ゆまは…≫

杏子「良いよ。何も言わなくて。全部聞こえたから…」


ゆま≪うん……。ごめんね…、キョーコ…≫

杏子「………それももう良いよ。さっき聞いた」


杏子「むしろ今度謝るのは、アタシの方だ。

   お前の気持ちもわかる筈なのに、いつもみたくぶっきらぼうなやめさせ方をしちまった。

   ごめん…」


杏子「でもな、ゆま……、お前の気持ちもわかるけど、その為に無茶されたら…、こっちが冷や冷やするんだ」


杏子「お前が頑張ってる事も、役立たずなんかじゃない事もアタシが知ってる。

   だから、少しは自分の事大事にしてくれ」


杏子「アタシの為にも、さ」



ゆま「うん…!」
979 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 01:02:12.24 ID:+oJd6Wjk0

お話が終わり、ゆまの体の氷がほとんどとけた時…。

こわい顔をした赤いドレスの人が帰ってくる。

その顔は怒ってはいるけど、それ以上にうれしそうにも見えて、こわいとしか言えなかった…。



双樹「まったく、乱暴な…」

双樹「けれど…、また美しいジェムが見つかったので、良しとしましょうか」



ゆま「キョーコ…」

杏子「ちょい休んでろ。どうせ手足もさっきの氷にやられてて満足に動かないだろ?」



杏子「………さて、ただですませてやる気は毛ほどもねぇが…。

   一応聞いといてやるよ」


杏子「何が狙いだ? 人様のジェムを奪って何がしたい?」




双樹「何、と言われましても別に何も。ただ奇麗だから集めているだけです」


杏子「お前…、ソウルジェムが何なのかわかってんのか…?

   それは…」


双樹「無論です。だからこそ集めるのでしょう?」






双樹「生命の輝きを放つこの石を…!」
980 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 01:03:02.21 ID:+oJd6Wjk0

杏子「最高に下衆いコレクターってわけね。

   安心したよ…」


杏子「それなら、気兼ねなくぶっ殺せるからなぁッ!!!」


キョーコは目にも止まらないはやさで、赤いドレスの人に槍を突き出す…。

けれど、さっきとちがって、赤いドレスの人もキョーコの攻撃を止めてしまう。

そして、攻撃を止められてしまったら…。




ゆま「キョーコ! 離れて!!!!!!」



双樹「同じ手が二度も通用するとでも?」

双樹「そして、私に切り込むのは自殺行為です…!」


双樹「カーゾ・フレッド!」


ゆまの時と同じ。

剣にふれていた槍先が凍って、そこから槍の棒の所、手が、体が、足が凍っていき…。

やがてキョーコもさっきのゆまのように凍りついた。
981 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 01:04:07.87 ID:+oJd6Wjk0

ゆま「キョーコッ!!!!!!」


双樹「あら…。よく見ると結構綺麗な顔立ち…。

   これはジェム以外にも価値を…ッ!?」



杏子「…………死ね!」


双樹「後ろ!? 何故!!!!!」


凍りついたキョーコの後ろから、『別のキョーコ』が襲いかかる。

赤いドレスの人は剣で防いだけど、それでも大きく飛ばされて地面に転がる。


キョーコはそれを見ながら、さらに分身を増やしていく…。




双樹「分身、ですか」

双樹「…………」

双樹「…………スキくないなぁ」



双樹「あなたも…、そのださい攻撃も…!」


飛びおきた赤いドレスの人の様子が変わったかと思うと…。

そのまっ赤なドレスは、、まっ白に変わって…。


今度は剣から火の玉を出して、キョーコの分身ごとその周りを燃やした。
982 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 01:05:01.42 ID:+oJd6Wjk0

双樹「どう? 派手に燃えてる自分の姿を見るのは?」

杏子「…………」



杏子「お前………、誰だ?」


双樹「へぇ…、よくわかったね」



双樹「いいよ、教えてあげる。

   私はあやせ。ルカと同じ体を共有している『別の存在』ってとこかな?」


双樹「最も別の存在とは言っても、一緒に『ジェム摘み』したり、残った体でアートを作ったり…。

   世界で一番通じ合ってる二人だけ…」


杏子「どうでもいいよ」



双樹「は…?」

杏子「とっととさっきの奴を出しな」



杏子「人のダチに手を出したお礼をしなきゃならないんだからさ!」



双樹「…………」


双樹「やっぱりあなた…………」




双樹「スキくない!!!!!!!」
983 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 01:06:44.09 ID:+oJd6Wjk0

双樹「オトボケを言わないで欲しいなぁ」

双樹「今度は、私の宝物であるルカに手を出したあなたに、私がお礼をする番なんだよ!」



双樹「と言う訳で、もうあなたのジェムは良いから…」


双樹「ここで消し炭になってよッ!!!!!!」


赤いドレスの人と、白いドレスの人は何もかもが逆…。


赤いドレスの人が氷なら、白い人は炎。

赤い人が慎重で冷静なら、白い人はすごく乱暴。

赤い人は一人と戦うのが得意みたいだけど、白い人はたくさんの敵と戦うのが得意みたいで…。


とにかく、何もかもがさっきとは逆で、別の人と戦ってるみたいなのに…。

キョーコはその別の人を、さっきまでと『変わらなかったかのように』軽く倒してしまった。





双樹「ち…くしょう……。

分身もせず、私ごと火球を全て落とすなんて…」


杏子「広範囲攻撃はこっちも得意。

   むしろ分身なんかより、手慣れてるくらいなんだよ」
984 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 01:08:44.70 ID:+oJd6Wjk0

杏子「さぁ…、さっきの奴をゆまに土下座させて、アタシの前から消えるか…。

   二人まとめてぶっ潰されるか…。好きな方を選びな」



双樹「何、いい気になっちゃってるの…?」


双樹「私たちは二人で一人…」

双樹「一人一人のお遊びの敗北なんて…、意味が無いのです…」

双樹「だから見せてあげる…」



双樹「私たちの本気を!」


熱さと寒さのまざったキモチ悪い風がふいて…。

その中心にいた白いドレスの人は、剣を両手にもち、そのドレスの右半分を赤色へと変えていた。



双樹「受けなさい…!」

双樹「ピッチ・ジェネラーティ!!!!!」


杏子「くッ…!」


右手の剣の冷気と、左手の剣の炎を合わせて、すごい魔法をはなってくるドレスの人。

キョーコはその魔法をどうにかよけたけど、その魔法はキョーコの後ろですごい爆発をおこして…。



さらに、赤白ドレスの人は剣を重ねて、そのとんでもない魔法をまたすぐに飛ばしてきた…。
985 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 01:10:01.15 ID:+oJd6Wjk0

双樹「あやせの超高熱…!」

双樹「ルカの超低温…!」


双樹「相反する筈の二つの力をも融合させる完璧なコンビネーション!」



キョーコはやっぱりすごい。


赤白の人の撃ってくる魔法は、すごく速いし、爆発もすごく大きい。

そんな攻撃をすごくかんたんそうに、しかもたくさん飛ばしてくる。


ゆまだったらすぐに当たっちゃうようなすごい攻撃を、よけつづけてる…。

でも…。




双樹「二つの頂点を一つにする…。これこそが、至高の技…!」


杏子「ほざけ…!」


キョーコはいつものように攻撃をよけているけど…。

心なしか、いつもより…。


うぅん…。

間違いなくキョーコは、追いつめられてる…。
986 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 01:11:24.58 ID:+oJd6Wjk0

杏子「ロッソ!!!」


双樹「くだらない…!」

双樹「今どき流行らないのよね。分身の術なんて!!!」



杏子「当たらない大技なんて、流行る流行らない以前の問題だろうが!」


双樹「ほざけ…!」


相手をわざと怒らせて…。

いつもだったら、あまり出したがらない分身を出して…。

だけど…。


キョーコが分身を出しても、つぎつぎにくる魔法の爆発が広くて、よけるだけで精いっぱいだから、

数を出せない上に、出せても爆発に巻き込まれて、敵にとどく前に消されちゃう…。


そうやって逃げている内にキョーコは、とうとう爆発で足を怪我して…。



杏子「チッ…」

双樹「とうとう回避が追い付かなくなったか」



双樹「ふん…。これでようやく……、終わりにできそう…!」


双樹「ピッチ・ジェネ………」




ゆま「そんなの………」


ゆま「やらせない!!!!!!!!!!」
987 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 01:12:30.22 ID:+oJd6Wjk0

おもいっきり地面をハンマーでたたいて、地震をおこす…。

それに足を取られた赤白ドレスの人は、キョーコへの攻撃を外す…。


そして、もちろん攻撃をジャマしたゆまを見て、にらみつける…。



双樹「あなたは後回し………と思いましたが、先のほうがよろしいので?」


杏子「馬鹿…! よせ…!」




ゆま「やだ……」


杏子「無茶ばっかすんなって言ったばっかだろうが…!」


ゆま「絶対にやだ……!」




杏子「ゆま!!!!!!」


ゆま「キョーコは無茶するなって言うけど………」


ゆま「いま無茶しなきゃ、キョーコを………」




ゆま「ゆまの大事な人を守れないもん!!!!!!!」
988 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 01:13:26.17 ID:+oJd6Wjk0

双樹「されば潔し…」

双樹「お前から先に片づける!!!!!」



ゆま「っ………」


赤白ドレスの人は、杏子ではなくゆまの元に向かってきて…。

両手の剣で、ゆまに斬りかかってくる。


ゆまは、それをどうにか受け止めたけど……。



双樹「私の剣を受けるとどうなるか………、お忘れで?」


ゆま「あぁ………!」


赤いドレスの方の右手の剣にふれた辺りのハンマーが凍り始め…。

すぐ近くの右手、すぐに左手も凍って…。

その氷が、手首を、ひじを、肩を凍らせて…。




そこで止まった。
989 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 01:14:17.77 ID:+oJd6Wjk0

双樹「な、何…!?」


杏子「ゆま! 無理やりぶっ飛ばせ!!!!!!」



ゆま「てぇぇぇぇぇぇぇいッ!!!!!!!!」

双樹「くぅ…!」


ゆまが凍った腕の代わりに、思い切り力を込めてキックをくりだす。

赤白ドレスの人は、それを思い切り受けて、よろつく…。

そして、それを狙って…。





杏子「これで………、終わりだッ!!!!!!」


双樹「かぁぁぁぁッ!!!!!!」


キョーコが持っていた槍を投げつける…。

ものすごい勢いで飛んできたそれは、赤白ドレスの人のお腹に刺さり…。

そのまま、たおれて動かなくなった。
990 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 01:16:41.53 ID:+oJd6Wjk0

杏子「ったく…。冷や冷やしたが、賭けには勝ったみたいだな…」


双樹「…………」


変身がとけて、動かなくなった敵の魔法少女の前に立ったキョーコが言う。

キョーコの足はゆまが治して、まわりに三人ほど分身もいる。


それでも、キョーコはゆまが回復魔法を使うのを止め、その上でのばした槍のくさりでしばった。



杏子「自分の力に溺れたな」

双樹「くッ…」


杏子「あの魔法は確かにとんでもない魔法だったよ」

杏子『マミのティロ・フィナーレに見劣りしない威力で、外れても爆風で敵を巻き込める。

   おまけにそれが連射できるんだ。ヤバイったらない」


杏子「ただ、そんなモンをあんだけポンポン撃ってりゃ…、そりゃ長続きするわけないなとは思ってたよ。

   魔力消費もお互いで半分こなのかもしれないが、それでもバカにはならない筈だろうしな」


双樹「だから、小賢しく逃げ回ってたのか…」



杏子「単純に食らいたくなかったってのもあるが…」

杏子「分身も満足に出せない、接近戦しかけりゃ凍りつく…と来りゃ、他に手もなかったしな」


双樹「…………」
991 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 01:17:46.86 ID:+oJd6Wjk0

杏子「さて、お前らの処遇だが…。どうしたもんかな…」

杏子「お前らみたいな外道は、殺しちまう方が面倒はないんだが…」


双樹「ルカは私が守る…」

双樹「あやせはやらせません…」



杏子「他の魔法少女に散々好き勝手してよくもまぁ、そんな事が言えるな…」

杏子「まぁいい。とりあえずジェムを出しな」



双樹「…………」


杏子「別にアタシはお前らが二人まとめて魔女になるまで待っても良いんだぜ?

   仲間も来るし、グリーフシードも儲かるしな」



双樹「チッ……」




杏子「そうそう。それでいいんだ………」


杏子「よッ!!!!!!!」


キョーコが敵から二つのジェムを受けとると…。

もう片方の手で、なにか魔力をこめて…。

そのまま敵だった魔法少女は、動かなくなった。
992 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 01:19:16.59 ID:+oJd6Wjk0

ゆま「……………」

ゆま「………殺しちゃったの?」




杏子「そうしたかったんだけどな」



杏子「コイツが収集してたジェムの山をマミに押し付ける予定だからな」


杏子「生かしとかないと情報聞き出せなくなるし…。

   そうなっちまったら、お人よしのアイツでも、さすがに引き受けなくなるかもしれないだろ」



ゆま「じゃあ………」


杏子「あぁ、ジェムに細工して眠って貰っただけだ」
993 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 01:20:40.69 ID:+oJd6Wjk0

ゆま「キョーコ…、ありがと」


杏子「何がだ?」



ゆま「ゆまが、人が死ぬとこ見たくないっていうから…。

   二人を殺さずにすませたんでしょ…?」


杏子「自惚れてんじゃねぇよ。全部アタシの為だ」



『アタシの為』

キョーコはいつもそう言う。


でも、そういうキョーコの強さも、優しさも、厳しさも…。

それは全部、ゆまたちのためだから…。


ゆまもやっと…。

そうわかったから…。
994 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 01:21:33.95 ID:+oJd6Wjk0

ゆま「キョーコ」

杏子「あん…?」



ゆま「もう、ゆまは力におぼれたりしないよ」

杏子「……………」



ゆま「たとえ、役立たずのままでも…。

   ゆまは、キョーコに大事にされてるって………、わかったから………」


杏子「……………」



ゆま「だから、キョーコも自分を大事にしてね…」


ゆま「キョーコがゆまを大事にしてくれてるように…。

   ゆまもキョーコを大事だから…」



杏子「……………」



ゆま「キョーコ! へんじは!!!」


杏子「…………はいはい」
995 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 01:22:32.67 ID:+oJd6Wjk0

ゆま「もう、テキトーすぎるよ! もう一回」

杏子「だーもう、うるせーなー!」



ゆま…。

悪いけど、その約束だけは…。

守れないかもしれない。


アタシは決めてんだ。

他ならぬ『アタシ自身の為』に…。

この身を捨ててでも、お前らを守るって…。

もう二度と大事なモノだけは失わないって…。


だって…。

また、アタシ一人残されたら…。

今度こそアタシはどうなっちまうかわからないから、さ…。



その代わり…、にはならないかもしれないけど、誓うよ。

お前は……、お前たちはアタシが必ず守る。



それが、今のアタシの…………。

全てだから。


―to be continued―
996 : ◆.2t9RlrHa2 [saga]:2012/01/25(水) 01:23:07.17 ID:+oJd6Wjk0

―next episode―



「御飯を粗末にしちゃ駄目だよ! それは悪い人のする事なんだから!」






―【第二十一話】迫り来る聖者達―



997 : ◆.2t9RlrHa2 [sage]:2012/01/25(水) 01:26:42.70 ID:+oJd6Wjk0
次スレです
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1327422355/
998 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/25(水) 01:34:56.77 ID:GeEEtq8Qo
乙〜
999 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/25(水) 01:52:35.49 ID:IYW08cwno
1000 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/25(水) 07:57:25.70 ID:KCghRxkIO
1001 :1001 :Over 1000 Thread
 達 じ   |                           / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
 者 ゃ   l                     | ・ な 会 多
 で あ  /                          | ・ い う. 分
 な    く      ,.'"´ ̄ ̄``丶.        | ・ と. こ 皆
___/ヽ)     /           ゙、.       ! ・ お と に
           /             ',       | ・ も が は
          ノ      _    __   !     |    う   も
         ,レ^ヽ  ∠:::::::.\ ヽ・ ヽ |     |       う
         / ,ヘ   ⌒`ト、:::.ヽ  ̄  |   _ノ           |
          l い    _,,,L・`ヽ:ル ノィノ     ̄\_____/
         ヽ       ー─-  ‘ー1
          >‐‐'.        、__,ゝ ,′
         /     ',       `二' /
          /     `丶、     /
        ノ           ``ーr‐'゙
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    _∠_ __ _ ,,,、、、-──‐┴-、、
    厂 ー──'''"´ ̄ ,  ニ二二ニヽ\
   ,′         , イ       ̄``ヽ \
.  /          //  `)         ',  ヽ
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ここだけ今のVIPwwwww @ 2012/01/25(水) 06:18:26.96
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底辺だけど人並み以上の生活をしたい @ 2012/01/25(水) 05:09:35.36 ID:7WM2ZzSE0
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【(゚∀゚)ラヴィ!!】PartK【がおー】 @ 2012/01/25(水) 01:56:39.34 ID:w37AMlmlo
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さやか「よろしくね、相棒」 まどか「うん!」 2 @ 2012/01/25(水) 01:25:55.53 ID:+oJd6Wjk0
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ポケモンクリアしたから仲良く対戦しようぜwwwwww @ 2012/01/25(水) 00:56:10.26 ID:E4TI2HX3o
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【女子大に】勉強or計画得意なやつちょっと来てくれないかな【受かりたい】 @ 2012/01/25(水) 00:54:21.06 ID:7MUNrbmT0
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杏「桜はいつか散るもの」D.C.UPS @ 2012/01/25(水) 00:20:02.40 ID:NUXA2sMd0
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後輩の恋をなんとかしてヤりたい @ 2012/01/25(水) 00:15:40.71 ID:dOnNBZ9AO
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