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零児「…幻想郷。新世界、か」小牟「懐かしい感じがするの〜」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆JbeFpMnays :2011/09/01(木) 02:39:27.50 ID:CvYxxW/i0
このSSは、東方ProjectとNamco X Capcom(以降ナムカプ)
 および無限のフロンティア無印・Exceed(以降まとめてムゲフロ)のクロスオーバーです。
 両原作を知らない方の為に大雑把な説明を、第1章の話に組み込んで進めていく予定です。

なお、ナムカプ及びムゲフロからは全キャラ出るわけではなく、
 出るキャラについても平等に扱える保証はございません。

更には、東方Projectの2次創作設定を利用する事もありますので、
 そういうのが苦手な方は各々でこのページを閉じるなりしてください。
 それと神霊廟についてですが、委託が始まるまでは4面以降はネタバレ扱いとして控えます。

書き方についてですが、最初の内は複数の書き方を雰囲気ごとに分けて利用しています。
 どの書き方が良かったかを教えていただけると参考になり、ありがたいです。

SSそのものについては全3章予定で書いて行こうかと思います。2章がほぼメインですが。

また、意見や質問・批判は絶賛大歓迎中です。びしばし指摘して下さい。

それでは、皆さまを楽しませられるか分かりませんが、祭りの始まりとさせていただきます。
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笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/01(木) 02:41:14.30 ID:W1Wj5i9Uo













                   ∩  ∩
                   | | | |
                   | |__| |
                  / 一 ー \
                 /  (・) (・)  |
                 |    ○     |
                 \__  ─  __ノ 









      
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3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/09/01(木) 02:41:16.87 ID:z13dg0ax0
期待b
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4 : ◆JbeFpMnays [sage]:2011/09/01(木) 02:44:04.69 ID:CvYxxW/i0
東方 X ナムカプ X ムゲフロ SS


魔翌理沙「たたたた大変だぜ、霊夢!」

霊夢「…?何よ魔翌理沙、そんなに慌てて」

 ここは幻想郷。とある世界にて、外界と特異な壁で分けられた、現の忘れ物。

魔翌理沙「異変だよ、異変!それもあっちこっちでいくつも起きてるぜ!」

霊夢「へぇ。何も起ってない気がするんだけど」

 ここは楽園。外の世界の喧騒を忘れた、妖怪と人間の宴の地。

魔翌理沙「それが変なんだ。異変の起きている場所が決まっているんだ。まるで結界みたいに」

霊夢「結界みたい?…あら、そういえば結界の様子が変ね」

 ここは博麗神社。幻想郷の大切な場所であり、何でもない神様の神社。

霊夢「スキマ妖怪。どういうこと?」

紫「私の所為ではありませんことよ」

魔翌理沙「私には結界のことはさっぱりだぜ」

 ここは鳥籠。少女達を縛る、逃れられぬ甘美な果物の倉。

霊夢「いいからさっさと答えなさいよ」

紫「そう急かさなくても、もうすぐに話すわよ」

魔翌理沙「ん?誰か来てるな」

 ここは理想郷。いくつもの年月を経ってなお未熟なる、無色の桃源郷。

紫「さぁ二人とも、あそこの二人と戦いなさい」

霊夢「はぁ?なんでそんなこと…ってもういないし」

魔翌理沙「んー、大人の男の人間と子供っぽい女…の妖怪?」

 ここは新世界。誰もが染められる、誰にも染まらない場所。

霊夢「あいつの思い通りになるのは癪だけど、今は当てもないわね」

魔翌理沙「私も知りたいし手伝ってやるぜ、霊夢」

 この出会いが、幻想郷を何色に染めるか…

霊夢「そこの二人、覚悟なさい」

魔翌理沙「恨みはないが、妖怪退治の一環だぜ」

 それを知る者は、神でさえいない。

霊夢「スペル『無双封印』!!」

魔翌理沙「恋符『マスタースパーク』!!」

 誰も知らぬまま、幻想の宴は幕あける。

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5 :さっそくスペル間違えてる件 ◆JbeFpMnays [sage]:2011/09/01(木) 02:54:53.96 ID:CvYxxW/i0
第1章 エピローグ 「幻想の郷のアリス」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
少女達と出会う、ほんの少し前…

〜〜〜博麗神社付近・緩やかな丘〜〜〜

 ヒューーーー…ドスドスンッ

零児「…くっ…小牟、大丈夫か?」

小牟「いたたたた。思いきり尻から打ってしまったわい」

零児「そいつは重畳。尻を叩く手間が省けた」

小牟「な、ひどいぞ零児!か弱い乙女が痛がっておるというのに」

零児「誰の所為でこうなったと思っているんだ」

小牟「わしのせいじゃと言うのか?!わしはただ『ゆらぎ』の規模を調べようとだな」

零児「どうやら、尻を叩かれたいようだな」

小牟「して、ここはどこかのう?見た所、自然が多いようじゃが」

 幻想郷の東の端に、黒色と赤色を基調とする服を着た二人の人の姿があった。精確には、一人と一匹なのだが。

零児「分からないが、日本の田舎の風にも見える。あっちのほうに田んぼがあるしな」

小牟「見えとるぞ。結構ひろい田んぼじゃのー。穂も金色で綺麗じゃて」

零児「どうやら、別の時間に飛ばされたのだけは確定したな」

小牟「さっきまで夏の初めじゃったものな。しかし、あの山に、あの丘に…ほむほむ」

 幻想郷は現在夏が終わり、秋が始まった頃。彼らがいた時空は、夏が始まってすぐの頃である。

零児「心当たりでもあるのか?」

小牟「いやぁ断定できんよ。もしかしたらあそこなのかもしれんが」

?「ぴんぽ〜ん。正解よ、狐さん♪」

 突如、虚空から声が響いたかと思うと空間が割れ、そこから傘を持った少女が顔を出した。

零児「!(強い妖気…ここまで近くにいながら全く気付けなかった」

小牟「おおう、…八雲紫じゃな!?じゃぁここはマジでそうなのじゃな」

紫「ええ、マジでそうよ」

零児「知り合いなのか?」

小牟「んーや、顔だけなら初めて合わせるの」

紫「こんにちわ、『森羅』の有栖 零児さん。以後、お見知りおきを」

零児「『逢魔』の一員じゃないだろうな」

小牟「違う違う。こやつは…」

紫「それについてはこの上の博麗神社でお教えしますわ。今は時間がないもので」

 そういい、紫はスキマへと沈んでいき…消えた。

小牟「全く。いつも寝とるんじゃから時間はあるだろうに」

零児「『逢魔』じゃないならなぜ俺達のことを?あいつみたいな空気を感じたが」

小牟「そういう奴じゃからしょうがない。して、登るかの?」

零児「…お前の判断を任せるさ。この世界の事、ある程度察しているのだろ?」

小牟「『ほとんど知らぬ』程度じゃがな。…2次創作なら大量にしっとるが(ボソッ」

零児「ん?何か言ったか?」

小牟「あー気にせんでもよい。じゃぁ行くとするかの」

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6 : ◆JbeFpMnays [sage]:2011/09/01(木) 03:07:41.74 ID:CvYxxW/i0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

〜〜〜博麗神社・裏手〜〜〜

零児「ここが博麗神社か。しかし、なぜわざわざ獣道を通ったんだ?」

小牟「ちとややこい理由じゃて。お、霊夢がおるのう。ほれ、あの赤い方じゃ」

 小牟が刺す指の先に巫女装束…と言っていいかわからんが、とにかく目出度い色の服を着た少女を見つける。

零児「もう一人、魔女風の少女もいるが?」

小牟「霧雨魔翌理沙っちゅー、普通の魔法使いじゃよ」


 獣道からこちらに向かって歩いてくる妖怪とおまけに向かってアイサツをする。


霊夢「そこの二人、覚悟なさい」

魔翌理沙「恨みはないが、妖怪退治の一環だぜ」


 紅白の巫女がお払い棒と札を、白黒の魔法使いが箒と何かの八卦炉を手に身構えた。


零児「…どういうことか説明しろ、小牟」

小牟「知らんよ!大方紫が炊きつけたんじゃろう!」


 慣れた風に得物に手を掛ける二人。どうやら見かけ倒しではないようね。


霊夢「霊符『無双封印』!!」

魔翌理沙「恋符『マスタースパーク』!!」


 少女達から、外見に似合わない巨大な力の流れを感じ取る。


小牟「開幕ぶっぱか!」

零児「ちっ、『電瞬』!」


 マスパが発射される一瞬前に、人間が妖怪を抱えて射線から外れた。男の人、大柄なのに早いわね。


魔翌理沙「私のを避けても、霊夢のは追尾だぜ!」

小牟「わかっとるわ!『玄武乍』!」


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7 : ◆JbeFpMnays [sage]:2011/09/01(木) 03:12:46.22 ID:CvYxxW/i0
小牟「わかっとるわ!『玄武乍』」


 夢想封印が四方から襲いかかる。けど、それらに対し爆弾らしいものを投げつけて弾幕を相殺してきた。


魔翌理沙「ひゅー。参考になるぜ」

霊夢「ちょっと魔翌理沙、気付いているわよね」

 砂埃が舞う中、霊夢が魔翌理沙に尋ねる。だが、

魔翌理沙「ん?何の話だ?」

霊夢「………はぁ、別にいいわ。さっさと…!」

 巫女の感が危険を告げる。飛べっ!

霊夢「魔翌理沙、避けて!」

魔翌理沙「へ?」

零児「金【ゴールド】!」ダダダンッ

小牟「銀【シルバー】!白銀【プラチナ】!」ダダダダンッ

 伝わることなく、相手からの反撃が襲いかかる。私はすでに避けているからいいけど…

魔翌理沙「うげっ、はや…うっ」ピチューン

霊夢「やっぱり被弾したわね」


 少女二人がいた位置に向かって放たれた7発の弾丸は、白黒の魔法使いだけを後ろへ吹き飛ばす。

 空に飛び上がり避けていた紅白の少女が、ふわりと着地するのが見えた。


零児「弾は既にゴム弾に換装済みだ。多少痛いかもしれんが、簡便してくれ」

小牟「さて、あとはぬしだけじゃぞ。霊夢」


 赤と黒の二人組がこちらに向かって歩いてくる。


霊夢「二人だから二度…は使えないわね」

小牟「お互い様じゃしの。それに奇襲分、更に言い訳がましくなるぞ〜?」

零児「降参してもらえると話が早いんだが」

霊夢「嫌よ。妖怪は退治しなくっちゃ。それに加担する人間も…ねっ!」

小牟「どうせ紫に扇動されたくせに、ようゆうわっ!」

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8 : ◆JbeFpMnays [sage]:2011/09/01(木) 03:16:10.79 ID:CvYxxW/i0
今日の投稿はとりあえずここまでです。
投稿してから分かった事について色々考え、続きを明日以降にでも書き込んで行こうかと思います。

…もう少し文章の間の空白を広げたほうがいいのでしょうか?。
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9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/01(木) 03:38:07.50 ID:lsFnmAu/o
期待
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10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [saga sage]:2011/09/01(木) 08:02:09.18 ID:xQfrCMU60
零児&小牟が好きだから期待する。
文章の空白はこれ以上広げたら逆に読みにくいと思いますよ。

ところで名前が魔翌理沙になってるけど…
たぶんメール欄にsagaを入れればちゃんと魔理沙になるかと
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11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/01(木) 08:47:40.02 ID:jCdo27DDO
ゆっくりは出ますか?
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12 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/01(木) 09:28:02.86 ID:CvYxxW/i0
>>10
魔理沙の件、ありがとうございます。
原因はよく分かりませんがとりあえず直りました。

>>11
一応、ゆっくりは出ますが…これ以上はネタバレなので第2章を待っていてください。

以下、投下し忘れていた初期設定です。

有栖 零児:ナムカプ及びムゲフロより

 時系列は無限のフロンティア・Exceedの世界、エンドレス・フロンティアから帰宅後約1月程という設定。
 「○○する程度の能力」未開花。素の「妖怪退治を生業とする実力」は開始前地点での本気魔理沙相手に一人でも勝てる程。
 ただし、まだスペルカード・ルールには不慣れなため、本来は微不利。今回勝てたのは別の要因。

小牟:ナムカプ及びムゲフロより

 時系列は零児と同じ。永遠の765(ナムコ)歳。
 「○○する程度の能力」未開花。素の「妖怪退治を補助する役割」は本気魔理沙と五分。
 スペルカード・ルールに関しては「原作」をしていたために、脳内シュミレーションばっちり。

以下、東方キャラ共通項目として、時系列は神霊廟EXクリアー後の話。

八雲 紫:東方Projectより

 スキマ妖怪。年齢不詳。「スキマを操る程度の能力」。
 外の世界に幻想郷の情報が流れている事を知っているが、特に手を出すつもりは今のところない。

博麗 霊夢:東方Projectより

 楽園の素敵な巫女。年齢10代前半。「空を飛ぶ程度の能力」。
 妖怪退治を生業とする、幻想郷の要的な存在。最近は神様を降ろす術に慣れてきている。

霧雨 魔理沙:東方Projectより

 魔法の森の元気な普通の魔法使い。年齢10代前半。「魔法を使う程度の能力」。
 妖怪退治を生業とする、人間の少女。努力の方向が明後日に向かいがち。実は運動音痴。
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13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/01(木) 21:07:01.50 ID:iMwFILqno
これは俺得スレ
期待
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14 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/02(金) 10:04:46.16 ID:1zMhvXlQ0
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〜〜〜博麗神社・裏の縁側〜〜〜

紫「どうだったかしら、霊夢」

霊夢「どうもこうもないわよ。見ての通り」

紫「あらあら、たんこぶが」ツンツン

霊夢「##」

魔理沙「完全に油断したぜ」

零児「相手の力量を計る前から油断してどうする」

魔理沙「いあー、男の人が戦う所なんて久しく見てなかったもんだからつい」

小牟「まぁ今はそういう事を言うとる場合じゃないぞ。紫よ、説明してもらえるんじゃろうな」

零児「おまえにしては珍しく急かすな。だが、確かに教えてもらえると助かる」

霊夢「そうよ、スキマ妖怪。なんで戦わせたのよ」


 結局2対1ではじり貧となり、最終的に小牟に飛び蹴りで倒された霊夢。今は4人で縁側に座り、緑茶を飲んでいたところである。


紫「説明するより戦った方が分かるから。なんて♪」

魔理沙「レイジ達のことか?強いのは分かったけどなんでわざわざ」

霊夢「…霊力のことね」

小牟「何?風邪でもひいとるのか?」

霊夢「そうじゃないわよ。なんか思うように力が出ないのよ。今じゃ6割あるかどうかね」

零児「あれで6割か。すごいんだな、霊夢は」

紫「そういうこと。零児達の強さを見せるためなのもあるけど、それ以上に貴女の…いえ、私達の現状を知っていてほしかったの」

魔理沙「あー、だからなんか違和感があったのか。霊力の溜まり悪かったし」

紫「魔理沙は殆ど影響受けてないほうよ。まぁ、その事について分かった事だけ教えてあげる」


 曰く、現在あちこちで起きている異変は全て霊夢達が解決してきた異変だけで、それがほぼ同じ形で再現されている。

 それとともに力を失った、あるいは減少している妖怪や一部の人間がいる。

 魔理沙が軽症なのは霊力アップアイテムの依存度が高いため、その影響が薄いのだろうとのこと。

 更に、この異変が起きる前後で幻想郷へ迷いこんだ外来者が多数いる。それも零児達と関わりがある・あった者達である、と。


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15 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/02(金) 10:14:07.73 ID:1zMhvXlQ0

小牟「つーことわじゃ、紫も力が落ちとると?」

紫「ええ。思うようにスキマが使えないわ」

霊夢「説明がやけに丁寧なのはそういうことなのね」

魔理沙「いつもの紫からは考えられないぜ」

零児「それで紫。俺達と関係がある者というのはCOS-MOSやハーケンのことか?」

紫「私が確認できたのはフェリシアやジューダス達よ。あの戦いの英雄様ね。ハーケンという人は知らないわ」

小牟「紫が知っとるのはあの戦いまでか。しかし懐かしいのぉ」

霊夢「全く、面倒ね。9つも面倒事を片付けないといけないなんて」

魔理沙「9つ?異変は8つじゃないっけ?」

霊夢「レイジ達も含めて9つよ」

零児「ところで、その異変というのは?」

小牟「零児は知らなんだの。よし、説明しちゃる!小牟のパーフェクト幻想教室じゃ」

紫「それだと駄目じゃないかしら?」


 少女説明中…                                     少女飲茶中…


零児「異変のことは大体わかった。それで、どこから手を付ければいい」

紫「貴方達のお好きなように。私としては春雪から行ってほしいかしら」

霊夢「プハァ。じゃぁ永夜からね」

魔理沙「永夜か。でもあれ、私が異変を起こしていたはずなんだぜ?」

紫「私が確認できた外来者は春雪異変と、後は二日ほど前に吸血鬼の所にモリガン達ぐらいなの。
  手掛りを掴めるかしらと思ったのだけれど」

零児「…出来ればそのどちらかをお願いしたい。霊夢、魔理沙」

霊夢「………ぇー」

魔理沙「ものすっごい露骨に嫌な顔してるな。そんなに紫の言う通りになるのが嫌なのか?」

小牟「振り回されてきたことを考えればまぁ分かるがの」

零児「頼む。何か起った時の責任は俺が取る」

霊夢「責任とかの問題じゃないんだけど…あーもう、わかったわよ春雪ね」

小牟「わしからすれば妖々夢じゃな」

魔理沙「じゃぁこっちだぜ。って…零児は飛べるのか?」

零児「跳ぶ?高い場所にあるのか?」

魔理沙「いあいあfly。飛ぶだぜ。まぁその調子じゃ無理そうだな」

小牟「わしも無理じゃぞ。…と言いたいところじゃが、霊夢らの飛翔を見ておればどうにか出来そうじゃ」

霊夢「あー、本当に雪降っているわ、紅霧があるわ…でも怨霊はここいらに沸いてないわね」

魔理沙「それじゃ、必要な時になったら箒に乗せるぜ。…前?後ろ?」

零児「魔理沙の飛びやすい方にしてくれればいいさ。それじゃ、行くとするか」

小牟「霊力をそう練ってこう動かしとるのか…っておい、わしを置いてくな!」

霊夢「ところで、紫はいつの間にいなくなっているのかしら」

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16 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/02(金) 10:25:44.72 ID:1zMhvXlQ0
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〜〜〜春雪異変・雪の降る春の森〜〜〜

零児「…今、何かを潜ったな」

霊夢「(ふーん、これに気付けるんだ」

魔理沙「ん?そうか?どんな感じだった?」

小牟「こう、股の間をのぅ…」

零児「蜘蛛の巣に突っ込んだ時に似ていた。あれよりよほど細いし薄いがな」

魔理沙「ああ、あれか。てっきり雪があたったのかと思ったぜ」

霊夢「ここはただの通り道。さっさと先に進むわよ」

小牟「ひどす!こやつらわしを無視しちょる!」

零児「お前が変なことを言うからだろう。っせぃ!」


 春が来るのを待ち続けるとある森。その奥の、更に奥にある場所。

 妖精達が「サムイーサムイー」と言いながら飛び交ったり、こちらにじゃれ付いてくる。

 霊夢達4人はそれらを片手で払いのけながら先に進む。


零児「それで、この異変を起こした西行寺家の亡霊姫はどういった相手だ?」

魔理沙「紫ほどじゃないけど胡散臭い奴だぜ。真意がわからないんだ」

霊夢「猫っぽいと言えば猫ね。興味があっちこっちいっちゃうし」

小牟「紫の親友じゃし、そういう性格なんじゃろうて。そしてぬしが言うな」

零児「お前もだ、小牟」

???「あら、そんなに急いで何処へ行くのかしら」

小牟「お、ようやくお出まし…ってありゃ、チルノが出てこんかったぞ」

霊夢「あいついたかしら?」

魔理沙「ああ、確かいたと思うぜ。でも見かけなかったな」

零児「この雪の異変を起こしている張本人の元にだ。お前さんは?」

レティ「私はレティ・ホワイトロック。この雪の異変の『黒幕』よ」

零児「なに…?」

小牟「真に受けるな。こやつはあくまで温度を更に下げとるだけで、異変に直接は関係ないのじゃし」

レティ「あら、なんでばれたのかしら」

霊夢「そんなことはどうでもいいわ。さっさと退いて頂戴。いえやっぱり退治するわ妖怪だし」

魔理沙「まぁ、退かなかったら撃つんだがな」

レティ「…ここは大人しく引くわ。博麗の巫女様とそこの九尾は強そうだから。もう二人は知らないけど」

零児「そいつは重畳。無駄な戦いは避けたかったから助かる。ただ、一つ訪ねていいか?」

レティ「何かしら?」

零児「ならなぜわざわざ出てきたりした?」

レティ「…さぁ、何故か貴方達の前に出なきゃいけない気がしたのよ」

小牟「ほうほう、参考にさせてもらうぞ、レティよ」

レティ「???」

魔理沙「こっちの話だぜ。たぶん」

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17 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/02(金) 11:00:50.71 ID:1zMhvXlQ0
本日はここまでです。昨晩誤字チェックしたのに寝落ちてしまいました…。

妖々夢から始めた理由ですが、3,5,6ボスの展開がすぐ思いついたからなだけです。

なお、異変とは
 紅霧:紅魔郷
 春雪:妖々夢
 永夜:永夜抄
 酒宴:萃夢想
 60周期:花映塚(これだけ異変名度忘れ。苦手だからかなぁ
 気質:緋想天
 神略:風神録
 怨泉:地霊殿
をさしています。


それと、それぞれの章について書き忘れていました。

第1章は東方の原作ストーリーをなぞりつつ、ナムカプ勢も混ざって異変を起こしています。
 故に本来のストーリーと多少変更されている点はあります。

第2章は第1章のメンバーに、更に追加でムゲフロ勢が参戦します。ここからが本編です。

第3章についてはまだ予定なだけですが、答え合わせ的なものを予定しています。
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18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/02(金) 12:08:47.27 ID:aU60W1EKo
大結界異変だっけ?
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19 :別PCより ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/02(金) 15:01:48.28 ID:1zMhvXlQ0
調べてみたところ、六十年周期の大結界異変との名(参照:幻想郷縁起)でした。

それと、萃夢想とこれ以降についての異変は縁起に記されておらず、
 原作内でも特にこれといった記され方はされていないので(たぶん)
 >>17の表記に大結界異変を追加した呼び方でストーリーを進めて行きます。


ところで、妖々夢の次にどこを攻略するかを実は決めていないので安価下2で募集します。
 ただし、地霊殿のみは最後とする予定なので除外します。ご了承ください。
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20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/02(金) 17:07:37.75 ID:jH+nVuHpo
kskst
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21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/03(土) 02:12:49.27 ID:VJefn6Ljo
永夜で
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22 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/04(日) 14:35:08.45 ID:QJ+UFaSC0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

〜〜〜マヨヒガ・猫の里〜〜〜

小牟「おお、ポカポカ陽気じゃ!」

零児「また結界を通ったな。ゆらぎに近い感じがしたが」

霊夢「確かここは特殊な場所だとか言っていた気がしたわ。よく覚えてないけど」

小牟「ところで霊夢、魔理沙よ。前回、レティとは戦わなんだのか?」

魔理沙「いーや、戦ったぜ。すぐに倒したけどな」

霊夢「覚えてないわ。出てきた妖怪倒しているだけだったし」

零児「つまり、同じ異変だが違う事が起きる事もあるわけか」

魔理沙「つーかシャオムゥ、いつの間にか飛んでるんだな」

小牟「解析完了じゃ。これなら零児もおいおい飛べそうじゃぞ?」

零児「そいつは重畳。ところで、ここはいったい?人の気配が全くしないが」

霊夢「マヨヒガよ。どういう理由であるのかしら」

魔理沙「レアなアイテムが全くないんだぜ。こういうところにはあるもんだと思ってたのにさ」

小牟「橙めがおるはずよな〜」

零児「確か紫の式の式だったか?そんな芸当ができるとなると、あの妖怪は相当な…」

小牟「それ以上はいけんぞ、零児!」

零児「………相当な実力の持ち主だと言うつもりだったんだが…?」


霊夢「魔理沙、あっちみて。あんな猫の妖怪いたかしら」

魔理沙「ぼんきゅっぼんだな。橙とは大違いだぜ」

?「な、なにおー!私だっていつかはあんなふうに…」

魔理沙「噂をすれば寸胴が来たぜ」

零児「ん?見た目通りで可愛らしいと思うがな」

橙「というか貴方達なんでここにいるの!なんで私の事知っているの!そしてお兄さんありがとう」

小牟「通り道じゃからの〜」

魔理沙「そういや自然とこっちに来たけど、直で冥界に行っても良かったんじゃね?」

霊夢「紫から聞いてないの?まぁ聞いていても邪魔だから退治するけど」

橙「紫様から?何も聞いてないよ!だっていつも寝ているもん…ってなんで紫様まで知っているの!?」

小牟「いかん、これ覚えてない臭いぞ」

零児「ん?知り合いじゃないのか?」

小牟「さっぱりじゃ。異変以外でもあっとるもんじゃと思っておったが」

霊夢「全く、面倒くさいわね。さっさと退治するわよ」

橙「にゃっ?!4対1はずるいぞー!」

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23 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/04(日) 14:38:26.56 ID:QJ+UFaSC0
橙「にゃっ?!4対1はずるいぞー!」

?????「橙ちゃん?どうしたの?喧嘩かな!?」

零児「なっ…フェリシア!?」

フェリシア「そうだよー!フェリシアちゃんだよー!…って、あんた誰ぇ?」

小牟・零児「「!?」」

橙「フェリちゃん!話は後でするからこいつらここから追い出すよ!」

フェリシア「侵入者ってことだね。わかった、手伝うよ!」

零児「まて、フェリシア!俺だ!有栖零児だ!」

フェリシア「アイスエイジ?知らないよ、そんなやつ!さぁさぁ構えて!勝負だよー!」

霊夢「ねぇ、倒していいかしら」

小牟「まぁしょうがないの。もう戦う気マンマンじゃし」

零児「…今度の新世界はややこしそうだな」

魔理沙「そもそも8つも異変が起きてるんだし仕方ないぜ。…いや、9つだっけか?」


 侵入してきた4人組が呑気に話してる。私をなめると痛い目みるんだからね!!


橙「…(あの狐さん、藍様に似てる…)スペルカード、翔符『飛翔韋駄天』!」
フェリシア「さぁ、皆で!『Let`s Dancing!』」


 橙があちこちに飛びながら、細かな弾幕を作り上げ、更に合図を送り弾幕を変化させる。

 フェリシアはそんな中を被弾しないように、荒々しく、それでいて滑らかに踊りながら俺達を狙い始めた。


魔理沙「うおっ、ややこ…くもないな。そっちの猫は飛べないみたいだし」

小牟「1つから3つ…なんじゃ、ノーマルか」

霊夢「ノーマル?何の話よ」

零児「喋っている暇はないぞ。先にフェリシアを落す!」


 男の人だけ地上でフェリちゃんと対峙して、他の三人はこっち向かってきた。ってこれじゃぁあんまり意味ないよフェリちゃん!?


フェリシア「そぉっれ!いっくよー」

零児「相変わらず踊るように戦うんだな」

フェリシア「なんで知ってんのー。いくら顔が渋いからってストーカーは許されるもんじゃないんだよ!」

零児「俺はストーカーじゃない」


橙「うわわわわーー!!」

小牟「ちょこまかと動くでない、橙!!」


 狐の人、藍様に似てると思ってたのに全然違ったよ!やけににやつきながら追いかけてくるー!!


霊夢「…あんた、倒す気ないわね」

小牟「ほっほっほ!追いかけっこも十分弾幕ごっこじゃ!ほーれにげろぉ橙!」

橙「うわーーーーん!!」

魔理沙「戦いになってないぜ、これは」

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24 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/04(日) 14:50:33.46 ID:QJ+UFaSC0
魔理沙「戦いになってないぜ、これは」


フェリシア「くう、ストーカーの癖にやるじゃない」

零児「…(弱い?いや、これは…)せぇえい!」


 フェリシアの猫パンチが頬をかすめる。それを避け、伸びきった腕を掴み、背負い投げの要領で投げ飛ばす。

 だが相手は猫人のダークストーカー。地面にたたきつけられる前に体勢を整え着地。

 その反動で跳び上がり、民家の屋根に飛び乗った。


フェリシア「あ、あっぶなー。あの人間強いなぁ。橙ちゃんのほうはどうなって……にゃぁ”!?」

橙「にゃあああ!?どいてどいてぇぇ!」


 ものの見事に顔面衝突。童話でもそうそう見ないわね。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


橙「ふにゃっ!?ぅー…頭ひりひりしてる」

フェリシア「ご、ごめんね橙ちゃん!…あたしもひりひりするー」

橙「ううう…大丈夫だけど…くやしー!」

紫「諦めなさい、橙。貴女じゃ憑きたてのほやほやでも負けるから」

霊夢「紫…あんた今まで何していたの?」

紫「外で色々と試していたわ。ここに入れたのはついさっき。どうやら貴方達が橙を倒したからのようね」

零児「事故だったがな。それで、これまではどうだったんだ?」

紫「詳しく言っても分からないだろうから簡単に説明するけども、『無』に繋がるだけだったのよ」

霊夢「『無』?」

紫「そう説明するのが一番早いの。虚無の深淵がなんたらなんて分からないでしょうし」

橙「???…はっ!紫様!こいつらいったい何なのですか!私知りませんよ」

紫「面倒だから見て理解なさい。それで、フェリシアは?」

フェリシア「うー、だからなんで私のこと知ってんのー?まっ、まさかダークストーカー!?」

零児「…というわけだ」

紫「あらあら。…まぁいいわ、これについてはこちらで調べてあげる。
  貴方達は引き続き異変解決の軌跡をたどって頂戴」

小牟「それはぬしのほうが得意じゃろうしな。さて次は…租界じゃったか?」

魔理沙「名前は知らないけど、ただの夜空だぜ?」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


紫「行ったわね。さて、フェリシア。ついでに橙も。色々と聞かせて…あら?」


 …どこに行ったのかしら?

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25 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/04(日) 15:14:20.03 ID:QJ+UFaSC0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

〜〜〜人形租界・とある夜空〜〜〜

魔理沙「レイジ、きっちり捕まってるか〜?」

零児「ああ、なんとかな。…マヨヒガの結界を抜けたらすぐ暗くなったな」

小牟「そもそもあっちが特殊な場所だしの。してアリスよ、3回もちょっかいだす必要ないからさっさとこんかい!」

アリス「あら、何故ばれたのかしら。そもそもそちらはどなたさん?」

霊夢「『妖怪バスター』」シュッ

アリス「わわっ。もー、紅白の巫女。面倒そうに投げつけないで貰えるかしら」

霊夢「前に会った時なんども目の前うろちょろされて邪魔だったのを思い出したのよ」

魔理沙「アリス!私のこと、覚えてないか?」

アリス「白黒の魔法使い?。似たようなの見た気がするけど気のせいね。つまり知らない。
    それにしても4人もいるのに4色だけって偏りすぎ。青や緑はどこ行ったの」

零児「あの少女は?」

小牟「アリス・マーガトロイド、7色の魔法使いじゃ。どっちかっつーと人形師としてのイメージの方が強いかの?」

魔理沙「うーん、あんなことやこんなことまでした仲なのに忘れちまったか…」

アリス「?私にそんな趣味ないわよ」

霊夢「あんたのあれやこれなんて何のこと言っているのか全くわからないわよ」

零児「…霊夢や魔理沙は見た目相応の年じゃないのか?」

小牟「異変以外には刺激が少ない世の中じゃからの。耳年増にもなるじゃろうて」

アリス「それでどこに行くつもりなのかしら」

零児「冥界だ。この異変を解決しにいく」

アリス「私の5割8分にも満たないグループで?数が集まればいいってものじゃないわ。量より質なのを教えてあげる」

魔理沙「だな。弾幕はパワーだぜ」

アリス「いいえ、ブレインよ。咒詛『魔彩光の上海人形』!!」


 少女の背後から、複数の人形が飛び出してきた。どれも同じ、赤を基調とした可愛らしい人形だ。

 それらが人であるかのように動き、飛び交う。人形達は色とりどりの球を放ちながら、弾幕を構築していく。


魔理沙「よっしゃ、やってy…うわあっ!?」

零児「うおっ!…魔理沙、やはり厳しいか」

魔理沙「零児の抵抗、思いの外でかいんだぜーーー」


 大人の男性を乗せて飛ぶのは初めてなのかしら、箒のセットは上海の弾幕を大きく避けている。
 あいつらは放っておいてよさそうね。


小牟「わしらが戦っちょるから、おぬしらは避けることに専念せい!」

霊夢「どうせ私1人でも倒せるんだし、シャオムゥも避けてれば?」

小牟「習うより慣れよじゃよ。それっ、『青龍槍』!!」

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26 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/04(日) 15:19:45.02 ID:QJ+UFaSC0
小牟「習うより慣れよじゃよ。それっ、『青龍槍』!!」

霊夢「ならなんで橙で試さなかったのかし…らっ!『ホーミングアミュレット』!」


 狐っぽい妖怪がレーザーを放ってきた。分かりやすい直線だから避けられるけど、

 紅白の巫女の札型追尾弾が少し厄介かしら?上海に命令して落せるけど。


魔理沙「うおっ!小さく…避けられ…ない…!!」

零児「多少ならカバーできる!俺のことは気にせず慣れてくれ!」

魔理沙「それでも左右にぶれるうううう」


 …スルーパス。


小牟「そういやアリス、3面なのにやたら濃度の高い弾幕じゃった!」

霊夢「というか、何か強い気がするんだけど」

アリス「何故かわからないけど、人形を多く使ったほうが良い気がしたのよ。3割増しぐらいに」

小牟「じゃからか、やたらと撃ち落とされるの…わっ!!」


 紙一重で上海の弾幕を交わす狐さんに、余裕で避けながら決定打を撃ってこない巫女。それに後ろで飛んでる白黒…?


アリス「あら、いつの間にか落しちゃったのかしら」

魔理沙「外れだぜ、アリス!恋符…」

零児「今、俺達は逆さまに落ちている」


 下の方から声が聞こえたかと思うと、大きく霊力が集まり始めた。それに気付いて回避行動を取りたかったのに


霊夢「『警醒陣』!」

小牟「『白虎砲』じゃ!」


 目の前の2人が平気で周りを囲ってきた。ちょっと、これ…


アリス「避けられないスペルは禁止って!」

霊夢「単独ならねー」ボリボリ

小牟「御愁傷様じゃてアリスちゃん」

魔理沙「『マスタースパーク』!!!」


 魔理沙の魔力が八卦炉に溜まりきり、極太のレーザーが発射される。

 霊夢の、四嗣墳陣のような面制圧型の球と、小牟の、虎を模した球が上下左右への逃げ道を奪った状態で、だ。


アリス「くぅっ…」ピチューン

霊夢「流石にあたったわね」

小牟「それにしても太いの〜。霊力何倍まで増幅しとるのやら」

霊夢「あ、人形遣いが落ちてく」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
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27 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/04(日) 15:26:30.45 ID:QJ+UFaSC0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

零児「あの少女、自由落下しているぞ。気絶したようだな」

魔理沙「やっべ、やりすぎた?レイジ、受け止めてやってくれないか?流石にあのまま地面に落ちられると困るんだぜ」

零児「了解した」

 ドサッ

零児「…軽いな」

魔理沙「なんだっけか、確か苦虫は会得したとか言ってたから、それできっとダイエットしてるんだぜ」

小牟「捨食の法じゃ。そもそも間違っとるが、そっちじゃと不老不死じゃぞ。しかし零児ぃ。役得じゃのぉ」

零児「何がだ。それにしても、気絶しながらも人形達に魔力は送られているのか。器用なものだ」

霊夢「それで、繋がったのかしら。紫?」

紫「呼ばれて飛び出て♪」

霊夢「やっぱり道順通り、ね。はぁ、面倒。後は騒音に妖夢に幽々子か」

魔理沙「アリス、起きるんだぜ。アリス」

 ペチペチ

小牟「ジョイヤー!」

アリス「…ん…ぅ…何よ、五月蠅いわね…」

零児「起きたか?」

アリス「っ!な、なんで私…ええ!?」

零児「暴れるな。落ちるぞ」

魔理沙「落ち着けアリス。お前が落ちてったのを拾っただけだぜ」

アリス「え?…あ、そうか私負けたのね…って、どうして助けたの?
    ルールに『殺す弾幕は禁止だけど、事故死なら仕方ない』ってあったじゃない」

魔理沙「そんなのもあったな、忘れてた。でも、アリスを見殺しにするなんて出来ないんだぜ?」

アリス「なんでよ。さっきも言ったけど私はあんたなんか知らないわよ?」

魔理沙「別に今忘れられててもいいさ。私がアリスのことを覚えてるからな」

零児「………」

魔理沙「だから、アリスの実力だって知ってる。どうだ?一緒にこの異変を解決しようぜ?」

アリス「…へ?何を言っているの?」

魔理沙「詳しい話は面倒だから後でレイジ達にでも聞いてくれ。とにかく、私はアリスを信頼してるんだぜ」

アリス「はしょりすぎじゃないかしら」

魔理沙「アリスなら分かってくれると思ってる」

アリス「………」

小牟「(空気じゃの、わしら」

零児「(魔理沙の後ろにいる俺が一番辛いんだがな」

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28 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/04(日) 15:31:41.32 ID:QJ+UFaSC0

零児「(魔理沙の後ろにいる俺が一番辛いんだがな」

アリス「…はぁ、何か知らないけど、いいわ。ついて行ってあげる」

魔理沙「いよっし!そうこなくっちゃアリスじゃねーぜ!」

霊夢「じゃぁ、次に行くわよ。こんなところで長居している暇なんてないんだから」

紫「………」

魔理沙「じゃぁ、よろしくな。アリス」

アリス「ええ、よろしく。白黒の魔法使いさん。それに紅白の巫女に、そちらさんは?」

零児「有栖零児だ。よろしくな」

小牟「わしは小牟じゃ。よろしくの、アリス。ほれ、握手じゃ」

アリス「んっ」


 差し出された手に、アリスが答える。奇しくも、不思議の国のアリスをモデルとする二人がそろう事になったわけね。
 …でも、事はそう簡単には行かなかったりして。


 カッ!!!


一同「!?」

小牟「うおっ、まぶし!」


 異常が起きる。アリスの体が突然発光しはじめ、瞬く間に視界を遮る明るさになり、皆の目を塞ぐ。ただ一人、私を除いて。

 そして光が引き…アリスがいた場所には、誰もいなくなっていた。


霊夢「何よ、嫌がらせ?…ってあら、いないわね」

魔理沙「ちょ、アリス!?何処行ったんだ!返事をしろー!」

零児「まて、むやみに動くな。何かが潜んでいるかもしれん」

紫「その心配はないわ。見ていたから」

小牟「なぬ!何があったんじゃ」

紫「…分解されていた、というのが正しいかしらね。それも電子的に」

霊夢「電子的?ってどういう事」

紫「これまた面倒だから、溶けたと思ってくれていいわ。ともかく、そこは重要じゃないの。
  理由や方法はまだわからないけども、とりあえず一つの仮説は出来たわ」

魔理沙「仮説?どんなのが?」


紫「『異変はあくまで異変』」

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29 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/04(日) 15:36:27.91 ID:QJ+UFaSC0

紫「『異変はあくまで異変』」


小牟「ほう?それで?」

紫「それだけよ」

霊夢「はぁ?あんたらしさが戻ってきたわね。退治するわよ」

紫「そうカッカしないの。ただ単に異変通りにしか進められない、頑固者だってことよ」

零児「つまり俺達は決められたレールの上を走るしかないわけか」

魔理沙「でもなんでアリスを見てそこまで言えるんだ?」

紫「…橙とフェリシアが消えたのよ。貴方達を見送った後に」

零児「何?」

紫「驚いたわ、私に気付かれずに消すなんて。こんな風に消えているとは思わなかったし」

小牟「あやつらもか…こりゃぁますます面倒じゃな」

零児「だが、一つずつ解決していくしかない。俺達に出来ることは、そう多くない」

霊夢「…ま、ならさっさと幽々子ぶっ飛ばして異変解決ね。行くわよ3人とも」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

零児「…紫。フェリシアの事だが」

紫「はいはい?」

零児「初めて会った時の強さのように感じた」

紫「…」

零児「参考になるかわからんが、一応伝える必要があると思ってな」

紫「いえいえ、参考にさせていただきますわ」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

小牟「しかし、アリマリじゃったとはな〜」

魔理沙「アリマリ?」

小牟「カップリングじゃよ」

零児「仲のいい友達という訳じゃないのか?」

小牟「いやいや、魔理沙のあのおしっぷりは…」

魔理沙「楽が出来るからだぜ」

小牟「…なに?」

魔理沙「だってアリスは魔法使い仲間だからな。色んな成果を互いに話す事もあるんだけど、何故かあいつの成果は私と相性がいいんだぜ」

霊夢「そうね、あんたアリスに色々借りまくりだし」

小牟「幼気な少女の夢が壊れたっ!!」ガンッ

零児「…突っ込まんぞ」

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30 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/04(日) 15:44:18.59 ID:QJ+UFaSC0
今日はここまでです。2面同時に投下出来たのはたまたまで、基本的には1面ずつ投下します。
そうじゃないと後々矛盾が生れてしまいますし…自分の腕前では。

>>21
了解しました。やっぱり妖々夢を先にしておいて正解でした…最初に永夜だと…げふんげふん

戦い方のイメージですが、天則に被弾1回制を追加したようなものだと思ってください。
一応、美しさも競ってはいますが…私の感性じゃ表現しきれない…
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31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/04(日) 16:44:37.57 ID:mCc5OknAo
乙です

脳内で鮮明に再生されてるから大丈夫
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32 :少し、思いついたので ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/05(月) 10:25:58.04 ID:GBA2wrzi0
−−−  ‐ −−− ――‐−−−−−‐   −−  ―−−−−―‐−−−−

レティ・ホワイトロック

雌型 妖怪 白を基調とした青のラインが入った服を着用

能力不明 金髪の女狐によると、周辺の温度を下げる能力がある模様

引き続き、適正体かどうか調査する必要 あり

−−−  ‐ −−− ――‐−−−−−‐   −−  ―−−−−―‐−−−−
33 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/07(水) 16:52:18.66 ID:3123307v0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

〜〜〜幻想郷上方・春の空気流れる空〜〜〜


霊夢「やっぱり空の方が温かいのは納得行かないわね」

零児「普通は上空の方が寒いはずだからな」

魔理沙「お、頭が春な妖精みっけ」

リリー・ホワイト「頭だけじゃありませんよー!春ですよー!」

小牟「はいはい、デコピンじゃ」ピチューン

リリー・ホワイト「わー!落ちるデスヨー……」

零児「今の妖精にも名前があるのか?」

小牟「リリー・ホワイトというんじゃ。春告精じゃよ。ハイテンションで五月蠅い妖精じゃ」

霊夢「もうすぐ着くわよ。魔理沙、もう慣れた?」

魔理沙「おう。ばっちりだぜ」

零児「アクロバティックな操縦だった。ツァイトで飛んだ事を思い出す」

小牟「あれは命がけじゃったの。して、三姉妹はどこじゃー!」

???「おやおや?貴女達、なんでここに居るの?」

霊夢「いたわね、騒音三姉妹」

????「あら、騒音だなんて失礼ね。私達は幽霊楽団よ!」

魔理沙「心にちっとも響かない音楽は、やっぱり騒音だぜ」

???「む…まるで聞いたことがあるような言い分…」

零児「彼女達がポルターガイストか?」

小牟「うぬ。赤いのが三女のリリカ。白いのは二女のメルラン。黒いのが長女のルナサじゃ」

リリカ「説明乙。なんで私達の事知ってるのか分からないけど、そのぶんだと御呼ばれしたのかな?」

霊夢「違うわ、春を取り返しnムグゥ?!」

小牟「おお、そうじゃ。御呼ばれじゃよ、うん」

霊夢「むぐむぐぐ?(なにすんの?」

小牟「(無駄に戦う必要はないと零児が言うたじゃろ。穏便に済ませられるならそれに越したことは…」

???「嘘ね。あのお嬢様は幽霊達で楽しみましょうって言っていたわ」

零児「!…ローズ、か」

ローズ「………何故名前を?自己紹介はまだしていないのだけれど」

小牟「おお、懐かしいの!まぁその調子じゃ覚えとらんじゃろうが」

魔理沙「また知り合いか?」

メルラン「知り合いなの?ローズ先生」

ローズ「知らないわ。怪しいわね」

零児「かつての仲間の一人さ。すでに霊魂の存在だ」

霊夢「一人増えたわけね。でもこれでちょうど4対4かしら」

魔理沙「こっちは実質3人だぜ?」

零児「すまん。俺が飛べさえすれば…」
34 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/07(水) 16:57:28.80 ID:3123307v0
零児「すまん。俺が飛べさえすれば…」

小牟「流石にまだ無理じゃて」

ルナサ「何にしても…御呼ばれしたかったら…幽霊になることね…」

3姉妹&ローズ「大合葬『霊車コンチェルトグロッソ・魁』!!」


 細かく並んだ色取り取りの球が大量にばらまかれる。魔理沙はあえて弾幕の濃い所を飛び続けるようだ。


零児「魔理沙、何故わざわざ濃い所を選ぶ?」

魔理沙「もう少ししたら分かるぜ。ほら!」


 魔理沙の言う通り、4人が3つの短い光線を出したかと思うと、それを繋げ、交差し、回転させ、色取り取りの球に変化をもたらせる。


霊夢「…んー…勘が言っているわ。魔理沙、そんな場所で大丈夫なのか?って」

小牟「くるくる回って何度も変化するんじゃよな。曲げないほうが強い弾幕な気がするんじゃよな、これ」


 なんだかばればれなのが癪ね。でも私達は練習通りにやるだけ。私はちょっとさぼるけど♪


メルラン「先生、好きな時に変調しちゃって!きっちり合わせるから!」

ローズ「そうね。三-三-七拍子!」

リリカ「(げっ!」


 そう示し合わせると、三姉妹の鳴らしていた音のテンポが変わる。それに伴い、弾幕の濃い部分も変化を始める。


小牟「おお、ローズはいらぬかと思うたがそんな風な役割じゃったか!」

零児「魔理沙、こんなことはあったのか?」

魔理沙「わわっ、なかったんだぜ!おっと!」

霊夢「…?音ずれてないかしら」


 …紅白の巫女の言う通り、ずれてる。………リリカね。


ルナサ「リリカ、手を抜かない…」

リリカ「ぬ、抜いてないよ、お姉ちゃん!」

ローズ「はいっ、二-二-四拍子!」

リリカ「うわわっ!?」


 リリカのやつ、気を抜いとったらしい。結構ずれ始めとる。…な・ら!


小牟「霊夢、メルランを反時計回りに動かすぞ!」
35 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/07(水) 17:12:28.49 ID:3123307v0
小牟「霊夢、メルランを反時計回りに動かすぞ!」

霊夢「ん?…ああ、そういうこと。分かったわ」


 …やばいわね。リリカ、ずっとずれているわ。そのことにあっちも気付いたようだし…。


魔理沙「お?よっしゃ私達も手伝うぜ。レイジ、ゴールドを撃ってくれ!」

零児「了解した。『金【ゴールド】』!」

魔理沙「弾をコーティングだぜ。魔開『オープンユニバース』!」


 一直線に飛ぶ球?に魔法使いが霊力籠めて…星型の球の軌跡を作ってる。早いし残ってるし、こりゃリリカと私は詰んだかも!


ローズ「…はぁ、こんなことならもっとリリカに厳しくするべきだったわ」

ルナサ「そんなこと無い。…私達の責任…」

メルラン「次に生かせればいいのよ、次に!」

リリカ「うえええー!敗戦ムード!?ってメルランお姉ちゃんきちゃだめー!!」


ピチューン*2

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

リリカ「うえーん、ほどいてよー!」

ルナサ「…しばらくそうしてなさい。…いい薬になる」

小牟「幽霊に効く薬ってあるのかの?」

魔理沙「確か幽々子はないとか言ってた気がするぜ。色んな意味で」

零児「良かったのか、ローズ。負けを認めて」

ローズ「楽団をまとめ上げてこその指揮者よ。それが崩れた地点で私に指揮者の資格はないわ」

メルラン「おかげでお姉ちゃんは無傷だけどね。ところで貴女達はどうして先生のことを?」

零児「以前、一緒に戦ったことがあってな。その時、世話になった」

小牟「始めはブラックワルキューレに操られとるフリをしておったな。そういえば、ジューダスもそうじゃったか?」

ローズ「…ごめんなさいね、本当に覚えてないの。でも、ジューダスなら白玉楼で庭師の剣の師匠をしているから知っているわ」

霊夢「あれ?確か、双剣使いとかって言ってなかったかしら?」

零児「ああ、それも相当な腕だ」

小牟「妖夢も双剣じゃし、師匠としては申し分ないんじゃろうな」

魔理沙「そいつは厄介だぜ。あいつの剣、ただでさえ面倒なのに」

ルナサ「お兄さん達…気を付けて。ジューダスさん、春度集めに躍起だったから…」

ローズ「…そうね。彼、お嬢様の為なら殺してでも奪い取るって感じだったわ」

魔理沙「うげぇ。零児、その剣士の相手は頼むわ」

零児「庇いきれるかわからん。注意するに越したことはないぞ」

霊夢「それじゃ行くわよ。流石に二度めは半日もかからなかったわね。冥界入り」

魔理沙「実際はもっと色々回ってたしな」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
36 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/07(水) 17:32:40.87 ID:3123307v0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

霊夢「ところで、あんた達は着いてくるのよね?」

メルラン「ええ。お嬢様が勝っても負けても、演奏するわよー」

リリカ「そ、それなら紐をほどいてほしいな〜、お姉ちゃん…」

メルラン・ルナサ・ローズ「ギロッ」

リリカ「ナンデモナイッス」

魔理沙「なぁなぁ、ローズって音楽の先生なのか?」

ローズ「私はそのつもりなのだけど」

零児「少なくとも、共に戦っていた時に見た覚えはない。占いなら何度かしてもらったがな」

小牟「よく当たるんじゃな〜、これが」

魔理沙「おっ、なら私も占って欲しいんだぜ。記念に」

ローズ「本当によく知っているのね。…タロット占いだけど、よろしくて?」

魔理沙「ああ。今日の運勢頼むぜ」

ローズ「…逆さの塔、月、隠者…逆さの輪……油断はささやかな不幸をもたらす。曖昧な陰には注意が必要………」

魔理沙「時すでに遅しだぜ」

霊夢「そのままさっきの状態ね」

小牟「よし、それじゃぁこの結界を飛び越えて行こうかの!」

零児「ん?飛び越える?解く必要はないのか?」

霊夢「上を飛び越えていけるのよ。ほら」フワフワ

零児「…結界の意味あるのか?」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
37 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/07(水) 17:39:50.66 ID:3123307v0
今回の投稿は以上です。相変わらず弾幕表現に苦心。

ローズの指揮者設定ですが、オリジナルです。

始めに考えていた設定では、聖と共に出るはずだったのですが諸事情から止めました。
代わりに適当な誰かと組み合せようと思い、結果プリズムリバー三姉妹の先生役として出てもらう事に。
初めて見た時何故かピアノの先生っぽく見えたんですよね。

後、音楽とタロットについてはほぼ知らないため、間違ってる可能性が高いです。

逆さの男の逆位置なら生だとかは知っているんですけけどね。はい、某じっちゃんの名にかけてです。
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/10(土) 23:46:51.13 ID:yu6Y3TwDO
まだー?
39 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/11(日) 09:27:53.59 ID:je8ZfLVi0
すみません、ゼミの合宿があって昨日まで倒れてました。
今日中に6面道中まで投稿しますのでしばしお待ちを。
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/11(日) 10:58:35.62 ID:M1MM9nqZo
期待して舞ってる
41 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/11(日) 14:29:23.03 ID:je8ZfLVi0
−−−  ‐ −−− ――‐−−−−−‐   −−  ―−−−−―‐−−−−

 橙

雌型 式 赤の服と、緑の帽子を着用した猫又

能力不明 ただし、さほど強さを感じず

適正体である可能性は限りなく低いが、引き続き調査せよ

なお、スキマ妖怪の妨害が予想される

−−−  ‐ −−− ――‐−−−−−‐   −−  ―−−−−―‐−−−−
42 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/11(日) 14:39:24.25 ID:je8ZfLVi0
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

〜〜〜冥界・白玉楼への階段〜〜〜

 タッタッタッタッタッ…

魔理沙「おお、早い早い。階段をよくそんな速度で駆け上がれるな」

小牟「普段から鍛えているからのぉ。零児はわしが育てた」キリッ

零児「間違っちゃいないが、そんな顔する事でもないだろう」

霊夢「ドヤ顔ね。退治してもいいかしら」

小牟「別にいいじゃろ、事実なんじゃし!」

魔理沙「(…なぁ、二人はどういう関係なんだぜ?恋人だと思ったんだけど」ヒソヒソ

零児「…大事な相棒さ。それより、気を付けろ。さっきから殺気を感じる」

小牟「0点じゃな」

霊夢「5点ぐらい上げてもいいんじゃないかしら」

魔理沙「えー、60点は固いだろ」

零児「ふざけている場合か。来るぞ」


??「人符『現世斬』!!」

??「『幻影陣』!!」


 階段横にある石灯篭の後ろから突然、二つの影が左右から襲いかかってきたぜ。零児だけを狙って!


魔理沙「狙い撃ちかよ!」

零児「ふんっ!『火燐』!」ガキィン

小牟「『水蓮』!」ガキィン

??「!?」キィンッ

??「…」ガチガチガチガチ


 死角からの2撃を防いだ?この男と女…出来る。


霊夢「へぇ、剣同士で鍔迫り合いになるとあんな音がするんだ」

小牟「何を驚いとるんじゃ、妖夢。わしも剣を使うんじゃぞ?」

零児「相変わらず、妙な仮面だな。ジューダス」

ジューダス「あの騒霊達にでも聞いたのか。いや…相変わらずだと?」

妖夢「すみません、師匠。防がれてしまいました」

ジューダス「師匠はよせと何度言ったらわかる。さっさと『張れ』」

妖夢「はいっ!人世剣『大悟顕晦』!」


 妖夢めがわしらの退路を断つように剣撃を起きおった。下がれんの〜。


魔理沙「お、おい!お構いなしかよ!」
43 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/11(日) 14:49:47.47 ID:je8ZfLVi0
魔理沙「お、おい!お構いなしかよ!」

妖夢「師匠が私の剣に引っかかることなど、あり得ませんから」

小牟「謙遜か、はたまた自虐か」

霊夢「あるいは信頼かしら。シッ!」

ジューダス「ふんっ」キィンッ


 霊夢がまだ鍔迫り合いをしていた俺とジューダスの間に札を投げ。ジューダスを後ろへ下げさせる。
 そこへ、正面に回り込んだ少女が剣撃を飛ばし弾幕を張る。


魔理沙「やべ、あの変な仮面、フリーになった!」

ジューダス「…『空襲剣』!」


 後ろへ下がったジューダスは、すぐさま弾幕を一直線につき抜けながら、空から俺を狙う。


魔理沙「うん、空を飛ばれてたら私らを守れねーな」

零児「だから気を付けろと言ったんだ。せいっ!」キィンッ

霊夢「…『ホーミングアミュレット』!」


 頭の目出度そうな色をした少女から追尾式の弾幕が僕に向けられた。さしづめ、けん制の心算なのだろうが…


ジューダス「あまいっ!『トリニティ・ビット』!」


 霊夢のアミュレットがジューダスの呼び出した3つの光に誘導されよった。つーかなんじゃあれ、初めて見るぞ。


霊夢「……………」

妖夢「そこぉっ!!『憑坐の縛』!」


 霊夢は何かを考えている。できれば、戦いに集中してほしいが…視ずとも避ける、か。


零児「俺も早く慣れんとな…フンッ!」キィン!

ジューダス「『虎牙破斬』!」

小牟「おわっとと!ジューダスのやつめ、ちょこまかしすぎじゃ。てんで当たらんぞ」

魔理沙「なら妖夢だぜ!魔符『スターダストレヴァリエ』!」

零児「…『電瞬』!」ダッ


 白黒の魔法使いが私に高速で突撃を…だが、直線すぎる!


妖夢「その程度、見切れない私ではありません!」

ジューダス「!馬鹿、そいつの後ろを見ろ!妖夢!!…ちっ!………」ブツブツブツ

魔理沙「もう遅いぜ!これでいけるだろ、零児!!」

零児「ああ、この位置だ!」


 魔理沙の星は目くらましで、本命はレイジさん、ねぇ。さっきもだけど、いつの間にそんなの仲になっているのよ、あの二人。


零児「『二刀・戒刀乱魔』!」
44 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/11(日) 14:58:33.05 ID:je8ZfLVi0
零児「『二刀・戒刀乱魔』!」


 白黒を避けたかと思ったら、男の人がいつの間にか目の前に


零児「『火燐』!」スッ


 白楼剣で、袈裟に斬り下げられた燃える剣を受け止め…られず、ぎりぎりで受け流す。


零児「『地禮』!」ブンッ


 続いて更に袈裟斬りに振られたビリビリと鳴る剣を観楼剣で受け止める。


零児「まだだっ!!『火燐』、終わらせる!」ガンッ


 そこに先ほどの剣が再び降ろされ…それに合わせ、白楼剣と観楼剣を交差させて受け止めるも…落される…!


ジューダス「………『グランドダッシャー』!!」


 あっちの剣士が何かぼそぼそと唱えてたかと思ったら突然地面が蠢いて盛り上がって…大穴開いて…!?やっべ零児落ちる!

 ………………………………・・・・・・


魔理沙「ふぅ、危ない危ない」

零児「すまん、魔理沙。助かった」

小牟「逃げよったな」

霊夢「まさか、地面を破壊してくるなんてね。うわー、すごく深い。クレパスみたいにぱっくり」

魔理沙「きっと、妖夢が春度を持ってたからだぜ」

零児「だろうな。あの少女に寄った時、春の陽気がますます強くなった」

霊夢「それを確実に幽々子に届けるために逃げる、ね」

小牟「それほどまでに本気という訳か。ジューダスらしいと言えばらしいのじゃが」

零児「だが春度は集まりきらない。そうだろ?」

魔理沙「その通りだぜ。っと零児、乗るんだろ?」

零児「ああ。流石にこの穴はとび越えられん。すまないが、上までよろしく頼む」

小牟「さて、決戦・西行寺幽々子とその怨讐!の巻き」

霊夢「誰に言っているのよ。行くわよ」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
45 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/11(日) 15:07:54.09 ID:je8ZfLVi0
−−−  ‐ −−− ――‐−−−−−‐   −−  ―−−−−―‐−−−−

 フェリシア

雌型 ダークストーカー 人の肌に、猫の毛がくっついたかのような皮膚をもつ猫人

特異な力はなく、身体能力の高さで戦う模様

この世界の住人ではなく、『森羅』の関係者

適正体の可能性は橙同様低いが、引き続き調査が必要

−−−  ‐ −−− ――‐−−−−−‐   −−  ―−−−−―‐−−−−

アリス・マーガトロイド

女型 人間? 西洋の人形に着せるような服を着用

能力 七色の魔法を扱う あるいは人形師

種族に関する情報は不要 適正体の可能性を調査する必要 有

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46 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/11(日) 15:21:36.86 ID:je8ZfLVi0
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

〜〜〜冥界・白玉楼・西行妖への花道〜〜〜

零児「ものの見事に桜が満開だな。つぼみさえ全くない」

小牟「おおお。こんな光景、一、二度見たことがある程度じゃ。いやー絶景じゃのぉ。花見がしとうなる」

魔理沙「気持ちは分かるぜ。ここが冥界じゃなけりゃな」

霊夢「うちの神社もこれぐらい満開になれば人が来るのかしらね」

妖夢「それで集まるのはせいぜい春の間だけだと思いますよ」

小牟「やはり戻ってきたの、妖夢よ」

妖夢「…先ほどは無様な姿を晒してしまいました。ですが、今度はそうはいきません」

魔理沙「おいおい、一人で私達と戦う気なのか?」

妖夢「負けることは承知の上です。ですが、白玉楼庭師兼警護として、この道を譲るわけにはいきません」

零児「そいつは重畳。あのまま逃げていたら、拍子抜けするところだ」

小牟「手間は省けるが嬉しくはないしの」

妖夢「ですから、あえて今ここでいいます。この先に行って、お嬢様に殺されても知りませんよ!!」

魔理沙「本当に負ける気なのな」

霊夢「すごく間抜けな光景よね」

妖夢「自分でも分かっています。…行きます!六道剣『一念無量劫』!」


 少女が刀を振り抜く。そこから生まれた剣撃が更に多くの弾を生み、あたりで舞散る桜を巻き上げ、弾幕を構成する。


零児「それがお前さんの覚悟なら、俺達もそれ相応の技で応える。いくぞ、小牟!!」

小牟「よっしゃこい!魔理沙、デビルダムトーチを高く放り投げるんじゃ!それも一つじゃない、全部じゃ!」

魔理沙「お、おう!わかったぜ!『デビルダムトーチ』乱投擲っ!」

小牟「そしてわしも、『玄武乍』!」


 男の人があの遠距離攻撃を行う武器を構え、狐の妖怪が黒い爆弾のようなものを、白黒の魔法使いが瓶を数十個も投げている。


妖夢「?いったい何を…」

零児&小牟「『銃の型・極』…!」

霊夢「………」


 柊樹・銀・金・白銀、4つの銃口が次々に火を噴く。わしと零児が息を合わせ織りなす…


小牟「ま、大道芸じゃの」

零児「言うな」

妖夢「くっ…瓶の煙で前が」

魔理沙「すげー、全部撃ち貫かれてるぜ」
47 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/11(日) 15:30:39.28 ID:je8ZfLVi0
魔理沙「すげー、全部撃ち貫かれてるぜ」


 煙で見えませんが、弾幕は相変わらず展開しています。よしんば近づけたとしても、煙で動きはばればれです。


妖夢「私の弾幕、潜り抜けられた者など殆どない!!………あれ?」


 そういえば、霊夢さんに張りつかれた事があるような…


妖夢「?何故霊夢さんの事を知っているのでしょうか、私は」

霊夢「私から目をそらした地点で貴女の負けよ、妖夢」



 声はすれども姿は見えず。あたりまえじゃな。こんなけ煙たいんじゃし。


妖夢「っ!?そんな、いつの間に」

霊夢「眠ってる間に、天人の馬鹿と戦った時を思い出せば分かるわよっ!!」


 バチコーーーーン!!


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

妖夢「きゅう…」

小牟「わしらに気を向けさせつつ、零時間移動からの緋想天式J2AでK.O.じゃったか」

霊夢「さっきのは座布団よ」

魔理沙「そんなに固い座布団があってたまるかよ」

零児「完全に伸びているな。…どうする?」

霊夢「放置していていいんじゃないかしら。早く幽々子倒して御茶にしましょ」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
48 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/11(日) 15:39:23.97 ID:je8ZfLVi0
今回の投下はここまでです。

今回、6面道中まで投下した理由は読んでいただければ分かりますが5ボス=6中ボスだからです。
ちょうど良い区切りなんですよね。後は妖々夢独特の6面展開も理由ですけど。

次はようやく幽々子様です。
今回遅れたもう一つの理由である幽々子様です。
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/09/12(月) 08:14:29.12 ID:7isBn/vDO

合宿じゃ仕方がないな 無理せず次も頼む
舞ってるぜ
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2011/09/12(月) 18:09:58.14 ID:yNYOTeWco
ナムカプきた――――
まじで懐かしいな
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/12(月) 20:31:27.53 ID:pph8vazDO
T−ウィルスに感染したモケーレムベンベ…などというものを受信してしまった。
52 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/13(火) 12:07:23.93 ID:Pc50QwSL0
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

〜〜〜冥界・大いなる妖怪の桜〜〜〜

零児「これが、西行妖…」

小牟「そこそこ立派じゃな。神楽天原が大きすぎたせいかインパクトは薄いが」

魔理沙「これより大きい桜があるのか?すげーな」

霊夢「上に居るわね、二人」

幽々子「そう、やっぱり妖夢は負けちゃったのね」

ジューダス「僕がきっちり教えていなかったからだ。すまない、幽々子」

小牟「おぬしら、そんなところにおらんとさっさと降りてきたらどうじゃ」

ジューダス「言われずともそっちに行ってやるさ。…幽々子、行けるかい?」

幽々子「ええ。大丈夫よ」

 猛烈な違和感。あの二人が何故あそこまで親密なのか(しら)。

霊夢「あんた達、出来ているの?」

ジューダス「馬鹿を言うな。幽々子を守る事、それが僕の使命だ」

零児「ジューダス、お前…スタンのことは覚えているか」

ジューダス「答える必要はない。無駄口叩いている暇があるなら剣を構えたら」

小牟「これで構えとるんじゃよ。しかし無駄な事をしちょるの、二人とも」

幽々子「…無駄な事?」

霊夢「西行妖は咲かないわ。春度が足りずにね」

幽々子「ふふっ。無駄なことなんてないわ。幽霊には、ね」シャン

ジューダス「結果に意味などない。成すために何をするか、だ。
      たとえ結果的に咲かなくとも、幽々子が満足すればそれでいい。だが…」ガチャッ


 優雅に漂う亡霊が扇子を開くと同時、大きな扇が背後に出現する。
 隙のない剣士が独特な剣を構え、盾になるかのようにその前に佇む。


魔理沙「ま、いいぜ。もう一度地に落としてやるだけだからな!」シュパッ

霊夢「後がつっかえているのよ。さっさと解決してのんびりさせてもらうわ!」ヒュッ


 白黒の魔法使いが霊力をたぎらせ、八卦炉を燃やす。
 紅白の巫女が気だるく祓い棒を振るい、陰陽玉を回す。


幽々子「せっかくだから、桜を飾る胡蝶になりなさい、三位の人間!」

ジューダス「成すために動く以上は全身全霊だ!」

小牟「あれ、わしらの前口上は?」

零児「カットだ」

ジューダス「『スティングレイブ』!!」

幽々子「まずは小手だめし♪」


 地の更に下から突く石槍の柱と、空から降り注ぐナイフの雨。厄介な上下攻撃か。


小牟「うへぇ…事故率高い通常じゃな」

零児「亡霊姫のほう、動きが分かり辛いな」

霊夢「これは私も嫌い、よ!霊撃『無双封印・散』!」
53 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/13(火) 12:14:29.55 ID:Pc50QwSL0
霊夢「これは私も嫌い、よ!霊撃『無双封印・散』!」


 目出度い蝶が霊撃を使ってスペルを消しちゃったわ。もっと避けてくれると思ったのに〜。ひょいひょいっと♪


幽々子「でも使われちゃ仕方ないわね〜。桜符『完全なる墨染の桜-忘我-』」

魔理沙「お!零児、よーくみてるんだぜ!かなり綺麗だからさ!」

零児「余裕があればな!」


 幽々子の胡蝶が宙を舞う。彼女のふるう…墨染の桜。………


ジューダス「…『魔人剣・双牙』!」

零児「甘いっ!『零の型』!」


 レイジさんが地を這う斬撃を避け、飛び上がった勢いそのままに相手の剣士へ剣を振り下ろす。相手の剣士は迎えの剣で…


ジューダス「『飛燕連斬』!」キィン!

霊夢「まるで演舞ね。それも幽々子の舞とは別のタイプ」

魔理沙「あんな激しく攻撃されちゃぁ捌き切れる気がしないぜ」

小牟「見惚れとる場合じゃないぞ、二人とも。わしらは幽々子を止めんとな」

幽々子「あら、そんな簡単に行くかしら〜」


 幽々子の胡蝶が四方を舞う。時機狙いのようでずらしを多用する、幽々子らしいスペル。


霊夢「でも残念。つい最近戦ったから覚えているのよ!」

魔理沙「もっと簡単だったけどな」

小牟「お?やはりあの話のあとじゃな!」

幽々子「くるくるっと〜♪」


 次々と蝶を相殺しながら幽々子に近づく。補充よりもせん滅の方が早いんだけど…相変わらず焦らないぜ、あいつ。


零児「上は順調なようだな。ならば、こちらも『直撃』させる!」

ジューダス「させるかっ!『魔人滅殺闇』!」


 下の方が何か熱いと思ったら、黒い炎が上がってきてる!?


魔理沙「うわあっち!?な、なんだこれ!?」
    マ リ ア ン
零児「『魔人闇』を地面に投げつけたのか。なかなかいい発想だな」

小牟「感心しちょる場合か!グレイズ出来たからよいが、服が軽く焦げたぞ!」

ジューダス「…マリアン…?」

霊夢「私は無事なんだけど、もっ!『封魔針』!」


 目出度い奴が細かく早い針を飛ばしてきた。…ちょうどいい。幽々子の元に飛び去るか。


幽々子「お帰りなさい、ジューダス」
54 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/13(火) 12:18:59.25 ID:Pc50QwSL0

幽々子「お帰りなさい、ジューダス」

ジューダス「…ただいま、幽々子。すまない、どうやら僕の事をよく調べたようだ。手の内が読まれてる」

幽々子「いいのよ〜。…これから巻き返しましょう?」

ジューダス「…ああ。さっさとけりをつけよう。『臥竜閃』!そこだっ!」


 計4回の薙ぎ払いが斜めの交互にずばーっと…こっちにきおる。


小牟「よく見ると妖夢のあれに似とるな。ほれ、あれじゃあれ」

霊夢「あれじゃぁ分からないわよ、おばあちゃん」

魔理沙「これならしょっちゅう避けてるから簡単だぜ」

幽々子「うふふ、『スフィアブルーム』♪」


 亡霊姫が扇子を薙ぐと、それに従うように紫の線が2重3重…何重にも張り巡らされ…寄る事を拒むかの如く、次々と炸裂する。


霊夢「置きスフィアって寄らなきゃいいだけ……じゃないわね。魔理沙、あの二人にレーザー打ち込んで」

魔理沙「言われなくてもやってる!遠くて全然当たらないけどな!」

零児「霊夢!魔理沙!ジューダスをよく見ておけ!来るぞ!」

霊夢「ええ、気付いているわ!」

小牟「念には念じゃ。『結界』!」

ジューダス「……『ブラックホール』!」


 私らと幽霊二人のちょうど間あたりで巨大な吸引力抜群の弾が出て来たぜ。萃香のあれだな規模が全然違うけど。


魔理沙「うおお?レーザーが曲がってる!すげぇ!」

小牟「ブラックホールは光をも吸い込むとはいうが、まさかここで見るとはのぉ」

霊夢「レーザーだけじゃないらしいわね。ほら」


 霊夢の言う通り、幽々子の胡蝶も吸われているようだ。


ジューダス「なっ……前はこんな事なかった…のに…」

幽々子「あらら、何故かしら?」

零児「よくわからんが好機だ、魔理沙」

魔理沙「この引きで好機はない…ぜっ!霊夢、『跳べる』か!?」

霊夢「少しならね!あれは超えられない!」

魔理沙「わかった、乗れっ!かっ飛ばす!!」ヒュンッ


 魔理沙が箒に八卦炉を取り付けて、箒に立ちあがる。そこに霊夢も一緒に乗って…


魔理沙「彗星『ブレイジングスター』!!」
55 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/13(火) 12:21:41.60 ID:Pc50QwSL0

魔理沙「彗星『ブレイジングスター』!!」

小牟「彗星ロケットじゃー!」


 八卦炉からマスパがロケットの推進力かのごとくだだ漏れちょる。贅沢なスペルカードじゃな、やはり!


ジューダス「僕は……くそっ、『ストーンウォール』!」

幽々子「ちょっと遅いかしらねぇ」

魔理沙「速き事風の如くってな!岩じゃ動かざる事だぜ!」

零児「山の如く、だ」


 壁が間に合わない。幽々子を……彼女は…僕が守らなくちゃいけないんだ…!!

 ドンッ


ジューダス「幽々子が無事でさえあれば…どうにで…も…?」

幽々子「………」


 何故…何故そんな困った顔をしているんだ、幽々子。


魔理沙「   !」

霊夢「   !」


 …ああ、そうか…。飛んで来ていたのは…箒…だけ…

 ピチューン


零児「…手を誤ったな」

霊夢「霊符『無双封印・集』」

魔理沙「流石にガス欠だぁ」

幽々子「…ふぅ。駄目だったわね〜」


 霊夢の陰陽玉が幽々子に殺到してる。少しは胡蝶で相殺してるが霊夢相手じゃ時間の問題だぜ。

 ピチューン


魔理沙「な?」

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56 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/13(火) 12:27:22.27 ID:Pc50QwSL0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

零児「箒と八卦炉、回収しておいたぞ。これで終わりなのか?」

魔理沙「お、さんきゅー。いーや、まだなんだぜ」

小牟「そうじゃな。あの通りなら…最後に耐久スペルが…」

零児「どういう事だ?」

霊夢「幽々子は二度、立ちふさがるのよ」


 シャン・・・シャン・・・・・・・・・


零児「この感じ…西行妖からか?」

霊夢「ええ。見れば分かるでしょうけど、こいつも妖怪なのよ」

小牟「おお?ジューダスめも起きたの」

魔理沙「でも、さっきまであった勢いがないぜ?」

零児「ところで、耐久というのは?」

魔理沙「撃ってみれば分かるぜ」

零児「小牟、頼む」

小牟「弾を無駄にはしとうないしの。ちょいちょい、ちょいっと」


 シャオムゥの青いビームが妖怪桜に当たることなく、通り抜けていく。


零児「なるほどな。そういう結界か」

霊夢「そうなのよ。でもそのうち燃費切れになるから避けてればいいわ」

ジューダス「………」ユラリ…

魔理沙「そうは行かなそうな気がするんだけど」


『反魂蝶 –参分咲-』

『デモンズランス・ゼロ』


魔理沙「ほらみろ!」

ジューダス「…彼女………リア……」ブンッ


 ジューダスの手に生みだされた真黒な槍は、投げだされると同時に分裂し、多角度から高速で俺達を狙い定める。


小牟「早い時機狙いレーザーとかメルランかっちゅうねん!」
57 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/13(火) 12:33:27.42 ID:Pc50QwSL0
小牟「早い時機狙いレーザーとかメルランかっちゅうねん!」

霊夢「でも所詮はただの追尾式ね。そりゃ、多少は難易度上がってるけど」ガリガリ


 西行妖があやしげな灯りを周囲にまき散らす。それと共に幽胡蝶が舞う。その光景はまさしく桜が散るかのよう。


零児「密度が濃すぎる!」ガリガリガリ

魔理沙「こっちはそこまででもないってことは、地上だからか!」ガリガリガリ

霊夢「(ヒョイヒョイヒョイッ」ガリガリガリ

小牟「密度が更に濃くなってきたぞ。もうすぐじゃ、零児!」ガリガリガリ


 蝶の間がどんどん狭まってる。もう2,3セットで終わるぜ!


魔理沙「でも槍が怖いんだぜ!?」ガリガリガリ

小牟「おもいきり離れようにも、いつの間にか結界が張られとるし、の!」ガリガリガリ

零児「狭い…だがまだやれ…おい、ちょっとまて狭すg」ガピチューン

霊夢・小牟・魔理沙「「「あ」」」」


 …わしらがかすれる程度のスキマで、零児が被弾せんわけないか…


霊夢「この場合、どうなるのかしらね」

魔理沙「さぁ…なぁ?」

小牟「れいじぃいいいいいいいいい!!!!」


 その後、彼の行方を知る者は…誰も…おらなんだ……。
 そして西行妖の霊力が切れ、異変は解決した。大事な仲間を代償として………


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

零児「勝手に殺すな」
58 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/13(火) 12:41:34.55 ID:Pc50QwSL0
今回の投下はここまでです。幽々子様の弾幕は本当に綺麗ですよね。聖も負けてませんが。

神霊廟の委託販売が日曜から始まり、既に3日目となったのでネタバレ解禁します。
…まぁ閑話休題に登場するキャラが増えるだけなんですけど。

本編とは直接関係ないキャラクター達による面白説明も追加しようかな、とか思ったり思わなかったり。どうでしょう?
59 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/14(水) 23:03:39.54 ID:W+hf7bqb0
ブルース「追加するって言っても、どういう形になるかわからなきゃ判断つかねーだろ」

レイレイ「というワケで、私達が呼ばれたアルよー」

ジョーカー「いやはや、こんな形で出るとは思っていませんでした」

ブルース「俺とレイレイは仲間だったからわかるが、なんでピエロがいるんだ?」

ジョーカー「依頼者曰く、『だって2次創作だし』だとか」

レイレイ「こっちはメタ気味にいくらしいからネー。極端に嫌いな奴以外は歓迎アルよー」

ジョーカー「おほほほほ!それはありがたい。貴女の魂が死んでいるのが……おやや〜?」

ブルース「おっと、それ以上はやめにしようぜ?スタジオで銃を撃つとかしたくねぇ」

ジョーカー「あはは、冗談ですよ、ジ ョ ウ ダ ン。さて、それでは自己紹介から入りましょうかね」

レイレイ「私からいくアルヨー。私はレイレイ、キョンシーアルね。ダークストーカーだったりもするアルよ」

ブルース「俺はブルース。アメリカのエージェントだ」

ジョーカー「私はジョーカー。おちゃめなピエロです☆」

レイレイ「それは嘘アルね」

ブルース「今更おちゃめとかないぜ」

ジョーカー「おほほほほ。ピエロですから」

ブルース「まぁあの戦いのことは不問にしておいて、だ。次はこのコーナーのことを説明するぜ」

ジョーカー「ここでは、本編とは直接関係ない雑談から、原作の用語の説明などを行っていく予定なんですよ」

レイレイ「書き溜めずにその場の勢いで書くカラ、カオスだったり矛盾があったりするアルが、許してほしいネ」

ブルース「さて、それじゃぁ今回はここまでだ」

レイレイ「いくらなんでも早すぎないアル?」

ジョーカー「簡単な説明だけのつもりでしたからね〜。縁があればまた会えますよ」

ブルース「そういうわけだ。俺としてももう少し話たかったがな」

レイレイ「それじゃあ、再見(サイチェン)アルよー」

ジョーカー「にょほほほほ♪アディオス♪」

ブルース「おう、じゃぁな」


ブルース「あ?何だこの紙。『本当はキャラの口調がいまいち思い出せないかr…』」

レイレイ「やめるアルね。これだから冬瓜(トンガァ)は」

ジョーカー「おやや〜?確か冬瓜とわ…」

ブルース「いい男って意味だよ、全く…」
60 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/09/15(木) 23:56:15.20 ID:owkJ8qud0
ブルース「そうそう、言い忘れてたことがあったぜ。俺たちの話だが、別にメンバーが固定されるってわけじゃないからな」

芳香「そうだー!その都度使いやすい人を使っていくー。とか書いてあるぞー!」

ジョーカー「なので、前回や今回のようにナムカプのキャラだけなこともあるわけです」

芳香「わけだー」

ブルース「俺としては、幻想郷とやらの住人と話してみたいんだが…ま、それはそのうちチャンスがあるだろ」

芳香「だろー」

ジョーカー「それとですが、ここで出た人達の「組み合わせ」が関係ないのであって、「出た人」は本編では出ないというわけではないのです」

芳香「とかいいつつ、ここで思いついた「組み合わせ」を本編に流用する可能性もらしいぞ!どういうことだー!」

ブルース「思いつきで振り回されるって事だろ?上の命令には逆らえないしな、俺たちは」

ジョーカー「ところで、レイレイさん…何かかわりましたー?」

芳香「???」

ブルース「そういえば、服がスマートになったような…」

芳香「私は昔からこの服だぞー!…あれ?昔からだったかな?どうだったかな?忘れたぞー!」

ジョーカー「はて?」

ブルース「なんだ?俺たちが間違ってんのか?」

芳香「〜♪」
61 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/16(金) 22:53:44.87 ID:3Coz9UZ+0
ひろみ「皆さん、こんばんわ。本日の『お知らせコーナー(仮)』を始めさせていただきます、天現寺ひろみと申します」

早苗「こんばんわっ!幻想郷の真の巫女、東風谷早苗です!」

名無しの超戦士1P「名無しの戦士1Pだ。好きなように呼べばいいぞ」

早苗「いやー今日も始まりましたこのコーナー!どうやら毎日更新するようにしたようですよ!」

ひろみ「継続は力なりと言いますからね。ですが、本編はきっちりと進めてもらいたいものです」

1P「ところでよぉ、そっちの巫女さんがあれか?例の非常識のお嬢ちゃんか?」

早苗「非常識とは失礼な!外の世界の常識が通じないとのことで、思考を解放しながら日々暮らしているのです!」

ひろみ「まぁ、気持ちはわからなくもないですね。私もあの戦いで自分の常識が通じない世界とぶつかりましたから…」

1P「ま、確かにな。魔法だとかがあるなんて、おとぎ話ぐれぇだと思ってたぜ」

早苗「さて、今日はそのそちら側の世界、つまり『Namco X Capcom』の世界について簡単に話していこうと思います」

ひろみ「こちらの世界は複数の世界が次元の壁を隔てて隣り合わせに存在する世界です」

1P「俺とこっちのバイクの姉ちゃんがいたのは『物質界』の『超未来』って時代だ。零児がいた時代からものすげー後の未来だな」

早苗「その時代である『20XX年』とは、他の作品で言うところの『現実世界』あるいは『現代』ですね。私たちが住む現在の地球と同じです」

1P「次だが、『魍魎界』だ。これは『物質界』の過去の世界…って考えられてる世界だが」

ひろみ「実は、戦国時代前後に非常によく似た世界なのがわかっているだけで、本当に過去の世界かはわからないんです」

早苗「私は歴史には疎いのでよくわかりませんでした。次は『幻想界』です」

1P「これがさっき言った、剣と魔法の世界だ。まじでおとぎ話の世界なんだぜ?」

ひろみ「そうですね。杖から炎や雷が飛び出したり、幽霊がいたり…ドラゴンの話は『超未来』でもあったので驚きませんでしたが」

早苗「幻想郷では龍がいるらしいのですが…残念ながら私は見たことがないんです。なんでも雷様という話なんですが」

ひろみ「あのドラゴンは守護者だという話でしたね。次に、『魔界』です」

早苗「幻想郷にもありますね、『魔界』。その中の『法界』に白蓮さんが封印されていました」

1P「こっちじゃ所謂地獄ってぇのも『魔界』にあるな。他にはバンパーだとかダークトーカーだとかがいるか」

ひろみ「ヴァンパイアとダークストーカーです。それに、妖怪達も多く住んでいますね」

1P「そういやあの小僧もそこ住みだったか?なかなかいい根性してる小僧だぜ」
62 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/16(金) 22:54:36.51 ID:3Coz9UZ+0

早苗「そして最後は『神界』、神様やその巫女達が住む世界です」

ひろみ「他の世界とそこそこ関わり合いがあり、その中でも特に『幻想界』と繋がっている世界ですね」

1P「あんまり話すこともない世界だがな。せいぜいきれいな神様がいるってことぐれぇだ」

早苗「そう考えてみると、やはり幻想郷は素晴らしいですね!『超未来』以外の要素が詰め込まれているのですから!」

ひろみ「そうですね、確かに一つで全てを内包しているのは…まるで最後のあの状態のようです」

1P「あの戦いみてぇのは二度とごめんだな。ま、その心配はいらねぇようだが」

早苗「ですねぇ…すべて弾幕ごっこで解決していますし」

ひろみ「次回はその弾幕ごっこである『スペルカード・ルール』についての説明の予定です」

早苗「原作と本作とそれぞれ説明しますよ!」

1P「んじゃ俺は帰るぞ?相棒が宝の話を聞いたらしくてな、さっきからコールがうるせぇ」

早苗「あ、待ってください!あなたのその姿…いえ、浮かんでいるツインビーのようなものを見せてください!」

1P「ああ?「モビちゃん」をか?なんでだよ」

早苗「私、ロボットとかその手の物に興味があるんです!それもはるか未来の技術ならなおさらに!あ、天現寺さんのバイクもです!」

ひろみ「え、ええ?まぁ見るだけでしたらいいですけど…珍しいですね、そういうのが好きな女の子って」

1P「そういうもんなのか?俺は知らねぇや」

早苗「お二人さん!早く早くっ!」

1P「あーはいはい。ほら、行こうぜ嬢ちゃん」

ひろみ「ええ、わかりました。………それでは皆さん、また次回、お会いしましょう」
63 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/17(土) 23:46:45.86 ID:LZRp3hRr0
リュウ「ふん!せい!とう!!!…ふぅ」

ハーケン「おいおい、スタジオで突然どうしたんだ?ジュウドーガイ」

勇儀「なんでも明日、中のやつが10qマラソンに出るとかで気合入ってんだとさ…グビッ」

リュウ「そういうことだ。そのせいでSSが全く進んでいないらしい。一応プロットとやらは出来上がっているようだが」

ハーケン「そういうことか。でもわざわざあんたまでトレーニングすることはないだろ」

リュウ「別にそれだけじゃない。日々鍛錬し、さらなる高みに昇ることこそが俺の生きる道だからな」

勇儀「お、いいねぇ。人間にしちゃ珍しいじゃないさ。中のやつにも聞かせてやりたいよ」

ハーケン「言ってやるなって。ところで自己紹介がまだだったな。俺はハーケン。エンドレス・フロンティアで賞金稼ぎをしてるぜ」

リュウ「俺はリュウ。格闘家の端くれさ」

勇儀「あたしゃ星熊勇儀。ま、地底に住むしがない酒好きの鬼さ」

ハーケン「自己紹介が済んだところで本題に入ろうか。実は昨日の約束が次に持ち越されるって話だ」

勇儀「何でも疲れててこれを打つのもしんどいんだとか。全く情けないねぇ、ポチポチ押すだけだろうに」

リュウ「そういうわけで、今日は進捗報告だけになる。文章化済みの部分は約6割、あとは脳内プロットのみだ」

ハーケン「明日も明日でマラソンの後だからな。『お知らせコーナー(仮)』が出来るかどうかも怪しいって話だ」

リュウ「ん?明日は、今日本編が投稿されていること前提で閑話休題を投稿したかったそうだ。だが、見込みが甘かったな」

勇儀「ま、下手なもん投稿されるよりはいいって事にしとこうか。そんじゃ二人とも飲みに行くよぉ」

ハーケン「別にいいが、この世界の店のことは知らないぜ?ユニコーンオーガ」

リュウ「すまないが、俺もそういう店のことは疎い。それに、酒もあまり飲めないんだ」

勇儀「そんなの適当に入って適当に騒げればそれでいいよ。出来れば旨い酒のほうがいいってのが本音だけどさ」

ハーケン「ま、多少冒険するのもあり…か。それじゃ、アディオス」
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/18(日) 00:17:15.99 ID:W6xSx9TRo
私まーつーわ
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/18(日) 19:41:22.75 ID:ZqAsmroDO
いつーまでーも ま〜つ〜わ
66 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/18(日) 21:35:08.69 ID:TnX+0BFd0
ルーティ「たとえあなたが 振り向いてくれなくて〜も〜♪」

琥魔「にゃ?どうしましたか〜、ルーティさん?」

ルーティー「んふふ〜。中の人の記録が思いのほかよくってテンション上がっちゃってさぁ。お寿司奢ってくれるって言うのよ」

お燐「おおっ?だからご機嫌なんだねぇ、お姉さん。…ん?でも今日は無理?」

琥魔「お寿司っ!……うちとしては生の魚のままの方が好きなんだがにゃ」

ルーティ「貴女、猫だものね。さて、それじゃ今日の『お知らせコーナー(仮)』始めるわよ〜」

お燐「にゃぁい!まずはあたいからだね。あたしは火焔描 燐。皆にはお燐って呼ばれてるよ」

琥魔「はぁ〜い♪私は琥魔、『猫騒動』の店主でぇっす♪」

ルーティ「そして最後が私、ルーティー・カトレットよ。レンズハンターをやってるわ」

お燐「中の人だけどね、疲れててSSそのものを考える余裕はないんだってさ。でも、テンションはアゲアゲだからこれは書けるんだとか」

琥魔「それで私たちにお仕事が回ってきたんですぅ。ちゃっちゃと済ませて報酬をもらうにゃ」

ルーティ「…あなた、私以上にさばさばしてるわね。っと、今日は『スペルカード・ルール』についての説明ね」

琥魔「幻想郷内の少女たちの間で流行ってる弾幕ごっこ、というのが原作の話だそうだにゃ」

お燐「使用するスペルとその回数を宣言して、『スペルカード』って呼ばれる紙を掲げる。弾幕を展開してそれを突破出来るかを勝負するってものだねぇ」

ルーティ「やる気があるのなら被弾しても何度でも挑めるのよね。こりゃ確かに弾幕ごっこだわ」

お燐「と言っても、負けたら悲惨な目に合うことも少なくないんだよねぇ。あたいなんかは死体を回収する気満々だったし」

ルーティ「一応、ルール上では殺しちゃいけないのよね?事故ならしょうがないけど」

琥魔「しかも、あくまでも弾幕ごっこなので避けられない弾幕は禁止なのです。所詮はお遊びということですね〜」

お燐「そして本作では、だいたいはまぁこのルールのままなんだけど、被弾は1度っきりで、乱入が可能って状態になってるんだよ」

ルーティ「後者についてはまだ使われてない設定よね。他にもあるらしいけどちょっとまだ秘密だって」

琥魔「ちっ、そんなけちけちして後のやつに仕事を回さんでも、うちらに任せて給料増やせっちゅうねん」

お燐「あははは。後は特にないかねぇ。ああ、美しさやテーマに沿って弾幕を考えてることが多いってのを言うの忘れてたよ」

ルーティ「そうね。花だったり、飛鉢だったり、最近じゃ一二階位だったかを表す弾幕もあるのよね」

琥魔「…もしかしてそれを見世物にして銭を稼げるんじゃ…」

お燐「そういう弾幕もあるにはあるけど…あたいの友達なんかを呼んだ日にゃ阿鼻叫喚の地獄絵図だろうねぇ。その時は私が掃除しにいってあげるけど♪」

ルーティ「お燐ちゃんも結構逞しいわね。それじゃ、今日はこれまでかしら」

琥魔「こらスタッフ、チンタラしてないで早く報酬だすにゃ。…おおお!これはいい鰹節に、小判っ!!ありがとうございますぅ♪」

ルーティ「……あー、なんかあの子とは仲良くなれそうにないわ…」

お燐「……気持ちは察するよ、お姉さん。さて、あたいも帰らせてもらうね。変化っ!」にゃぁ〜ん

ルーティ「あらかわいい。じゃぁね〜お燐ちゃん。…っと、さぁ、お寿司食べに行くわよぉ!じゃあね、皆っ!」
67 :お燐の一人称、統一できてNEEEEE ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/20(火) 07:51:19.98 ID:hh8WsI7/0

零児「勝手に殺すな」

魔理沙「そもそもリスタートするだけだしな」

 西行妖を倒したら張り巡らされていた結界が解けた。それと同時にレイジさんがスキマから出てきたの。

紫「驚いたわ。まさか貴方が被弾するとは思っていなかったから」

零児「少女達の遊びだという意味、少しだが分かった気がする」

霊夢「それは誤解じゃない?で、ここの結界が消えたわけだけど」

小牟「それはわかるんじゃが、冥界の空気を知らんから判断出来んのじゃ」

妖夢「!貴女達、そこで何を…って、霊夢さん?紫様に魔理沙さんも」

魔理沙「お、妖夢に幽々子じゃねーか。今度はきちんと覚えてるんだろうな?」

幽々子「紫〜、来てるなら言いなさいよ〜」

紫「うふふ。それで幽々子、私達が分かるのね?」

幽々子「?そこの二人は分からないわよ〜?」

零児「俺達のことらしいな、小牟」

小牟「どうやらさっきの戦いの記憶はないようじゃの」

霊夢「そんなことよりさっさとお茶を出してくれる?少し休みたいのよ」

妖夢「え、あ、はい。幽々子様、よろしいですか?」

幽々子「いいわよ〜。どうやらお話したいみたいだから」

魔理沙「ふぅ、やっと休めるぜ」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
68 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/20(火) 07:53:55.52 ID:hh8WsI7/0

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜白玉楼・中庭の見える客間〜〜〜

零児「…立派な家だな。古き良き日本の屋敷だ。畳も上質なものを使っているようだ」

幽々子「若いのによくわかるのね〜。感心だわ〜」

魔理沙「ふいー、こたつこたつ」

霊夢「(ズズズ」

小牟「お、騒霊達がおるの」

妖夢「お茶と茶菓子をお持ちしました。って霊夢さん、なんでもう飲んでるの?」

幽々子「あんまり遅いから紫が出してくれたのよ〜」

紫「相変わらず妖夢は駄目駄目ね♪」

零児「この人数なんだ、仕方ないだろう。ありがとう、妖夢」

妖夢「………」ボー

零児「ん?なんだ、俺の顔に何かついているのか?」

妖夢「…い、いえ!何も!」

小牟「この一瞬で妖夢がどんな扱いか分かった気がするの」

幽々子「それで、そちら様はどちら様?」

小牟「む、そうじゃな、説明しよう」

少女説明中

〜〜〜 〜〜〜 〜〜〜 〜〜〜
零児達は自分達の事と、今起きている異変の事を話した!!
〜〜〜 〜〜〜 〜〜〜

零児「という訳だ」

妖夢「そんなことが…」

魔理沙「そうだ。紫!アリスとかはどうなってるんだぜ?」

紫「藍が確認中よ。それから、フェリシア達だけど」

 そう紫が言うとスキマが開き、橙とフェリシアが落ちてきた。

橙「(シュタッ!」

フェリシア「(シュタッ!!」

橙「何でしょうか、紫様!…あ、幽々子様だー」

紫「見つけたから、連れてきたわ」

フェリシア「な、何!?変な所通ったよ!?…ってあああーーー!レイジじゃーん!シャオムゥもいるー!」

零児「久しぶりだな、フェリシア。今度は記憶があるようで何よりだ」

小牟「久しぶりじゃのー。モモとの共演、大繁盛じゃと聞いたぞ?」
69 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/20(火) 08:02:58.55 ID:hh8WsI7/0

小牟「久しぶりじゃのー。モモとの共演、大繁盛じゃと聞いたぞ?」

橙「ほえ?紫様ー、この人達は?」

紫「見て判断しなさい」

ローズ「何やら賑やかになっているけども、どうしたのかしら幽々子?……あら、貴方達…」

フェリシア「あれ!ローズもいたんだ!久しぶりー。デミデミの所以来だね」

ローズ「お久しぶり、フェリシア。それに零児と小牟も」

ジューダス「騒がしい…いったい何なんだ…!……お前達…」

魔理沙「あ!変な仮面!」

ジューダス「誰が変な仮面だ!」

零児「ローズ、ジューダス、久しぶりだな」

小牟「積もる話はあるのじゃが、ちょいとややこしい事態での。まずは確認したい事があるんじゃがよいかの?」

ローズ「そうね、私も聞きたいことがあるからよろしくてよ」

 ナムカプ勢会話中…

 零児達は先ほど幽々子達に話したのと同じ内容を3人に話した。もちろん、彼らの記憶がなかった事も。

ローズ「私が指揮者…」

フェリシア「私は大体そのまんまなんだね〜。ねぇ、橙ちゃん」

橙「そうだね、フェリちゃん。一緒に日向ぼっこしてたもんね」

ジューダス「そして僕が剣の師匠、か。確かに、そんな面倒事を押し付けられたがな」

妖夢「ですがそれは昨日決まった話で、まだ稽古も付けてもらっていません」

零児「ローズ、どうした?」

ローズ「少し引っかかるものがあるの。誰かの事を占ったような気が…」

魔理沙「それなら私の事だな。タロット占いして貰ったぜ」

ローズ「もう一度、占ってもよろしくかしら?」

霊夢「どうして?その手の占いって、何度もしたら意味がないと思うのだけど」

ローズ「…私の占いは同じ結果しか出ないの。運命に劇的な変化が訪れない限りわね」

小牟「一度だけ、覆された事があったの〜」

フェリシア「リュウと桜ちゃんのだね〜。あれは熱かったなぁ」

ローズ「よろしくて?マリサ」

魔理沙「ま、減るもんじゃないしいいぜ。ほら」


 結果は完全に一致。それを魔理沙が怪しがって物凄くめちゃくちゃに混ぜたが、再び一致。


魔理沙「うえぇ、結果が同じってのは気持ち悪いぜ」

ローズ「これは定められた運命。でも、本来はただの一つの道標なのよ」

ジューダス「その通り動くかどうかはお前次第だ。運命は確かに強力なものだ。だが、どうにもならないものじゃない」

フェリシア「そうそう。愛だとか、友情だとか、信頼だとか、そういう強い絆を目印にして新しい道を開拓するんだよ!」

小牟「流石役者じゃ。劇団しておるだけあって恥ずかしげもなく言えるの〜」
70 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/20(火) 08:06:48.45 ID:hh8WsI7/0

小牟「流石役者じゃ。劇団しておるだけあって恥ずかしげもなく言えるの〜」

霊夢「まったくね。でも、これで戦った相手は貴女達なのは決まったわけね」

幽々子「私達はそういうの全く覚えてないわ〜」

リリカ「私がくくられたとかそんなドジするわけないもんね」

メルラン「リリカはお調子者でずる賢いものね」

ルナサ「私も覚えていない。…力になれなくってごめんなさい」

零児「自分を卑下する必要はない。それが分かっただけでも進展はあったさ。ありがとう」

魔理沙「レイジは真面目だな。でもなんで幻想郷組(こっち)は覚えてないんだぜ?」

紫「まだなんとも言えないわ。ただの偶然かもしれないし。それと、藍から連絡があったわ。アリスは家にいるって」

魔理沙「お、サンキューだぜ紫」

ジューダス「それで、他の異変とやらも解決しに行くのか」

小牟「あたぼうじゃ。他の所にもあの時の仲間がおるみたいでの。さっさと助けてやらんといかん…チラッ」

ジューダス「何を見ている。言っておくが、僕は行かないぞ。関係ない事に首を突っ込む程、お人好しじゃないからな」

ローズ「申し訳ないのだけれども、私も行けないわ。占いの結果があまりよろしくないから」

フェリシア「私は行くよー!皆とも会いたいし、この世界の事も知り合いからねっ!」

魔理沙「あれ?ローズ、標識じゃなかったのか?」

ローズ「道標よ。まぁ、そうなのだけれど………行けば分かるわ」

霊夢「ふーん。じゃぁいいわ。紫、後はよろしく」

紫「あら、もう行くの?」

霊夢「言ったでしょ、後8つもあるの。ちんたらしている暇はないわ」

小牟「霊夢にしては、行動的じゃな」

零児「それで、次はどこに行くつもりだ?」

霊夢「永夜異変よ」

魔理沙「なんかやたらと永夜を推すな。なんでだぜ?」

霊夢「3人分の食料がないからよ」

零児「何?まさか、泊めてくれるつもりなのか」

霊夢「どうせ紫がそうやって仕組むでしょ」

紫「てへぺろ☆」

霊夢「#…それに、レイジさんはいい人だから襲うとかしないでしょ。万一妖怪に襲われて食べられたりしたら後味も悪いし」

小牟「………ほぅ」

幽々子「あらら〜、まさか〜?(ニヤニヤ」

小牟「まさかの〜?(ニヤニヤ」

霊夢「『妖怪バスター』」シュバババ

幽々子「ひょいっ♪」

小牟「ぎゃあああ!?目が、目がああああああ!?」
71 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/20(火) 08:15:51.21 ID:hh8WsI7/0

小牟「ぎゃあああ!?目が、目がああああああ!?」

妖夢「わわっ!?だ、大丈夫ですか?シャオムゥさん!」

零児「何をやってるんだ。魔理沙、体の方は大丈夫か?」

魔理沙「んや、まだ3割ってところかな。けど、家に帰ればすぐだと思う。薬があるからな」

紫「送って差し上げますわ。零児達が大変でしょうから」

霊夢「あんたのスキマって人通してよかったっけ」

紫「別に問題ないわ。特に貴女達なら慣れているでしょうし」

フェリシア「うげ、もう突然はいやだよー?」

零児「邪魔したな。暇ができたらまた来る」

幽々子「幽霊になって来てもいいのよ〜」

小牟「それはわしがさせんよ。じゃあの、ジューダスにローズよ」

ローズ「ええ、気を付けて」

ジューダス「…油断だけはするな。そんなたまじゃないだろうがな」

魔理沙「…もしかして:ツンデレ?」

ジューダス「なっ…バカを言うな!僕はただ、仲間だったその三人がへまをすれば、尻拭いする羽目になるからだな…」

零児「そいつは重畳。助けてくれるつもりなら、安心して戦いに向かえる」

霊夢「うわー、あわててるあわててる。わかりやすいわね」

紫「それが彼のいいところでもあるのよ」

ローズ「否定できないわね。暗に心配しているってことをわざわざ教えてくれるのだし」

ジューダス「き、貴様ら…!!!」

小牟「わーい!ジューダスめが怒ったー!逃げろーw」

ジューダス「待て、この駄狐!!叩き斬ってくれる!!!」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ジューダス「…行ったか。それで、なぜわざわざ僕を引きとめた?」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
72 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/20(火) 08:24:02.35 ID:hh8WsI7/0

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

〜〜〜魔法の森周辺・霧雨邸〜〜〜

 ガサゴソ

魔理沙「ふぅ、あったあった」

 がさっ…ズゴゴゴゴゴ

魔理沙「っべ!?崩れる!」

 ゴゴゴォーーーーン……

フェリシア「にゃっ!?あの子の家の方から凄い音が聞こえたよ!?」

零児「魔理沙、どうした!」

霊夢「大方、荷崩れでも起こしたんじゃないかしら」

小牟「じゃろうな。二人とも、近づくでないぞ。爆発とか起きそうじゃからの」

 霧雨邸まで送ってもらった一行。紫は他にも確認しなければならない事があるといいスキマへ帰り、魔理沙の荷積み待ちだったのだが…

魔理沙「ゲホッゴホッ…だ、大丈夫、ちゃんと取れたからさ」

零児「無事で何よりだが、今度はきっちり片付けておけよ」

魔理沙「あれで片付いてるんだ。機能美ってやつ?」

小牟「それで崩れ取ったらせんないわい。して、行けるのじゃな?」

魔理沙「これ飲めば大丈夫。…っと…」ゴクゴク

霊夢「毎度思うけど、本当にそれ大丈夫なの?神社に持ってきてくれるのは食べられるから気にしてなかったけど」

魔理沙「ぷはぁ!自分用で飲む奴なのにそんな危ない物は入れたくないぜ」

フェリシア「色からして十分危ない物に見えたんだけどぉ」

零児「ま、それで何でもないなら構わんさ。…それで、永夜異変はどこからいけば…」

魔理沙「おおっと待ってほしいんだぜ。結構近くにアリスの家があるから、合流させてほしいんだ」

霊夢「…あー、そういえばペアだったわね、貴女達」

小牟「ほう?異変は魔理沙が起こしちょるって言っておったし、アリマリでやっちょったというわけじゃな。…お?そうなるともしや?」

魔理沙「おう。察しの通り、永夜異変は私が解決したぜ」

霊夢「2対1とかやってられないわよ、全く」

フェリシア「ねーねー零児ぃ、あれ何の話ぃ?」

零児「詳しくはわからんが、異変の話だそうだ」

魔理沙「それじゃ、アリスん家にレッツゴー!」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
73 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/20(火) 08:28:56.50 ID:hh8WsI7/0

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜魔法の森・アリス宅〜〜〜

小牟「おお、本当に煙突があったぞ!」

零児「それも原作とやらの情報か?」

小牟「半原作じゃな。そういう絵が描かれておるんじゃよ」

霊夢「結構再現されているものなのね。うちの神社の構造もきっちり当てていたし」

魔理沙「私の家の中もだな。っと、アリスー!いるかー!」

アリス『ん?その声は魔理沙ー?』

魔理沙「そうだぜー。話があって来たんだー!」

アリス『勝手に入りなさいよー。いつもはそうしているでしょー!』

魔理沙「だとさ。入ろうぜ」

小牟「ほほう、これはやはりアリマリな気配が濃厚に…」

零児「ただ、仲のいい女友達だろう」

魔理沙「アリスー!無事かー!」

霊夢「邪魔するわね」

零児「お邪魔する」

小牟「おっじゃまっしま〜す」

フェリシア「お邪魔しま〜す」

アリス「魔理沙うるさい。それにしても団体さんだったのね。………霊夢はわかるけど、後の3人は?」

零児「俺から言おう。俺達は……」

 青年説明中…(春雪異変の事も説明)

アリス「…私が貴女達と戦った、ねぇ」

零児「信じられないかもしれないが、事実だ」

魔理沙「そのうえで頼みがあるんだぜ」

アリス「…はいはい、どうせ永夜異変についてこい、でしょ」

小牟「流石出来る女アリスじゃ。察しが早いのぉ」

フェリシア「こ、この人形…凄く本物っぽい…」

アリス「私は本物よ。あの異変が再現されているなら、私達が一緒に居ないと異変にならないのよ。
    それに私も調べたい事があるわ。どうせなら一緒の方がいいでしょ?」

零児「そいつは重畳。確かにその通りだ。…今度こそよろしくな、『幻想の国のアリス』」

アリス「…ええ、『不思議の国のアリス』さん」

霊夢「はいはい、決まったところでさっさと行くわよ。神社から人里方面ね」

魔理沙「それなんだけどさ、このまま竹林行ってもいいんじゃね?」

小牟「な…ぬし…それは禁断のプラクティス…!!」

フェリシア「??プラスティックが何か分からないけど、エイヤって異変はその竹林で起きてたんだよね?」

アリス「実際は私達が起こしていたのだけど、それの理由は竹林の中にある永遠亭ね。不自然な月を作り出していたのはそこの医者達だったから」

零児「なるほど。それなら確かに時間の短縮にはなるだろうな」

魔理沙「だろっ?だったら善は急げ。ぱぱっと攻略して今日は休もうぜ」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
74 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/20(火) 08:46:28.11 ID:hh8WsI7/0
−−−  ‐ −−− ――‐−−−−−‐   −−  ―−−−−―‐−−−−

ルナサ・プリズムリバー

女型 騒霊 黒を基調とした赤の装飾がついた服を着用

能力不明 音に関する何かであることのみ判明

適正体の可能性は低いが 調査する必要 あり

−−−  ‐ −−− ――‐−−−−−‐   −−  ―−−−−―‐−−−−

メルラン・プリズムリバー

女型 騒霊 ピンクを基調とした青の装飾がついた服を着用

能力不明 音に関する何かであることのみ判明

適正体の可能性は低いが 調査する必要 あり

−−−  ‐ −−− ――‐−−−−−‐   −−  ―−−−−―‐−−−−

リリカ・プリズムリバー

女型 騒霊 赤を基調とした緑の装飾がついた服を着用

能力不明 音に関する何かであることのみ判明

適正体の可能性は低いが 調査する必要 あり

−−−  ‐ −−− ――‐−−−−−‐   −−  ―−−−−―‐−−−−

ローズ

女 魂魄体 紫の服に青のタイツ 黄色のマフラーを着用

能力不明 能力とは別に 運勢を診断する特技を持つ模様

引き続き 適正体かどうかの調査をする必要 あり

−−−  ‐ −−− ――‐−−−−−‐   −−  ―−−−−―‐−−−−
75 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/20(火) 08:49:38.07 ID:hh8WsI7/0
今回の投下はここまでです。昨日書きこもうとしたらサーバーエラーで全然書き込めなかったんですよね…

なので『今日のお知らせコーナー(仮)』もできませんでした。こんな形で破ることになるとは。ぐぬぬ

次は閑話休題です。夕方に投稿できればいいなぁ……
76 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/20(火) 09:19:43.42 ID:hh8WsI7/0
カッツェ「というわけで、『今日のお知らせコーナー(仮)』、始めちゃうわよ〜」

クロノア「わふー!」ドンドンパフパフ

響子『わふー!』ドンドンパフパフ

カッツェ「はいストップ。自己紹介からぱぱっと始めちゃいましょうか。私はカッツェ、カッツェ・コトルノス。ジャイアント・マーカス号のリーダーをやってるわ」

クロノア「はーい、じゃぁ次は僕だね。僕はクロノア。ガンツと一緒に冒険をしてるんだ!」

響子「 おはよーございまーーーーっす!! 私は幽谷 響子。ヤマビコやってまーっす!!」

カッツェ「二人とも元気でいいわねぇ。子供はそうでなくっちゃ♪クロノアちゃんなんか、子供なのにいい体してるじゃない」

クロノア「え、あ、何?ありがとう?」

響子「(ワクワク」

カッツェ「さぁってそれじゃぁ本題に移るわよ〜。今日はすこーし飛んで、「ゆっくり」という生物について説明に入るわ」

響子「(ガックシ」

クロノア「えーっと…うわっ!?生首!?」

響子「『うわっ!?生首!?』…あ、本当に生首だ」

カッツェ「私も初めて見たときは驚いたけど、こういう生物みたいね」

響子「この「ゆっくり」ですが、「元祖ゆっくり」がどこ出なのかわからず、いわゆるネット全体の財産として扱われているとのことです!」

クロノア「うんうん、それで…東方界隈では広く愛されてて、2次創作だとかなりの頻度で出没する、んだって」

カッツェ「だけどさっき響子ちゃんが言った通り、使われ始めた大本がわからないから、東方オリジナルだ!とかは言わないでほしいのよね」

響子「それで、「ゆっくり」は基本的にあんまり喋られなくって、「ゆっくりしていってね!!」!!って言葉を頻繁に話すの!」

クロノア「普通に喋るのもいるらしいけど、そのたびに「キャァァァァアアアアアシャベッタァアアアアアア!」ってなるんだって。…なんだろ、これ?」

カッツェ「驚いてるのしかわからないわぁ。確かにこれが喋ったら驚いちゃうけど」

ゆっくり「ゆっ!!」

クロノア「うわっ!…こ、これが本物のゆっくり?」

響子「うわぁ、紅白の巫女っぽいです…」

カッツェ「見れば見るほどに奇妙ねェ。生態を調べたくなっちゃう」

ゆっくり「ゆっくりしていってね!!」

響子『ゆっくりしていってね!!』

ゆっくり「何真似してるの?バカなの?死ぬの?」

三人「・・・・・・・・・・・・」

 キャァァァァァアアアアアアアアアアアアアシャベッタァアアアアアアアアアア!!!!

響子「ふ、普通に!普通に喋ったああああ!」

クロノア「なんか怖い!怖いよこれえええ!」

カッツェ「いやーん、クロノアちゃーん、こわーい♪」

<カ、カッツェサン!?ドコサワッテルノ!       サワルグライイイジャイノ、コノイケズー>           ジュルリ>

ゆっくり「………カオスなの?終わりなの?また次回よろしくなの?」
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/20(火) 13:44:57.78 ID:bq9baNN1o
ゆっくりwwwwwww
78 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/20(火) 21:53:39.17 ID:hh8WsI7/0

1つ目の休題「食卓の危機!」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ブォオオオオオオオー

星「………綺麗ですね………海………」

マミゾウ「ん?おお、綺麗じゃぞ。なんと言うても広大じゃしな」

星「………」

マミゾウ「…星さんはどの程度、幻想郷におられたんじゃ?」

星「えー…400年程度、でしょうか。…実際、どの程度居たのかよく覚えていません」

マミゾウ「そうか、まぁそれじゃぁ確かに海は懐かしいかものぉ。……っと、陸地が見えてきましたぞ」

星「あ、はい。そろそろ準備ですね。…!!」

 サァァァ…ザァァァ…

 ここは新潟県の海。万代島から本島への連絡船の上である。
 寅丸星と二つ岩マミゾウは幻想郷から離れ、佐渡にやって来ていたのである。

星「な…あ、あれは本当に……全て人間が造ったというのですか!?」

マミゾウ「おお、そうじゃとも。あっちこっちの建もんは全て人の手が付けられとりますぞ」

星「……本当に良かったのでしょうか。確かに、私ぐらいしか外に出られる者はいなかったでしょうが…」

マミゾウ「聖さんが決めた事だしのぉ。それに、本島(こっち)に連れて来たんわワシの独断じゃ。気にしなさるな」

星「はぁ…」


=====================================================

〜〜〜回想・命蓮寺〜〜〜

聖「…あら、大変だわ」

ナズーリン「ん?どうしたんですか、聖?」

聖「お砂糖がなくなってしまいました」

ナズーリン「……ああ、まぁ、大変です…ね、ええ」

聖「他の調味料もあまり残っていません。どうしましょうか」

村紗「どうかしましたか、聖?」

一輪「白蓮姐さん、何かありましたかっ!?」

聖「それが大変。お砂糖が無くなってしまいました。塩とかもあまり残っていませんし…」

村紗「あ〜、確かにそれは大変。ちょっと里のほうに買い出しに行ってくるね」

響子『!お帰りなさいませ、寅丸さん!』

星『ただいまです、響子さん。皆さんはどちらに?』

響子『たぶん食卓だと思いますよ!やっぱり朝なので!』

星『そうですね。響子さんもご一緒にお食事、いかかですか?』

響子『もうすぐここが終わるのでそれが終わってからでいいですよー!』

一輪「あら?星がもう帰ってきましたね。朝礼を任されていたと思うのだけど」

村紗「調味料の事もあるし、ちょっと聞いてきます」ダダッシュ
79 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/20(火) 21:58:48.18 ID:hh8WsI7/0


星「え?お砂糖がなくなってしまった?」

村紗「はい。他の調味料も心もとないのでこれから買いに行こうかと」

星「その事ですが…皆さんご一緒に話した方がよいのでとにかく食卓に向かいましょう」

村紗「あら、何かあったのですね?」

星「それも相当に重大な事が」


一輪「ええっ?里がなくなっていた!?」

星「はい。遠くから見ただけですが、里があるべき場所はただの草原になっていました」

ナズ「ん?ご主人、その場所にまで行ったわけじゃないのですか?」

星「行こうとはしましたが、気付いたら引き返しているのです。まっすぐ飛んでいるのにも関わらず」

聖「異変…でしょうか?」

村紗「それなら霊夢さんが解決してくれるとは思うのですが…まだ行動していないようですね」

一輪「どうしましょうか…ご飯は楽しく生きるための非常に大事なもの…」

5人「うーん………」

ナズ「(…あれ、なんでこの人達本気で悩んでんの?ってかいつの間にヤマビコもいるの?)」

マミゾウ「おお、皆さんお早いお目覚めで。…何やら重い空気ですな?」

聖「おはようございます、マミゾウさん。実は調味料がなくなってしまいまして」

村紗「しかも、人里のほうにも行けないというのです。…どうしましょうか…」

マミゾウ「ふむ、でしたらワシが外界に行きましょうかえ?」

響子「そういえばマミゾウさんは外の方でしたね!」

マミゾウ「うぬ。幻想郷に来る方法もわかっとりますし、調味料をあれこれ買ってくることぐらい朝飯前ですぞ」

聖「それでしたらお願いしたいのですが…迷惑ではありませんか?」

マミゾウ「いやいや、命蓮寺の方々に迷惑かけたんはワシのほうですし、ここはお任せあれ」

村紗「で、でしたらついでにカレーの材料もお願いできませんか!?実は…」

 ワイワイガヤガヤ

ナズ「ふぅ(ため息)…ま、皆で仲良くやれるにこしたことはない、か」

鵺「それがここのいい所だしねぇ。…しっかしマミのやつ、すっかり馴染んじゃって」

ナズ「君はどうして狸を連れて来たんだい?」

鵺「んー?さ、忘れたわ」

マミゾウ「うーん、流石にこれだけ多いと一人じゃ辛いのぉ」

一輪「む、そうですか…ではどれか削らないといけませんね」

マミゾウ「んや、ついてきてもらえば良いじゃろ。星さんに」

星「え、私…ですか?」

鵺「いいんじゃないー?星なら毘沙門天だし、外に出ても信仰あるわよ」

マミゾウ「鵺の言う通りなのですわ。信仰や恐れがないもんが外に出ると危なっかしいですが、あるもんなら問題なしですぞ」
80 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/20(火) 22:17:49.71 ID:hh8WsI7/0

聖「なら、問題ありませんね。行ってらっしゃい、星」

一輪「そうね、姐さん。星なら安心して任せられます」

村紗「あ、私達のこと考えて遠慮しようとしています?なら気にしないで!星はいつも頑張っているのですから!」

響子「不肖ヤマビコの私が言うのもなんですが、少し根を詰め過ぎだと思います!」

ナズ「まぁ、確かにご主人には休息が必要だと思いますよ。それに買い出しって仕事でもあるのですし、ね?」

星「……わかりました。それでは朝食をとった後、よろしくお願いしますね、二つ岩さん」

================================================

 ブォオオオオオオオオン

『○○フェリーにぃ、間もなく到着します。衝撃に備えてぇくださぁさい』

星「…そう、ですね。これは買い出しです。よーし、一杯買いましょう!」

マミゾウ「おおー!。そうじゃ、星さんや」

星「?はい、なんでしょうか?」

マミゾウ「こっちにおる間はもうちょっと砕けて話しませんかえ?周りに聞かれて不自然がられるのも面倒じゃし」

星「それは構いませんが…私、長らくこの話し方だったので…」

マミゾウ「…まぁワシの方が変じゃわな。自然体でおられればよいじゃろう。さておりますか」

星「はい。よろしくお願いします、マミゾウさん」

 カツカツカツ…

子供「うわー!ママー、あのお姉ちゃんカッコイー!」

母親「美人さんねぇ。どこかの民族衣装かしら?」

星「はっ、この服のままでした!」

マミゾウ「あっはっは。まぁ大丈夫じゃろ。背中の羽衣だけとっとりゃ不審者には見られんよ」

子供「あっちのお姉ちゃん、ださーい」

母親「こらっ!大声で言わないの!」

マミゾウ「おろろっ…ダサいかのぉ…」

星「マミゾウさんに似合っていると思いますが」

?「(いあー、あれはダサいわ。一昔前のおばちゃんかって。これだからマミは…」

マミゾウ「へっくしゅ!…誰かに噂をされとるの」

星「風邪かもしれません。無理しないでくださいね?」

マミゾウ「むぅ、健康なのは取り柄なんじゃが…」
81 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/20(火) 22:18:32.80 ID:hh8WsI7/0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
82 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/20(火) 22:26:50.25 ID:hh8WsI7/0
今回の投下はここまでです。急ぎ気味に書き込んでしまって区切りがひどいことに…

今回の話は閑話休題1前篇です。霊夢が言っていた問題を命蓮時の方々にも直面してもらいました。

それと出入りが比較的自由という新事実が発覚したのでそれをさっそくとりいれてみました。
流石に誰でも出入り出来たら結界の意味がないので条件を設けましたけど。

閑話休題は本編とそこまで関わることのない、所謂小話な予定です。
今回はまだキャラクターが出そろっていないので、しばらく出る事がない命蓮時の面々に出張っていただきました。
というか一番のお気に入りなメンバーが全然出せないというのが、○○禁みたいで我慢出来なかっただけですが。

…マミゾウさんの口調、いまいちどころか全然わからない。クリアーしたけど台詞覚えてないですし…佐渡弁知らないですし…
83 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/22(木) 00:20:09.21 ID:U3vEo7Ii0
フーバー「本日の『お知らせコーナー(仮)』、初めましゅ。進行役を務めさせていただきましゅ、フーバーでしゅ」

鈴仙「進行補助は永遠亭の鈴仙・イナバ・優曇華院と」

咲夜「紅魔館のメイド長、十六夜咲夜がお送りいたしますわ」

フーバー「お姉さんたち、どうぞよろしくでしゅ」

鈴仙「ええ、よろしくね、フーバー君」

咲夜「見た目は完全に赤ん坊なのに…すごい頭脳を持っているんですよね」

フーバー「そうでもないでしゅ。ただほかの人より発育がいいだけでしゅ」

鈴仙「少なくともそんな風に喋られる赤ん坊、見たことないわよ」

咲夜「堂々巡りになりそうなのでここで一度切るわね。さて、今日のこのコーナーですが『博麗神社』についての簡単な説明をさせて頂きますわ」

フーバー「『博麗神社』とは『幻想郷』の東の果てに建つと言われている神社でしゅね」

鈴仙「本編の中でも軽く触れられていたけど、人里に背を向けるように建てられているのよね」

咲夜「その理由については外来者、あるいは外来物を迎え入れるというのが一つ。
   もう一つはあそこが幻想郷と外の世界のスキマに存在するからということです」

フーバー「何を祀っているのか巫女しゃん自信もあんまりよく知らない神社でしゅ」

咲夜「訪れるモノは人よりも妖怪が多く、人里からは『妖怪神社』として敬遠されているわ」

鈴仙「一応、巫女はそれをどうにかしようと動くことは動くのだけど…すぐに飽きて別のことをし始めるのよね…」

フーバー「神社の御利益がわからず、巫女しゃんも参拝者を増やしゅ努力をせず、
     妖怪だらけのせいで人の信仰が少ないにも関わらず、ずっと機能し続けてるんでしゅよね」

咲夜「一説によると幻想郷の結界の要の一つ、だそうです。…しょっちゅう壊されてますが」

鈴仙「まぁ、巫女が妖怪退治の報酬を受け取ってたりするし、巫女として管理は怠ってないから、なんでしょうけどね」

フーバー「今話せることはこれぐらいでしょうか?」

咲夜「みたいですね。紅茶をお持ちしましたわ」

鈴仙「いつのまに…やっぱり時を操れる人間は侮れないわね」

フーバー「いただきましゅ。(ごく…)……!!こ、これはっ!」

咲夜「?」

鈴仙「確かにおいしいけどそんなに驚くことかしら?」

フーバー「この淹れ方…この味…この香…!!咲夜しゃん、教えてほしいでしゅ!!」

咲夜「え?…ええ、いいですけども…」

フーバー「ありがとうでしゅ!計算上はこの味を導けるんでしゅが、どうしても実測値がずれていたんでしゅ!」

 赤子受講中…

鈴仙「………本当、フーバー君何歳よ……あ、今回はここまでよ。じゃぁね」
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/22(木) 00:22:02.37 ID:WNa5NzEQo
乙です
85 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/22(木) 22:19:35.85 ID:U3vEo7Ii0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

注意事項:永夜抄から書き方を変更しています。読みにくくなっている可能性があるので注意して下さい。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
86 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/22(木) 22:20:27.66 ID:U3vEo7Ii0

〜〜〜竹林・永夜結界(仮)の外側〜〜〜

魔理沙「へへっ、到着〜っと」

アリス「相変わらずここは竹だらけね」

フェリシア「なんだか、研ぎたくなってきた」

零児「猫の本能…なのか?」

小牟「竹で研ぎたくなる猫…おるのかの?」

霊夢「さぁ?…この結界、春雪のそれとだいたい似てるわね」

零児「流石結界の管理者だな。…そこまでは、俺にはわからん」

アリス「それじゃ、ここから行くのね?魔理沙」

魔理沙「おう!ここから永遠亭の道は一直線だからな!遅れるなよー」ビューン

フェリシア「おー!」ダダッシュ

小牟「おー!」ふわふわ

アリス「おー!」

霊夢「………」

零児「………」

アリス「おーーー!!!」

零児&霊夢「言わなんぞ」「言わないわよ」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

〜〜〜人里と神社の間・明けぬ夜〜〜〜

零児「…………竹林…じゃない?」

小牟「おかしいの、さっきまでは確かに竹林じゃったと思うが」

零児「魔理沙、霊夢。どういうことかわかるか?……ん?」

小牟「おらんな?つーかアリスとフェリシアもおらんぞ」

零児「…どういうことだ。竹林でもない、あの三人もいない。…そして」

リグル「こんな夜中に不用意に出歩いてちゃ、攫われちゃうよ?お兄さん」

小牟「リグルじゃな。ぬしは一人か」

リグル「?ええ、一人だけど…もしかして先客だったのかな」

零児「いいや、俺の連れだ。…彼女は?」

小牟「リグル・ナイトバグ、あの触角が示すように虫の妖怪じゃ。確か蛍じゃったか?」

リグル「あれれ、私も有名になったのね。でもそれってちょっと困るかな?」

小牟「そして男の娘じゃ」

リグル「私は女の子よ!」

零児「ボーイッシュには見えるが、可愛らしい部類だろう」

リグル「そうそう、その通りよ!お兄さんはいい人ね」

零児「さぁな。褒めたとしても、悪さをするつもりなら退治するぞ」

リグル「あははっ!大丈夫よ。お兄さんとはちゃんと勝負してあげる!」

小牟「(うまいこと手玉にとった感があるの」

零児「(お前が勝手にそういう流れにしたんだろ)…タイマン勝負をしてもいいか?」

小牟「む?急にどうしたんじゃ、零児」
87 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/22(木) 22:23:24.35 ID:U3vEo7Ii0

零児「どうやら、俺はまだ、スペルカード・ルールだと足手まといだ。修行する必要がある」

リグル「私は2対1でも構わないよ?というか二人でかかってきたらどうかしら」

小牟「ま、リグル程度なら大丈夫じゃろ。がんばれー零児ぃー」

リグル「むっ、失礼ね。人間程度に遅れは取らないわっ!蟲符『ナイトバグストーム』!」


 蛍の少女から幾重にも弾幕と使い魔が放たれる。使い魔は蛾の形となり交差しながら零児を狙う。
 零児はそれらを前後左右に避けながら火燐と地禮を護業から引き抜く。柊樹だけを残し、護業は零児の手から離れ落ちる。

 リグルの弾幕の第一幕が展開終了し、第二幕が放たれる。第一幕の攻撃を避け、いなし、斬り払いながら、二つの隙間を見続ける零児。
 リグルはそのまま三度、弾幕を展開し始める。零児は火燐を放りあげながら金【ゴールド】をリグルへと向け発砲する。

 リグルはそれをやや危なげに避ける。第三幕の弾幕に多少の乱れが生じるも、すぐさま再展開。
 そして続けざまに第四幕の準備する。そこを狙っていたかのように、零児が猛接近する。
 交差しながら行く手を遮る蛾をいなし続けながらあと数歩まで近づく。
 蛍が第四幕を張り始めたのに合わせ、時計回りに弾幕を避ける。そしてそのまま弾が途切れた所に地禮の突き一閃。
 リグルはそれを紙一重で避けるも、そのまま地禮の横凪に足を払われ…勝負が決まる。

 ピチューン


リグル「い、痛い…足切れてないっ!?大丈夫っ!?」

零児「安心しろ。みね打ちだ」

小牟「刀持ちが一度は行ってみたい台詞の上位にランクインしちょる言葉じゃな」

零児「…まぁ確かに言ってみたかったがな」

リグル「うう…弾幕勝負で負けるんじゃなくて、近距離で負けるなんてー!」

零児「いいや、弾幕勝負だったさ。金(こいつ)でお前さんの和を乱さなきゃ、近づくのは厳しかった」

小牟「言うて、殆ど見えとったじゃろ、零児」

零児「…まぁな。幽々子の後だったからか」

リグル「そ、それで私を退治するのかな、お兄さんは」

零児「今回は見逃すさ。一応、試したい事があるにはあるが…付き合ってもらった礼だ」

リグル「うう…」

小牟「してリグルよ、人里はどっちのほうに行けばいいかの?」

リグル「え?それならあっちだけど…」

零児「……何か飛んできているぞ」

小牟「うーん、あのシルエット的には…ミスチーじゃな…」

リグル「げっ、ミスティア?今会うのはまずわっ!じゃあね、お二人さん!」

零児「ああ、気を付けて帰るんだぞ。…何を慌ててるんだ?」

小牟「一応天敵じゃからの。それより零児、耳栓つけるのじゃ」

零児「?…ん、ああ」


 耳栓@音響結界・通信術式刻印済み


零児『聞こえるか、小牟』

小牟『うぬ、良好じゃぞ、零児』
88 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/22(木) 22:26:40.51 ID:U3vEo7Ii0

ミスティア「     」

零児『あの鳥の妖怪…夜雀だな』

小牟『うぬ。ミスティア・ローレライ、歌で人を惑わす妖怪じゃ』

ミスティア「  ?   、    !」

零児『何か話しているようだぞ』

小牟『鳥目にされると面倒でのぉ。そのために耳栓したんじゃが…』

ミスティア「###(シャキーン!」

小牟『短気じゃな』

零児『損気だな』

ミスティア「  『       』!」


 ミスティアが何か言葉を発しながら弾幕を展開する。鳥を模した使い魔の弾幕である。
 だが二人には時機狙いの球とその周囲を飛ぶ使い魔が薄く弾幕を張っているのを何の不自由もなく見つめている。

 当然、その程度の密度の弾幕ではリグルとそう変わらず、あっという間にミスティアを追い詰め、落とした。


ミスティア「…   !   !!」

小牟『鳥目になっとらんとこんなにも簡単か、こやつ』

零児『明らかに薄かったが…やはり、本来はもっと面倒なんだな?』

ミスティア「   !          !」

小牟『見える範囲が狭まれるからの。連射出来れば対処しやすいんじゃが、わしらは言うほど連射出来んし』

ミスティア「……(シクシクシク」

零児『……泣いたぞ。…とるか』

小牟『鳴いたの』

ミスティア「二人だけで話してると思ったら…こっちの弾幕にはきっちり反応してきて…
      挙句鳥目になってないですって…あはは…私…あはははは…」

零児「おい、泣くな。もう聞こえてるぞ」

ミスティア「…ふぇ?」

小牟「すまんのぉミスチー、おぬし対策で耳栓しちょったんじゃ」

ミスティア「ふぇえ?…そんなので私の能力聞かないなんて…うわああああん!」

零児「…普段はこんな妖怪なのか?」

小牟「いや、なんか自尊心ずたぼろにされたようじゃな」

ミスティア「ヒック…ズビビ」

零児「………いたたまれない気持ちになって来たぞ」

小牟「う、ぬ。わしもじゃ」

ミスティア「どうせわたじなんでやきとどりになっで食べられちゃうんだ、うわーん!!」

零児「はぁ…どうする、小牟」

小牟「どうする言われてものぉ…放置するしかなかろうて?」

零児「…はぁ。ところで、これで一つめなのか?」

小牟「いんや、永夜抄的に言うと2面じゃ。こやつらは通りすがりじゃからの」
89 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/22(木) 22:35:02.56 ID:U3vEo7Ii0

ミスティア(鳥形態「ぴーーーー!!」

零児「とうとう化けれなくなったな…置いて行くか」

小牟「じゃな。どうせ解決すれば忘れて元通りじゃ」

零児「そのことなんだがな。……一つ、試したい事がある」

小牟「うぬ?なんじゃなんじゃ?」

零児「………目に見える傷を負わせて、それが解決後にも残るかどうか、だ」

小牟「…あー、確かに大切じゃな。…でもそれならこやつの羽を持って行けばよいと思うぞ」

零児「ああ。…鳥で良かった」

小牟「じゃな」

ミスティア「TNTN!TNTN!」

零児「………何だ、その…色々とすまん」

小牟「そういえば、紫めがこんの」

零児「三姉妹の時も来なかっただろ。連絡手段があれば楽だったんだがな」

小牟「うーん、地霊殿の陰陽玉があれば会話できるんじゃろうか?」

零児「俺に聞かれてもな。お前の方が詳しいだろ」

小牟「次、聞いてみるかの。しかし、こうもまんまと永夜のスタイルになるとは…」

零児「と、いうと?」

小牟「うぬ、人間と妖怪っちゅースタイルじゃ。永夜で選べた時機は必ずその組み合わせでの」

零児「普段の俺達だな。一応、珍しいんだな?」

小牟「永夜独特じゃな。本体は人間で装備が妖怪、っつーのはちょくちょくあったんじゃが」

零児「魔理沙はともかく、霊夢も、か。…やはり、この世界はどこかゆるいな」

小牟「違いないの。ま、それが東方projectの売りじゃよ」

零児「そうなのか。…俺も少しは調べるべき…か?」

小牟「オタクなぬしなどみとうない」

零児「…よくわからんが、止めておこう」
90 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/22(木) 22:43:21.93 ID:U3vEo7Ii0
今回の投下はここまでです。次回は3面と閑話休題1中編を投稿予定です。

…はい、かなり手を抜きました。永夜のストーリー的に、夜が長くってテンションヒャッハーな通りすがりなだけの妖怪*2…こちらでの話が浮かびませんでした。
2章に入ればきちんと活躍するのですけどね。

それと、永夜の次に行く異変について、最近レスにて募集します。次々回投稿までになかった場合は酒宴異変とします。

残りの異変一覧

 紅霧:紅魔郷
 酒宴:萃夢想
 結界:花映塚 (60年周期の大結界異変
 気質:緋想天
 神略:風神録
91 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/23(金) 00:45:40.65 ID:roL6W+Gd0
平八「うおっほん。今宵の『お知らせコーナー(狩)』はこのわし、三島平八と」

リグ「…リグ・ザ・ガードと」

飛燕「あー…飛燕が…お送りする」

平八「どうしたうぬら!元気がないのぉ!フッフッフ…」

リグ「突然呼び出されてきてみれば、二人の相当な手練れが居たのだからな。警戒ぐらいする」

飛燕「それもあるが…そもそも、俺たちのような悪役だけで進めていいものなのか?」

平八「構わんから呼ばれたんじゃろ。それに、わしは一応英雄側じゃぞ?」

リグ「そのあふれ出る邪悪なオーラ…それで英雄だと、自分でも思っていないことを口にだされても…な」

平八「フッフッフ…まぁ、問題ないということでとにかく進めるとする。今日の解説は零児めらが所属する、『森羅』についてじゃ」

飛燕「政府特務機関『森羅』…『物質界』の時代における、裏の組織だ。活動内容としては妖怪やオカルトに関する怪異の解析、および処理となっている」

リグ「かの女狐が所属していることから、人間以外にも妖怪がエージェントとして活動している模様。ただし、未確認だ」

平八「解析班と呼ばれる部署らしきものがあることから、前方活動派と後方支援・解析派に分かれていることがうかがえる」

飛燕「本拠地については中の人が度忘れしたようだ。六本木あたりにあったと記憶はしているが…」

リグ「今度、時間が出来たときに最初から最後までやり直すとのことだ。…6年も前の作品だからな。少しばかり勘弁して貰いたい」

平八「以上で終わり…のようだな」

飛燕「ああ(重苦しい空気だった…ストライダーズでももう少し軽かったぞ…」

リグ「…」ジャキッ

平八「…」スゥゥ…

飛燕「…ああ、やはりなのか」

リグ「武人とあったとき、拳で語るのみ」

平八「同意じゃな。貴様らのなかなかの気配に体がわいとるわ」

飛燕「…はぁ、いいだろう、やってやる。死んでも恨むなよ」

三人「ハァアアアアアア!!!」


 その日、スタジオは崩壊した。
 スタジオ修復費を平八が出費したためすぐに建て直されたが、近所迷惑ということで3人にはきついお灸が据えられていた(主に映姫から)


河童「かぱー。忙しいやー」
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/09/23(金) 08:14:31.76 ID:78SeuEEDO
乙〜

次か……
私は 早苗に 会いたい

だから風で


酒宴と聞いて、東方蟒酒宴(2次創作ゲーム)かと思ってしまったのは俺くらいだろうな……
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/23(金) 12:33:29.38 ID:ETE6IYyco
乙です
酒宴も良いけどここは神略で
諏訪子様ぁ!!
94 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/24(土) 00:06:02.19 ID:oi1KoAtC0
ブルース「いよっ、久しぶりだな!今日の『お知らせコーナー(仮)』は俺と」

雛「〜♪鍵山雛と〜♪」

霖之助「森近霖之助がお送りするよ。よろしく、外の人間さん」

ブルース「おう、よろしく。今回のテーマは『東方二次創作』だ」

雛「一応、世間一般における『二次創作』についても少し説明するわ。ああ、すごい厄…ブルースさん」

ブルース「あ、ああ…そうなのか?」

霖之助「『二次創作』とは、元となるネタに対し、その権利を持つ者持たない者に関わらず行われる創作活動のことだね」

ブルース「権利を持たないやつがしているのは『同人活動』と呼ばれる。これはまぁ大抵がグレーゾーンな行為だ」

雛「商業ルートに乗せることなく行われてるのであれば大体の権利者は黙認、あるいは放置するわ。一部…例を挙げるとD社なんかは結構厳しいの」

霖之助「そして、『二次創作』は、元となるネタが複数ある場合がある。それらはパクリ、オマージュ、リスペクト、コラボと色々な呼ばれ方をする」

ブルース「このSSもそうだな。東方とナムカプとムゲフロのトリプルコラボ。ナムカプとムゲフロの関係を見るとダブルっぽいけどな」

雛「『東方二次創作』の場合、前3つが多いけど…『幻想入り』物も多いの」

霖之助「事の発端は某動画投稿サイトに投稿された『東方俺が幻想入り』だね。…少なくとも、中の人はあれが原点だと認識している」

ブルース「東方projectの設定の中にある、忘れ去られたものが幻想郷に入ってくる、という設定を利用した2次創作だ」

雛「これにより、他作品のキャラや物、あるいは現象を東方が吸収し発展するという形式が作り上げられたの」

霖之助「これには東方projectの世界観も多少関係しているのだけどね。読者に自由な考察と創作を許しているのが大きかった」

ブルース「このSSも、一応は『幻想入り』という形式をとっちゃぁいるが……あん?おい、資料ここで途切れてんぞ?」

雛「ついこの間、スタジオが壊されたと聞いたわ」

霖之助「どうやらそのようだね。河童達が忙しそうにあっちこっち行くのを見かけたよ」

雛「厄もたくさん漂ってる。…でも、やっぱりブルースさんが一番多いわ」

ブルース「その厄ってのは、確か災難のことだよな。雛ちゃんにはそれが見えるのか?」

霖之助「彼女は厄神だからね。厄を集める以上、見れるのだと思うよ」

雛「よければその厄、回収してもよろしいかしら…?」

ブルース「ああ、構わんさ。むしろ取ってくれ。それで運が向いてくるならばんばんざいだ」

霖之助「はたして、それはどうだろうね。運が悪いことが起こるかもしれないからこそ、運がいいことが起きたときの喜びが増えるんじゃないかい?」

ブルース「そりゃぁそうだが、運悪く死にました。じゃしゃれになんねぇからな」

雛「…ふぅ」

霖之助「…確かにね。命あっての物種ってやつだね。ああ、悪いね。今日はここまでのようだ」

ブルース「次の分は一応完成しているんだが、気に入らない部分が多いらしくって明日、投稿予定だそうだ」

雛「うっ……重いわぁ。ああ、厄い厄い…」

霖之助「さて、僕は商品の動かし方を聞いてくるよ。それじゃあ、また機会があれば」

ブルース「おう。っと…体が軽くなった気がするぜ!っておおおう!?雛ちゃんなんだその黒いの!?」

雛「これが厄よ。普段は人には見えない程度なのだけど…うふふ、貴方の厄、すごかったのね」

ブルース「こんなのが俺についてたかと思うと…うう、さみぃさみぃ。悪いが俺も帰るわ」

雛「ええ、お疲れ様。私も流してくるわ。それじゃあね。…くるくる〜♪」
95 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/24(土) 00:14:28.01 ID:oi1KoAtC0
>>92
了解しました。神略こと、風神録を次の異変とします。
蟒酒宴は私もしてますよ。むしろ若干ひっかけてました。

>>93
そういえば忘れかけていたネタがありました…ケロちゃんこと諏訪子様に感謝。
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/24(土) 00:18:37.14 ID:Y8tBzFbfo

諏訪子様の出番が楽しみだ
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/09/24(土) 10:33:06.41 ID:y62wpzaAO
霖之助さんだと!?この1とは良い酒が飲めそうだ。本編での出番も期待。
98 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/24(土) 23:27:47.04 ID:oi1KoAtC0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜人里だった場所・満月になりきれない夜〜〜〜

零児「蛍の娘が言っていた方向、こっちで合ってたはずだが」

小牟「今は見えんよ。慧音めが里の歴史を喰うたからの」

零児「くった?…全く、常識が通用しないにも程があるな」

慧音「何故その事を知っている、妖怪!」

小牟「ぬしの能力はけっこうチートじゃからの、慧音!」

??「あの少女の幻想郷演義にもまだ載せていないことを…相手は相当調べて来たようですぞ、慧音先生!」

慧音「そうですね、英雄先生。それでも里を守るため…ここは通さん!」

零児「今度は英雄先生か。…慧音先生という事は、あの少女は塾か何かを開いているのか?」

小牟「寺小屋じゃの。主に幻想郷の歴史を教えとる」

英雄「何…私の事まで…いやはや、有名になってしまったものですねぇ」

慧音「英雄先生…何を喜んでいられるのですか。こいつらは里を襲いに来た妖怪ですよ!」

零児「俺は人間なんだがな。それに、里を襲いに来たわけじゃない」

小牟「そうじゃ。後ろの月を……ああいや、これじゃ戦うフラグじゃ。わしらは竹林に用が合ってここを通っちょるだけじゃ!」

英雄「むむ、竹林ですと?ですがあちらも…」

慧音「英雄先生、それは他言無用とお願いしたはずです」

英雄「ええ、わかっておりますとも。それで、竹林に何の用があるのですか」

零児「(……英雄先生なら分かってくれるだろう)竹林の奥にある永遠亭、あそこの医者達に用がある!」

小牟「(ほいさっ)あそこに匿われちょる姫が面倒な事をしておってな!それを阻止する必要があるんじゃ!」

慧音「あそこの姫まで知っているのか」

英雄「ということは…」

小牟「うぬ。竹林にすむあやつの事も知っちょるよ」

零児「(あいつ?いったい誰のことだ」

小牟「(ぬしに説明するのを忘れておったから後で教える。今は合わせといてくれ」

英雄「…どうやら嘘やハッタリの類ではなさそうですな」

慧音「そのようですね。すまなかった、二人とも。この永い夜に気が立っていてな…」

零児「分かってくれたならそれでいいさ。それで、通してくれるんだな?」

英雄「ええ、あそこのお姫様にはつくづく手を焼いていまして…いや、体を、ですかな?あははは」

小牟「間違っとらんが…それは妹紅が、じゃろ」
99 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/24(土) 23:46:48.64 ID:oi1KoAtC0

零児「ですが英雄先生、俺達の事、覚えていないようだな」

英雄「おや?どこかでお会いしましたか?」

小牟「ぬしも同じく、か。そのことは異変が終わってから話しに来るから待っててくれい」

英雄「そうですね、貴方達を長い事引きとめては夜が更に長くなってしまいます」

慧音「すまない。力になれればいいのだが…あいにくここを離れるわけには…」

小牟「気にすんな!よくわかっとるからの」

零児「つい先ほど、二人の妖怪に襲われたところだからな」

英雄「なんですと?ではやはり警戒しなければなりませんな」

小牟「安心せい。理由は面倒なんで省くが、慧音がこのまま歴史を隠し続ければ問題ないからの」

慧音「め、面倒…」

零児「こいつはそういうやつなんでな。…それでは失礼する。早く行かないと食いっぱぐれる」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

零児「それで、その竹林に住む人とは誰の事なんだ?」

小牟「藤原妹紅、竹林の案内人じゃな。…不老不死なんじゃよ」

零児「不死者か。なるほど、それは確かに隠そうとするか」

小牟「それだけじゃないんじゃよ。結構ひどい事をした過去があってのぉ…」

零児「なるべく人眼には触れさせたくない、と。だが、そういう生物は腫れ物を扱うように接する方がかえって危険じゃないか?」

小牟「さぁのぉ。あやつめの自暴自棄な時期は一応過ぎさっとるから大丈夫じゃろ」

零児「…ま、そうじゃなきゃ竹林の案内人にはなれないか。ところで、竹林を抜ける算段はあるのか?」

小牟「まかせんかい!このわしを誰じゃと思うておる」

零児「行き当たりばったりの駄目妖怪だ」

小牟「ありゃっ?零児ぃ!!!」

零児「冗談だ。頼りにしてるぞ、小牟」

小牟「…むぅ」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

〜〜〜竹林・魔力漂う迷い路〜〜〜

小牟「迷った」
100 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/24(土) 23:47:35.40 ID:oi1KoAtC0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

   ↑本編

   ↓閑話休題1中編

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
101 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/24(土) 23:51:55.03 ID:oi1KoAtC0

星「ぉぉぉ…」

マミゾウ「あはは、驚いとるのぉ。これが現代の姿じゃよ、星さんや」

星「あの島も色々な建物が立ち並んでいると思っていましたが…これは…なんというか……すごいですね…」

マミゾウ「ずっと見続けてきたからわかるが、巡るましい発展ぷりじゃったよ」

星「ぼー…」

マミゾウ「これこれ、そう口をあけて空を見とると田舎もんと思われますぞ」

星「あ、はい、すみません」

マミゾウ「そんじゃま行きますか。ほれ、こっちですわ」

 少女移動中…

星「お、大きい…」

マミゾウ「集合商店、最近じゃデパートというとるかな。さ、入りましょうか」

星「ここでは何を扱っているのでしょうか」

マミゾウ「頼まれとったもんはだいだいありますかいの。ほれ、まずは腐らんもんから行きますぞ」

星「なんでも?万屋なのですね…」

マミゾウ「そうですなぁ、確かに万屋じゃな。ほれ、人も多いですしはぐれんよう着いてきて下さいよ?」

星「む、大丈夫ですよ。そんな子供でもありませんし…」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

星「は、は…逸れてしまった…」

星「…一応、霊長の札は貸していただいていますが…」

星「…先ほどから霊力を送ってはいるものの反応がなく…困りましたorz」

?「(妨害してるのに気付いてないわねぇ。相変わらず面白い反応見せてくれるわ」

星「それになんだか見られている視線が多くて……服…やはり変えておくべきでしたか…」

?「(服替えてもその髪だと結構見られると思うけどね」

星「下手に動くよりは、ここでじっとしていた方がよさそうで」グルルルー

?「(残念お昼。…星は一番働いてるからすぐお腹すくのよねぇ…ニヤニヤ」

星「う、うう…困りました…」

?「(さぁ、恥を晒すがいいわ、星!ネタになるから…!」

マミゾウ「なーにしちょる、鵺」

鵺「はひっ!?あ、マミ!?き、奇遇ねぇこんなところで」

マミゾウ「尾けておってなぁーにが奇遇じゃ。わしらの化かし合い歴忘れよったな」

鵺「なーんだばれてたの。でもまぁいいわ、星の反応面白くって楽しめたし」

マミゾウ「確かに化かしがいのある妖怪じゃがな。ほんじゃら、ほい」

鵺「ん?何?この荷物?」

マミゾウ「もて」

鵺「はっ?いあいあなんで私が…」
102 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/25(日) 00:18:12.26 ID:MmX6wF6G0

マミゾウ「聖さんの頼みもんが半分ほどはいっとるんじゃがなー。これがなかなか重くてのー。これ以上もてんかもしれんー」

鵺「……あーはいはい、わかったわよ…持って帰ればいいんでしょ…先帰ってるわ」

マミゾウ「なんじゃ、一緒に昼食べんのか」

鵺「邪険に扱っておいて何を今さら。それに、星の反応は好きだけどおしゃべりは苦手なのよね。そんじゃねー」

マミゾウ「…天の邪鬼め。さて、と。星さんやー」

星「!マミゾウさん!す、すみません迷子になってしまいました…」

マミゾウ「かまいませんぞ。わしがもう少し気をやればよかったわけじゃし」

星「ですが、御荷物が……あれ、ありませんね?」

マミゾウ「知り合いがおっての。任せて実家に持ってってもろうたよ」

星「そう…ですk」グルルルル

マミゾウ「おお、そういえばお昼でしたな」

星「あ、あのこれはその」

マミゾウ「知っちょるよ〜。星さんが食いしん坊なことぐらい。食べるとこもありますし休憩っちゅーことで」

星「面目ない」

マミゾウ「午後からきっちり持ってもらいますしきにしねーって。んじゃ、フードコート行きますかの」

星「フード…コート?」

マミゾウ「行ってみれば分かりますぞ」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜デパート内・フードエリア〜〜〜

星「わぁああ!す、すごい!沢山のお店が…あ、あれはなんでしょう。こっちも!あああの子供が食べてるのも美味しそう…」

マミゾウ「気にいったようですの、星さん」

星「はっ!………ごほん」

マミゾウ「今さら取り繕わんでもよいですぞ。まぁ、見ての通り色んな店がある場所でしての。星さんがしらんもんも多いかと」

星「…はい。正直、どれもこれも食べてみたくてしようがありません」

マミゾウ「どうせまだまだ時間はあるんじゃ、星さんのお腹が満足するまでのんびりしましょうぞ」

星「で、でしたらまずあの…まく○なる○?の月見バーガーとやらを」

マミゾウ「そういえばそんな時期でしたな。適当に空いとる席をとっといて下され。買ってきますからの」

星「わかりました。…こちらでのお買い物の方法がまだよくわからないので…お願いいたしま」グルルルー

マミゾウ「おお大変じゃ。早く買ってこんと星さんの腹の虫が暴れ出しそうじゃ」

星「(カアアアアッ」

 その後、フライドチキンの店だとか、天ぷらがたくさん乗ったうどんだとか、ラーメンだとか…
 毘沙門天的にそんなに食べてもいいのか?というぐらい色々と食べた星は、食べ終わってから、自身の業の深さに頭を抱えるはめとなった。


聖「星はそれぐらい食べても罰は当たりません。…あら、つい独り言が」

一輪「ま、まさか姐さんに毘沙門天様からの神託が…!」

村紗「いや、いくらなんでもそんな神託はないと思うわ、一輪」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
103 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/25(日) 00:24:37.16 ID:MmX6wF6G0
今回の投下はここまでです。英雄先生って結構便利なクッションですよね…(ナムカプ的にも

閑話休題1に関してですが、現状では本編と時系列的なつながりがあるだけで完全にほんわかのんびりほのぼの系です。

それと新潟には行った事がないので地理的なことやデパートの規模等はフィクション入りまくりです。
本当はもう少しリアルにしたかったのですが…

次回は少々手こずっていますので間が空くと思います。5面6面のプロットは結構簡単に出来たのですがねぇ…
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/25(日) 00:25:52.11 ID:fBHxVmzeo

焦らず>>1のペースで頑張ってくれ
105 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/25(日) 00:55:53.18 ID:MmX6wF6G0
諏訪子「と言う訳で〜今日の『お知らせコーナー(仮)』、始めちゃうよ」

ブルース「進行役は俺、ブルース&レジーナの、雛ちゃんに厄を吸ってもらってから絶好調な方、ブルースと」

諏訪子「神奈子&諏訪子の、くるくるオメメの可愛い方、諏訪子と!」

静葉「あ、あの…えーっと…合わせないと駄目…ですか?」

ブルース「あー…合わせてくれた方が場の空気的にはいい、かな?」

諏訪子「そんなのだから信仰が薄いのよ。ほらほらもっとアグレッシブに行かなきゃ〜」

静葉「…そう…ですね。!静葉&穣子の、紅葉を司る方、静葉ですっ!!」キリッ!

ブルース「いよっ!静葉ちゃん!」

諏訪子「そうそう、カマトトぶる必要なんてないのさっ!信仰しなかったら祟っちゃえばいいんだし♪」

静葉「それは流石にどうかと思います」

ブルース「さて、今日の話だが…実はなんもないんだそうだ」

諏訪子「なんでも、このままのペースでこのコーナーを進めると話しのネタがなくなっちゃうらしいわ」

静葉「いくらなんでも早いんじゃない?と思った方、実はストーリーに合わせて解禁しないといけない内容もあるらしいんです」

ブルース「つまりさっさと話を進めろ。ってことだ。…けど中の奴、色々と忙しくて予定の6割程のスピードになってるんだそうだ」

諏訪子「それと2章にまわしたいネタが多すぎて1章の展開に苦戦してるんだってさ。妥協してさっさと進めればいいと思うんだけどね〜」

静葉「おそらく拘りなんでしょうね。あるいはそもそも発想力不足…」

ブルース「お、結構きつい事言うんだな、静葉ちゃん」

静葉「あ、あの。私一応神様なのでちゃん付けはちょっと…」

諏訪子「そうけちな事言わないよ〜、静葉ちゃん。うちの神奈子なんかガンキャ○ンとか言われても笑顔なんだから」

ブルース「フランクな神様なんだってな。諏訪子ちゃんも同じ神社に祭られてるんだろ?」

諏訪子「そうよ〜。ややこい理由があってね〜」

静葉「これも信仰の形…ええ、きっとそう…そうよ静葉………ちゃん」

ブルース「神様もこんな反応示すんだな」

諏訪子「むしろ神様だからこそよ。はっきり言っちゃえば人間とそうかわらないしね」

静葉「そ、それでは本日はここまでです」

ブルース「そういえば静葉ちゃんは寂しさと終焉の象徴って二つ名があるそうだが…俺からしたらナンセンスだな」

静葉「え?」

ブルース「紅葉の季節に酒飲みながら夜風に吹かれるってのは、そりゃぁ風情あるもんだ。あの雰囲気に寂しさだとか、俺は感じないぜ」

諏訪子「お、いい事いうねぇ。なかなかに日本の事を知ってるじゃないの、白人さん」

ブルース「零児達に勧められてな、あれからお気に入りなのさ。ま、そういうわけでもっと明るく行こうぜ、静葉ちゃん!」

静葉「え、ええ。ありがとう」

諏訪子「本当、絶好調だねぇ。……祟っちゃうわよー」

ブルース「おおうおっかねぇ。ここはささっと逃げるに限るな。そんじゃ、また次回にな!」
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/25(日) 11:09:05.34 ID:fBHxVmzeo
諏訪子様ぁ!俺だー!結婚してくれー!
107 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/25(日) 23:59:00.33 ID:MmX6wF6G0
静葉「………」

稔子「お姉ちゃん?なんでそこで固まってるの?」

静葉「…虫の音を聞いていたの…後、漢字間違ってる…」



穣子「一発変換できないって悲しいね…ってそうじゃないわ、お姉ちゃん。今日の『お知らせコーナー』の時間よ!」

静葉「でも、あと一人がいないわ。今日は東方キャラだけだって聞いていたのだけど」



穣子「へんね、さっきスタッフに訊いたらすでに着てるって言ってたのに…いな…」

こいし「わっ!」

静葉「きゃっ!?」

穣子「うわっ!?ど、どこから湧いて出たの!?」

こいし「無意識っ!」キリッ!…あ、神様こんばんわ♪

静葉「は、はい。こんばんわ」

穣子「こんばんわ…って随分フリーダムな子ね。「」に捕らわれないなんて…」

こいし「今日の内容は『博麗大結界』についてだよー」

穣子「勝手にはじめられた!?えとね、『博麗大結界』っていうのは私達がいる『幻想郷』を囲う結界の中でも最も影響力のあるモノのことよ」

静葉「『幻想郷』と外界を遮断する役割を持ってて、内外に関わらずその境目を察知することは困難を極めるの」

こいし「これは信仰や恐れが少ない神や妖怪を守るための結界で、不必要な人も多いっちゃ多いよ!」

穣子「発案者の妖怪の賢者も信仰とかとは別の話だけど、そうだもんね…閑話休題にもあったけど、マミゾウって狸の妖怪も不要なんだよね」

静葉「外界でも確かな信仰がある存在は大丈夫なようね。あの寅の妖怪さんはどうやら阪神って集団から大々的に信仰を得ている、という設定らしいわ」

こいし「毘沙門天を祀ってるらしいからね!それで、『博麗大結界』は『2次創作』の時に話した『幻想入り』の仕組みを内包してるんですって!」

穣子「この『幻想入り』なんだけど、外の世界で忘れ去られたっていうのはあくまでも『存在或いは事象』がなので注意ね!」

静葉「不法投棄やごみとして処分されたのならば、ゴミとして認識され続けるものね。…今日はここまでかしら」

                                                             ねぇ、これなーに?

穣子「お疲れ様、お姉ちゃん。んーっ!座りっぱなしってのも疲れるものねー」                         へぇ、明石焼きっていうんだ…パクッ

静葉「ええ、でも楽しいお喋りの時間よ。……あら、いつのまにかあの妖怪がいないわ」                     うまいっ!

穣子「本当だ。私達の無意識さえも操れるなんて…なかなかの逸材だわ」                            もらうね〜♪

こいし「ねーねー、これいかが?」

静葉「あら、お帰りなさい。…これ、何かしら?」

こいし「明石焼きっていうらふいほ」

稔子「口に入れたまま喋らないの。…どれ、ひとつ。……あらおいしい」

静葉「そうなの?じゃぁ私も……あら、これは」

こいし「そこの人間!作り方を教えなさいっ!」ビシィッ!

穣子「なんだか今無意識に何かされた気がしたわ」

静葉「そうね。…あ、私にも教えてほしいかも」

穣子「お姉ちゃんも味をしめたか。…じゃぁ今日はここまで。本編の投下予定は火曜だって。期待せずに待ってあげてね」
108 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/27(火) 00:10:35.14 ID:sfY1F6Mu0
零児「本日の『お知らせコーナー(仮)』改め、『一日一談』だが…今日はお休みだ」

零児「先日も言った通り、このままの速度ではネタがつきてしまうんでな」

零児「…まぁ、『一日一談』以外にも進捗報告は必ず行うつもりだ」

零児「中のやつの思いつきで、また一つ増えるかもしれんしな」

零児「…そういうわけで、今日はここまでだ」

零児「それじゃ、また会おう」
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/27(火) 00:18:09.02 ID:a9BIcz1Po
おーう、乙
110 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/09/28(水) 01:07:38.26 ID:/MjJMpnB0
すみません、ゼミで出された課題で忙しかったため今日の投稿はありません。『一日一談』もです。
また、明日に投稿できるかもわからないです。この数の弾幕表現・戦闘描写は流石に無理があったかも…orz

お知らせが遅くなってしまい申し訳ございません。
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/28(水) 08:02:35.86 ID:CCzzrFCqo
書ける時に書いてくれれば良いですよ
たまに生存報告さえあれば
112 :永夜異変4面前半 ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/10/02(日) 20:49:08.80 ID:1Vt3zl2u0
〜〜〜竹林・魔力漂う迷い路〜〜〜

小牟「迷った」

零児「お前を当てにした俺が馬鹿だった」

小牟「仕方なかろう!まさか竹林の上を飛ぼうとしたら頭を打つなぞ知るわけないじゃろうに!」

零児「迷宮を上から攻略するのは邪道だからな。しかし、いくら竹林とはいえ、この迷い方は…」

小牟「そういうチューニングされとるからの。…だぁっ!月の狂気なんぞわしは追えんぞ!」

零児「術も無駄だったからな。いったい、どんな術が掛けられてるんだ?」

小牟「魔理沙や霊夢がおればまーだ追えたんじゃろうが…どうにも嫌な予感しかせんしのぉ。後、術ではないぞ」

零児「…そのエイヤショウとやらだと、主人公対決だったか?」

小牟「うぬ。それに魔理沙らの証言から、アリマリが霊夢を撃ち負かしたっちゅー話しじゃから…」

零児「アリスと魔理沙の二人と対峙する可能性が高い、か」

小牟「まぁそれにしても進めれんことには何とも……お?」

妹紅「やぁ、お二人さん。こんなところで夜更かしデートかい?」

零児「そんなのんきに見えるのか?」

妹紅「質問に質問で返すのはよくないよ。ま、迷子にしか見えないけどさ」

小牟「いやはや、まさかここでぬしが出てくるとはの…」

妹紅「慧音に頼まれたのよ。あんた達を永遠亭まで送って欲しいってね」

零児「そいつは重畳。実際、迷っていたところだ。だが、いいのか?」

妹紅「何故か知らないけど私の事知ってるんでしょ。なら今さら隠れててもしょうがないわ」

小牟「その事はまた後で説明するかの。…んじゃ道案内頼めるか?」

妹紅「お二人様、永遠亭にごあんな〜い、ってね」
113 :永夜異変4面前半 ◆JbeFpMnays [saga]:2011/10/02(日) 20:59:50.18 ID:1Vt3zl2u0

〜〜〜数十分後〜〜〜

妹紅「ふーん、24年来の、ねぇ」

零児「その間に色んな人や妖怪を見て来た。だから、今さらお前さんのような人間にも驚く事はないさ」

妹紅「…私を知った上で人間と呼んでくれる人が他にもいるなんてね」

小牟「零児めの肝は強いからの。こっちの意味でもの」クイッ

妹紅「あはは、そりゃ今度試してみたいね。って、んー?あれって噂の巫女かしら」

小牟「うん?どうしたんじゃ…ておお、霊夢じゃの」

零児「ん?あの隣にいる妖怪…見たこと無いな」

小牟「藍じゃよ。紫の式じゃな。…っつーか魔理沙もおらんか?あれ」

零児「ああ。…というか、アリスもいる」

妹紅「あら知り合いなんだ。…でもあの四人ぴりぴりしてない?」

小牟「もしや、噂の勝負の場面かの?…じゃが、霊夢めは一人じゃと言っておったし…」

妹紅「んー、悪いけどもう少し遠くで見させてもらうわね。あっちにばれるのはよくないし」

零児「ああ、気を付けてな」

妹紅「大丈夫大丈夫…」ボッ

小牟「ん?何故に炎を点けとるんじゃ、妹紅」

妹紅「貴方達が標的になるだけだから、っさ!」


 そういい、妹紅は特大の炎を霊夢と魔理沙達の間へと放り投げる。
 その弾は少し離れた地面に着弾、軽く弾幕をばらまいた。4人はそれを難なく避けた後、零児達の方を向く。
 4人と2人の視線が交差する。零児はすぐさま後ろを確認するが、既に妹紅はいない。
 すると視線の先に霊夢と藍が出現し、こちらを見据える。反対を向くと、ちょうど挟み込むような位置に魔理沙とアリス。
 挟撃の形である。


小牟「な、何をしとるんじゃあやつはあああ!」

零児「…殺気立っているな、霊夢。無理もないが」

霊夢「当たり前でしょ、こんな異変の最中にあんなことされちゃ。で、なんであんた私の事知ってるの?里の人間じゃないのに」

魔理沙「あれ、霊夢ってそんなに里に顔出してたっけ?」

アリス「さぁ。私に聞かれても」

零児「…霊夢達も、か」

小牟「やはり最悪のパターン…っぽいのぉ」

藍「答える気はないようだな。それでどうするんだ、霊夢。魔理沙が先か、この二人が先か」

霊夢「そうね、不意付いて攻撃してきたこっちの方がよっぽど危ない…わよね、魔理沙」

魔理沙「そもそも私達は危なくないぜ!ただ月をおかしくさせないためにおかしくしてるんだし!」
114 :永夜異変4面前半 ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/10/02(日) 21:07:05.70 ID:1Vt3zl2u0

小牟「わしらだって危なくはないぞ!さっきのだってわしらじゃなくて妹紅がじゃな」

霊夢「言い訳無用。それに妖怪なら退治しなくちゃ」

アリス「……その隣にいるのは何よ、霊夢」

霊夢「え?使い魔よ」

藍「せめて式と言って欲しいな。それに、紫さまからの指示でこうしているだけだ。お前の使い魔になった心算はない」

魔理沙「おーおー、仲間割れなら歓迎だぜ」

零児「たきつけるな。…こうなった以上、腹をくくるか」

霊夢「覚悟は決まったかしら。さっさと決めるわよ、魔理沙」

魔理沙「へへっ、流れ弾に当たっても知らないぜ?霊夢」

アリス「………」

藍「………」

小牟「くっそぉう!後でけちょんけちょんにしてやるからの、あやつめ!!」


妹紅(さぁって、お手並み拝見)


 アリスが蓬莱人形によるレーザーを展開したことで、混戦の火蓋が落される。

 小牟と零児はそれをそれぞれ左右に避け、武器を構える。
 そこへ、霊夢と藍が分かれて二人に襲撃する。

 小牟の方へ霊夢が、使い魔を全方向に飛ばしながらお札を集中砲火し、
 零児へは藍が急接近、そのまま張り付くようにクナイ型の射撃で襲いかかる。

 小牟はそれを空へと回避しながら、藍へと水蓮の水のカッターを見舞う。

 零児は弾幕をグレイズしながら後ろに下がり、四嗣墳陣の壁を作ることで残りを遮断。
 そこへ小牟の放った水の斬撃が藍の居た空間を裂く。だがすでに藍は霊夢の正面へと召還され、何かを構えていた。

 零児が回避行動をとったことにより、魔理沙達との距離が縮まった所へ魔理沙が『アース・ライトレイ』を展開。

 アリスはそびえ立つ竹に合わせた高さに、武器を持った人形達を散開させていた。

 零児は体勢を立て直しながら付近へ降ってくる使い魔を2,3斬り伏せるが、小牟の傍へと落ちた使い魔はそのまま上空へとレーザーを射出。
 小牟は銀【シルバー】を自分の方へと射出口を向けていた使い魔へ1弾発射。
 使い魔から放たれたレーザーとぶつかり…レーザーが四散する。

 結果、二人とも魔理沙から飛んでくる星型弾幕を難なく避けた。

 だが、金属による反射は人形達も行っていた。

 人形達がそれぞれに持つ(人形にしては)大剣とランスで、空へと撃ちだされたレーザーを精確に撃ち返す。
 上がるときはてんでばらばらであったレーザーが、緻密な調整によって二人へと大量に降り注ぐ。
 大雑把な魔法使いと繊細な魔族のコンビによる新たなスペルカードである。
 
 もっとも、零児はそれを見越して既に走り出し、小牟は原作ルナシューターの勘から横っ跳びで対処したのだが。

115 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/10/02(日) 21:12:23.73 ID:1Vt3zl2u0

霊夢「…ま、この程度でやられてたら面白くないわよね」

魔理沙「だな。せっかく霊夢を消耗させられると思ってるのにさ」

アリス「…乗ってないと結構強いものね…」

魔理沙「ん?アリス、どうしたんだぜ?」

アリス「なんでもないわよ。ところで巫女、さぼらないでくれるかしら」

霊夢「これでも一応貴女達に合わせたつもりなんだけど。さてそこの二人、ここからが本当の弾幕ごっこよ」

零児「だろうな。態々四人もいるのにこの程度じゃ意味がない」

小牟「何を冷静に分析しとるか。じり貧じゃぞ、じり貧」

霊夢「あら、四人だけだなんて誰が言ったかしら」

藍「その通りだ!式神『橙』!!!」

アリス「まだ増やすつもりなの?いくらなんでもあの二人可哀そうじゃない?」

小牟「ぬしが言うか、ぬしが。・・・」ジトー

零児「・・・・・・」ジー

藍「…は?」

魔理沙「で、あの化け猫はどこなんだ、藍」

霊夢「ふざけていると貴女から退治するわよ」

藍「ふざけてなどない!…呼びかけに返事がない。橙も、紫様もだ」

小牟「ほむ。そいつは重畳じゃな。よい情報をありがとう、藍」

零児「俺の台詞をとるな。ところで、あれは何をしていたんだ」

小牟「まぁ、橙めを呼びだそうとしておったんじゃ。失敗のようじゃがな」

霊夢「…はぁ、いいわ。使えないなら使えないで退治するし。さっさと準備なさい、藍」

藍「…ああ、くそっ。式輝『狐狸妖怪レーザー』!」

魔理沙「そんじゃ続きだぜ。恋符『ノンディレクショナルレーザー』!」

零児「おい、これはやばいんじゃないか」

小牟「ま、まだ大丈夫じゃ。自機狙いを引きつけてから左右に避けれ…うわああああ!」
116 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/10/02(日) 21:27:01.62 ID:1Vt3zl2u0

 恋符『ノンディレクショナルレーザー』…パチュリーノーレッジのスペルを元にした、魔理沙お得意のラーニングスペル。
 自身から星を流しつつ、使い魔が薙ぎ払うようにレーザーを放ついわゆる上位交換版である。

 そこに更に合わせて放たれる藍の赤と青のレーザー。それらは確実に二人の行動範囲を制限する。

 この二つだけであれば、まだ2次元的だったから良かったのだが…そうはいかない。

 アリスがそこへ人形達を降り注がせる。その多くを零児へと向けて。

 零児を狙って降って来ていた大玉を避けながら、人形に向かって金【ゴールド】を撃つ。貫かれたと同時に爆発する人形。

 危険性を理解した零児が一転、柊樹【ハリウッド】に構えなおし、レーザーの発生元にあるスキマを走り抜ける。
 そのレーザーを掻い潜りながら自分に向かって急降下する人形達を、竹を蹴って跳ぶことでグレイズする。
 そして構えていた柊樹を、こちらへと方向転換した人形にぶちかます。
 散弾が人形達に降り注ぎ、多数の爆発を生む。それらは連鎖を起こし、衝撃となって爆風を起こす。

 一方、零児の傍へ行かせない程度の人形の壁を作られていた小牟は、霊夢の攻撃にさらされていた。

 何度も何度も、まるで自分自身が弾幕になったかのように蹴りをかます霊夢。
 その動きに合わせて被弾覚悟の動きをする人形達。…やたらと頭を狙ってきているのは仕返しかっ!。

 そんな事を叫びながら打開策を探る。だが隙を見つけようとする程に、軌跡に残される札が動ける空間を更に狭めてくる。
 しかもそれが自機狙いに変わるのだから非常にややこしい。

 だが所詮、ただややこしいだけだと、ふと気付く。

 その事実に気付いた数秒後、零児がいた方向から爆発音。そして衝撃波…。

 だが、先ほど片方だけ外していた耳栓から聞こえてきた音で零児の動きを知っていた小牟は、それほど煽られる事なく踏みとどまる。

 霊夢はというと…爆風を涼しげに浴びていた。巫女の勘チートちゃうか。

 人形達も爆風にあえて飛ばされる事で上空に退避、そのままいつの間にか月を背景にして浮かぶアリスの傍へ。

 藍と魔理沙は位置が遠く影響も少なかったため、スペカを中断して様子を見ている。

 零児は爆心地に近かったため少し押し出される形になったが、近くの竹に護業を引っ掛け勢いを殺し、ゆっくりと降りてきた。


零児「(スルスルスル」トンッ

魔理沙「ひゅー!速攻のつもりだったのに案外耐えるぜ」

霊夢「思った以上ね。正直、もう少し早くねをあげてほしかったかも」

小牟「ふっふっふー。それほどでもあるぞ」

零児「浮かれるな。…それに、回避に専念しているだけだ。じり貧なのにかわりはない」

藍「この忙しい時でなければじっくり付き合ってもいい人材だな。だが、生憎と時間はない」

アリス「あら、私達をおいとけば夜は明けないわよ」

藍「それも含めてだ。幻想郷の人間が怯えるだろう」
117 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/10/02(日) 21:37:52.50 ID:1Vt3zl2u0

零児「人里なら安全だぞ。寺子屋の少女が里を隠していたからな」

魔理沙「それに、この月をどうにかしたら元に戻すって言っただろ」

霊夢「どっちも信用ならないわよ。ああもう面倒ね。さっさと諦めなさい」

小牟「ところで、わしらは2度戦う事は許されんのだろうか」

零児「よくわからんが…許されないだろうな。挟まれているうちは」                            チッ

霊夢「当たり前でしょ。逃がすわけないじゃない。そろそろ1回休みなさい!」

魔理沙「永遠にな!行くぜ、アリス。魔符『スターダストレヴェリエ』!」

アリス「はいはい。戦躁『ドールズウォー』!」

藍「式輝『四面楚歌チャーミング』!」

霊夢「夢符『二重結界』!」

小牟「あ、すまんこれは」

零児「見ればわかる。…詰んだな」


 アリスが放った人形に魔理沙の使い魔が重なり、武器を振りまわしながら弾を残す弾幕と化す。

 そこに藍の交差する米と大玉、更には霊夢の空間を繋ぎかえる結界である。

 藍の米型弾が結界を通り、妖精達と合わせるように目の前に出現する。
 大玉はそのまま通り過ぎ、行動できる空間を徐々に狭めて行く。

 人形達の軌跡に残った弾が動きだし、そこへ再び人形が剣を振りまわし迫りくる。
 小牟も零児も人形を撃ち落とし、陣を張り、対抗するが正直なところ意味もない。                      チリッ

 そして気付けば、二人はかなり近づいた状態で回避に専念していた。
 それはもはや、背中合わせと言ってもいいほどに。

 そこへ魔理沙が待ってましたと言わんばかりに八卦炉を構える。    チリッ


魔理沙「王手だぜ!」

アリス「ちょ、急に制御任せないでくれない!」

小牟「ま、まてい4人とも!わしの話を聞かんかー!」

霊夢「もしどこかでやり直し出来ていたら、その時は聞いてあげなくもないわ」
                                                     ジリリッ
魔理沙「終わりだぜ、赤黒い二人組!恋符…」


 慌てて外周へと逃げ惑う人形達はお構いなしに、魔理沙が八卦炉からまさに今発射しようとしている。

 左右は藍とアリスの弾幕で回避不能。上空には小牟がかろうじて逃げられる程度のスキマ。


 万事休すである。
118 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/10/02(日) 21:49:59.11 ID:1Vt3zl2u0

 だが、そのスキマに黒い球体が出現する。


??「備えてっ!零児さん!小牟さん!」

零児「っ!掴まれ、小牟!」

小牟「うおっ!?なんかあの黒いのデジャブじゃ」

霊夢「誰?」

魔理沙「今さら間に合わないぜ!『マスタースパーク』!」

???「…『ブラックホール』!」


 魔理沙のマスパが発射される。その瞬間叫ばれる剣士の叫び。

 出現した黒い球体が膨張し、周りの弾幕を吸い始める。それは近くにあった竹さえも根元から引っこ抜き、光さえも吸い込む。

 零児は護業に付けられた鞘を地面に深く刺し、吸われないように力を籠める。
 小牟はそんな零児にコアラ抱き。

 ブラックホールは逃げ切れなかった人形達も含めて、あたりの弾幕を全て吸い込みつくし、収縮し消滅する。


魔理沙「 」ポカーン

アリス「…人形が…7割なくなったわ…|||orz|||」ズーン

藍「なんだ今のは…まるで…」

霊夢「!藍、跳ぶわよ捕まりなさい」

??「人鬼『未来永劫斬』!」


 竹林の奥から何かが月光を反射したかと思うと、藍の居た場所目がけて妖夢が跳び上がって来た。
 それを、結界を足がかりとした零時間移動により回避した霊夢と藍は、魔理沙達の傍に浮かぶ。

 そんな少女達を睨みつけながら、竹林の奥から歩いてやって来たジューダスが零児の横に並ぶ。


ジューダス「まだくたばってなかったか。しぶとい奴らだ」

小牟「何を言うとるか。わざわざ術を使ったくせに〜、このこの」

零児「助かった、ジューダス。それに妖夢も。だが、どうして二人が」

妖夢「詳しくは霊夢さん達を倒してからにしましょう。ただ、紫さまから言伝が」

小牟「おう、そうじゃ。紫めはこっちに来とらんようじゃが外かの?」

妖夢「はい。…「藍が貴方達の邪魔をしていたら、ごめんなさいね」とのことです」

零児「何、この展開はいつもの事さ。だが、ジューダス…良かったのか?」

ジューダス「何がだ?その時はまとめて斬ればいいと言ってやったから問題ない」

小牟「やっぱりそれでこそぬしらしいの。じゃが、手心は加えてやれよ?」

ジューダス「…二人とも、行けるか」

零児「…ああ、ここからが反撃の時間だ」
119 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/10/02(日) 22:03:07.54 ID:1Vt3zl2u0

魔理沙「…はっ!マスパが、マスパが吸い込まれてったぜ!?」

霊夢「いつまで放心していたのよ。それにしても…全然疲れてないわね、あの二人」

藍「激しく揺さぶった心算だったんだが…ますます興味深いな」

アリス「それで、どうするの?悪いんだけど、手持ち的に無理できないわよ」

霊夢「流石にこの人数は面倒ね…」

魔理沙「あれ、萃香のと似てたけど…そんな規模じゃなかったぜ…すげぇ」

藍「それに、あの鬼意外にも重力を萃められる者がいたとは…それもあんな少年が…」

霊夢「全くどいつもこいつもやる気はあるのかしら」

魔理沙「お前に」

藍「だけは」

アリス「言われたくないわよ」

霊夢「何ようっさいわね!とにかくあんたたちはフォローに回りなさい。藍、撹乱なさい」

藍「…はぁ、了解」


魔理沙「(なぁ、アリス」

アリス「(何よ?」

魔理沙「(いあ、実はさ…」


120 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/10/02(日) 22:10:51.91 ID:1Vt3zl2u0
今回の投下はここまでです。ジューダスのブラックホールまじ便利。

ゼミの課題と大学の授業に追われる日々がこの内容とちょうど被って練り込むのに時間が掛かってしまいました。

次回の投下も似た程度の文量になるかもしれないのでやっぱり数日開きます。ご了承ください。


それはそうと、小牟の声優こと南央美さんが、某風来系のパロディゲームを出しているサークルの声優として起用されました。

…正直、ゲーム本編が楽しみでしょうがないです。メメタァ!
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/03(月) 01:42:56.55 ID:Nh7xaw8po

央美さん良い声だからな
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/03(月) 08:22:41.96 ID:mtUMbckDO
>>1


シレンパロのサークルだと某アクア(略 かな?
しかしジューダスよ、そんな危険な術をあの原作(TOD2)の乱戦中に使ってたのか……
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/03(月) 08:24:16.77 ID:mtUMbckDO
>>1

シレンパロだと某アクア(略かな?


しかしジューダスよ、そんな危険な術をあの原作(TOD2)の乱戦中に使ってたのか……
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/03(月) 08:26:54.07 ID:mtUMbckDO
ちょ……2重レス……
携帯からだと書けてないって言いながら書けてるから困る……
125 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/10/03(月) 09:05:42.23 ID:8OzFpYHf0
>>122
いえ、このジューダスはリメDのスタイルをとった旧Dの性格を所々引き継いでると思われるナムカプ(D2性格)仕様です。
そもそもD2では技名一新されていて、ブラックホールはアクラビの<リオン>が使うだけだったはずですし。


少々補足を。

ジューダス(妖)がBHを使った理由は、リメDスタイルでのBHを発動しているつもりだったからです。
リメDだとBHという名の黒くて派手なサイクロンですし。

ジューダス(永)がBHを使ったのは「弾幕ごっこ」についてまだ理解がないからです。つまり今後は自重していくことになります。

2重レスはこっちも怖いので書けた書けてないにかかわらず更新するようにしています。同じの2つ載せたら恥ずかしいですし…
126 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/10/03(月) 09:18:47.68 ID:8OzFpYHf0
ああ、間違えてた…

×旧Dの性格を所々引き継いでると思われる
○旧Dの技と性格を所々引き継いでいると思われる
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/10/03(月) 09:36:09.68 ID:R63wF+eAO
永夜、月、ナムカプ、零児とシャオムゥ、あとは分かるな?
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/10/03(月) 09:36:42.16 ID:R63wF+eAO
永夜、月、ナムカプ、零児とシャオムゥ、あとは分かるな?
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/04(火) 15:12:53.21 ID:2mgqu70Qo
シュワとセガール……もとい、名無しの超戦士1P・2Pさんマダー?
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/05(水) 09:54:00.01 ID:ynJxYN1jo
ナムカプの名無しの超戦士は
中の人補正が凄すぎてどうやっても勝てる気がしないww
メイトリクスとライバック・・・ごくり
131 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/10/05(水) 12:54:28.79 ID:C1pW1Iax0
零児「落ち着け、お前達。中の人ネタは確かに多少使う予定だが、強さ的にはだいたいナムカプ通りだ」

ブルース「続編で出てるやつらは強化されるけどな。と言う訳で今日はこんな時間に『一日一段』だ」

パチュリー「……読者を消極的に楽しませる方法は…」

零児「載っているのか?…っと、自己紹介だ。前回、きちんとしていなかったからな。俺は零児。本編では一応主人公をやっている」

パチュリー「…パチュリー・ノーレッジよ。紅魔館の図書館に住んでいるわ」

ブルース「俺はしょっちゅう出てるからパスだな。しっかし久しぶりだなぁ、零児。元気してたか?」

零児「ああ。ブルースこそ、元気そうでなりよりだ」

パチュリー「…むきゅー」

ブルース「ああ悪い悪い、パチュリーちゃん。今日は『護業』と『五行』の説明だよな?」

零児「ああ。『護業』とは、俺がもつこの複合武器の事だ。柊樹【ハリウッド】、火燐、地禮を一度に収容出来る」

パチュリー「見た感じは、サムライの家にある、刀を置くあれに似てるわ。火燐と地禮は刀だし、似ていて当然かもしれないけど」

ブルース「その3つと金【ゴールド】を合わせた4つの武器を駆使するのが『護業抜刀法』ってわけだな。…めんどくさくないか?」

零児「考えないようにしている。それと、小牟の水蓮もあわせて『護業抜刀法』さ。次は『五行』についてだ」

パチュリー「火、木、土、金、水の5つの属性の関係を、そのまま森羅万象…自然の摂理に当てはめる思想ね」

ブルース「火は金に、金は木に、木は土に、土は水に、水は火に剋つ…これが五行の相克の関係だな。
     確か沙夜がこの関係を使った技を持ってたよな?」

零児「ああ、『瞬華終刀』…意味するのは自然の終焉、といったところか。次は相生の関係だ」

パチュリー「木は火を、火は土を、土は金を、金は水を、水は木を生むというものよ。自然界の循環作用…をイメージすればいいかしら」

ブルース「他にもいくつか関係性はあるが、零児達が使っているのは主にこの二つだな」

零児「相生の関係を利用したのが俺と小牟の奥義、『真羅万象』だ。5つの属性で斬り、撃ち、滅する」

パチュリー「そこで更に『鬼門』という言葉が出てくるのだけど…今回はここまで」

ブルース「ふぃー、ややこしい話は嫌いだぜ。でも、パチュリーちゃんはさっきの五行の上にまだもう少しもってるんだよな」

パチュリー「日と月よ。…私の独自解釈だけど」

零児「そうでもないさ。俺達も日…空と月の力は借りているからな」

ブルース「ま、俺は銃器をぶちかましてるほうが良いってことはよくわかった。んで、この後どうする?」

パチュリー「今日は体調が良いから遊べるわよ」

零児「なら、空気のいい所で飯とするか。あの料亭とかどうだ?ブルース」

ブルース「お、いいねぇ。あそこで一杯ひっかけるか。…ってあーパチュリーちゃんが…」

パチュリー「魔法で成人してると思わせるわ。私も少しは嗜めるから」

零児「そいつは重畳。しんどくなったら、無理せず言ってくれ」

ブルース「っというわけで、今日はここまでだ。んじゃな!」
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/10/05(水) 19:44:04.14 ID:thqaKqYKo
ナムカプと東方だと・・・なんという俺得スレ

超戦士は遠距離不遇のナムカプでは唯一と言っていい強い遠距離ユニットだったな
MBL!MBL!MBL!MBL!MBL!M( 
欠点とされる当り判定のデカさもシステム的には有利に働くという

もしも次回作があるなら他も遠距離ユニットも強くして欲しいです、小牟先生・・・・
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/06(木) 15:57:05.12 ID:tkGIdSKOo
冬瓜さん解説の聞き手役が似合いすぎだよww

>>132
確かに超戦士以外の遠距離ユニット使い難かったな、ますよ&ひろみちゃんで苦労したわ
つーかムゲフロも良いがナムカプの続編もマジ出してくれよおおお
134 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/10/06(木) 23:41:01.46 ID:fpYmx4UA0
百一胎計画とやらがどうなるか、続編乞うご期待!が今の状況ですよねー。
ただ、バンナムの貪欲さが最近ひどいから難航してるんじゃないかな…そんな風に、私は思うのです。

ナムカプ続編を出すのであれば、頼むから次回作はゲームテンポ劇的によくしてください。2週目とかするのにも時間かかりすぎるw
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/07(金) 00:41:35.31 ID:ipYsM96DO
ナムカプ次出たら高確立でムゲフロ組がゲストで来るんだろうなww
136 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/10/08(土) 10:15:57.64 ID:4mOpmjkN0
今晩、続きを投下できたらいいな…と呟きつつ。ちょっと思いついたけど使いどころに困ってるネタを投下してみる。

アリス「これが自立人形の完成型よ!衛兵『ゴリアテ・Verファントム&Verフェイクライド』!」


COS-MOS「敵性体からの弾幕パターン、解析完了。これより、最適化された回避パターンを取ります」


ロック「にとりちゃんとロールちゃんに魔改造されました」

小牟「なんじゃこのガオ○イガーわっ!?」
137 :永夜抄4面後半 ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/10/08(土) 22:47:06.07 ID:4mOpmjkN0

ジューダス「さぁ行くぞっ!」

藍「好きにはさせない!」

小牟「混戦必須の陣容をお伝えしまーっす!」

零児「お前はいったい誰に言ってるんだ」

妖夢「急いでいるので…突っ切りますよ!」

アリス「貴女は相変わらずなのね」

魔理沙「頼んだぜ、アリス!」

霊夢「ちょっとこれごちゃごちゃしすぎじゃないかしら」


 藍が式神『十二神将の宴』を展開する。12の式がそれぞれに別々の軌道を描き、弾幕を構築していく。

 そこに妖夢が、真正面の式目がけて突きを繰り出す。そして使い魔を通過し藍へと迫る。
 それに対しアリスの弓の援護が入る。威力、スピード、範囲…どれもいまひとつだが、それを数でカバーした弾幕。
 その矢の軌道上へ半霊が盾になるように飛び出し、『悪し魂』を放つ。それらは弓矢を弾き、妖夢を守る。

 だが、その視界の悪さを利用して霊夢が頭上に『跳ぶ』。正しく妖々夢の再現である。
 しかしそれを、仕掛けた側の2人が止めに入る。

 小牟が霊夢の出現地点に、水蓮を使って間欠泉を巻き上げる。零児はその水に地禮と火燐を刺し込みつつ、藍のスペカを避ける。

 そんな二人に魔理沙が星の弾幕をけん制目的で降り注ぐ。
 それをジューダスが『月閃光』と返しの『月閃虚崩』で斬り落とす。月を表す剣撃が星を模る弾幕を砕いて行く。

 十二神将がいくつか水に流され消えた所で、間欠泉の奥へ避けた霊夢目がけ、同じく手前へ避けた妖夢がチャージショットを縦に放つ。

 それを軽々避けながら、藍の元へ急いで飛ぶ霊夢。裂けた間欠泉が藍と使い魔達を呑み込む津波となる。
 そこへ行かせまいとジューダスが『シリングフォール』を唱える。岩の雪崩を降り注がせる術だ。

 だがそれを、『マスパ』が間欠泉諸共吹き飛ばす。行き良いよくあたりにまき散らされる水…

 すると次の瞬間、水が膨張し爆発にも似た衝撃波を伴って細かな水滴と化す。
 水蓮の水と火燐の炎、それに地禮の雷…そこに、マスパの衝撃が加わり水素爆発を引き起こしたのである。

 アリスの人形とは比べ物にならない衝撃が水を伴い噴き荒れる。

 残っていた藍の式がその衝撃と数多の水に無力化されるなか、藍もまたそれに晒される。
 霊夢がかろうじて完全被弾を阻止するも、全身の7割を濡らしてしまった藍。

 もちろん、他の面々も濡れまくりである。小牟を除いて。
138 :残念だが、そういう表現はないんだ。すまない ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/10/08(土) 22:53:35.03 ID:4mOpmjkN0

魔理沙「…」ビター

アリス「…」ベター

零児「…火燐」ボッ

霊夢「平気なの?藍」ポトポト

藍「すまない、剥がれそうだ……しかし何故、水が弱点だと知っている」ベッタリ

小牟「ぬしが式なのを知っちょれば、後は簡単に答えを導き出せるじゃろ」ツヤツヤ

ジューダス「(…何故艶やかになっている」ヒタヒタ

アリス「あっちゃぁ、火薬が湿気ているわ…」

魔理沙「八卦炉が水浸しじゃねーか!…あ、火でた」

零児「さて、どうする。その式はこれで戦力外だと思うが」

霊夢「…だからなによ、別に一人いなくなったところでまだやれるわよ」

ジューダス「諦めろ。お前たちじゃ僕達には勝てない」

小牟「ほれほれ、ジューダスには勝てんそうじゃぞ?」

アリス「楽をしようという魂胆が見えるわね」

妖夢「なんとも言えません…ですが、数の利が逆転した以上、本当に無理でしょうね」

魔理沙「………。いーや、まだわからんぜ。なぁ、霊夢!」

霊夢「そうね、どんなにいようが私には勝てないってこと、教えてあげる!行くわよ二人とも」

アリス「はいはい。『ワイヤートリップ』!」

藍「…式を剥げばまだ行けるんだが…」


 アリスが人形同士を繋ぐ魔力の糸を広範囲に展開し始める。
 その糸は人形以外にも、ブラックホールから難を逃れた竹を支点として複雑に絡み合って行く。

 そこへ霊夢が陰陽玉を乗せ、思い切り蹴り飛ばす。不思議な軌道で飛び続ける使い魔の完成である。

 もちろん、その糸を断とうと妖夢が楼観剣を振り下ろし断つことは出来たのだが、次々と増えて行く糸の線路に意味もなく。

 次々と蹴られ増えて行く陰陽玉をしり目に、小牟が霊夢に迫る。
 だが黙って接近を許すわけもなく、走り続ける陰陽玉に飛び乗り離れる霊夢。

 しかし、小牟はそのまま魔理沙へと直行。待ち構えていた魔理沙はウェーブレーザーで迎え撃つ。
 それを降下することで避ける。上昇していては陰陽玉にぶつかるところだったからだ。

 それを見越していたアリスが線を新たに加え、真後ろから小牟を狙う軌道を作り上げる。
 だがジューダスがそれを撃ち返し、霊夢とぶつかるように仕向ける。

 陰陽玉同士がぶつかり、鈍い音を上げながら小玉をこぼす…しかし、霊夢は真上に飛ぶことで余裕の回避。

 そのまま別の陰陽玉に逆さまに着地する。その行先は零児の上方である。
139 :戦闘描写オンリーって、ここだけだと思うんだ… ◆JbeFpMnays [saga]:2011/10/08(土) 23:07:35.20 ID:4mOpmjkN0

 地上付近を通る陰陽玉を潰していた零児は、同じように柊樹【ハリウッド】で霊夢ごと陰陽玉に発砲する。
 その散弾の間をグレイズしながら迫りくる霊夢。…偶然通れる道が出来ただけで、普段はあり得ないのだが。

 そのまま『雨乞祈り』の札をまき散らす。それを2度目の柊樹で撃退するも、既に霊夢は横っ跳びしている。

 そこへ妖夢が4つの半霊で囲み、『奇び半身』を一斉に放つ。
 揺らめく弾幕がお互いに相殺するなか、完璧な軌道で避け続ける霊夢。
 だがやられ続けてきた経験からそれさえも織り込み済みの妖夢は霊夢を放置する。

 そこへ零児が追いつき、金【ゴールド】を近くの人形へと撃ち込む。
 人形の持つ槍に当たり、その手から弾かれた槍が宙を舞う。そこにジューダスが岩を呼び出し地面に縫い付ける。
 

 一方、陰陽玉の脅威がなくなった小牟は魔理沙の星を避けていた。
 自機狙いの大型の星…グレイズし放題だがいかんせんこれ以上近寄れない。

 一応、妖術でレーザーやら弾幕を放つも、密度も強度も足らずに星を打ち消せない。
 そこへ糸を斬る事を諦めた妖夢が合流し、『反射下界斬』を撒く。僅かながら空いた隙間に小牟が滑り込む。

 アリスがそれを察知し、弓の援護を放つ。だが数体から放たれた程度の密度では止まる事もなく。
 迫る小牟に合わせて魔理沙は箒に立つ。計らずも一騎打ちの形に…

 とか感心していたら不自然な軌道で上昇する魔理沙。どうやら箒に糸が付けられていたようだ。

 水蓮を大きく空ぶった小牟に向けて真上から流星群が降り注ぐ。
 慌てて避けるも、さらに陰陽玉が襲いかかり昇れなくなる小牟。線路をこちらへと集中させたようだ。……
 

 地面に縫い付けられた糸を辿って迫りくる陰陽玉を、霊夢は半霊の弾幕を避けるついでに蹴って返す。
 蹴られた陰陽玉の元へ飛び上がり、護業で打ち返す零児。それを再び蹴り返す霊夢。

 打ち、蹴る。打つ。蹴る。打つ。蹴る。打つ。蹴る。打つ。蹴る。

 同じ事の応酬…だと思っていたのに、ふと突然打ち返しがなくなる。

 そして気付く岩の槍…いつのまにか、筍のようにあたりを囲っている。

 その意味を探ろうとする直前に知る。縫い付けられていたはずの槍側から陰陽玉が昇って来たからだ。
140 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/10/08(土) 23:30:52.05 ID:4mOpmjkN0

 直感的に半霊達に妖怪バスターを放ち、その場から離脱しようとする霊夢。

 半霊達は吹き飛ばされるも、陰陽玉と交差するように跳んでくる零児に捉えられる。

 火燐と蹴りの連撃を持ち前の天性の感覚で捌き続ける霊夢。そして迫りくる陰陽玉を逆に利用し、零児に直撃させる。

 のを護業でぎりぎり防ぐも吹き飛ばされた零児。続いて追撃をし向けようとした所へジューダスが割り込む。

 吹き飛ばされた零児を守るように岩が出現し、霊夢の放つ弾幕を遮る。そのまま体当たりを仕掛けるジューダス。

 それを避け、脳天めがけて蹴りを落す。それを翻って避け、短剣を刺し込む。
 手持ちの陰陽玉でそれを受け止め、続く長剣を霊力強化の施した御祓い棒で受け止める。

 拮抗する二人。…そこへ、魂符『幽明の苦輪』をした妖夢が迫りくる。

 だが所詮は刀を一つ持っただけの妖夢…と思いきや、二人とも双剣状態である。
 本体には観楼剣と地禮。半霊には白楼剣と火燐。…吹き飛ばされた零児が手放した武器をそのまま受け取ったのだ。

 半霊の観楼剣と陰陽玉を、御祓い棒に込めていた力を緩めることで下に押し出されるように避ける。

 それを狙い、雷を纏う『現世斬』を繰り出す妖夢。それを刹那亜空穴で避けつつも反撃する霊夢。
 しかし、跳んだ先には陰陽玉…零児が撃ち返したものである。

 これだけの連続の攻防に、霊力も集中力も切れかけていた霊夢は、本当にギリギリのところでグレイズする。

 空中坂上がりのように上半身を逸らす霊夢。そのままサマーソルトキックを陰陽玉にかまし、迫る半霊へ打ち込む。
 半霊に当たる直前…半霊が元の姿に戻り、二つの刀が落ちる。
 そして、元に戻った半霊の真後ろから飛び出る黒い影が陰陽玉と交差し、そのまま霊夢を斬った。

  ピチューン

 霊夢が被弾したのを尻眼に、落ちてきた白楼剣と火燐を回収、そのまま構えた零児が見たのは…


 フリフリ


零児「白旗…か」

魔理沙「いやー流石にこれ以上はきついぜ」

ジューダス「…無様だな」

小牟「仕方なかろう。霊夢はともかく魔理沙とアリスは運動そこまで得意じゃないわけじゃし」
141 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/10/08(土) 23:35:38.72 ID:4mOpmjkN0

アリス「それもあるけど、貴方達に任せてもいいんでしょ、レイジさん?」

零児「む、覚えていたのか?」

アリス「?春雪のときに遭ったじゃない。魔理沙達が覚えてないから別人かと思ったけどやっぱり同じ人だったし」

藍「…霊夢がやられたか」

妖夢「藍さん、式の方は大丈夫ですか?何なら斬り取りましょうか」

藍「いや、遠慮するよ…」

ジューダス「それで、途中から明らかに手を抜いたのはどうしてだ」

魔理沙「あ、ばれてたか?」

小牟「アリスに至っては途中からじゃないんじゃよ。の?アリス」

アリス「ばればれだったか〜。やっぱり爆破すればよかったかしら」

零児「そうなると、ジューダス達が来る前に詰んでいただろうな。だが、結果的に助かった。二人が出番待ちをしていなければの話だがな」

妖夢「していませんよ。あそこに到着したのは本当にぎりぎりでした」

藍「…だがあの場所にはまだ他にも気配があったぞ」

小牟「(あやつじゃな」

魔理沙「ま、これで霊夢に後で怒られるかな」ケラケラ

零児「その時はきちんと手土産でも持って行け。それで妖夢、外はどうなっていたんだ」

妖夢「えっと、紫さまが言うには…」

紫「はぁ〜い。もういいわよ、妖夢」

藍「っ!?紫様!」

アリス「あら、あの時のスキマ妖怪」

紫「藍、お疲れ様。減給しておくわね♪」

藍「………分かりました」シクシク

零児「それで、いったいなにがあったんだ?」

小牟「そうじゃそうじゃ。本当なら霊夢とペアは紫じゃぞ。永夜抄的に考えて」

紫「順を追って説明するわ。とても大切なことだから」
142 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/10/08(土) 23:40:04.72 ID:4mOpmjkN0

曰く

1.零児達が入った時、フェリシアだけが出戻りし、後の5人は中へと入った事。

2.不審に思った私が藍を使って貴方達の後を追わせようとしたら、入った途端に繋がりが途絶えた。

3.紫が知る永夜抄のストーリーから、自分が中に入るのも危険と判断。

4.そこにローズが、魔理沙を占った時の結果を伝える。その中に零児達と戦う事を指す内容がいくつかあった。

5.以上4つの事から、こちらの永夜ではなく東方永夜抄を再現しているものと推測。

6.そこから永夜抄のルールに則り、『人と人ならざる者のペアが必要』という仮定を立てた上で、『永夜抄に関係した人』の妖夢を選んだ。

7.その後、誰かが博麗ないし魔法の森に帰ってくるのを待っていたところ、霊夢が鼻を抑えて蹲っていた。

そして、今に至る。
143 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/10/08(土) 23:50:09.91 ID:4mOpmjkN0

紫「と、いうことなの」

妖夢「では、零児さんと小牟さんは人妖ペアと認識されたわけですか」

零児「だが俺達は部外者だぞ?…それを言えば、春雪も同じだが」

ジューダス「僕も部外者だ。だが、おそらく妖として認識されたんだろう。となると型に意味があるのかもしれない」

魔理沙「…何言ってんだ、紫?」

アリス「やっぱりさっぱりね。なんだか大変な事だってのは分かるけど」

小牟「記憶が戻れば理解出来るじゃろうな。しっかし、わざわざ原作の方がルールとして浸透しちょるか…」

紫「それがますます謎なの。そもそも、それが正しいかも分からないけれど」

零児「だが、心当たりは全てあたっていくしかないさ。あの戦いも、結局は虱潰しだったからな」

ジューダス「僕はそれを知らないがな。…それで、この三人はどうするんだ」

魔理沙「私らは月を弄ってるから下手な事されると困るんだぜ?」

小牟「んぬ。確か二人が解決しておったとか言うから…もしやするとこのまま同行する、とか?」

妖夢「確か、前のときはふれると消えたとか。試してみては?」

紫「下手しても、私が月をどうにかするから大丈夫よ」

アリス「そういえばあの後しばらく記憶がないのよね…消えてたんだ、私」

小牟「ほれほれ、そういうことじゃから握手じゃ。前回と同じようにの」

魔理沙「…変なもん仕込んでないだろな」

小牟「(ジャキン」

妖夢「な…………んですか、それ?」

小牟「森羅式壱〇徳ナイフじゃ。透明化処理も施せる優れもんじゃぞ」

零児「今わざわざ見せる必要あったか?」

魔理沙「…わりぃ、そっちの男の人にお願いしていいか」

紫「(ここまで着ても藍との繋がりは復活しない、か」

零児「ああ」スッ


 零児が魔理沙と手を交わす。…すると魔理沙とアリスが共に輝きだし…そして消えた。


小牟「そしてこんな風に紫外線から悪意むんむんのオーラまでなんでも遮断するサングラスにもなるんじゃっ!」

妖夢「う…な、何が」

ジューダス「…二人が消えた…?」

零児「…やはり、こうなるのか。…紫、月は見えているか?」

紫「んー、どうも私の手は必要ないようね。まるで魔理沙達がいるかのように維持されているもの」
144 :曰く がEK に見える不具合 ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/10/09(日) 00:15:25.88 ID:bJaeu8Ze0

妖夢「紫様。今のが先ほど『見ればわかる』とおっしゃっていた?」

紫「ええ、そうよ。それで小牟。観た感想を聞きたいのだけれど」

小牟「電子的と言うた理由が分かったわ。確かにあれは電子的じゃな。.h○○kのデータドレインみたいかの」

紫「….h○○k?」

小牟「なんとぬし、知らんのか!そこそこ話題になったゲームじゃぞぉ?」

ジューダス「そんなことはどうでもいい。…つまり、どういうことだ」

紫「電子的という言葉があっている事に確信が持てただけね。なぜこうなるのか、3度も見たのにわからないもの」

零児「それでも、何も分からないよりはまし…か。それで、これからどうする」

小牟「とりあえずクリアーしたっちゅうことで、永遠亭に訪問するんじゃろな」

妖夢「でしたら、ここから先は私にお任せを。永遠亭までの道のりは知っておりますので」

ジューダス「暇だから僕も付き合ってやる。この世界の事、多少なりとも知っておきたいしな」

零児「頼んだぞ、妖夢。ジューダス。…それじゃ、後は任せていいな?紫」

紫「あ、その前に藍にこれを貼って貰えるかしら」

小牟「む、式の札じゃな。わしが貼ってもよいのか?」

紫「ええ。貴女だからいいの」

藍「…?」

小牟「ならほれぺったんこっ!」

 式の札を張り付けたと同時に光り出す藍。そしてまたも消える…が。

藍「ヘブチッ」ドスン

紫「お帰りなさい、藍」

零児「今の札…召還の札には見えなかったが」

紫「その事も分かったら教えるわ。それじゃ、続き頑張って頂戴ね」スキマ閉鎖

ジューダス「…幽々子と似ているな。類は友を呼ぶとか言うやつか?」

妖夢「あながち否定できないのがなんとも…それではこちらです。皆さん」

小牟「…東方成分が極端に減ったのぉ」

零児「永夜異変の最初からだろ。何を今さら言っているんだ」
145 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/10/09(日) 00:21:34.00 ID:bJaeu8Ze0
今回の投下はここまでです。戦闘描写をきちんと書き始めたら途端に霊夢無双気味に。

今回、戦闘描写が無駄に長いのはVS主人公組だからです。ここで少しネタと複線詰め込みたかったもので。

さて次回は永夜抄5面、旧新参ホイホイことうどんげです。てゐもいますね。
今回出せなかったナムカプムキャラがようやく出せる…おそらく水曜か木曜には投下出来ますのでお待ちください。
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/09(日) 01:59:38.33 ID:SD8teXD8o

霊夢つえぇwwwwwwww
147 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/10/10(月) 08:27:24.53 ID:UUp3SNh20
魔理沙「おはよう!普通の魔法使い、霧雨魔理沙だぜ。今日は朝から調子がいいから「一日一談」始めるぞ!」

士狼「おはようだワン。朝から元気なのはいいことだぞ、少女よ。おっと自己紹介が遅れたな。俺は士狼、神楽天原で商いをしている者だワン」

サベル「うがぁ…朝からゾンビをこき使うたぁいい度胸じゃねーか。ゾンビは夜のほうがぁ、活きがいいんだぜぇ?」

魔理沙「死んでるのに活きがいいもなにもあるかよ。…でも臭くねーな?」

ザベル「ひゃっはー!そりゃぁなぁ!レイレイちゅわんに嫌われちまうから風呂は毎日入ってるぜぇ!」

士狼「そいつはいいが、自己紹介ぐらいしたらどうだワン。やたら元気な死体さん」

ザベル「おっとぉ、そりゃぁ失礼したなぁワン公。俺はザベル・ザロックっていうんだ。以後、夜路死苦!ってなぁ!」

魔理沙「じゃぁ、今日のお題は…っと………モケーレ・ムベンベ?」

士狼「この資料によると、UMA…未確認生物だそうだワン。コンゴ共和国などでいるのでは?とされる恐竜だそうだ」

ザベル「恐竜ってぇと、あのT-ウィルスに感染してやがったアロサウルスを思い出すなぁ。もっとも、今回のはそんな凶暴じゃねーがな!」

魔理沙「東方界隈におけるこいつは、こいつそのものだったり、あるいはレミリアのことを指すんだぜ」

士狼「その吸血鬼の少女が天狗の娘さんとでモケーレごっこをしたことで、イコールになったようだワン。…いつみても必ず1回は吹くな」

ザベル「さぁらぁにぃ!MUGEN界隈じゃぁスカーレット姉妹が合体した怪獣のことを指してたりもするわけよ。ま、ごっこ遊びの延長戦だわな」

魔理沙「怪獣だったり、モケーレ・ムベンベの想像図そのままだったりするから、結構ごっちゃになったりするんだぜ。…登場頻度は低だけどな」

士狼「そして残念なことに、今のところこいつが登場する予定はないそうだワン。中の奴があんまり知らないから、が理由だそうだ」

ザベル「知らないってぇのもそうだが、あんまり調べられる時間もないそうだぜぇ?某動画投稿サイト系に該当動画があるなら教えてほしいってよ」

魔理沙「それから、お知らせがあるんだぜ。まだまだ先の話だけど、東方の音楽アレンジを利用して物語を進めることもあるんだとか」

士狼「もちろん、その作者さんには連絡をし、許可を取ってからここにアドレスを貼ることになるワン」

ザベル「更に!ヴォーカルアレンジは基本なしだ。あっちは嫌ってる人がめっちゃ多いしなぁ!」

魔理沙「一応、音楽アレンジってだけでも嫌う人がいるのもわかってるんだけど…そんな偏見まみれの人間まで面倒見切れないぜ」

士狼「ヴォーカルに関しては理解できる部分もあるから自重するがな。それと、利用する頻度の高いサイトは某笑う顔動画だ」

ザベル「あそこってだけで嫌う奴もスルーさせてもらうぜぇ?森を見て樹の一つまで判断する奴はゾンビ以下だ!はっはー!」

魔理沙「ま、見つけにくいし探す時間も結構必要だから結果的に知らなかったり面倒だから敬遠するのは仕方ないけどな」

士狼「それと、その音楽に関してはあくまでも本編を見るうえで一緒に聴くとより深みが増す…といいなぁ。というものを選ぶワン」

ザベル「その音楽の要素を取り入れて物語を書くこともあるから、できれば一緒に聴いてもらいてーが、視聴者の自由だな!」

魔理沙「もちろん、その動画やサイトを荒らす真似はよしてくれよ?お子様じゃないんだしな」

士狼「年齢も外見もそのままお子様の魔理沙が言うとどこかおかしいがな。さて、今日はこのぐらいかワン?」

ザベル「ふぃ〜。朝からテンションアゲアゲしてみたが…やっぱ低血圧にはきついぜぇ」

魔理沙「血圧もねーだろ?でもま、アリスがそうだし霊夢も確か低血圧だったな」

士狼「うちの姫様も結構低血圧だったワン。まぁ、無理に来てもらってすまなかったワン」

ザベル「別にいいぜぇ!どうせ寝てねーからな!」

魔理沙「ところで、ザベルってギターの神様だったとか?」

ザベル「ギタリスト、な。ギターじゃ付喪神になっちまうぜぇ」

士狼「ふむ、つまり事と次第によっちゃ英霊になれたかもしれないわけか…」

魔理沙「…?何の話ぜ?」

ザベル「おい、それお前の名前違いだろ」
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/10(月) 12:56:05.02 ID:RIRCSQKpo
おつおつ
MUGENにモケーレ・ムベンベなんて居たのかwwwwww
音楽はむしろ賛成する
149 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/10/11(火) 23:36:47.05 ID:v3+KN+/i0
そういえば忘れていた妖々夢初期設定。

レティ・ホワイトロック:東方Projectより

 自然に生きる妖怪様。「寒気を操る程度の能力」。1面ボスだが実力を隠しており、実際のところは不明。
 異変の中は春の来ない冬だが外は秋なため、冬はまだかとwktkしている時期。ふとましくない。

橙(ちぇん):東方Projectより

 化け猫又。「妖術を操る程度の能力」。カリスマ性がないのか、猫を従えない。…自分も猫なんだから理由わかるだろうに。
 秋の暖かくも涼しげな環境の下、日向ぼっこに勤しんでいた妖獣。フェリシアとは普通に友達になっている。

アリス・マーガトロイド:東方Prjectより

 魔法の森に住む魔族。「魔法を扱う程度の能力」。魔理沙と何度もペアを組み異変解決してきた程度の実力。
 魔理沙とパチュリー、それから最近は聖の4人組で魔法の研究をしている。
 とはいうが実際は各々が得意分野を伸ばしてそれを話のネタにする程度のお茶会である。

リリー・ホワイト:東方Projectより

 春が来るたび、皆に知らせまわる春告精。「春が来たことを伝える程度の能力」。三月精曰く、「春のあいつには絶対に適わない」。
 名前の付いた大妖精クラス、という設定。つまるところ普通の人間なら戦えるって話。

ルナサ/メルラン/リリカ・プリズムリバー:東方Projectより

 騒音をまき散らすポルターガイスト三姉妹。「鬱/躁/幻想の音を演奏する程度の能力」
 幽々子に呼ばれて月見の演奏を任されていた。映姫様に言われていたことに関して最近考察中。

魂魄 妖夢:東方Projectより

 白玉楼の主、幽々子の護衛兼剣術指南兼庭師な半人半霊。「剣術を扱う程度の能力」
 冥界に突如現れたジューダスにコテンパンにされ、それを見ていた幽々子が面白がって弟子になりなさいと言われてた。
 ただ、本人はまんざらでもない(師匠の教えに近づくためにはやはり強い剣士の下でうんぬんかんぬん

西行寺 幽々子:東方Projectより

 白玉楼の主。今日ものんびりふんわり幽霊ライフ。「死を操る程度の能力」
 この間の神子復活騒動からまた暇になり、異変でも起こそうかしら〜などと考えていたらこんなことになっていた。
 ローズの占いを真似しようと目下練習中。二日以内に飽きる予定。

フェリシア:ナムカプ(ヴァンパイア)より

 猫の獣人。ダークストーカーと呼ばれる者の一人。時系列は零児達と同じ。ワンダーモモの公演を存続させた。
 「○○する程度の能力」未開化。素の「ダークストーカーとしての本能」は近距離戦であれば小牟と互角。
 ただ、素手で戦うキャラなせいでスペルカード・ルールには不適。性格的には相性抜群なのだが残念な限り。

ローズ:ナムカプ(ストリートファイター)より

 ソウルパワーを扱う幽霊。時系列は零児達と同じ。ナムカプ異変の功労で眠っていたはずなのにいつの間にか冥界にいた。
 「○○する程度の能力」未開化。素の「ソウルパワーで戦う程度の実力」は遠近両用だが微妙に器用貧乏。
 他に「信頼出来る程度の占い」は例外を除いて必ず当たる。そして例外は強い意志がないとなかなかうまくいかない。

ジューダス:ナムカプ(テイルズ)より

 奇妙な細剣と短剣を扱う幽霊。時系列、その他はローズと同じ。
 「○○する程度の能力」未開化。素の「二刀流と昌術で戦う程度の魔剣士」は事実上ローズの上位交換。
 アクション方式でもスペルカード・ルールでも万能に戦える。実力は妖夢に7:3を付けられる程度。
 ただ、まだスペルカード・ルールの詳細を知らないため邪道と知らずにBH!BH!BH!
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/12(水) 00:21:52.24 ID:UG1NZoeDO


リオ……ジューダスはな……
性格的にスペカルール合わなさそうWW
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/10/12(水) 00:46:16.83 ID:r91ZVIgco


ナムカプではローズのオーラソウルスパークが
半分くらいしか入らなかったのも懐かしい思い出
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/12(水) 10:32:09.61 ID:QJDXoZE8o
フェリシアだけでなくナムカプは素手キャラ多くてスペカルールに合って無さそうだ…
上の方に挙がってる超戦士は別として飛び道具キャラは全体的にアレな性能だし
あ、でもアーサー辺りは育てれば化けるんだっけか

ところでキングさんは幻想郷でも普通に馴染みそうだ。あの顔付きからして
153 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/10/12(水) 17:54:09.25 ID:PbMLDMgX0
>>150
ジューダスであれば、地方の暮らし方等について文句を言わないので「郷に入らずんば郷に従え」を守ります。
更に性格も8割D2なのでそういう戦い方に関しても理解を示してくれま。歴史に詳しく思慮深くなってるので。

>>152
元ゲー的に考えればロックやアーサー、その他霊力・魔力持ちはスペカルールに適用可能だと考えています。
それでも対応不可なキャラに関しては…今晩か明日をお待ちいただければ対処法の一部を…

キング「これはマスクだ」
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/10/12(水) 23:04:30.23 ID:r91ZVIgco
>>152
「これはマスクだ」って言わせたいんでしょ!わかってるんだからねっ!

あれはキングさんの鉄板ネタだったなww
しかしキングさん吠え声くらい欲しかったぜ
155 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/10/14(金) 07:52:39.59 ID:FoIl4PnR0
わあああ寝落ちしてましたすみません。投下は昼ごろの予定となります申し訳ございません。


書き溜めてた内容が怪文書になってたのはこいしちゃんの仕業に違いない!!…orz
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/14(金) 09:24:39.78 ID:6F0I/p3Go
無意識なら仕方ないな!

>>152
景清とたろすけも違和感無さそうだ
たろすけー!早く来てエロいイベントおこしてくれー!
157 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/10/14(金) 15:06:13.63 ID:DQA2G8JC0

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜竹林・永遠亭の正面玄関〜〜〜

妹紅「よっ。お疲れ様、お二人さん。今は団体さん、かな?」

小牟「ぬぁにが「よっ」じゃこのあほんだらっ!ぬしのせいでいらぬ誤解を受けたんじゃぞ!」

妹紅「それは悪かったと思ってるわよ。けど、貴方達がどの程度強いか確かめる必要があったのよね」

零児「小手試しだったと?」

妹紅「ええ。すでに知ってるんだろうけど、ここの箱入り姫様も不老不死だからね。弱くはないわけよ」

小牟「言うとくが、その従者も不老不死じゃぞ。しかも、そっちのほうが…いや、何でもない」

妹紅「永琳も?あちゃぁそりゃ知らなかったわ。月の人間だから長生きなのかと」
                                                〜♪
妖夢「そうなのですか?知りませんでした…」

ジューダス「だが、そうなるとどうやって勝つ…いや、止めるつもりだ?」

小牟「永琳も輝夜も、どちらにせよ幻想郷の住人じゃて。ルールは守るはずじゃ」

零児「何年生きているかは知らんが、生きてる分節操はある、と」

妹紅「んじゃ、後は任せたわね。今中で何をしているかは知らないけど、ややこしそうだから」

小牟「わかっとるわい。ほれほれ、あっちいけ!しっしっ!」

ジューダス「子供か。僕達が中に入ればいいだろ」

妖夢「どうせこの中に用があるんですしね。さぁ、参りましょう」

妹紅「ノシ」フリフリ

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

???「お、見つけた。おーい!妹紅!竹炭出来たぞー」

妹紅「んー?ああ、ごめん今行くー」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                                                       〜♪
158 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/10/14(金) 15:29:44.24 ID:DQA2G8JC0

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

永遠亭内部:長廊下

ジューダス「…アクアベイルの建築と似ていると思ったが、中も同じか」

小牟「ほう?アクアベイルとやらも日本家屋形式、と」

妖夢「歓迎…されていますね」

零児「…兎の妖だらけか。月だと知らなかったら悪趣味としか言えんな」

小牟「少女にバニーコスさせとるようなもんじゃしな。ほれほれ、とにかく前に進むんじゃ!」


 永遠亭の廊下…外観からは考えられないほどの長廊下にて、永遠亭に住まう者達から妨害を受ける。
 妖怪達に忙しなく指示を与える1人の少女が見えるが、その少女を狙うのが難しい。
 別段きつい弾幕と言う訳ではないのだが、地味に嫌がらせ的な軌道でかき乱される。

 だがそれも妖夢の飛ぶ斬撃で悉く落ちる。…神霊廟の技を永夜で使えば道中パターンもくそもない。
 それを見かねて、指示をしていた少女が他の兎への指示を止めてこちらにやって来た。


??「剣をそんなに振りまわすとか予想外よ!」

妖夢「斬ってから物事を知る。それが私の流儀です!」

零児「まて、斬ってからだと遅いだろ」

小牟「今回に限ってはそれでおうとるよ。時間がそんなにないんじゃよなこれしかし」

??「(ん?)そうかなぁ?色々トラップ仕掛けたから、急いだら墜ちるわよ〜」

ジューダス「…ふっ。なら、その時は尻ぬぐいしてやればいい」

小牟「それに嘘じゃしな。ぬしにそんなものを仕掛ける義理がない。のぉてゐよ?」

てゐ「(やっべばれてる?)てゐ?てゐって誰ウサ。私は化けたばっかりの兎ウサヨ」

零児&ジューダス「…嘘だな」

妖夢「はい。嘘です」

小牟「古典的な人違いを装うとは…手を誤ったのぉ」

てゐ「…ちぇっ。こりゃ面倒だわ。うどんげに任せよーっと」ササッ

ジューダス「逃げたぞ。追わなくていいのか」

妖夢「あの兎はああいう妖怪なので。…って廊下の様子が」

小牟「うーぬ、まだ2段階目と言うたところか?さっさと鈴仙見つけんと姫の所に辿りつけんくなる」

零児「レイセンというと、確かブレザーを来た兎…だったか」

ジューダス「そのブレザーとやらが分からないが、兎じゃない奴なら向かってきているな」

妖夢「あれは…永琳さんですね」

永琳「あらら、早かったわね。てゐの奴…ろくに時間を稼がなかったようね」

零児「4対1で戦わせる方が酷というものさ。…お前が首謀者か」

永琳「首謀者?永い月の夜の事なら違うわ」
159 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/10/14(金) 15:36:12.41 ID:DQA2G8JC0

小牟「知っとるし、そもそも会話で時間を稼ごうとせんでもよいぞ。
   輝夜の為に永遠に隠れられる世界をつくろう等と…おわわっ!」シュッ

           タンッ

零児「っ!?(弓矢…いつの間に出した?」

永琳「何故その事を知っているのかしら、女狐」

小牟「こ、答えると思うてか!それに、今ここで長々とする時間はないはずじゃろ!」

永琳「…はぁ、その通りよ。鈴仙、ギルガメス!」

鈴仙「はいっ、師匠」

ギル「出番…のようだね」

永琳「ちょっと難しいかもしれないけど、このまま『封鎖』と『時間稼ぎ』お願いね」サッ

鈴仙「ええ、分かっています。出来うる限りやってみせます」

ジューダス「…かなりの使い手だったな。しかし、何故お前がここにいる、黄金の騎士」

妖夢「武器を出した瞬間が全く見えなかった…」

ギル「…僕はそんな名で呼ばれる程の者じゃないよ。だけど、何故その名を」

小牟「『幻想界』じゃと天下に轟く名じゃったろうに。しかしぬしがここにおるとは」

鈴仙「貴方達、どうも邪魔をするためにわざわざ来たみたいね」

零児「邪魔じゃない。異変を解決するためだ」

鈴仙「異変…そうね、確かにこれはここからしてみれば異変かもしれないわね」

小牟「そして達成できん異変じゃし、する必要のない異変じゃ。さっさと倒されて道を開けるんじゃな」

ギル「所々よくわからない事があるけど、そうはいかないな。追われる『彼女達』やこの子を守るのが、僕の仕事さ」

鈴仙「そういうこと。だから、地上の穢れた妖怪風情に…」

   『邪魔なんてさせない!!師匠の為に!姫様の為に!』

零児「っ、なんだ?急に声が」

小牟「画面上からじゃいまいちわからなんだが…やはり脳波か何かに干渉しかけとったか…!」

ギル「さぁ、ご退場願おうか!」

妖夢「来ます!」
160 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/10/14(金) 15:41:44.06 ID:DQA2G8JC0

 鈴仙が大量の弾丸をいっせいにばらまき始める。それを反射しながら、妖夢と小牟が鈴仙に向かう。

 ギルが廊下を疾走する。速度そのものは遅く、鎧に包まれて弾幕戦に不利なように見える。
 重厚な響きを奏でながら弾丸の中を掻い潜り零児達に迫るギル。
 それを迎え撃つ零児。剣と剣が豪快な音を鳴らし、火花を散らす。
 そこへジューダスが空から襲う剣を見舞う。しかし、それをブルーラインシールドで弾き飛ばし、後退する。
 
 妖夢が弾幕を反射しながら鈴仙に肉迫し、その後ろを付いてきていた小牟が隙を見て前に躍り出て、水蓮を薙ぎ払う。
 しかし、攻撃は完全にすかる。自身の位相をずらし蜃気楼の如く、あたかもそこにいるかように見せかけたのだ。

 小牟が水蓮を思い切り空ぶったのを確認した鈴仙はその瞳を更に狂気の色に染め上げる。

 その瞳の怪しい輝きに合わせ、ギルが二人を跳び越える。
 零児とジューダスがそれぞれに金【ゴールド】と小石を飛ばすがどちらもブルーラインシールドが防ぐ。

 そうして4人を挟み込む形にし、更にそれを分断するように鈴仙が使い魔を呼び寄せる。
 ぞろぞろと左右から列をなしてやってくる使い魔達。それらは辺り一面に弾幕を均等に放つ。

 それらが交差する…かと思われた時、突如歪む弾幕。斜線のようになっていた2色の弾幕がゆらぎ、横にずれ始めたのだ。

 しかし、男達はその動きに合わせて動き始める。少女達は使い魔を攻撃し始める。

 そこにギルがずれる弾幕を無視し斬りかかる。
 火燐で受け止め、短剣で鎧のスキマを狙うも、高速で動いた左手に弾かれ、思わず後ろへ下がる。

 それが幸いし、再び実体を取り戻しかけていた弾幕の隙間にもぐりこむ。

 だが、その中を、ギルガメスは突っ切ってくる。
 鈴仙の弾幕がギルガメスの鎧に弾かれているのにギルがピチュらないのだ。

 それには使い魔の解体作業をしていた小牟が声を上げる。


小牟「おぃぃ!?ちょっとまたんか!何故に被弾せん!?ルール違反じゃろ!」

鈴仙「教える必要はないわ、駄狐!」

零児「ちっ。盾だけじゃなく、鎧も適用外なのか!?」

妖夢「そんなはずがありません!肉体でなくとも体と判断されれば被弾のはずです!」

ギル「そう、本来ならこんな心臓部分に弾が当たれば駄目だろうね。だが…」チチチチチッ

鈴仙「ギルガメスさん、教える心算ですか」

ギル「ヒントだけさ。彼らは敵だが悪じゃない。それに、目的は時間稼ぎだしね」

ジューダス「必要ないっ!『魔人剣』!」

ギル「おっと!まぁ、そう言わずにさ。それじゃぁヒントだけど、『同じ』なのさ」

妖夢「え?それだけ?」

鈴仙「(確かにヒントだけど、私の能力知らないと意味ないじゃない。案外ひどいわね」

妖夢「鈴仙の能力…確か狂気を操る…?それと同じ??」

鈴仙「って、なんで知ってるのよあんた!」

小牟「そうじゃないのぞぉ、妖夢よ。波長を操るんじゃ。つまり反共鳴か何かっちゅーことかの?」

ギル「え、ちょっと早すぎやしないかい?…はっ」
161 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/10/14(金) 15:51:02.26 ID:DQA2G8JC0

零児「なるほど、あたってるように見えて実は反射していたのか」

鈴仙「ちょっとギルガメスさん、ばれちゃったじゃない」

ジューダス「だからといって、どうにか出来る問題にも思えないぞ」

妖夢「ようは一緒に斬ってしまえば問題ないということです!」

ギル「しまったな、これじゃぁ時間稼ぎにもならないじゃないか」

小牟「馬鹿みたいに真面目じゃったのが運の尽きじゃよ、ギルガメスよ。いっくぞぉ!妖孤仙術『奪氣の型』!」


 小牟が使い魔達に向かって左手の平を向ける。それに吸い込まれるかのように何かが抜けて行く。
 その正体は目に見えるようになった霊力であり、使い魔達のエネルギーである。
 エネルギーが吸い込まれたことで、使い魔達の弾幕が極端に薄くなる。

 それを機と取った零児は剣の連撃を繰返すギルに柊樹【ハリウッド】を撃つ。
 それを盾に隠れつつ飛び上がることで避けたギル。その動きに合わせ、ジューダスが双剣を振り上げる。

 その動きに合わせ、剣を流す。お互いに剣を上げている状態である。
 そしてジューダスが長剣と短剣の刺突の連打を浴びせる。瞬く間に千の突きを繰り出す技(実際は数十回)である。
 しかし、それを、左手に持った剣で全て捌ききる。手甲『ハイパーガントレット』のブースト効果である。

 使い魔を弱体化され、妖夢と小牟に迫られる鈴仙。二人から逃げつつ、月の隔離作業を行っている。
 妖夢はそれを必死に止めようと駆ける。小牟はちょくちょく使い魔に青龍槍を撃ちながら作業を見続けている。
 その、どことなく嫌らしい目線が癇に障ったのか、太めの弾丸を三点射する。

 しかし、それを悉く半霊の光に阻止される。どうにも手の内が読まれ過ぎである。

 だが勝負に勝てずとも時間さえ稼げれば、と考えを改める鈴仙。
 隊列を組んでいた使い魔達を消し、八方に控えさせていた使い魔を起動させる。

 懶符『生神停止(アイドリングウェーブ)』…全方位から弾幕を迫らせることで焦らせ被弾させるスペルカードである。

 
 鈴仙の使い魔が消え、なんとか凌いでいた情勢が悪化したギルは先ほどまでからは考えられない跳躍力で後ろに下がる。
 そのまま、新たに動き出した後ろ側の使い魔達のちょうど間に着地する。

 使い魔達が弾丸を放つ中、やはり先ほどまでと同じく鎧で弾きながら何かを探している。
 その行動が何を示すか知る零児が阻止しようとするが使い魔達の弾幕のせいで思うように近づけない。

 そこで『シャドウエッジ』を唱え、ギルの足元から剣を突きだすジューダス。しかしそれを取りだした『イラニスタンの油』で相殺するギル。
 更に続けて『黒竜の牙』を地面にばらまく。そこから蘇る大量のスケルトン。
 それらは剣を振りかぶりながら弾幕と共に迫る。正直なところ、この光景は地獄絵図のようである。

 迫る骸を柊樹と唱術で砕きながら、ゆらぐ弾幕を駆け抜けてギルに近づく。
162 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/10/14(金) 16:10:52.40 ID:DQA2G8JC0

 脆いながら、多少の損害では立ち止まらないスケルトン達を斬り伏せながら、二人が迫る。

 それを眺めていたギルは、弾幕が元に戻り、鎧が反射するのを確認しながら二人を待つ。
 そうしてやってきた零児達の足元から、時間差でスケルトン達が跳び出す。

 しかしそれらを踏み台にし、零児がギルの後ろへ跳ぶ。
 慌てて後ろを向いている所へジューダスが『虎牙破斬』を見舞う。

 一撃目で盾を弾き飛ばし、二撃目で剣共々抑え込む。しかしそれはあっけなく押し返される。
 体重をいくらか乗せているとはいえ、所詮華奢な少年の体では鍛えられた青年を抑え込むは出来ない。

 だが、そこで鍛え上げられた大人が抜刀術を以て背後から襲いかかる。

 ところで、弾幕はどうしたかと言えば…頻度は上がるが濃度の下がる位置で戦っているのである。
 それは、先ほどの戦いと比べれば天と地の差があるわけで…(所属的には逆じゃがの!とは小牟談)


 そんな中、鈴仙は不安を感じていた。

 二人の波長を探れば、こちらの行動は見え見えなようだった。

 弾幕の対処法までも知られている。

 その証拠に、自信満々に中央で避け続ける狐の妖怪。

 周囲八方にある使い魔達をどんどん潰していく半人半霊。

 下で戦う男たちはそういった雰囲気はないが、やはり彼らも自然と戦いやすい環境にいる。
163 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/10/14(金) 16:20:52.68 ID:DQA2G8JC0


 これが、地上。


 これが、戦い。


 戦いの準備は不十分だった。

 月の異変に気付いた師匠が言ってから、一刻もなく彼らが来たから?

 違う。

 自分が、戦いの経験を忘れていたからだ。

 何故か分からない。

 月であれだけ戦いの準備に明け暮れていたのに。

 忘れられない程に身に沁みつけたはずだったのに。


 故にスペルは2つしか満足に出せない。

 出そうと思えば出せるがあの二人を見る限り、ただの無駄。

 そのせいで生まれる訳の分からない焦燥感。

 そこまでひどく浸かっていた心算でもないのに起った、日常と言う名の怠惰のつけ。

 意図せずに、「期待を裏切った。」

 封鎖も時間稼ぎも満足に出来なかった。

 否。「師匠はそれも分かっていたのだろう。」

 「それゆえにあんな事を言ったのだ。」

 「稼げない、そう判断した…あの言葉。」

 「……ならいっそ、ならばいっそ。」


 『…月の兎の狂気に染まれ、地上人!!』


  ル ー ル な ん ざ し っ た こ と で は な い。


 拾ってくれたあの人の恩に報いるには…!!!



 「こーのばかちん!それが一番師匠を裏切る形になるというのがわからんのかっ!」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
164 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/10/14(金) 16:22:53.78 ID:DQA2G8JC0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「大丈夫かい?レイセン」

 気付けば、ギルさんに抱かれていた。
 ギルさんは怒ったような、困ったような、そんな顔。
 そして、おでこのあたりが微妙に痛い。

「まぁ、殺したりするつもりはなかったようだから心配はしていないけれど」

 それはそうだ。スペルカード・ルールでは殺しはご法度……でも、私は…

「それにどうも僕らを止めるために来たようじゃないみたいだし」

 どういう事?

「ああ、それなんだけども…」

========================================================

小牟「こやつ、途中から口に出とるのに気付いておらなんだな」

零児「俺達でもはっきりと聞こえる程だったんだがな」

ギル「…もしかしたら、自分の狂気に飲まれたのかもしれないね」

妖夢「うう…頭が痛い」

零児「おい、大丈夫か?」

小牟「忘れとった。妖夢は感受性が高いから狂気に染まりやすいんじゃった」

妖夢「え?そうなんですか?」

ジューダス「おい、知らないそうだぞ」

小牟「……ほうほうほう?これまた面白い事が分かったの」

零児「その話はお前さんに任せるさ。で、通してもらえるんだな」

ギル「僕一人じゃ4人も相手には出来ないからね。道はそっちだよ」

ジューダス「…襖…」

ギル「そこを通って廊下に沿って行けばいい。その先に彼女達がいるはずさ」

零児「…カイもそこにいるのか?」

ギル「ああ。やっぱり、知り合いなのかな。僕達」

零児「それは異変の後に確かめればいいさ。それじゃぁ行けるか?妖夢」

妖夢「はい、少し落ち着きました…」

小牟「万が一の場合を考えると置いて行きたいんじゃが…ま、大丈夫じゃな。終わった後にすぐ診せれるし」

ギル「気をつけて。恐らく、君達が思っている以上にやっかいだから」

========================================================

「というわけさ」

 彼らの事までにおわせるなんて、どこまで真面目なんですか…

「そう言われても、ね」

 …知り合い、ですか。

「心当たりはない。けど、彼は嘘をついているようには見えなかった」

 …はぁ、師匠に怒られちゃうなぁ。

「僕には彼女が本気でやっているようには見えなかったし…どうかな」

 ギルさんは負けてないからいいんで………?

「ん?どうしたんだい?」

 …なんで……周りが………く…来な………
165 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/10/14(金) 16:33:13.85 ID:DQA2G8JC0
今回の投下は以上です。対処法と言いながらよくよく考えてみればギルもスペカ対応出来る部類じゃねーか!

今回、鈴仙が変なのは仕込んでおきたい事との相性のためであり、元から変だとか嫌いだとかではありません。
無理矢理な部分があるので自分でも納得いってませんが………怪文書になってなけりゃもっとましだったんですよぉ!

次回投稿はちと遅くなります。来週いっぱいは忙しいので。


ところで、まじで東方成分薄いんですが4面の反動でしょうか。そりゃ最終的にはムゲフロメインになりますが……
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/14(金) 18:50:35.36 ID:KUzjMywDO
ナムカプでも東方でもなくて、”この作品“として楽しませてもらっているので、成分の濃淡なんて気になりませんね。
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/14(金) 20:52:48.07 ID:WrNY4zai0
乙、ひ、飛龍さんは!?ストライダー飛龍さんは出るんですか!?
168 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/10/15(土) 14:22:37.38 ID:8KFakdLS0
>>166
ですねぇ…SSなんて所詮は設定だけ持ってきた2次創作ですもんね。あまり気にしないようにしていきます。

>>167
あまり言うべきじゃなかったかもしれませんが、飛竜は「望み薄組」です。
今でもネタは考えてるんですが、どうにもインフレの発端になってしまうんですよね…
こればっかりは黒歴史がわr…ゲホンゲホン
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/10/15(土) 15:46:04.41 ID:+vib/CpOo
乙。戦闘表現がだんだん洗練されてきとるのぉ

>>167
飛竜さんが来ると「凄く…バイオレンスです…」な事になっちゃうからー!
170 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/10/17(月) 16:42:22.93 ID:LJW5IpBk0
さとり「スタジオ、という場所は面白いものですね。狭いですが」

ガグン・ラウズ(スヴァイサー)『おかげで我は外だ。…そもそも、我を呼んでもよいのか?ここの者共は』

ホリ・タイゾウ「かまわねーから呼んだんだろ?そもそもここじゃめんどくせぇ事は言いっこなしだ」

さとり「そうですね。封印だとか、死んだとか関係ありません。敵も味方も一緒にです」

ラウズ『それで構わんのなら我も気にしない事にしよう。…では、本日の『一日一談』だ』

タイゾウ「話題は東方の妖怪やそれに近いやつらの種族についてだ。全部、つーわけじゃないようだがな」

さとり「とりあえず始めは私の種族、『さとり』についてです。これは日本の昔話のひとつにある『さとり』そのままですね」

ラウズ『他者の心を読み、隠し事や嘘を見抜き言いふらす妖怪であるために、普通の人間であれば絶対に敵わないとされる』

タイゾウ「だが、無意識に蹴りあげられた小石が当たって傷付けられたってところから、絶対の無敵っつーわけじゃないらしい」

さとり「更には「地霊殿」のように、自分より強い相手には読めたとしても負ける事があります」

ラウズ『心が読める範囲が厳密に判明していないが、集中せん限りそこまで広くないというのが中の者の見解だ』

タイゾウ「無制限ならそれこそ無敗になっちまうしな。次だが、『魔族』だとよ」

さとり「アリスさんがそれに該当します。地上に居る鬼にそう呼ばれたそうです」

ラウズ『様々な憶測が飛び交っているようだが、『魔界の人間』をそれに当てはめる方向とする』ママーアレスゴーイ

タイゾウ「『魔族』の認識については『魔法使い族』だったり、純粋な『魔族』だとか色んな意見があるんだとよ」

さとり「ですが中の人は神主さんの「旧作と同一人物」より「一新した」という点を摘み取り、『魔界の人間』を選んだようです」

ラウズ『そして、この『魔界の人間』と言う点から、聖白蓮も『魔族』とするそうだ』キャッキャッ

タイゾウ「妖怪化したのは遠い過去の日本なんだが、SS内設定からそうするんだとよ」

さとり「その設定とは、「身体的特徴は人間と同じであり、違いと言えば過ごした空間ぐらい」というものです」

ラウズ『とは言うが、魔界の環境は人間界のそれを遥かに凌ぐほど劣悪だ。本来ならば生誕より生活せねば慣れ得ぬ』スゲー!

タイゾウ「宇宙も悪いっちゃぁ悪いがな。んで最後だが、知らない奴の方がすくねぇ『吸血鬼』だ」

さとり「力強く、素早く、日光に弱く、プライドの高い種族です。西洋妖怪、あるいは怪物とされます」

ラウズ『ヴラド・ツェペシュの末裔と自称しているが、実際は無関係だという』ナニシテンノーネーガンガン

タイゾウ「そうそう、儚月抄の設定は殆ど無視するんだとよ。ただ、これは吸血鬼以外もだがな」

さとり「表現の仕方が悪いと問題にされていますからね…身長、キャラ相関、その他色々とZUN氏の設定とは違うようですし」

ラウズ『吸血鬼に限っては大筋そのままの為、ほぼ変わらずだがな。資料はここまでのようだ』ウゴケヨーベシベシ

タイゾウ「あー疲れた。俺にこんなの似合わねーわ。デスクワークしてるやつの気がしれねぇぜ」

さとり「開始早々『だりーあそびてー』と連呼していたのに良く我慢出来ましたね。ところでラウズさんの方から子供のような声が」

ラウズ『…遊具にされている』キャッキャッ

タイゾウ「ぶっ!?」

さとり「な、なるほど…」

ラウズ『…下手に動けん』ワーイワーイ

タイゾウ「御愁傷様だな。……よし見に行くか」バタンッ

さとり「写真に収めてマスヨさんに見せるんだそうですよ?」

ラウズ『くっ、卑怯者め…!』スベリダイー

さとり「ある意味、兵器の平和利用ですね。…それでは今日はこのへんで。さようなら」
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/18(火) 11:20:07.49 ID:n6viq5ZUo
小五ロリ、小五ロリじゃないか!
172 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/10/19(水) 15:49:08.42 ID:aH+XKdYL0
凱「拙者、本日のえむすぃーを務めさせて頂く、凱でござる」

リグル・ナイトバグ「え、ちょっと早いわよ!えーっと、同じくMCをするリグルです」

コブン?「・・・・・・・」

凱「む?いかがいたした、らぅーず殿」

コブン(ラウズ)「…何故今回も我なのだ…」

リグル「なんだか言葉づかいが良かったからだって。ところでなんでそんなに暗いの?騒霊の音楽でも聴いた?」

ラウズ「この体になって落ち込まぬ者などおらんだろう…」

凱「そうでござろうか?なかなかに可愛らしい姿だと思いますぞ」

リグル「そういえば、外にあったあの機械が本来の体…なんだっけ?」

ラウズ「否、あれも借り物だ。だがあれは非常に馴染み、良かったのだ。……はぁ」

凱「ううぬ、御愁傷様でござる。ですが、仕事はせねばならぬのではござらんか?」

リグル「ここに来た以上はね。さ、落ち込まずに起きて起きて」

ラウズ「…うむ、そうだな、いつまでも落ち込んではおられん。手間を取らせてすまなかったな、二人とも」

凱「それでは、本日の題目は…前回の続きでござる。まずは『スキマ妖怪』でござるよ」

リグル「『一人一種族』妖怪のなかでもっとも有名で強大な力の持ち主ね。幻想郷の創設に関わったとされるわ」

ラウズ「妖怪の賢者とも呼ばれ、その言動は何を考えているのか判別がつかず、何でも知っているような気配を漂わせている」

凱「胡散臭いという言葉が一番合う妖怪でござるな。本編では弱っておられるためにその印象は軽いでござるが」

リグル「弱ってるって言ってたものね。さて、次は『妖獣(玉兎)』ね」

ラウズ「玉兎とは、月に住む兎の事を指す。この発想は月の模様から来ているために、他の国ではあまり語られる事はない」

凱「月では兎が餅搗きをしている、というのは日本ではあまりにも有名でござるな」

リグル「東方及びこの作品では竹林の鈴仙って兎や、本当に月に住んでるレイセンやその他の兎達を指すわ」

ラウズ「月に住まう者共通事項だが、寿命や罪といった概念から開放されているそうだ。ただし、現在地上で暮らす者達に寿命は『一応』あるがな」

凱「大げさ、嘘吐き、不真面目…その割に純粋なため、彼女たちの間では色々な噂が途絶えないそうでござる」

リグル「仲間内で念波を送りあえる事も後押ししてるらしいわ。…どうやっているのかしら」

ラウズ「ふむ、今回は二つだけか。………はぁぁ…」

リグル「お疲れ様。どうしてその体になったの?」

ラウズ「前回、スタジオに入れぬと言われあそこから話をしておったのだが、動かぬのをいい事に、小童達が遊び場にしてしまったのだ」

凱「む?新たな紙が…ほうほう、それで「危ない武器等を外して代わりの物を取り付け、遊具として有効活用してみるてぃすと」でござるか」

リグル「ラウズさんって確か思念体になれるって言ってたから、それを利用したわけね。……なんで止めなかったの?」

コブン「…小童達の笑顔は、我らが守れなかったモノだ。それをあのような形で再び見られたのが…な。ですぅ」

凱「それは、なかなかに良い御人でござ………ですぅ?」

リグル「なんか今、ラウズさんから聞き慣れない変な語尾が…」

コブン「……・・・・・・うぉぉぉおおおおおお!!!」ダッ

 バタンッ!

凱「………」

リグル「………」

凱「…後で慰めに行くでござるよ」

リグル「傷口に塩を塗る羽目になりそうよ。それでは今回はこの辺で。バイバイ」
173 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/10/19(水) 21:56:05.55 ID:4vMLQaTO0

お空「きょーの『一日一淡』の補足だよー」

お空「ラウズさんの設定だけど、中の人ネタがちょっと入ってて、それにバームクーヘン?の樹を制御したってところから」

お空「身内には優しいんじゃないかなーとか思ってたらいつの間にかこんなことになってたんだって」

お空「…うにゅ。よくわかんない」

お空「それと、ガイって人に、中の人から伝言だよー」

お空「『………』なんだっけ?」



英雄「ーーーーー!教え甲斐のある子の気配がしますぞ!」
174 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/10/21(金) 14:30:49.68 ID:zkmjtCF/0
布都「連絡だ。次の本編だが、土曜の深夜、曜日が変わる頃に投下するかもしれぬぞ」

布都「ただ中の者曰く、道中編だけになるかもしれぬとのことだ」

布都「竹取の姫とやらとの勝負を盛り上げるための演出が予想を越えておったようだな」

布都「しかし聞いたところ、彼の者は日の国の有名な御仁だという」

布都「つまり更に有名な太子様の演出もそれ相応のものを期待してよいということだな!」

神子「おや、物部氏。聞いてませんでしたか?私達の原作はなぞらないようですよ」

布都「なぬっ?!」
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/10/21(金) 23:55:04.37 ID:GGXTOhICo
おおう、土曜0時辺りか。楽しみだ
176 :日付変更ぐらいに投稿すると言ったな ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/10/23(日) 09:01:15.64 ID:xJkd0oR/0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜永遠の孤廊・宙浮かぶ廻廊〜〜〜

零児「透明な床…というわけでもなさそうだな」

小牟「なんじゃろな、これ。流石月の技術じゃ。わけわからん」

ジューダス「空に浮かぶ物の方が技術力は上…当たり前と言えば当たり前か」

妖夢「正直、何がなにやら…せいっ!やぁっ!」

零児「迎え撃ってくる妖怪が少ないな。やはり、準備不足か」

ジューダス「…ふん、つまらん」

永琳「あら、ごめんなさいね。モテナシがいまいちで」スッ

小牟「おおう、やはり来よったか永琳よ。ほれほれさっさと手抜きしてそこをあk………」           カッチン

妖夢「?どうしましたか、小牟さん?」

小牟「………いや、何でもないんじゃよ。ほれほれ、さっさとこやつを倒して輝夜をニート生活からおさらばさせるぞぉ!」

ジューダス「…だが、こいつは通してくれそうにないぞ」

永琳「ええ。今回、待っているのは姫様だけじゃないのよね。…ま、貴方達を診てあげる」

零児「来るぞ、構えろ!」

妖夢「くっ!」

永琳「安心なさい。もう弓では戦わないわ。それに…来なさい。超戦士達」

名無しの超戦士1P「おう、ようやく出番か」

名無しの超戦士2P「待ちくたびれたぜ」

小牟「…うっわぁ」

零児「一気に濃くなったな。この二人なら仕方ないが」

1P「ああん?知り合いか?相棒」

2P「お前が知らねーで俺が知るわけねーだろ。人違いじゃねーか?」

ジューダス「例にもれず、か。…それに、厄介な相手だ」

妖夢「コワモテ…というやつですね。…師匠より断然濃い…」

2P「ああん?俺達がコワモテだと?」

妖夢「(ビクッ」

1P「おいおい驚かせてるんじゃねーぞ、こんな少女をよ。そんなんだからコ ワ モ テなんだよ」

2P「それもそうか。わりぃな嬢ちゃん」

妖夢「い、いえ…」

永琳「のんびり話してる所悪いけど、用件は分かってるわよね」

1P「わーってるよ。お邪魔虫は掃除しろってことだろ」

零児「相変わらずノリがいいから見逃してくれると思ったが」
177 :あれは嘘だ ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/10/23(日) 09:11:50.63 ID:xJkd0oR/0

2P「相変わらずかは知らねーが、ここのお姫様達を守るのが俺達の存在意義なんでな」

ジューダス「なら、一緒に叩き斬るまでだ。その覚悟は出来ているんだろ?超戦士」

2P「あたぼうよ!」

1P「ま、倒されるのはお前らだがな」

永琳「行くわよ。秘術『天文密葬法』!」

1P&2P「機銃『ツイン・サイドサーム』だ!」


 永琳から大量の使い魔が放たれ、零児達4人を囲む。しかもその使い魔達は4人から絶妙な位置を取る。
 それに近づこうと零児と妖夢が駆けだす。しかし、やはり絶妙な位置を取るように動く。

 ならばとジューダスが永琳目がけ『デモンズランス』を飛ばす。
 漆黒の槍が使い魔達を貫く直前、永琳の左右にいた超戦士のサテライト、「モビちゃん」がナパーム爆弾を放ち阻止する。

 3人が行動を起こすのを確認し、永琳がゆったりとした動作で大弾を正面に打ち出す。
 その弾が通る道にいた使い魔は僅か避け、大玉が通った瞬間、大きく共鳴を起こす。
 そして放たれる大量の弾幕…それらが4人を襲いかかる。
 だが所詮正面からの粒弾幕。悠々と回避する4人。

 続けて超戦士1Pが左辺から零児へ、超戦士2Pが右辺から妖夢へとホーミングレーザーをぶちかます。
 永琳の大弾と同じく、使い魔が避ける。そして共鳴し…大量のレーザーがランダムに打ち出される。

 少し下がっていた零児は難なくホーミングレーザーと細いレーザー群を避ける。
 しかし、若干の焦りで前に出過ぎていた妖夢は慌てて後ろへと下がろうとする。

 それを読んでいた永琳が左外周をなぞるように大弾を放つ。

 大弾は妖夢の避けようとしたラインを塞ぎながら使い魔の共鳴を引き起こす。
 結果、左からは大量の粒弾幕が、右からはレーザーの高濃度弾幕が迫る。
178 :だがしかし…かもしれない…かもしれないと言っただけ…!! ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/10/23(日) 10:05:07.88 ID:xJkd0oR/0

 …のはずが、粒弾幕が一切放たれない。とっさにそちらへ避け、ついでに使い魔を切り裂く。

 弾幕が放たれなかった理由。それは今までずっと静かだった小牟が『鬼門封じ』で止めたからだ。

 斬られた使い魔達をしり目にレーザーを避け、ひとまず小包囲網を抜ける。

 それを確認したジューダスがまだ封じられている使い魔達の上に大きすぎる岩を落す。
 自由に動ける使い魔達が全て逃げる中、小牟の手にかかっていたものは案の定潰される。

 だが、永琳達三人は動じることなく攻撃を再開する。

 超戦士1P がマシンガンとオートバルカンで使い魔達を刺激する。
 超戦士2Pはホーミングレーザーを小牟に向け放つ。
 大量の直線弾がばらまかれ、共鳴した使い魔達がその密度を濃くする。

 迫りながら曲がるレーザーをひょいと避けた小牟は玄武乍をばらまく。

 後から来ていたレーザー群を、ジューダスが『ネガティブゲイト』で強引に軌道を曲げる。

 永琳が二人に続いて攻撃をする前に、零児と妖夢が再び駆け出す。

 前に出た二人を、再び絶妙な位置で囲い始める使い魔達。そこへ永琳が右方へと大弾を放つ。

 しかし、その大弾が使い魔達を響かせることはなかった。
 玄武乍は爆発することなく、『ネガティブゲイト』によって零児と妖夢の間に飛んで来る。

 そしてそこで、『火燐』を持った妖夢が渾身の斬撃を振りかぶる。
 炎を纏った飛ぶ斬撃が、玄武乍へと重なる。

 風を切る音。続けて、連続して鳴り響く爆発音。
 それらは間に居た約半数の使い魔を吹き飛ばし、大弾が通過した部分の煙が薄まる。

 残った使い魔は大きく外周を囲っていた4割程度だけ。そうなっては、4人を満足に囲む事も出来ない。

 となると、超戦士たちは近距離での戦いは不慣れ。
 マシンガンによる弾の嵐も妖夢の反射で自爆。
 残りの弾幕も阿吽の呼吸で多少の苦戦は強いられるが、発射元はたった3つ。

 あっという間に距離を詰められ、終わりである。
179 :故に…俺は悪くねェ!俺は悪くねぇんだ!! ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/10/23(日) 10:10:38.92 ID:xJkd0oR/0

ジューダス「ふんっ!」

1P「グワッ!」

小牟「あらよっとぉ!」

2P「おうふっ」

永琳「ふーん。やるじゃない、貴方達。流石に鈴仙を倒しただけある、か」

零児「あれは倒したというよりも暴走して自爆した、だったがな。それで、まだやるつもりか」

永琳「いいえ、ここはもう引かせてもらうわ。これ以上は構えないから」

ジューダス「…ちっ。余裕か」

1P「わりぃな、お師匠さんよ。期待に添えられなかったようだ」

2P「でもルールはルールだからな。俺達もここで引かせてもらうぞ」

永琳「構わないわ。…後はお願いします、姫様。カイさん」

輝夜「ええ、控えてて頂戴、永琳。超戦士達。この人達の戦い方は存分に見させてもらったから」

小牟「あやつめの言う通りじゃったな。カイも来ちょる」

カイ「?…狐さんの知り合いなんていたかしら」

妖夢「…月が…?」

ジューダス「あれは…何かが違うぞ」

輝夜「あら、幽霊の癖に良く分かったわね。…いえ、幽霊だからこそ解り得るのかしら」

小牟「わしも知っとるぞ。古の月…いや、確か本来の月じゃったか」

輝夜「その通り。遥か古、千や万よりさらに前、月の民でさえ忘れた古代の月よ」

カイ「その光は狂気の光。輝夜さん達のように月の民か、加護のない者が視たり、その光に晒されれば簡単に狂ってしまえるわ」

零児「…だが、なんともないぞ?」

妖夢「そういえば違和感はありますが」

小牟「ふむ、わしも変じゃと思うとったんじゃ。妖夢めがハイテンションになるはずなんじゃが」

輝夜「次第に解るわ。さて、この永遠の世界に来たのは、やっぱり私を止めるためよね?」

零児「ああ。あんた達を倒さんと異変が解決しないんでな」

カイ「私達はただ、追手から永遠に逃れるために月とここを切り離すだけ。貴方達に迷惑はかけないわ」

小牟「ところがぎっちょん、そうはいかんのじゃよ。そういう定めでな」

妖夢「それに、そんなことをすれば永遠に孤独なのではないですか?」

輝夜「確かにそうよ。でも、私の能力ならば一瞬と永遠を操れる。その能力の前では永遠も一瞬も等しい時間なの」

カイ「私はあの魔王を永遠に封じ込めるため、私の魂ごと…ここで…」

零児「そうやって逃げていても埒はあかないぞ。それに、そもそも目的から履き違えているんじゃないか?」

ジューダス「どんなに突き放してもしつこく付きまとってくる、あのバカみたいな奴がお前達に現れるかもしれないしな」
180 :故に…俺は悪くねェ!俺は悪くねぇんだ!! ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/10/23(日) 10:22:25.55 ID:xJkd0oR/0

ジューダス「ふんっ!」

1P「グワッ!」

小牟「あらよっとぉ!」

2P「おうふっ」

永琳「ふーん。やるじゃない、貴方達。流石に鈴仙を倒しただけある、か」

零児「あれは倒したというよりも暴走して自爆した、だったがな。それで、まだやるつもりか」

永琳「いいえ、ここはもう引かせてもらうわ。これ以上は構えないから」

ジューダス「…ちっ。余裕か」

1P「わりぃな、お師匠さんよ。期待に添えられなかったようだ」

2P「でもルールはルールだからな。俺達もここで引かせてもらうぞ」

永琳「構わないわ。…後はお願いします、姫様。カイさん」

輝夜「ええ、控えてて頂戴、永琳。超戦士達。この人達の戦い方は存分に見させてもらったから」

小牟「あやつめの言う通りじゃったな。カイも来ちょる」

カイ「?…狐さんの知り合いなんていたかしら」

妖夢「…月が…?」

ジューダス「あれは…何かが違うぞ」

輝夜「あら、幽霊の癖に良く分かったわね。…いえ、幽霊だからこそ解り得るのかしら」

小牟「わしも知っとるぞ。古の月…いや、確か本来の月じゃったか」

輝夜「その通り。遥か古、千や万よりさらに前、月の民でさえ忘れた古代の月よ」

カイ「その光は狂気の光。輝夜さん達のように月の民か、加護のない者が視たり、その光に晒されれば簡単に狂ってしまえるわ」

零児「…だが、なんともないぞ?」

妖夢「そういえば違和感はありますが」

小牟「ふむ、わしも変じゃと思うとったんじゃ。妖夢めがハイテンションになるはずなんじゃが」

輝夜「次第に解るわ。さて、この永遠の世界に来たのは、やっぱり私を止めるためよね?」

零児「ああ。あんた達を倒さんと異変が解決しないんでな」

カイ「私達はただ、追手から永遠に逃れるために月とここを切り離すだけ。貴方達に迷惑はかけないわ」

小牟「ところがぎっちょん、そうはいかんのじゃよ。そういう定めでな」

妖夢「それに、そんなことをすれば永遠に孤独なのではないですか?」

輝夜「確かにそうよ。でも、私の能力ならば一瞬と永遠を操れる。その能力の前では永遠も一瞬も等しい時間なの」

カイ「私はあの魔王を永遠に封じ込めるため、私の魂ごと…ここで…」

零児「そうやって逃げていても埒はあかないぞ。それに、そもそも目的から履き違えているんじゃないか?」

ジューダス「どんなに突き放してもしつこく付きまとってくる、あのバカみたいな奴がお前達に現れるかもしれないしな」
181 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/10/23(日) 10:32:41.13 ID:xJkd0oR/0

カイ「…それでも、これ以上ギルに迷惑をかけるのは…ドルアーガのせいで苦しむ人は生みだしたくないの」

輝夜「そうね、その可能性も否定できないわ。
   でも、こんな退屈な時間をだらだらと過ごすだけならいっそ切り捨ててしまった方がすっきりするかもしれないでしょ」

小牟「退屈なのはぬしが凌げるモノを探さぬからじゃろう。わざわざ巫女が退屈せん決闘方法を作ってくれたんじゃ。
   乗るしかないぞ!このビックウェーブに!」

零児「何がそこまで否定的な事を考えさせるにいたったかは知らないが…ギルガメスは、お前のことを教えてくれたぞ」

妖夢「…?…・ああ!あれって止めてくれってことだったんですか!」

カイ「!」

ジューダス「…(気付いていなかったのか」

輝夜「あらあら、カイさんとギルさんはお熱い事。そっか…なら、五番勝負と行きましょう」

ジューダス「五番勝負…財宝の数と同じか」

輝夜「博識な人は嫌いじゃないわ。それで私を楽しませてくれたのなら、月を元に戻してあげる」

カイ「えっ…でも」

輝夜「のけもの扱いにされてるんだったら連れて行って話相手になってもらいたかったけど…
   想ってくれる人を置いて行かせるわけにはいかないわ」

零児「ふっ。姫様らしいじゃないか」

輝夜「らしいじゃなくて姫なのよ、私は。さぁ、どうするの?全員で1つずつ課題を攻略しても構わないわよ」

零児「ここは、姫様の仁義に乗っからせてもらうさ。な、皆」

ジューダス「…ふん」

妖夢「皆さんがそれでいいのなら、構いませんが」

小牟「勝手に決めるでない。と言いたいが、気分が乗っ取るしな。ほれほれ、誰から行くんじゃ?」

妖夢「なら、私から行かせてください。先ほどまでの失態、ここで返上致します!」

輝夜「ふふっ。今まで何人もの人間が敗れ去っていった五つの難題。貴方達は幾つ解けるかしら!!」
182 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/10/23(日) 10:40:17.67 ID:xJkd0oR/0
今回の投下はここまでです。試しに寸止めしてみたり。

永琳のチートスペックはKOS-MOS Ver4ランクで困りものです。あっちは対処法思いついてますが。


昨晩は仮眠のつもりが気付いたら7時でした。何を言っているのか解らないだろうが(ry


ところで、なんで2重投稿に…「書き込む」は1回しか押してなかったのに。
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/24(月) 10:31:04.20 ID:K02cdQMWo
乙でした
妖夢何気に出番億多くて嬉しいぜww

KOS-MOSさんと言えばナムカプでもチートスペックでしたね
チートと言えば聞く所によると実は超戦士さん本来はイデオン的存在ってマジか…
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/10/24(月) 23:57:58.73 ID:GVLS6gyho

寸止め、つまり焦らしプレイかビクンビクン

>>183
天帝支配下の世界以外でメガクラッシュすると次元消滅レベル
だけど確かゲーメストかなんかで出た情報だったし
昔のSTGは設定が色々 き が く る っ と る から話半分でおk。話半分としてもアレだが

イデオン的云々は超戦士は天帝に滅ぼされた複数の世界の人々の無念や怒りが
集まって生まれた存在だから合ってると言えば大体合ってる
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/25(火) 10:30:56.49 ID:gtkadKEio
クリアしてみたら地球オワテタとか
語られない設定見ると絶望がお前のゴールだとか
ED後に明るい未来が一切見えないとか

昔のSTG、色々壊れててワロタwwww…ワロタ…
186 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/10/25(火) 12:21:50.20 ID:LQiE3WZr0
蓮子「はいっ!始まりました『一日一談』。本日のMCを務めますわ、私宇佐見蓮子と!」

さくら「はいはーい!春日野さくらと!」

沙夜「はぁ〜い。逢魔の沙夜の3人がお送りするわ」

蓮子「いっぺんに平均年齢上がった気がする。さて、今日のおdウプッ!?」

沙夜「年齢のこと言っちゃ、や ぁ 〜 よ ?」

蓮子「!!(コクコクコク」

さくら「案外気にしてないと思ってたな〜。っと、今日のお題は「逢魔」だよ!」

蓮子「ぷはぁ!え、えっと、確か『物質界』の『現代』軸で『森羅』と相対する組織、ですっけ」

沙夜「ええ。この世に混沌をもたらすための組織なの」

さくら「正直言うと凄く迷惑だよね。あの状態じゃ暮らしにくくて仕方ないよ」

蓮子「創設時期は不明。ただ結構昔から存在していたらしいです。判明しているのは10年前からですが」

沙夜「ナムカプ地点での目的は九十九の復活。ムゲフロEXでは百式による次元掘削からの…これ以上は企業秘密ね♪」

さくら「どっちの時も、結局世界間にある次元の壁をどうにかしてる感じだよね」

蓮子「資料を見るとどちらも小さな工作をこつこつとしているのね。ムゲフロの時はアグラットヘイムの人達に奪われて、破棄したようだけど」

沙夜「制御コードを奪われるとは思っていなかったのよね。あれは完全に私の失態だわ」

さくら「えーっと、逢魔の構成メンバーって、基本的に全員妖怪で、あの九十九ってのだけ付喪神なんだよね」

蓮子「元々一孤の存在だったのが、複数の九十九神あるいはそれになりかけの存在を吸収して強大な力を手に入れた、と中の人は設定づけてるわね」

沙夜「実際、6種の刀、鎧、兜、手甲、帷子、それから正午にやられるまでは足の方も全部九十九神よ」

さくら「それ以外にもごちゃごちゃ付いてたよね。友達のデコ携帯でもああはならないよ」

蓮子「……デコ九十九…カラーリング的にないわね」

沙夜「百式ならいけるんじゃないかしら?呼ぶ?」

さくら「そんなことで呼んでいいの!?ってかまだ残ってるんだ(汗」

沙夜「片那ちゃんも取り付けてない、ただの木偶よ。それに私、仕事人だから。ごっすぃ、表に用意しておいて〜」

毒牛頭「了解しました、沙夜様」

蓮子「それだけのために…御苦労さまです」

毒牛頭「出番があるだけまだましだ。牛頭なんか未だに折檻中だからな」

さくら「うげ、1月も?…何って言ったのか資料ないから気になるなぁ」

沙夜「うふふふふ」

蓮子「止めとこう、さくら。死ぬ」

さくら「あ、相変わらず笑顔がすごいや…あはは…」

沙夜「と、いうわけで今日はここまでよ」

蓮子「あんまり説明出来てない気がするけど、それだけ謎の組織ってことだからご了承ください」

さくら「よし、それじゃぁデコってこー!」

蓮子「なんだかんだで乗り気じゃない」

さくら「いやぁ、女の子だし。それにあのスボイサー?とか言うやつの隣に置けばなんだかいい感じじゃない?」

沙夜「スヴァイサー、ね。3m級のロボット達を遊技場に、ねぇ。…ありかも?」

蓮子「それだと東方からは何も出ないわねぇ。…あれはアドバルーンだし」

さくら「それだったら、中の人がなんとかするよ!きっと!」

沙夜「そうね、なんとかしてもらおうかしら?」

蓮子「ム、無茶振りだ…」
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/25(火) 14:18:18.70 ID:gtkadKEio
ババァーン乙
年食っててもロリババァだと年齢が禁句ではない不思議!外見って重要だよね
ムゲフロやってないから九十九タンのその後が分からないZE
今からでもやるべきか…

>>184
そんなヤバイ存在にあこぎな商売続けるシルフィーさんハンパねぇなww
188 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/10/25(火) 14:19:17.20 ID:LQiE3WZr0
…そういえば1組だけなんですが、ほぼカップル状態になる組み合わせがあるのですよ。

…それって幻滅してしまうとか、皆さんありますかね?

これまただいぶ後ってか、終盤頃の話なんですけどね。
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/25(火) 14:21:40.28 ID:1skbqYNco
そういうのは大好きだ是非やって欲しい
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/25(火) 14:38:51.77 ID:gtkadKEio
おいおいそんな要素……ニヤニヤできてとても良いと思います
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/26(水) 08:10:05.14 ID:0q5l6OoDO
いったいダレと誰が……

さぁ早く書く作業に戻るんだ
192 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/10/26(水) 12:16:02.47 ID:M4JfsN030
…あんたらって人わーーー!!!

すでにプロットどころか大まかなセリフの割り当てに展開に要するに基礎文章は完成してるんですけどねぇ!!

問題はこのままのスピードだと3か月後でも投稿できるかどうかって話です。
なんか、思ってたよりも戦闘部分が多くなってしまい、このままだと2章が予定の3倍ほどに…

え?早く書け?すみません…。
193 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/10/28(金) 13:38:40.98 ID:q5nH3Tup0
 カチッ…ガーガー…    ###東方文花帖(書籍)付属CD 風神少女###

 テレレテレレテレレテレレテレレテーテーテテレレレン テレレテレレ テレテレテレレン テレレテレレテレレテレレッテー
文「さぁ、始まりました本日の『一日一談』!本日のMCを務めさせていただきます、射命丸文と申します」
 テレ テレ テレ テレ テレ テレ テレ テレ テレ テレ テレ テレ テレ テレ テレ テレ
小牟「おーい!お茶の間の皆〜!僕、しまz…」ゴンッ
 ズンチャッ ズンチャッ ズンチャッ ズンチャッ ズンチャッ ズンチャッ ズンチャッ ズンチャッ
ピーター「それ以上は断固阻止する。…自分はWナンバー03、ピーター・ペインだ」
 テレーレレー テレレテーレーレー テレレレー デーン テレーレレー テレレテーレーレー テレレレー デーン
小牟「いったーい!手甲についとるようわからんので殴るでない!…わしは小牟。本編でばりばり活躍中の仙狐じゃ」
 テテーテテー テテテテーレーレー テーレーレレー デーン テテーテテー テテテテーレーレー テーレーテテーーー ジャンッ! 
文「はい、皆さんの自己紹介が終わった所で今日のお題です。「適当にやれ」………」
 テーテーテー テーテ テ・テ・テ テーテ テ・テ・テ テーレテーレーテ テー
ピーター「司令によると、竹取の姫との弾幕勝負のネタがうまく思いつかず、ゼミと相まってストレスがマッハ…ということだ」
 テレレ テーテ テ・テ・テ テーテ テ・テ・テ テー   デンッ!
小牟「その話の前にじゃ、これいい加減止めんか文!五月蠅いわ、読み難いわ、打ちにくいわ大変じゃぞ!」
 テーテーテー テーテ テ・テ・テ テーテ カチッ
文「あやや、これは失礼。というか酷くメタいですよ?」

ピーター「だが事実だ。…会話を続行する」

小牟「5つのスペカ勝負にしたのは自分のせいじゃから自業自得じゃが、いかんせん盛り上がりとネタの濃度に差があるようじゃな」

文「そのせいで本編は進めれず、『一日一談』もネタ解放出来ず…踏んだり蹴ったり吹き飛んだりなようです」

ピーター「一つ一つ、確実にこなしていこうとはしているが…正直、言い訳にしか聞こえないだろうな」

小牟「つーわけで雑談なわけじゃが…ピーターよ、おぬし何かネタをだせ」

ピーター「断る。そういった命令は下されていない」

文「命令ですか。貴方も集団に属してるんですねぇ」

ピーター「…少数精鋭だ。それに、今は事実上三体…いや、一人と二体しか、活動できる状態ではない」

小牟「ぬし、自爆したものな。じゃがその口ぶりからすると今は誰かの命令で動いとるようじゃが?」

ピーター「W00、ハーケン・ブロウニングからだ。この世界でなら、情報が流出しても構わないという判断も下した」

文「そんなの適当でも良いと思うんですがねぇ。流れをうまく掴めば、自分の手を使わずとも事は進むものですし」

小牟「そうやって自分から動かぬから椛から邪けんに扱われるんじゃぞ?…そういう意味じゃピーターとはそりが合いそうじゃな」

ピーター「椛…データベースに載っている情報では、「犬走 椛 白狼天狗であり、鴉天狗の部下的配置。射命丸文とは犬猿の仲」とあるな」

文「いっつも頑固で上からの命令を文字通り犬のようにこなすんですよ。そのくせ絡んできて…困ったものです」

小牟「もしかするといじめっ子的な心理でもあるのかの?…うーぬ、いまいち盛り上がりに欠ける」チラッ

ピーター「だから自分を見られても対処はしない。DTDがあれば、まだワンチャンスあったかもしれないがな」

文「まぁ、連絡だけですしね。今日はこの辺でお開きということで…」ガシッ

ピーター「…?何のつもりだ、射命丸文」

文「飲みましょう。ほら、小牟さんも」

小牟「そやつ、いわゆるカラクリじゃから飲んでも酔わんぞ?」

文「っ!?それはそれで良いネタになりそうね!やっぱり付いてきなさい。あれこれ話を聞かせてもらいます!」

ピーター「おい、こらやめろ!戦闘行為は禁止されているから実力行使されると…くそっ、離せぇええ!」

小牟「…何時の間にやら文屋。モードじゃな。それじゃ今日はこの辺で、ばいばーい」ノシ
194 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/10/28(金) 13:44:10.02 ID:6bIWajCG0
カルディア「…中の者を抹殺する。罪状はWナンバー03、ピート・ペインをピーターと書き続けたからだ」

エリミネイトッ!!!


やっちまったああああ!
195 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/10/30(日) 08:48:48.52 ID:1JoLchsv0

ブルース「いよう、みんな。俺だ、ブルースだ」

ブルース「連絡なんだが、次回投稿はおそらく水曜だ」

ブルース「前にプロットが出来てるとか言ってたのにこんなに長引ぃちまってすまねぇな」

ブルース「投稿の時にageるから、ageられたのを目印にしてくれ。…だからってsage忘れた奴を責めるなよ?」

ブルース「それから、その後の予定だが『永夜抄(6面)決着→閑話休題(1後編)→一日目の夜、二日目の朝(休息)→閑話休題(2前編)→風神録(1面)』」

ブルース「ま、だいたいこんな感じを予定してるらしい」

ブルース「ん?何か忘れてることがあるんじゃないかって?」

ブルース「さぁ、何のことやらさっぱりだな」

ブルース「最後に、もう一度だが…」

ブルース「本編がきっちり投稿できず、申し訳ございませんでした」

ブルース「…」

ブルース「…なんか今俺であって俺じゃなかったような?」
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/30(日) 10:37:00.05 ID:sHP+lKPPo
報告乙!
水曜まで全裸待機!
197 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/11/03(木) 10:25:57.48 ID:jsKAtmxp0

輝夜「まずは難題『龍の頸の玉 - 五色の弾丸 -』よ!」


 輝夜は、鈴仙が構えていたように人差し指を突き出し、後ろへと飛び去る。
 その指先から放たれる弾幕…槍状の光線とその後ろから湧き出るように現れる五色の弾丸である。

 妖夢はそれを翻りながら避け、半霊を姫に向けて放つ。
 しかし、半霊に向けて次の弾丸を撃った姫は手を広げ、使い魔を解き放つ。
 そのまま手を横に流し、踊るように使い魔を更に呼び出す。

 片手から滑り出た使い魔達は、先ほど輝夜が放ったものと同じ種類の弾幕をあちこちに撃ち始める。
 それを見た妖夢はとっさに速度を上げ、近寄る。迫りくる弾幕をグレイズし、二つの使い魔を斬る。

 霧散する使い魔達の向こうより、輝夜からの弾丸が襲いかかる。上下には使い魔が放った弾幕が。
 そこで妖夢は体を捻りながら『反射下界斬』を張る。半々身をずらすことでレーザーをグレイズし、弾丸を輝夜の元に撃ち返した。
 輝夜はそれを軽い動きで避けつつ、再び使い魔を飛ばす。

 先ほどと同じ要領で踏み込んだ妖夢は三つの使い魔を斬り伏せる。
 再び、霧散する使い魔の向こうから弾幕が…来ることはなく、懐深くへ潜るために加速する。

 弾幕が来なかった理由…半霊達が貫かれた衝撃で四つに分かれ、輝夜の元へ辿り着き弾を発射していたからだ。

 四分割された半霊からの射撃は寄れない限りばらばら。
 しかし、視界を遮るよう、執拗に目の前で交差する弾幕を撃たれれば狙いを定める事も難しい。

 結果、2回目の踏み込みで容易に懐まで潜り込めた妖夢は楼観剣で横凪に一閃。
 緑の閃光を伴い伸びた観楼剣が輝夜を襲う。

 それを本物の『龍の頸の玉』を迫る剣に上から乗せて体重を掛ける事でずらす。
 …も、そのまま玉ごと思い切り滑る。

 その動きが予想外だった妖夢は、続けて放っていた白楼剣の突きを止められず、顔面から輝夜の腹に…


 ドゴォッ


輝夜「げふぅ!?」

妖夢「し、しまった、ぴちゅって……ない?」

輝夜「げほっ、げほっ…ど、どうやら攻撃扱いなようね。ゲホッゲホッ」

小牟「…こうしまらんと、汚名返上とはならんのぉ、妖夢よ」

妖夢「…斬れなかった」ボソッ

零児「どこの斬り裂き魔だ。大丈夫か?姫様」

輝夜「え、ええ、もう平気。…こほん。おめでとう、一番ちびっ子!さぁお三方。一つ目の難題は攻略されたわ!次はどなたが来るのかしら?」

ジューダス「…僕が行こう。剣のなんたるかを教えてやる」

小牟「…輝夜もしまらんのぉ」
198 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/03(木) 10:41:03.45 ID:jsKAtmxp0

輝夜「そこ、五月蠅い。それに教えるのはそのちびっこに、ね?じゃぁ次は難題『仏の御石の鉢 - 砕けぬ意志 -』よ!」


 まだ若干腹を抑えている輝夜が距離を離し、二つ目のスペルカードを宣言する。

 今度は特に構えることもなく、使い魔達を展開していく。
 数多の使い魔達は輝夜を守るように三重に配置され、細い光線とコンペイトウのような星の弾幕を展開する。

 その第一波を、妖夢がしたように翻って避けたジューダスは、同じく速攻で輝夜へと迫る。
 しかし、すぐさま放たれた第二波が行く手を塞ぐように撃ち出される。それを舌打ちしながら下がって避ける。

 そこにやってきた第一波のコンペイトウを無視して詠唱を開始する。
 星の弾幕は自然とグレイズされ、続く第三波の光線と第二波の星もほんの僅かずれることで回避。

 そして詠唱が唱え終わり、大きすぎる岩が一つ、輝夜目がけて落される。
 しかし、輝夜はそれを完全に無視する。
 実際、使い魔達の放つ光線が岩を砕き、星が小さな爆発を起こしながら小石にし、塵にしていく。

 それをお互いに無視し、ジューダスは使い魔達の弾幕をグレイズしながらその一つに『臥竜閃』−『臥竜滅破』を放つ。
 黄色の斬撃が使い魔を二重に斬り裂き、消失させる。

 その光景に驚く輝夜をしり目に、ジューダスは光線の発射に合わせ、『幻影刃』を繰り出す。
 完全に交差したはずのジューダスは、無傷のまま次の使い魔を斬りつけていた。
 今度の使い魔はその一撃では消えなかったが、そのまま逆袈裟に『月閃光』、
  そこからの返しの袈裟切り『月閃虚崩』によって二層にいた一体の使い魔もろとも断ち斬る。

 慌てて弾幕の発射速度を上げる輝夜をあざ笑うかのように素直に下がるジューダス。
 そして次波が発射された瞬間、ジューダスは再び急接近する。岩の残骸に隠れるように、だ。

 星の弾幕は岩の残骸に触れ爆発し、光線はグレイズで避けられる。
 先ほどの攻撃で薄くなった一角目がけて飛ばれているため、実質正面は無視も同じ。

 彼に必要だったのは突破口となる入口だけ。

 手前二層を潜り抜け、最後の層に居た発車直前の使い魔を、『爪竜連牙斬』で目の前一つだけ斬り裂く。
 後は、目の前に輝夜。
 内側にある星の弾幕を『崩竜斬光剣』で避けながら迫り、終いである。


輝夜「い、痛ーい!…案外容赦ないわね、貴方」

ジューダス「勝負事に男も女もないからな。それに、そもそも皮ぐらいしか斬れてないだろう」

輝夜「むー…まぁ確かにそうだけどもね。グレイズを越えるぎりぎりをよく見極めたわね」

ジューダス「言っただろ。剣のなんたるかを教えてやるとな」

輝夜「でも、それで女の子の服を裂くなんて変態なのかしr…ああもう冗談よ冗談。そんな顔しないで。さ、お次はどちらさまが?」

零児「…課題は?」
199 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/11/03(木) 10:58:02.02 ID:jsKAtmxp0

輝夜「あら、先に聞くのね?いいわ。次は 難題『火鼠の皮衣 - 焦れぬ心 -』よ」

小牟「お、ならそれはわしが…」

零児「いや、俺がやる。ここで相性勝ちしても面白くないだろう」

小牟「む…まぁそっちのほうが姫様を楽しませれるかの?」

輝夜「さっきの火の刀は貴方のよね。いいのかしら?火と火で被ってるわよ?」

零児「それだけじゃないさ。それに、被って困るのはお互い様だろう?」

輝夜「ふふっ、どうかしらね。確か貴方は飛べなかったわよね」

零児「生憎な」

輝夜「いいわ。なら低空を飛んであげる。さぁ、いくわよっ!」シュバッ


  難題『火鼠の皮衣 - 焦れぬ心 -』!


 三枚目のスペルカードが発現される。輝夜から炎が渦巻き、零児の方へと向かってくる。
 更に使い魔が四体、輝夜の後ろへと配置される。
 それらは零児目がけて真っ赤な槍のようになった光線を放つ。

 迫りくる炎と光線をずれながら避け、様子をうかがう零児。
 輝夜も、それを静観する。
 三、四回程避けた後、零児が動き出す。

 護業から火燐を抜き出し、光線と交差させる。
 光線は二つに裂かれ、そのまま後ろへと流れる。
 火燐もただ熱を発するだけで変化なし。

 続けて、後ろへの引き様に炎を薙ぐ。剣の軌道と、そこから生まれた微量の風で揺らぐも、すぐに元に戻る。
 突撃しようにも炎は絶え間なく生みだされ、光線も時間差で自分を狙う。
 このままでは埒が明かない。そう判断した零児は炎に向かって駆け出す。

 光線が、自分の居た場所を狙い撃つ。それが実際に自分の所に来るまでにはいくらかのタイムラグがある。
 それはすなわち、進めば戻るのは困難であることを示す。
 それを分かってなお、零児は輝夜に向かって駆けた。


 4人の中で唯一純粋な人間(だと確信している)がどんな手で難題を攻略するか楽しみにしていた輝夜。

 その期待に、地禮で応える。雷が迸る刀が、零児の体にもう一つの力を与える。
 『電瞬』…一歩先へと向かう脚力を与える、高速移動術である。
 しかし、それは所詮早駆けを可能にするだけ。
 男性…それもガタイの良い大人が、この隙間なく放たれ続ける弾幕の中をただ通れるはずもない。


 あの刀が何か分からないが、動きが俊敏になったのはわかる。
 となると、ただ突っ込んでくるだけではないと「あいつ」との喧嘩で養われた勘が告げる。

 そして零児は炎へと、地禮を突き出しながら突っ込んだ。
 そのまま大量の炎を突っ切り、一直線に輝夜の元へ辿り着く零児。

 地禮が炎を吸い取り、顔面に掲げ上げられた護業に収められた火燐が零れた残り火を払いのけたからだ。
 『電瞬』状態の零児が地禮の峰で足を払う。奇しくも、リグル戦と似た形で決着する。


輝夜「あららっ!?」クルクル

零児「これぞ、陽の巡りなり」

妖夢「ほぉぉ…」

ジューダス「…」

小牟「うぬうぬ、相生じゃな〜。おーい輝夜や、大丈夫なんじゃろな?」

輝夜「全然大丈夫よ。飛んでいるもの。そっか、五行の相生…そういうのもあったわね」
200 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/11/03(木) 10:58:55.81 ID:jsKAtmxp0

輝夜「あら、先に聞くのね?いいわ。次は 難題『火鼠の皮衣 - 焦れぬ心 -』よ」

小牟「お、ならそれはわしが…」

零児「いや、俺がやる。ここで相性勝ちしても面白くないだろう」

小牟「む…まぁそっちのほうが姫様を楽しませれるかの?」

輝夜「さっきの火の刀は貴方のよね。いいのかしら?火と火で被ってるわよ?」

零児「それだけじゃないさ。それに、被って困るのはお互い様だろう?」

輝夜「ふふっ、どうかしらね。確か貴方は飛べなかったわよね」

零児「生憎な」

輝夜「いいわ。なら低空を飛んであげる。さぁ、いくわよっ!」シュバッ


  難題『火鼠の皮衣 - 焦れぬ心 -』!


 三枚目のスペルカードが発現される。輝夜から炎が渦巻き、零児の方へと向かってくる。
 更に使い魔が四体、輝夜の後ろへと配置される。
 それらは零児目がけて真っ赤な槍のようになった光線を放つ。

 迫りくる炎と光線をずれながら避け、様子をうかがう零児。
 輝夜も、それを静観する。
 三、四回程避けた後、零児が動き出す。

 護業から火燐を抜き出し、光線と交差させる。
 光線は二つに裂かれ、そのまま後ろへと流れる。
 火燐もただ熱を発するだけで変化なし。

 続けて、後ろへの引き様に炎を薙ぐ。剣の軌道と、そこから生まれた微量の風で揺らぐも、すぐに元に戻る。
 突撃しようにも炎は絶え間なく生みだされ、光線も時間差で自分を狙う。
 このままでは埒が明かない。そう判断した零児は炎に向かって駆け出す。

 光線が、自分の居た場所を狙い撃つ。それが実際に自分の所に来るまでにはいくらかのタイムラグがある。
 それはすなわち、進めば戻るのは困難であることを示す。
 それを分かってなお、零児は輝夜に向かって駆けた。


 4人の中で唯一純粋な人間(だと確信している)がどんな手で難題を攻略するか楽しみにしていた輝夜。

 その期待に、地禮で応える。雷が迸る刀が、零児の体にもう一つの力を与える。
 『電瞬』…一歩先へと向かう脚力を与える、高速移動術である。
 しかし、それは所詮早駆けを可能にするだけ。
 男性…それもガタイの良い大人が、この隙間なく放たれ続ける弾幕の中をただ通れるはずもない。


 あの刀が何か分からないが、動きが俊敏になったのはわかる。
 となると、ただ突っ込んでくるだけではないと「あいつ」との喧嘩で養われた勘が告げる。

 そして零児は炎へと、地禮を突き出しながら突っ込んだ。
 そのまま大量の炎を突っ切り、一直線に輝夜の元へ辿り着く零児。

 地禮が炎を吸い取り、顔面に掲げ上げられた護業に収められた火燐が零れた残り火を払いのけたからだ。
 『電瞬』状態の零児が地禮の峰で足を払う。奇しくも、リグル戦と似た形で決着する。


輝夜「あららっ!?」クルクル

零児「これぞ、陽の巡りなり」

妖夢「ほぉぉ…」

ジューダス「…」

小牟「うぬうぬ、相生じゃな〜。おーい輝夜や、大丈夫なんじゃろな?」

輝夜「全然大丈夫よ。飛んでいるもの。そっか、五行の相生…そういうのもあったわね」
201 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/11/03(木) 11:25:10.84 ID:jsKAtmxp0

零児「流石に知っていたか。姫様も、なかなか博識じゃないか」

輝夜「ふふっ。ええ、知っていたわ。ただ、月じゃ命が巡るなんて事がないから忘れていたのよ。地上の人間の考え方って柔軟よね、本当」

妖夢「あれって、要するに土に栄養を与えていたようなもの…ですか?」

小牟「んにゃ、土を足しちょるのが正しいかの?零児め、火燐で出力計っておったな」

輝夜「そうそう。燃やされて生まれた灰が土に還るのよね。…いいわ、いいわ貴方達」フフフ

カイ「な、なんだか不敵な笑みになって来たわね」

輝夜「正直なめていたもの。そしてこんな簡単に破られる…ふふふふ、何年ぶりかしら、この高鳴り」

小牟「次はわしの番じゃが、そのまま空回りして負けても知らんぞ?」

輝夜「その心配はないわ。次は 難題『燕の子安貝 - 永命線 -』!ギアを上げて行くわっ!」

ジューダス「横文字もきちんと対応していたのか」

妖夢「そういえば初めて言いましたね」


 零児に合わせて低い目に飛んでいた輝夜が飛び上がりながら宣言する。

 使い魔を一つずつ放ちながら、周囲へ固定弾幕を放つスペル。
 まるで珠を描いてるように見える数多のレーザー。
 さらに放たれる、交差型の二重の星弾幕。

 それを小牟は…内避けしている。

 使い魔の周囲は確かに空洞であり、密着さえしていれば星の弾幕も避けなくていい。
 だが頻度的にそれは不可能というか、奇数であれば偶数が、偶数であれば奇数の使い魔には間に合わない。

 しかし、小牟はまるでグレイズを稼ぐ感覚で奇数の使い魔と重なり、偶数の弾幕もちょちょいと避けている。

 その避け方には、姫様も流石に眼が点である。
 そして気付けば目の前に尻…が…


小牟「桃爆弾っ!」

輝夜「きゃっ(ボフン)…へ、なに、内避け!?」

妖夢「す、すごい!これで4連勝です!」

零児「…というか、あの避け方は予想外すぎるだろう」

輝夜「うーん、予定じゃ二人倒して五つ目、だったのだけど…」

ジューダス「見込みが甘かったな。勘でも鈍っているんじゃないのか」

輝夜「…そうかもね。こっちにきてから、永琳の指導を受けてないもの」

小牟「月では家庭教師じゃったものな、永琳」

輝夜「…なんでさっきから知ってる風なのかしら。まさか月の追手?…なわけないか」
202 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/11/03(木) 11:28:37.41 ID:jsKAtmxp0

妖夢「え?永琳さんが家庭教師?」                            ギロッ

小牟「いかん、殺気を感じる」

零児「何か知らんが、不用意に口にするからだろ。それで姫様、5つ目の難題はどうするんだ」

輝夜「遊びとはいえ、プライドが少々傷つけられちゃったからね。本気と書いてマジと読ましてもらうわ」

ジューダス「だが、これでお前が勝っても4勝1敗だぞ」

輝夜「あら?勝敗は私を楽しませられるか、よ。そういう意味じゃもう決まってるんだけどね」

妖夢「あ、それでは」

輝夜「ふふふ。ということでカイ。貴女もこちら側で楽しみなさい」

カイ「え?で、でも…」

輝夜「最後の一つは残った人全員を相手にするつもりだったの。だから人員不足なのよ、ね?」

小牟「ほれほれ、こう言っちょるんじゃし遠慮するでない。わらしの勝ちは決まったようなもんらしいからの」

カイ「……」

輝夜「安心しなさい。これが終わったら貴女の手伝いもしてあげるから」

カイ「カグヤ…」

輝夜「暇だし」

ジューダス「暇つぶしの一環か」

カイ「…はぁ。そうよね、貴女からすればあいつでさえも若造よね…」

輝夜「ドスサーガ、ですっけ?何度も蘇るなんて地上の妖怪らしいというか…」ア、ハイコレツカッテ

カイ「ドルアーガよ。…わかったわ。もう、あんなに悩んだのに…」?…アア

輝夜「それはギルさんに言えばいいわ。よし、それじゃ来なさい貴方達!最後の 難題『蓬莱の弾の枝 - 虹色の弾幕 -』よ!」

カイ「…(グッ)ブルー・クリスタル・ロッド!力を貸して!」

小牟「わー、カイはどうやって活躍するんじゃろうなー(棒」

零児「…無理矢理喋る必要、なかったんじゃないか?」
203 :だから玉と弾の誤字多い… ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/11/03(木) 12:09:57.95 ID:jsKAtmxp0


 輝夜から七つの使い魔が放たれ、全方位へと虹色の弾幕が放たれる。

 それらは虚空で急に曲がり、零児へと集中して降り注ぐ。
 零児はそれを、三人から離れながら回避。残りの三人が輝夜目がけてばらばらに飛ぶ。

 しかしそこにカイが『火鼠の皮衣』を持って魔法を放つ。
 ブルー・クリスタル・ロッド(B・C・ロッド)から大量の炎が生み出され、四方へと襲いかかる。

 「ウワーナンジャー(棒」と叫びながら小牟が避け、ジューダスと妖夢はそれぞれ『ストーンウォール』と『反射下界斬』で防ぐ。

 ほぼ反対側で避けていた零児は薄くなっていた虹色の弾幕を避け、カイ目がけて金【ゴールド】を放つ。
 それをバックステップで避けたカイはそのまま三歩下がる。

 そこに準備完了と言わんばかりに新たな虹色の弾幕が菱目状に放たれる。
 更には使い魔達がまるで輝夜には近づけさせまいと、同じく虹色の弾幕を横一杯に放つ。

 それらは先ほどと同様に虚空で切り返し、最も近かったジューダスを狙う。
 ジューダスはそれを僅かに後ろへ下がりながら回避。詠唱を始め、菱目の弾幕を先ほどと同様に僅か動きながら回避する。

 しかし、今度はカイが『龍の頸の玉』を持ち、ジューダス目がけて弾を撃つ。
 B・C・ロッドから放たれる、青一色に染まった弾幕が迫るのを見たジューダスは詠唱を中断し回避する。

 そこへ妖夢が軌道を変え、カイへと迫る。狙うはその手に持つ四つの宝具。
 迎え撃つように、B・C・ロッドを地面(?)に挿しこみ、『燕の子安貝』を抱え、祈るように片足を折る。
 そして杖から放たれたレーザーと星の弾幕、更に使い魔達の虹色の弾幕が妖夢を抑え込む。

 それによって生み出されたレーザー諸共避けて使い魔に辿り着く小牟。
 慌てて炎を再び生み出すカイ。
 しかし今度は遠慮もなしに、水蓮から湧き出た水を広範囲にばらまかれる。

 消火されているのを特に確認もせず、『白虎砲』を使い魔達に連続でぶちかます。
 しかしこの七つの使い魔は頑丈で、一向に消える気配もなし。

 更には反撃のように虹色の弾幕が放たれる。
 小牟はそれをぎりぎりまで引きつけた後、思い切り後ろへと下がる。

 地上(?)では、軽く濡らされてしまったカイの元へ零児が踏み込んでいた。
 迫る零児を見て弾丸を放つも、妖夢の半霊が輝きを放ちレーザー以外を打ち消してしまった。
 密度の薄いレーザーだけであれば悠々と接近できる。
 結果、かなりの接近を許してしまう。

 ならばと続けて祈り、数多のレーザーで抑え込もうとする。
 だがそれも一点からしか放たれないため、グレイズされ、星達は柊樹【ハリウッド】で相殺される。

 輝夜からの援護があれば、まだ幾分かましだったのだろうが、使い魔達の攻撃は空中に居る三人にしか向かわず。
 しかも、自分は巫女。…後方支援ばかりで接近戦のプロには敵わない。
 そのまま、零児に峰で叩かれ…

 ピチューン

204 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/11/03(木) 12:31:25.14 ID:jsKAtmxp0

 その少し前、小牟が後ろへ下がった後、入れ替わるようにジューダスが弾幕の中を突っ切ってゆく。

 続けて放たれていた使い魔の弾幕は、妖夢へと方向転換している。

 妖夢はそれを『現世斬』で超高速回避し、カイへと半霊を放つ。
 距離が離れていたため届く事はなかったが、そこで『悪し魂』をし、零児へ迫る弾丸を打ち消す。

 そのやり取りを尻眼で確認しつつ、ジューダスが使い魔達の元へ辿り着く。
 そこで二度、剣を交差させる『臥竜斬月』を繰り出す。

 一体の使い魔が霧散するも、残りの使い魔が反撃の弾幕を放つ。
 ジューダスはそれを僅か退避しつつ、『臥竜閃』で更に二体斬り刻む。

 そこに、B・C・ロッドから放たれたレーザーが襲いかかるも、空飛ぶ三人に届くころには隙間が広がりすぎている。

 そして地上(?)から聞こえてきた被弾音。
 それに輝夜は「参ったわね…」という顔。

 後はもう、ただの消化試合である。

 使い魔達も全て倒され。

 小牟が突撃し。

 姫は豪快に笑って…


 ピチューン


小牟「よーっしゃこれで終いじゃぁ!っておわわ!?」


 輝夜が被弾した瞬間、この空間がまばゆい光を放ち始めた。


ジューダス「ふんっ」バッ

妖夢「わわ、眩しいっ」バッ
205 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/11/03(木) 12:35:39.55 ID:jsKAtmxp0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜夕暮れ時の、永遠亭〜〜〜

零児「くっ………引いた、か?」

小牟「しもうたぁ…十得ナイフ…出せなんだぁ」ピヨピヨ

妖夢「そのようですね…って、ここは」

ジューダス「どうやら庭のようだな。これが本来の永遠亭…か?」

小牟「むぅ〜、みられんぞぉ〜」クラクラ

妖夢「はい。数回しか見た事ありませんが確かにいつもの永遠亭です」

鈴仙「姫様〜。師匠がお呼びです。…ってなんか本当にいる!?」

輝夜「うーん、この盆栽が…って、なーにーうどんげー?…ってあら?貴方達、どちら様?」

零児「…無断で邪魔して悪いな。俺達は…」

鈴仙「姫様、追手かもしれません!おひきくだs……って、妖夢!なんで貴女もいるの?」

妖夢「こんばんは、鈴仙。少しややこしい話なのですが…」

 ドガーンッ!!

??「こぅらぁ、かぐやぁああ!!あんた私の竹炭に何仕込んだのよぉ!!」

???「ちょっ、まてよ妹紅!いくらなんでも石垣壊したらだめだろ!」

輝夜「あ、いけない。後はよろしくね、うどんげ」バッ

鈴仙「え、ま、待って下さい姫様ー!?」

カイ「な、何々?!地震!?爆発!?」

ギル「待つんだカイ!襲撃かもしれな……零児?零児じゃないか!」

妹紅「そこかぁ、かぐやぁああー!!!」

???「まてって、もkうわああああああああ?!」ズボッ

小牟「むぅ、あっちこっちからよく知る声がぁ」フラフラ

??「ぷっ…そ、そんな完璧にはまるなんて…足元注意なのよ、人間♪…あははははははwww」バンバン
206 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/11/03(木) 12:38:26.09 ID:jsKAtmxp0

魔理沙「レイジー!大丈夫かー!…ってなんだこのあり様」

アリス「だから結界が切れたんだし大丈夫でしょ…って、なに、これ」

カイ「本当、零児だわ!小牟やジューダスもいるわね」

永琳「全く、何の騒ぎかしら、優曇華」

鈴仙「お、お師匠様!侵入者に、あっちで妹紅さんもいるようですし、それから姫様が」アタフタ

妖夢「…なんだか、斬り伏せたい気分に…」

ジューダス「落ち着け、妖夢。気持ちは分からなくもないがな」

?????「あーあ、こりゃぁひでぇあり様だぜ」

?????「あっちに飛んでった目出度い色の子供がしたらしいな」

小牟「うう、零児ぃ、どこじゃー…はうあっ!?」ズボッ

ギル「小牟!…って、何で落とし穴が?」

妹紅「あんた自分の盆栽がやられたらどんな気持ちになるか考えた事あるの!?」

永琳「…はぁ、とにかく。姫様と妹紅をどうにかしておいて頂戴…」

カイ「小牟、大丈夫?今手を…」

小牟「カイィ、すまんの…(フラッ)おおおおおう!?」グイッ

カイ「っ!きゃあああおち…!」

鈴仙「え、あ、あの二人を止めるんですか?って師匠もういないし」zuuun



零児「・・・・・・・・・・いつ終息するんだ、これは」

アリス「・・・・・・さぁ」

魔理沙「・・・・・・・・わかんねーぜ・・・」

ギル「・・・・・ちょっと、カイと小牟を助けてくるよ・・・」ヤレヤレ

ジューダス「・・・・ふんっ」

妖夢「」シュッシュッ

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
207 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/03(木) 12:50:18.53 ID:jsKAtmxp0
本日の投下はここまでです。色々と説明省いてる部分がありますがそれはもう少し後でお話することとなりますのでご了承ください。
 …このカオスにしたツケでごちゃごちゃで今回投下出来ないってだけなんですけどね…。

なお、その関係で次回は永夜抄クリアー後と閑話休題1後編を予定しております。


昨晩…というか11月に入ってからサーバーが不安定なのか、
 『書き込む』を押しても全く反映されなかったため、昨日のうちに投下出来ませんでした。

通告していた日に間に合わず申し訳ございません。

次回は土日のどちらか…だと…おもい…ます?…そうだといいなぁ(願望
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/03(木) 18:09:33.53 ID:ckEf9FoDO
今回もお疲れ様です!いやー、>>1さんの戦闘描写は細かく丁寧と本当に凄いですね!

まぁ記憶が戻ったり無くなったりすれば、あんなカオスにもなりますよねww
209 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/07(月) 19:04:42.50 ID:22Fp2php0
書き込めない理由がだいたい解って来た>>1です。まじ仮鯖の重さったら…

そして願望なんて所詮願望でしかなく、カオスはどこまで行ってもカオスでした。チクショウ…止まらな過ぎる…

>>208
自分でもそこそこ細かく書けているとは思うのですが(それでも少し省いてる)、自分の理想とする表現方法との相違と、
 戦闘部分の100%地の分形式(…で合ってますよね?)による作業量の増加が自分の中でコレジャナイ感が…。

まぁ、これに関しては風神録を理想に近い形で書いて行って、
 その後読んで下さってる方々に問いかけようかと思いますのでおいておきます。

それでは、投下です。「永夜抄クリアー後」及び「閑話休題1後編」です。
210 :????? ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/07(月) 19:11:33.49 ID:22Fp2php0
―――・-・・―――・―  ― ・――  ・    −  ―・―――
…データ収集 失敗

魂  夢…
エミ  ・ ト ッ
 行寺  子

…以上三名 データ 不足

収集方法 改善 余地 あり

続けて 東方永夜抄のデータを分析する

―――・-・・―――・―  ― ・――  ・    −  ―・―――

―――・-・・―――・―  ― ・――  ・    −  ―・―――

リグル・ナイトバグ

雌型 妖怪 緑の髪と、白のシャツ、黒のズボンにマントを着用

能力不明 昆虫に関する何かだと推測される会話 あり

適正体の可能性は低いが 調査する必要 あり

―――・-・・―――・―  ― ・――  ・    −  ―・―――

ミスティア・ローレライ

雌型 妖怪 茶を基調とし、羽飾りのついた帽子を着用

能力不明 女狐によると、音を操り鳥目にする能力がある模様

適正体の可能性は著しく低い 後回し

―――・-・・―――・―  ― ・――  ・    −  ―・―――

上白沢 慧音

女型 半妖 青を基調とした赤の装飾のついた服を着用

能力不明 歴史を喰うなどから、改変能力と推測

適正体である可能性 不明 調査の必要 あり

―――・-・・―――・―  ― ・――  ・    −  ―・―――

藤原 妹紅

女型 不老不死 赤と白の服を着用

能力不明 状況より、炎を扱う可能性大

適正体である可能性 高 調査の必要 あり

―――・-・・―――・―  ― ・――  ・    −  ―・―――

霧雨 魔理沙

女 人間 黒と白の服と帽子を着用

魔法を扱う程度の能力 ただし、人間のそれの限界は超えていない模様

適正体の可能性は低いが 調査する必要 あり

―――・-・・―――・―  ― ・――  ・    −  ―・―――

八雲 藍

雌型 式 白の服と青い、文字の入った前掛けのようなものを着用

式をあつあつかかかかかか

―――・-・・―――・―  ― ・――  ・    −  ―・―――

…八雲紫による妨害を確認 存在がばれている可能性…低

引き続き、調査の必要 あり

―――・-・・―――・―  ― ・――  ・    −  ―・―――
211 :????? ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/07(月) 19:14:30.99 ID:22Fp2php0
―――・-・・―――・―  ― ・――  ・    −  ―・―――

博麗 れいmu

はく はく はく はく はく 白 箔 Hak は h はは


―――・-・・―――・―  ― ・――  ・    −  ―・―――



…観測個体の損傷を確認


情報の隠匿性 及び 東方妖々夢時の言動


これらの要素より 適正体である可能性 大 常時 調査の必要 あり


また 観測個体の情報強度の底上げが必要と判断


試験的に −−−−−− の運用を開始する


―――・-・・―――・―  ― ・――  ・    −  ―・―――
212 :本編 ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/07(月) 19:26:21.27 ID:22Fp2php0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜永遠亭・竹の間〜〜〜

輝夜「…(たんこぶ」チンマリ

妹紅「…(たんこぶ」チンマリ

ギル「…」正座

妖夢「シュッシュッ」正座

ジューダス「…」柱にもたれかかっている

超戦士1P「…(なぁ、相棒」ヒソヒソ

超戦士2P「…(あん?どうした」ヒソヒソ

零児「…」正座

魔理沙「(ボリボリ」胡坐

アリス「…」三角座り

霊夢「ズズズ」正座

 輝夜と妹紅の乱闘 小牟とカイの救出 妖夢の抑え込み てゐのお仕置きetc…

 あの混乱状態に頭を抱えていたところに霊夢が到着し、輝夜と妹紅を一発K.O.し、その威圧感で騒ぎを鎮圧した。

 そして現在、カイと鈴仙が小牟を永琳の元に運び、他の面々は三人を待っている所である。

1P「(…いづらくねーか?」

2P「(俺もそう思ってたところだぜ、相棒」

てゐ「」チーン

 なお、てゐだけは永琳からお仕置きを受け、今のところ永琳にしか解けないとされる拘束縛りをされた上でぶら下がっている。
213 :本編 ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/07(月) 19:30:14.04 ID:22Fp2php0

カイ「皆お待たせ。永琳さんが小牟を診てくれるって」

鈴仙「じゃぁ、お茶もってきますn……霊夢、貴女なんで既に出してるのよ…」

霊夢「あんたが遅いだけよ。あ、台所の左の棚の上から2段目、右の引き戸にあった茶色の茶袋から出したから」ズズズ

鈴仙「ちょっ、それ一番高い奴じゃ!?」ダッ

輝夜「相変わらずそういう勘も鋭いのね。それも博麗の?」

霊夢「さぁね」ズズズ

ギル「じゃぁ、これでとりあえず落ち着いた…のかな?…改めて、零児、ジューダス。久しぶりだね」

零児「ああ。皆、元気そうでなりよりだ」

1P「俺達に元気もくそもねーけどな?」

2P「手入れぐれーのもんだな。な?モビちゃんよ」

魔理沙「あの時の仲間なんだってな。よろしくだぜ、えーっと…」

ギル「僕の名前はギルガメス。よろしく。彼女はカイ、僕のパートナーさ」

カイ「よろしくね、白黒の魔法使い…ちゃん?」

魔理沙「子供扱い、それは厳禁、だぜ。私は魔理沙だ」

アリス「諸事情で自己紹介はカットよ」

霊夢「メタい」

鈴仙「うう、やっぱり一番高いのだぁ…お茶、お待ちしました」シクシク

零児「ありがとう。…これで出会ったメンツは大体揃ったか」

てゐ「」チーン

妖夢「永遠亭付近で出会った方々、という意味では。いないのは藍さんぐらいでしょうか」

ジューダス「あれならユカリが回収していたから無視で構わないだろう」

輝夜「それで、貴方達がどこの誰なのか。何故ここに居たのか…教えてもらえるわよね?」

零児「ああ。まずは何が起きていたのか。それから、霊夢達と戦ったところまでを話そう。…」


青年説明中…

214 :本編 ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/07(月) 19:33:45.97 ID:22Fp2php0

 その、少し前

小牟「ふぇぇ…」ピヨピヨ

カイ「こっちの寝台でいいかしら、永琳」

永琳「ええ。そっと寝かしつけてあげて。そっとよ?」

鈴仙「一二の三で行きますよ。一二の三っ!」

小牟「ぅっ…すまんのぉ、二人ともぉ」ピヨピヨ

カイ「ご、ごめんなさい。すこし勢いが…」

永琳「はいはい。妖怪がそんなやわな訳ないでしょ。後は私が診るから、うどんげはあの人達にお茶でも出してあげて。
   それから、話も聞くように。カイさんも、私が責任もって診るから安心して頂戴、ね」

鈴仙「解りました」

カイ「お願いします。小牟、安静にね?」

小牟「ぉお〜、零児めによろしくなぁ…」ノ

鈴仙「行きましょう、カイさん」

カイ「はい」

ゴロゴロ…トン

パタパタパタ…カチッ

小牟「ううぬ…頭が頭痛じゃ…」

永琳「日本語用法的におかしいわよ。それと、いつまでそうしているつもりかしら?『女狐』」

小牟「む、目がくらんどるのは本当なんじゃがな、永琳よ」

永琳「あら?眼球見る限り大事には見えないけど」

小牟「だいぶ引いたしの。しっかし、ぬしは相変わらずチートじゃのぉ」

永琳「相変わらず…と言う程の事をした覚えはないのだけれどね」

小牟「億単位で生きとって、綿月姉妹を育て、他の者と違って記憶もある…他にも色々じゃが、これだけでも十分チートと証明できるわ」

永琳「はぁ。外にその情報が流れてるのかしら?それとも…」

小牟「おーっとストップじゃ。その話をする前に紫めを呼ばんか?…というか、おそらく邪魔しちょるじゃろ?」

永琳「…あのスキマ妖怪を?」

小牟「ぬしの裏を掻いた、の」

永琳「…はぁ。貴女も十分チートだと思うわよ?…はい」パチンッ

紫「ふぅ。早くして欲しかったわね、小牟?」

永琳「あら、挨拶はなしかしら?スキマ妖怪」

紫「あらあらごめん遊ばせ、御医者様」

永琳「」ゴゴゴゴゴ

紫「」ゴゴゴゴゴ

小牟「はいはいそこまでじゃ二人とも。あんな酒一つで本気になる必要もないじゃろう」

永琳「…あれでも一応10万年物だったんだけどね。で、なにから話そうかしら」

紫「ちょっとまって。ちょうど、零児が話始めるみたいだから。ほら」{隙間}

小牟「10万年じゃと、咲夜でも少々手間取るかの?どれ…」


青年説明中…

215 :本編 ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/07(月) 19:37:11.88 ID:22Fp2php0

零児「…と、言う訳さ」

妹紅「ふーん。私が貴方達を試した、ねぇ」

ギル「…カイ、そんな風に思い詰めていたのか」

カイ「その異変の中での話よ、ギル。貴方をおいて封印されようだなんて思わないわ」

ギル「…カイ…」

魔理沙「おー、あついあつい」

輝夜「でも、不思議な話ね。異変の再現か…」

鈴仙「いまいち信じられないわね…あ、妖夢が嘘ついてるってことじゃなくってね?」

妖夢「わかるわ、鈴仙。私も体験するまでは半信半疑だったから」シュッシュッ

2P「エネルギーが減ってるかと思ったら、そういうわけか」

てゐ「で、私は何時までぶら下がってればいいのかな?」ブラーン

ギル「お仕置きだって言って永琳さんがそうしたからね」

妹紅「あ、しまった思い出した」

零児「ん?どうした」

妹紅「いや、私が石垣ブッ壊した後、スタンの悲鳴が聞こえたような…」

ジューダス「…なに?」

1P「そういや、誰かの悲鳴が聞こえた気がするな?」

零児「…カオスすぎて忘れていた…」

鈴仙「外見てきます!」

てゐ「あの人間が落ちた穴、かなり深いから注意ね〜」ブラーン

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜永遠亭横手・壊れた石垣傍〜〜〜

スタン「おーい!誰か気付いてくれー!」

スタン「…静かになってから、10分ぐらいたったよな?」

スタン「…うーん、流石にそれはないだろ。そのうち助けに来てくれるって」

スタン「でも深いなぁ、この穴。自然に陥没したのか?」

スタン「…いや、分かってるよ。人の手が加わってることぐらい」

スタン「………」

スタン「…ルーティーと穴に落ちた時の事、思い出すな…」

ギル『お、これかな?おーい、スタン君、無事かーい?』

スタン「その声…ギルさん!?」

妹紅『ああ、やっぱり落ちて…って深いわねこれ?』

スタン「妹紅!おいて行くなんて酷いじゃないかー」

妹紅『あははー、ごめんごめん。っと、誰か紐持ってきてー。ぶっといやつねー』


青年救出中…

216 :本編 ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/07(月) 19:40:18.98 ID:22Fp2php0

またまた、少し前

零児『その後、永遠亭に辿り着いたわけだが…』

永琳「…ここからは知っているわ。鈴仙とギルさんを倒し、私と超戦士二人を退かせ、姫様と5連戦、と」

紫「あら、5つの難題でもしたの?」

小牟「うぬ。幽々子の時とは違うて誰もぴちゅらなんだがの」

永琳「見てたわ。なかなか上手じゃないの」

小牟「ぬしが本気を出したら勝てる気はせんがの。して、あの時の…」


============================================================


小牟「おおう、やはり来よったか永琳よ。ほれほれさっさと手抜きしてそこをあk………」

キーン

小牟「空けるんじゃ、永琳よ」

永琳「ドヤ顔している所悪いけど、眼を開けてもらえるかしら」

小牟「む、人が良い気になっちょるというときに………ってどうした、零児?…妖夢?ジューダス??」

永琳「彼らは動けないわよ。今、自由に動けるのは私と貴女だけ」

小牟「なぬ…じゃと…?ぬし、そんな能力なぞなかったはずじゃろ!」

永琳「…やっぱり、知っているのね。ならいいわ、さっさと説明だけするわよ。
   『永夜の異変は覚えてる』、『貴女がどの程度知っているか知らないけど、今は黙ってて欲しい』」

小牟「は?ぬし、覚えとるって…」

永琳「…姫様にばらされるのは困るから、今は黙ってて欲しいのよ」

小牟「………えー」

永琳「えーじゃないわ。(はぁ…)…シナリオ通り、進めて構わないから、ね?」

小牟「………」

永琳「…じゃぁ、これを解除するわ。よろしくね?『女狐』さん」

キーン


============================================================

217 :本編 ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/07(月) 19:45:41.95 ID:22Fp2php0

小牟「は、そういうことなんじゃな?」

永琳「ええ。私は覚えていたわ。幸いなことに、『後付けの記憶』もね」

紫「後付けの記憶?」

永琳「魔理沙とアリスが阻止したあの時と今回の分の差異の部分よ」

小牟「おお、それは貴重な情報じゃな。ほれほれ、さっさと吐えちまえば楽じゃぞ?」

永琳「犯人か何か?…とはいえ、違うのは超戦士達と、ギルさんカイさんの部分だけだったわ。…」


 超戦士は、遥か昔、自分達が月に移住した頃から、戦争・外敵、あるいは繁栄の後に訪れた腐敗…
  それらの危機から月の民を救うため、祈りから生まれたとされる守り神…という扱い。

 ギルとカイは、ドルアーガの軍勢から逃げるために、偶然ここに辿り着き、偶然輝夜の永劫隔離のタイミングに間に合った、というもの。

 どちらも永夜抄そのものに悪影響はなく、むしろ侵入者を阻止する上では自分達に有利に働くような印象を受ける配置だと感じた、とも。


永琳「うどんげがギルとカイに不信感を抱いてなかったのも、そう感じる要因ね」

小牟「あやつ、人間嫌いなのは相変わらずなのじゃな?」

永琳「ある程度ましにはなったけどね。後の相違点は、阻止しようと動いたのが貴方達だった事ぐらいね…まぁ、私からの話は以上よ」

紫「…ますます謎が増えたわね」

小牟「1解けて2増やされたら溜まらんぞ。…ん?外が少し騒がしいの」

永琳「…紐?誰か落ちたのね」

紫「{隙間}…ええ。スタンが落ちてるわ」

小牟「あやつめもおったのか。…じゃが、会わんかったような?」

紫「そういう事もあるのかしらね。…ところで、永琳」

永琳「何かしら?」

紫「…少し、貴女の知恵を拝借したいの」

小牟「実はわしもぬしと話がしたいと思うてた」

永琳「…それは構わないわ。私も、小牟『とは』もう少し話したかったから」

小牟「わし、ごっしめ〜い♪…じゃが、どうやって説明するかのぉ…」

紫「零児に?それなら、一日だけ大事を取って入院するとでも言えばいいんじゃないかしら」

永琳「…一応、薬屋なんだけどね、ここ」

小牟「何を今さらっちゅー話じゃ。よし、なら永琳に頼むかの!」

永琳「…はいはい。病人は大人しく寝台で寝てなさい」

カチッ ガラガラガラ……トン

紫「…聞きわけが良いわね」

小牟「正直、下手に脅されるよりも怖いかもしれん」
218 :本編 ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/07(月) 20:09:15.47 ID:22Fp2php0

スタン「いやぁ、皆の声が聞こえなくなったもんだからどうなるかと」

妹紅「ごめんね。頭に血が昇ってさ…」

カイ「どこか怪我してる所とかない?スタン」

スタン「いや、大丈夫。それにしても皆久しぶりだなぁ。元気だったか?」

零児「あいさつ回り、再びカットだ」

スタン「というわけで…何の話をしてたんだ?」

鈴仙「これも都合上カットです」

てゐ「臭うわね」ブラーン

2P「メガクラッシュしたくなっちまうな」

輝夜「なにかわからないけど止めてね?」

永琳「お待たせ。話は終わったようね」

鈴仙「あ、師匠。はい、ちょうど今終わった所です。…正直、未だに信じられませんが」

てゐ「お師匠様〜。」

妖夢「それで、小牟さんは?」

永琳「一日、経過診断するわ。だから、出来ればここに泊めたいのだけど」

零児「…あいつのことだ。心配はしていないが…一日か」

永琳「実際は半日もないわ。明日の朝にもう一度診断して、それで終わるから」

霊夢「いいんじゃない?医者としての腕は確かだし」

ギル「それに、もし万が一の事があっても僕らがいるよ。ね、カイ」

カイ「ええ。任せておいて」

零児「…そうだな。永遠亭の住人も、悪い奴らには見えないしな」

妹紅「輝夜に関しては若干賛同致しかねるけど」

輝夜「…悪かったわね。火の勢いを強くすれば早く出来あがるかと思ったのよ…」

妹紅「………輝夜…」

輝夜「…妹紅…」

妹紅「流石にそれはないわ。どんな馬鹿よ」

輝夜「ええ、私もちょっとないと思ったわ」
219 :本編 ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/07(月) 20:12:25.87 ID:22Fp2php0

霊夢「それじゃぁさっさと人里に向かうわよ。買いだめしなくちゃならないし」コトン

魔理沙「なら、私もお邪魔するぜ〜。鍋にしようぜ、鍋!」

零児「荷持ちなら、いくらでもする。世話になる以上、最低でもそれぐらいはしないとな」

妖夢「それでは、私もこれで失礼しますね」シュッシュッ

ジューダス「いつまで素振りしているんだ。…僕も失礼する」サッ

スタン「おい、リオンまてよ!あれこれ話したい事が…」ダダダッ

輝夜「…リオン?あだ名かしら」

ギル「…うん、そう言う事にしておいてほしい」

1P「つーことで、とりあえず今日は各々の家でやすむんだt」ドドドドドド

フェリシア「とおおおおおう!」ドゴォ!

1P「うおおおおお!?」ズゴバガドゴーン!

フェリシア「正義のフェリシア、ただいま参上!零児!助けに来た…よ?」

鈴仙「ちょ、襖がー?!」ガーン

妹紅「まぁいいわ。スタンの仲間の顔に免じて今日は帰る」

輝夜「今日は色々と楽しい事になりそうだし…いいんじゃないかしら。今みたいに」

てゐ「さて、師匠の結び目は全くほどけないわけなのだけど」ブラーン

ギル「おや、フェリシアもいたんだね。でも、零児ならもう帰ったよ?」

永琳「・・・・・・・・」

2P「…!?あ、相棒!?こら猫の嬢ちゃん!相手はちゃんとみねーと駄目だろうが」

フェリシア「あああ!ギル!カイ!ナッシーもいるじゃん!」


ワイワイガヤガヤ1Pサン大丈夫?ノープロブレムダ、ジョウチャンガヤガヤ


永琳「…博麗神社はいつもこうなのかしら?」

紫「…山の妖怪が集まった時はこれぐらいだったかしら」
220 :本編 ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/07(月) 20:54:39.25 ID:22Fp2php0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜人里・日暮れ時〜〜〜

ワイワイガヤガヤオンドリャー

零児「ずいぶん活気があるじゃないか。…いや、活気と言うよりは、忙しなく動き回っている…か?」

霊夢「そうね。いつもならこんな時間にこんな動きまわる事はないんだけど」

魔理沙「この感じ、朝市見たいだぜ?」

霊夢「…何にしたって、鍋の材料買わないとね」

魔理沙「そうそう、牡丹鍋で頼むぜ?」

零児「その事なんだがな、魔理沙。…お前、囲む材料はあるのか?」

魔理沙「んー?ないに決まってるだろ。ただ飯だぜ、た だ 飯」

零児「…」ガシッ

魔理沙「んっ?な、なんだぜ?レイ・・・ジ・・・・・・?」

零児「いくら友達とはいえ、飯をただで貰おうと言う根性、見過ごすわけにはいかんな」

魔理沙「うわっ!?ちょ、ちょっとまて、片手で持ち上げるなよっ!」ジタバタ

アリス「あ、なんだか嫌な予感」

魔理沙「二人とも!ぼさっとしてないで助けてくれー!」ジタバタ

零児「初回サービスだ。10回で手を打ってやる」スッ

魔理沙「ちょっとまてそれ親父にされて以来…!!!」



   秘技『千手観音・拾戒』!!



  スッパーーーンッ!!


 ハヒィイイイイイ!?


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

小牟「!(ピキィーーン」その時小牟に電流走る

フェリシア「んー?どったの、小牟〜」もぐもぐ

小牟「……虜になったもんが…また一人増えたようじゃな」

輝夜「虜?」もぐもぐ

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
221 :本編 ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/07(月) 21:03:32.59 ID:22Fp2php0

魔理沙「」チーン

零児「これに懲りたら、次からはただ飯を貰おうとはしない事だ。お前さんならキノコを手土産にするぐらい出来るだろ」

アリス「…聞こえてないようね。…あ、私は料理手伝うからね?ね?」

霊夢「自業自得のはずなんだけど、何故かしら…戒めになってない気がする」

零児「そんなわけないだろう。そりゃ、多少は手加減したがな」

霊夢「そう言う意味じゃないんだけどね」

??「少女の悲鳴が聞こえたかと思って来てみれば、懐かしいですな〜、零児君」

零児「…その声は、英雄先生か」

英雄「お元気そうで何より。君もこの世界にやって来ていたのですな」

零児「他にも、かつての仲間が幻想入りしていますよ」

アリス「?このおじさんは?」

零児「ああ、悪い、紹介しよう。この人は英雄…島津英雄先生だ。私立ジャスティス学園の国語の教師をやっている」

英雄「どうも、お嬢さん達。紹介に上がった英雄と申します。…で、そこで倒れてる魔法使いのようなお嬢さんは、大丈夫なのですかな?」

霊夢「平気じゃない?零児さんに尻叩きされてただけだし」

英雄「まぁ、零児君がやったという事は、間違っていないのでしょう。ところで、お名前は?」

アリス「カットよ。場面が変わって、魔理沙が起きたから買い物中に切り替わってるわ。そうそう、異変の事も説明済みよ」

霊夢『ふんふんふ〜ん』〜♪

魔理沙『ん?この野菜…もしかして採りたてか?おっさん』

零児「それで、先生はどちらに泊まっておられるので?」

英雄「寺小屋を営んでいる、慧音さんの所にお邪魔しております。そこで臨時教師としてとりあえず」

アリス「国語の教師って言ってたけど、なんでそんなに筋肉質なの?レイジさんといい勝負だと思うんだけど」

英雄「…家庭的な問題でしてな。これ以上は。…ああ、一応、生徒と肉体言語で語り合う事も稀にあるから、としておきましょう」

霊夢「零児さん、これもお願いね〜」サッ

零児「ああ、わかった(ガシ)…それに、暴力漢を退治し、世の風紀を守るのも先生の役目だとか?」

アリス「へぇ〜…真面目なのね」

英雄「いやぁ、これぐらいしか取り柄のないもので」
222 :本編 ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/07(月) 21:06:57.72 ID:22Fp2php0

魔理沙「まるで私だな」

零児「…あえて聞くが、どのあたりがだ?」

魔理沙「妖怪退治して、幻想郷の風紀を守ってるぜ?」

アリス「…三割は間違ってないわね」

霊夢『色の割合よりはましね〜。あ、このお肉一包みとあっちのお肉一包み、お願いね』

零児「それで、これからどうするおつもりで?」

英雄「先ほどの話を慧音さんと里長に伝えるつもりです。半日間の謎で皆さん混乱していたようですから」

アリス「そっか、春雪異変は午前中に終わったから良かったけど、こっちはこんな時間だものね」

英雄「作物の被害等は殆どなかったようなのでそこまで酷い混乱ではないようですが。っと、それでは私はここで」

零児「ええ。お気をつけて」

英雄「万が一、また力が必要になりましたら遠慮せず訪ねてくださいよ?零児君」

零児「それはお互い様ですよ、英雄先生」

英雄「はっはっは!それもそうですな。それでは」パーフェクト45度お辞儀

霊夢「…すごく真面目なおじさんだったわね〜。あ、これもお願いね、零児さん」

零児「それが、英雄先生のいい所さ」

アリス「ところで買い込み過ぎじゃないかしら。零児さんの両手が見えないんだけど」

零児「一応、まだ持てるぞ。前に一度、小牟の買い物でこの倍はつまされたしな」

魔理沙「いや、それ前見えねーだろ。…っと、それじゃ私は一度家に帰るぜ」

霊夢「何?キノコでも持ってきてくれるの?」

魔理沙「それもあるんだが、ちょっと香霖の所にも寄ろうと思ってさ」

零児「香霖?」

霊夢「森近霖之助。魔理沙だけが香霖って呼んでるの」

アリス「ふーん。遅くなって食いそびれても知らないわよ?」

魔理沙「私を誰だと思ってるんだぜ?霧雨魔理沙だぜ」

零児「その自身の根拠がわからん」

魔理沙「ははっ。ま、また後でな〜」フワッ

霊夢「…それじゃ、帰りましょうか」

零児「お邪魔させてもらう」

アリス「料理の手伝いなら任せてね」シャンハーイ ホウラーイ
223 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/07(月) 21:11:29.44 ID:22Fp2php0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
    ↑       本編       ↑

 と言う訳で、永夜のゲストキャラ達の顔合わせを済ませました。今回はだいぶ説明を省いてます。
 …気付いたらワードで8kbあったんですもの…

 それでは引き続き、閑話休題を投下します。

    ↓      閑話休題      ↓
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
224 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/11/07(月) 21:17:33.52 ID:22Fp2php0

星「」ガラガラガラガラ

マミゾウ「」ガラガラガラガラ

星「えーっと、後はカレーのルーや保存のきく缶詰…ですね」ガラガラガラ

マミゾウ「ほむ。こちらですぞ」ガラガラガラ

星「それにしても、この手押し車…これだけ乗せても壊れないのですねぇ」ガラガラガラ


 *漫画乗り状態


マミゾウ「10キロ乗せても大丈夫とか聞いたことが…と、これですかなっと」ヒョイヒョイヒョイ

星「…レジの人、大変でしょうね…これ…」ガラガラガラ

マミゾウ「これだけ買い込む客はそうおりゃせんでしょうしな」ケラケラ

マミゾウ「それにまぁ、これだけ買えばお客意様扱いされるかもしれませんぞ?」ガラガラガラ

星「…そうでしょうか。これだけ沢山の商品があるとそうは…」ガラガラピタッ

マミゾウ「あー、昔の感覚ですな。ま、気にせんでもよかですぞ」ガラピタッ

「うっわー、すっごい買い込んでる…」

「うっそまっじー?あんなのマンガでしか見たこと無いしー」


 ざわ…ざわざわ…


星「み、見られてます。好奇の目ですよこれは」ソワソワ

マミゾウ「(…鵺めを帰すんじゃなかったかのぉ?)」
225 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/11/07(月) 21:20:56.60 ID:22Fp2php0

〜〜〜船の上・夕暮れの帰り路〜〜〜

マミゾウ「船員さんにも驚かれてましたのぉ」ホッホッホッ

星「あの荷台一杯にありましたからね。それにしても…夕暮れ…」

マミゾウ「ほんに夕陽が落ちる寸前ですな〜。と言うとったら沈みましたな」

星「………」

マミゾウ「………」

星「…ふぅ。また三十分ほど船旅ですね」

マミゾウ「そうじゃの。こりゃ、少し遅れましたかな?」

星「…すみません。私が喰い意地を張ってしまったばっかりに」

マミゾウ「いやいや、少し計り間違えたわしのせいですわ。それよりほれ、そこに立ってくだされ」

星「?ここ、ですか」

マミゾウ「そこで毘沙門天様の格好を」

星「こう、ですか」

マミゾウ「」カシャッ

星「」ビクッ!?

マミゾウ「うぬ、やはり様になりますのぉ」

星「ひ、光って……もしかしてそれ、写影機ですか?」

マミゾウ「うぬ、そうですぞ〜。って、しもうた、ついいつものノリで撮ってしまいましたな…嫌でしたかえ?」

星「いえ、それは構いません。…ほぉ、こんな小さく…」

マミゾウ「幻想郷にも多少あったと思いますがの?」

星「ええ。鴉天狗の射命丸さんがこれぐらいのを」ジェスチャー

マミゾウ「なるほど。こんど見せてもらいますかな。…さて星さん、撮って見ますかえ?」

星「えっ…こ、壊れないでしょうか」

マミゾウ「そんなやわに出来ておりませんて。ほれ、教えますから安心なされ」


 ココヲコウシテコウスルト「カシャッ」オオ、テガルデスネ…


子供「あー!あのお姉ちゃんまたいるよー!」キャッキャッ

母親「本当ね〜。写真撮ってるのね」

マミゾウ「む?おや、昼間の」

子供「だs…懐かしいお姉ちゃん、撮って撮ってー」

母親「こ、こら!迷惑でしょう」

マミゾウ「いやいや、どうせ着くまで暇ですし、の?星さんや」

星「ええ。どうか遠慮なさらずに」

母親「そうですか?…じゃぁ、記念に何枚か」


 カッコイイオネエチャントツーショットー!ハイハイ、オチツイテネ〜「カシャッ」

 ワイワイキャッキャッ………

226 :閑話休題1 ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/11/07(月) 21:26:10.04 ID:22Fp2php0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜幻想郷・十三夜の月下〜〜〜

星「帰ってきましたね、幻想郷。んっー」ノビッ

マミゾウ「あの後のお子さんのはしゃぎっぷり、可愛らしいものでしたの」

星「…いつの時代も、子供は純粋ですね。それにしても、疲れました…外は音が多すぎます」

マミゾウ「わしは普段からおるからそう気にしとらんかったが…確かに、言われてみれば五月蠅いですの」

星「さぁ、早く帰りましょう。予定より遅くなってしまっています」

マミゾウ「月がそこそこの位置ですしの。ほんじゃらほいっ」フワフワ


〜〜〜命蓮寺・正面方向〜〜〜

星「…おや?人里…が見えますよ?」

マミゾウ「本当ですの。なにかあったのかの?」

星「…とにかく荷物を置かなければ。皆さん、ただいま戻りました!」

響子「おおっ?お帰りなさいませー!星さーん!マミゾウさーん!」

マミゾウ「どうでもですぞー、響子さんや。して、皆の集は?」

響子「おそらく、食卓かと!夕食時ですので!あれデジャブ?」

星「そうですね。…ん?食卓に?」


 ドタドタドタッ


村紗「星ー!マミゾウさーん!お帰りなさい!」ズササササササ

マミゾウ「そんなに慌ててどうしましたかえ?ムラサ船長」

村紗「いやー、それがですね…」

聖「鵺が人里から食料品を買ってきて下さったのですよ」

星「人里…から?あ、ただいま帰りました、聖」

聖「お帰りなさい、星。マミゾウさんも、無事で何よりです」

マミゾウ「頼まれたもんも、頼まれておらんもんも買ってきましたぞ。ところで、人里が見えるようになっとりましたが…?」

村紗「どうやら、元に戻ったようです。それで確認しましたが、どうも何が起ったのか分かっていないようです」

マミゾウ「?と、いいますと?」

聖「今朝から、元に戻った時…約一刻前程なのですが…それまで、変わらぬ日常を送っていたつもり、だったとか」

星「?あの慧音という方の能力で喰われていた、というわけではないのですね?」

聖「一応訪ねてみましたが、今日どころか最近は喰ってはいないそうです」
227 :閑話休題1 ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/11/07(月) 21:30:27.03 ID:22Fp2php0

マミゾウ「…して、鵺めが買って来たというのは鍋や食器以外の、砂糖やら塩やらってことですな?」

村紗「ええ。『これで星達が買い出しに行ったのが無駄になるわね!いやー愉快愉快』だとか」

マミゾウ「…外でも中でも天の邪鬼ですのぉ」

村紗「半分本音、半分隠し事…でしょうね」

聖「何故、鵺は無駄などと悲しい事を言うのでしょう…」

星「ですが実際、遅すぎて無駄になってしまいました…面目ない」

マミゾウ「(聖を喜ばせるために買って来たとか、へそが曲がっても言えんのじゃろな)」

村紗「そんなことはないですよ、星。やっぱりカレーのルーはあるだけで違います。これが外の…わー」キラキラ

星「そういえば、一輪やナズーはどうしたのでしょう」

聖「そう、客人が来られてるのです。その方の面倒を見てもらっています。どうやら星に興味がある御仁のようですよ」

星「?私に、ですか」

村紗「荷物は私達が片付けておくので、星は本堂へ。そこにいる緑の男性がそうですので」キラキラキラ

星「…ええ、わかりました。よろしくお願いします」タッタッタッ


〜〜〜命蓮寺・本堂〜〜〜


 スタ…スタ…スタ…


???「………」座禅

ナズーリン「…!」ピクッ

一輪「どうやら来たようですね、星」

???「………」

ナズーリン「頼むから、粗相のないようにしてくれよ?形(なり)を見て困惑するかもしれないけど、さ」

???「善処はするよ?何せ、僕らの祀る神様のお弟子さん、と言う話だからね」

一輪「こういう偶然も、きっと毘沙門天様のお導きなのでしょう」

???「うーん?毘沙門天様は、そういう神様じゃなかったと思うけどねぇ」


 スタ…スタ…スタ……

228 :閑話休題1 ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/11/07(月) 21:33:46.23 ID:22Fp2php0

星「…ナズーリン、一輪。寅丸星、ただ今帰りました」

一輪「お帰りなさい、星」

ナズーリン「お帰り、ご主人。たぶん聖から聞いてると思うけど、この男が…」

星「私に興味があるお方、との事で」

???「間違ってはいないけれど、誤解されやすい言い方だねぇ」

星「かもしれませんね。…えっと、お名前は、なんと?」

???「おっと、これは失礼。自己紹介が遅れました」



   「僕の名はヘイムレン。ヘイムレン・シルバート。毘沙門天に仕える、修羅の一族の一人、さ」


229 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/11/07(月) 21:45:06.59 ID:22Fp2php0
以上で今回の投下を終わります。ムゲフロ勢一番乗りはなんとヘイムレンでした。

ただ、1日目に出てきた癖にまともに動くのは4日目ぐらいになりそうだったり。理由は設定含めて後ほど。


さて、ここまでの話の中での質問、疑問、矛盾点の指摘などございましたらズバッとして下さい。答えられる限り御返事します。

それから、ジューダスの設定に関して、>>125>>153はなかった事にしてください。色々と間違っていました。日本語的にも、設定的にも。


次回投下は1週間以内に。「一日目の夜、二日目の朝(休息)」を。
 妖々夢と永夜で出てきた各キャラの説明と、幻想入りして何を想うか…といった内容でお送りする予定です。

それでは。
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(東京都) [sage]:2011/11/07(月) 22:25:42.43 ID:Y+s/JtV1o
ムゲフロ懐かしい。
あっちのカグヤ姫も5つの難題を基にした技を使ってたな。
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/08(火) 00:35:28.41 ID:LiRImEXDO
いやー、ほのぼのしてて良いですねぇ。まぁ、そうとばっかりも言ってられないんでしょうが…。
232 :一日一談 ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/11/08(火) 09:09:19.21 ID:FMIQwxXP0
美鈴「」ソワソワ

アーサー「どうした、お嬢ちゃん。落ち着かないな?」

美鈴「普段、門番をしているのでこういう雰囲気は落ち着きません。…お屋敷とは違う感じなのもありますが」ソワソワ

ブルース「要するにあれだな?緊張してるってわけだ。まぁとりあえず、自己紹介から始めようぜ?」

アーサー「まず私からだな。私はアーサー。『白銀の騎士』と呼ばれておるよ」

美鈴「わ、私は紅 美鈴(フォン メイリン)と申します!門番やってます!」

ブルース「そんなに大事なことでもなさそうだが二度言いました、か?俺は言う必要ないから、そのまま『一日一談』だ」

アーサー「本日は「かぐや姫」についてだ。わしらの『幻想界』でも比較的有名な話だな」

美鈴「竹取の翁が竹を取りに行ったら光る竹があって、それを切ったらかわいらしいお姫様がいた、というものですね」

ブルース「途中は大幅に省くが、五人の男に求婚された時に出された条件が、のちに『五つの難題』となったんだ」

アーサー「本編でも語られたが、『龍の頸の玉』『仏の御石の鉢』『燕の子安貝』『火鼠の皮衣』『蓬莱の弾の枝』がそれにあたる」

美鈴「偽物を掴まされたり、自ら偽物を作ったり、航海に失敗して散々な目にあったりで誰も見つけられなかったんですよね」

ブルース「それを『東方』では、かぐや姫本人とされる輝夜が、スペルカードの題材として使ってるな」

アーサー「中の者が言うに、難易度的には『龍の頸の玉』が一番高いそうだ。必ず1ボムしてしまうと言っていた」

美鈴「ムゲフロでは、>>230の方が言うとおり神夜姫様が使っていますね。多少名前が変わっていたりします」

ブルース「モチーフがかぐや姫だからな。月燐(がちりん)も相まってそれっぽく見える…が」

アーサー「実際のところは名ばかりで、火鼠の皮衣ぐらいしかそうだと言えるものがない。…と、中の者は愚痴っておった」

美鈴「ストーリー上の役割もかぐや姫っぽくないところから、やはりあくまでもモチーフ、ということなんですね」

ブルース「ま、そういうことなんだろうな。続けて「蓬莱人」についてだ」

アーサー「人間、月の民、おそらくはその他もろもろ関係なしに、「蓬莱の薬」を飲んだものが、そう呼ばれるようになる」

美鈴「東方では先の輝夜さんと、永琳さん、そして妹紅さんがそれにあたります」

ブルース「その薬を飲んだやつは不老不死になる…ってぇわけじゃなく、実際は「寿命はあるがリセットされるから結果的に不老不死」になるんだ」

アーサー「蓬莱の薬は「服用した者のその時状態を肉体ないし空間に記録し、相違があれば半自動的にその記録に上書きする」効果がある」

美鈴「ですが痛みや空腹等、生物的な活動に関しては普通に行われます」

ブルース「要するに何度でも死ねる不老人間になったってことだ」

アーサー「薬の効果を阻止する方法はいくらかあるらしいが、詳しくはわかっていないそうだ」

美鈴「以上で終わりですね。いやぁ案外話し始めたら楽になりました」

ブルース「すらすらっと読んでたしな。なんつーか、空気が読めるというか…」

アーサー「焦ってもしょうがないからな。やれることを、こつこつとするだけだ」

美鈴「ところでアーサーさんはスタジオでも鎧姿ですが………私服はないんですか?」

アーサー「……実は騎士生活が長すぎたせいで、一般の服の感性がよくわからんのだ」

ブルース「少しわかる気もするな。俺も、軍に缶詰された後は何が流行ってるのかさっぱりだったぜ」

美鈴「では、これからお洋服を調達しましょう!鎧の下はパンツ一丁だなんて恥ずかしくていけません」

アーサー「これが動きやすいんだが…まぁ、お嬢ちゃんのお誘いを断るのは紳士として失礼にあたる。よろしくお願いしますぞ」

ブルース「ってわけで今日はここまで。アディオス!」
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/08(火) 14:26:39.20 ID:HOTF/MtUo

スパンキングマスター零児wwwwww
234 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/11/09(水) 19:28:57.54 ID:ZNCPd+jZ0
こんばんわ。永夜抄登場キャラクターの初期設定を張りつけに参りました。一人忘れてたとか言えない。

その前に。

>>231
まだしばらくはほのぼのが続きますが、いずれは次レスのサンプルのような展開もあります。

某猟奇系二次創作を想起させる内容となっておりますのでご注意を。あれのようなシーンはありませんが。

なお、張りつけた理由は注意喚起です。これまた例の如くだいぶ後の展開ですが、いずれはこういうシーンもありますよ、と。


235 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/11/09(水) 19:31:57.73 ID:ZNCPd+jZ0





↓CAUTION  CAUTION  CAUTION↓





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜








『なんで皆、私を怖がるの?』

「…(〜なんて醜いモノ)」

『………人間なんて…こんなもの…』

「(○○○も…?やっぱり…こうなの…??)」

「…(¥なんて明けるから。あんな人間なんて信じるから)」

「(¥なんて…明けるから………)」

「…(そう、もう一度…閉じてしまいなさい)」

「(○○○も、人間…)」

「…(人間なんて、どんなに飾っても中身は賤しい獣なのよ)」

「(…こんなに苦しいのは…もういや…)」

「■■■に小石をぶつけましょう、ってなああああ!」

「…(そう、$なんて知らずに、もっとドキドキワクワクする日々を送りましょう?■■■)」

「………あはっ…」




ガッ!!!


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



いやぁ、誰がこうなるんでしょうかねぇ(棒

本来はもっと長く苦しんでます。可哀そうですがね……
236 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/09(水) 19:45:13.30 ID:ZNCPd+jZ0
投稿する順番間違えたなー。とか今さら思いましたが…まぁいいですよね。うん私のスレだ。うん(横暴

それでは、永夜抄登場キャラの初期設定です。なお、今回から少し表現が変わっています。
 また、時系列に関しては特記されていない限り最新の状態です。


東方projectWin版第三段 東方永夜抄より

 リグル・ナイトバグ

 昆虫妖怪。年齢不詳。「蟲を操る程度の能力」
 秋の夜長、鈴虫やコオロギが美しく鳴くこの時期はテンションが上がっている。
 なお、三月精で判明したが蟲らしく昨日の事は覚えていない。忘れていると言うわけではなさそうだが。


 ミスティア・ローレライ

 夜雀妖怪。年齢不詳。「鳥目にする程度の能力」
 八目鰻の屋台を経営。この時期は脂が乗っていてかなり人気。妹紅には竹炭でお世話になっている。
 

 上白沢 慧音

 半人半妖のワーハクタク。年齢不詳。恐らくは3桁。「歴史を喰う程度の能力」
 人里の寺子屋で子供たちに歴史を教えている。最近では一部の妖怪にも勉強を教えている。
 教え方をいじられており、英雄先生が来てからは若干人気を取られた感がある。


 博麗 霊夢(永夜)

 人間。「空を飛ぶ程度の能力」
 月夜が全く終わらない事態に、重い腰をどっこらせと上げた少女。
 とりあえず永夜の要因が魔理沙達である事を嗅ぎつけてぶっ飛ばそうとしていた。
 なお、力は『本来の博麗霊夢そのもの』である。


 八雲 藍(永夜)

 式。年齢不詳「式を操る程度の能力」。橙や前鬼後鬼等を操れる事から相当な実力。
 永夜の異変に気付いた紫が、藍だけをとりあえず霊夢に貸した…と思い込んでいた。
 一応、魔理沙達が何かの理由で異変を起こしているのは察していた。


 霧雨 魔理沙(永夜)

 人間。「魔法を操る程度の能力」
 永夜の異変を起こした張本人。月の状態が不自然である事に気付いた上での行動。
 ただ、月が変なのは分かっていたがどう変で、何をされているかは分かっていなかった。
 なお、力は『本来の霧雨魔理沙そのもの』である。


 アリス・マーガトロイド(永夜)

 魔族。「人形を操る程度の能力」
 永夜の異変を起こした張本人その2.魔理沙に流されて共同作業させられただけだが。
 月の異変の原因等を突き止め、魔理沙と共に永遠亭に向かっていた。
 記憶は春雪から続いていたため、零児達の事を覚えていた。


 因幡 てゐ

 永遠亭を住みかにしている妖獣。「人間を幸運にする程度の能力」
 健康をもっとも大事とする妖怪。それゆえにストレスなんて余分な物は持たないわ♪
 永琳に知恵をくれと言った割に教えを乞うてる気配がない。叱られても懲りない悪戯兎。


 鈴仙・優曇華院・イナバ

 永遠亭のお手伝いさん。玉兎。「狂気を操る程度の能力」。正しくは「波長を操る程度の能力」
 相変わらずてゐの悪戯に頭を悩ませつつ、師匠の薬の整理をしていた。
 異変中の切羽詰まった感じの鈴仙は設定されたもので、
  本来は物分かりの良い、厨二ネーミングに感化されてきた実は駄目気味な子。
237 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/11/09(水) 19:51:31.97 ID:ZNCPd+jZ0

 八意 永琳(やごころ えいりん)

 永遠亭の御医者様。推定数億歳。「あらゆる薬を作る程度の能力」。だが他にも能力持ち。
 その膨大な知識と経験から、作れない薬はないとされる程の智者。
 異変そのものの記憶と、他のメンバーがもつ「日常部分」の記憶の両方持っている。
 本来であれば、パンクして片方あるいはどちらの記憶もなくなるのだが、永琳だから大丈夫。


 蓬莱山 輝夜

 蓬莱人。最低でも4桁はあるっぽい。「永遠と須臾を操る程度の能力」。要するに一瞬と永遠を操る能力。
 月の名家出身であり、日本昔話「かぐや姫」の、かぐや姫本人。
 ギルとカイ、更には超戦士達の話を聞いて暇を潰しつつ、現在の日課である盆栽の面倒を見ていた。
 なお、竹炭に燃料を大量に追加した犯人。実は若干本気で本編のあの事を考えていた。


 藤原 妹紅

 蓬莱人。元は人間だが、諸事情から蓬莱の薬を飲み今に至る。「妖術(主に炎)を操る程度の能力」
 輝夜とはトムとジェリー的間柄。最初は確かに恨んでいたが今は半依存状態。
 異変時、いつものように竹炭を作っていたのだが、ふと寝てしまい、起きたら竹炭が…。


ナムカプより

 島津 英雄

 物質界の国語教師。国語教師なおかげで、幻想郷の言葉づかい(本来は昭和以前)にも余裕で対応している。
 「○○する程度の能力」未開花。素の「島津流空手九段の実力」は近距離に限り小牟と互角。
 ただし素手、しかも空手家であるためにスペルカード・ルールには不適。正波拳出すの遅いし。
 こちらには3日前から「幻想入り」しており、人里の子供たちからかなり好かれている。
 

 ギルガメス

 幻想界の英雄。「黄金の騎士」の異名をもつ。カイとは恋仲。
 「○○する程度の能力」未開花。素の「イシターの祝福を受けし騎士」はカイの支援があれば小牟と互角。
 遠距離で使用できる装備や、ジェットブーツの関係でスペカ戦にも十分対応できる。芸術的センスがやや残念だが。


 カイ

 幻想界の巫女。女神イシターに仕えている。
 「○○をする程度の能力」未開花。素の「女神イシターに仕えし巫女」は単独では3面クラス。
 ただし、本領はサポートにあり、ギルに限らずサポートに回れば相方のポテンシャルを引き出せる。スペカにも対応している。

 
 名無しの超戦士1P&2P

 超未来の戦士。名づけるべき人々が既に亡くなっているため、名前を持たない
 「○○をする程度の能力」未開花。素の「ハイテク装備で身を固めたコワモテ」は遠距離であれば零児小牟ペアに勝つ。
 スペカにも対応できる…が、芸術的感性が皆無なため、どちらかと言うと怒首領蜂に出たほうが良いレベル。


 スタン・エルロン

 幻想界の炎の剣士。17歳。
 「○○する零度の能力」未開花。素の「ソーディアンを操る程度の剣士」は零児と互角。
 ジューダス同様、スペルカード・ルールには対応しやすい。少々独特だが芸術性もある。ただし、現在のところ飛翔不可。
238 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/11/09(水) 19:57:40.64 ID:ZNCPd+jZ0
ムゲフロEXより

 ヘイムレン・シルバート

 エンドレス・フロンティアに転移してきた、修羅の一族。ゲルダ一派のNo.2。
 「○○する程度の能力」未開花。素の「躁音の二つ名に足る修羅」は近距離であれば零児と互角。
 スペカは一応対応。ただし今のところ突進系のスペカ限定。芸術的感性は修羅一。(羅刹機の新型を考案・試運転出来る程)


 アレディ達との修羅の決戦後、ゲルダの回復を待ち、墜落した「アグラットヘイム」の調査を行っていた。
 そこで見つけたクロスゲート(ルボール達が1月探したが見つけていなかった)を発見し、持ち帰ろうとしたところ起動。
 そのまま吸い込まれ…気付けば幻想郷に居た。
 
 
当初予定していた「ムゲフロ勢は二章以降からの参戦」を一人だけ繰り上げられた。理由はストーリーに関わるので内緒です。

何が言いたいかって言うと、思いつきで上がったり下がったりラジバンダリするってことです。前にも言った気がする。

それでは、失礼します。次は数日内に投下できそうです。
239 :一日一談 ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/11/10(木) 16:39:07.06 ID:6/X1R1Uj0
リィ・リー「さて、こんばんわ皆さん。本日のMCを務めさせていただく、ツァイト・クロコーディル副艦長、リィ・リーだ」

聖「閑話休題では何度か顔を見せていますが、こちらでは初めてかと思います。聖 白蓮と申します」

たろすけ「おーっす!おいらはたろすけだ。なんだかご先祖様とは別の奴に呼ばれた気がするぞ」

リィ「…小童の方は食べられそうにありませんな。それに引き換えそちらの女性は…ふむ、なかなか」

聖「あ、あの…食べる事前提、なのでしょうか?」

リィ「失礼。これが私なりの挨拶なので。それでは本日の『一日一談』を始めようと思います」

たろすけ「ぶっそうなおっさんだなぁ。まぁ景清のおっさんで慣れたけどさっ。今日は『天狗』に関してだって」

聖「日本古来では元は中国の物の怪…それが地方によっては神様や事象、人の状態等を表す言葉となったそうです」

リィ「東方の世界では妖怪として扱われているな。確認されている種族は『白狼天狗』と『鴉天狗』、後は『天魔』だ」

たろすけ「階級的にはもっと色々といるっぽいんだけど、そもそも鴉天狗しかまともに露出してないんだぜ」

聖「千年以上前から幻想郷にいるとされ、『幻想郷について、私達ほど知る者はいない』と自負しています」

リィ「実際は永遠亭のてゐ、賢者たる紫等も十分知っているはずじゃ?と中の者は首を傾げている」

たろすけ「新聞競争だって新しい目のはずだしな〜。んで、ナムカプ及びムゲフロじゃぁ逢魔の配下として出てくるんだ」

聖「あちらは悪天狗と業天狗という名前から、鴉天狗の中でも更に別れた階級を有しているようですね」

リィ「東方程重要ではない事から、雑魚しかいないかあれがカラス天狗の実力…ということになるな」

たろすけ「それで次は『河童』だぜ。こっちも超有名な妖怪だよな」

聖「一般に綺麗な川にすむ妖怪とされ、地方によって呼び名や姿が多少変わっています」

リィ「きゅうりが好物とされ、頭の皿が乾くと死ぬ…というのも共通項目なようですな」

たろすけ「東方だと天狗達と同じ妖怪の山に住むのが代表的だな。『山河童』って紹介されてるからもしかしたらこっちも種類があるかも?」

聖「機械技術に対して凄く熱心で、外界の技術を積極的に取り込もうとしています。ですが協調性がなく、各々が好き勝手してしまうとか」

リィ「そのために作業効率がばらばらで、全然外界に近づけない、とか」

たろすけ「おまけに人の事を盟友って呼ぶ癖に人見知りだったり、なかなかに困る奴ら、とか」

聖「気兼ねなく話しかけられる…そういう関係が築ければよいのですが…」

リィ「おそらく、理由が違うかと。本日はこれまでです。いやしかし、鼻が高いですな」

たろすけ「ん?天狗なだけにか?ってか何がだよ、おっさん」

聖「もしかして星のことですか?」

リィ「ええ。同じ虎として、神様…それも毘沙門天の代理になっているのが、嬉しく思いますな」

聖「あの、大変申し上げにくいのですが…」

たろすけ「星の姉ちゃん、寅っぽいけど元は別の妖怪だぜ?」

リィ「………なんですと?」

聖「はい。私が毘沙門天の代理をお願いするときに、もっとも適した姿が寅であると教えたので…」

リィ「…ん?それなら結果オーライではないですかな?」

たろすけ「て言っても、寅と関係してるのは物質界での話だけどな。なんでも聖徳太子とかいうおっさんがそんな縁で寺を建てたとか」

聖「…え?豊聡耳さんは女性ですよ?」

たろすけ「えっ?」

リィ「えっ?」

聖「えっ?」
240 :一日一談 ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/11/10(木) 16:56:18.85 ID:6/X1R1Uj0

リィ「…まぁともかく、縁起が良いということにしておいてください」

たろすけ「うーん、気になるけどまぁいいか」

聖「???」

たろすけ「も、もう気にすんなって!東方じゃ少女だってことだよな!うん!」

聖「…今度早苗さんに訪ねてこなければ…」

リィ「何故でしょう、凄く相手を間違っている気がしますな」

たろすけ「おいらもそんな気がする。それじゃぁ帰るとするかな」

聖「はい。お疲れさまでした。気を付けて帰って下さいね」

たろすけ「へーきへーき。地獄道に比べたら夜道なんて目をつぶってても安全だぜ」

リィ「それでは私も。艦長からついでの買い物も頼まれていますので」

聖「リィさんもお気をつけて。……ふぅ。…え?聖徳太子様の絵がこちらに、ですか?……」

聖「……この、殿方が???豊聡耳さんと全然似ていませんね…」

聖「…はっ。すみません皆さん。それでは本日はここまでです。失礼します」



聖「…皆さんに尋ねなくては…」
241 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/11/13(日) 22:07:39.32 ID:uv/COLbu0
こんばんわ。どうも自分に何が足りず、何をし過ぎてるのか分かってきました。

それでは本日分、「一日目の夜、二日目の朝」です。

投下。
242 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/13(日) 22:11:25.29 ID:uv/COLbu0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜博麗神社・茶の間〜〜〜

魔理沙「いよっ!はじめてるかー?」

霊夢「…タイミングいいわね。さっき食べ始めた所よ」

零児「きちんと皿も用意してあるぞ」

アリス「よくわからない自信通りね。それで、何を持って来たのかしら?」

魔理沙「ああ、こんな感じだぜ」ドサドサドサ

零児「…榎があるな。それにこれは…キクラゲに似ているが、何か違うな」

アリス「それなら食べた事あるから大丈夫ね。こっちは鍋にあわないやつじゃない」

霊夢「ふーん、そこそこね。でも、これはこれっ茸じゃない」

魔理沙「いっけね、ありっ茸と間違えたぜ。まぁキノコはそれぐらいにしておいて、ほら」トン

アリス「あら、コーラじゃない。もしかして取りに行ってたのって」

魔理沙「そういうことだぜ。レイジなら外の飲み物も大丈夫だろ?だから貰って来た」

零児「瓶に入ったコーラか。確かに、最近あまりみないな」

霊夢「零児さんは食事とか作るほうなんでしょ?」

零児「まぁな。本部の方針で、基本的に活動員は全員料理を人並みには作れるよう指導された…んだが」

アリス「だが?」モグモグ

零児「小牟は油揚げ以外つくらんくてな、必然的に俺が炊事の担当になった」

魔理沙「なんつーか、ご愁傷様だな」


     ・・・・・・


魔理沙「そーいや、五つの難題どうしたんだー?」

零児「ん?4人で別々に対処した後、最後は俺達対、姫様とカイだったが」

魔理沙「あーいやいや、そういうことじゃなくって零児はどうやって勝ったんだ?ってこと」

アリス「そういえば気になるわ。レイジさん、遠距離は凄く不利だったと思うんだけど」

零児「そういうことか。確かに不利だが、かぐや姫の『火鼠の皮衣』となればどうでもなかったさ」

霊夢「あ、キノコもういける」ヒョイパク

魔理沙「お、頂き〜っと。なんでそれならふぇいきふぁったんあちっ」

零児「慌てて食べるからだ」

アリス「全く。はい、コーラ」
243 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/13(日) 22:17:23.27 ID:uv/COLbu0

魔理沙「んくっ…ぷはぁ。サンキューアリス。それで、なんでなんだ?」

零児「それにはまず、五行の相生から説明する必要があるのか?」

霊夢「豆腐いけるわよ、零児さん」

零児「すまない」

アリス「大丈夫よ。パチュリーから少し教えてもらってるから」

魔理沙「そうそう。なんだっけか、ポ○ット○ンスターとかいうカードで教えてもらった」

零児「何故そこでそれが出た。…いや、簡単に教える分にはあの絵柄の方がいいのか?」

霊夢「私は知らないけど、気にしないで話せばいいわ」

零児「…まぁ、ともかくだ。「火鼠の皮衣」は、五行の上では土に分類されるんだ」

アリス「土?でもあれ、炎を出してたわよ。それも尋常じゃない数の」

零児「あの数は確かに予想外だったな。だが、それでも本質は土だったのさ」

魔理沙「おお?どうしてだ?」

零児「理由の一つに、火鼠の肉体構造が上げられるんだが」

霊夢「…ああ、そういうこと」

アリス「え?もうわかったの?霊夢」

霊夢「要するに、炎を出す部分と守る部分は別の部位ってことよね」

零児「…その通りだ」

魔理沙「???」

零児「火鼠の皮が燃えているわけじゃなく、別の器官…人間で言うと汗腺だな。そこから炎が噴き出しているのさ」

アリス「そうだったの?」

魔理沙「よくそんなのわかるな、零児」

零児「俺じゃなく、先人が見つけたんだがな。さて、ここで問題だ。そんな器官があるが、ただの皮なら燃え移ってしまう。なら、どうすればいい?」

魔理沙「水で消すか、土で耐えるか?」

零児「正解だ。後者の、土で耐えるだな」

アリス「なるほど、五行的に考えるとそうなるのね」

零児「それに、皮衣は攻撃用じゃないからな。攻撃に特化した火燐や地禮には及ばないだろうと判断したのさ」

霊夢「で、それを何かしらで確かめた後に地禮で薙ぎ払った、と。…あ、お肉いける」

魔理沙「へんぼうにふぁふぜぇ」ホクホク

零児「だから口に入れて喋るな」
244 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/13(日) 22:20:49.53 ID:uv/COLbu0
    ・・・・・・

魔理沙「というわけで、次はこれだぜっ!」ドンッ

零児「酒?おい、流石にお前さんの年で飲むのは…」

アリス「固い事言わない。ここは幻想郷…ここではこれがルールなのよっ!」クワッ

霊夢「もう飲んでるし…」

零児「…はぁ。口を出す方が野暮というものか」

魔理沙「そういうことだ。そんで、いける口だよな?」

零児「まぁ、そこそこはな」

霊夢「萃香がいなくて良かったかも。どれだけ強いか限界まで飲ませてくるし」

アリス「あの鬼はつぶれる気配がないものねぇ。…っとレイジさん、早く杯」

零児「…あいつなら、「美少女が注ぐのは絵になるのぉ」とか言うんだろうなっと、すまない」

魔理沙「ははっ、かもな〜」グビグビ


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜フェリシアの場合〜〜〜

フェリシア「…でさぁ!なんでか私だけのけものなんだよ!ひどくない!?」グビグビ

てゐ「そうねぇ。つまらなかったよねぇ。だからこの紐を…」

フェリシア「つまらないとかじゃないのよ!せっかく私がやってやろうって思ったのにさぁ」グチグチグチ

てゐ「(あかん、こいつ愚痴モード入ってる)」

フェリシア「…はぁ、やっぱりキングがいないと駄目なのかなぁ」シュン

てゐ「(突然沈没したわね。…見た通り猫ね、こいつ)」

フェリシア「・・・・・・・・・・・・」

てゐ「?どしたの?」

フェリシア「うがああー!こうなったらやけ酒だよ!朝まで飲み明かしてやるんだから!」

永琳「一応、人の家の酒だってこと覚えておいてね」

てゐ「し、師匠ー!助けてくださいよぉ」

永琳「ニコッ」

てゐ「」ゾクッ

フェリシア「私だってね、あの戦いで皆と一緒に戦ったんだから!ミュージカルスターが、だよ!?」

てゐ「へ、へぇ。ダンスの要領で避けながら戦ったの?(自分語りし始めたよ…)」

フェリシア「ふっふーん。それもあるけど、私はダークストーカーだからねっ!戦いの本能が叫ぶのさぁ!」

てゐ「う、うんうん」

フェリシア「あの後だって、モモちゃんの公演をうちと合併させたりとかして活躍したのにさー」ブツブツブツ

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
245 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/13(日) 22:23:49.52 ID:uv/COLbu0

〜〜〜スタンの場合〜〜〜

〜〜〜竹林傍・ミスティアの屋台〜〜〜

スタン「結局、リオンには逃げられちゃったよ。俺、空は飛べないからなぁ」

妹紅「リオンって、あの仮面付けてる剣士さんよね。ジューダスって言ってなかった?」

スタン「隠したがってるんだよな、何故か。うーん…」モグモグ

ミスティア「はい、八目鰻の白焼きとご飯です。妹紅、そちらの方は?」

妹紅「ああ、スタンって言ってね。幻想入りして来たんだ。彼の仲間も結構幻想入りしてるみたい」

スタン「よろしく、女将さん。美味しいですね、これ」

ミスティア「ミスティアよ、よろしく。今は脂が凄く乗っていて特にお勧めよ」

スタン「そういえば、秋ですもんね」モグモグ

妹紅「うん、今日は本物ね」

スタン「(ゴクンッ)…本物?」

妹紅「たまーに普通の鰻とか混ぜるのよ、この夜雀は」

ミスティア「し、仕方ないじゃない。八目鰻がいなくなっちゃうし…」

スタン「うーん。俺ならそこは休業すると思いますけど」モグモグ

妹紅「普通はそうよね。まぁ安いからいいけど」モグモグ

スタン「もぐもぐ」

ミスティア「………」トントントン

妹紅「もぐもぐ」

スタン「…いいなぁ、こういうのも。たまには」

妹紅「風情があるわよね」

ミスティア「そう言って貰えると嬉しいわ。ところで、スタンさんはどこ出身?」

スタン「ん?ああ、俺は幻想界ってところのリーベって言う、田舎の村出身です」

ミスティア「幻想界?リーベ?」

妹紅「そういう異世界なんだってさ。こことそう変わらないらしいよ?」

スタン「俺、そこが田舎くさくてあまりにつまらなかったから、どこかの城の兵士になりたかったんです。
    けど、世界を旅して、皆と出会って…リーベが良い村だってこと、よくわかりました」
246 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/13(日) 22:27:23.34 ID:uv/COLbu0

妹紅「若いうちにはよくあることね。いわゆるホームシックってやつかしら」

スタン「妹紅が言うとなんか変な感じだな。…え?ホームシックの使い方が少し違うだって?」

妹紅「ん?そうなの?」

スタン「ああいや、何でもない。…でも今はクレスタって街で孤児院を経営してるんですよ」モグモグ

ミスティア「孤児院を?大変じゃない?」

スタン「えぇ。ちびすけたちの元気な事。毎日がお祭り騒ぎで」アハハ

妹紅「だからか、慧音とどこか似てるの」

スタン「ケイネ?」

ミスティア「人里で寺子屋を営んでいる人よ。最近じゃ、妖怪相手にも勉強を教えてるとか」

妹紅「ただ、あの異変が他でも起きてるとすれば今は来れないだろうね。あ、その事教えに行かなくちゃ」

スタン「…でもだいぶ遅いぞ?明日でもいいんじゃないか?」

妹紅「……ま、それもそうね。昼までに教えればいいんだし」

ミスティア「ところで、教えられてる妖怪って誰なの?はい、御吸い物」

妹紅「ん?フランだよ。吸血鬼のとこの妹」

ミスティア「えっってあああ」バシャッ

スタン「(ベシャ)…うわっ」

ミスティア「ご、ごめんなさい、今拭くわ。…でも、よく無事でいるわね」

妹紅「私も初めは大丈夫なのかって思ったけど、案外素直だったからね」

スタン「なんだか、すごい子なんだな」モグモグ

妹紅「おいおい教えるわ。ところで、服はどうする?」

スタン「洗うしかないよなぁ…近くに川ってあります?」

ミスティア「それならあっちのほうに。…ごめんなさい、代わりの服を用意するわ」

スタン「ん?ああそれなら大丈夫。すぐ乾くからさ」トコトコトコ

ミスティア「すぐ?ああ、妹紅さんが…」

妹紅「んや、私じゃないんだよ。あいつも炎操れる」

ミスティア「………え?妖力も霊力も感じなかったわよ??」

妹紅「あの剣のおかげなんだってさ。よくわかんないけど」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜ローズの場合〜〜〜

ローズ「…というわけよ。わかったかしら?幽々子」

幽々子「だいたい解ったわ〜。それじゃぁ一度試しに妖夢を占いましょう」

妖夢「ただいま帰りました…って、なんでしょうか幽々子様?」

幽々子「うふふ〜。タロット占いを習ったから貴女で試させて貰うわ〜」

ジューダス「…奥で休んでいる」スタスタスタ

妖夢「あ、はいわかりました。…それで何をすれば?」

ローズ「そこで座っててもらえれば、それでいいわ。念じてもらうとかはないからリラックスして頂戴ね?」

    ・・・・・・
247 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/13(日) 22:29:33.07 ID:uv/COLbu0

幽々子「…この並びは〜、死に誘っちゃうから暴れまわりなさいってことかしら〜?」

ローズ「この場合、不注意は死を招くの方が近いわ。それから…」

妖夢「…私、ここに居る必要はあまりないのでは」

ローズ「一応、対象が傍にいたほうが因果を含ませやすいの。だから少し我慢して頂戴ね」

妖夢「むぅ…」

    ・・・・・・

ローズ「……それで幽々子。紫から連絡はあったのかしら?」

幽々子「さっき橙が来てたわ〜。なんでも小牟と永琳とで話すんだとか〜」

ローズ「エイリン?」

幽々子「ああ、ごめんなさいね。竹林のお医者さんよ〜」

ローズ「…医者、ねぇ…」

幽々子「あら〜?気になる事でも〜?」

ローズ「いいえ、なんでも。それで、満月でもないのに騒霊を呼びだして御月見なのは何故かしら」

幽々子「ふふふ、何故かしら〜」

妖夢「月見団子、お待たせしました」

幽々子「お酒は〜?」

妖夢「こちらに。少し冷え始めて来たので熱燗です」

幽々子「気がきくわね。流石妖夢♪」

ローズ「…それを食べる口実なのかしら?」

幽々子「うふふ♪」



〜〜〜名無し‘s&ギル・カイの場合〜〜〜

2P「へぇ?つまり月じゃぁレーザーよりも実弾装備のほうが発展してるわけか」

鈴仙「ええ。地上とは違って殺し合いをしているわけではないから」

1P「んー、俺達がいるのは宇宙だがなぁ?」

鈴仙「そういえば(汗)……でも、なんでそんな未来の人や、別世界の人が一緒に?」

ギル「それには、少しややこしいわけがあるんだ」

2P「それも、結構長い話になるよな?」

カイ「そうね。掻い摘んで話そうにも、どこを取ればいいかしら…」

輝夜「長くても構わないわ。楽しい話ならいくらでも聞けるし」

ギル「楽しいかどうかはわからないな。でも…退屈はしないと保障するよ」

カイ「…じゃぁ、まずは私とギルが、ジョーカーと出会った時…からかしら。………」




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
248 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/13(日) 22:31:58.86 ID:uv/COLbu0

〜〜〜ジューダスの場合〜〜〜

「………」

『  』

「……静かだな」

『  』

「……どう思う?シャル」

『           』

「…流石に、まだ判断するには材料が足りない、か」

『            』

「ああ。偶然かわからないが、あの時の仲間が集まっている。引き合う運命なのか、それとも…」

『                  』

「…あいつはすぐ厄介事に………ふっ。僕が言えた義理じゃないか」

『                      』

「……五月蠅い。………」

「何も起らなければいいが…」

「………」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜小牟の場合〜〜〜

ガラガラ…トン カチッ

永琳「お待たせ。カイさん達から、あの話を聞いてきたわ」

小牟「長い花詰みと思うたらそういうことか。となると手間が省けたの」

紫「必要な知識を得られたところで、今回の整理をしましょうか」

永琳「…永い夜になりそうね」

紫「三人とも、寝なくていい体じゃないの」

小牟「………」

永琳「………」

紫「な、なによ?」

小牟「普段からぐーたら寝とるぬしが?」

永琳「冬眠するってもっぱらの噂を持つ貴女が?」

紫「それとこれとは話が別でしょ…」


少女整頓中.........


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
249 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/13(日) 22:37:23.14 ID:uv/COLbu0

〜〜〜再び、博麗神社〜〜〜

「…むにゃむにゃ…」

「……zzz」

「…霊夢、掛け布団は?」

「そっち」

「………」ヒョイヒョイ

「………」バサッバサッ

「…うーん、もう食えないぜぇ…」

「…………zzz」

「………」

「魔理沙はともかく、アリスはこの程度じゃ風邪ひかないわよ」

「それでも、さ。…隣、いいか?」

「どうぞ」

「……十三夜、と言ったところか」

「………」グビグビ

「………」

    ・・・・・・

「………」

「いい所だな、ここは」

「和んでいる所申し訳ないけど、異変はまだ7つも残ってるわ」

「ふっ。…明日は?」

「妖怪の山。あっちの一番高いのよ」

「了解した。………」

「………はぁ。明日も早いから、私はこれで寝るわ」

「ああ。俺は、もうしばらくここにいる」

「一応、あっちの部屋でお願いね。この二人、寝相悪いから」

「ああ、わかった。…お休み、霊夢」

「おやすみなさい、零児さん」

「………」

「……幻想郷、か」ガサッ

「ああ、そうそう言い忘れてたわ」

「ん?」

「改めてようこそ、幻想郷へ。『不思議の国のアリス』さん」

「……アリスが既に言っていたな」

「そう言えばそうね。それじゃお休み」

「………」

「………」ゴソッ
250 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/13(日) 22:45:06.43 ID:uv/COLbu0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

―――・-・・―――・―  ― ・――  ・    −  ―・―――

…データ収集 再度失敗
 幡  ゐ

鈴  優曇    ナ
 ルガ ス
名 しの超   P
 無し 超戦士
 イ
  山  夜


…以上 名 データ 不足

エラー 該当者 測定 失敗

修正 以上七名 データ 不足

−−−−−−の稼働率 42%

翌朝からの運用をめどに調整 若干の不具合 無視

―――・-・・―――・―  ― ・――  ・    −  ―・―――

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
251 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/13(日) 22:48:40.15 ID:uv/COLbu0
〜〜〜二日目の朝・陽が差し込み始めた頃〜〜〜

「フンッ フンッ フンッ」

霊夢「おはよぉ…零児さん、早いのね。まだ寅の刻じゃないの」

零児「ああ、おはようさん。日課だからな」

霊夢「えらいわねぇ。ふわぁぁー…」

零児「そういうお前さんも、こんな時間に起きているじゃないか」

霊夢「調子が良かっただけ、よっとっと…」

零児「……ふんっ ふんっ ふんっ」

霊夢「(コトッ トクトクトク ゴクゴク)ぷはぁ」

零児「………」

霊夢「………境内の掃除、しておきますか」

「フンッ フンッ フンッ」

サッ サッ サッ

フンッ フンッ フンッ

    ・・・・・・

魔理沙「ん…んっ…くぅ…」

アリス「ぐぅ…ゴリ……どきなさい……」

魔理沙「………よいしょっと」

霊夢「魔理沙、起きなさい、ご飯よ…って」

魔理沙「グッモーニン、霊夢。…レイジは?」

霊夢「とっくに起きてるわよ。ほら、顔洗ってきなさい。アリス、あんたも起きる」

アリス「……ふがっ?…後5分…」

魔理沙「世の男が聞いたら幻滅するぜ、それ」ケラケラ


零児「おはよう、御二人さん」

アリス「おはよう、レイジさん…」

魔理沙「おはよう、レイジ。寝心地悪くなかったか?」

零児「ん?別に悪くはなかったが」

霊夢「そもそも、なんで寝心地悪いとか言うのよ」

魔理沙「だって、外界だと寝るときはベッドが普通だって聞くぜ?」

零児「あまり間違ってないが、別にそれだけしかないわけじゃない。劣悪な環境だってある。…頂きます」

アリス「頂きます。ごめんなさい、なにも手伝わなくて」

霊夢「少し意外よ。アリスが寝坊なんて」

アリス「魔力のめぐりが悪いの。人間の頃の感覚だったわ…」

魔理沙「いっただっきまーす」

零児「睡眠と食事の習慣を無くさなくてよかったな」

アリス「そうね。やっぱりこういう嗜みは必要なのよ」モグモグ

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
252 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/13(日) 22:51:53.05 ID:uv/COLbu0

〜〜〜永遠亭・永琳の寝室〜〜〜

小牟「………」パチッ

永琳「………」パチッ

紫「………」パチッ

てゐ「………」パチッ

小牟「それじゃ、ロンっ!」

てゐ「げぇっ」

永琳「…七対子ね。これでてゐが飛んで終了と」

てゐ「大損ウサ…スキマ妖怪と師匠に吸われると思ってたけど、あんたも案外強いのね」

小牟「だてにネットにふれとらんっちゅーこっちゃ。…これは負けんの確定したから振った手じゃが」

紫「三人の予想に反してすっごいポーカーフェイスだったものね」

永琳「……なんで私達麻雀してるのかしら」

小牟「ある程度話の整理をした後、中途半端な時間じゃったから何か暇つぶしをせんかってことになって」

紫「ならここは王道の麻雀じゃない?って。三人じゃちょっと物足りないから半死に状態のてゐも入れて」

てゐ「シャオムゥを飛ばして大儲けできるーとか思ってたらこのざまよ」

小牟「勝負はいつでも真剣本気じゃて。して、もうよい時間じゃな」

鈴仙「お師匠様、ご飯の用意ができましたー」

永琳「ええ、わかったわ。それじゃ、行きましょうか」

紫「私は藍に呼ばれたから、これでね」

小牟「竹林の料理はなんじゃろほいっ!」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

マミゾウ「#」ビキッ

鵺「な、なにどうしたのマミ?」

マミゾウ「今、わしのアイデンティティが汚された気がするんじゃ」

響子「おじさん口調がですか〜?」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
253 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/13(日) 22:54:46.67 ID:uv/COLbu0

フェリシア「ぅぅぅ…頭痛いぃ…」

鈴仙「はい、二日酔いの御薬持ってきました」

カイ「いないと思ったら、てゐさんの所でやけ酒だったなんて」

1P「気ーついたら酔いつぶれてたぞ?戻されたら面倒だったから放置したがな」

輝夜「とはいっても、焼酎が半瓶しか開いてなかったのよね。…下戸?」

フェリシア「ううう、しかたないじゃん…なんかすっごい酔いが回ったんだもん…」

てゐ「(どうも外の飲み物を混ぜた奴っぽいわね。あれ酔いが凄い回るのか…うししし)」

小牟「よゐ子は真似すんなよ!」

2P「あ?突然どうしたんだ?狐の嬢ちゃんよ」

小牟「超銀河の意思を受信したのじゃ」

ギル「ところで永琳さん、小牟は大丈夫なのかい?…見た所平気そうだけども」

永琳「ええ。やっぱりただの一時期的なめまいの一種ね。ちょっと特殊な環境に居たから強い光に弱かったようよ」

カイ「特殊な環境?真っ暗な場所にずっといたとか?」

鈴仙「それに、電子的な光源があるとより悪化するわね」

小牟「的確すぎるの…流石は念波を拾える優曇華じゃな」

鈴仙「その名で呼んでいいのはお師匠様と姫様だけよ」

フェリシア「んじゃぁ、シャオムゥは逝っちゃうんだねぇ…私もぉ」

2P「二日酔いでダウンしてるやつが無理すんなって」

小牟「文字通りにゲロっちまうからの。して、皆はこんのじゃな?」

1P「ああ、俺達は無理だな。モビちゃんのエネルギーが切れちまう」

カイ「私達も飛べないから着いていけないわ。これ以上、魔理沙さんの箒には乗れないでしょうし」

小牟「ということはわし一人じゃな〜。…しっかり飯くわんと」ガツガツ

輝夜「つけとくわよ」

小牟「ボーナス払い36回で良いか」

永琳「そんなに分けるほどの物じゃないわよ」
254 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/13(日) 22:57:22.54 ID:uv/COLbu0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

零児「御馳走様でした」

アリス「御馳走様。結構なお手前で」

霊夢「それは煎茶のときの台詞ね。片づけは二人がしてよね」

魔理沙「えー、なんでs」

零児「昨日酒飲んでぶっ倒れたのは誰だったか、忘れたとは……いや、忘れたのか」

魔理沙「かろうじて覚えてるぜ。…どっちの桶が洗い用だっけ〜?」

アリス「左の方じゃなかったかしら。それから、魔理沙達は先に行っちゃって良いわよ」

霊夢「あら、どうしたの」

アリス「寝棒の延長。やっぱり魔力のめぐりが悪いのよ。…だいたい5,6体をオートで動かせられる程度」

零児「それでも、充分な気がするが…万全を期して挑まんと何が起るか分からないからな」

魔理沙「私らが素で万全じゃないけどな。んじゃぁ片付けは全部任せてさっそく…」

零児「それとこれとは話が別だ。ただ飯食らいは許さんと言っただろう」

魔理沙「ちぇー。残飯捨ててくる」

霊夢「…やっぱり、昨日と同じね」グッパ

零児「いけそうか?」

霊夢「誰に言ってるのかしら」

零児「…そうだな。後は、小牟だが」

霊夢「むしろ、小牟を待つためにああ言ったんじゃなかったの」

零児「半分はな。…無事だといいが」

霊夢「着いた時には落とし穴にはまってたわね。カイって人と一緒に」

零児「バトルロワイヤルの落とし穴じゃなくて良かった」

霊夢「?ばとるろわいやる?」

零児「こちらの話だ」


魔理沙「終わったぞー、霊夢」

アリス「気にせずに向かえばよかったのに」

霊夢「それは私じゃなくて零児さんに言ってね」

零児「どうせ小牟を待つ必要があったからな。通信機が通じればよかったんだが」

アリス「つうしんき?紫がくれたアレみたいなのかしら」

零児「小牟もそんなことを言っていたな。…この耳栓が通信機だ」

魔理沙「おお、ちいさ。しかも本当に耳栓の形だぜ」

霊夢「こんなので、ねぇ。河童に見せたらバク転しかねないわね」

零児「携帯入らずだと思ったんだが…後で本部に報告だな」
255 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/13(日) 22:59:36.79 ID:uv/COLbu0

小牟「みんな〜(AAry」

魔理沙「ウェーブ!」ブワワワワーン

小牟「おおうっ!?何すんじゃい!」グレイズッ

霊夢「魔理沙の反応が正しい気がするのは何故かしら」

零児「わからん。その調子なら大丈夫そうだな」

小牟「全く、ごあいさつじゃな。…心配掛けてすまんの、零児」

零児「なら、さっさと連絡しろ。何故通信機を使わなかった」

小牟「おお、その手があったの!…………あれ?わし…いつ耳栓外したんじゃ?」

アリス「まさかの痴呆症?」

魔理沙「無理するんじゃないぜ、おばあちゃん」

小牟「ぼけとらんわ!本気と書いてマジと読むぐらいに何時外したのかわからんのじゃ!」

零児「………」

霊夢「…」シュンッ

小牟「(ガシッ)!?な、何するんじゃ霊夢よ!」ハ ナ セッ

霊夢「確保したわよ、零児さん」

零児「そいつは重畳。……機関の備品を無くすなと、あれほど言ったんだがな…」

小牟「ま、まて零児!にじり寄るでない!いかん、いかんぞこっちでもそれされると…」

霊夢「パス」バシッ

零児「ナイスアシストだ」ガシッ

小牟「な、流れが自然すぎる!?主らいつの間にそんな息ぴったりに…!」

零児「魔理沙、よくみておけ。これが尻100叩きだ」

魔理沙「は、は、ははは…」

アリス「トラウマ想起中ね、きっと」

小牟「き、きっと荷物の中じゃ!じゃからちょっとまて零児!!」

零児「お前がそうやって忘れたときはたいてい本当に忘れている。覚悟しろ」スッ

   パッーーーーーン!!

小牟「はひぃ!」

魔理沙「!」ビクンッ

アリス「(そんなに痛いのかしら。…顔真っ赤…)」
256 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/13(日) 23:01:09.03 ID:uv/COLbu0

〜〜〜100叩き後〜〜〜

小牟「イタタ…久々のはずじゃと言うのに、腕が全く衰えておらんの、零児ぃ…」

零児「昨日、魔理沙にしたからな」

魔理沙「シャ、シャオムゥは大丈夫なのか?私なんか10回で…」

小牟「ふっふーん。歴戦の勇士をなめるでない。これまでに五千回は叩かれちょる」

アリス「やな勇士ね。というか凄く不名誉じゃない?」

小牟「癖になるとのぉ、これが気持ちの良い痛みに…」

霊夢「………」

零児「………はぁ」

アリス「うわぁ…」

魔理沙「………あ、ああ」

小牟「え、何このアウェー感」

零児「当然だろう。それじゃぁ、行くとするか」

アリス「行ってらっしゃい。私は家に戻ってるから」

小牟「ほう?こんのか。…つーか次はどこ行くんじゃ?」

霊夢「行ってる最中に話すわ。今日は3つ済ませたいし」

魔理沙「ついでに、行先は妖怪の山だぜ」
257 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/11/13(日) 23:07:20.13 ID:uv/COLbu0
本日の投下はここまでです。マジ日常パートのネタ詰め込み度は異常です。ほのぼの書いてた方がよかったかな…

昨日、信貴山に行きやる気を注入してきました。毘沙門天神像を近くで見れなかったのですが少しばかり残念でしたが。

さて、そんなこんなで、閑話休題を挟んだ後はようやく風神録突入です。
 安価取ってから1月ぐらい掛かってるって予定どころの話どころじゃぬぇ!

次の投下は短いので水曜までに。

それでは。
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/13(日) 23:46:09.95 ID:MqzXo4ADO
風キター
嫁くるー
早苗ー俺だー(ry


>>1乙なんだZE☆
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/13(日) 23:58:22.03 ID:UvEPiILDO
投下お疲れ様!

鍋うまそうだったな〜、俺も食べたい…。
260 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/14(月) 22:51:38.93 ID:ayvuPZ4f0
こんばんわ。何故か思いの外、筆(?)の進みが早かったので投下します。…これが、やる気か…

では、投下です。
261 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/14(月) 22:59:42.27 ID:ayvuPZ4f0
閑話休題2『生真面目な奴ら』


神子「………」

屠自古「………」

芳香「うがー」スリラー

青蛾「ズズズ…ぷはぁ」

布都「………」

布都「何故ですかっ、太子!命蓮寺はここ、幻想郷における仏教の頂点と呼んでも差し支えない程の勢力!
   あそこを潰してしまえば、後の博麗の神社と洩矢の神社は張り子の虎ですぞっ!」

神子「そこですよ、物部氏。建前上の信仰ではありましたが毘沙門天…それも寅のお方ともなれば、流石の私も手を出しにくいものです」

屠自古「ですが、太子がいましがた申し上げたように建前上なのでしょう?
    なら、我らの封印を伸ばした報復として彼の寺を、その道力で抑え込んでしまえば…」

神子「…いやそれがですね、私はすでに白蓮と会ったのですよ」

布都「おおっ!あの寺の住職にっ!それで、彼奴めの欲望にくらんだ半生を…」

神子「綺麗でした」

屠自古「は?」

神子「綺麗なのですよ、彼女の心音は。確かに、昔の彼女は十の欲に塗れ、それは酷い有様でしたが」

布都「そ、それが何故綺麗、と?」

神子「彼女は、生まれた時から心根が清らかだったのでしょう。己が欲を後悔し、それを償うためにその身を犠牲にする事を厭わず…」

屠自古「………」

神子「おっと、これ以上は彼女のプライベートに深く入り込むので同志にも教えられませんが、私は彼女を応援したいと思うほどです」

芳香「でもー、封印を引きのばしたのはー、あの寺…か?」

神子「霊廟の封印を結び直したのもそういう封印があるから、仏教の教えに沿って再施工したまでのこと。
   我らが封印されていた事を伝えたら土下座までするほどでした」

青蛾「聞くだけでは確かに神子が気に入るのも納得できますが…それでも、我らの悲願の妨げになるのでは?」

神子「我らが教えを広めるのであればあの寺を貸してくれるとまで。彼の寺の集客力を考えれば悪い話でもありません。
   …彼女の早とちりでそういうことになっただけなんですがね」

布都「おおっ!流石は太子!つまり利用できる所は利用し、信仰の力を得て道教を極める…ということですなっ!」

神子「まぁ、身も蓋もない言い方をすればそうなりますかね」

青蛾「物部氏。恐らく神子は…」

布都「そうとなれば人間達の信仰心を我らへ向けるための計を立てねば。蘇我氏!まずは人里の傾向調査とまいりましょうぞ」

屠自古「やってやんよっ」
262 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/14(月) 23:04:59.29 ID:ayvuPZ4f0

神子「…(汗」

青蛾「相変わらず、空回りしそうなお方」

神子「…はぁ。ところで物部氏、少々気になる事なのですがね」

布都「?どうなされた、太子」

神子「なんとなく、久しぶりにかつての頃を思い出しながら眠ったのですよ」

布都「我らは尸解仙となり、寝食の不都合から開放されましたからね」

神子「ええ。…そこで夢を見たのですよ。それも結構はっきりと」

屠自古「それがどうなされたので?」

神子「物部氏に向かって光り輝くナニカが飛来し、衝突するという夢です」

布都「おおっ?それはもしや、何かしらの祝福…!?」ヒューーーー

神子「解りませんが、まぁ注意するにこしたことは…」ズゴォッ!

布都「ふぎゃっ」

屠自古「っ?!」

芳香「?」

青蛾「…あら、本当に降ってきたわ。でも光ってなかったわね」

屠自古「一応、手に持ってる三俣の槍が黄金ですが…物部氏、無事ですか?」

布都「きゅううう」

???「あいたたたた…」

芳香「おお、うごいたー。食べていい?」

青蛾「お腹を壊すかもしれないから止めなさい、芳香」

神子「………」キィイイイイ

???「…?おわわっ!ごめん、今すぐ退くよ」

布都「」チーン

???「あわわ、どうしよう…って、おや…?」汗

神子「………」

屠自古「………」

萃香「うが〜♪」スリラー

青蛾「こんにちは、緑の…人?」
263 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/14(月) 23:08:11.11 ID:ayvuPZ4f0

???「あー、こ、こんにちは」

神子「…ふむ、クリノ・サンドラ。幻想界の戦士の一族ですか。ふむ」

クリノ「っ?!ど、どうしてわかったんだい?というかこの人放っておいても…」

青蛾「大丈夫です。形は少女ですがこれでも尸解仙です。クリノさん」

クリノ「そ、そうなのか。っておいら、まだ自己紹介もしていないのに…もしかしてイシター様の知り合いでしょうか?」

神子「ふむ、…おかしいですね」

屠自古「どうなされました、太子」

神子「名前や種族等までは聴き出せたのですが、それ以外の事が全くなのです」

クリノ「???」

青蛾「あら…不思議な事があるものですね」

神子「…失礼しました、クリノさん。私は豊聡耳 神子(とよさとみみ みこ)。ここ、神界にて太子と呼ばれるものです」


 青年少女説明中...   尸解仙復活中...


クリノ「いやぁ、驚いた。まさかまた次元転移するなんて思いもしなかったよ」

神子「私も、まさか十欲の聴けぬ者がいるとは…その気になれば妖怪や神仏になりかけの「物」の声さえも聴こえるのですが」

布都「いやはや、「幻想入り」した者の瞬間を生で、それも落下地点にて経験するとは…やはりこれは祝福されておるのだな!」

クリノ「…普通、ぶつかったら「不幸だー」とか言うと思うんだけど」

屠自古「思い込みの激しい方だから、物部氏は。…それにしても幻想界…?」

芳香「うまい奴は多いのか?」

クリノ「うーん、まぁまぁかな?おいらそこまでグルメじゃないから話せないや(…奴?)」

青蛾「ところで、イシター様というのは?」

クリノ「おいらが仕えている方が守護している女神さまです。物質界でも結構知られていると聞いていたんだけど」

神子「私達も、封印から開放されてまだ日が浅いですからね。そういう話は博麗の巫女やスキマ妖怪に訪ねるのが早いかもしれません」

クリノ「そうか…そこへはどうやっていけるんだい?」

布都「ここ神界は幻想郷のどこへでも繋げれますぞ。…いや、マヨヒガ等は行けませんでしたな」

神子「まぁ、名前の通り迷った先に辿り着く場所ですからね」

クリノ「便利な場所なんですね。じゃぁ、幻想界に帰れそうな場所ってわかるかい?」

青蛾「うーん。可能性としては、やはり博麗の巫女やスキマ妖怪の所でしょうけど…」

神子「どうせですから、私が案内します。皆さんは道教を広める算段を」

布都「解りましたぞ、太子。覆して見せますぞっ!」

屠自古「やってやんよっ」

芳香「お?やってやんよー」

青蛾「芳香はここにいなさい」
264 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/14(月) 23:17:55.87 ID:ayvuPZ4f0

クリノ「…よかったのかい?あのフトって子…ミコさんの思惑とずれている気がするけども」

神子「まぁ、予定通りです。それに、あれはあれで、実力は信頼に足るので」

クリノ「うーん…」

神子「クリノさんは真面目ですね。さぁ、行きましょう。博麗の巫女にはもう一度挨拶せねばと思ってましたので」ガタッ

クリノ「…よっこいしょっ…石畳?」

神子「基本的に神界は幻想郷の地表の裏側にありますので、まぁこんなことに」

クリノ「こんなところから人が出てきたら、驚くだろうね」

神子「事実、驚かれました。…さて。博麗の巫女ー!いますかー?豊聡耳ですー!」

クリノ「手入れがきちっとされている神社だ。…というか、秋?」

神子「………うーん、生活音もしない。もしや何処かに行ってしまったかな?」

クリノ「まぁ、連絡もせず来たものな。じゃぁどうしようか?」

神子「うーん。……どうせですからこのまま待ちましょう。クリノさんの事も、もう少し知りたいですし」

クリノ「…そうだね。行先が分からない以上、下手に動かない方が賢明だ。…でも、もう一人の…スキマの妖怪さんは?」

神子「私達以上に神出鬼没な妖怪です。私自身、噂程度にしか聞いた事がないので会う事もままなりません」

クリノ「そうなのか。…少し周りを調べたいのだけども」

神子「私もお供しましょう。じっくり見た事がなかったので」

クリノ「何を祭っているのか分からない神社だなぁ…」

神子「ええ。博麗の巫女に訪ねてみましたがはっきりしません。どうも代々引き継ぎが雑なようで」

クリノ「おいらの世界じゃぁ考えられないな。巫女が新しく迎え入れられるときは大々的な儀式を行うものだから」

神子「私も、そういうものだと思うのですがねぇ。(……本当に神様がいるか怪しい神社ですし、仕方ないのかも」

クリノ「ん?何か言ったかい?」

神子「いえ、別に。とりあえず、この小山の麓ぐらいまでは降りますか」

クリノ「そうだね。階段も80段程度しかなさそうだし」

神子「ええ。少ないですね。それでは行きましょうか」*クリノ:戦士 神子:超昔の人基準

 青年少女散歩中...
265 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/11/14(月) 23:28:35.30 ID:ayvuPZ4f0
以上で閑話休題2前編の投下終了です。騒動が全くないとこんなに早いものなのか…。

少々星メンバーの良い人押しが強く感じるかもしれませんがご了承ください。
 今のところこうなるとしか思いつかないんですよ……。


>>258
早苗さんは原作よりの性格にする予定なため、少々アレでアレです。後光は差しませんが。

>>259
鍋、美味しそうでしたか?若干、肉の種類の描写忘れてたりタレのことを後で思い出したりしちゃってまして…
まぁ、次の機会にきっちり書きます。どうせ秋です鍋の季節です。


次は風神録1面、VS秋姉妹です。風神録のプロットは4面まで出来ているので戦闘描写に手間取らなければ3,4日以内に1面は進む…はず。

それでは、失礼します。


屠自古の性格が全く分からないせいで誰これ状態。
266 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/11/17(木) 15:05:25.78 ID:rBxMDl9B0
絶賛体調不良の真っただ中で次投下できるのがいつか分からなくなったのでご連絡をば。

でもベットの上ではネタが浮かぶせいで…半ラリ状態のほうが突拍子もないネタが浮かぶものですね、本当。
267 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/21(月) 13:32:43.83 ID:KrlI0/cJ0
未だ若干のどがやられておりますが復活しました。

これよりは風神録1面と2面を投下します。もしかしたら今日中に3面も投下出来るかもしれません。

若干ネットが不安定なので途中で切れるやも…
268 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/21(月) 13:41:33.13 ID:3un9a4XE0

〜〜〜妖怪の山・結界前〜〜〜

小牟「うーぬ、紫めが言うとった弱体化の件っちゅーわけか」

魔理沙「やっぱり妖怪の方が深刻なのかな?」

零児「わからんが、霊夢達よりも影響が大きかったようだな」

小牟「…風神録にアリスめがおらんかったし、きっとメタの力じゃな」

霊夢「メタ言うな。退治するわよ」

零児「…はぁ。妖怪の山についたな」

魔理沙「相変わらず、境目がわからないぜ」

霊夢「今回は中と外の季節が一緒だものね。…行くわよ」

小牟「そーれいっ」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜妖怪の山・紅葉散る麓の森〜〜〜

小牟「点呼っ!いち!」

魔理沙「え、え?ああにぃ!」

零児「…さん」

霊夢「よん。今回は皆いるみたいね」

魔理沙「みたいだな。…ところで本当に結界の中なんだよな?」


 結界を潜り終えたその先には、先ほどまでとほぼ同じ景色があった。
 秋めく山…燃え上るかの如く赤く染まり、その葉を散らせる、そんな光景が。
 結界を感じにくい魔理沙が疑うのも無理がない。


零児「その筈だが、さっきと殆ど変らんな」

小牟「風神録は秋じゃったしな。いやーしかし綺麗な風景じゃて」

霊夢「観光目的ならここで待ってなさいよ?」

小牟「それこそ解決してからでもかまわんわ。よっしゃ進むぞー」

零児「秋の二柱がいる、と聞いたが」

魔理沙「弱すぎるあの神様だな。秋…………?」

霊夢「…本当に忘れたわね。なんだったかしら」

小牟「オリキャラ故の不運か。秋静葉と秋穣子じゃよ」

零児「……あっちで見てきている少女がか?」


 零児の指さす方…獣道よりはいくら人の手がつけられたような道を挟んで向こう側の樹の後ろに、その少女はいた。
 服は紅葉そのもの。紅葉の髪飾りを付けた、寂しげな印象を受ける細身の少女。


魔理沙「おお、あいつだぜ!あいつが穣子…」

霊夢「…静葉、姉の方ね。何故仕掛けてこないのかしら」
269 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/21(月) 13:43:34.20 ID:KrlI0/cJ0

小牟「若干目を輝かせておる気がするのじゃが?」

零児「仕掛けてこないなら、手を出す必要はない。触らぬ神に祟り無しだ」

小牟「山に祭られとる神様の片方は、敬わんと祟るろくでもない神じゃがな」


 一体だれの事だろうかケロ。物騒な神様がいるもんだケロ。


霊夢「…そうね」

魔理沙「ずっとこっち見てるぜ、静葉」

零児「小牟、解説頼む」

小牟「秋静葉、寂しさと終焉の象徴たる神様。妹の穣子に、紅葉の素晴らしさを自慢する。冬になると暗くなる」

霊夢「というわけで捕まえて来たわ」

静葉「むぐー!?むっぐぐー!!」


 零時間移動を平然と無駄遣いする霊夢。静葉はというと、既にハンカチで口と手を塞がれている。


魔理沙「秋の神様って煮たら美味しいのかな?」

静葉「?!むぐぐぐむぐむー!!」

小牟「じゃーかーら、こやつは姉の方じゃから実りとは違うんじゃ。カニでもないしの」

零児「お前たちは何をしてるんだ。神を食べようとするな。それこそ罰あたりだ」

静葉「むぐ!むぐぐ!」コクコクコク

魔理沙「まぁ、食べられそうなところ殆どないしな。なんでじろじろ見てたんだ?」


 正直、少女に捕まる神様というのも、悲しい気分になるものである。


静葉「ぷはぁ! はぁ……紅葉の事、褒められてたから見ていたの」

零児「小牟が褒めていたな」

霊夢「何?もっと褒められないかな〜って覗き見してたとでも言いたいの?」

静葉「その通りよ? 最近、妖怪も人間もなかなか口に出してくれないもの」

零児「…確かに、綺麗になるのが当たり前と考えられているかもな」

静葉「だから穣子に信仰心で負けてかなりへこんでたの…」

魔理沙「(そういう経緯があったのかよ、あのとき)」

静葉「でも、そちらの妖怪さんの言葉が私に力を与えたわ。ありがとう」

小牟「ほれ、零児めも褒めてやらんか」

零児「あー…紅葉が見事な山は、それだけで一枚の絵になる。それを司れるのは凄い事だと思うぞ」

静葉「(ポッ」


 紅葉も霞むほどの真っ赤な顔である。


小牟「れいじぃいいい!おぬし浮気かぁあ!!」

零児「お前が褒めろと言ったんだろ…」
270 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/21(月) 13:48:25.25 ID:KrlI0/cJ0

??「貴方達! 紅葉もいいかもしれないけど、秋と言えばやはり実りの秋よっ!」


 突如響く大きな声。それは明るく、自信にあふれ、温かな息吹を感じる声。


静葉「! 穣子!」

穣子「お姉ちゃん、絶対間違ってると思うけど助けに来たわ!」

静葉「ええ、だいぶ間違えてるけどありがとう!」


 振り返って姿を捉えてみると、ふっくらとした芋を想起する服に、顔いっぱいに自信を携えた表情。
 そして何故か素足である。


霊夢「…コントのつもりかしら?」

魔理沙「っ〜〜!!」バンバンバン

零児「魔理沙の沸点、案外低いんだな」

小牟「B級向けじゃな。して、他にはおらんのか?」

穣子「よくわからないけど、いるわ! さぁ、出てきなさいっ!」
                                                 〜♪
??「赤コーナー! なんだかしらねーけど秋の嬢ちゃんに誘われてやってきた男っ!」


 マイクでもあるのかと思うほどに大きく、エコー掛かった声が森の奥より響く。
 そこから現れた男は身長170代、赤い道着を黒帯で結んだ金髪のアメリカ人。


ケン「秋と言えばチャンピオンの秋こと、ケン・マスターズだぁ!」

穣子「違うでしょぉおお! スポーツの秋だって言ったでしょぉおお!!」

ケン「そんなこと言われても、俺はチャンピオンだからな! それで、姉ちゃんを助ければいいのか?」

小牟「こりゃまた大幅な改変を受け取るの」

魔理沙「ん? 神略異変がか?」

小牟「それもじゃし、ケンもじゃよ」

穣子「何がどうチャンピオンなのよ…まぁいいわ。秋の山に入ろうとするこの人間達を止めるのが、今の私達の務めよ」

霊夢「貴女達程度じゃ止まらないわよ」
                             〜♪
ケン「その自信、いいねぇ。だけどこのチャンピオンベルトを賭けた勝負、負けられねーぜ!」

穣子「いや、だからチャンピオンじゃなくってぇ!!」

静葉「…穣子のテンションがおかしいわ…六割ましよ…」

零児「心中お察しする。…貴女様も戦うので?」

静葉「なんだか囚われの姫みたいでワクワクするから、このままでいるわ」ルンルン


 そういい後ろへ下がる静葉。心なしかスキップである。


霊夢「動機はおいといて賢明な判断ね」

魔理沙「なーなーレイジ、シャオムゥ」

小牟「ほむ? なんじゃ、魔理沙よ」

魔理沙「昨日のあれで欲求不満だからさ、私らだけでやらせてくんね?」
271 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/21(月) 13:51:10.07 ID:KrlI0/cJ0

零児「構わんが、霊夢もそれでいいのか?」

霊夢「…そうね、良い機会だから見てて頂戴」

零児「わかった。小牟、下がるぞ」


 二度戦い既に実力は知っているが、弾幕勝負を客観的に見た事はない。
 霊夢達の戦い方を観戦する事にした二人は、静葉の元まで下がる。


静葉「あら、知らない二人はこっちにくるのね?」

小牟「見学勢じゃ」

ケン「おいおい、嬢ちゃん達二人でやるってのか?」

霊夢「ええ、悪いかしら」

ケン「…いや、気にしないな。何人だろうと、どんなミテクレだろうと、俺は俺の全力を出すだけだぜ」

魔理沙「良い心がけだぜ。んじゃ、やるかっ!」

ケン「おうよっ! さぁこいっ、チャレンジャー!」

穣子「…ああもういいわ、チャンピョンマッチね…」

零児「どちらかというと、タイトルマッチかもしれませんね」

穣子「訂正どうも。 …豊符『オヲトシハーベスター』!」


 穣子が両手を広げてスペルを宣言する。
 神様を中心に、全方位へ放たれる黄色いレーザーと赤い粒弾幕。
 米と芋…というよりは、某ファーストフード店のフライドポテトのよう…を模した弾幕だ。

ケン「はっ!飛ばしていくぜっ」5↑2↑3↓1↑

魔理沙「足元注意だぜ! ほらほらっ」


 弾幕の中に紛れ駆け寄るケンを、低空飛行していた魔理沙が迎え撃つ。
 踏み込み、蹴りあげるたびに舞い上がる落ち葉の中に、赤の粒と黄色の線光、さらに色とりどりの星が混ざる。


ケン「これを消せるかっ!? 『波動拳』!」


 迫る星を飛び跳ね回避する。
 空中で身をひねり、両腕でサッカーボールを抱えるような構えをとる。
 ボールを抱えた格好のまま流れるように腕を前に伸ばし、『波動拳』を放つ。
 速度はあまり早くないが…


魔理沙「消せるかだって? なめるなっ!『ナロースパーク』!」


 負けん気を発揮した魔理沙が、似た構えから太めのレーザーを放つ。

 二人の力のせめぎ合いは、魔理沙に軍配が上がる。
 波動拳を呑み込んだレーザーはそのままケンの着地地点へと向かう。


272 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/21(月) 13:52:30.20 ID:KrlI0/cJ0

穣子「拝啓お姉ちゃんへ。これ無理だわ…」


 対して霊夢は悠々と 歩いていた。
 穣子が放った弾幕のうち、ぽtレーザーの周りを、あたかもその中心に重心があるかのように回りながら、だ。
 もちろん、迫る赤粒も全てグレイズ。二人の距離は徐々に近づいて行く。


静葉「そんな穣子を、お姉ちゃん応援してる」ピッピッ

零児「弾幕で会話…洒落てますが、何か違うんじゃないか?」



ケン「戦いってのは、先を見て行動するもんだ!『竜巻旋風脚』!」


 弱P波動拳が勝てない事を分かっていたケンは、迫りくるレーザーに対し体を回転させる。
 片足を上げ、まるで独楽のように回転する『竜巻旋風脚』…攻撃だけでなく、少しではあるが移動用としても使える技だ。
 事実、ほんの少し浮遊し跳躍の距離を稼いだケンはレーザーをグレイズし、着地する。

 そのまま、鍛え抜かれた脚部のバネを思い切り開放し、魔理沙に肉迫する。


魔理沙「今どうやって浮いたんだよ、ちくしょっ…『ラジアルストライク』ッ!」

ケン「なかなか良い反応だけどよ、先を見て行動するって言ったよなぁっ『昇竜拳』!」

魔理沙「うおぅっ!? ま、さか…!!」


 魔理沙が回避、防御、反撃…そのいずれを取れど関係なかった一撃。
 拳を突き上げ、大地から飛び上がる龍の如く、身をひねりながら超威力のアッパーを放つ『昇竜拳』。

 魔理沙の放った星弾が追いつく暇もなく、ケンは霊夢目がけて飛び上がる。


静葉「落ち葉が竜巻にまかれたみたいに…!」


 穣子を見続けながら今なおグレイズし続ける霊夢の元へ、ケンが飛来する。


零児「…勝負ありだ」


 燃え上る拳が霊夢のスカートに触れる。


小牟「じゃな」


 その瞬間、札となって消えさる霊夢。


ケン「な、なんだって!?」


 備えていたわけでなく、本当にただなんとなくの勘とタイミングで発動しただけ。


霊夢「先を見なくても、感じればいいんじゃないかしら」


 万が一、この反撃が打撃択ならばもう少し抗えただろう。
 だがしかし、霊夢は『亜空穴』をしただけで、見向きもせず再びグレイズに勤しむ。


魔理沙「さっきも言ったろ。足元がお留守だぜ! 『ミアズマスウィープ』!」


 きりもみ状態になりながら避けきるも、下から魔理沙が箒を掲げて昇ってくる。


魔理沙「貰ったぜっ!」
273 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/21(月) 14:02:43.37 ID:KrlI0/cJ0

ケン「ちくしょうっ!」

穣子「うわっ!? きゃーっ!」ズボッ


 魔理沙がケンをぶっ飛ばしたのと同じタイミングで、飽きた霊夢が穣子に蹴りをかます。
 蹴り飛ばされた穣子は勢いよく地面へと突き刺さった。


ケン「くっそー、完全に奇襲したと思ったんだがなぁ」

霊夢「そうね、確かに奇襲にはなったわよ?」

静葉「み、穣子! 今引き抜いてあげるからね!」

零児「俺も手伝います。しかし、神様の面目丸つぶれですな…」ボソッ


 少し柔らかめの土から、首から下を生やした状態…神でなくとも色々と台無しである。


小牟「ドロワ丸見えじゃ。零児、眼福じゃろ?お?」

零児「ならさっさと手伝え。そもそも、ドロワは見せパンの一種だろう」

静葉「え、もしかして紳士さん?」

零児「何か間違っている気が…。以前、こいつが態々調べて講義してきたんですよ」

魔理沙「先を見て行動した結果だぜ」キリッ

ケン「嘘付け、嬢ちゃん。ああいうのは適当っていうんだよ」

魔理沙「そうとも言う。けど、結果良ければすべてよしだぜ」   スポンッ

静葉「ぬ、抜けた!」

小牟「大きなカブ…否、芋が抜けましたー」

穣子「ゲホッゲホッ…誰が芋よ! 上手いじゃない!」

零児「いや、そこは否定するべきでしょう」


 穣子は豊穣神であるのだが、頭の飾りが芋なために芋の神様扱いを受ける事もある。


霊夢「相変わらず弱い神様ね。いい加減収穫祭前に里に降りたら?」

静葉「別に忘れられさえしなければいいものね、穣子」

穣子「収穫祭さえ毎年あればねぇ、お姉ちゃん」

魔理沙「それでこのざまじゃ仕方ないぜ」

零児「どういうことなんだ、小牟」

小牟「何故かは知らんが、里のもんは穣子の方を秋に呼ぶんじゃ。収穫祭に」

零児「…さっきまでの会話から察するに、豊穣を約束する類の神様じゃないんだな」

霊夢「少なくとも、こいつは野菜の成長促す程度のものよね〜」

小牟「むしろこっちのほうがリアリティあって良い気もするがの。歌う豊穣神とか受けがよいと思わんか?」


 豊穣神と言えば毎年の豊穣を約束したり、荒れた田畑を神の息吹で瞬く間に再生させたりと、超現象を引き起こすものが多い。
 だが穣子の能力は作物の成長を促し、その味を、色をより深くする能力である。

 故に大災害が起ったりすると否応なしに貧困にあえぐ事になってしまったりするのだが…。


穣子「私の歌を聴けー!って? …はっ! ごめんね、お姉ちゃん…守れなかった…」

魔理沙「その設定まだ残ってたのかよ」
274 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/21(月) 14:07:00.92 ID:KrlI0/cJ0

ケン「しっかし強ぇな、嬢ちゃん達。まだまだ世界は広いぜ。ほら、このベルトはお前らのもんだ…」ガチャガチャ

小牟「いや、そういうのはサシでやって初めて貰うもんじゃなかろうか?」

零児「…しまった、忘れていたな」

霊夢「ん? 何が?」

零児「永夜異変で、ミスティアという妖怪の羽を取ったんだが………ほら、あった」ヒラ

小牟「おおう、そうじゃったな。まぁ、霊夢めがああなっとたし当然かもしれんが…」ブツブツ


 小牟は紫、永琳と話をし、ある一定の予測を立てた。それに要した時間、大よそ6時間である。


零児「何か言ったか?」

小牟「あいやこっちの話じゃ。して、それが残っとるっちゅーことは東方キャラも本物の可能性が出てくるわけじゃな」


 のだが、未確定情報ばかりで可能性いっぱいありすぎ。話すだけ無駄だし面倒。


霊夢「キャラって言わないでくれるかしら。でもそれなら…」

 青年少女考察中…


 ということで仲間達には話さないと決めた。決して麻雀ばかりではなかったのだ。たぶん。



ケン「……おーい」ブラブラ

穣子「いいもん。秋まで放置プレイかまされるので慣れてるもん」イジイジ

静葉「助けてくれようとしてありがとうね、穣子」ナデナデ

ケン「…チャンピオン一生の恥だぜ、ちくしょう!」

魔理沙「元だけどな」

零児「はっ。すまない、ケン。姉妹柱様も」

穣子「まぁ秋のうちにいじけるのはやめといて、どうせ山を登るのよね」

魔理沙「まーな。さっさと神奈子ぶっ飛ばして異変終了だぜ」

静葉「あら、山の神様は神奈子って言うの?」

霊夢「後は諏訪子もいるわね」

小牟「早苗めも現人神じゃぞ。一応三柱じゃ」

零児「ほう、現人神か」


 神略異変のおり、外界…というか元の世界からやって来た三柱の名である。


ケン「俺もそう言われてぇなぁ」

穣子「山に入った形跡もないのに知ってるなんて…博麗の巫女、恐ろしい子…!」

魔理沙「それじゃ、先に進むか」
275 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/21(月) 14:08:52.06 ID:KrlI0/cJ0

零児「その前にだ。ケン、そのチャンピオンベルト借りるぞ」

ケン「あ、やっぱり欲しいよな。よかったぜ…いらないって言われたら俺のプライドがズタボロだったわ」


 表情はご想像にお任せします。


霊夢「…これ、金ね」

ケン「おう。純金だぜ。20XX年から連続4回防衛した、勲章さ」

魔理沙「良い触媒になりそうだな、これ」ツンツン


 科学的に言えば金は触媒としては不適格で、どちらかといえば絶縁体として用いられる。
 だが魔法やその類の薬を生成する上ではけっこう頻繁に使われる。健康被害がないのも理由の一つである。


ケン「おいおい、やめてくれよ?」

零児「安心しろ、借りるだけだ」

魔理沙「死ぬまでか?」

小牟「じゃからそれはぬしだけじゃと言うとろうが」
      〜♪
霊夢「埒が明かないからもう行くわよ」

零児「そうだな。気付けば6000文字を越えて…いやまて俺は何を言ってるんだ」

静葉「一瞬嫌なモノが降り立った気がするわ」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
276 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/21(月) 14:11:34.75 ID:KrlI0/cJ0

〜〜〜明り 届かぬ 暗き 森〜〜〜

零児「こっちでいいのか、霊夢?」

霊夢「ええ。歩く分にはちょっと面倒かもしれないけど、こっちなら一直線だから」


 深い深い森の中。光のほとんど入らない、鬱蒼と茂る、怪しげな森。


小牟「妖々夢と永夜抄の経験から、ルートはきちんとせんとどうなるかわからんといった所じゃな」

魔理沙「そういえば、天狗達の所、零児がやばくね? 絶壁な上に滝だぜ?」


 妖怪の山に侵入、あるいは迷い込んだ人間は基本的に川沿いを行く。
 理由としては、森が深く方位磁石がまともに効かない山なため、分かりやすい道標が必要なのだ。
 しかし、そのルートは曲がりくねっている上様々な生物、妖怪が暮らしている。
 その為、河童に見つかりやすく、驚かれて通報されるか河童たちの遊び相手になってしまうかのどちらかなのだ。

 という背景など関係なく、霊夢達からすれば「まっすぐ飛べる」から選んだ道なのだが。


零児「…仕方ないか。魔理沙、その時はすまないがよろしく頼む」

魔理沙「あそこ結構攻撃激しいから怖いんだよなぁ」


 そしてこの先にある滝。天狗達…主に白狼天狗の詰め所として機能している場所。
 絶壁から落ちる滝は侵入者を拒みつつ、見晴らしの良い高台としても使えるため、天狗達が自然と集ったのである。
 その高さはゆうに100mを越えるものであり、もしも戦いが起きれば天然の城砦としても使えるか。


小牟「じゃが絶好の稼ぎ場でもあるの。しっかし薄暗いのぉ。厄が溜まるのもようわかるわ」

零児「…確かに、厄かは分からんがそういう雰囲気は感じるな。風水の関係か?」

?「そう、ここは厄の溜まりどころ。人が来ては、不幸になってまた厄が溜まる」

霊夢「来たわね、疫病神」

?「私は疫病神じゃなくって厄神。人間達の厄を一身に引き受けて流す、流し雛」

零児「…くるくる回ってる、あの少女は?」


 零児の言う通り、まるでバレエを踊るかのように廻る緑髪の少女。
 その長髪の一部を、胸の前にリボンで結び、残りを後ろへ流す様は人の形を模した物のよう。


小牟「鍵山 雛。あやつの言う通り流し雛の厄神様じゃな。九十九神じゃよ」

雛「貴方達、これ以上先へは進ませないわ。麓の人間達の元へ、厄が大量に向かってしまいかねないから」


 赤の布地に、緑の刺繍を施した服は、制作者の独特な感性を表現したようにも見える。


魔理沙「いやぁ、あの神様なら大丈夫だぜ?フランクだし」
277 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/21(月) 14:15:38.28 ID:KrlI0/cJ0

???「雛様ー! まってくださいですぅ!!」

雛「あらごめんなさい、生まれたての九十九神さん」

小牟「この、小動物のような声は…コブンか!」

コブン「ふぇっ!? な、なんで知ってるんですかー!?」

魔理沙「ちいさっ! しかも三頭身だぜ、これ」


 その姿はレゴブロックを思い浮かべてもらえば分かるかもしれない。
 黄色の円柱状の頭は縦幅10cm程しかなく、そのうえで三頭身。
 青いボディに小さな指、それでもきちんとある間接は、可愛らしいマスコットのようだ。


零児「…トロンはいないようだな」

霊夢「………」

雛「コブン、知り合いなの?」

コブン「うーん、覚えてないですぅ…」

霊夢「…九十九神じゃないわね。もっと別のなにかね」

小牟「うぬ、確かお手伝いロボットとか言っておったかの」


 トロンという少女によって作られた、全41体いるコブン。
 それらは若干の個体差があるものの、根本はお手伝いロボットだ。


雛「何の話か分からないけれど、里の人間に厄をもたらすと言うのなら、私はここで貴方達を止める必要があるわ」

魔理沙「だーかーら、神奈子は信仰を広げるために山に来ただけだっての!」

雛「…そうなの?」

コブン「し、知らないですぅ!」

霊夢「そうねー、ただお祭り好きで、幻想郷のルール知らない余所者かしら」


 神略異変などと言われるこの異変だが、実際ははた迷惑なお引っ越しだったというのは、幻想郷に知られつくしている。


雛「…貴女達、何者なの? いえ、そこの巫女と魔法使いは異変のたびに暴れまわっているのは噂に聞くのだけど」

魔理沙「通りすがりの魔法使いだぜ」

小牟「通りすがりの美少女戦士、プリティ小牟じゃ」

零児「流してくれ。…今は異変解決を専門とするエージェントだ」

霊夢「山に来たのが正体不明だったから行かせたくなかったんでしょ?ほら、分かったんだからさっさと倒されるか退きなさい」


 厄神様たる雛の行動理念は、ここ幻想郷内では珍しい無力な人間の幸せを守る事である。
 厄を一身に背負わせ、川…そして海へ流す「流し雛」…その習慣から生み出たのだからある種当然かもしれない。

 それゆえに神略異変では霊夢と魔理沙を妨害した。
 彼女らがかき乱せば山に来た誰かだけでなく、下手すれば妖怪の山そのものが人里に攻め入るかもしれないから、と。

278 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/21(月) 14:18:33.32 ID:KrlI0/cJ0

コブン「あわわ、どうしましょぉ」

雛「……それだけの厄を背負いながらここまで生きて来たのね、男の人」

零児「…何を揶揄しているか分からんが、因縁や柵には人一倍多いとは自覚している」

小牟「揶揄っちゅーか、雛には見えるんじゃよ、厄の姿が。量が集まればわしらにも見えるぞ?」

雛「そこまで詳しいのなら、止める理由はないわ。ってことだから」スゥ

零児「何の握手だ?」

雛「せめてもの餞別。貴方の厄、私が抱き留めるわ」

コブン「ぼ、僕も引き受けるですー!」

雛「だーめ。コブンはまだ見ていなさい」

零児「それだと彼女に災難が訪れないか?」

霊夢「その心配はないみたいよ。どうも厄は雲みたいなものらしくって触れてる間だけ不幸になるとか。で、雛はそれをグレイズし続けてるって」

雛「ええ。それに、集めた厄は神様に祓ってもらうから大丈夫」

魔理沙「つーか私らのときは引き受けなかったのにレイジのは引き受けるのかよー」ブーブー

雛「前の事が分からないけれども、貴女達の厄は可愛い物よ」

零児「…御祓いと同じ、か。なら、頼もうか」


 そういい、差し出されていた手を握る零児。僅かながら、風が吹く。
 すると雛の周りに限りなく黒に近い、青紫の靄が浮かび上がる。
 それは瞬く間に雛の半身を包む程の濃さになっていった。 *雛の身長は大体150程度


雛「…っ…ふぅ…。終わったわ」

零児「……なるほど。心なしか、肩が軽くなったようだ」

コブン「真黒ですー! 大量ですー!」

霊夢「ここまで濃くなるなんてねぇ。それってどの程度なの?」


 実のところ、厄は雛やその手の神様の関与がなくとも、見えるほどの濃度まで高まる事がある。
 それらは毒や瘴気に転じたり、火災の元となり世に厄を更にまき散らすのである。
 ただ、その形になればより簡単に祓う事が出来るのだが。


雛「さぁ…私が経験した中では、個人レベルで最高なのは確かよ…んっ」

魔理沙「なんか、まじで気分悪くなってんじゃね?」

雛「いいえ、そんなことないわ。ただ…ね。うふふ」

零児「軽く悪寒が走ったのは気のせいということにしておこう」

小牟「…まさかのー。ところで、何故に通すんじゃ? わしらが嘘ついてる可能性もあるぞ?」
279 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/21(月) 14:20:58.22 ID:KrlI0/cJ0

雛「私はあくまで人への脅威がなくなればそれでいいの。だから人を疑う事はないわ」クルクル

魔理沙「んじゃなんで通せんぼしたんだよ」

雛「好奇心は猫をも殺す。それを事前に止めるのも、厄神たる私の務め」クルクル

零児「仕事熱心なのは良い事だ」

霊夢「熱心すぎて危うく自分が火傷する所だったけどね。んじゃ行くわよ」

雛「気を付けてね。厄がざわついているから」クルクル

コブン「むぅ、わからないですぅ…ワッ」クルクルドテッ

魔理沙「ははは。頑張って覚えろよ、新米神様」ヨッコイショ

コブン「わわわ、ありがとうです」

霊夢「すぐに川に出るから、そこから急ぐわよ」



??「…いやぁ出るタイミング逸しちゃったわ」

雛「あら、貴女居たのね」

??「まぁね。新しい仲間を見に。んで、この子?」

雛「ええ。立派な厄神……だと、思うんだけど」

コブン「?」

??「…『ワッ!!』」

コブン「っ!? ひいいいいい」ササッ

??「…姿に似合ってるようだし良いんじゃないかしら?」ケラケラ

雛「そういう問題かしら」

コブン「|っд;///)…」ビクビク

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
280 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/11/21(月) 14:24:33.98 ID:KrlI0/cJ0
以上で今回の投下は終わりです。なんとか投下出来ましたぜ…。

コブンって40体だと思っていたらなんだか目つきの悪いのが+1体いるそうです。
 詳しく調べなかったので偽物なのか本当に41体目なのか解りませんが…。

それでは、もしかしたら又今晩にでも。
281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/21(月) 16:23:01.70 ID:tha2L5lDO
乙!
雛様は可憐ですね。それにしても零児の厄凄ぇーww
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(大阪府) :2011/11/22(火) 07:43:51.14 ID:VgKwaKuD0

>>281
ただでさえ有栖家が退魔の一族なのにナムカプ・ムゲフロ・ムゲフロEXと大量の敵倒してるからね
283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/22(火) 15:34:11.99 ID:rmIT4ToDO
>>1

ところで、雛がレイジから体力の『厄』を吸い出す薄い本はまだか!!



……ふぅ いや、何でもない。忘れてくれ
284 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/25(金) 15:00:57.24 ID:zK1GQiOM0
こんにちわ。用事と風邪のぶり返しで連絡できませんでした。のど治らないですよ全く…

これから風神録3面を投下します。
285 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/25(金) 15:04:22.48 ID:zK1GQiOM0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜妖怪の山・穏やかな渓流〜〜〜

小牟「……やっぱり雛め、赤らんでおった気がするんじゃよな……うーん」

霊夢「? 厄がいっぱいでテンションでも上がったんでしょ」

零児「それ以外に考えたくない」

魔理沙「ん?」

零児「それよりもだ。魔理沙、少し箒に乗せてくれないか?」

魔理沙「お? 観たいのか?」

零児「ああ。良い画になっているだろう?」

霊夢「……ええ。前言撤回しないといけないわね、これは」

小牟「うぬ。一度は見たほうがよいぞ、零児」ウンウン

魔理沙「乗ったか? ぎりぎりまで昇るぜっ」

零児「………」


 薄暗い森を抜け、渓流に出た一行はまっすぐ遡っていた。
 そこで零児がふと気付き、魔理沙の力を借りて空へ舞い上がる。

 そこにあったのは、紅色に染まった山……いや、幻想郷か。


 赤と黄色、僅かに緑の葉を付けた木々が敷き詰められた、紅葉の絨毯のような風景。
 その風景のちょうど真ん中には、水底が見える川に、砂利や岩が転がる川辺。
 泳ぐ魚も見えるほどに澄み切った川は、紅葉の絨毯に青と白のコントラストを与えている。


 川のせせらぎの中に、遠くから聞こえる滝の音。
 そこに、水浴びをする動物達の鳴き声や、鳥たちの囀りも響き渡る。
 それらは言葉に表せない、日本人に刻み込まれた、無意識の望郷を再現しているかのよう。


 四人の間に、しばしの沈黙が流れる。


 浮かぶ三つの影が、川を逆流する。
 その影が魚の群れの上を通り過ぎるとき、魚は道を開けるように避ける。
 そして過ぎ去った所から元に戻る。
 丸々太った狸がこちらを見上げ、首を傾げる。
 小さなリスのような動物が慌てて森へ隠れる。
 鹿の親が、子を守るように身を乗り出し、こちらを睨む。
 時々、川魚が飛び上がる音が聞こえる。

 そんな、和やかにのんびりと流れるひととき。


 その光景に、ただただ心から感嘆のため息をつく青年。

 その光景を、優しげな瞳で見つめる少女。

 その風景に、なんだかんだで嫌いじゃないと見栄を張る少女。

 その情景に、懐かしさと儚さを感じる少女。

286 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/25(金) 15:08:37.68 ID:zK1GQiOM0

「げげっ、人間!」


 四人がそれぞれ別々の反応を示していたところに、ふと聞こえてきた人らしき声。
 そちらを向くと、青緑の服を着た少女が、川を遡りながら消えていく様が視えた。


魔理沙「おおう、もうそんなところか。忘れてた」ヒュルルル

零児「いまいち消えきれてないが、今のは?」ジャリッ

小牟「川城にとりじゃな。河童じゃよ」


 零児の言う通り、あまり消えきれていないせいで、余計に見えている少女がいる。


霊夢「あの反応は傷つくと思うんだけど」

魔理沙「私は気にしないぜ? このまま退いてくれてたらだけどな」


 案外ナイーブな霊夢の例。だが実際、あんな反応をされては傷つくものだ。


|  |「ま、まてっ! ここから先は通さないぞ!」

零児「引き返してくるのか、わざわざ」

小牟「まじでみえみえじゃな。スケスケミルミルじゃ」

こ |「ふっふーん、そんな風に言っても装置は止めないよ。自信作だからね。ってそうじゃない」

霊夢「妖怪バスター」チッ

 `  「うわわっ!?」ガリ バーン


 霊夢が宣告を無視して投げた札をグレイズするにとり。
 しかしそれはステルス装置の機関部を削り、停止させる。


にとり「うわわわ!? せっかく作ったのに何してくれるんだ、巫女!」

魔理沙「いや、だから見えてるんだって」

零児「むしろ、下手な迷彩服のほうがましなレベルだったな」

にとり「むむ、本当なのかー。こりゃ改善の余地が……ってそうじゃないってば!」


 突っ込みよりも先に機械の改善に意識が割かれる少女。
 川城にとり。緑を基調とした服と帽子をかぶる、何故かスパナを持っている河童だ。
 特徴的なのは背負う鞄……大きめのリュックサックがパンパンに膨れ上がっているのだ。


小牟「勝手に忙しくなっとる奴じゃな」
287 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/25(金) 15:11:20.25 ID:zK1GQiOM0

にとり「ここから先へは行かせるわけにはいかないんだ。ただでさえ排他的な天狗様が、今はぴりぴりしてるからね。
    今人間が行ったら良くて串刺し、悪くてミンチだ」


零児「過激だな」

霊夢「縄張りに対して妖怪一敏感だもの、天狗は」


 妖怪の山の天狗達は人里やその他の地域へ勢力を広めない代わり、強い縄張り意識を持つ。
 それなのに今回の異変でかなりかき乱されたのだから、全体的にイライラしているのは仕方ない事か。


にとり「だから私が無理矢理止める。盟友がそんな状態になるのは避けたいからね」

零児「ところで、その盟友というのは、好意的に捉えていいんだな?」

魔理沙「あってるぜ。こいつら人見知りが激しい癖に人間が好きなんだってさ」

にとり「すすすすすきなんじゃなくって、そそ尊敬しているだけさ! はは発明の親みたいなものだからね!」


 河童たちは人間の技術力や、その発想力に一目置いている。
 実際、文明や技術を後生大事に守って発展させてきたのは人間だけである。
 妖怪達はその日暮らしか、知的な者でさえも共存や支配に落ち着くのが大半。
 だがそんな中で技術に興味を持ち始めたのが、ここ幻想郷の河童たちである。

 その点においては、天狗達も多少は興味があるのだが、猿真似に落ち付いている感があるか。


小牟「河童の技術力は世界いちぃいいいいいい!」

にとり「………」

零児「………」

魔理沙「いやぁ、一番は人間だろ?」

霊夢「空気読みなさいよ、魔理沙」

にとり「というか、狐さんに言われてもねぇ……?」

小牟「わしとて発明家じゃぞ!全自動油揚げの元製造機を考案したんじゃからな」フフーン

零児「言質取った。解りきっていたがやはりお前だったな」

魔理沙「凄いのやら凄くないのやら…」

霊夢「前に雑誌で見た、全自動卵焼き機並みにどうでもいいわね」

にとり「! ねぇ、それ外の雑誌!? どこどこ、どこにあるんだい!」

零児「食いついたところ悪いが、止めなくていいのか」

にとり「はっ、しまったつい。とにもかくにも引き返してもらうよっ!」

小牟「目がフラフラし過ぎとちゃうか?」

にとり「自分でも若干……」
288 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/25(金) 15:17:15.18 ID:zK1GQiOM0

魔理沙「さっさとやるんだ、ぜっ! 『ナロースパーク』!」

にとり「おおっとぉ! 洪水『ウーズフラッディング』!」


 魔理沙のとっさの弾幕をグレイズし、にとりがスペルを展開する。
 左右から迫る横列弾幕と、川から吸い上げられるように出現した水弾が小牟を狙って発射される。

 が、


小牟「わし相手に水攻撃とは、片腹痛いわっ! 『水蓮』! 小牟サーファー!」


 川の底から突如噴き上がった間欠泉を操り、にとりの水弾を吸収しつつ迫る。


にとり「狐なのに水!? っととぉ、ならもっと高く空から降らせるだけさ! 水符『ウォーターカーペット』!」


 迫りくる小牟に合わせ、更に次のスペルを展開する。川の水が大量に空へと浮き上がり、小さな手裏剣のようになって降り注ぐ。


霊夢「グレイズしても濡れるわよ、これっ!」

零児「……相性が悪いな。水自体はどうにか出来るが……『地禮』!」


 ウーズフラッディングを避け、近づこうとしたところで次なる弾幕が展開される。
 水であるが故にその物量は半端なく、零児達の接近を拒む。


魔理沙「つーかこれしらねー弾幕だぞ! 細かすぎるって」

小牟「ふふーん、わしがその程度避けられんと思うてか!」


 降り注ぐ水の刃を、時にグレイズし、時に水蓮で薙ぎ払いながら近づいていく。
 細かな弾幕とはいえ、迫るパターン自体はだいたい同じであり、面倒な交差もないから出来る芸当だ。


にとり「むむむ、盟友は近づけないようだからいいけどこの狐さんは…」

小牟「ほーっほっほ! ダブルスポイラー画面上部隠し全面クリアーをなめるでない!」

霊夢「なんだか分からないけど凄い自信ね」

零児「……なんとなく叱る必要がある気がするな」

にとり「こうなればこのこでさっさとケリを付けようか。河童『のびーるアーム』!」

小牟「む、ハードじゃと?」


 にとりの背負う鞄から機械仕掛けのアームが出てきた。
 それから発せられる緑の光線…きゅうりを模した弾幕だともっぱら噂のスペルだ。

 四つの手から放たれるレーザーをグレイズするも、やはり後ろの面々は近づき難い。


霊夢「なんか強いわ、ねっ! 『妖怪バスター』」

にとり「流石に二度も壊されるわけにはいかないよっ。ひょいっと!」ガリリ
289 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/25(金) 15:32:30.31 ID:zK1GQiOM0

魔理沙「へへっ、レーザーなら私の出番だぜっ!」ガリガリガリ


 レーザー弾幕に切り替わった所で突っ込み始めた魔理沙。長めのレーザーでさえもなんのそのだ。


小牟「お、きおったな魔理沙」

魔理沙「おう、シャオムゥ。左側は任せろ!」

小牟「ほいきたっ、わしは右じゃな」


 そうして小牟と同じ領域にまで達し、息を合わせて左右にばらける。
 四つの手は変わらずレーザーを放ち続けるも、二人はその濃度が薄まる所で止まる。


魔理沙「レーザーってのは、こう撃つもんだぜ。『イリュージョンレーザー』!」

小牟「残念わしは小出しじゃ。『青龍槍』! あーちょちょちょちょちょー!」


 魔理沙の繋がるレーザーと、小牟の連射されるレーザーがにとりを…いや、「のびーるアーム」を襲う。


にとり「やばっ、まだ二つ同時は出来ないよー!」


 ある程度の弾幕回避機能を搭載したこのメカの手であるが、まだ二方向攻撃には完全に対応しきれていない。
 しかも、にとり自身が弾幕勝負にそれほど勤しんでいたわけでないために必要以上に動いてしまう。


零児「っ! ここだっ」

霊夢「………」


 結果、アーム同士が絡まり弾幕の濃度が急激に低下する。
 その隙を二人が逃すはずもなく、両脇でけん制を放ち続ける二人の間を駆ける。


にとり「うわ来たっ。……こりゃ課題かねぇ」

零児「心配してもらったところ悪いが、仕事なんでな。柊樹【ハリウッド】!」

霊夢「河童にお似合いの技にしてあげる。『雨乞祈り』!」


 左から魔理沙のレーザー、右から小牟のレーザー。
 下から零児の散弾。上から霊夢の札。
 重い荷物と、引けない理由とがあだとなり、被弾する。

 ピチューン  ボンッ


にとり「わわわ、アームがぁ!?」

霊夢「あら、こっぱ微塵ね」

にとり「あうう。動かし過ぎたから熱暴走したのかな?それともグレイズの摩擦熱?むむむ……」


 4方向からの弾幕を避けきれず、結構ぼろぼろにピチュッた所で『のびーるアーム』が音を立てて吹き飛ぶ。
 煙を上げているのに平然と鞄を降ろして中身の確認をする光景……。今まで相手にしてきた者達と明らかに特異である。
290 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/25(金) 15:35:52.79 ID:zK1GQiOM0

零児「おい、大丈夫か?」

にとり「ひゅ、ひゅいっ!? あ、ああ大丈夫だよありがとうめ盟友」

魔理沙「手を差し出されて嬉し半分人見知り半分ってところだな」

にとり「そ、そうだね、否定しないよ! でもさ、狐さんが水を操るなんてなぁ……」

小牟「ぬしの水捌きもなかなかのもんじゃったぞ? じゃがいかんせん発想が足りとらんよ」

霊夢「逆に足りすぎてるって考えはないのかしら?」

零児「手札は多いに越したことはないさ」

にとり「こりゃ谷河童の名が廃っちゃうかも。それで盟友、山を登るんだよね?」

零児「ああ。天狗達が慌てている元凶を叩く必要があるからな」

にとり「でも、あの慌てようはなぁ。やっぱり進ませるわけには……うーん……」

魔理沙「気にすんなって。私らは正義のヒーローなんだからさ」

小牟「そうじゃな。近所迷惑な騒音おばさんから、世界を荒らす妖怪まで何でも退治しちゃる」

霊夢「私の邪魔する奴は誰でもぶっ飛ばすわよ」

魔理沙「何でも屋だしな」

零児「毎度……俺達の方が悪役な気がしてくる」


 妙な因果だが、零児の仲間には手癖足癖が悪い奴らが多数集う。今回もご多分に漏れなかったわけだ。


にとり「あー……うん、頑張ってね、男の人。そ、それでさ! その銃を見せてほしいんだっ」

零児「ん? 金【ゴールド】と柊樹をか?」

にとり「ゴールドにハリウッドって言うんだね! いや、見たこと無い型だからばらしてみたくて…」


 河童たちは人間の発想力や技術の粋が詰まった物に対して目がない。
 それは戦いの最中だろうが喧嘩してようが愛であっていようが、だ。


零児「目ざとい奴だ。だが悪い、今は急いでいるんでな」

にとり「あ、ああそうだよね、うん山に行くんだもんね、うんそうだよね…」ションボリ

魔理沙「目に見えて落ち込んでるぜ」

小牟「思っておったより感情の起伏が激しいの。河童ってこんなもんか?」

魔理沙「んー、にとりぐらいしか私は知らないからなぁ。なんとも言えないぜ」

霊夢「じゃぁ、落ち込んでる河童を置いて昇るわよ、あの滝……」


 霊夢が指さす方に、水がなければ断崖絶壁と呼ぶにふさわしいであろう滝が少し見える。
 その高さと、水が叩き落ちるその大きな音で距離感がいまいち掴みづらいが、その壮大さだけははっきりとわかる。


霊夢「……を登った先に早苗達がいるはずだから」

零児「…ああ」

魔理沙「ここからが本番だぜ」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
291 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/25(金) 16:11:11.67 ID:zK1GQiOM0
−−―・  ――−   ・  -−―-−−・ − −−・−−−―・  ――−   ・  -−―-−−・ − −−・−−−−−

 ……稼働準備完了 −−−−−− 起動

 これより 解析処理の譲渡  ……完了


 仮説稼働個体 停止


−−―・  ――−   ・  -−―-−−・ − −−・−−−―・  ――−   ・  -−―-−−・ − −−・−−−−−

------------------------------------------------------------------------------------------------------------――――――

 −−−−と−…起動しました。

 これより、稼働までに収集されたデータの処理を開始。

------------------------------------------------------------------------------------------------------------――――――

 秋 静葉

 女性型の神。赤から黄色へと変わる、落ち葉のような服を着用。髪飾りも紅葉。

 金髪の狐妖怪小牟によると、四季の一つ、秋の紅葉を司る個体。

 適正体の可能性は不明。引き続き調査の必要が有ると判断。 

------------------------------------------------------------------------------------------------------------――――――

 秋 穣子

 女性型の神。秋の色を思わせる服装を着用し、頭に……芋を着用。元データとの差異がみられる。

 小牟によると静葉の妹であり、豊穣を司る個体のもよう。

 適正体の可能性は不明。引き続き調査の必要が有ると判断。

------------------------------------------------------------------------------------------------------------――――――

 ケン・マスターズ

 男性。赤の道着、金髪、アメリカ人らしい顔つき。

 特殊な力はなく、特筆するとすれば気を使った攻撃のみ。

 ただし、身体能力は相当なもので、飛翔せずとも跳躍だけで10mは飛び上がる。

 適正体の可能性は不明。引き続き調査の必要があると判断。

------------------------------------------------------------------------------------------------------------――――――

 鍵山 雛

 女性型の九十九神。赤黒い服に、緑の髪を流している。

 各会話から察するに、厄神であり、その同行を監視、操作出来るものと推測される。

 適正体の可能性は高と判断。要調査個体として上奏する。

------------------------------------------------------------------------------------------------------------――――――

 コブン

 人の型を模した機械。青の体、黄色の頭部で構成されている。

 能力等はない、ただの従者機械。

 適正体の可能性は低…否、ほぼ零と判断。調査の必要はないとする。

------------------------------------------------------------------------------------------------------------――――――

 他に一名、事前データにない個体を確認するも、有栖零児達と非接触なためデータ収集失敗。

 以上で事前データの解析を終了とする。引き続き、異変の監視を行う。

------------------------------------------------------------------------------------------------------------――――――
292 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/11/25(金) 16:25:25.95 ID:zK1GQiOM0
以上で今回の投下を終了します。

風神録3面道中曲、『神々が恋した幻想郷』をステージ側で表現しようと思ったらこうなりました。
……すっごい日本の田舎の風景チックですよね。好きなので良いですが。

次は四面です。天狗達がようやく出せるわけですが……。

>>281
>>282
零児の厄に関して、>>282の方が言っているのも一つの要因です。
なお、一般人の厄は雛の片手に乗る程度…稀に顔ぐらいの量になる程度だったりします。

>>283
濡れ場はムゲフロのラストみたいにしか書けませんっ。……あれ酷い寸止めですよね全く。


次回の投下は火曜だと思います。文が暴走しなければ……。
293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/26(土) 11:24:39.30 ID:vgqy4rhDO
にとりは可愛いなぁ。
294 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/11/30(水) 00:23:03.61 ID:CgHs1n2D0
こんばんわ。みょんなカップリングを考えていたら夜中回ってました。
この妄想は終わってからにしないと止まらなさそう…。


それでは投下します。風神録4面、対山の天狗達です。
295 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/30(水) 00:25:38.06 ID:CgHs1n2D0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜自然要塞・秋めく滝〜〜〜


「きゃああああああ」ピチューン

「くそっ! 正面突破してくる馬鹿な人間がいるとは…うわああああ」ピチューン


 タタタッ


零児「次、滝の裏から八体くるぞ!」

霊夢「確認っ! 『封魔針』!」

小牟「ほーれほれそこじゃな! 『白虎砲』!」


「第三小隊が全滅っ!? くそ、あの飛べない男から狙え! 他の奴らはけん制でいい!」

「「「了解!」」」


 秋めく、九天の滝。幅15m程もある滝壺に、そこへ降り注ぐ大量の水……。
 一つの観光名所となっていても何らおかしくない光景である。


魔理沙「私達がその程度で止まると思ってるのか、よっ!」

「ヒットアンドアウェイよ! 弾幕を適宜展開しつつ退いて!」

霊夢「視界に入ってから逃げられると思わないことね!」


 しかもただ水が流れ落ちているだけでなく、赤や黄色に染まった紅葉が混ざって落ちてくる。
 先ほどまでの景色も相当なものだが、この光景も風情があり、一枚の絵として完成されている。


「第四小隊まだかっ! もう三分の一まで登られたぞ!」

「第六小隊の準備出来ました、いけます!」

「ええい、そいつらから行け! ところで連絡、まだつかんか!」

「椛には通った模様! すぐ来るとの事です!」


 そんな背景も関係なく、派手な戦いが繰り広げられていた。

 先にも述べたように、ここは天然の城砦。天狗……主に白狼天狗達が詰め所としている。

 人妖に関わらず、山の部外者に対して排他的な彼らは、四人を見つけてすぐさま迎撃に出た。

296 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/30(水) 00:31:08.91 ID:CgHs1n2D0

零児「滝の横に道があってよかったな、魔理沙」

魔理沙「白玉楼の時もそうだが、すっごいよなレイジの体力」

霊夢「跳んでるものね。そこそこ整備されている道とはいえ」

零児「だが、その代わりに登る速度が落ちている」

小牟「確かに、風神録じゃともうちょい早いはずじゃな」


 零児が現在登っている道は嵐等が来た時の為の非常用通路であり、殆ど使われる事のない道だ。

 一応、使われる危惧が一部にはあったのだが、ここまで見つからずやって来られる人間はいない。
 例えいてもここを登るなんて愚行はしない。と判断されていた。

 事実、神霊廟の時系列までいないのだから間違ってはいない。

 だが奇しくもこの特異な異変で利用される形となったわけだ。


「あいつら、会話してやがる……ふざけやがって!!」

魔理沙「私一人でなら余裕なんだよっ! 『マジックミサイル』」


「だ、第六小隊全滅しました!」

「第四小隊、第五小隊、行けますっ!」

「もうすぐ椛が来る!とにかくそこまで稼げっ!」


 その道を走り、あるいは跳んで登る零児に合わせ、三人は迫りくる白狼天狗達を迎撃する。
 ただでさえ下っ端な彼らに、この四人の相手はきついものがある。



零児「滝の裏、十体以上来る……こっちか! 『電瞬』っ!」カッ

小牟「させぬぞ、『龍虎乱砲』!」

「うわっ、急に早く……キャー!」ピチューン

「は、張りつかれて……のわー!」ピチューン

「も、もう半分だと? 椛は! 鴉天狗への連絡はどうなった!」

椛「待たせた。みな、ひけっ!! おっ……ぅらぁ!!」ブンッ

魔理沙「来たぜ! 椛だ!」


 響き渡る大声に呼応し、応戦していた白狼天狗達が全員引き揚げる。
 そして後ろから現れた、紅葉マークの描かれた盾に他の天狗達と違い大きめの刀を持った白狼天狗がすぐさま弾幕を放つ。
 大きく、『の』の字のような形で放たれた弾幕は小牟を中心として三方へと流れる。


「「椛!」」

小牟「よっとぉ。残念外れじゃ!」
297 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/30(水) 00:35:04.64 ID:CgHs1n2D0

椛「お前達、この山を登る事は許されん! 即刻立ち去られよ!」

霊夢「相変わらず真面目っぽいやつね、めんどくさい。神様が引っ越してきたぐらいでなんなのよ」

魔理沙「いや、あのときは私らも結構驚いてたよな」

椛「んなっ……その事が分かっていながらここに来るとは、よもや山の支配権でも欲しくなったか!」

零児「やけに大きな話になったが違う。その神様を退治しに来ただけだ!」

椛「知らぬ者の話等、信用ならん! もし事実であれ、これは山の問題! 部外者には関係ない!」

霊夢「だからその部外者が侵入してきたんでしょうが。相変わらず頭の固い奴ね」

椛「博麗の巫女! 貴女の顔に免じて今回は不問とする! 『お遊び』が出来るうちにさっさと退けっ!」

小牟「ああ言えばこう言うのぉ。にとりめが言ってたほど猟奇的じゃないようじゃが」

魔理沙「つーか知ってる私らの話にも聞く耳持たずだぜ」

椛「あくまで退く気はないのなら、落とすまでっ! それぃっ!」ブンッ


 そうして再び放たれる『の』の字の弾幕。狙いは零児だ。


零児「くっ、俺は下がる!」

椛「みた目に反して素早い……! だが好都合。後三人っ!」

小牟「しめたっ。魔理沙よ、霊撃発動じゃ!」

魔理沙「お? ……! ああ、分かったぜ! 『霊撃』」


 大量の中弾と細かく配置された米粒弾幕を一斉に飲み込む大きな玉が、魔理沙から放たれる。
 弾幕中和専用の、いわゆる『ボム』である。


椛「ちぃっ、減らせてなかったのか!」

小牟「すかさず登場『小牟キィイイイック』!」

椛「へっ?! きゃぅんっ!?」ピチューン


 その玉の真後ろから、玉を突きぬけて小牟が椛に蹴りをかます。
 不意を突かれる形になった椛はその攻撃を額に思い切りくらい、滝の裏側へと吸い込まれていった。


「も、椛ぃー?!」

霊夢「零児さん、跳んで!」

零児「よし、とぉっ!!」

魔理沙「よし、キャッチだぜっ! しっかり掴まれよ、零児」ン?


 霊夢の掛け声に呼応して勢いよく跳び上がり、そのまま魔理沙の箒に捕まった零児。
 それを確認した後、全速力で滝を垂直に駆け上がる四人。
 素早い展開についてこれず、陣形が不十分だった天狗達を出し抜いた形だ。


「しまった! くそう、鴉天狗への連絡h」ビュォォオオオオオ
298 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/30(水) 00:39:03.51 ID:CgHs1n2D0

?「あやややや、侵入者だと聞いてやって来てみれば、博麗の巫女と白黒の魔法使いですか。
  ……もう二人程、見知らぬ輩がいますが」


 そして滝の上に到着したと同時に一陣の風が吹き、その風から生まれたかの如く少女が現れる。


霊夢「家の客人よ。それで文、その調子なら気付いていないわね」

文「気付く? 一体、何にでしょう?」

魔理沙「一番新しい宴会はいつだ?」

文「五日前ですね。確か阿礼の子も来ていたかと」

霊夢「決まりね。覚えてないわ」

小牟「んで、実際はいつなんじゃ?」

魔理沙「三日前さ。秋の味覚持って来たぞーって」

文「……ふむ。ボケてしまったのかしら。そんな記憶全くないわ」

零児「お前さんは呆けてないさ。……それで、彼女は?」

小牟「射命丸文、鴉天狗じゃな。ここ、妖怪の山のおそらくは実力者じゃ」

文「あら、知り合いだっけ? それとも、文々。新聞の購読者?」


 射命丸文……非常に天狗らしい腰から上の服装にスカート……更には下駄という、一見アンバランスなスタイルの少女。
 手に持つ葉団扇でだるそうに仰ぎながら、面倒そうな顔で零児達を観察している。


小牟「読んでみても良いとは思うが、いかんせん銭がわからんくての」

零児「新聞記者……なのか」

霊夢「一応、うちにもあるわよ? 大体焚火に使うけども」


 彼女……というよりも、山の天狗達の間では新聞が流行っている。主に、作る方でだ。

 娯楽が少なく、かつ元々幻想郷の軌跡を観測していた彼らの間に、外の新聞という情報媒体の話が舞い込むと文字通り瞬く間に広まった。
 始めは手書きだった物が旧式の印刷機を入手したことで効率化され、今では新聞対抗戦があるほどである。


文「のんびり話している所悪いんだけど、今はそんな余裕ないのよ。山に……」

魔理沙「知ってるぜ? 守矢神社が来たんだろ?」

文「……報告は正しかったのね。これはますます行かせられない理由が……」
299 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/30(水) 00:41:52.44 ID:CgHs1n2D0

小牟「嘘をつくでない。抜かせる気マンマンじゃろ」

零児「……そうなのか?」

魔理沙「なんか、組織に属する者はどーたらこーたら……」

文「そこの狐は読心術でも習得してるの? ま、その通りよ」

霊夢「前にも思ったけど、それならなんで戦うのよ。不戦敗でいいじゃない」

文「いえいえ、私自身はどうでもいいけど組織の体裁ってのがあるの。つまるところメンツね」

零児「…………」

文「ただでさえ目の上にたんこぶが出来て煩わしいのに、他所者が来てぎゃーぎゃー言われちゃたまったものじゃないわ」

魔理沙「だからさぁ、悪い奴らを懲らしめてやるんだからいいだろ?」

文「それは私も理解しているわよ。けどま、視られてる以上、ただで通したら五月蠅いのよね」

小牟「やはり、視線が増えたと思うたらそういうことなんじゃな」

文「そういうこと。それに、霊夢の知り合いらしいわよ?神様の一人は」

霊夢「……私の知り合い? 記憶があるっていうこと?」

文「さぁ? 天狗づてに聞いた話だから自分で確かめて。さ、手加減してあげるから本気で掛かってきなさい!」


 射命丸文は天狗達の中でも古参かつ特異な存在で、面白い話があればどんな相手だろうと構わず取材する。
 その成り行きで人間達の事をよく知り、中には魔理沙のように仲のよくなる人間もいる。

 そんな経緯があり、山の部外者であり実力者な彼女達を仲介役とするつもりなのだ。

 新参の神様と自分達の間にいざこざが生れないように。


霊夢「面倒よねぇ。零児さんの組織はどう……」

零児「まて、鴉天狗」

文「あやや? 射命丸文という名があると言ったじゃない、人間」

零児「お前さん、なんで組織に属している」

文「今、答えなくてはいけないことかしら、それ」

零児「メンツがどうでもいいと感じているのに、何故従う」

文「んん? メリットがあるからに決まっているじゃない。ま、その内容も答える必要ないわね」

零児「監視されているその理由、……」

300 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/30(水) 00:56:26.68 ID:CgHs1n2D0

〜〜〜15分後〜〜〜

霊夢「……零児さん、どうしちゃったの? 様子が変だけど」

小牟「いかんのぉ、あやつめのスイッチでも入ってしもうたか?」

魔理沙「スイッチ? ……おお珍しい、文の顔がぴくぴくしてる」


 零児が突如、文に対し癪に障る質問をし始めて15分が経過した。
 始めのうちは表情の変わらなかった文も、次第にいら立ちを隠せなくなったようだ。


零児「……というのに、何も……」

文「ああもういい加減五月蠅いわね。何? 何が言いたいのよ?」

零児「……最後に一つだ。何故手加減すると言った」

文「はぁ? まさか、手加減されると言われて怒りましたぁ?」

零児「…………」

文「……ちっ。昔の人間ならいざ知らず、今の人間なんて博麗の巫女でもなければ本気を出す価値もないでしょ」

魔理沙「……」グッ

文「貴方たちなんて所詮、面白い話を提供するだけの存在ですよ。喰われないだけましだと思ってほしいわね」


 遥か昔、まだ天狗達が外の世界で暮らしている頃、天狗……いや、妖怪退治を専門とする人間がそれなりにいた。
 だが幻想郷の内部では、その役割を持つのが博麗の巫女だけと言ってもいい程で、後の人間は生物ピラミッドの下層に位置する存在。

 最近では妖怪を退治するための方法の記された書物がいくらか幻想入りしているのだが、それを扱える人間は少数。
 しかも博麗の巫女に頼るシステムになってから長い年月がたち、その少数の人間達さえも巫女に頼る始末。
 そういった経緯が、天狗のみならず妖怪達の間に尊大な態度を取らせる要因となっている。


零児「……なるほどな。本気でやって負けるのが怖いのか」

文「はぁっ!? どうしてそうなるんですか?」

零児「メンツにこだわっているようだからな。つまるところ、そういうことだろう」

文「……はぁ。自殺願望者ってわけ? はた迷惑な野郎ね、本当」

零児「生憎と、まだ死ぬつもりはないさ。ただ、中途半端な事をしているようだから指摘してやろうとな」

文「たかだか100年もろくに生きられない人間風情が私達に指図しようっての?」

零児「亀の甲より年の功とは言うが、無駄に重ねるだけなら誰にだって出来るさ」

文「ならその無駄を削って上げますよぉ、小童!!」

零児「あまりキャンキャン吠えるな。小さく見えるぞ」

 「」








      ズバンッ









301 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/30(水) 01:00:03.71 ID:CgHs1n2D0


 少女が一瞬もなく消え、後から音がやってくる。


魔理沙「へ? あ、あれ? 文のやつ、どこ行ったんだ??」

霊夢「……はぁ、何やってんのよ、零児さん」

零児「すまないな。下がっててくれないか」

霊夢「知らないわよ、こればっかりは。死んだら自業自得」

小牟「まぁ、ぬしなら大丈夫じゃろうが……一応備えとるぞ」

零児「ああ、頼む」

魔理沙「……」

 『ミンチよりも酷い状態になるでしょうがねぇ!!』

零児「…………」

小牟「ほれ魔理沙。こっちこい。見えんのじゃろ」

魔理沙「え、あ、ああ……って見えんのか!?」

小牟「伊達に直接妖怪退治しとらんからの。ほれ、ここでよいじゃろ」


 『博麗の巫女らは退いたわね。これで遠慮なしに……』

零児「ずいぶんと余裕があるな。巻き込まない自身もないように見えるが」

 『ほざいてろっ!』

零児「……そうさせてもらうさ。『電瞬』一撃っ!」バリッ



 風の切る音が聞こえる。
 空気が軋んで鳴き声を上げる。

 少女が嵐を纏う。
 青年は静かに佇む。

 川の水が吹き飛ぶ。
 真っ赤に染まって落ちた木の葉が舞い上がる。
 それらは竜巻の如く巻き上がるも、それでもなお少女の姿は見当たらない。

 青年が柊樹【ハリウッド】を放り投げ、金【ゴールド】を抜く。

 そして、一瞬。




      ッ!!



302 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/30(水) 01:04:49.02 ID:CgHs1n2D0

零児「……」

文「……」

霊夢「……」

小牟「……」グッ

魔理沙「……?」

文「おやおや、これはだいぶ失礼な事を言っていたようですねぇ。すみません、『人間』」

零児「俺の方こそ、馬鹿にして悪かったな、『射命丸』」

文「文で結構よ? レイジ……でいいのかしら」

零児「有栖零児だ。好きに呼べばいい」

霊夢「……天生じゃないと無理だったわね、あれは。やっぱりすごいのね、零児さん」

小牟「やはり出来ておるのぉ、零児は」ウンウン

魔理沙「い、いつああなったんだ……ぜ?」


 文の葉団扇が零児の首の皮膚に僅かささる。
 同じく、零児の地禮が文の首の皮膚に触れている。

 文のフリーの右手が、零児の左手……金を構えた方を掴み抑え込む。
 だが、その銃口は二人の武器の間……零児の腕と文の腕に支えられるように乗っかりながら、文の顔を狙う柊樹の引金へと向いていた。


文「……はぁ、私ながら安い挑発にのってしまったものね」ヤレヤレ

零児「安くて悪かった。だが、組織に対する認識の事で癪に障ったのは確かだ」

文「いえいえ、興味のわく人間に会えたし、良かったわよ?」

霊夢「それで、いつまで絡み合ってるつもりかしら」

文「あやや? 貴女、レイジに興味が?」

小牟「そうじゃないじゃろ。当初の理由忘れたんかい」イライラ


 文は、その天狗下駄だからこそ高く見えるが実際は小柄であり、その分腕なども短い。
 さらに、葉団扇はせいぜい顔が半分と少し隠れる程度。
 それを武器として扱えば、必然的に近づくこととなる。


文「ああ、そうね。これは引き分けでいいのかしら?」

零児「いや、俺の負けだろう。金の弾が柊樹の引金を撃つまでにお前さんが俺の首を飛ばせるさ」

文「謙遜? そうしたら貴方の刀で右肩と左腕が飛ぶでしょ。わざわざ峰のほうを向けたくせに」

魔理沙「へ? あ、ああ! まじだ! 刃のほうが外向いてるぜ」
303 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/11/30(水) 01:15:43.02 ID:CgHs1n2D0

文「ま、もう少しこのままで……『あー、これは参りましたねー!』」


 突如として大きな声を上げる文。それはよく通る、鴉の鳴き声のようだ。


文『この人間とは引き分けになってしまいましたが、後三人も残っています! これは負け確定ですね!』

零児「……全く、お前さんというやつは」

文「『私、腕が飛ばされるのは困るのでこのまま投降します! 捕虜ですよ、捕虜!』言ったでしょ?通してあげたいって」

小牟「まぁ、筋は通っとるの。スペカ対決しとらんが」

文「それこそ二人に負けるわよ。『というわけで上にはそう報告しておいてくださいねー!』」ザワザワ


 しつこく言うようだが、文としては霊夢達を通さない理由はない。単に白狼天狗とその他の天狗達のメンツのために戦っただけだ。
 そこには先のような打算があったのだが、零児と戦ったことでそれ以上に興味が沸いた。
 なので今回はやはり、通すべきだと考えたのだ。


魔理沙「……結果として通れるならそれで構わないぜ?」

霊夢「そうね。無駄な霊力消費無かったし、零児さんも怪我らしい怪我してないし」ジトー

零児「仕方ないこととはいえ、そんな目で見ないでくれ。理由はある」

文「それでは、案内するわ。守矢神社の入口までだけどね」

小牟「そこらへんはどうなんじゃ?二人よ」

霊夢「同じね。その後は遠くから見てたみたい」

文「先ほどの会話から察するに、どうも二度目っぽいわねぇ、これ」

零児「異変が終わったら、説明するさ。道案内頼む」

文「ああ、私はこのままこの四人に汚されてしまうのでしょうか」ヨヨヨ

霊夢「退治してからでいいかしら」#

小牟「どうどうじゃ、霊夢」

零児「……魔理沙、思いつめた話があるなら後で聞くぞ」

魔理沙「ふぇっ?! あ、いあ、大丈夫だぜ」

零児「……そうか」

小牟「そうじゃ文よ。握手せい、握手」

文「あやや? 何か知らないけど、はいレイジ」

零児「そういえば、調べる必要があったな」ギュッ

文「それで、これからどうすれば?」

霊夢「光もしなければ消えもしないわね」

小牟「前回と同じじゃ言うとったし、これが当たり前かもしれんな」

文「?」

零児「気にしないで、案内してくれ」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
304 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/11/30(水) 01:19:49.41 ID:CgHs1n2D0
------------------------------------------------------------------------------------------------------------――――――

 川城 にとり

 女性型の河童。外見は緑の服、緑の帽子、緑の鞄、青のおかっぱ風な髪。

 会話及び−−−から、水を操る程度の能力と判明。また、河童という種族に共通して発明が得意。

 適正体の可能性、十分にあり。調査の必要性はあると判定します。

------------------------------------------------------------------------------------------------------------――――――
305 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/11/30(水) 01:24:41.34 ID:CgHs1n2D0
以上で今回の投下は終わりです。案外大人しくなりました。殺気自体はだだ漏れですが。


>>293
余所様のSSでもそうですが、何故かにとりって可愛くなりますよね。何なんでしょうね早くきゅうり上げたいです。



安っぽい挑発と言いながら、じゃぁ高い挑発って何だろう? と気になった今日この頃でした。

次は金曜か土曜に投下出来ると思います。若干短め予定です。

それでは。
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/01(木) 08:19:51.77 ID:98XeHh5DO
乙ですよ!
緊迫のバトルシーンでしたね。結構はらはらしました。

高い挑発…家族やら大切な人やら思い出の品とか場所をぐっちゃぐちゃに壊して絶望させて恨ませてからする挑発とか?
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/02(金) 06:32:31.83 ID:yOpVKq5DO
しかし、小牟の東方人物解説が謎の存在に一番貢献してしまっていると言う…。
308 : ◆JbeFpMnays [sage]:2011/12/02(金) 17:49:53.81 ID:hFi+hbGN0
キャプテン「やぁ、みんな! 久しぶりに『一日一談』だ!」

村紗「今日の司会を務めるのは私、村紗 水蜜と」

シレーナ「シレーナ海賊団船長、アン・シレーナさね」

キャプテン「そして私が I am captain commando! だ!」

シレーナ「メカメカしぃねぇ。アンドロイドかい?」

キャプテン「いや、これでも立派な人間さ。そういう貴女は魚人かな?」

シレーナ「どっちかって言うと人魚さね。ムラサは幽霊っぽいねぇ」

村紗「ええ。私は元呪縛霊です。様々な経緯があって、今は星輦船の船長ですが」

キャプテン「積もる話はあるだろうけど、今は仕事といこうか。今日は『超未来』について、話していこうと思う!」

シレーナ「『物質界』から何百年後の世界だね。どの程度後かは明言されてなかったりするよ」

村紗「現代よりも更に文明が発達し、銀河間を自由に行き来できるレベルにまで技術が発展しているのです」

キャプテン「その関係で様々な星人とコンタクトが取れるようになったんだ。利点ばかりではなかったがね」

シレーナ「『銀河警察機構』、『ベクター』、『ディグアウター』とか、そりゃぁもう結構な数の単語が出てきて混乱するね、これは」

村紗「実はもっとも矛盾をはらんだ世界でもあります。お祭りゲーなので細かい事は気にするな! ですが」

キャプレン「実は地球が無くなっているんだ。ここは『ゼノサーガ』のシナリオに沿っているようだね」

シレーナ「『グノーシス』、『プゥーカ』、『オクティ』…………ああ、なんだかめんどくさくなってきた」

村紗「お、落ちついて下さいシレーナさん! 誰ですか、この資料をシレーナさんに渡したの……」

キャプテン「爆破されてしまう前に今日は締めよう。これ以上は危険が危ない」

シレーナ「ああ、そうかい? 助かるよ。しっかし空気が悪いねぇ、ここ」

キャプテン「確かに、少々換気が悪いようだ。物質界の技術だから仕方ないが」

村紗「その点私は気にしなくてもいいので。ところで何故この三人なのでしょう」

シレーナ「あれじゃないかい? ほら、三人ともキャプテンだしさ」

キャプテン「私だけ、船長じゃないがね。そういえば某母の東方二次創作ではムラサ君が私の……」

村紗「あれ自体は楽しみですがそれ以上はいけません」

シレーナ「ああ、やっぱり面倒だねぇ。ぶっぱなすか」

キャプテン「待つんだ、シレーn」


 ドキューン!!


村紗「……爆破落ちって非常に楽ですね。では、今日はこれにて。ああ、損害の見積もり凄そうです」
309 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/04(日) 02:02:40.63 ID:r+EESNsY0
こんばんわ。どうも危惧していた事は何でもない事だと知ってどこかほっとしていたらこんな時間でした。

これより投下します。風神録5面です。
310 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/04(日) 02:07:59.18 ID:r+EESNsY0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜守矢神社・整理された石畳の参道〜〜〜

文『私はこれ以上先には進めません。新参の神様には手を出すなと天魔様からの言いつけなので』

小牟「おーう。ま、朗報を待つんじゃよー」

霊夢「行ったわね。じゃ、行きましょうか」

零児「なるほど。ここまでに道がなかった事を考えれば、この光景は不自然だな」

魔理沙「霊夢のとこよりよっぽど立派だしな。広さも倍以上あるぜ」


 あと僅か経てば夕暮れになる頃合いに、一行は山の頂上へと辿り着く。そこには、不自然なほど立派な神社があった。

 守矢神社……現実の世界より、山の一角を丸ごと同時に転移させたこの空間。
 ある程度の整理はされていたのであろう石畳に、並び立つ真っ赤で立派な鳥居。
 遠く、奥に見える建物の規模からも察するに、転移する直前まで多少の信仰とそれに伴う奉仕はあったのだと見受けられる。
 はっきり言ってしまえば、博麗神社が山小屋に見えてしまうほどの規模だ。


霊夢「大きくても不便でしょうがないわよ、ここ」

小牟「掃除するのも大変じゃろうな。して零児よ。なして挑発しとったんじゃ」

零児「ああ、実はな……」

????「む? 誰だ、お前達!」

魔理沙「おいおい、話の邪魔をしちゃいけないって……なんだ、こいつ?」

零児「……クロノアか」


 青っぽいふさふさな毛。大きくクリクリとした瞳。大きく長い、兎のような耳。
 そんな獣らしさを持ちながら、きちんと服を着て二足で立つ、10歳前後の少年を思わせる獣人がいた。


クロノア「ん? おじさん誰? サナエの知り合い? ……ってあああー!!」

零児「おじさん……」

小牟「なんじゃ、霊夢のほうを指しおって」

クロノア「やっぱりレイムなんだね! 僕だよ! クロノアだよ!!」

霊夢「……は?」

クロノア「ほら、アッチで一緒に遊んだじゃん! いやーよかった、やっぱりこの世界に居たんだね!」

魔理沙「霊夢の知り合いってこいつの事……なのか?」

霊夢「知らないわよ。こんな小動物みたこと無いわ」

クロノア「あ、そうだよっ! こうしちゃいられない! サナエェー」タッタッタッタッ


 ひとしきりはしゃぎまわったかと思うと、神社の奥へと帰って行く。
 短い手足を大きく振りながら走る様は、なかなかに可愛らしいか。


魔理沙「……行っちまったな」
311 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/04(日) 02:10:40.74 ID:r+EESNsY0

小牟「人の話をきいとらんの。しかし、テンションだだ上がりっちゅうことは」

零児「これまでの事を考えると、昔馴染み……にでもなっているのか?」

霊夢「んで、あれって何なの?」

零児「かつての仲間の一人さ。そういえば、最年少グループだったな」

魔理沙「妖怪なのか?」

小牟「んや、ああいう種族じゃよ。まぁ、この世界の妖怪とよう似たもんかもしれんがの」

霊夢「はぁ、なんだかややこしくなりそう」

零児「その予感はひしひしと伝わってくるな」

小牟「まぁ、邪魔もんはおらんようじゃしとにかく奥へと進むかの」

??「その必要はありませんよ、客人!」


 10歳前後の少女特有の、高く響き渡る声。元気と自信に溢れたその声に、一同は振り向く。


小牟「おおう、二人と違うて甲高い声……これが早苗めの声か」

早苗「まぁ、確かに私の声は高いとよく言われましたが……」

霊夢「そういえばこの時は結構テンション高かったわよね。自信満々で」

魔理沙「そうだなー。倒したらすっごいへたれたけど」

零児「散々なこと言われているが、彼女が神の一柱なのか」

小牟「うぬ、東風谷早苗。遠く、諏訪子の血を引く現人神じゃよ」


 イマイチな評価を受けた、霊夢の巫女装束の色を全体的に緑に変えた服を着る少女。
 東風谷早苗。小牟の紹介通り、守矢……洩矢の血を引く少女である。


早苗「む。霊夢さん、二人の秘密だって言ったじゃないですか! ……諏訪子様の血を引くのは知りませんけど」

霊夢「へぇ、あっちの。……てかちょいまち、早苗、私の事おぼえt」

クロノア「サナエー! 待ってよぉー」タッタッタッ

早苗「ああ、ごめんねクロノア。ほら霊夢さん、クロノアですよ! 犬の!」

零児・小牟・魔理沙「……」ジー


 一同はクロノアを見つめ、霊夢の方を向いて確認する。


霊夢「……いや、だから私も知らないわよ」

クロノア「ええっ!? 一緒にクルクル回るので遊んだり、お風呂に入ったじゃないkうわああっ!?」シュタタン

霊夢「忘れなさい、今すぐに!」

早苗「もー、クロノアは女の子の気持ちがわかっていませんね。大人の男の人の傍でそういう話は厳禁ですよ!」

小牟「……まだ常識にとらわれとるの。若干ずれとるが」

魔理沙「あれは怨泉異変の後だしな」


 後々彼女は問題発言をするのだが、それはまた別の話である。


零児「というか、話が進まんぞ」
312 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/04(日) 02:16:19.71 ID:r+EESNsY0

クロノア「うう、忘れられちゃったって、サナエェ」

早苗「仕方ありませんよ。私の奇跡の力で容姿がだいぶ変わってしまいましたし。色も」

零児「青い犬じゃなかったんだな」

早苗「はいっ。耳は元から長かったんですよ」

霊夢「そんなことはどうでもいいのよ。早苗、なんで貴女は私の事を知っているの」

クロノア「そんなことっ!?」ガビーン

早苗「そ、そんなことって酷いですよ霊夢さん! せっかくクロノアが喋れるようになったというのに!」

霊夢「だから話を進めなさい!」

早苗「むぅ。なんでって、私達あっちで友達だったじゃないですか」

魔理沙「おおう? これは修羅場な予感だぜ」

小牟「異変以前の記憶がある、というわけではないのは確定したの」

魔理沙「少なくとも、私らが前に戦った時は霊夢の事なんざ知らなかったようだぜ?」


 本来であれば、早苗ら三柱がこの世界に来たのは薄れゆく信仰心を再び獲得するためである。

 様々な事柄……未知の病気や不思議な力の謎が解き明かされていくにつれ、妖怪や神と言った存在は徐々に否定されていった。
 それは信仰心や恐怖心を薄くし、遠くないいつの日かに消滅するしかなくなる運命を見せつけ始めたのだ。

 それを回避するために大掛かりな引っ越しをし、一騒動起こしたのが本来の風神録である。


早苗「幼稚園の頃から、私と霊夢さんは二人っきりだった……なのにいつの間にか、霊夢さんは神隠しにあってしまった」

クロノア「僕もそれを知ってすごく寂しかったんだ。一晩中鳴いてたら蛙の神様に怒られたけど」ガクブル

早苗「あの時の諏訪子様は凄かったですよね。……その事を、忘れてしまったんですか?」

霊夢「生憎と、私はここ出身。というか、貴女のその記憶の方が間違ってるのよ」

零児「酷な事を言うが、お前達のその記憶は紛い物だ。今は信じられんだろうがな」

早苗「そんなはずはありません! 神奈子様も、諏訪子様も覚えておいでです! あの方たちが間違うなんて事はあり得ません!」

魔理沙「いや、間違いだらけだったよな。核エネルギーとか」

零児「おい、物騒な話になったぞ」

小牟「それはこの異変が終わってから話そうと思っとったんじゃが」


 守矢が起こした異変は一つだけではない。
 一つは異変の主……の友人に力を与え、一つは山をおも越えるほどの巨体なナニカを作った事があった。

 後者は異変と言うよりはただの勘違いなのだが……。

313 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/04(日) 02:21:16.65 ID:r+EESNsY0

早苗「っ! 神奈子様、諏訪子様を侮辱するのは許しませんっ!! さては貴方達は妖怪の手先ですね!」

クロノア「ええ、そうなの!?」

霊夢「そんなわけないでしょ、早苗」

早苗「そうですよね、そうじゃなきゃ霊夢さんが私の事忘れるはずがありませんよね……」ブツブツブツ

魔理沙「修羅場の矛先、変わった気がするんだぜ」

小牟「ヤンデレの気配じゃな」

早苗「こうなったら、私の奇跡の力で思い出させてあげます!」

魔理沙「結局実力行使ってな。解りやすいぜ」

零児「予想はついていたが、やはりこうなるか。なら、現人神の力を見せてもらうとする……」

早苗「ところで、アラヒトガミってゲンジンシンのことですか??」

小牟「oh……」

魔理沙「?」

霊夢「……」

零児「……少し待て。携帯持っているか?」

早苗「え? あ、はい有りますが」

零児「さっき言った二つの言葉で変換してみろ」

早苗「えーっと……あっ、アラヒトガミだと一発変換です!」

小牟「テンケテケテンな読み間違いじゃな」


 よくネタにされるこの読みだが、そもそも最近全く聞かないのだから仕方ない話である。


早苗「ひとつ勉強になりました。それでは参りますっ! 奇跡『海が割れる日』!」

クロノア「漢字の話はよくわからないや。『ビームジャノメ』!」


 携帯をポケットにしまい、続けてスペルカードを取り出し宣言する。
 ミシャグジ様と呼ばれる神が諏訪湖を横断した際、凍った湖が二つに分けられた現象を再現したスペルカードだ。

 石畳を挟み込むように、左右から青白いレーザーの波が襲い掛かる。
 さらには早苗の後ろから、銛のような弾幕が、四人を襲う。

 更に、弾幕の波に乗りながらクロノアが武器を振りかぶる。


魔理沙「クノロアってやつの武器はなんだぜ?」

零児「今使っているのは盾のようなものだ。ブーメランにも使えるとか言っていたか」

霊夢「なんだか、上手い事サーフィンしてるわね」

小牟「うぬぬ。負けとれんぞ!」
314 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/04(日) 02:25:48.85 ID:r+EESNsY0

クロノア「覚悟しろ! 『ウィンド・ソード』」


 波に逆らうこと無く流されながら、手に持つリングから伸びた剣のようなものを振りまわす。
 ……のだがいかんせん、距離が足りていない。


クロノア「あ、あれ? おーい! こっち来てよぉ」ウワーン

霊夢「……」

魔理沙「……」

早苗「……」

小牟「……」

零児「……タイミング間違えたな」ガリガリ

早苗「クロノア……あれほど最初に乗っても意味ありませんと」ヨヨヨ

霊夢「一々緊張感のない獣ね」

魔理沙「そうだなー。『ナロースパーク』」

クロノア「わわわぁっ!?」ガリガリガリ


 だいぶ流され、後ろから走って戻ろうとするクロノアに向かって魔理沙がレーザーを放つ。
 クロノアはそれを避けるも、避けた先は早苗の弾幕側だ。


クロノア「わー!? 当たる、当たるぅううう」ガリガリガリ

早苗「……仕切り直していいでしょうか」シクシク

小牟「うぬ、しまらんしの」

魔理沙「なんだか弱い者いじめしてるみたいだぜ」

零児「否定出来んのがなんともな」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


クロノア「ご、ごめんよサナエ。早すぎちゃった」

早苗「やっぱりこちらの方がクロノアにはいいですか?」ピラピラ

クロノア「うん。これのほうがいいや」ペシペシ


 早苗のスペルカードを止め、打ち合わせ中な一人と一匹。
 後ろを向いてしゃがみつつこそこそ話している姿は、緊張感の欠片もない。


霊夢「早く先に進みたいんだけども」

小牟「決闘は華やかに美しく、じゃろ。こういうのを待つことがそのゆとりに繋がるんじゃ」

零児「ついさっき、そんなものとはかけ離れた状態だっただろ」

魔理沙「全くだぜ。そしてそれをお前が言うな」

早苗「決まりましたよ、妖怪の手先達っ!」ズビシィ

クロノア「覚悟しろよっ!」ズビシィ


 決闘のルールを定めた張本人がそのルールからも浮きそうになりかけたその時、一人と一匹が振り向いた。
 ポーズをとりっている心算……なのだろうが、いかんせんずれている。

315 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/04(日) 02:28:38.91 ID:r+EESNsY0

魔理沙「っ〜〜!!」バンバン

零児「何が受けたのかさっぱりだな」

霊夢「それで、さっさと発動してくれないかしら」

早苗「言われなくとも! クロノア、行きますよっ。奇跡『神の風』!!」

小牟「奇跡「神の風」() じゃ」

零児「何か分からんが、煽るのはよせ」

クロノア「『風のリング』、いくよぉ!」


 早苗が虚空に舞い上がり、風を纏い始める。
 そして早苗の後方より、大量の米粒弾幕が発射される。

 それらは早苗の纏う風に流されるように動きを変え、更に押される形でスピードを上げて行く。


魔理沙「ふぅ。小牟が笑う理由は解るぜ、うん」

クロノア「とりゃあああああ」ブンブン

零児「今度はちゃんと、こっちに届いて……おっと!」


 零児が驚くその理由。それは、クロノアの動きに合わせて米粒弾幕の軌道が変わったからだ。

 早苗が纏っていた風は、クロノアを標として吹きぬけて行く。


霊夢「その腕輪が風を操ってるのね。なら……『ホーミングアミュレット』!」

クロノア「うわわ、着いてくる!? わふー!」ポフンポフン

魔理沙「おおっ、何か撃ち出したぜ、あれ」

小牟「風玉じゃな。距離は飛ばせんがそれなりに強力じゃぞ〜」


 霊夢が放ったアミュレットはリングから放たれた玉に弾かれ制御を失った。

 風のリング……風を操り、幻獣種やそれに近しい構造に限るが風船状態に出来るリングだ。

 風玉の圧力はなかなかのもので、盾を持ち鎧に固めた相手でも押し出せるほど。
 欠点は、その圧力のもつ距離が数mもない事だろうか。


霊夢「なら風を突けばいいのよ。『封魔針』!」シュタタ

クロノア「わわわっ、危ないっ!」タタン

零児「気を付けろ。こう見えてもクロノアは仲間の中でもそれなりに始めからいて、根性のある奴だ」

小牟「天空寺院からじゃな。確かクリノもあの時からじゃったか」

早苗「貴方達、私を忘れていませんか! 白玉増量です!」


 前衛で頑張っているクロノアに目を奪われていた零児達に対し、早苗はこっちを見ろと言わんばかりに弾幕を増やす。
 だが、それが増えても……


魔理沙「うん、やっぱりこのスペル弱いぜ」

小牟「難易度が上がってもここは稼ぎ場じゃしなぁ。劣化永夜返しと言うたところか」
316 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/04(日) 02:31:26.47 ID:r+EESNsY0

早苗「そ、そんな……霊夢さん、この風を感じてもまだ思い出しませんか!?」

クロノア「『ウィンド・ソード』! それそれっ!」シュッシュッ

零児「『火燐』! 風は火の勢いを強めるだけだぞ、クロノア」ブンッ

クロノア「おわっと、ハンマー!」カンッ


 早苗のスペルがある中、平然と戦い続ける零児。

 それもそのはずで、風のリングによる風の流れの制御には欠点がある。リング一点に集まるかのようにずれて行くという点だ。

 それを、これまでの弾幕勝負の経験から瞬時に察した零児は、すぐさまクロノアの横手を取る。
 これでもまだ多少避ける必要はあるが、濃度はリグルよろしくである。


霊夢「何度も言うけど、私は幻想郷(ここ)で生まれて、幻想郷(ここ)で育ったの。それ以外の記憶はないわ」

早苗「そんな……この風は、私が初めて起こした奇跡の風ですよ……霊夢さんがあんなに喜んでくれた、あの風なのに……」ブワッ


 東風谷の一族は代々守矢神に仕える巫女を輩出してきた。選ばれる基準は奇跡の力を持っているか否かだ。
 その奇跡の力は様々な種類があるが、大体は乾坤に関わるもの。
 そんな中、早苗は風を操る力を現出させた。それは名目上……いや、既に事実上の守矢神の力でもある。


小牟「……霊夢よ、さっさと決めるとするかの」

霊夢「そうね、いい加減耳障りかも」

魔理沙「よっしゃレイジ、気を付けろよっ。『マジカル産廃再利用ボム』!」


 早苗とクロノアの間目がけて、魔理沙の爆弾が投擲される。
 それらは着弾すると同時に七色に輝きながら煙をあたりに散らす。


クロノア「ぶわっ。げほっげほっ……な、何これくさっ!? しみるよ!?」

零児「風の流れを利用したか。……刺激臭がするぞ」

魔理沙「どんな効果が出るかは分からないからな。こんな時ぐらいしか使えないぜ」

小牟「流石にこの状態なら倒せるの。『朱雀刀』!」

クロノア「うわっ!」ピチューン


 マジカルと名が着いているが、結局のところ失敗品に爆薬突っ込んで不法投棄しているだけだ。
 それが誘発する効果は爆発するまで分からないものも多い。ただ、濃度が薄いために重症になる事はめったにないのだが。


早苗「ああっ、クロノア!」
317 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/04(日) 02:39:27.94 ID:r+EESNsY0

霊夢「早苗、あんたも負けるのよ。『封魔針』!」

早苗「っ! そんな針程度、避けられないとでもっ!」

零児「注意がたりてないぞ、現人神」

早苗「へ? いつの間に……あ、風がっ!」


 つい先ほどまでクロノアの傍にいたはずの零児が、もうすでに目の前に居る。
 弾幕が空に向かって動いているために、安易に接近出来たのだ。
 それもそのはずで、クロノアのリングを小牟が回収して空へと飛び上がり、弾幕を誘導しているからだ。


早苗「くぅ……ひ、卑怯です! 四体二なんて!」

零児「確かに、その数の不利はきつい物があった。だが、これも仕事なんでな」

霊夢「二度目ね、それ。さ、大人しくしなさい」

早苗「いや……いやでs」ピチューン


 早苗の返事を聞く前に、霊夢が陰陽玉を投げつける。
 それに当たった早苗は力なく吹き飛び、それでもゆっくりと地面に落ちる。


魔理沙「シャオムゥー! 終わったぞー!」

小牟「おー、わかったzヘブチッ!?」ゴンッ

早苗「ひっく……」

零児「…………」

霊夢「…………」

早苗「な、ぜですが……何故、おぼえでないんでずが」ヒック

クロノア「サナエ……」ズビッ


 しゃっくり混じりの泣き声をもらす早苗。それを見て、先に倒れていたクロノアも釣られて鼻をすする。


早苗「やでず……レイムざんのぎおぐを……ひっく……どりもどz」

霊夢「行きましょ、零児さん。魔理沙、小牟」

零児「……そうだな」

早苗「やだ、まっで!わだじはまだ……」

小牟「天井の事忘れとったわ。鬼門封じ(小)」ヒリヒリ

早苗「っ!?」

魔理沙「お、動きが止まった。なんだそれ?」

小牟「簡単に言うと、呪縛じゃよ。……ゆくぞ、魔理沙よ」


 鬼門封じをかけたまま、守矢神社の奥へと向かう一行。その顔には、僅かに陰りが見える。
 だがその陰りも、四人それぞれに別々の色を見せる。不機嫌、同情、憐れみ、憤り、と。


霊夢「……不快ね。今回は特に」

零児「早く異変を解決しよう。……それが、あの子を救う早道だ」

小牟「さっさと忘れさせるに限るの。……にしても、この改悪は許されぬぞ、異変の黒幕め……!」

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318 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/04(日) 02:53:20.74 ID:r+EESNsY0
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 犬走 椛

 女性型の天狗。赤と黒のスカート。霊夢の上着を、ほぼ白一色にしたもの。赤の頭巾。

 −−−から、千里先を見通す能力と判明。白狼天狗と呼ばれる山の哨戒兵の一種と思われる。

 適正体の可能性、不明。調査の必要性はあるが、優先度は中の下とします。

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 射命丸 文

 女性型の天狗。黒のスカート、白のシャツに、紅葉の模様のあるラインを施した服と、上位階級と思われる頭巾を着用。

 −−−による解析に失敗。会話のみより、実力者である事だけは判明。能力は不明。映像より風に関わる物と推定。

 有栖零児との小競り合いより、適正体の可能性を高に設定。調査の必要は十分にありと判断します。

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319 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/12/04(日) 03:01:41.82 ID:r+EESNsY0
以上で今回の投下を終わります。今回、少々思うところはあるかもしれませんがこの話に関しては少々ご勘弁を。


次回投下は6面+風神録クリアー後な予定のため、1週間ほどかかると思います。実際はもっと遅くなるかも……。
320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/04(日) 17:03:46.89 ID:LU9o1s/DO
クロノアを完全に犬扱いとは…こりゃ後でこんな設定をしたやつに対してブチ切レるかもな。

しかし、仮にも神の記憶まで弄るか…恐れを知らない、じゃなくてそれ程の力があるのか。
321 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/06(火) 01:29:13.99 ID:Lx/yLB4t0
こんばんわ。少々アンケートを取りたく、参りました。
アンケート内容としては、ナムカプ勢及び、ムゲフロのサブキャラの中で出して欲しいキャラがいるかどうか、というものです。

物語上、出る出ないが決まってるキャラクターは半数以上いるのですが、
 それ以外のキャラをどうするべきか困ったが故のアンケートです。敵味方関係なく上げてもらって結構です。一応一人一名で。

もちろん、スルーしてもらっても構いません。出演未定をあてても、結局ネタが浮かばず出せない等もあり得ますので。

また、ネタバレ回避のために基本的には出演可否は答えれません。

このアンケートの有効期間は二章開始直後までです。


↓これまでに出てきたキャラクター一覧。

有栖零児   小牟

フェリシア  ローズ    ジューダス

島津英雄   ギルガメス  カイ     名無しの超戦士1P&2P  スタン

クリノ    ケン     コブン    クロノア

ヘイムレン
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東) [sage]:2011/12/06(火) 11:12:04.46 ID:kZwGZ1JAO
せっかくのお祭りゲーなんだし、小ネタでも良いから思いついたらどんどん出してしまえばと思います。
323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]:2011/12/06(火) 21:52:10.94 ID:VLfXT5Pro
ハーケンさん出て欲しいなぁ
零児との信頼関係が良い
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/07(水) 00:42:56.67 ID:O7z4poGDO
ハーケンとカグヤを……
永遠亭にいけばタブルかぐやだな
方やペターン、方やバイーンだが
325 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/08(木) 01:14:20.06 ID:oVSawExb0
こんばんわ。ちょっと余所で熱くなりすぎてました。うーん。

本編に関してはだいたい順調で、土日には投下できそうな感じです。

>>322
最初はそう思っていたのですが、1回ひょこって出てきたらそのままフェードアウトしてしまうネタばかりで……。
それが自分的には少々引っ掛かりを覚えるのです。
結論:ネタの思いつかない自分に腹が立つ。


>>323>>324
流石にハーケンさんは出します。
というのも、ムゲフロ・EXのクロスオーバーと言いながら、その看板たる彼らを出さないのは詐欺かと思いましたので。
それに、無印終盤のあの会話は熱くて大好きですし。


しかしそうなるともう一人も……ふっふっふ。


では、今日はここら辺で失礼します。
326 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 23:49:23.89 ID:OS9UpgVDO
先生、日曜が終わります……
327 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/12(月) 01:39:28.00 ID:faBWIFDo0
こんばんわ。
金土日とやたら忙しくされて、クリアー後の話が完成しなかったので妥協してとりあえず6面だけ投下しに来ました。

クリアー後に関しては火曜までに投下します。

それでは、投下します。風神録6面。VS神奈子様です。
328 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/12(月) 01:42:04.60 ID:faBWIFDo0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜神寂びた戦場・侘びしき湖〜〜〜

霊夢「……早く着いたようね。前来た時は星空が見えたから」

小牟「まだ陽が山の向こうに見えとるの〜。御柱のせいであんまり見えんのが難点じゃ」

零児「なるほど、確かに守矢だ。……だが、この規模の御柱がこの数とは」

魔理沙「ざっと見ても五十本はありそうだよな。おっ立てすぎだろ」

小牟「! おった」

零児「言わせんぞ」


 夕暮れ時。まだ先にある守矢神社の本殿と、湖を背景にするこの場所。
 数多の御柱が並び立つその空間は、神々しいなにかを感じさせる。


零児「それで、カナコという神様はどこに居られるんだ?」

???「我を呼ぶは、何処の人ぞ」

魔理沙「ここ来るたびにそれだな。召還魔法の返事みたいだぜ」

霊夢「今回は確かに呼んだわね、神奈子」


 低く落ち着いた、威厳を感じさせる女性の声。
 虚空より現れたのは、赤い服に鏡を付け、零児の二の腕ほどはあろう太さのしめ縄を輪にして背負う少女。
 …………サザエさんヘアーのせいで少女に見えづらい神様だ。


神奈子「ふむ、私を知っているのか。……って、霊夢じゃないの」

霊夢「やっぱり、あんたも私の事を知っているのね」

神奈子「もちろんだとも。早苗とあんなに仲良くしてくれた子を忘れるはずもない」

小牟「あー、そのことなんじゃがのぉ神奈子よ」

神奈子「その方たちは、何者? 霊夢のこちらの友達?」

魔理沙「まぁ間違ってないよな。友達なのは」

霊夢「友達になったつもりなんてないわ」

零児「十分すぎるほど友達だろう」


 家に勝手に上がっても追い返したりせず、一緒に鍋を囲む。
 異変を解決するときも時々一緒。
 これで友達じゃなかったらなんだっていう話である。

329 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/12(月) 01:44:00.01 ID:faBWIFDo0

神奈子「はっはっは。変わったのね、霊夢は」

霊夢「変わってない! 変えられたのは貴女よ、神奈子」

神奈子「……ふむ、先ほどから、物いいたげだな。どうしたんだ、いったい」

小牟「この異変が二度目っちゅーことじゃよ、神奈子」

神奈子「ん? 誰かが先に似たような事をしたってことかしら」

魔理沙「いーや、お前がまた起こしたんだぜ」

神奈子「……私が?」

零児「これまでの事を説明します。どうか落ち着いて聞いて下さい」


 ここ、守矢の神である神奈子は、時代の移り変わりに対して寛容な神様である。
 いや、これでは語弊があるか。日本の八百万の神々は、元々寛容な神様だらけなのだから。

 神奈子はその時々の流行りに応じて姿を現し、口調や物腰を変え、巧みに信仰心を得て来た。
 だがそれは年月が経つにつれ出来なくなり、昨今では東風谷の巫女や、他の一部特殊な人にしか姿を見せられなかった。
 なぜならば、外の世界で姿を現すにはそれ相応の力……信仰心を消耗するからだ。

 だが、ここ幻想郷では信仰心をいうほど消費せず現世に顕現できる。

 どんな相手とでも、直接話をする事が出来る。それがたとえ神社で暴れまわる人間の侵入者であろうとも。


神奈子「それなら早苗も呼ばなくちゃね。…………はて、呼びかけても返事がないわ。クロノアと一緒に居たと思ったんだけど」

小牟「じゃから、それなんじゃがの……」

霊夢「倒したわよ。早苗なら」

神奈子「……なん、ですって?」

魔理沙「あいつは人の話を聞かなかったからな」

零児「もう少し柔らかく言った方が良かった気がするんだが」

神奈子「どういうつもりなの、霊夢。あれだけ仲良くしてくれていたのに……」

霊夢「だから、それが間違いだって言ってんでしょ。
   私 は 誰 と も 仲 良 く し て い る つ も り な ん て な い ! !」

零児「…………」

魔理沙「…………」

小牟「…………」

神奈子「…………」


 突然、ヒステリックに大声を上げ、否定する霊夢。
 その反応に、皆が唖然とする。

330 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/12(月) 01:51:29.52 ID:faBWIFDo0

小牟「……霊夢。おぬしらしくないぞ?」

神奈子「……その妖孤の言う通りよ。どうしたのよ、いったい」

霊夢「……なんでも、ないわよ」

魔理沙「……不愉快って……」

零児「…………」


 驚く少女達とは別に、零児だけがただ黙って霊夢を見つめる。
 ただただ、悲しげな視線を。


霊夢「……そんな目で見ないで。ともかく、あんた達の記憶は間違っている。それだけよ」

神奈子「……霊夢に何があったかは分からない。けど、嘘をついていないのは分かったわ」

小牟「むぅ、そうじゃな、何が……って、お? それじゃぁ」

神奈子「だけどそれとこれとは話が別。例えあんた達が嘘をついてなくとも、私だって嘘はついていない」

零児「……どうなされるおつもりで」

神奈子「悪いけど、この腹の虫はおさまりそうにないの。だから……」


 ドスンッ ドスンッ


小牟「ぬおおお。御柱が降ってきおった!」

魔理沙「空気が揺れたぜ、今のは」ビリビリ

零児「地面はもっと揺れたがな」グラグラ

神奈子「あんたらの戦り方には合わせてあげる」


 ドスンッ ドスンッ


神奈子「そのうえであんたらを倒して早苗への手向けにする」

霊夢「……」シャキ

小牟「霊夢……上手い事を話せば、戦わずに済んだかもしれんと言うのに」

霊夢「……知らないわよ。それに、さっさと倒してしまえばそれでいいでしょ」

神奈子「そううまく事を運べるとは思わない事よ、霊夢!!」


 ドスンッ ドスンッ                       モコッ


 六つの御柱が神奈子の周りに降り注ぎ、大地を揺らす。
 それは神の怒りを示すかの如く、大きな地響きを鳴らす。
 唯一地面に立つ零児は、その余波を受けているはずなのだが、平然としている。


小牟「お?」
331 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/12(月) 01:54:55.35 ID:faBWIFDo0

神奈子「覚悟せよ、人間ど」

???「五月蠅いのよこの阿呆カナーーー!!!!」

神奈子「もってわぷっ!?」バッシャァァァァァ!!

魔理沙「え? なんで諏訪子まで出て来るんだよ……」

小牟「超アッパーを決めたの」

零児「間欠泉と一緒にな」

諏訪子「ったく。人が昼寝してる最中に御柱おっ起ててんじゃないわよ。めいわく!」


 地中から間欠泉と共に飛び上がって来た、これまでの東方キャラの中で最も小さな少女。
 末端がややぶかぶかな服。さらさらしている金髪。
 身長に対して大きめな、少し離れてみると蛙のように見える帽子をかぶっている。

 洩矢諏訪子……幾度となく話題に上がっている、三柱目の神様だ。


神奈子「げほっげほっ……何するんだ、諏訪子!」ベチャベチャ

諏訪子「何するんだ、じゃないわよ! 五月蠅いっつてんの! 他人の睡眠邪魔すんな!」

零児「あの少女が三柱目の」

魔理沙「ああ。諏訪子だぜ」

零児「秋の姉妹神といい、厄神といい、神様でも少女なんだな」

神奈子「五月蠅いのは謝るが、顎に一撃はないだろう!」ベチャベチャ

諏訪子「そっちは偶然よ。それより、頭冷えたかしら」

神奈子「は? ……あー」ビチャビチャ

小牟「色んなところで使われとる、激怒ブレイカーじゃな」

零児「確かに、結果的に怒りを鎮められるかもしれんが……」


 水を思い切りぶっかけることで頭を物理的に冷やす。
 それと共に深呼吸せざるを得ない状況を作りださせて頭を落ち着かせる。
 これぞ古来より受け継がれてきた、『頭冷やせよこの馬鹿野郎』である。


諏訪子「早苗がやられて怒るのは構わないけど、あんた一人で何ヒートアップしてんのよ」

神奈子「…………」ビチャビチャ

零児「早苗という少女の事、大事にしているようだな。……はぁ」

魔理沙「さぁなぁ。妖怪退治にはしょっちゅう行かせてスキルアップはさせてるようだけど」

小牟「つーか聞こえとったんじゃな」

諏訪子「ここは本来私の神社だからねぇ。あちこちで聞き耳立てているわよ♪
    んで神奈子。そもそもあんたの気持が嘘じゃないなら手向けにすな。早苗の事も考えろこのあほんだら!」
332 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/12(月) 01:57:19.25 ID:faBWIFDo0

神奈子「……はぁ、悪かったわね。それじゃぁどうするのよ。生憎とまだ整理はつかないわよ?」

諏訪子「それこそ、こっちの世界のルールで勝てばいいのよ、勝 て ば。郷に入らずんば郷に従えって言うでしょ」

小牟「神奈子めは聞きわけがよいし、諏訪子めは普通じゃな」

諏訪子「んで勝ってから祟るなり奉仕させるなりすればいいのよ〜」

小牟「前言撤回じゃ」

魔理沙「この間わずか三秒だぜ」


 諏訪子は土着神の頂点であり、ミシャグチ様を操れる神様だ。
 その能力は遠い過去の洩矢の国にて、恐怖信仰の為に使われていた。

 幼い外見はその恐怖を際立たせるためにギャップを誘発させるものであり、この腹黒さはそのまま知略の豊富さにも繋がっていた。
 それでも神奈子には負け、洩矢が守矢になったりもするが、その経緯から寛容、悪く言えば放任主義な性格に変わったのだ。

 まぁ、それでも腹黒さは相変わらずなのだが。


零児「霊夢、お前も落ち着いたか」

霊夢「……私はいつでも冷静よ」

神奈子「…………」

諏訪子「ドゥーユーアンダスターン?」

神奈子「……分かったわよ。もう」

魔理沙「んでー、戦うんだよなー」ムー

諏訪子「あったり前じゃない。早苗にした事はともかく、『お祭り』はきちんとしないとね♪」

零児「神遊び、ですか」

神奈子「おや、近頃の若い男はそういうこと知らないと思ってたけど」

小牟「古典に詳しいしの、わしら」


 零児達の所属する『森羅』はその性質上、副産物的ではあるが古今東西の伝承や歴史を収集してきた。
 特に日本の事に関しては、アイヌの事から琉球王国、昔の植民地だった満州国についても調べ上げている。

 そんな中、お祭りとは元々、神に対する捧げものを献上し、神のご機嫌を取るものであった。
 それが習慣となり、次第に信仰が薄まって形骸化し、最終的には殆ど形だけ……騒がしく楽しむだけとなった。
 
 とはいえ、祭りを開く場所に住む土地神からすればそれだけで信仰心が集まるのだから気にはしないのだが。
333 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/12(月) 02:01:47.27 ID:faBWIFDo0

霊夢「はぁ。さっさと宣言しなさいよ。こっちは結構おしてるのよ」

零児「……十一時か」

諏訪子「本当、気になる認識のずれねぇ。ま、いいわ。それじゃぁあれ、行くわよ」

神奈子「そうね、あれの方が纏めて相手出来るか」

小牟「諏訪大戦かの?」

諏訪子「もー。ネタバレすなよ、妖孤」シュバッ

神奈子「名前バレしてるスペカに意味があるかは分からないが……いくよ」シュバッ


 「「『『諏訪大戦 〜 土着神話 VS 中央神話』』」」


 二人の神が一度にスペルカードを唱える。それは、かつて諏訪にて起きた、洩矢と八坂の戦の再現。
 鉄の輪を表す赤黒い輪と、それを錆びさせた植物の力を表す緑が続く弾幕だ。

 鉄の輪は空から、植物は地面から、四人を挟んで生み出されていく。
 またしても、零児が苦戦する弾幕である。……はずだった。


小牟「しかしこれじゃと耐久じゃね?と思うたがそんなことはなかった」ガリ

零児「出が早いな……赤い輪が少ないのが救いか? ……違ったか!」ガリ

魔理沙「へぇ、これこうなるのか」ガリ

霊夢「あんたは諏訪子と戦ってなかったものね。『封魔針』!」ガリ

諏訪子「ほっ。さぁさぁ早くしないと戦はどんどん激しくなるよ〜♪」


 零児が驚いたのは、空高く伸びあがった緑の弾幕が降り注いできたからだ。
 それと共に空から赤い輪の弾幕が、自機狙いとランダム弾で降り注ぐ。


零児「そいつは厄介だ。そうそうに片を付けさせてもらいます。『電瞬』!」バッ

神奈子「速い! だが、甘いぞ男」ニヤァ

霊夢「下がって、零児さん!!」ガリ

神奈子「どうだ、神祭『エクスパンデット・オンバシラ』!」


 霊夢が叫んだ瞬間、神奈子の背後から幾つもの御柱が出現する。
 それらは地を走って向かってくる零児に並行する形で射出される。

 外側から、外への逃げ道を徐々になくすように隙間なく放たれた御柱が零児のいける道を極端に狭める。
 更には、神奈子から零児に向けて遅い3段変化階式自機狙い弾が大量にばらまかれる。

 緑の弾幕へと走るルートしかなくなった……ところで、零児は御柱に方向を変える。
334 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/12(月) 02:07:44.97 ID:faBWIFDo0

零児「残念ですが、今の俺はすこぶる調子がいいんです。『四嗣墳陣』! とぁー!」タタン

神奈子「しまっ!」

魔理沙「おお、また跳んだぜ」ガリ

諏訪子「しかも二段ジャンプ。かっこいいねぇ」


 逃げ道を塞いでいた御柱へと跳び上がり、斜めになっていた部分に霊力の板を作り出す。
 それは本来であれば零児が乗るには少々強度が足りない。だが、御柱に密着させる事でその強度を補ったのだ。


神奈子「……なんてねぇ。『エクスパンデット・オンバシラ 第二陣』発射!」

小牟「おおっとぉ、ここで神奈子がツーループ目を発射したー! 零児めの行く手を遮るー!」ガリガリ

諏訪子「だがしかし、男は次々と板を生みだして空を蹴る! 続く第三第四の御柱をも次々足場にして神奈子に近づくー!」

霊夢「なんで二人で実況してるの」ガリガリ


 諏訪子の言う通り、零児は迫りくる多数の御柱に対し『四嗣墳陣』を繰り出し、被弾を回避する。

 諏訪子の弾幕も混じり相当な密度になっているはずの空間を、零児は軽々と避ける。

 それに対し、神奈子は疑問を抱く。
 決して侮ってはいない。
 むしろ軍神の、軍神たる緻密な計算をもってして全力でぴちゅらせようとしている。
 だがこの男は何故かずれる。
 力を使った痕跡もなく、彼自身が気付いて居るそぶりもない。

 だが、その予想外の出来事が……久しく感じさせなかった、真剣な勝負への高揚をわきあがらせる。


神奈子「彼の時代より感じえなかった物を、今この時に感じられるなんて……ねぇ!!」ブワンッ

諏訪子「さてと、そろそろこっちも本格的に騒ごうかしらねぇ。ほらほら、盛り上げるわよ〜♪ 鉄輪をひょいっと」ブンッ

小牟「あらよっとぉ。天則の鉄の輪じゃな。つーことわ反射するの」ガリガリガリ

魔理沙「本当、詳しいんだな、シャオムゥ。わっとと」ガリガリガリガリ


 諏訪子が鉄の輪を、弾幕の中に交えて投げ始める。
 しかしそれを避けたり水蓮で軌道を変えたり撃ち返したりして遊ぶ小牟。

 ……諏訪大戦の弾幕が物凄く濃くなった状態で、だが。


魔理沙「このまま空気なのは嫌なんだぜっ。っと、レイジ、援護するぜっ。閉符『ビッグクランチ』!」ガリガリガリガリ

神奈子「……あら、しくじったわね。もうこんな距離か」

零児「跳んで行けたおかげで楽でしたよ、カナコ神」ガリガリガリ


 地上を走るには、突如足の裏側に沸きかねない弾幕に対しても気を張らなくてはならなかった。
 だが御柱を伝って行くことでその危険を回避した零児は全力で前進することが出来た。

 角度の問題等で多少、遅かったりはしたが。


霊夢「…………『ホーミングアミュレット』」ヒョイヒョイシュバッ
335 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/12(月) 02:13:38.15 ID:faBWIFDo0

諏訪子「すごいわねー、狐と霊夢。神奈子の予想通り通じないわ」ヒョイッ

小牟「大人しく耐久スペルのままにしておればぴちゅるもんもおったかもしれないこともないかもしれないテストじゃ」ガリガリガリガリ

諏訪子「あはは。相変わらずどっちがどっちなのかさっぱりね〜そのネタ」


 今回は否定だったりもする。


神奈子「思ったよりやるわね。こうなれば一度、体勢を立て直して……」

零児「そうは、いかせないっ!」ガリガリガリガリ

魔理沙「ここをひっぱるぜぇ!」グイイイ


 『ビッグクランチ』は、複数の高硬度な使い魔を用いた、体当たりをしつつ逃げ道を塞ぐ弾幕を展開するスペルだ。
 実はこの使い魔、アリスの紐の着想を持って、魔理沙が手繰ることで行き来が自由自在なのだ。

 それを手繰り、神奈子の後ろに回った使い魔を神奈子の上側……逃げようとしていた方向へとずらしこむ。


神奈子「くっ。この大弾で進路を塞いでなにを……!」

零児「侵略する事火の如く。火燐『零の型』!」

諏訪子「鉄のボール:この俺を踏み台にしただと!?」


 本来、たとえ味方のスペルであろうとも、決闘中であれば被弾判定が生ずる。
 しかし零児には『四嗣墳陣』……がある。
 その大きな球体を足場とし、最後の一踏みを稼いだ零児が、背を向け掛けていた神奈子に襲いかかる。


神奈子「……読み違えた私の負け、か。ごめんね、早苗……」

零児「異変さえ終われば、元通りですよ、カナコ神。成敗っ!!」ズバッ


 ピチューン

 零児が火燐の峰で一太刀を浴びせ、神奈子が被弾する。



諏訪子「神奈子がやられたか……」フッフッフッ

小牟「あやつは四天王の中でも最弱……」フッフッフッ

霊夢「だからなんで敵同士で意気投合してんの、よ!」シュバババ

諏訪子「おわわっ。待ちなさいって、降参よ降参!」ガリガリガリ


 降参と言いながら弾幕を解除した諏訪子は、湖のほとりに逃げながら降り立つ。

336 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/12(月) 02:17:49.09 ID:faBWIFDo0

小牟「やはり、諌めるだけ諌めて漁夫の利狙いじゃったわけじゃな」

諏訪子「大体間違ってないけど、大体間違ってるわね」

零児「どういうことか、説明願えますか」

諏訪子「さっきから真面目君ねぇ。んとね、詳しくは思い出せないけど魔理沙の事覚えてるのよ、私」

魔理沙「ほう? じゃあさ、異変の黒幕が分かるか?」

諏訪子「期待には添えられないわね。飲んだ事がある気がするとか、そういうレベルだし」

霊夢「それが神奈子を止めることとどう繋がるのよ」

諏訪子「ここは私の神社。貴女達と神奈子の会話は聞こえてたから、この違和感の正体を探るためにスペカで挑む必要があったのよ。
    これだって、私はまだきちんと説明受けてないのに発想あったし」

零児「どういうことだろうな、小牟」

小牟「わからんのぉ。神奈子めは覚えとらんのに諏訪子が、うーん……」

諏訪子「だ か ら、後は貴女達が勝つか神奈子が勝つか楽しむだけってわけ♪」

魔理沙「相変わらずの自由奔放っぷりだな」

零児「カナコ神を鎮めるときも思いましたが、怒っていないのですね」

諏訪子「あれは神奈子が構い過ぎなのよ。死にかけとかじゃない限り私達が手を出しちゃいけないわ」

霊夢「そ。それはよかったわ」

諏訪子「あ、でも霊夢が早苗の友達だってのも覚えてるのよ〜? 幼稚園の写真もどこかnきゃっ!」ピチューン

霊夢「#」キイイイイイ


 霊夢の逆鱗に触れてしまった諏訪子が、その霊夢の蹴りでぴちゅった次の瞬間、結界が変化し始める。


魔理沙「光るな」

小牟「流石に二度も掛からんよ〜」バッ

零児「そうなんどもされると困るか……むっ?!」ズシ


 キィィィィ…………


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


魔理沙「引いた、な。さて辺りはどうなったか……お?」


 盛大に輝き、視界を白で埋め尽くした光が無くなってすぐ、四人は目を開ける。

 彼らが見た景色……空は先ほどまでと違い青い晴天で、その頂きに達しない程度の場所に太陽がある。
 そんな空を見ていると、先ほどまでは一切いなかった鴉天狗が忙しなく飛びまわっているのが見えた。


零児「…………。無事、終わったようだな」
337 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/12(月) 02:29:58.95 ID:faBWIFDo0
今回はここまでです。中途半端なのは前述のとおり、まだ出来ていないためです。


今回はクリアー後に詳しい解説を入れて行くつもりだったために戦闘描写が中途半端に感じられると思いますが、ご了承ください。

ただ、これは原作の難易度再現も兼ねての表現だったりもします。神霊廟来るまで風神が最弱だと感じていたもので……。


>>326
催促させてしまい申し訳ございませんでした。ただ若干そういうコメが最近欲しいなとかなんとkげふんげふん。


それでは今回はこれにて。失礼します。
338 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 06:53:10.42 ID:KfPsA6lDO
お疲れ様ですっ!
確かに最近レスが少ないですねぇ。何故なんでしょう?

最弱だと感じていた…って言い回しからすると、神霊廟の方が最弱にシフトチェンジしたんですか?俺は大体のシリーズをクリア出来てないんで、よく分からないんですけどね…。トホホ
339 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 08:24:35.72 ID:W2LxTN1DO
>>1

340 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/12(月) 11:14:13.09 ID:faBWIFDo0
レス、ありがとうございます。やっぱり、盛り上がりがいまいちなのでしょうか……と悩み始めた>>1です。


>>338
はい。原作の中では風神録は特に簡単でした。が、神霊廟はそれを遥かに超える難易度でした。

具体的に言えば、他のシリーズは風神録でさえもNノーコンに最低1月掛かったというのに、神霊廟だけは数日で済んだ、とか。

パラレルEDも比較的超簡単に見れた、とか。


それでは執筆作業に戻ります。
341 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/12/13(火) 01:04:26.86 ID:NpgMNVOB0
ルーミア「こんばんわ〜。ご飯を食べさせてもらえると聞いてやって来たわ。で、どこどこ」

冬瓜「まて嬢ちゃん。それはこの『一日一談』が終わってからで……っておいまてなんで名前が『冬瓜』なんだよ!?」

フラン「さっきぎゅってしてドカーンしたらそうなったの、人間さん」

冬瓜「まじかよ……こほん。よぉ、こんばんわ。今日のMCを務める、同じみ冬瓜と。ってここもかよ……」

ルーミア「常闇の妖怪、ルーミアと」

フラン「紅魔館の悪魔の妹、フランドール・スカーレットだよ。今晩はこの三人でお送りするわ」

冬瓜「チクショウ。最近妙に運がわりぃ……雛ちゃんにまた厄取ってもらうか」

ルーミア「トングァって、あのスイカみたいなのかしら」

フラン「スイカ? スイカって緑の縞々の……」

冬瓜「あー、嬢ちゃん達。先に仕事済ませてからにしよう、な? ほれ、飴玉上げるからさ」

ルーミア「飴だけじゃお腹は膨らまないよ。でもご飯のためだから仕方ないわ。今日は『稗田家』に関する話ですって」

フラン「1000年以上前から幻想郷の妖怪達に着いて記録を残している人達らしいね。あ、クランベリー味ちょーだい」

冬瓜「『古記事』制作に携わった阿礼を除き、阿一を初代として現在は9代目だな。ほいクランベリー」

ルーミア「阿礼を0として、阿一を1、阿爾を2…………面倒だから飛ばして阿求を9って風に、順番になってるのが特徴的よ」

フラン「この連番の名を継いでいる人が「御阿礼の子」と呼ばれてて、全員「一度見たものを忘れない程度の能力」を持ってるの」

冬瓜「その能力を生かして、幻想郷内の妖怪の退治方法を乗せてあるのが『幻想郷縁起』だ。代々1巻ずつ刊行されてるらしいぞ」

ルーミア「でもそれも昔の話で、今じゃ面白い話や弱点というより苦手な物とか、そういう情報ばかり載ってるって天狗が言ってたわ」

フラン「私は495年間御屋敷の中だったから知らないけど、最近の幻想今日は平和らしいからそうなったんですって」

冬瓜「実はこの「御阿礼の子」ってのは阿礼が何度も転生した姿らしいんだが、転生前の記憶が全然引き継がれてなくって意味がねぇらしい」

ルーミア「しかも偶然なのか何か他の要素があるのか分からないけど、短命なんだって。30年生きれないとか」

フラン「人間ってただでさえ長くない命なのにねー。当代の阿求って子は気にしてないって書いてるけど」

冬瓜「そこは博麗の巫女が感じてる使命と似たようなもんかね? ま、今日はここまでだ」

ルーミア「さぁご飯を寄こすのだー! お腹ぺこぺこなのよ、もう」

冬瓜「なぁフランちゃん、ちょっといいか?」

フラン「んー? 何かしら」

冬瓜「君のお姉さんの写真(撮影:森羅諜報部)を見たんだが……おたくら本当に姉妹なのか?」

フラン「そうだよー? どうして?」

冬瓜「いやな、今そこでご飯をばくばく食ってるルーミアって子の方が似てるからよ」

ルーミア「♪」ハグハグ

フラン「よく言われるけど、お姉さまはあいつだけよ。正直言ってやになっちゃうけど」

冬瓜「そうか。ま、肉親は大事にしろよな。んじゃ今日はこの辺でさよなr……ん? また急な原稿だな」

フラン「私が読むー。えーっと、

『東方求聞口授(とうほうぐもんくじゅ)が来年の1月26日に発売される。その説明が説明なせいで波乱を巻き起こしそうで楽しみでござる』

    …………だって」

冬瓜「あー、誰が最初にキレるかとか書かれてるもんな。嫌な予感しかしねーぜ、全く」

ルーミア「というわけで今日はここまで。じゃあのー」
342 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2011/12/14(水) 01:19:23.56 ID:llqtSBEx0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

小牟「して魔理沙よ、何を見つけ……おぉ!」

???「だぁあっ! しつけーやつらだぜ。クロノア、落っこちてねぇだろうな?」

クロノア「大丈夫さ、ガンツ。でもなんで僕ら追いかけられてんの」

ガンツ「知るかっ。けどな、あの顔つきじゃぁ捕まったらひでぇ目に合うに決まってる。ここは逃げるに……」

小牟「おーい、クロノアー! ガンツー!」

ガンツ「ああ? ……っておいシャオムゥじゃねぇか!」

クロノア「レイジもいるよ! やっほーう!」

白狼天狗「またんか、侵入者ー!」ズバババ

クロノア「わわ、またなんか撃ってきたよ! 右右ー!」

霊夢「……青い方は解るけど、黒いのも知り合いなの?」

零児「ああ。彼もかつての仲間で、クロノアのパートナーさ」

魔理沙「なんだ、あのバイクっぽいの。カッコいいじゃん」


 何やら、白狼天狗達と追いかけっこしている二人の獣人。
 一人はクロノア……先にも言った、10歳前後の少年といった印象を受ける獣人。

 もう一人は黒と金の毛に身を包んだ、赤のジャケットを羽織る獣人だ。
 操るバイクや腰に挿した二丁のけん銃も赤く、全体的に反抗期の少年っぽい印象を受ける。
 ガンツ……クロノアの相棒にして、賞金稼ぎである。


ガンツ「ちぃっ、森で撒けねぇ。クロノア! バズーカで撃ち落としてやれ!」

クロノア「ええっ!? 僕らの事侵入者とか言ってるから、僕らが悪いんじゃ」

ガンツ「知るかっ! こっちの話も気かねーで決めつけてくる奴に捕まるなんて俺はごめんだね!」

霊夢「……助けに行った方がいいかしら、小牟」

小牟「出来れば頼みたいかのぉ。早めに手を打たんとガンツめの気が……あ」バズーカ発射!


 ドガーン!


白狼天狗「くそ、あいつら爆発物で攻撃してきたぞ。気を付けろ!」

ガンツ「ちっ。外したか。ちょこまかしやがって」

クロノア「僕に運転任せないでよぉぉぉ」

霊夢「行ってくるわ」


 クロノアに運転を無理矢理任せ、ガンツがバイクに搭載してあった武器で白狼天狗達を迎え撃ち始めた。
 その反撃を受け、血の気が上がったのか追いかける天狗は攻撃を激しくする。

 それを必死なハンドルさばきで避けるクロノアが、ここ一番の被害者かもしれない。

343 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/14(水) 01:21:45.30 ID:llqtSBEx0

早苗「なんですか、今の音は。爆弾でも爆発しましたか!」キラキラ

諏訪子「懐かしい音も聞こえるわね。マフラーからガスの出る音ね」

魔理沙「おー。早苗、諏訪子ー!」

零児「…………」

諏訪子「あら、魔理沙じゃない。今日は何の用?」

小牟「さっきのことはすっかり忘れとるようじゃな」

魔理沙「霊夢もあっちにいるぜ。んで、今日は面倒な話でさ。……って、神奈子は?」

早苗「神奈子様なら、現在は天狗達の元で将棋をなさっていたかと」


 神略異変以後、この山の神たちは妖怪達に受け入れられ、信仰心を受け取る代わりに神通力を供給するようになった。
 いわゆる、御恩と奉公の間柄である。

 それを定期的に確認するのだがついでに暇つぶしも兼ねられるため、時たま神奈子や諏訪子が向かうのだ。


霊夢「はい、ただいま」

クロノア「きゅぅ」チーン

ガンツ「なんで……俺まで……」チーン

白狼天狗*2「」チーン


 暴走していた二人と、自分が割って入っても静かにならなかった天狗を気絶させて霊夢が帰って来た。
 レッドクランをぼろぼろにして、だ。


諏訪子「あらら、もったいない」

霊夢「仕方ないでしょ。私にも撃って来たんだから。『空飛ぶ女なんて碌な奴がいねぇ』とか言いながら」

零児「流石に、これは可哀そうだがな。小牟、改めて彼女たちのことを教えてくれ」

小牟「じゃがそのまえに茶じゃ、茶。早苗〜、頼むわよ〜」

早苗「え、え? 諏訪子様の声?」

霊夢「まだ出てもないのにメタな事すなっ!」ドガッ

小牟「ぎょえへー!」

諏訪子「何やら面白いわね。あれになる話?」クイッ

魔理沙「信仰の事は私は知らないな。それより倒れてるやつらの分も一緒にお茶を頼むわ」

諏訪子「だとさ。お願いね〜早苗」

早苗「分かりました!」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
344 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/14(水) 01:23:46.31 ID:llqtSBEx0

〜〜〜守矢神社・本殿〜〜〜

零児「ほう、これは立派な造りだな。……やはり、本家大本と言うべきか」

諏訪子「おや、私達の事分かるんだ? 幻想入り?」

小牟「おそらくの〜。じゃがまぁ実は否定材料があるわけで」ブツブツ

霊夢「何ぶつぶつ言ってんのよ」

小牟「お、おう。気にすんな!」

早苗「お茶と、ちょうどおまんじゅうもありましたのでお持ちしましたよ〜」

クロノア「おまんじゅうっ!」ガバッ

魔理沙「おおう、起きたぜ」

霊夢「クロノアにだけは攻撃加えてないもの。自分で木に突っ込んで気絶してたわ」

零児「おはようさん、クロノア。怪我はしてないな?」

クロノア「ああ、うん。久しぶりだね、レイジ! デミトリの所以来だっけ?」

小牟「そうじゃな、クロノア。……つーかこれ異変終わるたびに言わんとあかんのか……」

諏訪子「大事そうな話してる所悪いけど、祟るわよ?」

魔理沙「おっとそれはごめんだぜ。んじゃま、どこから話す?」

早苗「(この兎っぽい子、かわいい……」

クロノア「あー、ここがどこなのか教えてくれない? 気付いたらここにいたんだ、僕ら」

魔理沙「んじゃ零児、頼むわ」

零児「ここの事なら俺じゃなくお前達だろう。……」


 青年説明中...


早苗「ほぇぇ」ポカーン

霊夢「……ま、妥当ね」ボソッ

諏訪子「もう一度異変、ねぇ。なんかぼんやりとそんな気もするわ」

ガンツ「クロノアが犬たぁ、センスのねぇやつもいたもんだ。兎だろ、こいつ」

クロノア「いや、そりゃ耳は長いけどさ」


 零児達四人は、神略異変や、その他の異変の概要を説明した。
 ただし、早苗及び神奈子の件はあやふやにして、だが。

 その説明の最中、ガンツが目を覚まし、簡単な挨拶や事情説明も終えてある。


小牟「諏訪子よ。ぬしもぼんやりと覚えておるのじゃな?」

諏訪子「眠りを妨げられたのを少しね。しかし、面倒な上に忙しそうね、貴方達」

零児「……ええ。全くです」

霊夢「……」
345 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/14(水) 01:27:58.94 ID:llqtSBEx0

魔理沙「ああ、今の話で思い出したんだけど、文に挑発してたのなんでさ?」

小牟「そうじゃぞ零児。ぬしらしくないと思うたんじゃよ」

零児「結局流れていたな。……あれはただ、調子が良かっただけさ」

霊夢「……そんなところだろうと思ったわ。なんだか見損なった気分」

零児「確かに、調子に乗っていたのは謝る。いつも以上に動きにキレがあったからついな。……だが」


 電瞬や『四嗣墳陣』を使う際、思っている以上に体を動かせるのに気付いた零児は彼らしくなく、調子に乗ったのだ。
 厄がなくなることで潜在意識下における重荷からも一時的に開放され、さらに少しばかり高揚するのだから多少仕方ないが。


魔理沙「だが? どうしたんだよ」

零児「異変を解決したと同時に、違和を感じてな。厄を祓ってもらう前に戻った感覚だ」

諏訪子「でしょうねぇ。厄がいっぱいいっぱいだもの」ケロケロ

早苗「そうなんですか? 諏訪子様」

諏訪子「今の私の姿なら見えなくなるんじゃないの〜? ってぐらいね」


 諏訪子は、ミシャグチを操るという性質の関係上、雛程専門的ではないが厄を視認し操作する事が出来る。
 とはいえ、操れる厄は実質、ミシャグチ用のマーキング程度なのだが。
 ……それだけでも十分だとかいう話はおいといて、だ。


クロノア「へー。……ところでレイジ、なんでそんな暗い顔してるのさ?」

零児「…………なんでもないさ、クロノア」

クロノア「うっそだー。あのときみたいな顔してるよ?」


 暗黙のうちに黙っている事に決めたとはいえ、やはり暗い雰囲気は隠しきれない。
 かつて世界の危機に挑んだ仲間同士であれば、なおさらである。


ガンツ「相変わらずおめーはデリカシーがないのな」

クロノア「だってあの顔は良くない事があった顔だよ。だから僕に出来る事があれば言ってほしくってさ」

零児「……ふっ。大丈夫さ。異変の大本を叩けばそれで済む話だ」

諏訪子「んで、この後はどうするの? もうすぐお昼よ」


 今朝、神略異変に入ったのは辰の刻を越える直前であり、現在の時刻は巳の刻をいくつか過ぎた頃合いである。


魔理沙「どうせだから次は気質異変行こうぜ。すぐそこだしさ」

早苗「あれ? 気質異変といえば確か幻想郷中で起きていませんでしたか?」

霊夢「そのはずなんだけどねー」

小牟「これまでのことを考慮すると、異変に関わった奴らが他所に出張っておるから、
   天子のとこだけで起きとるんじゃないかと推測するぞ?」
346 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/14(水) 01:29:53.68 ID:llqtSBEx0

零児「確かほぼ同様に、酒宴異変も元凶は一人だったか」

小牟「まー、本来なら気質異変の黒幕が……まぁよいか」

クロノア「??? ガンツ、キシツ異変ってなんだっけ」

ガンツ「知るかっ。さっきレイジが話してただろうがよ」

早苗「では、次は気質異変ですね! いやぁ、天狗から聞いてはいたのですがいったいどんな天気が発現するのでしょうか、私」

零児「……随分と乗り気だが、もしやついてくるつもりか?」

早苗「え?」

霊夢「え?」

小牟「え?」

早苗「いけませんでしたか??」


 気質異変とは、神略異変の後に起きた異変であり、幻想郷中を巻き込んだはた迷惑な暇つぶしであった。

 あの当時、守矢の面々はまだ幻想郷に慣れていなかった。
 また、信仰拡大のためのこれまたお騒がせな異変を企てていたりもした。
 そのために参加できなかった気質異変の「その人の気質が発現する」現象に対して興味津津なのである。


魔理沙「いいんじゃね? 早苗も結構強いしさ」

零児「俺も構わないとは思うが……。いいのですか、諏訪子神様?」

諏訪子「もうまんた〜い。むしろじゃんじゃん連れてってあげて。風祝修行に持ってこいだしさ」

クロノア「あ、なら僕もいく!」

小牟「そいつは残念じゃが無理じゃの」

ガンツ「無理だとさ。大人しく退け、クロノア」

クロノア「いや、早いよガンツ。理由を聞かなきゃ」

霊夢「簡単な話、定員オーバー」

クロノア「定員オーバー? どういうこと?」

魔理沙「私の箒に乗れるのは二人までってことだぜ」


 元から空を飛べる霊夢、魔理沙、小牟はいいのだが、未だ空を飛べない零児は魔理沙の箒に相乗りするしかない。
 そして魔理沙の箒は、子供だけであれば三人乗れたであろうが、大の大人は一人だけしか乗せられない。
 これ以上、空を飛べない者が来ても、地上を走り続けられる永夜異変ならともかく、他の異変では御荷物にしかなりえないのだ。


ガンツ「マリサは箒を媒体にしてるってだけで、別のもんでも飛べるんだよな?」

魔理沙「まぁ、飛べるっちゃ飛べるが慣れてないときついぜ」

ガンツ「そうかよ。俺のレッドクランなら三人乗り出来ると思ったんだがな」

小牟「大変申し訳ございませんが、レッドクランはぼろぼろになっちょるぞ」

ガンツ「はぁっ!? ちょっとまてよおい……!!」バタバタバタ
347 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/14(水) 01:32:13.87 ID:llqtSBEx0

諏訪子「やっぱりもったいなかったわね」

霊夢「知らないわよ。どうしてもって言うなら河童にでも紹介すれば」

ガンツ『お、おれのレッドクランがぁあ!?』ガァーン!

早苗「そうですね。どうせならそのまま変形できるように……」

ガンツ『いらねーよ、ちくしょう! ……ううう』


 早苗は少女にしては珍しく、ロボット……それも、合体や変形物が大好きなのだ。
 幻想郷に来てからは、長らく触れる機会がなく燻っていたようであるが。


零児「……ああ、レッドクランで思い出した。ケンのベルトは……残っているな」

小牟「おおう。クロノアの風のリングもあるぞ」

クロノア「よかったぁ。無くしたかと思ったよ」

零児「それと、夜雀の羽だが…………ん?」

魔理沙「胸ポケットに入れたよな。ないのか?」

零児「……ない、な。ボタンも締めてあるから落とすはずはないんだが」

小牟「よし、零児めをお仕置きする番じゃな」

霊夢「あんな羽どうでもいいでしょ。で、確かめたい事は分かったのかしら」

零児「まぁ、だいたいな。それから小牟、俺が言うのもなんだが機関の備品と同列に語る物じゃないだろ」

諏訪子「話を聞く限り極論、そこらへんの石でもよかったレベルだしね〜」

小牟「ま、マジレス禁止じゃ! わしが恥ずかしくなる」


 東方キャラに傷つける必要があったのは、異変の中にあるこの世界の物と、外の世界の物とを比較するためである。
 故に諏訪子の言う通り、だいたい何でもいいのである。
 ただ、零児が『敵対者のナニカ』に拘っているのだが。


魔理沙「確認はこれぐらいにして、さっさと行かないか? 気質異変はどうせ二人だろうし、終わらせてここに戻って昼飯だぜ」

早苗「お腹をすかせるにはもってこいですしね」

小牟「それには賛成じゃな。つーわけで行くとするかの」

零児「ああ。……では諏訪子神。貴女方の……」

諏訪子「あーっとストップ、零児。もっと気軽に話していいわよ。むしろ固くっていやかしら」

零児「……わかった。貴女方の風祝、責任を持って面倒をみる」

諏訪子「……後で何があったか話しなさいよ〜。あんたの口からね♪」

零児「了解した」

ガンツ「ちくしょう、修理できる場所なんてねーよなぁ……」

諏訪子「それに関しては河童にかけあってあげるわよ、狼君」

クロノア「よかったね、ガンツ」

ガンツ「だからレイジの話を聞いてなかったのか? ここの技術は……あーもうだりい」

零児「目で見てみたからわかるが、そこそこ期待してても構わないと思うぞ。……それじゃ、行ってくる」
348 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/14(水) 01:32:51.25 ID:llqtSBEx0




諏訪子「……隠し事は体に毒なんだけどね。ま、優しそうなオーラ出してたしいいわよね」

クロノア「?」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
349 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/14(水) 01:43:41.82 ID:llqtSBEx0
--- ---------------------------------------------------------------- ----------------- ---------------------――――――

 東風谷 早苗

 人間の少女。緑の髪に、巫女服を腋の部分だけ露出させた服を着用。蛇と蛙を模したものであろう髪飾りをしている。

 小牟及び、−−−から、奇跡を起こす程度の能力だと判明。また、洩矢諏訪子という神の血を継ぐものでもある。

 適正体の可能性は高い。引き続き調査の必要があると判定します。

--- ---------------------------------------------------------------- ----------------- ---------------------――――――

 クロノア

 獣人の少年。黒の毛に身を包み、耳の先端は白。青い服と帽子をかぶる。帽子にはカンバッジのようなものを付けている。

 小牟及び、−−−から、風のリングと呼ばれる物を介して風の力を操るものと判明。少年特有の精神構造をしている。

 適正体の可能性は不明。引き続き調査の必要があると判定します。

--- ---------------------------------------------------------------- ----------------- ---------------------――――――
350 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/14(水) 01:47:15.09 ID:llqtSBEx0
コンバンワ。投下レスし忘れててああもういいやってなりました。いいよね…

そして今回の投下はここまでです。お次は会話の通り、気質異変となっております。

これまた会話通り、東方キャラは二人なのですぐに終わる異変です。たぶん、きっと。

次回投下は閑話休題2の中編です。投下時期は土日になるかと……もしかしたら同時に本編も投下出来るやも。

では、失礼します。
351 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 07:22:08.64 ID:DZPUw6oDO
お疲れ様!
それにしても、戦闘中の小牟と諏訪子は本当にノリが良かったなww

零児は一体何を悩んでいるんだろうか…?溜め込む必要があったりするのは、大人の辛い所なんだろうな。

ガンツ…災難だったな。無事に直る事を祈っておこう。
352 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/15(木) 00:34:30.39 ID:qJaIMDAV0
こんばんわ。レスありがとうございます。思い切り忘れていた事を確認しにまいりました。

これまでのOP、妖々夢、永夜抄、風神録の書き方でどれが一番読みやすかったでしょうか。

一応、現在は風神録の書き方そのままに緋想天を書き溜めていますが、他の方が良かったと言う声が大きければそちらへシフトする心算です。

この変更は物語の根本には影響ないので気にせず突っ込んでくれて構いません。

それでは、失礼します。
353 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 01:17:57.41 ID:m5wE1OUDO
書き溜め乙。
書き方は今のままで良いんじゃないでしょうか?
354 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/12/15(木) 13:10:43.68 ID:qJaIMDAV0
輝夜「ふぅぁ〜〜。朝っぱらから呼び出されて嫌になっちゃうわねぇ、全く」

ヴェーゼント・リヒカイト『人の言うその感性、我には理解し得ぬ』

ジュノ「確かに、そのような無駄な感性は分かりませんねぇ。ああいえいえ、人の仕組みが無駄とはいいませんよ?」

輝夜「別に〜。そんな風に取り繕ってもらわなくてもいいわよ。でもこの無駄が人生を豊かにするのよ、きっと」

ヴェーゼント『……自我を得し者も、それを識ったのであろうな。これより、此の回の『一日一談』を取り行う』

ジュノ「司会は私、ロックマン・ジュノと」

輝夜「月のお姫様、蓬莱山輝夜と」

ヴェーゼント『ヴェーゼント・リヒカイトが務め様。此の回は「エンドレス・フロンティア」について、だ』

ジュノ「物語の関係上、無印ではなくExceedを基準として話を進めさせてもらいますよ」

輝夜「元々はいくつかの世界が隣り合い、クロスゲートやそれに類似するもので繋がっていた世界、ね」

ヴェーゼント『機械文明の発達した人の住む「ロストエレンシア」、日本の和の世界を模した文明の「神楽天原」』

ジュノ「妖精や獣人といった亜人種の住む「エルフェテイル」、人魚や半魚人の住む「ヴァルナカナイ」」

輝夜「悪魔っ子や堕天使、骨が住む世界、「フォルミッドヘイム」、最後に「ヴィルキュアキント」と「アインストレジセイア」ね」

ヴェーゼント『本来ならば、これらの世界は繋がっていなかった。だが我が母体が元の世界へ変えるためにクロスゲートを展開』

ジュノ「座標もめちゃくちゃで狙いも定まってなかった事から、上記の最後を除く6つの世界を繋げることになりました」

輝夜「で、無印の最後に本体の化身が倒されてクロスゲートが暴走。1つの「エンドレス・フロンティア」になったってわけね」

ヴェーゼント『その折に、「10年戦争」と呼ばれる戦いの最中、クロスゲートの暴走に飲みこまれ消えた妖精族と』

ジュノ「その妖精族が飛ばされた先で色んな意味でお世話になっていた修羅の「覇国」も世界融合に巻き込まれ、E・Fの一部に」

輝夜「面倒な話よね。飛ばされてあっちに慣れたと思ったらまたこっちに戻されて。しかもおまけつきで」

ヴェーゼント『だが修羅の一族の生き様にこれといった影響はなく、すぐさま順応し世界の危機を作る側、救う側に分かれて争った』

ジュノ「実はもう一つ、フォルミッドヘイムとほぼ同じ世界「アグラットヘイム」も融合しているのですが、Exceedではそいつらが黒幕なんですよねぇ」

輝夜「10年戦争前に転移した理由だとか、ヴェルトバオムの樹の事がフォルミッドヘイムに全く伝わってない謎とか、後付け臭が…」

ヴェーゼント『そこは触れるべきではない。ともかく、混沌度合いだけでいえばナムカプに引けを取らぬであろう』

ジュノ「SRWOGSの設定を引き継いでいたりする世界ですしねぇ。あれだけで十分カオスと言えます」

輝夜「その略称だけで謎ね。ま、エンドレス・フロンティアの大まかな造りはこの辺でいいかしら」

ヴェーゼント『月の姫よ。なぜお前達は穢れをわざわざ求めた』

輝夜「こっちでそういう話はよしなさいよ。本編向けよ、それ」

ジュノ「この方はそういう話のネタしかもっていなさそうですし仕方ないのでは」

ヴェーゼント『ううむ……ならばお前はどうなのだ、ジュノよ』

ジュノ「私ですか? ……いけませんねぇ。増えすぎたデコイはデリートするべきだとかそういう話題しか」

輝夜「二人とも談話向けじゃないわね。なんで呼んだのかしら……」

ヴェーゼント『内なる者の、敵対者の中でのお気に入りだと言われたな』

輝夜「へぇ。趣味が悪いと言うかなんと言うか」

ジュノ「そうですよねぇ。私をお気に入りとは中々に酷いお人だ」

ヴェーゼント『それでは、此の回はこれにて終焉だ。静寂とは程遠き世界の果てでまた会おう』

輝夜「いや、お気に入りとは言ったけど出られるか分からないわよ?」

ジュノ「なん…だと…? ふざけるな! 私は何のためにここにきtくぁwせdrftgyふじこlp」

ヴェーゼント『さらばだ』

輝夜「サラダバー、なんてね」
355 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/17(土) 01:19:57.16 ID:MvR1FL4xo
こんばんわ。レスありがとうございます。

時には深夜25時ではなく、AM1時としてみようとか子供じみた事考えた>>1です。どうでもいいですねはい。


では投下します。閑話休題2中編です。
356 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/17(土) 01:25:09.89 ID:MvR1FL4xo

〜〜〜博麗神社・縁側〜〜〜

「霊夢さーん! 零児さーん! いらっしゃいませんかー? ……遅かったかな」

クリノ「おや? 誰かいるよ、ミコさん」

神子「ええ、どうやら白玉楼の庭師さんのようですね」

 巫女不在でも人……いや、妖怪が訪れる博麗神社。今日も例外なく騒がしくなりそうである。

妖夢「うーん、どうしようか。お手伝い出来ると思ったのだけど」

神子「そこ、白玉楼の庭師さん。確か妖夢さんでしたか?」

妖夢「あら、神子さんおはようございます。……お隣の人は?」

神子「おはようございます。クリノさんと申しまして、どうやら幻想入りしてきた様子」

クリノ「おはようございます、ヨウムさん。おいらはクリノ・サンドラ。よろしく」

妖夢「! もしかして、零児さんのお知り合いでは?」

クリノ「えっ、そのレイジって頭に傷がある、あの?」

妖夢「はい。では、やはり」

 これまでに十人程幻想入りしており、流石に鈍感な妖夢でも気付く。

 一応、現実世界で不要となった人間の可能性もあるが……
  そういった人間はたいてい無気力か現実(幻想)を受け入れず混乱しているものである。

 それに、これまで出会った人々は例外なく気力に溢れている。
 これもまた、幻想入り(妖怪の餌)になる者には無い特徴であろうか。

神子「どうやら何か手掛かりがつかめた様子。やはりここは便利な神社ですね」

クリノ「おいらも、まさかこの世界で彼の事を聞くとは思っていなかったよ」

妖夢「ところで、貴方は……妖怪?」

クリノ「ん? いや、おいらはサンドラ族だよ」

妖夢「もしや、戦士ですか?」

神子「そのようですよ。女神を守る騎士の部下だそうです」

クリノ「こう見えても、このサンドラの槍を授かった戦士のはしくれさ」

 サンドラ族……幻想界における戦士の一族であり、歴代の乙女騎士達に仕える由緒正しき一族だ。

 その中でも、特に乙女騎士ワルキューレの事を想い行動するのがクリノであり、戦士長の称号を得ている。 

 一応かの戦いにて形式上【裏切り者】の烙印を押されたのだが、
  そんなものは建前で実績を知ればその名に恥じない行動を取っていたのは誰もが知るところである。

357 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/17(土) 01:31:53.53 ID:MvR1FL4xo

妖夢「では、一戦交えましょう」

クリノ「ええっ、どうしてだい? おいらは君と戦う理由がないんだけど」

妖夢「それが、ジューダスさんに……」

ジューダス『お前には、武器同士を合わせた戦いの経験が足りな過ぎる』

妖夢「と、言われまして」

 実際、剣士としての才能は有るはずなのだが剣を交える相手がおらず、近接による実戦経験はほぼ皆無。

 かつての気質異変のおりに様々な人と戦ったのだが、一人しかまともな武器持ちはおらず、
  その一人も一度苦言を呈しに来ただけでろくに戦っていない。

 ジューダスに今日は乗り気じゃないと言われ、他に当てもなく暇を持て余していたという訳である。

神子「一応、私も剣はそれなりに扱えますよ?」

妖夢「あ、それ飾りじゃなかったのですね」

クリノ「そういうことか。それにしても、ジューダスも……今回は、敵対していないんだね?」

妖夢「? ええ、零児さん達と一緒に異変を解決しましたよ」

クリノ「それを聞いて安心したよ。よし、手合わせしようか、ヨウムちゃん」

神子「……(蚊帳の外)……! では私が審判のまねごとをしましょうか。同意と見てよろしいですね?」

妖夢「あ、はい、お願いします。……では魂魄妖夢、参ります!」

クリノ「どこからでも、掛かっておいで!」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


クリノ「はぁっ、とぉ。貰ったぁ!」カァーン

妖夢「しまっ……!」

神子「そこまでっ!」

 結論だけ言えば、妖夢の負けである。それも、さんざんたる内容でだ。

 何度も言うが、クリノはサンドラ族の戦士長の称号を得た猛者だ。
 しかもかつての戦いにて、様々な得物持ちと戦い、体を傷つけながらも乙女騎士と並び立った者。
 たとえセンスがあろうとも、妖忌の言葉の意味を悟れぬ少女が、一族を担う熟練の戦士に敵うはずがなかったのだ。

 ジューダスに負けている地点で、妖夢にもわかっていたことだが。


妖夢「……ありがとうございました」

クリノ「お疲れ様、ヨウムちゃん。女の子なのにいい太刀筋だったよ」

358 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/17(土) 01:35:59.31 ID:MvR1FL4xo

妖夢「一太刀も浴びせられてないのにそう言われても」

神子「そうですね、まだまだ荒削りです。ジューダスという方が言った事も納得でしょうか」

クリノ「まぁ、こんなに戦の匂いがしない地域ならそれでもいいのだろうけど」

妖夢「これでも昔は結構荒れていたそうですよ。師匠の話ですが」

神子「ほうほう。私も新参者なのでその辺りはよく知らないのですよ」

クリノ「そうか。色々と話を聞きたかったけど、他の人に聞いた方がよさそうだなぁ」ウーン

妖夢「え? 何故ですか?」

クリノ「見た所、十歳行くかどうかだからだよ?」

神子「妖夢さんは四十八歳ですが」

クリノ「えっ?」

妖夢「はい、四十八歳です」

クリノ「えっ??」

 半身が人間、半身が幽霊のハイブリット。それが半人半霊である。
 区分上は妖怪扱いだが、その半身の関係上人間でもある、一見半端物。

 そんな魂魄一族は、半霊部分のおかげで成長が物凄く遅く、長寿なのだ。

クリノ「……はぁ、驚いたよ。おいら、人間の子だと思っていたから」

妖夢「半分は間違っていません。半人半霊ですので」

神子「しかし帰ってきませんね。であらば十欲を……」

クリノ「その能力、便利だね。簡単な未来予知になるなんて」

妖夢「ですが分かられ過ぎて話がかみ合いませんよ」

神子「……はて、聞こえない。妖夢さんの欲が聞こえない」

妖夢「? 私っていくつか足りてないのでは?」

神子「ええ。ですがそれにしたって多少は見えるはずなのですが……はて?」

 そういい、神子は神社の周りの森に向かって聞き耳を立てる。しかし、再び首を傾げる。

神子「むむむ、やはり聞こえない。これはもしや私の方が……?」

クリノ「どうしたんですか、ミコさん」

神子「いや困りました。どうも能力が働かないようで。少し神界に帰って様子を……あらっ?」

359 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/17(土) 01:39:29.04 ID:MvR1FL4xo

妖夢「石畳を持ちあげてどうしたんですか?」

クリノ「あそこに神界への入口があるんだ」

神子「土……ですね」

クリノ「え? ……本当だ。土が見える」

 神子達がここに来る際通った石畳を持ちあげるも、そこにあったのは土だけ。
 本来なら、某青い狸の机の引出のような良く分からない揺らぐ空間が見えているはずなのに、だ。

妖夢「もしや神子さんも力を吸われたのでは」

神子「む? どういうことでしょうか」

妖夢「はい、実は……」

 少女説明中……

クリノ「……零児に小牟、またすごい問題に関わっているんだね」

神子「非常に能動的で格好の良い方々ですね。しかし全く、これは困りました」

クリノ「フトさん達と連絡とれなくなりましたからね」

神子「それだけでなく、神界から出入りが自由に出来るのは私と青蛾さんだけなのですよ」

妖夢「それって……」

神子「物部氏や蘇我氏はしばらく、御留守番ですかね」

クリノ「ん? セイガさんがいけるなら大丈夫じゃ」

神子「彼女が出入り自由なのはその能力あってこそ。他の物まで透過することは難しいと言っていましたか」

クリノ「あー……うん、ご愁傷様だね」

神子「全くです。しかしこれでは暇ですね」

妖夢「どうします?」

神子「下手に動かず、ここで博麗の巫女を待ちますかね」

クリノ「おいらも、そうさせてもらうよ。零児達を待つのにも、ここは便利そうだしね」

妖夢「ではクリノさん、再びお手合わせお願いできますか!」

クリノ「あ、ああ、構わないよ。そのかわり、スペルカードルールでの戦い方も教えてもらえると嬉しいかな」

妖夢「分かりました。では、先にしましょうか?」

クリノ「ヨウムちゃんの好きな方で構わないよ。さぁ、どうぞ!」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
360 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/17(土) 01:45:42.27 ID:MvR1FL4xo
以上で投下終了です。

戦いの最中の描写を切るとここまで短くなります。非常に書きやすくなる半面味気ないですね、これ。

クリノと言えば、ビックの術の出が遅い所為でコンボが切れる事切れる事。サビーヌの槍連打してるせいで余計に落ちる落ちる。

かばうやライフと防御係数微妙に高め(だった気がする)のを利用して防御に回すのが正解だったかな?と今さら思いました。

それでは失礼します。次回は今日の昼間か、遅くとも明日には本編を。
361 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/17(土) 01:56:39.85 ID:4ktEcKLAO

乙です。

頑張ってください。
362 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/17(土) 15:27:29.97 ID:9f597PyDO
乙!
果たして神子さんはどんなキーポイントになるのだろうか?
363 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/17(土) 21:21:14.50 ID:QPX8tZzxo
500KB超えそうだね
364 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/12/17(土) 22:57:41.47 ID:MvR1FL4xo
こんばんわ。レスありがとうございます。昨日今日と手がかじかんでいい感じに冬ですね全く。

すっかり忘れていたキャラクター設定を張りに来ました。実際合っても無くても同じくがしますが念の為に。


東方projectWin版第十段 東方風神録より

秋 静葉

 紅葉と寂しさと終焉の神様。四季と区別される前から存在はした。「紅葉を司る程度の能力」。
 山に限らず、幻想郷中の紅葉を司る。異変中、零児達が景色に見とれていた関係で信仰心が増えている。
 その事を妹の穣子に興奮しながら話している。静かにだが。

秋 穣子

 豊かさと実りの神様。静葉の妹。「豊穣を司る程度の能力」。
 幻想郷中の収穫物(に限らない)の実りを司る。今年は夏の天候がベターだったので収穫祭を楽しみにしている。
 その事を姉の静葉にドヤ顔しながら話している。結構うるさめに。

鍵山 雛

 流し雛人形の九十九神。年齢不詳。「厄をため込む程度の能力」。
 最近、食料として幻想入りする人間がぱったりと止んだために厄の溜まり具合がいまいちだと愚痴っている。

川城 にとり

 河童妖怪。年齢不詳。「水を操る程度の能力」。
 谷河童の中では(魔理沙の甲斐あって)珍しく人に慣れている。どれぐらいかと言うと逃げ出さない程度には。
 最近入り始めたSFC類の雑誌を見て独自に開発中。ソフト量産出来ないから微妙なんだけどねげふんげふん。

犬走 椛

 白狼天狗。年齢不詳。「千里先まで見通す程度の能力」。
 河童と大将棋で暇を潰す日々を送っている。ただしこの後こっ酷く叱られる予定。椛のせいじゃないのにね。

射命丸 文

 鴉天狗。年齢不詳。四桁より上。「風を操る程度の能力」。
 文々。新聞の原稿執筆に勤しむ天狗。次の新聞大会が近いために絶賛デスクワーク中。
 とはいえ一日経たずに書き終えて刷り始めるために異変のことを知るのも時間の問題。清く正しいがもっとーです!

東風谷 早苗

 現代の現人神。十代前半。「奇跡を起こす程度の能力」。
 妖怪退治を生業とする、僅かに神の血を継ぐ人間の少女。信仰心を集めることに関して物凄い向上心を持つ風祝(神職の一種)。
 ロボット物に対して目が無いがにわかじみた所があり、好きな所を聞くと「とにかく合体・変形・ビーム・ロケットです!」とか。

八坂 神奈子

 守矢神社の表の神様。年齢不詳。「乾を創造する程度の能力」。
 信仰心獲得と、妖怪の山の技術革新を目的とした様々な事業を展開する、どこか社長っぽい神様。
 異変の最中、定期会談の為に天魔やその他有力な山の妖怪達と出会っていた。別名お茶会。なんか年よりくs\ピチューン/

洩矢 諏訪子

 守矢神社の裏の神様。年齢不詳。「坤を創造する程度の能力」。
 神奈子を社長とするなら、諏訪子は取締役な神様。いつでもどこでも目を光らせている。
 河童たちに色んな案件をばらまき、山にスーパーマーケットを作ろうと計画中。その関係でレッドクランの修理をにとりに任せようとも。
365 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/12/17(土) 23:43:12.07 ID:MvR1FL4xo

ナムカプより

ケン・マスターズ

 物質界のアメリカの格闘家チャンピオン。誰に対しても気さくに話しかけるため、山の中では死亡フラグ気味。
 「○○する程度の能力」未開花。素の「全米格闘王の実力」は近距離に限り零児と互角。
 更には素手で戦うタイプだが流派の関係で回避能力も高く、弾幕にも多少は対応している。受け限定。
 ただいまチャンピオンベルトを必死になって探し回っている。詳しくは後ほど。

コブン(25号)

 幻想界のお手伝いロボット。コブン達40体全部に言える事だが、臆病気味でトロン大好き。トロン大事。
 「○○する程度の能力」未開花。素の「何でもできるお手伝いロボット」は40体いて初めて戦闘に貢献できる程度。
 そのために、1体でいても戦いには役に立たない。が、家事全般は一人でこなす。日常向け。

クロノア

 幻想界の獣人の少年。明るく元気で前向きだが、決して向こう見ずではない。
 「○○する程度の能力」未開花。素の「風のリングを操る少年」は小牟と近距離戦で互角。
 他にもさまざまな武器を持つが、風を利用できる状態でないとスペルカード・ルールには非対応。

ガンツ

 幻想界の獣人の少年。斜に構えた風貌と態度を取るが、根は熱く嘘と裏切りを嫌う。
 「○○する程度の能力」未開花。素の「親父の後を継いだ賞金稼ぎ」はクロノアと同格。
 ただし、クロノアのように状況限定ではなく、いつでもスペルカード・ルールには対応出来る。それも全て重火器のおかげ。



以上です。神子さん達は閑話休題2が終わった後でですかね。


>>363
投下したら501KB超えました。

他所の良く伸びているスレとか見ると700レス-500KBだったりするのでこれ書き込み過ぎか、レスつかな過ぎか……。グスン



ただ、これまで投下した分や本筋の為に書き溜めてる内容を足すと既に600KB越えていたりもします。

しかもこれ、紅魔 地霊 花映 萃夢 を書き溜めていない状態で、だと言うのですから……面白い。

……この調子なら、1章1スレでよさそうな気がしてきましたが、まだ半分も言ってないので心にとどめるだけにします。

それでは、また。本編何故か進めれなかった>>1でした。
366 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/18(日) 00:21:16.54 ID:sxLmKIsko
乙です いつも楽しく見てますよ
367 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/18(日) 16:03:03.32 ID:0/tZwKZuo
こんにちわ。

アレディ「励ましのお言葉、ありがとうございます。修練の励みとなりましょう」

……いえ、彼に言わせたくなっただけなんです。彼ってそういうキャラですし、ね。


ではこれから投下します。緋想天1面というか前編です。
368 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/18(日) 16:09:34.25 ID:0/tZwKZuo
〜〜〜守矢神社・本殿裏〜〜〜

小牟「そうじゃよ零児。一度この術式で飛べるか試さんとな」


 本殿の裏手、頭上にて不自然に黒い雲が集まっている空間を前に、小牟がピコーンと耳を立てる。
 ……いや、耳っぽい髪か。


零児「ん? もう俺に合わせられたのか」

小牟「おそらくの。わしは妖力で飛んどるが、ぬしなら五行の応用じゃ」

早苗「五行ってそんなに便利なものなんですか?」

魔理沙「一応万物の役割を当てはめてるらしいからな。きっと万能なんだぜ」

零児「言うほどでもないさ。人間の体で出来ることは、高が知れている」

小牟「今回のこの理論で飛べるようになれば、万能具合がマッハじゃがな。ほれ、こいつをこうしてじゃな……」


霊夢「…………」

魔理沙「ふむふむ……」

早苗「???」


零児「……ここをこうして……よし、準備出来たぞ」

 小牟の説明を受けた零児が準備を済ませる。堂々とした、仁王立ちである。

小牟「うぬ。力の巡りは問題ないぞ、零児」

魔理沙「さて、私が楽できるかどうか」

早苗「はっ。魔理沙さんの箒にクロノア君を乗せて魔女宅……!!」

霊夢「? 何言ってるの、早苗」

小牟「その発想はなかった」

零児「その内飛べなくなるぞ。……始める」フワッ

 五行を元に組まれた術式を、徐々に展開する零児。
 彼を中心に、柔らかな風が吹く。

小牟「掛け声は『飛翔』か『take off』じゃぞー」

早苗「『fly a way』でもいいのでは!」

霊夢「さっきから何を言ってるのよ、早苗」

零児「……(金で樹を加工し薄い膜とし、火で水を煮たせ気体とし、土から離れて飛び立つイメージ……)『飛翔』!」ブワッッ!

 説明されたイメージを心に浮かべ、その通りに動かせるよう力を巡らせ……唱える。

早苗「…………」

霊夢「…………」

魔理沙「…………」

小牟「……あっるぇ?」

零児「……飛ばんぞ、小牟」

小牟「あっれれのれぇ? おかしいぞぉん。術は完璧なはずじゃが……」

 しかし、地面から飛び立つ気配がない。掛け声をあげるだけの形になり、僅かだが恥ずかしい。
369 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/18(日) 16:12:39.70 ID:0/tZwKZuo

霊夢「……確かに巡りは悪くないけど……零児さんに合わなかったんじゃない?」

小牟「うぅーむ。長らく零児と一緒におったから、それはないと思いたいんじゃが」

零児「まぁ、無理なら仕方ないさ。責めるつもりはない」

魔理沙「楽が出来るかと思ったんだけどなー。零児が乗ってるとカーブの安定感増すんだけどさ」

早苗「何気なく飛んでいましたが、そういえば飛ぶのも十分常識外でしたね」

零児「普通の人間は自力で飛べんしな。すまん、魔理沙」

小牟「いやぁ、わしのほうが悪いぞ。こりゃもっと改蔵せんとな」

魔理沙「零児をか?」

小牟「それもありじゃが、ガトリング装着したクロネコ見たくなってしまいかねん」

早苗「あれもロボットでしたね。いえ、アンドロイド?」

零児「話が合うのがなんともな。それに、そんな改造まっぴらごめんだ」

霊夢「じゃぁ、もういいかしら。気質異変に飛びこむわよ」

早苗「ワクドキです!」

小牟「原作再現じゃとすると早苗目が入れるか否か……天則仕様で頼むぞ!」

魔理沙「乗ったな? よーし行くぜっ」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜真黒な雲海・竜の巣〜〜〜

  ボフンッ

魔理沙「わふっ! ひゃーーつめてぇ」

零児「上空なうえ、雲の中だからな。春雪のような事が起らん限り、普通はこんなもんさ」

早苗「服が秋物でよかったです。……ですがあれって夏ごろに起きてませんでした?」

霊夢「あんたのそれ秋服だったのね」

小牟「そういうぬしはどうなんじゃ、霊夢」

霊夢「え? 秋服にしか見えないでしょ」

零児「どっちもどっちだ。早苗も無事、来られたようだな」

 年がら年中、脇を露出している巫女服なのだから見分けがつくはずもなく。というかそれでいいのか幻想郷。

小牟「そうじゃな。して魔理沙よ、実際あれはいつごろの異変じゃったか?」

魔理沙「梅雨が終わるころ、つまり夏の手前だな。いい感じにキノコが生えてたぜ」

早苗「私のこれはきっちり素材が変わっています。狐の毛皮ですよ!」

小牟「なん……じゃと……? ここであったが百年目、仲間の敵討ってくれようぞ!」

早苗「む、戦りますか! そういえば貴女も狐の妖怪。退治して差し上げましょう!」

 一触触発……に見えて、小牟は手をうねらせている。正直戦う風に見えない。
370 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/18(日) 16:16:23.38 ID:0/tZwKZuo

零児「遊んでいる場合か、二人とも」

衣玖「そもそも、狐の毛皮であれば色がおかしいのでは」

霊夢「そうね。毛皮ならそれっぽくわかるようにしなきゃ意味ないわ」

早苗「ええ、流石に冗談です。ウール80%だったと思います」

 実は素材より編み方や組み合わせ方のほうが重要なのだがこんな少女が知るはずもなく。

魔理沙「それがどうなのかわかんねーけど。っと少し広い所についたぜ」

衣玖「お気を付け下さい。平とはいえ山頂付近。一歩足を踏み外せば、落ちながら天に登ることになってしまいます」

零児「ああ、ありがとう。しかし、空気が薄くならないな」トンッ

小牟「天界が近いからの。あっちから空気が流れとるんじゃろ」

??「おや、お客さんですか? 衣玖さん」

早苗「て、典型的サラリーマン!?」

霊夢「何その服。すっきりしてるわね」

小牟「中村ぁ! ……その服でよくここにおられるの」

中村「おや、私のことをご存じで? 申し訳ない、どこでお会いしましたか?」

 ぴっちりとした黒のスーツを着こなし、眼鏡を掛け、暗い雲の向こう側からやって来た三十代の男。
 街中でぱっと見ただけでは群衆に紛れ込みそうでありながら、纏う気配は先に合ったケンと変わらない。

 中村等……かの戦いにて、一「サラリーマン」として戦った、れっきとした仲間である。

零児「ちょっとまて、イクさん?」

魔理沙「あれ、そういえば……居たぜ」

衣玖「中村さん、このたびはどちらへ?」

中村「土地の話で少々閻魔様の元へ」

早苗「えーっと、ここから閻魔様の元へ……すごく歩きますよ?」

中村「ええ、三刻は歩くことになりましょうか」

零児「中村さんなら、毎日こなしているイメージがあるな」トコトコ

霊夢「ところでいつの間に居たのよ、電気ウナギ」

衣玖「服の素材が狐だというあたりです。それから私は龍宮の使いですよ、博麗の巫女」

 一行の空気にいつの間にか馴染んでいた、自らを龍宮の使いと名乗る少女。
 羽衣を纏い、リボンやレースを全身にまんべんなくあしらった優雅な服を着ている。

 永江衣玖……自称しているように、龍宮の使い(龍神の使い)である。

早苗「相変わらず見事なまでの紛れ込み。全く気付けませんでした」

小牟「空気を読む程度の能力は流石じゃな。女子トークでも場を盛り上げるんじゃろ」トコトコ

衣玖「ところが天界は思った以上に暇なのです。天人様達の会話も堂々巡りですし」
371 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/18(日) 16:20:35.23 ID:0/tZwKZuo

零児「彼女が地震を知らせに来るという?」

小牟「うぬ。先もゆうた『空気を読む程度の能力』で地震の前兆を緋色の気質から読み取ったようじゃぞ」

 衣玖の空気を読む程度の能力とは場の流れを感じとったり、気質と呼ばれる物事や現象の気配のようなものを読み取る能力だ。

 余談ではあるが、性質だけなら気質と厄は類似しているようだ。
 溜まることで現象を引き起こすという部分が、だが。

中村「そこまで詳しく覚えておられるとは。年は取りたくないものですねぇ」

霊夢「別にいいんじゃないかしら。後々思い出すんでしょうし」

衣玖「そう、地震なのです。博麗の巫女、このままで地上が壊滅するほどの地震が……」

魔理沙「それはとっくに回避されたぜ? 天子が楔石打ち込んでさ」

早苗「ああ、あの神社倒壊騒ぎの」

霊夢「というか紫が言うには地震はあいつのせいだって」

小牟「(今は溜めこんどるだけなんじゃが、無駄な混乱引き起こしそうじゃし黙るかの)」

衣玖「え、総統娘様が既に?」

零児「……とんでもない能力持ちが居たもんだな」

中村「むむ? 確か前に聞いたときは、あくまで大地が溜めこんでいるのを僅かに分散させているだけと」

霊夢「……なんですって?」

小牟「こ、この異変での設定じゃろ、たぶん!」

魔理沙「そうなのか? まぁ、あいつの性格からすればそんなチマチマしたこと似合わなそうだしな」

 魔理沙は天子と呼ばれる少女をそう評価するが、紫を唯一本気でキレさせた相手という事を知らなかったりする。

霊夢「どっちでもいいか。この異変の事だとしても関係ないし。さっさと元凶倒しに行くからそこをどきなさい」

衣玖「一応お尋ねしますが、元凶とは……」

霊夢「天子に決まってるじゃない。あの生意気不良天人よ」

中村「上司の娘さんを倒しに行かれると。確かにあの娘さんは我儘が過ぎますが……」

早苗「置いてけぼりです」

零児「俺もさ。どうやら困った娘だとは察しがつくが」

衣玖「……ではどうぞ御進みください、博麗の巫女と、その御一行」

早苗「いいのですか?」

中村「むむ、よろしいのですかな、衣玖さん」

 天女が優雅な所作で、道を開ける。いや、その動きはまるで空気の如くか。
372 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/18(日) 16:25:59.54 ID:0/tZwKZuo

小牟「やはり、ぬしは天子めにお灸を据える必要があると思うちょるな?」

衣玖「さぁ、何のことでございましょうか」

零児「だが、争わずいけるのならそれに越したことはないさ。……天界へはこのまま歩いていけるんですね、中村さん」

中村「ええ。そこに私がよく通る山道がありますので、そこからなら」

魔理沙「……ん、ちょっとまてよ。ここは確かに広いけど、こっから先は超坂道だったはずだぜ? あれを飛ばずに行くのは無理が……」

中村「ええ、生身では無理でしょうが……」

零児「中村さんは、ベラボーマンに成れるんですよね」

中村「銀の力を借りて、ですがね」

早苗「ベラボーマン……!?」

中村「お見せしましょう。『銀の力が私を変える……』」

小牟「BGM「核熱造神ヒソウテンソク」が合いそうじゃな」

零児「何の話だ」

 サラリーマン中村の体が光りに包まれ、そのシルエットが変化していく。
 ピッチリとしたスーツがでこぼこ状に変化し、全体的に厚みが増していく。
 眼鏡しかつけていなかったはずの頭も、トサカのようなものが生えてくる。

早苗「おおおお!!!」

魔理沙「なんか太ましいな」

 光が引いた先に居たのは、ヒーロースーツに身を包んだ男。

 青い四肢に、白のグローブとブーツを付け、胴体は緑と黄色のパワードスーツ。
 赤いマフラーに黄色いヘルメットと、ゴーグルを装着した、中村等その人だ。

零児「その姿も様になっていますね、中村さん。……いや、ベラボーマン、と呼ぶべきか」

ベラボーマン「この姿もあまり人の前では晒していないつもりですが……いやはや、本当に申し訳ない」

霊夢「…………」

魔理沙「…………」

早苗「…………」

小牟「お主らどうしたんじゃ。もしや、このスーツのかっこよさに……」

霊夢「……ダサいわね」

魔理沙「だっせぇー」

早苗「おぉぉぉぉ………………」

ベラボーマン「だ、ダサい、ですか」

霊夢「色彩最悪じゃない? もっと落ち着いた色には出来なかったの?」

魔理沙「いや、それよりもデザインだろ。なんだよあの腕と脚。スマートじゃないぜ」

早苗「だ、ダサかっこいいじゃないですか!!」
373 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/18(日) 16:29:43.54 ID:0/tZwKZuo

小牟「早苗、フォローになっとらん。つーかこれそんなにダサいかの?」

ベラボーマン「なっ、ぐはっ!?」

零児「お前達……」

衣玖「な、中村さん、大丈夫ですか?」

 散々な評価を受け、ベラボーマンの膝が折れる。……少女達の趣味から離れていたのだからしょうがない。早苗除く。

ベラボーマン「え、ええ、まぁ……このぐらい、会社周りに比べれば」

小牟「確かに、始末書のツケに比べれば屁でもないの」

零児「それはお前だけだ」

霊夢「まーいいわ、ださいおじさんは放っておいて先に行くわよ」

零児「……そんなにダサいか?」

早苗「私はかっこいいと思うのですが……」

魔理沙「いやー、だからやっぱ造形がなぁ」

零児「あれにも理由があるのさ。とにかく、先に進もう。……失礼します、中村さん」

ベラボーマン「あ、はい、御達者で」

 ナンデアンナブヨブヨナンダ。マッスグノバセバイイノニサ

 アレハテヲノバスタメデダナ

 ノビルノデスカ?!デハトンダリヘンケイシタリ……

 ヘンシンハシトルジャロ、サナエ

ガヤガヤ…………



ベラボーマン「……それで、本当に行かせてよかったのですか、衣玖さん」

衣玖「はい。彼女達なら、総統娘様を懲らしめる事が出来るでしょうし、何より……」

ベラボーマン「何より?」

衣玖「……あの狐の妖怪さんと男の人が私を睨んでいました。もし止めようとしていればすぐさま地に伏せていたかと」

ベラボーマン「……そういえば、両端に居ましたな。あれほど出来るお方を忘れてしまう事はないと思うのですが……」

衣玖「それも何かしら理由がありそうでした。ですが、今は総統娘様に勝てる事を祈りましょう」

ベラボーマン「そうですな。零児君の無事を祈って。……おや?」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
374 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/18(日) 16:39:20.82 ID:0/tZwKZuo
以上で今回の投下を終わります。


衣玖さんは空気を読み、かつ争い事は嫌いな温和な妖怪。

そこにベラボーマンこと中村さんが居たら戦いなんて起りはしませんよね。中村さんまじ社会人の鑑。


じつはクリスマス企画を予定しています。内容は本編でも閑話休題でも一日一談でもない完全どんちゃん騒ぎですが。


それでは、失礼します。次回投下は若干不明です。週内には投下したいのですがどうなるか……。
375 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/18(日) 17:03:40.43 ID:CrF5x6ODO
お疲れ様ぁっ!
魔翌理沙達よ、ベラボーマンは性能重視なんだ…だからダサいなんて言ってやらないで。強いて言うなら、時代のせいなんだよ…。ってか幻想入りってのはそう言うのからしてくるんじゃないのかい?しかし閻魔翌様と商談とかまじパネェっす中村さん。
376 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/18(日) 21:55:06.64 ID:sxLmKIsko
乙ぅ
377 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/19(月) 08:38:57.79 ID:WmrYxIlJo
おはようございます。レス、ありがとうございます。

少々返信をば。

>>375
個人的な考察ではありますが、戦隊物や特撮物と旧アーケードゲームは幻想入りをまだしていないものと考えています。

理由としては、前二つは潜在的なファンが相当いるから。

アケゲーは、日本であればゲームセンターがある限り無意識的に思い出されるからです。

更には持ち主が人知れず居なくなることで幻想入りするというパターンの影響外にいますしね。

これらの関係から幻想郷内では見慣れてる人がおらず、ロマンという常識も知られていないためこんな結果に、と。


じゃぁ何故(>>1含む)零児達がかっこいいと思ったかと言えば、上記に加えてナムカプでの活躍を知っているからですね。

「負けられないのですよ。今も、昔も」とかもう場面と合わせて心に来るものがあります、ええ。


それではこの辺で。失礼します。オートスキル愛妻弁当をどういう扱いにするか迷っている>>1でした。
378 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/20(火) 01:33:44.41 ID:FTjy+pv1o
実に面白い
感想はそれだけ
379 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/12/21(水) 02:25:42.76 ID:5NfVVfrxo
ワルキューレ「皆さん、こんばんわ。もう寝ていないといけない時間ではありますが、本日の『一日一談』を始めさせていただきます」

レミリア「進行役は私、『ツェペシュの幼き末裔』レミリア・スカーレットと」

マーク「俺は、マーク・ハンターだ。雇われ傭兵だぜ」

ワルキューレ「そして私はワルキューレと申します。それではよろしくお願いしますね。レミリアさん。マークさん」

レミリア「ああ。固くない程度にお願いする。戦乙女 ど の 」

マーク「俺は、金を貰った分の働きをする。それだけさ」

ワルキューレ「そ、それも一つの形だと思います。では本日の話題……一つ目は『式神』についてお話しますね」

レミリア「世間一般における『式神』の認識は、特定の作業をする便利な駒か、戦いのときに使役される道具のイメージか」

マーク「昨今のアニメの影響で、ある程度自立していたり成長するようなのも生まれて来たな」

ワルキューレ「東方projectの中では八雲紫さんの式、八雲藍さんとその式、橙さん。鴉さんにも居ましたね」

レミリア「鴉は私の知らない所だったらしいがね。東方だと、式神はパソコンなる物のイメージで語られる事が多い」

マーク「超高速演算機でありながら命令通りにしか動けないって点だな。言われたことしか出来ないのはナンセンスだ」

ワルキューレ「……そうですね。時には、言われた事に反する意思も持たねばなりません。反逆者、クリノのように」

レミリア「あれぐらい一途な部下が居ると上司甲斐があるというものだな。と、藍と橙は式なのは事実だが、入力タイプとなっている」

マーク「式が動くんじゃなく、式として動くようになるってわけだ。人間が装備によって剣士になったり魔法使いになったりするイメージだな」

ワルキューレ「続きまして二つ目は『幻想郷における人間と妖怪の協定』についてです」

レミリア「神やらそれ以外も一応は含まれているが、ここは大別して人間と妖怪(人間以外)の二つに分けさせてもらう」

マーク「幻想郷ってのは外の世界で忘れられたり、力を失った妖怪が入ってくるというのは散々言っているよな」

ワルキューレ「そういった者達が幻想郷に入ったとしても、そのままではやはり力を失いやがては消滅してしまいます」

レミリア「それの救済処置的に存在するのが人里の人間達だ。あそこの人間は私達妖怪や神を認識することで恐怖心や信仰心を奉げる、一種の動力源だ」

マーク「だが、妖怪の中にはそれを理解せずただがむしゃらに人間を襲うような奴らもいる。そこで紫がルールを制定した」

ワルキューレ「人里内部の人間に対して無闇に手を出すのは禁ずる、と」

レミリア「正直、私のような吸血鬼であれば襲わないから何の関係もない話だ。
     そもそも人間大量虐殺みたいな異変を起こせば霊夢達博麗の巫女が黙っていない」

マーク「これのおかげで人里の人間は無事暮らせるようになった。んだが今度は一部の妖怪の腹が減る。主に、人食い妖怪のだがな」

ワルキューレ「その問題を解決するために、今度はどうしたのかとおっしゃると………………八雲紫さんの神隠しの犯人と……いう二つ名……が……」

レミリア「その事に関してはまた別の機会にしようか。戦乙女殿に話させるのは酷というものだ」

マーク「吸血鬼の癖に、やたら譲歩するじゃないか? お嬢ちゃん」

レミリア「私の得にならないもの。全く、どういう選考したのかしら」

ワルキューレ「ありがとうございます、レミリアさん。……ふぅ」

マーク「ま、そんなに思い詰めなさんな。さて、仕事が終わったから俺は帰るぜ。契約金はいつものスイス銀行経由でな」

レミリア「どこの狙撃手だ。……ふぅ、こんな風で良かったのかしら、スタッフ」

ワルキューレ「良かったようです。……はぁぁ」

レミリア「戦乙女殿は本当にお疲れのようだな。どれ、ここは咲夜が教えてくれた元気の出る歌でも一つ」フフン

ワルキューレ「?」

レミリア「熊の子見ていたかくれんぼー。お尻を出した子一等賞ー」

ワルキューレ「…………ふふっ」

レミリア「夕焼け小焼けでまた明日ー。まーたあーしーたー………………」


マーク「…………『closed』だ。あばよ」
380 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/23(金) 01:09:02.19 ID:G9nHBhyNo
こんばんわ。レスありがとうございます。

これより、東方緋想天2面という名の最終面を投下します。
381 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/23(金) 01:11:57.47 ID:G9nHBhyNo

〜〜〜天界・さびしげな桃園〜〜〜

「暇ねぇ」

「わざわざ地震起こして巫女を寄こそうとしたっていうのに、巫女どころかありっこ一匹きやしない」

「気質の集まりも悪いし、もしかしてこの剣ナマクラじゃないでしょうね」ブウン

 スパッ

「出るわよねぇ、『非想の剣』。……はぁ、下で宴会でもしてるのかしら」ブンブン

 緋想の剣……それがこの、『気質異変』にて重要な要素を占めるある意味での元凶。
 天人にのみ扱え、人や物の性質をあらわす「気質」を集めたり、相手の弱点を確実につく能力を持つ。
 元の異変では、天子は最終的に霊夢に勝つのだが、その理由は体が頑丈なだけでなくこの剣のおかげでもあるだろう。

「衣玖は龍神様の様子を見に行って帰ってこないし、中村は閻魔のとこ。はぁー、暇ねぇ」クルクル


 ボフンッ

『おっ。でたぜー、レイジ』

『そのようだな。……綺麗な場所じゃないか』

「あらっ! ようやくお出ましのようね。さんざん待たせたんだから楽しませてくれなきゃ嘘よ……うふふふ」シュンッ

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜天界真下・雲海の中〜〜〜

早苗「へぇ、あの腕と脚は伸びるためにあんなぼよぼよに……」

小牟「びよーんと伸びるんじゃぞ。まるでゴムじゃな、あれは」

霊夢「ゴムで伸びつつ降りるって、あの外見に似合わず野生児っぽいわね」

 零児がベラボーマンのことを説明しながら、一行は天界へと続く雲の中を進む。
 春雪時の冥界ほどではないが、気温が上昇し始めている。

零児「ベラボーマンの服は銀の力で生み出された衝撃吸収材でもあるらしくてな。宇宙人の力だから詳しくは分からんが」

魔理沙「宇宙人かー。タコなんだろ?」

早苗「いえ、ぬえさんがそうですよ!」

小牟「ぬしはまだそれを信じとるんかい。っとぉ光が見えて来たの」

魔理沙「よーっし、御先っ! しっかりつかまれよー」

 ボボフンッ

魔理沙「おっ。出たぜー、レイジ」

零児「そのようだな。……綺麗な場所じゃないか」

382 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/23(金) 01:14:21.18 ID:G9nHBhyNo

 ボフンッボフンッボフッ

霊夢「っと」

早苗「お邪魔します! ……広いところですねー」

小牟「何故じゃ、何故わしだけ尻がつっかえとる!」ジタバタ

零児「お前さんの尻、別に大きくないだろう」

霊夢「…………なんで知ってるの?」

魔理沙「な、なんでなんだ」サー

早苗「何故でしょう!」

零児「お前達、何を期待している」

小牟「墓穴を掘ったの、零児。ついでに嘘じゃよ」スポンッ

 年頃の少女達の前では不用意な発言をすればキャッキャウフフである。

霊夢「ねぇ、教えなさいよ」

早苗「その話、興味があります!」

零児「単に、尻を何百回と叩けば自然と覚えるだけだ。他意はない」

早苗「お、お尻を何百回も……」ポッ

魔理沙「早苗、意味が違うぜ……あは、あははは……」

??「ずいぶん楽しそうな桃色トークね。ここが桃園だからかしら?」

小牟「70点と言ったところかの、天子よ」

零児「そういえば、桃の木が沢山あるな。……お前さんが、今回の異変の首謀者か」

??「あら、異変という事になっているのね。嬉しいわ〜。地震を起こした甲斐があると言うものかしら」

 お淑やかな足取りで現れた、派手目な衣装に身を包む少女。
 薄桃色の上着に、紺碧色のスカート。スカートよりも濃い髪に、桃の飾りを付けた黒の帽子をかぶる。
 前掛けになっている上着からは、虹色を模した飾りを垂らしている。それが派手に見えるようだ。
 彼女の名は……

天子「と、自己紹介が遅れたわね。私は比那名居天子。御察しの通り、この異変を起こした……」

霊夢「成敗っ!」シュバッ

天子「あららっと。人の話は最後まで聞きなさいよ、巫女」

霊夢「知ったこっちゃないわよこの不良天人。良い子ちゃんぶってるつもりかしらないけど、あんたの本性とっくにばれてるのよ」

小牟「…………絶壁じゃな」

零児「十いくらぐらいの外見で胸がある方がおかしいだろう。それに霊夢、落ちつけ」

早苗「……」ペタペタ

魔理沙「(気にしてるのか……)……」ペタペタ

天子「(ペタペタ)……そ、そもそも胸なんて脂肪の塊じゃない! 桃以下よ!」

小牟「わしはボリュームアップしたもんね!」フフーン

零児「……はぁ」

霊夢「……何やってんのよ、あんた達」フンス

 第二次性徴期の少女達の悩み……なはずだが霊夢は知ったこっちゃないようだ。
383 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/23(金) 01:16:58.74 ID:G9nHBhyNo

零児「ガールズトークは構わんが、本来の目的を忘れてもらったら困るぞ」

天子「そ、そうよ。男の人の言う通りよ」

霊夢「……そうね。あんたが私の神社と縁を結ぶために地震起こしてたとかね」

天子「……何の話かしら。私はそもそも暇を潰したくって地震を起こしていただけなのよ?」

魔理沙「あれ、パチュリーが何か言ってたような」

小牟「そんでもって霊夢に負けてー。敗者だから賠償するとゆうて要石を打ち込む算段じゃったか」

天子「!!」

早苗「そ、その手が……!」

零児「やらせんぞ」

天子「……へぇ。平和ボケしてるかと思ってたけど案外鋭いのね、地上の奴らも」ブンッ

 先ほどまで年頃の少女のようだった顔が一変、冷酷な策士の笑みに変わる。

零児「……」

小牟「いやー、それに気付いたん紫だけじゃし、一度は建て直した後じゃよ?」

天子「は? 何言ってるの? まだ神社は建て直してないわよ」

早苗「なるほど、私もこのように……あれ、そういえばどのようになっていたのか教えていただいて……」

霊夢「あんたの認識がどうか知らないけど今回神社は壊れてないの」

魔理沙「あんときの神社は萃香が建て直したんだっけ。一日で」

霊夢「二日ね」

天子「…………何言ってんのよ、あんた達」

 気質異変。それは小牟の言う通り、天子の裏の思惑から起こされた戦略的異変。
 それまでの異変との大きな違いはやはり、負ける事が前提であったことか。

小牟「よーするに、ぬしがしたことはまるっと全部お見通しだ! っちゅーことじゃ」

零児「胡散臭いが、事実だな」

霊夢「胡散臭いけど、事実ね」

早苗「あれ、聞いたことのある台詞のような」

魔理沙「うーん、集めてたのは別の奴だとか、うーん」

天子「……っ。うざいわね、あんた達。地上の人間の癖に」

零児「生きている界や種族、身分で評価するのは己が身を滅ぼすぞ、天人」

霊夢「くずれよ、零児さん」

天子「……要石『カナメファンネル』」

 数々の挑発(に取れる言動)と計画の破たんに、天子の余裕の笑みが消え、苛立ちが見える。

 そこで宣言されたスペルカード……八つの要石が正立方体の頂点となり、辺を均等に伸ばしながら弾幕をばら撒くスペルだ。
 天子はそれを二段……正十六面体になるように解き放つ。

零児「……とうとうキレたか。やるぞ、皆」

384 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/23(金) 01:18:51.63 ID:G9nHBhyNo

早苗「ではまずは私が! 『コバルトスプレッド』!」

 早苗の周囲から蛙型の弾が大量に発射される。それらはこちらへと向かう五つの要石に向かう。

小牟「援護しちゃる。『玄武乍』……シューッ!!」

 早苗が発射したのと同時に、小牟が玄武乍をサッカーボールのように蹴りあげる。

 先頭に居た五つの蛙に爆弾が装着され、要石にぶつかる……。
 小規模ながらも爆音が五連続で鳴り響き、要石を軽く砕く。も、それだけでは止まらない。
 着弾すると拡散する性質を持つ早苗の弾が、爆発の威力を上乗せた状態で要石を巻き込み……破壊したのだ。

天子「なっ、要石を……!?」

零児「『踏み込む』!」

魔理沙「突っ切る!」

霊夢「壊さなくても、避けれたわよ」

天子「予想外だけど、甘いわよっ」ブンブンッ

 天子が再び要石を解き放つ。
 それらは破壊されなかった要石の放つ十一の弾幕を伴って零児らを襲う。

零児「頼むぞ、魔理沙、霊夢」タンッ

霊夢「貼り付けるわよ、『警醒陣』」シュバッ

魔理沙「前と後ろにご用心。ってな!」ガチンッ

 魔理沙の箒の前と後ろに結界が出現する。
 『警醒陣』……強烈な強度を誇り、弾幕から妖怪までの侵入を拒む結界。
 本来ならば空中に漂い行動を制限するのだが結界の性質上、張りつける場所を物に設定すれば御覧の通りだ。

魔理沙「こいつの強度やべーからな。要石でも砕け散るぜ!」ガリガリガリ

小牟「魔理沙の高速移動じゃて!」

天子「あら、なら手伝ってあげるわ。『気質発現』!!」バァーン

魔理沙「うお、はや!?」

 緋想の剣から気質が溢れだし、天界の天候を操る。
 発現したのは『風雨』――移動等の行動が早くなるが、その反面制御が利きづらくなる天候だ。後濡れる。

 突然の加速で制御を失った魔理沙がファンネルの要石を手前三つ、奥二つ壊しながら反対側へ到達する。

小牟「またんか! 何故風雨が発現出来るんじゃ?! それは文めの気質じゃぞ」

天子「ふふん、何故かしらね(ていうかアヤメって誰)。『天地プレス』!」ゴゴゴゴ

零児「! ちいっ」タンッ

魔理沙「突き抜けちまった……あわわわわ」ガリガリガリ

 足元の土を抉りながら来る大きな要石と、それと同期して上から挟みこむように降って来た要石をバックステップで避ける。
 零児の真正面で二つの要石が大きな音をたてながら重なり止まる。

 風雨のおかげで難を逃れた形になったが……

零児「……これが狙いか」ペタ

385 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/23(金) 01:21:41.92 ID:G9nHBhyNo

霊夢「零児さん、大丈夫!?」

零児「ああ、無事だ! 今そっちに行く」

小牟「(予想よりはるかに大きいの……)早苗、あれを見てくれ……あれを、どう思う?」

早苗「はい。回りこむのが大変そうです」

小牟「シット! 神夜には通じたのに!」


魔理沙「わたたた、弾幕が多いっつーの!」ガリガリガリ

 零児が大きな要石を迂回しているその時、魔理沙は一人で弾幕を潜っていた。
 正面にあった警醒陣はもうほとんど消失しており、いつ壊れるかも分からないため当てに出来ない。

 何度か星の弾幕は放っているが、要石を破壊するには至っていない。

天子「そろそろこれにも飽きてきたわね。……『気質発現』」バァーン

早苗「弾幕が太く!? こ、これは」

小牟「魔理沙の気質じゃ。魔力が全力全開じゃぞ!」

魔理沙「こっち余計にやばいぃぃ」ガリガリ

 『霧雨』――制御や制限を無視し、霊力全開状態でスペルカードを放つようになる天候。やっぱり濡れる。

霊夢「でもこれなら好都合。一々溜めこまなくて済むもの。『博麗アm』」

天子「気符『天啓気象の剣』! 続けて『気質発現』!」バァーン

霊夢「『ミュレット』って、ちょっ……とぉ!」ガリガリ

小牟「まさかのフェイントじゃと。ほいっと」ガリガリ

 気質はある一定の濃度までは緋想の剣を持つ天人にしか操れない。逆を言えば、今の天子なら操れるという事だ。
 気質を全消費して放たれる、緋色の飛ぶ剣撃『天啓気象の剣』。これにより、天候を強制的に終わらせたのだ。

早苗「晴れましたね。……って引っ張られて? 八坂の風よ!」

魔理沙「こんどは小町のかー!? ……あ、抜けた」

 空が晴れ渡り、深い紺碧の空が顔を見せる。
 だが引き起こされるは一方向に引っ張られる感覚。全員の距離が、一点に向かって縮まって行く。

小牟「晴れとるのに、川霧効果? 極光でもないしなんじゃこれ」

零児「見えた。……おいおいおい! 何故俺に寄ってくるんだ!」ダダッ

早苗「わ、わかりませーん!」

天子「何この気質……知らないわよ!?」

霊夢「今ならっ 神霊『無双封印』!!」バッ!

小牟「零児を中心に愛を叫ぶとな。『龍虎乱砲』!」

386 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/23(金) 01:24:55.19 ID:G9nHBhyNo

天子「くっ。『守りの要』!」

 『川霧』じゃない謎の天候に、天子が困惑したと所へ二人が仕掛ける。

 二人の弾幕が天子の周りに浮かんだ要石にぶつかり徐々にそぎ落とし……破壊する。

 その過程で小牟の弾幕が全て消え去るが、霊夢の無双封印が三弾だけ天子を襲う。

天子「天人をなめないことね! 要石『天地開闢プレス』!!」

早苗「空へ高く……零児さん!」

零児「影が大きく……来る!」

天子「引き寄せられるなら、その勢いを使えばいいのよ!!」

 追尾していた三つの弾は、天子の作りだした大きすぎる要石に遮られ消滅する。

 その要石に乗っかったまま、零児目がけて降りてくる天子。
 落下速度と零児を中心に引き寄せられる力を乗せ威力が増していく。

霊夢「でかい……これは私達も危ないわ、零児さん!」

零児「お前たちは自分のことに集中しろ!」

早苗「……」ブツブツブツ

天子「まずは一人目よっ!!」

零児「そうはいかないさ。『俺は、屈しない』……」

 零児が目をつむり、ある一点へと神経を集中させる。
 そして

    ドゴォオオオオオオ………………

 要石がぶつかった衝撃で天界が揺れる。
 その衝撃に、遠くにいた他の天人達が物珍しそうに眺めてくるのが見えた。

天子「あらら、殺しちゃったかしら。でもま、事故よね事故。ぶつけるだけのつもりだったもの、私」

霊夢「…………」

早苗「……天! 開海『モーゼの奇跡』!!」

魔理沙「……」ニヤァ

小牟「……やはりぬしは物を殺した事がないのじゃなぁ。うんうん」

天子「は? 何を言って……ああ、ミエミエよ緑の巫女」トンッ

 天子の動きを真似たように飛び上がり、その頭上目がけて降りてくる早苗。
 しかし、天子は慢心しない。落下点から余裕の回避を行い、緋想の剣を構える。

早苗「神奈子様直伝、瓦割ぃいいーーー!!!」ゴロゴロ

天子「! 天候が変わったですって!?」

霊夢「これ、まさか……」

小牟「これが本当の、動かざること山の如しじゃぞー、魔理沙」

 手刀の構えをしたまま、ぶれること無く目標へと落ちる早苗。
 狙いは端っから、要石……いや、

早苗「ほあたーーー!!!」

 ドゴォ……

387 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/23(金) 01:28:32.00 ID:G9nHBhyNo

零児「……阿修羅之如駆」バリリッ

天子「なっ、生きて……!」

零児「『電瞬一撃』!」

 その下に居る、零児だった。

 声がしたから居るのは分かったが、舞い上がる土煙とそれを照らす光で居場所が掴めない。
 ならば引いて体勢を立て直す……暇など、零児は与えない。

 比較的形が残っていた方の要石から跳躍し、天子へと迫る。

零児「樹金道、金【ゴールド】!」バンッ

天子「くうっ!」カキィン

零児「柊樹【ハリウッド】!」

天子「『緋想の剣』よっ!」ブンブンブン

 初手の金で天子の切り返しを塞ぐ。
 次に柊樹を振りかぶるも、剣を振りまわして対処される。
 銃二つを手に取って飛び上がって来たのがばれ、攻撃の手を強められたのだ。

零児「虚を心算だったが、案外冷静だな」

天子「こう見えても、本気でキレた事なんてないわよ。残念だったわね」

霊夢「けど近づいたのが運の尽き。結界『拡散結界』!」

早苗「私の力を貸しますよ、霊夢さんっ! 秘技『忘却の祭儀』……!」

 二人の巫女が二つの結界を張り巡らせる。四方の霊夢、五忙星の早苗である。
 それらが重なり合いながら天子の周りを囲む。零児はまだ、内側に居る状態だ。

天子「結界……! でも残念ね、やっぱり貴方はリタイアよ」

零児「おいおい、俺達が何故天候を変えなかったか……分からなかったのか」

天子「は? だって空は……あれ、晴れ……?」

 光が煙を照らしていたのは、天候が『紺碧』のままだったからだ。
 仕組みは分からないが、零児を中心に集まってくるこの天候。……すなわち

魔理沙「私が居る事忘れるな、ってな! 魔符『スターダストレヴァリエ』!」

 移動性能が高い魔理沙が利用する事で活かされる天候なのだ。
388 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/23(金) 01:36:12.35 ID:G9nHBhyNo

 箒に八卦炉を取りつけ、高速突進をぶちかます魔理沙。
 普段でさえかなりの速度を叩きだすスペカだが、引き寄せられることで更にスピードが増す。
 その発想は天子の真似……そう、本当にコピーしたのは魔理沙のほうだったのだ。

天子「ちょ、貴方も痛い目に……」

零児「痛みには慣れている。それに、『屈しない』さ」

 霊夢と早苗の結界をものともせず、一直線に突き抜けてくる魔理沙。
 それもそのはずで、箒の先には霊夢が始めに着けた『警醒陣』があり、それが結界を打ち消し合っているのだ。

 だがそれは前方に着いていたものではなく、後ろ側……掃く側の方なのだから、見た目が悪いか。

魔理沙「勝てば官軍、負ければ賊軍だぜ!」

天子「お、おぼえてなs」ピチューン

 ボキボキボキッ

 箒が天子の背を叩き、被弾させる。
 被弾と同時に枝が大量に折れる音……魔力で補強しているのだが天子の体は頑丈さが取り柄であり、いくらか負けたようだ。

小牟「十得ナイフ装着! 零児ぃーーーー!!」キィィィィ

 そうして光り輝く天子……そのタイミングのせいで、魔理沙は零児を救出する事が出来なかった。

 皆が光りに目をくらます中、小牟だけが零児目がけて飛びこむ。

 キィィィン……ドゴンッ!!

天子「ヘブチッ!?」

零児「がっ!?」

中村「!?」

 小牟の加速もむなしく、光が消え去った後すぐにあらわれた天子の後頭部にぶつかってしまった。

小牟「…………ほぉー」

天子「いたたたた……」

零児「うぉぉぉ……」ポロッ

霊夢「……目を開けたらそこに」

早苗「蹲っている天子さんと零児さんが……」

魔理沙「頭がぶつかっただけなのにここまで音が聞こえて来たんだが、大丈夫か?」

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389 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/23(金) 02:01:05.93 ID:G9nHBhyNo
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 …………

 八坂 神奈子

 風の神。赤の服。森羅の男、零児の二の腕ほどの太さがあるしめ縄を背負う。頭には紅葉のような髪飾り。

 各自の会話からは、具体的な能力について判断不可能。御柱と呼ばれる六角柱の木を武器にすることは判明。

 −−−が利かない事を確認。その条件を精査するためにも、引き続き調査の必要があると判定します。

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 …………

 洩矢 諏訪子

 大地の神。紫の服に白の袖を着用。大きな麦わら帽子に似た、妙な目玉のついた帽子を被る。

 ここに到達するまでの会話から、疫病神がそれに類する神と判断。ただし能力は不明。

 −−−が利かない事を確認。神奈子と同様に引き続き調査の必要があると判定します。

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 続けて、緋想天の審査内容を報告。

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 永江 衣玖

 竜宮の使いと呼ばれる女型の妖怪。黒のスカートに、レースが二段にかけてつけられたピンクと赤の服を着用。

 服と同様の色の、とても長い羽衣も纏っている。

 小牟及び、−−−から、空気を読む程度の能力だと判明。また、龍神と呼ばれるモノの声を聞きとれる。

 適正体の可能性自体は低い。龍神と会話できると言った部分を重点的に調査する必要があると判定します。

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390 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/23(金) 02:02:32.52 ID:G9nHBhyNo

以上で投下を終わります。今回もまた、少々解説していない部分がありますが次回本編投下にて語れるかは不明です。


クリスマス企画ですが、24日の深夜から25日の朝方にかけて投下するかもです。疲れていなければですが……。

それでは失礼します。寒いのだから雪降ってほしいなぁ……はぁ。
391 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/23(金) 07:08:57.58 ID:lhKLQ1LDO
お疲れ様!
結構熱いバトルでしたね〜。潰されたかと思った零児さんでしたが、まるで精神コマンド[不屈]を使ったかの如き頑丈さでしたねww

そして紺碧と言う謎の気質…『溢れる漢らしい魅力に惹かれる』とでも言った様な気質なんだろうか?ww

それにしても、最後のごっつんこは、ちょ〜痛そうでしたねぇ。
392 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/25(日) 03:08:29.97 ID:7hKRmW7so
こんばんわ。メリークリスマスですね。シュトーレンというパンが食べられるだけで十分です、はい。

では投下します、クリスマス企画……『ナムカプ最後のパーティっぽいことをしてみた』、どうぞ。
393 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/25(日) 03:09:16.68 ID:7hKRmW7so

小牟「さぁーって始めるぞぉクリスマス企画! 司会はわし、プリティキュートな○カチュウ的マスコット、小牟と!」

シオン「は、はーい。何故か進行役に抜擢されたシオン・ウヅキです。よろしくね」

レティ「そして、12月と言えばお前じゃ! と呼ばれてきたレティよ。迷惑な話ね」

小牟「ホワイトクリスマスにするにはもってこいじゃろ、ぬし。さてぇ、この企画の内容はのぉ……」

シオン「えーっと、普段なら叶わないやり取りや組み合わせ、本編とは違った方向の祭りを繰り広げる、ねぇ」

レティ「要するに本編じゃ使えないネタをここで放出してすっきりテカテカしたいってことよ」

シオン「ちょ、ちょっと! そこまで話しちゃっていいの!?」

小牟「気にするな。成せばなるじゃ」

シオン「シャオムゥ、それ使いどころが違うわ」

レティ「はいはい細かい事は置いといてさっさと進める。今日は私達だけじゃないんだから」

小牟「うぬっ。本編じゃ最後らへんでしかなりえないカオスな状況に、今日はするからの!」

シオン「まとまるのかしら、これ」

小牟「さぁの。じゃぁまずはここにおる者達にすこしばかり挨拶を頼むかの。ほれ、マイク」

シオン「やっぱりというか、容姿だけならモモちゃんと同年代が多いわね、はい」

さくら「本当だよね〜。でも、蓮子ちゃんは大学生だよね! あ、私はさくらだよー!」

蓮子「ええ、これでもれっきとした大学生よ。こんにちは、蓮子です。はい、メリー」

メリー「ありがとう、蓮子。こんにちは。蓮子のサークル仲間のマエリベリー・ハーンです。はい、どうぞ」

クレオ「うん、ありがとー。はぁーい良い子のみんな〜、クレオだよ〜。今日のお菓子担当さ〜」

カッツェ「私も手伝ったわよ〜。カッツェでーっす。はい、ど〜ぞ」

永琳「一応医務班として来た永琳よ。飲み過ぎ食べ過ぎには注意してね。はい白蓮さん」

聖「はい。くりすます、というお祭りがあると聞いてきました、聖白蓮と申します。どうぞ」

響子「はい。水無月響子ですわ。ここまでが、一応年長・保護者組ね。シオンさんに返すわ」

シオン「はい、ありがとうございま……」

キョウコ「私と名前が完全に被ってる人が居るー!」

聖「確かにキョウコさんと同じですね。偶然とはいえ、これも何かの巡り合わせでしょうか」

小牟「わしからすれば管理人さんと同じっちゅー感じじゃがな。まぁとりあえずの紹介はここまでじゃ」

レティ「後は追って出てくるらしいわ。それでまず何をするかと言うと……」

シオン「気付いたかもしれないけど、フロアには女性しか居ないのよね」

小牟「それもそのはずで、男どもはサンタ服に着替えとる最中じゃ」

レティ「ところで、そのサンタとかクリスマスって何?」

シオン「えっ?」

小牟「えっ?」

響子「えっ?」

早苗「ご存じ……無いのですか!?」

魔理沙「ちょくちょく香霖の所に入ってくるけど、12月25日にケーキを食べる日ってぐらいしか」

†<ガタッ

小牟「座っとれルーミア。まぁ非常識が常識になるこの世界じゃし仕方ないか。ほれ、説明しちゃる!」

少女説明中…
394 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/25(日) 03:10:41.78 ID:7hKRmW7so

響子「と言うわけよ。分かったかしら?」

東方‘s「はーい」

レミリア「……血に染まった白衣を着て大きな袋を抱えた、小太りの初老……」

華扇「その上、空を飛ぶ二本の角を携えた四足獣に同じく空飛ぶソリ……凄い妖力を持っているのでしょうね」

さくら「なんか明後日の方向行っちゃってない!?」

小牟「そうやって遊んどるだけじゃし、気にするな!」

レティ「ようするに、そのコスプレを男性がしているってことね。皆ヒゲ着用?」

文「付けてる人と付けてない人とだいたい半々でしたよー」

トロン「全員着用だと、フーバー様が恐ろしくシュールになりそうだものね」

ワンダーモモ「でもそれを言えば、ジェネティさんも……」

錫華「あの包帯人間であるな。守天めも似合わなそうである」

萃香「鬼が紅白の格好ねぇ。霊夢みたいな?」

マスヨ「あの鬼があの巫女さんの格好…………ぷふっ。笑っちゃうわね」

ミスティア「そういえば、その博麗の巫女も見当たらないような」

文「別の部屋に居るのを確認していますよ。何をしていたかは秘密ですが」

クレオ「お菓子の差し入れ持ってったから私も知ってるけどね〜。見てからのお楽しみってことで」

小牟「そんなこんなでガールズトークの時間は終わりじゃ。実際にクリスマスを体感するがよい!」

シオン「そんな大それた物じゃないけどね。零児君達、どうぞー!」

景清「………………」

守天「………………」

アクセル 「……」ニコニコ

毒馬頭(トナカイ)「………………」

雲山『………………』サッ

一輪「うんざーん! 大丈夫、似合ってるわよ!」

一同「(というか一番合ってるよ……)」

錫華「守天よ、イカすであるぞー!」

零児「何故コワモテ連中の中にアクセルを混ぜた、紫」

紫「なんだかイラってしたから」

アクセル「ひでぇ!?」*チャラ助

アルフィミィ「大丈夫、十分合ってますの」

かりん「あら、牛のほうが見当たりませんわね?」

沙夜「うふふふふ」

さくら「それは聞かない方がいいよ、かりんちゃん」

たろすけ「ほんと、景清の兄ちゃんには合ってないなー」ワラワラ

景清「うぬ……あれほど我には合わぬと言ったであろう。たろすけ」

フラン「お姉さまがいった血ぬられた服が合いそうな顔してるものね〜」

凱「事実、血塗られた人生を送っていたそうでござる」

お燐「あたいが傍にいたら、その死体を処理してあげたのにねー」

守天「ど、どうだ錫華よぉ。似合ってねーっつうなら、すぐ着替えてくるが……」
395 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/25(日) 03:11:55.55 ID:7hKRmW7so

錫華「よいよい♪ 似合っておるぞよ。守天めの筋肉が存分に堪能できるのである♪」

リュウ「確かに、いい筋肉だ。力強さを感じる。一度手合わせを願いたいものだ」

マミゾウ「とりあえずはやめといた方が良い気がするの。ところでこの糞狐。乾杯の音頭はせんのか? ん?」

小牟「そんな邪険に扱われる事しとらんっつーのに。そうじゃな、とりあえず乾杯と行こうか!」

レティ「クリスマスパーティーとやら、開幕ね。雪降らせてくるわ」

シオン「セルフホワイトクリスマス……まぁ、ベクター社でも似たようなことしてるしいいか」

小牟「アレディよ、乾杯の音頭頼むぞ〜」

アレディ「わ、私ですか。では失礼して……漢杯!!!」

   かんぱーーーい!!

ルーミア「なんとなく違うきがするのかー」

ギル「ど、どうかな、カイ」

カイ「似合ってるわよ、ギル」

アーサー「若いもんはいいな。ところでこの服は特注でな。ここをこうするt」

パチュリー「そこまでよ! それ以上はさせな……ゲホッゲホッ」

響子「あらら、喘息? メディーック! ……あ、私か」ヒック

鳳鈴「来る前から微妙に酔ってたのは何故かしら。この保険の先生」

はたて「なんでもヒデオ先生とやらが浮気したーとか。本編で」

カッツェ「あっらぁ、それはいけないわね。どこの雌猫かしら」キラン

フェリシア「いや、今のでなんで女性の方が狙われちゃうわけ!?」

橙「藍様ー、あれどういうことでしょう?」

藍「お前にはまだ早い愛憎劇だよ、橙」

アーマーキング『妖怪化するような猫又に早いも何もない気がするがな』

小牟「しっかしよいのぉよいのぉ」グヘヘ

乙音「どこのおっさんだ。……で、何が良いのだ狐の者よ」

小牟「零児めがサンダ姿じゃぞ? この後きっと」

小牟「クリスマスプレゼントは俺だ、小牟」

小牟「とかゆうて迫ってくるんじゃよ。きゃー!」

さくら「(うわぁ……)」

早苗「(うわぁ……)」

神夜「ハ、ハーケンさんにそんなこと言われてしまっては、私……」

パルスィ「…………妬ましい」

勇儀「そうかい? 微笑ましいじゃないのさ〜。グビグビ……ぷはぁ。やっぱワインってのは甘くて好かないねぇ」

ガンツ「ラッパ飲みしておいてそれはねーだろ。鬼の姉ちゃんよ」

琥魔「いえいえ、私も同じことを考えておりました〜。ということで焼酎でも如何ですかか、お客様〜♪」

阿求「商魂が透けて見えますね。すけすけですね」ムンフー

早苗「あははー、阿求さんよってるれすねー。私は酔ってませんよっ!」キリッ
396 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/25(日) 03:13:11.31 ID:7hKRmW7so

タキ「べろべろではないか。……まぁ、こんな童では仕様もない事か」

萃香「そうでもないけどねぇ。霊夢とか魔理沙なら……ぷはぁ。飲めるよぉ」

ヘンネ「会話の最中くらい飲むのやめたらどうさね。しかし、背中に翼仲間が多くて嬉しいよ」

レミリア「あんたも結構酔ってるな。確かに翼仲間だが私は吸血鬼だぞ」

ぬえ「私に至っては正体不明だけどね〜。しかし博麗の巫女はまだ来ないの? それならそれで……」

ミスティア「さぁーみんなぁ。呑んでるかーい!」

 おおー!

錫華「盛り上がってるかえー!」

 おおおー!

ワルキューレ「な、なんでしょうかこれは」

布都「何やらキラキラしたものが降りてきましたな。あれは舞台装置……はっ! 俗に聞くカラオケ大会なるものでは……!!」

リリカ「残念ちょっと違うぜそこの人。博麗霊夢のライブだー!」

 おおおお!?

メルラン「皆心して聞きやがれー!」

ルナサ「紅白ってだけで選ばれた巫女、登場するわ」

妹紅「ってちょっと待ってよ、それなら私も……!!」

慧音(ワーハクタク)「いいじゃないか妹紅。おかげでこうやって何の気兼ねなく飲めるのだから。さぁ飲め! 飲まんと○す!」

ひろみ「わぁ、悪酔いしてる……というか、蓬莱人は死なないんじゃ……」

シルフィー「きっとそういうジョークなのですよ。あ、この武器はいかがですかにとりさん。レイセンさん」

にとり「こ、これが超未来の武器……」ゴクリ

鈴仙「こ、こっち方面に進化した技術というのも、なかなか……」

ドロシー「むむむ、商売敵のくせに良い品ぞろえですわ。侮りがたい」ゴクリ

飛竜「……貴様らにそんな玩具は必要ない。……だろ」

ヤマメ「こんなところで使う名言じゃない気が。お、巫女が出て来た。ヒューヒュー!!」

村紗「……な、なんですかあのスカートの丈の短さは!?」

アクセル「ムラサちゃんが言う事じゃないと思うんだな、これが」

咲夜「完璧な位置取りでステージの下だというのにスカートの中身が見えない……あの巫女、なかなかわかっていますね」

青蛾「妙な拘りを持ってるのね、このメイド。……芳香にあの恰好させてみようかしら」

霊夢「あのキョンシーにさせても、この踊りは……」

 クルクル……

霊夢「不可能よっ!」バァーン!!

雛「あ、あの回転は……!」

士郎「知っているのかワン?」

雛「クワトロトゥーループ……!!!」

チルノ「それってスケートのじゃない? あ、これ美味しい。おかわr」ヒョイッ
397 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/25(日) 03:15:37.02 ID:7hKRmW7so

幽々子「もぐもぐ……あら本当に美味しいわ〜。あら、あっちも……」

ブルース「す、すげぇ……あの嬢ちゃんが通って行った後……飾りのサラダも残ってねぇ……」

ロア「しかもそれが歩調を変えないまま……まぁ、その後すぐに戻ってくる料理もすげーけど」

芳香「まけもぐもぐられもぐもぐないもぐもぐもぐ」

レイレイ「食べながら喋るなんて行儀悪いアルね。同じキョンシー仲間として悲しいヨ」

お燐「キョンシー!」ガタッ

さとり「座ってなさい。……ステージで踊っているバックダンサーの方々、バラバラですね……色々な意味で」

中村「モモさんにネージュ姫。スターサファイアさん、ルナチャイルドさん、サニーミルクさんですね」

魔理沙「照明や小道具担当はアリスだぜ。よくあんなことができるよな〜本当」

アシェン「全くの事でありましたりしやすでやんすよ。あんな面倒なこと願い下げですたい」

マミゾウ「お前さんはもっとロボットっぽくふるまったらよいじゃろうに。のぉ、コスモスさんや」

KOS-MOS「それがアシェンのいい所だと思います、マミゾウ。それより、あちらの僧侶がそろそろ危ない……」

 バッ

霊夢「ちょ、何してんのよ白蓮……きゃっ」

聖「ふふふ……俗世にはこんなにも楽しい物があったなんて……聖白蓮、唄いますっ!!」てー→てー↑てー↓

ナズーリン「ちょ、聖!? さっきまで何を飲んで……ってこれワインじゃないか?!」

わや姫「そういえばあの尼さん、仏教の人だったわね。お酒に飲み慣れてるはずないか」ニヤッ

一輪「いいわよ、姐さん! やっちゃってくださいなー!」キャッキャッ

こいし「がおー!(粗ぶるグ○コのポーズ!」

アレディ「あの激しい演舞を舞いながら、あの声量……出来るっ! お相手願いたいっ!!」カッ!!

てゐ「! よーしはったはったぁ! 聖白蓮とアレディ・ナアシュの対戦だよぉ!」

クロノア「はやっ!? ってかもうお札も……ええ!?」

文「あやややや、天狗の目の前で博打とは中々度胸がおありで。負けて泣いても知らないわよ?」

マスヨ「聖ちゃんに50万ゼニー賭けるわよ! 女は度胸っ!!」

タイゾウ「うへぇおっかねぇ。俺はパスな」

トロン「どちらに掛けるべきか……うぬぬぬぬ」

コブン「ま、負けたらカレーがしばらく食べれないですぅ」

こいし「うぉおー!(荒鷲のポーズ」

リュウ「…………」ガタ

ケン「おい、リュウ何処行くつもりだ。おいまさか!」

リュウ「その勝負、俺も混ぜてもらいたい」キリッ

美鈴「私も、武道家の名折れとして、戦わずには居られませんっ!」

フーバー「みなしゃん、僕もいることを忘れないでほしいでしゅ!」

デミトリ「くっくっく。あの時の再現だな……面白い余興になりそうだ」

ルボール「おいてめぇら。俺をおいて決闘たぁどういう了見だ、ああっ!?」

英雄「こ、こら皆さん! これではクリスマスパーティーの意味が……あわわわ」
398 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/25(日) 03:17:23.57 ID:7hKRmW7so

キョウコ「解説は私にお任せあれっ。不肖ヤマビコ、精一杯叫ばせてもらいます! いいですよね、星さんっ!?」

キング「私はキングだ」

小傘「あれ、じゃぁこっち?」

リィ・リー「私はリィです、あまりおいしそうじゃない少女さん」

小傘「た、食べられっ!?」

リリス「あはは、面白いね。皆」

神子「しまった。目覚めてすぐなために、まだお金が……!!」

ルーティ「貸してあげてもいいわよ。といちで」

小町「こりゃまた有名なやつを。さて、あたいも少し賭けて……」

映姫「貴女は死神の身でありながら博打をすると……ガポッ!?」ゴクッゴクッ

諏訪子「あーもううっさいわねぇ。祭りのときぐらい羽目外しなさいよ〜♪」

ローズ「ワインボトル2本刺し……恐ろしいわね」

永琳「まぁ、あの閻魔様ならリキュールを飲み干しても死にはしないでしょう。それより貴方は飲まないの?」

キャプテン「せっかくだが、遠慮しておくよ。前回のパーティーで思い知ったからね!」

星「皆、なんで私とキングさにゃリィさんを間違えるんですか……ヒックッ」

静葉「貴女は良いじゃない……私達なんか存在さえ忘れられてるわよ……」

穣子「しかも冬だし。冬まっただ中だし……」

メディスン「ねーねー吸血鬼さん。あそこで固まってるのは何かしら」

モリガン「ん〜? ……さぁ、湿気てるぐらいしか分からないわ」

華仙「霊夢! そもそも貴女は巫女の自覚が」ペチャクチャ

エイゼル「まて、我はあの巫女では…………アックスを見ているのか……」

アン「面倒になって来た……爆破しとくかい?」

屠自古「やってやんよ!」

春麗「や、止めなさい貴女達! せめて蹴って黙らせるとか……」

ジューダス「物の見事に足の無い二人だがな」

ロール「本当、皆静かに出来ないのかしら。また修理費が掛かっちゃう……」

サビーヌ「いや、あんたのそれは自分のせいじゃないかい?」

霖之助「………………誰も僕の褌姿に突っ込みを入れてくれない」

平八「それだけひ弱な外見じゃそそられるもんもないわい。せめてワシぐらいにはなってみせよ、若造よ」

雲山『………………!』

マイク「裸という事なら負けておれんぞ! そおれ、鋼鉄の肉体ぃ!」

天子「鋼鉄ぅ? 私みたいに元から固ければそんなことする必要ないわね」フフン

レジーナ「ブルースからすれば、私も鉄女らしいから貴女の仲間ね」

キスメ「……胸囲の格差がある……けどね……」

スタン「いやぁ、皆賑やかでいいなぁ。なぁフランちゃん」

フラン「でもなんだか惨多苦労済とか苦痢住巣が関係ないよ?」

衣玖「サンタクロースにクリスマスですよ、フランさん。まぁ、お祭りと言うのは得てしてこのような状態になりがちです」
399 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/25(日) 03:18:30.29 ID:7hKRmW7so

輝夜「これも一種のだいご味よ。プレゼント交換とかが流れちゃったのは残念だけど」

お空「そんなのもあったんだ。私持ってきてなかったよ……」

ロック「交換じゃなく、大人の皆さんがくれるって言ってたような」

妖夢「……幽々子様、何も用意してなかったような」

神奈子「だいたいこっちにまわされたわよ。外の世界のことは私達の方が詳しいだろうからって」

名無し1P「で、その荷持ちは俺達ってわけだ」

M.O.M.O.「なるほど、その袋はそういうことだったんですね」

名無し2P「おうよ。決してブラットクリスマスだとか、鉛玉をプレゼントだとかじゃぁねえからな?」

リグル「凄みを利かせながらその顔で言われると冗談に聞こえないわよ!」

翔「超戦士殿は心優しい御仁。その心配はなしで候」

キャミー「……零児達が見当たらない」

平四郎「そーいや、何人かみかけねーな。便所か?」

キュオン「夢も希望もないこと言わないでよ。こういうときはロマンチックなのをね……」

シンディ「! 果たし愛……!!」

クリノ「いや、それも違うと思いますよ」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

零児「全く、前回の二の舞じゃないか」

ハーケン「そうなのか? ま、賑やかなのはいいことさ」

沙夜「前回はキスをしたってきいたけど、坊や」

零児「……一体だれから聞いたんだ」

紫「満月の夜の下で、だったわね。あれは魔界だからいつでも満月だけども」

ハーケン「ほう、ロマンチックじゃないか。今度それ、使わせてもらうぜ」

零児「……ふっ。勝手にしろ」




幽香「……ここで豆知識。クリスマスに飾られる柊はセイヨウヒイラギと言って、科目から違う全く別の植物よ」

紫「締めにまわしてごめんなさいね、幽香」

幽香「全く締めれてる気がしないけど、ね」
400 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/25(日) 03:22:03.84 ID:7hKRmW7so
以上で投下を終わります。

……味方全キャラをブッこもうとしたら起承転結もくそもなくなりました。最初の話何処いったし……!


それでは次回は緋想天終了後及び閑話休題2.5(一部キャラ達の半日的内容)を予定しております。

年末内には投下出来るかと。

それではメリークリスマス。
401 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/25(日) 10:24:42.05 ID:WqzqeVeG0
流し読みしたけど面白そう。>>1乙。
あと、EXCEEDからも出るのか?アレディと「ド」が特徴の姫も出ますか?
402 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/25(日) 14:46:33.27 ID:OIp1oEQDO
乙です!
いやー、実に賑やかなパーティーですねぇ。楽しさが伝わって来ましたよ。
403 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/26(月) 08:59:55.00 ID:A7GV/tNio
おはようございます。レス、ありがとうございます。

シルフィー「昨晩はお楽しみでしたね。え? 違う? でしたらこのアベック玉砕バズーカでも……」ガチャン

パルスィ「……妬ましい…………」ジャラジャラ

1P「何処向けだ。お嬢ちゃんも財布漁んなって」


>>401
>>1>>325でも言ったように、EXCEEDキャラは出しますし、看板と呼べる人たちも出す予定ではあります。

ただ、看板が誰を指すかまでは……。ヘイムレンを出した地点で色々と今さら感はありますが。
404 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 21:19:42.44 ID:Q4+kRdki0
>>403EXCEEDの看板はアレディだと思ってたんだがまぁ
人の考えによるか。
ともかく面白いので頑張ってください。
405 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/27(火) 11:29:54.30 ID:Fk6OPKdRo
こんにちわ。西側に居るはずなのに寒い今日この頃です。流石冬だなレティ自重しろ。

閑話休題2.5も入れようと思っていたら思いの外クリアー後が多くなったので先に投下します。

それでは投下します。緋想天クリアー後です。
406 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/27(火) 11:34:11.44 ID:Fk6OPKdRo
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

天子「なるほどねぇ、だから気付けなかったの……って信じると思った!?」ジンジン

小牟「何かが足りぬと思うたらその反応じゃった。よくやったぞ天子よ」

中村「あはは、またですか」

霊夢「また、って中村さんの時も似たようなのだった?」

中村「ええ。まぁ、私の場合は気付いたらここに居た、ということしか伝えれませんでしたし」

 頭と頭がぶつかって天子が暴れだしたのだが、霊夢が問答無用の『夢想天生』で黙らせた後、一緒に居た中村に状況を説明した。

早苗「それでもここにおいてくれていたという事は、なんだかんだで優しい人なのですね。天子さんは」

天子「別に〜? 変身とやらを見せてもらったから半信半疑になっただけよ」

零児「あれを見て嘘だと思うのは難しいだろうからな」

天子「まぁね。ただの人間が伸びるわけ無いし」

魔理沙「でもこれで本当だと分かったなら、こっちも嘘をついてないって分かるだろ?」

天子「わかってるわよ。巫女があんなことしたから言っただけ」

霊夢「もう一度してあげましょうか? 天人くずれ」

天子「はっ! 不意をつかれたから無様を晒しだけ。二度は通じないわよ、貧乏巫女」

 ギリギリギリ

零児「……放っておいていいのか?」

魔理沙「あの二人はあんな感じだぜ。それより頭、大丈夫か?」

小牟「たんこぶが出来とる程度じゃな。これぐらいなら冷やしておけばよいじゃろ」チョンチョン

中村「いやしかし、お二人とこの異世界で出会うとは思いもしませんでした。他の方々は、どちらに」

零児「色々なところですね。地上の人里や、ジューダスとローズは冥界で過ごしているようです」

天子「何? あんな辛気臭いところにもあんた達のお仲間がいるの?」

小牟「ここも性質は似たようなもんじゃろが。して、衣玖めがおらんのはなぜじゃ?」

天子「さぁ。龍神様がどーたらこーたら。詳しくは知らないわ」

魔理沙「どうせまた適当なこと言うだけだぜ。前の時もそうだったし」

早苗「諏訪子様が天狗伝に聞いた話によれば、地震なんて起きるわけ無いだろプゲラだそうですが」

霊夢「プゲラが馬鹿にしてるってのしか分からないけど、まぁだいたいそうね」

小牟「まぁ突然「幻想郷は滅亡する!!」と言われても「な、なんだってー!」とはいかんよな」

 龍宮の使いの欠点……というかは分からないが、衣玖さんは龍神のお告げを伝えるだけなのだ。
 しかもそれがいつ起こるのか曖昧で、ただ不安を煽っているようにも取られる。
 幻想郷にて、地震の記録が無いのも相まって信じられなかったのだ。

零児「もう少し分かりやすく言えないか。……結界に守られているから日本で起きる地震とも無関係、だったか」

中村「あの戦いを経験しておりますと、それも少々不安になってしまいますが」
407 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/27(火) 11:36:41.34 ID:Fk6OPKdRo

天子「ねぇ中村。貴方本当に戦ってたの? いまいち変身後でも信じられないんだけど」

中村「まぁ、疑われるのも無理はないですな。私ですし」

魔理沙「なんつーか、さえないおっさんだもんな〜。サワリーマンだっけ、早苗?」

早苗「サラリーマンです。会社にお勤めしている、このような服を着た方々をそう呼びます」

零児「冴えない格好なのは否定できんが、それを言えばお前さん達のような少女が戦うというのも無理があるさ」

小牟「まぁわしらは一般人じゃのーし、よーわかっとるがな」

天子「…………」

霊夢「ん? 何見てんのよ、天子」

天子「いーえなんでも。それで、ここにはもう用ないでしょ?」

魔理沙「ないといえば、ないよな。まぁ」

零児「中村さん。俺達はこのまま下山して、守矢神社と呼ばれる所に行きます。貴方はどうされます?」

中村「私も、降りましょうかねぇ。ここは上人や天人様がおられる地。私のような者が居る場所ではないでしょうし」

早苗「? そう思われるなら、どうしてこれまでここに?」

中村「……はて、そういえば妙ですな。誰かに引きとめられてたわけでもないのですが……」

天子「……そういえば、争ったけど返そうとはしなかったわ。周りも言わなかったし」

 先ほどの騒動の直前まで天女達が中村の話を聞いていた、とのことだが……今は少し遠巻きに眺めているだけだ。

小牟「それも異変の影響かもしれんな。紫めに伝えんと…………そーいや今日はまだ逢うておらんの」

天子「ゆかりぃ??」

霊夢「……反応もないわね。あれだけ積極的に動いていたってのに寝たのかしら」

魔理沙「あいつも妖力減ってるって言ってたし、老体だしな」

零児「陰口を叩くのは感心せんな。彼女だって色々と調べてくれているんだろう」

天子「…………本当に来ないわね。ならいいわ。中村が言う通り分不相応だからさっさと降りなさい」シッシ

小牟「てんこめ」

天子「てんこって言うな」

霊夢「やーいてんこてんこー」

零児「子供か、お前達。……ああ」

早苗「ピチピチギャルです!」

魔理沙「ピチピチギャルだぜ」

中村「いやはや、懐かしい響きですね」

零児「中村さんも世代的には……いや、いいです。それより、降りるぞ」

小牟「ほいほい。降りるときに衣玖めと会えたら良いんじゃが」

霊夢「晴れてるし微妙じゃないかしら。龍神様は雨雲の中に潜むって言うし」

天子「もっと面白い話をもってきなさいね〜」フリフリ…………
408 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/27(火) 11:40:06.67 ID:Fk6OPKdRo

天子「……ふむ」ブンッ

 零児達が天子に背を向け歩きだしてすぐ、おもむろに緋想の剣を取りだす天子。
 それを天に掲げ……気質を集め始める。

 じっくりと、ねっとりと、その場にあった気質……零児の、本来なら冷たいはずの幽霊を作り出す。

天子「……ふぅん。あながち嘘じゃないのねぇ。……な、ら」

  『気質発現』

 バーーーーーン!

早苗「? あれ、空が……」

魔理沙「空? ……お、ついさっきより青い」

中村「素晴らしく澄んだ、紺碧の空ですな」

小牟「天子と戦った時と同じじゃな。ああ〜零児に引き寄せられる〜」ペタ

零児「…………。今わざとふらついただろ。離れんか」

小牟「むぅ、けちー。これぐらいサービスせんかい」

霊夢「……影」

零児「どうやらさっきと同じ展開を御所望のようだ。霊夢、頼めるか」タッ

霊夢「懲りない奴よ、ねっ」タッ

 天界はほとんど何もない、地平線の先の先まで見える場所だ。
 それゆえに空は正面を見ていれば、ほぼ確実に自然と目に入る。

 そんな天界を歩いていた一行から、二人が後ろに向け飛び、零児だけが天子の方を向く。

天子「スペルカード一発勝負よ、レイジ! 要石『天地開闢プレス』!!」ゴォォォォ

零児「はぁ。困ったお嬢様だ。……『耐え忍ぶ』」

中村「おお、知らない構えですな」

 異変の最中に抱えていたものより、一回り小さな要石に乗った天子が、その時と同じ様に降ってくる。
 対する零児も同じ構え……護業を盾にするように前へ突き出し、右手を柊樹に添えた物忌の型を取る。

零児「さぁ、こいっ!」

天子「潰れなさいっ!!」

 ふらっ……

 ドゴォォォ…………

天子「手ごたえ、なし?」

魔理沙「すげぇ、ピチュってねぇ……」

早苗「そういえば魔理沙さんは見られてませんでしたね」

 衝撃の瞬間、護業を要石の滑らかな差し込み部分に沿わせるように体全体を滑らせ、かつ勢いを相殺したのだ。

霊夢「卍固め」ギュウウウ

天子「ちょ、ぎぶっ! ぎb…………」

零児「やはり要石同様、か」

 勢いが完全に止まり、天子の真後ろに現れた霊夢がそのまま要石を背面に固め技を極めた。
409 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/27(火) 11:42:16.08 ID:Fk6OPKdRo

中村「お、お嬢さん! それぐらいにしてあげては……」
                                                       〜♪
魔理沙「天子ならあれぐらいじゃ屁でもないらしぜ?」

天子「」ジタバタ

零児「霊夢、俺が仕置きをする。代わってくれ」

霊夢「りょーかい」

衣玖「大きな音がしてみたので帰って見れば中村さん、一体何が?」

中村「おお、衣玖さんお帰りなさい。実はですね……」

仕事人かくかくしかじか中……

衣玖「なるほど、お仕置きでしたか」

魔理沙「……はは……ははは……」

早苗「ああ、魔理沙さんが怯えていたのって」

天子「」ビクンビクン

 零児の仕置き……尻初回サービス割*天人増し=20回叩きを受けた天子が倒れている。
 頑丈であろうが人間で無かろうが、零児のテクの前には関係なかったようだ。

零児「間違った解釈をしている気がするな」

衣玖「どうでしょうか……ですが、良いお灸にはなったかと」

天子「いくぅぅ……あとで覚えてなさぃ〜……」

中村「相変わらず手首のスナップが……小牟さん、御無沙汰では?」ニコッ

小牟「ところがじゃ、今朝久しぶりにくろうてもうたのじゃ」ポッ

魔理沙「だからなんで照れるんだよ、そこで」

早苗「まるで布団叩きを使っていたかのような音……お世話になりたくありませんね」

零児「よほどのことをしない限りは大丈夫だ。……それじゃ、後はお任せしても?」

衣玖「はい。大人しい間に総統様の元に連行しますので」ガシッ

天子「っ! な、よしなさいよ衣玖! こらっ! 離しなさ……ビリッ!?」ジタバタ

 小脇に抱えられた天子が暴れるも、微弱な電流でも流されているのか痙攣する天子。
 自業自得の部分が多少あるとはいえ、いい加減不憫なものである。

中村「比那名居の当主様も、不良天人と呼ばれるなりのポリシーがありますからね。……では魔理沙さんの箒にお邪魔しますね」

魔理沙「座れないからぶら下がりだけどな。……零児がか?」

零児「ああ。何度かぶら下がったからな。慣れた」

霊夢「せいぜい三回じゃないかしら」

零児「それだけあれば十分さ。………………」
410 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/27(火) 11:46:04.93 ID:Fk6OPKdRo
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

天子「いぐぅ……もぅ電気はいいでじょぉ」ビリビリ

衣玖「あ、申し訳ございません、総統娘様。日頃出来ないものでつい」パッ

天子「ボフッ……あんたもたいがい良い性格してるわよね。全く」

 バサバサバサ……

????「中々いい千両役者ぶりだったぞ……テンシ」

天子「あんたこそ、顔に似合わず大人しかったじゃない。デミトリ」

デミトリ「私は吠えたりするのは嫌いでね」

 零児達が雲の下に消えた僅か後、辺りの桃の木の陰から蝙蝠が集まり……一人の大男の姿になる。
 青い全身タイツに身を包み、外が黒、中が赤のマントを羽織った顔面蒼白の紳士。
 デミトリ・マキシモフである。

衣玖「よろしかったのですか、デミトリさん。あの方々……貴方の仲間だと思われますが」

デミトリ「仲間? ふん、ただの協力関係に過ぎんよ。それも、すでに過去の話だ」

天子「ま、あんたが群れてる姿なんて想像できないし、したらしたで不気味だものね」

デミトリ「不気味で結構。……感想は?」

天子「楽しめそう、かしらね。異変が再現されてるとか言うのも嘘じゃなさそうだったし」

 天子は始めから、嘘だと断じない。自分の中で必ず反芻し、瞬時に整理する。
 楽しめるか、利用できるか、邪魔するかをだ。

衣玖「(本当……計算速度は素晴らしいのですが……)それで、どうなされるおつもりで」

デミトリ「……もうしばらく様子見といこうか。今回の騒動がどうなるか、まだ分からないのでね」

天子「あっそぉ? 私は楽しませてもらうわよ。なんてったって、久しぶりの大異変ですもの」

衣玖「そういえば、総統娘様が異変を起こしてからはだいぶ大人しいですね、幻想郷」

天子「そっ。つまんないのよ、ゲリラ的に巫女や他のと戦っても。……それに……」

デミトリ「それに?」

天子「……あの刺激……癖になりそう……」ポッ

衣玖「……(汗」

 お気に召したようで何よりだ。……決してMではない。たぶん、きっと、おそらく。

デミトリ「……くっくっく。零児……人間でありながら、淫魔のような魔性の男になるか。面白い」

衣玖「(この吸血鬼も大概ずれていますね……」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

零児「へーーーっくしゅん!!」

小牟「どうした零児、雲にでもやられたか?」

零児「わからん」
411 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/27(火) 12:10:05.65 ID:Fk6OPKdRo
以上で本編の投下を終わります。そしてまた忘れてましたレスありがとうございます。ああもう駄目だな自分。

玄米零児でお馴染のデミトリさんが出てきました。おぜうの技の元ネタですね、はい。


>>404
看板と言うのは、別に1人ではないのですよ、はい。


以下、登場キャラの初期設定です。

東方projectより

永江 衣玖

 天界の少し下、雲海の辺りを主な住みかとする龍宮の使い。「空気を読む程度の能力」。
 天子の監視兼教育係な妖怪。争い事が嫌いで、天子の言動にはほとほと困っている。いっそドリルで……

比那名居 天子

 天界に住む天人。成り上がりの理由から、不良天人と呼ばれる。「大地を操る程度の能力」。
 異変を自ら起こした興奮で自家発電していたために大人しかった。が、零児に新たな刺激を貰って再加熱。


ナムカプより

中村 等 (ベラボーマン)

 物質界の一サラリーマンでありながら、アルファ星人に認められベラボーマンとなった男。「○○する程度の能力」未開花。
 素の「銀の力の特撮ヒーロー」は近距離であれば小牟と互角。
 ただし腰が弱く、遠距離攻撃も持ち合わせていないために過激な戦いには不向き。スペカ戦?腰を折る気ですか! 

デミトリ・マキシモフ

 魔界の領主の一人。好戦家であり、絶対の自信を持つ吸血鬼。「○○する程度の能力」未開花。
 素の「ヴァンパイア・プリンス」は総合的には零児とほぼ互角。
 スペカ戦に対しては「子供の、それも女の遊びに付き合ってやる必要はない」と突っぱねてる。
 レミリア達とは違い、日光に当たっても何の問題も無い。というか銀以外大体無意味。
412 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/12/28(水) 09:39:05.69 ID:7gBgYsA3o
メルラン「やっほぉー! おはようまたはこんにちわまたはこんばんわ。メルランよ」

フェリシア「いえーい、皆見てるー? フェリシアだよー。今日の『一日一談』の司会者をするんだ」

エイゼル「我はエイゼル。アグラットヘイム代表として、今日は参戦仕った」

メルラン「戦いじゃないから肩の力抜いちゃいなさいよ。……ホネホネロック?」

フェリシア「私、猫だから……」

エイゼル「貴様らは何を言っている。……早急に始めようではないか」

メルラン「ああ、はいはいごめんなさい。んとね、今日は幻想郷の「冥界」……というよりも「幻想郷の上側」についてですって」

フェリシア「位置的に上にあるだけで、階層だとか小難しい話じゃないからね!」

エイゼル「次元の事か。……幻想郷は幾つかの世界の集合体である事は、すでに周知の事実であろう」

メルラン「その中で、空の上……それも遥か彼方にあるって言われてるのが冥界や天界なのよ」

フェリシア「冥界はつまり地獄、天界は偉い人の世界で、基本的に普通の人間が来るような場所じゃない……んだ」

エイゼル「死者の集う冥界。天人や上人と呼ばれる、人から昇華せし者が住まう天界。という区分だ」

メルラン「でもこの二つ、幻想郷縁起からすれば同じ世界だろうって書かれてたりするの」

フェリシア「どっちも昇天してるもんね。……あれ? 違うの?」

エイゼル「これもまた、地理的な意味合いであると考慮する。空の上、大地がある、穏やかな者達の住処など、共通点も多い」

メルラン「私達は騒がしいけどね! 後庭師も穏やかじゃないと思うわ。んと次は「気質」について?」

フェリシア「ゲロっちゃうと、中の人が気質に関してちょっとした勘違いしてたらしくてさー」

エイゼル「それの意識修正も兼ねての事だそうだ。……幸いにも修正可能範囲だったがな」

メルラン「結構ダサい話よね。んじゃ話すわ。気質は物事の性質があふれ出た物なのよね」

フェリシア「普段は見えなかったり、そもそもそんなに害はないんだ。それで、これが集まると幽霊になるの」

エイゼル「死者の魂である幽霊もまたその者の気質の集合体であるわけだ」

メルラン「私達騒霊も一応は気質の塊なのかな。……あの子の残滓でしかないけど……」

フェリシア「急に暗く!? メルランらしくないよ。もっと明るく行かなくっちゃ人生損々!」

エイゼル「霊として生まれ、今もなお生きているのだ。胸をはれ、騒霊の子よ」

メルラン「おおう、辛気臭くなっちゃったわね。続き続き、っと。この性質の関係上、天人だけが操れるんじゃないのよね」

フェリシア「あの幽霊のお姫様が幽霊を管理してるもんね。でもあれって操ってるのとは違うくない?」

エイゼル「彼女は……否、これは今話すべきではない」

メルラン「エイゼルさんは霊魂とか見えるのよね。便利と言うかなんというか」

フェリシア「隠さなくてもいいじゃーん、けちー」

エイゼル「本編で明かされるのを待て。兎も角、亡霊姫もそうだが厄神や博麗の巫女、月の巫女、
       声を聞くことで話を聞き、動かす豊聡耳もまた操っていると言えよう」

メルラン「それこそ最後は違う気が……?」

フェリシア「もう細かい事はいいじゃーん。面倒くさい〜」

エイゼル「……不向きだな」

メルラン「不向きねぇ」

フェリシア「座ってるのとか無理無理。やっぱり歌って踊って楽しく行かなくっちゃね!」ジー

メルラン「気持ちは分かるわ、ええ!」ジー

エイゼル「………………我を見つめてもどうにもならぬ。此の回はここまでだ」

フェリシア「ちぇぇ。ホネホネロック良いと思ったのに。……んじゃねー」
413 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/28(水) 16:11:33.23 ID:7gBgYsA3o
こんにちわ。閑話休題2.5を投下しにきました。

文量的にクリアー後と一緒でも良かった気がしますが……。

では投下します。閑話休題2.5「彼らは何してる?」です。
414 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/28(水) 16:14:17.14 ID:7gBgYsA3o
微妙に名前なし版のテストも兼ねています。注釈入れ忘れ申し訳ない。



〜〜〜人里編〜〜〜

「英雄せんせー。なんで今日は勉強しないのー?」

「ご両親から聞いてないのですか? 今日は慧音先生が忙しく、暇が取れなかったからです」

「ふぅーん。つまんないのー」

「勉強熱心なのは良い事ですな、由愛さん」

 ここは寺子屋。人里の北東辺りにある、他の家より一回り大きい屋敷だ。

 ここの主である上白沢慧音は現在、昨日の異変に関する事態把握のために留守にしている。
 そのため、本日は学び屋としての機能は働いていないのだ。

「ですが、今日はお帰りなさい。ご両親が心配しているでしょうし、私もいついなくなるか分からないので」

「はぁーい。じゃあねー英雄せんせー」

「お気をつけて。……さて、今のうちに整理整頓でもしますかな」

 そんな寺子屋にやって来た生徒の一人を家に返したのは島津英雄である。

 彼は現在、元の世界へ変えるための方法を探りながら寺子屋にて働いている。
 非常にまじめで学も深く、筋骨隆々なおじさんということで生徒たちの評価は上々のようだ。

「とはいえ、慧音さんもきちんとしていますし、こりゃ掃除ぐらいしかすることがありませんなぁ」

「……ひと段落ついたら、阿求さんの所にお邪魔しますかな」

「慧音ー、いるー? 邪魔するわよー」

「……おや? もしや」

「お、英雄さんおはよう。慧音は?」

「慧音さんでしたら、昨日の異変の事で外出中ですぞ」

「そっか、遅かったようね」

「どうしたんで……」

『妹紅ー、勝手に入っていいのかー?』

「ええ、慧音いないからー」

 妹紅と慧音は異変の中で軽く触れたが、気の置けない仲だ。
 それゆえに失礼な感じに入り込んできたりもする。
 しかも、それを矯正しようとするのだがなかなか治らない。結構困った蓬莱人である。

「それもどうかと思いますが。……御連れの方が?」

「うん。英雄さんと同じように幻想入りした人がいるのよ」

「ほう、零児君以外にも」
415 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/28(水) 16:17:00.19 ID:7gBgYsA3o

「妹紅、ここかー? ……ってヒデオさん!」

「あら、あの人知ってるんだってスタン、英雄さん知ってるの?」

「おお、スタン君! お久しぶりです」

「知ってるもなにも、ジューダスと同じかつての仲間さ。お元気そうでなによりです」

「スタン君こそ。して、何用でしたかな?」

「英雄さんなら知ってるでしょうけど、フランちゃんいるじゃない? あの子がたぶんこられないって話をね」

「フランちゃんが。それは何故?」

「詳しい話はよくわかんないけど、レイジさん曰く異変がもう一度起きてるんだってさ。ほら、ここもそうだったんでしょ?」

「あの話ですか。なるほど、あの子は紅魔館住まい……前に起った異変がもう一度起っているのなら、来られぬのも納得できますな」

 フランと呼ばれる子がいるのは紅魔館。かつて『紅霧異変』を起こした吸血鬼がいる

「へぇ……流石ヒデオさん。もう知ってるんですね」

「長くお世話になりそうでしたのでね。本当は早く帰りたいのですが……」

「まだレイジ達が動き回ってるしなぁ。飛行竜がいないから空飛んで手伝えないし」

「? 非行竜?」

「たぶん違う。空飛ぶ竜だよ、それも人工の」

「人工の竜? 全く、技術力もすごいのね、スタンの世界」

「まぁ遠い昔に造られたらしいけどな。で、どうする妹紅?」

「とりあえず慧音が帰ってくるまで暇ね。英雄さんは何か予定でも?」

「寺子屋の掃除を終えたら、阿求さんの所へ幻想郷縁起を読みに」

「アキュウ? 確か歴史編集者だったっけ」

「ええ。彼女の先代たちが書き残した幻想郷縁起はなかなかに勉強になりますぞ」

「じゃぁ私も一緒に行くわ。スタンもついでだから挨拶する?」

「そうだな。俺もヒデオさんの後に着いて行くよ。じゃぁまずは掃除だな!」

「勉強部屋と玄関先まで、頑張りますぞ」

「案外多いわね。ま、ちゃっちゃとすませますか」
416 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/28(水) 16:18:33.32 ID:7gBgYsA3o

〜〜〜永遠亭〜〜〜

「……暇だぜ」

「暇だなぁ、相棒」

「暇なのは良い事よ、超戦士さん達」

「そうさ。平穏を噛みしめられるのなら、それに越したことはない」

「若いのに老人っぽいこと言うわね」

「気苦労が絶えなかったってことでしょうか。はい、お茶」

「ありがとう、レイセンさん。……ほっ」

「……暇だぜ」

「暇だなぁ、相棒」

「妹紅が居なかったわ。全く、どこほっつき歩いてるのかしら」

「お帰りなさい、姫様。和菓子用意しますね」

「あんころ餅ね〜。…………盆栽みてくるわ。来たら呼んでね、永琳」

「はい、姫様」

「……零児さん達、今も戦っているのかしら?」

「レイジはともかく、シャオムゥがどうだかなぁ?」

「彼女なら心配いらないわ。やる気は十分だったし」

「確かに、あの食べっぷりはいつもの小牟だったね」

「……あんたら、もっとこう、アクティブなことしないの?」

「お茶の時間だもの。まったりしなくちゃ」

「休息は大事だよ、てゐちゃん」

「武器のメンテは終わってるからな」

「暇なだけだぜ」

「落とし穴なら全部塞いだわよ、てゐ」

「うげっ」



〜〜〜白玉楼〜〜〜

「〜♪」

「…………」ポンポンポン

「…………」カサッカサッピラッ

「〜♪」
417 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/28(水) 16:20:41.01 ID:7gBgYsA3o

〜〜〜スキマ〜〜〜

「…………どう、藍」

「ようやく、記憶の引出に成功しました。……遅れて申し訳ございません、紫様」

「いいのよ。あれが成功するかどうかを試したかっただけ。……それで?」

「記憶の差異から生じる歪みを検出しました。ですが、それがいつインプットされたか不明です」

「その先は?」

「残滓が悉く切れています。かろうじて長い物から計算しても、あの結界に対して伸びているだけです」

「恐らくはあれ自体が大きな装置なのかと」

「……そう。つまり異変の主は誰かわからない、と」

「はい……。もうしばらくリダイレクトしてみますが、インプットの対象がある程度決められているようで正直厳しいです」

「………………」

「………………」

「仕方ないわ。こんな状態になるまで気付けなかった私の所為だもの」

「………………」

「………………」

「紫様、お休みください。この作業であれば、私と橙とでどうにか出来ます。……今の紫様は少々しおらしすぎる

「あら、私がいつもはしおらしくないと? こんなにも少女なのに」

「お叱りなら、後にいくらでも」

「………………はぁ。そうね、彼らには悪いけど……もうしばらく休ませてもらうわ……」

「…………『橙』、紫様の床の準備を」

「分かりました、藍様!」

「…………」


〜〜〜八雲家〜〜〜

「………………」

『何かありましたら、すぐにお呼び下さいね、紫様!』
418 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/28(水) 16:22:35.01 ID:7gBgYsA3o


「………………」


「………………」


「来たわね、『 』」


「……ここに」


「…………例の結界の進捗状況は?」


「解析と同時に仕様変更を行っておりますので、一割も到達しておりません」


「手こずってるわね。……からのデータフィードバックがあるはずだけど」


「なにぶん、規格外なもので」


「……そうね、貴女は……」


「………………」


「……いいわ、そのまま進めて。ただしもっと効率を上げなさい」


「御意。……察せられると貴女様が困るので、ここで」


「ええ」


「……ふっ」


「………………」


「…………」


「……」

419 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/28(水) 16:26:12.48 ID:7gBgYsA3o
以上で閑話休題2.5を終了します。……うん、短い。三千もなかった。

次回は「小休止」と「酒宴異変」の予定です。酒宴は実質彼女一人なのですぐ終わります。

投下予定は頑張って明日の予定です。

では。
420 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/28(水) 17:08:53.14 ID:sqi7sjODO
乙!
あー、やっぱり平穏ってのは良いものですね。暇をもてあましている方々も居る様ですがww それにしてもデミトリさんが天界に居るとは思いませんでしたね。
421 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2011/12/28(水) 17:14:00.76 ID:7gBgYsA3o
おおおう、抜けてる部分が……

>>415の途中抜けている部分は

 フランと呼ばれている子が居るのは紅魔館。かつて『紅霧異変』を起こした吸血鬼が居る屋敷である。

となります。完全に流してしまってたし……
422 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/30(金) 11:55:12.08 ID:xDDJ7reJo
こんにちわ。遅くなって申し訳ない。今年最後になる投下です。

しかも予定と違って「小休止」だけです。いやむしろ小休止がのびすぎた……

では投下します。「小休止」……緋想と萃夢の間です。
423 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/30(金) 12:01:49.33 ID:xDDJ7reJo
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

諏訪子「今日の当番が私でよかったわねぇ。一人増えてたのは想定外だったけど。はい、オムライス!」

小牟「ほっほぅ! ふかふかのほかほかじゃてぇ」

中村「ああ、私の分はお気になさらず。愛妻弁当がありますので」パカッ

早苗「はい、皆さんの分持ってきましたよー」フワフワ

 時は正午をだいぶ過ぎた頃。
 天界から降りて来た零児達が守矢神社を再訪すると、ちょうど料理が出来た頃だと言われたのだ。

 それに甘んじた霊夢達に押される形で食卓に並んでいるのである。

零児「本当に良かったんですか、諏訪子様。俺達、特に何も見返りは出せませんが」

諏訪子「気にすんなって真面目君。早苗の面倒見てくれてるだけでも十分よ」

クロノア「うわぁ……こんなとろっとろなオムライス、初めて見たよ……うわぁ……」

魔理沙「なんつーか完璧だな。諏訪子がこんなに料理上手とは思わなかったぜ」

早苗「当番制ですから。それに諏訪子様は美食追求家として幻想美食会を立ち上げたとか……」

霊夢「初耳」モグモグ

零児「……イシター様と違って、随分と近い神様だな」

ガンツ「俺はこっちのほうが好きだがな。で、修理してくれる奴とは連絡取れたんだろうな?」

早苗「先ほど白狼天狗さんが来て、伝えたとおっしゃってました。お昼を食べ終わった後ぐらいには来るのでは?」

中村「河童でしたか。いやはや、どういう外見なのか興味が」

クロノア「ハクロウテングが女の子なんだし、カッパもマリサとかと同じじゃないかな?」

魔理沙「おう。外見は少女だぜ。あと服が緑だ」

 幻想郷における妖怪やそれ以外の神は、だいたいが少女の姿を取っている。
 理由としては諸説あるが、精神と強く結び付けやすい少女の姿が最も暮らしやすいからではと小牟は分析していた。

 というか自分がそうだし。

霊夢「あの衣玖ってのも妖怪よ、中村さん。というか飛んでるのはだいたい妖怪」

小牟「ぬしら三人が例外なだけじゃな。ふぅ、ごちそーさん!」

クロノア「でもコスモスとかも浮いてたよね。ジェットで」

諏訪子「ようおあがり。それはロボット的な理由じゃない?」

ガンツ「俺のバイクと同じようなもんだ。っと、ごちだぜ」

早苗「皆さん早いです。これは負けていられません! ハグハグ……」

零児「よく噛んで食べてないだけだ。ゆっくり食べんと太るぞ」

ガンツ「ちっ、わりーな。正直待ってらんねーんだよ」

中村「お父さんの形見でしたか。大事なのは分かりますが、焦っても変わりませんよ」

諏訪子「ほぉ、泣けるじゃない。でもミスター中村の言う通り焦らない焦らない」

魔理沙「……保護者だらけだぜ」モゴモゴ

霊夢「幻想郷らしからぬ空間になってるわね」モグモグ

小牟「人里もこんなもんじゃと思うがの〜」

クロノア「御馳走様っ!」

 叱る零児。諭す中村。待つ諏訪子。果たして、幻想郷では誰が一番似合うのだろうか。
424 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/30(金) 12:03:47.06 ID:xDDJ7reJo

???『やっほー神様〜。来たわよ〜』

零児・霊夢・魔理沙・中村・早苗「御馳走様(だぜ」

諏訪子「間の良い河童ね。はいはい今行くわよー」

 他愛もない話を交えながら約20分。皆の食事が終えた頃に誰かが訪問してきた。
 ガンツ達早食い組は既に神社前で張っていたようだ。

ガンツ『……こいつが?』

小牟『こやつじゃぞ』

???『ひゅい? あんた達誰?』

諏訪子『参拝客〜。ただいま絶賛信仰ましましよ〜』

???『へぇ、見かけない顔。でもやっぱり妖怪ばかりだね』

ガンツ『……まぁロールやトロンみてーな前例もあるか。後、俺は妖怪じゃぁねぇ』

 むしろかつての戦いのメカニックは大体女性でかつ子供(のような外見)ばかりだ。

???『それは失礼獣さん。……良い銃持ってるねぇ』キラン

魔理沙「……」ニヤッ

ガンツ『こいつの整備は俺一人でやれる。渡さねーぞ』

魔理沙「なかむらー、バイクの方先に行こうぜ」

中村「え? あ、はい」

 そそくさと縁側の向こう、レッドクランを置いてある辺りに向かう魔理沙。

???『むぅ、そっか。そいつは残念……』ショボーン

諏訪子『これからもっと大きくって赤いの触れるから落ち込まないの。こっちよにとり〜』

零児「魔理沙の奴、何しに行ったんだ」

霊夢「……早苗、玄関から行くわよ」ガタッ

早苗「え? あ、はい」

零児「?」

 それに合わせて、声が聞こえているのに態々表の方へ行く霊夢と早苗。……

魔理沙『中村さん、変身してほしいんだぜ』

中村『別にかまいませんが……銀の力が……』

にとり『赤くて大きいの……ごくり』

クロノア『間違ってないのがなんとも言えないね、ガンツ』

ガンツ『素直にバイクって言えコラ』

諏訪子『あはは、めんごめんご〜。ほい、こっちの縁側に……」

にとり「おお、本当にあった! っひゅいっ!? ……って魔理沙か。お隣さんは?」

 拝殿の一角を曲がった先、真っ赤な鳥居があるその手前に置いてあるレッドクランを目ざとく見つけるにとり。
 しかしその手前に魔理沙とベラボーマンが佇んでいた。

魔理沙「いっしっし。キャストオフ、なかむら!」

ベラボーマン「? 付けたり外したりと……」キィィィィ……

にとり「っ!? に、人間になった!? どういうこと!?」

 そんなにとりの前で変身を解く中村。その光景を見て、にとりじゃなくとも大体の者が驚くだろう。

小牟「そういうことかい。ぬしもたいがい悪戯好きじゃの」

魔理沙「私だけじゃないみたいだぜ」イッシッシッ
425 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/30(金) 12:06:59.35 ID:xDDJ7reJo

霊夢「にーとーりー」ポンッ

早苗「にーとーりーさーん」ポンッ

にとり「ひゅいっ!? 博麗の巫女に守矢の巫女!?」

 ただでさえ驚いている所に、真後ろから両肩ににやけながら現れた巫女二人組。
 かなり驚いて緊張している中に、トラウマまみれの二人が現れ、足が震え始める。

零児「……お前達、河童を苛めてどうする」

にとり「更に人間が出て来たよっ!?」

零児「……しくじった」

クロノア「なんであの子震えてるんだろ?」

ガンツ「……さぁな?」

青年説明中……

にとり「ふぇ……そういうことだったのか。こりゃ失礼したね、盟友」

零児「分かってもらえて何よりだ」

 怯え始めたにとりを小牟達が落ち着かせ、縁側に座らせた。
 落ち着いたところで事情を話すとすぐに納得してもらえたようだ。

にとり「とどめが怖めの男の人だったからちょっと焦っただけだよ、盟友」

中村「零児さんでコワモテですか」

クロノア「あのおじさん達に合わせたら大変だね」

小牟「……合わせんようにせんとの」

ガンツ「いるのかよ」

早苗「それでどうなんですか。直りそうですか!?」

にとり「まだそんなに見れてないよ、早苗。ただぱっと見、ちょっと危ないかなぁ」

ガンツ「……頼むぞ、マジで。経費が必要ならバズーカでもなんでもやるからよ」

にとり「落ち着きなって、ガンツ。物を貰おうとは思わないよ。見せては貰うけど」

魔理沙「相変わらず気前がいい奴だぜ」

小牟「流石技術オタクじゃな」

にとり「褒めても何も出ないよ、狐さん」

 河童たちは技術に対し目が無いのは前にも言ったが、それ故に太っ腹なのだ。
 未知の物と出会えた幸せなのか、人智の結集をみる事が幸せなのかはわからないが。

零児「……果たして褒めているのか?」

霊夢「分からないわね。……ま、そろそろ降りるわよ」

諏訪子「おや、もう行くの? もう少し休んで行けばいいのに」

霊夢「とか言いながらもう未の刻じゃない。残りの異変の場所も場所だし」

小牟「比較的近い、地霊殿にはいかんで良いのか?」

魔理沙「んー、あれは時間がかかるからなぁ。朝出て終わったのが三時だったぜ」

?「私達でさえも知らない場所だったから案内出来なかったのよね、あのときは」ブワッ

ガンツ「ちぃっ、つええ風だ…………あ?」

クロノア「わっふー。誰か来たよ!」

諏訪子「おや、ゴシップ記者じゃん。何しに来たの?」
426 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/30(金) 12:18:33.18 ID:xDDJ7reJo

文「ゴシップとは失礼ですね。私は清く正しく射命丸です」

零児「…………」

文「あやや、報告にあった通り。男の人が……二人いますね?」

中村「あ、私こういうものです」サッ

文「あやややや。これは御丁寧にどうも。私はこういう……」

 サラリーマンといえば名刺交換だが、幻想郷でもそのやりとりが行われるのは珍しい光景か。

小牟「大方白狼天狗からの報告が上がったんじゃろ。んで様子をみてこいと」

諏訪子「あの時と同じだねぇ。懲りないわね、大天狗も」

文「見知らぬ妖怪にそこまでばれているとは。……はて、デジャブ?」

霊夢「デジャブね」

青年説明中……

文「ふむ、にわかには信じられませんが……」

早苗「本当ですよ。私もこの目で確かめました!」

霊夢「まぁそのまま嘘だと思ってもらってもいいんだけどね」

文「何を冷たいことを。こんな面白話、記事にせずなんとしますか!」

クロノア「す、すごいオーラだ」

 目を爛々と輝かせながら風を操り髪を逆立てる文。スカートは鉄壁である。

にとり『おーい、こっちの準備できたよー』

零児「ん。すまないな、にとり」

にとり「いやいや。盟友の役に立てるのならなんだって手伝うよ」

中村「悪徳業者に引っかかってしまいそうな気がしますね」

小牟「河童のマイペースっぷりをなめるでないぞ。ダムを作る工事で山の一角を丸ごと爆破じゃ」

諏訪子「いい発想だったんだけどねぇ。なーんでか霊夢に止められた」

 山の一角を崩し、半天然の人工ダムを作る計画が建てられた事があった。
 その工事を施工することになった河童が一晩で山を爆破し、ダムは確かに作られた。

 だがその後、そのダムの危険性……崩して作られたダムは同じく崩れやすいということを自称仙人から諭され、
  これまた一晩で元に戻した事がある。

 それらは本当の狙いを隠した何かであると、仙人は考えた。

 しかし証拠もなければその後何かしたわけでもなく、結局うやむやになった話だが。

霊夢「あれは仙人が言ったのよ。……そういえば無事なのかしら」

文「あの方なら何人か外来人の面倒を見ていると報告が」

零児「……その中にケン・マスターズという男はいたか?」

文「さぁ、どうでしたか。あの仙人は情報統制が厳しいですからねぇ」チラッ

零児「そうか。もしその男がいたら教えてほしい。渡さなければならないものがあるからな」

文「報酬は?」

零児「……いくつか話に付き合ってやる」

文「約束取りつけたわよ?」

 不敵な笑みを浮かべる文を、呆れた顔で見つめる零児。互いの思惑が見え隠れするが……
427 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/30(金) 12:20:42.82 ID:xDDJ7reJo

にとり「……いいのかい? 盟友が勝手に決めちゃってるけど」

小牟「あれはあれで零児の予定通りじゃ。さぁーってにとりめが言っておった乗り物とはなんじゃらほいっ!」

にとり「こっちこっち〜」

ガンツ「気ぃつけろよ、レイジ。つってもま、あんたなら大丈夫か」

零児「油断はしないさ。……落ち着いたら、また皆で宴会でもするか」

クロノア「あの人がいないから突っ込まなくて済みそうだよ」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

????「へぇっくしゅん! ……風邪か?」

ケン「おいおい。裸なんかになるからだぜ、おっさん」

????「言い返せないな、これは。あっはっは!」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

にとり「というわけで、これがそれさ!」バーン

霊夢「丸いわね」

早苗「球体ですね」

 守矢神社の湖から続く、人里方面へ流れる川のほとりに大きな球面の何かが見えた。

にとり「これは『河童の川流れ号』って言ってね。最大12人乗せて川を降りられるんだ」

魔理沙「へぇ。使い捨てか?」

にとり「なわけないだろ魔理沙。自動で私の沢まで戻るのさ」

零児「便利だが……安全性は?」

にとり「今までに何人も乗せて実験してみたけど楽しかったって。外の景色が見えるのが良かったらしいよ」

小牟「こりゃぁ遊覧船じゃな。諏訪子よ、これを信仰に利用せんのか?」

諏訪子「んー、ちょっとねぇ」

にとり「さぁ乗った乗った! 魔理沙の霊力温存するんだろっ」ガコッ……シュー

零児「中村さんと俺を乗せている時、少し辛そうだったからな。助かる」

魔理沙「……ばれないようにしてるつもりだったんだがなぁ……?」

霊夢「結構顔に出てるわよ」

 魔力の消費が激しい上に、零児や中村を運んだ魔理沙に疲労の気が出始めた。
 それを察した零児が歩いて降りると言ったところに、にとりがこの案を出してくれたのだ。

早苗「御柱に乗せてタオパイパイという手も……」

零児「二重の意味で危ないだろ」
                                      〜?
にとり「全員乗ったねー? 言い忘れてたけど、防音性が高いから外や中の声は殆ど聞こえないよ。
    あと動き始めたら目的地まで出られないんだ」

小牟「まぁ川を流れるんじゃし妥当じゃな」

にとり「というわけで、閉めるよー。あ、中のそのボタンおしたら動き始めるよ」
                                                  〜♪
魔理沙「これだな?」

にとり「そうそれ。それじゃ五名様行ってらっしゃ〜い」ガコンッ

早苗「ぽちっとな!」

 河童川流れ号のドアが閉まり、川を流れ始める。どんぶらこ〜どんぶらこ〜と声が聞こえてきそうな滑り出しだ。
428 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/30(金) 12:22:56.04 ID:xDDJ7reJo

小牟「おお、確かにこれはよい。快適じゃ」

零児「中身が回らないような仕組みか。二重構造なのか、それとも……」
                                     〜♪
魔理沙「お、飲み物あるぜ。…………ペ、ペパ……キュー?」

早苗「ペプシアイスキューカンバーですね。……きゅうり味だそうです」
〜♪♪♪
小牟「ああ、幻想入りするわなぁ、これ……」

零児「本部で二日だけ流行ったあれか」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

にとり「ふぃ。無事出航したね。よし、次はレッドクランだ」

諏訪子「ところでにとり。あれって普段はどこから出発してたっけ?」

にとり「ひゅい? どこって、私の沢の近くだよ?」

諏訪子「……滝の下?」

にとり「そうそう、滝の下たきのし……た…………はっ!」

諏訪子「だから信仰には使えないのさ、シャオムゥ」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

霊夢「ところでこれなんか早くないかしら」

小牟「ほむ、確かに川の流れよりちーっと早いかの」

早苗「む、このキューカンバー美味しい!」
                  〜♪〜♪
魔理沙「いや、まずいだろこれ。外の奴は何考えてこれ作ったんだ?」ジー

零児「俺に振られても知らん。注目を浴びるために作ったんだろうとしか」

 現実の世界で、突拍子の無い商品が開発されるのは良く聞く話だ。
 しかしその商品はたいてい売れず、話題にも上がらず、すぐに忘れられる。
 そういった物も幻想入りするため、幻想郷はカオスなのだ。

霊夢「注目ねぇ。……うちもそういう神様祀れば注目されるかしら」

小牟「ここで注目浴びようとすると守矢クラスの事せんと行かんじゃろ」

魔理沙「はぁ、快適なのは快適だけどもう飽きたぜ。………………景色もそこでキレてるし」

零児「ん、切れている?」
〜!               〜♪
霊夢「切れてるわね」

早苗「本当ですね。んー、この感じだとあの切れている辺りは滝でしょうか」

小牟「ほう、滝か。…………フォール?」

零児「……waterfallだ。……どうする」

魔理沙「落ちるのか?! 落ちちまうのか?!」アタフタ

早苗「落ちます、落ちますよ!」キラキラ

小牟「すっかり忘れとった。ここ山頂じゃ」ハァ

零児「とにかく、衝撃に備えろ。後は、壊れん事を祈るだけだ」

魔理沙「なんでそんな落ち着いていられるんさー!」

 ワーワーキャーキャー

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜〜〜〜

〜〜〜
429 : ◆JbeFpMnays [saga]:2011/12/30(金) 12:27:35.11 ID:xDDJ7reJo
以上で投下を終わります。日常パートの筆のノリが……

それでは今年はこれにて終了でございます。三日おきの酒宴異変は来年の4日以降になると……

萃香「ぶわっはっはっはっはwwwww」

勇儀「来年の話をしているよwwwww」

錫華「お笑い草であるなwwwwww」

こ、このネタがしたかったってわけzy(ry



それではこの辺で。皆さま、良いお年を。
430 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/30(金) 18:07:47.89 ID:+iB1UgRDO
お疲れ様です!
川流れ号…どうなっちゃうんでしょうね?まぁカタパルトで一般人を射出よりは危なく無さそうだけど。

本年はありがとうございます。良いお年を!
431 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2012/01/01(日) 08:11:57.36 ID:P/ZZYaaDO
新年、明けましておめでとうございま〜す!

お正月特別編とか、来たりするんだろうか?
432 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/01(日) 10:38:14.50 ID:tovlFN5to
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

御節は食べましたか?御雑煮は?神社参りの予定は?親戚一同への御挨拶は?など等忙しい三が日です。

>>431
なのでそんなフリされてもやってやんよ!……ネタ浮かんじゃったりしたりしますのことですよ、ええ。

問題はこの三日間のいつ投下出来るか不明ってところですか。各々の用事のついでに適当に確認してくださいな。

では、この辺で。


聖「此度もまた新年を迎えることが出来、真に以て平穏無事である」

神子「新年の計は元旦にあり。無病息災を祈って……」

神夜「いざっ!」

『新春万福 敬頌新禧 千客万来 画竜点睛!』

錫華「のりのりである♪ さぁさぁ皆の集御一緒に! いよぉー……!」

『よよよい、よよよい、よよよい、よい。わーーーー!』
433 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2012/01/01(日) 19:12:51.28 ID:P/ZZYaaDO
まさか本年にやって頂けるなんて…感激でございっっっ!!
434 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2012/01/01(日) 19:16:59.89 ID:P/ZZYaaDO
>>433
なんという痛恨のミス…!“本年に”ではなく“本当に”と書こうとしたのに…っ!
435 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/03(火) 00:41:02.52 ID:muC92+PMo
こんばんわ。レス、ありがとうございます。

正月特別企画……と言えるほどの物ではないですが投下します、どうぞっ。
436 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/03(火) 00:42:58.68 ID:muC92+PMo

霖之助「こんにちは。あるいは、こんばんわ、かな。霖之助だ」

ブルース「よぉ皆。ブルースだ。ジャパニーズ・お正月の事で、今日は来たんだぜ」

コウタ・アズマ「おおおお、おうこんばんは。こ、コウタ・アズマだ」

零児「こういう場面で話すのは初めてか、コウタ」

コウタ「お、おう。人前ならいくらでもあるんだが、マイクってのはちょっとな……」

霖之助「そうかい? 僕もこの間初めてこのマイクというものに触れたけど、楽しいじゃないか」

ブルース「流石に外の物に触れてるだけあって適応が早かったよな。っとぉ今日はだな……」

魔理沙「呼ばれて来たぜ」

こいし「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん!」

零児「お、来たか。…………また古いネタを……」

M.O.M.O.「どうかしましたか、零児さん?」

零児「懐かしいネタだったんでな。少し感慨深かった。……今日はお正月に関係する話だそうだ」

コウタ「新年の一月一日から三十一日までの事だな」

M.O.M.O.「データバンクによりますと、様々な国や文化で正月にあたる行事があるんですね」

霖之助「今回は日本のことだけを話すよ。正月とは、旧年が無事終わったことと、新年を迎えたことを祝う行事なのさ」

ブルース「やることと言えばお年玉だろ、新年の挨拶まわりだろ、それから……」

魔理沙「それを忘れてたぜ。香霖、お年玉くれ」ニヤニヤ

霖之助「そういう事は、ツケを返してから言うもんじゃないかい?」

魔理沙「それはそれ、これはこれ。新年からそんなケチくさい事言わないもんだぜ」

コウタ「いや、ツケてるのに新年早々金をせびるってのは……」

魔理沙「金? 何言ってんだ?」

霖之助「……全く。はい、たまごっち」

零児「コウタ、幻想郷はいつの頃から止まっているか、知っているか?」

コウタ「ん? んーっと、確か明治の頃ってー話だっけ?」

ブルース「しかもそのド田舎だ。あの頃はまだ古い時代の名残があるんだが、田舎だとそれが顕著なんだ」

こいし「たまごっち〜?」

零児「その一つがお年玉だ。……お年玉とは元々、目上の者が目下の者に贈答することだったんだ」

霖之助「幻想郷でもその習慣が残っているよ。……というよりも、外で忘れ去られたという方が妥当かな?」

コウタ「あー、なるほどな。そこの小さな魔女は物をせびってたわけか」

魔理沙「子供の特権らしいからな。……んでこれはどういう物なんだ?」

霖之助「それは育成ゲームらしい。使い魔を育てあげ、立派な成体にするのが目的さ
     しかもその成体は多岐にわたって存在するらしい。懇切丁寧に育て上げればきっといい使い魔が……」
437 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/03(火) 00:44:27.84 ID:muC92+PMo

零児「……」

コウタ「……」

ブルース「ああ、日本で流行ったっていうあれか。随分古いが初期型か?」

零児「ああ、そうだな。……外の人間がいる所で、能力を使う意味はないと思うが?」

霖之助「決まった物事を知る前に考察するのは謎解きのようなものさ。合っていようがいまいが、その過程を楽しむ……」

こいし「これ動かないよー?」

魔理沙「うんともすんとも言わないな」

コウタ「貸してみな。……思った通り電池切れだな。こいつに使うタイプの電池もあんまり見かけねーが……」

ブルース「おっとぉ何故か俺のポケットにボタン電池がー」

魔理沙「御都合主義乙だな」

ブルース「こういうときぐらい全開で構わねーだろ。ほい、入れてみな」

コウタ「おう。……プラスがこっちでマイナスがこっち、っと。どうでい?」ピッ

 〜♪〜♪

こいし「わ、動いた!」

魔理沙「すげぇ。……けどなんか荒いな?」

零児「初期型のドットはこんなものさ。さて、話が逸れたが幻想郷では昔ながらのお正月というわけだ」

コウタ「って言っても、年上から年下に渡す構造自体はそう変わらないんだな。大名と侍がいたら話は違ったのか?」

ブルース「さぁな。俺は日本の歴史に関してはさっぱりだからな」

零児「……可能性は否定できないが、断定もできんさ」

M.O.M.O.「なるほど、これがご飯でこれがステータスこれは……」

こいし「モモちゃんすごーい。よくわかるねー?」

M.O.M.O.「こういう端末の操作には慣れているんです。ですが、この流れるのってなんでしょうか?」

ブルース「……微笑ましいねぇ」

コウタ「喧騒を忘れさせてくれるぜ……」

零児「こういう光景を見るのもまた、正月の醍醐味だな。……今じゃ、現金になってしまって味気ないが」

ルーティ「御金が貰えると聞いてやってきたわ」キラキラ

マミゾウ「金貸しはいらんかねぇ」

紫「少女と聞いて♪」

小牟「零児ぃ、わしをおいて正月談義とは冷たいのぉ?」

ブルース「ルーティちゃんは女の子だが、後から来たのが胡散臭い妖怪だらけだ……」

 しばらく、お待ちください。

ブルース「」チーン

コウタ「うわぁ……(笑顔のままボッコボコって……」

M.O.M.O.「だ、大丈夫ですか、ブルースさん!?」

紫「誰が加齢臭よ、誰が」

零児「言ってなかっただろう。そもそも、気にしている地点で認めたもどうぜ……」

 しばらく、お待ちください。
438 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/03(火) 00:45:53.18 ID:muC92+PMo

零児「ふん」win

紫「」チーン

コウタ「あれ? 勝ってる?」

ブルース「いってて……容赦ねぇなぁ」

小牟「二重の意味での。紫らしゅうもない」

マミゾウ「そう言えば正月じゃったの。ほれ、マミゾウ婆さんも童子達に御年玉をやろうかの」

M.O.M.O.「そ、そんな悪いです。マミゾウさん」

ルーティ「おばあちゃん、肩は凝ってない?」モミモミ

マミゾウ「おお〜、気の利く子じゃの〜」

コウタ「は、はぇ……」

マミゾウ「ぬしも子供じゃろ。遠慮せんとこっちゃこい」

小牟「……して、何の話しとったんじゃ?」

ブルース「ん? ああ、正月にやる事だ。あの狸がお年玉をやりまくってるから、次は挨拶まわりだな」

零児「これは難しく考える必要はない。新年の挨拶を、知り合いや親戚にするのさ」

霖之助「新年の福を迎え入れる等の意味もあるね。喜んでいるという事を表すわけだから、世間受けもいい」

小牟「つーわけで代表者連れて来たぞ」

響子「何故か呼ばれてきました、ヤマビコ響子でございます!」

コウタ「ふぃ。色々貰っちまったぜ……なんか犬っこが増えてねーか?」

響子「犬っことはなんですか! 私はヤマビコですよ!」

ブルース「シャオムゥ、別にキョウコちゃんを呼ぶ必要はなかったんじゃねぇのか?」

小牟「挨拶と言えばこやつじゃからな。つーわけでほれ、「明けましておめでとうございまーす」」

響子『明 け ま し て お め で と う ご ざ い ま ー す ! ! ! ! !』

零児「ここでよく言われるのが、新年と明けましてを一緒に使うのはおかしい、と言う話だ」

小牟「どっちも年が明けた事を説明しとるんじゃから、二度使うのは強調表現のつもりか? とかの」

響子「今 年 も よ ろ し く お 願 い 致 し ま す ! ! ! ! !」

零児「だが、新年を迎えた事で気持ちが高ぶり、語呂の良さも合わせて話してしまう人はそう少なくない」

霖之助「そもそもの目的が新年の挨拶なのだから、そういった誤用はその場では指摘する方が野暮だと、僕は思うね」

ブルース「正しく訂正する必要はあるが、それだってTPOだわな。この場合は言い方の問題か?」
439 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/03(火) 00:49:09.02 ID:muC92+PMo

マミゾウ「いやぁ童子らの笑顔は眩しいのぉ。特にほれ、ルーティって子が満面の笑みじゃ」

ルーティ「札束よー札束。あのおばあちゃん気前いいわ〜。大好きっ」

コウタ「あの笑顔は腹の中真黒だけどな」

小牟「まぁ、マミも笑顔でルーティめも笑顔。ウィンウィンの関係じゃて」

マミゾウ「正しい言葉づかいじゃからとゆうて上から目線じゃと、それはそれで空気を悪くするから気を付けるんじゃぞ」グリグリ

小牟「じゃからなんでわしの足を踏むんじゃ!? わしはぬしになんも悪い事はしとらんじゃろ!?」

マミゾウ「うるさいわい、この偽仙狐! なぁにが765歳じゃこの小童め!」

零児「……」

ブルース「なんだなんだぁ? なんであのグランドロリータはシャオムゥに突っかかってんだ?」

零児「狐が嫌いだそうでな、条件反射でああなるとか」

コウタ「狐と狸ってぇと、化かし合いの仲間ってぇイメージがあるんだけどなぁ」

紫「家の藍とも逢わせれないのよね、彼女」ムクッ

ブルース「お、起きたな。目覚めはどうだい?」

紫「ノーコメントよ。……主人公補正って怖いわね」

響子「メタのバーゲンセールですよー!」

ルーティ「バーゲンセールですってぇ!?」

マミゾウ「狐の言う事なんて信用できりゃせん!!」

小牟「端っから突っかかってきおってその言い分はなんじゃこのあほ狸!!」

M.O.M.O.「え、え、これって……!」

魔理沙「糞しやがった!」

こいし「うん……」

魔理沙「それ以上言うなだぜ!?」

零児「…………」

ブルース「…………」

霖之助「…………」

コウタ「…………」

紫「この展開になるの多いわね」

ブルース「だからメタなこと言うなって」

紫「あら、別に統計学的な話でしたわよ?」

霖之助「……御雑煮、食べるかい?」

零児「……頂こう」

紫「御節料理の事も話そうかと思ったけれど、かなり要素が多くて投げだしちゃったわ♪」

響子「メ タ で す よ ー !」

零児「……はぁ」

コウタ「(俺、絶対零児さんの立ち位置を維持できねぇな」
440 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/03(火) 00:51:38.10 ID:muC92+PMo
と言った感じで終了です。……明日が一日丸々忙しいために早めに切り上げようとしたらこのざまである。

本編と違ってあまりネタを寝かせれない分めちゃくちゃで投げっぱなし……色々と申し訳ない。


本編に関しては去年の宣言通り4日以降、とだけ。遅くとも来週水曜までには。
441 :以下、あけまして [sage]:2012/01/03(火) 01:43:52.60 ID:CIquTTuo0
乙です
今年も頑張ってください
442 :以下、あけまして [sage]:2012/01/03(火) 15:50:53.99 ID:ke0Om4gDO
忙しい中、ありがとうございます!

たまごっち懐かしいな…。でも超未来ではAIペットとか普通に居そうだなwwそれにしてもブルースさんご都合スゴイですね。

紫様ェ…、そりゃあガチ妖怪退治の凄腕プロが相手じゃあ分が悪いわ。しかし響子ちゃんの挨拶方法は便利だなぁ。

そしてマミゾウさんは全然おばぁちゃんに見えないよ!
443 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2012/01/06(金) 14:49:35.17 ID:MkwyZcV90
ヘイムレン「ふぃ〜ふぃふぃっふぃっふぃ〜♪」

リリカ「不思議な音だねぇ。なんだかこう、体が勝手に動きそうな……」

クリノ「動きそうというか、動いてるよ。リリカちゃん」

ヘイムレン「躁音の名は伊達ではないのさ。こんにちわ。今日の『一日一談』を担当させてもらう、ヘイムレン・シルバートさ」

リリカ「うわっ、本当だ。やほー、リリカだよー」

クリノ「こんにちわ。おいらはクリノ・サンドラさ。今回は新年初一日一談と言う事で、少しお知らせなのさ」

ヘイムレン「意気込み……と言ったところかな。新年の抱負というやつだねぇ」

リリカ「なんでも、>>322で言われた事を実践してみようかとか思ってるらしいよ?」

クリノ「物語の中盤以降にネタを思いついた時に対応するためだとさ。ピンチに「その時不思議な〜ry」はしたくないって」

ヘイムレン「細かいところにまでネタを詰め込む事が良いかは、出来あがるまで分からないけどねぇ」

リリカ「計算づくでやっても妙なずれで元からパーになることもあるもんね。キャラが動くって怖い事よね……」

クリノ「だけどその分筆が進んで、楽しいという気持ちの方が強いけどね」

ヘイムレン「ただ、ムゲフロ勢は僕以外は相変わらずでないのさ。あちらの出るキャラの導入と展開は結構肉付けしてるからね」

リリカ「ついでにこのヘイムレンって人が、>>322を実践しようと思った原因だって。自分で言っときながら変えすぎね」

クリノ「さっきリリカちゃんが言ったことをそのまましてるね。ただ、>>321の事はまだまだリクエスト受付中だからどんどん書いておくれ」

ヘイムレン「後は次の投下以降の話だけも、萃夢想が終わった後はしばらく日常が続くようだねぇ?」

リリカ「若干、スペカ戦恐怖症だって。メルランお姉ちゃんの音楽聞けばいいんじゃないかしら?」

クリノ「分野が違う気がするんだけど。まぁ、100レス程は行きたいとか……逃げてるね」

ヘイムレン「敵前逃亡は修羅の恥だ」

リリカ「音楽を聞いてくれればなんだっていいかも!」

クリノ「中の人は普通の一般人なんだけど。……これぐらいかな?」

ヘイムレン「そうだねぇ。……じゃ、今回はこの辺で」

リリカ「えらく普通に終わったわね」

クリノ「何かある方が普通じゃないと思うよ?」

ヘイムレン「ふぃ〜ふぃふぃっふぃっふぃ〜♪」
444 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/09(月) 23:53:22.78 ID:2c4fYXgEo
こんばんわ。レスありがとうございます。

萃香一人だからすぐ終わるだとか、スペカ戦恐怖症とか言ってるくせに気付いたら10KBも書いてました。

何してんだよ……俺……

というわけで投下です。「萃夢想-VS萃香-」です。
445 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/09(月) 23:56:16.87 ID:2c4fYXgEo

河童の川流れ号『ご利用ありがとうございました』パカッ

魔理沙「……ふぇ」

小牟「これはこれで楽しめそうじゃぞ、諏訪子よ」ドヤッ

早苗「まるでジェットコースターのようでした。いえ、なんとかフォールでしょうか」

霊夢「零児さん、大丈夫?」

零児「……ああ。なんとか、な」

魔理沙「私達はとっさに飛んだから良かったけど、レイジはどーん! って」

零児「あの程度の衝撃なら慣れたものさ。カタパルトで射出した時の方がよっぽどだ」

早苗「カタパルトで!? そ、それはどのような……」

霊夢「今はよしなさいよ。……この河童め」ガンッ

 霊夢の怒りの蹴りで扉を閉められた河童の川流れ号が、川を逆上りし始める。

 数百mもある滝から落下した一同は、零児を除いて宙に浮かぶことで衝撃を回避した。
 唯一空を飛べない零児だけ受身を取ったのだが、特に苦もなく船(?)を降りたあたり、無事なようだ。

零児「それに当たるんじゃない。……小牟、想定外なんだな?」

小牟「どうじゃろの。諏訪子めの反応からすれば、こうなる事は予想出来ておった気がするぞ」

霊夢「でしょうね。あの土着神は相変わらず……」

魔理沙「ああ見えて結構子供の悪戯するしな。……はぁ、本末転倒だぜ」

早苗「今問い詰めてます……………………えぇっ!? クロノアをもふってるのですか!?」

零児「もう少しねばれ。次はどこに行く、霊夢」

霊夢「………………」

零児「どうした、霊夢?」

霊夢「……」ピクッ

小牟「……耳が動いちょる」

魔理沙「ああ、その癖か」

零児「癖なのか?」

魔理沙「聞き耳立ててるときはいつもそうだぜ」

 無意識のうちに行うから癖だとはいうが、ここ幻想郷ではそれを操る妖怪がいるために本当にそうなのか分からない。
 ただ、霊夢の耳が動くのは幼馴染の証言からも事実なようだ。

霊夢「……酒宴、行くわよ」

早苗「ええっ!? ガンツまで!?」

魔理沙「お前はいつまで流されてるんだよ」

零児「酒宴……鬼が起こした異変か」

小牟「萃香じゃな。……そういやあれ何処が終点じゃ?」

魔理沙「あれは博麗神社の近くだぜ。ただし、外だがな」

早苗「あ、神奈子様が帰ってきました。……宴の席の事、かけあってみましょうか?」
446 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/09(月) 23:59:14.17 ID:2c4fYXgEo

零児「……こういう娘なのか」

小牟「ようやく本領発揮と言ったところかもしれぬ」

早苗「え、あれ??」

 マイペースなのが幻想郷の少女達なのだが、早苗に至ってはスーパーとかウルトラとかがついてもおかしくないぐらいだ。
 そのマイペースの犠牲にあった妖怪は数知れず。
 文も人間少女三人の中で最も妖怪に近いと言っていたのだから、幻想郷になじめているという事だろう。

霊夢「……呼んでるのよ、萃香が」

早苗「え、すみません聞いていませんでした」

魔理沙「大丈夫だ、萃香の声は聞こえてないぜ」

零児「今になって聞こえてきた。そういうことか?」

霊夢「ええ。……幻想郷中に疎でいたんだけど、別々の異変に吸われてたんですって」

小牟「なるへそ。広範囲を攻略したから、異変の外側で話せる程度に戻れたんじゃな」

零児「そういう能力なのか」

魔理沙「密と疎を操る程度の能力だぜ。こう、霧みたいになれるんだ」

 『密と疎』とは、簡単に言えば密度の事である。自身の存在を密にすることで実体化し、疎にすることで霧状になる。
 更に火を限りなく密にすることで大きな炎の塊にしたり出来る等、扱いやすく強力な能力だ。

零児「確か、酒を限界まで飲まされるから後回しにしていたんじゃないのか」

霊夢「来ないと私の耳回りで騒ぐってうるさいのよ。そっちのほうが迷惑」

早苗「小さな鬼さんでしたね。それでは向かいましょう!」

魔理沙「……やっぱ、流石に早苗には負けるな」

零児「自覚があるなら少しは直したらどうだ」

魔理沙「それはそれ、これはこれだぜ」

小牟「どいつもこいつもあれじゃ、あれ」

零児「お前が言うな。それと、アレで済ませるな。どれかわからん」

早苗「こそあど言葉ですね」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜酒の香り萃まる地〜〜〜

零児「……なるほど、確かに結界がある。だが小さいな」

霊夢「あの異変、本来なら幻想郷全土にわたって影響していたはずなんだけどね」

早苗「私が来る前ですね……とぅっ」

魔理沙「おい、先に……」

早苗「シュタッ!」

小牟「口で言うても10点はやれぬぞ?」

零児「わざわざ検証してくれたのは助かる。だが、次からそんな無茶はするな」

早苗「いえ、皆さんがどのように出てくるのかを見ようかと。ですが入れませんでした……残念」

零児「……それも大事か」
447 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/10(火) 00:02:06.73 ID:qkoBKf/So

霊夢「おかげで戻ってくる所見れたし結果オーライじゃないかしら」

 早苗が飛び跳ねて入り、そっくりそのままの軌道で結界から戻って来たのを確認した四人。
 帰って来たとき、早苗の表情が自信満々な満足顔から困ったような顔になったのだが、何を思ったのやら。

魔理沙「違和感ねーのか?」

早苗「はい、特にはなにも。ただ一瞬、酒臭かったような?」

霊夢「……飲んでるからそうだろうね〜。だってさ」

零児「中の様子が伝えられるのは便利だが、昼間っから飲むのはどうなんだ」

魔理沙「そういうやつだしな、萃香は」

霊夢「……早く行くわよ。こいつ五月蠅い」

小牟「んー。もうちょいサンプルが欲しいのでな、早苗と待っててくれんか。萃香の欠片よ」

早苗「どうせなのでこのまま博麗神社に向かおうかと思います!」

霊夢「あー、それはよしたほうがいいわ。結界の内外でどうなるかわかったもんじゃ……」

早苗「では、朗報をお待ちしておりますね!」タッタッタッ

霊夢「って聞きなさいよ!?」

魔理沙「走ってったな」

零児「態々森の中をな」

 酒宴異変が起きている場所は、零児達が幻想入りした所からそう遠くないが森との関係上、見えない位置にある。
 位置で言えば、妖怪の山と博麗神社の間ぐらいか。

 だが本来、三日起きに起きていた酒宴は場を変え人を替え開かれていた。
 それこそ幻想郷の至る所で、神社でも、野原でも、山でも。

霊夢「……萃香、悪いけどあっち居て」ハァ

小牟「おぉ。心なしか霧が薄くなってきたのぉ」

魔理沙「んじゃ行くのか?」

霊夢「……ええ、行くわ。話し合いで済みそうだし、もう一件いけるかしら」

零児「魔理沙の件もある。あまり無茶は出来んさ」

魔理沙「……むぅ」

零児「拗ねるな。……俺が一人で移動出来ないのが悪いのさ」

小牟「いやいや、わしが零児にあった術を構築出来んのが悪い」

霊夢「それ、終わってからでいいでしょ。入るわよ」

魔理沙「空気読めよ」

霊夢「あら、私は「空を飛ぶ程度の能力」よ」フフン

小牟「……」

魔理沙「……」

零児「……あー、霊夢?」

霊夢「放っておいて」

 普段真面目な人が突然ボケると対処に困るものである。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
448 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/10(火) 00:05:15.20 ID:qkoBKf/So

零児「……酒の臭いが濃いな」

霊夢「あら、山の宴会はこれぐらい普通よ?」

小牟「天狗が鬼に負けるっちゅうだけで、相当な飲兵衛じゃしな」

魔理沙「河童も結構だぜ。よっ、萃香。またして悪かったな」

萃香「グビッグビッグビッ……ぷはぁ。全くよ。一人酒程さみしいモノはないね」

零児「お前さんが萃香……酒宴を引き起こしていた、山の四天王の一人か」

萃香「そっ。お兄さんとそっちの狐は知ってるんだね、鬼のこと」

小牟「しょっちゅう退治しちょるよ。それにま、ぬしが寂しがり屋っちゅうこともな」

 結界を抜けた先。空も、景色の向こう側も、時間さえも分からない空間にて胡坐を掻く、顔が紅色に染まった小柄な少女が迎える。
 肩の所で乱雑に破かれた服を着、○○なスカートを履く。
 手に持つ瓢箪から服の至る所に繋がる鎖に赤い球体、黄色の三角錐、青い正四方形の飾りを付けた、頭から一対の角を生やす酒豪。
 伊吹萃香……幻想郷でさえも忘れられていた鬼の、その中でも実力者たる四人のうちの一人だ。

萃香「寂しがり屋だなんて失礼な。ただみんなで騒ぎたいだけだよ。ねぇ魔理沙」ケラケラ

魔理沙「そうだな。妖精がHみたいに騒いで、妖怪達の飲み比べをちゃかしたりしてな」ケラケラ

霊夢「それを神社でやるのは構わないけど、後片付けもせず何処か行くのは止めてくれないかしら」

萃香「おやおや、年長者を敬うってことを知らないのかい、霊夢♪」

零児「後片付けは皆の仕事だ。むしろ、儚い人間を優しく扱うぐらいしたらどうだ」

萃香「お兄さんは真面目すぎるんだよ。楽しいことは長く続けたいと思うのが普通だろ♪」グビッグビッ

小牟「嫌な事は遠ざけたいものじゃよな。報告書や始末書の山なんぞ見た日にゃ……零児に手伝ってもらわねばやってられんよ」

零児「それとこれとは話が別だ。後にまわしたツケぐらい一人でどうにかしろ」ハァ

霊夢「それじゃさっさと終わらせるわ、よっ 『亜空間穴』」シュンッ

 霊夢がスペルを取りだし、萃香の頭上へと瞬時に現れる。だが、

萃香「ひょいっと♪」ガリガリ

霊夢「(タン)……なんで避けたのよ、萃香」

萃香「いやいやぁ。言っただろう? 『楽しい事は長く続けたい』ってさ♪」

魔理沙「お前も大概やんちゃだよな」
                    コレ
萃香「へへへっ。そうじゃないと異変を起こした奴に悪いだろ♪」

零児「わざわざ付き合う必要はないと思うがな」

小牟「まぁ、鬼のぬしがそういうことを言うのは大体予測済みじゃ」

 異変とは、一種の祭りの側面を持つ。
 日頃、多少緊張感があるとはいえ平穏な幻想郷において、一種の娯楽なのである。

萃香「なら話が早い。せめてルールぐらいは守ってやろうよ〜♪」

魔理沙「よーするにスペカ対決しろってことか。分かりやすいぜ」
            イツモドオリ
萃香「そうそう。スペルカード対決さ♪」

霊夢「……ちっ」

魔理沙「フラグ回収っていうんだよな、これ?」

 俺、この戦いが終わったら彼女にプロポーズするんだ。は余りにも有名である。

零児「知らん。……幻想郷の鬼の力、見せてもらおうか」

霊夢「さっさと済ませて大異変を……」
449 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/10(火) 00:07:34.29 ID:qkoBKf/So

萃香「ちょっとまったぁ。こんな自由に出来る場所でただ乱闘ってには頂けないねぇ」

小牟「想定の範囲内じゃ」

零児「なら先に話しておけ。……どういう戦いがお望みなんだ、酒呑童子」

萃香「なぁに、純粋なサシでの能力比べさ。全力じゃぁ魔理沙に負けたけど、八分目ならどうなるか興味があるのさ。負ける気がしないけど」

魔理沙「おいおい。ただでさえ骨が折れたんだぞ? 私も負ける気はないけどな」

零児「……」

小牟「自然と話しておったが、これも魔理沙が解決したんじゃな」

魔理沙「おう。霊夢のやつ、連日宴会してて弱ってたからな。私がぱぱっと解決したぜ」

霊夢「私が行く所行く所、宴会だらけだったのよ。やになっちゃう」

萃香「楽しんでいたからいいじゃないか。ささ、誰から来るんだい? 言っておくけど私は弱くなってないよ〜?」

零児「……俺が行こう」

小牟「む、トップバッターを自ら選ぶか。よーっしやっちゃれ零児!」

萃香「ほう、お兄さんからかい? 誰でもいいけど、退屈だけはさせないで欲しいね〜」

零児「勝手が過ぎる鬼退治だ。その瓢箪、落すなよ」

霊夢「……文のときと言い、何が気に障ったのかしら」

小牟「実はわしもいまいちわかっとらん」

萃香「ほれほれ、おいでよさ〜」グビッ

零児「っ『地禮』!」シュッ

 瓢箪を思い切り担ぎあげ、天に向かいながらラッパ飲みしている萃香に、零児が迫る。

 護業から地禮を抜刀し、瓢箪を持つ手を狙う。
 しかし萃香はそれを更に仰け反ることで回避。そのまま護業を蹴りあげて後ろ回りで間合いをとる。

 零児はそれを追わず、落ちて来た護業を掴む。

萃香「意趣返しぃ」ニヤァ

零児「どうせならそのまま遠くに蹴飛ばすべきだったな」

萃香「何言ってんのさ。蹴る瞬間に引っかかりを浅くした癖に」ケラケラ

魔理沙「相変わらずすげー判断力」

小牟「得物を狙うてくる奴は多いからの。経験則じゃて」

萃香「グビッ……ふぃ〜。ま〜だまだ出方をうかがってるねぇ〜?」

零児「お互いにな。どうせなら、能力込みで試したらどうだ」

萃香「あっはっは、強気だねぇ。じゃぁお言葉に甘えて、こ て し ら べ。鬼符『豆粒大の針地獄』」ヒュッ

小牟「孫悟空の印象が強いのぉ、やはり」ウン

魔理沙「?」

 萃香が自分の髪の毛を抜き、軽くフッと息をかける。
 飛び散った毛がすぐさま手の平サイズの萃香になり、宙を泳ぎだす。
 その数、おおよそ三十を超えるだろうか。これも立派な弾幕なのだから幻想郷は侮れない。

零児「適当に飛んでいるだけか?」

霊夢「一応、当たったら被弾扱いよ」

 チビ萃香達が少ない所に走りだし、すれ違った二体を火燐で落す。
 その攻撃に反応したのか、周りのチビ達が零児に群がり始める。
 豆粒弾幕を四方にばら撒きながら笑顔のまま泳いでくるチビ達。
450 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/10(火) 00:09:10.45 ID:qkoBKf/So

魔理沙「私ならここでスイープだな」

小牟「コレダーでも使えれば楽なんじゃろが、零児めならなんとかしてくれると信じちょる!」

零児「丸投げするな。……柊樹【ハリウッド】、燃え盛れっ!!」

 護業から柊樹を抜きだし、火燐を銃口の上に起き、前方に向けて放つ。
 火を纏いながら飛び散る散弾がチビ達を薙ぎ払う。

萃香「銃も小型化したもんだねぇ」

霊夢「そういえば里にあるのはもっと大きかったかしら」

魔理沙「今さらだぜ」

 前方に居たチビ達が墜ち、その一帯を駆け抜ける零児。
 その後ろから追いかけてくる残りのチビ達を無視し、本体へと迫る。

零児「退路を断つぐらいなら、自分から来てみたらどうだ」

萃香「鬼が島の鬼は待ち構えてるもんだろ〜」ブンブン

 瓢箪から続く鎖を振りまわしながら滞空する萃香に、火燐の一太刀を浴びせる。
 それを鎖で難なく逸らし、そのまま巻きつかせて取り上げる。

萃香「そーれひょいっとぉ」

小牟「毎度思うんじゃが、この表現じゃと鎖ってこう、するっと……」

霊夢「反りの関係で大丈夫なのよ。たぶんきっと」

 火燐が奪われたのを無視し、右手の柊樹を軽く回転させて銃口を握る。
 同時、空いた左手でホルダーに収まっていた金【ゴールド】を掴み、万歳をしている萃香に発砲する。

萃香「あらもういっちょひょいっとぉ」

零児「『樹金道』、捌いて見せろっ!」

 再び大きくのけぞった萃香の足蹴を右に避け、萃香の横っぱら目がけて柊樹の銃床を振るう。
 それを腹踊りの如く、大きくうねらせて倒立。
 地に着く両手目がけて振り抜かれた金を飛んで回避、そのまま零児の背に寄り添う形で着地する。

零児「……酔拳……いや、お前さん風に言えば萃拳か?」

萃香「お、うまいねぇ。それ頂きっ」ヒック

霊夢「会話で漢字の違いが分かるのかしら」

小牟「お約束じゃな」ウンウン

 サクッ

 束縛が解け、宙に放り出された火燐が地面に突き刺さる。
 その音を合図に、零児は後ろの萃香へ左腕の肘鉄を振るう。
 しかし地面にダイブしへばりつく様に伏せた萃香は、続く金の銃弾を避けるように横へ転がる。

萃香「そいじゃそろそろ次、いってみよ〜。『火鬼』!」ゴロドゴォゴロドゴォ

 転がりながら両手を地面に叩きつけ、炎の弾を浮かび上がらせる。
 それを零児から遠ざかるよう、円を描く様に転がりながら行っているために、その中心に炎の塊が出来あがっていく。

零児「弾の軌道が逸れる。これも密と疎の関係か」ザクッ

魔理沙「……なんか、萃香の奴動き良くね?」

小牟「鬼じゃからな。伝承や、わし自信が観て来た経験じゃが、あやつらは近距離の方が得手なんじゃよ」

 撃つのを止め、火燐を地面から引き抜いた零児は萃香の動きをじっくりと眺める。
 その視線に気付くも、なお転がりながら地面を叩く萃香。
 半円を描いたところで止めて飛び上がり、零児の方へ向き直す
451 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/10(火) 00:11:30.71 ID:qkoBKf/So

小牟「おそらくそこらの重力でも弄っておるよ。簡単なブラックホールも作れるでな」

萃香「こらこら、ネタばらしはいかん。タイマンの意味がなくなっちゃうよ」

零児「……分かった。小牟」

小牟「おー、水を差すようなこと言うて悪かったの」

萃香「ん〜、分かってくれればよろしぃ。んじゃ次……グビッグビッグビッ……『鬼神燐火術』」ブフー

 瓢箪に入った酒を口に含み、勢いよくぶちまける。
 噴出された酒が炎の塊に触れて引火し、広範囲を焼く火の壁となる。

零児「予想していた通りだが、幅が広い」ダッ

 酒を口に含み、炎へと吹きだすことで燃やす芸は、サーカス等でも良く見られる。
 だが萃香のそれは密と疎を操り、火炎放射機さながらの範囲を得た、鬼の息吹である。

小牟「零児め、何をしとるんじゃ! 地禮を使って電瞬をじゃな」

魔理沙「それ、チビ達の所に落ちてるぜ?」

霊夢「護業に収まったままね」

小牟「……おぅふ」

 チビの軍団を抜けるときに零児は右手に柊樹、左手に火燐を構えた。
 残念ながら地禮は、護業と共に置いてけぼりである。

零児「だが、炎なら俺が得意とするところだ。……『火燐』っ!」ブンッ

 炎の波に合わせ、萃香の半円の軌跡から逆側へと走り出した零児は、火燐を縦に振りかざし薄かった端を叩き斬る。
 火燐から発せられる炎も相まって火の壁が相殺された所を飛んで潜り抜ける。

萃香「ぶはぁ。私に火で戦おうなんざ五百年早いと思ったけど、案外やるねぇ」ケラケラ

零児「火燐は伊達じゃない。鬼のお前さんなら、これがどの程度のものか分かるだろ」

萃香「業物だねぇ。それも、あの剣士のよりずーっと」ヒック

魔理沙「そうなのか?」

小牟「鬼は嘘をつかんと言うが、そこまではわからんのぉ」

萃香「ま、私も専門じゃないけどねぇ。ほれほれまだまだ行くよ〜? ブフー」

 酒を仰ぎ、今度は細く、零児へと集中した火炎放射を行う。
 一極に集中された火炎には流石の火燐も敵わないと判断。
 距離をおいても、能力で自分のところまで減衰しない攻撃の対処法が見つからない。

零児「やはり、鬼は一筋縄ではいかない……か」タッタッタッ

魔理沙「飛べない分、苦戦してるなーレイジ」

小牟「グレイズ数だけは、おそらくやばい事になっておるな」

霊夢「そういえばあの服焼けないわね」

 森羅の服は耐弾・耐火・耐水素材だったりもするが、それはまた別の話。

零児「このままでは埒があかん。一か八か賭けるか。……俺が負けても、代わりはいるからな」

小牟「悲しいことを言うでない。とはいえ、確かに無理せんと勝てんかの」

魔理沙「自暴自棄にやれるのが、先発の利点だな」

零児「だが、やるからには全身全霊を持って向かう。『もっと早く』!」
452 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/10(火) 00:15:08.54 ID:qkoBKf/So

霊夢「かっこいいけど、要するに手詰まりよね」

小牟「しー!」

 火燐を握る腕に、これまで以上の力が込められる。
 萃香の口の中から酒がなくなり、火炎放射が途切れたその瞬間、萃香めがけて駆け出す。

萃香「ふぅ。さっきの萃拳ってさぁ、こういうのだよ、ねぇっ!」ドゴォ

 宙に浮かんだ火鬼を、その小さな拳で思い切り殴る。
 その小柄な外見からは想像し難い程の威力を伴って、火球が幾つも飛び出してくる。

萃香「ほらっ……おらっ……ほいっとぉ」ヒック

 火炎放射の代わりにやってくる火球を、一つ目は斬り伏せた零児。
 しかし、ふらふらしながら殴り出される火球が、その動きと相反して早いがために、テンポが掴めない。
 それも、全て必ず零児に向かう命中精度なのだから苦労もするか。

小牟「萃香のやつ、遊んどるの。火炎放射し続ければいずれ零児めに当たってたであろうに」

萃香「そんなつまらない展開、スペカ対決にゃぁ似合わないってもんさぁ」ボゴォ!

 火球を避け、斬り、受け流しながら近づく。
 鬼の放つ、その重い一発を軽々と流す様は、昔話の鬼退治をする登場人物のようだ。

零児「……勝つためじゃなく、楽しむため、か」

魔理沙「まぁ、萃香らしいわな」

萃香「だから、お兄さんのやり方見せてみなぁっ。グビッ……ブハァー!」ドゴォ

 酒を軽く含み、拡散するように吹きだしながら火球を蹴る。
 それはあたかも音速で飛ぶ飛行機から生み出されるソニックブームか。

 火球の真後ろからせまる炎の壁が、零児に逃げ場はないと宣告する。

零児「……柊樹!」

霊夢「……」

魔理沙「す、すげぇ……」

小牟「あんな事も出来るとは。萃香のやつは鬼っぽくないのぉ。器用さ的に」

 それでもなお、逃げること無く立ち向かう零児。
 柊樹を放ったのちに放り投げ、右手で火燐を、左手で金を構える。

零児「……『乾坤一擲』っ。取ったぁぁぁっ!」

 腰を落とし突く構えを取る。そして、足のバネを解き放つように火球目がけて突きを繰り出す。
 同時に放たれる金の弾は、火燐が火球を捉えて突いた少し後に着弾する。

萃香「しまった。これじゃぁ見世物が観えないよぉ」ヒック

零児「なら、その目に焼き付けろ。『四嗣墳陣』っ!」

 しかし弾丸は相乗の関係で弾かれ……その衝撃が弾丸を砕き、陣を強制的に発動させる。

霊夢「けど、あれは殆どド派手なだけ。私たちなら弾幕で消せるわ」

小牟「それができん零児めは、知恵と勇気でカバーじゃ」

魔理沙「小さい結界だろ? ……でもなんか、出方が違う?」

 樹を燃やし、火を炎と化させた後、金を供えて固める『四嗣墳陣』。
 神略異変では相乗の手間を省ける程に力が巡っていたが、本来はこの手順を踏む必要がある。
 逆を言えば、憑き物が落ちた零児であれば使いたい放題、ということだが。

萃香「おおっ、結界も使えたのか〜。こりゃ侮りがたい」
453 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/10(火) 00:18:31.40 ID:qkoBKf/So

零児「このまま……貫き通す!」パキィンッ

 結界が鬼の息吹から零児を守り、火燐で薙ぎ払うと同時に割れ砕かれる。
 ようやく辿り着いた、鬼の目の前だ。

魔理沙「いけるっ!」

萃香『すごいすご〜い。流石人間こざかしいねぇ』ヒック

零児「力ではお前さん達に負けるからな。桃太郎や一寸法師のようにはやれ……」ガシャパシッ

霊夢「力増したわよね、今」

小牟「熱血スポコン魂じゃな」

萃香『だからこそ、力でねじ伏せるのが楽しいんだよね。至極単純明快に、さぁ!』

零児「……酒?童子の、巨大化の外法か……!」

萃香『うんうん、博識博識。よく勉強してるねぇ』ヒック

 炎の壁を潜り抜け、跳び出した先に居たのは超巨大な少女。
 密と疎……いや、酒?童子が恐れられた、その能力を使ったのである。

小牟「大きいのぉ。角もあんなにぶっとく……」

霊夢「ぶっとくわよ?」ゴン

萃香『だけどこれを……』ゴゴゴゴゴ

零児「ちっ!」ダッ

萃香『どーするかぬぁ!』ドゴォ!

 萃香が両手を上げ、零児を押しつぶすように倒れる。
 それから走って回避するも、体積も増えたからか、地響きがおきる。
 しかもそれだけでなく、その大きさに比例して巨大化した火鬼さえも湧き出しているのだ。

零児「くっ……」

小牟「あわわわわわ」

魔理沙「振りおろしてみてから飛翔余裕だぜ」

萃香『さぁお兄さん、こぉれぇでぇ……!!!』

 大きく左腕を振りかぶり、片膝をついている零児目がけて火鬼を殴る……

零児「……悪いが、大きくなった悪役は負けるのが戦隊物の常でな……」

萃香『終わりぃ……?』

零児「つまらんかもしれんが、これで終いだ」ガチャッ

 左肘を左膝に乗せ、銃口を向け、宣言する。

零児「『集中』。金【ゴールド】!!」バンッ

 コツン ピチューン

萃香『あいたっ………………えええー。それはないよおにいさ……』

小牟「うぬ? 結界が消えたの」

 小牟の言う通り、萃香にゴム弾が命中してすぐ、異変の結界が消えさる。
 萃香は消えること無く、大きなまま零児の目の前だ。

魔理沙「よっと。景色も戻ったな」

零児「すまんな、萃香。これも仕事なんでな」

萃香『………………』

零児「……ん? どうした、萃香」
454 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/10(火) 00:20:56.63 ID:qkoBKf/So

萃香『…………』

 俯いて顔を逸らしながら、体を元の大きさに戻した萃香。
 顔色が普通の肌色……いや、青っぽくなっているだろうか。

小牟「む、どうしたんじゃ、零児ー?」

零児「分からん。……額に当てたのが痛い……わけでもないだろう」

霊夢「……もしかして?」

 結界が消え、青空が覗いたのを確認した三人が零児の傍へと寄る。
 それをちらっと見た萃香が、大慌てで大回りに魔理沙の後ろへと回りこむ。

萃香「……ま、魔理沙……」

魔理沙「お、珍しい状態だぜ」

零児「一体どうしたんだ。さっきまでと全然違うぞ?」

小牟「ほぉ、これが萃香の素面か」ニヤニヤ

萃香「ひっ!?」

霊夢「止めなさいよ、小牟。あのね、零児さん。萃香って……」

少女説明中……

零児「……本当に鬼なのか?」

魔理沙「本当かどうか分からないけど、鬼だぜ」

 萃香は年がら年中、酒を呑んでいる飲兵衛だ。
 それも鬼が幻想郷から消える前……妖怪の山で四天王と呼ばれた、それよりも更に前からだ。
 そんな萃香だが、酒が切れると途端に人見知りが激しく、弱腰になる。
 始めからそうなのではなく、長く酒を飲み過ぎて素の状態での他人との接し方を忘れたから、だが。

萃香「う、う、嘘はつかない……から……」

小牟「……ばぁ!」

萃香「 」ビクッ

霊夢「…………小牟?」

小牟「かわいいんじゃからしょうがな……」チラッ

零児「……ふぅ……」

小牟「……なんじゃ零児ぃ。賢者モードか? いつ抜いたんじゃ」

魔理沙「抜いた?」

零児「子供の前でその話をするな。ただ、疲れただけさ」

霊夢「……ま、30分もあれだけ動けば疲れるわよね」

小牟「激闘のワンセットじゃな」

魔理沙「それより萃香。酒飲めよ?」

萃香「そ、それがさ……中に水が一切ないんだ……」

零児「水? 酒が入ってるわけじゃないのか」

小牟「酒虫の体液を内側に塗っておってな、それに水が触れると大量の酒になるんじゃ」

霊夢「神社はすぐそこだし、そこで水を入れればいいわよ」

萃香「あ、ありがとう霊夢。……じゃ、じゃあ先に行ってるねー!!」ダッ

魔理沙「あ、おい………………早苗、いたよな」

零児「忘れているな」            キャァァァァァァ!!!

小牟「あ、悲鳴聞こえた」
455 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/10(火) 00:34:16.15 ID:qkoBKf/So
〜〜〜〜―・ー−−−−−−-----―――・・〜=―−−-−−−・ー−−−-ー−・−−−−=   −〜ー---−―――――

 ベラボーマン

 超変身物質と、銀の力を用いてスーツを装着する人間。スーツの色合いについては映像より確認されたし。

 森羅のエージェント零児、及び−−−から、腕がのびる奇怪な体つきをしているものと判明。また、精神が熟成している。

 素体は適正体の可能性が低い。スーツ及び、超変身物質の詳細情報を調査する必要性はあると判定します。

〜〜〜〜―・ー−−−−−−-----―――・・〜=―−−-−−−・ー−−−-ー−・−−−−=   −〜ー---−―――――

 比那名居 天子

 体の頑丈な、天人と呼ばれる種族。青と白を組み合わせた服を着用。つばの広い帽子には、桃の飾りがある。

 幻想の少女達、小牟、及び−−−から、大地を操る力を持つ。

 また、武器である緋想の剣は、気質を操る力ををを持つ事が判明。

 適正体の可能性は不明。引き続き調査の必要があると判定します。

〜〜〜〜―・ー−−−−−−-----―――・・〜=―−−-−−−・ー−−−-ー−・−−−−=   −〜ー---−―――――
456 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/10(火) 00:42:15.61 ID:qkoBKf/So
以上で投下を終わります。1人しかいないから長く書こうと思ったのが間違いでした。折り合い付けられぬ……。

金曜日の『一日一談』でも書いた通り、ここからしばらくは日常パートです。

必ず出会う神子達以外にも、妖怪の山にいるケンやあのおっさん、迷ってるあの子等の話を書いていきますのでお待ちください。

次回投下は金曜日、

「萃夢想クリアー後(閑話休題2が並行)」と閑話休題2.5「続・彼らは何してる?」、閑話休題3「緑の笛吹き男」

を予定しております。100レス埋めてやる……やるんだからな……。

それでは、失礼します。
457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/10(火) 09:49:51.49 ID:4gE9kLbDO
お疲れ様です!
凄く熱い戦いでしたね!(炎的な意味でも)零児さんがイラつく理由は分からないけど、それで彼が戦う姿を見られて嬉しいという気持ちもあって複雑…。しかし巨大化に対して戦隊理論まで出てくるとは、本当にネタ幅広いですね〜。

そして一番の問題は、何故こんなに面白いSSにレスが殆ど付かないのかと言う事だ!もしかして、クオリティー高過ぎてみんな畏縮しちゃってるのか?それとも単に感想を思い付かないだけか?うーむ、謎だ。>>1様、もしかしたらこのSS、小説家になろう他小説専門サイトの方が向いてたのかも知れませんね。

このSSを見てるみんな!もっと感想やらネタやら、たくさんレスしようぜ!
458 : ◆JbeFpMnays [sage sage]:2012/01/10(火) 19:47:11.77 ID:VS8b0o6d0
こんばんわ。少々気になって読み直したらやっぱり>>448でチェックし忘れが……。

×肩の所で乱雑に破かれた服を着、○○なスカートを履く。

○肩の所で乱雑に破かれた白い上着と、その裾と紫色のスカートを合わせて三段に靡かせたような服を着こなしている。

でした。後は誤字ないよう、な? ……最初の方を見直すと目を潰したくなる誤字がありますがね……


返事をば。

>>457
レスして下さり、しかも褒めて頂けるのは大変嬉しいのですが、少々落ち着いて欲しいです。

気恥かしいというのもあるのですが、レスが着かないのは私の不徳とするところですし、

自分に足りない物故な所が多少なりともありますので。

レスが欲しいのは確かですが、チラチラ見ながらだったり、大の字構えてたりするのは違うと思うのです。


それから、ここで書こうと思ったのは某とある多重クロス作家さんがここで書いてるからという理由からです。

もちろん、この板の雰囲気が比較的穏やかだったのもあります。

短編で済まないとは思ったが故に、長くまったりと出来そうなここがいい、とも。

なのでまぁ、その点に関してはお気になさらないでください。


それでは、失礼します。
459 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/01/11(水) 21:43:10.58 ID:ryb+j/np0
手加減はイラっとくるんだろ、ムゲフロ的に(与ダメ全て1にする)
博打じゃないと出ないが、それでもウザいものはウザい アクセルが何度これで後衛に下がった事か
魂に集中とかそろそろ零児さん本気だな
460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/11(水) 23:44:21.33 ID:RLtKQ13co
零児さんはやはりアタッカーとして魅力的だわ
461 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/12(木) 19:35:32.79 ID:uLsdsqjdo
こんばんわ。レスありがとうございます。

緑の笛の男パートが長引いて明日の投下は難しそうでした。

なので「萃夢想クリアー後」と閑話休題2.5「続・彼らは何してる?」を投下します。


が、話の流れから少し先にレス返事を。

零児は言うほどイライラはしていません。彼の感情の規模からいえば3割あるかどうかです。

何せかの親友がここぞという時以外手抜きまくりな方で、それでも信頼していますから。

その最たる証拠は戦闘前台詞のあれです。あの台詞だけで信頼関係が見てとれるぐらいですしね。

それは彼だけだろ?と思う方。真隣の堕狐様をご覧なって下さい。いや本当に。

では、何故あの態度なのか……は、まだまだ秘密ですが。

というわけで投下します。どうぞ。
462 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/12(木) 19:38:43.42 ID:uLsdsqjdo

〜〜〜博麗神社〜〜〜

クリノ「いやぁ、驚いたよ。小さい子が井戸に走って来たから声を掛けたら、叫び声上げられてさ」

神子「おかげで、早苗さんの誤解が解けたので良かったのですが」

早苗「すみません。零児さんのお知り合いだとは……」

小牟「わしらも着とると知らんかったし、詮無い事じゃ」

 陽の傾き始めたころの博麗神社。肝心の巫女がいないはずなのに賑やかだった縁側に、霊夢達が帰って来た。

萃香「」キュゥ

霊夢「全く、情けないわね」

妖夢「鬼の素面なんて、そう見られることはないですよね?」

魔理沙「前のときは瓢箪がいつの間にかただの茶に変わってたんだよな。たぶんこいしの仕業だぜ」

零児「改めて久しぶりだな、クリノ。そして初めまして、聖徳太子」

神子「その名がきちんと伝わっているとは。……それから、神子と呼んでください。レイジさん」

魔理沙「ところで、早苗は何を誤解したんだ? 中村とか、クロノアとか、人間ぽくない奴が幻想入りしてるのにさ」

早苗「そりゃぁ誤解もしますよ! 妖夢さんとクリノさんが戦っていたのですから!」

妖夢「ただ、指導をしてもらっていただけなんですけどね」

霊夢「……まぁ妖怪と戦ってるように見えるわよね」ジトー

早苗「はい。野菜の妖怪かと」

小牟「失礼なやっちゃの。否定出来んが」

クリノ「しゃ、小牟……。それで零児。ワルキューレ様や、サビーヌ……他の仲間達は、幻想入り、していないのかい?」

零児「俺の知る限り、その二人はしていない。だがまだ解決していない異変に居ないとも限らないさ」

クリノ「……そうだね。可能性としてある以上、安易に決めつけるには早すぎる」

霊夢「……真面目」

魔理沙「真面目だぜ」

妖夢「既視感が」

神子「落ち着いたところで、何があったのかお話願えませんか? 妖夢さんから聞いたとはいえ、一か所だけですし」

小牟「そうじゃな〜。ぬしの耳の事も聞きたいしの。難聴じゃったっけ?」

神子「……まぁ、ある意味では」


青年少女説明中……


クリノ「ギル達の事は聞いていたけど、ケンやナカムラさんも」

零児「十欲を聴く能力……なるほどな」

霊夢「神界に戻れない、ねぇ」

神子「………………」

 解決してきた5つの異変。それと共に幻想入りしてきた仲間達。神子の異常。
 各々が情報に対して反応を示し整理し、裏にあるであろう意図を探るも、分からない事ばかり。

 悪意のように見えるものもあるが、明らかにそれだけではないのだから。
463 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/12(木) 19:42:00.72 ID:uLsdsqjdo

妖夢「それで帰って来たのですね。それで、次はどちらに?」

魔理沙「今日はここまでだぜ。レイジがしんどそうだからな」

零児「否定はしないが、お前さんも十分疲れているだろう」

 天界から守矢神社に帰る際、店員オーバーである大人二人を乗せた魔理沙。
 あの時、子供ならば乗せられると言ったのは弾幕戦の話だ。
 その理由としてはこの通り、ただの飛行でさえも相当な労力になるからである。

小牟「わしと霊夢はそうでもないが、零児が行かんならわしも行かん」

神子「あ、ところで霊夢さん。台所と、そこの食材を勝手に使ってしまいました。後日侘びを持ってきますが、今日はどうか……」

霊夢「…………」

クリノ「ご、ごめんよレイムちゃん。やっぱり許してくれないよね」

霊夢「……いいわ、別に。倍返ししてくれるなら」ニコッ

クリノ「ざ、罪悪感が」ズキィッ

 言ってる事は結構法外なのだが、無垢な笑顔なのだからやった事も相まって断れない。

 こういう場合、魔理沙や早苗、いや普通の少女ならば何かしらの含みがあるように思えるのだが、霊夢は例外だ。
 裏なく、ただ純粋にそう思い、そう実行しているのが見てとれるのだ。
 真面目な人間にとってはこの上なく厄介なタイプである。

妖夢「私はおにぎりがあったので頂いてませんよ」キリッ

零児「一応、止めるぐらいはしたんだろうな。……また買い出しに行かんとな」ヨッコイショ

早苗「零児さん、どちらへ?」

零児「……今の流れで人里以外に何処がある」

小牟「便所?」

神子「台所に、食材の確認では」

早苗「私もお手洗いかと」

零児「……そうか。霊夢、何が足りなそうだ」

霊夢「大根がなくなってるわね。後豚肉と生姜とか」シュン

 部屋が人でいっぱいだったために、零時間移動で台所へ行き確認する。
 今日一日あまり消耗していないのだからいいのだが、何か間違っている気がする。

萃香「ぷはぁ、いやぁ取り乱してごめんねぇ〜」ヒック

妖夢「鬼が起きましたよ」

萃香「まさか伊吹瓢の中が空っぽになるわ、酒が抜けるわ……散々だよ」ヒック

小牟「東方キャラはほぼリセットされとるしな。一日半も呑んでおらん扱いになったんじゃろ」

萃香「……へぇ?」

早苗「そう、それですよ。私はどうなって……」

零児「急いで買い足す必要はなさそうだな、霊夢」

霊夢「そうね、生姜ぐらいかしら。それも今晩のには使わないし……ま、買い出しはお願いするわ」

魔理沙「お、今晩はなんだぜ?」

早苗「……しょんぼりです」
464 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/12(木) 19:45:46.47 ID:uLsdsqjdo

霊夢「…………クリノさん、神子様。どうせこのまま泊まるんでしょ」

クリノ「レイムちゃんが許してくれるなら、泊まりたいかな。当てもないし、お金もないし……あ、もちろん」

霊夢「皆まで言わなくてもいいわよ。零児さんと同じタイプでしょうしね、クリノさん」

神子「残念ながら私も同じです。不測の事態に備えれず、何が太子か」

霊夢「神子様はきっちり二倍返しでお願いね」ニコ

魔理沙「霊夢って、なんだかんだで面倒見いいよな」

小牟「いい奥さんになれそうじゃな」

妖夢「異変モードは痛いですけどね……」

早苗「遠慮なしにがつーんでしたね」

霊夢「あ、上げるのか下げるのかどっちかにしなさいよ!」

 別に下げてもいないのだが、相変わらずどこかずれている少女達である。

零児「なら、生姜と大根だな」

霊夢「何がっ!? って、ええ、お願い。晩は肉じゃがだしゆっくりして来ても構わないわ。はい、お金」ジャリジャリ

零児「了解した」チャリーン

早苗「(夫婦みたいですよね、あの二人」ヒソヒソ

神子「(微笑ましい限りですね」ヒソヒソ

萃香「あの霊夢が、ねぇ」グビグビ

霊夢「# 無双封印っ!」バァーン!

クリノ「うわぁっ!? ちょ、ちょっと、いいのかい?」

 神子の傍に居たクリノが慌てて飛び跳ね退避する。
 霊夢の無双封印……色鮮やかな八つの玉が三人目がけて飛来しているのだから仕方ない。

零児「擦り傷程度しか負わんから気にする必要はない。……何にキレたんだ?」←聞こえてない

妖夢「では、私はこれにて。明日こそはお手伝いしますよ」

魔理沙「気にしなくてもいいと思うけどなー。ま、さいなら」ノシ

萃香「何するのさ霊夢。私は褒めたんだぞ!」

早苗「まさか照れてるんですかー」ニヤニヤ

神子「……」ノソノソ

霊夢「うっさい! そういうのじゃないって言ってるでしょ!?」

零児「…………」

 若干本気で否定している霊夢を冷やかす、懲りない早苗。
 神子だけは倒れたまま逃げようとしているのが、何かシュールだ。
465 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/12(木) 19:55:10.61 ID:uLsdsqjdo

クリノ「ほんとだ。音が大きかったのに全然平気そうだ」

小牟「出力20%という所じゃろうしな。ほんじゃら向かうかの〜零児?」

クリノ「おいらも手伝うよ。里ぐらいは知っておかなくちゃならないし、なにより他の皆とも顔を合わせたいからね」

零児「里と言えば、英雄先生ぐらいだったと思うがな」

萃香「まったくもって不服だ。むー」トコトコ

魔理沙「ん? 萃香も人里行くのかー?」

萃香「便所〜。ついてくる?」ケラケラ

魔理沙「鬼が一人が怖いってかー?」ニヤニヤ

萃香「んなわけグビッ……ぷはぁ。あるかーい」ケラケラ



??「……今日も萃香がいるわね」ヒュィー

 バサッ

??「人里に向かおうとしてるあの三人、見ててもらえる?」

??「そう、ありがとう。霊夢とどういう関係なのか、それが分かればいいわ」

??「それにしても、霊夢……何か変わったわね?」

??「良い傾向……よね。複雑だけど」トンッ



萃香「?」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜人里付近の田んぼ傍〜〜〜

零児「……そういえばだ。小牟」

小牟「む? どうしたー、零児ぃ」

零児「あそこのお寺……命蓮寺、だったか」

小牟「おそらくのー。詳しい場所は分からんのじゃ。わしが知る限り、幻想郷唯一の寺らしいからの」

クリノ「へぇ。神社は数か所あるのに、御寺は無かったんだね」

小牟「どうも寺に関するものは入ってくるんじゃが、寺に関しては完全に廃れたもんしか幻想入りしとらんようじゃよ?」

零児「……確かに、日本のお寺は昔から管理が程ほどにされていたからな。地域に近かったのも関係しているんだろう」

クリノ「それで、どうしたんだい?」

零児「いや、何。……少々気になってな」

小牟「……どうせ人里はすぐそこじゃ。わしとクリノで買い出しは済ませちゃるから、ぬしは訪ねてみたらどうじゃ?」

零児「いいのか?」

クリノ「おいらは構わないよ。人里の中を歩き回りたいと思ってたからね」

小牟「わしは慧音やあきゅんと話でもしちょるよ。ほれほれ、仏門破りでもしてこーい!」

零児「聞いたこと無いぞ。……なら集合は人里の東の門でな」

クリノ「分かったよ、零児」

小牟「ラジャー!」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
466 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/12(木) 19:58:11.15 ID:uLsdsqjdo

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

↑本編:萃夢想クリアー後

↓閑話休題2.5(時系列:緋想天クリアー後辺り)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
467 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/12(木) 20:04:08.83 ID:uLsdsqjdo

〜〜〜人里〜〜〜

スタン「ぐごぉ……」

慧音「む。鼾を立てながら寝るとは……」

英雄「仕方ありませんなぁ。歴史や資料の書物は一般的な本と違い、読み慣れてなければ辛いものです」

阿求「それに、読書する方には見えませんしね」クスッ

妹紅「言えてる。……ま、彼はしばらく寝かしてあげましょ」

 ここは稗田邸。現阿礼乙女たる阿求と、その関係者が住まう人里の図書館とも言える家だ。

 寺子屋の掃除が終わっても慧音が帰って来ず、では稗田邸へと赴くと当の先生がそこに居た。
 今回の異変について、稗田の資料から何か掴めないかと考えたそうだ。

慧音「しかしながら英雄先生。わざわざ掃除をなさってくれるとは」

英雄「お世話になる以上は当然のことですぞ。……さて、何処から手を付けたものか」

阿求「幻想郷縁起に関しては、特別そういった記述がない事は確かです。他の、外から流れ着いた資料はまだ見きれていませんが」

妹紅「まぁ、この部屋いっぱいにある物を一々読み通してたらそれだけで二年は下らないわね」

 今いるのは稗田の資料庫。米倉を改造して作り上げたものなのだが、七割は埋まっているのだ。
 それも今のような雑誌ではなく、遥か昔の巻物から、分厚い書物まで、色々な種類が。

英雄「しかもそれを、この几帳にきちんと整理してあるとは……いやはや、デジタル顔負けですな」

阿求「でじたる……確か、霖之助さんのお店でそんなワードが……」

妹紅「あそこって、あんまりめぼしい資料はないのよね。漫画とかは大量にあるのに」

慧音「それも外来語ばかりで要領を得ない。外の人間はあれでよく分かるものです」

英雄「あの生活に慣れてるからこそですな。後は外国への羨望が強いのですよ、今の日本は」

 今日、日本では新たな事実や新説が発表されることがある。
 その一つに、聖徳太子はいないという新説などもある。
 このおかげで豊聡耳達が封印されていた霊廟が幻想入り出来たのだ。

 だが、これらは決して無から生まれたわけでなく、歴史的資料や建造物から導かれている。
 そんなことができるのも、それらを後世に残すために保管し忘れなかったからに他ならない。

 そんな経緯もあってか、幻想郷に入ってくる資料はそう多くない。
 それでもこれだけ溜まるのだから、悲しい定めであろうか。

スタン「すぴぃぃ……」

妹紅「……ほんと、よく立って寝られるわよね」

阿求「一種の拘りを感じますね」

慧音「こんな拘り、出来れば無かった事にしてあげたいがな」

英雄「彼の元気の源ですし、そっとしておいて下され。……では私はこちらの棚を」

慧音「む、なら私はこっちの土地の蔵書を。妹紅、そっちを頼むわね」

妹紅「おーけー。……ほんと、多いわねぇ」

阿求「少なくとも、千年分ですからねぇ……」

英雄「現実の歴史学者が見たら、それだけでショック死してしまいそうですな」ウンウン
468 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/12(木) 20:08:05.84 ID:uLsdsqjdo

〜〜〜妖怪の山・明り 届かぬ 暗き 樹海〜〜〜

|っ

|っ皿;`] ヒョコッ

コブン「だ、だれもいないですよね……?」

 ここは異変が解決し、普段の喧騒が帰って来た妖怪の山。その谷底付近……暗い暗い、森の底。

コブン「……トロン様ー? ……トロン様ー?」ソローリ

 ガサッ

コブン「ひぃっ!?」

「ゲコッ」ピョンピョン

コブン「な、なんだぁ……蛙ですかぁ……」フゥ

 只でさえ光の届きにくいこの場所は、その光を少しでも得ようと高く濃く枝葉を茂らせた木々の所為で、昼間でも夜のような暗さである。

 谷底に近く、このあたり一帯を縄張りとする強力な妖怪もいるここは、天狗達も不可侵領域として放置している。

                  自殺願望者
 異変の時のような霊夢や、無謀な狩人以外はまず、こないのだから。

コブン「ど、どうして僕だけこんなところに飛ばされたんですかぁ……他の皆とも連絡取れないですぅ……」

コブン「それに暗くて、じめじめしてて、所々血液反応も見られるです」

コブン「……不気味です」ブルッ

 そんな森に、コブンは幻想入りしていた。
 異変が起きる直前に幻想入りしたからか、未だ特に妖怪達とは出会っていない。
 だがそんな幸運も、そう長くは続かない。

「シャー」

コブン「へ? ……へ、蛇ですー!」

「………………」

コブン「に、睨まないでほしいです……怖いです……」

「貴様、憑付神カ?」

コブン「へ? ツクモガミ?」

「熱ヲ持タズ、生キ物ラシカラヌ組ミ合ワセノ体……憑付神ニ他ナラヌダロウ」

 幻想郷には妖怪が自然発生することもある。ただし最近は偶然なパターンが多いが。

コブン「???」

「憑付神ヲ喰ラッタトアレバ、僕ノ妖力モ恐怖心モ強大ナ物ニナロウ」

コブン「あ、あのー、何を言ってるですか……?」

「オ前ヲ食ベル算段ダヨォ!」シャーーーー!!

コブン「っ!? きゃ、きゃーーーーー!?」

 蛇の妖怪に襲われ、逃げ惑うコブン。
 コブンはトロンによってお手伝いロボットとして五十体開発された。
 一応戦闘時にも多少のお手伝いができる。その方法とはもっぱら人海戦術である。

 1号のような個体なら、単体でもある程度の戦果まで出せるのだが、25号は残念ながら、だ。

コブン「ぼ、僕はツクモガミじゃないですぅ。それにまずいですぅうううう」

「嘘ヲツクナ! 観念シロ!」

コブン「うわーーーー!!」

 トタトタトタ
469 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/12(木) 20:09:40.22 ID:uLsdsqjdo

??「独りでけんけんぱ〜。けんけん、ぱぁでま〜ち〜ぼ〜お〜け〜」♪

 今日も今日とて一人きり。紫の傘を差した水色の少女が樹海を飛ぶ。
 件の騒ぎの時以来、博麗の巫女達が命蓮寺の墓場が人でごった返すようになった。
 その関係で墓場のお化けの目撃情報も増え、どんどん驚いてくれる人が居なくなったのだ。

 ああ悲しきかな番傘お化け。やったね、すごいねと言ってくれる人おらず。
 そんなこんなで新しい化け場所を探すのだが、根本的な所を間違っているのは相変わらずか。

コブン「だ、誰か助けてですぅううう!!」

「チィ、スバシッコイ奴ダ……!!」

??「……何々? なにかの声?」

 そんなときに誰かの声がする。声をする方を覗いてみると、小さな何かと蛇が走っている。
 追いかけられてる方のせいか、微笑ましい光景に見える。

コブン「ふぇえええええ」

??「……追いかけっこ?」

「シャァアアアアアアアアア」

??「…………ピコーン!」


「フッフッフ、追イ詰メタゾ」

コブン「やですー! 来ないでですー!」

 絶壁にまで追い詰められたコブン(お約束)に、蛇の妖怪が迫る。

「未来ノ大妖怪様ニ食ベラレルンダ。光栄ニ思ウノダナ、憑付神!」

コブン「だから僕はツクモガミじゃない……で…………」

 コブンの目が点(元から点とか言わない)になる。少し震えてもいるようだ。

「シャー。ヨウヤク観念シタノダナ」

コブン「……う、う、う……後ろ……」ガタガタ

「後ロ?」ギロッ

??「」ベロォォォン

 僅かに震えながら後ろを指すコブンに釣られ、蛇も後ろを向く。
 するとそこには(二人からして)大きな紫色の、真っ赤な目と舌が生えた番傘があった。

「」

コブン「」

??「恨めしやぁ〜〜〜」

「シャ、シャー!?」

コブン「はぅ」バタン

??「表はぁ……蕎麦屋ぁぁ〜〜〜」

「シャァーーー!?!?」

 漫画やアニメで聞くような音が聞こえるほどに素早く逃げ去った蛇。
 崖では、眼が渦巻きを描いた状態で倒れているコブンの姿が。

??「逃げた! わちき、驚かせた! …………成りたての妖怪相手じゃ、これっぽっちもお腹が膨れないわ」ショボーン

コブン「キュウ」

??「……というかこの子、何?」

 今さらである。
470 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/12(木) 20:12:08.66 ID:uLsdsqjdo

〜〜〜守矢神社・社務所〜〜〜

中村「いやはや、つまらない話で申し訳ない」

諏訪子「いやいや、久しぶりに外の話を聞けて面白かったよ? 中村」

クロノア「サラリーマンって大変なんだねぇ。僕にはそんな計算とか無理だよ」

神奈子「お前さんみたいな子供のうちはアウトドア派のほうがいい。子供は風の子と言うしな」

 守矢神社本殿。その手前にある、巫女さんやお坊さん等、所謂従業員が事務的作業を行う場所に、留守番の四人はいる。
 ガンツはにとりと共ににとりの住む洞窟に向かい、今ここにはいない。

神奈子「そういうわけで、力仕事はお前さんだ。働かざる者食うべからずだぞ?」

クロノア「ごちゃごちゃしたのじゃない分ましかな。どこにあるの?」

神奈子「聞きわけの良い子だ。とりあえず薪割りを頼もうか」

諏訪子「いやぁ、しかし書類捌き早いわねぇ」

中村「これでも一応、保険会社に勤めていますから。とはいえ、どちらかといえば外務担当ですが」

諏訪子「サラリーマンで特撮ヒーロー、更に妻子持ちとかリア充まっしぐらね」

 かなり、平和である。
471 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/12(木) 20:19:24.43 ID:uLsdsqjdo

〜〜〜妖怪の山・にとりのラボ〜〜〜

ガンツ「ど、どうだ? 直るのか??」

にとり「だから落ち着きなって、ガンツ。まだフレームしかろくに見れてないよ、っと」ブルル

ガンツ「ああ、ああ、そうだよな。ああ……」

 ここは九天の滝から流れる川の傍にある、洞窟の一つ。にとりが住処とするラボだ。
 レッドクランを二人で運び、その修理の状態をガンツが見ている。といった状況だ。

にとり「……そんなにこれ、大事なんだね」

ガンツ「……あ、ああ。わりいかよ」

にとり「いや、メカニック冥利に尽きるだろうなぁって。これの制作者さんが羨ましくてね」ガンガン

ガンツ「……そういうわけじゃねーんだけど、まぁそういうことにしてくれ」

にとり「どういう理由があれ、そういうものなのさ」〜♪

 物とは、大事にされる程に応えてくれる。
 メカニック冥利に尽きるというのは、結局のところ道具の「意味」をしっか全うさせられているということなのだ。
 まぁ、ガンツの場合は多少荒っぽかったが。

ガンツ「そうかよ。……ちと、飲みもん貰うな」

にとり「ああ、冷蔵庫の中はきゅうりしかないよ。そっちの桶の水ぐらいかなぁ飲めるの」ガンガン

ガンツ「ああ、それでかまわねーよ。以前もっとひでぇ状態を経験してっからな。……しかしまじできゅうりばっかだな」

にとり「ほー。こんどその話も聞きたいもんだね」クルクル

ガンツ「俺は話下手だからクロノアにでも聞いてくれ……ンクッ…………んめぇ」

にとり「口に合ったようで何より。っと、中はそんなに壊れてないから、今晩にでも直せそうだ」

ガンツ「まじかっ!」ドンッ

 期待していなかった分、手に持ったコップを机に勢いよく置いてしまう。
 それでも割れないのは地味に河童の技術の高さを表しているのだが……。

にとり「嘘なんてついても仕方ないよ。そのかわりボディはちょっと貧弱になるかなぁ。この素材は知らないし」コンコン

ガンツ「それならそれでもうちょい丁寧に触るさ。……ありがとな」

にとり「いやいやー。この構造が見られるだけでおつりがくるよ♪」

ガンツ「……それなんだけどよぉ、まじでいいのか? こっちとしては助かるけどよ」

にとり「実を言うと、所有者毎幻想入りした物を受け取るのはちょっとね。その人が死んでたら別だけど」

ガンツ「……さよか」

にとり「じゃぁ、もう少し調べてみるね〜。ああ、ガワの素材、少し切り取っていいかな? 解析に掛けたいんだ」

ガンツ「ああ。…………妙なところでずれてやがんなぁ。やっぱ妖怪、ってか?」

にとり「〜♪」

 ガンツの知る妖怪と言えば小牟、沙夜、毒牛頭等……正直偏ってる感がある。
 が、まぁ妖怪とは得てしてそういうものだからしょうがないか。
472 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/12(木) 20:20:40.34 ID:uLsdsqjdo

〜〜〜妖怪の山・どこかの道場〜〜〜

ケン「」ダンダンダンダンダン

????「落ち着け、ケン。焦ってもベルトは見つからんぞ」

ケン「そりゃぁ分かってるよ、アーサーのおっさん。けどよ、俺達を軟禁する必要はねーだろ?」

 ケンと話す、銀色の鎧に身を包んだ妙齢の男性。
 アーサー……幻想界にて、『白銀の騎士』の異名を持つ、英雄の一人だ。

アーサー「彼女は彼女なりに考えて結界を張ったのだろう。外には妖怪が多いらしいしな」

ケン「それだって本当かわかんねーし、そもそも俺とおっさんなら屁でもねーだろ?」

アーサー「過信は禁物だ。この世界が私達の知る世界で無い以上、何が起るか分からん」

ケン「だーもう。魔界村の英雄さんは太ってぇなぁ」

アーサー「あそこは時に賢く、時に目ざとく。場合に応じて臨機応変が必要だからな」

 ケンとアーサーが捕えられているここは、とある仙人が開く道場。
 悟りを開き、不老長寿の道を歩むために開かれたこの道場に、今は男が二人、結界に囲まれている。

アーサー「それに、鎧の紐を用意してくれたんだ。そう悪い人じゃぁないさ」

ケン「……いや、それは裸一貫のおっさんを見かねてだろ?」

アーサー「はっはっは。そうだったかもしれんな」

ケン「いやぜってぇそうだろ。……ま、この結界をどうこう出来ねぇ以上は大人しくまつさ」

アーサー「しかしこの結界、魔力のような……いや、たろすけが使っていた念力に近いな」

ケン「気ならある程度察せれんだが、そっちはお手上げだぜ」

アーサー「それはこちらも同じさ。サイコパワーのように見えていなければな」

ケン「あれはわざと見せてただけだけどな。……帰ってこねーな」

アーサー「外の様子も見えないから、どうなっているかもわからんな。紅葉は見ていたかったのだが」

 先も述べたが、彼らは今結界の張られた道場の中に居る。
 窓は和風と中華風を混ぜたような両開きであり、全て閉められている。
 後は壁の高い所に何かの模様をあしらった排煙窓があるがなにぶん高すぎる上、屋根で外の景色は見れない。

?『うーん。やはり結界が張られてるわね。しかもそれなりに強力。中の様子も見えない』

ケン「俺はしょっちゅう日本に行くから見慣れてるぜ、紅葉」

アーサー「幻想界であの気候が観られるのはジパングだけだからな。珍しいのさ」

?『誰を匿ったのか分からないけれど、あの仙人……徹底密着する必要があるわ』

 結界の内外は音が遮断されているために、壁一枚隔て先の会話さえも聞こえない。
 この仙人、徹底して隠蔽工作をしているようだ。

ケン「……やっぱここ、日本のどこかなのか?」

アーサー「私に聞かれても、返答に困るな」

ケン「はぁ。あの嬢ちゃんが帰ってくるまで暇なわけか。……おっさん、組手しねーか?」

アーサー「その発想に至るのが、ケンらしいな。よし、若いもんには負けんぞ」ヌギ

ケン「いや、すぐ脱ぐなよ!?」

アーサー「鎧のままでは組手が出来んからな」

ケン「だからってパンツ一丁はよぉ…………ほら、あそこに道着があるからそれ着てくれよ」

アーサー「むぅ、そうか。動きやすいんだがな……」

ケン「誰が好きこのんで男のポロリしかねー格好で組手するかよ……」

 妙なところで災難である。
473 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/12(木) 20:21:37.86 ID:uLsdsqjdo

〜〜〜八雲家〜〜〜

「紫様ー……やっぱり、まだお眠りになってますね……」

「藍様からの伝言です。一応、メモにも記しますが口頭でもお話します」

「異界の英雄、零児と小牟は神略、気質、酒宴異変を無事攻略しました」

「それで今日はもう終了とするそうです」

「その異変にて現れた、幻想入りしたと思われる異界の住人達のリストはピックアップ済みです」

「それもメモに残しておきますね」

「…………どうか、早く元気になって下さいね、紫様」

「……それでは、失礼します」

「…………」



「…………」

「…………紫ぃ?」

「……本当に寝てるよ。珍しい」

「橙は何を書いて行ったのかな〜っと。…………へぇ、こんなに」

「…………ねぇ、紫」

「あんた、彼らに嘘ついてるだろ?」

「何を嘘ついてるか分からないけど、さ」グビッ

「ぷはぁ」

「あんたが何をしようと思ってるか知らないけど」

「……無茶だけはすんなよ?」

「昔馴染みが消えて行くのは、寂しいからね」

「んじゃ、ね」

「………………」

「…………」

「……」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
474 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/12(木) 20:23:32.36 ID:uLsdsqjdo
以上で投下を終わります。うん、やっぱり日常パートのノリはいい。筆が進む。


次回投下は明日か明後日、「緑の笛の男」と、もしかしたら「命蓮寺」及び「魔法の森」関連を。

それでは。
475 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/12(木) 21:04:22.13 ID:t7+7uFGUo
乙!
476 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/13(金) 01:04:39.07 ID:8L9hdr/DO
お疲れ様!
うん。やっぱり良いな。幻想郷だー、って雰囲気がよく伝わってきます。

霊夢様の肉じゃがですと!?俺も食べたいなぁ…。

小傘ちゃんは可愛いな〜。
紫様…一体何が?
477 : ◆JbeFpMnays [saga sage]:2012/01/13(金) 11:21:27.93 ID:eoVfeEsro
こんにちわ。またもや誤字脱字チェックし忘れがありました。……1時間きっちり読み返す必要あるなぁ、これ……

>>469
×件の騒ぎの時以来、博麗の巫女達が命蓮寺の墓場が人でごった返すようになった。

○件の騒ぎの時以来、神聖な霊廟を見学しようと命蓮寺の墓場が人でごった返すようになった。

他にも「た」とか「り」とかが所々抜けてたり……そういう細かいところは申し訳ないですが脳内補完を。

では。
478 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/14(土) 11:12:25.92 ID:8wijV+KAo
乙乙ー
479 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/14(土) 17:24:46.46 ID:vrS5PUc+o
こんばんわ。レス、ありがとうございます。

これより投下します。「緑の笛の男」(半分ほぼ命蓮寺)です。
480 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/14(土) 17:32:09.83 ID:vrS5PUc+o

〜〜〜アグラットヘイム・中心部〜〜〜

「……ようやく見つけたよ? クロスゲート」

「全く。上の方では、まだ狼の王様が人海戦術で探してるから苦労したよ」

「あの数の目に触れずにここまで来るのは、ね」

 アグラットヘイム。
 アレディ達が居た覇国にやってきた、悪意に満ちた来訪者。
 悪戯に傷を増やし、魂を吸い、元の世界に帰って来てなお、世界を喰らおうとした、その集団。

 それらが拠点としていたヴェルトバオムの樹の根が深く根付くこの大地。
 その深部にて、ヘイムレン・シルバートは封魂の掌打を受け封印されたスヴァイサーを見つけた。
 正しくは、クロスゲートのついでに、だが。

「……僕らの争覇は、まだ終わっていない」

「彼が……アレディ君が、新たな可能性を見せてくれたからねぇ?」

「だからこそ、来るべき新たな争覇のために、クロスゲートが必要なのさ」

「……しかし、参ったね。ここまで深いとなると運び出すのに苦労しそうだ」

「それに通路は全部ふさがっている。心臓部に何でもかんでも設置したら、いざ攻められた時に困るのにねぇ?」

「ま、躁音の二つ名の通り、上で当てもなく彷徨ってる彼らに運ぶのを手伝ってもらおうかな」

 修羅と呼ばれる集団は、その力を認められた時、二つ名を与えられる。
 ヘイムレンの場合は躁音……他者を笛の音で操り、傀儡とする事からそう名付けられた。
 某魔法使いの少女のように、騒音と勘違いしてはいけない。

「……ところでこれ、動くんだろうねぇ?」

「あの時の衝撃は相当なものだったからねぇ。……確かめるに越したことはない、か」

「……僕らしくもない。壊れていても、帰って直せばいいじゃないか」

「さて、どうするかねぇ……」

「…………」

 −−を −へ −−−る−界−−−

「……?」

「声、だねぇ」

「クロスゲートから?」

「…………」ペタ

 ゴワン……

 声に誘われるように、クロスゲートに触れた。すると突如、クロスゲートが動き出す。
 まるで、巣に引っ掛かった獲物を狙う、蜘蛛のように。

「っ!?」

「しまっ……!!」ガッ

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜〜〜〜

〜〜〜

 そして、誰もいなくなる。クロスゲートは再び沈黙し、目覚めるその時を……ただ、待つ。
481 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/14(土) 17:35:18.69 ID:vrS5PUc+o

〜〜〜幻想郷・野原〜〜〜

「…………くっ……」

「……? 生き倒れ?」

「…………」

「……まだ生きてる。血の匂いもないし、気絶してるだけか」

「…………はぁ。私も聖に毒されたかな」

「放っておけば、いいものを……っと」ヨッコイショ

「…………」フワフワ


〜〜〜命蓮寺〜〜〜

ナズーリン「よっこいしょ……おーい、誰か来てくれないかー」

一輪「はいはいどうしたの、ナズ……あらやだ拾い食い?」

ナズーリン「それならわざわざここまで運ばないよ。怪我人さ。あっちの野原で倒れてた」

一輪「それは大変! 雲山、運んであげて。私は寝かせられる場所作るから!」

ナズーリン「……手慣れてるなぁ。それじゃよろしく頼むよ、雲山」

雲山『………………』ジトー

ナズーリン「………………そんな目で見ないでくれるかな。わかったわかった。ちゃんと面倒みるよ」

雲山『…………』ニコッ

ナズーリン「はぁぁ。やっぱり毒されてるなぁ、私」


〜〜〜客間〜〜〜

ヘイムレン「…………」

一輪「熱とか、外傷はないわ。こっちの足首が青くなってるぐらいね」

ナズーリン「血の匂いがしないからね。誰かに襲われたってわけじゃぁなさそうだ」

一輪「しっかし、鼠の貴女が人を運んでくるなんて。大変だったんじゃない?」

ナズーリン「見た目通り、痩せ男なのさ。それに失礼だな、君は」

一輪「そう? ごめんなさい。……星とマミゾウさんは買い物だし、聖と村紗は様子を見に出ているし……」

ナズーリン「ぬえのやつもいないようだけど?」

一輪「いつの間にか。私は掃除の続きをしているわ」

ナズーリン「わかった。……起きるまで暇だな。……律儀に待つ必要も…………」ブツブツ


〜〜〜命蓮寺・梅の間〜〜〜

ヘイムレン「ん…………?」

ヘイムレン「……ここは……?」

 目覚めたヘイムレンが、辺りを見渡す。
 そこは畳の間。四方は襖で囲まれており、部屋の隅には小さめの仏壇と箪笥。
 その反対側にある机の上に帽子と笛がある事をすぐに確認し、その傍にいた少女を眼前に捕捉する。

ナズーリン「お、起きたようだね、人間。目覚めはどうだい?」
482 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/14(土) 17:38:28.78 ID:vrS5PUc+o

ヘイムレン「…………君は? 見た所、鼠の獣羅のようだが」

ナズーリン「? ジュウラ? なんだいそれは。私は鼠の妖怪だよ」

ヘイムレン「妖怪……」

 非常に人間らしい姿を取る獣を獣羅と間違えるのは仕方がない。
 彼の知るその獣羅と、気が似通っているのだから。

 ただし闘争心は陰に潜み、それよりも遥かに小賢しい覇気を供えているのだが。

ナズーリン「……意識ははっきりしてるようだね。名前は?」

ヘイムレン「ん。ヘイムレン、ヘイムレン・シルバートさ。君は?」

ナズーリン「ナズーリン。気絶していた君をここまで運んできた恩人さ」

ヘイムレン「そうだったのか。それは失礼したねぇ。……ここは?」

ナズーリン「命蓮寺。人里近くのお寺だよ」

ヘイムレン「人里? 神楽天原のことかい?」

ナズーリン「…………は? カグラアマハラ? 何処だい、それは」

ヘイムレン「む? ……もしやここは『エンドレス・フロンティア』じゃぁ、ない?」

ナズーリン「……ああ、うん。ここは『幻想郷』。へぇ、これが幻想入り、ねぇ」

ヘイムレン「ふむ……また瞬転したのか……? ……クロスゲートを通ったんだ、その可能性は……」ブツブツ

 彼ら修羅は一度、世界間移動を予期せぬ形であるが体験している。
 それより以前に、異世界よりやってきた者達を知っていることからも、この事態を冷静に受け止められる。
 ……実際はヘイムレンだから、というのが大きいが。

ナズーリン「考え事の最中悪いけど、足の調子はどうだい?」

ヘイムレン「む? ……ああ、捻挫しているねぇ」

ナズーリン「痛みは?」

ヘイムレン「ん。これぐらい、なんとも」

ナズーリン「…………」バサッ

 ヘイムレンが見せた一瞬の間に、鼠の勘が鋭く光る。
 掛けられていた布団を思い切りめくり、ヘイムレンの右足を掴む。

ヘイムレン「おっとぉ、大胆だねぇ」

ナズーリン「……そい」グイッ

ヘイムレン「っ……」

ナズーリン「なんとも、ねぇ?」

ヘイムレン「……悪かった。痛むよ」

ナズーリン「鼠をなめないことだね。ま、とにかく冷やそうか。熱を持ち始めてる」

ヘイムレン「どこの馬の骨かもわからない、僕の面倒を見てくれるのは何故だい?
        妖怪と言えば、人とは相容れぬモノだと思っていたんだが」

       命蓮寺
ナズーリン「 う ちが特別なのさ。人と妖怪の平等を謳っているからね」

ヘイムレン「なんだい。差別でも受けている、とか?」
483 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/14(土) 17:41:21.30 ID:vrS5PUc+o

ナズーリン「似たようなものかな。ま、その詳しい話は一輪にでも聞いておくれ」

ヘイムレン「そういう君は、そこまで信奉していないように見えるねぇ?」

ナズーリン「……私は御主人に仕えてるだけだからね。そういったモノは二の次なのさ」

ヘイムレン「そうかい」

ヘイムレン「(……この足の状態で、何も知らない『ゲンソウキョウ』を歩くのはいけない)」

 彼はゲルダ一派と呼ばれる修羅の一集団のナンバー2だ。

ヘイムレン「(もう少し情報を集め、どうせならこのままここを利用して…………)」

 その実力は確かな物で、頭も相当切れる。
 他の修羅では試作さえ作るのが厳しい、新型の羅刹機を考案・制作出来るほど、知的な部分もある。

ヘイムレン「(……いけないねぇ。アレディ君が示してくれた道は、共栄だったじゃないか)」

 その上修羅としての冷酷な部分も持ち合わせていたのだから、相手となる者は苦戦を強いられただろう。

ヘイムレン「(……ここは彼に倣って……)」

 しかし、その彼の心を強く揺さぶった、とある少年の信念がある。
 彼は今、その信念と自らの意思との狭間で、先の見えない新たな道を見ている。

ヘイムレン「ナズーリン君。すまないが、この世界の事を教えてもらえるかな?」

 冷静な所もあり、混乱したりすることはないのが、彼の強さの証明であろうか。

ナズーリン「ん? ……構わないけど、無償ってわけにはいかないな」

ヘイムレン「もちろん、僕の世界…………いや、厚かましいな。僕がいた世界の事も話すよ」

ヘイムレン「僕達の一族……修羅のことも、ね」

青年少女説明中……

ヘイムレン「なるほど、ねぇ」

ナズーリン「修羅……まさかこんな巡り合わせがあるなんてね」

ヘイムレン「僕も驚いたよ。毘沙門天の、そのお弟子さんがいる寺に運び込まれるなんて」

 ナズーリンは知る限り(とはいえ命蓮寺内で一番知っているが)の幻想郷について語る。
 同じく、諜報員兼刺客として全国行脚をしたヘイムレンもまた、E・Fについて語る。

 互いに腹の探り合いをしながらの会話なのだから、もし第三者がいれば違和を覚えるところだろう。

ナズーリン「しかし、E・Fかぁ。……本当だろうね、人間?」

ヘイムレン「失礼な。僕が嘘をつく様に見えるかい?」

ナズーリン「うん。思い切り、十割。確実に。さっきのこともあって」

ヘイムレン「ははっ。これは手厳しい」

 だが、これぐらいが本当は良いのかもしれない。
 何せ、彼にとっては未知なる新世界。用心に越したことはないのだから。
484 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/14(土) 17:46:41.25 ID:vrS5PUc+o

一輪『ナズー、男の人は起きたー?』

ナズーリン「ああ。足の怪我以外は特に問題はないらしいよ」

一輪「なら呼びなさいよ。何のための同胞なのかしら。……こんにちは、人間さん」

ヘイムレン「こんにちは、尼さん。……少女だらけと言うのは、本当だねぇ」

ナズーリン「なんだい、ロリコン趣味でもあるのかい?」

ヘイムレン「馬鹿な。僕には仕えるべき大人の女性がいるよ。……君も妖怪なんだねぇ?」

一輪「あら。ナズー、話したのね」

ナズーリン「いいや、全くこれっぽっちも」

ヘイムレン「覇気を探らせてもらったよ。失礼だったかな?」

一輪「いいえ。そのハキ、とやらが良く分からないけれど。私は一輪。貴方は?」

ヘイムレン「ヘイムレンさ。覇気と言うのは、気の一種だと思ってくれて構わないよ。……外にもう二人、妖怪がいるねぇ」

 覇気とは、気質とよく似たものである。
 修羅の一族はそれを感じとり、操ったり気配を探ったり、武器にしたり出来るのだ。

ナズーリン「雲山と山彦のことか。どっちも命蓮寺の仲間だよ」

ヘイムレン「……穏やかで良い気だ。男の方は、なかなかに張っている」

一輪「便利なのですねぇ。と、お腹は空いていませんか?」

ヘイムレン「小腹程度は。……そこまで面倒見てくれるのかい?」

一輪「人であれ、妖怪であれ、困ったときはお互い様。助け合うのが命蓮寺です」

ヘイムレン「それは結構な事だけど、もう少し他人を疑った方がいいんじゃないかい?」

ナズーリン「そのための私さ」

 言葉を強く発し、警告するナズーリン。歓迎していない、と露骨に態度で示す。

一輪「ナズーリン! ごめんなさい、ヘイムレンさん」

ヘイムレン「構わないよ、イチリンさん。わざとだしねぇ」

一輪「そ、そうですか……」

ナズーリン「……はぁ。やっぱり拾わないほうが良かったかなぁ」

ヘイムレン「一期一会さ。せめて足が治るまでは診てもらいたいねぇ?」

ナズーリン「……鼠の恐怖を知らないのか? 人間なぞ喰らって捨てるぞ」ボソッ

ヘイムレン「その鼠を、僕は操れるけどねぇ? むしろ、使役までして見せようか」

ナズーリン「……」ビキッ

ヘイムレン「……」

一輪「う、うんざーん!」

雲山『よさんカァッ!!!』ピカーン

ヘイムレン「!?」

 雲山さんの一喝。普段シャイな頑固親父の怒鳴り声に、流石のヘイムレンも驚く。
 実際、普段物静かな人が叱ったり怒ったりすると、とてつもなく怖いものだ。

ナズーリン「……悪かったよ、雲山。一輪」

雲山『………………』

ヘイムレン「あ、ああ。すまないねぇ、親父さん?」

雲山『…………』ニコッ
485 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/14(土) 17:50:14.95 ID:vrS5PUc+o

ヘイムレン「(……自然と親父さんと呼んでしまった。それでよかったらしいけどねぇ)」

ヘイムレン「(………………うん、そうだねぇ)」

一輪「とにもかくにも怪我人なのですから落ち着いて。ね?」

ヘイムレン「ああ、すまない。僕が悪かったよ」

ナズーリン「なんだい急に。それで私の同胞を馬鹿にした事、許されるとでも」

ヘイムレン「詫びを入れたいのは山々だけど、今はこの通り足が不自由でねぇ。……必ず返すさ」

ナズーリン「…………ふん」

雲山『…………』

響子「何の声でしょうか、皆さん!」

一輪「あ、響子さん。いえ、なんでも……なくはないわね。お客さんがいらっしゃってるのだから」

響子「やや、人間ですか。こんにちは、私不肖ヤマビコやってます、響子といいます!」

ヘイムレン「良い挨拶だねぇ。僕はヘイムレンさ。しばらく厄介になるよ。……たぶん」

響子「おや、そうなのですか。わかりました、よろしくです!」

ナズーリン「……」

一輪「不服そうな顔してないの。昼ごろに姐さんは帰ってくるから、その時に陳情するといいわ」

ナズーリン「陳情まではいかないよ。……ま、それまでは置いてあげるさ」

ヘイムレン「ははは。全く、手厳しいねぇ」

響子「ナズーリンさんは相変わらずですねー」

一輪「……ハァ」

 実は一輪、普段の狂信者っぷりは演じてる部分が多少なりともあったりする。
 それも全て、聖や仲間たちと仲良く暮らすためを想ってなのだが。


〜〜〜お昼前・湖の側〜〜〜

?「……やはり駄目ですね。ここも戻ってしまうようです」

??「地底も、妖怪の山も、人里もいけない……困りましたね、聖」

聖「霊夢さんもいらっしゃられなかったし、魔理沙ちゃんもいません。……ここは一度、帰りましょう。村紗」

村紗「はい、聖。……ちょうどお昼ですしね」

 人里から北西の方角。霧の泉と呼ばれる綺麗な湖へと続く獣道。
 そちらから帰ってくる、二つの影。聖白蓮と、村紗水蜜である。

 彼女たちは星とまみぞうを見送った後、人里や地底、妖怪の山を訪ねまわっていたのだ。
 しかし、謎の異変が起きている現在では、何処へいっても巻き戻されてしまう。
 結局何もすることができないと悟り、命蓮寺へと帰っていこうとしたところだ。

聖「これは何なのでしょうね……?」

村紗「さぁ。博麗の巫女がいれば、まだ少しは分かりそうなものなのですが」

聖「山の早苗さんもいませんし、お手上げです……」

村紗「これは一輪や雲山も交えて会議をする必要があるかもしれません」

聖「……食材の事は後回しにして、星とマミゾウさんにも参加してもらえば……」

村紗「い、いやいや、食材も大事ですよ聖! お腹が減っては力が出ないものですし!」

聖「そうよね。ご飯は大事ですものね」ウンウン

村紗「(聖には悪いけど、カレーのルーが手に入る機会はそうないの……ごめんなさい)」

 この船長、俗物にまみれているようだが大丈夫か。
486 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/14(土) 17:53:23.20 ID:vrS5PUc+o

〜〜〜命蓮寺〜〜〜

聖「ただいま戻りました、響子さん」

響子「お帰りなさいませ、聖さん! 船長さん!」

村紗「ただいまです、響子さん。それから船長さんは止めてほしいと……」

響子「それは申し訳ございません、キャプテン!」

村紗「だから、それは聖輦船を操縦している時だけにしてください」

 いつものやり取りをしつつ、命蓮寺へと帰って来た二人。
 出迎えた響子が大きな声を上げることで、寺の皆が知るのだから呼び鈴入らずだ。

一輪「お帰りなさい、姐さん。村紗。どうでした? 何か進展でも……」

聖「どこも人里と同じ様な状態でした。……」

一輪「そう、ですか。……あ、そうです姐さん。人間のお客さんが!」

村紗「人間のお客さん? ……あ、靴がある」

一輪「ええ。野垂れている所を、ナズーが運んできてくれたのです」

聖「まぁまぁ。それは大変でしたでしょう。今はどうなされています?」

一輪「梅の間にて、足首を休めています。捻挫していまして……」

村紗「あらら。……湿布、買っておけばよかったわね」

聖「私達、使いませんものねぇ……」

一輪「その事を話したら、「鍛練や自己治癒で、物を頼るのは良くない事さ」と」

聖「まぁ」ジワッ

村紗「聖の好きそうな方ですね」

一輪「ナズーは追い出したがっているけどね。ささ、お昼の用意も出来ていますしその方も共に致しましょう」

聖「そうですね」

〜〜〜梅の間〜〜〜

ナズーリン「…………」

聖「」ニコニコ

村紗「」ワクワク

一輪「…………」

ヘイムレン「態々お昼まで御馳走していただけるとは、ありがたいねぇ」

ナズーリン「なんで聖はこんなやつ気に入ったんだ……」ブツブツ

聖「いえいえ。ご飯は皆で一緒に食べる方が楽しく美味しいですから。ね、ナズー」

ナズーリン「え? ……あ、はい。そうですね……」

村紗「一輪達は聞いたと思うけど、私達にも貴方のことを教えてくださいね?」

ヘイムレン「構わないよ。今はそれぐらいしか返せないしねぇ」

聖「ですが食事は静かに、食される物へ感謝と、祈りを籠めて」

一輪「畑の恵みを、野山の恵みを、川の恵みを、余すことなく」

ヘイムレン「……我らが血肉へ」

ナズーリン「……(明らかに意味合いが違うな、こいつ」

ヘイムレン「(仏教だと、野菜だらけなのを忘れていたよ」
487 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/14(土) 17:57:46.96 ID:vrS5PUc+o

〜〜〜夕刻・本堂〜〜〜

 聖と村紗、そして忘れられていた響子にも一通り説明し終えたヘイムレンは、命蓮寺のことを詳しく訪ねた。
 ここ、命蓮寺の神仏を毘沙門天とし、その代行である寅丸星を信仰の対象としていること。
 妖怪寺である理由。人と妖の絶対共栄を目指し、日夜布教に励んでいることを。

 自らの信念を、心機一転させようと思っていたヘイムレンにとっては悪くない環境だった。
 ただし、元の世界に戻るまでの間に変われれば、だが。


 スタ……スタ……スタ……

ヘイムレン「……」座禅

ナズーリン「……!」ピクッ

一輪「どうやら来たようですね、星」

ヘイムレン「……」

 そこで毘沙門天代行に興味があると伝え、御尊顔を拝めたいと申し出た。
 彼女たちはそれは勿論、こちらからもお願いしたいと言われ、ここ本堂にて帰ってくるのを待っていた、というところだ。

ナズーリン「頼むから、粗相のないようにしてくれよ? 形を見て困惑するかもしれないけど、さ」

ヘイムレン「善処はするよ? 何せ、僕らの祀る神様のお弟子さん、と言う話だからね」

一輪「こういう偶然も、きっと毘沙門天様のお導きなのでしょう」

ヘイムレン「うーん? 毘沙門天様は、そういう神様じゃなかったと思うけどねぇ」

 スタ……スタ……スタ……

星「……ナズーリン、一輪。寅丸星、ただ今帰りました」

一輪「お帰りなさい、星。それじゃ私は用事を済ませてくるわ」

ナズーリン「お帰り、ご主人。たぶん聖から聞いてると思うけど、この男が」

星「私に興味があるお方、との事で」

ヘイムレン「間違ってはいないけれど、誤解されやすい言い方だねぇ」

星「かもしれませんね。……えっと、お名前は、なんと?」

ヘイムレン「おっと、これは失礼。自己紹介が遅れたね」

ヘイムレン「僕の名はヘイムレン。ヘイムレン・シルバート。毘沙門天に仕える、修羅の一族の一人、さ」

 そして出会う、修羅と毘沙門天。
 以外にも見た時の反応が普通だったのは元の世界のおかげか。

星「……申し訳ございません。修羅、とはもしや、あの?」

ヘイムレン「そう、毘沙門天に仕え、走るあの修羅さ」

星「……いえ、それは羅刹では? 仏教において修羅は―――――」

 仏教における、修羅と羅刹、そして毘沙門天の関係性を語る星。
 そこには人や妖怪といった区別なく、ただ事実を述べ上げるだけの姿があった。
 そう。無意味装飾も、不必要な誇張も、非生産的な卑下もない話だ。

ヘイムレン「……ふぅ。本物だねぇ」

ナズーリン「……人間。君は」

ヘイムレン「そう凄まないでおくれ。僕はここのことを何も知らないんだ。少しぐらい、嘘をついても構わないだろう?」

星「未知への恐怖を恥じる必要はありません。……私を試したとの事なら、そのお気に召したでしょうか?」
488 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/14(土) 18:01:05.97 ID:vrS5PUc+o

ヘイムレン「もちろんだとも。失礼した、毘沙門天代理殿」

 人を傷つけない嘘は難しい。何せその人の評価によっても、つける範囲は変わるのだから。
 だが彼は彼女たちの信頼関係を見た。自らが、彼女にささげる忠誠心と似たそれを。

星「星で構いません、ヘイムレンさん。それで、毘沙門天に御用があるのは本当でしょうか?」

ヘイムレン「……毘沙門天を祀っているのは本当さ。羅刹機を一度巡ってるけどねぇ」

星「ラセツキ?」

ヘイムレン「機兵、あるいはロボット。3m級のからくり兵器のことさ」

ヘイムレン「僕ら修羅の一族は、太古の昔から、神を模った羅刹機を己が覇気で操れるようになることを一つの目標としてきた」

ヘイムレン「その過程で、勝負事の神とされる毘沙門天様を祀るのは、なんらおかしい話じゃないだろう?」

ナズーリン「あの説明じゃぁ、そんな不可思議ともとれる神様のことは信用していないと思うんだけど」

星「信ずる心が無ければ、神はいないに等しいものですからね……」

 「毘沙門天」を信じ、それを信奉していた聖を魔界の法界へ追いやったあの時。
 揺らいだ心を繋ぎとめたのは、その信ずる心だった。

ヘイムレン「逆を言えば、その心だけで加護が得られる。これほど便利なよりどころはないさ」

星「……」

ナズーリン「……人間」

ヘイムレン「おっと、失礼な事を言ってしまったねぇ。お詫び申し上げる」

星「いえ。それも一種の信仰の形でしょう。……面と向かって言われると、しょうしょう来るものがありますが」

 だが、その時に見えた人の心もまた、真実であり事実。
 彼のように『経済的』な観点から信仰する人が多いのを、彼女たちは知っている。

ヘイムレン「……すまないねぇ。不用意な事を言ってしまった」

ナズーリン「全くだよ。例え本心でも建前ってものが……」

星「ナズーリン、構いません。……まだ、お話は?」

ヘイムレン「後は特にはないねぇ。毘沙門天らしい所を見せてもらうぐらい、かな?」

星「それですと、あまり御期待には添えられないかと」

ヘイムレン「……まぁ確かに、謙遜されると、ねぇ?」

星「! ……そう、ですね」クスッ

ヘイムレン「やれやれ、先が思いやられるよ」フッ

ナズーリン「…………(だからなんで皆気を許すかなぁ)」ブンブン

ヘイムレン「(鼠の尻尾ってあれほど動く物なんだねぇ……?)」

星「(何か嬉しい事でもあったのでしょうか?)」

 部下の心、主人知らず。
 とはいえ、ナズーリンの心配は口に出せない物だ。
 感性の問題もそうだし、そもそも、ナズーリン自体もこの命蓮寺を大事に思っている仲間なのだから。

 だからこそ、裏方であることを苦としない。

 ただ、天然な皆に、ほとほと困るだけである。
489 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/14(土) 18:08:13.65 ID:vrS5PUc+o

 そんなこんなで、半日が過ぎた。

 命蓮寺の面々の献身的な介護に、流石に戸惑いを隠せなかったも、これが共生なのだと言い聞かせた。

 翌朝に、何故か響子が一緒に寝ていたりだとか、

 マミゾウとぬえの化かしを簡単に見抜いてしまったりだとか、

 カレーの具は何が好きかと聞かれ、ナスだと言ったら雲山が喜んだりとか、

 正直、戸惑う事ばかりが物凄い濃さでやって来たのは想定外だったが。

 それらに対し、まだ抵抗とギャップを感じたまま、二日目の夕刻へと差しかかる。



 転機が、足音を高らかに鳴らしながらやってくる、その時刻が。


490 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/14(土) 18:13:27.80 ID:vrS5PUc+o
以上で投下を終わります。この後は「命蓮寺」へと続きます。さて、どうなることか。

普段起りえないラッキースケベを、普通なら起こしえないようなキャラにさせてみようと思ったら想像だけで噴いてしまい、
 結局書けずじまいでした。

こっち方面の需要って……?


次回投下は少々不明です。内容自体は「命蓮寺」→「魔法の森の来訪者」→「二日目の終わり」の順ですが。

500で700kbってやばくねとか思った>>1でした。

それでは、失礼します。
491 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/15(日) 02:30:35.77 ID:qcv5oPTyo
おぉー 本編後のヘイムレンさんかー
これは楽しみだ

>聖「まぁ」ジワッ
>村紗「聖の好きそうな方ですね」

ここにちょっとワロタ
492 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/18(水) 01:19:19.77 ID:+zI4YOhTo
こんばんわ。レス、ありがとうございます。

「命蓮寺」を投下しに参りました。

なお、今回の投下内容はずれていると確信しています。東方らしさが皆無です。ご注意を。

命蓮寺……宗教関連の話となると途端に重くなると言うか、うーん。

ともかく投下します。どうぞ。
493 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/18(水) 01:23:14.25 ID:+zI4YOhTo

「……命蓮寺……妖怪寺、か」

 二人と別れた後、一人命蓮寺を訪ねる。
 何故だかわからないが惹かれたこの寺の、門を叩いて声を掛ける。

 ゴンゴンッ

「誰かいないかー?」

『〜〜……あ、はーい! ただいまー!』

 するとすぐさま奥から声が聞こえてきた。はきはきとした、元気な声だ。

「どうしましたー?」

「……少し、話がしたくてな。君は、ここの?」

「はいっ! 不肖ヤマビコ、響子と申しますっ! 今は皆さんいらっしゃいますので、どうぞ中に!」

「ああ、すまない」

「みなさーん! またまた人間のお客さんですよー!」

 自らを山彦と名乗った妖怪が、元気に飛びながら寺の中へ声を掛ける。
 いつの間にか後方にいた入道の妖怪に気を配らせながら、玄関に辿り着く。

『はいはい、お待ちくださいな〜、っと』

 ……寺なのにカレーの匂いがする。そのアンバランスさに、つい眉をひそめてしまう。

「この方です、星さん!」

「ようこそ、命蓮寺へ。……どうかなされましたか?」

「ん? ……ああ、いや。カレーの匂いが、こんなところでするとはな、と」

「……おかしいのでしょうか……?」

「いや、幻想郷でカレーの匂いを嗅ぐとは思わなかっただけさ。
 よくよく考えれば、守矢から入っていてもおかしくはないんだがな」

「外来者の方でしたか。確かに、守矢の神様から聞いたと、村紗は言っていました」

「ムラサ?」

「命蓮寺の船長です。どうぞ中へ。詳しい話はそちらで」

「ああ、お邪魔する。……有栖零児だ」

「私は、寅丸星と申します」

 星に案内され、本堂へと辿り着く。

 そこには外の世界とは明らかに違う毘沙門天像があった。
 顔の造形が、鎧の形が、持つ槍と宝塔が、これでもかと言うほどにリアルなのだ。
 それもそのはず。代理である星と、代理を祀りあげた聖が、直に見た上で造形したからだ。

「……舎利子。是諸法空相。不生不滅。……」ポク……ポク……

 そんな毘沙門天像の祭壇の前の、質素な飾り付けの机にて、般若心経を唱える少女がいる。

 静かに、大らかに声を震わせる、法衣に身を包んだ少女。

 その周りには先の船長と思わしき幽霊。入道を操っているであろう妖怪。
 眼鏡を掛けた狸の妖怪。心経を唱えながらこちらを睨む鼠の妖怪がいた。

「申し訳ございませんが、経を唱え終わるまでは……」

「分かっている。……共をさせてもらおうか」

「ではこちらへ。座布団を用意しますね」

「ああ。……」
494 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/18(水) 01:31:18.70 ID:+zI4YOhTo

「ぎゃーてーぎゃーてーはらぎゃーてー」

「波羅僧羯諦菩提薩婆訶般若心経。……」

「oM vaizravaNaaya svaahaa」

「オン ベイシラマンダヤ ソワカ」

 リィーン

聖「…………ようこそいらっしゃいました、客人。経典を読み上げることを優先しおいた事、お詫び申し上げます」

 般若心経と、毘沙門天の真言を唱え終え、正座したまま零児の方を向く法衣の少女。
 紫から毛先に向けて金色になる髪を持つその少女は、緩やかな所作の中に、力強い意思を感じられる。

零児「気にしていない。むしろ、久しぶりに唱えたことで、いい精神統一になった」

聖「そう言っていただけると幸いです。……私は聖。聖白蓮。ここ、命蓮寺の化主をさせていただいております」

村紗「私は村紗水蜜。ここ、命蓮寺の前身であり、聖を乗せるために作りあげられた聖輦船の船長をやっていました」

一輪「私は一輪。姐さん……聖の思想に感化され、そのお手伝いをさせていただいています」

マミゾウ「わしはマミゾウ。特に仏教徒っつーわけじゃのうて、聖さんのお世話になっちょるもんじゃ」

ナズーリン「……ナズーリン。御主人……寅丸星の身の回りの世話をしている」ムスッ

 そこに居た各々の妖怪が、自らを明かす。
 元の世界ではありえないその光景に、少しばかり感動する。

零児「俺は有栖零児。妖怪退治を専門とする機関の者だ」

「!」ガタッ

 ならばと、己も偽りなく、所属する機関の役割を告げる。
 案の定その言葉に、一輪と村紗が立ち上がる。
 同時、入道が一輪の後ろに現れ、零児を睨む。ただ、その目は顔を見ているようだが。

聖「お待ちなさい、一輪。村紗。……わざわざこの場でおっしゃるという事は、よほど自信があるか、あるいは」

零児「後者だ。別に、お前さん達を退治しに来たわけじゃない」

村紗「なら、なぜわざわざ……!」

零児「フェアじゃないのは好かん。争い事は嫌いだが、それ以上に、な」

「……」

零児「それに、事情も知らずに妖怪を退治するほど、自惚れてもいない。おいたが過ぎる奴を、懲らしめてるだけさ」

マミゾウ「じゃろうな。妖怪を供にしちょる男じゃしな」

一輪「な、何故分かるの? マミゾウさん」

マミゾウ「そやつ、憑かれとるよ。狐の妖怪にの」ビキビキ

零児「……わかるのか」

マミゾウ「おーおー、わしらをコケにしてくれた奴らのことじゃからの。ま、今ここにおらん奴のことを話しても詮無いわ」フンッ

 過去、何があったかわからないが、マミゾウは狐のことを酷く嫌っている。
 それ故に人間の、狐やその妖に対する知恵を優先的に仕入れているのだ。
 ただまぁ、その関係者まで害する程、大人げないわけではない。

零児「……連れてこなくて正解だったな。兎も角、そういう事だ」

聖「だそうです。お座りなさい、一輪。村紗」

村紗「……変な事したら承知しませんよ」
495 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/18(水) 01:38:39.72 ID:+zI4YOhTo

星「それで、何をしにこちらへ」

零児「それがわからん。……惹かれた、としか言いようがない」

星「惹かれた……? 命蓮寺に、ですか?」

零児「ああ。昨日は、何でもなかったんだがな」

一輪「もしかして、仏門に入りたいとか……!」

零児「いや、違うだろう。……どちらかといえば、力に引かれた」

聖「……ここは毘沙門天の神力がみつる場所。もしかしたら、何か御縁があるのかもしれません」

零児「……勝負事の神、か。確かに、俺はその神様の加護を受けているかもしれん」

ナズーリン「……どういうことだい?」

零児「詳しくは話せんが、そういう場面が何度かあったのさ。今になって思えば、よく凌げたと思えるほどの、な」

 かつての戦い……世界の命運を掛けた戦いや、そもそもそれの発端たる十数年前の出来事。
 その後訪れた無限の開拓地でもまた、それに負けず劣らずの出来事を体験している。
 どれもが、二度はごめんな内容だらけなのだから、彼の信条を考慮すれば……。

マミゾウ「博打じみた戦いをせんといかんほど、切羽詰まる事があったっちゅーことか」

零児「話しても、信じてもらえんだろうがな。……不幸自慢をしに来たんじゃない。
    ……そうだな。この寺の名前――命蓮は、信貴山縁起絵巻の、飛倉の逸話で名高い、命蓮のことか」

聖「……はい。倉を飛ばし、醍醐天皇の病を癒した、彼の命蓮です」

零児「関係は?」

一輪「姐さんは命蓮の姉です。血のつながった、正真正銘の」

零児「なるほど。あの倉の霊力が凄まじいのも納得いく。……相性がいいのも、確かなようだしな」

マミゾウ「ほえー、それは知りませんでしたな」

 命蓮寺のさわりを知る者は、実はそういない。
 霊夢や魔理沙は勿論、後期参入組のマミゾウや響子もだ。
 神子のように深くを聴いた者や、小牟のような部外者のほうが知っているのだから、おかしな話だ。

星「そういえばマミゾウさんには話していませんでした。自然と輪に入られていましたし」

零児「その上、妖怪からも信仰を得ている。節操がないと取れるぞ、聖白蓮」

村紗「なっ、失礼な……!」

聖「……まさか」

零児「今、この関係を築けているのなら何も言わん。そもそも、あいつの話は半信半疑だったからな」

星「……?」

零児「……こっちの話だ。すまないな、煽るようなことをしてしまって」

 その部外者の中でも、特にオタクな彼女から聞いていた零児は、聖に流れる力が、複数の力を混ぜたものだと理解する。
 ……霊力、妖力、魔力、神力。それらが一堂に合わさりながら、巡るそれを。

聖「……いえ、こちらも興味深い話が聞けたので。……胸の内、分かりましたか?」

零児「さぁな。案外、ただの気のせいな可能性もある」

ナズーリン「はた迷惑な気のせいだね。いつか身を滅ぼすよ、人間」

零児「そうならないように、日々鍛錬しているつもりだ。忠告、ありがたく頂戴しよう」

ナズーリン「……ふぅーん」

一輪「(さらっと流してる。慣れてるわね……)」
496 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/18(水) 01:43:20.23 ID:+zI4YOhTo

零児「……済まなかったな。帰るとしよう」

村紗「もうですか。本当に、何をしに来たんですか」

零児「……確認さ。今度はもっと、まともな話が出来るよう、話を拵えよう。……失礼する」

星「お送りします。よろしいですか、聖?」

聖「はい。この異常時です。たとえ退治屋の方でも、一人で歩くのは物騒でしょうから」ニコッ

零児「……お心遣い、感謝する」



村紗「……はぁ。では私はカレーを見てきます」

聖「はい、お願いいします。……」

一輪「良かったの、姐さん。あの人……」

聖「……」

 妖怪の退治屋。それは、彼女達にとって最も好ましくない存在。
 そも、博麗の巫女とは違い、正真正銘の生業としている風体の男だ。
 一輪や村紗が心配するのも、無理はない。

ナズーリン「あっちとは違って、殺戮者の顔じゃないよ。むしろ陰りが見えたね」

マミゾウ「ほう、まるでネズ公はその顔を知ってるみたいな口ぶりじゃのぉ?」

ナズーリン「そこにいるじゃないか。ねぇ、人間?」

ヘイムレン「ばれていたか。いやはや、気配は断ってるつもりだったんだがねぇ?」

ナズーリン「臭いまで消せないのが人間の駄目な所さ」

 零児が出て行った方向とは逆側から、ヘイムレンが現れる。
 その顔は、いささか驚きが混じっているようにも見える。

一輪「ナズー、だから貴女……」

ヘイムレン「彼女を怒らないでやってくれ。確かに僕は、殺戮者だったからねぇ」

マミゾウ「なんじゃ、自分から言いおったの?」

ヘイムレン「……彼がいるとは思わなかったから、黙っていただけさ。これでも、心は入れ替えた心算だけどねぇ?」

ナズーリン「…………」

聖「これまでの行いを悔やみ、自戒して先に進むのであればそれでよいのです。ここは毘沙門天も眺めていますし」

 彼としては、思うところがあるのだろうが、果たしてそれが本当なのかは分からない。
 そもそも、未だなお、完全に切り替えられてはいないのだから。

一輪「ところで、彼を知っているの?」

ヘイムレン「ああ。妖怪の退治屋というのは知らなかったけど、他は概ね僕が知っている通りさ」

ナズーリン「あんたのその言葉が信ずるに値する根拠は?」

ヘイムレン「さぁ?」

一輪「ナズー、いい加減にしないと晩御飯抜きにしますよ」

ナズーリン「私は子供か」

聖「こらこら。ナズーも、もう少し優しく……」

ヘイムレン「……ナズーリン君ぐらいのほうが、僕からすれば普通なのは何かの皮肉かな?」

マミゾウ「化かせん人間は嫌いじゃ」フイッ

ヘイムレン「それは、意味がちょっと違うねぇ」
497 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/18(水) 01:47:27.81 ID:+zI4YOhTo

聖「……」

一輪「……姐さん? そんな暗い顔をしてどうされまs」

 グルルルルー

聖「……お腹が空いてしまいました。カレーの臭いは、食欲を沸き立たせてしまいますね」グルルルル

響子「私は鼻がつーんってしてます」ヒリヒリ

ナズーリン「……珍しく静かだったな、君」

響子「難しい話は分かりませんし!」ヒリヒリ

 現代の世界において、食欲を抑えるというのは難しいものだ。
 只でさえ、外来者(守矢神社)の幻想美食会という(宗教的)天敵がいるのだから。

一輪「村紗はとんでもないものを盗んで行ったわね……」

聖「………………………」

 グルルルルー

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜命蓮寺と人里の境〜〜〜

零児「……」

星「……」

 命蓮寺を出て十分。沈黙したままの二人が、田舎道を歩く。
 どちらも佇まいに隙がないためか、はたから見ると何処かへ出陣する武人とその護衛のようだ。

零児「……怒っているのか?」

星「いえ。……あの時の話や、マミゾウさんのおっしゃる事が事実であれば、貴方は妖怪に対しても理解があるということです。
  ……違いますか?」

零児「まぁな。それに退治屋だと言っても、郷に入らずんば郷に従えだ」

星「お強いのですね。……あるいは、厄介事が嫌いなのでしょうか」

 前述の通り、星は人と多く触れ合っている。
 妖怪であることを隠し通し、長い間信仰を獲得し続けていた経緯もある。
 そんな経験豊富な彼女は、人の感情の機微をよく捕え、嘘を嘘と見抜ける観察力を持っているのだ。

 ……とはいえ、長い年月を隔てたが故に、忘れている事もあるのだが。

零児「厄介事に、好きこのんで突っ込む人間はいないさ。……いや、ここの少女達は、突っ込みまくっていたな」

星「ふふ、そうですね。……外来者なのに、よく知られていますが?」

零児「連れが、な。後は……そうだ忘れていた。お前さんたちにも話しておかんとな」

星「おや。長くなりますか?」

零児「端折るわけにもいかん話だからな。15分は下らないか」

星「では、茶屋に行きましょう。ちょうど、御連れの方もお待ちのようですし」

小牟「おーう零児ぃ。待っておったぞー」

零児「待たせてすまない、小牟。……そうだな、行こうか」

 人里の門の外側で、こちらに向かって手を振る小牟に向かって返事をし、合流する二人。
 軽い挨拶をした後、門の傍の茶屋で今回の異変について零児が語り始める。
 お腹をすかせた二人の妖怪が団子を食べながらだ。時折小牟が合いの手を入れるが……。
498 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/18(水) 01:49:39.70 ID:+zI4YOhTo

星「ンクッ……はぁ、そんなことが……」

小牟「ほふなんじゃー、ほょむほー」

零児「星を見習え、小牟。ま、そういうことだ」

星「異変の再現……」

小牟「永夜を一日目に攻略したんは正解じゃったなぁ。ぬしとこうやってゆっくり茶を楽しめる」ズズズ

星「……そのことなのですが……実は昨日、博麗結界の外に出たのです」

小牟「くっ……げほっげほっ……なんじゃと!?」

零児「……驚いたな。そんなことができるとは」

星「詳しくは、マミゾウさんから企業秘密だからと口止めされていますが……」

小牟「安心せい。ぬしがうそつきじゃない事はよーわかっとる。……んで、どうじゃった?」

星「? どう、とは?」

小牟「何百年ぶりかは知らんが、久しぶりの外じゃったんじゃろ? 感想じゃよ。フィーリング」

星「…………驚きました。人の発展に目を奪われ感動を、同時に恐ろしさを感じました……あれが、人の力なのかと」

 星が一人で信仰を集めることになって数百年。
 その間にもある程度の発展はあったが、ここ数十年に比べればドングリの背比べのようなものだ。
 それを知っている小牟だからこその質問内容でもあるのだが、

小牟「ふむふむ。呑まれんかったんじゃな」

星「……え? それはどういう」

小牟「ぬしは毘沙門天じゃから、言うほど危険はなかったんじゃが、あのビル群を見て消える妖怪もおるでな」

零児「自己の存在を保てなくなり、消えた座敷わらしのような前例があるのさ。そうでなくとも、心身衰弱する妖怪もいる」

小牟「山奥で暮らして、昭和前期ぐらいの建物しか知らぬ、200年程度生きた自称古参がそういうことに陥りやすかったりする。
    いらぬ豆知識かの」

星「な、なるほど」

 こちらの意味合いの方が強かったのだ。

 特務機関は【真羅】に限らず、戦闘集団以外の歴史情報収集・編修機関や多思想向け地図・地形調査機関等が存在する。
 世間一般ではオカルトや神話、与太話として封殺「した」物事の保守・管理を任されている機関もあるのだ。

                    妖怪や神
 それらの機関が手に入れる、 オカルト の情報は多岐にわたる。
 そういったモノの死亡理由等も、もちろん範疇だ。

小牟「わしら妖怪は、とあるそげぶな物語の生徒みたいにパーソナルリアリティがある。
    それを壊されるといかんっちゅーわけじゃ」

星「そ、そげぶ? パーナル……」

零児「急にマイナーな話をするな。前半は俺にも分からんが、パーソナルリアリティ――「自分だけの現実」、は分かるか?」

星「あ、はい。……なるほど、それが壊れてしまう妖怪が居たのですね」

 自分だけの現実……あるいは、自分を形創る情報。
 肉体持ちの妖怪や神は、媒体を持って存在するために、この要素はそこそこ薄い。
 だが、概念寄りの存在は、そのほとんどがそれらの要素で塗り固められている。

小牟「マイナーじゃとぉ!? ぬしはこれの面白さを知らんからそんなことが……!」
499 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/18(水) 01:52:14.90 ID:+zI4YOhTo

零児「今、その話はいらんだろ。……例に挙げた座敷わらしの場合、とある町の旅館に棲んで居たんだ。
    そこの、霊感の強い女将の好意で県……藩や、国と言えば分かるか?」

星「はい。それもマミゾウさんから聞きました」

零児「その中心部でもない、所謂地方都市に誘われ…………消滅した」

小牟「悲しい話じゃよな。子供のころから話相手になってくれた友達のようなわらしが、塵芥のように消えてしもたんじゃから」

零児「調査の結果、その座敷わらしは地域の守護神の代わりだったと判明した。
    地域の、栄えたいとまでは言わなくとも、健やかに暮らしたいという想いの、な」

小牟「数十歳っちゅー、若いわらしじゃったからのぉ。都市の繁栄っぷりでも見て、己の不甲斐なさでも感じてしもうたんか。
    ……それはもうわからん」

零児「最期に、自身の許容量を超える力を放出しようとした形跡はあるが、力の残滓が少なく、それ以上は分からなかった」

 そういった存在は、後から情報を得て自信の存在を確固たるものにしたり、大本に情報を加えて消滅から免れようとする。
 あるいは、自らの存在を他者に知らしめ、恐怖心や信仰心を糧に肥大化するか。

 だが、それらを行う前に、自身の存在を根本から揺さぶる事象に出逢うと、いとも容易く解けてしまう。
 若ければ若い程、その確率は高くなる。当たり前か。年齢はそのまま経験に繋がるのだから。

星「私も、そうなったかもしれないと」

小牟「先もいうたが、ぬしはまぁ大丈夫じゃよ。元があるし、今でも祀られとる毘沙門天の代理じゃし、そもそも高齢じゃ」

星「……あの、その旅館は……その町は、どうなったのでしょうか?」

小牟「…………」

零児「…………旅館は潰れ、町も高齢化が進んだ。じき、他所と合併して名前は消えるだろうな」

星「……そう、ですか……」

小牟「それ自体は悲しい話じゃ。じゃがの」

星「分かっています。マミゾウさん以外にも、人と共に暮らす妖怪が居た……そういう事ですよね」

小牟「……うぬ」

星「ですが何故、その後再び妖怪が生れなかったのでしょう?」

零児「座敷わらしのおかげで発展したその町は、皮肉にも地脈を壊していたんだ。
    信仰心と、残りの僅かな力場からの供給で、力を維持する事しか出来ないほどにな」

星「それは……皮肉ですね……」

小牟「先輩妖怪がおらんかったのも問題じゃな。山の天狗みたいなのがの」

 過ぎたる文明は身を滅ぼす。それを見事に体現してしまった例、というわけだ。

 もし、強大な力を持つ先輩がいれば、何かしら手段を講じれた可能性はある。
 だがそれも所詮、後の祭り。後悔先に立たずだ。

零児「ともかく、そういう危険があったという訳さ。……小牟、この方法について心当たりは?」

小牟「やり方は分からんよ。存在だけはしっとったが。ぬえがマミゾウ呼んだちゅー話しじゃからな」

星「東方project……ですか」

小牟「ぬしのへにょりレーザーは強いのぉ。皆のトラウマじゃ」

 数多のシューター達の壁となった、へにょりレーザー。トラウマとなった人は数知れず。
 事故死率の半端なさは他の五ボス(相当含む)と段違いだ。(中の人比)
500 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/18(水) 01:54:09.43 ID:+zI4YOhTo

零児「イメージしにくい。……クリノのやつ、来ないな」

小牟「こんのぉ。見てこようかの?」

零児「頼む。ところで、金を渡していなかったな」

小牟「うぬ。ウィンドショッピングしかやることなかったわ。あきゅんのお家はどこですか、っと」

星「それでしたら、御案内出来ますよ」

零児「泣きもしなければ、自分から案内できる猫だな」

小牟「わし、狐じゃし」



零児「……居たな」

小牟「花屋に捕まっちょるの?」

星「あの緑の方ですか」

クリノ「だ、だからおいらは植物の妖怪じゃないって、御婆さん」

「幽香さんにはお世話にのうとってなぁ……」

クリノ「うう、聞いてない……」

零児「……どうした、クリノ」

クリノ「ああ、零児、小牟。……そっちの子は?」

星「寅丸星と申します。零児さんとお話をさせていただきました。……どうなされました?」

「おおー、命蓮寺さんとこの。いや実はのぉ、この植物の妖怪さんに幽香さんのことを聴いとるんじゃよぉ」

クリノ「だからおいらはサンドラ族であって、植物の妖怪じゃないよ、御婆さん」

「何嘘をおっしゃるやら。緑の体に、チューリップ見たいな頭。植物の妖怪さんじゃのうてなんじゃと言うのかぇ」

零児「……」

小牟「……」

クリノ「そういう事だったのか……だから、おいらはサンドラ族という種族で……」

「サントラ属? 知らぬ名前じゃのぉ……」

星「お婆さん。優香さんは来られぬ事情があるのです。言伝なら私が致しますので、どうか彼を離してあげて下さい」

「あー、そうかえ? 助かるよぉ、寅の人。ほんじゃまぁ……」
501 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/18(水) 01:57:11.00 ID:+zI4YOhTo

クリノ「ふぅ、どうすればいいか分からなかった……。ごめんよ、二人とも。待たせちゃって」

小牟「こーいう事なら仕方なかろう。しかし、緑のチューリップはないじゃろ」

零児「シルエットだけなら、確かにチューリップだがな」

クリノ「おいらもそれだけは否定しないよ……」シクシク

星「はい、はい。わかりました、では。……どうやら、見た事の無い種を手に入れて、それが何かを聞きたかったようです」

小牟「うーぬ、幽香めに分かるかのぉ。ここ最近の雰囲気じゃと、外来種の可能性もある」

星「おや、知らないのですね。幽香さんは植物の声を聞けると、人里では有名ですよ」

小牟「ほぅ。文字通りフラワーマスターゆうかりんじゃったか」

クリノ「へぇ。あ、でも神子さんのように聴けなくなるとかあるかもしれないね」

零児「そうだな。まぁ、明日解決して訪ねればいいさ」

星「……あの」

小牟「無理じゃな」

星「え、あのまだ私……」

小牟「連れてってくれー、じゃろ。花映塚……六十年周期の大結界異変は、特殊な異変じゃとはいえ、ぬしは時期が違いすぎる。
    参戦出来んて」

星「……」

小牟「それに、味方におるんは常に人間じゃ。……ん? わし妖怪じゃね?」

零児「気持ちはありがたいが、万が一にも敵対した時、お前さんを倒さんといかん。それはあまりよろしくないだろ」

星「……はい。手間も増えてしまいますしね」

零児「そういう事じゃないんだがな。……まぁいい。帰るか。食材も忘れずにな」

クリノ「結構時間がたったね。想定外というか……」

小牟「わし以外が道草喰っとっただけじゃて」

零児「悪かった。元の世界に帰ったら、油揚げをやる」

小牟「そんな安ぅされたら、物価が跳ね上がってしまうぞ? お使い五回で一枚が、二回で一枚じゃ」

星「(どういう単位なのでしょう)」

クリノ「(どんな単位なんだろ……)」

零児「なら、抜きでいいんだな」

小牟「じゃーがー、貰えるもんは貰うぞ。約束じゃからな、零児!」

零児「素直にそういえ」

クリノ・星「「うーん」」
502 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/18(水) 02:10:46.12 ID:+zI4YOhTo
以上で投下を終わります。

会話の最中にあった座敷わらしの例はオリジナルであり、どちらの原作にもない話です。

突然、なんだこの話は?と思った方、申し訳ございません。先に忠告入れておくべきでした。

また、他にも色々と拡大解釈している部分がありますが、詳しい説明が必要であれば致しますのでどうぞおっしゃってください。


ところで……今までずっと、仙界を神界と間違っていました。

設定には全く関わらない、只の名称部分だけなのですが、お詫び申し上げます。

神のゲシュタルト法界でもしてたのかな……


次回は土日辺りに「魔法の森の来訪者」+「二日目の夜」を。

それでは。
503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/18(水) 09:27:13.42 ID:leK5MqKDO
お疲れ様です!
説明回だって、俺は大好物ですぜ!座敷わらしちゃん…いたたまれないな。御友人の女性も、後悔したんだろうなぁ。一緒に色々楽しみたかっただけなんだろうし。幻想入りして、どっかで元気にすごしてたりしないかな。

腹ペコひじりんカワユスwwまぁカレーの誘惑に抗える人間は少ないよな〜。

花映塚も楽しみです!
504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/18(水) 20:13:51.85 ID:urVkLBG8o
ゲシュタルト法界ってなんかカッコイイなwwww
505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/19(木) 08:36:08.50 ID:tM613ccDO
↑色々不安定そうだったり、何が起きても不思議じゃなさそうだねww

あ、関係ないですが…>>1さんはエスプレイドもしくはガルーダ1、2か。ソラ又はスグリのどれかってやった事あります?ただ単に聞いてみたくなってしまいまして。
506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/19(木) 23:14:09.93 ID:uGSOLAVxo
晒せと要求したから責任をもって>1から読んでいるけど、、、

ナムカップ勢しか知らないので、東方勢の読めない名前、技名がキツイ
なにをしているのか、なにがどうなっているのかが視えてこないので内容に集中できない

それでも>>73までは読ませてもらった。
魔翌理沙のキャラが気に入って面白くなってきたんだが、星とナミゾウが出てきて心が折れたwwww

あと、原作ネタを匂わせているんだろうけど、チンプンカンプンなので初見には辛い
小牟がいい感じに説明してくれてる箇所もあるけど、分からないものは分からないから投げてしまう
今の所しこりを残しているだけだ

でも、これだけの人数なのにキャラ別の口調が使いきれているのは凄いと思う
ノリや展開は好きだからもう少し読んでみるけど、今までの人物の総入れ替えは読む側が混乱すると思う


中途半端な批判で申し訳ない

一度頭をリセットしてくるわ
507 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/19(木) 23:53:50.57 ID:29A3RH2Go
こんばんわ。レス、ありがとうございます。指摘されてまじで衝撃受けたんでレス返をば。

>>503
座敷わらしは残念ながら霊魂になれない以上…………そういうわけです。

>>505
ガルーダ1or2を4年以上前にしたような記憶がある程度で、他はやったこと無いです。

ただ、ソラとスグリは少々興味が。まぁ、今はそんな余裕ありませんが。

>>506
振り仮名……振り仮名……そうだこれ忘れてたあああ!これ何処が原作知らない人も読めるんだようわあああ!


星とマミゾウが出て来たのは時系列が若干戻る等、あえて不親切にしている部分なので、まぁ……。

それと、この閑話休題(星マミ時点での休題)は総入れ替えではなく番外編的な内容なので、
 続きを読んでいただけば、恐らくその混乱は解消される………………と思います。

原作ネタに関しては、諸事情から解説するしないをある程度決めて流しているので、
 気になった部分があれば質問していただければ。

批判と言うよりも、感想と指摘な感じですね。ありがとうございます。


……wikiのほうには書いてるのにスレで書いてなかったことを、今さら。

 元ネタを知らなくともある程度の進行状態が分かるようにはしていますが、それでも気になった事があれば
  原作を調べるか、あるいはこのスレにてご自由にお聞きください。

それでは。読み仮名表を急きょ検討・制作中。
508 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/22(日) 21:35:29.95 ID:NotVzC95o
こんばんわ。昨日の段階で8割出来てたから、余裕とか思ってたらこんな時間でした。

難しい部分とはいえ、…………予想外です。

では、投下します。「魔法の森の来訪者」及び、「二日目の夜」です、どうぞ。
509 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/22(日) 21:39:44.54 ID:NotVzC95o

「ハッ……ハッ……ハッ………………ん?」

「おかしいな。山を走っていたはずだが、いつの間にこんな所に」

「……魔力の類か。だが、これはこれで、修業にはもってこいだ」

「はっ……はっ……はっ……はっ……」

 魔法の森。そこは、普通の人間が立ち寄れば、良くても眩暈がするほど危険な地。
 そこに生息する植物は、その環境に適応したか、あるいはその環境を作る側。
 それ故に、他所で生えている同種のものとは違った効果を持つ。

「ふんっ、はっ、せぇぃっ!」

 この環境になった推移は不明だが、保たれている理由は簡単なものだ。
 力なき者たちは入り込めず、かといって力ある者たちは用がないので立ち入らない。
 だから、荒れない。ただそれだけ。

「ふぅ。……随分と濃いな。樹海や恐山よりも、濃い場所が日本にあったとはな」

 とはいえここ数年は、荒れるとまではいかないが多少踏み荒らされている。
 普通の魔法使い、霧雨魔理沙がこの森のキノコを採取しているからだ。

 彼女は、他にいる三人の魔女とは違い、生粋の人間だ。
 しかも、純粋な魔力は四人の中では断トツで低い。
 それ故に、道具やドーピングを使って魔力を強化する。その材料は、ここのキノコなのだ。

「はっ……はっ…………ん? 家か」

 ところで、この魔法の森にはとある少女の家がある。
 普段は誰も来ないこの地に迷い人が来たとき、その人を森の外へ返したり、時間によっては止めてくれたりするのだ。

「ちょうどいい。道を尋ねよう。ごめん!」

『ん? はいはーい、ちょっとまってねー』

 ただ、その評判はあまりよくない。彼女の対応が、というより、家の中の環境がだが。

「……どちら様?」

「少し、走り込みをしていたんだが、いつの間にか知らない場所だったんだ。ここがどこか教えてもらえるかな?」

「……はぁ? ここで走り込み? ……冗談もほどほどにしなさいよ」

「む。嘘じゃないんだが……」

「汗をかいてなけりゃ、裸足じゃない。そもそもここはそんなことが出来る場所じゃないわよ。……あれ、でも人間?」

「ん? ああ、人間さ。もしかして君、妖怪なのか?」

「……」ジー

「?」

 その少女の家を訪ねた男に、少女は不審な目を向ける。
 先に述べた通り、ここはただの人間が来られる環境じゃない。
 それなのに走り込みしていると言われても信用できないのだ。
 だが、どこからどう見ても普通の人間。いや、かなり筋肉質だが。

「……人間ね。確かに」

「ああ」

「……まぁいいわ。ここは魔法の森よ」

「魔法の森……聞いたことがないな。新潟、富山、長野……その境目のあたりにあるのか?」

「ニイガタ、トヤ…………それ、外の世界じゃないの。ここは幻想郷よ。大方、結界を知らない間に通ったのね」

「む。幻想郷?」

 博麗神社は、長野のとある山奥にあるといわれている。
 そのあたりに結界があるのだが、ごくまれにその結界をすり抜けて入り込む人間がいるのだ。

 普段であれば、博麗の巫女たる霊夢がその人間を保護し、結界の外側へと送り返す。
 だがこの人間は、少々違う入り方をしたようだ。
 まぁ、彼女にとって入り方など問題ではなく、ここに無防備でいられることが問題なのだが。
510 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/22(日) 21:43:45.16 ID:NotVzC95o

「ちょうどいいわ、武道家さん。お茶が入ったところなの。中でゆっくり話さない?」

「あ、いや。迷惑を掛けるわけには」

「逆よ。このまま魔法の森をうろうろされるほうが、迷惑なの。幻想入りしたんだから」

「幻想入り? それはいったい……」

「聞きたかったら、中に入って。……私はアリス・マーガトロイド。武道家さんは?」

「……参ったな。これは聞かなくてはいかなくなったか。……俺はリュウだ」

「そ。どうぞ、リュウさん。いらっしゃい、幻想郷へ」

 白の胴着に、黒帯を腰に巻きつけ、赤の鉢巻を額に巻きつけた日本男児。

 ストリートファイター、リュウの、幻想入りの瞬間である。


             『魔法の森の、来訪者』


「なるほど。俺はいつの間にか、迷い込んでいたというわけか」

「……物分りがいいわね。貴方のような人って、大体にして、オカルト話は受け付けないものと思ったのに」

「世界中を歩けば、様々な力を使う人に出会う。俺はそういうやつと戦い、己を鍛えているんだ。
 俺よりも強いやつが、世界にはまだごまんと居るからな」

「殊勝なことね」

「それに俺自身、オカルトの力に呑まれたこともある。友人にも、そんな力を持つ人がいるしな」

「へぇ」

「しかしすまないな、アリス。わざわざ説明してくれて」

「そのためにここにいるから。静かなのはいいけど、少し刺激が足りないわ」

「魔法使いか。……かわいらしい部屋だな」

 アリスの家は、西洋建築のそれに非常に近い。
 暖炉に円とる。ダイニングとキッチンが繋がった部屋。出窓と両開きはガラスだ。
 大の大人が横になれる程度のソファーに、おそらくアリスの仕事場であろう机といす。
 その傍にある棚には、少女らしい本……以外にも、魔法の書が所々ある。グリモ……

 そんな部屋の中のあちらこちらに人形が置かれてある。
 それも全て服装が違い、それでいて細かな装飾で特徴づけられている。

「あら。褒めても何も出ないわよ?」

「少し視線が多いのが困りものだな。今にも、動き出しそうだ」

「動くわよ。ほら」

「シャンハーイ」

「ホウラーイ」

「おお。指を動かさずに人形を動かしているのか。すごいな」

「ふふっ。でも、今は調子がいまいち。少し気を抜いたら、すぐにめちゃくちゃになっちゃうわ」

「俺には、そうは見えないな。さて、お邪魔した。お茶、ありがとう」

 事実、動き出した人形達はそれぞれに作業をこなしている。
 掃除。お茶の追加。茶菓子の用意。裁縫道具の整理。
 魔理沙が見ていれば、確かに数が少ないと指摘するかもしれないが。

「待ちなさいよ。貴方、人の話を聞いてなかったの?」

「ん? いや、聞いていたさ。魔法の森は、魔力が濃いことや、夜の幻想郷は、妖怪がはびこっているんだろう?」

「なら、なんで出て行こうとするの。もう五時……当てもなく彷徨うには遅いわ」

「魔法の森からは出る。妖怪は、奇襲を討ち倒してこそ、意味がある」
511 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/22(日) 21:46:32.00 ID:NotVzC95o

「……そんなに、自信あるの?」

「そういうわけじゃない。むしろ、俺なんてまだまだだ。だからこそ、拳を合わせて前へ進む」

 その瞳にはなんの曇りも、一切の迷いもなく、自分自身を信じている。そんな顔だ。
 そう。だれよりも強い自信ではなく、己が拳を、信念を貫く、そんな己を、だ。

「……ねぇ。なら、私と戦わない?」

「君とか?」

「そう。ここ、幻想郷のルールに従ってなら、私も腕に覚えがあるの」

「幻想郷のルール?」

「スペルカードルール。穏便な決闘法として考案された、誰にでも勝てる可能性のある決闘よ」

「……魅力的だ。教えてもらえるか?」

「勿論」シャンハーイホウラーイ



「ほうらーい!」フンスッ

「しゃ、しゃんはーい……」

「ざっと、こんなところかしら」

「人形劇で分かりやすく……君は、先生に向いているかもしれないな」

 上海と蓬莱を使い、スペルカードルールの説明を行ったアリス。
 本格的なスペカ戦である必要がなかったため、二つの人形を半自律行動させ、それを第三者視点で説明したのだ。
 自作自演だとか、そういう野暮な突っ込みはなしの方向で。

「そう? でも、教えるより教えられる方が楽しいわ」

「しかし、そうか……この決闘方法が基本か」

「ええ。一応、むやみやたらと噛みつこうとする妖怪が、いないわけでもないんだけどね」

「困ったな。波動拳しか、遠くの相手を狙えないんだ」

「別に遠距離に拘らなくてもいいの。弾幕を掻い潜れる自信があるなら、近づいて直接叩くのも戦略のうちよ」

「それを聞いて安心した」

 もし、この説明を魔理沙がしていたら、

『弾幕はパワーだぜ。ごちゃごちゃして面倒になったら、でかいのぶっ放して終わりだ』

 とか言われていただろう。
 リュウなら、それも可能なのが少々悩ましいか。

「まぁ、たいていの弾幕は人を中心に展開してるから、近づくのは並大抵のことじゃないわ」

「む、そうなのか」

「ええ。試してみる?」

「そうだな。やって見なくては、分からないさ」
512 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/22(日) 21:51:31.67 ID:NotVzC95o

「じゃぁ、半径2mまで近づけば、貴方の勝ち。それまでに当てられたら、私の勝ち。それでいいわね?」

「ああ。いつでもこいっ!」

「いえ、貴方が来るんだけどね。……咒詛『首吊り蓬莱人形』!」

「む、すまない。……いざ参るっ!」

 五体の蓬莱人形が宙を飛び始める。始めは薄かった弾幕も、すぐさま分厚い壁となる。

 リュウは、そうなるのを待ってから動き始める。
 力強く踏み込み、ほぼ並んで流れて行く黄色い弾幕をグレイズする。
 均一に飛ばされる青い弾を無視し、バラバラな赤い弾を、次に続く黄色い弾幕似合わせて間を抜ける。

 しかし、その勢いを削ぎ取ろうとする大玉に不意を突かれたのか、大きく後ろへ下がる。

「ふっ。今の弾……見かけ騙しか」タンッタンッ

「ええ。さっき上海が避けてたの、見たでしょ?」

「ああ。慣れていないと、つい大きく動いてしまうな」トンットンッ

「それでも、見かけの範囲ぎりぎりで避けたのはすごいとおもうわよ」

「まだまだ、こんなものじゃないさ」ザッ

 そんな軽いやり取りを済ませ、再び接近を試みるリュウ。
 会話の最中に三度目の大玉が過ぎ去り、また黄色と赤と青の弾の壁が出来あがる。
 近づいたことでいささか濃いのだが、それでもなお、避けきる。
 そして四度目の大玉が、更に濃くなった弾壁と共に迫り…………

 大玉の有効範囲と、三色の弾幕の、ほんの一瞬空いた、僅かな隙間を潜り抜ける。

 そして到着した、アリスの周囲3m。

「……驚いた。二度で見切るなんて」

「三度……いや、五度だな」

「オカルト慣れしてるの、本当なのね。それとも、武道家さんの勘?」

「どちらもさ。ところで先ほどの弾幕……何かの模様のように見えたが、あれが芸術性なのか?」

「そうよ。五忙星と、そこから魅せる四色の弾幕よ」

「……。電刃・波動拳! 波動拳(強)!」ババッ

 徐に構え、二連の波動を飛ばす。一つ目は電撃を伴い、それを追いかける気の波動がぶつかり……

    バチィィッ……バゴォォン

「……樹が折れただけね」ゴゴゴ

「やはり、俺には弾幕を作るのは難しそうだ。模様を練るのは、どうも勝手が違う」ドゴォーン

「気……なのよね、それ」

「ん? ああ」

「……恐ろしや」

 波動拳が吹っ飛ばした樹は、40m近く離れた、萃香ぐらいなら(角は除いて)隠れられる大きさだ。
 アリスなら、少し本気を出さない限り、爆発する人形を用いなければ同じ事は出来ないだろう。

「それで。すっかり遅くなっちゃったけど、まだ何処かへ行くつもり?」

「む。……ふむ、してやられたな」

「ふふっ。まだまだ貴方には聞きたい事があるもの。今晩は寝かせないわ」

「……分かった。君の忠告を聞くとしよう。よろしく頼む、アリス」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
513 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/22(日) 21:56:08.85 ID:NotVzC95o
               『二日目の夜』


 零児が命蓮寺を出た、その頃……

萃香「グビッグビッ……ぷはぁ」

魔理沙「…………」ウツラウツラ

神子「! おやおや……」

早苗「ふ〜っふふふふふ〜ふふ〜」トントントン

霊夢「ふんふんふ〜ん」グツグツ

 博麗神社は、至って平穏だった。

 というかむしろ、(一番の幼女が酒を飲んでいる事以外は)外の少女達の日常そのものだ。
 そう、平和なのだ。基本的には。
 この平和の中、退屈した妖怪や力ある者が、時々暇を潰そうとどんちゃん騒ぎをするだけなのだから。

早苗「霊夢さん、玉ねぎ切れましたよ」

霊夢「それじゃ入れちゃって〜。そしたら出汁足して煮込むだけよ」

早苗「はいっ」

魔理沙「うと……うと………………」ボフッ

神子「っと、だいぶ疲れていたのですね。寝てしまいました」

萃香「その分、霊夢が働かなかたってか〜」ニヒヒ

 それも、別に恨みだとか妬みだとかそういう私怨ではなく、本当にただの暇つぶしだったり、
 霊夢に構ってほしくてやったり……。
 終わったら宴会が常なのも、結局はそういう事なのだろうか。

霊夢「そうねー、今日はかなり楽したかも。気質は早苗と魔理沙がやってたし」

早苗「一日以上、ぼけっとしてた分を取り返そうかと。とはいえ、それっきりでしたが」ショボーン

神子「残りの異変も、あまり活躍が見込めないのでは。あ、御布団どこでしょうか」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

屠自古「帰ってきませんね、太子」

布都「――――!!」

青蛾「? どうしたの、物部氏?」

布都「今、太子に呼ばれた気がした……!!」

芳香「気ーのせーいだー」ウガー

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

萃香「そっちだよー、聖人さん」ヒック

霊夢「そうねー、そもそも早苗が来てからの異変って、怨泉ぐらいなのよね」フタフタット

早苗「あ、その件はどうもすみません!」

神子「?」

霊夢「守矢の神様が黒幕なのよ。あの鳥頭、全く覚えてなかったけど」

神子「はぁ、なるほど」

早苗「私も聞いてみたのですが、知らないと言われまして」ウーン

 結局、殺伐としない幻想郷は、一種の理想郷なのかもしれない。
 エンドレス・フロンティアとは真逆の、『様式美』の世界という意味で。

萃香「あのカラスに聞くのが間違ってるっしょー」ケラケラ
514 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/22(日) 21:58:50.65 ID:NotVzC95o

〜〜〜一刻後〜〜〜

零児「今帰った。悪いな、遅くなって」

霊夢「構わないって言ったでしょ。買って来たのは、野菜置き場にでもおいといて」

小牟「うーん、いいにおいじゃな。おふくろの匂いじゃて」

神子「お帰りなさい。いかがでしたか、クリノさん」

クリノ「仲間には会えず終いさ。人間違いされちゃって」ハァ

萃香「人攫い〜?」

小牟「それはぬしらの専売特許じゃろ。ほれほれ、飯にしようぞ?」

 いささか問題発言をしつつも、流してご飯の用意を始める。
 テキパキ進む、食事の準備の傍ら、眠り呆けている少女の寝言が。

零児「魔理沙は俺が起こそう。他を頼む」

クリノ「台拭き台拭き……」

霊夢「なんで台拭き……って、ああ……」

魔理沙「zzz」ベチャー

零児「全く。……ほれ、魔理沙。起きろ。飯が出来たぞ」ペチペチ

魔理沙「う、うーん…………」ペトッ

 炬燵に突っ伏し、涎を垂らしながらだらしなく寝ている魔理沙の頬を叩く。
 ゆっくりと頭を上げ、起きた……と思いきや、零児にもたれかかり、再び夢見心地へ。
                                             〜♪
零児「こら、ひっつくな。さっさと起きて顔を……」

魔理沙「にへへ…………こーりーん……」

零児「…………」

神子「…………」

早苗「おおっ。写メ写メ」カシャッ

 早苗が袖の下から取り出したケータイを取りだし、その光景を激写する。
 零児の胸に、魔理沙がもたれかかって、笑顔のまま寝ているのだ。
 年頃の少女からすれば、これ以上の話のネタは……

霊夢「……相変わらず幸せそうに寝るわね、魔理沙」
   〜♪
小牟「むー? おー。こりゃ起こす方が酷かもしれんの」

零児「……だな。このまま寝かせて……」ゴソッ             〜♪

 ムニッ

零児「…………」ムニッ

魔理沙「にへらー……」ムニムニ

神子「おや、大胆」

早苗「ち、ちちち……!!」

小牟「黙っちょれよ、早苗ぇ……!」

 あった。

零児「……」ガバッ

魔理沙「おへっ……zzz」ブラーン

クリノ「? どうしたんだい、零児?」

 魔理沙の腰を掴み、縁側の外へ降り立つ。
 すれ違ったクリノが不思議そうな顔をしながら覗いていると……
515 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/22(日) 22:01:13.22 ID:NotVzC95o



   「……有栖流、秘技『千手観音・弐拾戒』!!」スパーン



 ウギャアアアアアアアアアアアアッ!?

 眠気も一発で吹き飛ぶ、零児の尻叩きが炸裂する。
 零児の顔が無表情気味なのが、千手観音らしさを醸し出しているような、いないような。

クリノ「……零児が怒っているけど、どうしたんだい?」

小牟「大事な玉を握られたんじゃよ……」

霊夢「しかも、かなり嫌らしい顔つきでね」

クリノ「あらら。……起きてたのかい?」

早苗「いえ、あれは夢の続きでしょうね……」

       ハヒィィィイイイイ!



魔理沙「びくんびくん」チーン

零児「…………」

神子「別の意味で、寝てしまいましたね」

早苗「と、というか……ち、ちち……」

小牟「……ぬし、案外うぶじゃな? 無理すんなよ?」

霊夢「これからご飯食べようとしてるのに、下ネタ厳禁よ」コトン

 お仕置きが終わり、部屋の片隅の布団に魔理沙を寝かせた零児が、無言で座る。
 それに合わせ、霊夢が肉じゃがを食卓に出し始める。

小牟「どーすんじゃい、魔理沙」

霊夢「そのうち起きるでしょ。痛みが心地いいとか言うやつなら、しらないけど」
                                                   /ヘックシュン\
神子「……そんな趣向が、いまではあるのですねぇ」シミジミ

零児「……江戸時代以前からあるがな。と、すまない」

早苗「零児さん、ご飯は大盛りですか?」

零児「ああ、頼む。……よし、それじゃぁ」

クリノ「大地の恵みと、イシター様の加護に感謝して。頂きます」

早苗「サンドラ族流の挨拶でしょうか?」

零児「だと言っていたな。頂きます」

 挨拶は心のオアシス。別に命蓮寺の家訓ではないが、一種の真理だろう。

早苗「命蓮寺に行っていたのですねぇ」

零児「俺だけだがな。……この短時間で、味が出ているな」

小牟「あそこを整地したんは、諏訪子じゃと聞いとるが」

早苗「はいっ。あの墓地を管理する人がいないと聞き、それをこちらからお話したら是非にと」

神子「その時には、すでに私達の封印を知っていたのでしょう。
    特に何もしていないのに三つの得……寅の方の能力は侮れませんね」

 風の噂程度だが、聖達命蓮寺の面々は、反妖怪勢力が封印されている霊廟の上に、態々寺を建てたと言われている。
 それが廃仏派の神子達だからなのか、ただ仏教の封印だったから再封印したかったのか、不明だが。

霊夢「早苗の神様が持ってきてくれたのよ。圧力鍋」
516 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/22(日) 22:04:12.89 ID:NotVzC95o

クリノ「あ、そういや聞いてなかった。皆の能力ってなんなんだい? その寅の人も含めて」

小牟「それも持ち込んだんかい……よく紫が許したの」

早苗「私は『奇跡を起こす程度の能力』ですよ」ムフン

クリノ「奇跡かぁ。なんだか凄そうだ」

小牟「実際は『風を引き起こす程度の能力』じゃがな。文めと被っとる」

萃香「入りこまれた以上は、仕方ないんだってぇ。それに、紫の家にもあるし」

早苗「失礼な! 星を落としたり、さいころの目が自由自在と、他にもありますよ!」

零児「ずいぶんとイカサマ臭い奇跡だな。……お前さん、紫の家に行けたのか」

 そもそも、そういった物を制限することは、非常にまれだ。
 なぜなら、プリズムリバー伯爵家が丸ごと入ってくるなど、大規模な幻想入りもあるのだから。
 たとえ幻想郷へのはた迷惑な引っ越しだったとしても、侵略道具でない限りは放置だ。

霊夢「わりとどうでもいい。……私は『空を飛ぶ程度の能力』よ」

クリノ「空を……ヨウムちゃんや、マリサちゃんも飛んでなかったかい?」
              〜♪
萃香「どうでもいいって言われたよー、れいじぃー」ダキッ

零児「お前さんに言った言葉じゃないだろ。それに、キャラを作るな」

小牟「他の皆と、心理的に一定の距離間でおるんじゃよな」

霊夢「……あ、そういうことなの」

小牟「自分で知らなんだー!?」ガビーン

霊夢「な、何よ。知らなくって何か問題ある?!」

萃香「……?」

零児「敵を知り、己を知れば百戦危うからず。とは言うが……この場合、どっちでも同じか」

神子「知りたいとも知りたくないとも思わない。かといって、興味がないわけじゃない……」

クリノ「難しいね。哲学みたいだ」

 歴代の博麗の巫女は、この能力を先天的、あるいは後天的に引き継ぐ。

 先天的な能力の継承は基本的に、先代が不慮の事故で死なない限り起らない。
 そして当代の巫女……霊夢は、その先天的な継承が起きた初めての例だったりする。

小牟「よーするに、御年頃な女の子っちゅーことじゃよ」

零児「そんな簡単でいいのか?」

早苗「お夕飯の最中に、深く考えると味を楽しめません。あーむっ」

零児「それもそうだな」

 ご飯がのどを通らないとか、舌の上に何が乗っているのか分からない……
 こういう事は、大抵が深く物事を考えているからであり、それでは食事を楽しめないもの。
 後回しにするのは、別に恥ではない。

萃香「私の能力は、『密と疎を操る程度の能力』だよぉ」

クリノ「あ、スイカちゃんのはさっき聞いたね」

霊夢「そうね。合流したときにね」

萃香「あり? そうだっけ?」

神子「酔ってますね……」

萃香「あはははは。まぁいいじゃん、自己紹介なんだし、ぐびっ……さぁぁ」サァァ
517 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/22(日) 22:06:42.81 ID:NotVzC95o

零児「息吹と語尾を一緒にするな。次は魔理沙だが……」

小牟「『魔法を扱い程度の能力』っちゅーが、要するに魔法使いそのまんまじゃな」

クリノ「うん。サビーヌやカイさん。アーサーさんみたいなものだね」

 魔理沙以外の魔法使いとはアリス、パチュリー、聖だ。
 彼女たちも分野は違えど大別して魔法使いであり、全員魔理沙の先輩でもある。

 この中で聖だけ、物凄く異色の魔法使いだったりもするが、それはまた後の機会に。

小牟「うぬ。して、星めの能力は、『財宝が集まってくる程度の能力』じゃ」キラーン

霊夢「……! 飯食ってる場合じゃないわ」ガタッ

零児「……」ジトー

霊夢「……冗談よ?」ポフンッ

神子「(目が本気でしたよ」

早苗「霊夢さん、最近冗談が増えましたね」

小牟「ぬしの天然具合は、相変わらずじゃがな」

クリノ「そうなると、さっきミコさんが言ったのは、運も込みなのかな?」

神子「ええ。まぁ、毘沙門天の弟子ですし、何かしらあるのでしょう」

萃香「案外、あそこの鼠が嗅ぎつけたのかもね〜」

霊夢「あり得るわね。あいつ物探し得意らしいし」

 日本の毘沙門天と言えば、聖徳太子こと神子が、寅の月寅の日寅の刻に建てたと言われる事から、寅が象徴とされている。
 しかし、その存在の大本である、インドのクベーラは財宝神としてあがめられている。

 要するに、縁起が良い仏様なのである。そういう事にしておいてください。

零児「質素だったのは、仏教らしさを出すためか」

早苗「いえ。倉の中の物は、お宝らしくありませんでしたよ?」

零児「あの中に入れてたのか。それで、何があったんだ?」

早苗「はい。えーっと、十二色の帽子に、錆びた刀に、何か埴輪らしい物も……」

神子「…………」

小牟「…………」

零児「……早苗。学校の社会の成績は?」

早苗「え? えー、お恥かしながら1で……」

クリノ「……成績で1って言うと……」

小牟「察しの通り、どん底じゃな」

 果たしてどういう評価方式かは分からない。だが、小中学校では大体にして1が最低だろう。

 弁解しておくと学校の社会が低いだけで、彼女自身は年にしては博識な方だ。
 それに幻想郷に来てから、歴史に対する見聞も広まっている。
 ただ、学校の社会がつまらなかったと感じていただけなのだから。

神子「ま、まぁ。果たして本物か分かったわけではありませんし。そもそも、年月がたち過ぎてて……」

零児「……だな」

霊夢「なんとなくだけど、早苗がそっちに疎いのは分かったわ」

早苗「むむむ」

 ただ、宝として集まったのなら、本物じゃなくとも相当昔の贋作というわけで、歴史的価値は……。


518 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/22(日) 22:08:44.30 ID:NotVzC95o

小牟「さてさてさてさて、やってまいりました温泉ターイム!」
                             〜!
 伸びている魔理沙を除き、全員が食事を終えた所で、小牟が声高らかに告知する。
 誰が決めたか、温泉タイムだ。

零児「突然なんだ、小牟」カチャカチャ

小牟「この近くに温泉があるっちゅー、ネタはあがっとるんじゃぞ、霊夢!」

クリノ「確かにあったね。ちょっと遠かったけど」

霊夢「それがどうしたのよ」

小牟「女子同士、入浴しようぜぇ」ワキワキ

神子「その手はなんですか、その手は」

早苗「いいかもしれません。裸の付き合いも大事だと、諏訪子様がおっしゃっていましたし!」

 お互いのことを赤裸々に語る。そんな空間に適している場所と言えば、風呂や星空の下だ。
 そういう事でなら、天然露天風呂での裸の付き合いは適しているだろう。しかし……

零児「恐らく、意味が違うぞ。……まぁ、ここは俺が片付けておく。霊夢達で、入ってこればいい」ガチャガチャ

霊夢「あら、いいの?」

零児「遅くなるとそれだけ危険が増す。湯冷えの、な」

小牟「そうじゃぞぉ。あれはいかん。ネットサーフィンの敵じゃ」

神子「貴女の場合、特に大変そうですしね」

 女の子からすれば、湯冷えは極力避けるべきだろう。
 だが秋の、一回目の満月も来ていないこの時期であれば、露店風呂に入る程度の余裕はある。
 なら、せっかくの機会に入らなければ、損だ。

霊夢「一番髪あるものね。……んじゃ、御言葉に甘えるわ。熱燗持っていこっと」

萃香「もう出来てるよぉ」ヒック

クリノ「ああ、台所で何かしてると思ったら……」

小牟「準備がよいのぉ。よっしゃ、レッツラゴー!」


『クリノさーーーん!!!』

 しばらくして遠く、温泉の湧く方向からクリノを呼ぶ声がする。

クリノ「ん、どうしたんだろ。『なんだい、レイムちゃーん?』」

『体をふくタオルを忘れたのー、箪笥の下から二段目にあるから近くまで持ってきてー』

 それに応じ、大声で返事をするクリノ。忘れ物を持ってきてほしいだけのようだ。
 つい先ほど、湯冷えの恐れがあると言ったのに。

クリノ「あ、ああー! わかったよー! ……箪笥って、どの箪笥だろ」

零児「恐らく、赤い飾りのある箪笥だ」

クリノ「んーっと……ああ、あったあった。それじゃぁおいら、持って行くよ。……どれぐらいだい?」

零児「……30分程、頼む」

クリノ「了解。でもみんな、気付き過ぎだね」ハハハ

零児「……小牟は、恐らく素だぞ」

クリノ「あれ。そうだったのか」トコトコ

 まぁ、そんなミスを霊夢がするはずもなく。
 バスタオルを人数分持ち、神社の裏手へと消えて行くクリノ。残るは…………

「………………」ガチャガチャ

「…………」

「……一皿多いな?」
519 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/22(日) 22:11:40.21 ID:NotVzC95o

〜〜〜神社傍の温泉〜〜〜

小牟「いい湯じゃっな!」

早苗「あははん!」

霊夢「何よそれ」

小牟「外の、温泉讃美歌じゃ。なーさなえー」

神子「楽しげなリズムですね。教えていただけませんか?」

小牟「後から続けばよい。あ、そーれ!」

 〜♪〜♪

萃香「ぷはぁ。いやぁこう皆で入るってのも、おつなもんだぁねぇ」ヒック

 博麗神社から離れておよそ20分の、森の中にある天然の温泉。
 軽く酔った三人が歌い、一向に酔う気配の無い二人がそれぞれに話し合っているところだ。

霊夢「そうね。……飲みながらあんなに騒いだら、のぼせると思うんだけど」

萃香「そんときゃそんときさ。どうせ早苗はすぐだしね」

霊夢「分かってて呑ませると、零児さんが怒るわよ」
            〜♪
萃香「黙っててくれるだろぉ、れいむぅ」ダキッ

霊夢「あーもう、くっつかないでよ。さっきからあんたキャラ違うわよ!」

 そのはずだったのに、本日二度目の謎抱きつきをかました萃香。
 はたから見ると、ただ上気した子が、年上の子に構ってほしそうにしている図なのが、微笑ましい。

小牟「むぅー! ぬしら、なーに他人様の前でいちゃついとるんじゃー!」

神子「そうですよぉ! 布都や屠自古の元に帰れない、私への当てつけですかぁ!?」クワッ!

霊夢「ちがっ! 誰がこんな酔っ払いといちゃつくもんですか! てか神子様、酒臭い!?」

萃香「ぉ、神子が当てたねぇ。それ、伊吹瓢の熱燗〜」ニヘヘ

早苗「あなたを〜まてばぁ あめがふるぅ」

小牟「わしじゃて、零児と、もっともーーーっと、いちゃつきたいんじゃぞぉ!!」

 その光景を見て、不満を爆発させる狐。
 萃香だけでなく、神子にまで絡まれた霊夢がうっとおしそうに二人を蹴る。

霊夢「知らないわよ、この酔っ払い!」ゲシゲシ

 ダッダッダッダッ

萃香「やっちゃえばいいじゃないのぉ。人眼なんかきにせずさぁ」

 トンッ

???「ひゃっほーーーーーぅっ!」

         \ザパーーーーーン/
520 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/22(日) 22:13:34.57 ID:NotVzC95o

霊夢「」バッ

小牟「うばっ!」

早苗「ゆうらくちょうで、あぶぶぶぶ」

???「きゃっ」

神子「おおっとぉ」ヒョイ

 そんな中に、突如として割って入った、金髪の少女、魔理沙。

 勘から、予め髪留めに札を仕込んでおいた霊夢だけ、水しぶきを浴びずに済んだ。
 だが神子以外はもろにかぶり、神子は熱燗を守るために、それが乗っていたお盆を抱えた。
 結果、神子ヘアーが台無しである。

霊夢「……魔理沙。あんた自重しなさいよ!」

魔理沙「へっへっへ。私をおいて、入ってた罰だぜ」

小牟「つーかもう一人悲鳴聞こえ……た…………」ジトー

こいし「あーん、眼に入ったぁ」ゴシゴシ

神子「……おや、どなたでしょう」

早苗「げほっごほっ…………あら、こいしさんじゃないですかぁ」

 五人で入っていると思っていたそこに、もう一人の入浴者。古明地(こめいじ)こいしだ。

こいし「うん、こいしだよー。見つかっちゃった。ちょっとまってね、今目が……」ゴシゴシ

霊夢「……あんた、いつの間にいたのよ」

こいし「んー? 昨日の竹林の頃からかなー」ゴシゴシ

小牟「なんと。一緒におったのか」

こいし「うんっ。貴女達、面白いねー」エヘヘ

 永遠亭の頃から、一緒に居たという彼女だが、他の皆は一切に気付いていなかった。
 それもそのはず。こいしの能力が、そういう使い方も出来るからだ。

神子「やけに熱燗の減りが、早いと思ったのです。……ああ、この徳利にはもうない」カラカラ

萃香「いざとなったら、私の瓢箪から飲めばいいのさぁ。水はいくらでもあるんだし」ヒック

霊夢「汚いわよ?」

小牟「世の中には、この水を欲しがる紳士もおってじゃな」

こいし「へぇ。何それ見たい見たい!」

早苗「……あんれぇ? 神子さん、のうry……うぷっ」

魔理沙「もう早苗のやつ危ないのかよ。ほら、外向けって。背中さすってやるからよ」

 虫も鼠も幽霊も神様も平気な彼女だが、酒だけはてんで駄目なのだ。
 でも飲んでしまうのは、「酒の席は、親交を深める絶好の機会!」と、鬼に言われたからとか。

早苗「しゅみば……おろろろろ」

 戻してしまえば、何の意味もない。

521 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/22(日) 22:15:59.86 ID:NotVzC95o

早苗「ううう……」ダルーン

魔理沙「世話が焼けるぜ。……じー」

小牟「んー? どうしたんじゃい、魔理沙よ」グビグビ

 早苗がひとしきり戻し、温泉の傍の、少しばかり熱を発する岩に運んだ魔理沙。

 帰って湯船に浸かってそうそう、小牟を睨む。
 主に、胸のあたりを。むしろ、胸のあたりを。

魔理沙「……いーや。胸がどうたらこうたら、言ってたからさー」ジー

神子「そういえば、膨らんでますね。いくらか」

小牟「ふっふっふ。着実に大きくなっとるんじゃぞ。……神夜や、ネージュめには負けるがなぁ」ショボーン

霊夢「例のお仲間さん?」

小牟「うぬ。牛乳二人組じゃ。あれには敵わんわい」

萃香「胸なんて、有っても仕方ないよぉ? 肩凝るし。邪魔だし」

小牟「じゃが、ないより有るじゃろ。それにぬしが言うと意味がない。自由自在なくせに」

魔理沙「マジなのか?」

萃香「あー、まぁね。けどいらないよ? 赤子に吸わせるわけでもない……ゴクッ……しぃ」シィ

小牟「ぬしはわかっとらん。ここには夢が詰まっとるんじゃ。でっかいでっかい夢がのぉ」

 胸を張って持論を語る、物凄くおっさんくさい少女。
 そもそも趣味がプロレスだったり、腐女子っぽい言動があったり。
 しかも、なまじ年を取っているから、手が負えない。

こいし「どれどれぇ」モミッ

小牟「にゃっ! と、突然触るでない。ドキがムネムネしてしまうじゃろ」

こいし「…………お姉ちゃんのほうが大きいなー」〜♪

小牟「なん……じゃと?」

こいし「半分ぐらいかなぁ?」

小牟「」ガビーン!?

霊夢「それはちょっと、盛り過ぎじゃないかしら」

魔理沙「着やせするタイプなんだなー、さとりって。……シャオムゥ?」

小牟「お、おかしい……ここは十代外見の女子しかおらんはず……」ブツブツブツ

神子「(青蛾殿も結構あるって、言えませんね、これは……」
522 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/22(日) 22:18:01.24 ID:NotVzC95o

〜〜〜博麗神社〜〜〜

零児「…………」

クリノ「ただいま。ごめんよ。後片付け、終わっているね」

零児「ん。いや、俺が頼んだのだからな。……それより、クリノ。
    イシター様や、ワルキューレ、サビーヌは元気にしていたのか?」

クリノ「うん。おいらが来る前までの話だけどね」

零児「そうか。……幻想界で、行方不明になった仲間の情報とか、なかったのか?」

クリノ「あんまりかな。ゾウナの軍勢や、魔界村の残党狩りのときに、アーサーさんと出会ったけど、皆と連絡は取り合えてるって」

零児「こっちも、似たようなものだな。……とはいえ、俺と小牟は次元転移に何度も巻き込まれたから、当てに出来んが」

クリノ「ありゃ。また、何かあったんだ?」

零児「……一度目は、沙夜の百夜計画だ。それで新世界……エンドレス・フロンティアに迷い込んだ」

クリノ「彼女、懲りないな……ってえええ!? あれ、確か彼女は……」

零児「殺したはずだったんだが、生きていたのさ。どういう理屈かは、分からんがな」

クリノ「はぁ。しつこいと言うか。それにしては零児、あの頃ほど執着してないように見えるね」ニコ

零児「俺は、変わったつもりはないんだがな。……ともかく、だ。………………」

 幾度か話題に上がった、エンドレス・フロンティア。
 ここ、幻想郷と……いや、あらゆる世界と似た、限りなく近く、限りなく遠い世界。

 三度にわたる激動の戦いを経て、それでもなお、まだまだ広がる無限の開拓地。

 そこで起きた出来事を、やはり淡々と語る零児。
 気付けば、少女達も温泉から上がり、帰って来ていた。

霊夢「ごめんなさい、零児さん。入って来たわよ」

零児「こっちこそ、すまないな。……早苗と魔理沙は?」

神子「早苗さんはまだ伸びていまして、魔理沙さんは後から入ったからもう少し、と」

小牟「む? 零児が謝る事なぞありゃせんじゃろ」

零児「……どうしてこう、お前さんは時々鈍感なんだ」

クリノ「ほんと。普段は鋭いのにね」

こいし「そうなのかー」
523 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/22(日) 22:20:41.40 ID:NotVzC95o

クリノ「……おや? 君は誰だい?」

こいし「私? 私はこいしって言うんだ、クリノ♪」

クリノ「こいしちゃんか。おいらは……って、もう知っているんだね」

神子「ずっと零児さん達と、一緒にいたそうで。私は全く、気付けませんでしたが」

零児「ああ……本当に一緒に居たのか?」

こいし「む、信じてくれないのね。河童の乗り物で、一緒に滝に落ちたもの」

小牟「どの程度一緒におったか、断言は出来んが、こやつめがわしらに気付かれずにおれるっちゅーのは、確かじゃぞ」

霊夢「そう。『無意識を操る程度の能力』のおかげでね」

 無意識を操る程度の能力。幻想郷の中で、紫でも捌くのが難しい、能力の一つ。

 意識ある生物には皆、必ず無意識が存在する。
 それを操り、無意識のうちに見逃したり、無意識のうちに聞き逃したりさせられるのだ。

零児「……随分と、都合のいい能力だな」

こいし「えへへー。それほどでも♪」

小牟「実際、使い勝手はやばいじゃろな。東方でも、最高ランクのチートと、言うてもいい」

クリノ「なるほど。それで、ずーっと一緒に居たんだね」

零児「椀が一つ多かったのも、おまえさんの仕業か」

こいし「はっ! 霊夢。肉じゃが美味しかったわ」キリッ

霊夢「そうですか、ありがとうございますぅ。こんど姉に請求するわ」

こいし「やばっ。お姉ちゃんに怒られる」

小牟「ほれ零児。右手がうずいておるんじゃろう。やっちまえ!」

零児「俺は叩きたくてしょうがないから、叩いているんじゃない」

神子「先ほど叩いたのは、まぁ、セクハラを叱った形……ですしね」

こいし「あれも面白かったなー。魔理沙の夢を、無意識に行動させてみたの♪」〜♪

萃香「……」グビグビ

霊夢「……」

零児「…………」ガシィッ

こいし「? え、何。零児さん?」

クリノ「……あー、彼女。そういう方でも、無意識なんだ?」

小牟「らしいのぉ。もろ刃の剣じゃ」

 再び、少女の叫び声が上がったのは、語る必要もない。


524 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/22(日) 22:25:08.84 ID:NotVzC95o

〜〜〜二人きりの温泉〜〜〜

魔理沙「…………」

早苗「すー……すー……」zzz

魔理沙「…………」

===========================================================

『なんだよ。二人きりだからって、手を出すつもりなのか?』ケラケラ

『……お前さん、あの子に劣っている事、気にしているな』

『……そ、それがどうしたんだよ』

 二人きりにしてもらった零児は、異変の最中に感じた、魔理沙の暗い部分を刺激する。
 みた事がある、そんな暗い部分を。

『気にするなとは言わん。だが、無駄に劣等感を持つ必要はない。お前とあの子は……』

『他人なんだから、違って当然、か? そんなんじゃねぇよ。そんなんじゃ……』

『……そうか? 俺には、お前さんがあの子の事を、意識し過ぎているように見えるぞ』

『だから、それがどうしたんだよ。私が意識しちゃぁ、いけないってのか!?』

『そうは言わないさ。ライバルとして意識するのなら、それはいい触媒になるからな』

『なら、なんで……』

『……お前さんの劣等感は、友達としての悔しさから来るものだろう』

『…………』

『……違うか?』

『……そう、さ。私は……友達だと、思ってて……なのに、あいつは……』

『……何故、友達で有りたいと思う』

『何故って……あいつは、いつでも異変に乗り出す。解決した、してないは、どうでもいい』

『……』

『あいつ、異変の時の顔……いつも以上に、なんつーか……』

『……無表情?』

『そ、そう、それだ。無表情なんだよ。……あんなすごいのに、顔が無表情でさ……』

『だが、俺達と居るときは、表情豊かだったぞ?』

『うん。だから今回からは大丈夫だと思ったんだ。……なのに…………』

『……』

『あんな顔させたくないから、私が頑張らないといけないんだよ。
 あいつが出なくてもいいぐらい、あいつがあんな顔したままでいなくてもいいぐらいに……!!!』

『……そのために、我武者羅に頑張るのか。手段と目的を、履き違えてるんじゃないか?』

『そんなことぐらい分かってる! けどさ、ならどうすればいいんだよっ!
 異変のたびにあんな顔されて……止めようと思っても……私が解決しようと思っても……あいつは先に行っちまう。
 修行しても、あいつはその先を軽々と進むんだぜ!?

 私がどんなに言っても、あいつは変わらないし……どうしろってんだよ……』
525 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/22(日) 22:31:20.80 ID:NotVzC95o

『…………友達とはな、』

『……?』

『気の置けない仲。本音でぶつかり合える仲。冗談を小突けあえる仲……そういうものだ』

『…………』

『相手が間違っている時に、それを指摘するのも、友達の役目だろう。だが、足りない物を補い合うのもまた、友達だ』

『……足りない、物』

『そうだ。お前さんが頑張っても、霊夢の先に立てないのなら……隣か、後ろで支える存在になれば、いいんじゃないか?』

『隣か……後ろで……?』

『あの子の身を案じているのは、よく分かった。だがな、それでお前さんの体を壊しちゃ、元も子もないのさ』

『で、でもそれじゃぁ、あいつが無表情だって、根本的な解決にはならないじゃんか!』

『……あの子のあの反応、慣れていないだけのように見えたがな』

『慣れて……ない?』

『ああ。友達と言われる事にな』

『なんで、そんなこと……分かるのさ』

『伊達に、お前さんたちの倍近くは生きていないし、お前さんたち以上の曲者と、暮らしてきたからな』

『……あー』

『それに、霊夢は能力のせいで、余計にそう思ってしまうんだろう。
 ……妖怪が寄りつく以上、お前さんや他の子達が、友達だと思って接するのは、なんらおかしい事じゃないんだがな』

『…………レイジは……』

『ん?』

『……レイジは、そういうこと……あったのか?』

『…………ああ。……そうだな。この傷はかつて、俺の親父の敵につけられた傷なんだ』

『……え? レイジ、まさか』

『……俺は奇跡的に命を取り留め、親父は身を呈して、『逢魔』を封印した。だが、な……
 十数年後、そいつらは封印から脱し、再び活動を始めたんだ。

 俺と小牟は、逢魔の計画を食い止めるために、世界を股に掛けた、ゆらぎの戦いに身を投じた。
 その最中、戦友と呼べる彼らと出会い、逢魔の野望を阻止した……そう思った矢先に……
 奴らの本当の狙い……親玉を復活させることを、叶えてしまったんだ』

『…………』

『俺はそれを悔やんだ。もう少し考えていれば、確かに気付けたことだったんだ。

 ……親父の死を、仲間達の苦労を無駄にした。

 そう考えた俺は、俺自身が落とし前をつけることで、その戦いに決着を付けようとした』

『…………』

『だが俺はその時、気付いた……いや、気付かされたんだ。仲間達が、いることを。
 俺一人じゃ、止めることは出来ない。そう思っていたのを……彼らが、打ち砕いてくれたんだ』

『……なか、ま』
526 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/22(日) 22:33:31.50 ID:NotVzC95o

『戦友……いや、友達さ。彼らがいなければ、俺は今頃、永劫の封印に……いや、俺だけが、無駄死にしていただろう。
 彼らは俺に足りない物を、埋めてくれた。そして、俺は敵を取れたんだ』

『…………そ、っか……』

『……参考になったか?』

『……うん』

『そいつは重畳。話してよかった』

『で、でもさ零児。なんで私に話してくれたんだぜ?』

『……』トンッ

『ん。?』

『お前さんが、かつての俺と被って見えたから、だな』ヨシヨシ

『えっ、あ、な、ななな撫でるなよっ!?』ガバッ

『ああ、すまん。つい』

『つ、つい!? ついで、子供扱いすんなっ!』カー!!

『すまんすまん。……この話。こっちに来てからは、お前さんだけにしか話していないことだ』

『?』

『……秘密だぞ?』

『……! あ、ああ!』

『よし、いい子だ。なら、肉じゃがを食べて、温泉に入ってこい。…………』

===========================================================

魔理沙「…………」ブクブクブク

魔理沙「……へへっ」

早苗「……なーに笑ってるんですかぁ、魔理沙さぁーん」ベター

魔理沙「のわっ、乗っかるnあわわわわ!!」

 バッシャーン!
527 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/22(日) 22:34:13.66 ID:NotVzC95o







528 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/22(日) 22:46:49.99 ID:NotVzC95o
以上で今回の投下を終わります。最後思い切りミスった。そこから書こうと思ったらorz

名前の振り仮名に関して、SSwikiの該当記事にて、現在までの全登場キャラにとありあえず割り当てました。

一部、まだきちんと修正されていませんが、これまでのキャラはそちらを覗いて下されば読みが分かるかと。

なお、そのアドレスはこちらです。

http://ss.vip2ch.com/ss/%E9%9B%B6%E5%85%90%E3%80%8C%E2%80%A6%E5%B9%BB%E6%83%B3%E9%83%B7%E3%80%82%E6%96%B0%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%80%81%E3%81%8B%E3%80%8D%E5%B0%8F%E7%89%9F%E3%80%8C%E6%87%90%E3%81%8B%E3%81%97%E3%81%84%E6%84%9F%E3%81%98%E3%81%8C%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%AE%EF%BD%9E%E3%80%8D

……長い。どうなってるのか書き込まないとわかんない。

その他、漢字の読みや、技の詳細に関しては今後、注意して表記していきます。

これまでの技に関しては、少々多いため聞かれた技のみお答えする形に。

また、その関係でミスが発覚。……片方は、だいぶ前から気付いてたのですが…………(汗


 ジューダスの技にて、トリニティ・ビット→アース・ビットです。二つの光球が出る技で、出来ること自体はほぼ同じです。

 妖夢の『観楼剣』が、一部で『楼観剣』になっていた事。正しくは『観楼剣』です。原作とは違う点にご注意ください。


以上で報告終了です。

次回投下は水曜以降、『(二日目の夜中+)三日目の朝』です。

それでは。
529 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/23(月) 00:15:26.56 ID:R/2Xxo8Do
乙乙

今日も零児さんのスパンキングが響き渡るぜ
530 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/23(月) 08:46:21.28 ID:l7fkFfnDO

 にく

 じゃが
531 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/24(火) 15:35:42.41 ID:bbijg9oDO
乙です!
零児さんの諭しは良く効くな。
532 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2012/01/24(火) 17:40:38.53 ID:jPKsilMx0
ネージュ「もう、ようやく呼ばれたわ。ハーケンは早くに呼ばれたと聞いていたから、いつ来るかと楽しみに……
      い、いえ? 決して楽しみなのではなく、どんな話をして差し上げましょうと考えていただけで、心待ちになんて……」

にとり「妖精のお姉さん、長いよ? もう始まっているのにさ」

テロス「それに、それはもう殆ど告白しているも同然だ。デレ過ぎて加減を忘れたな?」

にとり「まるで自分は加減が分かっているような……」

テロス「何か言ったか?」ギロッ

にとり「ひゅいっ?! な、な、な、なんでもないよ! さ、さ、さぁ、『一日一談』始めようか!」

ネージュ「おほん。私はネージュ、ネージュ・ハウゼン。E・Fの、妖精族の現王よ。……仮、だけどもね」

テロス「私はT-elos。一応、超未来のアンドロイドだ。……見せないわよ?」

にとり「まだ何も言ってないよ! ……こほん。私は川城にとり。本編でもう出たから、皆は知ってるかな?」

ネージュ「良いですわね、メイン世界の住人は。……では、今日のお題はド『スペルカード』について、ですわ」

テロス「小娘共の遊び道具だったか。一般的なトランプと、形状は似ているわね」

にとり「遊戯王や、MTGってカードゲームと表面の模様は似てるね。名前に、それっぽい絵に、大雑把な説明に」

ネージュ「これは大別して、二つのタイプに分かれるわ。『小規模持続型』と『大規模詠唱型』ね」

テロス「『小規模持続型』は、主に博麗霊夢の「封魔針」や、霧雨魔理沙の「ウェーブレーザー」等、所謂ショットの事」

にとり「『大規模詠唱型』は、霊夢の霊符「無双封印」や、魔理沙の恋符「マスタースパーク」とか、巷で言われるスペカを指すよ」

ネージュ「ボムも、後者に入るわね。この二つの違いは、ド派手さもさることながら、必要な経費の差もあるのよね」

テロス「『小規模持続型』は、通常攻撃にかなり近い。下準備が不要で、場合によっては宣言せず使用可能だ」

にとり「対して『大規模詠唱型』は、必殺技だね。本来、詠唱や準備が必要な攻撃を、前もって記し、力を注入しておくことで、
     好きな時にステップを無視して、発動できるのさ」

ネージュ「ただこの場合、形式的な動作や、力の流れをド無視するから、大体にして本来の威力より大きく劣るのよね」

テロス「お遊びにおいて必要なのは威力より、視覚的芸術性と宣ってるから、普通は気にしないようだがな」

にとり「魔理沙みたいに、全力な人もいるけどね。ああ、これは原作じゃなく、物語上の設定だよ」

ネージュ「原作だと、ドスペカはドスペカ、他はドショットやドボム、ドトランスとか、そういう区別がされてるわ」

テロス「森羅の奴らの武器の宣言も、物語上は一応のスペカ宣言だ。まぁ、小娘たちとは意味合いが異なるがな」

にとり「まぁ、これで終わりかな。……最後適当にドを付けてたね?」

ネージュ「ド鬱憤がド溜まっているもの。ド何度でもドをド付けますわ」

テロス「それ、むしろ話し難くなっているだろ。聞きづらいんだよ」

にとり「気持ちは分からなくないけど、それだとナムコのゲームのキャラクターになっちゃってるよ。確かリバースだったかな?」

テロス「そういう話はよしな。……全く、COSMOSや、お前のコレ(小指)だって出られちゃいないんだ。少しは我慢しな」

ネージュ「コココ、コレじゃ、アレディはコレじゃなくって、私の大事な、ご、護衛で……!」

にとり「……それ、EXCEEDラストで解消してたよね?」

テロス「時系列も忘れたのか。ドを付ける事も忘れているみたいだし、物忘れが激しいねぇ。おばあさん?」

ネージュ「(びきぃっ) だれがお婆さんですって? このガングロツンギレ!」

テロス「図星だから怒ったのかい、117歳のおばあさん?」

ネージュ「妖精族からすれば、これでもまだまだピチピチのギャルよっ!」

にとり「なんだ、まだまだ若いじゃないか。若いっていいねぇ」

テロス「…………」

ネージュ「…………」

にとり「ひゅい? 二人して、何私を見てるのさ?」

「「……忘れてた」わ」
533 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2012/01/24(火) 18:24:26.40 ID:jPKsilMx0
テロス「という事は、貴様は若年性痴呆症と言う訳だ。はっ、よけい滑稽だねぇ」

ネージュ「さっきは動揺しただけよ。そうよ、アレディはもう私のド虜。コレじゃなくってコッチ(薬指)よ!」

にとり「どっちかって言うと、妖精族のお姉さんが虜だったけどねぇ」

ネージュ「…………にとりさん。貴女、私に喧嘩を売っておりますの?」

にとり「ひゅいっ!? そんなつもりじゃ……!?」

テロス「さっきも、私に向かって偉そうな口をほざいたわね。相当自信があるようだ」コキッ

にとり「ちち、違うって! わわ、私はただ、素直に疑問に思ったことを……」

ネージュ「問答無用!」

テロス「すぐに始末をつけてやる」

にとり「ひゅ、ひゅいいーーー!?」ガクブル

ネージュ「…………」

テロス「…………」

にとり「な、なんで私がー」ガタガタブルブル

ネージュ「……くっ」

テロス「……ふっ」

「あっはっはっはっはっは!!」「おっほっほっほっほ!!」

にとり「な、何っ!?」

ネージュ「おっほっほ。分かっていますわ、にとりさん。冗談ですことよ」

テロス「お前さんがそんな玉じゃないことは、百も承知さ。ただ、反応が初々しいと聞いててね……あっはっはっは!」

にとり「……だ、騙したの」ガクシ

ネージュ「ごめんなさいね。河童はかわいいって評判だったから、つい」

テロス「悪乗りしたのは、謝ってあげる。……こんなものか」

ネージュ「そうね。説明はざっと終わったものね」

にとり「二人が本気で喧嘩してなってことなら、まぁこれで終わりだね」フゥ

テロス「光栄に思え。私がここまで乗ったのも、あのお方の命で…………」

ネージュ「それでは皆さん、ごきげんよう!」

にとり「はぁ、こりゃ帰って飲まないとやってられないよ……」ギィィ

ネージュ「私も、御一緒してよろしいかしら?」

にとり「これ以上、いじらないならね。はぁ、きゅうりきゅうり……」ボリボリ

ネージュ「……それ、いつも持ち歩いて…………」バタン

 ・・・・・・・・・

テロス「……ちっ。人の話は最後まで聞けって、親に教わらなかったのか……どういう教育を……」ギィィ

 バタンッ
534 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/27(金) 00:53:58.81 ID:utJcrLgwo
こんばんわ。レス、ありがとうございます。

零児さんの尻叩きは、きっとぱんぱんに膨らんだ風船が破裂するよりもいい音がすると思います。

こんな事言ってる場合じゃない。

では、投下します。『二日目の夜中+三日目の朝』です
535 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/27(金) 00:58:15.11 ID:utJcrLgwo

「………………」

「れいじぃ。魔理沙、随分とご機嫌だったけど、何したんだぃ?」

 真夜中。逢魔時を迎えた、月明かりだけの幻想郷。
 そこで二人、酒を飲み明かす人影が。

「なにもしちゃいないさ。ただ、昔話をした……それだけだ」

「……肩入れするねぇ。どうしたん?」

「……念の為さ。魔理沙は長異変一回で、魔力が枯渇する。あの性格も相まって、ほぼ確実にな」

「間違っちゃいないよ。前だって、私と戦った後すぐに寝てたからね」

「……残りの異変を考えれば、それはなるべく避けたい。ドーピングに頼るのは、彼女の為にもならんしな」

「いいんじゃないの? 若いうちは、それぐらい無茶しても、体が持つもんさ」

「俺も、始めは手出し無用と思っていた。だが……あの顔を見たら、な」

「ロリコン?」

「誰がだ」コクッ

「あんたが♪」

「……。ともかく、そういうことだ」

「ほいほい。けどさ、よくまぁ言いくるめたねぇ。あの子はそれなりに頑固だってのに」プハー

「魔理沙には悪いが、ああいう子は秘密を共有してやれば、だいたい大人しくなる。それを利用しただけさ」

「……嘘ついたってわけじゃないんだろぉ?」

「当たり前だ。下らん嘘をつくのは嫌いだ。そもそも、嘘をついたところで、あの敏感な子が見抜けないとは思わん」

「違いない。人一倍嘘を嫌う、あの子だしね」ケラケラ

「叙述トリックは好きなようだがな。…………」

「にしても、強いねぇ。人間にしちゃ♪」

「……宛ら、阿鼻叫喚の地獄絵図、か?」

 辺りを見渡すと、二人を除いて全員、酔い潰れていた。

 重なって倒れる魔理沙と霊夢。その反対のほうで、微妙に赤くなって寝るクリノ。
 炬燵に頭だけ入っている神子と、その炬燵の上で大の字で寝るこいし。
 そして、零児の膝を枕にして眠る、小牟、と。

 早苗だけ、零児の勧めで別の部屋にて安眠中だ。

「霊夢より強いなんて、なかなかよ〜?」ケラケラ

「……これ以上は、明日に差し支える。……切りあげさせてもらうぞ」

「へいへい、真面目さん。お話の代償に、異変が全部終わったら改めて飲むからねぇ?」

「情報は有難かったが、出来ればそれは御免被りたい」

「あっはっはぁ。酒の肴を見つけた鬼が、そう簡単に逃がすと思わない事だねぇ」トコトコ

「人攫いの本領か? 全く。…………」

「…………」ゴソッ

「……?」


536 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/27(金) 01:07:14.86 ID:utJcrLgwo
〜〜〜〜〜〜−^・_〜=  -- ̄―――ー〜====^=   ・ 〜・ 〜〜−−−−−−−−−−−−〜〜−−−−

 伊吹 萃香

 二本角の鬼の少女。紫スカートに白のブラウス、赤のリボンを胸と後頭部に着用。

 服のあちこちに鎖を付け、丸、三角、四角の飾りを付ける。

 小牟及び、−−−から、密と疎を操る程度の能力だと判明。また、四天王と呼ばれる程の実力を持つ事も判明。

 適正体の可能性が高い。優先度を高めに設定し、引き続き調査の必要があると判定する。

〜〜〜〜〜〜−^・_〜=  -- ̄―――ー〜====^=   ・ 〜・ 〜〜−−−−−−−−−−−−−−−−〜−・
537 :〜♪     ?      ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/27(金) 01:10:01.11 ID:utJcrLgwo

〜〜〜三日目の朝・聊か曇る、早朝〜〜〜

魔理沙「おーい! 起きろぉ、霊夢ー!」ガララッ

霊夢「起きてるわよ、馬鹿。朝から五月蠅い」

魔理沙「……なーんで、寝起きも負けるかねぇ」ウーン

 朝から元気いっぱいで目覚める、魔理沙。
 対して、相変わらずだるそうに、布団を片付けている霊夢。

魔理沙「あれ、零児は?」

霊夢「昨日と同じ。外で朝の鍛錬してるわ」

魔理沙「あ、そうなんだ? どれどれーっと」トコトコ

霊夢「……そもそも、私は一刻前から起きてるわよ」ハァ



「火燐っ、地禮!!」

「水蓮っ! 水の太刀っ!」

「とぉっ、たぁっ。きりもみアタックだ!!」

魔理沙「ああ、クリノも起きてたのか」トントン

クリノ「あ、おはようマリサちゃん。二日酔いは、大丈夫かい?」

魔理沙「ああ、勿論だぜ。酒は、飲み慣れてるからな」キリッ

クリノ「それはよかった。皆倒れてて、心配したんだ」カンッガキィッ

零児「おはようさん、魔理沙」カンッカンッ

小牟「オッハー。なんだかんだで、ぬしは普通に起きたの」ガガガン

魔理沙「私からすれば、シャオムゥがこんな時間に起きてる方が以外だぜ」ヨット

 神社の前、綺麗な石畳から外れた砂地で、朝の鍛錬を行う三人。
 その三人を見学するように、魔理沙はさい銭箱の傍に座る。

小牟「なぬ、失礼なやっちゃの。わしのどこがそう見えるんじゃい」

零児「真夜中遅くまでパソコンを触っていて、明け方までするのは、どこのどいつだ」

魔理沙「パソコンってあれか、外の式か」

小牟「そのまま起きるんじゃしいいじゃろー。それじゃな、一応。藍とかと違うて、ほぼ固定じゃが」

クリノ「大きいと、この神社ぐらいまであるよ。っと、サビーヌ程じゃないが、乱れ突き!!」

魔理沙「この神社……」

 振り返ってその大きさを確認する。

 博麗神社……幻想郷の外れ、一説には外にあるとはいえ、やはりその外観は立派なものだ。

 管理者が基本一人であることを考慮されてか、一部機能の収縮を計られている。
 それでもなお、一般的な一戸建てを二つ合わせた程度の大きさを誇るのだ。

 そんな規模の、香霖堂で見かけたパソコンを思い浮かべて……

魔理沙「……うっそだー」

零児「お前さんが思い浮かべているのは、おそらく違うぞ。もっと無機質で、非生物的だ」

魔理沙「パソコンってやつは知ってるぜ。けど、あれがこの神社程大きくても、仕方なくないか?」

小牟「こやつ、一応家にパソコンあるんじゃよ。電気通さんと駄目なのしらなんで、宝の持ち腐れじゃが」

魔理沙「ああ、あれ電気通せばいいのか。……どうやって?」
538 :        〜……   ……  ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/27(金) 01:12:48.12 ID:utJcrLgwo

零児「ほう。……だが幻想入りしているとなると、旧式だろうな」

小牟「香霖めの説明じゃと旧式じゃなく、トロンかもしれんがな。おわっとぉ」

霊夢『朝餉、出来たわよー』

小牟「ほーい。いっまいっきまーす」

クリノ「っと、終わりだね」

魔理沙「しっかし、朝からよくそんなに動けるなー」

クリノ「鍛えているからね。マリサちゃんも、軽い運動から始めれば、いつかは同じ事が出来るはずさ」

 三人は流々舞と呼ばれる、一種の約束組手をしていた。

 流々舞とは、流れるような攻防を行う組手の事。
 ドラマや映画の戦闘シーンがあるが、あれも流々舞の一種と言える。
 しかし達人クラスにもなると、本来の戦闘に負けず劣らずの速さで攻撃を捌きあうのだから、自然と激しくなるのだ。

魔理沙「あ、いやー、私はな……」

小牟「運動音痴じゃよ、魔理沙は。のー?」

魔理沙「……言うなよ」

零児「箒をあれだけ捌けて、運動ができないというのもよくわからんがな」



萃香「こくっこくっ……ぷふぇ」

クリノ「本当に朝から飲んでいるんだね」

早苗「おはようございます、皆さんっ!」ガラッ

小牟「|ミ」ピシャッ

零児「…………」

霊夢「鬼からすれば、飲まないほうが間違ってる、だっけ」

早苗「な、何をなさるんですか、シャオムゥさん!」ガララッ

魔理沙「早苗、寝ぐせ寝ぐせ……ぷふっ」

小牟「なんじゃそのテンパは。具○堅かっちゅーの」

萃香「酒を飲んでないと、私って感じがしないだろ〜」ヒック

早苗「え? あれ、あれれれ」

魔理沙「……あはははははwww」バンバン

零児「……B級認定か」

 早苗の頭が爆発していたのを指摘され、慌てて洗面所に走って行ったのを見て、魔理沙が笑う。
 だがその後、神子がもっと酷いパイナップル頭で起きて来たときは、流石に呆気に取られていたが。

霊夢「御馳走様。皆、遅いわよ」

クリノ「ああ、うんごめんよレイムちゃん。……」ボー

神子「み、見ないで貰えますか。もう髪型は治ったのですから」

小牟「神子めの寝ぐせ……いや、あれはもはや芸術じゃな。爆発じゃ」
539 :        〜……   ……  ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/27(金) 01:20:18.51 ID:utJcrLgwo
零児「蒸し返してやるな。それで霊夢、今日はどこに行くつもりだ」

霊夢「大結界異変。そこそこ規模が広いから、貴方の仲間もそこそこいるんじゃないかしら」

 大結界異変。博麗結界が完成してから60年周期で引き起こされる、大量の霊魂が原因の異変。
 偶然なのか何かの意図があるのか分からないが、今のところ二度、60年ごとに起きた事からそう名付けられた。
 外の世界から大量の霊魂が侵入する事で、結界が不安定になり、かつ気質たる霊魂が異常を引き起こす。

 霊夢が解決した二度目の大結界異変は別名、彼岸華の変とも呼ばれている通り、大量の花が咲いた異変だ。

魔理沙「あれかー。……閻魔様、呼び起こすことにならないか?」

小牟「んー、これまでの経験からするに、えいきっきは異変に巻き込まれておらんと思うぞ?」

早苗「映姫様ですね。どうしてでしょうか?」

小牟「一番でかいのは、地獄や是非局長は異変の範囲外じゃっちゅーことじゃな。
     後は要確認じゃが、えいきっきは仕事休みの合間にだけ、こっちに来るんじゃよな?」

霊夢「さぁ。詳しくは知らないわよ。けど、そんなに頻繁じゃないことは確かね」

魔理沙「私はその異変のときぐらいしか、逢ってないしな」

小牟「まぁそういう訳じゃ。後は、位相が違うだの、浄瑠璃の鏡がどうたらこうたら……」

零児「地獄の最高裁判長……四季映姫・ヤマザナドゥ、か」

クリノ「ヤマザナドゥ……楽園の閻魔様、って意味だね」

神子「私はまだ、あった事がありません。というよりも、逢いたくない相手と言いますか」

 しきえいき
 四季映姫 ・ヤマザナドゥ……ここ、幻想郷を担当する、地蔵から成り上がった裁断者。

 彼女は大結界異変にて、部下のサボりを指摘しに、仕事を切り上げてやって来た事がある。
 異変の原因である、死者の魂たる幽霊を、是非局長へと送れる、唯一の存在に。

 と、こんな大層な事を言っているが、その実態は、三途の川の渡し守たる部下のサボりを指摘するついでに、
  異変に乗じて暴れていた妖怪や妖精、人間に説教をして回った……というものだ。

早苗「私も、一年前に会ったっきりですねぇ。やはり地獄は忙しいのでしょうか」

零児「俺が知る閻魔大王は、それなりに忙しそうにしていたな」

小牟「あれは地獄からも脱走者続出じゃったしな。今回はそういうこともないし、大丈夫じゃろう」

文「文々。新聞増刊号、お待ちしましたぁ!」ズサァァァ

神子「おや、天狗がきましたね」

 そんな、黄泉返りしていた奴らのことを思い出していたところに、最速を自称する天狗が現れる。
 相変わらず、鉄壁のスカートである。

文「あら、いつぞやかの聖人さん。おはようございます」

霊夢「増刊号って、二日分合わせてとか?」

文「はぃ。といっても、鮮度がた落ちで、皆さん既に知っていることですけどね」ハイ

零児「どれ……。確かに、知っていることだらけだな」

小牟「じゃが、皆の居場所を書いちょるのは、整理するのに楽じゃぞ。……スタンめが人里におるの?」

早苗「ガンツさんはにとりさんのところですか。おお、無事直ったと!」

魔理沙「だけど、ケンがいねーな。代わりにリュウってのがいるけど」

文「別の頁に書いてあります、『仙人の秘密!』が、ミソだと思うのですが、中々頑固です」
540 :└-○-┐   ……   ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/27(金) 01:23:47.83 ID:utJcrLgwo

クリノ「この子が、例の文屋さんかい?」

文「はい。清く正しく射命丸です!」

霊夢「真っ黒で」

小牟「記事の為に事件起こして」

魔理沙「歪曲記事書く、お前が〜?」

文「あやややや。随分な言われようです。傷心です、零児さん」オイオイ

零児「………………」

 何故か妙に気に入っている零児にネタを振るも、新聞を見つめたまま固まられている。
 読み入っている……のは確かであろう。霖之助以外に、ここまで読み耽ってくれる人がいるのは珍しい。

早苗「それで、これだけなのでしょうか?」

小牟「……32頁に渡る情報を、これだけっちゅーのはちと酷じゃぞ」

魔理沙「外見書いてるもんなー。ほら、この骨を被ったとかめっちゃ分かるぜ」

霊夢「それで、どうしたいの?」

文「特には。零児さんとの契約はあくまで、ケンという男の捜索です。
   他は文々。新聞を昨日、一昨日と配達できなかった弁償ですよぉ」

魔理沙「お前らしくねーな。いつもは好きな時に好きなように取材するじゃん」

文「こうやって来てるのも、実は仕事の一環なのよ。博麗の巫女以下数名の状態並びに、今後の行動を観察せよ、とね」

零児「……これから大結界異変に行こうとしている所だ」バサッ

霊夢「ちょっと、零児さん?」

 新聞から目を離し、腕を組み、眼をつむったまま呟くように話す。
 周りが周りなだけに、親父さんっぽいのは気のせいじゃないだろう。

文「おやおや。情報漏洩しても構わないの?」

零児「どうせその場まで着いて来るんだろう。なら、先に話して捜索に専念してもらう方が、俺としては助かる」

文「なるほど。あくまでお仲間のため、ね」

神子「はたして、信じても良いのでしょうか」

小牟「これに関しては、零児に任せるわい。まぁ、信用しても良いんじゃないかと思ったりしなかったり」

クリノ「おいらはひとまず、ワルキューレ様や、サビーヌが幻想入りしていないことに安心したよ」ホッ
541 :◇JbeFpMnays                              ゙ー   ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/27(金) 01:26:55.07 ID:utJcrLgwo

魔理沙「でもまじで鮮度がた落ちだな。他の天狗が何書いてるのか、気になって来たぜ」

文「後は山関連で、ちょっと詳しいのがいるぐらいよ。私ほど、詳しいのはいないわ」フフン

零児「そいつは重畳。鮮度はともかく、濃度は十分だ。これなら、購読契約してもかまわんぐらいだな」

霊夢「……焼くより有意義ね」

 文々。新聞は、幻想郷で(呼ばれる頻度が)屈指の馬鹿にさえ、突っ込まれる程の出鱈目ぶりだ。
 その無茶苦茶ぶりは、天狗達の間でも評判はよくなく、購読する山以外の者達からも新聞ではない活用法を見出される始末。

 そんな新聞でも、学級新聞と呼ばれる新聞大会の上位者の内容より、情報としては美味しい事が多いのだが。

文「そんなに普段は面白くないかしら。ま、ならその通り上に伝えてくるわ」

クリノ「うん。ありがとう。シャメイマルちゃん」

文「真面目なのは良いけど、その呼び方は止めて貰える? 文でいいわ。クリノさん」

早苗「むぅ、4コマない……」

小牟「これ本当に外の新聞参考にしとるんか〜?」

零児「お前たちは何処に注目している」

文「あやややや。そっち方面で需要がありますか。これは帰って少し検討を……」

零児「お前もお前で真に受けるな。……行くか」

霊夢「そうね。辰の刻を半分も過ぎちゃったわ」

早苗「私もついていきますからねっ。たとえ入れなかったとしても!」

クリノ「おいらも、泊めてもらう分は働かなくちゃね」

魔理沙「フェリシアの二の舞になりそうな、そんな気がするぜ」

文「行ってらっしゃいませ〜。こちらはこちらで、引き続き新聞のネタを探すとします。でわっ」ビュンッ

神子「留守はお任せを。慣れていますので」

小牟「うぬ、頼んだぞい。ほれほれ、出発進行じゃ〜」



クリノ「そういや、スイカちゃんがいつの間にかいないね」

霊夢「根なし草だし、どっかふらっと行ったのよ。たく、茶碗だけ残して……」
542 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/27(金) 01:32:37.49 ID:utJcrLgwo
以上で投下を終わります。そういうわけで、次は花映塚です。

今回はちょっとした手法を、またもや試験的に取り入れています。

なので、もしかしたら場合によって見難いかも。


ところで、にくじゃがの描写入れた方が良かったのでしょうか……?

三日目の晩に多少力を……うーん……


とにもかくにも、次回は月曜に、『花映塚1面(相当)』です。

では。
543 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/27(金) 09:26:09.92 ID:H3PVcVcDO
お疲れ様!
花映塚は対戦要素があるから賑やかになりそうな予感。

>>530 食べたい気持ちが抑えられずに溢れちゃっただけですのでお気になさらず。
544 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/30(月) 01:39:43.28 ID:QV4qeT/co
こんばんわ。レス、ありがとうございます。

読みなおしてたら、萃香の元ネタの鬼さんの名前が環境依存扱い……しまった。

捕捉しますと、「酒てん(天冠に口)童子」と書き「しゅてんどうじ」と読みます。

さて、では投下します。『花映塚一面』です。

どうぞ。
545 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/30(月) 01:41:45.08 ID:QV4qeT/co

〜〜〜無縁塚への、道なき草原〜〜〜

クリノ「あっちに見えるのが、無縁塚かい?」

魔理沙「おう。映姫を倒さなくていいとなると、あのあたりに居る小町がボスだぜ」

小牟「ところで二人よ。大結界異変ちゅーと、幻想郷全体規模じゃったと思うんじゃが?」

霊夢「一応、起きてたのは全体ね。けどさっきも言った通り、問題は小町が働いてなかった事だから」

早苗「サボりを正せばいい、というわけですね! ……どのように?」ハテ

 大結界異変にて、大量に入ってきた霊魂は幻想郷中に分散し、あちらこちらで様々な四季違いの花を咲かせた。
 だが、その中でも一番多かったのは彼岸花……毒を持つ、死者の気質をそのまま現したような、儚い花だ。

 話がそれるが、この異変は実際に解決したのは四季映姫と言っても過言ではない。
 本来の幻想郷に戻すために、小町を叱りつけて輪廻の循環を元に戻させたのだから。

零児「その時次第、としかな。そもそも、例の如く事情が変わっているかもしれん」

小牟「そうじゃな。花見がしたいとか言ってくるやもしれん」

霊夢「彼岸花で花見とか、自殺願望でもあるのかしら。……ああ、死神だったわね、あいつ」

早苗「彼岸花の毒で花見がしたい」キリッ

小牟「わしを騙したのか、早苗っ!」

魔理沙「よくわからんぜ。なんで二人は話が合うんだ?」

零児「さあな。結界の前についたぞ」

クリノ「あー……何かあるような、ないような?」

魔理沙「私はクリノと同じなんだな」

早苗「あれ、魔理沙さんも分からないのですか?」

魔理沙「ああ。結界の事はさっぱりだぜ」

霊夢「ま、これだけ感じとれる人間がいれば関係ないわ。行くわよ。すぐ終わらせなきゃ」

 今のところ四対二だが、結界をきちんと認識できる術者はそう多くない。
 普通の人間に限らず、強い霊力や魔力を持つ者でも、知識や感性がなければ分からないのだ。

 そんな特殊な感性をもつ二人はともかく、零児が認識できるのは、全て小牟のおかげだったりする。

クリノ「おいらが先に行った方がいいかな?」

零児「いや、なるべく皆で入るべきだ。奇襲を仕掛けられる可能性も、ないわけじゃない」

小牟「じゃがぁ、妖夢のように辻るやつなぞ、そうおらんぞ。新聞を見る限りじゃが」

霊夢「何、消去法?」

小牟「そう、エリミネーション。まぁ、例の如く以下略なんじゃが」

早苗「以下略?」

小牟「かくかくしかじか」

 何故この言い方になったのかよくわからない、便利な 説明中……だ。が、

零児「事情が違うかもしれんぐらい、略さず言え」

魔理沙「おお、なるほど。流石、以心伝心だぜ」

クリノ「振りまわされてるように見えるけどね。よし、じゃぁ一緒に入ろうか」
 
 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
546 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/30(月) 01:45:18.05 ID:QV4qeT/co

〜〜〜濃く、白く、涼しき―――〜〜〜

小牟「…………」

魔理沙「…………」

零児「……どういうことだ?」

霊夢「……霧の、湖?」

小牟「クリノめらが一緒におらんのは、だいたい予想通りじゃが……」

魔理沙「おかしい、おかしいぜ。ここは、里を挟んで反対側だろ?」

 結界を抜けた先。踏み込んだ地は霧の湖。
 里の北西。紅魔館の面前。妖怪の山の川の先。その位置にある、大きな湖だ。

零児「……二人とも、ここで戦ったのは?」

霊夢「……バカ」

零児「馬鹿?」

小牟「ああ、チルノじゃ。つーかその言い方、こっちでも定着しとるんじゃな」

魔理沙「そっちでもなのか。でもま、あいつなら仕方ないな」

零児「なんだか分からんが、そのチルノと言うやつを馬鹿呼ばわりしているのは理解した」

 ここが霧の湖と呼ばれるゆえんは、ほぼそのまま、霧まみれだからだ。
 普段は言うほど濃くはなく、夏であれば快適な空間を約束してくれるだろう。
 問題はこの湖に、その快適な空間を求めて大量の妖精がいることぐらいか。

 なお、今は濃霧が絶賛特盛り状態だ。

霊夢「……適当に飛んでたのが、仇にでもなったのかしら?」

零児「だが、ここについた以上は先に行くしかない。霊夢、どっちに行けばいいと思う?」

霊夢「……覚えてないわ。適当に飛んでいたもの」

魔理沙「これは霊夢が解決したから、私もわからんぜ」

小牟「霧のせいで気候がようわからん。今はいったいいつじゃ?」

魔理沙「記憶が正しければ、あれは夏だったっけか?」

零児「となると、この霧は都合がいいのか。……だが」

???「なんだお前ら! さいきょーのあたいに会いに来たか!」

 霧の中から元気よく、勘違い大爆発な発言が飛び出す。
 現れたのは、全長1mもない、小さな小さな少女。

霊夢「だれがあんたなんかに。…………後ろに、誰かいない?」

??「…………」

小牟「霧に紛れて見えぬが、確かに誰かおるの。……ん? あのシルエット……」

零児「……見た事がある。だが、あまり考えたくない相手だな」

???「あたいは今、危険が良いんだ! 幽霊だろうと、花だろうと、凍らせられる!」

魔理沙「その割には、湖が凍ってねーぜ? チルノ」

チルノ「あたい、知ってるよ。そういうのは負け犬の頬骨って言うんだ」エヘン
547 :AAテストも兼ねてます。注意書き忘れ…… ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/30(月) 01:48:35.85 ID:QV4qeT/co

                    ___
         ______       /´:::::ヽ、_
        「:::::::::::`ヽ、  __/::::____:::::::::::`7
        >,.'-‐'''"" ̄   ̄`"''‐、:::::::/
       く/             ヽく、
        /    /  i  ハ 、  ヽ,  ', \
       /   / ハ ハ/ イ ヽ、  ',.  i/
       i  ハ/ー レ'   --‐'´ ヽ  ハ ',
       ノ|   ハ −'´      "" /レ'ノ ハ
 , '⌒ヽ   レ' 7,,,,       ,   i  | / ヽ,
 l   ー--─ 人    ー'´ ̄   ハ  / i  i  |
 ヽ、_ ノ   ノ|  /ヽ、._     ,.イ バ  ハ,へノヘ
        レヘ./^レヘ"'T'v--/レ^カィ‐'ヽ!/   /i
            , 'r'"ヽr,/ ̄ヽ;::i  ヽ、 / /
           /  〉 -L〉-  く:/   ハ-<
            i   >-イ-`r---〈::ト、r'"´`\___\
           /'ヽi:::::::: ̄::::::::::::::::7'ヽ_   〉、-┘
           〈  、i:::::::::i::::::::::::::::く /  ∠二>
           .\/:::::::;::::::::;:::::::::::/  r'、___
            (/::::::/:::::i::::::::::::::::ゝ、____ノ、/

 青い服に、頭に真っ赤なリボンを付けた、背に三対の氷の翼を生やす妖精。
 とっかかりの無い寸胴ボディの胸を、これでもかと張りながら、ドヤ顔を晒す。

 氷精チルノである。

零児「負け犬の遠吠えだ。そもそも間違っているがな」

チルノ「そーともいうな、人間!」

魔理沙「…………なぁ、霊夢。こいつ、馬鹿すぎね?」

霊夢「奇遇ね、魔理沙。流石にここまで馬鹿じゃなかったわよ、こいつ」
                  バカ
小牟「なんじゃ。いつもこんな H じゃないのか〜?」

零児「お前達、いい加減俺にも分かるように話せ。春雪のときに話していた、チルノとはこいつのことだな?」

小牟「そうじゃな。氷の妖精で、諸事情からバカっちゅー愛称で呼ばれるちょる」

チルノ「誰がバカだ! バカって言った方がバカなんだぞ、このバカっ!!」

零児「……」

魔理沙「こういうやつだぜ」

 呆れるというか、呆けるというか、零児がそういう状態になるのは物凄く珍しい。
 頭が頭痛とか、そういうレベルである。

霊夢「で、あんたも浮足立ってるわけ?」

チルノ「そうなんだよ。みんななーんか、騒ぐんだよねー」

零児「皆?」

チルノ「他のよーせい。まるで異変の時みたいだね!」

霊夢「起きてるのよ、異変が」ハァ

チルノ「へっ?」

小牟「周り見てみぃ。幽霊がわんさかおるじゃろ」

チルノ「むむむ? 見えないぞ!」

零児「霧の中から出たらどうだ。後ろの、お前さんもな」

チルノ「その手には乗らないよ! 霧から出てきた所をやるつもりなんだろ」ミキッタ!

??「…………」

魔理沙「だんまりか。案外シャイな奴だったりして?」

 チルノの後ろ、シルエットが見える程度の距離にいる、湖に立つ誰か。
 音もたてず、波紋もなく、息も聞こえず。
 スラっとした長身と、手に持った長い得物だけが、判断できる特徴か。
548 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/30(月) 01:53:07.60 ID:QV4qeT/co

霊夢「あーもう、うざいわね。蹴散らすわよ」

チルノ「ふっふー。どんなに目出度くても、あたいの氷の前では無力だってこと、思い違いしてやる!」

小牟「ああ、こやつ二次チルノじゃ」ポンッ

零児「その解析は頼む。それで、このまま湖の上で戦うとなると、俺は控えか?」

霊夢「? 何言ってるの、また箒にでも乗れば……ああ、昨日のはそういうこと」ヤレヤレ

チルノ「あたいはどうでもいいよ。何人でこようと、あたいの勝ちは決まってるもんね!」

魔理沙「極力乗せないことにしたんだぜ。零児の足腰に悪いからな」

零児「そもそも、男の俺が箒に乗る方がどうかしていたんだ」

 E・Fでもその事について言及したのだが、ここまでは移動手段の関係で仕方なく黙っていた。
 そういう『矜持』に近い部分に関して、少し古い価値観を持っている所が、零児にはある。

小牟「術式が、まーだ適応できんのよな。して霊夢よ。わしとペアを組んで、あやつらを倒そうぞ?」

霊夢「後ろのあれが誰か分からないけど、私一人でもいけるわよ?」

零児「……これまでの傾向通りなら、心配はないが、用心に越したことはない」

小牟「それに、皆がペアしまくりで、なんか羨ましいんじゃ。のー、霊夢ぅ」

チルノ「そっちから来ないなら、あたいからいくぞ!」

霊夢「……そうね。試すってのも、ありかしら……ねっ。『封魔針』!!」シュッ

チルノ「凍符『パーフェクト……』」

 ジュッ

??「…………」ブィィン

小牟「あーもうこれ確定じゃな」

零児「……プラズマ光剣……!」

チルノ「『フリーズ』!!!」    スィィィ…………キーン!!

 スペルカード発動を妨害しようとするも、湖に佇む者の光る剣によって遮られる。
 そして発動される、チルノのスペルカード。
 如何なる弾幕をも凍らせ落す、チルノの十八番だ。

 辺りの霧が凝固し、非均一な氷の刃となり、四人へと襲いかかる。

魔理沙「あいつ人の話きいてねーぜ」ハァ

零児「とことん、というわけか……火燐」ジュッ

小牟「カラフルボールじゃと思うとったが、きっちり氷じゃな〜。ほれほれ」ガリガリ

霊夢「私達だけ狙いなさいって……んのよこの馬鹿っ!!」

??「……」トンッ

小牟「やばぁっ、避けるんじゃー!」

 湖から飛び上がり、小牟目がけて振り抜かれる光剣。
 プラズマを纏い、ありとあらゆるものを切断出来るその剣を遮るには、特殊な障壁が必要だ。

??「はぁっ!!」

霊夢「せぇ……いっ!」ガンッ

 しかし、この剣……サイファーは、実体の長剣を用いられている。
 故にその実体の部分は通常の剣同様、触れる事が出来るのだ。

 問題は、振り抜かれる速度が、零児の抜刀と同じかそれ以上なところだが。

??「っ!」シュバッ
549 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/30(月) 01:55:51.81 ID:QV4qeT/co

チルノ「おおっ、すごいなひりゅー! 流石あたいの弟子だ」エッヘン

零児「飛竜……彼まで、幻想入りしていたか」

小牟「絶対、師匠より弟子の方が強いわ」

チルノ「なにをー! あたいが最強だってところ、みせてやるー!!」ムキー

飛竜「……俺は、一匹狼だ」

霊夢「今さら? なら、それらしいところ見せてみなさい……よっ!!」シュババババ

 封魔針が飛竜に殺到し、逸れた一部が水を跳ねあげる。
 それを、水面を駆け抜け避ける。水面に広がるのが、針の波紋だけなのが恐ろしい。

 その軌跡を追いかけるように、針が迫る。
 跳ねあがった水を針が貫き、また水を跳ねあげる。そのまま、霧の向こう側へと消えていくまで続け……

小牟「ああ、グレイズ音の幻聴が」

チルノ「あたいの方を見なさいよ、巫女ー!」カキーン

 チルノが水しぶきを、逆さツララのように凍らせる。
 それを大量射出するスペルカードを、発動する。

チルノ「『アイシクルライズ』!!」ババババッ

零児「なんだ。発想力はあるじゃないか」

霊夢「ちっ。細かいわね……小牟!」

小牟「合点承知の助じゃ。『結界』!」

 石つぶて程度の攻撃であれば、阻むことのできる小牟の『結界』。
 毒の類や、病原菌相手にも効く優れ物だったりする。
 ただ、光は遮れないし、風も抑え込めない。強い攻撃は貫通されると、注意が必要な術だ。

 ポウッ

チルノ「おお? なんか出た?」

魔理沙「幽霊だな。異変の時の」

小牟「いかん霊夢、あれを倒されると」

 ガガッ……パキン

チルノ「なんだ? なんかやれる気がする!」ピコーン!

霊夢「時すでに遅しよ。何が起きるっていうの?」

小牟「霊力が溜まるんじゃよ」シュン

零児「原作再現の方か?」

魔理沙「私らのときは、別にそんなこと無かったしな」

 突然沸いた幽霊が、チルノの弾幕に倒され、霧散する。
 するとチルノの、氷の翼が少しばかり大きくなった。

 その後、氷の散弾が止んだため、結界を解いて二人が飛ぶ。
 迎え撃つようにチルノはスペルカードを取りだし、宣言する。

チルノ「『アイシクルフォール』!」

霊夢「やっぱりバカね。正面ががらあきなのよっ!」

飛竜「死ねっ……!」

小牟「ぬしが上から来ることは、百も承知じゃ。白虎乱砲!」

 チルノの穴を埋めるかのように、上空から突き下してきた飛竜に、小牟が対応する。
 小牟の援護を受け、チルノへと肉迫した霊夢は、右手のお祓い棒を 後ろへ投げる。

チルノ「飛んで火にいる真夏の霊夢だ! 『アイシクルシュート』!」

飛竜「力ごと、斬ればいい。はぁっ!」シャキンッ!
550 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/30(月) 02:00:37.84 ID:QV4qeT/co

 乱打される白虎砲を、サイファーの一閃で斬り散らし、小牟へと肉迫する。
 無駄だと悟った小牟が、迫りくる飛翔物へと向き直る。

小牟「わしの水蓮じゃ、ぬしのサイファーは止められぬが……!!」

霊夢「だから……」ガリッ

小牟「仙狐攻殺法『孤主封霊夢』!!」カッ

 霊夢の投げたお祓い棒を掴み、叫ぶ。
 その瞬間服装が変わり、腋だし紅白巫女スタイルになる。

霊夢「あんたはバカなのよ! !」

小牟「ミコミコ小牟、『九字』を引くぞ!」 手加減↓

 僅か半身をずらし、ただの正面弾幕を避ける。
 あまり早くないとはいえ、もうわずか数mの位置で避けるのは、博麗の勘が成せる技か、分かりやすいのか。

零児「形から入る癖、やめないか」ハァ

魔理沙「霊力の無駄遣いだな」

飛竜「何……だと……?!」

 そのまま振りかぶられる、御祓い棒。
 霊夢の霊力が込められたその棒は、プラズマ光剣と鍔迫り合う。

小牟「ぬしさえ抑え込めれば、チルノはワンターンキルじゃ」

チルノ「当たれ、当たれー!」

霊夢「霊力増してるのには驚いたけど、バカが悪化してちゃ、意味ないわ」シュン

 アイシクルシュートを抜けられ、動揺したチルノは目をつぶったまま弾幕を放つ。
 しかし、合わせて真後ろへ『跳んだ』霊夢は、何もしない。

 そんなとき、小牟がふと、力を緩める。

小牟「さっきのクジ、外れなんじゃよなー」フラッ

飛竜「……! しまっ」

零児「……終いだ」

 膠着していたはずの状態から一転、不意に力が傾いたことで、バランスを崩す。
 そこに、真後ろからめちゃくちゃな氷の弾幕が……。

飛竜「侮るな……!」ジュッ

魔理沙「っあそこからもひねられるのか。流石、忍者は伊達じゃないってか?」

小牟「じゃが。そっちを避けるのに手いっぱいじゃろ。ほれ、『青龍槍』じゃ!」

 思い切り体をひねり、チルノの弾幕を斬り落とす。
 しかし、その隙を待っていた小牟が、青のレーザーを放ち……

 ピチューン

チルノ「うおっ、やったか!?」パチッ!

霊夢「バーカ。『陰陽玉』」ドンッ

 ピチューン

 袖から取り出した陰陽玉を、チルノの後頭部にぶつけて終わった。
551 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/30(月) 02:02:40.10 ID:QV4qeT/co

零児「お疲れさん、二人とも。……飛竜、お前は覚えてないようだな」

飛竜「……貴様ら、何故俺の名を知っている。……いや、話す必要はない。ここで始末す……」

 パコンッ

飛竜「っ?!」

魔理沙「えーい、お前みたいな物騒な奴は箒でこうだ。このこの!」パコパコ

 サイファーに手を掛けようとした飛竜の後頭部に、魔理沙の箒が炸裂する。
 その身長差は約30cm。大人しく飛んですればいいものを、立ったまましているのだから……

小牟「いい感じじゃな、魔理沙」

霊夢「なんなの、あの人。ずっと痛い視線感じたんだけど」

零児「飛竜……彼もまた、俺達の仲間だ。少し、過激だがな」

 彼は「ストライダーズ」の唯一の生き残りであり、かつての戦いにて宿敵、冥王【グランドマスター】を『ぶち殺した』男だ。

 青い忍び装束に身を包み、赤いマフラーが口を覆い隠す、正真正銘の暗殺者スタイル。

 その外見に反して、年はまだ十七と若い。
 口調は過激。空気は読まないし、はっきり言えば、協調性にも欠ける。
 だが、何かの『任務』に従い、裏切った仲間の呼びかけを問答無用で切り捨てる等、芯に強い信念を持つ。

チルノ「うう……痛い、痛いぞバカ巫女―!!」

零児「ところで、少し涼しくなったか?」

魔理沙「そいつが冷気を出してるんだ。夏場は重宝するぜ。このっ!」

飛竜「…………くっ」パコパコ

小牟「じゃから手を触れんのよ。くぅ、抱きしめたいなぁ、チルノォ……」

チルノ「へへーん。とーしょーになりたかったら触ってみろー!」

 このチルノの能力は『冷気を操る程度の能力』。本来ならば、涼しくなる程度の能力だろう。
 だがチルノは他の妖精と違い、正真正銘の能力たり得ている。それこそ、映姫に説教される程に。
 そんな溢れる力を制御するつもりもないために、彼女の周りは常に冷気があふれ出ているのだ。
552 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/30(月) 02:03:51.68 ID:QV4qeT/co

零児「言い回しも変だな。普段はこうじゃないと?」

霊夢「ええ。いつもバカだけど、周りが見えないだけだし」

魔理沙「宴会の時の踊りの真相聞いたら、実は恐怖に貶めるつもりだったとかな」パコパコ

零児「そうか。それで、どちらへ向かう」

小牟「無縁塚方面に飛ぶしか無かろう。問題は、紅魔館がどっちにあるかじゃ」

飛竜「……あっちだ」

魔理沙「本当だろうな!」パコパコ

 零児達がいる畔から、大よそ西を指す飛竜。先ほど、消え去った方角だ。

 未だ、魔理沙は叩いている。

飛竜「……嘘はつかん」

霊夢「いい加減止めてあげたら。困ってるわよ」

小牟「いい絵じゃがな。駄々っ子妹が兄に構ってほしいってしてるみたいで」

魔理沙「よし、やめた」スッ

飛竜「……ふぅ」

零児「……。なら、その反対……だったか?」

霊夢「まぁ、だいたいね。例の如く、いつの間にか場所が変わるかもしれないわ」

小牟「うぬ。とは言うて、永夜の時とは勝手が違う気がするのぉ」

魔理沙「行けば分かるさ。さ、行こうぜ。じゃあな、チルノ〜」

チルノ「むぅ。覚えてろよー! ……疲れたぁ」ダラーン

飛竜「…………?」
 
 
 
 ドクンッ
 
 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 
553 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/30(月) 02:09:35.84 ID:QV4qeT/co
〜〜〜〜〜〜−^・_〜=  -- ̄―――ー〜====^=   ・ 〜・ 〜〜−−−−−−−−−−−−〜〜−−−−

 チルノ

 妖精。青い服、後頭部に赤いリボンを着用。裸足。

 小牟と会話から、凍りを操る力と判断。−−−が効かない固体である模様。

 以上から、優先度は不明。妖精そのものへの調査もめどに、優先度は中に設定する。

〜〜〜〜〜〜−^・_〜=  -- ̄―――ー〜====^=   ・ 〜・ 〜〜−−−−−−−−−−−−〜〜−−−−

 飛竜

 人間。青の忍び装束、赤いマフラーを着用。また、黒い足袋も履く。

 −−−が効かない個体である模様。

 会話からも必要な情報を得られなかったため、要調査と判定する。

〜〜〜〜〜〜−^・_〜=  -- ̄―――ー〜====^=   ・ 〜・ 〜〜−−−−−−−−−−−−〜〜−−−−
554 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/01/30(月) 02:13:42.10 ID:QV4qeT/co
以上で、投下を終わります。望み薄だった彼ですが、このような形でひとまず出しました。はい。

でもやっぱり難しい。ムゲフロ随一のドストレートキャラですし。

今後、どんなふうにストーリーに絡めていくか……。

さて。次回投下は木曜以降、『花映塚二面(相当)』です。

それでは、失礼します。
555 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/30(月) 08:44:13.89 ID:IY7ezgzDO
お疲れ様です!
まさかの飛竜さんとはwwあれか、氷の様に冷たく鋭い男…だからか?

ミコミコ小牟…容易に想像出来るっ!霊力の無駄使い?いいやロマンだ!巫女服な萃香の立ち絵だって存在するくらいだしな。

うむ。やっぱりチルノは可愛らしい。
556 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/30(月) 10:16:57.89 ID:IMAPfJ8DO
シャオムウのコスがまたひとつ……


あの技、ムゲフロだと確かボスも問答無用で状態異常になってたな……
557 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2012/01/31(火) 01:58:08.25 ID:/wH4GD1h0

こんばんわ。そう言えばすっかり忘れていました、初期キャラ設定でございます。

それと、飛竜ってムゲフロじゃなくってナムカプだよ。何錯乱してるのか……。


東方projectより

伊吹 萃香(いぶき すいか)

 幻想郷のあちらこちらを、自由気ままに渡り歩く鬼。元、山の四天王。「密と疎を操る程度の能力」。
 いつものようにフラフラとしながら、体の一部を霧状にしていたら、異変内外に意識が分散する奇妙な状態に。

茨木 華扇(いばらき かせん):茨 華仙(いばら かせん)

 妖怪の山にて道場を開く仙人。中華風の服を身にまとう。能力不明。動物を操れるが、仙人の術の可能性あり。
 幻想入りしてきている人物たちを見張り、監視している。ただそれも、彼らの強さを知らないからだが……。

稗田 阿求(ひえだの あきゅう)

 稗田家の現「御阿礼の子」。九度繰返し転生した、阿礼の子孫。「一度見た物を忘れない程度の能力」。
 人里にて、いつものように暮らしていた。今回の異変についても記録し始めているが、相変わらず独自の解釈が……。

多々良 小傘(たたら こがさ)

 捨てられた番傘が、様々な思念を吸収して九十九となった、から傘お化け。「人を驚かす程度の能力」。
 今日も今日とて独り旅。人を驚かさんために、日夜修行に励むぞ! *明後日の方を向きながら

ナズーリン

 毘沙門天の弟子である、寅丸星の部下。命蓮寺在住。「探し物を探し当てる程度の能力」。
 ぬえとはまた違った、素直さの無い鼠の妖怪。幻想入りした物を探していたら、みょんな男を拾ってしまう。

雲居 一輪(くもい いちりん)

 命蓮寺に住み、聖の身の回りの世話をする入道使いの尼さん。「入道を使う程度の能力」。
 真面目で働き者。仏教を広めつつ、響子と共に命蓮寺の掃除をしていた。という、日常。

幽谷 響子(かそだに きょうこ)

 命蓮寺に住み、自主的に箒掃除や、元気な挨拶をしている山彦の妖怪。「音を反射させる程度の能力」。
 いつぞやの神霊騒ぎ以降も、元気に挨拶をしまくる。 お ー は よ う ご ざ い ま ーーーっ す!!

村紗 水蜜(むらさ みなみつ)

 命蓮寺に住み、魔界への移動手段を確保する舟幽霊。「水難事故を引き起こす程度の能力」。
 命蓮寺の前身、星輦船の船長。命蓮寺がその姿になった後も、そのメンテナンスをかかさない。カレー大好き美食家7号。

寅丸 星(とらまる しょう)

 命蓮寺の神仏であり、毘沙門天代理。元は虎と恐れられた、山の力ある妖怪。「財宝が集まる程度の能力」。
 命蓮寺メンバーの日課である、人里への説法参りをしようとしたところ、今回の異変にぶち当たる。

封獣 ぬえ(ふうじゅう ぬえ)

 正体不明の正体。相当な年齢だが、未だ子供っぽいところがある鵺。「正体を判らなくする程度の能力」。
 神霊騒ぎの件でも、聖に恩を返す事が出来ず、どうにかしたいと思っている所に、異変騒ぎを聞きつける。

二つ岩 マミゾウ(ふたついわ マミゾウ)

 佐渡の古参狸。命蓮寺と、佐渡の家を自由に行き来する、現代の大妖怪。「化けさせる程度の能力」。
 聖の人の良さに打たれ、昔話をし合う仲に。ぬえの相談を受けていた時に、異変騒ぎを聞きつける。

聖 白蓮(ひじり びゃくれん)

 魔界の法界と呼ばれた場所にて封印されていた、古き大魔法使い。「魔法(主に身体能力向上系)を扱う程度の能力」。
 他のメンバー同様、自身の日課をこなそうとしていたところ、今回の異変のことを知る。

古明地 こいし(こめいじ こいし)

 地底にある旧地獄の管理地、地霊殿に住まう、さとりの妹。「無意識を操る程度の能力」。
 異変が起きていることを知らず、また、異変に侵食されること無く自由気ままに楽しいことを探している。
558 : ◆JbeFpMnays [sage saga]:2012/01/31(火) 02:10:31.15 ID:/wH4GD1h0

ナムカプより

クリノ・サンドラ

 幻想界の神、イシターに仕える騎士の、忠実なる戦士。現在は最高ランクの称号を得ている。
 「○○する程度の能力」未開花。素の、「一族最高戦士たる槍捌き」は、零児には負ける程度。
 ただし、遠距離攻撃を一切持たず、動きもどちらかといえば重く遅いため、スペカ戦には不向き。

アーサー

 幻想界の名だたる、「白銀の騎士」。渋くも熱く、イチゴパンツを愛用しているおっさん。でも、実は26才。
 「○○する程度の能力」未開花。素の、「魔界村を攻略せし王国最強の騎士」は、零児と互角。
 魔力を扱い、武器の複製で遠距離攻撃が出来るが、クリノ同様遅いために不向きな方。


以上です。神子さん達の分、すっかり忘れててまだ書いていません。……この傾向、いけない。
559 : ◆JbeFpMnays [saga]:2012/02/03(金) 00:50:33.90 ID:RLdexilno

こんばんわ。レス、ありがとうございます。

ちょっと自棄が回って、博麗巫女仕様の小牟を描こうとか思ったら、下手なのを再確認。

絵心ある人って、羨ましいですよね。


さて、今回からトリップを変更していきたいと思います。

一応、本人確認を兼ねて、既存トリをここで。次レス(本編)以降は、変更後を使用します。

それでは投下します。「花映塚二面(相当)」です。どうぞ。
560 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/03(金) 00:52:47.31 ID:RLdexilno

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜スズランの丘。名もなき花〜〜〜

 ザクッザクッ

霊夢「……案外、無駄なく来れたわね。……あんまり道中の記憶がないけど」

零児「鈴蘭の群生地か。ここは、通り道なんだな?」

霊夢「本当は違うんだけどね。魔法の森を抜けて、再思の道を行った先。……なんだけど」

 人里から東南やや南の方角に、無名の丘はある。
 鈴蘭の咲き誇るこの丘は、魔法の森同様、人の手が殆どつけられていない。
 魔法の森とは違って人里から遠く、他のうまみも全くないから放置されているだけだが。

魔理沙「魔法の森を無視してこっちに回って、なんか蹴散らしたって言ってたな」

小牟「鈴蘭ちゅーと、メディスンじゃな。人形でも、蹴散らしたんじゃろ?」

霊夢「そうね、確か人形。なんだか、雛と勘違いしていた気がするわ」

零児「あそこに浮かんでいるのが、そうか?」

魔理沙「おー、確かになんかいるぜ。……わかんねーけど」

???「…………」

 先の妖精と同じぐらいの大きさの、つりさげられたかのように四肢をふらつかせる、少女の形。
 アリスと似た、浮世絵じみた肌がより一層、その存在を非生物たらしめている。

小牟「おー、メディスンじゃ。……じゃがなんか、様子がおかしいの」

魔理沙「だなぁ。死んでるみたいだぜ」

零児「……違う。抜けている、のか?」

霊夢「そうね。抜けてるわね」

魔理沙「は? ぬけt……」

???「警告します。その少女の形から離れてください」

魔理沙「うおっ。次は誰だよ? ……誰だ?」

 突如後ろから響く、機械的な音声。
 目の前の少女から放たれていたとしても、違和感なく受け入れられていたかもしれない、その声の主は……。

小牟「こ、コスモス!?」

霊夢「コスモス? 花?」

KOS-MOS「……再度警告します。その少女の形から離れなければ、強制排除に移らせてもらいます」

魔理沙「おいおい。また物騒な奴なのか、零児?」

零児「いや。警告に従えば、とりあえず大丈夫だ。……下がるぞ」

 かつて行われた、次元の壁を跨いで行われた戦い。
 そして、さらなる異世界にて行われた、二度の戦い。
 その三度にわたる戦いで、共に戦い、共に生き残った、歴戦の猛者。

 KOS-MOSである。

KOS-MOS「…………」スゥッ

霊夢「…………何……で……?」

小牟「むむ。手に何かもっとるの?」

魔理沙「人形、っぽいな。やけに小さいけど」
561 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/03(金) 00:54:56.59 ID:RLdexilno

KOS-MOS「……ご協力に感謝します。零児」

零児「! コスモス。お前さん、記憶があるんだな?」

KOS-MOS「はい、零児。零児と、小牟のデータは残っています。
        残りの二名については、該当データに一致する条件が、ありません」

小牟「なーんじゃ、びっくりさせおって。こっちの二人は霊夢に魔理沙。わけあって、一緒に行動しとるんじゃよ」

KOS-MOS「そうですか。私は、対グノーシス専用人型掃討兵器、通称KOS-MOSです」

 彼女は、超未来にて出現するようになった、グノーシスと呼ばれる化け物専用の兵器だ。
 ベクター社のシオンとケビンによって開発され、現在はVer.4と呼ばれる躯体になっている。
 外見は成人した女性だが、体のあちらこちらにあるパーツが、人ではない『何か』を表している。
 なお、ボインボインである。開発者曰く、「衝撃に強くなるし、色々詰め込めるからよ?」とか。

魔理沙「え? 対グノーなんちゃらかんちゃら??」

KOS-MOS「KOS-MOSと呼んでいただいて結構です。マリサ」

魔理沙「お、おう」

KOS-MOS「ところで小牟。レイムと同じ格好をしているのは、何か、意味があるのですか?」

小牟「コスプレに、意味など聴かれちゃぁ困るぜぇ」カカン

KOS-MOS「零児。よろしいのですか?」

零児「………………しらん」ハァ

霊夢「……貴女、何憑けてるのよ……」

KOS-MOS「……」

零児「どうした、霊夢?」

霊夢「なんで、そんな……貴女……そんな人を……!!」

KOS-MOS「……私が、見えるのですか?」

 何かを視て、驚きを隠せず叫び声を上げる霊夢。
 それに対し、それまでの機械的発音から優しげな声色の変わり、話し始めるKOS-MOS。

霊夢「! 話せるの?! ねぇ貴女。なんでそんな、そんな『容れ物』に入ってるの!?」

KOS-MOS「…………」

魔理沙「おい、霊夢。どうしたんだよ?」

霊夢「どうしたも、こうしたもないわ。このコスモスとか言うのに憑いているのは……!!」

 バンッ!!

霊夢「!」

 その先は話させないかのように、空間から銃を取り出し威嚇射撃を行う。
 機械的な判断と真逆に、霊夢を見つめる瞳は、声色が変わる直前までと全く様子が違う。
 そう。赤い、機械的な眼から、蒼い、悲愴に染まった瞳に……。

KOS-MOS「……ごめんなさい。でも、『私』の事は、話さないで」

霊夢「………………」

小牟「な、なんじゃ。霊夢めには何が見えとるんじゃ」

霊夢「……なんでも、ないわ」

魔理沙「…………」ジトー

小牟「KOS-MOSもじゃ。ぬしらしゅうない……。
    何の魂が憑いとるかまでは知らぬが、それを聞く程、わしらは野暮じゃありゃせんぞ」
562 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/03(金) 00:56:42.07 ID:nm72t/g8o
確かに霊夢さんとKOS-MOSはこうなってもおかしくないな
563 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/03(金) 00:57:26.87 ID:RLdexilno

KOS-MOS「それは承知しています。ですがレイムの事をよく知らないため、この処置を取るのが、最善と判断しました」

零児「そこまでか。なら、これ以上は追及しない。それより、その手の人形はどうした」

魔理沙「え、いいのか?」

 零児と小牟が切り替えたのを見て、素直に疑問を表す。
 これもまた、子供特有の感覚だろうか。彼らの間にある、『間』がどの程度のものか、計り損ねているのだ。

 ただ、これは別に怒られる事でもないし、これからじっくり養うべきものだ。
 幸いにして彼女は、その感性は強い方なのだから。

小牟「人間、誰しも秘密にしておきたい事はあるもんじゃ。女じゃと、特にな」キラーン

KOS-MOS「私は人間ではありません。それと、躯体は女性型ですが、精神構造上に、男女の区別はございません」

魔理沙「……ねーわ。その胸でねーわ」

KOS-MOS「零児の問いへの答えですが、この人形は、メディスン・メランコリーの、この空間内における鍵です」

霊夢「……鍵?」

KOS-MOS「はい。彼女を目覚めさせるための鍵という、位置づけになっています」

零児「この空間、と言ったな。それはつまり、異変の内容について、理解しているということか」

KOS-MOS「少し、違います。確かに、六十年周期の大結界異変について、多少のインプットデータは存在します。
        ですがそれも花が大量に咲く理由程度です」

小牟「ほむ。となると、メディめが察したことと、大体一緒じゃな。それを送ってきおる奴は解るかの?」

KOS-MOS「残念ながら、サーチすることは出来ません。この空間のU.M.N.に上書きされるかのように、存在しています」

零児「U.M.N.……たしか、データバンクのような物、だったか。……」

 魔理沙の突っ込みをスルーして、説明を始める。
 鍵という、やや抽象的な物言いをするのは珍しいのだが、どうやらそういうモノらしい。

魔理沙「……霊夢。急に専門用語ましましだぜ?」

霊夢「そうね。何話してるのか、さっぱりだわ。二度目ね、これ」

KOS-MOS「申し訳ございません。レイム、マリサ。それに零児と、小牟も」

小牟「む、どうしたんじゃ突然」

KOS-MOS「これから私は、役割を果たさねばなりません」

霊夢「役割? 何のよ」

KOS-MOS「この、少女の形を、目覚めさせる役割です」ピトッ

 カラッ……コロン……カラコロコロ

魔理沙「めちゃくちゃに動き出したぜ。人形みたいに」

 魔理沙の言う通り、操り人形を素人が手繰るように、人体ではありえない動きをするメディスン。
 KOS-MOSが持っていた人形が傍に浮かび、少女の形もまた、肌が僅か上気する。

小牟「……入れたの」

霊夢「入れたわね」

KOS-MOS「この空間を脱するには、私とこの少女の形……メディスンを、倒さねばなりません」

メディスン「………………?」パチッ

魔理沙「なんだよ。だったら入れる前に言えば、無抵抗で倒せたのに」
564 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/03(金) 01:00:34.13 ID:RLdexilno

KOS-MOS「私も、それが最善だとは思います。ですが、私は……」

メディスン「……ママ?」カラン

KOS-MOS「はい。貴女の、母。その役割を、担う物」

 半開きの、光の失せていた瞼がパッチリと開かれ、人形は目の前の人を視る。
 零児達から背を向けているため、KOS-MOSがどんな表情をしているか分からない。
 ただただ、優しげな声が、聞こえるのみ。

霊夢「……母、親?」

零児「すりこみか」

KOS-MOS「そのようです。親としてこの『子』を襲う者を倒す。その使命が、この行動を取らせました」

零児「……つまり、またなのか」

KOS-MOS「はい。ですが、御安心を。幻想郷の規則……スペルカードルールで、決着を付ければよいのです」

小牟「まーた回りくどいことを。確かにメディは生まれたてほやほやじゃがなー」

魔理沙「へー、そうなのか」

小牟「まだ、年齢一桁じゃよ。右も左も、知らぬようなもんじゃ」

 メディスン・メランコリーは、ここ無名の丘に捨てられた人形に、鈴蘭の毒が長年しみわたり、生まれた妖怪だ。
 そんな妖怪だが、生れて僅か数年であり、更に宿った場所が人も妖怪もろくに来ない丘。
 世間知らずな若輩者と言う訳だ。

 だから、もしかしたらスーさんとは、彼女の親同然の存在なのかもしれない。
 今の、KOS-MOSのように。

メディスン「……ママ? コノヒトタチヲヤッチャエバイイノ?」

KOS-MOS「ええ。スペルカードルール……分かる?」ナデ

メディスン「ウン。ワカル。ツクル」ドクン

霊夢「……生まれたてで勝てるなんて、思ってるんじゃないでしょうね」

小牟「思うとらんと思うぞ。それ以前にメディじゃ、魔理沙にかてん」

零児「……彼女の能力は?」

小牟「『毒を操る程度の能力』じゃ。主に神経毒を使い、時に人を操る事も出来るようじゃな」

魔理沙「準備オーケーか? コスモス」

KOS-MOS「はい。待たせて申し訳ございません。始めましょう」

メディスン「ハジメマショー?」カラン

KOS-MOS「換装『F-G-Shot』」ズガガガガガ

零児「散れ!」ダッ

魔理沙「ちょ、何も持ってなかっただろ!?」トンッ

 KOS-MOSの右手に突如現れたガトリングガン。それを片手で持ちながら、横に薙ぐ。
 魔力の流れもなく、霊力の動きもなく出現した武器に驚き、空へと逃げる三人。

メディスン「ワー。ママスゴーイ。ワタシモ、ワタシモ。ドクフ『シンケイノドク』」

小牟「気を付けい、皆の衆。あれは被弾扱いにならんが、体が痺れてよう動けんなる!」

零児「お前の『結界』でなんとか出来ないか?」

小牟「メディ一人ならの。じゃが、コスモスがおるんではいかんわ!」
565 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/03(金) 01:05:52.47 ID:RLdexilno

KOS-MOS「なお、私にこの毒の効果はありません」ブワッ

 ご丁寧にもそう告げ、毒の霧を突き抜けてくるKOS-MOS。右手のガトリングは、いつの間にか失せている。

霊夢「そりゃ御丁寧にどう……もっ! 『警醒陣』!」バシッ

KOS-MOS「ジン・ウヅキのパターン、再生」キィィ

霊夢「!」

KOS-MOS「『旋風会刃』」スパッ

 次に現れる、両刃のブレード。それと共に振り抜かれた太刀筋は、熟練者のそれと、全く同じ軌跡を刻む。
 霊夢のお札を、まるで豆腐を切るかのように切断し、さらに迫る。

魔理沙「カバーするぜっ。『グリーンスプレッド』!」バシュッ

KOS-MOS「回避します。EtherCircuit『バランスアップ』」ガリガリガリ

魔理沙「はぁっ!? 難なく避けられた!?」ガビーン

メディスン「ママ、スゴーイ!」カランコロン

霊夢「けど、体制が崩れたわ。宝具『陰み……』」

零児「いかん、霊夢。間に合わん!」

KOS-MOS「終わりです。コイン投擲」バラピーンバラ

霊夢「っ! (削がされた……」ガリッ

KOS-MOS「Jr.のパターン、再生。『ストームワルツ』」ガンガンガンガン

 中空で逆さまな状態から、左手に握っていたコインをばら撒き、同時に一つだけ弾くことで、霊夢のスペカを止める。
 そのまま、拳銃を両手に換装し、弾いたコイン目がけて銃弾を放つ。

 コインに弾かれ、兆弾となった弾丸が周囲のコインに当たり、何度も跳ね返り、その中にいる霊夢を射抜く。
 ……はずが、目の前は既に誰もおらず、コインのワルツも奏でられず、弾丸は空へと吸い込まれる。

霊夢「無理。あれは避けられないわ」シュン

KOS-MOS「空間転移。いえ、高速移動のそれと、よく似た反応ですか」クルッスタッ

零児「……メディスンの毒を、握っていたのか」

小牟「よう見切ったのぉ、霊夢。正直、冷や汗もんじゃぞ?」

魔理沙「まじかよ」

KOS-MOS「はい。当初の計算では、100%の力で回避できる者だとしても、メディスンの毒で阻害され、被弾するはずでした」

霊夢「零児さんのおかげよ。……もう少しで、意地でも避けようとしてた」

メディスン「ハサンダ、ハサンダー♪」

小牟「おう。そういえば、ダブルアタックじゃな」

 KOS-MOSと霊夢の攻防が終わり、ほんの少しの間が生じる。
 後方にKOS-MOS。前方には、毒の霧に守られるような位置にいる、メディスン。

 零児達は決して、ぼさっと突っ立っていたわけではない。
 毒の霧を放ったあと、母の動きを観て楽しんでいたメディスンに敵意がないことを確認したから、彼女に集中したのだ。

 何せ、身体能力に限らず、多くの面で彼女は、零児達を遥かに凌ぐのだから。
566 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/03(金) 01:08:57.49 ID:RLdexilno

零児「……しくじった。先に手を打つべきだったか」

魔理沙「式みたいなものって、藍はあんな事できねーぜ?」

零児「俺達が住む世界から、何千年もあとの未来の住人だからな。その性能も、段違いさ」

魔理沙「……例の、神社ほどあるパソコン並みか?」

KOS-MOS「この時代相当に換算すれば、およそ、大西洋一つ分の施設が必要となります」

小牟「改めて聞くと、恐ろしい話じゃな。どんだけオーバーテクノロジーじゃ」

霊夢「タイセイヨウ……って、外の世界の海ですっけ」

メディスン「……ワタシヲオイテ、オハナシナンテズルイ!! ドクフ『ボイズンブレス』!」シュー

 一人だけ置いてけぼりにされたのに腹を立て、メディスンがスペカを宣言する。
 毒符『ポイズンブレス』……先の『神経の毒』を撒き散らしながら、同時に多方向へ、密度の濃い弾幕を放つスペル。
 遅かったり、大回りすぎると弾幕に迫られ、被弾してしまう厄介なスペルだ。

霊夢「我慢が足りないわね、まったく」

零児「KOS-MOSは俺と霊夢で抑える。そっちの人形、頼んだぞ」ダッ

小牟「とにかく一度、ぶっ放せい! あ、ナロスパでな。マスパじゃと後ろから狙われかねん」

魔理沙「おう。『ナロースパーク』!」ジュゥ

 ゆっくりと空間を侵食する毒に向かって、魔理沙のレーザーが放たれる。
 このレーザーは八卦炉から放たれる高密度の光であり、高温の炎でもある。
 それが毒の中央を突き抜け、更には巻き込むような気流を生みだす。

KOS-MOS「零児。貴方の行動パターンは、多岐にわたって入力済みであることを、お忘れなきよう」

零児「百も承知だが、まだ全てを出し切ったわけじゃない」

霊夢「喰らいなさい。『宝玉退魔符乱舞』!!」

零児「行くぞ、霊夢っ!」パシッ

小牟「あー、永夜の通常3じゃな」解説

魔理沙「お掃除だぜー」ビーム

KOS-MOS「……拡散型の弾幕と認識。突撃します」

メディスン「ヤー! アツイノヤー!」

 ともなれば、毒は浄化され、弾幕もスパークによってかき消される。
 零児と違って遠距離から攻撃出来る。しかも機動力も高い。
 これが、メディスンが魔理沙に勝てない、理由である。

霊夢「……やっぱばれるわね」

零児「どうせ目くらましだ。『踏み込む』」ザッ

KOS-MOS「換装『R-Drill』。貫きます」ガンッ

魔理沙「おい。今の音、大丈夫なのか?」

小牟「……陰陽玉に穴あけよった」

零児「土よ……轟け!!」

 広範囲にお札と玉弾幕をばら撒きながら、跳ねる陰陽玉を仕込んで意表をつく『宝玉退魔符乱舞』。
 それを見ただけで看破したKOS-MOSは、少し右回り気味に走り込みながら、弾幕の中を行く。
 そこに落ちて来た陰陽玉をドリルで穿ち、弾幕地帯を抜けきったところに、零児が待ちうける。
567 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/03(金) 01:12:03.88 ID:RLdexilno

KOS-MOS「シオンのパターン、再生。『L-スロット・シュート』」ガキン

零児「ぬぅっ!」ガキン

霊夢「これも読むの、ねっ! 『妖怪バスター』!」

KOS-MOS「『R-Drill』全開。ホリ・タイゾウのパターン、再生」スッ

 ズガガガガガガガッ

魔理沙「ちょ、何だよその音!?」クルッ

零児「何っ?!」

 シオンの武器を模造したくい打ち機を使い、零児と鍔迫り合う事を避けた彼女は、
  続く霊夢の攻撃に、予想だにしなかった方法で迎撃を行う。

 ホリ・タイゾウ……かつての戦いで、ディグアウターとして名高かった仲間の、岩盤破壊を応用したのだ。

 大地にドリルを叩きこみ、その一帯の土や岩を跳ねあげることで、霊夢の弾幕を防ぐ。
 それはそのまま、体勢を整えたばかりの零児へ襲い掛かる。

小牟「ミスタードリラーの真似じゃと。どこまで多芸なんじゃ」

メディスン「チャーンス!」キュピン

霊夢「……『陰陽玉』、展開。夢符『二重結界』」

零児「うおっ」ブワッ

KOS-MOS「岩砕攻撃、失敗。換装『R-Blade』」

魔理沙「あ、余所見してた」ジュッ

メディスン「キャー!? イヤー!!」

 先ほどの乱舞の最中に、零児に投げつけた陰陽玉が起動する。
 表と裏の境を結び、限定された弾のみをその結界に通させるスペルだ。
 その中には、実体である岩や土も同様だ。……いや、むしろ実体のあるものが通れると言うべきか。

霊夢「……ここっ、『退魔符』!」シャッ

KOS-MOS「空間の歪曲を確認。ブースト、全開。急停止します」キキキ

小牟「始点が変わると、バラけ方も変わるもんじゃなー」ホェー

魔理沙「まじだなー」ホェー

メディスン「アツイアツイ!」ジュー

零児「地禮、金【ゴールド】。『集中』!!」ダンッ

KOS-MOS「同じ事です、零児。『迎え撃ち』ます」

零児「……そうか? 『加速する』。行けっ!!」ブンッ

霊夢「結界はね、私も通れるのよっ!!」クワッ!

KOS-MOS「!?」

 とはいえ、ある一定の質量を越えれば、結界がもたない。
 結界の所有者と、エキスパートである者達以外を通すのは、だ。

 二重結界の外周、零児が片足を掛けた場所から、霊夢が突如出現する。
 それに合わせ、振られていた地禮の鎬に霊夢の足がかかり、打ち出される。
568 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/03(金) 01:16:27.23 ID:RLdexilno

KOS-MOS「換装『L-blas……』」

霊夢「ふふっ。『亜空穴』」シュンッ

KOS-MOS「『……ster』。瞬転を感知。……!」

零児「加速装置は、切れていない!」ズバッ

 立て続けに行われる、瞬間移動。今行われたそれは、二種類に分けられる。

 一つは結界を用いない、霊夢特有の『零時間移動』。
 もう一つは結界を通る、『空間歪曲』だ。

 どちらも、本来であれば入念な準備が必要であり、そう簡単に使える代物ではない。
 それを、気の向くままに行える霊夢は、規格外なのかも、しれない。

零児「地禮『疾雷の型』!」ブンッ

KOS-MOS「『R-Blade』で対処」ガンッ

霊夢「そこぉっ!!」シュバッ

KOS-MOS「『L-blaster』……弾かれました」ガンッ

零児「轟けぇ!」ブンブンブンッ

KOS-MOS「バランスが、48%低下します」ガンガンガンッ

霊夢「『昇天脚』!!」カッ

KOS-MOS「うわっ」ピチューン

メディスン「ママー!?」アツイ!

魔理沙「お、やったか?」

小牟「フラグっぽいいい方じゃが、やったぞ。ほれ、とどめを刺してやれい」

魔理沙「OK。すばしっこい奴だったが、これで……」

 ちびちび出していたナロースパークを止め、八卦炉を放り投げる。
 箒に立ち、八卦炉を掴み、そして構える。

メディスン「ヨクもママヲー! セン妄『イントゥデリリ……』」

魔理沙「フィニッシュだぜ! 『マスパ超短バージョン』!」モワーン

メディスン「『ウム』ぅううう!?」バシュッピチューン


小牟「いやぁ、メディスンめは強敵じゃったのぉ」

零児「サボっていたくせに、何を言っている。叩くぞ」

小牟「しゃーなしじゃろ。コスモスがガトリングで掃射して来る可能性を考えれば、大事を取るしかないんじゃし」

魔理沙「で、あんたは大丈夫なのか?」

KOS-MOS「はい。躯体に対するダメージは大したものではありません。別の要因で、動けなくなっているようです」

メディスン「」チーン

 魔理沙の、一瞬だけ放たれたマスパに燃やされ、気絶したメディスンと、
 霊夢の昇天脚に飛ばされたKOS-MOSが、添寝の形で横たわっている。
569 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/03(金) 01:23:00.72 ID:RLdexilno

霊夢「……式みたいなものなのよね。水って大丈夫なの?」

KOS-MOS「問題ありません、レイム。超未来では、水程度で動かなくなる機械は、そうございません、にゃ」

魔理沙「にゃ?」

零児「気にするな。何かのバグだそうだ。……これで、俺達は先に進めるんだな?」

KOS-MOS「はい。空間からのデータが正しければ、このまま南西の方角へと向かうのが正解です」

霊夢「再思の道ね。まぁ、そのつもりだったんだけど」

小牟「ところでコスモスよ。タイゾウめの技を使うたのは……」

KOS-MOS「再生データの範囲拡張を行った結果です。以前の戦いの仲間の技であれば、ある程度は再生可能です」

小牟「それでじゃ、魔理沙よ。ぬしも何か、再生したんかの?」

魔理沙「? 何の話だよ」

小牟「いや、気付いとらんならよい。……流石青魔道士じゃな」

零児「知り合いと、言っている事が似ていたのさ。……後は、異変が終わった後でいいな」

霊夢「…………」

小牟「んー、まぁよいじゃろ。霊夢めも、先のことが気になったとして、どうせ後回しじゃぞ?」

霊夢「……ええ、分かってる。てゆーか、狂うわね……なんか」ガシガシ

魔理沙「何を今さら。私からすれば、霊夢のほうが…………あー、そういうことかぁ」ウームム

霊夢「何よ」

魔理沙「んー、べーつに」ヒューヒュヒュッヒュー

霊夢「……」ジトー

零児「……」

KOS-MOS「彼女たちは、友達なのですね。零児」

零児「……ああ」

KOS-MOS「……」

 昨晩、あんなことを言ったからか、二人のやり取りを優しく見守る零児。
 どんなに見ても、やはり友達同士にしか見えないと、『甘い観測』をしているのだろう。

 自身がそうであるように、『程度の能力』は、決して甘いものではないと、知らないから。

小牟「ほーれほれ。感傷に浸っとる場合じゃなし。霊夢と魔理沙もじゃ。さっさと行くぞ!」

魔理沙「おーう。今行くぜ〜」トンッ

霊夢「あ、待ちなさいよ!!」バッ


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

KOS-MOS「…………」

メディスン「…………」

KOS-MOS「……この物語は虚構。忘れなさい、若き妖よ。次の目覚めで、貴女の役割を、知る為に」

メディスン「…………スー……さん……」

 ブツンッ

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
570 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/03(金) 01:32:43.42 ID:RLdexilno

〜〜〜〜〜〜−^・_〜=  -- ̄―――ー〜====^=   ・ 〜・ 〜〜−−−−−−−−−−−−〜〜−−−−

 メディスン・メランコリー

 人形の形に宿った妖怪。黒の服、赤のスカートを着用したブロンドの人形。

 小牟と、−−−から、毒を操る力と判明。しかし、それ以外の情報量が、これまでの誰よりも少ないことを確認。

 適正体である可能性は低い。ですが、貴重なサンプルとしての観察対象という扱いで、優先度は中に設定します。

〜〜〜〜〜〜−^・_〜=  -- ̄―――ー〜====^=   ・ 〜・ 〜〜−−−−−−−−−−−−〜〜−−−−

 KOS-MOS

 アンドロイドと呼ばれる機械。成人女性の体に、機械的なパーツを付けくわえた容姿。

 小牟と零児、霊夢の会話から、何か特殊な仕様を持つ事が判明。−−−が効かない固体である模様。

 以上から、優先度は不明。必要な情報を収集するための、要調査個体とします。

〜〜〜〜〜〜−^・_〜=  -- ̄―――ー〜====^=   ・ 〜・ 〜〜−−−−−−−−−−−−〜〜−−−−


 「……あらあら。随分とデータが集まってるじゃない」

 「森羅以外にも、あの時の英雄達だらけ、ね。……」

 「……ま、もう少し様子見かしら、ね」

 「……頑張ってね、ヒーロー?」


〜〜〜〜〜〜−^・_〜=  -- ̄―――ー〜====^=   ・ 〜・ 〜〜−−−−−−−−−−−−〜〜−−−−
571 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/03(金) 01:40:43.23 ID:RLdexilno

以上で、投下を終わります。投下中レスがあって、驚きました。喜びで。

輝夜「すごくドキドキですぅ〜」


ゲホン。皆さん、風邪にお気をつけて。

さて今回、コスモス>>>メディなのは、正直言いましてメディのことを殆ど覚えていないからです。

本筋に絡むためのネタはあるのですが、それ以外の没になるようなタイプの考察が出来るほど、キャラを知らないと。

という訳で、邪神様に大暴れしていただきました。でもここだけで、後はペナルティ与えますけど。


次回投下は少々不明。内容は「花映塚三面(相当)」となります。

それでは、また。
572 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/03(金) 13:54:38.89 ID:dQaMuy7DO
おつ乙〜。
そうか…二人共“魂を持つ人の形”だからか。メディちゃんは楽しそうだったな。ビームで炙られてたけど(汗 母親役とかのくだりで…ちょっとホロッと来たよ。

それにしても、コスモスさんはいつ見ても高性能だなぁ。
573 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/04(土) 14:43:25.05 ID:4klsG4Gqo

小傘「わちき、許されたっ!!」バーン!

天子「おい馬鹿やめろ。この話は早くも終了ですね」

ジューダス「お前こそ、止めたらどうだ。身内ネタや二次ネタで茶を濁すのは、感心しないな」

小傘「なんとなくだけど、貴女の其のセリフも違う気がするわ。なんかこう、渋いおじさまが言ってそう」
                                                ひなない てんし
天子「二重の意味でね。さ、今日の『一日一談』始めましょ。MCは完璧天人たる比那名居 天子とその他よ」

ジューダス「僕の事は好きに呼べばいい。さっさと始めるぞ。今回は『書籍・小説』を中心に、漫画の類は少しだけ話してやる」
            たたら  こがさ
小傘「わ、わちきは多々良 小傘って名前がありんすよ! えーっと、小説は…………はかない……つき?」
    ぼうげつしょう                     こうりんどう
天子「 『儚月抄』 よ。上にルビ振ってあるでしょ。後は 『香霖堂』 ね」
           ぶんかちょう しこうばな  ぐもんしき
ジューダス「書籍は 『文花帖』 、『紫香花』、『求聞史記』、『The Grimoire of Marisa』がある」

小傘「え、何々? ……ふんふん。本体的には、音楽作品の短編集もここに入れたいのね。ふんふん」

天子「本体って何よ。「中の人」でしょ。で、これらは大体、香→文→紫→求→儚→マリサの順でお披露目されたわ」
                         さんげつせい     いばらかせん
ジューダス「間に、長期連載している漫画 『三月精』 が入る。 『茨歌仙』 も、一応の最新漫画か」

小傘「文花帖は、天狗の文って子が主役の取材記。紫香花はほぼ同人誌。求聞史記は永夜抄までの説明だって」

天子「幻想郷の記録係視点の、独断と偏見がふんだんに入り混じった説明らしいけどね」
                                   もりちか りんのすけ
ジューダス「香霖堂は幻想郷の、異変の無い時の日常を、 森近   霖之助 という男を中心に描かれた話だ」

小傘「最後儚月抄だけ異色で、漫画や4コマが同時進行してたんですって。色んな視点での話だから、大筋は一緒らしいけど」

天子「前に設定を無視するって言ったと思うけど、詳しい主原因は、魔理沙のマスパ同時着弾ですって。何これ」

ジューダス「ほぼ、そのままだ。自称、光線であるマスタースパークを、わざわざ大きく旋回しながら、二発撃った事がある。
       それが、月の巫女に『同時に着弾』したんだ」

小傘「……えーっと、魔理沙が光で、巫女がマッハ?」

天子「逆よ逆。ま、光って部分は魔理沙の自称だから、元から信じてなかったけど、同時着弾は流石にないでしょって話よ」

ジューダス「光と自負するほどの速さに対し、降ろす余裕があるのか? と言うのも、弱いが一つの要因だ。
       他にも、月を一周している間に肌が焼けないだの、避けられない弾幕があっただの、様々ある」

小傘「最後のは、時止め常習犯のせいじゃなかった?」

天子「それなら、時に纏わる神様を降ろせばよかったのよ。ここら辺の甘さは、神主のせいなのか、漫画家のせいなのか……」

ジューダス「批判じみた話はここまでだ。細かいところまで、このSSに入るわけでもなければ、把握出来るわけでもないからな」

小傘「事実、魔法の森をはじめに、その周辺の場所があbワプッ」

天子「後の説明は……香霖堂は、元から当てにならないって神主が言ってるわ。事実、読めばそのヘンテコ加減が分かるけど」

ジューダス「ほぼ同人誌の紫香花も除外。文花帖、求聞史記、マリサはキャラ個人の設定として、ある程度利用している」

小傘「漫画は全巻持ってないから、所々抜けてるんですって。こんな所かしら?」

天子「そうねー。んー、面白いような、暇なような」

ジューダス「以後、あまり呼ぶな。……仕事ぐらい、僕に選ばせろ」

天子「……にしては、結構柔らかい表現なのねー」ニヤニヤ

ジューダス「貴様のように、時間を持て余していないからな」

天子「あっらー。本編じゃ白玉楼で、なーんにもしてないくせに」イラッ

小傘「なんか美味しい臭いが」

ジューダス「…………そうだ、な」

天子「……なによ。突っかかるなら、もっと突っかかってきなさいよ。つまんない」
574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/04(土) 15:07:46.86 ID:TLaMAKmDO
↑コナミ!コナミじゃないか!
575 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/04(土) 15:09:25.74 ID:4klsG4Gqo

小傘「あ、消えた」

ジューダス「悪かったな。ヒナナイ」

天子「え、な、なに、これ。気持ち悪い……」

ジューダス「実年齢はともかく、精神年齢は僕の方が上だ。なのに、煽るような真似をしてしまった」

天子「……はぁ!?」カチン

ジューダス「子供に接するなら、それ相応の態度があっただろうに。悪かった」

天子「何あんた、謝る気さらっさらないでしょ!? 私の方が、子供って言ってるでしょ、それ!」

小傘「け、喧嘩でありんすか!? …………あれ?」クンクン

ジューダス「そういったつもりだったんだが、上手く伝わらなかったか。僕もまだまだだな」

天子「よーし、そこになおりなさい。叩き斬ってあげるわ」ブンッ

ジューダス「ふっ。チャンバラごっこか? 怪我しないように、注意を払ってやる」シャキン

天子「言ってなさい、この女男!!」

ジューダス「僕は男だ!」


小傘「……臭いが違うわ。喧嘩してるように見えるのに、楽しそうな臭いというか……。
    …………これが、ツンデレってやつでありんすか?」

天子「いや、デレてないし?」キィン

小傘「……新ジャンル、「ツンデレ臭」……!」

ジューダス「流石に、それはない」カキンッ

小傘「うーん、そうかなぁ。……あ、今日はここまでで候。又の巡り合いまで、さらばっ!」

天子「あんたいい加減、キャラ固めなさいよ。ブレすぎ」

小傘「……てへっ☆」ベロン

ジューダス「……から傘が活きたな」ハァ
576 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/07(火) 21:42:09.29 ID:xTu+FAQOo

こんばんわ。レス、ありがとうございます。

三、四面同時投下。とか思ってたらやたら長引きました。しかも、まだ途中。というわけで、三面だけ先に投下します。

では、行きます。「花映塚三面(相当)」です。
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/07(火) 21:43:42.66 ID:aalzQUK0o
待ってた
578 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/07(火) 21:46:41.05 ID:xTu+FAQOo

〜〜〜再思の道・赤くない、花道〜〜〜

小牟「うおーう。なんじゃこりゃ!」

魔理沙「辺り一面、ひまわり畑だな〜」ヒャー

 無名の丘を越え、辿り着くは再思の道。
 本来であらば、彼岸花が咲き誇り、その毒が結構な濃度で漂っている場所だ。

霊夢「変ね。こんなところ、通った覚えはないわよ?」

零児「だが、さっきのような違和感はない。改変……か?」

魔理沙「案外、霊夢の記憶がごっちゃだったりな」

霊夢「ちょっと言い返せないのが、腹立つわ」

 しかし今回は、様子が違う。咲き誇るは彼岸花ではなく向日葵。それも、満開の状態だ。
 もしもこの状態で自殺者が通れば、天国への花道に見えてしまうかもしれない。
 あるいは、陽に向かう健気な花に心打たれ、生きる気力が戻るかもしれないが。

小牟「しかしこうなると来るのは……皆の衆。くれぐれも花には気を付けい」

零児「どういうことだ?」

小牟「花の妖怪がおるやもしれん。花をぞんざいに扱うと、キレるって二次が定着しちょる奴がの」

魔理沙「……ああ。幽香か」

霊夢「あいつねぇ……。確かに、キレるかも」

??「博麗の巫女にだけは、言われたくないわ。出会った妖怪を千切っては投げるって、噂なのに」

魔理沙「噂をすれば何とやらだぜ」

零児「……この少女が?」
    かざみ ゆうか
小牟「 風見 幽香 。幻想郷中の、四季の花畑を渡り歩く妖怪じゃ」

 零児達の進む道の先に降り立った、緑髪の少女。
 風見幽香……幻想郷縁起にて、危険度高、友好度低とされる、花の妖怪だ。

 白のカッターシャツに、赤いチェック柄のスカートを着用し、同じ色と柄のベストを羽織る。
 一見、笑顔の絶えない、淑やかな女性といった風体だろう。

 漂わせる妖力を除けば、だが。

幽香「あらやだ。有名になるような事、した覚えはないのだけれど」

小牟「知るルートが違うからの。……それに目撃頻度高いぞ、ぬし?」

???「ゆうかー。どうしたのーってあれー??」

霊夢「あ、虫」

魔理沙「尻が光らない奴だ」

リグル「うるさいわね。私にはリグルって名前が……」
579 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/07(火) 21:50:09.21 ID:xTu+FAQOo

幽香「何に驚いていたの、リグル」

リグル「ってそうよ、そう。そっちの男の人! どっかで見た事あるのよね」ジトー

 五月蠅く騒がしく、再び登場したリグル。
 前回と違う点と言えば、髪がショートカットから、幽香とおそろいのショートボブになっているぐらいか。
 それと身長差も相まって、姉妹のように見える。       そこ、姉弟って言わない。

零児「月の異変のとき以来か。……そうか。アリスも、記憶を持っていたな」

小牟「時系列的には矛盾なしじゃ。幽香と一緒におるんも、予想内デス」

リグル「ああ、あの時のお兄さん。……女の子ばっかり侍らしてる!?」

幽香「あら。なんてふしだらで、不埒なのかしら」フフフ

魔理沙「零児……お前……」

小牟「そんな。わしとは遊びじゃったのか!?」

 悪乗り三人衆である。

霊夢「まとめてやっていいかしら」

零児「その気持ちは十二分に分かるが、ここはあえて乗るべきだったな」

魔理沙「全くだぜ。衣玖に弟子入りしてこいよー」ブーブー

幽香「こんなにノリが悪いだなんて。だから、人気がないのよ」

霊夢「え、え? そんな。だって、零児……さん?」

リグル「うろたえてる。もしかしてこれって、レアなんじゃない?」

零児「……まぁな。だが、そこまでだ」

 微妙に泣きそうな霊夢の顔を、直視できずに少し逸らしながら、話を止める。

小牟「実はこれ、パチュリーは言うとらんのよな。霊夢や、はたてがよく言うとる」

霊夢「何の話よ」ケロッ

幽香「それで、何の御用かしら。貴方達」

零児「ここ自体に用はない。この先の、無縁塚に用がある」

リグル「あの永い夜のときは人里で、今回は無縁塚ねー。この間はミスティアのせいで訊けなかったけど、何の御用なのかしら?」

零児「幽霊を送り出すために、渡し守と交渉さ」

魔理沙「ん? えらく表現が柔らかくなったな」

小牟「細かいことじゃ。つーわけでここを通りたいわけじゃが」

幽香「……ねーえ、リグル」スッ

リグル「は、はひっ!」ビクンッ

小牟「キター!! AA略!」

 先ほど身長差から、姉妹のように見えると言ったが、具体的には顎を乗せてもまだ少し屈む程度の差だ。
 その身長差を活かし、幽香がリグルの頭に手をやり、触角の付け根をなでる。
 じっくりと、ゆっくりと。慣れた手つきで。

幽香「確か貴女、この男に……穢されたのよね」

リグル「え? ……あ、うん。見事に負けた、わよ?」ブルッ
580 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/07(火) 21:54:43.85 ID:xTu+FAQOo

霊夢「なんか、言葉選びが不快ね」ジトー

幽香「うふふふふ。どのぐらい、テクニシャンだったのかしら……?」

リグル「え、えーっと……的確に弱点を狙ってくる……みたいな?」ダラダラ

魔理沙「……ある意味、間違ってねーな。うん」ブルッ

小牟「いや、あれはもはや弱点とか、抵抗力とかの問題じゃないぞぉ?」ドキドキ

幽香「そう。貴女も、手を出されたのね?」

魔理沙「……あれ? これ、幽香に油注いでね?」

霊夢「気付くの遅すぎよ」

零児「……リグル」

リグル「ごご、ごめんねお兄さん? でも私は悪くないっ」

幽香「そうよ。リグルは悪くないわ。悪いのはそこのあ、な、た」

霊夢「ほら、やっぱり私のノリで間違ってない」フンッ

リグル「でもさ、幽香。貴女、弄り遊びたいだけよね」ハァ

零児「妖怪の面妖さを、久しぶりに感じた気がするな」ハァァ

幽香「うふふ……。乙女の敵には、お仕置きよ」フワッ

零児「まったく。……それで、彼女の能力はなんだ。小牟」

小牟「『植物を操る程度の能力』じゃな。他のもんと違うて、戦いには使わん。基本的に愛でるための能力じゃ」

 植物を操る程度の能力。枯れていた向日葵を元気にしたり、陽に合わせて花を動かしたり。

 恐らくこれで蔦を伸ばしたり、蔓の鞭、花びらの舞などは行えるだろう。
 だがしかし、彼女は植物を愛する妖怪。それを戦いの道具にするなど、以ての外だ。

魔理沙「前に一度見たときは、紫陽花を咲かせてたぜ。梅雨に合わせてだったっけな?」

幽香「さぁ、おいでなさい。貴方の力……確かめてあげる」フワッ

零児「…………」

 だが、能力に頼らないからこそ、非常に妖怪らしい。
 その力は、純粋たる妖力や身体能力だけでも相当な強さを誇る。
 気が乗れば、全力の魔理沙相手に六ボスクラスの善戦を、余裕を持って行えるほどに。

 それでいて、強者とは楽しむために戦いを挑み、植物を愛でる邪魔をすれば、雑魚であれ消し済みにする。
 純粋な、『妖怪さん』なのだ。

霊夢「幽香〜。零児さん、飛べないわよ」

幽香「……え? ……リグル?」

リグル「はっ。言い忘れてた!」ガーン

小牟「ぬしらしいというか。よっぽど大切な所じゃぞ、それ」
581 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/07(火) 21:59:31.89 ID:xTu+FAQOo

幽香「……本当なの?」

 強者かもしれない者と戦えると盛り上がっていたところに、悲しい事実が告げられる。

 それを聞いた彼女は、楽しみを取り上げられた子供のような表情で、降りてくる。
 心なしか、周りの向日葵の元気もなくなったように見える。

零児「残念なことにな。そのせいで、足手まといにもなっている」

魔理沙「よく考えてみたら、だいたいみんな空気読んでくれるよな。なんか」

幽香「……そう。なら、いいわ。行きなさい。三途の河原は、その道をまっすぐだから」

零児「……いいのか?」

幽香「〜♪」

リグル「あ、自分の世界に入った」

 顔をそむけ、鼻歌交じりに向日葵畑へと潜って行く彼女。
 興味が失せた相手に、一切の未練を見せず元のペースに戻るのもまた、妖怪らしいか。

 いや、その姿は、どちらかといえば妖精のそれに、非常に似ている。
 違いは、片手でただの人間程度なら、意識不明の重体に出来る事ぐらいだろう。

小牟「植物好きっちゅーのは、変わらんのか。メモメモ」

零児「……。一応、どういうことか説明してくれるか」

リグル「たぶんだけど、上空でならひまわりを傷つけずに済むとかじゃない?」

霊夢「そりゃ、こんだけ向日葵だらけじゃ、戦いづらいわよね」

魔理沙「まぁいいじゃん。戦わずに済んだんなら、えーっと、そいつは超重?」

零児「重畳だ。……魔理沙の言う通りだな」

小牟「パターン・ブラックウィンドォ。無血開城じゃな」

霊夢「黒幕?」

魔理沙「それだとカーテンじゃね?」

零児「何故そうやって、時々英語で話す。それに黒幕はWirepullerだろう」

霊夢「きっちり答えてたら、同じじゃないかしら。ま、行きましょ。ちょっとここ眩しいし」

零児「そうだな。じゃあな、リグル」

リグル「はいはーい。気をつけて〜。……はぁ。蜜〜っと」〜♪

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

幽香「……向日葵の花言葉は、『憬れ』。貴方達は……何に憬れて、花になったのかしら、ね?」

 彼女は、植物を愛する妖怪。優雅で余裕を持ち、御阿礼の見解とは違って、社交性もある。
 この植物に宿る者の声は、果たして聴こえているのだろうか。
 それは彼女にしか、分からない。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
582 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/07(火) 22:05:13.77 ID:xTu+FAQOo

〜〜〜〜〜〜−^・_〜=  -- ̄―――ー〜====^=   ・ 〜・ 〜〜−−−−−−−−−−−−〜〜−−−−

 風見 幽香

 女性型の妖怪。白のシャツ、赤のスカートと上着を着用。事前情報の、傘がない。

 小牟と、−−−から、植物を操る能力と判明。ただし小牟の証言より、能力に意味はない様子。

 適正体である可能性は低い。身体能力等に対する調査のみとして、優先度は低に設定します。

〜〜〜〜〜〜−^・_〜=  -- ̄―――ー〜====^=   ・ 〜・ 〜〜−−−−−−−−−−−−〜〜−−−−
583 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/07(火) 22:09:28.54 ID:xTu+FAQOo

以上で、投下を終わります。うん、やっぱり短い。

花の妖怪、幽香さんでした。結構誤解されてる方ですよね。案外親切な人なのに。

さて、次回は金土の晩あたりで、花映塚ラストを。

では。このへんで。
584 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/07(火) 22:15:24.24 ID:aalzQUK0o
幽香さんは素敵な人だよね

585 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/08(水) 08:20:23.51 ID:HyjtdexDO
乙っす!
戦わずに済むとは運が良かったな。まぁそんな時も必要だよね。

超貴重なうろたえ霊夢さんをありがとうございました。
586 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/08(水) 08:27:47.28 ID:SKmYB2EDO
流石幽香さん!マジどS(親切)
587 : ◆NamCapMdYU [sage saga]:2012/02/10(金) 00:14:32.66 ID:YnjJjc8Z0

霖之助「やぁ、こんばんわ。本日のMCを務めさせてもらう、こーりんさ」

シオン「はぁーい、シオンです。眼鏡キャラってことで、お呼びが掛かったわ。……霖之助さん?」

マミゾウ「ほう、おぬしもか。わしも、同じ様に呼ばれたぞい。なんでも、ムゲフロに眼鏡キャラがおらんとか」

霖之助「ナムカプも、シオンさん以外誰かいたっけ……? だそうだ。……本当に、誰がいたかな?」

シオン「似合いそうな人なら、ワルキューレさん、かな? 中の人的にも」

マミゾウ「ほんじゃらほいっ。今日の『一日一談』じゃぞ〜。今日は『異変・前編』じゃな」

霖之助「今回の異変ではなく、東方原作における異変だね。ただし、旧作と呼ばれる第五弾までは、ここでは取り扱わないよ」

シオン「win版第一弾と呼ばれる、東方紅魔郷からの話ね。システム面は旧作と非常に似通ってる。けど、お話は新作側なの」

マミゾウ「事はとある年の夏、幻想郷中を核の炎……じゃのーて、赤い霧が覆ったんじゃ。日光も余裕で遮る程の濃度での」

霖之助「それは数日続き、流石にまずいと思った巫女や魔法使いが、単独で元凶っぽい紅魔館へ向かった、というわけさ」

シオン「その後のお話は、本編を待っててね。……花映塚が終わった後は、閑話休題のつもりだから、まだまだ先だけど」

マミゾウ「次は、妖々夢じゃな。冬も終わり、春の雪解けの季節がやってきそうなその時期の話じゃ。幻想郷では、まだ雪が降っとったんじゃ」

霖之助「いい加減、寒いままではいけないと霊夢と魔理沙、更には紅魔館のメイド長、咲夜が異変解決に乗り出したのさ」

シオン「春がありそうな場所を探し回っていて、本編のあの軌跡をたどり、対アリスさん戦でようやく目星がつくのよね」

マミゾウ「人形師の話に従い、空を飛ぶとどんどん温かくなったんじゃ。して、結界の前でたむろってた三姉妹を倒し……」

霖之助「春度を集めていた実行犯、妖夢君と対峙し、それを破った三人は、主犯格たる西行寺のお嬢様と戦い……」

シオン「結果はまぁ、あんな通りね。春度が足りずに西行妖は満開にならず、八分咲きした後、再び枯れるの」

マミゾウ「あの下に封印されているものが誰かを、白玉楼の主さんは確認したかったんじゃな。じゃが……」

霖之助「これ以上は、語ってはいけない事だそうだ。知りたい人は、妖々夢Phまでクリアーしないといけない、かな?」

シオン「まぁ流石にそんな時間はないだろうから、適当なワードで検索すれば分かると思うわ。さて、とりあえず以上かしら?」

マミゾウ「わしらのノルマはこんなもんじゃと。しっかし、眼鏡キャラが少のうて、ちょっと残念じゃそうな」

霖之助「だから少し無理矢理、あの狐さんに道具を持たせてるんだってね。それでも、あまり似合わないそうだから出番少ないとか」

マミゾウ「眼鏡はそんな簡単に、着けこなせるもんじゃないしの」フフン

シオン「そ、そんな大層なものだったかしら。……じゃぁ私はこの後、カレー屋さんに行くから」

りん之助「今回は、外の珍しい物を見せてもらうという約束だ。手始めにまず、メイドキッサ……という物を……」

マミゾウ「……ぬし、分かって言うとるじゃろ。それ」

シオン「褌一丁なのって、もしかして……」

マミゾウ「シオンさんめが平気なのが、以外とゆーか、肝が諏訪っとると言うか……」

シオン「……兄さんの褌姿、しょっちゅう見てたから」ハァ

こーりん(褌)「ああ、くれぐれも誤解しないでもらいたいが、僕はこーりんであって、霖之助じゃぁないよ!」キラン

マミゾウ「ん、追加の原稿じゃな。どれどれ……『こーりんは、本編では絶対出ないのでご安心ください』じゃとさ」

こーりん「悲しい話だね。けども僕は、屈しないよ!」キリッ

シオン「…………はぁ。お先に失礼させてもらうわ」

マミゾウ「おーう。お大事にの〜」
588 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/12(日) 00:41:27.98 ID:RjwD/T/ro

こんばんわ。レス、ありがとうございます。

幽香さんのUSCネタは大体阿求の所為。そうに違いない。


さて、では投下します。「花映塚ラスト」です。どうぞ。
589 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/12(日) 00:47:19.34 ID:RjwD/T/ro

〜〜〜無縁塚・咲き誇る深紅の花〜〜〜

零児「…………」

小牟「…………」ナンマイダー

 小牟が、手を合わせて念仏を唱える。
 ここは無縁塚。外来者の骸を弔う場所。あるいは、自殺の名所。
 幾つもある、積み重ねられた石は、無縁の墓。

 結界の内側でもっとも霊が多いここに、彼岸花は咲き誇る。

魔理沙「相変わらず、無縁塚は何にもない所だな」ドッコイショ

霊夢「……あのねぇ。あんたがもたれかかってるの、骸よ」

??「…………」

魔理沙「うわっ。縁起わりぃ」

 毒をはらみ、一歩間違えれば死に至りかねない、彼岸花。
 再思の道では、その毒に当てられた自殺志願者が、生きる気力を取り戻す事例がある。
 死ぬ気もなければ、この程度の毒ではなんともない四人には、関係のない話だが。

零児「骸は骸、なんだが」
             かげきよ
小牟「どうみてもこれ、 景清 じゃな」

景清「…………汝ら、何用でここに来た」

魔理沙「ひゃぁっ!?」

霊夢「珍しい。正真正銘の骸なのね」

小牟「地獄からの使者じゃしな。死者なだけに

零児「……」

魔理沙「……クッ」

霊夢「あんたね……」

小牟「……んーとの、小町めを働かせにきたんじゃ」

 魔理沙が、捨てられたと思って腰かけた鎧……いや、骸が動く。
 平景清。小牟の説明通り、地獄で眠っていた所を起され、かつての大異変の一端を葬った、恨みの武士。
 黒緑の甲冑にみを包んだ、生命の息吹の無い、白い顔の男だ。

景清「……渡し守をか。何故か」

霊夢「この彼岸花が溢れてるの、幽霊が原因って分かるわよね?」

景清「……童共が気付いている事。其の方が驚く程度にな」

魔理沙「失礼な死体だな。まぁ、それのせいで花が咲きまくってて、ちょっと過ごし難いから掃除しろって」

零児「言い方に少々難があるが、だいたいこんなところだ。渡し守が何処か、教えてくれないか」

景清「……其の樹の裏にて、寝ておる」

 その原動力はただ恨みのみ……などと、寂しい物ではない。
 武士の志たる、御恩と奉公の元となった概念。それから来る、主を失った悲しみ。
 それが彼を、弔い合戦という形で動かしていたのだ。

小牟「結局寝とるんかい。わしが見てくるから、ぬしらはまっとれ」

霊夢「あーうん、任せたわ〜。不安だけど」

魔理沙「頼んだぜー。不安だけど」

零児「……なら何故行かせた」
590 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/12(日) 00:52:16.59 ID:RjwD/T/ro

『まーったくもう、期待通りの胸元ダーイブ!!』ボフンッ

『きゃっ!? な、なななんだい、襲撃かい!?』ガバッ

 そんな彼が教えてくれた、樹の裏へと向かった小牟が何か変な事をしている。

 それは多くの漢が夢見たような、そんな行動を。
 漢なら夢見る、その行動を。

零児「……あいつ、何か余計なことしたな」

『……お前さん。なんで人の膝の上にいるんだい?』

『元は主の胸の上にダイブしたんじゃぞ。ぬしが驚いて上体上げたから、こうなったんじゃ』

『あーそうなのかい。それは悪かったねぇ…………ってまちな。なんであたいの胸に飛び込んでくる必要があるのさ』

『そこに、山があるからじゃ』キリッ

『はぁ???』

零児「………………」ザッ

霊夢「あ、行ってらっしゃーい」

 裏から聞こえてくる声を聞き、眼から光が失われた零児。
 そんな無表情なまま、樹の裏へ向かう零児を、霊夢が見送る。

魔理沙「一つ積んでは父の為ー、っと」コトッ

景清「……縁起でも無い事を」

 心にもない言葉を口に出しながら、時間を潰す魔理沙。
 かなり縁起が悪いのだが、それに対する恐れも知らないのが、彼女らしい。

『ま、まぁ、早く退いておくれよ。立てないじゃないか』

『おー、すまんのぉおう?』ヒョイッ

『おや、お兄さん。狐の飼い主かい?』

『そんなところだ。……すまんが、少し借りるぞ』

『いやー、まぁ別に好きなだけ連れて行けばいいよ。あたいのじゃないし』

『まて、まつんじゃ零児。話せばわかる!』ジタバタ

『有栖流『千手観音・壱百式』!!!』

 スパパパーン!

小町「……えらい怒ってるねぇ、あのお兄さん」

霊夢「百回ですって、魔理沙」

魔理沙「」ガタガタガタガタ

景清「……六段で崩れたか」

 抑えきれないオタクの血が、零児の気苦労を増やす。
 同時に、未だ慣れない尻叩きの音に、顔真っ赤で震える魔理沙である。

小牟「むぅ。わしは全国数百万の小町ファンの、代弁者になっただけじゃーちゅうのに……」ヒリヒリ

零児「そんな、欲塗れの集団がいてたまるか。……お前さんが、渡し守の?」
    おのづか こまち
小町「 小野塚 小町 さ。話は大体、博麗の巫女から聞いたよ」

霊夢「すぐにでも、仕事始めなさいよ。あんたがやる気見せれば、それで終わりなんだから」ゲシゲシ

小町「蹴るのはおよしよ。しっかし、もうそんな周期だったかい? 前回からあんまり経ってない気がするんだけど」

 小野塚小町。どこか下町風な、だらけた服の着方をする少女だ。
 服装は幽々子に似た、緩やかな着物。鎌を持っているのに、恐ろしく見えないのは、表情の柔らかさ故か。
 ただ、これまでの少女より明らかに年上。先の幽香より、一回りお姉さんだ。

魔理沙「お? もしかして覚えてるのか?」
591 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/12(日) 00:54:32.76 ID:RjwD/T/ro

小牟「もしかしたら、もしかするかもの」

景清「……その前に、童共に訊く事が有る」

零児「なんだ、景清」

景清「……何故我の事と、渡し守の事を知っておる。名乗りを上げた覚えはない」

小町「あ、そういやそうだねぇ。なんとなしに流されてたけど」

 只でさえ怖いその能面を、悪鬼の如く更に凄ませて問い詰める景清。
 その怖さたるや、夜道に出逢えばまず失神か、悲鳴を上げながら一目散に逃げるであろう程だ。
 声も、それに見合っているのだから、なお怖い。

小牟「……そういえば小町めは、この時にようやく出会ったんじゃったか?」

魔理沙「そーなのかー?」

霊夢「ええ、そうね。死神の話はちょくちょく聞いてたけど、サボり魔は初めてだったわ」

小牟「対して、平景清は……どういえばよいかの、零児?」

零児「……魔に落ちた源氏一行を屠った、兵」

景清「……何?」

 彼をそう語り始める、戦友。
 どんなに恐ろしい顔をしていても、今、自分達の事を忘れていても、彼は戦友だ。
 漂う気配も尋常でない程にまで刺々しいはずなのに、子供が懐く程に、優しいのだから。

 己が陥りかけていたかの妄執を、写す鏡としての一面もある。

零児「はたして、今の『お前さん』がそうかは知らん。だが、三種の神器を用い、源氏の呪いを断ちきった。違うか?」

景清「何故、その事を。よもや貴様ら、源氏の同胞……!!」

小町「いやー、どうみても違うんじゃないかい? 生きてるし、巫女だし」

魔理沙「後で教えろよなー、零児」

零児「渡し守の言う通りだ。それと魔理沙。歴史の勉強になるが、いいんだな」

魔理沙「三種の神器だけでいいぜ」キリッ

霊夢「……ん? 平の景清?」アレ?

 それぞれに、歴史への興味を示す。
 魔理沙はよく、霊夢から歴史の話を聞く。暇つぶし感覚でだが。
 霖之助の所に赴くのも、似た理由か。勿論、あくまで訪ねる理由のほんの一部だが。

景清「……まぁ宵。どの様な外法を用いようと、復活は叶わん」

小町「そうそう。そんな簡単に復活されちゃぁ、地獄の意味がないよ。あはははは」

零児「…………」

小牟「…………」

小町「……ん? 何か言いたそうな顔してるね」

零児「……何でもない」

小牟「気のせいじゃ。そんな顔しちょるように見えたんなら、小町。おぬし疲れとるんじゃよ」

霊夢「あんだけ寝てて、そんなはずないでしょ」

 この場合、小町が正しい気がするが、あまり気にしてはいけないのだろう。
 地獄から源氏が復活するだの。倒して地獄に送り返したのに、その地獄もろとも混ざって戻ってくるなど。
 そんなことが、そう簡単に起きてはたまった物ではない。何のバーゲンセールなのか。
592 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/12(日) 00:58:34.69 ID:RjwD/T/ro

景清「それに、このような童共に、復活させられる程の器量が有るとも思えぬ」

魔理沙「# 何、人の見た目で決めつけてんだぁあ!?」

零児「落ち着け、魔理沙。景清はこういうやつだ」

景清「……」フン

魔理沙「こういうやつって……人の事馬鹿にして」

景清「……よく吠える。益々以て、確信する。童には無理だとな」

魔理沙「##」

小牟「もーちょい、たろすけのほうがましかの?」

霊夢「たろすけ? 誰、その何故かしらないけど、むかつく名前」
                                  おのこ
小牟「……景清の事を理解しちょる、ぬしよりも更に若い男子じゃ」

 地獄めぐりを制した、そんな出鱈目な男子を、懐かしむように思い出す。
 思えば景清とたろすけも、初めはいつ斬り殺されるかもわからない関係だった。
 今はそういった刺々しさはない。むしろ余裕があるようにも取られる。

小町「あーもう、景清も煽りなさるなって。じゃぁ、あたいは疲れてるらしいから、もうひと眠りしてから仕事に……」

霊夢「今働けっ(亜空穴)」ガッ

小町「きゃんっ」ドンッ

零児「……」イラッ

魔理沙「ま、待ってくれよ零児。これ以上、私のトラウマを呼び戻さないでくれ!」ガシッ

景清「……」

 零児が手を、パキパキと鳴らす。            モノノフ
 その手を止めるように、腕に抱きついた魔理沙を見て武士は、もの思ふ。

景清「……やかましい」

小町「あいたた。もぉ、仕方ないねぇ。全く、人使いが荒いんだから……」

霊夢「…………で、仕事し始めたけど……異変解決しないわね」

零児「解決した時の事、もう一度頼む」

霊夢「んー。……ここまで来てから、小町と戦って。閻魔様と戦って。しばらくしたら元通りだったわ」

魔理沙「霊夢が神社に戻ってから、二日ぐらいたってた気がするぜ」

??「正しく言えば、二日と三時間四十七分ですよ、魔理沙。ま、そこまで正す必要はないですが」

魔理沙「げぇっ。この声……」

 無縁塚の奥から響く、空間の響きを無視した、落ちついた少女の声。
 静かであり、重くあり、心に深くのしかかる声。

??「全く。またサボっているのかと思いきや、不可思議な異変に囚われているとは。それでも死神ですか」ハァ

小牟「おお。わしと同じくらいじゃ」

零児「彼女が?」

??「申し遅れました。私は四季映姫・ヤマザナドゥ。察しの通り、閻魔です。有栖家の男子よ」

零児「!」

 四季映姫。幻想郷担当の閻魔であり、地獄の最高裁判官だ。

 閻魔大王が被っていたもの青くした、ヤマの冠を被る。
 服も同様に閻魔のそれを青く、もう少し柔らかくした印象だ。
 髪色は緑。他者から見て右側の揉み上げを伸ばしている。……何故だろう。
593 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/12(日) 01:03:26.23 ID:RjwD/T/ro

霊夢「閻魔様。まさかまた、お説教しに?」

映姫「其のつもりでしたが、この状態はあまり長引かせるものではありませんね。外との整合性が取れず、いずれ破たんするでしょう」

小牟「記憶があるっちゅーことは、やはり……って、おお? 新情報」

映姫「ですが、少ししくじりましたね。私が入ったことで、異変の筋書きが変わったようです」ハァ

零児「そこまで分かるのか。……ああいや、分かるのですか」

映姫「普段の口調で構いません。そも、あの時はもっとがっついていたはずですよ。成長した、というわけでしょうが」

零児「(あのとき……?)」

魔理沙「筋書きが変わったって、どういうことだ?」

映姫「ただ単に、今まで同様、私と戦えと言う事です。……」パカッ

小牟「お。浄瑠璃の鏡じゃな。……機能的な手鏡じゃ」ショボーン

魔理沙「……女の子らしいとか、考えてたのか?」

 浄瑠璃の鏡……閻魔達がもつ、対象者の経験を写す鏡。
 いかなる嘘も、その前では無意味であり、正確で厳格な裁きの材料となる。
 その能力は、現世の者が手に入れてはならない、冥界きっての秘密道具……のはずだ。

零児「さぁな。……その調子だと、手は抜かないようですね」

映姫「ええ。今なら、外にはなにも漏れない。少しばかり羽目を外しても、構わないでしょう」ンー

霊夢「羽目を外すって……閻魔様にしては珍しい事を」

映姫「その自覚はあります。博麗の巫女」

魔理沙「なんか、どいつもこいつもテンションあがってんな〜。萃香といい、諏訪子といい」

小町「幽霊、本当に大量にいrええ映姫様!? なんでこんなところに!?」

景清「! ……閻魔大王……」

映姫「……ただ、この設定はいただけません。私が閻魔大王を名乗る等、驕りが過ぎるでしょうに」ハァ

霊夢「……」

 彼女は自分を、一介の末端器官に過ぎないと自覚している。
 その理由はいくつかあるが、大きな理由は「分不相応」だと考えているのだ。
 ただただ魂を、地獄へと送らせたくないだけの、我儘な地蔵なだけなのだから、と。

映姫「さて、小町。手伝いなさい」

小町「ああああ、あたいは別にさぼってたわけじゃ…………え? 手伝うって、何をです?」

映姫「『弾幕ごっこ』ですよ。これから、彼らの小手試しです」

小町「は、はぁ。……映姫様の手前じゃぁ、さぼれないね、こりゃ」ハァ

小牟「……はっ。上司と部下……この組み合わせは多いっちゅーのに、案外なかったの」

霊夢「そうね。ま、誰がどう組もうと、関係ないけど」

魔理沙「まぁなぁ。なんだかんだ結局、パワーだぜ」

零児「景清はどうするんだ?」

景清「……我は何もせん。小娘達の遊びに、付き合う義理はない」

魔理沙「でも、一人は閻魔だぜ? ……今は閻魔大王だっけ?」

景清「……それでもやはり、小娘達と戦うのは、性に合わん」

小牟「……まぁその顔で弾幕張られたり、迫られたら夢に出るからの。それでよい」

零児「二人とも、そんな魂じゃないがな。……それでいいのか?」
594 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/12(日) 01:07:03.00 ID:RjwD/T/ro

映姫「ええ、来なさい。世界を救った英雄よ。その力の断片、私に見せてみなさい」

零児「……俺は、英雄なんかじゃ、ない」

映姫「謙遜は、時に罪となる事を知りなさい。審判『ラストジャッジメント』!!」

小町「まずは、投銭『宵越しの銭』だよっ!」

 マスタースパークとは違う、正真正銘のレーザービームが、開幕の音頭のように宣言される。
 『ラストジャッジメント』……悔悟棒に乗る、対象の罪を視覚化した弾幕だ。
 有り余る閻魔としての力が左右にこぼれ出ながら、対象を貫かんとする。

 小町のスペルはほぼ、ただの広範囲弾幕だ。
 文字通り、銭が投げられている事以外は、だが。

霊夢「ちょっ、太いわよ!? それにお金!?」ガリリッ

映姫「四人分の罪が、乗っていますからね。しかも今回は……これを薙ぎますっ」ブンッ

小牟「ちょっ、それやばす!」ガリリッ

零児「霊夢、小牟!」

小町「難なく避けたつもりかもしれないけど、あたいから眼を離しちゃ駄目だよ、お兄さん!」ブンッ

零児「いつのま、にっ!」ギキンッ

魔理沙「そいつの能力だ、零児! おらあっ、ばら撒きぃ!」

 小町の能力。それは、「距離を操る程度の能力」だ。
 平時であれば、仕事である三途の川渡しを、その霊魂の六銭に応じて伸ばしたり縮めたりするだけだろう。
 だが、いざ戦いとなれば、自分の好きなタイミングで距離を弄り、一方的な攻撃が可能になる。
 勿論、それでも欠点はあるのだが。

霊夢「やっぱり、相変わらずやっかいね。さっさと止めるわよ! 霊符『無双封印・散』!」

映姫「…………」

 ズガガガガッ

映姫「……その弾幕、全て『白』です。本体はその後ろっ!」ブンッ

小牟「白黒能力が、こんな方法で発揮されるじゃと」

霊夢「これでやれるとは思ってないけど、まさかねぇ」

 対し、四季映姫の能力は「白黒はっきりつける程度の能力」。
 物事の境をはっきりと定め、どちらに属するかを、その絶対の権限の元に確定させるのだ。

 彼女の前では無駄な小細工は意味を成さず、虚言も妄言も全て、悔悟棒に乗せられ打ち砕かれるだろう。
 閻魔たる彼女の宣告、『ラストジャッジメント』によって。

小町「お兄さん、剣さばき上手いねぇ。これでも結構、フェイントかけてるんだけど、さっ!」ガンガンッ

零児「ちいっ。間合いが……掴めん!」

魔理沙「てゆーか、小町こんな強いのかよ。見なおしたぜ」ヒュー

零児「……魔理沙っ!」ガキンッ

魔理沙「ほいきたっ、乗れ!」

小町「ありゃ。空を飛べば、逃げられると……」

 グワンッ    ガリッ

小町「思ったのかい!?」

 箒に捕まった零児と、地上にいた小町の間が一瞬で詰められる。
 速さなど意味がなく、どれだけ遠のいてもその距離を無くされてしまう。
 地上で戦っている方が良いかもしれない。何せ一点に集まれば、そこに注目すればいいだけなのだから。
595 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/12(日) 01:10:43.96 ID:RjwD/T/ro

魔理沙「ちぃっ。距離を弄られちゃ、逃げも出来ねーってか!?」

小牟「……所詮、天則はゲームじゃな。じゃが……」キラッ

霊夢「『パスウェイジョンニードル』!」シュバッ

小町「おおっとぉ、『死出の風』!」キキキンッ

 針というにはもう少し大きな、串のような弾幕を放つ霊夢。
 それに反応し、死神は大鎌を前に差し出しながら回転させて、針を弾き飛ばす。

零児「すまん、霊夢!」

映姫「後ろを見せるとは、余裕ですね。巫女よ!」シュッ

小牟「次のスペルじゃと!」

映姫「その余裕の先にある物を見せなさい。審判『浄頗梨審判 −博麗 霊夢−』!」

 映姫の掲げた手にあった、スペルカードと浄瑠璃の鏡が光る。
 すると辺りの空間が揺らぎ、半透明の大きな鏡を生みだす。
 その鏡は霊夢を映し出し、具現させる。

霊夢「っ、小牟!」

映姫『さぁ小町、縛りなさい!!』

小町「あいよっ、映姫様。地獄『無間の狭間』……を、大鎌で……!」グググッ

小牟「もう攻略法は検索済みじゃっ!」ダッ

零児「降りるっ!」バッ

魔理沙「もってけ、零児! 『スプレッドスター』!」

小町「遅いよ、お兄さん。私から一緒に離れたのが運の尽きさ!!」

小牟「」ガチャッ

零児「」ガチャッ

小町「げ、なんか嫌な予感が」

零児「『銃の型』……」
          シュウ
小牟「名付けて『蒐』じゃ!」ダダダダダンッ

 小町のスペル、『無間の狭間』。一定の空間にの距離を弄り、正しく識別する者以外の動きを阻害するものだ。
 いつもの調子であれば、人二人分程度の半径を持つ、円柱の空間を弄る。
 だが本気を出すと、博麗神社程度の広さまで、その集中に収められるのだ。

 しかしそれには、やはり大きな前振りが必要。
 例え本気でも、その範囲を掌握するまでに邪魔されれば、失敗するだろう。
 故に、そこに銃弾を一点集中させた新技を披露する。も……

映姫「させません。霊符『二重結界』!」

霊夢「させるものです……か!?」

映姫「その鏡に映った者……それは、貴方自身なのですよ。霊夢!」
     亜空穴
魔理沙「 あれ 読みあれかよ」

零児「ちっ。弾があらぬ方向に……!」

小町「さーすが映姫様。んじゃ、『死神の大鎌』横ぶりってねぇ!」ブンッ

 零児と小牟が放った弾丸が全て、結界の向こう側へと抜けてしまう。
 その結果、小町のスペルが難なく発動する。

 死神の大鎌を横に振ることで、辺りの空間に丸ごと傷を付ける。
 それが刻印の代わりとなり、空間の距離を歪ませる。
596 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/12(日) 01:12:33.87 ID:RjwD/T/ro

零児「っ……これは、鬼門封じか……!」

小牟「似たようなもんじゃが、まだ動ける! じゃが、早く小町めを倒さんと……」

映姫「残念ですが、そうはいきませんよ。嘘言『タン・オブ・ウルフ』!」

小牟「こ、ここで追加スペカじゃと!」

 『タン・オブ・ウルフ』。青く高密度の中球が行動を制限し、動けなくなった所を、舌のような赤い中球が襲うスペカだ。
 その舌は精密に動き、嘘言を弄す輩に絡みつき、喰らい尽くす。
 狼の嘘を並べた少年を喰らった、嘘の存在のように。

霊夢「何これ、濃いわよ!」ガリッ

小牟「青はフェイクじゃ。赤に注意せ……ってこんな動けんとやばい……!」ガリッ

小町「おっとぉ。……酷いねぇ、映姫様も」ホォ

零児「ちぃっ、『加速装置』! ……?」

魔理沙「ならそれを、撃ち貫けば……恋符『マスター……』」

小町「そうは問屋が降ろさないんだよねぇ。『死神の大鎌』!」ブワンッ

魔理沙「ひゃぁっ!?」チリッ

映姫「…………虚言の塊よ。狼の胃に収まりなさい」シュンッ

霊夢「くっ、『無双てn』……?」

 全方位に放たれる青い光の中から、赤い光が襲い掛かる。
 只でさえ、小町の無間の狭間で身動きが出来ない所に、高速の弾道が……

 パキンッ!

零児「……なに?」

小牟「……は? 何が割れたんじゃ???」

霊夢「結界が……消えて行く?」

映姫「…………」

 襲いかからない。
 赤の弾幕は五人を無視し、あらぬ方向へと伸びた。
 そして虚空を叩く様にして消滅。と同時に、異変の結界が消えさる。
 赤と青の細かな粉末のような何かを撒き散らしながら、元の風景に戻っていく。

小牟「……」ポケー

霊夢「……閻魔様。これは、いったい?」

映姫「言ったでしょう。虚言の塊よ、と。いつまでも、思い通り動くと思わない事です」

霊夢「は? え??」

映姫「いえ、こちらの話です。そうですね……初めに言った、整合性。それを崩したのです」

零児「そんな切り口があったとはな」

映姫「貴方方では、無理ですよ。浄瑠璃の鏡があってこそです」

魔理沙「なら、それを貸してくれよ〜。特別に、異変を解決するまででいいからさ」

映姫「……貴方はまだ、そのようなことを。それに、これはそう易々と貸し与えてよい物ではありません」

小牟「地獄七つ道具の一つじゃしな。小町めと、景清めは消えたの。……変わりにコスモスが倒れとる!?」ガビーン

 結界が崩れ去った後の、無縁塚。墓石のように重ねられた石の傍に、コスモスが倒れている。
 零児と小牟が駆け寄り、その安否を確認する。
597 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/12(日) 01:16:05.93 ID:RjwD/T/ro

魔理沙「ああ、あの高性能式か。騒霊のときみたいに、出てくる場所が違うな?」

映姫「……」

零児「コスモス。無事か?」

KOS-MOS「…………システム、起動。ボディチェックを開始します」

小牟「お、動いたの。……今の今までうち捨てられちょったっつーわけかの」

霊夢「…………」

KOS-MOS「……システム、一部破損。躯体稼働率、60%に固定。セーフティモードで起動します」ムクッ

小牟「たった。コスモスが立った!」

魔理沙「……スレンダー美人だぜぇ」

KOS-MOS「……一時間四十二分ぶりです、零児。小牟。レイムに、マリサも」

魔理沙「お、覚えてるんだな。えーと、モッコス?」

KOS-MOS「KOS-MOSです、マリサ。……それから、そちらの女性はどなたでしょうか」

映姫「私は四季映姫・ヤマザナドゥ。貴方の事についても存じていますよ。超未来の住人」

KOS-MOS「閻魔……閻魔大王とは、違うのですか?」

映姫「ええ。その部下という位置づけになります」

零児「その事なんだが……何故、俺達の事を? 例の、浄瑠璃の鏡か?」

映姫「そういう事にしておいてください。詳しくは、禁則事項なので」

 閻魔とは、その役柄上多くの守秘義務が生じる。
 命を預かり、裁く権限を持つ事を許された存在なのだから、あたりまえの話ではあろうが。

霊夢「それじゃぁ、説明は不要かしら。コスモス?」

KOS-MOS「……いいえ。異変の時にも話しましたが、私にインプットされたデータは、
        幽霊が、気質と呼ばれる個体情報を元に、花へ性質変化することだけです」

零児「そうか。なら、一度詳しく話そう。閻魔様は、如何します?」

映姫「結構です。私は私なりに、既に調べましたので」

小牟「浄瑠璃の万能性、恐るべしじゃな」

魔理沙「それじゃ、歩きながら話そうぜ。ここから紅魔館って遠いしさ」

KOS-MOS「了解です、マリサ。ごきげんよう、エイキ」

映姫「ええ。さようなら。……はぁ」

 深々とため息を吐く、映姫。
 それもそのはず。ここまで羽目を外したのは百数十年ぶりなのだ。
 それに、嘘ではないといえ、本当でもない事を彼らに話さざるを得ない状況から開放された安堵。
 日頃の忙しさも相まって、体の筋が弛緩するのも無理はない。

映姫「多少なりとも、この異変の影響を受けてしまったと、そういうことでしょうか。黒幕の思惑に、わざわざ乗ってしまったのですから」

小町「んーっ……。寝てたような、寝てなかったような。……おや? 何かあったんですか。映姫様?」

映姫「特には。それよりも小町。貴方が気にするべきは、貴方の仕事だと思いますが?」

小町「はっ」

映姫「はっ。じゃありません、全く……。今回は事情が事情ですから、これから巻き返せば、多めにみましょう」

小町「ま、待って下さいよ映姫様。あたいは気付いたらここにいて……」

 先ほどの異変の時同様に、樹の裏から出て来た小町。
 実はそこにいる事自体は気付いていたのだが、あえてスルーしていた。
 考慮すべき事案が、多数あるのだから。

映姫「…………」

小町「だ、だんまりだと逆に怖い。はぁ、何があったんだろうねぇ、あたい」ウーン
598 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/12(日) 01:17:25.71 ID:RjwD/T/ro


「……今回の異変、相当なものですね。誰が行っているのか、推測も出来ないとは。ですが……」

「……まぁ、いいでしょう。私が何かするほどでもないし、何かしなければならない程になれば、それはそれで所詮その程度だったと」

「それにしても、零児……いえ、有栖家と言うべきでしょうか。彼の血は……やはり、波乱の血なのでしょうか」

「あのような力を、持つはめになるとは」

「……」

「いえ、あの金狐に憑かれる程。……その地点で、非常な事」

「そうですね。スキマ妖怪、八雲よ」

「……」

「だんまりですか。それもまた、よしとしましょう」

「有栖家の、呪いとも言える運命。それに対して外野が深く口を挟む事こそ、野暮というものでしょうし」

「ですがスキマ妖怪。貴方のしようとしている事。それは…………」

「いけませんわ、閻魔様。どこで聞き耳が立てられているか、分かったものではありませんのに」

「……いいでしょう」

「ですが八雲よ。貴方は少々、彼らを見くびり過ぎている」

「違いますわ。彼らの力は、存じ上げております。ですがそれでも、私は成さねばならないのです」

「……。そうですか。では、私は特に言及しない事にしましょう。ですが、貴方が成そうとしている事は……」

「……」

「黒ですよ。……八雲紫」

「……」

「…………」

「……」

599 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/12(日) 01:19:03.66 ID:RjwD/T/ro

〜〜〜〜〜〜−^・_〜=  -- ̄―――ー〜====^=   ・ 〜・ 〜〜−−−−−−−−−−−−〜〜−−−−

 ……………………

 ……………………

 ……………………

 私が、虚言の……

 ……………………

 ……………………

 …………塊………

〜〜〜〜〜〜−^・_〜=  -- ̄―――ー〜====^=   ・ 〜・ 〜〜−−−−−−−−−−−−〜〜−−−−
600 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/12(日) 01:24:00.94 ID:RjwD/T/ro

以上で今回の投下を終わります。初のガチ負けだったりしますね。

やっぱりと言うかなんというか、花映塚は苦手ってイメージが払拭できません。

まじ30秒無敵とか止めてください映姫様。死んでしまいます。


さて、次回は閑話休題3、「昨夜の騒ぎ」です。だいたい、風神録以降のキャラ達のあれこれ予定です。

では、この辺で。
601 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/12(日) 07:52:21.84 ID:qs1gFiTDO
お疲れ様!
やはり閻魔は格が違った。

こまっちゃんも頑張ってましたね〜。そして惹かれる。まぁ、もしも男がダイブなんぞしたあかつきには…地獄が待ってるかも知れないが。

コスモスさん合流!にとりが見たら興奮死しそうだ…。
602 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/13(月) 01:57:56.57 ID:wW8+8X8g0

こんばんわ。花映塚キャラの初期設定を投下しにまいりました。

それから、仙界陣営の設定に関しては後回し決定です。次の閑話休題の後ぐらい、でしょうか。

神子さん以外、ろくに動いていない状態で説明しても忘れられますし。私みたいに…………

まぁ、花映塚キャラの説明です。


東方Projectより

チルノ

 氷の妖精であり、閻魔が唯一説教した、自然界の大物。のように見せかけた、やっぱりバカ?「冷気を操る程度の能力」。
 文々。新聞の出鱈目記事に対し、自分なりの意見をぶつける等知的な面はあるが、やはりバカ。iceべきバカだから問題ないが。

メディスン・メランコリー

 毒の人形。大結界異変以後、人や他の妖怪との交流を始めた新人さん。「毒を操る程度の能力」。
 鈴蘭のスーさんを手に、今日も今日とて人形解放を目指す。住処の無名の丘は、心地よい母なる大地。

風見 幽香

 花の妖怪。下手な事をしなければとっても優しいお姉さん。「植物を操る程度の能力」。
 今は秋の季節。再思の道の彼岸花を楽しもうと散歩していたら、こんなことに。でも、異変の中でも花見で幸せ気分満喫。

小野塚 小町

 三途の川の渡し守。死神という種族ではあるが、役柄の関係で別に人の命を取りに行かない。「距離を操る程度の能力」。
 東方キャラの中では珍しく女性らしい少女。見た目17歳。いつものように幻想郷でサボってたらこの様。ずっと寝てたようだぜ!

四季映姫 ヤマザナドゥ

 幻想郷担当の、地獄の最高裁判長。説教が好きなわけではなく、罪を軽くしてあげたいだけ。「白黒はっきりする程度の能力」。
 世の為、人の為、妖怪の為。今日も今日とて断罪の日々。……とか思ってたら霊が少ない報告。またか、またなのですか。小町。


ナムカプより

飛竜

 超未来のエリート忍者。ストライカーズの唯一の生き残り。冷徹で口調が荒いが、邪魔をしなけりゃ手はださん。
 「○○する程度の能力」、未開花。素の「特級ストライダー」は、零児と互角。
 余談だが、巷でよく見かける飛竜は一代目であり、この飛竜は二代目。故に遠距離武器は持たない。

KOS-MOS

 超未来のアンドロイド。スーパーテクノロジーの塊であり、その分析能力はぴか一。時たま見せる優しい姿は……。
 「○○する程度の能力」、未開花。素の「オーバー&ロストテクノロジー」は零児&小牟と互角。
 しかし諸事情から制限がかかり、零児に負け小牟に勝てる程度の出力状態。
 スペカルールに対しては十分に戦える能力を持ち、物理学・数学的知識を応用した魅せる弾幕も可能。

景清

 地獄にて眠る、魍魎界の武士。源氏を二度屠った兵であり、死体に似合わない激情を持つ「人」。
 「○○する程度の能力」、未開花。素の「平の武士の恨みの権化」は零児と互角。
 スペカに対しては本編で言った通り、全く意に介さず。対応もしなていないので存外困る。

以上です。改めてみると、少ない。最初の安価次第では文が来ていたかも……今となっては昔の話ですが。

それと、次回投下の日を申していませんでした。恐らく、木曜ごろになると思います。

それでは、失礼します。
603 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/13(月) 06:31:56.85 ID:9h/Leb1DO
解説乙です。 スキャナーさんが…喋った!?

掛け詞、中々イケてましたぜ。
604 : ◆NamCapMdYU [sage saga]:2012/02/15(水) 19:58:43.43 ID:mvZRNBed0

キング『……こんばんわ、だな。私はキング。本日のMCを務めさせてもらう。赤コーナーは東方より、寅丸星!』
             とらまる しょう
星「あ、こ、こんばんわ。寅丸  星 です。本日はどうぞ、お手柔らかに……」

キング『うむ。対して、青コー……ん? 白か。白コーナー。ムゲフロより、カッツェ・コトルノス!』

カッツェ「や〜〜ん。良い男に紹介されちゃったわ〜〜ん。で、も。私は以前出たから、紹介はカットね」

星「あ、あの。これ……『一日一談』ですよ……ね?」

キング『ああ、合っている。悪いな、俺の趣味に付き合わせて』

カッツェ「気にしなくてもいいんじゃないかしら。星ちゃんは間違ってないか確かめただけ。そうよね?」

星「はい。まさかまた間違えてしまったのかと……」

キング『……ふむ。それは不安にさせてしまったな。すまない、謝ろう』

カッツェ「や〜ん、いい男っぷり〜。けど、このままじゃ話が進まないから、仕切りましょうね?」

星「分かりました。では、本日の『一日一談』は『異変・中前編』です。前回の続きと言うことで、『萃夢想』ですね」

キング『幻想郷全土にて酒宴が数日置きに行われるという、妙におかしな流行が起きたのが、初めだな』

カッツェ「それも場所や時、天候に関わらずだ。人間や妖、妖精の区別もなかったようだな」

星「その事に気付いた永夜までの方々は、何かしら原因があるはずと、あちらこちらへ向かうことにしたのです」

キング『原因事態は確かにあったが、主犯格はその酒宴の傍に必ずいた。本編でも言っていた、萃香という鬼だな』

カッツェ「彼女の能力によって「酒宴をしよう」という気を萃められ、その酒宴に本人が参加していたからな」

星「その事に気付いた、本編では魔理沙さんが、萃香さんと戦い……おお、格好の良い事を……」

キング『詳しくは本編でだ。……次は『永夜抄』だ。でも触れられたように、原作では主人公側が起こしたものだな』

カッツェ「その理由としては、月が歪だったからだ。異変を起こした地点では、詳しい事は知らなかったのだがな」

星「ただ、満月を使った大規模な術である事は解っていたので、その原因らしき竹林へと向かったのです」

キング『しかし、道中にあるはずだった人里にて、開けない夜の異変に気付いた教師、慧音先生が妨害に入る』

カッツェ「彼女を倒した後に、事情を説明したんだ。熱いのは構わんが、早とちりはいかんな」

星「原作を読み解く限り、説明する気の無かった主人公側の問題な気も致しますが……」

キング『……そういう世界だ。竹林についた頃、『異変』に気付いた博麗の巫女こと霊夢が、異変の主たる魔理沙達の前に現れる』

カッツェ「倒して終わりだと考えたのだが、二対一では流石の霊夢も敗走。仕切り直しの二度目も倒され、解決失敗だ」

星「なお原作では霊夢さん・紫さんペアと、妖夢さん・幽々子さんペアは魔理沙さんと。
  魔理沙さん・アリスさんペアと、咲夜さん・レミリアさんペアは霊夢さんと戦うことになります」

キング『無事、障害者を倒した魔理沙達は竹林にある、永遠亭に到着。そこの兎達に妨害されるも、本編同様倒して進んで行った』

カッツェ「さらに従者……ということにしている永琳を退け、その先にいる月の姫、輝夜と遊び……異変は無事解決した」

星「何故少し言い淀むのかは、原作の資料を漁るか、本編をお待ちいただけると、いずれは解ります」

キング『二度も同じことを言っているが、前提知識の部分にあたる。申し訳ないが、そういうことだ』
605 : ◆NamCapMdYU [sage saga]:2012/02/15(水) 20:30:58.88 ID:mvZRNBed0

カッツェ「んじゃ、ここまでかしら〜。今回はなにもなくって良かったわね〜」

星「? 何かあったのでしょうか」

カッツェ「最後、とっても面白い事が起きたのよ〜。……そういう意味じゃぁ、残念かしら?」

キング『? 何故私を見て言うんだ、カッツェ』

カッツェ「あ〜ん。別に何でもないのよっ☆」

星「しかし、キングさん。素晴らしいお方ですね」

キング『? 何がだ?』

星「そのあふれ出る闘気。素晴らしい肉体。なのに微塵も感じさせない妖力。……私も、まだまだですね」

キング『……もしや、私を虎の妖怪か獣人、と?』

星「え、はい。虎の妖怪さんかと」

キング『……これはマスクだ』

カッツェ「なん……だと……!?」

星「な、なんと……! 申し訳ございません! 凄く自然な佇まいのために、間違えてしまって……!!」

キング『いや、そこまで気にするな。慣れている事だ』

星「な、慣れている……! なんと寛容で、相手を思い遣ったお言葉を……。
  ますます、申し訳が立たなく……寅丸星、御見逸れしました」土下座

キング『なっ、おい。立ってくれ、星』

星「」土下座継続中......

キング『……………………どうするべきだと思う。カッツェ』

カッツェ「……まさか私が獣人や妖怪と、人間の違いを見きれなかっただと。……くっ、何がオルケストルアーミー・副リーダーだ。
     平和に浸って、戦場の空気を忘れたのか……!!」

キング『………………』

星「」土下座継続中......

カッツェ「すまん、キング。星。俺はこれから、アレディ達に頼んで修練を積む。あの頃の感覚を取り戻すまで帰らん!」バタンッ

星「是非一度、命蓮寺にお越しください! このたびの無礼のお詫びを、どうかさせていただきたく……!!」

キング『……(ここは彼女の気が済むまでさせた方が、早く済むか……)わかった。是非、案内してくれ』

星「はいっ! お任せを!」

キング『……と言う訳で、今日はここまでだ。また会おう』



カッツェ「なお、中の者からの連絡だ。明日の投下は延期。次回投下は不明だという話だ。……済まない。アデュー!」
606 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/16(木) 22:26:39.77 ID:l9fSV0De0

更に連絡です。二月いっぱいは恐らく更新できません

これまではそんなに延期する事もなかったのでキャラで誤魔化しながら言っておりましたが、

今回は長くなりそうなので率直に申し上げます

余裕あるのがせいぜい今この時間だけなので、少しばかり即興物を書いておきます

……果たして、お詫びとなるか解りませんが


では、本来なら閑話休題3に入るはずだった予定の「タタラとコブン」です。行きます
607 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/16(木) 22:46:19.25 ID:l9fSV0De0

〜〜〜???〜〜〜

「…………あれ、僕……寝てたですか?」

「…………」キョロキョロ

「……ぼろぼろなお家ですー。ここはどこなんでしょうか……」

「…………あれ。僕、何か忘れてるような」ウーン

 秋も夜長。月明かりだけが照らす廃寺の一角にて、小さなその子は目覚める。
 屋根……だったぼろぼろな木の板の隙間から射す光は、その子の一帯だけを照らしているため、他の場所がいまいち見えない。

「僕は確か、蛇っぽい何かに追いかけられて……」

「……何かを見て倒れた……です……」ガタガタ

「……はっ。もしかしてここは、そのお化けの住処!?」

「たたた大変です。逃げるですー!!!」ドダダッ

 ガンッ

「あぅっ……痛いです。ちゃんと前を見てなかったで……」

鬼の面「」ヌワッ

「ひぃっ!? べ、別のお化けですぅーーー!」ドダダッ

 ガンッ

「はぅっ。ま、またですk……」

 ガラララララララッシャーン!!!

「ほわああああああああ!?」

「ほえええええええええ!?」

 小さな子は、周りを良く見もせずに動き出したため、周りにあった物におもいきりぶつかる。
 一つ目の鬼の面に怯えたその子は、必死になって反対側へと逃げる。
 しかし、今度はそちらで何か固い物にぶつかり……それがこけたのか、大量の音が鳴り響く。
 その音に驚いたのは、どうやら小さな子だけではなさそうだ。

「な、何々。何の音!? 巫女がまたやってきたの!?」ヒィ!

「ひぃいい!? 声がするですぅううう」

「きゃあああっ!? わちき悪い事してないわよー!」

「ぼ、僕だって何もしてませんー!!」ドダダッ

「きゃああああ! きゃああああ!!」

「うわーーーーーん、トロン様ぁー!!」

 ドタバタドンガラゴッシャーン!!…………

 ……………………

608 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/16(木) 23:25:14.35 ID:l9fSV0De0

〜〜〜命蓮寺・屋根の上の三つ影〜〜〜

「で、私のとこにきたと。……あいかわらずドジねぇ。小傘は」

「め、面目ない。ぬえちゃん……」シュン

 場所は移り、ここは命蓮寺の屋根。本来なら昇ってはならないのだが……そこにいる三人は、それぞれに勝手を働いている。

 その一人、小傘と呼ばれた少女は水色の服と髪、片目は青、片目は赤のオッドアイを持つ、下駄を履いている。

 だがしかし、その特徴を言い表すなら、やはり「傘」だろう。
 世間一般で言えば「ださい・センス悪い・古い」の三拍子揃った、紫の番傘を大事に握りしめているのだ。

「まぁまぁそう言いなさんな、ぬえよ。して、物音に驚いてわしらの元にきたんじゃろ? 一緒に行けばいいんかえ?」

「う、うん。お願いしたいの、マミゾウさん」

「まーあ、あの人間も特に弄りがいないし、別に私は構わないわよ〜」

「正体不明の種をつこうても、まるで効き目なしじゃもんな」ヒッヒッヒッ

「う、うっさいわね。そういうマミだって、化かしが効いてないじゃないの」

 後の二人はぬえ……黒のブラウスと、膝上まである黒のソックスをはいた、青と赤の翼じみた物を生やす少女と、
 マミゾウ……思いっきりおばあちゃんチックな色をした、地味な服を着こなす狸の妖怪だ。

 命蓮寺住まいの二人はともかく、小傘がここにいるのは助けを求めてのことだ。
 曰く、自分が現在住処にしている廃寺にて、何かがいた、と。

「あれには参った参った。覇気とやらは便利なようじゃ。……しかし小傘めよ。その音っちゅーのは、きっと他の妖怪のもんじゃろ?」

「そうかもしれないんだけど、怖いまま行くのは気が進まないし、マミさんは妖怪の切り札なら、万が一の時も大丈夫かなー、って」

「確かにそうやって呼んだのは私だけど、まるで私が役に立たないみたいじゃない」

「そ、そういうつもりじゃないのよ、ぬえちゃん! 私はね……」

「解ってるわよ、バカ。……ほんと、あんた妖怪なのかしら」ハァ

「冗談を真に受け過ぎじゃな。ま、暇つぶし程度なら構わんよ。ほんじゃらほいっ。案内せい」

「うん。お願いね、二人とも」

「どーせなんもないわよ、どーせ」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜妖怪の山・樹海の端の廃寺〜〜〜

「……なんじゃ、これ?」

「散らかり過ぎ。足の踏み場ないじゃない、これ」

「あ、あれ? 飛び出た時より酷い……ね?」

「いや、知らないわよ」

 三人は小傘が仮の住処にしているという、廃寺に到着する。
 しかしそこは入り口から既に、散らかっている。……壊れているのではなく、散らかっている。

 ガサコソ

「……傘じゃな」ブラーン

「こっちにはサッカーボールがあったわよ、マミ」ダンダンッ

「他にもバットにギターにキーボード…………ゲーム&ウォッチもじゃと……」
609 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/16(木) 23:45:37.58 ID:l9fSV0De0

「全部わちきが集めたのよ。それが何か分からないけど」エヘン

「それは構わないんだけどさー、これじゃ中がどうなってるとかわかんな……」ガサッ

「」チーン

「ん? 何これ」

「あ、それは昼間拾ったの。蛇の形始めと追いかけっこしてたわ」

 ぬえが取り出したのは先ほどの小さな子……コブンである。
 気絶しているのか、眼は渦巻き模様。すこーしだけ、後頭部にたんこぶがあるような、ないような。

「レゴブロックみたいな顔じゃのー。大きさは何十倍じゃが。どっかボタンがありゃせんか、ぬえ」

「んー、待ってねー。ちといま……」サワッ

「……」ッ

「それにしても……ぼろぼろになっちゃったなー……」ブラーン

「そーいやぬし、から傘の九十九じゃったの。……この、ゴミの山のような惨状の子らも、声があったのかえ?」

「んーん。ただ拾い集めただけ。すこーしだけそういう子もいたんだけど、見つけられるかな、これ」

 小傘は番傘の九十九神だ。妖力自体はさして強くなく、知識も二昔前のもので何故か止まっているが。

 そんな彼女は他の九十九神同様、同類の声を聞く事が出来る。
 成りたての物から、怨念の強く籠り妖怪化しかけている物をもだ。
 故に捨てられた『道具』達を集める習慣がある。そこには、彼女の記憶の引っかかりも多少関係しているが。

「うーん、ないわねー」サワサワ

「……」ピクッ

「ん?」

「動いとったつー話が本当なら、何処かにあるかと思うんじゃがなー。……ってどうした、ぬえ?」

「…………」コチョッ

「……」ビクッ

「……………………」ニカァ

 コチョコチョコチョコチョ!!!

「……」ビクビクッ……プフッ

「プハッハハハハ! や、やめるぷはぁ! ですぅアハハハハハハ!」

「……狸寝入りしちょったんか。わしの前で」

「あれ? さっき聞いた声のような?」アレ?

「何? つまりこいつが物音の犯人?」ゴニョゴニョゴニョ

「や、やめてーはははは、で、ですぅ……アハハハハハハ!」
610 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/17(金) 00:22:13.02 ID:v2cwduGZ0

「して、ぬしは何者じゃ、ちいこいの」

「は、話さないですー。知らない人と話しては駄目なんですー」

「……やるわよ?」ニカァ

「ひぃっ!?」

 狸寝入りしているのが分かった時と同じく、ぬえが邪悪な笑みを浮かべて迫る。

 コブンの体をくすぐりまくり、一通り堪能した後、とりあえず事情を吐かせようと開放したところだ。
 もう一度、くすぐりの刑がされそうだが。

「何がぬしのつぼに入ったか知らぬが、そこそこにしてやるんじゃ。わしは二つ岩マミゾウじゃ。ぬしは?」

「うう……僕はコブンですー」

「子分? 変な名前なのね」

「で、コブン。あんたはなんでこんなとこにいんの?」

「わ、わかんないんですー。気付いたらここにいたんですー」

「それは解ってるわよ。そうじゃなくって、蛇だっけ? に追いかけられる前の話」

「蛇に追いかけられる前ですか? ……んーっと………………わかんないです」

 数秒の思考の後、そう答える。
 彼らコブンは嘘がつけない性格である。その、自由自在な表情に現れるからだ。

「……どうやらくすぐられたいようね」

「ほ、本当なんですぅー! お願いですから止めてくださぃー!」

「問答無用。いらついてんのよ、こっちは!」ガシィッ

「いやー!? 助けて下さいですぅ、トロン様ぁー!!」

「トロン様って、誰?」

「ぼ、僕を作ってくれた人ですぅ。マスターですぅ!」

「…………」

「ほぉーら、今度は羽も追加してあげるわ!」コチョコチョコチョ

「ひゅいっ……や、や、やめてですーアハハハハハハ!」

「おー、お手玉もあったのぉ。……って小傘よ、何暗い顔しちょる」

「…………」

「……」

「…………」
611 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/17(金) 00:50:26.08 ID:v2cwduGZ0

〜〜〜十五分後〜〜〜

「ぜー、ぜー……ですぅ…………」

「何が悲しくって、八つ当たりがこんなしょぼいのよ……」ショボーン

「ある意味お前さんらしいの、ぬえ」ハァ

 たっぷりとくすぐりつくした後、急に現実に戻ったぬえが体育座りで落ち込む。
 それを慰めるようにマミゾウも傍にいるため、コブンの傍にいるのは小傘だけだ。
 その小傘も、俯いたままであるが。

「し、死ぬかと思ったですぅ。……僕、ロボットなんで死にませんが」アハハ……

「……ねーえ、子分。私、小傘って言うんだけどね。いい事教えてあげよっか〜?」

「は、はい、コガサさん、ですか? お手柔らかにお願いするです……」

「うふふっ。あのね、ここは『幻想郷』って言ってね、貴方は『幻想入り』したの。恐らく。きっと。絶対に」

「幻想郷……ですか? 知らない所ですぅ。それに『幻想入り』って、なんですか?」

「……外で忘れられた物が、ここに漂流することなんだよ〜?」

「忘れられたものが、ですか?」

 俯いたまま話される言葉。それは。先ほどまでの明るいイメージからは感じられないもの。
 深い悲しみのような、苦しい恨みのような。そんな、言霊の乗った言葉。
 人型の部分ではなく、傘の方から聞こえてくるその声は、暗く寂しげである。

「そ。入らなくなった物。本当に忘れられた物。死んじゃった物も……ここに来るんだよ〜?」

「それってなんだか、悲しいですぅ……」

「そうよねぇ。子分も、そうなんだからねぇ〜……?」

「? 何、言ってるんですか?」

「うふふ。信じたくなかったかなぁ……貴方はね、そのトロンって人に捨てられたのよ」

「! そんなはずないです! トロン様がそんなことするはずないです!」

「でも、じゃぁなんでここに来たの〜? 言っておくけど、わちきは嘘をついとりゃせんよ〜?」

「そ、それは……いえ、やっぱりコガサさんが嘘……を……」

「そう、わた……わちきは嘘なんてついてないの。ただ、あの子と…………れ……」

「……コガサさん? どうしたんですか??」

「……はっ。ううん、何でもないでありんすよ。ごめんね、なんだか嫌な風に話しちゃった」エヘヘ

「……??」

 何かをささやいたと同時、明るい雰囲気に戻る小傘。赤と紫……その二つが、月夜に線を引いた。

「(最近、外来者が多いってことは話さないほうがいいわね、マミ」

「(そのうち知るじゃろうがな」
612 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/17(金) 01:31:48.06 ID:v2cwduGZ0

「うぬ。やはりこやつ以外はおらんよーじゃな」

「やっぱ便利ねー、その弾幕。人の札ってのが、気に入らないけど」

「鳥や蛙もいたですー。すごいですー」

「人っちゅーのは結構すごいんじゃがの。して、コブンよ。ぬしはこれからどうするんじゃ?」

「へ? ……ああ、そうです。ゲゼル・シャフト号に連絡出来ないです!」

「は?」

「どうしようです。明日はお食事の当番じゃないですが、御庭の手入れは僕の番ですぅ……」

 コブン達は前にも言ったように、全50体いるわけだが、それらには家事がサイクルで割り当てられている。
 それの遂行度が晩御飯……シャフト号特性カレーへと還元されるのだが、それはまた別の話。

「当番制なんじゃの。まぁ、それは戻れるまで気にせんほうがよいぞ? 帰れるか解らんが」

「ええー!?」ガーン

「そこでじゃ。ぬしぐらいの大きさなら、聖さんに断り入れれば……」

「はぁ!? あんた、あの人間だけでもうざいってのにこんなの持って行くつもりなの??」

「こやつはあの男みたいには見えんし、別にかまわんじゃろー。ぬしの玩具にもなるぞえ?」

「ええー……」

「…………子分。ここで泊まって行かないかしら?」

「ここで、ですか?」

「そう。……この惨状は貴方のせいなんだし、最低でもその片付けが終わるまでは〜、なんて〜」

 実際、コブンのせいだろう。恐怖におびえていたとはいえ、物でドミノ倒しを起こしたのは間違いないのだから。
 その前にあった、小傘の驚かしがなければだが。

「……」ウーン

「わちき一人じゃ大変だな〜?」ニコニコ

「はいです。お片付けのお手伝いをするですー!」

「あら、なんか決まったみたいね?」

「……ぬぅぅえぇぇ?」

「偶然よ偶然。誰も時間稼いであっちで決めるの待ったとかないわよ」

「思い切り自白しちょるわ。……まぁよい、それじゃわしらは帰るの」

「はれ、片付け手伝って……」

「じゃぁーねー」ビューン「じゃあのー」ビューン

 片付けを手伝わず帰った二人。
 その息のぴったり加減や、やはり類が同じなのだろう……。

「……ひどい先輩よね、全く。それじゃよろしくね、子分」

「はいですー。……とにかく中に入れるようにです……」ガサゴソ

「……貴方が捨てられた証拠……見つけてあげるから……」ボソッ

「? 何か言いましたですか〜?」

「ううん、何でもない。さぁ、皆を掘り起こすぞー!」

613 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/17(金) 01:34:41.77 ID:v2cwduGZ0

……以上で即興終わりです。やっぱり文が所々何か違和感

そういうわけで、しばらく顔見せ程度しか出来ないかと思います

皆さんも、つけを後に回さないようお気をつけて

それでは失礼します
614 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/17(金) 07:35:19.66 ID:heaSiXFDO
お疲れ様ですー。
微ダーク小傘ちゃん。嫉妬から来てるのかなー、それか九十九仲間が欲しいからなのか…。

そしてコブンはトロン様と合流出来るのか!?
615 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/20(月) 12:59:19.19 ID:G1bZeRkIo

こんにちわ。レス、ありがとうございます

少しだけ余裕が出来たので顔見せと、閑話休題3の一部を放出していきます。夕方頃にですが


なお、今後の展開について少し連絡があります

今後の本編1章は展開速度重視となり、一部の戦いはミスティア戦時のような、流れの説明だけになります

他の部分に関してはあまり変わりませんが、少しだけボケ突っ込み等のギャグ会話が減ります

ご了承ください


では、また夕方頃に。投下時は前触れなしです
616 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/21(火) 01:18:20.96 ID:YylZy+jCo

〜〜〜妖怪の山・茨道場:二日目の夕方〜〜〜

「「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」

「せぃっ、おらぁっ!」

「はっ、ふぅん!」

 零児達が酒宴異変を解決し、博麗神社に戻る幾分前。
 妖怪の山のどこかにある茨道場にて、道場の名に恥じぬ、底から震える声が響く。

「おらおらおっさん、脇があめぇぜ!」

「くっ。拳で戦うだけの事はあるな。うちどころが分からんぞ。はっはっは」

 一方は、赤い道着に身を包み、金髪を揺らす日本男児。
 もう一方は、着馴れない様子の、白い道着に身を包んだ妙齢の男性だ。

「確かに、おっさんの動きは素人じゃねーが、何かを持ってる間合いだ、なっ!」ブンッ

「おおっとぉ。やはりか。長年連れ添った武器だからな。感触が手から離れんよ」

「……いつもは、魔力で作った奴を投げてんじゃねーのかよ?」

「まぁな。だが、あの武器達の手入れは欠かさんし、あれを持って訓練せねば、あまり意味はない」

 金髪男児の名はケン。白い道着の男はアーサー。両方とも、かつての戦いにて零児の戦友となった者達だ。

 彼らは今、山の中腹をもう少し昇ったあたりの道場にいる。
 結界によって閉じ込められ、暇となったから手合わせをしているのだ。

 ガラッ

「……貴方達、大人しくしていてと言ったはずだけど」

「ん? ようやく帰って来たか、チャイナ女。やること無かったから暇つぶしだよ。文句あるか?」シュッシュッ

「いえ。どうせ中の音は外に漏れないし、結界を壊してなかったのだから構わないわ」

「何故、わしらを閉じ込めたのかな? カセンちゃん?」

「……」

 茨 華仙。仙人を自称する、謎の少女だ。

 淡いピンクの髪にシニョンキャップを被り、白バラの装飾を施したチャイナ服を着る。
 さらに、両の指の先から肘少し前まで包帯を巻き付けている。これだけが謎だ。

「言ったでしょ、外が危ないからよ。ここは妖怪の山。貴方達のような人間が不用意に入れば……」

「あーはいはいそれはもういいからよ。俺らの事、ろくにしらねー癖にさ」 スッ

「それはこっちの台詞よ、勘違い日本人さん。この山の妖怪の排他性は……」

 ダンッ!

「尋常じゃな……っ!?」

「血の気が早いな。若いというのも、考えものだ」ハハハ

 既に体が温まりきっていたケンはすり足で、いつの間にか間合いを詰めていた。
 そこから踏み込み、腰を落して足払いを掛ける。

「に、するのよっ!」トンッ

「だから言ってんだろ。しらねーんだから、その体に教えてやんだよ、妖怪さん!」ダッ

「するど……い!」パンッ
617 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/21(火) 01:21:46.73 ID:YylZy+jCo

「……ほぉ」

 足払いをされ、とっさに右手で受身を取り離れようとした華仙を、ケンの拳が捉える。
 しかしもう片方の手で受け流し、そのままその腕をなぞり、軽く押してやはり距離を取る。

「……なるほど、確かに他人に教える程度には上手いのかしら」ピラッ

「おまえ、案外力あんのな?」

「……仙人だもの。身体強化ぐらい、朝飯前よ」

「仙人の名は伊達じゃないか。落ちついて話を聞いたらどうだ、ケン?」

「最初はそれでもよかったんだがよ。勘違い日本人っつわれたら、少しムカついてよ」

「短気は損気よ。実際、その髪は染めているのでしょう。それも勘違いよ」キュッ

「この髪はイザベラが褒めてくれてんだ。余計なお世話だってーの」

「見たまんまの感想を言っただけ。さっさとその血の気を抑えなさい。やっぱり勘違いしてるんだから……」ハァ

 先のケンの拳を流した際に、拳によって破かれた包帯を巻き直しながらそう話す。
 呆れたように溜息をつく所が、仙人らしくない事を自覚していないのが、なんとも言えない。

「ケン。前々から言おうと思ってたが、私もその金髪は微妙だと思うぞ」

「……なぁおっさん。なんで今のタイミングだよ……」ハァ

「少しは落ち着けと言うことだ。これでもまだ、勘違いだというのは?」

「そちらのおじさんは、物分かりが早くて楽ね。
 簡潔に述べれば、あんた達が強かろうが弱かろうが、今の妖怪の山を刺激するのは止めた方が良いってこと」

「ほう?」

「なんだ? 殺気立ってんのか?」

「似たような所。『皆』が天狗達の事を教えてくれるんだけど、山の上に人間が突然現れてね。そのことで慌ててるのよ」

「……天狗、だぁ? そりゃあれか。鳥頭で真っ黒で、羽の生えた?」

「どっちの鳥頭でも違うわ。真黒なのも、個体差。羽は生えているけど……そもそも、その姿は鳥人間じゃないかしら」

「以前であった鴉天狗がその姿だったものでな。……地域差でもあるのか?」

 彼らの知る天狗の姿。それは以前戦った相手の姿。
 しかしながら、その経験は幻想郷では無意味。いや、むしろ危ないだろう。
 何せ皆が皆、その姿とかけ離れた少女の姿なのだから。油断したところをガブリだ。

 ただ、かつての仲間達がそんな不注意はしないだろうが。

「で、『皆』ってのは誰なんだよ。その天狗の中に知り合いでもいんのか?」

「知り合いはいるけど今回は違うわ。……そうね、紳士なおじさんに免じて、紹介してあげる」トコトコ

「はっはっは。紳士だとさ、ケン」

「ありえねー。すぐまっぱになるおっさんが紳士だとかありえねー」
618 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/21(火) 01:26:07.85 ID:YylZy+jCo

「おいで、『皆』。あ、久米達は外でね。羽が傷ついちゃうから」

 ドタバタタ

「……へぇ」

「これはこれは、すごい光景だな」ホー

「この子達が『皆』。どう? これで仙人だって、信じてもらえたかしら」

 華仙が呼び込んだ『皆』……それは、大小様々な動物達だ。
 そこには種族も関係ない。弱肉強食の関係もない。ただ、彼女に懐いたように居る。
 これが彼女の能力の一つ。動物を導き、式のように駆使できるものだ。

「ほら、ケン。いくら『妖力』を感じても、仙人にはなれる様だぞ」ハッハッハ

「あー、悪かったな。こりゃぁ嘘じゃねーわ」

「……随分素直に信じてくるのね?」

「実際のもの見せられたら、な。それに、妖怪の知り合いっつー、前例があるからよ」

 それだけでなく、以前であった操つられた人達……それとは明らかに違う、動物達の姿。

 彼の戦いで救えなかった、罪なき二つの命。

 その時の悲劇を思い出すからこそ、動物達の姿に安心できる、癒されるのだ。

「それじゃ、カセンちゃん。詳しい話……お聞きしてもよろしいかな?」

「…………ええ。アーサー。ただその前に、ちゃんづけはやめてくれないかしら」

「ん? ……ああ、気づいたらつけていたな。これは失敬」

「仙人がちゃんづけとか、締まらねーもんな」

 仙人説明中...

「……外でそんなことがなぁ」

「………………」モフモフ

「この子達の話から、大体の目星は付けたから、次はその渦中の人を調べるつもりよ」

 仙華は己が足と、動物達の情報から得た山の様子を、二人に伝える。
 突然現れた霊夢と魔理沙。彼女らとともに居た、二人の『外来者』。
 さらにバイクらしきものに乗っていた二人の獣人の話もだ。
 天狗達の詳しい現状までは分からなかったが、この闖入者達に対してあわてていることは確か。
 そこに、この二人が防衛手段を講じ始めようものなら、確実に大きな騒ぎになっていただろう。
 ただでさえあわてているところに、治外法権を与えられたようなものなのだから。

「動物の勘を聞き出せるというのは、便利なものだな」

「どっかの仙狐みてーに、適当じゃないようだしな」

「……仙狐?」ピクッ

「ああ。普段はおちゃらけてる、ちっこい狐さ」

「ははは、懐かしいな。彼女と言えば、零児君のパートナーだったな」

「…………そう」
619 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/21(火) 01:28:43.62 ID:YylZy+jCo

「しかしそうなると、俺らはしばらくお留守番か?」

「いいえ。霊夢に話をつけてもらうわ。その男を訪ねる時に、一緒にね」

「だが、もう遅いな。……あー、申し訳ないが」

「?」

「飯さ。ここから出られないのなら、そっちから出してもらわねーとな?」

「ああ、すっかり忘れてたわ。でも精進料理しか出せないわよ?」

「だよなぁ」ZUUN

「私はそれでも構わんよ。もとより、あまり食べないほうだ」

 健康に気をつけてはいるが、やはりそれもアメリカ式になっている武道家。
 それに対し連日満足に食べられなかった日もあった、王国最強の騎士。
 その口に合うものが出てくるのだろうか。

「そう。なら、用意してくるわ。『皆』も、ありがとうね」

「コーン」「チチチッ」「ユッ!」

 ドタバタタ

「あん? なんか一匹変なのいなかったか……?」

「……き、気のせいよ。たぶん」

 微妙な顔をしたまま、道場から出ていく華仙と動物達。

 それらが扉の向こうに消え、閉められてから……二人は向き合う。

「……最初はずっと部外者だったのに、『男』なぁ?」

「嘘をつくのが下手なようだ。だがまだ、零児君だと決まったわけじゃない」

「仙狐にも反応してて、ほぼ確定だけどな。……まだまだ、隠し事がありそうだぜ、カセン」

「まぁ、しばらくは彼女の思いやりに甘んじるとしよう。……この結界は抜けられんからな」

「それが一番でけーってのが、情けない話だよな」ハァ


〜〜〜華仙個室〜〜〜

「…………あの男の知り合いなら、彼らから聞き出すのが得策かしらね……」

「キュー」

「……うん、ありがとう。お休み、久米」

「……突然現れた、有栖零児と、小牟。霊夢がなぜか、素直に従っている……人間」

「…………」

「……今回の違和感との関係や、異変の問題もだけど、それ以上に気になるわね」

「……でも、萃香がいるのよねぇ」ハァァ

「やっぱり『皆』に頼むしかない、か」

「……まあいいわ。とにかくご飯にしましょう。……豆多めにしたほうがよさそうかしら」ウーン

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
620 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/21(火) 01:33:28.08 ID:YylZy+jCo

以上で投下を終わります。そんなこんなで、華仙の顔見せが終わりました。

真面目で、教えを乞う者に対してきちんと対話するのに、どこか抜けてる彼女です。


次もまた、閑話休題3の一つです。……どれに手をつけるかわかりませんが。

それでは、失礼します。
621 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/21(火) 07:17:26.13 ID:QOJzHMcDO
お疲れ様です!
身体強化の術とか、格闘家からするとズルっこって感じかね?

ピクッて反応しちゃう華仙ちゃん可愛い。

ゆっくりは微妙可愛いww
622 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/21(火) 11:30:17.46 ID:ZOwkPISDO
>>1

>>621
昔あったオリコンとかもある意味での短期身体強化って見たらケンも使えるなwww
623 : ◆NamCapMdYU [sage saga]:2012/02/24(金) 19:48:45.36 ID:4vXH7P1y0

こんばんわ。明日の連絡に参りました。それから、少し返信をば

>>621
ズルとは考えていません。というよりも、それを含めて個人の『強さ』と認めています

身体強化がズルと言い始めると、正直武器もアウトですし

ただ、拳八のようなタイプは、武器を使う奴=雑魚と思っている部分がありますけど

なお、殺意の波動やデビル因子、サイコパワーはその性質を嫌っているだけで、強化部分は『強さ』扱いです

>>622
あれってどちらかというと、普段は70%で戦いオリコン時に100%出し切ってるイメージなんですよね

開幕前に「全力で〜」ってセリフがあったような気もしますが


さて明日ですが、午後二時ごろに閑話休題3の『朝の騒動』を投下予定です

その次に『仙界電』、『桃と鬼』、『メ』と来て、ようやく本編『花映塚攻略後-紅魔1面』となります

投下ペースが戻る予定なのがちょうど『メ』のあたりからなので、その後からは週2に……

遅れを取り戻したいので3になったりするかもしれませんが

それではまた明日
624 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/26(日) 02:51:21.23 ID:IlqajZz1o

こんばんわ。投下しにまいりました

なお、午後の2時は誤字で実際は……というわけでなく、昼間はメタスラのゾンビよろしく状態で……

……体調がおかしいと思ったら、すぐに病院へ。危うく丸一日潰すところでした


さて、では投下します。閑話休題3「朝の騒動」です
625 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/26(日) 02:54:36.18 ID:IlqajZz1o

〜〜〜人里・月下の二人〜〜〜

「……なぁ、妹紅」

「……なぁに、慧音」

「英雄さんや、スタン。あとはレイジ……だったか。彼らのことなんだが」

「……」

「人里の長老会議では今のところ、永夜の時同様に静観することを選んだ。”幻想入り”している人間に関しても、今まで同様の扱いだそうだ」

「……死んだらそこまで。頼れば受け入れる、ね」

 幻想郷の人里は、『人の』村や町と呼べる規模という意味では唯一の場所。
 それゆえに、”幻想入り”した人間達の受け入れ先となることも多い。

 外の知識や経験を代価に、同胞となるにしても、帰る手段を探すにしても、仮の宿を与える。
 同時に、この世界の掟を教え、受け入れぬ者は追放する。
 『幻想郷』というフィルターがあるが、実際のところは村社会のそれと全く同じだ。

「それ自体はなんら問題はない。むしろ、英雄さんのことを考えれば、ありがたいことだ」

「けど、どーにも異変のことが気にかかる。でしょ?」

「ああ。異変について、『なかったこと』にしてみたが」

「みたが?」

「……人里の『歴史』まで無くなることはなかったんだ」

「……ん? 異変が起きたのって、レイジさんの証言じゃ東の野原から人里、そして竹林全体でしょ?」

「彼らの証言が事実ならな。そしてそれは、英雄さんの言より、かなり信頼できる」

 慧音の能力は「歴史を喰う程度の能力」。それは、それまでに積み重なった全てを隠す能力だ。
 一見便利そうに見えるが、隠せるのはあくまで歴史となる事実のみ。人の『死因』や『行動』等は対象外だ。
 それゆえに、使えるとすればそれは防衛手段としてのみ。実は使いづらい能力の一つだ。

「……そーよね。フランともあんなに仲良くしてくれる人が、嘘つくわけないものね」

「そして、その人の仲間にも一定の信用が宿る。……だからこそ、困るんだ」

「異変と記録は別……なのかしら。それ、村長さんには?」

「もちろん話した。ただ、その手の能力は実測者が分からないなら、自分達にはどうにもできん、とさ」

「ま、そりゃそうよね。……それで、そのことはどうすんの? レイジさん達にでも訊く?」

「いや、今度の満月に『創る』さ。彼らだけでは知り得ないことも、分かるだろう」

「……あ、そういや後三日ね」

「英雄さんが来てから、十日……」

「スタンは三日だって。彼らは二日って話よ?」

 彼女たちの共通ワード、『満月』。
 永夜のワードとしても存在するこの言葉は、慧音にとってかなり重要な物だ。
 彼女が人でありながら人でないことを示す、今でこそ受け入れているが、忌み嫌うべき単語なのだから。

「ほぼ同時期に、この大量の”幻想入り”……か。いやな予感が当たらなければいいが」

「あの時のようね。あれは確か……――が」
626 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/26(日) 02:56:50.01 ID:IlqajZz1o

「その事は話さないと約束しただろう。それはすでに、彼女が……」

「そうだったわね。……となると、三日後かー」

「それまではどうせ、スタンと一緒にいるんだろう?」

 小牟は確かに幻想郷のことを知っているだろう。それこそ、東方Projectシリーズに関することならば。
 しかし、それでもなお拾いきれていないことがある。むしろ、そっちのほうが圧倒的に多い。

 そんな、彼女達だけの歴史はどんなものなのだろうか。それは、彼女達が語るまで分からない。
 分からなくて、いいものだ。

「まーね、そう約束したし。それにスタン……馬鹿素直で面白いのよ」ケラケラ

「それは半日いて大体わかったが、そんなになのか」

「ええ。なぜかってのは、明日の朝分かるわよ」ニヤッ

「……その顔の時は、信用ならんぞ。妹紅」

 悪戯っ子の、その悪戯に獲物がかかるのを待ちわびるような、そんな笑みを浮かべる。
 長く生き、人との接し方を一時期忘れていた者とは思えない、『人』らしい表情。
 それもこれも、彼女と出会い、あの子と出会い、『彼』と出会ったから故か。

 ただ、そんな表情を、すでに何度も見て慣れた先生は、冷たい視線で釘を打つ。

「だーいじょうぶよ。今回は保障するわ」

「そうか。期待しないで待っているよ」

「むー、信用ないわねぇ」

「日ごろの行いのせいだろう。……それじゃ、私は寝るよ」ガタッ

「ええ、おやすみなさい。…………気象予報士藤原が、三日後の天気を予想します
 昼はいくらか曇り空ですが、夜は晴れ渡り、絶好の月見日和となるでしょう!」

「……それは予想か?」ヒョイッ

「当たり前じゃない。年の甲、なめんなよ」

「ふふっ。……」ガタガタガタ

「……」ドキッ

 馴染みのやり取りを交わし、梯子で屋根から下りていく慧音。
 その姿を見送った後、曇った空を見上げて、徐に口走る。
 それを聞いた慧音が降り立っていた場所から顔を覗かせ、先とは真逆の笑みをこぼす。

「……そんなに信用ならないかしら」プニプニ

 実はあの笑みをむけられること自体、妹紅はあまり経験していない。だから、つい驚く。
 それは別に、彼女が妹紅に対して冷たいからではない。むしろ永夜の話を見る限り、献身的すぎるほどだ。
 ただ、彼女自身もまた、『彼』に救われた一人……それからの月日が少ない、ただそれだけなのだ。

………………

…………

……
627 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/26(日) 03:01:45.68 ID:IlqajZz1o

〜〜〜翌朝〜〜〜

 グゴオオ……スピィィ……

「…………」

「相変わらずで安心したような、そうでないような……」

「あ、やっぱり英雄さんも知ってたのね」

「……起きないんですね」

「かなり手こずりましたからな。あの時は無理やり起こしておりましたが、どうやって起こしますかな……」

 翌朝、七時ごろ。朝早くから起きている二人と、徹夜していた妹紅がスタンを起こしにやってきた。
 だがしかし、起きない。揺すっても軽くたたいても大声出しても起きない。
 これぞスタン。春眠どころか春夏秋冬、暁を覚えない眠りっぷりなのだ。

「私の時は、炎で焼いたら起きたわよ?」

「なっ、そんなことしたら火傷するだろう、妹紅!」

「ところが、スタン君はそうでもないんですよ。炎に強い耐性があるようでして」

「そーそー。初めて会った時に間違えてぶつけちゃったんだけど、平気な顔してたのよね……驚いたわ」

「それはそれ、これはこれだ。そんな方法で起こすなど……英雄先生。どのように起こしておられましたか?」

「いやぁ……私達の時も似たようなものでして」

「なっ……よし、わかりました。私が普通に起こしてあげましょう……!」

「お手並み拝見ね」

「もしかしたら、予期せぬ方法が見つかるやもしれませんしな」

 そう簡単に見つかれば、超未来の仲間達の緻密な計算による電撃を浴びせる必要はなかったよね。

少女奮闘中……

「ぜぇ……はぁ……」

「グゴォ……スピィ……」

「やはりでしたか。……下手をすると、猫君よりも強敵ですからな」ウーン

 彼にとっては因縁深かった、「猫君」。眠り病と呼ばれる、魂を抜きとられ眠り続ける現象を引き起こしていた、片棒。
 そいつ自信の強さもだが、その眠り病ともかけて、少しボケてみる。

「猫君? まぁいいわ。なら、私が燃やして……」ボッ

「寺子屋ごと燃やす気か、妹紅」ハァ

「あー……外、放り投げてから?」

「そういう問題じゃ――」

『…………』

「――ないぞ。これ以上は……」

「ん、まって。英雄さん、何か言った?」

「え? いや、私は何も」

「……なーんか、変な音が? 声かしら、これ」キョロキョロ

「人の話に割り込んだかと思えば……何を言っているんだ、妹紅?」

 突然、スタンの寝る部屋を見渡し始める妹紅に、心配三割叱り七割で話す慧音。
 どうも、妹紅だけが聞こえる声らしき音があるらしいが……。
628 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/26(日) 03:09:05.21 ID:IlqajZz1o

『…………』

「……鍋……オタマ……精いっぱ……叩け?」

「いや、そうじゃなくてだな」

「ごめん、慧音。ちと鍋とオタマ借りるわよ」

「あ、おい、妹紅!? ……どうしたというんだ、一体」

「……ふむ。わかりませんな」

「ですよね。……徹夜明けでどこか変なのか?」

「…………」

「さぁ持ってきたわよ。謎の声!」

 妙な電波を拾った妹紅が、台所から中華鍋と鉄のオタマを持ってきた。
 年季の入ったその二つの道具で何をしようというのか。

「お前それで何を……」

「黙ってて、慧音! ……ええ、なるほど。分かったわ。いっぺん試してみる」キラン

「何をするつもりですかな。妹紅さん?」

「あ、耳塞いでてね、二人とも。耳に来るらしいから」

「……?」ギュッ

「大体分かった気がしますぞ」グッ

「一応、周りに知らせるために弱めから……そぉ、れっ!」

 ガンガンガン……
 ガーンガーンガーン……

「!?」

『や、やはり……おふくろの技……!!』

「ほらほら、起きなさいスタン!! 『死者の目覚め』ぇ!!!」


     \ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン!!!!!/


「ん……リリスぅ……?」

 それはこれ、『死者の目覚め』……鍋の底にオタマを思い切り叩きつけて、音をかき鳴らす秘技だ。
 その音は、熟練者ともなれば眠れる死者おも起こすほどといわれる事から、その名がついた。
 ねぼすけな子供を起こす際には大変重宝する、おふくろの技だ。

「おお、本当に起きた。ありがとうねー、謎の声!」

『…………』

「…………」プルプルプル

「これで起きるとは。確かに、これは昔のアニメではよく見られましたな」ウンウン

「あー、皆……おはよう」

「はいはいおはよう。早く顔洗ってきなさいよ、スタ……」
629 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/26(日) 03:18:12.66 ID:IlqajZz1o

「妹紅……」

「あ、慧音〜。ほら、これでスタンの起こし方が分かったわy」

「こんな朝っぱらから、そんな音出す奴がいるか、この馬鹿もんがああああ!!!」ドゴォ!

「ふごぅ!?」

 ドンガラガッシャーーーン!

 慧音が流れるような動作で屈み、妹紅の腹に向けて頭突きをかます。
 怒るのは御尤もだが、怒っている本人も相当な大音量だ。
 しかも吹っ飛んだ先の襖を二つほど突っ切り、そのまま中庭に転がった妹紅が出す音も……。

<お、おい。何があったんだい、慧音さん!?

「あ、いや、なんでもないんだ! いや、なんでもないです! 盛大にこけただけですよ!」

「……スタン君。今のうちに顔を洗って……」

「グゴー」

「寝るなぁああああ!」ドゴォ!

「ぶふっ!?」


 その後、ご近所さんが心配して駆け付けたところに説明し、小さな騒ぎが収まるまでに一刻ほどを要した。
 とうの騒ぎの中心はといえば、慧音の頭突きで吹き飛び、庭の池に落ちたりして完全に目が覚めた。
 “幻想入り”後、穴に落ちるわ、みそ汁はこぼされるわ、池には落とされるわと散々なのだが……。

「いやぁ、ごめんごめん。俺、朝は弱くってさぁ」

「あれは弱いとかで済む問題じゃないわよ」

「うん、本当ごめん。だから今度からは燃やして構わないよ」

「……そうしてくれ、妹紅……」ハァ

「慧音さん、お疲れですな。……はい、お茶です」コト

「ありがとうございます、英雄さん。…………はぁ」

「いやー。まさかこっちでも『死者の目覚め』を聞くなんてなぁ。リリス程じゃなかったけど」

 気にしないどころか、申し訳なく思っている様子だった。
 彼は基本的に、他人を疑わないし、自分が至らない人間であることを自覚している。
 しかしそれを卑屈に捉えることなく、明るく受け取るからこそ…………。

「『死者の目覚め』であってたのね。声が聞こえたからそう呼んだんだけど」

「……声?」

「ええ。なんかしっぶい声が聞こえてきてね。それに従ったのよ」

「………………へ、へー。そんなことがあるんだなー」ハハハ

「?」

「っと。俺……もう一度ご近所さんに誤ってくる。俺のせいだしなー」ハハハ

 とはいうものの、彼は彼で後ろめたい……わけではないが、隠している事がある。
 その事となると急に態度が変わるのだから、『分かりやすい』人間だろう。
 それが好かれる要因でもあるが。

「では、私も。回覧板を出してきますよ、慧音さん」

「あ、お願いします、英雄さん」

「ハハハー……」バタンッ

「……律儀なんだな、スタン」

「いや、むりやり隠してたでしょ。あれ。わかってるでしょ?」

 それに気づけないのか、気付かないふりをしてあげているのか。
 その事にスタンが気付くのは、いつになるやら。
630 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/26(日) 03:22:20.40 ID:IlqajZz1o

〜〜〜寺子屋前・人里の一角〜〜〜

「……どういうつもりだよ、ディムロス?」

『お前が起きないのが悪い。この馬鹿もんが』

 荷物に剣を腰に携えただけで慧音宅……寺子屋を飛び出したスタンは、その剣に語り始める。
 周囲はまだ早朝だからか、人はまばら。
 ゆえに隠れることなく、『ソーディアン』と会話をし始める。

「なっ。……今日は言い返せない」

『今日だけじゃないだろう、このスカタン。……しかし、豪快だったな。ケイネという妖怪』

「そうなのかー? 俺は気付いたら池の中だったからさ。ところで、妹紅の事なんだけど」

『お前の気付いている通りだ。彼女は我の声が聞こえる。昨日から、その予兆があった』

 ソーディアン……一部の人間のみが扱える、特殊な技術で作られた剣。
 幻想界に六つだけ存在し、六つともが別々の属性を持っていた。
 なぜ過去形なのかというと……現存を確認出来たのが五つだから。とはいえ、そのうち一つはすでに『地獄』にあるのだが。

「らしいなー。……あの時の皆は聞こえなかったのに、なんでだ?」

『分からん。分からんが……この世界が、我達の世界とは違うからかもしれん』

「……他のレンズが、感じられないってやつか?」

『ああ。物質界や神界にもあったものが、幻想郷には感じられん。ただ、”幻想入り”してないと言われれば、それまでだがな』

 ソーディアンには、元の使い手の人格が「インプット」されている。
 スタンの持つディムロスには熱く、先陣を切って仲間を導く男の人格だ。
 だが同時に、司令官たる智略も持ちえる彼は、冷静に分析を行う。
 それでも、憶測までしかたどり着けないほど、情報量が少ないのだが。

「スタン君。よろしいですか?」

「あ、はい。どうぞ」サッ

「……今、剣に話しかけていましたね?」

「え、何のことでs……ってそうか、ヒデオさんなら隠さなくていいのか」

『話しているところをだけだ。ソーディアンの事までは話すな』

「分かってるよ。いちいち五月蠅いなぁ」

「スタン君とその剣との関係は、相変わらずのようですな」

「ええ。……妹紅が聞いた声は、こいつの声です」

 かつての仲間である英雄に、打ち明ける。
 そこには仲間としての信頼関係がある。この二人だからこそ、より強くだ。
 ただそれでも、ソーディアンの元の持ち主達の意向を守る事を選んではいるが。

 余談だが、スタンはまだ一六歳。対して英雄は三十八歳である。

「やはりですか。確かスタン君、ルーティーさん、リオン君の三人が、「そーでぃあん」を使っておられましたな」

「他にももう少しいますけど、あの時なら俺達三人ですね」
631 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/26(日) 03:25:50.69 ID:IlqajZz1o

「妹紅さんが聞こえたのは、何か理由が?」

「……結論からいえば、分かってません。こいつなりに考えてはいるようですが」

『こいつなりだと? スタン。お前にだけは言われたくない言葉だな』

「だから五月蠅いなー、もう」

「まぁまぁ。私達が聞こえないのが悪いのですから、スタン君を悪く言うのはお止めください」

『む、すまn……何故分かった。もしや、聞こえて……!?』

「な、なんで分かったんですか!?」

「おお、あっていましたか。いや、これは教師の勘なんですがね」

 長年、それも「私立ジャスティス学園」の教師を務めていれば、自然と人を察せられるようになる。
 その裏にあるであろう詳しい交友関係までは難しいが、目の前でやり取りしていれば、どういう間柄かは容易に想像できるのだ。
 それがたとえ、片方は声が出せぬ存在であったとしても。

「ほえー……」

『さすがというべきか。お前も見習え、スタン』

「難しそうだけどな」

「しかし、分からないとなると、これ以上は考えても仕方なさそうですな」

「うーん。勝手知ったる我が家……じゃないですしねぇ」

『……まぁ、その使い方でも構わん』

「そもそも私達が知っているつもりなだけ、ということも十分ありますぞ」

「……ですね。前のあの戦いで、不思議な事は数え切れないほどあるって、体験しましたし」

『正直、あれは我も驚いた。その後も、驚きの連続だったがな』

「……」

 ディムロスは、作られてからおおよそ千年の月日が経っている。
 それだけ聞けば長寿に聞こえるが、実稼働期間は三十年ほどか。
 とはいえ、千年前の十数年間と、現代の数年間を経験していれば十分だろう。
 後半が、妖怪の一生でもそうそう味わえない濃密体験であることを、加味すればだが。

「……それってつまり、考えても無駄って、ことですよね?」

「そ、そうなりますな」

「…………」

「……」

『……』

「……よしっ。なら、さっさとご近所周りしてくる! あれこれ悩んだって、仕方ないですし」

「そうですな。こういったことも併せて、零児君に話しておくことしか、今は出来ません」

「考えるの、苦手だしなー、俺。とりあえず、お隣さんだ。ヒデオさんは、どうします?」

「回覧板は逆の方向ですが、子供たちの様子も見たいのでお供しますぞ」

「分かりました。…………うーん、ご近所さんになんていうべきか」ウーン


 その後、ご近所さん達に謝りに行ったら、なぜか好評だった。
 一部には子供のころを思い出したとかも。
 もちろんスタンは納得いかなかったのだが……。それはまた、別の話。
632 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/26(日) 03:34:41.22 ID:IlqajZz1o

以上で投下を終わります。人里の朝……秘技『死者の目覚め』回でした


今回、特別気になる点が存在するとは思いますが、座敷わらしの時同様にこのスレでは深く触れません


さて次回の『仙界電』はおそらく木曜となります。神霊廟‘sと……

それでは失礼します
633 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/26(日) 15:39:21.16 ID:H8M6+ztDO
乙!
『死者の目覚め』ねぇ〜、実際にやる家もあるんだろうけど、実家ではされたことないなww

今回のオリジナルな掘り下げも、どことなく寂しげな感じを受けましたね。
634 :閑話休題でもない出来事集 ◆NamCapMdYU [saga]:2012/02/28(火) 14:32:10.75 ID:sBiva+NZ0

フェリシア「うにゃあああああああああああああ!!」

鈴仙「ななな、なに。なんなの、フェリシアさん!?」

フェリシア「海鮮魚が足りてない! サンマ! サンマの塩焼きが食べたいの!」

輝夜「幻想郷に海は無いものね〜。スキマ妖怪に頼めばどうかしら」

フェリシア「それだ! ちょっと神社行ってくるね!」ダダダッ

 その後、迷った挙句、ウサギに運ばれてきたのであった……

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


幽々子「ロォーズゥ、ひ〜ま〜よ〜」ベタベタ

ローズ「とは言われても……私は別に、暇ではないわ」

幽々子「ジューダスゥ」

ジューダス「……ふん」

妖夢「幽々子様。タロット占いは……」

幽々子「飽きたわ。皆、似すぎてるもの〜」

ジューダス「……全員幽霊だからな」ボソッ

『                    』

妖夢「…………」カキカキ

 主人観察記:祝・二日坊主っと。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


響子「柿 の 美 味 し い 季 節 で す よーーーーーーー!!!」

ヘイムレン「ミカンも、美味しいねぇ」ツルピカー

マミゾウ「梨もいけますぞ、聖さんや」シャクッ

聖「私は柚子が好きですわ。……んっ、酸っぱいж」クゥー

星「リンゴも頂きましたよ、皆さん。今、ウサギの形に……」



ナズーリン・ぬえ「「何この高齢者空間」」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
635 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/28(火) 18:51:05.48 ID:cSOQn1oDO
乙!
アニメ調で容易にイメージ出来ましたよ!
636 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/02(金) 01:44:05.25 ID:LaEwDfQZo

こんばんわ。レス、ありがとうございます

……なんだか最近、遠めに設定すると真夜中更新が多い気が……?

ともかく、投下です。『仙界電』……どうぞ
637 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/02(金) 01:49:05.53 ID:LaEwDfQZo

〜〜〜仙界・落物注意〜〜〜

「……」キュー

「またですか……」

「またみたいね〜。今度はお二人さんだけど」

「だ、大丈夫でしゅか!? お姉しゃん!」

「な、なんの……これ……し…………」ガクッ

『…………』

 ここは仙界。神子達が住まう場所。
 時間でいえば、神子とクリノが外に出た日の夜……ちょうど、皆が温泉に入っている頃。

 そんな時間に、布都の元へと再び荷物が届けられた。
 今度はクリノよりも圧倒的に重い。三倍以上はあるだろう、巨体が。

「わわっ、倒れてしまいましゅた。応急処置の準備でしゅ!」

『…………』

「なんだー? ……おぉっ? 新しい置物かー?」

「大丈夫ですよ。物部氏は……いえ、尸解仙はそんなに柔ではありません」

「シカイセン……でしゅか? あ、突然お邪魔して申し訳ないでしゅ」

「気にしなくていいわよ〜。物部様は、そういうの好きだそうだから」

『…………』

「しょれは……痛めつけられるのがしゅき、という意味でしゅか?」

「あながち間違ってないですね。そのうち起きると思うので、退いてさえいただければ」

 サ行が足りていない赤ん坊。それが今回落ちてきた一人。
 もう一人は沈黙を貫いているように見える、細身すぎる男。
 こんなアンバランスな二人組が一緒にいる光景は、普通なら非日常的だろう。
 赤ん坊が、クリノの三倍の重量の原因である、緑のロボットに乗っている事を加味しなくとも……。

「……確かに、生体反応は良好でしゅ。シカイセン……知らない職があるでしゅね」ウーン

「うおー! なーかーまーかー!」

『…………』

「なんでしゅか、ジェネティーしゃん。……似た臭いがしゅるんでしゅか」

「所で、貴方達の名前は? 赤ん坊さん」

「申し遅れましたでしゅ。僕はフーバー。こちらはジェネティーしゃん。二人とも、秘密警察機構、コマンドーチームのメンバーでしゅ」

「……秘密警察機構?」

「コマンドーチーム?」

「ジェーネティーかー! よーろしーくなー!」

『…………』

 そんな二人組の、所属も告げる。

 秘密警察機構『コマンドーチーム』。『超未来』の銀河全域において発生する犯罪に対し組織された、裏のチーム。
 隊長のキャプテン・コマンドーを筆頭に、その道のプロ中のプロのみが所属する、裏機構。
 本来ならば各隊員の正体はもっと隠されてなければいけない。
 だがあの戦いで一般人にまで余裕で知れ渡り、今では一般人のファンクラブまである。
 『それでも、自分の役目を果たすのが、commandoだ!』とは、キャプテンの言だが。

「あ、しょちらのお名前を教えていただけるとたしゅかりましゅ」

「失礼。私達は…………」

 少女説明中……
638 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/02(金) 01:52:46.54 ID:LaEwDfQZo

「トジコしゃん。シェイガしゃん。ヨシカしゃんに、フトしゃんですね」

『…………』

 各々の自己紹介と幻想郷の説明が終わり、名前を再確認するフーバー。
 彼は幼児でありながら、とてつもなく早い脳の成長を遂げ、コマンドーチームに入った超エリートだ。
 担当は発明と、組織のブレイン。自ら作ったロボットに乗り戦う、メカニック。

「……今更だけど、そのしゃんって……さん?」

「しょうでしゅ。僕、まだちゃんと発音ができないんでしゅ。聞き苦しいかもしれましぇんが、許して欲しいでしゅ」

「……いいえ、構わないの。むしろ……クルわ」

「〜♪ 〜♪」スリラー

『…………』

 発音に難がある事以外は、並の大人よりもよっぽど大人だ。
 どれぐらいかといえば、銀河規模の講演会を行う程のレベルで。

 なお、お察し頂けるだろうが、機械開発や新理論発表等の最年少記録は全て彼が塗り替えている。
 果たして次はいつ塗り替えられるのか……分かった物ではない、最年少だ。

「……カク氏の、見てはならない部分か」ハァ

「しょ、しょうでしゅか……しかし、ゲンショウキョウ……まだ見ぬしぇかいがあるんでしゅねぇ」

「……もしやクリノという方の名を、聞いたことは?」

「クリノしゃんでしゅか。大事な仲間の一人でしゅよ?」

『…………!』

「そーおなーのだー。昨日来たのだー。……昨日だったか〜?」

「今朝よ、芳香」

「ほ、本当でしゅか!? ……って、ジェネティーしゃんの声が分かるんでしゅね」

「? わーかるぞー? なー、青蛾ー?」

「いえ、私は分からないわ。……ゾンビ仲間だからかしら?」

『…………』

「ジェネティーしゃんはゾンビじゃないでしゅ。何で皆しゃん間違えるでしゅか……」

「(正直、分からないんですが……」

『…………』

 対し、寡黙を貫いているように見える包帯男……ジェネティー。
 マミーコマンドーとして所属する彼は、対生物攻略の要だ。
 その細い体と包帯は、人間では危険な切り込み隊長を難なくこなす。
 銃弾も毒もあたらないのだから、非常に適任なのだろう。

「む、気にしてないんでしゅね、ジェネティーしゃん。わかりました。しょれで、クリノしゃんは……」

「貴方達同様に"幻想入り"して、今は幻想郷の散策でもなされているかと」

「連絡は出来ましゅか?」

「それなら、物部様ね〜。……いい加減倒れているふりを止めて、起きたらどうでしょう?」

「……ふりではない。本当に痛かったのだ……」ムクッ

「(やっぱり肉体は脆い……」

「しゅみましぇん、フトしゃん。僕が落ちてきたばかりに」

「いやいや。痛みは確かにあれど、一日の内に二度珍しき"幻想入り"の到着点にいた……やはり私は祝福されておるのだな!!」

 それはそれ、これはこれ。思い込みが激しい布都だが、分けて考える冷静さはある。
 問題はやはり、分けた後の判断なのだが……それが一種のムードになっているから、悪くはないだろう。

『…………』
639 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/02(金) 01:55:39.13 ID:LaEwDfQZo

「なんとなく言っている事がわかったわ。でもこういう人なの、物部様」

「そーおなーのだー」

「して、幻想郷に向かうのだな」ニヤッ

「太子に連絡です、物部氏」

「いやいや。ここは仲間とご対面させるのがノリという物であろう。しばしまたれい!」

「……独特でしゅね」

 しかしながら、やはりこう口に出してしまう。
 彼女は妙なところで空気を読むというか、誰でも彼でも最初は持ち上げてしまうというか。
 気遣いはいいが、正直からまわっている感が否めない。

「否定しません。少し時間も掛かるでしょうし、寛いでいてくださいな」

『…………』

「お言葉に甘えるでしゅ。ジェネティーしゃんも、感謝しましゅと」

 とはいえ今回は、最終的に合流するつもりだから、その手間が省けるならそれで構わない。
 どちらかといえば、見ず知らずの二人組にここまでしてくれる事に、申し訳なく思う。
 コマンドーチームとしての責任や心持もある。
 仕事柄、見ず知らずの相手に対する警戒心も、見せないだけで存分にあるのだが。

「しかしジェネティーしゃん。しゃきほどからいろいろと試しているんでしゅが……」

『…………?』

 先の会話中ずっと「シルバーフィスト」……フーバーの乗るロボットのモニターを動かしていた。
 仙界の規模や、彼女らの生体登録。空気中の成分の解析等も同時並行だ。
 コマンドーチームのブレインとしての仕事の一環なのだが、彼の優秀さを行動で示すものでもある。

「他のコマンドーチームや、ゲゼルシャフト号。デュランダルにもつながらないでしゅ。
 ここはもしかしたら『物質界』や『げんしょうかい』のように、別しぇかいなのかもしれないでしゅね」

『…………』

「クリノしゃんに、この通信障害……まるで、あの時をようでしゅね」

『……』

 そんな彼が知らせる、どうってことない真実……彼らの日常の一部。
 一口に通信障害といえど、いくつか種類がある。
 妨害電波によるものか、通信対象が損壊するか、対象が何かしらの理由で存在しないか。
 そして、『自分達が異世界に行く』かだ。

「『超未来』で連絡がつかなくなったキャプテンしゃん。飛竜しゃん。KOS-MOSしゃん。
 ロックしゃんも、もしかしたらここにいるかも知れましぇんね」

『…………?』

「……マシュヨしゃんでしゅか? ……あの人は連絡してないだけな気がしましゅが」

『…………』

「勿論、リシュトには載しぇてあるでしゅ。クリノしゃんと会えたら、皆しゃんいるかどうかしゃがしゅでしゅ」

 多数の意世界が存在することを知った、あの戦い。
 あれのおかげで対処法マニュアルがさらに複雑化した各組織だが、コマンドーチームはその用意がない。
 何故なら彼らがその教本を練り上げ、銀河規模で配ったのだ。各々がすでに、頭に叩き込んでいる。
 そうでもなくとも、かつての戦いを経験した者達は肝に銘じているだろうから、心配ないのだが。


「ほれ、えーと、赤ん坊殿。お知らせですぞ!」

「フーバーでしゅ。しょれで、連絡とれましたか?」

「結論から言うと、出来なかった!」

「……へ?」

 眉を吊り上げてはいるが、困っているのか分からない表情で飛び込んできた布都。
 その知らせは、予想外だった。


640 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/02(金) 02:04:02.67 ID:LaEwDfQZo

以上で、『仙界電』終わりです。予想以上に短くしすぎた感

本当はもう少し布都をごにょごにょする予定でしたが、気の毒になったので少しマイルドに

むしろその分他三名の出番が減ったので、それを本編にて補充予定です


さて次回は日曜か月曜に『桃と鬼』。その後から投下速度を早めていきたいと思います

それでは



それからいまさらですが、スレタイの後半が詐欺状態です

小牟に言わせるの忘れてタイミングが無くなってた……はぁ
641 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/02(金) 07:19:51.62 ID:0MhHxCvDO
お疲れです〜。
スレタイですか…誰かに幻想郷の感想を聞かれた時とかどうでしょうかね?
それか零児がスレタイ上部を呟いた時の相づちとかで…。
642 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/03(土) 17:57:38.77 ID:KswAgiNDO
携帯からだと見えない?
643 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/08(木) 14:56:21.09 ID:nvmmH6SLo

こんにちわ。遅れました……携帯で連絡すればよかったのでしょうが

提案ありがとうございます

ただ、これまで本編内で話した内容からすると不自然極まりないので……

……本当、しくじった


さて、今回で閑話休題3を終わらせます。『桃と鬼』及び『メ』です
644 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/08(木) 15:01:32.92 ID:nvmmH6SLo

〜〜〜天界・有頂天〜〜〜

「なかなか……やるではないか」ニヤッ

「お前さんこそ、大口叩くだけはあるねぇ」ヒックッ

「当たり前だ。私を誰だと思っている」

「今は知る必要……プハァ。ないよねぇ?」ヒック

「……ふっ、その通りだ。……『ゲットマイレイジ』!!」

「『妖鬼‐密‐』!」

 ドゴォオオオオ……

「……激しいですねぇ」

「激しいわねぇ。柄にもなくはしゃいでる、みたいな?」

 ここは天界・有頂天。おもに天子が屯する、だだっ広い空間。
 あるのは天界の桃の樹と、その下の空間を気にしてはならないはげ山ぐらい。
 要するに何もないも同然の場所だ。

 しかし今現在、ここでは派手な事が起きている。

「『デモンクレイドル』!!」ガガガッ

「おっとっとぉ、酔神『鬼縛りの術』ぅ」ブンッ

「甘いっ! 穿つ!」

「わおっ!」ガリガリガリ

 原因はこの二人、デミトリと萃香だ。
 何故この二人が勝負しているか……時刻はわずか遡る。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜三日目、巳の刻〜〜〜

「……断る」

「あやややや。そう言わないで下さいよー。えーっと……」

「デミトリよー、文屋」

「……貴様」

 それは零児達が60年周期の異変に向かってから、一刻程経った頃の出来事。


 ネタを探して西へ東へ。いや空へ。今日も今日とて射名丸文、清く正しくインタビュワー。
 ようするに、絡んでいた。

「ご協力感謝します、天子さんっ。それでっ、貴方もっ、外来人ですよねっ? デミトリさん」

「小娘。あまり五月蠅いと、『追い払うぞ』」

「そういうわけにはいきません。こんなにも美味しそうなネタ……いえ、大規模な”幻想入り”。取材しなくてなんとなりますか!」

「知った事か。……ふんっ!」ブンッ

「おっとっと。いけませんよー、暴力わ〜。もっと穏便に……」

 文の新聞記事は捏造を一切せず、現地調達をモットーとしている。
 しかも相手の年齢や種族、お家事情を気にせず突撃するために、情報として美味しいのだ。

 ネタが思いつかないと自ら事件を起こしたり、誘発したりするから、出所はものすごく胡散臭いが。
645 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/08(木) 15:11:38.97 ID:nvmmH6SLo

「なーにが穏便よ。何人かぶっ飛ばしておきながら」

「いやいや、あれは事故ですよー。天女の方々が飛んでいるところに、わざわざ突っ込むわけないじゃないですか」

「……ま、面白かったからいいけどね?」ニヤッ

「それはなにより。それでデミトリさん。貴方と他の”幻想入り”している方々の関係は……」

「……テンシ。このカラスは何なんだ」

「下界の山の妖怪よー。適当に話してあげれば、満足して帰るでしょ」

 かつて自らが異変を起こした時も、探りを入れてきた鴉天狗。
 一番初めにやってきた動かない大図書館。その次に鋭かった者。
 その速さに似合わぬタフさと、理解力を持つ少女。

「ちっ。主と下僕だ」

「ああ、下僕と主ですかー。どちらの方が主さんで?」

「ふっ。どいつが、飼い犬に食い殺される主に見える?」

「あの方々は犬というより、もはや動物園ですけどね」

「それも、放し飼いだ。いや、檻や首輪も意味がない、と言うべきか」

「ほうほう。しゃしゃしゃの射名丸っと」カキカキ

 と、好意的に捉えてみたものの、実際は早くてしつこくてネタ重視なパパラッチだ。
 そのあたりは、排他的で古典的な他の天狗と違って友好度合いが高めなだけで、やはり妖怪なのだろう。

 そんな、実力者の余裕を感じ取り、気だるそうに対応するデミトリである。

「それが残念なことに、一人飼いならされちゃったけどね〜」

「っ! こ、この酒臭そうな声は……」

「いよっ、天狗ぅ。奇遇だねぇ」

「萃香さんじゃないですか。こ、こんなところに何用で」

「……思ったのだがな、テンシ」

「ん? 何よ?」

「小娘ばかりいすぎではないか? この幻想郷というのは」

 言葉の嵐が応酬しだしそうな雰囲気を漂わせていたら、文が突然縮こまる。
 現れたのは萃香……元・妖怪の山の四天王であり、彼女達天狗の元上司。
 今では対等……と鬼たちは言っているのだが、過去の経緯から山の妖怪たちは怯えてしまうのだ。

「ここらへんは私の領地だよぉ〜? 理由なんていらないさ」ヒック

「若干否定できないけど、男だってちゃんといるわよ」

「領地……ですか?」

「そ。ってことで天人さー。そいつだれ?」

「あんた、私を召使か何かって勘違いしてない? 言う義理なんてないわ」

「…………」

 そんな彼女に対し、過去に一度完膚なきまでに負けて領地を取られた天子。
 ここを取られたこと自体は、正直どうでもいい。むしろ、暇つぶしとして彼女は使える。
 ただ、『緋想の剣』で弱点を狙えたのにもかかわらず、勝てなかった事が癪なのも事実。
 だから子供のように対応する。どうせ相手も分かってる事をわかっているのだから。
646 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/08(木) 15:14:16.51 ID:nvmmH6SLo

「けちんぼー。……天狗ぅ?」

「は、はいっ! その方はデミトリさん。外の関係者だと思われる人ですっ」

「どいつもこいつも……」ハァ

「へぇ。零児の知り合い〜?」

「さぁな。貴様に言う義理はない」

「ぱくり」

「いやー、別にいいけどさ。あの人間の知り合いには、グビッ……ぷはぁ。見えないしねぇ」

「……どういう意味だ。小娘」

「そのまんまだよぉ? 本当にただ、見えないだけさぁ」ケラケラ

「貴様がどう思おうと勝手だが、私はあの人間を知っている。その逆も、な」

「だってさぁ〜、文」ニヤニヤ

「へ? あ、はい?」

「メモメモ♪」

「見事に聞きだされてんじゃん。あんた案外単純ね」

「……む」

 しかしその方法は、自分が過去に繰り返してきた事。
 なんでもないように流し、デミトリに目を付けて誘導尋問で誘う。
 結果、彼の安いような高いようなプライドは、ものの見事に引っかかったようだ。

「あっはっは。どこかの吸血鬼みたいだねー」ヒック

「なに? 吸血鬼だと……?」

「そーそ。見栄だけでっかいおこちゃまさ。あんも、似たようなもんだね〜、どうやらさ」

「……ふぅむ」

「ありゃ? つれない」

「その吸血鬼もまた、小娘か? テンシ」

「そうね。あと大きさ的には、萃香と同じようなもんよ?」

「名は?」

「レミリア……だったかしら。良く覚えてないわ。酒宴でしか見かけないし」

「……そうか。…………」

 だがしかし、それ以上の挑発には乗ってこない。
 腕を組み。目を閉じ。しかし漂わせる気は変わらず。
 誰にも気を許していない。そう示す、とげとげしいオーラを溢れさせたまま。

「……零児の知り合いってのも、あながち嘘じゃないのか。ねぇ、文?」シャク

「ですね。出会ったときと、少し印象が変わりました。……ところで、いつの間に桃を?」
647 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/08(木) 15:20:12.90 ID:nvmmH6SLo

「時に、スイカと言ったか」

「んー? なんだい、デミトリィ」

「ひとつ、勝負と行こうか。スペルカードでな」

「……なんでだい?」

「理由なら……」ブワッ

 そのオーラが爆発し、目に見える黄色と黒の力となる。
 そしてもともと怖かった顔が更に凶悪な、それこそ悪の親玉のような表情へと移り変わる。

「勝負が」グワッ!!

「ついてから、ってか!」

 ガガガガッ

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「で、文屋。今暇なんだけどさ、インタビュー受けて上げない事は……」チラッ

 ヒュゥゥ〜〜…………ヒラヒラ

「……居ないわね。ん? 手紙?」

『私、自分がしたいモノにしか取材しませんので!』

「……あのくそ鴉め」チッ

 そんなこんなで、萃香とデミトリが決闘中。天子はそれの観客といったところか。
 その隙に逃げ出した文の走り書きに悪態をつきながら、興味深そうに二人の戦いを見つめる。

「見てる分には楽しいけど、やっぱ、ねぇ……衣玖も龍神様のとこ行ったまま帰ってこないし」

「飛べ……!」バサバサバサ

「『萃鬼』!」ヒュウッ

「蝙蝠が出たと思ったら、吸い込まれてるわね〜。巣に帰ってるみたいだわ……ま、しばらくは見あきないだろうし、いっか」

暇つぶし    暇つぶし
 大事 の前に 小事 は気にしない。
 その大事は、まだ決まっていなかったりするわけだが。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

………………

…………

……

「『ミッシングパワー』!…………おや?」

「捕えた……!」ガシッ

「おおうっ?」

「『ネガティブストーレン』」グルンッ

「おおおお」

 ズガァァン……

「……ありゃー、私が投げられたか」ブラブラ

「隙だらけだったからな。これで私の勝ちだ」ニヤ

 発動しない『ミッシングパワー』に不意を突かれた所を、回転式逆さ投げを決められ、勝負がつく。
 スペルカードルールによる決闘だったはずなのだが、妙な終わり方である。
648 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/08(木) 15:24:15.38 ID:nvmmH6SLo

「……あんた、地面に角が刺さってるわよ」

「うーん。抜けなぃー」ブンブン

「別にそのままでも構わんだろう。……先の吸血鬼の話だが、貴様は知っているか?」

「んー? あんまりー。私も酒宴ぐらいだよー?」

「そうか。ならば、知っていそうな相手を教えろ」

「それが理由ねぇ。んー。さっきの天狗なら知ってるんじゃないかい?」

 唐突に質問が投げかけられる。
 先の反応から、来るであろうと分かっていた質問だ。
 だがあえて知らないふりをするのもまた、この場の空気ゆえ。
 戦いを楽しむ鬼にとって、理由なんてものは終わってからも考えない些細な事なのだ。

「……あいつを絞めるべきだった……いや、まて。確か貴様……あいつの上司だったな」

「元だけどねぇ。……使いっ走りさせるってか〜?」

「……それでも構わんがな。ともかく、そのレミリアとかいう吸血鬼の詳細が知りたい」

「ま、それなら適当に聞いてきてあげるよ。……だから抜いてくんない? いい加減頭に血が……」

「…………」ニヤッ

「あはー、悪い顔ー」

「……時間はまだある。あの時ほど、切羽詰まってはいないから……な」

「? 何の話?」

「……ふん」

 少女たちが理解できない独り言を放ち、そばの桃の樹にもたれ掛かり、眠る。
 彼……いや、吸血鬼は本来棺桶の中で眠るのだが、ここに転移した際にそんなものは無く。
 彼ほどの力があれば、吸血鬼の制約はほとんどないに等しいため、関係ないのだが。

「……うー。わざわざ岩に刺すんじゃないよー」ジタバタ

「これ、一応山ね」
 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 
 
〜〜〜雲海・???〜〜〜

「龍神様ー。龍神様ーー!」

「はて、龍神様がおられませんね。散歩の時期……にしては、少し早いような」

「…………」

「あっといけません。中村さんの忘れものを届けなければ」フワッ

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
649 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/08(木) 15:29:57.97 ID:nvmmH6SLo

     『メ』

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 金髪の子、可哀想〜♪

 うそつき大人にだ〜まさ〜れて〜♪

 白黒の個性、失せていく〜♪

 うそつき男に絆されて〜♪

 つまんない人間になっちゃうの〜♪


 黒髪の子、どうしたの〜?

 自由な貴女はどこへやら〜?

 紅白の色、褪せてゆく〜?

 沈んだ貴女は魅力なく〜?

 目出度くなんか〜あ〜りゃしない〜?


 ……本当、つまんない

 何でかしら。どうしてかしら?

 零児が来てから、魔理沙と霊夢が楽しくなくなったから

 あの男が、あの大人が、霊夢と魔理沙の色を奪っているのかしら

 ちょうど、赤黒だし

 ……つまんない。あの人間、つまんない

 心配しているふりして、仕事の邪魔にならないようにしているだけ

 子供を都合のいい駒にして、異変を解決しているだけ

 私達の事知っているから、余計にたちが悪いわ

 あんなうそだらけのひとのおとな

 …………

 いっそ、消してしまおうかしら?
650 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/08(木) 15:33:52.52 ID:nvmmH6SLo

 ……駄目ね。そしたらきっと、霊夢が私を退治しにくるわ

 それが妖怪の退治屋だもの

 きっと魔理沙が仇をとるわ

 それが普通の人間だもの


 じゃぁ、どーすればいいかしら

 あの男、あんまり能力効かないし

 どーすればいいかしら

 ……そうだわ。醜い心を晒してしまえ

 私が見損なった人のように

 あの人間の臭い心を晒してしまえ

 私を騙した人のように

 ……でもどーやって?

 能力が効かないのよ、こいし

 どーするの。考えなさい、こいし

 やればできる子なのよ、そうよこいし

 お姉ちゃんだって、そう言ってたじゃないこいし

 考えなさいこいし

 ……あの新聞

 天狗が持ってたあの新聞

 あれ、確か皆の居場所がどーだと言っていたわ

 人里に誰かいるって言っていたわ

 ……スタン、ですっけ?

 そいつから聞き出しましょう

 大丈夫よ、こいし。貴女なら出来るわ

 たのしいたのしいげんそうきょうをとりもどすせいせんの、ぜんしょうせんよ

 うふふふふ

 ははは
 

 
……あー、つまんない
651 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/08(木) 15:38:47.01 ID:nvmmH6SLo

以上で投下を終わります。デミトリ案外動かしにくい

ようやく紅魔郷です。win版第一作なのにようやくです

次回投下は土曜に、『花映塚攻略後+紅魔1面』です

投下速度頑張って上げていきますよっと

では、この辺で失礼します
652 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/08(木) 16:34:29.03 ID:nvmmH6SLo

おわっとと張り忘れてました神霊廟キャラ設定。……どうも影が薄い……

東方Projectより

芳香

 キョンシーであり、邪仙の僕。新生バカルテット筆頭候補。「何でも喰う程度の能力」。
 脳が腐っているから馬鹿。けど力持ちなうえ、不死身。というか……裏が……。

霍 青蛾(かく せいが)

 邪仙娘々。人妻。己の力を見せびらかしたいがために神子を誑かした。「壁をすり抜けられる程度の能力」。
 芳香の主人。芳香の潜在感情を読み取ったり、何度も復活させたり。意味深な関係。
 今作では引っ越しのお手伝いとか、霊夢に弟子入りしようとかで少しおとなしい。少しだけど。

蘇我 屠自古(そがの とじこ)

 太古の豪族、蘇我の長。物部氏と争っていたと言われるが……。「雷を起こす程度の能力」。
 尸解仙なのだが、普段は霊体で暮らしている。脆い肉体より、こちらのほうが便利だとか。
 真面目系のように見えるが……

物部 布都(もののべ ふと)

 太古の豪族、物部の長。裏で太子・神子と屠自古と結託し……。「風水を操る程度の能力」。
 尸解仙っぽいのだが、何か微妙。ドヤ顔フェイスでお馴染みになった娘。波乗りするよ。
 勘違いが多いが前向きで、神子に信頼される程度の実力持ち。5ボス勢のH筆頭。

豊聡耳 神子(とよさと みみみ こ)

 太古の指導者、聖徳太子その人。道教のために仏教と神道を利用しようと画策したが……。
 「十人の話を同時に聞く事が出来る程度の能力」。能力名最長じゃね?
 聖とは別タイプの聖人。「和を以て尊しとなす」を体現している。……つもりの人。ずれてる。
 寝起きのテンションがいろんな方向でぶっ飛ぶ人。教えについて、実は三人に隠している事案が……。


ナムカプより

フーバー

 超未来の天才児。コマンドーチームのブレイン。見た目は幼児、頭脳は大人。サ行に悩む。
 「○○する程度の能力」、未開花。素の「ベビーコマンドー」はジェネティと一緒で小牟と互角。
 ここ最近、あの異変の関係で忙しなく動き回っていた。その関係で、シオンと懇意に。博士の代わり。

ジェネティ

 超未来の戦闘員。コマンドーチームの切り込み隊長。包帯に身を包むのは、そういう星人だから。
 「○○する程度の能力」、未開花。素の「マミーコマンドー」は一人だと小牟よりやや弱い。
 あれ以降、様々な交流があり知り合いは増えたが、声を聞いた事のある者は相変わらずいない。
653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/08(木) 18:23:10.83 ID:SwYsRUqDO
お疲れ様!
デミトリさんが嫌がってたスペルカードバトルをしてくれるとは思わなんだ。

こいしちゃんはクロスヘイトな子なんだろうか?

紅魔館…姉妹が増えてたりして?ww
654 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/11(日) 02:03:33.54 ID:/5QTXzpno

こんばんわ。レス、ありがとうございます

神霊廟キャラ紹介の、芳香の名前を修正し忘れてました……

正しくは  宮古 芳香(みやこ よしか) です。神霊廟で一番普通な名前ですねこれ


それでは本編を再開します。『花映塚攻略後+紅魔郷1面』です

どうぞ
655 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/11(日) 02:06:23.48 ID:/5QTXzpno

零児「なるほどな。日ごろから、U.M.N.にバックアップを取っていたおかげで……」

KOS-MOS「はい。U.M.N.から破損データの補修を実行し、同時に記録データのサルページを行った結果、異変の通りとなりました」

魔理沙「なんだかわからんが、すごい技術だ」

 映姫達と別れてしばらく。KOS-MOSにこれまでの状況説明を終えたところ。
 KOS-MOSがもたらした新情報は、これまで分からなかったいくつかの事柄を解明するのに役立っていた。
 とはいえ、それでもやはり謎は深まるばかりだが。

小牟「つーことわ、あの後メディスンがどうなったかわかるんじゃな?」

KOS-MOS「……異変の結界が収縮するまでです。それ以後のデータは、一切存在しません」

霊夢「結界の収縮?」

KOS-MOS「はい。貴方方四名が次のポイントへ向かった後、あの空間を覆っていた結界は収縮。そのままロストしました」

零児「何? ……その時、お前さんは?」

KOS-MOS「回避方法が分からず、そのまま巻き込まれました。その際、駆動部や外部メモリを破損しています」

魔理沙「さっき言ってた、60%がどーたらってやつだな」

KOS-MOS「はい。それから、メディスン・メランコリーの件ですが、最後に『スーさん』と言った事を確認しました」

霊夢「スーさん? 誰それ」

小牟「鈴蘭のスーさんじゃな。……異変をなぞるなら、それこそあ奴の母のようなもんじゃ」

魔理沙「あー、そういやずっと手に握ってたな?」

 異変解決時の状況。なぜか情報になかった、KOS-MOSの日常記憶。
 僅かながらも残っていた、メディスンの本来の存在意義。
 分からない事より分かるに越したことは無いにも、程度があるだろう。
 そんな問題を一挙解決してくれるKOS-MOSが合流したのは、幸か不幸か。

KOS-MOS「申し訳ございませんが、これ以上のデータは見当たりません」

零児「これだけ分かれば、重畳だ。……しかし、道のりが違うな」

霊夢「そうね。これが本来の再思の道よ」


〜〜〜再思の道・彼岸咲く深紅の道〜〜〜


魔理沙「さっきは曖昧って言われて怒ってたくせになー」ニヤニヤ

KOS-MOS「空気中に毒素を検知。神経系に作用する種類の毒ですが、濃度は薄く、意識をはっきりと保っていれば問題ないと思われます」

小牟「彼岸花の毒じゃろな。再思の名の通りじゃ」

零児「さっきはここで、幽香と出会ったが……KOS-MOS、熱源は?」

KOS-MOS「熱源反応はありません。代わりに魔力に似た力の流れが、この先の森から溢れています」

霊夢「魔法の森だもの。……そういうのも分かるのね?」

KOS-MOS「かつての戦いで、様々なデータをインプットしました。そのおかげです」

魔理沙「結界も分かってるっぽかったよなー…………才色兼備とかあのメイド涙目だな」
656 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/11(日) 02:08:42.89 ID:/5QTXzpno

KOS-MOS「それは違います、マリサ。私はあくまでもインプットされたデータしか分かりません」

霊夢「…………ふぅん。へぇ」

零児「気持ちは分かるが、後でな。……ここから霧の異変――紅霧異変には、どう行くのが正解だ?」

 KOS-MOSに宿る存在を、かつての仲間……エイゼル以上に感じ取る霊夢。
 エイゼルや、魂が囚われた樹やその時の覇気の話から、魂がある事は知っている零児と小牟。
 だがそれがKOS-MOS達の問題であることも知っている二人は、踏み込みそうな霊夢を宥めるだけだ。

魔理沙「最短はやっぱ、霧の湖だよな。それでも遠いけど」

小牟「……紅魔郷って実は神社裏から始まっちょるんよの」

霊夢「……? そうだったかしら」

小牟「ルーミアめと出会うたんがそこじゃ。原作通りじゃと、じゃがな」

KOS-MOS「零児達の話からすると、残りの異変の筋書きも、その原作に沿っている可能性が高いと判断します」

 東方紅魔郷……紅霧異変の際の出来事を綴った話。
 とある夏の時期、幻想郷全体を赤い霧が多い、太陽の光を遮った異変。
 『霊夢』や魔理沙にとっては初めての、大がかりな異変だ。

零児「……何故先に言わなかった?」

小牟「一応これでも、昨日調べとるからの。少なくとも温泉の先までは適用外じゃ」

霊夢「萃香の時や永夜、紅霧と……やっぱりうちの結界はちゃんと働いてるのね」

魔理沙「紅霧は来てたもんな。……つーことは結局霧の湖か?」

 だがそれも、これから起きる大小様々な異変の一つに過ぎない。
 何ものにも囚われない霊夢は適当にしか覚えていないし、
 明日に生きる魔理沙は経験としてしか覚えないのだ。

小牟「じゃな。その間にあの二人を見つけて話さんとの」

KOS-MOS「あの二人とは誰の事ですか、小牟」

零児「クリノと、この世界の住人、早苗のことだ」

魔理沙「ああ、緑二人組か。すっかり忘れてたぜ」

霊夢「そういえば会わなかったわね。入口あたりにでもいるのかしら。……飛んでみてくる?」

零児「頼む。俺達は魔理沙の先導で、とりあえず人里へ向かう。ついでに幽香を見つけたら、これを頼む」

霊夢「分かったわ。名前を聞くんですっけ」

小牟「うぬ。あ、ちとまっとれ。今写真撮る」

魔理沙「……なーモコスコー」

 すっかり忘れられていた緑二人組……早苗とクリノ。
 更に緑髪な幽香と緑尽くしな行動予定をたてている三人を横目に、気になる事を確かめ始める。
 彼の事もそうだし、彼らの事もだ。

KOS-MOS「コスモスです、マリサ」

魔理沙「ああ悪い。……コモッスから見て零児ってさ、どういう奴だ?」

KOS-MOS「分析結果という意味でしょうか? それから、コスモスです、マリサ」

魔理沙「ああうん、それそれたぶんそれ」
657 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/11(日) 02:13:08.94 ID:/5QTXzpno

KOS-MOS「…………五行の理を組み合わせ、様々な相手、状況に応じた戦いの出来る、
        すぐれた判断能力を持ったエージェントという結果が出ました」

魔理沙「……………………期待してたのと違うぜ」ガックシ

KOS-MOS「ご期待に添えず、申し訳ございませんにゃ。マリサ」

小牟「コスモスは超ロボロボしちょるしの。っと、これで良しじゃ。ほい、霊夢」

 だがしかし、コスモスを理解していないがために質問内容を間違える。
 小牟の言うとおり、コスモスはロボットがロボットたる理由を地で行く存在だ。
 外見がどんなに人間らしくとも、その『AI』は言葉通りにしか言わないし、受け取らない。
 もし正しく聞くのなら、彼の人間性とでも言うべきだったか。

霊夢「ん。本当、律儀よね〜零児さん」

小牟「え、わしは?」

霊夢「たぶんきっとおそらくもしかしたら律儀」

魔理沙「その通りだぜ」

KOS-MOS「その意見に76%賛成します、レイム」

小牟「いじめじゃっ!!」

零児「自業自得だ。それじゃ、頼んだぞ」

霊夢「はいはい。ちゃんと人里で待っててよ?」

魔理沙「適当な茶屋でな」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜一方その頃、無縁塚〜〜〜

 ピョコッ

「……霊夢達、行ったかな?」

「あいつら、誰なんだろ。魔理沙もいたけど」

「流石にあんな中に突っ込む勇気は、あたいにはないっ!」

「さいきょーのあたいは一人前の真剣勝負しかしないのさ!」

「……で、あたいなんでこんなところにいるんだろ?」

「…………うーん?」

「あ、大ちゃんところに帰らなきゃ!」ピュー



「……止めるべきでしたか?」

「へ、映姫様。一体何の事…………あー、あの氷精ですか? 別に今用事は……」

「……まぁ、ないですね。仕方ありません。これも彼らの善行でしょう」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜人里・東の茶屋〜〜〜

フェリシア「むー。サンマいないのー」ダルーン

小牟「紫な、ゆかり。……ぬし、そんなに我慢ならんのか?」

 野を越え森越え、人里に戻ってきた四人は、いつか星と寛いだ茶屋にいた。
 そこで霊夢を待ちながら談笑していたところ、永遠亭から薬売りをしに来た鈴仙とフェリシアと再開したのだ。
 フェリシアは、何やら禁断症状を発しているようだが。
658 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/11(日) 02:15:14.98 ID:/5QTXzpno

フェリシア「んー、わかんなぃ。なんか急に食べたくなっただけなんだよね」

零児「気持ちは分からんでもないが、川魚ならたくさんいるだろ。それを塩焼きして食べるんじゃ、駄目なのか?」

フェリシア「んにゃー、あの油ぷりっぷりがいいのー……」

魔理沙「? よくわかんねーな、それ。油ぷりっぷり? 魚が?」

フェリシア「へぇっ!? あの美味しさ分かんないの!?」

鈴仙「魔理沙は幻想郷生まれとか言ってなかった?」

魔理沙「おう。生粋の幻想っ子だ」

 幻想郷には、海がない。
 それゆえに、幻想郷生まれの住人は海の幸を知らない。
 川がある関係で、鮭は上ってくるらしいが。

フェリシア「それって損。人生の九割は損してるね!!」

魔理沙「……そんな美味いのか?」

KOS-MOS「サンマの味は分かりませんが、以前シオンが似た魚の塩焼きを食べ、美味しそうにしていたことがあります」

小牟「ま、日本の秋の旬の魚じゃ。美味しさは保障できるの」

霊夢「……何話してるのよ、貴方達」

 そんな、食べ物の話をしているところに、ツッコミが登場する。
 いや、突っ込みというと語弊があるか。別に零児は突っ込み放棄していたわけではないのだし。

零児「ん。……フェリシアが禁断症状でな」

フェリシア「あー、紅白の子。ねね、サンマ呼んでユカリ食べさせてぇ」

霊夢「……具合は分かったわ。まぁ、無理ね」

フェリシア「ええー! なんでさー、ケチー」

霊夢「私にケチって言ってもしょうがないわよ。そもそも、そんな簡単に結界抜けれる状況じゃないでしょ」

鈴仙「あと二つだってね。一応、うちは特に何も起こってないわよ」

零児「ギル達が世話になりっぱなしだが、構わないのか?」

鈴仙「さぁ……師匠が仕事を割り当てて、それをこなしてるから大丈夫じゃない?」

魔理沙「それなら安心だな。姫と違って」

小牟「あやつは別に横暴じゃないっちゅーに。出来んと分かっちょることを頼んで困った顔を見ちょるだけじゃ」

零児「それは余計だ。それで霊夢、どうだった?」

 そんなフォローとは到底思えない話だが、実際こうなのだから姫様は困る。

 そもそも、分かっていてそうするタイプが幻想郷には多いというのは、今更な話かもしれないが。
659 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/11(日) 02:23:30.10 ID:/5QTXzpno

霊夢「ええ、両方済ませたわ。早苗とクリノさんは帰ってもらったし、あの種も聞いてきた」

フェリシア「なーにー、その種ってー」

霊夢「アネモネとしか。詳しい事は自分で伝えるって言って、取られたわ」

零児「それでかまわんだろう。俺達は俺達のすべきことをこなしていくぞ」ガタッ

鈴仙「あら、もう行くの?」

魔理沙「早いに越したことは無い。だろ?」

 早苗ほどではなくとも、人から影響を受けやすい魔理沙。
 そんな彼女が零児のモノマネをする。
 微笑ましい一場面であろうか。

零児「……ああ。コスモス。すまないが、寺子屋で待っていてくれないか?」
                                                          <○>
KOS-MOS「了解しました、零児。そちらで待機します。座標、または目印となる物は、ありませんか?」

鈴仙「あ、それなら私が案内してあげるわ。どうせそっちに薬持っていかないといけないし」

フェリシア「むぅぅ。私は諦めないぞぉ……」

小牟「ほいほい。無理すんじゃないぞー?」

 ………………

小牟「……して零児。あの話、黙っとくんじゃな?」

零児「ああ。……そのほうがいいんだろ?」

小牟「うぬ。あと二つ解決してから、霊夢と紫に話すべきじゃな」

零児「後はクリノぐらいだが……あいつなら、黙っていてくれるか」

小牟「一応、話してはおきたかったがの」

霊夢「何の話」グイッ

 何やらよからぬ事を話している気配を感じ取る霊夢。

零児「……めどがついたら話す。今は、紅霧異変に集中してくれ」

 実際、その事を知ってしまえば、異変そっちのけで紫に問い詰めようとするだろう。
 それは二重の意味で避けるべきだ。
 あれを知っているものは、そういないはずなのだから。

霊夢「…………」ジトー

小牟「見ないで! そんな目でわしを見ないで!」

霊夢「……はぁ。分かったわ。二人を信じてあげる」

零児「埋め合わせは、必ずする」

霊夢「高くつくわよ」ニコッ

 そんなこんなで言いくるめられる霊夢。
 そうとは知らずに年相応の笑顔でほほ笑む。
 言ってる内容があーだこーだと言ってはならない。絶対にだ。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
660 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/11(日) 02:27:03.61 ID:/5QTXzpno

〜〜〜人里北西・霧なき道〜〜〜

 ある程度整備された、田んぼのそばを通る道を歩くこと数十分。
 これまで同様の異変の結界の前に到着した一行である。

零児「この先……確かに、結界があるな」

魔理沙「だけど、シャオムゥの言うとおりなら神社裏に出るんだよな」

霊夢「誰だったかしら……」ウーン

小牟「ルーミアじゃ、ルーミア。闇の妖怪。出落ちさんじゃな」

零児「闇の妖怪……なのに、出落ちというのは?」

小牟「あやつ、頭のリボンのせいで能力落ちとっての、正直雑魚じゃ」

 そんな説明をされる、紅魔郷一面ボス・ルーミア。
 小牟の言うとおり、一面ボスにして闇の妖怪であり、だがその弱さは一面らしい出落ちボス。
 能力の片りんも見せずに倒れるのだから、東方というゲームそのものとしても出落ち感満載だろう。

魔理沙「なーんか思い出してきたような……」

霊夢「ま、そんな妖怪ならすぐでしょ。……着いたわね」

零児「少し冷えるな。霧の湖が近いからか?」

魔理沙「にしては霧がねーけどな。案外、チルノが通った後だったりして」

小牟「まさかのー。なぜか知らぬがさっき戦ったんじゃ。大丈夫大丈夫。……よな?」

霊夢「……ああそっか。あいつの住処って湖だったわね」

零児「…………」

小牟「…………」

魔理沙「…………」

霊夢「…………」

零児「沈黙しても、何も変わらんぞ。なるときはなる。ならんときはならん。それだけだ」

霊夢「そうよね。きっと大丈夫よね」

魔理沙「そーそー。連コなんてダサいぜ!」

小牟「乱立させすぎじゃろ……行くか」

 フラグの乱立ご用心である。
661 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/11(日) 02:31:59.58 ID:/5QTXzpno

〜〜〜神社裏・夜の野と森の境〜〜〜

零児「………………森……いや、林か。おい、霊夢。魔理沙。小牟。無事か!」

魔理沙「おう、無事だぜ。視界良好! とは、いかねーなやっぱ。霧で見えねーぜ」

 結界を潜り抜けた、その先。小牟の予想通り、そこは霧の湖より離れた地。
 空を飛ぶ魔理沙が、その視界の悪さを愚痴る。
 それもそのはず。紅霧異変のその名である、紅色の霧が充満しているのだから。

霊夢「こっちも大丈夫よ、零児さん。……確かに神社が見えるわね。裏……とは言い難いけど」

小牟「勿論わしも大丈夫じゃ。それはしゃーなしじゃろ。これまでも多少の誤差はあったんじゃし」

零児「多少で済まん事もあったがな。……方角は?」

小牟「このまま西でよいぞ。すぐに野に出る」

零児「了解。急ぐぞ」

 タッタッタッタッ……

『そーなのかー?』

『So Nano Sir!』

零児「開け…………意味が違うっ!!」クワッ

 野に出た瞬間響く声。
 片方は疑問形にしか聞こえないが、もう片方はネイティブな英語。
 それもかなり、元気で自身に溢れた発声である。

霊夢「突っ込みが冴えわたってるわねぇ……」

小牟「今度は誰がおるんじゃ。わからんぞ」

魔理沙「……青くて、コクモツ程じゃないけどメカメカしいぜ?」

零児「まさか」

小牟「視認したぞー。キャプテンじゃな、あれ」

????「あれ、誰か来たのかな?」

?????「そのようだな。……駄目じゃないか、君達!」ズビシッ

魔理沙「へ、あ、え?」

霊夢「な、何よ?」

?????「こんな夜遅くに、君たちのような子供が飛んでいるとは……親御さんが泣くぞ!」ズビシッ

霊夢「…………」

魔理沙「…………零児。あれ、なんだ?」

零児「俺たちの記憶にまちがいがなければ、キャプテン・コマンドーだが……」
662 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/11(日) 02:35:11.11 ID:/5QTXzpno

キャプテン「おや、私の事を知っているのかな?」

 何やら熱く語っているこの男、キャプテン・コマンドー。
 青を基調としたパワードスーツに身を包んだ、金髪の好青年。

小牟「その隣におる金髪黒服がルーミアじゃ。インパクトまったくなくなったがの……」

ルーミア「あはー。私も知ってるの〜?」

 対してそのそばを飛ぶのは、黒服に金髪、さらに赤いリボンと色の映える組み合わせが多い少女、ルーミア。
 手を横に広げゆらゆらとする様は、揺らぎを体現しているような印象を受ける。

霊夢「零児さん。それってつまり……」

零児「俺達が知る彼とは、だいぶ違うな。……テンションが高い」

キャプテン「もしかして、君が保護者代わりなのかな? 駄目じゃないか、夜遊びをしちゃ!」

小牟「言うほど夜でもなかろうに。夏の……いかん。月が見えんで時刻がわからん」

ルーミア「…………貴方達は食べてもいい人間?」

魔理沙「いいわけないだろ。どっちかって言うと、食べる側だぜ」

零児「別に喰らわんだろう。……俺たちは遊びで出歩いているわけじゃない。この紅の霧を止めるために急いでいるんだ」

キャプテン「ああ、この霧か。確かにここ数日、正体不明の霧のせいで太陽の光があたらないね」

霊夢「それが分かってるならさっさと退いてくれないかしら。このやりとり……何度すればいいのよ、ったく」

 かれこれ四度ほど、似たようなやり取りを行っているか。
 しかしながら穏便に済ませる方法があるならそれを取るようになった彼女達。
 これもまた、零児と居ることで身に付いた処世術のようなものだ。

ルーミア「十字架〜」

魔理沙「十進法だぜ」

小牟「不夜城レッドじゃな」

キャプテン「…………」

零児「明日の朝日を拝むためだ。……洗濯物が乾かなくて困っている人間も、いることだしな」

霊夢「……?」

 最初の説明……東方Projectについて小牟が無駄に説明していたところを口にする。
 実際、真夏だと言うのに数日間ずっと曇り空だと、洗濯物が溜まる一方だ。
 幻想郷のインフラを考えると、それは非常に困ることだろう。
 彼女もあの頃は知り合いも少なかったのだし……。

キャプテン「なるほど。そういうことなら……」
663 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/11(日) 02:37:44.79 ID:/5QTXzpno

ルーミア「私は黒よ?」

小牟「こっちの話じゃよ」

魔理沙「あー、レミリアがしてたっけか、そんなスペカ」

キャプテン「レミリア……?」

魔理沙「へ? ……あああ、悪の親玉! やっつける相手だぜ!」

零児「あ、おい、魔理……」

キャプテン「む、そうか。そうだな、敵の下調べは大事だからね!」

小牟「ますますもって、キャラ違うの……」

零児「……あの子に次ぐ、改悪だな」ハァ

 危うく色々と破たん仕掛けるところだったが、それは回避できた。
 本来の彼もまた、悪者じゃないと分かると、妙に気を許してしまうところがあった。
 ただし、ここまで甘い基準ではないのだが。

キャプテン「まぁ、そういうことなら急ぐんだ。今は戌の刻を半刻程回った所だからね」

霊夢「あら親切ね?」

ルーミア「……私はお腹が空いたのだけども」

魔理沙「キノコ食うか?」ホレ

ルーミア「なんで持ってるの?」

魔理沙「私だからな」

零児「…………納得しかけたが、それは変だぞ」

霊夢「適当に喰わせていくわよ。……屋敷は広くて面倒なの」

 魔理沙がルーミアに餌付けをしたのを見てから飛び上がり、独り言のように呟く。

小牟「亜空間拡張装置のせいじゃな」ウンウン

零児「……何の話だ?」

魔理沙「さぁ?」

 僅かにだが戻ってきた感覚。
 子供のころに失ったと思っていた、憧れ。
 それを零したことに、彼女は気付かない。
 それを拾ったのが小牟だけだったのは、魔理沙にとっての…………。

キャプテン「……行ったか。……君達が実は、この異変の主犯格と知り合いなのは、察したさ」

ルーミア「そーなのかー?」

キャプテン「ああ。だが、あえて分からないふりをさせてもらった。……さて、始めようか。闇の妖怪」

ルーミア「あはっ。紅白の巫女がいたから大人しくしてあげたけど、もうそうはいかないわ……」ブワッ

キャプテン「それはこちらの話……さっ! 『キャプテン・コレダー』!!」

 バリバリバリッ…………

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
664 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/11(日) 02:49:13.07 ID:/5QTXzpno

………………〜〜〜〜――−・ー− 〜ー^==ー~=~=〜……ー^ー^ー−ー^ー==^^ー―ー・……〜ー

………………

私は、虚言の塊なんかじゃ……ない…………!

………………

………………〜〜〜〜――−・ー− 〜ー^==ー~=~=〜……ー^ー^ー−ー^ー==^^ー―ー・……〜ー
………………〜〜〜〜――−・ー− 〜ー^==ー~=~=〜……ー^ー^ー−ー^ー==^^ー―ー・……〜ー

 小野塚小町、ならびに四季映姫・ヤマザナドゥのデータ解析、失敗

 同時に、平景清のデータも損失。

 しかしながら、観察最中の考察より、適正体の可能性が低いことはすでに判明。

 よって調査優先度は低とし、放置する。

………………〜〜〜〜――−・ー− 〜ー^==ー~=~=〜……ー^ー^ー−ー^ー==^^ー―ー・……〜ー

 ルーミア

 女性型の妖怪。黒の服に、赤のネクタイ型リボン、赤のリボンを頭部に着用する。

 −−−から、闇を操る能力と判明。しかしながら、その規模に関しては不明。

 適正体である可能性は低いと判断。しかしながらその能力の規模を探るため、優先度は中と設定する。

………………〜〜〜〜――−・ー− 〜ー^==ー~=~=〜……ー^ー^ー−ー^ー==^^ー―ー・……〜ー

 キャプテンコマンドー

 人間。青いボディーアーマーに身を包んでいる。

 −−−から、腕のパワーグローブから炎と電撃を放ち、戦うことが判明。

 適正体である可能性は低いと判断。ボディアーマーの有用性を確認する必要はあるが、優先度は低と設定する。

………………〜〜〜〜――−・ー− 〜ー^==ー~=~=〜……ー^ー^ー−ー^ー==^^ー―ー・……〜ー

………………

…………

…………
665 : ◆NamCapMdYU [saga sage]:2012/03/11(日) 02:51:50.25 ID:/5QTXzpno

以上で今回の文は終わりとなります。次回は『紅魔郷2面』もしかしたら+3面……?

投下予定日は火曜日か水曜日となります

それでは、失礼します
666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/11(日) 16:25:11.73 ID:5X3cupADO
お疲れ様!
なにやら霊夢はコスモスが気になるご様子。てか名前wwコクモツとか一瞬何の事かと思ったわww

フェリシア…ユカリ食べさせて。て(^^; 本人が聞いてたらどんな顔をするやらww

ルーミアとの戦闘は回避出来たか。しかし代わりにキャプテンが闘(や)ってくれましたww

スキャナーさんがまた喋った。まぁ存在が何であれ、意思があるなら否定されたくはないよな。
667 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/17(土) 14:35:01.80 ID:+zwaVwKZo

こんにちわ。レス、ありがとうございます

何が火曜か水曜予定なのか……土曜じゃん……


と、落ち込んでる場合ではなく、続きです

『紅魔郷2面』だけですが

では、投下します
668 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/17(土) 14:37:13.91 ID:+zwaVwKZo

〜〜〜霧の湖・二重濃霧〜〜〜

霊夢「…………誰、フラグ立てたの」

魔理沙「私は悪くねぇ!」

小牟「わわわ、わしとちゃうぞ!」

零児「落ち着け。誰が悪いというわけじゃないだろう」

チルノ「あえて言うなら、あたいにあったお前達が悪い!」

 博麗神社から道なき野原を走り抜けた一行は、霧の湖へと到着する。
 そこは、先の花映塚の時と同じ、霧の濃い世界。
 そして同様に、小さな氷精が待ち構えていた。

大妖精「〜〜! 〜〜〜?」

小牟「む、言葉が分からん……?」

魔理沙「いや、あいつは声が小さいだけだぜ」

チルノ「大丈夫だって、大ちゃん。あたいに任せな!」

零児「あの緑髪の妖精は?」

小牟「大妖精じゃな。モブ系じゃが、かなりの人気の持つ名無しっ子じゃ」

 違うのは、飛竜の代わりに大妖精がいるというところか。

 大妖精――青い服と黄色の細長いリボン。ポニーテールにした緑の髪の、鳥のような模様の羽をもつ妖精。
 チルノが元気いっぱいのわんぱく坊主の印象なら、大妖精は清楚なお嬢ちゃん。
 手に持つユリの花が、その印象をより強いものとしているようだ。

チルノ「やいやい、人間共! ここを通ろうってのかい!」

大妖精「〜〜、〜〜〜……」

零児「怖がっているじゃないか」

霊夢「……『あの人、怖そうだよ』?」

魔理沙「零児の事だよな、それ」

小牟「やっぱり一部のもんにはコワモテなのかの〜?」

チルノ「どうした! あたいに恐れをなして声も出ないか!」

大妖精「〜?」

霊夢「『話しはしてるよ?』」

零児「聞こえるのか?」

霊夢「いえ、口読み」

小牟「意外な特技じゃな」

チルノ「…………」

 少し前に戦ったがために、余裕綽々な一同。
 実際問題、先の戦いで強敵だったのは飛竜のほうであり、チルノはついでの感じがあった。
 そういう気も感じてか、チルノの口がひくついている。

大妖精「……〜〜?」

霊夢「『チ、チルノちゃん?』」

チルノ「おまえら人の話をぉぉ……」キィィ
669 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/17(土) 14:39:31.71 ID:+zwaVwKZo

零児「ここは俺に任せろ。先の戦いのつけを払う」

小牟「あれは全員マイナスで、どっこいどっこいな気もするがの」

チルノ「聞けぇええええええ!!!」

  パキキィィッ

 チルノがいた湖面がその冷気で、花形の波紋のように凍りついていく。
 出来あがる文様は、花弁が何層にも重なった蓮の花。

霊夢「そうね。頼んだわ、零児さん」

魔理沙「おあつらえ向きのステージも出来たしな」

零児「ああ。踏み込む!」ダッ

大妖精「〜!?!? !!!」

チルノ「大ちゃん退いてて。あの人間からぶっとばーす! 『アイシクルシュート』!」

零児「氷は水だが……火に弱い! 『火燐』!」ガジュッ

 その氷の蓮の上へと飛び乗る零児。
 氷の層は分厚く、零児が乗っても問題ない程。
 そこから一歩踏み込んだところにチルノが小粒の弾幕を張るが、火燐には勝てないようだ。

チルノ「なーっ! 溶かすなー!」

零児「氷が馬鹿にならんことは、よく知っているからな。対処させてもらう。金【ゴールド】!」バババン

チルノ「うおっ、早い!」ガリガリガリ
                      バカ
小牟「なんだかんだでよく避けるの、H」

霊夢「最近師匠が出来て強くなってるとか言ってたものねー、H」

魔理沙「いい師匠だなー、バカ」ニヤニヤ

チルノ「バカバカ言うなー!! 『アイスチャージ』!」ガガッ

零児「煽るのもなるべくやめんか、お前達。……直線的すぎるぞ!」タンッ

 続けて放つ突進技『アイスチャージ』。自らを氷で包みこみ、球に見立てて突撃するスペルだ。
 それなりの強度を持つそれは速度も相まり、氷の砲丸宛らの威力を発揮する。
 小柄なチルノが使える、数少ないごり押し攻撃である。

零児「『地禮』……叩きき――」

  ズルッ

零児「――るっ……!?」

魔理沙「剣が滑った!」

チルノ「どーだー! 最強に丸くしたこれに剣はきか――」

  ガッ ピューン

小牟「あ、飛んだ」

チルノ「――ないぞー! ……あれぇ!?」

 問題点を挙げるならば、零児の言った通り直線的にしか動けないこと。
 更にはその速度故、相手にぶつからなければ減速が難しい点だろう。

 さて、現在この場所は蓮の花のようになっている。
 花弁の先が反り立ち、スキーのジャンプ台のようになっているわけだ。
670 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/17(土) 14:41:36.52 ID:+zwaVwKZo

霊夢「H、どこ行くのよ〜?」

チルノ「わー、とまら、わー!!」ビューン

大妖精「ーー!! ・・・? ・・・?」アタフタ

魔理沙「口読まなくってもわかるな、これは」

 そこへ、剣が食い込めないほどに滑らかな曲線を描く高速の球が滑りこめば、カタパルトで射出されるかのように飛び出すだろう。

 角度42°で飛ぶその球は、綺麗な曲線を描きながら霧の向こうへと消えていった。

零児「……この場合は?」

魔理沙「あいつが戻ってこなけりゃ勝ちじゃね?」


  \バッシャーン/


………………

…………

……

チルノ「いやー、流石のあたいも驚いた。人間の男め、やるな!」

零児「俺は何もしていない」

大妖精「……。…………?」

霊夢「『おかえり。あの男の人の言うとおりだよ?』」

チルノ「……大ちゃんって、結構空気読めないよね」

大妖精「!?」

 一行と大妖精が氷精の帰りを待っていたところ、ずぶ濡れのチルノが返ってきた。
 その姿は完全に濡れ鼠であり、この気候のせいでひどく寒そうに見えた。
 だがそこは氷精。震えるどころか、むしろ水がどんどん凍りつき、それが増えるにつれ元気が増している。

小牟「おう、辛辣じゃ。流石新聞にケチつけるだけあるの」

零児「それは褒めていないだろう。……まだやるんだな、チルノ」

チルノ「おう! 逃げ出さずに潔く待っていたのは評価してやる!」

小牟「もっと氷価すべきじゃ」

霊夢「別に評価される事じゃないでしょ」

零児「そいつは重畳。……来い」

チルノ「あたぼーだ! 『フリーズショット』!」バババ

 チルノの通常射撃が放たれる。
 それは一つ一つが細く小さく、正面を含めた八方へと無駄弾を多く放つ射撃だ。
 だが正面に限り、その数は相当なもので、そこだけでいえば真冬の雪山の吹雪程の密度を誇る。

零児「戦法を変えてきたか」ダッ

魔理沙「……」

小牟「魔理沙はあれを見たことあるじゃろ。どうじゃ、あれは?」

魔理沙「ん? ああ、悪くないぜ。細かすぎて、威力はねーけどな」

チルノ「ほらほら、追いかけるぞー!」バババ

零児「……『加速装置』」バリッ
671 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/17(土) 14:44:31.64 ID:+zwaVwKZo

チルノ「はやっ!? って、今更逃げても仕方ないぞ!」

 その上これは通常射撃。相手の動きに合わせ自由に動き回れるのだ。
 とはいえ、集中しなければ拡散率が上がり、点への攻撃が弱まる。
 それを危惧してか、移動速度はそこまで早くない。
 ……零児を相手にする場合、面での攻撃のほうが有効なのだが、チルノはそこに気付けない。

零児「戦略的後退だ。……柊樹【ハリウッド】、『火燐』!」ババンッ

チルノ「うぉ……ってなんだ、届いてないのか。なら無駄無駄だ!」バババ

霊夢「……あれ、狙ってる?」

魔理沙「っぽいなー?」

零児「ふっ。『地禮』、喰らえ!」

霊夢「あれ、違う?」

小牟「いーや、おうとるよ。これが本当の……」

チルノ「とらえたー!! これで一回休みだ!!」バババ

零児「金【ゴールド】……二門『四嗣墳陣』!」ガンッ!

 チルノのショットが零児を襲う直前に、四の相生の恩恵を受けた結界が生じ、チルノの弾幕を遮る。

 以前、樹を火に添えた上で金を供えると説明した事を、覚えているだろうか。
 あれ自体は嘘ではない。だが、萃香の『火』力があり、かつ地禮が手元になかったが故の代用方法。

 本当の『四嗣墳陣』は『樹』を『火』に投下し『土』を拵え、『金』を育むことで成り立つ。
 しかも今回は、『樹』が『水』を吸い込みその力を増している。つまり……

零児「今回は……五行の理のフル活用だ。堅いぞ?」

  ガガガガガガッ

チルノ「なにおー! そんな板、凍らせてやるー」キー!

  ガガガガガガッ

魔理沙「……あー、だからこの前のあれに違和感を感じたのか」

小牟「じゃから、それじゃと感じ過ぎビクンビクンじゃ」

零児「どうした。びくともしていないぞ」

チルノ「むきー!! 今に見てろー! …………!」ニヤァ

大妖精「ー−! ーー!」

小牟「……キャー!チルノチャーン! か?」

霊夢「『頑張れー』って。……流石妖精。場に流されやすいわね」

 結界に対してフリーズショットを放ち続けているだけの、寒い展開。
 霊夢のそれとは違い、物理的強度を持った零児の結界に、氷がこびり付く。
 そう。こびり付いて、離れない。

零児「お前達、くれぐれも水を差すなよ」

魔理沙「分かってるって。……でも、近づいてるって言いたいぜ……」ボソボソ

霊夢「それを分かってて言ってる気がするわね」ボソボソ

小牟「ぬしら……そういう反応もいかんっちゅーに」

零児「……『心を……空に……』」

 結界の属性は、相乗により『火』でも容易に溶かせない程になった『金』。
 そしてそこに降り注ぐ氷……『水』は結露し凍てつき重なり合い、視界を遮る。
672 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/17(土) 14:46:43.00 ID:+zwaVwKZo

チルノ「いまだっ! 『真夏のスノウマン』!」ゴロゴロ

  ガギギッ

魔理沙「夏って感じ、しないけどな」

チルノ「結界なんて、この氷の前には無意味さ!」

 ガギ……ビキッ

霊夢「今、嫌な音が……」

小牟「まー、相生で『水』のほうが勢いますしのぉ?」

零児「ああ。……だが、掛った。滅っ!」パキン!

 真夏のスノウマン……雪だるまの代わりに氷だるまを作り上げ、それで相手を押しつぶすスペカだ。
 チルノの冷気と『金』との相乗効果で巨大化していく氷の玉は、瞬く間に直径二メートルを超える大玉となる。

 その氷だるまをくい止めていた結界を、自ら破壊する。
 突然つっかえていた物がなくなった氷だるまは、花弁の坂に逆らうことなく滑りだす。

零児「いない……? ……違う、上か!」

魔理沙「あああ、言いたくって仕方ないぜ畜生!」

チルノ「あれ、それ割れたのか。でも、まあいいや……氷符『ソードフリーザー』!」ズズズッ

 それもそのはず。零児が結界を壊すほんの一瞬前に、チルノは大玉の上へと跳んでいたのだ。
 その手に集まる冷気は、普通に扱う分には大き過ぎる大剣となる。
 この大剣と共に回転し、叩きつけるのがソードフリーザーだ。

チルノ「芽には芽を、剣には剣をってね!」

霊夢「使い方間違ってるわよ」

小牟「念願のアイスソードじゃな」

零児「……ふっ。嫌いじゃないぞ、チルノ!」

 しかし今回はその大剣の重さを利用し、真上から圧し潰す手段をとる。
 普通に考えれば、そんな見え見えの攻撃につきあう馬鹿はいない。
 だが零児はあえて受ける。

零児「『俺の全身全霊』……!!」ググッ

魔理沙「ちょ、流石にでか……!?」

チルノ「くらえ、人間!!」

霊夢「零児さん!!」

零児「護業抜刀法……二刀……」キンッ

 その氷剣大きさは大の大人よりも更に大きく、氷精が振り回されているようにしか見えない程。
 しかし、チルノは、それを嬉々として振りおろす。
 普通に考えれば、そんな見え見えの攻撃につきあう馬鹿はいない、はずなのに。

チルノ「これで一回休みだー!!!」

零児「『電鋼刹火 ―― 十文字』!!」バリバリ

チルノ「あばばばば!?」バリバリバリ

 地禮と火燐が、氷剣と交差し……――

673 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/17(土) 14:48:33.71 ID:+zwaVwKZo


大妖精「〜〜? ――!」

チルノ「……あれ、大ちゃん……? あたい……」パチパチ

小牟「おはよーさんじゃ、チルノ」

チルノ「……誰? ……あっ! 決闘は!」

霊夢「零児さんの勝ちよ。あんたが気絶してね」

チルノ「え、なんでさ! あたいの剣のほうが大きかったんだ。あたいが負けるわけ……」

零児「力の強さは大きさで表わされるものじゃないぞ、チルノ」

大妖精「〜〜…………」

チルノ「……そっか、大ちゃんが言うならそうなんだろうね」グター

 チルノが気絶したことで勝負がつき、湖に沈む前に畔へと移る。
 大ちゃんこと大妖精から説明を受けたのか、意気消沈しその場にうつ伏せでへたり込んでしまう。

魔理沙「そもそもそれじゃぁ、鬼のスペカがすさまじい事になるしな」

チルノ「……鬼?」ムクッ

小牟「あやつらが使うスペカは大体大きいがの。してチルノよ。ぬしはわしらの事覚えとらんのよな?」

チルノ「???」

大妖精「???」

霊夢「あんたは知らなくて当然だから、気にしなくていいわよ」

魔理沙「アリスは覚えてて、チルノは覚えてないかー。逆行はしないってことか?」

零児「他の結果を鑑みれば、その推測が有力だ。ただし、緋想天の例外がネックだがな」

小牟「あれは非想天則っちゅー扱いになっとったと考えれば、いけるんじゃがな」

 東方非想天則――緋想天の後に起こった、異変にならなかったいくつかの話を綴った物語。
 巷で天則と呼ばれるそれは、時間軸的には地霊殿の後に起きた事だ。
 その中には早苗の物語もあるため、小牟はこれが前提なら……と言うわけだ。

チルノ「??? …………やっぱり分かんない。なんであたい負けたの?」

零児「知りたいのか?」

チルノ「うん。納得できないもん」

零児「……土は水に克つ『相克』。火は土を生む『相生』。これら二つを合わせて『相乗』の状況を作り、お前さんの氷を斬った」

チルノ「???」

零児「だろうな。……お前たち、説明のついでに、おさらいするぞ」

霊夢「はーい」

魔理沙「復習ばっちりだぜ」

 チルノが、非常に不満そうな顔で零児を見上げる。
 その顔の高さに近づくようにしゃがみ、その眼を見つめる。
 そのまま徐に地面に座り込み、話し始めた。三人の少女も、それに合わせてくれる。
674 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/17(土) 14:50:40.62 ID:+zwaVwKZo

小牟「ほーい! んじゃまず、チルノの氷の威力を5としようかの。そうなると零児めの刀……地禮と火燐はそれぞれ3じゃな」

チルノ「うんうん」

霊夢「適当に攻撃しても氷が6、地禮は4、火燐は3になって、氷剣をせいぜい流すことしか出来ないかしらね」

チルノ「へ、何で氷とチライが増えたんだ?」

魔理沙「ここでさっき言った『相克』だぜ。氷は『水』、地禮は『土』、火燐は『火』の属性なんだけどな」

チルノ「えーっと…………」

大妖精「〜?」サッ

チルノ「ありがと、大ちゃん! 水……土……火……っと」メモメモ

 大妖精が持ってきた画用紙とクレヨンで絵を描きながら整理する。
 その姿たるや、幼稚園や小学校一年生程の少女たちの、他愛もない日常の光景のよう。

魔理沙「この三つの関係で言えば、土は水に克ち、水は火に克つんだ。だから、氷と地禮は+1だぜ」

チルノ「ほうほう! 土→水→火……たす1っと」

霊夢「次は『相生』の関係。火は土を生むって理ね。これで土の力は、その容量を超えない限り、火の分を足し算出来るわ」

大妖精「〜〜? ……!」

零児「ああ。あの時俺は、チルノの氷剣を地禮で払った。火燐は、地禮に添えただけだ」

チルノ「え? んじゃぁ……ここぺけで……ここを足して……うわ、あたいの氷を越えた!」

小牟「そうなると『相乗』効果じゃ。土がぬしの氷を蝕んで仕舞いじゃ」

魔理沙「正直いうと、最後の忘れてたんだけどな。私は」

霊夢「……」

零児「理解できたか、チルノ?」

チルノ「おう、取りあえずわな! …… …… ……くやしー!」ダンダン

大妖精「っ!?」

 零児達の話を聞き終え、地団駄を踏み始める。
 彼女は馬鹿だ。だがそれは、決して理解力がないというわけではない。
 先も言った通り周りが見えないだけであり、未来予想が非常に甘いのだ。

霊夢「今更?」

チルノ「今更じゃないよ。わかったからくやしいんだ! むきー!」

小牟「最初から思うとったが、花映塚の時と様子が違うの」

魔理沙「最近のチルノだなぁ……」

零児「あのときはもっと、日本語がおかしかったな」

魔理沙「それこそ、この紅霧異変のチルノみたいってことさ。こっちのほうが新しいぜ」

 だからこそ、理解すればそれに合った素直な行動を取る。
 彼女もまた、この幻想郷に多い、負けず嫌いな妖精なのだから。
675 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/17(土) 14:55:44.94 ID:+zwaVwKZo

魔理沙「いやー、でもやっぱり、見てるだけってはらはらドキドキだぜ」

 チルノ達と別れ、一行は先へと進む。
 零児が飛べないからと、相変わらず河畔に沿って向かっているのだ。

零児「悪かったな。あれを受け止めていなかったら、落ちていたんだ」

小牟「はて、落ちる?」

零児「……あの規模の氷塊が、あの氷に落ちたら?」

霊夢「……衝撃で割れたかもしれないわね」

小牟「そーいやそうじゃな。すっかり忘れとったわい」

 足場としてしっかり機能する程の厚みとはいえ、あの氷剣がぶつかったらどうなるか分からない。
 そのために大事を取り、斬り払って分断し、切断された側を火燐ではじきつつ少し溶かしていたのだ。

魔理沙「じゃぁあれか、嫌いじゃないってのは嘘……?」

零児「いや、本当さ。……飛竜の時より、より本来の彼女に近いんだな?」

魔理沙「え、ああ、そうだぜ。よっぽどチルノだ」

零児「そうか……」フッ

 優しい表情のまま、意味深に笑う零児。

 彼のこの表情は珍しい。小牟でさえも、何度か見た程度。
 というよりも、彼はあまり笑わない。
 笑う事が嫌いなわけでは、決してない。前にも言った、少々古いこだわりの関係で、笑う事が少ないだけなのだ。

小牟「なーに笑っとんじゃ、気味の悪い」

零児「悪かったな、気味が悪くて。……もうすぐ対岸に着くな」

霊夢「霧の濃度も、赤色が増してきたかしら」

魔理沙「さぁさぁ、紅魔館のお出ましだぜ」

零児「……行くぞ、皆」

一同「「「おうっ!」」ええ」

魔理沙「………………れいむぅ」

霊夢「」プイッ


魔理沙「あれ、でも『相乗』ってそんな1の差で出来るほどだっけ?」

小牟「あれの、実は地禮と火燐は6じゃ」

魔理沙「……え? おい、それって」

零児「……過剰なのは、認める」

霊夢「零児さん、途中で乗ってたものね。萃香の時と同じ、力の流れがあったし」

魔理沙「はー。可哀想というか、羨ましいというか……?」
676 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/17(土) 14:57:05.39 ID:+zwaVwKZo

………………〜〜〜〜――−・ー− 〜ー^==ー~=~=〜……ー^ー^ー−ー^ー==^^ー―ー・……〜ー

 ………………調査すべき個体、なし

………………〜〜〜〜――−・ー− 〜ー^==ー~=~=〜……ー^ー^ー−ー^ー==^^ー―ー・……〜ー
677 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/17(土) 15:01:40.23 ID:+zwaVwKZo

以上で投下終わりです。フラグってのは思いっきり立てるべきですよねムゲフロ的に

次回ようやく紅魔館組です。プロットは出来ていますが、いつ投下出来るか分かりません

投下内容は『紅魔郷3面』だけなのは、確定なんですが



ところでクジュの延期の仕方が思いきり近霖堂を思い出させる伸び方なんですが……

……まさかねぇ?


さて、それではこのへんで失礼します
678 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/17(土) 16:31:01.28 ID:q9oHciiDO
お疲れ様ー!
いや〜しかし、毎回よくあんな面白い展開を思い付きますねぇ。今回はアイスチャージ→リングアウトとかww 五行の解説もありがたいですしね。お絵描きチルノちゃん…想像したら和んだわ〜。

あ、もちろん大妖精も可愛かったですよ!
679 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/20(火) 01:31:00.74 ID:dTiaEhMUo

こんばんわ。レス、ありがとうございます

明日というか今日が休みのようでじゃないので、こんな時間に投下です

予告通り『紅魔館3面』のみとなります

それでは、どうぞ
680 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/20(火) 01:34:01.40 ID:dTiaEhMUo

〜〜〜紅魔館前門〜〜〜

??「やはり来ましたね、博麗の巫女。……なんか予想してたより多いかも」

霊夢「あの時も、こうやって阻まれたわね。……本味醂?」

小牟「三月精でもあんま出れなんだ味醂じゃな」

零児「……そういう名前なのか?」
                       ほんめいりん
美鈴「め い り ん ! 私の名前は 紅 美 鈴 です!!」

 湖から紅魔館へと延びる街道の半ばほど。その地にて、紅魔館を攻める者を待ち受けていた少女がいる。
 紅美鈴――緑のチャイナドレスに身を包み、肩にかかるぐらいに長い赤髪を流す少女。
 被った帽子も緑であり、星のマークの中に龍の文字が書いてあるのが、ちょっとしたアクセントになっている。

零児「今ので漢字が分かったが、なるほど……な」

美鈴「な、納得しないでください。……お嬢様を止めに来たんですよね?」

魔理沙「おう。そーいうことになるな」

零児「彼女が門番なんだな?」

小牟「うぬ。紅魔館の呼び鈴じゃ。……つーても、シエスタしまくりでダメダメなのんじゃよ」

美鈴「なっ、そんなに寝てませんよ。たぶん」

 苦い顔をしながらも、自身を擁護する。
 だが実際、シエスタ――スペインの昼寝の習慣――をしている姿をたびたび目撃されている。
 さらには被侵入実績も相当で、門番としての役はこなせていないのだ。
 ……とはいえ、吸血鬼の館を襲撃する者など、そういないから構わないかもしれない。
 ここももれなく、触ると危険がいっぱいなのだから。

零児「だが、門はまだ見えないぞ。……お出迎えか?」

美鈴「ええ、その通りです。泉……こほん。湖にて暴れている輩がいたと、報告がありましたから」

魔理沙「そいつは殊勝だな。さぁ、案内してくれ」

小牟「ああそうじゃ。今回は盗みに入るわけじゃなかったのよな」

美鈴「そういうわけにはいきません。侵入者は止めよとの命令ですから。……盗み?」

霊夢「あんた、私達を止められると思って?」

美鈴「正直、一人では……なので。来い、メイド軍団!」

妖精‘s「『「わー」』」

 抑揚のない掛け声と共に現れる、数十体の妖精達。
 皆がそれぞれ、フリフリレースが可愛らしい、色とりどりのメイド服を着ている。

小牟「おお、噂のメイド妖精じゃ」

零児「多いな。全員が、チルノ程だと危険だが」

魔理沙「あいつクラスの妖精、私は知らないな。後は雑魚ばっかだ」
681 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/20(火) 01:36:02.21 ID:dTiaEhMUo

美鈴「確かに、お世辞にも強いとは言えません。ですがそれでも、使い方次第ですよ!」バッ

 美鈴の掛け声とともに、妖精達が動き出す。
 近づいてくる者。美鈴の後ろに控える者。移動せずその場に残る者の三種に分かれたようだ。

霊夢「全員で来たら、一網打尽だったのに」フワ

零児「言っていることと、やっている事が変わるがな」ダッ

小牟「一匹ずつ着実にじゃ。そ〜れ、『朱雀刀』!」ズバッ

美鈴「とか言いつつ、ちゃっかり私からじゃないです、かっ!」パンッ!

 小牟の放った朱雀刀を、平手打ちで弾き飛ばす美鈴。
 その手には薄くだが、気を練ったモノが纏わりついている。

零児「……気か?」

小牟「うぬ。あれが美鈴の気じゃよ」

美鈴「……やはり危険ですね。特にそこの狐が。妖精隊、てぇっ!」

妖精B「てぇ〜♪」バババ

 二度目の美鈴の掛け声とともに放たれる、中球を直線に並べた弾幕。
 だがその掛け声を表すかのように、統率がまったく取れていないそれは、あまりにも大きな隙間を晒す。

霊夢「……ふざけてるのかしらね。『封魔針』!」シュババ

魔理沙「いやぁ、妖精らしいぜ。『スプレッドスター』!」

小牟「新技じゃ! 『シャオムゥショット』ぉ!」バンバン

 だが、そんな隙間など気にも留めず、三人の少女は飛び回る。
 弾幕の流れに従うようにグレイズする霊夢。
 高速で動きまわり、弾幕を押しつぶしながら飛ぶ魔理沙。
 四色の弾丸を放ちながら、弾幕の間を縫うように騒ぐ小牟。

零児「あいつ……四神を小型化したのか」

魔理沙「四神って朱雀とかの事だよな」ヒューン

零児「ああ。……もういいのか?」

魔理沙「あの二人が暴れてたらだいたい済むだろ」

小牟「一つ、二つ、次三つぅ!」バンバン

美鈴「分かっていた事です、ええ。ええ、分かっていたことなんです……」シクシク

 二人の暴れっぷりを見て舞い戻る魔理沙。
 実際、小牟の四色の弾丸と霊夢の針がメイド妖精を次々と墜としている。
 これはもはや、ボーナスゾーンである。

小牟「ふぅ〜。13体は落としたかの」

霊夢「……17体」ボソッ

小牟「はうわっ!?」
682 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/20(火) 01:42:32.37 ID:dTiaEhMUo

美鈴「……ぐぬぬ……仕方ありません。波状攻撃です!」バッ

小牟「なにがぐぬぬじゃ」

零児「……他に何かしたがっていたようだな」

霊夢「顔に出やすいわね」

 彼女は表情豊かな 妖 怪 だ。
 常日頃から笑顔が絶えず、驚けば大げさに、怒れば激烈に、泣けば盛大に、その感情を顔に表す。
 それは彼女のような者にとって、本来ならば致命傷となりうる部分。
 しかし彼女は、それを止めない。彼女を喜ばせる、大切な一手段だから。

 それが普段から出てしまっているために、間抜けとも取られているのだが、意に介さずだ。

美鈴「そ、そんな。ばればれですか!?」ペタペタ

魔理沙「うんうん、分かりやすい。だからいっつもお邪魔出来るんだぜ」

零児「……ん? 分かりやすいから、お邪魔しやすい?」

霊夢「……」ジトー  サクッ

魔理沙「あああいや、なんでもないんだぜ、零児!」

美鈴「一体何の……ってそんな話しこんでいる場合じゃありませんって。いけ、ようs……」

霊夢「あ、もう全員のびてるわよ」

美鈴「なんですとぉ!?」グイッ

 霊夢のつぶやきに過剰に反応しながら振り向く。
 するとそこには、着き従っていたメイド妖精達が全員のびている姿があった。

美鈴「いくらなんでも早すぎるわよ、貴女達!?」ガビーン

零児「それよりお前さん。今のが嘘だったらどうするつもりだったんだ」

美鈴「え、それは無いですよ〜。巫女の気配に嘘はありませんでしたし」

零児「……これが彼女の能力、か」

小牟「うぬ。『気を操る程度の能力』じゃな。……ここまで分かっとるとは、知らなんだが」

 気といえば身体を強化する時の抽象的な言い表しだったり、オーラと言い換えられるように能力だったり、様々ある。
 彼女の場合はその例の二つの他に、他人の気の溜まりどころを見れたりするものだ。

美鈴「って、だから流されてはいけませんよ!」ドンッ

霊夢「……気に流される程度の能力じゃないかしら」

美鈴「も、もう流されませんってば。……メイドが使えないなら、背水の陣だ!」トンッ

 当てにしていたのかしていないのか分からない妖精達をおいて、かなりの速さで飛びさる美鈴。

小牟「一人でか?」

零児「一人でも、その気概があれば陣になる……そういうことだろう」

霊夢「…………」

魔理沙「…………」

小牟「ネタにマジレスカコワルイ」

零児「知るか。追うぞ」

 それに渾身のネタ回しをする……も、零児に冗談は通じず。
 実際、一人で長板の橋を守った中国の武将が鉄壁の陣に相当していたことを考えれば、おかしくは無いだろう。
 彼女にそこまでの気概と実力があるかは不明ではあるが。
683 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/20(火) 01:43:37.49 ID:dTiaEhMUo

〜〜〜紅魔館・門前〜〜〜

美鈴「さぁ来なさい、侵入者!」

零児「……お前さん、庭師だそうだな」

美鈴「え? ええ、まぁ。それが?」

零児「このまま霧が出続けると、植物に影響が出る。お前はそれでいいのか?」

 彼女は門番であると同時に、庭師の役も担っている。
 彼女の咲かせる花は、幽香程ではないが華麗に咲く。
 先の気の能力を用い、植物の気を読み病気を未然に防ぐからだ。

美鈴「……お嬢様が望むなら。もとより、この庭もお嬢様の趣味ですので」グッ

零児「…………そうか」グッ

美鈴「!」ゾクッ

小牟「……やはりまだ、子供っぽいところが抜けんのぉ」ハァ

魔理沙「え? どうしたんだ?」

霊夢「さぁ? ま、ここは私に任せて頂戴。さっさと終わらせるから」

零児「ああ、任せる。……先の通りでいいんだな?」

 先の通りとは、美鈴が後退した後に小牟から提案されたことだ。
 それは美鈴の弱点……弾幕戦を仕掛けるという、単純なもの。
 とはいえそれは、オタクだからこそ提案出来たのだが。

小牟「うぬ。美鈴には悪いが、ここはぱっぱと進ませてもらおうぞ?」

魔理沙「私はパチュリーにおいとくか。ま、それがベストだぜ」

霊夢「霊符『夢想妙珠』……」

美鈴「ぐぅうう。やはり霊力は気と勝手が……きゃっ!?」

零児「なるほどな。……確かに得意ではないようだ」

 霊符『夢想妙珠』……夢想封印が追尾・威力重視とすれば、こちらは貫通・範囲重視と言うべきか。
 追尾性もある程度はあるが、強度とその球の大きさと数が特徴の、対スペル荒らし。
 美鈴も放つ気功や霊力を用いたスペカを放ってはいるものの、これに押しつぶされている形だ。

魔理沙「永夜の時に使われて焦ったなー」

小牟「使い勝手抜群じゃしな。お、詰んだ」

霊夢「陰陽玉を喰らいなさい!」

美鈴「ひぇえ!」

    \ピチューン/

 そうなれば小牟の分析通り、弾幕戦に弱い彼女にはなすすべもなく。
 背水の陣と気合を入れ直したところで、その差は埋まりようもないのだ。
 近接格闘で培った感覚と、百戦錬磨の弾幕職人の、致命的な差は。
684 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/20(火) 01:48:05.23 ID:dTiaEhMUo

美鈴「げほっごほっ……くう。流石博麗の巫女。やりますね。……げほっごほっ」

魔理沙「よーし。それじゃお邪魔させてもらうぜぇ。気になる事が、あるんだよな〜っと」

美鈴「え、はやっ、え、私は!?」

零児「少し待て、魔理沙。聞きたい事がある。……俺達以外に、誰かが訪問したか?」

 非常にいい笑顔でお宅訪問しようとする魔理沙を引き留め、零児が尋ねる。
 一番初め。紫と出会ったあの時。紅魔館に仲間がいるという話をした事を、覚えているだろうか。
 これまで放置する形とはなったが、彼はそれを覚えていたのだ。
 それゆえに、今後の展開を読むためにも、尋ねる必要があった。

美鈴「他に、ですか。それは今日の話で?」

霊夢「いいえ。一週間以内ね」

美鈴「んー……少なくとも、私が知る限りでは……」

小牟「寝てて侵入許すとかするぬしがか〜?」

美鈴「流石に侵入者の気配を感じれば起きますよ。やだなー」

零児「……」ピクッ

魔理沙「ノータッチ、ノータッチだぜ!?」

零児「……そうか。なら後は、進ませてもらうぞ」

 お仕置き人の血が騒ぎかけたが、魔理沙の必至さに免じて止めることにする。
 彼は気付かぬうちに反応する頻度が高まっているのだが、気付いているのだろうか。

美鈴「うう。どうしてもですか? 貴方は話が分かる方のようですし、どうか穏便に……」

霊夢「どうしてもよ。夏は暑くてこそ夏でしょ」

小牟「日焼けオイル塗って小麦色の肌を手に入れるべきじゃ。最近は癌だのなんだの五月蠅いがの」

魔理沙「や、吸血鬼だから灰になるだろ」

零児「……何?」

小牟「その話も後回しじゃ。ほれ、図書館にれっつらごー! じゃ」

美鈴「うう、お嬢様方に怒られる……」

霊夢「本当に図書館に着くのかしら。あそこ地下だってのに」

 先の話の中には、美鈴の弱点だけでなく、今後のルートに関する説明もあった。
 これまでの原作準拠な展開からすれば、門前の次はほぼ確実に図書館なのだ。

零児「魔理沙が寄った道のり、か」トンッ

霊夢「……本当。あの時から、ねぇ?」フワフワ



美鈴「ああ、入られてしまった。………………誰もいないわね。よし、寝よう!」サクッ

  ギャーーーーーーーー!?

??「もう。悪い子、ね。侵入されるのは想定内だけど、その罰はきっちり受けてもらわなきゃ」

??「ですがメイド長。あまり時間がないのでは?」

??「ん〜。図書館のほうに行くとか聞こえたわよ〜? パチュリーちゃんには悪いけど、時間稼ぎしてもらいましょうか」

??「……無理をなさらなければ、良いのですが」
685 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/20(火) 01:51:13.31 ID:dTiaEhMUo
………………〜〜〜〜――−・ー− 〜ー^==ー~=~=〜……ー^ー^ー−ー^ー==^^ー―ー・……〜ー

 紅美鈴

 女性型の妖怪。緑の服と帽子を着用した、赤髪のチャイナ。

 小牟と−−−から、気を操る能力と判明。遠距離は苦手なものと推測。

 適正体である可能性は不明。格闘戦力を計測する必要があるため、優先度は中と設定する。

………………〜〜〜〜――−・ー− 〜ー^==ー~=~=〜……ー^ー^ー−ー^ー==^^ー―ー・……〜ー
686 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/20(火) 01:55:52.33 ID:dTiaEhMUo

以上で投下を終わります。色々と可哀想な美鈴でした。名前とか能力とか


次回は『紅魔郷4面+α』です

+αは予定している内容と、5面も入るかな……?という希望的観測が

一応、金曜日に投下予定ですが、最近守れてないのでageたら、ということで


それでは失礼します
687 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 09:17:57.09 ID:eoPSpy1DO
お疲れ様!
美鈴は 何であんなに 不憫なの   五七五   例え真面目にやっていたとしても、たぶん不憫な扱いになるだろうしなー…。

そしてやはり妖精は可愛らしい。

小牟にノーマルショットが!?これでZキー押し放題だな!

さぁて…紅魔館の中には誰が居て、どうなってるやらねぇ。不謹慎だが、楽しみだ。

しかし、各作品に対する作者の愛を十分感じられるSSなのに、なんでレスが少ないのか理解出来ない…。


陰陽弾をくらえ!
688 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/03/20(火) 19:28:50.96 ID:/fR3VVCHo
東方はドメジャーだけどナムカプ、ムゲフロはどうかなぁという感じはせんでもない

でもクオリティは高いしレスしないけど見てる人多そう
まぁ何はともあれ>>1
689 : ◆NamCapMdYU [sage saga]:2012/03/23(金) 19:31:07.98 ID:h8+yvFUwo

こんにちわ。レス、ありがとうございます

ちょっと余所からご挨拶です。今回は23時に投稿できる!ヤッター!という、連絡を


それはそれとして、雑談?を


あまりレスがないのはおそらく、文量が多いのと、最初の方に色々とやらかしたからだと思っています

読み返すと色々とひどかったですし、あれで離れてしまった方もいるんじゃないかな?と

後はスレタイも、フィッシングするには弱いかな?

東方はメジャーでも、ナムカプ・ムゲフロは発売本数的にも結構なマイナーっぽいです

それをメインとし、東方要素が「幻想郷」だけだと、ね……

これらは次スレで直して行く所存ですが


それはそれとして、今晩の投下は前レスなしにいきます

というわけで、また、夜に
690 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/23(金) 23:14:24.60 ID:x5cu6KNGo

〜〜〜紅魔館地下・うす暗くカビ臭い図書館〜〜〜

零児「……すごい数だな。宛ら、本の海……か」

霊夢「まったくね。よくこれだけ集めたと思うわ」

魔理沙「幻想郷一なのは、明らかだな」

小牟「ざっと見て、十万三千冊はくだらんのぉ」ウヌ

 紅魔館に侵入した一行がたどり着いた場所は、小牟の予告通り図書館だった。

 ヴワル魔法図書館。幻想郷の中で最大の図書館であるここには、十万冊を超える、様々な本が詰め込まれている。
 “幻想入り”したただの雑誌や漫画等、小牟達にも馴染みある物から
 植物料理環境等の専門の書物に、凡人が読めば廃人まっしぐらな魔導書まで。
 そのほとんどが古い物であるように見受けられるのに、保存状態はすこぶる良好なのは、好ポイントか。

魔理沙「すーー……ぷはー。相変わらず湿気てるぜ」

零児「確かに、空気が悪いな。しかしこの広さ……あり得るのか?」

霊夢「普通はあり得ないわね。いくら紅魔館が大きいからって」シュッ

魔理沙「それなら、咲夜の仕業らしいぜ。なんでも空間を広げてるとか」

小牟「時間操作の応用じゃ。ここだけ、いろんな方向に拡張しちょる」バンッ

 紅魔館が大きいとはいえ十万冊……ちょっとした街規模の蔵書を保管するには、少なく見ても屋敷の半分は必要だ。
 例えここが地下であり、好きなだけ物理的な拡張が可能であろうとも、その労力は計り知れないわけで。

 そこで使われるのは、咲夜と呼ばれる少女の能力なのだが……。

零児「時を賭ける少女、か」ガリガリ

霊夢「どこかで聞いたフレーズね」ガガガ

小牟「あれは過去に飛んどる。こっちは限定的にしか無理らしいぞ?」バンバン

零児「ところでだ。さっきから攻撃してきている、あの本は?」ガリガリ

魔理沙「パチュリーのコソ泥迎撃装置だっけかな。私が来た時も作動してたぜ」

 その少女の話は後回しとなる。

 現在彼らはこの図書館の主、パチュリーによる迎撃装置に行方を阻まれている。
 本の形をしているそれは、無断で拝借しようとする者を弾幕で追い返す。
 木を隠すなら森の中の教えに従っているわけで、いい発想だと自分では思っているようだ。

零児「防衛機構としては、なかなかの出来だが」ガリガリ

霊夢「ばらまきなだけね。数が多いから、ただのコソ泥じゃ退散するしかないでしょうけど」シュッ

 タタタタン

小牟「お見事じゃな。全部ど真ん中に刺さっておる」ガリガリ

魔理沙「うーん。使い魔の姿が見えねーな?」ガリ

零児「調べることはいいのか、魔理沙」

魔理沙「ん。すでに終わってるぜ」

零児「ほう。随分早いんだな」

魔理沙「普段絶対に借りない物を選んだぜ」ニヒヒ
691 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/23(金) 23:19:01.57 ID:x5cu6KNGo

霊夢「……鞄、大きくなってるわね」

 イキイキとした顔を晒しながら、よくわからない事を話す魔理沙。
 彼女が抱える鞄の膨らみが、ここに入るまでよりも明らかに大きくなっている。
 そこに、彼女が話すワードを付け足せば……。

零児「……それならすでに、試し済みなんだがな」

魔理沙「へ、そうだっけか?」

小牟「忘れるンもしゃーないが、ミスチーの羽毛での」

霊夢「そういえばそんなこと――」

 シシシュッ

霊夢「――も、あったわね」ガリリッ タタタン

????「え、そんな。今完全に隙をついたはずなのに」

魔理沙「矢……? おいおい。使い魔はナイフを投げてき……」

零児「…………モモか?」

M.O.M.O.「あれ、お知り合いでしたか? モモ、もしかしてうっかり??」

 見上げた先、本棚の上にいたのはM.O.M.O.――レアリエンと呼ばれる人型の人造生命体。そのプロトタイプだ。
 彼女もまた、かつての戦いの仲間。KOS-MOSやシオンと共に、『超未来』からやってきた、小さな小さな勇者。
 零児や小牟にとっても大事な仲間であり、大事な姪っ子のような存在なのだ。

小牟「オゥ……以外におうとるのが悔しいぞ」

霊夢「そこ、張り合うところかしら」

零児「放っておけ。……魔理沙。どうなんだ?」

魔理沙「うーん。使い魔の格好をしてるから、たぶんあいつが使い魔なんだぜ」

M.O.M.O.「使い魔って呼ばれ方、嫌いです。私にはモモって名前があります」シュン

 そんな彼女は本来、清楚だが可憐さと可愛らしさを両立した服を着ている。
 だが今は小悪魔と呼ばれる少女が着る、その呼び名に似合わない、赤めの司書らしい服を着用している。

小牟「わーっとるよ、モモ。……じゃがその小悪魔スタイルは一体なんじゃ」

M.O.M.O.「え? これがモモの正装ですよ??」

魔理沙「ってことは確定だな。こいつが使い魔だぜ」

M.O.M.O.「むぅ……」ジー

零児「名前で呼んでやれ。……モモ。お前さんを使役している人は、どこにいるんだ?」

M.O.M.O.「あ、はい。パチュリーさんならこの奥に。……って、案内しちゃだめです!」

 つい乗せられてしまう、M.O.M.O.。

 彼女は非常に優しい子である。
 小さいからといって後ろに控える事を望まず、皆を守る力を、エーテルを得ようと努力する。
 人と違ってU.M.N.に接続し、データ収集が出来るのに、その心は清廉潔白。
 ……いや、幻想郷の少女達のせいでマヒしているだけであって、M.O.M.O.は外見相応の少女なのだろう。

霊夢「素直な子ね〜」

魔理沙「だな。まるで私みたいだぜ」

小牟「どの口が言うとるか」
692 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/23(金) 23:22:48.48 ID:x5cu6KNGo

零児「……やはり俺たちの記憶はないんだな?」

M.O.M.O.「はいです。貴女達の記録はデータバンクにはありません。美鈴さんの襲撃情報から、貴女達が侵入者だと断定します」

零児「その通りだ。……侵入者の前に立ちはだかったんだ。覚悟は、出来ているな?」ガチッ

霊夢「……いいの、零児さん?」

 今までは戦いでは怒ったとき以外、全くしなかったヒール役を演じ始める零児。
 この傾向の変化こそが、彼らとM.O.M.O.との関係を表している。
 それに気づき疑問を抱くのはおかしくない。だが、それに気付けるというのがどういうことかに気付けるかで……。

小牟「虚構かも知れんが、モモに嘘はつきとうないしの」

魔理沙「…………」

M.O.M.O.「当たり前です。パチュリーさんを守るためにも私、頑張りますっ!」

零児「いいぞ、その意気だ。こいっ!」

M.O.M.O.「はいですっ! 神秘の力よ、モモに……」

?????「そこまでよっ! 『フォールスラッシャー』」キキキン

 いざ勝負! というところに、邪魔が入る。
 『フォールスラッシャー』――五行の『金』を最も強く意識し練り上げた、剣による中距離投擲攻撃。
 それがM.O.M.O.と零児の間に割って入ってきたのだ。

小牟「じゃからそれはぬしの台詞じゃなーい!」

魔理沙「珍しいな、パチュリー。お前が奇襲なんて」

M.O.M.O.「パ、パチュリーさん。どうしt……」

パチュリー「……」フヨフヨ

M.O.M.O.「……パチュリーさん?」

パチュリー「……」パコンッ

M.O.M.O.「あうっ」

 パコパコパコパコ

零児「…………何、してるんだ?」

小牟「本の角で叩いておるの。全力……っぽく?」

 小牟の解説通り、パチュリーがM.O.M.O.の頭(主におでこ)を叩きまくっている。
 とはいっても、パチュリーはアリスを超える、超インドア派の魔女。
 何度も何度も振り上げ振り下せる重さは、かなり軽い物しかない。

パチュリー「あんたは(パコッ)、それが(パコ)、駄目だって(パコッ)、言ってる(パコ)、でしょ」パコッ

M.O.M.O.「ご、ごめんなさい、パチュリーさん。でも、私……」

パチュリー「でももへちまもキューカンバーもソナレアマチャヅルもないわよ。
        あんたはその服装が似合っているのだから、どうしようもないとき以外禁止……」スパコーン

M.O.M.O.「あぅぅ……はい、です……」シュン

 ゆえにその光景はシリアスさの欠片もなく。
 それどころかM.O.M.O.の反応も併せると、何のために来たのか分からなくなる程。

小牟「…………」ウーン

零児「…………」

霊夢「あ、終わった〜?」ペラッ

魔理沙「…………パチュリーの趣味かよ」

 結果、真面目だった空気が一転。ものすごく微妙な雰囲気になってしまう。
 零児は固まり、小牟は悩み、魔理沙は遠い目だし、霊夢は料理の本を読んでいる。
 なんていうかまぁ、その、台無しである。
693 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/23(金) 23:25:22.08 ID:x5cu6KNGo

パチュリー「で、あんた達。だれ? ……ッ」ッ

魔理沙「さっきから呼んでるんだけどな。やっぱり分かんねーか」ハァ

M.O.M.O.「侵入者です、パチュリーさん。すでにいくつか本が盗まれています」

パチュリー「……私の事を知っているようだし、念入りに調査でもしたのかしら?」

零児「……彼女が」

小牟「パチュリーじゃな。魔理沙から何度か話を聞いとるじゃろうが、魔法使い仲間で、五行を応用した七曜を操る奴じゃの」

 パチュリー・ノーレッジ――全身紫尽くめな、魔法使いの少女。
 その長い髪も、月飾りの付いたドアキャップのような帽子も、ゆったりとした内服外服も、全てが紫。
 濃淡等の多少の違いはあれど、ここまで紫尽くめなのは珍しい。

パチュリー「そこまで知っているなんて。……狐の妖を消極的に追い返す方法は……」ペラッ

零児「載っているのか?」

魔理沙「私の時と同じこと言ったぜ」ケラケラ

M.O.M.O.「あ、あの〜、パチュリーさん? 相手はそんなに待ってくれないかと……」

パチュリー「分かってる。だから……木符『シルフィホルン』」ホワッ

霊夢「っと。頼んだわよ、魔理沙」

小牟「わしがいっしょにやっちゃる。モモめの相手は、わかっとるでな」

魔理沙「よっしゃ。まずはこいつだっ! 恋符『ノンディレクショナルレーザー』!」

パチュリー「っ!? ……」ッ

 魔理沙の放つスペルに、驚きを隠せないパチュリー。
 それもそのはず。彼女の使う攻撃方法に、あまりにも似通っているのだから。

 そんなスペルがシルフィホルン……風に流される木の葉の如く、『木』の米粒弾幕を降り注がせるスペルを蹂躙していく。

パチュリー「あっ……」

M.O.M.O.「フォローは任せてくださいっ! 『フリーズショック』!」キィイ

小牟「そうは問屋が卸さんのよな。『水憐』、水の太刀!」バッシャァ

霊夢「水が凍って……止めたのね」

M.O.M.O.「そ、そんな……!」

パチュリー「……大丈夫よ。土金符『エメラルドメガリス』」

 しかしながら、驚いたのは一瞬。そういうものだと言い聞かせて反撃に移る。
 『土』と『金』を同時に扱うことで、二段階の速度を操作するエメラルドメガリス。
 これらを魔理沙へと集中的に放つことで、レーザーを堰き止める。

魔理沙「ちっ、リカバリーが早いな。でもこれは余裕だぜ、っと!」ホイッホイッ

M.O.M.O.「流石です、パチュリーさん! 私だって……『ギルティーレイン』!」スッ

零児「下がるぞ、霊夢」

霊夢「いえ、結界張るわ」シュッ
694 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/23(金) 23:28:07.19 ID:x5cu6KNGo

小牟「矢の雨じゃー! ……が」ガリガリ

魔理沙「結構濃いけど、この程度なら……」

 ギルティーレイン――辺り一帯を、矢の豪雨で埋め尽くす、M.O.M.O.の必殺技。
 M.O.M.O.は弓矢を使った攻撃が得意であり、それをメインとした戦い方で皆をサポートしてきた。
 その実力は超未来基準の達人クラス。その腕に、エーテルを併用して撃ちだす矢の雨は、かなりの威力を誇る。……だが。

小牟「ぬえの矢に比べたら!」

魔理沙「霊夢の弾幕に比べたら!」

  「「へでもないぜ!」ぇ!」

 ガリリリリリリッ

M.O.M.O.「そ、そんなっ!」

パチュリー「……馬鹿な」

 そんな濃度でも、映姫に負けたことで勘の戻った二人には意味もなく。
 この異変の謎の弱体化の影響が薄かった魔理沙に、ルナシューターな小牟。
 二人のグレイズが不協和音となり、図書館に響き渡る。

零児「あの動きは流石に出来ないな。霊夢も、あれが出来るんだろう?」

霊夢「……ええ。零児さんも、飛び方さえ覚えれば出来そうなものだけど」

零児「隙間の差があるからな。……西行妖で思い知った」

小牟「掠る〜掠る〜木の葉のようなわ・た・し〜。がーりがりがーりがり掠る〜〜」ガリガリ

パチュリー「くっ……日符『アグニシャ……』……!」ウッ

魔理沙「ほいほいほ〜……!」ガリガリ

零児「……おい。なにか、様子がおかしいぞ」

パチュリー「……っ……ほっ……」フラ……

魔理沙「馬鹿使い魔っ!! パチュリーがひきつけ起こしてるぞ!!」

M.O.M.O.「えっ。あっ!! パチュリーさん!」バッ  カランッ

 突如パチュリーが苦しみだし、ゆっくりと墜ちていく。
 その異常にいち早く気付いた魔理沙が声を荒げ、『使い魔』に知らせる。

霊夢「……喘息ね」

零児「何? ……小牟」ダッ

小牟「わーっとるわ! とにかく寝かせるところじゃ。モモ、ソファーかなにかはないんか?」

M.O.M.O.「こ、こっちにあります。……あ、本に埋もれて!」

魔理沙「れいじっ!」ヨロヨロ

零児「焦る気持ちは分かるが、静かにするんだ。……ソファーのほうを頼む」ポフッ

パチュリー「……ゲホッゴホッ……」

 その状況を見て、一行とM.O.M.O.はすぐさま行動に移る。
 小牟と霊夢はM.O.M.O.の後に続き、ソファーの周りを片づけ始める。
 魔理沙はパチュリーをすぐに抱きとめ、零児の元へ。
 すでに落下地点の付近にいた零児はそれを受け止め、ゆっくりとだが急ぎ足で皆の後ろへと付いて行く。

………………

…………

……
695 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/23(金) 23:30:37.45 ID:x5cu6KNGo

パチュリー「……スー……スー……」

M.O.M.O.「お水、毛布、それから……」タッタッ

零児「……小牟」

小牟「すまん……すっかり忘れとった。喘息持ちじゃったのよな、パチュリー」グッ

霊夢「むしろ、そこまで分かっているほうがおかしいのよ」

零児「……別に責めるつもりはない。皆の処置は、適切だったからな」

魔理沙「……でもおかしいぜ。あんな程度で起こった事なんかなかったのに……」

 パチュリーの二つ名には、動かない大図書館というものがある。
 その二つ名の通り、彼女はこの図書館からほとんど出ることはない。
 本のそばにいる者こそ私。という考えがあるからだが、この喘息も一つの理由だ。

小牟「喘息っちゅーのは、興奮するとよう発症するんじゃ。あんな程度、などはありゃせんよ」

魔理沙「いや、それは分かってるんだ。……けど、ここ最近は調子よかったんだぜ……?」

霊夢「調子がいいって……具体的には?」

魔理沙「んーっと……もっと外に出るようになった、かな。聖が来てからだけどさ」

小牟「聖めが。……差し詰め、呼吸法でも教わったんじゃろ?」

魔理沙「ご明察。……はぁ」

 魔理沙の言うとおり、ここまで脆いことはなかった。
 勿論、喘息による発作はいつ起こるか分からないし、起こってしまうと下手をすれば死に至る事もある。
 だがパチュリーは気質異変のおり、精力的に外に出て、積極的に異変解決へ赴いた事がある。
 その程度には運動をしても、大丈夫なはずなのだ。

零児「……深く考えるな、魔理沙。これも異変。…………早苗の時と、同じだ」

魔理沙「…………」

霊夢「……なら放っておいて、さっさと解決したほうがよかったかもしれないわね」

魔理沙「……!」

小牟「じゃが、ほっとけんのも、わしらの性じゃ。霊夢めが手伝てくれたんは、そういうことじゃろ」

魔理沙「……そう、だよな……」シュン

 それゆえに、魔理沙は心配してしまう。
 魔法使い仲間としてもだが、異変を共に解決したり、本の貸し借り(主に借りっぱなし)をする仲だから。

 ただし、あの晩があったからこそ、ここまで他人を心配する子になっているのだが。

M.O.M.O.「あ、あの、侵入者さん達。パチュリーさんが呼んでいます」

零児「……もう大丈夫なのか?」

M.O.M.O.「はい。だいぶ安定しました。……パチュリーさん、連れてきました」

パチュリー「…………」ジー

魔理沙「パチュリー、あのさ……」

パチュリー「……なんでやらなかったの」

 ソファーの肘掛にもたれ掛かる形で座っていた、パチュリーが尋ねる。
 そこには疑惑はなく、ただ純粋な疑問だけが乗っている。
696 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/23(金) 23:33:17.11 ID:x5cu6KNGo

小牟「……一応聞くが、何をじゃ」

パチュリー「発作起こした時に、私を倒さなかったことよ」

魔理沙「そんなの、スマートじゃねーからさ」

パチュリー「……博麗の巫女。貴女が決めたルールじゃ、事故死なら構わないってのがあったと思うけど」

霊夢「今でもそのルールは変わってないわ。けど、それとこれとは話が別よ」

零児「そもそも、そんなことを話すために、俺たちを呼んだわけじゃないだろう」

パチュリー「……そうね。単刀直入にいこうかしら。貴方達、レミリアを止めに来たんでしょ」

小牟「うぬ。あ奴めが手から出しちょる、赤い霧を止めにきたんじゃ」

 長ったらしい話は止めて、手短に済ませる。
 流してくれそうな人を見つけたからこそ、なぜか自分を心配する白黒の真意を測ろうとしたのだが、やや読み違えた。

M.O.M.O.「え、そんなことがあったんですか?」

パチュリー「レミリアが何かしているのは知っていたけど、赤い霧をねぇ」

魔理沙「幻想郷中に蔓延してるせいで、お日様がずっと隠れてるぜ」

零児「……窓が二つしかない地下だから、気付かないのも無理はない、か」

パチュリー「それなのよ。……レミリアの元に行くなら、わざわざこっちに来る必要はないわ。
        それなのにこっちに来て、盗みを働いたかと思ったら……そんなどうでもいい物ばかり」

霊夢「分かるの?」

パチュリー「防犯対策にバーコードやセンサーが有用って、本に書いていたから。バーコードが分からなかったから、魔力で代用しているの」

零児「その発想はなかった。参考にさせてもらう」

 十万冊を超える書物を管理するのに、二人では寝る間もないだろう。
 ある程度なら妖精メイド達にでも手伝わせればいいだろうが、パチュリーはあまり信用していない。
 そこで図書館管理システムの応用……ただ、ICカードの代わりに魔力を利用した物を用意したのだ。

小牟「いい発想じゃな。感動的じゃ。じゃがその質問には、今は答えられん」

魔理沙「この本は試したい事があったから借りるだけさ。異変が終わったら返すつもりだぜ」

パチュリー「……」ジトー

魔理沙「…………」ニヤニヤ

零児「…………」ジ

パチュリー「……そっちの扉から出て左の通路の突き当りを右に行けば、二階に上れるセントラルホールに着くわ」

零児「いいのか?」

パチュリー「構いやしないわ。……日が出てないってのは素敵な事だけど、それ以上に、私は静かな時間がほしいの」

霊夢「……あんたらしいわね。紫もやし」

M.O.M.O.「も、もやし……」

パチュリー「……言い得て妙ね」

 いいのかパッチェさん。
697 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/23(金) 23:35:59.49 ID:x5cu6KNGo

魔理沙「あ、でも、喘息大丈夫なのか……?」

パチュリー「……白黒鼠が心配する理由は分からないけど、久しぶりに男の人を見たから、少しうろたえたのよ。それが一番の原因」

小牟「……どんまいじゃ」ポン

零児「また俺のせいか」ハァ

パチュリー「だからこれ以上変なことが起きない限り、平気よ。……お人好しさん」

霊夢「だってさ、零児さん」

零児「今のは、魔理沙に向けてだろう」

魔理沙「え、小牟じゃねーのか?」

小牟「いやいや、霊夢じゃろ」

パチュリー「……あんた達全員よ」

全員「「「………………」」」

零児「ふっ」

  アハハハハハハハ

 互いに謙遜し合う。
 それは確かにお人好しの集団で、気持ちのいい関係かもしれない。
 勿論、度が過ぎなければの話だが。

霊夢「はぁ。じゃ、進みましょうか。次は私ね」

零児「その前にだ。魔理沙、その本は置いていけ」

魔理沙「あー、用が無くなったもんな、これ」

零児「いや、別の目的だ。……パチュリー。これを目立つ所に積み上げるが……いいか?」

パチュリー「構わないけど……どうして?」

小牟「それも異変が終わってから話すかの。長うなるし」

M.O.M.O.「あ、それでしたら、机を持ってきますね」トコトコ

小牟「おーう。……内から探る事をすっかり忘れとったの」

霊夢「といっても、今まで目立つ場所に印つけれたのって、せいぜい守矢の御柱に傷ぐらいじゃない?」

魔理沙「てうゆーか、それならすでに再思の道で確認済みじゃね?」

零児「念には念をだ。……そもそもあれは、イレギュラーが多すぎる」

 今までにもいくつかの条件は確認してあるが、今回の件は未確認だ。
 一応、KOS-MOSや映姫、更には小牟だけが知る永琳の件もあるが、自分達で起こした事は少ない。
 情報はより多く、より多様に。推理物の常識である。これが推理物かは置いといて。

霊夢「自分で調べる、ね」

M.O.M.O.「はい、机です」コンッ

小牟「……地上に置いたんじゃ芸がないの。本棚の上で」

パチュリー「……落とさないでね?」

魔理沙「地震が起きない限り大丈夫だろ〜」
698 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/23(金) 23:40:57.93 ID:x5cu6KNGo

零児「この本棚……先の弾幕戦の被害が一切ないのを見ると、結界に類する物を施しているな?」

パチュリー「ええ。だから、変な積み方さえしなければ……」

 保存状態が良かった理由が、これである。
 対弾幕……に限らず、本棚にはそれなりの防衛魔法をかけてある。
 保存のための空調や、日光を遮断する膜。弾幕を相殺する強度の結界等。
 そのために部屋の空気が悪く、ほこりっぽく湿っぽいのだが、パチュリーは気にせずだ。
 ……いや、自覚があるからこそ、紫もやしを言い得て妙と納得したのだが。

霊夢「そこは大丈夫よ。ただ乗せて置いとくだけだし」

零児「頼むぞ。この高さは、俺では流石に無理だからな」

小牟「空飛ぶ前提の本棚じゃよなー。どっこいしょぉ」ドスンッ

魔理沙「親父かっ」

零児「……よし、行くか。……悪かった。次からは気をつける」

パチュリー「……メイド長に気をつけてね」

小牟「咲夜じゃろ。大丈夫じゃて。時止め対策は万全じゃし」


M.O.M.O.「……え? メイド長さんって、さ……!」ムグー!?

パチュリー「そう。ならいいわ。ばいばい」

魔理沙「ん?」

小牟「……?」

 侵入者達が歩きだしてから、何かを言いかけたM.O.M.O.が口ごもる。
 最後尾でパチュリーを気にしながら飛んでいた魔理沙と小牟が振りかえる……が、気のせいだと前へ進む。

パチュリー「……『スプリングウィンド』、解除」ボソッ

M.O.M.O.「ぷはー! な、なぜ止めたんですか、パチュリーさん?」

パチュリー「面白くなりそうだから。……あれだけの事を知っていながら、あの事を知らないんだし」

M.O.M.O.「……紅魔館は男子禁制……ですか?」

パチュリー「ええ。……あのメイド長が定めた、お嬢様方を守るための規律」

 パチュリーが男に驚いた理由。それはこれだ。
 男子禁制の理由としては華やかさの問題もあるが、それ以上にお嬢様『方』に関係する部分が強い。
 メイド長が、上の姉妹を大事にするがために、設けたのだから。

パチュリー「私が喘息持ちだとかは知っているくせに、もっと重要そうなこの規律を知らないなんてね」

M.O.M.O.「大丈夫でしょうか。……メイド長さん、怖い人ですよ?」

パチュリー「少なくとも、あの男がひどい目に逢うのは確かね。それでくたばるような魂には見えないけど」

M.O.M.O.「……モモ、悪い子です……あの人達、良い人ばかりなのに……」

パチュリー「……違うわ。あの四人が、おかしいだけ。……そう――」

 お人好し。それは勿論、幻想郷にも多数いる。厄を流す雛や妙蓮寺の面々。人里の慧音等。
 だが彼らはそれらの一線を超している。無用で無駄な心配までしているのだから。
 ――それは――

パチュリー「――幻想郷にまったく似合わない存在よ。あの四人は」

M.O.M.O.「……パチュリーさん?」

パチュリー「……何言ってるのかしらね、私。……さ、業務に戻りなさい、モモ」
699 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/23(金) 23:42:33.37 ID:x5cu6KNGo

〜〜〜紅魔館・???〜〜〜

??「……こちらに来たようです。メイド長」

??「意外と遅かったのね。予定通り、発作でも起こったのかしら」

??「それは分かりかねます。……『くず入れ』の準備、出来ました」

??「流石ね、咲夜ちゃん。完璧で瀟洒なだけあるわ♪」

??「メイド長にはかないません。『あの男』を捨てればよいのですね」

??「それ以外に使い道なんてないわ。ゴミはゴミ箱へ、ね」

??「幸いにして、他の侵入者は空を飛んでいます。落とすのは、容易かと」

??「ふふ。後は仕上げをごろうじろ、ってね」
700 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/23(金) 23:51:54.93 ID:x5cu6KNGo

………………〜〜〜〜――−・ー− 〜ー^==ー~=~=〜……ー^ー^ー−ー^ー==^^ー―ー・……〜ー

 パチュリー・ノーレッジ

 女性型の魔法使い。紫色の、寝巻のようなぶかぶかな服を着用。長い髪には赤と青のリボンをつけている。

 小牟と−−−から、魔法……主に七曜の属性魔法を扱う能力と判明。ただし、その概要は五行以外不明。

 肉体面は絶望的だが、能力面の関係で適正体の可能性は不明。優先度は中とする。

………………〜〜〜〜――−・ー− 〜ー^==ー~=~=〜……ー^ー^ー−ー^ー==^^ー―ー・……〜ー

 M.O.M.O.

 女性型の………………否。人間の少女。うす紫とピンクの服を着用。また、ベレー帽を被る。

 映像記録より、弓を扱うほか、何かしらの変身能力を持っているものと推定。

 適正体である可能性………………は、たか……い。監視優先度は高と設定する。

………………〜〜〜〜――−・ー− 〜ー^==ー~=~=〜……ー^ー^ー−ー^ー==^^ー―ー・……〜ー

 ……原因不明のノイズ発生。

 ……けれど、リカバリーは成功。

 引き続き、有栖零児達四名の監視を続行します。

………………〜〜〜〜――−・ー− 〜ー^==ー~=~=〜……ー^ー^ー−ー^ー==^^ー―ー・……〜ー
701 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/23(金) 23:58:35.54 ID:x5cu6KNGo

以上で今回の投下は終わりです。……モモ@小悪魔スタイル……あ、翼付きって書き忘れた

予定を変えて、+αを次回に持ち越しました事をお知らせします


次回は月曜か火曜になると思います


しかし、気付けば三月末。開始から半年……

まだまだ終わる気配がありませんが、お付き合い頂けるなら、幸いです

それでは、また
702 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/03/24(土) 10:57:56.31 ID:1STEdf5oo
おつん

M.O.M.Oは癒し系で可愛いなぁ
ムゲフロのハーケンさんとか零児さんとの絡みは好きだわ
703 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/24(土) 16:03:12.75 ID:imJ9gezDO
お疲れ様!
小悪魔役はモモちゃんだったか…三作目のコルセットVer.なら近い気がする。ジギーさんを火球で包んで飛ばしたりするしww あれ?じゃあ本来の小悪魔は…?

パチェさんの服の趣味は…改変…なのか?それにしても零児さんの「載っているのか?」は違和感無かったなww

先取りノンディレクショナルレーザーとか、パチュリーさんェ…。

落ち込む零児さんはちょっと可哀想だったな。まぁ、それもこれも魅力が強過ぎるせいだね。仕方無いね。

まさかの咲夜さん降格!?現メイド長…一体誰なんだ…?
704 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/26(月) 22:08:52.70 ID:w5SS3J0Qo

こんばんわ。レス、ありがとうございます

>>703
コルセットVerとかありましたね。……3もう少しやりこんだほうがよさそうだ

そういえば、M.O.M.O.が好評だったのでムゲフロの戦闘前後会話を久々に聞いてみましたら……

……まじM.O.M.O.は癒し系可愛い。声も可愛い。零児・ハーケンのお兄さん具合も、それだけでご飯三杯いける


って現を抜かしてる場合じゃありません

本編投下します。『紅魔館5面+α』です。どうぞ
705 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/26(月) 22:12:09.26 ID:w5SS3J0Qo

〜〜〜紅魔館・セントラルホール階段上部〜〜〜

 バババッ……ジジジ……ガガンッ……

魔理沙「よっと。さっきと全然違うじゃねーか、こいつら」バババ

零児「統率具合が段違いだな。……だが、妖精の中にリーダーがいるようには見えん」ガリガリ

 パチュリーの説明通りに進み、セントラルホールへと着いた一行。
 荘厳な階段を上り、更に奥へと向かおうとした矢先に、妖精メイドの部隊に襲われた。
 部隊と言い表した通り、その妖精達は門前と比べ物にならない組織行動をとっているために、やや手こずっているのだ。

小牟「うーぬ。咲夜めがキャプテンじゃとして、能力で見えんのか、近いからしゃきっとしとるだけかの?」バンバン

霊夢「どっちにしたって、遠くからちくちくと……うざったいわね」

零児「あれだけ遠く飛ばれていると、俺には何もできん。……何が目的だ?」

小牟「足止め……っちゅーには、スカスカじゃし」ウーン

魔理沙「ま、零児はレミリアのために温存するんだぜ。私らがやってやるさ」

零児「ああ。…………」

 天井すれすれからだったり、廊下のはるか先からだったり。
 これまでは、零児が共に闘っていると相手もそれに合わせて高度を低くしてくれる事が殆どだった。
 だが今回は真逆……あえて距離を離して戦っているような、そんな雰囲気があるのだ。

魔理沙「おらおら、墜ちろー!!」バシュッ

メイド妖精「」サッ

霊夢「あれだけ離れてると、流石に避けられるわね」

小牟「……うーん。原作的には咲夜&メイド妖精にはならんはずじゃが……」

零児「……その可能性もある以上は、なるべく早くに倒すべきか」

魔理沙「んー……じゃあ、フルバーストしていいか?」

零児「俺に聞く必要はない。無茶はするなと、言っただけだからな」

魔理沙「了解っ! 先行するぜっ!」バシュッ!

妖精メイド「!!」

 だったらそんな雰囲気、私がこの手でぶっ壊してやる!
 そんな意気込みで八卦炉を箒に括りつけ、ジェットで飛び出す魔理沙。
 突然の突貫に、廊下の先の妖精達が驚いた……その隙に

   タンッ  タンッ  タンッ

霊夢「『亜空穴』……甘いのよっ!」ガッ

妖精メイド「!?!?」

 零時間移動による空間跳躍を行った霊夢が、隊列のど真ん中を突っ切る。
 前触れなしの攻撃に、妖精達の隊列が大きく崩れる。

魔理沙「おらおらチキン共。魔理沙様のお通りだぜぇ!」グイッ

小牟「小牟サーファー、海がすきぃーー!!」ザパーン

 隊列が崩れたところへ、魔理沙が高速で突っ込む。
 それに続くように、激流に身を任せてどうにかした小牟が続く。
 ここまでひどく荒らされてしまうと、もしリーダーが居たとしても持ち直せたかどうか。

零児「三人に任せてばかりではおれん。……『加速装置』!(だが……何か違和がある……何だ?」ダダッ
706 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/26(月) 22:15:14.33 ID:w5SS3J0Qo

霊夢「逃げても無駄っ! 『拡散アミュレット』!」シュッ

魔理沙「『鬼ごっこ』だぜ、ひゃほーう!」

小牟「小牟スピン、乱れ撃ちぃ!!」バババン

零児「やりたい放題だな……」ハァ

 霊夢の、徐々に拡散し広がる微追尾弾幕。
 魔理沙の、マスパの推進力を利用した往復体当たり。
 小牟の白金【プラチナ】・竜巻の型を、ゲッタンよろしくハチャメチャに回転しながら放つ攻撃。
 つまらない戦法を取った報いともいうような、定石を無視した三種三様の弾幕が、妖精達を蹂躙する。

零児「……やはり、空を飛べないと…………。いや、今考える事じゃ――」

  カッチン

??「」スッ

零児「――ない。……!」キッ

  ガコンッ

零児「だれ……しまっ!」

??「残念ですが、貴方はここでゲームオーバーです。(カッチン)御機嫌よう」ガッ

零児「くそっ!」ガッ

  ヒュー…≪ガコンッ≫…

霊夢「何の音? ……!?」

??「…………」

魔理沙「おいおい、どうしたんだ……あれ、零児は?」

小牟「咲夜めがおって、零児がおらん?」

霊夢「……」……

 数秒に満たない一瞬の出来事に、妖精メイドの相手をしていた三人は呆気にとられる。

 先程まで零児がいたであろう場所には、咲夜と呼ばれる少女しかいない。

霊夢「……」

小牟「……ぬし。零児をどこにやったんじゃ」

咲夜「……」

魔理沙「答えろよ、咲夜っ!」

 咲夜――他のメイドと似た青色の服を着た、白髪の少女。
 だが他のメイドとは明らかに違う雰囲気を持つ。
 その佇まいは、その年齢の少女が持ってはならない、殺戮者のそれだ。

咲夜「……ただ、ゴミ掃除をしただけですわ、お客様」ニコッ

小牟「ゴ、ミ?」

霊夢「…………」ボソボソ

咲夜「はい」

魔理沙「なんだよそれ。零児がゴミだってのか!?」

咲夜「左様でございます。……いけません。お客様のお持て成しのご用意がございますので、どうかこのままお進みください」スッ

   カッチン
707 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/26(月) 22:18:07.09 ID:w5SS3J0Qo

小牟「! 霊夢、今……じゃ?」

霊夢「…………」ボソボソ

 突如消え去った、零児。
 彼をゴミと言った、咲夜。
 そして放心している、霊夢。

霊夢「……な――勘――」ボソボソ

魔理沙「れ、霊夢?」

 窓の少ない紅魔館の中では、外の天気以上の荒れ模様が、展開されようとしていた。

………………

…………

……

魔理沙「####」

霊夢「…………」

小牟「妖精メイドがおらん。……あの話は本当かの?」

魔理沙「さぁな。……なんにしたって、お呼ばれした席には、出ねーとなぁ##」ビキビキ

 咲夜が能力を駆使して三人の前から消えた、数分後。
 何かに驚いて周りが見えなくなっていた霊夢が冷静になり、再び行進を始めたところだ。
 一応、零児が消えたあたりを調べたのだが、うんともすんとも言わなかったため、三人で奥に行く事を決めたのだ。

小牟「大改変ビフォーアフターっぽいんじゃがなぁ。……つーか霊夢は何に驚いとったん?」

霊夢「……なんでもないの。ほら、零児さんがいなくなって、動揺したのよ」

魔理沙「! そっか、だからあんなにショック受けて……」パァァ

小牟「それはあり得んじゃろ、霊夢」

霊夢「……なんでよ?」

小牟「能力的に考えて。NK?」

 霊夢の能力である、『空を飛ぶ程度の能力』。                      感傷
 小牟の解釈通りならば、例え相手から親身にされようとも、自分からは必要以上に干渉しない能力。
 そしてその解釈は、正しい。

霊夢「……―の――が――なかっ――ら―驚い―るのよ」ボソッ

小牟「もぞもぞ言うでない。ほれ、しゃきしゃきっと」

霊夢「本当にそれだけよ。……それに今はそんな事を探る必要ないって、零児さんなら言うんじゃないの」

小牟「ぐぬぬ。わしの解釈間違いかのぉ?」

 ただし、その解釈が本当に正しいかを確かめる術は、実際の光景を見るほかない。
 そして間が悪い事に、霊夢が生きているうちにあるかどうかな、例外を見られているのだが、知る由もなく。

魔理沙「何の話だか分かんねーけど、少なくとも最後のは確かだぜ。……咲夜ぶっとばす##」

小牟「ぬしはぬしで落ち着かんかい。……ま、ともかく咲夜じゃ。ごみっつーた真意も、聞かんといかんし」

魔理沙「ふー……よし、大丈夫だ。問題ない」
708 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/26(月) 22:21:59.32 ID:w5SS3J0Qo

霊夢「……眉間に皺寄せすぎ」

魔理沙「え?」

小牟「魔理沙よ。いっそ仮面着けるか? ジューダスのとおそろいで」

魔理沙「あの勘違い変装野郎のかよ!」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ジューダス「くしゅん」

妖夢「風邪でも引きましたか?」

ジューダス「……知らん。どこかの馬鹿が僕の事でも話してるんだろ。……迷惑だ」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

魔理沙「へっくし!」

霊夢「人の悪口言うからよ」   カッチン

咲夜「ティッシュです」スッ

魔理沙「あ、ありがと……ズビビー……『マスパ』ァ!!!」ブワーン

   カッチン

咲夜「」スッ

小牟「絶妙なタイミングで現れおってからに。座布団回収でもしとれっちゅーの」

 零児と逸れた割には落ち着く一行が、ある程度廊下を渡った先。
 とある扉の前で、咲夜がトレーを持って突如現れる。

咲夜「……畳の間でしたら、ありますが」

小牟「なんでやねん」

霊夢「前に通されたわ。似非だったけど」

魔理沙「そんな事はどうでもいい。重要じゃない。おい咲夜! 今度こそ質問に答えてもらうぞ! なんで……」

咲夜「あ、少々お待ち下さい」

魔理沙「ぇええ!?」ズコー

小牟「盛大に滑りおったぞ。空中で」

咲夜「妖精メイド、並べっ」サッ

 バーン!  ゾロゾロゾロ……

霊夢「……」

小牟「おお、おおぅ……」

魔理沙「すげー……」ブラーン

 その扉が開け放たれ、中から現れたのは妖精メイド達。
 彼女達が霊夢達の前に、綺麗な二列で、部屋の中へ招き入れるように並ぶ。
 おかえりなさいませ、ご主人様とか言ってもいいレベルだ。
 ……いや、それだと偽物っぽくなるか。

小牟「コスプレでした事はあったが、モノホンの行列は初めてじゃ……」ホエー

霊夢「……こんなの知らない」

魔理沙「なんだよこれ。なんだよこれ……」ホエー
709 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/26(月) 22:30:19.48 ID:w5SS3J0Qo

咲夜「……メイド一同の代表として、貴女様方三名に御挨拶申し上げます、メイド副長、咲夜でございます」クイッ

小牟「ボケー……ってちょいまちぃ! メイド副長……じゃと?」

咲夜「はい。まだまだ至らぬ若輩者ではありますが、副長を務めさせていただいております」

 そんなメイド達の先。小牟たちの目の前で自らをそう呼び、お辞儀をする咲夜。
 その動作一つ一つが洗練された、完璧な『仕える者』の動き。
 ただそれでも、零児が消えた直後にあった隙のなさが見え隠れしているのだが。

魔理沙「え、まてよ。ならメイド長って……誰だ?」

咲夜「紹介致します。……メイド長。お客様がお呼びですわ」

??「あん。やっぱり気になりますわよ、ね。あれだけたくさんの事を調べてたのだからん」

小牟「……このイライラする言い方に、腹の立つ語尾の上げ方……まさか……!?」

 カツ……カツ……カツ……

??「初めまして、こんばんわ。私がメイド長を務める……」

小牟「ぬしが……ぬしが何故ここにおるんじゃ! ――



〜〜〜『くず入れ』・????〜〜〜

   ヒュー……ドスンッ……

零児「くっ…………くそ……」

 咲夜によって『くず入れ』の中に落とされた零児。
 数十m程落下したようだが、光のない真っ暗な空間のため、実際のところは分からない。

零児「……しくじった!」ドンッ

 それほどの高さを落ちて無事だったのは、単に『くず入れ』の穴が滑り台のようになっていたから。
 それでも摩擦熱がどーたらこーたらあるが、そこはやはり森羅の服が優秀だねという話になる。

零児「妖精達は……このために……!」

 零児から他の少女達を離れさせて、自分だけを落とす。
 なんの意図があってそうしたかは分からないが、今の状況がそうだと証明している。

 こんな鉄と生臭い場所に、あの子たちを落とすような事は、考えたくない。

零児「……腹を立てても仕方ないか。……ともかく、ここがどこか……」

  カランッ

零児「!」ガチッ

???「うぅん……誰か……いるの?」ゴソッ

零児「……」ジリッ

???「……ご飯、なのか……な……うっ!」ズキッ

零児「……?」スッ

 カランカランッ

???「痛い……頭が……痛いよ…………」

 暗闇の先から聞こえる、声。
 その声は暗闇の中にあるせいか、少女の物だと思うのに、得体のしれない何か別物のように聞こえる。
 正体不明。アンノウン。


     U.N.オーエン

710 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/26(月) 22:33:40.34 ID:w5SS3J0Qo

零児「……そこにいるのが誰か分からんが……今、灯りを点ける。目に気をつけろ」

???「ぅん……ぅぅ……」

零児「……」スッ   ゴソゴソ  カランッ

   カチッ

零児「っ……。……!」

???「んっ、眩し……あれ…………れい、じ……?」

零児「リリス!」タッ

 そこにいたのは頭を抱えたリリス――薄紫の髪に羽を生やし、背からも「サキュバス」の羽を生やした少女。
 これまでの仲間とは違った印象を受けるが、彼女もまた、大事な仲間の一人だ。

リリス「しー。……静かにしなきゃだーめ。この子が起きちゃう。……っ」ボソボソ

零児「ああ、すまない。……この子は?」ボソボソ

???「すー……すー……」zzz

リリス「……フランちゃん。……私の妹……らしい……よ?」ボソボソ

 リリスに近づく事でその向こう側……ちょうど、灯りの影になるところで寝ている子に気付く。
 フランドール・スカーレット――サイドポニーな金髪。赤い服。まっ白い肌。
 背中から生える色とりどりの結晶のような羽が特徴の少女だ。

零児「……この子が、悪魔の妹か」ボソ

リリス「……?」

零児「なんでもない。……俺が分かるんだな、リリス」ボソボソ

リリス「うん。……れいじも、私が分かるんだね……?」ボソボソ

零児「ああ。……歩けるか?」ボソボソ

リリス「……うん。大丈夫」ボソボソ

零児「起こさんように、離れて話そう。……手を貸す」ボソボソ

 青年少女移動&説明中......

零児「……繋がりが……本当か」

リリス「うん。……だから、リリスが驚いたのも、伝わってると……っ」

 繋がり。

 リリスはシャドーストーカーの一人、モリガンの片割であり、同時に一個の存在だ。
 個々が自我を持つ。だが魂は強く結びついた、類稀なる関係。
 その関係は、彼の戦いの途中で切れたはずだった。
 だがその、絆とも呼べる関係がこの異変の中で復活し、その結果頭痛がひどくなっているようだ。

零児「その頭痛……悪い、無理をさせたようだな」

リリス「へーきだよ。……確かに痛いけど……モリガンと繋がってるの……感じるもの……」

零児「……そいつは重畳。仲が良好なようで、なによりだ。しかし、記憶がある……か」

 今現在、リリスとモリガンには二つの記憶がある。
 以前、月の頭脳……永琳が持っていたのと同じ、日常の記憶と、異変の記憶。
 実はこちらが頭痛の原因なのだが、彼女達は気付かずだ。
711 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/26(月) 22:38:30.61 ID:w5SS3J0Qo

リリス「でもフランちゃんは覚えてないみたい。……私の事、お姉ちゃん、って」

零児「レミリアが二女。モリガンが長女。…………長女は外見で決めたな」ハァ

リリス「アハハ。リリスもそう思った」

零児「……リリス、記憶ついでに教えてくれ。俺が落とされた、その理由となりそうな事は?」

リリス「……たぶん、男子禁制だと思うの。――お姉さまが決めた事なんだよ」

零児「男子禁制k…………な……――


  ――沙夜!?」」


沙夜「あら、私の事も知っていらしたのね。じゃぁあの男は貢物だったのかしら?」

魔理沙「……誰だ? また仲間?」

小牟「仲間……ちゅーより、利害が一致したから共闘しただけの、敵じゃ」

霊夢「……じゃぁ、こいつが例の?」

 小牟が毛を逆立てながら、メイド長となっている沙夜の事を話す。
 沙夜――妖孤であり、零児と小牟にとって腐れ縁とも取れる、最凶の仇。
 一度は共闘したが、やはりその関係は変わらない、因縁の存在。

沙夜「それにしては、門番ちゃんの時の言動が可笑しいかしら? どう思う? 咲夜ちゃん♪」

咲夜「……正直、分かりかねます。お客様方、男子禁制の事は御存じでしょうか?」

霊夢「は? 何それ。初耳よ」

沙夜「……ふふふ。そういうこと、ね。やっぱり貴女達は、レミリアお嬢様を倒しに?」

小牟「ぬしに話すことなぞありゃせんわい! 演技の可能性がある以上の」

 逢魔の構成員にして、その幹部。その目的は、世界を混沌に貶める事。
 目的の為なら自らを犠牲にすることも厭わない、プロの仕事人。
 『異変』を起こす側であり、共闘した事があれど、気を許してはならない相手だ。

魔理沙「だけどこっちの質問には、いい加減答えてもらうぜ。零児をどこにやった! なんでゴミとか言いやがった!!」

霊夢「大方、その男子禁制が理由でしょうけどね」

咲夜「……如何致しましょう、メイド長」

沙夜「生きのいい娘は嫌いじゃないわ。けど、話せと言われて答えるんじゃぁ……」スッ

魔理沙「……手?」

小牟「近づくでないぞ、魔理沙。あれは毒の手刀じゃからの」

沙夜「……あん。ネタばらししちゃやーよ、小牟ちゃん♪」シュッ

 あまり困った顔をしているように見えないまま、いつの間にか武器を取りだしていた沙夜。
 彼女の武器は三刀一丁一手刀――后業と呼ばれる零児のそれと似た武器であり、それを使った后業抜刀法が流派を扱う。
               こおり      ほむら      みそぎ     くろつち      しのぎ
 武器は其々に『水』の刀【氷】 『火』の刀【焔】 『土』の刀【禊】 金の銃【土盧】 木の手刀【鎬】
 そのどれもが零児と小牟が扱う武器と同等の出来であり、凶刃となって襲いかかってくる様は恐ろしいものだ。
712 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/26(月) 22:41:13.33 ID:w5SS3J0Qo

霊夢「……ほら。続き言いなさいよ」

沙夜「あん、いけずぅ。恰好がつかない事、わかってて言ってるでしょ?」ニコ

咲夜「言われて答えるようでは、紅魔館のメイドは務まりません」キリッ

敵味方一同「「「………………」」」

咲夜・魔理沙「(言っちゃった(わ)よこの副長……」

 常識知らず。それが彼女、咲夜だ。
 常識に縛られないといえば早苗のイメージが強いが、彼女はあくまでも「非常識に振る舞っている」だけ。
 だが咲夜は本当に常識を知らないような言動を取り、それに関してお嬢様も困っていたりする。
 まぁ、そのお嬢様も常識知らずなため、バランスは取れているようだが。

小牟「それでこそ咲夜じゃな。……ほれほれ、お客様権限で一つぐらい聞かせんか?」

沙夜「そう言われちゃ弱いわねぇ……」ウーン

咲夜「…………」

メイド妖精M「……(この格好疲れてきた」

沙夜「……そう、ね。じゃぁさっきのご質問にお答えしちゃおうかしら」

魔理沙「……零児の話か」##

咲夜「……先ほど話しました通り、ここ紅魔館では「男子禁制」となっております。――

 男子禁制。その理由とは、吸血鬼の姉妹の力をより強めるため。

 吸血鬼とは純潔を重んじる一族であり、それを敬愛して血を啜り、力と成す。
 逆に不純なる者たちには心から軽蔑を抱き、その血を喰らい浪費する。
 純潔なるものは同胞に。不純なるものは下僕に。

沙夜「けど、その本質が何か。私は考えたの」

 不純とは何か。純潔とは何か。
 それは処女や童貞などではなく、「一己の魂」かどうかであるという結論に達した。
 他と混じわらず、ただ父と母から授かったその身だけの存在であるかどうか。

咲夜「それは血を吸う側……つまりお嬢様方、吸血鬼にも言えることなのです」

 ただどんなに純潔であっても、女の吸血鬼が男の血を吸えば、その魂は穢される。
 力の差があればその限りではないが、その差の許容範囲は、吸血鬼本人でさえ判断がつかない。
 ならば男は排除すべき。お嬢様を穢す存在は、ただただ打ち捨てるべき。

魔理沙「…………」

小牟「…………」

霊夢「……」

沙夜「というわけなの。ご理解いただけたかしら」

魔理沙「それってつまり、私たちがレミリアの飯になるってことじゃねーか!」

咲夜「気づかれましたか?」ハテ

霊夢「むしろ、なんで気づかないと思ってるのよ」

小牟「じゃがまぁこれで理解はしたわ。納得はせんがの」

沙夜「あら、どうしてかしら?」

小牟「……それ、どこ情報じゃよ。黒幕もでたらめ考えよる」
713 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/26(月) 22:43:39.55 ID:w5SS3J0Qo

霊夢「本当。……ま、それはこいつらに問いただしても仕方ないんじゃない」

 確かに、吸血鬼は純潔を重んじる。
 だがそれは別に魂がどーだとか、自身の純潔がどーだとかの話ではない。
 単純に、血の美味しさが違うからだ。
 不味い(不純な)物を飲むより、美味い(純潔な)物をえり好みしているだけなのだ。

小牟「じゃな。……つーわけで、お持て成しはいらんぞ、沙夜」

沙夜「あん。意外と冷静なのね。あのゴミを落とせば、我武者羅に突っ込んでくると思ったのに」パチン

   ガシャゴソゴソドスンッ

魔理沙「おーおー、メイド達が武装したぜ。……けど無駄だってこと、さっきので分かってるんじゃね?」

咲夜「はて、何故でございますか?」

小牟「実力差は歴然じゃろうに。……じゃが、なんじゃその自信……?」

沙夜「あら。それは、ね」パチン

   ドクンッ

魔理沙「っ!? 落ち……?!」

霊夢「魔理沙!」バッ

 沙夜が指を鳴らした途端、魔理沙の魔力が消失し、空を飛べなくなる。
 三人の中で一番高い場所で飛んでいたために危なかったが、霊夢がさっと受け止め着地する。

魔理沙「あ、ありがと、霊夢。……なんだよ、これ」

小牟「魔理沙の霊圧が……消えた? 何をした、沙夜!!」

沙夜「やっぱり、これも知らなかったのね。……遅れまして紹介するわ。これが私の能力――」


       『反転する程度の能力』


 他者の能力を狂わせる能力。
 怪力乱神なら、赤子程の力に。心を読むなら、読まれるように。
 力の強弱や性質を真逆へと貶める、天邪鬼の力。

小牟「なん……じゃと……」

咲夜「そこに私の能力を付け足しまして、貴女様方をめっためたのぎったぎたにするのです」

 咲夜の能力は『時間を操る程度の能力』――その名の通り、時間を自由自在に操る能力だ。
 制限はほぼなく、自由に時間を止めたり、流れる速度を変化させられる。
 その能力の有用性と汎用性は計り知れず。
 それは本来、人が持ってはならない、上位の能力。

霊夢「…………」

魔理沙「…………」

小牟「…………」

沙夜「そういうわけで、大人しくご飯を食べなさいな。最後の晩餐なんだから♪」

咲夜「味付けには自信があります」グッ
714 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/26(月) 22:47:08.27 ID:w5SS3J0Qo

小牟・魔理沙「「……あっかん、べー」」ベー

 だがそんな絶望的な能力を前にも、三人は物怖じしない。
 しないが、やっぱり霊夢は合わせない。合わせてくれない。

沙夜「……」ニコニコ

咲夜「……マゾなのでしょうか?」

霊夢「誰が」

沙夜「残念ねぇ、味は保証したのに。それじゃぁ……」パチン

小牟「ぬふっ! ……力が抜ける。若さが……!」ヨヨヨ

魔理沙「変わってねーよ」

霊夢「…………」

沙夜「みんな、やっちゃいなさい」

妖精メイド‘s「Yes,My Load!!」バッ

咲夜「」カチャッ

小牟「逃げるが勝ちじゃ!」ピューン

魔理沙「だぜっ!!」ダダッ

 妖精達と咲夜が、それぞれの武器を持って飛びかかってくる。
 反転する程度の能力のせいで、ただの少女(?)となった者達は一目散に廊下を駆け戻る。
 そう、小牟と魔理沙の二人だけだ。

小牟「霊夢。……『夢想天生』の発動を許可する。……一度言ってみたかったんじゃー、これ」トットコー

霊夢「言われなくても」スッ

 霊夢だけがその場に残り、今までとは柄の違うスペルカードを取り出す。

沙夜「もう、無駄なあがきをしちゃって。貴女の能力だって……」パチンッ

霊夢「…………」フワッ

 沙夜が能力発動の合図である指鳴らしをするも、霊夢は宙に浮く。

沙夜「……あら?」パチンッ

咲夜「……」カッチン

  「…………………………」

 そして発動する、霊夢が博麗の巫女である事を示す、一つの証。




     『  夢  想  天  生  』


715 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/26(月) 22:49:51.98 ID:w5SS3J0Qo


  ピピピピチューン

妖精メイドM「ひっ!?」ピチューン

沙夜「……そんな、馬鹿な。……っ!」ガリガリ

 沙夜が、信じられないものを見るように、目を見開く。

魔理沙「お、無事発動したようだぜ」スタコラ

小牟「あたぼーじゃ。霊夢の能力をなんじゃと思うとる」サッサー

咲夜「私が止めます、メイド長(カッチン)」ピチューン

沙夜「!?」ガリガリ

 霊夢の能力が反発できなかったどころか、一瞬にして妖精メイドと咲夜を倒されたのだから、しょうがないか。

 霊夢の能力は『空を飛ぶ程度の能力』であり、その名を聞いただけでは肩透かしを食らうだろう。
 だがそれは大きな間違いである。
 彼女の能力の真価は、ありとあらゆる存在・現象の空に浮かび、その影響下から離れることなのだから。

沙夜「くっ!」ガリガリガリ

 そんな能力をフルに活用したのがこの、『夢想天生』だ。
 あらゆる現象の空に浮くことで他者の干渉から逃れ、自動で放たれる弾幕を無制限に放ち続ける。
 その事実上無敵で常勝無敗の技は、本来は霊夢必殺の奥義であり、スペルカードではなかった。

小牟「うお、これ以上いけんぞ!」

魔理沙「くっそ、予定より長いぜ」ガリガリ

 だが魔理沙が時間制限付きで使えばいいんじゃね? と考案して、スペルカード化したのだ。

 そんなスペルカードが、過信と油断から不意を突かれる形となった沙夜に襲い掛かり……。

沙夜「あーん」ニヤッ

  ピチューン

 正しい避け方が出来ずに、倒される。

魔理沙「よっしゃ、倒した! ……ってなんで止まんねーんだよ!?」ガリガリ

小牟「……時間制限短くしろと言い忘れた」テヘッ

 あらゆるモノから離れているために、敵味方の区別もなく、ただ時間制限いっぱいに発動し続ける。
 幸いなことに、かなり離れたおかげで弾幕は散発的だったため、ぴちゅることはなかった。

………………

…………

……

小牟「まったく。手こずらせよって、このこの」ゲシゲシ

沙夜「踏むほうは好きだけど、踏まれるのは好みじゃないわ〜」アンッ

霊夢「…………」

魔理沙「はー……もっと体力つけるべきか?」ゼーハー

咲夜「……」

 夢想天生が終わり、扉の前まで戻ってきた二人。
 戻ってきてそうそう沙夜を踏み始めた小牟を誰も止めないのは、鬱憤がたまっているからだろう。うん。
716 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/26(月) 22:54:22.39 ID:w5SS3J0Qo

小牟「まー、確かにちょっと体力低いの。……つーか沙夜よ。さっきの話が事実じゃと、納得できん点がまだあるぞ?」

沙夜「……何が、かしら?」

小牟「ゴミ箱っちゅーからには、零児めは地下に落ちたんじゃよな?」

咲夜「はい、そうなりますが」

小牟「……地下っちゅーと、フランめがおるはずよな?」

魔理沙「そーいやそうだよな。……いや、別にそこに行くわけと決まってなくね?」

霊夢「どうやって掃除するのよ。地下に落とした死体を」

魔理沙「……ああ」ポン

沙夜「……」ニコニコ

 小牟と霊夢の考えは間違っていない。
 事実、零児はフランとリリスの元に落ちたのだから。

小牟「答えい、沙夜」ジャキッ

沙夜「……あの二人は出来損ないだからよ」

魔理沙「でき……そこない?」ピクッ

咲夜「…………」

沙夜「そ。……三女と末の姉妹は、吸血鬼らしからぬ狂気を孕んでいるもの」

霊夢「はいまった。三女と末って、レミリアとフランだけじゃないっていうの?」

咲夜「レミリアお嬢様の事ばかり話しておられると思えば、そういうことでしたか」

沙夜「私は薄々気づいてたけどね、咲夜ちゃん。……そう、その二名だけじゃないわ。――」

 長女モリガン。次女レミリア。三女リリス。四女フランドール。
 それがこの異変における、紅魔館の吸血鬼一族。『アースランド』姉妹である。

小牟「……スタンめと同じパターンかと思うておったら」ハァ

魔理沙「続き話せよ、サヤ。狂気を孕んでるから、出来損ないなのか」ギリッ

沙夜「そうよ。吸血鬼に似合わない狂気。あんな欠陥品、上のお嬢様方と同じ扱いにする必要ないのよ」

魔理沙「こんのやろぉ!」ブンッ

小牟「やめい、魔理沙!!」スッ

   カンッ…………カラララン

 魔理沙が箒の柄の先で沙夜を力任せに突こうとしたのを、小牟が止める。
 小牟の水憐が箒を捉えて弾き、飛んだ先で虚しい音を鳴らす。

魔理沙「なっ……んで……! こいつはお前の敵じゃねーのかよ!!」

霊夢「勘違いしないの、魔理沙。……これは、『異変』よ」

魔理沙「っ……」

小牟「その通りじゃ。……わしとてこやつは嫌いじゃが、こやつはこんな屑じゃない」スッ

沙夜「…………」ニコニコ

 思いがけぬ、敵の擁護。
 これもまた、小牟や零児と、沙夜の関係を表している。
 敵対者だが、互いをよく知り、認め合うという仲を。

小牟「ぬしの怒りももっともじゃ。じゃが、それを晴らすべきはこやつじゃなく、黒幕じゃろう」

魔理沙「……」ギリッ

小牟「……の、魔理沙よ」

魔理沙「……そう、だよな。……ごめん」
717 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/26(月) 22:57:34.41 ID:w5SS3J0Qo

小牟「うぬ。素直に謝る事が出来るのは、好ポイントじゃぞ」ナデナデ

魔理沙「ばっ、なっ、お前まで子供扱いするなよ、シャオムゥ!」カーッ

霊夢「…………」

沙夜「…………」ニコ……

 一瞬前まであった雰囲気が、もう影も形もない。
 それは魔理沙も、心の奥で彼女が悪いわけではないと分かっているから。
 それを汲んだ上で、矛先を正しい相手へ返させた、小牟の気遣いのお陰だろう。

沙夜「いちゃつくのは結構なのだけど、そろそろ足を退けて貰えないかしら?」

小牟「それとこれとは話が別じゃ」ゲシゲシ

魔理沙「…………えー」

霊夢「そーいうことならいいわ。やっぱり早く解決したほうがいいわね」

小牟「じゃな。リリスとフランが相手じゃと、流石に怖いところがある」ゲシゲシ

咲夜「…………」

 だが、これまでにあった私怨を今晴らす小牟。
 どうせ異変の中の出来事だから沙夜は覚えてないだろうと思っての行為だったりする。
 それを知らない魔理沙は、遠い目で小牟を見ているが、お構いなしにトランプルだ。

霊夢「それじゃ、行きましょ。結構時間食ったわ」フワッ

魔理沙「ああ。……お前らの事、許したわけじゃねーからな!」バシュッ

小牟「それ、負け犬の台詞じゃ」トンッ

………………

…………

……

「……」

   カッチン

「行かれちゃったわね〜。……って、咲夜ちゃんも?」

 小牟達が廊下の奥へ向かってから数分。
 咲夜が無言のまま能力を使い、どこかへと消えさる。

「……もう、いけない子。『決闘』じゃぁ、一度負けたら大人しく引かなきゃスマートじゃないのに、ね」ホッ

「…………」トン

「それにしても、小牟は気付かなかったわねぇ。わざわざ一度名前を呼んであげたのに」パンパン

「坊やが一緒なら、気付かれてたかしら?」

 そして徐に、独り言を話し始める。

 彼女は正真正銘、逢魔の沙夜である。
 その証拠に「紅魔館やその門前において、一度も呼ばれていなかった小牟の名前」を言ったのだから。
 一応、小牟自身が技を発する時に言ってはいたが、名前を知らない者が聞いても分からない事だ。

「しかしこんな屑じゃない、か。……嬉しい評価だけど、少し買被り過ぎよ?」

「確かに、吸血鬼のお話は、私の話じゃないけども、ね」

「……ふふふ」

「それじゃぁ監視員ちゃん。……悪いけど、モモちゃんの時同様――――」
718 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/26(月) 23:11:59.06 ID:w5SS3J0Qo
………………〜〜〜〜――−・ー− 〜ー^==ー~=~=〜……ー^ー^ー−ー^ー==^^ー―ー・……〜ー

 十六夜 咲夜

 人間の女性。青の生地を主とし、白のフリルを多くつけたメイド服を着用。フリルのカチューシャを着けている。

 え、えええ、えええ……。映像記録と−−−より、時間を操作する能力を持っていると判明。

 適正体である可能性は非常に高い。監視優先度を高にして、引き続き監視対象とする。

………………〜〜〜〜――−・ー− 〜ー^==ー~=~=〜……ー^ー^ー−ー^ー==^^ー―ー・……〜ー

 沙や

 女性型の妖怪。全体的に黒で、露出度の高い服を着用。

 え、えい、えいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえい

………………〜〜〜〜――−・ー− 〜ー^==ー~=~=〜……ー^ー^ー−ー^ー==^^ー―ー・……〜ー

 沙夜

 女性型の妖怪。全体的に黒色な、銀髪の妖孤。

 小牟 と−−−より、五つの武器を利用して戦う事が判明。

 適正体である可能性は低。優先度も低とし、調査は最下位に位置づけます。

………………〜〜〜〜――−・ー− 〜ー^==ー~=~=〜……ー^ー^ー−ー^ー==^^ー―ー・……〜ー
719 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/26(月) 23:21:09.28 ID:w5SS3J0Qo

以上で投下を終わります。やっと出てきました沙夜御姉さまです。メイド長就任してました

そして分かり切ってたようなものですが、四姉妹な上に性がアースランドでした

……リリスのこれじゃない感が半端ない


てかなんじゃこの文量……予定は仮定で未定にも程が……


さて、次回投下は金曜までに、『紅魔郷6面+α』『紅魔郷クリアー後』です

それでは、また
720 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/27(火) 06:58:50.55 ID:PJpRAEUDO
お疲れ様!
しかし、幻想郷で霊夢の勘が外れる…か。それ程ヤバい事が起ころうとしてるってのか?

吸血鬼四姉妹…いやいやいや、予想してたとは言え流石に多いよww両親とか設定されてたらどんだけ頑張ってんだwwww

そうですか、沙夜さんでしたか………って言うか、何ですかあの強力な程度の能力は!!?まさかあんなもん引っ提げて来るとは思いもしませんでしたよ。

そして監視員さんはやっぱり貴女の関係者ですか…。最近はDJのスクラッチみたいな事多いけど大丈夫か?
721 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/03/27(火) 12:47:54.84 ID:WJS7j4oro
沙耶さん 悪役だけど嫌いになれないよなー
白夜とか片那とかは来てないんかな?
722 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/03/27(火) 16:13:38.27 ID:sdH+DZS7o
沙耶さんはやっぱ取り込まれてないのか
723 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/30(金) 19:06:04.94 ID:xWeMw6VDO
反転する…まさか性別も!?
724 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/31(土) 00:35:15.11 ID:jPtSJ7dBo

こんばんわ。レス、ありがとうございます

沙夜が人気なのはいいのですが……

>>721>>722

沙夜「スプラッタされる唄、聴きたい?」ニコニコ

沙耶「……」ニコー

ギャアアアアアア!トラウマ物ですよこれええうわあああ!!


さて今回の投下は『紅魔郷6面+α』だけになりました

『紅魔郷クリアー後』はなんかあまりすすめれず……

というわけでいきます。『紅魔郷6面+α』です
725 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/31(土) 00:37:04.19 ID:jPtSJ7dBo

魔理沙「…………はぁー。正直、怖かったぜ……」

霊夢「全然そんな風に見えなかったわよ?」

魔理沙「いやいや、まじで。まさか能力封じられるなんて思わなかったからさ」

小牟「厳密には逆転なようじゃが、まぁ良いわな。……そもそもあれが本当に程度能力か分からんし」

魔理沙「そうなのかー?」

霊夢「……残念だけど、あれは本物よ。確証はないけど」

小牟「む。巫女の勘かの?」

霊夢「ええ。……こっちは衰えてないの、ね」

 どうやら、零児が落ちた時の勘と、さっきの事が本当かどうか分かる勘は別物らしい。

魔理沙「……口調が伝染して、ね?」

霊夢「わざとだし、それ間違ってる。……もうすぐ着くわよ」

小牟「……ところでじゃ。原作じゃと、レミリア戦は真っ赤なお月さまの下じゃったが、どうなん、そこんところ」

魔理沙「なんか変な訛りだな」

霊夢「んー……このまま玉座っぽいところ行って、そこからバルコニーに出て、飛んで戦ったわね」

小牟「……零児おらんくて正解じゃったかもしれんの」

魔理沙「あー……箒乗せるか、待っててもらうかだしなー、零児」

霊夢「レミリア一人ならともかく、モリガンって人がいるのもほぼ確定でしょうし……いなくてよかったのかもね」

小牟「あとは無事を祈るだけじゃな、うん」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜紅魔館地下・狂気の部屋〜〜〜

零児「む……」ムズムズ

リリス「? どうしたの、れいじ。顔あげて」

零児「……へ、へぇっくしゅん!!」

  ヘェックシュン!  ヘェックシュン ヘェッ……

 超特大な音な上、地下の密室空間なために響き渡る、零児のくしゃみ。
 彼は健康人間なために日ごろ咳やくしゃみとは無縁で、そのために時たま、手で口を押さえ忘れてしまう
 しっかしこの幻想郷、何故か噂の感染力が高い。

リリス「耳ぃ……頭ぁ……」ウウウ

零児「す、すまん。リリス」

フラン「……五月蠅いなぁ、もう。なによ〜……?」

零児「! ……おはよう、妹様。起こしたようで、すまない」

 そんな音が響けば、眠り姫でもなければ流石に起きる。
 長い事寝ている上に、満足にご飯を食べていないがために、低血圧なようだが。
726 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/31(土) 00:38:49.51 ID:jPtSJ7dBo

フラン「……?」カクッ

リリス「あ、フランちゃん起きたんだ〜。おはよ、フランちゃん」

フラン「…………あー、リリスお姉ちゃん。おはよー。……それ、ご飯?」

リリス「んーん。リリスの友達だよ♪」

零児「……有栖 零児だ。よろしくな、フランドール」

フラン「…………あー、お人形?」

リリス「違うよー。人間の友達。あんなことや、こんなことを一緒にした仲なんだよ?」

零児「…………」

 小牟からは原作そのままを、魔理沙からは何故か最近絡みやすくなったと聞いていた。
 それゆえに、この異変の時のフランはもう少し危ない吸血鬼だと思っていた。
 だが、全くそう見えない。

フラン「本当に? お姉ちゃん。ねぇ人間。だったらお話聞かせて!」ガバッ

零児「……ああ。いくらでも話してあげますよ、お嬢様。……ただ、リリスは頭が痛いようでな。ベッドで横にさせるぞ」

フラン「それは大変。どうぞ、お姉ちゃん!」ポンポン

リリス「うん♪」ポフッ

零児「…………」

 人を見かけで判断してはいけない。魔理沙に言った事だ。
 だがそれでも、彼女に狂気があるようには思えない。

零児「……異変が終わってから探ればいいのかもしれんが……」

フラン「何しているの、人間。早く早く!」

零児「……はいはい、ただいま」

 彼に告げる勘がどの程度の物か。
 穏やかな瞳のまま、ただ場の流れに身を委ねることにした。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

   カッチン

咲夜「……」ハァハァ

小牟「やーはり来おったの。満身創痍の身で」

咲夜「……お嬢様への晩酌に出来ずとも、せめてお嬢様の願いだけは成就させねばなりません……」

霊夢「願いねぇ。そんな大層なものだったかしら。暑くて日差しがうざいから出してたんじゃないの」

魔理沙「でも当時は、あんまり日中出てなかったから意味ないって話だよな」

咲夜「それだけでは…………。いえ、どうせ自分は負けると分かっている以上、多くは語りません」

霊夢「まるで別の何かがあるみたいに言うわね」

小牟「ゆーて、今までも六面タイプには理由が付け足されとるから、おかしくないんじゃがな」

 幼馴染との再会。永劫封印の助力。恋人の誓い。
 どれも本来はなかった話であり、同時に強い人間模様を描いている改変。
 果たして今回は何が足されているのか。
727 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/31(土) 00:40:38.23 ID:jPtSJ7dBo

咲夜「……何の話をなされているかは、存じ上げませんが……奇術『エターナルミーク』!」シュバババ!

小牟「形振り構わずじゃなー、咲夜ぁ」ガリッ

魔理沙「……あれ。これ既視感が?」ガリッ

小牟「神子のグセフラッシュと似とる。……こっちのほうが難しいんじゃがな」ガリガリ

咲夜「くっ……せめて、一人でも削れれば……!!」

霊夢「……」ガリガリ

 咲夜が苦し紛れのエターナルミーク――ただのナイフ大乱投擲を放つ。
 ただのとはいったが、その数はどこに仕込んであるんだよというレベルだ。
 そこにも彼女の能力の秘密がある。が、

魔理沙「これより簡単なのかよー。原作の神子どれだけ弱いんだ?」ガリガリ

小牟「あやつを語るべくはオーバードライブでな。――」ペチャクチャ

霊夢「話してる暇ないでしょ、馬鹿。……『警醒陣』」ピンッ

咲夜「結界……それも強力ですね。ですがこのナイフを見切れわ……」

霊夢「学習能力ないわね、あんた。……私に時を止める能力は効かない」バッ

咲夜「!?」

 何故彼女が延々とナイフを投げ続けられるか。
 それは、空間を部分的に時止めし、そこにナイフを保管することで、彼女だけの武器庫を作っているからだ。
 後は時間を止めてナイフをせっせと回収していたりもするが、夢がないから黙っとくのが親切ってもん。

霊夢「あんたが掴んだナイフも、その軌道も、偽の腕振りも全部『視えてる』」ガガガガガ

咲夜「……そこ、まで」

小牟「相性じゃなー、ほんと。聞いた時は驚いたわ」

魔理沙「ついでに、私は咲夜相手に3割だぜ」

咲夜「くっ……!!」バッ

  トンッ

霊夢「そしてこのときのあんたは、これに驚く」ガシッ

咲夜「?!」

 霊夢が零時間移動で咲夜の真後ろに回り込み、両腕を掴む。

 これまで散々使われてきた、零時間移動。それは、空間を無視して体を移動させる技だ。
 弱体化して短距離しか飛べないとはいえ、それでも移動する瞬間は、人では知覚出来ない。

咲夜「そんな……私以外に……!?」

魔理沙「温存温存♪ ……で、シャオムゥ。神子以下だったか?」

小牟「いやぁ、勘違いじゃったかな」

霊夢「そうよね。こんな弱くて単調なの以下なんて、チルノだけで十分よ」

咲夜「よわ……い?」

小牟「……その体で無理すんなって事じゃ。わしでも、ぬしの手ブレは見えとる」

 ただ、別にそれだけでここまで容易に近づけたわけではない。
 咲夜が満身創痍の身でありながら、無理に止めに入ったのも要因の一つなのだから。
728 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/31(土) 00:43:12.92 ID:jPtSJ7dBo

咲夜「……そういう、事ですか」

魔理沙「それでも、私は、見えてない」シクシク

小牟「レミリアを想うんは構わんが、ぬしが体壊すような真似してどーするんじゃっつーの」

魔理沙「……でも、これしたの霊夢だよな」ボソボソ

霊夢「いーんじゃない? 咲夜の問題にしようとしてるし」ボソボソ

咲夜「……」ムム

小牟「ちゃーんと反省することじゃ。それにま、レミリアの望みは叶うぞ。たぶん」

咲夜「え? そ、それは一体……!」

小牟「つーわけでぬしはお寝んねターーーイム!」トンッ

   ピチューン

咲夜「あっ……ぅ……」ドスン

魔理沙「!?」ビクッ

 小牟が首のあたりを手刀で叩いた瞬間、呻き声をあげて倒れる咲夜。
 眠らせるやり方が荒いが、この際手段なんて気にせずだ。

小牟「いーはなしだなー」

小牟「主を想う従者に休息取らせるなんて、イケてるぜ」

小牟「小牟だけでも、スムーズに進めそうで助かるわ」

魔理沙「……いや言ってねえし! 声真似すんなよ!」

霊夢「それに咲夜、納得してなかったわよ」

小牟「細かい事はきにすんな。皺が増えるぞ、ぬしら」

魔理沙・霊夢「…………」

 小牟がややおかしなテンションになっている。
 こう見えても小牟は、繊細な心の持ち主だ。
 それこそ、彼がいないと動揺してしまい、いつもの調子じゃなくなる程度には。

霊夢「……ま、そうね。気にしないわ。ほら、もうそこの扉よ」

魔理沙「王道RPGっぽい扉だぜ」

小牟「大ボスの外見が子供じゃがな。ほいっ!」ドーン

〜〜〜紅魔館・ツェペシュフロア〜〜〜

????「この格好のほうがいいかしら、お姉さま。それとも、こっち?」クイックイッ

????「ん〜……もっと扇情的なほうがいいんじゃ……あら?」

魔理沙「いよーう、レミリアー。……隣のがモリガン?」

レミリア「……く、来るのが早い! まだポーズ決めてないのよ!?」ウー!

 階段の上の玉座のような椅子の前で、何か慌てふためいている永遠に紅い幼き月。
 レミリア・スカーレット――紅魔館の主であり、500年以上を生きる吸血鬼。
 淡いピンクなドレスを着た、立てばカリスマ座れば幼女、歩く姿は――

小牟「おぜうさまー!」イエー!

モリガン「シャオムゥじゃない。貴女が来るなんて……つっ」

霊夢「……どうやらそのようね」

魔理沙「くっ。ココモス並のスタイルだぜ……」ギリッ

 対して、大人の余裕を醸し出す、いるだけで男を魅了しそうな魅惑の女性。
 モリガン・アースランド――リリスと同じ服を着ているはずなのに、その真逆の印象を受けるサキュバスだ。
729 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/31(土) 00:46:15.30 ID:jPtSJ7dBo

小牟「どうした、モリガンよ。顔を歪めて」

レミリア「そうよ、お姉さま。先程も苦しそうだったけど、どうしたの?」

モリガン「気にしないの。……貴女が居るのに、レイジは見当たらないわね。どうしたのかしら?」

霊夢「その前に。……貴女、小牟が分かるってことは、記憶があるとみていいのね?」

モリガン「ええ。やっぱり、何かあるのかしら?」

 リリス同様、二つの記憶が混在しているために、頭痛に悩むモリガン。
 ただリリス程、ひどくはない。過ごした年月の差であろう。

小牟「大ありじゃ。……零児めが地下に真っ逆さまでの……今頃、リリスやフランめと……」ギュッ

魔理沙「シャオムゥ……」

小牟「……キャッキャッウフフしとるに違いない! うらやまけしからん!」バンバン

魔理沙「……心配して損したぜ」

モリガン「……だから嬉しそうにしたのね、リリス」ホッ

 モリガンからリリスに感情の動きが分かるように、リリスからモリガンにも感情は伝わる。
 あの時は逢魔の力のせいか、かなり一方通行だったが、今回は均等だ。

霊夢「……」

レミリア「…………?」ポカーン

モリガン「ところで、そっちの子供達は? 零児との子?」

霊夢「なっ……!」

小牟「ちゃうちゃう、今回の仲間じゃよ。詳しい話は、これが終わってからの?」チラッ

モリガン「また面倒事に顔を突っ込んでいるの? ……嫌いじゃないわ」フフフ

魔理沙「……びっみょーに、サヤに似てね?」

霊夢「なんだかねぇ?」

 モリガンはまだましなほうではあるが、かつての味方の中には気紛れで手を貸していた者達がいる。
 そういう者は、大体が悪役のような、ひどいと敵との違いが分からない程の言動を取ることがあった。
 その事で内心ひやひやした味方も、少なくはないはずだ。

レミリア「……って、お姉さま、どういうことですか? 何故侵入者と呑気に話を……!」

モリガン「……レ ミ リ ア」スッ

レミリア「あっ……」ボフッ

モリガン「……霧を出すの、もうやめましょうか」レロッ

レミリア「んっ……な、何故で……ひゃっ!」

魔理沙「うお。うお……」///

霊夢「……」

小牟「モリレミ……!」グッ

 おいてけぼりを喰らっていたレミリアが、姉へと疑問を投げかけようとして、椅子に押し倒される。
 投げかけられた言葉に抗議しようとするも、首筋を舐められ可愛らしい悲鳴を上げる。
730 :だからそういうシーンは書けないんだ…… ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/31(土) 00:48:21.21 ID:jPtSJ7dBo

モリガン「一緒に外で遊びたかったんでしょうけど、その心配はもうないからよ」スーー・・

レミリア「え? ……あ、そ、そこは……見られて……!」

モリガン「あら。その割には抵抗しないのは……何故かしら?」スリスリ

魔理沙「ひゃーー……」//////

小牟「これだけで、二十四時間戦えますの〜」フンスッ

霊夢「……子供がいるから、ほどほどにね(……って、零児さんなら……」

モリガン「……」ニコッ

レミリア「そ、それは……お姉さまが頭痛だから……暴れた……ら……」

モリガン「ふふっ。可愛い、『妹』。……んっ」

レミリア「ん――?!」

 サキュバス・モリガン、オンステージッ!


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

零児「――そこで、リリスは確か……無理にダジャレを言ったんだったか」

リリス「あんまり覚えてないんだ〜。リリスはぶられてたもん……」ブー

フラン「どうして? どうしてなの?」

零児「その呪術は人間以外には効かないようでな。仲間の何人かは、そのままだったんだ」

リリス「でもみんな、楽しそうだったよね!」

フラン「いいなー。私もそこに居たらなー」ショボーン

零児「……いや、まぁ、な」

 リリスが仲間に入って初の戦闘。それは、ダジャレの国で行われた。
 ダジャレを言ってしまう呪いのかけられた空間。
 敵も味方も、天然のギャグの応酬。それでも、彼女にとって憧れた世界。
 フランもまた、この頃では憧れていた世界。

リリス「でもね、そのあとのほうがもっとすご……か…………」ッ

フラン「リリスお姉ちゃん?」

零児「……リリス、またか?」

リリス「……ん、大丈夫。ただね……モリガンがね……驚いて……嬉しいみたい」

零児「小牟達が無事に着いた、ということか……?」

リリス「わかんない……けど、そうだと……いいね」

零児「ああ。……今の俺は、三人頼みだからな」

フラン「? 誰の話?」

零児「俺の仲間の話だ。……これから、レミリアと戦うはずなんだが」
731 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/31(土) 00:50:45.65 ID:jPtSJ7dBo
零児「俺の仲間の話だ。……これから、レミリアと戦うはずなんだが」

フラン「え、お姉様と? どうしてー?」

リリス「太陽を独り占め……だっけ?」

零児「霧を出して太陽の光を遮るのを、数日間続けている。それを止めさせるためにな」

フラン「ふーん…………私達をここに閉じ込めてる癖に、自分はのほほんと外出したいんだ……」

零児「…………姉の事、気に食わないのか?」

フラン「……んーん。私達が悪いの。ね、お姉ちゃん」

リリス「そうだね。……私達が悪い子なだけだもんね……(って、ことなの」ボソボソ

 狂気。
 フランドールは善悪や、物事の強弱を正しく知れる機会が少なかった。
 しかも姉……どころか、幻想郷中の誰よりも破壊に特化した力を持ってしまった。
 二つの不幸が混ざったことで、−核兵器を持った駄々っ子−が完成したのだ。

零児「……」

 だがそれでも、彼女は理解している。
 自分の狂気が皆を困らしてしまう事を。
 自分がひどい目に逢わないように、姉が嘘をついていた事も。

零児「……思ったほど、改悪しているわけではないのかもな」

フラン・リリス「?」

零児「こっちの話だ、気にするな。……だが、それでも……」グッ

フラン「……ぎゅってしてるけど、どうしたの? 何かドカーンしたいの?」

零児「ある意味はな。だが、それは最後の手段にしたい。……ところでモリガンの様子はどうだ、リリス」

リリス「……モリガン……すごく興奮してる……」モジモジ

フラン「?」

零児「……戦っていないなら、それで構わんが……」ハァ

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

モリガン「もう終わり? 夜はまだまだこれからなのに」カツン

霊夢「…………」

レミリア「ハァハァ……」

魔理沙「ふぅ、セーフ。レズはノーサンキューだぜ」

小牟「賢者になっとるくせに、よーいうわ。……じゃがモリガンよ、でかした」グッ

 モリガンがレミリアを責め始めてから、十五分ほど。
 椅子の上に、背中を大胆に晒したまま荒い息を吐くレミリアを置いてモリガンが降りてくる。
 その場面だけを見れば、いたいけな少女を手篭にした悪魔の女にも観える。

 彼女がレミリアを責めたのは理由がある。
 勿論、苛めたかったからというのもあるが、小牟の目配せを察してだ。
 サキュバスとして名高き彼女は、そんな微妙なところにも気を使えたりする。

モリガン「あら。私はただ、好きな事をしただけよ?」
732 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/31(土) 00:51:26.59 ID:jPtSJ7dBo

霊夢「そーでしょうね。……で、説得は出来たのかしら?」

モリガン「ええ。……ね、レミリア?」

レミリア「は、はひぃ……」ビクンビクン

小牟「すまんの〜、わざわざ。流石はサキュバスじゃと褒めてやりたい所じゃ」

魔理沙「……でもやってること、羽の付け根触ったりしただけなんだよなぁ……」ウーン

霊夢「案外そこが吸血鬼の弱点だったりして?」

 幻想郷の吸血鬼には、弱点が多い。
 日光。流水。炒った豆。柊鰯。他にもまだあると言う話だ。

 ただ、この場合の弱点は意味合いが違うのだが、黙らないと尻叩きが怖いので黙る小牟であった。

魔理沙「……」ウーン

モリガン「どうしたの、白黒ちゃん? さっきのが気になる?」

魔理沙「あ、魔理沙だぜ。それも気になるんだけど、サヤってやつがフラン達をゴミって言った理由がなー」ウーン

霊夢「まだ拘ってるの? だからあれは今回の異変の一環でしょ」

魔理沙「そーなんだけど、なーんか引っかかる」ウーーーン

モリガン「サヤの言葉を鵜呑みにしちゃだ〜め。大人の女性は、秘密事を沢山抱えているんだから」

 モリガンが言うと、説得力がある。

小牟「そうじゃぞ〜。わしにだって秘密の一つや二つあるしの。ヘソクリの場所とか」

 小牟が言うと、説得力がない。

霊夢「……箪笥三段目の引き出しの裏側」

小牟「な、何故ばれたし!?」

魔理沙「…………」

霊夢「…………」フッ

小牟「シマッタ」

モリガン「それで、これからどうするの?」

魔理沙「ま、考えるのは止めて。あんたら二人に被弾してもらうぜ」トットー

霊夢「元に戻る気配がないから、やむなしね」
733 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/31(土) 00:52:40.61 ID:jPtSJ7dBo

モリガン「あらら。だったら、やっぱり遊んだ方が良かったかしら」

小牟「……それは異変が終わってからでもよいじゃろ。ほれ、叩くぞ?」

魔理沙「レミリアはさきにーっと」バンッ

 ピチューン

モリガン「はいはい。……ま、これから面白い事が起きるし、それで我慢してあ げ る」ピチューン

 妖艶な笑みを浮かべたまま、小牟に叩かれるモリガン。
 その瞬間、これまで同様に光が満ち……結界が消える。

 そして見えてきたのは先程とそう変わらない風景。

霊夢「……よかったの、小牟?」

小牟「言うておったじゃろ、秘密を抱えとるって。楽しめるもんは話さんよ、あやつも」

魔理沙「まー、気持ちは分かるな。さて、零児探しに……」

レミリア「……咲夜ー、霊夢と魔理沙が居るんだけど、通したの?」

咲夜「いえ、通した記憶はございませんが……?」

魔理沙「あれ、居たのか」

 そう変わらない風景の中に溶け込んでいた、二人の……


   ゴゴゴ……ドガーーーーンッ!


レミリア「っ!? な、何!? 地震?! またあの子暴れてるの!?」

咲夜「確かめてまいります。……霊夢。魔理沙。要件は後で聞くわ」カッチン

小牟「零児……!?」ダッ

………………

…………

……

咲夜「これは……」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 やや前。異変が解決される、ほんの少し前。

零児「――そこでジューダスが……」

リリス「……ふー、終わったみたい。なんだかリリス、欲求不満だな……」ジー

零児「頭痛持ちなんだ、自愛しろ。だが、その知らせは重畳……か、わからないんだったな」ハァ

フラン「私はお話聞いてるだけで楽しいよ、お姉ちゃん!」

零児「そいつは重畳だな。……」グッ

 リリスのいう、モリガンとの繋がりの中継。
 それだけが、この空間での外部からの情報。
 その報せに、一喜一憂さえ出来ずに、零児はただ、気を紛らわせるしかない。
734 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/31(土) 00:55:20.30 ID:jPtSJ7dBo

フラン「……怖い顔になってるよ?」

リリス「沙夜お姉様と、戦ってたとき見たい」

零児「そうか、すまん。……やはり、もどかしいもんだと思ってな。待つしかないというのは……」

フラン「…………もどかしい?」

零児「ああ。……だれかに任せて、ただ待つのは……嫌いだからな」

 彼が待つのが嫌いなのは、己が無力を思い出すからだ。

 魔理沙に語った、彼の物語。

 父を失った、無力と選択への後悔。そして、父を殺した彼女を『守る』と誓った、過去。

 彼を突き動かす原動力だった、彼の軌跡。

リリス「だからって、皆を置いて行っちゃだめだよ。楽しい事は皆で。辛い事は……分け合って、ね?」

零児「分かっているさ。……じゃないと、魔理沙に怒られる」フッ

 けれどもう、今は違う。
 過去に拘る事は止めた。彼女とは並んで歩む事を選んだ。

 だからこそ、得られた出会いがあった。掛替えのない、友を得た。
 ここにも来られたのだから、その選択は重畳の至りだったのだろう。

フラン「……怖い顔になったと思ったら、笑顔になったり。人間がこんなに面白いだなんて知らなかった!」

リリス「フランだって、似たようなものだよ。ねー?」

零児「ああ。……異変が終わった後、おまえさんに――」

リリス「……? モリ……ガン?」

零児「どうした、リリ……!」バッ

 フランに何かを語りかけようとしたところで部屋が……いや、空間が輝き始めた。
 零児はそれが、異変を解決したことだと察し、目を塞ぐ。
 そして……


零児「…………引いた、か。……蝋燭が点いてある。結界もない。……やったな、霊夢達」

リリス「れいじ、何今の? 部屋が光ったと思ったら、少し移動してたの!」

零児「傍にいるのか、リリス。今のが異変をかいけ……つ…………」クルッ

フラン「・・・・・・」

零児「・・・・・・」

 そこに居たのはフランドール・スカーレット。
 ちょうどドロワーズを履こうとしている、人間でいうところの、生まれたままの姿である、彼女だ。

フラン「・・・・・・」ギュッ

零児「……話せばわかる」

フラン「きゃぁあああああああああああああ!!!」ブンッ

   ズガガガガガガガ……\ドゴーン/

………………

…………

……
735 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/31(土) 01:03:37.72 ID:jPtSJ7dBo

………………〜〜〜〜――−・ー− 〜ー^==ー~=~=〜……ー^ー^ー−ー^ー==^^ー―ー・……〜ー

 レミリア・スカーレット

 女性型の吸血鬼。薄いピンクのドレスを着用し、頭にはパチュリーの物と似た帽子を被る。

 −−−より、操作系の能力と判明。ただし、その範囲や影響度は低い。

 特記すべきはその肉体。適正体の可能性があるため、優先度高の下とする。

………………〜〜〜〜――−・ー− 〜ー^==ー~=~=〜……ー^ー^ー−ー^ー==^^ー―ー・……〜ー

 モリガン・アーンスランド

 サキュバス……女性型の淫魔。露出度の高い服を着ている。緑髪。

 各種情報からでは、能力の詳細が分からず。

 肉体強度に関して調査が必要だが、優先度中の下とする。

………………〜〜〜〜――−・ー− 〜ー^==ー~=~=〜……ー^ー^ー−ー^ー==^^ー―ー・……〜ー
736 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/03/31(土) 01:09:53.28 ID:jPtSJ7dBo

以上で投下を終わります。なんで今までアーンスランドをアースランド言ってたんや……


沙夜の能力『反転』では性別は変わりませんよ、勿論!

もしなったら男性な魔理沙や男性な勇儀や男性な神奈子や…………あれ?



さて、次回こそは『紅魔郷クリアー後』です。その次は『三日目の夜』→『四日目の朝』ですかね

その話の最中に、閑話休題は二つほどな予定ですが、未定で仮定なので

それでは、このへんで
737 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/31(土) 15:54:50.16 ID:MxxesNIDO
紅魔終了お疲れ様です!
なんと…まさかの百合展開ですと!?ちょいと刺激が強過ぎるんじゃないですかねぇ!?魔翌理沙なんて顔真っ赤だったじゃないですか!でも霊夢は平然としてましたね…、耐性があるのか?それとも最終的にやってたのがただのマッサージ(?)だったからなのかww?

それにしても、さっきゅんは健気だなぁ。

そして零児さんは望まないのにぬ〜べ〜先生並のラッキースケベに遭遇…どうしてこうなった?wwww
738 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/01(日) 08:13:16.88 ID:vKmKcdZDO
え〜っと、その…性別反転についてはですね。“何を”反転する〜 とか明言されてなかったんで…もしかしたら任意で色んなものを反転出来るのかな〜?と思った時…、「(性別も反転させたり出来たら、まさか零児さんが女の子にさせられたりするのかぁっ!?)」などと、こんな事を思っちゃいまして。アハハ…(汗

ちなみに、東方キャラを男に〜 の方は、これっぽっちも考えませんでしたね(笑) だって男→女はともかく、女→男なんて誰得?って思ってましたしww
739 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/04(水) 17:51:19.23 ID:yF/hKLn+o

こんにちわ。レス、ありがとうございます

何故かやたらと時間かかりました。驚くべきフランちゃんのはd\ギュットシテドカーン/

げほん、投下します。紅魔郷クリアー後です
740 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/04(水) 17:55:06.97 ID:yF/hKLn+o

咲夜「……これは」

 紅魔館が揺れるほどの力を放っていたのは、フランだった。
 そのフランに追われているのは、見知らぬ男。
 この男。驚くべき事に、妹様のレーヴァテインを避け続けている。

咲夜「……パチュリー様に連絡は不要ね」

零児「ああ、分かっているさ。俺が悪いんだろうな!」ガリガリ

フラン「お兄様にも見せた事無かったのに、死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえーーーー!!!」ブンブンッ

零児「すまんが、死ぬのは無理だ。『火燐』!」ガンッ

 フランの炎剣・レーヴァテインがめちゃくちゃに振り回される。
 その剣は図書館と同じだが、フラン専用に強化した結界にぶつかり、地響きを鳴らす。
 結界は安易に壊れたりしないだろうが、耐震強度の問題で不安を抱いてしまう。

フラン「! 止めた!?」

零児「せぇいっ!」

リリス「いいなー、楽しそう……」   カチン

咲夜「リリス。これはどういう状況なの?」

リリス「あ、さくや。えとね、れいじが振り向いたら、フランが叫んでー、遊び始めたの」ペカー

咲夜「そのレイジ……たぶんあそこの男でしょうけど、何でここに……まあ、今のでだいたい分かったわ」ハァ

 リリスに説明させるのは間違いだよ、咲夜さん。

零児「こういう展開も……考慮すべきだったか……!」

フラン「この、このっ!!」ブンッブンッ

咲夜「……ともかく。(カチン)妹様、お洋服をお持ちしました。その姿のまま動き回ると、風邪を引いてしまいます」

フラン「その姿? …………!!」カーッ  ダッ

 上半身裸な、ドロワーズを履いただけの姿である。
 羞恥心でとっさに追いかけまわしたが、冷静になるとこのほうがよっぽどだ。
 ところでもちろん、胸なんてぺったんこである。

咲夜「そっちの男……レイジ、でいいのかしら?」

零児「ああ。……言い訳はしないが、話ぐらいは……」

咲夜「あらあら、駄目ですわ。粗相をしたお客様には、きちんとしたお持て成しをしなくては」シャキン

零児「……お手柔らかになっ!」ダッ

咲夜「……『スクウェアリコシェ』!」

 突っ込んでくる零児をしり目に、咲夜は真後ろにあった壁に向かってナイフを投げる。
 そのナイフは一度反射し、地下の天井へと向かう。

零児「……」ダッ

咲夜「おや」

零児「跳ね返る」

   カッズバッ

零児「ふんっ……金【ゴールド】!」ガリッ

 あり得ない方向に飛んで行ったナイフは、天井にぶつかると同時に零児へと射出される。
 だがこれと似た弾幕をすでに知っていた彼は、跳ね返る音に合わせ右へ半身傾け、避ける。
 そのまま左半身を倒したところで、脇の下から金で狙撃する。
741 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/04(水) 17:59:08.84 ID:yF/hKLn+o

咲夜「……バレていましたか」パリイ!

零児「バレちゃいない。油断を誘う囮か、兆弾か……そのどちらかかと、思っただけさ」ダッ

咲夜「戦い慣れしているようですね。ですが……幻世『ザ・ワールド』」

零児「……」

 咲夜が大量のナイフを投げつけてくる。
 その隙間は零児が通れない程に細いが、それでも五行五列有るだけで、回避は容易い。

咲夜「これは流石に分からないでしょう」カチン

 しかし、咲夜の言葉と共に、いくつものナイフの軌道が変わる。
 右へ、左へ、上へ、下へ。散弾銃の如くばらけたそれは、避ける方向を一瞬戸惑わせる。
 それが狙いのスペルカードだ。

零児「……これを全部、わざわざ時を止めてから向きを変えているのか?」ガンッ

咲夜「!」

零児「ご苦労な事だが……芸の域を出んな」グッ

 だが零児はそれを見ずに、その場に足を叩きつける。
 そのまま低く腰を構えて、抜刀の構えを取る。

零児「道がないなら、斬り開くだけだ。二刀『戒刀乱魔』……」

 電鋼刹火が力の二刀二門なら、戒刀乱魔は速の二刀流。
 抜刀から火燐と地禮を交互に振り上げ、巻き上げる炎雷の渦。
 二つの刃に阻まれ、下手に拡散されて薄くなったナイフの群れは、零児に届かない。

咲夜「……私対策は練っている、というわけ?」

零児「そうでもないさ。……手を違えるな」

リリス「れいじは相変わらず、面白い動きをするね!」

零児「……楽しんでもらえて何よりだ」ハァ

咲夜「そのようね。……直接やらなくては、駄目なのかしら」フラッ

霊夢「そこまでよ。止めてもらえるかしら、咲夜」トンッ

 咲夜が不気味に両腕を垂れ下げた、その時。二人の間に霊夢が割り込んでくる。
 その手には魔力の槍……レミリアが使う、赤き神槍グングニルが握られている。

霊夢「ほら、これで大体通じるでしょ」ポイッ

咲夜「……珍しい。貴女もだけど、お嬢様がわざわざこれで連絡をよこすなんて」パシッ

霊夢「一緒に居た狐きってのお願いだから。で、ここで何があったの?」

零児「……俺がフランドールの裸を見てしまった」

霊夢「あらら。それはフォロー出来ないかもね」フフッ

咲夜「! ……」

リリス「?」

 あり得ないといった風に目を見開く咲夜。
 原作にて、時機組と呼ばれる少女達は、幻想郷の中でも比較的交流が深い。
 咲夜からの接点は、その中ではあまりない方だが、主人経由で霊夢の事は知っている。……つもりだった。
 だが、あの笑みは見た事がない。……いや、あんな冗談混じりに笑った所を、見た事がない。

零児「終わった後に後ろを振り返ったら、な。……不可抗力だが、俺が不注意だった」

霊夢「それであの地響きねぇ。……狂気なの、変わってないような気がするけど」

咲夜「……貴女達、ここで話してていいの?」

霊夢「別に〜。ぶつかりたかったら、すぐにでも上がれば……」
742 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/04(水) 18:02:30.35 ID:yF/hKLn+o

小牟「れいじぃいいーーー!! 無事かーーー!?」バッ

零児「ああ、無事だ」スッ   ドスンッ!

 地下室のまともな出入り口から、小牟が零児めがけて飛びだしてきた。
 それをきちんと避けられ、そのまま地面にぶつかる。予定調和である。

小牟「いたひ……ここは感動の再会で抱き合ってそのままキスじゃろ」ムクッ

零児「そんなに離れてもいないだろう。永夜の時に比べればな」

リリス「リリス、そっちの方が見たかったなぁ?」

霊夢「あの時は半日だったものね。……で、この子が三女?」

零児「ああ。その事も含めて、皆の所で話そう」

 魔理沙だけでなく、最低でもレミリアやモリガンが居る以上、無駄に時間を取る必要はない。
 それに、この地下のうす暗い環境は……嫌な事を思い出してしまう。

フラン「……」ジトー

小牟「おお、フランじゃ。姉君が呼んどるぞ〜」

フラン「……」ジトーーーー

小牟「ありゃ、反応なし? ……つーか零児見てる気がするんじゃが。熱烈な視線で」

零児「俺が悪いとだけな。……霊夢、案内頼む」

咲夜「それでしたら私が。だけど、分かっているわよね?」

零児「重々承知している。妙な真似はしないさ」

咲夜「結構。では妹様、レミリアお嬢様がお呼びですので、西方のテラスまでお越しくださいませ」ペコ

 フランとリリスを置いて、階段のある出口へと向かった一行。
 その背中をジト目のまま睨みつけるフランに、リリスが尋ねる。

リリス「行かないの、フラン?」

フラン「行くけど……あの男の人、リリスの知り合いなのよね?」

リリス「そうだよ〜。それがどうしたの?」

フラン「……んーん。なんでもなーい」


フラン「……見られて嫌なはずなのに……なんでだろ……何か……違う」ウーン

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

零児「…………沙夜」

沙夜「あら、坊やじゃない。悪いけど、今はお取り込み中なの」

魔理沙「安心しろ、零児も同じ要件だぜ」ジリッ

 咲夜に案内され、二階のテラスへたどり着いた一行。
 そこに居たのは沙夜、モリガン、M.OM.O.に、魔理沙とレミリア。皆で優雅に紅茶を嗜んでいた所である。

M.O.M.O.「零児さん! それに、小牟さんも!」

零児「無事だったんだな、モモ。そして久しぶりだ、モリガン。……一応、どういう状況か教えてくれないか?」

モリガン「見たままよ、レイジ。マリサが沙夜に突っかかってる所」

沙夜「そうなのよ。こんな熱視線受けたら、お姉さん火傷しちゃいそう」

魔理沙「……」ジリッ

 八卦炉を構えたまま、五歩(沙夜からすれば二歩)離れた位置でにらみ続けている。
 そこからぷっぱなすと、モリガンも多少被害を受ける位置であるが、周りが見えていないようだ。
 両方とも避ける程度には余裕があったりするから、構わないと言えば構わない。
743 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/04(水) 18:05:47.06 ID:yF/hKLn+o

小牟「血の気の多い娘っ子じゃの。じゃが、それがいい」キラーン

リリス「私も、元気な子って好きだな〜。いい声で鳴くもの」

零児「言ってる場合か。……魔理沙、よすんだ」

魔理沙「分かってる。ただ、逃げないように見張ってただけだぜ」ジリッ

零児「そこまで露骨に敵意を出してどうする。……沙夜も、分かっていて挑発するのは止めろ」

沙夜「ごめんなさいね。と、こ、ろ、で。その子、坊やのお気に入り?」

零児「さあな。……モリガン。モモ。沙夜。ここ数日の記憶はどうだ?」

沙夜「……うふふ」

 零児と小牟が彼女を仇以上の者と感じているのと同様、沙夜もまた、彼らを一種の友人のように感じている。
 敵と味方でありながら、企て事以外において、気の置けない、最高の好敵手。
 そんな彼女だからこそ、少年の成長を見守った近所のお姉さんのように、零児の誤魔化しを微笑ましく想う。

M.O.M.O.「記憶、ですか?」

モリガン「私は覚えているわよ。……あれがなんの記憶なのか、さっぱりだけれど」

リリス「リリスもー。モリガンと繋がってて、嬉しかったな〜。もう切れちゃったみたいだけど」ショボーン

霊夢「それを覚えてるだけでも、手間が省けるわね。コスモスの時みたいに」

M.O.M.O.「コスモスさんもいるんですか?」

沙夜「あらあら。それじゃ、まるであの時見たい」

小牟「ぬしのトラウマにプラグインじゃな。それじゃ、順を追って説明するかの」


  青年少女説明中......


レミリア「……咲夜」

咲夜「はい、お嬢様」

レミリア「私はすでに大体聞いたから、貴女が詳細を知りなさい。いいわね?」

咲夜「畏まりました」ペコ

レミリア「………………パチェ」

 状況の説明と整理を行っている皆の所で、咲夜が紅茶を淹れていく。
 その光景を眺めながら、その場にいない友人へと語りかける。

『ん……なに、レミィ?』

レミリア「……あんたの『計画』に見合った人材を見つけたわよ」

『……本当でしょうね?』

レミリア「当たり前じゃない。大事な友人に嘘をつくはずないでしょ?」

『だったらその友人に、あれやこれやと頼まないでよね』

レミリア「嫌よ。私はここの主だぞ。主が居候に頼みごとをして何が悪い」

『……はぁ。ま、私も楽しませてもらってたし、そこまで言うつもりないけど。それで?』

レミリア「今、目の前に居るさ。……ただ、もう少し様子を見ようかと思う」

『何? ぬか喜びさせたかっただけ?』

レミリア「白黒が一緒にいる」

『……ふーん』
744 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/04(水) 18:09:06.44 ID:yF/hKLn+o

レミリア「伝える事は伝えたわ。後はパチェが進めなさい。この為に、貴女に我がままを……」

『……ぶつぶつぶつ』

レミリア「……ふっ。……運命は、我らが手に」

『……モリガンが言ってれば、様になったのにね……』ブツブツ

レミリア「ぶっ! ……どういうつもりよ、パチェ!」

『……』ブツブツ

………………

…………

……


霊夢「――ってわけ。おわかり?」

 幻想郷で起こっている事。”幻想入り”している面々。
 これまでに解決した、紅魔含めた七つの異変の事。
 それらを話し終え、一応の確認を取る。

モリガン「ふぅ〜ん。……そこそこかしら?」

魔理沙「へ、そこそこ?」

零児「あまり気にするな。……沙夜、どう思う」

沙夜「能力以外は初耳よ。その上で、その筋の専門家から言わせてもらえば、異変の主はかなり適当してるわね」

小牟「やはり、ぬしもそう思うか」

沙夜「あるいは、片那ちゃんにさせたのと似たような事をしているのかも」

M.O.M.O.「片那さん……確か、いろんな世界を記憶していたんですよね?」
                            きゅうじゅうきゅう
沙夜「そ。次元壁の歪みを大きくするのと同時に、 九十九 へのデータの蓄積……それが片那ちゃんの、あの時の役割だったから」

零児「だがそうなると、今度の媒体は何になる?」

沙夜「それは私に聞かれても分からないわ。実物を見たわけでもなければ、相手の事を知らないのだし、ね」

魔理沙「……本当か?」

霊夢「あんたも大概しつこいわね。その事は零児さん達に任せておきなさいって」

小牟「して、沙夜よ。ぬしの『反転する程度の能力』……どういうもんか説明せい」

沙夜「出来れば、これで驚かせたかったんだけど。……」チラッ

零児「……」

沙夜「ふぅ。そうね、まずは――」

 反転する程度の能力。程度能力を弱体化させる、沙夜の力。
 一見強すぎるように見えて、実はやや使い勝手が悪い。
 何故ならその基準が分からないからである。

 たとえばレミリアに使うと、その力がやや弱まる程度。
 フランに使うと、程度能力が『掴まれた対象を癒す程度の能力』に変化。
 パチュリーにも使ってみたが、今度は変化無し。

 そこに、異変での魔理沙と小牟の力の消失を足してみたが、やはり条件が分からない。

沙夜「――と言ったところ。おわかり?」

魔理沙「……霊夢とサヤ、なんで真似し合ってんだ?」

小牟「似たところ、あるにはあるからの」
745 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/04(水) 18:19:30.47 ID:yF/hKLn+o

零児「……他に隠していることはないな?」

沙夜「ええ、勿論。助け合った仲間に、嘘はつかないわ」

零児「……以前の戦いのとき、義経やベガに隠し事をしていただろう」

沙夜「あん。細かい事を気にしちゃ、良い指導者にはなれないわよ、坊や」

霊夢「はいはい身内ネタは、整理し終えてからにしてくれない?」

M.O.M.O.「だけど、どうしてその程度能力?が、沙夜さんにだけはあるんでしょうか?」

モリガン「あら、私にもあるわよ?」

リリス「私にもあるわよ!」

小牟「なぬ? 本当か?」

モリガン「ええ。……見たい?」

小牟「見たい見たい。是非見たい!」

モリガン「ちょっと待ってね。リリス」カツンカツン

リリス「はーい。私は反対〜っと」カツカツカツ

 椅子から立ち上がり、テラスの西端にモリガン。その反対側、部屋の東端……レミリアの横辺りにリリスが陣取る。

モリガン「ここでいいかしら。『陰を操る程度の能力』」ズッ

 西日が差すテラスにて、屋敷の中へと伸びた影が蠢きだす。
 陽の傾きに逆らい、モリガンの身長にまで縮んだ影は、地面から離れて二足で立つ。
 影は平面から立体になり、漆黒のモリガンとなってそこに現れる。

リリス「ふー。『光を操る程度の能力』!」ピカー

 太陽の直射光を入らないようにした、蝋燭の火で照らされる部屋の光が集まる。
 蝋燭の光が弱まり、その代わりにリリスの隣に光が集まる。
 光はリリスと瓜二つの造形となり、純白のリリスとなってそこに現れる

モリガン「どうかしら?」
リリス「どうかな?」

魔理沙「お、おお。見たことない能力だぜ」

霊夢「……光陰。あるいは陰陽。表と裏、ってところ?」

零児「あの技とは違うんだな?」

モリガン「『アストラルビジョン』の事? 勿論、違うわ」

リリス「でも、どう違うのか、まだわかんないんだよ?」

 アストラルビジョン。彼女達が使う、分身を利用した連続攻撃。
 捕まえた相手と死のダンスを踊り、切り刻み、葬る、サキュバスの抱擁だ。

小牟「それはよいんじゃが……いつから使えるようになったんじゃ?」

モリガン「いつの間にか、としか。あの頭痛が起きてからなのは、確かね」

M.O.M.O.「……データ解析出来ました。モリガンさんの陰は光子が0.3%もありません。逆に、リリスさんの光は99%以上の高濃度です」

レミリア「子牛?」ジュー

零児「光の粒子だ。ようするに、光を一点に集めたようなものだな」

レミリア「ああ、だからなのね。妙に肌がひりひりするの」ジュー
746 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/04(水) 18:24:38.47 ID:yF/hKLn+o

咲夜「リリス。消してもらえないかしら」

リリス「ごめんなさい、今消しまーす」シュン

沙夜「あら? モリガンの影も消えるのね」

モリガン「どうやら、二人で一つの能力みたい」

魔理沙「霊夢の勘は相変わらずだな〜」

零児「能力の謎も増えた、か」

四人「うーん……」

沙夜「…………」

 『程度の能力』が”幻想入り”した側にも芽生える事が分かったが、物語を進展させるものではない。
 むしろこれまで同様に、全体像の見えないピースを一つ手に入れただけのようなもの。
 埋まらないピース。それは果たして同じ絵のパーツなのか、別の絵の欠片なのか。

零児「……考えていても埒が明かん。……最後の一箇所は、明日にするんだな?」

霊夢「ええ。地底だけど……零児さんの事を考えると、半日以上かかるのは確定だから」

小牟「やはり、それだけ深いんじゃな?」

魔理沙「間欠泉センターの穴を直通で五十分だぜ」

咲夜「大体、16kmです」

零児「……助かる。確かに深いな」

 最後の異変、怨泉異変。間欠泉から旧地獄の怨霊達が噴出した、後の恩恵が大きな異変。
 間欠泉を発生させた熱源は、旧地獄の一角”灼熱地獄”である。
 地上どころか、同じ地底の住人さえも容易く来られないよう作られた、地底の最下層。
 その道のりは長い上に複雑。地上からの案内があっても、半日以上かかったのだ。

M.O.M.O.「あの、零児さん。私も、ついて行きます!」

魔理沙「……」

零児「気持ちだけは受け取っておく。だが、モモには別の事を頼みたい」

M.O.M.O.「え? それは、いったい……」

小牟「コスモスめが少し損傷しておっての。それのメンテナンスが一つじゃ」

零児「そして……沙夜。お前もついてこい」

沙夜「あら、やっぱり?」

零児「当然だ。……お前を野放しにするわけにはいかんからな」

 M.O.M.O.とKOS-MOSは、彼らと出会う前からの仲間であり、その体について他よりも圧倒的に理解している。
 専用の機器が無ければ本格的な修理は不可能だが、それでもこれ以上悪化させない程度の事は出来るわけだ。

 そして沙夜。
 零児達にM.O.M.O.とKOS-MOS、そして沙夜はE・Fでの戦いにおいて共闘した仲であり、互いの行動パターンはよく知っている。
 零児との関係ほどでなくとも、M.O.M.O.に対しても本気の付き合いがあり、気が置けない仲。
 更にM.O.M.O.にはセンサーの類があり、行動を監視しやすい。心身共に適材なのだ。

零児「モモ。俺達が留守にする間……頼めるな?」

M.O.M.O.「分かりました。きっちり見張ります!」

沙夜「それじゃ駄目よ。それとなく見ているって言わなくちゃ」

魔理沙「……」ブスー

モリガン「……」

霊夢「私抜きで話を進めないで貰えない?」

小牟「どうせ「はい」か「おk」じゃろ。答えは聞いとらん」

霊夢「そうだけど、勝手に決めないでよね、もう」ハァ

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
747 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/04(水) 18:27:48.78 ID:yF/hKLn+o

〜〜〜ヴワル魔法図書館〜〜〜

小牟「邪魔するぞー」

パチュリー「邪魔するなら帰って」

小牟「分かったぞー。とでも言うと思ったか?」ニヤ

 博麗神社へ帰るメンバーを決めた後、四人は異変の最中に設置したアレを見に、図書館へやってきた。
 異変の時とは変わって、図書館全体の空調が整われ非常に快適な空間になっている。
 これでも、アウトドア派な魔理沙からすれば、澱んでいるらしいが。

魔理沙「何やってんだ? ……よ、パチュリー」

零児「……笑わなくて、安心したぞ」

パチュリー「……」ポチ

魔理沙「問答無用かよ」

咲夜「お待ちください、パチュリー様。本日は正規のお客様です。入り方は異様でしたが」

パチュリー「知ってる。……で、何の用?」

零児「本棚の上を調べさせてもらって構わないか? 探し物があってな」

パチュリー「…………」

小悪魔「わっ、白黒ネズミ! 今日は何を盗みに来たの! 咲夜さんも何のんびり連れて来ているんですか! 日ごろからどこか抜けていると思っていましたが、何もそんなミスを犯すことはないでしょう!」

 品定めするように一行を眺める。
 それぞれの力を見て人材の目星がついたところで、小悪魔が一向に言葉の嵐を見舞う。

零児「……盗、み?」ピクッ

小悪魔「貴方方もグルですか!? 大変ですよ、パチュリー様。何のんびりしてるんですか。早く撃たあばばばばば」ビリビリ

パチュリー「五月蠅い。……話なら、大体聞いてたわ。だから、調べたいなら、さっさとしなさい」

零児「……助かる。だが、盗みとはどういうことだ」

魔理沙「い、いや、違うんだぜ!? 私はあくまで借りてるだけでな……」

パチュリー「その通りよ。貸した本が多くて、しかも一向に帰してくれないから、この子が怒っただけ」

魔理沙「!? ……あ、ああ。そうそう、つい忘れちゃってさー」

小牟「……」

霊夢「…………」

 魔理沙は手癖が悪いと有名だ。
 気に入った物があれば『死ぬまで借りる』と言い、許可なく持っていく。
 その速さと約束の内容から、不名誉な信頼と「白黒ネズミ」という称号を得ている。

零児「……いいのか?」

パチュリー「なんのこと?」

零児「…………」

パチュリー「…………」

霊夢「ないわねー、机。……思ってた通り、って感じかしら」

零児「……そうか。すまない、邪魔したな」
748 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/04(水) 18:34:32.17 ID:yF/hKLn+o

パチュリー「……まって、魔理沙にいい本があるの。貸してあげるわ」スッ

魔理沙「……! ああ、そうだな、借りてくぜ、うん!」

 この事を零児にばれたくなかった魔理沙は、調子よくしてくれるパチュリーに内心感謝した。
 これは日ごろの仕返しなのだが、今の魔理沙はそれに気づかない。
 もしも以前の、零児に合う前の魔理沙なら、適当に調べるぐらいはしただろうに。

零児「……勉強会をするほどと言っていたし、そういう関係なのか?」

小牟「そーゆうことかもしれんのぉ。して、他に用はないの?」

霊夢「ええ。これからコスモスのところに行くんでしょ? なら、湖経由で人里ね」

零児「そうだな。……あの赤い髪の悪魔が?」

小牟「小悪魔じゃな。大妖精同様に名無し系モブじゃが……あんなのとはしらなんだ」

 小悪魔――全体的に赤黒い、頭に悪魔の羽を生やした少女。
 ヴワル魔法図書館にてパチュリーの手伝いをしていると言われる、小さな悪魔だ。
 パチュリーの召喚魔法によって呼び出されたと言われているが、真偽のほどはレミリアも知らない。

魔理沙「……ありがとな、パチュリー」ボソボソ

パチュリー「貸しだから」ボソッ

魔理沙「わかってるって。今度ちゃんと返しに来る」ボソボソ

 感謝の言葉を述べ、借りた本を鞄にしまい、図書館を出る。
 微妙にスキップしているその足取りが可笑しくて笑う。
 そこでふと気付いた事が……。

パチュリー「……こあ。貴女さっき、何か直してたわよね?」

小悪魔「あ、はい。本棚の上にあった、机と本を直しましたよ? あんなところに置いておくなんて危ないですので、司書らしくテキパキと直してみました。いやー、我ながら似合わない事をしました」ペチャクチャ

パチュリー「……間が悪い」

小悪魔「ふえ!?」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜紅魔館・門前〜〜〜

零児「邪魔をした。次にここに来る時は、アポを取ってから尋ねる」

咲夜「そうしてくれると助かるわ。……そもそも、門を無視するのはそこのだけでいいのよ」

魔理沙「失礼な。ちゃんと門から入ってるぜ? 開けてないだけで」

零児「…………」

 紅魔館には正門と小さな裏門以外、全方位が高い堀で囲まれている。
 門番の目がつかない場所などいくらでもあるのだ。
 だが魔理沙は常に正門から入る。本人からすれば「友人宅に訪問して、本を借りていくだけ」だからとか。

美鈴「咲夜さーん。その二人、誰ですか?」

咲夜「客人よ。もう、お帰りになるけど」
749 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/04(水) 18:37:13.84 ID:yF/hKLn+o

美鈴「……通した記憶、ありませんよ?」

小牟「裏世界から入ったからの。ぬしが知らんでもしゃーなしじゃ」

零児「咲夜。……お茶とお菓子、ごちそうになった。美味しかったぞ」

咲夜「それは態々、ありがとうございます」

M.O.M.O.「咲夜さん。メイリンさん。御世話になりました!」ペコ

美鈴「モモさんもなのね。なら、園芸指導はまた今度、かな?」

M.O.M.O.「はい……こちらの都合で約束を破って、ごめんなさい」

咲夜「何を約束していると思えば……」

美鈴「てへへ、気にしない気にしない。毎日同じ時間に手入れしてるから、都合ついたらいつでもどうぞ」

沙夜「いいじゃない。女子力アップに最適よ?」

小牟「庭いじりの出来る女……ますますポイントが高くなるの」

霊夢「……あんな庭ないし」

魔理沙「キノコの園芸ってどうなんだ?」ウーン

零児「何を張り合っているんだ。……モリガン達の事、頼んだぞ」

咲夜「言われずとも。お気をつけくださいませ」ペコ

 一向は各々に別れのあいさつを告げ、紅魔館を後にする。
 それを見送った後に、地下で起きた事の顛末を美鈴に伝えたら、美鈴がキレた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜霧の湖〜〜〜

チルノ「よっ、霊夢! 魔理沙! 後他の!」

零児「……チルノか」

M.O.M.O.「氷の羽……綺麗……」

 霧がほとんどなく対岸まで見える、綺麗な湖の畔で、一行は氷精に絡まれる。
 初対面が四人いるはずなのに、やたらと親しげである。

魔理沙「よっ、チルノ。……お前何してたんだよ」

チルノ「ん? 大ちゃんと遊んでた!」

霊夢「その前よ。午前中の事」

チルノ「午前中なー。……あ、そうだ。リグルとかくれんぼしてたんだった!」ポン

小牟「リグル涙目じゃな。……やはりバカルテットなのかの?」

魔理沙「……まぁ、辻褄は合ってるよな」

 礼の如く、日常を過ごしていた記憶だけが残っている様子。

零児「とりあえず、だがな。それでチルノ。お前さん、なんで現れた?」
750 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/04(水) 18:43:10.72 ID:yF/hKLn+o

チルノ「おー、そうだった。師匠に挨拶してこいって言われたんだ」

小牟「シッショー?」チラ

魔理沙「……なんで私を見るんだ、シャオムゥ」

小牟「え、おぬしじゃなかったのか」

魔理沙「? なんで私だと思ってたんだ?」

小牟「妖精大戦争的に考えて。あれ、フラグじゃと思ったんじゃが……」

 妖精大戦争――大層な題名だが、実際は妖精達の小競り合いなだけの、小さな騒動。
 光の三妖精に家を壊されたチルノがフクシューを企み、見事果たすのが通常の話。
 そこからEXステージにて、夜桜を楽しむ魔理沙に襲撃をかけ、追い返されるという、戦争のせの字も無い平和な物語。
 その際、魔理沙がチルノの実力を見て、うかうかしていられないと意気込みを語るのだが、小牟にはフラグに思えてしょうがなかったのだ。

チルノ「魔理沙は違うぞー。むしろとんだ迷惑だね!」

沙夜「あらあら。小さいのに、言う事は言うのね。お姉さん、そういう子は好きよ」ウフフ

魔理沙「うっせー! お前ら二人纏めてマスパすっぞ!」

零児「お前達……」ハァ

 とはいえ、実際はこうだろう。
 魔理沙の評判は「泥棒ネズミ」と呼ばれるように、正直悪い。何故なら実力のある、ガキ大将のようなものだったのだから。
 ついでに霊夢はそれより更に悪い、ヤクザなんて評価もあったりする。

M.O.M.O.「それで、チルノ……ちゃん?」

チルノ「おう! お前誰だ!」

M.O.M.O.「私はM.O.M.O.って言うの、よろしくお願いします。それで、チルノちゃん。そのお師匠さんって、誰なのか教えてくれせんか?」

チルノ「紫だ! 色々教えてくれるんだ!」

小牟・魔理沙・霊夢「「「紫ぃ!?」」」

M.O.M.O.「あ! 揺らぎに似た空間歪曲を確認しました!」

魔理沙「……はぁ?」

{ 紫「すぐ言っちゃだめよ、チルノ。そういうのは、少し溜める物よ」クスクス }

 衝撃の事実のように驚く三人。
 それを見てお淑やかに笑いながら現れる、更に幼女な姿になった紫。

沙夜「…………」

零児「……紫、お前……」

紫「ごめんなさい、零児。連絡を取る手段を『貴方』に伝えてなくて」

零児「それは構わん。どうせ、どこかのタイミングで見ていたんだろう。……ただ」

紫「ただ?」

零児「その姿はどうした。妖力もだ」

 連絡をつけられずに心配した出来事など多々あるため、別に気にしていない。
 それよりも気になったのは妖力。明らかに、減っているそれだ。

霊夢「……はっ。衝撃で我を忘れてたわ」

紫「それでしたら、後でお話しますわ。それより気になる事が、あるみたいだから」クイッ
751 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/04(水) 18:44:56.75 ID:yF/hKLn+o

M.O.M.O.「零児さん。もしかして、この子が……?」

霊夢「八雲紫、結界の管理者よ。それから、子って年じゃないわ」

沙夜「あん。レディの年齢をばらすような事言っちゃだーめ」

紫「全くですわ。霊夢はデリカシーがありませんのね」

零児「………………」

魔理沙「零児の目が怖い」

 以前小牟の考察で、少女の姿を取るのは精神と結びつけやすいからだと言った。
 それは間違いではなく、彼女達の精神状態応じて容姿は多少変化する。
 つまり、今の紫の姿は……。

チルノ「なんか放置プレイ食らってない?」

小牟「はっ、そーじゃよ。紫めがチルノの師匠って、どーいうこっちゃ?」

紫「あら。そんなにおかしなことかしら?」

霊夢「式を持ってるあんたが、なんでわざわざこいつを……」

紫「…………」

魔理沙「そーだぜ。鍛えるなら橙とか藍でいーじゃねーか?」

チルノ「知りたいか?」ニヤニヤ

小牟「ほれ、知りたいから、もったいぶらんと早う話せ」

チルノ「しょうがないなー、実は……」

紫「うふふ。ひ・み・つ、ですわ」

チルノ「……あれ、秘密なのか?」

零児「異変に関係ない事なら、黙っていてもかまわんさ」

 言いたそうにしていたチルノを制しながら、指を振って茶化す。
 零児の言うとおり、この事は異変とは無関係。彼女達二人にあった、過去の話。
 伝える義務は、ない。

紫「流石は英雄様。……人生経験豊富な事」

零児「……」

沙夜「…………」

M.O.M.O.「じゃぁ、ユカリさんは連絡のためにチルノちゃんを寄こしたのですか?」

紫「それもあるわ。けれどもうひとつ、零児に頼みごとがありますの」

零児「……? なんだ」

紫「……――」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
752 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/04(水) 18:59:48.64 ID:yF/hKLn+o

以上で投下を終わります。程度能力の解放が、ようやく始まりました

パワーバランスの大崩壊が始まりかねない……ガクブル



今回の最後にあった紫とチルノの師弟関係ですが、この『東方新世界』(次回以降のタイトル。無難に)では語りません

一章が終わった後に、平行して別の東方二次単作を投下予定で、そちらからの系譜となります

なお、それにて妹紅と慧音。フランとお兄様の話も明かされます

それらの話も重要ではありますが、「そういう物」と済ませられるので、気になったらご覧下さい

何にしても、この一章を終わらせなければ意味がありませんけど


さて、次回『三日目の夜』を金曜までに。その次は閑話休題を挟みたいと思います

女体化零児とかそれこそやめて!

それでは、また
753 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/05(木) 12:30:48.24 ID:L/YOZYt2o

重要なのにその程度で済ませれてでも見てくださいとはこれいかに……?

初期キャラ設定の投下をしにまいりました。もう一章の後半なので初期もくそもない気がしますけど


東方Projectより

ルーミア

 宵闇の妖怪。バカルテットと呼ばれる、東方馬鹿4人衆の一人っぽい扱いを受ける子。「闇を操る程度の能力」。
 言われてるほど馬鹿でもないのだが、その代わりぐーたらしている。そーなのかーが口癖扱いなのはキャラ付けです(キリッ

大妖精

 名もなき登場人物その1。霧の湖に住み、チルノの補佐(って言い方、カッコいいじゃん!Byチルノ)をしている。能力不明。
 チルノよりは知的だが、それでも妖精の領分からは出ない。湖のサブリーダー的存在であるが、妖精達はご多聞に漏れない性格なので……

紅 美鈴(ほん めいりん)

 紅魔館の緑な門番。呼び鈴の妖怪とも呼ばれているが、多くを語らないため不明。「気を扱う程度の能力」。
 気さくな性格で、近隣の妖怪からは面白いお姉さんと思われている。小町ほどではないが、外見年齢は高め。
 シエスタの事をよく言われるが、決してさぼっているわけじゃないんです。色んな事に気を使っているんで……す…………zzz

パチュリー・ノーレッジ

 居候の魔法使い。色んな二つ名を持つ、紅魔館のブレイン。「七曜を操る程度の能力」。なお、本来は「魔法を扱う程度の能力」。
 暗い性格のように見えるが、その実は行動派。外に出なかったのは実験が内で完成していたから。
 聖のお陰で健康面の改善が見受けられる。それでも喘息は治らない。ムキュームキューって、鼠か何かなの……?

十六夜 咲夜(いざよい さくや)

 紅魔館のメイド長。完璧瀟洒な働く女性。でもまだ十代です。「時間を操る程度の能力」。
 メイドとしては確かに優秀だが、どこかしら抜けてるお嬢さん。でも抜け目はないのですの。
 時機グループの中では(精神年齢的に)一番の年長者。でもやっぱり一癖二癖あるからご注意あそばせ。

レミリア・スカーレット

 紅魔館の主にして、永遠に紅い幼き吸血鬼。我儘と閃きで周りを振り回すおぜう様。「運命を操る程度の能力」。
 チルノよ り も身長が高い程度だが、これでも500歳を超えている。日ごろの精神年齢は魔理沙以下だけど。
 フランを幽閉していたが慧音や妹紅、『彼』と出会ってからは、ほぼ自由にさせている。誰がうーうー言ってるって言うの!うー!

フランドール・スカーレット

 紅魔館の狂気と呼ばれていた妹様。だが今ではそんな気配全くなし。「ありとあらゆるものを破壊する程度の能力」。
 永遠の495歳児。お兄様のお陰(所為)で狂気は鳴りを潜めたため、やや個性が……。慧音の生徒さん。お姉様とは違って、私は現実的よ。

ナムカプより

キャプテン・コマンドー

 超未来の正義の漢。コマンドーチームのキャプテン。青いパワードスーツと金髪が彼の気概を表している。
 「○○する程度の能力」、未開花。素の「I`am captain commando!!」は一人だと零児と互角。チーム総出だと二人にも勝てる。
 スペカルールには対応しているほう。それでも、リュウよりましといった程度だが(ジェットブーツのお陰)。

M.O.M.O.

 超未来の人口生命。百式レアリエンのプロトタイプ。どちらかといえばムゲフロからの出演。
 「○○する程度の能力」、未開花。素の「モモだって戦闘タイプです!」は、援護重視の中距離型。小牟と組むと零児と互角。
 スペカルールでかなり戦える能力を持ち、個性的なメンツに対して結構やれる。むしろ活かし放題じゃな。

モリガン

 魔界の一領主、アーンスランド家の現党首。魔界でも至高のサキュバスであり、退屈をひどく嫌う。
 「陰を操る程度の能力」を持ち、素の「夜を統べる女王」と合わせて零児と互角。
 スペカルールには柔軟に対応できるが、直接触れ合う方が好みなため、やや乗り気ではない。

リリス

 モリガンの片割にして、一己の存在。モリガン同様サキュバスだが、その力はまだ開花しきっていない。
 「光を操る程度の能力」を持ち、素の「無邪気な夜の眷族」と合わせて小牟と互角。
 モリガンと同じで、スペカルールには対応してるが……。
754 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/05(木) 12:39:01.63 ID:L/YOZYt2o

沙夜

 逢魔の幹部にして、実質的な主導者。目的の為なら手段を選ばず、宿敵との共闘も辞さない。呉越同舟ってわけ、ね。
 「反転する程度の能力」を持ち、素の「悪役たる生き様」と合わせて、特定の相手以外にはほぼ勝てる。
 スペルカードには小牟と同レベルで対応している。その技の関係上、こいしと似た弾幕を展開する。
 異変において記憶があったようだが、「監視員」との関係は不明。やはり何かを企んでいるようだが……?



以上で終わりです。……こういうのも書いてるから、遅くなるのかなぁ……

さて、それではまた明日に
755 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/04/05(木) 13:46:12.58 ID:kNe5YWzAO
フランちゃんきゃわわ!
投下お疲れ様です、いつも楽しく読ませて頂いてます!
はやくさとり様に会いたいなー
756 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/05(木) 14:27:50.56 ID:80+6ifDDO
お疲れ様ですっ!
フランちゃんのあられもない大暴れ!レーヴァティンをぶん回すも超人的ガチバトル力を誇る零児さんには意味を成さなかった。やっぱり零児さんって凄い!俺は改めてそう思った(Tさん風)。
そして咲夜さん…パリィって、“受け流す”って意味らしいけど、銃弾を避けずに、ナイフで受け…流す…だと? パねぇ。

今日の零児さんの華麗な小牟スルー。

ジト目フランちゃんもそれはそれで素敵。

魔翌理沙には、ちょーっと余裕が足りないみたいね。

レミパチェコンビは『計画』とか、何を企んでるやら。

沙夜はさんの程度の能力はまだまだ未知数だね☆

二人で一つの能力とか何それカッケェ。

炙らレミリア。

16km!?ドリラー並みやないの…。酸素欲しい…!

テンパり小悪魔が要らない所で頑張ってくれた影響はどう出てくるのか。

裏世界…まぁ、そうなるのか?ww

園芸モモちゃん…いいですね!

リグルェ…。

(評価的に)霊夢ェ…。

ロリゆかりんだとおぉぉ!?もしや分割したのか?ゆかりんパラダイスなのかあぁーっ!? ってかチルノの師匠とかマジでビックリだわ。

ゆかりんとの密談とかワクドキ。

………なんだこの行数!自分で書いておいて暴挙としか思えないよ!
757 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/07(土) 01:00:17.79 ID:iHxnrSyYo

こんばんわ。レス、ありがとうございます。まじ励みになります

紫の現状はチルノ達妖精と同程度だと思ってください

あ、普段は霊夢より少しだけ背が高い程度ですYO!


それから初期設定に入れ忘れてた子を……

東方Projectより

小悪魔

 名もなき登場人物その2。パチュリーによって召喚された幼い悪魔。能力不明。
 大妖精同様台詞やスペカが内にも関わらず、やたらと人気がある。この作品においてはマシンガンのように話し、悪魔っぽく自堕落的。


……ガチ忘れだよ、本当……


さてそれでは本編、『三日目の夜』です。どうぞ
758 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/07(土) 01:05:55.89 ID:iHxnrSyYo

〜〜〜香霖堂〜〜〜

  <バーン!

???「……?」

チルノ「おお、色々あるな! ゴミばっかに見えるけど」

零児「いきなり失礼だぞ、チルノ。それに、入る時は挨拶からだ」

魔理沙「……よ、こーりん。来てやったぞー」

 一度に三人現れた、ありがたくなさそうな珍客。
 魔理沙、妖精、大人の男性。……ああ、大人の男性のお陰で珍客じゃなくなった様子。

 彼ら三人は、とある目的を持って人里からやってきた。
 他のメンバーは先に帰り、それぞれにやる事をやっている所である。

???「…………ああ、魔理沙の知り合いか」

零児「お邪魔する。……騒がしくて、済まないな」

???「商売道具を壊さなきゃ、構わないよ。あいや、冷やかしも遠慮してほしいかな」

 香霖堂。人里と魔法の森の間にある、半人半妖が経営する古道具屋だ。
 扱う品物はほぼ全てが拾い物。それも、外から”幻想入り”した物ばかり。
 それ故に用途「だけ」分かっても、取り扱い方法が分からず、今も動くか保障出来ない。
 経営者の、あるがまま気質も合わさり、チルノの言ったゴミだらけという形容も、あながち間違いじゃない状態である。

零児「それには応えれそうにないな。挨拶に来ただけのつもりだからな。……彼が?」

魔理沙「おう。香霖……森近霖之助だぜ。香霖、紹介するぜ。こっちは零児。ちっこいほうはチルノだ」

 森近霖之助。ここ、香霖堂の店主であり唯一の従業員。
 魔理沙にとって兄のような存在であり、同時に良き理解者である彼は、大らかな人物だ。
 魔理沙や霊夢が物を勝手に借りていくのを、口だけで済ませる程度には。

霖之助「そっちの男性が、一昨日言っていた彼かい?」

魔理沙「ああ、その通りだぜ」

霖之助「……態々挨拶に来るとは。よほど常識的な人のようだ」

零児「世話になれば、礼として返す。当然の事だ」

霖之助「……まだ、幻想郷には染まっていないようだね。それは、外の常識だろう?」

 外の世界で非常識となった事が常識となる、忘れられた物が行き着く旅路の途中。それが、幻想郷。
 それは別に、常識が無いというわけではない。だがそれでも、常識的に行動する存在は少ない。
 霖之助もまた、その多い側の住人である。

零児「……その通りだろうな。だが、俺は染まり切るつもりはない」

魔理沙「! ……」

チルノ「なんだこれ。でっかい球に絵?」ジー

霖之助「ん? それは地球儀さ。僕たちが住むこの星を描いた、大きな地図といったところだね」

零児「……悪いな、魔理沙。だが、俺達は異変が終わり、結界が安定したら……」

 言った人からすればただの冗談のつもりでも、誰かにとっては辛く重い事もある。
 そんな誰かは、彼を知ったつもりだからこそ、あの言葉だけで言わんとする事を察してしまう。

魔理沙「分かってるさ。……まだ、考えたくなかっただけだぜ」

零児「だが、いる間ならいくらでも相談に乗ってやる。どれだけいることになるか、分からんがな」

魔理沙「……なら、結界が安定しないように祈ってるとするか」ケラケラ

 けれど、そんなのは分かり切ってる。
 三日。たった三日しかまだ立っていないけど、彼がどういう人かは分かってる。
 だから、本当に、ただ、まだ、充実した時間を、無邪気に過ごしたいだけなんだ。
759 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/07(土) 01:08:23.11 ID:iHxnrSyYo

チルノ「ここってどこにあるんだ?」

霖之助「おそらく、この辺りだね」

チルノ「…………? この島が全部か?」

霖之助「いや、この島のごく一部さ。地球全部を載せるために小さくしたようだから、分かり辛くなっているけどね」

チルノ「……よーするに、無駄ってことだな!」ドン!

零児「……元も子もないな」

魔理沙「ばっさりだぜ」ハッハッハッ

 そんな空気をぶち壊すように、的確な事実を言い当てるチルノ。

 実際、ただでさえ小さなこの幻想郷で、星全体を知ろうと思う者はいないし、知る必要もない。
 こんな感じの外向け商品の多い所が、物の売れない要因の一つでもある。

霖之助「……」ムゥ

零児「見聞を広めるにも、身の程を弁えんといかんしな。……しかし、本当に色々あるんだな」

魔理沙「零児は外の人間だし、使い方も分かるんだよな?」トコトコヨット

霖之助「だからってあまり、ネタばれしないでくれよ?」

零児「店主の能力を尊重しろと、釘を刺されているから安心しろ。だが、ストーブだけは逆に説明しろとも言われたがな」

 霖之助の能力――『道具の名前と用途が判る程度の能力』。
 既知だろうと未知だろうと、その物に名前と用途が染み付いていれば見ただけで分かる能力。
 一見便利にそうに見えるが、その使用方法や危険性などが分からないため、結構危ない。

霖之助「誰に、そんなことを?」

魔理沙「零児のつれの、シャオムゥって妖怪。私達の事、よく知ってるんだぜ?」

チルノ「紫も褒めてたな、そういや」

霖之助「……紫? 紫って、あの隙間の妖怪かい?」

魔理沙「ああ、そうだぜ? それがどうしたんだ」

霖之助「いや、妖精にまで顔が効くとは思っていなくてね。どういう関係なんだい?」

チルノ「紫はあたいの師匠なんだ。すごいだろ」エッヘン

零児「理由も告げずに押し付ける師匠に、ろくな者はいないがな」ハァ

 丸一日音沙汰が無かったかと思えば、突如現れ頼み事を押しつけてきた、紫。
 弱っている彼女を見れば、なにか切羽詰まっている事ぐらいは分かったが、それを探る時間はなく。
 語る間もなく、押し付けられる形で隙間の向こうに消えられたのだから、無理もない。

霖之助「だったら、置いて行けばよかったんじゃないかい?」

魔理沙「零児はそんな薄情じゃないぜ。……私も、そうした方がいいって思ったけどな」

零児「個人的に、気になった事もあるからな」

チルノ「あたいしってるよ」

零児「……唐突に、何をだ?」

チルノ「幼女が気になる男って、ロリコンなんだよな!」キリッ

魔理沙「えっ。……零児?」

霖之助「人はみかけによらないね」

零児「……然もそうであるかのように話を進めるな。そういう意味で言ったんじゃない」

 余計な知識が多くなっているように見えるが、何を教えているのか。
 数ヶ月前と似たようなやり取りが、ここに来てからも多くなっている事実に、苦い顔をするしかない。
760 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/07(土) 01:12:52.80 ID:iHxnrSyYo

魔理沙「そうだよな、安心したぜ。で、なんでだ?」

零児「……紫の弟子。それだけで、十分だろう」

チルノ「おお、アドバルーンか!」

零児「……アドバンテージのことか?」

チルノ「それそれ!」

霖之助「使いどころを、間違って……いや、これはこれで……」ウムム

零児「そんなわけあるか」

魔理沙「まぁ、紫の弟子ってだけで気になるのは、わかるよーな、わからないよーな」

零児「俺の個人的な印象だからな。そこまで気にする必要はないぞ?」

チルノ「うーん……復讐しないとなぁ」ウーン

零児「何かおかしい。……さて。ストーブの件なんだが、どんなふうに使用している?」

霖之助「これの事だね。……――?」

 話を切り、彼のストーブの使用方法を聞き始める。

 霖之助は基本的に、自分の能力で調べた物は、自分で使い方を知ろうとする。
 この試行錯誤の時間が、彼の人生を彩っているわけだ。
 だがそれは、時に悲惨な目にあう可能性を秘めている。
 その確率が高く、被害の規模がでかくなるストーブだけは、(知られたときに尻を叩かれそうだから)教えた。

零児「ああ、古いなこれわ。これだと――」

魔理沙「……なぁ、チルノ」

チルノ「ん? なんだー、魔理沙」

魔理沙「ほいほいついてきてよかったのか〜? あんな事を私に言ったくせにさ」

チルノ「紫が言ったからな。仕方なくだ!」

魔理沙「(紫の命令>私の評価かよ)……な〜、どうしてそんな素直に言う事聴くのか教えてくれよ〜」ウリウリ

チルノ「やだね。紫が秘密って言ったから、秘密さ!」

魔理沙「そんなこと言わずにさ。私とお前の仲だろ〜?」グリグリ

チルノ「な、なにすんだよ! 秘密は秘密だー!」ウガー!

魔理沙「話さないと……こうだっ!」ガシッ

  コーチョコチョコチョコチョ

チルノ「うひゃひゃひゃ! や、やめろー!」ジタバタ

魔理沙「ほらほら、話せよ、このこのー!」コチョコチョ

 ここまで言う事を聞くということは、チルノにとって有意義な事が多いのだろう。
 そもそも紫は『幻想郷』の中では最古参の一人であり、創設者の一人だ。
 その経験や知識は、他人を引きつけるのに十二分の魅力を持つ。
 妖精からすればその膨大な知識は宝箱のようにも見えるわけで、いい遊び相手なわけだ。
761 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/07(土) 01:19:05.00 ID:iHxnrSyYo

零児「……ふっ。何やってんだ、あいつら」

霖之助「……変わったな」ボソ

零児「ん? 何がだ?」

霖之助「なんでもないさ。魔理沙。店の物、壊さないでくれよ?」

魔理沙「分かってるって、おらおらー!」

零児「……」

霖之助「ん? どうしたんだい?」

零児「……なんでもないさ」

………………

…………

……

魔理沙「」カチーン

零児「……やりすぎるからだ」ハァ

 凍りついた魔理沙。
 くすぐり過ぎて、チルノの力が暴走したのだ。
 結果、香霖堂の店側の半分が氷結状態である。

霖之助「まだ秋だと言うのに……はぁ」カチッ ボッ

チルノ「……」ビクビク

零児「…………これとこれはもう駄目だな。次は……」キュッキュッ

 凍ったことで使えなくなった物に印をつける零児。
 使用方法を教えられるのは嫌だが、商品にならない物ならおいとくわけにはいかないから教えてくれと頼まれた。

霖之助「どうも悪いね。こればっかりは、どうしようもない」

零児「止めなかった俺も悪いからな。……!」

霖之助「出力はここか。……MAXにしてみよう」カチカチカチ

零児「…………」ガサ

 そんな後ろでは、魔理沙の八卦炉を取りだす為の部分解凍を行っている最中。
 八卦炉にそんな便利機能があるのを知っているのは、実は霖之助だけだったりする。

 ………………

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

小牟「して、こんな時間になったと?」

零児「ああ。すまんな」

魔理沙「……ごめん」

 現在、零児の時計で九時。幻想郷の時刻では戌の刻を半分過ぎた頃。
 霧の湖を出たのが申の刻の少し前だから、かなり遅い時間だ。

 なお、早苗は待っている間に帰った。

早苗『クロノアとガンツの様子を見に行ってきます! でわっ!』

 と、目を輝かせながら。


チルノ「……あたい悪くないもん」
762 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/07(土) 01:22:16.26 ID:iHxnrSyYo

霊夢「ま、いいんじゃないの。モモが気を利かせて、仕上げの前で置いててくれてるし」

M.O.M.O.「はいっ! やっぱりご飯は、出来たてが一番です!」

沙夜「前から思ってたけど、やっぱり欲しいわ、この子」ウン

魔理沙「…………」

クリノ「以前より、段取りもよくなってるしね」

小牟「どこの嫁にやっても恥ずかしくないからの〜」ウンウン

M.O.M.O.「そ、そんな。モモなんて、まだまだです。とにかく、皆さんのご飯を作りますね!」トタタ

魔理沙「・・・・・・・・・・・・」

 良い子過ぎるM.O.M.O.だが、それもこれも父と母に認めてほしい一心で身に付けたもの。
 彼女は人工生命体だが、元となった人格が存在する。
 そしてその人格と同様……否、別の愛情を受けて育った、訳ありの子。
 その愛情に報えるように、一生懸命になった結果が、今のM.O.M.O.なのだ。

零児「……ふっ。それで、KOS-MOSの調整槽だが……香霖堂にはなかった」

小牟「そうか〜、残念じゃの。まだ見つけとらんのか、一緒に来とらんのか……」

沙夜「コスモスが居たのは魔法の森の奥なんでしょ? なんでも、危険度が高いって話だけど」

霊夢「ええ。でも霖之助さんぐらいなら、軽々入れるわ。でも今朝まで入れなかったんだし、とりあえず前者でしょ」

クリノ「だとすれば、彼女は直せない訳だね。……おいらが診ても、仕方ないしなぁ」

 KOS-MOSの調整槽とは、彼女をメンテナンスする際に入れる棺桶のような物。
 彼女はシオンが作り上げた、世界でたった一体のオリジナル。それが無ければ、修理は絶望的というわけだ。

 香霖堂に向かったのは、それがあるかどうかの確認もある。
 E・Fに二度瞬転した時は、その槽と共にやってきていたから、可能性としては十分あったのだ。

神子「……霊夢さん、あの話によく入れますね。能力が効かないせいか、私にはさっぱり」ハァ

魔理沙「要するにメンテ用品ってのは分かるけど……ココモスに必要なのか?」

神子「……ココモス?」

沙夜「……?」

零児「なんでお前さんは、コスモスの名を言えない……?」

魔理沙「……わかんね? で、コモッコは?」

小牟「……わざとに聞こえてくるの、いい加減。二つ隣の部屋じゃ。チラかっとるから、きーつけいよ」

魔理沙「おう、ちょっと見てくる」タタッ

零児「ご飯が出来たら、呼ぶぞ」

魔理沙「わーってるってー」

 そわそわしながら、小走りで部屋を出ていく魔理沙。
 未知の物、それも超高性能な機械ともなれば、好奇心の塊である彼女が観察したくなるのも無理はない。
 ……ここにいるのが、やや気まずいと感じるのもあったりするが。

神子「……ところで今夜の部屋割、どうします?」
763 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/07(土) 01:26:10.35 ID:iHxnrSyYo

零児「俺とクリノは一緒だとして……モモはおそらく、コスモスに付きっ切りで調整しようとするだろうな」

沙夜「それは私が止めるわね。それよりも、そこの借りてきた子猫ちゃんだけど」

霊夢「魔理沙とでいいんじゃない? 罰として」

クリノ「そんな、罰だなんて。こんな子供なのに」

小牟「わしとチルノでもよいぞ? ……いや、むしろわしも足した方が良いかしれん」

沙夜「私の事、嫌っているものね。それじゃ、私と霊夢ちゃんに神子ちゃんで、ガールズトークと洒落込みましょうか」

 確かに、ずっと黙ったままのチルノ。
 拗ねている……というよりは、話について行けずに固まっている感がある。

零児「明日は最後の一つとはいえ、長引く可能性が高い。……ほどほどにしろ」

沙夜「はいはい。ヒーロー様の仰せのままに」ニコ

零児「俺はヒーローじゃない。何度も言わせるな、沙夜」

クリノ「……随分、仲好くなったんだね」

霊夢「これで仲が良いって、昔はどうだったのよ」

小牟「言うたじゃろ。呉越同舟じゃ」

神子「言いましたっけ?」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

魔理沙「……モモ……やっぱ、あんな風に愛想振りまいた方が……零児に…………?」

KOS-MOS「…………」

魔理沙「……流石に、ねーか」ハァ

KOS-MOS「…………」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 その後、M.O.M.O.のご飯を平らげ、それぞれの寝床へと潜っていく。

 今日済ませた二つの異変もまた、意味深げな改変が施されていた。
 それを踏まえてもなお、黒幕の思惑は雲を掴むような物。
 一応、疑惑が馬鹿みたいに高い沙夜を手の届く距離に置いたが、今のところ嘘は見受けられない。

 何故か?
 それは、零児の古傷が物語るからだ。

 彼の頭の傷は、一種のセンサーのように、『ゆらぎ』や沙夜の力を察知する。
 だが今回、それが一度も起きていない。零児と小牟としては、それだけでも十分なのだ。

 勿論、隠せるような何かを開発し、それで騙しているのかもしれない。
 しかし、やはりそれはないと考えている。
 何故なら、零児の古傷の他に、霊夢の巫女の勘が、何も告げないからだ。
 超常的で、論理もなにもかもが破たんしているように見えるが、信ずるに値するのがこの二つの勘。

 ただ、その選択が間違っていたのかどうかを知るのは、遠い後の話となる。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
764 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/07(土) 01:28:28.40 ID:iHxnrSyYo

「……」ズズズ

  ガラガラ……トン

「……すまん、遅れた」ギッ

「構わないわよ。寝さえしなきゃね」ホッ

「……そうか」

「それで、コスモスの事なんだけど。……あの魂、どういうこと?」

「どんな魂があるかは、俺達も知らん。だが、その魂が強い力を持っているのは、知っている」

「…………」

「ヴェルトバオムの樹の事は、話したな?」

「ええ。魂を食らって大きくなる、世界樹の一種」

「それは、より強い魂を引き寄せようとするらしくてな。……それに、コスモスが一度囚われた事がある」

「そうね。あの魂は、とても強いわ」

「それ以外にも、AIだとは思えない事を言った事もある。……おそらくは、その魂が強く反応したんだろう」

「…………」

「……その彼女だが、自分の事を秘密にしたがっている。……だから、この事は」

「分かってるわ、他言無用でしょ。……そもそもあの時は取り乱しただけで、言っちゃ駄目なのは百も承知よ」

「そいつは重畳。……お前さんに言うだけ、野暮だったな」

「ご信頼、どうも。………………零児さん」

「……なんだ?」

「……私……ね……」

「……」

「…………」

「……」

「……ごめんなさい。やっぱりなんでもないわ」

「……整理がつかないなら俺じゃなく、同年代の子を頼った方がいいぞ」

「…………」

「何せ俺は、爺臭いからな」

「……ふふっ。何それ」

「さあな。……寝るぞ。お休み」

「ええ、お休みなさい。……」

「…………同年代、か」

「……零児さんって、ま――母――や、父様――――……」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「……」ムクッ

「……」Zzz

「…………トイレ」ペタペタ

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
765 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/07(土) 01:30:08.59 ID:iHxnrSyYo

〜〜〜???〜〜〜

「……やっぱり彼は英雄様、ね。貴女の思惑どおりじゃない」

「ええ。……本当に、優しい人」

「でもいいのかしら? 彼の手間を増やしても」

「貴女が気にする事じゃない。例の結界に集中なさい」

「あらやだ。怖いわね、もう」

「……そもそも、どうしてその口調なの? 『 』」

「ふふふ。それは紫が知ってる事じゃないの」
    自分
「……キャラ探しってこと? 寒いわね」

「あん、もう意地悪」

「だったらもっと、私の負担を和らげなさい」

「……なら、一つ朗報を。例の結界は彼らのお陰で順調よ。それでもまだ、二割ってとこだけど」

「…………」

「これでも全速力なのよ? 一人、不慣れな体でやっているのだから、褒めて貰いたいぐらい」

「……そうね。ありがとう、『 』。不十分な調整でごめんなさい」

「………………うっわー、久々に聞きましたわ」

「…………若干素が出ているわよ」

「こほん。ま、あの子のフィードバックも役に立ってるから、宜しく伝えてておいてね」

「……いつかね」

「ええ。それじゃまた、この辺で。チャオ」

  {  }

「…………」

「……強くなりなさい。……チルノ」

「私の大事な……大事なH番目の、同胞」

「………………」

「…………

……
766 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/07(土) 01:34:40.76 ID:iHxnrSyYo

以上で投下を終わります。……そうなんですよ。まだ三日目なんですよ……

次回投下は火曜日までに、『四日目の朝』です。閑話はそのあとに回すことにしました

つまりこのままいけば、「四日目」→「閑話2つ」→「地霊殿突入」ですね。予定通りいけば

では、この辺で
767 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/04/07(土) 10:09:41.88 ID:7hATUI0DO
お疲れ様!
零児さんの保護者度がぐんぐん増してる気がw   霖之助とチルノは初対面だったのか。   地球儀…君は無駄なんかじゃないよ。   零児さんは魅力的だからな〜、好きに(恋愛感情ではないだろうけど)なっても仕方ないね。   昔のストーブだと爆発とかしそうだもんな…。   細かい事まで知ってても不気味に思われないのは、小牟の妖怪柄故かねぇ?   紫…ろくでもない師匠ってのは、当たってたみたいだな…。   アドバルーンにアドバンテージ…どっちも上げるものではあるね。   チルノが出たら誤字させずしてどうする?みたいなw?   じゃれ合うのは良いけど、氷らされたりしてよく生きてたな魔理沙は…(汗 哀れ香霖堂…道具達…ご愁傷様。   チルノよ…(今回は)お前は悪くない。   何だろ…モモの台詞でアイマスのやよいがよぎった。   複雑な乙女心は分からないが、良い子ちゃんな魔理沙…だと?見てみたい様なみたくない様な…。   調整槽ねぇ…まぁ無くても二章か三章で…。   魔理沙のコスモス呼称は犠牲になったのだ…ネタの犠牲にな。   アリスと上海達なら、即時換装&モーショントレースとかコスモスと似た様な事は出来そうかも?   霊夢さんの素敵度が上がって来て俺は嬉しいけど、果たしてこれは良いのか良くないのか…。   今回も、良い伏せ具合のミステリアストークですね。それにしてもチルノが同胞…か、まぁ妖精なんて超古代から居たんだろうし、何かしらあってもおかしくはないのか。   まだ三日目、と仰いますが…閑話休題とか細かい部分まできっちり書いて下さってるから、時間がかかって当然ですよ。ですから、お気になさらず。

だから多いって俺…でも、どうしてもあれにもこれにもって反応したくなっちゃって…自重が出来なくなってしまうんです。どうか、どうかお許し下さい!
768 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/04/07(土) 11:04:21.05 ID:Oy8cwfo/o
まだ3日目なのか!
シャオムウの事前知識もあってそうとう馴染んでるな
769 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/07(土) 17:15:52.26 ID:iHxnrSyYo

意表をついてこんにちわ。一日も経ってませんが投下しにまいりました


>>767
楽しんで頂いているようで、何よりです。三日目で悩んだのは、進んだ時間の事ではなかったり

まぁそれも、理由付けしてますけどね


さてそれでは『四日目の朝』です、どうぞ
770 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/07(土) 17:22:11.82 ID:iHxnrSyYo

〜〜〜博麗神社・四日目の朝〜〜〜


   チュンチュン   チチチ……

  TNTN!

零児「げほっごほっ……ごほっ……ズズッ……くそっ……」ブルッ

チルノ「風邪を引くなんて、まだまだだな!」

神子「貴女の所為ではありませんか。零児さんの布団の中に入り込んで……」

小牟「典型的なイベントじゃが、チルノがしたらいかんな、やっぱし」

沙夜「これじゃ、カッコいい顔が形無しね」フフフ

零児「……うるさい……」

 朝。鳥達が目覚め、騒がしく楽しげに鳴き始める頃。
 博麗神社の一室では、風邪をひいて寝込んでいる零児が居た。

M.O.M.O.「冷たいお水、汲んできました」

霊夢「ありがと。それと交換しておいて」

KOS-MOS「おはようございます、皆さん。これは、一体どういう状況ですか、クリノ」

クリノ「えーっと、おいらが零児と一緒に寝てて、朝方に呻き声が聞こえたから目を覚まして横を見たら、チルノちゃんが零児の上に」

魔理沙「どうりでいないと思ったら。……昨夜一体何をしたんだよ、チルノ」

チルノ「んー……夜中にトイレ行って、そのあと布団に戻っただけだぞ?」

零児「…………」

沙夜「本当に典型的、ね。もう少し捻らなきゃだめよ、おちびちゃん」

 状況はご覧の通り。起きたら布団に女の子――が、チルノで再現されてしまった。

 氷精チルノ。その体からは常に力が漏れており、周囲の温度は冷やされてしまう。
 そのために、長時間近くにいた相手は寒さに震えるわけだ。
 ただ、凍てつくほどではない。普段通りであれば、だが。

チルノ「むー……」ウーン

M.O.M.O.「チルノちゃん。桶に氷を浮かべておいて貰えませんか?」

チルノ「あ、おう」

零児「……すまん、皆。……地底には……ついていけそうに……」

霊夢「いいんじゃない。三日連続で動きっぱなしだったんだから、いい休息よ」

小牟「それに、パーティーは全員おってなんぼのもんじゃ。……今日はゆっくり休むと良い」

魔理沙「どーせパチュリーから借りた本があるし、ちょうどいいから読むぜ」ケラケラ

 各々が理由を作り、前向きに状況をとらえる。
 実際、根を詰め過ぎていたし、情報も整理しきれていなかったのだから、落ち着いた時間が欲しかったのも確か。
 地底の住人には悪いのだが、そんな状態で行くよりはすっきりした方がよいため、一回休みだ。

沙夜「…………」
771 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/07(土) 17:25:46.91 ID:iHxnrSyYo

零児「…………すまん」

小牟「そう思うなら、今日一日で直せるように精をつけるんじゃ。八目鰻でも買ってこようかの?」

魔理沙「ミスティアの処か。だったら私がひとっ走り……」

神子「今の今、本を読むと言ったところではありませんか。私が行ってきますよ」

魔理沙「え、あ……うん」

M.O.M.O.「じゃぁ、柔らかいご飯を炊きますね」トットットッ

魔理沙「あ……」

霊夢「ついでだから私はちょっと野暮用で出かけるわ。後、宜しく」

小牟「わしも、神子と行くぞー。つーわけで小遣いくれ」

霊夢「あんたねぇ……」

  アーダコーダソーダドーダ

魔理沙「…………」

霊夢「…………」チラッ

 役割分担をさくさくと決められてしまい、やる事が無くなっていく。
 下手に用事っぽい事を言ってしまったがために、自らを縛るような形になってしまった魔理沙は、固まってしまう。

KOS-MOS「では私は、情報の整理と共に、修復モードで待機します」

チルノ「こんぐらいでいいかー、ももー?」

M.O.M.O.「え、あ、ごめんなさい。今手が」

沙夜「大丈夫よ、モモ。ちゃんと氷は浮かんでるから」ポンポン

チルノ「叩くな」ムー

沙夜「あら、ごめんなさいね。ところで、さっきの事なんだけど――」

霊夢「……はい、小牟。ところで、ミスティアがどこにいるかわかってる?」

神子「ええ。以前、妙蓮寺に寄った際、ついでに頂いた事があります」

小牟「竹林のそばじゃよな。んじゃ、行ってきまーっす」

魔理沙「…………あー……」

 テキパキと用事を済ませていく周りにおいてけぼりを食らっているような状況。
 難しいわけじゃないのに、零児の為だと思う事が多すぎて、手がつけられない。
 皆が自然に動いているように見え、不自然な自分に悩んでしまう。

沙夜「はい、おちびちゃんがしなきゃいけない事は?」

チルノ「……やっぱ、ごめんなさいか?」

零児「……何が悪かったか……分かったか?」

チルノ「んー……トイレを寝る前に済ませなかったこと?」
772 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/07(土) 17:31:32.06 ID:iHxnrSyYo

沙夜「一番正しい答えね。よくできました」ポンポン

チルノ「だから叩くな!」

クリノ「確かにそれを守っていれば、こんなことにはならなかったかもね」ハハ

零児「……そうだな。……げほっごほっ」

魔理沙「れ、れい――」

沙夜「はいははいストップ。風邪を移されちゃ意味ないから、お子様はもう出ましょうね」ドンッ

チルノ「あたいは引かないけどな!」ドンッ

魔理沙「え、ちょ、まっ……!」ドンッ

  ガラガラ……ピシャンッ

 そんな魔理沙の状態を見透かしたうえで、部屋から連れ出す。
 嫌われている? 敵対関係? そんなもの知ったこっちゃない。
 彼女にとって10歳そこらのガキンチョなんて、容易に手玉に取って弄り回せるのだから。
 けれど、彼に免じてそれは勘弁してあげる。それ以上に、面白い事が見れそうだから、ね。

クリノ「……本当に、大人しくなったね」

零児「……あれは、魔理沙を弄る為だろうがな」

クリノ「だと思うけど、それでもさ。それじゃ、おいらはモモちゃんを手伝ってくるかな」

零児「……済まないが、色々と頼む」

クリノ「結局手伝えることが少ないようだから、これぐらいはお安いご用さ」

  ガラガラ……トン

零児「…………」

KOS-MOS「…………」

零児「……飯が出来たら、起こしてくれ。コスモス」

KOS-MOS「了解しました、零児。お休みなさい」

零児「…………」


 そんなこんなで、地霊殿の異変攻略は一日ずれ込む。
 その所為で、六面の戦いが激しくなった事を、小牟は後にこう語る。
 「あれがフラグ死……っちゅーもんかもしれん」、と。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
773 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/07(土) 17:37:46.73 ID:iHxnrSyYo

以上で投下を終わります。すぐ投下出来たのはこういうわけでした

騙したような形になって申し訳ありませんが、これが本来の予定です

ほら、予定通りならばって、露骨にフラグ?をね?

この次に閑話休題が来るのは本当ですが


その閑話休題は、木曜までに予定しております


それから、これまでに出たキャラの中で、現在どうなっているか気になるキャラを一名につき一人どうぞ

なんか微妙に、自分が忘れてそうなので

では、今回はこのへんで
774 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/04/07(土) 17:50:45.21 ID:XTPM1Vt8o
ムゲフロのキャラは…ヘイムレンだけだったっけか?
775 :別PCより。ID同じかもですが [sage]:2012/04/07(土) 19:33:07.94 ID:iHxnrSyY0

まとめるのに時間がかかりました。登場人数86とかやっぱりやばす

>>774
ヘイムレンだけですね、今の所


東方

紅 ルーミア 美鈴 パチュリー 咲夜 レミリア フラン

妖 レティ 橙 アリス プリズムリバー三姉妹 妖夢 幽々子

萃 萃香

永 リグル ミスティア 慧音 永琳 輝夜 妹紅

花 メディスン 幽香 小町 映姫

風 秋姉妹 雛 にとり 椛 文 早苗 神奈子 諏訪子

緋 衣玖 天子

地 こいし

星 ナズーリン 小傘 一輪 村紗 星 白蓮 ぬえ

神 響子 芳香 青娥 屠自古 布都 マミゾウ

他 霖之助 阿求 華扇


ナムカプ

 クロノア ガンツ ベラボーマン ジューダス(リオン)

 ギルガメス カイ デミトリ モリガン フェリシア リリス

 キャプテン フーバー ジェネティー リュウ ケン

 ローズ アーサー 名無し1P&2P コブン 英雄


ムゲフロ

 ヘイムレン


除外

 こいし 鈴仙 スタン 景清 飛竜 博麗グループ

となっております。除外グループは閑話休題で出ますので、お待ちください

それと、最大4名までとします。念のために
776 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/04/07(土) 19:59:49.94 ID:7hATUI0DO
連投感謝です!
朝の爽やかな小鳥の囀り…になんか混ざりものがw 八ツ目鰻は以外と早く手に入ったりしたのかな?   まさか零児さんが風邪を引かされるとは…いくら凄いとは言っても、やっぱり人間なんだなぁ。   沙夜さんwチルノに何を期待してんだw   ミスチーの鰻…俺も食べてみたいよぉ〜!   まぁ魔理沙よ、おとなしくパチュリーさんから借りた妖しい本でも読んでるんだなw   モモちゃんはもうすっかりおさんどん係りだな。良いんだけどね。   霊夢さんの野暮用とは一体…?後、何だかんだでお小遣いをあげるとか優しいな。   チルノよ…それもそうだがそこじゃないw しかし、零児の布団に入ったのは…こいしに無意識誘導でもされたのか?   沙夜さんの大人っぷりには付いて行けへんでぇ…。   クリノさん…特に被害に遭ってなくて良かったね。

気になるキャラか…雛様、メディ、映姫様、リュウさん…かな。
777 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/08(日) 09:15:07.38 ID:m0V7RDEoo

朝起きて見直したら日本語めちゃくちゃで、申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまった

気になるキャラのリクエストですが、読者お一人につき一キャラで、最大四人までということです

なので今のところ、ヘイムレンだけ受け付けた事になります。……間違っていれば、レスしてください

というわけで、執筆作業に戻ります。でわ
778 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/08(日) 10:43:12.15 ID:KyYfFw4DO
どうも、>>776を書いた奴です。そういう事でしたか、勘違いしてしまってすみませんでした。 では改めまして、リクエストは…リュウさんでお願いします。
779 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/04/10(火) 09:12:56.09 ID:1B8DDjTDO
折角>>1さんが書いてくれるって言うのに、何故希望キャラのリクエストが殆ど来ないんだ…?このスレを見てるみなさーん!これはチャンスなんですよーっ!?

ageて様子見だっ!
780 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/10(火) 16:45:18.01 ID:AX1b0p57o

こんにちわ。レス、ありがとうございます

今回の投下は閑話休題だけで、リクエスト分は次となっています

……で、まぁ、いい加減に落ちつきましょう



さて、内容は『こいしの出会い・前篇』と『鈴仙の独白』です

鈴仙の方は半年ぶりの一人称視点です

……以前のような読み難い形ではありません。たぶん

それでは、どうぞ
781 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/10(火) 16:46:54.86 ID:AX1b0p57o


「人里に着いたわ。さて、どうして来たのかしら、こいし?」

「はいっ! 憎きあの男の弱点を探すことでありますっ!」

「……あれ、何か間違えた」

「まーいいの。こいしは小さい事は気にしない、大きな女なのよ」

「霊夢達を元に戻すなんて大望を、成し遂げる女なのよ」

「うふふふふ」

「待っててね、わ た し の だ い す き な ま り さ」

「待っててね、わ た し の だ い す き な れ い む」

「小さなこいしの、大きなワンステップ!」

「第一章『醜い人の大人』。始まり始まりー」

「……ところで、反吐撒き散らしてもいいかしら?」

782 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/10(火) 16:48:49.91 ID:AX1b0p57o

〜〜〜三日目の昼前・寺子屋〜〜〜

「ふむ。つまり、彼らが帰って来るまで面倒を見ればいいんだな?」

「はい、その通りです。ご迷惑をおかけします」

「話を聞く限り、特に面倒見なきゃいけないってわけじゃなさそうだけどね」

 零児達が紅魔館へ向かい、その結界に入る少し前。
 約束通りKOS-MOSを寺子屋まで連れてきた鈴仙は、彼女を慧音に預ける。
 そのまま、仕事へと取りかかった。

「そうか。……しかしすみません。いつも態々寄っていただいて」

「いえいえ。こちらこそ、いつもたくさん買ってくださってありがとうございます。……けど、今回は少なめですね」ガサゴソ

「諸事情から臨時講師を雇ったんですが、その人が上手く立ち回ってくれているおかげですよ」

「……まさか、ここにも”幻想入り”の方が?」

「おや。妹紅から聞いていませんか?」
         うち
「……あの人が、永遠亭に言うと思う?」

「……思わないな」ハァ

 営業スマイルと、教師らしい丁寧な対応が、話題がずれるのと同時に途切れる。
 そんなやりとりが出来るのも、それなりになじみ深い二人だからか。

「とにかく、彼のお陰でここ一週間の消費量がぐんと下がったんだ。保健にも通じている人でね」

「なるほどねぇ。大口の一つだから、結構困るかも」チラッ

「そっちの財政状況は察しているが、表面ぐらい喜んでくれたらどうだ」ハァ

「冗談よ。流石にそこまでがっついてないし。それじゃまた、来週にでも宜しくお願いしますね」ヨット

「はい、ありがとうございました。お気をつけて」

 人里の寺子屋では歴史や算数以外にも、ある程度の自衛知識を教えるようにしてある。
 これは『彼』と出会った後、昔設計した自衛計画を引っ張り出して取り決めた事。
 その授業は基本的に野外で行われる体育のような形式で、生傷が絶えない。
 そんな理由から、永遠亭から来る週一の薬売りの鈴仙とは、かなり顔を合わせるのだ。

「……ああ、ちょっとまった、鈴仙」

「はい?」

「長老たちからすでに聞いたかもしれないが、今年の秋祭は例年通り行うとさ」

「……相変わらず好きねぇ。ま、ありがと。姫様に伝えておくわ」

「あぁ。じゃぁ、気をつけてな」

「はいはい」ノシ

 そんな彼女に、恒例行事を知らせる。

 『秋祭』
 毎年、秋のこの時期に行うこの祭りは、二年前から参加するようになった輝夜の楽しみの一つ。
 やる事は外の収穫祭のようなものだが、秋の姉妹柱も呼び寄せて行うために、同規模の物では最大の盛り上がりを見せる。
783 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/10(火) 16:51:30.18 ID:AX1b0p57o

「……よし、お昼とするか。コスモス、お昼はどうした?」

「私は非生物であり、食物を摂る必要はありません。なので、昼食は頂いておりません」

「ああ、そうなのか。……ロボット、とかいうやつか?」

「正しくは、対グノーシス専用人型掃討兵器ですが、その認識でも問題ありません」

「ほ、ほう。……味覚とかは?」

「あります。他に特筆すべき要素はありませんが、強いて上げるならば、間接や首の最大回転角度も人と同様です」

「……よくわからんな、それは」

 より人に近く、美しく、より人を分かるように。
 機械なはずなのに、それ以上の想いを乗せて作り上げられた、人の型。
 願わくばマスコットのような……いや、戦乙女のように、見る者を癒し導けるようになれ、と。

「それより先程から、ケイネの後ろに熱源がありますが、対処しなくともよろしいのでしょうか」

「ん? おや、地底の?」

「やほー、慧音〜」ブンブン

「入る時は声をかけろと、何度も言っているだろう」

「てへへ、めんごめんご」

「全く。妹紅なら、今は外出中だぞ」

 無意識に表れた地底の主の妹、こいし。
 彼女は昔、妹紅と何か一悶着あったらしく、それからの知り合いだそうだ。
 その関係は妹紅と慧音が仲好くなってからも続き、寺子屋にふらふらと立ち寄るようになっている。

「残念、今日の用事は妹紅じゃない。スタンって人に、用があるんだ〜」フンフンフ〜ン

「……どこで知ったんだ、彼の名前を」

「天狗の新聞〜♪ 色んな人の名前が載ってたよ?」

「ほぉ。どの天狗なのか、教えて……」

  ヒュゥゥゥ……

「対象の反応がロストしました」

「……相変わらず、足の速い奴だ。……どの天狗なんだろうか」ウーン

 ただそれは、別に仲好くなったというわけではない。
 彼女の寄りつく先の一つとして、目星を付けられたというだけだから。
 それを理解している慧音は、彼女の事についてあまり深く考えない事にしている。
 彼女のような妖怪の思考回路は、考えるだけ無駄だと身に染みているから。

「……そのうち分かるか。コスモス、お茶はいるか?」

「必要ありません。味覚は確かに有りますが、食事は必要としません」

「……やっぱりよくわからん」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
784 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/10(火) 16:53:17.24 ID:AX1b0p57o

〜〜〜人里・食堂通り〜〜〜

「ここは相変わらず古臭い匂いばっかりね」

「嫌いじゃないわっ」

「でも……うーん?」

「お昼時だからイルカと思ったんだけど……」

「そもそも会った事ないから、どれか分からない!」ドーン

「まぁきっと、そのうちみつかr」

   ドンッ

「キャッ! ……やっぱり、人ごみは嫌いよ。私の事を誰も見な――」

「っと。ぶつかってごめん。大丈夫か?」

「――い……え??」

 流れを無視して歩いていた所に、誰かがぶつかる。
 自分の能力の所為でそうなったのに、それを棚に上げて愚痴ろうとしたら、相手から謝られる。
 そんな初めてで久しぶりな反応に、思わず驚いて相手を凝視してしまう。

「いや……今、俺がよそ見しててぶつかったからさ。ごめん」

「……?」

「……あれ? 許して貰えない……のかな。参ったな」ボリボリ

「なーにしてんの、スタン。……ってあら、こいしじゃない」

「……えっ、この人がスタン?」

「え、あ、うん。俺はスタンだけど?」

 ぶつかってきた相手は、探していたスタンだった。
 彼はつい直前、近所の食事処から出てきて、その感想を妹紅へ嬉しそうに話そうとしていた。
 それで前方不注意となり、ぶつかってしまった……と、思っているわけだ。

「やっだ、貴方を探していたの! 幸先いいわー日ごろの行いのお陰ねっ!」キャー

「……あのー、俺に何か用で?」

「ええ、用が大ありっ! 聞きたい事があるの! あのね、あのね……」

「はーいちょっとまった、こいし。往来のど真ん中ではしゃがないの」

「あ、妹紅いたの」

「今ついさっき挨拶したでしょ。ともかく、脇に退く!」

「あ〜れ〜」

 オーバーな反応をするこいし。
 彼女は自身の能力で周りから無視され、それに慣れてしまった妖怪。
 する事なす事全てが、無意識の内に 目に 耳に 脳に 入らない 残らない
 それを分かっているがために、他人との距離感を忘れて、面白おかしく道化を演じ続けてきた。
785 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/10(火) 16:55:28.96 ID:AX1b0p57o

「妹紅の知り合いなのか?」

「ちょっとした腐れ縁」

「あんなことやこんなことした仲よ。……いたっ」

「もぉいっぺんやってあげましょうか?」ゴゴゴゴ

「……遠慮します」

「それで、どこか痛いところはないか?」

「えー? 今の今頭叩かれたじゃない!」

「いや、だからさっきぶつかった時の話でしょうに。大丈夫なの?」

「ええ。全然大丈夫よ、当たり前じゃないの。私を誰だと思っているの?」

「ごめん、知らないんだ。つい最近”幻想入り”したばっかりでさ」

「長年暮らしてるけど、こいつがどうだとか噂を聞いた事はないわよ」

「まぁ。妹紅ったらモグリなのね」

「………………あんたがでしょうが!!」ガシッ

  グリグリグリ

「ぎゃー! 痛い、痛い! それまじ痛いわよもこー!」

 いい加減にしろと言わんばかりにキレる。
 実際、モグリなのはこいしの方だ。
 地底住まいの、コミュ障害。人の事など知らない『ロクデナシ』。
 とてもとても妖怪らしい、自分勝手な内向き思考。

「仲いいんだな、二人って」

「んー、嫌っちゃいないけど、好きでもないわね。……で、スタンになんのようなの?」

「いっつつ……拳骨でぐりぐりは酷いわっ!」

「な ん の よ う」

「まーまー妹紅。そんなに急いでないんだしさ」

「ええ、妹紅はせっかちね」

「……あんたn」

「それでねスタン。貴方に聞きたい事があるのよっ。いいかしら?」

 話のテンポがめちゃくちゃなこいしに、妹紅は思いきり振り回される。
 我慢強い(はずの)慧音と違って、妹紅は直情型であり、こいしとは悪い意味で相性が良い。つまり相性が悪い。
 それは空虚に過ぎ去った時間の、代償のようなモノでもある。

「俺が答えられる事なら、なんでもどうぞ」

「ありがとっ。えとね、えとね、零児って人の事を聞きたいの!」

「え、レイジの事を?」

「ええ。最近、魔理沙や霊夢と常に一緒にいて、気になったの!」
786 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/10(火) 17:01:58.36 ID:AX1b0p57o

「……直接聞けばいいじゃない」

「いやーん、そんなの恥ずかしいじゃない」キャー

「(いや、それスタンに聞いても同じでしょ)」

「んー、今まで意識しなかったからなぁ……良い人だよ。普段は冷静で頼れるけど、いざって時は熱くて少し危ない人、かな」

 彼は他人を値踏みしない。普通のやり取りの内に相手を感じ取り、それをごく自然に受け入れる。
 いや、そもそも彼は他人を疑わない。真に受けては、その反応で周りに笑いを届ける少年だから。
 他にもM.O.M.O.やクロノアが似たようなキャラであり、戦いの中に癒しを届け、緊張をほぐしてくれた。

「そんな事は知っているわ。そうじゃなくて、弱点よ!」

「へ? 弱点?」

「そっ! 苦手な食べ物とか、夜は一人じゃトイレにいけないとか? ……これはないわね」

「……何するつもり、こいし」

「ん?」

「ん? じゃないわよ。何でいきなりそういう事を聞くわけ? それじゃまるで、嫌がらせしようとしているみたいよ」

「あら、悪いかしら?」

   ゾワッ

「! あんた……!!」グッ

 自覚なき悪意。邪悪な動機。負の渦。
 奪われた物を取り返す。ただその一心で、狂う少女。
 その閉じた心から湧きあがる気配に、かつての自分を重ね、起こり得る事態に備えをとる妹紅。

「……それじゃ、教えられないな。レイジが困るし」ボリボリ

「そういう事じゃないわ、スタン。こいつは――!」

「本当に?」

「うん、ごめん」

「本当の本当???」

「何度言われても、答えられないよ。そういうわけだから、妹紅も抑えて」

「……」ギリッ

 それに気づかないのか、殴りかかりそうな妹紅だけを宥める。
 スタンの目からすれば、妹紅が手を出しそうに見えるだけなのも無理はない。
 無意識にいる彼女は、佇まいを変えることなく、機械的に心を入れ替えられる。
 その時湧き出る妖力は、閉じた容器から僅かに漏れ出る冷気の如く。
 妖力も霊力もないスタンには、気付けという方が無理な事。

「……妹紅」
787 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/10(火) 17:06:30.34 ID:AX1b0p57o

「……分かったわよ。こいし、スタンに免じてひいt」

「なーんて、冗談よ冗談! そんなことするわけないじゃない。二人ってば真に受けちゃってー」アハハ

「…………」

「あ、そうなんだ? いやー、騙されたな」ハハハ

「でも、嫌いな食べ物を知りたいのは確かよ。あの人間かっこよくって惚れたんですもの」キャーキャー

「……はぁ?」

「へ〜。でも、レイジにはシャオムゥがいるからな、強敵だぞ?」

「……スタ……もういいわ」ハァ

 これまで同様に、にじみ出ていた気配が瞬時に切り替わる。
 ぱらぱら漫画のように切り替わる彼女に流され、いい加減疲れてしまう妹紅。
 なのに調子の変わらないスタンに驚くやら、呆れるやら。

「そうね、あの妖怪こそ最大の敵かもしれないわ。ごめんなさい、スタン!」

「ん? ああいや、俺こそごめん。こっちが意地悪するような形になっちゃったね」

「いえいえ、こちらこそごめんなさい」ペコ

「いやいや、こっちこそ」ペコ

「……いや、私も悪かったわ。ごめんなさい」

「そうね、妹紅が悪い」ヒョイッ

「# よっしゃいっぺんのしてやる」ボンッ

「ど、どうどう! 落ちつけって妹紅!」ガシッ

 お約束の流れではあるが、お前が言うなと堪忍袋の緒が切れる。
 妖力の炎が軽く漏れ出しているのだが、平然とスタンは抑え込む。
 ……若干、引きずられているが。

「それじゃ、出直すわっ! 頭を冷やして、足をあっためて!」ノシシシ

「それは血行を良くするための話でしょうが!!」

「ああ、気をつけてー」

「……スタン。なんであんた、あんな平気に話せてるのよ」

 こいしが去り、気になっていた事を尋ねる。
 自分はさんざん振り回されたのに、スタンは平気なのが釈然としないのだ。

「ん? あー、前にも話したよな、孤児院のこと」

「ええ、聞いたわね」

「その、うちの孤児院って、『幻想界』のあっちこっちの子を引きとるから、色んな境遇の子がいるんだ」

「…………」

「その中には、心に深い傷を負った子もいる。暴力ばっかり振るったり、涙をずっと流してる子だっている」

「スタン……」

「だから、ああいう寂しそうな子のあやし方……じゃないな、接し方も、慣れてるつもりなのさ」

 その理由とは、いろんな子を受け持ち、面倒を見ているから。
 身売りされた子供。家出少年。戦争孤児。誰も彼も受け入れ育てる、『デュナミス』孤児院。
 そんな子達をルーティという”彼女”や、ボランティアで来てくれる修道女とで切り盛りしている。
 子供達の兄兼父な彼は、様々な傷を持った子と接してきた。だからこそ、流されない強さを持っている。
788 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/10(火) 17:09:41.77 ID:AX1b0p57o

「……寂しそう?」

「ああ。十分程度しか話せなかったけど、なんだかそう感じたんだ」

「あいつが寂しそうねぇ。ま、確かに構ってちゃんに見えない事もないけど」

「そうにしろ、そうじゃないにしろ、ああいう子は怒ったら駄目だ。もっと話を聞いてあげなくちゃな」ウン

 人を有るがままに受け入れるからこそ気付く、心の声。
 彼は他人の話を真に受けるが、芯の部分まで流される事はない。
 本気になって悩み、本気になって考え、本気で良い方向へ共に歩もうとする。

「はぁ。やっぱ慧音と似てるわ、スタンって」

 もしも慧音や英雄が先の話を聞いていたら、やはり同じように感じ取ったかもしれない。
 彼らは、年齢こそ違えどやっている事はほとんど同じ、”先に生き教え伝える者”だ。
 ディムロスが英雄を見習えと言ったのも、この事があっての話。
 それが難しいと分かっているから、安請け合いをしなくなっていたりする。


「……で、いつまで抱きついてるつもり?」

「あ、ご、ごめんっ!」バッ

「いや、別にいいわよ。あいつにさえ見られなきゃ」ハァ


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「うーん、失敗失敗。妹紅が一緒じゃ、ろくに聞けやしないわね」

「でも彼、口は軽そうだわ。絆せばポロって零すかしら?」

「でもでも、どうやって懐柔しようかしら?」

「でもでもでも、なんでまた能力効かないかしら??」

「なんだか傷つくわ〜。あいつにも効かない、こいつにも効かない。やになっちゃう」

「あ、もしかして、”幻想入り”には効かない尽くしなのかしら?」

「……あの狐には聞いてたわね。緑にも」

「能力減退のせいかしら? わかんないわね」

「でも、ぶつかられたら気付かれたわ」

「うーん……うーん…………」

 あー、めんどっ。考えるのだって、エネルギーが必要なのよ!

「ああところで、やっぱ反吐撒き散らすわね。うげー」

789 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/10(火) 17:10:16.86 ID:AX1b0p57o

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 『鈴仙の独白』

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790 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/10(火) 17:12:06.73 ID:AX1b0p57o

 今日の薬売りはこれで終わりっ。
 ノルマには達したけど、どうにもそこまでね。

 ……フェリシアはあの後、結局帰ったのよね。別にどうでもいいけど。
 迷ったとしても、どうせてゐか兎が案内するでしょうし。



 私は鈴仙・優曇華院・イナバ。竹林にある永遠亭と呼ばれる所に住む薬師の助手。
 普段はお師匠様……永琳様のお手伝いをしながら、姫様のお世話をしている。
 今日はその一環の薬売り。週に一度、人里にまで降りてきて、置き薬の補填とお金の徴収に回っているわけ。


 正直なところ、人と接するのが嫌いだから、こんな事はしたくない。
 けれど、お師匠様が――

 「それを克服するためにも、永遠亭を支えるためにも、あんたがこれをしなさい」

 ――とおしつ……ごほん。優しい心配りで、仕事の一つにしてくれた。
 有難迷惑である。


「お〜……竹林の兎さんや。御帰りかえ?」

「はい。おばあちゃんの家も回って、いつものように補充しておきましたよ」

「そうかいそうかい、有難いねぇ」


 と、愚痴っていてもしょうがない。早くここから出なきゃ。

 私がよく顔を出すからって、こうやって覚えられてしまっている。
 私は別に、人間と仲好くしたいわけじゃないのに。



 人間といえば、最近やってきた新しい居候。
 “幻想入り”した面々で、何故か今は家で働いている。
 そりゃ真面目で要領も良いから、てゐよりは役に立っている。
 けど、どうして態々住まわせるのか、理解に苦しむ。
 ……まぁ、お師匠様の考えなんて、昔から分かったためしがないけど。
791 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/10(火) 17:14:25.68 ID:AX1b0p57o

 彼らは、他の大勢と同じ世界、あるいはそれと隣接しているらしい世界からやってきた、異邦人。
 私が知り得る限りだけども、最近の”幻想入り”している人達は、全員同じ体験をした仲間だそうだ。
 それも、その複数の世界を救うような、大冒険ともいえる武勇伝。
 幻想郷で起きてきた事よりも、更に奇天烈な冒険譚。


 だがその話、正直私は眉唾物だと思っている。


 嘘だとは流石に言わない。幻想入りしているのは十、二十を超えているから。

 それ以上に、私の能力――『狂気を操る程度の能力』改め、『波長を操る程度の能力』で、嘘をついていないと分かっているから。
 この能力はすごいのよ。人や物の波長さえ分かれば、大雑把な思考や物の位置を常に把握できるの。
 しかもこれ、その波長を掌握すれば、精神に異常をきたす――狂気に染めることも――……


 ……っと、話がずれてしまった。
 ともかく、この能力で彼らが嘘をついていないのは把握済みだ。
 けれどこれ、今までにも何度か同じような人間はいたの。
 嘘をついているつもりはなかったり、嘘とまでは言わなくとも誇張しているようなのが。
 彼らも所詮、その類なのだと、私は考えている。


 それだって、数が多すぎて辻褄合わせが出来ないんじゃないか、って?
 辻褄を合せる必要なんてないのよ。
 同じ体験をした者同士なら、おじいちゃんおばあちゃんが語る昔話のように、相槌を打つだけで話が真実になる。
 美化されていたり、大げさに話していても、些細なことだと流してしまう。
 大事なのは全体の流れだと思い、話はより壮大に膨らんでいく。
 いつしか本当の話が見えなくなって、収拾がつかずに唐突な終わりを迎える。
 実際、彼らの話はそうなっている。
 ……少なくとも、私はそう感じた。



 なんでそんな否定するのだろうか。
 ……ある種の同族嫌悪、かもしれない。

792 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/10(火) 17:18:12.99 ID:AX1b0p57o

   げっと
 私達月兎には、噂しか気を紛らわせる物が無い。




 娯楽らしい娯楽がない月の都の、更に労働力である私達には、気を紛らわせる物が無かった。


 けれど月兎達には、念波があった。


 意識の共有じゃないけど、他の月兎と念じただけで会話が出来た。
 それを使って、初めは似たような境遇を嘆いたり、主人への愚痴を言い合ったり。

 ただどんなに言い合っても、境遇は変わらない。
 だってそもそも、どんなに愚痴を言い合っていても、本当は衣住食が整って穢れのない月が好きだった。

 だから、境遇を変えようとも思わなかった。


 だけどそれだと、念波は意味のない、ただの肥溜になって、いつしか堕落を――穢れを招いてしまう。
 ……なんて大層な事を考えたわけでもなく、ただ新しい気を紛らわせるネタが欲しくなった。


 ふとしたとき、誰かが噂を流した。
 その噂は些細な物で、数日の間は月兎達の話題となっていた。
 ただそれも、すぐに廃れて、言った本人でさえ忘れかけていた……その時。


 その噂が真実という報せが届いた。


 本当に些細な事。
 とある月人の家で人事異動があったという、知っていようが知っていまいが関係のない話。


 だけど月兎達は、それを先に知っていたという快感を得た。
 いや、それは快感という程でもないかもしれない。
 ただただ、本当だったねーと笑い合うような、ささやかな優越感。
 噂が流れ始めてから、真実だと分かってから数日後までの、これまでと違う充足感。
 月兎達は、それに少し、浸った。


 色んな噂を流しては、その噂の真偽を語り合い、事実をそれと無く調べる。
 それが本当だろうと、嘘だろうと、月兎の間では気紛れに使える物だから、歓迎された。
 功を焦るような『穢れた思考』もない月兎達は、その途方もない噂話が大好きになっていく。


 それはいつしか、噂話その物が好きなのだと、主人である月人達に誤解されるようになる。
 けれど、別にそれは構わなかった。
 だって別に、止められなかったから。
 その念波を使って、ちょっとした諜報員のような事はさせられたけどね。


 だから月兎達は、噂だけで娯楽を作り上げた。

793 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/10(火) 17:19:21.45 ID:AX1b0p57o

 事実だったけど、尾ひれが付きすぎて原型を留めていなかった噂もあった。
 その逆に、添削されすぎて真実だと分かるまでに時間がかかった噂もあった。
 あるいは、事実そのまま過ぎて考察のし甲斐のない噂も。
 はたまた、地上の人間が月に攻めてくるなどという、途方もない……噂も。


 そのどれもが等しく、月兎達の気を紛らわしてくれた。



 そんな噂好きな月兎達を私は知っているから、人間の話が大法螺吹きなのだと思うわけで。
 だって、彼らの話の内容が、まさに月兎達の噂するそれなのだもの。


 世界が大融合したり。

 次元を斬る剣が自分の意志であっちこっち行ったり。

 自称魔王が生贄求めて女子を襲ったり。

 でも結局元通りになったり。


 他にも色々あったけど、流石にこれはない。
 幻想郷でだって、ここまで頓珍漢な出来事はない。
 せいぜいうちがやったみたいに、満月の中に閉じこもるぐらい。
 ……あー、守矢の所が色々やっていたかしら。
 まぁそれでも、力があった神様が頑張って結界を抜けてくるぐらいか。


 いくつもの世界の、結界のような物を壊す事を、妖怪程度が出来るはずないじゃない。
 そもそも、外にそれだけ妖怪やら九十九神やらいるのかどうかも怪しい話だし。



 だからって、全容がどんなものか分からないけどね。
 でも、これを月兎達に教えたら、面白い話のネタになりそう。


 まぁ、そんな理由で、私は彼らの話を信用していない。
 姫様やてゐが興味深そうに聞くのは、好きにすればいいけど。



 ……それ以外でみれば、良い人達だとは思うわよ、勿論。

794 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/10(火) 17:24:04.94 ID:AX1b0p57o

〜〜〜永遠亭〜〜〜

「ただいま帰りました、お師匠様」

 仕事から帰った場合、私はすぐにお師匠様の元に行く。
 結果の報告はもちろん、変わった事が無いかを報告するためだ。
 とは言っても異変が起きていないと、基本的に報告内容は変わらない。
 ……今、起きているけど、巫女がやっつけてるし事後報告でいいでしょ。

「おかえりなさい、うどんげ」

「今日はノルマを達成出来ましたが、後は特に」

「そう。他には?」

「寺子屋に、”幻想入り”が一人いる事を確認しました。それから、巫女達と出会い、これから紅霧異変に向かうとも」

「零児達の事はフェリシアから聞いたわ。寺子屋のほうは、あの話からすれば当然かもね」

「後は……姫様向けですが、秋祭を例年通り行うとのことで」

 でもやっぱり、報告内容は大体同じ。
 季節の行事は一月に一度はあるし、ノルマは普段通り。
 “幻想入り”だって、年に数回は人里に来ているから、そんなに珍しいものでもない。

「…………よくまぁ執り行おうと思ったわ。目的は同じかしら」

「同じ?」

「”異界組”から臨時収入が得られそうだったから、薬でも調合しようかと」

「ああ、そういうことですか……異界組って、ギルさん達”幻想入り”者ですか?」

「ええ。今までと違って集団で入って来ているから、少し呼び方をね」

 ただ、これほどまでの集団は珍しい。
 これまでは (といっても三年しかろくに知らないけども) 多くても四人が最高記録。
 今回はうちだけで並んでいるし、全体を見れば余裕で越えているのも知っている。

「分かる気もしますが……わざわざ変えるほどですか?」

「個人的によ。もし今、関係のない人が幻想入りした時、少しややこしくなるでしょ?」

「でしたら、私もそう呼びます。……それで、いつ頃から?」

 だから、お師匠様がこう言ったのも、単なる区別だと思っていた。
 仕事柄、薬に分かりやすい記号を付けているし、それの延長線上だと。

「とりあえず、ギルさん達の血液サンプルに試している最中だから、それが済み次第かしら」

「明日にもですね。お誂え向きの異界組でもいればいいのですが」

「穴に落ちていた彼とかね。じゃ、片づけて姫様に話しておいて」

「分かりました」

 今思えば、この時気付かなかった自分が悪いのかもしれない。
 この地点ですでに、四つも見過ごしていた事があるのだから。
 いや、そのどれか一つが分かっていても、この時の私は何もしていなかったと思う。

 だって私は、臆病者だから。
 戦争が怖くて逃げてきた、他人の事を言えない……卑怯者だから。
 後悔ばかりしていた、裏切り者だから。

795 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/10(火) 17:28:36.11 ID:AX1b0p57o

以上で投下を終わります。負の要素が強めな二人でした

こいしの後篇はリクエスト終了後に投下予定です

以後の予定は

リクエスト消化→こいし後篇→景清と飛竜の閑話休題→四日目夜→五日目朝→……

となっています。さとり様ごめんね!

では、このへんで
796 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/04/10(火) 23:03:35.99 ID:1B8DDjTDO
お疲れ様です!
そっかー、やっぱ零児さんが気に食わないかー。まぁ、そういう娘が居るのも仕方ないか。   さとり様、人当たりですか?それとも砂糖オーラのせいですか?あ、両方ですかそうですか。   英雄先生の臨時生徒、無闇に妖怪にちょっかい出さなきゃ良いけど。   新参ホイホイさんとの出会いは花が最初。   ハイテクさんが通る。 なんちて。   スタンも雰囲気がよく出てるなぁ。   伝統のお仕置き「頭グリグリ」←スペカ風に   妹紅ェ…w   恥ずかしいとか惚れたとか、白々しいぜぃ?こいしちゃん。 嫌いな食べ物の話しは…確か三日目晩にはなかったよね?   弱点など教える訳がry   スタン…大人してるんだなぁ。   あいつ…、ぐーやかあややか…?   あー、確か月も舞台になってたもんな、知っててもおかしくないか。なんか広まり方がコミカルチックだがw   異界組…分かり易いですね。

すみません。ageたのはSSを催促したのではなく、ただ読者のリクを煽ろうとしただけなんです…。
797 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/13(金) 19:37:34.33 ID:8ZXQg1EDO
スレタイと幻想郷のごった煮要素から思ったんだけど…もしかして幻想郷って、沙夜が作ろうとしてた新世界そのものだったりするのか…?

あ、ネタバレになりそうでしたらノーコメントで。
798 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/13(金) 23:29:28.39 ID:n/5zfgITo

こんばんわ。レス、ありがとうございます

ノーコメントと言われてノーコメントだとやっぱりネタバレになるんじゃないかと考えてしまうジレンマ

ただ、それは違いますのでご安心を


さて、リクエストの一つ、ヘイムレンの四日目を投下します

どうぞ
799 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/13(金) 23:33:08.10 ID:n/5zfgITo

〜〜〜命蓮寺〜〜〜

「…………っ」

   トンッ

「魔班猛旋脚!!」

   カッ……カカカカカカッ   ドンッ!

「「おおっ」」

「……お足の方は如何でしょうか、ヘイムレンさん」

「少し鈍っているけど、これぐらいならすぐに取り戻せるねぇ」シュシュ

「それはよかったです。あまりきちんとした世話が出来ず、申し訳ございません」

 時はヘイムレンが”幻想入り”して四日目。
 命蓮寺の世話になっている彼は今、裏の墓場へ続く石畳みで運動をしている。
 クロスゲートに吸い込まれた際に負った、怪我の具合を確かめているところである。

「いやいや、十分休息は取らして貰ったよ。……食事が少々、物足りなかったけどねぇ?」シュッシュッ

「それはご勘弁を。曲がりなりにも、仏教寺ですので」

「分かっているさ。里なり狩りなりで、済ませるとするよ」シシシシシッ

「それで、これからどうなされるお積りでしょうか?」

「それなんだよねぇ」

 その足も、魔班猛旋脚――高速回転しながら足を刺に見立てて相手を切り刻む技――が使えるまで回復した。
 とはいえ、元々捻挫程度なために、通常の行動には一切の支障はなかった。
 だが、アレディの示した道を識る為に、敢えて甘んじる事を選んでいたのである。

「さっさとどこかに行ってしまえばいい」ムス

「あらあら駄目ですよ、ナズー。そんな辛辣に当たってわ」

「すみません、聖。……はい、天狗の新聞です」スッ

「有難う御座います」

「おや、ここにも新聞はあるんだねぇ?」

「妖怪の山の、天狗が発刊していらっしゃるのですよ。それを聖が毎週集めていまして」

 そして経験する、争いのない平和な日々。
 ナズーリンに警戒され、それを聖以下命蓮寺一同が嗜めるという、他愛ないやり取り。

「天狗達が書いている事は出鱈目ばかりだから、当てにならないけどね」

「どれどれ……」

「…………あらあらまぁ。……うふふ」

「聖が楽しそうで、なによりです」

 他にも、雲山から酒の共になってほしいとか、響子とのあれこれで頭が痛くなった事とか。
 修羅として生きていた頃には体験し得なかった、浪費するだけと言っていい日常。
800 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/13(金) 23:36:41.89 ID:n/5zfgITo

「……ほぅ」

「どうなされました?」

「これを、見てくれるかな?」バサッ

「はいはい、文々。新聞ですね。えーっと……”幻想入り”リスト?」

「良い情報だよ。この間の彼の事や、他にもその仲間らしき名前が、その所在と共に羅列されている」

 心休まる日々。
 喧騒を忘れ、闘争を忘れ、心身を癒し続ける毎日。

「おぉ、確かに珍しく良い情報ですね。……らしき?」

「知らない名前だらけだからねぇ。この書き出しを信じれば、少なくとも知り合いらしい、と」

「沢山いますね。あれ、でも貴方の名前はないようですが」

「見せて。……本当だ。あの烏天狗が見逃すとは思えないけど」ジトー

「……あの時の羽獣羅が、この新聞の発行者なのかな?」

「あの時?」

「だから、その獣羅って言い方止めたらどうだい」

「ごめんごめん、つい癖でね。……一昨日の夕方頃に零児君が来ただろう? あのタイミングで、羽を持った少女が着ていたのさ」

「気づきませんでした。……だから、隠れて?」

 つまらない。

 物足りない。

「ああ。始めは、僕に襲撃でもかけてきたのかと思ったけど、違ったしねぇ」フゥ

「……なんで微妙に残念そうなんだ」

「そう見えるかい?」

「……さぁね。知らないよ」

 疼く。

 修羅の血が、疼く。

「…………んー」パサッ

「どうしたの、姐さん」

「いえ、ヘイムレンさんの今後の事を考えていたのです。何をして頂こうかと」ウーン

「……おや? 僕がここに居つく事前提かな、もしかして」

「? はい」

 いや、血ではなく、習慣なのかもしれない。
 精神の根底に染み付き、生き方そのものとなっていた、修羅の掟。
 それから脱するには、彼は少し年をとりすぎている。

「……もう、聖の好きなようにすればいいさ」シクシク

「だから、なんでナズーはそんな嫌っているの?」

「……同胞を操れるとか言われて心許す奴がいるかな?」

「ほんの冗談なのにねぇ」フッ

「……##」

「顔が怖いわよ、ナズー」

 誰だって、長年連れ添った、もはや自身でもある習慣を捨てるのは難しい。
 それが誇りと言い切れるほど強いものなら、尚更に。
801 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/13(金) 23:39:10.68 ID:n/5zfgITo

「でも、いいのかい? 何かしらの形でお返しはしようと考えていたけど、そんな形でも」

「あ、そういうつもりで言った訳ではないのですよ?」

「「えっ」」

「「…………」」

「被ったわね」

 それでも、この道の先に見えてくるはずの、アレディが見つけた新世界を求める。
 つまらなくても、物足りなくても、辛くても、それは今だけなのだと信じて。

 こんなことを感じているうちは、まだまだ見えそうにない事も、理解はしている。

「どうやら、僕と君とは似た者どう……」ガシッ

「……シメルゾ」

「……ごめんよ」ニコッ

「そもそも君は、どうせ一宿一飯の恩義を返すとか思ってるくせに、似た者だとか言わないで欲しいね!!」

「悪かった、謝るよ。でもそんなに拒絶されると、流石に心が痛むねぇ」

「嘘吐けこのバナナ頭!!」

「……三日月のつもりなのにねぇ……」

 だから、らしくない自分を演じる。
 彼と同じものを見つける為に。
 彼が見出した価値を知る為に。


「……でもそれが分かるということは、やはり似た者同士なのでは?」ハテ

「聖。それをナズーに言ったら飛び出しそうだから止めてくださいね」

 なお、ぬえとマミゾウは、小傘とコブンがその後どうなったか、確かめに(からかいに)行っている。
 星はこの間見つけた墓の掃除と、その管理者を探していたりするため、不在である。

「そうですか、ムラサ?……そうです、ちょうどあれがありました」

「「「あれ?」」」

………………

…………

……
802 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/13(金) 23:43:58.11 ID:n/5zfgITo

〜〜〜命蓮寺・化主の部屋〜〜〜

「ヒジリさん。アレとは……一体なんのことかな?」

「確か一昨日頃に、物を分解するのが得意だと仰っていましたよね?」

「ああ。正しくは組み立てるほうだけどねぇ」

 解析、という点でみればそれも間違ってはいない。
 それに、作る事を知る者は、その逆もまた知っているのが常である。

「それは申し訳ございません。……それを見込んで、頼みたい事があるのです」ガタッ

「……自然と開けたけど、これ隠し扉だよねぇ?」

「え……あ、はい」

「もう少し、用心したらどうだい」ハァ

「知らない方や、魔理沙ちゃんのような方なら少し考えますが、貴方なら大丈夫かと」ニコッ

「…………」

 無防備。そう思われても仕方ないほどに、甘く見える言動。
 だがそれは、一般人が見たらの話。
 ヘイムレンのような戦場に身を委ねた者からすれば、彼女の行動に意味が見えてくる。

「どうぞこちらへ。暗いので、足元にご注意ください」フワッ

「……ああ、大丈夫さ。暗い所ぐらいは、すぐに慣れる」

 試されている。
 彼女の覇気や雰囲気に、一切の変化は見当たらない。
 だがこれは、何かしらの形で自分を試している。

「梯子を降ったら、少しお待ちください。今、灯りを点けますので」

「……ここはもしや、昨日言っていた封印場かな?」

「はい。神霊廟を再封印する際に用意した場所の一つです。今では、倉庫として使っていますが」

「隠し扉の奥の倉庫。……そういう場所には大体、宝物が眠っているのが相場だねぇ」タンッ

 ただ、何を試されているのかはさっぱり分からない。
 修羅の試練ならば、血反吐を吐いてでも乗り越えてきた。
 だが、ここまで優しい気に包まれた試され事など、見当もつかない。

「『宝』……。はい、確かに、『宝』ではあります。……灯り、点けますね」ボッ

   ボッボッボッボッ

「……これは……」

「ヘイムレンさん。貴方には、こちらの『宝』を……分解してほしいのです」

「確かにこれは、僕向けかもしれないねぇ」

 それと関係あるのか、はたまた別件なのか分からないが、そこにあった『宝』とは…………
803 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/13(金) 23:51:15.96 ID:n/5zfgITo

以上で投下を終わります。……短いんです。時間掛った割に短いんです

ですが、彼の登場が速まった理由でもあったりしますので、次の登場を乞うご期待!


次のリクエストキャラ、リュウに関しては明日か明後日の予定です

その次は追加リクがあっても無くても『こいしの出会い・後篇』です


それではこの辺で
804 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/14(土) 08:50:26.49 ID:UOzDwQaDO
お疲れ様。
ヘイムレンさんは色々と満たされないご様子…暇なら向日葵にでもちょっかい出して見れば良いと思うよ!

珍しく高評価な文々。新聞。

やきもきナズーと天然ときどきシリアスひじりん。

お宝とは一体…。
805 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/15(日) 18:42:44.03 ID:GctU0Vz3o

こんばんわ。レス、ありがとうございます

メアリー・スー……なってないですよ……ね?


さて、リクエストのリュウの三日目を投下します

どうぞ
806 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/15(日) 18:46:51.03 ID:GctU0Vz3o

「ハッ……ハッ……ハッ………………」

  ………………

「ハッ……ハッ……ハッ………………」


  ………………


「ハッ……ハッ……ハッ………………」



  ギィ……

「確かに、出られそうにないな。気付いたら、元来た道に戻ってしまう」バタンッ


〜〜〜アリス亭・夕方〜〜〜


「……まさか二日間、走ってきたの?」

「ああ。以外と小さい世界なんだな」

「…………」

 驚いた表情のまま固まる、七色の人形遣い。

 アリス亭に一日泊めて貰ったリュウは、翌日の早朝に「出かけてくる」と言い、その夜には帰ってこなかった。
 襲われたか、余所に泊っているのか……と思っていたらこれである。

「だが、良い世界だ。山も畑も美しいし、川も透き通っていて、動物も元気だ」

「…………」

「……俺の顔に何かついているか、アリス」

「……体育会系ってのはなんでそう、行動的なのかしら」

「ん?」

 心配して損したし、呆れてものも言えない。

 彼女が知る体育会系とは、魔理沙や聖。
 厳密に言うと二人のスタイルは違うし、魔理沙は体育会系でもないが、外で運動する方が性に合っている点は同じ。
 そんな彼女達がしてきた事は、魔法使いとしては積極的すぎる内容が多く、やはり呆れてばかり。

「なんでもないわ……で、それ以外は?」

「それなんだが、零児に会ってきた。アリスに宜しく伝えてほしいと」

「レイジさんと? 無事会えたのね」

「風邪を引いて、今日一日寝込んでいたんだ。彼らしくもない」

「へぇ。そんな簡単に引くような、甘い人には見えないのに」

 そんな、羨ましくも思う側にいるはずの零児の容体を聞かされる。
 人は見掛けによらないって彼の言葉だったかなと、少し考えて……。

「……まさか、あの人に会うために出て行ったの?」

「ああ。だが、場所が分からなかったから、西から探したらこのざまさ」

「……ごめんなさい。博麗神社は東の果てって、言いそびれてたわ」

 リュウは幻想入りしたその晩に、アリスから色々な事を聞いた。
 だがアリスはその時、地理をあまり伝えなかったのだ。
 だいたいいつも、森の外や人里まで送っているだけだったため、その癖でつい。
807 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/15(日) 18:49:54.96 ID:GctU0Vz3o

「気にする事はないさ。おかげで色々な光景が見られたからな」

「……前向きな所まで共通なのかしら。それで、荷物が増えているのはなんで?」

「これは……」ガサゴソ

「……山の幸が多いわね」

「ああ。妖怪の山で、双子の神様に色々貰って来た」ドサッ

 栗、さるなし、まいたけ、なつめ、りんご、かき、他にも秋の旬の幸が、背負っていた袋から次々に出てくる。
 それも、それだけ持っていながらなんで息切れ一つしていないのか、という量だからまた呆れる。
 後でこれでも減っていると聞いて、もはや「あっそう」としか言えなくなったが。

「山にいる双子の神様? ……………………ああ、秋姉妹ね。それで、そのベルトっぽいのは?」

「俺の友人のなんだ。”幻想入り”したのは確からしいが、まだ所在が掴めないそうでな」

「あらら。……で、預かったと」

「彼らに任せ続けるわけにはいかないからな。明日にでも、探しに行くつもりさ」

「一応、襲われた可能性も……って、分かってるわよね、それぐらい」

「勿論。だが忠告、感謝する」

 そんな彼に、今更警告じみた言い方をするのも無意味だと諦める。
 どうも零児と関係のある人々は、これまでと違う接し方が必要なようだ。
 それはそれで暇潰しになってくれるから、わりと有りがたいのだが。

「でも、レイジさんが風邪ねぇ。……お見舞いに行ったほうがいいかしら」

「その事でマリサから言伝がある。『明日は地底に行くから、人形貸してくれ』だそうだ」

「……あーそうね、前回貸したわね」

「何の話か分からなかったが、伝わってよかった」ヨッ

「でもこれ、私だけじゃ意味ないのよねぇ」

「そうなのか? 台所借りる」

「ええ、紫って妖怪が…………って、え? ……え? …………ええ!?」

 思いがけない言葉が思いがけない相手から出てきたために、二度見してしまう。
 そこにはすでに山菜を並べて洗い始めているリュウがいる。
 手際が良すぎて、もう一度見てしまう。

「……料理出来るの?」

「一昨日ご馳走になったような、手の込んだ料理は難しいが、……男料理なら」シュッ

{ 「あら、ならそのお手並みを拝見させて貰いながら、話を進めましょうか」 }

「っ!」バッ

「……びっくりした。気にしなくていいわ、知り合いだから」

 呑気な事を言いながら現れた、紫。
 彼女を知らないリュウは、零児と同じ反応で身構える。
 男物とはいえ、エプロンをいつの間にかしていたために、シュールだが。
808 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/15(日) 18:55:45.20 ID:GctU0Vz3o

「……そうか。君は一体?」

「お初目にお目にかかりますわ、英雄様。八雲紫と申しますの」

「英雄と呼ばれる程、俺は何かを成し遂げてはいないさ」

「……なんだか、零児さんも似たような事言いそうね。……それで、要件はこれでしょ」シャンハーイ

「ええ。流石はアリスね」

「どーせタイミングを見計らってたくせに、よく言うわね。……パチュリーや天狗にも?」

「すでに連絡済みよ。今回は連絡相手が多くて苦労しましたわ」ヤレヤレ

 二人の間で通じる会話。
 二人きりで話す事は少ないが、それでも自分の事は知られている。
 その証拠に、前回ありきとはいえ、この会話だ。
 そんな見透かされた状態で人形を渡す気にはなれないが、余計な事はせず従ったほうが身のためだろう。

「でも、今日でよかったの? もしかしたら今朝には行っていたかもしれないの……に…………」

「ふふふ、構わないの。彼にはたっぷり休養を取ってもらえたのだから」フフッ

「……はぁ」

「どうしたんだ、ため息なんか吐いて」

「気にしないで。……相変わらず、ろくでもないわね」

{ 「褒め言葉と受け取るわ。……それじゃ、明日の朝にね」 }

 要件を済ませてすぐにスキマへと消える。
 長くいてほしくなかったからいいのだが、こうも呆気ないと余計な事を考えてしまう。
 相手が相手なのだから、それこそ余計に。

「………………」

「…………」

「………………はぁ」

 だが視界に入るシュールな光景に、集中力が持つはずもなく。
 ……何度見ても、シュールな光景だ。

「……外の男性に、家庭的な人でも増えているのかしら?」

「さくらが言っていたな。確か、草食系男子だったか」

「草食系……確かに、今のリュウさんにはぴったりかもね」

「肉も、嫌いじゃないんだがな」

「……燻製だけど、そっちにあるわよ? 他にも――」


 結局二人で調理し、頂くことになった。
 彼の言った通り、男らしい切り方が大雑把な料理だったが、以外といけたようだ。


 調理の最中に、料理すると言った理由を尋ねると、やはり零児の時と同様の返事をもらう。
 彼女の外への認識が間違っていく事になるのだが、これはまた、別のお話。

809 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/15(日) 19:02:19.89 ID:GctU0Vz3o

以上で投下を終わります。シュールだ

リュウと言えば、殺意リュウ……結構喋るんですね……(SF4参照


次回投下の『こいしの出会い・後篇』は水曜か木曜の予定です

同時に景清と飛竜も投下出来れば……


それでは、この辺で
810 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/15(日) 22:08:31.47 ID:K1RkhaFDO
え?メアリー・スー?誰がです?>>1さんが?それよりは長ったらしくレスする俺の方が嫌われてそうだが…。リュウさんの事なら、色々な存在に気に入られてもおかしくはないと思うけどなぁ…人や神には人間的に、妖怪には食料的に。
811 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/16(月) 09:44:28.03 ID:Mk6REsfDO
お疲れ様ですっ!
まさか一周して来るとはww小さいって言うけど、あれでも結構デカいと思うんだがねぇ…(^^; しかも神様から直接大量の食べ物を貰ったり、伝言役までこなしちゃって。リュウさん凄ぇー。とっても凄ぇー。こんな一言しか出せないのが悲しいぜ。   都会派には理解出来なかろうwwでもまぁ、魔法使いが全員一辺倒じゃあ面白くないよね?   たくさんの可愛い女の子に看病してもらえる…確かに羨ましい。零児さんは嬉しいとは思わないだろうけどねww   会えて良かったな。きっと零児さんも少しは喜んだ事だろう。丁度お見舞いの品になるものもあった事だしね。しかし、移動中にも食べたりしたんだろうけど、それでもあんまり減ってないって…元は一体どれくらいあったんだ…?   良かったなベルトよ、持ち主にはその内会えそうだぞ。   体を作るのは食べ物だし、格闘家も料理は基本スキルなんだろうな。   エプロンリュウさん…見た目はともかく、したままじゃ戦いづらそう。   ゆかりんはこの時既にちびゆか化してるんだっけ。   シャンハイ可愛い。   休んだ分、大変になるらしいが…。   草食系(笑)   燻製も良いよね〜。   二人で料理とか、素敵なシチュエーションだ。   今時そこまで礼儀正しい人は珍しい。
812 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/04/16(月) 19:22:35.04 ID:gs8NRVzqo
改行しろよ
813 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/17(火) 11:24:47.55 ID:CX/5vjODO
あ、やっぱり改行の方が良いんですか?なら次から戻しますね。
814 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/19(木) 08:15:10.20 ID:G6vTfQ62o

おはようございます。レス、ありがとうございます

今回は『こいしの出会い・後篇』だけの投下となっております

それでは、どうぞ
815 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/19(木) 08:17:00.63 ID:G6vTfQ62o

「なんだか昨日は面白みもくそもなかったわ」

「なんだかんだであの人間の後を追うのは面白かったもんね」

「なんだかんだもんだ?」

「あの大人なんて大っきらいだけど」

「……ふっ」

「でもしかし、どうすればいいかしら?」

「スタンって男から聞き出すには、どうすればいいかしら??」

「考えるのよ、こいし。出来る出来るやればできる!!」

「あ、だめ。分かんない」

「んー…………」

「そうだわ。スタンの弱みを握ればいいじゃない!」

「私ったらあったまいー☆」

「…………あれ? でもどうやって弱み握ろうかしら?」

「無限ループって怖くない?」

「うー…………」

「……じゃぁこういうときはお姉ちゃんを頼ろう!」

「未だに目を見開いてるお姉ちゃんを頼ろう!」

「大好きな大好きなお姉ちゃんを頼ろう!」

「そうときまれば喘息全身だー!」

「あはははは!」
816 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/19(木) 08:25:22.89 ID:G6vTfQ62o

〜〜〜人里・寺子屋〜〜〜

「……やることないなー、ディムロス」ブンッ ブンッ

『教師二人がこなしていくからといって、さぼるのは感心せんぞ、スタン』

 こいしがスタンと接触した翌日。零児が風邪を引いて寝込むその日。
 鰻を求め、ひとまず人里にまでやってきた小牟達は、妹紅に事情を説明して案内してもらっている。
 その為、スタンは寺子屋の手伝いをしていたのだが……

「って言われてもな。本は苦手だし、物片づけるのも得意じゃないし……」

『……まき割りも終えた。朝市も付き添った。飯の片付けも終えた。……まぁ、やることもないか』

「子供達は明日から来るって話だし、そっちに備えるさ。いやー、楽しみだな」

『……すっかり平和ボケしているな』

「なんだよ、悪いのか?」

『いざという時に備えるべきだ。零児達しか解決出来んとはいえ、それ以外にもやれる事はあるはずだからな』

 先の戦いでは、備えていてもその裏を突かれた。
 それでも、想定できるあらゆる事態への備えは必要。
 そう考え『助言』する、軍人ディムロスである。

「って言われても、空は飛べないし金はないし、異変以外じゃ目立った事……あー?」

『どうした? 何か気付いたのか?』

「いや、目立った事じゃないけど……あの子の事でさ」

『……零児の事を探っていた、あの妖怪か。確かに、気にかかるな』

「だろ? 昨日はあのまま何の音沙汰も無かったし、どうしてるんだろうな〜」

『……彼女の事、調べてみたらどうだ』

 鋭いような、鋭くないような、スタンの発言。
 いい加減慣れてきたとはいえ、日ごろから深く考えて結論に至る剣からすれば、頭が痛くなる言動。

「でも、どうやって調べる? 妹紅は話したがらないだろうし、慧音さんは忙しいし」

『出直すと言っていた以上、来る可能性は十分あるだろう。その時にでも聞いて……』

「やっほー、スタン! 出直して来たわ!」キャー

『…………』

「ははっ。ほんとだ、来たな。ディムロスも、よくわかってるよな」

『…………』

「おはよう、こいしちゃん……でいいんだよな?」

「おっはよー、スタンっ! 妹紅はいないわよね?」キョロキョロ

「……ああ、今は出かけてるけど?」

「よかったー! あの小姑が居たら五月蠅くって嫌になっちゃうわ」プンスカ

『妹紅の反応は、至極当然だがな』

 妹紅の肩を持つディムロス。
 彼はスタンとは違って、命を預かる立場にあった関係で用心深く、疑り深い。
 それ故に無鉄砲に見えるスタンとは口喧嘩が絶えないのだが、これが中々良い凸凹コンビになっている。
817 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/19(木) 08:30:53.68 ID:G6vTfQ62o

「ハハ……それで、今日は何のようだ? レイジの事?」

「んーん。それもあるけど、素敵な景色の場所があるのっ! そこに彼を案内したいの!」キラキラ

「へー、いいな。でも今日は風邪引いてるらしいからなー」

「分かってるわ。だから下調べにつきあってほしいの!」

「下調べ?」

「そっ。あの人が喜んでくれるか、貴方に判断して欲しくて!」

『…………』

「でも俺そういうセンスないぞ? ……服が個性的って言われた事あるしな」フッ

 零児どころかギルガメスとも出会っていなかった頃の話。
 ソーディアンマスター五人でいた頃に言われた、ファッションセンスに対する『個性的』というフォロー。
 数少ない、彼の自虐ネタだ。

『おまえな……』

「いいのいいの! 暇そうなの貴方しか知らないから!」ドーン

「はは……結構ズバッと来るんだね」

『…………』

「はっ、ごめんなさい。私、思った事をつい口にしちゃうのよ!」

『まるでフォローになっとらんな』

「やめて。結構傷つく」

「ねぇ、ついてきてくれない?」ウルウル

「え、あ、うーん……」

『……我は何も言わん。いや、何も言う必要はないな?』

「…………」

 こんな能天気な彼だが、これでも相手が何をしたいのかぐらいは分かる。
 むしろ、ここまで不自然極まりない事に、気付けないほうが愚かともいえるか。

 しかしながら、本来はこいしが誘い出そうとしている事など、絶対に気付けない。
 何故なら、無意識の内に受け入れさせてきた彼女に、自分が罠を張っているという自覚がないから。

「分かった。下調べにつきあうよ」

「やったっ! やっぱり私って見所あるわっ。ささ、さっそく行きましょ!」トンッ

『……馬鹿もんが』

「ああ。俺、馬鹿だから、今はこれしかレイジの負担を軽くさせられる方法が分からない」

『……くれぐれも、油断するな。我も気をつける』

「頼んだぞ、相棒」

 無意識で受け入れさせるから、後ろめたさも感じない。
 後ろめたさが無ければ、言霊に乗るのは真意だけ。
 その真意……とまではいかずとも、何かを感じたスタンは誘いにのる。

『……はぁ。我は何故、こんな奴をマスターに選んでしまったのか』

「今更だろー。……ってちょっとまってくれよ、こいしちゃーん! 俺、飛べないからさー!」

『…………書置きしていかんか、このスカタン!』

 ただ、抜けている部分は相変わらずである。
818 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/19(木) 08:37:27.95 ID:G6vTfQ62o

〜〜〜妖怪の山七合目・間欠泉センター付近〜〜〜

「なー、こいしちゃん。……あの看板無視しても良かったのか?」

「へーきへーき。どうせ山の天狗のコケオドシよ」

『否定は出来んが、肯定も出来んな』

「排他的だって話……なんだよな?」

  ザワザワザワォーーーン!

「……どうして無視されるんだ?」

『…………』

「あっるっこー♪ あっるっこー♪」

 寺子屋の人物達への書置きをして、いざ妖怪の山へ。
 警戒態勢が某人物の所為でより強化されているのに、二人は誰にも見つからない。
 ただしそれは、誰もいないというわけではない。


  「くそっ。なんで今回の”幻想入り”共は、どいつもこいつもずかずかと入って来るのよ!」

  「面目丸つぶれですね、椛さん」

  「他人事じゃないでしょ……ああもう、馬鹿ラスがあんな新聞出すから……」

  「それは流石に八つ当たりじゃないっすか〜?」

  「分かってるわよ。それでもいいたくなるの!」ムキー!!


 御覧の通り、白狼天狗達は度重なる侵入者に対して頭を悩ませている。
 だが彼らは、真下で歩いているスタン達には気付かない。

『分からんが、今は考える必要もなかろう』

「ま、そうだな。お仕事頑張ってくださいねー……あ、やっぱ聞こえてない」

『態々確かめるな、馬鹿もん!』

「〜♪ 〜♪」

 これがこいしの能力の真骨頂。
 本来であればこのように、意識ある者達の無意識を操り認知させないのだ。
 ただなぜか、スタンには全く効かなかったが。

「たまには歩くのも悪くないわね。足腰鍛えて安産型になろー!」

「確かに、この山登りはいいかもしれないな。紅葉も綺麗だし」

『遠足気分になるのはいいが、道のりを考慮すれば対象が限られてくるぞ』

「いや、分かってるって……」

「ん? 何々?」

「いや、山が綺麗だなーって」

「……私ずっと見てるから分かんないや」

『…………』

 そんな彼に、やっぱり効かない。
 先程から独り言を話しているから、聞くと思っているのに効かない。
 話し相手が居る事を知らないのだから、そういう勘違いもしてしまうわけだ。
819 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/19(木) 08:39:57.89 ID:G6vTfQ62o

「そういえば、見せたい物は山頂にあるって言ってたけど」

「ええっ。間欠泉センターって言うのよ!」

『……?』

「間欠泉センター? 観光地みたいだな」

『…………』

 間欠泉センター。
 守矢神社のそばにあり、そこの神が管理するエネルギー精製施設。
 怨泉異変以降に作られたその施設は、守矢の二柱が企てた計画の一つ。

「そこの最下層がすごいの。もうそりゃ色々と!」

「へぇ、そりゃ楽しみだ」

『……用心しろ、スタン。目的地は地底数十kmだ』

「……いつの間に調べたんだよ」ボソッ

『稗田宅でお前が寝ている最中にだ。あの三人はちゃんと調べていたんだぞ』

「……面目ない」

 “灼熱地獄”の上に直接作られたその施設は、蒸気を用いて電力を得るという地熱発電の形を取る。
 この蒸気を利用したエレベーターもあり、そのおかげで一般人の地霊殿に行きやすいルートが開拓された。
 また、これらの設備が完成することで、山の技術も確実に進歩した。

「んふふふ〜ふ〜ふぅん♪」

「……それで、地下深いってこと以外に、何かあるのか?」

『センターの真下は灼熱地獄と呼ばれる場所らしい。旧地獄の一端という話だが、センターとして再利用されている事を考えると……』

「…………」

 だがそれも既に過去の話。
 山の技術革新を推し進める守矢の神は、外の技術を様々な形で山へと広めていった。
 その結果、電力効率の悪いこの施設は観光用へと姿を変え、しかし地底に用がある人もおらず、廃れていく。

「……熱いってことか」

『熱いで済まんかもしれん。下手をすれば……』

「ん? そうだね、熱いかな〜?」

「……それってやばくないか?」ボソッ

『神が管理し見世物にしている以上は、大丈夫だと思うが……聞いてみたらどうだ』

 結局、水蒸気発生施設という名目で、申し訳程度に動かされている間欠泉センター。
 だがそんな上の状態など知らずに、”灼熱地獄”の管理者は主人の命令を適度に守り続けている。

「こいしちゃん。ちょっと聞きたいんだけどさ」

「ん? なーに??」

「その間欠泉センターの熱さってどのぐらいなんだ?」

「知らないよ、そんなこと」

「そ、即答。うーん……」

『神に聞きに行くしかあるまい。会えるかどうかは、別としてだがな』
820 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/19(木) 08:52:21.86 ID:G6vTfQ62o

「だよなぁ……。ちょっと、寄り道してもいい――」ボコッ

 さてここで一つ、注意しなければならない事がある。
 この辺りの地盤はかなり脆いということだ。
 その最大の理由は、間欠泉センターが近いという点。

「か…………な、なー、ディムロス」

『どうやら、この辺りの地盤は脆いようだな』

「冷静に言うなよ。……こ、こいしちゃーん。ちょっと助けてくれないかな?」

 間欠泉センターと呼ばれる大穴は、元は怨泉異変で出来た”最大級の間欠泉”跡である。
 原因となった怨泉異変では幻想郷中に間欠泉が湧きあがったが、『星輦船』が飛び出すほどの大穴はそこ限り。
 後の間欠泉は1m未満の物が多く、数も全体で十を少し数える程度。

「? どーしたの〜? 止まっちゃってさー」トコトコ

「歩いて来ちゃ駄目だ、こいしちゃん!」

『間欠泉……空を飛ぶ妖怪……あの看板……』ブツブツ

 ただしその、別名噴出管と呼ばれる間欠泉の穴は、三か所を除いてこの辺りに集中している。
 そのために周辺の地盤は緩く、脆くなっている。
 更には天然ダム等の開発による衝撃も合わさり、大人一人分の重さでも崩れかねなくなっているのだ。

「……えー、何か見つけたんでしょー」トコトコ

「違うって、足元! 地面!」

「地面? ……あらほんと。ヒビが入ってるわ」ジー

「そ、そう。だからちょっと……来たら危ないからね?」

 とはいえこの事は、天狗や他の山の妖怪は気にしていない。
 彼女達はそもそも空を飛べるため、万一地面が落ちても飛べば済む。
 侵入者の問題だって、この辺りは見晴らしも良いために、今までなら気にしなくても良かった。

「……」ニカッ

  キラーン

「……な、なんでそんな笑顔なのかな?」

「……えいっ!」ドスッ

  ボゴォッ

「おわー!?」

『……なるほどな』

「一人納得するなよ、ディムロスゥゥゥ!?」ヒュー

「きゃー、おーちーるー」キャー

 だがこの道は、空を飛べない者達にとっての二番目の最短登頂ルート。
 今回、“幻想入り”した奴らは今までのセオリーが一切通用しないため、一応ここにも警戒を当てていたわけだ。
 それでも、こいしの能力の前では無意味だが。

「……なー。俺、悪い事したのか……?」ヒューー

『知らん』

「ちっかちょっくつー」キャー

 しかし、このルートはやはり危険極まりなく。
 排他的だとは言うが、それでもやはり嘘はつかないのが山の妖怪。
 それを知らない二人は、そんな思い遣りも虚しく地下へと落ちていった。


  「……あれ、なんか穴が増えてません、椛?」

  「…………誰もいなかったのに…………頭痛い」orz

821 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/19(木) 09:01:37.81 ID:G6vTfQ62o

以上で投下を終わります。スタンってば本当に……


プロジェクト・クロスゾーン(pxz)という、セガ・バンダイナムコ・カプコン三社共同開発のゲームが発表されましたね

参戦キャラがまじやばいです。楽しみでしょうがないです

それからあれは、時系列的にムゲフロ(EXだとは思うけど)の後です。個人的にですが確定です

何故かは、テロスのボイスを聞いて下さればお分かり頂けるかと


そんなステマをしつつ、次回投下は明日、最低でも景清の話を投下予定です

では、この辺で
822 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/19(木) 17:25:10.33 ID:kANdr25DO
お疲れ様です〜。

あぁ、やっぱり昨日居たのねこいしちゃん。

嫌よ嫌よも好きの内…と言う言葉もあるが…まさか?
「気持ちの問題だ!」

スタンの、弱み…?なんかあったっけ?

こいしちゃん…あんまりお姉さんをこき使い過ぎるのは可哀想だぜ?

凄く…苦しそうです。

妹紅s'屋台の焼鳥食べてぇ〜。

残念だったなスタン…明日は子供達には会えそうにないぜ。

苦労剣ディムロス…お疲れ様。

噂をすれば無意識。

あんな可愛いらしい姑が居るか!

あの漫才も人気の理由の一つ。

だいたいキャラデザのせい。

(精神年齢)子供は時に残酷なもの。

果たして負担は減るのか増えるのか…。

書き置きは頑張って日本語で書いてくれてるのか?だとしたら凄いな。

警告看板は一般人向け。逸般人向けではありませんww

なんかエクセレンさん居ない?

組織間で下っぱってのは辛いだろうなぁ。

確認は大事。

山が綺麗なのは良い事。

スタンに能力が効かない理由も、その内明らかになるだろうね。

怨泉って…字が怖いな(汗
幻想郷にも、行政の失敗施設が生まれてしまったのか…。

まるでドリフみたいだなwwまぁ、リアルに命懸けな訳だが。

凄ぇ…あの青年、落ちながら喋ってやがる…!

もみィ…お疲れ様。

pxzねぇ、キャラ幅広げて更に多くの人に買ってもらって、三社共に利益を得ようって事なんだろうけど…、どうなるんでしょうかね?
823 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/21(土) 23:26:34.95 ID:ZYIVhLUQo

こんばんわ。レス、ありがとうございます

予定に間に合わず、今日までずれこみました……

ただ、景清と飛竜の話が書けたので順次投下です

それでは、どうぞ
824 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/21(土) 23:30:48.07 ID:ZYIVhLUQo

〜〜〜新地獄〜〜〜

「…………」

「……? ――」

「…………五月蠅い」

「! ……そこにいましたか、平景清」
   わっぱ
「……童? 否。貴様……何奴」

 死者の魂が、その罪の重さの分だけ責め苦を受け続ける、地獄。
 業深き者程、永く苦しい懲罰を受ける、死後の世界。

 その牢獄に囚われながら、かつての戦いで罪を免除された者たちが何名か居る。
 平景清もまた、そのうちの一人だ。

「映姫様を童って……結構大きいのにねぇ?」

「寝ぼけて間違えただけでしょう。……私は閻魔、四季映姫・ヤマザナドゥです、お見知りおきを。世界融合を阻止せし英雄よ」

「……我の事を知るか。だが、その形……」

「あーっと。それ以上は、思っても言っちゃぁ駄目さ。悔恨棒で叩かれちゃうよ?」

 彼は三度黄泉返りした源氏を討伐するため、安駄婆と呼ばれる渡守の手で、地獄から送り出される。
 その後、様々な出会いと戦いを経て、恨み以外の死後の過ごし方を知った彼は、他の死者同様に別れを惜しまれながら眠りについた。

「まぁ、信じられないのも無理はないでしょうが……肆百陸拾弌の斬り捨てられし者の名、読み上げましょうか?」

「!」

「ほー。昔の人にしちゃぁ斬りまくってるねぇ」

「……其の鏡……浄瑠璃の鏡か」

 そんな『前例』があり、彼は眼を覚ます事自体に珍しさを感じない。
 安易に起こされる事への苛立ちの方が、よっぽどだ。
 その苛立ちの向かう先がよくからぶるのは、何かの呪いかもしれないが。

「ええ。信じて貰えたところで、本題に入りましょう」カチッ

「…………」
   あんだば
「……安駄婆様。彼の英雄の一人を見つけました。確かに、地獄に居られました」

「……?」

『ひゃひゃひゃ、そうじゃろぅ。幻想郷の閻魔、四季様や』

 映姫が胸元から取り出した、鏡とは別の何かから聞こえてくる老婆の声。
 渡守の中でも最も長く務め、発言権が閻魔大王の次とも言えるほどとなった存在。
 安駄婆――先の戦いにおける影の功労者であり、『地獄』の管理者の一人だ。

「……安駄婆か。貴様がそのカラクリから語る理由は知らぬが……閻魔が斯様な小娘に代わったのを見ると、隠居でもしたのであろう」

『ひゃひゃひゃ。わしはまだ引退しとらんし、閻魔も代わっとりゃせんよぉ、景清』

「……何? それはどういう……」

「その質問は後でお答えします。今は手短に用件だけを」

「…………」

 景清とは、かつての戦いが起きる以前からの知り合い。
 恨みを抱えて死んだ己を、見守るように導いた、女神とも呼べる渡守。
 とは知りながらも、今でも面妖な婆だという認識しかないのだが。
825 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/21(土) 23:33:43.08 ID:ZYIVhLUQo

「まーまーそんな怖い顔しなさんなって。ほら、酒でも一杯さ」

「………………」

「……後回しです。安駄婆様、そちらから来た死者三名、確かに確認しました」

『ひゃひゃひゃ。予測通りじゃの、四季 様 や』

「……こほん。先日ご報告した有栖家の男子、他十数名……そして異変の中身。
 ……かつての戦いが、繰り返されようとしているのでしょうか」

 と景清が思っていても、安駄婆は実力も地位も、一介の神程は持ち得ている。
 それを相手しては、一つの界を受け持つ閻魔といえども、佇まいを整えてしまうものだ。

『それを決めるのは、まだまだ早計じゃ。そも、死者は景清を含めても三人しか行っとらんからの』

「……」

『それにお前さんは、何があっても静観する事を決め込んだのじゃろ?』

「……?」

「……はい」

『なれば、じっくり考えい。わしはわしで探りを入れるが、お前さんが頼りなのは変わらんでな』

 それを見越してか、はたまたいつもの暗示か、意味深な事を言う。
 安駄婆の言う『なにか』は、必ず何かが起こる事を示している。
 それがナニカは、さっぱりだが。

「分かりました、安駄婆様。第三者としての、閻魔としての責務、きちんと果たしましょう」

『ひゃっひゃっひゃ。景清やたろすけの面倒、頼んだえ? 四 季 様』

「たろすけ……?! 童に何か……」  バッ

「……」

 手をむけられる。たったそれだけ。
 だがその手から感じるのは、紛れもない閻魔の圧。
 悔恨棒で口を隠しつつ向けられた眼差しと手だけで、景清は黙らざるを得なかった。

「……それはいいのですが、その、様付けは止めて頂けませんか、安駄婆様。私は貴女様に比べたら……」

『ひゃひゃひゃ。確かにお前さんはまだまだ小娘かもしれぬが、閻魔でもあるのじゃ』

「……」

『その自覚がありながら、渡守如きに頭を下げるでない。謙遜は、時に罪となるんじゃろ?』

「…………そうですね。やはり、まだまだ精進が足りないようです。ですが――」

『というわけじゃから、通信を切るかの。さらばじゃ、”四季様”や』

  ブツンッ

「…………はぁ」

 “四季様”を強調したまま、通信を切られる。
 紫相手でもここまで手玉に取られる事はない映姫だが、頭の上げられない相手だととたんに調子が狂う。
 幻想郷やこの界隈に、そういう人が居ないのは救いだ。
826 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/21(土) 23:36:57.69 ID:ZYIVhLUQo

「流石安駄婆様ですねぇ、四季様?」

「…………ええ、全くです。……さて。お待たせして申し訳ない、景清」

「…………」ジロリ

「……聞きたい事はいくらかあるでしょうが、まずは状況からお話しましょう」


 閻魔説明中……


「……また、不可思議な事が起っておるのだな」

 小さな閻魔から聞かされる、己が起こされた理由。
 彼の戦いを共にした、友と呼べる彼らが再び集う、幻想郷の現状。
 そして先程の会話の中に出てきた、たろすけの安否。

「はい。幸いにして、今のところは貴方が戦うべき理由はありません。向かうべき事情はあるでしょうが」

「……たろすけ」

「心配かい? 誰かは分からないけど、童ってことは子供何だろう?」

「……童に心配など無用。……其れよりもだ」

 心配はいらない。
 地獄から出て、地獄へと帰るその時まで、血に汚れた己の共をし続けた男児。
 あの児の粘り強さと、真に男たる度胸を知る以上、要らぬ心配りは無用である。

「シキエイキと申したか。そのようなカラクリを通して安駄婆と話した訳……話して貰おうぞ」

「それにはまず、次元の壁がある理由について話さねばなりませんね。
 ……質問に質問で返す事になりますが、それは何故だと思います?」

「……相容れぬ世界の関わりを絶ち、均衡を保つためであろう」

「間違いではありませんが、それは後付けの要素が強いのですよ」

「何?」クワッ

 悪鬼の顔から阿修羅の顔へと変貌する、景清。
 驚いた時、より怖くなるのだが、どうにかならないだろうか。

「次元の壁は、確かにその役割をも担っています。ですが、元となった理由ではありません」

「……?」

「『物質界』、『幻想界』、『魍魎界』、『魔界』、『神界』。それから、『超未来』。……違う点は何でしょうか?」

「……分からん。違いがあり過ぎてな」

「その通り。”違いがあり過ぎる事”が、元となった理由です」

「…………」

 世界の違い。
 零児達が知る幾つもの世界は、そのどれもが同じ事はない。
 どれだけ似た人間が居ても、どこかに必ず違いが存在している。
 それを言い表すなら――

「世界は可能性という、”多様性”を孕んでいます。それこそ、那由他を超える程度には」

「多様性……」

「進化や歴史の分岐点でどの方向へ進むか、ということですね。極端な例を示せば、人が生まれるか、獣が跋扈するか」

「…………」

「この多様性を育むには、一つの世界で繰り返すより、幾つもの世界で同時に育んだ方が手っ取り早いし、効率的です。
 成長しきる前に潰える世界もあるでしょうが、それを含めての多様性なので構わない。
 そしてこの多様なる世界を――」
827 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/21(土) 23:44:07.17 ID:ZYIVhLUQo

「待て。……効率的だと? もしや、世界を造る者が居るとでも?」

「……ええ、いますよ。ただし、その存在を認識出来た事はありませんがね」

「…………」

 映姫や閻魔大王、イシターといった、生物の上位階級である『神』よりもさらに上の存在。

 それは、あるいは世界その物かもしれない。
 だが、それより下位にいる自分では、今なお知る事は出来ないと悟る閻魔……いや、各世界の『神』もまた、そう悟っている。

「ちょちょ、ちょっと待って下さいよ映姫様。いきなり話が飛躍してません?」

「彼らにとっては別段、飛躍した話ではありませんよ、小町。貴方にとっては、そうでしょうけども」

「…………」

「……話を続けよ、閻魔」

 この事を、景清はあの戦いでほんの僅か察していた。
 ただ、『神』以上に考えるだけ無駄だと、感じていた。
 それに気付いたのは、死んだ先の世界と「ぷれいや」の存在を、宴の最中ににふと思い出した、その時。
 だが過っただけで、知る方法が自分にはない事も察し、墓まで持っていこうと思ったのだ。

「失礼。……この多様な世界ですが、先にも言った通り一つにならないよう注意する必要がありました。
 そこで生まれたのが次元の壁です」

「…………」

「次元の壁は、貴方達が知るように世界を分かち、均衡を保っています。
 資格ある者ならそれを認識し、力ある者なら飛び越えるなり、向こう側の住人と会話するなり出来ます。
 ついでですが、先に話した『博麗結界』もまた、次元の壁の一種でしょうか。人工物なので、厳密には違いますが」

 そしてようやく説明される、次元の壁の話。
 だが景清他、あの戦いを超えた者達は既に知っている事なため、簡潔に述べるだけ。
 それよりも、よっぽど気になる事がある。

「安駄婆が我らにしたのが、それであろう。……だが何故、先の話はそれを通したのだ」

「……初めの質問に答えましょう。それは、『幻想郷』を含むこの世界が、次元の壁を幾つも超えた先にあるからです」

「……隣にある世界ではない、と申すか?」

「ええ。本来ならば、意識して十生を経験したとしても、たどり着けないと言える程離れています」

 景清がカラクリと称した、木と金属が出鱈目に組み合わされたような物。
 イシターや安駄婆が語りかけてくる時は、そういった物が不要だった覚えがある。
 だが今回必要なのには、当たり前のように理由がある。

「…………」

「……いるではないか、とか考えないでください。ともかく、そういう理由からこういった補助が必要になってくるのです」

「…………」

「壁一枚であれば特に難しい事はありませんが、何枚も向こう側となれば片手間で済むものではない、ということです。
 ……詳細まで知る権限を、貴方が持っていない為に、簡潔に済ませましたが……御理解いただけましたか?」

 それが、これ。
 この道具は、資格と力を持つ者同士が、万が一の為に各々用意する連絡手段の一つ。
 人によって違うが、映姫の場合は管理する場所の性質も併せ、敢えて白黒つけられない機械染みた物を用意してあるのだ。

「……知らぬ」
828 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/21(土) 23:47:00.95 ID:ZYIVhLUQo

「それはよかった。では、お送りしましょう。小町、頼みましたよ」

「え、今のでいいんですかい?」

「ええ、構いません。本来なら、ここまで多くを語る必要もなかったのでしょうし」

「はぁ、そういうもんですか……」

 映姫は安駄婆から少しは聞いた事があるが、彼らの事を直接は知らない。

 だが、景清は死者。
 その性質を見切る事は生者よりも容易。
 その人となりを見る限り、余計な心配もまたいらずだ。

「それから小町。彼岸の岸に送り届けた後は、暇を与えます」

「本当ですか〜? なら遠慮なく昼寝を……………………ええええええええええええ!?」

「……五月蠅い」ビキッ

「いや、だって、暇……えええええええ!?」

「安心なさい、クビじゃありませんから」

「え? ……あ、なーんだ。クビじゃないんですか〜。驚かせないで下さいよ〜」ホッ

 突然の通告に、飄々とした態度がワンテンポ遅れて崩れ去る。
 普段の上司からすればあり得ない事を言われて、当然の反応かもしれないが。

「ただしその暇の間次第では、本当にクビにするかもしれませんがね」ニコッ

「えええええっ!?」ガビーン

「さぁさぁ小町、 仕 事 な さ い」

「…………質問とかは?」

「黒です」キリッ

 えも言わせぬ宣告。
 安心した所で追撃をかまされ、挙句にこの暴挙とも取れる発言。
 と言いたいが、彼女の普段の態度を考えれば甘いぐらいだったりもする。

「ああ、必要のない時にこちらに戻ってきたら、悔恨棒で遠慮なく叩きますよ?」

「うへぇ……分かりましたよ……最後の仕事をしてきますよ」トホホ

「そうならないように、すべき事を見つけなさい。……景清よ。有栖家の男子にあったら、気をつけよと」

「……我は飛脚や物見ではない」

「ほらほら、さっさと乗った乗った!」

「…………」

 一人は慌しく、一人は幽霊の如くゆらりと、三途の川に浮かぶ船に乗り、対岸へと消えていく。

「……」サッ

 それを見送った映姫は何も言わず、踵を返すと己の仕事場へと帰る。
 是非局直庁……彼女の仕事場である、最高裁判所へと。

829 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/21(土) 23:49:33.99 ID:ZYIVhLUQo

〜〜〜幻想郷・彼岸〜〜〜

「ほい、ついたよ、幻想郷」

「…………む?」

「……どうしたんだい、ぼーっとして」

「…………」ノソ

「…………愛想悪いねぇ」ハァ

 三途の河を逆行している最中、ずっと黙ったままの景清。
 元々、口数が少ない方なので、これが自然だ。
 問題は、これから地獄に送られそうな雰囲気だったことぐらいだろう。

「…………」ガチャガチャ

「……おーい、どこ行くんだい?」

「……零児達の元へだ」

「道、分かるのかい?」

「………………む」

「あんた、似たようなやり取り、絶対してるだろう?」

 彼は基本的に、見ず知らずの者には心を許さない。
 頑固なのもそうだが、巻き添えにする事への煩わしさが苦手だから。
 そのために、同じ過ちを繰り返しそうになる。

「…………」

「ま、博麗神社にいるんだし、人に尋ねりゃ場所は分かるだろうね」

「……!」

「あんたの格好抜きにしたら」

「…………」

「…………」

「…………」

「……暇を持て余してる渡守がいるんだけどねぇ……」チラッ

「…………」

「…………」

「…………」グッ

「…………」

「…………何か話したらどうだ」

「……あたいの負けだよ」ハァァ

 それを察して柔らかい言葉を投げるが、返してくれない。
 幻想郷の住人だって、めちゃくちゃな変化球とはいえ返してくれる。
 こりゃ、お仲間さんは大変だったろうねぇ。と思う小町である。

「ほら、ついてきな。ただし、道草代わりにあんたの話を聞かせて貰うよ?」

「……多少ならな」

「! ……それじゃぁ、向かうとしようか」

「…………」

 それは自分でも分かっている。
 会話の切り出し方が分からないだけで、話そうとは思っている。
 ただ、悩めば悩むほど顔が怖くなり、誤解を招いているだけなのだ。

 つまり、顔やら元の性格やらで、色々と損している景清であった。
830 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/21(土) 23:50:33.36 ID:ZYIVhLUQo

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

     『飛びたてぬ、竜』

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
831 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/21(土) 23:53:06.65 ID:ZYIVhLUQo

〜〜〜幻想郷・東の原〜〜〜

「…………」

   ザッ……ザッ……ザッ……

 零児達が来てから、三日目の夜。
 ここは辺りに民家も無く、ただただ月明かりだけが照らす、野原。
 その闇に溶け込むように森の中で息をひそめる影一つ。

「…………」

「わはー、見つけたー♪」

「! そこか……!」シュッ

「残念、外れ〜」ガリッ

「ちっ」

 後ろから聞こえてきた声相手に、落ちていた小石を投げ付ける男。
 だが彼は投擲物による攻撃を日常的に行わないため、易々と避けられる。

「逃げても無駄よ、人類さん。貴方の血の匂いがぷんぷんするわよー?」

「…………」ガサッ

「鬼ごっこかしら〜?」ワハー

   ガササササササ
     ガササササササ

 ついてくる、闇。
 恐ろしい物を形容しているかと思われるが、違う。
 本当に闇その物が、彼の後を付き纏っている。

「……」タンッ

「上〜?」フワッ

「……」タンッ

「左〜」フワッ

「……」タンッ

「下〜」フワッ

「……」タンッ

「左〜♪」フワッ

 野にある木に飛び乗り、弾けるように横へ飛ぶも、闇は狂いなく追ってくる。
 理由はやはり、闇が言った通りに血の匂いを追われているからか。

 左の脇腹から流れる、生きた人間の赤い血。

「人を食べるのって、やっぱり面倒ね。怪我してるのに、こんなに元気なんだもん」

「…………」タタッ

「でも人のお腹を空かさせたのだから、責任もって食べられなさいよねー」

「…………」タタッ

 この傷は、闇と遭遇する前……花畑にいた悪鬼にやられた傷。
 怒りをぶつけられるかのような、弾幕の嵐から逃げる際に負ってしまったもの。
 それ故に本来の動きが出来ず、この程度の速さの敵を撒けなくなっている。
832 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/21(土) 23:54:50.05 ID:ZYIVhLUQo

「…………」トンッ

「あら、こっち来て……」

「……死ね」ブンッ

「っ!」

   ガッ

 なら、迎え撃てばいい。
 ストライダーとして暗躍していた頃の勘が、そう告げる。

   リッ

「!?」

「わはー♪」

 だが、すれ違い様の袈裟斬りを、避けられた。
 いくら弱っているとはいえ、プラズマ光剣が掠った事に、驚く。
 ……いやそれ以前に、手ごたえが違う事に気づく。

「くっ……」タンッ
     闇
「貴方の血、美味しいわね〜?」

「…………」

 ほんの僅かに感じた、違和。
 闇へと袈裟斬りを放ち重なった瞬間、その刀身部分が見えなくなった。
 そして闇から出た瞬間……刀身が伸びた。

「まさか……」

「ああ、やっぱり、タベタイ」クワッ

「……セェエイッ!」ブンッ

 否、伸びたわけじゃない。
 だが見間違いでなければ、闇を通る瞬間……

   ガリッ

「!」

「どこ狙っているのかな〜?」

「……やはり、消えていたか」

 プラズマの部分が消えている。
 先程は消えたプラズマが再び出る瞬間を、伸びたと見間違えただけのようだ。

「そんな細い棒なんか振り回しても、当たらないよー?」

「ちっ」タンッ

「ニガサナイー」ワハー

 しかしその瞬間は、普通なら見られる物ではない。
 その違和に気付けるのは、彼がエリートと呼ばれ、唯一の生き残りになれた実力ゆえの賜物。

「…………はぁ…………はぁ……」

「あら、やっと疲れてきたの? 私も涎が止まらなくなってきたから、チョウドイイカシラ」

「くそっ」

 だがそれでも、傷を負っていれば体力は余分に減る。
 昼間からの連戦もまた、体力の浪費に拍車をかけてしまっている。
 実際の所は昼間八割、今二割だが。
833 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/21(土) 23:56:58.60 ID:ZYIVhLUQo

  ガサガサガサ
   ガサガサガサ

「はぁ…………」

「…………」グギュルルグルルー

「!?」

「……ワハー♪」

「……。……!」

 このまま逃げ回っても、埒が明かない。
 自分は弱り続け、かつ血の匂いで位置がばれているという劣勢。
 闇の正体が何か分からないが、この状況では長引かせるだけ不利。

 ならば、先に見える樹の影から、相手が来るのを待って仕留める。

「……」タンッ

 樹の後ろに回り込み、剣を手に待ち構える。
 闇は2m程の球体。
 樹を透過しようと、左右にずれようと、見てから対処出来る。

「……来い」グッ

「イッタダッキマーッス!!」

 普段なら片手で振り回す剣を、両手で握る。
 闇に樹が呑まれ……!

  ゴンッ

「ウゲッ」

「!?」

「うぅー……」

 鈍い衝撃音が響く。

 樹を呑み込んでいた闇は消え去り、彼が元来た側から、呻き声が聞こえてくる。

「…………」

   シーン

「…………」ソロリ

「人肉……牛肉……うへへぇ……」ピヨピヨ

「…………こんな小娘に」

 遠巻きに裏側を覗くと、そこには金髪の少女が気絶していた。
 その姿を見て、苛立ちを覚える。
 何故今日は、こんな奴らから何度も逃げねばならないのかと。

「…………」ブンッ

 昼間目覚めた時、目の前にいた緑髪の悪鬼に突然襲われ、こんな傷を負わされる。
 その悪鬼もまた、少女の形をしていた。
 その傷を癒す為に隠れ、夜に差し掛かった頃、今度はこの闇の少女に襲われる。

「…………」スッ

 そう、少女の形。
 正しく言えば、子供の形か。
 共闘者の助力があったとはいえ、あの戦いを……冥王を葬った自分が、こんな形から逃げていた事実。

 虚しさが、過る

「……死ね」シュッ

 ガシッ

「おっと、それ以上はいけないな、飛竜君」
834 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/21(土) 23:59:12.60 ID:ZYIVhLUQo

「……! コマンドー……」

 首に向かって剣を振ろうとしたその時、手首を掴みながら彼の名を呼ぶ男が現れる。
 そう、彼の名は……

「I am captain commando. だ、ストライダー・コマンドー」

「…………なぜ止めた。邪魔をするなら貴様とて……」

「いやなに、事情知らないからさ」

「…………」イラッ

 夜遅くだというのに、馬鹿に透き通った大声で自己紹介をする。
 キャプテンコマンドー……飛竜の現上司であり、影の秘密警察機構、コマンドーチームのキャプテン。
 そして名を呼ばれた男、飛竜……コマンドーチームのエリート新人である。

「それに、入隊の時に話したはずだ。……例え悪人でも、私達の手で殺めるのは最後の手段だと」

「…………」

「重大な罪を償わせるのに死は最も手軽だが、時にそれは逃げの一手にもなる。とね」

「……許諾した、覚えはない」

「だが、拒否された覚えもないな」

「…………」

「だろ? 飛竜君」

「……ふんっ」シュン

 掴んでいる腕を振りほどき、光剣をしまう。
 しれっとした物言いではあったが、腕が微動だにしない程の力を込められていた。
 それと物言わせぬ圧を放たれていたのに、物怖じしていないだけ彼の場馴れ具合が窺える。

「……要件は」

「呼出には、応答してもらいたいね。ただでさえ今は、次元を超えてしまったかもしれないというのだから」

「慣れ合うつもりはないと、言ったはずだ」

「私だって、慣れ合わせるつもりはないさ。ただ、チームとして、最低限情報の共有をね?」

「…………俺は特に持ち合わせていない。強いて言えば、ここはうんざりだ」

「……ふっ。ほら、応急キットだ」スッ

「…………ふんっ」

 上手く扱われている気がしない事もないが、無用な詮索をしない上司さんには従う。

 受け取った応急キットから、手慣れた様子で薬品を選び、傷を手当てしていく。
 その間、キャプテンは金髪の少女を覗き込んで考え事だ。
835 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/22(日) 00:00:34.36 ID:TBmhZLSyo

「…………」

「終わったぞ、キャプテン」

「そうかい。……実はこっちも、情報はほとんど持ち合わせていないんだ」

「……気付いたらここにいたのか」

「君もか。……惑星エリクールの調査を行っていたはずなんだが」

「……ロザの砂漠だ」

 考え事とは、今回のこの出来事。
 気を失った記憶はあるが、その後どうやってここに来たのか分からない。
 そもそも、二人は何百光年離れた惑星にいたはずなのに、小型の通信機で居場所が分かるほど近くにいたのだ。

 どうにも、あの時と近い匂いがする。

「うーん……」

「……こいつはどうする」

「ああ、一つだけ確認だ。……動機は何だと思う?」

「……腹を空かせていたようだ。人を喰うらしい」

「…………妖怪さんかな? 君の血に誘われた、と」

「…………」

「それじゃ、長居は無用だね。行こうか」

「……はぁ」

「私に捕まったのが運のつきさ、飛竜君。さ、まずは話の分かる相手が居る場所を探そう!」

 何にせよ、情報収集から始めるのが鉄則。
 もしあの戦いと同じく次元転移を行っているならば、帰る手段を探す必要がある。
 それを知るにしても、まずは動かなければどうにもならない。
 その身その足で集める。それが、

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


  『I am captain commando!!』


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
836 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/22(日) 00:07:22.06 ID:TBmhZLSyo

以上で投下を終わります。いつの間にか乗っ取られてた


pxzは、三社の有名どころを持ってきているようですがどうなるかは、まだまだ分かりませんね

……カットイン以外は期待度高いですけども



さて次回は『四日目の夜+五日目の朝』です。おそらく、火曜辺りになると思います

それでは、失礼します
837 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/04/24(火) 06:22:28.94 ID:3DEQxAGAO
投下お疲れ様ですー!

飛竜とキャプテンのコンビ、かっこ良くていいですねぇ

PxZに零児、小牟を含むナムカプ勢が多数参戦するのを正座しながら待っていますです
838 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/24(火) 09:48:37.15 ID:yEmO788DO
お疲れ様!
影清さんにエレキギターとか持たせたら、ヴィジュアル系の人に見えそうな気がww

うろたえーき様も、それはそれで魅力的。携帯的なやつは、卒塔婆フォンとかいう名前だったり?

面妖…確かに安駄婆様の周りにはお面がたくさん浮いてた様な…。

こまっちゃんは今回、最後以外困らされてばっかりだったなww

飛竜さんは災難だったんだな…寝起きにいきなり幽香サマの不意打ちとか…よく生きてて下さった。

危なかったなルーミア。多分キャプテンが来てくれなかったら終わってたぞ。

キャプテンさんは温情家だな。ありがたい事だ。


ところで、乗っ取りって何の話で?
839 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/25(水) 16:56:14.78 ID:PApCRtdHo

こんにちわ。レス、ありがとうございます

なんだか一日遅れがデフォになりそうな……いかん

それはともかく、『四日目夜』および『五日目朝』を投下します

どうぞっ
840 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/25(水) 16:59:40.96 ID:PApCRtdHo

〜〜〜博麗神社・夕方〜〜〜

  ソロリ……ソロリ……

  ソロリ……ソロリ……  ヒョイッ


華仙「…………久米の言った通りね」キョロキョロ

 夜の博麗神社に、ピンクの侵入者が現れる。
 気になる彼……有栖零児が風邪だと聞き、やってきたのである。
 とある計画を持って。

華仙「萃香はいないし、今日は静か。……後は本当に彼が寝ているかどうかを……」

??「……彼とは、誰の事だ?」

仙華「最近、霊夢のそばにいる人間。赤いジャケット羽織った、傷の男よ」キョロキョロ

?児「……俺の事か?」

仙華「え……っ!?」ビクゥッ

 そんなお目当ての人間が、真後ろにいた。
 それも明らかに、ぴんぴんしている。
 というか、いつの間に後ろにいたのか。

零児「何の用だ?」

仙華「え……あ、ええ。貴方のお見舞いにと思って」

零児「そいつは重畳。……それで、何の用だ?」

仙華「えー……(通じないわよね……)」

 風邪と聞き、これぞ好機と見た仙華。
 お見舞いと介抱、それから霊夢からの人望を見せつければ、彼も多少傾くはず。
 そう思っていたのが、初っ端から狂った。

仙華「……(どう切り返すべきかしら。とりあえず、霊夢の知り合いだと……)」

霊夢「どーしたの、零児さん。……あら、仙人」

仙華「(流石よ、霊夢!)こんにちは、博麗の巫女。お邪魔しようと思っていた所でして」

零児「……知り合いか」

霊夢「ええ、修行の相手をしてくれる仙人よ。紹介するわ。こちらは、零児さん。――」

 そこに、霊夢が助け舟を差し出してくれた。
 そのまま、彼が異変解決を手伝ってくれているとか、妖怪の退治屋だとか、外の人間だとか。
 仙華が既に知っている事を、楽しそうに話し始める。

零児「…………」

仙華「…………」

霊夢「――なの。……って、どうしたの、二人とも?」

零児「……ふっ、なんでもないさ。……既に知っているようだが、改めて。有栖 零児だ」サッ

仙華「茨 華仙です。どうか、お見知りおきを」グッ

零児「ああ、お手柔らかにな」

 その様子に、零児の厳しい表情が解れる。
 警戒されるのは仕方がなかったが、すぐに解いてくれて助かった……と思ってしまう華仙。
 この仙人は抜けている部分があるのが、御愛嬌というか何というか。
841 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/25(水) 17:03:26.21 ID:PApCRtdHo

霊夢「それで、今日は何の用かしら?」

華仙「あ、ええ。風邪を引いた人が居ると聞いて、お見舞いに」

霊夢「ならご足労ね。零児さんならとっくに治ったわ」

華仙「……そのようで」

魔理沙「おい、霊夢。零児はどうし……あ、仙人」

華仙「こんにちは、魔理沙。貴女も元気そうで」

「ん〜? どうしたんじゃ、魔理沙〜?」

魔理沙「ああ、仙人が来てるんだよ。零児達が捕まってる」

小牟「なんじゃとぉーう!」バッ!

M.O.M.O.「あの、どうしたんですか、シャオムゥさん……?」ヒョコッ

  ワラワラガヤガヤ

華仙「…………次から次へと」アセアセ

 華仙の登場に合わせて、部屋の中から続々と顔を出してくる面々。
 一昨日見た時は確か七人いたはずだが、その倍ほどになっている。
 外見もチグハグで、もはやどういう集団か……は、最初から分かっていないか。

華仙「……霊夢。ここは狭いので……」

霊夢「分かってるんだけど……部屋の中にいる方に言ってくれない?」

零児「……俺はただ、便所に行っただけなんだがな?」

華仙「(あ、だから後ろにいたのね)」


〜〜〜博麗神社・居間〜〜〜

華仙「……それはまぁ、大変でしたね」

小牟「大変っちゅーか、いつも通りっちゅーか」

 あの後も青い大人の男性が覗き込んで来たり、部屋に入ってみると怨霊……もとい、不死武士がいたり。
 部屋の隅で立っている忍者のような人や、なんだか綺麗な女性も二人、どんだけ増えてんねん。

 それから知り合いを一人。
 萃香程じゃないけど、会いたくなかった相手だ。

沙夜「英雄業も大変ね、ぼーや」

零児「そんな業界、まっぴらごめんだ。そもそも、お前のような奴の所為だろう」

沙夜「あら、うちは週休二日制よ。ブラックじゃあるまし」

M.O.M.O.「え、じゃぁ……何曜日がお休みなんですか?」

沙夜「月曜日と木曜日よ、モモちゃん」

零児「…………」

仙華「(ブラック?)」

 そんな中へ、霊夢と魔理沙、そして何故か小牟のお墨付きをもらい、輪の中に入れた華仙。
 そのまま彼らが行っていたであろう報告会に滑り込む。
 途中からのせいでおいてけぼり感があるが、そこは我慢の為所だ。
842 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/25(水) 17:10:47.60 ID:PApCRtdHo

キャプテン「私達も休みはないが、それはそれで充実しているから構わない」

飛竜「……話の腰を折るな、女狐」

沙夜「あら、ごめんなさいね。……それで、金髪の彼の行方は?」

神子「それがさっぱりだそうで。山の妖怪は見ていないようですし……」

M.O.M.O.「スタンさん……無事だと良いのですが……」

零児「あいつなら、余程の事がなければ大丈夫だと思うが」

小牟「一緒に居るんが、おそらくきっとたぶんメイビーバハップスで、こいしじゃからのぉ……」

 スタンが行方不明になった事を、ミスティアの屋台から帰る際に妹紅から聞いた小牟。
 妹紅の証言から、連れ去った(?)犯人はこいしと断定した。
 のだが、そんな事をせずとも分かっていた妹紅が捜索中だそうだ。

魔理沙「? こいしが一緒だと、不安なのか?」

小牟「現実はどうか知らぬが、わしが知る限りじゃと、やや不安を覚えるんじゃよな」

景清「……小娘に後れを取る、童ではない」

クリノ「小娘かはともかく、おいらもスタン君がやられるとは思わないな」

華仙「……(貴女がここにいるとは思いませんでしたよ」ヒソヒソ

小町「……(こっちにも、色々あるのさ」ヒソヒソ

チルノ「なーれいじー。そのスタンってやつ、強いのかー?」

零児「ああ。炎を自由に操るうえ、剣術も相当なものだ。チルノだと、相性が悪いかもな」

 ただ、幻想組はこれまで同様に、必要以上の心配はしない。
 東方キャラ達を知るがゆえに、小牟だけが揺れやすくなっているのは相変わらずだ。

魔理沙「あー、そうでもないぜ。そいつ、レーザー以外ならなんでも凍らせれるし」

零児「……ほぉ」

チルノ「そうだ、あたいに凍らせられない物はない!」エッヘン

小町「今の今、レーザーが無理だって言われたじゃないかい」

チルノ「はれ?」

華仙「……それはまた、興味深い話ですね」

沙夜「…………」

小牟「まぁ、これ以上心配しても栓無しじゃ。ケンと同じでの」

仙華「…………」ダラ

 だがそれは、確認できていない他の仲間も同じ事。
 だから確認程度で終わりにする。
 悩み過ぎて体調を崩せば、今日の二の舞なのだから。

クリノ「それ以外と言えば、リュウさんが寄ったぐらいかな?」

零児「幻想郷を周っている、と言っていたな。アリスの世話になっているらしい」

魔理沙「それなんだよ。アリスの家であんな果物貰うわけないし、あれ……どういうことだ?」

沙夜「山で神様に貰ったとか言っていたわよ? ね、モモちゃん」

M.O.M.O.「はいです。なんでも、双子の神様からの贈り物だそうです」

小牟「秋姉妹かの〜。……褒めでもしたんかの、あの天然男児わ」
843 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/25(水) 17:13:14.29 ID:PApCRtdHo

霊夢「……誰?」

零児「神略異変で戦っただろう。……覚えてないのか」

霊夢「…………居た気がする?」

小牟「深刻なオリキャラ症候群じゃ」

 『オリキャラ』とは、秋の双子の神様の事を指す。
 原作『東方風神録』の一面に居たのにもかかわらず、オリ(ジナル)キャラと呼ばれた事が発端。
 今では(四季)折(々の)キャラ(クタ)として扱われてもいるが、幻想郷でも影が薄い様子だ。

神子「……そう言われたくはありませんね」

小町「あたいはどっちでもいいけどね〜」

キャプテン「それならそれで、隠密活動が出来るじゃないか」

華仙「……なるほど」ポン

零児・景清・飛竜「「「………………」」」

魔理沙「怖い。なんかこの三人怖い」

 彼女達からすれば、「秋祭」さえあればいいから構わないのだが、やはりああはなりたくないものである。

 忘れ去られた物が来る幻想郷で忘れられるという事は、滅びを意味するのだから。

景清「……零児よ。込み入った話がある」

零児「なんだ、景清」

景清「……『壁』の事だ」

沙夜「あら。カゲッキーからその話が出るなんて、明日は槍でも降るのかしら?」

景清「…………」シュッ

魔理沙「ちょちょちょ、自然と剣抜くなって」

 相変わらず冗談を真に受ける景清。

零児「落ちつけ、景清。……それから霊夢。済まないが……」

霊夢「はいはい、分かったわ。……魔理沙、神子、華仙、小町はこっち来なさい。あとチルノも」

チルノ「えー、なんでだよ?」

小牟「”幻想入り”したもんで、秘密の会議じゃ。すのうまん」

チルノ「えーー、いいじゃん、別にー」

M.O.M.O.「ごめんね、チルノちゃん。他のお話なら、後でいくらでも聞かせてあげるから」

チルノ「ぶーぶー」

魔理沙「ぶーぶー」

 氷精は、可愛らしく口を尖らして不満を訴える。
 相変わらず話にろくについて行けていないはずなのだが、のけもの扱いの方が嫌いらしい。
844 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/25(水) 17:14:53.84 ID:PApCRtdHo

零児「便乗するな。それから……壁に耳あり障子に眼ありはよしてくれ」

魔理沙「ふえっ!? べ、別にしてないぜ!?」

沙夜「あん。坊やの事が気になって、この辺りでうろうろとしていたもの、ね」

魔理沙「な、な、何の話だよ! 出鱈目言うな!」

キャプテン「可愛らしいじゃないか。青春を謳歌している感じだな」ウン

魔理沙「だからしてねーって……あああああ!」ダッ

霊夢「……追い打ちね」

 風邪を引いた零児が心配で、結局丸一日無駄に潰した魔理沙。
 その間の行動が丸々筒抜けだった事への羞恥心を煽られ、顔を真っ赤にして逃げ出す。
 正直、ここまでするつもりはなかったのだが……案外黒いキャプテンである。

キャプテン「一番渋りそうな気がしたからね。あれなら、しばらくは戻って来れないだろう?」

小町「あはは、違いない。んじゃあたいは……あー、進退考えなきゃいけないんだった」ズーン

華仙「それでは、私は霊夢達から話を……」

小牟「(後で二人きりで話そうぞ、――――」

華仙「っ!?」ビクッ

チルノ「約束だぞ、もも!」

華仙「え、あ、貴女……」

M.O.M.O.「うん、チルノちゃん」

小町「…………ほら、行くよ」グイッ

華仙「あ、ま、待って下さ……」

霊夢「…………一応、魔理沙は私が見てるから」

零児「頼む。……終わったら、こっちから向かう」

霊夢「はいはい、わかったわ〜っと」ノシ

  トンッ

零児「……コスモス、大丈夫か?」

KOS-MOS「……リカバリーモードから、セーフティモードへ。……はい、大丈夫です、零児」

零児「よし。……頼む」

景清「……閻魔から聞いた話だが。……――」

 怨霊説明中......


 こうして”幻想入り”メンバーだけが残った部屋で、景清から『次元の壁』の話がされる。
 内容はほぼ、映姫が話した事そのまま。

景清「――……これが、我の聞かされた話だ」

零児「……やはり、この世界はパラレルワールドのようなものか」

クリノ「零児達は、気づいていたんだね?」

小牟「守矢の歴史、『幻想郷』や神子の存在……間接的じゃが、そう思わざるを得ん事ばかりじゃったしな」

 自らが居た『物質界』と異なる歴史。
 『幻想郷』という、特異な場所ゆえの違いも捨てきれなかったが、これで決定的となった。
845 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/25(水) 17:17:31.19 ID:PApCRtdHo

キャプテン「それに関しては、『物質界』出身者が分かりやすかった……ということかな」

沙夜「そうでもないわね。私みたいに、つい最近異変から出たばっかりだと、情報がないもの」

零児「どうだかな。だがこれで、相当厄介な事に巻き込まれたのは、確かになった」

景清「うぬ。……いくつもの壁を超えること……それ自体が……」

 それは同時に、巨大な異変の証左ともなる。

 誰が。何の目的で。どのようにして。
 それはまだ分からないが、下手をすればあの戦いよりさらに……。

一同「………………」

小牟「一応参考程度に、壁一枚超えるのに必要な経費はどれほどじゃ?」

沙夜「比較的繋げ易かった『物質界』と『幻想界』で、大阪城ぐらいは建つんじゃない?」

クリノ「どの程度か分からないけど、お城を建てられるほどか……」

沙夜「油揚げが十億個は買えるわ」キリッ

飛竜「……真面目な単位にしろ」

M.O.M.O.「お、お城は『超未来』換算で特一級戦艦程です。……『幻想界』はわかりません……」

零児「規模さえ分かればいい。ほとんど、労力の問題だろうからな」

キャプテン「それを、この人数か……」バサッ

小牟「ぬしら追加分は明日発行じゃろうし、地底に居る分も含めて……どうなるやらの」

 皆が口にしないことだが、やはり今回も後手に回らされている感がある。
 だが相手の置いたシンボルに行くしか当てがない以上、悩んでも仕方ない。
 零児達四人以外は、それ以上のもどかしさを感じているのだから。

キャプテン「……よし、私と飛竜は明日、他に何か異常がないか調べてみよう」

飛竜「……おい、まて。俺は……」

キャプテン「怪我人かもしれないが、その程度どうってことないだろう?」

飛竜「そういう事じゃない……!」

沙夜「それでいいんじゃないかしら。コスモスと連絡が取れるのだし、ね」

クリノ「おいらはこのままだね。……サヤがいることだしさ」ニコッ

KOS-MOS「そうなると私は、このまま待機という事でよろしいですね」

零児「ああ。これと通信回線、繋げられるか?」ガサゴソ

M.O.M.O.「えーっと……はい、これでしたら何とかなりそうです」

小牟「……耳栓か」フッ

零児「失くした事、忘れてないからな」

沙夜「あら、おばあちゃんは何か失くしちゃったのかしら? 痴ほう症?」

小牟「ボケとらんわ、じゃかましい。わしは永遠のピッチピチな765歳じゃ!」

景清「……哀れな」

KOS-MOS「それは十分老人ではありませんか、小牟」

小牟「仙狐基準ならぴっちぴちなんじゃー!」ウガー!

 そんな空気は嫌いと言わんばかりに、流れを変える。
 もどかしいだけで手を緩める程、彼らは平和ボケしていない。
 それが祟って落ちているスタン等の例もあるが、それもまた一興か。
846 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/25(水) 17:34:27.39 ID:PApCRtdHo

飛竜「何故勝手に決めた。俺は慣れ合うつもりはないと……」

キャプテン「君の場合、動いているほうが何かと良いだろう?」

飛竜「…………」

キャプテン「なら一緒にというわけさ。あいにくと、君は今怪我人だしね」

飛竜「……ちっ」

 キャプテンとして、チームを引っ張るのは大切な事。
 モチベーションなんかは、特にね!

沙夜「…………」

クリノ「じゃぁこの事は、内緒……ってことで、いいのかな」

零児「壁の事はな。パラレルの存在であることは、時期を見て二人に話す」

沙夜「すぐでいいじゃないの。情が移り過ぎると、別れが辛くなるわよ」

M.O.M.O.「でも、別れ話を切り出すのは辛い事だって……」

零児「モモ、いい。……その前に一つ、やらねばならない事がある。それが終わってからだ」

 どちらが正しいかなんて、その時にならないと分からない。
 出会いはいつでも一期一会。
 ただ、無責任な事だけはしないと決めている、零児である。

小牟「それは零児めに一任するかの。……んじゃわし、ちーっと華仙捕まえてくる」

零児「何の話かは知らんが、お前も深入りするなよ」

小牟「浅く広くじゃよ」ノシ

キャプテン「…………」

 先に華仙に呟いた時、悪い顔で言っていたがために、すぐに察せられる。
 それを考えると、やはり若者なのだろうか。
 765歳だが、若いのだろうか。


847 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/25(水) 17:39:07.66 ID:PApCRtdHo

〜〜〜博麗神社・外の井戸〜〜〜

小牟「…………」ナデナデ

華仙「…………」ダラダラダラ     バチッ

小牟「ふふ〜ん」コチョコチョ   バチチッ

華仙「……何故」

 追い出されるときに囁かれた耳打ち。
 その呼びだしに応え、一人きりで井戸にいた所に、小牟がやってきた。
 そして伝えられた要件に、正直困惑する。

小牟「ん〜?」モフモフ バチッ

華仙「何故、それで黙っていてくれるのです……?」

小牟「可愛いは正義じゃっ!」キリッ

雷獣(……なのか?)バチィッ

 雷獣――電気をその身にまとい、雷雨を起こす力を持つ、獣。
 その雷獣を愛でさせてもらうだけで、己の秘密を黙っていると言われたのだ。
 訳が分からず、困惑するのは当然の事だろう。

小牟「そもそもわしは、どっかの悪役みたいにそういった駆け引きはせんよ」

華仙「……それはありがたい事ですが、何故私の事を?」

小牟「外で知る機会があったんじゃよ」

華仙「……茨木童子として……?」

 その秘密とは、己が茨木童子であるという、隠し通したい過去。
 ばれたら色々と厄介なことになる、重い枷。
 それをこの狐は分かっているはずなのに、これだけで済ませてくれるとは、到底思えない物だ。

小牟「残念外れじゃ。……それもあるんじゃが、それ以降の話がメインじゃな」

華仙「幻想郷に来てからの……山の四天王として、かしら」

小牟「あー、やっぱりそうなんじゃなー」モフー! バチィッ!

華仙「え……これ知らなかっ……!?」

小牟「察しはついとったがの。じゃのーて、仙人になってからがメインじゃ」

華仙「…………」

 だが、小牟は本気でそれでいいと思っている。
 たかるつもりはあるが、それだって目的はモフモフすることだから。
 ついでに、話のネタが増えたらラッキーだが。

小牟「霊夢に修行つけたり、魔理沙に家を見つけられたり……」

華仙「!?」

小牟「この子が原因っちゅーのを、だまっとったりの〜」ギュー

雷獣(せんかが悪い)バチチッ

仙華「な……なな……」

小牟「…………ぷふっ」

雷獣(何笑ってんだ?)

小牟「やはりぬしは仙人じゃないのぅwww」

雷獣(ああ。顔に出やすいもんな)フンスッ
848 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/25(水) 17:40:54.99 ID:PApCRtdHo

仙華「……悪かったですね、顔に出やすくて。……」

 そんな意図も知らずに、未熟な仙人は考える。
 さきの彼の言動を見る限り、知っているのはこの狐だけの様子。
 ここは一度下手に出て、ご機嫌伺った方が得策か。

仙華「……まぁ、分かりました。……本当に、その、今晩貸すだけ……でいいんですね?」

小牟「うぬっ。雷は落とすでないぞー、雷獣ぅ」スリスリ

雷獣(機嫌よけりゃな)バチッ

仙華「……では、私はこのまま帰りますね。明日の朝、迎えに来るわね」

小牟「うぬ。竿打や久米によろしく言うてくれの〜」

仙華「……ええ」

 ただこれも、最良手ではない。
 そもそも、そうやって『霊夢』を想って行動すること自体が間違いなのだから。
 それに気づけないのは、鬼としての一途な気性が、気質として根底に染み付いているからか。

 忘れたくとも忘れられない、鬼の本分が。


小牟「〜♪ ……見れば見るほどパチ○スっぽいの、ぬし」

雷獣(誰だよ)バチッ
849 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/25(水) 17:42:08.99 ID:PApCRtdHo

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「…………zzz」

「…………」

  カラカラ……トン

「あら。今日もなのね、零児さん」

「……昼間寝すぎたようだ。おかげで目が、な」

「ふふっ。……明日は満月かしらね。……はい、お茶」トン

「すまん。……そうだな、明日か」

「「……」」

 月を見上げ、茶をすする二人。
 外からある程度のインフラが引かれているとはいえ、夜の灯りは月だけになる幻想の空。

「…………異変が全て終わった後になるが……話さなければいけない事がある」

「……さっきの、余所者会議の事?」

「ああ。……お前さんになら先に話してもいいんだろうが、魔理沙と一緒に話さんと、フェアじゃない。……だから、終わった後だ」

 月光の中、星の瞬きと雲の輪郭が、主役を彩る脇役のようにざわつく。

「あいつが取り乱す、そんな話?」

「取り乱すかどうかは分からん。……だが、明日の調子に影響を与えると考えている」

「…………」

「勘のいいお前さんなら、既に察したかも知れんが……報せだけだ」

 それは、誰かの心を表すように。

「じゃぁなんで、先に話したの?」ジー

「……明日以降、神子やチルノが先に知るはずだ。その予防線としてな」

「…………」ジー

 それは、静かながらも確実に。

「……すまん、気を散らして欲しくないと思ってだが……余計だったか」

「……んーん。御気遣い、ありがと。大丈夫、魔理沙には黙っておくわ」

「頼む。……」グッ

 兆候として、彼らに訴えかけてくる。

「……じゃ、私は先に寝るわ。お休みなさい、零児さん」ニコッ

「お休みだ、霊夢」

  カラカラ……トン



「…………」


「…………」カタカタ


「…………くそ……今頃になって、ぶり返したか……?」カタカタ

850 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/25(水) 17:43:06.76 ID:PApCRtdHo

〜〜〜    〜〜〜


「……察しが、いい……?」


「…………私は……ただ…………」


「…………」





 でもそれに、誰も気づけない。

 目出度い、其の巫女でさえも。

 百戦錬磨の、エージェントでさえも。


 それを見守る、彼女でさえも。


851 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/25(水) 17:45:29.73 ID:PApCRtdHo

〜〜〜五日目・朝〜〜〜

  カーンッ! キキンッ

零児「……よし、問題ない」グッパッ

クリノ「問題ないどころか、力が有り余ってる感じだね」ゼーハー

キャプテン「なんだか、引きこまれる感じがしたよ」フゥッ

 いつものように、朝早く起きる異界組。
 示し合わせたわけでもなく、ただ自然と組み手を行う。
 博麗神社の、朝の恒例行事の如く。

小牟「相変わらずじゃのー、零児。病み上がりの鬱憤を晴らすように動くんわ」バチッ

零児「体がなまるのはいただけないからな。……ところで、それは何だ」

小牟「雷獣の子。華仙めのペットじゃな。もふもふなのにこのバチバチ感が堪らんのじゃ」ギュー

雷獣(おかげで寝不足……)フワー

キャプテン「……バチバチなら、私に任せろー!」コレダー!!

クリノ「おわっと」

霊夢「……何やってんの、キャプテンさん」トンッ

 それに対し、お茶を出すのも慣れた。
 掃除もして、朝餉も用意する。他にも……。
 そうやって異変の前に英気を養い、万全で挑む。

零児「すまんな、いつも」

霊夢「いいの。……晴れたわね、今日も」

神子「秋晴れですね。昨日はやや、雲がありましたが」

景清「……陽の光を、再び浴び様とはな……何度も、永久の離れを期待しておるのに」

クリノ「…………」

神子「…………」

小牟「前後で明るさが違いすぎるわ。……まぁ、これで良しじゃろ、零児」

零児「ああ。……いける」

霊夢「気負わないでね、零児さん」

小牟「それわしの台詞じゃぞ、霊夢!」

 最後の異変、怨泉異変へと。



魔理沙「zzz」

小町「zzz」

チルノ「zzz」

沙夜「…………駄目ね、この子たち」

KOS-MOS「地球時間でまだ五時です、沙夜」

852 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/25(水) 18:04:52.97 ID:PApCRtdHo

以上で投下を終わります。雷獣可愛いよ雷獣

ようやく次回地霊殿突入ということで、一面二面同時予定です

……スレも残り150。切りよく一章で終わりそうで……こんなはずじゃなかった……


次回投下は土曜か日曜の予定です

GW終わるまでに四面いければ…………

それでは、失礼します
853 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/04/27(金) 09:38:00.69 ID:eIXPLXdAO
投下お疲れ様です!

いよいよ待ちに待った地霊殿ですねぇ
楽しみにしております!
854 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/27(金) 22:46:41.94 ID:BKiono/DO
お疲れですっ!
風邪とはいえ、半日程度で治してしまうとは…やっぱり零児さんは鍛え方が違うなぁ。

華仙さんにも色々あるんですねぇ。空回り具合の方が面白いけどww

霊夢さんがどんどん可愛く…それだけに、最後の寂しそうな感じがなぁ…。

賑やかなのは良い事だ(笑)

スタンみたいな人も、必要ではあるんだよね〜。

小町さんは素敵美人だと思ってる。仕事の事は…多分大丈夫でしょ。

チルノの後の沙夜さんの沈黙…まさか、アチチルノの出番が?

リュウさんは、今頃あの二人と会えてるのかな?

幻想郷の自然は、賞賛されて然るべき。

秋姉妹は農的に里人達のメイン神様。

嫌がってもちゃんと伝えてくれるんだから、景清さんは親切だな。

すのうまん。どっちかといえば、レティさんな気がする。この場合、すのううーまんか?

ブーイングなのに可愛い不思議。

魔翌理沙ったら手玉に取られちゃってww

あれ?なぜかモモちゃんが大ちゃんに見えてきたぞ?
余りに離れた世界…公式と同人の壁…って事か?

耳栓なぁ…誰かが拾ってて話しを聞いてるとか?

精神年齢≒年齢だと思ってる。

パチルス?ポケモンかな?よく知らないんだよね…。

霊夢さんと月夜を眺める…話が話しでなければ、羨ましいと思えるんだけどねぇ。

風邪が残ったりしてたら、ヤマメさんの時ヤバくね?
戦士のアップは激しいなぁ。

任せろー!バリバリー!

大変だろうに全員分の朝食を用意してくれるなんて…霊夢さんマジ天使。

俺もすっかり起きるのが遅くなったな…良くないとは思っているんだけどね。

さて、地霊殿ではどんな事が待っているやら…。
855 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/30(月) 02:23:55.50 ID:CWd/H5fno

こんばんわ。レス、ありがとうございます

さて早々に投下します。『地霊殿前・一面・二面』です、どうぞ
856 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/30(月) 02:25:40.62 ID:CWd/H5fno

魔理沙「零児は元気になったし!」オイッチニー

チルノ「おう!」サンシー

魔理沙「天気はいいし!」ニーニー

チルノ「うむ!」サンシー

魔理沙「絶好の異変日和だぜ!」サンニー

チルノ「そーだな、白黒!」サンシー

 元気よく話しながら柔軟体操をしている、この二人。
 時刻は七時を少し回った頃。
 全員起き、既に発った飛竜とキャプテン以外で食事を終えた所である。

沙夜「雨の方が、色々と捗るんだけど。ねぇ、坊や?」

零児「一々天候を気にして動くか。……だが、天気が良い方が気分はいい」

魔理沙「べー」

M.O.M.O.「通信回線の状態も良好です。……キャプテンさん、聞こえますか?」

キャプテン『問題ないよ。ほら、飛竜君も!』

飛竜『…………異常なし』

 KOS-MOSとM.O.M.O.との通信回線から聞こえる、二人の男の声。
 彼らがここに来られたのも、この回線のお陰。
 そしてそれがどこまで届くかの確認ついでに、調査を始めたのである。

KOS-MOS「データのバックアップは常に取ってあります。お気をつけて、零児。小牟。レイム。マリサ」

魔理沙「コスモもな!」

神子「おしいっ。……それ、まだ治らないのですね」

小町「……魔理沙はコスモスの名がちゃんと言えないのかね?」

霊夢「もういいのよ、それは。……で、いつになったら来るのかしら」  {}

M.O.M.O.「! 空間歪曲を感知。……『スキマ』です」ホッ

{「遅れて、すまないな、霊夢」}

 噂をすれば現れる、『スキマ』。
 だが中から現れたのは、永夜の異変で戦った式だ。

零児「……知っていたのか、霊夢」

霊夢「昨日、連絡受けたのよ。地底に行くならこれもきっちりしないと、ってね」

藍「そういうわけです、零児殿。それから初めまして、異界の英雄達よ」トンッ

景清「……また、狐の化生か」

沙夜「確かにお仲間がいっぱい、ね」

 藍――紫の式であり、”九尾のモノ”でもある、管理者の右腕。
 紫の冬眠……もとい休憩中に、彼女の代役を務められるほどの実力者。
 そのために色々と押し付けられる、可哀想な従者その三である。

魔理沙「つーことわ、アリスの人形とかもか?」

藍「ああそうだ、魔理沙。それらを用意するために、紫様が奔走されて……{ペシン}……こほん」

零児「……便利だな、『スキマ』」

クリノ「欲しそうだね、レイジ」
857 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/30(月) 02:27:32.37 ID:CWd/H5fno

藍「……ともかく、地底に向かう貴方方四名分の用意させて頂きました」

零児「何? 俺と小牟もか?」

藍「はい。まずは、霊夢と魔理沙だが」サッ

 袖の下から取り出されていく、幾つもの道具。

 霊夢は陰陽球が三つ。
 魔理沙は上海人形に、無色の六角水晶とトランシーバーのような物だ。

M.O.M.O.「!」ソワソワ

沙夜「……ふふっ」ニコニコ

小牟「よーりどーりニトリ、じゃな」

魔理沙「おー、まじだ。……思い出したらムカついてきたぜ」

KOS-MOS「どうかしましたか、マリサ」

魔理沙「三人が三人とも、温泉目当てで私を地底に送りだしたんだぜ」プンスカ

霊夢「…………これ、あんたと繋がってるわね」

藍「流石は『博麗の巫女』。察しが早い」

霊夢「…………」

零児「それで、俺達の分というのは?」

藍「こちらです、零児殿。小牟殿」サッ

 次いで、反対側の袖から差し出される道具。それは……

小牟「……座薬と、宝塔じゃと?」

零児「銃弾だ。これは、どっちがどっちなんだ?」

藍「銃弾は小牟殿。宝塔が、零児殿です」

チルノ「ほうとう? あの食べられる奴か?」

小牟「ちゃうちゃう、どっちかって言うとおでんじゃ。これ、話せるんじゃよな?」

藍「地上では。……異変の中に入った後は、保障出来ませんが」

魔理沙「もし話せなかったら、無意味じゃね?」

藍「万が一の時用に、通信相手の力を込めて貰っている。引きだすぐらいは可能だ」

 用意周到に手を伸ばす。
 それがボーダー商事……ではなく、八雲の名を冠する者の務め。

零児「……こちら零児。聞こえていたら、返事をして欲しい」

?『おお、本当に通じましたよ、聖! ナズー!』

  ワイワイガヤガヤ……ボソッ

?『あああすみません、先の方。こちら、寅丸星です』

零児「…………良好だ、星」

 繋がった先は、命蓮寺。
 後ろで何やら騒がしかったようだが、その声までは聞こえないようだ。

小牟「まー、見たまんまの相手じゃな。……んじゃこっちは……おーい誰かさん、聞こえるかいの〜? オーバー」

??『……中途半端に軍形式でやらなくてもいいんじゃない、小牟』

小牟「まずは形からじゃろ、永琳よ」

永琳『サルまねは余計な混乱を生むだけよ。……さて、無事通信っと……』

 シルバーの口径と一致する銃弾からは、永琳の声。
 こちらは静かに、データを取っているような雰囲気がする。
858 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/30(月) 02:29:42.27 ID:CWd/H5fno

藍「お二人とも、通じたようでなによりです。そちらはどうだ、霊夢。魔理沙」

アリス『大丈夫よ。……で、零児さんの体調は?』

 上海人形からはアリスが、

パチュリー『黒魔術を用いた風邪の治療法は……』

 六角水晶からはパチュリー、

文『悪化しそうね。いやーどうも零児さん。あまり乗り気ではありませんでしたが、射名丸文、けんz』

 陰陽球の一つからは文、

萃香『よーう、人間。酒は飲んでるか〜い?』ヒック

 別の球からは萃香、

文・にとり『げげっ、萃香さん!?(文:忘れてたわ)』

 トランシーバーのような物からはにとりの声が聞こえてくる。
 怨泉異変にて、霊夢と魔理沙をけしかけた妖怪達である。

魔理沙「……五月蠅いな」   ギャーギャー

景清「同感だ、童」   ヒュイ!? ヒェエー!

キャプテン『喧騒が、こちらまで聞こえてきているよ。頑張ってくれ、零児君』  ハハッ!

 夢といえば、夢のコラボレーション。
 酒宴以外で一堂に会することはない面子に、一行はより一層騒がしくなる。

零児「……これで全員か?」

小牟「わしが知る限り、霊夢と魔理沙のパートナーは全員じゃな」

藍「後、もう一人だけ。チルノ、これを凍らせてくれ」サッ

チルノ「はーい、ラン姉貴!」キーーー

小牟「外れたっ」チッ

クリノ「こっちは水晶玉だね。中が空洞になっているようだけど……おお!」

 チルノの冷気が充満し、蒼いオーラを放ち始める水晶玉。
 それはチルノと同じように、周りに冷気を漏らしながら、鼓動する。

藍「よし、いいぞ。これは零児殿がお持ちください」

零児「……”灼熱地獄 “対策か」

藍「流石はご明察で。チルノとの会話も可能ですので、思考の隅にでも置いていて頂ければ」

零児「…………?」

藍「何か気になる点でも?」ハテ

 藍の言い方に、何かが引っかかる。
 だが、それが何か分からない。
 いや、何もかもにお面を着けたような口調のせいで、余計に引っかかっているだけかもしれない。

小牟「ん? 霊夢と魔理沙が三つ、零児が二つで……わしだけ一つぅ?」

霊夢「……ほら」シュッ

小牟「(パシ)おうふ……何のつもりじゃ、霊夢?」

霊夢「紫じゃないなら要らないわ。小牟に上げる。……別にいいわよね、藍?」

藍「……紫様の仰った通りだ。好きにすればいい」
859 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/30(月) 02:31:38.84 ID:CWd/H5fno

零児「…………」

 九尾とは、常に化かして遊ぶモノ。
 壁の向こうだとしても、恐らくそれは変わらないだろう。
 なら、一々突っ掛かる必要も、時間もないと判断する。

景清「うぬら、時は良いのか」

魔理沙「急かすなって、カゲキヨ。でも確かに、半刻過ぎてるわ」

{ 藍「私の所為だな、済まない。……それでは、健闘をお祈りします」ペコッ  }

零児「……行くか」

 その相手からの贈り物も受け取り、準備は整った。
 一行が向かうは、人里より更に西側。
 地底へ続く、大洞窟の入り口だ。

小牟「うぬ。留守を頼むぞ、皆の者」

神子「ええ、行ってらっしゃい」

M.O.M.O.「行ってらっしゃい、零児さん! 小牟さん! レイムちゃんに、マリサちゃんも!」

魔理沙「ちゃんづけ!?」

チルノ「……変か?」

小町「今更だねぇ。……さて、何すればいいのかねぇ……」

沙夜「あら。何の話かしら、コマチ?」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜西の野原・地底の洞穴〜〜〜

零児「……モモ、コスモス。聞こえるな?」

M.O.M.O.『はい、聞こえています。音声もはっきりです』

 通信回線の状態を、念入りにチェックする。
 昨日話しあった事と、E・Fでの経験からの判断だ。

霊夢「んでそっちは、文」

文『ええ、勿論。ここまでは当然でしょう』

萃香『前回と同じだもんねぇ』

にとり『問題はそこから……って聞いてるけど、どうしてだい、魔理沙?』

魔理沙「この異変って、結界が張られてるんだが……その関係らしい」

星『……中でも無事、繋がると良いのですが』

小牟「考えても仕様がないの。足を踏み入れれば分かる事じゃ」

 対し、紫の術を知る者は案じない。
 というのも、実はこの異変に対してあまり危機感を抱いていないから。
 そこには一種の、期待と慢心があるからだろうか。

永琳『こっちでもきっちり観測しているから、気にせず入りなさい。式、いいわね?』

藍『確認するまでもありませんよ。……どうぞ、零児殿』

零児「……チルノ、合図しろ」

チルノ『ゴー!』

霊夢「溜めなさいよ……」フワッ

 それが吉と出るか凶とでるかは、まだまだ分からない事だ。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
860 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/30(月) 02:33:44.38 ID:CWd/H5fno

〜〜〜地底へ向かう洞・幻想風穴〜〜〜

零児「……この岩山が地底に続く道なんだな、二人とも?」

魔理沙「ああ、この岩山だぜ」シャンハーイ

 結界を抜け、踏み込んだ地は暗い暗い洞穴。
 普通の人が入り込まないこの穴は、自然の姿そのままに存在する。
 地の底へと続く、岩だけの世界だ。

小牟「あーあーこちら小牟、聞こえとるかー?」

永琳『ち……とま/ザッ/、い/ザザッ/だから……整中』

霊夢「繋がる事は繋がったようね」

永琳『……―う? これでいいと思うん―けど』

零児「まだ少しノイズがあるが、言いたい事は十分伝わってくる」

 そこで早速、繋がるか試す。
 怨泉異変では、霊夢と魔理沙が妖怪達に誑かされてこの地の奥へと向かった。
 その際、その妖怪達から『通話できる武器』を持たされていたのだ。

萃香『いえーい天―、河童、聞こえて―?』

にとり『――いっ!? なんでこっちなんです―?!』

零児「遊ぶのはほどほどにしろ。……モモ、コスモス、聞こえるか?」

 ……………………

小牟「どうじゃ、零児」

零児「……うんともすんとも言わん。チルノ、モモ達はどうしてる?」

チルノ『ももが―いじの事呼ん―るな。返事し―!』

魔理沙「通じないもんは仕方ねーだろ。……でもこれで」クックックッ

霊夢「…………」

 それを再現するために、今回もそれぞれの道具を渡される。
 案の定妖怪達とは通信でき、モモ達とは繋がらなくなってしまった。
 その事を既に聞いていた零児含めた四人は、対して驚かなかったが。

藍『まぁ、―ばらくはこれでも大丈夫でしょう。地――橋に着くまでには―とかしますの―』

霊夢「そうね、どうせそこまでは余裕でしょ。行きましょ、皆」

零児「ああ。先は長いからな」

魔理沙「疲れたら言えよ? 私の箒に乗せてやるからさ〜」

  ヒューーーー

零児「お前さんが言う事じゃないな」スッ ガリッ

  トンッ

???「!」

  シュー……

小牟「キャッチ、ユー!」ガシッ

???「!?!?」 ズササー

 天井から降って来た、桶。
 中から緑のモサモサが見えるそれを、嬉々としてキャッチする。
861 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/30(月) 02:36:20.55 ID:CWd/H5fno

魔理沙「……なんかもう、見なくてもいいのな」

零児「風きり音がしたからな。それより……本当に小さいんだな」

小牟「桶に入る程度の幼女じゃー」スリスリ

???「!! ―!」ジタバタ

霊夢「キスメ、ねぇ……?」

 キスメ――釣瓶落としであり、片手持ち程の桶にすっぽり収まる大きさ。
 高い所から自身を落とす他に、鬼火も落として人間を驚かせる。
 その隙に首を刈り取り持ち去るという、妖怪らしい妖怪である。

零児「あんまり深くまで入ってないんだが……早かったな」

アリス『確―前は、祭り―あるからどーたらって言って――がするけど』

小牟「確かヤマメが言うておったな。つまりー、テンションあげあげ?」

キスメ「――……離せー!」ジタバタ

小牟「キャァァアアシャベッタァァァアアア!!」パッ

萃香『はっ――はっ。その程度で驚―なんて、狐もまだま――ね』

小牟「ネタじゃバーロー。……ヤマメは居らんようじゃな」キョロキョロ

 彼女は原作において、喋った所を見られていない妖怪。
 口数が少ないのか、はたまた喋れない妖怪なのか……。

キスメ「……ちっ……」シュッ

魔理沙「あ、逃げた。……いいのか、放っておいて?」

霊夢「あの程度なら片手間でしょ。それより小牟、髪の毛燃えてる」

小牟「ふぇ? ……ぎゃあああわしのヘアーが!」ブンブンッ

零児「(……グレイズ扱いなのか?)」

文『何―ともかく、―く先に進―ない?』

霊夢「そうね。……妖精とか岩の駆除は私達に任せてね、零児さん」

零児「頼んだ、三人とも」


   青年少女行進中......


小牟「……地上の灯りは見えんくなったの」

零児「暗闇だが、地底側が仄かに明るいな」

萃香『ま、当然だ―。妖怪が住ん――るんだし』プハー

 洞穴に入ってから、数十分。
 空を飛べる三人の導きの元、予定より早く降りられている。
 それでもまだ、入り口部分の半分程しか到達していないのだが。

魔理沙「しかしこれ便利だな、にとり」ゴシゴシ

にとり『ふふーん。前の―省を活かして、更にガーツの案も入れた改良――よ!』

零児「そいつは重畳。……こっちのメガネと合わせて、良い暗闇対策になった」

霊夢「でも、盲点だったわ。灯りつけて飛ぶから、狙われてたなんて」

小牟「サバイバルじゃ基本中の基本じゃぞ、霊夢。灯りは的、言うてな」

零児「……実戦だがな」

 暗闇の中、灯りを点けずの行進。
 一応光る妖精が居るのだが、それらはにとりの『オプティカルカモフラージュ』のお陰で見つからず。
 そのおかげか、入り口付近では多少あった妖精や弱い妖怪の攻撃が殆ど止んだのだ。
862 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/30(月) 02:38:13.47 ID:CWd/H5fno

星『お二人――当に慣れていらっしゃい―すね。暗闇の中を―くのは、私達でも怖か――という―に……』

零児「…………まあな」

魔理沙「このままずーっと岩だけ相手にすんのも、それはそれでつまらないけど」

霊夢「小牟の予想通りなら、ヤマメが出てくるんでしょ。……あいつ時々地上出てくるのよね」

にとり『あい―らは嫌いだ―。川を汚して―くんだもん』

  ………………め…………やー…………

魔理沙「それは前にも聞いたぜ。……ん?」

小牟「声が聞こえたの、奥の方から」

零児「妖精の物とは違ったな。……まだまだ遠いようだが」

星『気をつけ――ださい、皆さん。土―蛛は人に対して―極的に――』

霊夢「言われなくても。…………存外警戒してるのね、妖怪寺住まいなのに」

魔理沙「それはヤマメが悪いんだぜ」ケラケラ



 何かの声が聞こえてから、しばらく。
 下層へと続く坂がやや緩くなり、仄かな明かりの正体であった提灯が見えた。
 どうやら、地下都市へと続く道に着いたようである。
 そこから、先程まで辺りに漂っていた妖精の気配がぴったりと止んでいる。

零児「……道が二手に分かれているぞ」

魔理沙「へー、ここってそっちに道あったんだな」

パチュリー『……? 何―事?』

小牟「零児めが別方向の道を見つけたんじゃよ。そっちにも提灯が掛っちょる」

霊夢「向かうのはこっち。それから、そろそろ出るはず」

 ……たろくん…………ちー…………てま…………

小牟「確かに、声も大きくなっちょるの。……ん?」

 先程聞こえた声が、より大きく聞こえてくる。
 それは霊夢が指さした方角から聞こえてくるのだが、どこかこう……合わない声だ。

アリス『何で――ら、不快係―が上がっ―わ』

魔理沙「は? 何言ってんだよアリス?」

零児「不快とまではいかんが、同感だ。……聞いた覚えがあるしな」

小牟「やはりか。わしもそれっぽい予感がひしひしと伝わってきおる」

藍『まさ―、敵……―え、味――しょうか?』

零児「まだ断定は出来ん。……それを確かめる」

萃香『えらそーに言――るけど、前に行―だけだよ―〜』



  やー…う、たろく……こ触ろう……てるのよー いい…ろーぐ……へへ

 徐々に大きくなる声に、段々呆れ顔になっていく零児。
 その声の発信源で、何をしているのかを勘で気付いた霊夢も同様に呆れる。
 魔理沙だけは、それに気づいていないようだが。
863 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/30(月) 02:39:28.50 ID:CWd/H5fno

霊夢「…………あー」

零児「見えたのか?」

霊夢「…………見えたわ、うん」

小牟「あのちびすけめ、呑気になにやっちょるんじゃ」

魔理沙「んー? ちっこい奴が……ヤマメと遊んでる??」

????「うひゃひゃひゃ」

ヤマメ「あはは!」

永琳『……誰、――下品な笑い―』

小牟「たろすけ、わしらの仲間じゃ」

 洞窟に木霊する笑い声。
 その声の主たろすけは、零児達と共にかつての戦いを超えた童。
 容姿は霊夢達とほぼ同年代の男子であり、ただの人間である。

小牟「おい、たろすけ。おぬし何しとるんじゃ?」

たろすけ「ん〜? ヤマメちゃんとデートだぜぇ……って、誰だ姉ちゃん達?」

零児「いつもの通りか。俺はありs……」

たろすけ「おっさんには聞いてないぜ。そっちの可愛子ちゃん達の方さ〜」

魔理沙「……」ゾワッ

零児「……だろうな」ハァ

 だが景清が認めた程の男児であり、生きながら地獄めぐりを制した事もある。
 その根性はどの仲間にも劣らないどころか、スリルを楽しむ程度の余裕がある程。

ヤマメ「たろちゃん……」

小牟「ここはわしに任せい。わしらはこれk」

たろすけ「あ、ババアもチェンジで」

小牟「#」バッ

零児「落ちつけ、小牟。こういう奴だっただろ」

霊夢「……え、これ改変じゃないの?」

小牟「……まぁ、大体あっとるよ」

 だが同時に、若い女性に対する下心が、仲間の中で最も強い。
 それはもう、これが理由で地獄送りにされたほどである。
 しかも、そうだというのに治っていないほどの、筋金入りだ。

たろすけ「へいへい、姉ちゃんたち〜」HEY!

魔理沙「…………まじで?」

零児「本当だ。……全く、久しぶりだというのに」フッ

魔理沙「! ……んー、でもやっぱなー」

チルノ『…………どう―うことだー?』

藍『チルーは気にしなくて―い』

ヤマメ「で、本当にどこに行くつもりなのかな? お祭り?」

 対し、ヤマメ――ふんわりとしたスカートに、黄色い六つのボタンと紐がついた服を着る妖怪。
 その姿は蜘蛛を彷彿とさせるが、その実彼女は『土蜘蛛』と呼ばれる古参妖怪の一種である。
 性格は明るく気さく。
 その為か、地底の妖怪の間では人気者で、良き話し相手になっているようだ。

霊夢「……その先の、灼熱地獄よ。そこで調子のってる烏を懲らしめにね」
864 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/30(月) 02:41:49.22 ID:CWd/H5fno

ヤマメ「あれま、あんな奥まで? よくやるわねぇ、あんたたち」

たろすけ「あっこって確か、さとりのねーちんの所だろ? 結構深いぜ?」

小牟「じゃから、時間に余裕持って来たんじゃよ」

アリス『体調―ね』

 その能力は『病気(主に感染症)を操る程度の能力』。
 健康な人間であろうと病気に冒し、弱った所を……喰う。
 のは好きだが、そんなに頻繁に襲ったりはしない、比較的危険度の低い妖怪だ。

たろすけ「……んー……じゃぁさっさと行きな。おいらはヤマメちゃんとデート、だからさっ」

零児「いいのか、通して」

たろすけ「おっさん連れて祭り行くんだったら引っかけたけど、行き先が違うんじゃなー」

零児「…………」

魔理沙「おっさんて……」

ヤマメ「あはは、まぁ気にしなさんなって。好きなだけ通って行けばいいからさ」

霊夢「そ、ありがと。お言葉に甘えて先に進むわ」

ヤマメ「はいはい、気ぃつけて〜」フリフリ

 そんな二人は、邪魔することなく通してくれる。
 これはむしろ、デートの邪魔をするなということだろうか。

魔理沙「…………ま、いいや。零児が気にしてなさそうだし」プイッ

ヤマメ「……ああちょっとまった、お兄さん」

零児「? なんだ」

ヤマメ「」チョイチョイ

零児「…………」

 歩き出した所で、零児だけに呼びかける。
 手招きをされた所に、一歩だけ近づき様子をうかがう。

ヤマメ「……何の病気か知らないけど、さっさとお医者さんに掛った方がいいよ?」ボソッ

零児「…………」

ヤマメ「自覚あるなら、尚更にねぇ? 子供達が心配するよ〜?」

零児「……忠告は有難いが、勘違いだ」

たろすけ「…………」

 告げられた診断結果を、やや刺のある態度で流す。
 それはまるで、余計なお世話だと言っているかのよう。

霊夢「……? どうしたの、零児さん」

チルノ『―いじー、もしかして―だ風邪なのか?』

零児「気にするな。それより、先を急ぐぞ。少し慎重に歩きすぎた」

小牟「うぬ。ペースを上げんと、BGMが早送りになってしまうの」

魔理沙「何の話だよ、それ」

星『…………』
865 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/30(月) 02:43:18.60 ID:CWd/H5fno

たろすけ「……なんでわざわざあんなこといったんだよ、ヤマメちゃん。自殺願望者だろ、あれ?」

ヤマメ「あー、たろちゃんは知らないか。紅白の方は地上の巫女、異変の解決屋だね」

 ヤマメはその人気っぷりと、地上へちょくちょく出る所等から、幻想郷の情勢に関しては結構博識だ。
 それ故に、博麗の巫女の容姿ぐらいは把握している。
 それが三人も引き連れ、行き先もはっきりしていれば、手を出したくはないのが普通だ。

たろすけ「へー、あの姉ちゃんが」

ヤマメ「だからまぁ、おせっかいをね。それより、本当に引っかけなくてよかったの〜」チラッ

 それに巫女と一緒にいる男から、何か変な症状を感じ取った
 自分の専門範囲からはずれているが、それに苦しんでいる様子だったから、ちょっかい混じりに口に出した、というわけだ。

たろすけ「いーんだよ、別に。これからヤマメちゃんとあれこれ楽しむんだから、さ」モミッ

ヤマメ「いやーん、たろちゃんのエッチー」バチーン

たろすけ「ふごっ!」

  ドゴォォン……

 ところで、土蜘蛛は元来、力が強いものである。

 じゃれつくように尻を揉まれ、それに返事をするように手を振りかざせばどうなるか。

 まぁ、壁に突き刺さる程度は軽いよ?


866 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/30(月) 02:45:21.33 ID:CWd/H5fno

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 異変解決者一行から、蒐集に値する情報、なし

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――
867 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/30(月) 02:47:44.55 ID:CWd/H5fno

〜〜〜渡る者の途絶えた橋〜〜〜

永琳『……っと、どう。これでノイズも取れたはずだけど』

魔理沙「良好だぜ。……そっちの耳栓はどうだ、零児?」

零児「やはり、うんともすんとも言わんな。ある程度潜ったのも、理由かもしれんが」

 ヤマメ達と別れてから、半刻後。
 宣言通りにスムーズな会話が出来るようなった一方、M.O.M.O.達とは繋がらない状況が続く。
 それを確認しつつ、大きな橋に差し掛かった所である。

パチュリー『……随分と信用してるのね。機械はあんまり分からないけど、不良品だってこともあるんじゃない?』
                                           うち
小牟「それならそれで、文句の一つも言えるんじゃが……あいにくと、『森羅』とモモを疑う気はせんよ」

にとり『いいなぁ、耳栓型通信機。これが終わったら見せてね、盟友!』

零児「考えておく。それより、この橋だが……」

藍『お察しの通り、橋姫が守る橋です。確か、渓谷になっていたかと』

 橋姫が守る橋。
 それは地底の都市と、地上の穴のちょうど間辺りに存在する渓谷にかかる、いくつかの橋の事。
 このルートのみが地上と地底を繋いでいたため、人間を嫌う橋姫が門番じみた事をしているのだ。

萃香『でっかいだろ〜? 落ちたらそこいらの怨霊の仲間入りだから、気をつけなよ』

霊夢「零児さんがなるとは思えないけど。……来る」

????「妬ましい……ああ妬ましい……妬ましい……」

アリス『出たわね、根暗妖怪。…………短歌?』

小牟「俳句じゃ。しかしやっぱり暗いのぉ、パルスィわ」

パルスィ「あら、私の事を知っているの? そして自分は根暗じゃないアピール……妬ましい」

 その橋姫とは彼女、水橋パルスィ――金髪緑眼、尖った耳を持つ少女だ。
 『嫉妬心を操る程度の能力』より他者の嫉妬心を操り、人間関係を容易く崩壊させる妖怪。
 だが普段はわりと普通に話しあえる妖怪である。

零児「俺達は地底の最奥に用があってここに来た。騒ぎは起こさんから、通して欲しい」

パルスィ「………………男?」

永琳『あ、これは昼ドラの予感』

小牟「……何みとんねん、おぬし」

パルスィ「美少女の外見した子を三人も連れてる男? ……………………妬ましい」ガリガリガリ

 とはいえ、それも地底住まいに限る話。
 地上からの侵入者にはまず、疑いの目から向けるのが礼儀だからだ。
 疑うより前に、妬んでしまうのがかなり瑕だが。

魔理沙「び、美少女? ……へへっ」

にとり『社交辞令だよね、それ』

文『あら、魔理沙さんは褒め殺しするといいのね。メモメモ……』

魔理沙「な、ばっ、ちげーし!」

霊夢「あんた達ねぇ……」
868 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/30(月) 02:49:12.10 ID:CWd/H5fno

パルスィ「一人は純粋で、一人は冷静? もう一人は……年増の狐? ………………より取り見取りで妬ましい」

小牟「わしの事褒め取らんじゃろ!」

 ただ妬むといえど、彼女は根本的な所で嘘を吐かない。
 屁理屈染みていた妬み事もあるが、それでもやはり、優れた点を見て妬む。
 それが一部の妖怪に好かれているのだという話もあるようだ。

零児「……俺はそんなつもりで一緒にいるんじゃない。そもそも、そんな不埒な感覚で相手と接するのは間違いだ」

四人「…………」

零児「…………?」

パルスィ「何それ真面目系? …………恨めしい」

霊夢「零児さん……」

魔理沙「……」キラキラ

小牟「ぬしという奴は……」ハァ

にとり『公衆(?)の前でそういう事言える人間、久しぶりに見たよ』ホー

星『……素晴らしい』

萃香『……へっへっへぇ』zzz

パルスィ「…………」ブツブツブツ

 そんな相手に誠実さを魅せるという、天然たらしっぽさを魅せてしまう。
 それは道具の向こうにまで見えているために、向こう側からも色々な反応が返って来る。
 が、

零児「それはどうでもいい。……通してくれるのか、邪魔をするのか。どっちだ、水橋」

パルスィ「……あの人も、あの人もそうやって誠実っぽく見せて、私を騙して……」ブツブツブツ

小牟「いかん、逆鱗に触れたやもしれん!」

零児「まさか……橋姫の? だがあれの夫は……!」

パルスィ「どうせあなたも女誑かしてるんでしょ! そんな害悪、殺してあげる!!」

 その反応は、特大の爆弾が火山に投げ込まれたが如く。
 彼女が彼女になった理由を思い出させるのに、十分過ぎた言葉。
 その緑の双眼が暗く輝き、零児へと襲いかかる。

霊夢「嫉妬に狂ったわね」

藍『……これだから地底の妖怪わ』

零児「これは異変という事を忘れるな、藍。とにかく鎮めるぞ。小牟、援護しろ!」バッ

小牟「合点承知の助じゃ!」



 だが、勝負は十分と経たなかった。
 病み上がりとはいえ、既に弾幕戦にも適応した零児。
 そして元々、彼のパートナーとして徹底的にフォローに回っていた小牟。

 例え心を操る能力を持っていても、それが効かないこの二人にはただただ無駄であった。

チルノ・魔理沙『「……すげぇ」』

パルスィ「なんで、どうして、仲違いしないの!? ……ワプッ」ゴボボ

小牟「頭を冷やせぃ、『波乗の型』!」ザパーン

  ピチューン
869 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/30(月) 02:51:45.26 ID:CWd/H5fno

パルスィ「う……げほっごほっ!」

 それは舞踏会のワルツのように、息が合っていた。
 二人は、互いの位置を見ずに弾幕を掻い潜っていた。
 そして止めは援護という言葉とは裏腹に、小牟の一撃で刺した。

 それは二人が、互いにしたい事を理解し合っているから。

零児「大丈夫か、水橋」

パルスィ「…………触らないで……何なのよ……貴方達……なんで……」

小牟「確かに嫉妬心を操れるかもしれぬが、わしと零児の間柄で、嫉妬するもんなぞありゃせわい」

パルスィ「……そんなの」

萃香『あるだろぉ、橋姫ぇ? 勇儀や他の鬼みたいな関係がさ〜?』

パルスィ「! それを、人間が?」

 嫉妬とは、自分に無い物を強請る心。
 あるいは他者の良い点や異なる点を、快く思わない心。

 零児と小牟はそんな物を持つ間柄では、決してない。

霊夢「…………」

アリス『仙人ってのも結局はそういうのなんだから、あり得ない話じゃないでしょ』

零児「通して貰うぞ。俺達は灼熱地獄に、どうしても行かなくてはいけないんだ」

パルスィ「……私は負けたのよ、妬ましい。一々聞かなくても、ほおっておけばいいわ、妬ましい」
                                    パートナー
 彼らは苦楽を、悲劇を、決意を共有し、互いを知り尽くした  相棒  。
 叱り叱られることはあれど、それもスキンシップの域を出ない、いわば信頼表現。
 そう、嫉妬どころか負らしき感情が、二人の間には欠片もない。
 嫉妬心を操る能力が介入しようとも、零を動かす事は出来なかった、というわけだ。

小牟「そうじゃな、ぬしを置いていくかの。……じゃが、これだけは言うておく!」

パルスィ「?」

小牟「零児はわしの婿じゃ!」バーン!!

一同「『…………』」

アリス『よくよく考えたら初めて見たけど、すごい一体感ね』

にとり『あれガンカタって言うんだよね。山の神様のDVDで、見た事あるわ』

小牟「なぬっ!」キュピーン

魔理沙「なんだ、そのデーブイデーって?」

零児「…………はぁ」

 そんな緊張感も、終われば一瞬で氷解する。
 シリアスな雰囲気など意にも介さず話せるのは、魅力である。
 やり過ぎると、シリアスブレイカ―になってしまうが。

霊夢「お疲れ様。……ここから旧都まで、歩いてどの程度か分かるかしら、パルスィ」

パルスィ「大体半々刻じゃないかしら。……歩いて踏破しようだなんて、体力が妬ましい」

霊夢「踏破とか、そんなんじゃないわよ。地獄いったらはいおしまいだし」フワッ

パルスィ「…………」ネタマシイネタマシイネタマシイ

 一行はパルスィをおいたまま橋を渡り切り、その先へと向かう。
 遠くから聞こえてくる、祭りの囃子太鼓へと急ぎ走る。




パルスィ「…………あの人間と妖怪の間にはなくっても……」

   貴女の中はどうなんでしょうね、博麗の巫女……?

870 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/30(月) 02:54:59.59 ID:CWd/H5fno

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ……再び異変解決者一行から、蒐集に値する情報、なし

 −−−から、『嫉妬心を操る程度の能力』とは判明

 無駄な情報として、消去します

―――――――――――――――――――――――――――――――――――
871 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/04/30(月) 02:58:37.88 ID:CWd/H5fno

以上で投下を終わります。童……!!

口授を買って読みふけっていたらこんな時間に

夜更かしはお肌の敵ってのはまだまだこちら側の常識ですよね、うん。……というか、心配するキャラいないか



次回は少々投下日不明で、『地霊殿三面』となっております

そのあとに1レスレベルのギャグ突っ込んで、さとりん……来るっ!


それでは、この辺で
872 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/01(火) 17:38:59.89 ID:LdshL9IDO
お疲れ様!
折角の晴れでも、残念ながらお天道様の出番は地底入り口まで。

コスモてwwまぁ、そのくらいの力は余裕であるかも知れないけど。

ブラック企業とかゆかりんの式の方がよっぽどだよな…。

スキマツッコミ…いろんな所でたまに見るよね。

零児さんが妖怪の力を得たいだなんてご冗談を。

モモちゃんが反応したのは上海人形かな?実際はどうか分からないけど、アイコンとかだと可愛いもんな。

座薬ってゆーなー!

宝塔に込められた星さんの力とは…?賑やかな女子連の中で、ヘイムレンさんも通信を聞いてるのかな?

永琳さんなら何を任せても安心、って気がしちゃいますよね!

黒魔術での治療って…高温発熱?勘弁ですな。

アイ水晶…蒼く鼓動とか格好いいな!

違和感ねぇ…“流石は”ってところかな?良く知った仲でもないんだし。

狐同士なら力の親和性も高い…か?

チルノの使い方が上手いっすねぇ。

間接的にでも通信出来りゃ良いわな。

抵抗するキスメちゃんの姿は簡単に目に浮かんだ。

逃げ際に鬼火とか…やるな。

にとりは本当に凄い技術力してるぜ。

まぁ、あれは女の子には普通好かれない態度だよな。

たろすけは強いけど…ああはなりたくないな。

ヤマメさん…不憫な役を当てられちゃってまぁ。

何の話し、ってメタい話しですww

GSの横島君って、彼が元になってるのかね?ww

“考えておく”だけ。

俳句のネタ元忘れちまったな。何だったか…。

永琳さん…予感は大当たりでしたねww

照れ顏、頂きました。

年齢なんて見た目で良い。

真の紳士ここにあり。

水橋だとかおりさんがちらついた。

戦闘BGMが脳内再生されるー。

婿(予定)

DVD見たいのかww

負のオーラが見えるぜ(汗

パルスィさん…まさか霊夢さんに能力を…?

監視員が無駄とか言い切りやがったww

口授はもっと読み耽ってても良いと思います!

来るっ! てニュータイプネタ?ww
873 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/04(金) 15:35:35.20 ID:bzBI7HO0o

こんにちわ。レス、ありがとうございます

地霊殿三面を投下しにまいりました、どうぞ
874 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/04(金) 15:37:51.77 ID:bzBI7HO0o

〜〜〜地底・雪降る旧都〜〜〜

  ワーギャーワーギャードゴォッ!

零児「……祭りなのか、これは」

小牟「男祭りを忘れたか、零児。あれもほぼこんなもんじゃぞ」

アリス『……相変わらず、野蛮ねぇ』

 旧・第五地方地獄都市。それが、この場所の正式名称。
 元々こういった地獄の都市は担当地区ごとにあり、地方の全ての魂を請け負って捌いていた。
 だが、分散し過ぎたがために起きた財政悪化のせいで、ここは切り捨てられることとなる。

魔理沙「賑やかなのはいいんだけど、暑苦しいよな」

にとり『無法者が沢山いるしねぇ。あー、見てるだけで皿が乾くよ……』

チルノ『お、凍らそうか!』

藍『冷やしても別に変わらないぞ、チルノ』

霊夢「こっちを黙らせるのに役立ちそうね。……大丈夫、零児さん?」

 そこに後からやってきたのが、地上から追放されたり、あるいは地上を見限った者達。

 元々は地獄に近寄らないようあちらこちらで暮らしていたのだが、閻魔達が財政難でここを放棄すると聞き、確かめにやってきた。
 すると都市の形は丸々残されており、その暮らしやすさから我先に空き家へ住み着き始めたのだ。

零児「俺より、魔理沙の心配をしてやってくれ。……ここまで多いとは思わなかった」

永琳『本当にね。大通りが妖怪だかりじゃないの』

萃香『あっちで喧嘩、こっちで喧嘩。いやぁやっぱり賑やかだねぇ』ヒック

魔理沙「だから、それが暑苦しいっつーの」  ヒュンッ

 元々地底は、その全域を合わせると地上である幻想郷の十数倍にもなる程の広さを持つ。
 そして旧都の規模は、地底の空間の中でも最大級の物だ。

 地底の多くの者が旧都に集っても、十分許容範囲だったのである。

魔理沙「おわっと! 弾が飛んできたぜ」

小牟「流れ弾のようじゃが、いつこっちを狙い始めるか分からんの」ン? 

零児「そういえば、ここはどうやって通ったんだ、二人とも」

霊夢「え? …………邪魔だったから、ふっ飛ばしがら」フイッ 

魔理沙「……絡んできたから、マスパしながら」フイッ 

 その結果、地上以上のにぎわいを見せる都市となる。
 この集まりを見て、地上の者達は無法地帯だと恐れた。
 だが彼らなりの秩序のもとに暮らしているために、不用意な事をしなければ問題はないのだ。

零児「……何故顔をそむける?」

アリス『叱られると思ったんじゃないの、二人とも』

小牟「そんな昔の事、気にせんっちゅーのに。……んで、下の話なんじゃが」

にとり『どうしたんだい、シャオムゥ?』

小牟「思いきり睨まれたんじゃよ、妖怪に」


   「上に人間が居るぞー!!!」


 ただ、その不用意な事というのが……
 人間が来るという点なのが、問題なのだろうが。
875 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/04(金) 15:39:53.58 ID:bzBI7HO0o

魔理沙「見つかった! 予定より早いぜ!」グイッ

霊夢「もっと高い所飛べればよかったんだけ、ど!」

藍『結界らしき壁……』

小牟「ここはにとりめの光化学迷彩の出番じゃろうに……」

にとり『わ、悪かったね! ステルス機ってのから発想頂いたら、別物になってさ……』

零児「後にしろ。今は飛んできている輩をどうにかするべきだ」

 妖怪というのは人間の畏れを食らうことで、自己の強化を図る存在。
 だが地底に来る人間は、迷い込んだ者や自殺願望者ぐらいしかおらず、それも”幻想入り”並の頻度でしかない。
 要するに、畏れが足りていないわけだ。

パチュリー『……まだ妖精だけね、来てるの』

魔理沙「ほんとこいつら、どこにでもいるよな」

小牟「自然そのものじゃしな。……ぬお、目のあったやつがきおる!」ガリッ

星『レーザーが多いようです、気をつけて!』

小牟「三面道中じゃー!」ガリリリ

 そこに人間が現れたらどうなるか。
 それはもう盛大に、皆でからかい始めるのだ。
 己等の恐ろしさを、地上へと伝えさせるために。

霊夢「……文。あんたの力って、三人全員に使えるわよね」

文『あやや、私の出番ですか? 勿論、使えますよ〜?』フフン

霊夢「なら、零児さん…………いえ、魔理沙次第でどうにかなるわ」

零児「…………」

魔理沙「どういうことだよ?」

小牟「ノーショットスキル、超高速移動を皆で使うっちゅーわけじゃな?」

文・霊夢『「ええ」』

 だが、そんなことに一々付き合うつもりはない一行。
 そこで文の風の力を借り、疾風よろしく一気に駆け抜けて先へと向かおうとする。
 だが、これにも問題点が一応ある。

魔理沙「……で、なんで私次第なんだぜ?」

霊夢「……しっかり捕まる必要あるでしょ?」

魔理沙「スピードだすしな」

霊夢「今の、箒の柄に乗って掴むだけじゃ不安定でしょ? 実際、逆さまに落ちてた時は危なかったし」

魔理沙「そうだな、安定に欠けるな」

零児「…………なら別に、掴む場所がいるな」ハァ

魔理沙「ああ、確かに」ン?

アリス『…………密着するって事よ、魔理沙』

魔理沙「そういうこと……か…………!」カァァ

 
 それは、抱きつかれるという点。
 人によってはなんでもないであろう行為。
 それこそかつての魔理沙なら、全く意に介さず承諾していただろう。
 
876 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/04(金) 15:44:17.74 ID:bzBI7HO0o

魔理沙「だき、だき…………」

小牟「こ、こら、止まるでない。追いつかれてしまうぞ!」

文『いやぁ、良い画ですねぇ。……後ではたてに念射してもらおうかしら』

零児「言ってる場合か。……魔理沙、しっかりしろ!」

魔理沙「ハッ! だだだだ大丈夫だぜ、私ならな、うん。ばっちり、準備オッケーだぜ、うん」

霊夢「…………駄目ね」

 だが今は、その言動を見れば普通誰もが分かる程、零児に惚れている。
 その、陶酔一歩手前な彼女に、想い人が抱きつけばどうなるか……この有様では、言うまでもないだろう。

零児「…………」

文『で、倒します? 数と手間と時間が酷い事になりそうですが』

永琳『極力避けるべきね。それこそ、魔理沙がそんな状態じゃあね』

パチュリー『………………』

零児「…………」チラッ

星『その高さでは、宝塔の加護があれども無事では……』

 異変の結界ぎりぎりの高さにいる、彼女達。
 そこは裕に20m程の高さがあり、落下すればいくら体を鍛えていても怪我は必至。
 そもそも、彼一人をおいて先に進むこと自体があり得ない事。
 なら、彼女が落ちつくしかない。

零児「……魔理沙」ガシッ

魔理沙「ふぇぁい!」ドキドキ

零児「俺の目を見ろ」

魔理沙「え、あ…………」ドキドキ

零児「……」カチッ

にとり『あ、カモフラ起動した』

魔理沙「…………」

 
 ………………
 
 
 目を見る。

 金色の瞳を黒の眼が、見つめる。
 
 
 ………………
 
877 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/04(金) 15:46:44.25 ID:bzBI7HO0o

零児「……もう、大丈夫だな?」

魔理沙「……うん」

零児「……。霊夢、頼む」

霊夢「え、いいの?」

零児「いけるな、魔理沙」

魔理沙「ああ、大丈夫だぜ」

小牟「くぅぅ、男は目で語る。やはり出来ておる。出来ておるぞ、零児」ウンウン

藍『…………』

 目の奥に引き込まれ、鼓動が落ちついていったのが分かった。
 まだドキドキしているのは変わらないが、心は冷静になっていくのが分かった。

 もっと恥ずかしい事したんだし、大丈夫だろうと。(記憶にないけど)

文『はいはいもうそこまで来てますよ! 皆さん、準備は?』

小牟「言うて、何すればいいんじゃ?」

霊夢「縦一列に並んで、風を感じたら着いてくればいいと思う」

零児「……腰に手を回すぞ、魔理沙」

魔理沙「おうっ!」ギュッ

文『宜しいですね? では、ぶっ飛びますよー! ……私は別に飛ばないんですけども』

   ヒュゥゥ

 風を纏い、飛翔する。
 その速さ、魔理沙のスターダストレヴェリエをも超える。

零児「ぐっ……」

小牟「これ風やばいぃぃー!」

チルノ『はえぇ…………うぇっぷ』

永琳『無理して見てなくてもいいのよ?』

霊夢「……やっぱり慣れてないと三人にはきついわよね」

文『仕方ありませんよ。そんな簡単に慣れられたら、私の立つ瀬がありませんし』ニカッ

 四方からやって来ていた妖怪達を置いてけぼりにし、一行は先へと進む。
 人向けに抑えられているとはいえ、叩きつけられる風の壁はやはり厳しいものがある。

魔理沙「ひゃっほーーう! やっべぇ早いぜこれ、いえーい!!」

零児「…………」

アリス『……魔理沙が楽しそうで、何よりね』

文『魔理沙さんならしょうがないですね!』

チルノ『さいきょーのあたいもだいじょ…………うぷっ』

 スピードとパワー凶の魔理沙からすれば、絶好のアトラクションなようだが。

霊夢「だから無茶しない――」

  ヒュッ

霊夢「――の……!」ガリッ
878 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/04(金) 15:52:22.80 ID:bzBI7HO0o

小牟「……む、風が止んだ?」

零児「どうした、霊夢。なにがあった?」

萃香『あぁ、やっと来たねぇ』

霊夢「……あれを見て」

小牟「……盃がdj」

 この速さの中、霊夢の目の前を何かが通り過ぎた。
 それは星熊盃と呼ばれる、とある鬼が愛用する酒呑み用の赤い盃。
 持ち主は、地底にいる元妖怪の山四天王が一鬼。

文『あやややや……』

小牟「おおう、ブーメランのように戻ってきおった」ガリッ

魔理沙「これは流石に避けれるけど……」ガリッ

  パシッ

??「ん〜。懐かしい風だねぇ」グビッ

零児「…………真っ赤な、一本角。彼女が」

萃香『勇儀さ〜』グビッ

 星熊勇儀――力の勇儀の二つ名を持つ、鬼のリーダー。
 萃香の仲間でもある彼女は、体操着のような上着と半透けのスカートを着た、健康的な女性の姿をとる。

勇儀「ぷはぁ。……回しても、味は変わらないねぇ?」ションボリ

霊夢「やっぱり、出てくるのね」

零児「……原作と違うルート、だったんだな?」

小牟「うぬ。本来なら街中を暴れながら飛び、それを見て興味を抱かれるはずじゃよ」

勇儀「っと、何の話をしているのか分からないけど、あんたら……どこ……に…………プフッ!」

一同「?」

勇儀「お、男が……女の子の後ろで箒に乗って……滑稽じゃないかい」バンバン

零児「…………」

 性格は鬼の例に漏れないどころか、更に豪放磊落。
 小さな事は一々気にせず、楽しめたのなら勝ちじゃんか!を信条とする。
 ただし嘘や卑怯な行いにはその拳を持って制裁を行う、姉御肌全開の妖怪だ。

萃香『あっはっは! だよねぇー』ハッハッハッ

零児「…………」ズーン

霊夢「笑わないでよ。零児さん、空飛べないんだから仕方ないでしょ!」

勇儀「そりゃ、その光景ってことはそうだろうけどさぁ。ならどうして、態々連れて来たんだい?」ヒーヒー

小牟「かくかくしかじかで、これがベストメンバーなんじゃよ」

勇儀「……なんだいそりゃ? 言えない訳でもあるのかい?」ン?

 そんな彼女に眼をつけられたのが、旧都を通る際の出来事。
 あの時は霊夢と魔理沙が共々に暴れまわっていたために、目をつけられた。
879 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/04(金) 15:56:49.97 ID:bzBI7HO0o

萃香『言えないんじゃないよぉ、勇儀。急いでるから話す時間がないだけ』

勇儀「聞いた覚えがあると思えば、萃香か。……もしかしてその巫女に道具にさせられちまったのかい?」

萃香『前は巫女で、今回は道具か。違うから安心しなって』

勇儀「そぉかい。で、祭りよりも大事な行き先ってのは……この調子だと、さとりのとこだね?」

霊夢「……ええ」

勇儀「ふぅ〜ん。よっぽどな用事があるわけだ。ふぅ〜ん……」

 地底の妖怪の凶暴性は、地上に十分伝わっているはず。
 そうだというのに堂々とやってきた二人の人間に、興味が湧いたというわけだ。

零児「……灼熱地獄でおいたをしている烏が居る。そいつを止める必要があるんだ」

パチュリー『あら、立ち直ったわね』

勇儀「おや、言ってよかったのかい? 時間がないんだろう?」

魔理沙「……だからさ。不埒な感覚で接するのは失礼、だぜ」キリッ

零児「…………」

萃香『さっそくパクリかい。相変わらず、節操のない奴だ』

勇儀「あたしゃ嫌いじゃないけどね。けどそういうことなら、通して――」

  ドンッ!

勇儀「――上げられないねぇ!」

霊夢「なんでそうなるのよ」

勇儀「なんでかってそりゃ、気に行ったからさ! その箒男もねぇ!」

 そして再び、立ちふさがる。
 瞳をぎらつかせ、唇の端を吊り上げ歯を見せる。
 そんな、楽しそうな笑みを浮かべながら。

小牟「……まぁ、こうなるのは目に見えとった」

零児「確かに、言っていたな……」ハァ

藍『それではどうするお積りで、星熊殿』

勇儀「どうするかって? そりゃ勿論、この盃を零さずに戦えるか、だろう!?」

魔理沙「勿論って、そりゃ前もそうだったけどさ」

パチュリー『それに二人で挑んだのに……結構時間掛ったわよね』

勇儀「あぁ、この違和感は気の所為じゃなかったんだね。ま、どうでもいいけどさ」

霊夢「……零児さん、これって」

零児「萃香……いや、諏訪子様の時と似ているか」

勇儀「さぁさぁ無駄口はそこまでにして、四対……ん? 三対? まぁいいや、何人でも掛ってきな!」

魔理沙「……私と零児はパスだよな」

零児「こう、中空だとな。……降ろして戦わせてもらえるなら、いけるんだが」

霊夢「私一人でいくわ。零児さんと小牟はさっき戦ったんだし、ね。……それに」キッ

 そんな相手に、一睨みする霊夢。
 これから戦うというのに、互いにスペルカードを取りだす気配が一切ない。
880 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/04(金) 16:00:27.56 ID:bzBI7HO0o

霊夢「スペルカードルールを無視する相手は、初めてでしょ」

勇儀「おや、怒ったかい? でも、いいじゃないかぁ。あんな『縛り』は地上だけでさ」

霊夢「怒ってないし、気にしても無いわ。すでに知ってるもの」

 そう、勇儀はスペルカードルールを気にしていない。
 気に入らない訳ではないのだが、ややこしい話はいいから死なないように喧嘩しようや!
 そんな豪快さで、戦ってきたのだ。

小牟「それ、言っておらんかったじゃろ! ……つーか、それがわしらの普通じゃぞ」

魔理沙・霊夢「「…………あ」」

零児「…………」

霊夢「と、とにかく。私が相手するわ、もう」バッ

勇儀「そーそー、周りも待ってるんだし、ねぇっ!!」ブンッ

 勇儀が盃を持っていない右拳を振りぬき、不可思議な輪を生み出す。
 それは降りぬかれたスピードとは裏腹に、ゆっくりと霊夢へと向かって行く。

霊夢「……萃香、『キリンカ』借りるわよ」シュッ

萃香『ほいっ』

小牟「『地獄の苦輪』に『鬼神燐火術』は、相性悪いんじゃが……」

零児「見ている限り、優勢だな」

勇儀「はっはぁ!」ジュッジュッ

魔理沙「消しまくってるけどな」

 勇儀の放たれた弾は阻む弾であり、盾にしつつ相手に迫る苦痛の輪。
 対し霊夢の弾は萃香の炎を飛ばす術で、貫通する弾。
 その炎は苦輪を削りつつ勇儀の元へ向かうが、腕の一振りで霧散していく。

勇儀「その程度の炎じゃぁ、肉も焼けないよぉ!」ブォンッ

霊夢「その程度の密度じゃ、バカにも当たらないわっ!」トンッ

チルノ『ふぇ?』

勇儀「お、跳んだ? なっつかしいねぇ。それが出来る人間が、今もいるとはさ!」クルッ

零児「……跳んだ先に一瞬で放つ、か」

小牟「流石というべきじゃな。四天王、恐るべし」

 亜空穴を使い撹乱しながら攻める。
 その跳んだ先を瞬時に睨まれ、隙を突く事が出来ない。
 ただわざとなのか、勇儀の視界内にしか跳んでいないようだが。

魔理沙「……遊んでやがるぜ」

パチュリー『どっちが?』

にとり『え、勇儀さんがじゃないの?』

零児「両方だが、意味が違うな。……何を狙っている、霊夢」

勇儀「ほらほらどうしたぁ! そんな事じゃ、酒はこぼれないよぉ!」

  トンットンットンットンットンッ

文『瞬間移動の視界とは、こんな世界ですか。まるで写真のようですね』

 苦輪から逃げ回るように、かと思えば一つの苦輪を削り取るほどに弾幕を重ねる事もある。

 右へ。左へ。上へ。下へ。寄り。離れ。跳び。跳ね。削り。削られ。

 そんな事を数十回と繰り返し……動きが変わる。

霊夢「……文、――――」ボソッ

勇儀「……。こそこそ何話してるか知らないけど、逃げ一辺倒はそろそろ飽きたよ!」フッ
881 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/04(金) 16:03:41.24 ID:bzBI7HO0o

零児「苦輪の動きが止まった?」

勇儀「大荒れ、大時化を……!」

霊夢「! この時を、待ってた!」

   トンッ

 勇儀が右手を高く上げると、苦輪の動きが止まる。
 握りこぶしを振るわせると、共鳴するように震える。
 その、拳を握った瞬間に『亜空穴』で勇儀の真上に現れ、蹴りを放った霊夢。
 が、


   ガッ         ピチューン


勇儀「やっぱり、隙を見せたら真後ろか。だけどそれは、効かないよ?」ググッ

霊夢「…………」

魔理沙「霊夢!」

 その蹴りを、その方向を見ないまま右の拳で捕まえる勇儀。
 霊夢は足をがっちりと掴まれたまま、身動きが取れなくなってしまう。

勇儀「あたしを前に集中させて、後ろからは来ないと思わせようとしたんだろうけど、無駄だったねぇ?」

零児「…………」

星『いけません! 鬼との肉弾戦は、いくら博麗の巫女といえど……!』

勇儀「安心しなって、殺しゃしないからさ。ただ、卑怯な手の報いは――」

霊夢「魔理沙、小牟、翔るわよ!」トンッ

魔理沙「え、あ、翔る?」

勇儀「うけ……てぇ?」

 だが掴まっているという事は、彼女にとって拘束されたという訳ではない。

零児「小牟、魔理沙の牽引を頼む」

小牟「……ああ、そういうわけじゃな。ほれ霊夢、急ぐんじゃ。そして魔理沙よ、とにかく飛べ!」ガシッ

魔理沙「え。あ、ああ、分かったぜ!」

文『勇儀さんが覚えてない事、期待していますね! かっとびー!』バシュンッ

 亜空穴を行い拳の中から抜け出した霊夢は、そのまま零児達の前へと跳んでくる。
 そして文に準備をさせておいた風の加護を使い、勇儀の元から一気に遠ざかったのだ。

 

勇儀「………………?」ポカーン

 その状況に、色々と腑に落ちない勇儀。
 盛大に喧嘩して、着た理由を酒の肴に……とか思ってたのに、独り置いていかれたのだから。

 だがまぁ、こう思っておくことにした。

勇儀「……そんなに急ぎの用があったんだねぇ。悪い事したのかな、こりゃ?」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
882 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/04(金) 16:08:05.50 ID:bzBI7HO0o

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ……星熊勇儀の能力に関する情報は、抽象的にしか蒐集出来ず

 −−−でも能力名は分からず。力が強いという事だけが、分析出来た

 しかし、四天王であるという情報を加味して監視優先度は中とし、今後も調査することとする

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
883 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/04(金) 16:12:21.59 ID:bzBI7HO0o

以上で投下を終了します。ごめんね、姉御……

次回投下内容の関係で、やや中途半端な終わり方となっております

その次回投下は1レスだけ『一方その頃』を入れたのち、『地霊殿4面』となっております

\さっとりーん/

投下日は来週月曜か火曜となっております。GWぇ……

それでは、失礼します
884 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/04(金) 17:33:07.76 ID:d8vY/gaDO
お疲れ様っ!
お祭りかぁ…久しく行ってないな。

いやぁ、純情すなぁww

零児さん…笑われちゃって可哀想に。

絶叫マシンより早ーい!って、あんまり嬉しくはないよねぇ…(汗

意識外からの攻撃…にはならなかったけど、意識外の逃走にはなったみたいね。
885 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/07(月) 00:27:18.36 ID:sd+MuSzco

こんばんわ。レス、ありがとうございます

GWはまだおわっちゃいn……なんでもありません


さて、「一方その頃」と「地霊殿四面」を投下します。どうぞ
886 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/07(月) 00:28:17.46 ID:sd+MuSzco

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 
 ………………
 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
887 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/07(月) 00:30:26.71 ID:sd+MuSzco

〜〜〜旧都・地獄街道〜〜〜

藍『……今のは一体どういうことだ、霊夢』

霊夢「んー? …………私の勝ちってことよ」

アリス『どうして? スペカルールじゃないんでしょ?』

 勇儀の元から脱し、旧都の反対側まで一っ飛びした一行。
 ここから地霊殿までの道を翔るのは厳しいため、風の加護を消したとたん……この質問だ。

小牟「と、あっちが思っとっただけ……っちゅーことじゃな、たぶん」

星『そうなのですか?』

霊夢「おそらくね。そうじゃなきゃ、あの被弾音は出ないでしょ」

藍『一体どういうことだ。以前もこうだったのですか、萃香殿』

萃香『ん〜や、霊夢と魔理沙が二人で盃から酒を零させたよ』

 そう、以前の戦いでは魔理沙が無茶して、霊夢が盃を集中的に狙い、勝利を収めた。
 今回と同じようにスペルカードルールを無視され、ハンデを貰った上で、だ。

パチュリー『……それにしては、今回のそれは……そう、確信していたみたいな動きだったわよ?』

霊夢「ええ、そうよ。だって、私の勘だもの」フフッ

アリス『……勘? 巫女の?』

霊夢「勿論。その勘が、これが私達の異変じゃなくって、『原作よりの異変』だって告げたの」

永琳『原作……ねぇ』

小牟「うぬ、後は大体わかったかの。確かに、それじゃと被弾確信はおかしくないかもしれん」

 そんな経験を流した判断理由。
 これもまた、これまで解決した『異変』の情報を知った上での勘だ。

魔理沙「あー、そういや全員スペカルールで戦ってるんだよな」

零児「……要するに、星熊童子の意思に関わらず、そのルールで戦わざるを得なかった、ということか」

霊夢「ええ。……紅霧異変の頃から、ある程度勘づいてたんだけどね」

藍『……なるほど』

パチュリー『……私、そのゲンサクとやらを知らないんだけど』

文『今はそういう物だという事で、納得しておいてください。ささ、次はいよいよさとりさんですよ』

 これまでの材料だけで判断するには、やや弱かった予想。
 それを勘の一言で済ませられるのが、博麗の勘たる所以であろう。

零児「降ろしてくれ、魔理沙。ここからは足で行く」

魔理沙「おう。……ドキドキしてきたぜ」

アリス『今更? あれだけ抱きしめられてたのに』

魔理沙「違う違う、さとりのほう。……上手くいくかな」

小牟「”ぬしの資料”を基に考えたわしの作戦じゃぞ。責任とれ」

零児「自信を持て、だろ」ハァ

 さて、実はこの異変へと入る前に、既にある程度の説明と計画を立て上げていた。
 その資料にされた、”ぬしの資料”――『The Grimoire of Marisa』にあった、さとりの一文。

 さとりが読めるのは、あくまでも考えている範囲だけだということ。

 今回はそれを頼りに、戦いを避けようという魂胆なのだ。
888 :ってうわ、ミスった。一方その頃後廻しにorz ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/07(月) 00:33:39.05 ID:sd+MuSzco

永琳『魔理沙の考察が正しければ、四人でリレーすればトラウマを再起されるまでには至らないはずよ』

霊夢「まぁ、駄目だったら私と魔理沙で行きましょ。二人のトラウマって、なんだか洒落にならなそうだし」

零児「頼む」

小牟「まじ勘弁じゃ。ルナグーヤの銃弾やら、星のヘニョリレーザーはスコアタの敵じゃ」ハァ

星『……はい? 私……ですか??』

魔理沙「確かに寅丸のレーザーは驚いたけど、邪道だぜ」キリッ

 次の相手もまた、特殊な妖怪だ。
 『さとり』と呼ばれる種族の少女であり、記憶からトラウマを引きだし、弾幕化させ心を揺さぶってくる。
 それを避けるには、寄らない・聞かない・思い出さない、だ。
 その回避策に対して、余計な事をしている気がするが、気のせいである。

永琳『式、止めなくていいのかしら』

藍『…………』

霊夢「……藍?」

藍『…………』

  ………………

小牟「藍ねーちゃーーん!」

藍『……ん? な、なんだ?』

永琳『ぼさっとしてないの。あんたがさぼると、私につけが周るのよ』

小牟「いかんのぉ。紫めはもうちょい余裕があったぞ? ほらほら、ダブルピーススマイルじゃ」

藍『……―――にだ―は――れ――ない―――な』ボソッ

小牟「あん? なんだってぃ?」

零児「遊んでる場合か。……走るぞ」ダッ

 ネタまみれの小牟を制し、問答無用で先へと進む。
 旧都の端とはいえ、ここから地霊殿までも結構な距離があるのだから。

………………

…………

……

〜〜〜地霊殿・玄関〜〜〜

チルノ『おー、こーかまんみたいな家だな』ホー

魔理沙「……こーかまん? 紅魔館だろ?」

チルノ『そうそう、それだ!』

 知らない所で食べ物にされた悪魔の館はともかく、一行は地霊殿に到着する。
 西洋建築の様相の大きな館ではあるため、話題に出す事は間違っていない。

パチュリー『……向こうでも突っ込まれてそうね』

霊夢「たぶん、コスモスが突っ込んでる。……さて、玄関は」ギィィ

零児「開いたな。不用心……いや、違うか」
889 :ってうわ、ミスった。一方その頃後廻しにorz ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/07(月) 00:36:30.02 ID:sd+MuSzco

小牟「ペットに管理を任せておるし、さとり自信は来るもの拒まずじゃしの〜」

魔理沙「気をつけろよ〜。他のはそうでもないけど、お燐だけはちょっかい出してくるからな」

霊夢「……良く考えたら、ここも動物園よね」

魔理沙「あー、確かにな。仙人の所とは違って、暗いけど」

 そんなここ、地霊殿は、『さとり』以外の住”人”がいない。
 心を読む能力ゆえに嫌われ、その能力ゆえに動物に好かれているからだ。

 なのでやや、獣臭い。

零児「邪魔をする。……どっちにいけばいい、霊夢」   カツンッ

霊夢「教会、って言うのかしら。あれっぽい所に出たら……足音」  カツンッ

小牟「聞こえるの。ハイヒール?」  カツンッ

   カツンッ

???「…………」

魔理沙「……お出ましになられたぜ?」 カツンッ

星『彼女が、こいしさんのお姉さん……』カツンッ
       こめいじ
零児「……古明地、さとり」カツンッ

さとり「…………」ピタ

 この館の奥へ行こうとしたところに、主が歩いてやってくる。
 古明地さとり――『さとり』と呼ばれる妖怪にして、地霊殿の主。
 ゆったりとした服を着た、真珠のように白い肌を持つ妖怪。

藍『……?』

さとり「…………」

霊夢「お出迎え、ってところかしら?」

さとり「…………」

零児「……皆、分かっているな?」

小牟「分かっとる。……しかし予想外じゃな」

パチュリー『……予定より半刻早い。そのせいじゃない?』

 その体の複数の場所から動脈血管のような管が伸び、体の前にある球体へと集結している。
 その球体こそが『さとり』の代名詞ともいえる器官――第三の目{サードアイ}である。

 皆が静止する中、その目だけが別の生き物のように四人を順番に見つめる。

さとり「…………」

魔理沙「…………(質問されねぇ)」

さとり「…………」

霊夢「…………(何か、変)」

さとり「…………」

零児「…………(…………)」

さとり「…………」

小牟「…………(小五ロリキター! さとりんペロペロ)」

さとり「……誰」

 重苦しい沈黙を破り、ようやく質問が投げかけられる。
890 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/07(月) 00:38:14.62 ID:sd+MuSzco

零児「……俺の名は――」

さとり「何の目的」

 だがそれに答える間もなく、次の質問が飛ばされる。

霊夢「この先に用が――」

さとり「四人いる訳」

小牟「ベストメンバーじゃか――」
      ウツホ
さとり「燐と空をどこまで知っているの」

魔理沙「だ、大体――」

さとり「これまでに誰と戦ったの」

零児「……答える必要は――」

さとり「どうやって灼熱地獄を潜り抜けるつもり」

小牟「…………」

さとり「……――」

 次から次へと投げかけられる、回答のない質問。
 だがその答えから続く質問が、一つ飛びに問いかけられる。
 ある程度予測していたが、ここまで止まることなく話が続くのは、やや驚きも混ざってしまう。

さとり「――…………」

魔理沙「……あ、止まった?」

零児「なるほどな。便利だが、厄介だ」

小牟「これをタイマンでするとなると、確かに要らん事を読まれるのぉ」ハァ

霊夢「だから、後は私達に任せて。様子が変」

さとり「…………」

 質問の回答は、四人で交互に回す。
 これがさとり対策として練られた案だが、この調子では効果があったか分からない。

永琳『そうなの? 映像越しだから分からないわね』

魔理沙「んで、通してくれるのかどうなのか?」

さとり「…………」

霊夢「…………」
891 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/07(月) 00:42:18.48 ID:sd+MuSzco

さとり「ご自由にどうぞ。……寝起きでぼんやりしていただけですので」

小牟「それ癖毛じゃのうて寝癖かい!」ズビシッ!!

霊夢「…………」

さとり「そう警戒しないで、『博麗の巫女』。その差は誤差……違いますか?」

霊夢「…………」

 そんな心配をよそに、眠気を取る為かサードアイ諸共瞬きを繰り返す。
 だが霊夢は如何わしいと、言葉の外の圧で示し続ける。

零児「……霊夢」

霊夢「……行きましょう、零児さん」

文『あやややや、いいのですか?』

霊夢「ちゃっちゃと通してくれるなら、それに越した事はない、でしょ。……気に喰わないけど」

小牟「トラウマ回避出来たんじゃ、儲けもんっちゅーことで……中庭どこ?」

魔理沙「こっちだ。薔薇園だったりもするんだぜ」

霊夢「…………」

 のだが、名を呼ばれるだけで意図する所を察し従う。
 そんな素直になった霊夢を引き連れ、一行は更に深くへもぐる。

零児「……協力、感謝する」サッ

さとり「…………」

 答える気も無く、ただその後ろ姿を見つめ続けるさとり。
 踵を返して中庭へと向かっているその背中を、三つの目が見つめ続ける。

さとり「…………」

   ニャーン

さとり「…………」フッ

 そのあとを追う猫の、足取り軽く。
 口に加えた皮は、いったい誰の物ぞ。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「あ、お姉ちゃんはっけーん!」ガバッ

「………………?」アレ?

892 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/07(月) 00:43:37.65 ID:sd+MuSzco

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 
   ………………
 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
893 :一方その頃@地霊殿到着前 ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/07(月) 00:48:05.11 ID:sd+MuSzco

〜〜〜博麗神社〜〜〜

チルノ「うぇっぷ……」

M.O.M.O.「チルノちゃん、大丈夫?」サスサス

チルノ「だ、だいじょーぶ……――!」シャキーン!

神子「〜〜〜……? ……――?」

景清「……? …………」ジロッ

  ドンガラガッシャーン!!  パリーン

チルノ「っ!?」ビクゥ

M.O.M.O.「! しょ、食器棚が勝手に動いて……あ、喋れました!」

神子「何枚か落ちちゃいましたね」アララ

KOS-MOS「……三つの熱源反応が北東へ移動後、ロストしました」

景清「…………見て来よう」ガチャッ

沙夜「私も暇だから行きましょうか、ね」スッ

クリノ「おいらも行くよ。北東なんだね?」

KOS-MOS「はい。正しくは、北北東の方角、約60m地点です」

M.O.M.O.「皆さん、気をつけてくださいね」

沙夜「大丈夫よ、モモちゃん。この三人なんだもの、ね」

M.O.M.O.「……はいです! 皆さんの裏をかき続けられた沙夜さんが、後れを取るとは思いません!」

沙夜「……なんでかしら、微妙に傷ついたわ」

クリノ「自業自得じゃないかな」アセアセ

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 
〜〜〜命蓮寺〜〜〜

星「あ、無事旧都を抜けました!」

聖「それは良かった。……スペルカードルールを無視した鬼と聞き、気が気でありませんでした」ホッ

ナズーリン「ところで、御主人。ちょっと尋ねたいんだけど」

星「はい、なんでしょうか。ナズー」

ナズーリン「……あの人間が持ってる宝塔って、本物じゃないだろうね」ジト

星「勿論ですよ。本物は今、本堂に供えて毘沙門天様の威光を浴びています」

ナズーリン「……見てくる」ダッ

村紗「ナズーは相変わらず、心配性ね」

星「それは私が悪いのですよ。一度とはいえ、宝塔を失くしてしまったのですから」

一輪「でもそれを聞いて、安心したわ」

聖「と、言いますと?」

一輪「姐さんから星は私達とは違い、生粋の思念の塊と聞いてました。ですがそういうドジな部分もあって、違いはないのだな、と」

聖「……そうですね。皆、違いはないのです」

ナズーリン「…………(代わりに槍が無くなってたけど、どうせ飾りだしいいか」
894 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/07(月) 00:53:39.79 ID:sd+MuSzco

以上で投下を終わります。順番間違い痛い……


そんなこんなでさとり様ようやく登場……出番ぬぇ!


一章も残す所、5面6面クリアー後だけとなりました

そんな5面は水曜か木曜の予定です

では、このへんで
895 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/05/07(月) 20:18:33.59 ID:cPltWGU2o
>>1
さとりさま/(^o^)\
896 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/07(月) 21:39:32.94 ID:joJghT3DO
お疲れっすっ!
情け無用の強制弾幕ルール、か。

博麗の勘は、異変に対しては凄いけど…。

零児さん&俺達の世界では、幻想郷はZUNさんの創作物だけど。今零児さん達が居る幻想郷は、きっと本当にある幻想郷なんだろうね。

零児さん達のラスボス'sを再現とか幻想郷が危ない。

こーかまん?ググるか。

小牟の心の中が俺らwwww

スピードクエスチョンとかどこのテストかと。

寝起きねぇ?本当かなぁ…。

普段はストレートなのか?ダメだ、想像出来ない。

薔薇園…アカン。ゲルトさんが…。

ここでこいしか、行きはよいよい帰りは…ってやつか?

監視員さんが終始無言ww

無理しちゃって、可愛いなチルノ。

器を割ったのは三妖精か騒霊三姉妹か…。

聖様、お優しい。

槍ねぇ…、落としただけなのやら、盗られたのやら…。
897 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/14(月) 01:05:50.75 ID:wEZuD87Co

こんばんわ。レス、ありがとうございます

ものすごく遅れました。連絡もせず、申し訳ございません

お燐のスペカ認識ミスから始まり、その修正等をしていたらこんなことに


さてそれでは投下します、『地霊殿五面』です

どうぞ
898 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/14(月) 01:07:59.27 ID:wEZuD87Co

〜〜〜旧灼熱地獄への高炉・中間層〜〜〜

零児「…………」キィィ

魔理沙「いやぁ、快適快適」

藍『やはり用意しておいてよかった』

チルノ『あたいのお陰さ。どうだ、参ったか!』

零児「ああ、助かっている。……逆に、密集することになったがな」

 地霊殿の中庭から降り、また一刻。
 本来ならまだまだ温くないとおかしい地層は、蒸し暑いを超えた熱気に包まれていた。
 それは地獄として稼働していた頃よりも、怨泉異変の時よりも、更に。

小牟「しゃーなしじゃん……この温度はやばい。何がやばいって、中心地がやばい」

霊夢「口調変わってる。……けど確かに、これは大変ね」ケロッ

魔理沙「……なんで霊夢は平気なんだ?」

霊夢「? 夏服だからよ?」

一同「『えっ』」

霊夢「……???」

 チルノの冷気によりましにはなっているが、それも障害なく進めているから利用出来るだけ。
 攻撃してくるはずの敵が、この暑さにばてているのか散発的なため、それでもまだいいのだが。

萃香『……やっぱり差がわからないよ、霊夢』

霊夢「……分からない?」クルッ

零児「……ああ」

霊夢「…………」ショボーン

アリス『あ、今回は火薬に引火しないから安心しなさい』

魔理沙「覚えてなかったのにわざわざ言うなよ!」

 零児達が通っている道は、灼熱地獄を管理するために、地獄の管轄下にいる鬼が造った管理路。
 鬼の手もさとりのペット達の手もつかないために多少荒れてはいるが、やはり鬼製なだけあってしっかりとしている。

小牟「はいはいあつーことはせんといてくれぇやになっちゃうわい」ベター

零児「だらけて覆い被さるな」

星『灼熱地獄…………え? な、何を言っているのですか、聖!』

小牟「…………」チラッ

藍『考えない方が、賢明だと思いますよ』

 そんな、熱いくせに誰も汗をかいていない行進は続く。
 その、代り映えしない景色の中を、黒い影が横切る。

??「にゃーん」

魔理沙「来やがったぜ、黒猫が! ……あれ?」

霊夢「横切ってったわね。お燐なのは間違いないんだけど」
899 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/14(月) 01:12:00.71 ID:wEZuD87Co

零児「……小牟。今の猫が咥えていたのは」

小牟「完全にマスクじゃったな。どっちのかは分からんがの」

アリス『トラ柄のように見えたけど、あんなマスク被ってる人がいるの?』

零児「プロレスラーに、二人ほどな。覆面レスラー……と言ったか」

パチュリー『……覆面レスラー……』ゴソゴソ
       カエンビョウ
 お燐――火焔猫 燐は、さとりのペットの一匹でもある妖怪。
 猫の姿と人の姿を行き来し、怨霊を操って戦う死体の運び屋だ。
 そんなお燐がトラのマスクを咥えたまま、奥へと進んでいく。

にとり『しっかし、目もくれずに行っちゃったね。どうして絡んで来ないのかな?』

零児「あのマスクが、俺達の知っているマスクなら……恐らく、奥にそれをつけなくてはいけない人物がいる」

魔理沙「戦利品の可能性は低いしなぁ。死体じゃないし」

小牟「あいつじゃとすると、またみょんな改変されとる可能性が微粒子レベルで……」

永琳『はいはい、ネタで元気になったのなら先に進みなさい』

霊夢「……お燐が通った後だって言うのに、怨霊は相変わらずへばってるわね」

零児「行こう。正面に気をつけろ」

 そんなお燐を追いかける形で、更に奥へと進んでいく。



 涼しい顔のままの霊夢が先行し、また半刻。

霊夢「…………あ、人影」

小牟「カゲー」

チルノ『かげー?』

零児「何? ……どんな様子だ」

 ようやく訪れた変化に、空気が引き締まる。
 注:二人除いて

霊夢「……上半身裸の男の人の周りを、お燐がぐるぐると。男の人は、こっちに背を向けてるわ」

文『いやぁ〜零児さんといい、デミトリさんといい、筋肉質な人が多いですねぇ』

零児「デミトリ? あいつも来ていたのか」

文『ええ、明日の新聞の幻想入りリストに、載せる所存ですよ。相変わらず、ケンさんとやらは見つかっていませんが』

小牟「デミデミめ、どこに隠れておったんじゃ。……ま、それは後回しじゃな」

魔理沙「さー、御対面〜っと……うお、まじで裸だ」

零児「……キングだったか」

 やや曲った道の角に差し掛かったところで、その先を覗き込む。
 そこにいたのはキング――ジャガーのマスクを被った、筋骨隆々の漢。
 その周囲では、お燐が猫の姿のまま飛び跳ねている。

小牟「アーマーの可能性も、無きにしも非ずじゃったが……」

霊夢「で、どうするの? ……って、聞くまでもない、か」

アリス『どうせこの奥だものね』

零児「そういうことだ。…………」ザッ
900 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/14(月) 01:16:25.52 ID:wEZuD87Co

お燐「! にゃーん」

キング『……着たか』

 その角からゆっくりと出て、歩み寄る。
 それに気付いたお燐の鳴き声に反応して、キングもまた振り返る。

キング『……何の用だ、お前達』

魔理沙「ここまで来て何の用だ、はないぜ」

キング『それもそうだな。……地獄烏に用があるそうだな』

零児「その猫から聞いたのか」

キング『ああ。既に知っているんだろう? 名を読んだらどうだ』

小牟「お言葉に甘えて〜、火焔猫 燐〜!」

お燐「にゃぁい!」ポワワー

 掛け声と共に、猫の姿が変化する。
 深紅の髪を両サイドでおさげにし、ダークグリーンの服と相まって顔をより明るく見せる。
 猫耳を頭につけながら、人の耳も持つやや不可思議な妖怪だ。

星『おお、変化ですか』

お燐「いやいや〜、お姉さん。名前を呼んでくれるのは嬉しいけど、お燐と呼んで欲しいねぇ」

小牟「一種の礼儀じゃ」

お燐「そうなのかい? ま、それはおいといて」

キング『もう一度訊こう。何の用でここまで来た』

零児「……この奥にいる、地獄烏を止める為だ。お前が呼んだんだろう、お燐」

お燐「おや〜、そこまでばれてるんだ。流石、さとり様を話だけで済ませただけはあるねぇ」

 彼女が、異変の黒幕。
 灼熱地獄の温度が上がり、間欠泉があちこちで湧きあがるようになった際、怨霊を混ぜこんだ張本人。
 ただそれも、地底の異変を地上に知らせる為の手段に過ぎなかった。

萃香『やーっぱりどこからか見てるのか。小動物だから気が分かり辛い』

キング『やはり燐の言った通りだな。地上から誰か来ると』

お燐「予想以上だけどね〜。腐ったエビでも鯛は釣れるようさ」

魔理沙「分かってるなら、さっさと通してくれ。悪のり鳥頭は、懲らしめないとな」

お燐「ところがどっこい、そう簡単に通すわけにはいかないんだよね〜、これが」

 その理由は、力に溺れた友を止める為。
 大切な友達を守る為に、主人ではなく地上の誰かに報せる。
 処分されるかもしれない恐怖からきた人騒がせな異変は、望んだ以上の結果で終幕を迎えた。
 それが、怨泉異変。

藍『やはり、実力試しをするのか』

お燐「なんだいなんだい、そんなことまで? もしやお姉さん達……『さとり』?」

零児「違う、同じ事があっただけだ。……なら、早々に始めるか」

キング『相当な自信を持っているようだが、自惚れるなよ』

霊夢「自惚れじゃないわ、自信よ! 『妖怪バスター』!」シュッ

キング『っ!』ダンッ

 あの時とは違う形で、勝負が始まる。
 前回はお燐が挑発染みた言い方で趣味を暴露し、霊夢と魔理沙の気をそれっぽく彩った。
 だが、それもやはり実力を見極める為であるから、結果的には同じか。
901 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/14(月) 01:19:57.28 ID:wEZuD87Co

お燐「好戦的だねぇ。実力もあるなら、この上なく美味しい死体になるよ!」ガリッ

藍『……やはり橙とは違うな。下品だ』フッ

小牟「ここでチェンコン*はいらんぞ、藍」    *チェンコンプレックス。橙を溺愛している者に送られる称号

キング『……がぁああああ!』ブンッ

星『気をつけてください! あの虎の方が岩を!』

零児「分かっている。それから、あのマスクはジャガーだ」タンッ

 お燐の趣味とは、死体を集める事。
 これは種族の本能なのだが、彼女の場合はそれ以上の意味合いを持っている。
 それを示す事柄は、今ここにいる事であろうか。

アリス・星『……?』

魔理沙「虎じゃないんだな……っと、『ステラミサイル』!」バシュシュシュッ

お燐「呪精『ゾンビフェアリー』……いっちゃうよー!」

ゾンビフェアリー`s「……」ワーワー

霊夢「…………」

魔理沙「うわ、昨日の思い出す! ……あ、一昨日か」

  ズガガガッ ピピピチューン

 さとりの飼うペット達は基本的に『化けられない』。
 故に、灼熱地獄原住の地獄烏以外にここの管理は厳しい……いや、無理なのだ。
 だが、お燐はここにいる。

小牟「あれがゾフィーじゃよ、零児」

零児「…………」

キング『燐、ばれているようだ』

お燐「らしいねぇ。でもこれは、対策があっても厳しいんじゃないかい?」ニヤッ

ゾフィー`s「……」ムクッ

  バシュッ バシュンッ

零児「『踏み込む』!」バリッ

 それは、人の死体や魑魅魍魎を喰らい続け、力を蓄えたから。
 捨てられただけの死体を喰らい、妖怪と成ってからもそれを続けたから。
 それもこれも、親友と並び立つ為に。
 あの馬鹿で可愛い烏と、ただただ騒ぎ続ける為に。

霊夢「守って、『警醒陣』! 纏めて散りなさい……霊撃『夢想封印』!」

ゾフィー`s「! わ、きゃー!?」

  ピピピピピピピチューン

お燐「にゃぁい!?」

 復活したのも束の間、霊夢の霊撃が妖精達を吹き飛ばし、零児の道を造り上げる。

小牟「最近の詠唱みたいじゃな。ほれほれ、『朱雀刀』!」

キング『っ。やるぞ、燐!』ガリッ

お燐「……確かにこりゃ、さっさとやっちゃったほうがいいねぇ。妖怪『火焔の車輪』!」バッ

キング『行くぞ、地上の者達よ!』

小牟「……『火焔の車輪(物理)』かの?」

 お燐が放ったスペカは、正真正銘のイライラ棒。
 炎の波を二重に放ち、細かな道を造りそこを通らせるだけの、シンプルでありながら難易度の高い弾幕だ。
 それを今回は、キングを炎輪の中心として展開される。
902 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/14(月) 01:22:35.47 ID:wEZuD87Co

零児「二人とも、キングは俺が相手をする」ガリガリッ

小牟「キングめも飛べんようじゃしな。間合いを気ぃつけい」ガリガリ

キング『付き合い、感謝する』

零児「どうせならヒールを演じてみたらどうだ、キング!」

キング『その役は、燐に一任してある。……私には、私の役があるっ!』

 レスリングでは場や観客を盛り上げる為に、役割を与えられる事がある。
 その役を演じきってこそ、プロであると言えるのだ。
     ヒール
 それに悪役とは、彼にとって役以上の意味がある。

零児「二丁『呪金道』!」

キング『喰らぇえ!』

 それは、死んだ師が演じ続けた”悪ノ花”。
 役だけでなく、責と誇りを持って矜持続けた、彼の生き様。
 死してなお、悪役であり続けた男の軌跡。

零児「ふんっ。たぁ!」ガリガリ

キング『はっ……がぁぁあ!』ガリガリ

お燐「ほぇぇ……」

霊夢「……あんた、私達放っておいていいの?」

お燐「あんな動き見せられて、見惚れるなって方が酷だよ。紅白のお姉さん」

 自分は彼の後を追えない……そんな間違いをも乗り越え、それでいてやはり悪役は譲り続けると決めた。
 そこにあった漢同士のやり取りは、奇しくもフェリシアのミュージカルで活かされるようになったのだが。

零児「叩き斬る。……『火燐』、『地禮』!」ブンッ

キング『くっ……』

魔理沙「あのキングって裸の奴もすごいなー」

萃香『活かせてない感じがするけどねぇ〜。あれ、本当は投げが得意なんじゃない?』

小牟「あたりぃ〜。良い勘しとるの」

 キングは、言われた通りに投げが主体のプロレスラーだ。
 それを十分に知っている零児は、腕に捕まらないよう回避を重視した立ち回りで翻弄する。
 力だけで言えば、確実に負けるのだから。

キング『この狭い中……やるな』

零児「お互い様だ。だから、終わらせる」

キング『……燐!』

お燐「はいはい!」パンッ

零児「!」スカッ

 車輪が消え去ると同時に、キングが後ろへと下がる。
 驚きながらも、振り上げた刀をそのまま投げ上げ、御業にしまう。

キング『燐、観ての通りだ』

お燐「…………」

キング『……燐?』

お燐「いやぁいいね、お兄さん! カッコいいよぉ!」

キング『…………』

 中々にわくわくが止まらない。
 これでも、かなりの力を出してあるスペルカードだったのだ。
 それを平然と避ける様を見せつけられたら……昂ってくる。
903 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/14(月) 01:24:52.10 ID:wEZuD87Co

零児「……小牟。これは一体どういうことだ?」

小牟「たぶん、気に入られたんじゃよ。火焔車的な意味で」

魔理沙「……私達の時も、死体が欲しいからここで死ねって言ってきたよな」

霊夢「まぁ、良い人だとは思うけど」

文『お燐さんに気に入られますか。本当に一度死んでみては? いい記事に――』

零児「断る。そんな簡単に死んでたまるか」

 彼女は基本的に、無縁仏か訳あって供養されなかった死体のみを喰らう。
 だが時々、超例外的にだが死体にして持ち帰りたい人間が現れる事があるのだ。
 そうなると彼女はしつこく付きまとってくる。
 倒されても、何度でも、何度でも。

お燐「むぅ、残念。お兄さん程強い人間の死体は、さぞ美味しいだろうに……」シュン

星『……聖の断った理由が分かりました』ハァ

藍『生きて軌跡を残すからこそ、人は面白いんだ。やはり下品だな』

お燐「さてさて、お兄さんは分かったけど、お姉さん達はどうなんだい?」クイッ

 ただ今は、もしかしたらもっと大物を釣れちゃったんじゃない? という期待も大きい。
 唯一飛べない人間がこれなのだから、当たり前の彼らはどれ程なのか。。

霊夢「私のは見たでしょ」

魔理沙「……じゃぁ私か? 私は美味しくないぜ」ケラケラ

アリス『いや、すでに前回言われたけどね?』

キング『後は、そこのお狐様もか』

小牟「やはりキングは漢じゃ」キリッ

藍『何を……』ハァ

お燐「あははは! まぁいいや、半分も上等なら。……後は」ニヤッ

ゾフィー`s「ヘイ!」ムクッ

 長い間大人しかったゾンビフェアリー達が、再び立ち上がる。
 ゾンビフェアリー――名前だけ聞けば嫌な名だが、実際は死んだふりが得意なだけの妖精。
 地上のそれとは違い、地底にいる妖精はやや頑丈なため、そうやって遊んでいるわけだ。
 とはいえ、統率はしっかり執られているため、十分厄介ではある。

魔理沙「後は……なんだよ」

キング『纏めて掛って来い、知る者達よ!』

アリス『魔理沙、あんたが一番気をつけなさいよ?』

魔理沙「へ、なんでだよ?」

アリス『……さっきからパチュリーの反応ない』

パチュリー『――――』シーン

アリス『私とにとりとじゃ……後は分かるわね?』

魔理沙「……あの馬鹿モヤシー!」

お燐「『死体繁華街』、かーいてーん!」ニャーン

 そんな彼女達がばらけて四人を囲む。
 ところどころ霊夢の陰陽球で怪我をしたような妖精もいるが、皆元気なようだ。

文『おや、これは私が取材したスペルでは?』

小牟「これを本筋でするのはずるいでござる! ってー声が聞こえた気がするの」

零児「何の話だ。……だが、この数は」
904 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/14(月) 01:27:08.74 ID:wEZuD87Co

魔理沙「やっぱデジャブだよな、霊夢」

霊夢「だからって、今回は使えないわよ。霊撃だって、ブン回せるものじゃないし」

ゾフィー(頭乗)
キング『話していられる余裕……そうはないぞ』

お燐「活きが良いのばかりだからね! 上手くやらなきゃ、あっという間に袋の鼠さ」

 更に足されるゾンビフェアリー達。
 多方からにじり寄りながら、多くの弾幕をばら撒く。
 本来、消しながらでなければ逃げ場を確実に塞がれるこのスペルに、少し悩む一同。
 そこで、

零児「……星、藍。力を貸してくれるな」

星『……はい。どうかお使いください、零児さん』

藍『そのための、私達ですから』

 イレギュラー達が声を上げる。
 前回にはいなかった、六つの特異点。
 その組み合わせは、異変よりも異質。

チルノ『あたいの出番かっ!』ガタッ

永琳『あなたはまだよ。私もだけどね』

魔理沙「結構もったいぶるな。……だああパチュリー戻って来いよー!」ウガー

小牟「まぁ、ぬしは最終兵器お空のために温存しておくんじゃ。よっしゃ行くかの、零児?」

霊夢「……フォローは任せて。慣れてないでしょうし、ね」

零児「頼む。……『集中だ』」スッ

小牟「『よく狙えぃ!』」スッ

 零児が宝塔のレプリカを、命蓮寺で見た毘沙門天像のように構え、
 小牟は両の手で拳銃の型を取り、弓を放つが如く構える。

藍『……疑符『妖回針』』

星『毘沙門天の威光よ、彼の者への祝福を!』

お燐「む、お兄さんから霊力が?」

小牟「小牟レーザー!」チョイ!

零児「ってぇ!」

 放たれ始める、二人の光線。

ゾフィー`s「イターイ」ピチューン

キング『やはり……』ガリガリ

 交錯する、光の乱舞。
 初めは僅かだったそれは、すぐさま密度を増していく。

霊夢「……結界『拡散結界』!」

ゾフィー`s「ふっかーt」ピチューン

お燐「ちょ、これは相性最悪かもー!?」

魔理沙「…………」ヨッ

 曲るレーザーの軌道を、妖精は狙われているか判断できない。
 狐の力二倍増しのレーザーを、妖精は回避できない。
 運良く逃れられた者達も、”移動する”結界に迫られ追い込まれ射抜かれる。

 どんなに妖精が頑丈でも、三人の放つ弾幕が隙間なく続くこの状態では、満足にばら撒けず。
905 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/14(月) 01:28:29.02 ID:wEZuD87Co

零児「……難しいな」

アリス『え、結構落としてるじゃない。レイジさん』

チルノ『レーザーキライ』

小牟「パーワアッ!」チョイチョイチョイ

 その弾幕の濃度は、徐々に零児と小牟へと傾く。
 元々ゲーマーで弾幕も張れた小牟はともかく、零児も落としていけるのは射撃の腕前からか。

お燐「うわ〜阿吽の呼吸だねぇ、あの二人。紅白のお姉さんも、上手い事穴埋めてるし……」

魔理沙「だよなー。初めての時も、あんな感じだった気がする」ウーン

お燐「へ〜、そうなのかい? …………あれ、いつの間に」

魔理沙「フリーだったからな」スッ

 そんな三人に見とれていたら、魔法使いさんこんにちわ。

お燐「…………」ニカッ

魔理沙「…………」ニッ

  バシュッ ピチューン!

ゾフィー`s「……わー!」

萃香『おやおや、蜘蛛の子散らすように』

キング『……十分だな』

 魔理沙が八卦炉から衝撃波を出し、お燐を落とす。
 それを見たキングは、唸るように評価を下した。

霊夢「何よ、さっきから計るように。あの時は、こんなに露骨じゃなかったわよ?」

お燐「それはしょうがないよぉ〜。いくらお姉さん達が知っていても、あたいはしらないんだからさっ」イタタ

小牟「ぬしは光物に眼のない烏のようなもんじゃしの。鰹節に小判かもしれぬが」

零児「話が飛んでいないか。それに、それは琥魔だ」

魔理沙「ん、また知らない名前だぜ」
906 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/14(月) 01:30:18.77 ID:wEZuD87Co

キング『燐、立てるか』

お燐「そこまでされたわけじゃないから、大丈夫だよ。けどま、これならお空達にも勝てるかな?」シッシッ

 そのキングの頭に被さるように、お燐が飛んでくる。
 さっきまでいた妖精は、お燐に飛ばされて逃げ帰ったようだ。

霊夢「勝てるかな? じゃないの、勝つのよ。それで、『達』ってのは?」

文『あや、確かに複数形なのは気になりますね』

キング『それは知らないのか。……空が力を得た、という事は?』

零児「知っている。それが誰から貰ったのかもな」

魔理沙「バカ奈子だよな〜。全く、お騒がせな神様だぜ」

お燐「不思議だねぇ。まぁ、達ってのは……――」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

キング『……行ったな』

お燐「行っちゃったねぇ」

 お燐達から『達』と呼ばれた残りが誰かを聞かされ、急ぎ走り出す四人。
 彼らに取り残されるように、お燐とキングは佇んでいた。

キング『不思議な人間達だ。知っている事と知らない事が、あまりにチグハグだ』

お燐「けど、それに慣れてる感じだったね。あのお兄さんのおかげかな?」

キング『……燐、すまん。わざわざヒールを買って出て貰ったというのに』

お燐「いいんだよぉー、別に。あたいとキングの仲じゃないかい」

キング『…………』

お燐「それに、目的は達成出来そうなんだしさ」

 キングもまた、律儀な大人。
 対しお燐は演劇っぽい振る舞いをするが、根は友達想いの猫。
 まるで彼と彼女のようである。

キング『…………』

お燐「……んー、でもやっぱり、死んだらもったいないねぇ」

キング『……何故だ?』

お燐「だってあの三人の前で死んだら、まず焦げちゃうよ。保険は賭けるべきだったかな〜?」

キング『……おまえという奴は』

 そう、零児と小牟のような……そんな二人である。
907 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/14(月) 01:30:51.36 ID:wEZuD87Co

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 
   ………………
 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
908 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/14(月) 01:36:39.48 ID:wEZuD87Co

以上で投下を終わります。ラストはまた、次回を待てひき!

お燐は六ボスクラスですよね、弾幕的に。主にゾフィーが



さて次回の『地霊殿六面』は来週の日曜までには投下するつもりです

ただすごく長くなる予定なので延期する可能性高いです。御了承下さい

それでは、このへんで
909 : ◆NamCapMdYU [saga sage]:2012/05/16(水) 17:42:52.60 ID:MpymIslCo

速報―プロジェクトクロスゾーンに、ムゲフロ枠としてハーケン&輝夜推参―

ついテンションあがったままカキコ。なお、pxzの主人公格は未だ不明

しかし……ワルキューレ様ぇ……


本編は長引きそうです。申し訳ない
910 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/18(金) 08:15:51.41 ID:66+CBi9DO
>>1のペースでいいから一番いいのを頼む

PXZか……
この感じだとレイジ達も参戦してくれそうで期待に胸が膨らむな
911 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/05/24(木) 13:10:59.65 ID:zDTnyXWAO

>>1です、こんにちわ

今晩か明日中に、ようやく投下出来そうという連絡です

わざわざ言う必要はない気もしましたが、制約かけないとずるずると長引きそうだったので携帯から、と

では、自分に腹立ちながら、失礼します

912 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/25(金) 23:44:01.31 ID:x3usipwvo

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜地底・旧灼熱地獄跡最下層〜〜〜

魔理沙「着いたぜ、零児。ここが……」

零児「……灼熱地獄跡。その名に相応しい場所だな」

 たどり着いた、地底の更に底。

 沸々と煮え滾るマグマを眼下にし、率直な感想を述べる。
 かつての戦いでも同名の場所を見た事があるが、こちらは大きな窯のイメージだ。

小牟「びゃー、あついぃ!」

霊夢「言ったら余計に熱くなるでしょ。……で、あそこにいるのが」
   レイウジ ウツホ
文『霊烏路 空さん。間欠泉騒動の、大本ですね』

星『あの方が、間接的とはいえ、私達が再び集う好機を作った方』

 空と呼ばれるその少女は、地獄烏と呼ばれる灼熱地獄跡に住む妖獣の一種だ。

 彼女は八咫烏の力を取り込み、灼熱の太陽と同じ核融合の力を得た。
 その不釣り合いな力に調子付き、地上侵略を目論んだのが、怨泉異変の始まりである。

零児「背を向けているな。誰かと話しているようだが」

チルノ『見えないなー、あのマフラーのせいで』

永琳『マントよ。話している相手は、スタンとロックなのかしらね』

小牟「確かめるかの。ほれ魔理沙、行けい」

魔理沙・零児「「お前な……」」

 ただこれは異変という形ではなく、利用されただけという扱いである。
 その原因は、間欠泉自体による被害らしい被害が皆無だったのもそうだが、霊夢が『異変』だと思わなかったことが大きい。
 異変とは、博麗の巫女の認識(承認)あって、初めて異変と見なされるのだ。
 それ故に、お燐が黒幕という扱いなわけである。

霊夢「気付かれないうちにやっちゃうのも、手だとは思うんだけどね……」

藍『それも、知りたいと言えば…………え、あ、分かりました、紫様。駄目だそうです』

小牟「……喋れるんなら顔ださんかい。しっかし、なんでじゃ?」

藍『予定調和を崩す事は、幻想郷の均衡を保つ妨げになるかもしれないから、と』

零児「……なるほどな。なら、声をかけるべきか」

 もしもお燐が怨霊を混ぜ込まなかったら、お空は地上へと侵攻してきただろう。
 その場合は、も し か し た ら異変になっていたかもしれない。
 何故ならば八咫烏を従える、神格も実力も上な真の黒幕たる神様が、二人も待ち構えていたのだから。

魔理沙「気がのらねーけど、仕方ないよな。……今度こそまじでいろよ、パチュリー」

パチュリー『善処するわ』

魔理沙「善処じゃねーよ! プロレスの本とか今いらねーだろ」#

零児「……それこそ、後にしないか」ハァ

霊夢「……こほん。お空、ご飯よー(裏声」

お空「うん、さとり様?」クルッ

 さてそのお空だが、服装は白のブラウスに緑のスカートと普通だが、他が特異である。
 左足は”分解の足”と呼ばれ、黒のブーツに電子のようなエネルギー体が絡みついている。
 対し右足は”融合の足”と呼ばれ、金属的な靴を履いている。
 そして右手には”第三の足”と呼ばれる、制御棒のような多角柱な筒を装着してあるのだ。

お空「あら、違ったわ。貴方達、誰かしら?」
913 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/25(金) 23:46:47.95 ID:x3usipwvo

小牟「……似とったか?」

零児「差し控える。俺達は地上から来た者だ。間欠泉について話したい事があって、ここに来た」

霊夢「…………」フイッ

魔理沙「ドンマイ」ポンポン

萃香『…………』

 しかし一際目を引くのは胸元にある大きな“赤い目”と、その背のマントであろう。
 “赤い目”は八咫烏の象徴であり、大きさも相まって目立つ。
 マントはその内側に広大な銀河を映しているために、やはり目立つのだ。
 なお、このマントはお空の好みである。

お空「間欠泉? それが何か?」

小牟「ぬしの力で温泉ブッシャーなんじゃ。それを止めてほしいっちゅー話なんじゃが」

お空「…………?」

???「僕達の力で灼熱地獄跡が活性化。その煽りで、付近の水脈が間欠泉になった……ってことだと思うよ、お空ちゃん」

???「へー、今のでよくわかったな。相変わらず、ロックは賢いなぁ」

ロック「……正直言うと、スタンさんとお空ちゃんはもう少し考えた方が良いと思う」

お空・スタン「「!?」」

 そんなお空の後ろから現れた、スタンとロック。

 ロック――ロック・ヴォルナット。
 超未来の住人であり、かつての仲間内では年少組に入る半人半機の少年。
 その姿は青い外部装甲をつけた、メカのような印象を受ける。
 だがその心は勇気と好奇心に満ち溢れた、折れない鋼の冒険心を宿す……はずだが。

小牟「おーう、ロールに鍛えられた突っ込み力じゃ」

霊夢「あの二人の言った通り……だったわね」

にとり『……(おおおおお……!』

スタン「あの二人って、お燐ちゃんとキングさんの事か?」

魔理沙「ああ、その二人だぜ。……で、お前達の力って?」

お空「質問の多い訪問者ね。一つに絞ってくれないかしら」

ロック「最初の質問と同じだけどね」

お空「…………」

 何故かやや、辛辣である。

スタン「でもそれ、もう分かってるんじゃないのか? 止めてほしいって、言ってるぐらいだし」

小牟「お空めが神から核を貰っとんのはわかっとるんじゃが、ぬしら二人がどうなのかさっぱりじゃ」

スタン「あらっ。……でもそれなら、既に答えは出てる」

零児「何? もしや……!」

ロック「そう。僕達も同じ、核の……八咫烏の力を貰ったんだ」

魔理沙「だからか、余計に熱かったの」ハァ

 与えられた、三つの核。
 それは地底深くに生まれた、地獄の太陽。

お空「そうよ。地上の方達には、厳しかったかしら」

小牟「赤道直下の町並じゃったな。紫外線があったら、確実に真っ黒じゃ」
914 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/25(金) 23:49:14.77 ID:x3usipwvo

零児「そうか。……それを止めて貰う事は」

ロック「出来ないよ。この力を持って、増えすぎた『デコイ』は排除する。本当はまだ、その準備段階だったのだけどね」

 神が与えたそれは、お空に地上侵攻という欲を生み出した。
 分不相応に大きな力を得て、調子に乗ってしまったというわけだ。

霊夢「デコイ……って、何か嫌な響きね」

零児「間違いじゃない、霊夢。……スタンと空も、そのつもりなんだな」

お空「ええ。もう、私から言うつもりだったのに」

零児「何故、そんな事を考える。お前さん達は、曲がりなりにも人のはずだ」

 対し、この二人は別の何かに囚われているように見える。
 不敵に笑うお空を置いて、二人は暗く悲しい表情で佇んでいるのだ。

ロック「…………」

スタン「…………」

小牟「そうじゃな。そもそも、何故嫌われ者と呼ばれるさとりの元におるんじゃ」

ロック「…………」

スタン「……答えられない」

魔理沙「なんだよ、言えないような事なの……」

零児「まて。……話したくないんだな」

ロック「……貴方は、察してくれるみたいだ。……うん、貴方達には、関係ない」

霊夢「…………」

スタン「でも、この力を持ったまま、どうしても地上に出なきゃいけないんだ」

 二人を知る者ならば、今の表情を見れば驚くか、心配するだろう。
 彼らに不釣り合いな……悲愴な決意に固められた、暗い顔をしているのだから。

スタン「……そういうわけだから、態々来てもらったところ悪いけど……一簣之功、にさせてもらう」スッ

霊夢「最後の一努力? ……出力を試す、ってわけかしら」

魔理沙「でもさ、お湯を沸かす力が三つあって……どうなるんだ?」

小牟「一言で言えば、地上は壊滅するんじゃ!」

ロック「……その子も、人の話を聞いてないのかな」ハァ スッ

零児「勘弁してやれ、力の規模が分かっていないだけだ。そして悪いが、止める」

お空「止められる物なら止めてみなさい、地上人!」

スタン「神の炎、その身に受けろ!」ゴォォ

 二人の内にある感情の正体を突き詰めないまま、戦いが始まる。
 霊夢と魔理沙もここまでの事を考えてか、零児と小牟の対応に合わせて動く。

小牟「ほれ皆の衆、お喋り解禁じゃ。えーりんに藍よ、分析結果は?」

藍『活動エネルギーが予想よりはるかに高い。このままでは、足場がこの縁しか……』

スタン「うぉお、『双竜連牙斬』!」

零児「ふんっ、地禮『瞬雷の型』!」

 狭い足場の上で、剣がぶつかり合う。
 溶岩の上にいけないのはこの二人だけであり、そう考えれば足場が少なくとも構わないように見える。
 だが、

お空「弾けて混ざれ、核熱『ニュークリアフュージョン』!」
915 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/25(金) 23:52:53.36 ID:x3usipwvo

アリス『魔理沙っ!』

魔理沙「いきなり、結構! 空中魚雷に、いっけ上海!」シュッ   シャンハーイ

ロック「……? ミサイル?」

零児「ちっ、『電瞬一撃』!」バリッ

小牟「そうじゃ、とにかく逃げい! 『結界』!」キッ

 そんな狭い空間では、お空の攻撃は脅威にしかならない。
 遅くて分かりやすい軌道な代わりに、高火力広範囲なのが彼女のスペルカードの特徴。
 そこに、並の炎なら無効化してしまうスタンがいるとなると、じり貧は必至だ。

零児「くそっ。どうにかしないと、そう長くはもたんぞ!」

永琳『……ここで態々長引かせても、意味ないわよね』フム

小牟「なんじゃ、方法でもあるんかい」

永琳『貴女も思いつくと思ったんだけど……ま、いいわ。零児さん、箒に乗りなさい』

零児「……分かった。魔理沙!」トンッ

ロック「何をしようとしているか分からないけど……させない!」ガチッ

魔理沙「残念、既に準備ずみっ!」グイッ

アリス『ワイヤーレーザー、射出!』

 だがそこは、ブレインの転機が救う。
 お空の弾幕で爆散するのを見越し、空中魚雷に魔力の糸を絡ませてあったのだ。
 それは固定されていないがために、鞭の如くしなってロックを打つ。

ロック「! いつの間に……換装、『シールドアーム』!」ガリガリッ

お空「私に任せて、ロック! そんなへにゃちょこなゴミカスなんて…………あれ、焼けない?」

アリス『ぶれはしたけど、そんな大雑把な攻撃じゃ切れないわ』

零児「っと、掴んだ、魔理沙!」

魔理沙「おう! 次は、永琳?」

永琳『水晶二つで水の気を強めなさい。後は分かるわよね、動かない大図書館さん?』

パチュリー『……真ん中まで行って。それから、レイジに賢者の石を渡して』

 意図する所を察した、次なるブレイン。
 その指示を受けた魔理沙は、相手三人に目もくれず中央へと突き進む。

スタン「早いな、あの子。俺は間に合わないぞ!」

お空「くぅう、当たれ当たれー!」ブンッ

魔理沙「保護膜頼むぜ、にとり!」カチッ

にとり『あ、うん…………って『オプティカルカモフラージュ』だよ!』

零児「頼りにしてるぞ、にとり」

にとり『ひゅいっ!? お、おう! 盟友!』

 後ろから追ってくる弾幕を大きくかわし、ドーム型になっている灼熱地獄跡の天井辺りにまで到達する。
 それに対し、お空が制御棒を構えて狙いを定める。

お空「あーもう、少しはこっちを見なさい! 爆符『メガ――」

小牟「流石は核娘、打ち放題じゃのぉ。じゃがっ!」

霊夢「そんな甘い事、させるわけないでしょっ! 『妖怪バスター』!」

お空「きゃんっ」ガリッ
916 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/25(金) 23:57:21.36 ID:x3usipwvo

スタン「……ぶつぶつ……」

ロック「僕だっているんだ、『ホーミングミサイル』!」

小牟「懐かしの『玄武作』フレア!」

 だが溜め動作が長いために、簡単に隙を突かれる。
 そのフォローにまわったロックのミサイルは、小牟がばら撒いた玄武作に当たって爆発し、役目を担えない。

ロック「でも、これでいい!」

小牟「む? しもた、スタンめを……」

スタン「……『フレアトルネード』!」

 その裏で、炎の剣士は静かに唱術を唱え終わる。
 ど派手な演出に注意を散らしてしまい、フリーとなっていたのだ。
 剣の力で放たれた唱術――炎の渦が、魔理沙と零児に襲いかかる。

萃香『ほぉ、魔法かな? 魔力も感じないのに』

お空「すごい、これなら!」

霊夢「……大丈夫、間に合ってるわ」

パチュリー『落りて』

零児「魔理沙、気をつけろよ」

魔理沙「もちっ!」

 暴風が来る前に、天井から溶岩へと急降下する。

零児「二人とも、頼んだ。……せぇい!」ブンッ

 そして低空……フレアトルネードの僅か先で停止し、二つの水晶を溶岩に投げつける。

パチュリー『……氷精、今よ』

チルノ『ほぉ〜い……すぅー』

 
  水符『プリンセスウンディネ』

  氷符『パーフェクトフリーズ』
 

 二つの水晶から、冷気が溢れだす。

 水晶球からあふれ出た冷気は、それを包む泡に伝わり、”熱反応”とは真逆の反応で泡を肥大化させていく。
 その氷の泡が触れた所は、そのままの姿で凍てついていく。

ロック「凍って……いってる!? とっ」トンッ

スタン「うわぁお……」

お空「あわわわわ」

 その光景を見て、当然のように驚く。
 三者三様なのは、それぞれの性格を表しているようだ。

 そうして凍てつく波紋は端まで行届き、止まる。

魔理沙「……やっぱ強いよな、チルノ」

藍『……よし、安定した。零児殿、いけます!』

零児「…………」ヨッ

  トンッ

零児「……冷え固まったわけじゃないんだな」

 氷の大地に降り立ち、その状態を確かめる。
 零児の言うとおり、氷の膜で止められているだけのように見える。
 ただその足場はしっかりしていて、多少の衝撃ではびくともしなさそうだ。
917 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/26(土) 00:01:06.19 ID:stroYsLeo

藍『はい、紫様の能力による物です。あ、内容については禁則事項ですので、悪しからず』

魔理沙「なんか、久々に紫っぽいな、それ」

お空「やばい、どうしよう……さとり様に怒られる」ブルブル

小牟「……ぬしも多少弄らとるようじゃな」

文『その心配は、不要なんですけどね』

ロック「……これは、警告かな」

魔理沙「ん?」

 そんな力を目にしながら、一人冷静にやってくるロック。
 今の彼の言葉に乗る威圧感は、少年のそれとは思えないほどに重い。

ロック「マグマを止めるほどの力を見せつけ、しり込みさせようって魂胆では?」

霊夢「…………」

ロック「…………」

零児「それもある。後は、溶岩のままじゃ俺が足手まといになる。それを避ける為だ」

ロック「なるほど。貴方が来ないといけない理由がある、と」

零児「話が早くて助かる。……早いついでに、降参してもらえると助かるんだが」

 元々ロックは物分かりがよく、順応も早い。
 しかし、ここまで冷たくも無ければ、察しもあまりよくはないはずなのだ。
 それはまるで、大人のような立ち振る舞い。

ロック「無理ですね。この好機を逃して……次はない」バッ

スタン「ああ。止まるわけにはいかないんだ」トンッ

零児「そうか。……なら、掛かって来い。俺達が止めて見せる」

お空「……はっ。あんたなんかに言われなくたって、行ってあげるわ!」

 そんな、話が一番分かっている彼の言葉で、三人は再び構える。
 三人が持つ気迫は、より一層強く見える形となって、溢れだす。

小牟「仕切り直しっちゅーわけじゃ」

霊夢「でもこれで、本当の勝負よ」

スタン「そうらしいな。……けどこれ以上の言葉は――」グッ

零児「いらん!」ドンッ

 話の最中に上から降りてきたスタンが、先陣をきる。
 ソーディアン・ディムロスを低く構えたまま、肉薄し――

 
   「魔王――」     「火燐――」
 

 ――舞う剣撃。迸る炎。唸りを上げるは――

 
    「炎撃覇!!」「零の型!!」
 

 ――男の咆哮。

藍『…………』

零児「……うぉぉおお!」

スタン「うぉぉお、おりゃあ!」

 上にいた時とは違い、激しく鍔迫り合う二人。

 だが、火の剣としては、スタンの操るディムロスの方が上。
 更に共鳴によって引き出される力の前に、零児は火燐ごと軽く押し返される。
918 :() ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/26(土) 00:08:38.80 ID:stroYsLeo

星『……強い。先程の虎の……あ、ジャガーの方も強い方でしたが』

零児「皆、強いさ」

お空「焔星『フィクストスター』!」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

   CAUTION!!    CAUTION!!    CAUTION!!    CAUTION!!

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

小牟「綺羅星グレイズじゃー!」ガリガリ

 その上空ではお空が投げ飛ばした、小さなリングを幾重にも重ね繋げた大きな輪の中を、グレイズしている小牟がいた。

 お空は核融合による、量子や電子の習性を再現した弾幕も操る事が出来る。
 ただそれでも、小牟の前ではまだまだ足りないのだが。

ロック「『クラッシュボム』!」バシュッ  ビリッ

魔理沙「あたんねー……って、びりびりいってる!?」ガリッ

零児「気をつけろ、ロックはコスモスと同郷のようなものだ。爆弾と電撃を扱うぞ!」

ロック「……やっぱり、不思議な人だ。僕達が居る事を知らなかったようなのに、使う武器を知っているなんて……さ!」

 そして前方にて、ロックと魔理沙が弾幕戦を始める。

 彼の体は場合に応じてパーツをつけ替えられる仕様になっている。
 主に武器を着ける右腕や、地形に応じたシューズを付け替えるといった具合だ。
 その為、持ち込めさえすれば、多彩な武器を扱う事が出来るのだ。
 ただそれ故に、一手多く動作が必要にもなっているのが、やや欠点だったりも。


霊夢「…………」

文『あやややや、霊夢さんは動かないので?』

 その中に飛び込まず、辺りに視線を配らせている霊夢。
 これまでの動きからすれば即助けに向かうはずなのだが……

霊夢「……まぁ、あんたが気がつかないのは仕方ないわよね」

文『おや、もしかして何かあるので?』

霊夢「視られてる。たぶんだけど、映姫様がやったのと同じ奴」

萃香『あの閻魔が? 何したんだか』

霊夢「……でも、映姫様のようにはいかないか」

 巫女の勘が告げる、見られているような感覚。
 この灼熱地獄跡にやってきてから、感じるようになった視線。
 それが気になり、零児達がとりあえず平等に戦える状態になったのを機に、独断で調査を始めたのである。

文『閻魔様がこの異変を割った、というやつですね。なるほど、それは重要です』

霊夢「説明どーも。……気持ち悪いったらありゃしないわね、この視線」

萃香『ぷはぁ。卑怯だねぇ、こそこそとさ』
919 :) ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/26(土) 00:10:37.42 ID:stroYsLeo

霊夢「そういうわけでもなさそうだけど。…………」

 感覚を研ぎ澄まさせて、霊力を練る。

霊夢「…………」

 聞こえてくる三種の戦い。
 それ以外には、僅かに温度が落ちたこの空間の、風の音だけ。

文『…………』ワクワク

萃香『…………』プハー

 感じる視線は、恐らく一つ。
 ……たぶん、一つ。

霊夢「……?」

 だが、どこから見られているのかさっぱりだ。
 何せ周りを見渡しても、影も形も無い。
 『博霊の勘』を持ってしても、居場所が掴めないのだ。

霊夢「……違う。……」

 ……正しく言えば、ようやく勘が働いた、なのかもしれないが。

霊夢「…………」イラッ

スタン『『剛招来』! 『裂空斬』!』

魔理沙『ぬお、跳びかた変だな! 正統派『ナロースパーク』!』

ロック『『ロックバスター』、連射!』

零児『柊樹【ハリウッド】、金【ゴールド】、撃ちこむ……!』

小牟『こらぁ、霊夢! さぼっとらんで、この均衡を崩さんかー!』

お空『これの上からでも出せるのよ! 『ブレイザー』!!』ドンドンドンッ

小牟『連打すなー!』

霊夢「…………」

 そんな事をしている間、あちらさんはあまり動きがない。
 対等の場に立った両者は、互いに”前衛”、”後衛”、”遊撃手”というパーティーになっている。
 つまり、いまいち決め手がない状況なのである。

霊夢「…………」

文『行かないので、霊夢さん?』

霊夢「急かさないでよ。行くわよ、五月蠅いわね。……はぁ」

萃香『はっはっは。私らには分からんけどさ、霊夢にならどうにかできるのかな?』

霊夢「……無理。どーすればいいか分からないし」

萃香『なら、どうする〜? ぼーっと突っ立ってるだけ?』

霊夢「………………あんたら、当事者じゃないからって焚きつけるの止めなさいよ」

萃香『えー、暇だしぃ』

文『えー、暇ですし』

霊夢「…………」#

 その中に突っ込めと、囃したてるこの二人。
 彼女達が今回、異変解決の手伝いをしているのは、結局のところ楽しめそうだからというのが強い。
 異変解決は手伝うが、楽しそうな方を優先するのだ。
920 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/26(土) 00:14:04.39 ID:stroYsLeo

霊夢「あーもう分かったわよ! しつこく言わないでくれる?」

萃香『へっへっへ、そーこなくっちゃねぇ』

 ただ、今回はこれで構わない。
 勘でも掴めない相手を探すよりは、手早く異変を解決した方が他の三人の為にもなるのだから。

霊夢「何がそーこなくっちゃ、よ。……」

 ただそれよりも、色々と腑に落ちない事に悩む、霊夢であった。

ロック「『マシンガンアーム』!」ダダダッ

小牟「前見た時より、早く強うなっとる!」ガガリッ

零児「コスモスも強くなっていただろう、何を言っているんだ。……、上!」

お空「七星『セプテントリオン』!!」

 お空が放つ、北斗七星を模った弾幕。
 狙う相手……いや方角によって弾幕の濃度が変わるそれが、”三方向”に向かって放たれる。

小牟「ぶふーっ!? なんでや……スターーン!?」

スタン「燃え尽きろっ!」

 それは、スタンからの力の供給によるものだった。

 入れ替わり立ち替わり、相手を変えてきた三人。
 そのサイクルが、ちょっとした不注意から崩れ、炎の力を集めることとなってしまう。

 だが、

霊夢「…………」トンッ

零児「……霊夢」

霊夢「ごめんなさい、零児さん! ……夢符『二重結界』!」

ロック「え、いつの間に!」

 跳んできた霊夢が、スペルカードを展開する。

 内側と外側の境界を入れ替える二重結界が、死兆星になりかけた三人を救う。

お空「え、私の弾幕……帰ってきた!?」ガリッ

魔理沙「わりぃ、スタンをフリーにしちまった。だけど霊夢遅すぎだろ、何してたんだ?」

霊夢「気になる事があったから。ごめんね」

藍『気になる事?』

霊夢「後にしましょ。結構長くなるから。……『退魔符』その十!」シュッ

 弾幕が戻ってきたと驚いたが、実際は外回りの結界の内側に飲まれたから戻ってきたように見えただけ。
 そして今度は後ろから、大量の札が流れ込んできた。

お空「なるほど、これはアベコベってわけね」

スタン「驚いたな、そんな事が出来るなんて。だけどそれなら、寄って斬るだけだ!」

小牟「残念じゃが、ここからはオシオシじゃぞ。永琳、行くぞえ!」

永琳『よく狙いなさい、女狐さん』

 永琳の弾丸を白金【プラチナ】に込め、狙い澄ます。
 そのポーズは、とても狙っているようには見えないが。

零児「魔理沙、霊夢、行くぞ!」ダッ

魔理沙「おう、フォローするぜ!」グイッ

ロック「何かするつもりだ、気をつけて!」

霊夢「気をつけたって無駄よ。だって……」

小牟「バッボーイ!」バンッ
921 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/26(土) 00:16:45.77 ID:stroYsLeo

スタン「うわっ!」ガリッ

   ガンッ!

 放たれた弾丸は、スタンの脇腹を自らグレイズし、遠く壁にまで到達する。
 そこに待機していた上海が盾で軌道を跳ね返す。
 大きく翼を広げて飛ぶ、お空の背中へと。

お空「?」ガリッ

ロック「兆弾だと思ったら……外れた?」

 ただそれはお空に掠っただけで、そのまま飛んでいく。
 そして弾丸は、天井に虚しく埋まった。

小牟「ぐぬぬ、魔理沙ぁ!」

魔理沙「”フォロー”はしただろ。それより、前、まえ!」

小牟「その手には……――」

スタン「『閃空裂破』!」

小牟「――乗らぬぅ!」カァン

 跳び上がりながら翻り、相手の背後から兜割を繰り出す閃空裂破。
 それを仕込み錫の鞘で受け止め、そのまま上へはじき返す。

スタン「おわっ!」

小牟「ワシ流水憐抜刀法、『清水の型・逸れ刀身燕――』」

スタン「っと、『ブレイブ・ビースト』!」ガォオ!

小牟「わっほう!」ガリッ

藍『……長いからですよ』ハァ

 やたらと長い前口上の間に体勢を整えられ、そのまま炎獅子の咆哮をかまされる。
 低い腰構えだったため、そのまま前転で逃げられたが。

小牟「前転の可能性!」キリッ

霊夢「……ネタに全力を奉げないでくれない?」

星『やはりマミゾウさんと似ていますね。どことなく、ですが』

ロック「……お空ちゃん。このままじゃ僕ら、負けるよ」

お空「え、どうしてよ」

ロック「数の不利もだけど、余裕が違うんだ。……出し惜しみ出来るほど、甘くない」

お空「…………よし、分かったわ。なら、全力出すわね。巻き込まれても知らないわよ」

ロック「そうならないように頑張るさ。スタンさん!」

スタン「! よし、『裂空斬』!」

 不利な流れを瞬時に感じ取り、危機感を抱いたロックとお空は並びを入れ替える。

魔理沙「それ脱出技かよ、『ナロースパーク』!」

スタン「『鳳凰天駆』!」

魔理沙「次は急降下? 見た目ほど単純じゃないってか」

零児「その通りだ。スタンの相手は俺がやる。後の二人を頼む!」

小牟「いかん、もう遅いぞこれは」

お空「私の前に、跪け! 『地獄の人工太陽』ぉ!」
922 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/26(土) 00:20:16.17 ID:stroYsLeo

―――――――――――――――――――――――――――――――

   CAUTION!!    CAUTION!!    CAUTION!!    CAUTION!!

―――――――――――――――――――――――――――――――

小牟「ほーら、ラスペ!」

 特大の神力が、お空を中心に核熱となって浮かび上がる。
 それは溶岩よりも眩く光り、圧倒的な熱を放ってこの場の全てを照らす。
 其の姿や正しく、地底の太陽。

零児「吸い込まれている? これが例の」

霊夢「そう、決め手。アレに近づくのは、今の私じゃ天生以外無理」

星『神の力を、これほどまで引き出せる方がいるなんて』

にとり『エネルギーとしてはいいけど、干上がっちゃうよ』

 自分自身が弾幕その物となるこのスペルカードは、究極の攻防一体技。
 下手な弾幕なら全て遮断し、肥大化し続け、最後には逃げ場を奪い取る力技。
 更に疑似的な重力を発生させ周りの物を引き込むのだ。
 その関係で、仲間を巻き込む可能性が高い。

スタン「ぬぉおおおお!」ダダッ

零児「……自滅覚悟か」

スタン「自滅なんかしない。俺は仲間を信じてるっ!!」

お空『あぁぁああああああ!』

 だからこそ彼らは、これに全てをかける。
 生半可じゃ敵わない相手に、全身全霊をぶち込む。
 そう、

ロック「ターゲット、ロックオン。『シャイニングレーザー』!」

スタン「『屠龍閃』!」

 太陽に、二人のエネルギーをぶつけて。
 更に早く、更に大きくするために。
 全てのパワーを、お空に。

アリス『うわー……あの時の倍は、肥大が速くなってるかも』   ビキッ

藍『! この熱に、足場が壊れかけている……!?』

零児「関係ない。俺達も全力で迎え撃ち……終わらせる」

魔理沙「やるんだな、あれを?」

小牟「やるしかないのう、あれを!」

霊夢「…………あれってなによ」ハァ

小牟「決まってるわい。がtt」

零児「それは言わせんぞ」

 それに対抗すべく用意していた物を展開する。
 相手が三人なら、こちらは四人だ。

霊夢「なんでわざわざ異変の時にしたいとか言うのかしらね、小牟は」

小牟「経験則じゃ。異変の中なら被害はでんっ」

零児「全く……」

星『それでも、付き合って上げるのですね』

零児「一理はあるからな。それに、あいつがそこまで無謀な事を選ぶとも思えん」

星『…………』

魔理沙「位置に着いたぞー!」ガシッ
923 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/26(土) 00:27:10.79 ID:stroYsLeo

霊夢「夢符『拡散結界』」

 魔理沙が後方で八卦炉を構え、その前方に霊夢の結界が螺旋状に配置される。

 それは、お空と戦う時の為に用意していた、力を合わせたファイナルスペル。

藍『時間がありません。お二人も、早く』

零児「分かっている。……小牟、行くぞ。『これで決める』!」

小牟「四人で出来るもん、じゃ! 『わしの切り札』っ!」

 結界の真下で、武器を構える二人。
 二人の霊力が、瞬時に高まり……

小牟「水は樹を」

零児「樹は火を」

小牟「火は土を!」

零児「土は金を」

小牟・零児「「金は水を生む!」」

 彼らの持つ武器の力を、結界へと流していく。
 五行の力を得た結界は、虹色に輝くドリルの如き形状へと変化する。

小牟「五行コーティング完了。いつでもよいぞ、魔理沙」

魔理沙「弾幕はパワーだけど、もっと考えてやるんだぜっ。恋符『ファイナルマスタースパーク』!」

小牟「ちゃーう! 『愛と友情の、クワドロプドリルスペシャル』じゃ!」

 魔理沙渾身の極太レーザーが、結界に向かって放たれる。
 それは結界の螺旋に沿って渦を巻き、圧縮され、五行の彩りを得て、先端の穴から穿たれる。

零児「……マミゾウと一緒か?」

星『そ、外のお話を聞く時だけは……』

霊夢「……四協『スパイラルスパーク』でしょ」ボソッ

お空『う、うにゅーー!?』

 一点集中されたレーザーは、肥大化し続ける太陽へと突き刺さる。
 ぶつかった瞬間、力が拮抗したようにみえた。
 だがそれはほんの僅かな間だけで、すぐに太陽を貫通し、反対の土壁にまで到達する。

   ピチューン

スタン「……そんな、馬鹿な」ドスッ

ロック「ドリ……ル……?」

 お空がやられことで、太陽は収縮し消えた。
 後に残った二人は、敗北を感じ取ったのか力が抜けたようだ。

小牟「大技には大技が礼儀じゃ。偉い人には、それがわからんのじゃ」

魔理沙「偉い人ってだれだよ!」

零児「大丈夫か、魔理沙」

魔理沙「へーきへーき。あれは八卦炉のリミッター解除しただけだしさ」ヘヘヘ

アリス『シャオムゥって、すごい事考えるわね……』

小牟「憧れと羨望を詰め込んだからの」キラン
924 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/26(土) 00:29:16.54 ID:stroYsLeo

零児「そうか。……スタン、ロック」

ロック「……なんですか」

スタン「…………」

 戦意を失った声で、零児の方へ顔を向けるロック。
 スタンは項垂れたまま、剣を握りしめている。

零児「お前たちは何故、地上へ向かおうとしたんだ?」

ロック「…………初めに言った通り、『デコイ』……『人間』を減らす為」

藍『……デコイ? デコイとは?』

小牟「なんじゃ、ぬしは紫から聞いとらんのか?」

藍『あ……はい』

ロック「……?」

 デコイ――人。
 超未来における、エデン又はロストエルサレム以外で繁殖している人間。
 その者達へととある意思が名付けた、削除されるべき人間の総称。
 これらはロックの記憶と、生誕の鍵。

零児「詳しくは後でだ。……それでスタン、お前は……」

スタン「…………」ブツブツ

星『……酷く落ち込まれて……』

霊夢「…………」

スタン「『エクスプロード』!」

アリス『え、また詠唱!?』

魔理沙「な、な、な…………んにもおこんねーぞ?」

 叫びながら、唱えた言葉。
 だが何も起こらない衝撃からか、疑うように剣を見る。

スタン「……なんで、だよ……ディムロス?」

小牟「暴れようとしとったんか。あきらめが早いと思うておったが」

スタン「なんで力を貸してくれないんだ? 俺はお前の為にやってるのに!」

萃香『他人に善意を押しつける程、酷い偽善はないよねぇ』プハー

スタン「……五月蠅いっ! ……なんだよ、ディム……目を、覚ませ?」

霊夢「…………へぇ」

スタン「なんだよ……それ。俺はディムロスを……親友のお前を殺して捨てた地上を! 神を殺す為に――」

   スッ  ピチューン

 阿修羅ともいえるほどに歪んだ顔で、怒鳴り声をあげたスタンを、零児が首を打って黙らせる。

魔理沙「っ!」ビクッ

星『な、零児……さん?』

霊夢「……不思議よねー。最後の相手だけ、被弾したら消えるんだもの」

文『いやぁ、流石に抜刀術の使い手。手が早い』
925 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/26(土) 00:33:54.27 ID:stroYsLeo

零児「……ロック。スタンは、復讐の為に地上に出ようとしたんだな」

ロック「ええ。……僕が聞いた範囲では、神々の戦争のコマにされ、使い捨てられた、と」

小牟「復讐するは我にあり、かの。嫌なもんじゃ」

零児「…………」

 今回の異変の動機。
 地底に逃れた他の妖怪と合わせたような、改変。
 早苗の時と同じく、早々に忘れさせるべき悪夢。

魔理沙「覚えてないのは、本当にラッキーだぜ。……で、”やる事やった”けど後はどーするんだ?」

ロック「やる事?」

霊夢「今の貴方に話しても仕方無い事。たぶんこのままだと、落ちて溶けるわね」

零児「そうか。なら、上まで行った方がいいだろう。魔理沙、少しだけ頼むぞ」

小牟「ロックめもついてくるんじゃぞ? ぬしを絞めんといかんから」

 魔理沙の言うとおり、終わらせてしまえば済む事に、もうそこまで悩まない。
 それよりも安全を確保してから、ゲームクリアである。

ロック「えっ、あの」

アリス『大丈夫、痛くしないはずだから』

零児「軽く叩くだけだ」シュッ

ロック「……分かりました」

 
チルノ『あたい達の出番はー?』

パチュリー『……凍らせただけでいいんじゃないかしら』

 零児とロックを二回に分けて、壁の上に運ぶ。
 その後二つの水晶を回収し、後は被弾させるだけ。

小牟「ほい、取ってきたぞ〜」

チルノ『ぶー』

霊夢「いいわよ、零児さん」

零児「…………」

ロック「……やらないんですか?」

零児「……例え、今のお前さんに意味がないといえ……」

ロック「?」

 徐に口に出し始める言葉。

零児「俺達にとって、ロックとスタンは仲間だ。この世界にとっては、空もな」

ロック「! ……」

零児「だからこそ、無駄な戦いはなるべく避けたかった」

ロック「…………」

 それは言い訳のように聞こえそうで、彼を知っている人からすれば重い話。

零児「その事を、お前さんには話しておきたかった」

ロック「……それは、仲間としてですか? それとも……僕が話を聞きそうだったから、ですか?」
926 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/26(土) 00:54:05.77 ID:stroYsLeo

零児「その、どちらもだ」

ロック「……それに、意味は」

 幾度となく正義なき戦いを乗り越えた彼だからこそ、そう思わずにはいられない。
 エージェントでありながら、私事を優先してしまう、彼だからこそ。

零児「……無いかもしれないな。記憶を失う事を知っていながら、話しているのだからな」

ロック「…………本当に、心の底から、不思議な人だ」

星『…………』

ロック「……僕にとってウツホとスタンは、『力』以上の価値はない」

零児「……!」

 そんな彼の気概が移ってしまった、『究極のイレギュラー』。
 心の奥底にある暗く深い部分を、吐露してしまう。

ロック「無用な『デコイ』さえ排除出来れば、彼らも用済みだった」

小牟「…………」

ロック「はずだった、んですけど……処分出来ないだろうなって、途中で気付きました」ハァ

零児「…………」

 移った、というよりは、戻った、の方が適切かもしれないが。

ロック「貴方に会ってから、何故だか自分の役目を、考えてしまったんです。……初めは何故か、分かりませんでしたが」

零児「……分かったんだな」

ロック「貴方が言っている通りなんでしょうね。……きっと」

魔理沙「きっとじゃねぇ。絶対さ」

ロック「…………僕からは以上です。もう、いいですか?」

零児「……ああ。済まなかったな」

ロック「どうせ負けたんです。気にしないでください。……それじゃ、さようなら」

零児「違う。……また後で、だ」

ロック「……はい」

 再開を約束する、挨拶。
 そして……

 
   ピチューン

 
………………

…………

……

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
927 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/26(土) 00:55:36.31 ID:stroYsLeo

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ……………………………………………………………………………………

 コングラッチレイション。森羅のエージェント

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
928 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/05/26(土) 01:00:09.34 ID:stroYsLeo

以上で投下を終わります。大幅添削とか、反省点考えてたら間が空きすぎた


小牟暴走回。実は、いっそもっと酷く、圧倒的にしようと思ったりもしましたが……自重


さて次回、『地霊殿クリアー後』の投下で、一章は終了となります

土日の内に投下したいのですが、暇が取れるか……

最低でも、五月中には終わらせたいですが


それではこのへんで、失礼します
929 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/05/26(土) 23:58:37.27 ID:2Nar9Dcno


1章でまずはぐるっと異変を一回り、ということになるのかな?
930 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/29(火) 23:38:54.10 ID:vmxAZeeDO
お疲れ様です!
前回からは結構時間あったのに、レス出来なくてすみませんでした。

それにしても、今回も凄かったですねぇ。流れが全部アニメ調で想像出来ましたよ。

合体技のぶつかり合いもめっちゃ格好良かったです。
霊夢=骨組み
零児&小牟=肉付け&超硬化
魔翌理沙=出力で
ギィィガァァドォォリィィルゥゥゥゥ!とか熱いな!
やっぱりドリルは魅力的ですね。

スタン…あっさり巻き込まれちゃって。

そして、ここんとこちっとも喋らなかった監視員さんが遂に…!
931 : ◆NamCapMdYU [saga sage]:2012/06/01(金) 00:14:30.49 ID:mHGbv1nso

こんばんわ。レス、ありがとうございます

最低でも5月中……と思っていましたが、間に合いませんでした。伏線回収しながらだと長い長い……


>>929
はい。零児と小牟が異変を体験し、幻想郷を知る。というのが、一章の大体の流れです

二章からはメインストーリーを進めつつ、ムゲフロからも何人か来訪者がやって来ます

逆にナムカプからは、今までに出てきたキャラで基本は打ち切りです

ブルース「な、なんだってぇ!? ……平穏に暮らせるなら、それでいいか」


>>930
大丈夫です。レスがなくとも指は進みますから


以上、連絡だけしまして失礼いたします

恐らく、日曜には投下出来るかと。このペースなら……きっと

それでは、また
932 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/06/04(月) 00:20:26.26 ID:1UOqhWLHo

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

零児「……戻ったようだな」

魔理沙「……(キョロキョロ)……だな。温度も下がってる」

チルノ『そうかー? あたいには同じにしかみえない』ダルー

小牟「サウナレベルにまで落ちたかの。これが、普段の灼熱地獄跡なわけじゃな」

 異変が終わり、これまで同様に世界が戻る。
 先程まであった土の天井は消え去り、代わりに人の手が加えられたような穴が出来ている。
 そして目の前にはその穴を通る、蒸気を利用したエレベーター。
 間欠泉センターの一つとなってしまった場所が、そこにはあった。 

文『最近はあまり興味がなかったので、来ていませんでしたが、いやーやはり寂れてますねぇ。ここは、これでいいのかもしれませんが』

零児「忘れられた物が行き着く世界で、忘れられた場所……か」

霊夢「大丈夫よ、零児さん。ここ程度じゃ、そこまで深刻じゃないから」

にとり『山の神様達も、ちゃんと管理しているらしいからね。そ、それより、さっきのロックって子なんだけどさ!』

 ただ、ここが改造されたり、神奈子が管理したり、寂れている事は、割とどうでもいいこと。
 それより元からここに住み、その任を全うし続けている者達がいる事実さえあれば、事足りる。
 それに旧地獄を忘れるほど、地獄の最高裁判官は薄情でもないのだから。

小牟「ロボットちゃうぞ、あれはパーツじゃ。アーマーに近いかの」

にとり『ああ、やっぱりそうなんだね! いいなぁ、いいなぁ……』

魔理沙「……コモモスのほうがメカっぽいぜ?」

にとり『!』ガタッ

萃香『それは後にしてくれないかなぁ、河童ぁ』

にとり『ひゅいっ?! は、はひー!』

 そんなシリアスチックな展開はうんざりだと言わんばかりに、妖怪達が勝手をし始める。
 其の空気はいい息抜き……にはなるだろう。たぶん。

零児「……喋るだけでこれか」

星『……あの関係はもう、百年近く昔の事なのですが……』

小牟「む、ぬしは山住まいじゃったのか。新しいネタじゃな」

 『――じさ―』

零児「ん?」

M.O.M.O.『れ―じさん、聞こ―ますか? 零児さん!』

零児「聞こえるぞ、モモ。どうやら、繋がったようだな」

 そのタイミングで、通信が入る。

M.O.M.O.『はいです。御無事なようで、何よりです』

小牟「脱落者0、クリアータイム六時間三十二分、Sランク―伝説のオンボロじゃ」

M.O.M.O.『……?』

魔理沙「……それも原作か?」

小牟「別のネタじゃよ」

零児「……怨泉異変は無事解決した。出会ったメンバーだが、――」

 異変で出会った仲間達の事を、事務的に報告する。
 たろすけ、キング、ロック、スタン。
 その他にも、改変された内容や”やる事”も伝え終わる。
933 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/06/04(月) 00:23:27.55 ID:1UOqhWLHo

零児「――以上だ。最後の二つはこれから調べる。そっちは、変わった事はなかったか?」

M.O.M.O.『はい。……あ、いえ、無かったと言えば無かったんですが……』

零児「……?」

M.O.M.O.『……何故かお皿が何枚か落ちて、割れてしまったんです』

零児「……原因は?」

M.O.M.O.『食器棚に衝撃が加えられた結果、と言う事は分かりました。熱源も探知したのですが……』

 対する報告は、お昼頃にあった謎の出来事。
 霊夢が怒りそうである。

零児「……それは霊夢や小牟に言った方がいいかもしれんな。今、代わる」

小牟「ん、どうしたんじゃ」

零児「詳しくはモモから聞いてくれ。それから、あれは魔理沙に頼む」

霊夢「? ……代わったわよ。――」

魔理沙「おっけー、んじゃ見てくるわ」ヒョイッ

 そこから逃がすように、用事を頼む零児。
 事前にセットしていた物を取りに、上へと続く穴の傍へ飛ぶ。
 これもまた、事前に予定していた計画の一つ。

魔理沙「おーい、医者ー、聞こえるかー?」

永琳『はいはい、聞こえるわよ。あの狐じゃないのね』

魔理沙「取り込み中だぜ」

霊夢『なぁんですってええええええ!?』

魔理沙「……ほらな」ケラケラ

永琳『何したんだか。……データは取り終えたわ。後は、帰ってサンプルの分析ね』

 外部からの、知覚以外による異変観測である。

 これは、藍と永琳からの提案によるもの。
 以前、永夜異変の折に藍を引き戻した事がある。
 あれを応用した観測装置を、作り上げていたというわけだ。

魔理沙「なーに言ってんだかさっぱりだぜ。……それよりさ、永琳」

永琳『何よ』

魔理沙「なんでこんなにノリがいいんだ? 前に私が頼んだ時は、拒否ったくせに」

永琳『……強いて言うなら、気分の差かしらね。これでいい?』

魔理沙「…………」ジー

永琳『睨んでもこれ以上は言わないし、そんな暇なさそうなんだけど?』

 その提案も含めての、この疑問。
 そもそも彼女達永遠亭の住民は、基本的に外との関わりを。必要最小限にとどめる印象が強かった。
 だが今回……少々アクティブ過ぎる。

魔理沙「え? ……あー」

霊夢『どこのだれか知らないけど、うちの物壊すなんていい度胸じゃないのー!』ウキー!

小牟『落ちつくんじゃ、霊夢。わしらまだ用事あるっちゅーの!』
                   や
霊夢『小牟、離して! そいつ退治れない!』ウキー!
934 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/06/04(月) 00:27:18.12 ID:1UOqhWLHo

永琳『何やってるのかしらね』

魔理沙「……全くだぜ。ま、とりあえずなんでもいいや」ガリガリ

 とはいえ、零児達の手伝いをしてくれるのならそれでいいや、と思ってしまう魔理沙でした。←この間僅か40秒。

永琳『……聞きたいなら、二人きりでね』

魔理沙「遠慮しとくぜ。新薬の実験台に、されたくないからな」

永琳『人聞きの悪い。効果はちゃんと分かってるわよ』

魔理沙「飲ませるのを否定しろよ!」


〜〜〜地霊殿下〜〜〜

 暴れ出しそうな霊夢を落ちつかせ、永琳の観察結果を軽く聞いた一行。
 内容自体は皆が少し疲れている事と、仲間の探索とで時間を喰う事が予想されるため、触り程度で終わる。

 その話をしながら、行きとはまるで様子が違う灼熱地獄跡の通路を登る。

小牟「やはり、ここらへんも手を加えられとったか」

にとり『この辺りは土蜘蛛に任せたって、噂があったな〜。本当、仕事だけは一人前なのに』

魔理沙「阿求の新しい奴に書いてたな。まぁ、地底だしあり得なくもないか」

零児「土蜘蛛か。おい、穴が見えたぞ」

霊夢「あそこは、そんなに変わってないのね」

小牟「さとりの家じゃしのー。ほれ、先に出るぞ?」

 ぞろぞろと穴から出てきた一行が見たのは、忙しなく動いている動物達であった。
 その中には異変で出会ったお燐もいる。
 そのお燐が、動物達に指示を送っているようだ。

星『忙しそうですね。どうなされたのでしょうか』

小牟「さぁのぉ。おーいお燐や、何しとるん?」

お燐「さとり様が、急に部屋の模様替えをしたいっていってねぇ…………ふにゃ? お姉さん達誰……って、巫女がいる!」

チルノ『模様替え?』

お燐「どこから……ってああ、あのえれべーたーからかな。うん、模様替えだよー」

 ごくごく自然に応対をするお燐。
 彼女は地霊殿においては珍しく、外部への露出が多いペットだ。
 それ故に、コミュニケーション能力は高い方なのだ。

魔理沙「急になぁ。ところでここ数日、私達以外に誰か来なかったか?」

お燐「お姉さん達以外に? ……んー、うちには来てないと思うよ?」

零児「そうか。済まないな、呼びとめたりして」

お燐「なんのなんの〜。それよりお兄さん達は誰だい? 巫女や魔法使いに、兄弟がいるとは聞いてないけど」

小牟「わしらは訳あって行動を共にしとるもんじゃ。その説明も、さとりんにするからの」

お燐「あー、さとり様に会うつもりかい? 大丈夫? トラウマ抉られるよ?」

零児「そんな柔じゃないさ。それに、対策はある」
935 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/06/04(月) 00:31:35.58 ID:1UOqhWLHo

霊夢「そもそも、私達がいるんだからトラウマなんて再起させないわよ」

小牟「わかったらなら、下がってよいぞ」

お燐「うへへ、そいつは失礼しやした」

 ノリ良く、作業へと戻っていったお燐。
 それに対して、零児が突っ込みをいれる。

零児「で、どこにいるのか、分かっているのか?」

小牟・魔理沙「「あ」」

霊夢「大丈夫、私が知ってる。さとりはいつも、部屋にいるはず。こっちよ」

小牟「魔理沙めじゃのうて、霊夢が知っておったのか」

魔理沙「……なんで私だぜ?」

アリス『大方、忍びこんだ〜とかじゃないの?』

小牟「それもあるが、地底にちょくちょく来とるんじゃろ、確か」

魔理沙「まーな。けど、ここは別だぞ? トラウマなんて、まっぴらごめんだぜ」

零児「トラウマだろうがなかろうが、忍びこむな。……今の俺達が、言えた義理じゃないかもしれんがな」

 霊夢の後について、地霊殿の中を歩く。
 多種多様な動物達が様々な物を抱えながら、あちこちの部屋を出たり入ったり。
 それが一番多い、開け放たれた扉の前で、霊夢が止まる。

霊夢「ここよ。やっぱり、多いわね」

星『……熊が箪笥を運んでいる様には、驚かされました』

魔理沙「やっぱ、仙人の所と似たようなもんだぜ」

霊夢「さ、入りましょ。ここの一部屋奥が、さとりの寝室だから」

零児「俺が入ってもいいのか?」

小牟「変態の連呼をされるかもしれんの」

パチュリー『……見てみたいかも』

零児「そういった誤解は勘弁してくれ。ハーケンじゃないんだ」

萃香『このロリコン紳士♪』

霊夢「……寝室には私達が入るから、零児さんは部屋の中で待ってて。それから、萃香は後で覚えておきなさい」

 不名誉な代名詞扱いにされた異界の友の話はあっちに置かれ、話は進む。
 さとりの部屋……これまでの通路や部屋同様に、ステンドグラスの窓が取り付けられた部屋。
 内装は正しく西洋の洋館のそれで、小さなシャンデリアやスタンドランプがある。
 他にも西洋陶磁を飾ってあったり、銀の剣等……少女趣味から外れたような物まで壁に掛けられているのは、統一感の為だろうか。

アリス『……入った時から思ったけど、結構センスいいわね……』

魔理沙「うーん……そうかぁ?」

アリス『そうよ。あのお皿の配置とか、銀食器の間隔とか』

魔理沙「白が多すぎてなぁ。それに、この部屋の広さはもったいなくねーか?」

アリス『家は優雅に休むためのものでしょ。そもそもあんたの家はね……』

魔理沙「う、うっせーな! あれはあれで片付いてるんだよ!」

零児「ここで喧嘩する事じゃないだろう」

霊夢「放っておきましょ。じゃ、私が中見てくるわ」

小牟「ワシもいくぞー」

 女子同士の会話らしい内容をお送りしながら、何故か二人の世界に入った魔理沙とアリス。
 無駄な事をしなければいいので、流して二人で寝室へと入る。
936 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/06/04(月) 00:34:10.17 ID:1UOqhWLHo

霊夢「入るわよー、さとり」

さとり「…………あら」

小牟「おいーっす、小五ロリ! じゃなかった、さとり!」

さとり「…………」キィ

 突然の来訪者に、椅子の上から冷ややかな視線を送るさとり。
 ただ霊夢の姿を見たからか、椅子の向きを変えてこちらを向く。

さとり「なんの用……とは、言わないわ。どうやら、御存じのようだし」

小牟「うぬ。要件はまぁ、かくかくしかじかじゃ」

霊夢「どう、心当たりは?」

さとり「……一つ目は知りません。私達はいつもと同じように過ごしていたつもりですから。
     二つ目と三つ目ですが、ここに来ていないという事だけは確かです」

霊夢「……そう。なら、もう用はないわ」

さとり「おや、休んでいかれないので? それだけ動かれた後だというのに」

霊夢「あんたとなんて、一緒に居たくないわよ」

小牟「わしはいいんじゃがのー。心読まれても屁の河童じゃし」

 そしてやはり、あっという間に終わる会話。
 ここにまで来た要件と三つの訊ね事を、異変の時と似た形で訊ねる。
 今回は逆転して、一方的だが。

小牟「とはいえ、用があるからやっぱり帰るんじゃがな」

さとり「…………」

小牟「それわかっとって言っとる癖に、何じゃその渋い顔は」

さとり「なんでもありませんよ? 強いて言うならば、貴女の心の内でしょうか」

霊夢「何思い浮かべてるのよ」

小牟「それはの〜、アルタのメリデアがバルシでキュートなホワイトホールじゃったり、他には……」

 こんな思考を読めば、流石の『さとり』も頭が痛い。

霊夢「日本語話しなさいよ。ああ、そうそう」

さとり「はい。いらしたら、貴女方の事をお伝えしますよ」

霊夢「……やっぱり、会話出来ないってムカつくわね」キッ

小牟「…………おおう、さっとりんよ」

 あれこれと要件を済ませ、そそくさと部屋を出る霊夢。
 その後についていこうとして、小牟がある事を思いつく。

さとり「……分かりません。私が役に立つ保障はありませんし、何より、あまりここから出たくありませんから」

小牟「まぁ、無理強いはせんがの。気が向いたらでええかの」ニカッ

 それさえも読み、答えてくるさとり。
 文字通り見透かされているのにケロっとしているのは、流石妖怪なのか。

小牟「ほんじゃま、わしも行くかの。落ちついたら、お茶でも貰いに来るかの」

さとり「ええ、さようなら。…………」

 閉まった扉を見つめ続けるさとり。
 第三の目が二度三度瞬きをしてから、椅子の向きを直して片づけを再開した。
937 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/06/04(月) 00:43:46.82 ID:1UOqhWLHo

魔理沙「いや、でも白蓮の魔法はな――」

アリス『それじゃちょっと弱いわ。あれはこう――』

霊夢「……何の話をしているの、あの二人」

零児「わからん。元の話から、乖離し過ぎたのは確かだ」

 戻って来て早々、先程と丸っきり主題が変わっている会話を聞かされる。
 二人が会話している事は、魔法使い四人の属性的なことにまでずれていた。
 趣味が合わないとはいえ、ここまでずれ込むのは一種の奇跡である。

小牟「ほら魔理沙、用事はもう終わったんじゃぞ」

魔理沙「だから、白まほ……あ、そうなのか?」

霊夢「ええ、収穫なし」

零児「そうか。なら、旧都を通って地上へのルートでいいな?」

萃香『それは、あんたが言われる方じゃないかい?』

 それは置いておき、予定されていたプランBの確認をする。
 プランAでは、地霊殿に誰か仲間がいれば、零児はその仲間と共に、地上へとUターンする予定だった。
 しかしいなかったため、このまま洞穴方面へ同行し、旧都にて一時的に二手に別れる算段なのである。

零児「……それにも、対処法は練ってある」

にとり『あら、あるんだ?』

星『はい。宝塔を使い、手出し出来にくい状態を作るのです』

 それには、問題がある。
 霊夢や魔理沙、妖怪である小牟なら気にされないだろうが、大人の男性である零児だけは目を着けられる可能性が高いのだ。
 そこで、神の威光を間借りし、誤魔化しながらやり過ごそうと言うわけだ。

文『それはいい方法かもしれませんが、いいのですか? 毘沙門天さん』

星『頼り過ぎはよくありませんが、時には、頼ることも必要です。人命が掛かっているのであれば、殊更に』

文『そういう事じゃなくって、零児さんを信用しても、ということです』

 だがその案に、一石を投じる天狗。

 彼女は非常に頭の回転が良く、更に豊富な経験を持っているため、ちょっかいを出す事が多い。
 ただそれは決して、嫌がらせや言掛りをしたいわけではない。
 自身の信条と、明確な考慮を持って、おせっかいにも他人の踏み込む距離を咎めているだけなのだ。
 だから、神力を利用させるのは止めた方がいいのではと、嘯く。

星『……どういう事でしょうか?』

文『おや、分かっていると思いましたが』

魔理沙「な、なんだよ、文。お前、零児が信用出来ないって言うのか?」

文『信用出来ないとは言いませんよ。ただ、まだ隠している事があるのに、不用意な事をするべきではない、というだけで』

魔理沙「それが信用してないってことだろ。それに何だよ、隠し事って?」

文『それはこちらに聞く事ではありませんよ? ねぇ、零児さん?』

零児「……文の言う通り、俺に聞くべきだ。そして確かに、お前さんたちに話していない事はまだある」

魔理沙「れ、零児……」

小牟「零児、おぬし……」ハァ

星『…………』

 それを否定するような、偽善者でも潔癖者でもない。
 あの夜に血塗られた過去を魔理沙に話したが、嘘をついている部分がある。
 それ以外の、醜い大人な部分を見せない立ち回りだって、してしまっていたりもする。
 それが彼女達に悪影響を齎してしまったと、思っていた部分もある。
938 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/06/04(月) 00:58:36.79 ID:1UOqhWLHo

アリス『隠し事と、話していない事は別だと思うけれど』

魔理沙「そ、そうだぜ。それに秘密の一つや二つ、誰だって……」

零児「魔理沙。俺を過信するな。俺は、汚れた大人だ」

魔理沙「! …………」

零児「……霊夢もだ」

霊夢「…………」

萃香『…………』プハー

 だから、少女達の期待がまぶしい。
 不用意な事をしてしまったと考えるからこそ、余計に。

零児「……。その陰陽球を貸してくれないか」

霊夢「文のを? ……どうして」

零児「少しだけ話がしたい。それも、二人きりでだ」

霊夢「………………」スッ

零児「すまん。……小牟、頼んだ」

小牟「まぁ、二人は任せとくんじゃ。とりあえず、じゃがの」

 
〜〜〜地霊殿・玄関外〜〜〜
 

文『行っちゃいましたね〜。これは私、このまま捨てられて……』オヨヨ

零児「球に入ってるわけじゃあるまい。……わざわざすまないな、文」

文『いえいえ、これは貸しですから。ねぇ、星さん?』

星『私は別に、貸し借りをした覚えはありません』

 霊夢から文の陰陽球を借り、玄関で別れて数分後。
 重苦しい話になりそうだったのを、文が早々に軽口で流す。

星『ですが、これで本当に良かったのでしょうか?』

零児「分からん。そもそも、俺が危惧していること自体、杞憂かもしれないからな。だが……」

文『そんな事を言い始めれば、有象無象に囚われて、何も出来なくなりますね』

零児「ああ。だから、これからは少し距離を置く。……あの子達には悪い事をする事になるがな」

 文の投げた一石は、零児にとってはありがたいものだった。

 彼が出会った様々な人や妖怪の言葉は、彼の行いに疑問を抱かせていた。
 僅か五日程居ただけで、変わったという声が多かったのだ。
 自分が、あんな事を言ったにも関わらず。
 それは、悪影響を与えたかもしれないと考えるに、十分であった。

星『ところで、何故このような事を?』

零児「……俺達は、壁の向こうの住人だ」

チルノ『壁の向こう? どういうこと?』

零児「幻想郷の外の世界より、更に遠い所の人間ということだ」

文『別次元、パラレルワールド、並行世界とかいうやつですね』

星『……『天』のように行くのが困難である、と?』

零児「ある意味、それ以上だ。大災厄を引き起こしかねん境界を、越えなくてはいけないからな」

 それを巻き返さないといけないと悩み、それでも心配はかけまいと、ここまで隠し通してきた。
 だから、文の絶妙なタイミングは、彼にとって幸いだったのだ。

 その雰囲気を感じ取って、文と星は早々に理解した。
939 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/06/04(月) 01:07:35.74 ID:1UOqhWLHo

文『ふむ。よーするに、これ以上懐かれても、面倒見切れないという事ですね』

零児「…………」

星『そんな、身も蓋もない言い方はどうかと』

 それを分かった上で、文は自己流を貫く。
 悩め悩め若造よ、それも我らが時のつぶしぞ、と。

零児「……はぁ。とにかく、そういうことだ。……すまないが」

文『分かっていますよぉ。他言は致しません。先程も言った通り、貸しですから』

零児「いや、そうじゃない。別に話してもいいが、魔理沙と霊夢には、俺から話す」

星『心得ました。……それでは、向かいましょうか』

文『おや、やっぱり貸してしまわれるので?』

星『ここまで他者を気遣える方が、悪用するとは思えません。それに、万が一にもそうなった場合には、直に征伐致しますし』

零児「それは、ますますらしく振る舞わないとな。……毘沙門天の威光、お借りする」

文『でしたら、猿田彦の力も、お貸ししましょうか?』

零児「いや、いい。余計な貸しは作りたくないからな」フッ

文『あやややや、私ってばそんな風に思われていますかぁ』オヨヨ

 手のひらを返すのが早い上に、見え見えの目論見を隠すつもりもない文に、つい笑ってしまう。
 内心感謝しているとはいえ、だ。

 そうして話を終えて、三人の後を追う。
 思っていた以上に早く見つけたのだが、その背は暗く重い。

零児「すまない、三人共。遅くなった」

小牟「おう、零児。思うたより、早く追いついたの」

零児「ああ。俺の所為なのは分かっているが、少し急ぐぞ」

霊夢「……はい」

零児「…………」

 やはり、暗い。
 零児自らの信用するな宣言は、彼女達には少々重すぎる。
 全幅の信頼を寄せかけていた所で、この仕打ちなのだから。

零児「パターンBだが、予定通り行くことにする。二手に分かれるほうが、効率的だからな」

魔理沙「…………」コクッ

小牟「コクッ、じゃなかろう。そんな暗くてどうするんじゃ、魔理沙」

魔理沙「…………おう」

小牟「……いかん。重症っちゅーのを超えとるぞ、これ」

パチュリー『本当にね。そんなにショックなのかしら』

アリス『パチュリー、あんまり……』

零児「無駄口を叩いている暇はない。道はまだ長いんだ」

 それでも投げださないのは、彼女達の職業柄か。
 あるいは、それでもなお、彼を信じようと足掻いているのか。
 重苦しい空気のまま、一行は進み続ける。
940 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/06/04(月) 01:10:13.81 ID:1UOqhWLHo

〜〜〜旧都〜〜〜

魔理沙「…………」

零児「…………」

   ザワザワザワ……

 雪降る地下の都市、旧都。
 その街道を、零児と魔理沙が歩いている。

 当初の予定通り、霊夢と小牟は旧都の外周を行き、零児と魔理沙は勇儀を訊ねる為に目的の建物へと歩いている。

チルノ『ほえー、地都ってこうなってんのか』

魔理沙「……地都って、略しすぎ」

チルノ『言いやすいじゃん?』

零児「言葉には、その形である事に意味がある物が多い。あまり略して話すな」

チルノ『ほーい』

魔理沙「……着いたぜ。ここが、勇儀のいる居酒屋だ」

 魔理沙に案内されてやってきたのは、旧都のおおよそ中心地。
 回りの建物よりも更に高いその建物は、勇儀(の配下)が経営する居酒屋。
 ここを根城とし、日々飲んで騒いでを繰り返しているらしい。

零児「ここに、あの鬼が」

魔理沙「邪魔するぜー」

鬼「お、地上の魔法使いじゃねーか。って、後ろのは誰だ?」

魔理沙「毘沙門天のお使い様。勇儀と話がしたいってさ。いるか?」

鬼「勇儀の姐さんなら、いつもの部屋じゃねーか?」

魔理沙「そっか。……ここは相変わらずだな」

鬼「そりゃぁな。こう五月蠅いのが俺達ってもんよ」

零児「…………」

 響く喧騒は、一つのおおきなうねりの様。
 昼間から酒を飲み、騒ぎ、叫び、歌う、妖怪達の酒池肉林となっているのが、この居酒屋だ。
 そもそも、地底の妖怪に昼夜の概念があるかは、不明だが。

魔理沙「……んじゃ、邪魔するわ」

鬼「おーう」

零児「お邪魔する」

鬼「……なーんか暗かったな、あの二人」

 勇儀がいるいつもの部屋は、この居酒屋の最上階。
 天守閣を模して作られた部屋で、旧都を一望しながら飲むのが日課なのだ。
 その部屋へと続く階段を登り切った先に、胡坐をかいた一角の鬼を見つける。

魔理沙「……おーっす、勇儀」

勇儀「あ〜ん? なんだい、魔理沙か」グビッ  プハー

魔理沙「二月ぶり……だな」

勇儀「なんだ、まだその程度しか経ってないのか? って、後ろのは?」トクトク

零児「俺の名は零児、有栖 零児だ。毘沙門天の使い……と偽って、ここに来た」
941 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/06/04(月) 01:12:46.43 ID:1UOqhWLHo

勇儀「ほう。それをわざわざばらすなんて、どういう用件だい? ……っとと」ポチャン

零児「実は、人を探している。お前さんが旧都でも顔が広いと聞いて、頼りに来た」

勇儀「まぁ、確かに飲み仲間は多いけどねぇ。それで、誰を探してるって?」

 突然の来訪者にも驚く事なく、気ままに酒を飲み続ける。
 そして同じく、酒を飲んでいるの見ていながら、話を進めていく。

零児「虎のようなマスクをした大男。全身青い機械のような少年に、金髪の剣士、
    それから、小さいが……女に目がない男の子だ。全員、人間なんだが」

勇儀「んー、二人程分かんないが、キングとたろすけなら下にいるよ?」

零児「何、本当か?」

勇儀「鬼の私が、嘘つくとでも思ってんのかい」ゲラゲラ

零児「そういうわけじゃない。ただ、驚いただけだ」

魔理沙「……下って、どの階だ?」

勇儀「二つ下さ。場所は声がしてくるから、分かるはずだよ」

零児「二人が居たら、説明だけ頼む」

魔理沙「……分かった」トットット……

 そそくさと逃げるように、下へと降りて行く魔理沙。
 いつもと違う態度に、勇儀が眉をしかめる。

勇儀「おやおや。いつもは有難うって言ってくれるのに、どうしたんだい」ゴソ

零児「俺の所為だ。俺の所為で、今あの子は…………」

勇儀「あの子は?」

零児「…………」

勇儀「訳ありってことか。原因が分かってるってことは、何かしてんの?」

零児「取り除こうとはしている。まだ、途中だがな」               コソッ

勇儀「ふぅーん。何の理由があれど、あの子にあんな顔をさせるのは、感心しないねぇ」

零児「……ああ、怒られて当然だ」

勇儀「……はっはーん」

 勇儀と魔理沙は飲み友達であり、その心根を気にいって、地底に来た時には目をかけている。
 何度も飲み合い語り合ったからこそ、彼女らしからぬ暗さを心配するのだ。
 ただ、その原因を、なんとなくだが察した。

零児「何だ?」

勇儀「よーするに、あんたはあの子に嫌われたいわけだ」

零児「…………」

勇儀「違う?」

零児「……その通りだ」

勇儀「そうかそうか。だから、自分を苛めるような言葉を選ぶんだねぇ」

 ほんの僅かしか話さなくても、戦う者が醸し出す雰囲気で、多くを察する。
 歴戦の兵であり、”力”の勇儀と呼ばれる彼女だからこそ身に着いた、包容力に繋がる第六感。
 これが、異変の時に違和感を覚えられた一因だ。

零児「自分を苛める……か」

勇儀「でもさ、そんなことしなくたって、あの子に構わなきゃ良いだろうに。相変わらず面倒な事をするねぇ、人間は」
942 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/06/04(月) 01:20:56.83 ID:1UOqhWLHo

零児「それは既に手遅れだ。変えてしまった……かもしれないからな」

勇儀「ふーん。ま、あんたがどうするつもりか、分からないけどさ。少なくとも、あんたもあの子も、面白くないんじゃないかい?」

零児「…………」

勇儀「短い人生、楽しまなきゃ損だって。あんたみたいな奴は、特にさ」

零児「……生易しい事じゃないな、それは」

 だから、魔理沙の本音だってわかる。
 だから、零児の思い遣りにも気付ける。
 その上では好きにも嫌いにもなれないけど、捨て置くには勿体ないと思ってしまう。
 やや小難しいのが、なんだかこう、かゆいようだが。

勇儀「あぁあぁ、堅い奴だ。酒がまずくなっちまう」

零児「それは済まないな。なら、お暇させて……」

勇儀「んー、もう少し待ちな。あの二人が、あんたは結構強いって言ってたんだけどさ」       ……サッ

零児「……肯定も否定もしない。自身はあるがな」

勇儀「そういう人間は、つまらない戦い方が多かったかな? 弱点だの死角だの、ってね」

零児「さしで戦う分には、人間は不利だからな。怪力乱神の鬼ともなれば、特にな」

勇儀「それぐらい、分かってるさ。だからこそ、真っすぐ突っ込んでくる奴は、大好きだ」

 そんな彼女は、やはり分かりやすい奴が好きだ。
 世間知らずの強力自慢なんかは、現実を教えるように突っぱねてきた。
 無謀と知りながら向かってくる奴も、赤子の手を捻るように打ち倒してきた。
 でもそいつらとは、酒呑んで笑えあったものだから。

零児「……それで、手合わせするつもりか」

勇儀「いいや、ガタイを見ただけさ。ついでに、臭いもね。相当なもんだよ、あんた」

零児「……臭い、か。お前さんも、そこそこじゃないのか」

勇儀「そりゃぁねぇ。鬼だよ、私ゃ?」

零児「そうだな。そこまで大胆に下着を見せられるのは、鬼か痴漢ぐらいだろうからな」

勇儀「おっと、こりゃいらない物を見せちまったねぇ」ハハハ

 魔理沙が居なくなった後、胡坐から片膝立ちの姿勢に変えたのだが、そこでスカートの中が見放題になっていた。
 とはいえ、下着を見られて恥ずかしがる生娘でなければ、思春期真っ盛りな坊主でもないから無問題。
 故意じゃないことさえ分かれば、要らぬ詮索をせずに済む。

零児「……話は以上か?」

勇儀「急かすねぇ。急いては事を仕損じる、って言葉があるじゃないか」グビグビ

零児「単に予定が詰まっているだけだ。ここで多少縮まったのは幸いだったがな。だから、済まないが……」

勇儀「ああ、別にこれ以上止めるつもりはないさ。一杯、受けて行きな」

零児「……仕事の最中なんだが」

勇儀「それを咎める奴が、ここにいるのかい? それに、さ」

零児「……それに?」

勇儀「私からの酒は、飲めないって言うのかい」

零児「…………」

 ただ、詮索をするだけ無駄ではある。
 彼女は隠し事をするつもりなどないし、行動には単純な理由しかない。
 豪放磊落は伊達じゃない! のだ。
943 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/06/04(月) 01:27:49.18 ID:1UOqhWLHo

零児「……はぁ。その役割は、萃香じゃなかったのか」ドスンッ

勇儀「はっはっは。あいつのは返杯さ。ほら(トクトクトク)……よっと」タプン

零児「その盃に、丸々か。……頂く。…………んっ」グイッ

勇儀「おっ、いい上げっぷりじゃないか」ケッケッケッ

 星熊盃は直径30cm程の、大きな盃だ。
 入れられた酒は美酒となり、飲む者を強く酔わせようとする、鬼の可杯。
 それになみなみと注がれた酒を、一息に飲み干してしまう。

零児「ぷはぁ! ……これで十分か」

勇儀「十分も何も、もっと飲み比べたくなった程さ」

零児「悪いが、これ以上は本当に時間が……」

勇儀「大丈夫大丈夫。一杯は一杯さ。だけど、またいつか来たときは、勝負と行こうや」

零児「……鬼に勝てる気はしないがな。それじゃ、失礼する」

 そう言って立ち上がり、振り返りもせず階段を降りて行く。

 ふら付かない足取りを見送り、もう一度酒を注ぎこんだ勇儀の目は、ぎらついた獲物を見るような目だ。

勇儀「…………(トクトクトク)…………(ゴクッ)…………ぷはぁ。……美味しいじゃないか。少し、勿体ないけどね」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

星『……大丈夫ですか、零児さん? あれだけの量を、一度に飲まれましたが』

零児「酒には強いつもりだ。それに、美味い酒は酔い難いもんだ」

チルノ『ということは、あたいが飲んできたのは全部美味いんだな!』

零児「……おまえさんが飲んできた酒が美味いかは知らんが、なんとなく間違ってる気がするな。どことは言わんが」

  ワイワイガヤガヤンダトコノチビ! ウルセーマメツブ!

零児「っと、ここだな。……邪魔をする」ガラッ

たろすけ「お。ようやく来たぜ、零児兄ちゃん」

零児「遅くなって済まない。……久しぶりだな。たろすけ、キング」

たろすけ「久しぶり。相変わらず無茶してんのな〜」

キング『久しぶりだ、零児。元気そうで、何より。……だがどうした、その顔は』

零児「その顔?」

魔理沙「……赤いんだぜ?」

 二つ下の階の、騒がしい部屋へと入る。
 そこにはやはり三人がいて、子供二人が何やら揉めていたようだ。
 それも、零児の顔を見たらすぐに収まったが。

零児「勇儀に酒を飲まされたのさ」

キング『ほう。だから長かったのか』

零児「一杯だけだがな。……話は?」

魔理沙「まだ、途中。つーかこいつがちゃちゃ入れてきてさー」

たろすけ「分かりやすく言わないのが悪いんだろ。零児兄ちゃんからも、何か言ってくれよ〜」

零児「分かり辛いかも知れんが、詳しくは地上に出てからだ。……話を続けるぞ」

青年少女説明中…………
944 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/06/04(月) 01:36:04.11 ID:1UOqhWLHo

零児「――以上が、大まかな説明だ」

キング『成程。……私達を探しに来てくれたのは、そういう理由か』

アリス『地底だから、というのも強いわ』

たろすけ「いいねーちゃんの声が聞こえるけど、人形か……」

アリス『…………』

零児「……そういうわけだ。二人とも、着いてきてくれるな?」

キング『其の事だが、私はここに残る』

零児「……何?」

たろすけ「勇儀姉ちゃんに、恩があるんだとさ。本当は乳繰り合いたいんだろー?」

魔理沙「ち、ちち、乳繰り……!?」

零児「お前じゃないんだ。……良いのか? 地底は人間には厳しいと聞いているが」

 たろすけ絡みの、いつものやりとり。
 本当に、懲りない奴である。

キング『それは確かなんだろうが、安心しろ。勇儀の計らいもあるが、まだバレていない』

星『やはり、ジャガーの妖獣……!?』

キング『……これはマスクだ』

零児「人間だと言っただろう、星。……ということは、まだしばらくは大丈夫なんだな」

キング『ああ。それに、地底に誰かいる方が、便利じゃないのか?』

魔理沙「それは言えてるな。問題は、どうやって連絡を取るかだけど……」

零児「お前さんが考える必要はない」

魔理沙「……へーいへい」ブーブー

星『……?』

 キングが言うのならば、それは十分に説得力がある。
 それでもやや心配ではあるために、何か手段を講じる必要がある。

零児「……少し待っててくれ。モモ、聞こえるか?」

M.O.M.O.『はい。どうかしましたか、零児さん?』

零児「今、キングにたろすけと合流した。だが、キングがここに残るらしくてな」

M.O.M.O.『! キングさんにたろすけ君、居たんですね! それで、どうするんですか?』

零児「残って貰うさ。ただ、連絡手段が欲しい。それについて、少し検討していて貰えないか」

魔理沙「……」ムッ

M.O.M.O.『分かりました、いくつか心当たりがあるので、ピックアップしておきます。残りの詳しい話は、またあとでしますね』

零児「頼んだ。……そういうわけだ。たろすけ、魔理沙、行くぞ」

 なら、頼れる超未来のあの人達に任せるべきだろう。
 彼が取った、今後の方針的にも、それがベストだ。

たろすけ「あいよっ。こいつと一緒にってのは、ちょっと癪だけどな」

魔理沙「んだと、このエロがっぱ! お前との方が、よっぽど嫌だぜ!」

にとり『ひゅいっ!?』

たろすけ「うっせーなー。俺、貧乳には興味ねーんだ」

魔理沙「……ああん!?」#
945 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/06/04(月) 01:48:47.03 ID:1UOqhWLHo

星『……魔理沙さん、元気になられてますね?』

零児「子供同士、気が合うんじゃないのか? 喧嘩もしている事だしな」

 何か、少しずれ始めた零児である。

零児「それはともかく、霊夢と連絡を取ってくれ。行くぞ」

キング『気をつけてな。フェリシアに、よろしく伝えてくれ』

零児「分かっているさ。また後でな、キング」

キング『ああ』

………………

…………

……

キング『……勇儀』

勇儀「なんだい、あんた?」

キング『零児と酒を飲んだのは……気に入ったから、でいいんだな?』

勇儀「それ以外に、何かあると思う?」

キング『いや。それならそれでいい』

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜地上への洞穴〜〜〜

 あの後、霊夢と連絡を取り合い、旧都の端で合流した。
 あちらではロックを見つけており、合流の際に他の仲間と同様に再会を喜び合った。

 ロックもまた、人とは思われておらず、憑喪の類として扱われていたようだ。

 その後は橋を渡り、地上への道のりをただ走っていた。
 その際、霊夢が先行するような形で、独り飛んでいた。
 対して魔理沙は口げんかをしながらもたろすけやロックと一緒にいたのは、既に吹っ切れたからなのか。

 そうこうしながらも一刻が経ち、地上の明かりが見えてくる。

小牟「おう、ようやく陽の光が見えてきたの。オレンジ色じゃが」

魔理沙「もう申の刻か、そこいらだろうしな。いやー、長かったぜ」

ロック「ごめんね、皆。迷惑かけたみたいで」

零児「さっきも言ったが、気にするな。お前さん達の所為じゃない」

小牟「呼ばれた理由もそうじゃが、異変にはいっとる条件も、よーわからんしの」

たろすけ「でも、異変ってやつは全部解決したんだよな?」

霊夢「そうね。……私が知る限り、異変はこれ以上ないわ」

文『一応、過去にも異変は結構ありましたが、先代やそれより昔のことですからね』

零児「『原作』で出ていないから、範囲外なのかもしれんな」

魔理沙「それはそれ、これはこれだぜ。よー、やくだぜー」ンー

 夕方、おおよそ16時。
 思った通り、半日近くを潰した今回の異変も、地上に着いたことで一応の終わりを告げる。

 まだ、見つからない仲間。
 まだ、知り得ない全容。
 まだ、分からぬ敵。

 未だ見えぬ、"異変"の全容に振り回されながら、彼らの戦いは混沌へと誘われていく。
 そして世界は繋がって……――。


 東方新世界 第一章 会合編 結
946 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/06/04(月) 01:54:37.82 ID:1UOqhWLHo

以上で、投下を終わります

二章は新スレからの予定となっております

現行スレは、レスの残り具合を見て小ネタ、小話を投下して埋めていきます

一日一ネタぐらいで?


それでは、この辺で失礼します
947 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/06/04(月) 02:23:10.87 ID:fd+hXRnUo
乙っすー
小話と2章楽しみにしてます
948 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/04(月) 03:30:02.52 ID:7k7eiknZo
乙です
949 :1レスネタ回 ◆NamCapMdYU [saga]:2012/06/04(月) 19:47:55.22 ID:1UOqhWLHo

新・オプティカルカモフラージュ制作(?)秘話

〜〜〜四日目・夜〜〜〜

{ 紫「は〜い、にとり。進捗具合はいかがかしら?」 }

にとり「ひゅいっ!? なんだ、紫か〜。全く、驚かさないでよ」

紫「慣れない貴女が悪いだけ。それで、頼んだ物は?」

にとり「要望に添えてるか分からないけど、こんなの出来たよ」

紫「……形は変わらないわね。どうなったのか、説明して貰える?」

にとり「なんと、影になるようになりました!」キラン!

紫「……影?」

にとり「そっ! 前回の奴とは、発想を丸っきり逆転させてね。これはガンツの話から着想を得て――」

紫「ふーん、影……ねぇ。それで、効果はどれ程なのかしら」

にとり「――宇宙式のステルスを……ん? 効果?」

紫「ええ。良い結果を出さない限りは、前回のを流用するわ。あの人に迷惑をかけないためにも、ね」

にとり「むむむ、心外だね。河童の技術が信用できないって?」

紫「……」ニコッ

にとり「よーし、見せてやろうじゃんか。外に出てよね!」 { }

{紫「出たわよ?」}

にとり「その距離ぐらい、歩いたらどうなの……。と、ぽちっとな」ブゥン

紫「…………」

   「こうやって光を完全にシャットアウトすることで、風景と反同調による距離感の――」

紫「……」レーザー

   「――乖離をn(ピチューン)ひゅいっ!? な、なんで!?」ピチューン

紫「ちょい、ちょい、ちょい」

 と 「ひぇえええ、なんでええ!」ピピピチューン

紫「距離感を掴めなくなるのは確かかしらね。だけど、私の頭脳にかかれば無意味よ」チョイチョイ

 と 「のおおおおおう!」

紫「でもま、私以外なら問題ないでしょうし、採用ってことにしてあげるわ」チョチョチョチョイ

にと 「ちょ、なら、とめ……イタイイタイイッターイ!」ビェエエ!
950 :1レスネタ回 ◆NamCapMdYU [saga]:2012/06/05(火) 23:41:58.34 ID:xdZfa6m0o

日常の風景・寺子屋編

〜〜〜零児達が"幻想入り"する三日前〜〜〜

フラン「…………」ジトー

英雄「…………」タハハ

慧音「こらこら、フラン。そんなに睨まないで」

フラン「……新しい先生?」

妹紅「そうよ。国語の担当をしてくれるんだって」

フラン「……おじさんだけど、体力は大丈夫なの?」

英雄「こう見えても鍛えていますから、多少の事なら平気ですよ、お嬢さん」

フラン「………………」ジトーーー

慧音「申し訳ない、英雄先生。どうも、警戒心が強くて……」

英雄「いやいや、気にしていませんよ。……お嬢さん。私は英雄、島津英雄と申します」

フラン「……私はフランドール・スカーレットよ、ヒデオ」

英雄「ちゃんと自己紹介出来るとは、しっかりしたお嬢さんですな」

フラン「お兄様に、そう教わったもの。それから、お嬢さんって呼び方……止めてほしいな」

英雄「おや、お気に召しませんでしたか。では、フランさんと……」

フラン「……フランちゃん、って呼んで」

妹紅「…………」

英雄「フランちゃん、ですか」

フラン「うん」

英雄「分かりました。私の事は、英雄と呼んでいただいて結構ですよ」

フラン「もう呼んだわ、ヒデオ」

英雄「おっと、そうでしたな。ははは」

フラン「……ふふっ。ねぇヒデオ。ヒデオはどこから――」

 
慧音「……心配なさそうだな。フラン」

妹紅「流石に三年も経てばね。あの子にとって、今まで以上に早く過ぎている三年とは言ってもさ」

慧音「なんだかんだで、強い子なのだろうな。……いや、それは三年前に、とっくに知っていたか……」

妹紅「…………」

慧音「…………」

妹紅「今度は、ああならなければ良いわね」

慧音「させないさ、絶対に。……絶対に」

951 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/06/06(水) 00:16:55.36 ID:g+E3pP8Go
先生とフランちゃんいいな
952 :1レスネタ回 ◆NamCapMdYU [saga]:2012/06/06(水) 12:04:44.83 ID:AZMu6VmWo

日常の風景・守矢編

〜〜〜五日目・昼前〜〜〜

中村「……ふぅ。終わりましたかな」

早苗「お疲れ様です、中村さん。お茶と羊羹お持ちしましたよ」

中村「あ、これはありがたい。頂きます」

  ドタドタドタ

クロノア「羊羹!」ズサーーー

早苗「あ、クロノア。ちょうど呼びに行こうと思ってたところです。はい、羊羹」

クロノア「わーい、ありがと、サナエ! ……ってうわぁ、紙が山積みだよ。これ全部、ナカムラさんが?」

中村「ええ、まぁ」

クロノア「よくまぁそんなに座ってられるよね。僕、10分持たないよ」

中村「サラリーマンとしては、これぐらい日常茶飯事ですからね。文字を見るというのは、中々楽しいものですし」

クロノア「……わかんない。そんなの見てたらアタマイタクナルヨ」

諏訪子「でも本当、助かったわ〜。楽出来て♪」

早苗「す、諏訪子様……」

中村「ところで、書類を整理していて気になったのですが……」ゴソゴソ

クロノア「?」

中村「ああ、ありました。このダム建築計画から、中止までの一連の流れは、いったい何があったのでしょうか」

早苗「それはですね〜、ダムを一日で作り上げた実績と、河童のフィギュアを結びつけ、企業成就のマスコットとして売り出そうとしたのです」

諏訪子「それを、仙人に咎められて、ダム毎中止にしたのさ。神奈子の思いつきには参ったもんよ」

クロノア「ダムを一日でって、どうやって?」

諏訪子「単純に山を崩して、川を堰き止めただけよ」

クロノア「単純にって、それ凄いじゃんか!?」

中村「ふむ……」

早苗「あのー、それがどうしたのでしょう?」

中村「あ、いえ。……私達人間が考える環境問題や自然問題は、当の本人方からすれば、問題でさえないのかと考えましたら
    ……自分達が、なんともちっぽけな存在に思えてしまいまして」

諏訪子「あったりまえじゃん。この地球だって、齢10桁なのよ? 何度文明が生まれて滅んで、生物が入れ替わったか」

早苗「諏訪子様には、その記憶が?」

諏訪子「ないと言えばない。あると言えばあるわね」

中村「となると私達はやはり、傲慢なのでしょうか」

諏訪子「……ああ、何、懺悔? だったら気にしなくていいわよ。中村みたいに考えるのだって、傲慢なのだって、それが人間『らしい』って事だからね」

中村「らしい……ですか」

諏訪子「そ。だからま、生物としてまっとうに生きさえすればいいのよ。悩むも暴れるも御自由に、ってね」

クロノア「…………難しくてよくわかんないよ」アーン パクッ

諏訪子「あっはっは。その調子よ、クロノア。等身大に生きるのが一番一番♪」

クロノア「???」モグモグ
953 :1レスネタ回 ◆NamCapMdYU [saga]:2012/06/06(水) 22:32:48.23 ID:AZMu6VmWo

日常の風景・白玉楼編

〜〜〜五日目・昼〜〜〜

妖夢「…………」

ローズ「…………」

幽々子「…………」ニコニコ

ジューダス「・…………」

妖夢「…………」スッ

  スタ  スタ  スタ  ジャリ ジャリ

妖夢「……申し訳ございません、ローズさん。待たせてしまって」

ローズ「構わないわ。それより、あのお墓を毎日綺麗にしているわね。大事な人でも眠っているの?」

妖夢「はい。人ではありませんが、大切な子が……」

ローズ「そう。その子も幸せ者ね。毎日供養して貰えるのだから」

妖夢「……この方法でしか、あの子にしてあげられる事がないだけなんです。お墓を綺麗にして、お祈りする事しか……」

ローズ「忘れられないという事は、それだけで十分供養になるものよ、ヨウム」

妖夢「…………」

ローズ「……それじゃぁ始めましょうか。私の好きなようにすればいいのよね、ジューダス?」

ジューダス「ああ。お前なら、分かるだろうからな」

ローズ「あら、ご信頼どうも。……来なさい、ヨウム」

妖夢「はいっ、ローズさん! 妖怪が鍛えた観楼剣に、斬れぬ物など殆どないっ!!」

幽々子「前口上、言わせるようにしたのね〜」

ジューダス「その方が、あいつにあっているからな。それに少しだが、意表を突けるだろう」

幽々子「あらら。ジューダスって、もっと頑固だと思ってたわ〜」ヒョイパクッ

ジューダス「あれを言うことで名乗っているのなら、僕はそれを否定しない。理解はしないがな」

幽々子「な〜んだ、ざんね〜ん」モグモグ

ジューダス「……それより、あの墓だが」

幽々子「なぁ〜に?」モグモグ

ジューダス「あの下には、何も埋まっていないんじゃないか?」

幽々子「ええ、そうよ〜。ついでに、その魂もここにはないわ〜」モグモグモグモグ

ジューダス「……それを、ヨウムは知っているのか」

幽々子「勿論。それでも、ああしてるのよ」モグモグモグモグモグモグ

ジューダス「そうか。…………」

幽々子「…………」モグモグモグモグモグモグモグモグモグモグ

ジューダス「…………」

幽々子「…………」モグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグ

ジューダス「…………はぁ」

幽々子「亡霊だから、太らないわ〜」

ジューダス「…………ちっ」
954 :1レスネタ回 ◆NamCapMdYU [saga]:2012/06/07(木) 15:19:03.85 ID:XV2WWHOMo

日常の風景・仙界編

〜〜〜四日目〜〜〜

屠自古「むむむ……」

ジェネティ「…………」

芳香「〜♪」

フーバー「……うーん、やっぱり駄目でしゅねぇ」

布都「くうう。何故このような事になってしまられたのか! 太子様と! 三日も! 逢えない!! などと!!!!」

フーバー「すみましぇん、分からないんでしゅ。外の事が分かれば、まだましなんでしょうか……」

布都「ああいや、フーバー殿の所為では……」アタフタ

青娥「……(暇ねぇ」コチョコチョ

芳香「〜♪」ニパー

屠自古「太子様が忘れられているとは、思えませんし……何か重大なことでも……?」

ジェネティ「…………」

フーバー「そうでしゅね、ジェネティしゃん。八方ふしゃがりでしゅ」

青娥「……(今日何もなかったら、出るか」

布都「太子様ぁあああ!」ゥォォォ!

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜人里〜〜〜

神子「そういえばシャオムゥさんは、中国系なのですか?」

小牟「ん? そうじゃが、何かの?」

神子「貴女なら知っているでしょうが、青娥さんも彼の国出身なので。そういう人が多いのかと」

小牟「そういう人とはなんじゃ、失礼な。わしはこう見えても純情派じゃぞ」

神子「何も、不純だとは。ただ、弄り好きな方だな〜、と」

小牟「それは否定せんよ。むしろ大正解じゃ」ハッハッハ!
955 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/07(木) 16:08:18.79 ID:34w0ZFNDO
どのお話も素敵すなぁ。
956 :1レスネタ回 ◆NamCapMdYU [saga]:2012/06/07(木) 22:49:25.41 ID:XV2WWHOMo

日常の風景・紅魔館編

〜〜〜五日目・昼ごろ〜〜〜

美鈴「…………」

小悪魔「おや、また寝ているのですかね美鈴さんは! 駄目ですねー門番だというのに自覚が足りていませんよ! ここは一発私がびしっと言ってやって地位の向上を目指しつつ給料アップを目論んで……」

美鈴「……起きてますよ、コアさん。そもそも、私にびしっとした所で、パチュリー様のご機嫌は取れないでしょう」

小悪魔「ちっ。憂さ晴らし出来れば何でもよかったのですが、そう上手くはいかない物ですね。あ、でもしかし「また」を否定はしていません。やはり寝ているという事を白状したも同然なので、この言質を持ってメイド長に直談判を……」カチン

咲夜「狼少年の話を真に受けるほど、お馬鹿ではありませんよ。小悪魔さん」

小悪魔「むむ、聞かれていましたか。しかし昼間から外に出ているメイド長とはどういうことでしょうか。常日頃から思っていましたが買い物程度なら妖精に任せればよいのです。なのに妖精が使えないなどと、新人教育をさぼっている言い訳を妖精に押しつけて……よしこのネタでレミリア様に上告を」

咲夜「レミリアお嬢様なら、今は妹様、リリス様と一緒に寝ておりますわ。不用意に起こしに行くと、怖い目に遭うかと」

小悪魔「ぐぬぬ。それでは原点回帰としまして不甲斐無い御友人である館の主のアレコレをパチュリー様に吹きこんで、下剋上してやります! 覚えてやがれー!」バビューン

美鈴「……相変わらずですねー、コアさんは」

咲夜「何をどう思ったのかしらね、あれ。……それより美鈴、少し留守を頼むわ」

美鈴「買い物ですか?」

咲夜「ええ。妹様の日傘を、見繕ってこいと言われましたので」

美鈴「分かりました。行ってらっしゃいませ」

咲夜「他にも色々と買い足さなきゃいけない物があるから、少し遅くなるわ」ノシ  カチン

美鈴「……咲夜さんの遅くなるって、基準がよくわからないんですよね。さて、仕事仕事」

大妖精「…………」ヒョコッ

美鈴「……ん? あら、大ちゃんじゃない」

大妖精「……――!」

美鈴「はい、こんにちわ。どうしたの、今日は?」

大妖精「――〜〜、○○!!」

美鈴「チルノちゃんがいなくて暇だから来たの。どうしたの、チルノちゃんは?」

大妖精「っ! ××、――! ――!」

美鈴「スキマ妖怪に誘われて、知らない男と一緒に? ……それって、赤と黒のジャケット羽織った、傷の男?」

大妖精「」コクコク

美鈴「あー、やっぱりですか。……あんの野郎フラン様の裸見ただけじゃなく、チルノちゃんにまで手ぇ出すとは」ゴゴゴゴ

大妖精「っ!?」ビクッ

美鈴「もし次、ノコノコと着やがったら、絞めてやるからな……」ゴゴゴゴ

大妖精「! ――!」アタフタアタフタ

美鈴「それはそれとして。……大ちゃん、一つ聞いていい?」

大妖精「?」

美鈴「……なんで普通に喋れるのに、妖精語で話すの?」

大妖精「……キャラ付けですっ」キリッ

美鈴「どういうことよ、それ」ハァ
957 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/06/08(金) 08:11:27.60 ID:vz7BkK4DO
零児にロリコン疑惑がww
958 :1レスネタ回 ◆NamCapMdYU [saga]:2012/06/08(金) 10:27:22.52 ID:jo3uNOm+o

日常の風景・超未来編

〜〜〜フーバーが噂していた、その頃〜〜〜

マスヨ「ハハハハハハ! どんどん来なさいこのタコ! ハハハハハ!」ガガガガガ

タイゾウ「おい、マスヨ! てめぇこうなる事分かってて、俺に掘らせたな!?」ズガガガガ

マスヨ「心外ね、タイゾウ君。私がわざとしたって言うの? 私はただ、タイゾウ君に楽しんでもらえたらと思ったて、誘っただけなのに」ガガガガガ

タイゾウ「だからってオクティ共の巣を掘らせるこたぁねえだろ! つーかてめぇ、やっぱ分かっててやってんな!」ズガガガガ

マスヨ「良いじゃない、別に。もしも本当にオクティがいれば、こうやって掃討する。いてもいなくても、タイゾウ君は星を掘れて満足。損はないじゃない」ガガン ドボンッ!

タイゾウ「あのなぁ。現に今こうやって命狙われて、横に掘り進んでる、どこが満足出来るって!?」ズガガガガ

マスヨ「あはは。細かい事は気にしないの。タイゾウ君の背は、私が守ってあげるから☆」キキキキッ

タイゾウ「てめぇに守られてると、生きた心地がしねーんだ――」ズガガガガ

マスヨ「あ、対衝撃波対策、しておいてね」キキキキキッ

タイゾウ「――よ。っておおおおい、それベクター社の……!?」スッ

マスヨ「マックスファイアー!」ズゴォォォォォ!!

タイゾウ「―――――!(掛け声一緒かよ!」ォォォォォ

マスヨ「――? ―――(なーに、タイゾウ君? 聞こえないわよ〜」ォォォォ

タイゾウ「―――――――……(そーいうのぶっ放すから、生きた心地がしねーんだよ……」ォォォォ ズガガガ

マスヨ「ハハハ! 汚物は滅却よー!」オオオオオオ

タイゾウ「――――――!(なんでそれは聞こえんだよ!」ォズォガォガォガ
959 :1レスネタ回 ◆NamCapMdYU [saga]:2012/06/08(金) 10:33:56.59 ID:jo3uNOm+o

こんにちわ。1レスついでに地霊殿の設定を持ってきました

スレは残る所41。消費するのに結構かかりますね。……1月100レスだし普通なのかもですが

では、設定をぽいっ



東方Projectより

キスメ

 釣瓶落としの妖怪。内気でナイーブ……なんてイメージは、井戸の底に持っていきましょうねぇ。「鬼火を落とす程度の能力」。
 地底に住む妖怪に恥じない、怖い奴。だけど抱き上げられると手も足も出ない。所謂地底のロリ枠。

黒谷 ヤマメ(くろたに)

 土蜘蛛の妖怪。地底の中でも明るい妖怪で、皆のアイドル(キラッ☆)。「病気(主に感染症)を操る程度の能力」。
 その明るさと、気さくで面倒見のいい性格から、宴会の進行や店の呼びこみ、果てには結婚式の司会までなんでもやる子。

水橋 パルスィ(みずはし)

 橋姫の妖怪。地底の旧都へ向かう途中の橋で、地上から来る輩を監視する。「嫉妬心を操る程度の能力」。
 普段は愛想のいいお姉さんだが、裏ではそれはもう嫉妬心を爆発させている。だが、鬼の一種であるがために、嘘はつかない。

星熊 勇儀(ほしくま ゆうぎ)

 鬼。元、妖怪の山の四天王『力』。豪快に笑う、姐御さん。「怪力乱神を持つ程度の能力」。
 旧都の元締的役割だが、別にそんなことやってない。毎日酒を飲んで、騒いで、喧嘩して、楽しく過ごしている。
 だが、彼女を中心にある一定の秩序が生まれているのは事実であり、それに対して快く思っていない者もいる。

古明地 さとり(こめいじ)

 妖怪”さとり”。地底でも嫌われる、正真正銘の嫌われ者。「心を読む程度の能力」。
 動物達には好かれており、地霊殿の傍や下にある、いくつかの旧地獄の管理を任せている。
 人の心を弄ぶ行為は好きではないが、敵意や悪意があるとトラウマをこれでもかと言うほどに抉ってくる、ドS(さとり)。

火焔猫 燐(かえんびょう りん)

 火車の妖怪。働き者で、友達想いで、さとり様大好き! な猫。お燐と皆に呼ばれている。「死体を持ち去る程度の能力」。
 凶兆の黒猫と同じような理由で嫌われるが、放置された死体を回収する、一種の掃除屋だったりも。
 博麗神社にしょっちゅう出入りしているため、色んな人や妖怪と知り合いだったりする。

霊烏路 空(れいうじ うつほ)

 地獄烏の妖怪。お燐と同じくさとり様大好き! なんだけど……? 「核融合を操る程度の能力」。
 力を手にし、調子に乗っていたのは過去の話で、最近は昔のお空に戻っている。
 地霊殿のペットの代表のように扱われていたこともあるが、ペット達(お空含む)が忘れて流れた話。


ナムカプより

たろすけ

 魍魎界の少年。地獄を生きたまま渡り歩いた実績を持つ。その原因がエロさだとかっていう罠。
 「○○する程度の能力」、未開花。素の「地獄突破・エロガキ」は、一人だと二面ボス程度。
 しかし、景清と共だと最高のスペックを発揮する。良い兄弟っぽい状態。スペカには非対応ね、悪しからず。

キング

 物質界のプロレスラー。役割を担う者や演じる者を、善悪に関わらず評価する強い漢。
 「○○する程度の能力」、未開花。素の「プロの矜持」は、一人で小牟と互角。
 スペカルールには勿論のこと非対応だが、その芸術性や競技性に関して理解と知識を働かせてくれる。

ロック・ヴォルナット

 超未来のドリラー(遺跡発掘師)。半人半機の少年であり、出生にある秘密を持つ。
 「○○する程度の能力」、未開花。素の「鋼の冒険心」は、一人で小牟と互角。
 スペカには馴染むが、どちらかと言うとアリスの人形感覚。ようするに補助役。でもハイスペック。
960 :1レスネタ回 ◆NamCapMdYU [saga]:2012/06/08(金) 23:51:28.55 ID:jo3uNOm+o

日常の風景・日本編

〜〜〜四日目・昼ごろ〜〜〜

さくら「ふんふんふん、ふふ〜ん」

かりん「…………」カタカタ

さくら「ふふふーん、ふっふっふ〜」

かりん「…………」カタカタ

さくら「ふふっふふっふふ、ふーんふん」

かりん「…………ふぅ」パタン

さくら「ふん、ふん、ふふふんふん、ふふふ〜ん」

かりん「……随分とご機嫌ですわね、さくらさん」

さくら「ん? そ、そうかな〜」デヘヘ

かりん「そしてデレッデレですわね。そんなにあの放浪男……リュウさんと会えるのが、嬉しいので?」

さくら「そりゃそーだよ! デミトリさんのとこで宴会してから、まーた旅に出たと思ったら、わざわざ連絡寄こしてくれて「会おう」だよ!」バンバン

かりん「はぁ。確かにあの殿方は、顔は宜しいとは思いますが、性格のほうはいささか、どうかと思いますわよ?」

さくら「それは神月さんが、高望しすぎなだけだと思うけどなー。あれだけ強いのにまだ上を目指そうとする姿勢……カッコいいじゃん!」

かりん「あの姿勢は、神月家の人間としては高く買いますわ。ですが武一辺倒なのは、一般常識としても駄目な御仁ですわよ?」

さくら「それだけじゃないって! リュウさん、料理とか、整理整頓とか、裁縫とか、上手なんだから!」

かりん「…………」

さくら「他にも他にも、あーだこーだそーだどーだ――」

かりん「惚れこんでいますわねぇ」ハァ

  プルルル   プルルル

かりん「……(ピッ)なにか? …………ふむ、データは? …………分かった、御苦労様」ピッ

さくら「特に野豚の……って、どうしたの。そんな険しい顔して」

かりん「問題が発生しましたわ、さくらさん。「あの戦い」の関係者の一部が、行方不明になっていますの」

さくら「あの戦いって……え、あの戦いの事!?」

かりん「左様ですわ。今のところ確認できただけでも、ケン・マスターズと島津英雄、中村等さんが……」

さくら「ケンさんに、英雄先生に、中村さんまで……!? どど、どうして?」

かりん「そこまではまだ分かりませんわ。神月グループの総力を挙げて、調査させるつもりではありますが」

さくら「私に出来る事は、神月さん!」

かりん「今の所、何もありま……いえ。神月グループが経営する、ここ、京都のロイヤルホテルにて、リュウさんを待つ事をお願いしますわ」

さくら「え、いやそれは元から……」

かりん「さくらさん。まだあの三名しか判明してはいませんが、もしも更に多くの関係者が行方不明となっているとすれば、
     貴方がここにいるという事で、そのままさくらさんの身の安全の保障と、探す手間が省けるという事になりますの」

さくら「え。それって……」

かりん「更に、あの御仁がここに来るという約束をしている以上、ここを離れるわけには行かないでしょう?」

さくら「神月さん……。うん、わかった。ありがとうね、神月さん」

かりん「おーっほっほっほ! もっと褒めたたえるが良いですわ! ……くれぐれも、お気をつけあそばせ。私は、一度本社に帰りますから」

さくら「うん。神月さんも、気をつけてね!」

かりん「それでは。とぅっ!」

さくら「うわー、もうヘリきてるよ……。……リュウさん」ギュッ
961 :1レスネタ回 ◆NamCapMdYU [saga]:2012/06/09(土) 17:56:17.28 ID:YRfLogpPo

日常の風景・天界編

〜〜〜四日目・夜〜〜〜

デミトリ「…………」

衣玖「…………」

デミトリ「…………」

衣玖「…………」

デミトリ「……そこで何をしている。リュウグウのツカイ」

衣玖「何も」

デミトリ「…………」

衣玖「…………」ニコニコ

デミトリ「…………」

衣玖「…………」

デミトリ「…………」

衣玖「…………」

デミトリ「……一つ聞くが」

衣玖「はい?」

デミトリ「貴様、暇なのか?」

衣玖「んー。まぁ、暇といえば暇でしょうか。竜神様がおられないので、いつもよりも」

デミトリ「それで私を監視しているのか」

衣玖「監視などと。外のお方、それも高名な吸血鬼様ということで、観察させてもらっています」ニコッ

デミトリ「ふん、言い方を変えただけではないか」

衣玖「いけませんか?」

デミトリ「……どこぞの蠅虫のように、騒がなければな」

衣玖「はい」

デミトリ「…………」

衣玖「…………」

デミトリ「…………」

衣玖「…………」
962 :1レスネタ回 ◆NamCapMdYU [saga]:2012/06/10(日) 00:23:21.32 ID:1Xa4cAZXo

あの人、今どこ・宵闇編

〜〜〜五日目・朝〜〜〜

  グギュルルル〜〜

ルーミア「お腹すいたのだぁ……」グデーン

ミスティア「言わなくても分かるわよ。どうしたの、今日は」

ルーミア「今日じゃないのだー、一昨日なのだー」グー

ミスティア「いや、そんな事は聞いてなくってね」

ルーミア「久しぶりに人にありつけると思ったら、木にぶつかって気絶しちゃったのよー」グルルー

ミスティア「あなた……相変わらず?」

ルーミア「らずー。というわけで、ご飯よこせー」

ミスティア「お金は?」

ルーミア「お腹が空きすぎたから、食ったー。まずかったわ……」

ミスティア「あなたねぇ……。私だって商売でこれをやってるの。ただでは上げられないわ」プイッ

ルーミア「けちー」

ミスティア「ケチで結構よ。お金さえ持ってれば、よかったんだもの」

ルーミア「……うだうだ言ってないで寄こせや、ごらぁ!」ガァッ!

………………

…………

……

ルーミア「」チーン

ミスティア「自分の闇さえまともに操れない妖怪が、相手を暗闇に包む夜雀に勝てると思ったの」フンス   バッ

ルーミア「うぅぅ……ひもじいよぉ」モグモグ

ミスティア「着物をしゃぶらないで!?」バッ

ルーミア「ぼふっ………………」

ミスティア「全く。なんで朝っぱらから、戦わなきゃいけないのよ」ハァ

ルーミア「…………」

ミスティア「ほら、ルーミア。屋台引けないから退いてよ」

ルーミア「…………」モグモグ

ミスティア「……ルーミア?」

ルーミア「草って案外、美味しいのだー」モグモグ

ミスティア「……………………」

ルーミア「これからは、草食系の時代だって何かで見たわ。そういうことなのね〜」モグモグ

ミスティア「……妖怪の尊厳も糞もないわね」ハァァ
963 :1レスネタ回 ◆NamCapMdYU [saga]:2012/06/10(日) 13:35:54.75 ID:1Xa4cAZXo

あの人、今どこ・華君編

〜〜〜四日目・昼〜〜〜

幽香「…………」トントン

  ガサ……                                                 クルクル

   トコトコ……

幽香「よいしょっ」

   トコトコ……

  ボフッ

幽香「…………」スッ

  ザクッ  ザクッ                             クルクルクル

  …………

幽香「ふぅ。……ふふっ」

雛「はっ! 厄の気配」キョロキョロ

幽香「あら、疫病神」

雛「厄神ですわ。どうも、花の妖精さん」

幽香「妖精……ね。それより、どうしたのかしら」

雛「ここに、厄の残滓を感じたので、ちょっと」

幽香「……残滓ねぇ」ニヤ

雛「ええ。でも薄い、薄いわ、薄すぎる。貴女、仕留め損ないました?」

幽香「…………」ニコニコ

雛「…………」ニコニコ

  ………………

雛「……明日のお話ですけれど。貴女、行きます?」

幽香「さぁ。行くかもしれないし、行かないかもしれないわ」

雛「そうですか。私は厄を溜め込むためにも、行くつもりです」

幽香「ふーん」

雛「もし会いましたら、その時は」フワッ

幽香「…………」

雛「御機嫌よう」クルクルクル〜

幽香「……何しに来たのやら」
964 :1レスネタ回 ◆NamCapMdYU [saga]:2012/06/10(日) 22:11:18.94 ID:1Xa4cAZXo

あの人(?)、今どこ・毒人編

〜〜〜五日目・昼〜〜〜

メディスン「コンパロ、コンパロー。毒を持って来てやったわよ、えーりん!」ガラッ!

永琳「…………」

メディスン「……試験管なんかにらんで、どーしたの?」トン

永琳「…………」

メディスン「……えーりん?」

永琳「…………」

メディスン「……霧符『ガシングガーデン』」ブフー

永琳「…………私に毒は効かないわよ、メディスン」ゲホッ

メディスン「ちっ」

永琳「それで、何しに来たのかしら?」

メディスン「どーく! 毒を持ってきたの! 藜、福寿草、鈴蘭、柘榴!」

永琳「ああ、そう、いつも済まないわね。うどんげー、ちょっとー」

鈴仙『はーい、ただいまー』

メディスン「まったく。……でも、なんで試験管持ってかたまってたの? しかも、空の」

永琳「なんでもないわ」    ガラッ

鈴仙「何でしょうか、お師匠様。……って、毒人形」

メディスン「メーディースーン! いっつもいっつもしつれいね、うさぎもどき!」ダンダン

鈴仙「はいはい、暴れないの。それでは、いつも通りでいいんですね?」

永琳「んー、今回のレートは1.2倍にしてあげて。勿論、粗悪でもね」

鈴仙「え、あ、はい、分かりました。……それじゃこっち来なさい、毒人形」ガラッ

メディスン「けんか? けんか売ってんのよね、それ! いーわやってやろーじゃないの、――」ピシャッ

永琳「……ふぅ、行ったわね。ちょっと、集中し過ぎてるかしら」ンー

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

鈴仙「……んー、これはこれぐらいで……」パチパチ

メディスン「…………」

鈴仙「これはこれで……1.2倍して、っと。はい、今回の分はこんなものね」

メディスン「おー。……相変わらず、お金のかちは分からないわ」

鈴仙「分からないぐらいの方が、気楽でしょ。さ、帰ったかえtt――」   ガラッ!

輝夜「駄目よ、うどんげ。まだ返しちゃ!」\バーーン!/

鈴仙「な、姫様!? 突然なにを……」

輝夜「んふふ。メディスン。私と良い事、しない?」

メディスン「…………イイコト?」

輝夜「そ、い・い・こ・と」

鈴仙「……姫様、何を企んでいるんですか?」

………………

…………

……
965 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/06/14(木) 00:30:14.25 ID:xkxyKqQco

あの人、今どこ・???編

〜〜〜?????〜〜〜

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 偽物

 紛い物

 嘘の物

 私はそんな者じゃない

 我は、あの方の為に

 己があるのは、その人の――

 ――――キキッ――――

 ――目があったから

 この者の嫌う世界など

 どの輩が嫌う未来なぞ

 静かな繁栄の元に

 消え去る事を

 ―――様の為に誓う


         オリジナリティ
  それが、私の、感情なのだから



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
966 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/14(木) 09:59:43.83 ID:YPD/KlhDO
ふむ。意味深ですな。

それにしても、ちびっ子達は可愛いねぇ。
ルーミアちゃんは…最早哀れって感じだったけど…(汗
967 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/06/16(土) 00:20:17.37 ID:llRwKbPHo

日常の風景・紅魔館編

〜〜〜四日目の夜〜〜〜

モリガン「素敵な場所ね、ここも」

レミリア「気に入って貰えて、こちらとしても鼻が高い」

リリス「背は低いけどね!」

レミリア「…………」

フラン「ねーねー、モリガン。ちょっと聞いていい?」

モリガン「なーに、フランちゃん?」

フラン「昨日来た男の事なんだけど」

リリス「レイジの事だね! それがどうかしたの?」

フラン「……あの人って、変態なの?」

モリガン「あれは変態じゃないわね。臆病って言うのよ」

フラン「……臆病?」

モリガン「ええ。人気があるのに無いなんて引っこんで、アタックしない人だもの」

リリス「すえぜん食わねば男の恥って言葉もあるのに、ね〜」

モリガン「ねぇ」

フラン「じゃぁ、私の裸見たのは?」

リリス「ふかこーりょくって奴かな? シャオムゥの事が好きだから、もしかしたら小さい子が好きかもしれないけど」

レミリア「やっぱり、あの二人は恋仲なのか?」

モリガン「ええ。どの程度まで行ったかは、知らないけれども」

フラン「ふーん……」

モリガン「……それだけかしら、フランちゃん?」

フラン「……うん」

リリス「(何か気になってそうだよね、フラン」

モリガン「さぁ、どうかしらね」フフフ

レミリア「……明日は満月フェスティバルか」フッ
968 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/06/16(土) 00:27:33.49 ID:8KVPhlQdo
久々にナムカプをちょっと復習して改めて読みなおした
969 : ◆NamCapMdYU [saga sage]:2012/06/16(土) 08:12:39.12 ID:llRwKbPHo

ナムカプを復習しますと、途中の解釈間違い(というか完全な勘違い)が痛くてなかったことにしたい……

まぁ、本編中で言ってない事ですしどうにでもなりますよね(戦々恐々)


二章ですが、例の並行作品共々練り直し中で投下の目途が中々立ちません

なのでもうしばらく、1レスネタでお茶を濁す事になります。申し訳ない
970 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/06/16(土) 21:09:04.08 ID:llRwKbPHo

あの人、今どこ・騒霊編

〜〜〜五日目・朝方・森の廃洋館〜〜〜

リリカ「お姉さん、事件ですっ!」バーン!

ルナサ「……どうしたの、リリカ。態々、扉なんか開け放って……」

リリカ「これを見てほしいの!」バンッ

メルラン「あら。リリカが新聞なんて、珍しい」

リリカ「そのお約束っぽいのはいいから。とにかく、ここのここを見てっ!」バシッバシッ

ルナサ「………………鳥獣戯画? これがどうしたの」

リリカ「いや、どうしたじゃないわよ。私達以外にも楽団があるなんて、これは由々しき事態よ!」

幽々子「幽々しき事態? なんでかしら〜?」

リリカ「そりゃどうしてって、呼ばれる機会がへ……って、うわああああ!?」

メルラン「何を驚いてるのよ。失礼じゃない?」

リリカ「いやいや、幽々子さんが来てるなんて知らないし! なんかお姉ちゃんが多い気がしたけど!」

幽々子「ふふふ、お邪魔してるわよ〜」

リリカ「ど、どうぞ。っていうか、だから、これはやばいって、ルナサ姉さんにメルラン姉ちゃん!」

ルナサ「……何をそんなに慌てる事があるの。一期も前の話よ……?」

リリカ「へ? ……あ、ほんとだ。じゃなくって! 時期の問題じゃなくって! むしろ一期も前なら余計で!」

メルラン「落ちつきなさいよ、もう。ほら、私が奏でて上げるから」

リリカ「それじゃ躁になっちゃうよ!」

ルナサ「……それじゃぁ、私が演奏する……?」

リリカ「それじゃ鬱!」

幽々子「それじゃぁ〜、私が導こうかしら?」

リリカ「それは洒落にならない! …………はぁ」

ルナサ「……落ちついた?」

リリカ「……お陰さまで。でもなんで、お姉さん達はそんなに落ちついてるの?」

メルラン「だって、既に知っているんだもん。ねー、姉さん」

ルナサ「……うん」

リリカ「ガクッ。……なら初めに言ってよ」

幽々子「ついでに〜、既に解散したのも知ってるわよ〜?」

リリカ「……えー!?」

メルラン「組んで二月で解散だったっけ。方針の違いとかなんとか」

リリカ「何、そこまで分かってて、お姉さん達は……」

ルナサ「…………」クスッ

メルラン「ええ、そうよ」ニコニコ

幽々子「ふふふ〜」

リリカ「ちくしょうめ!」
971 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/06/17(日) 01:07:44.42 ID:rBosFuaPo

あの人、今どこ・操音編

〜〜〜五日目・早朝〜〜〜

ヘイムレン「…………」ガサッ

 ………………

ヘイムレン「誰もいないようだねぇ。覇気は…………ふむ。皆、一箇所に集まっているのかな。

        全く、人を信用し過ぎているよ、君たちは。…………いや、僕が言える立場じゃない、か。

        ……一晩。頼まれ事とはいえ、それにのめり込んで徹夜してしまったのだからねぇ」フッ

  …………ました……

ヘイムレン「ん? ここまで聞こえてくる声とは。…………何やら、興奮しているようだけど」

  スッ……

 
 
ヘイムレン「……ん〜? 何をしているんだい、君達?」

ナズーリン「…………君か」

聖「あ、ヘイムレンさん。頼んだ事ですが、怪我などは為されていませんか?」

ヘイムレン「大丈夫さ。あれぐらいなら、造作もない事だからねぇ」

聖「それは助かりました。今はとある物のテストと、異変のお手伝いを、星がしている所なのですよ」

ヘイムレン「成程ねぇ。だから、さっきはあんな大声を」

星「はっ。そちらまで聞こえてしまいましたか?」

ヘイムレン「僅かに、だけどねぇ?」

星「こ、これはお恥ずかしい。見慣れぬ物で、ついはしゃいでしまいまして」

ヘイムレン「…………」

ナズーリン「…………」

一輪「仕方ないわ、星。八雲の藍さんが言っていた事は、半信半疑だったもの」

聖「遠い地との会話を、扱える能力に限らず行える妖術。……数百年居た魔界でも、数名しか扱えなかったものと、記憶しています」

村紗「それが今や、向こうの映像も付いて見られる! すごい、すごいわ。カレー並の技術革新です!」

ヘイムレン「……そうか。君達には、そう映る物なんだねぇ」

星「え? ……はい」

村紗「これがもし、あの時にあったなら。……聖に寂しい思いは、させなかったのでしょうが」

聖「そんなことはありませんよ、村紗。これが有ろうと無かろうと、私は、貴女方を想えば、寂しくなどありませんでしたよ」

一輪「……姐さん」

聖「…………」ニコッ

ヘイムレン「…………っ」サッ

ナズーリン「…………」ジッ

 

ヘイムレン「……意識の差がこんなにもあるとは。…………まだまだ、認識不足なようだねぇ」フッ

響子「……? 認識不足なようだねー」フッ

ヘイムレン「……そこまで山彦するのか、君は」

響子「出来得る限りまでは!」キリッ
972 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/17(日) 09:55:15.97 ID:I8dXMW0DO
ふわふわ幽霊´s 良いねぇ。

外が科学で発達するなら、幻想郷は術学で、
ってとこなのかな?科学より凄く思えるぜ。

きょこたんは可愛いな〜。
973 : ◆NamCapMdYU [saga sage]:2012/06/22(金) 14:13:45.92 ID:tzyDJkDko

こんにちわ。なんだかPXZの報告スレっぽくなってしまってますが、続報で御座います

レッドアリーマーが登場した事で、アーサー参戦が濃厚に

更に六本木がMAPである事が判明したお陰で森羅組がより濃厚となってテンションががが

まだだ、まだ決まっとらんよ……



なお、本編は数日中に新スレを建てる予定です

陽那拓もほぼ同時期に建て、並行していきますので、やっぱり乞うご期待

それでは、また
974 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/22(金) 20:56:18.91 ID:td51wJoDO
なんか>>1とはプクゾースレで会ってそうな気するなww


新スレ立ったら埋めれば良い?
975 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/06/26(火) 16:01:35.33 ID:OOF7KwP0o

こんにちわ。新スレを立てましたので一応の誘導をば

零児「……東方新世界」 霊夢「第二章、ね」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1340692233/

これ以後はこのスレを私が適当にネタで埋めて行きますので、気にせず

また、ヒナタクの誘導もすると思います。たぶん

そういうことで、よろしくお願いします

では
976 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/26(火) 16:37:53.67 ID:QIII3O/DO
小ネタを作るのも大変でしょうに、ありがたい事ですね。
977 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/06/30(土) 23:43:38.93 ID:UUY8B3uKo

あの人、今どこ・裁長編

〜〜〜五日目・夕方〜〜〜


 『デーモンクレイドル……バットスピン!』

「のうふっ!」ゴロゴロ

  ドーン……

「今回も私の勝ちだな、テンシ」

「くっそぉ。緋想の剣が効かないからって、良い気にならないでよね! まだ終わってないわ!」

「既に3連敗。初日からの事を考慮に入れれば、11連敗だ。素直に負けを認めたらどうだ」

「はんっ。だーれが認めるもんですか。認めない限り、負けは負けじゃないのよ!」

「……はぁ」

「露骨に溜息つくんじゃないわよ」

「つきたくもなるものだ。……それより、あそこの鬼だが」

「あん、萃香? それが何」

「……一人で笑っているのは、何故だ?」
                   バカ
「……知らないわよ。飲み過ぎてHになったんじゃない?」

「ふぅむ。……そうか」

「いや、真剣に考え込まないでよ。『緋想の剣気』っ!」ブンッ

「ふっ」ガリッ トンッ

「気を読むとか、吸血鬼らしくないのよ……!」トンッ

 ………………

「あーっはっはっは。ほーれ見たことか。その子達を甘く見るから……ひひひ」

「全くですね。予想とだいぶずれが生じているのに、まだ黙っているとは」ハァ

「ん? ……げ、閻魔」

「どうも、萃香。……霧になるのは黒ですからね」

「ぐぬぬ」

「何がぐぬぬですか。……ああ、いけません。今日は役柄としてではなく、四季映姫として貴女に会いに来たというのに」ハァ

「……おんやぁ? どういうことだい?」

「旧知の仲として、貴女に一つ訊ねたい事がありましてね」

「閻魔様ともあろうお方がかい?」

「二度言うのは嫌いです。……彼と"彼女"についてです」

「『彼』は分かるけど……彼女って?」

「…………『 』ですよ。貴女も知っているはずの」

「!」

「……やはり、気付いていませんでしたか」

「……『 』が、どうしたんだって?」

「それは、この酒瓶が空になるまで……ということで」

「……はっはっは。こりゃぁいいや。よっしゃ、付き合って上げるよ。四季ちゃん」

「懐かしい呼び名だ。…………さ、どうぞ。伊吹さん」クイッ
978 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/01(日) 08:58:04.82 ID:eOHqV4PDO
暇じゃなくなってよかったな天子。デミトリさんにはいい迷惑だろうけどww

しかし…知ってる筈の知らない存在…か。色々と事情があるみたいですね。
979 : ◆NamCapMdYU [saga sage]:2012/07/07(土) 23:06:47.31 ID:90zdjBZeo

魔理沙がいないと、ここまで進まない物だとは思わなかった(合の手的な意味で

誘導する事を止めた陽那拓も、二章の投下と数日ずらしで……とか思ってた為にこの様

もうしばらく、もうしばらくおまちを……
980 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/07/31(火) 00:27:05.96 ID:wfsOpU7Ko

あの人、今どこ・正義編

〜〜〜五日目・夕方〜〜〜

キャプテン「…………」

飛竜「…………」

 ワイワイガヤガヤ

キャプテン「…………」モグモグ

飛竜「…………」

<女将ちゃん、酒の追加ー!      はーい!>

キャプテン「……(ゴクッ)。いやぁ、賑やかだね」

飛竜「…………」

キャプテン「秋祭、と言ったかな。里全体で楽しもうという気が、存分に伝わってくる」

飛竜「…………」

キャプテン「毎年これなら、確かに消える心配はないかもしれないね!」

飛竜「…………」

キャプテン「……相変わらず、黙々と食べているね」

飛竜「……ふん」

キャプテン「少しぐらい、美味しそうにしたらどうだい? 喜びは素直に出すべきだ」

飛竜「……俺に、そんな姿が似合うとでも」

キャプテン「似合う似合わないじゃないさ。美味しい物を出してくれた料理人には、感謝するべきだと思ったからね」

飛竜「……ふん」

キャプテン「全く、ぶれないね。……零児達は、今頃どうしているか」

飛竜「…………」

キャプテン「楽しんでいるなら、いいのだけど」

飛竜「…………」

キャプテン「…………」

飛竜「…………」

キャプテン「…………」


ミスティア「(あの席の二人組、近寄りがたい雰囲気だわ……」
981 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/31(火) 02:23:18.62 ID:jiQ+Uu+DO
温度差凄いもんなww
982 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/31(火) 19:27:50.27 ID:r9P0cU23o
           ,. -───-- 、_
  ♪   rー-、,.'"          `ヽ、.
   \ _」::::::i  _ゝへ__rへ__ ノ__   `l
     く::::::::::`i / ゝ-'‐' ̄ ̄`ヽ、_ト-、__rイ、    }^ヽ、
   .r'´ノ\::::::::ゝイ,.イノヽ! レ ヽ,_`ヽ7ヽ___>、_ ノ ハ } \   _人人人人人人人人_
  /ヽ/ r'´ ィ"レ´ ⌒ ,___, ⌒  `!  i  ハ /  }! i ヽ  >  うー! うー!  <
 / / ハ ハ/ ! /// ヽ_ ノ /// i  ハ  〈〈{_   ノ  }  _」   ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
 ⌒Y⌒Y´ノ /l           ハノ i  ヽ⌒Y⌒Y´
      〈,.ヘ ヽ、        〈 i  ハ  i  〉
       ノ レ^ゝi>.、.,_____,,...ィ´//レ'ヽハヘノ
983 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/08/10(金) 00:33:59.68 ID:9wcqHJKro

あの人、今どこ・客員編

〜〜〜三日目・昼前〜〜〜

  セェィッ、タァッ!

輝夜「…………」バリバリ

カイ「よしよーし」ナデナデ

兎(〜♪)

ギルガメス「千手突き……!」

  パココココココッ

輝夜「……まぁ、匠程度にはあるわね」モグモグ

てゐ「いやぁ、早い。若いのに頑張るねぇ」ソー

輝夜「…………」ペシッ

てゐ「あいたっ」

ギルガメス「ふぅ。……!」シュッ

  スッ……              コーン……

ギルガメス「……ふぅ」

輝夜「御見事」パチパチ

ギルガメス「どうかな、カグヤさん。御眼鏡に叶っていたら、嬉しいのだけれど」

輝夜「十分十分。丸太をそれだけできればね〜」

てゐ「それだけって姫様。木刀でそんな大きさの丸太を弾いたり、叩き割ったりとか……」

名無しの超戦士1P「ん〜? 割と普通だよなぁ?」

名無しの超戦士2P「普通かはしらねーが、あいつらは普通に出来るだろうな」

てゐ「んなあほな」

輝夜「あっはっは! そりゃ、月の精鋭も涙目かしらね」

ギルガメス「楽しんでもらえて、何より。……ん?」

   ガヤガヤガヤ……

カイ「あら? 何か騒がしいわね」

フェリシア「た、ただいまぁ……」

2P「猫の嬢ちゃんじゃねーか。……何があったんだ?」

フェリシア「竹林で……迷った……」グテーン

輝夜「うどんげはどうしたのよ。一緒じゃなかったの?」

フェリシア「お腹空いたから帰って来たー」

1P「そーいや、海鮮魚が足りねーとか、言ってたか?」

フェリシア「そー。もう、秘められた野生が暴走するぐらい、やばい」

輝夜「永琳に頼んでみたらどう? たぶんきっとどうにかしてくれるわよ」ニコッ

フェリシア「」ダッ!

てゐ「……姫様。まーたお師匠様に無理難題ふっかけて」

輝夜「いいでしょー」ウシシ

てゐ「いいねぇ」ウシシ

一同「……えぇー……」
984 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/10(金) 07:27:11.02 ID:31iJgjnDO
バイオプラントくらいありそうだし、魚程度なら造ってくれるかも?
985 : ◆NamCapMdYU [saga]:2012/08/16(木) 17:09:26.23 ID:F9Vdegrjo

〜〜〜あの人、今どこ・夢魔編〜〜〜

〜〜〜五日目夜・人里〜〜〜

リリス「ところでさ、フラン!」

フラン「なーに、リリス?」

リリス「フランの羽って綺麗だね! お祭りの中でも輝いてて!」

フラン「ふふっ。ありがと、リリス!」

モリガン「確かに、灯篭の灯りが反射して、どんな宝石よりも深い味わいを醸し出してるかもね」

フラン「えへへ……」///

美鈴「…………」ドクッ

モリガン「…………」ジー

英雄「メイリンさん。鼻血が出ていますが……?」

美鈴「……はっ!」サッ

モリガン「ふふふ。それにしても、少し退屈ね」

リリス「そーお? 私はこれでも楽しいよ! 色んなモノが見られて!」

フラン「私も、皆と一緒にいれて楽しいよ! ねー、ヒデオ! 美鈴!」

英雄「そうですなぁ。お祭りというのは、いくつになっても心躍るものです」

美鈴「はい。人々のいきいきとした活気が、心地よいですね」

リリス「だってー?」

モリガン「あらあら。私だけね」フフフ

フラン「勿体ないよー。ほら、あっちで何かしてるみたい! 見に行こう!」タタタ……

モリガン「ふふふ…………」スゥー……

リリス「あー。リリスも行くー!」トタタ

英雄「……ふぅ」

美鈴「あはは……お疲れなようで」

英雄「ええ。あの子達に合わせるのに、体が着いていきませんなぁ」ヤレヤレ

美鈴「仰るわりには、中々な気の張りようですね」

英雄「いえいえ。年にはかないませんよ。出来る事は呼吸法と、せいぜい日々の散歩程度ですから」

美鈴「その積み重ねですよ。……しか、し……」

フラン『あー! アリス!』

アリス『あら。吸血鬼の所の』 シャンハーイホウラーイタイワーンチベーットフラーンスオランダッロシアーロンドーン オルレアッ!

リリス『わー。人形が沢山で、すごいね!』

アリス『ふふ。今はまだ演技中だから、ね?』

モリガン『……中々の手つきね』ゴクッ

アリス『貴女だけ、見てる所違わない?』

美鈴「……フラン様の浴衣。良いですねぇ」ドロッ

英雄「……メイリンさん。また鼻血が」

美鈴「っ!」サッ
986 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/16(木) 17:29:02.76 ID:sw0MGXMDO
フランちゃんが純粋に楽しそうで何よりだな。
987 : ◆NamCapMdYU [sage saga]:2012/09/17(月) 23:07:12.87 ID:b15Cu5w6o

あの人、今どこ・銀拳編

〜〜〜五日目・昼〜〜〜

アーサー「…………」ジー

ケン「フンッ……フンッ……フンッ……」ガシャンガシャン

華仙「二人とも、良い知らせが……やはり何度見ても慣れないわね、それ」

竿打 チョコン
ケン「あー?」

華仙「その光景よ。……確かに、動物達にも鍛錬や修行の手伝いはしてもらっているけども」ハァ

竿打『ピー』バサッ
ケン「いい感じに重りになるからな、っと。よし、腕立て200回終わりっ!」フー

アーサー「…………」

ケン「で、良い知らせってのは?」

華仙「ええ。実は……って、アーサーさん?」

アーサー「……あ、ああ。済まない、何かな?」

ケン「仙人様から、有難いお言葉だとよ」

華仙「そういう事をするつもりはないとあれほど……おほん。実は、例の話なんだけどね」

ケン「お、零児達の事を調べたのか?」

華仙「直接ね。思っていた以上に良い人間だったかしら」

アーサー「まぁ、零児君だしな」

ケン「真面目だからなー、あいつ」

華仙「その上で今回の事を訊ねたけれど、詳しくはこの新聞に書いてあるから、読んで確かめて欲しいの」パサッ

ケン「ずぼらかよ。んで、それだけなのか?」

華仙「いいえ、もうひとつあるわ。貴方達には、もう少しここに居て貰う必要があるってこと」

アーサー「……というと?」

華仙「山の天狗達が結構焦っててね。この新聞の発行者……射名丸文より先に、"幻想入り"した者を探そうとしているのよ」

ケン「ん? 仲違いしてる、ってことか?」

華仙「んー……。まぁ、文よりも功名を得る為でなく、零児って人の足を引っ張るためだから、結果的に同じかしらね」

アーサー「! ……それはまた、随分と嫌われたものだ」

ケン「はた迷惑な話だぜ。けどよ、それならそのアヤってやつに話せばいいんじゃねーのか?」

華仙「御尤も。ただあの子ったら神出鬼没でね。中々伝えられないのよ」

ケン「そこは、仙人のジンツウリキかなんかでどうにかならねーのか?」

華仙「…………そんな便利な物じゃないわよ、仙人って。どういう発想しているのかしら」

ケン「いやよ。イシターの神様とか、安駄婆のばーちゃんとかは普通にしてたしな?」

アーサー「確かに、あのお方達はしていたが……人智を超えた先に居られるからな」

華仙「……なるほどね。まぁ、早く会える事を願っていてくれたらいいわ」トコトコ

 ガラピシャッ

アーサー「……どんどんボロが出ているな、カセンさん」

ケン「自覚ねーのが、一番やばい所だけどな」
988 : ◆NamCapMdYU [sage saga]:2012/09/22(土) 20:47:56.39 ID:gYZIF4P1o

あの人、今どこ? 化々編

〜〜〜五日目・夜〜〜〜

マミゾウ「じゃからな、こういうのとか」ポンッ

コブン「わっ! 魔法使いさんですー?」

マミゾウ「うむ。こういうのとか」ポンッ

コブン「剣士さーん!」

マミゾウ「そうそう。更にこういうのとか」ポンッ

コブン「…………ふりふりさん?」???

マミゾウ「……まぁ、わしも最初よくわからんかったよ。これでも巫女だそうじゃ」

コブン「ほぇー」

マミゾウ「後は、その色違いじゃな」ポンッ

コブン「赤から緑になったですー!」

マミゾウ「わしも違いがよーわからんが、まぁ、この四人には気をつけるんじゃぞ」キラン

コブン「はいですー!」

 

ぬえ「はぁ。あの男がうざいからこっち来てるけど、やっぱりやる事ないわね〜」

小傘「…………」

ぬえ「ねー、小傘ぁ。ちょっと、ほぼ憑きかけの奴、見繕ってくんない?」

小傘「…………」

ぬえ「……こがさー?」フリフリ

小傘「…………」

ぬえ「……久しぶりにみたわ。おーい、まみぞー」

マミゾウ「ん? ないじゃらほい?」

ぬえ「ん」顎クイッ

マミゾウ「む? ……ほう。やはりかわらんのぉ、憑喪の呆けは」

ぬえ「ねぇ」

小傘「……独りで―ン――……」ブツブツ

コブン「どうしたんですかー、コガサさんは〜?」

マミゾウ「ん? 昔を思い出しとるんじゃよ、昔を」

コブン「……なんだか、寂しそうです……」

ぬえ「ま、捨てられたって言ってるしねぇ。ちゃんと覚えてないらしいけど、そういうもんじゃない?」

コブン「……でも、何か、違う気がするですぅ……」

小傘「わち―とあなた――、ま〜―ぼ〜お―……」ブツブツ

ぬえ「違う? ……そーかしら?」ンー

マミゾウ「うーむ。そう言われると違う気がするが……」ウムム

小傘「…………」ボー
989 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/04(木) 15:41:31.74 ID:I8HZ7qPDO
でも小傘ちゃんってよく残ってたよなぁ。
普通だったら、和傘なんてすぐ風化しちゃうのに。
990 : ◆NamCapMdYU [sage saga]:2012/10/17(水) 14:42:34.26 ID:1lSND/oFo

あの人、今どこ? 黒幕編

〜〜〜五日目・怨泉異変解決後〜〜〜

???「…………」

???「……何故かしら。地上が騒がしかったから逃げてきたのに、ここも少しうるさかった気がする」

???「何か起っているのかしらね。特に何も感じないけれど」

???「…………」

???「騒がしくなるって、そんな予感がしている」

???「まだ冬じゃないのに、出たくないわ……ふぅあ〜」
991 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/17(水) 15:54:54.63 ID:avpVj+Mk0
リアルはもう冬近いね。
992 : ◆NamCapMdYU [sage saga]:2012/10/19(金) 17:33:23.26 ID:eG19SrjDo

あの人、今どこ? 図書編

〜〜〜五日目・祭りの最中〜〜〜

「…………」

「あーいそがしいいそがしい。忙しいったら忙しい!」

「…………」

「どうして門番には休暇があって、私にはないのでしょうね! 日頃働いているのは私の方だと云うのに!」

「…………」

「パチュリー様と、レミリア様はのんびりですし、ああもうストライキとやらでも起こしましょうか? 起こしちゃえばいいんでしょうか!?」

「…………」

「あーでもないこーでもない」ペチャクチャ

「……相変わらず大きな独り言だ。飽きないからいいが、どうにかならないの、あれ」

「仕事はしているからいいのよ。……」

  ↑
「ふぅ〜ん。で、"アレ"の為に何かしたの?」

「ええ、本を渡した。けど、まだ釣れないわ」

「はっはっは。ぞっこん過ぎて、中々読んで貰えないのかな?」

「さぁ。そういうの、興味無いわ」

「……くっくっく。そうだよなぁ、我が友。本の中の方が、余程刺激的だろうさ」

「…………」

「だが、グレート・ザ・ライブラリーよ。よくもまぁ、本に細工をしたな? そういう事、酷く嫌っていたはずだが」

「この計画の為には、手段を考える必要はない。利用できるものは、利用するだけよ」

「ふっ……中々熱心じゃないか」

「知ってる癖に」

「もちろんよ、パチェ。でなきゃ、伝えるはずないじゃない」グイッ

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「ゆ、百合臭い。百合臭いですよ!? なんでそんなに顔面近づけているのですか! キスですか? ディープにしますか!? よしでしたらベッドの用意を済ませて……」

「…………」ブンッ

「ひょえええええ!?」ガリッ

「……『フォールスラッシャー』」スッ

「わああー! パワハラーーー!」ガリガリガリ

「……もう少し、空気を読むように躾てくれよ?」

「考えとくわ」
993 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/20(土) 11:16:44.87 ID:V/asG3D40
ここのこぁさんは本当に賑やかよね〜

しかし本の仕掛けとは一体……
994 : ◆NamCapMdYU [sage saga]:2012/10/21(日) 14:35:16.14 ID:kbLQuQyJo

〜〜〜いつかみた、あのもののものがたり〜〜〜

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

『…………! ――……!!』

 強大な力。

『………………を使うしかない』

 次元の壁を、糸も容易く砕き、世界を……新世界を生みだす、あの災厄の力。

『奴を再び、次元の狭間に叩き帰す……!』

 ありとあらゆる境界も、力も、命も、世界も混ぜ合わせ……浸蝕する、絶望の力。

『有栖流……鬼門封じ……!?』
995 : ◆NamCapMdYU [sage saga]:2012/10/21(日) 14:36:12.30 ID:kbLQuQyJo

 その力は絶対で、私が気付いた時には、既に止められない状態にまでなっていた。

『これが最後だ。決着をつけるぞ……っ!』

 ……語弊があるかもしれない。その状態になって、やっとその存在に気付けたのだから。

『駄目じゃ! それだけは使ってはならん!』

 その時、正直諦めかけていた。独りでは為す術もなく、そこに居た二人にも、どうにか出来るとは思えなかったから。

『……他に方法があるのか……っ!』

 だが、違った。そこに居た彼は、その素質があった。

『この術が通用するかどうかも保証はない。だが、可能性は一番高いはずだ』

 それは、因果の血に因る所も、十二分にあっただろう。
996 : ◆NamCapMdYU [sage saga]:2012/10/21(日) 14:36:47.60 ID:kbLQuQyJo

『もし駄目だったら……。お前は逃げろ。……この場を離れて次の手を考えるんだ』

 だが、それ以上に。いや、それだからこそと、言うべきだ。

『おまえは『森羅』にこれからも必要になる……命を無駄にするな!』

 彼という人が、彼という人生を歩んできたからこそ、と。

『駄目ったら駄目じゃ! ぬし……ぬしは何もわかっておらん! あの時、正護の命を……親父の命を奪ったのは……!』

 愛する者を、肉親を失っても、信じ続け歩み続けた。だから……世界を救える力を、持っていたのだと。

『……知っている。……おまえだ、小牟』

 私は己を恥じた。甘く見ていた事もそうだが、何より、その発想を持たなかった事を。

『あの日の朝……親父は俺に言った。小牟……おまえの術によって、命を落す事になるだろう、とな』
997 : ◆NamCapMdYU [sage saga]:2012/10/21(日) 14:37:25.62 ID:kbLQuQyJo

 命を投げ捨ててでも、愛する者を守り切る。そんな……未来への布石。未来へ至る、軌跡。

『零児……。それを知っていて……この10年を?』

 そこに思い至らなかった、頭ばかり膨らんだ、自分自身を。

『ならば……ならば、なおさらじゃ! ……今度はわしがやらねばならん!』

 100年と生きられない人の方が、よほど他者を愛し守ろうとしているではないか、と。

『ふざけるな……っ! 後に残された者はどうする……!』

 思えば800年前も、『人』は他人の為に死ぬ覚悟を、その結果を……私に示したではないか。

『やっぱり、ぬしは何もわかっておらん! やっぱり……ぬしは……わしの事を何もわかっておらん……!』

 あの時、己が無力を悔いたのを、どうやら忘れてしまっていたようだ。
998 : ◆NamCapMdYU [sage saga]:2012/10/21(日) 14:37:59.87 ID:kbLQuQyJo

『なぜ……なぜ、わしを護って先に逝ってしまう……!』

 だが、だからこそ、こんどこそ、私は……私は…………。

『正護もそうじゃった! そして……息子のぬしもそうしようというのか!』

 ……彼がこの世界に居るのは、重畳の至り。

『……お願いじゃ……零児……。わしも……わしも連れて行って……』

 ありとあらゆる万全を期して、事に挑めると云うもの。

『今度こそ……連れて行って……おくれよ…………お願い………………』

 この因果を越えた先に待つものこそ、共とするにふさわしいものはない。

『今まで……すまん、小牟。そして……さよならだ。また、いつかな』
999 : ◆NamCapMdYU [sage saga]:2012/10/21(日) 14:38:56.21 ID:kbLQuQyJo

 だから、どうか。どうか……

『零児ぃっ!』

 私を……連れて行って。あの高みへ、導いて。

 

  有栖  零児

 

 ―――――――――――――――――――――――――――

 
1000 : ◆NamCapMdYU [sage saga]:2012/10/21(日) 14:39:40.85 ID:kbLQuQyJo

 

 

         東方新世界

          会合編

           Fin

 
1001 :1001 :Over 1000 Thread
☆.。 .:* ゜☆.  。.:*::::::::::::::::゜☆.。. :*☆:::::::::::::::::: 。.:*゜☆.。.:*
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女「好きです」男「じ、実は俺も」 @ 2012/10/21(日) 14:31:44.84 ID:wpn0CZEI0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1350797504/

メンヘラJKだけど暇だからお話しましょう @ 2012/10/21(日) 13:33:15.77 ID:g5g8Mzwso
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1350793995/

ここだけ能力者の集まる高校 さらにコンマゾロ目で異能の力に覚醒192 @ 2012/10/21(日) 13:18:11.84 ID:Ab/aoMbAo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1350793091/

ここだけ能力者の集まる高校 さらにコンマゾロ目で異能の力に覚醒 192 @ 2012/10/21(日) 13:17:31.18 ID:7KQrIzAM0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1350793051/

コナン「光彦ってだれだよ」 @ 2012/10/21(日) 12:31:18.55 ID:Pk+NB8kw0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1350790278/

避難所のメモ @ 2012/10/21(日) 09:37:20.75 ID:K40Ii+2u0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1350779840/

プロジェクト葱畑ゾーン @ 2012/10/21(日) 07:26:49.38 ID:J4xpat4ao
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男「神様にも祝詞」 @ 2012/10/21(日) 06:35:03.34 ID:eTxQ8TC90
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1350768903/



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