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僕の彼女は未元物質 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :1 :2011/09/04(日) 14:29:07.88 ID:hz/dD2kA0


初めてスレ立て。
地の文は初投稿以降少なくなります。

『青ピが第六位設定』・『ていとくんが女の子』・『捏造第六位能力』


が許せない方は見ない事を推奨します。
15巻その後IF。
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
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ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
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旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
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木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
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いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
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【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
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こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
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【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
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アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
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2 : :2011/09/04(日) 14:31:01.12 ID:hz/dD2kA0


垣根「はぁっ、はぁ…チッ、痛ぇな畜生…ッ」

『反射』された未元物質に刺し貫かれた激痛が、殴り飛ばされ衝撃を受けた血まみれの身体があげる悲鳴のような痛みが、興奮の治まった今頃になって身体中を這い回るようにして襲う。
あまりに痛すぎて吐きそうだ。ついでにいえば、右手が肘の先から無いから体のバランスが取り辛い。
あいつの『役割』を理解して、肉塊を模した未元物質を隠れ蓑に裏路地まで逃げ込んだのは良いが、出血が酷すぎて話にならない。
それ以前、第一位に負けた俺に、最早どこにも居場所は無い。
つい生存本能が赴くままに逃げたのは良いんだが、あそこで死んどいた方が良かったかもしれない。
どうせこのままじゃ失血死しちまう。

垣根「げほっ、ごぼっ…は、ぁ…」

俺は誰も助けてこなかった、だから誰にも助けてもらえない。
それは当たり前の話だし、暗部世界ではその特徴(人間の冷たさ)は顕著だ。
血を失いすぎてとうとう足がもつれて倒れた。起き上がる体力も気力もありはしない。
もういい、どうでもいい…。

垣根「……ハッ、馬鹿臭ぇ。学園都市第二位が、惨めな最期だなクソッタレ」

どちらにせよ、あの第一位に俺が勝つ事は無いだろう、悟った。
今頃は理性ゼロの状態で俺が身代わりにした肉塊もどきを殴り殺しているんだろう。
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3 : :2011/09/04(日) 14:32:32.58 ID:hz/dD2kA0

大量に血液を失ったが故の体の内側から込み上げる寒さに目を閉じたところで、誰かの足音が聞こえた。
研究者じゃないと、いいんだが…。

??「!?キミ、ちょ、血が…!」

呑気に思える『善人』のような声…どうやら研究者じゃなかったみたいだ。
一般人を関係無い事に巻き込むのは、趣味じゃねぇんだけど、な……。
ちくしょう、死に損なった…。






垣根「ん……?」

??「あ、目ぇ覚めたん?良かった、間に合ったみたいやね」

垣根「……何処だ、ここ」

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4 : :2011/09/04(日) 14:33:54.86 ID:hz/dD2kA0

目を覚ますと、見覚えの無い天井があった。
何処だココ、と首を傾げていると、青い髪が視界に入る。
体中がだるいが、貧血を起こしているようなけだるさがあるだけで、痛みは無い。
ついでにいえば、右肘の先がある。
…右肘…ん?

??「久々に能力使ったからちゃんと機能してるか不安やけど…ええと、聞こえてますー?」

垣根「…あぁ。……病院じゃねぇみたいだが、これは義手か?それと、お前医者か?」

??「僕は『肉体創造(オールリバイバル)』ゆうて、他人自分関わらず、身体を再生出来るんよ。部位や範囲によって相応の時間がかかるんやけどね。あ、ココは僕の下宿してるパン屋さんのお部屋ですー」

垣根「…肉体創造…初めて聞いた、が…成る程、もしかしてお前があの第六位、か?」

??「あー、はは…普段は隠しとるんやけどね…その通りや」

垣根「……何で俺を助けようと思った」

??「ん…なんでやろ。しいていうなら、友達のヒーローくんに感化されたってところやね」

垣根「ヒーロー、ね…」

思わぬ所で幻の第六位(実は空席だと思ってた、名義だけかと)に出会うとは思わなかった。
様子を窺うに、どうやら身分を隠して普通の学生として生活してるらしい。
助けてくれた事を感謝すべきなら、一刻も早くこの部屋から出て行った方がいいだろう。
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5 : :2011/09/04(日) 14:35:05.87 ID:hz/dD2kA0

アレイスターが動くか、『統括理事会』が動くか、はたまた…何にせよ、俺は消されるだろう。
もしこの第六位が俺を庇おうとした場合、殺される場合が考えられる…というより、殺されるだろう。
同じ超能力者とはいえ、こいつは『善人』だ、俺を助けてしまう位の。

垣根「助けてくれた事には感謝する…が、俺はもう行かねぇと…」

??「まだ寝とらんと、血ぃ足りないやろ?ほらほら戻る」

垣根「…何を勘違いしてんだか知らねぇが、俺は只の学生じゃねぇ。第二位の『未元物質』、しかも今は追われる身なんだよ、犯罪者だ犯罪者。だから離せ」

??「第二位いうと、垣根帝督さんやね。追われる身なのはわかっとったよ」

垣根「…は?」

??「垣根くんが起きるまでに、何度か奇襲受けましたしねー。容赦無く刺した後にちょっと修復して病院に行っていただきましたけど」

垣根「は…え…はぁ?」

??「奇襲受ける度に演算邪魔されて大変やったよ、ふー」

こいつが何を言ってるのか一瞬わからなくなったが、どうやら統括理事会等の…暗部か。を、無理矢理追い出したらしい。
しかも殺さず、善人らしいやり口で。笑える。
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6 : :2011/09/04(日) 14:37:15.05 ID:hz/dD2kA0

嘘かとも思ったが、確かにドタバタうるさい音が聞こえた気がするし、第六位というのが事実なら曲がりなりにもこいつも『超能力者』だ、有り得ない話じゃねぇ。
それにしたって、俺をそこまで守る理由は無いはずだ。
暗部組織が寄越されたのだとしても俺を引き渡せば何もしないと言っただろうし
、こいつもそれに従えばそんな面倒な目には遭わなかっただろう。

垣根「どうしてそこまでして俺を守った。理解が出来ねぇ」

??「簡単に言えば、一目惚れしたからやね」

垣根「…は!?」

今度こそ心底間抜けな声が出たと思う、いやいやいや、どういう理由だよ。
さりげなく布団に押し戻されながら、今の言葉の裏を探る。
……ダメだ、ちっとも真意が読めねぇ、俺に一目惚れしたから助けたって意味にしか聞こえねぇ。

??「まぁそんな訳で助けたんやけど、安心してええよ。僕紳士やし、今までもこれからも寝込み襲うなんて卑劣なマネせぇへんし」

垣根「何言っ…紳士とか関係ねぇだろうが、真面目に答えろこの、」

??「あ、今メロンパンとコロッケパンしかないんやけど、どっちがええ?他にもパンやったら何でも焼いてくるけども」

垣根「話聞けクソが!!」

青ピ「あ、僕の事は青髪ピアスって呼んでくれたら嬉しいなぁ」

垣根「………長ぇ。お前なんか青ピで充分だ、この間抜け面」

青ピ「うはぁ、上やんよりキッツイなぁ。でも問題あらへん、なんてったって垣根くんは僕の好きなショート、ストレート、ブレザー、ツンデレ属性を網羅しとるしね!惚れた以外に!」

垣根「………意味わかんねぇよ、このホモ野郎が」

青ピ「ここで実は男装の麗人やったらもっと良いんやけぐげはぁっ!!」

垣根「誰が女だクソ野郎…初めて言われたっつの」
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7 : :2011/09/04(日) 14:38:29.08 ID:hz/dD2kA0

青ピ「うぅ、体も心も痛い…はっ、垣根くんは女王様タイプなんやね!大丈夫、僕はそれもカバーしとるよ!」

垣根「もういい黙れ」

青ピ「で、ご飯どないする?」

垣根「…メロンパン」

青ピ「甘党かわええなぁ…はいどうぞー」

我慢しよう我慢しようと思ったんだが、あまりにも突拍子の無い発言に未元物質で殴り飛ばしちまった。
未元物質による頬の裂傷がみるみる内に回復し始めたのには流石に動揺しちまったが、これが第六位の実力(もとい能力)なのかと納得。

垣根(とりあえず今は、何も考えないでパン食おう…)もぐもぐ

それにしたって…男装の麗人発言は焦った。
やはり早くここから出ねぇと、バレる。





……俺、垣根帝督が女だという事が。
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8 : :2011/09/04(日) 14:40:07.55 ID:hz/dD2kA0

本日の投下はこれで終了です。
ローカルルールどう変わるんだろうか…。
次の投下はまだ不明ですが、来週中までには。
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9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/09/04(日) 15:14:23.10 ID:Ncbsu0dw0
面白いな、期待
ていとくんは外見男なの?
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10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/04(日) 15:16:08.90 ID:ylUM6wp6o
>>1
期待してる

スレタイのインパクトがヤバイ
>>1見るまでていとくんが未元物質で彼女を作って上条さんに殺されて復讐する話かと思った
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11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/04(日) 15:19:44.66 ID:y2SsPQJAO
ほう
常識が通用しねえな
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12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/09/04(日) 16:30:26.59 ID:0oiapfUlo
これは期待
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13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2011/09/04(日) 16:47:16.74 ID:PiQN8a0AO
期待してる
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14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/04(日) 16:49:59.85 ID:buozX73SO

スレタイの吸引力がすごすぎる
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15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/04(日) 17:04:26.61 ID:YSlE9p3E0
ていとくんが女って大分無理がある
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16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/04(日) 17:14:30.75 ID:i3LOPx1DO
期待
それにしてもていとくんは見た目あのままなのか?
だとしたらデカイ女だな
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17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/04(日) 17:16:41.80 ID:o5WCs85Zo
いや、超絶美形なていとくンならいける
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18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/04(日) 18:14:34.86 ID:cl+R+MrW0
何だこの新鮮過ぎる組み合わせ
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19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2011/09/04(日) 20:39:44.07 ID:ph1hm7NU0


きっとこのカッキーはさらしを巻いてるに違いない
20 : :2011/09/04(日) 21:29:17.72 ID:RAD9hgYe0

思った以上に早く書けた事と、時間が出来たので投下します。
地の文少なめとかやや嘘でしたさーせん…。
本日はこれで終了とか言ってすいませんでした……。
それから、レスありがとうございます。

>>9>>15>>16
見た目はまんま15巻の扉絵です、身長とかもそのまま。
心の目で見てみてください、段々とていとくんがていとちゃんに…。

※ヒント:革靴履いて180cm、なで肩、喉仏確認不可、体つきが結構細い
ちなみに現在の服装は青ピのパジャマ。

>>19
な ぜ わ か っ た
21 : :2011/09/04(日) 21:30:14.15 ID:RAD9hgYe0



どうしてお母さんの言う事が聞けないの!

煩い、黙れ、消えろ  いたい

お母さんはね、――――の事を思って言ってるのよ?それがどうしてわからないの?

五月蝿い

もっと女の子らしくしてくれないと、お母さんがあの人に見捨てられちゃうのよ

知るかよ、一人でやってろ  ごめんなさい

そんなにお母さんを不幸にしたいの?――――、お母さんは


垣根「うるせぇえええ!」がばっ

青ピ「!? ど、どないしたん?」

垣根「あー…あ?」

青ピ「だ…大丈夫ですかー?おーい」ひらひら
22 : :2011/09/04(日) 21:31:09.56 ID:RAD9hgYe0

何だ、今の夢は。
いや、どういう意味合いを持つのか、俺自身はわかってる、とりあえず不快だ。
そもそもどうしてあんな夢を見たんだ、昨日あった出来事は?
―――駄目だ、さっぱりわかんねぇ…もういい、考えるのをやめよう。
昨日初めて会話をした男、第六位――青ピは、俺を心底心配そうな表情で見ている。
損得抜きの心配は苦手だ、慣れねぇ。
未元物質製の身に纏ったサラシはしっかりと機能しているようだ、まさか寝てる間に服を剥がれて体中触られたりでもなければ俺が女だとは気付かれまい。
大体、身体中まさぐられたら流石に起きるしな。

垣根「…ちょいと夢見が悪かっただけだ、問題ねぇよ」

青ピ「あぁ、成る程…どこか痛む所は?」

垣根「いいや、問題ねぇ」

青ピ「それなら良かった。僕はこれから学校に行かなあかんのやけど…垣根くん、自分で動けるか?」

垣根「俺を誰だと思ってやがる、さっさと行けよ第六位」

青ピ「呼び名は第六位以外で、出来れば青髪ピアスで!」キリッ

垣根「ゾンビ野郎って言われてぇんだな、よくわかった」
23 : :2011/09/04(日) 21:31:50.80 ID:RAD9hgYe0

青ピ「本当に女王様属性やね…ぐすん…朝ご飯はテーブルの上にあるパンを適当に摘んでてくださいね、なるべく早く帰ってくるけど」

垣根「良いからさっさと行けっつの」

青ピ「よし、行ってきます」

垣根「………」

青ピ「行ってきます」キリッ

垣根「……、…いやだから行けよ、俺を見つめた所で学校にはテレポート出来ねぇぞ?」

青ピ「行ってらっしゃいって言うて欲しいんですー」くねくね

垣根「キメェ動きしてんじゃねぇよ。…あーはいはい、イッテラッシャイ」

青ピ「棒読みにも程があるやろ…まぁええか、行ってきまーす」ぱたん

垣根「たかが挨拶に何分かけてんだよ…」

ようやく青ピが出て行った部屋は途端に静けさが広がり、時計と雨の音だけが部屋に響いた。
昨日は確かメロンパン食って、予備に青ピが買ってた歯ブラシ借りて歯磨いて、風呂も借りて…倒れるように寝たんだったか。
…悪夢見たの第六位のせいじゃねぇか、男装の麗人じゃないかなんて妙に鋭い事言いやがって。
まぁあいつのことはいい、ひとまず自分の状況を整理して身の振り方を考えねぇと。
24 : :2011/09/04(日) 21:32:32.59 ID:RAD9hgYe0


カレンダーを見るに、俺が眠って(昏睡して)いたのは約三日程。
その間第六位は俺の身体を修復するために演算しながら戦っていた。
第六位が追い返せる程度の実力ということは、まず『グループ』・『アイテム』(は壊滅状態だったか)、は関わってねぇ。
俺は反逆者だ、にも関わらず割かれた戦闘要員があまりにも少な過ぎる。
もしかしたら第六位が滅茶苦茶強かったという可能性もあるが、能力の特性から考えてそれは無いだろう、確かにガタイは良いし、喧嘩は強いのかもしれねぇが。
それにしても妙だ、こうして俺が一人だということを感知しているだろうに、未だ何の気配も無い。
暗部の活動はその性質上表沙汰にしたくないとはいえ、緊急事態ならば後処理の人間や手立てを用意してでも事を起こすだろう。
それが、放置ときてる。つまり、この情報・結果から導き出される答えは。

垣根(…捨てられた、か)

恐らくこの表現が一番現在の状況に合致しているだろう。
所詮俺は『第二候補』、大量に手間をかけてまで連れ戻す価値は無いということか。
それとも、掌の上で転がす間命の猶予期間を与え、悩む俺を見て嘲笑っているのか。
どちらにせよ、ムカつくことには変わりねぇんだが。
25 : :2011/09/04(日) 21:34:18.75 ID:RAD9hgYe0


――――まぁ、いい。
現在何も出来なくても、この状況で冷静に時間が経過していけばいつか好機は掴める。
『第一候補』に躍り出らずとも、学園都市を掌握する条件を得る、機会が。
今派手な動きをすれば、それこそ粛清してくれと言っているようなもんだ、俺はそこまでマゾじゃない。
泳がせてやるというのなら、お前達の予測もつかないような泳ぎ方をしてやろうじゃねえか。
噛み付くにはまだ早い。


垣根(この俺を始末しなかった事、後悔させてやる)もぐもぐ

垣根(そういや心理定規のやつはどうしたんだろうな…まぁ利口な女だ、なんとかなってるだろ)もぐもぐ




強く強く、雨が降っている。
物語の行く先をかき消すかのように、ざあざあと、強く、強く。
26 : :2011/09/04(日) 21:35:29.73 ID:RAD9hgYe0

本日の投下は本当にこれで終了です。
今週中にはまた更新できたら…いいなぁ。多分、いやきっとします。
なんだかシリアスっくなりましたが、基本的にはギャグ(?)とほのぼのからのいちゃいちゃで進めていくつもりです。
……先生、酉の付け方が把握出来ません!
27 : ◆Q4QqNnVgv2 [sage]:2011/09/04(日) 22:28:37.42 ID:OmK+dPI3o
#とりてすと
半角シャープに任意の文字列
英数字でも可能
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(奈良県) [sage]:2011/09/04(日) 22:32:49.15 ID:pmB5jAyG0
ググレよ
まったく



名前欄に「自分の名前#任意のpass」を半角英数字で3〜10文字程度入力
>>1
29 :1  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/05(月) 21:46:15.40 ID:QglJk72N0
書き溜めという程の量でもありませんが、投下したいと思います。

>>27>>28
ありがとうございますううう!

それでは以後、この酉でよろしくお願いします。
ていとくん(ちゃん)の呼称を固定しないのはわざとです。
30 :1  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/05(月) 21:47:45.23 ID:QglJk72N0



―――とある高校の教室


青ピ(垣根ちゃん…いや、垣根くん大丈夫やろか)

人助けをした事等、これまで一度としてあっただろうか。
いや、女の子の笑顔もとい下心目的で何度かあったかもしれない、と少し前までの自分の節操の無さに苦笑する。
彼…彼女?は裏路地で血まみれで倒れていた。
血なんてそうそう見ないモンで動揺してしまったが、どうにか治療出来て良かった。
男子用の制服を着ていたからてっきり同性だと思って服を脱がすと、違和感を感じた。
今考えればそれは、彼女…彼の能力によるものだったのだろうと思う(サラシ的な意味で)。
能力の特性上、見ようと思えば僕はその人の骨や内臓、集中すれば細胞まで見る…もとい視る事が出来る。
ちぎれた(切断された?)腕の修復を行う為にひとまず骨の作りや筋肉の付き方を見る限り、彼…垣根くんは女性だった。
というよりも、骨格の形まで確かめたから、女性である事に間違いは無いのだが。
何故彼女が男子用の制服を着ていたのかはわからない、一人称が『俺』ということ、自分が女性だということをひたすら隠すところから見て、何か事情があるんやろうとは思うけど。
どうしてあんな危険な人間達が彼女を狙って僕の所まで来たかもわからない、それでも僕は逃げようだとか、明け渡して楽になろうとは思わなかった。
もちろんそこには良心の阿責だとか、明け渡したら殺されてしまいそうだと思った事も含まれている。
でも、それ以上に僕は、彼女の笑顔にときめいた、一瞬で惚れてしまった。
あれを一目ぼれと言わずして、何を一目ぼれといおうか。
31 :1  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/05(月) 21:48:39.21 ID:QglJk72N0


青ピ『大丈夫やからね…いたた…』

垣根『……、…ん』

青ピ『…目ぇ覚めたん?』

垣根『…』

青ピ『うーん…安心して、ええからね』

垣根『……、…あり、がと』


二度目の襲撃を乗り切った時、何とか敵より隠しきった彼女がぼんやりと目を覚ました。
正式に彼女が目覚めた時にはあからさまに初対面な態度をとられたので、恐らく彼女は完全に寝ぼけていたか、意識朦朧としていたんやろう。
それでも、例え僕へ向けられたのではない言葉なのだとしても。夢の中の誰かに言ったのだとしても。
その感謝の言葉に、安心しきった優しくて可愛らしい笑みに、どうしようもなく心臓が高鳴った。
今まで適当な言葉として『一目惚れ』という単語を使ってきたが、あの時こそ正しい意味合いで一目惚れをしたのだと胸を張って言える。


その後すぐに気を失った彼女の身体を治す為、僕はずっと演算し続けた。
好きになった人に、好きな人に生きて欲しいと思うのは、当たり前の事やから。
もしかしたら彼女はとんでもない犯罪者なのかもしれない、その身柄を狙われるようなことをした、重罪人なのかもしれない。
第二位とはいえ、いつもいつも追われている訳ないんやし。
一緒に居たら危険、それはよくよくわかった。
それでも、僕は彼女を好きになった、守りたいと、生かしたいと思った。


――戦うにはあまりにも弱い、この能力と命の全てをかけて。
32 :1  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/05(月) 21:49:27.68 ID:QglJk72N0


そうして目を覚ました彼女は、思っていた以上に気が強くて、男性意識が強かった。
せやから僕は、彼女をくん付けで呼ぶ事に決めた。
いつか彼女が自分を女性扱いしろと言う日まで、僕は男性扱いをしてあげようと思う。
それにしたって、我ながら何て単純な理由に命懸けなんやろうと少し笑えるけれども、好きになってしまったから。
だから全身全霊をかけて守りたい、何があろうとも。
……家帰った時居なかったらどないしよう。

小萌「青髪ちゃーん?聞いているのですかー?」

青ピ「……はっ、はいはい、聞いてましたよー!」キリッ

小萌「嘘をついても先生にはお見通しなのですよ?ではこの証明問題を解いてみちゃってくださーい」

青ピ「あ、ええと…Xからy地点に向かう…」

小萌先生の補習は魅力的やけど、今日からしばらくは早く帰ったほうがええと思った。
彼女の体調が心配やし、もし襲われてたら…第二位と解ったとはいえ、不安になる。
何も無ければそれでええし、何かあったなら全力で解決したい。
その為にも、今日は真面目に勉強せんとなぁ…。

33 :1  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/05(月) 21:50:16.34 ID:QglJk72N0

―――青髪ピアスの部屋


垣根(暇だな…お、普通の林檎サイダーじゃねぇか、悪くねぇな)がさごそ

その頃の垣根はといえば、やる事も無くなり、食べるものもなくなり、冷蔵庫を何となく漁っていた。
行儀が悪いという自覚はある、しかしそれにしてもやる事がないのである。
彼を責めてはいけない、何しろまだ十代、好奇心有り余る上に喉が渇きやすく腹も減り易いのである。
それに加え、パンは消化に良い、すなわち腹に溜まらない、つまりは空腹の訪れる時も些か早いのだ。

垣根(もうやる事無くなっちまったな…よし、エロ本探すか)

彼は別段青髪ピアスの彼女気取りではない。
只暇つぶしのため、また自分の欲望を満たす為に他人の部屋を漁っている。
学園都市第二位は自重という言葉を好まない。知らないのかもしれない。

垣根「おっ、あったあった」ずるずる

典型的な隠し場所であるベッドの下、本の間を探しても所謂18禁の本は見当たらず、そして垣根は賭けに出た。
押入れの中の謎の段ボールに手を突っ込む事で、イケナイ雑誌を引き当てられるかどうか、そんな自分の運や直感との戦いであった。
かつて『ピンセット』を用い『滞空回線』の中の情報を解析していた時の、真剣そのものな顔つきで。
結果としては垣根自身の意思の勝利、しかしここで誤算。
なんと、イケナイ本に挟まれたイケナイ雑誌に挟まれた18禁漫画(ry)と、芋づる式にどんどんと出てきてしまったのである。
しかし垣根は自重して、もしくは反省してすぐさま段ボールにしまい直したりはしない、むしろバレる事覚悟でやっている。
……自分が暇だからという、只それだけの理由で。
34 :1  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/05(月) 21:50:58.71 ID:QglJk72N0

垣根「見事にジャンルばらっばらだなオイ…」ぺらっ

ひとまず芋づる式に出てきてしまったイケナイ雑誌をバラし、一つ一つの本へと直すとベッドに積んだ垣根は、雑誌等々の表紙を見た。
ロリから熟女まで、ツンデレからダルデレまで、インテリ女性からおバカちゃんまで、様々な女性のグラビアやイケナイ絵が表紙になっている。
垣根は此処まで見て尚後悔もドン引きもしない、八割方男性の思考もとい嗜好である彼女も、結構な女性好きだからである。
女性にモテようと努力し、髪を染め制服を改造した事が良い証拠である。

垣根(…可愛い系も良いな…このボンテージなかなかエロいじゃねぇか…おお)ぺらり

単純な絵面で言えば、彼氏の家に遊びに来た彼女が彼氏が居ないのをいい事にイケナイ雑誌を探し出し、忌々しそうに読んでいるような感じだろう。
無論垣根は青髪ピアスの彼女でもなければ、雑誌の女性に嫉妬して不快にない。それどころか可愛い系の女性写真にデレデレになっているのだが。
とてもとても普通は命の恩人に出来る所業では無いのだが、垣根帝督は元々やると決めたら容赦の無い人間だ。

垣根「……とりあえずしまっとくか」がさごそ

第二位の記憶力をナメてはいけない、彼は何事にも手を抜かないのだ。
イケナイ本に挟まれたイケナイ雑誌に挟まれた18禁漫画(ry)と元あった正しい順番で挟み込み、元あったように段ボールへと戻す垣根。
まるで空き巣が犯行に失敗して逃げる時のようだが、垣根は自分の振る舞いに気まずさや、青ピへの申し訳無さなどは微塵も感じない。
何故なら学園都市第二位は自(ry)からだ。
35 :1  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/05(月) 21:52:17.43 ID:QglJk72N0

青ピ「ただいまー」ガチャ

垣根「早いじゃねぇか」

青ピ「補習は無ければ普通これくらいの時間帯ですよ?あ、くまさんサブレ食べる?」

垣根「…熊?」

青ピ「ファンシーな熊の顔の形しとるんよ。ココア味やけど、食べられそう?」

垣根「むしろ寄越せ、今すぐにだ」

青ピ「はいどうぞー」

命の恩人に対する態度ではないが、これは彼の素の態度である。
ええかっこしぃの必要に駆られていなければ、割と彼は周囲の人間に対してぞんざいな扱いだ。
どちらかといえばこの場合、くまさんサブレ>>>多分超えられる壁>青髪ピアスとなってしまっただけで、彼に悪気は無い。
青ピも気にしていないため、特に問題は無いのだが。

垣根「………」じー

青ピ「食べへんの?」

垣根「あぁ?食うに決まってんだろ」じー

クマさんサブレ(あうう、たべないでー)←垣根の幻聴もとい空想の声

垣根「テメェは俺の糧になるんだよ、感謝しやがれ」じー

青ピ(何か急に電波になったけどカバーしとるよ、何妄想しとるんやろ?)

クマさんサブレ(やー、たべないでー)←垣根の幻(ry)

垣根「くっ…ちくしょう…」ギリッ

青ピ(空腹と何かの間で葛藤しとる…かわええけど助け舟の出し方わからへん…)

垣根「…そういやこのサブレ、何処で買ったんだよ」

青ピ「ケーキ屋さんやけど?」
36 :1  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/05(月) 21:53:06.21 ID:QglJk72N0

クマさんサブレ(…けーきやさんでばいばいしたおにいちゃん、げんきかなぁ)←垣根の(ry)

垣根「俺はメルヘンじゃねぇ、思考までメルヘンでいてたまるかっつの…」ぼそ 

クマさんサブレ(ねこさぶれのおねえちゃん、なんだかなやんでたけど、かいけつしたかなぁ、してたらいいなぁ)←垣根の(ry)

垣根「」がりぼりぼりっ

青ピ(サブレ一枚口にするのに二十分も悩むとは…何やったんやろう)


垣根帝督、人生で二度目の敗北。まさかの対クマさんサブレであった。
37 :1  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/05(月) 21:54:33.08 ID:QglJk72N0

本日の投下はこれで終了です。今回こそは…とギャグを目指した結果がこれ。
次はいつの投下だろうか…きっと来週までには…来週入ってからかもしれません。
地の文だらけになってしまった…読みにくくてすみません…。

何かネタとか希望がありましたら、ちょろっと書いてくださると執筆がスムーズになる気がします。
基本(>>1に書いた三つの要点)は崩しませんが、それ以外ならなるべく書ける範囲内で書こうと思います。
……あっ、質問とかもありましたらどうぞ。
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/09/05(月) 23:03:26.53 ID:ISz7/zpDO
このていとちゃ…ていとくんのおぱーいは何カップか気になる
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/09/05(月) 23:04:19.83 ID:ISz7/zpDO
このていちゃ…ていとくんのおぱーいは何カップか気になるwwww
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/09/05(月) 23:05:12.05 ID:ISz7/zpDO
このていちゃ…ていとくんのおぱーいは何カップか気になるwwww
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/05(月) 23:06:20.39 ID:rMWJ2Z9DO
>>1
このていとくん、もといていとちゃんメルヘン力がハンパないでぇ…
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/09/05(月) 23:07:08.00 ID:ISz7/zpDO
このていちゃ…ていとくんのおぱーいは何カップか気になるwwww
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/09/06(火) 05:50:49.43 ID:13Yk3sxAO
どんだけ気になってるんだw
エラーが出ても気にせず更新してみろ、大抵書き込めてるから
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/09/06(火) 16:56:44.28 ID:SM+P8tFLo
これはなんという俺得

乙!
45 :1  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/06(火) 20:48:47.89 ID:nHzdXG090
重大なミスに気付いてしまった…青ピの一人称…ボクでしたね、すみませんでした。
来週までにはとか言っておいて連日投下申し訳ないです、新手の詐欺のつもりじゃないんです。
地の文減らなくて申し訳ありません、新手の詐欺のつもりじゃ(ry)。多分地の文減りません。
そしてレス、ありがとうございます!…今更ながら、このスレはだいぶ原作無視です、ご都合主義で書いていきます。
ご都合主義の為、戦争とか無かった事になっています。☆がプラン一旦停止したとか、何かの理由で仲直りしたんだなぁ、とかそんな風に脳内補完していただければ幸いです。


>>38
このていとちゃんの胸のサイズはCからDの間というやや大きめです。腕を組んでもらうとかなり幸せなレベル。
しかし未元コルセットサラシを巻いているので、例え服を脱いでも彼が能力を発動している間は筋肉+男性の胸板にしか見えません。


それでは、投下していこうと思います。
46 :1  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/06(火) 20:49:58.07 ID:nHzdXG090

―――青髪ピアスの部屋

青ピ「平和な休日やねー…何かしたい事あります?」ごろごろ

垣根「あー…そうだな…パン焼くのって疲れんのか?」ごろごろ

青ピ「せやねー…うーん、大量に焼くと滅茶苦茶疲れる」ごろごろ

垣根「一個とか二個なら然程疲れねぇか?」ごろごろ

青ピ「やる人の感じ方とか、どの位凝ったパンを作るかにいって変わるけども、ボクは馴れてるからなぁ、あんまり参考にならへんと思う」ごろごろ

垣根「……よし、ちょっくらパン焼こうぜ」むくり

青ピ「垣根くん、お菓子作りとか料理の経験は?」むくっ

垣根「ある訳ねぇだろそんなもん」どやっ

青ピ「そこドヤ顔するとことちゃうで?」

休日の学生とは、とかくも怠けやすいものである。
しかしその怠けも長く続けば飽きる。
ちなみに先程まで彼らは怠惰な感情のままにベッドで二人並んでごろごろとくつろいでいた。
勘違いしないでいただきたい、これは決して18禁行為をした後のごろごろではない、しいていうならば昼寝である。
ちなみに垣根は青ピに自分の性別がまだバレていないと思っており、青ピは垣根をしっかりと男性扱いしている。

47 :1  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/06(火) 20:51:12.72 ID:nHzdXG090

―――厨房

青ピ「ちなみに垣根くんのイメージのパンの作り方ってどないな感じなん?」

垣根「小麦粉に卵ぶち込んで混ぜて焼くんじゃねぇの?」

青ピ「間違ってはいないんやけど…心配になってきたわぁ…」

学園都市第二位といえど、この世の全てを知っている訳ではない。
彼にとって料理とは何か、答えは未元物質以上に不可解なものである。
青ピは一抹の不安を抱えながらも、垣根のサポートに取り組むことにした。
まさかこの時点で、垣根はドジッ子属性などとは誰も思うまい。無論青ピも。

垣根「!? うぉっ、ぷ!」ばさーっ

青ピ「!? 大丈夫かいな垣根くん」おろおろ

垣根「大丈夫に決まってんだろうが、気にすんな」ふるふる

青ピ(心配せずにいられる基準を軽く飛び越えとるんやけど…というか涙目やし)

垣根「ちくしょう…俺は負けねぇぞ…これ以上敗北してたまるかってんだ…」じわっ

パンを焼くには、まず材料を混ぜ合わせなくてはならない。
今回は垣根の希望もあってしっとりメロンパンを作る事に決まった。
つまり今回作るメロンパンの場合、小麦粉(強力粉)・米粉・牛乳・卵・砂糖・塩・バター・スキムミルク・ドライイースト…等々が必要となる。
クッキー生地は既に青ピが昨晩の内に暇潰しで作り上げていたため、パン生地のみ用意することになったのだが、垣根がドジを連発した。
小麦粉を運ぶ最中にこけて粉を頭から被り、卵を割るのを失敗して殻がボウル内に大量に入ってしまったり、とにかく甘くすればいいのかと砂糖を大匙何十杯も…etcと酷いものであった。
途中何度か垣根は調理を放り出そうとしたのだが、その度に『自分は学園都市第二位の人間』というまったく関係ないプライドで作業を放り出せず、次々と前述の悲劇を生み出した。
どこかの誰かの言葉を借りれば、『悲劇ってのは意外と柔らかいンだよ』である。

青ピ「なんとか焼く作業まで辿り着けた…本当に良かったぁ」ぐた

垣根「もう二度とパンなんか焼かねぇ…粉塗れになるしよ」むすっ

青ピ(普通は頭から小麦粉被ったりせぇへんけどね)

青ピ「まぁまぁ、シャワーも浴びた事やしそれこそ水に流さんと」へらっ

垣根「………」むすっ

青ピ「垣根くんのお陰で一段と美味しいパンが食べられますし」

垣根「…解ってんじゃねぇか、そうだよな、わざわざこの俺が手間かけたんだしよ」

青ピ(かわええけど、扱いやすいわぁ…)

垣根帝督、実に扱い易い人材である。
最も、褒められても基本的に彼は疑うのだが無条件で青ピの褒め言葉に機嫌を良くしたということが既に信頼まで至っているということなのだが、それに二人共気付かない。
十二月九日。
奇しくもこの日は、垣根が第一位と争ったあの日から、丁度二ヶ月の日だった。
48 :1  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/06(火) 20:52:34.17 ID:nHzdXG090

―――青髪ピアスの部屋

あの日から二ヶ月も経過したが、一向に俺を殺そうとするか、『回収』しようとする動きは無かった。
何故かはわからないが、しいていうならばあちらも機を伺っているのかもしれない、と思った。
暗部に少しばかり関わってしまったとはいえ、青髪ピアスは表側の人間だ、[ピーーー]と面倒だろうしな。
ましてや第六位、尚更始末する訳にはいかない。只のスキルアウトとかならまだしも。
何だかんだで二ヶ月、俺は外に出ていない、ずっとこの部屋に居候している。
そろそろ外に出て、俺を襲ってくる奴をとっ捕まえて事情を聞くのも悪くねぇ。
パンを食べ終わった後青ピは買い物に行ったので、部屋には俺一人きり。
多少は申し訳ない気分になりながら青ピの服をいくつか借りて、外に出る。流石にパジャマじゃ外には出れねぇし。
裏口から抜け出るのは意外と簡単で、成る程此処を使って俺は部屋に運び込まれたのかと納得。



垣根「…いってきます、か」

言うのも言われるのも慣れないフレーズ。
それはつまり、俺には帰る場所が無かった事を、そして今でも無いということを表している。

垣根「…第一位の事馬鹿にできねぇな、アホらし」

すっかり青ピに感化されてしまった、平和ボケしてやがる。
俺は人殺しだ、ゲスで外道で最低な野郎なんだ。
だから、幸せを享受する権利なんてものは存在しない。
悪人に幸福なんて似合わない。
でも。
―――もう少し早く、もっともっと前に、青髪ピアスと出会えていたら。

垣根(…ガラでもねぇな。サムいっての…馬鹿ばかしい)

一瞬でも日和った考えを浮かんだ自分に唾を吐きかけたい気分になりながら、表通りより更に寒々しい裏路地に向かう。
すれ違う学生達は楽しそうにクリスマスがどうだの、寒さがどうだのと、のんびりとした調子で会話をしていた。
49 :1  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/06(火) 20:53:25.14 ID:nHzdXG090

女子学生A「クリスマスっていったらケーキだよね?」

青ピ『クリスマスいうとケーキのイメージやね?』

女子学生B「私はやっぱりプレゼントのイメージかな。ま、サンタさんはとっくに卒業しちゃったけど!」

垣根『クリスマスっつったら恋人同士の性夜、って感じじゃねぇの?』

青ピ『あからさまに言うと悲しいやんか、お互いに彼女おらへんのやし』

垣根『ハッ まぁな』

青ピ『ボクはプレゼントのイメージも強いなぁ。サンタさんはおらんくなったけど』

彼女達にとっての日常は、俺にとっては完全な非日常のはずだった。
青ピと会話をするようになってから、そんな非日常が、いつの間にか日常になっていた。
楽しかったのかもしれない、もしかしたら俺は、それをずっと望んでいたのかもしれない。
それでも、与えられるのがあまりにも遅すぎた。
今の俺が居るべきなのは、あんな優しい場所じゃない。
この裏路地のように、暗い、湿った、誰もが基本的に厭うような場所だ。

垣根(…俺は、第一位以上に外道だ。青髪ピアスと一緒に居るには、ふさわしくない)

一歩一歩、裏路地の奥へと歩みを進める度に後ろ暗い考えが俺を支配する。
『垣根帝督』のあるべき姿へと、暗闇が俺を連れ戻そうとする。
最初に思ったはずだ、恩義を感じるなら一緒に居るべきじゃない、一刻も早く出て行くべきだ。
それをずるずると…まったく、情けねぇ。
この服を返せないのは残念だが、この辺りが潮時だろう。

垣根「寂しい、なんて、思っちゃいねぇよ」

誰に言い訳しているのか、勝手に唇が動く。
頼りない声量で。
本当にこれでいいのか、と誰かに問いかけられている気がした。




これでいいに決まってるじゃねぇか、所詮俺は―――。
50 :1  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/06(火) 20:54:59.75 ID:nHzdXG090
※モブがオリキャラ注意

不意に俺から見て右側の壁にナイフが突き刺さり、俺は歩みを止めた。
…ようやく来たか。

胡桃「わざわざ自分からやられにきてくれるとは、随分呑気です?第二位。腑抜けちゃったんです?」

垣根「腑抜け、ねぇ。否定はしねぇよ、可愛いお嬢さん」

胡桃「…何があったかは知りませんが、『回収』させてもらうです?」

垣根「ま、何やったって同じ事だ。ったく、統括理事会も学ばねぇな。格下じゃ俺に勝つどころか傷一つつけられないってのに」

胡桃「統括理事会…? さぁ、やってみなきゃわからないです?」

上下前後何処から来るか、結論は背後。
何処にでもいるようなチンピラが、爆薬を手に俺に突っ込む。
最も特攻という訳では無く、粉の入った何か爆弾を俺の間合いへと叩き込み、防いで中身が飛び散ったところで即座に距離をとる戦法のようだが。
中身は催涙ガスを兼ねた煙幕、一瞬で目の前が真っ白に染まる。
呑気にも昼間の小麦粉を思い出して、俺はどうしようもなくおかしくなって、笑った。

垣根「確かに俺の能力は、『一方通行』のように反射なんて器用な事は出来ねぇ。ひとまず視界を奪って闇討ち、発想は悪くないと思うぜ?褒めてやるよ」

胡桃「!? な、なんっ」

垣根「俺の能力攻撃は別に大振りである必要はねぇんだよ。別に羽が出なくても使えるしよ。精密に演算して対象を決めずとも、未元物質自体を空間にバラまいちまえばいい」

栓家「げほっ、う、ごぼっ…!?」

胡桃「えふっ、うぇえっ…!!」

垣根「自分達が撒いた催涙ガスで窒息する気分はどうだ?可哀相だから説明してやるよ」

垣根「お前達が使用した催涙ガスは一般に市販されているオレオレジン・カプシカムが主成分のものだ。一般に普及しているものより遥かに強力みたいだけどな。とはいっても普通の物質としてのスプレーは皮膚や粘膜に痛みを生じさせるもの、咳き込ませる程度の威力しかねぇ」

垣根「さて問題、俺の『未元物質』がどういう効果を持つかというと、まぁ防御、攻撃、その他様々あるが…その一つが、物理法則への干渉だ」

垣根「未元物質に干渉された物理法則はがらりと変わる。この場合は空気中のエアロゾル粒子に干渉してみたんだが、毒ガスになっちまったみたいだな」

栓家「」

胡桃「う…」

垣根「男の方は死んじまったみたいだが…まぁいいか。聞きたい事がある、とりあえずお前の雇い主は?」

胡桃「………」
51 :1  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/06(火) 20:56:12.00 ID:nHzdXG090


チンピラの様相の男は既に事切れてしまったようで、ぴくりともしなかった。
ついやり過ぎたが、女の方が動いているのでよしとする。
だいぶ格下のようだし、事の次第によっちゃ、見逃そうと思う。

垣根「…俺は、お願いしてる訳じゃねぇんだけどよ。わかってるか?」

胡桃「わかってる、です…?けほっ」

胡桃「謎の雇い主からのお仕事命令、なんです?」

垣根「…そうかよ。見逃してやるからとっとと行け」

胡桃「けほっ、う…どうして、です?」

垣根「格下のゴミを蹴り潰して気分良くなる趣味はねぇからな、さっさと行けよ」

胡桃「げほっ、かはっ…」

女はよろよろと立ち上がり、やがて路地裏から出て行った。
噂、等と曖昧な情報、だが確かな情報ではあった訳だがら、恐らく統括理事会の内の一人が俺の『回収』を狙ったんだろう。
多分俺が復讐しなくても、統括理事会内で消されるんじゃないだろうかとは思う。
とはいえ、警備員が来ると何かと面倒臭い、一応俺は身を隠していた人間な訳だし。
勿論俺が殺したこいつの隠蔽は、さっきの女の仲間か誰かがやることだ、俺の知った事じゃない。
さて俺も逃げるかと未元物質を展開してところで、俺の肩を誰かが掴んだ。
油断していたつもりはないが誰だ面倒臭い、と振り返って視界に入ったのは、


青い  髪


青ピ「…垣根、くん」

どこから見ていたのか、どこまで見ていたのか、今現れたのかはわからない。
だが様子から見て、俺が笑って人を[ピーーー]所を見てしまったようだ。
『スクール』に居た時の、仕事の鉄則が頭を過ぎる。
誤魔化しが聞かず、情報隠蔽も効かない相手なら、知られ過ぎたら殺さないといけない。
嗚呼でも、俺にはこいつを殺せない。殺せなく、なってしまった。


垣根「何、でだよ。なんで、」





そして、血を洗い流すかのような、大雨が降り始めた。
52 :1  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/06(火) 20:57:27.43 ID:nHzdXG090

本日の投下はこれで終了です。
どうしよう、先行き不安になってきた…ちゃんと完結させられるのか、これ…。いやでも、青ピとていとちゃんはくっつくはずなんです。
急にくっついたりしたらすみません。
次回の投下は多分明後日やその辺りになると思います。遅くとも来週までには。
見て下さっている方に最大限の感謝を。
…本編の合間に小ネタ挟むのって、駄目ですかね?
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/06(火) 22:06:20.85 ID:b7XrQ4BDO
乙。展開はえーな

小ネタは好きにしたらいいんじゃね?
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/09/06(火) 22:10:01.80 ID:oIji2Lez0
>>1乙ー
むしろどんどん入れてくれ。
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/09/06(火) 22:11:32.52 ID:SM+P8tFLo


小ネタは大好きです
56 :黒い悪魔と未元物質(1)  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/06(火) 23:20:03.43 ID:FBs8Z2840
本日は終了詐欺になってしまった…すみません…。本編の展開の早さは反省しています。
許可を頂いたので小ネタ会話文を。ていとちゃんは珍しくサラシを忘れてしまったようです。
そしてていとくんが著しくキャラ崩壊。時間的には一緒に住み始めて一ヶ月くらい。




青ピ「じゃあボクちょっと下(パン屋さんの手伝い)行ってきますー」

垣根「あぁ…」うとうと

青ピ「すぐ戻ってきますからね」キリッ

垣根「いいから早く行けよ」うとうと

青ピ「行ってきますー」パタン



垣根「…zzz」

垣根「…ん?」

かさかさ

垣根「…何だ、この嫌な物音は…」むくっ きょろきょろ

G「(カサカサ)」ヤァ

垣根「」

G「(カサカサ)」ボク、ゴッ君、ヨロシクネ!

垣根「ひっ…や…やだぁああああ!こっ、こっちくんなぁああ!」ぶわっ

青ピ「!? どうしたん垣根く…」タッタッタッタッ ガチャ

垣根「ひくっ、やだやだ、青ピたす、助けてぇ…っ」えぐえぐ

青ピ「」きゅん

G「(カサカサ)」ファサッ

青ピ「今こそ垣根くんの為に戦う時みたいやね」キリッ

G「(カサカサ)」

垣根「」

青ピ「ええと、雑誌…これでええか。…よし、今や!」雑誌を丸めてスパーキング!

G「!?」チーン

青ピ(とりあえずトイレに流そう…雑誌は…捨てておけばええよな)
57 :黒い悪魔と未元物質(2)  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/06(火) 23:22:52.93 ID:FBs8Z2840
垣根「……」

青ピ「手も一応洗って…大丈夫やったか垣根く」

垣根「っ…青、ピ…こわか、ったぁ…ひくっ、ふぇ…うわぁああん!」ぎゅう

青ピ(oh...サラシする前やからお胸の柔らかさが布二枚だけ隔ててボクの鎖骨へ…ってそうやないやろボク!)

青ピ「泣かんといてぇな、もう大丈夫やから。な?」なでなで

垣根「ゴキは、駄目…流石に無理だ…」

青ピ「うんうん、大丈夫やでー」なでなで

青ピ(大体はボク以上に男らしいけどやっぱり女の子やね)

垣根「未元物質でぶっ殺してやろうかとも一瞬考えたんだが、混乱した状況で演算したら部屋ごとぶっ壊すような気がしてな」しゅん

青ピ「ボクの部屋の心配してくれたん?ありがとうな」へらっ

垣根「…その、う…あー…」

青ピ「どしたん?」

青ピ(ボクの服の裾握る仕草かわええなぁ、これなんてエロゲ?)

垣根「た…よりにして、っから…な」(昆虫退治的な意味で)もじもじ

青ピ「」ぶっ

垣根「?! ちょ、オイ、何で鼻血…死ぬな、起きろコラ!」ゆさゆさ

青ピ「ボクもう死んでもええ」ぽたぽた

垣根「お前が死んだら俺が困るんだよ。死ぬなら俺が死んでからにしろ」(困る=昆虫退治・匿ってくれる的な意味で)

青ピ(一生添い遂げたい発言…やと?かわええ、辛抱たまらんけどボクは紳士やから襲ったりせぇへんよ!)

青ピ「せやね、ボクが垣根くんを守らんとね」キリッ

垣根「第六位風情が調子に乗ってんじゃねえよ。…まぁ、精々俺の為に働け」ぎゅっ

青ピ「喜んでー!」

青ピ(せやからお胸がですね、垣根くん…幸せやけども…)




G出てきたら>>1は少なくとも泣きます、はい。
小ネタで頭を冷ましてから本編に戻ろうかな、と思ってます。
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/07(水) 00:03:30.66 ID:GGxETX0DO
>>1乙おつ
ダメだ…このSS読んでから15巻読み直したらていとくんがもう女の子にしか見えぬ
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/09/07(水) 00:11:29.07 ID:qozln0Zpo
こんなかわいいていとくん初めて見た

俺のていとくんがこんなに可愛いわけがない
60 :>>1 ◆H0UG3c6kjA [sage]:2011/09/07(水) 00:40:11.09 ID:YX6otU3AO
しまった、間違えてしまった…

>>51

×噂、等と曖昧な情報、だが確かな情報ではあった訳だがら、恐らく統括理事会の内の一人が俺の『回収』を狙ったんだろう。

○組織の決定にしてはあまりにもチャチだ、恐らく統括理事会の内の個人が俺の『回収』を狙ったんだろう。なにせ、未元物質は金になる兵器だ。

で、脳内補完をお願い申し上げます。
レスありがとうございます。
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(奈良県) [sage]:2011/09/07(水) 17:23:06.42 ID:sP1P8eae0
>>1

ちょっと、G何匹か捕まえて
ていとくんに見せてくる
62 :1  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/08(木) 13:49:45.07 ID:CXE/Mi4AO

レスありがとうございます、>>1です。
まだ頭を冷やしきれていないので、小ネタを。時間としては一緒に暮らし始めて2ヶ月近く。

>>61
鬼畜過ぎる…wwww

では小ネタ投下。
63 :叩いて?被って!じゃんけんぽん!(1)  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/08(木) 13:51:05.37 ID:CXE/Mi4AO

垣根「暇だな」

青ピ「せやねー…」

垣根「何か面白い事しろよ。腹踊りとか」

青ピ「そんな無茶を…いや、垣根くんがどうしてもというんならやりますけどもね?」うん

垣根「つまんねぇから却下」

青ピ「」

垣根「もっと嫌がれよ!」むすっ

青ピ(oh...理不尽…)

垣根「…あ、そうだ、あれやろうぜ」

青ピ「あれ?」

垣根「叩いて被ってじゃんけんポン」キリッ

青ピ「垣根くんがキメ顔するタイミングがいまいち分からんのやけども…まぁええか、用意するから待っててなー」がさごそ
64 :叩いて?被って!じゃんけんぽん!(2)  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/08(木) 13:54:13.09 ID:CXE/Mi4AO

〜叩いて被ってじゃんけんぽんのルール〜

・1対1で向かい合い、正座または胡座をかいて座る。

・じゃんけんをして、勝者は素早く敗者をはたき(ハリセン・ピコハン等)、敗者は素早くそれを防ぐ(ヘルメット・下敷き等)。

・互いが飽きるまで続ける。


用意するもの
・気力、遊び心
・ハリセンまたはピコハン(手刀も可)
・下敷きまたはヘルメット(自分の腕でも可)

()内は道具が用意出来なかった際の特別ルール。

垣根「俺のピコハンに常識は通用しねえ」ドヤッ

青ピ「ピコハンに常識とかあるんやろか…というかそれ、勝利宣言なん?やりますよー」

青根「叩いて」

青根「被って」

青根「じゃんけんポン!」

垣根 チョキ

青ピ パー

垣根「貰った!」すっ

青根「っ」さっ


どぐしっ←下敷きにピコハンが当たった音


垣根「…命拾いしたな」つん

青ピ「」ガクブル

青ピ(未元物質で強化しとった…下敷きが吹っ飛ぶ所やった…)すっ

青ピ(関節の動き読んで勝つしかない)
65 :叩いて?被って!じゃんけんぽん!(3)  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/08(木) 13:56:48.77 ID:CXE/Mi4AO

垣根「偶には良いな、こういう緊張感も」すっ

垣根「さて、二回戦だ」

青根「叩いて」

青根「被って」

青根「じゃんけんポン!」

垣根 チョキ

青ピ グー

青ピ「」さっ

垣根(しまっ…間に合わねぇ!)ぎゅっ←目瞑った


なでなで


垣根「……あ?」ぱちっ←目開けた

青ピ「……」なでなで

垣根「」

青ピ(如何なる時でも女の子は叩かへん、それがボクの信条やからね)

垣根「……っ、ムカつい、た」かぁあっ

垣根「ふざけんな、やるならやれ、情けなんかかけてんじゃねぇよ!」バサッ

青ピ「落ち着いて垣根くん、まず未元物質をしまって!頼んます!」おろおろ

青ピ(怒りというより照れで顔真っ赤やね、かわええなぁ…)

垣根「……」むすっ

青ピ「…機嫌、直してくれへんかな?」

垣根「…メロンパン」

青ピ「ん?」

垣根「メロンパン、焼いてこいよ。蜂蜜入ってるやつ」

青ピ「すぐ焼いてきますからねー」へらっ

垣根「おう」

青ピ「行ってきますー」ぱたん




垣根(…ちくしょう。何だってんだよ、思考停止しちまったじゃねぇか)




ていとちゃんだって年頃の女の子だもの、撫でられたらドキドキします。小ネタ投下終了。
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/09/08(木) 13:58:21.33 ID:/sGQyV8Ro
おつおつ
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/08(木) 17:08:05.86 ID:R4w7qfri0

ていとちゃんかわいい
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/09/08(木) 18:49:47.71 ID:Pv2IFHoDO
さすが青ピやでぇ…!

ていとちゃんハァハァ
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/09/08(木) 20:20:01.12 ID:dd2TtC/G0
垣根女性化ネタは考えたことあるけどまさかやる人がいるとは……
この>>1には常識が通用しねぇ!
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/09/08(木) 22:21:30.07 ID:i1sfFV530
俺得ktkr、こういうのを待っていた
やっぱTSは先天性に限るぜ

それと細かいことだけど、地の文の垣根は彼ではなくて
彼女なのでは?
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2011/09/08(木) 22:35:54.31 ID:N68n89E00
男装の麗人ていとちゃんか・・・むねあつだな

乙!!
72 :そろそろ本編に戻ります ◆H0UG3c6kjA :2011/09/09(金) 16:11:55.61 ID:Bam7ADVT0

レスありがとうございます、そろそろ本編に戻ろうかと考え書き溜めしてきました。
誤字脱字発見して反省しました…どうか完結までお付き合い願えれば幸いです。

>>70
性別的にはそうなんですけども、この後の本編内容で↓の理由を明かします。
肉体的は女性なので本来は『彼女』なんですが、とある理由で『彼』表記も出来るのです。ので、不安定に書いてます。


それでは投下。
73 :1  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/09(金) 16:13:08.06 ID:Bam7ADVT0

家に着くまで、俺達は一言も言葉を交わす事は無かった。
俺は青ピに手首を掴まれ、手を引かれて歩いた。
握力は俺以上に強いだろうに、俺の手首を握る為に込められた力は弱かった。それが、安心した。
大雨が降る中、ただひたすらに青ピの家まで歩みを進めて、気付けば到着。



―――青髪ピアスの部屋

青ピ「垣根くん、先にシャワー浴びてええよ、風邪引いてまうから」

垣根「…、…っ」

何かを言い出そうとしたはずなのだが、うまく声帯が働いてくれなくて、結果声が出なかった。
こいつは、さっきの事を無かった事にしたいのか、その割には表情は暗いままで。
結局何の言葉も口を突いて出てくれなかった俺は、青ピの言う通りシャワーを浴びる事にした。
返り血なんて一滴も浴びちゃいないってのに、どうにも自分が身体中鉄臭い気がしてならない。
気が動転していたのは認めるが、どうして帰ってきちまったんだろう。
何で手を振り払わなかったんだ。
…そもそも、『帰る』なんて表現、いつから使うようになっちまったんだ。
此処は青ピの部屋であって、俺は只匿われただけであって、本来この場所は俺と何ら関係ない場所のはずだ。
それでも、帰ってきた、なんて言葉が出るのは…俺が、青髪ピアスの隣を、居場所だと思っているから。

垣根(おこがましいにも程があるだろうが、俺の腑抜け)

責められない事が、嬉しかった。
俺を拒否しないことが、再びこの部屋へと連れ戻してくれた事が、嬉しかった。
でも、本当はこれは疎むべきことであて、俺なんかが喜んでいい事じゃない。
俺に帰る場所は必要ない、そんな弱さは、甘さは、あの長い暗部生活で捨てたはずだ。
少し位ならそんな当たり前も許されるんじゃないか、そう考えてどれだけの人間を悲劇へと巻き込んだか。
しっかりしろ、と自分を窘めても、思い通りに感情操作出来なかった。

垣根(…そりゃそうか、俺も一応人間だしな。化け物でも)

石鹸の泡と一緒に、こんなまどろっこしい気分全て、排水溝に流してしまえたらと思った。

入れかわりに青ピが風呂に入り、俺は一人で部屋に取り残された。…考える。
これからどうするべきか、統括理事会はどう出てくるのか。
俺は今風評ではどういうことになっているのか。
やはり俺は、暗部に自ら戻るべきなのか。

経緯はどうであれ、俺は恐らく今の考えの内、四番目の言葉を選択肢として選ぶのだろう。
裏社会の暗い場所が本来の俺の居場所であり、俺もそれを望んで……いる、はず、だ。
74 :1  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/09(金) 16:13:56.18 ID:Bam7ADVT0

青ピ「…垣根くん?」

垣根「…あぁ、上がったのかよ。何だ?」

青ピ「垣根くん、怪我しとらん?」

垣根「俺は無傷だが」

青ピ「ん、それならええよ」

安心した、と青ピが笑う。
俺に向けられているその優しい笑みが安心感を誘って、次いでムカついた。
どうして俺を責めない、人殺しだと罵らない。
身勝手な怒りが胃の奥から込み上げて、嘔吐するように、気付いたら怒鳴り散らしていた。

垣根「何で…」

青ピ「…?」

垣根「何で俺を責めねぇんだよ!気持ち悪くねぇのかよ。能力を使って殺ったとはいえ、俺は人を殺したんだぜ?しかも笑顔でだ、慣れっこなんだよあんな事。殺人狂だ、最低の下衆野郎だ、追い出し嫌悪しこそすれ、俺を再び招き入れるなんて何考えてんだ」

青ピ「………」

垣根「馬鹿な女じゃあるまいし、殺人鬼を匿う自分素敵だなんて頭湧いちゃいねぇだろ、俺を警備員に突き出すなりなんなりすればよかったんだ!」

青ピ「………」

垣根「そこまでの覚悟は出来ないんだってんなら、俺の事なんてそ知らぬフリをすれば良かった、どうしてだ、どうして…っ、なんとか言ってみろってんだこの野郎!」

なんて自分勝手な女だ、俺が青ピなら殴り飛ばしたいレベル…なんて、客観的に思った。
散々怒鳴り散らして八つ当たりした俺の頭はとうに醒めていて、冷静な思考が出来た。
なんと言われるだろう、こいつはなんて返すだろう。
拒否されるなら、嫌悪されるなら、今度こそ見捨てられるなら本望だ、そんな事慣れてる。
それに、その方が俺も何とかして暗部に戻る覚悟も決められる、中途半端な『此処』という居場所が無くなるから。
嗚呼でも、こいつが俺を突き放す時の表情は見たくない、きっと見たら、何か余計な事を考えちまう。
もうこれ以上こんな事に思考を割くべきじゃない、何かが変わってしまう前に、俺は此処を出て行かないといけないんだ。
75 :1  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/09(金) 16:14:55.58 ID:Bam7ADVT0


垣根くんが人殺しをしている可能性はこれまでも考えた。何故追われているのだろうかと予想する過程で、何度も。
仮にもボクも超能力者の端くれ、それに見合った思考能力はあるつもりや。
だから、垣根くんを連れ帰ればボクも共犯扱いされる可能性が高い可能性は、あの裏路地で現場を見た瞬間にわかっていた。
警備員に突き出す、そ知らぬフリをしてやり過ごす、声をかけてからだって、無理矢理人違いでしただのなんだのいって誤魔化して脱兎のごとく逃げるのがベストだったということも、わかってる。
それでも、ボクに向かって振り向いた彼女の表情が置いていかれた子供のような泣きそうな顔になって、放っておくことなんて出来なかった。
放っておくことができないなんてそんな綺麗過ぎる感情じゃない、単純に、その表情に惚れ直してしまったからだ。
人を笑顔で[ピーーー]ところだって見ていた、心底愉しそうな笑みだった。
ボクの行動は間違ってる、そんな事よく考えなくたってわかる、でもボクは、それでもええと思えた。
…超能力者は人格破綻者の集まりといわれとるけど、あながち間違いでないかもわからんね。

青ピ「垣根くんが、好きやから」

垣根「…」

青ピ「それでも垣根くんが大好きやから、ボクは一緒に帰ってきたんやで。そんな理由しかあらへんよ」

垣根「…意味わかんねぇ。怖くねぇのか?俺が本当に殺人狂で、今までそれを隠してただけで、今ここでお前を殺したらどうすんだよ」

青ピ「ボクは死なへんよ」

垣根「第二位ナメてんのか、本気で[ピーーー]ぞ」

青ピ「構わへんよ。ボクは死なない、垣根くんを、これから先も、守ってあげたいと思うとるか」

垣根「テメェは一回死なねぇとわかんねぇみたいだな、教えてやるよ。俺は…お前テメェが思ってるような人間じゃないってことをな!」

青ピ「…せやね。垣根くんが、ボクの予想通りの人間だなんて、そんな事ありえへん。けど、垣根くんがどんな人間でも、ボクは否定せぇへんよ。大丈夫」

垣根「うる…っせぇんだよ、偽善者風情が!!」

殺気立った垣根くんが未元物質を展開させれば、僅かにボクの身体が震えた。
生存本能がボクに逃げるように語り掛ける、この状態は危険だ、背を向けて今すぐ走り出せ。
逃亡、防御、それこそが正答、ボクの意思こそが間違っている。
――それでも、今ここでボクが逃げたら、誰か彼女の手を握ってあげるんやろう。
誰が彼女に笑顔を与えてあげられるのか、幸せにしてあげられるのか。
それはおこがましくも、今の時点では少なくとも、ボクしか居ない。きっと。
どこまでも冷血を装う彼女の瞳は揺れて、動揺を隠しきれていなかった。
大丈夫、と抱擁するように両腕を彼女に伸ばして微笑むボクの姿が、彼女の瞳に映っていて、やや滑稽で内心笑った。

硬質化した未元物質が、狙いを外したのか、それとも間違えたのか、ボクの左肩を貫く。
まず最初に熱湯がかかったような熱さ、次いで呼吸もままならないような痛みが訪れた。
痛みに耐えながら演算すると、除々に左肩の傷が修復されていくのがわかる、正確には強制再生だけれども。
激痛にもんどりうって倒れたボクの上へと垣根くんが跨り、トドメを刺さんとばかりに未だ硬質化した未元物質を振り上げ、そして―――やめた。
弾けてはらはらと周囲に舞い落ちていく白い小さな羽は、雪が地面へ溶け込む様に、しかし雪の様に濡らす事なく、床へと落ちて消失した。
羽の行く末を視線で追っていたボクの頬に、ぽたぽたと水が落ちてきた。これは未元物質とは何ら関係ない、彼女の…涙だ。
向かい合った先のその顔は相変わらず端整に整っていて、目の端からは依然ボクの方へと水滴が溢れ出していた。

垣根「どうして、逃げねぇ?テメェは今、本気で殺されかかったんだぜ…?抵抗しないなら、逃げろよ…」

青ピ「言うたやろ、ボクは逃げへんよ。それに、垣根くんを…っ…守りたい、から」

垣根「守る…って、さっきから青臭い事ペラペラと…第六位っ、の…テメェが、一体何か、ら…俺を守るなんて言ってん、だ?」

青ピ「少なくとも、ボクは垣根くんを、孤独から救えるんやないかなぁと思っ…っう…とる、よ」

垣根「馬鹿じゃねぇのか…馬鹿だろ、お前…」

青ピ「本気の恋をしたら…人は馬鹿になるんよ…?大丈夫、ボクは死なへんから、泣かんでええよ、大丈夫」

泣かなくていい、と言ったのが逆効果だったのか、垣根くんの流す涙の量は格段に増えてしまった。
呼吸困難を起こしかねないくらいに泣きじゃくる彼女が心配で、宥めながら何度も何度も背中を撫でた。
しばらくして呼吸ペースが元に戻って泣き止んだ彼女は、只一言だけ、「悪かった」と呟いた。
誰に宛てたかわかり辛いメッセージ、でも、ボクはちゃんと受け取ったから。
結局垣根くんにはボクを[ピーーー]事は出来なかった、それだけで、ボクが彼女を愛し続ける理由としては充分過ぎる。

垣根「今日、俺を捨てない選択をした以上、もし地獄に堕ちる時は青ピも一緒かもしれねぇぞ。後悔してねぇのか?」
76 :1  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/09(金) 16:15:30.19 ID:Bam7ADVT0

青ピ「ボクは堕ちへんし、垣根くんも堕ちへんよ」

垣根「…なんで、そんな事が分かる」

青ピ「ボクは臆病やけど、それだからこそむしろ、垣根くんの最後の命綱になるから」


どこかのヒーローのように、地獄から引きずりあげてあげられるような善良さ(ちから)は持っていない。

どこかのヒーローのように、自分だけが地獄に堕ちて彼女を守ってあげられるような強さ(ちから)も持っていない。

どこかのヒーローのように、どこまでだって彼女と逃げ続けられるような覚悟(ちから)も、生憎ボクは持ち合わせていない。

それでも、彼女がほんの少しでも手を差し出してくれたなら。
今にも落ちてしまいそうな断崖絶壁の隅でボクに手を伸ばすなら。
その時はボクは喜んで手を差し出そう。
彼女自体に、その崖を這い上がる力はある、ボクは手を差し伸べるのがベストなのだから。


垣根「命綱、ね…ゾンビの腕ならそりゃ心強いな、無限だしよ」

青ピ「ゾンビ言わんといてぇな…」

垣根「なぁ、」

青ピ「ん?」

垣根「…これから先も居座るから、覚悟しとけよ?」

青ピ「もちろん」


垣根(俺がどんな人間でも、か)

垣根(…あり、がと)


青ピ「? 今垣根くんなんか言うた?」

垣根「言ってねーよクソボケ、早く飯食わせろ」





―――幸福には翼がある。つないでおくことは難しい。(シラーの格言より)
77 :1  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/09(金) 16:16:18.21 ID:Bam7ADVT0

これで本日の投下は終了です。
本編は来週になるかもしれません。
またも今更ですが、この先ていとくん(ちゃん)の過去捏造が本編ストーリーの中で出てきます。
閲覧、レスしてくださる方、いつもありがとうございます。
小ネタについてお題(?)意見(?)があれば書けるだけ書こうと思います。
多分これからの流れは本編→小ネタ→本編になりそうです。

…格言使ったらヤバかっただろうか…。
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/09(金) 18:01:25.69 ID:PsyyQ58So
垣根ちゃァァァァァァン!!!
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/09/09(金) 18:12:06.70 ID:AzlgoSUho
この1の文章力半端ないっす

ほかに書いてた、書いている作品ある?
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2011/09/09(金) 18:31:39.47 ID:tCieWuKc0

カッキィィィ!!
81 :1  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/09(金) 22:27:23.99 ID:d0hJ9sCs0

小ネタが浮かんだので投下させていただこうと思います。
レスありがとうございます…叫んでらっしゃるのはどういうことなの…?wwww

>>79
ありがとうございます誤字ばっかり同じ単語の使いまわしばっかりですみませんあばばば
SSスレを立てたのはこのスレが初めてで一つだけです。


それでは投下。
82 :甘味について  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/09(金) 22:30:47.00 ID:d0hJ9sCs0

青ピ「そういえば」

垣根「なんだ?」ごろごろ

青ピ「垣根くんってほぼ毎日ボクの作ったお菓子とか菓子パン食べとるけど、よく病気にならへんね?」

垣根「人よりインスリン分泌量が多めだから、糖尿病にはなりにくいんだよな」ぽりぽり

垣根(クッキーはナッツ系よりココア系だな…食感的にはチョコチップ入ってる方が好きだが)

青ピ「…インスリン分泌量はともかくとして、食べてる割には細すぎやと思うんやけど」

垣根「アレだ、演算する度にカロリー消費が尋常じゃねぇんだと思う」むきゅむきゅ

垣根(紅茶マシュマロか…風味がくどいのは否めねぇが、美味いな)

青ピ「普通のご飯も食べとるしええんやけどね、少し心配になったから」

垣根「自分の体調管理位自分で出来る、問題ねぇよ」もふもふ

垣根(バウムクーヘン、最近コーヒー味とか見かけるが…やっぱり普通のが一番だろ、値段にもよるが)

垣根「ん」つバウムクーヘン一欠けら

青ピ「え、ボクにくれるん?」

垣根「そもそもこれ買ったのお前だろうが。口開けろコラ」ぐいぐい

青ピ「ちょ、うぐっ、押し付けんといてぇな、なんで喧嘩腰なん!?」

垣根「うっせぇ、いいから食えよ」ふいっ

青ピ「ん、美味いなぁ」

垣根(…せっかくこの俺がわざわざ『あーん』してやろうと思ったのに、手で受け取りやがって…)

垣根「…[ピーーー]、全身青色に染まって死んじまえ」

青ピ「!?」ガーン
83 :部屋とエロゲとていとちゃん  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/09(金) 22:32:23.99 ID:d0hJ9sCs0

垣根(青ピは学校か…今日は何すっかな、エロ本は読破しちまったし)

垣根「あいつオタクっぽいけど、エロゲとかねぇのかな」がさごそ

垣根「…パッケージ…偽装の黒かよ、中身わかんねぇ…まぁいいや、パソコンにぶち込めば見れるだろ」


ウィーン

\『男☆装☆少☆女 〜ぼく、ううん、わたしあなたがすきよ〜』/


垣根「」

垣根(驚愕を通り越して思考停止しちまった…ひとまずやるか)


〜数時間後〜

『ぼく、女の子なのに、男の子って嘘ついてた…だって、きみと友達になりたくて!』

垣根「見た目すっげぇイケメンなのに女声って違和感ありありだな…」カチカチ

垣根(男装して男として生きるならちゃんと声も声変わり後を演出しろっつー…ゲームにゃ無理か)

『ぼく…ううん、わたし…ずっと前から、あなたがすきよ』

垣根「………」カチカチ

『優しく手を握ってくれた時から、ずぅっと意識してて…でも、きみはわたしを男として見てたもん、無理だって思った』

垣根「………」カチカチッ

『ずっと怖かった、この嘘がバレたらきみはわたしを嫌うんじゃないかって…でも、きみはわたしを好きって言ってくれた』

垣根(流石ゲーム、リアルじゃありえねぇな)

『○○(主人公の名前)…』

  抱きしめる
  押し倒す
ニアキスする

『んんっ…○○…えへ、嬉しい…』

垣根(押し倒せば良かったか…)ブチッ

垣根(飽きた、片付けちまおう)がさごそ

青ピ「ただいまー」ガチャッ

垣根「遅かったじゃねぇか」 

青ピ「調理実習で片付けに時間かかってもうて…ごめんなぁ?」

垣根「ガキじゃあるまいし、何に対して謝ってんだよ」

青ピ「いや、さぞ暇やったろうなと…あ、これ調理実習の結果ですー」

垣根「…プリンか」

青ピ(隠しきれてない笑顔かわええ…)

垣根「仕方ねぇな、晩飯の後に毒舌評価してやるよ、喜べ」

青ピ「毒舌やない方が嬉しいんやけどね」


垣根(青ピに俺が女だって言ったら…どうすんだろうな)

垣根(…いや、別に好きとかじゃねぇし、何考えてんだ俺、疲れてんだなうん)



全身青色とかそれなんて[たぬき]…。
本日は小ネタ投下終了です。
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/09/10(土) 00:38:24.34 ID:PB3wWFUuo
お前も[たぬき]にしてやろうかぁ!
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(奈良県) [sage]:2011/09/10(土) 03:06:18.32 ID:BD/XKDat0
ここの、青ピがカッコ良すぎて
ていとちゃんが羨ましい
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/11(日) 14:49:49.69 ID:IYWxlyejo
このていとちゃんすでにデレデレである
87 :1  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/12(月) 04:48:50.88 ID:aYpzVfim0

レスありがとうございます。
書き溜めが出来た為、投下します。
急に場面が飛んでていとちゃんの過去話へ。
オリキャラ・過去話捏造満載です。そして鬱注意。
88 :1  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/12(月) 04:49:52.48 ID:aYpzVfim0


―――俺の母親は、娼婦だった。

正確に言えば、とある会社の社長と愛人関係を築く女だった。
その社長は極度の年下好き、簡単に言えばロリコンだったようだ。
母親はほぼ毎日社長に抱かれ、そして俺を孕んだ、しかしその頃には、社長に見限られていた。
理由は簡単、歳をとったからだ。加えて正妻ならばまだしも、愛人が妊娠しても男としては好ましくはない。
恐らく社長は囲っていただけで、母親への愛情は無かったのだろうと思う、だが俺の母親は違った。
手切れ金を手渡されて尚社長を愛し続け、結局堕胎出来ずに俺を産み落とした。
……俺に対しての愛も、最初はあったんじゃねぇかと予測する。
母親は誰にもひた隠しにして俺を産み、出生届けを出さなかった。一人きりで俺を育てようとした。

『――――、あなたはあの人に似て凛々しいけれど、昔の私のように可愛らしいわ』

『ひくっ…ぐすっ…どうして、私はあの人の…』

『…何見てるのよこのグズ、そんなに惨めな私が面白いの?』

『…そうよ、そうね、最初からそうすればよかったのよ、そうすれば私だって…!』

最初こそ俺を猫可愛がりした母親は、俺が物心つく頃には、俺の存在を疎むようになっていた。
若さ(幼さ)が、無邪気さが憎らしい、疎ましい、そう思っては俺を意味もなく理不尽に罵倒した。
周囲に子供が居るとバラしていないのだから、勿論支援の一欠けらも彼女には与えられなかった。
子育てノイローゼ、俺への嫉妬、好きな男に振り向いてもらえぬ精神的苦痛…母親は、日に日に精神を病んでいった。
そうして病んだ母親がとった行動は、俺を生贄にすること。
簡潔にまとめてしまえば、俺を社長好みの性奴隷にして捧げ、その母親ということで自分を愛してもらおうとした。
そう思い立ってから、母親は病的に俺に『女の子らしさ・可愛らしさ』を強要するようになった。
母親の中にある理想から、理想の行動や言動から少しでも外れる度に容赦無く叩かれた。
グズ、馬鹿な娘、やはり産まなければ良かった。やっぱり駄目なのかもしれない。
挙句の果てに俺を産んだせいで自分は幸せになれないのだと俺を罵倒し、虐待するようになった。

『あなたのせいで、私は―――!』

乾いた殴打音が響く度、俺の心は砂漠のようにカラカラに乾いていった。
醜い女だ、惨めな奴だ、汚らしい心だ、俺はこんな人間には育ちたくない。
89 :1  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/12(月) 04:51:18.93 ID:aYpzVfim0

―――そして俺は、八歳の時、母親をベランダから突き落として殺した。
[ピーーー]つもりはなかったといえば、言い訳になるだろうか。
俺は確かあの時、洗濯物を干そうとした母親を手伝おうとしたんだ。
母親はよりによってそこでヒステリーを起こし、俺を散々叩いて疲れた身体を柵にもたれ、ごめんなさいと謝罪した俺が母親に飛びついたところで、柵は壊れ、母親だけが墜ちていった。
母親の言葉は、強ち間違っていなかったのかもしれない。
俺は母親を不幸にし、惨めにし、そして最後には殺した。産まれてこないほうがよかったのかもしれない。
それでも最初に俺を不幸にしたのは、母親じゃねぇのか。

……なぁ、そうだろ?

ベランダ下へと転落し、頭から血を流して動かなくなった母親を目にした俺は、パニックになって家を飛び出した。
行く宛ても、頼る人も居ない、それでも家にはいられないような気がして、体力の尽きるまで走った。
やがて俺は学園都市の『門』付近で倒れ、そこからの記憶はしばらく無い。
気付けば、俺は研究所に居た。最も、無機質な白い壁に囲まれた場所というだけだったから、病院だったのかもしれない。
俺はそこで、一人の研究員に育てられた。学園都市の研究者にしては甘いその男は、俺によく飴を与えては頭を撫でた。
どんどんとその男を好きになっていった。無論、この『好き』ってのはあくまで家族愛的なそれなんだが。

ある日男は言った、君の戸籍を作ろうと。
戸籍という単語の意味は当時わからなかったが、ひとまず作る、と頷いた気がする。
男は様々な本を俺に与え、好きに名前を決めるように言った。

垣根『うーん…みょうじは、おとうさん?のでいいかなぁ』

姓を垣根。

垣根『おなまえは…うー…せいめいぼんじゃないのからとろう、かっこいいのにしよう』

名前を決めるのに手間取ったが、男らしい名前をつけようと思った。
『女の子らしさ』を強要する惨めな女を見て育った俺は、自分は男として生きていこうと思った。
女として生きていけば、いつかあんな女になってしまうような気がしたから。

垣根『ていとく…かいぐんのしょうかん?ぜんたい…をとりしまり、しきする、もの?かっこいい!』

垣根『でもそのまんまとるのもつまんないなー…んっ』ぴこーん

垣根『よし、とく、だけとって、ていはべつのじにしよう』

男『決まりそうかい?』

垣根『うん、もうちょっとだからまってー』

俺は母親から捨てられた、八歳までを育てられたにしろ、精神的には見捨てられていた。
その事実をよくよく自覚すると、惨めな気分で心の中が埋め尽くされた。
その内に俺は、俺自身は母親の子ではない、例え身体はそうなのだとしても、俺は『あの女の娘』として、これ以上世界に存在していたくない。
だが、今の親を否定すれば俺は誰からも産まれていないことになってしまう、俺の幼い頭脳はそこまで考え、最も母親の意図から遠い名前を自分に付けた。

<帝―みかど。天子。皇帝>

その時からずっと俺は、垣根帝督。
天の子であり、自分のこれからの運命全体を取り締まり、指揮する者。
産まれてきた事を後悔などしない、俺は天から生まれた、選ばれた人間なんだ。
母親に虐待されて心の壊れた、哀れな少女なんかじゃない。
天使のように選ばれた、強く気高い男だ。これこそが俺の本当。

男に懇願し、非合法で戸籍に登録する際、俺の性別は男にしてもらった。
どのみち『学園都市』で生きている限り、戸籍などよくよく調べられる機会はほとんどない。
IDによる『書庫』照会で大体は済んでしまうからだ。
90 :1  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/12(月) 04:52:30.12 ID:aYpzVfim0





垣根『ちょうのうりょく?』

男『そう。開発してみたら、帝督くんはもっと幸せになれるかもしれないよ』

垣根『しあわせ、かー…』

男『ちょっと大変かもしれないけど、幸せになる為の努力としてやるならいいんじゃないのかな?』

垣根『…うん、おれ、がんばってみる!』

まもなくして俺はその白い場所から研究所へと移され、能力開発をされた。
既存の能力開発では『可能性』だけが顕れ、結果俺は無理矢理な負荷を心身共にかける開発を施された。
言葉にするもおぞましい実験を、開発の全てを、一身に俺は耐え続けた。
そしてその結果顕れたのは、『未元物質』。文句無しの『超能力者』。
俺が位置づけられたのは学園都市第二位という序列<ランク>。
最高の気分だった、俺はこれまでの不幸の対価に、ここまでの力を手にしたのだと。


俺が『未元物質』を手にするまでの運命の八割程は、統括理事会…いや、アレイスターによって仕組まれていた。
全部が全部じゃない、もちろん偶然の要素も多い。だが、それでも、仕組まれたことには変わりなかった。

母親が俺を虐待していることに、周囲の住民が誰も気付かなかったこと
学園都市近くに辿り着いた俺をすぐに拾い上げたこと
児童相談所など『表』の機関を遠ざけたこと
『男』は統括理事会の寄越した『暗部』の人間だったということ
あの白い建物は、俺を監禁する為に用意された場所だったということ
戸籍を好きに決めさせたのは、『自分だけの現実』への現実の状況を極端に変化させることでどんな結果が出るかという実験だったということ
俺が『未元物質』を手にすることは、確定事項だったということ

皮肉にも、俺を幸せにしてくれた学園都市のせいで、俺は不幸に過ごしてきた。
俺に居場所を与えてくれた学園都市は、俺のあるべき場所を奪ってきた。
それら全ての行いは、たかがアレイスターの『プラン』の為なんかに。
だから俺は、暗部に、地獄まで身を落とした。綺麗な場所に居ては、底の底へは辿り着けないと考えたからだ。
学園都市の全てを掌握する、アレイスターの『プラン』を歪ませる。
学園都市自体を怖そうなんて思わない、仕組まれていたとはいえ、俺に居場所を与えてくれたのは、優しさをくれたのは、此処だったから。
いつか学園都市を手中に収めよう、この場所は様々な事に使える。


―――そして、もう二度と、俺のような『悲劇(喜劇)』を生み出してしまわないように。


この手を血に染めて、脚を血の海に浸して、結局得たものは何も無かった。
沢山の女を愛した、どこにも居場所は無かった。
彼女達は俺を愛してくれはしたが、力足りず、俺の問題に巻き込まれて死んでしまうか、俺の力を恐れて逃げていった。
いつだって俺は一人ぼっちだった、母親を殺したあの日から何も変わらず、俺は―――。

アレイスターへの『直接交渉権』を得れば、俺は『プラン』に干渉出来る。
干渉出来ずとも、多少はアレイスターの思考に影響を与えること位は出来るだろう。
直接操れずとも、学園都市を間接的に操る事が出来るようになる、つまりは、掌の上へと乗せ転がす事位は。
その日を得る為に、俺は何だって犠牲にしてきた。
91 :1  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/12(月) 04:54:05.74 ID:aYpzVfim0



垣根(それでも結局、第一位には敗北、格下に救われ掬われて今に至る、ってな)

垣根(…この状態が俺にとってはベストなのかもしれない、と最近考える始末だ、腑抜け)

青ピ「垣根くん、布団敷けましたよー」

垣根「ん、あぁ…いや、布団は要らねぇ」

垣根(どんなに傷つけても、こいつは俺を否定しなかった。あまつさえ、救うと言い張った)

垣根(例え、俺がどんな人間だとしても、だ)

青ピ「?? ベッドが良いんなら譲りますよー」

垣根「そういう意味じゃねぇ」

青ピ「…垣根くん、何や顔色悪いけど、大丈夫なん?」

垣根「自分で思ってるより、大丈夫じゃねぇかもな」

青ピ「体調悪いんなら、早く寝た方が…」

垣根「今夜は、お前と一緒にベッドで寝る」

青ピ「」

垣根「…だから、俺の昔話、聞いてくれるか?」

青ピ「昔話…垣根くんが話したいんやったら、ボクはいつまでだって聞きますよー」

もう、俺は『垣根帝督』として、元『スクール』のリーダーとして、『未元物質』、学園都市第二位の男として生きなくてもいいのかもしれない。
こいつだけは、俺を否定しないような気がする。
どれだけ汚い部分を晒して尚、俺を愛して抱きしめてくれるような、そんな気がする。


垣根「俺は……女なんだ、ずっと嘘ついてきた、ごめん。それから、汚い話を聞いてくれ」


青ピ「いつまででも、何度でも聞くから、安心してくれてええよ」



――――世界中の善人を集めたって、こいつの優しさには敵わない。
92 :1  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/12(月) 04:55:47.73 ID:aYpzVfim0

以上で本日の投下は終了です。
次回の投下は来週中には。
地の文だらけワロエナイ…閲覧ありがとうございます。
シリアスにするかが悩み所ですね。
過去話でおわかりいただけたと思いますが、戸籍上の問題でていとちゃんを彼表記にしたり彼女表記にしたりしてました(できました)。
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/12(月) 05:23:34.28 ID:wYLnj/m+o
おつ
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/09/12(月) 18:15:10.22 ID:rZ5AzOnao
おつおつ

投下早いな
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(奈良県) [sage]:2011/09/12(月) 20:13:57.14 ID:5y2BZMCz0
>>1
くそー、ラブラブでもシリアスでも
>>1のは面白いから期待
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/20(火) 17:40:25.19 ID:uKUYQ0TGo
待てないぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ
97 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/09/20(火) 23:12:23.40 ID:pps1sSyS0

レスありがとうございます。待っていて下さった方、ありがとうございます、お待たせしました。
遅くなりましたが、書き溜め出来ましたので投下しようと思います。
日を空けた割にあまり量が無いです…すみません。

以下より投下。




電撃大王やっと読めたよ、ていとくん出演おめでとおおおお!!
カチンときて隠れ家ぶっ壊しちゃうなんて可愛いなぁああああ
98 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/09/20(火) 23:13:15.56 ID:pps1sSyS0

―――長い話を終えた彼女は、ぶたれるのを覚悟した子供のようにぎゅっと目を瞑り、懺悔するように項垂れた。

何故彼女が男として生きてきたのか
彼女はどんな人間で、どんな事をしてきたのか
彼女の性別は男ではないということ(ボクは最初から知ってたけども)

全てを話して項垂れ、最後に締めくくるように

垣根「…追い出すなら、追い出してくれ。迷惑はかけない。嘘をついてきて、本当に悪かった。今ままでありがとうな」

と言い、顔を上げたかと思えば、優しく微笑んだ。
いつもの彼女らしい人を見下す笑みでもなく、ボクが惚れたあの可愛らしい微笑でもなく、何もかも諦めきったような、そんな雰囲気で。
ボクが何も言わないのをどうとったのか、もう話す事は無いとばかりに立ち上がりボクに背を向けた彼女の背中はひどく小さく、そして心細く見えて。
そこに『学園都市第二位の超能力者』『未元物質』なんて男性は居なかった。
そこに居たのは、寂しそうにしていたのは、ボクのよく知る、照れ屋でプライドが高く可愛らしい、垣根帝督という、只一人の女の子しか居なかった。

青ピ「垣根…くん、いや、ちゃんでええかな」

垣根「…何だよ。礼なら言ったはずだ」

青ピ「そんな話聞いたら、ボクはますます垣根ちゃんを手放したくなくなる」

垣根「……何言ってんだ。言ったろ、俺はガキの頃から人殺しなんだよ。しかも嘘吐きだ」

青ピ「それでもええよ」

垣根「………」

青ピ「ボクは、君にならどれだけ嘘をつかれても、罵倒されても、怒らへんし、嫌いにもならへんよ。どんな話をされても」

垣根「…アタマイカれてんのかよ」

青ピ「そうかもしれんね、否定はせぇへんよ」

垣根「俺は、あの女みたいな人間になるかもしれねぇぞ。最低で、下衆な」

青ピ「心配性やね、垣根ちゃんは」

垣根「…オマエを、傷つけたくないんだ。住んでる世界が違うとかじゃなくて、純粋に。でも俺はこんな性格だ、気をつけたって、オマエを傷つけちまう」

青ピ「大丈夫」

垣根「嘘つくなよ」

青ピ「嘘やないよ」

垣根「……」

青ピ「例えボク含む百人が笑いあったって、千人が喜んだって、学園都市中の人間が君を疎んだって、ボクは君を失った世界は耐えられへんよ。不幸やもん」

垣根「…此処に居て、いいのか?ずっと、一緒に居ていいのか…な」

青ピ「一緒に居てくれへんと、ボクはもうまともにご飯も喉を通らへんなぁ。比喩やなくて、本当に」



青ピ「君が一緒に居てくれないと、ボクは嫌。せやから、ずっとココに居て下さい。お願いします」


垣根「……、…ん」


嬉しそうにはにかんだ彼女に抱きつかれながら、やっぱりボクはこの人が好きなんやなぁ、としみじみ思った。
99 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/09/20(火) 23:14:01.00 ID:pps1sSyS0
―――青髪ピアスの部屋(ベッド)

青ピ(結局緊張して一秒も寝られへんかった…)むにゅっ

垣根「んー…むにゃ…」すやすや

青い髪の少年は昨夜から本日の朝現在時刻まで徹夜した。ベッドに横たわっていながら、緊張により一睡も出来なかったためである。
何故緊張しているかというと、隣ですやすやと眠る少女の胸(性別バレして未元物質によるサラシを取っ払った為、現在布一枚@青ピのパジャマ)の谷間に自分の顔が挟まっているからである。
彼の名誉の為に言っておくが、断じてこれは事後の朝チュンではない。只の添い寝である。
また彼女の為にも言っておくが、別に誘惑している訳ではない。ただ単に生い立ち上、女性としての警戒心が極端に少ないだけである。

青ピ(と、とりあえず距離置こう…)

垣根「んん…」むぎゅっ

青ピ「」むにゅっ

青ピ(青髪ピアスさんの青髪ピアスさんがスーパーサイヤ人になりそうなんやけど…)

距離をとろうとすればする程に強く抱き寄せられ、遂には動けなくなった青ピがとった行動。
それすなわち『妥協』である。
彼が出来る努力といえば、妥協と、自らの息子さんが興奮してしまわないよう耐え続ける事である。

青ピ(は、早く起きてくれへんかなぁ…)

垣根「…ぁ?」ぱちっ

青ピ「…おはよう」

垣根「はよ…」

青ピ「トイレ行きたいんやけど、一旦離れてもらって構わへんかな?」

垣根「んー…」ぐしぐし

ようやく彼女が離れ、これ幸いとばかりに彼はトイレへとダッシュした。
仮に彼が粗相してしまったとしても彼女は夢精と捉えるだけで軽蔑したりはしないのだが、それはそれ、これはこれ、気持ちの問題である。
100 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/09/20(火) 23:14:49.51 ID:pps1sSyS0


色んな意味で精神的に疲れたせいでぐっすり眠っちまった。
やっぱり人肌は駄目だな、なかなか起きれなくなっちまう…俺だけか。
青ピは便所か…さて、今日は休日(最も俺にはあまり関係ない)な訳だが、何しよう。

『君が一緒に居てくれないと、ボクは嫌。せやから、ずっとココに居て下さい。お願いします』

垣根「…ッ。…あークソ、飯でも作ってみるか」

駄目だ、調子が狂う、今朝は血圧が高いだけだ、きっとそうだ。
…まともな朝飯っていうと、トーストと目玉焼きと…多分サラダは材料の問題で作れねぇから、ウインナー炒め位か。
トーストは食パン(昨日の階下パン屋の売れ残り、青ピが奪取、六枚切り)をトースターにぶち込むとして。

垣根「ウインナーは…焼くのは焦がすかもしれねぇし、茹でるか」

大丈夫、きっと俺にだってまともな朝食位作れる、作れないとおかしい。
もし俺が作れないなら、それは世界の方が間違ってるっていうことだ。
…目玉焼きって、鶏卵だったよな、使うやつ。別にグロいもんじゃなかったはずだよな。
冷蔵庫、冷蔵庫…と。

 \パカッ/

卵は思った通りあったが…さて、青ピの好みはサニーサイドアップか、それともターンオーバーか…。
ま、どっちにしろ対して変わらないだろ、ターンオーバーは黄身が潰れ易いだけで。
でもな、一般的にターンオーバーはサンドイッチ用らしいし…サニーサイドでいいか、楽だし。

垣根「先にフライパンに油引いて、熱して…卵はもう割っとくか」

フライパンに直接割ったら殻が混入する気がする。
割と自炊してる青ピが時折失敗する位だ、料理に関しては初心者の俺が調子に乗るのは良くない。
自分らしくないとは思う、でも実際料理は苦手な人間だ、俺は。
最もこの数ヶ月間、俺が失敗する度に青ピがフォローするから、不快になったことはあんまり無いが。

垣根「…美味く出来上がったら、喜んでくれっかな」

垣根(何言ってんだ俺、馬鹿…)

椀に二つ卵を割って、予想通り入ってしまった殻を取り除く。…硬い殻を黄身を潰さないようにして除外するだけの簡単なお仕事です、なんてな。
とりあえず大方殻は取り除けたようだし、やや煙の上がり始めたフライパンに投入。
途端に油が椀に残っていた水分と科学反応を起こして激しく撥ねた。

 \ジュゥウウ〜!/

垣根(後は焦げなけりゃ完璧なんだが…)

そういえば青ピの奴、全然戻ってこねぇな…大方オナってんだろうと思うが。
只焼くよりは蒸し焼きにした方が焦げ辛いよな、多分。
フライパンの中に軽く水を入れて、跳ね返る水分を蓋で塞ぎつつ弱火にシフト。

 \シュゥー…/

垣根「後は湯沸かしてウインナー茹でるか…」

青ピ「あれ、垣根ちゃんご飯作ってくれてるん?ありがとなぁ」

垣根「別にテメェの為じゃねぇ、勘違いしてんじゃねぇぞ青ネギ野郎」

青ピ「ネギ!?ボク緑色ちゃうよ?!」

垣根「青はな、緑の仲間なんだよ!」がるるる

青ピ「…緑に何か恨みでもあるん?」

垣根「いや、特に何も?」きょと

青ピ「」

青ピ(からかってるんか電波発言なんかわからんよ…)
101 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/09/20(火) 23:15:40.52 ID:pps1sSyS0

青ピ「いただきますー」

垣根「…ます」

青根「」むきゅむきゅ

青ピ「焦げないで焼けたんやね、美味しい」

垣根「何しろこの俺が知識を総動員して作ったからな」ドヤァ

青ピ「せやね、垣根ちゃんが一生懸命作ってくれたから美味しい」

垣根「だ、誰が一生懸命作ったなんて言った、自惚れてんじゃねぇぞ!それとその垣根ちゃんって言うのやめろ」

青ピ「やっぱり君付けの方が良かったん?」

垣根「…帝督」

青ピ「?」

垣根「帝督、って…呼び捨てで、いいっつってんだよ…」つん

青ピ「…わかったで、帝督ちゃん」

垣根「やっぱり一遍死ぬかコラ」

青ピ「まぁまぁ」

あれから失敗しかけては青ピにフォローされ、何とか朝食を作り上げる事に成功した。
多分俺一人でまともじゃない(失敗した)朝食でもコイツは構わず美味しいって言う気がする。
理由も多分、味覚音痴じゃなくて俺が落ち込む顔が見たくないからとか多分そういう理由。


青ピ「片付けも済んだし…昨日の話のちょっとした続きでも」

垣根「続き?」

青ピ「ボクな、帝督ちゃんが女の子だって初日から知っとったよ」へらっ

垣根「」

垣根「知ってて付き合ってたのか、俺の嘘」

青ピ「隠したがってる事を指摘するのもデリカシー無いかなぁと思いまして」

垣根「…悩んでた時間返せ」

青ピ「ごめんなー?能力がコレやから、どうしたって分かってしまうんよ」

垣根「別に怒っちゃいねぇよ」

青ピ「…本当に?」

垣根「いい奴だな、と思っただけだ」

青ピ(…いい奴、かぁ。好きになってくれたら嬉しいけど…人生そんな簡単にはいかれへんよな)

垣根「それ、と」

青ピ「…?」

垣根「……っ…オマエが好きなんだな、って自覚した」

羞恥なんか感じたのは何年ぶりだったか、顔が上げられない。

青ピを傷つけたくないと思ったのは、信頼したのは、過去を話したのは、受け入れてもらえて嬉しかったのは。
褒められて照れたのは、撫でられて顔が熱くなったのは、こんなにも離れがたい理由は。





―――俺が、青髪ピアスを、恋愛感情として好き、だからだ。
102 :1  ◆H0UG3c6kjA :2011/09/20(火) 23:17:04.33 ID:pps1sSyS0

本日の投下はここまでです。
これで終わりでいいような気もするんですが、もうしばらく続きます。
ぶっちゃけこっから先は>>1の[田島「チ○コ破裂するっ!」]だァ!

予定としてはシリアスはさようなら、ほのぼのイチャイチャ爆発しろ、な感じです。
質問等ある方はどうぞ。
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/21(水) 00:10:34.31 ID:Hd3jNzeyo
青ピ











爆発しろ
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/21(水) 00:11:26.38 ID:Hd3jNzeyo
忘れてた
1乙
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/09/21(水) 00:11:34.92 ID:opoGSRuuo
イイね、イイねェ、最高だねェ!
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/09/21(水) 00:18:40.40 ID:dRFu1x3wo
>>青髪ピアスさんの青髪ピアスさんがスーパーサイヤ人に
クリリンの事か……
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2011/09/21(水) 00:39:41.44 ID:z3VdaL2x0


青髪さんマジ青髪さん!

108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/21(水) 05:19:34.90 ID:nKiZJjZT0
>>1
まったく…ブクマが増えてしまったじゃないかどうしてくれる
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/09/21(水) 23:45:10.17 ID:nJ8bnSSW0
乙です!
質問なんですけど、一方さんは、百合子だったりしませんか?
上一だったりしませんか?
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/09/22(木) 00:21:40.28 ID:c9fdmEqXo
知るかそんな事(裏声)
知るかそんな事(迫真)
知るかそんな事(切実)
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/22(木) 18:13:34.17 ID:oYDyg4T30
とりあえず、勝てなくても
青髪を一発殴りたいのは、
僕が異常だからだろうか
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/23(金) 01:37:32.04 ID:eJozYseUo
>>111
おれも同じだ
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/09/23(金) 02:01:38.54 ID:wDceTqx9o
それは異常じゃないし、むしろ偉業に分類されるだろう
114 :1  ◆H0UG3c6kjA :2011/10/01(土) 18:34:53.60 ID:ZrTKwiXI0

レスありがとうございます。書き溜めが出来たので投下したいと思います。
[田島「チ○コ破裂するっ!」]ですとか言っておいてだいぶ遅れてしまいました…せっかく気に入ってくださった方が居るというのに…駄目な>>1ですみません、ごめんなさい、申し訳ないです。
青ピのクリリンェ…。

>>109
うーん…>>1は一方通行さんを男性だと思っているので、少なくともこのスレで一方さんが出てきた場合、一方さんは男性です。
もしも百合子ちゃんを期待していてくださったなら、すみません…ここは『>>1だけの現実』なので。
上一?その幻想をぶち[ピーーー]! …でも上嬢通行ならうっかりこのスレに投下されるのかもしれません。

それでは引き続き>>1の[田島「チ○コ破裂するっ!」]をお楽しみ下さい。


それでは投下。
115 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/10/01(土) 18:36:12.97 ID:ZrTKwiXI0

青ピ「………」

垣根「黙って、ないで…何とか言えよ…」

青ピと二人きりでの無言の空間をこんなにも苦痛に感じたのは今日が初めてだ。
…もし、靡かれたら萎えるというか、相手を好きじゃなくなるタイプだったらショックだ、言わなきゃ良かった。
もうかれこれ十数分、青ピは一言も発さずに黙っている。何を考えているのかさっぱりだ。
いつもはわかり易いし、よく喋る男なのに。

青ピ「えー、と…」

垣根「…」

青ピ「ボク、夢見とらんよね?」

垣根「…全力でオマエの頬肉引きちぎってやってもいいんだぜ?俺は」

青ピ「あ、夢やなかったんやね」

垣根「当たり前だ、っ」

青ピ「……ボクな、今、死んでもええと思う位幸せ」

垣根「バッ、カじゃねぇの…大袈裟なんだよ…」

青ピ「いつもの帝督ちゃんらしく、『この俺に好かれてんだから光栄に思え』とか言わへんの?」

垣根「…もう、オマエにはプライド高く誇らなくてもいいと思ったんだよ」

窒息させる気かと思う程に強く抱きしめられて思考が滞った。
上手く言葉が出てこないが、男に抱きしめられてるってのに不快じゃないのはわかる、俺がコイツを好きだから。
青ピは、俺がどんな態度をとったって変わらず優しく接してくれる。
だからもう、威張らなくても、脅さなくても、怯えなくてもいい。
無理に意地張ったって張らなくたって、どうせ『可愛い』だのなんだの言うんだろうし、気にしないんだろう。

青ピ「…そっか」なでなで

垣根「…好き合ってんだから、恋人にシフトチェンジして構わないんだが、浮気に関してペナルティ設けていいか?」

青ピ「そもそも浮気せぇへんし関係無いと思うけど…好きなだけ設けてええよ」

垣根「本当か?」ぱあっ

青ピ(あ、かわええ)

垣根「素粒子レベルでバラッバラにするけど良いのか?」

青ピ「」

垣根「あ、でもこれじゃアレだな…そうだ、オマエが浮気した相手の女、寝取って人生ボロカスにしてやる」

青ピ「」

垣根「…どうした?顔色悪いぞ?」にこっ

青ピ「あ、あぁ、大丈夫やで」へらっ

青ピ(思った以上にヤンデレやった…女の子寝取るとか帝督ちゃんの場合やりかねへんからな…)
116 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/10/01(土) 18:36:59.36 ID:ZrTKwiXI0

―――午後、青髪ピアスの部屋


垣根「暇だな」

青ピ「暇やね」

垣根帝督は、青髪ピアスに乗っかって暇を持て余していた。
決して性行為に及んでいるという意味ではなく、いうなれば幼児が横たわった父親の背中に乗り遊んでいるようなものだ。
ベッドで二人並んで横になっている割に青ピが一向に彼女を襲おうとしないのは枯れているのではなく、必死に我慢しているからだったりする。
そんな彼の心情を知ってか知らずか、垣根は割と容赦なく抱きついてきたりする。
青ピの息子さん(下半身的な意味で)が限界を訴えてはトイレへ行く青ピ。些か不憫だと思わなくも無い。

青ピ「…帝督ちゃん、お願いがあるんやけど」

垣根「お願い?」

青ピ「下のパン屋さんの制服、高身長の方用のあってな?着てみて欲しいんやけど」

垣根「何だそんな事か。暇だし、構わねぇよ」

青ピ「ちょっと下行って取ってくるから待っててな」すくっ ぱたん

何故唐突に青ピがこの様な提案をしたかといえば、暇つぶし三割、コスプレさせたい意欲七割である。
垣根の中での制服イメージ=白い、パティシエがよく着ている白い服。
でオッケーしたのだが、実際には皆さんも知っての通り、このパン屋さんの制服はメイド服によく似た可愛らしい女の子用の制服である。
無論男性用の制服もあるのだが、青ピがこんな提案をしておいて、まさか男性用を持ってくるということはまず有り得ない。
…青髪ピアス、今日恋人に殺されても構わないという覚悟である。

垣根(遅ぇな…)ごろごろ

青ピ「ただいまー」がちゃっ

垣根「ん。その白いのが制服か?」

青ピ「一式持ってきましたよ」キリッ

垣根(…一式?あれってそんなに沢山着込むモンだったか?)

青ピ「…それと、女の子用の下着、店長の奥さんから貰って来たから、しばらく着けててくれると嬉しいんやけど」

垣根「しばらくって何時までだよ」

青ピ「ボクが寝るまで」

垣根「あぁ、何か最近やたらオナってると思ったら俺に反応してたのか」

青ピ「当たり前やん…って何でボクが照れとるん、普通逆やないやろか」

垣根「安心しろ、オマエが女に性転換するって言っても俺は反対しねぇし、軽蔑もしねぇからよ」キリッ

青ピ「」

垣根「さて着替えるか」

一応のマナーに加え、息子さんの為にも青髪ピアスは垣根のお着替えシーンから目を逸らす事にした。
せっかくのラッキースケベなのだが、こう見えて少年は純情なのである。

垣根「…女用じゃねぇか。着替えてやったぞ」

青ピ「…天使がおるんやけど、写真撮ってもええかな?可愛いんやけど、素敵なんやけど」

垣根「却下」

青ピ「うぅ…殺生なー…かわええ…」

垣根「…ふん」つんっ
117 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/10/01(土) 18:37:44.10 ID:ZrTKwiXI0

脚が長くスカートがよく似合い、強調されずともそれなりのボリュームがある胸を持った顔立ちの中性的な少女は、現在進行形で憤っていた。
というのは傍目から見た結果であって、少女…垣根は実際には怒ってはいない。
仮に彼女を怒らせた場合の結果は、少なくともこのスレや15巻を最後まで読んだ方ならお分かりだろう。

垣根(…俺、こういうの似合ってんのか)ひらひら

青ピ(パンチラ…やと…!?)

頬を小さく膨らませ顔を赤くした可愛らしい恋人が、これまた可愛らしいスカートをぱたぱたと控えめに確かめるように動かし、聖域が数回ちらちらと見える。
年頃の少年にとっての光景はかなり情欲をそそるが、青ピも例外なく劣情を催した。
本日何回目か、数えるのも面倒になる程、お手洗いお一人様ご案内である。



今更、自分が俗に言う『女らしい』格好をするとは、としみじみ思う。
あれだけ嫌悪していたはずなのに、どうしてだか、青ピに喜ばれて不快には思わなかった。
…あれか?これが惚れた弱味ってやつか?…何か違う。
いや、もちろん青ピが『男らしい、ムキムキな垣根くんを愛してるんや!はい柔道着!』とか言われたら引くけどよ。

垣根「…えへ」

それにしても、目に見えて喜んでたな。
似合う似合う連発してたし…ま、トイレに消えちまったが。
下着が女物だとどうにも落ち着かないのは、約十年間男物に身を包んで生きてきたからなんだろうな。
…スースーする…もう元の服に着替えちまおうかな…でも、アイツ落ち込むかもしれねぇ。
別に青ピに遠慮しなくたっていいんだろうけど(そもそもこの着替えだってあくまで『提案』だったし)、何も告げずに着替えてしまうというのも、何となく気が引ける。
そういえば俺、青ピには与えて(衣食住的な意味で)もらってる割に、何も返せちゃいないんだよな…。
確かに今朝朝食は作ってみたが、それだって一人で出来た訳じゃないし、むしろフォローされてばっかりだった訳だ。
今は恋人だから女側が男側に寄生するのは別に普通(?)なのかもしれない、だが…。

垣根「それじゃ、俺のプライドが許さねぇんだよな…」

何というか、誰かに借りを作ったままというのは気持ちが悪い。
それは相手が誰であれ、むしろ嫌ってないやつ相手程、気持ち悪さが増す。
正確に言えば申し訳無さなんだが…返そうにも、俺の口座は凍結していたし、そもそも俺は死んだ事になってる、そうそう出歩けない=バイトも出来ない。
俺を養って青ピが貧窮している状態でないということはわかる、だがそれにしても…このままだと、俺が申し訳ない→返せない→ストレスで何かしでかしそうだ。

垣根(今、確実に借りもとい恩を返すには…ベッタベタの王道でいくしかねぇか、致し方ねぇ。まぁあれだ、恋人にシフトチェンジした訳だし、何の問題もねぇだろうよ)
118 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/10/01(土) 18:38:28.38 ID:ZrTKwiXI0

盛大に自己表現していた息子さんをトイレで沈黙させ、よくよく手を洗ってから部屋に戻ると、帝督ちゃんは酷く何かに悩んでいた。
また出て行くだ何だという話には…ならへんよね、と一抹の不安に駆られつつも聞きだせず、あっという間に夜になってしまった。
夕食、入浴共に済ませてしまい、再びボクのパジャマ(サイズプラス男物ということが落ち着くそうで)を着ている帝督ちゃんと向かい合い、現在はポーカーをしている。
ちなみに現在連戦連敗(16/16)、どうにも勝てそうにない。ボク相手にイカサマ使ってもしょうもないし、多分純粋に帝督ちゃんの幸運なんやろうなぁ。

垣根「上がり、フルハウス」

青ピ「ワンペア…また負けてもうたねー…」

垣根「引き運弱いんじゃねぇの?」

青ピ「否定はせぇへんよ…はぁ。もう寝よか」

垣根「ん」

当たり前の様に今回も隣に滑り込んできた。
…好きな部分のの一つとはいえ、危機感とか無いんやろか…いや、本気(能力込み)で抵抗されたら死ぬのはボクなんですけどね。
今回は今までになくパジャマのボタンが外れている。
ボクが言った事を守ってくれているらしく、今回は上も下(確認しとらんけど)も女性用下着(@フリル付き少女趣味、薄ピンク)を身に着けているようだ。
…どないしよう、こっちの方が興奮するんは、ボクが変態やから?そうなんやろか?
でも、恋人(可愛くてスタイルの良い女の子)が隣で彼パジャマ(やや乱れ気味)、パジャマから透ける下着装備やったら誰でも興奮するやろ。

垣根「………」

青ピ(…あ、寝たんやろか?)

とりあえず何も気にしないで…今日は寝ぇへんと…毎日徹夜じゃ身がもたない。
そんなボクの瞑想も気にせず、寝ているかどうか不明の彼女は仰向けのボクの腕に胸を押し付けるようにして抱きついてくる。
誘ってるんやろか…でも大事にしたいし…男側が考える事やないのかもしれへんけど、付き合って一日目にそういう事をするんは早急過ぎやないんやろか。
無心無心、何も考えずに寝よう、寝てしまえばきっと気にならなくなるはずやし。










垣根「……エロい事しないの?」
119 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/10/01(土) 18:39:20.89 ID:ZrTKwiXI0

本日の投下はここまでです…時間を空けた割に少なくてすみません…。
投下ペースが目に見えて下がってますが、頑張ります…次の投下は…来週中に、きっと。
閲覧ありがとうございます。
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2011/10/01(土) 18:53:46.36 ID:dS27hllAO
ふぉぉぉぉぉぉぉぉ
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2011/10/01(土) 20:52:53.34 ID:gDZwuE6l0
1さん乙です!
早くしてくださいー!みんなが幸せになることをー!
後、青ピは死なない程度に爆発しろ!
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/10/01(土) 20:55:21.70 ID:gDZwuE6l0
すいません。ageてしまいました。本当にすいません!
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/01(土) 21:48:52.60 ID:gPD69OCAo
これは・・・!!

124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2011/10/02(日) 01:18:31.46 ID:k4Mw/EgI0
うおおおおぉぉ!!

>>1のせいで新しい扉開いちまったぜ・・・っ!
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/10/02(日) 19:50:47.32 ID:rWo3Iar1o
ぜひエロいことしてください
126 :VIPにかわりまして統括理事会がお送りします [sage]:2011/10/03(月) 13:25:03.91 ID:YTMyS+aR0
とある魔術の禁書目録劇場版公開決定!!!!!
更に新約とある魔術の禁書目録3巻は12月10日に発売決定!!!
劇場版の詳細は10月11日発売の電撃文庫マガジンで!
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2011/10/06(木) 21:49:41.02 ID:QArcJD8t0
……ふぅ………



…ふぅ……
128 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/10/09(日) 23:07:12.75 ID:QDPjT34u0

レスありがとうございます。
やっと言わせたい事を言わせられた…ていとくん、劇場版には出るんでしょうか、楽しみです。
書き溜めが出来ましたので、これより投下していこうと思います。
…スランプが来てしまったので投下が遅れてばかりです、申し訳ありません。
129 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/10/09(日) 23:07:40.22 ID:QDPjT34u0

エロイコト?エロイコトってのは…イコール『エロい事』なんやろか?え、明らかなお誘いなん?据え膳なん?これ。

青ピ「…空耳に決まっとるんやんボクの馬鹿、そないに都合のええ事がぽんぽん起こったらそれなんてエロゲ?やもん」

垣根「…何さっきからぶつぶつ言ってんだオマエは」

青ピ「これは夢やね、きっとそうなんや、ボクもう寝てしまってて…よーし、頬をひっぱ…いだだだだ!」

垣根「オイ、本当に大丈夫かよ」

帝督ちゃんが起き上がり、心配そうにボクの顔を覗き込んでくる。
あ、睫毛長い…そして胸の谷間が…仰向けやから鼻血が口の中に広がって噎せそう。
ぺちぺち、と頬を叩かれるままに顔を少し横に動かすと吐血した。
自分の血で窒息ってどれだけ間抜けや…。

垣根「!? ……肺の病気だったのかオマエ…知らなかった」

青ピ「げほ、ごぼっ…?」

垣根「病気なら医者にかかってるよな?常備薬はどこだ?話せないなら指差しでいい、教えてくれ、死ぬな」

青ピ「ちが…げほっ、うぉえっ…」

垣根「っ、死ぬな、死ぬなよ…っ!」

パニックに陥った帝督ちゃんはボクが完全に肺の病気だと思ったらしく、慌てて薬を探している。
心配して対処しようとしてくれてるのはとてもとても嬉しいんやけど、これ只の鼻血なんです…。

青ピ「て、いとくちゃ…」

垣根「何だよ…?まさか、死ぬのか…?…仕方、ないよ、な…待ってろ、俺もすぐに後を追うからな」

青ピ「そうや…なくて…」

垣根「遺言か?出来る限りソイツに伝えてやるよ」

青ピ「これ…げほっ、かはっ…只の鼻血…」

垣根「……、…殺す」

心配させやがって、と言わんばかりの睨みが注がれて痛い、居辛い。
未元物質の羽(=帝督ちゃんの本気)なんていつぶりやろう…ははは…

 暗         転


130 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/10/09(日) 23:08:22.21 ID:QDPjT34u0





攻撃しようかと本気で思った途端に青ピが失神した。
興奮し過ぎたせいでオーバーヒートしたか、鼻血で貧血症状に陥ったからか、そのどちらかだと思われる。
…心配させやがって。死んじまうかと思ったじゃねぇかよ、馬鹿。
とりあえず寝かせたまま鼻にティッシュを詰めて、弁当用だと思われる凍った保冷剤をタオルに包んで現在は青ピの首筋(リンパ節)に宛がってやっている。
白血病等そういった出血が止まらない病気にでも羅っていない限り、すぐに鼻血は止まるはずだ。

垣根「…馬鹿」

青ピ「んん…?」

垣根「目は覚めたかよ」

青ピ「あー…すんませんでした」

垣根「いや、大した世話はしてないが…何だって急に鼻血だよ」

青ピ「帝督ちゃんの胸がですね、はい…心配かけてごめんなー」

垣根「……ふん」つんっ

目が覚めた青ピはしきりに俺に謝ってくる。別に迷惑をかけられた訳じゃないんだが。

垣根「で、シねぇの?」

青ピ「…帝督ちゃんは、もっと自分を大切にした方がええよ?」

垣根「………」

ムカっとしたのが自分でもわかる、今の発言はムカついた。
本来なら俺が憤る発言じゃないのかもしれないが、それにしたって思慮が浅すぎないか。
俺がどれ位の覚悟で誘ったと思ってやがる。…そりゃまぁ、恩返しって事で決断は早かったけど、それなりに緊張したんだ。
それなのにこいつときたら…さっき殴っておくべきだったか?

青ピ「……?」

垣根「自分を大切にしてるから、オマエを誘ったんだろうが。分かれよそん位」

青ピ「…でも、」

垣根「でもじゃねぇ。…オマエは俺に恩返しを強要しない、だからこそ尚更返したいと思うんだよ、いい奴だから」

青ピ「ボクは恩返しなんて心底望んでへんよ?帝督ちゃんの衣食住、お金出してるのはボクの自由意思なんやし」

垣根「分かってる、分かってるから…俺に、オマエにやれるものなんて処女と身体位しか無いなと思ったんだよ」

青ピ「………」

垣根「売春なら『書庫』に情報が無くても出来る、カツアゲだってな。でもオマエはそんな方法で得た金では喜ばない」

青ピ「…せやね、嬉しくないなぁ」

垣根「…だから、オマエに直接エロい事をするかしてもらう位しか、俺はオマエの為に何も出来ないんだよ」

青ピ「そんな事、」

垣根「ある。家事もロクに出来ない、一緒に居て癒される性格でも無い、金も無い、使えない女だ、自覚はある。
オマエが命を狙われてる立場とかそういったものなら守る事で恩は返せる、だがそういう訳でもないし、そういう風になって欲しい訳じゃない。
恋人に抱いて欲しいと思って何が悪いんだよ。その辺の男に一発二万位で売春してくるよりはよっぽど自分を大事にしてるし、道徳に沿ってるじゃねぇか。
それが何だよ、もっと自分を大切にしろって。…青ピは、俺を抱きたくないのか。好きじゃ、ないのかよ」

これじゃ只の八つ当たりだ、そう思いながらも言葉が止まらなかった。
どう見たってどう考えたってコイツは俺を好きでいてくれてるじゃないか。
それなのにこれじゃ、疑っているのと一緒だ。
131 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/10/09(日) 23:08:53.21 ID:QDPjT34u0

青ピ「…総合すると、帝督ちゃんはボクが大好きって事でええの?」

垣根「…間違ってるとは言わねぇが、今の発言を要約してもそうはならねぇだろ」

青ピ「ボクもやけど、帝督ちゃんも大概自虐的というか、自己評価低いなぁ」

彼女の口からそこまで即物的な問いかけがくるとは思わなかったけれども、ボクは帝督ちゃんを好きじゃない訳じゃない。
そもそも、前提条件からして大幅に間違っている。
家事なんて出来なくていい、お金も無くたっていい。
少なくともボクは、彼女と一緒に居て癒されているし、幸せなのだから。

垣根「………」

青ピ「恩返しはリアルタイムでしてもらってるから、気にしなくてええよ。それに、ボクは帝督ちゃんを好きやから、一緒に居るだけで癒されとるし」

垣根「…本当に?」

青ピ「嘘言ってどうするん、本当やで?…そりゃあボクも男やし、そういう事はしたいとは思うけども…まだ、早いと違うんかな。男側が言うのも微妙なところやけどね」

垣根「…事が性急過ぎるし、一緒に居れば恩返しっていうことか」

青ピ「…納得してもらえた…やろか?」

垣根「紳士ぶりやがって、オマエなんか一生童貞だバーカ」

青ピ「」

垣根「……もういい寝る」

強烈な一言を言ったかと思えば着衣を整えてそそくさと毛布に包まった彼女はたまらなく可愛らしく見えた。
だからといって前言撤回はせぇへんけども、後ろから抱きしめてみると抵抗は無かった。
……うん、やっぱり癒されるわー。
132 :垣根帝督ちゃんのとある夢  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/10/09(日) 23:09:42.91 ID:QDPjT34u0

※上嬢通行


一方「まだ出来ねェのか?」

上嬢「まだ出来ませんよー、大人しく座ってて待っててくださいねー」

禁書「今日はあくせられーたがお金を出してくれたから大きなハンバーグなんだよね?まと!」

上嬢「そうですよー。第一位様々だなぁ」

一方「現金な奴ゥ…」

一方(平和な金の遣い方なンて今までしてこなかったが、悪くねェな)

上嬢「上条さん自身にもっとお金があったら一方通行の財力に頼る事なくご馳走出来るんだけど…ごめんな」しゅん

一方「いい。…オマエの作った飯位しか安心して食えねェからな、手作りは…だから、金を提供する代わりに、ずっと作れ」

上嬢「え、一方通行、それって…」

一方「っ、勘違いしてンじゃねェぞ。周囲にオマエみたいなお人よしが居ないってだけだ」

禁書「…素直じゃないね、あくせられーた」ぼそ

一方「うっせェぞシスター」

上嬢「…えへへ、よーし、上条さん今夜は頑張っちゃうぞー(調理的な意味で)」



垣根「…はっ」がばっ

垣根「何だ今の夢…?」

青ピ「すー…」

垣根「…夢、だよな?…いいや、寝よ」ごろん むにゃ
133 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/10/09(日) 23:10:08.56 ID:QDPjT34u0

今日の投下はここまでです。
スレの趣旨とは変わりますが、上嬢通行のようなTSのCPで希望があればドマイナーでも頑張って書いてみます。
次の投下…ううむ、二週間以内には。
閲覧ありがとうございます。
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2011/10/10(月) 01:12:38.38 ID:yj/DswWX0
今回も非常に良い垣子ちゃんでしたっ
背の高い男装っ子っていいよね・・・

上嬢通行は別にいらねー
それよりも是非、未元ピアスを書いてください!
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/10/10(月) 02:33:50.93 ID:E1Z+pOOao

上嬢通行はあってもなくてもどちらでもいいです
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/10(月) 16:54:53.56 ID:7JrYeesbo
乙!!
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/11(火) 10:04:07.24 ID:QHQ2YuBDO
上嬢さんktkr
おっぱいおっきくて家事ができるなんて素敵だよ上嬢さんはぁはぁ


メインは未元ピアスでお願いします。
でもちょろっと上嬢通行が出ると幸せです。
138 :VIPにかわりまして統括理事会がお送りします [sage]:2011/10/11(火) 23:20:32.57 ID:vhbX37Yr0
上嬢通行ktkr
書いてください。
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/26(水) 02:04:00.05 ID:7rLa8HUDO
まだかなー
140 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/10/27(木) 18:51:58.31 ID:nwPOR2oy0


いつになったらスランプはきちんと終わってくれるのか…。
お久しぶりです、>>1です…二週間以内とか、無理でした、本当にごめんなさい
意欲が無いのではなく文章が出てこないんです(言い訳)

何とか書き溜めたので投下します。…まだ読んでおられる方はいらっしゃるのだろうか。
141 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/10/27(木) 18:56:03.25 ID:nwPOR2oy0

学園都市は今、女子学生を中心にだいぶふわふわそわそわとした雰囲気になっている。
理由はいわずもがな、二月だから。そう、バレンタインである。
好きな人にチョコを渡さねば、どんなチョコを渡せばいいのだろう、そういえば義理チョコの用意、今年の友チョコどうしよう。
恋をしていてもいなくても、日本の女性は学園都市内外問わず、この月は悩みが多く出費もかさむのである。
かくいう垣根帝督もその一人。昨年まではまるっきり男性気分というか、チョコの山が貢がれる側だったものの、今年からは送る側になった。
別にチョコをあげるという義務は無いのだが、何となく…恋人が居れば、普通はイベント事に参加したいものである。
しかし、垣根帝督という女の子にとって、これは非常に難しい。

垣根(…やべぇ、どんなチョコが好きなのかさっぱり聞き出せねぇ)

何しろ彼女のプライドは、山より高く空まで届かんばかりなのである。
色々あって多少は低くなったものの、それでもやはり今まで培ってきたプライドというのは、そうそう切り崩せない。
はっきり言ってしまえば、彼女は親しい人間に対して完璧なコミュ障なのだ。
相手の発言が気にいらなければ立ち去り、癇に障れば殺し、部下には命令すればよく、同僚とは冷めた適当な会話のみ。
自分から仲良くなろうと話しかけた事もなければ、友人の一人も居ない。
食べ物は何が好き?だなんて簡単な事すらそれとなく、軽く問いかけられない程コミュ障なのである。
無論、『仕事』でしてきたように、凶器を相手の顔の前で不安定に揺らつかせながら「情報を吐け」ということは簡単だ、非情になれば良い。
しかし彼女は敵に銃口を突きつけて重要物資の場所を吐かせたい訳ではない。
只、自分の恋人に「チョコならどんなものが好き?」と問いかけ、答えが欲しいだけだ。
だがしかし、青ピに「帝督ちゃんがボクの好きなチョコを知りたがるいうことは…はっ、もしかしてチョコくれるん?(ぱぁあっ)」と感付かれるのは嫌なのだ。
自己嫌悪に陥る位、垣根自身自分を、ひいては自分のプライドを面倒だとは思っている。が、決してコミュ障とは認めない。
また、友人の意見を参考にしようにも、前述のように垣根には友人が一人も居ない。暗部時代の知人はとてもではないが連絡を取る気にはなれない。

垣根「…」ぐったり

青ピ(大丈夫やろか…)

垣根「…ムカつく」ごろごろ

青ピ(何にムカついとるのかさっぱりなんやけど)

対して青ピ、実は垣根からのチョコに対してはこれっぽっちも期待していなかったりする。
垣根を好きでないとか、女性として見ていないとかいった理由ではなく、あくまで垣根のプライドの高さ、昨年まで男性として生きていた事を考慮しての思考である。
勿論恋人である垣根からのチョコレートは欲しい。むしろチョコじゃなくていいからほっぺにキス位は欲しいと思ってはいる。
ちなみに昨日の昼間それとなくほっぺちゅーの件は口に出したところ、照れ隠しという名のタコ殴りをされた事を青ピは忘れてはいない。
垣根が青ピにチョコをあげたがっているという大前提に気付けない限り、青ピから垣根にチョコは〜〜が好き、と告げる事はない。
悶々と不毛に悩み続けるばかりである。

垣根「………うみ」ぐだぐだ

青ピ(海?)

そろそろどこぞの萌えキャラのようにふにゃあだのうみゃみゃだの呟いてしまいそうな垣根なのであった。
142 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/10/27(木) 18:56:25.25 ID:nwPOR2oy0

学園都市は今、女子学生を中心にだいぶふわふわそわそわとした雰囲気になっている。
理由はいわずもがな、二月だから。そう、バレンタインである。
好きな人にチョコを渡さねば、どんなチョコを渡せばいいのだろう、そういえば義理チョコの用意、今年の友チョコどうしよう。
恋をしていてもいなくても、日本の女性は学園都市内外問わず、この月は悩みが多く出費もかさむのである。
かくいう垣根帝督もその一人。昨年まではまるっきり男性気分というか、チョコの山が貢がれる側だったものの、今年からは送る側になった。
別にチョコをあげるという義務は無いのだが、何となく…恋人が居れば、普通はイベント事に参加したいものである。
しかし、垣根帝督という女の子にとって、これは非常に難しい。

垣根(…やべぇ、どんなチョコが好きなのかさっぱり聞き出せねぇ)

何しろ彼女のプライドは、山より高く空まで届かんばかりなのである。
色々あって多少は低くなったものの、それでもやはり今まで培ってきたプライドというのは、そうそう切り崩せない。
はっきり言ってしまえば、彼女は親しい人間に対して完璧なコミュ障なのだ。
相手の発言が気にいらなければ立ち去り、癇に障れば殺し、部下には命令すればよく、同僚とは冷めた適当な会話のみ。
自分から仲良くなろうと話しかけた事もなければ、友人の一人も居ない。
食べ物は何が好き?だなんて簡単な事すらそれとなく、軽く問いかけられない程コミュ障なのである。
無論、『仕事』でしてきたように、凶器を相手の顔の前で不安定に揺らつかせながら「情報を吐け」ということは簡単だ、非情になれば良い。
しかし彼女は敵に銃口を突きつけて重要物資の場所を吐かせたい訳ではない。
只、自分の恋人に「チョコならどんなものが好き?」と問いかけ、答えが欲しいだけだ。
だがしかし、青ピに「帝督ちゃんがボクの好きなチョコを知りたがるいうことは…はっ、もしかしてチョコくれるん?(ぱぁあっ)」と感付かれるのは嫌なのだ。
自己嫌悪に陥る位、垣根自身自分を、ひいては自分のプライドを面倒だとは思っている。が、決してコミュ障とは認めない。
また、友人の意見を参考にしようにも、前述のように垣根には友人が一人も居ない。暗部時代の知人はとてもではないが連絡を取る気にはなれない。

垣根「…」ぐったり

青ピ(大丈夫やろか…)

垣根「…ムカつく」ごろごろ

青ピ(何にムカついとるのかさっぱりなんやけど)

対して青ピ、実は垣根からのチョコに対してはこれっぽっちも期待していなかったりする。
垣根を好きでないとか、女性として見ていないとかいった理由ではなく、あくまで垣根のプライドの高さ、昨年まで男性として生きていた事を考慮しての思考である。
勿論恋人である垣根からのチョコレートは欲しい。むしろチョコじゃなくていいからほっぺにキス位は欲しいと思ってはいる。
ちなみに昨日の昼間それとなくほっぺちゅーの件は口に出したところ、照れ隠しという名のタコ殴りをされた事を青ピは忘れてはいない。
垣根が青ピにチョコをあげたがっているという大前提に気付けない限り、青ピから垣根にチョコは〜〜が好き、と告げる事はない。
悶々と不毛に悩み続けるばかりである。

垣根「………うみ」ぐだぐだ

青ピ(海?)

そろそろどこぞの萌えキャラのようにふにゃあだのうみゃみゃだの呟いてしまいそうな垣根なのであった。
143 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/10/27(木) 18:59:47.90 ID:nwPOR2oy0


一ヶ月前の一月、学園都市とロシア間の戦争(当スレにおけるご都合主義)が終結し、暗部の構成員で再度戻る事を希望しなかった人間は自動的に表の世界へと戻された。
戻されたというよりは、完全に解放されたと例えるべきか。
垣根はその事を『電話の男』から携帯へとかかってきた事で知ったのだが、未だ青ピにはその事を告げていなかった。
理由は、もう少しだけ此処に、青ピと一緒の場所で暮らしていたかったから。
奨学金も通常通り入ってきているし、口座も今は凍結されていない。
それを知られてしまえば、青ピはきっと自分を…悪い言い方をするならば、追い出すだろうから。
もしかしたらそのまま恋人関係まで消えてしまうかもしれない。垣根はそれが、それこそが一番怖かった。
せっかく自分を認めてくれた人間でも、それはあくまで同情の上に成り立っているからで、離れてしまったら最後、自分の事など忘れてしまうのではないか。
垣根自身の人間関係が希薄なせいで、付き合いが短い人間ばかりだったせいで、永遠を信じる事が出来ない。
善人が他人に備わる善意の存在を信じているように、悪人たる垣根は他人の善意を、長く続く愛情を、信頼することも信用することも出来ない。
故に言えない。嘘をつく。まだ追われているのだと。その位に彼女は、青ピに依存し、恋をしている。



本当の事なんざ、言えるはずがねぇ。
人間ってのはそもそもの本質が駄目な生き物だ。俺は性悪説を信じる。
俺自身、愛されるような人間じゃない、それはわかってる。
何しろ殺人鬼の嘘つきの男女だ、人間としての魅力は毛程も感じない。
そんな俺でも、青ピは好きだと言ってくれた、あの言葉や表情に嘘は無い…と、思う。
だが、好意ってのはたいてい「〜してやった」又は同情が下地になっていることが非常に多い。
ましてや青ピは俺が寝ている間、手当てをしてくれている最中に惚れたんだ、前者も後者も下地である可能性が高い。
となれば、俺が自力で生きていける人間だと知った途端、土台がだいぶ崩れていく。
所謂、恋愛においての「冷める」感覚に陥るのではないかと思うと気が気じゃない。
永遠に隠し通せるとは思わない。でも、まだ少し、もう少しだけ、青ピと一緒に暮らしていたい。
一緒に飯を食って、風呂に入って、寝る。そんな毎日を過ごす事を、もう少しの間だけ許して欲しい。
初めて幸せだと思えたんだ。長い間一緒に居て、初めて幸福を感じられた相手なんだ。

……だから、もう少しだけ。


垣根「ちょっと出かけてくる」

青ピ「気ぃつけてなー」ひらひら

垣根「あぁ」

青ピ(外で見たら本当に男の子やね、未元物質不思議やわぁ)
144 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/10/27(木) 19:00:42.13 ID:nwPOR2oy0
―――とあるショッピングモール@バレンタイン特設コーナー付近待合ベンチ

チョットマッテヨー エヘヘチョコゲットー ナニコレヤスーイ

垣根(…無理だ、とてもじゃないが入れねぇ。何だあの空間。ハートマークとピンク色と香水臭さのオンパレードじゃねぇか)けほっ

ナニアノヒトカッコイー コエカケテミヨッカー エームリダヨーカノジョマチデショ

垣根(テメェらみてぇな香水臭いだけのブスじゃ勃つモンも勃たねぇよ…いや、もってないんだけどな)

一方「クソが、何だって俺が…あン?」ちらっ

垣根「」

一方「………」

垣根「…に、にゃー」へらっ

一方「なンだ猫か…」てくてく

垣根「…」ほっ

一方「ンな訳ねェだろ馬鹿かオマエ」

垣根「」

だらだらとリアルタイムで冷や汗が背中を伝っていくのがわかる。
コイツにもう未元物質は通用しない、ともすれば戦う手立てが少なすぎる。
周囲に居るのは一般人、とてもじゃないが俺を助ける側に回るとは思えない。
そもそもなんだって第一位がこんなファンシーな空間に居やがる、実は女だったんです百合子ちゃんでした(はぁと)みたいな感じかふざけんなコラ。

一方「…なァ」

垣根「…何、だよ」

一方「暇そォに見えるが、暇なのか?」

垣根「? 俺が忙しいかどうか、関係あんのかよ。暗部は解体された、俺もオマエももうまるっきり無関係な人間のはずだ。
それとも何か?此処じゃ一般人の被害が多すぎるから移動して殺りあいましょうって?暗部無関係に、俺が最終信号を過去に狙った、だから今改めてトドメを刺すってか。
どちらにせよふざけてんじゃねぇぞ第一位、殺るならさっさと殺れよ、のんびり世間話する気はないからな」

一方「いや、そォじゃねェ」

垣根「…は?」

一方「オマエが生きてた事に驚いただけだ。別に他意はねェよ。オマエが言う通り、今はもう関係ねェしな」

垣根「………」

一方「オマエに頼みがある」

垣根「あぁ?頼み?俺は危うくテメェに殺されかけるところだったんだぜ?」

一方「自業自得だろォが。…」手招き

垣根「……」耳澄ませ

一方「オマエ、女なンだってな」ぼそ

垣根「」
145 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/10/27(木) 19:01:43.43 ID:nwPOR2oy0

何で、コイツが知っているのか。
まぁ俺を調べまくっていれば(調べた理由はおいといて)ボロも出るだろう、それはわかる。
が、それをわざわざ俺に言うメリットはなんだ?昔ならいざ知らず、今は…大多数に女と思われても、さして弱味にはならないからいいんだが。
駄目だ、ちっともコイツの思考が読めない。敵意はさほど無く殺意も無いとわかった、だとするとこれは嫌がらせの部類なのか?
さて、誤魔化すべきか…だがこの様子だと既に情報自体を知っている様子だ。今更誤魔化しても確実とは思えない。
まぁいい、青ピに何も迷惑がかからないならそれでいいんだ。第一位に何と罵倒されようと知ったことではない。

垣根「仮に俺が女だとして、第一位サマはどうなさるおつもりなんだ?あ?」

一方「まずは友達からでイイ、付き合ってくれ」

垣根「」

新手のギャグか何かか、とっとと消えろと第一位の顔を見たところ、本気と書いてマジだった。
これは誤魔化しておいた方がよかったのかもしれない。
危うく演算切っちまうところだったじゃなえぇかクソボケ。
付き合ってくれって何だ、百歩…いや、万歩譲って失せろが妥当というか普通だろうが。
頭がパンクしそうだ、ただでさえ朝から青ピの為…いや、青ピのせいで慣れない考え事させられたってのに。
等と考えている間に第一位が語りだした、やばい吐きそう。

一方「容姿端麗、第二位だし頭も切れる、未元物質で色々偽装してるンだろうが胸もあンだろ?
いや、仮にまな板と言われるソレでも構わねェよ、俺は。全然問題ねェ。
俺の理想は、俺を負かすよォな女なンだよ。オマエ程俺を追い詰めた女は今までもこれから先も居ねェ。
オマエ程の理想の女もいねェ、とはいえ尻軽じゃあるめェし、友達からでイイ、付き合ってくれ」

垣根「生理的に無理」

一方「……オマエの身体をキズモノにしたことは、一生かけて償う」

垣根「キズモノとか妙な言い方してんじゃねぇよクソッタレ、死ね」

そもそもあれはまともに食らってた場合傷ってレベルじゃねぇだろうが。
切断された肘は青ピの能力ですっかり元通りだし、コイツに償って欲しい事なんて何も無い。
というかむしろもうこれ以上俺の人生に関わらないで欲しいんだが。

一方「頼む」

垣根「無理だって、言ってんだろうが…」じわっ

一方「」きゅん

垣根(もうやだなんなんだよこいつ)

垣根「…目立ちたくは無かったんだが致し方ねぇ」ガタッ

今日はチョコレートを諦めるとして、ひとまず第一位から逃げようと思う。
どうか着いてきませんように、と思いつつ未元物質を展開して飛ぶ。



打ち止め「お…おーい、おおおーい、ってミサカはミサカはぼーっとしているあなたに呼びかけてみる!」

一方「…悪りィ。帰ンぞ」

一方(戦闘中は何とも思ってなかったが、第二位天使みてェだな…涙目可愛かったな、クソ)きゅん

打ち止め(どうしよう、一方通行が変なのってミサカはミサカは至急MNWに助けを求めてみる…!)
146 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/10/27(木) 19:02:16.59 ID:nwPOR2oy0


―――青髪ピアスの部屋

垣根「ただいま」ぐったり

青ピ「お帰りー、何かあったん?」

垣根「いや、久々に外出て疲れただけだ」

帰宅した帝督ちゃんはやたら疲れきっていた。
なんというか、満身創痍というか、気力体力共にゼロというか。
出かけている間に何かあったのか、一度目の質問で答えてくれなかったということは、追究しようとしても無駄やろうと思う。
もしかしたらバレンタインのチョコ買いに…は無いか。無いわ、うん。
まぁ外に出ればピンクとハートが眩しい今日この頃やし、目は疲れたんかもしれへんね。
ココアを作って差し出すと、久々に柔らかい微笑を向けてもらえた。相変わらず綺麗でかわええなぁ…。

垣根「あー…その」ずずー

青ピ「ん?」

垣根「学校って、楽しいのか?」おずおず

青ピ「…少なくとも、研究所よりは楽しいなぁ」うん

垣根「…そうか」ずず

青ピ「…仮にウチの学校に転校する気が起きても、ボクのクラスに来たらあかんからね?」

垣根「転校しねぇよ、そもそも籍しかねぇし、行く気も無い。…何で駄目なんだよ?」

青ピ「色々あるんや」

青ピ(かみやんとか、かみやんとか、かみやんの上条フラグとかな)

垣根「?」








思わず気が逸って告白からいっちまった上あからさまに断られたが、それはまァイイ。
生きているという事を聞いた時も驚いたが、土御門から第二位は女だと知らされた時も驚いた。
男ならなンとも思わねェ(というか思ったらアウトだと考えてきた)が、女なら話は別、直接本人にも言ったが理想だ。

一方「…俺は諦めねェぞ」

例え、オマエに既に好きな男が居るのだとしても。
147 :>>1の視る夢  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/10/27(木) 19:03:03.53 ID:nwPOR2oy0

※上嬢通行


上嬢「あ、あああの一方通行!」

一方「あン?」

上嬢「あ、う、その…ええと…」

一方「さっきからなンなンですかァ?そのだのあのだのォ」

上嬢「その…一方通行、甘い物って、嫌い、か…?」

一方「好きじゃねェ、割と嫌いだ」

上嬢「そっか…」

上嬢(じゃあ、このクッキーは後でインデックスにあげよう…)ぐすっ

一方「その後ろ手に持ってるモンは何だ」

上嬢「え!? いや、別に?」あわわわ


クッキーの袋<グシャリ


上嬢「」

一方「…何かよォ、程よく硬い物が潰れた音が聞こえたンだが」

上嬢「………気のせいじゃないか?」

上嬢(バレンタイン当日に会えるってんで昨日一生懸命作ったんだけどな、不幸だ…絶対割れてるし、甘い物嫌いだっていうし、ちゃんと聞いてから作ればよかった)

一方「気のせいじゃねェよ」

上嬢「……」

一方「寄越せ。他の野郎用なンつったらブン殴ンぞ」

上嬢「え、でも…割れたというか、潰れちゃったし、すごい甘いし」

一方「イイから寄越せ」

上嬢「…」つココアクッキーの入った袋

一方「ン。…美味ェ」もそもそ

上嬢「形悪いし、甘くない、か…?」

一方「甘ェ。他の奴が作ったか既製品ならゲロ甘過ぎて吐いてるトコだ」

上嬢「う…」しょんぼり

一方「オマエが作ったと思えば何でも美味ェっつってンだよ、察しろ鈍感」ツン

上嬢「一方通行…!」ぱあっ

一方「…緊張してスカート握りすぎてたせいか知らねェが、盛大に捲れてンぞ」

上嬢「うわぁあああ!不幸だぁああああ!!」なおしなおし
148 :>>1の視る夢  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/10/27(木) 19:03:53.42 ID:nwPOR2oy0

本日の投下はこれで終了です。…あれほど気をつけていたのに連投してしまった。
恋敵も必要じゃね?ということで第一位様に友情出演していただきました。まだ出ます。
勿論メインは未元ピアス、未元通行は…おやつです。…未元物質製ピアス、攻撃力高そうですね。
閲覧ありがとうございます。
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/10/27(木) 20:16:41.94 ID:xhTUBXi5o
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/27(木) 21:20:33.57 ID:NBoxkZ13o
未元通行・・・ゴクリ

乙!
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2011/10/28(金) 03:32:53.96 ID:uhQKbfLAO


しかし、むぅ……我が儘を言うようになるだが
正直取って付けた感と言うか、無理矢理さが目立つ気がする
未元ピアスのままでも十分だったんジャマイカ?
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/28(金) 06:31:25.34 ID:S1twIKxDO


上嬢通行をもっと書くべきだと思います
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/28(金) 14:28:06.65 ID:iE7FGisZ0
主人公二組というのは中途半端になるから上嬢通行ネタはほどほどにしとくのがベター
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/28(金) 17:16:02.03 ID:cSegs6bP0
一通じゃま。出なくていい
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/28(金) 20:35:26.95 ID:zr4HdgRDO
とにかく>>1の小説が面白いからぶっちゃけカプはなんでもいいっちゃいいはすはす
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/10/29(土) 06:45:19.22 ID:H0FwHl3AO
乙!読んでるよー
何回も読み返してるよ
157 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/10/30(日) 23:44:54.78 ID:yiPBHx3A0

レスありがとうございます。いつ次回投下するか明記し忘れてました…あてになっていませんが。
書き溜めが出来たので投下します。
一方さん急にぽっと出だし整合性無さ過ぎじゃね?と思う方が多かったと思います(>>1も投下後そう思いました)。
が、ていとちゃんの三人称が彼だったり彼女だったりしたように一応理由がありますので、どうか後半ものんびり見ていただけたらと思います。
加えて、上嬢通行はあくまでおまけ会話文に過ぎませんので…メインは未元ピアスです、はい。ので、上嬢通行に関しては書いたり書かなかったりします。あまり力は入れていません。
ご指摘ありがとうございます。

それでは本日も投下させていただきます。
158 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/10/30(日) 23:46:06.77 ID:yiPBHx3A0

青髪ピアスは今日も今日とてクソ真面目に学校へ行った。
日中の(そしてなるべく午前中の)暇な内にチョコについて考えなければならない。
…駄目だ、チョコ売り場を思い浮かべる度に第一位の顔が頭に浮かんできて胸糞悪い。

垣根「…んー」ごろごろ

既製品を買うには、あの人ごみの中割り入らねばなるまい。
…どう考えても、モテない男が自分のチョコ数稼ぎに踏ん張ってバレンタインコーナーの女をかき分けているようにしか見えない。
高級チョコ屋に行っても、コンビニに行って板チョコを買ったにしてもそうとしかとられないだろう。
そう思われるのは俺のプライドが許せないというか、許さない。
……、…やっぱり、女の格好をして行くのがベストなのか?こう、髪も未元物質でそれとなく染めて、俺だって分からない感じで。
それもそれでプライドに傷が付く気がするが、モテずに必死な男が…と思われるよりはマシかもしれない。
まぁ着ていく格好は…仕方あるまい、何処かで調達するか。後はどんなチョコを買うか。
割れチョコで作るか、チョコ系のケーキを買うか、はたまた高級チョコを買ってくるか。
青ピが高級志向の人間なら一番最後の案であっさり決まりなのだが、生憎庶民志向だと思うから、多分一番喜ぶのは最初の案だ。
…そもそも、手作りチョコって何すればいいんだ?溶かして固める…とかじゃないよな、多分。それじゃあまりにもつまらなすぎる。
駄目だ、女から手作りのチョコなんてもらったことないから一般的なイメージがさっぱり湧かねぇ。

垣根「庶民的、平凡、ありがちワンパターン喜ぶチョコ…」むむ

温めて溶かしたチョコを身体に塗って誘惑、とかか?確実にエロい事にもつれ込むんだろうが、青ピの事だから多分逃げるな。
っつかそれじゃバレンタイン自体が卑猥な行事だな。一部のカップルはしてるかもしれないが…クソ、悩む。
もういい、行ってみれば何か浮かぶだろ。…女らしい服装なんざ覚えて無いんだが…売り場に行けば何とかなる、か?

…第一位に会いませんように。


そうして垣根帝督は、魔のショッピングモールへと黒髪装備で出かけていったのであった。
159 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/10/30(日) 23:46:36.95 ID:yiPBHx3A0


―――とある高校の教室

青ピ(帝督ちゃん、今何やっとるんかなー)ぼんやり

土御門「青ピちゃーん、前は見えてますかにゃー?昼休みですぜい?」ひらひら

青ピ「」はっ

青ピ「ぼーっとしとったわ、寝不足かもしれへん」ははは

上条「さしずめ、またゲームでもしてたんだろ?」

青ピ「そんなとこやね」

青ピ(彼女の事考えてましたとか言えへんわ…)

土御門「………」

土御門(このまま一方通行の奴が第二位を青ピから寝盗ってくれたら安心なんだがな。悪く思うなよ青ピ、お前の為なんだ。お前が第二位と結ばれて幸せだとは、どうにも俺には思えない)

ふとした悪意というものは、ほのぼのとした日常の中へと馴染み紛れ込むものである。
それ故、悪意や敵意といったマイナス感情に、『善人』は気付きにくい。
生憎そういったものに、青髪ピアスという少年は決して聡くない。
あからさまに自らに向けられた敵意や悪意といったものはすぐに気がつくものだが、自分の周囲へと向けられた悪意に関しては、普通なかなか気付けないものである。
むしろ気付かれたら気付かれたで、土御門は青髪ピアスを友人としてだけでなく、陰の部分を持つ不穏分子として見なければならないのだが。

早く帰りたいわー、とぼやくでもなく思いながら青ピはふと窓の外へと視線をやり、たそがれた。
少し前に電話(相手はわからない)を彼女が誰かとしてから、それ以来彼女が何かを隠している気がする。
何を隠しているのかさっぱりと見当つかないものの、彼女が自分から話さないということはそれなりに重い話なのだろう、と静観することにしている。
彼女が大切だからこそ、無闇に土足で心の中へと踏み込む事はしない。自らもかつて、そんな遠慮の無い土足の侵入者に傷つけられたからだ。
自分で自分を治療する――能力の芽生えは、いじめに遭ってからかもしれないな、とふと考える。
誰も守ってなどくれないのなら、自分で自分を守ればいい。でも他人を傷つける事には抵抗があったから、反抗せず自分で怪我の手当てを毎日のようにしていた。
言い返す気力も失せて、そのまま小学校を卒業するまで、通わされた研究所から隠れる為能力を使わなくなるまで、絶え間なく能力を使用していたように思う。
出る杭は打たれるし、劣る者は虐げられる。そんな世の中の仕組みを知って以来、自分は人に嫌われないよう、明るく生きた。
いじめられていた過去を隠すように、親しい友人にさえ本名を名乗らなくなった。何も、知られたくなかった。
特別好かれず、特別嫌われることもない。それなりに友人が居て、クラスに溶け込めていればそれでいい。
進歩を望めぬ己など、大切な人間が出来る事もなく死んでいくのだろうな、と、彼女を好きになるまでは、思っていた。
一目ぼれをして、今は性格や声までも好きになって、彼女を特別に、大切に思った、今も思っている。
今までどんな人が泣きそうな顔をしても、少しばかり可哀相にと思うだけの人間だったというのに、今は彼女が泣くか笑うかで自分は幸せか不幸かが決まる。
こんなにも人を好きになる事は、これまでなかった、これから先も彼女に対して以外無いだろう。
何があっても、彼女を離したくない、離れたくない。
いつしかそんな執着が自分の中で生まれて、そんな感情に自分自身とまどってはいる。
もし仮に、自分から彼女を奪い去ろうとする人間が居たならば理屈抜きで殺してやりたいと思う程の、燻る激情。

青ピ「…恋は罪悪です、かー」ぼんやり

土御門「夏目漱石の『こころ』ですかにゃー?」

青ピ「そうそう。ご名答やね」



―――恋は、罪悪だ。
160 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/10/30(日) 23:47:15.10 ID:yiPBHx3A0

店員に勧められるまま適当に試着していたら、今まで意識してこなかった『垣根帝督』という人間が、能力によって手を加えなければ『女』だという事を再確認した。
黒髪にしたし、未元物質で多少髪を伸ばした(背中位まで)状態にしたので、青ピ位しか俺が垣根帝督という事は分からないだろう。
奇しくも、女らしい装いに身を包んだ俺の姿は、見目だけは麗しかった俺の母親(あの女)に似ていた。
不快感に歯噛みしたところで、この前パン屋の制服を着た時の青ピの表情が頭に浮かんで溜飲が下がった。
そうだ、今は別に女らしさを強制されてる訳じゃない。これは俺が自分の意思で行動を決定しているに過ぎない。

店員「如何なさいますか?」

垣根「このまま買うんで、タグ取ってもらっていいですか?」にこっ

店員「はい、失礼しまーす」ドキドキ

今頃青ピは真面目に授業受けてんのか、はたまたぐうたら寝てるのか。
帰ってこの(胸元リボン付き清楚系ワンピース)姿を見せたら、またこの前と同じように褒めるだろうか。
別に褒めて欲しくて着る訳じゃなく、あくまでバレンタインコーナーへの入り易さの為なんだが、それはそれとして。
精算を終え、来るまでに着ていた青ピの服(勝手に借りた)を店員から貰った紙袋に押し込んで外に出ると、鬱陶しい位の陽の光が眩しすぎて、思わず目を細めた。
能力をそれとなく使えば日光は防げるのだが、たまには紫外線を浴びるのも悪くはあるまいと思いつつ歩く。
すれ違う度に女だけでなく男まで俺を見ている気がするのだが…気のせいだろう、きっと。というか俺は男にモテたくない。



―――とあるショッピングモール、バレンタイン特設コーナー

垣根(んー…)きょろきょろ

右を見てもチョコレート。ギャルっぽい女。
左を見てもチョコレート。清楚っぽい女。
安く価格設定されたチョコが積まれるカラフルな山。
宝石か何かのように、一粒ウン百円の高級チョコレートのディスプレイ。
チョコレートケーキ、チョコの匂いの香水、チョコレートフォンデュ用のチョコ、大量の板チョコ。
無駄なPOPは省かれている分、逆に『買え』オーラが半端無く感じられた。
ここまで選択肢があると逆に困ってしまうものだが、俺以外のコーナーに居る女は大体買うものを決めているらしく、次々とチョコを手にとっては楽しそうに会計しに行く。
甘ったるいチョコレートの香りと、女共の臭い香水が入り混じって吐きそうな臭いがする、マジできつい。
手作りか既製品か、食べ物かそうじゃないか位は決めておくべきだったか、と思いつつコーナーを歩く。
かなり広いスペースのはずなのだが、異常な量のチョコにスペースがとても狭いかのように感じる。
とりあえず手作りにしよう、一刻も早く帰りたいというか、このコーナーから出て行きたい。
手作りもオススメとばかりにレシピ(例えばフォンダンショコラ)が色々な場所に設置された箱に入っている。無料らしい。



垣根「…ん?」ぴこーん

…これなら青ピ、喜んでくれるかな。
161 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/10/30(日) 23:48:13.50 ID:yiPBHx3A0




俺には、初恋の人が居た。というか、今も居る。最近再び生存を知ったと言うのが一番正しいか。
出会った場所は病院の中庭で、ソイツ…いや、その子は病院の中庭で暇そうに空を仰いでいた。
まだ、俺が感情を人に向けてはいけないと思う、“あの事件”の起こる数年前。
まだ、苗字が二文字、名前が三文字の…周囲よりスキルが少し上なだけの、平凡な子供だった頃だ。
能力の弊害で髪の色が白、瞳の色が赤くなったのを能力と関係無い病気だと思い、診察に行ったンだと思った。
無論能力によるものだ、簡単に説明されて帰された訳だが。
どォせ帰ってもやる事は無いし遊ぶ友人も居ない、少し中庭で時間を潰そう、と木陰に向かう途中の事だ。
俺とほとンど同い年に見えたその子は、中庭で鬼ごっこをしている子供達を見ながら、一人木陰で猫を撫でていた。
何処からか入り込ンだ野良猫なのか、はたまた彼女の友人が飼っていたのかはわからない。
脚を骨折しているのか、何かの病気なのか、車椅子に腰掛け、木陰でぼンやりと猫を撫でる憂鬱そうな彼女の横顔を見て、ドキドキとした。
同年代・同クラスの女にも何人か顔立ちのイイ女は居たのだが、その子は特別綺麗で、猫に向かって微笑むのを見た瞬間に心臓が止まったような錯覚を覚える程だった。

一方「あ、ええと…」

垣根「…? な、に?」

一方「あるけない、のか?」

今にして思えば、車椅子に乗っている人間に対してどれだけ失礼な発言だ、と思わなくもない。
ただその時の俺はその子に話しかけるという最優先課題だけで脳内が埋め尽くされていたから、あまり考えずに話していたように思う。
俺の発言を聞くなり、口元に手を当ててくすくすと可愛らしく笑った彼女は、緩く首を横に振って、彼女の目の前にあるベンチに座るよう言った。
断る理由も無く座ると、猫の顎を擽りながら、その子は微笑ンでいた。

垣根「べつにいまあるけないだけで、すうかげつしたらあるける」

一方「こっせつしたのか?」

垣根「じっけんでけがしただけだ。こっせつじゃない」

一方「にゅういんしてるの?」

垣根「うん」

ふにゃあ、と呑気な鳴き声を上げ、彼女の膝から飛び降りた猫は何処かへと走っていってしまった。
彼女はそれを追うでもなくつまらなそうに見送ったので、あれはやはり野良猫だったのだろうと思う。
長い黒髪は背中を少し越えた位の長さで、入院服の色は青だった。
会話が途切れる事を恐れた俺は、どォでもイイ事を口から出していた気がする。
彼女も人と話すのは苦手なのか、相槌がほとンどだったが。

垣根「かみ、まっしろだな」

一方「……、…」

興味深そうな表情で彼女が俺の髪へ手を伸ばし、思わず俺はその手を拒絶した。
クラスメートじゃあるまいし、殴られる訳ないだろうに、怖かったからだ。
優しく触ろうとしたらしい彼女の手は優しく弾かれ、不可解そうな表情を浮かべさせてしまった。
仲良くなれる気がしたのだが駄目か、と幼いながらに自嘲したところで、その子が明るい表情で俺を見つめた。

垣根「なぁ、のうりょくがあればぶたれねぇの?はじきかえせんの?」

一方「え、あぁ、うん…」

垣根「…いいなぁ」

その表情は、無能力者が俺を見るのとも、普遍的な能力しか持たない能力者が羨ましがるものとも違った。
かといって研究者のように気持ち悪さを帯びたものではなく、只純粋に、『反射』を羨ましがる表情だった。
彼女は、他人に触られるのが嫌いなのかもしれないな、と思った。
会話をすればする程、彼女と俺は似通っていると感じた。
162 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/10/30(日) 23:49:04.01 ID:yiPBHx3A0
しばらく考えて、悪戯っぽい笑みを零したその子は、俺が反射に入れているものを答えるよう問いかけてきた。
最低限の重力、酸素、光…その他諸々生きていくのに必要無いものは全て反射出来るのだと答えた覚えはある。
彼女はよくよく考えた後、唐突に酸素を変化させると言った。
一体何をするのか、と首を傾げた所、摂取していた酸素が甘く変な匂いに変わって噎せた。
悪戯が成功したように彼女は楽しそうに笑って、自分もすごいだろうとはしゃいでみせたのが、可愛らしくてたまらなかった。
次の瞬間には酸素は元の状態に戻り噎せる事も無かったのだが、どういう原理で、能力で、酸素に干渉したのかが気になって、しかし彼女は教えてはくれなかった。

一方「けほっ、けほ…おれのはんしゃがきいてない…?」

垣根「ふふっ、はは、あはははは!」

一方「すー…はー…いまの、きみののうりょくなのか?」

垣根「うん。びっくりした?」

一方「した!」

愉快そうに笑った彼女は、秘密あり気にそっと俺の唇に指を当てて、「何の能力かは教えてあげない」と魅力的な笑みを浮かべて誤魔化した。
俺は、その子が自分に干渉出来たという事実にすっかり心を奪われて、彼女を好きになっていた。
クラスメートが殴ろうとするのと違って、その『干渉』には一切の悪意が無かったからかもしれない。
俺の能力の気味悪さ(強さ)を知って尚、彼女は俺に対して怯えず揺るがず、可愛らしく微笑ンでいた。

垣根「…そういえば、なまえは?」

一方「なまえ?」

垣根「なーまーえ。おまえのなまえは?」

一方「×××」

垣根「×××だな、わかった。おれは…んと…ていとく」

男みたいな名前だな、と思ったものの、世の中には女みてェな名前の男も居る位だし、と思い深くは突っ込まなかった。
互いに自己紹介をしたところで病院のチャイムらしきものが鳴り響き、彼女は車椅子の固定ロックを外して俺を見た。
俺は何と言葉を発すればいいか困っていたのだが、彼女はしばし考えあぐねてから、「304号室」とだけ告げた。
彼女の病室番号なのだと付け加えて、遠ざかっていく車椅子を見つつ、俺は明日も来ようと思った。
次は、あの子のお見舞いに。
163 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/10/30(日) 23:50:05.06 ID:yiPBHx3A0

次の日、朝すぐに(とはいっても病院側が見舞いを許可する時間になってから、だが)病院に行った。
彼女が口にした304号室へ向かうと、車椅子ではなく、身体を支える杖(俺が今現在、能力使用モード外で普段使っているのに似ている)で身体を支えた彼女が俺を出迎えた。
エレベーターから降りた俺の姿を目にするなり、嬉しそうに口元を弛ませた彼女は杖をつきながらのろのろと俺に近寄り、病室で話をしようと誘った。
やはり断る理由も無く連れて行かれた病室は個室で、ベッド周りの棚にはお菓子が積まれていた。
キャラメル、チョコレート、マシュマロ、サブレ、グミ…どれもこれも甘そうなお菓子ばかりで、当時の俺が持ってきたクッキー等山の一部に消えてしまいそうな程。
沢山見舞い客が来るのか、と問いかけると彼女は寂しそうに首を横に振って、俺(×××)以外は一人しか来ないとぼやいた。
その一人がこンなに大量のお菓子を手土産に持ってくるのか、と思うと、子供ながらに嫉妬の念を覚えた。
まるで、彼女の『恋人』のようだと。保護者だの教師だのという発想が浮かばない俺の思考は大概残念だ、と平和ボケした今になって思う。

一方「ていとく、おやがみまいにくるの?」

垣根「…おやなんていない」

一方「…じゃあ、だれがくるんだ?」

垣根「なまえはしらない。けんきゅうしゃとおれとあいだにいて、はなしあいするひと」

一方「……うーん」

垣根「おれもよくわかってない」

親について問いかけた瞬間、整った彼女の顔が憎憎しげに歪ンでしまった事に焦って問いかけ続け、結局ソイツが誰なのかは分からなかった。
彼女にとってその男はそれなりに大切な人らしい。口ぶりで悟った。
勝手に片思いしておきながら、勝手にその男に嫉妬しつつ、彼女との会話を楽しンだ。
昨日の猫の事、いつ退院するのかという事、好きな食べ物について。
時折途切れながらも会話をして、楽しそうに彼女が笑う度、胸が高鳴った。

一方「ていとくは、すきなひといる、のか?」

垣根「ううん、いないし、かんがえたことない」

一方「じゃ、じゃあ…その、しょうらい、おれのおよめさんになってください!」

垣根「…およめさん?」

一方「だ、め?」

垣根「…おむこさんなら、いい、ぜ?」

自分が女扱いされるのが嫌らしい男口調の彼女はそう言って、結果俺が折れた。
当時から俺には友人が居なかったし、その年代の女の話し方なンて分からなかったし、そういう人も居るという認識でしかなかった。
……もしかしたら、彼女にはホルモンバランスの崩れ始めた俺の容姿が女に見えたのかもしれない。

俺が持ってきた、甘そうなクッキーを幸せそうに頬張って、彼女は上機嫌に俺を手招きした。
警戒する必要を感じなかった俺は珍しく『反射』を解き、内緒話か何かかと耳を澄ませ、顔を近づけた。
ふに、と柔らかい感触を頬に感じて、息が詰まった。
次いで何をされたのか理解して、今までに無い程顔を赤くして動揺したのを覚えている。
その様子につられて彼女も顔を赤くしてそっぽを向くと、しばしの間病室が静寂に満たされた。

垣根「…れい」

一方「…?」

垣根「くっきーの、おれいだからっ」

俺の頬へ口付けた理由を述べているらしい彼女はそう言い切ったかと思うとクッキーの空袋をゴミ箱に押し込ンで、毛布を被って動かなくなった。
どンな理由であれ好意を行動で表されたのは初めてで、緊張と興奮とで死にそうな気分になりつつ、ひとまず礼の言葉を述べた。
164 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/10/30(日) 23:50:38.52 ID:yiPBHx3A0
それからまた数時間して互いに冷静さを取り戻した上で会話し、夕方になったところで、手を振り合って別れた。
次の日彼女の病室に行くと其処はもう空っぽで、転院したのだと看護婦から聞いた。
どこの病院に行ったのかと聞いてみても個人情報故に看護婦も答えられるはずも無く、そのまま彼女と会う事は無かった。

優しくて、可愛くて、俺に初めて『好意』をくれた、ていとく(帝督)。

強い喪失感に苛まれて以来、俺は恋をしていない。
その後の『あの事件』で他人に感情を向けるのをやめ、打ち止めや番外個体と過ごす現在も、彼女以外に恋愛感情を向けた事も無ければ、向けようとも思わない。
垣根帝督が、第二位があの子だとは思わなかった。確かにていとくと読む名前はそうそうあるモンじゃねェし、納得はしたのだが。
何故土御門が俺に第二位が生存していることと女だという事を教えたのかは解らない。だが、この情報から垣根が俺の恋の相手だと導くとは思っていないだろう。
まァ、そンなことはどうでもイイ。些細な事だ。
彼女が生きていた、今も俺は彼女を好きでいる、俺にはそれだけが分かっていればイイ。

一方「…結婚の口約束、俺は忘れてねェぞ」

他人に思いを再度向けるようになった今、俺はもう彼女への愛情を無かった事には出来ねェ。
せめて最後にキチンと別れの挨拶が出来ていれば、ここまで焦がれる事も無かっただろう。
ようやく会えたせいで先日は暴走気味に話してしまったが、今後は徐々に話していけば問題無いだろう、と思う。
例え彼女が誰かを好きでも構わねェ、俺にしか彼女は幸せに出来ねェ、俺以外に彼女を完全に理解する事なンざ不可能だ。
妹達への贖罪の気持ちは今でもある、だが、この感情はそれとはまた別物だ。
もし垣根が彼女だともっと早く気付いていたなら、あの日殺そうとしなかったかもしれない。…それは流石に無ェか。状況が状況だったしな。
初恋は叶わないというらしいが、それは途中で諦めた奴が共感出来る名言でしかない。
“叶わないから”で諦めるンじゃねェ、叶うまで諦めなければイイだけの話だ。

愛してるンだ。

歪ンだ考えに基づく気持ちの悪い恋だという自覚はある。

だが、オマエを愛してる。



―――恋は、罪悪だ。
165 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/10/30(日) 23:51:36.27 ID:yiPBHx3A0

思い返すと牛乳は冷蔵庫に溢れかえっていたので、とりあえず板チョコ二枚と粉ゼラチン(5g×4だったか)を買った。
豆乳で作ろうかと思わないでもなかったが、別に青ピは超健康志向でもなければ女でもないし、カロリーにこだわる必要も無いだろう。
ついでに買い置き(おやつ的な意味で)のチ●ルチョコも数個買った。いちごミルク味と、オレンジジュース、変わり種のイカ墨柿の種味。
三番目は地雷のような気がするので、家に帰ったら青ピに半分食わせて、様子を見てから食おうと思う。

垣根「…それにしても、平和だな」なでなで

野良猫「にゃー」ごろごろ

件のコーナーを歩き回り、無駄に疲れた俺は、青ピの家=自宅(?)近くの公園に来ている。
流石に昼間の時間帯だからか、幼い子供は見当たらない。もし居たとしたら不良だ。
思わずぼやいてしまう位に平和過ぎる。ドンパチのドの字も見当たらない。
板チョコは多少溶けても問題無いし、先程唐突に寄ってきたばかりか俺の膝に飛び乗って動かない猫を愛でて数時間休んでから帰ろうと思う。


こうして猫と戯れつつ外でぼんやりしていると、昔の事を思い出す。
とはいってもその記憶は断片的で、はっきりとは思い出せないんだが。
白い髪の女(?)、車椅子の俺。病院の中庭と、お菓子まみれの病室。
俺に話しかけてきたそいつはどことなくビクビクとしていて、それでいて面白かった。
たった二日間の出来事だったのに、その当時の思い出はそれしか思い出す事が出来ない。

『じゃ、じゃあ…その、しょうらい、おれのおよめさんになってください!』

白い肌を羞恥で赤く染めながら、テンパりつつ必死に俺に告白してきたそいつの顔を、うまく思い出す事が出来ない。
名前も聞いて、教えて、呼び合ったはずなのに、思い出せなくて。覚えているのは、名前が三文字だったということだけ。
初めて出来た友達…口約束の婚約者か?あいつの事は好きだった。たった二日間だけなのに、全てを分かり合えるような気はする程に打ち解けた。
その次の日もきっと会えると信じていたのに、その日中に転院が決まって、慌しい『男』に連れられて別の病院に転院させられたのだったか。
結局、そいつとは最後のお別れも出来ないままに、二度と会う事は叶わなくなってしまった。
思えばあれは、俺の初恋だったのかもしれない。
中性的な女だった。もしかしたら男だったかもしれないが、はっきりと思い出せないが故にそれは永遠に不明のままだ。

野良猫「ふにゃー」ごろごろ

垣根「あっさり服従のポーズとってんじゃねぇよ」うりうり

野良猫「にゃっ、にゃぁ」ごろーん

垣根「呑気だな、オマエ…俺もか」なでなで

野良猫「にゃぁ」

程よく空は曇っていて、風は寒くもなく熱風でもなく、涼しいいい風だ。
このまま一時間位昼寝しちまおうかな、なんて思った所で、公園に誰か入ってきたのがわかった。
こんな時間に公園に居るだなんて悪いやつだな、と自分を棚に上げて思った瞬間、白い髪が見えて目が覚めた。
まさか俺(垣根帝督)とは流石の第一位の観察眼でも見抜けないだろう、と思っていると、近づいてきた第一位は、信じられないものを見たような目で俺と視線を合わせた。



一方「……、黒くて長い髪、猫。昔のままじゃねェか、帝督」

どうして、おれのむかしをしってるの?
166 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/10/30(日) 23:52:20.69 ID:yiPBHx3A0

本日の投下はこれで終了です。
修羅場っていいよな、と思いつつ日々を生き始める>>1です。
トンデモ展開に過去話付ければいいと思うなよ、と感じた方もいらっしゃるかもしれません。
…ええと、大幅なキャラ崩壊申し訳ないです。
ていとちゃんが女の子口調になったり本来の口調だったりするのはランダムです。
閲覧ありがとうございます。…次の投下…書き溜めが出来たら、早めに。はい。
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/10/31(月) 00:36:59.36 ID:GzXsRB3bo
乙ううううううううううううううううううううううううううううううん
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/31(月) 19:06:27.21 ID:R8pTABTTo
乙!
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/11/05(土) 20:12:05.06 ID:/3ba0hxw0
乙!!
170 :>>1 ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/11/07(月) 14:27:23.31 ID:+U9ElHrAO
本編が書けない…進まぬ筆ェ…。
久しぶりに小ネタを投下。
171 :やきもち ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/11/07(月) 14:28:34.82 ID:+U9ElHrAO

■■「青髪くん。放課後。時間はある?」

青ピ「姫神ちゃんやないか。ボクに何か用でもあるん?」

■■「お世話になっている人に。プレゼントを贈りたいのだけど。良かったら一緒に買い物して欲しい」

青ピ「わかった、とことん付き合うで」へら

■■「ありがとう」



■■「最近。青髪くん。表情が明るいね。何かいい事でも。あった?」てくてく

青ピ「まぁ、うん、色々あったわぁ」てくてく

青ピ《帝督ちゃんとか、帝督ちゃんとか、帝督ちゃんとか》


垣根「」←散歩してた

■■ピアス「「」」いちゃいちゃ←垣根ビジョン

垣根《…青ピ?…見間違いじゃ、ねぇか》

垣根《やっぱり俺なんかより、ああいう長い黒髪の清楚そうな女のがタイプなのか》

垣根《……、…帰ろ》
172 :やきもち ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/11/07(月) 14:29:40.85 ID:+U9ElHrAO
――青髪ピアスの部屋

青ピ《姫神ちゃんのプレゼントの贈り主、あれで喜んでくれたやろか》

青ピ「ただいまー」ガチャ

部屋→ボロボロ

窓ガラス→割れてる

青ピ「」

垣根「………」

青ピ「……えー、と」

青ピ《侵入者いう感じやないし、帝督ちゃんがやったんやろうなぁ》

垣根《青ピが悪いんだ。俺の事を好きって言った癖にあんな地味そうな女といちゃいちゃいちゃいちゃ呑気にデートしやがって、ああクソどうしてやろうか、やっぱりあの女も殺っとくべきか、バレないようにすりゃどうすりゃいい、能力使って分子レベルまで叩き潰せば問題無いか?どうせ俺は地位的に逮捕されねぇ、青ピにバレないように気をつけて明日辺りサクっと殺っちまえば》

青ピ「帝督ちゃん」

垣根「」びくっ

青ピ「…怪我、無い?」へら

垣根「……、…ん」

青ピ「掃除、手伝ってもらってええかな」

垣根《…何だよ、怒らないのかよ。…部屋に八つ当たりするんじゃなかった》
173 :やきもち ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/11/07(月) 14:31:12.56 ID:+U9ElHrAO



青ピ「掃除終わり、と」ふー

垣根「…」ちょこん

青ピ《……ベッドの隅っこで丸まっとる、何や悪さした犬猫みたいやね》そろそろ

垣根「……悪かった。でも、オマエも悪い」つんっ

青ピ「え、ボク?」きょとん

垣根「オマエが地味女といちゃいちゃしてっから…」

青ピ「……あ、姫神ちゃか、納得したわぁ」しみじみ

垣根「………」

青ピ「姫神ちゃんが恩人にプレゼント贈りたい言うから、一緒に買い物してただけやで?」

垣根「………」

青ピ「ヤキモチ、妬いてくれたん?」

垣根「別にそんなんじゃねぇよ、バーカ」

青ピ「ボクが好きなんは帝督ちゃんだけやでー」ぎゅう

垣根「……」ちらっ

青ピ「かわええなぁ。ちゅーしてええ?」ドキドキ

垣根「却下」ふんっ

青ピ「残念…」しょんぼり

垣根「……」ちゅ

青ピ「」

垣根「この俺をムカつかせたんだ、オマエからのキスなんか受け入れてやるかよ、死ね青毛」

青ピ「アホ毛みたいな言い方せんといてぇな…」デレデレ

垣根「にやにやすんな」

青ピ「彼女からキスしてもらったんやもん、にやにや止まらへんよ」

垣根「…バカ。…んな事言われたら、許しちまうだろうが」

青ピ「今何か言うたー?」

垣根「言ってねぇ飯作れ死ね」

青ピ「…きついなぁ。ええけどね」うんうん


…なんて事が本編の少し前にあったようです。
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(東京都) [sage]:2011/11/07(月) 18:51:17.27 ID:oT48ZvA/o


175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/08(火) 14:03:54.88 ID:kwNOGY6SO
読み進める目が止まらない
なにこれおもしろい
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/15(火) 19:44:40.17 ID:kVFYUpato
まだかなぁ、
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/24(木) 00:22:30.35 ID:ouLMz7nDO
まだかねぇ
178 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/12/17(土) 17:05:32.90 ID:Csm+wa2d0

スランプ…うぐぐ…
ようやく書けたので投下します。もう誰も居ないかもしれませんが…

もうすぐこの物語は終焉を迎えます。



それでは投下。
179 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/12/17(土) 17:06:37.65 ID:Csm+wa2d0
昔のままだと俺を評した第一位は小さく、無理に作ったような笑みを浮かべると隣はいいかと聞いてきた。
その問いかけの意味を理解するのに十数秒程時間を要してから、頷く事で答える。
隣に腰掛けた第一位を視界に入れるのが何故だか怖くて、曇り空を見上げた。
そよ風にビニール袋がかさかさと音を立て、しばらく無言のまま時間を過ごした。
先に沈黙を破ったのは、俺の方。疑問を解消するために。

垣根「…なぁ」

一方「ン…?」

思いがけず掠れた声が出て、唾を飲む。何に緊張しているのか、自分でも分からない。

垣根「…何で、俺が俺だって分かった」

一方「他の奴には分かンねェとしても、俺はオマエを見違える事はねェ。もう二度と」

カラカラに渇いた喉から搾り出したような低い声に視線をやると、赤い瞳と視線がかちり合う。
前回(猫の鳴き声で誤魔化しに失敗した時でなく、『あの日』)と同じ位の真剣な表情にたじろぐ。
せめて身体は引くまいと意志で見つめ続けていると、第一位は静かに目を伏せた。
助かった、等と思ってしまいながらどう言葉を返すべきか考えあぐねていると、ぽつり、と男が呟いた。

一方「クッキーの礼、覚えてるか」

よくよく意味を噛み砕いてみれば呟きではなく問いかけであるその言葉に、先ほど上手く言葉に出来なかった疑問が見事に解消された。
俺がガキの頃長い黒髪であったこと、膝上の猫、クッキーの礼にとした口付けを知っているのは、憶えているのは、『×××』だけだ。
あれに関しては調べようがない。俺が『垣根帝督』に成る前の話だ、調べられる訳がない。

垣根「…覚え、てる」

一方「悪かった」

垣根「は?」

一方「帝督を殺した…いや、正確には死ぬまで追い詰めた事か」

垣根「…別に恨んじゃいねぇよ。弱さは悪だ。俺はテメェに負けた、それだけの事だ」

何をいきなり謝りだしたのかいまいち理解出来なかったが、要するに俺が全て打ち解けた(あの二日間だけ)女だったから、申し訳なくなったらしい。
善人そのものな発言に思わず噴き出しそうになりながら言葉を紡いだものの、何か違和感を感じる。
謝罪の仕方に、謝意以外にも何か感情がこもっている気がした。
不意に第一位が動き、俺のパーソナルスペースまで割り入ってくる。
若干の苛立ちと不可解な態度に流石に身体を引けば、白い毒手が伸びて俺の頬に触れた。少しだけ、冷たい。
体温の低い手指はそのまま確かめるように俺の頬をそっと撫でて、顔が近づいてくる。
口付けすら可能なその距離に嫌悪感よりも先に不安が頭を過ぎっている事に自分自身違和感を感じている。
そうして蛇に睨まれた蛙のごとくしばらく惨めに固まっていた事に気が付いて、完全に弱気な自分を叱咤しながら睨む。
俺がこいつに動揺する必要性はどこにもない。うろたえるな。

垣根「な、にしやがる…」

一方「許してくれ」

垣根「何の話…さっきの話ならマジでもう何とも思っていやしねぇよ」

一方「いや、違う。本当は帝督に逢ったらすぐに言わねェとならなかったンだが、聞いてくれ」

垣根「………」




一方「オマエが好きなンだ、昔から今まで、これからもずっと」

180 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/12/17(土) 17:07:29.19 ID:Csm+wa2d0

―――とある高校の教室


上条「今日はタイムセール間に合いそうだっ」がらがらばたんっ

青ピ「カミやんは忙しいなー」

土御門「青ピは急がなくていいんですたい?」

青ピ「今日はまだええかな」

土御門「なら今日は久々にゲーセン行こうぜい!」

青ピ「カミやんには悪い気もするけどええよ」

土御門「カミやんは今頃フラグ立ててるから放っておいても無問題だにゃー」

土御門の軽口に青髪ピアスが笑って、連れ添って学校から出る。
一人先に帰ってしまったことを除けば、デルタフォースのいつもの日常風景だ。
例え腹に一物抱えているとしても、表立って目立たなければ善良な人間にしか見えない。
突き詰めて代弁するのならば、土御門元春という少年は青髪ピアスに幸福になってもらいたいのだ。
それは青髪ピアスが善人であり、一般人であり、友人だから、親友だからである。
敵として対峙した事がある人間を、そう簡単に信用出来るだろうか?答えは大概の人間がノーだ。この世界は少年漫画のように明るく優しくはない。
そしてそんな明らかに信用のおけない人間が、自分の親友の近くに居る。嬉しいだろうか、安心だろうか?これもまた答えはノーである。
土御門は知っている。長く暗部に所属していた人間は、所属している人間は、どうやったって何かを犠牲にする癖を捨てられない。
自分の命を、もしくはそれと同等のものを守る為なら、何だって犠牲に出来る。無論、自分もそうだからだ。
一般人なら、そうあるいはあの『ヒーロー』ならば、そうではないのかもしれない。
偽善にしろ本当の善にしろ、誰も何も犠牲にせず全てを救い出せるのかもしれない。まずは何も切り捨てないよう考えるだろう。
だが、自分の様にメリットデメリット、打算、どちらを犠牲にすればより良い結果かを考慮して生きてきた人間は、そうは考えられない。
人間としてこの考え方は間違っている、とはいえ人の心はそこまで清くない、自分が助かる為なら人を橋から簡単に突き落とせる。
だからこそ、土御門は怖がっている。青髪ピアスが、垣根帝督という一人の人間によって身も心もボロボロにされてしまうのではないかと。
不安ならその大元の種を消せばいい、潰せばいい。だからこそ、土御門は一方通行を犠牲にした。
その結果、一方通行と垣根帝督両名が傷ついてしまっても構わないのだ。何故なら彼らは『悪』であり、ただ少し関わりを持っただけの、『友人』ではない人間なのだから。

土御門(本当に汚いのは俺みたいな奴なんだろうよ。それでも構わない、決めた事、済んだ事だ)

青ピ(バレンタインに何ももらえなくてもホワイトデーに何かあげるべきやね、うん)

青ピ「やっぱりボク帰るわ、用事思いだしてん」

土御門「残念だにゃー…また今度にゃー」

青ピ「またなー」

181 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/12/17(土) 17:10:00.74 ID:hSIKwv4f0







口付けと共に告げられた言葉に、一瞬だけ心臓が止まってしまった気がした。
いつもの様に頭が働かない、思考がうまくいかない。

垣根「………昔、って…あの日から、ずっと…か?」

しばらくの間を置いてようやく口から出た言葉は拒絶よりも先に確認だった。
嬉しいという訳ではない、傷ついた訳でもない。
何も感じないという事が恐ろしかった。俺は青ピが好きなはずなのに。

一方「あァ、ずっとだ」

第一位の顔に、無邪気な『×××』の笑顔が重なって見える。
息を吸い込んで、脳に酸素を行き渡らせて、思考を纏めた。

垣根「俺は、オマエを好きにはなれない」

一方「……」

垣根「俺には好きな奴が居るから、オマエを好きになる事は出来ない」

一方「そいつが居なかったら、なってたと思うか?」

垣根「…あるいは、なってたのかもな。だが、ソイツが居なかった場合なんて考えた事こともねぇよ」

物理的にも精神的にも、あの場所で青ピが俺を助けてくれなかったら、守ってくれなかったなら、一緒に居てくれなかったなら、『俺』は此処に居ない。
もし仮に青ピじゃない、例えば研究者が俺を拾ったとしたら精神的に死んでいたし、誰も助けなければ物理的に死んでいた。
今こうして呼吸していられるのは、両腕があるのは、まともにものを考えられるのは、全て青ピのお陰だから。
感謝の言葉として口に出した事はあまり無いが、数え切れない程に青ピから幸せとやらを貰った。
人殺しの兵器として一生を終えてしまっていたかもしれない俺を人間にしてくれたのは青ピだ。
もうこれ以上何も要らない、側に居ることが許されるならと嘘をつき続けているくらい、好きだ。
感謝してるだけじゃない、俺は心から青ピの事が好きなんだ。皮肉にも、改めてきちんと気付いたのは今さっきなのだが。

一方「…そいつの傍が、しあわせなのか?」

垣根「…ん」

垣根「俺と一緒に居る事で、ソイツが不幸になってしまっても、一緒にいたい」

一方「そォ、か」

垣根「…でも、」

一方「…?」

垣根「俺みたいな奴を好きになってくれて、ありがとう」


泣き出しそうな赤い瞳に、同じく泣きそうな顔をした俺の顔が映っている。
悲しそうにも嬉しそうにも辛そうにも見えるその表情を浮かべる自分に辟易しながら立ち上がる。
俺が信じている人間はあまりにも少ない。その中で青ピと×××は、同等に好きだった。
でもこれでは駄目だ。言葉ではうまく言い表せないが、今ようやく、色々な感情と決別出来た気がした。

一方「可能性が無くても、俺は好きでいるから、そいつが駄目だったら」

垣根「その時は、×××と付き合ってもいい」

一方「……じゃァな」

垣根「あぁ」
182 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/12/17(土) 17:11:06.76 ID:hSIKwv4f0

家へ帰ろうと歩いていたが、思わず足を止めてしまった。
中距離からでもわかる。自分の恋人の姿ならば当たり前だ。
いつもと違い、長い黒髪と可愛らしいワンピース姿なのはあの男の為だろうか。デートの為のお洒落なのだろうか。
都合の悪い言葉ばかりが聞こえた。都合の悪い姿ばかりが見えた。
ストレスで血圧が上昇しているのを感じた。能力で下げる。
彼女に怒っているのか、今さっき公園から出て行った白髪の男に怒っているのか、自分でもよく分からない。
家に帰って、彼女に優しく出来る自信がない。

『俺みたいな奴を好きになってくれて、ありがとう』

隠れて聞いた彼女の言葉が頭の中でリフレインする。
只、思考の中で確立された事は、『彼女があの白髪の男に盗られた』ということだ。
認識すればする程苦しくて、気付けば握りこぶしを強く握り過ぎて血が出ていた。
心配する彼女の顔が頭に浮かんで、能力で無理矢理治してしまいながら自宅へと歩く。
先に帰宅しているであろう彼女に、先ほど抱いた激情を怒鳴りつけてしまったら、今度こそ彼女は出て行ってしまうのだろうか。
古くからの付き合いに見えたあの白髪の男の下に、行ってしまうのだろうか。
ギリギリと歯ぎしりするのを抑えられない。悔しい、憎らしい。
彼女をとられたくない。しかしあの男を殺す訳にはいかないだろう。先ほどの告白シーンを除いても、仲が良さそうに見えた。
悲しませたくはない。だが、行かせる訳にもいかない。
誰にも渡さない。愛情を飛び越えた独占欲を抑えきれない。

どうすればいい?



青ピ「…ただいま」

垣根「遅かったな」


―――なんだ、簡単な事じゃないか。
183 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2011/12/17(土) 17:12:02.52 ID:hSIKwv4f0

本日の投下は終了です。

…次の投下で終わります。
一方さんの噛ませ犬感…申し訳ない。
キャラ崩壊すみませんでした。

閲覧ありがとうございます。

184 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/17(土) 17:41:54.78 ID:kBRcxQCDO
乙です
185 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/17(土) 18:57:33.77 ID:tIdS8+7Ko
おつおつ!
おや……?青ピのようすが……
186 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/17(土) 19:15:34.10 ID:5KPPD6RDO
乙です
青ピにヤンデレフラグだと…!
187 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/17(土) 21:46:39.12 ID:Og9Cs9fBo
HAHAHA、紳士of紳士 の青ピさんがまさかヤンデレだなんてー
188 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/18(日) 02:04:04.38 ID:vyrEtjmHo

>>187
変態of紳士じゃね?
189 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 17:15:13.83 ID:1GbTANiAO
>>187
紳士of変態じゃね?
190 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/30(金) 22:22:20.70 ID:GTsibmgDO
>>187
紳士or変態じゃね?
191 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/30(金) 22:47:44.06 ID:8Pqzwb/AO
>>187
変態of変態じゃね?
192 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2012/01/01(日) 16:42:37.66 ID:lMh4p3X+0
一方さんが噛ませって珍しい
それで上嬢さんが出張るというわけですね分かります

今気付いたんだが青ピって…
可能性の宝庫なやつだな!
褒めてるからこいつ案外ホモ大丈夫なタイプかなとか思ったのは許しうわやめろ
193 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2012/01/03(火) 00:03:39.42 ID:Tj4M2rQZ0

あけましたね、おめでとうございます。
とはいえ、このスレは今回の投下で終わってしまうので…。
今まで読んでくださった方、ありがとうございました。
途中から執筆が非常に遅れ始め、大変申し訳無かったです。
本年、皆様の健康と幸福をお祈りしております。


それでは投下。
194 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2012/01/03(火) 00:04:43.43 ID:Tj4M2rQZ0

青ピ「……その服装と髪はどうしたん?かわええね」

垣根「似合うと、思うか?」

青ピ「ええと思う」

垣根「そうか」

帰ってきた青ピの様子が、少しおかしかった。
何かを思いつめているような表情と、暗い雰囲気。
学校で何か落ち込む事でもあったのだろうか、と思いつつ髪形を元に戻して、服を着替える。
心なしか青ピの顔色がマシになった気がする。やはり似合わなかったのだろうか。
とはいえ、傍目には似合っていたと思う…青ピが男装嗜好なだけか。

青ピ「晩ご飯はシチューでええかな?」

垣根「あぁ。人参多めにしろよ」

青ピ「三本あるから全部入れれば問題あらへんね!」

垣根「…手伝ってやろうか?」

青ピ「怪我したら危ないし、座って待っててなー」

少し元気が無いという事を除けば、いつも通りの青ピだ。
さっきの落ち込み様は、きっと俺がいつも通り男装してなかったから驚いただけ、きっとそうだ。
鼻血の時もそうだった、きっと俺の考えすぎだろうと思う。
ミルクの温かな甘い匂いを嗅いでいると、段々眠くなってくる。
調理中の青ピには申し訳ないと思うが、少しだけ、晩飯が出来上がるまで寝よう…今日は疲れた……。
195 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2012/01/03(火) 00:05:08.78 ID:Tj4M2rQZ0

いじめで悩んでいた時に使っていた、強い睡眠導入剤。
学園都市製のそれは優秀で、一錠であっという間に眠りにつくことが出来る。
昼夜逆転してしまわないように、という配慮から七時間きっかりで目が覚める。
その代わり、七時間の間は全身麻酔をかけられたかのように目を覚ます事も、思考することも出来ない。
無論、感覚もない。どんなに揺さぶり起こそうとしても無駄だ。
彼女を傷つけない為には、彼女を守る為には、ひいては自分の安寧を守り抜く為には、最早こうするしかない。
自分がこんなにも自分勝手な人間だとは知らなかった。『こころ』の第三部、『私(先生)』の心境もこんなものだったのだろうか。
逃げられたくないのなら、閉じ込めればいい。例えどんな手を使ったとしても。

垣根「すー…くぅ…」

青ピ「…ごめんなぁ」

疲れた表情で眠る彼女を見ていると、このままでも彼女はどこにも行かないのではないか、と思わなくもない。
でも、これから先どれだけの不安があるだろう?今日と同じ事が、何回起こるだろう?
これからの全てを受け入れられる自信が、受け流せる自信が無い。
彼女を家から出したくない。あの白髪の男にも渡したくない。

シチューの具を入れずに少し注いで、彼女の分に錠剤を溶かす。
白いルーに溶けていく白い錠剤を眺めながら、そっとスプーンでかき回す。
甘そうなミルクの色と、無機質な薬の色。
どちらも同じ白なのに、前者は幸福を、後者は惰眠を運んでくる。
自分が恋をしてしまったばかりに、酷い事をしてしまう彼女には、本当に申し訳ないと思っている。
思っているのだが、もう、決めてしまった。

196 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2012/01/03(火) 00:05:36.61 ID:Tj4M2rQZ0

目が覚めると、シチューがテーブルに並べられ、スプーンが添えられていた。
既に席についている青ピは、のんびりとした(そんな風を装った)様子で俺を見ると微笑んだ。
前の職業柄、人の嘘を見抜くのは得意だった。何か考えを笑顔の下に巡らせながら、青ピは微笑んでいる。
それが分かったところで、何だというのか。
どうせあの日に死んでいた命だ、例えこのシチューに毒が潜んでいようとも、好きな奴に殺されるなら、むしろ本望だ。
最早能力以外価値の無いこんな人間を、それでもいいと、青ピは愛してくれた。
何度疑っても、傷つけても、青ピは俺を追い出さなかった。
過去の汚い話を打ち明けても、それでも構わないと笑って抱きしめてくれた。
もう、それだけでいい。殺されたって、何されたって、我慢する。出来る。
俺は愛するという事はよくわからないけど、青ピの事が大好きだと、今なら胸を張って言えるから。
だから、もう何をされても構わない。

垣根「寝てた、悪い。食うか」

青ピ「ええよ。いただきますー」

垣根「…いた、だきます」

湯気を立てる温かいシチューは、予想通りに美味かった。
只、鼻から抜ける薬独特の臭いに咽そうになる。
食事に毒やら薬やらを盛られるのは初めてじゃない、今すぐにでも胃液ごと吐き出せば良いのかもしれない。
でもそれをしたら青ピが傷つくような気がして、出来ない。
青ピにだって考えがあって薬を盛ったのだ、どんな効能かは把握しているだろう。
毒を口にする俺以上に辛そうな表情で食事をする青ピの姿を見て、知らず知らずの内に微笑んでいた。
馬鹿だな、今この瞬間まで俺が気が付いてなくてもそんな顔されたらわかっちまうぞ。
あるいは、わざとバラして指摘して欲しいのか。それは分からないが。
これで媚薬なんてオチならそれで良いのに、と思うものの、思考に霞がかったように頭が重いから、きっと違うだろう。
とてつもなく眠い。今の今までずっと徹夜しながら細かい作業をしていたかのように眠くて、視界がぼやけていく。
睡眠薬か、毒か。後者なら俺は此処で死ぬ。
ぶちまけて汚すと片付けが面倒だろう、スプーンを器に突っ込んでだるさに身を任せてカーペットに倒れる。
茶色い綺麗な天井を見上げていると、段々と瞼が意思とは関係無しに下がってくる。
視界に入り込んできたのは、何かを怖がる様な青ピの顔。泣くなよ、自分でやったんだろうが。




―――青ピ、だいすき。
197 :※切断・グロ注意  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2012/01/03(火) 00:06:36.59 ID:Tj4M2rQZ0








全てを悟ったかの様に笑ってから眠った彼女を抱きしめて、抱き上げて風呂場へ運ぶ。
切断された四肢における皮膚だけを再生させる演算は、もう何度も練習した。
彼女が眠っている間に全てを終えなければならない。
彼女を、蓋の閉じた浴槽の縁に腰掛けさせて、(目的は忘れていた、恐らく過去にキロ買いした肉を捌こうと思った)買い置いていた、切れ味の良い業務用肉切り包丁を持ってくる。
もし骨の部分で躓いたら、能力を使って骨折させるしかない。
興奮はしていない。只、申し訳なさで胃液がせり上がってきそうだ。

青ピ「………」

垣根「…すー…」

演算をして、腕の筋力を上げる。
例えるならば、体重三桁の人間を指数本で軽々持ち上げられる位の筋力。
握力もそれなりに高めてから、肉切り包丁を手にする。少し、重い。

青ピ「……」

垣根「…あお…ピ」

青ピ「…」

垣根「らい…すき…」

青ピ「…ボクも、帝督ちゃんの事が、世界で一番好き」

細い脚は、長年ほぼズボンで過ごしてきたからか日焼けしておらず、青ささえ感じられる程に白い。
片腿半分に包丁をあてがって力を込めると、嫌な感触と共に存外あっさりと切断された箇所から下の脚が切断され、タイルに転がった。
出血多量で死んでしまうような事になる前に傷口に触れて皮膚やら骨やら、最低限必要な内部組織を再生させると出血が止まる。
血まみれのタイル。転がる彼女の白い脚。無論、ボクの服やら顔やらも血まみれ。
むせ返るような血の臭いに吐き気を覚えながら、何とか堪えてもう片腿にも包丁をあてがう。
自分が何をしているのか冷静に思考している自分と、只もう後には引けないという理由で力を込める自分とが離反して頭の中に居る。
もう一度、先ほどと同じように力を込めて切断する。すぐ治療(正確には処置)しているものの出血量がひどく、彼女の顔色は白を飛び越えた色へと変化し始めている。
白い骨を、赤黒い肉を、断面を見てしまわないように目を閉じて演算に集中する。
鉄の匂いしかしない。緊張で乾いた唇を舐めると、えげつない血液の味がした。
気持ちが悪い。でも、今ここで戻してしまっては彼女の体にかかってしまうかもしれない。
シャワーコックを捻って、やや熱めのお湯を出してタイルに広がる大量の血液を、彼女の脚に付着している血液を排水溝へと流す。
証拠隠滅というよりも、一刻も早くこの鉄臭さから自分と彼女を解放したかった。
人間大の人形にそうするように、眠ったままの彼女の身体と髪を洗って、タオルで身体を拭いてから服を着せる。
それから自分も身体と髪を洗って、着替えた。血まみれの服は刻んで燃えるゴミに混ぜ込んだ。
切断した脚は、腐敗してしまわないよう能力で弄って蝋化させた。清潔な紙袋に、マネキンのそれのように入っている。
両脚を無くした彼女は、もうこの家から出て行く事は無いだろう。
勿論、互いが死ぬまで一緒に居る覚悟でやった事だ。後悔が無いと言えば嘘になるが、彼女が憎くてやった訳ではない。
彼女は未だすやすやと眠っている。薬がきちんと効いているようだ。
目が覚めたら、罵倒されるだろうか。嫌われるだろうか。全てを諦めて自殺したがるだろうか。
例えどんな反応を示されても、拒絶されても、ボクは彼女の傍に居る。居たい。

ごめんなさい。

ごめんなさい



198 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2012/01/03(火) 00:07:14.33 ID:Tj4M2rQZ0

目を覚ますと、朝になっていた。
周囲の状況から見て、どうやら青ピの部屋、ベッド上の様だ。
とりあえず、死んではいない。

垣根「……」

両脚の太腿半分から下がなくなっていること以外には、何も変わり無い。爽やかな朝だ。
昨日の出来事(といっても夕食の途中眠くなって寝るまでだが)は、全て覚えている。
予測するとするならば、青ピは俺に強力な睡眠薬を飲ませ、意識を失っている間に脚を切断した。
眠っている俺を連れ出して街中に出て事故にあった、という馬鹿らしい可能性もあったが、それはまず無いだろう。意味不明だし。

青ピ「…」

垣根「起きてたならちゃんと目開けろよ。狸寝入りしてんじゃねぇ」

青ピ「…ごめん、な」

垣根「…別に、怒っちゃいねぇよ。悲観してもいない。何か理由があったんだろ?」

青ピ「帝督ちゃんを、誰にも盗られたくなかった、から」

垣根「馬鹿だよな、オマエ」

青ピ「………」

垣根「こんな事しなくても、俺はオマエしか好きじゃねぇよ」

青ピ「…昨日の、白い髪の」

垣根「第一位か。…昔の知り合いだ。やましい事は何もねぇな。あいつが今すぐ死んでも、何のデメリットも悲しみもない」

青ピ「……今、何考えとる?」

垣根「…これでオマエは、俺を捨てられなくなったな、と思ってるだけだ」

青ピ「え…」

垣根「人一人の両脚切断しやがったんだ、まさか責任取らずに夜逃げしねぇよな?」

青ピ「…ボク、最低な事したのに…どうして」

垣根「昨日のシチューに薬が入ってたことくらい、気付いてた」

青ピ「…」

垣根「あからさま過ぎんだよ、オマエ。笑うかと思った。毒だとも思ってた。それでも、」

青ピ「…っ」

垣根「それでも、オマエになら殺されても構わないと思ったから、昨日のシチューを食べたんだよ」

泣きそうに顔を歪める青ピに、俺の方が申し訳ないような気分になってくる。
この優しいこいつが、俺の脚を切断するなどというおぞましい行為に至るまで、どれだけ悲しんだだろう。苦しんだだろう。
そう思うと、ムカつきすらしない。仕方がない、不可抗力のような気もする。
ぐしゃぐしゃに歪んだ顔を見ると俺まで落ち込みそうで、とりあえず視線を外して抱きしめた。
両脚が無くなって困るのは、幻視痛が予想されるだけだ。それさえなければ、青ピさえいれば不便は無い。
最悪能力を駆使すれば家の中で生活する事はさほど難しくない。青ピと一緒に外に出る時は車椅子を借りればいい。
死んだ訳じゃない。何も問題は無いはずだ。
どのみちこの家から出る事は今までもこれからもほとんど無い。

…もしかしたらこの感情は、ストックホルム症候群の症状の様なものなのかもしれない。
それでも構わない。青ピはこれで他の人間に目移りできなくなる。絶対に。



―――罪悪感で、人は縛っておける。
199 :1  ◆H0UG3c6kjA [saga]:2012/01/03(火) 00:07:41.86 ID:Tj4M2rQZ0

爽やかな朝の空気の中、一人の少年が学校へ向かって歩く。
愛しの恋人の姿を頭に思い浮かべながら。
自分の起こした惨劇を一笑に附して、ずっと一緒に居てくれればそれで良いと優しく微笑んだ彼女の顔を。
自分が奪った、美しい彼女の両脚を。
それでも、数ヶ月前の心情に比べれば少年は落ち込んでいなかった(あるいは、狂っている)。
今日もすぐさま帰ろう、そして彼女の介護をしよう。
自分だけの彼女。
自分だけの恋人。
愛する人。
大好きな人。
思わず口元が弛んでしまいそうになるのを懸命に堪えながら、少年は学校へ入る。
教室へ入ると、いつも三人でつるんでいる内の黒髪の友人が珍しく席に座っていた。早い登校だ。

上条「よう」

青ピ「おはようさん、カミやん」

上条「何か表情明るいな」

青ピ「彼女が出来たというか、おるからね。リア充オーラが出とるのかもわからん」

上条「え、マジかよ!どんな子なんだ?」

よくぞ聞いてくれた、とばかりに青髪の少年―――青髪ピアスが笑う。
思考の半分は会話に割きながら、もう半分は彼女の姿を思い浮かべながら。
惚気そうになるのを我慢しつつのんびりと会話する。
やがて黒髪の少年―――青髪ピアスの友人である上条当麻は口を開き、疑問をそのまま問いかけた。

すぅ、と涼しい空気を吸い込んで、スピーチでもするかのように青髪ピアスが微笑んで上条を見つめる。
その姿は末期の病に羅った恋人を持つ男性のようにも、どこかに大事なものを忘れてきた狂人のようにも見えた。


青ピ「僕の彼女は未元物質。学園都市第二位の、可愛らしい美人」

青ピ「ボクだけの恋人」

青ピ「誰にも渡したくない」

青ピ「カミやんには会わせられへんなぁ」

上条「そう、なのか」

青ピ「とっても素敵な女性なんやで?」


青ピ「ボ ク を 恋 に 狂 わ せ た ひ と」










僕の彼女は未元物質     おわり
200 :以下、あけまして、おめでとうございます [sage]:2012/01/03(火) 00:10:24.68 ID:RVY2MB2DO
お待ちしておりました。
あけおめです。
201 :以下、あけまして、おめでとうございます [sage]:2012/01/03(火) 00:13:15.99 ID:0K4G0c/Zo
乙です!
青ピ怖い
202 :以下、あけまして、おめでとうございます [sage]:2012/01/03(火) 00:15:46.78 ID:RVY2MB2DO
投下が始まったと思ったら終わっていたでござる。

青ピ恐ろしい子!
203 :以下、あけまして [sage]:2012/01/03(火) 01:10:33.36 ID:umMyfw25o
結構グロイのにめっちゃほっこりした
>>1乙!!
204 :以下、あけまして [sage]:2012/01/04(水) 20:31:54.60 ID:a/2cVJljo
我らの紳士、青ピたんが……
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