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剣士「パーティを組めだと?」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/05(月) 23:41:36.95 ID:kCvpyrPN0
受付「はい、当協会では単独での仕事は認めておりませんので…」

剣士「…何故だ、不都合な点でもあるのか」

受付「ええ、まぁ…国の騎士団や魔法協会からの斡旋でしたらば信用もあるので良いのですが…」

剣士「民間からでは不満か?」

受付「二人以上でのパーティを組んでいただいて、その中で信用を協会に証明していただきたいのです」

剣士「…仕事中も監視し合う、ということか?窮屈だな」

受付「申し訳ございません、規則ですので」


受付「ある程度の功績が協会に認められれば、単独で依頼を請け負う事も可能になりますよ」

剣士「……ふん、まあいいだろう、それまでの我慢だな」
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旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
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木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1713351945/

いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713279251/

【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713277692/

こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
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【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
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アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
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エルヴィン「ボーナスを支給する!」 @ 2024/04/14(日) 11:41:07.59 ID:o/ZidldvO
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/05(月) 23:43:28.65 ID:kCvpyrPN0
剣士「その、パーティとやらは私の他にもう一人で良いのだな?」

受付「はい、二人以上でしたら問題ありません」

剣士「そうか……しかし…」

受付「当協会では民間傭兵の方々に、同じ民間傭兵の中からパーティ候補を斡旋しております」

剣士「! …なるほど、私のような奴も多いということか…組む相手には困らないということだな?」

受付「ええ、左様で」

剣士「よし、ではその斡旋とやらを利用しよう」

受付「ではこちらのリストブックから……あ」

剣士「?」

受付「……ええっと、申し訳ございません、当協会では15歳未満の方は」

剣士「書面を読んでいないのか、私は19だ」

受付「…は…はい、申し訳ございません」

剣士「全く失礼な男だ」
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/05(月) 23:46:07.68 ID:kCvpyrPN0
剣士「……ふむ」パラッ

受付「……」

剣士「…なんだ、貧相な顔つきの者が多いな」パラッ

受付(お前が言うか……)


受付「こちらは女性の方のリストですからね、まぁ男性と比べればそうでしょう」

剣士「……通りで…男の斡旋は?」

受付「申し訳ございません、二人パーティの場合はトラブル防止のため、同性での組み合わせとしなければならないのです」

剣士「面倒な規則だな…力の強い男がいれば頼もしい限りなのだが…」

受付「申し訳ございません、面倒でしょうが当協会の規則なのです」

剣士「仕方なしか…」


剣士(それにしても低身長ばかり…私の背を補えるほどの剣士や戦士が欲しいのだが…)

剣士「……む」

:ホリィ=ポールウッド
:女性
:19歳
:身長191

剣士「た……たかっ…!?」

受付「?」
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/09/05(月) 23:47:52.59 ID:zZxKLRpPo
しねば?

http://nanabatu.web.fc2.com/new_genre/mizera_holy/1266560300_09.html
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/05(月) 23:48:18.93 ID:kCvpyrPN0
剣士「何故だ、私は毎日ミルクを飲んでいるし栄養のバランスも考え日々吟味して…ブツブツ…」

受付「あー、こちらは今週中に来たばかりの新しい方のリストですね」

剣士「…?新しい…?」

受付「あなたのような方ですね、同じく斡旋希望の…こちらは“被”斡旋ですが」

剣士「なるほど」

受付「昨日の今日なのでまだ顔写真はありませんから…まぁ選ぶのであればもっと左のページの、詳細が載っている方が」

剣士「こいつと組む」

受付「……え?」

剣士「こいつとパーティを組みたい」

受付「構いませんけど…良いんですか?そんな簡単に決めてしまっても…」

剣士「ふ、問題ない…191の大女だ…さぞ素晴らしい剣撃を見せてくれるのだろう…私にふさわしい相方だ」

受付「…剣撃…?…えー、ではこの方希望で、本当によろしいのですね?」

剣士「ああ、是非頼む」
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/05(月) 23:50:54.91 ID:kCvpyrPN0
>>4
書きなおしする部分や追記がある
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/09/05(月) 23:51:08.28 ID:S2r/4sfT0
>>1応援してるぜ!
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/05(月) 23:55:00.91 ID:kCvpyrPN0
剣士(ふふ…やっとだ、やっと傭兵になれる…)

剣士(…身分の低さと身長の低さ…あまりにも大きなリスク…私は今日、それを乗り越える…!)

剣士(長かった…ここまでくるためにどれだけ修練を重ねたか…)

剣士(最初は剣を買うだけでも苦労したものだが…小銭を稼ぐために無法者のギルドで稼いだあの日々…うう、いかん涙がこぼれる)


受付「では受理ということで、判を押します、よろしいですね?」

剣士「ああ、景気よくドンと捺してくれ、ドンと」

受付「…えらく上機嫌ですね…わかりました」

どんっ


受付「さて、では相手の合否の結果が出るまでしばらく時間をいただきます…相手も新しい方のようですし、通知はおそらく一日ほどですので」

剣士「ああ、すまないな」

受付「いえいえ、仕事ですから」



“被斡旋希望者ファイル 女性‐魔術師”
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2011/09/05(月) 23:56:49.55 ID:kCvpyrPN0
――酒場


剣士「マスター、私にも大きなツキが回ってきたようだよ」

主人「ほう?賭場ではした金でも手に入れたか?」

剣士「ふ、私は不確定要素の海に溺れる愚かな賭博師などではないぞ」

主人「そのガキみたいなちっせぇ背じゃ、剣士には見えねえけどな」

剣士「黙れ斬るぞ」チャキッ

主人「おいやめろ、わかった、から落ち着け、そいつはシャレんなんねえ」

剣士「背の話はするなっ」
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2011/09/05(月) 23:59:35.02 ID:kCvpyrPN0
剣士「……傭兵だよ、傭兵」

主人「ほう、傭兵協会に入ったのか?」

剣士「ああ、この国で最も大きな、国営の傭兵ギルドさ」

主人「そりゃすげえな、確か身体能力テストがあっただろう」

剣士「魔術以外は完璧にクリアしたとも」

主人「ヒュー、さっすがぁ」

剣士「木造ゴーレム4体如きで最終試験だぞ?あんなものは練習台にもならないね」ゴクゴク

主人「じゃあこれからその腕で良い仕事をこなせるってわけだ」

剣士「ふふっ…金が入るからな…これからはこうしてマスターと話す機会も増えるかもな?」

主人「そうだな、たまにはミルク以外のもんもオーダーして、店を潤してほしいもんだが」

剣士「酒は飲めん、ミルクで十分だ」

主人「…やっぱまだまだ、レディには遠いな」

剣士「む」
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2011/09/06(火) 00:04:16.24 ID:5SWnLF7F0
――傭兵協会


剣士「……うお…」

魔術師「えへへー、私ホリィっていいます、先月19歳になりましたー」ヌゥ

剣士(で、でかい…)


受付「こちらが一緒にパーティとして活動することとなるミゼラさんと…今紹介がありましたが、ホリィさんですね」

剣士(191センチってこんなに高いのか……いや、このロビーにいる誰よりも高いってどういうことだ…)

魔術師「私、はじめてなので傭兵の仕事とかよくわからないんですけど、頑張ります!よろしくお願いしますっ!」

剣士「お、おう…よろしく頼むぞ、これから共に頑張ろう、ホリィ」

魔術師「はい!こちらこそー!ミゼラさん!」

剣士(み、見上げただけで首が痛いっ…!)


受付(身長138pと191pか…こりゃ、とんでもないコンビになりそうだな…)


ミゼラ=ソイレギンス
年齢:19 身長:138p

ホリィ=ポールウッド
年齢:19 身長:191p
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2011/09/06(火) 00:06:04.05 ID:5SWnLF7F0
おやすみなさい
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/09/06(火) 00:07:23.77 ID:8FCuatUAO
確認もせずにドヤ顔で罵倒・・・
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/06(火) 05:33:02.07 ID:uCGduYlAO
スターオーシャンの
ディアスみたいな剣士かと思ったが違かった
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/06(火) 10:01:17.06 ID:jwTQDuaBo
えっ、本人?続きも書いてくれるのか?期待
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/06(火) 17:19:24.45 ID:YQAltfwIO
え続き書いてくれるのかまじか
これは激しく期待
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2011/09/06(火) 19:28:14.01 ID:5SWnLF7F0
魔術師「えーっと、ここにサインですねー?」

受付「はい、これからパーティとして傭兵協会の仕事を請け負うためのカードを発行しますので」

剣士(…私が土台を使わなければ書類も書けなかった受付のテーブルを…中腰で…)

魔術師「……うーん、と…はい!できましたー!」

受付「…はい、確かに…ではこちら受理という形で。これからは正式な当協会の会員として、仕事を請け負うことができます」

魔術師「わーい、カードだ!綺麗!」

受付「ではこちらミゼラさんも」

剣士「! おお、ありがとう」

魔術師「えへへ、これから頑張りましょうね!ミゼラさん!」

剣士(立ってるだけですごい威圧感だ…私が足手まといになってしまいそうな…)


剣士(…頑張らなくてはな…!このホリィに負けないように…)
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2011/09/06(火) 21:10:15.72 ID:5SWnLF7F0
――屋外 関所前広場


魔術師「……えへへー」

剣士「…どうした、そんなにカードばかり眺めて」

魔術師「えー?…えへへ、だって、やっと念願叶って手に入れたカードなんですもの…」

剣士「……ふ、そうだな」


剣士(ここまでの道のりに苦労したのはホリィも同じか…まぁ、平民は誰しもそんなものだからな)


魔術師「学校を卒業したら、絶対に傭兵になるって、ちっちゃい頃から決めていたんです!」

剣士「ちっちゃい頃か……まぁ私よりはでっかい頃だろうな」

魔術師「それでー、城下町で商いをしてるお父さんとお母さんのためにお金を沢山稼ぐんですよー!」

剣士「……」

魔術師「…あれ?剣士さんどうかしました?」

剣士「あ、なんでもない、ぼーっとしてただけだ」

魔術師「あははー、良い天気ですからねー」

剣士「…そうだな、良い日和だ」
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2011/09/06(火) 21:12:51.25 ID:5SWnLF7F0
魔術師「あれー?」

剣士「?どうした」

魔術師「…ミゼラさん、私たちってどこに向かって歩いてるんですか?」

剣士「今さら聞くか、…まあ言ってなかったからな」

魔術師「う、ごめんなさい…」

剣士「いや、ホリィは悪くない」


剣士「…こいつを見てくれ」ピラッ

魔術師「……ほえー?」

剣士(屈んでもやっぱり私より高いのな…)


“E:鉱兵タイトンのコロニー破壊”


剣士「ふふ、お前とパーティを組む前から目をつけていた仕事さ、儲かるぞ」

魔術師「……ほえー」
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2011/09/06(火) 21:18:38.85 ID:5SWnLF7F0
剣士「近年、召喚獣やゴーレムを扱う召喚師や顕現師が魔法協会の枠組み以外でも増えていてな」

魔術師「あー、それ聞いたことあります!悪い魔法使いさんが増えてこまってるって」

剣士「そうだ、そいつらが洞窟や郊外で勝手に“練習”と称してゴーレムを生みだすものだから、なかなか国も困っているそうだ」

魔術師「ひどいですよね!勝手に作って勝手に放っておくなんて!ゴーレムさんが可哀そうです!」

剣士「そうだな、自分の術に無責任な輩が増えた、ゆゆしき事態だ」


剣士「……と、頭を悩ませている傭兵協会の手助けをいち早く行い、私たちの名声を知らしめてやるのさ」

魔術師「な、なるほど…!じゃあ、人のためになる事なんですね!」

剣士「その通りだ、ふふ」


剣士(しかしホリィは魔術についても詳しいんだな、抜けているようでなかなか他の方面の知識にも明るい…案外、油断できない奴なのかも)

魔術師(ミゼラさんちっちゃくて可愛いなぁ〜)
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2011/09/06(火) 21:22:58.13 ID:5SWnLF7F0

――八卦国郊外


剣士「…うむ、この林の先に洞窟が多いらしいぞ」

魔術師「じゃあここを進むってことですね!」

剣士「もちろんだ…ここらは平坦で凶暴な魔獣も少ないだろうが、気を引き締めて行くぞ!」

魔術師「はい!」

剣士「よし、いざ洞窟へ!」



――10分後



魔術師「うわー、枝が顔に引っかかったー!」ガサガサ

剣士「ぐわっ、なんだこの巨大な根っこは…!」

魔術師「うう…ミゼラさん、もうすぐですか?もうすぐつくんですか?」

剣士「ああ着く…はずだッ…くそっ、樹海かここはっ!」


剣士「地理的には、もう少しここを過ぎた所で洞窟が見えるはずだが…」

魔術師「わ、わあああ!クモの巣です!わああ!顔にかかっちゃいましたああ!」

剣士「ぬっ、くそ…下草が邪魔だ…!」
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/09/06(火) 21:45:02.59 ID:Et1HCSwso
かぁーわぁーいぃーいぃー
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/06(火) 21:55:28.50 ID:5SWnLF7F0
剣士「はぁ、はぁ…!」

魔術師「うう…顔にいろんなものがくっついたりしました…髪を洗いたいです…」

剣士「…傭兵の仕事は屋外が多くなるからな、私は短めだから大丈夫だが、その長い髪は切るかまとめるなりした方が良いかもしれん」

魔術師「うう…街を出る時お母さんに整えてもらったのに…」


剣士「……ともあれ」

魔術師「……はい」

剣士「洞窟の前まで到着だな」

魔術師「…そうですね」

剣士「財宝の隠されたダンジョンなどではないし、召喚師の連中からすればゴーレムを隠密に作れれば良いだけだから…そうコロニーは深部にないだろう」

魔術師「……?」

剣士「入ったらすぐ、ゴーレムが襲ってくるかもしれないということだ」

魔術師「なるほど!」
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/09/07(水) 05:20:29.48 ID:6GWbcQNRo
乙した
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/07(水) 20:26:57.03 ID:3vLs++I70
魔術師「じゃあ、準備もしておかないといけませんねっ」ガサガサ

剣士「…整い次第、中へ入ろうか」


剣士(…ふむ、布で包んである、あの長い何か…あれは槍か、それとも長剣か…)

剣士(…ふふ、すごい、私の身長ほどもありそうな業物だな…解いた時、どれほどの力を見せてくれるのか…)


魔術師「準備できました!」

剣士「お、そうか…それじゃあ、洞窟に潜ろうか」

魔術師「…うー、緊張してきました…!」

剣士「はは、そうだな、私もだ…はじめての仕事だからな…」

魔術師「じゃあ私と同じですね!」

剣士「お?ホリィも初めてか、意外だな」


剣士「…でも、今回戦うであろうタイトンはEランク、ゴーレムといっても一般的な人程度のサイズだ、苦戦はしないだろう」

魔術師「は、はい!」

剣士(私は技術とこれまで積み上げてきた能力でなんとなすればいい…)

剣士(ホリィは…ふ、あの大業物を振り回すだけでなんとかなりそうだな?)
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/07(水) 20:30:15.09 ID:3vLs++I70
魔術師「あ、綺麗な石ー!」

剣士「……さっきまでの緊張感はどこにいったんだ…」

魔術師「すごーい、緑色!ちょっと透明かも?」

剣士「…あまり道草していると、灯りを見失ってはぐれてしまうぞ?」

魔術師「あ、ごご、ごめんなさーい…」タタタ・・・


剣士(……静かだ…足音しか響かない…それに)

魔術師「わー、まっくらー」

剣士「…?」

魔術師「声もよく響きますねえ」

剣士(……おかしいな、さっきまではカンテラの明りで壁面が見えていたんだが…)


ガラッ・・・ガラガラ・・・


剣士(! いや、音の響きからしてここは広場だ!洞窟に作られた不自然な広い一室…)

魔術師「え?何の音ですか?」

剣士「ふふ…喜べホリィ、早速だ!」

魔術師「えー?」

剣士「小型とはいえ、狭い通路でゴーレムを生成するわけにもいくまい!くるぞ!」


鉱兵『ウゴォオオオオオ!』
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/07(水) 20:35:58.67 ID:3vLs++I70
魔術師「きゃ、きゃー!」

剣士「落ちつけ!ただの岩の塊だ!動きは鈍いぞ!」

鉱兵『ゴォー!』

魔術師「め、目がまっかです…!一つ目です…!」ササッ

剣士「私の後ろに隠れてどうする!私じゃお前の遮蔽物になるものか!戦うぞ!」

魔術師「うう……」


『ゴォオオオ!』

『ゴォ…ゴォオオオ!』


剣士「!…うめき声が響いているだけかと思ったが…どうやら数体いるらしいな!」

魔術師「…いっぱいいるんですかー…?」

剣士「ああ…暴れるには丁度良い…!」

魔術師「た、戦うしかないんですかっ?」

剣士「もちろん…!記念すべき最初の戦いだ!カンテラの灯りを頼りに立ちまわるしかない場所だが、やるしかあるまい!」

魔術師「うう…は…はい!やります!」


鉱兵『ウゴォオオオオオッ!』
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/07(水) 20:39:37.13 ID:3vLs++I70
鉱兵『…ッ!』ブンッ

剣士(拳!中心狙いの左ストレート…!だが動きが愚鈍だな!)

ゴシャッ


鉱兵『……?』

剣士「どうした!私はただ右へ一歩、飛びのいただけだぞ!」ヒュ


ボコッ

鉱兵『ご…ぉー…』ドシャ

剣士「ッ…さ、さすがに岩に剣を当てるのは…手が痺れる…!」

剣士「だが本気で当てれば砕ける程度の脆さ…なら、攻撃をかわせば勝てる!」


魔術師「ひ、ひえええ!」

剣士「ホリィ!大丈夫か!」

魔術師「に、逃げ回ってます!助けてくださいっ!」

剣士「…な、何をしているんだお前は」

鉱兵『ゴォオオオ!』ブンッ

剣士「……チッ、他人に構う暇などないかっ」



魔術師「…ッ!」

ドサッ・・・
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/07(水) 20:48:37.23 ID:3vLs++I70
剣士(弱点は見つけた、スタイリッシュに造形したかったのかは知らないが、異様に腰回りが細い!)ブンッ

ゴシャッ

剣士(ゴーレムとはいえ、胴体を切断されれば緻密な魔術式は崩れる!)

剣士(ゴーレムを動かす式が無ければ、奴らはただの岩人形だ!)ビュンッ

ドゴッ


剣士「ふうっ、3体目…!」

『ぐおお…ぉ…』 『ごおお…』ドシャドシャ


鉱兵『ウゴォオオオ!』

剣士「…くそ、数が多いな…!この剣新品なんだぞ…!?」

鉱兵『ゴォオオ!』ブンッ

剣士「報酬が全て武器屋に溶けぬよう、この剣の強度に祈らなくてはなッ!」ドゴッ

『ゴォオォゥ…』ドシャ
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/09/08(木) 09:27:46.68 ID:zFXI6tCuo
ワクテカ
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/08(木) 19:58:23.48 ID:Ca1my84n0
剣士「はぁ、はっ…おい!ホリィ!そっちはどうだ!」

『ゴォオオオ!』ブンッ

剣士「くっ…!おいホリィ!」


剣士「……ホリィ?おいホリィ!どこだ!無事か!?」

ぐにっ


剣士(! な、にか…柔らかいもの…踏ん……)

魔術師「…」


剣士「…な…!なんだとッ…!?」

鉱兵『ゴォオオオオオオ!』
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/08(木) 20:02:23.87 ID:Ca1my84n0
魔術師「……」

剣士「き」


剣士「貴様らァああああぁああ!!」

鉱兵『ゴォオオ!』

剣士「誰が叫んでいいと言ったァぁあぁああ!」ブンッ

――バゴッ


『ゴォオ…』ドシャッ


剣士「…なんてことを…なんて事をしてくれるんだ…!」

剣士「ここで、こんな初日でパーティを亡くしたなんて…なれば…!」


剣士「私は仲間も守れない、ただのチビの烙印を捺され…!」

剣士「早々に協会から追放されたら…どうしてくれるんだぁあああ!」ドガッ

『ごぉお……お…』
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/08(木) 20:13:51.39 ID:Ca1my84n0
剣士「はぁっ!はぁっ…!」

『……』

『……』


剣士「……ペッ、やっと全て片付いたか」

剣士「石が唸りを上げるなど、おこがましい…身の程を知れ、石屑どもめ」


魔術師「……」

剣士「…ぁあ…どうしよう……見た目に傷はないようだが…」


剣士(鉱兵共は一掃したが…これじゃあ報酬なんて貰えない……いや)

剣士(それどころか…パーティの死が私の過失として…クソっ、せっかくここまでのし上がってきたというのに…!)

剣士(何故こいつは戦わなかったんだ…!身体試験を通っておきながら何故…!)


コロン

剣士「! これはホリィの持っていた長物…これだけのものがあって…」
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/08(木) 20:16:44.29 ID:Ca1my84n0
パサッ

ゴロン・・・


剣士「なにっ……!杖!?」

魔術師「……」


剣士「…何?…こいつ、剣士じゃ…うそ…」

剣士(魔術師だったのか!?魔術師…くそ、こいつ、身体能力試験なんかやっているはず無いじゃないか…!)


剣士(それどころか、ゴーレムは人が生み出した顕現生物…対抗式で簡単な術は反駁されて効果が薄い…!最悪だ!)

剣士(これじゃまるで私…こいつをドラゴンの巣に誘い込んだようなもの…!)


魔術師「う……ぅう……」

剣士「…!まだ息はあるのか!?」

魔術師「くる…しいです…」
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/08(木) 20:23:46.28 ID:Ca1my84n0
ズル・・・ズル・・・


剣士「まだ息はあるよな…?大丈夫だよな!?」

魔術師「…ぅ…」

剣士「しっかりしろ…気をしっかり持て…!今、洞窟を出るから…!明るい所で応急処置を施す…!」

魔術師「…ぁぅ…」

剣士「大丈夫だからな…応急処置…学校行ってなかったから、詳しくはわからんが…ちゃんとやるからな!」

ズズズ・・ズズ・・・


剣士(く…!重い…!重すぎる…!足ひきずっちゃってるけど大丈夫だよな…!?)

魔術師「す…すみません…ごめんなさい…」

剣士「…!」

魔術師「私……ドジで…馬鹿なんです…ごめんなさい…」

剣士「…黙ってろ!悪いのは全部私だ!」

魔術師「……」

剣士「待ってろ、絶対に助けるから…!」
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/08(木) 20:25:51.02 ID:Ca1my84n0
魔術師「すーっ」


魔術師「はぁあああぁー…」


剣士「…」

魔術師「…うん!もう大丈夫です!助かりました!ありがとうございます!」

剣士「…そうか」

魔術師「本当にありがとうございます…私、狭い所だとすぐ貧血になってしまうので…」

剣士「ああ…そうらしいな…私は背が低いからわからんが…」

魔術師「あはは、一時は視界が真っ暗になっちゃって、どうなるかと…」

剣士「……」スタスタ


魔術師「風景がぐにゃーって……あれ?どこに行くんですか?」

剣士「……もう帰る、疲れた」

魔術師「えへへ、私もです、じゃあ一緒にこれから…あ!美味しいパン屋さん知ってるんですけどこれから…」

剣士「先に協会だ、馬鹿」

魔術師「あう」
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/09/08(木) 20:46:33.75 ID:SLcoUqnAO
前から読んでたよ!

続き書いてくれるなら万々歳だ。

待ってるからね!





…待ってるからね!
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/09/09(金) 05:51:07.07 ID:qIDoYaU1o
乙した
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/09(金) 20:06:13.64 ID:M7t4TzP80
受付「は、いえ、ですから、女性魔術師のホリィさん、間違いはありませんって」

剣士「私が希望していたのは剣士もしくは戦士で…!」

魔術師「あう」

剣士「…魔術師の相方を望んでなどいなかったんだ!」

受付「そう申されましてもねえ、あの時ちゃんとファイルを2種類差し出したんですから」

剣士「う」

受付「ちゃんと物理戦・魔術戦別の傭兵希望者に分けたんですよ?それをこちらの過失にされましてもねぇ」

剣士「し、知らなかったんだ!パーティを解消してくれ!」

魔術師「ええ!?そ、そんなぁミゼラさん…」

剣士「私は!……私のこの身長をカバーできる、接近戦可能な奴と組みたかったんだ!異種同士で組むなど…!」

受付「接近でも遠距離でも対応できてむしろバランスが良いとは、勝手ながら僕は思いますけどね」

剣士「うるさい!とにかく私の希望ではない!解消だ!解消!」

魔術師「そ、そんなぁ…私ミゼラさんと一緒にやってきたいって思ってたのに…」

剣士「うあぁあー……そんな涙目で見るな!」
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/09(金) 20:09:57.04 ID:M7t4TzP80
受付「…まぁ解消は構わないのですが」

剣士「本当か!?」

受付「ええ、並々ならぬ事情をお持ちの方もいるでしょうし、無理を通す措置は可能です、が、違約金を支払っていただきます」


剣士「…………え?」

受付「当然でしょう、今日結成したばかりのパーティを今日解消…カードも解約…どんな迷惑行為ですか」

剣士「ぐっ…」

「カードを発行するのも、パーティを正式なものとして協会に登録するのもタダではないんですよ」

剣士「…それは…そうだがしかし…」

受付「違約金無しでパーティ解消・変更とする場合はそれなりの信用を築いてからで無くてはなりませんからね」

剣士「……は、また信用か」

受付「この世は貴族も平民も、実績と信用が全てですよ、剣士さん」ピラッ


“違約金 22000YEN”

受付「これも仕事ですからね、どうしても解消したいと言うのでしたら…また景気よく、これに判を捺しても良いのですが」

剣士「うぐ…」

魔術師「ミゼラさん…」

剣士「…」
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/09(金) 20:13:33.04 ID:M7t4TzP80
――八卦国北東関所前公園 広場


剣士「……」

魔術師「わー、お金いっぱいもらっちゃった…ミゼラさんのやった仕事って、こんなにすごいんですね…」ジャラ

剣士「……おい」

魔術師「…ミゼラさん?」

剣士「怒って良いんだぞ」

魔術師「?」


剣士「人の事情など一片も考えない、身勝手であさましい奴だとな」

魔術師「…?…何の事ですか?」

剣士「…当然、パーティ解消の話だよ」

魔術師「…」

剣士「そのくせ違約金は払いたくない守銭奴…そう罵ってくれてもいい、私はそんな奴だ、卑しいもんだ」

魔術師「…そんなことないですよ」
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/09(金) 20:16:06.66 ID:M7t4TzP80
剣士「…」

魔術師「だって私はドジだし、まぬけだし…のろまだし…」

剣士「…」


魔術師「えへへ、学校にいた頃もそういう風に言われててー…」

魔術師「…自分でも思います、いざという時失敗しちゃうし…頭がこんがらがって、でも冷静になろうとすると、貧血起こしてすぐにふらーって」


魔術師「…えへへ、パーティ解消されても何も文句は言えないです…私、本当にまぬけだから」

剣士「…」

魔術師「…怒るなんて、そんなのとんでもないです、私こそ怒られるような人です」

剣士「お前は何も」

魔術師「ミゼラさんがゴーレムさんと戦っていたいた時だって、私何もできなかったですもの」


魔術師「ごめんなさい、ミゼラさん…私みたいな、あはは…でくのぼー、と組むことになっちゃって…」

剣士「……」


「ままー、あの人たちすごーい」

「あら、あの子ユウくんと同じくらいの子かしらねー」
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/09(金) 20:20:10.44 ID:M7t4TzP80
――八卦の国、ニの町 大通り


魔術師「わあ、すっかり陽がくれちゃいましたねー…真っ赤かだぁ」

剣士「…鼈甲色の綺麗な夕日だな」

魔術師「んー、まぶしー」

剣士(……影長っ…)


魔術師「…私、このニの町でおばさんの商店の部屋を借りて一人暮らししているんですけど…ミゼラさんは?」

剣士「え?」

魔術師「ミゼラさんもニの町に住んでいるんですか?それとも宿ですか?」

剣士「……ああ、宿を借りているよ」

魔術師「ほんとですか!行ってみたいなー!」

剣士「…お前がいるとうるさくなりそうだから、駄目だ」

魔術師「うっ…ごめんなさい…」

剣士「謝るほどのことじゃないだろ」

魔術師「あう、すみません…」


剣士「…こんな私とでも、組んでくれる?」

魔術師「え?」

剣士「チビだけど、私と一緒にパーティを組んでくれるのか?ホリィは」

魔術師「…えへへ、当たり前じゃないですか、ミゼラさんに頼みたいくらいです」

剣士「…ありがとう」

魔術師「どういたしまして!あと、ありがとうございます!」

剣士「…どういたしまして」


剣士「…これから、よろしくな!ホリィ!」

魔術師「はい、よろしくお願いします!ミゼラさん!」
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/09(金) 20:23:44.38 ID:PNGYZ0Yw0
ふむ。

期待。
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/11(日) 20:09:51.34 ID:VzfQ715u0
――酒場


剣士「……」ゴクゴク

剣士「…ふぅ」コト


主人「浮かねぇ顔だな、初仕事でヘマでもしちまったか?」

剣士「ヘマ…ヘマね…言うなら昨日かな…」

主人「昨日?」

剣士「浮かれ過ぎて…文字も見えなくなった…それだけだよ」

主人「おいおい、酒も入ってねえのに泣き上戸か?やめてくれよ」

剣士「ふん、誰が泣くか」


剣士「……ま、泣きたくはあるけどな…自分のふがいなさって奴に」

主人「なんだ、いつもの威勢はどうしたよ」

剣士「…落ち込む事もあるんだよ、人間だからな」
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/11(日) 20:12:47.42 ID:VzfQ715u0

主人「…しっかし、本当に今日はどうしちまったんだお前、元気が無いってどころじゃないな」

剣士「……元気は無いが」

ジャラララ・・・


主人「!おい、この金…」

剣士「ミルク、もう一杯頼むよ…ふっ、初報酬の記念だ、今日はいつもより多く飲んでやる」

主人「…わかってるよ…朝までな?」

剣士「ああ……すまないな、いつも宿代わりにしてしまって」

主人「構わねえよ、一杯でも飲みゃ客も客だ、お前は一応常連でもあるしよ」

剣士「…よし、じゃあ麦パンも一切れ貰おうか、大サービスだ」

主人「…ったく、どうせならもっと奮発してくれよな」
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/11(日) 20:16:16.84 ID:VzfQ715u0
――八卦国

――世界でも指折りの、魔力産業が特化した王国

――ライフラインを全て、魔石のエネルギーにより賄っている

――噂では国の地下深くに大量の魔石が眠っているということだが、

――それを狙う者は皆等しく、ある一定の深さまでしか掘り下げることができない

――この国の地下には、国をすっぽり覆ってしまうほどの分厚く巨大な岩盤があり、

――それは亀の甲羅であると、言い伝えられている

――しかしそんな伝説も遥か昔の伝承であるので、

――そのようなおとぎ話を信じている者は今では、一人もいない
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/12(月) 00:13:41.93 ID:iGabmm3IO
誤字訂正とか細かい修正するだけなのに投下ペース遅すぎやしないですか
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/09/12(月) 04:59:53.63 ID:hrHmpjMxo
乙した
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/09/12(月) 12:23:45.94 ID:zWHsueBAO
( *・∀・)φ じゃあ早くスルゥー
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/13(火) 20:28:53.14 ID:W9OYbMos0
魔術師「……国より大きな亀さん…!」

魔術師「すごい、この国って亀さんだったんだ…!」パラッ、パラッ

剣士「何を読んでいるんだ?」

魔術師「! あ、剣士さん!おはようございます!」

剣士「ああ、良い朝だな」

魔術師「えへへー、そうですね!協会の中って、天井は高いし窓は大きいしで、良い日差しが入って気持ちが良いです!」

剣士「……ん?その本は?」

魔術師「あ、あそこの本棚にあったので勝手に読んでました!協会の人なら自由に読んでも良いんですって」

剣士「ほう…そうか、私も暇があったら読んでみようかな」

魔術師「えへへ、待ってる間に暇をしなくて良いですよー」
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/13(火) 20:31:20.81 ID:W9OYbMos0
魔術師「それでミゼラさん、今日は一体何をするんですか?」

剣士「ん?んー…」

魔術師「あ……大丈夫です、今回こそ貧血になったりしませんから!頑張りますから!」

剣士「いや、そういうことではないんだ」


剣士「傭兵といっても色々な仕事があるからな、何も戦いばかりが傭兵ではない」

魔術師「あ……えっと、物を運んだりとかも仕事なんですよね?人を守ったりとか!」

剣士「そうだ、国との戦争……は今は無いが、何も命の危機を招くような仕事ばかりやらなくても良い」

魔術師「ふむふむ」


剣士「私は剣士でホリィは魔術師だ、戦闘においては得意とする分野も違うだろう」

魔術師「確かに……昨日みたいに、私の術が全然効かないこともありますからね」

剣士「そうだ」


剣士「…だから今回は、二人でできそうな安全な警備、または護衛の仕事を探してみようと思う」

魔術師「まずは仕事を探すんですね!探すのは得意ですよー!」

剣士「ふ、頼もしい限りだな」
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/13(火) 20:36:33.82 ID:W9OYbMos0
――護衛の場合

受付「あー…どの依頼者も身長制限を設けていますね、高い視点からでなければ見えない範囲もありますし」

剣士「……」

魔術師「え……で、でも私がいますよ?」

受付「いやー、民間の傭兵の方は任務を二人以上でこなしていただくという規則がありますから」

剣士「私か…」

受付「ミゼラさんを見た場合、ちょっと条件を満たすのは難しいかと思いますね」


――採集の場合

受付「魔鉱石の採掘ですか……あー、ちょっと狭い所の作業となってしまうので、ホリィさんはちょっとダメでしょうかね」

魔術師「あう」

剣士「…くそ、私は余裕なのだが…」

魔術師「でくのぼーでごめんなさい…」

受付「んー、洞窟内の作業はほとんどが駄目みたいですね」



――運搬の場合

受付「馬鳥馬車の運転免許証はお持ちですか?これはどちらかが持っているだけでも構いませんが」

魔術師「…はうう…」

剣士「おい貴様、昨日から思っていたが実は私たちの事を蹴落とそうとしているだろう?」

受付「いやそんなつもりはないです、いや本当に、自分でも驚きですが」

剣士「そっちがその気ならこちらにだって傭兵なりの考えが…」

受付「ちょっとちょっと抜刀しないでくださいよ、真面目にやってるんです、ほんとに」
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/13(火) 20:42:44.17 ID:W9OYbMos0
受付「……こちらでも色々と仕事の方を探してみたのです…」

魔術師「…」

剣士「…」


受付「……残っている任務はほぼ討伐などになってしまいますね」

剣士「馬鹿な!そんな馬鹿なことがあってたまるか!少しはあるだろう、護衛とか、少しは!」

受付「あるにはあるのですが、国の反対側や…かなり遠くの地域に派遣されてしまいますよ?六の町なんていけますか?」

魔術師「あう、六…」

剣士「そんな馬鹿な!」

受付「一週間ほど待てば運の向いた仕事が来るかもしれませんけどね、ただ条件の緩い仕事は受注競争も激しいですよ?」

剣士「くっ…」

受付「それに移動のための運賃だけでも報酬を圧迫しますし、時間のロスで更に受注できる仕事が少なく…」

剣士「ああもういい!わかった、討伐で構わん!貴様の掌の上で踊って見せよう!」

受付「いえ、ですからそんなつもりはありません」
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/13(火) 20:47:35.91 ID:W9OYbMos0
魔術師「討伐かぁ…うーん、でもお仕事です!頑張ります!」

剣士「…これしかない……とはいえ、まだ組んでから日も浅い…互いの力も全く把握できていない状況だ」

魔術師「私なにもしてませんからね…」

受付「そうですね、最初はランクの低い…最低のものからチャレンジしていくのが良いと思います、各々の能力のお披露目も兼ねましてね?」

剣士「低ランクか…低ランク、うーむ…」

受付「昨日はEを受けていたようですが、最初にしては多少荷が重いのでは?そりゃあもちろん正当な報酬は出しますが」

剣士「…もっともだな、しかし金が欲しい」

受付「欲に憑かれると思わぬ事故に遭います、慎重に決めてくださいね」バサッ

魔術師「あ、これはファイルですか?」

受付「はい、ここが討伐・採集の対象となっています」

剣士「……ふむ…」ピョン

魔術師「…」

受付「…」

剣士「なるほど、分厚いファイルだな…」ピョンピョン

受付「土台、お持ちしましょうか」

剣士「頼む」ピョン
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/13(火) 20:57:36.20 ID:W9OYbMos0
剣士「ふむ、なかなか毒のありそうな奴らが揃っているな…」パラパラ

魔術師「ど、毒ですか…」

剣士「毒カエルの卵、…デノンの巣窟掃除…」

受付「低いランクの対象は主に一次産業に害を及ぼしますからね、毒を持つものも多いです」

剣士「数多く討伐する必要があるんだな」

受付「そりゃもう、郊外森林、国内にも五万といますし、量をもって害を成す生物だっています、毎年のカマアゴイナゴの群れなどによるヤマムギ畑荒らしの惨状を見ればわかるでしょう」

魔術師「ほえー……怖いですねぇ」

受付「なので、ここらへんのページの対象は討伐というよりも駆除に近い形になりますね」

剣士「…報酬が低い、もっと高い奴は…」

魔術師「あ、これなんてすごいですね!100,000万YENですって!」

剣士「異常成長個体の斬竜…体長7m?悪夢だな…」

受付「……まあ、決まったら受付の方にファイルを返してくださいね、向こうのベンチで見ていて構わないですから」

57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2011/09/13(火) 23:25:27.58 ID:W9OYbMos0
“C:錆蜘蛛アスメ”

剣士「これだ!」

魔術師「これです!」

受付「報酬金額を見て決めましたか」

剣士「ふん、悪いか?」

受付「いえいえとんでもない」

受付「…アスメは人ほどもある巨大な蜘蛛…だけならばただ気持ち悪いだけで済むのですがね」

剣士「特別な事情があって、高額な報酬が設定されているのだろう?」

受付「まぁ、はい」


受付「アスメは蜘蛛と称されていますが、その生態はそれとは大きくかけ離れたものです」

剣士「鉱物を食う」

受付「その通り、鉱山の麓にある点々と存在する数少ない採石場が、このアスメによって荒らされているんです」

剣士「ああ、掲示された新聞で読んだ事がある…採石場に穴を作ってしまうから、陥没したりでその被害が無視できないと」

受付「博学ですねぇ」

剣士「雑学さ」
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/09/14(水) 12:37:33.37 ID:k5rWVRlAo
乙した
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2011/09/14(水) 20:02:54.79 ID:mA+Gemau0
受付「アスメの出現地域は主に採石場です、この二番の地域にある採石場で被害が出ているそうなので、そこを当たってみてください」

魔術師「えーっと、採石場って…あれかなぁ?診療所のちょっと向こうにある…」

受付「はい、そこですね、近いので徒歩でもいけるかと」

剣士「…そうだ、ひとつ聞いておこう」

受付「? はい」

剣士「こいつ、タイトンのように呪文を反駁したりはしないだろうな?」

受付「…反駁、えっとなんでしたっけ」

魔術師「あ、初歩の呪文とかの式を解してしまう事なんですけど…」

受付「! ああ、逆祖のことですね、すみません、なかなか魔術関連の知識は出てこなくて」


受付「アスメは原始的な生き物なのでそれは無いと思いますね、詳しい調査はされていませんが…」

剣士「……心配だな」

受付「頑丈さはありますが、野生の魔獣は滅多なことでは逆祖なんてしませんよ」

剣士「ふむ…」
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/09/14(水) 20:04:34.62 ID:qXMPbeMuP
どこか前と変わってるところある?
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2011/09/14(水) 20:05:14.36 ID:mA+Gemau0
魔術師「大丈夫ですよ!私、頑張りますからっ!」

剣士「ふ、期待してるぞ」


受付「……あーそれよりもむしろですね」

剣士「?」

受付「ミゼラさん、あなたの剣、それが通じるかがわかりませんよ?」

剣士「……ふん、バカにするな、私の剣の力なら岩程度は砕かすことができる」

受付「相手は錆蜘蛛、文字通り金属ですから、あまり武器に無茶はさせないことですね」

剣士「いらぬ心配さ」

受付「油断はしないでください……よっ」ドンッ


“受理”


受付「民間の傭兵とはいえ、怪我をされてしまうとこちらの風評に響きますからね、身体は丁重に扱って下さい」

剣士「……ふん」
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2011/09/14(水) 20:06:47.99 ID:mA+Gemau0
>>60
錆蜘蛛の後に見知らぬストーリーがひとつ加わる
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2011/09/14(水) 20:09:01.76 ID:mA+Gemau0
――八卦の国、ニの町 大通り


剣士「全く、いちいち癇に障る奴だ!」

魔術師「あはは…」

剣士「ふん、まあいい…できれば今日、遅くても明日には仕事を終わらせて、目にものみせてやる…」

魔術師「? え、これって今日じゃ終わらないんですか?」

剣士「……さあ、どうだろうか…対象が見つかれば早く終わらせる事も出来るが…」

魔術師「えっ、じゃあ今日見つからないと、どうなるんですか?」


剣士「……さあ?」

魔術師「えっ?さあって…」

剣士「現地でそのまま張り込みでも、一旦帰宅しまた後日…でも良いんじゃないだろうか」

魔術師「あぁ、そういうことですか!なるほどー」

剣士「ああ」


剣士(……私は…できる限り短期間で多くの仕事をこなし、名声を高め……)

剣士(そして……)
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2011/09/14(水) 20:11:33.50 ID:mA+Gemau0
魔術師「でも、なんだか思っていたよりも気楽なんですね」

剣士「ん?」

魔術師「私、傭兵さんってもっと忙しいのかと思ってました」

剣士「……というと」

魔術師「傭兵さんってこう、あるじゃないですか?ベルの音で一斉に起きて、足音をそろえてー、みたいなの」

剣士「ふむ、イメージは伝わるが私はそれに全く共感する事が出来ないな」

魔術師「なんていうか、もっとキビキビと、時計を見ながら動くような仕事だと思ってて…」


ジャララッ


魔術師「ほら!こうして懐中時計も買ったりしたんですよ」

剣士「使い時がそう多いかは知らないが…まあ、気合いが入っていることは良い事だと思うぞ」

魔術師「えへへ、ありがとうございます」

剣士「……傭兵のイメージ…か」

魔術師「ミゼラさんはどんなイメージだったんですか?」
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2011/09/14(水) 20:17:29.04 ID:mA+Gemau0
剣士「そうだな、確かに傭兵と言えば忙しく各地を走り回ったり…」

魔術師「うんうん」

剣士「戦い、戦って、戦い尽くす…そんなイメージはかつての私にもあった」

魔術師「えへ、ですよねー」


剣士「しかし実態は、自分で好みの仕事を選びこなしていく、日雇いのようなものだ」

剣士「…まぁ、戦争や紛争など、四六時中あるものではないからな、当然の事だが」

魔術師「ジラフ国との戦争は終わっちゃいましたからね」

剣士「他の国との関係も、雲行きが怪しいという所まではきているのが…戦争とまではいかないようだな」


剣士「…もし戦争にでも参加できるのならば、私の名を上げる事もできたのだが…」

魔術師「……剣士さんは、戦争がしたいんですか?」

剣士「…そう怖がるな、そういう意味じゃないさ」


剣士「…私は、金持ちになりたい、それだけだよ」

魔術師「? あははー、じゃあ私と同じかもしれませんねー」

剣士「かもな」
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/14(水) 20:48:03.57 ID:Vkc3BZ7Qo
支援だ
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/15(木) 15:59:12.58 ID:ldRnFHfXo
このスレ立った時丁度前の読み直してたところだったから結構修正多いのがわかるなーどうなっていくのか楽しみだ
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/15(木) 20:50:45.23 ID:IIxpxRPH0
――採石場

カンカンカン、カンカン・・・


警備員「ん…?子供か?おい、立ち入り許可証は?親父さんがいるのか?」

剣士「随分厳重だな?そして私は成人だ…これでいいだろう、傭兵協会お墨付きのカードだ」

警備員「ああ、アスメの野郎の駆除か…そりゃ頼もしいな、通ってくれ」

剣士「御苦労」

魔術師「えへへ、ありがとうございますっ」

警備員(うお、でかっ…なんじゃあの女、現役だった頃の俺の親父以上ありやがる)


カンカンカン・・・

魔術師「わー、広ぉい…」

剣士「そうだな…ここから手探りで蜘蛛を一匹探すには嗅覚が何十倍か必要だろう…」

魔術師「えっと、こういう時って誰かに聞いた方が良いんですかね?」

剣士「それよりも先に、この現場の責任者への挨拶だな」

魔術師「あ、そっか、えへへ」
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/15(木) 20:53:12.29 ID:IIxpxRPH0
監督「ああ、そういや一週間前に出したな、討伐の依頼…」

剣士「忘れていたから帰れ、は通用しないぞ」

監督「はは、忘れていたのは図星だが、そんな無下に扱ったりはしねえよ、是非手伝ってもらいてえ」


魔術師「えっと、その蜘蛛さんって沢山いるんですか?」

監督「正直現場にいる俺らにもよくわからん、奴らは地中に潜んでいるからな」

剣士「岩石を掘り、そこに巣をつくる習性を持つと聞いた…ならば地上にも奴らが掘った穴はあるのではないのか?目撃者がいるということは、地上で確認したという事だからな」

監督「あー、あるっちゃあるな、奴らが食い散らかした憎たらしい穴だ」

剣士「ならばそこを埋めるなり水を放つなり…」

監督「やってみたが効果はねえ、穴は途中で陥没して行き止まりになっていることも多いんだ」

剣士「……ふむ…」

監督「それに、開けられた穴の数も膨大だ…そんなことに労力は割けねえんよ」
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/15(木) 20:55:30.48 ID:IIxpxRPH0
剣士「……」

魔術師「……うーん」

監督「はは、まぁ難しく考えなさんな、確かに早く討伐してほしい奴らではあるが、時間制限があるわけでもないだろう?」

剣士「……」

魔術師「はい、ですけどやっぱり、早めに仕事は終わらせた方が良いですよね?」

監督「まぁまぁ、急ぐと事を仕損じるもんでな…」

コポポポ・・・

コトッ

監督「粗茶だ、安物で銘柄は知らんが飲んでくれ」

魔術師「わあ!ありがとうございます!」

監督「はっは、ベーグルもあるからな、まあ適当につまんで、ゆっくりしていってくれよ」

剣士「…ありがとう」

監督「はっはっは…ま、俺はあっちの部屋で仕上げにゃならん書類があるが、準備ができたら呼んでくれ、問題の場所を説明して回ってやるからな」
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/15(木) 20:58:52.21 ID:IIxpxRPH0
剣士「……」ゴクゴク

魔術師「優しい人ですねー」

剣士「そうだな」

魔術師「もっとこき使われるかと思ってました、こう…来たらすぐ蜘蛛を探すみたいな」

剣士「悪かったな、昨日はこきつかって」

魔術師「あ、ご、ごめんなさいそういうわけじゃないです…あう」

剣士「冗談だよ」

ズズズ・・・


剣士「……ふう、あったかい」

魔術師「ですねぇ」


剣士「彼らの話では、どうも蜘蛛は見つけにくいものらしいな」

魔術師「…地面の中にいるのって、どう探せばいいんでしょうね?」

剣士「確かにそれは問題だな、なんとか地上にあぶりだす手でもあれば仕事が早く終わりそうなものだが…」

魔術師「…長くなりそうですねー」

剣士「そうだな」

魔術師「…えへへ、でも私、ミゼラさんと一緒にいるの、楽しいから全然平気ですよ!」

剣士「……そうか」
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/15(木) 21:03:07.60 ID:IIxpxRPH0
カンカンカン・・・カンカン・・・


監督「ここだ、ここ…登れるか?」

剣士「よっ…ふう、なんとか」


魔術師「ふう、ひい…あぅ、山を歩いてるみたいです…」

剣士「手を貸してやってもいいぞ?」

魔術師「だ、大丈夫です…ふうっ…」


監督「…作業の際には形の整った石を切り出す…当然、質を吟味して選んで切りだすから、アスメの穴のせいで品物の形が悪くなったりとか、そういう被害はあまりない」

剣士「……ふむ、だがまるで蜂の巣だな」

監督「ああ、ここまでやられるとさすがに辛いがな…ここはもう、どこに空洞があるかわからん場所になっちまって、作業は行われていない」

魔術師「わー、すごいぼこぼこしてる」

監督「最初の被害が出たのもここだ、こっからどんどん、まだ平らな切り出しの始まっていない区域にも被害が出始めた」

剣士「被害額が気になるところだな」

監督「はは、そいつは勘弁してくれ…次はこっちだ、ついてきてくれ」

魔術師「あ、もうここ下りちゃうんですか」
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/09/15(木) 22:53:04.91 ID:OuOBN4Olo
乙した
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/16(金) 19:39:58.93 ID:Le44HvfV0
監督「……とまぁこんなところだ、被害は今のところ、広く浅い感じではある」

剣士「ふむ」

魔術師「つ、疲れたぁ…」

監督「だがここから被害が続けば、こちらも仕事ができなくなっちまうからな」

剣士「なるほど、わかった、状況は把握した」


監督「討伐の手段は何でもいい、ただし現行の作業の邪魔をせず、あまり石を破壊しすぎないようにしてほしい」

魔術師「ひっそりと、っていうことですね!」

監督「んー?まぁそんなもんだな、やり方は任せるぞ…じゃ、俺は現場に戻らせてもらう」

魔術師「お仕事中にごめんなさい」

監督「なぁに、頼んだのはこっちだ…さっきの部屋は好きに使って良いから、頼んだぞ」

剣士「任せろ、必ずアスメ共を血祭…討伐してやる」

魔術師「今回は私もがんばりますよー!」

剣士「おう、期待してるぞ」

監督(腕は知らんが、仲良しな二人組だな)
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/16(金) 19:41:37.59 ID:Le44HvfV0

剣士「…と、格好だけはつけてみたが」

魔術師「あははー、広いですよねー、採石場って」

剣士「……参ったな、この広さは手探りでなんとかできる規模ではない…」

魔術師「どうしますか?」

剣士「……」


剣士「とにかく、奴ら害虫共が逃げ隠れするようでは埒が明かない…なんとかあぶりだして、それを叩き潰していく方向で行こう」

魔術師「…あ!穴の前にベーグルを置いて待つのはどうでしょう!?」

剣士「うむ、そういった前衛的な試みは嫌いではないぞ」

魔術師「えへへー」
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/16(金) 19:44:55.34 ID:Le44HvfV0
魔術師「……」ジーッ

剣士「……」


魔術師「……なかなか、蜘蛛さん出てきませんねぇ?」

剣士「…ホリィ、お前本当にベーグルを置いて出てくると思っていたのか」

魔術師「え?でもミゼラさんも今こうして…」

剣士「それはまだ私がこれ以外の策を思いついていないからだ」

魔術師「ああ、そういうことですね、なるほどぉ」


剣士(…くそ、なるべく多くの任務をさっさとこなして、ギルド側に実力を認めさせたかったのだが…)

魔術師「蜘蛛さーん、美味しいよー、焼きたてだよー」

剣士(……これは思いのほか時間がかかるかもしれないな…)

剣士(そもそも受付の男の話では、私の剣がアスメに通用するかどうかわからないと…むぅ、まいった…)


剣士「……ん?」

魔術師「え?」
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/16(金) 19:49:39.78 ID:Le44HvfV0
剣士「そうだ、ホリィ、お前は魔術師だな?」

魔術師「? はい、魔術師ですよ?」

剣士「属性は?いや、何級までの術を扱える?」

魔術師「え?」

剣士「魔術能力試験の結果は?学校――」

魔術師「まま、待ってください!そんないっぺんに言われてもー」


剣士「…よし、じゃあまずはどの程度魔術を使えるのかを聞かせてもらおうか」

魔術師「……うーん、落ち着いている時なら中級の術は使えますよ!」

剣士「おおっ」

魔術師「属性は火とー、水とー、雷とー、あと頑張れば風も!初級なら土もかな?鉄は使えないんですけど…」

剣士「…三属性は中級までか…ふむ、かなり優秀じゃないか?」

魔術師「えへへ、学校のテストだけです…独術も使えないし…」

剣士(属性を使ったあ炙り出し……ホリィの力を見るいい機会でもある、やってみるか…)
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/16(金) 20:01:12.35 ID:Le44HvfV0
――作戦1、水攻め


魔術師「えっとー、ここの穴に向かって水をたくさん落とせばいいんですね?」

剣士「そうだ、排水溝に向かってバケツをひっくり返すような、洗い流すような感じで思いっきり流してくれ」

魔術師「…これで蜘蛛さんがどこか穴から、ぴゅーって飛び出てくるんでしょうかね?」

剣士「安易だが私はその発想に賭けてみるのも悪くないと思っている」


剣士「…つまりは、高い位置から穴に向かって大量の水を注ぐ…蜘蛛の洗い流しだ」

魔術師「蜘蛛さん、溺れちゃうんですか?」

剣士「どうだろう、やってみないとな」


魔術師「……では、いきますよ!」

剣士「ああ、遠慮せず思いっきりやってしまえ!」

魔術師「すぅー…はぁー…」


魔術師「……“アーキュ・ルーツ”!」

ゴポッ、ゴポポポ・・・

ザババババッ


剣士「!」
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/18(日) 08:32:32.58 ID:sbRPAnh+o
もう少しまとまった量投下できない?
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/21(水) 20:46:41.76 ID:he1mH1lh0
ザザザザザザ・・・

魔術師「…」

剣士(…すごい、本物の魔法だ…割と下級の、ただ水を生み出すだけの魔法のはずなのに、なんて量だ)


ザザザザ・・・


剣士「! そうだ、どこかの穴から水流が沸き出てくるはず…それを見つけないと…!」


ザザザザ・・・ ザザザ・・・

剣士(水流の音は……まだ続いてる、岩の中に掘られた空洞は長いという事か)

剣士(ホリィの魔力の量も心配だが、とにかく穴の終点を洗い流すまで…)


魔術師「……」


ザザザザザ・・・ ゴポッ、ゴポポ・・・
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/21(水) 20:48:44.59 ID:he1mH1lh0
魔術師「……あ!」

剣士「む!?」


ゴポッ・・・ゴポポポ・・・

魔術師「わ、わわわ!水が逆流してる!?」

剣士「ホリィもういい、術を止めるんだ」

魔術師「は、はいっ」


剣士「…くそ、穴がどこかに通じていると考えたのが浅はかだったか…行き止まりしかなかったようだ」

魔術師「…うう、溢れた水で靴が少し濡れちゃいました…」

剣士「すまんな、私のと替えてやっても良いぞ」

魔術師「え、いやぁ、そこまでひどくないので大丈夫です、というよりミゼラさんの靴、私はけませんし」

剣士「……」


剣士(もしかしたら今の穴に十分に水が満たされ…中に居た蜘蛛を溺死させたかもしれないが…)

剣士(はたして、それを調べるのは難しいな)


剣士(どうにかしてアスメの現物を穴から引っ張り出したいが…さて…?)
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/21(水) 20:59:31.91 ID:he1mH1lh0
――作戦2、火炙り


魔術師「…わあ、ここの石、大理石みたいにつるつるしてます!」

剣士「こんなに高そうな石でも、食われてしまえば用途が限られ、売りにくくなってしまうな」

魔術師「…ここにも穴があいてますね…虫なのに、どうやってこんな大きな穴を開けているんだろ…」

剣士「少しずつ齧っているのだろう…蔵のネズミ、床の間のタズム、縁の下のシロアリというやつだ」

魔術師「ほんの少しでも、私だったら歯がかけちゃいます…」


剣士「……うむ、ここなら丁度良いかもしれんな…この低さ、角度…この穴でいってみよう」

魔術師「えっと、次はー…?何をすればいいんですか?」

剣士「ホリィの術で、この穴に火を通してみようと思っているが…できるか?」

魔術師「…うーん…魔力もまだまだあるので、大丈夫です!やってみます!」

剣士(生き物というのは水には耐えられても、熱にはとても耐えられんものだ…これならば上手くゆくかもしれん!)
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/21(水) 21:14:48.54 ID:he1mH1lh0
魔術師「えーっと、たき火みたいにぼーって、やればいいんですか?」

剣士「うむ、イメージとしてはそうだが、……そうだな、大罪人を焼き殺すほどの強さでやってしまって良いぞ、容赦はいらん」

魔術師「そ、そんなのよくわからないです!」

剣士「ならばドラゴンの丸焼きを作るような火力で良い」

魔術師「……えへへ、ドラゴンの丸焼き…」

剣士(ドラゴンなら良いのか?)


魔術師「じゃあ、放ちますね…熱いので離れててくださいね」

剣士「…お前自身はいいのか?」

魔術師「はい、自分の魔力で作ったものって、術者に及ぼす影響は少ないんですよ」

剣士「ほー…便利だ」

魔術師「…いきますよー」


魔術師「……“イアニュス・ルーツ”…!」

シュボッ・・・ボボボボボボボボ!


剣士(…すごい、やはり魔術は派手さが違う…応用も利く…国が力として教育に金をつぎ込むのも納得だ)

剣士(そしてホリィ…こいつもそうだな、なかなかの教育を受けているらしい…)


剣士(…確かにホリィ、こいつは優秀だろう…だが…)


ボボボボボ・・・
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/22(木) 23:29:59.42 ID:aA1lIYot0
魔術師「……」

シュボボボ・・・


剣士「…さて、ホリィが頑張っている間に私は“煙突”を探さなければ…」

剣士「今のところ煙が出ている穴は…」


剣士「…む!」


モク・・・モクモク・・・


剣士「…来た、煙…!あそこか!」

タタタ・・・

ズザザッ


剣士「ここで待ち伏せをしていれば…中にアスメが潜んでいれば…!」


モクモク・・・

剣士「……」


モクモク・・・

剣士「……チッ」
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/22(木) 23:37:02.20 ID:aA1lIYot0
剣士「失敗か…むむむ」

魔術師「うーん…なかなかうまくいきませんねっ」

剣士「火炙り…アイデアは良いとは思ったんだが…やはり穴が多すぎるか…?」


魔術師「…あの、ミゼラさん!私ならまだまだ全然平気なんで、大丈夫ですよ!」

剣士「うむ…いや、だが虱潰しをするにしても、あまりにその数は多い…違う作戦を考えなければならんな…」

魔術師「……」

剣士「何か効率の良い方法は…」ブツブツ


スッ

剣士「!!」

ナデナデ

魔術師「えへへー」ナデナデ

剣士「…何のつもりだ?」

魔術師「えへへ、考え込んでるミゼラさん、なんだか可愛くて…」

ゴツン


魔術師「…あうう…殴らなくても…」

剣士「ホリィ、お前も真面目に考えろ、真面目に」
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/22(木) 23:41:48.60 ID:aA1lIYot0
監督「あー疲れた…まぁ今日の作業は随分と進んだ方かな…やれやれ」

ガチャ


監督「こう毎日石の上を歩いていると、足首もすり減っちまう……ん?」

剣士「この石山の穴がこうで、こっちの崖にある穴からくるわけだから…」ブツブツ

魔術師「むにゃむにゃ…ベーコンパン…」


監督「…おいおい、なんだこりゃ、採石場の地図なんか広げて…本もそこらに散らかってやがるし」

剣士「む、おお、ここの監督か、すまないな、言葉通り好きに部屋を使わせてもらっているぞ」

監督「…いや…まぁ好きに使えといったからな、うん」


ガサガサ、ガサ

監督「よっ…足場がねえや…こんな夜までここで、一体何をしてるんだい?」

剣士「ふん、決まっているだろう」


剣士「蜘蛛根絶の作戦会議さ」

監督「…そうか、くくく、会議ねえ…」

魔術師「むにゃぁ……」

剣士「…一人でも、頭の中では会議中なのさ」

監督「はっは…いや、だが物凄い集中力だな」

剣士「もちろんさ、急ぎだからな」


剣士「今日中にくまなく採石場の地形を調べ上げ、奴らをあぶりだせる場所を探してやるんだ…!」
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/22(木) 23:45:34.32 ID:aA1lIYot0
監督「じゃ、俺は家に帰る…この事務所は好きに使っても良いが…」

剣士「ん?何だ?」

魔術師「うーん…むにゃむにゃ…」


監督「…あー、なんだ、あまり根を詰め過ぎるのは良くないぞ」

剣士「何を、私は仕事をしているだけだ」

監督「……そうか」


監督「ま、無茶して風邪はひかないようにな!遅くまでやるつもりなら、温かいもんでも飲んどけ!」

剣士「ああ、心配には及ばない」

監督「よし、じゃあ明日もまた、頼んだぞー!」


バタン


剣士「……」

魔術師「…すやすや…」

剣士(…こんな所で足踏みはしていられない)


剣士(さっさと終わらせてしまおう…そしてまた、次の仕事に…)
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/22(木) 23:46:33.33 ID:aA1lIYot0
魔術師「…うーん…うにゃ…」

剣士「……」

魔術師「んっ…くぅぅ…ふぁぁああ…」


チュンチュン・・・


魔術師「……うん?」

剣士「…すーすー…」

魔術師「……!」


剣士「…すーすー…」

魔術師「……」マジマジ


魔術師「…寝顔…かわいい!」
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/28(水) 00:31:51.09 ID:66CJrOaK0
続きがきになる
(・ω・)
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/09/28(水) 16:59:29.32 ID:FhtOcYn8o
ワクテカ
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/30(金) 23:08:37.02 ID:hJli1Wc80
剣士「…う…」


剣士「ぐあ…首が…首が痛い!くぅ……!」

魔術師「あ、ミゼラさんおはようございますー!」ペコッ

剣士(…最敬礼が私よりも全然高い…)

魔術師「?」


剣士「…うーん…朝か、どうやら寝てしまったようだな」

魔術師「あ、ごごめんなさい…」

剣士「私の事だ……お前は私より早く寝たけどな」


剣士「……まぁしかし」パサッ


“第二地区採石場 構成図”


剣士「…昨日のうちに大体は仕上げた…穴の位置、そこから予想される内部の空洞…」

魔術師「あ、この部屋にあったお茶入れたんですけど飲みますかー?」

剣士「ほう?気が利くな、いただこう」

魔術師「えへへー」
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/09/30(金) 23:10:03.94 ID:hJli1Wc80
剣士「……」ズズズ・・・


剣士「外は白いが…まだ曇りで日が見えないな」

魔術師「でも、なんだかこういう、どんよりしてて、全然晴れてない方が“朝”、って感じしません?」

剣士「…ふむ、そうかもな…私にはそんな繊細な感性は無いが…」

魔術師「ふんいきですよー、ふんいき」

剣士「……」モグモグ


剣士「…昨日の昼間に調べた穴の個所…穴の角度、それらはすべてこの地図の上に書きだした」ピラピラ

魔術師「わ、印がいっぱい」

剣士「細かい作業は得意だが、しかし肩が凝る…」コキコキ

魔術師「あ、じゃあ私が揉みましょうか?」

剣士「…いや、握り潰されそうだ、遠慮しとく」

魔術師「そ、そんなことしないです…」


剣士「朝蜘蛛は殺すなとの言い伝えだが、その教えに唾を吐きにゆくぞ、さあ支度をしろ」

魔術師「え、もう行くんですか?まだお風呂…」

剣士「そんな贅沢なもの、ここにあるかわからん、早くしろ」
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/10/03(月) 23:47:17.32 ID:lty6xok50
ザッ

剣士「……」


ヒュォオオ・・・


剣士「ふう、朝の風は気持ちいいが、少し冷たいな」

魔術師「靄で町がかすんで見えるー」

剣士「…さて」パサッ


剣士(昨日の水攻めは明らかな失敗だな…上から水を流したところで、日常の雨を凌ぐ能力を持っているであろうアスメを追いやれるはずはない…)

剣士(つまり、岩の上部に開けられた穴には、アスメが潜んでいる可能性は少ないということだ……)


剣士(…これはアスメの能力が雨の耐性を持たない事を前提にした考え方だから、詳しくまではわからんが…)

剣士(上部に穴をもたない個所だけに絞れば……穴の数はかなり限られる)


剣士(アスメの生態が私の考え通りかどうかは後だ、とにかく数は絞った、まずはこの線でやってみよう)

魔術師「あ、黄色い石だー!綺麗!」

剣士「石好きだな」
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/10/03(月) 23:51:02.32 ID:lty6xok50
魔術師「ここに火を放てば良いんですねー?」

剣士「うむ、景気良く頼むぞ!」

魔術師「はーい!」


魔術師「…“イアニュス・ルーツ”…!」

シュボボボッ・・・


剣士(…さて、ここが上部に穴を持たない箇所だが…ここは昨日来た崖だな、垂直に剃り立つ断崖だ)


剣士(この採石場が初めてアスメに食われた場所で、ここから他の平たな岩場にもアスメが来たらしい…と…)

剣士(……上部に穴を持たない穴がある場所はここだけだ、間違いない。ここはきっと何かいるはず…)


シュボボボ・・・
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/10/04(火) 13:21:01.13 ID:lUpwbnseP
続きにたどり着くまでにいつまでかかる予定?
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/10/04(火) 15:12:34.27 ID:8N6Mt0LAO
( *・∀・)<あとちょっと
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/10/04(火) 23:03:34.50 ID:95Es8kd10
剣士(…?おかしいな…)

剣士(アスメが雨を、巣穴への浸水を嫌うならば…何故縦に穴を掘る…?)

剣士(いや、アスメは雨を嫌っていない…水浸しになっても大丈夫な機構を持って…違う、そうじゃない!)


シュボボボ・・・


剣士「…陸上で暮らす生き物が…しかも蜘蛛が水を好むはずがない…」

剣士「ならば何故アスメはこの採石場に、崖以外の場所を縦に…穴を?そんな必要が?」


剣士「……思い出せよ…何か…何か……」


“あー、あるっちゃあるな、奴らが食い散らかした憎たらしい穴だ”


剣士「食い……散らかす…!」


シュボボボッ・・・!


剣士「ホリィもう良い!そこから離れろ!こっちに戻れ!」

魔術師「えっ?でもまだ……」


ゾワゾワ・・・ゾゾゾゾゾゾ・・・!
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/10/04(火) 23:06:10.75 ID:95Es8kd10
錆蜘蛛「ジャッ…ジャジャジャ…」

「「ジャジャ…ジャジャジャジャ…」」


魔術師「わ……わわわ…!な!なんかいっぱい出てきた!」

剣士「チッ!馬鹿だった…!もっと早く、昨日の時点で気付いていれば!」

魔術師「み、ミゼラさぁん!?なんだかすごい蜘蛛さんが沸いて出てますよっ!?」

剣士「少し迂闊だったな…この崖は全体がアスメの巣だった!」

魔術師「ええっ!?」

剣士「崖以外に開いた穴は全て、こいつらのただの“食事場”に過ぎない…!崖は大本命、奴らの巣だったんだ!」


錆蜘蛛「ジャ…ジャジャ……!」


カチカチ、カチ、カツカツカチカチ…


魔術師「わわわ、崖を歩く音がとても金属みたいですねっ!?」

剣士「言ってる場合か!さっさと来っちこい!襲ってくるかもしれないぞ!」
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/10/04(火) 23:09:34.19 ID:95Es8kd10
「ジャジャ…ジャジャジャジャ…」

カチャカチャ カチカチカカカッ…

カツカツカチカチカツカツカチャカチカチ…


剣士「耳障りな足音…まるで鈑金工場にいる気分だ」

魔術師「…蜘蛛さんたち、崖を歩き回ってるだけで私達に襲いかかってきませんね…?」

剣士「…そうだな…巣穴や、中にいる子供が最優先なのかもな、どの道好都合だ」

魔術師「子供、ですか?」

剣士「ああ」


剣士「…奴等は普段はあの巣穴に身を隠しているが、食事の際には外へ出て、別の場所から鉱物や岩を食う」

魔術師「それを子供達にあげるんですねっ?」

剣士「憶測だがな」

魔術師「なるほど……ミゼラさんすごい!」


剣士(…崖を過度に食わないのは巣穴の崩壊を恐れているから…か?だとすれば合点はいくな…)

剣士(火の煙から子蜘蛛を守るために外へ出てきた…うむ、やはりここは巣だろうな)
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/10/05(水) 22:26:31.71 ID:cz1LLVqy0
剣士「…しかし参ったな」

魔術師「……はい」


「ジャジャジャジャジャジャ…」

カチャカチャ、カチカチカチ…


剣士「ひーふーみー…ふん、数えるのも面倒だ…奴等を一網打尽にできればそれこそ大漁なのだろうが」


錆蜘蛛「…ジャジャ……」カチカチカチ・・・

魔術師「…あんなにいたら、何を退治したらいいのか分からないですねー…」

剣士「…全くだ、律義に現れ、律義に一体ずつ襲ってくるならば良いんだが…」


カチカチカチ…カチカチカチ…


魔術師「……あの、試しにまた火を放ったり…?」

剣士「前衛的だが、それはやめておけ」


カチカチカチカチカチ…
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/10/10(月) 10:05:47.71 ID:ec08bxtJo
まだかな?
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/10/10(月) 10:06:35.51 ID:ec08bxtJo
まだかな?
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/11(火) 00:52:26.08 ID:8JmhvyuIO
まだかー
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/10/12(水) 21:39:28.87 ID:mxANe81T0
ガチャッ

監督「おい聞いたか!?崖の所にアスメ共が大量に沸いていやがるって…!」

剣士「うっさい知ってる、そいつらを巣穴から追い出したのは私達だ」

魔術師「むふぅー…」

監督「あんたらが…?そうか、そりゃお手柄だ…!奴等の居場所さえわかれば…!」


剣士「……」

魔術師「……」

監督「…どうした?」

剣士「…ふー、参っているんだよ、仕事が進展していよいよ大詰めとなった今、こんなクライマックスにな…」

監督「どういうこった」

魔術師「あ、落とし穴とかどうでしょう!?」

剣士「馬鹿者、穴は奴等の十八番だろうが」

魔術師「あう」
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/10/12(水) 21:46:54.47 ID:mxANe81T0

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


監督「…なるほど、炙り出したはいいがそこからどう退治するかが考えつかない…と」

剣士「ふ、情けない討伐隊だと笑ってくれて良いぞ…畜生、数をせいぜい二、三匹と踏んでいたのが甘かったか……」

魔術師「私の覚えてる上級魔術をぶつけても、きっとあの崖全域に威力が及ばないだろうし…そもそも崖が崩れちゃうし…うーん」


監督「……これはどうだ?四方を新たに雇った増援で囲み、一斉に討伐する…」

剣士「そ、それはダメだ!」

監督「? 何故だ?一番効率的だと思ったんだが」

剣士「…それは…金がかかるだろう?何人雇うつもりだ?」

監督「……それはそうだが、この際すぐにアスメ共を全滅させられるなら…」

剣士「わ、私達だけでなんとかしてみせる!考える!元々私達の任務だろう!?」

監督「…まあ…それはそうだが…」


剣士(この任務は、私の名声を世に知らしめるチャンスなんだ…傭兵達が力を合わせて採石場を守った、なんてニュースはいらない…!)
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/10/12(水) 22:13:35.72 ID:An2dysZAO
そんなことがあるのか
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/10/13(木) 20:19:59.70 ID:8G5scXmb0
魔術師「……あ!落とし穴がダメならー…崖の下におっきな穴を掘って、その後蜘蛛さんを落としてー」

剣士「落とし穴じゃないか」

魔術師「まだまだ続きがあるんですよ!」

剣士「続き?」


魔術師「はい!それでですね!そこに私の一番の術を、何発も放つんです!」

剣士「…なるほど、穴に潜らせる前に術で一網打尽…か」

魔術師「絶対に逃げられないと思いますよ!一か所の穴のような所に集めれば、みんなに攻撃できますし」


監督「…おい待て、その、アスメ共をたたき落とすための穴ってのは誰が掘るんだ?」

魔術師「……あ」

監督「それにその、一番強い術か?本当に連発できるのか?」

魔術師「はう…」

監督「アスメが術を防いだり、術に当たらなかったりして、穴から逃げ出したらどうするってんだ」

魔術師「…考えてなかった…」

剣士「……うむ…」


監督「…ここでの労働者も、崖に群がるアスメ達の不気味な光景に怯えてんだ…離職者が出る前にさっさと事を済ませたい…」

剣士「ま、待ってくれ、しかし増援は…」

監督「それもやむなしさ」

剣士「……」
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/10/14(金) 20:43:25.92 ID:Mamn9oFv0
監督「…とりあえず、俺は今から朝礼だ」

魔術師「はい」

監督「労働者達に話をして、落ち着けてくるが…それでもあの巨大蜘蛛への恐怖は拭えないだろう」

剣士「……」


監督「…あいつらはここ毎日、アスメの穴を気にして、石以上に精神を削って働いてきたんだ…できるだけ俺は、あいつらを安心させてやりたい」


監督「石工は八卦国の宝だ…この国を支えている柱のひとつだ、その卵達を腐らせたくない」


監督「…午後だ、今日の午後までに何か良い案を出してくれ…」

剣士「午後って…」

監督「無ければ、申し訳ないが俺は傭兵協会の方に増援の依頼を出してくる」

剣士(……くそ…!)


監督「じゃあ、朝礼にいってくるからな……また、午後に」

バタン
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/10/18(火) 22:38:05.15 ID:xoMWzAKL0
魔術師「…うーん…確かにあの人の言うとおり、人を沢山集めて囲んで駆除した方が…」

剣士「ふざけるなッ!」ダンッ

魔術師「ひゃっ…!剣士さん!?」


剣士「…チャンスなんだ…傭兵協会に、私の功績を知らしめる…!」

魔術師「け、剣士さん、落ち着いて…!」

剣士「こんな、こんな採石場などどうなっても知った事か!元々もう切り出す予定の無い崖なんだ、爆破してでも………ッ…!」フラッ


剣士(……くっ…!?頭が…)

バタッ

魔術師「! 剣士さんっ!」

剣士「…くそ……この手柄は…私の……!はぁ……はっ…!」

魔術師「す、少し静かにしてくださいっ、落ちついて…大丈夫ですか?頭が痛いんですか!?」ピト

剣士「馬鹿者…落ちついていられるか…!」


魔術師(! 酷い熱…!やっぱり、昨日の徹夜で…!?)

剣士「…はぁ…はぁっ…!…あと少しで…少し…!」
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/10/20(木) 20:40:56.12 ID:uE6+n1lC0
魔術師「ミゼラさん、無理しちゃだめです!すごい熱ですよ…!」

剣士「…こんなもの…!デノン熱に比べたら…!は、はっ…」

魔術師「ダメですー!行っちゃだめですー!」グイッ

剣士「は、離せ…!いや降ろせ!」ジタバタ


魔術師「ま、まだまだ時間はあるんですよ!?午後まで時間はあるんですよ!?」

剣士「ない!そんなものを待っていたら、私はきっと、いつまでも猶予を引き延ばす怠惰な一生を送る事になる!」

魔術師「休む時にはちゃんと休まないとだめですよー!」

剣士「甘えてられないんだ!私のような人間は絶対に、妥協なんてできないんだ!一度でも妥協した人間は、ずっと甘え続けるんだ!」


剣士「私は…!私はそんなものご免…」

魔術師「!」

剣士「だぁ……」バタッ

魔術師「み、ミゼラさんー!」
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/20(木) 23:21:32.28 ID:QkRMy1r2o
「一度でも妥協した人間は、ずっと甘え続けるんだ!」
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/22(土) 06:09:45.39 ID:FeQ6LF4IO
まっていたよ。頑張れ。
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/10/24(月) 20:53:08.80 ID:O3kuOGN40
剣士「…すぅ…すぅ…」

魔術師「えっと、これを絞って…

ギュッ ボタボタ


魔術師「…これで熱さましになりますよねっ」

ビチャンッ

剣士「ぶっ…」

魔術師「あ、滴が口に入っちゃった…拭きとらなきゃ」フキフキ

剣士「ぅう……」


魔術師(…寝顔…すごく苦しそう)

魔術師(どうしてミゼラさん…こんなに無理して、力入れて頑張っちゃうんだろ…)

魔術師(…傭兵さん達の間では…これが普通なのかな?)

魔術師(じゃあ私は、全然頑張ってないのかなぁ…)


魔術師「……」

剣士「…すぅ…すぅ…」


魔術師(懐中時計…まだ午後まで時間はある…でも四時間かぁ、うーん…)

魔術師(でもでも…ミゼラさんが動けない以上は、私がやるしかないんですよね?)
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/10/25(火) 21:18:00.02 ID:FZLRgHRU0
カキカキ・・・

魔術師「…崖がー、ここまで高さあるからー…広さはこうしてー、深さはー…やれるだけやってみるしかない…」


魔術師(私一人でどれだけ掘れるかなぁ……うう、もっと色々な術を覚えておけばよかった…)


魔術師「でも…今ある術だと…やっぱり作戦の最初と最後にしか役に立てない…むむむ、ずっとは無理かも」

魔術師「……手作業だけど…大丈夫!きっとできる…!」


魔術師「うん…よし、設計図はこれで大丈夫…かな?」

魔術師「後は…着替えて準備して…あ!そうだスコップ!スコップ探さないと!」バタバタ


魔術師「えっとー、これかな?これなら掘れそうかな?」ガタン

魔術師「あとはー…」


剣士「…すぅすぅ…」

魔術師「…紅茶、淹れておきますねっ、ふふふ…具合が良くなってきたら飲んでくださいっ」

コポポポ・・・


魔術師(…ミゼラさんが昨日あんなに頑張ったんだから…私も、それに応えないと!)
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/10/26(水) 20:42:26.14 ID:Rr0TEEs50
錆蜘蛛「ジャジャジャ…」

カチカチ・・・


魔術師「…ふわー…崖の真下にいると、蜘蛛さんが落ちてきそう…」

魔術師(…怖がってちゃ…何もできないですよね…!)


魔術師「時間制限はあるから、早くしないと…!えいっ!」

ガツッ


魔術師「……か」

魔術師「かったーい…あうう…」

魔術師「手が、手がしびれ…」

錆蜘蛛「? ジャジャ…」カチカチ


魔術師「うう、でも、でもでも掘れなくはないんです…頑張って、おっきな穴をあけないと…!」ザクッ

魔術師「よいしょ、よい…っしょ!」

ザクザク・・・
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2011/10/27(木) 00:25:23.36 ID:c8+krLICo
みてるよ
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/10/31(月) 22:04:28.68 ID:PwtnUqR50
カンカンカン・・・カンカンカン・・・


「……監督」

監督「あ、どうした?もうお前も作業を始めていいぞ」

「いえ、あの…崖の方なんですけど」

監督「さっきも言っただろう、崖の事は心配しなくても………!」



監督(…遠くてよく見えねえが、あれは…まさか)


カンカンカン・・・カンカン・・・

カン・・・

・・・


監督「……どうしたお前ら、作業を…」

「「「……」」」

監督「………別に、減給もしねえし、解雇もしねえよ」

監督「好きなように…今日は、好きなだけ、どこにでも穴をあけてやがれ!」


「「「……はい!」」」
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/11/01(火) 00:15:52.56 ID:Li9hy+iIO
もっともっと!
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [saga]:2011/11/01(火) 22:36:28.69 ID:l5VD9u840
カンカン・・・・カン・・・

・・・


剣士「……」ズズズ

剣士「けほ、けほっ…」


剣士「…石にノミを打つ音が…止んだな?何かあったのか…休憩か?」

剣士「……ふ、しかし…私はなんてざまだ…こんな、あいつがあんなに頑張っているであろう時に」

剣士「まさか、風邪で倒れてしまうとはな…情けない」


剣士「……」パサッ

剣士「…ふふっ、“落とし穴設計図”…か、よくこんな計画を思いついたものだな…」


剣士「絵が、ははは、なんだこれは?蜘蛛か?ははは…下手くそめ、まるでダニじゃないか」

剣士「ふふ……」ゴクゴク


剣士「…ホリィ…美味しいよ、紅茶」

サーバを移転しました@荒巻 旧サーバ:http://vs302.vip2ch.com/
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [saga]:2011/11/04(金) 19:47:16.67 ID:K+W3hwFB0
魔術師「よいしょ、よい…っしょっ!」ザクッ

魔術師「あうう、腰が痛いー……」ザクッ


錆蜘蛛「ジャジャジャ…」カチカチ

ガラガラッ・・・


魔術師「……え?何の音…」

ドゴォン!

魔術師「きゃっ…!ら、落石っ…!?」


錆蜘蛛「ジャジャジャジャ……」カチカチ

魔術師「く、蜘蛛さん達が…!?むむむ…!」


魔術師「邪魔されたって負けないもん!この崖の一面をすっぽりと落とせるような、深い落とし穴を掘ってやるんだからっ…!」ザクザクッ


ザクッ・・・ザクッ・・・

魔術師「よいしょ、よいしょっ…!」


ザクザクザクッ・・・ザクザクザクザクザクザクザクザクッ・・・


魔術師「……あれ?」

石工「……」ザクザク
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [saga]:2011/11/07(月) 22:58:39.10 ID:cBWsOma+0
魔術師「…あ、あの、みなさん…?ここの石工の方ですよねっ?」

「……」ザクザク


監督「よーし、そっちの土運び出せー、適当な所に積んでおいていいぞー」

「「「ういーっす」」」


魔術師「あっ…監督さん?どうしてここに?これは一体?」

監督「ん?おう、背の高いお嬢ちゃん、精が出るな」

魔術師「えっとー、ここって、もう石の切り出しはしていないんですよね?」

監督「……ああ、そうだ」

魔術師「…あ!え?じゃあもしかしてみなさん…!」
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [saga]:2011/11/08(火) 21:11:00.00 ID:0LiHWZT50
監督「俺が指示したわけじゃねえからな」


監督「…こいつらが、蜘蛛の大群の真下でせっせと土掘るアンタを見て…それで、勝手にやろうって始めただけだからよ」

魔術師「えへへ……ありがとうございますっ!」

監督「おーいお前ら、アスメ共の巣の真下たぞー、怖くねえのか馬鹿野郎ー」

「「「うーっす、超こえーっす」」」

監督「死ぬかもしれねえが、死んでも補償金下りねえからなー」

「「「うーっす、だいじょーっす」」」


監督「……全く、本当に土と岩削る以外能のねえバカ共だぜ」ザックザック

魔術師「えへへ…でもみなさん、優しくて素敵です!」ザクザク

監督「そうかー?学校も出てねえ奴らだ、ろくでもねえよ」ザクザク

魔術師「監督さんも素敵ですよ?」ザクザク

監督「…はっは!こんな老いぼれが素敵か!うれしいねえ…」ザクザク

「あれ監督、監督は学校行ってたんすか?」

監督「あん?1年でやめたよ馬鹿野郎、喋ってねえで手ェ動かせ」ザクザク

魔術師「…えへへ」
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/09(水) 01:40:24.54 ID:j1RveXEUo
でっかいとぼけた子、って可愛いよね
しかもそれが頑張り屋と来た日にはもうね

強気なちっちゃい子もかわいいけどさ
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [saga]:2011/11/09(水) 20:23:40.01 ID:mTAmGnuo0
魔術師「よいしょっ!」ガツッ


魔術師「……!あ…」

「…!こいつは」

監督「…あちゃー、まいったな…やっぱりここまで掘り下げると岩があるか…」ガンガン


魔術師「…ここは、スコップじゃ掘れないんですか?」

監督「無理だな、一番でっけーノミを使えばなんとか掘れるだろうが…これまでと比べりゃチマチマしたもんだ」

「監督、持ってきましょうか?」

監督「おう、一応全部頼む……それに、こんなにでっけー範囲を掘るには作業に集中してなきゃなんねえ」

魔術師「?」

監督「アスメの奴ら、時々上から石を落してきやがるだろ」

魔術師「あ、じゃあ掘ってる作業中に…」


監督「…怪我人が出るかもな…こいつは難しい作業になりそうだ」

魔術師「……うう…」
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [saga]:2011/11/10(木) 21:02:39.44 ID:IAw5o+yC0
「地下1メートルまでは掘れたようだな?」

魔術師「! あ…」


剣士「けほっ…よし、なら後は岩盤をすり鉢状に、できるだけ鋭角に掘っていけばいいだろう…」

魔術師「ミゼラさん!風邪は…!」

剣士「ふん、私はこんなものよりもっと恐ろしい病に冒された事がある、苦ではない」

監督「ちっこい嬢ちゃん…ここからはすり鉢状に掘ればいいのか?」

剣士「ああ、中央に向かって細くなるよう、円錐状に掘れば良い…アリ地獄ならぬ蜘蛛地獄にしてやるのさ」

監督「…なるほど、それならやつらも簡単には上がってこれそうにはないな…」

剣士「地中に逃げられるのは厄介ではあるが、一番困るのは穴に落とした後地上に出られ…再びどこかに巣を作られたり、人が襲われたりする事だ」

監督「なるほど、それなら……労働者達への被害も少なくて良いかもしれねえ」

魔術師「……」


剣士「…ホリィ、良いアイデアじゃないか」

魔術師「! …えへへー、ありがとうございます…」
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) :2011/11/11(金) 07:29:26.96 ID:glCh24bSO
おいいついただと…
まつてる
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [saga]:2011/11/14(月) 21:58:14.51 ID:9RvJavl+0
剣士「よし、岩盤を掘り下げる者以外も全員、ツルハシなど手近な武器を揃えろ!万一蜘蛛が襲ってくれば殺されるかもしれんぞ!」

「「「ういーっす」」」


監督「なんとまぁ、うちの従業員勝手に使ってくれちゃってよぉ」ガツッ、ガツッ

魔術師「えへへー」

監督「まー、これでアスメ共がいなくなるってんなら、俺も嬉しいんだけどな」

魔術師「任せてくださいっ!私、頑張りますから!」

剣士「ホリィ、お前はもう作業をやめて良いぞ、お前はやる事があるからな」

魔術師「ふえ?」


剣士「魔術だよ、体力を温存して、精神集中しておけ」

魔術師「なるほど!はーい」

剣士「…けほっ…あと、それとな」

魔術師「?」


剣士「…蜘蛛を落とす作戦、大型の術はもちろん使うが…効率の良い策を思いついた」ニヤリ

魔術師「…?」
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/14(月) 22:09:26.70 ID:CHS+ICxIO
もっともっと!
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [saga]:2011/11/16(水) 20:50:43.64 ID:YfoRniT90
監督「…ひゅー、こんなおっそろしい大穴に落とされたら、大人でもなかなか戻ってこれねえな…」

「予定よりも随分と深くなっちまいましたね」

監督「んー?まぁ念には念をだな、深けりゃそれだけいいだろう」


剣士「けほ、……落石で怪我をした者はいるか?」

監督「あー、ちょっと大きめの岩が肩にぶつかって傷負った奴らならいるが、んなもんは茶飯事だ、問題ねえ」

剣士「……すまないな、そちらの工員を扱うような真似…」

監督「なに、これが俺らの能力だ、気にすんなよ」


魔術師「……」

剣士「ホリィ、魔術の準備は良いか?」

魔術師「は、はいっ」

剣士「あまり緊張するな、呼吸とイメージが乱れるぞ」

魔術師「ううう、心臓の音が自分でも聞こえます…」

剣士「……大丈夫だ、お前ならできる」

魔術師「そ、そういうの私、弱いんです…」
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [saga]:2011/11/17(木) 20:11:12.09 ID:TUbHrnLy0
“最初は崖一面にへばりついている蜘蛛共を、大穴へたたき落とす事だけを考えれば良い”


魔術師「……じゃあ、いきます…」

監督「お、魔術か…滅多に見れないもんだな、どれどれ…おいてめーら、退避だ退避、離れてろ」

「「「…うーっす…」」」



魔術師(…多分、この術ならあの崖一面の蜘蛛さんたちを下に落とせる…かも!)

ヒュンッ

剣士(杖を……向けた、さあ何が出るか…)


魔術師「…“イグネンプト・コスモフィウス”…!」

バチッ、バチバチバチ…!


剣士(! 杖の先から雷光が…!雷の術か!)

バチバチバチバチッ・・・!


錆蜘蛛「……ジャ…!」
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [saga]:2011/11/18(金) 20:26:20.81 ID:Us0FtVvD0
バチチチチチッ!

「ジャ…!…ジャジャ…!」

「ギィ…ジャ…ジャジャジャ…!」


ガシャン、ゴトッ、ガシャッ・・・


監督「おお…!杖から雷撃が!?崖一面に放つとは…!」

「すげえ!蜘蛛がどんどん穴に落ちてくぜ!」

「おいみろあいつ、一番下にはまって痙攣してやがる!はっはっは!」


魔術師「はぁぁああ…!」バチバチ・・・

剣士(これは想像以上の広範囲だ…!雷撃が金属を求め、蜘蛛に狂いなく命中していく!これで全ての蜘蛛は穴に落ちた!)


錆蜘蛛「ジャジャ…ジャジャ…!」

剣士「…ふっ…ここまでくれば成功したようなものだ!みんな!這い上がってくるアスメ共の頭をツルハシでぶち破ってやれ!」


剣士「一匹たりとも這い上がらせるな!奴ら全員……奈落よりも恐ろしい蜘蛛地獄でもがき苦しませてやるのだからな!はははは!」

魔術師(み、ミゼラさん怖いです…)
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/19(土) 01:59:11.74 ID:fYCf0GIfo
魔術師かわいい
けど剣士が一番可愛いのを俺は知ってる
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [saga]:2011/11/24(木) 20:18:12.40 ID:Q+n3qWdR0
監督「おらこの野郎!よくも一等高ぇ鼈甲石を食ってくれやがったな!」ドガッ

錆蜘蛛「ギャッ!」

ドサッ・・・ゴロゴロ・・・ガシャッ


「うおらー!積年の恨みだ!死ねええええ!」ドガッ

「ジャジャジャ…!…ギィィ……!」

ゴロゴロ・・・ガシャッ


監督「…くそっ!あの野郎共、思った以上にタフだ!電撃で死んでねえ奴も多い、ツルハシでも穴の底に蹴落とすだけが精いっぱいだ!」

剣士「ご苦労、策はあるから安心するといい…さてホリィ、あの穴に向かって、使える中で最大級の火の術でもお見舞いしてやれ」

魔術師「え、えっ?」

剣士「魔力はあるだろう?奴らを熱で焼き尽くしてやりたいんだ、熱には弱いだろう」

魔術師「…わかりましたっ!やってみます!」

剣士「この虫けらめ!這いあがってこれるものなら来てみろ!」ザシュ

錆蜘蛛「ギィァァアア…!」

ゴロゴロ・・・


魔術師「…ふー…集中集中…」
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [saga]:2011/11/25(金) 21:39:53.04 ID:dSZBdI1g0

魔術師「“イアニュス・ラテルス・ヘリオスエッグ”!」

シュボボボボ・・・!

ボボボ!


「うわ、あっちぃ!」

監督「ぬおっ、なんちゅー熱風だ!あちち!」


剣士(おお、穴の上部に巨大な火球が生成された…!)


錆蜘蛛「ジャ…ジャジャジャ…ァアア…!」

魔術師「…熱いだろうけど、ごめんなさいねっ…“落ちろ”っ!」


ヒュッ

ゴォォォオオオオオ・・・!


「ギャァアア……!」

「ギィ…ジャジャ…ァア!」


剣士「…ふふ、壮観だ、熱にもがき苦しむ蜘蛛共め…ふふふ」


錆蜘蛛「ジャジャジャ……!」

剣士「…ほう、まだ這い上がる気力のある奴がいたか…底辺から這い上がるその気力は称賛に値するだろう、が」


ドスッ

剣士「私はな、お前ら虫が大っ嫌いなんだ」
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [saga]:2011/11/29(火) 00:06:18.18 ID:6Gxo3NqT0
ボボボボボボ・・・


魔術師「…解除っ!」

ボシュッ


魔術師「ふぇえー…さすがに疲れたー…」

監督「おお、すげえ…穴にいる半分以上はもう身動きすらしてねえ!」

「やった!アスメを退治したぞぉおおお!」

剣士「いや、まだだ」

魔術師「え?」

監督「なん……!あっ!」


錆蜘蛛「ジャジャジャ…!」

ガリガリ・・・


監督「くっ…奴ら!岩盤を掘って、地下に逃げてやがるっ!」

「ああ!あそこの穴はもう深くまで…!」

「やべえ、土の中に逃げられちまう…!」

剣士「ふん、問題ない…」
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [saga]:2011/11/29(火) 19:27:41.30 ID:6Gxo3NqT0
魔術師「え、ま、また魔術ですか?もう大きな魔術は失敗しちゃうかもしれないです…」

剣士「そんな大層な術は必要ないさ」

魔術師「え?でも地面に隠れちゃった蜘蛛さんたちを攻撃するとなると……」

剣士「ほんのちょっと、なぁに…水を生成する術を発動してやれば良い…くくく」

魔術師「…!…水ですねっ、わかりました!」

剣士「ああ、多めにな…」


監督「! そうか、なるほどな…嬢ちゃんあんた」

剣士「くくく…はは、はっはっは…!」

監督「…鬼だなぁ」


魔術師「“アーキュ・ルーツ”!」

ゴポッ・・・

ゴポ、ドドドドザザザザザ・・・!
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [saga]:2011/12/01(木) 21:00:16.94 ID:ojJFSZb00
剣士「奴らは巣穴を縦に掘らない…浸水しないようにするためだとすればな」

剣士「何故浸水を恐れるのか?それは当然、水が苦手であるからと考えるのが妥当だろう」


ドザザザ・・・


錆蜘蛛「ジャッ…ジャ…!」ゴポゴポ


剣士「突然真上に現れた火球の熱…そこから逃げるためには、火球から離れた…そう、地下、それも真下へ逃げるしかない…縦に掘るしかないのだ」


ドザザザザ・・・


剣士「鉱物を取りこみ、重くなった金属質の体…それで水中はさぞ辛かろうな」

剣士「残念だがこの穴は水はけの悪い岩盤…水流は貴様らの掘った穴に一滴こぼさず流れ込む」

剣士「水は低きに流れる……とは、少し違うか」


監督「お、水から這い上がろうとしてる奴らがいるぞー!引導渡してやれー!」

「「「ういーっす!」」」
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [saga]:2011/12/06(火) 20:50:13.31 ID:Aw7wgiFi0
錆蜘蛛「……」カチカチ・・・カチ・・・


剣士「はぁっ!」ドガッ

錆蜘蛛「ぎァっ……!」

ガシャン


剣士「……よし、これで生き残りはいないな?」

魔術師「ふー、久々に沢山魔術使ったなぁ…疲れたー…」


剣士「……ホリィ、今日は頑張ったな」

魔術師「えへへ……こんなに力を振り絞ったの、はじめてかもです…」

剣士「やればできるじゃないか……私以上に、すごいよ、お前は」

魔術師「……えへへー」


監督「よーしお前ら、その穴から蜘蛛を引っ張り出してこい、数かぞえて報告するからなー」

「「「うーっす」」」


剣士「けほっ、けほ……ふう、とにかく、終わりだな」

魔術師「……えへへ、ですねっ」
139 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/08(木) 19:09:16.45 ID:xNskpXwE0

監督「十、ニ十、…うお、32匹か…」

「子蜘蛛と合わせてっすけどね…親らしき蜘蛛は、背中に卵を抱えてました」

監督「ほう?じゃあもうあの崖に蜘蛛いねえな?」

「ええ、多分」

監督「よーっし…こりゃ思わぬ成果だ、まさかここまで早く討伐してくれるとはな…」


「…あの二人の女の子、良いっすよね」

監督「はは、気合いも入ってるし度胸もある、が…ちと、背が極端だな、ははは」

「あはは」


監督「……じゃ、俺は散らかされた事務所の掃除をするから…お前らは休憩でもしてろ、それが終われば通常通りの仕事だからな!」

「うっす!」



ガチャ

監督「はー終わった終わっ……あん?」


剣士「げほっ、ごほっ、か、風邪が…ぶり返した……」

魔術師「あうう…腰が…腕が…全身が痛いですぅう…」

監督「……」
140 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 11:09:42.23 ID:BINuTQgIO
みてるよ
141 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/12(月) 22:19:30.31 ID:mY+adnYA0
受付「アスメ、コロニーごと討伐…32匹全て…なんとまぁ」


剣士「ごほっ、げほっ…ふん、どうだ…私にかかればこんなものだ…」

魔術師「私達、ですよ…いたた、まめになってるぅ…」


受付「…依頼者側の報告書類には声援の声、感謝の言葉、…ファンクラブ参加希望?…まぁ色々ありますが…アスメからの被害は無いとありますね」

剣士「ふ、まぁな…虫けら相手にけほっ、…怪我などするものか…」

魔術師「あう!足つった!」ピキーン

受付「じゃあなんで今あなた方は死にそうなんでしょうか」


どんっ

剣士「!」

受付「まぁ、任務は完璧に成功ですね…予定よりも早く終わったようですし、依頼者からの評価も高い…うん、素晴らしい仕事です」

剣士「ふ…当然さ」

魔術師「えへへ、ミゼラさん沢山頑張りましたからねっ」


受付「報酬はあちらのカウンターで受け付けていますので、こちらの切手を持って、どうぞ」

受付「おつかれさまでした、ミゼラさん、ホリィさん」
142 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/13(火) 21:06:10.59 ID:APcnP6Z+0
――八卦の国、ニの町 大通り


剣士「ごほっ、ごほ……あー…ふらふらする…」

魔術師「ミゼラさんm大丈夫ですか?おんぶしますよ?」

剣士「馬鹿にするな、一人で歩ける…子供じゃあるまいし…」

魔術師(…子供みたいだけどなー)


魔術師「…でも本当に大丈夫ですか?本当に具合が悪そうですよ…」

剣士「……問題ない」フラフラ

魔術師「…無理はしないでくださいね?」

剣士「ただ歩くだけに無理も何もあるものか…」

魔術師「……」

剣士「……」フラフラ


ガッ


剣士「あ」フラリ

魔術師「わわわ!危ない!」ギュッ

剣士「うぐう」

魔術師「ほらー、だから無理はだめって言ったんですよ…」

剣士「ぐ……」
143 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/19(月) 20:41:12.11 ID:xT2ND3qj0
魔術師「ミゼラさんって、すごい努力家ですねー」

剣士(くそ…結局おんぶか…なんてザマだ……)


魔術師「……あれ?起きてますか?寝ちゃいました?」ユッサユッサ

剣士「起きてる、あやすように揺するな」

魔術師「あ、えへへーごめんなさい…」


剣士「……私はこの世の中、努力さえすれば…できないことなどほとんどないと…そう思っている」

魔術師「あ、私のお母さんもそう言ってました!先生も!」

剣士「良い親と師を持ったな、なかなか啓けている」

魔術師「えへへ」
144 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 22:54:18.78 ID:3yva9ORIO

できればもう少しでいいからペースを…
145 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/20(火) 13:40:37.71 ID:HOUph14W0
ちょっとまとめて投下して終了宣言って感じが読みやすいのだが
146 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/20(火) 15:11:20.55 ID:4UNOxQnPo
別にこのままでいいけどな
長期間書かなくなったらタブから消すだけだし
それぐらいの内容だろ
気ままに続けてくれ
147 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/20(火) 21:20:21.47 ID:OZpDh/dIO
この作者さんは大体こんな感じです
148 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/20(火) 21:24:57.30 ID:srIbxDTyo
過去作の焼き直しだけどな
149 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/20(火) 22:35:01.73 ID:iJTS/PE80
剣士「努力とはいえ、さすがに努力だけでは王族にはなれないだろうが…」


剣士「…しかし、それは無理だとしても、成れるものや出来ることは、限りなく多い…と、思う」

魔術師「うんうん」

剣士「人の一生などあっという間だ…時間は無駄にはできない」


剣士「だから私は、私の夢を実現させるため、努力を、時には無茶をすることも惜しまない」

魔術師「ほえー…ミゼラさんの夢ですか、どんな夢なんですかー?」

剣士「……」

魔術師「?」


剣士「うるさい、さっさと歩け」グイ

魔術師「あう、髪ひっぱらないでー…」


剣士「とにかく、私は夢を叶えるために、己を道を切り開くために…こうして、急いでいるんだ」

魔術師「仕事をですか?」

剣士「そうだ」

魔術師「ふーん…急ぎの夢なんですね?」

剣士「急ぎの夢……?うむ、まぁ…そうかな」
150 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/20(火) 22:36:54.31 ID:iJTS/PE80
魔術師「あ」

剣士「……?どうした、立ち止まって…けほっ」


魔術師「ミゼラさんって、一人暮らしですか?」

剣士「…うむ、まぁ…そうだが?」

魔術師「…えへへー…」

剣士「? なんだよ、いきなり笑って…気持ち悪いな」

魔術師「じゃーこれから、私の住んでるお家に行きましょう!」

剣士「……は?」

魔術師「看病ですよ!かんびょー!」

剣士「なん……?そんなのはいらん!降ろせ!」

魔術師「だーめです!風邪のまま一人じゃ、本当に辛いんですから!」タッタッタッタッ

剣士「うあ!揺れる!高い!」

魔術師「仕事がまた上手くいったって、おばさんに褒めてもらわなきゃ!」
151 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/20(火) 22:38:15.91 ID:iJTS/PE80
店主「あら、ホリィちゃんおかえり!…って、あら…その後ろの子は…?」

剣士「……」ムスッ

魔術師「えへへ、前に話した友達のミゼラちゃんです!」

剣士「ともっ……」

店主「あらー可愛い!抱いて良い?」

魔術師「えへへ、いいですよー」

剣士「おいこら、人を小動物のように扱うな」

店主「うふふー…ホリィはすぐにぐんぐん成長したから抱っこできなかったけど…この子は良いわねえ」ギュ

剣士「暑い!」


魔術師「えへへ、まぁまぁおばさん、中に入りましょ!もう今日は疲れちゃいましたから…」

店主「あらあら、そんなに服を汚しちゃって…ていうかおばさんって何かしら?訂正するまでいれてあげないわよーうふふ」

魔術師「あ、おねえさん!」

店主「よろしい、いらっしゃーい、そしておかえりー」

剣士「はなせ!」
152 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/20(火) 22:41:20.03 ID:iJTS/PE80
剣士「けほっ…こほっ…うう、寒気が…」

魔術師「お湯で石温めてきましたよ!さささミゼラさんっ、どうぞどうぞ」

剣士「あ、ああ…」

店主「はーい、レンカトウのスープよ、体が温まるから、のみなさい」コトッ

剣士「……すまない…、あちち」カチャ

店主「ふふ、熱いから気をつけてね」


剣士「…ふー、ふーっ…」

店主「……うふふ」

魔術師「…えへへ」

剣士「……」ムスッ


剣士「…で、ホリィはこの店を宿に住んでいるのか?」

魔術師「あ、はい!おb…おねえさんはお父さんの親戚なんです!」

店主「ふふ、ホリィちゃんがニの街に来るって手紙が来たから、もう即決よぉ」

剣士「……ほう」

魔術師「えへへ、傭兵協会って、全ての街にあるわけじゃないですからね…」

剣士「…ま、実家から通うのは面倒だな、確かに近くの宿を見繕うしかない」
153 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/21(水) 13:40:36.16 ID:OSOuQMEO0
154 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/21(水) 23:10:43.28 ID:cSVncdU50
店主「でも、ミゼラちゃん本当にありがとうね?」

剣士「……?」


店主「この子、傭兵になるってこの街に来たのはいいけど、傭兵協会に登録したはいいけど組んでくれるパーティの人がなかなか見つからなくて…」

魔術師「……えへへ」


店主「この子、おっちょこちょいだしね…本当に仕事がくるのかなー、この子と一緒に仕事してくれる人はいるかなーって」

剣士「……」

店主「そう悩んでいたけど、ふふ、ミゼラちゃんがホリィちゃんを選んでくれて、本当によかった」

魔術師「うん!えへへ、ミゼラさんが選んでくれたって傭兵協会から通知が来た時、私ね、思わずおねえさんとダンス踊っちゃったもの!」

店主「うふふ、しかも国祭の踊りをねー」

剣士(嬉しくてダンス…随分と仲が良いんだな…)
155 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/26(月) 21:59:28.23 ID:YIW/vNML0
店主「だからほらっ」

剣士「!」ボフ


剣士「……毛布…」

店主「ホリィちゃんは私の子も同然!そのホリィちゃんの友達であるミゼラちゃんも、私の子も同然よ!」

剣士「……めちゃくちゃな」モフモフ

店主「ふふ、ありがとう、これからもホリィちゃんを支えてあげてね?」

剣士「……」


剣士「………わかっ…た」

魔術師「えへへー」

店主「じゃあ私、店の一階の会計の管理しなきゃいけないから、戻るわねー」

魔術師「はーい!お仕事頑張ってくださーい!」

店主「ミゼラちゃん!本当に、ゆっくりしてっていいからねー!」

剣士「……うむ」


剣士(……)
156 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/27(火) 01:44:31.83 ID:W/K5y0BIO
かわええやないか///
157 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/27(火) 23:18:32.00 ID:oNDpeP/e0
剣士(……)モフモフ


剣士(…毛布…本格的な布団で寝るのっていつ以来だ?宿屋以来か?)

魔術師「あ、腰のポーチは取らなきゃ寝辛いですよ?」

剣士「あ……おう」

カチャカチャ


魔術師「今日一日くらいは、ゆっくりと体を休めた方がいいですよ?」

剣士「……」

魔術師「ミゼラさん、仕事にすごい熱心だけど…あんまり無理しちゃうと、体が壊れちゃいますからね?」

剣士「…ふん、剣士の体は丈夫に出来ている、少しくらい動いたところで」

ズキ

剣士「く……」

魔術師「あ、ほらもう、駄目ですよ!風邪がどんどんひどくなっちゃいますから!」

剣士「……」


魔術師「…ミゼラさんがどうして仕事を急ぐのか、わからないですけど……でも、ミゼラさんは私のパートナーなんですからっ」

魔術師「……ミゼラさんは私の事、どう思ってるのか…わからないですけど、少なくとも私はミゼラさんの事、大切な人だと思ってますからね?」

剣士「……」
158 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/28(水) 01:52:19.53 ID:U+1WgkWEo
ゆっくりでいい
ちゃんと投げずに続けてください
159 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/28(水) 16:18:03.03 ID:fvyRojwqo
ぬるりと見てるよ
160 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/28(水) 23:49:22.81 ID:scAkzVmIO
全員生存…はない…かも?
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/01/10(火) 19:40:43.63 ID:f/xOWgfD0
――公共浴場


かぽーん


剣士「……けほっ…」

魔術師「昔、お母さんから聞いた話ではですねー…風邪をひいた時は沢山汗をかいて、沢山寝るのが良いんだそうです!」

剣士「そうなのか…初耳だ」チャプ

魔術師「だから、こうしてお風呂に入ればー…風邪なんてきっと、明日には治ってるはずですよ!」

剣士「ほう?なるほど、それは…けほっ、…頼もしいな…」

魔術師「えへへ」


魔術師「…ミゼラさん、そんなに外側にいないでー、こっちに来た方が肩まで浸かれますよ?」

剣士「…いや、温まりすぎると眩暈がしそうだ…私は半身浴でいい…」

魔術師「? そうですかー」ジャバジャバ
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/11(水) 07:47:05.48 ID:AQ/8Llcw0
キテター
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/01/11(水) 19:48:49.93 ID:gd0DyfSD0
剣士「なあホリィ」

魔術師「はい?なんですかー?」チャプチャプ

剣士「前に、私が…パーティを解消しようと言った事があるじゃないか」

魔術師「! …はい、ありますね…」

剣士「………」チャプチャプ


剣士「今更…かもしれんが」

魔術師「?」

剣士「…あれはな、別に私が…お前が嫌いだからとか…お前が使えないからとか…そういう訳じゃないからな?」

魔術師「!」

剣士「そこは…私が言ってもアレなんだが……勘違いしないでくれ」

魔術師「…はい……でもどうして…?」

剣士「……」チャプ

魔術師「…」
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/12(木) 00:52:12.34 ID:hfmJ6cvKo
もっと描写頑張って!
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/12(木) 14:35:11.53 ID:SjMKiOKNo
特に胸の大きさとか毛の有無とか?
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/01/12(木) 18:44:50.32 ID:vbhPB7K90
剣士「ちょっと前に、私の夢について聞いたな?」

魔術師「あ、はい!」

剣士「…教えてやろう」


剣士「…私はな、この国の騎士団に入りたいんだ」

魔術師「わぁ、騎士団ですか!」

剣士「そうだ、城の直属…八卦騎士団。地位も給金も、全てが約束されている…」

魔術師「かっこいいですからねー!騎士さんって!」

剣士「ああ、格好いい、昔から私の憧れだった…」


魔術師「なるほどー…あ、でもどうして騎士団を目指すと、私とのパーティを解消しなきゃいけないんですか?」

剣士「……うむ…まぁ、色々あるのだが」
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/01/13(金) 23:20:55.68 ID:1cpckl/C0
剣士「この国の…八卦国の騎士団というのは、そのほとんどが上流階級の人間で構成されている」

魔術師「…そうですね、魔術師団もほとんど貴族とかー、そういう関係の人たちだって、習いました」

剣士「そう、つまり騎士団になるためには、私たちのような平民…のような低い階級の者は、滅多な事が無い限りは騎士になんてなれやしないんだ…」


魔術師「……でも、ミゼラさんは洞窟で、あんなに沢山のゴーレムさんを倒したじゃないですか?」

剣士「沢山のゴーレム、か」

魔術師「ミゼラさんの実力は本当にすごいと思いますよ?」

剣士「それでも騎士にはなれない、ほんのちょっと実力があるだけでは、八卦の騎士団には入れないんだ…!」


剣士「…国は頭が固いんだ…いや、そんなことはどうでも良い、…とにかくこの国では風習として、習わしとして惰性として、上流階級の者にのみ、騎士の称号を与えている」


剣士「……しつこくこびりついた赤錆のような風習を打ち破って、私のような人間が騎士団に入る…そのためには、ちょっとやそっとの名声では不可能…」

魔術師「……」


剣士「………そう、例えば…わずか19歳…成人したばかり、傭兵になったばかりの女剣士、しかも平民階級である者が数々の任務を短期間でこなす…」

剣士「ふ…そんな風評が傭兵協会から国に伝われば、何か機会もあるかもしれんが…」


魔術師「……なるほど…急いでいたのはつまりそういう…」

剣士「さっきも言ったが、私はホリィと組むの、……嫌じゃないよ、むしろホリィとこういう事してると、私は楽しい」

魔術師「! え、ほほんとですかっ?」

剣士「ああ、本当だよ、それは本当だが……」
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/01/28(土) 15:00:07.04 ID:AEcDPjRi0
魔術師「……」チャプン

剣士「…私は、傭兵協会で一人で活動する予定だったんだ」

魔術師「あ、そうなんですか?」

剣士「ああ」


剣士「だが、傭兵協会では、民間からの傭兵の場合、ある程度の信用を得なければ…その間は、ほかの民間傭兵と一緒に仕事をしなければならないらしいのだ」

魔術師「あー、それ私も説明の時言われましたー……えへへ、でも私、一人でやるの寂しいから別に良かったんですけど」


魔術師「…でもどうして、一人で仕事をしようと思ったんですか?誰かと一緒にやった方が、苦労も半分こ、簡単ですよ?」

剣士「単独で任務を達成すれば私の名だけが名声として伝わるだろう?」

魔術師「あ、そっか……」ブクブク

剣士「…だが規則で二人以上でのパーティを求められた……まぁ、ここだけでも頭が重いのだが」

剣士「できれば、強いであろう剣士と一緒にパーティを組み…その中で、私がそいつ以上の力を発揮し、次々と任務を達成していく…そうすれば、私の名声はより上がる」

魔術師「……」

剣士「…それで…だから…私よりも、いや男よりもぜんぜん身長の高い、強そうな剣士と組めば…って思ったんだけど…」

魔術師「あははー、私魔術師ですよー?」

剣士「……一生の不覚だ、本当に…」ブクブク
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/28(土) 21:32:43.45 ID:u9rtninzo
ああ焦れったいもどかしい
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sagi sagu sage sago]:2012/01/28(土) 22:44:21.13 ID:AEcDPjRi0
剣士「……剣士と一緒に組めば“剣士のペア”、しかし魔術師と剣士が組めば“息の合った二人”…」

魔術師「あ、でも私はそっちの方がいいかもー、なんだか仲良しみたい!」

剣士「いや、私もそういう呼ばれ方が嫌いなわけではないんだが…どうしても、騎士団の候補としては遠く見られて…“傭兵”として見られてしまうだろ」


剣士「……ふぅ、いや、私のせいではあるのだがな……どんどんハードルは高くなってゆくよ…全く」チャポ

剣士「いや、失敗を掘り下げるだけならばいくらでもできるか…はぁ…」

魔術師「……あはは、でもいいじゃないですか」

剣士「んー…?」


魔術師「私と一緒にどんどん仕事をして…もちろん無茶はダメですけど!それで地道に、私たちの実力を証明していけばいいじゃないですかっ!」

魔術師「息の合った二人……えへへ、私もそんな風に呼ばれたらいいなって、なんだか段々そういう風に思えてきました!」

剣士「……ふふ、そうか……?」

バシャッ

剣士「わっぷっ…!」

魔術師「ほらほら、肩までつからないと、体が冷えちゃいますよー」

剣士「こ、こら溺れる…!」

魔術師「えへへ、ミゼラさん脚きれー」スベスベ

剣士「やめ…っぷは、やめろっ!」バシャバシャ・・・
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/28(土) 23:51:14.64 ID:Nirp80UIO
こっちも頑張ってやー
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/01/29(日) 23:03:14.47 ID:JWOF6lub0
「おーい誰か!姫を!姫を見なかったかー!」

「な、なんだと!?また脱走かッ!?」

「くそ、やられた!あまり見ないメイドが部屋から出てきたと思ったら…!」

「…反省は後だ!早く姫を探せ!」

「また城下町まで下りるのはご免だぞ…くそっ!」


ダカダカダカダカ・・・


騎士「……うるさいなぁ、全くせっかくの朝食が不味くなるっての…」モグモグ

騎士「あんなにお天道様も機嫌が良いんだから、もうちょっとねー…心をおおらかにしても罰は当たらないのに…」モグモグ


コッ、コッ、コッ・・・


騎士「博士ー、久しぶりー」

博士「?……あら、城壁の縁の上でお昼寝なんてぇ……空中への警備が熱心なのか、それとも…」

騎士「珍しいなー、博士が研究室から出るのは学会か会食の時だけかと思ってたよ」モグモグ

博士「ふふふ、それにしては、よく足音だけで私だとわかったわねぇ?」

騎士「うちの姫さん達はヒールなんてはかないからねぇ」

博士「あ、なるほど…」


騎士「……で、その姫さんがまた脱走したっていうこんな朝の忙しい時に、博士はどちらへ?」

博士「ふふ、ちょっとした地質の調査よ、騎士団長様」
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/01/29(日) 23:10:16.82 ID:JWOF6lub0
騎士「そういやよー、小耳にはさんだ話なんだがさ」

博士「…」

騎士「傭兵協会の方にね、なんでも博士と同姓同名の人からの依頼がきてたらしくてね」

博士「それで?」

騎士「それだけ」

博士「…うふふ、顔が広いのか耳が良いのか…」

騎士「嫌々団長やってても、声は耳にはいるさね」

博士「……ええ、依頼を出したのは私よ、民間傭兵をすこしだけ、雇わせてもらうつもりだわぁ」

騎士「あ、じゃーその同姓同名って本当に博士だったんだ?」

博士(…白々しい…)


博士「…ま、騎士さんや城内兵さん達の手を煩わせるまでもない仕事…というだけよ」

騎士「なるほど、そいつは現状姫様で手を焼いている我々にはありがたい…」モグモグ


騎士「だが忘れてもらっちゃあいけないねえ?博士はこの国の、城の家臣とも並ぶ重要な人物だ」

博士「……」

騎士「どこの馬鳥の骨とも知らん奴らを雇って、安全をおろそかにされちゃあ、困るのはうちらなんですわ?」
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/01/29(日) 23:16:05.88 ID:JWOF6lub0
騎士「こっちも忙しいんですけどやっぱり心配なので、…とはいえあまり厳重すぎるのも調査の邪魔になるでしょうから、ねえ」

博士「…ふふ」

騎士「博士の護衛として、うちの騎士をひとりお付けしますよー」

博士(…チッ、余計な事を…)

騎士「なぁにうちの優秀な騎士だ、行動もちゃんと謹んでくれるでしょうから、安心してよ」


博士「…そうね、あなたの部下がついてくれるなら安心だわ」

騎士「あ、なんならおまけにもう一人…」

博士「失礼、時間が無いので、また今度」

コッ、コッ、コッ・・・


騎士「……ふん」

騎士(まぁあのドS変人と名高い博士だからな…アヤシーのはしょっちゅうのことだが…)

騎士(気のせいかな、なんだか最近、鼻につくんだよねー、臭い)モグ・・・


タッタッタッタッ・・・


「ああ団長!何やってるんですか!姫様がいないこんな非常時に!」

騎士「うちの城、週一で非常時なのね」

「いいから一緒に探してくださいよ!いつもあなたが最初に見つけるんですから!」

騎士「えー…」
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/29(日) 23:17:36.03 ID:JWOF6lub0
明日からこの時間は転載ではなく、新たに追加されたお話がはじまります。
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/30(月) 00:01:28.68 ID:+qmY1lKIO

ゴバクキニスンナ
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/30(月) 12:12:46.47 ID:EOmeVCjTo
wwktk
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/01/30(月) 19:54:17.99 ID:JE/tWvDA0
【八卦国 二の町】


町娘「あら、綺麗な首飾りー」

婆「でっしゃろう、クシの貝を丹念に削ったものでしてな…」



タタタタ・・・


兵士「おい、そこのお前」

町娘「え?はい?」

兵士(…赤毛か)


兵士「紫……紫っぽい髪の女性を見なかったか?」

町娘「え?」

兵士「ここらを走っていなかったのか、と聞いているんだ」

町娘「はあ…見ていませんけど…」

兵士「そうか」

町娘「でも紫なんて、ふふふ、王族の方みたいですわね」

兵士「! もう用はない、手間をかけたな」タッタッタッタッ・・・

町娘「あらあら…いってしまったわ、お忙しいのね」


シュゥウ・・・


姫「…ふっ、こういう場合、あの兵士って職務怠慢になっちゃうのかしらね」

婆「姫さまもいぢわるじゃのう」

姫「うふふ、いいのいいの!夕時には帰るもの…じゃあこれひとつ、いいかしら?」

婆「あい、まいどありじゃあ」
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/31(火) 01:43:57.01 ID:Is3btvMTo
誤爆わろたwww
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/01/31(火) 20:21:38.88 ID:3PQ/jYCn0
チャリッ

姫「……ふふ、良い感じ?」

婆「おお、昔のあたしにそっくりですぢゃ」

姫「あらっ、それじゃあエリアルの分も買ってあげようかしら」

婆「あ、姫さま、使いの者が来とりますぞ」

姫「!」


姫「“アンデミッダ・オクトカム”」シュゥウ・・・


町娘(変装完了!髪の色さえ魔術で変えれば、誰も気づかないわ!)

「なあ、ちょっと」

町娘「!」


騎士「…姫さん、バレバレだけど」

町娘「…なんだ騎士か…良かったぁ…一般兵だったらどうしようかと…」

騎士「服装の色合いは素朴で城下町らしくて良いけど、あまり完璧に着こなすのは逆に目立つと思うんだ」

町娘「センスあるでしょ?」クルッ

騎士「靴が分不相応に高級なものっていうのも減点かなー」

町娘「! だ、誰もそんな所見ないわ!騎士くらいでしょ!」

騎士「わたしも粗探しをしてるわけじゃないんだけどね、つい気付いちゃうんだよ」

町娘「…このだだっ広い城下町で何度でも私を探し出せるくせに、よく言うわね」

騎士「だから、見つけたくもないのに見つけちゃうんだよ」

町娘「いつかあんたも撒けるようになってみせるわ」

騎士「だあから、追ってるつもりはないんだけどお」
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/01/31(火) 22:56:33.81 ID:3PQ/jYCn0
町娘「朝の二の街は賑やかでいいわね」

騎士「んー、ね」

町娘「口のきき方はそれでいいのかしら」

騎士「だめかな」

町娘「あー、そこだけでいいから謙ってくれない?」

騎士「恐縮ながら、私ワルf」

町娘「あー痒いっ!だめだめやっぱナシね、そのままでいいわ」

騎士「ほらみー」


フワーン・・・


町娘「…ぉお?良い香り」

騎士「ああ、パン屋の匂いだ…ベーカリーが近くにあったなあ、そういえば」

町娘「うん、私もお気に入りだけど…この匂いはいつもと違うかな…」スンスン

騎士「んー、パンはパンじゃね、ひめさま」

町娘「違いのわからない騎士団長ね、あんたに毒見はさせないようにするわ」

騎士「やった」


タタタタ・・・

町娘「…ベーカリーはこっちのはずだけど…おかしいな、通りの反対からの方が強い匂いがする」

騎士「200m先ってところね」

町娘「オオカミ並みの嗅覚ね…まああなたの事だからきっと合ってるんでしょうけど」

騎士「いやいや、でっかい看板が出てるもの」

町娘「え?」



――ベーカリー・ロウネル


騎士「ね?」

町娘「…知らない店だわ、随分と大きいパン屋ができたのね」
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/02/01(水) 20:56:02.64 ID:/ZqitMhI0
町娘「……」タッタッタッ

騎士「あれ、新しい方のパン屋には寄らないの?」

町娘「いつものベーカリーが良いのよ」

騎士「ふーん」


町娘「ベーカリー・ロウネルか…」

騎士「あれ、やっぱ気になってる?」

町娘「ロウネルって誰だったっけ…」

騎士「人?」

町娘「なんでもない」



――ベーカリー・林檎


町娘「覚えておきなさい騎士、パンっていうのはね、繊細なものなのよ」

騎士「ははぁ」

町娘「一度に大量に練られるパンなんて、城内で作られても大した味にはならないわ」

騎士「そーいうものなのか…」
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/02/02(木) 20:34:35.16 ID:lzDGTTQ30
カランカラン・・・


看板娘「いらっしゃいませー」

町娘「やあ」

看板娘「あ!また来てくれたんだー、ありがとうライラ」

町娘「近くを通ったから、ついでにね」


騎士「……ライラ?」ポソ

町娘「偽名に決まってるでしょ」ボソ

看板娘「そちらのお姉さんは…ライラの友達?」

町娘「え?」

騎士「わたし?わたしは〜〜〜…っと、キノっていうんだ、よろしく」

看板娘「キノ!はじめまして、よろしくね」

騎士「ああ、うん」


看板娘「……キノって」ポソ

騎士「咄嗟に思いついたのがそれだったんだよ」ボソ



184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/02/03(金) 23:27:27.56 ID:/3eAS+Nl0
騎士「色々なパンがあるねー、色鮮やかで美味しそうだ」

姫「丹精込めて造られた焼きたては、他とは違うのよね」

騎士「よくここに?」

姫「ええ、美味しいからね」

騎士「ふーん……」


ガラーン


騎士「しかし、景気は悪そうだ」

姫「…」

看板娘「あー、お客さん少ないでしょ?今」

姫「!」

看板娘「最近は客足も遠のいちゃったんだ、向こうに大きなベーカリーが建っちゃってね」

騎士「ははぁ、やっぱりか…」

姫「向こうの店は知らないけど、味はこっちの方が上だと思うわ」

看板娘「うん、私も向こうの食ったけど、大したことはなかったよ」

姫「うんうん、量産モノなんてその程度よ」


看板娘「…ただ、安いんだ、向こうの」

姫「……」

騎士「あー、値段ね、それは大きいね」
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/02/06(月) 18:21:53.65 ID:LryPwuA30
姫「物価って、業種によってギルドがまとめているんじゃないの?抜け駆けなんて、この国でできるのかしら」

看板娘「うん、ちゃんとそれぞれの民間商会があって、ベーカリーならベーカリーで、二の町では12店舗が入ってるんだ」

姫「…ベーカリー・ロウネルは?」

看板娘「入ってないさ、入ってたら除名もンだよ、あんな木づちで叩いたような価格っ」


騎士「むぅーん、安いって、実際どんくらい安いわけよ、ここのだって結構安いよね?」

看板娘「…こっちも対抗してかなり値下げしたんだよ、今は赤字覚悟で一斤が640YEN…けど!まだまだあっちのが全然安い」

姫「大量生産にものを言わせてるってことね…」

看板娘「わかんない…最近は麦の値段も上がってるのに、よくもまああそこまでオベンキョーできるもんだよ」

騎士「ふーん…」


カランカラン


魔術師「えへー、おじゃましまーす」ヌゥウ

姫「うわ」ビクッ

騎士(ぅお)

看板娘「おー、ホリィちゃんいらっしゃい!焼き立ていいのあるよ!」

魔術師「わーい、どれどれー…」ノッシノッシ


姫(…すごい客ね)

騎士(うちに欲しい体格してるわ、あの子)
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/02/06(月) 20:32:59.93 ID:5OiwvPkHo
みてるよ
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/06(月) 22:09:21.57 ID:x4oAuMq0o
超みてる
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/06(月) 22:51:15.09 ID:+0RMsB7IO
     ...| ̄ ̄ | < 続きはまだかね?
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189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/02/06(月) 22:52:00.97 ID:5fgi0xfAO
(燃料切れ* ∀ )
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/02/07(火) 20:57:37.47 ID:ReQZNGRx0
魔術師「わあ、これ可愛いですね!」

看板娘「でしょ?うさぎのパン、ニンジンたっぷりだよ」

魔術師「自分で焼いたんですか?」

看板娘「は、ははは…いや、親父が…私焼けないし」

魔術師「身体に良さそうだし、ひとつ買ってきますね!」

看板娘「ん、ありがと!」


姫「…私も、何買おうかな」

騎士「金貨以外の持ち合わせがあるのかい?」ボソ

姫「馬鹿にしないでよ、こういう時のために常日頃くずす努力をしてるのよ」

騎士「抜け目ねえ姫様だ、私が引退するまでは安泰だな」

姫「ふん」ゴソゴソ


魔術師「じゃあ、またきますねえ」

看板娘「はーい、ありがとうございましたー!」


カランカラン
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/02/08(水) 20:06:01.00 ID:4GGIp8Cl0

看板娘「ライラはそれにするんだ?いいねぇ、お目が高いよ、ふっふっふっ」

姫「あらほんと?おだてても財布の紐が緩くなるだけよ」

看板娘「なぁにい?いけるとこまで謙っちゃうよワタシ」

姫「ふふ、ま、食道は緩くならないから、申し訳ないけどこれだけね」

看板娘「ちぇー、ふふ、まいどありっ」

騎士「んー、じゃあわたしはコレ、コーヒーのやつ」

看板娘「はいどーも!まだまだ良い香りするから、キノも早めに食べるといいよ!」

騎士「うん、そうするよ」


ガチャ


姫「んじゃあ、またね、リシュ」

看板娘「うん!またきてよ、ライラ!」


カランカラン
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/02/09(木) 19:55:21.63 ID:+RL8MuXN0
騎士「なあ姫さんや」

姫「わかってる、そろそろおうちに戻るわ」

騎士「悪いね、忙しいとこ水差してるようで」

姫「私の当然の義務だもの」ムシャッ


姫「……」モグモグ

姫「…戻る前に、もうちょっと城下町を見ておきたいんだけど?」

騎士「毒を食らわば盛った奴をも、だよ、気になったことは納得いくまで向き合うといいさ」

姫「あら、大人びた意見」

騎士「忘れちゃこまるなぁ、オトナだよ?わたし」

姫「あなたみたいな大人が沢山いれば、統治も内政も簡単なのにね」

騎士「生産性が落ちるから、変な夢は見ない方がいいね」ムシャ

姫「ふふ、それもそっか」


――ベーカリー・ロウネル


姫「…ま、見るだけよ」


カランカラン
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/02/10(金) 20:32:11.56 ID:Mt4GOwRA0

姫「…っ…」

騎士「内装は外観以上のインパクトがあるね」

姫「広い…所せましと、色々なパンが置かれてる…!」

騎士「いやぁ、大盛況だねえ」


“一斤 530 YEN”


騎士「100YEN以上も違うんじゃあ、勝負にもならないわけだ」

姫「…」

騎士「言わなくてもわかるよ?」

姫「…ここの店主」

騎士「そりゃあまずいよ」

姫「何よ、この店は何かあるに決まってる、店の人間に直接聞いて…」

騎士「そんなことできる立場じゃないでしょ、わたしたちは」

姫「……くっ」

騎士「騒いでみ?もうわけのわからない事態になるのは想像に容易い…一国の姫が、なぁに城抜け出して奉公してんの、って」

姫「…なら、あなたが」

騎士「わたしだって同じだよ、この店にどんなからくりがあろうとも、わたしたちはそれを暴くことはできない」


姫「……」

騎士「わたしたちは、もっと大きなもののためにしか動けない、不自由な人間なのさ」


姫「…なら、自由に動ける人間を使えばいいってことね」

騎士「おっと、冴えてるぅ」

姫「ふん、助言するなら直接的に言いなさいよ」

騎士「何事も順を追ってね?ふふふ」
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/12(日) 15:11:01.28 ID:3GYHYfLIO
続きが楽しみ
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/02/13(月) 23:09:43.26 ID:TI3a9sM60
兵士「! 姫様、どこへいらして」

姫「気晴らしよ」

兵士「…陛下は嘆いておられます、お早く」

姫「ええ」


タッタッタッ・・・


兵士「………まったく」

騎士「困ったもんだねえ」

兵士「うわぁっ!?」

騎士「あはは、変な声」

兵士「…団長、音もなく近づくのはやめてください」

騎士「まぁ、姫様もよく脱走はするが、いつもちゃーんと帰って来るんだ、問題はないさ」

兵士「……そうですか」

騎士「そうさあ、そりゃ一日空いたー なんてなったらわたしらウチクビですよ」

兵士「……」

騎士「ま、あの歳の娘の自由を縛るくらいなら、わたしら何人がウチクビになろうと上等だけどね」

兵士「勘弁してください」

騎士「縛るより守れってこと、じゃあ、わたし飯は城壁で食ってくるから食堂には行かない。じゃあね」

タッタッタッ・・・


兵士「…ああ、もう」
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/02/15(水) 21:02:19.29 ID:8MwmVD5T0
王妃「…」

姫「…」

王「ふむ、前のような粗雑な味付けにはなっていない」

コック「はっ、ありがたき…」

王「“料理になった”と言ったのだ」

コック「…!」

王「料理長が料理を作る、当然のことだろう」モグモグ

コック「……はっ」

王「下がれ」




王妃「…言いすぎではないでしょうか」

王「ふん」

姫「お父様、近頃は隣国との交易に精を出し過ぎでは…しばらくお休みになられた方が」

王「ならん」


王「…前にあのコックが出したスープ、我にはわかる…あの塩は我が国のものではない」

姫「……」

王妃「……」

王「忌むべき隣国の、安塩だ」


姫(…お父様…)

王「もうしばらくは、関税について忙しい協議が続くだろう」
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/02/16(木) 09:23:26.65 ID:hXvZfRVAO
追いついてしまった……
前のやつの続きが気になってたから嬉しい
楽しみにしてます
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/16(木) 09:45:17.85 ID:VbhIY1TIO
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/02/16(木) 22:12:17.40 ID:BYhGflVj0
【八卦城 寝室】


妹「お姉さま!」

姫「うふ、ちゃんとチキントラド、残さずに食べた?」

妹「当然ですわお姉さま、4年前と1カ月と22日前のあの日にお姉さまに叱られた時から、私はチキントラドを残してはいません!」

姫「本当に?」

妹「この命とお姉さまへの愛に誓って真実ですわ、お姉さま」

姫「イリー……」

妹「おねえさま……」


ガシッ


姫「ああもうっ!なんて可愛い妹なのあなたは!」クルクル

妹「お姉さま!お姉さまこそこの八卦国で最も麗しい存在ですわ!私などお姉さまと比べれば塵芥…!」クルクル

姫「何を言うのエリー!あなたこそこの世で最も可憐だわ!あなたのためなら私は王位なんて…!」

妹「お姉さまー!」

姫「エリー!」




外の近衛兵(……さっさと番交代して寝たい)
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/17(金) 23:40:28.67 ID:wdYlv7rGo
名前でたキャラは括弧の前も名前にしてくれると嬉しい
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/02/20(月) 19:46:28.18 ID:sk3c8Zav0

ピチチチ・・・ピチチ・・・


妹「…すぅすぅ…」

姫(…貝のアクセサリー、エリーによく似合ってる…)


姫(クシ貝の飾り…そう簡単に手に入る材料でもないはずなのに…こんな細工までされているのに)

姫(なのに、すごく安かった…城の一般兵の給金から見ても大したことのない額だわ)


姫(…けど、クシ貝の飾りの値段と昨日のパンとを比べると断然にパンの方が安い)

姫(なのに、あれでもまだ一般国民からしてみれば“高い”のよね)


姫(パンの値段を見比べて買うほどに……)

姫(…リシュのベーカリーへの客足が、一気に途絶えてしまうほどに)


姫(ベーカリー・ロウネル、あれができてから、辺りのベーカリーは大赤字だと聞いた)

姫(あの巨大なベーカリーは一体何?ギルドにも入らず、単独で収益を上げ続けることができるベーカリーなんて…信じられない)


姫(きっと何らかの“裏”がある、調べなくちゃいけないわね)
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/21(火) 00:30:35.64 ID:ev3UywBDO
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/02/21(火) 21:56:26.42 ID:2rjOf9RI0

タッタッタッ・・・


騎士「やあ、おはよう姫さま」

姫「あら、城壁の上でお昼寝なんて良い身分ね…ていうか、なんで私と気付いたのかしら」

騎士「昨日履いてた靴と同じ音がしたからねー」

姫「ケモノ並みね」

騎士「がるる」


騎士「で、どちらへ?」

姫「ちょっと民俗の調査に、ね」

騎士「おお、それは危険です姫様」シュバッ



シュタッ


姫(…あそこから一跳びで…)

騎士「どうか私めを、姫様の供として従えてはいただけませんか?」

姫「サボりたいならどうぞ、重要な仕事だしね」

騎士「やったっ、姫さま話わかるっ」

姫「はいはい、その砕けすぎた口利き、間違ってもエリーにはしないようにね」

騎士「かしこまりましてにございますよ、姫さま」
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/02/22(水) 19:29:20.96 ID:vYvGwQQ90
【城下町】


騎士「ま、ただし今日は条件厳しいんだけどね」

姫「ん?何よ」

騎士「引率する身分が身分だからね、わたしも…昼前までには帰ってもらわないと困るってこと」

姫「聞けない相談かしら」

騎士「価格問題に深入りされるのも困る…直接の手だしなんかはご法度だね」

姫「私に協力してくれるんじゃなかったの?」

騎士「護衛だよごーえーい、脱走も昨日の今日なんだから、もうちょっと自重してもらわないと」

姫「…ふん」

騎士「昨日も言ったけど、わたし達の身分が解決できる問題でもないしね」

姫「どうかしらね」

騎士「介入できるのは、法に触れる行為が行われていた場合に限るのさ」

姫「……」

騎士「ベーカリーの…リシュ、だっけ?彼女の手助けをしたい気持ちはわかるけど、純粋な競争で負けているのだとすればわたし達は――」

姫「うるさい、さっさと行くわよ」タタタ・・・


騎士「…やれやれ、まぁ、時間は守ってくれそうだね」
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/22(水) 21:27:40.73 ID:DsLqoAHIO
見てる
おてんば姫かわいい
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/22(水) 22:45:16.66 ID:cTJVwvjAo
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/02/23(木) 23:13:51.74 ID:l+04cvwE0
カランカラン

――ベーカリー・林檎


看板娘「おっ!ライラじゃん、いらっしゃーい!」

姫「やあ、また来たわよリシュ」

騎士「どうも」

看板娘「キノも一緒ね、いらっしゃい!いやー、経営難の時に足を運んでくれるのはありがたいよう」グデェ

姫「レジでぐだってるとお客が逃げるわよー」

看板娘「へへ、やることないもんでね」

姫「なにー?時期にお客がどんどん入って忙しくなるかもしれないわよ」

看板娘「はは、だといいんだけどさ」

騎士「……」


姫「…ベーカリー・ロウネル、だっけ」

看板娘「…ん」

姫「あそこって、誰が経営してるのかな」
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/02/28(火) 20:38:52.45 ID:H8SiFhdE0

看板娘「……」

姫「ちらっと中だけ見てみたよ、アレ…すごい人だった」

看板娘「うちとは大違いでしょ」

姫「人も沢山雇ってたみたいだけど」

看板娘「さあ…調べる気にもならないよ…警備員が通せんぼして、抗議しようにも通してもらえないしね」

姫「警備員?」

看板娘「そ、ガードマンだね」


看板娘「…組合が抗議に行こうとしたら、そのガードマンが立ちふさがって言うんだ」

看板娘「“ベーカリー・ロウネルはそちらの組合に加入していない、指図を受ける筋合いはない”…ってね」


姫「……」

騎士「……」

看板娘「言い分はもっともだから、引き下がるしかなかった」

騎士「それで値段で勝負、と…」

看板娘「うちも無茶だとはわかってるんだけどね…もう、ロウネルに対抗するにはそれしかないから…」
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/29(水) 01:24:21.52 ID:WgbilifIO
みてるからはよ
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/29(水) 02:55:58.00 ID:31HjSG66o
     ...| ̄ ̄ | < 続きはまだかね?
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211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/02/29(水) 18:29:02.26 ID:3Q+QmE8m0
騎士「……」ジロ

姫(…わかってるわよ、ガードマンを乗り越えて、なんてさすがに考えちゃいないから)


姫「…ごめんねリシュ、変な話しちゃって…パンいただくわ」

看板娘「ふふ、まいどぉ」


カランカラン



魔術師「えへへー」ドスンドスン

看板娘「あ、いらっしゃーい、ホリィは最近よく来るね」

姫(どこかに雇える傭兵がいればいいんだけどな…)

魔術師「えへへ、傭兵さんのお仕事してたら、お金が溜まったんですよー」


姫「!」

騎士「……」


看板娘「あー、前いってた蜘蛛のアレか、そかそか」

魔術師「パンもお菓子も食べ放題で毎日幸せです、うふふ」

看板娘「けど一食でその量はちょっと多すぎるんじゃないかい」

魔術師「えへへ、そうですか?」


姫(……)
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/03/01(木) 18:27:59.89 ID:CjmctOg80
カランカラン・・・


姫「……」

騎士「ここ最近で一番良い顔してるね」

姫「彼女、使えるかしら」

騎士「傭兵ねえ」

姫「傭兵協会を通さずに、直接交渉すれば動いてくれるわよね」

騎士「どう動かすのさ?」

姫「決まってるわ、ロウネルの謎を暴いてもらうの」

騎士「漠然とした頼みごとだな!?あ、ごめんつい素が」

姫「別にいいけど、素でも被りでもあんまり変わらないわよアナタ」


姫「確かに漠然としているかもしれないけど、中途半端な協力をされても困るもの…最後まで、解決までは付き合ってもらうわ」

騎士「嫌な役回りだな」

姫「私達だって色々と遠くから調べてサポートするのよ」

騎士「…そんなに守りたいんだ、パン屋」

姫「もちろん」

騎士「……ふーん、ま、法外な安値がロウネルの実力って結果だったら、諦めるしかないけど…やれるだけやったらいいんじゃないかな」

姫「やってやるわよ、絶対にね」


カランカラン


魔術師「えへー……あ、さっきのひとたち、どうも」

姫「……」

騎士「……」

魔術師「え?え?なんですか?」
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/03/01(木) 20:23:13.15 ID:E3nJvnpbo
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/03/05(月) 19:53:49.84 ID:+TCqopWK0
(*・∀・*)ノ 今週はカードゲームのテストプレイ用のなんぞを作らなきゃいけないので、このSSはしばらくおやすみします
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/06(火) 01:04:51.36 ID:cqFhEO9Po
うむ待ってるよ
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/03/12(月) 18:10:11.32 ID:P7WpNlAY0

剣士「……」ゴロゴロ

剣士「へー…ヴイテ地下水道記念硬貨がこんな値段で買い取りしてるんだ…新聞もたまには読んでみるもんだなぁ…」パサッ

剣士「…随分と前に硬貨使っちゃったけど」ゴロゴロ


「ミゼラさんミゼラさんミーゼラさーん!!」


剣士「うっさっ……なんだホリィー!」


ドスドスドスドス・・・ガチャ


魔術師「ミゼラさーん!お客さんですよ!」

剣士「私に言うなよ、階下の伯母さんに言えよ」

魔術師「ううん、違うんですよ、私達なんです!」

剣士「は?」

魔術師「私達に、頼みたいことがあるんですって!」

剣士「…何の話やら」
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/03/12(月) 19:26:42.78 ID:YLT66pqAO
まってたぜ
218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/12(月) 19:28:12.00 ID:v9ueDxuLo
このスレ見てからウィザードリィ・オンラインを始めました!!!
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/03/13(火) 18:21:14.61 ID:YUeJNYji0
剣士(私達に頼みって、つまりなんだ…?傭兵協会からの仕事か?)

剣士(どうせ静養するなら万全の状態に戻すまではじっとしていたいのだが……)


剣士(いや、待てよ…これはまさか、私達の活躍を聞きつけてやってきた特別な…?)

剣士(……)


剣士(よし!やった!こんなに早く私の実力を示すチャンスが巡ってくるとは!)



ガチャ


剣士「おまたせホリィ、そして傭兵協会……」


姫「こんにちは」←普通の人に見える

騎士「どもども」←普通の人に見える


魔術師「えへへ」

剣士(誰だよこいつらは…町会の人か…?)
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/03/14(水) 01:17:18.34 ID:hvJubPdlo
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/14(水) 01:46:43.84 ID:BSN4ZiDIO
意外と抜けてる剣士いいね!
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/03/19(月) 18:24:50.92 ID:4VXniTWV0
剣士「えっと、ここでいいのか、ホリィ」

魔術師「ええ、お客様ですもの!」

剣士「おb…お姉さんの応接室だろ」

魔術師「えへへ、大丈夫ですよ、ちゃんと言ってありますから」

剣士「ならいいが…」

魔術師「頑張って仕事もらってきなさい!って応援してくれました!」

剣士(その前に仕事なのかな、この人らは……)


姫「……」

騎士「ええと、お二人はペアの傭兵で?」

剣士「! あ、ああ、まあな」

姫「ちなみにどんな任務…」

騎士「おっと、その前に私達はですね、とある流通総合商社の組合の者なのですがね」

姫(なにそれ)

騎士(まぁ合わせてよ)


魔術師「流通総合……?」

剣士「…私達が、何か?このベーカリーの経営に関する事なら、私達は部外者でわからないのだが…」

騎士「ああ、そういうわけではありませんよー」


騎士「まぁ平たく言えば、我々は傭兵協会とは別口で、市場の監査をしている部署の者なのですよ」

剣士「はあ」


剣士(なんだこれ、難しい話が始まったぞ…)

魔術師(りゅーつー……?)
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/03/20(火) 01:34:06.32 ID:ndaAKi9xo
このミッションは傭兵には難易度高そうだな
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/03/20(火) 11:31:08.85 ID:Hs6oiRG20
魔術師たちのいる店はベーカリーじゃなかった。ミス。
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 12:38:36.95 ID:CoRyFTYIO
バカ天然とバカチビに諜報活動は少々難しいかと
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/03/20(火) 23:33:24.71 ID:2iW5jMyRo
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/03/21(水) 17:42:43.07 ID:lv5H29Qg0

騎士「…えーとまあ、難しい話は抜きにしましてね」

剣士「はあ」

騎士「我々の監査の仕事は、大口の協会に頼らないものなので、あくまで小さな規模で委託し、遂行していくものなのです」

剣士「……うーん?」


姫「……つまりこういうこと、貴方達に、教会抜きでの仕事をやってほしいの」

剣士「!」

魔術師「やったー!仕事ですよ!ミゼラさん!」


剣士(協会抜き…なるほど、大手とは違う切り口で調査すれば情報の信憑性も増すということか…)

剣士(わかる…その理屈はわかるが…)

剣士(……傭兵協会に貢献できない、となるとなぁ…)


騎士「まだ詳しい情報は開示できませんが、客に紛れて市場調査をすればいいだけ、というようなものですんで」

魔術師「ほえー、簡単なんですか?」

騎士「ええ(まあ、多分だけど)」
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/23(金) 08:01:45.44 ID:tuBuZamIO
もしかしてバカなの、剣士ェ…
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/03/23(金) 19:52:15.95 ID:ahebLvVa0

剣士「……ちょっと、相方と相談を…」

姫「構わないわ」

剣士「失礼」



剣士「……どうする?」

魔術師「え?受けるんですよね?」

剣士「傭兵協会からの公的な依頼でなくては、記録にも残らないだろうし…」

魔術師「あ…そうですね」

剣士「それに手続きとかも、非公式の依頼だとよくわからないというか…報酬とか後々に揉めるってこともあり得そうで」

騎士「あ、報酬は大丈夫だよ」

剣士「え?」


騎士「前金で半分は渡しておくからね、それでやってくれれば大丈夫」

魔術師「前金!……ってなんですか?」

剣士「良いのか?こんな見ず知らずの奴相手に」

騎士「仕事を頼む相手の事くらい、最低限のものは事前に調べてはあるから、大丈夫」

剣士「……なるほどな」


姫(え?)

騎士(ウソ、全然調べてない)

姫(……)

騎士(まぁそれっぽいでしょ?)
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/03/24(土) 07:32:06.85 ID:uMEWPOVfo
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/24(土) 08:44:55.69 ID:6JJtEyS1o
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/03/26(月) 18:41:56.39 ID:3WG7oR/50

剣士(……どうせなら、騎士団や国に恩を売る任務につきたい所だが…)

剣士(前のアスメ退治で、私達にできる仕事はかなり少ないことがわかった)


剣士(……国のものでなくとも、ちょっとした機関相手に恩を売る機会があるというのは良い事だ)

剣士(辛い仕事でもなさそう……うむ、収入にもなるし)


剣士「……わかった、引き受けよう」

騎士「おお、ありがたい」

姫「ありがとう!感謝するわ!」

剣士「いえいえ」

魔術師「えへへ、仕事だー」

姫(……この子は大丈夫なのかな?)


騎士「では後日、契約のための書簡をお持ちしますので、そこにサインか刻印をしていただければ契約成立となります」

姫「……」

騎士「任務内容は諜報……とある店の商品の原材料の流通調査をしていただきたい」

剣士「とある店……」

騎士「おっと、それは後日、契約していただいてから」

剣士「う、うむ」
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/26(月) 19:28:38.82 ID:LfkKQGeIO
乙?
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/26(月) 22:41:42.18 ID:Hwl0Z7YIO
おーつ
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/03/27(火) 19:16:12.02 ID:WIjP7yxN0

バタン


剣士「……」

魔術師「なんだか難しそうな仕事をもらいましたね!」

剣士「勝手はまだわからないが、明日説明されるだろう」

魔術師「どんなことするんでしょうねー……」

剣士「楽な任務だったら良いのだが……」


魔術師「…活躍して、国にまで頑張りを見てもらえたらいいですね!」

剣士「それは無理だろう」

魔術師「そうとも限らないですよ?」

剣士「どうだかな」


剣士「……まあ、骨休めと思って気軽に臨もう」

魔術師「はい!」
236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/27(火) 22:18:42.81 ID:7wFa/lBDO
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/03/27(火) 22:45:10.62 ID:VRbji+Epo
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/28(水) 07:30:31.47 ID:0s+Cn6rIO
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/03/29(木) 20:16:45.32 ID:ZPtFU5uZ0

姫「……」


姫(夜窓、城の夜窓……)

姫(銃や弓を警戒して、中庭しか映さない窓……)

姫(ここから見える外は、つまらない庭と夜の寒さだけ…)



騎士「よ、姫」

姫「! び、びっくりした!」

騎士「すいませんね、いやこっちも姫がまだこの時間に起きてらっしゃるとは」

姫「…あなたくらいの人間なら、部屋まで通すのに」

騎士「ははは、こんな時間じゃさすがに門前払いですよ、私でも」


姫「……で、何の用?」

騎士「んー、いや、ね……最近は姫さまの無断外出が多いせいで、昼間は城内の警備も厳しくなっててさ」

姫「あら大変ね、お父様ったら心配性なんだから」

騎士「明日も予定があるでしょ?城下町に出るならそれなりの準備をしておかないとさ」

姫「準備、ねえ…」

騎士「影武者を用意するなら今のうち、ってこと」

姫「……考えておくわ」
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/03/30(金) 18:16:14.93 ID:tPJhQPqF0
【八卦城 ――朝】



姫「ごちそうさま」

妹「ごちそうさま」

王「早いな」

姫「はしたなかったでしょうか」

王妃「いいえ、とても丁寧でしたよ」

姫「うふふ、ありがとうございます、お母様」


王「うむ、特に我から話すこともない、先に部屋に戻って良いぞ」

姫「はい」

妹「では、お先に」


王「…エリアル」

姫「…はい?お父様」

王「ここを窮屈に感じる年頃であろうが、勝手にうろつく事は控えなさい」

姫「…はい」

王「八卦を汚すなよ」

妹「……」


王「わかったなら良い、戻りなさい」

姫「……行きましょう、イリー」

妹「はい、お姉さま」

241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/30(金) 19:35:54.79 ID:gQQ0x2OIO
乙?
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/30(金) 22:01:15.70 ID:o4bdRlgDO
乙!?
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2012/03/31(土) 19:06:58.46 ID:HDtYSgxbo
八掛は王族の名称か?
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/04/02(月) 19:40:39.42 ID:VA6uBrjt0
コン、コン


衛兵「エリアル様、陛下からの命で……」

「そんなに心配しなくとも、私はここにいるわよ」

衛兵「……!し、失礼しました」

「まったくもう……煩わしいから、確認の回数を減らしてくれないかしら」

衛兵「き、今日だけでございます、どうか……」

「今日だけね……わかった、あなたの首も大事だものね」

衛兵「まことに申し訳ございません」

「行って構わないわ」

衛兵「はっ」


カッカッカッカッカッ・・・


妹「…ふふ、い愛しのお姉さまの声、この私で良ければ、いくらでも影武者を務めさせていただきますわ……」

妹「ああ、お姉さまのお部屋、なんて芳醇な香り…」
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/02(月) 22:25:10.17 ID:pbjzhjXIO
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/04/04(水) 19:46:23.01 ID:vGSY1lW30
【城下町 二の町】


騎士「なんていうか、姫さま、ひどいな」

姫「何よ?文句ある?」

騎士「いや別に……」

姫「イリーは喜んで私の言う事を聞いてくれたのよ?ひどいだなんて」

騎士「うーん」


姫「それに、イリーから何かお願い事があったら、次は私がこたえてあげるもの」

騎士「あ、そういうもんなの」

姫「そういうものよ、私とイリーは一心同体だもの」

騎士「いやー民草に知れたらちょっと賑わいそうだ」

姫「ふふっ、機会があればいくらでも触れ回ってやりたいところね」

騎士「怖い怖い」
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/04/04(水) 21:06:22.03 ID:RjDyWKioo
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/05(木) 08:09:19.36 ID:51GdJhBIO
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/04/05(木) 22:57:46.25 ID:0sX+XT640

騎士「やあ、待たせてしまったかな、申し訳ない」

姫「今日はどうぞよろしく」

剣士「こちらこそ」

魔術師「えへへ、よろしくおねがいしますー!」

騎士「ではさっそく、契約の書簡の方を」


コロン


騎士「封蝋はあなた方で割っていただきたい」

剣士「うむ」


パリッ


剣士「見ても?」

騎士「どうぞどうぞ」

魔術師「わくわくしますねっ」

剣士「ちょっとうるさいぞ、ホリィ」

魔術師「す、すみません……」


パサッ
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/04/06(金) 00:55:59.64 ID:mlDy3VIDo
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/06(金) 06:55:22.16 ID:q08A2cBIO
おつ
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/04/06(金) 20:35:45.99 ID:TvFVhfAN0

剣士「……えーっと、全部読んでみたけど」

魔術師「任務の内容は、聞いてから……印を捺してからですか?」

姫「そういうことね」

騎士「危険ではない(と思う)ので、そう警戒しなくとも大丈夫ですよ」

姫「まあもっともこれも口約束なんだけどね」

剣士「……」

騎士「はっはっは、まあ、今はそんなですけど、内容を聞いたら拍子抜けすると思いますよー」


剣士「……ホリィ」

魔術師「うん、私はオッケーです」


ポンッ


姫「……受ける、ということね」

剣士「諜報如きで臆していては、何もできないからな」

姫「ふ、意気込みは良いわね」

剣士「なに?」

騎士「あーあーあー、それじゃこちら受理ということでハイ、おっけーですハイ」

魔術師「うふふ」
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/06(金) 22:00:49.57 ID:uJ4iuF0IO
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/06(金) 22:39:31.13 ID:znMig7WVo
おつん
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/04/09(月) 19:44:54.61 ID:Bm6Pf+8o0

騎士「依頼内容はこちらの書簡を、はいどうぞ」

剣士「うむ」

騎士「その封を開けたら、責任が生まれるから、決断するなら…」

剣士「愚問だ」ペリ

騎士「あはは、ちょっとすごんでみただけなのに」


パラッ


剣士「……ん?」

魔術師「…ミゼラさん、もうちょっと紙を倒してください、見えないです」

剣士「ん、ああ……」


姫「ふふ、どうかしら、この仕事は」

剣士「いや…なんていうか」

魔術師「パン屋さんを調べるだけですか?」

騎士「ね?拍子抜け」

剣士「うむ……」

騎士「でも立派な、一応は企業スパイとも言えるよ、相手に知られたらどうなるかね」

姫「あくまで秘密裏に動いてもらうわ、いい?」

剣士「……ふーむ」



“ベーカリー・ロウネル 関連会社の調査”
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/10(火) 06:56:35.69 ID:9NRh8tgIO
ふーむふむ
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/04/10(火) 19:22:09.86 ID:9lF7rWIo0

姫「……彼女ら、しっかり働いてくれるかしら」

騎士「どうでしょーね、傭兵は人それぞれでわからんですわ」

姫「……脅してはあるけど、前金ガメられたら、手の出しようがないわね」

騎士「はは、まさかぁ、そこまで図太い神経はしてないでしょう」

姫「どうかしらね」


騎士「まあなんとかなるでしょう、簡単そうな任務ですしね…私達が動くと足がつくことでも、彼女ら一般市民なら問題はないですよ」

姫「ある程度の成果は出せそうだけど…」

騎士「小さなベーカリーが巻き返せるほどのスキャンダルが発掘されるとは期待しない方が良いですよ、ひめさま」

姫「……何でよ」


騎士「大量生産、大量消費、安い道理は通ってるんですからね、ロウネルの方は」

姫「…裏があるかもしれない」

騎士「当然ね、けどひとつくらいの覚悟は必要だよ」


騎士「民って、そういう世界で生きてるんだからね」

姫「……」

騎士「さ、行きましょうひめさま、妹様がお待ちかねだ」

姫「…ええ」
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/10(火) 20:23:22.77 ID:+WEPy8gIO
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/04/11(水) 01:22:30.91 ID:MRY4GFAeo
260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/04/11(水) 19:47:34.07 ID:Xc6OUb7/0

魔術師「えーっと、ベーカリー・ロウネルさんですね、こっちかな?」

剣士「おい、場所がわかるのか?」

魔術師「はい!新しくできた、おっきなパン屋さんですからね」

剣士「有名なのか、知らなかったぞ」

魔術師「えへへー、二の町の人ならきっとみんな知ってますよー」

剣士「まあ、道案内は頼むよ」

魔術師「任せてください!えへへ、近いですから」



剣士「…しかし、想像していたものよりも遥かに簡単な調査だ」

魔術師「そうですねえ」

剣士「とりあえずはロウネルに入って、関連する会社について調べてみるとしようか」

魔術師「そうですねっ!あとパンの味とかもー」

剣士「金のかかることは無理にやらなくていい」

魔術師「でも、ロウネルさんって安いって有名なんですよ」

剣士「……ほお」

魔術師「ここら辺で一番安いってウワサです」

剣士「ふむ…そ、そういうことなら…」

魔術師「前に食べた事あるんですけどね…でも、ベーカリー林檎のパンが一番です!」

剣士「…ふーん、そうか」

261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/12(木) 07:11:43.60 ID:+bvM9VSIO
魔導師は既に食べてるのか
262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/04/12(木) 09:20:26.13 ID:sGeHDpggo
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/04/12(木) 19:39:18.23 ID:HVPr+Huf0
【ベーカリー・ロウネル】



剣士「おお、でかいな……」

魔術師「ね?すぐでしょ?」

剣士「こんな近くにあったとは…まあ、とりあえず中に入ってみよう」

魔術師「はい!」



剣士「…うお、すごい人だ、パン屋とは思えんな」

魔術師「天井も高いですし、棚も大きいですよね」


「はーい、こちら焼きたてのツイストベーグルだぁ、美味しく食べるなら今から1分以内!急いで急いで!」

「蓋ありゴーストベイクだよ!好きな物を入れて楽しめる小さいものもあるよ〜!」


剣士「……腹が減るな」

魔術師「……はいっ」
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/14(土) 01:06:00.48 ID:6aMJq1cDO
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/14(土) 07:30:08.12 ID:PHw0FNv0o
あつ!
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/14(土) 10:40:20.37 ID:kFhcxOIBo
ひゃっこい!
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/04/16(月) 18:32:04.80 ID:RiAviqKM0
剣士「……」モチャモチャ

魔術師「……」モムモム


剣士「……焼きたては、美味いな」

魔術師「えへへ、そうですねえ」


剣士「店内にこうして食べるスペースがあるというのは、なかなか親切な建築設計だな」

魔術師「広いお店ならではの発想ですよねえ」

剣士「うむ…しかし、どうしてここまで安い値段でパンを売れるのか…」

魔術師「土地の税も、たくさんくるでしょうにね」


「ははは、それはですねお嬢さん、このお店は伯爵様が経営している店だからなのですよ」

剣士「!」


店員「どうもお嬢さん、ご利用いただきありがとうございます」

魔術師「えへへ、どうも、美味しいパン屋さんですね」

店員「ふふ、そうでしょう、我々ロウネルは味も値段も一切妥協しません…最高の品質と安さを皆さまに提供します」
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/04/17(火) 08:32:57.63 ID:yWpIfOdfo
269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/18(水) 12:58:29.52 ID:BFOoUR/IO
おつ
270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/04/18(水) 18:36:01.51 ID:udoHXQB10

剣士「伯爵、様?」

店員「ええ、ロウネル伯爵様です、このベーカリーを経営しているのですよ」

魔術師「ふああ、じゃあ貴族さんが……」

店員「一般のベーカリーでは成しえない大量生産ゆえの安さ、この大事業はロウネル様だからこそできたと言っても良いでしょう」

剣士「ふむふむ……」モチャモチャ


剣士(なるほど、貴族経営の店だったか…)


魔術師「たくさんパンを作ると安くなるんですか?」

剣士(お)

店員「ええ、大量に仕入れることで、原料を安くすることができますからね」

魔術師「そうなんですかぁ…すごい…」

店員「ふふふ、そういった地道な削減により成り立つのが、ロウネルなのです」

剣士「なるほど」モチャモチャ


剣士「ふう、腹ごしらえも終わったし、そろそろ行こうか?ホリィ」

魔術師「え?」

剣士「行く予定があっただろ、間に合わなくなるぞ」

魔術師「は、はい!あ、待って下さいよー!」


店員「……」
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/18(水) 19:17:10.90 ID:Whd68Z7IO
272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/20(金) 07:01:41.13 ID:7/IszweIO
さっそく目をつけられとるww
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/04/20(金) 19:35:54.40 ID:+d0P4cKf0

魔術師「きゅ、急にどうしたんですかー」

剣士「……傭兵の装備で来たのは間違いだったかもな、警戒されていたよ」

魔術師「へ?」

剣士「あの店員にだ」


剣士「目で解ったよ、“こいつらは何だろうな”って見定めるような、そんな目で私達を見ていたからな」

魔術師「そうですか…?」

剣士「ああ、やたらと私達にまとわりついていたしな…何かするんじゃないかと疑るようにさ」

魔術師「そんなぁ…普通のお客さんとして来てたのに」

剣士「いや普通ではないだろ、一応立派な諜報だから」


剣士「しかし、あの店員から基本的な情報は取れたな」

魔術師「はい、そうですね……」


剣士(ベーカリー・ロウネル…貴族経営の店…大規模な製造はつまりそういうことか)

剣士(今のところは特に怪しい点も無いな)
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/20(金) 20:18:42.88 ID:ipyW8UyIO
乙?
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/20(金) 21:10:08.22 ID:goGYEYHdo
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/21(土) 02:20:21.60 ID:adI4zSnDo
ふむふむ
277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/04/23(月) 20:08:52.40 ID:NLCqTPpu0

【二の街 噴水広場】


魔術師「……」

剣士「……ふー、さて……」



「すごいね……」

「うん……」

「おー、でか…ちっさ」

「ははは…」



魔術師「どうしました?これから、どうします?」

剣士「…まずは落ちついた場所に行こうか」

魔術師「え?そのためにここに来たんじゃ……」

剣士「もっと落ちつける場所へ行くんだよっ」

魔術師「は、はい……」
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/24(火) 00:28:23.21 ID:r1uzLf4qo
ラブ●かww
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/24(火) 12:36:38.74 ID:RzED/7fIO
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/04/24(火) 20:35:58.27 ID:ee+aBcZ50
【喫茶店】


剣士「やれやれ、今にして思えば、私たちほど諜報に向かないペアも珍しいだろうな」

魔術師「えー?どうしてですか?」

剣士「……私たちのペアは、一目で覚えられるからだよ」

魔術師「あー」


剣士「まったく、簡単かと思いきや、なかなか難しい仕事を選んでしまったみたいだ」

魔術師「……で、でも調べ事をするだけですし…」

剣士「…そうだな、怪しまれないうちに必要な探りを入れてしまうか…何度も機会はない」


剣士「まずは原料の仕入れ先を探してみるか…店の名前は詳しく知らないけどさ」

魔術師「はい!」
281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/24(火) 22:15:59.57 ID:afpZp05IO
目立ち過ぎ私服警官的な感じかww
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/04/25(水) 00:15:20.86 ID:73nHJHBMo
283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/04/25(水) 20:27:31.79 ID:Ogr+Itwv0
【二の街・ベーカリーギルド】


受付「ふうん、珍しいお客さんだねえ、こんな寂れた事務所に、ベーカリー以外の人が来るなんて…」

剣士「あはは…」

魔術師「私のお友達もベーカリーで働いてて、興味があったんです!」

剣士(よし、セリフを噛まずに言えたな)

受付「なるほどねえ、感心感心…最近の若い女の子も、やれ戦争だやれ出世だしか興味がない、嫌〜な世の中になったものだよまったく」

剣士「ハハハ、オッシャルトオリデ」


「ほら、お茶を入れましたよ、良いボヒーのものだから、どうぞ」

魔術師「わあ、わざわざありがとうございます!」

受付「ははは、いーんだよ、ベーカリーに興味を持ってもらえれば嬉しいからさ」


受付「……えーっと?」

剣士「……」

受付「あ!そうかそうか、どこで原料が仕入れてるのか知りたいんだったね」

魔術師「はい!」

受付「二の街のベーカリーはだいたい、遠くても一の街や三の街の所までだね、原料を仕入れるといったら」

剣士「ふむ…やっぱり両隣まで…」

受付「運ぶのもただじゃないからねえ…はい、これが主な原料仕入れ先のリスト」

パサッ

剣士「ありがとうございます!」
284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/26(木) 06:40:19.15 ID:K5IY1vxmo
内偵らしく、なってきたな
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/26(木) 11:57:19.27 ID:32FBOxGIO
286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/04/26(木) 19:57:23.82 ID:6/xV+LzB0

剣士「オズの菌工房、ブレップ発酵菌粉末工房……」

受付「そりゃ菌工房でね、色々な菌を扱ってる」

魔術師「菌でパンを膨らませるんですねー」

受付「おうとも、菌によって味も出来も、ぜーんぶ変わって来る」


剣士「ヘイネの風車舎、ミルー風車舎、パープルミッド風車舎……風車?」

受付「小麦だよ、山麦を使う所も多いが、まぁ製粉所も兼ねてるってこと」

剣士「小麦か……この連絡先、メモを取っても良いかな」

受付「おう良いよー?」

剣士「ありがとう……ホリィ、たのむ」

魔術師「はーい」


剣士「で、八卦蜜糖精製所、オクトール砂糖精製所…ここは砂糖か…」

受付「そうそう、他にもあってねえ、たとえば……」

剣士「ふむふむ…」
287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/26(木) 22:25:50.08 ID:havxBtxIO
説明好きwwww
288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/04/26(木) 23:59:44.42 ID:0g3fVp5ho
289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/04/29(日) 08:27:52.04 ID:VdEQ+4cAO
追いついちゃった
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/05/01(火) 18:33:25.49 ID:iqKfw5/80

受付「ほいじゃ、ありがとう〜」

剣士「わざわざ教えてくれてありがとう、では」

魔術師「さようなら〜!」

「また来てねぇ」


バタン


剣士「……ふう、思ったよりも濃厚な情報が手に入ったな」

魔術師「えへへ、そうですね…書類もくれましたしね!」

剣士「ああ、ベーカリーギルドに所属していないロウネルからは目も付けられない、安全で確実な業界の情報だ、活かさない手はない」

パラパラ


剣士「しかし数が多いな」

魔術師「ですねぇ、同じ原料でも、仕入れ先はたくさん……」

剣士「ロウネルだけがどうしてあそこまで低価格を実現できたのか……お抱えの仕入れ先があればお手上げだが、調べれば何かわかるかな」

魔術師「調べるとしたら、どこでしょう?」

剣士「うむ、まずは麦から行ってみよう」

魔術師「麦……そうですね、パンといったら麦ですものね!」

剣士「主成分だしな、ここで削減しなければ、他の材料ではコストの削減は難しいだろう」

魔術師「行ってみましょうか!」

剣士「ああ、そうだな」
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/05/01(火) 19:26:55.47 ID:TTwPG/9so
1乙
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/01(火) 19:31:17.24 ID:KqKOA/tIO
293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/02(水) 07:39:39.03 ID:53TBjbBeo
おついち
294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/05/07(月) 19:35:27.75 ID:2+ol8XUh0
【ヘイネの風車舎】


挽手「ぇえ?ロウネルさんの所に出してるかって?」

剣士「はい」

挽手「あんた、他のベーカリーの回し者かい?」

魔術師「そ、そういうわけじゃないですけど……」

挽手「じゃあロウネルさんの回し者かい」

剣士「どっちなら良いんだ」

挽手「……ふん、こっちとしちゃあ、他のベーカリーの人であってほしい所だけどね」

魔術師「え?なんでですか?」

挽手「簡単だよ、あたしゃロウネルさんが嫌いなの」

剣士「ロウネルが?何故?」


挽手「そりゃあもちろん、態度が気に食わないのさ、ロウネルさんのね……あれが貴族特有の、ってやつなのかい?とんでもないよ、ホント」

魔術師「あー、貴族さんですからね……」

挽手「ズカズカと無言で上がり込んで来ては、あたしに“小麦は年に何杯取れるかね”だってよ!礼儀ってものを知らないね!貴族は!」

剣士「うーむ……横柄だな」

挽手「あたしが“どうせこんだけしか取れませんよ”って突きつけてやったら、“なんだこれだけか”ってさ!もう頭にしか来ない!」

剣士「ひどいもんだ」

挽手「金輪際、ああいう奴とは関わりたくないもんだよ、ホントに!」
295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/07(月) 23:00:06.22 ID:CaCCfDyDO
296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/05/07(月) 23:03:17.57 ID:/mbdf9B0o
297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/08(火) 01:40:35.24 ID:X1JKx45wo
298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/05/08(火) 19:25:24.43 ID:5lkL6quP0
【パープルミッド風車舎】


剣士「ここは結構大きな施設だな」

魔術師「パープル……あ!国営の所じゃないですか?ここって」

剣士「そうか、なるほどな」


「いらっしゃいませ、……おや、何かご用でしょうか」

剣士(見た目だけで商売相手ではないと決め付けたな)

魔術師「あのー、ここの小麦の出荷についてお伺いしたいんですけど……」

「はあ、我が風車舎の?」

剣士「料理店を開く時、原材料について調べたくて……」

「ああ、飲食店を開かれるおつもりで?実に熱心ですね」

剣士「…ここはどんな所に出してるか、ちょっと聞きたくて…例えば、ここから出してる店で美味しい所とかあったら聞きたいなと」

魔術師(わあ、お上手)


「んー、まあ、あまり言って良い事ではないのでしょうが、ベーカリーは特に多い所ですかね」

剣士「!」

「こちらは安定供給を目的としていますので、値段の方は他の民間に負けるところはありますが…作の出来によって、その年の出荷は変わります」


「ベーカリー林檎、マジックプレート……二の街の多くのベーカリーが利用していますね」

剣士「? あれ、ではベーカリー・ロウネルは?」

「ロウネル、ああ、ロウネル様ですか……まぁそれなりにですかね」

剣士「……それなり」

「他のベーカリーと同じくらいですよ、大した量を買いつけるわけでもありませんね」
299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/08(火) 21:16:45.56 ID:X1JKx45wo
…ここじゃない?
300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/08(火) 21:38:58.30 ID:66SaZnvIO
301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/05/09(水) 22:46:06.49 ID:2zDSswuW0
【ミルー風車舎】


「いらっしゃ……なんだい君たちは」

剣士「私たち、飲食店を開こうと思っていて」

「あー、それでうちの小麦を?」

剣士「はい、でも小麦によって性質が異なるので、この店の小麦がどのようなものに合うか……例えば、味でいえばどういった店に出しているか、とか……」

「悪いね、ここの畑は不作でね、土地が痩せているのかどうにも小麦に余裕がないんだ」

魔術師「あ、ごめんなさい……」

「新たにお抱えで取引先を持つ余裕はないよ…すまないね」

剣士「そうですか……悪いことを聞いた、わかりました」

「いや、すみません」
302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/10(木) 00:06:05.55 ID:M7ets8EDO


なかなかヒットしないね
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/10(木) 00:35:07.77 ID:NwH8LuMIO
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/05/10(木) 04:35:59.56 ID:yyGHPR82o
見てるよ
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/10(木) 07:03:00.90 ID:6MfQsmoIO
おつんぽ!
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/05/10(木) 19:05:45.45 ID:HauxyI4q0

魔術師「うーん……難しいですねえ」

剣士「……」

魔術師「どのお店にも、やっぱり事情があるんですねー…」

剣士「うーむ…」

魔術師「勉強になりますね……どうかしました?ミゼラさん」

剣士「ん、ちょっと気になる所があってな」

魔術師「気になるところ…?」


剣士「3つの大きな風車舎を回ってみたが、ロウネルと大口で取引しているものがないとは、どういうことだ?」

魔術師「あれ?そういえば」

剣士「ロウネルは一日に大量のパンを生産しているんだ、これらの風車舎と契約がないのはおかしい」

魔術師「……そうですね、それか、他の街から輸入してたり?」

剣士「だとしたらお手上げだが…?」

魔術師「……でも、調べてみますか?」

剣士「……それが良いのかもしれないな」

魔術師「うふふ、歩きますねえ」

剣士「脚にくる仕事だなぁ」
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/10(木) 19:20:04.37 ID:NwH8LuMIO
乙?
308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/10(木) 21:13:18.63 ID:6MfQsmoIO
乙んぽ!
309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/05/10(木) 21:39:45.41 ID:1WWsqMJAO

そして309しつけぇ
310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/05/11(金) 19:25:54.26 ID:ui/cWIgH0

――酒場


主人「ふーんふんふん、ふーん」


コンコン、コン


主人「おっ…?ミゼラか、専用のカップ出さないとな…」カチャカチャ


キィイ・・・


剣士「ふう…つ、疲れた…」

主人「ようミゼ――」

魔術師「ふわー、脚がもう折れちゃいそうですよー…」

主人「でっ…!」

剣士「ん?あー…そうか、まだ紹介していなかったなマスター、傭兵協会で私とパーティを組むことになった、相方のホリィだ」

主人「おお、この娘が……」

魔術師「あら?ミゼラさんのお知り合いの方ですか?はじめまして!私、ホリィ=ポールウッドと申します!」ペコォオリ

主人(会釈してもでけぇ)


主人「あ、ああよろしくな……ミゼラをよろしく頼むよ」

魔術師「はーい!」

剣士「ふん、よろしくしているのは私の方だ」

主人「そうか?」

剣士「……む、実務ではそうでもないか…?」

魔術師「えへへ…」
311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/11(金) 19:27:43.40 ID:aSTQW7GIO
312 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/12(土) 00:32:13.38 ID:33RTlVoDO
313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/12(土) 08:52:25.14 ID:/qHcQRqJo
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/05/14(月) 02:01:32.82 ID:NNoNJhqU0

主人「へえ、なるほど……極秘の調査任務ねえ」

剣士「ああ、詳しくはマスターにも言えないが……んく、んく」

魔術師(ミルク……)

主人「傭兵っていうくらいだから、隣国の“蛇”にでも派兵されるのかと思ったが…」

剣士「あっちとの戦争はもうないだろうよ、決着したようなものだし」


主人「へえ、なるほど……ふーん、調査ねえ……そんなこともするんだなぁ」

魔術師「でも、なんだか退治よりも辛いです…」

剣士「そうだな、結局今日は聞き回っても何も掴めなかったし……」

魔術師「あはは…八卦国中の風車舎さん全てに詳しくなった気がしますね…」

剣士「麦屋に詳しくなってもな……」


主人「風車舎?」

剣士「あっ!こらホリィ、秘密だって言っただろ!」

魔術師「あ!ご、ごめんなさーい!」

主人「まぁまぁ……小麦の調査でもしてるのか?ミゼラ」

剣士「…むむ、まあ、関連調査というか…風車舎の方で、変な納入がないかを調べているというか」

主人「…ミルー風車舎」

剣士「!」
315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/14(月) 06:33:48.31 ID:sDzXbWLYo
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/05/14(月) 08:22:27.28 ID:2O2GZVCso
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/05/14(月) 18:44:10.47 ID:NNoNJhqU0
魔術師「み、ミルー風車舎って、今日行ったところですよね!?」

剣士「あ、ああ!マスター、そこがどうかしたのか!」

主人「どうもこうも、まぁちと変だなっつー話が上がってるだけなんだが」

剣士「……?詳しく、聞かせてもらえないか」

主人「おう」


主人「まぁ俺のこういう、酒もちょっとした飯も提供してる業界だからこそ気付いた可笑しさなんだけどな」

主人「ミルー風車舎の麦の量は、二の街付近ではヘイネの次に多いと言われているんだが」

主人「ヘイネやあそこは作り過ぎた麦で、簡単なエールを毎年出してるんだよ」


主人「うちはそこのエールをよく取っていてな、今年もエールを取っているんだが……料理用の小麦は出せないと、別口の通達が送られてきてな」

剣士「……ん?」

主人「おかしいだろ?余り物で造れるエールは出せても、粉は出せない…理由は不作だとか言ってるが、そんなはずはないだろう」

剣士「……そうだな」

主人「それに不作っつっても、他のミッドやヘイネでは全く不作なんぞは起こっちゃいない、何かあるんじゃないか、って、酒場では言われてるよ」


剣士「……」

魔術師「……」
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/14(月) 19:17:02.38 ID:1XwBYi1IO
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/15(火) 00:18:18.70 ID:vDpa8OUIO
それだ!
320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/15(火) 01:36:21.93 ID:JWqVuzbDO
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/05/15(火) 19:05:50.39 ID:XdcxJ1oL0

騎士「ふんふんふーん、いやぁ良い天気だ」

騎士「こういう日は馬鹿騎士見習い共の稽古の面倒なんぞは見ずに、のんびり外で散歩に限……」


騎士(今ちらっと、掲示板に大事なことが書いてあったような)


「えーっと、鳥馬車正午に到着……」

「ああ良かった、ちゃんと待ち合わせに行けば大丈夫らしい」

騎士「おっとすまないね、悪いね、あいあい、通りますよ」グイ


騎士「……ん〜」


“中間報告あり 峡谷の二人”


騎士(……ふーん、もう何か掴んだのかな?)

騎士(まあいいや、とりあえず姫様に知らせないとね)


騎士「もちろん返事はYESだよ、デコボコさん」カリカリ


“中間報告あり 峡谷の二人”
“合点承知の助 明日にまた あの場所にて”
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/15(火) 19:15:12.85 ID:1oC+QFpIO
323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/15(火) 23:53:59.84 ID:JWqVuzbDO
連絡方法は掲示板か
なるほどね
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/16(水) 11:19:00.81 ID:ovImYMpIO
乙ん
325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/05/16(水) 18:51:14.64 ID:aHCv2zuz0


姫「中間報告ね、3日か4日といったところかしら」

騎士「まぁ、国の調査団に行かせるよりは早い方かな」

姫「中間でこれだけ早いと、解決までは一週間?」

騎士「だったら嬉しいですねえ」

姫「あはは、そうね、この城の者の方が使えないというのは、ちょっと悲しいけど」

騎士「まー金がかかってりゃ頑張れるもんなんですよ」

姫「……そうか、哀しいものね」


コン、コン


姫「!」

騎士「亀」

「蛇」

騎士「ん、中へどうぞ」


ガチャ


剣士「失礼します」

魔術師「失礼しまーす……」

騎士「どうも、まぁ掛けてください、報告を聞きましょうか」
326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/16(水) 22:26:18.88 ID:DOfZxz6IO
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/17(木) 07:04:37.29 ID:zyt9toYIO
乙ん
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/05/17(木) 21:41:24.20 ID:cRaUoU7N0

騎士「ふむ、まずは小麦から当たってみたと……ミルー風車舎、か」パラ

剣士「ひとまず怪しかろうというのはそこだけ、他の材料も調べるとなると……」

騎士「いや、良いと思います、小麦。そしてミルー風車舎…この線で深く調べてみて良いかと」

魔術師「えへへ」


姫「酒とパン……なるほど、この不自然さはベーカリーだけでは把握できないわね」

騎士「ええ、酒造と風車舎では繋がりも薄く、疑わしいくらいでは調べようもありませんしね」

姫「御苦労さま、二人とも、なかなか良い報告が聞けたわ」

剣士「いえいえ」

魔術師「えへ、それじゃあ、私達は引き続きミルー風車舎さんを調べれば良いんですか?」


騎士(……どうします?こっから先は、もしかしたらリスクを伴うかも)

姫(続けましょう、今さら引きさがるわけにもいかない)

騎士(まー確かにそうなんですが)


騎士「……では、指定した日時にミルー風車舎へと赴いていただきます」

剣士「日時を指定?」

騎士「こちらの方でも都合があるので、すみませんが」

剣士「……わかった」

姫「そうね、明日の11:40分にまたここへ来てもらおうかしら」

魔術師「お昼ですね、わかりました!」

329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/05/17(木) 22:03:19.83 ID:vyZSEU7zo
330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/05/17(木) 23:26:32.36 ID:GSmAsLvAO

見てるよ(`・ω・)
331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/17(木) 23:49:39.68 ID:GzjDxZXIO

同じく
332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/17(木) 23:51:15.52 ID:B8smz2/Mo
まだ途中ですが読んでます
333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/18(金) 04:34:45.44 ID:oBGDMMNDO
334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/05/22(火) 20:38:17.89 ID:oM4AAQd+0

剣士「……ん?」ヒョイ

魔術師「?」

騎士「何か落し物ですか?」

剣士「……ええ、ちょっと趣味で使ってる針を」

騎士「おお、そりゃあ大変です、ここで落とされたら見つかりませんからね」

剣士「はは、ではこれで失礼」

姫「また明日に」

魔術師「はい!」


バタン


剣士「……」

魔術師「へー、ミゼラさんて、お裁縫するんですか?」

剣士「んー、まぁ、ね」


剣士(……これって、まさかな)
335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/22(火) 22:35:37.24 ID:ub1fBhbIO
おーつ
336 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/05/23(水) 00:42:47.32 ID:cyiOsa0Qo
337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/05/28(月) 19:34:07.87 ID:apCJLQRj0
魔術師「これからどうしましょっかぁ」

剣士「そうだな……私はちょっと、寄りたい所があるかな」

魔術師「どこですか?私も行きます!」

剣士「いや……パーティだからって常に一緒ってわけではないぞ」

魔術師「……そうなんですか?」

剣士「そうだよ…お前は傭兵協会で何を聞いていたんだ」

魔術師「えへへ?じゃあ別行動ですね?」

剣士「そうだな、夜にまたそっちに向かわせてもらうよ」

魔術師「はい!……あ、私はどこに行こう?」

剣士「どこでも良いんじゃないか?」

魔術師「うーん……」

剣士「とにかく、ここで一時解散だ」

魔術師「……はい!」

剣士「?」

魔術師「えへへ、はじめての解散ですね?」

剣士「な、そんな寂しそうな顔されても、私のプライベートの時間だってあるんだからな」

魔術師「わかってますよー、えへへ」

剣士「……ったく」
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/28(月) 19:39:32.57 ID:J/sIo7WIO
339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/29(火) 06:41:44.86 ID:bJUdvz7IO
プライベート…ごくり
340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/29(火) 14:56:43.93 ID:4mlVd2WKo
ごくり
341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/05/29(火) 19:36:56.07 ID:nt9xZ+aj0


受付「おや…ミゼラさん、ホリィさんと一緒では」

剣士「いつも一緒にいるわけじゃない」

受付「任務につきましては、パーティで相談しての決定が望ましいですが…」

剣士「そういうつもりじゃない、あの本棚を見たいんだ」

受付「本?資料書ですか、それでしたらあそこの一角がそうです」

剣士「……ここの全ての傭兵に解放しているんだろう?あれだけ?」

受付「あれだけです、みなさんそこまで本を読むわけでもないので」

剣士「……」

受付「まぁ、だいたいの本は揃っています、有益なものばかりとまではいきませんが、ある程度の洗練はされている棚達ですよ」

剣士「そうか…わかった、恩に着る」タッタッタッ

受付「はい」


ガタガタ


受付「……」


ガタガタ


受付「…ミゼラさーん!脚立はこちらにありますがー!」

「黙れー!」

受付「黙れって……」
342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/29(火) 19:45:05.90 ID:kpEtMFxIO
343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/29(火) 22:09:53.26 ID:UOcUJcpDO
ちっちゃかわいい♪
344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/05/29(火) 22:33:34.33 ID:rl70eenAO
かわええな(*´Д`*)
345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/05/31(木) 20:43:06.02 ID:5twmNKC90

店主「はい、ホリィちゃん、チョウイモのサラダですよー」

魔術師「わーい!いただきまーす!」

店主「ふふふ、たくさん食べてねー、これ以上おっきくならなくていいけど」

魔術師「もぐもぐ……?」

店主「うふふ、まぁいっか、もうとことん成長しちゃいなさ〜い」

魔術師「ふぁーい」


ガチャ カランカラン


剣士「ただいまー……戻りました」

店主「あら、ミゼラちゃん…お夕飯の準備はできてるわよ」

剣士「え…?夕飯?」

魔術師「一緒に食べましょう!美味しいですよ?」

剣士「…じゃあ、いただきます」

店主「たくさん食べて大きくなってねー」

剣士「……」ムスッ
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/31(木) 21:20:16.94 ID:u/UoNtjIO
347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/01(金) 06:40:22.18 ID:kEMckA5co
348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/06/04(月) 20:06:40.98 ID:zvC9e0ut0

姫「……」

妹「お姉さま?」

姫「ん?どうしたの、イリー」

妹「難しい事を考えておいでですね?」

姫「あら……わかる?」

妹「お姉さまの事でしたら、なんでも」

姫「……ふふ」

妹「…そう思いたいのですが、近頃のお姉さまは、私にも秘密にされていることがありますね?」

姫「……ごめんなさい、この事は、誰にも言えないの」

妹「……」


姫「……口に出しただけで、それを聞きとる風があるかもしれない」

姫「筆談すらも覗く要石があるかもしれない」

姫「…事実、奇怪な眼や、耳や、鼻で命を落とした王は数知れないわ」


妹「…甲羅の中の亀、ですものね」

姫「そう……」


姫「……ふう!それじゃ、おやすみなさい!イリー!」

妹「はい、お姉さま」
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/04(月) 20:09:43.41 ID:Qi/VXXsIO
350 :ブーン・ルミナス :2012/06/04(月) 20:20:01.66 ID:DoM4etK50
ネコチャンシロイ つづける に替わって ネコチャンアカイ つづける
悪魔重量が重くなく、安定している
武道家→戦士→武道家→戦士→武道家→戦士。
351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/06/05(火) 19:58:19.71 ID:YcvHoPCV0
コン、コン


「亀」

剣士「蛇」

「どうぞ」


剣士「……ふー」

魔術師「おはようございます!」


姫「ええ、おはよう、ちゃんと来たわね」

剣士「それはもう、当然」

騎士「じゃあ早速ミルー風車舎への調査に行ってもらいます、の、で、す、が……」

魔術師「?」


騎士「…ロウネルが関わっていない可能性も当然あるのですけど、ミルー風車舎、私どもからしても、どうも……臭う」

剣士「はあ」

姫「……」

騎士「ロウネルが裏で何らかの手を引いているとすれば、もしかしたら貴女方にも身の危険が伴うかもしれません」

魔術師「へっ?」

剣士「消される?」

騎士「といってもまぁ、相手も立場ある貴族、何かやましいことがあっても、この程度の事ならばもみ消し方も穏便に済ますとは思いますが」

姫「それも、あなた達の追求の仕方次第ね」

剣士「……」

騎士「あまり派手に、大っぴらにやりすぎないように気を付けてください、引き際さえ心得ていれば大丈夫だと思いますが……」


剣士「こういう仕事、慣れてるんですね」

騎士「ええ、そりゃもう」

姫(よく言うわコイツ……ま、事実慣れてるんだけど)
352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/05(火) 20:49:27.00 ID:xrv9S13IO
353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/06(水) 00:17:57.44 ID:RQ4IAmmDO
354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/06/06(水) 19:50:21.86 ID:GLwwf9ta0

魔術師「緊張しますね、ああいう風に言われると」

剣士「ああ……だが事実だ、気を引き締めていこう」

魔術師「はい」

剣士「……まぁ、風車のおっさんにどうこうされることはないだろうけど…」

魔術師「あはは、ミゼラさんでも私でも、さすがに普通の人相手なら大丈夫ですよー」


剣士「……」

魔術師「はい?どうかしました?」

剣士「いや……なんだかんだで、ホリィも闘いには自信あるんだな、と」

魔術師「そ、それはそうですよ、八卦国の魔術師ですもの!」

剣士「隙を突かれたり、貧血にならないようにな」

魔術師「むー……そんなのばっかじゃないです……」



剣士「……着いた、ミルー風車舎」

魔術師「ですね」

剣士「…よし、問い詰めにいくぞ」

魔術師「はいっ!」
355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/06(水) 23:44:48.87 ID:RQ4IAmmDO
乙乙
356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/06/07(木) 00:09:58.45 ID:R/xqAtCto
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/07(木) 07:15:36.31 ID:9CgWkqFIO
乙乙乙
358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/06/07(木) 19:07:09.87 ID:T96GaoCa0
ガチャ キィイ・・・


「いらっしゃ……なんだ、また君たちか」

剣士「どうも」

魔術師「こんにちはー」

「小麦は取引できないよ?」

剣士「そうですか…ここならエールも出してくれると聞いたので」

「……!」

魔術師(いきなり!?)


剣士「エールが出せるなら、小麦もあるのかな、と」

「……誰から?」

剣士「本当は小麦、あるんですよね?人が悪いなぁ、売って売れないと困るんですよ」

「……」

剣士「……はあ、やっぱり苦手だ、こういうの」

魔術師「?」

剣士「粗野な育ちはこれだから、な…」


剣士「…問い詰めるのは苦手だ、けど顔を見ればだいたいわかりますよ」

「…何のことかな、帰ってくれ」

剣士「嘘をついてるかどうかなんて、すぐにわかる」

「私が何をしたというんだ?嘘とは何の事だね?」

剣士(…こうなったらもう、ハッタリしかないか)


魔術師「……もう、全部わかってるんですよ?」

「!」

剣士(お)

魔術師「私達がここにきたのは、もう後処理です……全てわかっちゃってます」

「……」

魔術師「国を敵にしてまで、守りたいものがあるんですか?」

剣士(うわあああー、怖っ)

「ひっ…!や、やめてくれ!話す!全て話すから、全面的に協力する…!」

魔術師「えへー」
359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/07(木) 20:23:14.26 ID:LwNQKTfDO
はったり効きすぎワロタ
360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/07(木) 21:35:00.13 ID:2LTrDrNmo
ワクワクワ
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/07(木) 22:49:34.13 ID:pjJXTx/IO
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/06/08(金) 19:47:17.50 ID:RfOtABzr0
「……ベーカリー・ロウネル…」

剣士「!」

「…全てあそこの指示だ、いや、命令…とにかく俺の意志じゃない」

剣士「ロウネルに小麦を大量に出していた、だけならば咎めも何もないが…」

「口止めされていたんだ…でなければこんなことはしない!」

魔術師「?」


「ロウネルは俺を脅したんだ…!大量の小麦を、クズみたいな値段で売れと…!でなければこの風車舎の未来はないと…!」

剣士「なに……?あそこがミルーを恐喝していた?」

魔術師「貴族さんが、ですか?」

「…貴族の恐喝だぞ、従わなかったらどうなるか…!」


剣士(…真っ黒じゃないか)

魔術師(なな、何か物凄い大事じゃないですか?これ)
363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/06/08(金) 21:41:47.38 ID:af3zpajdo
364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/09(土) 00:48:01.06 ID:IKzHz5MDO
貴族よっぽどパン屋さんになりたかったんだな
365 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/09(土) 08:30:50.68 ID:zZQuPqy9o
黒んぼ
366 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/06/11(月) 18:48:50.20 ID:oI3VdPPJ0

「従うしかなかったんだ…俺は叔父のように殺されたくはない」

剣士「叔父……?」

「先々代だ、やつらが来た時には俺が喋るよりも先にロウネルに向かって叫んでたよ」


「“それが貴族のすることか!”……ってな」

魔術師「それで……」

「その場で…叔父は殺されちまった、用心棒にな」


剣士「……なんて酷い」

「俺ぁ何も言えなかった、頷くしかなかった…!」


「だってそうだろ?俺らのような平民には何の後ろ盾もない!奴らはギルドに告発しようとしても無駄だって…!」

魔術師「…ロウネルさんに、従うしかなかったんですね」

「超安値での販売だ、ギルドの大幅な規約違反…帳簿は毎週毎月ごまかしてた…くそっ、絶対にばれると思ってたんだ」

剣士「……」

「ああ、俺はもう破滅だ、ミルーはおしまいだ、ごめんよじいちゃん……」


剣士「…任せろ、そのために私達がいる」

「え……?」

剣士「だって、あなたは何も悪いことをしていない」


剣士「貴族の不当な圧力、これは許されるはずがない」

「でも相手はロウネルで……」

剣士「だからどうした!それが貴族か!?私はそのような矮賊に頭を下げ続けるために努力しているのではない!」

魔術師(!)
367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/11(月) 19:21:49.93 ID:ZK25OlzIO
368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(島根県) [sage]:2012/06/11(月) 19:22:23.13 ID:QiI2qFrEo

盛り上がってきたね
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/11(月) 20:46:49.19 ID:mp+MbfZHo
剣士が熱くなって参りました
370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/11(月) 23:02:05.43 ID:Bvtc8x8DO
剣士ガンガレ
371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/11(月) 23:47:58.56 ID:DOx4H2iSO
1レスの更新であとは感想かよ……何だかな
372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/12(火) 00:05:14.55 ID:G0bs1ryIO
ロウネルさんパン好き過ぎんだろ…
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/06/12(火) 18:52:02.89 ID:5zBGsWM10

魔術師「……そうですね、その通りですよ!」

「……助けてくれるのか?」

剣士「正しき民を守るのが国だ」


剣士「…私はそう信じている」

剣士「……そうでない国になど、私は仕えない」

魔術師「うん」

剣士「…ホリィ」

魔術師「ミゼラさんは正しいですよ!」

剣士「…ありがとう」

「頼む、叔父の仇をとってくれ…!ロウネルの罪を暴いて、ミルー風車舎を助けてくれ!」

剣士「ああ、必ず助けてやる…不正を暴くだけの材料はある、あとは報告だけだ」


剣士(あの二人の機関に報告すれば、きっとなんとかしてくれるだろう……)

魔術師「じゃあ急いで戻りましょう!まだあの二人はいるかもしれませんよ!」

剣士「! そうだな、すぐにでも戻ろう」

「お願いだ、ロウネルの連中にはバレないようにしてくれ!俺は……!」

剣士「ああ、身の危険があるんだろう、わかってるさ」

「……感謝する!」


ガチャッ・・・


剣士「さあホリィ、二の街のあの建物へ……」

魔術師「…」

剣士「……っと、と、…ふう、なんてことだ」



??「やあ、お二人さん、お久しぶりですね」
374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/12(火) 19:59:48.14 ID:uN6V+fSIO
375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/12(火) 22:25:55.60 ID:XYCjZndDO
376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/06/12(火) 22:39:26.33 ID:xIK5yAzSo
ロウネルさん……
パン屋さんになるのが夢だったんだな
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/13(水) 12:23:23.13 ID:G7tGus2IO

誰だ?
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/06/13(水) 19:21:54.42 ID:Nwz+Zfx10

剣士「お前は……」

魔術師「? どなたですか……」

??「まあお待ちください、お嬢さんがた」

魔術師「あ、あの、私達急いでいるので……」

剣士「忘れたかホリィ、奴はロウネルで私達に目をつけた店員だ」

魔術師「……あ!」

??「ふふ、思い出していただけて何より……」



盗賊「しかし今の私はベーカリー・ロウネルの店員ではない…あくまで、隣国のならず者…荒くれ者の盗賊団の一人」

剣士「……ジラフの盗賊は、そんな立派な井出達ではないがな」

盗賊「おや、そうでしたか?まぁ保険のようなもの、構わないのです……ネズミの排除が蛇の務め」


ジャキッ


盗賊「斬って殺す、そして奪う……盗賊の後に残る証拠は、何も持たぬ裸の死体のみなのですから」

剣士「……口封じのつもりか?」

盗賊「怪しむ目つきで店内を眺めていた貴女達、マークしていて正解だったようですね、ここまでたどり着くとは思いませんでしたが……」


剣士「そっちがそのつもりなら、私にだって考えはある」ジャキッ

盗賊「おや、平民ごときが伯爵に抵抗なさる?まぁ命乞いなどは無駄ですけど、楽に殺すくらいならば聞き分けますよ?」

剣士「ほざけ逆賊の犬…私の剣は悪を裁く剣ではないが、目の前の貴様らを斬るには理由が十分に揃っている」


チャキッ

剣士「それだけだ」
379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/06/13(水) 19:22:41.71 ID:yBVf6vllo
さいそくちんこ
380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/13(水) 19:30:30.98 ID:P/e7+C/IO
381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/13(水) 23:24:31.67 ID:KbcEUfEDO
盗賊まで絡んでるとか
貴族さんのパン好きには脱帽するっス
382 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/14(木) 01:22:08.65 ID:lsDFjIMIO
パン「私のために争わないで!」
383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/14(木) 18:52:20.21 ID:XboOibSIO
パンだけにな!
384 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/06/14(木) 19:51:09.51 ID:fQYtCsPq0

盗賊「くく、くくく、いや、まぁいいでしょう、義賊、いや必要ですからね、良いと思いますよ」

剣士「嗤うな」

盗賊「いやぁ、しかしね、勝ち負けも正否も、全ては強者が勝ち取る事ができるものですよ」

剣士「…なに?」

盗賊「てめーらが正義をウタおうが、俺らにゃ関係ないってこと」


ドォンッ


剣士「――」


チュイッ


剣士「――は」

魔術師「ミゼラさんっ!?」


剣士(…鞘が……吹き飛んだ)

盗賊「わざと剣の鞘を狙った、外したわけじゃあない」

剣士「いま、のは……」

盗賊「銃ですよ、知らんかね?ジラフ最新の肩掛中型銃……茂みに2人、忍ばせているんです」

剣士「…銃など当たるか」

盗賊「最新鋭っつったろーチビアマ、30m以内ならほぼ誤差無し、50m以内で殺傷できるの一級品だ」


魔術師「……」

盗賊「おっとそこのノッポ!動いてもらっちゃ困るな!変な動きをすればお前にも風穴を開けてやるぞ!」

魔術師「ひっ……」


剣士「……」

盗賊「……く、くくく、ははは、いやあ良い子だ、くっくっくっ……」
385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/06/14(木) 20:33:18.15 ID:QviH3+lxo
386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/06/15(金) 09:53:29.95 ID:5vcf35LAO
個人的には書きためて、週一ぐらいできりのいいとこままでやってほしいかな

まあ結局>>1のやりやすいやり方でいいんだけどさ
387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/15(金) 12:33:51.95 ID:RCcmz/xIO

今のペースがいい

気合入ればマジシャンほむのようにガンガン進むさ
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/06/15(金) 20:37:14.21 ID:TeyHPAWx0


剣士「そうやって力を振るい、民からなけなしの財を奪うのが、貴様らのやり方か…!」

盗賊「はっは、ただ養分を吸うだけならばここまで危険な真似はしない……だがロウネル様にも目的があるのだよ」

剣士「……」


――アォオォオオオオ……ン……


盗賊「……狼か、近いな」

剣士「……お前らの目的はなんだ」

盗賊「ふ?知りたいですか?」


盗賊「一の街から八の街、八卦国を構成する8つの街それぞれにベーカリーのギルド支部が存在する…」

盗賊「品質・値段の均一を望むギルドすら振り切り…ロウネル様は、八卦国最大のベーカリーを作ろうというのです」


魔術師「なっ……!人を殺してまで…!」

盗賊「事情があるのですよ、事情がね……近々行われる八卦の決闘会に備えるために…!」


剣士「――……」

盗賊「わからないか?全ての参加者へ、国の最大ベーカリーである我々の商品が行き渡る…最も安全であるとね」

剣士「……なに」

盗賊「大金が行き交う大会だ、期間中は毒の混入など誰にでも動機がある」

剣士「下衆めッ!そのようなくだらない事のために……!」

盗賊「ふはは、私の身分も更に固まる!何が下らないと…!」



――アォオオォオオオッ!


「あっ、ぎゃぁあああっ!」


盗賊「!」

剣士「!?」
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/06/15(金) 20:49:21.39 ID:+mTHsUOBo
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/16(土) 00:11:38.66 ID:Hvz3j0EDO


貴族、パン屋の風上にもおけないな
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/16(土) 01:24:25.30 ID:GDmsgX1Po
狙撃手pgr
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/06/17(日) 22:23:37.23 ID:TtqVPGx/0

スパッ


射手「あ、が!?」

射手(銃身が、切れ……!?)


騎士「――がるるる」


射手「な、騎士団の……?あ、やめ、助け」

騎士「喋るな賊」

ドスッ


射手「ぁ……」

騎士「ここにいるのは狼さ、ただの狼」


射手「わル……フ…」

ドス


射手「……」

騎士「まあ、ちと、牙がデカすぎるかねぇ?」

393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/06/17(日) 22:24:42.43 ID:KLYG/9+ao
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/17(日) 23:54:51.40 ID:SuWnkIwpo
人狼?
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/06/18(月) 18:28:30.27 ID:mprgYDms0

射手「? あっちが騒がし――」


「動くな、振り向けば殺す」

射手「!」

「杖だけじゃなくて、刃物も用意しといて良かったわ、まさかこんな展開だなんてね、嫌な予感はしてたけど」

射手「…俺が合図を送れば、あの二人も、そしてお前も、他の射手によって……」

「もう一人のガンマンかしら?今頃は適度に奔放な育て方をされた“狼”に噛みつかれているでしょうね」


射手「……誰だ、どこの派閥だ」

「ふふ、どこだと思う?」

射手「………ルキシターの一派、か…?」

「ルキシター、そう、あのおじさんがね…あの人も何かしらに手を染めているということかしら」

射手「何者だ…!ロウネル様に刃向かうなど…!」

「逆ね、この国で私に刃向かう人なんて、片手で数えられるくらいよ」

射手「なに…」クル


ズパ


射手「ぁ」

姫「…向かないでよ、馬鹿」

射手「なん、な……お前、が…」


ズルッ・・・ドシャ


姫「…ここまでね、手伝えるのは」
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/19(火) 01:01:17.30 ID:T/BjWNWIO
まさかの姫w
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/06/19(火) 03:09:14.12 ID:7MhY1Vhoo
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/06/19(火) 20:05:42.45 ID:UvjoF3pM0

盗賊(……やれ!)クイッ


剣士「!」

盗賊(なに、シグナルに反応しない!?早く撃て!)

剣士「はぁあああッ!」ダッ

盗賊(クソ!来やがった!)


ガキィン


剣士「…曲刀で上段を受けるとは、見事だな」ギリギリッ

盗賊「……どうも」ギリギリ


魔術師「加勢します!」

剣士「頼む!」

盗賊(くっ…さすがに剣と魔術のタッグはキツすぎる!)


盗賊「“イアニュス・テルス・モルテ”!」

ボウゥッ・・・!


剣士(これは、炎!?……いや、奴の身体から煙が…!)
399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/19(火) 21:24:04.10 ID:ou8mMRXDo
武●術!!
でなくて煙幕かww
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/20(水) 13:57:24.37 ID:Vk/2ldqIO
401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/06/20(水) 19:02:37.12 ID:BuiB7qti0

剣士(間合いも位置も読めない!一旦下がる!)

ババッ


剣士(で、何が来る?)


「――“ステイプル・ランプル”!」

ドヒュッ


剣士(ほらきた、遠距離の術!スチールの針!煙の尾を引くそれは…)


カキンッ キンッ

剣士(3本ッ…!)


キンッ


剣士「……ふう!」

魔術師(わ…!飛ぶんできた何かを、全部弾いた!)

剣士「ホリィ、術で応戦を!」

魔術師「え、えええ!?」

剣士「何でも良い早く!」

魔術師「はっはい!“イアニュス・ラテルス――」


「“ステイプル・ラギルディ――”」

魔術師「!? くっ、“ギドルグ・ラーギス――!」


ブワッ


魔術師「!」

剣士(煙幕から出てきた!?だと!?)

盗賊(そんな高等術など使えるものかよ)


盗賊「死ね」ヒュ

剣士「っ…!」


ザク
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/20(水) 19:21:46.63 ID:Vk/2ldqIO
403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/20(水) 22:13:03.62 ID:4l8/6j+IO
なんたる焦らしプレイ…
今回に限っては気になって仕方が無い
404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/06/21(木) 01:27:47.21 ID:bmxRMKO+o

この焦らしプレイはもう馴れた
405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/06/21(木) 18:59:00.57 ID:9fChro+S0

盗賊「!?」

ギリ・・ギチギチ・・・


剣士「ぐ…(なんとか致命傷まで深く刺される前に、掴めた…)…ホリィ、やれ…!」

盗賊(正気か!?こいつ剣を両手で掴んで…!)

剣士「ふ、ふ…直刀なら回せたが、掴みやすい形状だな…!」


魔術師(――もう躊躇しない)

盗賊「や、やめろ!俺に魔術が当たるとは――」

魔術師「“テルウィズ・ラテルザム・ラインバータ”!」


ヒュ


剣士(風…)

パシュ


盗賊「っ」

盗賊(見えない、一撃……喉が)


盗賊(…同士討ちなど、あり得なかった…やつはただ、高めに術を放つだけなのだから…)


ドサッ
406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/06/21(木) 21:02:57.54 ID:DdDybNH7o
407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(島根県) [sage]:2012/06/21(木) 22:07:44.11 ID:G77yMzRfo

背の低いのが役に立ったのか…
408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/21(木) 22:31:08.63 ID:AJphrziDO
409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/22(金) 07:12:21.73 ID:z5x7C3HIO
…大怪我
410 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/06/25(月) 20:10:08.45 ID:tkDm5WRo0

魔術師「……!」


盗賊「……」ドクドク・・・

剣士「気負うな、ホリィ」

魔術師「わ、わたし、人を……!」

剣士「私達は人を相手にすることもある、気負うな」

魔術師「…でも」

剣士「お前は私を守ったんだ、ホリィ」

魔術師「……」

剣士「ありがとう」


ザッザッザッザッ・・・


剣士「……!」


騎士「や、お二人さん」

姫「……」


魔術師「あ……」

剣士「……」
411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/25(月) 20:37:47.53 ID:ZQP3OS3IO
412 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/06/26(火) 19:31:18.69 ID:Zyidc4Ka0

騎士「……まだ、かろーじて脈はある」

姫「そ」

剣士「おい、あんたら…」

姫「“アンデミッダ・オクタルフォーム”……」


パキッ、パキパキ・・・

剣士「!?」

魔術師(知らない魔術…人の皮膚が結晶化してる…)


騎士「治療だよ、傷口を過去の形に直してる」

剣士「…」

騎士「この男からは聞かなきゃならないことが沢山あるからね、生かしておく必要がある」

姫「……」パキパキ


姫「……ふう、終わり」

魔術師(…人の組織を八角形に結晶化させて、再生成…治療魔術としては完璧ではないけど、応急処置ならすごい便利そう)


剣士「聞いて良いのか」

騎士「何をでしょうか」

剣士「……あんた達が、私達を助けてくれたのか」

騎士「…んー?助けてはないけど…」

姫「ただの後処理にきただけよ」

剣士「……」
413 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/06/26(火) 20:13:30.05 ID:5V4xr3hFo
414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/26(火) 23:32:54.17 ID:ugvq8dabo
騎士が非道そうww
415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/06/27(水) 10:04:52.59 ID:119Vee2mo
まさかホリィさん見ただけで・・・
いやいやまさかな・・・ハハハ・・・
416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/06/27(水) 18:52:58.19 ID:3izCZ2960

騎士「偶然ですよ、ぐーぜん、カンが不安だってつぶやいていたもんで、後をつけて遠目に窺っていれば、厄介な刺客に巻き込まれている」

姫「本当は加勢をしようとも思ったけど、必要はなかったみたいね」

剣士「……ああ」


グイッ


騎士「よっこいせっと…ありがとう、君達のおかげでロウネルの悪い尻尾が掴めそうだよ」

剣士「…え?ていうことは」

姫「もう終わりよ、御苦労さま」

騎士「心配せずとも、報酬はしっかり払いますとも」

剣士「……」

魔術師「突然、終わっちゃいましたね…?」

姫「ここまでと決まっていたもの、当然よ…むしろ、あなた達にとってはクライマックスだったのではなくて?」

魔術師「た、たしかにそうだったかも?」

剣士「…報酬はどうすれば?」

騎士「追って連絡します、また掲示板で」

剣士「……わかった」
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/27(水) 20:07:50.60 ID:BgGJQt5IO
418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/06/29(金) 19:59:16.47 ID:3KrbriPf0

盗賊「……」


盗賊「く……ぅ……あ?」

騎士「ようこそ、八卦国の特設拷問部屋へ〜」

盗賊「……!お前は…!」

騎士「がるる」

盗賊「八卦国騎士団長…“狼”…!ワルフィ…ウルヘリオン…!」

騎士「いやーどうもどうも、まぁ君のお仲間も一瞬で私に気付いてくれてさ、知名度があるっていいねぇ、人気者だよ」

盗賊「仲間……!?」

騎士「ほら、あの部屋のかどっこにいる二つ」


死体「……」

死体「……」


盗賊「……っ!」

騎士「状況が状況だったもんで、殺すしかなかったわ、めんごめんご」


騎士「さて、ま、あの凸凹の二人は私が派遣した傭兵だけど…おかげさまで街に怪しまれず探りが入れられたっていうかねぇ」

盗賊「殺せ……」

騎士「何が言いたいかってゆーと、ま、ロウネルさんの快進撃もそろそろ終わり?みたいな?」

盗賊「殺して……ください…!」

騎士「じゃあ舌を噛み切れよ、わたしが全力で応急処置してやるから」

盗賊「うわ…うわぁあああぁッ…!」

騎士「さーさー、ロウネルさんの詳しい目的から罪状まで、詳し〜く吐いてもらおーか」
419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/29(金) 20:36:01.75 ID:AxGjOgkwo
420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/02(月) 07:10:49.00 ID:OV0xg0AIO

魔法治療で拷問って現代を超えるな
421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/02(月) 19:57:18.77 ID:9zM496R80

魔術師「……“アンデミッダ・オクタルフォーム”」

魔術師「……」


剣士「上の空だな、何をしてるんだ?」

魔術師「あ、ミゼラさん……えへへ、なんでもないです」

剣士「……ま、まぁなんだ、結果として誰も死んでいないようだしな、良かったと言えるだろう」

魔術師「……えへー、そうですね!」


魔術師(あの後、すぐに報酬を渡されて、手続きは淡々と進んで……気がつけば、仕事は終わっていました)

魔術師(けどあの人たちはしっかり約束通りのお金も用意していたし、この仕事で人の役に立った手ごたえはちゃんとある…)

魔術師(何かひっかかるようなのがあるんですけど、全然気にする事ないですよね!)



剣士「おーい、ホリィ、さっさと来ないとベーカリー林檎、スイートベーグル売りきれるぞー」

魔術師「は、はぁい!」

タタタタタッ・・・
422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/02(月) 21:47:24.88 ID:8uzVE3BIO
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/03(火) 18:34:50.96 ID:1Nkvzi7l0
カランカラン


看板娘「いらっしゃーい!おーホリィ!わっかりやすいねぇー」

魔術師「えへへ、こんにちは、リシュちゃん。スイートベーグルありますかぁ?」

看板娘「うんうん、まだあるよ」

魔術師「良かったぁ!売りきれるかと思ってヒヤヒヤしてましたよー」

看板娘「いやこれ売り切れる商品じゃないんだけどね」

魔術師「え?そうなんですか」


剣士「前よりも客入りが良くなったみたいだな」

看板娘「うん!ロウネルの状態が怪しくなってきたっていうからさぁ、客も離れていったり色々大変みたい」

剣士「そうか……」


剣士(早いな……)

看板娘「今度は戻り客を取りあって、ベーカリーギルドが大戦争!うちも負けてらんないよー」

魔術師「わあ、大変ですねえ、リシュちゃん……」

看板娘「うけけ、嬉しい悲鳴ってやつ!」
424 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/03(火) 18:55:22.44 ID:JtvPiD3ro
425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/04(水) 07:17:11.48 ID:ZX4UgzrIO
うけけΣ
426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/04(水) 18:41:31.76 ID:KLCtTD490

「にゃあ!リシュ!ツナパン売り切れじゃないか!」

看板娘「え?あーごめん、なんだかそれ調子よくてねぇ〜」


魔術師「あ、このスイートベーグルだけ色が濃い!きっとすごく甘いやつですね!」

看板娘「あっはっは、ごめんそれ多分あたしの焼いたやつだ!偏っちゃうんだよねぇー」

魔術師「じゃあこれ買います!」

看板娘「まいどー!」



剣士(…近頃世間を騒がせていたベーカリー・ロウネルの騒動は収束した)

剣士(だがそれは、人気絶頂だったロウネルが突然退いたという騒動のことであり…)

剣士(……裏でどのような事が行われていたのか、それを知る者はいない)


剣士(私の名誉も、あの謎の二人組みの動きも…)


剣士(そして……)

ゴソ


剣士(……王家のみが発するという、この紫色の長い髪の毛も…)

剣士(……全ては闇の中だ)

剣士(それはきっと、私が不用意に踏み込んではならない領域かもしれない…)
427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/04(水) 19:52:10.54 ID:aGE85smIO
428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/04(水) 22:13:19.53 ID:vXZJ3s97o
乙!
429 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/07/05(木) 00:30:13.78 ID:4ugteytso
乙乙!
430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/05(木) 07:34:40.81 ID:Kzjp5OgIO
乙ん
431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/05(木) 18:46:34.84 ID:3NYGgxNS0

――――


伯爵「ち、違う!無実だ!もう一度よく調べなおせ!私はやっていない!」

刑吏「あるけ」ゲシ

伯爵「うぐっ…ち、違う…!助けて…!陛下!どうか御慈悲を!」


王「黙れ逆賊」


伯爵「……!」


王「ジラフからの塩、膠の不正な流入…小麦の不当な独占…この怒り、我が剣が鞘に収まっていることが不思議なほどだ」

伯爵「そ、それらは全て、私がやったのではなく…その…」

王「その他に文句は言わぬ、その温情が死を見届けてやるということだ」



チャキッ

刑吏「あんしんしろ、このひのために、よく“といで”おいた」

伯爵「…ひ…いやだ…やめろ…」


王「執行」



ドガンッ


コロ・・・
432 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/05(木) 19:17:45.01 ID:3XeYqMwIO
433 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/06(金) 00:32:52.66 ID:H55mJfD2o
乙乙乙!
434 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/06(金) 20:12:30.35 ID:AUq4itZZ0

妹「お姉さま、最近、何か良いことでも…?」

姫「ん?なぁにイリー」

妹「晴れ晴れしたような顔を、見せるものですから…」

姫「…ふふ、イリーにはわかっちゃうわね」

妹「お姉さまの妹ですもの、うふふ」


姫「…ええ、ちょっとだけいいことがあったのよ」

姫「一国の姫である身分からしてみれば、とても些細な動きであったかもしれない」

姫「陰湿で、とても八卦の姫としてそぐわない、汚れたようなことかもしれない」


姫「それでも私はね、この城の外の者なら、誰でもできうるようなことができたことを、誇りに思うのよ」

姫「“ああ、私にも暖かな人間らしい血が流れている”ってね」


妹「お姉さま…?」

姫「うふふ、さ、もう寝ましょう」

妹「……はい、お姉さま」


妹「お姉さま」

姫「?」

妹「無茶をしては、いけませんわ」

姫「……ふふ、わかっちゃうのね」


キィイイ・・・ バタン
435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/06(金) 20:54:58.94 ID:izPzjcvqo
436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/07(土) 09:06:54.43 ID:19mF5m5Ao
乙ん
437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [saga]:2012/07/09(月) 00:04:37.29 ID:C4KIn5bAO
あ、言い忘れてた

ベーカリー・ロウネルはこれで終わり

次から修正投下の形に戻る

間にもひとつ挟めなくもないけど、拙いし…ゲーム作りたいし…
438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/09(月) 00:05:41.33 ID:9P2XS8/Eo
439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/09(月) 02:26:25.21 ID:VuXIn/RFo
てことは、これももともとあっちでやってた奴なのか
440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/09(月) 19:03:38.35 ID:RYGWwL010
――昼


パタタタタ・・・

魔術師「ミゼラさんミゼラさんみーぜーらーさーん!」バタンッ!


剣士「おい、うるさいだろ…下の商店の迷惑になるだろうが」

魔術師「えへへ、ごめんなさい…」


ガサッ


剣士「……?」

魔術師「えへへー、ベーカリー林檎で買ってきましたー!」

剣士「…すんすん……ん、良い香り」

魔術師「私のおススメばかり買って来たんですよ!ほらほら、どうぞどうぞ」ズイズイ

剣士「もが、ふご…」ギュムギュム
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/10(火) 01:10:04.45 ID:Wafkn3yio
442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/10(火) 18:26:53.41 ID:MidAPyNIO
乙ん
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/10(火) 18:28:09.98 ID:r313pVjX0
魔術師「あ、そうだ!パンよりですねっ!もっともっとすごいものがあるんですよ!」

剣士(く、苦しい…)


パサッ


剣士「!」ゴクン

魔術師「えへへー」

剣士「?…なんだこれは、手紙か」

魔術師「ほらっ」ペラ

剣士「………む」


“八卦国 傭兵協会第二支部”


剣士「…傭兵協会からか…一体何の知らせだ?」

魔術師「えへへー、もしかしたら蜘蛛さん退治が認められたのかもー」

剣士「馬鹿者、そんな早く認められるものか…ま、まぁ少しは期待したいところではあるが」

剣士(ベーカリー騒動の裏での活躍が評判に…んなわけないか)

魔術師「きっと良い知らせですよー!昇格とか!」

剣士「…ふふ、だと良いがなあ…」


ペリペリ
444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/10(火) 20:25:49.14 ID:Wafkn3yio
445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/10(火) 21:50:10.73 ID:u91m29/IO
うわあ
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2012/07/11(水) 11:53:21.48 ID:Auy0LF9AO
あ、これ今日完結させちゃうからね
447 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/11(水) 12:21:16.10 ID:nnr56seIO
     ...| ̄ ̄ | < 続きはまだかね?
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\  \__(久)__/_\::::::|    |:::::::|
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.|| ゙ヽ i    ハ i ハ i ハ i ハ |  し'_つ
.||   ゙|i〜^~^〜^~^〜^~^〜
448 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/11(水) 19:19:27.07 ID:ytPRyKWt0
“緊急指令:地質調査団の護衛及び補助”


魔術師「きんきゅうしれい……?」

剣士「!」


“ホリィ=ポールウッド、ミゼラ=ソイレギンスの任務遂行能力の高さを評価し、同2名にこの任を命ずる”

“任務開始日時は本日1時より、八卦国傭兵協会第二支部にて”


魔術師「……これって!」

剣士「うそ…いや、ほんと…?」

魔術師「やったー!認められてます!私達認められてますよっ!ミゼラさんっ!」ユッサユッサ

剣士「は、はは…やった…」


剣士「……ん?まてよ、本日一時…?おいホリィ、今は何時だ」

魔術師「あ、はい、えっとですねー」カパッ
449 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/11(水) 19:22:23.94 ID:nnr56seIO
450 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/11(水) 19:23:49.03 ID:ytPRyKWt0
近衛「遅いですね、二人の傭兵」

博士「そうねぇ…ま、急な呼び出しだったから仕方ないかもしれないけれどー…」


博士(…とんだ邪魔者がついてきたな…黒狼め、余計なものをつけてくれた)

博士(どうにかして、こいつの視線をかいくぐり調査したい…)


博士(……そしておそらく、チャンスは今回限り…短期に二度も同じ場所での地質調査となれば、どうしても怪しさは浮き彫りになる)

博士(つまり、私は今回の調査で可能な限り研究に使えるデータを収集し…怪しまれない動きを見せつけ、ワルフィの近衛兵を信用させる!)


博士(…うふふ、ちょっと難しいかしら?でもやるしかないわね)


ダダダダダダッ・・・


剣士「はっ、はっ…す、すみませっ、遅れてしまって…」

魔術師「ひぃ、ひぃー…」


受付「ちょっとちょっとお二人さん、困りますよ?緊急指令で送ったんですから、遅刻されては」

近衛「うおー、背高いなぁあの子…」

博士「……ふふ」


博士(鈍そうな二人)
451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/11(水) 19:27:38.61 ID:ytPRyKWt0

受付「傭兵としての心構え、筆記試験は受けましたよね?緊急指令が来た場合は何があっても来なさいよ、と」

剣士「む、て、手紙が来たのが昼だったんだ!無茶を言うなぁ!」

受付「昼?手紙を出したのは朝ですよ?」


剣士「……」

魔術師「あ、あはは…緊急っていうから良い知らせかなーって…だからミゼラさんを驚かせようと取っておいて…」

受付「あのねぇホリィさん…」

博士「ふふ、話は良いかしら?」

受付「!」


博士「そうねぇ、でも大した遅刻じゃないから…無かった事にしてあげる?いきなり通知を送った私も悪いものね?」

魔術師「あ、ありがとうございます、すみませんっ!」

博士「ふふ、良いのよ…私はケミス、今回調査をする城の人間よ…」

魔術師「ほええ、お城の…」

近衛「僕はケミス博士の身辺警護を務める、八卦国騎士団のクーゲル……短い間ですが、どうぞよろしく」

剣士(! 騎士団…!)
452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/11(水) 19:30:12.76 ID:ytPRyKWt0
近衛「ん? 何か?」

剣士「あ、いや、なんでもない」

近衛「…ああ、聞いた話ではあなたも剣士なのだそうですね、背丈のリスクは大変でしょうに…」

剣士「……いいや、私のこの背は逆に利用価値がある、リスクなどではない」

近衛「おお、そうなんですか…すごいなぁ」


博士「二人の活躍は小耳に挟んでいるわぁ、なんでも採石場に蔓延る錆蜘蛛、石喰いアスメを巣ごと駆除したとか…」

魔術師「えへへ、頑張りましたー…あ!特にミゼラさんがですけどねっ」

剣士「……ま、まぁ…いや、でもホリィだって…」


博士「うふふ、あそこの石は結構高いからね…守ってくれてありがとうね、小さな傭兵さん?」

剣士(ち、小さなは余計だ!)


博士「今回も私の護衛と手伝い、結果を出してくれると嬉しいわ…」

剣士「うむ……ん、手伝い…?」

受付「ああ、補助のことですね、その説明はこちらから致しましょう」
453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/11(水) 19:34:35.13 ID:ytPRyKWt0
受付「今回は国の郊外…だいたい二番の外側あたりですね」


受付「その地質の調査という事なので、その警備などをしてもらいます」

剣士「…ふむ、郊外の地質…」

魔術師「二の街の郊外には小さな山がありますね!」

博士「うふふ、そう、だいたいその辺りかしら」


受付「日程は現地での調査具合と天気を見てになりますが、長引くごとにその分の保証は出されるそうです」

剣士「…報酬が高くなると?」

受付「ええ、そうとも言えますね」

剣士「……ふむ」

魔術師「わぁい!お父さんとお母さんへの仕送りが増える〜!」


受付「現地での調査は、基本的に専門家であるケミス博士が行いますが、その手伝いも二人にはやっていただきます、たとえば…まぁ、テントの設置とかですかね?」

剣士「なるほど、それで手伝いか」

受付「やる事はもっと多くなると思いますけどね」

博士「うふふ」
454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/11(水) 19:39:25.68 ID:ytPRyKWt0
博士「…ま〜〜〜…あんまり専門的なことはやらせたりしないから…」

博士「そうねぇ…助手手伝いのような感覚で作業をしてもらって結構よ」

魔術師「はーい!頑張ります!」

剣士(…その助手手伝いというのがあまりイメージできんな…)


博士「現地への移動は鳥馬車よ、手配は済ませてあるからぁ…準備ができたらすぐにでも表に停めてあるのに乗ってちょうだい」

魔術師「馬車!」

博士「ふふ、馬車ははじめて?」

魔術師「えへへ、いやぁ、久しぶりですー…お父さんと旅行に行って以来ですっ」

剣士「…馬車か…初めてだな」

近衛(……よく見たらこの二人、身長差がすごいな……)
455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/11(水) 19:47:20.26 ID:ytPRyKWt0

剣士(…トイレは…大丈夫、さっき行ったな)

剣士(えっと剣、砥いだっけ…あ!砥石は何種類入ってる?)

剣士(これで足りるか?大丈夫か?砥石で評価はされたりしないか……?いやそもそもこんな安物の剣が恥ずかしい…)


剣士(うおお、せめて現地についたら川で思いっきり砥いでアピールを…!)

魔術師「ミゼラさーん、まだですかー?」

剣士「うるさいっ!今急いでいるっ!」

魔術師「はう、ごめんなさい……」


剣士(ああもう!立派なのは衣服の裁断と仕上げだけか?情けない、これじゃあの偉そうな二人に幻滅される…)


ジャリジャリ

近衛(あ、いっけねー…最近稽古さぼってるから錆びついてる…)

博士「…馬車は揺れるから、あまり刀剣は出し入れしないで欲しいわ…?」

近衛「あ、す、すみません」チャキンッ

魔術師(えへへー、馬車〜)
456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/11(水) 19:56:09.13 ID:5EbOoXAP0
>>446
完結だと?
洞窟のからの続きが読めるんじゃなかったのか?
457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/11(水) 20:07:45.91 ID:ytPRyKWt0
>>6
>>62
この二人を主役としての続きは多分一切ないと思う…脇役だし
458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/11(水) 20:12:49.99 ID:ytPRyKWt0
剣士「…遅れました、すま…すみません」

博士「そう?じゃあ早速、行きましょうか……出してちょうだい、少し急ぎ目でね?」

「はい、では出発しまーす」


ゴトッ

ゴトト・・・


魔術師「あ、これこれ、この感じ懐かしー」

剣士「…おー…」

近衛(…楽しそうだなー…まぁ平民なんてそんなもんか)


博士「ふふ、到着したらすぐにテントを設置してもらうから、忙しくなるわよ…」

剣士「! は、準備は整っています、心配無く」

博士「うふ、頼もしい…」


博士(…民間の傭兵ならば、万一でも城の内部に噂が流れる事はない…興味がなければ探ることもしないだろう)


博士(……しかし、せっかく万全を期して民間の傭兵を雇ったというのに…ワルフィめ、余計な監視を…)

博士(…到着するまでに、なんとかクーゲルさんの視線を逸す工夫をしなくてはね…?うふふ…)


ゴトトン・・・
459 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/11(水) 20:20:18.32 ID:ytPRyKWt0
ゴトン・・・


「…はい、目的地に到着しましたー、荷物などお忘れなく、ゆっくり急がず足元に気をつけて下車してください」

魔術師「あっ、ついた!?はーい!」

博士「みたいね、それじゃあ降りましょうか…?」


近衛「ああ、こっちの荷物は僕が持つので」

剣士「いいや、このくらいは手伝わなければ……紛いなりにも、国の手伝いとして」

近衛「ぁあ、そう?じゃあこっちのお願いします(やったラッキー)」


魔術師「…あれ?でもここって街道のまんなかですよ?ここの地面を調べるんですか…?」

博士「目的の場所へは徒歩よ…馬車も入れない細い道、国の領土の端だから…八卦国の軌を残すには色々と面倒なの」

魔術師「なるほどー」

剣士「ふむ…国家間の話となると、仕方ないか…」
460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/11(水) 20:23:38.35 ID:ytPRyKWt0
ガサガサ…ガサッ……


博士「この林を抜けた辺りで調査ポイントが見えてくるわ…」

魔術師「あう、また顔にクモの巣がー…」

近衛「んしょ、ふぅ、入り組んでるな…山遊びなんていつ以来だか」


剣士「…今回行なう地質調査は、そのポイントの地層成分を?」

博士「…ん〜〜〜そんなところかしらね〜…領土の端っこは探査がまだ行き届いてないから、色々とね…」

剣士「ふむ、なるほど…」

近衛「…」


近衛(ったく…団長が怪しい動きがあったら報告しろーとか言ったから、気になってついて来たはいいが…全然そんな雰囲気ねーよ)

近衛(今度珍しい肉料理屋連れてってやるって…そんな餌で頷いた俺も俺だが……はぁ)


博士(ふふ……)


ガサガサ
461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/11(水) 20:26:54.54 ID:ytPRyKWt0
ガサッ


魔術師「わあ」

剣士「…ぉお」

博士「…到着よ、ここが今回調査するポイント…」


魔術師「なんだか、小さい山みたい!」

剣士「うむ…平地が多い八卦国としては、かなり珍しいな、やはり郊外か…」


博士「この、山のように隆起している地域の一部の土を採集していくわ…」

剣士「はい」

博士「採集ポイントを探しながら見て回るから、拠点としてここにテントを立てて頂戴…獰猛な魔獣もいないでしょう」

近衛「なるほど」

博士(やることは少ないし、本当はいらないかもだけどね〜〜〜?)


剣士「よしホリィ、手伝え!そっちの骨を広げろ!」

魔術師「え、骨?あ!このパイプですねっ!」

博士「あら、早い仕事…ふふふ、役立つわぁ…」


近衛「……」

博士「あなたも暇なら、二人を手伝ってあげれば?」

近衛「あー…はい」


近衛(…監視に専念しろと言われてたが……まぁ別にいいか、体が鈍りそうだし)
462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/11(水) 20:30:49.44 ID:ytPRyKWt0
ガチャガチャ・・・


魔術師「よいしょっ…それにしてもミゼラさんっ!今日も気合い充分ですね!」

剣士「ああもちろんだ…なんたって、思いの他早く回ってきたチャンス…私の見せ場だからなっ!」ガチャンッ


剣士「連続の仕事だろうがなんだろうが…やるのは今しかない!」

魔術師「えへへ…なんといっても、私達が優秀だって、国から認められたんですものねっ…!」

剣士「ああ…やっぱり私にも、ツキはやってきてるよ…!」


剣士(あとはこの仕事で、博士を怪我させないように守りきる…!博士に私の誠実さをアピールする!)


近衛「あー、んじゃ、僕も手伝いますので、テントの器材貸して下さい」

魔術師「あ、はーい!」ガチャガチャ

剣士(そしてもちろん…騎士団に所属するこの男にも!)
463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/11(水) 20:34:44.64 ID:ytPRyKWt0
ガチャ、カチャッ


魔術師「へー、じゃあクーゲルさんってお城に住んでるんですねー!」

近衛「ああ、まぁ…騎士はみんなそうだよ、城で寝食し、城を守り国を守る、それが仕事だからね」

魔術師「ほわー、なんだか格好いいです!」

近衛「ははは、そうかな」

剣士「……」ガチャガチャ


剣士「クーゲルさん、騎士団だからやっぱり剣の方も素晴らしいのだ…ですよね?いや、訊くのも失礼なことですが……」

近衛「あははは…二人とも、別にかしこまらなくていいよ、普通に話してくれれば」

剣士「……む」

魔術師「えへへ、私はいつでもこんななのでお気遣いなくー」

剣士(…敬語は……慣れん)


近衛「ああ、僕の剣の腕?あー、そりゃねー、稽古は毎日してるし、実戦はまだだけど…自慢ってわけじゃないけど、試合では上位の方だよ」

魔術師「ほえー」

剣士「…それは……すごい」

近衛「いや、当然だよ…あ、打ちビスの短いやつ取ってくれる?」

魔術師「あ、はあい」ガチャッ
464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/11(水) 20:37:02.01 ID:ytPRyKWt0
剣士「…試合…打ち合いかぁ……レベルも高いんだろうな…」

近衛「そりゃあもちろん、国最高の剣術組織だからね」

剣士「…最高レベル……一体どれほどの実力なのか…ふーむ」ブツブツ

近衛「強いよー?まぁプロ中のプロだからね、ふふ…」


剣士(…やはり……騎士団への道のりは遠いか…いや、めげてはいられんな)


博士「あらぁ…テントはもう完成かしらね?」

魔術師「あ、ケミス博士…はい!もうバッチリです!ちなみに6割はミゼラさんがやりました」

近衛「えっ?」

剣士「い、いえいえそんな、私が施設した部分なんてほんの7割程度で…」

近衛「そんなにやってたか…すごいな」

博士「あら、ふふふ……面白い子達ね…」
465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/11(水) 20:40:37.91 ID:ytPRyKWt0

博士「……そういえば今、強さどうこうって話…してたわね?」


剣士「え?ああ、いやっ、はい…騎士は憧れなので…」

近衛「ははは、実力さえあれば、君もなれるかもよ」

剣士(…実力さえあれば…か)

博士「……ふふ…」


博士「…え〜〜〜っとー…確かあなたはぁ…第一騎士団長さんの所の一般騎士よね?」

近衛「あ、はい」

剣士「第一騎士団長…!この国で最も剣の筋が鋭いと言われている、“狼”の異名をもつあの“ワルフィ”さんの!?」

魔術師(あははー全然わからない…)


近衛「あぁ、まぁはい、騎士団長さんの部下です、ハイ」

近衛(なんであの性格で“狼”なんて異名がついたんだろ、わかんないよなぁ)


博士「ふふ……」
466 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/11(水) 20:45:55.63 ID:ytPRyKWt0

博士「……“勝った者だけが、剣を掲げる事がゆるされる”…」

剣士「?」

博士「この国に伝わる言葉よ、大会の宣伝文句だったかしら…?」

近衛(うちらの剣の礼式のひとつでもあるけど)


博士「クーゲル君…そして…えっと〜〜…ミゼラさん、これは八卦国の前王様が言った言葉なんだけど〜〜…これについて…どう思う?」

剣士「! …その通りかと、栄光は常に強い者が握るものですから…」

近衛「まぁ……僕もそう思いますね」

博士「うふ……そう…」


博士「…じゃあ、ちょうどミゼラさんも騎士団の強さに興味があるみたいだし、提案なんだけどーーー……クーゲルくんとミゼラさん、二人で試合をしてみない?」

剣士「!」

近衛「…ん?」

魔術師「?」
467 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/11(水) 20:50:54.44 ID:ytPRyKWt0

近衛「…あの、ケミス博士…今回は研究のために来たのですよね?」

博士「うふふ、もちろん……でも〜〜〜……民間の傭兵と国直属のエリート騎士…どちらが強いかってー、気になるじゃない?」

近衛「…あのですね…ケミスさんふざけないで下さいよ、僕は城で教育を受けた身です…彼女のような、」

剣士「!」ビキッ

魔術師(あ、目付きが…)


近衛「一般のマニュアルのない練習しか行っていない剣士とは、比べるまでもありませんよ」

魔術師(…あ…あわわ……)


博士「…ふーん…じゃあやっぱり現役騎士の方が強いのねー…」

剣士「待ってください、博士」

魔術師(あーー)
468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/11(水) 20:53:38.32 ID:ytPRyKWt0

博士「あら、何かしら?」

剣士「騎士団の中には城の訓練を受けていない者も少なからず存在します」

近衛「……」


博士「そうねぇ、平民の中からも入ってきたり〜〜〜…ミゼラさんが今所属している傭兵協会から入ってくる人もいるわねぇ…」

剣士「城で教育を受けたから強い…というのは、少し違うのではないかなと」


近衛「…それは城で生まれ育った騎士はそうでもないって意味かな?ミゼラさん」

剣士「必ずしもそうではない、という意味です」

魔術師(あわわわ…も、もう空気が変です…)


剣士「……」

近衛「……」

博士(……うふふ、やっぱり兵士も賤民も、血の気が多いわねぇ…)
469 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/11(水) 20:56:30.77 ID:ytPRyKWt0

近衛「……博士さんがどうしても、正統なる騎士と一傭兵の戦士との力の差を、“あえて”見たいというのであれば」

近衛「僕は別に、試合でもなんでも、構いませんけど」


剣士「身分が約束された剣と、自らを高めるための剣…果たしてどちらが強いのか」

剣士「博士がそれに興味をお持ちなら、私もその検証を“手伝い”ますよ」


近衛「…まぁ、竜と風鳥の戦いを見るが如きものとなりそうですがね」

剣士「…検証の結果、“従来の考えを見直さざるを得ない光景”が見れるかもしれませんね」


近衛「……」

剣士「……」


ヒュォオオオ・・・


魔術師(あああ…止められないかな?あの二人止められないかな?)

博士「……」ニヤリ


ジャッ シュッ


ガキンッ!
470 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/11(水) 20:58:49.08 ID:ytPRyKWt0
ギリギリギリッ・・・


魔術師(わ…!剣抜いてる!剣抜いてるよぉ…!)


剣士「剣が錆ついてるじゃないか、己の商売道具の手入れを怠り、何が騎士だ?」ギリギリ

近衛「ははっ、その錆びた剣と同じ速さで剣を抜くところを見るに、明らかになったね、そんな騎士よりも腕は下なんじゃない?君は」ギリギリ


魔術師「や、やめてくださーい…喧嘩はだめですよー!」

博士(野蛮な奴らはみんな単純、うふふ)


パン、パンッ

博士「はい、剣を収めなさい二人とも……私はどちらが強いかは知りたくても、死体が見たいわけじゃないの」


近衛「……」ギリギリ

剣士「……」ギリギリ


スッ・・・


博士「……試合といっても、死を与え合う方ではないわ…試みる方よ」


博士「私はねぇ、試みが好きなの…平民と上流階級の潰し合いが見たいわけではない」

剣士「…ならば決めようじゃないか、貴様と私、どちらが強いか…」

近衛「ふん、望むところだよ、オチビさん」
471 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/11(水) 21:02:56.46 ID:ytPRyKWt0

ヒュンッ


近衛「……よかったな、刃引きされた修練剣があって」

剣士「良かったのはお前の方だろうがな」ヒュンッ


近衛「言ってるが良いさ、だが力の差を思い知るのは君の方だよ」

剣士「ほう、ぜひとも見てみたいものだな?力の差とやら」

魔術師「……」


博士「さーてぇ……これはこれで、面白いデータが採れそうかしらねぇ…」

魔術師「ううー…喧嘩はよくないのにー…」

博士「ふふ、白黒つけば丸く収まるわ…それが戦いというものよ」


博士(どんな形に落ち着いたとしても、結果が出たことには変わりないもの)


博士「……それでは、位置について」


剣士「……」

近衛「……」
472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/11(水) 21:05:13.43 ID:ytPRyKWt0
ザザァ…

ガサガサガサ…


剣士(…打点は私より高い、まぁ当然…しかし男の平均よりも若干高め……それは困るな、なんだかんだ、高さのエネルギーは単純な脅威だ)

近衛(相手は小さい、まるでガキだ…しかし女だろうが子供だろうが、メンツにかけて本気で戦わせてもらう……なんといっても博士の御前だからな)


剣士(初太刀はどうするか…錆びた剣だろうが、八卦の剣術となれば侮れん…)

近衛(田舎剣術は太刀筋が読めないから油断はできないな…まぁ、軽くひとつひとつ受け流して…隙を突くか)


博士「……それでは」

剣士「…」

近衛「…」

魔術師「……」


博士「…………試合、始め!」


ジャッ シュッ
473 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/11(水) 21:10:45.93 ID:ytPRyKWt0

ガキンッ


剣士「はぁあああ…!」

ギリギリ・・・

近衛(…!なんと、さっきよりも早く抜刀してきた!それにいきなりの押し込みとは、初太刀に勝負を賭けてきたか…!?)ギリギリ・・・


ババッ


剣士(…案外、奴の守りも早かった…さすが八卦、といったところだな)スッ

近衛(こちらが動きを変える前に退いて型を変えるか、まぁ利口だな……いいだろう)

スッ


剣士(あの構え……!)

近衛「八卦国騎士団の誇りにかけて!」


剣士(…ふ、ふふふ…騎士の構えになった…私を相手に!)


剣士(ならば守りを重視する、その鉄壁の剣捌きとやら…)


剣士「見せてもらおう!」ヒュッ

近衛「こいッ!」


ガッ!
474 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/11(水) 21:20:29.75 ID:ytPRyKWt0
ガン

ガンガンッ!


近衛(ちっこいくせに剣は速くて重い!やはり魔力で強化できるか…!)ギリギリ・・・

剣士「どうした!?甲羅に籠っているだけではいずれ砕かれるだけだぞ!?」

近衛「ふん!育ちが悪ければ口だけは達者になるな…!」ガッ


剣士「は!まるで剣は達者であるかのような口ぶりだな!?」ザザッ


剣士(……くそ、やはり守りが優秀だ、体の外側に受け流されそうになる感覚が気持ち悪い)

近衛(…こちらは甲冑の分動きが鈍るが…どうせあの小ささだ、すばしっこさは最初からあちらに分があると考えよう)


剣士(攻撃を受け流され隙を作らされる前に、逆に翻弄して奴の隙を窺う)

近衛(焦らず後手に回る、その覚悟の上で実力の違いをハッキリ出してやる)
475 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/11(水) 21:22:24.82 ID:ytPRyKWt0
カンカンッ、ドカッ


魔術師「わ、わわ、わーっ…わっ!危ない……!」

博士「……ふふ、なかなか打ちあうわねぇ〜……」

魔術師「うー、見てられないです……人が怪我をする所なんて見ていられないです…」

博士「ふふ、片方は甲冑、もう片方は肉体を魔力で強化してるから、あなたの友達が怪我をすることはないんじゃない?」

魔術師「そんなのー、わからないですよー…目に入ったら大けがです…」

博士「あの幅の広い剣が目にダイレクトねぇ〜〜…八卦街に隕石が落ちる確率よりは高いわね〜〜…」


カンカンカンッ、ガッ・・・


博士(……それにしても)


剣士「ぁあああああ!」ガァン

近衛「おおおおおお!」キンッ


博士(腐りかけとはいえ、八卦の騎士とあそこまで渡り合うなんて…あの子、なかなかセンスあるわねー…)

博士(まぁ〜〜…階級がちょっとアレだから…プラマイゼロってところだけどね…うふふ)
476 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/11(水) 22:21:11.08 ID:ytPRyKWt0
剣士(磨り下段…!)

ガッ


近衛(っ…葛捻か!)

ガッ


剣士「はぁっ…!どうした鉄壁ィ…!息が荒くなっているんじゃないのか…ッ!」ヒュッ


キンッ

近衛「ふっ…!僕は君らのような身分の低い者とは違う…!」ギリッ

近衛「騎士団の剣を舐めるなよ平民…!」ガシュッ


剣士(く、また力任せに弾かれた…甲冑を着ていても、肉体の強化を怠っていない…!)

近衛「…流派を持たない剣など全てチャンバラ…コピスの尾の振りと同じ!」ヒュンッ


ガッ

剣士「くっ……!(やばい、どんどん重くなる…!)」


近衛「思い上がるな、自分が攻めているから互角だとでも思ったか…!?疲れた時にこそ、内に座した実力が顕著に顕れる…!」ギリギリ


魔術師「ああ、ミゼラさん……」

博士「あーあ」


ギリギリッ・・・
477 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/11(水) 22:24:26.10 ID:ytPRyKWt0

近衛「ほらほら、ほら!力の差がはっきりしてきた!見ろよ!これが騎士の力だ!」

ギギギ・・・


剣士(ぐ、ぬぅうう……剣で押しつぶされる…刃に深く食い込んだ、抜けられない…!)ギリギリ・・・


近衛「身分の差!教育の差!身の丈の差!若さと荒っぽさで最初は繕っていたが!?しかし今はどうだい!」

近衛「これが圧倒的な差だよ!騎士とは総てにおいて完璧なのさ!わかるか!?平民!?」

剣士「ぐ…むぅ…!」ギギギ・・・

近衛「君はなんといったかな!?ミゼラ=ソイレギンス…ん?ソイレギンス…!」


剣士「……!」


近衛「ふは…ふははは!お笑いだ!お前、もはや平民ですら…!」

剣士「黙れぇえええええぇぇえええ!」

近衛「!!」ガッ


博士「!」

魔術師「あっ…!」

近衛(な、何!?あの体勢から僕の剣を撥ね退けるか!?)
478 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/11(水) 23:41:37.80 ID:ytPRyKWt0
近衛(全力で抱え込んでいたはず!何故それを弾き返せるっ!?)


剣士「誰が私の生まれを笑えと言ったァアあああぁああ!?」ヒュ

ガン、

ガンガッガガガッガッ


近衛「ぐあ、くっ……速ッ……重さも…!」

ガッ、ガキッ


剣士「嘲られるのは!一傭兵の私に負かされる貴様の方だ雑兵ォ!!」


ガガガッ・・・

バキッ


近衛(あ、…け、剣が!僕の剣が!?魔力を込めて強化していたはずなのにっ…!?)

剣士「死ねぇ!」ヒュ

近衛「! ま、まいっ…」



「“ラテルス・ルーツ”!」

ヒュォオッ!
479 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/11(水) 23:42:58.49 ID:ytPRyKWt0

剣士「ふ、ぶっ……!?」フワッ


剣士(と、突風!?下から!?体が浮き上がる!?)


ドサッ

剣士「ったぁ……!」


魔術師「あう、ミゼラさん…ごめんなさい…」

博士「死ねぇえ〜〜じゃないわよ?これは試合よ、試合……結果は出たわ」


近衛「…はっ…はっ……!」ガタガタ


博士「どうやら、ミゼラさんの実力は騎士団の半数以上に勝るみたいねぇ…?ふふふ…」

近衛「…!くそっ…僕がッ」

剣士「……」


魔術師「み、ミゼラさん!怪我はありませんでしたか!?大丈夫ですかっ?」

剣士「…あ、ああ…すまない、頭に血が…」
480 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/11(水) 23:44:57.23 ID:ytPRyKWt0

博士「…なるほどね……ま〜〜〜運や地面の悪さ、甲冑の重さ色々あるでしょうから、これだけで断ずるには早計だけど…」

近衛「……」


博士「ふふ、そういう結果となってしまったら、それを信じるしかないわね?納得いかない?」

近衛「…僕は甘かった、それだけです…しかし騎士団すべてがこう軟ではない」

剣士「……ほう」


近衛「負けを認めよう、僕は君の前では、そう、君の言う通り平民以下の人間だ」

剣士(……ふん、無駄に潔くはあるんだな)


博士「うふふ、珍しいものを見れたわ、ありがとうね?」

近衛「……いえ、自分の甘さを認識できました、感謝します」

剣士「自信がつきました、ありがとうございます」

博士「……」

魔術師「……」


博士「…ふふ、それじゃあだいぶ脱線しちゃったけど…早速、調査の方に移らせてもらうわね?」
481 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/11(水) 23:47:21.67 ID:ytPRyKWt0
ガチャッ・・・ガサガサッ


博士「…器材はほとんどこの鞄の中に納まっているから…あなた方はポイント到着まで私の護衛、というような形で行動していただくわ」

剣士「はい、任せてください」

魔術師「はーい」

博士「ちょっと無茶な山道を歩くかもしれないけれどー…まあ大丈夫よね?」

剣士「はい、問題ありません、必ずやお守りします」

魔術師「あう、枝が顔に当たるから…あまり好きじゃないです…」

剣士「おいこら」

魔術師「はぅ、問題ありませんっ」

博士「うふふ、頼もしいわね?」


近衛「では、僕も…」

博士「あなたはテントを見張ってていただけるかしら?」

近衛「……え?」
482 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/11(水) 23:49:25.58 ID:ytPRyKWt0

剣士「!」

近衛「待ってください、私は博士の身辺警護をと頼まれて…!」

博士「あら、そうなの…でも」


博士「大人数で歩くには不向きな山中…魔獣が現れたときの小回りを考えれば、できるだけ少人数で行きたいのに…ミゼラさんとあなた、私はどちらを優先して警護を託せばいいのかしら?」

近衛「う……それは、しかし」


博士「私も鬼ではないわ、あなたが試合で負けた、という事だけで言っているのではなくて〜〜…」

博士「そのテントの荷物の中には、国の重要な書類や証明書があるのよ」

近衛「……」

博士「それを護るという意味でも、クーゲル君、あなたの適所といえば、それの警護なのではないかしらね…?」

近衛「…わかりました」

博士「ん〜〜よろしい…」


剣士「……」

博士「…ふふ、それじゃあ行きましょうか?」
483 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/11(水) 23:52:12.07 ID:ytPRyKWt0
ザッザッザッザッ・・・


剣士「……」

魔術師「……ミゼラさん、ミゼラさん」

剣士「あ……ん?どうした?」


魔術師「なんだかミゼラさん、さっきから様子がおかしいですよ?変に無口です…」

剣士「……気にしないでくれ、護衛で緊張してるだけだからな」

魔術師「あ、そうなんですか」

剣士「うむ、なに、逆に国のお抱え騎士に勝てて晴々とした気分さ」

魔術師「えへへ、ミゼラさんの剣捌き、すごかったです!速かったー!」

剣士「そうか?…あの、いけすかないクーゲルとかいう騎士も、あいつはあいつで…技のキレは私よりも上だったけどな」

魔術師「あの人も構え方とか、本当に騎士っていう感じがして、かっこよかったなぁ」

剣士「ふ、そうかもな……まぁ結局、勝利を手にしたのは私だが、奴も強かった」


剣士(…だが、技のキレは良くても…あの態度、口ぶり……それだけは許せん)

剣士(負けを認めたからといって、口から出た蔑みが霧消するはずもないんだ)
484 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/11(水) 23:54:30.86 ID:ytPRyKWt0
ガサ、ガサガサ・・・


博士(何とか邪魔な監視役は振り落とせた…ふふ、可哀そうだったけど)


博士(試合はどちらが勝っても、適当な理由をつけてクーゲル君を置いていくつもりではいたけれど…)

博士(まさか、国の騎士が傭兵に負けるとはねぇ…予想外だわー)


博士(……とにかくこれで、城の関係者はいなくなった)

博士(ここで私が何の研究をしていようと、疑る者はいない…不穏な噂が城の中から広がる可能性は消えた)


博士(あとはこの二人に適当な指示を出して放置して〜〜…ふふ、研究に集中することができるわ)


博士(民間の傭兵なんて所詮は小金稼ぎの野蛮人…少し地位や金をちらつかせれば、どうにでも動いてくれる…)


博士「うふふ……」

剣士「? どうかしましたか?」

博士「んー?思い出し笑いよ…ふふ」

魔術師「あ、私もそういうのよくありますー!」

博士「ごめんなさいね、見苦しかったかしら?」

剣士「いえっ、そんなことは…」

博士(……)


博士(……そろそろ到着かしら)
485 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/11(水) 23:57:45.29 ID:ytPRyKWt0

ガサッ


博士(……以前訪れた所…そうね、ここだわ)

博士(忘れるはずもない、この地形だけは何の証拠も残さずに記憶する必要があった)

博士(多少の地殻変動があろうと、いくつかの特徴は変わらない)


魔術師「あ、ここ一帯はちょっとした広場になっていますね!」

剣士「ふむ、そうだな…辺りに木々も無い、隆起したこの…崖か?岩の層が見える…」


博士「この辺りは大きな空洞のある岩肌が多くてね……あ、空洞に入ったりしてはダメよ?」

剣士「何か問題があるんですか?」

博士「ええ〜…専門家でないと、崩れる空洞かそうでない空洞かの見分けがつかないから…魔獣の巣かもしれないしね?」

剣士「ふむ、確かに…」

魔術師「わー、本当だ、岩肌がスポンジみたいです…」


博士「ここ周辺は八卦国内で最も高い山と云われているわ……まぁ、もともと緩やかな傾斜しかない国だし、それでもこのくらい、って感じだけれど」

剣士「……ほおー、確かに珍しい景色だ…」

博士「うふふ」
486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/11(水) 23:58:45.30 ID:ytPRyKWt0

博士「……じゃあ、私は良いポイントを探してくるから…すぐ戻ってくるわ、ここで待っていてちょうだい」

魔術師「はーい!」


剣士「博士、私たちに何か手伝えることがあれば…」

博士「ふふ、探しやすそうな地層を見つけに行くだけよ、大丈夫だから待っていなさい」

剣士「……はい、わかりました…」

魔術師(しょんぼりしてるミゼラさん可愛い…)


博士「…まー…十分くらいして戻ってこなかったら、そうねー…死んだものと思って良いわ」

魔術師「えっ!?」

博士「うふふ、冗談よ……十分で戻らなかったら探しに来て」

剣士「……」

博士「お仕事、期待してるからね?ふふ……」

剣士「…わかりました」
487 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/12(木) 00:02:26.00 ID:F5UHtPqd0
魔術師「……なんだか、変わった人ですねー」

剣士「ああ…立場上、私は頭を下げてはいるが、苦手なタイプだ…あれは」

魔術師「あはは、でも悪い人じゃなさそうですから…」

剣士「…そうかもな…私には、学者の感情や心なんて想像もつかないから、なんとも言えんがな」

魔術師「人の心は、人それぞれですもの」

剣士「うむ、そうだな」


ジャリッ


剣士「うーむ、しかし…あの博士の前で、試合に勝つ事ができたんだ…」

魔術師「うんうん」

剣士「もっと“できる”ってことをアピールして、更に好印象を与えたいな…」

魔術師「えへへ、ケミスさんのお手伝い、頑張らなくちゃですねっ!」

剣士「……ああ、そうだな!」
488 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/12(木) 00:05:00.74 ID:F5UHtPqd0

――だいたい5分後


博士「待たせて申し訳ないわね、良い場所を見つけたわ」ガサッ

剣士「! ご無事で何よりです」

博士「ふふ、大げさよ…層がはっきりと大きく出ている壁面を見つけたから、これからそこへ行って作業をしてもらうわ」

魔術師「調査のお手伝いですねっ!」

博士「ふふ、きっと二人が思っているほど近代的な調査ではないわ…誰でもできる簡単な仕事よ」


剣士「…それで、具体的にはどういった手伝いを?」

博士「それは、今から向かう壁面の前についたら説明するわ」

剣士「わかりました」

博士「ふふ」


博士(…まぁ、私が真に調査したい場所は、こんなどうでもいい壁面の層などではないけれどね…)

博士(でもそれを、あなたたちが知る必要はない)

博士(この国の王族ですらも、ね…)
489 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/12(木) 00:07:34.24 ID:F5UHtPqd0

魔術師「わー!ケーキみたい!」

剣士「ほおぉ……これはまた、なんとも」


博士「ふふ、綺麗でしょ?ここなら層もわかりやすいし、綺麗な幅も広いから採集もしやすいと思うわ」

剣士「…えっと、ということは私たちの仕事は、ここでの博士の採集を手伝うということですか?」

博士「……う〜〜〜ん、ちょっと違うかしら?」

剣士「?」


博士「確かに採集はしてもらうのだけれど〜〜…私の作業手伝いではなく、あなた達二人でやっていただきたいの」

魔術師「え、ええ!?私たちでですか?」

博士「本当は私も詳しい作業手順を、手取り足とり教えながらやっていきたいんだけど……そうすると日が暮れてしまうのよね?」

剣士「……」


博士「だから、私とあなたたち二人は別々に作業をするわ」

魔術師「うう……上手くできるかなぁ…」

博士「ふふふ、あなた達なら上手くできると思うわよ?器用そうだもの」
490 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/12(木) 00:08:59.85 ID:F5UHtPqd0

剣士「…しかし博士、それでは博士の身の安全を守る事が…」

博士「心配には及ばないわ、…なに、少しの間だけ岩を削り取るだけですもの、ふふ…」


剣士「……しかし…」

博士「心配性ね?ふふ、大丈夫、慣れているから」


魔術師「…あ、あの、層の調査っていっても、私本当に素人でっ、ドジだし…」

博士「あの壁面の、そうね……あそこの白い層から、下の古い所をこのポケットケースに、番号順に入れてくれればいいから」カパッ


魔術師「……えっと、……削って、このケースの中に入れるんですね?」

博士「ええ、簡単でしょう?」

魔術師「……できるかも!」

博士「うふふ、お願いね?」


剣士「……わかりました、任せてください」

博士「何かあったら呼ぶし、こちらの調査が終わればここに戻るから、そんなに心配そうな顔をしなくても良いわよ?」

剣士「…! はい」
491 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/12(木) 00:10:57.33 ID:F5UHtPqd0

魔術師「えっと、まずは一番下からいこうかなー」カリカリ

剣士「……」

魔術師「あ!私は高い所をやるので、ミゼラさんは低い所をやりますかっ?その方が効率が…」

剣士「…あの女、怪しいな…」

魔術師「ふえ?」


剣士「ホリィ、お前はなんとも思わなかったか?あの博士の振る舞いを」

魔術師「……うーん?」

剣士「テントに近衛兵を置いてきたり、私たちに作業を任せたり…随分と重要な役目を変に振り分けるのが好きなようだが」

魔術師「……あ!」

剣士「何か感じただろう?不穏な感覚を…」


魔術師「…きっと博士、私たちに隠れておやつを食べながら休憩…」

グワシグワシ

魔術師「い、いたいいたい!髪の毛抜けちゃいますっ!」

剣士「食えよ、堂々と食えよ、誰も個人の栄養補給を妬んだりせんよ」


魔術師「……うー、でも確かに、ちょっと一人が好きかなー?って感じはしますね…」サスサス

剣士「うむ…」
492 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/12(木) 00:12:33.61 ID:F5UHtPqd0

魔術師「でもでも、そういうのってよくありません?」

剣士「ん?」


魔術師「たまに友達と遊びたくなくなったりー、じっとお部屋のベッドでごろごろしていたかったり」

剣士「……わからないでもないが、それとこれとは関連が無さそうだな」


魔術師「私が学校に居た頃もずっとそういう子いましたよ!一人が好きな子!」

剣士「ふむ?」

魔術師「机の上に沢山落書きしてあってー、教科書もぜーんぶ炎の術を失敗して燃やしちゃったり、おっちょこちょいな子だったんですけど…」

剣士「…ん?」


魔術師「あそびましょーって話しかけたら、その子“話しかけないでくれ”って…」

剣士「いやもういい、その話はもう良いよホリィ、参考になった、ありがとう」

魔術師「? えへへー」


剣士「…まぁ、そうだな…そんな性格の人である可能性も全く無いではないが、私から見れば少し不自然に見えるんだ」

魔術師「? うーん、そうでしょうか…」

剣士「思わせぶりな態度は元来の性格からだろうけど、それでもだよ」
493 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/12(木) 00:14:03.38 ID:F5UHtPqd0
剣士「……たとえば」カリカリ


剣士「鞄だ、あの博士、鞄は自分で持つと言ってクーゲルに手渡さなかった」

魔術師「でもテントは守れって、クーゲルさんに言ってましたよ?」カリカリ


剣士「それは…んー、テントには特になにも怪しいものが無い、とか…」

魔術師「あんまり人を疑うのは良くないですよ?…あ!おっきな石が埋まってる!」

剣士「……むぅ…」


魔術師「人を疑っていたら、信じてあげられませんからねー」カリカリ

剣士「…それは、騙される人間の考え方だ」

魔術師「…うーん、でもでも」


魔術師「ケミス博士が私たちを騙してでも一人になりたいって理由は、なんなんです?」

剣士「……う、それは…」

魔術師「ね?考え過ぎなんですよー」カリカリ
494 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/12(木) 00:16:14.71 ID:F5UHtPqd0
カリカリ サラサラ・・・

カチッ


剣士「……」カリカリ


魔術師「…まだ、気になっているんですか?」

剣士「いや、…うむ」

魔術師「……もー」


魔術師「ミゼラさんはケミスさんに信頼されたいから、頑張ろうって言ったんですよね?」

剣士「そ、そうではあるが…」

魔術師「だったらミゼラさんも、ケミスさんの事を信じてあげなきゃ、おあいこになりませんよ?」

剣士「……」カリカリ

魔術師「……」カリカリ


剣士(…くそ、私はどうかしてるのか?疑心暗鬼じゃないか…何故だ?)

剣士(私たちを置き去りにして一人で調査…それは自分が集中したいから、そう取れるだろう…?)


剣士「…くそ、悔しいが、憶測の中では菓子を独り占めが一番あり得る線……独り占め…」

剣士「………」
495 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/12(木) 00:17:36.31 ID:F5UHtPqd0

剣士「……魔石…かな」ボソ

魔術師「ふえ?」


剣士「博士が隠れて菓子を食ってる…割と、それは合っているかもしれんな」

魔術師「……?どういうことですか?」

剣士「さあな、私もよくわからん、全てが憶測では“お話”にしかならんからな」

魔術師「ほえー…?」

剣士「極端で…まぁ、バカな話でもあるが…」


剣士「あの変人博士が、もしも以前にこの山で…例えば、金とか、魔石とか…魔法金属とか、発見していたとしたら…」

魔術師「……」

剣士「…なんだその微笑ましい感じの笑顔は、やめろ」

魔術師「えー、だってー…」
496 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/12(木) 00:20:06.06 ID:F5UHtPqd0

魔術師「国の科学者さんなんですよね?」

剣士「ああ、そう言ってたな……届いた書類もちゃんとしたものだったし」

魔術師「…国の専門家として働いている裕福な学者さんが、そんな魔石や金銀なんて…周りに隠してまで欲しがるとは思えませんよ?」

剣士「む……確かにそうか…」

魔術師「魔石が壁一面にびっしりー、とかだったらありえるかもしれないですけど…」


魔術師「あるとしたら、もっとお金とかそういうのじゃなくて…別のものじゃないですか?」

剣士「別のもの…ねえ?なんだそれは?」カリカリ

魔術師「うーん……えへへ、なんでしょう……?」


剣士「封印された魔具か?禁術を記した聖典か?それとも古代に封印された幻のモンスターとでも…」

魔術師「ん!」

剣士「お!?」ガリ


剣士「あ、いけね、削りすぎちゃった……いやこのくらい大丈夫か…?おい、あまり変な声出すなよホリィ…」

魔術師「幻の…モンスター!」

剣士「?」
497 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/12(木) 00:21:40.54 ID:F5UHtPqd0

魔術師「モンスターさんです!モンスター!」

剣士「は?お、おい一体どうした、落ち着いて話せ…」

魔術師「いるんですよっ!本で読みましたっ!この国には、ものすっごくおっきな、モンスターが眠っているって!」

剣士「……?」


魔術師「えへへ……こほん!」


魔術師「えっとですね、そのモンスターはこの国の岩盤として地下に眠っていてですね…」

魔術師「でもその岩盤の正体は実は何と!国を覆ってしまうほどの巨大なカメの甲羅…」

剣士「アホらし」カリカリ

魔術師「……ちょ、ちょっと聞いてくださいよミゼラさん!これ本当だとしたらすごいことじゃないですか!?」

剣士「新種の魔族かと思えばなんだ、ただのおとぎ話じゃないか」カリカリ


魔術師「む、むー…でも、ケミスさんはもしかしたらそのカメさんの研究をしていたり…」

剣士「そんなくだらない研究のために私たち平民に重ーい税をかけているのか?だとしたら今すぐ天誅を下してやるレベルだな」

魔術師「そ、そんな…でも本当にあるかもですよ…?」
498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/12(木) 00:23:55.69 ID:F5UHtPqd0
カリカリ

剣士「……」カリッ


剣士「ふん…まぁ、あの博士が何故一人になりたがっているのか…それ自体には興味がある」

魔術師「…はい」


剣士「亀の甲羅云々は、かなー……りどうでもいいが、一億分の零くらいの確率ではあり得ることかもしれん」

魔術師「それってゼロじゃ…」

剣士「うるさい、……とにかく私は、今の私はあの変態博士の動向が気になって仕方が無いんだ」


カランカラン


剣士「こんな、ただ岩を削っているだけの作業でも、じっとやっていられん…先ほどの決闘の昂ぶりで妙に疼いているのか、とにかく真偽のほどを確かめにいきたい」

魔術師「え?本当ですか?」

剣士「ああ、このままではおちおち、安心して仕事もしていられんからな…」


剣士(…本当ならあの博士を信頼し、彼女の命令を聞き狂いなく実行する…それが最大のアーピルなんだろうが)


剣士(……もしあの女の掌の上で踊らされているのだとしたら、それはもう、我慢できん!)

剣士(私は元来、ああいう、含み笑いをするタイプの人間は好きじゃないんだ…!)
499 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/12(木) 00:25:19.64 ID:F5UHtPqd0

タッタッタッタッ・・・


魔術師(……あーあ、ミゼラさんいっちゃった…)


カリカリ


魔術師「いつもいつも無茶するから…心配だなぁ、ミゼラさん…」カリカリ


魔術師(でもケミスさんが、どこにいるかもわからないのに…どこに行ったんだろ…?)


魔術師(…もしかして…ミゼラさん、ケミスさんを追いかけて途中で迷子になっちゃったりしないかな…!?)

魔術師(あんなに小さなミゼラさんが迷子になったら、そうしたら…!)


剣士『うぐっ…ぇえーん…ホリィぃ…どこだよぉー…!』グズッ


魔術師「……!」

魔術師「か、可愛い!」ガリッ


魔術師「あわわ、変な風に削っちゃった…」パラパラ
500 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/12(木) 00:28:05.98 ID:F5UHtPqd0

タタタッ・・・


剣士(博士は別の所で調査すると言ってどこかへ行ってしまった…場所は告げなかった)

剣士(それだけでも怪しいものだが…ううむ、やはり何故一人になりたいのか、それがわからん…)

剣士(これで本当に、一人で集中したいという事だったら…全く私は馬鹿な奴だ)


キョォォオオォッ・・・・

ケロケロケロケロ・・・


剣士(…コダマ鳥の声が響いている…郊外、田舎という感じがするな…)

剣士(国境の端っこ…ジラフ国との境目である微妙なライン…ロケーションを考えれば考えるほど、怪しさは膨らむのだが…)


ジャリッ


剣士「……む」

ザラッ・・・


剣士(砂……いや砂利だ、地面に違う色の砂利が溜まっている…岩の破片?そんな感じではない…?)

剣士(……上の、層の壁面から崩れて積もったのか…?いや)


ジャリッ


剣士「…岩の破片が不自然に積もっているのは、ここだけだな…」
501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/12(木) 00:29:39.01 ID:F5UHtPqd0

剣士「……どこか、この壁面を掘削でもしたのか…?」ツツツ・・・

剣士「しかし周囲にそのような跡は…ただゴツゴツしてるだけ…」


剣士「!?」


ツツ・・・スカッ


剣士「!? 岩の凹凸に触れたと思ったら…手ごたえがない…!?だと」

剣士「な、なんだ?これは、見えるが触れない魔法の岩だとでも…」


剣士「…」ジーッ


剣士(違う、これは目の錯覚だ…ここの触れないと思った部分、ここは…この部分の岩だけが)


剣士(普通の壁面よりも、“奥”に存在している…!)

剣士(まるでだまし絵のような岩の扉だな…扉…まさか)


ピチョーン・・・


剣士(微かにだが………水の音…)


剣士(中に空間が広がっている!)
502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/12(木) 00:31:30.71 ID:F5UHtPqd0

剣士(中は洞窟のように暗い…)


剣士(けど何故だろう、薄暗い程度だ…まるで地面が淡く光っているように、先を視認できる…)

剣士(飽和した魔力は独特の発光を見せるというが…?)


剣士(…ふん、とうとう胡散臭くなってきたぞ…ここに来て地層の調査などと言われても、愛想笑いも涸れるものだな)


コツーン、コツーン


剣士(…思ったよりも広い空洞だな…岩の扉は自分で作ったのかな…?)

剣士(……何のために)


ピチョーン・・・


剣士(………ふ、当然か……菓子を隠すためだよな?)


コツーン、コツーン・・・


剣士(国のお抱え科学者が一体、郊外の辺鄙な山へピクニックにやって来て、どんな菓子を食うのか……興味がそそられる)
503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/12(木) 00:33:14.31 ID:F5UHtPqd0

ドクン・・・・・・


博士「……」


ドクン・・・・・・


博士「……ふふふ、水脈の音、かもしれないけれどー……?ちょっと、リズムがねぇ……?」


博士(ひとつひとつがまるで馬車のように巨大な、鉄の鎖の輪…ふふふ、古臭いこんなもので、どこを縛っているのかしら…)


博士(ここが洞窟の最深部…周囲には…消えかかった古代の魔法陣…)

博士(城にもあったけど〜〜…この魔法陣、魔石からの魔力の調整役、とか言われてるわねぇ…式はぜんぜん、そうは見えないけど?)


博士(うふ、うふふふ…でも実際のところ、これってなんなのかしらねぇー…!?私から見れば、まるで封印…)


カツーン


博士「……!」ババッ


カツーン・・・


博士(……誰だッ…!)ギリッ・・・

504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/12(木) 00:34:20.58 ID:F5UHtPqd0

カツーン


博士(誰だ、誰か来るな、城の人間か?)


博士(落ちつけ、きっとあの傭兵二人のうちのどちらかだ…いや、どちらにせよマズい)


博士(…最深部のこの岩の一室だけは、絶対に見られてはいけない…ここを見られれば、誰であれただの噂では済まなくなる…)


博士(……この部屋の入り口を爆破するか!?いや落ち着きなさい…ダメよ、それだけはダメ…)

博士(………ここへは定期的に城の重要人物が訪れ、安否を確認している…そんなことをしては、形跡が…)


カツーン・・・


博士(…………あくまで最後の手段として、それは残す…先にダメ元で手を打っておくとするなら〜〜〜…)


博士(…知らんぷりか…“口封じ”しかないわね…!)
505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/12(木) 00:35:31.82 ID:F5UHtPqd0
カツーン・・・


剣士(…長い…長いぞ、すごい長さだ、自然にできる洞窟の長さではない)

剣士(そもそもこんな山の壁面に、洞窟なんてあるわけがない…ここは作られた空間…!)


剣士(絶対に何かあるぞ……絶対に…!)


カツーン、カツーン


剣士(! 足音…私の反響音ではない…これは)


カツーン、カツーン・・・


剣士(……来るな、誰かが…)


カツーン、カツーン


剣士「…!」
506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/12(木) 00:36:43.99 ID:F5UHtPqd0

博士「あら、足音が聞こえてたから誰かと思えば、ミゼラさんね?」

剣士「…博士、随分と探しましたよ…地層の調査でわからないことがありまして」

博士「あら、そうなの?じゃあ今すぐそちらに行くわね、こっちの方も終わったし…」

コッ、コッ


剣士「……」

博士「……」コッ


博士「行きましょう?もう一人の〜〜〜…ホリィさん、まだあちらに残っているのでしょうしね?」

剣士「…博士、そしてここでも聞きたいことが」

博士「……何かしら、遠慮なくどうぞ?」


剣士「今回の調査は、地層の地質調査……ですよね?ケミスさん」

博士(……うふふ…)


博士「そうね、地質調査よ…層の成分を分析に、この山がいつの時代にできたものなのかを…」

剣士「ここには層が見当たりませんが」


博士「………うふ、…うふふ」
507 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/12(木) 00:37:41.91 ID:F5UHtPqd0

博士「はー…うん、うんうんうん…」

剣士「……」


博士「うふふ、…私、頭の回転が早い子って大好きよ?理解が早くてとても助かるもの……でも」


コッ


博士「あんまり頭の回転が速いと〜〜〜…悪い熱にうなされてしまうわよ…?うふふ…」

剣士「…知らない方が良い事もい多い、ですか?」

博士「うふふ、良いわねそのセリフ、なんだか裏役の悪って感じがして素敵…」


博士「でも私はねぇ?悪でもなんでもない…私は多くを知っているだけ…秘密が多いだけなの」

剣士「……」

博士「秘密を持ってしまうと、ど〜〜…しても、隠していたくなっちゃう…そんな経験、あなたにもあるわよね…?」

剣士「……ふん」
508 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/12(木) 00:39:23.24 ID:F5UHtPqd0

剣士「博士…私はあなたの事を信じて、そうして…誠意を見せて働けば、あなたに認められると…そう思っていました」

博士「あら?私は力のある人物は認めるわよ…使える子は大好きだもの」


博士「あなたが昼間、うちの城の騎士を負かした時、その時から私はあなたを認めていたわ」

剣士「違う」


剣士「…ここは一体、何なのですか?地層とは全く関係の無い、人為的に掘られた洞窟のように見える…私は」


剣士「……私は…私を騙すような人に認められても…そんなもの信じられない、ちっとも嬉しくはない、たとえそれで騎士になれたとして、忠義など抱けない…」

博士「……」


剣士「…博士が握っている秘密…それ自体は、私は知ろうとは思いません…いえ、そう言ってしまえば嘘ですが」


剣士「……私は、私が信じていた人が私を欺いていた…それだけが何よりも、たまらなく歯がゆいのです」

博士「……うふ」
509 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/12(木) 00:41:40.32 ID:F5UHtPqd0
博士「それじゃあ、あなたは私を信じなくていいわ」

剣士「!」

博士「私もあなたを信じない、うふふ……」

剣士「…!私は真面目に…!」

博士「こちらも真面目よ」


博士「…ど〜〜しても人には知られたくない秘密がある…誰しもひとつは持っている…」

博士「ここもそうよ?ここは私の禁忌…ここに踏み入れる人は、本当なら放っておけないの」

剣士(……脅しにきたか?)


博士「あなたもそうでしょう?知られたくない秘密……あるはずだ」

剣士「…」


博士「知らないとでも思ったか、“賎民”」

剣士「……ッ!貴様!」バッ


グイ


博士「離しなさい賎民、……お前が襟が掴んだところで絞め上げられやしない、ただ汚れるだけだ」

剣士「それ以上私をその名で呼ぶな…ッ!」
510 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/12(木) 00:45:45.09 ID:F5UHtPqd0
博士「ソイレギンス…今では由来を知る者はあまりいないだろうが、私は知っている…城で細かな教育を受けた者ならわかるだろう」

剣士「やめろ…!」グッ


博士「奴隷上がりの“靴磨き”が…名を改め“呉服”など…?身の程を知ったらどうだ?」

剣士「これ以上私の母を…血統を侮辱するなッ!」


ジャキンッ

博士「……“ソイレギンス”の名を持つ者が騎士になる…?うふ、うっふふふふ…おかしいわ、滑稽よ、いえ、センスがあるわ」

剣士「貴様…死にたいのかッ!?」

博士「……うふふ、わかる?誰でも知られたくない事はあるのよ…」

剣士「……!」
511 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/12(木) 00:47:24.33 ID:F5UHtPqd0

博士「秘密は共有するものよ?うふふ…この場所も、私の襟についた跡も…」

剣士「……!」


博士「私はこの襟とあなたの家系図を見せるだけで、ミゼラさん?…あなたをいつでも監獄…いいえ、死刑台送りにできるのよ、独断でね」

剣士「…貴様…貴様貴様貴様ァぁあ……!」

博士「大丈夫、安心して?うふふ…私は秘密を多く持っている…コレクションは大事にするタイプよ…」


博士「…ここで見たことは全て忘れろ、誰にも話すな、もしも少しでも出回る情報に異変が見つかれば〜〜……」

剣士「……!」


博士「お前は当然…お前の親…兄弟…子孫……ついでにあのホリィって子も」


博士「…全て…」

剣士「……」


博士「………うふふ、じゃあ早く“地質調査”に戻りましょうか?ミゼラさん?」
512 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/12(木) 00:48:28.10 ID:F5UHtPqd0

魔術師「……あっ!ミゼラさん!」

剣士「ああ、ホリィ」


博士「遅くなって申し訳ないわね、そちらの採集の方はどう?」

魔術師「えへへー、ばっちしです!」カランカラン

博士「あらぁ、素敵……やっぱり私が見込んだ通り、優秀な人たちね?」

剣士「……」


魔術師「? ミゼラさん?」

剣士「…ん?何だ?」


博士「うふふ、それじゃあテントに戻りましょうか……今日で終了、もう良いわ」

魔術師「えっ?」

博士「ふふ、二人が頑張って集めてくれたおかげよ、良い場所だったっていうのもあるけれど…予定よりもずっと、早く終わったわ」

魔術師「え、えへへ…褒められた…」
513 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/12(木) 00:54:33.84 ID:F5UHtPqd0

近衛「……?あれ、博士、そのテント…」

博士「んー?調査の方が終わったから…もう今日で引き上げるわ」

近衛(早っ…来た意味無っ…)


魔術師「えへへー…あ、すみません、なんだかクーゲルさんだけ待たせちゃう形になってしまって…」

近衛「あー?いや、そういうのは全然構わないけど」


剣士「…やれやれ…結局なんのためのテントだったんだか……」ブツブツ

魔術師「あははー、でも早く終わって良かったです!」ガチャガチャ

剣士「そうだな、良かった…」ガチャガチャ

魔術師「?」ガチャガチャ


近衛「じゃあ、標の灯を上げておかないとな…馬車呼ばないと、馬車」

博士「……」
514 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/12(木) 00:55:21.53 ID:F5UHtPqd0
――ニの街 傭兵協会前


博士「…それでは、受付の人にこの紙を渡して」ピラッ

魔術師「? あっ、依頼者側の報告書かー…」

博士「予想以上の働きだったから、評価は高めにしてあるわ…ふふ」

魔術師「あ、本当だ!ありがとうございます!」


博士「うふふ……それじゃあ、私はこのままこれで帰るから〜〜…いつかまた、機会があれば…よろしくね?」

魔術師「はーい!」

剣士「…うむ、あーいや、…はい」


近衛「……ミゼラ」

剣士「?」

近衛「またいつか、今度はちゃんとした場所で手合わせを願いたい」

剣士「……ほう」


近衛「その時は絶対に僕が勝つ」

剣士「…ふん、やってみるがいいさ」

博士「………ふふ…」
515 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/12(木) 00:56:10.91 ID:F5UHtPqd0
「はい、出発しまーす」


ガラガラ・・・

ゴトンゴトン・・・


魔術師「またいつかー!」ブンブン

剣士「……」


魔術師「…ほら、ミゼラさんもっ!アピールアピール!」グイッ

剣士「…」ブンブンッ


魔術師「……えへへ、今日は疲れましたねー」

剣士「…そうだな、疲れたな…」

魔術師「でも楽しかったです、色々な事があって…」

剣士「…そうだな、色々な事があった」


魔術師「……ミゼラさん、なんだか元気ないです?」

剣士「気のせいだろう、私はいつもこうだ」

魔術師「……そうかなぁ…」
516 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/12(木) 00:58:04.32 ID:F5UHtPqd0

受付「いやぁーそれにしても……ほっ」


どんっ


受付「…まさか、日帰りで戻ってくるとは思いませんでしたよ」

魔術師「えへへ、私もですー」

受付「最近、結構な頻度で仕事をされているようですけど、本当に体だけは大事にしてくださいよ?」

剣士「うむ、わかってる」

受付「傭兵は体が資本、いつまた緊急の指令が下りるかわからないんですから、いつでも万全に整えておいてくださいよ?」

魔術師「はーい!…えへへ、大丈夫です!ミゼラさんが無理しそうになったら私が止めますからっ」

受付「はは、それなら心強い」


魔術師「ねー?ミゼラさん?」ヒョイ

剣士「降ろせ、持ち上げるな」
517 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/12(木) 01:00:06.43 ID:F5UHtPqd0

魔術師「えへへー、お金、今日も沢山!」ジャラジャラ

剣士「…うおー…あの変態博士、奮発してるな…」

魔術師「あっ!またそう悪い風に言うー…怪しいと思って行ってみたけど、何もなかったんでしょう?」

剣士「え?ああ…そうだよ」

魔術師「じゃあヘンタイなんて、失礼ですよ?ミゼラさん」


剣士「……うむ、そうだな…すまん」

魔術師「……」


ヒョイ


剣士「! おい、だから降ろせ、持ち上げるなと…」

魔術師「…ミゼラさん、何か隠してません?」

剣士「…!」

魔術師「あーっ、今ちょっとまぶた動いたー!」
518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/12(木) 01:02:10.33 ID:F5UHtPqd0
剣士「……」

魔術師「…むー、やっぱり何か隠してるー…」

剣士「……て、てい!」ガスッ

魔術師「きゃ!?ちょ、チョップ!?」


スタッ


剣士「…何も隠してないし、持ちあげられるのは嫌だ、それだけだ」

魔術師「……」サスサス

剣士「……」


魔術師「……ねえ、ミゼラさん?」

剣士「…なんだよ」


魔術師「今日も一緒に、お風呂入りません?」

剣士「……風呂か、そうだな…」

魔術師「今日あった、疲れた事もいやーなことも、全部水に流せちゃうかもしれませんよ?」

剣士「…ふん、そうだな」


剣士「……そうしようか」
519 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/12(木) 01:03:01.84 ID:F5UHtPqd0
「わー、ミゼラさんの髪、じゃりじゃりしてるー」ワシワシ

「…作業中の砂埃のせいだな…お前の頭も同じだ」

「えっ?そ、そんな……」

「おい、しっかり洗え!お前の髪は後で洗ってやるから!」

「あう、はい、ごめんなさい…」ワシワシ


「……ホリィ」

「んー?はいー?」ワシワシ

「…もしも私が騎士になったら…お前はどうなるんだろうな」

「……あ」ワシ


「…例えばの話だぞ?そもそも私がなれるかどうか…」

「……なれますよ!絶対!…うー、お城に住みこむようになって、しばらく会えなくなっちゃうのは寂しいですけど…」

「……」


「…でも、ミゼラさんだったらきっと、絶対になれますよ!」
520 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/12(木) 01:03:41.97 ID:F5UHtPqd0

「……なれるかな、私でも」

「うん」


「騎士にだぞ?」

「うんっ」


「…この、ミゼラ=ソイレギンスがだぞ?」

「えへへ、だからー、なれますって…ば!」


バシャッ


「うおっ!冷たっ…!」

「あ、ご…ごめんなさい!お湯じゃなかった…!」


「…この野郎、お前も同じように…!」

「ひ、ひい!やめてください!ゆるしてー!」

521 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga sage]:2012/07/12(木) 01:05:34.66 ID:F5UHtPqd0

多くの謎を残し、小さな女と大きな女の物語はここで終わる

しかし、二人はまだまだ夢のため、努力していることを忘れてはいけない


個人の些細な顛末など、何千年かもすれば忘れ去られてしまっても、仕方の無いことかもしれないが
522 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/12(木) 01:18:37.72 ID:/ZPzxTjVo
おぉぉおわってしもたぁ・・・
良いでこぼこコンビでした!
523 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/12(木) 01:24:09.55 ID:SX+b1lKFo
乙…



乙…
524 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [saga]:2012/07/12(木) 01:29:14.69 ID:8j+yd/UAO
城関係の人も追記として出したし、本体の予備知識としては申し分ない


だらだら加筆修正したけど、二人の傭兵物語は今日で終わり

HTML化依頼は出したので、あとは勝手に落ちるのを待つのみ

お疲れさま
525 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/12(木) 01:32:24.89 ID:LXVQEqd4o
     ...| ̄ ̄ | < お疲れ様でした 面白かったです
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526 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/12(木) 01:34:53.99 ID:Ae7Ns6SOo
ん、この遺跡ってもしかして考古学者の女の子の話のあれと同じ?
527 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/12(木) 03:50:23.79 ID:vlu8cLHOo
何かのスピンオフ的な物なのかな、だとしたら本編が気になるわ
まぁ何にせよ乙
528 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/12(木) 07:02:41.22 ID:+1n8YkWIO
ジェミ乙!!
529 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/12(木) 18:51:10.50 ID:+1n8YkWIO
>>457
>>1様、この二人が脇役になる本編を知りたいです
530 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/07/13(金) 00:24:14.81 ID:v8jKJHhAO
本編はまだ書かれてない

SSとしてやるなら、確実に安価にせざるを得ないからやりたくもない

ベーグル食べたい
531 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/13(金) 00:25:05.37 ID:BBarkZKno
なにこの打ち切りみたいな終わり方

こんな半端に終わるものわざわざ加筆までして貼りなおすなよ

期待してただけにがっかりした
532 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/13(金) 00:26:18.00 ID:TMcq0BF5o
記者の続きはよ!
533 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/07/13(金) 00:41:02.48 ID:v8jKJHhAO
彼女らは勇者じゃないしよくある主人公でもない
最初から時代の片鱗を一緒に写すための被写体でしかない

このスレはほぼ、追記した内容を書きたかっただけ(どうにかキャラクターを出したかった)

間に1つ挟むとは前もって言ってあるし、そこはご容赦ねがいたい
534 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/13(金) 00:42:23.65 ID:bEmH57SIO

いままでのペースとは何だったのかw

あと、別スレあるなら誘導をぜひお願いします
535 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/13(金) 18:34:32.35 ID:GQ13NBQ4o


今って何種類SS書いてる?
肉まん含めて2つしか知らないんだけど
536 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/13(金) 18:38:51.02 ID:AW6vPEkIO
女記者の活躍を読みたい…
537 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/13(金) 20:47:03.56 ID:BSgCxLq8o
>>536
青の国は気になるよな
538 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/07/14(土) 01:50:17.92 ID:jCuiiMqAO
今SS速報にあるものはこれを除いて4つ、おまけして5つ

色々なSSを読みまくって探そう

539 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/14(土) 02:48:32.26 ID:8I3hRAkIO
探すのめんどくせぇぇ
540 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/14(土) 08:06:31.21 ID:rwz2KMJIO
コテでもトリでもどっちでもいいけどつけてないのかな
中途半端なもん見せられても困るから今後わかりやすいようにNG入れておきたいんだけど
541 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/14(土) 13:23:38.96 ID:kgQgWOkDO


えっ!?これ肉まんが書いてたの??
542 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/14(土) 15:45:26.29 ID:8S9/kHC5o
>>541
この人はもともとこういう雰囲気のが多いよ
逆に俺は肉まんのSS見てキャラが違いすぎて吹いたわ
543 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/14(土) 22:33:58.32 ID:hytX+euSo
これで終わり?
他の作品があるならタイトル一覧を…
544 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/15(日) 02:07:11.39 ID:ePrmOK8oo
IDで検索したら引っかかったりするよ
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