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ほむら「勇者 エクス☆マギカ」 -
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1 :
書かなきゃ忘れそうな注意事項です
◆1B0iEDnTxU
:2011/09/06(火) 20:58:54.47 ID:FRdcbQBa0
お待たせ致しました。
9話が完成しましたので新しいスレ作成とさせてもらいます。
此方のSSはクロスオーバー物となっております。
クロス物は『魔法少女 まどか☆マギカ』『勇者 エクスカイザー』
のクロスとなっております。
更に続き物となっており此方で投稿するのは第9話からとなります。
8話以前の話は此方のスレ
まどか「勇者 エクス☆マギカ 第1話」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1310439726/
に掲載させてもらっております。
もし興味のある方は、是非見て感想を書いてもらえると嬉しいです。
次のレスは此処までのあらすじとします。
1.5 :
荒巻@管理人★
(お知らせ)
[
Twitter
]: ID:???
【 このスレッドはHTML化(過去ログ化)されています 】
ごめんなさい、このSS速報VIP板のスレッドは1000に到達したか、若しくは著しい過疎のため、お役を果たし過去ログ倉庫へご隠居されました。
このスレッドを閲覧することはできますが書き込むことはできませんです。
もし、探しているスレッドがパートスレッドの場合は次スレが建ってるかもしれないですよ。
旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713353246/
木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1713351945/
いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713279251/
【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713277692/
こんな恋愛がしたい 安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713183168/
【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713091115/
アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713089503/
エルヴィン「ボーナスを支給する!」 @ 2024/04/14(日) 11:41:07.59 ID:o/ZidldvO
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713062467/
2 :
やっと投稿出来た…
◆1B0iEDnTxU
:2011/09/06(火) 21:04:51.24 ID:FRdcbQBa0
あらすじ
さやかが絶望して大変!
みんなが駆け付けたぞ!
でもさやかのソウルジェムが爆発してとんでもない事になっちゃった!
以上8話のあらすじでした。
3 :
ほむら「勇者 エクス☆マギカ 第9話」
◆1B0iEDnTxU
:2011/09/06(火) 21:05:40.65 ID:FRdcbQBa0
膨大なエネルギーが炸裂した中心点。
そこから新たな結界が形成され、そこには人魚の様な魔女が居座っていた。
「……。」
「クッ…一体何が…?」
「!?さやか!!」
杏子は魔女の近くで横たわっていたさやかを持ち上げると素早く後退した。
「オイ!さやか!しっかりしろ!」
4 :
ほむら「勇者 エクス☆マギカ 第9話」
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 21:06:08.65 ID:FRdcbQBa0
揺すってみたは良いものの、さやかからは返事が無く、死んだ様に動かなかった。
「う…さやかちゃん?」
「さやか?」
「美樹さん!そんな…!」
「助けられなかっ…た!」
ウオオオオオオオォォォォ!!!
魔女は雄叫びを上げて巨大な車輪を呼び出し、まどか達に向けて投げつけた。
その一つがまどかに転がってきてマミ達は驚愕した。
5 :
ほむら「勇者 エクス☆マギカ 第9話」
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 21:06:51.99 ID:FRdcbQBa0
「!鹿目さん!!」
「!!」
バギィ!
まどかは目を瞑って衝撃に備えていたのだが、直ぐ近くで音がしたと思うと、車輪の衝撃は全く来なくなった。
恐る恐る目を開けると、ドラゴンカイザーが真正面から車輪を受け止めていたのだ。
「ぬ、うぅ…!」
「ドラゴンカイザーさん!」
「早く!キングローダーに乗るんだ!」
「う、うん!」
6 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 21:07:23.04 ID:FRdcbQBa0
そう言って、まどかはキングローダーの方に向かった。
その途中、恭介が倒れているのを見つけ、手を貸す為にそちらに向かった。
「上条君!」
「しっかり!」
まどかは恭介を肩を持ち、キングローダーまで運んでいた。
恭介は額を切っていたが、意識ははっきりしていた。
「有難う、鹿目さん…」
「保険委員だし、ね?」
「!マミさん!?」
7 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 21:07:49.22 ID:FRdcbQBa0
まどかがマミを見つけると、マミは呆然と魔女を見つめ、立ち尽くしていた。
そこに狙ったかのように複数の車輪が飛んできていた。
「マミさん!危ない!!」
「あ…!」
マミはやっと茫然自失の状態から戻ったのだが、時既に遅く、大量の車輪が砂埃を上げてマミを押し潰していた。
「マミさあぁん!!!」
「!マミ!」
「くそぉ!マミ!」
8 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 21:08:17.21 ID:FRdcbQBa0
だが、その瞬間、キングローダーの上にマミが座っていたのだ。
マミにも何が起きたのか分かっておらず、その隣にはほむらが立っていた。
「やはり、間に合わなかった…!」
「ほむらちゃん!?」
「あ、暁美さん?今どうやって?」
「説明は後!今は此処から逃げるのよ!」
その言葉にマミはやっと覚醒してほむらに食って掛かって行った。
「な…!何言っているのよ!暁美さん!美樹さんを見捨てる気!?」
「あれはもう『美樹さやか』ではないわ!魔女なの!」
9 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 21:08:51.83 ID:FRdcbQBa0
「でも美樹さんだったものよ!」
「私は放って置けない!」
「馬鹿言わないで!」
「もう無理なの!助けられないの!」
そう言うほむらの目から涙がこぼれて、地面に落ちた。
まどかは、二人のその言い合いを見て疑問が湧いた。
「…ねぇ、ほむらちゃん…あの魔女の事…知っているの…?」
「!?」
「それは…「オイ!」
「今は言い合っている暇はねぇだろ!」
「どうやって逃げるんだ!」
10 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 21:09:29.70 ID:FRdcbQBa0
ほむらの言葉を遮り、杏子がさやかを抱えて飛び乗ってきた。
さやかを恭介に預けると、魔女に向けて槍を構えていた。
「……分かったわ、此処から脱出する」
「けれど、美樹さんは絶対に助ける!良いわね!」
そう言ってマミはほむらを睨みつけていた。
ほむらは一瞬怯んだが、歯を食いしばり返答していた。
「…分かったわ…脱出の手伝いをする」
「ドラゴンカイザー!早くコッチに!」
「!?分かった!」
11 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 21:10:03.31 ID:FRdcbQBa0
特大車輪の間を飛ぶ様に回避していたドラゴンカイザーにほむらが声を掛けてキングローダーの所まで跳んで来ていた。
そして、ほむらが脱出の為の支持を開始した。
「全員、この上から動かないで!」
「ドラゴンカイザーはエクスカイザーになってキングローダーを引いて!」
「マミさんはドラゴンジェットに何でも良いから紐を繋げて!」
「「(わ)、分かった(わ)!」」
二人同時に返事をすると、エクスカイザーはドラゴンの内部から出て来て車に変形してキングローダーに接続した。
マミは変形し、飛行できるようになったドラゴンジェットに魔法でできた紐を機首から出てきたランディングギアに括り付けると準備を完了した。
「出来たわよ!」
「コッチもOKだ!」
12 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 21:10:35.80 ID:FRdcbQBa0
その言葉を合図に、ほむらは円形の盾を構え、能力を発動した。
「えぇ、それじゃあ、私から離れないで!」
キュゥィィィィィィィィ…!!!
カシャン!!!
ほむらの盾が開き、内部に組み込まれた高速回転する歯車が止まると。
世界の全てから色が失われた。
キングローダーに乗っている人達を除き、世界の全てが『止まって』いた。
「な…!コイツは…!」
「飛んだり跳ねたりしないで、此処から離れたら貴方も『止まって』しまうわ」
「エクスカイザー!出して!」
13 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 21:11:06.10 ID:FRdcbQBa0
その言葉にエクスカイザーはエンジンを全開にして応じた。
急に加速して、まどか達は落ちそうになったが、ほむらが手を掴んで事なきを得た。
「あ、有難う、ほむらちゃん…」
「暁美さん…、貴方の能力ってもしかして…」
「…えぇ、そうよ、私の能力は…「皆!話はこの結界を出てからにするんだ!」
エクスカイザーにそう言われほむら達は黙った。
まどかはほむらの哀しそうな横顔を見つめていた。
14 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 21:11:41.47 ID:FRdcbQBa0
第9話『そんなの、あたしが許さない』
キングローダーに揺られて数分、ようやく結界の端が見え。
マミが砲撃を放ち、結界に穴を開けそこから抜け出した。
結界を抜けるとそこは電車の操車場になっており。
キングローダーはそこに荒っぽく着地した。
ドズゥン!!ギャァア!!
「キャッ!」
その後、一度バウンドすると、ブレーキを掛けてキングローダーは止まった。
周囲を見回し、エクスカイザーは安堵して話した。
15 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 21:12:21.69 ID:FRdcbQBa0
「ふぅ…此処までくればもう「テメェ!!」
突然の怒鳴り声に全員が驚いていると、杏子がほむらに飛び掛かって地面に押し倒していた。
「何、今更ノコノコやって来てんだ!」
「どうしてだ!どうして助けようとしなかった!」
「さ、佐倉さん!」
「や、止めて…「うるせぇ!!」
まどかは杏子の怒声に怯んで黙ってしまったが、杏子の顔を見ると。
今にも泣きそうになって我慢しているのが分かってしまった。
「コイツはな…!知ってたんだよ!あたし達、魔法少女の結末をよぉ!」
16 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 21:12:57.57 ID:FRdcbQBa0
「え…何…?」
「どういう事…?ほむらちゃん…」
「そ、それは…「しらばっくれてんじゃねぇ!」
再び、杏子の怒声が響き、まどかは驚いた、そしてほむらもまた弱気な目で杏子を見ていた。
何時ものクールさとは違い、今はただ、杏子に怯えるようになっていた。
「コイツはな!言ったんだよ!ソウルジェムが穢れで満たされた時、それは私達の終わりだってなぁ!」
「ソウルジェムが輝きを失った時!砕けて、グリーフシードになり魔法少女は魔女になるって!」
「え…?嘘…?」
「嘘なんかじゃねぇ、事実、さやかは…」
「…ッ!!」
「ヒッ…!!」
17 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 21:13:36.66 ID:FRdcbQBa0
杏子が睨むと、ほむらは竦み上がっていた。
その目は涙が溜まっており、今にも零れ落ちそうだったが。
それ以前に、ほむらを射竦めるには充分だった。
「何怯えてやがんだ…?何時ものすまし顔は何処行ったんだぁ!?えぇ、情報通さんよぉ!!」
「わ、私は…」
「助けたかった…本気で、さやかを助けたかった…!」
「でも出来なかった…!私なんかじゃ出来なかったぁ…!!」
怯えながら弁明しようとするほむらを杏子は胸倉を掴み、脅しとも取れそうな気迫で睨んでいた。
それに耐えられなくなったのか、ほむらはポロポロと涙を流しながら喋っていた。
「知っていたのに止められなかった…!信じてくれる訳無いもの…!」
「私の話なんて、誰も…!!」
18 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 21:14:18.98 ID:FRdcbQBa0
「ほ、ほむらちゃん…?」
「何もそこまで…「分かるの!」
「今までも何度も話した!でも、聞き入れてくれなかった…!」
そう言ってほむらは顔を手で覆い、俯いてしまっていた。
何時もとは違い、酷く弱気で、自信の無い姿にまどかは驚かされていた。
「…だから話さなかったって…?」
「ふざけんなよ!!」
杏子がほむらに向かって拳を振り上げ、ほむらが恐怖に目を瞑った時。
「止めるんだ!」
エクスカイザーが変形して杏子を後ろから羽交い絞めにして抑えていた。
杏子はそれを解こうともがいていた。
19 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 21:15:10.64 ID:FRdcbQBa0
そう言いながら、マミはほむらと杏子の間に止めに入った。
「でもね、今はそんなことより、美樹さんをどうやって助けるか、よ」
マミは先程出てきた箇所を見つめ、場の全員に賛同を求めていた。
その目の先にはもう結界の揺らぎは無く、さやかの魔女はもう何処かに身を潜めてしまったのだろう。
「…それに、佐倉さん、分けも分かっていない一般人を巻き込もう、だなんて思っていないわよね?」
振り返る眼光は鋭く、恭介の事を暗に指していた。
流石に頭が冷えたのか、杏子は涙を拭い、考えていた。
「…当たり前だろ!ほらアンタ、手ぇ出しな、家まで送る「待ってくれ!」
「待っておくれ!さやかは、さやかはどうなるんだい!」
「まさかこのまま死んでしまうなんて…「死なせねぇよ」
「アイツは、死なせねぇよ…」
20 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 21:15:55.07 ID:FRdcbQBa0
杏子の話を遮って聞いてきた恭介を、同じ様に遮り、杏子は言葉を切った。
恭介はその杏子の姿を見て、黙る事で了承をしていた。
「…とりあえず、美樹さんの身体は私の家に連れて行くわ」
「後で寄ってね」
「おう、…行くぞ」
そう言って杏子は恭介を背中におぶり一息に跳んで行った。
「…行ったわよ、暁美さん」
「グス、グス、うぅ、御免なさい、マミさん…私…」
21 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 21:16:27.52 ID:FRdcbQBa0
「えぇ、そうね、貴方は動くべきだったのよ」
「誰も動かなかったとしても、誰かがそれに付いて来てくれるかも知れなかった」
「だから教えて貰うわよ、貴方の力の事を」
「グス…ハイ…」
ほむらは座ったまま、マミから差し出された手を握り返し引っ張ってもらい立ち上がっていた。
マミは砂利の上に横たえられたさやかの身体を抱き上げると、まどか達の方を向いた。
「さて、此処じゃ話し辛いから、追って私の家に来てね」
「先に行って紅茶を用意しておくから」
そう言い残し、マミも杏子と同じ様に自宅の方角へ跳んで行った。
後にはほむらとまどか、それにエクスカイザーだけが残されていた。
まどかは、気まずく思い喋る事が出来ないでいたが、エクスカイザーが話を切り出した。
22 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 21:17:42.41 ID:FRdcbQBa0
「二人とも、マミ達も言っていたんだ、早く行こう」
そののおかげで少し場の空気が和らぐ事になった。
「あ、う、うん…」
「ほむらちゃん、いこ」
「でも、あたし…」
「ほむら、後悔をする事は何時でも出来る」
「今はその時ではない、分かるかい?」
「うん…」
「それなら、マミ達を待たせる訳には行かない」
「二人ともドラゴンジェットに乗って先に行ってくれ」
23 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 21:19:41.36 ID:FRdcbQBa0
「え…エクスカイザーさんは?」
「流石にこのサイズだと、二人位が限界でね」
「私は走ってマミの家に向かう」
「君達はドラゴンジェットで先に向かってくれ」
「うん、分かった」
「行こう、ほむらちゃん」
まどかは何時までも泣いているほむらに寄り添って手を貸し、ドラゴンジェットの上に乗っかった。
二人が乗ったドラゴンジェットはまるでVTOL機の様に垂直に上昇するとマミの跳んで行った方角に方向転換し、瞬時に加速して後を追って行った。
「…さやか、必ず君を助け出す…!」
エクスカイザーは振り返り、そう虚空に向けて語ると、ドラゴンジェットを追うために車に変わり夜の操車場を後にした。
24 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 21:21:01.76 ID:FRdcbQBa0
見滝原の上空。
ドラゴンジェットの背の上でまどか達はマミの家に向かっていた。
風は予想通り強く、吹き荒んでいたが、凍える程酷いものではなかった。
「大丈夫?ほむらちゃん」
「うん、大丈夫…」
先程よりは落ち着いたほむらの心配をしながら、気流に飛ばされないようにまどかはしっかり掴まっていた。
「…まどかには、まどかには先に教える」
「?何?ほむらちゃん」
「私はね、未来から来たの」
25 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 21:33:14.57 ID:FRdcbQBa0
「!?み、未来!?」
驚いてドラゴンジェットから手を離しそうになったが、済んでの所で止めて顔だけをほむらに向けていた。
ほむらは、そのまま話を続けた。
「そんな、100年後の未来とかじゃないけれどね、私は『ある人』を助ける為にこの時代に来たの」
「だから知っているの、本当ならマミさんが死んでしまう事とか、さやかが魔女になる事も…」
「…それで今まで助けに来たり来なかったりしたの?」
「ううん、それだけは違う」
「『ワルプルギスの夜』に対抗する為の準備もしておかないといけなかったから…」
何か大仰な名前が出てきたのだが、今まどかはそんな物に関心は無かった。
寧ろ、ほむらの言葉を聞いて安堵していたからだ。
26 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 21:35:57.49 ID:FRdcbQBa0
ほむらはその言葉に、押し潰される様な感覚になって喋らずにはいられなかった。
だが、その言葉をまどかに遮られてしまっていた。
「でも…!「エクスカイザーさんも言ったでしょ?」
「後悔はいつでも出来る、今はその時じゃないって…」
「だからさ、ガンバロ」
「…何処までも優しいのね、まどかは」
「ほむらちゃんほどじゃないけどね…♪」
そう言ってまどかはおどけて見せていた。
その様にほむらは、改めてお礼の言葉を言っていた。
「ありがとう、まどか」
27 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 21:37:10.16 ID:FRdcbQBa0
「良いよ、あ、マミさんのマンション!」
二人が話している間にも目的地を目指して飛んでいたドラゴンジェットの上からマミの家のあるマンションが見えた。
まどかはそれに指していた。
「ほむらちゃん、マミさん達にもこの事を…」
「えぇ、分かっている」
「今の事は全部話すわ」
そう言って涙を拭うと、ほむらの顔は何時もの凛々しい物になっていた。
先程の弱気なほむらの面影は見えなかった。
「それじゃ、行きましょう」
ほむらの言葉に、まどかは笑顔でうなずいていた。
そして、ドラゴンジェットをマンションの屋上に着地させ。
そこからマミの部屋に二人は向かって行った。
28 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 21:37:46.80 ID:FRdcbQBa0
夜の町並み。
それを背景に跳ぶ影があった。
背中には、松葉杖を抱えた上条恭介を背負った佐倉杏子その人であった。
その顔は暗くは無かったが、思いつめたような顔をしていた。
「ねぇ…君は、さやかの友達なんだろ?」
その杏子に後から恭介は話をしだした。
一瞥して、杏子は再び前を向いて語りだした。
「…友達なんかじゃないよ、あたしはアイツと同じ魔法少女ってだけ」
「それ以上でもそれ以下でもないよ…」
「でもさっき…」
「そりゃ…仲間だから心配ってだけだよ…」///
29 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 21:38:13.25 ID:FRdcbQBa0
杏子は少し赤くなっていたが、恭介に顔を覗かれずに済んだ事に感謝していた。
「…約束したんだ、待っているって」
「さやかの答えを聞くまで、僕は待つって…」
「…ッたく、あいつは果報者かもね」
そんな事を言いながら跳んでいると、恭介の家が見えてきた。
家人に気付かれない様に玄関に降りると、恭介を降ろして直ぐに退散しようとした。
だが、恭介の言葉に引き止められる事となった。
「待ってくれ!」
「僕に、僕に何か出来る事は無いかい?」
30 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 21:40:04.63 ID:FRdcbQBa0
杏子はその言葉に振り返ると、まっすぐ見つめる恭介が立っていた。
その目は本気で、ただの思い付きで言っている訳ではないのはわかった。
「今日のを見て分かったろ?あんたはコッチ側に来るべきじゃない」
「でも…!」
「アンタの言いたい事は分かる、でもね」
「アンタは待っているべきなんだ、此処で」
「……。」
そう言われ、恭介は黙って考えていた。
そして。
「分かった…」
「けれど、約束だ、必ずさやかを連れて帰ってきてくれ!」
31 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 21:41:04.59 ID:FRdcbQBa0
恭介は了承しさらには土下座まで行なっていた。
頼まれるのは分かってはいたが、流石に土下座をするとまでは思っていなかったので、杏子は驚かされた。
「ちょ…!そこまでしなくても良いよ!」
「あたしはあたしのやりたい様にするだけなんだから」
「それでもだよ、それでも、君はさやかを助けようとしてくれるんだ」
「こうするべきだと、僕は思う」
「…ハァ、この街にはどうしてこうもお人好しが居るんだか…」
「ま、悪くは無いけどね…」
そう言って杏子は恭介を立ち上がらせて、肩を掴んで言った。
32 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 21:42:47.27 ID:FRdcbQBa0
「あんたの覚悟、ちゃんと受け取ったよ」
「だから、心配スンナ」
「有難う…えっと…?」
「あぁ、杏子、佐倉杏子だ」
「分かった、それじゃあ、佐倉さん…」
「杏子で良いよ…、アンタの願い、引き受けた」
杏子は恭しくお辞儀をすると、一跳びで恭介の前から消え去っていた。
「さやかを…頼みます…」
見えなくなった杏子にそう言うと、恭介は自分の家に入って行った。
33 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 21:43:22.90 ID:FRdcbQBa0
マミの自宅。
一足先に帰って来たマミはさやかをリビングのソファーに寝かせ。
皆に出すように紅茶を入れていた。
「……。」
だが、マミの心中も穏やかではなかった。
さやかが、あのような姿になってしまったのだ。
いずれは自分も…と思っていると、何かに気づいたようにその方向を一瞥して喋りだした。
「…嘘を付いていたのね、キュゥべぇ」
「まさか、ボクは嘘は言っていないよ」
そう言って白い生き物キュゥべぇはマミに返答していた。
34 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 21:43:49.65 ID:FRdcbQBa0
「嘘仰い!貴方は確か死なないって言ったじゃない!」
その態度が気に入らず、言葉を荒げてマミは振り返り、問い詰めていた。
「確かに死なないと言ったさ、それは穢れが溜まりきると、君達は魔女に生まれ変わるからと言う意味だったんだけどなぁ…」
「ふざけないで!そんなのどっちにしろ、死んだも同じじゃない!」
「じゃあマミ、それなのに君はさやかを助ける、何て豪語していたのかい?」
「それでもよ、もしかしたらあの魔女を倒せば…」
「?キュゥべぇ?」
その先を言う前にキュゥべぇはいなくなっていた。
マミは不審に思ったが、まどか達がちょうど来たから退散したのだろう。
そう思う事にした。
35 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 21:44:28.14 ID:FRdcbQBa0
「マミさん、お邪魔します」
「えぇ、いらっしゃい」
「?あの、杏子は…」
「佐倉さんなら「今来たよ」
玄関を見ると、魔法少女の姿では無く。
元の服に戻った杏子が立っていた。
その後ろにはエクスカイザーも一緒に立っていた。
「待たせたかい?」
「いえ、ちょうど紅茶ができたところです」
「さて…それじゃあ始めましょうか」
「美樹さんを救う為の作戦会議と」
「暁美さんの事について…ね?」
36 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 21:44:55.72 ID:FRdcbQBa0
マミの言葉で会議が始められたのであった。
そして数分後。
ほむらはまどかに言ったのとほぼ同じことを話してほむらの話は終わった。
「成程…そういう事だったのね…」
「暁美さんの事は気になるけれど、とりあえず保留にしておきましょう」
「今の優先事項は、美樹さんをどうやって助けるか、ね」
「先ずは地盤作りの足止めね、私の魔法で美樹さんの動きを止める」
「その間に鹿目さんが彼女の説得に回って頂戴」
「え?私…ですか?」
「えぇ、そうよ」
「私達なんかよりも美樹さんと友達なのは鹿目さんなんだから」
「…御免なさい、魔法少女でもないのに貴方に難役押し付けちゃって」
37 :
すみません一旦休憩挟みます
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 21:57:28.47 ID:FRdcbQBa0
「良いんです、みんなの役に立てるなら…」
その言葉にマミは申し訳なく思っていた。
「有難う」
「佐倉さんは露払いをお願いできる?」
「露払い?」
「恐らく、美樹さんの魔女はさっき出してきた車輪でも攻撃してくると思うからよ」
「それが鹿目さんに当たらないようにしてほしいんだけど…良いかしら?」
「分かった…」
「本番の時は頼むぜ、えっと…」
杏子とまどかは、互いに自己紹介すらしていない事を思い出し。
まどかが先に名前を名乗った。
38 :
お待たせしました続きます
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:13:08.78 ID:FRdcbQBa0
「私、まどか、鹿目まどか」
「あたしは佐倉杏だ」
「よろしくな」
そう言って杏子は握手の代わりにまどかの手にお菓子を乗せていた。
「ヘヘッ」
「?」
その光景を微笑ましく見ながら、マミはエクスカイザーに話を振っていた。
「エクスカイザーさんも佐倉さんと一緒に露払いをお願いできますか?」
39 :
お待たせしました続きます
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:13:34.55 ID:FRdcbQBa0
「私は構わないよ、だがマミ」
「もしもの時は、さやかには私が引導を渡そう」
「「「「!?」」」」
場の4人はその言葉に固まってしまっていた。
真っ先に口を開いたのは杏子であった。
「な!?今助けるって話をしていただろ!?」
「聞いていなかったのかよ!?」
「話は全部聞いていたからだよ、杏子」
「だが、君達でも手に負えなかった場合の事だ」
「万が一、と言う事は考えておくべきだよ」
40 :
お待たせしました続きます
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:14:50.79 ID:FRdcbQBa0
「でもエクスカイザーさん、何も私達が…」
マミの言葉は確かに間違ってはいなかった。
魔女を倒すのは魔法少女の役目である。
だが、それでもエクスカイザーは首を横に振って続けた。
「彼女は君達の友達なんだ、その業は君達が背負うべきではない」
「それなら、と私は思っただけだよ」
その言葉にマミは閉口してしまった。
エクスカイザーの心使いに。
「…分かりました、万が一の時には…お願いします」
41 :
お待たせしました続きます
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:15:52.99 ID:FRdcbQBa0
「あぁ…」
だが、それを聞いて、まどかは俯いていた。
「エクスカイザーさん…そんな事言わないで下さい…」
「エクスカイザーさんだって、知り合った日数が違うだけで、もうわたしの友達です…」
「そんな事…」
まどかの気持ちを察し、エクスカイザーは申し訳なく思っていた。
「…そうだね、すまない…」
「でも、これだけは譲る事は出来ない」
「分かって、貰えるね…?」
「……ハイ…」
まどかは、返事をするとそのまま泣いてしまった。
マミは、声を掛ける事ができず、ほむらの方を向いていた。
42 :
お待たせしました続きます
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:16:46.94 ID:FRdcbQBa0
「…暁美さん、貴方はサポートに回ってもらえる?」
そう言ってマミはほむらに視線を向けた。
ほむらは遂に来た、と言った面持ちで話を聞いていた。
「杏子達でも捌けなかった時の為、ですね?」
「えぇ、貴方の能力は確かに強力だけど、戦闘向きじゃないからね」
「鹿目さんと私達の間で動いてもらうわ」
「分かりました…」
「頼むぞ、ほむら…」
「何時まで盗み聞きをしているんだ?」
「キュゥべぇ」
43 :
お待たせしました続きます
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:18:30.88 ID:FRdcbQBa0
そう言ってエクスカイザーが振り向くと、そこには先程マミの後ろから現れたように再びキュゥべぇが座っていた。
それを見て、杏子は真っ先に嫌悪感を露にしていた。
「ケッ!盗み聞きとは洒落た趣味してるじゃん?」
「それは君達が僕に教えてくれないだろうからね」
「情報の収集、とでも言っておこうか」
「それに、ボクはまどかに話があって来たんだ」
キュゥべぇはそう言ってまどかの方に向き直っていた。
「キュゥべぇ…」
「生きていたのね…」
「ねぇ、貴方は皆を魔女にする為に契約をしていたの?」
44 :
お待たせしました続きます
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:19:05.78 ID:FRdcbQBa0
まどかのその問いに、キュゥべぇは首を横に振っていた。
「勘違いしないで欲しいんだがボクらは何も人類に対して悪意があるわけじゃないんだ」
「全てはこの宇宙の寿命を延ばす為なんだ」
「「宇宙?」」
マミと杏子は話が壮大になってしまい、如何したものか、とキュゥべぇを見つめていた。
「君達は、エントロピーと言う言葉を知っているかい?」
そう言ってキュゥべぇは魔法少女たちを見回していた。
ほむらは兎も角、マミと杏子は揃って首を横に振っていた。
「簡単に説明するとだね、焚き火で得られる熱エネルギーは木を育てる労力と釣り合わないって事さ」
「エネルギーは形を変える毎にロスが生じる」
「宇宙全体のエネルギーは目減りしていく一方なのさ」
45 :
お待たせしました続きます
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:20:40.86 ID:FRdcbQBa0
キュゥべぇの瞳はエクスカイザーに向けられていた。
他の目線も同様に集まると、エクスカイザーは黙って首肯していた。
それを見ると、キュゥべぇは話を続けた。
「だからボク達は熱力学に縛られないエネルギーを捜し求めてきた」
「以前はプラネットエナジーを活用するべきでは?とも話があったんだけどね」
「それは宇宙刑法に反する行為だからね、止めるべきだという結論になったのさ」
「そうして見つけたのが、魔法少女の魔力だよ」
「ボク達の文明は知的生命体の感情をエネルギーに変換するテクノロジーを発明した」
「ところが生憎、ボク達は感情という物を持ち合わせていなかったからね」
「そこで、この宇宙にいる様々な異種族を調査し、君達人類を見出したんだ」
46 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:21:14.74 ID:FRdcbQBa0
ただただ、マミ達は驚愕していた。
エクスカイザーの様な生命体も存在すれば、漫画やアニメのように感情をエネルギーに変える事が出来る、生命体の存在。
その宇宙の有り様に、キュゥべぇはそのまま話を続けていた。
「人類の個体数と、繁殖力を鑑みれば」
「一人の人間が生み出す感情エネルギーは、その個体が誕生し成長するに要したエネルギーを凌駕する」
「君達の魂は、エントロピーを凌駕するに足り得るんだ」
「とりわけ、最も効率が良いのは第二次成長期の少女の希望と絶望の相転移だ」
「ソウルジェムとなった魂は燃え尽きてグリーフシードに変わる瞬間に膨大なエネルギーを発生させるんだ」
「それを回収するのがボク達、インキュベーターの役割、と言うわけさ」
47 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:21:40.90 ID:FRdcbQBa0
何も言う事ができなかった。
誰もが、その規模の大きさと、真実に言葉を紡げなかった。
それでも、まどかはキュゥべぇに話を続けた。
「私達は消耗品なの?」
「貴方たちの為に、死ねって言うの…?」
「この宇宙にどれだけの文明が犇めき合い」
「一瞬ごとに、どれだけのエネルギーを消費しているか分かるかい?」
「君達人類だって、いずれはこの星を離れて、ボク達の仲間入りするだろう」
「そのときになって枯れ果てた宇宙を引き渡されても困るよね?」
「長い目で見れば、これは君達にとっても得な取引のはずだよ?」
48 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:22:14.22 ID:FRdcbQBa0
「馬鹿言わないで…!」
「そんなわけの分からない理由の為に…色んな魔法少女たちが死んで…!」
「さやかちゃんがこんな目に会って…!」
「あんまりだよ…!」
「酷過ぎるよ…!!」
まどかは、強きに訴えかけたのだが、途中から涙交じりになってしまい。
最後は顔を覆って泣いていた。
「…ボク達はあくまで君達の合意の元に契約しているんだよ?」
「それだけでも十分に良心的なはずなんだが…」
その言葉に火を吐いたのはまどかではなく、杏子であった。
49 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:23:02.55 ID:FRdcbQBa0
「フザケんな!」
「そんなの、騙したのと同じじゃねぇか!」
「…騙す、と言う行為自体ボク達には理解出来ない」
「認識の相違から生じた判断ミスを後悔する時、何故か人間は他者を憎悪するんだよね」
「…貴方の言っている事…付いて行けない」
「納得なんて出来ない…」
「…君達人類のいや、そこにいる宇宙警察も合わせた君達の価値基準ほど、ボクらには理解出来ないなぁ…」
「今現在で60億を下らない、更に4秒に10人ずつ増え続けている君達が」
「どうして単一個体の生き死ににそこまで大騒ぎするんだい?」
まどかは、否、此処にいる全員が理解できた、この種族とは未来永劫理解できるとは思えない…と。
50 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:23:41.75 ID:FRdcbQBa0
「そんな風に思っているのなら、貴方は、やっぱり、私達の敵なんだね…」
「これでも弁解の心算だったんだけどなぁ…」
「君たちの犠牲が、どれだけの素晴らしい物をもたらすか、理解してもらいたかったんだが…」
「…どうやら無理みたいだね…」
「当たり前でしょ?」
「まどか…いつか君は最高の魔法少女になり、そして最悪の魔女になるだろう」
「その時、ボクらはかつてない大量のエネルギーを手に入れられるはずだ」
「この宇宙の為に死んでくれる気になったら声をかけてね」
「待ってるから」
そう言ってキュゥべぇはまどかから視線を杏子たちに向けた。
51 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:24:14.37 ID:FRdcbQBa0
「さて、君達も何か聞きたがっているみたいだけど?」
「何を聞きたいんだい?」
全員押し黙っていたが、杏子が話を切り出した。
「…何も聞きたくねぇ、って言いたいがひとつ聞きたい」
「さやかのソウルジェムを取り戻す方法は…?」
・・・・・・・・・・・
「無いね、ボクの知りうる限りでは」
杏子はその言葉が気になり聞き返していた。
「知る限りでは?」
「そうさ、君達魔法少女は条理を覆す存在だ」
「君たち魔法少女がどんな不条理を成し遂げたとしても驚くに値しないよ」
「ただ、前例が存在しないから、助言のしようも無いけどね」
52 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:24:46.29 ID:FRdcbQBa0
その言葉を聞き、杏子は鼻を鳴らして返した。
「フンッ!いらねぇよ…」
「テメェの助けなんて誰がいるものか…!」
そう言って杏子は、おもむろに立ち上がり。
さやかの身体に肉体を維持できるレベルの魔力を移していた。
その目は、動く事の無いさやかの顔を見つめていた。
「アイツはね…思い出させてくれたんだよ…」
「?杏子ちゃん?」
「さて…マミからも聞きたい事はあるか「無いわ」
「無いから出て行って頂戴」
「…やれやれ、マミにまで嫌われたか」
53 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:25:35.40 ID:FRdcbQBa0
そう言ってキュゥべぇは首を振り、音も無く影に入っていくと部屋の中からいなくなった。
拳を握り、耐える様なマミを心配そうにエクスカイザーは声をかけた
「マミ、大丈夫かい?」
「御免なさい、大丈夫ですから…」
「今は、美樹さんを助ける事に注力しましょ」
54 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:26:22.66 ID:FRdcbQBa0
翌日、まどかは深夜過ぎに帰って来た事には言及されず。
何時もどおりに朝食に付いていた。
「……。」
「ん?どうしたんだい?まどか」
「口に合わなかったかい?」
「え?ううん、違うの」
少しその態度が気になっていたまどかだったが、やれやれ、と言った感じの知久の一言でようやく理解できた。
「…まどか、ママから伝言」
「無茶だけはするな、ってさ」
「!?」
その言葉に、まどかは驚いて向くと、知久は笑顔で続けた。
55 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:27:01.45 ID:FRdcbQBa0
「言えないのなら一言、自分も相手も不幸になるような事はするなって言っていたよ」
「ママも、僕もまどかの事を信じているから」
「だから、胸を張って行ってらっしゃい」
「有難う、パパ…」
家族の心遣いに感謝し、朝食を勢い良く平らげて。
気分を切り替えて、まどかは学校に向かって行った。
「…気を付けてね」
タツヤにご飯を食べさせながら知久は呟いていた。
まどかは決意を新たに学校への道を走っていた。
すると、見知った後姿が前を歩いていた。
56 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:27:40.23 ID:FRdcbQBa0
「あれ?仁美ちゃん?」
直ぐ目の前をぼんやりと歩く仁美が見えたのでまどかは歩調を合わせて仁美の横まで遣って来ていた。
だが、仁美の様子は何処かおかしく、此方に気が付いていないようだった。
「仁美ちゃん?おはよ〜」
「あ、まどかさん…おはよう御座います」
仁美は返事を返してきたのだが心、此処に在らず、と言った感じで上の空であった。
「如何したの?」
まどかは少し聞いてみたくなって聞いてみた。
「いえ、昨日、上条君に告白したんですけどね…」
「フラれてしまいましたもので」
57 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:28:07.15 ID:FRdcbQBa0
「あ…」
まどかは聞いて後悔していた。
そう言えば仁美とさやかは恭介の取り合いをしている最中であったのをすっかり忘れていたからだ。
「ご、ゴメン仁美ちゃん」
「良いですのよ、分かりきっていた事ですし…」
「そんな事…え?どういう事?」
よく考えると仁美は恭介に振られた、と言っていた。
そしてそれは分かりきった事だとも言っていた。
58 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:28:51.67 ID:FRdcbQBa0
「私、本気で上条恭介君をお慕いしていたんですが」
「上条君の心は、もう決まってらっしゃったみたいで、ただそれだけだったんですの…」
「……後悔とかは、無いの…?」
「後悔は確かに有りますわ」
「でも、上条君には彼女の方がお似合いですから…」
「全く、さやかさんには世話を焼かせますわね」
そう言って、仁美は笑顔を作っていた。
明るく、皆が見惚れるような笑顔であった。
「そういえば、さやかさんは如何したんでしょう?」
「最近休みがちですし…」
「あ、さやかちゃんね…その…」
59 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:29:24.67 ID:FRdcbQBa0
一瞬、まどかは本当の事を言って良いのか迷ってしまっていた。
恭介はこの事を知っている、だが、無関係な仁美に心配を掛けさせるわけには行かない。
迷って言葉が出なくなっていた、その時。
(聞こえているか?まどか)
「!?」
突然の声に驚いたが、直ぐに念話だと分かり声に集中して聞いた。
(突然で悪いんだが、さやかの反応を見つけた)
(マミにはもう連絡してある、来てくれるか?)
その言葉に居ても立っても居られなくなり、まどかは方向転換して走り出した。
学校はこの際、休んでしまう事を選択した。
60 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:30:04.27 ID:FRdcbQBa0
「え!?ま、まどかさーん??」
「突然どうなさったんですの!?」
「仁美ちゃんゴメン!今日、私休むって先生に伝えておいて〜!」
そう言い残してまどかは行ってしまったのであった。
残された仁美は。
「一体何がどうなっておりますのー!!」
と嘆いていた。
(絶対に!絶対に助けるんだ!さやかちゃん!!)
まどかはカイザーブレスを起動し、友達とも呼べる宇宙人を呼んだ。
61 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:30:36.09 ID:FRdcbQBa0
合流自体は容易に行なえた。
今まどかを始め、杏子、マミ、ほむら、エクスカイザーが此処に揃っていた。
口を真っ先に開いたのはマミであった。
「本当なの?美樹さんが見つかったって?」
その疑問に杏子は直ぐに返答した。
「あぁ、間違いない、この近くにいるのは確かだ」
そう言って杏子はソウルジェムを見せると、紅く明滅しているのが分かった。
魔力を感知して輝いているのが見て取れる。
「…間違いなさそうね」
「それじゃあ、行きましょう」
「佐倉さん、道案内、お願いね」
62 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:31:18.42 ID:FRdcbQBa0
マミがそう言うと他の全員も頷き、杏子の後を付いて行った。
その道中、杏子がまどかに話しかけてきていた。
「すまねぇな、わざわざ呼び出しちまって」
「ううん、良いの、さやかちゃんを助ける為だもの」
「…正直さ、あたし達じゃ助けられるかわかんねーだろ?」
「でもさ、あたしは助けられるのが無理だって分かるまで諦めたくはねぇんだ」
「アイツは魔女になっちまった、でも友達が呼びかければ若しかしたら人間だった頃の記憶が蘇るかもしれない」
「説得が駄目でも、あの魔女を真っ二つにしたらさ、中からソウルジェムがポロッと落ちてくるかもしれないじゃん?」
「そう言うモンでしょ?最後には愛と勇気が勝つストーリって」
少し照れくさそうに杏子は話していた。
63 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:31:48.60 ID:FRdcbQBa0
「えぇ、そういうものよ」
「お話ならね、ヒーローが現れて如何にかするけど」
「此処にはヒーローはいないわ」
そう言って、杏子の話に返事をしたのはマミであった。
その意図を理解しようとしていたら、そのままマミは話を続けた。
「だから、あたし達がヒーローになるの」
「美樹さんを助けましょう…必ず…!!」
マミは腕捲りをしてガッツポーズをしていた。
それを否定するものはいなく、皆でうなずいていた。
「…思えばあたしもそういうものに憧れて魔法少女になったんだよね」
「あいつは…さやかはそれを思い出させてくれたんだ…」
64 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:32:17.46 ID:FRdcbQBa0
杏子は少し恥ずかしそうに照れていた。
「本当なら無理強いしたくないんだけどね…」
「頼めるかい?」
「勿論!」
そう言ってまどかは胸をエッヘン!と胸を張っていた。
それを見て、杏子は敵わないな、とため息を付いていた。
65 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:32:48.59 ID:FRdcbQBa0
杏子が歩みを止めた。
工事途中のビルの中、それは確認できた。
手の中のソウルジェムは煌き、此処に魔女がいる事を明白に告げていた。
「いる…ね…」
「さやか…」
「えぇ…」
「まどか、気を引き締めていくぞ…!」
「…うん!」
まどかの声を合図に4人は戦闘体勢に入った。
マミと杏子にほむらは魔法少女の姿に、エクスカイザーは胸のパネルを回転させて、獅子の顔を出現させていた。
66 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:33:21.80 ID:FRdcbQBa0
「フン!」
杏子が槍を薙いで結界に入り口を作り、そこから全員で突入した。
結界の中はまるでコンサートホールに続く廊下を思わせる装飾が為されており。
不気味ではあるが、厳かな雰囲気を醸し出していた。
「…妙だね…」
「えぇ、妙ね…」
「使い魔がいない…?」
周囲の空間は狭く、人が二人並ぶと、それだけで身動きが取れなくなりそうで、しかも使い魔はいない。
更に廊下はずっと奥まで続いている、と不気味さに拍車をかけていた。
壁には何かの公演ポスターが貼られており、その中を一列縦隊で進んでいた。
不意に、まどかが杏子に話を掛けた。
67 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:34:09.82 ID:FRdcbQBa0
「…ねぇ、杏子ちゃん…」
「ん?なんだい?」
そう言いながら、歩く事は止めずに杏子は振り向いていた。
「私ってさ…何時も誰かに戦わせてばかりいるでしょ?」
「それなのに私は何もしていない…」
「やっぱり、卑怯なのかな…」
その言葉に杏子は足を止め、頭の上にハテナを浮かべて首を傾げていた。
「?どうしてアンタが卑怯になるんだい?」
まどかはその質問に逆に困ってしまった。
68 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:34:37.50 ID:FRdcbQBa0
「え?でも…私…「舐めるんじゃないよ」
「この仕事はお遊びで出来るもんじゃねぇんだ」
「命を危険に晒すのはそうするしか他に出来ないヤツがやる事だ」
「幸せな家族に囲まれて、何の不自由も無く暮らしている奴がいてさ」
「ただの気まぐれで魔法少女になろうなんて」
「そんなのあたしが許さない」
「ぶっ潰してやるよ」
杏子はまどかに対して凄んで見せていた。
その後、笑顔になってまどかに続けた。
「あんただってさ、いつかは命を懸けて戦わなきゃならないかもしれない」
「その時になって考えれば良いんだよ」
「…ま、そうさせたくないって奴が一人居るみたいだけどね」
69 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:35:06.15 ID:FRdcbQBa0
そう言って杏子が目線を横にずらしていた。
まどかがその視線を追って振り向くと、そこには鬼気迫る顔で杏子を睨む。
ほむらがいた。
「ほ、ほむらちゃん…?」
「まどかは…まどかだけは…」
「魔法少女にさせないわ杏子…」
そう言ってほむらは力の限り拳を握り締めていた。
「怖い顔すんなよ、ッてさぁ、アンタさ、何時の間にあたしの事を名前で呼んでるんだい?」
「!?」
その言葉に驚いたのは、何故かほむらだった。
そして、おもむろにあ、とマミも思い出していた。
70 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:35:44.21 ID:FRdcbQBa0
「そういえば…私も何時の間にかマミさん…て…」
ほむらは更に驚いていた様であった。
それを肯定したのはエクスカイザーの発言であった。
「あぁ、言っていたね、私が聞いたのは昨日の脱出時以来だったが」
「え!?うそ!?私、そんなときから名前で!?」
「言っていたよ、気付いていなかったのかい?」
指摘を受けてほむらは自分の行動を思い起こしていた。
すると、何故か見る見る赤くなっていき、仕舞いには顔を両手で覆っていた。
その様を見ていた面子は可笑しくなってしまい、その場で笑っていた。
71 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:36:11.23 ID:FRdcbQBa0
「ほむらちゃん、おっかしー」
「なんだよそれ?ハッハッハッハ、マジ受ける!」
「酷いわよ、皆」クスッ
「暁美さんだって、親しくなりたいのよ?」クスッ
「ははは、ほむら、気張らなくて良いのに無理をしていたんだね?」
「うううぅ〜」///
「何も恥ずかしがる事じゃないよ、ほむら」
「親しく思うのなら、名前で呼び合うべきだよ」
「同い年の友達ならね」
72 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:36:47.81 ID:FRdcbQBa0
そう言って恥ずかしがっているほむらにエクスカイザーは優しく声を掛けていた。
その言葉にほむらはむくれてはいたが顔を上げていた
「そうよ、エクスカイザーの言う通りなんだから、私としては親しくしてくれて嬉しかったわよ?」
「良いじゃない、別に」
「そ、そういうわけじゃ…!」///
「ま、ほむらが親しくしようって努力してんのなら、あたし達も答えなきゃな?」
「あ、杏子ちゃん、ほむらちゃんの事」
「…もぉー!知らない!」///
一言怒鳴ると、ほむらはヅカヅカと結界の奥に歩いて行った。
73 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:37:19.36 ID:FRdcbQBa0
「待ってよー、ほむらちゃーん!」
「もう、照れ屋なんだから」
「行きましょ」
マミの言葉に合わせて、ほむらを追う為に全員で走って行った。
ほむらが走って行ったのを追い、一番最奥の扉の前についていた。
全員の顔から笑顔は消えていたが、緊張してはいなかった。
「…此処ね…」
「あぁ」
「この先に、美樹さんが…」
「開けるぜ…?」
「よし、行こう!」
74 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:37:46.05 ID:FRdcbQBa0
扉を開けると、そこはコンサートホールになっており、使い魔が集結しオーケストラを奏でていた。
その中心に、魔女は居た。
使い魔の奏でる演奏に聞き入り、此方には気が付いていない様だった。
「さやかちゃん…」
「行くわよ…!」
「打ち合わせ通りに!」
「分かった!」
「さやかちゃん!私だよ!まどかだよ!聞こえる!?」
各自に散会し、行動を開始しだした。
マミはマスケットを召喚し、魔女の周囲に弾丸を穿ち拘束の準備を始めだした。
その行動に、魔女は気が付いて動き出し始めた。
75 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:38:17.46 ID:FRdcbQBa0
(…邪魔をするな…)
魔女は剣を掲げ、大型の車輪を召喚し、まどか達に投げ付けてきた。
それを杏子とエクスカイザーの二人で薙ぎ払っていた。
「クッ!構うな!続けろぉ!」
「てぇや!」
「行くぞ!マミ!」
「フォトンリング!」
「了解!」
エクスカイザーが腕から出した輪に合わせて、マミは床に着弾した箇所から拘束魔法を発動し、魔女に絡み付けた。
それを確認し、まどかは続けてさやかを説得した。
76 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:38:50.59 ID:FRdcbQBa0
「さやかちゃん!止めて!こんな事!」
「お願い!思い出して!!」
その間、杏子は放たれた車輪を破壊し続けていた。
そして魔女は、もがいて拘束を解こうとしていた。
(邪魔…!!!)
「チッ!全く、聞き分けが無さ過ぎるよ!さやかぁ!」
ヒュンッ!ドガァン!!
最後まで残っていた車輪を破壊すると杏子は魔女に向いた。
それと同時に、魔女は拘束を破壊してしまった。
「クッ!強化した拘束が!?」
「この魔女は、イヤ、さやかは今まで以上に強い!」
ウオオオオオオオオオオオオオオオォォォ!!!
77 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:39:16.80 ID:FRdcbQBa0
魔女が雄叫びを上げ、剣を杏子に振り下ろした。
ブォン!!ドガァアン!!
杏子は受け止めたが、魔女の力が圧倒的過ぎて足が地面にめり込んでいた。
「グゥ!!」
「「「杏子(ちゃん)!!」」」「美樹さん!」
「う…大丈夫だ!続けろ!」
「あんたは呼び続けるんだぁ!!」
「止めて!さやかちゃん!もう止めて!!」
「マミ!もう一度拘束だ!」
「ええ!」
78 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:39:50.77 ID:FRdcbQBa0
「…何時ぞやのお返しかい?」
「そういや…あたし達、最初は殺しあう仲だったっけねぇ…?」
「怒っているんだろう?何もかも許せないんだろう?」
「分かるよ…好きなだけ暴れな…」
「付き合って…やるからなぁあああああ!!!」
すると、目の前に特大の車輪が現れ、杏子を吹き飛ばしてしまった。
ドゴォォォン!!
「グアァ!!」
「杏子ちゃん!」
「キャア!!」
杏子にを取られているうちにまどかも魔女に掴まえられて握りつぶされようとしていた。
(…死ね…)
79 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:40:44.99 ID:FRdcbQBa0
「うぐっ!さ、やかちゃん…」
「まどか!」
一番真っ先に動いたのはほむらであった。
能力を使い時を止め、魔女の周囲に時限式の爆薬を配置し、盾に収納していた拳銃で持ってまどかを掴む腕に弾倉の弾丸全てを撃ち込んだ。
そしてまどかが爆発に巻き込まれないようにフィールドを張り、時間停止を解除した。
そのとたん、すべての爆弾が炸裂し、銃弾が魔女の腕を穿った。
カチッ、ドドドドドドドォオオオン!!!
オオオオオオオオオオオオオオオオォォォ!!!
その爆発の所為で、まどかを掴まえていた力が緩まり、引っ張れば抜け出せる所まで行っていた。
「キャア!!」
「大丈夫よ!まどか」
80 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:41:17.92 ID:FRdcbQBa0
「!ほむらちゃん!」
「さぁ、早く手を!」
ほむらが手を伸ばすと、緩んでいた腕に力が篭り、まどかを握る手が更に強く握られ、まどかは短い悲鳴を上げて気絶してしまった。
「!?まどかぁ!!」
すると爆煙の中から剣を持った拳が現れ、ほむらを殴り飛ばしてしまった。
受身すら取れず、ほむらはホールの壁面に叩き付けられて血を吐いていた。
「ガハッ!!…」
「な、どうして…!」
その時、ほむらは異様な光景を見てしまったのだ。
魔女が尋常じゃない速さで再生し、元の形に戻っていたのであった。
81 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:41:58.39 ID:FRdcbQBa0
「そんな…!まさか、さやかの能力をそのまま!?ありえない!!」
「こんなの…私は知らない…!!」
ほむらは驚愕していたが、魔女が再生した事こそが厳然たる事実であった。
マミはそれでも状況を冷静に判断しようと必死になっていた。
「鹿目さん!!」
「エクスカイザー!このままでは鹿目さんが!」
「判っている!本気で行かねば!」
「キングローダー!!」
マミに言われ、呼応する様にエクスカイザーはキングローダーを呼び、合体の体勢に入った。
「フォームアップ!」
「巨大合体!キングエクスカイザー!!」
82 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:42:33.22 ID:FRdcbQBa0
合体を終えて着地をすると、魔女はキングエクスカイザーに向き直り、持っている剣を振り下ろしてきた。
キングエクスカイザーは済んでの所で白羽取りを行い、その剣を抑え付けていた。
「マミ!今の内にまどかを!!」
「了解!!」
「ティロ・フィナー…!?」
マミがまどかを助ける為に最大の威力で腕を吹き飛ばそうとした時、魔女はあろうことかまどかをマミに向けて盾代わりにしたのだった。
「クッ!撃てない!」
「卑怯な!」
砲撃体制をとっていたマミであったが、まどかを盾にされて撃ち込む事が出来ないでいた。
その隙を魔女は目敏く、まどかを握ったままの拳で殴りにきたのだ。
83 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:43:03.40 ID:FRdcbQBa0
「キャアァ!!」
「マミ!」
「!!」
マミに気をとられたキングエクスカイザーも白羽取りをしたまま持ち上げられ、勢いよく振り下ろされた剣と一緒に地面に叩き付けられていた。
「ぐあぁぁ!!」
その様を見て、魔女は余裕の笑を浮かべているような感じであった。
だが、今度はその隙を一番最初に吹き飛ばされていた杏子が見逃さなかった。
「さやかぁ!!」
腕の下方から飛び上がり、すれ違い様に槍を振り、まどかの握られた腕を切り落としたのだった。
「さやか!あんたぁ、信じているって言っただろぉ!!」
「この力で人を幸せにできるってぇ!!!」
84 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:43:34.82 ID:FRdcbQBa0
魔女は語らない。
だが、その返答は剣を持って返されたのであった。
ドスッ
「あ…?」
杏子は不意の衝撃に下を向くと、そこには魔女が持っていた剣が深々と刺されており。
やられた、と気が付くのは数秒後であった。
(あ…、やられた…?)
そう思ったときには既に遅く、剣を抜き払われ、傷口から大量の血を噴出しながら、杏子はその場に大の字で倒れた。
辺りは己の地で満たされ、杏子は血の海に倒れる事となっていた。
(駄目なのか…?)
(あたしは…あたしなんかじゃ…)
魔女の結界に動くものはおらず、魔女のみが音楽にあわせ踊るように動いていた。
85 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:44:13.63 ID:FRdcbQBa0
「う…」
先程杏子の一撃で解放されたまどかは、意識を取り戻し、今どうなっているのか確認しようと頭を持ち上げた。
すると、そこには地獄のような光景が広がっていた。
「あ…」
ほむらは壁に打ち付けられ、瓦礫の中で胸元を紅く染めて意識を失っていた。
「あぁ…」
マミは目立った傷は無かったが、うつ伏せにその身を横たえていた、動こうとすらしていなかった。
「あ、あぁ…」
エクスカイザーは何時の間にか合体しており、地面が捲れ上がっている箇所から、キングエクスカイザーの腕が少し見えるだけであった
86 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:44:54.64 ID:FRdcbQBa0
「ああああ…!!!」
恐ろしかったのは、それを友達がやってしまった、という事実。
そして、眼前の血の海に横たわっている杏子に向けて絶叫していた。
「杏子ちゃぁぁぁぁぁん!!!!!」
杏子の胸はわずかに動いており、生きているのが判りまどかは安堵していた。
だが、そのまどかの上に巨大な影が覆い被り、見上げると、そこには。
「ヒッ!!」
この事態を作り上げた魔女が悠々としていた。
「そんな…こんな事って…」
まどかは絶望に打ちひしがれ、その場に膝を折った。
魔女はまどかに興味は示さずに、その上を通り杏子の前にまでやってきていた。
87 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:45:22.41 ID:FRdcbQBa0
「!?」
「…ぁ…」
(……。)
魔女に目があるのかどうか、分からないが、その目は強固の側に落ちているソウルジェムに注がれているのが判った。
変身している所為か、胸元に付く様に形状が変化している、紅い宝石だった。
魔女はおもむろに剣を構え杏子のソウルジェムに狙いを定めていた。
「止めて…」
その言葉が聞こえているかどうか判らない。
だが、まどかは喋らずにはいられなかった。
「止めて、さやかちゃん…」
88 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:46:06.71 ID:FRdcbQBa0
魔女は腕を高らかに伸ばし、肩から剣を含めて一本のラインにしていた。
「止めて…止めて…!」
そして、力を溜めていたのか、そのまま剣を一直線に杏子のソウルジェムに振り下ろされた。
「さやかちゃん!駄目!止めて!いやぁああああああ!!!!」
まどかは友達のソウルジェムを砕かれる音なんて聞きたくない、殺される姿なんて見たくないと、目と耳を塞いでいた。
だが、それに似たような音はせず、ただ、剣が風を切った音が、オーケストラに負けずにまどかに響いていた。
「…??」
まどかは、迫る恐怖と戦いながら、薄目を開けて眼前を確認した。
すると、そこには杏子が生きていた。
先程と変わらず、虫の息ではあるがちゃんと生きていたのであった。
魔女の振り下ろした剣はソウルジェムに触れた所で止められていた。
89 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:46:40.71 ID:FRdcbQBa0
「あ…さやか…ちゃん…?」
まどかは、必死の叫びにさやかが目を覚ましてくれたのか?
と思っていた。
だが、その考えは直ぐに違う、と言う事に気付かされた。
「…!?ウ」
ギャアアアアアァアアァアァアッァアァァァ!!!!!!!!!!!!!
突然の杏子の絶叫がまどかの思考を掻き消したのであった。
「え…?な、に?」
まどかは理解できなかった。
なぜなら、杏子は『何もされていなかった』からだ。
それなのにも関わらず。
杏子は目を見開き、まるで全身を焼かれるような叫び声を上げていたのだ。
90 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:47:20.36 ID:FRdcbQBa0
「どう、したの?杏子ちゃん…?」
「さやか、ちゃん…?」
まどかには理解できなくとも、これと同じ様な事を、さやかは昔されていたのだ。
魔女は、以前さやかが、キュゥべぇにされたのと同じ事を杏子に行なっていたのだ。
だが、その痛みはその時の再現とは言わず、その何倍にもして杏子に与えていたのであった。
魔女は杏子には触れず、ソウルジェムと接触している剣先で、そのような事を行なっていたのだ。
「あぁ…さやかちゃん!止めて!お願い!!」
何が起きているのか分からないまどかでも、魔女が何かしている事に気が付き、止めるように懇願していた。
だが、魔女は聞いておらず、上機嫌にオーケストラと絶叫のハーモニーを奏でていた。
「やめてぇ…もう止めてよぅ…」
91 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:48:06.00 ID:FRdcbQBa0
まどかの声は、最後の方はもう涙で掠れ、後で鳴り響くオーケストラと、杏子の絶叫によって掻き消されてしまっていた。
すると、不意に杏子の叫び声が止んだのである。
まどかが杏子を見ると、そこには叫び疲れボロボロになり、顔中涙や色々な液体でグシャグシャにした杏子が、虚ろな目をしていた。
魔女はその杏子の片足を掴み、人形のように持ち上げると、まどかはその意図を察したらしく、杏子に向かって叫んでいた。
「杏子ちゃん!早く!逃げてぇ!」
まどかは杏子が此方を向いた時、目が合った。
杏子の顔は何時もとは違う疲れた笑みを湛えていたが、その目は逃げられない、と克明に告げていた。
「イヤアアアアァァァァァァァァァ!!!!!」
その絶叫を合図に、杏子は高々と放り投げられてしまった。
ほむら達も、その絶叫で以って気が付いたのだが、杏子が放り投げられる様を見つめる事しか出来なかった。
92 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:49:05.77 ID:FRdcbQBa0
「「杏子!!!」」「佐倉さん!!!」
(…頼むよ…神様)
(こんな…こんな人生だったんだ…)
(一度位、幸せな夢見せてくれよ…)
叫びつかれ、ぼんやりした頭で持ってそんな事を杏子は考えていた。
そして、頂点に到達し、自由落下が始まり、杏子はぶれた瞳で魔女を見つめていた。
下の魔女は剣を構え落ちてきた杏子を串刺しにする算段なのだろう。
(良いよ、さやか…一緒にいてあげる…)
(一人ぼっちは、寂しいモンな…)
93 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:49:44.81 ID:FRdcbQBa0
腹を括り、魔女が再び自分を串刺しにした時、諸共に自爆してやろう。
と心に決め、杏子は目を瞑り、自由落下に身を委ねていた。
その時。
まどかの横を、風が通り抜けた。
まどかは何が起こったのか、後ろを向いてみた。
だが、そこには何も無かった。
そして視線を杏子の方に戻すと、そこには信じられない光景が広がっていた。
先程まで自由落下をし、魔女の剣に刺し貫かれるのみだった杏子がいなかったのだ。
魔女の足元にある、ソウルジェムも一緒に。
その場にいた皆が呆けていた時。
94 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:50:16.01 ID:FRdcbQBa0
バサァ
と、布がたなびく音が耳に入った。
その音のした方を向くと、そこには杏子が這いつくばっていたのだ。
嬉しかったのだが、その肝心の杏子は何かを見つめ、ただただ呆然としていた。
杏子の目線を追って行くと。
そこには魔法少女が立っていた。
ほむらでもない、マミでもない、エクスカイザーでもなく。
蒼く、凛々しく、活発なイメージを持たせる瞳。
そして軽量そうな蒼い胸鎧に片側が長いスカート。
依然見た時には何も無かった筈だが、今では金に染め上げられた装束の端の部分。
蒼い宝石がはめられておらず、代わりに全て黄金の装飾に変わったベルト。
何時も見知った顔、でも助けようとしていた顔。
その顔に一転の曇りも無く、ただ魔女を見据えていた。
95 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:50:46.73 ID:FRdcbQBa0
魔女はその魔法少女に車輪を投げつけたのだが。
魔法少女は、何の苦労もせずに片手で止めていた。
それを合図に、全員一斉にその見知った魔法少女の名前を叫んだ。
「「「「さやか(ちゃん)!!!!????」」」」「美樹さん!!!!????」
「そう…その通り!!!」
全員から名前を呼ばれ、魔法少女美樹さやかは声高らかに名乗り上げた。
96 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:51:34.82 ID:FRdcbQBa0
「愛の翼に!」
「勇気を込めて!!」
「廻せ!正義の大車輪!!!」
そう言って、さやかは魔女から投げつけられた車輪を投げ返していた。
「魔法少女!ミラクルさやかちゃん!!」
「御期待通りに、ただいま到着!!!!」
「さやか…?どうして…」
魔女はすぐさま反撃し、さやかのいる箇所に剣を叩き付けていた。
だが、その場にさやかはおろか杏子も居なくなり、まどかのそばに杏子を抱えてさやかは立っていた。
全員、何が何だか分からない状態だった。
自分達は魔女になったさやかを助ける為に此処にいるのに、そのさやかが魔法少女になって此処に助けに来たのだ。
その中でさやかは、杏子を地面に置き、向き合っていた。
97 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:52:07.82 ID:FRdcbQBa0
「な…なんでさやかが此処にいるんだよ」
「さやかはあの魔女じゃ…」
「動かないで、杏子、今治すから」
そう言ってさやかが杏子に手を触れると、以前マミに行なったのと同じスピードで傷が回復して行った。
まどかはその様子を見て只さやかの名前を呼ぶ事しかできなかった。
理解の及ぶ範囲ではなくなっていたのだ。
「さやか…ちゃん?」
「あぁ、まどか、良かった怪我は無いみたいだね」
「ここは私に任せて、まどかはほむら達を!」
「え?うん…」
98 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:52:33.97 ID:FRdcbQBa0
さやかに言われ、まどかはマミ達を手助けに向かった。
「ちょっ!ちょっと待てよ!さやか!」
「何であんたが此処に居るんだよ!あれはアンタじゃないのかよ!?」
「いや、そもそも!何でアンタ魔法少女の格好を…!「杏子」
「有難うね」
さやかはそう言って笑顔で杏子を見つめていた。
そして魔女に向き直ると、剣を構え直して語った。
「杏子があたしの体を維持する為に魔力を注いでいたでしょ?」
「その時ね、あんたの気持ちも流れて来てたんだ。」
「凄い温かかった…だから、分かるの」
「あんな気持ちで魔力を込めていたのは、杏子くらいだって…」
99 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:53:13.31 ID:FRdcbQBa0
「!?」
「な、そんな事…」
「第一なんでアンタ死んでないんだよ!」
癪に障ったのか、その言葉にさやかが反論した。
「はぁ!?何であたしが死ななきゃならないのよ!」
「駅でソウルジェムに罅が入ってそこから魔女が生まれただろ!?」
「魔法少女の成れの果てがあの魔女なんだ!!」
「それなのに何でアンタが此処に居るって聞いているんだよ!」
その言葉を聞いて、さやかは成程、と眼を細めていた。
「そうか、そう言う事ね、杏子」
「確かに、あそこに居る魔女はあたしだよ、でもあたしじゃない」
100 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:53:47.75 ID:FRdcbQBa0
「はぁ!?何言ってんだよ!?」
もう杏子には理解が出来ないでいた、目の前のさやかと、魔女になったさやか。
絶対に在り得ない者同士の対峙する光景を目の当たりにしてパンク寸前であった。
「兎に角!今はあの魔女を倒すから!」
「待っていて!」
そう言ってさやかは魔女に突っ込んで行った。
オオオオオオオオオォォォォォォ!!!
それに呼応する様に魔女も唸り声を上げ、火花を上げて剣を交差していた。
杏子はその様子を見届けると、限界が来てしまったのか、その場に倒れてしまった。
「分けが、分からない…」
101 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:54:25.00 ID:FRdcbQBa0
「でやぁ!」
さやかの剣が、魔女と火花を散らしている時。
まどかはほむら達の所まで来ていた。
「ほむらちゃん!大丈夫?」
まどかが心配して聞いたのだが、ほむらも目の前の状況に理解が及ばず呆けていた。
「そんな…どうしてさやかが…?」
「分からないわ、でも暁美さん」
まどかが後ろを振り向くと、そこにはマミが立っていた。
腕を押さえてはいるが、どうやら別状は無い事にまどかは安堵した。
「今はあの魔女を倒しましょう」
「美樹さん一人に任せられないわ」
102 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:55:00.40 ID:FRdcbQBa0
見ると、さやかは善戦してはいたのだが、魔女の方は切った傍から再生しており。
劣勢に傾くのは明らかだった。
「行ける?暁美さん」
「グッ…」
ほむらは、まどかに手を掴んでもらい、壁から立ち上がる事が出来た。
「…何とか行けます!」
「なら…行くわよ!」
ほむらとマミはさやかを援護する為に跳び上がった。
「さやか?これは一体…?」
「だが、さやかが居るのならば、話は別だ!」
キングエクスカイザーも立ち上がり魔女の方へ跳んで行った。
103 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:55:31.85 ID:FRdcbQBa0
「くそっ!再生してちゃキリが無い!」
悪態を突きながらさやかは魔女に果敢に斬り付けていた。
だが、相手は再生を繰り返し、この状況を打破できないでいた。
そこに弾丸が打ち込まれ、魔女が動きを止めた。
「美樹さん!手を貸すわ!」
「マミさん!ほむら!」
「さやか、でも如何するの!?」
「あの回復力じゃマミさんでも…!」
「方法は有る!」
「キングエクスカイザー!!」
104 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:56:12.81 ID:FRdcbQBa0
さやかは振り返り、キングエクスカイザーに声を掛けていた。
二人が振り返るとキングエクスカイザーが立っていた。
さやかは率直に要求をした。
「キングエクスカイザー!!」
「カイザーフレイムをあたしに叩き込んで!」
その申し出にキングエクスカイザーは驚いていた。
「さやか、何をする気だ!」
「下手な事をすれば君の身体が持たないぞ!」
「良いから、私を信じて!」
さやかの目は本気で、冗談ではない事は判った。
キングエクスカイザーは本気で考えていたのだが。
105 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:57:13.84 ID:FRdcbQBa0
オオオオオオオオオオオォォォォォォォォ!!!!
魔女が攻勢に出てきてしまい、決断を迫られていた。
「…分かった!」
「だが、無茶はしないでくれ!」
「そう来なくちゃ!」
「マミさん達はアイツを動けなくして下さい!」
「カイザーソォード!!」
キングエクスカイザーは高らかに叫び、カイザーソードを構え魔女と対峙していた。
だが、その剣で戦うのではなく、さやかの要望に答える為に剣に炎を当て始めた。
ボァヒュゥゥゥゥ!!!!
106 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:57:49.68 ID:FRdcbQBa0
高熱の炎が胸のライオンから吐き出され、カイザーソードは忽ち熱せらた。
その刀身は徐々に赤々と輝き、エネルギーを渦巻かせ始めていた。
「暁美さん!」
「私が拘束するから足止めを!!」
「分かりました!」
そう言ってほむらは盾をかざし、何時の間にか魔女の周囲に爆弾を配置し、足止めをしていた。
時を止めてしか出来ない芸当に、マミは関心していた。
「ここまで出来るなんてね…」
「私も、ハァ!!」
マミも負けじと魔女の周囲に弾丸を撃ち込み。
そこから先程と同じ様に拘束用のリボンを現出させた。
そして、そのリボンの端を全て自分の基まで伸ばし、両腕で抑え付けた。
107 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:58:22.41 ID:FRdcbQBa0
「クゥ!力が強い!」
「そんなに持たないわよ!」
「分かっています!」
「キングエクスカイザー!」
「お願いします!」
「オウ!」
「カイザァーフレイムッ!!」
さやかの言葉に応じ、キングエクスカイザーは刀身に込めたエネルギーを全てさやかに向けて解き放った。
飛び出したエネルギーは自ら丸くなり、まるで吸い込まれる様にさやかに向かっていた。
「フンッ!!!」
さやかはそのエネルギーに剣を向けて対峙していたのだが、そのまま剣でエネルギーを受け止めたのであった。
108 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:59:06.95 ID:FRdcbQBa0
「うぐううぅぅ…!!!」
さやかの身体はエネルギーを帯び、微かに後退していた。
あまりにも強いエネルギーで、服の端が何箇所か弾け出してもいた。
「さやかちゃん!」
「美樹さん!」
「「さやか!」」
「大丈夫…!!」
「これくらい…!」
「あのあたしがやった事に比べれば…!」
そう言って、さやかは後退していた身体を踏ん張って、その場に押し留めた。
その間にも、魔女はもがき、マミの拘束が解けそうになっていた。
109 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/06(火) 23:59:38.02 ID:FRdcbQBa0
グオオオオオオオオオオォォォォォ!!!!
「グゥ!!!美樹さん…!もう…!」
「今…終わらせるよ…!」
「これが…あたしの…!」
さやかは剣に溜まったエネルギーを無理矢理抑え付けながら頭の上に掲げると。
「チャージ…アップだああああぁぁ!!」
その言葉に呼応し、剣のエネルギーが煌き、さやかの周囲を光で飲み込んだ
そして、光を突き破り、さやかが魔女に突進を仕掛けた時、異変は起きていた。
突撃しているさやかの服が更に変わっていたのだ。
110 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/07(水) 00:00:23.32 ID:mHFcqSHg0
胸鎧は更に頑強になり、装飾が増えて肩にも同一デザインの鎧が追加され。
両腕と、両足を守る様に白金に紺と金の装飾がなされた手甲と足甲が着けられていた。
更に、剣も巨大な物に変わり、以前の物よりも一回り程大きくなっていた。
「オオオオオオオオオオォォォォ!!!!」
さやかは剣を肩に担ぐ様な形で両手で持ち、魔女に突撃していた。
それに魔女も気が付き、拘束されながらも剣を構え迎撃の態勢に入った。
オオオオオオオオオオォォォォ!!!!
さやかは地上で充分加速すると、そのままの勢いで飛び上がり、魔女に斬りかかった。
その時、さやかの前に金色の枠が数個現れ、さやかは構わずその枠の中を進んだ。
それを潜る度にさやかは更に加速していった。
111 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/07(水) 00:01:16.92 ID:mHFcqSHg0
「デェャリャァ!!」
最後には目にも止まらない速さまで加速し、袈裟切りに剣を振り下ろした。
魔女は手持ちの剣で受け止めようとしたのだが、敵わず。
その剣ごと真っ二つに叩き切られてしまったのであった。
ズワシィ!!
ビギィィィィィィィィ!!
「ありがとう、あたしの変わりに…」
「ゴメンネ、さよなら…」
オオオオオオォォォォォォォオオオアアアアアァァァァァ!!!!!!
ボガオォォォォン!!!
その言葉と共に魔女は爆散し、さやかは剣に残ったエネルギーの残滓を払い。
そのまま後ろ手に背負い、戦いは終った。
112 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/07(水) 00:01:57.63 ID:mHFcqSHg0
魔女を倒すと、結界は揺らぎ、工事現場に視界は戻った。
「ふぅ…これで何とか「さやかちゃーん!!」
さやかがまどかの声のした方を向くと、そのまま頭が突っ込んできて腹部に命中して倒されてしまった。
「グヘェー!!」
「さやかちゃん!もう、心配したんだよ!!」
「もう会えないかもって思ったんだよ!」
「本当に…本当に…」
113 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/07(水) 00:02:39.24 ID:mHFcqSHg0
まどかの言葉は最後の方は泣き声になってしまい、何を言っているのか分からなくなってしまっていた。
だが、さやかは言いたい事が分かったのか、まどかの頭に手を載せて謝っていた。
「ゴメン、まどか」
「心配掛けすぎた、謝るよ」
「後、心配してくれて、ありがとね」
「うぅ、ううぅぅぅ…」
よしよし、とまどかの頭を撫でてさやかはあやしていた。
「…で他に質問したいって人はいる?」
「って言うか、全員したいって顔に書いてあるけどね」
泣いているまどかと気絶している杏子を除き、3人が順番に質問する事になった。
114 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/07(水) 00:03:13.46 ID:mHFcqSHg0
「それじゃ私から聞かせてもらうわ」
「美樹さん、貴方一体如何したの?」
「さっきだって、魔法は使っていたみたいだけど、ソウルジェムも見当たらないじゃない」
「あ、それなんですけど、実はあたしにも良く分からないんですよ」
「気が付いたら、マミさんの家で寝ていて、魔女の気配を追ってここまで来て、皆が危ない!って思ったら変身していたもので…」
「そうなの…?」
お互いに要領を得ない顔をしてはいたが、マミは何よりさやかが生きていた、と言う事に満足していたのかそれ以上は質問は無い。
と言って、質問を終えた。
「じゃあほむら、何かある?」
「え?!わ、私??」
不意に声を掛けられた所為か、ほむらは驚いて自分で自分を指差していた。
115 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/07(水) 00:04:02.72 ID:mHFcqSHg0
「そうだよ、一番理解出来ない!って顔しているじゃん?」
「聞きたい事があるんでしょ?」
「…色々聞きたいんだけど、今は止めておくわ」
だがほむらは質問しようとはしなかった。
ただ、ほむらは考え込んでおり。
「マミさんの家で、話したい事があるからその時にでも」
「後は彼に譲るわ」
そう言ってエクスカイザーに譲った。
「すまない、ほむら」
「いいの」
116 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/07(水) 00:04:39.11 ID:mHFcqSHg0
「さて、勇者様は何が聞きたいのだい?」
「何でも答えようぞ?」
と言ってさやかはふんぞり返っていた。
まどかは苦笑いでも嬉しそうにその光景を見つめていた。
「そうだな、私からはさやか…、君の身体を見させて欲しい」
場に一気に静寂が流れた。
「「「……。」」」
「…?」
「どうしたんだい?何かあったかい?」
117 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/07(水) 00:05:12.36 ID:mHFcqSHg0
聞かれてもどう返したら良い物なのだろう、と回答に迷っていると、エクスカイザーは納得したように話を続けた。
「あぁ、すまなかった」
「言い方が悪かったみたいだね」
「さやかの身体状態が気になるから、センサーを使わせて簡単な診断をしたかったんだが、問題ないかい?」
「え、あ、あぁ、そういうこと〜あたしは付いてっきり、ってセンサー?」
「別に害が無いなら良いですよ?」
そう言ってさやかは手を両側に広げてその場に立っていた。
そのさやかに一言断りを入れエクスカイザーは額の飾りからビームの様な物を出して、さやかの身体を下から上に、上から下に走らせて行った。
「…もう良いよ、さやか」
「ふぃー、何が如何したんです?」
「そんな顔して?」
118 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/07(水) 00:05:48.30 ID:mHFcqSHg0
エクスカイザーはスキャンが終わると同時に複雑な表情をしていた。
さやか達はそれを不思議に思い見守っていた。
やがて決心したのか、エクスカイザーがさやかに向いて話を始めた。
「さやか、よく聞いて欲しい」
「そして何があっても取り乱さないで欲しい」
「な、何よ?急に改まっちゃって」
「何が起こっても驚かないから早く言ってよ」
「そうかい?分かった」
そう言ってエクスカイザーは一度目を閉じていた。
そして目を開くとさやかに告げた。
119 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/07(水) 00:06:41.51 ID:mHFcqSHg0
「さやか…君は、エネルギー生命体になったんだ」
「………。」
一瞬の静寂、そして。
「「「えええぇーーーーー!!!!」」」
素っ頓狂な声を三人揃って上げる事になっていた。
第9話 完
120 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/07(水) 00:07:45.15 ID:mHFcqSHg0
次回予告
「さやかの事もあり、私は全てを話す事に決めた、もうこれ以上秘密は持ちたくないし…」
「え?何?私の家にお泊り会?」
「え?マミさん、修行?新しい必殺技!?」
「そんな…こんなのって…アリ!?」
「次回 勇者 エクス☆マギカ『もう誰にも頼らない』」
「あなたの家にも宇宙人いる?」
予告担当:暁美ほむら
121 :
◆1B0iEDnTxU
[ saga]:2011/09/07(水) 00:12:39.68 ID:mHFcqSHg0
と言うわけで、第9話終了です。
ぶっ飛んでいますが、元々これを書きたくて書き始めたので問題無しです。
次回は本当ならほむらの回想話ですが、此方はお風呂回とさせてもらいます。
それでは。
122 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/09/07(水) 00:17:07.56 ID:/6OkNevSo
お疲れ様でした。
なんてこと・・・・・なんてこと・・・・・・まぁ、一安心ですね・・・・・・。
123 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)
[sage]:2011/09/08(木) 00:12:13.59 ID:/eR5gHCBo
事情を話したら、聞こうとしない・信じない・心中しようとする
事情を話さなかったら、怒る・責める・説教する
ほむほむ無理ゲーすぎるだろ
エクスカイザーの居るループに来れてよかったなぁ
124 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)
[sage]:2011/09/08(木) 00:17:36.24 ID:yqZ0aAzjo
乙
結局人間じゃないことはそのままかさやさやちゃん
125 :
なすーん
[なすーん]:なすーん
__ 、]l./⌒ヽ、 `ヽ、 ,r'7'"´Z__
`ヽ `ヽ、-v‐'`ヾミ| |/三ミヽ `iーr=< ─フ
< /´ r'´ ` ` \ `| ノ ∠_
`ヽ、__// / |/| ヽ __\ \ヽ |く ___彡'′
``ー// |_i,|-‐| l ゙、ヽ `ヽ-、|! | `ヽ=='´
l/| | '| |!|,==| ヽヽr'⌒ヽ|ヽ| | |
┏┓ ┏━━━┓ | || `Y ,r‐、 ヽl,_)ヽ ゙、_ | | |. ┏━┓
┏┛┗┓┗━━┓┃ ...ヽリ゙! | l::ー':| |:::::::} |. | / l|`! |i |. ┃ ┃
┗┓┏┛ ┃┃┏━━━━━━━.j | l|.! l::::::ノ , ヽ-' '´ i/| !|/ | |リ ━━━━┓┃ ┃
┃┃ ┏━┛┃┃ ┌┐ | l| { //` iー‐‐ 'i 〃/ j|| ||. |ノ ┃┃ ┃
┃┃ ┃┏┓┃┗━━━.んvヘvヘゝ | l| ヽ ヽ / _,.ィ ノ/川l/.━━━━━┛┗━┛
┃┃ ┏┛┃┃┗┓ i .i ゙i\ゝ`` ‐゙='=''"´|二レ'l/″ ┏━┓
┗┛ ┗━┛┗━┛ ノ ! --─‐''''"メ」_,、-‐''´ ̄ヽ、 ┗━┛
r|__ ト、,-<"´´ /ト、
| { r'´ `l l /|| ヽ
゙、 } } | _|___,,、-─‐'´ | ゙、
`‐r'.,_,.ノヽ、__ノ/ | | |、__r'`゙′
| |/ i |
| | |
126 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/08(木) 12:05:18.18 ID:L7Kjpo5t0
感想有難うございます。
>>122
さん
まぁ、普通こんな事にはなりませんからね。
ぶっ飛んでおります(笑)
>>123
本編だとこんな感じでしたので、こうなりました。
書いていてほむらは本当に苦労人だと実感しましたよ…。
>>124
個人的なさやかちゃんのハッピーへの条件に
1.恭介の腕が治る 2.魔法少女ではない 3.生きている
この三つを考えていましたので、ゾンビではなくなった事が重要です。
後、
>>125
の茄子は何ですか?
たまに連投されているのを見掛けたりするんですが…。
それでは。
127 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(兵庫県)
[sage]:2011/09/10(土) 09:21:48.02 ID:2H2U6TVd0
あーさやかはエクスカイザーと同類になっちゃったか
128 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/09/10(土) 11:40:33.89 ID:kHJgIosvo
火鳥兄ちゃんのようになっちゃうさやかと申したか
129 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/10(土) 23:02:53.75 ID:5xfEzL8t0
>>127
さん
ハイ、そうなります、ですがまあその辺りは次回少し説明が入りますので。
>>128
さん
ハッ!火鳥兄ちゃんと同じようになっちゃうさやかちゃんと申し上げました!
エクスカイザーとのクロスで真っ先に思い浮かんだのがこれな物で…。
では。
130 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/17(土) 00:40:15.23 ID:M9BkfZiT0
チクショウ!もう最終レスから1週間経っちまった!
掛かり過ぎだぜ…。
まだ掛かりそうなので、お待ちの方申し訳ございません。
それでは。
131 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/09/28(水) 23:43:24.28 ID:kYzrfPjd0
まってるよ?
132 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/09/29(木) 16:28:57.26 ID:QZv2z0+30
>>130
さん。
お待たせして本当にすみません…。
10月の頭位には投稿できるよう踏ん張っておりますので…。
もうしばしお待ちを…。
133 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/09/29(木) 17:29:03.41 ID:fBvlzRCPo
そういやエクスカイザーとファイバードって精神生命体なんだっけ
ロボットのボディを壊したら、死ぬのかな?
新しい体に憑依して復活?
このSSのエクスカイザーはもしラジコン壊されたら死ぬの?
134 :
全く出遅れた!
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/10/02(日) 00:49:01.75 ID:xcMIk3oZ0
待たせしました!
やっとこさ完成しましたので、推敲の後投下します。
遅くとも、明後日くらいには出来ますのでもう少しお待ちを!
駄文過ぎる…80越えとかどういうことなの…?
>>133
さん。
死にはしないはずです。
ファイバードも最後にドライアスを倒す為に自爆特攻をかまして本体ピンピンでしたし…。
なので、ラジコンが破壊されても一応生きてはいると思います。
戦う事はできないと思いますが。
135 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/10/03(月) 13:17:31.51 ID:ugaQDEsQ0
お待たせ致しました、それでは第10話投稿です。
謎展開注意!
136 :
ほむら「勇者 エクス☆マギカ 第10話」
◆1B0iEDnTxU
[saga]:2011/10/03(月) 13:19:29.83 ID:ugaQDEsQ0
見滝原の郊外にある採掘場。
此処からだと、市街地を一望する事ができる、そして人が寄り付かない。
大掛かりな何かをするにはうってつけの場所だ。
その採掘場にて魔法少女4人は苦戦を強いられていた。
まどかはその様子を傍から見守る事しか出来ないでいた。
「はあ、はあ、はあ」
「クッ、そんな、此処まで強いなんて…」
「4人で掛かっても歯が立たない…だと…」
「……。」
137 :
ほむら「勇者 エクス☆マギカ 第10話」
◆1B0iEDnTxU
[saga]:2011/10/03(月) 13:20:24.40 ID:ugaQDEsQ0
見滝原の郊外にある採掘場。
此処からだと、市街地を一望する事ができる、そして人が寄り付かない。
大掛かりな何かをするにはうってつけの場所だ。
その採掘場にて魔法少女4人は苦戦を強いられていた。
まどかはその様子を傍から見守る事しか出来ないでいた。
「はあ、はあ、はあ」
「クッ、そんな、此処まで強いなんて…」
「4人で掛かっても歯が立たない…だと…」
「……。」
138 :
二重投稿しちゃった…死にたい…
◆1B0iEDnTxU
[saga]:2011/10/03(月) 13:21:04.30 ID:ugaQDEsQ0
各々が思うことを口に出し、対峙する相手を見ていた。
その相手とは、さやかより大きめの体格をしており、青と赤に白を基調としたカラーリング。
胸には鬣の部分が大型化した獅子の顔が存在し、兜には龍の角を思わせる角飾りが付けられていた。
所々に見た事があるデザインが存在しており、だが魔法少女たちには新鮮に見えるその相手。
エクスカイザーの最強形態が立ちはだかっていたのだ。
「如何した!4人とも!これで終わりか!?」
その挑発とも取れる言葉にさやかが剣を支えに立ち上がっていた。
剣は長大で以前魔女を叩き切った物であった。
「何の…!まだまだぁ!!」
「それで良い!立ち上がるならば、相手をするまでだ!」
「佐倉さん!行ける?」
「ハッ、誰に口聞いているんだよ?」
よろめきながらも立ち上がる二人、その瞳には赤々と闘志が燃え滾っていた。
139 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 13:22:00.71 ID:ugaQDEsQ0
「暁美さんも!良いわね!」
「……。」
ほむらも立ち上がったのだが、マミに返事はせずに下を向いていた。
「?暁美さん?如何したの「どうして…」
マミの言葉を聞かず、ほむらは天に向かって絶叫していた。
「どうしてこうなったのーーーーーーー!!!!」
第10話『もう誰にも頼らない』
話は人魚の魔女をさやかが倒し、全員でマミの家に帰って来た所まで遡る。
杏子は今だ気絶しており、ソファーに寝かされていた。
今現在、テーブルには杏子を除く5人が座っていた。
140 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 13:22:54.04 ID:ugaQDEsQ0
「「「…。」」」
「あの〜、あたしの顔に何か付いてる?」
テーブルに着いたさやかは3人の視線の集中砲火を浴びていた。
「あ…ゴメン、さやかちゃん」
「やっぱり気になっちゃうから…」
そう言いながらまどかは出されていた紅茶に口を付けたのだが、それでも目線はさやかに向けられていた。
「……。」
「な、何か急に有名人になったみたいで恥ずかしいなぁ…」///
さやかは紅茶を照れながら飲み、熱さに驚いてヒーヒー言っていた。
「もうっ、美樹さんったら」
「大丈夫?」
141 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 13:23:22.00 ID:ugaQDEsQ0
「ハ、はひ、すみません…」
「それは、そうとエクスカイザーさん、詳しく教えてもらえますか?」
さやかに水を渡して、マミはエクスカイザーの方を向いた。
それに、エクスカイザーは頷いて、話を始めた。
「さっき、さやかに言った通りだ、さやかはエネルギー生命体となっている」
「これを見てもらいたい」
そう言ってエクスカイザーは胸の飾りから光を発し、テーブルの上に立体映像を表示した。
その姿は手を開いて立っている、さやかの物であった。
「これは先程スキャンしたものなのだが、見ていてほしい」
そう言って立体のさやかの像を一色に変化させて行くと、ちょうど胸の真ん中辺りにぼんやりとした丸い球状の明かりが灯っているのが分かった。
すかさず、マミはエクスカイザーに質問していた。
「エクスカイザーさん、これは?」
142 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 13:23:59.47 ID:ugaQDEsQ0
「これがさっき言った、さやかの魂だよ」
「この淡く光っている球が、さやかがエネルギー生命体の証なんだ」
エクスカイザーはそう言ってぼんやり光る丸い球を指差していた。
それにまどか達は感心してへぇ〜と唸っていた。
「でも、何でこれであたしがエネルギー生命体になったって言い切れるんですか?」
「もしかしたら違うかもしれないじゃないですか?」
「それは間違いない」
「マミ、まどか、ちょっと立ってもらって良いだろうか?」
エクスカイザーが二人に頼むと、二人とも如何したのだろうか?と思いながらも了承し、その場に立ち上がった。
すると、その二人に先程さやかに当てた物と同じビームを放ち、まどかたちの身体をスキャンした。
「これも見てほしい」
そう言うと、今し方スキャンしたまどかとマミの画像も表示されるようになった。
その映像もさやかの物と同じ処理が施されると、違いがハッキリした。
「あ!胸のモヤモヤが無い!」
143 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 13:26:10.28 ID:ugaQDEsQ0
「そうなんだ、普通の人間にはこのエネルギーの塊が見当たらないんだ」
「マミにも見えないからこの画像で判断するのなら、同じ人間と言う事になるけどね」
そう言ってエクスカイザーは、表示していた立体映像を消してさやかの方を向いた。
さやかは少し落ち込んだような素振りをしていた。
「タハハ、運良く生きてられた、と思ったらやっぱ人間止めちゃったか…」
「さやかちゃん…」
落ち込んでいるさやかにまどかは声をかけれなかった。
だが、エクスカイザーは話し掛けていた。
「…確かに、さやか、君は人間じゃなくなってしまった」
「けれど、君は人間に近い存在、とも言えるんだ」
その言葉に全員頭にハテナを浮かべていた。
周りを見て、続きをエクスカイザーは話した。
144 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 13:27:50.40 ID:ugaQDEsQ0
「元来、エネルギー生命体には幾らかの種類が存在するんだ」
「一つは私の様に、純粋な形のエネルギー生命体」
「もう一つは、自らをエネルギー生命体に出来る種族だ」
「「「自らをエネルギー生命体に出来る種族?」」」
鸚鵡返しに聞く三人にエクスカイザーは頷いていた。
「マミ達の知っている、ファイバードもその一人なんだ」
「外部の補助受けて、身体を分離させる事ができる者達をそう定義付けている」
「だから、さやか、君はどちらかと言うとその枠に進化した、と言った方が適切なんだと思う」
言葉は難解で、分かり辛いものがあったが、エクスカイザーはさやかを励まそうとしているのは理解する事が出来た。
「進化…って言われても…実感ないなぁ…」
さやかは唸りながら顎に手を当てていた。
まどか達も同様の反応であった。
「確かにね、他に何か無いんですか?」
「トランスフォームができるようになるとか、明鏡止水の心とか」
「星を護はなんちゃらとか」
145 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 13:28:45.54 ID:ugaQDEsQ0
「マミさんそれは何か違うような…」
「それは出来たら出来たで怖い様な…」
マミの発言にまどかとほむらは苦い顔をしていた。
その反応を見てマミはえぇ〜と言って二人に質問していた。
「そう言う能力があるかは分からないが、さやかの場合は、魔法少女の力をそのまま使えるみたいだったね」
「基本、エネルギー生命体は長寿で1万年以上は生きる事が出来る」
「それに、宇宙に存在するエネルギーを摂取出来るから食べる事はしなくても良くなるんだ」
1万と言う単語を聞いた時、さやかはげんなりしてテーブルに顎を付いていた。
「無茶苦茶な事サラッと言われた様な気がするんですが「だが、さやか」
「これだけは言える、君の様なタイプのエネルギー生命体は自身の体と一体化している時はその本体は身体に影響を受けるんだ」
「身体が死んでしまうと、一緒に死んでしまう」
「身体の寿命でも同じなんだ」
その事を聞いて、マミ達もエクスカイザーの話を聞いていた。
146 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 13:29:17.65 ID:ugaQDEsQ0
「え…?それってどういう「単純に言えば」
「今の状態だと1万年も生きる事は出来ないし、衰弱しすぎると死んでしまう」
「君は今のままだと不思議な力が使える人間だ、と言う事だよ」
さやかは、分からなかったのかキョトンとしており。
エクスカイザーは話を続けていた。
「さやか、君はゾンビなんかじゃなく、人間に戻ったんだよ」
「複雑な話をする上ではエネルギー生命体だけど、今の君は人間だよ」
マミは、エクスカイザーの言葉を直ぐに理解を示し。
成程、と唸っていた。
「そうよね、エネルギー生命体になったって言うのが正しいのなら」
「今の貴方が生きているって言うのは間違いないわ」
「魔法少女の運命を覆したのだもの」
エクスカイザーはマミの言葉に首肯していた。
「…あれ?何でだろ・・・?可笑しいな…」
「嬉しいんだけどさ…如何したらいいんだろう…」
「涙が、涙が止まらないの…」
147 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 13:30:14.82 ID:ugaQDEsQ0
そう言い、キョトンとしていたさやかは顔を覆って泣き出してしまった。
まどかは心配になり、さやかの肩に優しく手を置いていた。
「さやかちゃん、大丈夫?」
「有難う、有難うね、まどか…」
「美樹さん、我慢しなくても良いのよ?」
「泣ける時に泣かないと、後で後悔するわよ?」
その言葉を切欠に、さやかはまどかに縋って泣きじゃくっていた。
それをやれやれ、とマミは懐かしい物を見つめる様な瞳で見つめていた。
(…泣ける時に泣かないと、本当に後悔するわよ?)
(私みたいにね…)
暫くの間、さやかはが泣いているのを眺め、マミはおもむろに立ち上がり、紅茶のお変わりを入れるために台所に向かって行った。
その姿をエクスカイザーはただジッと眺めていた。
それに反応してなのかは分からないが、ソファーに寝かせていた杏子がもぞもぞと動きだし、眠たそうに目を擦りながら起き上がった。
148 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 13:32:13.26 ID:ugaQDEsQ0
「ん〜…?」
「あら?杏子、起きたのね」
「あぁ、気分わりー」
「…!そうだ!あの魔女はどうなった!」
杏子はそのままほむらに顔を近づけて事の顛末を聞き逃さないようにしていた。
対するほむらは、顔が近い事もあり、少し引いていた。
「顔が近いわよ、結果的にはあの魔女を倒す事になったわ」
「!!くそっ!駄目だったのかよ…あたし達じゃ助けられなかったのかよ!」
「これじゃあ夢に出てきたさやかに顔向けできねぇな…」
自分の太腿の上で握り拳を作っており。
ほむらは何を言っているのだろうと思いながら見ていると。
杏子は涙目になり、窓の外を向こうとした。
その途中で動きが無くなり、その杏子の視線を追って行くと、そこにはまどかの胸で泣くさやかの姿があった。
149 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 13:32:50.77 ID:ugaQDEsQ0
「え?さやか?え?…え?」
杏子は目を白黒させてさやかを指差していた。
ほむらは呆れた様にため息を付き話をした。
「何言っているのよ、さやかがあの魔女に止めを刺したの、新たに生まれ変わってね…?」
ほむらは反応が無くなった杏子を見てみると、さやかを見たまま動きが止まっていた。
すると。
「うぅ〜ん」
と唸ってまた気絶してしまったのだ。
流石にこの事態にはほむらも驚き、杏子を揺すりだした。
「え!?ちょ、杏子!?しっかりして!」
「誰か、助けてぇ!」
その後、杏子を介抱する為に大慌てで水を取りに行ったとか、行かなかったとか。
150 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 13:33:26.69 ID:ugaQDEsQ0
数分後。
部屋は落ち着きを取り戻し、ソファーに座る杏子を混ぜて、全員で話を再開していた。
「頭が痛くなる様な現実だね…」
「まだ夢なんじゃないかって位だよ…」
「じゃあ、つねってみる?」
そう言ってさやかは手をワキワキさせて近づいて行った。
その顔面に杏子の足で踏みつけられて、そこで止まっていた。
「グゥ、手厳しいなぁ、杏子は」
「鼻が痛いよ…」
「言える口かよ?ったく」
「…でも、良かったよ、あんたが生きているって事がね」
「そう言えばさ、なんであんたそんなけったいな者になれたんだよ?」
杏子がそう言いながらさやかを見ると。
さやかは難しい顔をして唸っていた。
「いやぁ、それが分かんないんだよね」
「気が付いたら、って感じだし、」
151 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 13:34:09.75 ID:ugaQDEsQ0
「何だよ?そりゃ」
「仕方ないでしょ、起きた時には杏子の魔力が身体を温めていたのが分かった位なんだから」
「分からないものは分からないの」
そういったさやかの言葉に、杏子は少し紅くなって返事をしていた。
だが、それでも杏子は笑顔作ってさやかを見ていた。
「そ、そうかい、悪かったよ…」///
「あーあ、喉が湧いちまったよ」
「何か飲み物をくれるかい?」
その言葉を聞き、マミは杏子に紅茶をソーサー付きで手渡した。
杏子は香りを楽しんでから少し口に含んでいた。
「ふぅーん、良い紅茶だね」
「あら?分かるの?」
「それなりにね、それはそうと」
「如何したんだい?事情通」
「やけに難しい顔をしているけど」
152 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 13:34:38.25 ID:ugaQDEsQ0
そう言われてまどか達は、ほむらを見ると、俯き最近見せている物とは少し違う顔で思案しているようだった。
「…皆に話しておきたい事があるの、先に謝らせて貰うわ」
「御免なさい、私はまだ隠している事があったの」
顔を上げ、突然の告白に全員驚いていた。
マミは文句を言わずに聞き返してきた。
「それは貴方が秘して置くべき秘密、と言うべき物なの?」
「もし、そうなら言うべきではない、と思うのだけれど?」
マミは、ほむらの心中を察したのそう言って、暗に言わなくても良い。
と言っていた。
だが、ほむらはマミの顔を見て、首を横に振った。
「有難う、マミさん」
「でも、これは言わなければならない様な気がするから…」
「私の…魔法少女になった時の事を…」
ほむらがそう言うと、全員居住まいを正して、ほむらの話に耳を傾けた。
「…何処から離した方が良いのかしら…」
「いえ、最初からの方が良いわね」
そう言ってほむらは自分の事を語りだした。
153 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 13:35:13.23 ID:ugaQDEsQ0
カチッカチッカチッカチッ
時計の針はただ時を刻み続ける。
「ハイ!それじゃあ自己紹介をお願いします!」
担任の早乙女先生の言葉に吃驚して飛び上がり、少し紅くなりながら少女は自己紹介を始めた。
「あ、あの、始めまして…わ、私、暁美、ほむらです…」
「よ、よろしくお願いします」
黒くしなやかな長髪を両側で三つ編みにし、気弱そうな言葉でほむらは自己紹介をしていた。
周りの目は好奇の色で輝いており、それだけで少女は竦み上がりそうだった。
「暁美さんは心臓の病気でずっと入院していたから」
「皆仲良くしてあげてね」
その言葉にクラスの面子は元気よく返事をしていた。
154 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 13:35:43.52 ID:ugaQDEsQ0
ホームルームが終わり、1時間目の休憩時間、転校生『暁美ほむら』はクラスの女子数人に質問攻めされていた。
「ねぇねぇ、暁美さん」
「暁美さんは前どんな学校に通っていたの?」
「え?」
「部活とかやっていた?」
「あ、あの…」
「スッゴク長い髪だよね〜編むの大変じゃない?」
「あ、その…私…」
ほむらが質問攻めに答える事が出来ずにオロオロしていると、救いの手は唐突に差し伸べられた。
「皆、ちょっとゴメンネ」
「暁美さん、休み時間に保健室でお薬飲まないといけないから…」
155 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 13:36:39.71 ID:ugaQDEsQ0
その言葉に、質問していた女子達は悪い事をしたな、と言った面持ちであった。
「そうだったの?ゴメンネ、暁美さん」
「それじゃ、また後で聞かせてね」
そう言って質問していた女子達は解散して行った。
後には、机に座ったままのほむらと、助けてくれた笑顔が良く似合う女の子が立っていた。
「行こう、わたし、保険委員だからさ」
「場所、分かる?」
そう言って女の子の後ろをほむらは歩いて行った。
道中、振り返って見返されるのが凄く恥ずかしく思っていた。
「ゴメンネ、転校生ってやっぱり珍しいからさ」
「皆はしゃいじゃって…」
女の子は慣れた足取りで後ろを振り返りながら歩いていた。
ほむらはただ、お礼を言う事しかできなかった。
「あ、その、有難うございました…」
156 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 13:37:05.19 ID:ugaQDEsQ0
おずおずとお礼を言うと、女の子は笑って返してきた。
「そんなに緊張しなくても良いんだよ」
「クラスメイトなんだし」
すると、女の子はアッと言ってその場に立ち止まった。
「自己紹介がまだだったよね?」
「わたし、鹿目まどか、まどかって呼んでね?」
「え…「だからさ、わたしもあなたの事をほむらちゃんって呼んで良いかな?」
その申し出は嬉しい物ではあった。
だが、ほむらは素直に喜ぶ事ができなかった。
「そんな…私…」
「あまり名前で呼ばれた事がなくて…それに変な名前だし…」
そう言ってしょげていると、まどかはそれを吹き飛ばすような笑顔で続けた。
「そんな事ないよ!わたしはカッコ良いと思うなぁ…」
157 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 13:37:41.71 ID:ugaQDEsQ0
まどかに名前を褒めてもらい、ほむらは嬉しく思ったのだが。
「そんな、私なんて名前負けです…」
ガックリと肩を落としていた。
その様子を、まどかは口元に手を当てて考えており、そうだ!と言って手を打ち合わせていた。
「だったらさ!ほむらちゃんもカッコ良くなっちゃえば良いんだよ!」
そう言うまどかの姿は、ほむらには輝いて見えていた。
自分には無い明るさと、元気さ、自分にも出来るんじゃないか、と思わせるその優しさ。
何時の間にか、ほむらはその姿に見惚れていた。
授業が始まり、ほむらは心底自分を恨んだ。
教壇の前に立たされ、計算式が分からず、涙し。
体育の授業はその病弱な身体が崇り、準備体操だけで貧血を起こしてしまい。
穴があったら入りたいほどであった。
そして落胆しながらの帰り道、一人寂しく帰路に付いていた。
158 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 13:38:45.03 ID:ugaQDEsQ0
「はぁ…鹿目さん、私、カッコ良くなんてなれないよ…」
そう呟き、空を見上げると、涙で空が滲んでしまった。
(人に迷惑かけて…恥かいて…)
(私このまま変わる事が出来ないままなのかな…)
涙を拭い、俯きながら如何しようも出来ない事がグルグルと思考を占拠していた。
その時、何処からか、語り掛ける様な声が聞こえてきた。
(だったらさ…死んじゃった方が良いよね…?)
(そうかな…)
(私が死ねば…?)
酷く後ろ向きの答えが出てそうしよう、と思った時、視界が揺らぎ、通学に使う道とは違う異空間と呼ぶに相応しい場所に来ていた。
それに驚き、先程までの事は頭から抜けていた。
159 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 13:39:24.88 ID:ugaQDEsQ0
「え!?な、何、此処!!」
「ヒッ!!」
凱旋門の様な物が現れると、そこからデッサンの下書きの様な物が現れ、此方に近づいて来た。
ゆっくりと、確実に此方を狙う様な歩みであった。
「何これ!いや!」
何かは知らないけれど、怖くて動く事が出来ないでいた。
一体がほむらに近づいて、触れようとした時。
ドドドドドドドドォン!!!!
物凄い数の銃撃によって、その化物は吹き飛ばされてしまったのだ。
その攻撃の中に何条かの光が混ざっているのが見て取れた。
「!?!?」
「間一髪ってところかしらね?」
「もう大丈夫だよ!ほむらちゃん!」
160 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 13:40:57.44 ID:ugaQDEsQ0
「!?」
その声に振り向くと、そこには二人の少女が立っていた。
一人は黄色いコルセットの様で、胸元を強調するような衣装を着込んだ少女。
恐らく自分より年上であろうと思った。
そしてもう一人はピンクのフリルがとても可愛らしく、優しさが顕われた様な姿をした今日見知った人物であった。
「鹿目さん!?」
「あ、あなた達は…」
「彼女達は魔法少女」
「魔女を狩るものさ」
答えたのは傍に居た白い不思議な生き物だった。
それに驚く間も無く、まどか達は化物に攻撃を仕掛けだした。
「いきなり秘密がばれちゃったね」
「クラスの皆には、内緒だよ!」
「行くわよ!鹿目さん!」
「ハイ!」
161 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 13:41:43.11 ID:ugaQDEsQ0
そう言って、まどかは枝を模した弓を構え、そこに光の矢を構え、化け物に撃ち込んだ。
黄色い少女も同じ様にとんでもないサイズの銃を出し、砲撃していた。
「「ティロ!・フィナァーレッ!!」」
「シュゥー!!!」
その掛け声とともにエネルギーは凱旋門に命中し、大爆発を起こした。
ほむらは、ただその光景に見惚れていた。
その後、ほむらは巴マミと名乗った先輩の家に招待されていた。
そして紅茶とケーキを御馳走になっていた。
「あの…良いんですか?」
おずおずとマミに対して伺うと、マミは笑顔で返してきた。
「良いのよ、さ、暁美さんも遠慮せずに召し上がれ」
「ん〜♪マミさんのケーキはやっぱり美味しいな〜♪」
162 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 13:42:22.14 ID:ugaQDEsQ0
そう言いながらまどかは出されたケーキをおいしそうに頬張っていた。
その光景を見て、ほむらは質問したくなってしまった。
「あの…鹿目さんは何時もあんなのと戦っているんですか…?」
ん?と言ってまどかはほむらの方を向いた。
「マミさんはベテランだけどね、私は半人前だよ」
「先週キュゥべぇと契約したばっかりだし…ね」
キュゥべぇに目線を移すと、キュゥべぇはケーキを食べながら首肯していた。
マミはまどかのその言葉に反応して返した。
「あら?でも今日の戦いは最初よりずっと良かったわよ?」
「まだ充分とは言えないけどね」
「ほ、本当ですか〜?」
そう言いながら笑っているまどかを見て、ほむらは酷く心配になり、更に質問をしていた。
163 :
何故投稿出来ない…
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 14:27:47.99 ID:ugaQDEsQ0
「平気、なんですか?」
「怖く…無いんですか…?」
その言葉に、マミとまどかはほむらを見ていた。
そして、まどかが口を開いた。
「それは…平気って事は無いし、怖かったりもするよ?」
「でも魔女をやっつける事ができれば大勢の人が助かる訳だし…」
「やり甲斐はあるかな?」
「そうね、でも鹿目さんは『ワルプルギスの夜』が来る前に1人前になってもらわないとね」
まどかはマミの言葉に元気良く頷いていた。
ほむらはその様を見て、再びまどかに憧れの眼差しを向けていた。
カチッカチッカチッカチッ
時計の針はただ時を刻み続ける。
全てが崩壊し、宙に浮かび上がっていた、これが『ワルプルギスの夜』の力。
その光景を見て、ほむらは絶望していた。
164 :
何故投稿出来ない…
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 14:31:58.10 ID:ugaQDEsQ0
「平気、なんですか?」
「怖く…無いんですか…?」
その言葉に、マミとまどかはほむらを見ていた。
そして、まどかが口を開いた。
「それは…平気って事は無いし、怖かったりもするよ?」
「でも魔女をやっつける事ができれば大勢の人が助かる訳だし…」
「やり甲斐はあるかな?」
「そうね、でも鹿目さんは『ワルプルギスの夜』が来る前に1人前になってもらわないとね」
まどかはマミの言葉に元気良く頷いていた。
ほむらはその様を見て、再びまどかに憧れの眼差しを向けていた。
カチッカチッカチッカチッ
時計の針はただ時を刻み続ける。
全てが崩壊し、宙に浮かび上がっていた、これが『ワルプルギスの夜』の力。
その光景を見て、ほむらは絶望していた。
165 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 14:32:57.10 ID:ugaQDEsQ0
「そんな…巴さん…」
マミはほむらを庇い、魔女の攻撃を受け、死んでしまった。
ボロボロになりながらも、マミはほむらを守る事が出来たのが嬉しかったようで、満足げな顔で逝った。
ほむらは自分がこんな所まで来なければ、そう思い涙していた。
一緒に弔っていたまどかは、おもむろに立ち上がり、ほむらに告げた。
「…じゃあ、行って来るね」
「そんな…!巴さんだって!私の所為で死んじゃったのに…!」
「そんな事ないよ、ほむらちゃん」
「マミさんは、ちょっと運が悪かっただけだよ」
そう言ってまどかは笑顔を見せていた。
その笑顔は始めてあった時のものと同じものだった。
「それに、今戦えるのはわたし一人、あの『ワルプルギスの夜』を止められるのは、わたしだけだから」
まどかは『ワルプルギスの夜』の方を向き、背を向けたまま喋っていた。
166 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 14:34:05.29 ID:ugaQDEsQ0
「そんな!無理よ…勝てっこない!逃げよう!」
「誰も鹿目さんを恨んだりしないから!」
都合の良い言葉だった。
マミの犠牲によって生きている命、ほむらにはそれを無駄に出来ない思いで言っていた。
その言葉は守られる立場だから、それに甘えられる場所に居たから言えた言葉だった。
まどかは振り返り、首を横に振り、話をした。
「ほむらちゃん…」
「わたしね、貴方と友達になれて嬉しかったの」
「今でも自慢なんだ、あの時…貴方を救えた事が」
その顔には絶望はなく、嬉しさで満ち溢れていた。
「わたし、魔法少女になって良かったって」
「そう思っているんだ」
「嫌…行かないで…」
ほむらの涙ながらの懇願でも、まどかを止める事ができず。
まどかは自分の弓を構え、最後の挨拶を言って飛び立って行った。
「有難う、ほむらちゃん」
「さようなら」
167 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 14:34:47.14 ID:ugaQDEsQ0
「あぁ…!鹿目さぁーーーーーん!!!!」
空は天気雨の様相を呈しており、脅威が過ぎ去った事を顕していた。
そして、瓦礫の中に、たった一人でその脅威と戦った少女の亡骸が横たわっていた。
その少女に寄り添う様にほむらはずっと俯き、泣いていた。
「どうして…?」
「死んじゃうって解っていたのに…」
「私なんかを助けるよりも…」
「貴方に生きていて欲しかったのに…」
ほむらは、マミに助けられた。
そしてまどかにも助けられて生きていた。
守られるばかりの自分を呪い、強くなりたいと思っていた。
「その言葉は本当かい?」
そこに今まで何処に居たのかキュゥべぇが瓦礫の上にいた。
168 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 14:35:19.35 ID:ugaQDEsQ0
「暁美ほむら」
「君はその祈りの為に魂を懸けられるのかい?」
「戦いの運命を受け入れてまで叶えたい望みがあるのならば、ボクが力になってあげるよ」
「……貴方と契約すれば、どんな願いも叶えられるの?」
「そうとも、君にはその資格が有りそうだ」
「…さあ、聞かせてごらん」
「君はどんな祈りでソウルジェムを輝かせるんだい?」
その言葉は、まるで悪魔の甘言の様にも聞こえた。
だが、それでもほむらは涙を拭い、キュゥべぇと契約をした。
「私、私の願いは…」
「鹿目さんとの出会いをやり直したい!」
「彼女に守られるだけじゃなく、彼女を守れる私になりたい!」
「憧れるだけじゃない、一緒に並んで歩きたい!」
169 :
一度試しに上げさせて貰います
◆1B0iEDnTxU
[saga]:2011/10/03(月) 14:36:18.03 ID:ugaQDEsQ0
そう言い終えると、胸の辺りが苦しくなり、そこから紫の光の塊が現れた。
「契約は成立だ、君の願いはエントロピーを凌駕した」
「さぁ、手にとって解き放ってごらん、君の新しい力を」
言われるがままに光を両手で握り締めると、イメージが浮かび上がった。
丸い円い盾、時の砂を詰め込んだ不思議な盾。
その盾を回した時、周りの景色が全て色の線になり、自分の後方へ吹き飛んで行った。
カチッカチッカチッカチッ ガシャン!!
時計の針は止まり、高速で針を巻き戻して行った。
170 :
問題なさそうなので続けます
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 14:37:08.11 ID:ugaQDEsQ0
ほむらが目を覚ますと、そこは見知ったベッドの上だった。
寝起き独特のぼんやりした感覚の中でほむらは今までの事を思い出していた。
日付は退院の日、ほむらは今までの事を夢なのか、と落胆していた。
「…はぁ、夢か…?」
だが、その手の中に違和感があり、手を開くと、そこには紫に輝く宝石が握られていた。
「あぁ…!夢じゃない!」
そして机の上に置かれた見滝原中学の案内パンフレットを手に取り。
それからほむらは、まどかにまた会えると思う一心でワクワクしっぱなしだった。
「ハイ!それじゃあ自己紹介をお願い「暁美ほむらです!」
「よろしくお願いします!」
「暁美さんは心臓の病気で、ってあら?」
171 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 14:37:48.48 ID:ugaQDEsQ0
担任の早乙女先生の話も途中で自己紹介をし、ほむらはまどかに駆け寄って手を握って話をした。
「鹿目さん!」
「わたし魔法少女になったよ!」
「これから一緒に頑張ろうね!」
当のまどかは突然の告白と、クラス中の奇異の目に晒され真っ赤になっていた。
そして高架下、魔法少女3人で揃い、ほむらの力を見定めているところだった。
「それじゃあ、行きます!」
「やあぁぁぁ〜」
ほむらは変身して何処からともなくゴルフクラブを持ち出し、ドラム缶に向かって行った。
その時、共に時間を止めていたので攻撃は全て命中する、はずだった。
「うりゃ〜、あれ?」
「おりゃー!」
172 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 14:39:00.09 ID:ugaQDEsQ0
その攻撃は大振りで、全く当たらなかった。
何度かしている内に当たり始め、ようやく手ごたえが出始めた。
そして、時間停止を解除してマミが評価を出していた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
「…どうです?マミさん?」
「うぅーん、時間停止ねぇ…」
「凄いと言えば凄いんだけど…それ以外にはない?」
「はぁ、はぁ、え?すみません、これ位しか出来ないです…」
「…良い能力なんだけど、もう少し使い方を考えた方が良いわね…」
真美のその言葉にほむらは息も絶え絶えに返答にしていた。
その夜、ほむらは自宅で手製の爆弾に付いてのページを開き、それを参考に爆弾を作成していた。
そして翌日。
173 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 14:40:32.45 ID:ugaQDEsQ0
初めて魔女と戦う実戦。
ほむらはロープの上でビクビクしていた。
マミとまどかは魔女相手に奮戦していた。
使い魔が降り注ぐ中、まどかは弓に矢を番えて一体一体正確に撃ち落していた。
「エイッ!!」
「たぁ!!」
「わ、わわわわわわ〜!」
その中で、マミは自分のリボンで道を作りほむらが歩けるようにしていた。
「暁美さん!今よ!」
「ハ、ハイ!」
時間を止め、必死に走って行き、魔女に手製の爆弾を放り込み、停止を解除した。
魔女は大爆発を起こし、完膚なきまでにバラバラになっていた。
ほむらは此処まで威力が強いものか、と驚きながら結界の中を落ちていたが、リボンのクッションに抱きとめられて落下が止まっていた。
「あぁ…や「やったあぁ!!」
「やったよ!ほむらちゃん!」
「凄いよ!!」
174 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 14:41:24.80 ID:ugaQDEsQ0
そう言ってまどかはほむらに抱きついていた。
マミも頷きながらその光景を見つめていた。
ほむらはまどかと戦える事が嬉しく、恐怖は感じてはいなかった。
何よりも、並んで歩く事ができる自信に満ち溢れていた。
カチッカチッカチッカチッ
時計の針はただ時を刻み続ける。
「ウグゥ!!」
突然、まどかが苦しみだした。
原因は分からない。
「か、鹿目さん!?どうしたの!?」
「どう…して…?」
「『ワルプルギスの夜』は倒したのに…!」
「う、ギィヤァアアアアァアアァアアアアア!!!!」
絶叫と共にソウルジェムが変質し、グリーフシードから黒い大きな塊が出て来てその姿を顕現させた。
その化物は周囲の命を吸い取り、更に大きくなっていった。
175 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 14:44:00.25 ID:ugaQDEsQ0
「な、何…これ…?」
カチッカチッカチッカチッ ガシャン!!
時計の針は止まり、高速で針を巻き戻して行った。
再び、ベッドの中で目覚めたほむらは自分のソウルジェムを見て確信した。
「皆、キュゥべぇに騙されている!!」
「はぁ?何?それ?キュゥべぇがそんな嘘を付いて何か得するの?」
新たに始めた時間では更に仲間が増えていた。
魔法少女として新たに仲間になったさやかはほむらのその言葉を酷く疑っていた。
「た、確かにそうだけど…」
「それに、妙な事吹き込んで、あたし達の仲間割れでもさせたいの?」
「アンタ、まさかあの杏子ってヤツとグルなんじゃないでしょうね?」
そう言ってさやかはほむらの事を睨んでいた。
ほむらは謂れの無い疑いを掛けられたじろいでいた。
それをマミが制していた。
176 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 14:44:52.50 ID:ugaQDEsQ0
「止めなさい、美樹さん」
「暁美さんだってそんな事望む訳ないわ」
「そ、そうです…」
「そうだよ、さやかちゃん、それこそ仲間割れだよ」
そう一斉放火を浴びてさやかは黙っていたが、頭を掻きながら悪いと言って話を続けた。
「…でもどっちにしろ、あたしこの子とチーム組むの反対だわ」
「いきなり目の前で爆発されたら溜まったもんじゃないの、今まで何度巻き添え食らいそうになった事か…」
さやかはそういうと、ほむらを片目のみでジト目睨みをしていた。
それにほむらは、しょんぼりしながらも、善処すると言って事なきを得ていた。
ただ、ほむらはさやかとはあまり仲良くなれそうにない、とも思っていた。
177 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 14:45:40.18 ID:ugaQDEsQ0
その後、ほむらは色々な所から武器を調達してきた。
専ら人に言える様な所ではないが、様々な武器を手に入れ、それの使い方を調べ、さやかと共に戦う為に練習していた。
爆弾の精度も上がり、更に強力にし、魔法少女としても万全の体制を維持できるほどになっていた。
だが。
「テメェ何モンだ!」
「さやかに、何をしやがった!!」
ほむらが見たのは、前の世界の最後の方で見た、魔法少女の最後とほぼ同じ物であった。
ソウルジェムが濁り、グリーフシードに変わり、そこから魔女が生まれる。
疑心から確信へと変わった瞬間でもあった。
「さやかちゃん!やめて!わたし達に気が付いて!」
「キャァ!」
倒れ込んだまどかに幾つもの車輪が飛び込んで来た時、時は『止まった』。
ほむらが止めたのだった。
ほむらは使い方を覚えた拳銃で狙いを定め、一発一発を正確に車輪に向けて撃ち出した。
その弾丸は、止まった時の中で命中する寸前に止まり、ライフリングを空中に走らせたままになっていた。
そして、盾の中から特性の爆弾を取り出し、タイマーを起動した。
178 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 14:46:15.38 ID:ugaQDEsQ0
「…美樹さん、御免なさい」
そう呟くと、時は動き出した。
飛び込んだ銃弾は全て車輪に命中し、悉く破壊し、まどかを助けた。
発動した爆弾は瞬時に豪炎でさやかだった魔女を包み込み、焼き滅ぼした。
「さやか…クソッ!」
「チクショウ…こんな事って…」
「酷いよ…あんまりだよ…」
「……。」
ほむらは確かに哀しかった。
だが、信じてもらえなかった事が一番哀しくもあった。
その時、黄色いリボンが地面から出てほむらを拘束し。
それと同時に、杏子のソウルジェムが撃ち抜かれて砕けた。
179 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 14:46:59.45 ID:ugaQDEsQ0
「な…」
「うぅ…!」
「ま、マミさん!?」
「ソウルジェムが魔女を生むのなら!みんな死ぬしかないじゃない!!」
「貴方も!私も!!」
涙を流しながら、マミは正確にほむらのソウルジェムを撃ち抜こうとした。
だがそれよりも前に、マミのソウルジェムがまどかによって撃ち抜かれていた。
「あ…」
マミの最後はあっけなく、そのまま倒れてしまった。
まどかはその場に泣き崩れ、ほむらが寄り添った。
「イヤだよぉ…もうこんなの…」
「…大丈夫だよ、一緒に『ワルプルギスの夜』を倒そう、ね?」
生き残った魔法少女二人は、お互い更に生き抜く事を涙に濡れながら誓い合っていた。
180 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 14:47:38.71 ID:ugaQDEsQ0
カチッカチッカチッカチッ
時計の針はただ時を刻み続ける。
「…グリーフシード、残っている…?」
「ううん」
「そっか…これでもう私達、お終いだね」
二人で『ワルプルギスの夜』を倒したのまでは良かった、だがその後の事はまったく考えておらず。
今二人はソウルジェムを濁らせて最期の時を迎えようとしていた。
「ねぇ、このまま二人で魔女になってさ、何もかも滅茶苦茶にしちゃおうか…」
「嫌な事とか、悲しい事とか全部」
「何もかも無かった事にしちゃえる位に壊しまくってさ…」
「それはそれで…良いと思わない…?」
朦朧とした意識の中で、鉱物同士がぶつかる、無機質な音が聞こえてきた。
その音に顔を向けると、まどかがグリーフシードを持ってほむらのソウルジェムを浄化していたのだ。
181 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 14:48:20.63 ID:ugaQDEsQ0
「ゴメンネ、ほむらちゃん」
「わたし、嘘付いちゃった」
「一個だけ取っておいたんだ」
「な…!どうして私なんかに!」
まどかはほむらのソウルジェムが浄化されるのを見届けると、その場に倒れこんでしまった。
ほむらはまどかを自分の胸に抱き寄せていた。
「へへ…ほむらちゃんはさ…過去に戻れるんだよね…」
「だからさ、こんな終わりにならないように、歴史にならないように…」
「お願いしたいの…」
息も絶え絶えにまどかは告げた。
「キュゥべぇに騙される前の…馬鹿な私を…」
「助けてくれない、かな…」
「約束する…!」
「何度繰り返しても!絶対に貴方を助けて見せる…!!」
その言葉に、まどかは安堵を零していた。
「良かった…グゥ!!」
182 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 14:49:21.64 ID:ugaQDEsQ0
「あぁ!鹿目さん!」
そう言うと、まどかは苦しみ出し時間が来てしまった事が分かった。
まどかは焦点の合っていない目でほむらを見つめていた。
「あと…最後にね…もう一つだけ、お願いして良いかな…?」
「私…魔女にだけはなりたくない…!!」
「嫌な事や辛い事はイッパイあったけど」
「守りたいものが…この世界には沢山あったから」
「……うん…!!」
ほむらは、変身するとまどかが持ち上げたソウルジェムに拳銃で狙いを定めていた。
「まどか…!!」
その言葉を聞くと、まどかは以前の世界でも見せた変わらない笑顔で呟いていた。
「ほむらちゃん…やっと…やっと名前で呼んでくれたね…」
「う…れしい…な…」
ほむらはただ泣きながら引き金を引くしか出来なかった。
「うぐぅうううううううううう!!!!」
183 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 14:52:12.65 ID:ugaQDEsQ0
カチッカチッカチッカチッ ガシャン!!
時計の針は止まり、高速で針を巻き戻して行った。
病室のベッド。
何度も見た光景を再び始め。
ほむらは立ち上がり姿見の前にまでやってきた。
そして自分の瞳にソウルジェムを翳し、魔力で持って強化した。
「誰も未来を信じない…誰も…未来を受け止めない」
「だったらあたしは」
「もう誰にも頼らない」
「そして、まどかは魔法少女にさせない…!」
「絶対に…!」
そうほむらは決心し、病室を後にした。
まどかとの約束を守る為に。
カチッカチッカチッカチッ
時計の針は只進み続ける。
184 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 14:52:47.15 ID:ugaQDEsQ0
「まどか」
「うえ!誰!?」
「そんな事はどうでも良いの、貴方に奇跡を約束して取り入ろうとする者が現れても」
「決して、言い成りになっては駄目」
「え…?あの…」
その後のほむらは今までの周回で得たノウハウを全て生かし、武器を調達、爆弾の製造。
魔女の討伐と、全てを無駄なくこなして行った。
自衛隊の武器庫、極道の詰め所、港湾に密輸されたコンテナ。
様々な武器、弾薬を集め、知り、覚えた。
全てはまどかを救う為、まどかを助ける為。
それだけの為に、ほむらは戦い続けた。
「誰かに分かってもらう必要もない」
「そして、今度こそ…『ワルプルギスの夜』を…」
「この手で…!」
185 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 14:53:33.74 ID:ugaQDEsQ0
結論から言うと、『ワルプルギスの夜』は強すぎた。
この時の為に準備した物全てを注ぎ込んでも全く効いた様子を見せず。
ただ、空に浮かんでいた。
「くっ!押される…!」
弾薬も底を付き、ほむらは盾での防戦に追いやられていた。
それをまどかは見ている事しかできなかった。
「酷い…!」
「彼女だけでは荷が重すぎたんだ」
最近知り合った生き物がそう呟き、まどかは絶望していた。
「こんなのって無いよ!酷すぎるよ!」
吹き飛ばされ、気を失いそうな意識を繋ぎ止めてほむらは彼方を見遣ると、そこにはキュゥべぇとまどかが見えた。
「…!?まどか!!」
「そいつの言葉に!耳を貸しちゃ駄目ぇえ!!」
186 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 14:54:10.54 ID:ugaQDEsQ0
「諦めては駄目だ、君ならばこの運命すら変えられる!」
「避けようの無い滅びも、嘆きも全て覆せば良い!」
「その為の力が、君には備わっているんだ!」
「騙されないで!そいつの思う壺よ!!!」
ほむらは力の限り叫んでいた、だがその言葉は届く事はなかった。
「私なんかでも、誰かの役に立てるの…?」
「こんな結末を変えられるの!?」
「勿論さ、だから、ボクと契約して…」
「魔法少女になってよ」
その言葉に、まどかは頷き、世界を救う為にその願いを叶えた。
「駄目えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!」
ほむらの言葉は虚しく響き、あとには桃色の輝きが世界を覆った。
「…本当に物凄かったね、変身したまどかは」
「まさか、『ワルプルギスの夜』を一撃で倒してしまうなんて…」
187 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 14:54:56.85 ID:ugaQDEsQ0
「…結果を見越した上で言っているの…」
そこに、まどかの姿は無く遠方に巨大な魔女の姿が見えるのみで。
世界は水底に沈んでいた。
その様を、ほむらはただ呆然と見つめていた。
「…遅かれ早かれ、結末は一緒だよ?」
「彼女は最強にして、最大の敵を倒してしまったんだ」
「当然、あとは最悪の魔女になるしかない」
「今のまどかなら、恐らく十日と経たない内にこの星を滅ぼしてしまうんじゃないかな?」
その無感情な目にはほむら以外の命を吸い上げる魔女の姿が映し出されているだけだった。
「さて!あとは君たち人類の問題だ」
「ボク達のエネルギーノルマはほぼ達成できたからね」
ほむらはおもむろに立ち上がると、魔女に背を向けていた。
その行動を不審に思い、キュゥべぇは質問していた。
188 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 14:56:39.85 ID:ugaQDEsQ0
「…?戦わないのかい?」
「えぇ…そうよ…」
「私の戦場はココじゃない…!」
「暁美ほむら…まさか君は…!」
カチッカチッカチッカチッ ガシャン!!
時計の針は止まり、高速で針を巻き戻して行った。
繰り返す。
私は何度でも繰り返す。
『ヒッ!』
例えそれが意味の無い事であっても。
あなたの為なら、私は永遠の迷路に閉じ込めれられても、構わない。
『ほむらちゃん!?』
私の、たった一人の友達。
『そいつを渡して頂戴。』
カチッカチッカチッカチッ
時計の針は只進み続ける。
今も変わらず、ただ正確に進み続ける…。
189 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 14:57:21.22 ID:ugaQDEsQ0
全てを話し、ほむらは少し肩の荷が下りたような気持ちだった。
淹れられた紅茶はすっかり冷めて、温くなっていた。
「これが、私の全てです」
「まどかを魔法少女にしないのが私の目的」
「今までも、そしてこれからも…」
そう言って話を締めくくると、全員俯いていた。
無理も無い、信じる事なんて出来ない、そうほむらが思っていた矢先。
ガシッ!とマミに両手を掴まれていた。
「暁美さん!貴方はそんな過酷な運命を辿っていたのね!?」
そう涙目で訴えるマミは、ある種の迫力があり、ほむらは生返事しか返すことができなかった。
「え!?あ、ハイ…でも、まどかの為なら」
「その心…!正しく清い泉のようだわ!」
「運命を凌駕し、抗う姿!」
「それはまるで、ジャンヌダルクの如き…」
190 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 14:58:02.07 ID:ugaQDEsQ0
「良いヤツ!ほむら!アンタとんでもないほど良いヤツだよ!!」
「それに比べて!別のあたしと来たら!どうしてやろう!一発分殴って…」
「ちょっ!さやか!確かにそうだったけど!今のさやかは仲良くしてくれているじゃない!」
何故か泣きながらヒートアップしだしたさやかをほむらは必死で説得した。
すると、少し落ち着いたのか、涙を拭って冷静に考えていた。
「そういえばそうだよね…でもあたしはほむら事を信じていなくて、それはあたしじゃなくて…ぬわー!!」
前言撤回、全く冷静ではなかった。
「えぇい!埒が明かん!こうなればほむら!あたしを殴れ!それでお相子だ!」
仕舞いにはテーブルに片足を立てての謎の見栄まで切る始末だった。
流石にほむらも思わず突っ込みを入れてしまっていた。
「意味分からない!何それ!」
「落ち着けさやか!あんたが殴られたって始まらないだろ!!」
「さやかちゃんも杏子ちゃんも落ち着いて!」
「これが運命石の扉の選択だったのね!!!」
「マミさんも!」
191 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:01:14.19 ID:ugaQDEsQ0
話を聞いていた4人は理解が追い付かなくなり、どうやら恐慌状態に陥っているらしい。
まどかも目を回して落ち着こうとしていた。
その様子を見て、ほむらは開いた口が塞がらなかった。
「……。」
「意外、と言う顔をしているね、ほむら」
その喧騒の中で、エクスカイザーのみが理解を示し、ほむらに話しかけていた。
「途轍もない力なんだね、君の能力は」
「そんな良い物でもないです」
「精々、少しの間、時を止めるのと、一定期間の時間を巻き戻す事位しか…」
そう言ってほむらは暗に自分を非力だ、と言っていた。
「だが、その力を駆使して今まで戦って来た結果は、見ての通り」
「君の行ないは間違いではなかった、と言う事だよ」
「え?」
192 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:01:50.23 ID:ugaQDEsQ0
エクスカイザーがどういう意図で言っているのか理解できず、ほむらは聞き返していた。
エクスカイザーはそのまま続けた。
「ほむら、君はまどかの為に戦っている」
「そう言っていたけど、その行動が、周りに影響したからこそ」
「今、さやかはマミ、それに杏子が此処に居るんだろう?」
「あ…」
そう言ってほむらはマミ達の方を向いていた。
本来なら、仲違いをしたり、死んでいるはずの人達。
そしてその中に居る、魔法少女じゃないまどか。
よくよく考えると、今まで在り得なかった光景だ。
その光景を理解できたのか、ほむらの目には少し涙が溜まっていた。
「でも、おかしいわね…」
「暁美さん、貴方が言った事に嘘偽りが無いのは分かるわ」
「でも一つだけ、不可解な事があるんだけど」
今まで錯乱していたマミが突然冷静になり、ほむらに話しかけてきたのだ。
「不可解な事、ですか?」
193 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:02:31.16 ID:ugaQDEsQ0
「えぇ、エクスカイザーさんの事が一回も話に出てきていないんだけれど?」
マミはエクスカイザーに対して、非礼を詫びる様に目線を向けていた。
そう言われて、まどか達はそう言えば、と頷いていた。
「そうですよね、杏子が出てこなかったりするのは判るけど…ほむらは今まであった事が無いの?」
後から杏子がさやかに組み付いていたが、気にせずにほむらに聞いてきていた。
「それなの…彼とは今までのループで一度もあった事が無いの」
「不思議ね…」
「今までのループでは存在し得なかった存在、なのかしら?」
その疑問にはエクスカイザーも同意していた。
「あぁ、どうしてまどか達と会っていなかったのだろうか?」
「宇宙技術を以ってしても、タイムリープは未知の技術だから調べようも無いからね…」
「…私も思ったんですけど、さやかが魔法少女にならなかったりした事もあったから、それに近い物なんじゃないかな…って」
「成程…」
194 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:03:03.78 ID:ugaQDEsQ0
そう言ってほむら、マミ、エクスカイザーの三人は納得し、唸っていたのだが、そこに杏子が割り込んで来た。
「小難しい事はあたしには分からねぇけどよ、これから如何するんだ?」
「ほむらの言い分じゃ、あたし達の戦いが終っている様には見えないけど?」
「そう、まだ『ワルプルギスの夜』が残っている…」
ほむらの顔は険しく、その魔女が今までと桁違いだというのを、如実に示していた。
「ほむらちゃん、そんなに強いの…?」
「強いなんて物じゃない、次元が違いすぎるの」
「私の力じゃ、如何にも…「なら、答えは簡単ね」
ほむらの言葉を遮り、マミが喋り出した。
全員、何かマミには秘策があるのか、と思い視線を向けていた。
「特訓をしましょう!」
「幸い、この場に魔法少女は4人も居るし、お互いの弱点を探る絶好の機会だと思わない!?」
195 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:03:41.73 ID:ugaQDEsQ0
「と、特訓…?」
その言葉に一同絶句していた。
マミは名案とやらを提示したと言わんばかりのドヤ顔をしていた。
「特訓に適した場所は幾つか知っているわ」
「それに、美樹さんの能力はそのままならば、穢れを吸い出す事ができるんじゃない?」
「そうなら、特訓効率が格段に上がると思うんだけれど」
さやかを向きながら、マミはさやかに対する質問をしていた。
ただ、さやかも如何なのか首をかしげていた。
「分からないです、確かに杏子の怪我を治せたけど、穢れを吸い出すのまで出来るかどうか…」
「なら、あたしのソウルジェムの穢れ吸ってみれば良いんじゃない?」
さやかの疑問に杏子が割って入って来た。
その手には、少し濁ったソウルジェムが置かれていた。
「杏子…」
「信じるんだろ?だったらあんたも自分の力を信じな」
「……。」
196 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:04:15.02 ID:ugaQDEsQ0
その言葉に、さやかは頷き。
杏子のソウルジェムに触れて、意識を集中した。
すると…。
「出来た…!」
見る見る杏子のソウルジェムは輝きを取り戻して行ったのだ。
濁りはそのままさやかに吸い込まれて行った
「決まりね!」
「暁美さん、美樹さん、佐倉さん」
「これから特訓よ!」
「ちょ!特訓って!」
「何する気なんですか!?」
ほむらの言う事も正しかった。
いくら特訓と言ってもそれで『ワルプルギスの夜』を倒せるとは思えなかったからだ。
だが、マミはその言葉に自信を持って切り替えしていた。
197 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:04:55.07 ID:ugaQDEsQ0
「何って…決まっているじゃない?」
「必殺技の練習よ!!」
「なん…だと…?」
「新必殺技を考えるのよ!」
「『ワルプルギスの夜』にも敵う!新必殺技をね!」
「美樹さん!貴方の訓練にもなるわ!」
そう言いながらマミはさやかを指差していた。
さやかも自分を指差して驚いていた。
「あ、あたし!?」
「そう、美樹さんは佐倉さんや、暁美さんと比べると、どうにも実戦経験が浅いから」
「今回の特訓でその穴を埋めようとも思っているの、どう?」
マミはさやかに同意を求める為にさやかに向いていた。
それにさやかは考える様に顎に手を添えていた。
「う〜ん…」
「良いと思いますけど、時間は如何するんです?」
「『ワルプルギスの夜』までそう無いんじゃないんですか?」
198 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:05:38.94 ID:ugaQDEsQ0
「そうだよ、あたしはともかく、あんたらは学校があるんだろ?」
「そんなに時間を割けるのかよ?」
「それは問題ないわ、重要なのは暁美さん」
「『ワルプルギスの夜』が来るまで、あとどれ位あるの?」
「え!?あ、あと…まだそれなりには…」
「2週間は無いですけど…」
その言葉を聞いて、マミは頷くと、これからの予定を語りだした。
「みんな、聞いて頂戴」
「これから、『ワルプルギスの夜』を打倒する為の特訓をしたいと思うの」
「期間は『ワルプルギスの夜』が出てくる前日まで」
「学校のある日は放課後から、土日はフルで特訓すれば、それなりの成果が出ると思うんだけど」
「幸いにも明日から連休、異論は無い?」
「無いですけど…」
「休みの日はどこに集まるんですか?」
そう質問するさやかにマミはう〜ん、と悩む素振りを見せていた。
「そうね…」
「暁美さん、貴方の家にしましょう」
「ハイ……ゑ?」
199 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:06:17.59 ID:ugaQDEsQ0
突然の提案に、ほむらは頷いた後にまた聞きなおしていた。
「聞こえなかったの?暁美さん、一人暮らしでしょ?」
「だから、休日にはそこにお泊まり会をしながら、特訓をするって言ったの」
「明日からちょうど休日だし2日は根を詰められるわよ!!」
その言葉に驚いたのは、ほむらだけであった。
「ちょ!そんな話聞いてないです!」
「第一、なんで私の家なんですか?!」
「あら?今までずっと秘密を持ち歩いていたのに、ココに来てその態度?」
「これはある意味、暁美さんへの罰ゲームみたいなものと思って欲しいんだけどなぁ?」
そう言って半目でマミはほむらを横目で見ていた。
秘密にしていた事を言われると、ほむらも流石に気にしているのか黙りこくってしまった。
「そんな顔しないで、私はいじめる為に言ってる訳じゃないのは分かるでしょ?」
「今まで、暁美さんが一人で戦ってきたのだからその前準備、今回はみんなで戦いましょう?」
200 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:06:58.25 ID:ugaQDEsQ0
マミはほむらに協力する意味で握手を求めてきた。
それを見て、ほむらは手をとって良いものか迷ってしまっていた。
手を伸ばしたは良いものの、手が宙を彷徨っているのを見て、今まで黙っていたまどかが動いた。
ほむらの手を掴むと、マミの手に添えるように置いた。
「ハイ、ほむらちゃんこれで良い?」
「ま、まどか」///
「有難うね、鹿目さん」
マミがにっこり笑っていると、さやかと杏子の手も重ねられてきた。
「3人だけでずるい〜」
「あたしも混ぜてよ」
「さ、さやかが一緒にやるんなら、あたしもやらせてもらうよ」///
「なによぅ?赤くなっちゃって〜?」
「ふふっ、仲間はずれになんかしないわよ?」
「みんな仲間なんだもの」
そう言いながら5人で手を合わせていた。
すると、5人揃ってエクスカイザーを見つめた。
201 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:07:57.37 ID:ugaQDEsQ0
「ほら、何してんだよ」
「アンタも早くしな?」
そう言って杏子はエクスカイザーに手招きをしていた。
その仕草に、エクスカイザーは少し戸惑っていた。
「良いのかい?私はただ君達に「こまけぇこたぁ良いんだよ」
「仲間かどうか、それだけだろ?」
「だろ?まどか」
杏子がそう言ってまどかを向くと、まどかは笑顔で頷いていた。
「うん!」
「エクスカイザーさんは私達の仲間だし、私の友達だもん」
「そうよ、貴方が居なければマミさんを助ける事も出来なかっただろうしね」
「あたしだって、エクスカイザーが居なかったらこうなっていなかったかもしれないしね…」
「私が今こうしているのはエクスカイザーさんが居たからなんです、あの時助けてくれた勇者さん」
「あたしには…何にも無いけど、さやかやこいつ等が信じるのならあたしも信じるよ」
202 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:08:39.23 ID:ugaQDEsQ0
それぞれが思いを語り、エクスカイザーに催促をしていた。
その思いにエクスカイザーはそっと5人の手の上に自分の手を載せて解答した。
「有難う、エクスカイザーさん」
「礼を言うのは此方だよ、まどか」
「そうまで言って貰えるとは思っていなかったからね」
「それだけの事をしてくれたんですよ、エクスカイザーさんは」
「少し恥ずかしいね、けれど、それならマミの言う特訓も手伝わないとね」
エクスカイザーがそう言うと、マミは嬉しそうにしていた。
本来、マミの方から頼もうと思っていたらしく、すまなさそうにもしていた。
「よぉし!明日から『ワルプルギスの夜』を倒す為に頑張りまっしょう!!」
「「「「「オー!!!」」」」」
そう言ってマミの音頭に合わせて、全員で腕を上に挙げていた。
203 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:09:22.45 ID:ugaQDEsQ0
翌日、昼を回った頃、マミの提案通り、まどかはほむらの家にやって来ていた。
今まどかは、ほむらの家の玄関前にいる。
両手で旅行用のかばんが提げられており、泊まり用の衣服等が入れられていた。
「そう言えば服だけ持ってきちゃったけど、ご飯とかどうするんだろう…?」
まどかは事前に食事の事を聞くのを忘れているのに気が付いた。
唸っていると玄関が開き、中からマミが出てきた。
「あら?鹿目さん如何したの?みんなもう集まっているわよ?」
「あ!マミさん、こんにちわ」
律儀に挨拶をすると、マミは笑いながら挨拶を返してきた。
「ふふっ、こんにちわ」
「さぁ、上がって、お昼はもうすんだ?」
「は、ハイ、その、お昼以外は如何するんですか?」
204 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:09:55.15 ID:ugaQDEsQ0
「あぁ、何だその事ね」
「今は先にみんなと顔合わせしましょ」
そう言ってマミはほむらの家の奥に消えていった。
「…お邪魔しま〜す」
まどかも意を決して、玄関を跨いで入っていった。
中に入ると広々とした空間に不可思議なオブジェが飾られた部屋があった。
恐らくリビングであろう。
その部屋の中心にある、半円型のソファーに他の全員が揃っていた。
「お、遅いぞ、まどか」
「ゴメン、色々準備していたら遅くなっちゃった」
テヘ、と言ってまどかは持って来たバッグを両手で前に持ち上げた。
それを見て杏子は、ほえ〜と間抜けな声を上げていた。
「たまげたねぇ、そんなに持ち込んでどうする気だい?」
「どうするも何も、着替えとか、色々持ってきたんだよ?」
「杏子ちゃんは何か持ってきたの?」
205 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:10:35.61 ID:ugaQDEsQ0
まどかが聞き返すと、杏子はあぁ〜、とさっきと似たような声で返答していた。
「いや、あたしって宿無しなモンだからさ…」
「持ち物はこの身一つってヤツだよ」
そう言って前にも見た事のあるパーカーを摘んで延ばして見せた。
まどかがすまなさそうにしているのを見て杏子は笑って言った。
「別にアンタが気に病むことじゃないよ」
「これでもあたしは人生を楽しんでいるんだから」
「そうだよ、まどか」
「杏子がそう言っているんだから、気にする事は無いよ?」
アンタは気にしなさすぎ、と言われながらさやかは杏子とじゃれ合っていた。
その光景を少し見てからほむらに話をした。
「そう言えばほむらちゃん」
「これから如何するの?」
「それなら今さっき決まったところよ、これからマミさんについて行って特訓をするの」
「皆揃ったから行きましょう」
206 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:11:23.12 ID:ugaQDEsQ0
その言葉に頷くと、全員揃ってほむらの家から出て、一路マミの後に付いて行った。
まどかは、何処で特訓が出来るのだろうか?と内心ワクワクしていた。
数分歩いて行くと、そこに廃ビルの入り口が開いていた。
「ココ…ですか…?」
「えぇ、今日はココで特訓しましょう」
「明日は、朝から私の秘密の場所でって事で」
そう言うとマミは私服から魔法少女になっていた。
「今日は美樹さんの特訓を中心に、互いの連携なんかを強化して行こうと思うの」
その言葉を聞いてさやかはあからさまに嫌そうな顔をしていた。
「うへぇ、こりゃキツイなぁ…」
「お手柔らかにお願いしますよ?」
「…ヘッ、こりゃ手厳しく行きますか」
「さやか、手加減なんかすると思うなよ?」
207 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:12:15.46 ID:ugaQDEsQ0
「…ですよね〜」
二人はほぼ同時に変身すると、さやかの姿が変わっている事に気が付いた。
その姿は前に魔女を一撃で叩き切った時の物、そのままであった。
「あれ?さやかちゃんの姿、前のままだね」
そう言われて、さやかは自分の服を見るとやっと気が付いたのか少し驚いていた。
「うお、あの時のままじゃん!」
「前のも気に入っていたんだけどなぁ」
「剣は…変わっていない…」
そう言いながらスカートの裾をつまみながらその場でクルリと回ってみていた。
腕と足に付けられた白金の鎧がきらりと輝いていた。
その後、剣を出してみると、サーベル型の以前の物と変わらない剣が出てきた。
「良いじゃない、美樹さんカッコいいわよ?」
「私もそんな装備欲しいなぁ…」
208 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:13:04.43 ID:ugaQDEsQ0
「あはは、それはそうとマミさんあたしはこのまま杏子と始めちゃって良いんですか?」
「準備は良いんですけど?」
「そうね、最初は佐倉さんと…いえ、ちょっと待ってね」
「私は暁美さんとのコンビネーションを確認するから」
「鹿目さんエクスカイザーさんは?」
「ハイ、ちょっと待って貰えますか?」
まどかは持っていたバッグを地面に降ろすと、ファスナーを開けて中に手を突っ込んでいた。
すると、中からラジコンになっているエクスカイザーが出されて直ぐ横の地面に置かれた。
「御免なさい、窮屈じゃなかったですか?」
「いいや、日中にラジコンが一台で走り回ると怪しまれるからね」
「別に問題は無かったよ」
「ところで私は如何すれば良い?」
エクスカイザーは即座に変形すると、マミの方に歩いて行った。
「エクスカイザーさんは最初に美樹さんの相手をお願いできますか?」
「キングエクスカイザーなら同じ剣使いだし、参考になるんじゃないかなって」
209 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:13:39.67 ID:ugaQDEsQ0
「なるほど、それなら手加減は出来ないな」
「キングローダー!」
マミの言葉を了承し、即座にキングローダーを召喚し、そのままキングエクスカイザーに合体した。
「巨大合体!キングエクスカイザー!」
「さぁ!さやか、遠慮なく掛かって来るんだ!」
息巻くキングエクスカイザーを見て、さやかはため息を付いていた。
恐らく、自分はコッテリ絞られる事は免れないだろう、と。
「はぁ、仕方ない」
「ならあたしも気合入れなくちゃね!」
そう言って剣を剣を構えてキングエクスカイザーと正面から対峙した。
「あ、杏子ごめん、キングエクスカイザーの後になっちゃったけど…」
「構わねぇよ、さっさと絞られな」
「ま、言えるのはあたしとやり合う前にへばるなよ?ってだけだ」
「頑張りな」
ニヒヒ、と笑ってさやかの様をジックリ見る腹積もりの杏子であった。
その笑みに、さやかは不適に笑うとキングエクスカイザーに向き直った。
210 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:14:20.25 ID:ugaQDEsQ0
「さぁ!来い!!」
「…あっちはもう始めた見たいね」
「それじゃあコッチも始めちゃいましょ」
「ハイ!でも、コンビネーションって何をするんですか?」
「あっちはスパーリングメインで、コッチは作戦メインて所かしら?」
「実際、『ワルプルギスの夜』と戦ったのは暁美さん貴方だけだから」
「貴方の話しと照らし合わせてもう一度作戦を練ろうと思うの」
「その後、一度手合わせしてみましょう」
そう言ってマミは笑顔を作った。
ほむらもそれに薄い笑みを作って返していた。
「ハイ、それじゃあ、お願いします!」
「ほむらちゃん、みんな、頑張ってー!」
211 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:18:05.15 ID:ugaQDEsQ0
まどかは魔法少女ではないから傍から応援する事しかできなかった。
だが、それなら力の限り応援してあげようと思っていた。
「まどかに声援を貰っちゃへばる訳にはいかないね!」
「あぁ、そうだな!全力で来い!さやか!」
「言われるまでも無く!」
そう言って二人は互いの剣に体重を掛けて鍔迫り合いを始めたのであった。
結果から言うと、さやかは良く頑張った。
だが、相手が悪すぎた、としか言い様が無かった。
ローテーションで手を変え品を変え全員で模擬戦を行なったのだが。
結果は…。
エクスカイザー 全勝
ほむら 3勝
マミ 2勝
杏子 1勝
さやか 全敗
212 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:18:51.43 ID:ugaQDEsQ0
となった。
さやかは全戦に渡ってあと少しと言う所まで肉薄したのだが、それでも敵わなかった。
最終的に、さやかは心身ともに疲労し。
「アダジノガダダバボドボドダァ!」
とまどかに縋り付いて絶叫していた。
ほむらは時を止める能力を最大限に生かし相手の隙を狙って勝利を治めていたのだが。
キングエクスカイザーと対峙した時、その戦法を逆手に取られて敗北する、と言うとてつもないものだった。
さらに作戦を練り『ワルプルギスの夜』に対抗出来得る策を各自で討論する形にもなっていた。
そうして時間も過ぎ去り、時計は夜を指していた。
さやかは疲労困憊、と言う体で仰向けになってコンクリートの地面に寝そべっていた。
「はぁ〜、本当に疲れた〜」
「ったく、お疲れさん」
「ほらよ」
そう言って杏子はお菓子を差し出すと、それの腕をさやかが握り返して立ち上がっていた。
杏子は以外だったのか少し顔を赤くしていた。
「さて、良い時間だし、今日はココまでにしましょう」
「暁美さんの家で夕食にしましょう」
213 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:19:36.06 ID:ugaQDEsQ0
その言葉に真っ先に反応したのは杏子であった。
マミはやれやれ、といった感じでいた。
「よぉーし!飯だぁ!ってマミ?如何するんだ?」
「あたし達、何にも持って来てなんだけど…」
「それには及ばないからよ」
そう言ったのはほむらであった。
ほむらはそのまま続けた。
「あなた達が来る前にマミさんと一緒に晩御飯の支度をしておいたのよ」
髪を掻き揚げてほむらは不敵に笑っていた。
その様を見て、まどかは普通に驚きを表していた。
「ほむらちゃんすごぉい!」
214 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:20:33.80 ID:ugaQDEsQ0
「これくらい如何ってこと無いわよ、マミさんもいたしね」
「エクスカイザーさんもありがとうございます」
「いいんだよ、ほむら」
「それより驚いたのはさやかだよ、あの短時間でマミや杏子に追い付く位にまで成長したのだから」
「センスがあった、と言えるだろうね」
さやかはそれを聞いて、照れていた。
照れ隠しに頭を掻いていたが、顔が赤いので直ぐにわかった。
「よかったね、さやかちゃん」
「いやぁ、あたしもまだまだ捨てたモンじゃないって事?」
「煽てても何もでませんよぅ?」
「ま、実践で動けなくちゃ意味ないけどな」
「それでも驚きだったね」
「ん、んもう杏子まで…!」///
さやかは、そういいながら杏子の二の腕を思い切り叩いていた。
杏子は痛みでその場に腕を抱えて蹲ってしまっていたが、さやかは浮かれてそれどころじゃなかった。
215 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:21:10.03 ID:ugaQDEsQ0
「さて、行きましょう」
「ご飯が待っているわよ」
マミの言葉で全員でまたほむらの家に向かったのであった。
全員が互いに話をしてコンビネーションの事や色々な事を話しながら歩いて行った。
夕食はマミの言ったとおり非常に豪勢なものが揃っていた。
マミ曰く、きょうの日中、食材を買ってからほむらの家に来た、との事だ。
ほむらは出前を頼んでも良い、と言っていたのだが、マミが聞かなかったらしい。
「自分から言い出したんだもの、これ位しなくちゃ」
「暁美さんにも手伝っちゃってもらったけどね♪」
そう可愛くおどけながら最後と思われる皿をテーブルに置いていた。
その様は、さながらバイキングか、満漢全席を彷彿とさせる様相であった。
まどかとさやかはその量に驚いて開いた口が塞がらなかった。
杏子はその料理を目を輝かせて涎を垂らして見ていた。
「それじゃあ食べましょう、杏子が待ちきれないって顔に書いてあるし」
216 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:21:48.69 ID:ugaQDEsQ0
ほむらの言葉を聞いて杏子は音速の速さで椅子に付くと何時の間にか取り皿を山盛りにして食べようとしていた。
「待ちなさい佐倉さん、みんなでいただきますをしましょう?」
「おっと、そうだった」
「ほら!あんたらも早く席に付きな!」
箸を持ちながらまどか達を呼ぶからマミに行儀が悪いと言われていた。
それでも楽しいのか杏子はずっと笑顔だった。
「あんな顔見せちゃって、あたし達もお相伴に預かりますか!」
「エクスカイザーも食べれるんでしょ?だったら一緒に食べよ?」
「ね?マミさん」
「ハイ!エクスカイザーさんもどうぞ!」
「箸とかの扱いは分かりますか?」
「「「「「「頂きます(まーす)!」」」」」」
そうして六人の食事は賑やかに始まった。
217 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:23:06.09 ID:ugaQDEsQ0
「む、中々にこの箸と言う物は難しいね」
「君達みたいに持つ事が出来ないよ」
「あ、あのエクスカイザーさん」
「良かったら私が食べさせても…」
「ん?良いのかい?でもマミも食べるだろう?」
「私も箸を使える様に…「いえ!お構いなく!」
そう言ってマミは鼻息荒くエクスカイザーに自分の箸で食べさせようとしていた。
最終的にエクスカイザーもその好意に甘える事にしていた。
「うん、こういう物もケーキとは違った美味しさがあるんだね」
「おいしいよ」
「は、ハイ!ありがとうござます!!」///
「……まどか、ハイ」///
その様を見て、ほむらは相するのが当たり前の様にまどかに箸を向けていた。
218 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:24:27.34 ID:ugaQDEsQ0
「ほ、ほむらちゃん…」///
「恥ずかしいよ…」///
「構う事は無いわ、ハイまどか、あーんして」
「あ…あーん」///
結局ほむらに押し負けてまどかは一口食べさせてもらった。
「美味しい?まどか」
「ん…おいしいよ、ほむらちゃん」///
「良かった…」///
二人で何とも言えない空間を作っており、傍のさやかは居辛そうにしていた。
「…なんでこんな空間が出来上がっているの?」
「マミさんも…まどかも…どういうことなの?」
219 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:25:10.66 ID:ugaQDEsQ0
「うんめぇー!!マミは良い嫁さんになるぜ!!」
「あら?嬉しいわ、ありがとうね佐倉さん」
「お代わりがあったら言ってね」
「お代わり!「早いわ!」
「あ、杏子ご飯付いてる」
さやかが指でご飯粒を取ってそのまま食べてやると恥ずかしそうに杏子は赤くなっていた。
「あ、わりぃ」///
「あ!マミ!そのから揚げとって!」
「ほむらも前にあるヤツとって!」
「全くうるさいわね」
「それにこれは青椒肉絲(チンジャオロース)よ」
「美味いから箸が進むんだよ!」
「それより取ってくれよ!そこの何とかって言うの」
「はいはい」
220 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:26:30.31 ID:ugaQDEsQ0
杏子の動きで隣同士の会話から、全体での会話に変わっていった。
マミは懐かしそうな顔をしながら茶碗を持って呆けていた。
「良いわね、こういうの…」
「久しぶりだわ、こんなに賑やかな食事は」
「そうなのか?それじゃ今度はあたしがアンタの家に行ってやっても良いけど?」
「エクスカイザーさん凄い!もう箸使いこなしている!」
「みんなの箸使いを見させてもらったからね、使い方が分かると面白い物だね」
「ほむらって結構料理うまい?」
「そんな事無いわ、一人暮らしが出来るレベルってだけ」
「そう言えばほむらの作ったのはどれなんだ!?」
「これか!」
「うん、美味しいね」
「エクスカイザーさん、此方もどうぞ」
食事は終始賑やかに進み、その日の夜は全員初めての事に疲れたのか静かに寝ていた。
221 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:27:24.82 ID:ugaQDEsQ0
翌日、朝早くからマミに起こされ、まどか達は目をシパシパさせながら朝食を頂いていた。
「マミさん〜、まだ朝の5時ですよ〜」
「何言っているの、特訓の朝は早いんだから」
「今日は1日中特訓するんだから覚悟しなさい!」
その言葉にさやかは蛙を潰したような声を出しながら朝食をとっていた。
そして朝食を終え、マミに付いて始発の電車に乗る為に全員揃って出発した。
今回マミは不可思議なほど重たそうな鞄を持っており、一同はその中身が気になっていた。
視線に気が付いたのか、マミは人差し指を立てて口元に近づけて言った。
「ふふっ、着いてからのお楽しみよ」
「それまでは内緒」
そう言って中身は全員に内緒で電車に乗り、目的地まで揺られる事になった。
電車に揺られる事数十分、更に電車から降りてバスに乗り換えて数十分。
停留所を5人揃って降りると、目の前には地肌を晒した巨大な山が聳え立っていた。
222 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:30:52.91 ID:ugaQDEsQ0
「すっご〜い…マミさん、ココは何ですか?」
さやかがそう聞くと、待ってましたと言わんばかりにマミは説明を開始した。
「ココは以前から、見滝原市の採石場として有名な所よ」
「墓石や、大型のビルの敷石なんかを此処から調達しているらしいの」
「観光スポット、まではいかないけれどその手の人には結構人気があるらしいわよ」
見滝原市の石材関連はこの採石場で取れている、との事らしい。
更に今日は業者が休みで、現在此処には誰も居ないとも言っていた。
「こういう所って、特訓には持って来いだとは思わない?」
「だから此処で特訓をしようって思ったのよ」
「広いし、自由に出来るし」
そう言ってマミは鞄を降ろして中身を開いていた。
全員の視線がその鞄に向けられると、マミが中から小型のテーブルを取り出していた。
レジャー等で使える四角いテーブルだ。
更に鞄の中からは重箱が現れて、中に食べ物があるのを窺わせていた。
「お昼ご飯よ、一区切りが付いたらみんなで食べましょう」
223 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:31:55.63 ID:ugaQDEsQ0
「はーい!それじゃあ始めちゃいますか?」
「えぇ、今日は対『ワルプルギスの夜』を想定した訓練にしましょう」
「それ様の武器も持って来たし…」
「良いわ、それじゃあ…」
「エクスカイザーさんと暁美さんは私の後付いて来て」
そう言うとマミは振り返り、前の方に歩いて行ってしまった。
ほむらとエクスカイザーは互いに顔を見ていたが、マミがやるのだから間違いは無いだろう。
と結論をし、付いて行く事にした。
「何をするんだいマミ?」
「あそこにちょうど見下ろす形になる高台があるから、そこまで移動しましょう」
「あ、エクスカイザーさんはドラゴンカイザーになってもらって良いですか?」
「それに暁美さんはその武器で持って私達で美樹さんたちを撃つの」
いきなりの発言に驚いていると、マミは補足の説明をした。
「私達は『ワルプルギスの夜』の攻撃を知らないわ」
「だから、暁美さんの支持で持ってその攻撃を再現してみようと思うのよ」
224 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:32:41.18 ID:ugaQDEsQ0
その提案に、エクスカイザーは成程、と唸っていた。
だがほむらは少し乗り気ではないようだった。
「でも、マミさん」
「エクスカイザーがドラゴンカイザーになって欲しいと言うのはどうしてなんですか?」
「簡単な事よ、ドラゴンカイザーは弓を扱える」
「弾幕は種類の多い方が訓練になるでしょう?」
「そういう意図があったのか、分かった」
「ドラゴンジェット!」
その掛け声と共に蒼い戦闘機が彼方から飛来し。
エクスカイザーを収納するとドラゴンカイザーへと合体を完了した。
「巨大合体!ドラゴンカイザー!!」
「ドラゴンアーチェリー!」
弓を構えると、そのままさやか達の方を向き、臨戦態勢に入った。
その様子を遠目から眺めていたまどか達は眼を細めて何が始まるのかを見極めようとしていた。
225 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:33:23.00 ID:ugaQDEsQ0
「ん〜?ドラゴンカイザーになった?」
「何始めるんだろ?」
そうさやかが呟くと、さやか、杏子、まどかの3人にマミからの念話が届いてきた。
(3人とも聞こえる?)
(今から訓練を始めるわよ?)
「お?マミか、一体どんな訓練を始めるんだい?」
(お昼までは対『ワルプルギスの夜』を想定した回避&迎撃訓練をしようと思うの)
(ローテーションで私と暁美さんペア)
(美樹さんと佐倉さんペアで相手に弾を撃ち込んでいくっていうのを考えたの)
(ココに到着したら交代って形にするから)
そう言いながらマミはさやか達に両手を大きく振って見せていた。
薄目でそれを確認していた杏子が口を開いた。
「なるほど、で、ドラゴンカイザーは如何するんだよ?」
226 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:34:08.51 ID:ugaQDEsQ0
(ドラゴンカイザーは私たちと美樹さんのチームが攻撃をし終わるまで一緒に攻撃を撃ち込んで貰うわ)
(その後に回避訓練の方に参加してもらおうと思っているわ)
「各チームが終わると、攻撃と迎撃を変えてローテーションか…」
「良いんじゃないかい?それなら何時までも攻撃ばかりでフェアじゃないとか無いし」
「杏子はオッケー見たいなんであたしもオーケーです」
(OK!じゃあ始めましょう)
(鹿目さんはテーブルの所で待っていて頂戴)
「ハイ、さやかちゃん、杏子ちゃんがんばって!」
「「おう!」」
まどかが下がるのを確認し。
その二人の間にマミの放った銃弾が飛び込み、特訓は開始された。
「行くよ!さやかぁ!」
「おうよ!」
227 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:34:56.74 ID:ugaQDEsQ0
爆煙の中から変身した二人が飛び出て、マミ達のいる高台まで全力で疾走した。
その様子を見てマミは一安心していた。
「今の一撃で戦闘不能にならないかちょっと心配だったけど」
「杞憂だったみたいね」
そう言うとマスケット銃を大量に召喚し、その全てを走ってくるさやか達に向けていた。
その姿勢から全弾を雨霰の様にお見舞いするのかと思いきや、数丁を纏めて撃ち込み、再度撃ち込んだ分の銃を召喚。
そして他の銃を数丁纏めて撃ち込むと言う戦法を取っていた。
「ただ単純な絨毯爆撃だけじゃ能が無いし、それに面白味も無いしね!!」
良い笑顔を浮かべながら、マミは銃弾の雨をさやか達に撃ち込んでいた。
その様を見てほむらは少し、恐怖を感じていた。
「……と、とりあえずドラゴンカイザーも攻撃お願いします」
「あ、ああ、分かった」
「よし…行くぞ!」
228 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:35:35.03 ID:ugaQDEsQ0
ドラゴンカイザーは矢を宛がって引き絞り、和弓の如く放つと、その矢はさやかに見る見る吸い込まれる様に進んでいった。
さやかはそれに気が付かず、そのまま頭に命中してしまうのではないか、と思われたその時
横から槍の穂先が伸びてきて、その矢を弾いたのだ。
「!?杏子!?」
「ボサッとすんなよ!」
「このまま突っ込むぜぇ!」
杏子はそのまま、一心不乱に走り抜けていった。
少し立ち止まっていたさやかも、負けじと後について走り出していた。
そして銃撃を掻い潜り、二人はマミたちの真下にまでやって来ていた。
「このままマミさん達の所まで一気に…!」
「そうは問屋が卸さないわよ!美樹さん!」
眼下に迫ったさやか達を前にしてもマミは余裕の表情を崩していなかった。
しかもあろうことか、銃すら構えず、胸を張って仁王立ちをしていた。
229 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:36:07.05 ID:ugaQDEsQ0
「油断しすぎですよ!マミさん!」
「このまま一気に!」
「掛かったわね!」
マミがそう一言うと、片腕を上げて何かの支持を誰かに送った。
すると…。
「?…え?な…!」
マミの両脇から大きな岩が顔を見せて、そのまま転がり落ちてきたのだ。
「その岩を攻撃だと思って避けるなり何なりしなさい!」
「出ないと潰されるわよ!」
「「ギャアァァァァ!!!」」
忠告が遅かった所為か、さやかと杏子は絶叫をしながら駆け上がっていた崖をそのままの勢いで下っていた。
その様子には流石に驚いたのかマミは崖上から身を乗り出してさやか達に叫んでいた。
230 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:36:44.54 ID:ugaQDEsQ0
「ちょ、ちょっと!」
「何で逃げるのよ!壊すなりしてコッチに来なさいよ!」
下の地面で膝に手を付いて息を荒げていたさやか達だったが、杏子が怒鳴り声を張り上げていた。
「フザケんな!!」
「あんな物転がってきたら誰でも驚くわ!!」
流石の杏子も驚きを隠せなかったようだ
片足で地団太を踏みながらマミに文句を付けていた。
「何言ってるの!特訓といえば大岩が転がってくるのを避けたり壊したり受け止めたりするものでしょう!?」
「分けのわかんねぇ事言ってんじゃねぇよ!!」
「分け分からないとか無いでしょう!」
「昔から特訓といえばこういう物なの!」
「だから文句言わずにココまで這い上がってきなさい!」
互いに互いの言い分に分けが分からない、とがなり立てていたが、二人とも引き下がらない状態であった。
そこに今まで息を整えていたさやかが幽鬼の様に立ち上がり杏子に声を掛けていた。
231 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:37:31.69 ID:ugaQDEsQ0
「杏子…やろう…」
「はぁ!?アンタこんなふざけた…!」
「私に良い考えがあるの…」
そう言うさやかの顔は影が強く、杏子は以前魔女化した時とは違う寒気を味わっていた。
マミがプリプリ怒っているのを後ろから見ていたほむらはこれから大丈夫なのか、と少しだけ不安に思っていた。
「…さやかの言いたい事は分かった」
「本気なんだな…?」
「勿論」
「見せてやろう…杏子」
さやかはそう言って一目散に崖を駆け上って行き、マミを見据えていた。
「フンッ、やっと来たのね」
「それじゃまた味わいなさい!」
「暁美さん!ドラゴンカイザー!」
232 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:38:20.94 ID:ugaQDEsQ0
マミの合図に、二人は大岩を押して、再びさやか達に向けて落としたのであった。
だが、今度のさやか達は臆せずに大岩に突っ込んでいき、うまく紙一重でかわしながらマミの所まで上って行った。
さやかの気配が変わり、マミは少し考えてから自分の銃を出し波状攻撃を加えて攻勢を強めた。
「良い動きよ!でも、これはどう!」
流石に大岩と銃弾の嵐に見舞われ少し速度が落ちたが、それでも二人は前進をやめず。
さやかは一気に垂直に飛び上がるとマミに一撃、剣を振り下ろした。
マミはその一撃を予見していたのか、撃ち終えた銃を捨てずに持っており、銃身でそのさやかの一撃を受け止めた。
「……。」
「…やるようになったわね、美樹さん」
「それじゃあ、交代ね」
さやかの一撃を押し返し、マミは笑顔でそう言っていた。
対するさやかは、終始無言で表情も見えていなかった。
「暁美さん、準備をお願い」
「今度は私達がここまで来る番だから」
「ドラゴンカイザー、美樹さん達と一緒にお願いします」
233 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:39:21.16 ID:ugaQDEsQ0
マミは深くお辞儀をすると、そのまま下に降りていき、目の前から姿を消した。
「…ドラゴンカイザー」
「さやか達が暴走しないようにお願いします…」
ほむらは一言そう言ってマミの後を付いて降りていった。
ドラゴンカイザーも不穏な空気を察しており、さやかには気を付けていた。
だが。
「ドラゴンカイザー」
抑揚の無い声色にドラゴンカイザーも驚き、さやかを見つめていた。
「私達の…邪魔はしないで下さいね…?」
ドラゴンカイザーはこの時、地球の女性とは恐ろしいものだ、と思っていたらしい。
「さて、暁美さんも準備オーケーね?」
234 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:40:00.91 ID:ugaQDEsQ0
「ハイ、けど…大丈夫ですか?」
「さやかの様子が少しおかしかったようですけど…」
「大丈夫よ、特訓なんだし、これ位の事はしなくちゃね」
ほむらにそんな自身が逆に心配になり始めたとき、マミが先行して走り出してしまった。
暫く走っていると、さやか達が全く攻撃してこない事を不審に思い始めた。
「変ね…美樹さん達、どうして攻撃してこないのかしら?」
「さぁ…何かあったんじゃ」
ヒュン
と言う音と共に、何かが横を通り過ぎて地面に突き刺さっていた。
ほむら達が恐る恐る確認すると、其処には見知ったさやかの剣が突き刺さっていた。
ギギギと擬音が出そうな程で振り向くと、さやかと杏子は笑っていた。
凄い良い笑顔で、大量の剣と共に。
235 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:41:56.48 ID:ugaQDEsQ0
「さ〜て、いきますよ〜マミさ〜ん」
「当たって死ぬんじゃね〜ぞ〜」
「え?ちょ、死ぬって…」
わざと念話ではなく、大声を張り上げてからの投擲。
そしてマミの言葉はとんでもない速度で突っ込んできた剣にかき消され、さやか達はマジだと理解し。
二人の背中に嫌な汗が流れ始めた。
「あ、あれ〜?おかしいな〜、み、美樹さ〜ん?」
「マミさん…今はともかく…」
自分達に迫る剣の雨を見て、二人は死に物狂いで崖に向かう事にした。
「「キャアァァァァァァァ!!!!」」
「ハァーッ!ハッハッハッハ!!」
「怯えろ!すくめぇ!!」
「魔法少女の性能を生かせぬまま!死んでゆけぇい!!」
236 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:44:25.88 ID:ugaQDEsQ0
「さやか…それはやりすぎだよ…」
その攻撃は岩石エリアでも健在で、大岩と剣+何故かサンダーアロー、おまけに長く伸びた杏子の槍がピンポイントで襲う。
と言う、先ほどよりも難易度の高い物に変わっていた。
「そらそらそらそらそらそらそらそらそらそら!!!!」
「よっと!ほら!そぉりゃ!」
二人のコンビネーションはバツグンで、ほむらが時間停止を使えるのを思い出すまで全く進む事が出来ないでいた。
ほむらの能力でさやか達の下に付くと、さやかはあからさまに不満を零していた。
「ちぇーっほむらの能力ってずるーい」
「コッチが頑張って投げ込んでも意味無いんだもん」
「……。」
「ま、先にやったマミ達が悪いからな」
「これでお相子だよ」
「ほら、ドラゴンカイザーもボケッとしてないで」
「今度はあたし達と登る番だろ?早く準備しな」
「あ、ああ…分かった…」
237 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:48:04.23 ID:ugaQDEsQ0
ドラゴンカイザーは一度だけ振り返ると、マミとほむら二人の表情は影になっており見えなかった。
この時、ドラゴンカイザーは少しだけ後悔していた。
もう少しマミに忠告しておけば良かった、と…。
午前の特訓は途中からお互いのチーム同士で潰し合いの様相となっていた。
ドラゴンカイザーが突撃に回った所から、特訓はもうおかしくなっていた。
マミとほむらが本気で殺すつもりで銃撃し出したのである。
ほむらに至っては、迫撃砲やらバズーカまで持ち出してきて此方に止めを刺そうとまでしてきたのだ。
魔法と銃弾の暴風雨はさやか達への直撃コースであった。
その中、運良く死にはしなかったが、その後のさやか達の攻撃は当社比10倍はイケるレベルであった。
そして、お互いがお互いを殺そうと本気で行なうものだから、其処彼処で爆発と大岩と剣が散乱し。
採石場は戦場と化していた。
終いにはマミは泣きながら。
「みんな死ぬしかないじゃない!!!!」
等と絶叫して照準すら合わせずに乱射しているほどであった。
昼になり区切りが付いた時は全員が立つのすら億劫なほど疲れ果てていた。
ほむらが後からまどかにこの時の事を聞くと。
まどかは興奮気味に。
238 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:48:49.47 ID:ugaQDEsQ0
「凄かったよ!ほむらちゃん!!」
「あるで映画の撮影を見ているみたいだったよ!!」
と、少しハシャギ気味であった。
「はぁ…、ふぁんふぉいっふぃがふめふぇ」
ため息を吐きながらも全員で反省し、現在、用意されていた昼食を御馳走になっていた。
マミ曰く、早めに起きて拵えたのだそうな。
「御免なさい、わたしもアツくなりすぎたわ…」
そう言いながらマミはしゅんとしおらしくしていた。
「いや、あたしが真っ先に血が上っちゃったからいけないんです」
「それなら私が注意していたらこんな事にはならなったよ…」
「あんたの所為じゃないよ、さやかと悪乗りしちまったんだ、反省している」
「判っていながら事態を悪化させたのは私よ、御免なさい」
239 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:49:35.13 ID:ugaQDEsQ0
口々に謝罪を述べており、まどかは頭にハテナ浮かべていた。
どうしてエクスカイザーまで謝り倒しているのかな?と。
「でも、これだけ派手に特訓すれば成果はありませんでした」
「なんて事は無さそうね」
「それだけはホッとしたわ」
マミは胸を撫で下ろしていた。
それには一同同意の苦笑いをしていた。
「さて!気を取り直して食べちゃいましょう」
「食べ終わったら別の特訓をするから」
「…さっき見たいにはならないような、ね」
そう言ってマミは全員に魔法瓶から注いだ紅茶を振舞っていた。
「御馳走様、ところでマミ」
「次の特訓は如何するんだい?」
240 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:50:21.87 ID:ugaQDEsQ0
昼食も済み、エクスカイザーはマミに質問していた。
午前のような事がまた起きるのならば、今度は止めさせなければ、と言う思いもあったから聞いたのだが。
「大丈夫ですよ、あんな風にはなりませんから」
と、苦笑しながらマミは返答していた。
「次は…あれです!」
そう言いながらマミは明後日の方向を指差していた。
その指を追っていくと、先程まで転がしまくった大岩が一つ確認できた。
それを確認すると、ほむら達はまさか、と言う面持ちでマミを見つめていた。
「そんな顔しないで!」
「今度はあの岩を壊すだけだから!」
と、マミは泣きそうになりながらも弁解していた。
その言葉を真っ先に聞き返したのはさやかであった。
241 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:50:53.78 ID:ugaQDEsQ0
「壊すって…そんな簡単で良いんですか?」
「あたし達なら、バァー!って感じで全部壊せそうなんですけど」
さやかの言葉にマミは人差し指を立ててチッチッチと舌を鳴らしていた。
何かまだあるようだ。
「此処の岩って結構硬いから気合を入れなきゃ駄目よ?美樹さん」
「それにただ壊すだけじゃ面白くないでしょ?」
「みんな一つは必殺技を考えましょう!!」
胸の前で両手を合わせて、目を輝かせながらマミは喋っていた。
「「「「必殺技!?」」」」
「そう!『ワルプルギスの夜』に対抗するには訓練だけじゃ駄目だと思うの!」
「どんな者でも打ち倒す…キングエクスカイザーさんのサンダーフラッシュのように!!」
「私達には必殺技が必要なのよ!!」
合わせていた手を握り締め、マミは自信たっぷりに豪語していた。
「それに、みんなで必殺技を相手に打ち込むなんて素敵じゃない!?」
「私一度で良いからやってみたかったの!」
242 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:51:44.72 ID:ugaQDEsQ0
それが本音か、と一同心の中で突っ込んでいたのだが。
さやかは割りと乗り気であるように見えた。
杏子もそれに渋々賛成していた。
その時、杏子は立ち上がると何か思いついた様で、にやりと笑っていた。
「なぁ、マミ」
「必殺技考えるんならよ…石ころ相手じゃなくて、相手を決めてすりゃあ良いんじゃないか?」
「相手を決めて?」
そうマミが聞き返すと、杏子はあぁ、と言って返事した。
「そういう相手が居る、だろう?エクスカイザー」
杏子はそう言ってエクスカイザーに同意を求めていた。
エクスカイザーは虚を突かれて少し驚いていたようだ。
「私が、かい?」
243 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:52:33.98 ID:ugaQDEsQ0
「あぁ、そうさ」
「アンタはあたしら一人ひとりが相手しても全く動じずに昨日全員叩きのめしたからな」
「あたしらの新必殺技とやらをを受けてもビクともしないんじゃないか?」
これは、杏子が昨日の戦いでさやかにしか勝ち星を上げられなかった事も原因にあった。
要するに、負けっ放しが癪に障った、と言う訳だ。
その意図を察したのか、さやかも杏子の意見に賛成していた。
「そうよねぇ〜エクスカイザーなら〜あたし達が4人がかりでも敵いそうに無いかもしれないし〜」
「お願い出来ますか〜?」
いかにも、と言う猫撫で声でエクスカイザーに迫っていた。
対するエクスカイザーは顎に手を当ててどうするべきか考えていた。
「う〜ん…」
その様子を黙ってマミは見ていたのだが、我慢できなくなったのか、自分から声を掛けていた。
「エクスカイザーさん、あの…私からもお願い出来ますか?」
「一度で良いから、全員で力を合わせて戦ってみたかったんです」
244 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:53:16.94 ID:ugaQDEsQ0
「マミ…」
「確かに、エクスカイザーさんには無理難題かもしれません」
「でも、それでもみんなが力を合わせるのを「分かったよ」
「マミ、君の熱意に負けたよ」
「!?良いんですか?」
マミは本気で聞き返していたが、エクスカイザーは笑顔で了承していた。
「あぁ、君達全員の力も見てみたいからね」
「その役、私が引き受けた!」
「あ、有難う御座います!」
そう言ってマミは礼儀正しくエクスカイザーにお辞儀をしていた。
「よし!それでは、準備だな」
「ドラゴンジェット!」
245 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:56:17.36 ID:ugaQDEsQ0
合体を解除して近くにおいていたドラゴンジェットが反応し、ドラゴンカイザーに合体を完了した。
4人はそれを確認すると、全員でドラゴンカイザーと真正面から対峙するように立ち。
戦闘態勢はバッチリだった。
「先ずは私から行くわね」
マミはそう言って目を瞑り、集中しだした。
周りも邪魔にならないように静かに見つめていた。
数秒経った時、マミの足元から魔力のオーラが湧き上がり、真上に上りだしていた。
「…!ハァ!!」
「ム…!来るか!?」
気迫と共に息を吐くと、黄色の輝きは増しマミの髪の毛やリボンを揺らめかせていた。
「新・必殺!」
「エクスプロジオネ・ロッソ!!」
その掛け声と共に、マミは新たな必殺技をドラゴンカイザーに叩き込んだ。
ドラゴンカイザーに着弾すると、エネルギーはそのまま大爆発を起こし周囲一帯の瓦礫を吹き飛ばしていた。
その光景を見て、マミはガッツポーズをとっていた。
246 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:56:56.63 ID:ugaQDEsQ0
「やった!出来たわ、新必殺技!!」
「酷いね、いきなり大爆発するとか…」
「何言ってるのよ佐倉さん!」
「爆発はロマンでしょ!?」
そんな事を言っていると、マミは急に向き直り爆煙の向こうを見つめ始めた。
煙が晴れると、そこには防御する為に腕の甲を前面に構えたドラゴンカイザーが立っていた。
所々が煤けてはいるが、それ程のダメージがある様には見えなかった。
「中々の威力だったが、それでは私は倒せないぞ!マミ!!」
「そんな!自信があったのに…」
マミがガッカリしている中、杏子が先陣を切ってドラゴンカイザーに突っ込んで行った。
247 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:58:13.32 ID:ugaQDEsQ0
「杏子!」
「ボサッとするなよ!」
「あたし達全員の力を合わすんだろ!」
「…そうだね、杏子にばかり良いカッコさせないんだから!」
そう言うと、さやかも後を追う様にドラゴンカイザーに飛び込んで行った。
突撃した二人の連携は先程見たより上手くなっており、ドラゴンカイザーも驚いていた。
「本当に凄いな君達は!」
「私でも一人ならまだしも、全員とは流石に分が悪いみたいだ!」
「ヘッ、煽てても手加減はしないぜぇ!」
「そういう事!」
ドラゴンカイザーに肉薄する二人、そしてそれを後方から支援するようにマミ達が砲撃をしていた。
その一撃が再びドラゴンカイザーに命中し、よろめいた所をさやかと杏子の連携した一撃が叩き込まれた。
「ヌオォ!!」
流石に聞いたのか、体勢を崩して後退りし、胸を抑えていた。
その様を見て前衛二人はハイタッチをしていた。
248 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:59:01.90 ID:ugaQDEsQ0
「…本当に強くなった、特にさやかは目を見張るほどだよ」
「ま、あれだけいじめられればね?」
「強くもなりますよ」
と、剣を構え直してさやかは言っていた。
その闘志を示すかのようにさやかの剣は陽光を浴びて刀身を煌かせていた。
「そうだね、それならば!」
「私も本当の力で相手をしよう!」
ドラゴンカイザーはそう言って両手を握り締め、仁王立ちになった。
さやかと杏子、それにほむらはその言葉を疑問に思い。
マミはハッと気が付き、一人警戒を強めていた。
「みんな!気を引き締めて!」
「ドラゴンカイザー!いえ!エクスカイザーの真の力が来るわ!!」
「「「真の力!?」」」
その言葉を皮切りに、ドラゴンカイザーが動き出した。
249 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 15:59:35.91 ID:ugaQDEsQ0
『キングローダー!!!』
両手でエネルギーを溜めると、ドラゴンカイザーはキングローダーを呼ぶのと同時にエネルギーを放出した。
そのエネルギーが地平線の彼方に消えると、キングローダーが出現した。
そして、キングローダーが飛び上がり、キングエクスカイザーへの変形シークエンスを開始した。
それに追随する様にドラゴンカイザーのハッチが開き、中からエクスカイザーが飛び出し、キングローダーに収納された。
『トォウ!!』
『フォームアップ!』
そのままキングエクスカイザーに合体するとエクスカイザーが合体を解除したドラゴンのボディ中央から光が走り。
分割されてキングエクスカイザーに飛んでいき、それぞれのパーツが装着されていった。
ドラゴンジェットの脚部がそのままキングエクスカイザーの脚部へ。
背中のバックユニットに機首が装着されウィングは下を向き固定された。
更に、ドラゴンの上半身が折りたたまれてキングエクスカイザーの腕部に被せられ、キャノン砲は肩アーマーに。
両手がせり出すと、胸部の獅子に、更に巨大な鬣と前鎧が装着された。
そして最後にキングエクスカイザーがマスクを解除すると、赤い輝きが顔を包み、新たなマスクが現れ。
エクスカイザーの最強にして最後の姿が現した。
『超巨大合体!グレートエクスカイザー!!』
合体を完了し、再び4人の前にグレートエクスカイザーは着地した。
250 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 16:00:19.29 ID:ugaQDEsQ0
「な、合体…だと…!?」
「しかも大きくなった!?」
「ついに見る事が出来た…!」
「エクスカイザーの最強形態!!!」
「これは…!」
「如何した!?」
「怖気づいたのか!?」
そう言ってグレートエクスカイザーは4人を挑発するとそれに負けじと杏子たちは奮起して再び槍を構えていた。
「ハッ、でかくなったからっていい気になんなよ!」
「行くぜ!さやかぁ!!」
そうして、冒頭にまで話は戻るのであった…。
251 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 16:00:55.85 ID:ugaQDEsQ0
マミたちの善戦空しく、その中でさやかは大剣も使える様になったのだが。
グレートエクスカイザーに太刀打ちできず全員倒れて息を荒くしていた。、
「はぁはぁ、そんな…一撃も返せないだなんて…」
「なんだってこんなに強いのよ…」
「うおぃ!何でこの状態で他の魔女倒さなかったんだよ!」
「これなら軽く一捻りじゃねーか!!」
そう言って杏子が怒鳴ると、グレートエクスカイザーは申し訳なさそうにしていた。
「あぁ、それに関して、私は謝らなければならないよ」
「んだと!テメェ本気で戦ってなかったって言いてぇのかぁ!?」
グレートエクスカイザーの言葉に遂にキレて杏子は最早噛み付くのは時間の問題、と言えるほどの剣幕だった。
252 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 16:01:40.93 ID:ugaQDEsQ0
「きょ、杏子ちゃん落ち着いて…」
「落ち着いてられねぇから怒鳴ってんだよ!」
「これでふざけた事抜かすならぶん殴って…」
「実は、この合体をするために調整をしていたんだ」
「……は?」
その言葉を聞いて、杏子は思わず聞き返していたのだった。
グレートエクスカイザーはそのまま続けていた。
「再びこの地球に遣って来た時から調整をかけていてね」
「キングローダー、ドラゴンジェットは比較的楽に完了したんだが、超巨大合体への調整が難航してね」
「つい、昨日やっと調整が終わったんだよ」
「……それだけか?」
「あぁ、それだけなんだ、もっと早くに調整が終えていたと思うと、本当にすまなかった」
「……。」
「本当なのか?それ」
「あぁ、本当だ」
253 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 16:02:40.80 ID:ugaQDEsQ0
そして、何を思ったのか杏子はそのまま固まってしまっていた。
まどか達は遂に怒りが頂点に達し、何も言えないものなのだろう、と何時爆発するか、戦々恐々していた。
数分して、杏子が震えだすと、周りはどうなる事やらと固唾を呑んでいた。
だが、全員の予想とは全く異なる光景を目にする事となった。
「アッハハハハハハハハハ!!」
杏子は突然笑い出したのであった。
全員分けも分からずに杏子を見ていると、杏子はそのまま笑い続けていた。
「ッハハハハハハハハ!あんたって本当に馬鹿だね!」
「下らない言い訳をするとか、そんな事せずに真っ向から本当の事言ってきやがる!」
「ハッハハハハハハハハハハハ!」
「ちょ、ちょっと杏子大丈夫?頭おかしくなっちゃったんじゃ…」
「ハハハハ…わりぃわりぃ、マミ!」
「もう二度とコイツとは闘わないからな!」
「けど、真正直な馬鹿は嫌いじゃねぇけどな!」
254 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 16:03:28.71 ID:ugaQDEsQ0
心底機嫌が良さそうに笑うものだから周りで呆けていたマミたちも釣られて笑い出してしまい。
遂には全員で笑い転げる事となっていた。
その後、笑い終えてから魔法少女達の特訓は終わり、全員で帰りの支度をして帰路に付いていた。
後日、採石場が酷い参上になっている事に業者が気付き、ニュースにも取り上げられたが、それはまた別の話。
「いやぁ、疲れた疲れた」
「でも凄いよね、グレートエクスカイザーだっけ?」
「あれなら『ワルプルギスの夜』とか言うのも簡単にやっつけられるんじゃないですか?」
「そうかもね、でも分からないわ」
「今まで彼と一緒に戦った事なんてないもの…」
「そうね、私も始めてよ」
「でもね、暁美さん」
「勝てるわよ」
そう言ってマミは後ろを向くと、まどかに頭を預けて眠っている杏子を見ていた。
「私も、美樹さんも、佐倉さんもいる」
「貴方には守るべきものもある、絶対に勝ちましょう」
その言葉に感じる事があるのか、ほむらは涙目になりながらも、マミに礼をしていた。
「有難う…マミさん…」
255 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 16:04:18.57 ID:ugaQDEsQ0
「ふふっ、如何いたしまして」
そうしてバスを降り、電車に乗り、ほむらの家まで帰って来た時、不意にマミが口を開いた。
全員椅子について一休みしている時だった。
「さて、それじゃあお風呂にしちゃいますか」
「え!?お風呂ですか?」
「えぇ、流石に汚れちゃったからね」
「この近くに銭湯があるのよ、みんなで行かない?」
「私のおごりって事で」
「え?マミ、風呂屋行くのか?」
「そうよ、佐倉さんも一緒に行きましょう?」
「い、イヤ、あたしは遠慮すると言うか何と言うか…」
「何もったいぶっているのよ」
「貴方の分の着替えも、あたしのを分けてあげるから行きましょ?」
「そうよ、イコイコ!」
「イヤ!だからあたしは…」
そう言って、半ば強制的にさやかに後ろから押され、杏子はリビングから姿を消していた。
「行っちゃった…」
「良いんですか、マミさん?」
256 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 16:05:16.17 ID:ugaQDEsQ0
「良いから言っているのよ?」
「さ、行きましょ?」
マミはほむらとまどかの手を引っ張って歩き出していた。
その時、エクスカイザーの事を思い出してそちらの方に顔を向けていた。
「あ、すみません、エクスカイザーさんは待っていてもらって良いですか?」
すまなさそうに頼むと、エクスカイザーは快諾していた。
「良いよ、ゆっくりしておいで」
「すみません、それじゃあ家の戸締りをお願いします」
「それじゃあ行きましょ?暁美さん、鹿目さん」
バッグを何時の間にか背負っており、それに続く様にまどか達もリビングから出て行った。
「……さてと…」
変形し、暗がりを少し見つめた後、キッチンの方に歩いていった。
257 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 16:05:54.24 ID:ugaQDEsQ0
昨日特訓をした廃ビルとは逆、少し都心に近づいた所に『見滝原湯』と言った少し古風な銭湯が其処にはあった。
「こんな所にこんな場所があっただなんて…」
「穴場、とまでは行かないけど、憩いの場としては充分でしょ?」
「わぁ〜?杏子ちゃん、如何したの?」
まどかが杏子を見ると、何故か服の裾を握ってモジモジしていた。
少し顔も赤いようだった。
「ん、んん?イヤ、ベツニナンデモネーヨ」///
「片言で何言っても信用ないんだけど…」
「早く入っちゃおうよ!」
「マミさんも早く」
「もう、美樹さん」
「私がおごるって事忘れていない?」
全員で賑やかに入って行き。
更衣室までやってきた。
すると、マミが肩に掛けていたバッグを降ろし、中から石鹸やタオル等の風呂用セットを5人分取り出して渡していた。
258 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 16:06:37.43 ID:ugaQDEsQ0
「はい、これを使って頂戴」
「わざわざスミマセン、マミさん」
「と言うか、そのバッグ中にどれだけ入っているんですか?」
「秘密よ、さ、早くさっぱりしちゃいましょ」
マミの言葉に、各々服を脱いで浴場には入って行く事になった。
「なんか、変な感じだね〜」
「修学旅行とか見たい」
「あたし達は何処行くんだっけ?」
「まだ決まってない?」
「うん、まだ決まってないはずだよ?」
「そっか、これからが楽しみだわ」
「その時は、まどか〜覚悟してよぉ〜う?」
さやかはそう言いながら手をワキワキさせてニヤニヤしていた。
なんと言うか、卑猥な表現であるようにまどかは聞こえていた。
259 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 16:07:30.74 ID:ugaQDEsQ0
「な、何かさやかちゃん顔怖いよ」
「イッヒッヒ〜って、杏子どうしたのよ?」
「何時までもそれじゃ入れないじゃない」
その言葉にギクッと肩を跳ね上げて杏子はバツが悪そうに頬を掻いていた。
「え?あ、そ、そうだな」
「あたしの事は良いから早く先に入っていなよ?」
そう言って素っ気無く手の甲で早く行け、と暗に行っていたのだが。
まどかとさやかはお互いを見て、さやかがニヤリと笑って杏子に手をワキワキさせながらにじり寄っていた。
その様を見て、杏子は背筋に悪寒が走り、後ずさったのだが、直ぐコインロッカーに阻まれさやかを見ていた。
「どうしたの〜きょうこぉ〜?」
「顔青いわよ〜?」
「そ、そう言うお前だって、顔怖いぞ〜…?」
「それは杏子が恥ずかしがって脱がないからそれを脱がしてやるのが楽しみだからよ〜!!!」
まるでどこかの大泥棒ばりに杏子に飛び掛るさやか。
それを横で冷静に見るまどかがいた。
260 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 16:08:21.39 ID:ugaQDEsQ0
「さやかちゃん、程ほどにね?」
杏子の絶叫が更衣室に響き渡っていた。
「ううぅ、酷い…さやかに汚された…」
「ちょ!人聞きの悪い事言わないでよ!」
「周りの視線が痛いから!」
無理矢理脱がされた杏子は、さめざめと泣いており。
さやかは事態の収拾はするべく躍起になっていた。
「さやかちゃん、やりすぎ」
「うぅ…、反省してます」
「今度なんか奢るからさ、ね、このとーり」
両手で、泣いている杏子にお願いすると、奢る、と言う単語に反応したのか、少し泣き止み。
「スンッ、約束だかんな」
と、上目遣いでさやかに約束を取り付けさせた。
261 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 16:09:20.11 ID:ugaQDEsQ0
(ガァ!何時もはツンツンしているのに)
(弱気になった時のこのギャップ!)
(これが萌え?燃えなの?萌えなのか〜!!!)
等と、何かいけない扉に手を掛けつつ、さやかは謎のガッツポーズを取っていた。
その様をまどかは苦笑いして見る事しかできなかった。
「あはは…ほら、杏子ちゃんも身体洗っちゃお」
そう言ってさやかを放置してまどかは杏子と一緒にカランの列の方に歩いていった。
さやかもようやく気が付いて、二人の後に付いていった。
「あ、マミさんとほむらがいる」
指を刺すと、その先にはほむらがマミに髪を洗われている所だった。
何故か、ほむらは俯き、何かに打ちのめされた様な顔をしていた。
「あら、美樹さん達もやっと来たのね?」
「遅かったじゃない」
262 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 16:10:12.70 ID:ugaQDEsQ0
「いえ、って如何したんです?ほむらなんか変ですけど…」
「さっき突然こうなってね、放って置いても仕方ないから今私が髪を洗っている所なの」
ほむらは反応を見せずに何かをブツブツ呟いていた。
「ん?何言ってんの?ほむら」
質問すると、ゆらりとさやかの方を光の無い瞳で見ていた。
すると、そのまま視線をずらしてまどか、杏子と見つめて何かを悟った様にため息を付いていた。
「何さ、やけに沈んでるけど、何かあったの?」
「…ふっ、持つ者と持たざる者について真剣に悩んでいた所なのよ」
物凄い寂しげな表情で頭を洗われるほむら、何と絵になりがたい光景だろうか。
そのほむらにマミは容赦無く盥のお湯を被せてシャンプーを流しにかかっていた。
「さ、これで良いわ」
「後リンスしちゃいましょ」
263 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 16:10:45.21 ID:ugaQDEsQ0
「い、いえ!後は自分でします!」
「そう言わずに、やってあげるから」
マミが立ち上がると、その胸元のおっきな物体が反動で揺れ動くのにさやかは釘付けになっていた。
(うおぉ!!特盛り!?)
その圧倒的脅威を見せ付けられ愕然としながらも、さやかは今度は自分の胸元に視線を移し。
バスタオルの上から寄せて上げる様に持ち上げていた。
(…恭介もおっきい方が好みなのかな…?)
等と考えながら揉んでいると、他の面子はどんな物なのか、と少し目線をずらして見てみた。
(まどかは…これからってところですか?)
友人の胸元を見ながら品定めをするような目線で見つめていた。
「?な、何、さやかちゃん?」
「え?あ、い、イヤ、何でも」
264 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 16:11:25.18 ID:ugaQDEsQ0
視線に気が付かれ何でも無いかのように振舞って難を逃れた。
(まどかは今度修学旅行の時にでも…さて…)
(杏子は……オオゥ…)
さやかが次に目線を移したのは杏子であった。
杏子の胸元を見つめ、言葉にならない音を漏らしていた。
(これは…歳相応と言うべきか、はたまた…)
「な、何だよ…人の胸ジロジロ見て…」
「イヤ、胸がちっちゃいと、感度が良いって聞いたものだから」
「バ!馬鹿言え!そんな事知らねぇよ!」///
そう言って耳まで赤くなると、杏子はそっぽを向いてしまった。
そのままズカズカと蟹股になり、まどかの横に座って頭をガシガシ洗い始めてしまった。
さやかはちぇっと言って残念そうにしていた。
265 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 16:12:06.52 ID:ugaQDEsQ0
(後で揉んでやるか…)
(揉むと大きくなる、って誰かが言っていたし…)
気を取り直して、今度はほむらの方を見ていた。
そしてさやかは驚愕した。
(なん…だと…?)
(ほむらの…胸が…無い…?)
一瞬、さやかは我が目を疑いそうになった。
さやかは、目を擦ってもう一度見ていた。
(イヤ!ある!あるけど…!)
(サイズ的には…まどか>杏子>ほむら)
(と、言った所か…!)
(イヤでも、まどか>ほむら>杏子にも見える…!)
そこでさやかは何かに気が付いた様にハッ!となった。
(そうか!分かったぞ!)
(ほむらは自分の胸があまりにも無いものだからそれで傷心していたのか!!)
(そしてその様をマミさんの特盛りを見て、絶望の淵に叩き落された!!)
(って所かしら!?)
266 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 16:12:42.33 ID:ugaQDEsQ0
勝手にうんうん、と唸りながら納得するさやか。
そして泣き出しほむらを見ていた。
(可哀想なほむら!そんな所、気にしていられないもんね!!)
「ほむら…」
「何、今私は!?ちょ、如何したのさやか!?」
さやかは涙を流しながらほむらの手を握っていた。
「大丈夫だよ、もう大丈夫だから」
「もう悩まなくても良いのよ!」
「何を言っているのか分けがわからないわ!!」
「動かないで、暁美さん」
「リンスが目に入っちゃうわよ」
267 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 16:13:16.59 ID:ugaQDEsQ0
修学旅行に行った時ほむらの胸は重点的に揉んでやろう、等とさやかは心で決心していたのであった。
「ふぅ〜良い湯だわぁ」
特盛りを湯船に浮かべながら、マミはゆったりと寛いでいた。
マミの特盛りは、まるでどこかの人形劇に出て来る島の様で、ぷかぷかと二つ揃って浮かんでいた。。
まどか達も同様に銭湯を楽しんでいた。
「はぁ〜、こういう所で演歌とか歌ってみたいなぁ〜」
「音が反響してくるし、湯気って喉に良いらしいんだよ」
「ってあれ?さやかちゃんは?」
隣で髪を纏めて湯に浸からない様にしながら入っていたほむらがその答えを言った。
「さやかなら杏子と一緒にサウナに入って行ったわよ」
「あら?そうなの?それなら、私も入ってくるかしら」
「最近ちょっと腰周りが気になっちゃって…」
そう言って、マミは湯船を後にしてサウナに入って行った。
その後姿を見て、まどかは。
「別に気にするほどじゃないんだけどな〜」
268 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 16:13:58.17 ID:ugaQDEsQ0
と一言呟いていた。
「本当に、嘘みたい」
「今までの苦労がまるで水の泡、でも悪い気はしないわ」
そうほむらは言って肩の力を緩めていた。
やっとゆっくりした、と言った感じの面持ちであった。
「ほむらちゃんは何でも背負い込みすぎだったんだよ…」
「言ってくれたら、ううん、信じて貰うのは大変かもしれないけれど…」
「えぇ、そうね」
「まどか、有難う」
その言葉にまどかは恥ずかしくなり、赤くなっていた。
「そ、そんな事無いよぉ…」///
「でもね、私より…「鹿目さん!暁美さん!大変なの!!」
まどかが何か言いそうになった所にマミが血相を変えて走ってきた。
素っ裸で。
「ま、マミさん」///
「タオル、タオル」
269 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 16:14:39.77 ID:ugaQDEsQ0
「そんなこと言っている場合じゃないの!暁美さんあなたも手伝って」
「美樹さん達が!」
「!?さやかが!?」
その言葉に慌ててまどか達がサウナに駆けつけると、さやかと杏子が真っ赤になって伸びていた。
「ちょ!さやかちゃん!?しっかりして!」
「えへへへ〜、まろかのおっぱいら〜やわらか〜い」
「ち、ちっちゃくにゃ〜い…」
「…マミさん、こいつらどうしてこうなったんです?」
「い、いえね、私が入った時には美樹さんがもう佐倉さんにちょっかい出していたのよ」
「胸がどうのとか言いながら」
さやかの身体に何らかの変調が起こったのかと思ったら、何でも無いようでまどか達は、一安心してほっと息を付いていた。
「はぁ、全く何やっているのよ」
「さやかちゃん、しっかりして」
「まどか、マミさん手伝って、二人を退かすわよ」
そう言ってまどか達は、伸びた二人を脱衣所の扇風機の前にまで担いでいく事となった。
270 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 16:15:22.03 ID:ugaQDEsQ0
「はぁ〜良い湯だったわ〜」
「心が洗われるって言うか?」
「何言ってんだよ、アンタは最後の方はあたしの胸揉んで伸びていたじゃないか」
「なっ!馬鹿!そういう杏子だって!」
「だらしない、と言うかそんな事やっていたのね」
「さやか、何処まであなたは愚かなの」
「コラァ!ほむら!言って良い事と悪い事があるのよ!」
「言える立場じゃないような…」
銭湯を存分に楽しみ、5人揃って談笑しながら歩いていると。
何処からともなく良い匂いが流れてきた。
「お?この匂いは…カレーだ!」
271 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 16:16:36.16 ID:ugaQDEsQ0
そう言って匂いをかぎ分ける姿には犬の耳と尻尾が付きそうだな、とさやかは思っていた。
「それはそうと、夕食はどうするんです?」
「朝から特訓してたし、何か注文とかするんですか?」
「そうよね…まぁ暁美さんの家に帰ってから考えましょう」
談笑を続けながらほむらの家の前まで付くと。
中から良い匂いが漂って来ていた。
「おや?この匂いは…」
「肉じゃがだ!!」
杏子は即座に匂いをかぎ分けると、物凄い速さで家に入って行き、驚きの声を上げていた。
何事かと思い全員が追いかけて家の中に入ると、そこには驚きの光景が広がっていた。
「これは…!」
「佐倉さんの言ったとおりの肉じゃが…」
「それに焼き魚…」
「この匂いは…」
272 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 16:17:19.38 ID:ugaQDEsQ0
「おや、帰ってきたんだね」
「お帰り、みんな」
その声に振り返ると、エクスカイザーが台所から出て来て鍋を片手に持っていた。
「あ、あの…エクスカイザーさん?」
「これは…?」
「?ああ、ちょっと台所を借りてみたんだ、ほむらの家にあった料理本を借りて作ってみたんだ」
「味の保障は出来かねないが…」
「食べるかい?」
「何言ってんだ!こんな良い匂い漂わせて!」
「腹減っていたんだ!食わせろ!」
そう言って杏子は既によそられているご飯に手を出そうとすると、エクスカイザーに手を叩かれていた。
杏子はぶたれた手を擦りながらエクスカイザーを渋々見ていた。
「駄目だよ杏子」
「食べるのなら、みんなで、だよ」
「皆は食べるかい?」
273 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 16:18:03.97 ID:ugaQDEsQ0
その言葉を聞くと、全員揃って。
「「「「「喜んで」」」」」
と言っていた。
その日の夕食は皆一様に美味しく頂いていた。
「でよ〜、さやかのヤツがサウナで胸揉んできたときは如何しようかと思ったよ」
「べ、別に良いじゃん!減るもんでもないでしょ?」
「と言うか、その話しはもう良いでしょ〜」
夕食も風呂も終えて、全員でパジャマに着替え現在並べた布団の上で絶賛トーク中であった。
「でも美樹さんは格段に強くなったわ」
「明日以降も放課後に詰めて行きましょう」
「うへぇ、勘弁してくださいよ…」
「仕方ないわね、これも『ワルプルギスの夜』を倒す為だもの」
「お願いね、さやか」
274 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 16:18:49.02 ID:ugaQDEsQ0
「…おう!」
そう言うと、さやかは布団の上に立ち上がって豪語しだしていた。
「任せて頂戴!この魔法少女!ミラクルさやかちゃんがいる限り!」
「悪の栄えた試しは無い!」
「…なんつってね」
言い終えるとまた布団の中に潜っていき、杏子に話をしようと向くと。
何時の間にか杏子は静かに寝息を立てていた。
「ありゃ、寝ちゃった…」
「疲れたのかしらね、邪魔しちゃ悪いから私達ももう寝ましょ」
マミがそう言って明かりを消し、さっきのまでの騒がしさから一転し。
辺りは寝息しか聞こえなくなった。
275 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 16:19:50.36 ID:ugaQDEsQ0
「……。」
「……ねぇ、ほむらちゃん、まだ起きてる?」
「…何?まどか?」
「…有難うね、ほむらちゃん」
「…?まどか?」
「実感とかそう言うのは無いんだけどね」
「ほむらちゃんが私を守る為に戦ってくれたのは分かるつもりなの…」
「だから、有難うね」
「今までお礼を言えなかった私の分まで、有難う」
「まどか…」
ほむらは色々な感情が綯い交ぜになり、涙が零れてしまっていた。
その様子をまどかは何時の間にか見て笑っていた
「ウェヒヒ、ほむらちゃんって、結構涙脆いんだ…」
「御免なさい…でも…「勝つぞ」
「この戦い、絶対勝つぞ」
276 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 16:20:21.59 ID:ugaQDEsQ0
見ると、杏子は何時の間にか起きており、顔を見せずに此方の言葉を続けていた。
「…そうね、今まで暁美さんが巡った世界では、こんな奇跡は起こらなかった…」
「だからこそ、勝ちましょう」
「そうだよ、ほむら」
「アンタの目的も順調、だから心配する事は無いって」
「みんな…」
何時の間にか全員に励まされ、そして共に戦ってくれる事を誓ってくれた。
その言葉に更に涙を零しながらありがとうと呟いていた。
その様子を、ただエクスカイザーは見つめていた。
第10話 完
277 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/03(月) 16:21:31.82 ID:ugaQDEsQ0
次回予告
「何よ?インキュベーター?どういうこと?」
「!?まどかの力は私が原因…!?」
「其々が思いを一つにし、遂に私達は『ワルプルギスの夜』と対峙する」
「負けるわけには行かない、もう繰り返したくない…!」
「次回 勇者 エクス☆マギカ『最後に残った道しるべ』」
「あなたの家にも宇宙人いる?」
予告担当:暁美ほむら
278 :
◆1B0iEDnTxU
[saga]:2011/10/03(月) 16:25:08.26 ID:ugaQDEsQ0
と言うわけで謎の10話終了です。
ドンだけ悩んだんだよ…。
やりたい事詰め込みすぎて結局80K超えだったので、今回切り方が大味です。
次はやっと5人vsワルプルさんになると思います。
途中謎のエラー連発でしんどかったわぁ…。
それではまた。
279 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/10/03(月) 19:53:22.04 ID:+8RPim0Ro
お疲れ様でした。
280 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/10/03(月) 20:17:06.57 ID:sXWO089l0
乙乙
281 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)
[sage]:2011/10/03(月) 23:35:33.56 ID:ckmFwQHuo
長編乙
282 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(兵庫県)
[sage]:2011/10/03(月) 23:50:31.37 ID:q7zL1/rA0
乙乙
あまり無理はすんなよ
283 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/04(火) 01:24:07.18 ID:sX3OJh8a0
>>282
さん。
気を使って貰いすみません。
くたばらない程度に頑張りますので。
では。
284 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/13(木) 15:26:09.35 ID:ijEVTm130
ちくしょ〜まさか↑のレス書いた次の日に風邪引くとかワロスwww
今週中には書き上がりそうなのでお待ち下されば幸いです。
後、書き忘れていたのですが。
身長の設定としては。
EX(車)シャルロッテ≦キュゥべぇ<EX(人型)≦タツヤ<まどか<早乙女先生<ほむら<マミ≦杏子
杏子<さやか<KEX<DK≦仁美≦詢子<<恭介<知久≦GEX
と自分の脳内では設定しております。
EXはエクスカイザー
DKはドラゴンカイザー
KとGがついたEXはキングとグレートと考えて下さい。
それでは。
285 :
◆1B0iEDnTxU
[saga]:2011/10/18(火) 15:56:18.79 ID:0UddKU7U0
11話を書いていたと思ったら何時の間にかデータふっ飛ばしていたでござるの巻。
そして作り直しとか…。
うっかりしすぎてしにてぇ…。
と、いうわけで公開します。
286 :
まどか「勇者 エクス☆マギカ 第11話」
◆1B0iEDnTxU
[saga]:2011/10/18(火) 16:17:25.89 ID:0UddKU7U0
走る、走る、走る。
奇怪な模様を描く床を只、ひたすら走る。
その先に、見届けなければいけない物が在って、走り続けている。
不思議と息切れは無く、軽快に走り続けている。
そして見つけた、『非常口』と書かれた、この場にそぐわない不可思議な表示灯。
この先に求めるものがあるのだろうか?
否、必ずある、何故かは分からないがそう五感が言っている。
この扉の先に、見届けるべき『何か』が在る!
そう思い、一息に扉に手をかけた。
ガシャン…、重厚な音と共に扉が開いた。
扉の向こうは破壊された『世界』が広がっていた。
ビルは浮き、道路は抉れ何もかもが宙に浮き、この世の物とは思えない光景が広がっていた。
「あぁ…!」
287 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:18:10.65 ID:0UddKU7U0
その光景を眺めていると、不意に視線が釘付けにされた。
視線の先には一人の女の子が立っていたからだ。
その女の子は紫と白を貴重とした服を着ており、明らかに普通の服ではない事は目に見えた。
少女が跳び上がると、それを待っていた様に巨大なビルの残骸が向かって来たのだ。
残骸に激突し、潰されてしまったか、と思っていると、何時の間にか少女はビルの近くに現れ。
攻撃を回避していた。
「酷い…!」
「仕方の無い事だ、彼女一人では荷が重すぎたんだ」
「でも…彼女も覚悟の上だろう…」
288 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:18:40.93 ID:0UddKU7U0
何時の間にか居た白い生き物と会話し、少女が戦うのを見ている事しかできなかった。
その中で少女は攻撃を直に受けてしまい、背中から叩きつけられていた。
「そんな…!あんまりだよ!こんなのって無いよ!」
気絶し掛けていた少女は此方に気が付いたのか、上半身を無理矢理起こし、此方に向かって叫び声を挙げていた。
だが、その叫び声は周りの音にかき消されてしまい、此方に届く事は無かった。
289 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:19:07.88 ID:0UddKU7U0
「諦めたらそれまでだ」
「…でも、君なら運命を変えられる」
「避けようの無い滅びも、嘆きも、全て君が覆せば良い!」
「その為の力が、君には備わっているんだから」
(…か…)
「…本当なの?」
「あたしなんかでも…何か出来るの…?」
「こんな結末を変えられるの…?」
290 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:19:48.94 ID:0UddKU7U0
(ま…か…)
「勿論さ」
「だからボクと契約して…」
「魔法少女になってよ!」
(まどか……!)
(まどか!!)
291 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:20:23.84 ID:0UddKU7U0
第11話『最後に残った道しるべ』
まどかが目を覚ますと、ベッドの横にエクスカイザーが立っており、心配そうにまどかの体を揺すっていた。
「まどか、どうしたんだい?」
「魘されていたみたいだが…」
エクスカイザーに上体を起こすのを手伝ってもらうと、からだが嫌な寝汗を掻いているのに気が付いた。
だが、その事には気にならず、先程の夢の方が気になっていた。
292 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:21:17.44 ID:0UddKU7U0
「…また、あの夢かい?」
「うん…」
此処最近、ほむらの家から帰って来た辺りから、不可思議な夢を見る様になったのだ。
依然一度見た事があったのだが、同じ夢が眠る毎に鮮明になっていくのだ。
エクスカイザーに相談した時、恐らくその夢こそ、前の時間の時の記憶なのではないか、と予測していた。
まどかの中では予測から確信へと変わっていたのだ。
あまりにも鮮明すぎるのだ、今の今までそこにいたのか、と錯覚するほどに。
293 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:21:55.02 ID:0UddKU7U0
「大丈夫です…」
「そうか、なら良い「まどか?」
「如何したんだい?」
その時、ドアの向こう側から知久の声が聞こえ、まどか達は驚いて返事をした。
「ゑ!?だ、大丈夫!」
「今起きるから!」
「エクスカイザーさん!早く変形しちゃって!」
294 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:22:24.18 ID:0UddKU7U0
「ああ、分かった」
小声でエクスカイザーに頼むと、着替える為にベッドから立ち上がろうとした。
その時。
「ぐお!」
「キャアァ!!」
変形して隠れようとしたエクスカイザーを真上から踏んでしまい、そのまま足を滑らせてエクスカイザーを自分の机にぶつけてしまったのだ。
まどかは踏んだ方の足のバランスを失ってしまい床に尻餅を付いていた。
p
295 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:23:11.62 ID:0UddKU7U0
「ま、まどか?」
「大丈夫かい?」
大きな音がしたものだから、知久は驚いて部屋に入って来たのだ。
そこにはまどかの机に激突しているラジコンカーと、その導線上に尻餅を付いているまどかの姿があった。
「如何したんだい?」
「怪我は無いかい?」
「う、うん…イタタ…」
「パパから貰ったラジコン踏んじゃって…」
手を貸してもらい、立ち上がると、その足でラジコンの方に向かい持ち上げた。
「駄目じゃないか、まどか」
「ちゃんと片付けておかないと」
296 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:24:12.14 ID:0UddKU7U0
そう言われ、まどかは素直に謝っていた。
その様をやれやれ、と言った感じで知久は見ていた。
「ゴメン、パパ」
「全く、…ん?」
振り返ろうとした知久が、まどかの抱えたエクスカイザーに何かを発見したようで。
そのまましゃがんで目線を下げて、エクスカイザーをジッと見ていた。
見られているエクスカイザーは内心冷や汗物であった、まどかもばれてしまうのではないか、と気が気でならなかった。
297 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:25:28.29 ID:0UddKU7U0
「……ねぇ、まどか」
「え!?な、何?パパ」
「…いや、ご飯が出来ているから早くおいで」
「う、うん、有難う」
何時もの応答をして、知久が出て行くのを確認すると。
少しの間ドアを見詰め、知久がやっぱりとか言いながら入って来ないか確認し、まどかは盛大にため息を付いた。
298 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:25:56.98 ID:0UddKU7U0
「…はぁ〜、ビックリしたぁ…」
「あぁ、私もだよ…」
「今後、話す時は気を付けよう」
その言葉に頷き。
まどかは怪しまれないうちに着替えを終えて、朝食をとりに行った。
299 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:26:23.69 ID:0UddKU7U0
何時も通りに食事を終え。
まどかは何時もどおりに学校へ登校した。
その途中でさやかと仁美に合流し、何気ない会話をしながら歩いて行った。
「でも、さやかさん」
「いきなり何の連絡も無しに休んだ時は驚きましたわ」
「鹿目さんもですわ」
300 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:27:17.66 ID:0UddKU7U0
「あぁ〜、あの時はゴメン…」
「あたしにも色々あってねぇ〜」
「ゴメンネ、仁美ちゃん」
「私もいきなりいなくなっちゃって…」
学校の初めにはもう謝ってはいたのだが、最近は余程ショックだったのか、仁美はよく登校時に愚痴を零していた。
そう言いながら3人で会話していると、後から声をかけられた。
301 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:27:57.94 ID:0UddKU7U0
「あ、ほむらちゃんおはよう」
「よ、ほむら」
「おはようございます」
「ほむらさん」
三者三様に挨拶を返され、ほむらは顔を少し赤くしていた。
「…なんか、挨拶が返されるのって、何時もの事だけど新鮮ね」///
「そんな事無いよ、ね?さやかちゃん、仁美ちゃん」
302 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:28:36.17 ID:0UddKU7U0
「「同感(ですわ)」」
二人揃ってハモると、4人に笑顔が生まれそこから全員で話に華を咲かせながら登校する事となった。
そして、学校の教室で休み時間。
ほむらの机の周りに集合して会話をしていた。
「でもさ、やっとほむらも内のクラスに慣れたって感じだよね?」
「あたしとしては嬉しい限りだわ〜」
等とのたまいながらほむらの机に腰を下ろし。
うんうんと頷いていた。
303 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/10/18(火) 16:29:52.66 ID:0UddKU7U0
「何でさやかが感動しているのよ…」
「でも、私も同感ですわ」
「最初の印象ははっきり言ってあまり宜しくありませんでしたし」
「そういえば、昨日中沢君がほむらちゃんの事聞いて来てたよ?」
「アイツも懲りないよね〜」
「前に仁美にラブレター出したのってアイツでしょ?」
304 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:30:37.81 ID:0UddKU7U0
今は男友達と会話する中沢を一瞥すると、さやかはヤレヤレと言った素振りをしていた。
「そ、そうなの…?」
「なんだか、恥ずかしいわ」///
そう言ってほむらは慣れない好意に赤くなっていた。
今度はそれを見て、さやかはまだまだだね、と首を振っていた。
「そんなんで参っていたら、この先やっていけないよ〜ほむらぁ〜?」
「そ、そんな事今の貴方に言われたくないわよ」///
「第一、あなたは進展あったの?」
305 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:31:46.22 ID:0UddKU7U0
「ばっ!馬鹿!恭介の事は関係ないでしょ!?」///
さやかは、恥ずかしがりながらほむらの二の腕を叩こうと手を振った。
が、ほむらはそれを間一髪でかわし、さやかはその場でクルリと一回転していた。
「あなたのそれ、痛いから嫌なのよ」
フンッ、と鼻を鳴らしほむらはさやかを少し睨んでいた。
「んも〜、つれないんだからほむらってば〜」
「あ、恭介」
306 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:33:07.67 ID:0UddKU7U0
「あ、さやか、志筑さんに暁美さん、鹿目さんもおはよう」
教室の入り口にいる恭介をさやかは目敏く見付け。
松葉杖を付いた恭介がやってきた。
仁美は、ふられたにも拘らず何時もと同じ態度で接しているのを見て、まどかは仁美は強いな、と思っていた。
だが、仁美はさやかに対しての時だけは少し辛口で話をしていた。
「それにしても、美樹さん」
「何時になったら上条君に答えを言う心算なんですか?」
その言葉に反応して、さやかはギクッ!と擬音が聞こえるほど肩を挙げて、仁美をバツの悪そうに見ていた。
「あ〜、イヤ、そのね…これにはふか〜い訳があって」
307 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:33:37.69 ID:0UddKU7U0
「もう!そんなこと言って一週間もはぐらかしていらっしゃるじゃありませんか!」
「これでは、私が上条君に振られたのが何か軽く見られている様で我慢なりませんわ!」
「イヤ、軽く見ている訳じゃ「それなら!早く言うべきです!」
「時間を更に掛けるようなら、私が上条君を持って行きますわよ!」
何時の間にか仁美はヒートアップしており、衆目を気にせずに大声で怒鳴っていた。
さやかもその言葉に反応して怒鳴り返していた。
その様に気が付いたのか他のクラスの人達もさやか達の方を見ていた。
308 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:34:56.42 ID:0UddKU7U0
「ちょ…!何言ってんのさ!」
「仁美は恭介にふられたからもう関係ないでしょ!?」
「関係あります!」
「私だって本心から上条君をお慕い申し上げていると言いました!」
「さやかさんは上条君の幼馴染だからこそ!私も身を引いたというのに…!」
「だのにこの進展の無さ!」
「いい加減告白なり何なりしてみたらどうなんですか!?」
そう言われると、さやかは顔を真っ赤にして周りを見回していた。
時既にお寿司…もとい遅し。
309 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:35:30.13 ID:0UddKU7U0
「ばっ!馬鹿!仁美!声が大きい!」///
「何を仰っていますの!」
「何時までもはぐらかすさやかさんが悪いんで御座いましょう!?」
「それなら!何時になったら上条君の告白の返事を返すんですか!」
「イイッ!!」///
仁美の言葉が切れると、さやかはクラスの中で聞いていた面々からはヒューヒューと口笛と野次の歓声に包まれていた。
恭介に至っては、仲の良い男子から肘で小突かれて、顔を真っ赤にして下を向いていた。
よもやこんな形でクラス中に知れ渡るとは夢にも思っていなかったようだ。
「さあ!如何なさいますの!さやかさん!」
310 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:36:15.37 ID:0UddKU7U0
「〜〜〜〜〜!」///
「分かった!分かったよ!」///
「でも一週間!一週間待って!」///
「そしたら言うから!」///
その言葉にクラス中からおぉ〜と言った歓声が上がっており。
さやかは、何時の間にかクラス中から注目を受ける羽目になっていた。
「…何で、こんな事になってるんだろう…」
「さあね、さやかが何時までも奥手だったからじゃない?」
「ある意味、いい気味ね」フフンッ
311 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:37:14.33 ID:0UddKU7U0
「あはは…」
その様をまどか達は苦笑して見ている事しか出来なかった。
この後、何事かと駆けつけた早乙女先生に事情を聞かれ、恭介が何故か連れて行かれるという珍事態が発生した。
恭介曰く。
「死ぬかと思った…」
としか言わず、何をされたのか結局は分からずじまいであった。
その後、学校の帰り道。
ほむらとまどかは二人並んで雲の多目の夕暮れ時を歩いていた。
312 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:37:48.64 ID:0UddKU7U0
「……。」
マミ達と特訓をするので、最近の日課のほむらの家への道を歩いていた。
二人の足取りは重くは無かったが。
その表情は少し、暗かった。
「……ねぇ、ほむらちゃん」
「もう明後日なんだよね…」
「…えぇ、そうよ…」
まどかの言った明後日。
それはもう『ワルプルギスの夜』が襲来する事を如実に実感するのには問題ない言葉であった。
「皆いるし、今迄一緒じゃなかったエクスカイザーさんもいるし…大丈夫…だよね…?」
「えぇ、大丈夫…」
313 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:38:23.82 ID:0UddKU7U0
ほむらは生返事を返し、ぼんやりと空を見つめていた。
瞳は虚ろで、上を向いてはいたが、どこか遠くを見るような瞳だった。
「……。」
「…なんだろうね、私さ、ほむらちゃんが大丈夫って言ってくれているのにね」
「ぜんぜん大丈夫じゃない感じがしちゃうの…」
「ほむらちゃんが今迄頑張ってきた事も判るのに、何でだろう…?」
まどかは、此処最近見る夢の所為で胸中不安で一杯になっていたのだ。
314 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:39:07.84 ID:0UddKU7U0
「…心配には及ばないわよ、まどか」
「必ず倒して見せる、例え、私がどんなになろうとも…」
「それが、私に残された最後に残った道しるべだから」
「…ほむらちゃん」
不安そうな顔を見せると、ほむらは笑顔を見せていた。
「そんな顔をしないで、まどか」
「早くマミさん達と会いましょう」
315 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:40:21.25 ID:0UddKU7U0
翌日、学校は休校となっていた。
ほむらが予測したとおり、学校は見滝原全域で暴風警報が発令され、休校となった。
まどかは家にいた。
エクスカイザーはこの風の中。
「用事があるからちょっと出かけてくる」
「今日中には帰ってくるよ」
と言って窓から出て行ってしまって、今部屋の中にいるのはまどかだけだった。
そのまどかは机の方を向き、ノートの表紙をただジッと見ていた。
316 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:41:09.70 ID:0UddKU7U0
「……。」
「…何しに来たの?キュゥべぇ」
振り向くと、そこには白い生き物が立っていた。
感情の無い瞳でまどかをただ見つめていた。
「最後にもう一度話をしたかっただけだよ」
「まどか、ボクと契約する気は、本当に無いのかい?」
何度聞いたであろう言葉を聞くと、まどかは首を横に振って拒絶の意志を見せた。
「…協力はしてくれないか…」
317 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:41:47.10 ID:0UddKU7U0
「当たり前でしょ?」
「あなたは私達を何だと思っているの?」
「家畜や何かだとでも言いたいの?」
「…そうだね、そう言った方がボクと君達の関係は正しいのかもしれない」
「!?あなた…!」
「でも考えてくれ、まどか」
「君の言う家畜は人間の糧になるために人間の手によって『保護』されている」
「家畜は『保護』を約束されているから安全に繁殖できる」
「そしてその繁殖した家畜を食べる、持ちつ持たれつの理想的な共生関係にあるじゃないか」
「それはボクと君達の関係と似ていないかい?」
318 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:42:16.83 ID:0UddKU7U0
「ふざけないで」
まどかはそう言って強く睨みつけていた。
だがキュゥべぇはそんな事知らないといった風に目の前までやって来て居住まいを正していた。
「ふざけてなんかいないさ」
「なら、教えてあげるよ、まどか」
「インキュベーターと人類が共に歩んできた歴史を…」
そう言ってキュゥべぇがまどかの瞳を感情のない瞳で見つめると。
まどかの目の前には途轍もないヴィジョンが広がった。
「な…!これは…!」
319 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:43:09.50 ID:0UddKU7U0
落ち着くんだ、まどか。
これはボクが見せている映像だよ。
ボク達の種族が記録する君達との歴史さ。
何処からともなく聞こえるキュゥべぇの声に翻弄されながらも目線を前に向けると、そこにはずっと昔。
時代すら分からない様な時代のヒトとキュゥべぇと同じ外見を持つ生物との映像が繰り広げれられていた。
その映像の中ではどんどん時代が進み、ヒトが魔法少女と共に進化して行く様が綴られていった。
ボク達はね、有史以前から君達の文明に干渉してきたんだ。
数え切れない少女達がインキュベーターと契約を交わし。
その希望を叶え、時には歴史の転機をもたらし。
そして最後は皆、一様に絶望に身を委ねて逝った。
320 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:43:37.02 ID:0UddKU7U0
映像は次第に時代が進み、歴史の授業で習ったり、有名な女性達が現れ。
迷える人達に救いを齎し、王国を築き、革命を起こし、そして裏切られ、死んでいった。
「祈りから始まり、呪いで終わる」
「これまで数多の魔法少女が繰り返してきたサイクルだ」
何時の間にか映像は終わり、まどかは机に腕を付いて涙を零していた。
その様子をキュゥべぇはただ見つめていた。
「…皆信じていたのに…裏切られたの…?」
321 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:44:32.13 ID:0UddKU7U0
「彼女達を裏切ったのはボクらじゃない」
「『自分自身の祈り』だよ」
「どんな希望も条理にそぐわない物である限り、必ず何らかの歪みを齎す」
「やがてそこから災厄が発生するのは当然の摂理だ」
「それを裏切りだ、と言うのならそもそも願い事なんてするほうが間違いなのさ」
そう言って言葉を区切ると机の上から移動し、窓の傍にまで来ていた。
まどかはその様子を椅子に座りながらただ眺めていた。
322 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:45:07.72 ID:0UddKU7U0
「でもね、それを愚かとはボクは言わないよ」
「そうやって過去に流された全ての涙を礎にして、今の君達の暮らしは成り立っているんだから」
「もし君達とボク達が契約を果たしていなかったら、恐らくここまでの革新は起こっていなかったんじゃないかな?」
「…そこまで自分達との共生関係を主張したいのなら…」
「どうしてあの子達を見守りながら、あなた達は何も感じなかったの?」
「みんなが、どんなに辛かったのか…理解してあげようとしなかったの?」
そのまどかの言葉に、キュゥべぇは溜息を付いた後、居なくなっていた。
「それが理解できたら態々こんな星にまで来なくて済んだんだけどね?」
323 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:46:08.95 ID:0UddKU7U0
暴風が吹き荒れる中、ある目的地を目指す小さな物体があった。
その姿はラジコンで、何処から操作されているのか分からないほど高速で道を走っていた。
少し前から雨が降り始めており、何時もより少し速度を上げて走っていた。
そうして走る事、数十分。
エクスカイザーは変形して二本の脚で立つと、マンションの入り口に気が付かれない様に入っていった。
エレベーターは使わず、階段を一歩一歩上がり、目的の階に到着して、ある部屋の前まで来ていた。
部屋の表札には『巴』とだけ書かれており。
ここに巴マミが住んでいる事をあらわしていた。
表札のベルを押して、マミを呼んで中に入れてもらった。
すると意外な顔がマミと一緒にいた。
324 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:46:42.31 ID:0UddKU7U0
「おや?杏子じゃないか」
「どうしたんだい?」
「アンタこそどうしたんだよ、こんな時に」
「何か忘れ物か?」
「そんな事無いわよ、佐倉さん」
「佐倉さんは拠点にしている所が使えなくなったって言うから今日は私の家に招待しているんです」
「そうだったのか」
「いや、ほむらから聞いてはいたけどヒデーよなこりゃ」
「あたしのマイホームもこれじゃただじゃすまなぇなぁ…」
325 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:48:01.22 ID:0UddKU7U0
杏子が外を見て驚きの声を上げている横で。
マミは来客用のティーカップに紅茶を注ぎ、ケーキと共に出していた。
「マイホームって…この前見に行ったあのダンボールハウスの事?」
「あぁ、自慢じゃないが持って来いの物件さ」
「雨は凌げる、立地条件は良し、おまけに近場に川がある、ときたもんだ」
「で、アンタは何しに来たんだ?忘れ物じゃないならさ」
そう言って目の前に置かれていたケーキを銀紙ごと持ち上げると。
おいしそうに端の方からガツガツと食べてしまい、ほんの数口でぺろりと平らげていた。
326 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:48:41.87 ID:0UddKU7U0
「いや、ちょっとね」
「マミ…君は大丈夫かい?」
「大丈夫…と言いますと?」
「前に、さやかが泣いていた時のマミの顔が、忘れられなくてね」
「大丈夫だろうか、と思ってやって来たんだよ」
エクスカイザーがそう言うと、マミは思い出だしたのか。
あぁ、と言って苦笑いを浮かべていた。
「あの事ですか、良いんですよ、私なんて」
「もう、そう言ってもいられないですし」
327 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:49:24.63 ID:0UddKU7U0
マミは哀しそうな目をして視線を下に向けていた。
その様を見かねて、エクスカイザーは立ち上がり。
マミの隣にまでやってきていた。
「?如何したんですか?エクスカイ」
マミが言い終える前に、エクスカイザーがマミを抱きしめたのだ。
ただ、エクスカイザーは小さめで体格に差があり、どちらかと言えばエクスカイザーがマミに抱きついた。
と言った方が良い様な構図であった。
「え!?え、エクスカイザーさん!?」///
「な、何を…!」
328 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:53:14.62 ID:0UddKU7U0
「マミ」
「強がる事と、強い事は全く別の事だよ」
「君は確かに強い、けど強がらなくても良いんだよ」
「マミ、君はもう一人ぼっちじゃないんだ」
「あ…」
その言葉の意味が分かり、慌てて振り解こうとジタバタしていた腕は大人しくなり。
エクスカイザーの肩におずおずと回されていた。
そしてマミがエクスカイザーを抱きしめる形になった時。
マミは泣き出していた。
以前、エクスカイザーに自分の心情を吐露した時とは違う、静かな泣き顔であった。
329 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:54:13.01 ID:0UddKU7U0
「うっ、ぅっうぅ…!」
「マミだってまだ女の子なんだ」
「遠慮なんてせずに、ちゃんと泣かなきゃ駄目だ」
「分かったかい?」
「うん…」
「私、先輩だし、カッコいい所みせなきゃって思って…」
「それで、我慢して…」
「それも良い、けれど、やりすぎて自分の逃げ場を無くしては駄目だよ」
「カッコいい所も、カッコ悪い所も含めて、マミはマミなんだ」
「うん…!うん…!」
330 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:54:43.84 ID:0UddKU7U0
その様子を見ながら杏子はやれやれ、と言った感じで首を横に振っていた。
エクスカイザーはその杏子を見て、片手でおいでおいでと、手を振っていた。
杏子はその仕草を見て自分を指差してイヤイヤと手を振っていた。
マミはその様子を何時の間にか見ており、杏子の手を引っ張って自分達の方へ引き寄せた。
「お、おい!マミ!」///
「良いじゃない、佐倉さんも」
「あなたも天涯孤独の身なんでしょ?」
「こういう時に位、甘えちゃいなさい?」
「アンタに言われたくはないけど…」
331 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:55:20.24 ID:0UddKU7U0
そう言ってはいたのだが、杏子も黙って二人に抱き付いていた。
「ん…」
「ね?良い物でしょう?」
「…悪くねぇ」///
「あら?素直じゃないわね」
「う、うるせぇ!」///
そう言いながらも杏子は二人に抱きついており、満更でもない様であった。
332 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:55:55.24 ID:0UddKU7U0
所は変わり、恭介の家。
この風の中さやかは恭介に会いに来ていた。
そして今はバイオリンを弾いて貰い、その音色を満喫していたのであった。
♪〜♪〜♪〜
さやかはその音色に聞き入っており、目を瞑っていた。
「……。」
「ふぅ…どうだった?」
演奏を終えると、さやかは控えめに拍手を送り、小さな演奏会を終えた。
333 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:56:57.47 ID:0UddKU7U0
「うん!良い感じ!」
「退院前に弾いた時よりも上達したんじゃない?」
「そう言って貰えると、態々この風の中来て貰った甲斐があるね」
「まぁ、あたしが勝手に来て頼んだだけだけどね」///
そう言ってさやかは恥ずかしそうに顔を赤くしていた。
「でも、どうしたんだい?この風の中、いきなり押しかけて来たと思ったら」
「僕の演奏を聞かせてくれって…」
334 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:57:29.59 ID:0UddKU7U0
恭介が質問をすると、さやかからは今までの笑顔が消え、下を向き真面目な顔をして話を切り出した。
「前に言ったよね、あたしが魔法少女だって事」
「…実はね、明日になるんだけど」
「とんでもない敵がこの町に現れるの」
「あたしはそいつと戦う」
「だから、その前に、恭介のヴァイオリンを聞いておきたいな…って思ったから」
そう言ってさやかは窓の外に目をやった。
その様子を見て、この風は魔女のものなのか、と恭介は驚いていた。
335 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:58:34.01 ID:0UddKU7U0
「だからさ、昨日仁美に言った告白なんだけど…」
「今、ここで」
その続きを言おうとした時、さやかの口は恭介の口付けで塞がれていた。
「あ…恭介…」///
「駄目だよ、さやか」
「志筑さんとの約束なんだから」
「約束は守らないと」
336 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:59:12.01 ID:0UddKU7U0
そう言って恭介は顔を離すと、にっこりと笑っていた。
「ご、ゴメン…」///
「だから約束だよ、さやか」
「必ず帰って来てくれ、そうして返事を」
今度は恭介の言葉をさやかの口付けが塞いでいた。
さっきの恭介の口付けよりも長く。
337 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 16:59:43.48 ID:0UddKU7U0
「分かった、だから今日はこれで我慢して…ね?」///
そう言って恭介の顔から離れると、今度はさやかがにっこりと笑い返していた。
「あぁ、約束だ」///
そう言いあい、二人は再び口付けを交し合っていた。
338 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:00:43.59 ID:0UddKU7U0
「…また殺されたいの?」
「それは勘弁願うよ」
「今日は君と話をする為にここまでやって来たんだから」
ほむらは最後の決戦に赴く準備を行なっていた所、何時の間にかキュゥべぇが現れ、不機嫌そうに応対していた。
「時間遡行者、暁美ほむら」
「数多の平行世界を横断し、君の望む結末を迎える為にこの一ヶ月を繰り返してきた存在」
「その君のお陰で、ある答えが出たんだよ」
「答え?」
339 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:01:15.72 ID:0UddKU7U0
「そうさ、今君を取り巻く、この異常な事態の事さ」
恐らく、キュゥべぇの言いたい事は予測できた。
今迄、繰り返した時には存在しなかったエクスカイザーと言う存在。
そして、さやかのエネルギー生命体化。
ほむらも言いたい事はあったが、キュゥべぇの話を聞く事にした。
「先ず、君達と行動を共にするエクスカイザーに関してだ」
「君が繰り返した世界で現れなかったのはただ単純に君の前に現れなかっただけだと思うんだ」
「何?それじゃあ今回、彼が現れたのも偶然だと言いたいの?」
340 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:02:04.27 ID:0UddKU7U0
「いいや、まどかの『因果』に引き寄せられた」
「といった方が正しいかな?」
「まどかの因果に?」
ほむらは分けが分からずに聞き返していた。
キュゥべぇもそれに頷き話を続けた。
「そうさ、強い因果を持つとそれだけ数奇な運命に遭遇する」
「恐らく、エクスカイザーはそのまどかの因果に引き寄せられて」
「この見滝原にやって来たんだろう」
341 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:02:50.67 ID:0UddKU7U0
その説明を聞き、ほむらは成程、と納得をしていた。
だが、それ同時に疑問も浮かんだ。
「待って、それじゃあ話がかみ合わないわ」
「どうしてまどかの因果が元なのに今迄現れなかったのよ」
「残念だが、この話にはまだ続きがあるのさ」
「少し考えてくれ、ほむら」
「君の願いはなんだい?」
「何を今更…」
「私の願いは唯一つ」
「まどかを魔法少女にしないことよ」
342 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:03:58.14 ID:0UddKU7U0
そう言い切ると、キュゥべぇはやれやれ、といって首を横に振っていた。
その仕草に一瞬、蜂の巣にしてやろうか、とほむらは思っていたのだが。
此処は堪えて話を聞く事にした。
「違うよ、それは今の君の願いだ」
「ボクが聞いているのは、君はどういう願いで魔法少女になったのか?ってことさ」
その言葉に、一瞬ほむらは戸惑ってしまった。
なぜ今になって、とも思いながら、ほむらはキュゥべぇに言った。
343 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:04:49.74 ID:0UddKU7U0
「……私の願いは…、まどかとの出会いをやり直したい」
「そして、一緒に守られるのではなく、共に歩む事…」
「そう、君の願いはある種、時間への反逆」
「この世界の法則へのルール違反だ」
「その願いによって、この世界は繰り返されて来た事によって」
「それがまどかに影響を及ぼしたんだ」
「どういう事よ?」
344 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:05:52.02 ID:0UddKU7U0
「魔法少女の素質は背負い込んだ因果の量で決まる」
「一国の主や救世主、と呼ばれる存在はそれだけの因果を背負っているのさ」
「けれど、まどかは極普通の一般人、本当に平凡な少女なんだ」
「それにも拘らず、彼女が抱え込んだ因果の量は計り知れないほどだ」
「ボクはそれを不可解に思っていた」
そこで一度言葉を切るとキュゥべぇはほむらを見つめ直した。
「ほむら、ボクの予測が正しければ」
「まどかは君がこの世界を繰り返すたびに強くなっていったんじゃないかい?」
345 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:06:39.96 ID:0UddKU7U0
その言葉を聴き、ほむらは少し考える風に顎に手をやり。
ハッ!と思い当たり驚いた。
「…どうやらボクの考えは正しかったようだね」
「原因は君にあったようだ」
「君が時間を巻き戻す理由はただ一つ」
「まどかの安否だ」
そう言ってキュゥべぇは話を続けた。
346 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:07:33.85 ID:0UddKU7U0
「君は同じ理由、同じ目的で何度も時間を遡るうちに」
「彼女、鹿目まどかを中心に幾つもの並行世界を螺旋状に束ねてしまったのだろう」
「その結果、絡まる筈の無かった平行世界の因果線が全て今の時間軸のまどかに集約されたんだろう」
「そうだとすれば彼女の途方もない魔力係数にも納得できるんだ」
「君が繰り返す毎にその中で循環した因果の全てが巡り巡って」
「鹿目まどかに繋がったんだ」
「それって…それってまさか…」
「そうさ、暁美ほむら」
「君がまどかを最強の魔法少女にしたんだ」
「不可抗力とはいえ、お手柄だよ」
347 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:08:47.64 ID:0UddKU7U0
その結果を伝えられ、ほむらは愕然としていた
「因果とは色々な人や物を惹き付ける、奇跡すらもね」
「エクスカイザーはその因果に巻き込まれてこの見滝原にやってきたのだろう」
「美樹さやかが謎の進化を遂げたのも、恐らくまどかが居たから成し得た事だろう」
「それでもだ」
「君の願いは絶対に完遂出来ない」
「巨大すぎる因果は、運命となり君の前に立ちはだかるだろう」
そう言われた時、ほむらは何も言えなかった。
そのほむらを一瞥し、キュゥべぇは居なくなった。
348 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:09:37.96 ID:0UddKU7U0
そして翌日、遂にその時が来た。
『此方は見滝原市役所です』
『本日、午前7時に兼ねてから台風の接近により』
『見滝原市全域に警報から避難指示へ変更となりました』
『付近のお住まいの皆様は、速やかに最寄の避難所への移動をお願い致します』
『繰り返し、連絡します…』
前日からの風雨は更に酷くなり、その脅威が近づいている事を知らせていた。
まどかは家族で揃って今避難所に避難していた。
349 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:10:10.85 ID:0UddKU7U0
「きょうはみんなでおとまり〜?」
「そうだよ、今日はお泊りだ〜!」
無邪気にタツヤが喜び、それを知久があやしていた。
まどかはこの中でも戦う仲間達を思い、浮かない顔をしていた。
「ん?如何したんだ、まどか?」
「気分でも悪いのか?」
「え!?う、ううん!なんでもない!」
(皆…ほむらちゃん…)
(頑張って…)
350 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:10:44.13 ID:0UddKU7U0
まどかは見えない所で戦う仲間達に対して祈っていた。
その頃、ほむら達は脅威を目の前にして談笑していた。
「準備は良い?」
「勿論、さやかはどうだい?」
「言われなくても、でもちょっと寝不足かな?」
そう言ってさやかはおどけていた。
それに杏子はハハッと笑い、手にしていた焼き鳥を全て平らげた。
351 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:11:31.59 ID:0UddKU7U0
「ところで、エクスカイザーさんは?」
「あ、さっき、まどかから連絡があって、一緒に居るって言っていたから、たぶん合流が遅くなるって」
「そうか…最初から助けは頼れない感じか…」
「で?アタシ等はどうすりゃ良いんだ?」
「まさか此処に来て眺めている、なんてことは無いよな?」
杏子がほむらを見ると、ほむらは首を横に振った。
「いいえ、私が先制して攻撃を叩き込む」
「それに合わせて攻撃をして欲しいの」
352 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:12:20.13 ID:0UddKU7U0
「成程…」
「なら、派手に行かせてもらいましょう」
「えぇ…」
(どんな事があっても…必ず…!)
「……!来る!」
辺りには靄がたちこめており、さっきまでの暴風すらもピタリと止み。
不気味は気配を伴った風が吹いていた。
「「「「……。」」」」
353 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:13:06.11 ID:0UddKU7U0
4人は風の吹く方へ歩き出していた。
少し歩くと、使い魔の行進が現れ、まるでパレードの様子であった。
それに気を取られずに4人が歩いて行くと。
それはそこに居た。
空中をパレードに引き連れて浮かび。
逆様にその豪華なドレスをたなびかせていた。
354 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:14:14.62 ID:0UddKU7U0
≪D≫
「さて、行きましょう」
「円環の理を私達で断つのよ!」
355 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:14:43.77 ID:0UddKU7U0
≪C≫
「愛と勇気が最後には勝つ、か…」
「なら、やるしかねぇな!」
356 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:15:11.97 ID:0UddKU7U0
周りのビルが競り上がる様な感覚になり、背中を圧迫していた。
「負けない…!負けるもんか!」
「此処には、私の護りたいものが沢山あるんだから!」
357 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:16:13.20 ID:0UddKU7U0
≪A≫
「今度こそ…!『ワルプルギスの夜』を!」
「この手で…!」
「私達の手で!!」
358 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:16:46.33 ID:0UddKU7U0
≪@≫
開幕のベルは鳴り響き、『ワルプルギスの夜』はその巨大な歯車をギアを変更する様に持ち上げ。
高らかに笑い声を上げた。
『アハハハッ!ウフフフフッ!』
359 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:17:55.39 ID:0UddKU7U0
それを皮切りに、全員変身し。
臨戦態勢を整えた。
ほむらは変身し終えると、即座に盾を翳し。
その中から物凄い数の単発式のロケット砲を辺りの地面に整列させた。
「うわ!すごっ!」
「感心している場合じゃないわよ!美樹さん」
「頼むわよ!暁美さん!!」
「よっしゃぁ!」
360 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:20:09.29 ID:0UddKU7U0
マミの言葉を皮切りに、さやかと杏子ペアに、マミとほむらペアに別れ動き出した。
「お願いよ!暁美さん!」
「ハイ!」
盾を構えて中の機構を起動し、周囲の時間全てを止めた。
マミもその影響を受け、今は動いていない。
その中を走り、バズーカを構えて『ワルプルギスの夜』に向けて順次撃ち込んで行った。
ドォン!ドォン!ドォン!ドォン!ドォン!
361 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:21:23.03 ID:0UddKU7U0
時の止まった中をロケット弾頭が噴煙を走らせて止まり、その全てのバズーカを使い終わり。
盾の機構を解除して時を戻した。
全て弾が動き出し、その全てが『ワルプルギスの夜』に見事命中して爆煙を上げた。
『アハハハ!ウフフフフフ!!』
その爆撃をものともせず『ワルプルギスの夜』は笑っていた。
それを見て、マミは待ってました、と言わんばかりにマスケット銃を召喚し。
極上の笑みを浮かべていた。
「この程度でくたばるなんて思っていないんだから!!」
「さあ!くらいなさぁい!!!」
362 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:22:18.47 ID:0UddKU7U0
召喚した銃全てを撃ち込み『ワルプルギスの夜』を鉄塔の近くにまで吹き飛ばした。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドオォン!!!!
『ウフフフフフ!ハハハハッ!』
(佐倉さん!美樹さん!そっちに行ったわよ!)
「良し、コイツを撃って行けばいいんだよね!」
「構うこたぁねぇ!」
「全部叩き込んでやれ!!」
363 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:23:35.85 ID:0UddKU7U0
綺麗に二列に並べられた迫撃砲を、さやかと杏子の二人が走っていき。
走り抜けた箇所から次々と砲弾を発射して行った。
飛び上がった砲弾は全てが放物線を描き、『ワルプルギスの夜』に当たっていった。
高度は少し下がっていたのだが、効いている様には見えなかった。
ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン!!!
ドッ!ドッ!ドッ!ドッ!ドッ!ドッ!
『アハハハハハハ!』
「クソォ!効いていんのかよ!」
「分からない!けど!ほむらぁ!」
(問題無いわ)
(此処までは予測どおり!)
364 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:24:20.03 ID:0UddKU7U0
その念話を終えると、ほむらは手元にあったスイッチを押して、あらかじめ設置していた爆薬を炸裂させ、鉄塔を『ワルプルギスの夜』に向けて薙ぎ倒した。
鉄塔は『ワルプルギスの夜』に当たり、その高度を更に下げていた。
だが、決め手にはならず鉄塔すらも炎で燃やし尽くしてしまっていた。
(なんだよ!ありゃあ!)
「まだよ!まだ終わりじゃない!」
そう言いながら、ほむらはタンクローリーを操作して。
見滝原市を繋ぐ大橋の上を片輪で走行させ、『ワルプルギスの夜』の顔に向けて突っ込ませた。
燃料が満載のタンクローリーは、そのままの速度を維持して顔面にぶつかって爆発した。
ドガアァァァァン!!!!!
365 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:25:31.18 ID:0UddKU7U0
その瞬間にほむらは飛び降りてそのまま川面に降りて行った。
水面に着水すると、そこには何処から調達してきたのか、地対艦誘導弾の砲塔が競り上がり。
ほむらに向いた『ワルプルギスの夜』をロックしていた。
「ココ!!」
ドドォン!!
叫び声と同時に発射されたミサイルは一瞬の内に『ワルプルギスの夜』に命中し。
その推進力を持って物凄い速度で『ワルプルギスの夜』を予定していたポイントにまで移動させた。
推力に負けて『ワルプルギスの夜』はその身体を盛大にコンビナートの大地に叩き付けられていた。
「マミさん!!!」
(オッケー!!)
366 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:26:10.20 ID:0UddKU7U0
マミは最初に一撃を放ってから移動し、龍脈の上でエネルギーをチャージし続けていた。
その身体からは黄色のエネルギーが溢れ、今にも巻き上がりそうになっていた。
「チャージ完了!!」
「たぁぁぁぁぁ!!!!」
物凄いエネルギーを抱え込み大ジャンプをして、見滝原を一望できる位の高さまで跳び上がった。
すると、コンビナートに身を横たえた『ワルプルギスの夜』を確認し、砲撃態勢に入った。
その地面にはよく見ると赤く輝く発光体が見受けられた。
ほむらが今までの時間を掛けてセッティングしたC4爆薬の群れである。
『アハハハハ…』
「最初で最後の超必殺の一撃!!!」
「とくと受けなさい!!」
367 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:27:00.88 ID:0UddKU7U0
そう言ってマミはリボンを巻き上げ、自分の身体が小さく見えるほどの超大な銃を2丁召喚した。
「アンジェリアァ・デモーニィ・インフェルノォ!!!!」
雄叫びと共にその攻撃を打ち込むのと同時にC4爆薬が大爆発を起こした。
カァッ!ズガァァァァァァアン!!!
その輝きと爆発の衝撃は対岸に集結したほむら達の身体を揺さぶり、熱風が身体を叩いていた。
「うわ〜凄い爆発…」
「こりゃ酷いね…」
感想を漏らす二人の前にマミが着地し4人全員が揃った。
「まぁ、これだけやれば…さしもの…『ワルプルギスの夜』も…」
368 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:27:55.79 ID:0UddKU7U0
「……。」
ほむらはその爆炎を見つめ、ただジッとしていた。
相手が動かないのを見て、終わった、と思ったその時。
シュゥン!ガァ!
「!?」
「うあぁ!!」
「「ほむら!」」「暁美さん!?」
3人が物凄い勢いで吹き飛ばされて行ったほむらを見るとその軌跡には黒いエネルギーが渦巻いていた。
「!?」
369 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:28:29.38 ID:0UddKU7U0
マミが振り返ると、黒いエネルギーが分裂し。
魔法少女の様な形をした使い魔が姿を現した。
『キャハハハハハ!!』
「な、何こいつら!」
「使い魔!?」
「二人とも気を付けて!」
「アレを!」
370 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:29:56.33 ID:0UddKU7U0
マミに促されてその先を見ると、信じられない光景が広がっていた。
吹き飛ばされたほむらも痛みを堪えて上半身を爆炎に向けると。
そこには爆炎の中、ただ笑いながら宙に浮かぶ『ワルプルギスの夜』が居た。
『ウフフフフフ…アハハハハハハ…!』
371 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:30:44.79 ID:0UddKU7U0
ドドォォォォォン……!
地響きと共に聞こえた音は、見滝原市の市民体育館の照明を揺らし、避難していた人達を騒がせていた。
「何?今の音?」
「分からない、もしかしたらこの風で何か倒れたのかも…」
「誰か外に見に行った方が良いんじゃないか!?」
「おい!コンビナートの方が大爆発を起こしているって!」
その中まどかだけはその音が友達たちが闘っているものだと察しが付き、一人モヤモヤする気分で居た。
372 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:31:46.69 ID:0UddKU7U0
「……。」
「ん〜?ねーちゃ、どったの?」
「?まどか?どうしたんだい」
「え?あ、ちょっとトイレに行ってくる」
まどかは知久とタツヤに悟られない様に、気分を紛らわす為に一人体育館の入り口の方に走って行った。
「……。」
入り口まで遣って来て気持ちを落ち着けようとしたのだが、ガラス張りの壁面から見える外の景色は酷く荒れており。
逆に不安に駆られてしまっていた。
373 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:32:26.51 ID:0UddKU7U0
「…ねぇ、キュゥべぇ」
「ほむらちゃん達は、本当に勝てるの?」
何時の間にか居たキュゥべぇに驚きもせずに、ただ静かに質問をしていた。
キュゥべぇも、それに静かに答えた。
「今更言葉にして説くまでも無いよ、まどか」
「見届けてあげると良い、暁美ほむら達が何処までやれるのか」
「…ねぇ、ほむらちゃんはどうしてそこまでして戦うのかな?」
「それはまだ希望があるからだよ」
「希望?」
その言葉に、まどかはキュゥべぇの方を向いた。
キュゥべぇはそのまま続けた。
374 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:32:53.61 ID:0UddKU7U0
「彼女がまだ希望を求めているからさ」
「いざとなれば、彼女はこの時間軸すら無為にして戦い続けるだろう」
パララララララララララ!!!
ドォン!ドォン!
ほむらぁ!そっちに行った!
クゥ!ガシャン!
ダタタタタタタタタタタタ!!
うおりゃあ!てぇい!りゃあ!
シュン!カチッ!ドシュゥン!
まだよ!まだ終わりじゃない!
375 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:33:23.94 ID:0UddKU7U0
「何度でも、性懲りも無く、この無意味な連鎖を繰り返すだろうね」
ドォン!カチッ!カチッ!
しまたっ!カートリッジ…!
キャハハハハハハ!!
?!さやかぁ!
!?しま…!
ドガァァァァァン……
さやか!?
この…!
美樹さん!
376 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:34:42.55 ID:0UddKU7U0
「今の彼女にとって立ち止まる事と諦める事は同義なんだ」
「何もかも無駄だった、まどかの運命を変える事は出来ないと確信したその瞬間」
「暁美ほむらの心は絶望に負け、グリーフシードへと変質するだろう」
ああああああぁぁぁぁ!!!!
この!この!この!このォ!!
ウフフフ、アハハハハ…!ハァーッハハハハハハハ!!
マミさん!無闇矢鱈じゃ…!
マミさん!!
!?
ドガォオオオオオン!!!!
マミさん!!!!
377 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:35:13.78 ID:0UddKU7U0
「彼女自身にも分かっているんだ」
「選択肢なんて最初から存在していなかった事を」
「だからこそ、彼女は今も戦い続けているんだ」
「勝ち目なんて有ろうが無かろうが」
くぅっ!おおおおおおおああああああああああああ!!!
ガシャン!バルルルルルルルルルルルルルルルルルルル!!!
「希望を持つ限り、救いなんて無いんだよ」
「君なら分かるだろう?」
「彼女達はそれを肯定出来ないからこそ、戦っているんだ」
378 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:35:46.77 ID:0UddKU7U0
残酷な真実を下され、まどかはそれに抗い続けるほむらの為に涙を流していた。
だが、それと共にその手を力強く握り締め、ある決心が付いた。
その決心を基に走り出そうとした、その時。
「何処に行くんだい?」
「ママ…」
母、詢子が何時の間にか近くに居て心配そうに腕組みをしていた。
「まどか…アタシに何か隠してるだろう?」
「言わなくてもわかるよ、アタシの娘だからな…」
379 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:36:22.17 ID:0UddKU7U0
「……。」
「ママ、私、友達に言わないといけない事ができたの」
「その友達は、今凄い事に巻き込まれていて、戦っているの」
「……。」
「素人が動くな」
「ココは消防とか自衛隊に任せな」
「ううん、駄目なの、私で無ければ…」
「私が行かなきゃいけないの!」
そのまどかを見て、詢子は手を振り上げて頬を張ろうとした。
まどかも引っ叩かれるのを覚悟して目を瞑っていたのだが、何時まで経ってもその衝撃が来なかった。
何か、と思いまどかは薄目を開けると、その手はまどかを叩かず、ただ握り締められていた。
380 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:36:58.82 ID:0UddKU7U0
「まどか…、分かっているのか…?」
「アンタの言っている事は自分勝手だって事が」
「その自分勝手で、どれだけの人間が心配するのか」
「アンタがあたし達の目を盗んで、毎晩出掛けていた時は目を瞑っていたよ」
「まだ、心配はなさそうだって、でもな、まどか」
「今この状況を分かっているのか!?」
「もし解っていないなんて「解っているよ」
詢子が激昂しそうになったのをまどかが話を挟んで止めさせた。
そうしてまどかは続けた。
381 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:37:28.81 ID:0UddKU7U0
「自分を粗末にしちゃいけない事も」
「どれだけパパやママに大切にしてもらっているかも良く解っている」
「でもね、違うの私も皆が大切で、絶対に失いたくないから」
「私にしか出来ない事を、私の言葉じゃなきゃ伝えられない事を伝えに行くの!」
そこまで言って、まどかは一度息を整えて話を続けた。
「ママはさ、私が良い子に育ってくれたって言ってくれたよね?」
「今でもそう信じてくれる?」
「私を正しいと信じてくれる?」
その言葉を、詢子はただ黙って聞き続け。
終わった所を見て口を開いた。
382 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:37:56.54 ID:0UddKU7U0
「…絶対にヘマはしないな?」
「うん」
「誰かの嘘に踊らされてねぇな?」
「うん」
「それじゃあ、約束できるか?」
「約束?」
「あぁ、それが終わったら、アンタの言う友達を全員家に招待するんだ」
「それであたし達に紹介するんだ」
「これが私のお友達です!ってな」
383 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:38:44.21 ID:0UddKU7U0
そう言うと詢子はまどかを振り向かせ、背中を叩いて見送った。
「うわ!ととと…」
「あ…ママ…」
「行って来い、そんでアンタのやりたい事をして来るんだ」
「…うん!ママ!行ってきます!」
「約束、必ず守るから!」
笑顔のまま、まどかは早足で階段を降りて行き。
体育館後にした。
「…はぁ〜、結局アタシも親馬鹿なのかねぇ…」
そう言いながら、最後まで自分の娘を叩かなかった手を見て、悪くはないかな、と思っていた。
384 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:39:18.21 ID:0UddKU7U0
雨は何時の間にかあがっており、酷い風の中、まどかは何か飛んでくるのを厭わず、迷わず友達の所に向かって走っていた。
その中でまどかは腕に巻いた通信機のボタンを押していた。
ピッ!パシュウゥゥン!
ガオォォォォン!!
「エクスカイザーさん!」
「まどか!」
「私!今から行って来ます!」
「だから…!」
385 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:39:51.42 ID:0UddKU7U0
「あぁ!解った!」
「私も直ぐに向かおう!」
「!有難う!!」
そう言ってまどかが通信を終えようとした時。
「待ってくれ、まどか」
「少しこのままで良いから、私の話を聞いてくれるかい?」
「?ハイ…」
386 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:40:29.26 ID:0UddKU7U0
エクスカイザーは避難所に持って来たまどかの旅行バッグの中から小声で話をしていた。
周囲は喧騒に包まれており、少し話しづらかったが問題はなかった。
「…良いかい?」
「…ハイ!私も最初からそうする心算でしたし…」
「私も如何にかして間に合うように向かおう」
「それじゃあ、また後で!」
「うん!また後で!」
387 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:41:02.83 ID:0UddKU7U0
そう言って通信を切ると、エクスカイザーはどうしたものか、と唸っていた。
エクスカイザーがバッグの中に居るのは訳があった。
本来なら、まどかの部屋から発進出来たのだが、今は家族全員で避難をしている。
故に、窓を開け放したままにする、と言うのは無用心であるとして、鍵を閉めてきたのだ。
だが、このまま置いて来てはエクスカイザーは発進出来ないから、まどかは以前ほむらの家に連れて行った時と同じ方法を取ったのだ。
方法は良かった、だが状況が悪かった。
(さて、発進し易くはある、だがあまりにも大勢の目が在り過ぎる…)
(何か注目が逸れる事があれば…!)
その時、エクスカイザーの入れられたバッグが持ち上がり、どこかに運ばれようとしているのをエクスカイザーは感じた。
388 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:41:38.08 ID:0UddKU7U0
(まずい!もしかすると、これは盗難と言うやつだろうか!?)
(このままでは…!)
ファスナーを開ける事すらままならず、バッグが移動する振動に揺られていると、不意に固い感触がサスペンションに感じ、地面に置かれたのだと気が付いた。
そして、バッグの中からでも周囲に酷い風が吹いているのが分かった。
(?此処は…一体?)
そう思っていると、ファスナーが開けられ、外の景色が見えた。
その景色はまさしく体育館の外であり、どうして此処で開けられてたのかエクスカイザーは疑問に思っていた。
バッグの中に手が入れられ、エクスカイザーの車体が両手で持ち上げられ。
前後を逆にして横の地面に置かれたのだ。
(これは…!)
389 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:42:21.30 ID:0UddKU7U0
「これで良いかい?」
引っ張り挙げた人物を見ると、そこにはまどかの父親の知久の姿があった。
横では弟のタツヤが知久のズボンの裾を掴んで見ていた。
「君が何なのかは分からないけど、まどかが危ない所を今迄助けてたんだろう?」
エクスカイザーは一瞬驚いてしまった。
なぜこの人はエクスカイザーがただのラジコンじゃないのを見抜いたのか、と。
390 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:43:05.23 ID:0UddKU7U0
「驚いているのかい?答えは簡単」
「君が使っているのは、僕のラジコンだからさ」
「僕だって、伊達や酔狂でラジコンを扱っていた訳じゃないから直ぐに分かったよ」
「まどかの部屋の君が置いてある箇所のブラックマーカー」
「あれが出来る様な回転数は、僕のラジコンじゃ出来ないし、それよりも前にそうなる程のパワーも無い」
「それに、一番決定的だったのは昨日の事さ」
そう言って知久はラジコンに対して人差し指を立てて見せていた。
傍から見たら変な人だが、幸い此処には誰も居なかった。
「ラジコンってのは所謂模型だ、それなのにまどかが踏んで、しかも机にフロントからぶつけておきながら壊れないのは可笑しかったからね」
「昨日見た時は気のせいかな、とも思ったけど、どうやら間違いじゃなかったようだ。」
391 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:43:38.61 ID:0UddKU7U0
知久はハハッと笑っていた。
エクスカイザーは成程、と思いながらも、このまどかの父親は普段は優しいだけじゃなく、本当に何でも見ているのだな、と関心もしていた。
そして自分の隠れている為の技術もまだまだだな、と感じていた。
「ぱ〜ぱ?なにしてるの〜?」
「ん?イヤね、このラジコンさんが出かけるみたいだからちょっと話をしていたんだよ〜」
「タツヤも、話をするかい?」
「する〜!らじこんがんばれ〜」
タツヤはそう言うとキャッキャとはしゃいでいた。
エクスカイザーはその様子を、喋らずにじっと見ていた。
392 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:44:18.07 ID:0UddKU7U0
「と、言う訳だ」
「まどかを宜しく頼む」
「あの子は時々、危なっかしいからね」
「助けてあげて欲しい」
知久はタツヤを抱え上げてラジコン状態のエクスカイザーに頭を下げていた。
タツヤは何が起こってるのか分からずただキョロキョロしていた。
その様子を見て、エクスカイザーも黙っていられず。
フロントライトを開いて。
「…私もその心算です」
「必ず、まどかを無事に連れて帰って来ます!」
393 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:44:59.92 ID:0UddKU7U0
そう言って、力の限りタイヤを回転させ、知久の股を潜って方向転換をし。
嵐の中心に向かって走って行った。
「おぉ〜!らじこんさんしゃべったぁ〜!!」
「がんばれ〜!!」
「良かったね、タツヤ」
「…まどかを頼みます」
知久の瞳は、何時までもエクスカイザーの走って行った方向を見つめていた。
暫くその場に立ち尽くし、詢子を心配させる訳にも行かず、知久はタツヤと一緒に体育館に帰って行った。
394 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:45:40.99 ID:0UddKU7U0
ほむらは焦りながら跳んでいた。
マミもさやかも、杏子もやられてしまい、もう打つ手が無くなっていたのだ。
そして『ワルプルギスの夜』の進路も焦りの対象になっていた。
『ウフフフ…アハハハ…』
「くっ!このままじゃ!避難所に!」
その進路はゆっくりだが着実にまどかの避難している所へと向かっていた。
このままではまどかどころか、もっと酷い事がおきる。
追撃戦を邪魔する使い魔を手持ちのアサルトライフルで一掃しながら近づき。
あと少しの所で『ワルプルギスの夜』が攻撃を仕掛けてきた。
395 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:46:16.00 ID:0UddKU7U0
『アハハハハッ!ウフフフフフフフハハハハ!!』
笑い声と共に周囲に衝撃波が飛び、持っていたライフルが破壊され、その直ぐ後に黒い雨が注ぎ、ほむらの動きを鈍らせた。
そこに、今迄周辺を浮遊していたビルの残骸がほむら目掛けて迫って来た。
ほむらはこのままでは回避出来ない、と思い盾を翳して、時を止めようとした。
だが。
「!?しまった!!」
盾に収納された時の砂はもう残っておらず、時を止める事は出来なくなっていた。
「ハッ!」
396 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:46:50.58 ID:0UddKU7U0
それに気を取られ、ビルがそのまま向かって来て防御する事すら忘れてしまっていた。
ドゴァァァァン!!!!!
「ぐあぁぁ!!」
ほむらは吹き飛ばされてしまい、辛うじて原形を留めているビルの1フロアにその身体を叩き付けられていた。
「う…あ…」
気絶しそうになるが、痛みでまた覚醒し、動こうとすると足が瓦礫に挟まっており身動きが取れなくなっていた。
「あ、足が…」
「くっ……!何度アイツに挑んでも…何度時間を巻き戻しても…アイツに勝てない…!!」
397 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:47:36.37 ID:0UddKU7U0
その頃、マミも同じ様に瓦礫の中に埋もれており。
意識を途切れさせていた、帽子は何時の間にか無くなっており、衣装もあちこち破れていた。
だが、幸いソウルジェムは壊れておらず、優しい黄色の輝きを放ち、健在だという事を顕していた。
「う…」
瓦礫が崩れた音で目を覚まし、辺りを見回す。
身体は瓦礫に埋もれてはいたが、少し体を揺すれば抜け出せるようであった。
「これなら…まだ行けるわね…」
そう言って、マミは瓦礫の中から這い出て立ち上がり『ワルプルギスの夜』を睨みつけていた。
「何処までも頑丈ね…暁美さんが何度挑んでも倒せなかったのは脚色じゃなかったって事か…」
「でもまだ…!」
398 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:48:16.77 ID:0UddKU7U0
そう一人ごちるとマスケット銃を一丁召喚して手に携えて跳び上がろうとした。
だが、突然眩暈が襲いその場に膝を付いてしまった。
「あぐ…」
マミの目線からは周囲の世界全てが歪み、まるで終末の様相であったが、現実にはそんな事はなかった。
何時の間にか頭部を強打しており、脳震盪のような症状に見舞われていたのだと思われる。
それを見つけたのか、黒い使い魔が数対マミの方へ飛んで来ていた。
『キャハハハハハハ!』
399 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:48:47.53 ID:0UddKU7U0
「……あれ…?」
「あたし…生きてる…?」
別の場所でさやかは己の無事を確認しどうして生きているのか不思議に思っていた。
その答えは直ぐ傍に居た。
カラァン…
何か棒が地面を撃つ音が聞こえ、さやかは剣を取り出して臨戦態勢に入った。
が、直ぐにさやかは青褪めて剣を放り出して音の主に走って近寄っていた。
400 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:49:25.54 ID:0UddKU7U0
「杏子ォ!!」
「…なんだ、やっと起きたのかよ…」
「このままアタシがあの化けモンを倒すまで寝てても…」
杏子は槍を落として、満身創痍といった状態であった。
さやかはその傷の深さに驚き、そして直ぐに周りの様子がおかしい事に気が付いた。
「これは…杏子の結界…!?」
「あぁ、さやかがあんまりにも眠たそうだったからな…ちょっとの間だけ…眠れるスペースを確保したんだ」
そういうと、杏子はくず折れてしまい、さやかは慌てて杏子を胸に抱きかかえた。
受け止めた鎧は杏子の血でその白金を赤黒く染めていた。
401 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:50:00.23 ID:0UddKU7U0
「しっかりしてよ!杏子!」
「傷なら、幾らでも治せるから!」
さやかの声に、杏子は薄く笑って見せていた。
「ヘヘッ、アンタの癒しはホント凄いね」
「それに比べてアタシときたら、カッコわりぃ…」
「駄目、話しかけないで!」
「でもよ…それでも、もう駄目かもしんねぇ」
「外、見てみな…」
402 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:50:40.63 ID:0UddKU7U0
息も絶え絶えと言った風情の杏子に促されて結界の外を見ると、黒い使い魔が此方を探してウロウロしていた。
その数は恐らく数十対は居るだろう。
「今はアタシの力で見えなくしてるけど…時間の問題だよ」
「な、何馬鹿な事言ってるのさ!」
「生きるんでしょ!?」
「最後には愛と勇気が勝つんでしょ!」
その言葉に、ハッと元気無く杏子は反応していた。
403 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:51:15.24 ID:0UddKU7U0
「あぁ、そうだったな…」
「なら…頑張らねぇと…!」
そう言い終わった瞬間、使い魔達が杏子の結界に気付き。
一斉に突進しだした。
「…ハハッ、ココでばれるとか…ついてねぇ…」
結界に亀裂が走り、その隙間から一体の使い魔が進入してきた。
『キャハハハハハハハ!』
404 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:51:47.75 ID:0UddKU7U0
「クゥッ!!」
「それならば…!」
ほむらは盾を構え、その中の砂時計を逆転させようとしていた。
「……!」
だが、実際にする事はなかった。
ある事実がほむらを止めたのだ。
405 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:52:20.95 ID:0UddKU7U0
「……繰り返せば、繰り返す度に」
「まどかの因果が増えていく…」
「私がやって来た事は、全部まどかに圧し掛かって…」
『君の願いは絶対に完遂出来ない』
『巨大すぎる因果は、運命となり君の前に立ちはだかるだろう』
キュゥべぇの言っていた事が判り、ほむらは力無く盾の付いている左腕を降ろした。
406 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:53:08.33 ID:0UddKU7U0
「う…うぐっ…うぅ…!」
避け様の無い運命を告げられ、ほむらの心は遂に折れてしまっていた。
マミ達は、未だ戦っているのは分かっていた、だがそれでもほむらの心は、まどかを絶対に助ける事が出来ない。
と言う事実により絶望に染まり、ソウルジェムが加速度的に濁り、あと少しでグリーフシードへ変質しそうになる所まで来た時。
誰かの手が触れた。
「……!?」
407 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:53:43.03 ID:0UddKU7U0
戦いに疲れた手には懐かしく感じる温もり。
涙で視界が定まらない中、瞬きをして視界をクリアにすると、其処には予期していない人物が膝を付いていた。
「…まどか…?」
「もう良い、もう良いんだよ、ほむらちゃん」
408 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:55:16.35 ID:0UddKU7U0
そう言ってまどかはほむらの手を握っていた。
ほむらのソウルジェムは其処で濁りが止まり半分ほどがそのままの色で輝いていた。
「……!まどか…!まさか…!」
「うん、ゴメンネ、ほむらちゃん」
「私…魔法少女になる」
第11話 完
409 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/18(火) 17:56:09.20 ID:0UddKU7U0
次回予告
「ほむらちゃん、さやかちゃん、マミさん、杏子ちゃん」
「そしてエクスカイザーさん」
「其々が、其々の思いで戦っている」
「だから、私は信じるの、皆が生きている事を」
「どんな困難でも乗り越えられるって」
「次回 勇者 エクス☆マギカ『わたしの、最高の友達』」
「あなたの家にも宇宙人いる?」
予告担当:鹿目まどか
410 :
◆1B0iEDnTxU
[saga]:2011/10/18(火) 17:58:25.17 ID:0UddKU7U0
これにて11話完です。
思えば長くきたものだ…。
何とか終わりが見えました。
もう少しだけお付き合いお願いいたします。
それでは。
411 :
◆1B0iEDnTxU
[saga]:2011/10/18(火) 18:01:09.16 ID:0UddKU7U0
そういえば、一番頭で乗せたURLで見れない方用に。
もう一度HTMLのURLを乗せておきます。
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1310/13104/1310439726.html
412 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(兵庫県)
[sage]:2011/10/18(火) 22:05:35.08 ID:QA7kTCAo0
乙
413 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)
[sage]:2011/10/18(火) 23:39:04.11 ID:/OOIY1gRo
おつ
414 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)
[sage]:2011/10/19(水) 17:59:49.03 ID:OZkNz+e0o
乙華麗
415 :
◆1B0iEDnTxU
[saga saga]:2011/10/23(日) 12:20:03.17 ID:P2AHXeTS0
レス有難うございます!
ちょっと忙しかったので反応できませんでした。
もう暫く掛かりますので、気長に待っていて下さい。
それでは。
416 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/23(日) 12:29:30.23 ID:P2AHXeTS0
ageちまった…すみませんでしたorz
417 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/24(月) 17:07:12.52 ID:Zc+9/InB0
…なんて言っていたら完成しました。
今夜から明日にかけて投稿できますのでもう少しお待ちください。
418 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)
[sage]:2011/10/24(月) 19:24:38.63 ID:wytQ+9PGo
ズボン脱ぐか
419 :
お待たせしました
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:03:33.47 ID:3GSy7o860
ズボン脱いで待ってもらえるとは…有難うございます!
今から投下します。
弟が風邪引いたとか言いながらこんな時間まで起きていますので、皆さんも風邪を引かないようお気をつけてください。
420 :
みんな「勇者 エクス☆マギカ 第12話」
◆1B0iEDnTxU
[saga]:2011/10/25(火) 01:05:27.99 ID:3GSy7o860
神秘で広大なこの宇宙。
だが、この地球には『魔女』と呼ばれる謎の存在が巣食っていた。
しかし、その魔女に、勧善と立ち向かう者達が居た!
『宇宙警察 エクスカイザー』そして『魔法少女』である!
これは世界に蔓延る悪と戦う、『勇者エクスカイザー』と魔法少女の仲間達の戦いの記録である…。
第12話『わたしの、最高の友達』
421 :
◆1B0iEDnTxU
[saga]:2011/10/25(火) 01:06:12.16 ID:3GSy7o860
「私…魔法少女になる」
まどかの足元には何時の間にかキュゥべぇも立っており、準備は万端、と言った感じであった。
「そんな…!やめて!」
「それなら…私は、何の為に…!」
「ううん、止める事は出来ない…」
「だって私自身で決めた事なんだもの…」
422 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:06:49.04 ID:3GSy7o860
笑顔でまどかはほむらを見つめていた。
その笑顔は何度も見た事がある、何時ものまどかの笑顔であった。
「これまでずっと、ほむらちゃんに守られて、望まれて来たから今の私が在るんだと思うの」
「そんな私がやっと見つけた答えなの…」
「だから…信じて…ね…?」
そう言ってまどかはウィンクをしていた。
だが、その仕草にほむらは少し違和感を覚えていた。
(一体何を考えているの?どうして…あんな顔を出来るの…)
「キュゥべぇ」
423 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:07:22.80 ID:3GSy7o860
ほむらが思案している中、まどかは隣に居た白い生き物を呼び、自分の前に座らせた。
「…さぁ、数多の世界の運命を束ね、因果の特異点となった君ならば」
「どんな願いすらも叶える事が出来る」
「君は…その力を持って何を願うんだい?」
その問いかけにまどかは居住まいを正し、深呼吸をしていた。
「…ねぇ、キュゥべぇ」
「最後に聞いて良い?」
「?なんだい?まどか」
「本当に叶えられない願いは無いんだね」
「勿論さ!君ならどんな願いでも叶える事が出来る!それは間違えようの無い事実さ!」
424 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:08:17.07 ID:3GSy7o860
「そう…ならさ…『もう既に叶っている願い』を叶える事は…出来るのかな…?」
その言葉に、ほむらとキュゥべぇは首を傾げていた。
もう既に叶っている願いとは、どういう意味なのだろうか?と。
その疑問を口にしたのはキュゥべぇであった。
「…どういう意味だい?」
「言っている意味が、良く分からないんだけれども…」
キュゥべぇにそう言われ、まどかはえぇ!?と驚いてアタフタし始めていた。
少し顔を赤くして、考え込むと、纏まったのかもう一度話し出した。
「あ、そのね…キュゥべぇは願いを叶えてくれるでしょ?」
「それはまだ達成出来ていない物ばかりだと思うんだ」
「だから、今の時点で叶っている願いをもう一度って事なんだけど?」
425 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:08:49.93 ID:3GSy7o860
少しモジモジしながらまどかは聞いていた。
キュゥべぇは少し考えて喋りだした。
「…たぶん出来ると思う、君の言いたい事は」
「例えばマミが『生きたい』って言う願いをもう一度叶える、と解釈して良い物かい?」
その問い掛けにまどかはうんと頷き、キュゥべぇは了承した。
「何を願うのかは分からないけど」
「君の素質ならば、先ず問題は無いだろう」
「さぁ!君の願いを!」
426 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:09:53.41 ID:3GSy7o860
そう言ってまどかの言葉を聞き入れる態勢に入っていた。
まどかは一瞬振り向いてほむらの顔を見ていた。
(やっぱりおかしい…!)
(何かが…何かが違う!)
(まどかは…一体何を考えているの…!)
ほむらが疑問の渦に巻き込まれている間に、まどかは願いを語り始めた。
「(私の…私の願いは…)」
「(全ての、過去から現在、未来の魔法少女にの変わる事の出来る可能性を持たせたい…!)」
まどかの願いに、キュゥべぇは首を傾げて聞きなおした。
427 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:11:22.55 ID:3GSy7o860
「??それは、美樹さやかと同じになる…と言う事かい?」
「(そう…)」
「(さやかちゃんみたいになれれば…魔法少女にも未来も希望もある…!)」
「(だから…全ての魔法少女に、希望を持って貰いたい!)」
「(みんなの願いは無駄なんかじゃないって…!)」
そう言い終えると、まどかの周囲にピンク色の輝きが立ち込めた。
「成程…でもエネルギー生命体にしてくれ、と言わないのは気掛かりだけど」
「これで契約は成立だ…!」
「さぁ!まどか!君のソウルジェムを!」
「や…まどか…だめぇ!」
光の柱の中でまどかはほむらに向き直り、何か喋るように口を動かしていた。
428 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:12:01.24 ID:3GSy7o860
(え…?何…『だい…じょうぶ…?』)
口の動きが止まると、まどかはにっこり笑って光の中に消えた。
その笑顔は悲壮な覚悟の儚い物ではなく、何時もの笑顔であった。
その笑顔が見えなくなるや否や、光の柱は弾け飛び、中からは制服のまどかが現れた。
「な…!どういう事だ!」
「願いは叶えたのに!ソウルジェムどころか、魔法少女にすらなっていないなんて!!」
「(それはそうだよ、キュゥべぇ…いいえ)」
「インキュベーター!」
429 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:12:39.87 ID:3GSy7o860
まどかが言い捨てると同時にビルの壁面から何かが飛び上がり中空を舞った。
それは赤、青、白の小さな車、ラジコンカーであった。
「チェーンジ!!エクスカイザー!!」
車は即座に変形すると、そのまままどか達の居るフロアに着地し、キュゥべぇの方を向いて両腕を向けていた。
「フォトンリング!!」
そう叫ぶと光の輪が出現し。
キュゥべぇを縛り上げた。
「うわぁ!」
430 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:13:10.66 ID:3GSy7o860
「エクスカイザー!?」
「やったぁ!」
驚くほむらとは対照的にまどかは歓声を上げる始末で、ほむらは一層分けが分からなくなっていた。
「こ、これは一体どういう事だい!?まどか!!」
「エクスカイザー!!」
「どうもこうも、見たままだよキュゥべぇ!」
「宇宙刑法違反で君を逮捕する!」
431 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:13:42.29 ID:3GSy7o860
そう言ってエクスカイザーはキュゥべぇを指差していた。
それにキュゥべぇは縛り上げられた手足を動かして抗議していた。
「そんな!君達宇宙警察の有する宇宙刑法には抵触しないはずだよ!」
「それなのに君は僕を逮捕するというのかい!?これは不当逮捕だよ!!」
「そう思うかい?だがそれは間違いだ!」
「宇宙人類に対しては、本来は宇宙刑法で罰するのが一般だが、仮に宇宙犯罪者の潜伏地域の現地立法に抵触している場合」
「その法律の範囲で以って逮捕する事も可能なんだ」
「なんだって!?」
432 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:14:27.07 ID:3GSy7o860
「君は未成年者に対して、不当な契約を結ぼうとしたね」
「それはこの国では違法である可能性が高い」
「更に君の行為は、宇宙刑法で禁止されている、宇宙未進出惑星内での兵器密造にも抵触する可能性がある!」
「拠って、君の身柄は拘束させて貰う」
「…別件逮捕か…」
「してやられたよ、まどか」
「ゴメンね、キュゥべぇ」
「ま、まどか…これって一体…」
もう分けが分からなくなってほむらは目をグルグル回していた。
それを見たのか、まどかはほむらの方へ歩いて行った。
433 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:15:03.52 ID:3GSy7o860
「ほむらちゃんにもゴメンネだね」
「私、ほむらちゃんに嘘付いちゃった」
テヘッ、と言いながらまどかは可愛く舌を出していた。
「え?嘘って…え?」
「うん、嘘」
「私が魔法少女になるって言ったのが嘘」
「ほむらちゃんの今までの頑張りを無駄に出来ないもの」
そう言ってまどかはほむらの手を握っていた。
434 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:15:45.70 ID:3GSy7o860
「本当はエクスカイザーさんに頼まれちゃったからこんな嘘付いちゃったんだ」
「ね、エクスカイザーさん」
振り向くと、エクスカイザーが近くにやってきていた。
「あぁ、まどかにはすまない事をした」
そう言ってエクスカイザーはまどかに頭を下げていたのだが、まどかは気にしなくても良いと言いながら手を振っていた。
「ほむら、君にも分かるように説明しておこう」
「私の本来の目的は、この地球で発生している、ある案件を解決する事だったんだ」
435 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:17:25.85 ID:3GSy7o860
「ある…案件…?」
「そう、この星の科学力では作り出す事の出来ない、兵器転用すら可能な代物『魔女』に対して、だ」
「地球で確認されていたのが前々から知っていたのだが、それにキュゥべぇたちの種族が関与している可能性が浮上してね」
「私が調査、及び違法行為の場合の確保の為にやって来たんだよ」
エクスカイザーが其処で切り、ほむらは驚きを露にしていた。
宇宙の片隅とも言っても過言じゃない事に宇宙警察は目を光らせていたのか、と。
「キュゥべぇの行なっている事は、あくまでもこの宇宙を維持する事に貢献、もしくは」
「現地民の非常事態の防御手段として認められていたから、地球の現地法で違法行為を行なっている瞬間を掴まえる事しか出来なかったんだ」
436 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:18:56.18 ID:3GSy7o860
「それで、中々足を出してくれなかったから、私が囮になったの」
「魔法少女になる、ってね♪」
「本来ならもっと早くに手を打つべきだったのかもしれなかったんだが」
「私の不徳だ、本当にすまない」
それでやっと、ほむらの中でまどかの仕草の謎が解けた。
アレはエクスカイザーを待つための時間稼ぎだったのか、と。
だが、それでも疑問はまだあった。
「で、でも!どうしてまどかはキュゥべぇと契約をしたのに魔法少女になっていないの!?」
「それにソウルジェムだって…」
「それなんだけどね…」
「確立で言ったら半々くらいだったんだ、だから殆ど賭け」
「でもね、確実にならないって自信はあったんだ」
437 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:19:42.89 ID:3GSy7o860
「自信?」
「そう、ほむらちゃん私が言った願い、聞こえていた?」
「も、勿論よ『全ての、過去から現在、未来の魔法少女に進化の可能性を持たせたい』…よね?」
「それでどうして魔法少女にならないのか説明して!」
ほむらは分けが分からなくなっており、半分叫び声であった。
「…昨日、家にキュゥべぇがやって来たんだ」
「その時にね、今までの魔法少女達の事を見せてくれたの」
そう言ってまどかはキュゥべぇの方を向いていた。
そのまどかの意図に、キュゥべぇは頷いていた。
438 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:20:18.94 ID:3GSy7o860
「彼女は嘘は言っていない、本当だよ」
「ボクは『ワルプルギスの夜』が来る前の最後のチャンスだと思ってまどかの家に行ったんだ」
「あなたって…!」
怒りが込み上げて来て、キュゥべぇを撃ち殺してやりたかったのだが、足が瓦礫に挟まれており。
動く事が出来ず、そのまままどかが続けた。
「私が見たのはどの魔法少女も、等しく絶望に身を委ねて死んでいったこと…」
「そして、祈りから始まって呪いで終わるってキュゥべぇは言っていたんだけれど、実は違ったの」
「「違う?」」
まどかの言葉が気になったのか、ほむらとキュゥべぇは同時に聞き返していた。
ほむらは忌々しそうにキュゥべぇを睨んでいた。
439 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:21:01.60 ID:3GSy7o860
「そう、キュゥべぇが居なくなった後、私も色々調べたんだ」
「調べるって言っても、ほんのちょっとしか出来なかったんだけどね」
「でも調べる中での魔法少女達は、絶望のみに身を委ねて死んでいないって事が分かったんだ」
まどかはそう言い切り、キュゥべぇが拘束された身体で猛反発した。
「そんな!あり得ないよ!ボク達は今まで君達と密接に関係していたんだ」
「それなのにボク達の記録が間違っているなんて…!」
「ううん、たぶんキュゥべぇたちの記録も間違っていないと思うの」
「でも、絶望の中でも魔法少女達は最後まで信じて死んでいったんだと思うの」
「信じて死んでいった?」
「何をだい?まどか」
440 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:21:37.88 ID:3GSy7o860
キュゥべぇの言葉を聴き、まどかは右手を胸に添えて目を瞑り、一言だけ喋った。
「それはね…」
「皆の事だよ」
「皆?」
「うん、助けた人や、慕われた仲間たち」
「それに、これから先の、世界を良くしてくれるであろう人達の事を」
その言葉にキュゥべぇは即座に反論していた。
「馬鹿げている!そんなの馬鹿げているよ!まどか!!」
441 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:22:33.51 ID:3GSy7o860
「馬鹿げてなんかいないよ、キュゥべぇ、信じるってとても難しい事だけどね」
「どんなに怖くても、どんなに辛くても」
「どんなに絶望しても…!人は信じる事を止めない!」
「だって…皆繋がっているんだもの」
「信じる心が繋がっているから、今私達がココに居る、生きているの」
「私達が生きる世界があるの!」
「その世界を繋げて来た魔法少女達がただ絶望に塗れて死んでいったなんて絶対に信じない!」
442 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:23:16.32 ID:3GSy7o860
「答えになっていないよ!まどか!」
「どうして君が魔法少女にならなかったのかの答えを……!」
「まさか…!」
「そうだよ…キュゥべぇ」
「魔法少女は最初から進化する可能性があったの!」
「そして、信じる事は希望なの」
「だから私の願いはもう叶っているから、こうして魔法少女になっていないの」
そう言い切り、まどかは胸を張っていた。
443 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:24:21.42 ID:3GSy7o860
「あり得ない…あり得ないよ…」
「じゃあ、このシステムは、ボクの星で作り上げた感情をエネルギーに変換するシステムは」
「宇宙進出すら儘ならない地球の人間が、どうやって美樹さやかの様にそのシステムの枠を抜け出すんだい?」
「それこそ矛盾しているよ」
暴論とも言えるまどかの言葉に、キュゥべぇは眩暈がする思いでまどかに聞いていた。
ほむらも全く理解できていなかったのだ、無理も無いと言えば当然であろう。
「それはね…(成程…そう言う事だったのね)」
「!?マミさん!」
「無事だったんですね!」
(えぇ、無事よ)
(鹿目さんに信じてもらっているんだから、ね♪)
444 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:25:13.54 ID:3GSy7o860
「ウェヒヒヒ♪」
今迄、全く音信不通だったマミが会話に割って来たのだ、まどかは予測していたのかそれほど驚かず。
ほむらは居るであろう方向に目を遣っていた。
そのままマミの念話は続いた。
(話は全て念話で聞かせてもらったわ)
(全く驚いたわ、いきなり鹿目さんの魔法少女宣言が聞こえて来た、と思ったら)
(急転直下なんだもの…)
「ゴメンなさい、マミさん…いきなり念話を飛ばして、でも…(えぇ…)」
(分かったわ、後は私に任せて)
(キュゥべぇ!聞こえる?)
445 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:25:49.00 ID:3GSy7o860
「マミ!?どうして君が今までの会話を聞いて居たんだい!?」
(さっき言った通りよ、鹿目さんからいきなり念話が送られて来て)
(一部始終を全てあなた経由の念話で聞かせてもらっていたんだもの、気付かなかったの?)
またもや驚きの事実を聞かされ、キュゥべぇはまどかの方を見た。
それに答える様に、まどかは舌を出していた。
(まさか、あの時念話も同じ事を喋って、ボクに気づかれない様にマミに送信していただなんて…)
「結構鹿目さんって器用なのかもね?」
そう言って、マミは地面に突き刺していたマスケット銃を拾い上げ、黒い使い魔を撃ち貫いていた。
その射撃は先程まで眩暈に襲われていた素振りは一切見せず、正確に、無慈悲に使い魔を貫いていった。
446 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:26:30.90 ID:3GSy7o860
「キュゥべぇ、私ね、美樹さんがどうしてエネルギー生命体に成れたか、分かっちゃったのよ」
(ほ、本当なのかい!)
「えぇ、本当よ、先ずはあなたにお礼を言っておきましょう」
「この体にしてくれた事に」
(どういう事だい?なぜ今になって礼を…?)
「それは…簡単!」
マミは跳び上がってそのままビルの瓦礫を降りると、周囲を使い魔に埋め尽くしながらも余裕の笑みを浮かべていた。
「私も今からそれに成るからよ!」
(なんだって!?)
447 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:27:33.32 ID:3GSy7o860
そう言ってマミはソウルジェムの髪飾りを外し、目を瞑り両手で祈る様な形で握り締めていた。
「感情をエネルギーにするソウルジェム」
「そのシステムを作り出した事、それ事態が間違いだったのよ」
「このソウルジェムは希望をエネルギーに変え、その中に絶望を溜め込む」
「それが話をしている時に理解できたわ」
「でもね、ある感情によってそのシステムを覆す事が出来るのよ」
「エクスカイザーさん達と同じシステムへとね…」
(ある…感情…?)
「そう…それは…絶望でも希望でもない…勇気よ!!!」
448 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:28:23.50 ID:3GSy7o860
目を見開くと、手の中のソウルジェムは瞬く間に煌き、周囲を黄色い輝きで覆った。
その中心で、マミはその光の発生点を愛しそうに見つめていた。
「家族を失って、一人ぼっちで戦って…」
「私は…今迄、魔法少女にばかり専念して、友達なんて持った事がなかったから…」
「そして、一人で死んでいくのが怖かった…」
「でもね…今は違う、今は周りに頼れる後輩も居る、同じ境遇の仲間も居る」
「時を超えてやって来た、危なっかしい後輩も居るの!」
「そして何より…」
「もう、私は一人ぼっちじゃない!」
『キャハハハハハハハハハハハ!!!!』
「もう、何も!怖くない!!!」
449 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:29:01.16 ID:3GSy7o860
マミが言い切ると同時に、ソウルジェムが弾け。
黄色い光の柱が天を貫いた。
突然の事に、使い魔たちは怯み、顔と思われる部分を腕で隠していた。
その隙を光の中のマミは見逃さず。
光の柱が消えるや否や、マミは飛び上がり。
両手に持ったマスケット銃と両腰と背中から伸びたホルスターにセットされた銃を切り離し。
宙に浮かべ、周囲の使い魔を全て撃ち貫いた。
「真・魔法少女!」
「巴マミ!!」
「暴れ撃たせてもらうわよ!!!」
450 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:29:43.77 ID:3GSy7o860
そう宣言すると、今までと同じ様に更に空中に銃の軍隊を召喚し円状に配置し、一斉射。
その周囲の使い魔のみを全て焼き払った。
周囲を確認し終え、マミはそのまま『ワルプルギスの夜』に向けて飛んで行った。
「勇気だなんて…そんな…」
「信じられないよ!分けがわからない!」
「そんなもので、ボク達のシステムが破壊されたっていうのかい!?」
「そうよ、キュゥべぇ」
「あなた達は最初から間違っていたの」
「そうだよね!さやかちゃん!」
451 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:30:52.15 ID:3GSy7o860
「おうよ!」
さやかがまどかに返事をし。
それを合図にボロボロのさやか達は跡形もなく消え去り、結界に侵入した使い魔達は、余す事無く剣山に貫かれていた。
其処に刃を連結した鞭の様な剣が飛び込み。
その剣を握る手によってトリガーが引かれ、飛んで来た刃が爆発を起こし周囲の剣も連鎖的に反応し、その場に居た使い魔を全て吹き飛ばした。
「全く、あんなのに引っかかるなんて情けない奴らだねぇ」
「何言ってんの、杏子の技がトンでもないだけでしょ?」
(杏子!?さやか!?君達は瀕死の重症のはずじゃ…)
452 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:31:37.53 ID:3GSy7o860
「ほら、キュゥべぇまで騙せるとか、ドンだけよ?」
「違いねぇ」
杏子はニシシ、と笑うと槍を横に突き立て、胸元のソウルジェムに触れていた。
さやかはその様子を後から見ていた。
「あたしね、マミさんの言った事、何となく分かった」
「ん?」
「あの時ね、駅で皆に色々言われた時」
「もう一度、信じようと思ったんだ皆の事を…」
「そしたらね、胸の奥が熱くなって」
「ソウルジェムが輝いたのを思い出したんだ」
「その時、ソウルジェムの溜まりすぎた濁りも一緒に力を持ったんだと思うの…」
453 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:32:18.98 ID:3GSy7o860
「へぇ〜だからさやか対さやかなんて事になったのか…」
「まぁ、アタシの憶測だけどね」
「その時の感情は何とも言えないんだけど、それがマミさんの言う勇気ってヤツなのかな?」
「愛と勇気が最後には勝つんだ」
「違いねぇ」
そう言う杏子のソウルジェムも紅く輝き、さやかはそれを覗き込んでいた。
「綺麗…」
454 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:33:16.64 ID:3GSy7o860
「アタシは、今迄自分の力が怖かったんだ」
「この力で、何もかも壊しちまった、家族を殺してのうのうと生きて…」
「この力を使ったら思い出しちまうから、だから絶対に使わない様にしていた…」
「でも…何時からかな…少しづつ使う様になったのは…」
杏子は目を瞑り、今までの事を思い出していた。
そうして思い出し、目を開き。
「あぁ、あのロボット野郎が使わせたんだっけ」
「忌々しいねぇ、全く…」
「でも、悪くねぇ」
「アタシは向き合うよ、アタシのしてきた事に」
「あたしの心に、迷いはまだある…けれど…!」
「もう二度と!逃げも隠れもしねぇ!」
455 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:34:25.75 ID:3GSy7o860
ニヤリ、と不敵な笑みを浮かべると、ソウルジェムが砕け、マミと同じ様に光の柱が立った。
その光が収束するとその中から二本の意匠の違う槍を携えた杏子がいた。
片方は十字架、もう片方は三角形の穂先をした槍であった。
その槍に目をやり、軽々と片手で回し感触を確かめると。
「悪くねぇ、さて、行くか!さやか!」
「マミを待たせるのも良いけどな!」
槍を構えて背中に天使と悪魔の羽の様な物を出しそのまま飛び上がっていった。
「あ!待ってよ!」
さやかも遅れまいと杏子の後を追って飛び上がっていった。
「無茶苦茶だよ…!こんなの!」
456 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:35:00.61 ID:3GSy7o860
「そうかもね、でも事実なんだよ」
その様をもう勘弁と言った感じでキュゥべぇは見ていた。
まどかはエクスカイザーを見て頷くと、エクスカイザーも頷き返していた。
「さぁ、今度はほむらの番だ」
「え!?わ、私!?」
いきなりエクスカイザーが振り返りほむらに宣言し、それにほむらは驚いていた。
「うん、今度はほむらちゃんの番だよ」
「そ、そんな事言っても…どうすれば良いのか…」
457 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:35:55.61 ID:3GSy7o860
「そんなの簡単だよ、ほむらちゃんはほむらちゃん自身を信じればいいんだよ」
今までの会話を聞いて、勇気を持てばソウルジェムという戒めを砕く、と言うのはほむらも分かった。
だが、まさか自分自身を信じろ、と言われるとは思っていなかった。
「だって、見ていると分かるんだもん」
「ほむらちゃんは自分を信じていない事が」
「!?そんな事無いわ!私は今まで…」
ほむらが否定の言葉を口にしたのだが、それをエクスカイザーが遮って喋った。
「いいや、そうじゃない」
「ほむらが強いのは良くわかる」
「だけどね、君が強いのと君自信を信じる事は別なんだ」
「君は確かに自分の力を信じている」
「けれど、自分自身を信じていないんだ」
458 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:36:36.06 ID:3GSy7o860
「そ、そんな事言われても…」
「それは私も分かる、夢で見たほむらちゃんも同じ」
「力に頼っているけど自分自身には頼ろうとしないのが分かる」
「!?それは…」
流石のほむらも思い当たる節があり、言葉を口にする事が出来なかった。
今迄、自分の力で戦う事が出来なかったから、自分の力を信じる事が出来なかったからこそ、色々な武器を扱える様にして来た。
「……。」
459 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:37:15.22 ID:3GSy7o860
「だからほむらちゃんは信じて、自分自信を」
「もうほむらちゃんは、ただの臆病なほむらちゃんじゃない、みんなと一緒に戦う事の出来る」
「強くてカッコいいほむらちゃんなんだから!」
「…まどか…!」
そう言われ、ほむらの涙が自身のソウルジェムに落ちた時。
其処から紫の輝きが溢れ、ほむらを照らした。
「こ、これは…!」
「さあ!ほむらちゃん!」
「ほむら!」
460 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:38:11.55 ID:3GSy7o860
二人に促され、ほむらは自分のソウルジェムが見るように手の甲を見つめ。
語りかける様に喋りだした。
「…私は…自分自信の力に酷く自信が無かった」
「私如きじゃ無理だ、何も出来ない、私なんかじゃって諦めたいたのかもしれない…」
「けれど、今は違う」
そうぽつぽつと語り、自分の感情に整理を付けているかのようでもあった。
「私の事を信じてくれている人がいる」
「私はその気持ちに答えたい」
「ううん、答える!」
「私自身の力で!この夜を終わらせる!」
「そしてこれからも、みんなと共に歩き続ける!」
パキィン!!
461 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:38:57.46 ID:3GSy7o860
ソウルジェムが砕け、ほむらも光の柱に包まれた。
その様子を横から見ていたまどかはエクスカイザーに抱きついて心の其処から喜んでいた。
「やったぁ!!」
「あぁ!やったな!」
光が収まると、其処にはほむらが立って自分の身体を見回していた。
ほむらはどうやら殆ど服装が変わっておらず、ソウルジェムのあった手の甲以外はそのままであった。
その中で一番変化していたのは盾であった。
「盾が…変わった?」
462 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:40:41.44 ID:3GSy7o860
ほむらの盾は今まで、使用時にしか機能していなかった機構が全て可動しており。
内部の歯車は、正確に時を刻む様に一定の間隔でカチッカチッと音を立てながら動いていた。
形も円形から菱形へと変わり、盾の前面はギリシャ文字で1から12までの数字が紫色に輝いていた。
「これがほむらちゃんの…新しい力…」
自分の服装と武器を確認し、ほむらはうんと頷き。
「じゃあ、まどか…」
「行って来る!」
文字盤の光が何個かほむらの背中に集まり、其処からウィングが現れ。
ほむらは、『ワルプルギスの夜』に向かって飛んで行った。
463 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:41:20.77 ID:3GSy7o860
「よし…まどか、私も行ってくる」
「君も避難するんだ!」
「ドラゴンジェットォ!!」
空の彼方からドラゴンジェットを呼び出し。
それに飛び乗り、エクスカイザーもほむら達の元へ向かった。
「ほむらちゃん、エクスカイザーさん…頑張って…!」
「無理だ!彼らは『ワルプルギスの夜』の力を知らないからあんな事言えるんだ!」
「絶対に敵いっこない!」
464 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:42:25.74 ID:3GSy7o860
「ううん、勝てるよ」
「それにね、キュゥべぇ」
「魔法少女は希望を齎すけどね」
「どんな困難にも立ち向って、誰かの為に戦える人達…エクスカイザーさんや今のほむらちゃん達みたいな人達をね」
「大昔から、物語なんかに出てくる人達の事を何て言うか…知っている?」
「それは…」
「勇者だよ」
魔法少女だった者達の光が空に眩しく輝いていた。
465 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:43:21.02 ID:3GSy7o860
既にマミは周囲の使い魔を一掃し、上空に跳び上がって『ワルプルギスの夜』の眼前に迫っていた。
『アハハハハハ!ウフフフフフフフ!アーッハハハハハハ!』
「笑っていられるのも今の内よ!」
「あなたはココで私の手で倒れるんだから!」
「ハァァァァァァ!!!!」
手持ちの銃を全て前面に展開し、マミは砲撃体制を整えて一気に決めるつもりでいた。
「必殺!!」
「ヴォンバルダメント・インフィニータ!!!」
466 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:44:12.04 ID:3GSy7o860
一斉に砲撃を行い、その後も銃を何度も召喚し、魔法の弾丸を無尽蔵に叩き込んだ。
その砲撃で『ワルプルギスの夜』は大型の身体を爆煙で隠していた。
「やった?」
マミが目を凝らして確認しようとした時、爆煙の中から黒いエネルギーがマミ目掛けて槍の様に突っ込んできた。
「!?」
そのまま狙いを定め、マミの腹部に黒いエネルギーが突き刺さった、かに見えた。
貫かれたマミはそのまま霧散し、その横に何が起こったのか分からず動けなかったマミが浮かんでいた。
「こ、これは…!」
「詰めが甘いぜ!マミ!」
「マミさん!遅れました!」
467 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:44:44.90 ID:3GSy7o860
二人の言葉が聞こえ振り返ると、そこには紅と蒼の魔法少女が得物を携えて浮いていた。
「二人とも無事だったのね!」
「それに今のは…佐倉さんの『ロッソ・ファンタズマ』ね!」
「ゑ?ロッソ…何?」
「う、うるせぇ!」///
「それより今はあのデカブツを倒すんだろ!!」///
そう言って杏子が指差す方向には、依然『ワルプルギスの夜』が浮かんでいた。
しかもその姿にダメージらしき痕は無く、悠然と笑っていた。
468 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:45:20.99 ID:3GSy7o860
『アハハハハハ…ウフフフ…』
「嘘!全くの無傷だ何て…!」
「頑丈なのが取り柄ってヤツかよ!?」
「チョーウゼェ!」
「…!」
「危ない!来るわよ!」
『ワルプルギスの夜』から再び黒いエネルギーが飛び出してくるのを見とめ。
3人は散開して迎撃に入った。
469 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:45:58.71 ID:3GSy7o860
「クソッ!このままじゃジリ貧じゃねぇか!」
「何か策はねぇのかよ!」
「在るには在るわ!けど、それでも通用するかどうか…」
「保証は無いわ!」
「なら、それで行きましょう!」
「こんな所で倒される訳にも行かないですし…!」
「私達で、ヤルっきゃないから!」
そう言って、黒いエネルギーを切り払ったさやかの後方から新たなエネルギーが串刺しにしようと迫っていた。
だが、直前に文字盤を模した壁が現れさやかを貫かずに其処で止まった。
「さやか、後!」
「ッ!!」
470 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:46:33.79 ID:3GSy7o860
何処かから聞こえた忠告を受け、即座に後ろを振り向き黒いエネルギーをそのまま切り裂いた。
そして、何処から聞こえて来たのか、と周りを見回していると、何時の間にか背中合わせにほむらが浮かんでいた。
「ほむら!?」
「気を付けて!敵の攻撃は前から来るわけじゃない!」
「暁美さんも来たのね!」
「見つけたのね!あなた自身の勇気を!!」
会話をしながらも黒い槍をかわし、攻撃を返し。
縦横無尽に空を飛び回っていた。
471 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:47:08.12 ID:3GSy7o860
「…ハイ…!!」
「遅かったじゃんか!またどっかで泣いていたのかよ!」
「…言い訳はしないわ…」
そう言って、ほむらは杏子に向かって不敵な笑みを浮かべた。
最初杏子はその顔を見て呆けたが、直ぐに同じ様な顔になって見直した。
「…ヘッ!」
「で?どうするんだ?マミ」
「アイツに敵う策ってのは?」
472 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:47:41.81 ID:3GSy7o860
攻撃が止み、全員で作戦会議をする為に4人は空中に固まった。
「それなんだけどね…「全員大丈夫か!?」
「!?」
その声に振り返ると、そこにはドラゴンジェットに乗っかったエクスカイザーが居た。
心配そうに4人を順番に見ていた。
「この様子だと、皆無事みたいだね、良かった…」
エクスカイザーが胸を撫で下ろしているのを見て。
さやかが答えた。
473 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:48:27.43 ID:3GSy7o860
「ハイ、皆揃ってあたしみたいになっちゃって…」
「御株が取られた感がありますけどね〜」
「何言ってるの、美樹さん」
「私達も自分の勇気を見つける事が出来たからこそ、あなたと同じになれたんじゃないの」
「そうだよ、ある意味アンタのおかげって事じゃん?」
「少しは胸張っときな」
「胸を張るのは良いけど、それよりマミさん、その策って?」
あぁ、と言って談笑しそうになった気持ちを振り払い。
マミは真面目な顔で話し出した。
「単純なんだけどね」
「全員の攻撃を一点に集めるって言うのは如何かしら?」
「今の私達なら、いけると思うの」
474 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:49:01.70 ID:3GSy7o860
その提案に全員を見回し、各々が成程と頷いていた。
「そうか…それならもしかしたら…」
「けれど、すまない」
「私に飛行能力があれば…」
エクスカイザーはドラゴンジェットの上で肩を落としていた。
だが、ほむらがその言葉に返した。
「大丈夫です!エクスカイザー!」
「今の私の能力を使えば…」
475 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:49:47.60 ID:3GSy7o860
ほむらが盾を構えると、文字盤の数字が一つ輝きを失い。
エクスカイザーとドラゴンジェットの間に、エクスカイザーを支える様に文字盤が現れた。
「?!ほむら!これは…」
「今の私の力です、あなたの足元を対象に停止時間の壁を作ってその上に乗れる様にしました。」
周りの3人は、ほむらの新技に驚き。
エクスカイザーも最初は戸惑っていたが。
足元の感触を確かめ終えるとよし!と言ってほむら達の方を向いた。
476 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:50:39.49 ID:3GSy7o860
「有難う!ほむら」
「君のおかげで一緒に戦えそうだ!」
「マミ!その提案!試す価値は大いにある!」
「私も参加させてもらおう!」
「ドラゴンジェット!キングローダー!!」
そう言って額の兜飾りにエネルギーを溜め、遥か彼方の空にエクスカイザーは放った。
近くに浮いていたドラゴンジェットはその叫びに反応し、大きく旋回し、呼び出されたキングローダーと共に併走しだした。
キングローダーは併走状態から、すぐさまフライトモードに変形して飛び上がり。
フォームアップの準備が完了していた。
エクスカイザーは足元を気にせずに宙を走り抜け、そのままキングローダーと合体した。
「フォームアップ!!」
477 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:51:19.22 ID:3GSy7o860
掛け声と共にハッチが閉まり、エクスカイザーはキングエクスカイザーに巨大合体を完了した。
其処へドラゴンジェットが飛び込んで行き、機体中央から光が走り、パーツに分かれてキングエクスカイザーに飛んで行った。
そのままキングエクスカイザーに装着され、エクスカイザー最強の姿を現した。
最後にキングエクスカイザーのバトルマスクが外され、顔を輝きが包み新しいバトルマスクが現れ、合体が完了した。
「超巨大合体!」
「グレートエクスカイザー!!」
合体を終え、そのまま文字盤の上に着地をすると。
文字盤は少し沈んだが、問題無くグレートエクスカイザーを支えていた。
478 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:51:54.99 ID:3GSy7o860
「準備は良い見たいね?」
「それじゃあ、再び行きましょう!」
「「「「オウ!!!」」」」
5人は其々が持つ最強の必殺技を出す為に構えだした。
「あたしから良くか!」
「マミが勝手に名前を付けた…」
「奥義!『ロッソ・ファンタズマ』!!」
掛け声と共に杏子は4人に分裂し、その各々がエネルギーを穂先に溜めだした。
「「「「こっからが本番だ!どれが本物か!分かるかぁ!?」」」」
479 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:52:30.34 ID:3GSy7o860
そう言って4人はバラバラに飛び上がり、『ワルプルギスの夜』を翻弄しだした。
『ワルプルギスの夜』は笑いながらも周囲に黒い衝撃波を出しながら杏子を叩き落そうとしていた。
だが、そのどれもが当たっては歪み、当たっては消えを繰り返し。
どれが本物か分からなくなっていた。
「杏子だけには良いカッコさせないよ!」
「あたしも編み出したんだから!」
さやかが剣を構えると、剣はそのまま大型の物に変化し。
切っ先を巨大な魔女に向けていた。
「いくぞぉー!!」
「秘技!『スクワルタ・トーレ』!!」
480 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:53:15.64 ID:3GSy7o860
言い終えるのが早いか、動くのが速いか、といったスピードでさやかは飛び出し。
現われ出した使い魔を高速の一撃で全て破壊していった。
その斬撃は衝撃波として『ワルプルギスの夜』に届いたのだが、それら全てが効いている様には見えなかった。
「美樹さんの高速戦闘、本当に凄いわね」
「でも!負けてられないんだから!」
「それなら私は、一撃必殺よ!」
マミ腰と背中のホルスターからマスケット銃を呼び出しは周囲に浮いた全てを束ね、光が螺旋状に包み込むと。
中から巨大な銃を出現させ、トリガーを握った。
「気合充分!」
「最後はこれで決まりよ!」
「必殺!『ティロ・フィナーレ』!!」
481 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:54:02.13 ID:3GSy7o860
銃口からはエネルギーが溢れ、今にもその輝きを放とうとしていた。
「これで…!本当に終わりに出来る!」
「まどかを!みんなを!助ける!!」
盾を構え、文字盤の数字が数個浮かび上がり。
そこから光が形を変え、中から黒塗りの弓が現れた。
「あの時のまどかの様に…ううん」
「これが私の…!『フィニトラ・フレティア』!」
光の弦を引き絞り、光り輝く矢にエネルギーが満ちていった。
482 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:54:49.68 ID:3GSy7o860
「今こそ皆の力を合わせる時だ!」
「カイザーソード!!」
グレートエクスカイザーが両手でエネルギーを固め、真上に翳すと。
まるで空に落ちる雷のように走り、雲海に消えていった。
すると、雲の切れ間からカイザーソードが落ちて、グレートエクスカイザーの手に収まった。
そして片手にドラゴンアーチェリーを出現させると、二つの武器を目の前で合わせた。
二つの武器を輝きが包み、其処から新たに巨大なカイザーソードが姿を現した。
不安定だった天候が荒れ始め、何時の間にか空は雷雲を纏い。
稲妻が走った。
483 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:55:47.02 ID:3GSy7o860
ボォァヒュウゥゥゥン!!
グレートクスカイザーの胸の獅子から物凄い熱の炎が吐き出され、カイザーソードを熱しだした。
カイザーソードはキングエクスカイザーの時と同じ様に荒々しいエネルギーを纏い、その刀身を煌かせていた。
「サンダァーフラッシュッ!!!」
大降りに振り上げ、正眼に構えると、其処からエネルギーが溢れ、まばゆい光が周囲を包み込んだ。
光は龍の姿を一瞬見せたかと思うとそのまま消え、その中央から身体を黄金に煌かせたグレートエクスカイザーが物凄い速さで飛び出した。
周囲の風を逆巻かせて、グレートエクスカイザーの突撃に合わせ。
『ワルプルギスの夜』の周囲で露払いを行なっていた二人は、グレートエクスカイザーに平行して突進を始めた。
484 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:56:39.91 ID:3GSy7o860
「グレートエクスカイザー!!」
「あたし達も一緒だ!」
「行くぜぇ!!」
「オウ!」
「行くわよ!暁美さん!!」
「ハイ!!」
「「「「「オオオオオオオオオオオオオォォォォォ!!!!」」」」」
485 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:57:31.91 ID:3GSy7o860
3人が突撃するのに合わせて、マミとほむらは最大まで溜めた力で持って一撃を放った。
バギィィィィィイイイイイ!!!!
『アハハハハハハハハ!!!ハハハハハハハハハハ!!!』
5人のエネルギーが全て一点集中して『ワルプルギスの夜』にぶつけられたのだが。
「っくぅぅぅ!」
「け、剣が!」
寸前のところで剣は当たらず、全て目の前で止められていた。
これが恐らく『ワルプルギスの夜』がダメージを受けなかった原因であろう事は明白であった。
「ぬぅ!押されている!?」
486 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:58:07.83 ID:3GSy7o860
「諦めんな!」
「踏ん張りやがれぇ!!」
「!?何かのフィールド!?」
「暁美さん!」
「言われなくても!!」
後方からエネルギーを放射し続けていたマミは異変に気が付き、ほむらに声を掛けると。
ほむらはその意思を読み取っており、威力を更に引き上げた。
487 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:58:43.33 ID:3GSy7o860
「グッ!身体が…!」
「弱音を吐いちゃ駄目よ!」
「私達はまだ生きているんだから!」
「うおおおおぉぉ!!」
輝きが『ワルプルギスの夜』の胴辺りで留められ、その輝きに眼を細めながらまどかは祈っていた。
「皆…!」
「無理だ!敵いっこない!」
「君の願いも!何もかも!」
488 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 01:59:36.87 ID:3GSy7o860
「そんな事ないよ、キュゥべぇ」
「奇跡はね、起こしてもらうものじゃないの」
「起こすものなの!」
「皆!頑張ってぇぇぇぇぇ!!!」
その言葉に呼応したか、カイザーソードが動かなかったのが少しづつ前進し始めた。
「!?グレートエクスカイザー!」
「いける…!いけるぞ!!」
「ぬぅぅぅ…オオオオオオオオオォォォォ!!!!」
489 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 02:00:19.27 ID:3GSy7o860
グレートエクスカイザーが渾身の力で切り込み、さやかと杏子も後に続く様に叫びながら得物に力を入れていた。
「「うおおおおおおおおおおお!!」」
「頑張って!」
「さやかちゃん!杏子ちゃん!マミさん!ほむらちゃん!」
「グレートエクスカイザーさん!!」
「「「「「でえぇぇぇぇいやああああああぁぁぁぁ!!!!」」」」」
5人の叫びが揃ったと同時に不意に抵抗が無くなり、5人分の最大の一撃が全て『ワルプルギスの夜』に命中した。
バギイイイイイイイィィィィィン・・・・・・!!!!!!
490 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 02:01:46.63 ID:3GSy7o860
『ウフフフ、あははは、ふふふふ……』
『ワルプルギスの夜』の身体には、グレートエクスカイザーの袈裟切り、さやかの逆袈裟、杏子の縦一文字の切れ目。
そして中央にマミとほむらの合わさった砲撃による巨大な穴が開いていた。
ドガアァァァアアアアアアアアアアンンンンンンンン!!!!!!!!!!!
『ワルプルギスの夜』の大爆発を背に3人の正面を影で覆い隠していた。
マミとほむらも爆発に背を向けており、その顔を窺う事は出来なかった。
ガァオォォォォォォォンンン!!!!!
「嘘だろ…ありえない…あの『ワルプルギスの夜』を…」
「倒してしまうなんて…」
491 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 02:02:35.93 ID:3GSy7o860
全力を出し、肩で息をしていたほむらがやっとの思いで口を開いた。
「や…やった…」
「遂に…「やったぁああああああ!!!」
「勝った!勝ったよ!ああたし達勝ったんだ!あんな化物相手に!」
「ヤターーーーー!!!」
そしてほむらが感慨深く感動を噛み締めようとした途端。
横にさやかがいきなり現れ、諸手を挙げて喜びだしたものだから驚いて硬直していた。
更にほむらに抱きついて来た。
「ちょ、さやか」
「顔近い!!」
「良いじゃん良いじゃん!」
「勝ったんだからさ!ほら杏子もマミさんも!」
492 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 02:03:16.49 ID:3GSy7o860
「お、おいさやか!」
「み、美樹さん!?」
「ヤレヤレ…」
その後、さやかの音頭取りで空中で5人揃って万歳三唱を暫く続けていたという。
その顔は、其々笑顔になっていた。
空は5人の功績を祝福するかのように雲海の切れ間から日光が差し込んでいた。
493 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 02:04:31.85 ID:3GSy7o860
『信じられません!見てください!先程まで酷い荒れ模様だった天気が今は嘘の様に晴れ渡っております!』
『取材の為に来ていたレインコートが要らなくなる程の急変振りです!』
『正に奇跡の賜物といったものでしょうか!?もしかしたら先程見えた光と関係があるのかもしれません!』
『以上、此処見滝原市の郊外からお送りいたしました。』
体育館に置かれたラジオからは逐一台風の情報が流れていたのだが、それを聞いていた人たちはこぞって外の見える場所に行き。
其処から見える雲の多い空を眺めていた。
「……やったな、まどか」
「…あぁ」
「らじこんかった〜!」
その空を体育館から見ていた知久達は呟きながらガラス張りの壁から見える空を見つめていた。
494 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 02:05:10.36 ID:3GSy7o860
5人は万歳を終えると、そのまままどかの居る場所にまで降りて、再び勝利の余韻を味わっていた。
まどかは瓦礫に足をとられながらも真っ先にほむらに抱きついてその勝利を讃えた。
「ほむらちゃーん!!!!」
「まっまどか!?」///
「良かったね、良かったねほむらちゃん…」
「終わったんだね…」
その言葉に自らの想いを思い出し、ほむらはジワリと涙が出てきた。
そして、そのまままどかに抱きついて泣き出してしまった。
「やったよ…グスッ、やったよ…、まどかぁ」
「私…あなたを守りきる事が出来たよぉ…」
「うっうぅうぅぅぅぅぅ…!!」
495 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 02:05:48.89 ID:3GSy7o860
「…ほむらちゃん、お疲れ様」
そのほむらをまどかやあやす様に背中を讃え祝福していた。
それを見て、さやかは首を振りながらほむらを見ていった。
「ヤレヤレ、転校生は容姿端麗、成績優秀」
「おまけに魔法少女で元病弱っ子!」
「更には未来人と、どれだけ萌な要素が詰まっている事やら」
「あら?美樹さん、それならメガネっ子と泣き虫も追加しなきゃ」
「何の話してんだよお前ら…」
そう言い合って5人の少女は笑い合っていた。
だが、その輪に入らずにエクスカイザーはただ黙って見ていた。
496 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 02:06:36.66 ID:3GSy7o860
「まどか」
不意に呼びかけられ、まどかが振り返ると、そこにはキュゥべぇとラジコンの状態になったエクスカイザーがいた。
傍にいたキュゥべぇは相変わらず拘束されていた。
「何?エクスカイザーさん」
「どうしたの?」
それに気が付いたのか、他の4人も向いていた。
「お別れを言わなければならないんだ」
「え…それって一体…」
突然の告白にまどかは言葉が出なかった。
そのままエクスカイザーは話を続けた。
497 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 02:07:33.92 ID:3GSy7o860
「私の目的は、あくまでインキュベーター達の行動を監視、及び確保だ」
「その目的が達成されてしまったから、私はこの星から出て行かなければならない」
「そんな…」
「彼らの行為は裁くべき所業だ」
「それをそのままにしておく訳にいかない」
「宇宙警察に即刻連行しなければならない」
「だから、此処でお別れだ」
「そうね、そうですものね…」
「分かりきっていた事だけど…もうお別れなのね…」
498 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 02:08:41.76 ID:3GSy7o860
「あぁ…私も残念に思うよ」
「君達のような者にはそう簡単には会えないだろうからね」
「恐らく、もう会える事も難しいだろう…」
少女達は黙って聴き、その中でラジコンカーから青い光が現れ中空に停滞していた。
その光に全員見惚れながら見上げていた。
「キュゥべぇ達はどうなっちゃうんですか?」
「まさか…」
「いや、殺される事はないよ」
「生きていなければ償いをすることは出来ないからね」
499 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 02:09:27.06 ID:3GSy7o860
その言葉を聞いて、まどかはほっと胸を撫で下ろしていた。
それをみてキュゥべぇはヤレヤレ、といった感じに首を振っていた。
「まどか、気持ちは嬉しいけれどボク達にそんな同情は必要無いんだ」
「どうせこの身体も使い捨てだしね」
「まぁ、勿体無くはあるけれど」
そう言って耳を掻く様な仕草をしていた。
実際には拘束されて出来なかったが。
その言葉を、エクスカイザーは直ぐに諫めた。
「キュゥべぇ、君達の命であっても宇宙は蔑ろにはしないよ」
「命はこの宇宙で最も大切な宝だからね」
「宝?」
500 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 02:10:02.03 ID:3GSy7o860
「そう、『宇宙海賊ガイスター』が狙い、遂に手に入れる事の出来なかった物だよ」
「まどかの言う宝物とは少し意味合いが違ってくるかもしれないけれど」
「どんな命であっても、この宇宙に生きとし生けるもの、全ての命は宝なんだ」
「それが、どんなに悪党の命であってもだよ、キュゥべぇ」
キュゥべぇは何か考えているのか、その声には反応せず、ただ俯いていた。
その時、マミは前に出てエクスカイザーに話し出した。
「エクスカイザーさん」
「本当に、有難う御座いました。」
501 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 02:10:38.01 ID:3GSy7o860
マミは体の前で手を合わせると、深々とお辞儀をしていた。
他の4人もそれに習うように皆一様にお辞儀をした。
「礼は要らないよ、マミ」
「君達は君達自身の力で問題を解決したんだ」
「そうかもしれません、けれどそれを手伝ってくれたのは紛れも無くあなたなんです」
「私が弱音を吐いた時だって、あなたは優しくしてくれた」
「だから弱虫な私でも、もう一度戦いに向かうことが出来たんです」
「あたしは……まどかに酷い事を言ったのを気が付かせてくれたっけ」
「そうでなきゃ、あたしはただ魔女になって何もかも壊しまくっていたかも…」
マミの言葉に続く様に、さやかが呟いていた。
502 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 02:11:18.71 ID:3GSy7o860
「本当だよ、さやかには手を焼かされたよ」
「あたしも嫌なものを思い出しちまったけど…それでも良いかなって、今は思っている」
「嫌な事も良い事も全部ひっくるめてあたしはあたしだからね」
「アンタの言う宝物ってヤツかな?」
そう言ってさやかの首に腕を回し、二人でじゃれあっていた。
そしてほむらが前に出てエクスカイザーに再びお礼していた。
「エクスカイザー」
「本当に、本当に有難う御座います」
「あなたが居なかったら、マミさんやさやかに杏子、誰も生きていなかったかもしれなかった…」
「本当に、なんて言ったら良いのか…」
503 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 02:12:24.30 ID:3GSy7o860
「そうだね、私からもお礼を言わなければならないよ、ほむら」
「君のお陰でも在るんだからね」
「飛べない私用に足場を作ってくれたんだから、ね」
そう言っておどけて見せると、ほむらは噴出して笑ってしまっていた。
その中で、まどかは何も言わずにただじっとエクスカイザーを見つめていた。
「…そろそろ時間か、まどか」
「今迄、本当に有難う」
「私こそ、本当にありがとう」
「まどか」
其処に、今迄だんまりだったキュゥべぇが喋りだした。
まどかはキュゥべぇを見つめていた。
504 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 02:13:15.94 ID:3GSy7o860
「何?キュゥべぇ」
「いや、恐らく僕ももう会える事が無いだろうからね」
「最後の忠告、と言った所だよ」
「忠告?」
その言葉は聞き捨てならず、場の全員がキュゥべぇに注目していた。
「君の因果の量は物凄いとさっき言っただろう?」
「だから、気を付ける事だ」
「これから、恐らく君が望むにしろ望まないにしろ」
「その意思とは関係無しに君の運命は大きく変わっていくだろう」
「救世主や一国の王の様に」
「……。」
505 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 02:13:58.95 ID:3GSy7o860
「そして、因果の糸とは脆い物でね」
「何時切れるかも分からない」
「君の因果の解れが、その時が君の死だ」
「救国の英雄達の様に裏切られて、殺されてしまうかもしれない」
「その運命を許容できるのかい?」
「そう…」
「…動揺すらしないんだね」
「うん、だって私には最高の友達がいる」
「何時だって、どんな時だって信じているもの」
506 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 02:15:05.75 ID:3GSy7o860
「そうよ、インキュベーター、それにそんな運命なんてわた「「「わたし達が」」」
「そんな事許さない」
「でしょ?」
後から自分の台詞をマミに取られ、驚いたがほむらは笑顔で頷いていた。
「それに、私もただ黙って守られるわけじゃないよ、キュゥべぇ」
「私も、魔法少女じゃなくても自分に出来る事が、見つかったから」
「……ヤレヤレ、これが本当に最後のチャンスかな、とも思ったんだけれど」
「君達には無駄だったみたいだ」
507 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 02:16:03.07 ID:3GSy7o860
言い終わると、キュゥべぇの身体は半透明な光の膜に包まれ、宙に浮かんだ。
「それじゃあ、お別れの様だ」
「行こう、エクスカイザー」
「あぁ、それじゃあ」
「マミ、さやか、杏子、ほむら、まどか」
「さようなら」
「まどか、君の宝物を大事に」
「ハイ!」
二つの光はそのまま上空を目指し少しづつ小さくなっていった。
まどか達はそれに見えなくなるまで、ずっと手を振っていた。
508 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 02:16:36.15 ID:3GSy7o860
「…行っちまったな…」
「えぇ…」
「なんだか…夢見ている気分ね」
「でも、これは現実よ」
「それより、まどか」
「さっき言っていた魔法少女じゃなくても出来る事、って何なの?」
何時までも空を見上げているまどかにほむらは質問した。
すると、まどかは笑顔で振り返って話し出した。
509 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 02:17:11.53 ID:3GSy7o860
「私ね、キュゥべぇに今までの魔法少女たちの事を教えられたって言ったでしょ?」
「だからね、私その人達の事をもっと知るべきなんじゃないかなって思ったの」
「そうして調べて、魔法少女たちの記録を作っていけたらな、って思ったんだ」
「そうやって、魔法少女たちの意志を引き継げたらなって」
「歴史探求家ね」
「良いんじゃない?私は応援するわよ、鹿目さん」
「あたしも賛成!」
「それじゃあさ!一番最初はこのさやかちゃんでお願いよ?」
「えぇ〜?」
510 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 02:17:59.86 ID:3GSy7o860
「でも中々難しいわよ?」
「歴史なんて物は書かれていない事だらけだろうし」
「その覚悟は…あるみたいね」
「なら、あたし等は邪魔立てが入らないようにする、ってか?」
「面白そうじゃん?」
「そうね、まどかの事は私も全力で手伝うわ。」
「でも、先ずは帰りましょう」
「さやかの愛しの上条君も心配しているだろうし」
511 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 02:18:39.04 ID:3GSy7o860
「ガッ!ほむらぁ!此処でそのネタを振るかぁ!」///
「え?何々?暁美さん教えて?」
「何だよ、まだ告ってねぇのかよ、だっせぇな」
「それなら避難所でユックリタップリ教えるわ、さやかの前で」
「行きましょ、皆」
そう言うと、何時の間にかほむらは移動しており。
さやかは真っ赤になって追いかけて行った。
「ま、待てぇ!ほむらぁ!!」///
512 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 02:19:17.49 ID:3GSy7o860
「あらあら、さ鹿目さんも行きましょ」
「佐倉さんも」
「ハイ!」
「しょーがねぇ、さやかの悶絶する姿でも拝むとしますか」
そう言って二人は先に行ったほむら達を追いかける為に足早に瓦礫を後にした。
まどかは動かず、傍に置いてあったもう変形しないラジコンカーを抱え上げ、愛おしそうにその車体を手の平でなぞっていた。
そして、再び空を見上げると、もう見えなくなってしまった輝きに少しだけ呟いて4人の後を追った。
513 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/25(火) 02:20:02.99 ID:3GSy7o860
「ありがとう、エクスカイザーさん」
「わたしの、最高の友達」
雲の多い空からは蒼く輝く空が見えていた。
その青空に、一瞬だけ星のような輝きが瞬いた様に見えた。
第12話 完
514 :
このSSはもうちょっとだけ続くんじゃよ
◆1B0iEDnTxU
[saga]:2011/10/25(火) 02:27:53.09 ID:3GSy7o860
と、言うわけで
「『ワルプルギスの夜』本気出してないエンド」
完結です。
予定としては、もう一つの
「『ワルプルギスの夜』本気出したエンド」
更にエピローグを予定していたりします。
…色々といわれるべき事、言いたい事は在りますが、もうこんな時間なのでもう寝させてもらいます。
それでは。
515 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2011/10/25(火) 06:56:24.56 ID:509LI505o
お疲れ様でした
516 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)
[sage]:2011/10/25(火) 21:33:53.21 ID:lENfmEhVo
乙乙
他エンドとエピローグ楽しみにしてます
517 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(兵庫県)
[sage]:2011/10/25(火) 23:53:59.58 ID:oyKzqZE20
乙
他の話を楽しみにしてる
518 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/26(水) 00:48:40.64 ID:nzovVPq10
結構レスがついて驚きです。
有難うございます。
もう少し掛かると思いますので、ゆっくりしていて下さい。
それでは。
519 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/10/27(木) 23:25:10.60 ID:4FPCxqZr0
>現地立法に抵触している場合
そんな事言ったらエクスカイザーさんも「不法入国」「銃刀法違反」「おとり捜査」
インキュベーター側の弁護士が優秀だたらやばい。
520 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(中部地方)
[sage]:2011/10/27(木) 23:45:51.78 ID:eZ72yxYAo
>>519
日本の法律に異星生命の入国を禁止するものは無いのでは?
ガイスターやオーボスが暴れた後だし何か規定はあるのかもしれないが
実際ガイスターやドライアスは警察や軍隊では取り締まりようがない気がする
521 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/10/28(金) 01:23:15.29 ID:8FEcIzNo0
>>519
さん。
中々鋭い所を…。
確かに、エクスカイザーもそれなりにヤバイでしょうね。
けど、
>>520
さんの言ったのと似てしまいますが。
地球国家内で異星人の出入国を規制する法案が整っていない、というのが正しいんじゃないでしょうか?
エクスカイザーが来た時にはもうオーボスが暴れたのにも関わらず。
ガイスター出現時に警察やなんやらが出動していない上に、エクスカイザー達は住民からは歓待を受けたりしていましたし。
後のファイバードでもそう言う描写はないですし。
…描かれなかったと言われればお終いですけど(笑)
その辺り深く掘り下げるのも面白いかもしれないですけど、如何せん其処まで頭は回りませんです。
本当に申し訳ないです。
後、宇宙警察側の策としては、逮捕は現地方準拠、起訴は宇宙法準拠とかやりそうではありますが。
これではエクスカイザーが悪人に見えてしまう。
日本的に言えば、オーボス、ガイスター、ドライアスと悪の宇宙人は数々来襲するけど。
それに比例するように、正義の宇宙人もやって来ているわけですから。
宇宙人の出入国規制に賛成派、反対派は真っ向から対立、議会は大紛糾、ついでに何かの汚職が出て来て大騒ぎ。
とかやっていそうですよね、無駄に。
長駄文失礼しました。
522 :
お待たせしました
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 01:31:15.39 ID:sG7VJkqO0
書き終えた…。
推敲に入りましたので、明日には投稿できると思います。
それまで少々お待ちを。
そして御都合&無茶振り展開になると思われますので注意を。
それでは。
…まぁ、何時もの事ですけどね(笑)
サーバを移転しました@荒巻 旧サーバ:
http://vs302.vip2ch.com/
523 :
ロックされたとか…死にたい
◆1B0iEDnTxU
:2011/11/02(水) 01:32:52.64 ID:sG7VJkqO0
後エピローグも完成しそうなのでその時は時間を開けての連投になると思います。
それでは。
サーバを移転しました@荒巻 旧サーバ:
http://vs302.vip2ch.com/
524 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)
[sage]:2011/11/02(水) 04:58:42.46 ID:p0vVYE/fo
wwktk
525 :
勇者 エクス☆マギカ 第12話
◆1B0iEDnTxU
[saga]:2011/11/02(水) 11:50:57.42 ID:sG7VJkqO0
最後の悪あがき、どうかお付き合いお願いいたします。
もう一つの結末。
あったかも知れない終わり。
第12話『本当の宝物』
526 :
分岐点は>>484から
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 11:55:14.99 ID:sG7VJkqO0
『アハハハハハハハハ!!!ハハハハハハハハハハ!!!』
グレートエクスカイザー達の一斉攻撃を受けても『ワルプルギスの夜』はビクともしなかった。
それどころか、その攻撃を押し返しだしているほどだった。
「ぬぅうううううう!!」
「まだだ!こんくらいでへこたれてる場合じゃねぇ!」
「あたし達の一斉攻撃でもまだ倒せないなんて…!」
「皆の全力を出し尽くすのよ!」
527 :
やたら重い
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 11:59:38.17 ID:sG7VJkqO0
「今だ!」
「ウオオオオオオオオオオオオオ!!!」
全力を込め、グレートエクスカイザーの剣が進み、遂には抵抗が無くなり。
『ワルプルギスの夜』の身体を袈裟切りに真っ二つにした。
ズバキィィィィィィィ!!!!
『あははは…ウフフフフフ…アハハハハ、ハハハハ…』
切り抜け、グレートエクスカイザーが剣を水平に持ち直すと共に。
『ワルプルギスの夜』が大爆発をした。
ボガァァァァァァァァン!!!!
528 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 12:00:10.82 ID:sG7VJkqO0
爆発の中から『ワルプルギスの夜』の歯車が衝撃で吹き飛び、ビルにめり込んでいた。
ガァオォォォォォォォンンン!!!!!
「まさか…倒すだなんて」
「冗談だろ!?」
「あぁ…!ヤッッッタァ!!!」
まどかは全身を持ってその喜びを表していた。
上空にいる魔法少女たちも、互いの全力を讃え、祝福していた。
「やったね…」
「えぇ…これでやっとね…」
529 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 12:00:45.90 ID:sG7VJkqO0
「はぁ〜疲れた…もうあんな奴と戦うのは懲り懲りだぜ」
「これで終わり…私の戦いも…やっと…」
「大丈夫かい?ほむら」
「早く下に降りて休もう」
そう言って5人はまどかの元に降りてきた。
ほむらは疲労困憊の身体でまどかに駆け寄り、瓦礫に足を取られ胸に飛び込む形でまどかに抱きついていた。
「ご、御免なさい、まどか」
「ううん、いいよほむらちゃん」
「お疲れ様」
「皆もお疲れ様!」
530 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 12:04:45.30 ID:sG7VJkqO0
「おかしいのよ、何時もは…『ワルプルギスの夜』を倒すとそれに伴って空も晴れていくはずなの…」
「それなのに…雨が…」
「…暁美さんの考えすぎじゃない?」
「現に私達は今し方倒したのよ?」
「そう…ですよね…?」
「ほら!ほむらも浮かない顔してないで、早く行こう!」
そう言ってほむらの手をさやかが引っ張ってまどかの方に歩いていった。
その中で、グレートエクスカイザーのみがその場に立ち尽くし、何かを考えているようだった。
それにまどか達は気が付き、グレートエクスカイザーの方を向いていた。
「?どうしたんですか?グレートエクスカイザーさん」
531 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 12:05:18.55 ID:sG7VJkqO0
「いや…まどか、実は…」
グレートエクスカイザーが話を始めようとした時。
「!?危ない!」
まどかに走って行き、グレートエクスカイザーがまどかを守る様に半回転して向いている方向が逆になった。
ドズゥ!!
ガシャアン!!
「ぐあぁぁぁ!!」
「…え?」
532 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 12:06:09.97 ID:sG7VJkqO0
カイザーソードが落ちる音が辺りに響いた。
更に突然響いた鈍い音に、まどかは一瞬何があったのか分からなかった。
グレートエクスカイザーの顔を見る為に顔を上げると、そこには信じられない光景が目に映った。
「え?何…これ…」
まどかの頭の上、グレートエクスカイザーの右胸の辺りから鈍色の棒が飛び出ていたのだ。
突き刺さっている所にはスパークが走り、傷を負ったのは明白だった。
その光景を見ていた他の4人も何が起きているのか分からず、ただ構えて見ている事しか出来なかった。
グレートエクスカイザーの後、すなわち今迄まどかが背中を見せていたほうから、『ワルプルギスの夜』の歯車が飛んできたのだ。
それからまどかを守る為にグレートエクスカイザーは自ら盾になっていた。
533 :
sageているのにsagaらない…だと…?
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 12:07:06.28 ID:sG7VJkqO0
「!グレートエクスカイザー!!」
「グッ!大丈夫だ…!この位…!」
そう言うのと同時に、歯車から伸びた棒が付け根から吹き飛び、グレートエクスカイザーの身体をビルの残骸に吹き飛ばした。
「ヌオォォォォ!!」
「グレートエクスカイザーさん!」
「まどか!後!」
「!?」
534 :
sageているのにsagaらない…だと…?
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 12:41:36.25 ID:sG7VJkqO0
一度テスト投稿です。
535 :
畜生…orz
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 12:45:24.59 ID:sG7VJkqO0
まどかがほむらの声で振り向くと、目の前には『ワルプルギスの夜』の巨大な歯車が平面を向けて浮かんでいた。
その歯車の中心、ドレス姿の人型が繋がっていた所から黒い液体の様な物が溢れ出し、まどかを絡め取っていた
「!?何これ!いやぁ!ほむらちゃん!助けて!!」
「まどかぁ!!」
ほむらが走って手を伸ばすが、間一髪の所で届かず、まどかは歯車に引き摺り込まれる様に持ち上げられていた。
その間もまどかの身体には黒い液体がどんどん広がり、片目しか見ない状態だった。
「まどか!まどかぁ!!」
「ほむらちゃん!!ほむらちゃん!!」
「いや!いやぁ!!!」
536 :
エラーエラーでしにてぇ
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 12:45:56.75 ID:sG7VJkqO0
遂に、顔全体に液体が広がり、そのまままどかは歯車の中に取り込まれてしまった。
それをほむらは助けられず、絶叫していた。
「まどかああああああ!!!」
「何!なんなのよあれ!」
「どういうことだ!」
「まさか、まだ死んでいなかったのかよ!?」
その光景を見て4人は愕然とし、ほむらは分けがわからなくなっていた。
537 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 12:46:23.53 ID:sG7VJkqO0
「知らない…!私、あんなの知らない!!」
「一体何がどうなって…!」
パァン!!
「暁美さん!落ち着いて!」
「あなたがしっかりしなくてどうするの!!」
マミの懇親の張り手でほむらは我に返っていた。
「あ…マミさん」
「しっかりなさい!暁美ほむら!」
「あなたが知らないからっておかしくなっても状況は悪くなるだけよ!」
「今はアレがどういう物なのかというのが先決でしょう!?」
538 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 12:47:00.13 ID:sG7VJkqO0
「は、ハイ!」
そう言ってほむらは再び歯車に向き直ると、その様を見て驚愕した。
「何?溶け出している…?」
歯車が溶け出し、その形を崩しだしていたのだ。
そこに突然キュゥべぇが喋りだし、ほむら達の注目はそちらに向いた。
「君達はやりすぎたんだ」
「だから、『ワルプルギスの夜』は本気を出すだけだよ」
「どういうことよ!インキュベーター!」
「本気を出すだなんて!私はあんな姿を見た事が無いのよ!」
「私が見たのは、あの魔女が上下が逆転した姿くらいよ!」
539 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 12:49:20.14 ID:sG7VJkqO0
「それはそうだよ、あの魔女の本気は二つあるんだ」
「君が見た姿はその一つに過ぎないのさ」
「まぁ、最もこの姿は本当に稀で、今迄にも指折りの数しか現れた事がなかったんだ」
その間も歯車は溶けており、何時の間にか球体になっていた。
キュゥべぇは話しを続けた。
「無理も無い、『ワルプルギスの夜』がこの姿になった、ということは」
「君達は本当にお終いだ、という事だ」
「何を根拠に…!」
「…君達は魔女の性質というものを知っているかい?」
540 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 12:49:56.44 ID:sG7VJkqO0
「性質?」
「そう、魔法少女から変化した魔女はその人間の心を大体反映しているんだ」
「『ワルプルギスの夜』その性質は無力」
「君達の攻撃が通らなかったのはこれに依るものが大きいと思う」
「そしてあの魔女は地球上、全ての物を『戯曲』へと変える為に世界中を回っているんだ」
「戯曲?」
「って事は何か?この世界中の悲劇全てアイツの為に創られたシナリオだって言うのかよ!?」
「そこまではいかないよ」
「ボクも今迄ずっとあの魔女を観察してきたわけじゃないからね」
「そして、あの魔女は通称『舞台装置の魔女』」
「この意味が分かるかい?」
541 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/11/02(水) 12:51:57.25 ID:sG7VJkqO0
「どういうことよ?」
マミの疑問に答える様に、黒い球体は拍動しだし、全員の視線は球体に向けられた。
拍動は最初は弱かったが、動く毎に強くなっていき、最終的には少し離れた位置に居るほむら達の周囲が振動でびりびりと揺れるほどだった。
「演目の中で都合の悪いアドリブ、もしくは内容の変更を余儀なくされる状況になってしまった場合」
「どうすると思う?そこで終わりじゃあ話にならないだろう?」
「その時に現れるのさ、演目を円滑に推し進めるべく、場に合わせたアドリブを行い」
「演劇を継続、もしくは其処で終わらせる存在」
「『デウス・エクス・マキーナ』が登場するのさ」
542 :
◆1B0iEDnTxU
[sage saga]:2011/11/02(水) 12:52:39.65 ID:sG7VJkqO0
「どういうことよ?」
マミの疑問に答える様に、黒い球体は拍動しだし、全員の視線は球体に向けられた。
拍動は最初は弱かったが、動く毎に強くなっていき、最終的には少し離れた位置に居るほむら達の周囲が振動でびりびりと揺れるほどだった。
「演目の中で都合の悪いアドリブ、もしくは内容の変更を余儀なくされる状況になってしまった場合」
「どうすると思う?そこで終わりじゃあ話にならないだろう?」
「その時に現れるのさ、演目を円滑に推し進めるべく、場に合わせたアドリブを行い」
「演劇を継続、もしくは其処で終わらせる存在」
「『デウス・エクス・マキーナ』が登場するのさ」
543 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 12:53:35.70 ID:sG7VJkqO0
キュゥべぇが言い終えると、黒い球体の拍動は止まり、辺りは雨の降る音だけが響いていた。
ほむら達はそれの様子を見ながら戦闘体勢を崩さずに凝視していた。
先に動きが在ったのは球体の方だった。
動き出したと思うと、見る見るうちに黒い球体は縮まりだしそのサイズを小さくしていた。
「な!何、小さくなっている?」
「気を付けて!嫌な予感がする!」
「何が、何が始まるってんだよ!」
「!?あれ!」
544 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 12:54:20.78 ID:sG7VJkqO0
さやかが指差す箇所を見ると、何かが飛び出ている事に気が付いた。
すると、球体の縁から何かが正体を見せ始めた。
球体の中から出て来た物の正体は赤い靴だった。
マミ達はなぜ赤い靴が?と疑問に思っていた。
だが、その靴を見てほむらは驚愕の色を隠せないで居た。
更に球体は縮まって行き、中に見えた物の姿をどんどん露にしていった。
ピンク色の髪の毛、少し短めの髪の毛をお気に入りのリボンで両側であつらえ。
ふわりと広がったスカートの中はフリルで装飾が施され、その少女の心を反映している様だった。
服装の色は白を基調とし、ピンクの布地が所々アクセントとして使用されていた。
黒い球体は最後は手のひらに収まるぐらいにまで縮まり、首もとの飾りにはめ込まれた。
545 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 12:54:46.59 ID:sG7VJkqO0
「そ、そんな…」
「まさか!こんな事って…!」
「嘘だろ…?質の悪い冗談だろ!」
「いいや、冗談なんかじゃない」
「これが君達の招いた結果だよ」
「そんな、そんな…まどか!?」
其処には先程黒い液体によって捕らえられ、安否が全く分からなくなっていた。
まどかの姿があった、空中に両足を抱えて浮かぶその姿は先程の制服とは違い、魔法少女としての姿であった。
546 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 12:55:34.53 ID:sG7VJkqO0
「暁美さん、あれって…」
「はい…私の知る、まどかの魔法少女としての姿です…」
「嘘!何でまどかが魔法少女になっているの!?」
「分からない、けれど…」
そう言い淀み、ほむらは自分の知るまどかの姿とは違う箇所に目を向けていた。
本来、まどかの魔法の色はピンク色で、ソウルジェムも同じピンク色である。
だが、このまどかのソウルジェムの色は黒。
光すら吸い込みそうな黒であった。
「ん…んん〜〜〜」
547 :
お待たせしました続けます
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:29:33.19 ID:sG7VJkqO0
眠っていたまどかは目を覚まし、空中で丸くなっていた身体を伸ばしていた。
そうして、寝ぼけ眼を擦り、ほむら達を見つけて地面に降り立った。
「あ…ほむらちゃん、おはよう」
「…?どうしたの?そんな顔して?」
「ヒッ!!」
まどかは可愛く首を傾げて、何があったのかといった感じであった。
だがほむらはその目を見つめていたから理解できたのだ。
その瞳は酷く濁っており、同一人物とは思えない程、歪んでもいた。
このまどかは、全くの別物、まどかの皮を被った何かだと感じていた。
548 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:30:19.71 ID:sG7VJkqO0
「どうしたのさ?ほむらちゃん」
「何かあったの?」
「ふっ!ふざけないで!!」
「まどかを何処にやったの!!」
「あまりふざけた事を言うのなら…!」
ほむらは弓を取り出し、最大威力で放とうと構えていた。
「コイツで吹き飛ばすわよ!」
その様子を見てまどかはキョトンとし、あぁと言いながら手の平を合わせていた。
549 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:30:56.68 ID:sG7VJkqO0
「そっかぁ、そうだモンね、このままだとほむらちゃんにも分かり辛いものね」
「ウェヒヒ♪」
「黙りなさい!まどかの顔を使って何のたまっているのよ!!」
「今すぐに、その口を使えなくしてやる…!」
歯軋りをし、今にも真っ二つに折れてしまうのでは無いかと言うほど弓を引き絞り、ほむらはまどかを睨み付けていた。
それに動じもせずに、まどかは掌を振って静止を促していた。
「止めといた方が良いよ、ほむらちゃん」
「だってわたしはわたし、正真正銘の鹿目まどかだもん」
「わたしは『ワルプルギスの夜』と一つになったの」
「何を!…え…?」
まどかは笑顔でそう告げると、ほむらは虚を突かれ射撃姿勢を解いていた。
550 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:31:24.78 ID:sG7VJkqO0
「どういうことよ…」
「…今まどかが言っただろう、暁美ほむら」
「彼女は『ワルプルギスの夜』と一体化したんだ」
「どうして!?どうして鹿目さんが魔女と融合しなきゃならないのよ!キュゥべぇ!!」
「こんなのおかしいじゃない!!」
マミは分けが分からず絶叫していた。
後輩が取り込まれたと思ったら、魔女と融合したなどと言い出したのだ。
普通なら冗談で済まされるレベルの話じゃない。
だが、マミの言葉に答えたのはキュゥべぇではなく、まどかであった。
551 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:31:52.61 ID:sG7VJkqO0
「おかしくなんか無いですよマミさん」
「わたし、分かったんです『ワルプルギスの夜』と一つになって」
「これはただの儀式なんだって」
「ぎ、儀式?」
「何の儀式なのさ…」
「それはね、さやかちゃん…」
「この茶番を終わらせる為の儀式なんだよ」
「え?」
まどかの答えが早いか杏子が動いたのが早いか。
目にも留まらない早業で、杏子はさやかの前で槍で以って頭を狙った攻撃を辛うじて防いだ。
黒い槍を杏子の槍が受け止め、その穂先に亀裂が走っていた。
552 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:32:40.81 ID:sG7VJkqO0
「ちぇ、杏子ちゃん酷いよ」
「どうしてわたしの邪魔をするのさ?」
「さやかちゃんを殺しててあげれたのに…」
「なにがだよ!?ふざけてんじゃねぇ!」
「儀式だとか茶番だとか言いやがって!」
「あたしは回りくどいのがあまり好きじゃないんだ!」
「言いたい事はハッキリ言いな!」
そう杏子が言うと、その肩は微かに震えているのがさやかには見えていた。
まどかはあからさまに不満で頬を膨らませると、機嫌が悪そうに喋りだした。
553 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:33:20.17 ID:sG7VJkqO0
「分かったよ、杏子ちゃんにでも分かる様に今から話してあげる」
そう言ってまどかは深呼吸すると、語りだした。
「皆は『ワルプルギスの夜』を倒してしまったよね?」
「それがきっかけで『ワルプルギスの夜』は、世界中を戯曲にする為の障害だって、あなた達を認識したの」
「だから、殺す事を決意したの、わたしの力を使ってね」
「ほむらちゃん達の大事な物って、色々あるけどさ、今一番大事なのは、わたしだよね?」
「ウェヒヒ♪だからわたしが生贄にされたの!」
「『ワルプルギスの夜』のもう一つの本気、それは『私』自身を倒した人の最も大切に思うものを取り込み」
「そうして、その大切なもので戦うの、だから私が選ばれたって言うのはそういうことなの」
「わたしの身体を使えば、皆攻撃出来ないよね?わたし死んじゃうもの!」
「ウェヒヒヒヒヒ!!!」
そうまどかは嗤っていた、その笑顔は醜悪で、何時も見せる物とは程遠く歪んでいた。
554 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:33:54.54 ID:sG7VJkqO0
「な、馬鹿な!そんなの聞いた事がない!」
「私が調べた限りではそんな事が書かれている文献なんて存在しなかった!!」
「それなのにどうして!」
「?おかしいなぁ、ほむらちゃん本当に調べたの?」
「確か一度だけ、大陸一つを海の底に沈めたと思ったんだけど…」
「ねぇ、インキュベーターさんあなたなら知っているでしょ?」
小馬鹿にした様にまどか、否キュゥべぇ曰く『デウス・エクス・マキーナ』なる存在はキュゥべぇの方を向いて声を掛けていた。
その言葉に最初ほむら達は耳を疑った、本気でコイツは何を言っているのか?と。
555 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:34:31.41 ID:sG7VJkqO0
「事実だよ、ボク達の記録にも『デウス・エクス・マキーナ』の記述は殆ど無いけど」
「大陸一つを丸々海に沈めたのは事実として残されている」
キュゥべぇの言葉に全員絶句した。
それほどの力を持った魔女が今まどかの身体を使い、目の前に対峙しているのか、と。
そして同時に一つの疑問が浮かんだ。
「…鹿目さんを、助けられるの?」
一縷の希望に縋る様な声色でマミは呟いた。
その言葉を聞いていたキュゥべぇはただ首を振り。
「助けられないからこそ、この戦いは茶番なんだよ」
556 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:35:07.78 ID:sG7VJkqO0
そう言っていた。
ずっと黙っていたまどかは何かに耐えられなくなったのか、途端に笑い出し。
涙を浮かべていた。
「ウェヒヒヒヒヒひ、ハハハハハハハッ!アハハハハハハ!!!」
「マミさん、まだそんな事思っていたんだ!」
「さやかちゃんに杏子ちゃんもそう思っているの???」
その顔は凄く嬉しそうで回答を待ちわびていた。
さやか達は少し引きながら無言で頷くと、魔女は更に嗤っていた。
「アハハハハハハハハ!!」
「皆、結構馬鹿なんだね!」
「それなら、わたしの手で…救ってあげなくちゃあ!!!」
557 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:36:03.27 ID:sG7VJkqO0
虚空から枝の様な弓を取り出し、黒いエネルギーを矢に変えて放ち。
ほむら達の目の前に着弾させて、粉塵を巻き上げた。
溜まらずマミ達は散会し、各々の判断で瓦礫の影に身を潜めていた。
が。
「!?暁美さん!何やっているの!」
「あ、あぁ…」
ほむらは再び目の前の現実によって我を失っていた。
それを確認し、魔女が歩いて近づいて来ていた。
「ほむらちゃん逃げないんだぁ、勇気があるね」
「でもね、そんなの意味がないんだよ?」
「ほむらちゃん、死んじゃうよ??」
「アハハハハ!!」
558 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:36:33.32 ID:sG7VJkqO0
そう言って魔女は弓を振り上げ、魔力を纏わせ振り下ろした。
ほむらはただ呆然と見ている事しか出来ないで居た。
「暁美さん!!」
「っ!!」
それを見て、即座にさやかは反応し、一直線にほむらを助けに飛び出した。
そしてそのまま大剣を取り出し、魔女の背中に向かって振り下ろした。
のだが、魔女は即座に反応して、振り返り、振り上げる様な形で弓と剣をぶつけ合った。
「ウフフフフフ!!」
「さやかちゃんが庇っても無駄なんだよ!」
「全部スクって!この劇を終わらせちゃうんだから!!」
「黙れぇ!!これ以上、まどかの声で喋るなぁああああ!!」
559 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:37:41.17 ID:sG7VJkqO0
鍔迫り合いをする剣を思い切り握り締め。
さやかは力の限り振り下ろしていた。
すると。
バギィィィィン!
さやかの持った剣が物凄い音を立てて折れてしまったのだ。
魔女は振り上げた形で、さやかは振り下ろした形でその場に停止していた。
折れた刃が地面に突き立てられ、先に動いたのは魔女だった。
「アハハハハハ!!」
「しまっ…」
560 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:38:27.58 ID:sG7VJkqO0
魔女は弓を逆袈裟に振り下ろすと、その軸線上にあったさやかの身体からは夥しい量の血飛沫が噴出した。
その様に魔女は歓喜し、恍惚の表情を浮かべていた。
さやかはそのまま倒れ伏すかと思った、だがその目には闘志が今だ燃えており。
手放しそうになった折れた剣を握り直すと、そのまま魔女に対して振り下ろした。
「え?」
呆けた声を出して、魔女は袈裟切りに切られ、さやかと同じ様に切り裂かれた所から血飛沫を上げる、はずだった。
さやかの一撃は確かに入ったのだが、手応えが無かった。
(!?まさか『ワルプルギスの夜』と同じ…!)
「やってくれたね、さやかちゃん」
「わたしからも!お返し!!」
561 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:38:58.97 ID:sG7VJkqO0
そう言って魔女は拳を握ると思い切り振りかぶってさやかに懇親のパンチを叩き込んだ。
さやかは両腕をかまえて防御をしたのは良いが、防御した腕の片方から嫌な音が響き、そのままの勢いで後方の瓦礫に吹き飛ばされて行った。
それを視認し杏子が背中から受け止めていたが、減速させることが出来ずに瓦礫の土煙を上げていた。
「グアァ!!」
「…大丈夫か?さやか」
「ちょっと駄目、腕逝っちゃっているから治さないと…いぎぎぎ」
「アッハハハハハハハ!」
「さやかちゃん、杏子ちゃんと一緒にスットラーイク!」
「キャ!!」
562 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:39:29.55 ID:sG7VJkqO0
魔女が嗤っている隙を付き、マミの銃が足元に打ち込み、辺りは再び粉塵により視界が悪くなった。
その行動に魔女は呆れ半分に怒りを表していた。
「も〜、そんな事やっても意味無いよ?マミさん」
「この雨じゃ、直ぐにこんな煙幕なんて晴れちゃうんだから」
「えぇ、でもそれが良いの!」
粉塵の中からマミがマスケット銃を構えて現れた、その回りには大量の銃を浮かべながら。
「ヴォンバルダメントォ・インフィニータ!!!」
その掛け声と共に、マミは全ての銃の撃鉄を下ろして魔女に火砲の洗礼を浴びせようとした。
563 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:40:14.88 ID:sG7VJkqO0
「凄いね、躊躇いが無いよ、流石マミさん」
「でも、わたしも似た様な事が出来るんだから!」
「!?何!?」
魔女が再び弓を構えると、魔女を中心に桃色の陣が発生し、其処から無数の光の雨が降り注いだ。
その光の雨は全てマミの放った銃弾と相打ち、二人の間で大爆発を引き起こした。
突然の爆風に耐えられなかったのか、魔女は尻餅を付いていた。
「キャッ」
マミはその隙を逃さずに、後に居たほむらを抱きかかえると瓦礫に身を隠してほむらと向き合った。
564 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:40:45.65 ID:sG7VJkqO0
「クッ!暁美さん!いい加減にしなさい!アレは鹿目さんでも魔女なの!」
「倒さなきゃ駄目なの!それは分かっているんでしょう!?」
マミはほむらの胸倉を掴んで持ち上げて怒鳴り散らした。
ほむらはやっと正気に戻り、マミに反論した。
「で、でもマミさん!アレはまどかなんです!」
「助けないと!私が助けないと!」
「助けたいのは山々よ!私も承知の上!」
「でも私達の力じゃあの魔女には…「それなら…私が行こう!」
「「!?」」
565 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:41:17.71 ID:sG7VJkqO0
振り返ると其処には、右胸辺りを押さえたグレートエクスカイザーが立っていた。
マスクで表情は読み取り辛いが、その瞳が何時もより小さくなっており。
痛みを堪えながら立っているのが分かった。
「そんな!無茶です!幾らグレートエクスカイザーでも!そんな傷じゃあ…」
「分かっている、だが今戦う事が出来るのは私達だけなんだ」
「ならば私は戦うまでだ!」
そう言ってグレートエクスカイザーは、両手を握り締め魔女の方へ飛び出して行ってしまった。
「グレートエクスカイザー!!」
566 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:42:01.58 ID:sG7VJkqO0
何も出来そうに無いと思っているほむらはただ手を伸ばす事しか出来なかった。
その手は宙を掴み、ただ前に伸ばされていた。
(……ら………ん……)
一瞬、誰かが自分を呼ぶ声が聞こえ振り返ったのだが、そこには誰も居なく。
隣に立っていたマミは、グレートエクスカイザーの飛び出した方を見つめていた。
567 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:42:40.85 ID:sG7VJkqO0
「まどか!」
爆炎から一転し、静かになった瓦礫の中で一人佇む魔女に向かってグレートエクスカイザーは叫び。
自分の方を向かせた。
「あ、グレートエクスカイザーさん」
「良かったぁ、あの程度で死んでいたら私も困っちゃう所だったよ」
「こんなんじゃ、誰も救う事は出来ないってね♪」
ティヒヒ♪と嗤いながらグレートエクスカイザーを見つめていた。
その歪んだ視線を目の前から見据え、グレートエクスカイザーは話を続けた。
568 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:43:16.03 ID:sG7VJkqO0
「…まどか、いや…デウス・エクス・マキーナか」
「本当にこんな事が救いに繋がると思っているのか?」
「?何言っているの?」
「私が行なうのは戯曲」
「この世界には真の救いは無いの」
「だからね、私の作る戯曲の中だけでも真の救いを広げて行きたいなって思っているの」
魔女はそう言って両手を広げてクルリと一回転した。
569 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:43:48.24 ID:sG7VJkqO0
「その為には先ず、ほむらちゃん達を倒さないといけないから」
「あれ?でも、それじゃあわたしの救いにはならない…」
「けれど、私はほむらちゃん達を救いたい…」
「???」
そう言って魔女はその場で目を瞑って考え出してしまった。
その様を見ていたグレートエクスカイザーは不可思議に見えたが、すぐさま魔女は手を合わせて結論を出した。
「そうだ!」
「わたし自身が結界を作って、その中に皆の魂を取り込めれば!」
「今のわたしなら、もしかしたら出来るかもしれない!」
「この世界を全て戯曲にすることが!!」
570 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:44:30.07 ID:sG7VJkqO0
満面の笑みでもって出した回答に、魔女は自ら喚起して飛び上がっていた。
それをグレートエクスカイザーは。
「させると思ったのか!デウス・エクス・マキーナ!」
「少女の命を貪り、あまつさえ全人類規模でこの世界を滅ぼそう等と、このグレートエクスカイザーが断じて許すわけにはいかない!!」
「そして何より!この宇宙の宝をそんな理由で奪う事も断じて許さん!!!」
魔女に指を刺し、宣言した。
571 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:44:57.42 ID:sG7VJkqO0
「…ふぅん?」
「邪魔するんだ…それなら仕方ないね」
「イマココで、救済してあげるよ…」
「完膚なきまで破壊しつくして!」
「やれるものならやってみるが良い!!」
そう言いながら構えると、魔女は弓を引き、射撃体勢に入った。
グレートエクスカイザーは魔女の直ぐ横に視線を移し、落としたカイザーソードに目を遣った。
(カイザーソードがあれば互角に戦えると思うのだが…)
「よそ見していたら、蜂の巣だよぉ!!」
572 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:45:41.61 ID:sG7VJkqO0
その宣言どおりに陣を展開し、先程のマミと一戦した時と同じ量の光の雨を降らせた。
グレートエクスカイザーは怯む事無く前進し、その雨の中を全速力で突き進んだ。
魔女は驚いたが、直ぐに笑みを浮かべ攻撃の手を緩めなかった。
「この中を突き進むなんて!やっぱりグレートエクスカイザーは凄いね!」
「でも!このままじゃあ、やられちゃうよ!!」
「言われなくとも!」
そこで、グレートエクスカイザーはおかしな方角に飛び込んだ。
魔女は何をしたのか疑問に思っていたが、直ぐに理解し攻撃を再開した。
グレートエクスカイザーは器用に両腕で地面を掴むと、それと一緒に落ちていたカイザーソードを掴み取り、そのまま跳び上がって魔女に切りかかった。
「デェヤァ!!」
「フッ!」
573 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:46:21.40 ID:sG7VJkqO0
弓と剣がぶつかり、硬質の音が響き渡った。
魔女の体格はまどかそのもので、グレートエクスカイザーとは比べるまでも無いほど小柄であった。
だが、その体格差をもってしても魔女は対等に鍔迫り合いを出来るほどの力を持っていた。
「グッ!信じられん!まどかの身体にこれほどの力が存在するとは!」
「これは『まどか』じゃなくて、わたしの力だよ!」
「皆みんな…!救ってあげるんだからぁ!!」
「それに、あなたの身体じゃあ、どうにも出来ないでしょ!」
突然体勢を崩され、横に移動する様に鍔迫り合いを続けていた、だがグレートエクスカイザーの右胸からは火花が散り。
苦痛に表情を歪めていた。
574 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:47:02.54 ID:sG7VJkqO0
「グッ!」
「アハハハハハハ!やっぱり!」
「さっきのが効いているんだ!」
「それじゃあ私を倒す所か、助ける事なんて出来ないよ!!」
「いいや!必ず手はあるはずだ!例え私が助ける事が出来なくとも!」
「ほむら達になら出来るはずだ!」
「高望みだよ!グレートエクスカイザー!!」
お互い相手に牽制を掛けながらの剣戟が続いた。
1撃、2撃、3撃と過ぎた頃にはグレートエクスカイザーが押され出していた。
魔女はグレートエクスカイザーの傷が開く様にわざと右半身を使わせるように立ち回っていたのだ。
575 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:47:45.64 ID:sG7VJkqO0
「うぐっ!なんの!!」
「剣の振りが遅くなったよ!」
ここぞ、と言うタイミングを逃さず、魔女は一気にカイザーソードを払いのけると、弓の先をそのまま右胸に突き立てて両腕で捻った。
すると、流石に耐えられなかったのかグレートエクスカイザーから苦痛の呻き声が聞こえた。
「グゥああああああ!!」
「痛いの?痛いでしょ?私が全部、救ってあげるよ…」
「こんな悲しみしかない世界なんて、全部私が御伽噺にして、幸福な終幕を見せてあげるんだよ?」
「ウフフフ!」
576 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:49:12.32 ID:sG7VJkqO0
傷口からは火花が散り、グレートエクスカイザーの痛みを体現している様であった。
それでもグレートエクスカイザーは魔女に反論を始めた。
「それは絶対に駄目だ!」
「デウス・エクス・マキーナ!」
「君は間違っている!」
「…どうして間違えている何て言えるの?」
「現に、今のこの瞬間にも魔法少女達は絶望し、その命を終えようとしているにも拘らず?」
「貴方の言っていることは間違いなんじゃないの?」
魔女の込める力が少し弱まり、右胸から与えられ続けていた痛みが和らぎ、グレートエクスカイザーは話を続けた。
577 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:49:56.72 ID:sG7VJkqO0
「グッ、確かに…私の言っている事は間違いかもしれない」
「それでもだ、この宇宙に生きてる人達、君の様な悪と捉えられてしまう様な者であっても」
「命は宝なんだ!」
「宝?」
「そうだ、どんな物にも変え様の無い、其々がたった一つしか持っていない」
「本当の宝物だ!」
「それを…君の行なおうとする事によって失い、無碍にさせる訳にはいかない!」
グレートエクスカイザーがそう叫ぶと、魔女は弓を引き抜き、一歩下がって俯いて喋りだした。
流石に痛みでグレーとエクスカイザーは片膝を付いていたがそれでも魔女を見据えていた。
578 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:50:44.00 ID:sG7VJkqO0
「何言ってるの…?そんな…それなら、魔女になってしまった人達はどうなってしまうの?」
「魔女は絶望を振りまく、魔法少女達に倒される道しかないじゃない!」
「それなのに、あなたはそれでも命は宝だと言い張れるの!?」
「答えてよ!グレートエクスカイザー!!」
その目には涙が溜まっており、今迄戦った魔女とは全く違う事が分かった。
グレートエクスカイザーは魔女の言葉に頷き、話を続けた。
「…そうだ、どんな形であれ、命は宝なんだ、だからこそ!」
「私は、魔女を倒すという業を背負う!」
「そして、その意志を引き継いでいく!」
そう言って立ち上がり、カイザーソードを痛みを無視して正眼に構え、魔女と正面から向き合った。
グレートエクスカイザーの言葉を魔女は繰り返していた。
579 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:51:29.68 ID:sG7VJkqO0
「意志を…引き継ぐ…?」
「そうだ、もっと別の形があるのかもしれない、だが、私には君達を倒す事でしか答えを見つける事が出来なかった。」
「今の科学では、君達を元に戻す事はおろか、その力を抑制する事も出来ない」
「それは哀しい事だ、本当ならば魔女である君達とも分かり合える事が出来る筈なんだ…」
「怨んでくれても私は構わない」
「そ、それは…」
「だが、私は君達『魔法少女だった者達』の意志を引き継ぎ、これからも戦っていく!」
「その想いは君でも分かる筈だ!『まどか』!!」
(……うん、そうだよ…)
580 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:52:18.41 ID:sG7VJkqO0
グレートエクスカイザーがそう叫ぶと、念話が聞こえ、その声がまどかである事にその場に居た全員が驚かされた。
さやかは杏子に肩を借りて瓦礫からグレートエクスカイザー達の方へ向かおうとしている最中だった。
「ま、まどか!?」
「あんた無事だったの…!?」
(無事って言うのか分からないけれどね、今私の魂は、さっき言ったとおりこの『ワルプルギスの夜』と一緒になっているの)
(でもね、だから分かったの、『ワルプルギスの夜』と戦ってきた魔法少女達)
(そして取り込まれていった魔女達…其々の思いが犇めき合って居るのが…)
(だからこの魔女はそんな不幸な世界を無くす為に、世界中を周り続けていたんだって…)
「鹿目さんなの?本当に」
581 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:53:22.40 ID:sG7VJkqO0
(ハイ、今迄ほむらちゃん達に呼び掛けていたんですけど…)
(上手く聞こえなかったみたいで、御免なさい)
魔女もその念話が聞こえているのか、驚きを隠せないで居た。
そして自分の胸元を見て声を掛けた。
「ど、どうしてあなたがまだ生きているの!?」
「私とあなたが融合した時に、あなたはもう…」
(私も最初から気が付いていた訳じゃないよ)
(あなたの哀しい声が聞こえたから、こうして起きていられたの)
「か、哀しい声?」
582 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:54:12.10 ID:sG7VJkqO0
(うん)
(グレートエクスカイザーの言っている事は間違いじゃないよ)
(どんな命でも宝物なの、あなたもわたしもほむらちゃんも皆)
(魔法少女が魔女を倒すのは何も世界を守る為だけじゃない)
(途中で倒れてしまった人達の、皆の意志を引き継ぐ事なの)
(そうやって、ほむらちゃん達は生きていたの)
(在り方が変わっても、それは変わらない事なんだよ)
(わたし、それが分かったの)
その念話にマミが頷き喋っていた。
「意志を引き継ぐ…良い言葉ね、鹿目さん」
「私は今迄も、これからも魔女退治は続ける心算よ、でも鹿目さんの言葉で、また違う思いで戦えるわ」
「魔女も魔法少女も関係なく、その意思を引き継いで、後の世界に繋げる…」
「素晴らしいわ!!」
583 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:54:46.01 ID:sG7VJkqO0
(だから、あなたも良いんだよ)
(確かに世界中には悲しみが溢れている)
(けれどそれを覆す為に戦っている人達も同じ位居るんだから…!)
「……。」
「わたしは…わたしの目的は…」
魔女はどうして良いのか分からず、ただ立って泣いていた。
「皆!『ワルプルギスの夜』を倒すにはまどかの胸のソウルジェムを狙うんだ!」
その時、突然キュゥべぇが喋りだし、全員に聞こえる様に大声を出していた。
584 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:55:43.01 ID:sG7VJkqO0
「インキュベーター!?」
「どういうことよ!」
「ずっとまどかの状態を見ていたんだ、そしたら今の彼女は魔法少女と大した差異は無い!」
「ソウルジェムのパワーが絶望か希望か、それだけの差だ!」
「どうしてあんたがあたしらにそんな事を言うんだよ?」
「今度は何企んでいるんだ?」
さやか達がやって来て、杏子がキュゥべぇを睨みながら言うと。
キュゥべぇは首を振りながら喋った。
「君達の事を見て居たらね、興味が湧いたんだよ」
「感情という物に、取り分け、敵わないと分かっても立ち向かって行く」
「マミの言う『勇気』ってヤツにね」
「…どうやら、ボクも感情とか言う疾患になってしまったかな…?」
585 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:56:15.37 ID:sG7VJkqO0
キュゥべぇはそう言いながらヤレヤレと首を振っていた。
「でも、この信じるという感情…うん、悪くないね」
「それなら!もっと話は早いわ!!」
そう言ってマミは銃を5丁浮かせると、それらを全て引き金部分に胸元のリボンを巻きつけると。
4丁をほむら、さやか、杏子そして魔女の前に飛ばして浮かせていた。
その様子を見て魔女を含め、全員驚いていた。
「ま、マミさん!これは…?」
「キュゥべぇの言ってる事を、私は信じるわ!だから皆のエネルギーをグレートエクスカイザーに一つに集めるのよ!」
「鹿目さん達を助ける為に!!」
586 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:57:22.32 ID:sG7VJkqO0
「正気か!それに、どうしてまどかの前にまで!」
「あれは魔女であってまどかじゃないんだぞ!」
「正気も何も、これしか方法は無いからよ!」
「鹿目さんの身体の回りは『無の障壁』によって守られている!」
「ならば、それを上回る力で持ってその障壁を突破しなければならないわ!」
「だから皆の力を合わせるの!」
「この場に居る、全員の力で以ってね!」
「だからって!今倒そうとしている相手からもパワーを分けて貰うんですか!?」
「無茶ですよ!協力するかすら分からないんですよ!?」
587 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:58:02.36 ID:sG7VJkqO0
さやかは今の隙を見計らいグレートエクスカイザーの傷を治しながら反論していた。
普通なら正論である、だが、マミは笑顔で反論していた。
「あら?案外無茶じゃないかもしれないわよ?」
「彼女はこの劇を終わらせたい、私達もこの戦いを終らせたい」
「満場一致で問題は無いと思うけど?」
「イヤだからって!」
さやかが次の言葉を言おうとしたら、マミはそのまま続けた。
「それに…彼女は今、自分の使命とも戦っているのよ!」
「世界中を戯曲にするという…でもそれに疑問を持っているのだから」
「私達が手伝わなくちゃ!」
588 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:58:32.83 ID:sG7VJkqO0
マミの言葉にどうしたものか、と魔女を向くと、そこには酷く困惑し。
どうしたら良いのか分からなくなってオロオロしている魔女の姿があった。
さやかは本当に迷っていた。
「…私はマミさんの言う事を信じる!」
そんな中、一番先に引き金に手を掛けたのは意外な人物、ほむらであった。
「暁美さん!」
「ほむら!?」
589 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 14:59:21.78 ID:sG7VJkqO0
「まどかを助けたい!」
「その為なら何だってやる!魔女でも何でも助けてやるわ!」
「だから…!」
そう言うほむらの手に杏子の手が乗せられ、ほむらは途中で切った。
「皆まで言わなくても良いよ」
「馬鹿みたいな話だよ、家族の為に人間やめて、ゾンビになったかと思ったらそれすら止めて」
「挙句の果てには、倒す相手すら助けようって言うんだ、甘ちゃんどころか本当に只の馬鹿だね」
杏子も何時の間にか引き金に手を掛けておりそう言いながらも乗り気である様に見えた。
590 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 15:00:28.87 ID:sG7VJkqO0
「あたしはそういう馬鹿の味方をするよ」
「さやか、アンタはどうするんだい?」
杏子は振り向いてさやかを見るとさやかも引き金に手を掛けていた。
グレートエクスカイザーの傷も塞がれて立ち上がっていた。
「…はぁ、確かにあたしは皆を信じるって言ったよ?」
「けどね、こんな無茶な事やるなんて無謀すぎるよ」
「その割には、さやかも持っているはどういうつもりだ?」
イジワルそうにさやかを睨んでいると、さやかはバツが悪そうにしていた。
591 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 15:01:39.42 ID:sG7VJkqO0
「あの時と同じだよ、誰かが信じているのに、あたしだけ信じないでいるのは」
「ずるい、そう思っただけ、だからあたしも信じるよ」
そう言って杏子に笑顔で頷くと、杏子も笑い返した。
「さあ、後はアンタだけよ!」
「そ、そんな…出来ない…私には出来ないよ!」
「私はこの世界を戯曲にする為に…」
(思いつめないで、そんな劇を終わらせちゃおう、皆の力で)
(あなたも一緒に)
(こんな悲劇を終わらせよう)
592 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 15:02:29.64 ID:sG7VJkqO0
まどかの念話に魔女は恐る恐る目の前に浮かんだ銃を握ると。
5人全員が銃を握る状態になった。
「有難う」
「さあ!これで皆『繋がった』わ!」
「皆の力をグレートエクスカイザーに!」
「アリメンタツィオーネ・コッレガーレ!!」
マミが技の名前を叫ぶと、其々が握っていたトリガーが輝き。
其処からそれぞれの魔力の色の光がマミの元へリボンに沿って走って行った。
赤、蒼、黄、紫、そして銀。
全ての輝きが混ざり合い、マミの持つ銃を白く輝かせていた。
「行きます!グレートエクスカイザー!」
「私の!私達の思いを!」
593 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 15:03:21.80 ID:sG7VJkqO0
そう言って引き金を引くと、光の弾はグレートエクスカイザーに向かって放たれた。
グレートエクスカイザーはそれを真っ向からカイザーソードで受け止めた。
「!?これは…皆の力が分かる…!」
「あたし達の魔力と想いが詰まったものだ!その一撃で!」
「終わらせましょう!」
「やっちゃえぇ!!」
「オウ!!」
594 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 15:04:26.02 ID:sG7VJkqO0
「これが…」
(みんなの、わたし達の力…)
「「「「「ギャザウェイ・ソード!!!!」」」」」
5人が唱和すると、カイザーソードに篭められた輝きが解き放たれ。
その中から5色の輝きを伴った白く輝くグレートエクスカイザーが突撃していった。
「「「「「オオオオオオオオオオォォォォ!!!!」」」」」
595 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 15:05:24.38 ID:sG7VJkqO0
「あぁ…なんて眩しい光…これで終われるの…」
(もう良いの、もう良いんだよ)
(この世界に絶望しなくても、誰も恨まなくて良いんだよ)
(あなた達の意思は私たちが繋げて行くから)
「うふふふふ、あははは」
魔女の目から涙が零れ落ち。
弾けるのとほぼ同じに剣が胸元で輝く黒い宝石のみを切り砕いた。
パキィン!!
その途端、まどかを中心に桃色の光の柱が現れ、周囲一体を飲み込んだ。
596 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 15:06:51.76 ID:sG7VJkqO0
目を開けると、そこは真っ白で何も無い空間だった。
周りを見ても誰もいなかった。
すると、不意に目の前に少女が現れた。
普通の服とは違う服を着た少女、それが何人も横並びになって列を作っていた。
その様子を見ていると、後から肩に手を置かれて振り向いた。
其処には皆が揃っており、一様に頷いていた。
そうして全員が並び、一人の少女が前に出てきた。
それに習い前に出て、自分から手を出すと、少女は一瞬躊躇い。
その手を掴んでくれた。
笑顔で返すと、少女も笑顔になり。
「ありがとう」
そう一言だけ言った様に聞こえた。
それに皆は笑顔で答え、視界が滲みもう何も見えなくなった。
597 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 15:07:39.01 ID:sG7VJkqO0
目を開けると、そこには真っ青な空が広がっていた。
周りを見るとみんなが心配そうな顔をして此方を見つめていた。
すると、不意におでこに冷たい感覚がして見上げると、ほむらが膝枕をしていたのが分かった。
そして涙を流してまどかの事を見つめていた。
「まどか…御免なさい…」
「あなたを魔法少女にしないって約束したのに…」
「…良いんだよ、ほむらちゃん」
「それより、ゴメンネ、わたしこそ約束守れなくて…」
「良いの…良いの…うぅ…」
598 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 15:08:27.15 ID:sG7VJkqO0
そこまで言うと、まどかの頭を抱いてほむらは泣き出してしまった。
その様子を全員ただ黙って見ていた。
始めに口を開いたのはキュゥべぇだった。
「全く、君達は本当に常識を覆しすぎだよ」
「倒れた魔女のグリーフシードすら消滅してしまうなんて」
「しかもまどかだって一緒に死んでしまうかも知れなかったというのに…」
「いい加減、感覚が麻痺してきたよ」
「良いじゃない、そうやって感じ取る事が大事なんだもの」
599 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 15:09:08.86 ID:sG7VJkqO0
「つか、またあんた一番大事な所を喋らなかったのかよ」
「喋ったら喋ったで君達の決意は揺らいでしまうだろう?」
「それなら言わないのが正解じゃないか」
「違いない」
「それよりも、まどかは大丈夫だろうか?」
「あれほどの事があったばかりだ、何か身体に不調が無ければ良いのだが…」
グレートエクスカイザーが心配そうにしていると、キュゥべぇが話しかけ来た。
600 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 15:09:48.17 ID:sG7VJkqO0
「それなら、まどかの様子を見ていたらどうだい?」
「宇宙警察になら何時でも行けるんだし」
「しかし…」
「心配には及ばないよ、君がまどかを見ている隙に逃げ出そうだなんて思っていないから」
「寧ろ、ボクもまどかの心配をしているんだ」
「3日位は居て貰いたいものだね」
その言葉にさやかは訝しげな目で疑問を口にしていた。
601 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 15:10:28.30 ID:sG7VJkqO0
「何か裏がありそうで怪しいわね…」
「どうしてだい?さやか」
「君はボクの事を信じたんじゃないのかい?」
「だからこうやってまどかも生きている大団円を迎えれたんだ」
「感謝位はして欲しいな」
「あ、何時ものキュゥべぇだ」
「よかったぁ」
等と笑い合い、晴れた空には雲が転々と浮かんでいた。
602 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 15:11:11.65 ID:sG7VJkqO0
それから、エクスカイザーは周囲からの懇願+まどかの身体の心配もあり。
3日間滞在を延長する事を決め、今に至っている。
今日まで事件らしい事件は無く、至って普通に暮らし、無事に3日目を迎える事となった。
そして見滝原市郊外、杏子の教会にて集まり、別れの言葉を言い合っていた。
「エクスカイザーさん、本当に有難う御座いました」
「あなたが居なかったら、多分私は…」
「良いんだよ、そんなに畏まらなくても」
「そうだよ、マミさん」
「どれだけ掛かっても、また何時か会えるんだから」
「泣いちゃ駄目ですよぉ〜?」
603 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 15:11:54.83 ID:sG7VJkqO0
「も、もう美樹さんったら」///
「キュゥべぇも元気でね」
「君に言葉をかけて貰えるとは思っていなかったよ、まどか」
「君の身体は、どうやらマミたちと同じ様に成ったみたいだから、心配は無いと思う」
「ただ、過程が過程だったから、君の途轍もない力は全部『ワルプルギスの夜』が持って逝っちゃったみたいだけどね」
「いいんだよ、そんな事」
「みんなと一緒が一番なんだから」
そう言って笑うと、キュゥべぇも同意し。
「違いない」
と、ニッコリしていた。
604 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 15:12:44.64 ID:sG7VJkqO0
「…本当に心変わりしたのね」
「今でも信じられないわ」
ほむらはその光景を横目で見てキュゥべぇを睨んでいた。
だが、その眼は少し優しく、前よりは良くなっていた。
「暁美ほむら、君は最後までボクを目の敵だね」
「疲れないかい?」
「当たり前でしょ?何度繰り返してあなたの行いを見て来たと思うのよ?」
「それに、余計なお世話よ」
605 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 15:13:30.04 ID:sG7VJkqO0
フン、と鼻息を出してソッポを向いていた。
それを見てキュゥべぇは首を横に振っていた。
「…弁明の余地は無いね」
「でも、この星に来て、ボクは感情という物を理解できた」
「そして、ボク達なんかでは君達には敵わない、という事もね」
「どうしたんだよ、藪から棒に」
「いや、ボク個人としてはエクスカイザーに味方しても良いかな、と思っているって事さ」
「感情エネルギーは確かに魅力的だ」
「けれど、君達魔法少女全員を敵に回した時の事を考えると、最悪の結末が予測できたからね」
606 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 15:14:11.14 ID:sG7VJkqO0
「何だ、結局は打算なのね」
「まぁ、これはボクにとってのアイデンティティだからね」
「それで間違いではないと思うよ、キュゥべぇ」
「確かに宇宙のエネルギー事情は問題の一つでもある」
「だが、それを後から来るという理由だけで彼女達に押し付けるのは駄目だ」
「この問題を彼女達に手伝ってもらうのは、この地球の人々も宇宙に上がった時」
「今は、私達が解決するべき問題だ」
「…そうだね、まぁ、先ずボクの星の住人達が納得するかの問題が先に在るだろうけどね」
「ははは、違いない、それじゃあ行こう」
607 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 15:15:11.27 ID:sG7VJkqO0
そう言うとラジコンから青い光の玉が出て来て宙に浮かんだ。
キュゥべぇも続くように、光に包まれて同じ高さに浮かび上がった。
「ねぇ、キュゥべぇ」
「今も他の所で魔法少女が生まれているんでしょ?」
「そうだよ、僕はある意味代表として選ばれただけだから」
「宇宙裁判所からの通達が無い限り魔法少女への勧誘は続けられるだろう」
「そうなの…」
「でも、心配は無いだろう?」
「君達は条理を覆す魔法少女なんだ」
「勇気を持ってすれば、ソウルジェムなんて戒めは無意味だろう?」
608 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 15:16:24.34 ID:sG7VJkqO0
「そうね、私達が伝えて行けば、魔女になってしまう人達も減っていくからね」
「実体験ありで」
「中にはさやかみたいに穢れを溜めすぎて魔女も一緒に現れる」
「なんてのも居るかもな?」
そう良いながら杏子とさやかはお互い突っ突きあっていた。
その様子を見ながらキュゥべぇは話をしていた。
「それじゃあ、またどこかで出会おう」
「その時はまた地球で会うかもしれないし、今度は宇宙でかもしれない」
「私としては地球で会うのはゴメンだわ」
「今度在ったら蜂の巣にしてやるから」
そう言ってほむらは不敵な笑みを浮かべると。
指で持って銃の真似をして人差し指をキュゥべぇに突き付けた。
609 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 15:17:13.53 ID:sG7VJkqO0
「怖い怖い、そうならない事を願うよ」
「私からは何も言う事は無くなってしまったね」
「けれど、私も信じているよ、君達の事を」
「ハイ、お元気で!」
まどかの言葉に頷くと二つの光は空に向かって飛んで行った。
「…行っちゃった…」
「さて…これからが本番よ!」
マミはそう言って伸びをするとよし!と言って居住まいを正していた。
610 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 15:17:52.14 ID:sG7VJkqO0
「本番って…魔女退治以外に何があるんだよ?」
「決まっているじゃない!私達の戦いよ!」
「魔女討伐も在るけど、一番は魔法少女達を助ける事があるじゃない!」
「「魔法少女を助ける?」」
さやかと杏子は二人揃って同じ事を聞いていた。
「キュゥべぇも言っていたでしょ?」
「勇気を広めて、私達と共に戦える人達を増やしていくのよ!」
「そうして円環の理を超えた先に行くのよ!」
マミはガッツポーズを取って真っ先に走って行ってしまった。
611 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 15:18:32.26 ID:sG7VJkqO0
「あぁ!マミさん待って下さい!」
「と言うかなんですか!円環の理って!」
「ったく、マミのヤツ何言ってんだか」
「ほら、まどかとほむらも行こうぜ」
杏子もそう言ってさやかの後を追って行ってしまった。
612 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 15:19:26.28 ID:sG7VJkqO0
「皆早いよぉ」
「行きましょ、まどか」
「…ねぇほむらちゃん」
突然まどかがほむらに声を掛け、ほむらが振り向いた。
「何?まどか」
「有難うね、ほむらちゃん」
「私なんかの為に」
「良いのよ、私がお願いされただけだから…」
613 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 15:20:05.69 ID:sG7VJkqO0
「それでも、ね♪」
「…ねぇ、まどか」
「今でも私の事を友達だって思ってくれる?」
ほむらがそうまどかに聞き返すと、まどかは笑顔で頷いた。
「うん!ほむらちゃんも!さやかちゃんも!マミさんも!杏子ちゃんも!」
「エクスカイザーさんも!」
「私の最高の友達だよ!」
「…有難う」
614 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 15:20:43.53 ID:sG7VJkqO0
その時かなり遠くにいたマミ達から呼ぶ声が聞こえ、それにまどか達は答えた。
「行こう!ほむらちゃん!」
「…うん!」
ほむらの手を取り、まどかは3人のいる方へ走って行った。
第12話 完
615 :
◆1B0iEDnTxU
[saga]:2011/11/02(水) 15:26:51.29 ID:sG7VJkqO0
アニメ「未来日記」若本ヴォイスのデウス・エクス・マキナが出て来た時にはどうしようかな、とも思いましたけど。
構わず書き上げました。
これにて「『ワルプルギスの夜』が本気出したエンド」はお終いです。
本当なら対魔女戦の時にグレートのマスク割れ&剣折れやった後に
>>594
の展開に入ろうとも思ったんですけど、くどくなりそうなので止めておきました。(笑)
他にも色々な所が割愛されて荒くなってしまいすみません…。
後はエピローグのみ、バイトがあるので本日の夜にまた現れます。
それでは。
616 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)
(中部地方)
[sage]:2011/11/02(水) 17:02:51.41 ID:rmYCjxelo
乙です。
ついにサブタイに本当の宝物が・・・
エピローグも楽しみにしてます。
617 :
お待たせしました
◆1B0iEDnTxU
[saga ]:2011/11/02(水) 23:43:25.08 ID:sG7VJkqO0
仕事長引いてこんな時間になるとは思いませんでした。
次のレスからエピローグです。
618 :
エピローグ
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 23:44:31.82 ID:sG7VJkqO0
あれから数日が経ち、まどかは一人で見滝原の破壊された市街地を散策していた。
今も戦いの爪痕が残った残骸、その中を一人ゆっくり、目に焼き付けて置くように歩いていく。
まどかの胸中は色々な想いで溢れていた。
そうして、戦いを見つめていた辺りにまで行くと、腕捲りをしてカイザーブレスのボタンを押した。
ピッ
それ以上の反応は無い、それでもまどかは空を見上げて、一人喋りだしていた。
619 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 23:45:45.30 ID:sG7VJkqO0
「エクスカイザーさん、聞こえている?」
「あれからね、色々あったんだよ」
「今日はその報告」
そう言って一度切ると、呼吸を整えて再び口を開いた。
「さやかちゃんはね、あの後上条君に告白できたんだよ」
「その瞬間、それはもうクラス中で大騒ぎ、早乙女先生なんか気が早くって、もう上条君に」
『上条君!美樹さんを大切になさい!』
『ちょ!早乙女先生、気が早すぎですよ』///
620 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 23:47:05.81 ID:sG7VJkqO0
「なんて言いながらお祝いしていたんだよ」
「上条君は恥ずかしがっていたけどね♪」
「当のさやかちゃんは告白するのに周りからの目が気になりすぎて、終わった後立ったまま気絶しちゃっていたんだ」
「おかしいでしょ?」
「それに、仁美ちゃんは横で嬉しそうに笑って居たんだ、私も仁美ちゃんみたいに成れたらいいなぁ〜って今も思っちゃうよ」
ウェヒヒ♪と笑い、まどかは記憶の中の二人を思い出していた。
621 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 23:47:47.02 ID:sG7VJkqO0
「マミさんはね、杏子ちゃんと暮らす事に成ったんだって」
「二人とも身寄りが無いし、都合が良いからってマミさんが無理矢理勧誘したみたいなの」
「それに、何より杏子ちゃんの家があの時の風で壊されちゃったんだって」
「その時の杏子ちゃん可愛かったなぁ〜」
『うわ〜ん!あたしの家が無くなっちまったぁ〜!』
『え〜』
『何時もの杏子とは違ってこれはまた…』
622 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 23:48:32.91 ID:LUjFxgU90
「最近はマミさんに勉強を教えて貰いながら魔女退治をしているみたい」
「夢は孤児院を開くんだって!その為の勉強らしいよ?」
『これはあたしの自己満足だよ』
『そんな高尚なものじゃない』
『けれど…一人ぼっちは、やっぱ寂しいから…な』///
「それにマミさんはお菓子の職人を本気で目指すって息巻いていたよ」
「いつか、エクスカイザーさんに食べてもらうんだ!って」
「マミさんの作るお菓子本当に美味しいから、楽しみだよね」
『今はまだこれ位しか出来ないけど、いつか…』
『何時か必ず、宇宙に轟くケーキの達人に成って見せるわ!!』
623 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 23:49:27.51 ID:sG7VJkqO0
「ちょっと変なギアが入っちゃっていたけど…大丈夫です」
「……たぶん」
少し座っていた時間が長かったのか、お尻が痛くなってまどかは立ち上がった。
そうして周りを見渡し、瓦礫に目線を送りながら歩き出した。
「ほむらちゃんは…あれから人当たりも良くなってね、クラスのみんなから人気者に成っちゃった」
「それで、今度のクラス委員も任されるんじゃないかって話も出てきたんだよ?」
「凄いでしょ!」
「それにね、良く笑ってくれる様になったんだ」
「それが一番嬉しいの」
624 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 23:50:12.46 ID:sG7VJkqO0
『みんなにちやほやされるのって慣れないわね』
『でも、悪くもないかもね』ホムッ
『行きましょ、まどか』
「あれからも、皆魔法少女としての仕事も行なっています」
「杏子ちゃんが一番行動範囲が広いのかな?」
「グリーフシードが無くて困っている魔法少女がいたら手助けにも行っています」
「マミさんのおかげで、チームとして名前も決まっています」
625 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 23:50:58.81 ID:sG7VJkqO0
『Magica Quartet』
『これで行きましょう!』
『でもマミさん、それじゃあ4人なんじゃぁ…』
『細かい事は気にしないの!』
『さぁ!これからも張り切って行くわよ!!』
「ママ達にも話す事の出来る事情を話して、私も一緒に行動しています」
626 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 23:51:56.60 ID:sG7VJkqO0
『……あたしとしちゃあ、娘を危険な所に行かせたくないんだけどなぁ…』
『まぁ、先輩さんや、同級生、それに杏子ちゃんがいるんだ』
『気をつけて、な』
「ママは、何故か杏子ちゃんが凄く気に入ってるみたいで…」
「やたらべったりです…あはは…」
そう言いながら苦笑いを浮かべると、直ぐに笑顔に戻って立ち止まり、空を見上げていた。
「私たちは皆元気でやっています、エクスカイザーさんも元気ですか?」
「また何時か会う事が出来たらな、何て思いながら私は毎日を送っています」
言い終えると、まどかは両手を後に回しそのまま俯いて、歩いていた。
627 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 23:52:52.65 ID:sG7VJkqO0
「けれど…やっぱり、ちょっとだけ…寂しいな……」
カシャッ
無機質な音が響き、何か落ちたのだろうか?とまどかは顔を上げると、そこには人がいた。
淡い黄色のジーンズに赤いジャケット、古臭いかな、とも思わせるがそれでいて少し新しくも見える格好の青年が立っていた。
その手には年代物の古いカメラが握られていた。
「あ、ゴメン、つい気になってシャッターを切っちゃったんだ」
「謝るよ」
そう言って青年はぺこりと頭を下げた。
「え?あ、いえ良いんです、貴方はどうしたんですか?こんな所で」
628 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 23:54:31.27 ID:sG7VJkqO0
まどかが聞き返すと、青年は頭を上げて周りを見回しながら喋りだした。
「あぁ、ちょっと新聞の取材でね」
「こう見えて、ボクはそれなりの腕を持つ記者!…の卵なんだ」
頭を掻きながらおどけて、まどかはその様を見てくすりと笑っていた。
「あ、笑ってくれた」
「よかったぁ何か悲しい顔をしていたからどうしたものかと思ったんだけど、どうやら大丈夫見たいだね」
「あ…すみません、わたしなんかに」
「いいよ、ちょっと記者として取材もさせてもらうからさ」
629 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 23:56:04.52 ID:sG7VJkqO0
はぁ、と気の抜けた返事をして、まどかはその青年が指差した所に腰掛け話をする事になった。
「…それにしても酷いね」
「スーパーセルが直撃したって聞いたけど…」
魔女が見えない人には正しい言葉であった、だからまどかは素直にハイ、と言って頷いていた。
「避難所には被害とかは?」
「え?あ、ハイ」
「そんなに酷くはありませんでしたし、今回けが人も出なかったって聞いた事があります」
「全く運が良いよね、こんな事になっていたってのに…」
630 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 23:56:39.45 ID:sG7VJkqO0
「ハイ…」
「あ、気に触ったかい?」
「いえ…」
「そっか…」
そう言って二人揃って無言で空を見上げていた。
「「……。」」
暫し無言、まどかは唐突に口を開いた。
631 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 23:57:54.95 ID:sG7VJkqO0
「大事な…」
「うん?」
「大事な友達とお別れをしたんです」
「その友達はずっと遠くに行っちゃって、もう二度と会えないかもしれないんです」
「……。」
「でも、仕方が無いんです」
「その友達は、とっても大事な事の為に帰っていてしまったから…」
「…ならさ、会える様に努力しなよ」
「え?」
632 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/02(水) 23:59:02.65 ID:sG7VJkqO0
青年の方を向くと、笑顔で空を見上げていた。
「確かに今は会えないかもしれない、でもその人は何処にいても君の心の中にいる」
「忘れる事の無い、大切な友達なんだろう?」
「…はい…」
まどかが頷くと、だったら!といって青年は勢いをつけて瓦礫から立ち上がった。
「会う為に頑張らなくちゃ!」
「もし再び会った時に君が悲しい顔をしていたら」
「その友達も哀しくなっちゃうだろう?」
「・・・あなたも大事な友達が遠くに行っちゃったんですか?」
633 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/03(木) 00:00:17.51 ID:s0T1rpuW0
聞くと、青年は少し昔を懐かしむよう目付きになって空を見つめていた。
「…10年位、前かな…」
「僕もその友達と別れたっきりでね」
「だから、今度会う時の為に今も頑張っている最中なのさ」
「夢は初めての宇宙飛行士記者!!」
「宇宙に行くのが僕の夢なんだ!」
「宇宙に行けば、その友達と、また会えるかもしれないしね」
その目は遥か彼方を見つめ、後悔や苦悩の色は全く見えなかった。
青年の友達とはまさか、と思いまどかは声を掛けていた。
「…あの「コウタくーん!!」
634 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/03(木) 00:01:12.23 ID:s0T1rpuW0
不意に大声が聞こえ、二人揃って振り返ると、何とも人が良さそうな深緑色のスーツ姿の人物が手を振っていた。
「いやぁ、コウタ君どうしたんだい、こんな所まで来て」
「徳田さん、ゴメンちょっと話を聞いていたんだ」
「話?あ、いやこりゃ失礼を、私、東都新聞の徳田って言います」
「えーと…」
そう言いながら出された手をまどかは迷わずに握り返した。
「あ、私、まどかって言います」
「鹿目まどか」
635 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/03(木) 00:02:17.37 ID:s0T1rpuW0
「そうか、まどかちゃんか」
「良い名前だねぇ!」
名前をよく言われ、まどかは笑顔になっていた。
その様子を見ながらコウタは話を切り出した。
「それよりも徳田さん、どうして僕を呼びに来たの?」
コウタと呼ばれた青年の言葉に思い出したのか。
徳田さんは一層慌ててコウタに話しをしだした。
636 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/03(木) 00:04:21.63 ID:s0T1rpuW0
「そうだよ!聴いてくれ!コウタ君!」
「実は、大変な事実を聞いたんだよ!」
「「大変な事実??」」
「またまた、徳田さんのネタって何時もどこかずれてるからなぁ」
「そんなこと言わないでくれよ、コウタ君」
「実はね、この災害は、スーパーセルじゃないって言われているんだ!」
「本当は、こんなとぉーってもでかい化物がこの見滝原にやって来て!」
「辺り構わず暴れまわったんだ!」
637 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/03(木) 00:05:03.70 ID:s0T1rpuW0
「まさかぁ!それならその化物みんなから見えているはずじゃん!?」
あれ?と言って徳田さんはメモ帳を取り出すと。
そのままがっくりと肩を落としていた。
「しまったぁ〜この化物は普通の人には見えないんだったぁ〜」
「普通の人には見えない?」
「そう!何でも幽霊みたいなもので、一般人からは災害に見えるそうだよ」
またまた、とコウタは言っていたのだが、まどかは内心冷や汗ものであった。
638 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/03(木) 00:06:13.87 ID:s0T1rpuW0
「んん〜!!これは特ダネの予感だぁ〜!コウタ君!こうしちゃあいられない!」
「此処で瓦礫を撮っているよりも先に、取材にレッツゴーだ!!」
そう言うと徳田さんは猛スピードで走っていき、ほんの数秒で見えなくなっていた。
「全く徳田さんは…?どうしたんだい鹿目ちゃん」
「顔真っ青だよ?」
「え゛!!あ、いや、ちょっと気分が悪いかなーなんて、アハハハハ…」
「あ!でも大丈夫ですよ!!はい!」
「そうかい?さて、僕はもう行かなくちゃ」
「徳田さんっておっちょこちょいだから」
639 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/03(木) 00:07:25.03 ID:s0T1rpuW0
「あはは、そんな感じがしますよね」
「それじゃ、有難う」
コウタはそう言うと近場に止めてある車の方に走って行った。
その様子を目で追っていたまどかは吃驚した。
青年が乗り込んだ車はよく似ていたのだ。
自分の部屋に飾ってある『ラジコン』に。
それが気になり、まどかはコウタの所まで走って行った。
「あ、あの!すみません!」
640 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/03(木) 00:09:12.76 ID:s0T1rpuW0
「ん?どうしたんだい?」
「あ、いえ、その…良い車ですね」
そういうと、コウタは笑顔になりお礼を言っていた。
「有難う、家族で使っている車なんだけどね」
「友達が使っていたでもあるんだ」
愛おしそうにボンネットを撫で、コウタはドアを開けると運転席に座った。
「それじゃあ、僕はこれで」
「あ、すみません、最後に一ついいですか?」
641 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/03(木) 00:10:05.86 ID:s0T1rpuW0
「なんだい?」
「お名前、聞いていなかったから…」
まどかがそう言うと、コウタはあぁと言って頭を掻いていた。
「ゴメンゴメン、お互い自己紹介すらしていなかったよね」
「君は、鹿目まどかさんでいいんだよね?」
「はい、まどかでいいです」
642 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/03(木) 00:11:14.65 ID:s0T1rpuW0
「僕の名前は星川コウタ」
「コウタって呼んで」
「はい!コウタさん、夢を頑張ってください!」
「有難う、まどかも!」
握手をして、言い終える頃にエンジンがかかり。
馬力の高そうな音を響かせていた。
643 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/03(木) 00:12:17.83 ID:s0T1rpuW0
「それじゃあ僕はこれで」
「そうだまどか、君んちにも、宇宙人いる?」
まどかがその言葉にドッキリするのを見てからウィンクをしてドアを下ろすと。
そのままブラックマーカーを残して徳田さんの元へ向かって行った。
「…ハイ!居ましただけど、ね♪」
「有難う、エクスカイザー」
644 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/03(木) 00:13:10.86 ID:s0T1rpuW0
そう言ってまどかは、家に向かって走って行った。
何時か、宇宙の彼方の友達に会う為に。
HEROS EX ☆ MAGIKA
勇者 エクス☆マギカ
終
645 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/03(木) 00:23:48.78 ID:s0T1rpuW0
と、言うわけでやっとこさお終いです。
長かった…本当に長かった。
初めて1話書いた時には此処まで長くなるとは思って見ませんでした。(笑)
更に合計1500レスまで行くなんて夢にも思いませんでした。
本当はおりこ漫画組みとか出してあげたかったけど漫画版見てないんで出すに出せませんでした。
其処はお許しください。
此処までお付き合い下さり、本当に有難うございました。
残りのレスは質問&感想それに考えていた魔法少女達のスペックでも書いておこうと思います。
それでは。
646 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)
(チベット自治区)
[sage]:2011/11/03(木) 13:02:25.77 ID:ukMWMZ6ko
乙!!
647 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)
[sage]:2011/11/03(木) 15:25:39.75 ID:x6AFP1y0o
おつかれさまっした!
648 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)
(兵庫県)
[sage]:2011/11/03(木) 22:39:02.70 ID:vCGAUR6d0
おつ!
コウタが出てきてなんか嬉しかった
649 :
チラシの裏側
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/03(木) 22:43:27.78 ID:s0T1rpuW0
レス有難うございます。
名前の通りなので、本SSにて考えていた設定などをただ書いていきます。
〜と違うなど言わないで下さいね(笑)
美樹さやか
見滝原魔法少女組で一番最初に変わった魔法少女。
魔法は『治癒』の強化、更に攻撃力とスピード等が洗練されました。
本編でも初陣に大暴れしていたから恐らく一番伸びしろがあるんじゃないかと。
本来とは違い、願いが大掛かりになった所為でさやかの運命自体が大きく変わり。
恭介に告白されたり、復活したりしました。
イメージは『仮面ライダー剣 ブレイド:キングフォーム』をイメージしてもらえれば簡単です。
最初は必殺をロイヤルストレートフラッシュにしようか迷いましたけど、ちゃんと技が出来たからそっちにしておきました。
動かすとドンドン喋って、ドンドン親父キャラになっていき。
楽しかったです(笑)
こんな感じで何個か投下していきます。
次回はマミさんかな?杏子かな?
たぶんどっちか。
それでは。
650 :
チラシの裏側
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/05(土) 01:44:59.05 ID:SgaZoJZN0
ッべー日跨いでいたわっベー。
というわけでチラシの裏2回目。
さやかと来たらやっぱ杏子で行きます。
佐倉杏子
隣町で凌ぎを削っていた魔法少女。
魔法は『魅了』から『幻想』へと変わり、影分身の術が使えるように。
槍は漫画とアニメ両方の槍を持ちで、変幻自在に攻撃が可能。
翼は杏子のイメージ罪と罰の具現と言う事で。
イメージはあったんですが、書いている途中で合わなくなってしまい実質無しになりました。
杏子ゴメン。
原作通りに話を進行させていたら活躍する場が無くなってしまっていた様な気がする…。
今度何か書く時には活躍させてやりたいなぁ…。
途中からどんどん口が悪くなっていたのも今後の課題でした。
お次はマミさん。
では。
651 :
チラシの裏側
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/05(土) 02:09:36.33 ID:SgaZoJZN0
あまり引き伸ばすのもスレ的に宜しくないから残りも書いちまうぜ!
巴マミ
見滝原で戦う先輩魔法少女。
中二病であり、良き弱虫、けれどこのSSだと参謀役をこなしてくれました。
魔法は『繋ぎとめる』から『繋げる』へと変わり、最後の大技への布石に。
銃も数丁召喚状態を維持できる物が加わり、火力が向上しております。
魔力消費を気にしなくても良いので、派手に暴れる風にもっとちゃんと書けばよかった。orz
イメージは『ガンダムダブルオー劇場版 サバーニャガンダム』で。
書き上げる前はHi-νガンダムで行こうかとも思いましたけど、書いて行く内に変わっていきました。
ついでにマミのオリジナル必殺技名は全て日本語→英語→イタリア語の順で変換で作りました。
グーグル翻訳は優秀です(笑)
次はほむら。
652 :
チラシの裏側
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/05(土) 02:17:06.46 ID:SgaZoJZN0
それじゃま次はほむらで。
暁美ほむら
時を駆けた魔法少女。
本編以上に泣かせてしまい申し訳なく思っております。
魔法は『時間』で変わりありませんが、能力が変化し、時間遡行能力が無くなり。
変わりに時間を停止しての障壁、対象指定の時間停止そして盾の光を数個利用するとそれに応じた武器を選択、展開が出来るように変わりました。
持ち出せる武器は今までの時間分で使った事のある物+弓です。
…最初に考えていたのは『フルメタルパニック! ARX-8レーバテイン最終決戦仕様』だったんですが。
表現がごちゃごちゃしそうな感じがする上、コレジャナイ感がどんどん出て来てこうなりました。
一応『勇者王ガオガイガーFINAL ジェネシックガオガイガー』のガジェットツールを想像して貰うと助かります。
そして今は後悔!本気でチラシの裏にでも書いていろよ…orz
次はまどか。
653 :
チラシの裏側
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/05(土) 02:25:54.91 ID:SgaZoJZN0
さて主人公の登場です。
鹿目まどか
以前のスレで宣言した時に魔法少女にはしないと宣言したんですが、そのままじゃ勿体無く思い。
分岐が出来上がりました。
>>513
エンドだと。
魔法少女にはならず、ほむら達に付いて世界中を周ったりとか。
>>614
エンドだと。
魔法少女になって、矢張りほむら達と今度は世界平和の為に戦いに身を投じるとか。
変わっていきます。
実質あまり変わりませんが。(笑)
小説版や漫画版はノータッチだからどんな魔法特性か分からないから全く考えておりません!
でも、救いとかになりそうですよね。
魔女化した時にも凄い事していましたし。
次でお終い、最後はワルプルギスの夜。
では。
654 :
チラシの裏側
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/05(土) 02:38:41.17 ID:SgaZoJZN0
コレでお終い。
ワルプルギスの夜
本文中では、あくまで仮の姿みたいな意図があり、ずっと『』をつけていました。
さやかが魔女になったから使い魔として出しても良いか、と思ったけどややこしくなるから止めておきました。
正解でした(笑)
公式での紹介で舞台装置の魔女+戯曲とか表記されているから真っ先にデウス・エクス・マキナの名前が浮かびました。
単調で更に厳密には違いますけど…。
歯車にくっ付いた人形だけをやっつけると、真の姿を見せるとかもうRPGとかに毒されております。(笑)
他にも書くべき事が一杯在りそうな気もしますが、どうもテーマを決めないと書けないみたいで…。
これにて。
655 :
◆1B0iEDnTxU
[saga]:2011/11/05(土) 02:43:06.81 ID:SgaZoJZN0
と、言うわけで書かなくても良い駄文も書き終わりましたので、本当にこれにてお終いです。
来週位にHTML化依頼をしようと思いますので。
結構切実に、感想などお願いします。
それでは、最後に悪あがきのageで。
656 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)
(大阪府)
[sage]:2011/11/05(土) 22:14:09.66 ID:2kpvt7MRo
長期間乙でした
657 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)
(東京都)
[sage]:2011/11/06(日) 10:49:16.72 ID:LEuEuMoXo
面白かったよ。特に、ラストの魔法少女変身シーンは勇者シリーズの王道的なゾクゾク感があった。次回作にも期待します。
658 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/06(日) 17:40:48.36 ID:LmSYuTBu0
月並みな言葉しか出てきませんが、本当に有難うございます。
>>657
さん。
そこまで言ってくれると書いた甲斐がありました。
次も何かで頑張ります!
659 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/09(水) 01:38:20.01 ID:QBnKutBq0
そう言えば、言い忘れていました。
OPは『FictionJunction』版のギャザウェイでイメージして貰うと良いと思います。
載せるかどうか悩みましたがアドレス貼って置きます。
youtube『
http://www.youtube.com/watch?v=O1T-FIXaMKc
』
では。
660 :
◆1B0iEDnTxU
[saga sage]:2011/11/10(木) 02:43:12.13 ID:XYieHRfr0
HTML依頼も出しましたので之にて店じまいとなります。
また何処かで書いているのを見掛けたら生暖かく見守ってやって下さい。
それでは、見て下さった方々本当に有難う御座いました。
661 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)
[sage]:2011/11/10(木) 02:48:55.11 ID:DPX3ZDoOo
乙!
662 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)
(チベット自治区)
[sage]:2011/11/10(木) 07:07:36.69 ID:kzS8n+Bao
お疲れ様でした
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