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御坂「ただの道化ですよ、とミサカは自己紹介します」 -
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1 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2011/09/07(水) 16:40:27.28 ID:ovrJyVKn0
【1】超電磁砲と呼ばれる少女
「道化もここまでくると実に滑稽だな」
サングラスの奥に潜む鋭い眼光が少女のど真ん中を射抜いた。
染めているのか色を抜いているのかは定かではないが、男の髪は日本人離れした金色で、ワックスで軽く整えられている。
金糸の髪は沈む橙の夕陽の日差しを反射しきらきらと輝く。
暇つぶしと言わんばかりに、親指と人差し指で自分の髪をもて遊ぶ少女の眉間に皺がよる。
指先に絡まる髪束の中に枝毛が数本ある。
染色もパーマしない毎日のトリートメントも欠かさない等、人並み以上の努力を重ねているつもりだったのに、
染めるだけ染めて(若しくは脱色して)、それ以外は大方野放し状態であろう目の前の男よりも、
途方もない労力が注がれた少女の茶髪のほうが痛んでいるのは明かだった。
「神様ってのは本当に不公平よね」
相応の対価を支払い努力を積み重ねたもの程、満足する結末を与えてくれない。
「だから、嫌いよ」
少女は呟き、く髪を絡め取る指をくるりと回した。
1.5 :
荒巻@管理人★
(お知らせ)
[
Twitter
]: ID:???
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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
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全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/
笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
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【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
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ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713736565/
2 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2011/09/07(水) 16:44:07.95 ID:NcXFZ4ZF0
ぼくたちは、なかよく
>>1
乙してるよ
∧_∧
===,=(´・ω・ )
>>1
乙
||___|_゚し-J゚||_
∧_∧/ //.___|^∧_∧
>>1
乙 (´・ω・ ) /|| |口|(´・ω・ )
>>1
乙
./(^(^//|| || |口|⊂ _)
>>1
乙 ∧_∧ /./ || || |口| || ∧_∧
∧_∧ (´・ω・ ).
>>1
乙..|| || |口| || (´・ω・ )
>>1
乙
(´・ω・ ) /(^(^/./ || || |口| || ゚し-J゚
"" ゚し-J゚:::'' |/ |/ '' " :: ":::::⌒ :: ⌒⌒⌒ :: "" `
:: ,, ::::: ,, " ̄ ̄ "、 :::: " ,, , ::: " :: " ::::
3 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2011/09/07(水) 16:48:26.41 ID:ovrJyVKn0
重力に従って、若干不健康気味なことが証明された髪がパサリと流れる。
男は少女の世迷言に付き合ってやる義理もないと、
成立しそうにない会話のキャッチボールを早々に諦め己の聞きたいことだけを一方的に言葉にした。
「悲劇のヒロインは楽しいものか?」
男の声色に少女に対する憐みも諦め込められてはいない。ただ。
「―――なあ、超電磁砲」
観客も居ない舞台の上で一人芝居を続ける間抜け者を見ているような、そんな瞳で少女を見ていた。
「……ふーん」
少女はひと息おき、
「結局、アンタも私のことを『そう(超電磁砲)』呼ぶのか」
そうよね。
そうだよね。
何度も確認するように、超電磁砲と呼ばれた彼女は頷いた。
4 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2011/09/07(水) 16:57:36.82 ID:ovrJyVKn0
自分が空回りで舞い続ける地面の土台が、またひとつ、ぐにゃりと曲がる感覚が背筋を走る。
ゾワリと虫が肌の上を這うような肌触りが可笑しくて仕方ない。
また一人、少女の名を呼ぶ人間が減った。
こうやって、個体を選別するために割りふられた識別記号は過去の産物へとなり果てていくのだろうか、と他人事のように納得する。
そして、少女はふと。
彼もまたこのような道筋の果てにかつての呼び名を失って行ったのだろうかと考えたが、
すぐにその思考を放棄した。
「そうね。そこそこ楽しいわよ?」
汚い感情を否定して真っ白な心だけをもつ純粋な女を演じる。
自己満足一辺倒な演技だが、それはそれなりに楽しい、と少女は微笑む。
行き場もなくただ髪を弄ぶよりは幾分か楽しい遊戯だ。
5 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2011/09/07(水) 17:07:18.84 ID:ovrJyVKn0
「…………そうか」
「そうよ」
即答した少女に、サングラスに金髪頭の男が「残念だよ」と小さく言った。
気を紛らそうとでもしれいるのか。
頭をぐわしぐわしと乱暴に掻く。
無造作に放置していても輝くを放つキューティクルをいとも簡単に傷つける。
そんな彼の姿に、少女は「面白くない」と感想を抱いた。
せっかく綺麗になままなのに。
何もせずとも、神様から与えられた一つなのに。
「ズルイわ」
「何が」
「別に。只の独り言」
もやもやと渦巻く感情の名を口にしても発散されることはない。
いいな、と羨ましがるだけのイイ子ちゃんでいられたらどれほど良かったか。
(……いいや。それも今更すぎるか)
遅すぎる後悔がさざ波程度で押し寄せては離れていく。
6 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2011/09/07(水) 17:14:19.94 ID:ovrJyVKn0
「残念、か」
『超電磁砲』は男の台詞を復唱したのち怪訝な面持ちで男を見やる。
「ねえ、土御門元春さん。それ、アンタが言っていい台詞じゃないと思うのよね」
「自覚しているさ。俺には資格が無いことも権利が無いことも」
「なら」
「それでも、」
「……」
「それでも、悔やまずにはいられないんだ」
どうして、こんなことになっちまったんだろうな。
声には出さなくとも、サングラスの奥から垣間見れる視線の揺れから、男の内面が浮き彫りになる。
先ほどまで無機質な視線を『超電磁砲』に向けていた男、
土御門元春は、この時になってようやく感情らしい感情を露わにした。
7 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2011/09/07(水) 17:20:19.20 ID:ovrJyVKn0
彼に対して、『超電磁砲』は少しばかり荒げた声で反論する。
「この配役を選んだのはアンタじゃないか」
それは、誰が見ても大雑把過ぎると感想を抱く、雑な粗筋だけが記された素人作成の台本だった。
「この私に道筋を与えたのアンタじゃないか」
必死にアドリブをつけて物語を進め続けて続けて続けて続けて続けて続けて続けて。
幾日たったか。
幾月たったか。
幾年たったか。
「…………そうだな」
「…………そうよ」
今日もまた、意味のない会話はここで終る。
8 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2011/09/07(水) 17:30:29.25 ID:ovrJyVKn0
夕暮れの公園にひゅうと秋風が流れカサカサと木枯らしが囁いた。
冷たい秋風に両者の頬の熱が奪われる。
手持無沙汰になったのか、土御門は羽織る学ランの胸ポケットにある煙草の箱から一本取り出すと、
安っぽさが前面に曝け出されている大量生産型の激安ライターで火をつける。
少女はチリチリと痛む奥歯で感傷の味を久方ぶりに噛みしめていた。
徐に両手を目の前に広げ、見下ろせば、どれだけ己が一人舞台に立ち続けているのかを実感させられる。
何があっても、地球はまわり太陽はきらめき月はうたう。
あの子を置き去りにして、あの人に見向きもしないで、私を振りまわして、誰もをズタズタに引き裂きながら。
四つの季節が順に色を変えて流れていき、ついにはこの両手にある指の数以上の季節が過ぎ去った。
過ぎ去ってしまった。
数えるのも飽きてしまたのは季節が一巡した時で、
演じることに狂気じみた歓喜を見出したのは季節が二巡した時だった。
そうして、季節が三巡を迎えようとする今、
少女は便宜的に命名された個体名から完全に離脱して、
『超電磁砲』になった。
9 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2011/09/07(水) 17:35:46.36 ID:ovrJyVKn0
「―――そう、かつて私は」
隣で紫煙をふかせつ土御門は聞こえているだろうに沈黙を保つ。
「……ミサカは」
そう、彼女は、
「ただの試験個体だったのに」
試験個体として姉妹の最初を飾った個体、検体番号〇〇〇〇号。――――かつての、最初のミサカ(フルチューニング)
10 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2011/09/07(水) 17:42:13.81 ID:ovrJyVKn0
トントン、とんとん。
煙草の灰を切るリズミカルな音と『超電磁砲』と成り果てた少女の鼓動が一緒くたになって、彼女の鼓膜を震わせた。
静かに瞳を閉じれば、ミサカの全てとも言える、ミサカの本当のはじまりである少女の事が思い浮かぶ。
手に汗をにじませ身体が震えなくなったのは、ただ単に、それだけ時間が過ぎてしまったからに過ぎない。
「お姉さま、とミサカは……」
無意識にそこまで口に出ていた。
そして、全てを終える前に、
「懐かしいな」
土御門の『待った』が入った。
「本当に懐かしい。久しぶりにその口調をお前から聞いたが、それまでにしてくれ」
これ以上は喋るな、という暗黙の指示か。
単なる土御門のワガママか。
彼の制止の理由が前者であれ後者であれ『超電磁砲』にとってはどちらでもよいことが、
彼女は自然と彼に従い口を閉じた。
11 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2011/09/07(水) 17:51:48.31 ID:ovrJyVKn0
彼は彼なりに思う所があるのだろう。
だからこそ沈黙を貫き少女の共犯として有り続ける。
土御門が命をかけるに相応しいとした相手すら騙し続ける猿芝居だとしても、
それほどの価値はあるということなのだ。
物語のたどり着く結末が喜劇であれ悲劇であれ、開幕したからにはもう後には引けない。
少女の前髪が軽く浮遊し静電気くらいの紫電が発生した後。
『――完全下校時刻です――』
と、頭上高くから偉そうに演説してまわる飛行船のアナウンスが聞こえてくる。
土御門はフィルターギリギリまで吸いきった煙草を投げ捨て靴底でそれを踏みつけた。
小さく灯っていた火は無残にも消えうせ千千に引き裂かれる残骸は、
地表へと還り命の終りを自分の代わりに体現しているようにも思えた。
靴底に踏みつけられ跡形も無くなったそれのように、最後に消えて着ればいいのに、と
『超電磁砲』は『彼女らしくない』歪んだ笑みを浮かべながら、将来の展望を描いた。
12 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2011/09/07(水) 17:59:45.90 ID:ovrJyVKn0
「そうね。最後は無残に果てたら、私としては満足な結果になるかも」
「おいおい、やめてくれよ」
「どうして?」
とてもいい案だと思ったのに。
風の揺れから髪が囚われそうになるのを右手で塞ぎつつ少女は男に問う。
「どうしてって。俺が困るからだにゃー」
にぃっ、と土御門は普段通りの年頃の少年らしい笑顔を晒す。
サングラスをかけ直し、学ランの胸ポケットの奥にある煙草の箱を更に奥底へと押しやった。
担任のセンセーに見つかるとうるさいんですたい、と言い訳まで付け加えれば、
二人を覆っていた気だるく重々しい空気が取り払われる。
照明のスイッチのより分かり易い土御門の切り替えに、少女は少々あきれつつ返事をした。
「で? 何が困るって訳?」
強気に元気に。
まさしく『彼女』のような声色で。
13 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/09/07(水) 17:59:52.42 ID:C+JJBlkVo
希望だが、最初にどういった設定なのか説明が欲しいかな
ある程度読んでから嫌な気分になる内容だったてのはできる限り避けたいんで
14 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2011/09/07(水) 18:07:00.84 ID:ovrJyVKn0
「だって、御坂美琴ちゃんが居なくなったら、舞歌が悲しんでしまうからにゃー」
「はは、確かにシスコンな土御門さんにしてみれば、それは困るわね」
「舞歌は泣いたら中々泣きやまないから」
「知ってる。友達だもの」
スイッチを切り替えさえすれば、日常風景に溶け込むのは容易い。
土御門ど、『超電磁砲』と呼ばれる少女は、軽口を叩きながら各々の帰路へと進んでいく。
夕陽のよく見える第七学区の公園からまっすぐ歩き、向こうに見る大きめの十字路で、彼らの進む道は別れる。
十字路を右折すれば土御門の住み慣れたとある学生寮へと道は続く。
左折すれば、『超電磁砲』が居を構える常盤台中学の寮へと道は続く。
「それじゃあ、またね。土御門さん」
「ああ、またな。美琴ちゃん」
学生たちが交わす当たり前の別れの言葉を交わせば、彼らは背を向け、帰宅を急ぐ人の群れに混ざる。
15 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/09/07(水) 18:09:58.49 ID:FlSoDgXZ0
×舞歌
○舞夏
16 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2011/09/07(水) 18:11:14.44 ID:ovrJyVKn0
ざわざわと耳に障る煩い雑音は、ここで生きる多くの学生たちの無数の声達。
その中に少女が欲する答えは存在しない。
群れる人を隠れ蓑に少女は今日もまた一日を終える。
終りの見えない劇の幕が下がるのは果たしていつか。
途方もない疑問が浮かんでは消え、それもまた雑音へと吸収されていった。
【-1】0000号と土御門元春による詐称行為
17 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2011/09/07(水) 18:19:27.06 ID:ovrJyVKn0
>>13
申し訳ありません。
―――――
とある魔術の禁書目録の二次創作です。
試験個体が身分を詐称し超電磁砲として過ごしているという設定です。
おおよその時系列は第3次世界大戦の一年後と仮定しております。
18 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)
[sage]:2011/09/07(水) 18:23:36.35 ID:QfmjeSEU0
乙
これは面白そうだな……。
19 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)
[sage]:2011/09/07(水) 18:26:10.90 ID:jxwzerQN0
面白そうだけど書き溜めないのが残念すぎる
20 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/09/07(水) 18:28:09.80 ID:c3GcktzFo
たばこはふやけて千のゴミになるってJTがいってたけど乙!
21 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2011/09/07(水) 18:32:34.72 ID:ovrJyVKn0
【2】昼休みの攻防
「せーんぱいっ、一緒にご飯食べませんかー?」
昼休み。
午前中の授業が終わり人時の解放感が充満する教室にその来訪者は参上した。
きらりきらりと無駄に光を反射させるブロンドの髪を靡かせながら、
来訪者は教室の一番奥、 教室の中でも最も静かな一角が定位置である上級生に声をかけた。
おしゃべりに夢中になっている女学生たちの話し声が充満する空間でも、彼女の声はよく通った。
とても澄んだ声をしているのね。
何時だったか、誰かがそう褒めた時、彼女は頬を染めつつ
「お腹に力を込めれば誰だって自然と声が出る訳よ」と、てれ隠ししたこともあった。
廊下から声をかえるや否や、我が物顔で上級生が主として君臨する学校最上階の教室にずんずんと足を踏み入れる来訪者。
当然、最初の頃は無遠慮に教室内に入ってくる下級生に、クラスメイト達もいい顔をしなかったが、
彼女の元来の人懐っこさを前に無残にも全員が攻落し、
いまでは愛すべき我が3年B組のアイドルとして扱われているのだから、正に現実は小説奇なり、だ。
22 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2011/09/07(水) 18:42:51.40 ID:ovrJyVKn0
「suppose 私が嫌だと言ったら?」
声をかけられた先輩こと、布束砥信の意地悪な物言いを見事に受け流し、彼女は近くに居た他の女子生徒に話しかける。
「すいませーん。この席借りちゃってもいいですか?」
「いいわよ。私、今日は食堂でごはん食べる日だし」
「わー! ありがとうございます」
「いえいえ」
授業がはじまる前には退散しますんでー!!
と食堂へ去っていく女子生徒の背に向かって大声で言葉をつけたした彼女に、
布束は自作した本日の弁当の主役、タコさんウインナーを頬張りながら、
「ちょっと。私の言葉は無視するの?」
「あー。私ってば『もし』とか『仮に』って言葉が嫌いなもんで、つい」
今、彼女に似合う効果音は『てへっ☆』とかだろうか。
笑窪が愛嬌を増幅させる某製菓メーカーのキャラクターの様な笑みだ。
後輩は先ほどの女子学生から借りた席の椅子を布束の机の真横にセットし終えると、
制服のスカートが皺にならないように慎重に椅子に座る。
23 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2011/09/07(水) 18:49:45.33 ID:ovrJyVKn0
うきうきといった様子で持参した弁当(布束はこれを断固として弁当とは認めないが)を、
タコさんウインナーの後光が眩しい布束の弁当の隣に置く。
「今日もそれなの?」
「今日もこれです」
お弁当というには、やけに光沢を放つ丸い容器。
表面には波の上を勢いよく泳ぐ大きな魚が描かれ、その上には威風堂々と『鯖味噌』のロゴが。
後輩が自信を持って『弁当』だと主張するものだが、これを弁当だと認めたくない。
「いやー、それにしても今日も先輩のお弁当は美味しそうですね。あの、良かったら一口くだs」
「No 嫌よ」
「お願いする前に却下されたぁぁぁぁああああっ」
「貴方は大人しく今日も今日とてサバ缶を食せばいいじゃないの」
24 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2011/09/07(水) 18:57:16.82 ID:ovrJyVKn0
「いいですか、先輩! 日本には別腹というすばらし〜い言葉があってですね!」
「屁理屈言わないで」
おかず譲渡を断られると、下級生は弁当を避けつつ器用に机に突っ伏した。
これしきのことで大げさに肩を落とすのか我がアイドル。
(……アイドル『様』と表現したほうが適切かもしれないわね)
先ほどから見えない矢が背中にグサリと刺さる。
3年B組のハートをキャッチした麗しの乙女の切なげな姿がそこにあれば、
一部はファンクラブにまで進化を遂げているクラスメイト達から、布束に少々きつめの視線という矢が刺さること刺さること。
いいや、ここで負けてなるものかと態勢を立て直そうとした瞬間。
25 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2011/09/07(水) 19:09:46.51 ID:ovrJyVKn0
「……結局、先輩のお弁当美味しいから好きな訳なのに」
そんな呟きと共に、しょぼんとした下級生が目に入る。
「……」
『私可哀想でしょ? 可哀想でしょ? しょぼーんって訳よぉ』と言いたげな姿だ。
自覚しているにせよ、自覚していないにせよ、他者の庇護欲を最大級まで高める少女の仕草に
布束は騙されないのだが、如何せん、クラスメイト達はこの乙女に夢中なのだ。
積極的に対人コミュニケーションを取ろうとしない布束とて、適度な安寧が約束された学生生活を維持したい決まっている。
ややこしい事柄を必要以上に背負い込むには、もう彼女の両肩には重しが大きくのしかかり過ぎている。
故に。
幸か不幸かクラス内で微妙なバランスの上で成り立つポジション(アイドルのお気に入り)を
奇しくも手に入れてしまった布束は、己の保身と、うっとしい視線から逃れるために、
本日も開戦した「お弁当のおかず頂戴戦線」の停戦を宣言する羽目になる。
26 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2011/09/07(水) 19:16:47.58 ID:ovrJyVKn0
「……ok、一個だけ。一個だけなら譲ってもいいわ」
「ほんと!」
その言葉にがばりと勢いよくアイドルの顔に生気が戻る。
「本当に貴女はゲンキンな人ね、フレンダ」
待ってましたとばかりにフォークで戦利品を口に運ぶ
アイドル級の可愛さを誇る下級生、フレンダ=セルヴェルンは布束の言葉に不満そうな顔をした。
「結局、私は別にゲンキンな女になったつもりはない訳よ」
お得意の口癖を交えながらそう言い張り、戦利品のタコさんウインナーはフレンダの胃の中へと運ばれていくのだった。
『お弁当のおかず頂戴戦線』―――戦績、下級生の五十戦全勝を記録。
【-2】寿命中断(クリティカル)
27 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2011/09/07(水) 19:24:34.87 ID:ovrJyVKn0
【3】八月末日より五度目の遭遇
カーンッ!! と。
実況アナウンサーの熱狂的な前振りと同時に鳴り響くゴングの音が脳内で聞こえたのは何度目だろうか。
背中の後ろに隠した右手の指をおって数を数え、御坂美琴は今回を含め通算五度目の火ぶたが落とされた事に気がついた。
相も変わらず、目の前の男は無言で立ち尽くすばかり。
目尻が僅かに上がったのが視界に移ったが、向こうからは見えない御坂の後ろ手に、
警戒しているのか戸惑っているのかは彼女には察しがつかない。
ただ、鉄臭い深紅の液体に似た赤い眼が揺れている現実に、少しばかり気が遠のく。
28 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2011/09/07(水) 19:32:01.39 ID:ovrJyVKn0
考えれば、実に簡単なからくりだった。
御坂と二、三十メートル先で対峙している男、一方通行にも共通項目くらいはある。
少年少女が居を構える学園都市は素晴らしいほどに効率性が重視される街づくりであり、
年齢別・分野別に学区が形成され、学生たちは区分けされる。
思春期の年齢の学徒たちの大部分は第七学区というカテゴリーに所属する事を推奨されている。
超能力者として絶対的な地位を築く御坂や一方通行であっても、例外ではない。
彼らも、他の中高生とともに、この第七学区を生活基盤として日常を過ごしている。
かなりの低確率とはいえ、街中で二人が偶然に出会ってしまう事も、事前に考えるつく事柄だったのだ。
29 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2011/09/07(水) 19:38:23.22 ID:ovrJyVKn0
本来ならば。
同学区の住人同士が道端で出会う。
親しい者ならば立ち話と洒落こみ、顔見知り程度の知人であっても、挨拶の一つや二つは交わすのが人情というもの。
御坂と一方通行も、神経の全部を注いで全力で好意的に解釈すれば
『知り合い』ち言えなくもない関係性ではあるが、
「よう、今朝の調子はどうよ」「まあまあかな」と互いに軽々しい口を叩くことはあり得ない。
というか、したいとも思わないが。
五回目のゴングが鳴り両者一歩も動かないリング上。
先制をしかけるのはどちらか、とどうでもい囃したてをする脳内実況アナウンサーの声に無視を決め込む。
無意味な外野の声ほど、苛立ちを助長させるものはない。
大きな道路の十字路にある横断歩道。
最低でも、歩行者用の青信号が点滅するまで、この睨みあいは続く。
30 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2011/09/07(水) 19:48:38.56 ID:ovrJyVKn0
思い返す一回戦。
御坂のヒーローとなった上条当麻と第一位が激闘を繰り広げた八月末日より、数ヵ月後。
久しぶりの再会を果たしたのも、人の往来が多いこの横断歩道だった。
互いの存在に気が付き、両者とも石のように固まったのは記憶に新しい。
彼の隣に居た小さな少女のアホ毛が左右にゆらゆらと動いていたのが印象的だった。
人影に隠れてその顔はよく見えなかったが、
身体が感じる電磁波から明らかに『御坂美琴』――いや、存在しないミサカである0000号と同種の生き物であることは分かった。
更に、己の記憶が正しければ、九月三〇日に一瞬視界を捉えた少女だろうとも推測ができた。
しかし、あの少女は一体何者だったのだろう、
と今になっても疑問は浮かんでくる。
知りえない情報を突きつけられた気がしたが、彼女は妙に達観した様子で納得しつつもある。
(だっと当然よね。ミサカが御坂になってどれくらいたつのかって話よ)
御坂として生を継続させる道をあゆんでから彼女はミサカとは絶対的な決別をし、いまに至るのだから。
仕方のないことだ。
31 :
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[saga sage]:2011/09/07(水) 19:55:14.28 ID:ovrJyVKn0
道路を挟んだ対面の後。
赤信号が青信号に変わる前、数秒の沈黙と停滞を乗り越えた一方通行は小さな少女に一言二言声をかけると、
横断歩道を渡らずに来たと思われる道を引き返して行き、一度目の対戦はそこで終りを迎えた。
(んで、そのあとは近所の地下街で一回、セブンスミストで一回、路肩で一回、エンカウントしてるんだよねー)
メタルスライムくらいの遭遇率だろうか。
確かに倒せば膨大な経験値が手に入りそうだ。
(いやいや。私がブッ殺されて、お終い、か)
残念ながらメタルスライムを打倒するにも一三八手目がで逆転できる切り札は思いつかない。
悔しいことに世界最強と名を馳せたスーパーコンピュータの演算能力は伊達ではないようで。
一手目から投了する方法はかつて思いつくことが出来たが、一三九手まで駒を進める手順は未だ考えるかないのが現状だ。
32 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga sage]:2011/09/07(水) 20:04:00.24 ID:ovrJyVKn0
車道の信号機が青から黄へと移り変わり、やがて赤い色へと変化をしていく。
一回戦の時と違い、彼の横に幼い少女の影は無く交差を避ける仕草すら見当たらない。
御坂から目を離さずに立ち尽くしている。
何も知らない人が見れば、ただ大人しく信号機の色が変わるのを待っている行儀のいい人にしか見えないだろう。
「どうしたらいいのかな」
ポツリ、一人事が漏れると同時に、ピッと横断歩道の信号機の色が変わった。
青なのか緑なのか、曖昧な色が眩しく、ミサカは微妙に目を伏せる。
明るい色は時に突き刺さるようにして痛かった。
鉛のように身体は重いし、呼吸困難になるのではないかと錯覚する程に息も荒くなる。
右手の掌は嫌という程汗にまみせる。
(息、苦しい。足、重い)
けれども御坂の戸惑いを振り払うように人波は横断歩道へと歩んでいく。
背中をおされる、というより、押し出されるようにして御坂は流されるままに一歩を動かした。
33 :
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[saga sage]:2011/09/07(水) 20:08:19.99 ID:ovrJyVKn0
歩みはじめ一歩、
二歩、
三歩、
四歩、
五歩、
六歩、
七歩、
八歩、
九歩、
十歩
十一歩、
十二歩、
そして、十三歩。
十三歩目にして、彼が彼女の領域まであと少しの距離に迫る。
そうして、とうとう両者の領域が重なった時、御坂美琴(フルチューニング)は口を開く。
「どうして、アンタが私の目の前に居る訳?」
【-3】0000号としての疑問
34 :
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[saga sage]:2011/09/07(水) 20:12:22.20 ID:ovrJyVKn0
今回は以上です。
次回投下は1週間後くらいに。お邪魔しました。
35 :
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[sage]:2011/09/07(水) 21:58:36.37 ID:C+JJBlkVo
乙
とりあえず気になる点は御坂美琴本人は既に故人って解釈でいいのかな?
36 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/09/07(水) 22:38:32.53 ID:c3GcktzFo
>>35
おまえはさっきからごちゃごちゃと…そんなこと聞くなよ
そこは作中で語るべき部分だろ
地雷踏みたくないなら黙って閉じればいい
いちおつ
37 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/09/08(木) 00:47:56.41 ID:YeO69HN0o
>>36
ごめん、地雷踏みたくないってのもあるけど恐れて良作かもしれないのをスルーしてしまうのも勿体無くって……
でも不快に感じる人もいるしもう黙るよ、本当にすまんかった
>>1
も色々と聞いてしまって申し訳ない
38 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/10/06(木) 16:37:55.24 ID:PNdMTTfIO
アホ一人に止められたか……
39 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)
(山形県)
[sage]:2011/11/09(水) 21:44:11.25 ID:WO87SUCT0
待ってる
40 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
[sage]:2011/11/21(月) 21:56:54.29 ID:RrkklFg90
待ってるwwww
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