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マミ「鹿目さん、私のご飯は…?」まどか「昨日食べたでしょ」モグモグ 分岐ルート - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2011/09/16(金) 21:01:51.44 ID:FSirzC3no
代行
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笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/

トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713798788/

【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713788018/

ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713736565/

【安価】少女だらけのゾンビパニック @ 2024/04/20(土) 20:42:14.43 ID:wSnpVNpyo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713613334/

ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713522243/

旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/09/16(金) 21:02:11.54 ID:2oZmowvgo
代理乙〜
ほむマミ(?)とあんまど(?)が世界を救うと信じて! ワッフルワッフル
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/09/16(金) 21:06:46.79 ID:2oZmowvgo
代行だ。続きからか初めからなのか
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2011/09/16(金) 21:08:46.29 ID:UTKNJkBbo
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/16(金) 21:11:31.66 ID:tQ+CDbUlP
代行乙
幸せなほむマミを信じて
6 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 21:12:31.28 ID:ljPTaRcFo
まずは代行感謝いたします


マミ「鹿目さん、私のご飯は…?」まどか「昨日食べたでしょ」モグモグ

http://logsoku.com/thread/hibari.2ch.net/news4vip/1315909209/


>>422より続き

ニュー速とダブりがありますが独立した話として読めるようにしたいので初めから行きます
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/16(金) 21:16:03.08 ID:tQ+CDbUlP
たしかに>>1とか適用されてるのかどうか気になってたし、初めからしてもらえると助かります
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/09/16(金) 21:18:05.32 ID:CTCPHYHZ0
代行乙ー

ニュー速から来たよー
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/09/16(金) 21:20:53.51 ID:CTCPHYHZ0
>>7
だが元スレの>>1は別の人だったからなー…
結局途中になっちゃわない?
10 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 21:23:45.73 ID:ljPTaRcFo
日本語下手ですいません上記の>>422の続きを初めから投下、ということで

何せ筆が遅いので、ちょっと楽させてください
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/16(金) 21:24:41.00 ID:tQ+CDbUlP
>>9
その辺も含めて気になってたからな初めからは助かるなって
たしか喫茶店の辺りまでは現行の人だから、初めからやるならコッチ仕様に期待できそう
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/16(金) 21:25:38.51 ID:tQ+CDbUlP
リロってなかったorz
いえ気にせずやってくださいな
13 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 21:27:06.50 ID:ljPTaRcFo

巴マミと恋人関係になってから、3ヶ月が経った
彼女のマンションに半ば一緒に住む形になって
初めの1ヶ月は大変に幸せだったのだが――

マミ「ほむらさん……今日は、してくれるわよね?」

ほむら「……ええ、なんとか……頑張るわ」

マミ「もうっ、頑張るって言って、この前は寝ちゃったのよ?
   忘れたなんて言わせないんだからね?」

ほむら「まかせて、なんとか頑張るわ……」

マミ「んもぅ、同じこと繰り返し言うのって退屈してるってことでしょ?」

ほむら「違う、マミが素敵すぎて言葉が……」

マミ「聞いた! その台詞、先週聞いたもん!!」

ほむら「……ええそうね。創意工夫が足りなかったわ」


ほむら(重い、精神的に……)
14 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 21:43:58.27 ID:368rtW3AO
規制よけ
15 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 21:44:02.58 ID:ljPTaRcFo

やはり、まどかのことを完全に忘れるには時間が必要なのだろう
考えないように、考えないようにするために隙あらば私を求めてくる

それでも、私にはマミに求められることが嬉しかった
特に最初の頃は私も夢中でマミの身体を貪ったのだが……

日々、蓄積されていく疲労

過剰ともいえるメールのやり取り(1時間に一度、譲歩してこれだ)

一日一個、マミの素敵ポイントを褒めること(重複不可)

毎日毎回の手の込んだ夕食に見合った感想(これを苦痛に感じるとは思わなかった)

お風呂での濃密な洗いっこ(シャワーで済ませたいときだってある)

寝る前のお話(暗い所で本を読むと目を悪くするので、暗唱を義務付けられている)

そして――

書き連ね、ひとつひとつ吟味するだけで一日が終わってしまいそうで、
正直、少し辛いと感じるようになってきた。ここに挙げていない細かいものも、だ

ただ、まどかのことがある。それを思うと文句は言えない
いや、文句を言う以前に私自身が持つのか一抹の不安が……
16 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 21:45:53.65 ID:368rtW3AO
17 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 21:46:21.06 ID:ljPTaRcFo

オフィス 


さやか「……暁美課長、判子お願いします」ボソ

ほむら「元気ないわね、大丈夫?」

さやか「課長って、人の心配とかできるんですね。初めて知った」

ほむら「今のは聞かなかったことにするわ……記入漏れが多すぎ。精進しなさい」

さやか「へいへい」

ほむら「こら!」

さやか「すみませーん」

そう言うと、彼女は私にだけ見えるように舌を出し、自分の席に戻ってしまう

ほむら(……全く)
18 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 21:46:40.54 ID:368rtW3AO
19 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 21:47:57.11 ID:ljPTaRcFo

まどか「課長、判子お願いします♪」

ほむら「……鹿目さんはご機嫌ね」

まどか「はい……重りがなくなったっていうか、
    余計なことを考えなくてよくなったのが大きいと思うんですよね」

まどか「それに杏子ちゃんとデートなんです、今日」

ほむら「……そう。別に聞いてないのだけど……楽しんできて」

まどか「はい。杏子ちゃんって、優しいし、カッコいいし、
    押し付けがましくないところがいいんですよ」ティヒ

ほむら「よくわかった。書類もそれだけすらすらこなせると、尚いいわ」

私がつき返した書類を受け取ると、初めて出会った頃の笑みを浮かべ、まどかが呟いた

まどか「……泥棒猫」ボソッ

ほむら「……」

私は何も言わない、いや言えない。まどかはそんな私を見て満足そうに戻っていった
20 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 21:48:22.03 ID:368rtW3AO
21 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 21:49:24.41 ID:ljPTaRcFo

オフィスビル 屋上 昼食


マミは私の姿を見つけると、オーバーアクションで手を振ってくる
なんというか……揺れている。後でそれとなく注意しなくては
左手に持っているのが程好い大きさのランチボックスで私は安心した

ほむら「嬉しいわ、サンドイッチにしてくれたのね」

マミ「ふふ、こっちは海老とアボカドで味付けは塩胡椒とオリーブオイルだけ。
   こっちはクリームチーズにドライマンゴーを刻んで混ぜたの」

マミ「ちなみにパンはお米の粉で出来てるのよ」

ほむら「ありがとう、いつも。いただきます」

マミ「どうぞ、召し上がれ」

一口齧る。おいしい。いつも、おいしい。しばらく黙々と食べた
マミはそんな私をニコニコしながら眺めている

ほむら「おいしいわ、巴さん、とても」

マミ「ありがとう。ほむらさんの言葉が励みになるわ」ニコ

ほむら「マ……巴さんにお料理を習う計画をいい加減実行しないとね」

ポットから注いでもらった紅茶をすすりながら私は言う

マミは辺りを見回し、こちらへの視線がないことを確認して私の耳元で囁く
耳たぶを舐められる近さで、吐息がくすぐったい

マミ「……マミでいいのに」ヒソヒソ

ほむら「ダメよ。メリハリよ、メリハリ」

マミ「つれないわね、ホント」クスクス
22 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 21:50:17.07 ID:368rtW3AO
23 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 21:51:08.95 ID:ljPTaRcFo

ランチが終わって……

マミ「ほむらさん」

ほむら「何? 改まって」

マミ「実はね……」

妙な溜めを作るマミ。とりあえず、適当な球を投げてみた

ほむら「……子供でも出来た?」

マミ「ちょっと、それどういう意味!?」

ジョークのチョイスを間違えたようだ。私も精進しなくてはいけない

ほむら「ごめん、私たちの、って意味」

マミ「やだ……だったらそう言ってよ……」ポッ

しばらくの間、マミと一緒にいて気づいたことがひとつある
彼女は、ちょっと変だ

ほむら「……えっと、話があるんじゃないの?」

マミ「開発部スタッフの選り抜きでね、視察と研修に行くの。まあ、国内なんだけど」
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [saga]:2011/09/16(金) 21:53:35.67 ID:368rtW3AO
25 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 21:54:05.50 ID:ljPTaRcFo

ほむら「期間は?」

マミ「1週間。ほむらさんに会えなくて死にそうになるかも」

ほむら「そう、私も食生活が貧しくなってしまうわね……」

マミ「ほむらさん、ほっとくとあのゼリーみたいなので済ませようとするものね。
   ダメよ、あんなのは食事のうちに入らないんだから」

ほむら「ええ、ママ、気をつけるわ」ニヤッ

マミ「誰がよ」クスクス

ほむら「貴女こそ1週間も離れるのだから、
    寂しがって周りに迷惑をかけてはダメよ?」

マミ「はい、ママ、気をつけるわ」ニヤッ

ほむら「誰がよ」クスクス
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [saga]:2011/09/16(金) 21:56:10.94 ID:368rtW3AO
27 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 21:57:00.52 ID:ljPTaRcFo

マミ「……だから、ね?」

ほむら「ええ、まかせて。今日の私に不足はないから」

私は辺りを見渡す。よし、誰も見ていない

ほむら「マミ」

マミ「はい」

マミが目を瞑る

ほむら「好きよ、愛してる、嫌だって言っても離さない」チュッ

マミ「……ええ、私も」チュッ


ほむら(良かった……少し休める)
28 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 21:58:13.36 ID:368rtW3AO
29 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 21:58:28.14 ID:ljPTaRcFo

少し遡って 食堂


さやか(何食べても、味なんかしないや……)チュルチュル

さやか(残しちゃおうかな……いや、でも杏子に……)

さやか(はあぁ、杏子に怒られることなんて、もうないじゃん……)

さやか(やべっ、泣きそうだよ……)グス

「……さ、さやかちゃん」

さやかは振り向きたくなかったが、また名前を呼ばれるのが嫌だったので
仕方なく振り向いた。そこにいるのは、よく知る他人

さやか「……なに? 鹿目さん」
30 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 21:59:02.88 ID:368rtW3AO
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/09/16(金) 21:59:14.69 ID:CTCPHYHZ0
>>10 >>11
なるほどね
おれも色々と誤解してたわ。すまん
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/09/16(金) 21:59:19.87 ID:FSirzC3no
こっちサル避けいらないんじゃなかったっけ
33 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 22:00:06.58 ID:ljPTaRcFo

まどか「あ、あのさ、席良いかな? ご一緒して……」

さやか「どうぞ……別にあたしのテーブルじゃないんで」

まどか「う、うん。ありがとう」ガタッ

目の前の彼女が何を考えているのか、さやかにはまるでわからない
強く自分を保たないと今にも罵倒してしまいそうだ

まどか「……」モジモジ

さやか「……」イライラ

まどか「……」モジモジ

さやか「……」イライラ

まどか「……」モジモジ

さやか「……」イライラ

まどか「……」モジモジ

さやか「……」イライラ

まどか「……」モジモジ

さやか「……あのさ」

まどか「ひゃいっ!」ビク

さやか「なんだよ、あたしがなんかした訳?」
34 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 22:02:08.22 ID:368rtW3AO
◇クソイーモバイルのせいです
35 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 22:03:29.59 ID:ljPTaRcFo

まどか「こ、怖いよ……さやかちゃん」

さやか「……あたしは……あんたの方が怖いよ」

まどか「そんな……私は、たださやかちゃ……」

さやか「名前、呼ばないで」

まどか「え?」

怒りを極限まで煮詰め、小声でゆっくりとさやかは言う

さやか「……名前を呼ぶな」ギリッ

まどか「うぅ……」シュン

36 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 22:04:43.73 ID:368rtW3AO
37 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 22:05:22.49 ID:ljPTaRcFo

さやか「……悪い、食事の邪魔したね。あたし、行くわ」

まどか「う、うん」

さやか「あとさ……」

さやか「やっぱり、次から一人で食べて。無理だ、あたしには」

まどか「……」

さやか「じゃ、ね」スタスタ

まどか「うん」

まどか「……」モソモソ
38 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 22:06:22.72 ID:368rtW3AO
39 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 22:06:40.33 ID:ljPTaRcFo

オフィス 廊下


さやか(……ダメだ、頭痛い)トボトボ

ほむら「美樹さん、大丈夫?」

さやか「うわ! ……い、いきなりなんだ……ですか」

さやかの顔からは生気が失われている。血色も悪い

ほむら「日本語くらい、きちんと使いなさい。人ですらなくなるわよ」ニコ

さやか「す、すみません」

ほむら「……貴女、顔色が悪いわ。早退しなさい」

さやか「課長は、つやっつやしてますねぇ」ヘラヘラ
40 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 22:07:49.59 ID:368rtW3AO
41 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 22:08:29.69 ID:ljPTaRcFo

ほむら「そういう皮肉も自己卑下も要らないから。
    貴女は、私の部下なの。無茶はさせられない」

さやか「いや……でも」

ほむら「早く帰らないと、無断退勤扱いにするわよ?」

さやか「そんな、それパワハラじゃ……」

ほむら「そうね。だから私にそんなことさせないで」

さやか「うう……すみません。……ご厚意に甘えます」

さやかは更衣室へトボトボと歩いて行く
いつもの溌剌としたオーラがまるで感じられない


ほむら(問題は山積みね……)
42 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 22:09:37.50 ID:368rtW3AO
43 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 22:09:46.80 ID:ljPTaRcFo

開発部


ショウ「巴、いる?」

モブ男「今、呼んできます」

ショウ「あんがと」

しばらくして、マミが感じの良い笑顔で近づいてくる
彼女ならここより稼げる場所が沢山あるのに、と下世話な想像
しかし、怖い女のことを思い出して、すぐに頭の中から考えを消す

マミ「なんでしょうか」

ショウ「ああ、あのさ、そこのミーティングルームで話したいんだけど」

マミ「え?……私の貞操とか、大丈夫かしら……」

巴マミという人物は真顔で冗談を言い、その反応で人を見るところがある
まあまあ信頼されているのかな、とショウは自己評価を下した

ショウ「ざけんな。部下に手を出すほど落ちぶれてねぇし。
    それにガラス張りじゃねーか、その部屋」
44 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 22:09:55.73 ID:368rtW3AO
45 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 22:10:22.20 ID:ljPTaRcFo

マミ「ふふ、そうですね。今、お茶を淹れますので」

ショウ「いや、いいんだ。和みに来た訳じゃない」

ミーティングルームに入り、マミは椅子に、ショウはテーブルに腰掛ける

マミ「それで、お話というのは?」

ショウ「暁美ほむら」

それだけ言い、ショウは真剣な表情でマミを凝視する
マミもショウから視線を逸らさず、表情も動かさない

マミ「……それだけだと、なんのことか分からないのですが」

ショウ「俺にもわかんね。……暁美のやつはさ、結構高く買われてんだ、社内で」
46 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 22:12:15.42 ID:368rtW3AO
47 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 22:12:27.97 ID:ljPTaRcFo

マミ「でしょうね。彼女の年齢で今のポストって、中々聞きませんもの」

ショウ「まあ、そうだな。そんな会社だから、俺みたいなのが居られんだわ」

くすくすときししという笑い声が狭い部屋の中で響きわたり、すぐに止んだ

マミ「……付き合うのを止めろ、とか言わないで下さいね? 幻滅しちゃうから」

ショウ「そんなこと言うかよ、既婚者ならともかく」

マミ「だったら……」

ショウ「あいつが疲れを溜め込んでんの、わかってるよな?」

マミ「……」

ショウ「はっきり言って、俺は今、スレスレの内容を話してる。
    セクハラもいいところだからな。まあ、だから俺なんだけど」
48 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 22:13:16.91 ID:368rtW3AO
49 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 22:13:22.96 ID:ljPTaRcFo

マミ「……それで?」

ショウ「巴も、暁美もわが社の貴重な財産なんだよ。
    そのことをよく弁えてもらいたいってだけ」

マミは目の前の男性の言葉を心の中で噛み締め、口を開いた

マミ「私たち、子供扱いですね」

ショウ「言ってもらえるうちが花だって。『前途』があるんだから」

そう言って、きししと笑うショウの顔を見て、マミは男の子だな、と思う

50 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 22:13:54.02 ID:368rtW3AO
51 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 22:14:03.53 ID:ljPTaRcFo

街中 


さやか(平日のこんな時間に街を歩くのなんて、ひさびさだな)テクテク

気分を変えるというのは大事なことだ。さやかはほむらに素直に感謝していた
……彼女に会うまでは

杏子「……あ」

そのまま無視して通り過ぎて行ってしまえばよかった。でも、出来ない

さやか「……ほんと、転校生、最悪だわ」

杏子「なんだ? それ」

さやか「何、普通に話しかけてんの? ナンパとか、マジで要らないんだけど」

杏子「……だったら、行けよ……あたしもあんたに話なんて……」
52 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 22:15:34.30 ID:368rtW3AO
53 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 22:16:14.32 ID:ljPTaRcFo

杏子のボソボソした声を遮り、さやかは誰に言うともなく話し出す

さやか「なんかさ、ガッカリだわ。
    もうちょっとマシなやつだったはずなんだけど、あんたも、まどかも」

杏子「おまっ、自分は、まどかとキスとかしといて……」

さやか「関係ないよね? あたしとあんたは他人なんだから」

杏子「あ、ああそうだよ。関係なんかねーよな」

さやか「……」

杏子「……」

気まずい。
54 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 22:16:24.31 ID:368rtW3AO
55 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 22:17:07.49 ID:ljPTaRcFo

杏子「……あの」

さやか「んじゃ、この時間帯にここいらを歩かなきゃいいんだね。
    ……幸せにやんなよ、鹿目まどか、とさ」

さやかの言い方が気に食わなかったようで、杏子は露骨に顔をしかめる
でも、そんなこと関係ない。だって『他人』なんだから
さやかは気づくとその場から駆け出していた

杏子「おい、待てって……」

追いかけてもきやしない。誰が待つか、バカ!!

さやか(ああ、もう! また泣きそうだ、ホント最悪!!)

ぼろぼろと流れ出す涙を無視するのに精一杯で、さやかはロクに前も見ず走る
56 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 22:18:16.00 ID:368rtW3AO
57 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 22:18:28.08 ID:ljPTaRcFo

200m以上は走っただろうか。杏子は追ってこない……あんのヘタレめ!
……そう言えばこんなに走るなんて、いつ以来だろう
息は切れるし、お化粧はぼろぼろで、靴ずれも確実にしてる
まったく気分は最低なのに、血の巡りが良くなったせいか
どことなく気持ちが良い。奇妙な高揚感だ

そうか、ジョギングとかいいかも知れな――


どすん。


通りすがりの人にぶつかってしまった
きゃっ、という女性の声。現実に引き戻され、自分の愚かさを再確認

さやか「す、すみません! いい、急いでて――」

「……あらあら、ひどい顔してらっしゃいますわね、さやかさん」

馴染みのある声。優雅な仕草で服装を直すその人は、

仁美「新メニュー開発に付き合ってくださる? どうやらお暇みたいですし」
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/16(金) 22:19:32.21 ID:tQ+CDbUlP
お、既存まではれたかな?
お疲れ様です
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/16(金) 22:28:16.74 ID:0vw4B2/do
おつ
どろどろすぎワロリンヌ
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/09/16(金) 22:29:19.16 ID:FSirzC3no
乙乙

コテ通りの展開を期待していいんだろうか…
61 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 22:35:28.81 ID:ljPTaRcFo

オフィス


美樹さやか一人がいなくなっただけでも、結構な大忙し
暁美ほむらが任されているセクションは、会社の中ではさほど重要な箇所ではない
それでも当然ノルマというものがある
ほむらは普段であればチェックのみに留まる作業にまで自分の労力を傾けていた
仕事には直接的には関係の無い考え事をしながら

        ラブ
ほむら(私がマミ愛を貫いたせいで、こんなひずみが来てしまった。ガタガタね)ホム

ほむら(……なるほど、社内恋愛禁止って言うのもなかなか理に適ってるわ)ホム

ほむら(まあ、そんなこと今更、だけれど)ホム

ほむら(……はあぁぁ、今日のサンドイッチ、おいしかったなぁ……好きよ、マミ)ホム

ほむら(しかし、美樹さやかは相変わらずの打たれ弱さね)ホム

ほむら(きっと杏子ともろくに話してないはず)ホム

ほむら(そうやって無闇に自分を追い詰めるのだから)ホム

ほむら(それが可愛い、ってなるのはせいぜい中学生くらいまでなのにね)ホム
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/16(金) 22:41:33.97 ID:tQ+CDbUlP
ほむほむ、和んだww
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/09/16(金) 22:42:33.10 ID:FSirzC3no
やべい、ほむほむの心情可愛すぎる
64 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 22:46:07.90 ID:ljPTaRcFo

ほむら(確認はとってないけれど、まどかの行動は明らかに私へのあてつけ)ホム

ほむら(……ああ、マミ愛してるわ、貴女の愛が偶に重いけれど)ホム

ほむら(杏子なんてどうでもいい、本当に求めてるのはマミ。まどかはきっとそう)ホム

ほむら(どうすればよいのかしらね、ロクに恋愛とかしてこなかったからなぁ)ホム

ほむら(気が進まないけれど、ショウさんにでも相談しようかしら)ホム

ほむら(いやダメね。ショウさんは最後のカードにしよう)ホム

ほむら(今の段階で相談なんかしたら『乙女か? お前が?』って笑われる……そうよ、きっと)ホム

ほむら(……それはそうと可愛くてちっちゃいのをマミに使わせて、私がじっと眺める……アリね)ホム
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/16(金) 22:48:38.19 ID:vtjezZDlo
そういやいつの間にまどカスは寝取ったの?
これから?
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/16(金) 22:52:14.27 ID:tQ+CDbUlP
ほむほむww定期的にマミさんのこと考えてるなww

>>65
これから明かされていくんじゃない?
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/16(金) 22:55:26.13 ID:a9swioi70
愛の重さゆえにほむらがマミを投げだすとか言う展開じゃなかったか…
ほむら見直したぞ
うちに帰ってマミさんをふぁっくしてきていいぞ
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/09/16(金) 22:56:10.97 ID:CTCPHYHZ0
マミさんに使う可愛くてちっちゃいの…シャルロッテ…
69 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 23:04:08.06 ID:ofVLpthRo

ほむら(ショウさんのことだから、私とマミのことは知ってるでしょうね、当然)ホム

ほむら(それを知って、付き合い方を変えるような人じゃない。あの人は他の人とは違う)ホム

ほむら(……どうしてマミだったのかな、私。たとえばショウさんとか……うーんないわね)ホム

ほむら(ていうかレズ☆ハッピーもいいとこよね、私の職場……神の意思としか思えないわ)ホム

ほむら(ああああ!!! 早く帰ってマミにいっぱいいたずらしたいぃぃ!!!)ホム

ほむら(……ダメね、思考がエロ方面に流れてきた……しかし現金だわ、私も)ホム

ほむら(さっきまでは、1週間離れてリフレッシュくらいに思ってたのに)ホム

ほむら(マミの依存にばかり気を取られてたけども、私自身はどうなのかしら……)ホム

ほむら(……うん、ずぶずぶね……間違いなく溺れてるわマミに)ホム

70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/09/16(金) 23:05:42.02 ID:4NRPTf+P0
やべえこのほむほむ可愛すぎだろww
71 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/16(金) 23:09:38.30 ID:ofVLpthRo
今日はここまでにします

ありがとうございました

そしてお休みなさい
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/09/16(金) 23:10:46.35 ID:2oZmowvgo
乙〜
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/16(金) 23:10:48.74 ID:0vw4B2/do
おつかれ、おやすみ
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/16(金) 23:11:21.68 ID:a9swioi70
おうふ おつでした
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/09/16(金) 23:11:28.63 ID:4NRPTf+P0
(`・ω・´)ゞ 乙であります!
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/16(金) 23:13:15.54 ID:tQ+CDbUlP
乙!
こっちだとマイペースにできていいね、書き手も読み手も
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/09/16(金) 23:19:15.66 ID:CTCPHYHZ0
おつー

おやすみー
78 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/17(土) 04:40:50.12 ID:0VQByOmAO

ほむら(問題は私のフィジカル面なのよね……元々ひ弱だもの)ホム

ほむら(いくら、気持ちがあっても、身体が追いつかなければ)ホム

ほむら(精神は肉体に簡単に隷属してしまう……昨晩も何故かつらかった)ホム

ほむら(うぅむ、……だからって私がムキムキに肉体改造すれば、ってことでもなし)ホム

ほむら(……一人でいた時には考えようとすらしなかったことだわ、こんな)ホム

ほむら(すっかり恋する乙女モードね……性的な面ではバテ気味のお猿さんだけど)ホム

ほむら(いけない、こんな表現マミが怒り出すわ……って、口にしなきゃいいだけじゃない)ホム

ほむら(ダメね……少し上がるテーマで妄想しましょう)ホム
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/17(土) 05:21:02.72 ID:VXjqne3bP
どこかでムキムキのほむほむの絵を見た気がする
80 :ほむマミ派(単発ゲリラ更新、そして微エロ) [saga]:2011/09/17(土) 11:14:49.97 ID:0VQByOmAO

ほむら(そう言えば、今日の褒めポイントをまだ考えてなかったわね)

ほむら(うーん、さすがに3ヶ月ほぼ毎日、尚且つ重複不可だと考えるのもキツいわ)

ほむら(とりあえず、想像上のマミを下着姿にして……)

ほむら(場所はどこにしようかしら……第三資料室にでもするか、殆ど人来ないし……)


第三資料室(妄想)


ブラウンのレース、か。なかなかのチョイス。紐パン率の高さもマミの良いところ。とても、良い
両腕で下着姿を覆い隠そうとして隠しきれなくて、もじもじするところがすっごく萌える
仕切りにドアを気にする素振りもたまらなく素敵
この恥じらいがマミから失われたら、魅力は半減してしまうでしょう
香りのしない紅茶、のようなものかもしれない

マミ『や、やだ……よ。人来ちゃう……』モジモジ

ほむら『ふふふ……じゃあ何故言われるままに脱いだのかしら?』

ほむら『下着姿になっておいて、こんなの嫌って、わけがわからないわ』ニヤニヤ

マミ『うぅ……だって、そうしないとほむらさんが……』カアッ

言い訳の下手な子。その言い方じゃ、私に付け入る隙を与えるだけなのに
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/09/17(土) 12:14:49.40 ID:W55C2CfAO
やった続きキタ!これで勝つる!
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/17(土) 12:39:35.16 ID:VXjqne3bP
ほむほむ、これ仕事しながら妄想してるんだよな
流石ほむほむ、レベルが高い……
83 :ほむマミ派(妄想ほむらさん) [saga]:2011/09/17(土) 14:03:56.18 ID:0VQByOmAO

ほむら『そうしないと?』

マミ『……え?』

ほむら『そうしないと私が、何?』

マミは言い淀む。それはそうだろう
言葉遊びで考えたら、マミは既に『詰んでいる』のだから

マミ『えっとぉ……』

あさっての方を向いて時間稼ぎか……
可愛くって、思わず抱きしめたくなっちゃうけれど
ここは心を鬼にしなくては
辛い……もとい、面白い♪

ほむら『マミ!』

マミ『ひゃいっ!』

ほむら『私が憧れた先輩はこんなことにも答えられない
    ダメな人だったのかしら?』

マミ『そ、そんな……』

ほむら『……私をガッカリさせないでね』ニコッ
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/17(土) 14:53:28.72 ID:x3M8PLNg0
ほむら仕事しろwwwwww
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/09/17(土) 15:11:10.81 ID:jQrbeswg0
妄想でこれだけいけるとか、達人過ぎるww
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/09/17(土) 15:35:08.05 ID:qj4pp1NQ0
妄想中の現実のほむらが気になるなww
表情とか手は動いてるのかとかww
87 :ほむマミ派 [saga]:2011/09/17(土) 15:37:29.36 ID:0VQByOmAO
本編更新がちょっと出来ないので小ネタ

ショウさんは名前こそショウさんですが
実はモデルが別にいましてぴ苦渋で見た
「おっさん杏子」がアイデアの元だったり(マミさんを「巴」と呼ぶところとかね)
まあ、好きなビジュアルイメージでお読み下さい

今晩の内にほむらの妄想に歯止めをかけたい所存

早くさや仁が書きたい
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/17(土) 16:24:20.17 ID:x3M8PLNg0
ぐぇ 本スレ落ちた・・・
89 :ほむマミ派(妄想ほむらさん) [saga]:2011/09/17(土) 16:59:34.25 ID:0VQByOmAO

マミ『ぃ、いじわる……言わないでよぉ、うっ……ぅわーん!!』

しまった、泣き出した!!

ほむら『な、泣かないでっ、ていうか人が来てしまうわ』オロオロ

マミ『ぅわーん!!!』

ほむら(ダメだ、マミが大声で泣くところなんて見たことないから、
    イマイチしっくり来ない……って、んなこたいいのよ!)

私は急いでジャケットを脱ぎ、マミの上半身を覆う
次に彼女の頭を抱き寄せ、優しく髪を撫でて、囁くように謝り続ける
マミはしばらく私の胸に顔をうずめたまま泣き続けていたが、
徐々に落ち着いてきたようだ……良かった

ほむら『……ごめん、ごめんねマミ……私が悪かった。もうこんなこと二度としないから、ね?』ナデナデ

マミ『ホントに?』グスッ

ほむら『ええ、ホント! 嘘偽りなく!』

マミ『……じゃあ、私のどこが好き?』エヘヘ

ほむら『……っ』

ほむら(それを今考えてるんじゃないの……)
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(秋田県) [sage]:2011/09/17(土) 17:01:26.86 ID:D/uqb/RRo
マミさん重いな
いろんな意味で
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/17(土) 17:19:30.16 ID:phawqbi3o
妄想が勝手に動き出したww
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/09/17(土) 19:47:40.10 ID:qj4pp1NQ0
>>88
いつかスレ立てて続き書いてくれると信じてるぜ

>>89
妄想でこれだけ動かせるとは
このほむほむできるww
93 :ほむマミ派(妄想ほむらさん) [saga]:2011/09/17(土) 20:04:15.54 ID:0VQByOmAO

ほむら『あ、貴女は癖があるから嫌だって言ってたけど、
きらきらして、ふんわりして、女の子らしくて好きよ貴女の髪』

マミ『……聞いたわ、それ』ジロッ

ほむら『……そうね、言ったわね、かなり最初の頃に……』

マミ『……』

ほむら『……』

地雷を踏み、動けなくなった私

ほむら(私の妄想の筈なのに手強いわね……)

ほむら『じ、じゃあ……』

マミ『じゃあ?』ジロッ

ほむら『……』

マミ『ほむらさんは恋人の好きなところをあげるのに、
   じゃあ、なんて言葉を使うような人なワケ?』

ほむら『……そうね、
    そんな無粋なことをする輩は馬に蹴られて死んでしまえばよいとさえ思うわ』ホムッ

マミ『ふんっ』プイッ

マミは怒って顔を背けてしまう
真っ先に馬に蹴り殺されてしまう私を追及する気はないようだ

さて。
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/09/17(土) 20:20:41.89 ID:8WoMMqt90
元スレってもう落ちたの?最初のから4日間ずっと追いかけてたんだが…
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/17(土) 20:26:54.80 ID:VXjqne3bP
ほむほむ、妄想でも悩まされるとか、やっぱり苦にしてるんだなww

>>94
あと一歩で完結だったのにな
まあしゃーない
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/09/17(土) 20:33:27.13 ID:sRLwJfhyo
あっちは完結宣言がフラグだったな……

ほむマミとあんまど(?)が幸せならそれで良い……
ひたすら続きワッフルし続ける
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/09/17(土) 20:37:39.51 ID:LAL+eD4so
さやかちゃん救済されないかな
まどかに優しくしただけで全て失う一番の被害者だし
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/09/17(土) 21:40:39.65 ID:LAL+eD4so
って、読み返したらさや仁に落ち着きそうなのね。よかった
99 :ほむマミ派(業務連絡) [saga]:2011/09/17(土) 21:45:40.27 ID:0VQByOmAO
期待を裏切る予定でおります
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/09/17(土) 21:50:32.70 ID:sRLwJfhyo
なん……だと!? 貴重なあんまどが……?
どの期待を裏切ることやら
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/09/17(土) 21:58:23.95 ID:LAL+eD4so
まさかほむマミが…?
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/17(土) 22:06:17.94 ID:s+LWL4iEo
まさかまどカスが幸せに…
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/09/17(土) 22:35:13.89 ID:qj4pp1NQ0
ほむほむの推測だけど>>64見る限り
まどっちの本命はあんこじゃなくてまだマミさんっぽいもんな
あんこはあんこでさやかに未練あるみたいだしどう転ぶか分からんですわ
104 :ほむマミ派(妄想ほむらさん) [ saga]:2011/09/17(土) 23:14:06.13 ID:eAjZ2jyY0

横を向いたまま、頬を膨らませているマミを見て、
その曲線の美しさに改めて注視する
そう、彼女の形作るラインはどれもこれも柔らかい
とりあえず、マミの頬を人差し指で突付いてみる

やっ、というマミの呻きに私の中心は軽く揺れた

ほむら『可愛い声出しちゃって』クスクス

マミは少し顔を赤くして、こちらに向き直る

マミ『そ、そういうのはずるいと思うわ』アセッ

ほむら『マミのほっぺは突付きたくなるほっぺ』

それだけ言ってマミの瞳をじっと見つめる
さて、お気に召すかしら。目が泳いだマミもまた素敵

マミ『……わ、悪くはないけど』

ほむら『けど、何?』

マミは視線を下にして何を言おうか迷っているようだ
ふむ、このまま二人して戸惑うのも良いかもしれない
しかし、時間は有限である。私の辛抱も切れてしまいそうだし

ほむら『……言わないと、もっと悦ばせるわよ?』
105 :ほむマミ派(愚痴) [saga]:2011/09/17(土) 23:30:41.88 ID:0VQByOmAO
ダメだ妄想が終わらん
106 :ほむマミ派(愚痴) [saga]:2011/09/17(土) 23:31:50.72 ID:0VQByOmAO
寝ます
お休みなさい
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/09/17(土) 23:33:23.80 ID:sRLwJfhyo
乙〜
108 :ほむマミ派(妄想をやめたほむらさん) [saga]:2011/09/17(土) 23:58:51.43 ID:0VQByOmAO

ほむら(やーめた! 妄想やーめた!)ホムッ

ほむら(大体非効率すぎるわコレ)ホムッ

ほむら(大体いくら子細に想像したってそれはマミじゃない)ホムッ

ほむら(いうなれば『虚』。そう、『虚マミ』よ)ホムッ

ほむら(最初のアイデアに固執してしまうのは疲れてる証拠だわ)ホムッ

ほむら(もしマミが褒めポイントを要求してきたら、無理にでもコマしちゃえばいいのよ!)ホムッ

ほむら(……おっと、品を欠いてしまったわね)ホムッ

ほむら(待ってなさい、マミ)ホムッ

ほむら(今夜の貴女に喋るヒマなんて与えてあげないんだからね♪)ホムッ

ほむら(……さて、誤魔化せたところで仕事に戻りましょ)ホムッ

まどか「あ、あの課長」

ほむら「ああ、鹿目さん、話しかけてくれるのを待ってたわ……」
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2011/09/18(日) 02:04:32.73 ID:UAA2RRJw0
ほむほむのスケジュール帳がマミ褒め帳になってそう…
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/09/18(日) 02:15:15.89 ID:yXPDxQw/0
妄想を見てほむほむならマミさんを幸せにできると確信できたわ
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/09/18(日) 08:19:59.86 ID:uMGSdmVA0
信頼と安心のほむほむ
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/18(日) 09:21:47.85 ID:D/1rWb2Zo
マミさん、ほむほむの気持ちに気付いてあげて…
マジで幸せにしてくれるいい子だから
113 :ほむマミ派(単発ゲリラ更新 インターミッション) [saga]:2011/09/18(日) 09:50:56.41 ID:+BoA7v/fo
少女進化論を読みつつ

ほむら(私、ここまで乙女じゃないわね……)
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/18(日) 10:16:59.71 ID:RxD7ccDIP
>>112
ショウさんのおかげで気づけたんじゃないかな?

>>113
ほむマミ好きはやっぱ買うよね、はやく読みたい……
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(西日本) [sage]:2011/09/18(日) 13:55:32.03 ID:mR6wrA6O0
本ルートもSS速報でも新スレでも完結願いたいな
見てたら是非お願い
116 :ほむマミ派(単発ゲリラ更新 鍔迫り合い) [saga]:2011/09/18(日) 16:47:47.00 ID:8+x7i07AO

オフィス


ほむら「それで何? 鹿目さん?」

まどか「えぇと、さや……み、美樹さんが早退したところで、
    言いにくいんですけど……」

ほむら「ああ、私用で定時上がりしたいって話?」

まどかはおどおどした顔つきで頷いた

ほむら「……ふん、今日が水曜だから、
    木金で分散すればいけるでしょ……」

なんとなくすんなりOKを出せず、嫌みまじりの独り言を呟いてしまった
こういう時、はっきり加齢というものを感じてしまう
まあ、『お友達』ではないのだから、という逃げも出来なくはないけれど

まどか「あの……もし、ダ……」

ほむら「いいわ。めいっぱい楽しんできてね」

変な含みを持たせず言えただろうか?
どうも自信がない。というか、そこまでエネルギーをまわせない

まどか「……いいんですか、課長は?」

質問の意味がよくわからない
まどかの探るような表情に、少しだけ嫌悪を感じる

ほむら「いいも何もないのだけれど……」

まどか「用事とかないんですか?」

やけに食い下がってくる。正直、無意味な会話なので苛立ってきた

ほむら「貴女にプライベートを報告する義務はないと思う」

自分でも驚くくらいの冷たい声
私の返答を聞いたまどかは、
色々な感情を滲ませた「すみません」でその場を後にする
意図に気付いてから、
意地でも話題を『そこ』へ持っていかないようにするのに余分な力を使ってしまった


ほむら(まあ、そうよね……)フゥ


ほむら(……今日は乳枕してもらいましょう)ホムッ
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/18(日) 16:53:00.23 ID:0IjtQKiAo
なんだよほむほむwwwwww
冷たくあしらった後に変なこと考えやがってwwwwww
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/18(日) 17:04:57.21 ID:RxD7ccDIP
まどっち、勘ぐり入れてるとか、まだ狙ってるんだな
一波乱あるのかな、気になる
119 :ほむマミ派(インターミッション) [saga]:2011/09/18(日) 18:35:06.70 ID:8+x7i07AO
少女進化論を読みつつ

マミ(やだ……ここの私、可愛い……)
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/09/18(日) 20:44:32.30 ID:JQKsbVEIo
どうかまどかにマミさんを寝取られませんように…
121 :ほむマミ派(業務連絡) [saga]:2011/09/18(日) 22:05:46.02 ID:1rwQywsgo

今後確定している流れ、というか自分への誓い

・マミさんパート

・さや仁パート

・佐倉杏子と、まど杏パート

・ほむマミ濡れ場

・巴マミ研修へ

上から下の順で行きます

このあとは書くとそれだけでネタバレっちゃうんで今は書けません

一応ラストまでの流れは頭の中にありますが長いSS自体(というか長い話自体)
書くのが初めてなので、気負わずに行こうかなと

少女進化論を読み返してニヨニヨ致したいので、
今日は多分本筋は書けないと思います

気持ちを上手く乗せられると良いのですが

なんとかこのスレで収めたい所存
 
皆様のレスに励まされている毎日です。本当にありがとうございます

122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/19(月) 00:56:55.58 ID:I+kLRd80P
最期まで付き合うぜ、無理せず頑張ってください
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/09/19(月) 03:15:57.13 ID:07VJ7PzJ0
研修にまどかもいるんですね、わかります
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/09/19(月) 07:01:52.47 ID:zj4HWNJwo
まど杏……だと!? 全力でワッフルだ
研修後は……なるほど
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/19(月) 13:57:16.22 ID:I+kLRd80P
でもまどっちの本命が未だにマミさんみたいだし、杏子は可哀相だよね
頑張ってまどっちを本当の意味でモノにするのか、さやかとヨリを戻すのか、気になる
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/09/19(月) 19:17:33.59 ID:F+AH/Sg7o
ほむマミスキーは最後まで読んでも大丈夫なのかが最大の不安…
逆転敗北なんてなったらSGが濁りきってしまうわ
127 :ほむマミ派(回想 メガほむ好きの人スミマセン) [saga]:2011/09/20(火) 00:29:09.08 ID:GKe7XFhho

巴マミの暁美ほむらに対する第一印象は、「自信の無い子」であった

鹿目まどかの右後ろを申し訳なさそうに、
無駄のない、すらっとした体型を台無しにする猫背でトボトボと歩く

せっかくの端正な顔立ちを覆い隠してしまうセンスのないメガネをかけ、
さらさらで真っすぐで腰まで伸びた綺麗な黒髪を、
絶妙に野暮な二つ分けの三つ編みにして、情けない揺れを作ってトボトボと歩く

とても綺麗な声をしているのにもかかわらず、
発声も文法もおぼつかなくて、言いたい事が消えてしまい仕方なくトボトボと歩く
そんな女の子

好意的に見れば庇護欲をそそられなくもなかったけれど、
前述の通り、肝心の対話スキルが0に等しく、
初めのうちは自分が嫌われているとマミは本気で思っていた

後輩達を自宅に招いての初めてのお茶会にて

まどかや美樹さやかは素直にマミの家のインテリアや雑貨を褒め、
出された紅茶もケーキも、おいしいおいしいと喜んで口にしていた
そして二人して、

「マミさんは理想の先輩だ」

とマミの気分を良くさせてくれた
そこに一切の皮肉が無かったからだろう、凄く嬉しかった

一方のほむらと言えば、落ち着かない様子でロクに口も聞かず、
目の前のケーキに手を着けるのにも相当の勇気が要ったようだ
一口食べ出すのに結構な時間がかかっていたし、
味の感想を優しく訪ねても、

「お、おいしいです……」

と本当においしいのかどうかイマイチわからない返事
表情は「おどおど」という言葉を固めたような感じで、
気持ちも読み取れない。その時のマミはまだまだ子供だった

そんな場の空気に馴染めないほむらをまどかは、

「緊張しなくていいんだよ」

と優しく励まし、さやかは面倒くさそうな顔をして眺めていた
それは今から十●年も前の話である

もしあの時、マミとほむらの二人きりで、マミの機嫌がもう少し悪かったら、

「口に合わなかったら、残しても良いわよ?」

と笑顔で皮肉を言っていたかもしれない

その無かった過去を前提として、今のほむらとの関係があったなら、
報復行為として、どれだけ恥ずかしい言葉を口にさせられていただろうか

そんな妄想をするだけでゾクゾクとしてしまう自分を、どうしようもないなとマミは思う
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/20(火) 01:17:22.31 ID:kQwxD59m0
さあマミさんその妄想をほむほむにぶちまけるんだ!
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/20(火) 03:17:41.46 ID:zxnsW8xWP
やだこのふたり、SとMで完璧な変態カプじゃないですかww
130 :ほむマミ派(これからを書くにあたって前スレを読み返して) [saga]:2011/09/20(火) 04:07:23.13 ID:WmEymwJAO
自分で書いといてなんだけど、ほむらも結構なクズだった

あと先に謝っとく……○○○ごめんな!
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/20(火) 04:39:26.36 ID:zxnsW8xWP
ほむら、まどか、さやかの誰かに死亡フラグが立ったな……
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/09/20(火) 06:59:30.18 ID:OzG+1hIvo
ちょ、まどか……orz
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/09/20(火) 07:09:40.97 ID:ofHMnuYa0
ほむらの場合は、まどマミ、杏さや
まどかの場合は、ほむまみ、杏さや
さやかの場合は、ほむマミ、杏まど

さあ、どうなる?
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/20(火) 07:25:51.65 ID:nTDC2UuPo
特定キャラが不幸になるなら、ネタバレになるとしてもハッキリ書いてくれたほうが助かるんだがな…
ライトなほむマミ期待してる人多いんだし
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/09/20(火) 07:31:36.29 ID:OzG+1hIvo
この変なスリルも悪くないけどね
ヤバイぞまどっち……orz
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/09/20(火) 08:44:15.87 ID:sUUD4SMN0
百合修羅場って最高のご褒美です
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/09/20(火) 09:11:26.17 ID:AaU/Ts6P0
ちょい不幸にされた子は仁美ちゃんがおいしく頂くからなんの問題もない
138 :ほむマミ派(回想) [saga]:2011/09/20(火) 10:08:11.49 ID:4ccYQvmoo

元々、あまり気の長い人間ではない。巴マミは自分のことをそう認識している
攻撃的で抜け目なく、独善的で意地が悪い。そのくせ想定外の事態に弱くて、何より寂しがりや
難儀な性格である。そのままでは普通に生きていくのは難しいだろう
己を省みるだけの客観性があった事は幸いであった。「良き先輩」としての自分は完全に作り物

こんなときに名前を出すのはなんだけど、美樹さやかあたりは今でも勘違いしたままだと思う
そして、決して短くない時間を共に過ごした鹿目まどかも、
マミから罵詈雑言を浴びせられるまでは気付いていなかったようだ。
それはそうかも知れない。取り繕うのは、上手かったから

そこまで怒りを覚えていたわけでもなかったはずだったのに、
まどかに対してマミが最後に放った言葉は、

「貴女に裸、見られたくないの」

「出て行って」

この二つだけ。関係の清算としては最適かもしれないけれど、人としては最低だ
でも仕方ないとも思う。その時のマミは、暁美ほむらに文字通り「塗り替えられた」直後だったから

今までしたことがなかった恥ずかしい格好をさせられ、
普段であったら、思い浮かべるだけで顔を真っ赤にしてしまうような単語を、幾つも、何度も言わされ、
そして、数えることが出来なくなるまで意識を飛ばされた。
気持ちが良すぎて、わけがわからなかった。『モラル』とかどうだっていい、って言える位
そんなかつてないほどの昂ぶりの余熱を、ゆっくりと、じっくりと冷ましているところへ、まどかはやって来た


……他の女とキスしてるところを私に見せ付けておいて、この子は一体何をしに此処まで来たのかしら?


ほむらとの不倫関係が先にあることも忘れて、マミはまどかに憤る。己を省みることをせず
そうして、マミはまどかに対して最初で最後の『本音』を思い切り投げつけた
まぎれもない本心ではあったけれど、本心であるなら何を言ってもよい訳ではない。よい訳がない

逆光で表情はわからなかったが、茫然自失を身に纏い、ふらふらとまどかは消えていった
入れ替わるようにほむらが音も無くマミに忍び寄り、
まだ熱の残ったいろいろな部分を優しく弄りながら耳元で囁く

「……辛かったでしょう?」

『そんな気分じゃない』、ありふれた常套句を口にするよりも先にマミの理性が剥がれて、溶けて――


……そもそも、ほむらは何故、まどかを部屋に入れたのか?
快楽に押し流される寸前のマミの一部分が、当然の問いを繰り返す。でも、







訊けない、怖くて







ただ、溺れてゆく
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/20(火) 15:20:17.44 ID:zxnsW8xWP
なんかまどっちの復縁しそうなマミさんだな
ほむほむ、早く本当の意味で打ち解けた方がいいぞ
140 :ほむマミ派(単発更新 ひとりごと) [saga]:2011/09/20(火) 16:30:39.73 ID:WmEymwJAO

『ひとみ』とか『巴マミ』とか『ショウ』とか『モブ男』とか『恭すけ』とか『さくら(あんこ)』とか、まさかの『タツヤ』とか、まあ、いろいろあるよね……

誰かが死んだりはしません(アニメ本編があれだったのに、そんなの僕だっていやだよ……)

マミさんパートはあと2〜3レスで終わらします。地の文が多くて申し訳ない

早く仁美という人を書いてみたくて
会話形式+状況説明文に戻すので、ライトなのが好きな方はしばしのお待ちを……
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/20(火) 20:18:10.92 ID:NcA3CfSeo
まどマミ復活したら私死ぬしかないじゃない…!
濡れ場まで頑張ってみるか
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/09/20(火) 22:28:37.02 ID:3y7W4kGy0
黒マミさんだ
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/21(水) 19:35:29.97 ID:9qisJ1YjP
書きためてるのかな?
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/21(水) 19:36:10.94 ID:9qisJ1YjP
書きためてるのかな?
145 :ほむマミ派(業務連絡) [saga]:2011/09/21(水) 19:49:28.55 ID:rLBn1Y4AO
ライトなのが好きな方申し訳ありません

マミマミパートが少し長くなりそう
ここで書いとかないと書くとこないんで

今日は1レス投下出来るかどうか
塩梅が難しくて


ほむら「……ちなみに私はネイキッド・スネーク一択よ……スニーキング・スーツに、フェイスペイントはスプリッターで」ホムム
146 :ほむマミ派(回想) [saga]:2011/09/22(木) 03:53:02.72 ID:Lyas52jRo


「貴女より、私より、辛い思いをした人を私は知ってる。でも私は貴女をなじったりはしない」


暁美ほむらはそう言って、マミに関係を持ちかけてきた
不思議な口説き文句で、鹿目まどかとの仲に行き詰まりを感じていたマミはその言葉に縋りつく

純粋に貴女に好意を寄せています、という言い回しでなかったところがマミにはありがたかった
まどかとの関係がまさに「先輩と後輩」の敬意や好意の延長線上から始まっていたからで、
マミはそんな自分をとても汚いと思った




「マミさん! お久しぶりです!」

全く素敵な偶然で、まどかや美樹さやかの二人が、マミのいる職場で働くこととなった
近くに身寄りが無い上、見滝原から離れることの出来なかったマミには、
彼女達の存在は生きていく上での大きな励みとなった。大げさに聞こえるだろうが、本当だ

部署こそ違えど、二人はスケジュールをマミの方に積極的に合わせ、
休みの時には皆で遊びに出かけたりした。うん、少しだけ懐かしい

とある休日のこと
二人と街中で偶然出会ったマミは、共にいた佐倉杏子という女性を紹介された
最初はただの友人かと思っていたのだが、どうやらそうではないらしい

「さやかちゃんと杏子ちゃん、恋人同士なんです」

二人のいない所ででまどかがマミにそっと教えてくれた
そうか、そういうこともあるのだな、という素っ気ない感想をマミは抱く

「でも、美樹さんって……」

マミの疑問をまどかは遮って、

「すっごく仲良しなんですよ?」

自分のことのように喜ぶまどか。えへへと笑いながら答えた姿が印象深い
そう、鹿目まどかという子は、まず目の前にいる誰かを想う。本当に、本当に良い子だ

さやかと杏子の二人のやり取りを見て、マミが最初に思ったのは「おかしな二人」
杏子という女性は言葉遣いも荒いし、食事のマナーもあまり良くない
杏子が細かい粗相をすると、すかさずさやかが、

「あんた、いい加減にしな?」

と半分怒り気味で言い、それを受けた杏子が、

「へいへい」

と半分面倒くさそうに返す。まるっきり漫才のようだが、微笑ましいとはちょっと言い難い

「これって仲良しなの?」

マミがこっそりまどかに訊くと、まどかは素敵な笑顔で言う

「ええ、とっても」

そうか、そんなものなのだな、とマミは思い、

「そう。羨ましいわね」

と呟いてしまった。すると、何故かまどかの表情が少し曇り、

「……マミさんは恋人とかいないんですか?」

こんなぶしつけな話題、申し訳ないという態度でまどかが訊いて来た
いる、という嘘のつけない反応をしてしまった自分を悔いて、

「恥ずかしながら」

と、おどけて答えるのがマミには関の山。しかし、それを受けてのまどかの言葉は、
その時のマミには全くの予想外であった

「……私じゃ、力に、……マミさんの力になれませんか?」


振り返ってみて改めて思う。わざとではなくても、誘い込んだのは、私だ
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/22(木) 10:36:52.26 ID:cda5ZZLqo
マミさんなんかアニメよりも人間らしいよなぁ
だがそこがいい
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/09/22(木) 22:54:46.05 ID:J1Xtiu490
ほむマミエンド希望だけどこういう過去話みると
まどマミにより戻してもいいんじゃないかと思ってしまう

しかしこれだけ付き合いの長そうなさや杏をどうやってまどっちが寝取ったんだろう
149 :ほむマミ派(回想) [saga]:2011/09/23(金) 02:40:39.60 ID:Bmf4pftQo

巴マミは小学校6年生の秋、自動車事故で両親を一度に失った。
マミも同じ車に乗っていたがほとんど無傷。奇跡であると思う、良くも悪くも。
家族揃って出かけること自体が稀で、その稀なことの最中に悲劇は起こった。

買い物の帰りで、夕暮れ時。事故の多い時間帯だ。

マミは母親と一緒に選んだ花形の髪飾りを黄金色の太陽光に当て、
様々な角度から眺めてにんまりとし、後部座席ではしゃいでいた。

父親は運転に集中し、一言も喋らない。マニュアル式の古いスポーツセダン。
音はうるさいし、乗り心地も良くない。何より見た目の古さがその時のマミにはすごくイヤだった。

でも。シフトレバーを操る父の左手の動きがなんだか魔法のようで、それは見ていて楽しかった。

「お父さん、それ難しいの?」

「……そうでもない」

父の最期の言葉だ。解釈の余地のある短い言い回しを好む人だった。
物静かな人で、怒鳴られたことは一度もなかった。その頃のマミは行儀の良いほうではなかったのに。
普段かまえない一人娘に対して遠慮をしていたのだろうか。それを確かめることは当然叶わない。

「身を乗り出しちゃダメ。危ない」

助手席に座った母が首だけをマミの方へ向け、多少厳しい口調で言った。やはり最期の言葉だ。
父よりは実のある遺言だったな、と今のマミは少々失礼なことを思う。
言いつけを守らなかったら、マミは同じ場所で命を落としていた。そう、身を乗り出してはダメ。

母に頭を撫でてもらうのが好きで、何度もせがんだ。要求が通りそうなスレスレのタイミングを狙って。
仕方ないわね、という表情から笑顔になり、右手で優しく二度撫でてもらう。心地よかった。


暁美ほむらに無理難題を言うのも、少し似たメカニズムかもしれない。
彼女がギブアップすれば、いつ止めたって構わないのだけど、ほむらが余りに頑張り続けるので、
マミからは止められない状況になりつつある。出来れば、もう少し苦悶の表情を露わにしてもらいたい。


話が逸れた。

マミは母の言うとおりに大人しく座席に座り、髪飾りを愛で続けた。
着ける前に飽きてしまうのでは? というくらいに。色々な角度から眺めて。
ふいに手から髪飾りが滑り落ちた。急いで拾わなくては、とシートの間にマミは潜り込み、


そして、衝撃。


当然、その場で意識を失い、後の記憶はなんとか社会復帰(学校にまた通えるようになる)するまで、
正直曖昧な部分が多かった。脳がマミの心を気遣っていたのだろう。それには素直に甘えた。
フラッシュバックというのは恐ろしいものだということを、それから何度も経験することになったのだから。


マミの命を間接的に救った髪飾りは、今の今まで着け続けている。髪型を変えられないのはそれが原因。
基本的に誰にも触らせることなく、今日までずっと着け続けている。夕日に照らすようなことはもうしないけれど。









「慣れない事はするものじゃない。危険が伴うなら尚更だ」

そんなブラックジョークを頭の中に浮かべ、一人苦笑できるくらいには、事故から時間が経った。
あまりに悪趣味すぎるので、ほむらにも、鹿目まどかにも、勿論そんなことは言っていない。

まどかは「そんな悲しいこと言わないで下さい」と泣き出してしまったろうし、
ほむらは多分怒り出すことが経験でわかっているから。どちらも「少女」の反応だな、とマミは思う。
150 :ほむマミ派(愚痴) [saga]:2011/09/23(金) 18:24:01.28 ID:0qNmVChAO
マミさんパートが重くてキツい……
あと3レスくらい……

ライトなのが好きな方、もう少しだけ待ってて……
151 :ほむマミ派(回想を打ち切ったマミさん) [saga]:2011/09/23(金) 22:16:05.00 ID:G7KW2MMNo

開発部 


マミはデスクに座り、モニターを眺めているが作業はまるで捗っていない。
隣のモブ男が一定の間隔でキーボードをカタカタいわせているのとは対照的に。


マミ(……ダメだ、思考があっちこっちに飛んじゃって全っ然、集中できない)

マミ(さっき部長に言われたことが思いの外響いてるわね……)

マミ(……なんか一週間くらい考えてたように感じるのは気のせいかしら?)

マミ(うん、こういうときこそメールチェックね。ほむらさんがメールくれてるはず)

マミはメールボックスを開く。新着メールの内の一つに暁美ほむらの名前を見つけると、
カーソルを合わせ、そこをクリックした。



   to 巴マミ

   from 暁美ほむら

   お仕事お疲れ様。今、貴女に送る最適な言葉を見つけたので、メールします



   『下手な考え、休むに似たり』
  


   深呼吸して、落ち着いて、周りをよく見て、そして無理をしないで

   また会いましょう(σ`・ω・)σ            


                                        ほむらより



マミ(……そうね、全くもってその通り。最初のアイデアに固執するのは疲れてる証拠だわ)フゥー

152 :ほむマミ派(溜め息マミさん) [saga]:2011/09/23(金) 22:37:02.69 ID:0qNmVChAO

モブ男「巴さん、色っぽい溜め息止めてくれません? 気が散る」

モブ男はモニターを注視し、淀みなくタイピングを続けながら言う。

マミ「え? あ、ああごめん……」

マミ(……なんかセクハラくさいんですけど、今の)

確かに開発部スタッフの仕事は溜め息ではない。
マミは無理に思考を切り替えようとする。

マミ(……でもねぇ、一旦考え出すとね……)

マミ(実際問題、鹿目さんにひどいこと言ってから、全く会話してないしね……)

マミ(ほむらさんに鹿目さんのことを訊くのもおかしいし)

マミ(私、一体どうしたいのかな……)
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/23(金) 22:38:42.06 ID:6A2ZarWNo
モブオきめぇwwww
154 :ほむマミ派(溜め息マミさん) [saga]:2011/09/23(金) 23:21:02.96 ID:G7KW2MMNo

マミ(ほむらさんのことを愛してるのはホント。これは疑いようのない事実)

マミ(鹿目さんとは結局、先輩後輩以上の関係にはなれなかったしね……)

マミ(そりゃ、まあ、それなりに致しましたけれども?)

マミ(ほむらさんのテクに骨抜きにされた後だとね……正直、ね?)

マミ(……うーん、私、今凄くゲスになってる気がする)

マミ(私が鹿目さんにネコ被ってたのがいけないのよね、実際の話)

マミ(結局、鹿目さんの事を信じてなかったってことになるしね……)フゥー

モブ男「巴さん、溜め息。二回目」カタカタ

マミ(るっさいわね! あんたに聞かせたくて溜め息ってんじゃないのよ!)

マミ「ご、ごめんね、もし五月蝿かったら、耳栓とかいかが? 購買にあるわよ?」ビキビキ

モブ男は先ほどからのペースを崩さず、マミの方をちらりとも見ない。

モブ男「なんで? 意味わからんですわ」カタカタ
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/24(土) 00:15:50.55 ID:qWzS+Al8P
モブww
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) [sage]:2011/09/24(土) 01:53:58.06 ID:83iaV/Z5o
分岐元
マミ「鹿目さん、私のご飯は…?」まどか「昨日食べたでしょ」モグモグ
http://archive.2ch-ranking.net/news4vip/1315909209.html

マミ「鹿目さん、私のご飯は…?」
http://mimizun.com/log/2ch/news4vip/1316047132/

マミ「鹿目さん、ご飯は…?」まどか「ない」モグモグ
http://mimizun.com/log/2ch/news4vip/1316093133/

マミ「鹿目さん、私のご飯は?」まどか「あ、忘れてた…」
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1316791152/

分岐先
マミ「鹿目さん、私のご飯は…?」まどか「昨日食べたでしょ」モグモグ 分岐ルート
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1316174510/

まとめて見たよ
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/09/24(土) 01:57:07.73 ID:ykk59oqjo
>>156
GJ

もう一つの方はあれから音沙汰無しか……
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) [sage]:2011/09/24(土) 02:02:11.82 ID:83iaV/Z5o
>>157
もう一つの方って分岐元の方のことか?
それなら今VIPで投下してるよ

マミ「鹿目さん、私のご飯は?」まどか「あ、忘れてた…」
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1316791152/
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) [sage]:2011/09/24(土) 02:03:44.90 ID:83iaV/Z5o
誤字ゴメン
まとめて見たよじゃなくてまとめてみたよで
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/09/24(土) 02:04:17.84 ID:ykk59oqjo
>>158
おお……ついに! 感謝する!!
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/09/24(土) 03:54:56.47 ID:4Ot+HA/AO
ほむマミなのかこの話は…?
続きカモンカモン!
162 :ほむマミ派(溜め息マミさん) [saga]:2011/09/24(土) 04:22:08.11 ID:rtiv0XoAO


マミ(くっ、淀みなく作業を続けつつ、こちらをグイグイ抉ってくるスキル……まるで誰かを思わせる……)

マミ「モ、モブ男君はさ、黙って作業出来ないわけ?」フルフル

モブ男「……巴さんが話しかけてこなければ」カタカタ

マミ(そうなんだけどさぁ! このままいくと言いくるめられて終わりで私の負けなの!)

マミ(貴方、年下なんだから譲ってくれてもいいじゃない!)ムキー

マミ「……あのね、人間誰しも溜め息くらいはつくでしょう?」

モブ男「……作業すりゃいいのに」ボソッ

マミ「ちょっと!」

チーフ「巴! 働け!」

マミ「すいません……」シュン

モブ男「……」プッ

マミ(……んの野郎!!)ゴゴゴ
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/09/24(土) 08:48:36.44 ID:90Qs0L950
完全にキャラ変わってますってマミさんww
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/24(土) 10:47:05.47 ID:Crz0E3nwo
こいつ……出来るッ!
165 :ほむマミ派(溜め息マミさん) [saga]:2011/09/24(土) 12:43:37.62 ID:rtiv0XoAO


マミ(ダメダメ! こんな汚い言葉遣いしたら、ほむらさんに嫌われちゃう……)

マミ(……ってまあ、口にしなきゃいいだけの話なんだけど……油断は禁物よ、マミ)

マミ(……)

マミ(…………)

マミ(……やっぱり、集中できないわね)
マミ(せめて、この時間を有効に使えないかな……)

マミ(何かこう……試していないことはなかったかしら……)

マミ(……)

マミ(…………)

マミ(………………)

マミ(……えぇい、ほむらさんに届いて! 私のこの想い!)チュッ

モブ男「……なんかヤなことありました?」カタカタ クスクス

マミ(だから貴方には関係ないっつーの! 『チッ』と『チュッ』じゃ、意味が真逆でしょうが! あと仕事しながらクスクスすんな!)

マミ(……いや、今のはおかしいわね、私が)

マミ(己を省みることを忘れない……それもいい女の努め……)

マミ(あぁ、早く定時にならないかなぁ……ほむらさんに会いたいよぅ)

マミ(今日の私は全く持ってダメOLね……)

マミ(それもこれも、ほむらさんが傍にいないせい……)

マミ(『巴マミ』……その花言葉は『罪な女』……)

マミ(無用に色香を振り撒くことはせず……)

マミ(『暁美ほむら』その人に触れられた時のみ、真の意味で咲き乱れるの……)

マミ(ふぅ……どうだ、モブ男。秘技「心の中で溜め息」。流石の貴様もこれは追及できまいて)クックックッ

チーフ「何笑ってんだ、巴! ここ職場だぞ!」

マミ(あ、やべ)
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/24(土) 18:03:12.23 ID:qWzS+Al8P
二人とも似たようなこと考えてるあたり、似たもの同士だよねww
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/09/24(土) 19:37:39.14 ID:tBCnP3aeo
早く結婚しないかな、ほむらとマミさん
168 :ほむマミ派(業務連絡) [saga]:2011/09/25(日) 12:43:40.95 ID:5LFjYNwAO
今日、明日でマミさんパートが終わりそう

重エピソードをカットして正解だった……

レスして下さる皆様、ありがとうございます

投下が遅くてすみません
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/09/25(日) 13:01:07.31 ID:bwXJtw5Qo
重エピソードカット……(´・ω・`)
170 :ほむマミ派(お詫び) :2011/09/25(日) 13:18:17.25 ID:5LFjYNwAO
余計なこと書いてすみません

本編中に織り交ぜる予定なので

一つだけ書いたやつがあって、それは完結したら、没エピとして上げます

レイ○とかではないのでご安心を

それでもひどい話なんですけどね
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(秋田県) [sage]:2011/09/25(日) 13:22:49.53 ID:2Ss1YFu+o
ひどいはなしハァアアン
wktk
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/09/25(日) 13:22:53.48 ID:bwXJtw5Qo
没エピ(´・ω・`)
重い話期待ちゃってたから少し残念。続きワッフルワッフル
173 :ほむマミ派(溜め息マミさん) [saga]:2011/09/25(日) 21:05:36.90 ID:sw1RvLtno


巴マミの在籍する開発部チームBは、
同日に三回チーフから注意を受けると、反省レポートを提出する義務が課せられる。

反省レポートのテーマは、


「わたくしがもっと仕事に集中するためには」


という屈辱的なもので、
マミは暁美ほむらとの交際を「本格的」にスタートさせてから、既に二回レポートを書かされていた。
一度書いたら次が中々出て来ないもので、要は二回も書くなよ? ということが言外としてあるのだが。

ちなみにマミの隣のデスクを預かるモブ男は、開発部に配属されて以来一度もレポートを書いたことが無い。


マミ(まずいわね……非常にまずいわ……)

マミ(この前書いたばっかりだっていうのに……しかもほむらさんに手伝ってもらって)

マミ(にしても、あの時のほむらさんはステキだったなぁ……)ポォーッ

マミ(優しく笑って、『マミは仕方のない子ね』って頭を撫でてくれて……)キュン

マミ(やれやれ、と、よしよし、が、こう絶妙にブレンドされた感じで、
   『仕方のない子ね』って頭を撫でてくれて……えへっ、えへへ、えへへへへ)


マミは笑い声が現実のものとなっていないか確認を怠らず一人悦に入っている。
表情は完全に固定し、視線はモニターを見つめて。最低限チーフに見咎められない程度の外見を保った上で。

マミの想い人であるほむらが今のマミを見たら確実に叱責対象になるのだが、
今のマミの状態を考えるとほむらが何をしても「ご褒美」にしかならないという皮肉。

そんなマミに冷や水をかけるようなメールがほむらから届けられた。



   to 巴マミ

   from 暁美ほむら

   お仕事お疲れ様。先ほどのメールで伝え忘れていたことがありました
  
   貴女の強さも、それから脆さも、私はちゃんと知っています

   深呼吸して、落ち着いて、周りをよく見て、そして無理をしないで

   また会いましょう (σ`・ω・)σ            


                              ほむらより



マミ(えぇーっ、ほむらさん帰り遅くなるのぉーっ)ショボン

マミ(うぅ……これだとお風呂で洗いっこが時間の都合上カットね……明日も仕事だし)

マミ(ちぇっ、ほむらさんの肢体を堪能するチャンスなのに……)

マミ(無駄がなくって、すべすべで、しっとりしてて、程よい弾力があって)

マミ(こう……なんていうか「ちゅるん」ってしてるのよ、「ちゅるん」って)

マミ(前に私が『まるでイルカのようね』って言ったら)

マミ(ほむらさん、いつになく真剣な表情で『貴女のそのセンスはとても貴重だと思うわ』って褒めてくれて)

マミ(褒めてくれて……えへ、えへへへ、えへへへへへ)



妄想は続く……
174 :ほむマミ派(お詫び) [saga]:2011/09/25(日) 21:09:58.15 ID:5LFjYNwAO
ごめん、多分今日はここまで

ほむらからのメッセージに気づいてもレスしちゃイヤだよ
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/09/25(日) 21:11:35.05 ID:bwXJtw5Qo
乙〜
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/25(日) 21:27:26.07 ID:rznt7zwlP
あれ、メールの内容ミスってる?
177 :ほむマミ派(むっつりマミさん) [saga]:2011/09/26(月) 10:59:54.71 ID:zPX/nezAO


マミ(……こう、私がほむらさんの身体をわざとエッチな洗い方とかすると……)

マミ(「んっ」、とか、「やっ」、とか、「こらっ」、とかさ……可愛い声だしちゃったりしてね……ふふふ)

マミ(で、トドメの一言がね……声のボリュームをぐっと絞っての、「やめなさいっ……!」って……うふふふ)

マミ(……はぁ〜っ、いいわ……ほむらさん、いい……すごく……)

マミ(ふぅ……心の中で溜め息るのも、板についてきたわ……)

マミ(この点では、モブ男の野郎に……おっと、モブ男君さんに感謝しなくてはいけないわね……)

マミ(好きよ、ほむらさんっ、チュッ)

マミ(……届いたかなぁ……)

マミ(……)

マミ(…………)

マミ(……髪の毛もさらさらで真っ直ぐで綺麗で……)

マミ(ほむらさんは、「無い物ねだりよ」ファサッ、って言うけどさ……)

マミ(やっぱり、憧れざるを得ないわよ……ホント……)

マミ(早く、会いたいなぁ……)

マミ(……)

マミ(…………)

マミ(ああ、そうそう……)



まだ続く……
178 :ほむマミ派(落ち込むマミさん) [saga]:2011/09/26(月) 20:50:37.54 ID:zPX/nezAO

開発部


開発部では二時間に一度、七分三十秒間の強制的休憩が挟まれる(昼食時除く)。

巴マミは内なる妄想世界に逃げ込む術をほぼ完全にマスターし、チーフの追撃をかわしたが、
三回目の強制休憩の際、マミ自身を襲ったのは強烈な自己嫌悪であった。


マミ(完っっっ全に給料泥棒だ、これ……)

マミ(いくらなんでも今日は酷すぎる、最近ちょっとおかしいわ、私)

マミ(こんなんじゃ、ほむらさんの恋人を名乗る資格なんてない……)

マミ(くっ、ダメよマミ、貴女はこんな事で終わってはいけない女……)

マミ(原因を究明しなきゃ。私だってエンジニアの端くれなのだから)

マミ(えぇっと、遡って考えましょうか……)

マミ(……)

マミ(…………)

マミ(………………)

マミ(……………………)

マミ(…………………………)

マミ(………………………………)


そして、巴マミの脳裏に(誤った)電気信号が走る――


マミ(…………モブ男の野郎…………!!!)


普段の彼女であれば、こういった責任転嫁は絶対にしない。マミ自身のプライドがそれを許すはずがないからだ。
しかし、暁美ほむらのことを深く考えすぎた余り、オーバーヒートを脳が起こしていた様子。

熱暴走は恐ろしい。本当に、恐ろしい。

マミがどのようにして隣の男にいちゃもんをつけてやろうかと睨みつけていると、
意外にもモブ男の方からマミに対して話し掛けてきた。休憩中では初めてのことである。


モブ男「……いつにも増しておかしいっすね、巴さん」

マミ(…………上等だょ、オラ)


マミの闘争本能に火が付いた。
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/26(月) 21:03:04.05 ID:NH2RVBIMo
マミさんwwwwww
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/26(月) 21:08:40.32 ID:tKovMyoTo
そんなことに闘争本能を使うのかよww
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/09/26(月) 21:10:28.34 ID:PkIfvhVso
モブ男腹立つからさっさとぶちのめすんだ
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/09/26(月) 22:57:59.56 ID:AEE9ZiM60
ほむほむといいマミさんといい妄想力すげえなww
183 :ほむマミ派(勘違いマミさん) [saga]:2011/09/26(月) 23:42:17.70 ID:Csi+UGSQo


マミが眼前のモブ男という男に苛立たされる理由は実は他にもあり、
彼が開発部に配属されて以来、開発部内のコンペで、マミは一度もモブ男に勝った事がないのだ。

そのくせ、どんな都合があるのか知らないが、
モブ男はコンペそのものを辞退してしまうことも多く、その時だけマミは最優秀賞を獲れる。
これはマミにとって、大変な屈辱である。仕事におけるストレスの多くを占めていると言ってもよい。

そんな、巴マミという人物の本質的な部分を刺激してやまない存在のモブ男。
その憎き敵が自分を挑発してきているのだ、喜んで乗ってやろうじゃないか。

と、マミは思っていたのだが。


モブ男「心配してましたよ、チーフ。巴さんのこと」

マミ「…………へ?」


モブ男のその一言を聞いた瞬間にマミの中で煮え滾っていたものが急速に萎んでいく。

入れ替わるように頭をもたげる、
身悶えせんばかりの強烈な恥ずかしさ。顔が熱くなるのをマミは自覚していた。

そんなマミの様子を見て、少し面倒くさそうにモブ男が口を開いた。


モブ男「今日だってさ、人事部長と話した後の巴さん、おかしかったもの」

マミ「あ、ええ、まあ、その、ね?」


マミは上手く受け答えの出来ない自分を、
バカになってしまったように感じる。というか、バカだ、私は。

モブ男はらしくない、ひそひそ声でマミにそっと言う。


モブ男「……チーフなんか、巴さんが部長に弱味握られてるんじゃ? とまで言ってたんだから」

マミ「ない! それは絶対ないから! 勘違いも、お気遣いも無用ですよ?」


何、その日本語、とモブ男はくすくす笑う。……全くだ。



以前、ほむらがショウのことを、
『あの人はそんな人じゃない』と語ってくれたことをマミは思い出す。

それを聞いた時のマミは、嫉妬の感情がハッキリと顔に出てしまい、
ほむらに「妬いてるの? ねえ、妬いてる?」と散々からかわれた。

ちょっと懐かしくて、とても恥ずかしい記憶。



モブ男はしょんぼりした表情をしているマミを面白そうに見ながら続ける。


モブ男「さっきもさ、キーボードの音はしないのに溜め息連発、
    いきなり笑い出したかと思えば、置き物のように動かなくなって、完全にサイコさんですよ?」ククク

マミ「うぅ……」


そこまで言わなくても、と思ったが、そう客観的評価をされてしまうとその通りだ。
このモブ男という人がこんな饒舌になるのも珍しい。とても楽しそうに見える。ん? 待てよ?



再度、巴マミの脳裏に(誤った)電気信号が走る――



マミ(まさか……この子…………私のことを…………………!?)
184 :ほむマミ派(恥をかくマミさん) [saga]:2011/09/27(火) 20:39:49.50 ID:YvUDqnBAO


マミは心の中で溜め息を一度つく。

マミ(はあぁっ……ダメよ、マミ。貴女はなんて……なんて罪作りな……)

マミ(さっき心の中で詠み上げた通り、身も心も『暁美ほむら』その人の為にあるのに……)

マミ(私は決して女神なんかじゃない……全ての愛を受け止めることも)

マミ(ましてや、全てに愛を注ぐことなんて……)

マミ(どうして、どうしてこんな……)

マミ(でもそれは……それは仕方のないこと……)

マミ(MJだってこう歌っていたわ……)

マミ(『神が我々をそのようにおつくりになったのだから』ってね……)


彼女の頭はまだ本調子ではないようだ。

モブ男は突然置き物状態になってしまったマミがこちら側へ帰ってくるのを仕方なく待つ。
チーフから、「巴マミの様子をそれとなく探ってくれ」と頼まれ、自分はそれを引き受けてしまったのだから。

妙齢の女性というのは皆こんなものなのか?
いや、でも……などとモブ男が考えているうちに、不敵な笑みを浮かべ、マミは『帰ってきた』。

今まで二人の間で交わされた会話の流れを無視した顔つきだと、モブ男は思う。


マミ「……モブ男君はさぁ……好きな人とか、いるのかな?」

モブ男「は?」

マミ「そんなに難しい話、してる? 私……」

モブ男「……えっと、なんで?」

マミ「ふふ、いいじゃない。……逆セクハラとか言っちゃイヤよ?」

マミ(さあ来い! モブ男! 賢しげな面をした貴方に、「くもの糸」ってヤツを掴ませてあげるわ!! )


逆セクハラである。

モブ男はマミからの突然の質問に顔を歪めざるを得ない。
男女が逆だと即問題になるのだが、それより何より、モブ男は言いようのない怖れのようなものをマミから感じていた。

答えない、という選択肢はないのだろう。……仕方がない。


モブ男「ええとですね……」

マミ「早くしてね? 休憩時間、終わってしまうわ……」

マミ(来い! 討つ準備は整ってんのよ、こっちは!)





モブ男「……嫁さん、かなあ」

マミ「」ウッ
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/27(火) 20:42:11.72 ID:lEJnS4KAo
ウッwwww
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/09/27(火) 20:45:12.81 ID:D5Huh35po
所帯持ちかいwww
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/09/27(火) 20:47:30.93 ID:k0F9sSi2o
プークスクス
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/27(火) 20:51:35.05 ID:nWFgEOl9o
まさかの既婚者wwww
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/27(火) 23:20:47.42 ID:hF39gaR3P
ウッww
190 :ほむマミ派(予告) [saga]:2011/09/28(水) 05:25:40.31 ID:ejhg5rBL0
そろそろネタが尽きたので、実は次かその次ぐらいに終わりにするつもりです
少し長めのを明日投下します
今までありがとうございました
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/09/28(水) 05:53:43.62 ID:WptEzpH9o
>>190はなす板やって失敗していた偽物
一応、報告しておく
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/28(水) 06:04:36.31 ID:RySr1/kx0
>>191
嘘乙
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2011/09/28(水) 07:50:07.66 ID:UEs4PYZAO
あ、ホントだID同じじゃん
194 :ほむマミ派(業務連絡) [saga]:2011/09/28(水) 08:05:57.76 ID:SbgnmcoAO
びっくりした。偽物とかまさかね……

ええと、>>191の方の指摘どおり>>190は今までの僕とは別の人です

本物だと証明するためにクイズを一つ


・マミさんは何故、ほむらからの二度目のメールを見て、ほむらの帰りが遅くなるとわかったのか?


明確な理由があります

わかってもレスしちゃいやだよ


IDの末尾が全角大文字Oのと半角小文字のoなので、それも見分けるのに役立つかと

しかし、マミさんパートに関しては予告が間違っていないという……
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/09/28(水) 16:23:39.21 ID:WptEzpH9o
ネタ切れって時点で嘘乙っていう
続きワッフル
196 :ほむマミ派(恥の上塗りをするマミさん) [saga]:2011/09/28(水) 22:22:46.60 ID:fqqEinxyo


恥ずかしい。ただ、猛烈に恥ずかしい。


比べるのもおかしな話だけれど、
ベッドの上でほむらに恥ずかしい言葉を言わされるときの十倍は恥ずかしい。

それは何処にも責任を押し付けられない、
純度100%の勘違いを自分がしてしまったからで、マミはさっきよりずっと顔が熱くなるのを感じていた。

そして、マミは俯いて、固まって、押し黙って。

貴重な休憩時間を食い潰している。話し相手のモブ男を完全放置していることを承知の上で。
とても、モブ男の方など見られない。恥ずかしすぎて見られない。このまま消えてしまいたい……。


マミ(死ねる……不謹慎だってわかってるし、
   ほむらさんに間違いなく怒られるけど、死ねるわ、この恥ずかしさ……)

モブ男「……あの、巴さん? 答えたんだけど。休憩時間が終わっちゃうんだけど」

マミ「え、ええ、確かに聞きました、私は聞きました」


全くなっていない返事をして、マミが俯けた顔を上げると、
少し不機嫌そう顔でモブ男がこちらを見ている。まあ、当然だろう。

ここは私が喋らなくてはいけないのよね、と心の中で確認して、マミはロクに考えずに話し出した。


マミ「……ほら、私そんなこと知らなかったしさ、ええと、あの……」

モブ男「そりゃそうですよ。チーフに続いて二人目だもの、このこと話したの」

マミ「そうよね、それはそうよね……」

モブ男「巴さん、大丈夫? あの自信たっぷりな表情の巴さんは何処へ消えたの?」


そうよね、それはそうよね、と返しそうになるのをマミは必死で堪えた。なんとか次の言葉を探さないと。

マミを見ているモブ男の表情は少し笑みを浮かべた状態で、
マミはそれを見て気が緩み、頭が緩み、そして、口が緩んだ。


マミ「だってさ、ほら、モブ男君、ゆ、ゆびわ…………っ」


止められなかった。マミはまた顔が熱くなるのを感じる。

モブ男の方はといえば別に気にする様子もなく、
左手をパーの形にして、ぱらぱらと不規則に五本指を動かして言う。


モブ男「タイピングが遅くなるから」

マミ(やだ、ちょっとカッコいいじゃ……って、お、思ってませんっ! マミ、そんなこと思ってないよ!)

マミ「……そっかぁ、そうよね……それはそうよね」

モブ男「巴さん、そればっかりだね。さっきとは別の人?」クックッ


モブ男は面白そうに笑っているが、マミは何一つ言い返せない。
不測の事態に弱い自分を久々に満喫するマミ。……今回は自分で自分を罠にかけたのだけど。

ようやく見つけた次の言葉がまたデリカシーを欠くものになるとは、このときのマミには当然わからない。


マミ「……式とかは、挙げてないの?」

モブ男「うーん、うちの嫁さん、あんまり身体強くないから」


気に病む様子もなくモブ男は答えた。その素っ気なさがマミにはこたえた。大変にこたえた。


マミ「ご、ごめ……」

モブ男「ああ、止めてそういうの。僕も嫁さんも嬉しくない」
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/28(水) 22:25:40.25 ID:rCvVMSDSo
モブオさんいけめんっす
198 :ほむマミ派(業務連絡) [saga]:2011/09/28(水) 22:26:03.00 ID:SbgnmcoAO
次でマミさんパート終わり

期待を裏切ると言ってもこの程度なので、安心してお読み下さい

そして、お休みなさい
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/29(木) 00:30:11.19 ID:42h0foXSP
体が強くないか……ほむほむとかぶるな……
200 :ほむマミ派(正気を取り戻したマミさん) [saga]:2011/09/29(木) 20:36:33.57 ID:YEIGy1ito


マミとモブ男の間にしばしの沈黙が流れる。
どういった形でリカバーしようかとマミが考えていると、先にモブ男の方が口を開いた。


モブ男「……おめでとう、でいいっす」

マミ「はい?」

モブ男「今日で嫁さんと籍を入れてから、162日目の記念日なんです」


最初はこちらを和ませるための冗談かと、マミは思った。
しかし、マミを見るモブ男の眼つきは真剣そのもの。普段彼がモニターを眺める時と全く同じ眼。


……成る程、そういうことか。


マミは姿勢を正し、顔付きを正し、自分に今出来る最上級の祝辞を頭の中で練り上げる。

それに呼応するかのようにモブ男も背筋を伸ばした。
普段の彼は猫背もいいところなので、ほんの少しの違和感。


マミ「モブ男さん、162日目の結婚記念日を無事に迎えられたことを心よりお慶び申し上げます」

モブ男「ど、どうも、あ、ありがとうございます」


そして、二人して座ったままお辞儀。マミは優雅に、モブ男はぎこちなく。

周りのスタッフはなんなんだ一体、という顔でマミ達を見ているけれど、別に構わない。
恥は十二分にかいた(マミ一人が)。

お辞儀を終えると計ったように始業ベルが鳴り、「仕事だ」とモブ男はいつもの姿勢に戻って作業を始める。
モニターから視線を動かすことなく、一定のペースでカタカタと。無理を感じない最適なスピードで。

それを見届けて、マミは再び姿勢を正し、精神を統一する。


マミ(……そう、ここは職場で、今は仕事中よ)

マミ(って、まあ、それを散々注意された訳なんだけど)


マミは一度深呼吸をする。
全身の細胞全てに新しい酸素を行き渡らせることをイメージして。

次に、変に力まないように身体をほぐし、大きく上へと伸ばす。
なんとなく視線を感じなくはないが、まあ仕方がない。

そして、本当に一瞬だけ周りを見渡す。
うん、各々のペースは有れど、浮ついた顔をしている人等いない、多分。


巴マミは自身が本来持っている眼つきでモニターを睨み付け、タイピングを始めた。


余計な優しさも、甘さも全く感じられない、攻撃的かつ魅惑的な眼差し。


それはまるで、何時か何処かの並行世界で、彼女が使い魔達に向けマジカルマスケットを構え、狙いを定める時のような――
201 :ほむマミ派(ひとりごと) [saga]:2011/09/29(木) 20:41:22.89 ID:J8S/s7tAO
さや仁も、まど杏もすっ飛ばして、ほむマミ濡れ場の流れを考えている自分がいる

次の更新は多少先になるかと

お休みなさい
202 :ほむマミ派(ifエピ 巴マミの妄想が行き過ぎていたら) [saga]:2011/09/30(金) 00:24:21.19 ID:3b2Xk1GAO


マミ(……ほむらさんがこっちの身体をね、洗ってくれる時がまた……いいのよ……)

マミ(『貴女の肌に傷をつけては悪いわ』とか言っちゃってさ……)

マミ(スポンジでボディソープを泡だてて……それを両手いっぱいに絡ませて……)

マミ(『くすぐったかったら言ってね?』って、気遣う囁きがね……)

マミ(それが既にくすぐったいの! もうバカ! ほむらさんのバカ!)

マミ(あぁ……マジ悶えるわ……)

マミ(でも、「あの時」とは違うのよ……気持ちよさの種類が、ちゃんと……)

マミ(あの使い分けはホント凄い……やっぱり明確な区分けがほむらさんの中で成されてるのね……)

マミ(ふぅ……)

マミ(……こんなこと、私が仕事中に考えてるって、ほむらさんにもし知られたら……)

マミ(きっと、第三資料室あたりに連れ込まれて……)

マミ(そうね……ほむらさんのことだから、下だけ全部脱がされてさ……)

マミ(『ねぇ、マミ? 私、こんな事したくはないのよ? でも、貴女を監督する義務が私にはあるの』とか言ったりして……)

マミ(……その……わざと音を立てるように扱われて……ハァハァ)

マミ(私が、『ご、ごめんなさいぃ……もぅ、にっ、二度と……』とか中途半端に答えるものだから……フーッフーッ)

マミ(『マミ!……私は貴女の何処を信じれば良いか教えて!……ココ? それとも、ココなの?!』って、がつがつ弄られて……コヒューコヒュー)

マミ(………………えっとぉ、そのぉ……)

マミ(いくらなんでも、はしたなさすぎるわね……とても昼下がりの妄想ではないわ……カァーッ)

マミ(……まぁ、全部ほむらさんに仕込まれたことなんですけどね……)

マミ(ふぅ……)

マミ(……)

マミ(…………)

マミ(………………)

マミ(あ゛あ゛っ! かえりたいぃ! マミ、おうちにかえりたぃー!)

マミ(かえって、ほむらさんとイチャラヴしたあああいぃぃっ!!!)ジタバタジタバタ


チーフ「巴ぇ! アウトォ!」
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/30(金) 00:39:19.65 ID:GLVaEpqio
色々とアウトーww
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/30(金) 00:41:56.48 ID:kKqxiFh6P
ほむマミ別れる展開あるかとか心配してたが全然大丈夫そうでよかったww
205 :ほむマミ派(想い出) [saga]:2011/09/30(金) 20:14:58.93 ID:bjdSi7dvo


さやか『杏子、落ち着いた?』

杏子『……おう、ありがとな』

さやか『……涙、拭きなって。ひどい顔してるから』

杏子『……てよ……』

さやか『ん? 何?』

杏子『舐めてよ、涙。涙の跡』

さやか『バ、バカ、甘えんなってば……』

杏子『なあ、お願いだから。頼むよ』

さやか『しおらしい声出すなって。らしくないなあ』

杏子『だって、さやかにしか頼める相手なんていねーもん、あたし』

さやか『そりゃそうかもしんないけどさ……』

杏子『お願い! もう、お菓子の無駄買いとかしないから! お願いします!』

さやか『……あんた、あたしと何回その約束をすれば気が済むのさ……あと敬語とか使うな、むず痒い』

杏子『いーじゃん、けちけちすんなよぉ。あたしのお願いなんてさ、他にないだろ? レアだよ、レア』

さやか『……ねえ、杏子』

杏子『イヤだ』

さやか『いや、まだ何にも……』

杏子『絶対にイヤだ。さやかがその顔するときは、話の内容決まってんだから……あたしはさやかがいいんだよ』

さやか『……でもさ』

杏子『お願いだって言ってんじゃんか……あたしは譲る気はないよ』

さやか『なんであんたが威張ってんの? お願いする立場の態度か、それ?』

杏子『へへっ、じゃあ舐めてよ、涙の跡』

さやか『また最初に戻るのかよ……』

杏子『さやかこそ何回もあたしに言わせんなよ。あたしはさやかじゃなきゃダメなの』

さやか『……もー、今回だけだよ?』

杏子『いや、その約束は出来ないね』

さやか『うぉい!』

杏子『へへっ』
206 :ほむマミ派(さやかは顔を洗いました) [saga]:2011/09/30(金) 23:14:06.41 ID:3b2Xk1GAO

 志筑仁美のアパート (巴マミの復旧より三時間程遡って)


仁美「とりあえず御顔を洗ってらして、さやかさん」

志筑仁美はそう言って、洗濯済みのタオルをタンスから出し、美樹さやかに手渡した。

さやかは洗面台でメイク落としと洗顔を兼ねたジェルを、自分の顔に馴染ませる。
今、あまり自分のことを凝視したくないさやかだったけれど、そうも言っていられない。

さやか(ひっどい顔……)

元々薄化粧のさやかは、苦もなく崩れたメイクを洗い流す。少し勿体ない気もするけど、水道は流したまま。
なるべく急いで済ませよう、という焦りが作業の完遂を遠のかせ、しかも自身はそれに気付かないという悪循環。
思いの外、彼女は追い詰められている。

流れ落ちる冷たい水を掬って顔に浴びせる、というシンプルな行為が気持ちよい。
さやかはそこに逃げ込みそうになっていることを自覚し、慌てて水道のコックを下ろした。
仁美から借りたフェイスタオルに洗い上がった顔をうずめる。微かな芳香。

さやか(ああ、気持ち……って、うん、キリがないや)

なにはともあれ。
顔を洗うという作業を終えることで、さやかは心の濁りもほんの少しだけ取り払えた気がした。


まあ、気がしただけなんだけど。
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/09/30(金) 23:27:05.33 ID:mlGLOVcTo
さやかがこのSSで一番の被害者なのは間違いない
208 :ほむマミ派(業務連絡) :2011/10/01(土) 00:17:22.94 ID:tPy0oP0AO
続きを書こうかと迷ったが、今日も仕事なのでここまで

妄想マミさんのifエピは、某名SSのマミさんと久兵衛のやりとりを見て、カッとなって書いた。後悔はない

(この劇中の)実際のほむらは『真綿で首を絞める』型言葉責めの人なので、「!」は使わない


表記の仕方にバラつきがあってすみません

試行錯誤の最中なので

皆様、良い夜を……
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/10/01(土) 08:35:31.75 ID:E53277Nf0
さやかちゃんとあんこちゃん回想だとラブラブだなww
なんで別れたのか気になるぜ
210 :ほむマミ派(さやかは仁美と立ち話をしました) [saga]:2011/10/01(土) 19:57:39.33 ID:tPy0oP0AO


 さやかがもたもたとしていると、仁美が洗面所に様子を窺いに来た。
 仁美は感心した、といった表情でさやかに声を掛ける。

仁美「……そうやってお化粧を落としてしまわれると、あの頃のままですわね、さやかさん」

さやか「いやー、それは無いっしょ。もう十年以上経つんだよ?」

 空元気でさやかは答えた。いくらなんでも言い過ぎじゃ、とさやかは思う。
 励ましのつもりか、おだててくれた仁美の顔には確かな年月の流れが見てとれる。
 言い換えれば、疲れが……いや、よそう。

 あの頃、と仁美が表現してくれた時からは想像も出来なかった肌合い。
 でも、自信に満ち溢れた表情は変わらない。それこそ、『あの頃』のまま。

 しばらくの間、さやかは仁美を見つめていたようだ。
 仁美が若干困った表情になったことで、さやかはようやく我に返った。

仁美「あんまり、まじまじと見ないでくださいまし。恥ずかしいわ」

さやか「ああ、ごめん。いつまで経っても仁美は綺麗だなぁ、ってね。あははは……」

 自分で言っておいて、その言葉の白々しさにさやかは苛立ってしまった。
 そして、なんとなく鏡に写る自分の顔を見返す。あたしは一体どうなのさ? と。

 出た結論は、ロクに成長も出来ず、ただ年を重ねただけ。ただ、それだけ。
 どうしても、今のさやかはそのようなマイナス思考にしか行き着かない。

仁美「中学の時の制服を着ても、いけるんじゃありません?」

 仁美が突然言った言葉の意味を理解するのに時間が掛かった。

さやか「……それこそ無理。『お店の人』か、『何かの撮影』にしかなんないって」

 それを受けて、「ですわね」と仁美が笑う。とても楽しそうに、かつ上品に。

 ……うん、わかってたよ、この流れ。

 でも、さっきの作り笑いより、さやかは自然につられ笑いが出来た。不思議だ。
211 :ほむマミ派(想い出) [saga]:2011/10/01(土) 22:49:08.35 ID:oFAV0tiFo


さやか『杏子ぉ、お風呂空いたよ』ホカホカ

杏子『へーい』シュタッ

杏子『…………うーん』ジィーッ

さやか『な、何さ、人の顔ジロジロ見て……』アセッ

杏子『なぁ、さやか、いっこ聞いてもいい?』

さやか『ど、どうぞ』

杏子『なんでメイクとかすんの?』

さやか『なんで、って言われてもなあ……女の嗜み?』

杏子『女のたしなみ、って何?』

さやか『え? そこから説明すんの?』

杏子『うん。わかり易く頼む』

さやか『どうしてあんたはいちいち偉そうなんだよ……』ムッ

杏子『時間稼ぎすんなって。あたしの知的欲求に早く答えてくれ』ニヤニヤ

さやか『……おい、わかっててやってんのか、コラ?』イラッ

杏子『わかんねぇから聞いてんの。わかれよ、そのくらい』

さやか『だから威張るな! ちょっと待ってろって……』

杏子『へいへい』

さやか『くっ……』

さやか『…………』ウーム

さやか『…………』ウーーム

さやか『…………』ウーーーム

杏子『……なんでぇ、結局知らねぇんじゃん』ボソッ

さやか『……すいません、見栄を張りました……でも、突然どしたの?』

杏子『だってさ、さやか、別にメイクとか要らねぇし』ツンツン

さやか『人のほっぺたツンツンすんな! メイクするしないはあたしだけの都合じゃないの!』

杏子『……ふーん、不自由だね、それ』

さやか『そうだね! 不自由だね! あーもう変な汗かいたじゃんかよぉ……』

杏子『一緒にまた入ればいいじゃん、そんなの』

さやか『……うちの湯船の狭さを杏子さんはお忘れですか?』イライラ

杏子『それなら妙案がある。あんたが先に浸かって、あたしがその上に……』

さやか『ざけんな、バカ!!』
212 :ほむマミ派(さやかは居間で料理を待つように言われました) [saga]:2011/10/02(日) 23:57:27.64 ID:Bu8pJs4AO


「感情移入して欲しくない」


 そういった理由で、仁美が料理を作る所は見せてもらえないらしい。
 さやかは少しだけガッカリした。

さやか(待たされてるとイヤなこと考えちゃうんだけどな……)

 単に料理をご馳走になりに来た訳ではない。
 あくまで試作メニューのモニターとして招かれたのだ。
 わかってはいたのだが、
 一人でいても辛いから仁美の誘いに乗ったのに、などとさやかは思ってしまい、
 さっき笑ったときの感情はあっというまに消え失せた。

さやか(……にしても)

 失礼を承知の上で、さやかは自分が今座っている六畳間を見渡した。

 小さな本棚が一つ。そこには料理に関する本がぎっしりと詰まっている。
 普段であれば、読みやすそうな物を探してパラパラと捲るくらいのことをするのだけど、
 今のさやかにはその気力を望むべくもない。

 テレビはあるけど、観る気は起きなかった。
 観て気分を変えることも出来るかもしれないのに、そのことがなんとなく怖い。
 何故怖いのかわからないのが、また怖い。

 大人しく料理が出来るのを待てばよい。 
そんな囁きをしてくれる人は、今のさやかの近くには居ない。
 表面上はいいお客を演じられているはず、そんな信用のならない励ましは一度聞こえた気がした。

さやか(まどかに酷いこと言っちゃった……)

 突然、大切な友達のことを思い出した。
 先ほどの自分がその友人にどんな態度で接したのかも。

 少し涙ぐむ。あの態度は最低だったな、と思い返して。
 彼女のことを責める筋合いなどなかったのに。……あたしにはなかったのに。
 相変わらずの馬鹿さ加減だ、とさやかは自分のことを声にせずになじった。

 卵をかき混ぜているような音がさやかの耳に入る。
 もう一人のことがすぐに連想された。
 思い出したくない、でも絶対に忘れられない、もう一人。

さやか(ああっ、もう! チクショウ!)

 その叫びはさやかにだけ聞こえた。はっきりと聞こえた。
213 :ほむマミ派(想い出) [sage]:2011/10/03(月) 10:45:26.18 ID:4Unin3VAO


杏子『さやかー、まーだーぁ?』チンチン

さやか『スプーンをチンチン鳴らすな! 行儀悪すぎだよ!』トントン

杏子『や、やだ、さやか……チンチ……』ポッ

さやか『そういうのいいから! 黙って座ってろって! 後ろに居られると気が散るの!』トントン

杏子『……へーい』トテトテ

さやか『ったく……あんたがオムライス作れ、って言ったんだろ……』ブツブツ

杏子『何、さやかぁ?』トテトテ

さやか『あ゛ー、呼んでねぇし! 座ってろっての……』コンコン ペキャ

杏子『……なー、さやか?』

さやか『……なぁに? 杏子ちゃん』カチャカチャ

杏子『作ってるとこ、見ててもいい?』

さやか『……黙って見てるなら』チチチチッ ボッ

杏子『おう』エヘン

さやか『返事はいいんだけどね……』ジャッ
杏子『…………』

杏子『…………なぁ、さやか』ジィーッ

さやか『おい、早速かよ……』ジャッジャッ カッカッ

杏子『ピーマン、ヤダ』

さやか『ダメ! 細かく刻んであげたんだから。食え!』ジャッジャッ

杏子『……へーい』ショボン

さやか『……』ジャッジャッ

杏子『……なぁ』

さやか『ダメ! 食え!』ジャッジャッ

杏子『ちげぇよ……』

さやか『…………杏子?』ジャッジャッ

杏子『ご、ごめん……さやか……こんな時に……』フルフル

さやか『あたしこそ気付かなくてゴメン!ゴメンね!』カチャッ バタバタ
214 :ほむマミ派(さやかは料理が出来るのを黙って待ちました) [saga sage]:2011/10/03(月) 22:29:02.79 ID:QwWazvjyo


 バターを火にかけた時の良い匂いが、さやかの方まで漂ってきた。

さやか(……オムレツ? オムライス?)

 社食で食べたうどんは七割弱残してしまったさやかであったため、
 食欲を刺激される匂いには敏感になっているらしい。

さやか(現金だね、あたしも。でも、なんの反応も出来ない状態になるよりマシか……)

 さっき残したうどんは最終的にどこへ行き着くのだろう。
 そんなことをふと考えるさやか。
 
さやか(食べられもせずに燃やされて終わりかな……)

 今、本当に考えなければいけないこと。
 今、しなければならないことから目を逸らし、
 さやかは普段であれば気にも留めないようなテーマに思考の大半を傾けようとしている。
 そんな自身の逃げ腰を重々承知の上で。……でも。

さやか(……やっぱダメだ。頭、働かない)

 仕方がないので、本棚に並べられた本のタイトルを黙読することにした。
 和洋中それぞれの料理に関するもの、見映えのする配膳方法、調理器具のカタログ、
 料理と酒の各々のマッチングについて書かれたもの、
 店内の照明色と料理の相性について述べられたもの、等々。

 どの本にも付箋が挟み込んである。
 本の上からぴょこぴょこと突き出していて、見た目はお世辞にも格好良くはない。

 よく目を凝らすと、何故かはわからないが、囲碁の本がポツンと挟まっていて、
 さやかにはそれがちょっとだけ面白かった。

さやか(勉強熱心だ、仁美は)

 シェフという職業を経験したことのないさやかだったけれど、
 これだけ心を割いて仕事に身を捧げているのだというところを見せられると、
 仁美は自分よりずっと苦労を重ねているのだろうな、と勝手に思ってしまう。

さやか(なんてこと思われたくはないだろうな、きっと)

 考えては、否定し。考えては、打ち消し。

 堂々巡りを地で行くさやかに、レストラン上条のメインシェフ志筑仁美より声が掛けられた。

仁美「お待たせしました、さやかさん。ランチメニューに加えようかと考えていますの。このオムレツ」
215 :ほむマミ派(想い出) [sage saga]:2011/10/04(火) 15:06:56.67 ID:TdbxowNAO


さやか『どう、杏子? おいしい?』ドキドキ

杏子『うん、うまいよ』パクパク

さやか『……あっそ』ハァ

杏子『どした?』パクパク

さやか『いや、別に……』

杏子『……なんだよ、気になるじゃん』カチャン

さやか『……あのね、まどかが言ってたんだけどさ……』

杏子『ふむ』

さやか『まどかがマミさんに料理を作ってあげるとするじゃない?』

杏子『ふむ』

さやか『そうするとね、マミさんが、「ここは良かった」、
    「ここはこうした方がより良くなる」みたいなレクチャーをしてくれるんだと』

杏子『ふむふむ』

さやか『でね、それが凄く嬉しいし、楽しいんだって』フー

杏子『なるほど。……あたしにもそれをやれ、と?』

さやか『い、いや、そうじゃないんだけど……』アセッ

杏子『じゃあ、なんでそんな話をすんのさ?』ハテ

さやか『……うーん、なんとなく?』

杏子『嘘言うなって。さやかの言いたいことはわかったから』ニヤリ

さやか『に、にやっとすんな! 世間話だろ、こんなの……』アセアセ

杏子『さやかの作るもんは大抵うまい』ビシィ

さやか『なんだよ、大抵って……』ハァ

杏子『さやかの作るもんは大抵うまい!』ビシィッ!

さやか『でかい声出すなって! わかった! わかったから!』

杏子『……あんたも女の子だってこと、忘れてたよ。悪かったな』フッ

さやか『杏子さん……その台詞は必要かい?』イラッ

杏子『いつもありがとう』

さやか『へ?』

杏子『いつもありがとう、って言ってんの! 何回も言わすな!』テレッ

さやか『なんで言うほうが照れてんのさ……』テレッ

杏子『……』カァーッ

さやか『……』カァーッ
216 :ほむマミ派(さやかは試作メニューの感想を仁美に述べました) [saga sage]:2011/10/04(火) 19:03:14.94 ID:3HIJ+RHLo


 小ぶりなオムレツである。試作メニューだからだろうか。
 仁美はそれを半分に切り分けた。中から固まっていない卵が流れ出るようなこともない。
 何かが混ぜ込まれているのがわかる。きのこの類だろう。

仁美「さあ、お食べになって。一口目の感想を聞きたいんですの」

 そう言って仁美が切り分けたオムレツを皿へ取り分け、さやかの前に差し出す。
 さやかの気付かないうちにナイフとフォークも用意されていた。

さやか「……いただきます」

 一口分を小さく切って、口に運ぶ。

さやか(あ、おいしい)

 昼食時には感じなかった味覚も非常にハッキリと感じられる。
 きのこの種類はしめじだと思う。卵の風味を邪魔しない程度の味付け。
 つなぎとして炒め玉葱も入っているのがさやかにはわかった。

 よく咀嚼して飲み込む。さて、どう言えばよいのやら。
 
仁美「あまり考えないで下さいまし。なるべくシンプルな感想がよいので」

さやか「えっと、食べやすい、かな。あたし、昼御飯残しちゃったんだけど……」

 成る程、と仁美は返事をして自分の分のオムレツを一口食べた。
 やはりよく噛んで飲み込み、それから何かを考える難しい表情になった。
 仁美のこういった顔付きを見るのが初めてのことで、さやかは少し驚いた。 

さやか「……おいしいよ、とっても。メニューにあったら頼むと思うわ、このオムレツ」

 これまた気付かないうちに用意されていたミネラルウォーターを飲みながらさやかは言った。

仁美「良いのですけれど……家庭料理なら」

 ふむ。どういうことだろう? さやかは少し興味が湧いてきた。

さやか「クオリティが及ばないとかって話?」

仁美「いえ、方向性、ですかね。言葉にするのなら」

 それだけ言って仁美はまた考え込んでしまった。
 なんとなく自分の感想がまずかったのでは、とさやかはいらぬ心配をしてしまう。
217 :ほむマミ派(さやかは仁美の思案に付き合いました) [sage saga]:2011/10/04(火) 20:09:09.44 ID:TdbxowNAO


 沈黙に耐えられず、さやかはオムレツをもう一口食べる。うん、おいしい。

仁美「……さやかさん落ち込んでらしたでしょう?」

 突然仁美から声を掛けられ、さやかは慌てて飲み込もうとするも、
 仁美に「ああ、すみません」と、落ち着いて食べるように促された。
 なるべく正直にシンプルに言葉を紡ごうと、さやかは頭を捻る。

さやか「……うーんとね、お昼を食べた時には味なんてしなかったんだけどさ」

仁美「ええ、お顔付きから十二分にわかりましたわ」

さやか「味覚が戻ったよ。凄いよね、仁美の料理の力だと思うんだけど……」

 思うんだけど……今の自分が言ってもなあ、という方面に行き着いてしまうさやか。
 それが顔に出ていたのだろう、少し残念そうに仁美が言った。

仁美「その惑い自体を吹き飛ばして差し上げたかったのですが……力不足でしたわね」

さやか「いや、そんな」

仁美「こちらは勝負ですの。……勿論、さやかさんに挑んでいるのではなくてよ?」

 そう言って、また考え始めてしまう仁美。
 掛ける言葉も見つからないので、さやかはまたオムレツを一口。

さやか(おいしいんだけどな……)

 そんな心の呟きを読み取ったかのように仁美が口を開く。

仁美「欠けているのは、『中毒性』ですわね。有り体に言えば」

 穏やかでない単語が出てきて、さやかは吃驚してしまう。
 仁美は難しい顔をしたまま続ける。

仁美「『おいしい』以外のことを考えられなくする……
    特に昼食にそれ程時間を取れる方は少ないですし」

さやか「な、なんか話が怖くなってきたね……」

仁美「あら、元々怖い話なんですのよ? 何せビジネスなのですから」

 品よく笑いながら仁美は言った。

仁美「そんな怖いことを、違法な薬物無しでしなくてはいけませんの、わたくし達」

 今のはジョークですわ、と仁美は微笑むけれど、
 気圧されてしまって、さやかは上手く笑えない。
218 :ほむマミ派(さやかは仁美に二度驚かされました) [saga sage]:2011/10/04(火) 21:27:36.15 ID:3HIJ+RHLo


さやか「……役に立たなかったね、あたしじゃ。申し訳ない」

 意味もなく謝ってしまうさやか。仁美はとんでもない、といった顔をして話し出す。

仁美「こちらの都合でお誘いしたのですから、そんなお気遣いは要りませんわ。
    それに言ったじゃありませんか、力が及ばなかったのはわたくしの方ですのよ?」

さやか「いや……なんか、そうやって優しい事言われるのも辛いっていうか……」

 今の今まで意識から離れていた事柄が、さやかの脳裏にまた浮かび上がる。
 
さやか「あたしね、この前、振られちゃってさ……今日もダメダメで早退させられちゃって……」

 また涙が出てくる。本当にどうしようもない涙腺だ、全く。
 そんなさやかの様子を見て仁美が静かに放った一言に、さやかは衝撃を受けた。

仁美「佐倉杏子さん、ですわね?」

さやか「え? なん……で?」

 さやかは仁美に対しては杏子のことを、「友人、ルームメイト」としてしか紹介していない。  
 
仁美「……一度街中でお見かけしましたの。こちらの胃にキリキリ来る程の仲睦まじさでしたわ、本当に」

 心の底から来ている発言だとわかる。微笑みは崩さず、威圧感も仁美からは感じられないけれど。

さやか「そ、そんな、だって仁美には恭介が……」

仁美「わたくし、いつ誤解を正そうかと思っていたのですけれど……」

 そう言って、仁美は大きく息を吐き、吸い込んだ。

仁美「わたくし、恭介さんとは、『恋人同士』という関係ではありませんし、今まで恋人関係だったこともありませんの」

さやか「」


 絶句するしかない。美樹さやかにとって、今日一番のサプライズ。
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/10/04(火) 22:19:12.74 ID:hZbFpEHqo
さやかちゃんは既に杏子と別れてるから何の問題も無く仁美と付き合えるんだな
でもこれで杏子とは完全に寄りを戻せなく…ぐむむ
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/04(火) 22:20:37.48 ID:3L0dQKuFo
これで安心してまど杏に捧げられるぜ。イヤッホウ!
221 :ほむマミ派(さやかは仁美に説教をくらいました) [saga]:2011/10/05(水) 00:15:32.51 ID:j3DWsjIAO


 言葉が出て来ない。さやかは何を口にしたらよいのかわからない。

仁美「酷いですわ、さやかさん。わたくし達を除け者にして」

 そう言って仁美は更に続ける。

仁美「恭介さんも言ってましたわ。『僕達って、割と信用ないよね』って。わたくし達が茶化したりするとでも?」

 仁美の口調が怒りを帯びてきた。とりあえず何か言わないと。

さやか「あ、あのね、あたしのこともそうなんだけどさ……」

仁美「ああ、わたくしのこと? それはもう、あの日さやかさんに宣言した時以来恭介さん一筋ですわ!」

 そうか、それは良かった……でも。

仁美「……まさかさやかさん、『あたしにもまだチャンスが……』とか考えたりしてませんわよね?」

さやか「……っ、ないっ……よ」ギクッ

仁美「本当にさやかさんが恭介さんのことを……」

 そこで仁美は水を飲んだ。そして深呼吸。なんだか話の流れがおかしなことになってきたぞ、オイ。

 そして、かつてないほどのエキサイト振りを見せる仁美がいる。

仁美「っ、さやかさんが本当に恭介さんのことをお慕いしているのならば、それはいいんです! 素敵な方ですから!」

さやか「う、うん……」

仁美「……でも、今のさやかさんにはまず考えなくてはならない相手が居るのではなくて?」

 ようやく少し落ち着いたようだ。ただその言葉が耳に痛い。痛すぎる。
 さやかは自分の言葉を涙と共に吐き出した。

さやか「で、でも振られたんだもん! 出て行って、って言われたもん!」
222 :ほむマミ派(さやかは仁美に更に説教をくらいました) [saga]:2011/10/05(水) 14:08:21.49 ID:j3DWsjIAO


 さやかがそう喚いても、仁美は全く動じない。

仁美「詳しい事情はわかりませんし、訊きません。
   でも、今のさやかさんのお話の中で明らかに問題だ、というところが見受けられましたわ」

さやか「へ?」

 熱の冷めた調子で仁美が言う。
 ただ明らかにさやかに対しての怒りは持続している様子。

 何故ここまで仁美が怒っているのか? さやかはその理由を尋ねようとするも、

仁美「……少しは自分でお考えになって?」

 つれない。

 涙を収めるのにもこちらは一苦労なのに、などとさやかは思ってしまう。
 このままだと先に進まないので考えてみようとするけれど。
 ……ダメだ。頭なんて働く状態ではない、とても。

さやか「……ゴメン仁美、あたしバカだからわかんないや……」

 わたくしに謝られても困るのですけれど、と仁美は前置きし、

仁美「さやかさんは杏子さんのことを、
   わたくしや恭介さんに、なんと言ってご紹介下さいましたかしら?」

さやか「と、友達だったかな……」

仁美「そうでしたわね。
   にもかかわらず、『振られた』って、どういうことなのでしょう?」

さやか「あっ」

 仁美の言わんとするところがさやかにもわかってきた。だけど。

さやか「……杏子がそれでいい、そう紹介してくれればって……」

仁美「なのに、『振られた』?」

さやか「うぅ……」

 さやかは仁美の顔を見られない。俯いた状態から動けない。……涙は止まったけど。
 仁美はすっかり普段の調子を取り戻し、水を一口飲んでこう言った。

仁美「……今のさやかさんにピッタリ当てはまる言葉があるのですが、お聞きになりたい?」

さやか「いえ、いいです……」

 つい敬語で答えてしまい、さやかは気まずそうに背を丸めて水を一口飲んだ。
 
223 :ほむマミ派(その時、暁美ほむらは……) [saga]:2011/10/05(水) 21:24:00.28 ID:j3DWsjIAO

オフィス


ほむら(くっ、やっぱりあんな馬の骨でも、いるのといないのじゃ大違いだわ)ホムホム

ほむら(って、いけない、こんなこと考えてたらショウさんに叱られちゃう)ホムホム

ほむら(って、まあそんなこと言わなきゃ、って、さっきもやったわねこれ……)ホムホム

ほむら(少し上がるテーマで……うん、やったけどもう一回位はいけるでしょ、時間的に)ホムッ

ほむら(…………あー、マミパイに早く顔をうずめたい……)ホムッホムッ

ほむら(そして、充血して固くなった先端を舌や指先で転がして、マミの身を捩らせて遊びたい……凄く)ホムッホムッ

ほむら(全く、マミバディのレスポンスの良さはF1カー並みよね、ふふ……まぁ、乗ったことないけど……)ホムムム

ほむら(巴マミ、私の貴女への愛は本物よ……色々な側面を持っていることは否定しないわ、敢えて……)ホムッホム

ほむら(……これ位にしとくか、キリがないし……)ホムホム

ほむら(さぁ仕事だ! 社畜モード全か……)ホム

ほむら(あれ? ……何か、マミ関連で忘れてることがあったような……)ホムム

ほむら(やばっ! マミにメールしてない! ……うーんと、何か気の利いた一言は、と)ホムホム

ほむら(……マミも私も変に考えちゃうところは似てるから……よし、閃いた!)ホムホム

ほむら(これでいいか……色気はないけど、社内メールだしね)カタカタ ホムホム

ほむら(はい、送信っと、いってらっしゃ〜い♪)カチ ホム

ほむら(ふぅ、少しはマミの助けになると良いのだけど……)ホムッ

ほむら(……今の私、ちょっと乙女っぽかったかな?)ホムッ

ほむら(そういうのとは無縁の人生だったからな……今まで)ホム

ほむら(……マミは私の「恋人」であり、「恩人」ね……間違いなく)フゥ




モブ崎「ねぇ、鹿目? 課長がぶつぶつやった挙げ句に哀愁を漂わせてるのは何なの?」

まどか「……お仕事のことで頭がいっぱいなんじゃないかと……思いますけど……」
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/10/05(水) 23:09:58.99 ID:5/bDiuJW0
どんなに妄想しようが顔には出さずばれないとこはさすがほむほむというべきかww
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/06(木) 01:50:22.62 ID:OFhMy20EP
さやか方面、かなり展開してるな、wktk
そしてブレないほむマミ
226 :ほむマミ派(さやかは仁美に口を滑らせました) [saga ]:2011/10/06(木) 16:52:33.97 ID:92fV5tmxo

 志筑仁美のアパート


 しばらく沈黙が続いた。さやかは恐る恐る顔を上げる。

仁美「言い過ぎましたわ、さやかさん。ごめんなさいね?」

 慣れ親しんだ微笑みで仁美が優しくさやかに言った。
 こちらが顔を上げるのを待っていてくれたのだろう。その気遣いが、さやかの中に不必要な罪悪感を生む。

さやか「仁美が謝ることなんてないのに……」

仁美「いえ、どういった経緯でそのようになったのかも知らないのに、
   偉そうな事を言ってしまって申し訳ありませんでした。心よりお詫び申し上げます」

 仁美はさやかに頭を深々と下げた。

さやか「や、やめてったら! 仁美が頭を下げるのなんておかしいってば!」

 それもそうですわね、と仁美はあっさり身体を起こした。……うん、遊ばれてるね、あたし。
 
 そんな流れを無視するかのように、仁美は突然、意を決した表情でさやかに言う。

仁美「さやかさんはわたくしの大切なお友達ですわ」

 ずっと前に聞いたことのある、仁美の台詞。口調も全く同じ。でも響き方が違うのはなんでだろう?
 何か返事をしなければ、とさやかは考えずに話し出した。

さやか「……なんか、悪いね……気ばっかり使わせてさ、
    おいしいオムレツまでご馳走になってるっていうのに、気の利いたことも言えないし……」

仁美「元より、さやかさんにそのようなことは期待してませんの」

 あっさりとした仁美の返事。さやかは思わず顔をしかめてしまった。

さやか「……それは、あたしをバカにしてるのかな?」

仁美「違います。さやかさんの本領はそんなところには無いということを言いたかったのですけど」

 本領なんて呼べるものが今のあたしにあるだろうか? さやかは戸惑う。

仁美「……杏子さんと歩いているさやかさんを見て、
   わたくしがどのように思ったか、おわかりになりますかしら?」

さやか「と、突然何さ? わかるわけ、ないじゃんよ……そんなの」

 さやかの言葉を受け、仁美は悪戯っぽく微笑み、口を開いた。

仁美「『マジ爆発しろ』、ですわ」

さやか「そ、そう」

 コホンと咳払いをする仁美。多分、さやかに対するサービスのつもりだったのだろう。
 心なしか頬を紅く染めていて、可愛らしい、とさやかは思った。

仁美「それはともかくとして、
   あの時のさやかさんと杏子さんの笑顔はとても自然で素敵でしたわ。
   ……もっと信じてもいいと思いますの、そういった感覚を」

さやか「で、でも……今の杏子には……まどかが……」

仁美「……え? なんでまどかさんのお名前が?」

さやか(あ、やべ)

 さやかは口を滑らせた。
227 :ほむマミ派(さやかは仁美に追い込みを掛けられました) [saga]:2011/10/06(木) 21:11:34.68 ID:0IIWrPdAO


 ……やってしまった。

 元々がおしゃべりなさやかである。
 自分に関することというのもあって、つい口が緩んでしまった。

仁美「話題、変えましょうか?」

さやか「う、うん。そうして貰えると助かるよ、はは……」

 仁美は優しい。

仁美「……そういえば、この前、うちのレストランに暁美さんがいらっしゃって」

さやか「へえ、そう」

仁美「……巴先輩と一緒に」

さやか「……へえ、そう」

 仁美は優しい……はず。

仁美「とても仲睦まじくていらっしゃって……」

さやか「へ、へえ、そう……で?」

仁美「まるで、恋人同士のような……」

さやか「そ、そう……」

仁美「というか、暁美さんにお尋ねしましたの……わたくし」

さやか「な、何を?」

 ひ、仁美?

仁美「『恋人同士のように仲が良くて羨ましいわ』、って」フフ

さやか「…………それで?」

仁美「『恋人同士なの』。即答でしたわ、一瞬の迷いもなく」

さやか「………………そう」

仁美「巴先輩が少女のように頬を染められていたのが印象的でしたわ……」

さやか「そ、そっか……」

 ひ、仁美?!

仁美「ところで、まどかさんって、巴先輩と一緒に住まわれていませんでした?」

さやか「………………う、うん」

仁美「なのに、暁美さんと巴先輩は恋人同士だという……」

さやか「お、おかしな話だね、それ……」

仁美「変ですわね……」

さやか「へ、変だね…………」

仁美「非常に変ですわねぇ……」

さやか「ひ、非常に変だね…………」

仁美「…………」

さやか「…………」

仁美「………………」

さやか「………………」

仁美「……………………さやかさん?」

さやか「…………………………はい……」


美樹さやかはなんとなく、事の顛末を志筑仁美に説明することとなった。
228 :ほむマミ派(さやかは仁美に色々話しました) [saga ]:2011/10/07(金) 20:34:51.73 ID:sZGwRDhLo


「あきれた」


 美樹さやかから色々と事情を聞いた、志筑仁美の第一声がこれだった。

仁美「それじゃあ、さやかさんはただ巻き込まれた挙句、
   杏子さんという『友人』まで失ってしまっただけじゃありませんの。
   ……まどかさんとの仲も、どうせギクシャクしてしまっているのでしょう?」

さやか「う、うん……仁美は言いにくいことをズバズバ言ってくれるね……」

仁美「しかし、略奪愛とは……しかも禁断の愛の形……」フーム

さやか(仁美、楽しそうだなぁ……)

 仁美はまた考え込む姿勢になる。
 ただ待つのもなんなので、さやかは残ったオムレツを平らげた。
 冷めかけていたが、おいしかった。お弁当に入れたらどうかと思う。

 仁美がさやかの方に顔を向けた。さやかは口の中のオムレツを水で流し込む。

仁美「……でも、これを好機と捉えるべきかもしれませんね、さやかさんは」

さやか「え? ちょっとそういうふうには考えられないんだけど……」

仁美「杏子さんがさやかさんにとってどんな存在か自覚できただけでも、
   価値は大きいですわ、今回の一件」

さやか「……ど、どんな存在って?」

仁美「『恋人』とも、『友人』とも、『姉妹』とも、『同居人』とも……、
   みたいな逃げを打つのはお止めになって?
   わたくし、好きじゃありませんの。そういうかったるいの」
229 :ほむマミ派(さやかは仁美の熱い語りに耳を傾けました) [saga]:2011/10/07(金) 21:27:41.56 ID:i4EJqTCAO


 仁美はいつに饒舌である。
 とても生き生きとしている。
 さやかは完全に聞き手になってしまった。

仁美「大体さやかさん、
   さっきおっしゃったじゃありませんか。『振られた』って」

さやか「……言ったね……確かに」

仁美「それが『本音』ですわ。さやかさんの嘘偽りのない本音」

 ……そうかもしれな――

仁美「そうなんですのよ? かもしれない、ではなくて」

さやか「う、うん」

 表情に出てしまっていたみたいだ。

仁美「わたくしの前で取り繕うのは無しにしてくださる?」

さやか「はい……」

 なんか、また説教みたくなってきた。
 でも、なんだか少し嬉しいや。

仁美「……喜んでいる場合でもありませんのよ?」ジロ

さやか「はい……」シュン

仁美「お話を聞いた限りでは、
   杏子さんもさやかさんに打ち明けていない本音が必ずあるはず。
   そこを話し合いでキッチリ詰めることもせず、お別れも何もありませんわ」

さやか「……そうだね……ただ、向こうが話を聞いてくれるか……」

仁美「聞かせるんです。今だったら絶対に間に合います。
   一方的に関係を打ち切ろうという行為自体、
   杏子さんの方にも余裕などなかったと思いますけど」

さやか「か、語るね……仁美……」

 大体、と言って仁美は一度溜め息をつく。

仁美「さやかさんが、おかしな同情でまどかさんにキスなどするから、
   このようなことになったんじゃなくって?」

さやか「うぅ、すみません……」

仁美「わたくしに謝られても困りますわ」

 そう言って、仁美はさやかに微笑んだ。
230 :ほむマミ派(>>229訂正) [sage]:2011/10/08(土) 09:04:04.62 ID:+XKDQ6tAO

×仁美はいつに饒舌である。

○仁美はいつになく饒舌である。
231 :ほむマミ派(さやかは仁美に質問をしてみました) [saga]:2011/10/08(土) 17:22:26.47 ID:k+xhFttAo


さやか「……ねぇ、仁美」

仁美「何でしょう?」

さやか「ちょっと意地悪な質問してもいい?」

 仁美は一体何だろう? という表情でさやかを見る。

さやか「もし、まどかが仁美に今の状況を相談しに来たとしたらさ、
    仁美はなんて言って答えるのかな?」

仁美「……随分と余裕がおありですのね、さやかさん」クスッ

さやか「いや、あたしに親身になってくれてるけど、まどかだって仁美の……」

 さやかの言葉を仁美は手で制した。

仁美「それって物凄いマナー違反ではありませんこと?」

さやか「うん、わかってて訊いてるの。
    落ち着いて考えて答えてくれる友達なんて、
    仁美くらいしかいないし、あたし」    

 オムレツの感想のお礼としてお願い、とさやかは付け加えた。
 仁美はそれを聞いて、またクスッと笑い、考え込む。

仁美「今の段階で……いや、
   そもそもまどかさんがわたくしのところにそんな相談事を持ち込まれるとは思えませんけど」

さやか「そうなんだけどさ、訊いてみたいなって思っちゃってね……」

 さやかは窺うような顔付きで仁美の方を見る。
 それを見て、仁美は「仕方ありませんわね」と苦笑した。

仁美「さやかさんは御自分でもお気づきの通りの優柔不断な方ですから、
   今の内に杏子さんとの仲を徹底的に深める様、言うと思いますわ。
   それと同時に、さやかさんとの仲がおかしくなることを覚悟した上で」

 さやかは仁美の返答を聞いて、ほんの少し笑みを浮かべた。
 
仁美「何か面白いことを言いましたかしら? わたくし」

さやか「いやぁ、ここまでバッサリ言われるのって、
    なんでかはわからないけど気持ちがいいなぁって……」

仁美「お世辞にも良い趣味とは言えませんわね、それ」

 二人して同時に声を上げて笑う。大きな声で、心の底から。
 今日、さやかが仁美の家に招かれてから初めてのことだった。
232 :ほむマミ派(業務連絡) [saga]:2011/10/08(土) 18:08:22.02 ID:+XKDQ6tAO

これにて、全然百合百合しくないさや仁パートはおしまい

笑えるところとかなくてすみません

濡れ場まであと1パート

ほむマミを渇望されている方はもうしばらくのお待ちを……
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/08(土) 18:23:09.14 ID:m310nVs5o
oh…あんまどっち……
濡れ場ワッフル
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/08(土) 19:14:20.95 ID:9zSvzC8AP
仁美ちゃん、本当に達観してるなぁ
本編でもあんなことなければ良い友達だったんだろうな
235 :ほむマミ派(巴マミの回想) [saga]:2011/10/09(日) 19:33:05.67 ID:i5CA4IfYo


『巴もさ、一人で色々と大変だろ?』

 マミが中学二年生の時のこと。 
 進路指導室で、担任の男性教師に上記の台詞を投げかけられた。

 最初は意味がわからず、マミはしばらく考え込んでしまった。

『皆まで言わせないでくれよ、……わかるよね?』

 担任の粘ついた言い回しによって、マミは言外の意味に気付く。
 次の瞬間、マミは自分を取り巻く状況そのものに心底ガッカリし、心の中でこう呟いた。

「舐めやがって」

 口にしたことのない言葉だったし、これからもそんな予定はないけれども、
 あの時の自分の心情をこれより上手く言い表せる言葉を、マミは未だに思いつかない。
 
 進路や内定を保障する代わりに……という事だったのだと思う。
 そんなことを確かめる事などせず、マミはその場をとぼけて立ち去った。
 
 その後、担任からの呼び出しを二回無視した上で、 
 三回目の呼び出しに応じ、若干の怒りを滲ませた男性教師の失言を隠し持っていた携帯型のテレコに録音した。
 ハッキリとした拒絶の意を伝えるマミの発言部分まで全て。
 
 相手が理性的な仮面を被った人物でまだ良かった。
 舌打ちが聴こえた気がしたけれども、全てを遮断し、マミは急いで家に逃げ帰る。
 玄関のドアを閉めた直後、マミはドアにもたれ掛かるようにして大声で泣き崩れた。
 

 次にマミがしたことは職員会議に無言で乗り込み、
 録音した内容を全職員の前で聞かせるという暴挙。
 相談など出来る相手などその時のマミにはいなかった。
 警察へ行ったとしても、悪戯扱いされてしまう恐れがある。
 
 マミが懐からテレコを取り出した時、
 担任教師の顔色がみるみる青ざめていくのが、マミの視界に入ってしまった。
 
「だったら! どうして!」

 心の中でマミは必死に叫び続けながらテレコの再生ボタンを押した。


 直後の職員室の様子を一言で言い表すのならば、『滑稽』。これに尽きる。
 担任の声も喋り方も特徴的であったため、
 誰が何をしようとしたのかが、一度聴いただけで全職員に伝わった。
 何より、当該の教師のうろたえ振りで、録音内容が紛れもない事実であると知れ渡ったのだ。
 その点においては、マミの取った行動は正解だったのかもしれない。

 
 校長やら、教頭やら、学年主任やらが、事情を訊くという名目で執拗な口止めをマミに迫った。

「はい」 「余計なことは喋りません」

 この二つの言葉を嫌になるほど、マミは繰り返した。
 他にも何かを喋った気もしたけれど、今でもそれしか思い出せないし、思い出したくもない。
 

 結局、担任教師は自主退職という形でマミのいた中学を去り、
 他県の中学で教師として働くことになったということだ。
 半年後に結婚を控えていたそうだが、そんなことはマミには何の関係もなかった。

 
 口止めが済むと、『預かる』という言葉を盾にテレコを取り上げられ、
 マミは『監視役』の女性教師に自宅まで車で送り届けられた。全くもって周到なことだ。

 最初の内は必死で耐えていたマミだったけれど、堪え切れずに途中で嘔吐してしまった。
 どうやら女性教師の私有車だったらしい。忌々しそうにマミを見る瞳が今でも鮮明に思い出される。

「わざわざ自宅まで送り届けて頂いたにも係わらず、粗相をしてしまって本当に申し訳ありませんでした」

 上手く言えた。


 寝室までふらふらと歩き、ベッドに倒れこむ。
 このまま目が覚めなければ、父親や、母親に会えるかもしれない。
 ありえない夢を抱いて、マミは夢も見ずに眠りに着いた。

「おやすみなさい」
236 :ほむマミ派(業務連絡) [sage]:2011/10/09(日) 19:37:49.21 ID:6sp9juqAO

マミさん成分が足りない気がしたので、書きためを投下しました

杏子たん編は多分2日後くらいから始まります
237 :ほむマミ派(仁美はバカップルの戯れに付き合わされました) [saga]:2011/10/10(月) 18:56:56.46 ID:r7xQr3K4o

 レストラン上条 個室席


ほむら「でも、志筑さんがシェフだなんて驚きだわ、想像もつかなかった」

仁美「そうでしょうか? わたくしはそのように思ったことなど一度もありませんけど」

ほむら「いえ、言いたかったのは私の想像力の欠如の方のこと。全く持って精進が足らないわ」

仁美「……そうかもしれませんわね」クスッ

ほむら「ええ、本当に」フフッ

マミ「……」ムゥ

ほむら「……ああ」スッ

マミ「……っ」ビクッ

ほむら「マミ、わかった?」

マミ「は、はいっ」モジモジ

 ※テーブルの下でヒールを脱いだほむらの爪先がマミのふくらはぎを優しく撫でています

仁美「……どうかされましたか?」ハテ

ほむら「失礼、マミがやきもちをやいてしまったみたいで」サワサワ

マミ「ご、ごめんね。私も精進が足らなくって……」フルフル

仁美「お止めになってください、本来無粋なのはわたくしの方なのですから」フフ

マミ「そ、そうね、それはそうよね……」ヒクッ

ほむら「……マミ?」ピタッ

マミ「あ、ああ、そんなことないわよ? 久しぶりだものね? 積もる話もあるでしょう?」

 ※撫でるのを止めました

仁美「え、ええ、ではお言葉に甘えて……」


仁美(一体、どうされたのかしら?)


 つづく……
238 :ほむマミ派(仁美はなんとなく見届けることにしました) [saga]:2011/10/10(月) 22:22:36.02 ID:5Qu5/DMAO


ほむら「……ねえ、昔の私を知られてる志筑さんには、今の私ってどう見える?」

仁美「そうですわねぇ……何時だったか学校の図書室でお会いした時のイメージと少し重なりますかしら」

ほむら「ていうと、私達が三年に上がってからかな、多分」

仁美「ええ。『時間がなくって』、という一言がとても印象的でしたわ」

ほむら「……言ったかもしれないわね」

マミ「……」キョトン

ほむら「ああ、ごめんね、マミ」サワサワ

マミ「う、うぅん、いいの……っ」ビクッ

 ※ほむらの爪先がマミの膝頭を撫でています

仁美「巴先輩?」

マミ「ごめん、つ、続けて……」ハァッ

仁美「お加減があまりよろしくないようですが……」

ほむら「……」ピタッ

マミ「あ、治った、今治ったわ、ふふっ」

仁美「……そうですか。なら良いのですが……」フム

ほむら「志筑さんこそ平気? 忙しいのでしょう?」

仁美「暁美さん達が最後のお客様ですから、まだ大丈夫ですわ」クスッ

ほむら「志筑さんと久しぶりにお話したくなっちゃって、最後になるように予約したの」サワサワ

マミ「……っ」ビクッ

 ※次は内ももです

仁美「やはり、お加減がよろしくないのでは?」

マミ「い、いいのよ……遠慮しなくって、大丈夫……」ハァ

仁美「でも……」

ほむら「……」ピタッ

マミ「はい、治った」ニコッ

仁美「では、お言葉に甘えて……」


仁美(わかってきましたわ……わかりたくはなかったですが……)ハア


それでもつづく……
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/10/10(月) 22:25:48.40 ID:YINNRImKo
このレストランパートは時系列的に仁さやパートの前なのかな?
仁美が以前「恋人のような〜」とか言ってたし
240 :ほむマミ派 [sage saga]:2011/10/10(月) 23:13:32.38 ID:5Qu5/DMAO
>>239 はい過去エピです

あと何レスか続きます
241 :ほむマミ派(仁美はほむらの話に耳を傾けました) [saga]:2011/10/11(火) 19:14:04.90 ID:T0BQ3K4AO

 二分後


ほむら「……私が出来る料理なんて、『フライパン焼き』くらいのものだもの」

仁美「それは……」

マミ「ふふふ」

仁美「簡単なものならわたくしがお教えしましょうか?」

マミ「おっと、それは僭越ではなくっ……っ」ビクッ

ほむら「マミ、ごめんね?」サワサワ

マミ「はいっ……」モジモジ

 ※外ももです

仁美「……」フゥ

ほむら「まだ時間は大丈夫? 志筑さん」サワサワ

仁美「そうですわね、あと五分くらいなら、オーナーも目を瞑って下さるかと」クスッ

ほむら「そう、じゃあ目いっぱいお話しましょう?」ピタッ

仁美「ええ、喜んで」

マミ「……」ホッ

ほむら「……上条さんとはいつ結婚するの?」

仁美「暁美さんがそのようなことを気になさるなんて……」

ほむら「気になる年になったの」フフ

仁美「……よく誤解されるのですが、恭介さんとは恋人同士ではありませんの、わたくし」クスッ

マミ「えっ!」

ほむら「……マミ?」ジロ

マミ「はい……」シュン

ほむら「でも意外だわ……『今は』ってこと?」

仁美「『今まで』、ですわね。正確に表現すると」

ほむら「……そう、あんなに熱心に見えたのにね、あの頃は」フム

仁美「あら、それは『今でも』、ですわ」フフフ

マミ「へ、へえ、それまた解せないわね……」ドキドキ

ほむら「……」

マミ「……」ホッ

仁美「……」フフッ


まだつづく……
242 :ほむマミ派(仁美はほむマミと人生について語りあいました) [saga]:2011/10/12(水) 00:40:04.92 ID:vBIk+5BAO


ほむら「……ねぇ、志筑さん」

仁美「何でしょう?」

ほむら「もし明日、自分の命が終わってしまうとして、志筑さんは後悔しない? 今の自分の生き方」

仁美「そういった仮定の話はあまり意味が無いように思えますけど」

マミ「……」

ほむら「私、臆病者だから、そんなことばっかり考えちゃうの。どうしようもないわね、全く」フフ

仁美「しない、と思えるようには過ごしているつもりですが、その時が来ないことには……」

マミ「……私はするかも」

ほむら「マミ?」

仁美「巴先輩……」

マミ「よく出来た、より、出来なかった、のほうが記憶に残ってることが多いし」

ほむら「……」

仁美「そうでなくては成長など望めないのですから当然では?」

マミ「うーん、なんていうか……根が暗いからかな、私……上手く言えないけど」

ほむら「……」

マミ「ごめん、邪魔しちゃって」

仁美「……ひとつだけハッキリしていることがありまして、それにならお答え出来ますが」

ほむら「……是非聞きたいわね」

マミ「ええ」

仁美「わたくしは上条恭介さんという方の隣に立つことに必死で、毎日が辛くて、そして、それが面白いですわ」

ほむら「そう……変な質問に答えてくれて、どうもありがとう」

仁美「いえ、どう致しまして」

マミ「……志筑さんって、素敵な方ね。私、今までちょっと誤解してたかも」

仁美「……言われ慣れておりますわ、その台詞」クスクス


さらにつづく……
243 :ほむマミ派(仁美はさやかに情報提供をしました) [saga]:2011/10/12(水) 11:12:35.53 ID:vBIk+5BAO


ほむら「……そろそろお引き止めするのも悪いわね」

仁美「そうですか。では失礼させて頂きましょうか」

マミ「とってもおいしかったわ」

ほむら「ええ、本当においしかった」

仁美「どうもありがとうございます」フフ

ほむら「……志筑さん」

仁美「何でしょう?」

ほむら「私は貴女が羨ましいわ」

マミ「えっ!」

ほむら「なんでマミが驚くのよ……」

マミ「だって、ほむらさんが人の事を羨ましがるだなんて……」

仁美「……では失礼致します。ごゆっくりおくつろぎ下さいませ」ペコリ




 志筑仁美はレストラン上条における暁美ほむら達とのやり取りを、掻い摘んで美樹さやかに話した(会話部分のみ)。

さやか「ふぅん、過去を懐かしむような奴だったんだね、あいつ」

仁美「さやかさん、口がお悪くてよ? 仮にも上司でしょう? 暁美さんは」

さやか「まあ、そうなんだけどさぁ」

仁美「……なんとなくですが、焦りのようなものを感じましたわね。特に、暁美さんの方から」

さやか「えー、いっつも余裕ぶっこいてるような感じだよ? ほんでもって仕事はテキパキしてんのがね……」ブツブツ

仁美「……さやかさん、わかっておられるとは思いますが……」

さやか「大丈夫、言わないって。信用第一、だもんね? ……大体、あたしが無理に訊きだしたんだしさ」ヘラヘラ

仁美「こういった時のさやかさんは、その信頼性の無さに対して、抜群の信頼性をお持ちですので」クスッ

さやか「い、意地悪言わないでよ、仁美ぃ」オロッ

仁美「あら、意地悪ではありませんのよ? これ」フフ

さやか「ぐっ」

仁美「……意地悪ではありませんの」

さやか「うぅ」シュン



仁美(……)
244 :ほむマミ派(業務連絡) [sage]:2011/10/12(水) 11:21:47.64 ID:vBIk+5BAO

次こそ、あんこちゃんマジまどまどパート

今日か、明日から
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/12(水) 16:53:05.20 ID:Axpl7w+Go
ワッフルワッフル
夢のあんまどなのにガクブルが止まらない……
246 :ほむマミ派(佐倉杏子) [saga]:2011/10/12(水) 16:59:23.74 ID:vBIk+5BAO


 佐倉杏子が同性愛者であることを自覚したのは、十四歳の夏の事だった。

杏子(皮肉なもんだね……)

 彼女の実家は教会である。
 信仰する宗教の教義に同性愛を禁忌とする文言があることを再読し、杏子はこう思った。

杏子(さて、どうすればいいかな?)

 佐倉杏子という女性にとって幸運だったのは、
 彼女が己の特質を気に止むような人格ではなかったことだ。
 客観性に長けていると言えばよいのか、
 佐倉杏子は現実的な物の見方を出来る人物だった。……でも。

杏子(父さんは認めてくれないだろうな)

 唯一といってよい悩みが自分の父親の存在であることが、杏子を深く考え込ませる。

杏子(自分を曲げることなんて出来ない)

杏子(だって、それ自体が嘘で、嘘は罪悪なんだから)

杏子(出来ることなら父さんに、あたし自身を認めてもらいたい)

杏子(でも、それは難しい、……いや、ムリだ)

 杏子は自分の父親のことを尊敬していた。
 
 どうすれば、世の中にとっての救いの種をもたらすことが出来るか、だけを考えて生きているような人。
 『救いの種』という表現は杏子の父自身のもので、父親のそんな控え目なところも杏子は好きだった。

 その反面、杏子の父は非常に頭が固い人物でもあった。
 当然のことである。若干の不合理や矛盾に目を瞑ってでも教義を丸飲みし、
 心の底から言葉を紡げるようでなければ、通りすがりの迷い人ひとりすら救えない。


 今の、例えば、暁美ほむらのような人物から見れば、それは『盲目的』としか写らないだろう。

 でも、佐倉杏子にとっては違う。
 父親の持つそれは紛れもない『信念』であり、今日に至るまで、杏子のその考えは変わらない。
247 :ほむマミ派(初恋杏子ちゃん) [saga]:2011/10/13(木) 18:09:06.19 ID:gh0HfJHvo


 杏子はある日、一人の少女に出会う。
 その少女との出会いで、杏子は自分自身のことをより知ることとなった。

少女『私、この近くに引っ越してきたの。よろしくね』

 ニコッと笑いながら、杏子とその時一緒にいた妹に感じの良い挨拶。

杏子『うん、よろしく。……あたしさ、この近くの教会に住んでるんだ』

少女『へぇ。私、教会って行った事ないから今度案内してね?』 

杏子『いいよ、あのさ、よかったら名前とか教えて貰える?
   あたしは佐倉杏子っていうんだ。んで、隣にいるのが妹のモモ』

 普段よりも浮かれている自分。杏子は早口になるのを抑え切れない。
 妹が杏子の服の袖を引き、「おつかいは?」と二度言った。

 少女が妹の方を優しい表情で見ながら、杏子に名乗る。

杏子『……いい名前だね、とっても』

少女『杏子ちゃんはお世辞が上手いね』

 そう言って少女は微笑んだ。
 
杏子『お、お世辞とかじゃ、ないよ……』

 一体、自分は何でこんなに舞い上がっているのか?
 わからない、いや、わかる、でも、わからない。

少女『……おつかいはいいの? モモちゃんの方がお利口さんだよ、ね?』

 杏子は袖を引く妹の手を振り払ってでも、少女と話を続けようとしていた自分を恥じた。
248 :ほむマミ派(初恋杏子ちゃん) [saga]:2011/10/13(木) 18:09:21.51 ID:0VPxF4dAO


 杏子が出会った少女は二歳年上だった。

別の日、二人きりで会った初めての時のこと。杏子の家の近くの公園だった。
ベンチに並んで腰掛けて。……あれはデートだった、間違いなく。

少女『杏子ちゃんはやっぱりミッションスクールへ通ってるの?』

杏子『学費が高いから、公立の中学に通ってる。君は?』

 杏子は少女の名前を呼ぶのがなんとなく恥ずかしかった。
 少女を呼ぶ時には必ず二人称。でも、少女はそのことを咎めたりはしなかった。

 最後まで少女の名前を呼ぶことがなかったのが、佐倉杏子の数少ない後悔のひとつ。

少女『私、学校行ってないの。通信教育で一応勉強はしてるけど』

杏子『へえ、お金持ちなんだね。羨ましいや』

 杏子の言葉を受けた少女の表情が少しだけ曇った。

少女『うーん、そういう訳でもないんだけど……』

 失言だったかもしれない。でも杏子は慌てなかった。

杏子『人それぞれ事情はあるよね』

少女『杏子ちゃんが言うと可愛く聞こえるね、その台詞』フフフ

 杏子は顔が熱くなった。心臓がドキドキするのが自分でもわかった。

杏子『からかわないでよ、あたしが年下だからって……』

少女『……年上とか、年下とか、どっちだっていいと思わない?』

 真剣な顔付きで言い、少女は杏子との距離を詰めて座りなおした。
 杏子は何故か動けなくて、それが何故か嬉しかった。
249 :ほむマミ派(初恋杏子ちゃん) [saga]:2011/10/13(木) 23:10:11.18 ID:0VPxF4dAO


少女『杏子ちゃんはさ、こうやってお話してても、
   楽しいし、賢いと思うんだけど、お友達とかはいないの?』

 何度目かの「デート」にて。

 いつかはくる、と思っていた質問が少女の口から出た時、
 杏子は必要以上に身構えてしまった。

少女『……あまり、話したくない?』

 隠しても仕方がない。正直に話そう。

杏子『いや、実はあたしんち、若干新興宗教扱いでさ……』

 杏子は公立の中学へ通っている理由を偽っていた。
 
 元々の教義に無いことを自分の父親が説くようになったことで、
 本来なら通えるはずだったミッションスクールに門前払いを食わされたのだ。

 そのこと自体には特別ショックを感じなかった杏子だったが、
 事情をよく知らない人達の、奇異の目や偏見といったものからは逃がれられなかった。

少女『そっか。まあ、人それぞれ事情はあるよね』

 そう言って少女が軽く流してくれたことで、
 杏子はこの人にはもっときちんと話そうと思い立つ。

杏子『属してた宗派から破門されたりしてね、
   その時はあたしも妹も、まだまだちっちゃくてさ、
   家族が生きていくのも大変だった時期もあったんだ』

少女『生きていくのも大変? この日本で?』

杏子『うん。その日の食事がリンゴ半分だけとか』

 想像していた以上の貧しさだったようで、
 何故か少女は申し訳なさそうな表情になった。

少女『私、すっごい偏食なんだけど……そういうの、杏子ちゃんから見て許せない?』

 それを聞いて、杏子はにっこり笑う。

杏子『あたしもピーマンは嫌いだよ。苦いし』

 杏子の言葉に、少女は「可愛い」、と反応して笑ってくれた。

 そんな少女を見て、杏子は「可愛い」、と心の底から思った。
250 :ほむマミ派(初恋杏子ちゃん) [saga]:2011/10/14(金) 17:39:38.32 ID:5aPyQ4/fo


 杏子の通う中学も夏休みに入った。
 今まではそれ程喜べなかった長い休暇も、今回は違う。
 だって、あの子に会える機会が増えるということだから。

 デート、といっても公園のベンチで二人並んで座って話すだけ。

 杏子は家の手伝いや、妹の面倒を見なければならなかったし、
 少女の方も学校へ通っていない分、勉学に必要な時間は一般的な学生より多かった。

少女『余計に頑張らないといけない立場なの、私』

 少女はそう言って、杏子に優しく笑いかける。

杏子『自分をちゃんと律してるんだね、すごいや』

少女『難しい言葉を使いたい年頃かな? 杏子ちゃんは』

杏子『あたしはそんな挑発には乗らないよ』

 二人して大笑い。楽しい、本当に楽しい。
 
少女『……ねえ、今度、私の家に遊びに来ない?』

 杏子は一瞬尻込みしてしまう。
 
 自分が父親を尊敬していることと、
 世間から自分の家庭がどんな色眼鏡で見られているのかは、全然別の話だから。

 そういう嫌な思いを中学に入ってからも何度かした。
 ただ、そのことで杏子が周りの人々を恨むようなことはなかった。

 伝わる人には伝わる。伝わらない人には伝わらない。たったそれだけのこと。

 そう割り切っていたつもりだったのに、今の自分は何を怯えているのか?

少女『迷惑、かな?』

杏子『……本当にいいの?』

少女『うん、とりあえずは合格だね、杏子ちゃんは』

杏子『ひどいよ? その言い方』

 また二人して大笑い。杏子の心の曇りも同時に吹き飛んだ。
251 :ほむマミ派(杏子ちゃん乙女モード) [saga]:2011/10/15(土) 05:20:15.01 ID:crJPP2NAO


杏子が誘いを受け、少女の家を訪れる日が来た。

252 :ほむマミ派(杏子ちゃん乙女モード) [saga]:2011/10/15(土) 05:23:27.16 ID:QIhMaKTDo


 なるべく身奇麗に、失礼のないようにしないと。

 そんなことを考えながら、杏子は服装を選んだ。
 食べるものにも事欠く、といった状況からは脱することが出来たが、
 杏子の家庭は決して豊かな暮らしぶりといったものではなかった。

杏子母『服装を決めるのに、随分時間が掛かってるわね?』

杏子『うん。と、友達の家に呼ばれてさ』

 あらまあ、という母の顔。
 杏子は喜び半分、恥ずかし半分といった顔をして俯いた。

杏子母『……ちょっと待ってなさい。今用意するから』

 しばらくして杏子の母が持ってきたのは、
 純白のふんわりとしたサマーワンピース。

杏子『可愛いけど、あたしには似合わな……』

杏子母『こんな時の為に内緒で用意したのよ? 母さんに任せて』

 普段はリボンで乱雑に纏めた髪を母親に綺麗に梳いてもらい、
 ワンピースを着せてもらう杏子。

杏子母『姿見で確認してみて? まるでお嬢様よ?』

 言われるままに鏡に映る自分を見て、杏子は顔を紅くしてしまった。

杏子『……変じゃないかな?』

杏子母『今の杏子の姿を変だ、って言う人がいたら、変なのはその人』

 微笑みながら紡がれた母の言葉に杏子は勇気づけられた。

杏子『母さん、ありがとう。本当に』

杏子母『貴女にも、モモにも、よく頑張ってもらってるもの。
     むしろ母さんがお礼を言わなくちゃいけないわ』

杏子『やめてよ、そんな』

杏子母『……お友達を待たせては悪いわ。早く行きなさい』

 手土産に紙袋いっぱいのリンゴを持たされ、杏子は少女の家に向かう。
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/15(土) 06:54:10.77 ID:j6DDPskfP
まさかこの少女は既存の誰かなんだろうか?
この杏子ちゃんはマミさんとは顔見知りなんだろうか
魔法少女じゃないからフェアウェル的な出会いはしてないのかな?
254 :ほむマミ派 [sage]:2011/10/15(土) 10:11:29.16 ID:crJPP2NAO
>>253
この話のあんマミの出会いは>>146が初

まあ、『友人』の知り合いくらいの仲ですね

少女が誰か、ってのは言えませんねぇ、ウェヒヒヒ
255 :ほむマミ派(杏子ちゃん乙女モード) [saga]:2011/10/15(土) 15:17:04.89 ID:JEASCOwUo


 杏子が教えてもらった道のりを行く途中に、
 いつも二人が会う公園があり、そこで少女は杏子を待っていてくれた。

少女『すごい、杏子ちゃん、まるでお嬢様みたいだよ?』 

杏子『うう、それ母さんにも言われたんだけど……』

少女『なんで恥ずかしがるの?
   素敵、っていくら言っても、言い足りないくらいなのに』

 だから、だ。そんなことを言われること自体、
 杏子にとっては初めてなんだから仕方がない。

少女『ふぅん、杏子ちゃんの新たな萌えポイントを見つけられて、
   お姉さんは俄然盛り上がってきましたね』

 少女の言葉を合図に二人して笑う。このやり取りも手馴れたものになってきた。

杏子『もう、いいでしょ? からかうのはさ。
   あたし、この格好でいるところ、あんまり人に見られたくないんだ……』

少女『うーん、まあいいわ。後でじっくり堪能させてもらうから』

 悪戯っぽく少女が言う。

杏子『なんかいやらしいよ、その言い方……』

少女『ふふん、杏子ちゃんが可愛いのがいけないんだ』

 少女の家までの道中で散々に褒めまくられ、
 杏子は今までに感じたことのない高揚感を覚えた。
256 :ほむマミ派(少女の家に上がる杏子) [saga]:2011/10/15(土) 16:39:03.19 ID:crJPP2NAO


 十分ほど歩いて、少女の住む家に着いた。
 杏子が想像していたよりはこじんまりとした、二階建ての一軒家。

 少女は玄関のドアの前で、杏子の方を見てこう言った。

少女『もしかするとさ、ちょっとだけイヤな思いをさせるかも……』

杏子『大丈夫、慣れてるし』

 杏子の返事を聞き、少女は急に真剣な表情になった。

少女『杏子ちゃん、気を使ってくれるのは嬉しいけど、
   慣れてるなんて言い方はしちゃダメだよ?』

杏子『う、うん』

少女『……ま、いっか。それじゃどうぞ上がって』

杏子『お邪魔します』

 少女が玄関のドアを開け、只今、と挨拶すると、
 少女の母親にしてはやけに若い女性が杏子達を出迎えた。

女性『おかえり。ああ、その子?』

少女『そう。佐倉杏子ちゃんていうの』

杏子『佐倉と申します。本日は……』

女性『いいわ、そういうの。お友達なんでしょ? 歓迎します』

 特別感情を込めるでもなく、女性は言った。

少女『もー、そんな言い方……』

女性『歓迎します、って言ってるんだからいいじゃない。
   私、これから仕事だから。夕飯は適当によろしく』

 それだけ言って、女性は家の奥に引っ込んでしまった。
 去り際に「懲りないのね」、と小さく呟いたのが、杏子の耳に残った。

 玄関先でなんとなく固まってしまった、少女と杏子。
 少女が小さな溜め息を一度ついて話し出す。

少女『うん、予想通りだった』

杏子『さっぱりとしたお母さんだね……』

 杏子は言葉を選んだつもりだったが、
 そもそもの前提が間違っていたことを知らされる。

少女『継母なの。……悪い人じゃないのよ?』

杏子『いや、あたしも別にイヤな感じはしなかったけど……』

 けど。

 何が「懲りない」のかは、確かめることの出来ない杏子だった。
257 :ほむマミ派(少女に牛乳をせがむ杏子) [saga]:2011/10/15(土) 23:04:51.26 ID:ghAk6YOIo


 杏子は階段を上がり、少女の部屋に通された。
 
 ベッド、勉強机、本棚、パソコン、テーブル。大体予想した通りの内装。
 杏子は妹と部屋を共有しているので、個人部屋はやはり羨ましい。

少女『杏子ちゃんは何が飲みたい?』

 せっかくリンゴを持ってきたので、
 杏子はそれに合うと思っている飲み物の名前を口にした。

杏子『牛乳、かなあ』

少女『やだ杏子ちゃん、可愛い』

杏子『や、やめてよ、からかうの……』

少女『可愛いから、可愛いって言ったの。いい加減に慣れて?』

 そう言って、少女は座って待ってて、と下へ降りていった。

 フローリングの上にカーペットが敷いてあり、
 小さなガラステーブルが置いてある。座布団は二つ。
 言われたとおりに座布団へ杏子は行儀良く正座する。
 テーブルの上に一冊本が乗っていて、杏子はそれを凝視した。

 漫画の類だろう。
 女の子二人が相合傘で通学路を歩いている表紙イラスト。
 ほとんどそういったものを読んだことのない杏子だったので、
 後で少女に許可を得て見せてもらおうと思った。

 しばらくして、少女がお盆の上にリンゴと飲み物を乗せて戻ってきた。

少女『背筋を伸ばして正座してる杏子ちゃん可愛い』

杏子『もう反応しないからね』

少女『そう。じゃ、今日はこれで打ち止めにしよう』

杏子『「今日は」、なんだ……』

少女『まあ、私の気持ちの高まり次第ではどうなるかわかりませんがね?』

 いい球を投げてきた。杏子はタイミングを合わせて、少女と共に笑う。
258 :ほむマミ派(少女を感心させる杏子) [saga]:2011/10/16(日) 11:48:10.53 ID:81jlTHwAO


 少女は大変な偏食家だと、杏子は聞いていた。

 リンゴは食べられるようだが、皮は剥かねばダメだろう。
 用意された果物ナイフで丁寧にリンゴの皮を剥いていく杏子。

少女『魔法みたいに綺麗に剥くね』

杏子『大袈裟じゃない、それ』

 少女には感心させられることが多かった杏子だったが、
 ようやく良いところを見せられて、少しほっとした。

少女『私がやったら、大変な惨状になるもん、皮むきなんて』

杏子『……かもね』

 また二人して笑う。

少女『やっぱり出来なきゃダメなのかな、そういうの』

 杏子は作業の手を止めることなく、ちょっとだけ考えた。

杏子『……出来る人がやればいいんじゃないかな?』

少女『優しいね、杏子ちゃんは』

杏子『出来たよ。召し上がれ』

 恥ずかしかったので褒め言葉には応じず、
 杏子は均等に八等分されたリンゴを少女の方へ差し出した。

 少女がリンゴに口をつけるのを杏子は黙って待つ。
 程なくして、リンゴをかじる良い音が聞こえた。

少女『……おいしい』

杏子『そ、良かった』

 それだけ言って、杏子は手拭きで両手を拭い、
 デザートフォークでリンゴを刺して口へ運んだ。
 普段はこんな気取った食べ方をしないので少しだけ緊張する。

杏子『……うん、やっぱり皮付きのほうがおいしいや』

少女『軟弱者ですみませんね……』

杏子『そうだね』クスッ

少女『うぅ』

 なんだか気分が良い。杏子はそう感じた。
 でも、それは少女の気遣いのおかげだな、とも同時に思う。
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/10/16(日) 12:39:09.96 ID:sihID1sg0
なんで杏子がまどっちを選んだのかわかってきたな
260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/16(日) 12:58:51.66 ID:BlZz2ibjo
ちょっとした気の迷いで選んだ訳じゃないみたいで良かった。本当に良かった
261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/10/16(日) 22:13:14.06 ID:ypRUd+2Bo
さやかちゃんカワイソスなフラグが立ってきたな
262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/16(日) 23:36:47.93 ID:8rsHLVwyP
さやか→あんこ→まどっち→マミさん←ほむほむ

おぉぉ、ドロッドロやでぇ
263 :ほむマミ派(少女にそれとなく仕込まれる杏子) [saga]:2011/10/17(月) 11:30:56.50 ID:rpoj+U3AO


 楽しい時間は過ぎるのが早い。

 杏子は家へ帰らなくてはならない時間になった。

杏子『そろそろ帰らないと……』

少女『うん、そうだね。あー堪能した、堪能した』

杏子『もー』

少女『杏子ちゃんが可愛いのがいけないんだ』ニヤニヤ

 少女が放つ魔法の言葉。口八丁ともいえるかもしれない。

 最初の頃よりは抵抗なく受け入れている自分に気づき、
 杏子は顔がにやけていないか、少女に
悟られないよう確認した。

 二人して下へ降り、玄関へ。
 丁度、奥から出てきた女性と行き会う。
杏子『長々とお邪魔致しました』ペコリ

女性『そう。また来てね』

 女性は微笑みながら杏子に言い、リビングのドアを開けてその場を去った。

杏子『いいお母さんだね』

 少女に対して、思ったことを素直に口にする。

少女『継母、だよ?』

杏子『いいや、お母さん、だよ』

 杏子の言葉に少女はにっこりと笑った。

少女『杏子ちゃんは優しいね』

 杏子はそれには応えなかった。

 一瞬の沈黙を置いて、少女が突然「あっ」と言い、
 ちょっと待ってて、と二階へ上がっていく。
 数分しないうちに小さな手提げ袋を持って少女が降りてきた。

少女『はい、これ。貸してあげる』

杏子『えっと、何?』

少女『……こっそりと読むように』

 芝居めいた口調で少女が囁く。

杏子『う、うん』

 自宅に戻って普段着に着替え、夕食等の用事を済ませた後、
 妹が寝付くの待ってから、杏子は紙袋の中身を確認した。

杏子(あの漫画だ)

 とりあえず読んでみる。

 どう読んでいけばよいのかは大体知っている杏子。
 何ページか捲って、「こっそり」の理由が杏子にもすぐにわかった。

杏子(女の子同士でキスしてる……)

 佐倉杏子はその晩、少女から借りた漫画を熟読した。
264 :ほむマミ派() [saga]:2011/10/17(月) 12:24:55.02 ID:rpoj+U3AO


 それから二日後。いつもの公園にて。

杏子『読んだよ、漫画』

 杏子はなるべく感情を出さないように少女に言った。

少女『面白かった?』

杏子『……繰り返し読んだよ』

少女『それは面白かったってこと?』

杏子『なんか、うじうじした女の子ばっかりだった』

少女『もう! なんで質問に答えてくれないの?』

 なんて答えてよいのかわからない、と杏子は何故か言えなかった。

杏子『なんで、あの漫画を貸してくれたの?』

少女『それは、私の好きなものを杏子ちゃんに知ってもらいたかったから』

杏子『そう』

少女『……杏子ちゃん、怒ってる?』

 どうだろうか。正直わからない。

杏子『うちさ、教会だ、って話はしたよね?』

少女『知ってる。未だに連れて行って貰ってないけど』

 少女の方も段々と苛立ってきたようだ。

杏子『いけないことなんだ、同性愛、っていうのは。
   あたしの家が信仰する宗派の教義にも、そう書いてある』

少女『……それで?』

杏子『わからない』

 そこで杏子は手持ちの言葉が無くなってしまった。

少女『杏子ちゃんは私が意地悪したと思った?』

杏子『そうは思わなかったよ。でも……』

少女『でも?』

 言葉が出てこない。わからない、とも言いたくない。

 初めての気持ちだ、こんなこと。

杏子『……あたし、帰るね』

少女『うん……』

 少女と会えばいつも楽しかったのに、
 その日は久々に重苦しい感情を持て余した杏子だった。
265 :ほむマミ派(少女に謝られる杏子) [saga]:2011/10/17(月) 13:39:34.05 ID:rpoj+U3AO


 さらに二日後。場所は同じ。

少女『この前は無神経なことをして、ごめんなさい』ペコ

 元々会う約束をしていなかったのに、
 少女の方が杏子のことを公園で待っていてくれたようだ。

 杏子もなんとなく、行けば会えるのでは?
 と思っていたので、少女の姿を見つけた時は顔がほころびそうになった。

 でも、我慢する杏子。

杏子『いや、あたしも態度が良くなかったし……』

少女『ごめんごめん、本当にごめん』ペコペコ

杏子『やめてよ、別に怒ってるわけじゃないって』

 杏子がそう言った瞬間に少女は満面の笑みを浮かべる。
 思わず魅入ってしまいそうになるのを、杏子はぐっと堪えた。

少女『そっかあ、杏子ちゃんは話のわかる人だと思ってたんだ、私』ニコニコ

杏子『えっ、変わり身が早すぎじゃない?』

 少し呆れ気味で杏子は言った。

少女『やっぱり、ごめん……』シュン

杏子『……もういいってば。キリが無いよ』クスッ

 なんでだろう、笑えてきた。

 少女はシャキッ、という擬音を響かせんばかりに姿勢を正す。

少女『まあ、私はわかっていたよ。こうなることをね……最初から』フフ

杏子『そうなんだ……』

 調子が良すぎでは? と杏子は思ったが、
 彼女の笑顔を見られるのならば、それも別に大した問題ではないなと結論した。

 それより。

杏子(あたしはこの人のことが好きなんだ、きっと)

 舞い上がりそうになるのと同時に、
 どうしたって避けては通れない問題を意識すると、杏子は目の前の彼女ほど素直に笑えなかった。
266 :ほむマミ派(少女に打ち明ける杏子) [saga]:2011/10/17(月) 15:20:58.06 ID:rpoj+U3AO


 でも。だからこそ。


杏子『好きなんだ、君のこと』

 少女の様子が落ち着くのを見計らって、杏子は迷わずに告白した。

少女『……』

 固まってしまう少女。そんな彼女を杏子はじっと見据える。

少女『え……えっと、本当に?』アセアセ

杏子『こんな大事なことで嘘つくのは嫌だもん。好き。君のことが好き』

少女『そう……そうですか……』カァーッ

 いつもは少女にからかわれてばかりだったけど、
 この場の勢いはあたしが掌握してるな、と杏子は冷静に判断した。

少女『私もね、好きかなあ、杏子ちゃんのこと……』エヘッ

杏子『ずるいよ、そんな言い方。「かなあ」はずるい』

少女『でも、杏子ちゃん、お家の事情が……』

杏子『そのことも含めて話そうよ。冗談まじりでいいからさ、いつもみたく』ニコッ

少女『う、うん』

 今までが立ち話だったので、ベンチに並んで座る。いつものポジションだ。

少女『な、なんか、杏子ちゃんがカッコいいんだけど……』

杏子『悩むより、話し合った方が現実的だと思ったから』

 杏子の迷いない言い切り方に、少女は若干表情を曇らせた。

少女『……やっぱり、漫画の件は不愉快だったでしょ?』

杏子『ううん、自分の気持ちに気づかせてもらうきっかけになったし、いいよ、もう』

 口にすることで気持ちがハッキリと見えてきた。

 何事もしてみるものだ、と杏子は思う。
267 :ほむマミ派(休憩混じりのひとりごと) [sage]:2011/10/17(月) 16:14:36.16 ID:rpoj+U3AO
もしもしで書いてるので、改行ミスはマジ死にたくなる

ほむマミ濡れ場までまだまだ先が長いので、ゆったりお待ちを

あともう一つ。
皆さんは忘れている、原作のおいしいところが殆どオミットされているとはいえ、
これが「まどか☆マギカ」の二次創作であるということを……
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/17(月) 16:23:44.84 ID:PbT5mO+to
凄ぶる嫌な予感。まどあんェ……
269 :ほむマミ派(少女に好きと言いまくる杏子) [saga]:2011/10/17(月) 18:43:11.91 ID:rpoj+U3AO


杏子『あたし、友達とかいないし、これが恋なのかどうかは正直言ってわからない。
   でもね、好き、って言葉は躊躇いなく口に出来るよ。君のことが好き』

少女『あ、あのさ、好き、って言って貰えるのは大変に嬉しいんですけど……』

杏子『……少しはあたしの気持ちがわかった?』ニヤリ

少女『はい……』ポッ

 誰かに好きと言って、それを受け入れて貰える喜びに、杏子は酔いしれていた。

杏子『多分、初めて会った時からだね、その時にはもう……』

少女『好き、でしょ? そんなに連発しなくても……』テレテレ

杏子『そ、好き』

少女『もー』

 全くもって気取っている。杏子は今の自分のことを心の底からそう思う。
 そして、それはなんて素敵なことなんだろう。

 当然、リスクを伴う行為であることは承知の上だ。

 「承知している」と「身を持って知る」の明確な違いなど、この時の杏子にはわかるはずもない。
270 :ほむマミ派(少女との関係が表面的にはあまり進展のない杏子) [saga]:2011/10/17(月) 21:39:41.15 ID:rpoj+U3AO


 夏休みが終わり、季節が秋から冬に入ってからも、
 少女と杏子は相変わらずの間柄だった。

少女『いやぁ、杏子ちゃんは可愛いねえ』

杏子『うん、好きだよ』

 二人揃って笑う。

 目に見える変化といえば、
 杏子が「好き」という単語を会話の中に折り混ぜるようになっただけ。

 なんというか、微笑ましい関係、である。


 とある冬の日。
 真冬の公園は当然寒い。防寒対策をお互いに万全にした上での「デート」。

少女『ねえ、杏子ちゃんと知り合ってから、
   もう年を越しそうなのに、まだ手も握ってないんだよ? 私達』

 シンプルかつ、突っ込みどころのある切り返しは何かと考える杏子。

杏子『ウブなんじゃない? あたし達』

少女『イマイチだね、それ』

杏子『ホントにね』

 また笑う。

少女『教会へはいつ案内してくれるのかな?』

杏子『……まだ合格ラインに達してないね、君』

少女『うーん、厳しいよぅ』クスクス

 冗談めかして言うものの、
 杏子はいつになっても少女を自分の家へ連れて行くことはしなかった。

 出会って間もなくの頃、少女に説明した通り、
 杏子の実家の世間的な評判はあまり良くはない。

 お互いに合意があったとしても、
 事情を知らない人から見れば、それは勧誘行為に見えてしまう。

 それは少女の方でも承知していて、
 杏子が返答に苦慮するところを堪能しようという悪戯、である。
 
 そして、杏子もそんな悪戯に承知して付き合っている。

少女『……お母さんがさ、久しぶりに杏子ちゃんに会いたいって』

杏子『へぇ、嬉しいや、そう言って貰えるなんて』

少女『私も結構びっくりした。だって、初めて言われたもん、そんなこと』

杏子『……嬉しいなぁ、本当に』

 杏子は少女の「母」に好感を持っていたので素直に喜んだ。
 そんな杏子の様子を見て、少女はニコニコとしている。

 杏子と少女の関係は、本人達が自覚しているところより、ずっとずっと深くなっていた。
271 :ほむマミ派(少女の家に再び招かれる杏子) [saga]:2011/10/18(火) 14:49:02.91 ID:fhsXvxFAO


 杏子は再度、少女の家に招かれた。

 年が明けてからのことで、その日はほんの少しだけ雪が降っていた。

杏子『向こうのお宅で夕御飯をご馳走になるから、夕飯はいらないよ』

杏子母『それを聞くのは三回目なんだけどな、母さん』クスッ

杏子『うん。念押ししてるの』ニコッ

杏子母『……あまり騒いだり、失礼のないようにね?』

杏子『わかったよ、母さん。十分に気をつけるから』

 一瞬、母親が何かを言おうとし、すぐに引っ込めたのが杏子にはわかった。
 多分、自分達の家庭についてのことだろう。

 余計なことを言って、
 娘の心に負担をかけてはいけない、といった気遣いを杏子は感じ取った。

 勿論、杏子だってそんなことを自分の母に言わせたくはない。

杏子『……母さん、いつもありがとう』

杏子母『何? 急に』

杏子『言わなくちゃ、って思ったから』

杏子母『……そう。お友達を待たせては悪いわ。早く行きなさい』

 今回は手土産もなく、服装も普段通り。
 少女の母が、杏子に日頃のお礼をしたいとのことで、
 何かを持ってきたら家へは上げない、というおかしな警告を少女にされていた。

 マフラーをしっかりと巻いて、長靴を履き、傘を差して、杏子は少女の家へと向かう。
272 :ほむマミ派(少女の家に再び上がる杏子) [saga]:2011/10/18(火) 23:45:47.34 ID:fhsXvxFAO


少女『マフラーで口元がすっかり覆われてる杏子ちゃん可愛い』

 少女が玄関のドアを開けてくれ、開口一番こう言った。
 杏子はマフラーを外して、お返しを考える。

杏子『……どうもありがとう。そしてお邪魔致します』

少女『あれ? いつになく素直だね?』

杏子『あたしは素直だよ、いつも』

 目の前に少女の「母」もいるというのに、少女は普段通りだ。
 杏子は危うく「好き」という言葉を口にしそうになった自分にヒヤヒヤしたのだが。

継母『貴女たち、いつもそんな感じなの?』クスクス

杏子『ご挨拶が遅れました。本日はお招きに預かり……』

継母『いいわ、そういうの。歓迎します。よく来てくれたわね』

 微笑みながら女性は言う。
 機嫌が良さそうで、杏子も一安心した。

継母『私は仕込みがあるので、この子の部屋で寛いでいてね?』

 それだけ言って、リビングのドアを開けて、女性はその中へと消えていく。
 
杏子『いいお母さんだね』

少女『……うん、私もそう思う』

 少し照れた様子で少女が言う。

 よし、もう少し恥ずかしがって貰おうか。

杏子『……ああ、忘れてた。「好き」だよ』ニコッ

少女『ちょ、ちょっとぉ』カァーッ

 頬をリンゴのように紅くする少女の反応で、玄関先でのやり取りは締めくくられた。
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/19(水) 00:55:25.26 ID:PNqNbSSBP
すごくいい雰囲気だが、このあとマミまど&あんさやになるんだよな、いったん
いったいこの二人に何が起きるんだろう……
274 :ほむマミ派(少女の部屋でホットミルクを飲む杏子) [saga]:2011/10/19(水) 14:44:09.94 ID:QleezhwAO


 少女の部屋で杏子は行儀良く正座している。

少女『お待たせ致しました』

 飲み物を載せたお盆を持って、少女が部屋に戻ってきた。

少女『いつものやつを』ニヤニヤ

 そう言って杏子にマグカップを差し出す。

 湯気が立ち上っている。ホットミルクだ。

杏子『いただきます』

 音を立てないように慎重に啜る。
 飲み頃の温度。当然、おいしい。

少女『お味の方は?』

 ちょっとだけ考えた。

杏子『おいしいよ、とっても』

少女『なんだ、つまんないの』ハァ

杏子『食べたり、飲んだりしてる時にはふざけちゃダメ、って育てられたので』

 上品に言い返す杏子。
 少女は「ぐぬぬ」という表情をつくっている。

 とりあえず、杏子の勝ち。

少女『勉強になりました』

杏子『わかって貰えて嬉しいよ』フフン

 同時に笑う。

少女『最近、押されっぱなしだなあ、私』

杏子『ボロが出てきたってことじゃない?』ニヤリ

 少女はちょっと考え込む。

少女『……なんか面白くないので、ちょっと攻めてみたいと思います』ウン

 そう言って、少女は立ち上がり、ベッドに腰掛ける。
 杏子は黙ってその様子を眺めていた。何故だか、落ち着かない気分で。

少女『杏子ちゃんもおいでよ』

 少女は左手でベッドをぽすんぽすんと二度叩いた。

杏子『え』ドキッ

少女『ああ、いいわ、その困惑する表情……とても』ウットリ

杏子『や、やめてよ、そういう言い方……』オロオロ

 そう言いながらも、
 杏子は腰が浮き上がりかけている自分に気づき、顔が熱くなってきた。

少女『……早く来ないと私が杏子ちゃんの上に座っちゃうよ?』ヘヘ

杏子『わかった! わかったから!』アセアセ

 杏子は慌てて立ち上がり、
 足音を響かせないようにゆっくり歩いて、少女の左隣に座る。

 少女のベッドは、杏子が想像していたより固いマットレスが敷かれていた。

少女『第一段階はクリア、だね』

 杏子の方を向いて、少女はにっこりと笑う。

杏子『第一段階?』ドキドキ

少女『……そう。当然、その次があるの』フフフ
275 :ほむマミ派(杏子ちゃん乙女モード再び) [saga]:2011/10/19(水) 19:59:00.98 ID:QleezhwAO


 少女のベッドに並んで腰掛ける二人。

 公園のベンチに並んで座る時と同じポジションである。
 それはいいのだが、杏子は身体全体が何となく熱い。そして落ち着かない。

 少女は微笑み、黙って杏子を見つめている。
 次に腰を浮かせて、杏子の方へ詰めて座り直した。

 視線は少女から逸らせない。杏子は何故か、視線を逸らせない。
 杏子は自分の膝の上に乗せている右手を握りしめ、左手で少女のベッドに体重を掛けた。

杏子『あ、あのさ……』

 ふと、自分の右手に感じるひんやりとした感触。
 見ると、少女の左手が杏子の右手に重なっているのが確認出来た。

少女『握り返して。指を絡めて』

杏子『えぇっ……』

 少女の真剣な声色と対照的に、情けない声を上げてしまう杏子。

少女『早くしないと……』

杏子『わかったって』ボソッ

 言われた通りに握り拳を解いて、少女の左手と自分の右手の平を合わせる。
 ひんやりだけではない。しっとりとしている、少女の手の平。

 膝の上に座られてはかなわないので、少女に言われるまま、指を絡めて弱々しく握る。

 華奢な手だ、と杏子は思う。
 というか、それくらいしか考えられない、ドキドキしすぎて。

 黙って杏子を見つめていた少女が嬉しそうに囁く。

少女『はい、第二段階クリア』ニコッ

杏子『う、うん』


 しばしの沈黙。


少女『……私の手、どんな感じ?』

杏子『華奢……』

少女『そ、まあいいけど』

 もう少し、褒め言葉を練りなさい、と言われた気がした。

杏子『……あたしの手は?』

少女『ぽかぽかする。私、体温低いし』

杏子『す、好き嫌いが多いからじゃ……』

少女『杏子ちゃんはさ、手続きをきちんと踏みたいほう?
   それとも、飛ばしても平気?』

 無視された。質問の意味もよくわからない。

杏子『……えっと』

少女『それじゃ、ちょっと飛ばしまーす』コソッ

 囁きと共に少女の顔が杏子の顔に近づいてきた。

 全くもって自分でもわからないが、杏子は目を瞑り、顎を少し引き上げる。
276 :ほむマミ派(少女とちゅっちゅする杏子) [saga]:2011/10/20(木) 12:00:23.48 ID:Z3JSMx0Vo
 

 佐倉杏子の人生初めてのキスはあっさりと交わされた。

 まあ、予測はついてはいたが、味はしなかった。
 感じたのは、息遣いと、熱と、柔らかさ。これも予測はついた。

 唇と唇が離れる。時間はそれほど長くはなかったはず。

 杏子は目を開けた。少女の表情が気になったからだ。
 そこから杏子の中で急速に恥ずかしさが沸き立ってきた。

 どんな不敵な表情をしているのかと思えば、
 少女は顔を真っ赤にして俯いているのだから。

 杏子は、自分から話しかけねば、という妙な義務感を抱いた。
 このまま黙っていると、自分も恥ずかしさで参ってしまいそうで。

杏子『あのさ……』

少女『初めてだった?』

杏子『え?』

少女『……杏子ちゃんに謝らなければいけないことがあるの』

 俯いたまま少女が続ける。

少女『私は初めてではありません』

杏子『……キスが、ってこと?』

少女『その先も』

杏子『そう……』

 唐突に何を言い出すのか。しかも、顔を真っ赤にして俯いたままで。

少女『あのね、杏子ちゃん』

杏子『……何?』

 少女が何を言うのかは確信できている。

少女『好き……私も、杏子ちゃんのことが好き』

 直後、電話の子機が鳴る。杏子の身体がビクッと跳ねた。
 その様子を見て、少女はニコッと笑い、立ち上がって電話を取った。

 しばらく話した後、電話を戻して少女が杏子の方に振り向く。

少女『お母さん、ちょっとてこずってるんだって。普段、料理なんてしないから』

杏子『そ、そっか……』

 訪れる沈黙。そして、それを破ったのは少女の方。


少女『……もう一回キスしてもいいかな?』


 拒む理由などその時の杏子にあるはずもなく、再び二人の距離が近づいていった。
277 :ほむマミ派(少女の家で夕食をご馳走になる杏子) [saga]:2011/10/20(木) 18:45:25.58 ID:Rjq9sPMAO


 味がしない。

 気を抜くと溜め息をつきそうになるのを、杏子は必死で堪えた。
 他人様の家で夕食を頂いているというのに、溜め息などもっての外。

 佐倉杏子は両親にそのように育てられた。

継母『……杏子ちゃん、おいしくない、かな?』

 女性が心配そうな表情で杏子に訊いてきた。

杏子『いえ、凄くおいしいです』

継母『そ。ならいいんだけど』

 そう言って、女性は自分の食事に戻る。


 四人掛けのテーブル。

 女性の向かいに少女が、その左隣に杏子が座っている。

 少女はといえば、普段通りの様子で、
 自分の皿に盛られた料理からピーマンを丁寧に取り除いている。
 杏子はそんな少女を横目に、ピーマンごと料理を口に運んだ。

 元々濃い味付けのなされている料理だったし、
 それより何より、今の杏子に料理の味などよくわからない。

 ピーマンを気にせずに食べ続ける杏子が気になったのだろう、
 少女が目の前にいる女性に失礼のない形で、杏子に問いかけてきた。

少女『おいしそうに食べるね?』

 回らない頭で杏子は考える。

杏子『……丁寧に避けるね』

少女『味が濁るのがね、イヤなのよ』

 少女の暴言を気にせず、女性は黙々と食事を続けている。

杏子『呆れた美食家だね……』

 そこで女性が堪え切れないといった様子で吹き出した。

継母『貴女たち、まるで姉妹みたいね。どっちがお姉さんか、わからないけど』クスクス

少女『……それはそうかもしれないねぇ、杏子ちゃん』ニヤニヤ

 意味ありげな少女の言い回し。
 杏子はそれには応えず、食事に集中する。

 和やかに晩餐は続けられた。
278 :ほむマミ派(考え込む杏子) [saga]:2011/10/21(金) 08:51:48.66 ID:fIhGU4MAO


 雪の勢いが増してきたようだ。

 夕食後、慌てて帰ろうとした杏子は、女性に「車で送るから」と優しい言葉を掛けられ、
 食器の洗い物が済むまで、少女とリビングでテレビを見て過ごしていた。

 杏子が洗い物を手伝おうすると、女性はこう断った。

継母『まだお礼が済んでないから』


 少女と二人きりだと、落ち着かない。
 舞い上がりそうなのと、崩れ落ちそうな感覚が、同時に杏子の全身を支配している。

 テレビの画面を睨み付けるようにして眺めていると、

少女『杏子ちゃん、杏子ちゃん』

 杏子がそちらを向くと、

少女『むぅー』

 唇をすぼめ、目を瞑り、両腕を杏子の方へ広げて、「おいで」のポーズ。

杏子『や、やめてよ……』

 弱々しく拒絶の意思を示すことしか出来ない杏子。


 少女の部屋で幾度かのキスを交わす内に、杏子は自分自身の特性を知った。

『……杏子ちゃんは、「受け」だね』

 少女が楽しそうに呟いた。
 わかりたくはなかったが、わかってしまった。

『恥ずかしがることじゃないんだよ?』

 そう言われても、杏子にとってはやはり恥ずかしい。

 少女と唇を重ねる度に身体の持つ熱が増してくる。
 余分な力が抜けて、より相手を受け入れ易くなる。
 身体の奥からじわりと何かが滲んで、
 それを意識すると、さらに潤んで、全身がむず痒くなる。

 そして、もっと続きがして欲しくなる。

 恥ずべきことではない、と少女は言った。

 それはある面では真理だろう。
 杏子もそう思うし、出来ることならそのまま流れに身を任せてしまいたかった。

 でも、出来なかった。

 時間も無かったし、今の自分には先にクリアしなければならない問題が山積みな気がして。


 洗い物が済んだようだ。

 女性がリビングに来て、杏子に言った。

継母『車のエンジンを暖めるから、あと少しだけ待ってて?』

 杏子は「はい」、とだけ答えた。

 上手く言えたかどうか、自信はない。
279 :ほむマミ派(自宅まで車で送り届けてもらう杏子) [saga]:2011/10/21(金) 23:28:51.26 ID:fIhGU4MAO


継母『狭苦しい車でごめんなさいね?』

杏子『いえ、そんなことないです』

 二座しかないスポーツカーだった。

 自分の真後ろから聞こえてくるエンジン音は、
 今まで耳にしたことがなかった類の音で、杏子の気を少しだけ紛らわす。


 別れ際の少女はあっさりとした態度で、「じゃ、またね」と微笑んで手を振ってくれた。
 杏子は自分が相応しい態度を取れていたかどうか、自信が持てないままだ。


継母『……杏子ちゃん、どうかした?』

 二人きりだ。訊くなら今しかない。

杏子『あの、初めてお会いした時のことなんですけど……』

継母『うん、それで?』

 前をしっかりと見ながら、女性が聞き返してくる。

杏子『「懲りないのね」、って何のことだったんですか?』

継母『……そのことについても、杏子ちゃんとお話するつもりだったの』

 女性は特に様子を変えることなく、返事をしてきた。

継母『あの子が学校に通ってない理由は聞いてる?』

杏子『いえ、聞いてません』

継母『そう。じゃあ、ここからは杏子ちゃんに選んで貰わないとね』

杏子『……どういうことですか?』

継母『聞くか、聞かないか』

 杏子は少し迷う。

杏子『聞かせて下さい』

 女性は意外そうな表情をする。勿論、運転する姿勢はそのままで。

継母『あの子に直接訊けない?』

杏子『……』

継母『ごめん、意地悪な言い方になっちゃった。
   ……貴女、優しいから訊かないでおいたのよね?』

杏子『いえ、そんな……』

 一呼吸置いて、女性が口を開いた。

継母『端的に言うと、閉じ込められてるの、あの子。あの家に』
280 :ほむマミ派(女性の話に耳を傾ける杏子) [saga]:2011/10/22(土) 09:55:22.81 ID:RHoXrA5AO


杏子『……どうして、ですか?』

継母『「問題行動」を起こさないように』

 女性は初めて杏子が出会った時と同じような、感情を抑えた口調で答えた。

継母『全くもって、人権無視もいいところよね。そして、私もそれに加担してるってワケ』

杏子『やめて下さい! そんな言い方……』

 思わず叫んでしまった。

 これ以上聞かなくても、問題行動、という言葉が何を指しているのかは大体想像がつく。

 それより杏子が耐えられなかったのは、
 隣の女性が自分自身を突き刺すような物の言い方を敢えて選んでいるようにしか見えないこと。

継母『貴女もあの子に同じような物言いをしたことがあったはずよ?』

杏子『……え?』

 女性は動じることなく、杏子に問い掛けてきた。

 少し間が空く。

継母『大丈夫、慣れてるし』

杏子『あっ』

 思い出した。

 初めて少女の家に招かれた時、
 杏子は確かにその言葉を少女に対して口にした。

 女性は一度溜め息をついて、また話し出した。

継母『あの子言ってたわ、
   「杏子ちゃんみたいないい子が、なんでそんなことを口にしなくちゃいけないのかわからない」って』

杏子『あの……』

継母『私もそう思う。心の底から、本当にそう思う』

 杏子は何も言えなくなった。
 ただ、黙って女性の横顔を見ている。

 また溜め息をついて、女性は口を開いた。

継母『……杏子ちゃんも、そしてあの子も、私から見て本当にいい子よ。間違いなく』

 でも、それだけじゃダメなの、と女性は付け加えた。

 杏子は相変わらず、返す言葉が見つからない。
281 :ほむマミ派(女性に打ち明けられる杏子) [saga]:2011/10/23(日) 08:20:25.04 ID:ran5En9AO


 杏子の家の前まで到着してしまった。

 その後、二人の間では会話が弾まず、杏子は女性に掛けられる言葉を探し続けていた。

継母『……着いたわよ、無事に』

 女性はそう言って、車を道路脇へ寄せ、ハザードランプを点けた。

杏子『……あの』

継母『何? 杏子ちゃん』

 杏子からの問いかけを受け、女性はシフトノブをニュートラルにし、サイドブレーキを引く。

杏子『どうして名前を呼んであげないんですか?』

 杏子は少女の名前を口にして、女性に尋ねる。

 先程の会話でも、女性は「あの子」としか言わなかったし、
 少女に対しても「貴女」としか呼びかけるところしか、杏子は見ていない。

継母『資格が無いもの、私には』

 女性は自嘲気味に笑って答えた。

杏子『そんな……資格って……』

継母『……言ったでしょう? 「加担してる」、って』

杏子『え?』

 ……まさか。

継母『察しが良いわね。「仕事」なの、それが、私の仕事』

杏子『それって、もしかして……』

継母『知ってると思うわ、勘のいい子だから。
   勿論、私からは何も言ってないし、あの子も私に訊いてはこない。
 ……大体、喋った時点で契約違反だもの、私』

 女性は淀みなく杏子の質問に答え続ける。

 杏子は再び言葉を失った。
282 :ほむマミ派(黙りこくる杏子) [saga]:2011/10/23(日) 13:39:56.42 ID:ran5En9AO


継母『本当ならね、杏子ちゃんにお礼を言わなくてはいけないの』

継母『あの子と友達になって、仲良くしてくれてる貴女に、お礼を言わなくてはいけないの』

継母『私の作った下手な料理を、文句も言わずに食べてくれた貴女に、ありがとう、って言いたいの』

継母『でも、それはしてはいけないの。私は貴女にお礼を言えない立場なの』

継母『貴女があの子に惹かれていて、あの子が貴女に惹かれていることが、
   今日、私にはハッキリとわかってしまったから出来ないの』

継母『おかしいじゃない。たった一度間違いを犯しただけで、なんで自由を奪われなくてはならないの?
   人の気持ちをちゃんと考えられる、あんなにいい子がどうして踏みにじられなければいけないの?』

継母『でも、私はそんなこと言ってはいけないの。
   それを承知で引き受けた仕事だから、そんなことを言う資格、私にはないの』

継母『私にはお金が必要で、そこは譲れないの。
   ……貴女たち二人の関係と、私の収入を天秤に掛けた時、優先されるのは収入の方なの』

 女性の目から涙が溢れていた。

継母『……これはね、あの子が杏子ちゃんと出会ってからの話なんだけど……』

継母『あの子がね、私のことを、お母さん、って呼んでくれるようになったの』

継母『最初の頃は恥ずかしそうに、でも、ちょっと嬉しそうに』

継母『本当は私も物凄く嬉しい筈なのに、辛いの。
   その場はなんとかやり過ごせても、後で涙が止まらなくなるくらいに、辛くて、辛くて、仕方がないの』

継母『……杏子ちゃんに話してはいけないことなの。こんなこと、本当は』

継母『でも、無理。もう、一人では抱えきれない……私には、無理』

継母『貴女にはいくら感謝してもし足りない筈なのに、私にはそれが出来ないの』

継母『今日来てくれてありがとう、って心の底からは言えないの。私にはそんな資格なんてないの』

継母『ごめんなさい、杏子ちゃん。本当にごめんなさい……』

 涙を流しながら謝り続ける女性の言葉を、杏子は黙って聞き続けた。
283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/23(日) 14:17:17.40 ID:FCJCliyfP
重いな……
284 :ほむマミ派(振り返る杏子) [saga]:2011/10/24(月) 07:21:46.23 ID:MZm53/7AO


 思い返せば、少女の口から、自分の父親の話が出たことは一度もなかった。

 自分はどうだっただろう? 杏子はこの半年余りを振り返ってみる。


『父さんは融通の利かないところも多いけどさ、あたしは尊敬してるんだ。
 だって、言葉を尽くすことを諦めないできたからこそ、今の家族みんながあるんだし。
 ……まあ、一日の食事がリンゴ半分、ってのはもうゴメンだけどね』

 少女は優しく笑って、こう答えた気がする。

『最後に茶化さなくてもいいんだよ?』

 杏子ちゃんはお父さんのことが大好きなんだね、とも言ったはず。

 まるで自分のことのように喜んでいる少女の姿を見て、杏子は得意気になっていたのかもしれない。


『母さんったら、あたしがピーマン嫌いだ、って言ったら、
 夕食にピーマンの肉詰めを二晩続けて出すんだよ?
 「杏子は挽き肉好きでしょう?」、とか言って、微笑みながら……』

 面白いお母さんだね、と少女は笑いながら、

『……でも、少し羨ましいな。うちのお母さん、私のイヤがることは絶対にしないもん』

『えー、そっちの方が羨ましいよ、あたしは』

『ふふ、そうかもね』

 二人して笑った。


 詳しいことはわからない。杏子には、わからない。

 でも、ひとつだけ、ハッキリとわかることがある。



 あたしは、……あたしは救い難い大間抜けだ。
285 :ほむマミ派(少女を迎え入れる杏子) [saga]:2011/10/25(火) 10:57:06.55 ID:0stnTwoeo


 雪解けの季節。


 杏子はあれから少女に会う機会が極端に減った。
 実際のところ、杏子は受験を控えていたし、
 少女の方も前ほど積極的に杏子に会おうとはしなくなった。
 
 偶に会っても、前のように話が盛り上がらない。いつもの公園で、いつものベンチなのに。
 杏子の中にも、それから、少女の中にも、上手く言い表せない何かが溜まっているような感じ。
 

 当然、あの日からキスをすることもなかった。

 これはこのまま終わってしまうことなのかもしれない。
 そういった諦めの気持ちが杏子の中で膨らんできた頃のこと。


少女『杏子ちゃん、ごめんね。来ちゃった』
 
 少女が杏子の家まで訪ねて来た。

杏子『ああ、よく来てくれたね。嬉しいよ』

 白々しい。

 あれだけ家に来ないよう、遠回しに言葉を尽くしたのに。
 一体、今の自分は何を思って話しているのか。

少女『せっかく来たから、教会の中を案内して欲しいな』

 にっこりと笑って少女は言うけれど、杏子は上手く笑えない。
286 :ほむマミ派(少女を案内する杏子) [saga]:2011/10/25(火) 11:17:45.05 ID:DCVQb7gAO


 二人して、教会の中を歩きながら話す。

少女『誰にも見られないように来たから、安心して?』

 悪戯っぽく笑いながら、少女が言った。

杏子『……来ちゃダメ、とは言ってないでしょ』

少女『でも、迷惑そうな顔してる』

杏子『気のせいだよ、そんなの』

 気のせいじゃない。

 少女の素敵な笑顔につられて笑えないんだから、気のせいなんかじゃない。

 自分はひどい嘘吐きだ。

少女『……ステンドグラス、綺麗だね』

 少女は話題を変えた。

杏子『君が食いつくところ、多分、それくらいでお終いだよ? ウチ』

 名前を呼べばいい。何故、出来ない?

少女『……杏子ちゃん、あの日、お母さんと何を話したの?』

 ステンドグラスを眺めながら、普段通りの口調で杏子に訊いてきた。

杏子『あの日、って?』

 白々しい。本当に白々しい。
287 :ほむマミ派(少女に押し切られる杏子) [saga]:2011/10/25(火) 11:52:34.59 ID:0stnTwoeo


少女『やっぱり杏子ちゃん、聞いたんだね』

杏子『話がよくわからないよ』

少女『嘘だよ。私にだって、それくらいわかるもん』

 全くだ。少女が気付かないわけない。

杏子『……ねえ、案内するところ、もう無いんだけど』
 
 無理に話題を変えようとする。

少女『私にはあるの。あそこで私の話を聞いて欲しい』

 そう言って、少女は懺悔室を指差した。

杏子『ウチ、遊び場じゃないんだよ? わかるでしょ、それくらい』

少女『私は真剣なの』

 真っ直ぐ杏子の方を向いて少女が言った。目に宿る、強い意思。

杏子『だったら、父さんが帰ってくるまで……』

少女『杏子ちゃんじゃなきゃダメなの。私は杏子ちゃんに聞いて貰いたいの』

 ダメだ。ダメに決まってる。

 しばしの沈黙。

杏子『……わかったよ。話を聞くだけなら』

 ダメだ。こんなこと、絶対にダメだ。
288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/25(火) 12:17:52.21 ID:vSfzSfjXP
今二人とも何歳だろう?
杏子が高校受験前だから14〜15ぐらいかな
まどかは年上設定だっけ杏子より
じゃあマミさんとあったのは高校になってからなのかな?
289 :ほむマミ派(>>285訂正) [sage]:2011/10/25(火) 13:26:32.42 ID:DCVQb7gAO

×受験を控えていた

○受験を翌年度に控えていた

>>288
話の都合上、まど、さや、ほむ、あんは同じ学年にしました

マミさんとの出会いは社会人になってからということで
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/25(火) 20:43:07.36 ID:KIVT0YEKo
あれ、でもVIPのほうのスレだとキュゥべえの存在知ってたり(ry
まぁ複数回バトンタッチされてたから若干の矛盾はしょうがないのか
291 :ほむマミ派(懺悔室にて) [saga]:2011/10/25(火) 22:45:12.08 ID:C/NDi0/zo


少女『……学校の先生だったの。私が初めて好きになった人』

少女『先生も私のことを好き、って言ってくれた時は本当に嬉しかった』

少女『自分が少数派で、しかも決して周りに認められるような相手じゃないってことは承知してた』

少女『「承知してる」、って認識自体が甘かったと今では思うよ。うん、本当に甘かった』

少女『……先生の方もね、恋愛そのものを避けるようにしてきたらしくて』

少女『運命が私たちを引き寄せたんだね、って私が冗談を言ったらさ……』

少女『先生ったら、顔を真っ赤にして俯いて、「うん、私もそう思う」とか言うんだよ?』

少女『可笑しいのと同時に、先生のことが物凄く可愛く見えて』

少女『ああ、性別とか、年齢とか関係なく引き合うことってあるんだな、って思えたの』

少女『デートなんておおっぴらに出来ないから、先生のアパートに勉強を教わりに行く、って名目で』

 少女の言葉が一旦止まる。

少女『……杏子ちゃん、聞いてる?』

 衝立の向こう側から少女が問い掛けてきた。
 表情は窺えない。こちらも、向こうも。

杏子『うん、聞いてる』

 ようやく、少しだけ優しい声が出せた。
292 :ほむマミ派(懺悔室にて) [saga]:2011/10/25(火) 23:49:50.30 ID:DCVQb7gAO


 杏子の返事から一息ついて、少女はまた語り出す。

少女『……キスも沢山したし、それ以上のこともいっぱいしたよ?』

少女『杏子ちゃんに言うのもなんだけど、凄く楽しかったし、幸せだったな』

少女『二人して協力して、バレないように、
   バレないように、って慎重にやってたつもりだったのに……』

少女『やっぱり、バレちゃうんだよね。そういうのって』

少女『元々は、私ばかりが特別扱いされてる、
   先生に贔屓にされてる、っていう抗議から始まったんだけど……』

少女『約束事のような流れで、「私と先生がデキてる」、
   みたいな噂が出てね……まあ、事実でしたが……』

 そこで少女は自嘲気味に笑った。

 少女の「母」の笑い方に似ている、と杏子は思う。

少女『私も、先生も、舞い上がってて、バカになってたんだ、きっと』

 聞かなくても、大体はわかる。
 でも、聞かなくてはいけない。

 杏子はそう感じた。

少女『問い詰められた時に否定しなかったの、二人して。笑っちゃうでしょ?』

 杏子は意識して少し間を空ける。

杏子『……ううん、そんなことない。そんなことないよ』

 さっきより、更に優しく答えられた気がする。

 自身の声色の穏やかさに杏子は驚いた。
293 :ほむマミ派 [sage]:2011/10/26(水) 04:33:54.57 ID:cS+nsdbAO
>>290
読み返したら、キュゥべえって一回だけ言ってますね。多分、本ルートの人だと思う

分岐した時点で、魔法少女というものからは完全に切り離されてます。
というか、よく似た、別の世界、別の話ですね

この話のあんマミ初顔合わせは>>146

そう言えば、本ルートって終わったのかなぁ……
294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/26(水) 05:17:08.45 ID:JFuPx7kKP
本ルートは一回過去編が立ってるのみたけど、それ以降はみてないな
書き主がゲリラ的に立てるし、2〜3時間書いたら寝ちゃうから、保守人いないとすぐ落ちるんだよね
だから実際には新スレで完結してても、きちんと見届けてる人は少ないと思う
295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/10/26(水) 05:32:14.09 ID:3ONS8Muj0
本ルートはあのまま眠らせるには惜しい作品だな
書き主が続き書く気ないのなら自分がスレ立てして書こうかなっておもいはじめたわ
296 :ほむマミ派(懺悔室にて) [saga]:2011/10/26(水) 16:49:53.31 ID:RHM1Qu4bo


少女『……結局、先生は仕事そのものを辞めなきゃいけなくなって。
   なのに、「貴女は自分を責めてはダメ」、って私の心配までしてくれて』

少女『流石に凹んだな。だって、責任の半分は私にあるのに、
   表立ったお咎めは一切無しでそのまま学校に通えそうだったから』

少女『……だから、お父さんに「中学を卒業したら、君は自宅で勉強しなさい」、
   って言われた時、ちょっとだけ嬉しくて。……倒錯してるなって、自分でも思ったよ?』

 少女の口から、父親について言及があったのはこれが初めてだ。

少女『それで、中学を卒業して、引越しして、家の中で勉強するようになったってワケ』

 少女は軽く溜め息をついた。杏子は話の再開を黙って待つ。

少女『……私のお母さんね、お父さんの部下だった人なの。勿論、今のお母さんのことだよ?』

少女『「今日から、私が貴女のお母さんよ」みたいなことは言わなかった。
   一言、「よろしく」、っていう素っ気無い挨拶だけ。その時の私にはそういうのが有り難かった』

少女『大体、引越しと同時に再婚なんて、タイミング良過ぎだよね?
   でも、お母さんのことは嫌いじゃなかった。それは幸運なことだったと思う』

 少なくとも私にとっては、と付け加え、少女は黙り込んだ。

杏子『……それで?』

少女『お母さんのこと、しばらくは名前をさん付けで呼んでたんだけど、
   杏子ちゃんに言われてから、「お母さん」、って呼ぶようにしたんだ』

 胸が痛い。杏子は久しぶりにその感覚を味わう。
297 :ほむマミ派(懺悔室にて) [saga]:2011/10/27(木) 04:35:47.79 ID:DL+HCIKAO


少女『……最近、お母さんの様子がちょっとおかしいの』

杏子『どんなふうに?』

 思わず訊いてしまった。

少女『今日もね、杏子ちゃんの家に行くから、って言ったら、
   「いちいち言わなくていいわ」、って返事が返ってきて』

少女『前はどこへ行くにも、必ず尋ねてきたのに、だよ?
   ……でも、冷たくなったわけじゃないの。物凄く優しいの、前よりもずっと』

少女『玄関で私を見送る時もね、
   「貴女は本当にいい子よ」とか、いきなり言い出して。びっくりしちゃった』

 少女は苦笑いしているみたいだ。

少女『本当にいい子だったら、
   お母さんにあんな苦しそうな顔はさせない筈なんだけどな……』

 杏子は何も応えられない。
 少女もそれをわかっていて、喋り続けているのだろう。

少女『……ねえ杏子ちゃん、あの日、お母さんと何を話したの?』

 さっきと同じ質問。もう、はぐらかせない。

杏子『言えない』

少女『そっか。それじゃ、仕方がないね』

 じゃあ質問を変えます、と少女は明るい声で言った。

少女『杏子ちゃんは私と会うの、もうイヤですか?』

 訪れる沈黙。

杏子『……あの』

少女『イエスか、ノーで答えて欲しいな』
 少女の声は震えている。

 杏子は言葉が見つからない。
 
少女『……杏子ちゃんは、私のこと、嫌いになっちゃった?』

杏子『そんなわけないよ!』

 言葉がないのなら、動くしかない。

 杏子は立ち上がり、少女のいる側へと急いで移った。
298 :ほむマミ派(走り込む杏子) [saga]:2011/10/27(木) 05:59:06.02 ID:DL+HCIKAO

 スポーツジム ロベルタ


 一時間十三キロのペースで佐倉杏子はランニングマシンの上を走っていた。
 かなりのハイペースだが、今の自分には丁度いいくらいだ、と杏子は思う。

 そんな杏子の姿を見た顔見知りのトレーナーが、杏子の方へニヤニヤしながら寄ってきた。

トレーナー「貴女、今日デートなんじゃなかったっけ?」

杏子「……いや、いいんす。これで……」タッタッ

 流石に普通に会話をするのはキツいので、最小限の受け答えに留める。

トレーナー「いいわぁ、若いって」ウフフ

杏子「……」フッフッ

 若い、か。

 今の自分よりずっと若い頃の事を思い出していたので、上手い切り返しが思いつかない。

トレーナー「アタシだったら、仕事もそこそこにして、夜に備えるけどな」

 そう言って、トレーナーは杏子を面白そうに見ている。

杏子「一応……備えてる、つもりですけど……」フッフッ

トレーナー「……そう。そんな相手なんだ、今日の人」フフ

 無闇に鋭い。そして、非常におせっかいだ、と杏子は感じる。

トレーナー「今の彼氏に悪いとは思わない?」

 少し考えた。

杏子「……彼氏じゃ、ないんで」タッタッ

トレーナー「なるほどね」

杏子「……仕事、いいんすか?」フッフッ

トレーナー「アタシもね、デートなの、今日。それで省エネ中」クスクス

 今の彼にメロメロなの、とトレーナーは笑いながら言う。

杏子「……メロメロ、すか」ハッハッ

トレーナー「いと、メロメロ」ククク

 機嫌が良さそうに笑う屈強な体つきの男性を横目に、杏子はひたすら走り続ける。
299 :ほむマミ派(想い出) [saga]:2011/10/27(木) 07:26:19.34 ID:DL+HCIKAO


杏子『まぁ、ぶっちゃけるとね、レズなんだわ、あたし』

さやか『……』

まどか『……』

ほむら『……』ホムゥ

杏子『あれ? 反応薄いね?』

さやか『そ、それで?』

杏子『で、あたしの実家は教会でさ』

さやか『ええっ!!?』

まどか『さやかちゃん、失礼だよ……』

ほむら『つ、続きをお願いします……』wktk

杏子『んで、ある日、女の子とキスしてるとこを親父に見つかって』

ほむら『!!』

まどか『ほむらちゃん?』

さやか『……で?』

杏子『同性愛、ってタブーなんだわ、教義の上で』

まどか『ああ、聞いたことあるかも』

さやか『……で、どうなったの?』

ほむら『……』ゴクリ

杏子『親父が滅茶苦茶に怒ってさ、「魔女だよ、お前は」、って言われたから家を出た』

まどか『……』

ほむら『……』

さやか『……それで?』

杏子『終わり』

さやか『……あっさりしすぎじゃね? それ』

杏子『なに、あんた、あたしがその子と何回キスしたか、とか知りたいワケ?』ニヤニヤ

さやか『バ、バカ、違うし……!』

ほむら『……』ゴクリ

まどか『……ほむらちゃん?』
300 :ほむマミ派(身支度を整える杏子) [saga]:2011/10/27(木) 08:37:08.41 ID:DL+HCIKAO

 ロベルタ シャワールーム


 一時間きっちりと走り込んだ後、杏子はシャワーを浴び、バスタオルで全身を拭きあげた。

 下着を身に付け、洗面台の鏡に映る自分の姿を見て、ふと思う。

杏子(髪切らなきゃ)

 腰まで伸びた、少し癖のある赤毛。

 アパートに一緒に住んでいた美樹さやかを追い出すようにしてからひと月近く経つが、髪はそこから伸ばしたままだ。

 髪を切ってくれる同居人が居なくなったのだから、当然のことではある。

杏子(あいつ、まだ金取りに来てないな)

 そんなことを思いながら、杏子は髪を乾かした。

 あらかた乾いた髪を仕方なく自分でブラッシングする。
 一応デートなのだから、相手に失礼があってはいけない。

杏子(いっそのこと、短くしちまおうかな……いや、やめよ)

 ロッカーまで戻り、服を着る。

 黒無地のTシャツ、軽いダメージ加工の入った、ブーツカットのジーンズ、薄い灰色のスウェット。

 色気はない。まるでない。そんなことを自分で思った。

 ロッカーのドアの内側に付いた鏡を見ながら、長く伸びた髪を黒のリボンで一纏めにして、身支度はおしまい。

 あっさりとしている。実にあっさりとしている。
301 :ほむマミ派(さやかとばったり出くわしちゃう杏子) [saga]:2011/10/27(木) 23:08:51.64 ID:DL+HCIKAO

 街中


杏子(まだ四時間近くあるな、約束の時間まで)

 現在、午後二時過ぎ。
 普段だったら勤め先の鯛焼き屋で、雇われ店長として働いている時間である。
 
 今日は休みを元々入れてあった。
 平日でないと中々休みを取れないのは、立場上仕方のないことだ。

杏子(ゲーセン……いや、金が掛かることはしばらくカットしないと)

杏子(でも、家に居ても落ち着かねーし……なんか)

杏子(かといって、あのままジムに居たら、ヘトヘトになるまで身体動かしちまうし……多分)

杏子(図書館……ないな……)

杏子(……こうやって考えると、あたしって無趣味だなぁ)

 行くあても無く、ただぶらついていると見知った顔が目に入ってしまった。

杏子(あ! さやか……)

 鍛え抜いている杏子の脚力なら、気付かれないうちに遠くへ走り去れた……はず。 
 なのに、脚が動かない。視線も動かせない。

杏子(なんであいつがこんな時間に……)

 あたしには関係ない、という声が杏子の頭の中で弱々しく響く。

杏子(会社、どうしたんだろ……)

 『他人』の心配をしている場合なのだろうか?
 このまま突っ立ってると、見つかる。

杏子(ちょっと、痩せたか?)

 距離が近づく。もう逃げ出しても遅い。

 視線がぶつかる。一瞬で曇る相手の表情。
 ほぼ同時に杏子の胸にチクリと痛みが走った。

杏子「……あ」

 佐倉杏子史上、屈指の情けない呻き。
302 :ほむマミ派(想い出) [saga]:2011/10/28(金) 23:20:35.32 ID:Je0jvjhYo


さやか『大体、見つかった、ってどこで?』

杏子『教会の懺悔室』ボソ

ほむら『!!!』

まどか『ほむらちゃん?』ジロッ

ほむら『ご、ごめん』

まどか『わたしに謝られても困るよ……』

さやか『んー、見つかって怒られても、それじゃ文句は言えんわ』

杏子『……まあ、そうだね』

さやか『な、なんだよ、素直じゃん』

杏子『人から改めてそう言われると、確かにその通りだ、と思っただけ』

まどか『……』

ほむら『……』

さやか『……あ、あれだよ、あんたも悪いかもだけど、魔じ……』

ほむら『きょ、杏子さんっ!』

杏子『ん? 何?』

ほむら『ひとつ、質問してもいいですか?』

杏子『いいよ、別に』
303 :ほむマミ派(泣かせる杏子) [saga]:2011/10/29(土) 23:02:59.09 ID:R2zfgssAO


 普通の表情をして歩いていた美樹さやかが、自分を見た途端に顔色を変えた。
 
 これまでの経緯を考えれば当然のことなのに、杏子にはそれがショックだった。
 そして、ショックを覚えた自分にも、やはりショックを覚えてしまう。

さやか「……ほんと、転校生、最悪だわ」

 杏子には意味がわからない。

杏子「なんだ? それ」

 とりあえず、素直に訊いてみた。
 当たり前に話しかけている自身の滑稽さを度外視して。

さやか「何、普通に話しかけてんの? ナンパとか、マジで要らないんだけど」

 怒り心頭といった顔つきと口調のさやか。
 杏子はさやかのこの表情も、この喋り方も、よく見知っている。

 おかしな言い方だが、少し懐かしい。

杏子「……だったら、行けよ……あたしもあんたに話なんて……」

 対して、弱々しい自分の声。
 以前だったら、ここから杏子もエキサイトしていくパターンなのに、全く持って冴えない。

 これまたおかしな言い方だが、実に情けない。

さやか「なんかさ、ガッカリだわ。
    もうちょっとマシなやつだったはずなんだけど、あんたも、まどかも」

杏子「おまっ、自分はまどかとキスとかしといて……」

さやか「関係ないよね? あたしとあんたは他人なんだから」

杏子「あ、ああそうだよ。関係なんかねーよな」

 杏子のキレのない返事を受け、さやかは俯いて黙り込んだ。

 次、さやかが顔を上げたときには、目にいっぱいの涙を溜めているに違いない。
 そんなことを思いながら、杏子も相手に合わせて黙り込む。

杏子(何やってんだ、あたし……)

 十秒もしないうちにさやかが顔を上げ、杏子を睨みつけた。
 予想通り、溢れんばかりの涙を両眼に携えて。

 杏子はその姿を見て、何故か急に伝えるべきことを思い出した。

杏子「……あの」

さやか「んじゃ、この時間帯にここいらを歩かなきゃ……」

 ……いつもそうだ、こいつは。

 肝心な時に限って、人の話なんて聞きやしない。
304 :ほむマミ派(ボサッとしちゃう杏子) [saga]:2011/10/30(日) 09:47:51.49 ID:sn0ard7AO
 さやかは言いたいことを言うと、来た道を戻るように走り去る。

杏子「おい、待てって……」

 もし、同じ立場だったら待つワケないよな、と思いながら杏子は呼び止める。
 自身の声の弱々しさが相変わらず情けない。そして当然さやかは止まりはしなかった。

杏子(あいつ、脚遅くなったなあ)

 さやかの後姿を見えなくなるまでぼんやりと眺めて、杏子はそんなことを心の中で呟く。
 あくまで、今の佐倉杏子から見た感想で、実際はそんなこともないのだが。

 それより、追いかけてさやかを捕まえて、言うべきことを言う。
 何故、それが出来ないのか。杏子はわかっているくせに、わかっていない振りをする。

杏子(……ま、いっか。次で)

 次、ってなんだろう? 杏子は考えない。気付いていて、わかっているくせに。

 我ながら、とぼける、ということが本当に下手だと杏子は思う。
305 :ほむマミ派(想い出) [saga]:2011/10/30(日) 09:49:16.35 ID:EUjkiNeco


杏子『んで、質問って何?』

ほむら『あ、あのですね、杏子さんのお父さんは今どうされてるんですか?』

杏子『……』

さやか『えぐい質問するなあ……』

まどか『さやかちゃん、静かにしよ?』

杏子『……流行らない教会で流行らない説法を続けて、家族三人細々と暮らしてんじゃね?』

ほむら『そ、そうですか。……もうひとつ訊いてもいいですか?』

杏子『……いいよ、別に』

ほむら『その……きょ、杏子さんがキ、キスをされた方は今どうされてるんでしょう?』

杏子『……』

さやか『……』

まどか『……』

ほむら『……あの、こ、答えたくなかったら……』

杏子『家でテレビでも見てんじゃねーの。知らねーけど』

ほむら『……そ、そうですか』ニコッ

さやか『え? 今の答えに微笑む要素あったか?』

まどか『わたしもちょっと気になるような……』

ほむら『えっと……杏子さんにとって、お、お二人とも大切な方なんだな、ってわかったから……』ニコニコ

杏子『は? 何いってんのあんた? 話聞いてた?』ギロッ

さやか『おいやめろよ、威嚇すんの。怖が……ってないね、別に……』ハテ

まどか『……ほむらちゃん?』

ほむら『……』ニコニコ

杏子『……』チッ
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/30(日) 10:08:45.70 ID:bFPgpCt9P
ほむほむ、結構このころから黒いなww
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/10/30(日) 13:56:34.08 ID:fB7ki8sy0
ほむほむ分かっててやってんだろww
308 :ほむマミ派(職場に顔を出す杏子) [saga]:2011/10/31(月) 19:13:32.32 ID:MpdnHZXAo

 鯛焼き屋


 なんとなく、来てしまった。

 杏子は見滝原に三店舗ある内の一番古い店を任されている。
 駅の近くのビルの一階にあり、立地条件は中々良い。
 
 杏子は年齢は若くても、見習い時代から数えればもう十年以上のキャリア。

 店番の店員は二名。『焼く奴』と『売る奴』。
 杏子は焼く奴に声を掛けた。

杏子「仕事してっか?」

バイト「へい」

 二十歳に満たない男性アルバイトが珍妙な返事を返してきた。

杏子「あんた、お客様にはそういう口の聞き方を絶対すんなよ?」

バイト「はい」

杏子「……まぁいいや。リンゴジャムを二つ。ホイップ付きで」

バイト「出来れば、つぶあんのクオリティを見てもらいたいんすけど?」

杏子「生意気言うな。いいから早く出せっつうの」

バイト「へい」

 杏子は反応しなかった。

 いつもだったらヘッドロックを決めているところだが、そんな気にはなれない。
 それにこのバイトは杏子のそれを心待ちにしている様子が窺えるので、もう止めようと思っている。

 売る奴がせっせと鯛焼きを紙袋に詰め、杏子へ差し出す。こちらは女性。杏子よりも年上だ。

杏子「はい、三百五十円」

 杏子は小銭を出す。
 その姿を見て、焼く奴が杏子に話し掛けてきた。

バイト「おごりでいいっすよ」

杏子「おめー、胃が空になるまで鳩尾殴り続けるぞ?」

バイト「丁度頂きます」

 杏子は紙袋に入った鯛焼きを手に、噴水公園へ向かう。
309 :ほむマミ派(座り込む杏子) [saga]:2011/10/31(月) 23:05:30.77 ID:X3uLdc2AO

 噴水公園


 歩いてばかりだ。
 きっと考えることを身体がイヤがっているのに違いない。

 誰も座っていないベンチを見つける。
 無意識の内に右側を空け、杏子はそこへ座り込んだ。

杏子「いただきます」

 小さく呟いて、一つ目の鯛焼きに頭からかぶりつく。

杏子(焼きすぎ……)

 そう思いながらも、一緒に頼んだホイップをつけることなく、あっという間に食べ終えた。
 二つ目は手で千切りながら、緩く溶かれたホイップを絡めて一口ずつ食べる。

杏子(でも、これをつけながらだと、悪くはない)

 ただ、良くもない。

 一時間も走り込んだのだ。ジャッジが甘くなって当然である。
 鯛焼きを二つ食べ終わっても、何も変わらない。そんな気持ちにしかなれない。

 杏子の気持ちとは関係なく、良く晴れ渡っていた。
 空を仰いで、しばらくそのままの姿勢を保つ。

「杏子さん?」

 少年の声が聞こえた。杏子はそちらを向く。
 杏子の知人の中で、数少ない『男の子』。

 鹿目タツヤだ。

杏子「ああ、久しぶり」

タツヤ「隣、座ってもいいですか?」

杏子「別に、あたしのベンチじゃねーから……」

 言い終わる前に、タツヤは杏子の右隣に座り込む。制服姿だ。

杏子「サボり?」

タツヤ「だったら良かったんですけどね」

 そう言いながら、タツヤは右側へ視線を向けた。杏子もそれに倣う。

杏子「……なんかあたし、あの髪の長い子に睨まれてる気がすんだけど?」

 短い期間ではあったが、杏子も袖を通したことのある制服が目に入る。
 女子ばかりが三人ほど。その中で一際綺麗な子に、杏子はじっと見られていた。

タツヤ「杏子さんに見とれてるんですよ、きっと」

杏子「笑えねーな、それ」

 笑えない。本当に笑えない。
310 :ほむマミ派(業務連絡) [sage]:2011/11/01(火) 12:49:24.01 ID:NWwDctsAO
サーバ移転の表記が出なくなるまで更新をストップ致します

誤字、脱字、余字、改行ミスに気を付けた上で書きためます

ちゃんと終わりまで書きますので、読んで下さっている方はしばしのお待ちを……

サーバを移転しました@荒巻 旧サーバ:http://vs302.vip2ch.com/
311 :ほむマミ派(想い出) [saga]:2011/11/02(水) 20:24:17.50 ID:lIiKAM6AO


さやか『……あんたさぁ、やっぱもう一回家に帰ったほうがいいんじゃない?』

まどか『わたしもそう思う……』

ほむら『……』

杏子『……るっせぇなぁ、あんましつこいと、また万引きすっぞ?』

さやか『意味不な脅しをかけんな! 一緒に謝りに行くの、どんだけ大変だったと思ってんだ!』

杏子『はっ、別に頼んでねーし、そんなん』フン

さやか『なんつー態度だよそれ! ただでさえ、こっちは受験控えてんのに!』ムカッ

まどか『さ、さやかちゃん』オロッ

杏子『知らねーよ。大体あたしには関係ない話だしねぇ? お受験? 勝手にすればぁ?』ヘッ

ほむら『き、杏子さんっ』アセッ

さやか『……このぉ!』ガタッ

杏子『やんのかコラ!』ガタッ

まどか『ダメだよ、二人とも!』バッ

ほむら『か、鹿目さん、危ないよ! し、しばらく放っとこ?』ガシッ

まどか『でも!』グイッ

ほむら『騒ぎに気付いて、せ、先生がすぐに来るから! ね?』ギュッ

まどか『そんな……!』

ドタン! バタン!

さやか『んのっ! っざけんなよ! 取り消せ!』グイグイ

ドタン! バタン!

杏子『そっちがざけんな! 関係ねーから、ねーっつってんだ!』グイグイ

ドタン! バタン!

教師『……何をしてるの! 貴女たち!』バタバタ
312 :ほむマミ派(想い出) [saga]:2011/11/02(水) 20:24:19.07 ID:IyXh71t3o


さやか『……あんたさぁ、やっぱもう一回家に帰ったほうがいいんじゃない?』

まどか『わたしもそう思う……』

ほむら『……』

杏子『……るっせぇなぁ、あんましつこいと、また万引きすっぞ?』

さやか『意味不な脅しをかけんな! 一緒に謝りに行くの、どんだけ大変だったと思ってんだ!』

杏子『はっ、別に頼んでねーし、そんなん』

さやか『なんつー態度だよそれ! ただでさえ、こっちは受験控えてんのに!』 ムカッ

まどか『さ、さやかちゃん』 オロッ

杏子『知らねーよ。大体あたしには関係ない話だしねぇ? お受験? 勝手にすればぁ?』 ヘッ

ほむら『き、杏子さんっ』 アセッ

さやか『……このぉ!』 ガタッ

杏子『やんのかコラ!』 ガタッ

まどか『ダメだよ、二人とも!』 バッ

ほむら『か、鹿目さん、危ないよ! し、しばらく放っとこ?』 ガシッ

まどか『でも!』 グイ

ほむら『騒ぎに気付いて、せ、先生がすぐに来るから! ね?』ギュッ

まどか『そんな……!』

ドタン ! バタン !

さやか『んのっ! っざけんなよ! 取り消せ!』 グイグイ

ドタン ! バタン !

杏子『そっちがざけんな! 関係ねーから、ねーっつってんだ!』 グイグイ

ドタン ! バタン !

教師『……何をしてるの! 貴女たち!』 バタバタ
313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/11/02(水) 20:42:59.97 ID:zqzPacBjo
回想でわかってる部分だけだと、まどほむって昔からあまり仲良くないのな
314 :ほむマミ派(愚痴) [sage]:2011/11/02(水) 21:45:12.78 ID:lIiKAM6AO
ミスしないようにと思ったらこれだよ……サーバの調子おかしいすね

>>313
まあ、おいおい……
315 :ほむマミ派(公園にて杏子) [saga]:2011/11/03(木) 23:43:07.09 ID:DgaBA9DAO


杏子「で、あんた達は何してんの? ここで」

タツヤ「美術部のスケッチの下見、らしいです」

杏子「それって、スケッチした方が早くね?」

タツヤ「僕もそう思います」

 言いながら、タツヤはクスッと笑う。

杏子「……余裕あんな。羨ましいよ、ホント」

 素直な感想を伝えた。
 頭を使って話すことを、杏子は正直だるいと感じている。

タツヤ「杏子さんはどうしたんですか? ここへは一人で?」

杏子「まぁね。人と会う約束はあんだけどさ……それまで、暇」

 余計なことは言わない方が良い。そう直感した。

タツヤ「じゃあ、しばらくはお話出来ますね。嬉しいなぁ」

杏子「……あんたが嬉しいのは別にいんだけどさぁ、ずっと睨まれてんだけど?」

 先ほどから、同じ少女の視線を感じ続けている。
 他の女子二人はその様子を面白そうに見ていた。杏子にとっては好ましくない雰囲気。

 と思ったら、杏子の方を真っ直ぐ見ながら、その少女が近付いてきた。
 隣のタツヤは少しイヤそうな表情。

少女「あの」

 杏子に向かって話し掛けてきた。

杏子「こんにちは」

少女「貴女、鹿目君とはどういう関係なんですか?」

 無視された。

 少女に苛立ち混じりの質問をされる理由がイマイチわからない。いや、大体はわかる。
 タツヤの顔が能面のようになっているのを、杏子は横目で確認した。

杏子「この子のお姉さんの知り合いだけど?」

 タツヤに右手を差し向けて答える。

少女「そうですか。私たち、部活動の下見で来てるんで、もういいですか?」

タツヤ「ちょっと……」

少女「鹿目君は黙ってて」

 家で大人しくしていれば良かった。
 そう思いながら、杏子は口を開く。

杏子「悪いね、あたしまだ話すことあるから、もう少しだけ借りるわ、鹿目君」
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/04(金) 16:50:21.27 ID:xW4a9vH+0
タツヤもてもてっすなあ
317 :ほむマミ派(呆れる杏子) [saga]:2011/11/04(金) 17:22:35.13 ID:uES/Sn+4o


 少女は杏子の返答を聞き、素直に引き下がって離れていった。
 特に威圧したつもりもなかったが、敵わない、と判断したのだろう。

 『利口』だ、と杏子は思う。

タツヤ「どうもありがとうございます」

杏子「いや、別にお礼を言われても嬉しくねぇんだけど……」

タツヤ「だって、僕じゃどうにも出来なかったですもん。
    杏子さんにもそんな感じが伝わったでしょ?」

杏子「手厳しいね、おい」

 思わず苦笑してしまう杏子。
 件の少女は相変わらずこちらの様子を忌々しそうに眺めていた。

 タツヤはその視線を完璧に無視している。

タツヤ「ようやく笑ってくれましたね、杏子さん」

杏子「……あたし、そんなに怖い顔してた?」

タツヤ「少し辛そうでしたよ? 杏子さんには笑顔でいて欲しいです、僕は」

 そう言ってタツヤは杏子に微笑みかけてきた。

杏子「その台詞、あの子には言ってあげられないのかい?」

 おせっかいだとは思ったが、つい口から出てしまった。
 タツヤは少しだけ考える素振りを見せる。

タツヤ「杏子さんは優しいですね」

 それが彼の答えらしい。タツヤは微笑みを取り戻していた。

杏子「ま、いんだけどね……」

 若干の間が空く。

タツヤ「……ところで、杏子さんはいつになったら僕とデートしてくれるんですか?」

杏子「ところでも何も、そんなことあんたに言われんの、今日が初めてだと思うんだけど?」

 今の自分は呆れた表情を隠せていないはず。杏子はそう確信している。

 なのに、タツヤは何故か満足そうな顔付きだ。
318 :ほむマミ派(むくれる杏子) [saga]:2011/11/05(土) 19:56:28.15 ID:QEeAdTjAO


杏子「あたし、何か面白いこと言ったか?」

タツヤ「いえ、予想通りの答えが返ってきたので安心しただけです」

 微笑んだまま、タツヤは言う。

タツヤ「さやかさんにも同じことを言ったことがあるんですけど……」

杏子「……で?」

タツヤ「『タ、タッくんたら冗談上手くなったねぇ、にゃははは』、って答えてくれました」

 にゃははは、が可愛かったですね、とタツヤは笑っている。

杏子「……ふーん、あっそ」

 一瞬ムッとした自分に気付き、杏子は恥ずかしくなった。
 
 大体、今の自分にはムッとする理由も資格も無い。

杏子「それって、いつの話?」

タツヤ「……一年くらい前かなあ、多分」

杏子「あんたさぁ、そうやって年上をからかうのは良くないよ? ……あたしたちはともかくさ」

 説教くさいと感じながらも、説教めいたことを口にしてしまう。
 何故なのかはわからない振りが、相変わらず出来ない。

タツヤ「からかったわけじゃないですよ? 勿論、今も」

 そう言って、タツヤは真っ直ぐ杏子の方を見てくる。

杏子「……悪いけどパスだわ。あんたには興味が持てないし」

タツヤ「でしょうね」

 タツヤは面白そうに返事をしてきた。

杏子「それをからかってる、っていうんだっつーの。わかっててやってない?」

タツヤ「ええ。杏子さん元気なさそうだったから、ワザと怒られるようなことをしてみました」

 でも大丈夫そうで良かった、とタツヤは言い、さらに続ける。

タツヤ「ウチの姉なんか、ずっと様子が変ですもん。……巴、って人の所から帰ってきて以来」
319 :ほむマミ派(思い出す杏子) [saga]:2011/11/07(月) 00:51:37.16 ID:/TTVGtUAO


杏子「変、ってどんなふうに?」

タツヤ「言葉にするのは難しいんですけど……僕の知ってる姉ではないですね、今の状態」

杏子「いつまでもおんなじ、ってこともないだろ? みんな歳を取ってんだし」

 それもそうですね、とタツヤは言い、しばし考え込む。
 白々しい一般論に終始している自分に杏子自身が呆れていることにも気付かず。

タツヤ「一言で無理に表現すると、『良くない』。こんな感じですね」

杏子「……それこそ、まどか本人に言ってあげるべきなんじゃないの? 実の姉なんだからさ」

タツヤ「僕が言ったら母の鉄拳がすぐさま飛んできます、確実に。痛いんですよ? 凄く」

 そう言って、またタツヤは微笑んだ。

杏子「ああ……なんかわかるよ。あんたんとこのお袋さん、そういうのにうるさそうだもんな」

タツヤ「いえ、僕の言い方が皮肉めいてるから、そこを指摘されつつグーで頭をガツンと」

杏子「素直に言ったらいいじゃん。『姉ちゃん大丈夫?』、って」

タツヤ「……杏子さん達が僕と同じ歳の頃、それ、出来てました?」

杏子「ああ……」

 ふむ、いいところを突いてくる。
320 :ほむマミ派(想い出) [saga]:2011/11/07(月) 00:52:08.45 ID:L0pHxYglo


さやか『……』ツーン

杏子『……』ツーン

まどか『ねぇ、ほむらちゃん……』

ほむら『な、何? 鹿目さん……』

さやか『……』ツーン

杏子『……』ツーン

まどか『今日は賑わいに欠けるね……』

ほむら『そうだね……』

さやか『……』ツーン

杏子『……』ツーン 

まどか『……何か、話題ないかな?』 

ほむら『わ、私にそんなこと訊くなんて、初めてじゃない?』チラッ

さやか『……』ツーン

杏子『……』ツーン 

ほむら『…………こ、この前、お、お母さんから、電話があって』ガサゴソ

まどか『初めてだねほむらちゃん、それは初めての話題だね』チラッ

さやか『……』ツーン

杏子『……』ツーン 

まどか『……』チッ

ほむら『えっと、えっと……』ペラペラ

まどか(早く)
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/07(月) 07:54:24.76 ID:WrR8PSOwo
このまどっちは刺々しいし、マミさんと別れたのは正解だったな
マミさんは繊細だし
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関西地方) [sage]:2011/11/08(火) 06:59:56.47 ID:Fiy1t95K0
舌打ちしちゃだめだけど分からなくもないな
友達同士がピリピリしてると疲れるかたまにこっちまでイライラしてくるからなあ
323 :ほむマミ派(微笑む杏子) [sage saga]:2011/11/09(水) 04:45:47.26 ID:YERFewUlo


タツヤ「まあ、それはともかくとして」

杏子「ともかくとしてデートは? とか、ナシだよ?」

 杏子も自然に笑みを浮かべられるようになってきた。

タツヤ「いや、そうじゃなくて……そもそもウチの姉、レズビアンじゃないと思うんですよ」

 レズビアン、って差別用語でしたっけ? と付け加えタツヤが訊いてくる。

杏子「知らね。……どうして、タツヤはそう思うの?」

 意識して少年の名を呼ぶ杏子。

タツヤ「テレビでお目当ての男性歌手をだらしない顔して眺めてるところ、何回も見てますから」

杏子「あっそ。でも、それだけじゃあねぇ、ちょっと証拠としては弱くない?」

 今の自分は平静を装えているか?
 杏子はそちらに気を取られ、上手く返事が出来ていないと感じる。思い過ごしかもしれない。

 タツヤは杏子に向かって言う。

タツヤ「自分の姉です。それなりの期間、一緒にいましたし」

杏子「……あのさ、気を悪くしないで欲しいんだけど、あんたって結構……」

タツヤ「シスコンですよね、まるっきり。自分でもそう思いますよ」

 ハッキリとした口調で言い、タツヤは微笑んだ。

杏子「うーん、別に、姉思い、ってことでいいとは思うんだけどね」

タツヤ「すみません。杏子さんには関係ないのに、こんな話をしてしまって」
324 :ほむマミ派(一人ベンチでぼんやり杏子) [sage saga]:2011/11/09(水) 04:45:57.34 ID:GhTKPXBAO


杏子「……いや、いんだよ。こっちも一人ベンチでグダってただけなんだから」

今、自分は嘘をついている。杏子はそう思う。

タツヤ「そうですか。それじゃ、僕の話を聞いてくれてありがとうございます、に変更で」

杏子「うん。……まどかに優しくしてやんな、素直にさ。タツヤも十分優しいと思うよ?」

 杏子さんにそう言って貰えて嬉しいです、と答え、タツヤは立ち上がる。

タツヤ「それでは失礼します。デート、楽しめるといいですね」

杏子「デートってワケでもねぇんだけど……」

 杏子の呟きを聞くことなく、タツヤは少女たちの元へ謝りながら戻っていく。
 
 そんな鹿目タツヤの後姿をぼんやりと眺め、杏子は思う。
 つまらない嘘を重ねて少年の耳に入れずに済んで良かったと。

 もう一度空を仰ぐ。そのままの姿勢で、杏子はしばらく青空を見つめていた。
325 :ほむマミ派(想い出) [sage saga]:2011/11/09(水) 08:43:14.71 ID:2CwCkeYho


ほむら『ええと、えっとぉ』ペラリペラリ

杏子『……随分、分厚いメモ帳だね』

まどか(きた!)

ほむら『は、はい、私の母はその時々で言うことがかなり変わるので、メモが必須で……』ペラリ

杏子『……ふーん、あっそ』

さやか『……』プイッ

まどか『ちなみにこの前は何を言われたのかな?』

ほむら『……まず、「ほむちゃんは人より死にやすいから気をつけて」と、か、開口一番に』

さやか『あんたお母さんに、ほむちゃん、って呼ばれてんだ? ……つうか容赦ないね、それ』

ほむら『あっ……』カアッ

さやか『ああ、ごめん。それで?』

杏子『……』プイッ

ほむら『あとは、「そろそろ社会的なリハビリも出来てきただろうから、媚を売ることを覚えなさい」、って』

杏子『……まぁ、それは言うよな、ほむらみたいな奴にだったら特に』

さやか『……』プイッ

杏子『で、続きは?』

ほむら『えっとですね……』ペラリ

まどか(もっと、盛り上がる話題にならないかな……)
326 :ほむマミ派(会社玄関口にて) [sage saga]:2011/11/09(水) 14:48:42.31 ID:GhTKPXBAO

 オフィスビル 玄関口 午後六時


 仕事も終わり、私服に着替えた鹿目まどかは同じ課の先輩であるモブ崎と退社した。

モブ崎「鹿目、課長にデートだから定時で上がる、って息巻いてた割に表情冴えないね?」

まどか「……モブ崎さんには隠し事出来ませんね? えへへ」

モブ崎「愛想笑いしなくていいんだよ? 私には」

まどか「お気遣い、ありがとうございます……」

 その言葉を素直に受け取れたらどんなに楽か、とまどかは思う。
 隣を歩くモブ崎という人物が、それほどストレートな人格ではないことをまどかは知っている。

モブ崎「しかし、美樹の奴は調子悪そうだったね、今日。鹿目、なんか知ってる?」

まどか「いや、美樹さんと今日あんまり話してないから……よくわかりません」

モブ崎「……最近、二人でご飯食べなくなったでしょ? 喧嘩でもしたの?」

まどか「えっと、あの」

 返答に詰まってしまう。正直に話せることが余りに少なくて。

モブ崎「相談くらい乗るけど?」

まどか「あの、あの……」

「まどか!」

 呼び声のする方を向くと、佐倉杏子がまどか達の方へ近づいてきた。軽く笑みを浮かべている。

杏子「お仕事、お疲れさん。あ、どうも」

 まどかの隣にいるモブ崎にも、杏子は淀みない挨拶をした。
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(愛知県) [sage]:2011/11/09(水) 21:54:58.34 ID:1idOnx0No
杏さや復活してまどかぼっちルートこないかな…
328 :ほむマミ派(困りまどか) [sage saga]:2011/11/09(水) 22:26:38.36 ID:9J6k5G23o


杏子「ぶらついてたら、いつの間にか辿り着いたよ、ここに」

 そう言って杏子はまどかに笑いかけた。

まどか「あ、あの、わざわざありがとう……」

 おどおどとしている。無理もない。まどかにとっては完全に予想外の事態だろう。
 そんなまどか達の様子を少し怪訝そうに眺めるモブ崎。

杏子「どした? 早く行こうぜ?」

まどか「う、うん」

モブ崎「……あの」

杏子「何です?」

モブ崎「いえ、別に」

 モブ崎はバツが悪そうに視線を逸らす。まあ、杏子にはどうでもよいことだが。

まどか「それじゃ、モブ崎さん、ここで失礼します」

モブ崎「鹿目は体調崩さないよう気をつけてね?」 

まどか「はい、気をつけます。お疲れ様でした」

モブ崎「うん、お疲れ」

 伏し目がちになってしまったまどかに、「早く行こうぜ?」と杏子はもう一度促す。
 ここでボヤついていても、マイナスにしかならないことがなんとなく読み取れた。
 
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/09(水) 23:43:21.07 ID:GQ3ztYu5P
個人的にはまど杏はうまくいってほしいな
ここまで含ませてきたんだし、ね
さやかはなんというか一人じゃないけど、
まどかは杏子までいなくなったら救いが……
330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(東京都) [sage]:2011/11/09(水) 23:58:17.26 ID:GxP60er+o
>>329
だよね
331 :ほむマミ派(やったねマミちゃん! 出番がきたよ!!) [saga]:2011/11/09(水) 23:58:45.67 ID:GhTKPXBAO

 開発部


マミ(少し残業してくか……ほむらさんも遅くなるし、今日の私はいろいろとアレだったし)

 そう思いながらモニターを再度睨みつけようとすると、巴マミの携帯電話にメールが届いた。

マミ(ほむらさん!? いや、ないわね、絶賛仕事中なはず……)

 とりあえず、携帯を開いて内容を確認する。



  to 巴ちゃん

  from モブちゃん

  なんかさ、鹿目と美樹の『恋人』が二人して消えてったんだけど

  巴ちゃん、なんか知ってる?

  美樹も今日早退しちゃうし、余計な仕事がこっちに回ってくるのは勘弁なんだけど


  追記 お願いします、一度でいいんで、合コン出て。お願いします……お願いします……


  追記の追記 今夜もお楽しみですか?         MOB



 様々な思いを封じ込めるように、マミは携帯を閉じた。

マミ(そんなこと言いながら、モブちゃんガッツリ定時上がりじゃない……)

 マミとモブ崎は同期入社で、一応友人関係でもある。
 はっきり言って油断ならない人物であるのだが、そこがマミにとっては好ましかったりもする。

 好ましい面が発揮された一例がまさに今。まあ、ケースバイケースだけれど。

マミ(ふむ、そうか。そうですか……)

 貴重な情報提供だ。マミの仕事をする手は完全に止まり、思索に耽る。

チーフ「……巴、仕事しないなら帰れ。いろいろムダ」

マミ「はい、そうさせて頂きます」

 マミは素直に上司に従う。
 暁美ほむらに会う前に、精神的なコンディションを万全にしなくてはいけない。

 それはマミにとって、何よりの最優先課題である。
332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/10(木) 09:53:15.15 ID:S9Rbhn+Ho
話完結時に登場キャラ全員がギスギスした空気になるかが楽しみすぎる
333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/10(木) 20:32:14.41 ID:gTnuwqmS0
合コンwwwwww

まどかもマミさんとよりを戻さないまでも和解はしてほしい
334 :ほむマミ派(歩きまどか) [sage saga]:2011/11/11(金) 05:16:28.80 ID:OuVle5cqo

 街中


まどか「まさか、会社まで来てくれるとは思わなかった」

杏子「……迷惑だった?」

 まどかの歩幅に合わせて歩きながら、杏子は訊く。

まどか「ううん、そんなことはないけど……」

 そんなことはないけど、に続く言葉が杏子にはなんとなく想像出来てしまう。

杏子「ま、驚かせたのは謝るよ。悪かったね」

まどか「そ、そんな! 杏子ちゃんが謝るのなんて変だよ」

 笑ってはいけないが、慌てぶりがよく知っているもので可笑しい。
 こういったところは変わらないものなのだな、と杏子は思った。

 しばらく無言で歩き続ける。なんというか、探り探りだ。

杏子「……タツヤに会ったよ」

 危険回避の為に話題を変えた。少々強引だと自覚しつつ。

まどか「え? どこで?」

杏子「噴水公園で」

まどか「……タッくん、女の子と一緒じゃなかった?」

杏子「うん。綺麗な子だったね……タツヤはお気に召さないようだったけどさ」

まどか「その子、多分、ウチに来たことあるかも……髪の長い子じゃなかった?」

杏子「へぇ、彼女?」

まどか「違うみたい。玄関先で追い払うようにして帰しちゃって。
    『もう二度と来なきゃいいのに』、って呟いた瞬間にママに頭を叩かれてた」

 そう言って笑うまどかの笑顔は弱々しい。杏子にもハッキリとわかる。
335 :ほむマミ派(話しまどか) [sage saga]:2011/11/11(金) 13:07:27.20 ID:Q7PFbrzAO


杏子「ふーん、でも確かに女の子の方がタツヤに熱心な感じではあったね」

 公園での短いやりとりを見て思ったことを、率直にまどかへ伝えた。

まどか「ママがさ、『迷惑なら迷惑で相手にハッキリ言え』、ってタッくんに言って。
    『そんなこと直接言ったら角が立つじゃん』って言い返して、また叩かれてたよ」

杏子「痛いらしいね、凄く」

 二人して笑う。今日初めてではないだろうか。

まどか「反抗期、って言うのかな? わたしにはなかったから、そういうの」

杏子「ああ……」

 上手く返事が出来ず、会話が止まってしまった。

まどか「あっ、ごめん」

杏子「なんでまどかが謝んのさ。……変な気の使い方すんなって」

 自分で言っておいて、胸が締め付けられるような思いに杏子は囚われてしまう。

 『あいつ』にも同じことを何回か言われたから。

まどか「うん、そうだね」

 それだけ言って、まどかは黙り込む。
 杏子がまどかの方を向くと、そこから窺える表情は暗い。

杏子「……ところでさ、誘っといてなんだけど、あたし、あんま金ねーんだわ」

 必要以上に明るく、杏子はまどかに言う。

まどか「えへへ、わたしも家にお金入れてるから、結構カツカツなんだよ」

 杏子は一呼吸置いた。

杏子「食事とだらだらを同時にこなせる場所をあたしは知ってる」

まどか「え? どこだろ? わかんない……」

杏子「まあついてきなって。多分、まどかは入ったことないから」
336 :ほむマミ派(想い出) [sage saga]:2011/11/11(金) 15:24:13.77 ID:Vr3yUz01o


ほむら『……そ、それと、「一人の人が同時に二つの場所には立てない」、というのと』

さやか『ふぅん、それはわからんでもないね』

ほむら『さ、最後に、「生活費を振り込んでおいたから」で、電話を切られました……』パタン

まどか『……終わり?』

ほむら『う、うん』コクッ

杏子『ふむ』

さやか『……なんていうか、まあ、ね?』

まどか『幾分、トリッキーなお母さんだね……』

杏子『……そうか? 割とオーソドックスだと思うけど』

まどさや『!?』

杏子『なんだよ?』イラッ

まどか『えっとぉ……』

さやか『いや、あんたの口から、オーソドックス、とか出てくんだなって……』

杏子『……おい、憶えてっか? 中間考査での成績順?』ムカッ

まどさやほむ『ぐっ』

杏子『あたしより上位の人って、あんたたち三人の中にはいなかったはずだよねぇ?』ハッ

まどさやほむ『ぐふ』

杏子『特に……美樹さんでしたっけ? 赤点ギリが二科目ほどあったみたいですけど?』クックックッ

さやか『……っ!』ムムッ

まどか(あぁっ! 流れが……っ!)

杏子『そんなんで大丈夫なんですかぁ? お受験?』ケラケラ

さやか『……』プルプル

杏子『どうして震えてんの? 寒いの? ねぇ?』キヒヒ

さやか『……いっ』グッ

杏子『何? 聞こえないよ?』ヘヘッ

まどか『さ、さやかちゃん?』アセアセ

ほむら『……』ゴクリ
337 :ほむマミ派(暁美課長は残業中) [sage saga]:2011/11/12(土) 19:34:28.13 ID:PMEJussAO

 オフィス


ほむら(あああ! やっぱ、カッコつけて帰らせるんじゃなかった!!)カタカタ

ほむら(あいつも! それからあいつもぉ!)カタカタ

ほむら(モブ崎なんか、まどかの影に隠れて消えてるし! 隠れられてないのよ! 全く!)カタカタ

ほむら(……しかし、こんなこと口にしたら負けだわ、確実に)ホムム

ほむら(巴マミの恋人である以上、そんな弱気、私には許されない。うん、そうよ)ホムッ

ほむら(大体、余分に給料貰ってるんだから。最低限それ以上の働きをしないと……)フゥ

 一息つく。

 強制したわけでもないのに残業を買って出た、部下のモブ畑がこちらに近付いて来た。

モブ畑「課長、チェックの方をお願い致します」

ほむら「貴女の仕事には信頼が置けるから、後回しにしたいのだけど?」

モブ畑「そう言って頂けるのは嬉しいんですが……」

 そう言う彼女の表情はやや曇り気味だ。

モブ畑「余計なお世話ですけど、一言いいですか?」

ほむら「何? 正直、余裕があまり無いから、込み入ったのは勘弁してね?」

モブ畑「……そういう課長の態度が課内の空気を悪化させてると思います」

 耳が痛い一言。
338 :ほむマミ派(部下と語らう暁美課長) [sage saga]:2011/11/12(土) 19:34:57.58 ID:yg40H87Ao


ほむら「……初めてじゃない? 貴女がそんなことを言うのって」

 自分のことで申し訳ないのですが、とモブ畑は前置きした。

モブ畑「身体を壊すまでの自分と、今の課長がなんとなくダブって見えまして。
    一人でやってる、一人でやれてる、というか……」

ほむら「身の程知らず、ってこと?」

モブ畑「違います。モブ崎や、美樹や、鹿目や、自分をもっと頼って貰えたらな、と」

 彼女たちは帰ってしまいましたが、と苦笑しながら言う。

 モブ畑は柔道選手としてのスポーツ入社だったが、半年前に左ひざを壊し、現役を引退した。
 文字通り、『後が無くなった』社員である。彼女には最高に失礼な表現ではあるけれど。

ほむら「そうね。……でも、デートの邪魔は出来ないじゃない?」

モブ畑「ですね。自分もデートしたいです」

 しばらく二人して笑う。多分、初めてのことだ。

モブ畑「……しかし、本当にデートなんでしょうか? 鹿目は」

ほむら「どうしてそう思うの?」

 言うか、言うまいか、迷いの表情をモブ畑は見せる。これも、多分初めて。

モブ畑「全然嬉しそうじゃなかった。むしろ、苦しそうにも見えました」

ほむら「……そう。モブ畑さんが言うのなら、そうかもしれないわね」

モブ畑「こういう時、自分も女なんだな、と思います」

 そう言って、慎ましやかに苦笑するモブ畑の笑顔は、年下の私が言うのもなんだが、可愛らしい。
339 :ほむマミ派(想い出) [sage saga]:2011/11/13(日) 18:01:25.82 ID:lB/EFNsAO


杏子『どしたの美樹さん? 言いたいことは大きな声で頼むよ』ヒャッヒャ

さやか『……べ、勉強……教えて下さい…………』ボソッ

杏子『……へ?』

まどか『……え?』

ほむら『……』チッ

まどか『え? ほむらちゃん、なんで今、舌打ちしたの?』

ほむら『あれ? な、なんでだろ……』

さやか『……確かにあんたの方が成績いいんだから、教えて貰ったほうが賢いと思ったんだよ……』ウン

まどか『さやかちゃん……』

ほむら『……』ホゥ

杏子『……いや、まあ、それはかまわねぇけどさ……いいの? あたしで?』

さやか『何、あんた、教えられる自信とかないワケ? 散々、人のことバカにしといて』

杏子『ち、ちげぇって……ただ、意外っつーか、なんつーか……』

まどか『……杏子ちゃん、出来たら、わたしもお願いしたいな。ダメ?』

ほむら『わ、私も』

さやか『改めてお願いします』ペコッ

まどほむ『お願いします』ペコッ

杏子『やめろ! 頭下げんの……なんだよ、この流れ……面倒くせぇ……』テレッ

さやか『とか言いつつ、まんざらでもなさそうな顔してね、杏子たんは』ニヤニヤ

杏子『う、うるせえな、ぶっ[ピーー]ぞ! 杏子たんとか言うな!』プンスカ

さやか『やだー、まどかぁ、杏子たん怖いよー』ヒャー

まどか『わ、わたしはちょっとさやかちゃんが怖いかな……』

さやか『な、なにおー』

杏子『だから杏子たんはやめろっつうの……』ハァ

ほむら『……』ニコニコ
340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/13(日) 18:33:44.83 ID:1g4GnGkUP
ほむほむがところどころ黒くて吹きそうになるww
341 :ほむマミ派(詰め寄りまどか) [saga]:2011/11/15(火) 00:24:36.14 ID:kckCqM+7o

 街中


 目的地までの道のりで少しずつ会話が弾むようになってきた。

まどか「杏子ちゃんはさ、どうして今日、わたしを誘ってくれたの?」

 当然の疑問がまどかの口から出る。遅すぎた位だ。

杏子「ぶっちゃけるとね、あたし友達いないから」

 我ながら上手く言えた。
 ただ、まどかの顔を見ると全く納得出来ていない表情。

まどか「今から嫌なこと言うけどいい?」

杏子「……いいよ、別に」

まどか「わたしが杏子ちゃんの立場だったら、わたしのこと許せない」

 変な言い方だね、と弱々しく笑んで付け加えてきた。

杏子「まどかでも、許せない、なんて言うのな」

 話を逸らそうとしている自分が情けない。今日は、情けない、のオンパレード。

まどか「杏子ちゃんは誤魔化すの下手だね」

杏子「どういうこと?」

 まどかはじっくりと言葉を選ぼうとしているようだ。
 その横顔を見ていると、昔のことが連想される。

まどか「さやかちゃん、凄く辛そうだったよ。昼ご飯も残してたし」

杏子「……ふーん、そうなんだ」

 白々しい、と、情けない、しか今の自分にはないような気がして仕方がない。
 一時間も走ったせいで、ろくな切り返しが出来ないと責任転嫁。

 若干の間の後、何かが纏まったようで、まどかが口を開く。

まどか「信じていいんだよね? 杏子ちゃんのこと」

杏子「意味がよくわかんねーけど……」

まどか「わたし、杏子ちゃんのこと、信じてもいいんだよね?」

 たたみ掛けてくる。

杏子「信じる、って何を?」

まどか「遠慮しない。わたし、さやかちゃんには遠慮しないから」

 強く言い放つまどか。
 まるで、昔、家を出た頃の自分を見ているようだ、と杏子は思う。
342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/15(火) 08:58:17.65 ID:RTOkgNLOo
ここがターニングポイントか
杏子にはさやかちゃん幸せにしてあげてほしい
343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/15(火) 09:06:06.18 ID:AWIJLerhP
うーん、自分はまどかかなぁ
杏子は本編でも自分の面影を見たさやかを気にしてたから、
まどっちに自分の面影を見たのなら救ってやって欲しいと思う

というかまどっちは杏子にまで見捨てられたら、いよいよダメになるとおもう
344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/15(火) 09:09:38.61 ID:RTOkgNLOo
だけど過去編はともかく現代編ではほとんどまどかのせいで幸せがぶち壊されてるわけで…
仁美のおかげで話し合うって気持ちになったんだから杏さやでよりを戻して欲しいなぁ
345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/15(火) 09:15:44.86 ID:AWIJLerhP
まどっちはマミさんでやらかしたけど、それが原因でマミさんは本当の幸せをつかめてるよね
これで今回もかき乱すだけ乱して、結局さや杏が雨降って地固まるに収まったら、まどっちはピエロになりそうで……
まどっちが失えば失うほど周りが幸せになっていって、一人だけ救いが残らないというか……(´・ω・`)

まあこれが終わったらマミさんの研修期間開始らしいし、誰が一緒に行くかで一波乱ありそうな予
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方) [sage]:2011/11/15(火) 09:36:41.61 ID:xcGrXNFv0
自分も杏子にはまどかを幸せにして欲しいな
さやかには仁美や恭介みたいに傍にいてくれる親友がいるし、ほむマミとも繋がりはまだある
でもまどかはほむほむとマミさんとは最悪の状況だし、さやかとも気まずいなんてレベルじゃない
今でも杏子に対して手探りながら、すごい必死にすがりつこうとしてるし、
この状態で杏子にも切り離されたら、なんかもう自殺でもするんじゃないかと思えてくる

>>345
まて、その前にほむマミ濡れ場だ

その前にほむマミ濡れ場だ(迫真)
347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(北海道) [sage]:2011/11/15(火) 20:03:08.43 ID:M//QKwEAO
一人になるっつー原因を作ったのは自分自身だろ?
自業自得なんだし、どう転ぼうが受け入れないと駄目だろ
それが出来なきゃピエロどころか、ただの我が儘なガキだと思う
まぁ人間的に成長するなら見捨てられた方がいいよ
348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(愛知県) [sage]:2011/11/16(水) 08:52:30.11 ID:YIomb4Qzo
結局マミさんに冷たくしたまどかが全ての原因だし、全ての罰を受けて欲しいとは思う
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/16(水) 10:10:09.02 ID:ZIhW9dXFP
でも杏子は本編でも自分の面影をみたさやかを救おうと必死だったし、
まどっちを見捨てれず救ってやろうとするんじゃないかなって思う
てかそうおもってるからさやかと別れたんだろうし
350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(愛知県) [sage]:2011/11/16(水) 10:17:18.02 ID:YIomb4Qzo
面影を見てるのはわかるけど…
結局さやかを裏切ったのは杏子の勝手だし、よりくらい戻してくれないとどっちの印象も最悪になりそう
まどかはうまいこと成長させるだけでもいいし
351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方) [sage]:2011/11/16(水) 11:27:22.22 ID:EIiZhRVF0
その理屈だと、マミさんやほむほむも別れて、まどかとより戻さなきゃ
冷たくしたのは確かだけど、だからと言って話し合いもろくにせず浮気したのはマミさん側
ほむほむが付けこみ策を張り巡らし二人を破壊したし、それが原因でまどかも情緒不安定になってる
さやかだって同情とはいえまどかとキスしてるし原因は作ってるし、なんか誰が特別悪いとか自業自得って感じはしないな

まあ本ルートの方のまどかは擁護のしようがないレベルで色々と終わってたけど
352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/16(水) 11:48:18.11 ID:ZIhW9dXFP
本ルートのまどっちはあれはあれで気持ちはわかるけどなぁ
だってほむほむの嘘の性で、凄い昔から浮気されてたと勘違いしてたしね
まあだからと言ってやりすぎだし罪はあるとは思うが、あっちのマミさんはまどっちのせいで全てを失ったし
でも誤解してたことと、ごめんなさいをいう機会があれば救いもあったのかなって思う

てかもう完結しないのかね本ルートは……
>>1さん、分岐ルートが終わったら、あっちものっとりで終わらしてくれませんか?
353 :ほむマミ派(お詫びと返答) [sage]:2011/11/16(水) 12:17:34.96 ID:fSFzk24AO
いつ書き込みしたのか、って位スレが伸びてた……

ちょっと本編が更新出来ません
今日、明日は無理ですね多分

本ルートは書き手の方に頑張って頂くしかないと思います
この話が完結したら、続編にあたるものをSS速報で書くつもりですので

ちまちま更新していくスタイルは変えられないので、週一くらいで見て貰えたらなと
ちゃんと終わりまで書きますので、しばしのお待ちを……
354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方) [sage]:2011/11/16(水) 20:18:59.80 ID:Knkqd1v20
完結後に続編あるんですかやったー
いつまでも待ちますとも
355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]:2011/11/16(水) 20:22:57.47 ID:D8v5erG8o
ワッフルワッフル
杏子にはまどかを救ってほしいけど、どうなる事やら。続編もワッフルしてる
356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/16(水) 20:42:58.75 ID:wxQlqicTo
このSSがまどか☆マギカなのか、キャラの名前だけ借りたオリキャラものなのかわからなくなってき(ry
357 :ほむマミ派(見つめまどか) [sage saga]:2011/11/18(金) 23:45:37.72 ID:71J615QAO

 ネットカフェ エリィ


 カップルルーム、だそうだ。
 といっても、杏子は美樹さやかと何度か訪れたことがあった。
 
 六畳のスペースにカーペットが敷かれ、座椅子が二つ。リクライニング機能がついている。
 パソコンデスクに、小さな折りたたみテーブルが一つずつ。

 まどかは先ほどの切迫した様子を完全に潜め、
 パソコンで動画サイトにアップされているネコの動画を眺めていた。杏子はその左隣。

まどか「可愛いねぇ、可愛いね、杏子ちゃん」

杏子「ああ、そうだね」

 生返事。
 
 様々な種類のネコが丸まって動かなくなったところを後ろから取り続けている動画。再生回数も少ない。 
 杏子からすると大変にマニアックな代物なのだが、まどかはご満悦のようだ。

 まあ、喜ばしいと思う。

まどか「杏子ちゃん、お店は繁盛してる?」

 モニターを見つめながら訊いてきた。

杏子「……ん、ぼちぼち」

まどか「また買いに行くよ、家族みんなの分」

杏子「あんがと。嬉しいよ」

 少し気持ちを込められた気がする。何せ自分の生活が懸かっているのだから。

 幾秒かの間を意識して空ける。

杏子「まどかはどう? 仕事の塩梅」

まどか「……今日も書類のミスを何度か怒られたよ。厳しいから、ウチの課長さんは」

杏子「ふーん、そ」

 なんてことない、といった感じでまどかは答えてきたが、その表情は確かに一段暗くなった。

杏子(我ながら、ひっでぇ質問……)

 でもここを確かめておかないと、次に何を喋ってよいのかすら、今の杏子にはわからない。
358 :ほむマミ派(想い出) [sage saga]:2011/11/18(金) 23:46:24.43 ID:JAfxWDXvo


杏子『……なあ、おっさん』ジュー

店主『ん、何?』

杏子『なんで、あたしを雇ってくれたの?』ジュー

店主『なんでって、おめーに頼まれたから』

杏子『いや、そうだけどさ、学校の寮に入るお金まで出してくれて……』

店主『全額利子付けて返せよ。あげたワケじゃねーし』

杏子『はい……』

店主『おう』

杏子『……』ジュー

店主『……』

店主『……あのまま万引きを繰り返すようなことされたら困るんだよ。個人的に』

杏子『……どうして?』

店主『おっさん、あんたのお袋さんのこと知ってる、って前に言ったよな?』

杏子『うん』

店主『とりあえず、あんたの両親にここで大きな恩を売ってだな……』

杏子『……うん』

店主『お袋さんのこと、いつか親父さんのところから掠め取ってやろうっていうね、企み』クックックッ

杏子『それをあたしに言うんだ……』

店主『おめーに関係なくね? 言ってたじゃん、「あたし、家を捨てたんだ!」って悲痛な声で』キヒヒ

杏子『や、やめろよ! そんな変な声出してない!』アセッ

店主『あー、いんだよ、そんなことは。それより、焼きに集中しろっつの』

杏子『……へーい』シュン

店主『……おっさんにはいいけど、お客様にはそういう口聞くのやめろよ?』

杏子『はい』

店主『お、いい返事』

杏子『……』ジュー

店主『……』

店主『……こうな、ひとつひとつに魂の欠片を練り込むようなつもりで、丁寧に、かつ適切に焼いてくれ』
359 :ほむマミ派(訂正とお知らせ) [sage]:2011/11/20(日) 18:51:37.08 ID:yzkC2TPAO
>>357
×取り続けている

○撮り続けている

小説形式部分の「」前の名前を次から排します
当然、あのシーンに向けての準備ですね

まあ、当分先の話なんですけどねぇ ウェヒヒヒ
360 :ほむマミ派(汲みまどか) [sage saga]:2011/11/20(日) 19:04:24.65 ID:2+vNiUJeo


「杏子ちゃんは何飲む?」

 空になったコップを二つ手に取り、まどかが訊いてきた。

「んー、炭酸だったら何でもいいや。……わりぃけど氷も入れて」

「えへへ、かしこまりー」

 ドアを開け、ちょこちょこと出て行く後ろ姿は、服装が変わっただけで昔と変わらない。

 杏子はカーペットに直に寝そべり、漫画を読んでいる。
 少年向けの格闘漫画で内容は単純。主人公より少し強い敵が出てきて、苦闘の末撃破。
 そしてまた少しレベルの上がった敵が出てきて……の繰り返し。

 こういった漫画を読むときの杏子は、その読ませるメカニズムを分析することに重点を置いていた。
 仕事に直接活かされることは多分無いが、能動的、客観的に『見る』ことはやはり大事だと考えている。

(あいつはよく泣いてたな、漫画読んで) 
 
 ここにはいない人物を思い浮かべた。何故漫画を読んで泣くのか、と質問したこともある。

『なんで、って質問するあんたがわかんないよ』

 そう答えて、また泣いていた。

(……やめよ、無意味だ)

 思考を遮断し、読んでいた漫画を放る。そして仰向けになり、大の字に手足を伸ばした。 
 杏子は天井を何も考えずに眺め、ただ呼吸をする。吐いて、吸って、吐いて。

 足音が近づいてきた。続けてドアの開く音。

「うわ、びっくりした」

「ああ、わり。何入れてきてくれたの?」

 杏子は顔だけをまどかの方へ向ける。

「くふふ、飲んでみてのお楽しみだよ」

 まどかの表情は少しずつ明るくなってきている。喜ばしいことだ、多分。
361 :ほむマミ派(飲みまどか) [sage saga]:2011/11/20(日) 19:58:04.96 ID:yzkC2TPAO


 何やら、たくらみ顔で杏子の方を見てくるまどか。

 手渡されたコップには、氷がいっぱいに詰められたコーラと思しき飲み物が確認できる。

「コーラじゃねーの? これ」

「まあ、飲んでみてよ」

 杏子は言われるまま、一口ストローで飲んでみた。
 なんというか、まあ、コーラだ。

「……とりあえず、コーラだよな? あたしにはそれしかわかんねぇんだけど」

「あれ? 杏子ちゃんにはこの違いがわかりませんか?」

 そう言って、まどかは杏子の方へ近づいてきた。

「ちょっと飲ませて貰ってもいい?」

「いや、いいけど……」

 杏子の返事とほぼ同時にコップを受け取り、まどかはストローで一口啜る。

「あ、間違えた」

「……何を?」

 杏子にはなんとなく話が見えてきた。
 部屋の真ん中の折りたたみテーブルには全く同じように見える、まどかの分の飲み物が置かれている。

「まどかもそういう子供っぽいこと、まだすんのな」

 杏子はなんとなく笑えてきた。まどかは恥ずかしそうな顔をする。

「うう、こんなはずじゃなかったのに」

「ちなみに本来あたしに飲ませる予定だったヤツには何が入ってんの?」

「それを言ったら面白くないよ……」

「いや、もう十分面白いって。教えてよ、あたしに」

 しょぼくれているまどかを無視して、杏子はテーブルのコップに手を伸ばす。

「あっ、ダメだよ」

 杏子の素早さには対応出来なかったようだ。
 コップを掴まれた時点で、まどかは諦め顔になって俯いてしまった。
362 :ほむマミ派(笑いまどか) [sage saga]:2011/11/20(日) 21:02:04.00 ID:2+vNiUJeo


 本来杏子が飲む予定だったものなのだから、文句を言われる筋合いは無い。
 そう自分の中で結論づけ、杏子は一口飲んでみた。

「……うまいな、これ」

 まどかの表情が明るくなる。

「ほ、ほんとに?」

「うん。ジャスミンティーだろ? 混ぜたの」

「えへへ、さすがだね、杏子ちゃんは」

 鹿目まどかという人物の笑顔には、周りを和ませる能力が確かにある。
 そんなことを再確認できた瞬間。杏子は少し気持ちが軽くなっている自分に気付いた。

 誰かと共に過ごすのなら、笑えていたほうがいいに決まっている。

「コーラを先に入れるのがポイントだよ」

 まどかは得意気に言った。

「詰めを誤っちまったねぇ」

「全くだね……」

 二人して声を揃えて笑う。しばらく続く笑い声。

「……なあ、まどか、腹へったな」

 ひとしきり笑った後、杏子は問いかけた。
 
「うん、わたしも何か食べたくなってきたよ」

「あたしは食うもん決まってんだけど、まどかはどうする?」

「うーん、実は最近お腹周りが危険水域に達しててね……」

 ワンピースの上から、自分のウエストをぐりぐりとやり始めるまどか。
 杏子は何故か目を逸らしてしまった。そのままの姿勢でまどかに声をかける。

「別に変わってなくね? あたしはそう思うけど」

 返事がない。
 何事かと思い、まどかの方へ向き直ると、杏子を真剣な顔付きで見ていた。 

 杏子が息を飲むのと同時にまどかが口を開く。

「……杏子ちゃん、悪いんだけどさ、ちょっと触って確かめてみてくれるかな?」
363 :ほむマミ派(接近されまどか) [sage saga]:2011/11/20(日) 22:21:09.52 ID:yzkC2TPAO


「別に変わってねーって。それにあたし、まどかのウエストのアベレージなんて知らねーし」

「……杏子ちゃん、何を慌ててるのかな? くふふ、杏子ちゃん、何を慌ててるのかな?」

 二回繰り返してきた。

 まどかには珍しいニヤニヤ顔で杏子の方へにじり寄って来る。

「あー、わかった。わかったから」

 まどかの接近を手で制し、杏子は自分から近づく。
 膝立ちの状態で相変わらずお腹周りをぐりぐりとやっていて、ちょっとコミカルではある。

「やめろそれ。なんかイヤだわ」

「それくらい気になってるってことなんだよ」

 ニヤニヤしながら言うまどか。手は大人しく下げたが、今のまどかは少し危ない気がする。
 わかった、と言ってしまった手前、杏子はまどかとの距離を三十センチ程まで詰めた。

「……それじゃ触るぞ」

「よろしくお願いします」

 距離が近い。まどかとここまで接近するのは杏子にとっては初めてのことだ。
 こういう時にさやかがいれば、なんて都合の良いことを思ってしまう自分はやはり情けない。
364 :ほむマミ派(想い出) [sage saga]:2011/11/20(日) 23:42:57.56 ID:yzkC2TPAO


さやか『さーやかちゃんのぉ、嫁チェックターイム!』シェアァァ

まどか『……』ハァー

ほむら『……』ハァー

杏子『……』チッ

さやか『まぁずわぁ、マイファースト嫁ぇ! まどたんっっ!』ダキッ

まどか『ひゃあっ!』ビクッ

さやか『あれぇ? まどたん、ちょっぴりふくよかモード入ってなぁい?』ムニムニ

まどか『やっ、やめ……くっ、くすぐっ、あはっ、あははは』ケラケラ

さやか『そぉかあ、さやかちゃんの揉みが足らんかったかあ、悪いことしたなぁ……』ウリウリ

まどか『う、うひゃ……』ガクガク

杏子『……おい、なんとかなんねーのか? あれは?』イライラ

ほむら『い、犬に噛まれたと思って忘れるしかないかと……』ウンザリ

杏子『おめーらがそういう消極的な……』

さやか『つぎぃぃ! セカンドって呼んでゴメンよほぉむらぁ!』ガバッ

ほむら『い、いやっ! は、離し……』ムガッ

さやか『ホントにヤなら抜け出せるっ! それくらいの優しさはさやかちゃんにだってあるっ!』リィヤァァ

ほむら『離し……ば、ばかぢか……あははははは』ビリビリ

さやか『……ほむらはねぇ、まどたんとはまた違った中毒性に満ち溢れているのだよ、うん』ゴゴゴ

ほむら『じ……地獄へ落……』ガクゥ

さやか『ふははははははは』ツヤッツヤ

杏子『おい、いいだろ、もう? 二人とも落ちてっぞ?』ハァー

さやか『仕方ないの』バッ

まどか『…………ぅぇひ』グッタリ

ほむら『……[ピーー]ねよ……ホント[ピーー]ねよ……』ゲッソリ

杏子『……』

さやか『……なんか食べ足りん、何ゆえか……』チラッ

杏子『うっ』ギクッ

さやか『……気が乗らんな』ハァー

杏子『なんだとテメエ!』ブチィ

さやか『欲しいのか?』ニヤッ

杏子『ち、ちげぇよバカ! バーカ!』ムカムカ

さやか『……余は何よりも素直さを好む……お主はまだまだ修行が足りんよ……』クックックッ

杏子『……知るかよバカ……』チッ
365 :ほむマミ派(慌てまどか) [sage saga]:2011/11/22(火) 02:19:27.33 ID:ZjQCUfaZo


 膝立ちしているまどかに片膝を突いて近付いた杏子は、そっとまどかの腹部に右手で触れる。

「……なあ、腹に力入れてねーか?」

「へへ、ばれちゃったね」

 あっさりと認めるまどか。

「意味ないだろ、それじゃ。力抜けよ」

「笑わない? 思いの外凄くても笑わない?」

 見下ろすように杏子の顔を見つめるまどかの目は、真剣そのもの。

 杏子は少しだけ考え、こう答える。

「笑いは、しない」

「そんな言われ方したら力抜けない……」

「だから意味ねーってば、それ。もう、手離していい?」

「や、やだ!」

 まどかの両手が杏子の右手をがっちり掴む。よって、杏子は逃げられなくなった。
 
 空いた左手で杏子は自分の右頬を掻く。全然痒くなんてないのに。

「……あのさあ、まどかが贅肉チェックしろっつったんだよ? 覚えってっか?」

 平静を装って杏子は言うが、まどかの両手から伝わる熱のせいでハッキリ言って落ち着かない。

「ぜ、贅肉とか、言ってないし! 杏子ちゃん辛口すぎるよ……」

「あたし、まだ何も言ってないに等しいと思うんだけど?」

 とりあえず、話が前に進まない。
366 :ほむマミ派(膨れまどか) [sage saga]:2011/11/22(火) 03:44:00.39 ID:tIVuGmBAO


 他人の身体を無遠慮にべたべたと触る趣味はない。杏子は正直困っていた。
 右手がまどかに掴まれたまま、一分近くが経とうとしている。

「まどか、すまん」

「へ?」

 左手で貫手をつくり、まどかの右脇腹を軽くつつく。

「ひゃっ」

「おっと、あぶね」

 過剰反応は予測済み。
 杏子はフリーになった右腕でまどかの肩を抱きかかえ、倒れないのを確かめてから手を離す。

「もう! ひどいよ! びっくりしたぁ」

 頬を膨らませてまどかが言った。

「つついた感じじゃ、大丈夫だと思うよ、あたしは」

 笑顔をつくり、まどかを安心させようとする。我ながら実に姑息な手段。

「そうかな? 平気かな? わたし、まだセーフかな?」

「まあ、まどかのセーフゾーンがあたしにはわからんけど」

 二人して笑う。とりあえず危機は脱することが出来た様子。

「で、まどかは何を食べるの? 誘ったんだから奢るよ」

「うう、悪い気もするけど……ピザが食べたいです……」

「お腹周りを気にしてたのは誰だい?」

 また笑う。

 思えば、まどかと二人きりでここまで話すこと自体が初めてのことだ。……理由は言わずもがな。
367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/22(火) 04:03:59.00 ID:UrkcNl06P
さやかは杏子ちゃんの足枷になってたんだろうか?
これだけじゃ、まだ杏子ちゃんの真意はわからないか……
同時進行の回想がなにか真意と繋がりがありそうでwwktk
368 :ほむマミ派(食べさせまどか) [sage saga]:2011/11/22(火) 23:17:29.82 ID:3TclrLyho


「杏子ちゃん、あーん」

「あむ」

 先ほどから、まどかがピザを杏子の口に次々と運んでくる。
 これでもう三切れ目だ。

 相手が違うので、一応咀嚼して飲み込んでから杏子はまどかに話しかけた。

「まどか、さっきからあたしに食べさせてばっかじゃね?」

「えへへ、杏子ちゃんの食べっぷりがいいのが面白くて……」

「いや、いいんだけど……、食欲無いのか?」

 まどかの表情が少し曇る。
 自分から誘っておいてなんだが、これでは杏子もあまり楽しくはない。

「まどかのウエストなら多分大丈夫だからさ、食えって。まあまあうまいよ?」

「多分なんだね……」

 さらに一段表情が暗くなった。段々と面倒になってくる杏子。

 仕方がない。こちらから言いたくないことを言うしかないだろう。

「さやかのこと、気にしてんだろ?」

 五秒ほどの沈黙。

「……うん、それは気になるよ、やっぱり……」

 それだけ答え、まどかは黙り込む。
 杏子は、仕方がない、をもう一度繰り返すことにした。

「あんた自分で言ったじゃん、『遠慮しない』、って。あれって嘘?」
 
 五秒ほどの沈黙、二回目。

「……杏子ちゃんはいいの?」

 質問で返された。苛立ちを隠し、上手い切り返しを杏子は考える。
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/22(火) 23:19:22.98 ID:gjYXGqJ/o
たのむ杏子、さやかを幸せにしてあげて…
370 :ほむマミ派(食べまどか) [sage saga]:2011/11/23(水) 09:28:59.39 ID:642hCn5+o


「ほい、食え」

 杏子はピザを一切れ手に取り、まどかの口元へと近付ける。

「えっと、あの……」

「このままじゃ埒があかねーもん。いいから食え、お返しだよ」

 微笑んで杏子は言う。
 功を奏したのかはわからないが、まどかは一口小さくかぶりついた。

「あむ」

「……落ち着いてよく噛んで食えよ? ピザって消化よくねーから」

 子供扱いするなという目をして、まどかは口をもきゅもきゅさせている。どことなく小動物チックだ。
 十五秒の後、まどかはピザを飲み込んだ。杏子は黙って様子を窺う。

「……おいしい」

「そ、良かった」

 まどかがコーラをストローで啜るのを見て、杏子も飲み物を飲む。

「とりあえず、冷める前に食っちまおうぜ? 話はそっからでも出来るし」

「うん、そうだね」

 まどかは笑みを上手く作れないようだ。やはり悪手を打ってしまった、と杏子は反省する。

 次の手を迅速に講じなくては。杏子はすかさず、ピザをまどかの口元へ。

「ほい、食え」

「えぇっ、自分で食べられるよ」

「ダメー。まどか、あたしに何切れ食べさせたっけ?」

「やっぱり恥ずかしいね、これ……」

 文句を言いながらも大人しくピザにかぶりつくまどかを見て、杏子は何故か自分の妹のことを思い出した。

 もう十年以上、杏子は家族の誰とも会っていない。
371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方) [sage]:2011/11/23(水) 09:37:58.07 ID:2BE8nz/e0
うへぇぁ……杏まど素晴らしすぎて悶えるわぁ……
372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]:2011/11/23(水) 09:50:25.16 ID:FNmhosbMo
天国構成中と聞いて
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/23(水) 16:43:49.48 ID:pgkBN7ZkP
小動物まどかに餌付けずるあんこちゃんの図が最高過ぎる
374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/24(木) 08:56:13.28 ID:MPqK1yfUo
もはやあんさやの希望は消えてしまったのか
375 :ほむマミ派(想い出) [sage saga]:2011/11/24(木) 19:09:50.53 ID:kT2xz5j4o


さやか『あんたさぁ、いっつも昼ご飯パンだけど、栄養とか考えてる?』

杏子『しょうがねーじゃん、あたしはあんたたちと違って、経済的に余裕あるわけじゃねーし』モグモグ

まどか『杏子ちゃん、食べながら話すのやめよ?』

ほむら『……』モソモソ

さやか『……そうか仕方ない。では、このさやかちゃんが一肌脱いであげちゃいましょうかね?』エヘン

杏子『何それ?』モグモグ

まどか『……杏子ちゃん、やめよ?』

ほむら『……』モソモソ

さやか『あたしがお弁当作ってきてやっから。……杏子たんに』ニヒヒ

杏子『はぁ!?』ブフォ

まどか『ほら飛んだ! 汚いし、お行儀悪いよ!』プンプン

杏子『ああ、わりぃ……』

ほむら『……』モソモソ

さやか『まあ動揺するのも無理ないよ、まどか。何せ杏子たん、シャイだから』ククク

杏子『……何回目になるかわからんけど、杏子たん、って言うな』イライラ

さやか『うん、大人しくお弁当を食べてくれるなら、もう呼ばない。約束する』キリッ

杏子『なんつー交換条件なんだよ、それ……』

ほむら『……』モソモソ

さやか『……杏子には勉強を見てもらってるしね。少しくらいはお礼をしないとさ』ウン

まどか『さやかちゃんが珍しくカッコいい……』ハー

杏子『……ていうかさ、そこで黙々と鳥の餌みたいなのを齧ってるほむらに食わす方が先じゃね?』

ほむら『わ、私はまだ、食事制限とか、あるので……』

さやか『と、いうわけなのだよ』ヘヘ

杏子『……そっか。どうもありがとう』ボソッ

さやか『……うん、こちらこそいつもありがとう、杏子』

まどか『えへへ』

ほむら『……』モソモソ
376 :ほむマミ派(せがみまどか) [sage saga]:2011/11/25(金) 21:52:51.11 ID:qsXRXPsAO


 六枚のピザを三切れずつ、
 元々杏子が食べる予定だった中華丼を三分の一まどかに食べさせて、二人は慎ましい夕食を終えた。

「杏子ちゃんって、野菜とか苦手じゃなかったっけ?」

 一息ついたところでまどかが訊いてくる。

「ああ、今日一時間くらい走ったから」

「い、一時間!? そんなに走ったら死んじゃう……」

 大げさな反応だったので、杏子は思わず笑ってしまった。

「まどかもどうだい? 腹回りを気にすることとかなくなるよ?」

 ニヤニヤしていることを自覚しつつ、杏子は問いかける。

「腹回り、ってイヤな響きだね……」

 渋い表情をしたまどかの返事。

「耳に痛い方がいいんだって、こういうのはさ」

 それだけ言うと、杏子は仰向けに寝転がった。両手を頭の下に置き、まどかの方を見られる状態を保って。

 まどかは正座を崩し、両脚が外へ向いた座り方をして、杏子をじっと見ている。
 すると突然、何かを思いついた様子で口を開いた。

「杏子ちゃん、食べてすぐ寝ると牛になるっていう……」

「なんないよ」

 途中で遮られ、まどかはむくれ顔になる。

「最後まで言わせてくれてもいいのにー」

「……迷信は嫌いだもん、あたし。確かにこのまま睡眠、ってのは良くないけど」

 的確かつサービス精神に欠ける返答の後、杏子はまどかから視線を逸らし、天井を仰ぎ見る。

 そして、しばしの沈黙。
 
 ふと、強い視線を感じ、まどかの方を見やると、何かを言いたそうな顔付きをしていた。

「……どうかした?」

 のんびりと尋ねる。意図的に。

「杏子ちゃん、重ね重ねお願いばっかりで悪いんだけどさ、……おなか枕させてもらってもいいかな?」

 聞いた事のないフレーズ。
 でも、意味はすぐにわかり、杏子は少しだけイヤな予感を覚えた。多分、拒否出来ない。
377 :ほむマミ派(解きまどか) [sage saga]:2011/11/26(土) 08:11:26.38 ID:uRpTh2RUo


 杏子の返事を聞くことなく、まどかは空いた食器と折り畳みテーブルを片付け始める。

「……なあ、食べてすぐ寝るのは良くない、って言ってなかったっけ?」

「くふふ、つい今しがた、その説は杏子ちゃんに否定されたばかりだよ」

 まどかは答えた。嬉しそうに。

「いや、言ったけどさ……」

 まさか初めからこうするつもりで、まどかはワザとつまらない質問をしたのだろうか。
 だとしたら、中々のテクニックではある。杏子は色々と諦めた。

「まどか、寝るんだったら、身体の右側を下にしな?」

「えへへ、かしこまりー」

 愉快そうに言いながら、まどかは髪を結っていたリボンを解き、髪を下ろす。
 さも当たり前に行われたその行動に、杏子は内心慌てざるを得ない。

「おい、ガチ寝かよ」

「だって髪の毛が邪魔になるもん」

 まどかは再び膝立ちの状態になって、杏子の方へゆっくりと近付いてきた。

「それじゃ、失礼します」

「……どうぞ」

「へへ、緊張するね、お互い」

「いらんこと言うな」

「よっと」

 ごろんと寝転がり、まどかは自分の頭を杏子の腹部へそっと乗せてくる。

 久々に自分の身体に掛かる誰かの重み。杏子が最初に抱いた正直な感想は、心地よい、だ。
378 :ほむマミ派(訂正) [sage]:2011/11/26(土) 08:19:30.41 ID:RNMBKwuAO
>>376
×六枚のピザ

○六切れのピザ

食べ過ぎ
379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/26(土) 08:41:38.36 ID:lVtgoHVzP
この手探り感というか駆け引きっぽいのがあるのがリアルでいいなぁ
お互いを意識してて、でもまだ慣れてないから緊張してるのがすごいわかる
380 :ほむマミ派(寝まどか) [sage saga]:2011/11/27(日) 14:48:46.06 ID:SRpL6lszo


「……驚愕のお腹だね」

 まどかがぽつりと言う。
 
「どういう意味?」

「余分なお肉がまるでないよ……」

 杏子は天井を見つめながら笑った。まどかが自分の方を向いて寝転がっているからだ。

 一体誰と比べてるんだい? という質問がふと思い浮かび、言葉にする前にかき消す。

「……まどかはさ、お姉さんだろ? タツヤとこんなふうに過ごしたことってないの?」

 不自然な質問だとわかっていて口にする杏子。
 
「昔はあったけど、今はないかな、流石に。わたしはともかく、タッくんはイヤがりそう……」

「ふーん。……今度誘ってみれば? 『お姉ちゃんのお腹で寝てみない?』、って」

 言いながら、杏子は吹き出してしまった。まどかも合わせて笑い、振動が杏子の腹部に伝わる。

 その震えは、こそばゆい。

「取り合ってもらえないよ、きっと。わたしに冷たいもん、今は」

「いや、たった一人の大事な姉なんだから、真剣に頼み込めばいけんじゃねーかな……」

「ふふ、杏子ちゃんは、どうしてそんなにタッくんを推すの?」

 まどかはまだ笑っている。顔を見なくても、声と振動で丸わかり。

「……こっからは聞かなかったことにして欲しいんだけど、まどかは大丈夫?」

「うん、いいよ」

 返事を受け、杏子は一度深呼吸をした。ほぼ同時に、「おぉ」、というまどかの反応。

「タツヤ、あんたのことすげー心配してたよ。心の底から心配してた」
381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/27(日) 20:39:56.46 ID:hNd0fuK/P
兄弟ってほんと微妙な距離感あるよねww
382 :ほむマミ派(問いまどか) [sage saga]:2011/11/28(月) 12:36:20.24 ID:h5Qo3/JAO


 しばらく返事がなかった。

 仕方なく杏子がまどかの方を見ると、何とも言い難い表情で考え込んでいる。

「どうかしたか?」

「……うん、それはね、わかるよ。わたしにだってわかる」

 そう答え、沈黙してしまうまどか。
 杏子は何か言わなくてはと思い、実行する。

「さっき言ってたじゃん、反抗期が来てんだろ? だから……」

「どうして、杏子ちゃんはタッくんのこと話題にしたのかな?」

 遮られた。また、悪手を打ってしまったらしい。

「いや、久々にタツヤに会ったからさ、なんとなく……」

「杏子ちゃんは嘘つくの下手だね」

 にっこり笑いながら、厳しめのトーンでまどかが言いきり、そのまま続ける。

「タッくんに何か言われたんでしょ?」

「いや、あたしは何にも言われてないよ、別に」

「杏子ちゃんは、でしょ?」

 完全に打つ手を誤った。相手がゼロ距離にいるので、動揺を表に出せない。
 杏子がさりげなく視線を逸らすのと同時に、まどかが呟いた。

「話題変えよっか」

「あ、ああ、そうだね」

 ほんの数秒空く。

「……杏子ちゃんはさ、どうして今日、わたしのことを誘ってくれたの?」

 穏やかな口調にも聞こえなくはないが、杏子の体感温度は下がる一方だ。
383 :ほむマミ派(想い出) [sage saga]:2011/11/30(水) 09:32:59.55 ID:AfeMUeqAO


さやか『ふざけるなよ、お前! 取り消せ!』バシッ

杏子『てめえこそふざけんな! あたしは間違ったことなんて言ってない!』バシッ

まどか『やめてよ、二人とも! こんなのおかしいよ!』

ほむら『……』

さやか『何がわかるんだよ! なあ、お前に何がわかるんだよ!? 答えろ!』ドカッ

杏子『……あたしが同情すりゃ、元通りになんのか! 治んのか、そいつが! なあ!?』バシッ

まどか『ねえ、二人ともやめてったら! ……ほむらちゃん、ごめん! 先生呼んできて!』

ほむら『ダメだよ』

まどか『え?』

ほむら『こ、これは止めたらダメだよ』

まどか『ほむらちゃんまで何言ってるの……?』

さやか『……仕方なくなんてない! 取り消せ! 取り消せ!』バシッ

杏子『るせぇ! 何回も同じ台詞繰り返してんじゃねーよ!』バシッ

さやか『いいから取り消せ! 早く取り消せ!』バシッ

杏子『うぜぇんだよ! 繰り返すなっつってんだろ!』バシッ

まどか『もうやめて……やめてよ二人とも……』グスッ

ほむら『……』フゥー

ほむら『……まどか』

まどか『え?』

ほむら『せ、先生、呼んでくるから』スタスタ

まどか『……ほむら、ちゃん?』

さやか『うあああっ! 取り消せ! 取り消せ! 取り消せ!』ポロポロ

杏子『……耳触りな声で喚いてんじゃねーぞ、コラ!!』バキッ
384 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/30(水) 15:02:19.84 ID:zdiiWBF3P
恭介関連か
そいやさやかはまだ恭介のこと引きずってそうだったよね、仁美との会話で
385 :ほむマミ派(慣れまどか) [sage saga]:2011/11/30(水) 22:28:48.54 ID:AfeMUeqAO


 言葉が上手く纏まらない。
 多分、杏子自身もよくわかっていないからだと思う。

 とりあえず、もう一度深呼吸をする。
 ほぼ同時に、「おぉ」というまどかの反応。さっきと全く同じ。

「……よくわかんね。あたしにもわかんねーよ」

 杏子は正直に答えた。

「へへ、それはわたしが、『よくわからないけど誘いたくなる女』だ、って解釈でいいのかな?」

 まどからしからぬ攻めだ。もっとも、杏子が知らなかっただけだろうが。
 さほど考えることなく、返答を思いつく。

「まどかが言うと異様に面白く聞こえるね、それ」

「ひ、ひどいよ!」

 そして、二人して笑う。

 杏子は、出来れば『おなか枕』の姿勢から脱したいのだが、まだ機は熟していないだろう。

 焦りは禁物。

「あんたとさ、こうやって二人だけで話すのって初めてじゃん? それだけでもよくね?」

「……うん、そうだね」

 間が空くと、意識されるのは『いない誰か』。
 でも、そんな間を活かして会話を紡げば良い。

 この時間の過ごし方に、杏子も、まどかも慣れつつある。
386 :ほむマミ派(同時刻、美樹さやかは……) [sage saga]:2011/12/01(木) 07:26:20.41 ID:csmDbKvAO

美樹ハウス さやかの部屋


 ベッドの上で腕組み正座をし、目の前に携帯電話を置いて、美樹さやかは固まっていた。


さやか(うーむ、悩むな……)

さやか(いや、悩んでる暇があったら電話しないと……)

さやか(でも、『幸せにやんなよ』なんて啖呵切っちゃったしなぁ……)

さやか(いや、ダメでしょ。あたしが引いたら、話終わっちゃうし……)

さやか(でもなぁ……まどかにもキツいこと言っちゃったしなぁ……)

さやか(いや、だから、それはそれで謝りゃいいんだっつの。それはそれ、これはこれ、だってばさ……)

さやか(でもなぁ……うーむ……悩むな……)

さやか(……あれ? なんか最初に還ってきちゃったぞ? ダメじゃん、これ……)

さやか(でもなぁ、うーむ……)


 志筑仁美の助言のお陰か、比較的冷めた頭でさやかはのんびりとしている。

 彼女には彼女なりに確信めいたものがあるようだ。
387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/01(木) 09:11:33.79 ID:/hSgv4BQo
なんとかよりを戻させてほしい
388 :ほむマミ派(まどろみまどか) [sage saga]:2011/12/02(金) 06:10:00.35 ID:RfyOwQ8AO

 エリィ カップルルーム


 そろそろ起き上がりたくなってきた。 杏子はまどかの方を向き、声をかける。

「なあ、まどか……」

「やだ。 もう少しこのままがいい」

 杏子の腹部上から発せられる拒否の声。 まるでこちらの出方を予測していたかのような反応速度だ。

 しかし杏子は慌てない。

「もういいっしょ? あたし、このままだと寝ちゃいそうでさ」

「……わたしも眠くなってきたから、いいよ」

 いや、良くない。

 ただ、まどかの表情は本当に眠たそうで、確かに少し寝かせてやりたい気持ちにはなってくる。

 そのまどろみかけた顔付きを見続けるのが気恥ずかしくて、杏子はまた視線を逸らしてしまった。

「まどか、明日も仕事だろ? ここで寝るワケにもいかねーじゃん」

「いいよ」

 より眠たそうな返事。

「おい、『いいよ』じゃねーって。 風邪ひくから。 ……な?」

 少々厳しく、杏子は言った。 再度、妹のことを思い出しながら。

「いいよ」

「だから、よくねーっ……」

 杏子の身体にかかっていた重みが突然消え、気付くと両手両膝をついたまどかが杏子の上に跨っていた。

「へへ。 杏子ちゃん、わたしの巧みな演技力に騙されちゃったね?」

 杏子の鳩尾の真上で、まどかはニヤニヤとしている。 物凄く嬉しそうに。
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/02(金) 10:13:33.72 ID:OiL/Y9S8P
二人のやり取りが素晴らしくて吐血した
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/02(金) 10:47:20.87 ID:sgz/6hgVo
ここからまどか転落したら素敵
391 :ほむマミ派(暁美課長は残業中) [sage saga]:2011/12/03(土) 06:52:10.11 ID:qOoQG9LAO

 オフィス


ほむら(…………マミ………………汁………………)カタッカタッ


モブ畑 「課長、外線一番にお電話です」

ほむら 「ええ、わかった。 ありがとう」キリッ

ほむら 「お電話代わりま……」カチャッ ピッ

さやか ≪ちわっすぅ! 美樹でーす!≫ヒャッホゥ

ほむら 「……声のボリュームくらい調節して話しなさい。 後、ここは会社なのだけど?」ハァー

さやか ≪いやぁ、今日は大変にご迷惑をかけまくったから、一刻も早く無事を知らせないと、ってね≫ヘヘ

ほむら 「美樹さん? 私の話、きちんと聞いてくれてるのかな?」イラッ

さやか ≪明日はちゃんと会社に出ますので。 今日はお気遣いありがとうございました≫

ほむら 「そう。 ……くれぐれも無理はしないようにね?」

さやか ≪……≫

ほむら 「どうかしたの?」

さやか ≪……あんたこそ無理すんなよ?≫

ほむら 「こら!」

さやか ≪すみませーん≫ガチャ

ほむら 「ちょっ……」ツーッツーッ


ほむら (……全く)フゥー


モブ畑 「愛されてますね」クスクス

ほむら 「ナメられてる、の間違いでしょう? 精進がまるで足らないわ、私」

モブ畑 「そうですか」フフ

ほむら 「……そうよ」ホムッ
392 :ほむマミ派(にやけまどか) [sage saga]:2011/12/04(日) 13:18:33.94 ID:s23d1FaFo
 
 エリィ カップルルーム


 鹿目まどかという人物がここまで不敵な表情をするのを、杏子は初めて見た。
 知っているようで知らないものなのだな、とぼんやり思う。

「この部屋でのね……、緩慢な動作、眠たげな受け答え、食欲無さげな素振り、そして、そして……」

 ニヤリとしたまま、何やら滔々と語り出すまどか。 杏子は黙って耳を傾ける。

「致命的ともいえる飲み物の渡し間違え……、全てはこの瞬間の為の布石、だったんだ……」

 ハッタリだろう。
 まどかが楽しそうなので別にいいか、と素っ気ない感想を杏子は抱いた。

 それにマウントポジションを取られていることは事実だ。
 中々に滑らかな動きで、師匠筋にあたる人物がまどかにはいるのでは、と想像される。

 それが誰か、と確かめることはしないけれど。

「……もう満足かい? あたし、起き上がりたいんだけど?」

「杏子ちゃん、ノリ悪い……」

「完全にあたしの負けだもん。 何も言うことねーしさ」

 その言葉を受け、まどかは表情をより輝かせた。

「じゃあ、ここから続けてわたしのターンだね?」

 そうして、何故かは知らないが、まどかの両腕と両膝が小刻みに震えだし、

「『お、お母さん、ぼく、上手く立ち上がれないよ……』、『ダメよ坊や、貴方が生きられるかどうかの瀬戸際なの』」

 小芝居が始まった。
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/04(日) 13:41:09.66 ID:Hy5YviQ2P
まどっちww
394 :ほむマミ派(掴みまどか) [sage saga]:2011/12/04(日) 22:50:19.54 ID:0mG3AF6Ko


 『生まれたての子鹿アタック』、だそうだ。


 今、佐倉杏子の上に鹿目まどかが覆い被さっている。


「なあ、まどか、重……」

 重くない。 むしろ軽いくらいだ。

 比較対象を一人しか知らない杏子だったので、その軽さと、柔らかさと、暖かさを強く感じてしまう。
 杏子の胸の上に頭を置いた状態で、まどかは顔を左横に向けていた。

「杏子ちゃんからボディソープの香りがします」

「いや、訊いてねぇし、別に」

「くふふ」

 状況は杏子にとって大変に不利だ。 何故さっさと起き上がらなかったのかが悔やまれる。

「こうしてれば、風邪もひかないよね?」

「ひくぞ? 普通に」

「もう、ムードに欠けるよ、それ」

 余裕のまどか。 

 正直、この後どうしてよいのかがわからない。 杏子にはわからない。
 まどかの両手が杏子のスウェットの両脇を掴んでいて、逃げられない体勢。

 杏子の両手は自身の頭の下にある格好から動かせなくなった。

「体重とかは大丈夫なんじゃね? 多分」

「へへ、そう言って貰えると安心して食べられるかな」

「そうやって太ってくんだけどねぇ」

「や、やめて……」

 なんとか平静を装って会話を続けられている感じはするが、まどかの落ち着きぶりには敵わない。
 気づかれているはずなのに触れられられていない事柄があって、杏子は内心焦っていた。

「……杏子ちゃん、結構な速さで心臓が鳴ってるよ」

 ぼそり、と指摘されてしまう。

 まあ、言って貰ったほうが気が楽には……ならない。 全然ならない。
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方) :2011/12/04(日) 23:32:24.09 ID:tR/6qNOC0
いいなあ、可愛らしい攻めってこういうのを言うのかな
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(愛知県) [sage]:2011/12/04(日) 23:35:40.39 ID:VJDDZP68o
あんさや…
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]:2011/12/04(日) 23:40:32.18 ID:CZGMMu3Zo
素晴らしいあんまどです
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(愛知県) [sage]:2011/12/05(月) 09:37:39.92 ID:YisOoOQLo
さやかのよりが戻るかどうかだけ知りたい
戻らないならもう来ないから
399 :ほむマミ派(返答) [sage]:2011/12/05(月) 10:34:24.82 ID:GJkv3OaAO
心苦しいのですが、誰も死にません、としか言えません
申し訳ないです
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/05(月) 14:18:17.42 ID:/aMYifV7P
あんさや好きの人、攻撃的なコメント多すぎ
もうちょっと自重しようよ
401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]:2011/12/05(月) 17:15:40.19 ID:hHdQwj+Qo
例の如く追って確認して確信する事は認識わっしょい。そんな事より、もちつきワッフル
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/05(月) 19:51:12.36 ID:Zgpsx2X6o
誰も死なないだけか…
今まで楽しませて読ませてもらったよ、さよなら
403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/06(火) 07:52:23.45 ID:JIBEWREUo
まどあん派でもいつ寄りが戻るかわからなくてハラハラする
404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/06(火) 07:57:49.54 ID:/5r0FZrlP
うむ、どうなるかわからないから面白いだよね
405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/06(火) 08:02:23.64 ID:JIBEWREUo
>>404
いや、俺の場合は逆なんですけどね
まぁ>>1が展開ばらしたくないならしょうがないけど
406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(愛知県) [sage]:2011/12/06(火) 22:45:06.91 ID:ogRoMfBKo
しかし視点が移りまくりで誰がメインなのかわからなくなってきたな
…ほむマミ?
407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]:2011/12/06(火) 22:49:20.84 ID:dBnh8M5Jo
あらやだヒートアップしてきました。もちつきワッフル
408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方) [sage]:2011/12/06(火) 22:54:17.53 ID:ThXOW4xb0
複数主人公の群像劇でしょ、よくあるとおもうけど(今だとFate/Zeroとか)
この過去回想をこまめにいれまくる演出が洋ドラのLOSTみたいだなぁと思った
409 :ほむマミ派(業務連絡) [sage]:2011/12/07(水) 17:54:43.40 ID:5oFPBvEAO

一応、>>121の予定通りに書いています

ラストまで完全に決まっていて、その一点に向かっている最中です

僕から言えるのは、「誰も死にません」がギリ(これだって最重要ネタばれだと思う)

流石に師走ってる為、更新頻度は落ちますが
ちゃんと終わりまで書きますので、しばしのお待ちを……
410 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]:2011/12/07(水) 17:58:10.26 ID:MTMMFAEeo
ワッフル待機
411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/07(水) 18:07:08.54 ID:7kyBF8KTP
ネタバレ見たい人、見たくない人ってのは趣向の違いだしね
攻略本片手にゲームする人と、一回目は攻略なしでゲームしたい人の違いみたいなもんだし、>>1も外野はきにせずに筆進めて欲しい
412 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/07(水) 21:19:16.20 ID:463b5DoCo
どんな結末になろうが結構なんだが流石におせえ…
しかも元はのっとりだろ?
413 :ほむマミ派(想い出) [sage saga]:2011/12/08(木) 02:42:57.10 ID:QZFsVaSOo


まどか『……』

さやか『……』パクッ

杏子『……』モグモグ

まどか『ねぇ』

杏子『……どした?』ゴキュ

まどか『……ほむらちゃんって、わたしたちのこと、やっぱり嫌いになっちゃったのかな……』シュン

さやか『いやあ、流石に付き合いきれない、って思われても仕方はないよね、ははは……』

まどか『それって、笑いながら言うことなの?』

さやか『ご、ごめん』

まどか『……』ションボリ

さやか『……』ウゥ

杏子『……さやか、すまん。 改めてすまん』ペコッ

さやか『あんたも、とってつけたように謝んなって……もう済んだことじゃんよ……』ハァー

杏子『じゃあ、この油琳鶏うまい』モグッ

さやか『ありがと……「じゃあ」は要らないけどね……』

まどか『……』シュン

杏子『……あいつにも事情があんだろ? 昼休みになると速攻消えちまうんだから』モグモグ

まどか『杏子ちゃんはドライだよね……食べながら話すの、やめてくれないし……』

杏子『わ、わりぃ……』ゴクン

まどか『……』グスッ

杏子『……ま、まどかも食うかい? 作ったのはあたしじゃねーけど、うまいよ?』

まどか『いらない。 この前さやかちゃんに、「太った」、って言われたもん……』

さやか『ご、ごめん』

まどか『さやかちゃんが謝るのはおかしいよ……』

さやか『……』ウゥ

杏子(じゃあ、どうしろっつんだよ……)ゲンナリ

さやか『ん? 杏子、なんか言った?』

杏子『いんや、別に』モグッ

まどか『……』グスン

さやか『……まどか、早くご飯食べてさ、勉強しよ? ね?』

まどか『うん……』モソッ
414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/08(木) 03:58:30.07 ID:AluRqS8lP
ほむほむはさやあんの繰り広げる茶番じみたやり取りにイラだってたしね
まあでも面白いのが、ほむほむは無自覚なんだろうけど、今まさにほむほむは、
傍観者の時にイラだってたようなバカップル的やりとりをマミさんと嬉々としてやってるところだなぁww
415 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/08(木) 08:11:48.84 ID:hIrAbSyI0
そろそろ想い出にマミさんくるかな
416 :ほむマミ派(遊びまどか) [sage saga]:2011/12/08(木) 17:34:11.01 ID:gFc/WGMAO


 膠着状態が続いてた。 子鹿アタックから、二人は重なったまま。
 今の杏子にとって救いなのは、まどかと視線が合わさっていないことだけ。

「……なあ、寝てないよな?」

「ふぇ?」

「おかしな声出すなっつの」

「くふふ」

 遊ばれている、いいように。

 まどかの方が体温は高いようだ。 衣服ごしでもそれが十分に伝わってきて、杏子にはそれが辛い。
 両脚を真っ直ぐ伸ばしてクロスさせたポーズに妙な力が入っていることを自覚し、顔が熱くなった。

「この格好、いつまでしてりゃいいわけ? あたし、もう……」

「我慢できない?」

「おい、ふざけんなよ?」

「くふふ」

 笑いながら、杏子のスウェットをより強く掴んでくるまどか。 動きはお互いに殆ど無い筈なのに、押されている、と感じる。

「杏子ちゃんの心臓が鳴り止みませんね」

「鳴り止んだら死んじまうし」

「へへ、それはそうだね」

「……なあ、もういいだろ?」

「わたしのターンは終了してません。 ふふ」

 埒が明かない。
 強行突破しかないだろう、と杏子が思った瞬間にパソコンデスクに置いてあった携帯電話が鳴った。

「佐倉さん? お電話ですよ?」

「ああ……」

 そう言いながらも、まどかは退く気などさらさら無いようだ。
 
 杏子は杏子で身体が上手く動かない。 今鳴っている着信音に設定してある人物は一人だけしかいないから。
417 :ほむマミ派(わかりまどか) [sage saga]:2011/12/09(金) 04:16:10.79 ID:DYYTdFQUo


 結局、電話が鳴り止むまで、杏子は微動だに出来なかった。

「杏子ちゃん、電話に出なくてよかったの?」

 当然の質問。

「まどか、退く気なかったじゃねーか。 ……重くて動けなかったよ、わりーけど」

「……まあ、少しは自覚があったんだけどね……へへ」

 心苦しい。 重い、と言ったことに対してではない。

 そして、再び沈黙。 もう何回目だろうか。 即、次の手を打たねば。

「なあ、重い、って冗談……」

「わかってるよ」
  
 遮られた。 これも何度目だろう。 わかってる、という返答も今の杏子には喜ばしくない。

「杏子ちゃん」

「何?」

「頭、撫でてくれないかな?」

「……えらい、甘えてくるじゃん」

「そのつもりで来たもん、今日」

 声の調子がまた暗くなった。 少し間を取ってから、話し出すことにする。

「……それよりさ、あたし起き上がりたいんだ、いい加減」

「杏子ちゃんが頭を撫でてくれたら、わたしのターンは終わりです」

「おいおい……」

「終わりです」

 様子を見る為にまどかの方を向くと、 杏子は棘のない柔らかい匂いをハッキリと嗅ぎ取った。

 それは、意識しないようにしていた、まどかの匂い。
418 :ほむマミ派(わがままどか) [sage saga]:2011/12/10(土) 19:13:54.91 ID:qd3E0ygAO


 鹿目まどかの持っている『匂い』を嗅いだことで、杏子は少し安心した。

 良い匂いではある。 ただ、それだけのこと。
 
 わざわざデートに誘っておきながら、とんだ身勝手な感想を抱いている自分に嫌気がさした。
 その気持ちを誤魔化すように、杏子は視線をまどかから外し、天井を仰ぎ見る。

「まどか、もう起き上がろうぜ? あたしも明日朝早いんだよ、な?」

 嘘だ。 今日だけで幾つ嘘をついただろうか? まどかの要望に応えるつもりすらない返事。

「……やっぱり、頭撫でてくれなくていいや」

 ぼそりとした呟き。 読み取られたのかもしれない。

「いいよ、頭くらい撫で……」

「しなくていいよ」

 また遮られた。 逆の立場だったら、自分もきっとそう答える。

「じゃあ……」

「それはやだ」

 そう言って、まどかは強くしがみついて来る。 頭を杏子の胸に強く押し付けるようにして。

「おい、まどか、苦しいって」

「やだ」

「やだ、じゃねーよ。 わがまま言うな……」

「やだ!」

 それほど大きな声ではなくても、まどかの叫びは杏子の身体の芯にまで響いた。

「……迷惑だろ? ここで叫ぶの」

 対して自身のひどい台詞。 何の気持ちもこもっていない。

「杏子ちゃんはなんで今日わたしを誘ってくれたの? わたしを騙そうとしてるの? ねえ、なんで?」

「落ち着けっつの。 まどかのわがままには十分付き合ったじゃんかよ」

「杏子ちゃん、ここに来てから、何か都合の悪いことがあるとすぐ目を逸らすんだもん。
 わたしだってバカじゃないんだよ。 さっきの電話がさやかちゃんからだ、ってことも知ってるんだから。
 あ、そうか、さやかちゃんとグルになってわたしをひとりぼっちにしようとしてるんだね。
 もうとっくにわたしはひとりぼっちなのに、さらに追い詰めてそれを二人して眺めようってことなのかな? ねえ?」

 捲くし立てるだけ捲くし立てると、まどかは身体を震わせ始めた。

「今日さ、ほむらちゃんに『泥棒猫』って言ってやったんだ。
 そしたら、さやかちゃんに『名前を呼ぶな』って言われちゃったよ。
 仕上げに杏子ちゃんは何をしてくれるのかな? ねえ、何をしてくれるの?」
419 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/10(土) 21:19:10.82 ID:7xJWC5oao
いい病みっぷりだ
420 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/10(土) 21:23:01.24 ID:PKXwyCpMo
>>1は絶対多分「○○まどか」が気に入ってるだろう。うん、良いフレーズだ
421 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 18:27:52.63 ID:KJeVXOw50
まどっち・・・
422 :ほむマミ派(怯えまどか) [sage saga]:2011/12/11(日) 19:16:19.08 ID:s8Kp+XHQo


 まどかは杏子が未だかつて見たことが無いほどに興奮しているようだ。 表情を窺えないことが杏子の不安を煽る。
 こちらの身体に震えながらしがみ付いてくる力は相変わらずで、杏子はまどかの昂ぶりに釣られないように呼吸を整えた。

「まどか、あたしはあんたを騙そうとなんてしてない。 落ち着けって」

「嘘だよ。 杏子ちゃん、わたしがさやかちゃんとキスした、って話したとき、何て言ったか忘れちゃった?」

 杏子は間髪入れずに答える。

「ぶん殴りたい、って言ったよあたし。 ちゃんと覚えてる。 でもそんなことしない。 絶対にしないから」

「そうやって油断させて、わたしを殴るんでしょ? 騙すんでしょ? そうなんでしょ?」

 怯えや焦りを強く滲ませてまどかは言う。 その身体から伝わる震えは痛々しさを感じさせた。
 殴られるかもしれない相手にしがみ付く、という矛盾をしている時点で、今のまどかがかなりの錯乱状態にあることは間違いない。

「なあ、まどか、こっち向け。 殴ったりなんてしないから。 あたしを見ろ」

 杏子はそう言って、両手でまどかの背中を優しくさすった。 かつて、自分が美樹さやかにしてもらった時のように。
 触れた瞬間こそ強張りを見せたが、小さくて、柔らかくて、暖かい背中は徐々にほぐれて行く。

 まどかは相変わらず顔を横に向けたままの姿勢。 色々と怖いのだろう。 それは無理もない話だ。

「まどか、そのまま深呼吸しろ。 ゆっくり吸って、ゆっくり吐いて、な?」

 杏子の両手が自分の背中をさすり続けているからか、まどかは無言で大人しく指示に従ってくれた。 吐いて、吸って、吐いて。
 身体を重ね合わせていることが役に立ったかもしれない。 震えも少しずつ治まってきている。

「……そう、それでいいから。 あたしはまどかを殴ったりなんてしない。 絶対にしないよ」

 本当のことを喋るのは実に楽だ。 そんなふうに杏子は思う。
423 :ほむマミ派(啜りまどか) [sage saga]:2011/12/12(月) 20:54:18.59 ID:VCUfNLvAO


「あちーから、よく冷ましてから飲め、な?」

 杏子はある程度落ち着いたまどかに、ホットココアを汲んできて差し出した。
 マグカップを受け取り、ココアに息を吹きかけるまどかの姿を見て、杏子はまた自分の妹のことを思い出す。

「杏子ちゃんがふーふーしてくれれば完璧なんだけど……」

 少し元気を取り戻した顔付きでまどかが悪戯っぽく言う。

「おい、甘えんなよ?」

「へへ、すみません……」

 すぐ申し訳なさそうに謝ってきた。 何故かはわからないが、なんとなく心苦しい。 

 まどかは正座を崩し、両脚が外側へはねた座り方をしている。 よく似合っていて、杏子は「女の子」だな、と感じた。
 自分はといえば、胡坐をかいてまどかとの距離を一メートルほど空けて座っている。 正直、これ以上間を狭めるのは御免だ。

 向かいの相手が一口ココアを啜り、飲み込むのを待ってから、杏子は話し出す。

「最初に言っとくけど、あたしがさやかを部屋から追い出したのは、まどかとの件とは別の話だからな?」

 これは真実だ。 杏子にとっての真実。

「そうなんだね……」

 それだけ返事をして、まどかはまたココアを冷まし始めた。 あまり納得のいかない様子で。

 杏子は大きく息を吐いて、吸い込み、次の言葉を繰り出す。

「まあ、さやかとはちょっとやりづらくなってるとは思うけど、それはまどかの方でなんとかして?」

 少しの間を置いて、まどかは持っているマグカップに視線を落としたまま口を開いた。

「それって、どっちの心配をしてるのかな?」

「……は? 意味のわかんねー質問すんなよ」

 これは嘘。 バレバレだろうが、まどかは「へへ、すみません」とだけ答え、ココアを啜った。

 次の言葉を口にするのは杏子にとってもリスキーな気がしたが、こうなった以上は仕方がない。

「あの日さ、その……、ほむらとマミとのことをまどかから聞かされた時に、あんたの力になれなくてすまなかったね」

 予想通り、沈んだ表情になるまどか。

 本来なら、今日まず始めに話しておかなければいけなかったことだと、今になって思う。

「杏子ちゃんが謝るのはおかしいよ……」

「理屈で言えばそうだけどさ、やっぱ、まどかはあたしの友達だから……、うん、悪かったよ」
424 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 21:34:45.74 ID:JN9MCq4qP
別件だったのか、まどっちとさやかのことは
425 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 07:27:12.81 ID:3F1MuNe20
俺も原因それだとばかり思ってた
426 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 08:34:48.03 ID:Hsg5z4sjo
あんさや完全にオワタ
俺もさよなら
427 :ほむマミ派(尖りまどか) [sage saga]:2011/12/13(火) 20:29:18.66 ID:Z0rBqN/Go


「謝らないでよ、本当に謝らなきゃいけないのはわたしだもん……」

 まどかは持っているマグカップに視線を落として呟いた。 多分、マグカップなど見てはいないだろうが。

「だから、あんたとさやかがキスしたことはもういいんだって。 あたし、そのことについてはもうなんとも思ってねーから」

 半分本当で、半分は嘘。

 微動だにせず、こちらの言葉に耳を傾けている様子のまどかに、杏子は続けて話す。

「それにさ、あいつとあたしはもう他人なんだから。 ……そういうふうにさやかにも言われちまったし」

 ぴくり、とまどかが反応した。

「それって、いつの話なのかな?」

 また、打つ手を間違えたかもしれない。 杏子は慎重に次を考える。

「……覚えてねーよ。 記憶が忘れることを望んでんじゃね?」

「ショックだったから?」

「おい、えらく噛み付いてくるじゃ……」

「杏子ちゃん、さやかちゃんを追い出した理由、って教えて貰えるのかな?」

 中々の鋭さで遮られた。 まどかはマグカップをじっと見つめるポーズのまま。

 しかし、想定されていた質問であって、杏子は慌てない。

「それをまどかに話す義務はないね。 一応、さやかのプライバシーにも関わるしさ」

 理屈は通っている。 一応、理屈は通っている。

 まどかは同じポーズを保ち、難しい表情をして口を開く。 杏子は何故かイヤな予感がした。  

「質問ばっかりで悪いんだけど……、杏子ちゃん、さやかちゃんときちんとお話したの?」  
428 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 02:40:57.67 ID:mlxWMT7Zo
まどかの反応が別れる話をした後の恋人だ、、、ドキドキする
429 :ほむマミ派(遮りまどか) [sage saga]:2011/12/14(水) 17:37:31.75 ID:OWiHssCyo


 非常に分が悪い。 杏子はそう感じている。
 こうなるのなら、大人しく頭でもなんでも撫でてやればよかった、と遅すぎる後悔。

「やっぱり、話したくはない?」
 
 誰に言うともなく呟くまどか。 その表情の暗さは今日最初に会った時の状態に戻ってしまった。

「いや、さっき言ったことと同じでさ、まどかには言えねーことがあるっつーか……」

 苦しい誤魔化しだ。 そもそも答えになっていない。

「ううん、いいよ。 わたしに話す必要はないよね、確かに」

 弱々しく微笑んで、まどかはココアを啜り、一度溜め息をついた。

「さやかちゃんに『名前を呼ぶな』、って言われたのもね、
 ほむらちゃんに見栄を張る為に杏子ちゃんの名前を出したわたしがいけないんだから……」

 まどかは暗い顔付きのまま黙り込んだ。 杏子はなんとか空気を変えようとする。

「ほら、あれだ、あたしの名前で良ければ別に……」

「杏子ちゃん、知ってる?」

 また遮られた。 まどかが遮りのプロなのか、自分の喋りが下手なのか。

「知ってる、って何を?」

 まどかはココアを一口啜ってから、笑みを浮かべた。 無理をしていることが一目でわかる笑み。

「さやかちゃんさ、嫁チェックという名目のセクハラをぱったりやめたんだよ? 杏子ちゃんのいない所でも」 

「……正直知らんかった。 けど、それが何?」

 話の流れが思っていたのとは違う方向性で望ましくなくなってきた。
430 :ほむマミ派(終わりまどか) [sage saga]:2011/12/15(木) 02:20:32.33 ID:+oTwb7MAO


 まどかは無理を感じさせる笑顔のまま、話し出す。

「さやかちゃんね、ある日突然、『杏子がヤキモチをやくから、もうまどたんとの戯れは卒業したのだよ』、ってわたしに言ったんだ」

 可笑しいよね、別に訊いてないのに、と付け加え、まどかは楽しそうに笑った。

 その不自然にも見える笑顔の明るさは、杏子の中にある種の気まずさを起こさせる。

 理由はハッキリしているが、換言したくはない。

「いや、それを今のあたしに言われても困んだけど……」

 杏子は視線を逸らして返事をした。 まどかを直視出来ない自分の情けなさを痛感しつつ。

「本当にそう言い切れる? 杏子ちゃんは、今の言葉をわたしの目を見て言える?」

 言われると思った言葉が、思った通り、思ったままの形で、まどかの口から発せられた。

 素直に言い分を聞くのが癪で、杏子は姿勢を変えずに言う。

「何だよ、何でまどかにそんなこと言われなきゃなんないワケ? 別にあんたには関係ねーじゃん」

 口調が荒れてしまった。 理由は明白で、やはり、換言はしたくない。

 しばらくしても返事が無いので、やむを得ずまどかの方を向くと、彼女の両眼から涙が流れ落ちていた。

「おい、まどか……」

「杏子ちゃんも知ってると思うけど、話を聞いて貰えないのって、凄く辛いよ? ……まあ、わたしの場合は自業自得だったかな」

 何度目か数えるのもイヤになるくらいに遮られた。 そして、今の状況に既視感を覚える杏子。

「わかってんよ、そんなことは。 あたしだってバカじゃねーんだし……、つか、何で泣いてんの? 迷惑なんだけど?」

 心ない言葉を敢えて選んだつもりだったが、まどかは全く動じない。

「そう言えば、わたしが怯むと思った? 残念ながら、免疫がついてるんだ、今のわたし」

 それは虚勢だ。 杏子はそのことをよく知っていて、わかっていた。

 そして、二人の間に再度訪れる沈黙。 双方にとって実に気まずい沈黙。

 片方の涙が収まるのをお互いに黙って待ち、落ち着いたところで、佐倉杏子と鹿目まどかのデートはあっけなく終了となった。
431 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 02:39:13.94 ID:2qMuyKWrP
まどっちが本気じゃないなら私を惑わして振り回すなって言ってるのはわかるんだが、
いまだにあんこちゃんが何をおもってさやかと別れ、まどっちに接近してるのかがわからんね
まあそこがストーリー的な核心なんだろうとは薄々感じてる
432 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 07:06:57.50 ID:s3fuJazuo
あらら
433 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 07:15:01.07 ID:v34jTui60
まあでもこれはまどかの対応が正解だろ
正直、杏子は何を考えてるのかわかんないしちょっと不気味だよ
「信用しろ」と言うくせに「じゃあ何故?」と聞くと答えられないとか、
人間不信になってるまどかからしたら、ちょっと近寄りがたいと思う
434 :ほむマミ派(鹿目まどか) [sage saga]:2011/12/15(木) 13:12:47.40 ID:LPbjHH+Zo

 鹿目邸 玄関前


「杏子ちゃん、お茶くらい出すけど、寄ってく?」

 鹿目まどかは、わざわざ自分の家まで送ってきてくれた佐倉杏子に対して優しく問いかけた。

「……さっきも言ったじゃん、あたし、明日朝はえーしさ。 ……まあ、ご厚意には感謝すっけど」

 なんだかんだ言って、佐倉杏子という人物は優しい。 そして、とても嘘が下手だ。
 よくこんな演技力で美樹さやかのことを部屋から追い出せたものだ、とまどかは皮肉めいたことを思ってしまう。

「そうだったね。 ……今日は折角誘って貰ったのに、お見苦しいところを沢山晒してしまってすみませんでした……へへ」

 ワザと卑屈に返してみた。 きっと杏子の反応は渋いはず。

「おい、そんな言い方すんな。 あたしはそんなふうには思ってねーから」

 ほら、やっぱり。 実にわかりやすい。

「ごめん、蒸し返すようなこと言っちゃって。 あ、タッくんが杏子ちゃんに会いたがってるのを急に思い出したよ」

 まどかは意地悪な嘘をつく。 弟のタツヤなら、大抵の女性は好きだから、厳密に言うと嘘ではない。

「忘れたの? あたし、昼間タツヤに会ったんだけど? ……それにあたし、あいつと特に話す事とかねーし」

 今度は正直に喋ることにしたようだ。 これ以上は本気で怒り出しそうなので、退くことにする。

「そっか。 杏子ちゃんも気をつけて帰ってね? 今度、必ず鯛焼き買いに行くから」

「ああ、あんがと。 出来たら来る前に電話してな? 焼きたての方がやっぱうまいからさ」

「……杏子ちゃんは優しいね」

「うーん、今のまどかに言われても皮肉にしか聞こえねーなぁ、それ」

「くふふ、そんなことないよ?」

「……おやすみ、まどか」

 そう言って身を翻し、杏子はさっさと歩き去ってしまう。

「おやすみー! 杏子ちゃーん!」

 まどかは大きな声で別れを告げた。 杏子はさっと振り返り、「声でけーよバカ」、と小さく叫び返してくる。

 その慌てぶりを見て、まどかは彼女のことを可愛いと感じた。
 自分の胸の内にもうひとつ渦巻く、形容し難いイヤな感情を必死で抑え込みつつ。
435 :ほむマミ派(鹿目家の夜) [sage saga]:2011/12/15(木) 22:35:01.41 ID:+oTwb7MAO

 鹿目邸 玄関口


「お、出戻り」

 まどかが自宅のドアを開けると、弟のタツヤがそう出迎えてくれた。

 続けて、音もなくタツヤの後ろに忍び寄り、彼の後頭部を勢い良く拳で殴る母親の詢子。

 ゴッ、という鈍い音はまどかにまで痛みが伝わってくるようだ。

「い、いてぇ……」

「実の姉になんて口聞いてんだ! 敬え!」

 タツヤは殴られた部分を押さえて蹲っている。 怒りを隠すことなく、弟を睨み付ける母を見るのにも随分慣れた。

 まどかは居た堪れなくなって、詢子に話しかける。

「ママ、いいよ、別に。 わたし気にして……」

「甘やかすな! つけ上がる!」

 こちらまで怒鳴られてしまった。 まどかはただ見ていることしか出来ないらしい。

「……こ、こっから……持ち上げる予定だっ……っ!」

 ふらふらと立ち上がった弟が何かを言い終わらないうちに、母はもう一撃。

 今度は右の太腿を滑らかに蹴り抜いた。 バシッ、という肉を打つ、聞くだけで痛い音。

 タツヤはその場に音を立てて倒れこみ、「いてぇ……」、と呻いている。

 まどかが『里帰り』した最初の頃は、父親の知久が何事か、と慌てて様子を見に来たのだが、今ではそれもない。

「姑息なこと考えてんじゃねぇ! 寝ろ! バカが!」

「寝ろ、ってまだ九時過ぎ……」

「……寝ろ!」

 詢子の一喝。

 今日のやり取りはこれにて終わりのようだ。
 
 タツヤは蹴られた部分を痛そうにさすり、ヨロヨロとしながら、自分の部屋へと無言で戻っていった。

 そんな息子の後ろ姿を呆れた様子で眺め、母は一度溜め息をつく。

「……ったく、あいつ、真性のマゾヒストかっつの。 毎晩毎晩、性懲りもなく」

 そして、まどかの方へ向き直り、詢子は優しく笑みを浮かべた。

「おかえり、まどか。 デートは楽しかったかい?」
436 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/16(金) 07:36:21.76 ID:+HbtC2Gvo
だいぶまどかマギカから離れてきたな
設定改竄されたまどマギのようなSSか
437 :ほむマミ派(自宅玄関にて) [sage saga]:2011/12/16(金) 17:45:37.21 ID:5B4g7kCSo


 まどかは、「ただいま」、としか答えられなかった。

 そして、玄関でしばらく無言になってしまう母娘。 こうやって見つめあうのが今のまどかには辛い。

 詢子は仕方がないというふうに苦笑し、まどかに向かって言う。

「出戻り、って言われて、まどかは嬉しかったかい?」

 簡単な質問だ。 なのに、まどかの口からは上手く言葉が出てこない。

「……タツヤのことは考えなくていいから、出戻り、って言われて嬉しかったかどうか、正直に答えな?」

 母の口調は優しい。 こちらを見る目つきも穏やかだ。

 ただ、『この質問に答えなければ家へは上げない』、という強い意思が伝わってくる。

「嬉しくなかった」

 まどかは正直に答える。

「じゃあ、いいんだよ、これで」

 そう言って、詢子はにっこりと笑い、

「改めて訊くけど、デートは楽しかったかい?」

 もう誤魔化せない。

「ううん、あんまり」

 やはり正直に答えた。

「そっか。 じゃあ、風呂に入ってさっさと寝ちまいな? 明日も仕事なんだから」

「うん……」

 まどかは靴を脱ぎ、きちんと揃える。

 自分の所作を黙って見ている母に何かを言わなくては、と思うが何も思い浮かばない。
 というより、これ以上何か優しい言葉を掛けられたら泣き出してしまいそうだ。 そのことに母も多分気づいていて、黙っている。

 結局、先ほどのタツヤのように無言で自分の部屋へ戻り、荷物と上着を片付けて、まどかは浴室へと向かった。
438 :ほむマミ派(まどか入浴) [sage saga]:2011/12/16(金) 20:16:28.53 ID:rULLwwmAO

 鹿目邸 浴室


 脱衣所で衣服を脱ぎ、洗濯籠へ入れる。

 まどかは自分の裸を見ないように視線を落とし、浴室へと向かった。

 浴室のドアを開けるとしっかりと湯船にお湯が張られていた。 有難いことだ。 本当に有難いことだ。

 今日は自分が一番最後の入浴になるので、このまま浸かっても良かったが躊躇われた。

 まどかはシャワーの栓をひねる。

 頭からシャワーの湯を浴び、そのまま立ち尽くした。 暖かくて気持ちよいが、心の内はまるで晴れない。


 母が家に居てくれて良かった。

 本来なら喜べる事ではない。 長年の激務と、アルコールの多量摂取の複合で身体を壊し、休職中なのだから。

『まどかみたいな稼ぎ手が戻ってきてくれて良かったよ……、皮肉じゃないぞ、これ』

 そう言って、母である詢子は、まどかが実家に戻った時、家を出る前とはなんら変わらない態度で出迎えてくれた。

 父の知久も同じように優しかった。 やはり父の作る料理はおいしい。 いつも、おいしい。

 弟のタツヤも態度が素直ではないだけで、まどかの帰宅を可能な限り出迎えてくれる。 ほぼ毎日だ。


 その全てがまどかにとって暖かくて、嬉しくて、頼もしくて、そして、何故か苦しい。


 身体を伝う温かな水。

 それは確かにまどかの体温を上げているのに、自身の事として意識出来ない。

 自分は今、泣いている。

 シャワーの勢いを強め、全身で涙を流すような妄想をしてみるが、意味はまるでない。

 どうしてだろう?

 何も考えたくはないのに、考えずにはいられず、考えなど纏まらない。

 どうしようもないと思う。 まどかは自分自身の事を本当にどうしようもないと思う。
439 :ほむマミ派(まどか黙考) [sage saga]:2011/12/18(日) 21:17:29.04 ID:CoC1vxmMo


 疲れが取れたのか、増したのか、よくわからないまま入浴を終え、気づくと寝る準備の全てを整えていた。

 まどかはリビングに居た両親と最低限の挨拶を交わし、自室に戻る。


 大人しく、真っ直ぐベッドに入った。

 まだ午後十時を三分の一ほど回ったところだが、自身の活動限界まで、リミットは余りない。

 
 先程までの『デート』について考える。
 
 今日、佐倉杏子と幾らかの時間を共に過ごしたが、彼女が自分に本当に伝えたかったことは多分二つ。

『あんたの力になれなくてすまなかったね』、そして、『さやかとなんとか上手くやって』

 電話で済む内容である。 罪滅ぼしのつもりか、同情か、杏子自身も寂しかったのか。

 メッセージの重要性としては後者の方が大きいのでは、と考えてしまう自分を、まどかは醜いと感じる。

 或いは心の何処かで、美樹さやかと佐倉杏子の関係が決定的に破綻していることを望んでいたのかもしれない。

 自分でも何処まで本心なのかわからない発想に囚われ、身が凍えるような錯覚。


 まどかは改めて思う。

 表面的な現象は同じでも、自分と美樹さやかでは遠ざけられた理由が多分真逆だ、と。

 鹿目まどかは要らなくなったから拒絶され、美樹さやかは想われているから追い出された。

 佐倉杏子がどんな考えからそうしたのかまではわからないし、そのことで彼女が口を割ることはないだろう。

 言い換えれば、その程度の脆い決意。 少し問い詰められただけで崩れてしまうような。

 余程上手く追い出したに違いない。 そんなことしか考えられない自分が益々イヤになってくる。


 巴マミに今すぐ電話して、今までの非礼を詫びれば良い。 でも、怖くて出来ない。 自分は臆病者だ。

 美樹さやかに今すぐ電話して、佐倉杏子と話すよう言えば良い。 でも、出来ない。 自分は卑怯者だ。


 殴られるのは心底怖いが、むしろ佐倉杏子に殴られた方が良かったのでは、と矛盾したことを考える。

 ただ、それは甘えだ。

 玄関で弟が殴られる代わりに自分が殴られれば良かった、と意味のないことを考える。

 ただ、自分はもう中学生ではないし、やはり、それは甘えだ。

 
 眠りたい、考えたくない、眠れない、考えずにはいられない、自分は一人ではない、なのに一人きりだ、寂しい、寂しい、寂しい、寂しい――
440 :ほむマミ派(まどか就寝) [sage saga]:2011/12/18(日) 21:17:49.95 ID:h3vaP7IAO

 ベッドの中で静かに涙を流し、鹿目まどかは午後十一時を少し過ぎた辺りで、意識を失うように眠りについた。
441 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/18(日) 23:28:06.12 ID:Gc0T9Kpao
そろそろ濃厚ほむマミのターンくるー?
442 :ほむマミ派(業務連絡) [sage saga]:2011/12/20(火) 14:17:19.48 ID:KrUEOT0eo

次のパートは、幾つかの塊にして投下したいので、しばらく更新はなしになります

再開は年明けの五日過ぎになるかと。当方サービス業にて、年末年始一切関係ないので

よいお年を
443 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/20(火) 14:40:10.11 ID:ITwAjRRxP
仕事がんば
どうにもまどあんは無理っぽいね
ならばさやかちゃんを幸せにしてあげてくだしあ
444 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/20(火) 17:24:15.26 ID:it0TTYp0o
待機ワッフル
445 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/20(火) 20:21:59.49 ID:DWInPxYLo
あんさや!あんさや!
446 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/21(水) 09:43:40.12 ID:GjUc7+MAo
まどかぼっちで他イチャイチャエンドがいいな
447 :ほむマミ派(お詫び) ◆CuwcoLXTJ2 [sage]:2012/01/01(日) 09:18:52.23 ID:ypLh3KUAO
正月忙しい

更新遅れます
すみません

いい一年を
448 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2012/01/01(日) 09:54:22.44 ID:abZ5eqLYo
あけおめ把握ワッフル
449 :以下、あけまして [sage]:2012/01/03(火) 08:49:19.67 ID:sx6jSjoB0
おけおめー
ことよろー
450 :ほむマミ派(書き込みテスト) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/01/05(木) 20:56:07.59 ID:7ghQv40AO
test
お知らせのしようがないね、これ
451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/06(金) 02:23:58.54 ID:3201Betp0
tes
452 :ほむマミ派(ひっそりと再開のお知らせ、そして今更の注意書) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/01/10(火) 22:14:57.89 ID:UqRB3czAO
更新のペースが大変遅いことを、まずお詫びします

この話は「本来ありえない時間軸、世界線のパターンの一つ」とお考え下さい
独自設定、設定改竄がまだ幾らか出てきます
そういうのが大丈夫な方で、読んで楽しんで頂ける所があれば幸いです

本日は10レス投下

携帯と連投のきかないイーモバイルで落としてくので、少し時間がかかります

一応、エロシーンが含まれているので、嫌な方は読まないで下さい
目標は、50レスで切り上げの予定














では、投下致します
453 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/01/10(火) 22:18:06.94 ID:sgg/4CIRo

 巴マミのマンション リビング 午後九時四十分


 予定していた時刻より、大分遅い帰宅となってしまった。

 私がリビングのドアを開けると、マミは既に寝間着に着替え、髪を下ろした状態で読書をしている。
 行儀良く正座し、黙って活字を眺めているその姿を見て、何故かほっとした。 

「おかえりなさい、ほむらさん。 お仕事お疲れ様」

 本をガラステーブルに置き、マミはこちらを向いて微笑みながら言った。

「ただいま、マミ」

 何か気の利いた一言を、と思うが、頭が上手く回らない。
 正直な話、疲れが溜まっていて、表情に出さないようにするので手一杯だ。

 そんな私の代わりに、マミが沈黙を破ってくれた。

「夕ご飯は済ませた?」

「ええ、マミの大嫌いな、ゼリーっぽいアレと、もそもそのブロック、野菜ジュース」

「ふふ、別に嫌ってはいないけど……、ほむらさん的には豪華な晩餐になるのかな」

 随分と機嫌が良さそうである。 喜ばしい。 色々な意味で喜ばしい。   

「……何を読んでたの?」

 テーブルに載せられた文庫本を横目に、私は尋ねた。

「ほむらさんに薦めて貰った小説」

 即答。 その柔和な顔付きとは対照的な素早さ。 次に問うことが決まって助かった。 

「面白い?」

「ううん、ちっとも」

 答えるマミは素敵な笑顔。

「そう、それは残念ね」

「……もう、違うわよ」

 軽く怒られてしまった。 何故か、というのは考えるまでもない。 
 マミは皆まで言わせるな、という顔をして、無言で私の方を見てくる。 その視線が少しくすぐったい。

 もう、手持ちの言葉が尽きてしまった。 時間もないので素直に告げることとしよう。 

「シャワー、浴びてくるから」

「ええ、待ってる」

 荷物を片付け、早足にならないよう気をつけながら、私は浴室へと向かった。
454 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/01/10(火) 22:24:13.75 ID:UqRB3czAO


 普段からマミにしっかりと身体を洗われているお陰で、それ程時間を掛けずにシャワーを済ませる事が出来た。
 ゆっくりと湯船に浸かって疲れを取りたい気もするけれど、これ以上の弛緩は後の事を考えると望ましくない。

 バスタオルで身体に纏わりついた水分を拭い、ボクサータイプのショーツだけ穿き、バスローブを羽織る。
 洗面台の鏡で、自分の裸をさっと眺めた。 最大限好意的に見ても、色気といった要素には欠ける気がする。
 
 毎晩のように巴マミの一糸纏わぬ姿を見ていたら、それも仕方ない、と心の中で結論づけた。
 
『無駄がなくて、すべすべで綺麗だ』

 そう、マミに褒められたことがあったが、『あれって、皮肉のつもり?』と、後で性的にいじめ抜いたことをふと思い出す。

 一度息を大きく吐いて気分を入れ替えた。 マミに疲れを見せるような事態に陥らないよう。

 新しいバスタオルで、髪の毛を優しく拭きあげた。
 ドライヤーを使うのは最小限にしなくてはいけない。 マミに叱られてしまうし、そんなのは嫌だから。

 仕上げにドライヤーで程々に水分を飛ばし、丁寧にブラッシング。
 ここまで気を使って髪の手入れをするようになったのは、マミと暮らすようになってからのこと。

 感謝しなくては、と思う。

 細かい手入れの数々を機械的、規則的にこなし、一度洗面台に写る自分の顔を確認した。
 多分、大丈夫だろう。 問題なく巴マミと相対することが出来る筈。

 大丈夫、と心の中でもう一度繰り返し、私はゆっくりとマミの待つリビングへと戻った。
455 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/01/10(火) 22:25:47.38 ID:sgg/4CIRo


「お待たせ」

 そう言って、リビングのドアを開けると、柔らかい衝撃。
 マミが抱きついてきて、私の首筋に顔をうずめてくる。 不意打ちが好きな彼女だ。

 そのまま立ち尽くす訳にもいかず、彼女の耳元で囁く。

「……マミ? くすぐったいんだけど?」
  
「お風呂上がりのほむらさん、凄く良い匂いだから……」

 くすくす笑いながら、マミは自分の鼻先を擦り付けてくる。 光栄なことだけれど、少し恥ずかしい。
 彼女の吐息が首周りを暖めてきて、困るような、困らないような。

 それに、私の鼻腔をくすぐる匂いの方がずっと素敵で、困るような、困らないような。    
 ふわっとした彼女の髪の香りが心地よい。

 一度息を吐き、気合を入れて一言。

「ねえ、早く行きましょう?」

 そうして、マミのことを急かすも、

「あと五分……」

 のんびりとした返事。 いくらなんでも長すぎる。
 
 マミはくすくすとしたまま、私を緩く捕縛していた。 単純な腕力は彼女の方が上だ。
 背中に回されたマミの両手がこちらを優しく撫でまわしていて、正直、気持ちが良い。

 身体から力が抜けそうになるのを必死で堪え、何とか言葉を纏めて口にした。

「なんだったら、ここでする?」

「ダメ。 それはダメ」

 そして、より強く全身を押し付けてくるマミ。 思わず、吐息が漏れそうになる。 
 
 ふわふわして、暖かくて、良い匂いで、なんとなくケーキを連想させる素敵な感触。
 クリームやら、スポンジやら、シロップやらに包まれている錯覚。
 
 こうやって刺激を受け続けていたら、私も少しはマミのような身体つきになれるのだろうか? 
 ほんの少しだけそんなことを考える。 はっきり言って無意味だが、楽しい。   

 相変わらず、肩甲骨や背骨を沿うように撫でられ、声を出さないようにするのが辛くなってきた。
 彼女とセックスをする場所は、この家では一ヶ所のみと定められているので、早くそこへ行きたい。

「……だって、今日はほむらさんと一緒にお風呂出来なかったし」

 突然、マミが呟いた。 考えを読まれてしまったらしい。 

「お風呂出来る、って表現、日本語としてどうなの?」

「ふふっ、わざとよ」

 また、のんびりとした返事。
 きっと、どうしようもなく意地悪な表情をしているに違いない。 今はマミの時間だから、抵抗する権利はない。

 私の背中を撫でる彼女の両手は一定のペースでいやらしくて、気を抜くともたれ掛かってしまいそうだ。
 しかし、こういう風に私を弄れ、という教えだと解釈し、甘んじて受けることにする。 

 現在、午後十時三十分。
456 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/01/10(火) 22:30:22.73 ID:UqRB3czAO


 本当にきっかり五分、マミにいいようにされてしまった。
 若干、息が荒くなっている自分に気づき、何とか呼吸を整える。   

 彼女が顔を上げてこちらを見てきた。 ニヤニヤとして、まるで悪戯っ子みたいに。
 本当なら、今すぐにでもキスをしたいし、出来る近さだが、ここではダメ、なのだ。

 それは初めての時からの決まりごと。 

 私が言うことを待ち望んでいる様子で、マミはじっと見つめてくる。 その表情は、誘い込むように攻撃的。

「……さて、行きましょう?」

「ほむらさん、ちょっぴり目がとろんとしてる」

 見事に逸らされた。 そう言う彼女は嬉しそうで何よりだけれど、ここで折れる訳にはいかない。

「行きましょう?」

「はぁーい……」

 甘ったるい返事。 私が望んだ返事。

 普段の巴マミからは絶対に聞く事の出来ない声。 子供っぽくて、可愛らしい囁き。

 リビングの照明を落とし、指を絡ませ、マミの左手を右手で握った。
 お互いの体温にそれほど差がないのか、彼女の手は実にしっくりくる。

 僅かな緊張を覚えつつ、無言で寝室まで、二人して手を繋いでゆっくりと歩く。

「マミの温かさは程好くて好きよ」

「ありがと……、ってほむらさん、そんなに色んな人を知ってるの?」

 私は答えない。 しばらくして、「もうっ」、というマミの声。

 数秒の間が空いた。

「あ、ほむらさんに薦めて貰った本だけど……」

 気分を変えて、といった具合に彼女が呟く。

「それがどうかした?」

 マミの方を見ずに訊き返した。

「『生きる為に飛ぶ』、じゃなくて、『飛ぶ為に生きる』、っていうのは、なかなかぐっと来るものがあったかな」

「……貴女にそう言って貰えて、本も幸せね」

「何よ、カッコつけちゃって……」

 二人して、くすくすと笑う。

 そして、あっという間にドアの前。

 左手でドアノブを押し下げ、間接照明のスイッチを入れる。
 二人して部屋の中へ入ると、マミがそっとドアを閉めた。

 繋いでいた手が一旦離れ、マミがベッドのある方に回り込んで、こちらに向き直る。 互いの距離は二メートル程。
 私はその様子を黙って眺め、彼女の表情の変化をじっくりと確認した。

 品のない言い方をすれば、『食べ頃』になるのを待っている状態。 マミは伏し目がちになり、下唇を軽く噛んでいる。
457 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/01/10(火) 22:31:41.17 ID:UqRB3czAO

 良い頃合いを見計って、静かに一言。 

「それじゃ、始めましょうか?」

「……はい」

 マミが自分の寝間着のボタンに手を掛けるのを、私は何も言わずに集中して見つめ続ける。
458 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/01/10(火) 22:32:43.25 ID:sgg/4CIRo


 緩いシルエットのワンピースタイプで、前にボタンが七つ。 色は薄紫で、ふわっとしたデザイン。
 巴マミという女性の魅惑的なボディラインを隠すのには、明らかに力量不足の布切れ。
 
 二つ、ボタンを外したところで、豊かな双峰の谷間が窺えた。
 私には無いものだけれど、羨ましいとは感じない。 彼女の気苦労を間近で見ているから。

 ただ、弄ぶのが面白い、とは常々思う。 

「マミ? 貴女、どうしてパジャマのボタンを外してるの?」

 マミが三つ目を外そうとした瞬間に声を掛けた。ボタンにかかった彼女の両手が止まる。
 何故そんなことを訊くのか、という表情をすぐに隠し、マミは頬を赤らめて、

「今から、ほむらさんに……、その……」

「聞こえない。 もっと大きな声で話して頂戴」

 意図的に少し声を荒げて遮ると、彼女がビクッと反応した。
 マミは視線を下に落として、気まずそうな顔つきになってしまう。

 私はマミから目を逸らすことなく、感情を抑えた声で言う。

「私に聞こえるように、わかるように、しっかりと喋りなさい。 私の目を見て話しなさい」

 はい、と弱々しく返事をして、彼女はこちらを見る。 既に瞳が潤んでいるのがわかった。       
 先ほどまでのマミとは、人格がガラリと変わってしまったかのよう。

 抱き寄せて、紅くなった頬を優しくなぞってあげたいけれど、ひたすら我慢をする。

「……ほむらさんが、『始めましょう』、って言ったから……です」

 敬語を使え、と強制したことはない。 マミ自身の判断だ。

 素晴らしい、の一言。 

「脱いでも良い、なんて、私は一言も言ってないのだけど? にも係わらず、貴女は私に責任を擦り付けるの?」

「ち、違います……」

 手馴れたやり取り。 彼女の両手はボタンにかかったまま。 早く脱ぎたいのだろう。

 マミは困った顔を必死で作りながらも、今の状況そのものを心の底から悦んでいる。 私にはそれがよくわかる。
 私は責め立てることに悦びを見出している素振りで、内心、自分が責められているような錯覚に打ち震えていた。

 当然、マミには悟られているだろう。

 なんというか、全く始末に負えない二人。 そのことが、物凄く愉しい。
459 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/01/10(火) 22:36:42.67 ID:UqRB3czAO


 ほむらは無表情でこちらをじっと見つめてくる。 そこに穏やかさのようなものは一切感じられない。
 こんな冷たい目で見られているのに、何故、自分の身体はどんどん火照ってくるのか?

 わかりきったことを考えるのをやめ、マミは最適解を瞬時に頭の中で練って口にした。

「ほむらさんに、早くいやらしいことをいっぱいして貰いたくて、勝手に脱ごうとしました……」

 その言葉を聞いた彼女が口元を若干緩ませるのを、マミは見逃さない。

「……そう。 随分、あっさり認めるのね?」

「はい、前に『いやらしいことは恥ずべきことじゃない』、ってほむらさ……」

「言ったわね、確かに」、とほむらは面白そうにこちらを遮る。

「ただ、勝手に脱ぎ出すのはお行儀が良くないんじゃないかしら? マミはどう思う?」

「……お行儀が悪いのをほむらさんに叱られたくて、わざとやりました」

 答えている間にも、マミの全身をなんとも言い難いむず痒さが駆け巡って、じれったさは増すばかり。
 この先に、どんな『お仕置き』、言い換えれば、『ご褒美』が待っているのか。

 考えただけで意識が遠くなりそうで、そんな自分のことを、心の底からいやらしいと感じる。

 ほむらは「マミは仕方のない子ね」と軽く笑い、こちらの望む台詞を発した。
460 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/01/10(火) 22:38:03.85 ID:sgg/4CIRo


「いいわ、脱いで。 但し、下着はつけたままにしなさい」

「はい……」

 決まりきった応酬だが、この瞬間が堪らなく好きで、マミはその気持ちを顔に表しながらボタンを外していく。
 
「嬉しそうにボタンを外すじゃない」

 そう言うほむらの顔つきも、凄く嬉しそうだ。

「はい、嬉しいからです」

「マミは本当にいやらしい女の子ね」

「はい……、私は本当にいやらしいです……」 

 あっという間に全てのボタンを外し、前がはだける。
 両袖を器用に滑らせて、マミは下着のみの姿をほむらに晒した。 下着の色はアイボリーホワイト。

 脱がれた寝間着は何も言うことなく、大人しくフローリングに寝そべっている。

「マミ、どうして今日、その下着を選んだのかを私に教えて貰える?」

 来る、と思っていた質問が来て、マミはその悦びを表情に出しつつ、

「ほむらさんに下着の上から焦らされるのが、弄られるのが大好きだから、ノンワイヤーで布地の薄いものを選びました」

「……あら、そんなネタばらしまでして、マミは私に悪戯されたいの?」
461 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/01/10(火) 22:42:12.07 ID:UqRB3czAO


 くすくすと笑うほむら。 意地の悪い顔をしているようにしか見えないのに、マミは目を逸らせない。

「いっぱいされたいです……、腰が抜けて立てなくなるまで、沢山、マミのことをいじくりまわして下さい……」

 初めの頃に比べ、すらすらとおねだりが出来るようになった。 我が事ながら、妙な感心をしてしまう。
 相変わらず、身体の色々な部分がちりちりと疼いていて、両手を強く握り締めている自分に今更気づいた。

 これ以上喋ると、ご褒美が遅れることを経験しているマミだったので、期待を視線に滲ませ、黙ってほむらを見つめる。

「良い眼つきをしてるわ……、正直な貴女のことが大好きよ」

 冷たい笑顔を保ちつつ、ほむらはじりじりと距離を詰めてきた。

「……でも、マミの望むことが曖昧すぎてよくわからないから、具体的にどうされたいのかを説明して」

 どう答えれば、ほむらは自分の望むような行為に及んでくれるだろうか?
 マミは必死で考えるが、返事は纏まらない。 自分の頭が働かなくなっていることはわかるのだけれど。

 とりあえず、何かを言わなくては。

「あの、ほむらさんにキスをして欲しいです……。 キスして……、マミの舌を沢山吸ってください」

「貴女、キスだけで満足できるような女の子だったかしら? マミはもっと欲張りな女の子よね?」

 未だバスローブ姿のほむらが再び表情を固め、マミとの距離を五十センチ程まで詰めて、左手をゆっくりと上げてくる。
 その手の中指と薬指が伸ばされた状態でパラパラと動いて、下着をつけたままのマミの右胸に近づき、触れる寸前に止まった。 

 静止したほむらの指から、目が離せなくなっているマミ。 自分の胸との間はほんの数センチ。
462 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/01/10(火) 22:45:32.69 ID:UqRB3czAO


「ねえ、マミ。 貴女、今、おっぱいされると思ったでしょう?」

 無表情でほむらが訊いてくる。

「思いました。 ……して、くれないんですか?」

 おっぱいされる、なんて日本語はない、と言ってやりたかったが、自分の口から出たのは全く別の言葉。

「だって、マミがキスして欲しい、って言ったのに、おっぱいをせがむのはおかしくない?」

「いつも……、キスをねだると別のことをされるので、それを期待しました……」

 あきれた、と呆れてはいない様子でほむらが返してくる。
 彼女の中指と薬指が再度、意味有りげに、こちらには触れることなく動き始め、マミはその動作が気になって仕方ない。

「全く、いつからそんな小賢しいことを考えるようになったの? 今だって、私の指ばかり気にして……」

 ふふっ、と笑いを漏らし、ほむらは左手を下げてしまった。 思わず落胆してしまうマミ。
 言いたいことがあるのなら早く言え、といった様子のほむらに、マミは大人しく従うことにした。   

「正直に……、言います。 キスもして欲しいし、おっぱいも沢山弄って欲しいし、くちゅくちゅもして欲しいし……」

「素直にそう言えば良いの」感じの良い微笑みを浮かべ、遮ってくるほむら。

 そして、彼女が両手でマミの両肩を掴んだ。 特別力を込めることはせず、しかし、逃げ出せない強さで。
 触れられた肩から条件反射で、マミに身体の力を抜くことが指示された。

「……唾液をいっぱいに含ませてから、口を大きく開けて、舌を突き出しなさい。 吸ってあげる」

「はい……」

 急いで口の中を唾液で満たす。 今、自分は焦っていて、興奮している。 この先を思い浮かべ、歓喜している。
463 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/01/10(火) 22:49:41.31 ID:sgg/4CIRo


 不意にほむらの右手がマミの左頬に触れる。

「……懸命によだれを溜め込んでるマミの顔、凄く可愛いわ」

 そう言って、四本の指の腹でこちらの頬を優しく撫でてくる。 くすぐったくはない。 ただ、気持ち良い。
 喋れないので、褒められて嬉しい、という表情を自分なりにつくり、一度頷いた。

「マミ、唾液を飲んではダメ。 口から垂らしてもダメよ?」

 これは、『今から貴女の何処かを愛撫する』というサイン。
 『わかりました』の意でもう一度頷き、ほむらに悟られないよう、マミは両脚に力を入れる。 姿勢は『気を付け』。

 独りでに目を瞑ってしまうのが、我ながら可笑しい。 自分で言うのもなんだが、好き者、だと思う。

「……っ!……んっ」

 多分、中指と薬指だろう、下着の上から右胸の先端を軽く押し込むようにいじってきた。

 甘痒くて、心地よくて、びくびくと全身が震える。
 力が抜けそうになったので、太股をぴったりと合わせ、両足の親指を重ねて刺激に耐えた。  

「よだれを垂らしちゃダメ、って言ってるのに、マミは本当に仕方のない子ね……」

 嬉しそうにほむらが呟くのが聞こえる。 正直、無理だ。 声を漏らさないでいることを褒めて欲しいくらいなのに。
 ただ、身体に走る微弱な電流の如き快感に、くねくねと反応している自分のことを、確かに『仕方ない』とは感じる。
 
 口元から吹き出ている粘ついた液体を、ほむらに舐め取って貰いたい。
 
「マミ? 真っ直ぐ立ちなさい。 背中が丸まってる」

 頬を撫でてくれていたほむらの右手が、いつの間にか離れていた。 多分、左胸の先を摘んでくるはず。

「ふぁっ!……あっ、んあっ」

 当たり。

 口から、声と共に漏れてはいけないものが垂れ落ちるのがわかる。 顎を伝って、自身の鎖骨を暖かい液体が濡らしていた。

 ペナルティは確実だが、それも構わない。

 どちらにしたって、『気持ちが良いこと』なのは、確定しているのだから。
464 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/01/10(火) 22:52:22.75 ID:UqRB3czAO

つづく


はは、11レスになっちゃった
465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/10(火) 23:00:04.57 ID:iMWE8iHDo
乙〜
待ってた
466 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/11(水) 07:32:50.04 ID:55EJmXk30
ほむマミのターンきてた
ひゃっほー
467 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2012/01/12(木) 01:58:03.10 ID:LCymrwjSo
乙です。
濃厚でエロいなぁ。 こりゃ中学生設定のままじゃ出来んわww
468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/01/12(木) 23:14:38.39 ID:hYTMfKKBP
きたー最高です、乙乙!
469 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/12(木) 23:15:07.84 ID:hYTMfKKBP
すまん、sage忘れた(´・ω・`)
470 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2012/01/24(火) 03:05:28.92 ID:cErQ8WNAO
間が相手ますね
471 :ほむマミ派(生存報告) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/01/24(火) 14:30:10.57 ID:zjmqTYCAO
生きてはいます
あと五日ほどお待ち下さい

遅くて本当に申し訳ないです
472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/24(火) 16:36:00.55 ID:evYdguhTo
待機ワッフル
473 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/24(火) 16:59:45.61 ID:7aQEbmUZo
お待ちしておりますよん
474 :ほむマミ派(3レスのみ、生存報告代わりに) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/01/26(木) 00:18:26.59 ID:xw4SbTQWo


 きっかり五分、マミの両乳首だけを下着の上から丹念に、尚且つ、力を込めないよう弄りまわした。
 リビングでの足止めは、これを期待してのことだと解釈したからだ。

 こねて、つまんで、なでて、おしこんで、ゆさぶって、はじいて、もてあそんで。

 刺激の仕方を変えると、マミの表情も、嬌声も、連動して変化していくのが実に面白い。

「……唾液を全部零しちゃって、そんなに気持ち良いの?」

 マミは相変わらず嬉しそうな声で鳴いていて、私の問い掛けに答える気もないらしい。
 身体の震わせ方、捩じらせ方が実に巧みで、こちらの視覚も、触覚も、聴覚も、すっかり彼女に魅了されかかっている。

 なんとか、自分を抑えなくては。

 名残惜しいが一旦愛撫を止め、右手でマミの顎と口元を優しく拭う。 左手をマミの右頬に柔らかく添えて。
 彼女は目を開き、肩で息をしながら、少し不満そうに私を見てきた。 紅潮した頬と、潤みきった両眼が堪らなく可愛い。

 そんなマミの反抗的な眼つきも、また素敵。 ゾクゾクする。

「ねえ、マミ。 私が尋ねごとをしたときにはどうする、って約束したかしら? 覚えてるわよね?」

 少しの間を置いて、呼吸を整え、姿勢を正したマミが口を開いた。

「喘ぐのをやめて、質問に答える、って約束しました……」

「その割に不満げな顔つきをしてるのは何故? 私を納得させられる?」

 こういった場合は優しく問い質すと、マミが良い返事をする。

「ほむらさんに触られてると……、凄く気持ちが良くて、言葉が纏まらなくなるから……、無理です……」

 その口調は幼さを感じさせた。 演技かもしれないし、そうではないかもしれないが、とにかく耳に心地よい。

「気持ち良いのはわかるのだけど……、返事がないと、私もどうしていいのかわからなくなるわ」

 見え透いた嘘。 次にどんな責めをして欲しいのかを、マミ本人の口から言わせたいだけの戯れ。

「そんなの……、そんなの、イヤです……」

 マミはそう言いながら、自分の右手を私の左手に重ねてきた。 じっとりと汗ばんでいて、暖かい彼女の手のひら。 
 彼女の手のひらと、しっとりと熱を帯びた頬に挟まれ、左手の温度が上がっていくのがわかる。
475 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/01/26(木) 00:18:37.82 ID:fwxcT0gAO


 そのまま、マミは黙って私の顔を直視している。
 今までの経験から考えると、らしくない流れ。 彼女に押されている気がする。

「マミ? どうして欲……」

 マミの口元に添えられた私の右手を、彼女の左手が掴んだ。

「ちょっと?」

「ほむらさんも脱いで下さい。 ……そうしないと、私が脱がしちゃうから」

 艶めいた微笑みでそう言うと、マミは両手を離し、自分のブラジャーをさっと外してしまう。
 下着で保持されていた形から大きく外れることなく、戒めを解かれた二つの豊かな膨らみがその存在を強く主張してきた。

 色素の薄い両胸の先が尖った状態になっていて、こちらの視線はそこに引き寄せられた。

「こら、勝手に……」

「正直に言います。 直接、マミの胸を苛めて欲しいです。 ほむらさんに吸って貰いたいの、すっごく」

 ブラを放り投げ、マミは私の首筋に両手を回してきた。 そして自分の方へ私を引き寄せる。

「早く脱いで? 今日、仕事もロクにしないで、ほむらさんに苛めて貰うことばっかり考えてた私に、いっぱいお仕置きして?」

 キス出来る近さでマミは囁く。 その挑発的な眼差しから目を逸らせない。
「ええ、わかった。 そうして欲しいのね?」

 なんとかそれだけ答え、バスローブを急いで脱ぎ去り、マミに倣って床に放る。
 長いこと着衣していた為、部屋の空気をひんやりとしたものに感じた。

「やっぱりほむらさんの裸、綺麗……」

 呟きに反応出来ない自分の鈍重さを誤魔化すように、私はマミのショーツに手をかけ、脱がす準備を整える。
 マミの両手もいつの間にか私の腰元に来ていて、同じことをしようとしていた。

「……ねえ、脱がしっこ、って初めてじゃない?」

 悩ましげな吐息の絡まったマミの一言。

「そうね。 いつもは自分で脱がせて、自分で脱いで、だったから……、新鮮だわ」

 お互いの身体が密着し合う。 今度は情けない呻きを漏らすことを躊躇わなかった。 くすくすと笑う目前の彼女。
 わざと乳首同士を触れ合わせるようなことをされてしまったから、仕方のない話ではあるけれど。

 何にせよ、私は知っていて、わかっている。

 マミの熱と柔らかさは、素肌で感じるのが一番良いことを知っていて、わかっている。

 だから焦らしていたのだ、自分自身を。
476 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/01/26(木) 00:19:36.48 ID:xw4SbTQWo


 全ての衣類を剥ぎ取った二人。

 脱ぎ去った下着はただの布であり、それをいちいち確認することなどせずに、私はマミをベッドへと軽く突き倒す。
 彼女は両肘をついて上半身を起こし、太腿を閉じた状態でゆっくりと三回擦り合わせた。 私から視線を逸らすことなく。

 とても良い誘い方だ、と思う。

「さて、始めましょうか」

 返事をする暇も与えず、私はマミに覆い被さり、わざと音を立てるように唇と舌を吸った。
 彼女も控え目に、且つ力強く応じてくる。

 ぷるぷるとして、程よく暖かいマミの唇。 ぬめぬめとして、舌触りの良いマミの舌。 

「……っ……んぅ……」

 先程はマミに唾液を貯めさせ、それをみすみす無駄にしてしまったので、今度は私が提供する番。 
 少し、ほんの少しだけ息苦しくなる程度に、彼女の口の中へと粘性のある水分を送り込む。

 マミは両腕を私の背中に絡め、眉間に軽く皺を寄せて悦んでいる様子。

 しばらくして、絡まっていた舌と舌が離れる。
 マミが全てを吸い尽くし、飲み込んだ為、糸を引くこともなく、スムーズに次の動作に移れそうだ。

「それじゃ、お望み通りお仕置きしてあげる」

 マミは私の言葉を聞いて、余裕を感じさせる笑みを浮かべ、枕を引き寄せて、頭を乗せた。

 私は彼女の左横に退いて、自分の身体を少しだけ起こす。
 右手をマミの左脇腹から、ゆっくり下へと這わせて、左脚の付け根で止めた。

 マミは両膝を軽く立て、迷うことなく両脚を開く。 その思い切りのよさに感心してしまった。

「マミ。 『食べられる』のと、『くちゅくちゅされる』のだったら、どっちが良い?」

「そうね……、ほむらさんとお喋りしながらが良いから、くちゅくちゅかな」

 期待を全面に押し出した返答の仕方に、思わず笑いが零れてしまう。 マミも釣られるように、いやらしく笑っている。

「貴女、何を嬉しそうにしてるの? 言っておくけど、お仕置きなのよ?」

「わかってるから……、早くお仕置きして?」

 そう応えてきて、彼女は上半身を軽く揺すった。 遅れて揺れる、二つの膨らみ。

 今日はいまいちペースが掴めない。 何か、お仕置きらしいことをさせなくては。

「……マミ、皮を捲りなさい」

「えっ」 惚けた顔で返事をするマミ。

「わからない振りしないの。 捲りなさい」

「はぁい」

 彼女は躊躇いなく自身の左手をきらきらとした茂みの上に置く。
 そして、中指と薬指の間を空け、そのまま引き上げる動きをした。

 指の食い込ませ方が絶妙だ、と、また変に感心してしまう。

「それだけあっさりされると、ちょっと……」

 自分でも失言だと思ったが、つい口から出てしまった。

「……何よ、しなかったら怒るくせに……、ふふっ」

 どうやらマミは反抗期らしい。 機嫌が良いのは、大変に喜ばしいのだけれど。
477 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/01/26(木) 02:08:48.08 ID:fwxcT0gAO


 仕切り直す為に一旦右手を離し、マミの右膝頭に優しく中指と薬指を添えた。

「もうっ……、何で、手が遠くにいっちゃうの?」

 それには応えず、指を滑らせて、彼女の内腿を丁寧に、優しく撫でまわす。

「っ、……あっ……くぁっ」

「……なんだかんだ言って、こういうのが好きなんでしょ? マミは」

 途切れ途切れに喘いで、細かく全身を震わせているのだから、イヤな筈がない。
 少しずつ、彼女の本当に望む場所へと撫でる指を近づけ、半分まで来たところでまた膝頭に手を戻した。

「やっぱり、意地悪してくるのね……」

「言ったでしょう? お仕置きなのだから、マミが『お願いします』って言うまではしてあげない」

 ほんの数秒考える素振りを見せ、マミは口を開いた。

「……お願いしまっ、ぅく! ……ぁああっ!」

 皮を捲らせ、剥き出しになった彼女の陰核付近を中指で多少手荒く擦った。 完全な不意打ちで、これも全てはマミの為。

 マミは身を仰け反らせて、可愛く喚いている。 枕を掴む右手から伝わる必死さがまた素敵。

「マミ、お望み通りしてあげてるわよ? 気持ちいい?」

 『くちゅくちゅ』より、『ぐちゅぐちゅ』の方が当てはまる水音。

 先ほどまでの余裕は完全に消え失せ、彼女は言葉を失って叫ぶ気持ち良さに溺れているようだ。

 マミの充血した突起は、こちらの激しくも力を抑えた愛撫により、尖り具合を増していく。 

「……ねえ、今初めて触ったのだけど、何でこんなにビチャビチャになってるのかしら?」

 応えられず、マミは気持ち良さそうに鳴き続けていて、見ているだけで私の下腹部もじっとりと熱くなってきた。

 そして、手を止める。

 彼女が呼吸を整え、私に抗議してくるのをじっと待つ。
478 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage]:2012/01/26(木) 02:17:59.37 ID:fwxcT0gAO
つづく


中途半端ですみません
479 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/27(金) 17:41:04.31 ID:lud5SoG8o
ほむマミの絡み方がエロいですね・・・ふぅ
480 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/01/27(金) 18:47:32.82 ID:dwZTxaHs0
マミ「今日も紅茶が美味しいわ」668からの分岐改変が起きない平行世界
もし改変が起きない平行世界のマミがシャルロッテに死ななかったら OR マミ死亡後にまどかがマミ、QBの蘇生願いを願ったら
魔法少女全員生存ワルプルギス撃破
誰か書いてくれたらそれはとってもうれしいなって
481 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/30(月) 03:56:29.99 ID:cRlj+GV0P
やっぱりほむマミはいいものだ乙
482 :ほむマミ派(生存遅延お詫び報告) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/02/04(土) 19:19:27.38 ID:nhI0k4KAO

最悪とはいかないまでも、散々な1月でした……

2月中に必ず再開します
本当にすみません
483 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/04(土) 19:20:06.23 ID:lPmGA+g3o
把握ワッフル
484 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2012/02/07(火) 07:22:54.62 ID:syp6xyFco
期待しつつ待機。
485 :ほむマミ派(10レス投下、携帯なので遅いです) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/02/16(木) 22:27:04.41 ID:FSMRM/4AO


 十秒ほど経って、マミはようやく落ち着きを取り戻したようだ。

「もう……、いきなりは……ずるいわよ……」

 与えられた悦びの余韻を何とも言えない表情で表しつつ、彼女は弱々しく文句を言ってきた。

「でも、今、私が触れてるところは凄く嬉しそうなのだけど? ……いつにも増してびしょ濡れ」

 マミに触れている指を左右に軽く滑らせると、「んっ」と、面白いように反応してくれる。

「あっ、だ、だから……、されながら……だと……むりぃ……だか……らぁっ」

 くちゅくちゅ、くちゅくちゅ、と、数秒間マミの秘所を柔らかく弄ぶ。 彼女の左手は既に仕事を放棄していた。

 鮮やかな色をした入り口がぱっくりと開いて、そこから止め処無く溢れ出る『涎』を指先で掬い、絡め取る。

「……マミ、自分で確かめなさい。 貴女がどれだけいやらしい女の子なのか」

 纏わりついた水気を垂らさないように気遣いながら、右手をマミの口元まで運んだ。
486 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/02/16(木) 22:29:11.93 ID:FSMRM/4AO

「え? 舐めろ……、って……こと?」

 蕩けた顔つきで、ふしだらに乱れた息遣いで、マミが訊いてくる。

「一応、お仕置きだから」

 有無を言わせず、彼女の唇に中指と薬指の腹を押し当てる。 眉間に若干皺の寄った顔つきが可愛い。

「確認だけすれば良いわ。 全部舐め取れ、なんて言わない」

 寸時の戸惑いを見せるも、マミは舌先を少しだけ出して、私の指をちろりと舐めた。

 舐められた瞬間、自分の奥底が震えるのがわかった。 人のことを言えない位、私も御多分に漏れずいやらしい。

「どんな味がする?」

 右手を彼女の口から離し、訊いてから三秒の後、

「……無味」、マミがぽつりと呟いた。

 その言い方が、今の時間には似つかわしくない可愛らしさだった為、思わず吹き出してしまう。

「何で、笑うの……?」

「いえ、今のマミがすっごく可愛かったから、つい」
487 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/02/16(木) 22:31:23.37 ID:FSMRM/4AO

「ほむらさんの……その手には乗らないんだから……」

 言いながらも、マミは嬉しそうな様子を隠せていない。 頬に差した赤みは彼女の気持ちを正直に伝えてくれる。

 しばらく無言でマミの顔を見つめていると、突然、閃きが舞い降りてきた。

「ねえ、マミ。 今、凄く良いお仕置きを思いついたのだけど……、されたい?」

「……うん、されたい。 ……ああ、違うわね……、して下さい……」

 彼女はもう一度左手で自身の皮を捲り上げ、下唇を噛んで真っ直ぐこちらを見つめてくる。
 物欲しそうな眼つきで、今からもう一度触れようとしているところより、ずっと淫猥さを感じさせた。

 一度唾液をゆっくりと飲み込み、自分の感情を整理して一言。

「じゃあ、してあげる」

 露になったマミの急所に、先ほどと同じ形で中指と薬指を添える。 快感を与えないよう細心の注意を払って。
 それでも、触れた瞬間にビクッという反応をさせることは免れられなかった。
488 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/02/16(木) 22:33:41.00 ID:FSMRM/4AO

 声を漏らさなかったことは単純に評価出来る、と偉そうなことをふと思う。

「……貴女が良くなるように自分で動きなさい」

 僅かな動揺を見せるも、彼女は言われるまま、腰を上下にねっとりと揺さぶり始めた。
 かすかに漏れるキーの高い呻き声と、粘液にまみれた、こりっとした触感がこちらを侵食してくる錯覚。

 腰の動きに横方向の回転運動が合わさっている辺り、巴マミという女性は本当に『好き』なのだな、と妙な感動を覚える。

「凄いわね……、貴女は私に言われたことだったら、何でもするの?」

 意識的に微笑みをつくり、感情を出さないよう、責めの言葉を静かに浴びせた。

「はいっ……、し、します……。 気持ち……良くして、貰う為だったら……っ……なん……でもっ……」

 話しながらだと、流石に動きが鈍るようだ。 わざとかもしれないが、一応注意をしなくては。

「マミ。 喋ってる時もきちんと腰を動かさなくてはダメ。 ……頑張れる?」

 耳にくすぐったい声を漏らしつつ、彼女は目を閉じたまま、眉間に絶妙な皺を寄せてこくりと頷く。

 その仕草が、やはりこの時間には似つかわしくない可愛らしさで、私はもう一度唾液を飲み込んだ。
489 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/02/16(木) 22:35:15.16 ID:FSMRM/4AO

 より深い快楽を得ようと、マミは懸命に、言われるままに、しかし焦らぬよう腰を動かし続ける。

 ほむらの添える中指と薬指の間の溝に尖った部分を擦り付けると、甘い痺れが細かく爆ぜて、はしたない声が出てしまう。

「……この……、もどかしいのが……あっ……すごく……すごく、いいです……」

 尋ねられた訳でもないのに、マミはそんな言葉を口にしていた。
 もうとっくに全身が淫らな熱に支配されていることを自覚していて、ほむらにも知られているのに。

 今、自分は、自分で自分を責め立てているのだと、ようやく気づいた。 

「……そう。 しっかり見ていてあげるから、好きなだけ貪りなさい」

 穏やかな声色。 熱さと冷たさが同居する、不思議に落ち着きのある声。

「します……、いっぱいしますから……全部、見てて……下さい……」

 力いっぱいに自身を押しつけることはせず、ゆっくりとした動きを保って、マミは下半身を振り続ける。
490 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/02/16(木) 22:37:55.50 ID:FSMRM/4AO

 自分で動け、と言われた瞬間に腰を回転させることを思いつき、即実践してみた。 程好く、息継ぎのし易い気持ちの良さ。

 普段であれば、ほむらの指や舌や言葉で、否応もなくコントロールの利かないところまで持っていかれてしまうので、
 この余裕ある時間はむしろご褒美の類に入るな、と思ってしまった。 マミは我ながら本当にどうしようもないと感じる。

「……マミ? 何をニヤついてるの?」

 ほむらの静かな問い掛け。

 目を瞑っているからわからないが、そう言う彼女だって絶対ニヤついている筈。 声質がさっきよりもいやらしい。

「何でも……ないです……」

 腰を大袈裟にゆったりとまわしつつ、軽く嘘をつく。 得られる快感と喋りのバランスを上手く取れるようになってきた。

 こういうのも成長というのだろうか?

「嘘言わないの。 ものすっごく、だらしない顔して笑ってるわよ? 今の貴女」

 結構な言われようだが、何故か悪い気はしない。

『そんなのお互い様じゃない』という言葉を飲み込んで、マミは緩やかに喘ぎ、動き続ける。
491 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/02/16(木) 22:39:37.53 ID:FSMRM/4AO

「……ねえ貴女、ちょっと手を抜いてない?」

 そう時間が経たない内に、指摘されると思ったことそのものを言われてしまう。

「こうやって……、ゆっくりしてれば、ほむらさんが意地悪してくるって……、思ったから……」

 少しずつ自分に与える刺激を弱めていた為、思いの外はっきりとした口調で答えられた。

「それに……、手じゃなくて、腰、です……」

「それに……、手じゃなくて、腰、です……」

「そういう屁理屈は好きになれないわね。 ……いいわ、両手で自分の胸を慰めなさい。 私が代わりに捲ってあげる」

 マミが目を開けると、興奮を表に出さないよう興奮しているほむらの表情が窺えた。

 暁美ほむらはとても美しい顔立ちをしている。 滑らかな身体つきをしている。 羨ましくて仕方のない、綺麗な髪をしている。
 そんな女性が自分を弄くりまわすことに躍起になっている。 こちらが快楽に溺れる姿を見ることに夢中になっている。
492 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/02/16(木) 22:41:55.26 ID:FSMRM/4AO

 その事実は巴マミにとって単純に嬉しいし、面白い。 自分でもなかなかに込み入った感情だとは思うけれど。

 とにかく、もっと喰いついて欲しい。 貪って欲しい。 物理的にも、精神的にも。

 最終的には、何も考えられなくなるまで気持ち良くして貰いたい。

「……貴女の胸を触ってた時間の方がずっと長かったのだけれど、
 どうしてマミのここはこんなに濡れてて、だらしなく開いてるのかしら? 私にもわかるように説明して頂戴」

 起き上がり、正座を崩して座るほむらがマミの陰部を食い入るように見ながら呟いた。

 彼女の両手はこちらの大事な部分を剥き出しにして優しく触れ、
 逃げられないよう、マミの左太腿を右肘でがっちりと抑え込んでいる。

 当然、マミに逃げるつもりなどない。

「ほむらさんにいやらしいことをされる、って思うと……、何もしなくても勝手に濡れて、開いてきます……」

 わざと自分の動きを遅くし、ほむらが苛立つようにのんびりと答えた。

「良い答えだけれど、動きが鈍ってる。 もっとちゃんと腰をまわしなさい。 ……好きなんでしょう? 回転運動」
493 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/02/16(木) 22:44:29.96 ID:FSMRM/4AO

 その言葉の直後、ほむらの指が小刻みに震えて、マミの身体に予期せぬ電流が走った。 同時に口から漏れる動物的な呻き。

「んぁっ……、すきっ……ですけど、やっぱり……やっぱり、ほむらさんにして貰いたいです……」

 自分に触れている指の動きが喋っている途中で止まり、三対七のバランスで、安堵と落胆。
 マミは自分の下半身を反時計周りにじっくりとまわして性感を持続させながら、両手でほむらの左手を握り締める。

 マミのその行動は、両腕で両胸を寄せ上げる形になった。 二つの頂の尖りは先ほどから愛撫を待たされている状態。

 手を握った瞬間、ほむらの表情がかすかに揺れ、すぐ元通りになる。

 暁美ほむらは動揺していない素振りで動揺するのが上手だ。 マミは彼女のそんなところが可愛いと思う。

「……マミは私にどうして欲しい?」

 ほむらは相変わらず自分の手を添えたところに視線を注いだまま。 声色が平時の状態に戻っていて、ちょっと腹立たしい。

「あの……、指を挿れて……ぐちゅぐちゅ、って音を立てて掻きまわして下さい……」

「何処に指を挿れるの? ちゃんと言ってくれないとわからない」
494 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/02/16(木) 22:49:01.15 ID:FSMRM/4AO

 さて、考えどころ。

 最初の頃はマミに女性器の各部の細かい名称を口にさせ、それを愉しんでいた様子のほむらだったが、飽きてしまったらしい。

 捻りつつもシンプルで、扇情的で、口にするのも憚られる言葉を思いつかなくてはいけない。
 いや、いけないことは別にないけれど、マミが望むことに最短距離で到達する為のささやかな試練。

「あっ……あ、あのっ……」

 どうにも考えが纏まらないと思ったら、マミ自身の快楽を貪る行為に邪魔されているのだと気づく。

 ほむらの左手を握り締めたことで自分の腰の動きが安定し、ほむらの添える指により強く突起を擦りつけることとなった。
 そこから拡がる刺激の波が全身の理性を煮溶かして、マミを動物の本来へと急き立てていく。

「夢中で動いてるじゃない」

「だ、だって……、してくれないからぁ……」

「それじゃ、言葉にしなくていい。 マミが欲しいところに自分で指を挿れて、私に教えてくれればいいわ」

 そう言ったほむらの左手がマミの両手の戒めを強引に解き、頭の後ろにその手を回して美しい黒髪を左肩へ纏めて流した。

 その仕草が実に様になっていて、腰を動かすのを忘れ、思わず見とれてしまう。

「おっぱいをいじめるのを忘れてたわね……、舌先で遊んであげる」

 ぬらりと輝く舌を尖らせた形で突き出して、マミの右胸の先にほむらの顔がゆったりと近づいてくる。
495 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/02/16(木) 22:50:10.22 ID:FSMRM/4AO

 彼女の舌がマミの胸に触れるのと同時に、添えられていた二本の指がマミの中にスムーズに潜り込んできた。

「ふぁぁっ……、あ、そこぉ……、そこ……ぐりぐりして……いっぱいぐりぐりしてください……っ」

 マミの内側で悦びを憶えるポイントをほむらの指によって精確に押し当てられ、軽く圧が掛けられた状態。

 乳首は舌で優しく触れられ、転がされ、マミの身体全体がびくびくと正直に反応をしてしまう。
 いちいち口から洩れる呻きが自分のものとは思えないくらいにはしたくて、恥ずかしくて、そして、そのことに興奮する。

 空いた両手でほむらの右手を掴む。 理由は明白で、言葉にする代わりに甲高い声でマミは喘ぎ続けた。

 不意に胸への愛撫が止み、マミはほむらが身を起こす気配を感じ取る。

「マミ、目を開けて私の顔を見なさい」

「っ……、は、はいっ……」

 ほむらはマミが目を開いた瞬間に右手を震わせてきた。 最高にいやらしいタイミングで、それが堪らなく気持ち良い。

「ああぁっ……くあぅっ、いいっ……い、いい……ですっ」 

「……熱くて、ぬちゃぬちゃして、指がきゅって締め付けられるのだけれど、これってどういうことなのかしら?」

 彼女の囁くような問い掛け。

 マミにも一応届いてはいる。 聴こえてはいる。 ただ、喘ぐことに忙しくて答えられない。 

 身体中を駆け巡る本能的快楽が、巴マミの人としてのプライドを押し流していくことに抗えないし、抗いたくもない。

 質問に答える代わりに「もっと」という単語を大きな声で何回も叫び続け、途中でマミの意識はぷつりと弾けた。
496 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/02/16(木) 22:52:55.77 ID:FSMRM/4AO

つづく

連れのiphoneを使って、まどっちに「痛いよ…」と「ダメだよ…」を繰り返し言わせたことをお詫びします
497 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/17(金) 02:24:21.46 ID:XyKen95RP
乙乙
あれはやく他の子達もでてほしいな
498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/02/17(金) 16:55:06.51 ID:21SKimKjo
乙ー
相変わらず描写がエロいなあww
499 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/17(金) 16:56:53.76 ID:3CGO1T/7o
500 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage]:2012/02/17(金) 23:52:03.97 ID:nv0pHJJAO
>>492訂正

×マミの左太腿

○マミの右太腿

同じ台詞を二回繰り返してるところはコピペミス
次から気をつけます
501 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/03/06(火) 20:26:49.28 ID:ILSiGdzMo
書き溜め飛ばした…

死にたい…
502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/03/06(火) 23:29:41.71 ID:4yMslZWNo
ou……
まじかあああああ
503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/07(水) 00:05:40.37 ID:Is8Rs0NGP
なんだと・・・
504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/03/08(木) 02:45:41.96 ID:t/xQlQFpo
_| ̄|○ ティロ…  _| ̄|Σ・∴’、-=≡○ フィナーレ! !
505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/03/14(水) 22:28:50.77 ID:0CJo42Ono
イ`

どんまい
506 :ほむマミ派(6レス投下) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/03/18(日) 11:29:04.59 ID:IPGMOlnAO


 つい、夢中になってしまった。 悪いのは自分か、それとも、悦び尽くしてぐったりとしている目前の彼女か。

「貴女に『もっと』、って言われたら、私には逆らえない」
 
 素直な感想を冷静に囁く。 少し、ペースを緩める時間帯だ。

 二本の指は未だマミの中。

 ねとねとして、ぷつぷつして、熱くて、ひくついていて、気を抜くと即弄んでしまいそうな、涸れることのない蜜壷。 

「……まだ、して……くれますよね?」

 呼吸が整っていないにも係わらず、マミが早速のおねだり。
 彼女は両手の指を器用に操り、こちらの右手の甲をいやらしく撫でてくる。

 こそばゆくて、気持ちが良くて、表情に出てしまいそうになるのをなんとか堪えた。

「……そうね、マミがお漏らししちゃうところも見てないし……、もっとも、今もそれに近い状態だけれど」

 仕返し代わりに軽くいじめてみる。

「やだぁ……、言わないでよ、そんなこと……」

 言いながら、私の右手首を両手で軽く握り締めてくる辺り、本当にわかっている。 巴マミは本当によくわかっている。

 彼女は嬉しそうに、『やだ』、を言うのがとても上手い。

「ちょっと、休ませて」

 うずめた指はそのままで、身体を密着させるようにマミの右横に寝そべり、彼女の頭を比較的乾いた左手で優しく撫でた。

 こうするとマミの顔つきが子供のようにあどけなくなって、私はそれを真近で眺めるのが堪らなく好きだ。

「……私からすれば、貴女の髪の方が、きらきらして、ふんわりして、女の子らしくて、ずっとずっと羨ましい」

 透き通るような黄金色に指を絡めつつ、わざと誤った手を打つ。

 マミは一瞬だけ驚きの表情を見せ、すぐに引っ込めた。 なかなか機敏な反応速度だと思う。
507 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/03/18(日) 11:30:34.75 ID:G81R9xpJo


「ねえ、ほむらさん……、ひとつ質問してもいい?」

「何?」

 顔をこちらへ向けた状態で、彼女は一度目を瞑り、ゆっくりと開いた。

「どうして、志筑さんのことを、羨ましい、って言ったの?」

 やや懐かしい。 そういえばそんなことを確かに口にした。

「さあ……、なんとなく?」

「もうっ、嘘ばっかり……」

 面白くなさそうにマミが呟いた。 そう言われても、自分でもよくわからないのだから仕方がない。

 ただ、目の前の愛すべき女性は要らぬ心配をしているみたいだ。

「貴女、やきもちやいてるでしょ?」

「ち、違うも……」

「違わない。 マミの顔にそう書いてある」

 右手を軽く震わせる。

「んっ、も、もう……やめてっ……、真面目に訊いてるの」

 やめて、という単語を聞き取った瞬間にぐりぐりをやめる。

 言葉とは裏腹に、残念そうな素振りを隠しきれていないマミが可愛い。

「……しろ、って言ったり、やめろ、って言ったり、マミは忙しい女の子ね」

 言った直後に吹き出してしまい、マミも遅れて吹き出した。 しばしの間、二人していやらしい含み笑いを分け合う。

 良い頃合いで、私もマミに尋ねることにした。

「マミの方こそ、どうして志筑さんのことを話題にしたの?」
508 :ほむマミ派(6レス投下) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/03/18(日) 11:33:51.11 ID:IPGMOlnAO


 私なりに考えてみたんだけど、と彼女は前置きし、

「今の志筑さんには、ほむらさんの羨ましがる要素が見当たらなかったから……」

 失礼にも程があるわね、と付け加え、マミは恥ずかしそうに笑った。

 その言葉を受け、意識して少し間を空ける。

「……多分、今のマミと同じようなことを思ったからじゃないかしら」

「どういうこと?」

「『ザ・ストイック』、って感じで、とても真似出来ないし、したくもない、って思った」

「……なのに、羨ましいの?」

「違う。 だから、羨ましいの。 ……もうやめましょう? この話」

「そうね……、なんか、段々妬けてきちゃった……」

 急いで身を起こし、左手を膨れかけたマミの右頬に優しく添えた。 機嫌を損ねるようなことはしたくないから。

「私は貴女に夢中よ。 それは間違いない。 言い切れる」

 彼女の目を真っ直ぐに見据え、声を張る。 嘘はないが、取ってつけた感じは否めない。

 ……乗り切れるだろうか?

「そんな真剣に言われると、逆に怪しい、って思えてくるわね」

 悪戯っぽく微笑み、マミが自分の右手を私の左手に重ねてきた。

 そこから伝わる熱は、若干威圧的な発言内容とはまるで噛み合わない穏やかさ。

「……うん、信じるわ。 私もほむらさんに夢中よ。 それは間違いない」

 にっこりと笑うマミ。

 その非の打ちどころのない笑顔を見て、私の性的欲求に再び火が灯った。 不思議なものだ、と我ながら思う。
509 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/03/18(日) 11:34:46.08 ID:G81R9xpJo


「……さて、とってもエッチで、どうしようもなく欲張りな巴さんの為に、いやらしいことの続きをしましょう」

 ぴくり、とマミが反応した。 ベッドの上で彼女をそう呼ぶこと自体が久しい。

「はい……、いっぱい、してください……」

 まず、二本の指をゆっくりと引き抜き、マミから少しだけ離れて、片膝を立てて相対する。
 相手の表情の僅かな動きも見逃さないように、視線は決して外さない。

 マミは開かれた両脚をそっと閉じた。 次に大きく開く時の前準備だろう。 紅く色づいた顔から、笑みもさっと消えてしまう。

「貴女、『どうして、指を抜くの?』、って思ったでしょ?」

 静かに問い掛ける。

 この引き延ばしの時間を厭い、同時に悦んでいる彼女の眼つきが堪らない。

「……思いました。 どうしてですか?」

「まあ、ちょっと待ってて」

 マミの中に長いこといたおかげで、私の指は大変にびしょびしょである。 仕切り直さなくては。

「……っ、ちゅっ……んぷ……んっ……」

 丁寧に音を立てつつ、中指と薬指に舌を這わせる。 舐める。 吸う。 マミの方をじっと見つめながら。

 いつまでそんなことしてるの? という顔つきを必死で堪えている彼女をわざと無視して、舐め続ける。
510 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/03/18(日) 11:37:21.26 ID:IPGMOlnAO


「……あの」

 マミはあっという間にしびれを切らした。

「ああ、これ? だって、指が淫水やけしたら困るもの」

「……ほむらさんは……どこで……そんな、変な言葉を覚えてくるの?」

 心底恥ずかしそうなマミ。 顔を真っ赤にしていて、それが良い。 凄く良い。
 どうやら、目を逸らしたら負けだと思っているようで、私が質問に答えるまでは視線を動かさないつもりらしい。

 もじもじと擦り合わされる魅力的な太腿が、巴マミの本心をしっかりとこちらに伝えてくる。 私も耐えるのがなかなか辛くて、面白い。

 一旦、指舐めを中断し、

「マミも、舐めて欲しい?」

 無感情を装って尋ねる。

 マミはといえば、焦らされることに悦びを憶えてしまっている自分自身がとても歯痒そうで、同時に物凄く嬉しそうだ。

「もう……、訊いたことには……」

 最後のささやかな抵抗。 不適当な表現かもしれないが、可愛らしい。

「私も、二度は訊かないわよ?」

 彼女は不服そうに押し黙ってしまった。 とりあえず、私の勝ち。 いや、負けか。

「マミも舐めて欲しい?」

 振り切るようにたたみ掛ける。

「……はい、舐めて……貰いたいです……」
511 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/03/18(日) 11:38:19.56 ID:G81R9xpJo


「そう……、じゃあ、貴女が舐めて欲しいところを私にもわかるように教えて頂戴」

 マミがどのような格好でこちらを誘ってくるのか。 それを期待しつつ、遠回しな要求。
 ほんの数秒の後、彼女は無言で両手を膝裏にまわし込み、自分の両脚をゆっくりと抱え上げ、股を広げた。

 ふむ、とても良く見える。 きちんと要望に応えなくては。

 困惑と、羞恥と、切迫と、熱望と、様々な感情の入り混じったマミの顔つきをじっくりと眺め、もったいぶって口を開く。 

「……おねだりのポーズを取らせたら、マミは見滝原一の女の子ね」

「いやっ、そんな……」

「ねえ、マミ、ちょっと垂れてきてるわよ?」

 遮って責める。 そうしろ、と彼女の顔に書いてあるからだ。

「……い、言わないで……」

「『マミのいやらしくてだらしないところを舌で綺麗にお掃除して下さい』、って、大きな声で言ってみましょうか?」

 良い具合にハイだ。 責めの言葉がすらすらと出てくる。  

 マミは私の一言一言に敏感な反応を見せ、身体全体を細かくひくつかせて、迎え入れる準備をひとりでに整えている様子。

「どうしたの、マミ? 早く言いなさい。 ……何なら一晩中、その格好をしたままでいる?」

 彼女は一度唾液を飲み込むと、首を力なく横に振り、両眼を愛おしくなる程に潤ませて下唇を噛んだ。

「……マミの……いやらしくて、 はしたなくって……、何もしなくてもびちょびちょに濡れちゃう、だらしないアソコを、
 ほむらさんの舌でペロペロ舐めて、綺麗にお掃除して下さい……。 お願いします……いっぱい、お掃除して下さい……」

 声を震わせつつの、素晴らしいアドリブ。

 マミが望む以上の快楽を提供しなければならない責務の重大さに、私も思わず身震いしてしまう。
512 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/03/18(日) 11:39:38.99 ID:IPGMOlnAO

つづく


次は4月
513 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/18(日) 12:55:28.83 ID:Zqs/B1FIP
乙乙!
514 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/18(日) 13:03:11.59 ID:+HYHMuK5o
次の更新日がえらいこっちゃ
515 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/03/19(月) 23:24:21.79 ID:zmP9OkWQo
乙乙
攻めほむほむと受けマミさんが合わさって最強にみえる
516 :ほむマミ派(生存報告) ◆CuwcoLXTJ2 [sage]:2012/04/21(土) 11:38:45.25 ID:FnaWnVrAO

なんとか4月中には

このまま失踪とかはないので

すみません…
517 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/04/21(土) 14:36:27.69 ID:fIizM6oCo
待ってる
無理しないでね
518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2012/04/21(土) 16:22:25.51 ID:IGDPUNFZo
生存報告が来るだけでもありがたい。
待ってるよ。
519 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2012/05/10(木) 21:55:43.01 ID:1m3aHXxAO
無理なら無理でもいいんだよ?
520 :ほむマミ派(8レス投下) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/05/16(水) 23:21:55.74 ID:waiXGfioo


 大きく開かれたマミの中心から、濃密で貪りつきたくなる匂いが立ち昇ってくるかのようだ。

 まだ近づくことも、触れることも、当然舐めることもせずに、わざと鼻を鳴らした。 ぴくり、と反応するマミ。

 彼女は先ほどから既に二回も唾液を飲んでいて、それを咎められたい顔つきをしている。

「マミ、貴女は今までにオナニーってしたことある?」

「……あります」

 不意の質問にさほど戸惑うことなく答えてきた。 早くして欲しくて仕方がないのだろう。

 その余裕のなさがまた可愛い。

「道具とか、使うの?」

「使ったことありません。 あの……」

「私、マミがしてるところ、見てみたいな」

 こちらの唐突な要求に反応して、彼女はまた唾液を飲んだ。

 自分の内腿を掴むマミの指が生々しく食い込み、次の責め句を待ち侘びている。

「貴女の身体をいじくるのが面白くって忘れてたのだけれど……、確か、今はお仕置きの時間だったわよね?」 

「でも……、そんなの、恥ずかしい……です」

 形ばかりの拒絶。 膨れ上がる疼きを一刻も早く掻き乱したがっているストレートな欲望の炎が、彼女の両眼に灯っていた。

「脚を抱え上げたままでいるのも大変でしょう? 下ろしていいから、マミがどうやって自分を良くしてるのか教えて頂戴? ね?」

 優しく、尚且つ、拒否を許さない声色をつくって囁き掛ける。

「……ちゃんと教えてくれたら、めいっぱい気持ち良くしてあげる」

 マミは頬を色めき立たせ、無言で頷いた。 悦びを慎重に押し隠しているつもりらしいが、私は決してそれを見逃さない。
521 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/05/16(水) 23:26:37.44 ID:DyK7ZW7AO




「んっ……、っぁ……」

 くちゅり、くちゅり、と両手の指をランダムに使い、自身を慰めているマミを、しばらくの間黙って眺めていた。

 見られながら、というのが彼女の肌に合うらしい。 期待に沿えるよう、私も強く視線を注ぐ。

「やっぱり、クリトリスが好きなのね」

「はい……っ、す、好きです……」

「指の使い方が上手で凄く参考になるわ」

 いくらでも手を抜けるにもかかわらず、懸命に急所を擦り、息を乱している姿に嗜虐心をそそられる。

「ねえ、マミ、今日の仕事とオナニーとを比べたら、どちらの方を真面目に取り組んでるのかしら?」

「……オナニー、です」

 マミには悪いが思わず笑ってしまう。

「あのね……、そういう時は嘘でも仕事って言いなさい」

「だ、だって、嘘つくと……ほむらさん、いじわるするんだもん……」

 指の動きを止めることなく、甘ったるい声でのささやかな抵抗。

 でも、不思議とあざとさは感じない。 その理由は明白。

「まあ、そんなにぷっくりと腫れ上がって、ぐっしょり濡れてるのだから、そうなんでしょうね」

「ねえ……」

「ダメよ。 お仕置きなのだからまだ続けなさい」

 限界が近いようだ。 勝手に絶頂を迎えたら叱られる、と思っているのに違いない。

 無論、そのつもりだけれど。

「わかってるわよね? 言いたいことがあるのならはっきりと口にして」

「イキそう……、これ以上、したら……」

「ええ知ってる。 貴女は自覚してないかもしれないけど、さっきから腰が上下にゆらゆら動いてるもの」
522 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/05/16(水) 23:27:52.91 ID:waiXGfioo


 真っ直ぐな指摘に戸惑いを滲ませるマミの顔つきを眺め、一呼吸置いてから口を開く。

「でもダメ。 勝手にイッたら許さないし、手を止めるのも許さない」

「そんな……、もう……できな……」

「我慢して、我慢して、我慢に我慢を重ねてからイクのが大好きでしょう、マミは」

 別種の笑みが零れる。 良い追い込みだ、ともう一人の自分が頭の中で呟いた。

「ほむらさん……、もう……もう、我慢できません……早くペロペロして下さいっ……」

「ダメ」

 懇願をあっさりとかわされ、表情を複雑に蕩かせるマミ。

 言われるままに自慰行為を続け、弾け飛んでしまいそうになっているのが傍目にも明らか。

「そうね、よく頑張ってるから、私も少しお手伝いしてあげましょう」

 彼女の方へにじり寄り、緩く立てられた両脚に両膝を滑り込ませる。 行為の邪魔をしないよう気をつけて。
 再度、肌が触れ合ったことよりも、自分の性器をいじくりまわすことに夢中なマミにちょっとだけ腹が立つ。

 一度、細く息を吐き、気分を入れ替えた。 どうすればより悦ばせられるか、だけに集中しなくては。

 自分の両手中指に唾液を絡ませ、彼女の硬く充血した両胸の先を、湿らせた指の腹でくりくりと柔らかく刺激する。

「ふぁっ、そ、それ……されたらぁ、無理っ……ひゃっ、んぅ、あっ……」

 身体全体を艶めかしく揺らして悦ぶその姿は、緩みきった顔立ちは、抑制の全く利いていない呻きは、まるで獣のよう。

「言いながらも、指は止まらないところが流石は巴マミ、ってことかしら?」

 僅かに刺激を緩めると、なんとも絶妙な不服さ加減で彼女が口を開いた。

「やめたら……やめたらダメ、って言ったじゃない……」
523 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/05/16(水) 23:30:28.08 ID:DyK7ZW7AO


 可愛らしい口ごたえに胸がきゅっと締め付けられるような思いを抱くも、表情には出さない。

「わかった。 もう無理なんでしょう? やめていいわ」

 わざと突き放すように言い、マミの一人遊びしている両手首を掴んで、強引にベッドへと押さえつけた。

 頭の上に組み敷かれた、白く程良い肉づきをした両腕は私の言いなりで、逆らおうという意思の欠片も見当たらない。

 露わになった、丁寧に処理の成されているマミの腋の下をじっと見つめ、本人がそれに気づくのを待ってから、次の構文を口にする。

「お望み通り、ペロペロしてあげる」

「やっ、ち、違……」

 有無を言わせず覆い被さる。

 諸々の液体でべとついている巴マミの肌が、熱が、曲線が、しっとりした柔らかさが、興奮の度合いを端的に表した息遣いが心地良い。

 鼻先を右腋に軽く擦りつけ、なめらかな感触を婉曲なやり方で味わう。 聴こえるように匂いを嗅いであげようかと思ったが、それは自重した。

「いやぁっ……く、くすぐったいっ、そこ違うっ……」

 性感の供給をぷっつりと断たれた彼女の腰が、私の下でもぞもぞと動いているのを直に感じる。

 でも、脚は閉じさせない。 その為に自分の両膝を差し込んだのだから。

 『卑猥』の一言で換言可能な、いやらしい蠢きをしっかりと捉えつつ、引っ掛かりの全くない腋をぺろりぺろりと舐めた。

「やあぁっ、ちがうぅ……、ちがうったらっ」

 幼子の駄々のごとく首を振り、なかなかの暴れ具合を伴って震えるので、私も舌の這わせ甲斐がある。

 執拗に舐めまわした。 マミの肢体から反抗的な意思が完全に抜け切るまで、舐めまわした。

 気づけば、聴こえてくるのは私の行為から新たな甘美を見出し、身に受ける刺激を余すことなく味わおうとする、淫らな呼吸音。
524 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/05/16(水) 23:31:40.40 ID:waiXGfioo


 ふむ、もういいだろう。 ペロペロをやめ、上半身を少しだけ起こす。 密着した肌から伝わる、熱と湿り気を強く感じながら。

「腰がずっとうねうねしてる」

 大人しくなったマミの気恥ずかしそうな顔つきを真近で眺め、聴こえるギリギリの声量で囁いた。

「だって……、舐めて欲しいの、腋の下じゃないし……」

 こうやってじらされるのも悪くない、といった口ぶりでの返事。

「アソコ、じゃ、私にはわからなくて」

「うそばっかり」

「ええ、嘘」

 二人して笑う。

「せっかくいい感じで煮詰まってきてたのに、どうしていじわるするのよ……」

「貴女の望むままにしてたら、貴女の望むようにはならないから」

 マミのことをいじめるのが面白くて仕方ない、という言葉を彼女が受け入れやすいよう言い換える。

 私の返答を受け、マミはしばらく考え込む素振りを見せた。

「……私って、そんなにわがままで、欲張りで、いやらしい?」

「ええ、かなり。 ……でも、そんなマミのことが好き。 愛してる」

 マミの時間が止まる。 このタイミングで言われるとは思っていなかったようだ。

「どうしたの? 顔、真っ赤よ?」

 彼女は無言で両腕を私の首に掛け、顔を近づけてきた。 大人しく目を瞑り、上にいながら受け身の姿勢を取る。

 唇が触れ合うのと同時に、マミの舌が半ば強引に私の口の中を掻きまわし始めた。

 身体の色々なところが一斉に疼く。 頭の中に気持ちの良い火花が数えきれない位飛んで、力が抜けそうになる。

「っぷぁっ」
 
 ほんの数秒で、意図的に糸を引くように、彼女の舌が私から離れていくのがわかった。 正直、名残惜しい。
525 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/05/16(水) 23:35:52.07 ID:DyK7ZW7AO


「ふふっ、ほむらさんの舌を犯してやったわ……」

 両眼を開くと、マミがらしからぬ言葉遣いでニヤリとしつつ、自分の口元を拭うのが目に入った。

 続けて、彼女が両脚を私の腰周りにゆっくりと絡めてくる。
 声を出すことはなんとか堪えたが、纏わり付き方が露骨にいやらしくて、くすぐったくて、気持ち良い。

 仕上げにマミの両腕が背中に回り込んできて、隙間のない体位が出来上がる。

 私は完全に逃げられない体勢となった。

「ちょっと? これじゃ、舐めてあげられな……」

「腿ずりで我慢するからいい」

 初めて聞く言葉だ。 突っ込みどころ満載の素敵なフレーズ。

「……腿ずり? 我慢?」

「ぎゅってして、いっぱいキスして」

 こちらを鮮やかに無視して、彼女が目を瞑る。 どうだろう、お仕置きからは離れてきたが、従わされるのも悪くはない。
 痕が残らないよう、落ち着いてしっかりとマミの両肩を掴み、より強く抱き合う。 包み込まれるような柔らかさが少し羨ましい。

 なんとなくではあるけれど、『食べられている』、と感じた。

 唇を舌でゆっくりとこじ開け、先ほどとは逆にマミの口の中を丁寧に侵食していく。
 舌と舌で優しく慰め合いながら、マミの腰が再度何かを探すようにくねり出すのを感じ取った。

 一旦、口づけをやめ、

「マミ、右脚を下ろして」

「……はい」

 再び、唇が軽く触れるのと同時に、彼女の両脚が私を解き放つ。
 緩く伸ばされた右脚をタイミング良く跨いで、自分の右膝をマミのぬるりとした先端へ軽く押しつけた。

 びくり、とした、活きの良い震えに、私の身体も連動するかのごとく火照りを増してくる。

「気持ちいい、です」

「そう。 じゃあ、頑張ってずりずりしなさい」

「はいっ……」

 お互いの唇に吐息を吹きかけるようなやり取りの後、マミが私の腿を上手に使い始めた。
526 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/05/16(水) 23:37:01.29 ID:waiXGfioo




「ほむらさん、乳首たってる……」

「言わなくてもいいでしょ、そんな」

 無駄話を息継ぎの最中に織り込んで、何度も唇と舌を絡め合った。 お互いの境目がなくなっていくような錯覚を覚えながら。

 マミの落ち着きのない下半身から染み出てくる粘り気が、私の腿を順調に浸していく。

「腰の使い方が上手で感心しちゃう」

「……し、仕事より……、真剣に取り組んでるから……」

「開き直ってもダメ。 明日はもっと真面目に働きなさい」

「うん……」

 お互いの尖った部分で相手の肌をもどかしく刺激し合うことの気持ち良さ。 マミが右膝を立ててきたら、私はきっと耐えきれない。

「乳首たってる」

 彼女がまた嬉しそうに呟いた。 くすくすと笑っていて、とても楽しそうだ。

「そう言うマミも、いろんなとこが硬くなってて、ぐしょぐしょ」

 素直な状況説明をしたつもりだったが、自分でも虚勢を張っているように聴こえてしまった。

「だって……、気持ちいいもん……」

 息遣いが荒くなって、受け答えが徐々に覚束なくなっていく彼女の表情。

 変な表現だと自分で感じなくもないが、素直ないやらしさだと思う。

 でも、今の私はもっとだらしない顔つきになっているに違いない。 気を抜くと、そのまま倒れこんでしまいそうな位、とにかく良い。

「……本当にこれで満足しちゃうの? いい加減、お掃除して欲しいでしょう?」

 堪えきれなくなる前に次の手を打つ。

「ほむらさんが舐めたいんでしょ?」

 強気の態度。 まあ、否定する理由もないけれど。

「ええ。 反応が過敏で、いやらしくて、面白いもの」

「……先輩のおまんこをそんなに舐めたがるだなんて、ほむらさんも結構な変態ね」

 ぞくりとした感覚が背中を走り、マミの両手の平による緩やかな愛撫にすかさずなだめられた。

 とても良い口撃だ。

 私の腿に自分の股を夢中で擦りつけながら言う台詞でもない気がするけど、押されている事実は否めない。
527 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/05/16(水) 23:47:43.12 ID:DyK7ZW7AO


「……その変態におねだりをせがむマミは、より一層の変態さんね」

 いまいち切れ味に欠ける返し。 我ながらそう思う。

「ええ……そうね……」

 再度くすくすと笑いながら、間髪入れずに返事をしてきた。 物真似のつもりだろうか。

 こういう雰囲気のまま、彼女とベッドの上で絡み合うこと自体初めてで、落ち着かない。
 今までが歪んでいた、と言ってしまえばそれで話が終わってしまうが。

 私がマミに負荷を掛け、彼女が嫌がるふりをして、それに応じる、というやり方に慣れきっていたことを今更反省する。

「今日、何か良いことでもあった?」

 なんとか、それだけ呟いた。

「……内緒」

 埒があかない。 攻めの手を緩めたところから、ずっと彼女のターンが続いている気がする。

「ねえ、マミ……」

「いいの」

「え?」

 マミが突然、私の両肩を掴み、身体を押し上げようとしてきた。 何故か抵抗出来ず、為すがままの自分。

「……どうしたの? 急に」

「ほむらさんの方こそ、今日何かあったでしょ?」

 真剣な眼差しで見据えられ、言葉を失ってしまう。

「別に、何も……」

「嘘。 私にだって、それ位わかるもの。 こうしてると余計によくわかる」

 お互いに動きが止まってしまい、私はマミから視線を逸らさないようにするので手一杯になってしまった。

 先ほどまでとはまるで別人のような鋭い眼光を湛え、彼女はじっと睨みつけてくる。

「言わなくていいから、イエスか、ノーかで答えて。 ……笑ったりしないわ」

 質問の意味がわからない。 いや、わからないふりが出来ない。

 このまま倒れこんでしまいたい、とふと頭に浮かぶも、応えられない私にその資格はない。
528 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/05/16(水) 23:51:21.80 ID:DyK7ZW7AO

つづく

いやらしいのは打ち止め
お久しぶりでした
529 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/17(木) 01:32:47.64 ID:oEOVKVrTP
きたあああ!乙乙!!
530 :ほむマミ派(唐突な終わり) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/05/18(金) 13:07:57.07 ID:miS9tx/AO


 自然と口から出てしまった言葉だった。 ほむらは表情を固めたまま、こちらを無言で見つめてくる。

 感情を表に出さないようにしているらしいが、マミからすれば、それは実にもったいないことだと感じた。

「わかった。 じゃあ、訊かない」

 それだけ言い、物言わぬ恋人の頭を半ば強引に胸元へ抱き寄せ、指通りなめらかな黒髪を柔らかく丹念に撫でた。

 さらさらで、真っ直ぐで綺麗で、羨ましい。

 しばらくの間、彼女の髪を撫でる動作を黙って続けていると、予想した通り、か細い肩が震え始めた。

「ねえ……」

「いいから、こうさせて」

 ほむらの声色に軽い驚きを覚えるも、マミはそのことには触れず、彼女の背中に両手をまわし、優しく撫でまわす。

「やっぱり、この髪は憧れざるを得ないわね」

 返事を期待せず、ぽつりと呟いた。

「……ごめん」

「おかしいでしょ……、ほむらさんが謝るのは」

 気づけば、温かい水が胸元を濡らしていたが、それはあまりに自然で、予測済みで、全く違和感を感じなかった。

「本当に羨ましい」

 もう何も言わなくていい、という意味を込めて、もう一度呟く。

 大人しく泣いている彼女の髪を撫でながら次にどうすればよいかを考えるも、初めてのことでマミには良いやり方が思いつかない。

 今までが相手に甘えすぎていたのだ。 こういう時、それがよくわかる。
 そして、それは鹿目まどかとの時も同じだった気がする。 見かけのうえでは違っているように見えても。

 とにかく、ほむらは今の顔を見られたくないだろう。 マミはそれだけを意識して、ただ優しく彼女を撫で続けた。
531 :ほむマミ派(ノンレム睡眠) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/05/18(金) 13:21:17.59 ID:miS9tx/AO
















 Zzz…
532 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/05/19(土) 15:37:18.68 ID:Pd4ueDk+o
乙ー
終わり?
533 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/01(金) 22:54:24.57 ID:o6LcN5WIo
534 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/03(日) 12:51:11.27 ID:1PA5MY7IO
久々にきたら結構すすんでた
素晴らしい乙乙

たぶんこっちに移動して唯一きちんと進んでるSSだよな
535 :ほむマミ派(ようやくの二日目) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/06/03(日) 19:25:10.21 ID:bCzpJeoAO


 朝だ。


 ということを知覚するより早く、暖かくてふわりとした空気が頬を撫でた。

 さて、どうしよう? 目を開けるべきか、寝たふりを続けるか。

「ほむらさん……狸寝入り下手すぎ……」

 聞き馴れた囁き。

 ばれているので大人しく瞼を開くと、予想した通り、マミが私の真上でほくそ笑んでいる。

 視線がぶつかるのと同時に、何故か彼女は眼を逸らし、咳払いを一度。

「『……さあ、その銃で僕を撃て。 子供のおつかいより、ずっと簡単だろう?』、『い、嫌よ。 そんな……そんなこと、出来ない!』」

 某歌劇団の男役張りの良い声と、賢しげぶった女性の声色を巧みに使い分け、力のこもった一人芝居が始まった。

 いきなりのクライマックスだ。 息を飲み、黙って耳を傾ける。

「『考えるまでもないじゃないか。 だって、僕はスパイで、君は連邦捜査官だ』、
 『どうして、そんな冷静に笑っていられるの!? なんで、他人事みたいに言えるのよ!』」

 まず貴女が落ち着くべきだ、と思ったが、状況がよくわからないので続きを待つ。

 大方、逆ハニートラップといったところだろうが。

「『必要な情報は国へ送った。 僕はお役御免……、もっとぶっちゃければ、用済み、だね』、
 『やめて! そんな言い方しないで! ねえ、嘘でしょう? 嘘って言って!』」

 男性側が冗談を言っているのだとしても、いずれ破局は免れられないカップルであるように感じた。

「『ずっと君を騙し続けることだって出来た。 僕には出来たさ。 でも、終わらせて欲しいんだ、君のその手で』」

 気取った男だ。 私なら、急所を外し、太腿あたりをさっさと撃つ。

 たっぷりと間をとって、次は女性のターン。 マミの顔が慌てふためく女性連邦捜査官に様変わりした。

「『む、無理よ、そんな……、出来るわけない……だって、私には……無理よ! 無理! 出来ないっ!』」

 相当なうろたえぶりである。 無理、と、出来ない、しか喋っていない。

 マミの表情がさっと入れ替わる。 再度、男性スパイの出番。 不敵な笑みがいやらしい。

「『…………お腹に僕の子がいるんだろう?』、『っ! どうして……それを……!』」

 幾らかの溜めを経て、驚愕の事実が唐突に明らかとなった。
536 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/06/03(日) 19:30:39.46 ID:bCzpJeoAO


 断片的な情報で判断するのは良くないのだけれど、スパイや連邦捜査官がこんなことで大丈夫なのだろうか?

 きっと、家の壁がパイ生地で、暖炉を組む煉瓦が生チョコレートで出来ているような世界に暮らす人々のお話に違いない。

 にもかかわらず、生々しい。

「『避妊もせずにあれだけ何度も愛し合ったんだ、当然だよね? 君だって覚えてるだろ?』、
 『もう、やめて……私にとって……貴方と過ごした時間は、そんな簡単に茶化せるようなものじゃない……』」

 生々しい、を通り越して、香ばしい。 尚且つ、たまらなくベタである。 狙ってのことだろうが。

 またしばらく間が空き、マミに男性スパイが憑依して、『そうかい』、と冷ややかな笑顔をつくった。

「『なら、僕が撃つ。 君のことを、お腹にいる子供ごと、撃つ』」

 手ぬるい脅迫。 捜査官はスパイの心遣いをもう少し汲み取る必要がある。

「『出来ない……出来ないわ』、『おかしいな、僕の愛した人はそんな弱気なことを言う女性じゃなかった筈なんだけど』」

 煮え切らない様子の女性に、何故か苛立ちを覚えてしまう。 悪いのはスパイなのに、捜査官に同情出来ない。

「『もし、僕が捕まって、拷問に近い取り調べを受けたとしても、絶対に口は割らない。……そういうふうに育てられたから』」

 このまま黙って聞いていれば、全てを喋ってしまいそうな、のんびりとした独白。

 女性捜査官はそれを聞き、おろおろとした表情で塞ぎ込んでいる。 役柄をスイッチするタイミングが絶妙だ、とふと思った。

「『じゃあ、何故私に喋ったの? こんなこと、知りたくなかった……』、『おいおい、公僕がその発言をしたらまずいんじゃないかな』」

 全くだ。 しかし、ちょっと長い。

「『……まあいいさ、二つに一つだ。 僕が撃たれるか、君が撃たれるか』、『嫌、嫌よ、絶対に嫌! 出来るわけない!』 」

 すちゃ、と銃を構える擬音がマミの唇から放たれた。 オチはなんとなく見えているけれど、口を挟むべきではないだろう。

「『いずれにせよ、お別れ、だね』、『……嫌ぁあぁぁぁぁっ!』」

 たぁーん、ぐふぁっ、どさっ、とテンポよく銃声やら、断末魔やらを口ずさみ、マミが私に覆い被さってきた。

 ぐふぁっ、の言い方が秀逸な可愛いらしさ。
537 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/06/03(日) 19:34:00.62 ID:bCzpJeoAO


 昨晩の出来事をそのまま引き継いだ肌と肌が重なり合う。 べたついているのに、不快感はまるで感じない。

 その重みと、反して、重力を無視したような柔らかさと、多少落ち着いた熱は、離れたくなくなる心地よさ。 とりあえず動けない。
 彼女の髪が右頬をくすぐっている。 若干のむず痒さが小芝居のものと重なる気がした。

 しばらくして、マミの身体が細かく震えだした。 声を押し殺して笑っているようだ。 私の反応の鈍さが面白いのかもしれない。

「朝から随分と飛ばすじゃない」

 おはよう、より先に言わなくてはいけない気がしたので、素直に言葉を紡いだ。

「だって、ほむらさんにまためそめそされたらやだもん……」

 右耳に届いてくるその声は、口調がいつもより更に幼く、指摘内容は的確で辛辣。

「結局、スパイの男は死んじゃったの?」

 応えるのが癪だったので、わざと興味のない事を尋ねた。 見透かされることは織り込み済みで。

「なんで、そんなこと訊くの? 呆れ顔で私のこと見てたのに」

「殺したらまずいんじゃないかな、って思って」

「くそ真面目」

「……そういう言葉遣いは感心出来ないわね」

「ごめんなさい、ママ」

 そう言って、マミの方が先に笑い、伴う振動を余すことなく感じ取ってから、私も遅れて笑う。

「ちなみに、捜査官のモデルはほむらさんだから」

 どこが? と訊き返したかったが、出来なかった。

「まあ、実際同じ立場に置かれたら、慌てふためくかもしれない」

 彼女の髪を背中ごと左手で撫でつつ、謙虚に返す。

「私もそうかも」

「そんなこと言って、マミは結構バンバン撃ちそうな気もするけど」

「それ……ちょっとひどくない?」

「ええ、狙ってのことだもの」
 
 今度は私が先に笑う。 鼓動や細かな震えが少しずつシンクロしていくかのようで、ほんのりと気持ち良い。
538 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/06/03(日) 19:39:24.31 ID:bCzpJeoAO


「良かった、元気になってくれて」

 笑いを抑え、心底、といった口調でマミが呟いた。 その穏やかで優しげな声色を聴くことが少し気恥ずかしい。

「ねえ、マミ、今何時?」

 強引に話題を逸らす。

「五時十分。 ありえないほどに早起きね、今日は」

 ゆうべの切り上げが早かったせいかしら? と意地悪く付け加え、彼女は楽しそうに笑っている。

「昨日は不甲斐なくってごめんなさい」

 観念し、思ったことをシンプルに口にした。 わざとらしいと自分でも思うが、本心だ。

「謝らなくていいの。 そう言ったでしょ?」

 予想通りのむすっとした返事。 それを受け、感情を水増しして、大げさに声を弱めて呟く。

「だって、マミがいじわるするんだもん……」 

 そして訪れる沈黙。 空気がやや冷え込んだ気がする。

「それはその通りなんだけど……ほむらさんに言われると、なんか……」

「ええ、そうね。 我ながら気色悪い」

「もうっ、そういう意味じゃないったら」

 と言いつつ、マミはまた笑い出した。 すすんで道化を演じたのだから、笑って貰わなくては困る。 いや、別に困らない。

「……でも、か細い声で話すほむらさんってちょっといいかも。 ピュアほむらさん、って感じで」

 マミに悪気がないのはわかっていたけれど、心の奥底を引っかかれた気がして、軽い苛立ちを覚えた。

「私はそんなの嫌だわ。 別に汚れてて構わない」

「えっ……これ、冗談……」

「マミ、両膝を立てて、腰を起こしなさい」

 彼女が顔を上げ、私を不安そうな表情で見つめてくる。

「どうしたの? 早く起こしなさい」

「あの……」

「起こしなさい」
539 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/06/03(日) 19:47:42.76 ID:bCzpJeoAO


 おずおずと無言で腰を上げるマミの瞳から、決して目は逸らさない。 次、どうされるのか、彼女にだってはっきりわかっている筈だ。

「言われるままに出来ちゃうマミは本当にお利口さんね」

 彼女は嬉しくなさそうに黙り込んでしまった。 でも、これだってマミの為。

 空いたスペースに素早く右手を滑り込ませ、目的地を瞬時に探り当てた。 左腕はマミの背中を抱きかかえて離さない。

「ひゃっ」

「あら、濡れてる……、こうして欲しいなら、初めからそう言ってくれればよかったのに……恥ずかしかったのかな?」


 くちゅり、くちゅり。


 掛ける言葉と、与える肉体的刺激のバランスをよく吟味して、彼女の弱点をソフトにもてあそぶ。

「ち、ちがっ……違うっ……」

「違うのなら、何故、濡れてるの? どうして、嬉しそうな顔をして身体を震わせてるのかしら?」


 くちゅり、くちゅり。


 昨夜はこちらの不手際で途中終了してしまったのだ。 チャラにはならないだろうが、穴埋め代わりの短期決着を狙う。

「答えなさい。 マミが嫌なら、やめたって構わないのだけれど」

「ち……ちが、違いませんっ……っんふぁ……ぁあっ」

「……正直な貴女のことが大好きよ」

 あっという間にマミの全身を焚きつけることが出来た。

 ただ、ごり押しであることは否めず、個人的に高評価をつけられるやり方ではない。

「ねえ、マミ、口を開けてよだれを垂らしてくれない? 飲みたいから」

「ふぁ……は、はいっ……」

 唇が大きく開かれる瞬間、押し込むように先端を愛撫してあげると、だらしない呻きをそのまま液体化したかのような水分が下りてきた。

 エイミングがいい加減で私の左顎に垂れ落ちてしまったが、拭うことをしなければ、きっとマミが舐め取ってくれる。


 くちゅり、くちゅり、くちゅり、くちゅり。


 程なくして、サービスの提供を打ち切った。 ついさっきとは別の理由でマミが私に覆い被さってきたからだ。
540 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/06/03(日) 19:51:44.15 ID:bCzpJeoAO


「残念、最後までしてあげられなかったわ」

 予定を変更し、意地悪には意地悪で返すことにする。

「そんなの、ずるい……」

 甘えた声を出し、のっそりと上半身を起こしたマミが、私の濡れた顎に唇をそっと触れさせ、『お掃除』を始めた。

 ちうっ、とキュートな音を立てて吸い取られる液体。 本人の元に還ることになるとは、露ほども思わなかっただろう。

「……続き、して? ううん、して……ください」

 お掃除が終わり、ねっとりとした声色での要求。 どう答えるかは決まっているけれど。

「ダメ。 私はいたく傷ついたから」

「んもぅ……いじわる……」

 腰が落ち着かないようで、それを直に感じ取るのが凄く面白い。

 右手をわざと近くに待機させてあるので、さりげなく自身を押し付けてこようとする彼女の動きがよくわかる。

 入口の周りをじらすようになぞると、絶妙に誘ってくる吐息の艶っぽさが増してきた。

「ねえ、ほむ……」

「続きは今日の夜ね」

「えっ」

 おねだりを遮り、今はもう貴女の性感帯には触れません、という意味を込めて呟いた。

 周りをなぞることも即刻やめ、本当におしまい、ということを伝える。

 それを受け、しょんぼりした顔つきで黙り込んでしまうマミが可愛い。 下半身のもぞもぞを自重するつもりがないところも可愛い。

 本当にいじめがいのある、素敵な彼女だ。

「せっかくの早起きだもの。 もっとこの時間にふさわしい、さわやかな会話をしましょう?」

 最高に白々しいが、それは空気を変えるためのわかりやすい嘘。

「……そうね、朝からちょっとアレだったわ」

 マミはマミで表情を切り替え、仕方なく次のモードへと移行することにしたようだ。

 まあ、滑り出しとしては悪くないのではないだろうか。
541 :ほむマミ派(お知らせ) ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/06/03(日) 20:05:34.76 ID:bCzpJeoAO


 つづく


 また、ここからちまちま行きますので、時間のある方は気長なお付き合いを
542 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/06/03(日) 20:26:54.29 ID:2vPHiDJ1o
そういえば本ルートって完結したの?
543 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/04(月) 08:31:02.24 ID:Qpvb1zxIO
終わってないね
もうこっちがメインでいいわ
544 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/04(月) 08:33:55.40 ID:cUvERosjo
本ルートの誘導があるかもと思ってたまにここを覗いてしまう
545 :ほむマミ派(さやかちゃんにまどかちゃん) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/06/06(水) 14:14:27.73 ID:uBPt1i1AO

 オフィス 女子更衣室


 一度、深呼吸をする。


 自分のロッカーの隣を預かる彼女に時間を合わせての出社。

 明らかに浮かない表情をして制服に着替える鹿目まどかを見て、さやかは早速心が折れそうになった。

 ダメだ。 こちらが勇気を出さなくては。 意を決して近づく。

「……おはよう、美樹さん」

 先を越されてしまった。 ただ、視線はぶつからない。 当然のことだと思う。 

「おはよう……鹿目さん」

 ごく近くにいるのに遠い。 そんなふうに感じながら、他人行儀な挨拶を返した。

 まどかは黙々と身なりを整え、その場をそそくさと離れようとしているのが読み取れたので、急いで次の言葉を探す。

「あ、あのさ」

「……何かな?」

 少し間を空けての平坦な返事。 会話に対する意欲はまるでなさそうだ。

 まどかは相変わらずさやかの方を見ようとしない。 当たり前のことなのに、そのことがずしりとこたえた。

 自分は昨日全く同じことを隣の彼女にしたばかりで、話しかける前にまずしなくていけないことがある。

「昨日はゴメン、ホントにゴメン。 あたし、カッとなって、つい……」

「どうして、美樹さんに謝られなきゃいけないのかわからないよ」

 ゆるやかに、タイミング良く遮られる。

 ようやく、まどかはこちらに視線を向けてくれた。 さびしそうな笑顔と、明確な拒絶の意を伴って。
546 :ほむマミ派(さやかちゃんにまどかちゃん) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/06/06(水) 14:16:46.44 ID:uBPt1i1AO


 さやかは言葉が出てこない。 言葉が見つからない。 肝心な時、自分はいつもそうだ。

「……あたし、あんたにひどいこと言った。 だから、それを――」

「わたしが美樹さんの立場だったら」

 また遮られた。 虚ろな笑みに胸を抉られるような錯覚を憶える。

「わたしが美樹さんの立場だったら、そんな簡単にわたしのこと許さない」

 もういいかな? と付け加え、まどかはにっこりと笑う。

 こんな攻撃的で、挑発するような物の言い方をする彼女をさやかは見たことがなかった。 本心からの言葉だとはとても思えない。

「ねえ、まど……」

「わたし、行くね。 課長に怒られるのイヤだもん」

 特別急ぐ様子もなく、まどかはロッカーに鍵を掛けてさやかを置き去りにしてしまう。



 そして、取り残された、蒼い女の子。

 でも、挫けている場合ではない。 自分にはしなくてはいけないことだらけなのだから。

 もう一度深呼吸をし、気持ちを切り替えようとさやかは努力する。
547 :ほむマミ派(ほむら黙考) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/06/06(水) 14:24:35.49 ID:uBPt1i1AO

 オフィス


ほむら(……あぁ、昨日は『おつとめ』が短く済んだから、身体が楽ね)

ほむら(っていけないわ……これじゃ、マミに甘えたままで終わってしまう……)

ほむら(でもなー、マミは底なしの女の子だからなー、ちょっとはこういう時があってもいいわよね……、多分)

ほむら(……にしても流石のモブ畑さんね、課の良心を一手に引き受ける女……もう始業準備が済んでる)

ほむら(誰よりも出社は早く、サビ残も厭わない……仕事は確実で綿密、人あたりもいい……変な意味じゃなく嫁にしたいわ)

ほむら(本来の意味での『嫁』よ……恋人はマミなのだから……って、私は誰に言い訳をしてるのかしら?)

ほむら(まどかよりも背が低いのに、なんていうかこう……気が満ちてるというか……)

ほむら(私も少し護身術がてら、何か習おうかしら? ……ああ、ダメだわ、マミが絶対やきもちやいちゃうし……)

ほむら(ふふっ、そんなところもかわいいよマミ、マジかわいいよ……はあーっ、朝から頭の中は貴女でいっぱい……)

ほむら(きっと、こんなことマミに知られたら、『めっ』、ってされてしまうわね、『めっ』、って)

ほむら(ちょっぴり怒られつつ、マミの乳枕に顔をうずめたい……知ってはいたけど、やはり至高の逸品だったわ……)

ほむら(ホントこう、『テンピュール()』って感じでね……これはまずいか……『○ンピュー○()』にしておきましょう)

ほむら(……これだと電子頭脳に誤認される可能性がなきにしも……って、誰に話すわけでもなし、別に構わないわね)

ほむら(あぁ……湧いてるなぁ……私、今、どうしようもなくおバカだなぁ……)

ほむら(と思ったら、なんやかんやでまどかが席に着いていたわ……)
548 :ほむマミ派(ほむら黙考) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/06/06(水) 14:34:03.84 ID:3mAyuKlRo


ほむら(あら、モブ畑さんの予想通り、あまり芳しくない表情……杏子との相性自体は悪くないと思っていたのだけれど……)

ほむら(まあ、当然よね……まどかも、杏子もそんな子ではないのだから……うーん、我ながらイラっとくる上から目線……)

ほむら(しかし、わからないのは杏子ね……いったい、何を考えてるのかしら?)

ほむら(……やめましょうか、野暮に過ぎるし、正直無意味だし)

ほむら(と思ったら、連想されるかのように、美樹さやかのご出勤……うわぁ、空気が一気に澱んできた……)

ほむら(モブ畑さんはよく平気な顔していられるわね……肝心の美樹さんは……うん、少し持ち直した感じかな? 流石、単細胞)

ほむら(後はあいつだけか……どうせ、ギリ出社なのだから、いちいちイラつくのも損だわ)

ほむら(どうして、マミはあんなのと友達なのかしら? 『あんなの』、って呼んではいけないのをわかっていても、そう呼んでしまうモブ崎……)

ほむら(ま、いっか……世の中、いろいろとあることだし……私とマミの関係も『いろいろ』に分類されてしまうことは否めない……)

ほむら(そうね……少し、マミについて想いを馳せることにしましょう……)ブツブツ




モブ畑「今日の課長はご機嫌だね」

さやか「そうすか? あたしには普段通りの仏頂面にしか見えませんけど」

モブ畑「……美樹は普段通りの口の悪さだな。 ほっとするよ」フフッ

さやか「へへっ」


まどか「……」
549 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2012/06/06(水) 20:57:38.80 ID:/T6xJymko
乙です。

久しぶりの日常パートなんで前回どうだったかと遡ってみたら去年だったわww
とはいえ、投げ出さずに続けているスレ主には感謝だよ。
550 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/06/06(水) 23:32:28.02 ID:iidMDZFqo
まどか痛い目にあってほしい
551 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/07(木) 01:47:14.95 ID:DVeMOtYIO
乙乙
552 :ほむマミ派(日常) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/06/08(金) 09:37:01.09 ID:YeiHUZZAO

 やや、時間は飛んで オフィス


ほむら「あのね、この話をするのは初めてじゃないから、何度も言いたくないのだけれど」

さやか(じゃ、言わなきゃいいじゃん……)

ほむら「……何か?」

さやか「なんでもないっす」

ほむら「細かいミスで人は死なないかもしれないけど、取り戻す為に費やした時間は二度と戻ってこないの。 ここまではいい?」

さやか「はぁ……」

ほむら「はぁ?」

さやか「はい」

ほむら「……誰よりも早く、なんて要求はしてないのだから、書類の二重チェックを習慣づけなさい……美樹さんは『うっかり』さえなければ……」クドクド

さやか「……」

ほむら「って、何を黙り込んでるの?」

さやか「……」ウニュッ

ほむら「……そのアヒル口は、いったいどんな意思表示のつもりなのかしら?」イラッ

さやか「……」

ほむら「黙ってないで何か言いなさい。 しおらしいのなんて、貴女には似合わないわ」フンッ

さやか「すみませんでした……以後、気をつけます……」

ほむら「以後、気をつけてないから、私も同じことを繰り返し話してるの。 ……これは嫌味だから、少しは身に染みて」

さやか「……」

ほむら「美樹さん? 聞いてる?」

さやか「……」ウニュッ

ほむら「そのアヒル口をやめなさい!」

さやか「すみませーん」シュタタタ


ほむら(……全く!)
553 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/08(金) 17:55:30.20 ID:hoL3ZkhIO
最近、更新が多くて幸せ
554 :ほむマミ派(日常) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/06/10(日) 14:02:24.99 ID:Phy/rSYAO

 時は少し遡る……


ほむら(『も、もう……もう、読めません……』、って言った時の悔し気持ち良さそうなマミの表情……)

ほむら(あの時のマミの悔し気持ち良さそうな表情といったら……ふふ、ダメね……深い感動のあまり、二度繰り返しちゃった……)

ほむら(ああ……足の指をしゃぶってあそびたい……マミが太腿をもじもじ擦り合わせるところまで煮詰めて、いじめて差し上げたい……)

ほむら(二人で会社ぶっちぎって、いやらしいことたくさんしたいなぁ……でも、立場上無理ですよねー、わかってますよーだ……)

ほむら(まあ、思うだけなら自由だし、体力も消耗しないし……最近の成績はお世辞にも良くなかったから、ここらで挽回したいわよね、正直……)

ほむら(あっ、ようやく来やがった……今日もメイク濃いなぁ、商売女じゃないのだから……モブ崎ぃ……)
555 :ほむマミ派(日常) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/06/10(日) 14:11:22.11 ID:JeVoQIjKo

 ほむ→さや 説教中


モブ崎「鹿目は今日も元気ないね」フワァ

まどか「えへへ……すみません……」カキカキ

モブ崎「いや、別に謝る必要はないんだけど……デートだったんじゃないの?」

まどか「……実を言うと、デートなんかじゃなかったんです……昨日のは」

モブ崎「じゃ、何?」

まどか「傷の舐め合い、ですかね……」

モブ崎「……鹿目ボイスで『舐め合い』とか言うのを聴くと、形容し難いエッチくささを感じる」

まどか「す、すみません」

モブ崎「いや、だから、謝らなくていいんだけど」

まどか「……」

モブ崎「……」フワァ


モブ畑「……二人とも、手を動かせ」カタカタ


まどか「すみませんっ」アセッ

モブ崎「……」

まどか「あ、あのモブ崎さ……」

モブ崎「鹿目はさ、好みのタイプとか細かい方?」

まどか「え? 何の話ですか?」

モブ崎「来週の金曜に取引先の男の子達と飲むんだけど、来るか?」

まどか「それって……」

モブ崎「こんな言い方したらなんだけど、今、独り身でしょ? 気晴らしのきっかけ位にはなると思うんだよね」

まどか「でも……わたしなんて」

モブ崎「それを決めるのは向こうだよ。 鹿目が気をつけなきゃいけないのは、都合良く遊ばれないよう、適度に構えておくこと」

まどか「なんか、行くことが前提になってきてる気が……」

モブ崎「咬ませ。 人数合わせ。 先輩後輩の立場を使ったパワハラ。 どう言われれば、納得が出来る?」

まどか「どれも、イヤです……」

モブ崎「じゃあ、『この機会を有効利用してやる』、くらいのしたたかさを持たないと。 もう中学生じゃないんだから」

まどか「すみません……」

モブ崎「いや、謝る必要はないんだけど」
556 :ほむマミ派(日常) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/06/10(日) 14:20:46.11 ID:Phy/rSYAO


モブ崎「……で、どうよ?」

まどか「あの……あの……」

モブ崎「鹿目自身が厭わなきゃ、結構需要はあると思うよ。 ていうか、じゃなかったら、そもそも誘わないし」

まどか「需要、ですか」

モブ崎「そ、需要」

まどか「……」

モブ崎「ねえ、いつま……」


モブ畑「モブ崎、自重しろ」


モブ崎「……」ムッ

まどか「す、すみません」

モブ畑「なんで鹿目が謝るんだ? 自分はモブ崎に言ってる」

まどか「はい……」

モブ崎「私は……私は、別に」

モブ畑「それはわかってる。 でも、よせ。 仕事中だぞ?」

モブ崎「……あー、委員長面した誘われもしないヤツの僻みがうぜー、というひとり言。 ……ひとり言すっよ、これ」

モブ畑「……」

まどか「あ、あの」オロオロ

モブ崎「何?」

まどか「なんでもないです……」

モブ崎「……」フンッ

モブ畑「……モブ崎の期待に添えなくて申し訳ないけど、自分には婚約者がいるから、合コンとか別に要らん」

モブ崎「ええっ?!」

まどか(え?)

モブ畑「何か問題でも?」

モブ崎「いえ……別に……」

まどか(ないです……)

モブ畑「……」フフッ

モブ崎「……っ!」


まどか「……」
557 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/11(月) 01:24:50.93 ID:5cRpri+IO
乙乙
558 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/14(木) 11:29:50.75 ID:ZmPd+v6kP
いいねいいね、乙!
559 :ほむマミ派(日常) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/06/14(木) 19:30:07.17 ID:3FSqx0mTo

 ところかわって 鯛焼き屋


杏子「……」

バイト「……」ジュー

杏子「あんた、地味に焼くの上手くなったね」

バイト「でも、昨日のやつは焼きすぎだったと思うんすけど」

杏子「なんだ、わかってて寄こしたのかよ」

バイト「だからつぶあんにしてほしかったんです。 新しく焼けば良かったから」

杏子「……なるほどね」

バイト「焼き加減の微妙な差で文句をつけてくるのは店長くらいしかいないんで」

杏子「こら」ゲシッ

バイト「いたい」

杏子「そういう相手を舐めた態度ってのは、言葉にしなくても伝わるんだからな? あんたがそんなことされたらどうよ?」

バイト「イヤですね。 キレちゃうかもしれません」

杏子「じゃあ、すんな」ゲシッ

バイト「いたい」

杏子「ったく……」

バイト「すみませんでした」

杏子「いいよ、もう。 焼くのに集中しな」

バイト「はい」

杏子「……」

バイト「……」ジュー

杏子「あっついときにうまけりゃいいじゃないか、って思うだろう?」

バイト「はい」

杏子「皮をパリっとさせたいって気持ちはよくわかるんだけどさ、冷めたとき餡がパサついちゃうんだよね。 つぶあんだと特に顕著」

バイト「……それ、前にも聞きました」

杏子「そうだっけ? あんたに細かくダメだしするのって、確か初めてだと思うんだけど」

バイト「なんか、店長の考えてることがわかるんすよ……言葉にされなくても。 自分でも不思議です……」

杏子「気色わりぃな。 察してるんなら、実践しろっつの」ゲシッ

バイト「いたい」
560 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/06/17(日) 20:16:48.76 ID:2/VNZr+c0
ここに来て勢いが出てきたね、このまま完走まで
561 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/17(日) 20:24:14.16 ID:TrWq3XTTo
お、何時の間にか復活していたのか。乙
562 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/18(月) 07:34:55.46 ID:oxv904yIO
乙乙!
563 :ほむマミ派(ポエティマミ) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/06/18(月) 13:09:38.84 ID:BkxHCBtAO




『全く持って素敵な夜ね』

 そう呟く彼女の黒髪は 視線を逸らしたら即溶けこんでしまいそうな 艶めいたカムフラージュ

『でも 無粋な連中がお待ちかねだわ 本当に毎日毎日懲りもせず』

『……きっと 私たちも同じように思われているに違いない』

『ええ それは違いない』

 正直に答え 二人して軽く笑う

 呼吸を整え お互いに目配せ 今 生きているということを改めて噛み締める

『さて 準備はいい?』

『誰に訊いてるの? 今までずっと一人でやってきてたのよ?』

『だから不安なの』

『ちょっ……』

 口論になりそうな空気 でも ここは年長者の余裕を見せ付けたい

『……まあいいわ くれぐれも射線に入らないように 手加減とか出来ないから』

『そっくりそのままお返しするわ それでなくても貴女 余分な出っ張りが人より多いのだから』

『その点 貴女は安心ね』

『何ですって?』

『いえ 別に』

 また 二人して笑う

 そんなこんなで 意識しないようにしていた澱みが明確な悪意となって形作られ 私たちの前に

 もし この瞬間の怖れを忘れてしまったとしたら きっと明日はない

『行きましょうか』

『ええ』 

 同時に得物を構え 高揚している自身を必死で宥める 冷静さが要だと彼女が小姑の如く繰り返すものだから

 その引き締まった横顔を見続けていたい というのは 私一人だけの大切な隠し事


『―― 来る!』


 さあ 夜が白む前に早く 月明かりで命がけのダンスを――
564 :ほむマミ派(日常) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/06/18(月) 13:15:26.37 ID:BkxHCBtAO

 舞い戻って 開発部


マミ「……」カタカタ

モブ男「……」カタカタ


マミ(……)カタカタ

マミ(……)カタカタ

マミ(……)カタカタ


マミ(ああ……)


マミ(……)カタカタ

マミ(……)カタカタ

マミ(……)カタカタ


マミ(……ダメね)


マミ(……)カタカタ

マミ(……)カタカタ

マミ(……)カタカタ


マミ(えっと……下半身が実にむずむずするわ……)
565 :ほむマミ派(日常) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/06/18(月) 13:24:27.10 ID:BkxHCBtAO


マミ(いやらしくない妄想で誤魔化そうかと思ったけど、ほむらさんを登場させたのは明らかに間違いだった……)カタカタ

マミ(んもぅ……今朝だって、あんな中途半端なところでやめちゃうんだもの、ホントに意地悪なんだから……)カタカタ

マミ(そして、そのことをちょっぴりイイと感じてしまっている、どうしようもない私……)カタカタ

マミ(カッコつけて、途中で終わらせてはいけなかった昨日の夜……それは二度と戻らない時間……)カタカタ

マミ(でも、あそこで、『舐め』を要求してたら、流石に後悔することになったでしょうね……人として)カタカタ

マミ(あぁ、困った……マミ困った……)カタカタ

マミ(なんとかして、はけ口を見つけなくては、仕事に集中出来ないわ……)カタカタ

マミ(んー……)

マミ(……)

マミ(……)

マミ(……)ウムムム



マミ(仕方ない……モブ男に八つ当たりしよう……)
566 :ほむマミ派(日常) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/06/23(土) 03:14:35.20 ID:U7AoP6TCo


マミ(チーフはサボって煙草の時間か……よし、いける)


マミ「モブ男さん」カタカタ

モブ男「……なんすか?」カタカタ

マミ「奥様は、お元気?」カタカタ

モブ男「ええ、まあ……」カタカタ

マミ「そう。 良かった」カタカタ

モブ男「……」カタカタ

マミ「ふふっ」カタカタ


モブ男(なんだ? いきなり……)


マミ「……」カタカタ

モブ男「……」カタカタ

マミ「モブ男さん」

モブ男「あの、今……」

マミ「いいじゃない……それとも、怒られちゃうのがそんなに怖い?」

モブ男「えっと、あの」

マミ「優秀で、お利口で、愛妻家で、それはそれはご立派なモブ男さん……」

モブ男「……昨日のことだったら、今からでも謝りますけど?」

マミ「まあ、どうして? モブ男さんが謝るのは明らかにおかしいわ……うん、それはおかしい」

モブ男「あの……」

マミ「ふふっ」

モブ男「……」


マミ(さん付けで呼ばれることにむず痒さを感じているのはお見通しよ……)
567 :ほむマミ派(日常) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/06/23(土) 03:15:15.40 ID:JWOrWVpAO


モブ男「……」フゥ

マミ「……」カタカタ

モブ男「……あの、巴さん?」

マミ「……」カタカタ


モブ男(おい、こっちの問い掛けは無視かよ……)


マミ「……」カタカタ

モブ男「……」カタカタ

マミ「ときにモブ男さん」

モブ男「……」カタカタ

マミ「……ときにモブ男さん」

モブ男「……」カタカタ

マミ「モブ男さn……」

モブ男「聴こえてるよ! 何?!」

マミ「いえ、チーフがいつの間にか戻ってきてるから、それを伝えたくて」フフッ

モブ男「えっ」



チーフ「坂間、お前今日随分元気あるな」

モブ男「……すみません」

チーフ「いいんだよ、その勢いをキーボードにぶつけてくれさえすれば」

モブ男「はい、気をつけます」

チーフ「うん」



マミ「……」チッ

モブ男(……舌打ち?)
568 :ほむマミ派(日常) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/06/23(土) 03:18:47.21 ID:U7AoP6TCo


マミ「……」カタカタ

モブ男「……」カタカタ


マミ(ちょっと甘くない? 私にはやたらと厳しいのに……)

マミ(大体、隣のコイツがあんまりにも大人しいから、私の浮付き振りが際立つんじゃない……って、それは違うか)

マミ(アッ……もしかしなくても、もしかして……いえ、流石にそれはない……考えすぎね)

マミ(んー……)

マミ(仕方ない、機を窺いましょう……)


マミ「……」カタカタ

モブ男「……」カタカタ

マミ「……」カタカタ

モブ男「……」カタカタ

マミ「……」カタカタ

モブ男「……」カタカタ


マミ(お、チーフが外線を取った……よし、次で決めるわ)


マミ「……ねえ、モブ男さん」

モブ男「……」カタカタ

マミ「ちょっと訊きたいことがあるんだけど」

モブ男「……」カタカタ

マミ「ねえ……さっきからパソコンの調子がおか……」

モブ男「おかしいのは巴さんの頭でしょ?」ボソッ

マミ「何ですって!?」

モブ男「……ちなみに、チーフがこっちを見てますから」カタカタ

マミ「えっ」




チーフ「巴」

マミ「……はい」シュン
569 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2012/06/23(土) 21:52:57.22 ID:lNBAQSIro
乙です。
つーかマミさんなにやってんだww
570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/23(土) 23:24:14.13 ID:M9QHguNIO
乙乙
571 :ほむマミ派(マミご飯) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/06/28(木) 22:18:09.84 ID:658TL0ZAO

 オフィスビル 屋上


 ほむらの後姿を見つける。 声を掛けなくても、彼女は必ず自分に気づいてくれる。 必ず振り向いてくれる。

 地味ではあるけれど、中々の能力だとマミは思う。

 予想通りスムースに振り向き、表情をわずかに緩ませるほむら。 顔をくしゃくしゃにしたりしないところが実に奥ゆかしい。
 いつもより大袈裟に手を振って、気持ちの落ち込みを悟られないようにするも、きっと見抜かれてしまうだろう。

 いや、違う。 見抜かれたいのだ。 随分ガードが緩くなったものだ、と我ながら思う。
 その副作用で緊張と緩和のコントロールが上手くいっていないが、これは単なる言い訳に過ぎない。

 とにかく、今の自分は普通じゃない。 マミはそのように自己分析をした。

「……何かあった?」

 挨拶代わりに早速の指摘。 顔に出ていたのだろうが、そんな自分が情けない。

「ええ、ちょっと。 いえ、あんまりちょっとじゃないんだけど……」

「いいわ、食べてからゆっくり聞かせて貰うから。 今日のメニューは何? お腹が空いちゃって」

「えっと……、しそ梅ささみのおにぎりと、出汁巻き卵と、キュウリとパプリカと玉ねぎの和風ピクルスと……」

 背もたれのないベンチに並んで腰掛け、お弁当を広げる。 ほむらの視線はピクルスの入ったタッパーに注がれていた。

「ピクルス、いいわね。 そそられる」

 食いつくポイントが少し変な気もするが、それは多分わざとだ。

「……ほむらさんは、もうちょっとお肉関係を積極的に食べたほうがいいと思うんだけどな」

「いいの。 ちゃんと生きられるのなら、好きなものを食べるべきよ」

 さりげなく、精をつけることを要求している自分がちょっぴり恥ずかしい。 あっさりとスルーされてしまって、尚恥ずかしい。

「それじゃ、いただきます」

「どうぞ、召し上がれ」

 とりあえず二人して昼ご飯を食べ始めた。
572 :ほむマミ派(想い出) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/06/28(木) 22:19:24.11 ID:ABcEP7aYo


杏子『さやか、このつくね団子の辛子マヨネーズ和えうまい』モグモグ

さやか『……それはいいんだけどさ、あんた、食べながら話すのいい加減やめな? まどかにいくら言われても、ちっとも効き目ないし』

杏子『あー、わりぃわりぃ』ゴキュ

さやか『全っ然、心こもってないなあ……』ハァー

まどか『……』

さやか『ん? どうかした?』

まどか『ううん、なんでもない……』

さやか『なんでもない、って顔じゃないじゃん。 嫁の浮かない表情を見過ごすほど、さやかちゃんは野暮な女ではありませぬぞ?』

杏子『……どーだか』

さやか『なんか言った?』ジロッ

杏子『いんや』モグッ

さやか『ったく、すぐ話の腰を折りやがって……口の中のものがなくなるまで喋らなくていいからね?』

杏子『……』モグモグ

さやか『……で、まどか、どしたの?』

まどか『さやかちゃんと杏子ちゃん、すごく仲良しになったね……』ポツリ

さやか『え?』

杏子『……まどか、さやかは決して「ブサかわ」なんかじゃねぇよ?』ゴキュ

さやか『おい、今誰もそんなこと話してなかっただろ……』

杏子『だから、ブサかわなんかじゃねぇよ、つってんじゃん……ちゃんと聞けよ』ハァー

さやか『……喧嘩売られてる感満載だけど、あえて問おう。 じゃあ、あたしに当てはまるのはいったい何なのさ?』

杏子『……』

さやか『なんで、こういう時はピシャッと黙るんだよ……』イライラ

杏子『わりぃわりぃ』ヒャッヒャ


まどか(仲いいな……)
573 :ほむマミ派(食べ終えて) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/06/28(木) 22:28:04.70 ID:658TL0ZAO


「それで、何があったの?」

 いつも通り、おいしい、と褒めてくれ、ほむらは黙々と行儀よくお弁当を食べてくれた。 そんな彼女の食後の一言。

 緑茶を静かに啜る横顔を窺うと、その落ち着き振りは中学生の頃とはまるで別人のように感じられる。

「えっとね……」

「まさか、またレポートとか?」

「違うわよ……、まあ、ちょっと危なかったのはここだけの話」

 マミの返事を聞き、全く、と呟いて、ほむらが苦笑いを見せる。
 それは本来ならマミのプライドに障る行為であり、もっと若い頃であれば機嫌を損ねていてもおかしくなかった。

 大人になったな、と皮肉めいたことを自分で思う。

「チーフがね……なんか、私にだけやたらと厳しいの。 悪いのは主にこっちの方だから仕方ないとはいえ」

 それだけ言って、ほむらの横顔を再び覗く。 昨晩露わにしてくれた右耳は、艶やかな黒髪に覆われ、よく見えない。

「……巴さんが自分で悪いと思ってるのなら、それを気にするのは筋違いなんじゃないかしら?」

 彼女はきっとこう答えてくる、という予測そのものズバリの返答に、喜びが二割、がっかりが八割。
 自分の発している空気を読み取られたのだろう、呼応するかのようにほむらがやれやれ感を漂わせ、更に顔付きを緩めた。

 彼女が不意にこちらを向く。 マミは条件反射で息を飲んだ。

「『フェアじゃない』、ってことを言いたいのよね?」

「うーん……、自分でも子供っぽいとは思うんだけど……なんていうか」

 そこで会話が止まってしまう。 ほむらは前を向いてカップを口元へ。

 彼女は表情を変えずに緑茶を品良く啜り、息を長く静かに吐いた。

「……今からする話は巴さんには絶対納得がいかないだろうし、嬉しくもないでしょうけど、いい?」

「別に……いいわよ?」

 食後の話題としてどうにも適切でない流れになってきたが、偶には良いか、とマミは隣の女性に倣い、一度息を長くゆっくりと吐いた。
574 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/06/28(木) 22:31:39.86 ID:ABcEP7aYo


「まわりくどい言い方はしたくないから端的に言うけど、巴さんが女だからよ、結局」

 特別感情を込めるでもなく、ほむらが言い放つ。 言葉の意味よりも、それをあっさり口にした彼女に驚いた。

「ちょっと、言い方が冷たすぎない?」

「ええ、そうね」

「……それで?」

「終わり」

「えっ?」

「この話をこれ以上しても、正直面白くないし、無意味だし、大事な今の時間を彩るのには不適格に過ぎるわ」

 そう言って、ほむらは控え目に笑う。

「なんか、今日のほむらさん、やたらとツンツンしてるわね」

「理屈ではわかっていても、受け入れる事は難しい……」

 半ばこちらを無視する形で、ぽつりと呟く彼女。

「巴さんくらい魅力に溢れてると、男の人も色々と余計な気を使うの。 ……当然、自覚はあるでしょう?」

 意地の悪い問い掛け。

 『魅力に溢れてる』、というフレーズが気になったが、話の本筋ではないので反応してはいけない。

「……平等も、公正も、人類が本来目指すべきものかもしれないけれど、私たちの生きるこの世界にそこまでの余裕はない」

 患っている人の常套句をすらすらと述べるほむら。 初めての接待パターンだ。

 それより何より、段々とほむらの顔が近付いてきているのが気になる。 声のボリュームが落ちてきているのも、実に気になる。 

「貴女、今、『魅力に溢れてる』、って言われた瞬間、ほっぺが緩んだ」

「えっ」

 いや、顔には出していなかった筈……ちょっと自信はないけれど。

 というか、近い。 吐息がくすぐったくて、柔らかくて、あったかくて、気持ちが良い。

「……そんな素直で可愛いマミのことが大好き」

 そう囁いて、腰を浮かせ、彼女が右手でこちらの前髪を優しくかき分けてきた。

 となれば、目を瞑るより他にない。 それ以外の選択肢など、マミにはない。
575 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/06/28(木) 22:36:40.41 ID:658TL0ZAO




 待てど暮らせど、おでこへのキスはやってこなかった。




「さあ、巴さん、そのダルンダルンになった御顔を引き締めて。 社畜の時間よ?」

 目を開くと、なんともいえないニヤニヤさ加減でほむらがこちらを見ている。 担がれた。 完全に担がれた。

「……騙したわね?」

「人聞きが悪いわね。 励ましたの」

 現時点で頬がかなりの熱を持っている。 それくらいはマミにも自覚出来ている、と思う。 頬が熱い。 本当に熱い。

「今の目を瞑った巴さんの表情……最高だったわ。 それくらい色ボケしてればまだまだいけると思う」

「ちょっと!」

「あー、その元気はキーボードにぶつけて頂戴。 それ以外は要らない。 今は、要らない」

 瞬時に表情を引き締め、ほむらは音を立てることなく立ち上がる。

「ほむらさん、やっぱり今朝のこと怒ってるでしょ?」

 怒りを全く隠せていない声色で、すらりとした黒スーツの後ろ姿に問い掛けた。

「いいえ、別に?」

 憎たらしい程の無表情が振り向く。

 今の彼女からは本心をまるで読み取れない。 理由は明白で、マミ自身の精神状態が平時のものではないからだ。 良くない意味で。

 そんなこちらの事情まるで鑑みることなく、また後で、とだけ言い、ほむらは本当にベンチから去っていってしまった。

 取り残されたマミは仕方なく気持ちを切り替えざるを得ない。 そうせざるを得ない。
576 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/28(木) 23:43:38.79 ID:0mjQgmjIO
乙乙!
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/06(金) 23:41:39.03 ID:+dnc4RZIO
まだー?
578 :ほむマミ派(お詫び) ◆CuwcoLXTJ2 :2012/07/09(月) 05:31:45.23 ID:Z2Sr0Who0
体調絶不調にて更新が滞っております すいません

逃げたわけではないです
579 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2012/07/10(火) 05:50:36.64 ID:mdbmccDAO
だれか簡単なあらすじください
キャラ同士の関係がよくわからんくなってきた
580 :ほむマミ派(投下合図兼あらすじ) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/07/26(木) 18:30:46.68 ID:gm4fmoEAO


・まどマミからほむマミへ(寝取った)

・その煽りを受けたのかどうなのか、杏子が一緒に住んでいたさやかを、なんやかんやでアパートから追い出した

以上

581 :ほむマミ派(いつの間に三日目) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/07/26(木) 18:33:52.66 ID:gm4fmoEAO

 街中



 巴マミ、暁美ほむら両名による、のどかな茶番から、約三十時間が経過した。



 美樹さやかは仕事帰りに寄り道を決行中である。

 本来は寄り道ではなく、かつて普通に歩いていたルートを通るだけのことなのだが、ひと月近く避けていた道を歩くので、この表現になった。

 歩くと靴ずれが痛い。 二日前、何も考えずに走ったりなどしたからだ。

 気持ちがざわざわとして、落ち着かない。 これからのことを考えると、落ち着いてなどいられないからだ。

 大きく息を吐き、吸い込む。 また息を吐いて、吸い込む。

 落ち着いてはいられなくても、落ち着かなくてはいけない。 回り道をしそうになる自分を、心の中で励まし続けなければいけない。


 鹿目まどかとは、あれから結局ろくに話せていない。

 彼女に拒絶されるなど、想像したこともなかった。 そんな自分を大変な甘ちゃんだと思う。

 自ら跳ね除けたのだ。 彼女の言葉に耳を傾けることなく。 さやか一人のせいではないにしろ、我が身の負う責任は決して軽くない。


 頭から、まどかのことを無理矢理に追い払う。 同時に二つのことを考えながら器用に動ける自身ではない。 さやかはそう思い込んでいる。

 ただ、切っても切り離せないテーマであることが、さやかの心に慣れ得ない負担を掛けているということ。


 意識して、深呼吸を繰り返す。 息継ぎすら下手くそに思える今の自分。

 歩くことのみに集中しようとしても、出来ない。 足から伝わるひりひりとした痛みが、つい先日のことを思い起こさせるからだ。


 目的地が近づいてくるにつれ、両脚がいうことを利かなくなっている錯覚。 いや、錯覚などではなく、明らかに竦んでいる。
582 :ほむマミ派(寄り道) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/07/26(木) 18:39:29.28 ID:gm4fmoEAO


 偶に立ち寄っていた書店が目に入る。 中に入る用事は今のさやかにはない。

 自覚しながらも、脚は勝手に自動ドアの方へ。 その存在を認めた瞬間、こうなることはわかっていた気がした。


 学生に、サラリーマンに、書店員に、そのいずれでもないように見える人達に。 うざったくない程度に店内は賑わっている。

 自分は、いったい何処に含まれるのだろう? 他の人から見て、今の自分はどういった人間に見えるのだろう?

 全く持って無意味な時間つぶし。 逃げの思考。 昨日の朝の決意はもうしぼみかけていた。


 一度、溜め息をつく。 背筋を伸ばし、ファッション誌の置いてあるコーナーへ向かう。

 整然と並べられたカラフルな表紙の数々に目配せした上で、適当に取った一冊を適当に開いた。

『いかにして周りから際立つことが出来、そして、周りから浮かないように出来るのか?』

 欲深く、矛盾を孕んだ内容を見かけ上品に言い換えた、メーキャップ術の特集記事が目に入る。

 今現在の美樹さやかにとって、自身に施すメイクは対外的なマナーと、着ている衣服とのバランス調整以上の意味を持たない。

 どうやって上手く誘う、とか、誘われる、といったページを熱心に読み込むような経験もなかった。

 読み込まないようにしていたのかも、とふと思う。


 唐突に佐倉杏子のことを思い起こした。 さやかが彼女を身綺麗に整えてあげようとすると、全力で嫌がられた記憶が蘇る。

 犬に服を無理矢理着せようとする飼い主と、言うことを聞かない生意気な犬を自分達に重ね合わせていたこともあったような。

 実に失礼極まりないが、そのことはさやかの胸の内だけの話なので、まあ許してもらえる範囲内だと自己完結した。


 我に返る。 そんなことをのんびりと思い返している場合ではない。
583 :ほむマミ派(黙考) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/07/26(木) 18:43:32.20 ID:gm4fmoEAO


 雑誌を丁寧に元の位置へと戻す。 当然、何も買うことなく書店を出た。 悪いお客だ。


 足の痛みをしっかりと感じながら、一歩一歩目的の場所へと歩を進める。

 どきどきと心臓が打つのをはっきり感じ取り、 気を落ち着かせる為に唾液を飲み込んだ。 雑踏の音に紛れることを許さないくらい、そっと。 


 まず、会ったら何を言うべきか? 少なくない時間、懸命に考えたつもりだったのだが、初めの一言すら思い浮かばない。

 脳内の迷走ぶりが、自身の脚運びにはっきり表れていると自覚した。 ふにゃふにゃで、ぐだぐだで、へなちょこ。


 あのいけ好かない上司が今の自分を見たら、きっとこう言うに違いない、

『切実さが足りない』、『真剣さが足りない』、そして、『ちゃんと聞いてる?』

 聴こえてはいる。 だから、ちょっと黙っててくれ。


 こんなにも怯えが先に立つ、今の自分が本来の姿だと、さやかは改めて思う。

 水曜の昼下がりにぶつけた啖呵のごとく、彼女に問い質せばよいだけなのに。

『あたしを追い出した理由をちゃんとわかるように教えて欲しい』
 
 誰にでも出来る、簡単な質問。 何故、もっと早く言えなかったのか。 いや、未だ果たされてはいないのだけれど。
584 :ほむマミ派(目撃) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/07/26(木) 18:48:28.89 ID:gm4fmoEAO


 さやかが実家に戻った時、一番喜んでくれたのは父親だった。

 直接言葉で何を言われたということもなかったが、態度でありありとわかった。 そんな父を横目に、母親は渋い表情。 

『喧嘩しちゃって』

 この一言で済ませてしまえる程、簡単な話ではなかった筈なのに、さやかは家族に対してそれしか説明をしなかった。

 両親からそれ以上の詮索をされることもなかった。 我ながら不誠実だと思ったが、その緩さと心地良さに甘えた。

 もっと、しっかり話さなければならないことが目一杯あったにも係わらず、そんな大切な一つ一つを全て飲み込んで。


 また、溜め息をつく。

 家でも、職場でも、明るく振る舞うように努めてはいたけれど、そろそろ限界に来ていると感じる。

 父も、母も仕事がまだまだ忙しく、顔を合わせる時間が少ないのが救いだ。

 先日はあの女にまで心配されてしまう始末。 だからこそ今日、まず一つを片づけてしまいたい。


 心臓が高鳴る。 駅前の賑やかさが、さやかの全身に沁みわたる。 もう着いてしまう。

 さっきから、地面しか見ていない。 背中を伸ばそうとするが、怖くて出来ない。

 歩道に敷き詰められたタイルの模様が、終点に近づいていることを知らせてくる。


 埒が明かない。 大きく息を吐き、意識して顔を上げる。

 そうして、遠目から見知った姿を確認すると同時に、美樹さやかは再度萎縮してしまった。
585 :ほむマミ派(まどあん!) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/07/26(木) 18:54:51.68 ID:gm4fmoEAO


 やや遡って 鯛焼き屋


「杏子ちゃん、約束を果たしに来たよ」

 えへへ、と笑いながら、鹿目まどかが声を掛けてきた。 一見元気そうで、杏子はほんの少しだけほっとする。

「いらっしゃい。 ホントに来てくれたのな」

「それはね、もう……炎の約束だから……」

 意味ありげにまどかは言うけれど、杏子には意味がよくわからない。 くふふ、という機嫌の良さそうな笑い声だけが救いだ。

「それって、炎の、とか要らなくね? 別に」

「その指摘……実に、的を射てるね……」

「変なタメつくらなくていいから、普通に話せよ。 なんかやりづらい」

「へへ、ごめん」

 佐倉杏子のよく知る、鹿目まどかだ。 外見からして、それは間違いない。

 しかし、拭いきれない違和感。 杏子には心当たりがあり過ぎて、指摘することも出来ない。

「ん? どうかした?」

「……いんや。 出来たら、来る前に教えて欲しかったかな」

「杏子ちゃん……、人はね……それを『油断』って呼ぶんだよ……」

「おい、それやめろって」

「へへ、ごめん」

 見かけ、楽しそうで何より、である。僅かな動揺すら彼女に悟られないよう、 杏子は冷静に次の一手を考える。
586 :ほむマミ派(まどあん!!) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/07/26(木) 18:58:29.33 ID:gm4fmoEAO


「今からでも焼けるけど、どうする? 何を幾つこしらえればいい?」

 結局、無難な一言に落ち着いた。

「いいよ、この出来てるのの中から選ぶから」

 そう言って、まどかは保温機能の付いたショーケースをまじまじと眺め始めた。

 そこから十秒間、無言になってしまう二人。 自分の左横にバイトの男がいることを、杏子はちょっぴり厄介だと感じている。

「……ねえ、杏子ちゃん、今度のお休み、いつ?」

 視線はそのままにまどかが訊いてきた。 表情を慌てて整える杏子。

「来週の木曜だけど……、なんで?」

 返事をした直後に唾液を飲み込んでしまった。 そんな自分が少し情けない。

「この前のお礼を企んでるんだ、わたし」

 同じ姿勢であっさりとまどかが返してきた。 言葉の選び方が明らかに不穏である。

「企む、って怖い言い方だな、おい」

「んー、的を射てますね……」

 同じ姿勢のまま、彼女はとぼけた返事。

 まどかから真剣に品定めされている鯛焼きたちも、若干の緊張を隠せていないようだ。 杏子はそんな妙な思い込みを抱いた。

 その原因にすぐ辿り着く。 隣にいるバイトが漂わせている空気のせいだ、と。 

「……あんた、もう上がっていいよ」

「いや、いいっす」

「いいっす、じゃねーよ。 帰れ」

「いや、いいっす」

 蹴飛ばしてやりたくなったが、まどかがいる手前出来ない。 代償行為として、こっそりと息を長く吐いた。
587 :ほむマミ派(まどあん!!!) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/07/26(木) 19:04:17.57 ID:gm4fmoEAO


 そこから二十秒沈黙が続き、特に用があったわけでもないのに、杏子は奥の事務所に引っ込んでしまった。

 鹿目まどかから発せられる、形容し難い雰囲気になんとなく耐えられなくなってしまったからだ。

 約束を守って、わざわざ鯛焼きを買いに来てくれたことは本当に嬉しい。 ただ、対する杏子自身の準備が全く整っていなかっただけのこと。

 これでは、油断している、と指摘されても文句は言えない。

(いくらなんでも失礼すぎるね、これじゃ)

 一度深呼吸をして気持ちを切り替えようとするも、パーフェクトに落ち着かない。 杏子は色々と諦めをつけた。

 再度、店へと出る。 目に入ったのは、バイトがいつになく上機嫌でまどかに接客をしている姿。
 言いたいことが瞬時に山ほど湧いてきたが、全て飲み込み、平静を装う。

「まどか、今度来る時はさ、一声連絡してよ。 こいつより、あたしが焼いたほうが確実にうまいから」

 客商売失格だ、と我ながら思ったが、まどかなら余計なことは言わないだろうと踏んで、すれすれの発言を選んだ。

 対して、きょとん、という擬音がぴったり嵌まる表情のまどか。 失礼な表現になってしまうが、ちょっと隙だらけに見える。

「でも、沢山サービスしてくれたよ?」

「は? ……おい、何やってんのあんた」

「いや、僕の気持ちというか……」

 バイトはそこまで言って押し黙り、もじもじとしている。 杏子から見て、心底気色悪い。

「色気づいて、独断専行カマしてんじゃねーよ、バカ!」

 左肩を大袈裟に揺らし、フェイントを掛ける。

 手慣れた反応速度でバイトが上半身をガードするより一瞬だけ早く、固めた右拳を相手の右腿付け根に容赦なく突き刺した。

「うぐ!」

 殴られた部分を両手で押さえ込み、その場にへなへなとくず折れる男性アルバイト。

 最近調子に乗っていたので、丁度良い機会だ、と杏子は自己完結をする。
588 :ほむマミ派(まどあん!!!!) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/07/26(木) 19:10:16.77 ID:gm4fmoEAO


 約一分後。


 帰れ、の一言に大人しく従い、バイトはよろよろと立ち去っていった。

 まどかが目の前にいることを承知で、杏子は大きく舌打ちをしてしまう。 彼女の表情が曇ってしまうことをわかっていながらだ。

「あの、ごめん……、わたしが気を遣わなかったから……」

「ああ、違うよ。 このことについては完璧にあたしの責任だもん」

 そこで無理に笑顔をつくる。 まどかの怯えた顔つきは正直見たくない。

「でも……」

「いいって。 せっかくだから、あいつが焼いたのをみんなで食べて貰って、厳しく批評してくれるとありがたいね……謝られるよりは」

 場を丸く収めるのには適した構文。 そこに、自分の本心はどれほど含まれているだろうか?

「……うん、ありがとう」

「じゃあさ、企みについて教えてよ。 それくらいはいいだろう?」

 にこやかに尋ねることが出来たが、本当のところは少しでも事前情報を知らないと落ち着かない、という臆病さ。

「企み、というのはね、わからない、知る由もない、それが企みなんだよ?」

 くふふ、と笑い、芝居がかった口調でまどかはおどけてきた。 表情が明るくなると、杏子としてもほっとする。

「……じゃあ、別に拒否ってもいい、ってことだよね? あたしもはっきりしないのは御免だからさ」

「えっ、それは困る……」

 しゅん、となるまどか。 小動物チックで面白い。 からかい方が杏子にも掴めてきた。

「まどか、そこでもう一回ひねらなきゃ。 奥の手の更に奥の手を、ってね」

「……蔵馬君?」

「お、よく知ってんじゃん」

「へへ、ネットで得たにわか知識なんだけど……」
589 :ほむマミ派(さやか踵を返す) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/07/26(木) 19:17:47.47 ID:gm4fmoEAO


 和やかなやり取りだ。 遠目からでもそれが良くわかる。 さやかには本当によくわかる。

 気づかれるのが怖くなって、慌てて元来た道を戻り始めていた。 無意識の行動にしては随分と判断が早い。

 幾何学的な模様のタイルだけを見て、黙々と、ただひたすらに目的地から遠ざかるさやか。


 あの笑顔だ。 横顔しか窺えなかったけれど、まどかの自然な笑顔を久しぶりに見て、さやかは少しほっとしてしまった。

 良かった、彼女は別に笑えなくなったわけではないのだ。 ただ、さやかの前で笑顔が見せられなくなってしまっただけで。


 さやかが身を潜めていたところからは、杏子の様子はわからなかったが、きっと彼女も元気でいるのに違いない。

 それこそ、自分の存在など、もう必要ないくらいに、元気で。


 気づくと、ぽろぽろと涙が零れ落ちている。 ここ最近では何度目の流れになるのだろう。

 もういい加減飽きても良い頃なのに、まるで止む気配がない。 ぽろぽろと、ぽろぽろと、本当に、本当に情けない。


 まったく意味のない遠回りをして、美樹さやかは実りなき帰路へと着いた。
590 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/07/26(木) 19:20:10.25 ID:gm4fmoEAO

つづく

なるべく早く、次をお届けしたいです
591 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/07/26(木) 22:00:12.69 ID:QwhFz0O1o
さやかが一番可哀想
592 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/26(木) 22:08:30.37 ID:FusaBMHPo
なんというめんどくさやか
593 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2012/07/26(木) 23:38:44.53 ID:5jFPYybxo
乙です。
今回結構長めですね。
594 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/27(金) 19:53:02.56 ID:EqsNES4IO
乙乙、どれだけかかってもきっちり書いてくれてありがたいです
595 :ほむマミ派(投下合図) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/08/13(月) 00:53:34.24 ID:auHrhOoAO


 あらすじ

・お昼どき、ほむらがマミさんに「色ボケしてる」って、ついうっかり言ってしまった

 以上
596 :ほむマミ派(気がつけば五日目) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/08/13(月) 00:55:43.63 ID:YnyWui8Qo


 巴マミのマンション リビング



 巴マミは働き者だ。


 月曜日から金曜日まではデスクワークを意欲的にこなし、土日の二日間で、一人で掃除するには広い部屋の数々を綺麗に整える。

 掃除に及んでいる時の彼女の動きには無駄がなく、必死さを感じさせることもなく、大変に手際が良い。 初めて見た時は軽く驚いた。 

 私も僅かながら力になれないものか、マミから学べないだろうか、と思うのだけれど。

 彼女が気に入っていたフライパンを焦がしてしまうという、とある一件の後、私は全ての家事を取り上げられた。


『ほむらさんが来る前は、結構手を抜いてたんだけどね』

 マミが少し恥ずかしそうに笑いながら、そう答えたことがあった。

 もっと詳しく聞きたかったけれど、出来なかった。 色々と、ままならないことは多い。

 一度、息を細く、長く、意識的にゆっくりと吐く。 身体に溜まった澱みが抜けていくことをイメージしながら。


 静粛性に優れた掃除機が、こちらからは見えないところでごろごろと移動しているのが聴こえる。 ノズルがフローリングを滑る音もよく聴こえる。

 私はといえば、リビングのソファで仰向けに寝そべり、見かけ優雅に読書。

 幾度か読んだものなので、あまり集中出来ない。 完全にかっこつけグッズに成り下がっている。 本に申し訳ないと思う。 いや、思わない。

 それに、「そこから動いちゃダメよ?」、とマミに言われてのポジションなのだから、真の自由からは程遠い。

 でも、彼女に感謝しなくてはいけない。 複雑な身分だ。

 
 ひとつ結びにした髪を右肩から前の方に流してある。

 髪の量が多めなのが密かな悩みのひとつで、思い切って短くしたいと考えたこともあるが、絶対に許可が下りないので黙っている。

 本を右手のみに持ち替え、左手で自分の髪を軽く撫でてみた。 枝毛がないことは手入れが楽で助かるな、としみじみ思う。
597 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/08/13(月) 00:59:59.56 ID:auHrhOoAO


 この髪が武器に成り得る、という自覚はある。 ない、と言ってしまうと、私はジャストにカマトトな大嘘吐きになってしまう。
 
 しかし、活かせる機会に恵まれていたとはお世辞にも言えない過去だった。

 だから、マミに、『羨ましい』、と言われる度、にやけないようにするので必死だ。

 多分、今の私はだらしない顔つきになっているのに違いない。

 褒められること自体にまだまだ慣れていないのもあるだろうし、慣れてはいけない、とも思っていた。

 それは謙虚さではなく、真逆の感情から来るものだと自己分析している。


 ここ三日ばかり、マミとの肉体的な接触がほぼなくて、若干さびしい。 身体的には実に楽なのだが、さびしい。 非常に身勝手だとは思う。

 色ボケ、は流石にまずかった。 ギリギリのところを狙ったので、今回は良い勉強をしたと思えばいいのだが、さびしいものはさびしい。

 見かけ上、彼女は普段通りの様子なので、謝るタイミングがなかなか見つからない。 いや、謝るのが正しいことなのかも、よくわからない。


 また、息を吐く。 ここでマミと過ごす時には絶対に仕事をしない、と決めていたので、暇だ。

 しかし、私は彼女の手伝いすら出来ない、お荷物状態を甘んじて受けなくてはいけない立場。

 このような立ち位置を喜ぶ人も少なくないだろう。 ただ、私はそういうタイプの人種ではなかったということ。

 本来の私は、臆病で、他人の顔色を窺わずにはおれない、わざわざ自分で言いたくはないが、弱い生き物なのだ。


 目を瞑る。 思考パターンが明らかに望ましくないかたちを取っていて、少し脳を休ませる必要がある。

 過ぎた待遇は自身を鈍らせる、ということがよくわかった。 嫌味なく、マミのご機嫌を直すには、とぼんやり考える。

 まるで思いつかない。 でも、考える。 ちっともアイデアが湧いてこない。 でも、考える。

 思いつかないのは、真剣に考えていないからだ、と自分を心の中で叱咤し、考える。 しかし、思いつかない。 随分と鈍い脳みそだ――
598 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/08/13(月) 01:00:56.65 ID:YnyWui8Qo


 いつの間にか、眠ってしまっていたらしい。


 良い匂いが鼻をくすぐる。 よく知っている匂い。 つい最近も、こんな経験をした。

 迷いなく両眼を開くと、予想通り、マミの顔が私のごく近くにあった。

「やっほ」

 そう囁くと、マミはにっこりと笑んで、ゆっくり離れていった。

「ごめん、マミ……、今、何時?」

 寝ぼけた振りを全力で装い、のんびりと、静かに尋ねる。 ごめん、が余計だった、と即後悔。

「……まるで、『眠り姫』のごとく、静かに寝ちゃってたわね、ほむらさんったら」

 いくらかの間が空き、彼女らしからぬ、にやついた顔つきで、マミは私の質問を完全にスルーした。

「ねえ、今何時?」

「ふふ……、セオリーを無視して、自分で目を覚ましちゃうんだもの。 お姫様失格よ? それじゃ」

 いや、無視されているのは私の方である。

 瞬時に上品な笑顔へと切り替えられるのは、実に素晴しいことなのだが、非の打ちどころのない彼女のその笑みが却って怖い。

 国内ブランドの旅行鞄と、ターコイズブルーのキャリーバッグを携え、マミは見慣れたガラステーブルの方へ腰を落ち着けた。

 行儀の良い、実に絵になる正座姿。

 掃除をしている時の格好から着替えたらしく、カジュアル且つ品の良い、丈の長いワンピースを身に纏っていた。 初めて見る召し物だ。

「……可愛いわね、よく似合ってる」

「ありがと」

 短い返事。

 彼女は笑顔を固定したまま、態度は変わらず。 どうしたら、この状況を打開出来るだろうか?
599 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/08/13(月) 01:04:04.79 ID:auHrhOoAO


 首だけをマミの方へ向けた姿勢のままで、起き上がれない。 さて、何から切り出せばよいか。

 奇を衒わず、無難な一言を選ぶことにした。

「明日の準備、もう済ませてたんじゃなかったかしら?」

「うん、ちょっと」

 素早い切り返しと共に、一瞬だけ、マミの表情から明るさが目減りした。 地雷を踏んだかもしれない。

 無意識に上半身を起こす。 頭の中は全くの白紙状態であるにも係わらず。

「あの……、何か買い物とか必要? なんだったら私が行くけど」

 自分でも驚くようなことを口にしてしまった。 マミもきょとんとした顔つきで私を見てくる。

「今日のほむらさん、ちょっぴり変ね」

「ええ、自分でもそう思う。 実に変だわ、本当に変」

「ふふ、まさしく変ね」

 再度、素早く返してきて、ふふ、とまた短く笑い、マミは旅行鞄とキャリーバッグの中身を丁寧に取り出し始めた。

 行為の意図が、私にはいまいち掴めない。 わざわざリビングでしなくてもいいことであるのは間違いない。 

 しかし、何を言っても、どう言っても、的外れになってしまいそうな気がして、しばらく黙って様子を窺うことにした。

 ぶつぶつと呟きながら、取り出した衣類やら何やらを一つ一つ確認して、鞄の中へと確実に納めていくマミ。

 その所作は落ち着いていて、的確で。 見ているだけで、何故かほっとするような感動を憶える。

 私から見つめられていることに対する、彼女の反応は感じられない。 というか、目の前の荷物に夢中だ。   

『私と、旅行の準備と、どっちが大事なの?』
 
 頬が熱くなるような構文を、ふと頭の中に思い浮かべてしまうも、恥ずかしすぎて、口には出せない。
600 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/08/13(月) 01:06:18.58 ID:YnyWui8Qo


 十分後。


 元通りに荷造りを終え、マミは一度息を長く吐いた。

 私が話しかけても、もう大丈夫だろう。 体を完全に起こして、ソファへしっかりと座り直した。

「マミ、忘れものとか――」

 こちらを遮るかのように、彼女は再び荷を広げ始める。 それを見て、思わず、「え?」、と呟いてしまった。  

「やっぱり、変? ほむらさんから見て、おかしいかな?」

 手に持ったサニタリーバッグに視線を向けたまま、マミは恥ずかしそうに微笑む。

 その笑顔に、ほんの少し胸を締め付けられる思いがした。

「いえ、おかしくはないけど……、そんなに研修が楽しみだなんて、知らなかった」

 今、自分は間抜けなことを口にした、と言った直後に思う。 そこから、しばし沈黙が続き、先ほどと同じ光景を眺め続けた。

「……もっと、どーんと構えられたら、っていつも思うんだけど、ダメね」

 突然、ぽつりとマミが呟いた。 視線と動作はそのままで。

「用心深いのは良いことじゃない。 私も見習わなくちゃ、って思ったわ」

 自らの意思で言っておきながら、どこかしっくりこない。 まぎれもない本心であるはずなのに、何かが違う、という感覚。

 察したのか、マミがこちらを向き、ふふ、と笑った。 私は黙って彼女の言葉を待つ。

「ちょっと、昔話してもいい?」

「ええ、聞きたい。 ただ、先に気の済むまで準備をしてからの方がいいと思う」

「……そしたら、ほむらさんも手伝ってくれる? 何かしら、新たな発見があるかもしれないし」

「勿論、喜んで」

 二人して、くすくすと笑いながら、一週間の旅行にしてはやや多めの荷物と対峙し始めた。
601 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/08/13(月) 01:08:37.20 ID:auHrhOoAO


 私が「下着、二日目」と言って、マミに手渡す。 「二日目、下着」とマミが復唱し、バッグの中に整然と詰める。


 そんな手順を全ての持ち物で踏みつつ、私は思い違いをしていたことに気づいた。

 機嫌を損ねていた訳ではなく、彼女は別の何かで頭がいっぱいだったのだ。

 共同作業の最中、マミは、「捗るわね」、と三回口にした。 そこまで喜んで貰えるとは思っていなかったので、私も嬉しい。

 手渡す動作が加わることで、余計に時間が掛かっていることは間違いないが、彼女の言いたいのはそういうことではない、と身を以って知った。
 
 そして、全部を綺麗に片付け、図ったように二人して顔を見合わせる。 私はマミから締めの一言を待った。

「ありがとう、これでもうおそらく完璧に憂いはないと思われるわ、多分」

 くすくすと、楽しそうな、淀みないお礼の言葉。 実に、実に光栄なことである。

「これくらいしか私には出来ないから。 ……何なら、もうワンセットいく?」

「いいわよ、もう十分」

 お茶を淹れましょうね、とマミは軽い足取りでキッチンへと歩いて行った。

 彼女の昔話はお茶菓子代わりになりそうだ。
602 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/08/13(月) 01:12:36.82 ID:auHrhOoAO


 良い香りである。


 彼女の淹れてくれる紅茶は、砂糖を入れなくても、ミルクを入れなくても、まろやかで、ほんのりと甘い。

 使っている茶葉についても、正しい紅茶の淹れ方や、飲み方についても、私は全く知らないが、逸品だということは断言出来る。

 問題になるのは、私の発言の説得力、ただ一点のみ。

「おいしい」

「ありがと」

 しばらくの間、言葉を交わすことなく、味と香りを愉しんだ。 よく冷まして、音を立てないよう、気をつけて啜る。

 初めて巴マミの家に招かれた時のことをふと思い出した。 記憶が正しければ、委員会活動の後輩として、私はここに訪れたはず。

 とにかく、緊張しかしていなかった。 この部屋も、ここにある数々の調度品も、振る舞われた紅茶やケーキも、全てが眩しくて。

 それを一人で取り仕切るマミの姿は、自分とはまるで別世界に住む、大袈裟に言えば、天上人のように見えたものだ。

 彼女も、私も、部活動も免除されていたので、鹿目まどかが美化委員として私を推してくれていなければ、マミとの出会い自体がなかった。

 まどかは園芸部に所属していた為、校内の緑化活動を美化委員会と共に行う立場にあった。

 そんな昔のことを、ふと思い出す。

「何? 遠い目なんかしちゃって」

 マミからの唐突な呼び掛け。 その表情は実に穏やか。

 どうにも微妙なタイミングで声を掛けられてしまい、私は返答に困ってしまう。 せっかくの良い空気を台無しにはしたくない。

「マミの淹れてくれる紅茶は、いつも変わらず、おいしいなって。 ……本当に落ち着くもの。 まるで魔法みたい」

 言い回しに気を取られ過ぎて、濃厚なおべっかに聴こえかねないものとなってしまった。

 咳払いも控え、彼女の顔を真っ直ぐに見つめる。 さて、どう返してくるだろうか。

「……そ。 まあ、いいけど」

 そう言って、マミは品良く紅茶を啜った。
603 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/08/13(月) 01:14:29.30 ID:YnyWui8Qo


「ところで、昔話はいつ聞かせてくれるの? ちょっと気になるのだけれど」

「あー、やっぱり覚えてたのね……、そんなに面白くないんだけど、ほむらさんがそれでもよければ」

 マミは、「えへ」、と珍しい笑い方を挟み、おどけてきた。

 私はといえば、別に無理矢理聞きたいということもない。 彼女が話したそうだ、と直感したのがひとつ。

 もうひとつは、なんとか自分の方から話題を逸らしたい、といういやらしさだ。

 短い間の後、マミは一度ゆっくりと息を吐いて、ゆっくりと吸い込み、きらきらおっとりとした両眼を細めて、私には見えないものを見据え出した。 

「そうね、あれは私が十四になってすぐのことだった……、それほど時間は経っていないけれど……、遠い、遠い昔のことに思える……」

 短くまとめると、学校での宿泊行事にて、マミが旅行鞄の中に替えの下着を入れ忘れた、というよくある話だった。

 冷たい言い方をしてしまえば、大した話ではない。 無論、マミに対してはそんなこと絶対に言わないが。

「……用心深さはそうして培われた、という教訓話よ。 あまりにテンプレート過ぎて、今まで誰にも話せなかったわ……」

 ふふふ、と締めくくるマミ。

「その割に、最近のペナルティレポート連発はどういうことなのかしら? 次あっても、手伝わないわよ?」

「もうっ! 今、その話はしてないの!」

 私のニヤニヤに呼応するかのごとく、ぷくーっ、と頬を膨らませ、顔を紅くしてしまうマミが可愛い。 うずうずと、気恥ずかしげな正座姿も可愛い。

 『ほっぺを膨らませる』、イコール、『不服』、というのが、若干、型の古さを感じさせなくもないが、彼女にとてもよく似合っていて、全く問題はない。
604 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/08/13(月) 01:19:19.00 ID:auHrhOoAO


「隙あらば、すぐにいじわる言うんだもの……」

 と、キュートにご立腹なマミを堪能しつつ、紅茶を啜る。

 うん、おいしい。 時間を掛けて、じっくりと味わって、しっかりと飲み込んだ。

「でも、どうして、その話を私にしようと思ったの?」

 思ったことを素直に尋ねてみる。 すると、マミの表情がやや暗くなった。

「ほら、あれよ……、こんなことをいつまでも気にしてたら良くないじゃない。 だから……」

「だから、何?」

 つい、突っ込んでしまう。 問い詰めることはしたくないのに、何故か自分を止められない。

 観念した、という様子を上手く顔つきに滲ませつつ、マミは息を長く、ゆっくりと吐いた。

「この話をするのは初めてだ、って言ったでしょ? だから、その……、鹿目さんは知らないの。 このことを知らないの」

 久しぶりに彼女の口から、『鹿目さん』、と出てきた。 聞いた瞬間、ちくりと身体の一部が痛む。

 多分、表情に出ていたのだろう。 気まずそうに、マミも黙り込んでしまった。

「……恥ずかしかったから?」

 ある程度時間を置いて、彼女に訊いてみる。 声に感情を込め過ぎないよう、気をつけて。

 問い掛けに対して伏し目がちに頷き、マミは明らかにつくり笑いとわかる笑みを浮かべた。

「ごめんなさい、マミ」

「どうして、ほむらさんが謝るの……?」

 彼女の不安そうな問い掛けを受け、息を飲み、出来あがった構文を頭の中で打ち出して、きっちりと再確認する。

「さっきの話、『大した内容じゃないな』、ってちょっと思っちゃったから。 わざとらしく聴こえるかもしれないけど、貴女にとって、大事なことだったのよね」

「そ、そんな……、やめてったら……」

 くすぐったそうに恥ずかしがるマミの姿を見て、こんなシリアスな時にも係わらず、可愛い、と思ってしまった。

 すると、彼女の表情が瞬時に険しくなる。 何故だろうか?

「ねえ、ほむらさん……、謝った直後にニヤつくのは流石にどうかと思う」

「ごめん、ホントごめん」

 まったくだ。
605 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/08/13(月) 01:24:13.96 ID:YnyWui8Qo


 ただ、ひたすらに謝罪を繰り返した。 それほど怒っていたわけではなかったらしく、マミはくすりと軽く笑う。

「ほむらさんはどうだった? 一人暮らしが長かったでしょう? 教えて欲しいな」

 もともとが臆病だったので、致命的な忘れもの、といった経験は記憶にない。 都合よく忘れているだけかもわからないけれど。

「そうね……、私が十四になって、学校にも少しずつ慣れてきた頃にはあったかもしれない……」

 マミのスタイルを踏襲し、目を細めて、彼女には見えないものを見据え出した。 実は私にだって、何も見えていない。

 ただ、思い出した。 あの頃のことを、ぼんやりと。

「英文の和訳の宿題をね、機械翻訳にかけ忘れたことがあって、そういう時に限って、授業で最初に当てられちゃって……」 

「あらら」

 マミが程良いタイミングで合いの手を入れてくる。

「正直、その時の私にスムーズな解答は期待されていなかったから……、目線を下に落として、『あの、あの……』、で乗り切ったわ」

「……おしまい?」

「ええ、おしまい」

「なんていうか、こう……、もっと恥ずかしいエピソードとか、ないの? 思い出しただけで悶絶しかねない、とびきりのやつ」

 マミは不満そうだ。

「そう言われても、『あの、あの……』、が結構万能なカードだったから……、マミいわく、ピュアほむら、の頃は」

「……ふーん、なんだかつまらないわね」

 ひどい言われようだが、彼女の気持ちが理解出来なくもなかったので、私は何も言い返さず、次を考えた。
606 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/08/13(月) 01:33:54.73 ID:auHrhOoAO


「あとは、そうね……、調理実習の時に、命を削るような思いで調味料を計った、とか、それくらいかしら。 自分でも驚くくらいに、手がぷるぷるしてた」

 それを聞き、「大袈裟」、とマミが面白そうに笑う。 彼女がそう思うのなら、それはそれでよい。 特に共有すべき感覚だとも思わない。

 あの時、一番輝いていたのは美樹さやかだったような記憶がある。 何故、彼女はあの手際を日々の業務に活かせないのだろうか。

「なんか、あれね。 ほむらさんは自分を晒すのが好きじゃないのね。 ……まあ、私も人のこと言えないけど」

 しみじみとマミが呟いた。

 晒すほどの自分がない、という返答が頭の中に浮かんだが、口にはしない。 どう考えても、ポジティブな発言には成りえないからだ。

「そうかもしれないわ。 やっぱり、恥ずかしいのは嫌だし……、マミに釣られただけで、わざわざ自分から披歴したりはしないわね」

「それだと、まるで私が悪い、って言われてるみたい」

 ニヤニヤしつつ、意地悪を言うマミ。

「違う。 どうして、そう捉えるのよ……」

「冗談よ」

 あっさりとそう言って、また楽しそうに笑いだした。 溜め息をつきたくなるのをぐっと堪え、私も調子を合わせて笑う。

「ふふっ、さて、今日は料理をする気がまるで起きないんだけど、ほむらさんは、お夕飯、何が食べたい?」

 ほんの少し考える。 思いついたが、気に入って貰える可能性は限りなく低い。

「……ぺディグリーチャム」

「ふざけてると本当に用意するわよ?」

 一息で言い切られた。

 彼女はきっちり頬を膨らませ、ぷんぷんしている。

 再度、『ぷくーっ』、が見られて、密かに満足だけれど、これ以上は本気で怒らせかねないので、マミに何を食べるか相談を持ちかけた。
607 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/08/13(月) 01:37:06.03 ID:YnyWui8Qo


 協議の結果、少し散歩をした上で、近所の蕎麦屋に出向くこととなった。

「あ、シャワー浴びなきゃ」

「え? 着替えた時、浴びたんじゃないの?」

 いつもの良い匂いがしていたので、すっかり準備は整っているものだとばかり思っていた。

「うん、ちょっと」

 控え目に俯いて彼女は言うが、何がちょっとなのか、よくわからない。

 考えてもわからないので、素直に問おうとしたその瞬間、携帯電話が鳴った。 着信音で誰かはわかる。 母だ。

「ごめん、マミ、ちょっと長くなるかも。 母さんからだから」

 素早く立ち上がり、彼女に声を掛ける。

 マミは私の方を真っ直ぐ見てきて、「了解」、と無声音で返事をし、完璧な笑みを浮かべた。

「なるべく早く戻るわ」

 こくりと頷き、マミが小さく手を振ってくる。

 私も同じく小さく手を振り、深呼吸して気合いを入れる。 失礼を承知で言うと、相手はかなりの難物だからだ。
608 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/08/13(月) 01:42:51.53 ID:auHrhOoAO


 二十五分後。


 どっと疲れた。 比較対象のサンプルに乏しい私だが、我が母はハイレベルな面倒くささを誇るはず。

 電話を切った直後、「あ゛ー」、と品のない呻きを上げてしまった。

 寝室から、のろのろとリビングに戻ると、何故か、未だマミが座ってぼんやりとしていた。

「あれ? シャワーは?」

「うん、ちょっと」

 だから、何がちょっとなの? とヒステリックな声を上げそうになる自分をなんとか押しとどめ、息をゆっくりと吐く。

 私の内心などお構いなしな、おっとりとした様子のマミ。

「随分、話し込んでたみたいね」

「まあね……。 マミに大事にされた分が全部吹き飛んだかのよう」

「ままならないわね」

「ええ、本当にままならない」

 そこで、ようやく笑うことが出来た。 マミも一緒に笑ってくれている。

「何を言われたのか、訊いても構わない?」

 笑うのをやめ、マミがきりっと顔立ちを引き締め、尋ねてきた。

 現在、午後五時十五分を少し回ったところで、彼女がシャワーを浴びてからの準備等を考えると、それほど潤沢に時間があるわけではない。

「短くまとめると、『早く元を取らせろ』、って、くどくど、ねちねち二十五分」

「お疲れ様」

「ええ、本当に疲れた。 誇張じゃないところが辛いわ」

「……でも、素敵なお母様ね」

 早すぎず、遅すぎず、最適なタイミングでマミが呟いた。
609 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/08/13(月) 01:47:56.51 ID:YnyWui8Qo


「……そうね。 マミがそう言うのなら、きっとそう」

 正直に、誇張のないように、気をつけて言葉を選んだ。 母との電話で、思いの外エネルギーを消費していたようだ。

 微妙な空気を孕んだ沈黙が十秒ほど続き、マミが、「さて」、と立ち上がる。

 入れ変わるようにガラステーブルの方へ座り込み、彼女を下から見上げた。

「それじゃ、シャワー浴びてくるわね」

「ええ、待ってる」

 やり取りの後も、マミはなかなか動き出さない。 いったい、どうしたのだろう? 

 一瞬、何かを言いたそうな顔をしたかと思うと、すぐいつもの彼女に戻って、洗面所の方へゆっくりと歩いていった。

 ぼんやりと、その後姿を見送って、ぼんやりとしてしまう。 失った体力を少しでも取り戻さなくては、という意識が働いているみたいだ。

 今日は何を食べようか、もり蕎麦ばかりだと、またマミに笑われる……、などと考えているところに、ふっ、と閃きが。


 気づくと立ち上がり、深呼吸をしていた。 ……まったく、こんな大事なことに思い至らないなんて、私はどうかしている。
610 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/08/13(月) 01:52:37.21 ID:auHrhOoAO

 つづく

 次は適度に力の入ったいやらしい展開がくる予定なので、苦手な方は回避推奨

 あと申し訳ないのですが、更新は確実に九月以降になります
611 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 :2012/08/13(月) 07:50:16.13 ID:auHrhOoAO

 一回あげておこう
612 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/15(水) 05:10:29.03 ID:4lml/t7C0
613 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/15(水) 08:42:13.09 ID:X0v3QciVP
614 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/15(水) 19:25:15.42 ID:cpimSFAWo
615 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2012/08/17(金) 22:01:02.03 ID:lB+Kd/j3o
乙です。

しかし、次までちょっと長そうだな。
待ちどおしいわ。
616 :!ninja [sage]:2012/09/11(火) 03:38:51.85 ID:wf8/uu8vo
てす
617 :ほむマミ派(遅延報告) ◆CuwcoLXTJ2 [sage]:2012/09/15(土) 14:41:51.06 ID:V+Sfwi3AO

 仕事で腰を壊し、SSとか書ける状況ではありません

 皆さんも身体はお大事にしてください
618 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/15(土) 14:47:48.94 ID:hyIAlI+ao
把握乙。待ってる
619 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/15(土) 15:18:44.08 ID:PWllGTvIO
連絡あってよかった、頑張って
620 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/17(月) 16:58:08.11 ID:ey8lC34uP
待ってるよ、頑張って
621 :ほむマミ派(生存報告) ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/10/10(水) 18:33:52.75 ID:9mBnVFBRo


 劇場版で良かったところ

・OPにおける鹿目まどかの成長記録

・本編における美樹さやか

・良い音響でMagiaのフルサイズを聴けたこと


 いろいろと落ち着いてきたので今月中に続きを投下致します
622 :ほむマミ派(書き込みテスト) ◆CuwcoLXTJ2 [sage]:2012/10/25(木) 18:54:49.18 ID:y7uUfrAAO



623 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/28(日) 20:13:06.97 ID:T54X5ajy0
まってるよー

劇場版円盤早く欲しいな
624 :ほむマミ派(投下合図) ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/11/02(金) 21:39:05.05 ID:N978lvrAO



※大変お久しぶりです37レス投下致します品のないエロシーンが含まれていますので注意


625 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage saga]:2012/11/02(金) 21:39:26.75 ID:GlYSRWMPo


「私も入るわ」

 わざと音を立ててドアを開き、脱衣所に足を踏み入れたとき、マミは丁度ブラジャーを外そうとしているところだった。

 背中のホックに回した両手をゆっくりと下ろしながら、こちらへと向き直る彼女。
 髪は縛めから解かれ、右肩へと流されていた。

 マミの表情は特別何を訴えるでもなく、ただ真っ直ぐに私の目を見据えてくる。

「でも、汗とか、かいてないでしょう? わざわざ付き合ってくれな―‐」

「マミと一緒に入りたいの」

「……ふぅん」

 それだけの返事をして、マミは俯いてしまった。

 迷いの感じられる右手を肩へと持っていき、いろいろ誤魔化すような仕草で、下ろした髪をもてあそんでいる。

「ねえ、マミ、私も態度を改めるから、言いたいことはきちんと言って。 もう茶化したり、からかったりしない」

「そんな、必死にならなくてもいいのに……」

 相変わらず俯いて、拗ねたような声色。 やはり、ご機嫌は麗しくない。

 彼女に掛ける言葉を考えながら、私は自分の髪を素早く纏め上げ、ヘアゴムと髪留めで固定した。

 次にブラウスのボタンを外し始め、マミから視線を逸らさないで、練り上げた文言を口にする。

「そのままでいいから聞いて頂戴。 貴女のことをいじめるのが面白くて、つい調子に乗り過ぎちゃった。
 色ボケしてる、なんて言ったのも取り消すわ。 完全に私の失言だった、二度と言わないから」

「別に気にしてないけど……」

「嘘。 だったら、私の目を見てそう言って。 『怒ってない』って、示して欲しい。 マミに嫌われたくないの」

「……嫌うとか、ないもの」

 彼女の視線はフローリングに向けられたまま、聞き取るのがやっとの音量で呟いた。
626 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/11/02(金) 21:40:58.18 ID:N978lvrAO


 ブラウスを脱ぎ、ショートパンツを脱ぎ、マミと同じ下着姿になる。

 床にそのまま衣服を捨て去っても、咎められることはなかった。 普段であれば、叱られてしまうことは間違いない。

「ありがとう。 このままじゃ風邪を引いてしまうから、早く脱いで、シャワーを浴びましょう?」

 思い切って彼女の方へ距離を詰め、密着する。 マミの二の腕に手を添え、拒絶されなかったことに、正直ほっとした。

 視線が合わさらないことがもどかしいけれど、ここまで来たからには、絶対に離れない。

「もう……、ちゃんと洗濯かごに入れないとだめ」

「それより、もっと大事なことがあるの。 今の私には」

 鼻先を彼女の首筋へ落とした。 マーキングを施すように擦りつけ、口から熱く湿らせた空気をゆっくりと漏らす。
 僅かに身を捩じらせる様子が直に伝わってきて、それが面白い。 肌の触れ合う面積が増すと、いつも思う。

 マミは本当にふわふわと柔らかくて、甘い匂いがして、こうしているだけで気持ちが良い。

「吐息、くすぐったい」

「でも、こういうの好きでしょう?」

「うん、好き」

「……ねえ、しばらくこうして甘えてもいい?」

「早くしなくちゃ風邪をひく、って言ったのはそっちじゃない……」

 喜びがストレートに染み出た囁きを左耳で捉えるも、返事はしない。

 ほんの数秒、凝縮された沈黙と、ふんわり煮詰まった匂いを堪能する。

「ほむらさん? 聞いてる?」

「前言を翻したくなる魅力が貴女にはある」

「いくらなんでも、おべっかが過ぎないかな……」

「いいえ、違うわ。 それはマミが謙遜し過ぎ」

 言い終えるのと同時に、彼女の背中に両手を滑らせ、ホックを外した。
627 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/11/02(金) 21:41:58.99 ID:GlYSRWMPo


「はい、ブラをナイナイしましょうね」

「何よ、ナイナイ、って」

 くすくす笑う声が聴こえた後、マミは自ら肩ひもに手を掛け、ブラジャーをずり下ろした。
 私が彼女に真正面からぴたりとくっついている為、若干のもたつきを伴って床へと舞い落ちる。

 その摩擦が、確実に刺激としてマミの肉体に刻まれているはず。 既に始まっている。

「マミも、私のブラをナイナイして?」

「だから、なんなの、それ……」

 あきれた口調で、マミは私の背中に手をまわしてきた。

 彼女の指がホックに掛かった瞬間、舌先を出して、彼女の動脈近くに接触させる。 

「んっ……、大人しくしなさい」

「やら」

 マミのを首筋を舐めながら、あざとさ全開の舌足らずな返事をした。

「人にはちゃんと喋れ、っていうくせに、っ、んぁっ……っ」

 左手のひとさし指をマミのたわわな乳房の先へと押し込ませ、むにむにと左右に弾く。
 右手の腹で彼女の左太腿を撫で下ろし、三本の指を使って撫で上げる。 鎖骨の方へとじわじわ舌を這わせながら。

 これだけで、マミの動きを止められる。 抵抗を押しとどめ、次を容易にする。 その敏感さが大変に好ましい。 気持ち良さそうに細かく震えている。

 そして、色気づいた溜め息を漏らしながら、彼女はホックに手を掛けたまま寄り掛かってきた。 

「……マミ、もぞもぞしていないで、早く外して? いつまで経っても、シャワーが浴びられないわ」

 舐めるのを中断し、舌の根が乾かぬうちに意地悪を捻じ込んだ。 無論、マミが悦ぶから、そうする。

 返事らしい返事のないまま、マミは私のブラジャーを丁寧に外して、床へと放った。
628 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/11/02(金) 21:44:12.60 ID:N978lvrAO


 この前と同じようにショーツを脱がせ合ったとき、彼女のそれに僅かな湿り気を見たが、指摘はしない。 あとでくすぐりの材料に使おうか。

 顔を見合わせたとき、マミの瞳に期待の込められた煌めきを確認出来たことで、ほんの少しだけ肩の荷が下りた気がした。

「ここまで、随分時間が掛かっちゃったわね」

「主にマミのせいね」

「もう」

 肌を擦り合わせるように抱き合いながらの、馬鹿馬鹿しくて、素敵なやり取り。

 お互いの持っている熱が、お互いを昂ぶらせていくのがわかって、愉しい。

「ほむらさん、やっぱり、もうちょっと食べた方がいい。 少し痩せたもの」

「……主にマミのせいね」

「言うと思った」

「ごめん、次はもうちょっとひねるから」

「考えなくていいわ、そんなこと」

 不意に彼女の方から唇を寄せてくる。 目を瞑り、受け身の姿勢を取った。

「っ……んっ」

 唇同士が軽く触れ合う。 舌を絡めているわけでもないのに、ぴりぴりと細かく弾けるような感覚が背筋を駆け巡った。  
 マミの両腕が私の腰周りをしっかりと支えてくれていて、安心する。 これは楽でいい。

「っ……、ねえ、ほむらさん、ふにゃっとしてるけど大丈夫?」

「ここで始めちゃったら、雑巾がけとか後始末が大変だから」

「ああ……なるほどね……」

 彼女の顔が、もう一度温かい吐息とともに近づいてくる。

 両脚に力を入れ直し、マミのうなじに指をそっと絡めて、控え目なキスを交わした。
629 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/11/02(金) 21:44:53.20 ID:GlYSRWMPo


 ミストサウナで肌寒くない室温に保たれたバスルームにて。  

 大人二人が余裕で寝そべることのできる洗い場は、マミ一人の手によって完璧に掃除が行き届いていた。
 そんな快適な環境で、マミの手によって丁寧かつ素早く、背中に泡だてられたボディソープを塗りたくられている。

 事務的な感じがしなくもないが、その距離感が何故か好ましい。

「腋の下を洗うから、腕を上げて?」

 マミの声が真後ろから聴こえてくる。 浴室内特有のエコーが彼女の声質によくマッチしていて、聴いているだけでくすぐったい。

 言われるままに腕を九十度上げ、両手を頬に当てた状態で、マミのアクションを黙って待った。
 くすぐったくないように、力を加減して洗ってくれる彼女のその手際が、実にくすぐったくて、いいのだ。

 我ながら、本当にバカだと思う。

「……何ニヤニヤしてるの?」

「いえ、別に何も」

「ふぅん、まあいいけど」

 最近、色々と見抜かれやすくなっている気がする。 顔も見ずによくわかるものだ。

「ほむらさん、ちょっとこっち向いて」

 不意にそんな言葉を掛けられたかと思うと、彼女に腰を掴まれて、半ば無理矢理にターンさせられ、対面。
 企みの漏れ出た笑みを湛え、マミが無言でこちらを見つめてくる。 たっぷりと泡の絡まった両手の指をわきわきさせながら、だ。

 なんとなく嫌な予感がして、両腕を下ろしてしまった。

「あぁん、どうして腕を下げちゃうの? 今の可愛かったのに」

「だって、前は自分で洗えるし……」

「ダメよ。 今は私の時間なんだから。 腕を上げなさい」

「でも……」

「上げなさい」
630 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/11/02(金) 21:47:05.43 ID:N978lvrAO


 無言で腕を上げた。 『普段はマミで散々遊んでいるのだから、今くらいは』と、心の中で繰り返し呟きつつ。

「さっきの、両手をほっぺに当てたポーズがもう一回見たいな」

 矢継ぎ早な注文。 彼女は嬉しそうで、なによりだ。

 抵抗せずに、大人しく要求を飲んだ。 自身の無防備さを目の当たりにされるのも、偶には悪くない気がして。

「いいわ……、それ、いい……」

 マミが、彼女らしくない、おどけたような粘っこい呟きを、余裕を感じさせる微笑みと共に漏らした。

 私は何も答えない。 ただ、言いなりになることを真剣に体感しようと思って。

「それじゃ、洗ってあげる」

 いくらかの溜めを経て、マミの両手が伸びてくる。 下唇を噛まないよう、表情に出さないよう、加減をするのが思いの外難しい。
631 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/11/02(金) 21:48:13.92 ID:GlYSRWMPo




 予想に反して、あっさりと終わってしまった。

 シャワーでボディソープを流してくれる手つきも普段と変わりはない。

「何を考えてるの?」

 マミが澄ました顔で再度尋ねてきた。 どう答えようか、あまりひねったことは言いたくない気分だ。

「ええと……、こうやって身体を洗ってもらうのは良いものね、ってしみじみと」

「素朴」

 先にマミが笑い、私も後を追って笑う。

「はい、おしまい。 攻守交替の時間です」

 彼女は滑らかにターンして、背中をこちらに向けてきた。 脇腹からヒップ、太腿へと流れ、描き出される曲線の豊かさが羨ましい。

 纏め上げられた色素の薄い髪は、マミに備わっている華やかさをなんら損ねることなく、
 剥き出しのうなじにじわりと浮かぶ汗は、明らかに私を誘っている。

 期待に沿えるよう、無言で後ろから彼女を抱きすくめた。 ただ、柔らかくて、温かい。

 その左首筋に唇を当て、マミの湿った熱っぽい肌を記憶させようと押し付けた。

「……ほむらさん?」

「その前に溜まってる分を発散させないと」

 右手をマミの右胸へ伸ばして、慎重にわし掴む。 掴むだけで、指は一ミリだって動かさない。
 びくり、とした彼女の強張りはすぐにほどけて、聴こえてくる息遣いは雌っぽいリズムへと躍動しつつある。

「発散……?」

 かすかに震えたマミの声色が耳に心地よい。 平静さを保とうと、しかし弾けかかっているバランスが素晴らしいと思う。

「抜く、でもいいのだけれど」

「抜くって……」
632 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/11/02(金) 21:51:02.45 ID:N978lvrAO


「あのね、マミ、こうしてるとすっごく匂うの」

 マミの左耳に吐息を吹き掛けつつ遮ると、「やだっ」と、敏感な反応を見せた。

 におう、という響きから彼女の不安が煽られたらしく、落ち着きがやや失われているのが、重なり合った皮膚を通して伝わってくる。

「貴女の身体中から、悪戯されたがってる匂いがするわ。 早くぺろぺろ舐めて欲しい、指でいろんなところをぐりぐりいじくりまわして欲しい、って」

「うん、されたい……、いっぱいして欲しい……」

 マミは寸時の戸惑いもなく答え、全身を私の方へ預けてきた。 しっかりとした重みを感じ取る。 他意はない。

 落ち着かない、といった感じで彼女は太腿を擦り合わせていて、そんな幼子じみた、素直なはしたなさに釣られて笑んでしまう。

「じゃあ、おねだりしなさい」

「はい、あの……」

「おっぱいでしょ?」

「……ゆっくり揉んでから、乳首を摘んで下さい」

「いいわよ」

 しかし、揉まないし、摘まない。 両手の中指と薬指の腹で、二つの頂の周りをうっすらと執拗になぞった。

 指から伝わる、たまらなく柔らかな感触は、もっとやれ、と私のことを急かしてくる。
 おあずけを食ったマミの全身が、少しでも良くなろうと、こそこそ揺れている。 

「もぅ、いじわるしないで……正直に言ったのに……」

 若干息を荒げ、平時の口調でマミが抗議をしてきた。 ここから屈服させるのが最高に面白いのだ。 彼女は本当によくわかっている。 

「ふふ。 ……でも、結構嬉しそうよね。 びくびくしちゃって面白いわ」

「だって、久しぶりだもの……」

 正直、久しぶり、と言えるほど間が空いてはいないと思うのだが、これは良いことを耳にした。

「そう……、じゃあ、『マミはいやらしいことが一週間も我慢できない、とってもすけべな女の子です』って言ってみて? そしたらお望み通りしてあげる」
633 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/11/02(金) 21:51:53.53 ID:GlYSRWMPo


 しばし、マミからのリアクションを待つも、私の耳に届いてくるのは欲求不満げな息遣いのみ。

 仕方ない、もう少し煮詰めてあげなくては。 まったく手間がかかって、そこが素敵だ。

「マミ? お返事は?」

「……言われた通り答えたら、絶対いじわるするじゃない」

「流石にわかってるわね」

「ねえ我慢できないの。 ほむらさんに気持ち良くして貰いたい。 全然言うことをきかないマミに早くお仕置きして……?」

 即興にしては練られた構文の後、マミの両手が私の両手に被さり、許可なく乳房を揉みしだきだした。

「っはあぁ……気持ちいいっ……おっぱい気持ちいいです……」

 悩ましげな声色。 より動物に近づいた吐息。 気になって彼女の横顔を窺う。 
 眉間に皺を寄せつつ、マミの口元に浮かぶのは紛れもない笑みだった。

 己の内に湧き上がる欲望をまるで隠す気のない、清々しいまでの淫らな表情に、吸い寄せられるかの如く見とれてしまう。

「……マミ、ひとつ訊きたいのだけれど、揉まれるのって、どういうふうに気持ち良いのかしら? 私にもわかるように教えて」

「あの……、身体中ぞくぞくして力が抜けてきて、乳首を摘んで欲しくなって、お腹の下の方がむずむず熱くなって……、それからっ……」

「ありがとう、よくわかった」

 彼女の言い分に耳を傾けつつ、気づいたことがあった。
 充血した薄紅色の二つの先端に刺激を与えないよう、両手の指の動きをコントロールされていることだ。

 飽くまで、摘むのは私自身の意思で行わなくてはならないらしい。

 自分で自分を焦らすのがこれだけ上手なのだから、実のところ、私の方が良いおもちゃである。
634 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/11/02(金) 21:55:24.53 ID:N978lvrAO


 何分か経ったのか、十秒も経っていないのか。 私にはわからない。 間近の女性にも多分わかっていないはず。

 燻り続ける巴マミの喘ぎは、浴室内に乱反射し、名残惜しさを感じさせるスピードで消え、しかし、絶えず湧いてくる。

「ほ、ほむらさん、摘んで……乳首、摘んで下さいっ……」

 あざといまでに身体中をくねらせつつのおねだり。

 私は何故か答えられないし、応えられない。

 こちらが愛撫しているはずなのに、揉みしだかれている乳房と、私の手と、マミの手が同化してしまっているような錯覚が頭から離れない。

 背に腹は代えられず、大きく息を吐いて、蔓延していた内側の靄を強制的に払い去った。
 
「貴女、今乳首いじられたら、イッちゃわない?」

「うん、イクぅ……すぐイッちゃうっ! だって私、どうしようもないすけべなおんなだからぁ……! お願いだから、早く摘んで……!!」

 唐突な叫びが結構な音量で響き渡る。

 驚きより、悦びの方が上回った。 うん、嬉しい。 理由ははっきりしているが、口に出すのは控えた。
635 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/11/02(金) 21:56:11.34 ID:GlYSRWMPo


 ―― さて。


「んんぁああぁっっ……!!」

 宣言なしに両乳首を軽く摘んであげると、予想していたよりは控え目に身体を折り曲げ、両膝をがくがくと震わせてマミが啼く。 

 絶頂とまではいかなかったようだ。 無論、それでよい。 ハードルが下がってしまったら、お互いにつまらない。

「ねえ、おっぱい気持ちいい? 乳首、たまらない?」

「うん、いいっ……乳首いいっ、たまらないぃぃ……もっと……もっと、いじってくださいぃっ……」

 平時の品性をかなぐり捨てて、巴マミが得た快感に呼応した呻きを漏らす。

 必要十分を大幅に超えた双峰を慌ただしく変形させ、上半身を揺らしながら、肉付きの良い彼女のヒップが、私の腿の付け根をぽふぽふと叩いてくる。

 きっとそれは、本能が望む律動。 でも、これ以上暴れられると、私の非力さでは抑えきれない。 少しブレーキをかけてあげるのも恋人の務めだ。

「本当にお行儀の悪い下半身ね……、大人しくしないと、このままおっぱいでおしまいにするわよ?」

「やぁ、いやぁそんなの……、もっとして、いっぱいして、めちゃくちゃにして……んくぁあぁっ……」

 これより上はない、というくらいに硬くなった先端二つを、気持ち強く摘むと、マミは背中を弓なりに逸らして、よりいっそうの嬌声を上げた。

 とても、とても甘い声だ。 媚びていて、下品で、遠慮がなくて、聴き逃せない音色。

 ふと、息遣いの荒くなっている自分に気づき、呼吸を整え、引き続きマミに性的な悪戯を加える。

 一点を、いや、正確には二点を、捏ねて、捏ねて、捏ねて、捏ねた。

「あふっ、んぁああはあぁぁっ……だ、だめぇぇ、このままだとぉ……わ、私ぃ……だめぇぇ……」

 彼女は再度、前傾姿勢気味に上半身を折り曲げ、その全身の震えは、幾度となく目の当たりにした、私の一番好きなマミに近づきつつある。 

「……あれ、まさか、本当におっぱいだけで終わりそうなの? 冗談っていうか、そういうのじゃなかったの?」

「いじっ、いじわるいやぁ……イカせ、て……くださっあああっんんっ……くふうぅうあぁぁ……」

 彼女の懇願を遮りたくて、右手を弛みきったマミの太腿の付け根へと滑り込ませる。

 二本の指を探り慣れた場所へ到達させると、象徴的な突起はとんでもなく熱く、硬く、拡がりきった花弁は、救い難いほどに濡れていた。
636 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/11/02(金) 21:59:46.99 ID:N978lvrAO


 巴マミの中心へと指を触れさせ、ほんの少しいじくると、ぷしゃっ、と生温かな液体が右手を濡らす。

 よく知っている、いつものぬめり気とは違う。

「んぅうっはああぁうんんっっっ!!」

 言語としての意味を成さない、本能と直結した巴マミの咆哮が、私ごとバスルーム全体を揺らした。

 彼女の両脚は突如として制御を失い、マミはその場へ力なくへたり込む。 この表現はどうかと思うが、暴発させてしまった。
 酸欠気味で苦しそうなマミの背中をしばらく呆然と眺め、慌てて我に返り、寄り添って彼女の強張った背中をほぐさんと、柔らかくさする。

「……ふふ……お、おもらししちゃったわね……恥ずかしいわ……ほ、ほんとっ……」

 ふうふう、と苦しそうな声を漏らしつつ、マミが私の方を向いて見せる、無理矢理な笑顔。

「馬鹿、喋らなくていいから。 楽な格好をして、ゆっくり吐いて、ゆっくり吸いなさい」

「ば、ばかって……しっ、失礼しちゃう……」

「いいから、喋らないで言うことをきいて? ね?」

 空気が一変してしまった。 彼女が落ち着くまで、ひたすらに背中をさする。 明らかに調子に乗りすぎた。

 正座を崩し、ぺたりと座りこんだマミの右肩を右手で抱え、やや痛々しさを感じさせるひくついた背中全体を左手で撫で、さすった。

「ごめんなさいマミ、本当にごめんね、本当にごめん。 ごめん、ごめんなさい」

 ほんの少しでいいのだ、彼女の苦しみをなんとか緩和してあげたい。

 それだけを考え、無言でさすり続けると、マミが未だ苦悶を引きずった顔つきに再度笑みを浮かべ、左手で握り拳をつくって、親指を上に立ててきた。

「馬鹿、そんなことしなくていいの! とにかく楽な姿勢をして頂戴!」

 彼女は、『バカって言うな』といった眼つきで睨んでくるも、今のマミは結構なバカなのだから、バカと言わざるを得ない。
637 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/11/02(金) 21:59:54.48 ID:GlYSRWMPo





「あぁ……結構本気で苦しかった……もう歳かしらね……」

 五分も経つと、先ほどまでの苦しみはどこへやら、けろっとした顔で、マミが過ぎ去った時間を懐かしんでいた。

 お互い意味もなくタイルに座り込んだ状態になってしまっていて、次への取っ掛かりが失われた状態である。

「あのね、マミ……」

「やめて、説教とか。 おばさんくさいわ、今のほむらさん」

「お、おば……」

「良い経験を積んだと思えばいいじゃない。 生憎、私はほむらさんのような虚弱体質じゃないんだから」

 えへん、と言わんばかりにマミが得意気な表情をつくる。 言いたいことは山ほどあるけれど、彼女の笑顔には敵わない気がして、全てを飲み込んだ。
 代わりの一言が見つからず、しばらく黙りこんでいると、マミが私を見ながら、なんともいえない悪い笑みを浮かべている。

 どうしてだろう、嫌な予感しかしない。

「『ごめぇん、マミィ、ごめぇーん』」

「…… 一応、念の為に訊くけれど、何のつもり?」

「似てた?」

「期待に沿えなくて申し訳ないけど、ぜんっぜん似てないわ。 三点」

「四点中?」

「違う。 一万点」

「限りなくゼロに近い三点ね、それ……」

「ええ、そうね」

 二人して同時に笑った。 お互いの笑顔がお互いをほっとさせる。 そうであって欲しいと、心の底から願う。
638 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/11/02(金) 22:03:21.93 ID:N978lvrAO


「ふふっ、さて、落ち着いたところで、さっきの続きをしましょうか」

「え? 大丈夫なの、貴女……」

 驚きの提案の後、マミは再び悪い笑みを浮かべた。 何故か、何も言えない。 今、この場を掌握しているのは彼女だ。

「だって、私、一週間の我慢もできない、どすけべ女なんだから」

「……そんなに威張って言うことかしら? ていうか―‐」

 皆まで言うな、の意味合いがこもったハンドジェスチャーで遮られた。
 
「ぜんっぜん足りないし、我慢なんてできないわ。 ほむらさんは一週間もの間、私にオナニーして凌げとでも言うつもり?」

「いえ、そうじゃなくて」

「私のここ、さっきからまたうずうずしてるの。 ほむらさんの舌でぺろぺろ舐めて、鎮めて欲しいな……」

 急にしおらしい声色と表情をつくって、両膝を立て、股を開いてきた。 はっきり言って卑怯だ。

 問題となる箇所は若干閉じた状態になっていて、偽りなくうずうずしているのかはわかりかねるのが実際のところ。

「……そう。 ただそれじゃ、本当にして欲しいの確認できないから、わかるように開きなさい」

「はいっ……」

 色白の彼女は、生殖器の表側も淡く大人しい色合いだ。 もっと身も蓋もない言い方をすれば、グロくない。

 両手の指によって拡げられ、露わになった粘膜は、確かに濃厚な水分を湛えていることが見て取れた。

「ああ、そうね。 いつも通りのいやらしいマミね」

「もう……、ここを私みたいに言わないでよ……」

「違うの?」

「……ううん、違いません」
639 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/11/02(金) 22:03:32.68 ID:GlYSRWMPo


 急にエンジンが掛かってきた気がする。 なんだかんだいって、巴マミに乗せられてしまう、情けない私である。

「マミ、犬の恰好をして、私にお尻を向けなさい」

「はい……、沢山、ぺろぺろして下さい……」

 彼女はゆっくりと立ち上がり、後ろ姿を私へと向ける。続けて前屈姿勢を取り、両手をタイルへとついた。

 両脚が膝のところで若干折れ曲がって、犬のはずなのに、どことなく子鹿の様相。

「そのポーズじゃ大変だから、両膝を床についていいわ。 滑らないように気をつけて」

「……え? いいの?」

 マミが窮屈そうに顔を向け、訊いてくる。

「いいから早くしなさい」

「はぁーい……」

 おっかなびっくり、といった感じで彼女は両膝をつき、本来のドギースタイルになる。
 表情は窺えないものの、どことなく落ち着かないようだ。 我ながら、マミには随分無理をさせていたものだと、今改めて思った。

 彼女が本当に嫌がることは強いてないつもりだけれど。

「そわそわしてるわね。 腰周りがそんな感じ」

「なんていうか……、楽で……」

 人のことを『素朴』と言えないくらい素朴な彼女の返答に、笑いをこらえきれない。

「もうっ、人のお尻見て笑わないで……」

 面白いのはそこではないのだが、マミから見た私も、きっとこんなところだらけなのだろうと思い直し、自重した。
640 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/11/02(金) 22:06:24.34 ID:N978lvrAO


 しかし、気を抜くとまた笑ってしまいそうだ。 マミに見られていないので、多少大袈裟に自分の左頬をつねって精神統一を図った。

 呼吸を整え、唾液を静かに飲み込み、声色のつまみを『無感情』のチャンネルへと合わせる。

「私が舐めやすいように、もっとお尻を突き出して。 できる?」

「はい、できます」

 しばらく何もせず静観していると、マミは上半身を落として両肘をタイルへと着け、腰を突き出して、左右にゆらゆらと振り始めた。

 戸惑いを感じさせる揺れ具合の中に透けて見える、様々な感情の襞。

「何なのそれ? 早く舐めろ、って意味かしら?」

「はい……、おねだりしろ、って言われると思って……、自分なりに考えました……」

 マミは顔をこちらへは向けることなく、弱々しく頷き、恥ずかしそうにヒップを揺らし続けている。

 そのサインにきちんと応えなくてはならない。

「自分からすすんで、というのは素晴らしいことだけれど、品がなくて、とても褒められたものではないわね。 でも、マミらしくて良いわ」

「はい、あの……」

「だめ。 面白いから、私が満足するまで続けなさい。 ……貴女の得意分野でしょう?」

 マミは再度無言で頷くと、左右の動きに上下運動を加え、懸命に誘おうとしてきた。 どこで覚えてくるのかは知らないが、なかなか扇情的だ。
 
 『8』を九十度回転させたその軌道は、一定のテンポに整えられた優雅なラインを描き、彼女の期待を裏切り続ける。

 私はその様子を黙って眺め続けた。
641 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/11/02(金) 22:06:43.71 ID:GlYSRWMPo


 巴マミは放置、視姦されることが好きで好きで仕方ないらしい。

 腰の動きに見合った快楽を与えられていないのにもかかわらず、息遣いに余裕がなくなっていくのが傍目にもわかる。

「マミ、さっきみたいになっては困るわ。 深呼吸して、落ち着きなさい」

「っ、あの……」

「どういうふうに舐めて欲しい? どうすれば、マミは満足できるのかしら?」 

 我ながら、完璧なタイミングで遮った。

 私の言葉を聞いて、彼女の動きは呼吸と共に揺るぎないペースを取り戻す。 素直な女性だ。

「はい……よだれをぶくぶくさせてから、私の……その……クリトリスに塗りたくって……ふやけるまで、べろべろして貰いたいです……。
 私がイッても……お尻の肉をがっちり掴んで離さないで、しつこく……何回も、何回も、とろとろになるまでしてください……」

 芸術的な腰を振り方をこちらに見せつけながらの、大変にわかりやすいおねだり。

「ええ、いいわよ」

 言われるままに、口の中で湧きあがるねとっとした液体と、呼気を細かくシェイクさせる。  
 当然、唇は閉じた状態なので、マミに聴こえることはない。 でも、しっかりと伝わっているようだ。 何故か、それがわかる。

 仕上がった潤滑剤を適量右手に取って、彼女に触れないよう気をつけて近づき、ひざまづく。
 そして、マミの潤んだ両眼を見据えつつ、うっすらと開くその口元へ濡れた手のひらを差し出した。
642 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/11/02(金) 22:10:03.70 ID:N978lvrAO


「これでいい? 舐めて確かめて頂戴」

 口の中の水分を上手くいなし、なんとか舌足らずになることなく言えた。 ほんの少しほっとする。
 マミはといえば、私の手に視線を集中させ、淫蕩まっしぐらな笑みを浮かべると、腰の動きを止めて嬉しそうにぺろぺろやりだした。

 彼女の舌遣いがたまらなく気持ち良い。 きめの細かさや、柔軟性は申し分なく、舐め方も参考にしたくなる技量を感じ取った。
 ただ、ここで声を漏らすわけにはいかないし、表情に出してもいけない。 四つん這いのマミが舐め終えるのをじっと待つ。

 しかし、十秒ほど経っても一向にやめる気配がない。 仕方なく唾液を飲み込んで、聴こえるように咳払いを一度。

「……いつまで舐めてるの? 訊かれたことに早く答えなさい」

 自分でも驚くような厳しい口調になってしまった。 マミは動じることなく、えへ、と幼い笑い声を漏らし、ようやく舌を引っ込める。

「あの……ほむらさんのよだれ、おいしいです……」

 屈託のない顔をして、曇りない声で言うものだから、不意を突かれ、吹き出してしまった。

 マミはマミで、えへ、ともういちど同じ笑いを湛えてこちらに媚びつつも、どこか、『やってやった』という雰囲気を漂わせている。

「もうっ、笑わせないで。 あんまりふざけてると、本当に終わりにするわよ?」
 
「そんなの、嫌……」

 あざとさ全開のしゅんとした表情と、甘えた声色で身を固め、巴マミは芸を覚えたての犬のごとく、また腰を無限大に振り始めた。

 その変わり身の素早さたるや、まったく、本当に手のかかる彼女である。
643 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/11/02(金) 22:11:41.56 ID:N978lvrAO


 とにかくマミに触れぬよう、最初の位置へ戻り、片膝を立てて座り込んだ。

 彼女はといえば、ふぅー、ふぅー、と落ち着いた息遣いをわざと聴こえるように強調してきていて、早くこい、と挑発してくるかのようだ。

 この短時間で腰の振り方が随分と上手くなっている。 言われても嬉しくないだろうが、驚異の才能だと思う。

「……お尻を振るの、もうやめていいわ。 十分に愉しんだから」

「はい……いっぱいぺろぺろしてください……」

 マミは上半身をさらに下げて、胸をタイルにべたりとつけ、腰の張り出しを強調して、右手で皮を捲りつつ、入口を大きく開いた。

「ほむらさん……垂れてきたら恥ずかしいから……じゅるじゅる音を立てて吸ってください……お願いします……」

「……いいわよ」

 そう答えて、口の中の水分を溜め始めると、振るのをやめさせたはずのヒップが再びゆらゆらし始めた。 完全に狙ってやっている。

 積極性は買うべきだが、どうにも彼女に上手く操られている気がしてならない。
 悔しいことに、ここは大人しくマミの一箇所をいじめまくるしかないようだ。

 物言うことない巴マミの下半身は、なによりも強く、真っ直ぐな意思を持って、一定のラインを描き続けている。


「はやく……はやく舐めてよ……、待てないっ……」


 本当に口にしたのか、それとも幻聴なのかわからない、彼女の素直で消え入りそうな囁きを合図に、私はマミへと忍び寄った。
644 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/11/02(金) 22:12:08.67 ID:N978lvrAO




















645 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/11/02(金) 22:15:34.47 ID:GlYSRWMPo



 リビングヘ入ると、母がダイニングテーブルに座ってぼんやりとし、父は夕食の準備に追われているところだった。

 どちらに声を掛けていいのかわからない。 まどかは、自分がいつの間にか、救い難いほどの愚か者になってしまったと感じる。

「どうしたんだい、暗い顔して」

「ううん、なんでもな……くはないや。 ママ、体調はどう? ……顔色は悪くないみたいだけど」

 それなりに上手く言えた。 できれば、沈黙は短い方がいい。

「ああ……アタシは良い娘を持ったもんだねぇ……」

 手を目元に当て、すかさず泣き真似を始める母。 これは笑っても大丈夫なはず。

「もうっ、真面目に訊いてるのに……」

「大分良くなったよ。 これも、家族みんなが支えてくれたおかげだ」

 泣きの演技をあっさり手放し、母は揺るぎない眼差しでまどかの方を見据えてきた。 視線の力強さに正直ほっとする。

 でも、甘えてはいけない。 なのに、今のまどかには甘えることしかできない。

「……まどかの方こそ、どうなんだい?」

 母はマグカップをもてあそび、うっすらと笑みを浮かべつつ、問い掛けてきた。

「どう、って言われても……」

「こんなこと言いたかないけど、日曜だってのにいい若いもんが籠もってて良いのだろうか? いや、良くない。 カビが生えちまうよ?」

「ママ……」

 まどかが口にしたのとほぼ同時に、父がこちらを見ることなく、母をそう呼んだ。 棘はないけれど、聴いたことのないトーンだ。

 それに対して、母は何も言わないし、父の方も見なかった。

「あの……ごめん……」

 沈黙を埋めるため、まどかは謝ってしまう。 良くないことだ、と自覚していても、謝ってしまう。
646 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/11/02(金) 22:17:17.51 ID:N978lvrAO


「そうやって誤魔化すのは良くないぞ。 アタシら家族じゃないか。 まあ、今のアタシが言えたもんじゃないけどさ」

 まどかが母の言葉を否定しようとするより早く、父が「ママ」と再度呼ぶ。 表情にこそ出ていないが、今度は明らかに非難の色を感じ取った。

 自分のせいだ、とも言えない。でも、自分のせいだとしか思えない。

「えっとね、わたしも色々しようとはしてるんだよ? あっ、そうそう、合コンに誘われちゃったんだ……」

 そこまで言って、自分が何もしようとしていないことを再認識した。 自分自身のことだ。 とりあえず、誰よりもよくわかる。

「で、行くのかい? ……ていうか座りな? まどかの家だぞ、ここは」

「うん。 行くかどうかは考え中なんだけど……」

 行く、と言っておけばよいのに、つい正直に答えてしまった。 椅子に腰かけてから、しまった、と思う。 はっきりいって遅い。

「アンタは本当に良い子に育ったよ」

 向かい合って座っていた母がにっこりと笑いながら、不意に立ち上がってまどかの方へ近づき、右手で頭を撫でてきた。

「や、やめてよママ」

「あー、『やめて』って言われると俄然盛り上がるねぇ」

 ニヤニヤ顔の母。 やめて、と言いながらも、まどかは髪をくしゃくしゃされることがとても気持ちいい。
 大人しく頭を撫でられていると、普段通りの穏やかな表情をした父が、ミルクのたっぷり入ったのコーヒーを出してくれた。

 父が母を見る目も普段通りで、とりあえずほっとする。

「まどかはアタシ達の自慢の娘さ」

 撫で飽きたのか、右手をまどかから離し、母はまたにっこり笑った。 父も同じように笑い、キッチンへと戻る。

 そう言って貰えることは嬉しいが、今のまどかには素直に受け取れない。その原因は明らか。
647 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/11/02(金) 22:18:05.77 ID:GlYSRWMPo


「……ところで、タツヤは? 部活なの?」

 疑問を口にしつつ、淹れて貰ったコーヒーを啜ると、飲み頃の温度だった。 こういうところを学ばなくては、といつも思う。

「まどかは覚えてるかい? タツヤに入れ込んでる女の子のこと」

 覚えてはいるが、まず思い浮かんだのは、母に頭を叩かれる弟の姿。

「ああ……、あの綺麗な」

「そう。 押し問答の末、何処かに連れてかれちまったよ。 あのまま行くと、絡め取られる日もそう遠くはないね……」

 母がしみじみ呟くと、父は冷蔵庫の扉を開けた状態で、振りむくことなく、「ママ」とたしなめるように呼び掛けた。

 先ほどとは違って、若干面白そうな雰囲気を滲ませていることが救いだ。

「ああ、悪い悪い」

 ほんの少しの間の後、ちっとも悪びれることなく謝る母の姿を見て、仲の良い夫婦だ、とまどかは感じる。

「……まどかもさ、同じ女として、あの子の粘り強さは見習うべきだと思うよ。 心の底から、そう思う」

 ほっこりしていると、不意に攻められた。 ただ、まったく予想だにしなかった、ということもない。

 母の視線は特別何を訴えるでもなく、黙ってまどかの方を見てくる。 何か、言わなくては。

「そうかな……、やっぱり、そういうものなのかな……」

「ああ、そうさ。 アンタはそれだけのポテンシャルを秘めた女だ。 ……これは親の欲目抜きで言い切れる」

 平坦な口調で、でもはっきりと、母が口にした。

 今はその言葉を素直にありがたく受け取れる努力をしよう。 まどかは心の中でそう結論づけた。
648 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/11/02(金) 22:19:41.66 ID:N978lvrAO




















649 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/11/02(金) 22:20:28.00 ID:GlYSRWMPo





「はい、ほむらさん、あーんってして?」

「……あむ」

 濃く、甘く煮つけられていても、臓物関係は苦手だ。 むぐむぐと咀嚼しながら思う。

 十五秒以上かかって、ようやく飲み込めた。 口の中に残る独特の臭みは、良薬だと思いこまなければ、到底許容できない代物。

「おいしい?」

「ええと……、鶏の肝臓と、醤油と、砂糖とが煮詰まった……、そんな味がするわ」

「それはイエスと捉えてよいのかしら?」

 形良く箸を持つ手を下ろし、マミが左手の人差し指を左頬に当てて小首を傾げ、こちらを見つめてくる。 にこにこしながら、無言で見つめてくる。

 熱いほうじ茶を無理やり啜って、なんとか取り繕った。

「そうね……、まあ、別に……」

「はい、あーん」

「……あむ」

 先ほどから、食べさせられてばかりだ。 広いとは言えない店内で、明らかに浮いた空気を演出している妙齢の女性が二名。

 それはともかく、今度は心臓だった。 子供じみていて自分でも若干恥ずかしいが、歯ごたえがありすぎて苦手だ。

「よーく噛むのよ?」

 返事ができないので、二度頷く。 ひたすら噛み続け、ごくりと飲み込むも、そこに快感はなかった。

 命を差し出して貰ったにわとりさんには悪いが、わざわざ食べなければならないものだとは思えない。
650 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/11/02(金) 22:25:17.72 ID:N978lvrAO


「ねえ、マミ、後は自分で食べられるから……」

「だめよ。 ほむらさん、私が見てなかったら、『何を食べても、もしくは食べなくても別にいいや』って絶対なるもの」

 それはまったくその通りなのだが、とにかく恥ずかしいのだ。 彼女がわかっていてやっていることは間違いない。

「わかった。 それはわかったから、今度は私がマミに食べさせてあげる」

「私はいい。 鶏レバー、そんなに好きじゃないし」

「え?」

 ほんの一瞬固まった私を見逃すことなく、マミは自ら件のレバーを口に入れ、ゆっくりともぐもぐし始めた。

 彼女が咀嚼し終えるまで、仕方なく待つ。 十五秒ほどかかって飲み込んだ後、箸の先を唐突にくわえてにんまりととするマミ。

「……お行儀が悪いわ」

「ああ……めくるめく間接キッス……」

 私の言うことなど聞かず、うっとりとした表情で意味のわからないひとり言を呟くマミである。 困ったものだ。
651 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/11/02(金) 22:26:48.27 ID:GlYSRWMPo


 やや時間は飛んで。


 味の異様に濃いグリーンアスパラと、火の通りが絶妙で柔らかい甘さの海老がかき揚げとなっている。
 マミが一口頬張ると、さくっと軽い音がして、その響きを耳にするだけで大変においしそうだ。 でも、何故か彼女は食べさせてくれない。

 ぼんやりとその様子を眺めていると、『こら』といった表情をつくって、マミが優しく睨みつけてきた。 私は向かいの女性の一言を黙って待つ。

「……お蕎麦がのびちゃうし、つゆが冷めちゃうし、見られてるのは恥ずかしいし、いろいろとだめ」

「あーん、っていうのはもうおしまいなの?」

「そんな甘えんぼさんじゃないでしょ、ほむらさんは」

「そう……」

 ちょっと食べたいな、と思うものはあまりくれないマミである。 私の苦手なものは喜んで『あーん』してくれるのだけれど。

「ほむらさんの鴨、良さそうね……」

 かと思えば、急に攻めてきた。 拒否する権利は残念ながらない。

 温かい椀を左手で持ち上げ、マミに差し出そうとすると、なってない、といった面持ちで彼女は首を横に振る。

「……えっと、あーん」

「あむ」

 にっこにこで鴨の切り身を頬張るマミ。

 この非効率極まりない食べさせ合いに対して、良い顔をしていなかった初老の女性店員が、『ほどほどにしろ』と顔面に滲ませ、蕎麦湯を運んできた。

 更に良くないことに、座敷のはす向かいに親子連れがいて、
 幼い男の子が「ママー、あれやって」と言い、対して若い母親が「静かに食べなさい!」と返す、テンプレートなやり取りを繰り広げている。

 味覚の鈍化していない幼子を蕎麦屋になど連れてくるな、と言いたくなるも、単なる八つ当たりに過ぎないので、決して口にはしない。
652 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/11/02(金) 22:29:16.56 ID:N978lvrAO


 更に時間は飛んで。


 つつがなく食事は終わり、私をマミも蕎麦湯をストレートで啜っている。 塩分過多になり易い和食だ。 そのことは嫌というほど叩き込まれている。

「……さっきの男の子、可愛かったわね」

 不意に呟くマミ。 私は素直に同意できなかった。

「ああやって周りの迷惑を考えずに騒げるのは、少しだけ羨ましいと思うけど……」

 なるべく攻撃的にならぬよう気をつけたつもりだったのだが、マミは私の返答に若干呆れた笑みを浮かべている。

「ほむらさん、まさかやきもちとかやいてない?」

「やいてない。 ……ただ、あの子にあげるのなら、私にもかき揚げを一口あーんして欲しかったわ」

 それってまさしくじゃない、とマミが楽しそうに笑いだした。 否定はできない。 自分でもそう思う。

「今日のほむらさんはなかなか可愛いところを見せてくださる……」

 言い返したくなったが、それを堪え、頬に沸き立った熱が冷めていくのをただ黙って待ち、蕎麦湯を啜る。

「……あの子に食べさせてあげる姿は結構様になってたわね。 私には真似できない、きっと」

 思いついたことをあまり考えずに呟くと、マミは「そんなことない」と、柔らかく微笑んだ。

「ほむらさん、ちょっと思い出話してもいい?」

「……いいわよ」
653 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/11/02(金) 22:31:54.25 ID:N978lvrAO


「高校に入ってできたお友達のことなんだけど……、その子はね、二学期に転校してきて、初めはすっごく大人しかったの」

「ええ」

「席が近かったし、なんとか力になれないか、と思って話しかけてたら、なかなか腹黒い子だってことがわかってきてね……、仲良くなった」

「そう」

「元々の友達も交えて、みんなでお昼を食べるようになって、しばらく経ったある日……」

「……何があったの?」

「『巴さんって、未亡人臭が半端ないね』って言われちゃった。 気軽な感じで」

「それは……」

「そう。 私の事情を知ってる友達はみんな、今のほむらさんみたいな顔をして、気まずそうに黙り込んじゃって」

「でしょうね。 私がその場にいても同じ反応だったと思うわ」

 まあ、その日はそれでおしまいだったんだけど、と付け加え、マミはふふっと笑いを漏らす。

「それからどうなったの?」

「ある日、手紙を貰って校舎裏に呼び出されたんだけど」

「マミと人気のない校舎裏の組み合わせは危険ね」

「もうっ、茶化さないで。 件の彼女が物凄く落ち込んだ顔をして、私のことを待ってたの。 話しかけても、なかなか一言が出ない様子で……」

 大体の想像はついたが、私は何も言わない。 マミにも、思い出の中の友人に対しても失礼だと思ったからだ。
654 :ほむマミ派(想い出) ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/11/02(金) 22:34:57.11 ID:GlYSRWMPo



杏子『……あれ、ほむら? ほむらじゃね?』

ほむら『ああ、久しぶり……その…………杏子……』ボソッ

杏子『ていうかさ、あんた今、あたしのことスルーしようとしなかった?』

ほむら『……ごめんなさい。 本当に気づかなかったの』

杏子『まぁ、いいや。 ……つうか、えらく雰囲気変わったじゃん。 これが俗にいう「高校デビュー」ってやつ?』ニヒヒ

ほむら『そんな良いものじゃないわ』

杏子『えっと……そうやって即否定されると、話が終わっちまうんだけど……』

ほむら『ごめんなさい、人とまともに話すこと自体久しぶりで』

杏子『ふーん……でもちょっとやつれ気味だよ? ちゃんと食ってる?』

ほむら『……ふふっ』

杏子『なんだよ?』

ほむら『杏子は相変わらず優しいわね』

杏子『おい、やめろよ、そういうの……』

ほむら『ええ、そうね、ごめんなさい』ペコリ

杏子『だからそういうのやめろって……』ハァー

ほむら『……』

杏子『……』

ほむら『……私の話し方、変?』

杏子『別にそんなことねぇけど……』

ほむら『良かった』フフッ

杏子『……』

ほむら『この前、同級生の男の子に、「お前、幽霊みたいだな」って言われちゃって』

杏子『……それで? どしたの?』

ほむら『物凄く頭に来たから、床に唾を吐いてやった』

杏子『そうなんだ……』

ほむら『……』

杏子『……』

ほむら『……冗談よ』ニコッ

杏子『……そう』

ほむら『申し訳ないけれど、行かなくてはいけないところがあるから、これで失礼するわ』スタスタ

杏子『ああ、またな……』




杏子(……変なの)
655 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/11/02(金) 22:41:20.40 ID:N978lvrAO


「傍迷惑な女ね。 マミには申し訳ないけど、そう思う。 わんわん泣くくらいなら、もっと自分の発言には気をつけるべきよ」

 何がトリガーになったのかはわからないけれど、自分で思っていた以上に冷たい言葉が出てしまった。

 マミは苦笑いしつつ、うんうん、と頷いている。

「その時は私もまったく同じことを思ったんだけどね、後から思い返した時にはちょっと違ってた」

 そう言って微笑むマミは今日一番の柔らかいオーラを漂わせる。

「違ってたって、どう違ってたの?」

「うーん、言葉にするのは難しいんだけど……、まあ、悪くないな、というか、捨てたものじゃないな、というか……」

 マミは、うむむ、という擬音が当てはまりそうな表情に変わり、二の句を継ごうと躍起になっている。

「ごめんマミ、別に無理やり聞きたいわけじゃないから……」

「ちょっと待って」

 マミは私を遮り、しばし考え込み、「やめにしましょう」と宣言した上で、再び非の打ちどころのない笑みを浮かべた。

「……ほむらさんもね、あまり決めてかからない方が良いんじゃないかな、って思って、こんな過去エピを話しました、まる」

「決めてかかるって、何の話?」

 私の質問を受け、マミは「少しは自分で考えなさい」と、楽しそうに笑っている。
656 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/11/02(金) 22:44:02.09 ID:GlYSRWMPo




 帰り道。


 手を繋いでゆっくりと歩く。 マミと二人で歩く。


「家の冷蔵庫にハウスもののシャインマスカットが冷えてるから、食べさせあいっこしましょうね」

「皮のぷつっと弾ける感じが好きだわ」

「そういうのって、自分で思ってる以上に人に知られてるものよ」

「そうね。 マミは犬の格好が好きね」

「もうっ! バカ!」

 彼女の左肩が私の右肩にぶつかってきた。 結構な勢いで当てられたと思ったのだが、まるで痛くない。

 沈黙が続くも、息苦しさはまったくない。 次の手をお互いに練っているからだ。

「そういえば、ここのところ、ケーキを焼いたり、買ってきたり、っていうのが大分減ったと思うのだけれど」

「ああ……、そういえばそうね。 馴染みのお店にも随分不義理を働いちゃってるわ……」

「まあ、私があまり食べないから……」

「そう、そうよ。 ほむらさんが食べないから。 それがずばりな答えね、うん、間違いない」

「……やっぱり気になるの?」

「何が?」

「えっと……」

「ねえ、何が?」

「見て、マミ。 月が素晴らしく綺麗」
657 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/11/02(金) 22:47:33.98 ID:N978lvrAO




 また、時間は飛んで。


 寝室にて。 お互いの寝巻は『眠る』用のものを纏い、ベッドへ入る。

 帰り道と同じく、手を繋いで。


「ああ、どことなく落ち着かない……」

「深呼吸なさい。 小学生じゃあるまいし」

「このお腹の下辺りをじわりと圧迫する感じは、その場に立たされた者でなければ、決して……知りえない」

「かっこよく言っても、あまり説得力はないわね」

「もう、冷たすぎるわよ……寝不足で私が粗相をしたら、ほむらさんが責任とってくれる?」

「無茶苦茶ね」

「……うん、ちょっと無理がありすぎると自分でも思った」

「ふふっ」

「ふふっ」

「……羊でも数えたらどうかしら?」

「ほむらさんがお話してくれればいいのに」

「これから一週間のシミュレーションをするのもまた一興よ」

「普通、そういうのって、もっと前から準備しておくものじゃないの?」

「ええ、それを忘れたマミの責任が大きいと、私は思う」

「言い方が絶対零度すぎるわ……」
658 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/11/02(金) 22:48:57.83 ID:GlYSRWMPo




「ひーつじが一頭、ひつじが二頭……」

「あら、大人しく数え始めたのね」

「三頭、四頭、五、六、七……、だめだわこれ、全っ然だめ」

「いくらなんでも、こらえが利かなさすぎでしょう……」

「眠りたい、眠れない、八、九、十……」

「七十三、五百四十七、六百九十一、百七十九……」

「もうっ! こんな時にいじわるしないでよ!」

「興奮は大敵よ、マミ」

「だったら、せめて協力してくれてもいいのに……」

「わかった、頭を撫でてあげましょう」

「ああ……いいわね……」
659 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/11/02(金) 22:50:55.17 ID:N978lvrAO




「……五十三……五十よ……」

「……」

「ごじゅ……う……ご……」

「……」

「………………ご……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……って、ほむらさん大変!」

「どうしたの? 何か忘れ物?」

「子ひつじさんがひつじ飼いに捕まっちゃった!」

「えぇー……」
660 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/11/02(金) 22:52:54.08 ID:GlYSRWMPo



「ちょっと、そんな……手動バリカンで毛を刈られそうだわ……大変、どうしよう……」

「どうしようも何も、貴女のさじ加減ひとつじゃない……」

「無垢という概念そのものをふうわりさせたような毛が刈られてしまいそうなのよ? ほむらさん、冷酷すぎる……」

「こんなこと言いたくはないのだけれど、マミの頭を撫で続けてる私に対して、ねぎらいの言葉とかはないのかしら?」

「ああ……無力だわ。 目の前の現実になす術もなく、私には……私にはただ黙って見ていることしかできないというの……?」

「……それって、ドラマか何か?」

「刈られてる……ほむらさん、刈られてるわ……」

「そうね、残念だわ、とても残念」

「…………ほむらさん」

「なぁに?」

「あの子、諦めた眼をしてる……」

「マミ、寝なさい」

「……うん、おやすみ」

「おやすみなさい、マミ」
661 :ほむマミ派(ノンレム睡眠) ◆CuwcoLXTJ2 [saga]:2012/11/02(金) 22:55:22.28 ID:N978lvrAO




















 Zzz…
662 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [saga sage]:2012/11/02(金) 23:01:43.41 ID:N978lvrAO



 つづく



 このSSにおける「ほむマミ」はここでほぼ終わりです、というか、またマミさんの出番がしばらくありません

 今年の内に終わらせたかったのですが、無理。時間のある方は気長におつき合いを…
663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/02(金) 23:40:06.85 ID:QlW3ZQxNo
やっと来たか。乙
664 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/03(土) 12:01:19.35 ID:6kGxaf6IO
665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/07(水) 13:56:07.05 ID:OCsQ+qNaP
おお続ききてる乙乙
666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/07(水) 19:42:10.86 ID:dPODryXv0


667 :(報告) ◆CuwcoLXTJ2 [sage]:2012/12/17(月) 00:52:57.31 ID:sTrpBLYw0
 今年は生存報告で終わります

 本当に申し訳ないです
 正直気持ちに余裕がありません
668 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/21(金) 17:05:55.33 ID:XH7nV1oVP
気長にまつよ
669 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage]:2013/02/08(金) 04:01:08.33 ID:dQfoVExeo
 
 生存報告 兼
670 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage]:2013/02/08(金) 04:02:37.95 ID:dQfoVExeo

 生存報告 兼
671 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage]:2013/02/08(金) 04:04:09.24 ID:dQfoVExeo
生存報告 兼
672 :ほむマミ派 ◆CuwcoLXTJ2 [sage]:2013/02/08(金) 04:08:27.28 ID:dQfoVExeo

 重すぎて 三回も同じ書き込みをしてしまった…

 今月には再開して なるはやで終わらせたい… 
673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/09(土) 08:28:22.41 ID:JIMFURVVo
無駄な会話とか省いてさっさと完結まで持っていってほしい
どうせこっちはただの本家の派生ルートなわけだし
674 : ◆CuwcoLXTJ2 [sage]:2013/02/09(土) 22:50:57.93 ID:WVfavPHv0
上のレスにイラッときたので一旦このスレを落とします

文句も言わず待ってて下さった方には本当に申し訳ないです
675 :(お詫び) ◆CuwcoLXTJ2 [sage]:2013/02/10(日) 10:23:41.61 ID:h1ru7q6R0
かっとなってスレ汚ししてしまいましたので後日同タイトルで立て直します
676 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/10(日) 22:45:42.81 ID:BPIotvC2o
1年以上続けたスレをたった一つのレスにイラッとして落とすのはどうなの?
しかも同タイトルで立て直すって意味無いと思うんですけど
677 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/16(土) 06:54:31.82 ID:LXqZGzRBo
まぁ続けてくれればどちらでも良いです。
せっかくここまで来たのだから完結はして欲しいね。
678 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/16(土) 10:08:38.77 ID:FNC1MZxno
話ほとんど進んでないしこれで終わりでいいよ
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