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とばりのなか - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/17(土) 19:47:42.65 ID:/PI9rPgc0
夜。

街の住民たちが寝静まった頃、普段から人通りの少ないこの公園に
二人の若い男女の姿がった。

年齢は二人とも二十歳前後だろうか。
まだ若干の幼さが残る顔立ちである。

「な、いいだろ?」

男は女の肩に腕をまわし、胸を揉む。
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全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
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【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
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ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
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【安価】少女だらけのゾンビパニック @ 2024/04/20(土) 20:42:14.43 ID:wSnpVNpyo
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/17(土) 19:55:06.87 ID:/PI9rPgc0
「もー、がっつき過ぎ!」

「へへへ、いいじゃねーかよ」

女が少し顔を曇らせるも、男は構わず乳房を鷲掴み揉みしだく。

「ちょっと……ホントにこんなトコですんの?」

「そっちのが興奮すんだろ?」
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/17(土) 19:59:21.58 ID:/PI9rPgc0
「それは……」

「ひひひ」

男は女が台詞を言い終わる前に唇を塞ぐ。

「!?……ん……んん……んんんんん……」

「はむっ、……ん……うんん……」

「ぷはっ!」

「ひひひひひひ……どうよ?」

「もう、相変わらず強引なんだから……」
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/17(土) 20:10:41.16 ID:/PI9rPgc0
男に強引な接吻をされるも、女の顔は紅潮していた。

そしてそれを見た男は、自分の目論見通り今晩はここで女を抱けると
確信し、素早く次の行動に移る。

「そんじゃ、ま」

「あっ」

このような場合、女性をその気にさせた時点で既に勝敗は決して
いるのだ。

つまり――――
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/17(土) 20:19:20.49 ID:/PI9rPgc0
同時刻。


「はぁ、はぁ、はぁっ!」

とあるくたびれたアパートのとある一室で、パソコンのモニター画面を
覗きこみながら、必死に自分の肉棒をしごいている男がいた。

やや運動不足気味のその男は、本当に人間であるのか疑わしい醜悪な顔
を浮かべながら、ひとりにやけている。

にやけながら、しごいている。

「ハルヒ、ハルヒッ、ハルヒッ!」

しかも、時折「ハルヒ」と叫びながら。
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/17(土) 20:25:43.46 ID:/PI9rPgc0
ハルヒという名の人物が、この男の彼女なのか、意中の人なのか。

それとも果たして、パソコン画面の中のキャラクターを指しているのかは
分からないが、この男、えらくハルヒという人物に御執心のようである。

それもその筈。

「ハルヒ、もうこれで23発目だよ。ハルヒッ!うっ!」

先程の自慰で、本日ついに23度目の射精を迎えたのである。
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/17(土) 20:35:33.83 ID:/PI9rPgc0
「はぁ、はぁ、はぁ……ハルヒ……」

しかし、23度も射精したというのに男は再び椅子に座り直し、
パソコンに向き直る。

どうやらまだまだ挑戦するようだ。

何が彼をそこまで追い込むのかは分からないが、まぎれもなく
彼は人類の限界に挑戦している。

あっぱれである。

もしも「ハルヒ」がモニターの中に存在する架空の人物であるのなら、
その熱意に負けて画面から出てきてほしいと、この光景を見ている者
なら思う事だろう。
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/17(土) 20:40:54.88 ID:/PI9rPgc0
それほどまでに、男の自慰に対する意気込みは鬼気迫るものがあった。

「はぁ、はぁ、はぁ、うっ!ハルヒ!うっ!」

「うっ!うっ!うっ!」


……しかし、この時の彼はその結果、自分の身にこれから何が
振りかかるか知る由もない。
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/17(土) 20:53:32.21 ID:/PI9rPgc0
同時刻。


「ゆうすけ……寝たかな?」

閑静な住宅街の一角にある赤い屋根の家。
家族が寝静まった家を徘徊する少女がいた。

少女は暗がりの廊下を手すりを掴みながらヨタヨタと歩く。

「くらっ……」

光がちっともない暗く長い不気味な夜の廊下。

後ろを振り返れば、自分のそっくりさんでもいるんじゃないかと
思うほど不気味なこの廊下を、しかし少女は渡る。

己の目的の為に。
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/17(土) 21:00:25.86 ID:/PI9rPgc0
「お父さん居ないし、今日がチャンスだよね?」

まるで自分に言い聞かす様に、少女はゆうすけという名の弟の
部屋を目指す。

所謂、夜這いである。

彼女は三つ下の弟を溺愛していた。

幼いころ、母親が死んでからというものずっと弟を支えて
きた為であろう。

その愛情は姉弟愛というには少し歪んだいびつな愛だった。
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/17(土) 21:09:28.09 ID:/PI9rPgc0
弟が幼稚園に入る時も。小学校に上がる時も。中学生になる時も。

そして、初めて自宅で自慰をした時も。

彼女はずっと見守ってきた。
ずっと、ゆうすけの成長を傍で見ていた。

イソイソと家に帰った弟が部屋でなにやらしていると感ずいた彼女は
ドアの隙間からじっと見ていた。

弟が自慰をするのを。

射精する瞬間を。
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/17(土) 21:17:43.04 ID:/PI9rPgc0
自分がずっと育ててきた弟が、見守って来た弟が、あの様な
よがった表情をしながら一人でしごいているのを目の当たり
にし、彼女は何処か狂ってしまったのかもしれない。

その日を境に、彼女は寝ても起きても弟のことしか考えられ
なくなり、弟の初めてを奪いたいと強く願うようになった。

自分が育ててきた弟の最初の人になりたい。
他の誰にも奪われたくない。

近親相姦を強く願うなど、一般人からはおよそ理解できない
感情ではあるが、しかしそれでも、彼女は弟の初めての人に
なりたかったのだろう。
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/17(土) 21:29:12.65 ID:/PI9rPgc0
少女は火照った身体の疼きを抑えられぬまま、弟の部屋へ向かう。

自分の欲望を満たすために。
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/17(土) 21:35:38.69 ID:/PI9rPgc0
翌日。



「なんだよ、コレはっ!」

朝早くから怒号が飛ぶ。

「なんでこんなに変死体ばっかあんだよ!ひー、ふー、みー……
5つだぞ!?5つもへんてこな仏さんが出来上がってんだぞ!?」

「落ち着いてくださいよ、警部……」

「これが落ち着いていられるかっ!ついこの間やっと死体遺棄事件
の犯人捕まえた途端これだぞっ!?」

「愚痴の一つも言わせろっ!」

「ははは……」
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/17(土) 21:39:27.25 ID:/PI9rPgc0
警部と呼ばれる初老の男が若い刑事に食ってかかる。

気が短いのかストレスをため込みやすい男なのかはさておき、
早死にしそうなタイプである。

「けど、本当にどうしたんでしょうね。この死体たち……」

「はんっ!」

「大方、セックスでもやってたんだろ!?全裸で抱き合ってる
死体なんざそうとしか思えん!」

「けど、それにしたら……」

「っち」
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/17(土) 21:53:57.67 ID:/PI9rPgc0
若い刑事は死体を見やる。

全裸だ。

全裸で抱き合ってる。

先程見てきた2つの現場の死体も全裸だった。

そして3つめの現場であるこの家の死体も――――

「全裸、ですね」

「けっ!」
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/17(土) 22:00:18.13 ID:/PI9rPgc0
しかし、確かに全裸の死体ではあるのだが、

「なんで、こんな奇妙なことに……」

死体はどれもみな、一様に変質していた。

いや、変質というよりは、むしろ変形していた。

ある者は腕や足が曲がり、ある者は首が180度回転していたり、
またある者はまるで二つに折りたたまれたかのように、身体が九の字
になっていた。

しかも、本来そちら側にはどうあっても曲がらないであろう方向へ
である。
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/17(土) 22:06:38.79 ID:/PI9rPgc0
当然、この姉弟たちの死体も……。


「こんなのとてもじゃないですが、人間業とは思えません」

「まあな」

「いったいどうやったらこんな事が……」

「ふん」

若い刑事が疑問に思うのも無理はない。

なぜなら、どれも自然な死体だったからである。

不自然なほどに自然に、元々そうあるかのように身体は折れ
曲がっていた。捻られていた。

外傷はどこにも見当たらない。

出血すら、していない。

腕が折られているというのに。
首が捻られているというのに。

その他には目立った外傷が何処にもないのだ。

それがより一層、この死体たちの不気味な点であった。
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/17(土) 22:17:50.79 ID:/PI9rPgc0
それに、いくら性行為の最中で気が回らなかったとしても、
これが殺人事件であるならば、目の前で人が変形されているのに
一人も暴れていないのもおかしすぎる。

仮になんらかの薬品をかがされでもしたと言うのならば、その痕跡
が死体から検出されてもいいはずだが、今のところそれらしい報告は
受けていない。

まあ、先の3体にしてもまだ検査をお願いしたばかりなのだから、
全ての検査が終わるまではまだまだ時間が掛かるだろうが。

しかし……。

「もし薬品を考慮に入れたとしても、おかしな点が多すぎる」

犯人は何故被害者たちの身体をこのように変形させたのか、そもそも
変形させる意味はなんだったのか。

疑問はつきない。
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/17(土) 23:16:11.68 ID:p4waPSYDO
おもろい。支援。
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/18(日) 00:03:50.82 ID:BlrVLFRMo
おもろいよ。スレタイが

「となりのばか」

に見えたけど…
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/09/18(日) 00:34:07.44 ID:tsubKIyAO
>>21
お前もかww


>>1、期待してる
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/18(日) 02:07:10.90 ID:7e6wlXDB0
>>21
あれ、俺がいる……
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/09/18(日) 10:24:08.14 ID:y/wlKMgTo
今スレタイが思っていたのと違うのに気がついた
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/18(日) 10:36:59.23 ID:puPIoDxIO
乙です
これは先が気になる…
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/18(日) 18:33:57.59 ID:T7hNF3vl0
「はんっ!」

初老の男が隣で鼻を鳴らす。

「そんなの犯人に直接聞かなきゃ分かんねえよ。直接聞いても
分かんねえかもしんねえけどな」

「…………」

確かに、と若い刑事は無言のまま頷く。

もしこれが人の手によって行われたのならば、何故このような行動を
起こしたのかは犯人以外知り得ない。

けれど――――

「そんなのは、どんな事件でも同じ事だけど、ね」

「なんか言ったかあ?」

「いえ、なにも」

若い刑事はさっさと歩く初老の男に半歩遅れでついて行く。
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/18(日) 18:35:46.06 ID:T7hNF3vl0
現場を確認し、周辺の住民への聞き込み、まとまて上に報告、他にも
やる事は山積みだ。

無駄口を叩いている暇などない。

顔を強くバンバンと二度ほど叩き、気持ちを引き締めながら彼はその場
を後にした。
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/18(日) 18:41:34.98 ID:T7hNF3vl0


「ふぁぁぁぁぁぁぁ……」

とある閑静な住宅街のとある一軒家でボリボリと頭を掻きながら、
階段を降りる青年の姿があった。

時刻はもう昼過ぎである。

「おはよ〜」

「あらおはよう。朝ごはん出来てるわよ」

「ん、ありがと」

「それじゃ、お母さんもパート行ってくるから後ヨロシクね」

「りょ〜か〜い」
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/18(日) 18:59:23.90 ID:T7hNF3vl0
起きてくるのが少し遅かったのだろう。

母親はこれからパートがあるらしく、せかせかと用事を済ませ
それだけ彼に言うと、そのまま家を後にしてしまった。

青年は一人家に残された。

「う〜〜〜ん……」

ボリボリと頭を掻きながら、

「とりあえず、いつまでも寝間着のままじゃ良くないよな」

等と独り言を呟き洗面台に向かう。
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/18(日) 19:19:51.09 ID:T7hNF3vl0
「ふぃ〜〜〜」

バシャバシャと顔を洗いさっぱりし、自分の現状を確認する。
時計に目を見やると、もう昼前だ。

「あっちゃぁ〜、ちょっと寝すぎたなぁ」

青年は特に悪びれた様子も見せず、朝食と称された剥かれた
りんごを頬張りながら、相も変わらず誰に向かって話している
のか不明な独り言をつぶやく。

「ま、いっか」

なんとも変な男である。
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/18(日) 19:32:56.87 ID:T7hNF3vl0
それから1時間後。


朝食も取り、着替えも済ませた青年は外に出ていた。

「う〜〜〜ん、お日様が気持ちいいぜぇ!」

青年は伸びをしながら、太陽に向かって話しかける。

この男、独り言を言い続けないと死んでしまう病気なのか、ひたすら
誰と喋っているのか分からない会話をまだ続けていた。

「ふんふんふふ〜〜〜ん、ハロワが俺を呼んでいる〜♪」

しかもワケの分からない歌も歌っている。

本当にどこまでも自由な奴である。
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/18(日) 19:44:29.87 ID:T7hNF3vl0
――――彼の名前は迂羅内アタル(うらないあたる)。

性別、男。

23歳。

今をときめく無職である。

しかし、彼は別に無職になりたくて無職になった訳ではないことを
ここに宣言しておこう。

彼、アタルは大学卒業後、都内にあるそれなりの大きさの企業の
グループ会社に就職していた。

親も教授もそして彼自身も、これで下手に仕事で失敗をしない限りは
将来安泰だと思っていた。

しかし就職が決まり、仕事を始めたその矢先、景気が低迷し株価が暴落。

親会社である企業も窮地に立たされ、やむを得ずアタルの勤めている
会社を潰し、再生を試みたのだ。

その結果、彼は入社一年も経たぬうちに勤め先が無くなり、行き場
を失ってしまった。
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/18(日) 19:47:32.67 ID:T7hNF3vl0
まあ、当の本人は

「ふんふっふん、ハロワ、ハロワ〜♪」

あまり落ち込んではいないようなのだが、果てさて……。
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/18(日) 20:00:37.33 ID:T7hNF3vl0




「っと、なんかあっちの方騒がしいな?」

ハローワークに向かう途中、やけに進行方向が賑わっている事に、
アタルは気が付いた。

「なんだろ?」

元来、野次馬根性が備わっている彼は人波を割って、確認しに行く。

アタルにとって、ハローワークよりも目先の変わった事件の方が
優先順位が高いのだ。

「ふんふふ〜ん、なんじゃろな?」
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/18(日) 20:19:06.92 ID:T7hNF3vl0
この時のアタルは、まだ自分が向かっている先がとある事件の現場
などとは思ってもいない。

東京での生活が抜けきっていない彼は、こんな人だかりが出来る
なんて芸能人でもいるのか、それとも誰かが路上パフォーマンス
でもしてるのかと思ったのだ。

こんな都会から離れた片田舎で、そんな出来事は起こり得ないと
いう事を、アタルはすっかり失念していた。

そしてこういう田舎で……いや、この土地でこんな風に人だかりが
出来る一番の理由を見落としてもいた。


そう、殺人事件である。
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/19(月) 07:08:04.60 ID:Q5G57jUv0
「ブルーシート?」

現場を目撃したアタルが開口一番放った台詞がこれだ。

そう、彼の目の前に広がるのは黄色いテープが張りめぐらされ、
ブルーシートで玄関が覆われた奇妙な光景。

「なんだ、芸能人じゃねーのか」

若干悔しそうに顔を歪めるアタル。

「パフォーマーでもねえみてえだし」

まさか、あの黄色いテープがお触り禁止の意味ではあるまい。

それに大体、ブルーシートかぶせた出し物を思いつかない。
しかも一般住宅が立ち並ぶこんな場所で。
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/19(月) 07:13:25.60 ID:Q5G57jUv0
「あの〜なにがあったんです?」

隅の方でお喋りしている3人組みのおばさんに話を振る。

「殺人事件があったのよ」

「!?…………殺人事件、ですか」

「そうなのよ!怖いわよねえ」

「…………」

このときアタルは内心少し後悔しいていた。

まさか殺人事件の現場だなんて。
大人しくハローワークに向かっておけば良かったのに。

こういう場合……。
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/19(月) 07:16:27.90 ID:Q5G57jUv0
「あ、君!君からはまだ話を聞いてなかったね」

「げ」

中年のスーツを着た男が近寄る。

「警察だが、すこしお話を聞いても?」

「はい、まあ……」

こういう場合、近くに刑事がいるのはつきもので、そして
事情聴取されるのもままあることなのだ。
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