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少女「ハッピーバースデー、つかまえて」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/18(日) 02:20:56.56 ID:bGWjb4oAO
9月30日から三週間ほど前の、ある日。

僕が彼女に会いに行こうと決めた日があった。

僕はそれを、彼女に伝えた。

僕「……誕生日には」

女「え?」

僕「女の誕生日辺りには、会いに行くよ」

僕「絶対」

女「……本当?」

僕「うん。絶対行く」

女「まあ、当然ね。誕生日と言わずさっさとこっち来なさいよね」

まるで、ワガママなお嬢様みたいな口調で彼女は僕に言うのだった。

僕は笑いながら、彼女と話をしていた。

女「……あ、明日休みなんだからこっち来なよ。車で四時間くらいなんだから、僕ちゃんなら楽勝でしょ?」

電話越しの彼女は、明るく優しく、そしてイジワルだった。

いつもと一緒だ……。

そう僕は。

たとえ、これが絶対に報われない恋だとしても……僕は彼女に会いたかった。

彼女にもう一度……会いたかったんだ。
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暇人の集い @ 2024/04/12(金) 14:35:10.76 ID:lRf80QOL0
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ミカオだよ。 @ 2024/04/11(木) 20:08:45.26 ID:E3f+23FY0
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アルミン「どうやら僕達は遭難したらしい」ミカサ「そうなんだ」 @ 2024/04/10(水) 07:39:32.62 ID:Xq6cGJEyO
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/18(日) 02:28:31.26 ID:bGWjb4oAO
9月30日の昔。

今から昔に数えて季節が百つほど……めぐった秋の日に彼女は生まれた。

それは、離れた場所にいた僕には想像も出来ないくらいに遠い世界。

けっして知る事の出来ない、瞬間。

僕はそんな遠い昔に思いをはせていた。
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/18(日) 02:40:31.91 ID:bGWjb4oAO
僕(……彼女が生まれた日、か)

誕生日、誰にでもその瞬間はやってくる。

いや、生まれた後にはやってきた、と言うべきか。

僕(……でも毎年来るんだから、やってくる、でもいいのかな?)

女「……ちょっと。なに、いきなり黙りこんじゃって。どうしたのよ?」

僕「え、あ、うん。なんでも……」

女「そんなに私に会いたいの? もう仕方ないな〜、牛乳くらい奢ってあげるからさっさとこっちに来……」

僕「……なんで牛乳なんだよ?」

女「あ、もうその歳じゃあ身長も伸びないか。あははっ」

受話器の向こうから、無邪気な悪意の笑い声が聞こえた。
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/18(日) 02:45:59.57 ID:bGWjb4oAO
僕「……相変わらず。いつもの女だね、変わってないよ」

女「そう? 僕ちゃんだって変わってないでしょ? 今も昔も、ずっと」

僕「……」

僕自身は変わっているつもりだよ、と言いたかった。

でも、言えなかった。

僕「……変わった事なんていったら、年齢くらいだよ」

女「年齢、年齢……ね。あれ、僕ちゃんはずっと十代のままでしょっ? くすっ」

僕「ホント、変わらないね女は」

女「し〜らない。会ったら意外と変わっちゃってるかも、ね」

会ったら……か。

何年だろう、僕が彼女の元から離れてから。

どれだけの年月が過ぎていたのだろう……。
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/18(日) 03:10:05.44 ID:bGWjb4oAO
女「……半年」

僕「え?」

女「半年ぶりくらいだよね、会うのって」

僕「あ……えっと、そうだっけか?」

まるで心を見透かしたかのように、彼女が僕に言葉をかけた。

僕「半年……そんなものだっけか」

女「うん。最後に会った時は……まだ寒かったよね」

僕「……」

女「不思議だよね。時間なんて」

女「長いように感じても、あっという間」
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/18(日) 03:18:38.93 ID:bGWjb4oAO
女「だから、三週間だってあっという間だよね?」

僕「……どうだろうね」

僕はちょっとひねくれて答えてみた。

女「……別に、今来たいなら来てもいいんだよ? むしろ来い〜!」

僕「なんでそうなる!? だから、誕生日には行くって言ってるでしょ」

女「でもまだわからないんでしょ〜? だったら今来ちゃえば……」

僕「……ワガママ女」

女「はいはい、そんな悪口言っちゃダメですよ〜」

僕「……」

まるで、子供でもあやすみたいに。

彼女は優しく僕をバカにするんだ。

そんないつもの会話を……僕たちはこんな真夜中にしていた。
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/18(日) 03:29:37.20 ID:bGWjb4oAO
女「……あ、もうこんな時間」

僕「そろそろ切る?」

女「そうだね、電池も少ないし……そうしよっかな」

僕「ん」

女「じゃあ、またね」

僕「……また。電話、ありがとうね」

女「あはは、いいよいいよ」

僕「いつもみたいに出ないと思ってたから、ビックリだよ」

女「今夜はたまたま忙しくなかったんです〜」

僕「……大変だね。いつも遅くまで」

女「ま、ね」

受話器の向こうから、ちょっとだけため息が聞こえた気がした。

僕「……」

僕「じゃあ、また」

女「ん」
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/18(日) 03:38:05.86 ID:bGWjb4oAO
彼女の返事を最後に、電話が切れた。

今僕の耳を打ち付けているのは、無機質な機械音だ……。

僕は電源ボタンを押し、その無機質な音を終わらせる。

僕「……ふう」

そして、部屋に静寂とどうしようもない寂しさが訪れた。

僕はその寂しさのまっただ中にいる……。

僕「……」

シーン、と、僕の耳には聞こえている。

僕はなんとなく天井を見上げた。

僕「……」

彼女も、こんな寂しさを感じていたりするのだろうか……。
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/18(日) 03:58:31.34 ID:bGWjb4oAO
僕「寂しさ……いや、それは無いか」

だって彼女には。

将来を約束した恋人も、空白の夜を埋めてくれる友人だっているはずなのだから。

僕「……いるはず、か」

遠い場所に来てしまった僕には、もう彼女の事はわかっていないんだ。

僕「……」

自分でも、何を考えているのかよくわからない。

一種の放心状態のようだった。
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/18(日) 04:07:44.03 ID:bGWjb4oAO
僕「……寝るかな」

思考が止まる。

眠い証拠だ……。

僕はそのまま電気を消して、横になる。

こうしてまた眠れば、また朝が来る。

そして何度かそんな日々を繰り返せば……。

僕「彼女にもう一度……会える」

けっしてそれが、僕の生きる目的ではないのに……。

今の僕は彼女に会いたがっている。

不安だから、だろうか?

僕「……寝よう」

僕は余計な事を考えまいと、目を閉じた。
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県) [sage]:2011/09/18(日) 04:13:46.09 ID:GVMTteQno
ひさしぶりだな!
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/18(日) 04:17:58.13 ID:bGWjb4oAO
僕「……」

意識が飛ぶ。

僕は眠りの世界へと落ちていった。

次にこの目を開いたら……また彼女に近付く事が出来る。

僕は、そう信じて疑わなかった。

……。

僕(遠くで、救急車のサイレンが鳴っている)
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/18(日) 04:47:59.43 ID:bGWjb4oAO
……。

そして、9月30日。

今思えば、あの時……。

僕が彼女にメールの一通でもすれば、運命は変わったのだろうか?

9月30日……三週間後の誕生日。

今日、彼女が死んだ。

目を開いても、もう僕は彼女に会う事は出来なくなった……。


僕(ああ、僕は……)

夜の街を歩きながら、僕は救急車のサイレンを聞いていた。

左手には彼女へのプレゼント包みを持ったまま……。

ゆらゆらと、夜の街灯と一緒に揺れていた……。
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/18(日) 05:02:48.13 ID:bGWjb4oAO
僕「……」

今も僕の耳には、受話器から流れてくる友人の淡々とした声が響いていた。

彼女が……死んだ。

車の事故、だったらしい。

それ以上はよく聞こえなかった。

途中から頭が真っ白になって、それから……。

それから、どうしたんだっけか?
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/18(日) 05:11:16.25 ID:bGWjb4oAO
僕「……確か、久しぶりに来たこの町を歩きながら」

それから……。

「……くすくすっ」

僕「?」

「お兄さん、悲しい顔してますね」

後ろから笑い声が聞こえた。

僕は思わず振り返る……すると、その目に飛び込んできたのは。

少女「くすくすっ」

僕「……」

夜の町には似つかわしくない、小さな女の子がそこに立っていた。

その笑顔はまるで……。
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/18(日) 05:22:12.36 ID:bGWjb4oAO
僕「……なんだよ」

少女「わ、そんな喧嘩腰にならないで下さいよ」

正直、どんな気分かもわからないんだ。

僕(好きな人が、消えてしまった……そんな時に)

優しい言葉なんて。

少女「くすくす」

僕「……」

少女は何も言わず、笑っている。

小さな身体をした女の子、黒のロングスカートに……白いワイシャツ。

まるで、ピアノの発表会のような印象を受ける……こんな町の真ん中で。

少女「ふふっ」

少女はまた不気味に笑った。
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/18(日) 05:28:59.84 ID:bGWjb4oAO
僕「……」

僕は少女を無視するように、歩き出した。

少女「わ、わ、わ。ちょっと。待って下さいってば」

僕「……」

少女「どうしたんですか〜、そんな怖い顔して」

僕「……ついて来るなよ」

少女「もう〜。そんな怒ると女の子にモテませんよ〜」

女の子……女。

僕は自然と彼女を思い出してしまう。

少女「……ね、その手に持ってるのプレゼントか何か〜?」

少女が僕の左手を、クイッと引っ張る。

振り払えばいいのに……僕の手はそれをする事が出来なかった。

……グイッ。

僕「っ!?」

少女の手に力が込められ……僕の足は止められてしまった。
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/18(日) 05:38:02.13 ID:bGWjb4oAO
少女「ふふっ」

僕「……!」

少女「わあ、ケーキ。美味しそうですね。甘い物好きなんですか〜?」

僕「……は、離せよ」

少女「あ、名前が書いてある。えっと……し……?」

僕「っ!」

少女「この書き方、誰かのお誕生日かな〜?」

いつの間にか、少女はケーキの包みを開き勝手にそれを覗いていた。

僕「ち、ちょっとお前……!」
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/18(日) 05:45:36.62 ID:bGWjb4oAO
少女「ん〜、チーズケーキか〜」

少女は僕の言葉などお構い無しに、箱を開け中のケーキを取り出し、そして……。

少女「……ま、美味しいですかね〜。あれ、これってちょっと高級品?」

僕「な、なに勝手に食べてるんだよ。それは女のため……」

僕「ため……」

はあ。

そこまで言うと、僕の胸はまた虚しさでいっぱいになっていったんだ……。

僕「……」

少女「もしかして、なんかワケありですか?」

指についたケーキをペロッと舐めながら、少女は僕を見つめてきたんだ……。
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/18(日) 05:51:02.69 ID:bGWjb4oAO
少女「……あ、ごめんなさい。ケーキ食べちゃって」

僕「……今さら謝るなよ。勝手に食べておきながら」

少女「ふふっ、じゃあちゃんと弁償しますよ。ちょうど向こうにケーキ屋もありますし……」

少女「ああ、ケーキに書く名前は一緒でいいんですよね。し……」

僕「っ!!」

僕「ケーキはもう……いいんだよ……」

少女「あれ〜。なんか落ち込んじゃいました? ごめんなさいね、ケーキ……」

少女「ううん、ケーキのせいじゃないのかな。どっちかと言えば……」

少女「あなたは名前の方を気にしてるみたい、ですね?」

僕「……」

僕の足は完全に止まり、その場に立ち尽くしていた……。
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/18(日) 06:00:30.91 ID:bGWjb4oAO
少女「ま、ちゃんと弁償しますから。ささ、行きましょ行きましょ」

僕「……もう」

少女「ふふっ?」

僕「ケーキなんて、もういいんだよっ!」

少女「んっ?」

僕「そんな物買った所で……もう」

ケーキを食べてくれる人は、もういない。

いないのだから……。

僕「……」

少女「へぇ」

少女「そっかそっか、誕生日の彼女が死んじゃったんだ。ああ、あなたの……ふ〜ん」

僕「な……!」

少女は、彼女の死を口に出したんだ。

僕「死んだ……どうしてお前が知っている」

少女「くすくす」

少女「わかるんですよ、私には」
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/18(日) 06:10:03.03 ID:bGWjb4oAO
僕「わかる……だって?」

少女「ええ」

少女「人の死とか……そう言ったものはちょっと、ね」

僕「……」

少女「くすっ」

僕には、少女が何を言っているのかよくわからなかった。

僕「……」

こいつはただの少女じゃない。

それこそ、人間なのか……と疑ってしまうほどに。

少女の姿は、やはり不気味に思えてしまった。

少女「ねえ」

そして、それ以上に不可思議に感じたのが……。

少女「その人って今日死んじゃったの? ケーキ持ってるくらいなら……」

僕「……?」

少女「その人ってどんな人? 綺麗? 可愛い? 髪は長い? 短い?」

死んだ彼女の事を……なぜか色々と聞いてきたのだ。
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/18(日) 06:15:19.05 ID:bGWjb4oAO
しかしそれは、彼女自身の事を聞いている様子では、なかった。

少女「死んだ時間は……? 朝? 昼? それとも、さっき?」

少女「死因は? 溺死? 焼死? 事故死? それとも……自殺? 他殺?」

少女「知りたいなあ、その彼女の事……」

僕「……!」

一体、何なんだこの子は?

少女「ふふっ。何言ってるんだって顔してますね」

少女「単純に知りたいんですよ。そういうの……興味がありましてね」

僕「……さっき言ってたわかるってのは?」

少女「……ふふっ。秘密です」

僕「なんだよ、それ」
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/18(日) 06:21:22.76 ID:bGWjb4oAO
少女「もし教えてくれたら……」

少女「彼女ともう一度、会えるかもしれませんよ?」

僕「……え?」

少女「ふふっ」

会えるって……どういう事だよ。

僕「彼女はもう、いない」

少女「ええ、知ってますよ。今はもう生きていない」

少女「でも……昔は生きていた」

僕「……そんな当たり前の事」

少女「はい。だからこそ……生きてるのも、当たり前なんですよ?」

僕「……よく、わからない」

少女「ふふっ。簡単ですよ、今日じゃない昨日……昨日ならまだ彼女は生きている」

少女「当たり前、ですよね?」

僕「……ああ」

僕は彼女の話を食い入るように聞いている。
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/18(日) 06:36:24.88 ID:bGWjb4oAO
少女「そんな彼女に……もう一度会いたい」

少女「そうは考えませんか? 人間って普通……」

僕「彼女に……会える。生き返らせる事が出来るのか!?」

少女「……」

少女「……」

少女「くすっ」

少女はまた不気味に笑って、僕の方を見つめているんだ……。

少女「さあ? どうだろうね……私にもよくわからないんだ」

僕「わからないって……」

少女「でも。私にはわかるんですよ」

少女「もう一度彼女に……会えますよ」

僕「……」

少女「私が協力すればですけど、ね」

僕「お前は一体……?」

少女「くすっ」

黒いスカートをひらりとひるがえしながら……僕から目を背けたんだ。

そして少女が口を開く。

だって私は……。

少女「彼女を守らないといけないんですよ」

少女「どうあっても……ね」

少女の顔が、ニヤリと笑った。
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/18(日) 08:42:33.81 ID:PcORbUZIO
久しぶり
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/09/18(日) 10:06:19.40 ID:w/pkZCp8o
ふぅ…。
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国) [sage]:2011/09/19(月) 01:00:28.09 ID:iwJYTHkpo
うは、ときどき見に来てみるもんだな
なんてタイミングなんだ
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/20(火) 05:35:33.02 ID:a61mKmCAO
僕「守るって……お前は一体」

少女「ま、ま。そんな事はいいじゃないですか」

少女「まずは彼女を助ける……それが全てでしょ?」

僕「……」

はぐらかされた気もしたけれど、確かにその通りだ。

彼女を助ける、しかし……。
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/20(火) 05:41:40.99 ID:a61mKmCAO
実際にそんな事が出来るのだろうか。

彼女は既に死んでいて、それを守る事など……。

僕は半信半疑になりながらも、少女に問い詰めてみた。

僕「具体的な方法は……?」

少女「……」

少女「彼女が死なないよう……君が彼女を守るんですよ」

僕「はぁ?」

出てくるのは疑問の嘆きばかりだ。

僕の反応を予想していたかのように、少女は平然と話を続けている。

少女「いいですか、今日彼女は死ぬ。それをあなたが助ける……それだけです」

少女はまた同じような事を僕に言ったんだ。

僕「それはわかる……だから、もっと具体的に……」
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/20(火) 05:45:22.74 ID:a61mKmCAO
少女「ふふっ、そんなに彼女を助けたいんですか?」

僕「……そりゃあ、ね」

僕は迷わず返事をした。

だが、次の彼女の言葉が僕の気持ちを揺るがせた。

少女「へえ、逆に自分が死んじゃうかもしれないのに……ですかぁ?」

僕「え……」

僕が、死ぬ?

どういう意味だ。

それは、助けた彼女の変わりに僕が死んでしまう、という事だろうか?

少女「……どうしたの、青い顔なんかしちゃって」

この反応も当然と言った具合に、少女はまた知らん顔で僕に言葉を投げ掛けていた。
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/20(火) 05:59:30.14 ID:a61mKmCAO
僕「……彼女を助ければ、僕が死ぬ?」

少女「え? どうしてそうなるんですか?」

僕「違う……のか?」

少女「そりゃあもちろん。別に彼女を助けたからって、あなたの命が変わる事はありません」

少女「……もしかしたら、命の絶対数みたいなのを気にしたのかもしれませんけど」

僕(当たり)

今日消えるはずの命を一つ救ったのなら、代わりに僕の命が消えてプラスマイナスゼロ……そんな予想をしていたのに。

じゃあ、死ぬっていうのはどういう事だろうか?

少女「……正直な話、死ぬかもっていうのは一番極端な例です」

僕「?」

少女「いいですか? あなたはこれから時間に逆らって生きるという事になります。それはわかりますね?」

僕は……なんとなく、と曖昧に返事をした。
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/20(火) 06:12:41.46 ID:a61mKmCAO
普通の人間じゃあ絶対あり得ない事をするのだから、死んでしまうのも「当たり前」に起こりうる。

と、少女に説明された。

少女「……まあ、私に言えるのはこれくらいですかね」

僕「……」

少女「そんな不安そうな顔しないで下さいよ。死ぬかもっていうだけで、実際は結構大丈夫かもしれませんよ?」

僕「……本当に」

少女「はい?」

僕「本当に、女を生き返す事は出来るんだな? それだけは『かも』じゃあ困るからな」

僕は念を押すように少女に尋ねた。

少女「それは、もう。細かくは説明しないけど、彼女は死なないんだから……ね」

僕「……わかった。それは信じよう」

少女「覚悟、決めてくれましたか?」
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/21(水) 00:35:57.57 ID:9DOyG3EAO
僕は、ゆっくりと頷いた。

少女「……」

少女「じゃあ今から、具体的にどうすれば彼女を助けられるか……説明しますね」

少女「まず、彼女は今日の誕生日をとても楽しみにしていました……しかし、途中で死んでしまった」

僕「……」

少女「あなたが彼女を救う方法は、ただ一つです」

彼女の誕生日に、幸せを感じさせる事──。

僕「……え?」

一体どういう意味なのだろう。

僕は思わず、聞き返してしまった。

少女「今日の彼女には、幸せが足りなかった……たったそれだけの理由、よ」
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/21(水) 00:40:51.46 ID:9DOyG3EAO
僕「それだけの理由って、原因は車なんだろ?」

少女「それは死因です。直接の理由にはなってないんですよ」

僕「……話が飲み込めないよ」

少女「でも、信じるしかないと思いますよ。そうでないと今から起こる事についていくなんて、とてもとても……」

やれやれ、と言った具合で少女は僕を見ている。

僕も内心、仕方ないなと言った様子で話を続けている。

僕「……で、幸せにするにはどうすればいいんだよ」

少女「さあ? それは本人の感じ方次第ですからね」
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/21(水) 00:59:32.54 ID:9DOyG3EAO
僕「ここに来てそれは無いだろっ」

少女「落ち着いて、落ち着いて。幸せの感じ方なんて人それぞれでしょ?」

僕「そういう事じゃなくて……どうして幸せだと死ぬのを防ぐ事が出来るかって聞いてるんだよ」

少女「……」

少しの沈黙の後、少女は淡々と語り出した。

少女「……彼女が」

少女「彼女が、寂しいって言ってたのよ」

僕「……?」

少女「寂しいと死んじゃう、ウサギさんみたいな性格。だから彼女が幸せならば……」

僕「……ようするに、真面目に話すつもりは無いってわけか」

少女は、またニヤリと笑った。

少女「あはは、だって。普通に全部話すとややこしくなっちゃうんですもの」

ケタケタと笑う少女の顔と、神妙な顔付きで僕と話していた顔……そのどちらもが、今は恐ろしく思える。

でも……。
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/21(水) 01:06:48.58 ID:9DOyG3EAO
少女「でも、彼女を死なせないためには私を頼るしか無いんですよ?」

僕「……」

少女「ふふっ、わかってるって顔してますね。ま、とにかく……」

少女「あなたは、誕生日の彼女を幸せにしてあげる事。それは例えば……恋人としての幸せなどじゃなくても、大丈夫」

少女「彼女が満たされれば、命の器も満たされます……わかりましたか?」

僕「……ああ」

もう、話は大方聞き出した。

あとは本当に女を救えるのかどうか、だけだった。

少女「……決めた顔ですね。では……」

少女は僕の頬に触れたかと思うと、ポン、ポンと軽く二回叩いたのだった。

少女「……向こうで何かあったら、私も駆けつけ」

そこで、少女の声は途絶えた……。

視界から景色が消える。

まるで、テレビを消したかのように、プツリと情景の糸が切れた。

そして……。

……。

僕「……あれ?」

次に目覚めた時、僕は自宅のベッドの中にいたのだった……。
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/21(水) 01:30:13.55 ID:9DOyG3EAO
僕「……」

さっきまでの暗い町並みから一転、明るい朝の日差しを浴びている自分の姿。

格好はそのまま、記憶もそのまま……。

僕「時間は、いつだ?」

僕はパッと携帯電話を手に取り、日付と時刻を確認した。

……一応、デジタルは9月29日の朝9時と表示されていた。

僕「……合ってるのか、これ」

不安になり僕はテレビをつけてみた。
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/21(水) 01:35:05.77 ID:9DOyG3EAO
テレビから流れる朝のニュース内では、どこかで見た事のあるような情報ばかりが流れてくる。

昨日もこの番組を見ていた気がする……なんとなく覚えているもんだな。

そして、新聞を読み上げるコーナーで今日の日付が映る。

そこには、9月29日とはっきり新聞に活字が印刷されているのだった。

僕「……今日はやっぱり、昨日なのか」

我ながら、変な事を口走る。

まだ実感は沸ききらないが……どうやらここは、本当に女の誕生日の一日前らしかった。

僕はしばらくテレビをつけたまま、ボーッとそれを見つめていたのだった……。
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/21(水) 01:37:52.28 ID:9DOyG3EAO
テレビから流れる朝のニュース内では、どこかで見た事のあるような情報ばかりが流れてくる。

昨日もこの番組を見ていた気がする……なんとなく覚えているもんだな。

そして、新聞を読み上げるコーナーで今日の日付が映る。

そこには、9月29日とはっきり新聞に活字が印刷されているのだった。

僕「……今日はやっぱり、昨日なのか」

我ながら、変な事を口走る。

まだ実感は沸ききらないが……どうやらここは、本当に女の誕生日の一日前らしかった。

僕はしばらくテレビをつけたまま、ボーッとそれを見つめていたのだった……。
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/21(水) 01:38:29.01 ID:9DOyG3EAO
テレビから流れる朝のニュース内では、どこかで見た事のあるような情報ばかりが流れてくる。

昨日もこの番組を見ていた気がする……なんとなく覚えているもんだな。

そして、新聞を読み上げるコーナーで今日の日付が映る。

そこには、9月29日とはっきり新聞に活字が印刷されているのだった。

僕「……今日はやっぱり、昨日なのか」

我ながら、変な事を口走る。

まだ実感は沸ききらないが……どうやらここは、本当に女の誕生日の一日前らしかった。

僕はしばらくテレビをつけたまま、ボーッとそれを見つめていたのだった……。
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/21(水) 01:47:38.92 ID:9DOyG3EAO
少女「いいの、そんな呑気にテレビなんか見てて」

突然、僕の横から声がした。

いきなり声をかけられたもので、僕の身体はビクリと反射してしまう。

少女「やあ」

……振り向くと、そこには先ほどの少女がベッドに腰かけている。

僕「な、なんでここに……!」

少女「なんでって。様子見ですよ、あなたがどんな動きをするか……ね」

僕「……高見の見物か?」

少女「ん〜、ちょっと違いますね。でも助けられるか部分は助ける、とも言ったはずですけど?」

僕「それは、まあ……」

少女「それに、時間を無駄にするより動けるだけ動いた方が後で後悔しませんよ?」

少女「もう、彼女が死ぬスケジュールはわかってしまってるんですから……」

沈んだ口調で、少女は僕に言い聞かせた……。

テレビから流れるニュースの雰囲気とは、ひどく相性の悪いように聞こえる。

そんな落ちた話題を少女は口走る。

少女「でも事実だから、ね」

だからこそ、余計に少女の言葉が嫌に感じたんだ……。

僕の胸に、モヤモヤした霧のような物体がたまったのがわかった。
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/21(水) 17:37:41.15 ID:9DOyG3EAO
少女「で、これからどうするんですか?」

僕「……なあ、昨日と同じように行動しても女が死ぬ可能性は変わらない、よな?」

少女「全く同じ行動なら、そうなるでしょうね。ま、私といるんで微妙な『ズレ』は起こるでしょうけど。それでも……」

僕「……ふむ」

少女「ちなみに、昨日は何をしてたんですか?」

僕「プレゼントを買ったくらいかな。女のいる町に向かったのが明日で……」

少女「大きな出来事はそれくらいですかね?」

僕は、うんと頷いた。
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(島根県) [sage]:2011/09/28(水) 11:44:39.49 ID:C5pfWgACo
こっちでやってたのか
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/09/30(金) 04:24:02.66 ID:mz0NX9PGo
理由ぐらい書いてけや糞が
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/30(金) 10:55:36.13 ID:MXuObQEIO
逃げた?
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/09/30(金) 17:57:20.60 ID:OcR9g6Jx0
前作で30日って言ってたから来てみたら・・・
どうしたんだろ
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国) [sage]:2011/09/30(金) 21:51:24.07 ID:v7+GBd8Xo
誕生日になっちゃったよ
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/10/04(火) 00:22:26.23 ID:v4ayE7rB0
前に何書いてた人?
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