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死神「君の命はあと三日だよ」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/09/29(木) 23:06:37.37 ID:Fs558s+AO
即興

2日ぐらいですぐ終わる

※死神は野郎
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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714054765/

渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714052788/

二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714049241/

佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/09/29(木) 23:10:28.75 ID:Fs558s+AO
死神「こんにちは」

男「……? こんにちは」

死神「いきなりだけど、君は死にます」

男「いきなりすぎるなオイ」
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/09/29(木) 23:14:37.07 ID:Fs558s+AO
死神「驚かないんだね」

男「驚いたよ、まずお前の存在感のなさに」

死神「そりゃあ僕は死神だから。なくて当然」

男「死神?」

死神「うん、死神」

男「死神ってアレか、鎌持つやつか」

死神「見る?」

男「見るったって、どこにあるんだよ」

死神「君の心の奥にそれはあるんだよ」

男「気持ち悪いなお前」

死神「自覚してる。慣れないものはするもんじゃないね」
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/09/29(木) 23:17:55.70 ID:Fs558s+AO
男「……おい」

死神「どうかした?」

男「いつの間にそんなでかい鎌持ってたんだよ」

死神「今さっき取り出したから持っているんだ」

男「取り出しただぁ?」

死神「鎌を意識しながら空間に手を伸ばすと気づいたら手に持ってる」

男「便利だな」

死神「まあね」
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/09/29(木) 23:21:06.93 ID:Fs558s+AO
男「でだ、死神」

死神「うん?」

男「俺が死ぬ云々は本当か?」

死神「本当だよ。僕が嘘をつくような顔をしているかい?」

男「自信を持って言える。うん!」

死神「酷い!」

男「娘か息子、どちらを助けるか聞かれたら沈黙しそうな顔してる!」

死神「正解だよそれ!」
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/09/29(木) 23:24:26.14 ID:Fs558s+AO
男「どうして話が脱線するんだろう」

死神「余計なことお互いに言ってるからじゃない?」

男「お前が原因だな」

死神「君の方こそ」

男「…本題に戻るぞ。つまりお前は今から俺の命を取るんだな?」

死神「ああ、今ではないんだ」

男「は?」

死神「君の命はあと三日だよ」
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/09/29(木) 23:27:41.41 ID:Fs558s+AO
男「三日?」

死神「まあまあいい長さだろう?」

男「いや良く分からないけど…俺、三日も生きれるの?」

死神「はい?」

男「あと三日も生きれるんだなって」

死神「ちょっと何言ってるか分からないです」

男「いや、薄々近いうちに死ぬなぁとは思ってた」

死神「だからエロ本とか片付けていたんだね、納得」

男「勝手に憶測建てて勝手に納得するなよ」

8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/09/29(木) 23:30:50.41 ID:Fs558s+AO
死神「生に執着がないんだね、君は」

男「執着あるなしの問題じゃない」

死神「じゃあどういう問題?」

男「少し前から未来のビジョンが描けないんだ」

死神「ビジョン」

男「あるだろ? 二十歳になったらこうしてるとか、三十路になったらああしてるとか」

死神「ふぅん」

男「聞いておきながらまるで興味なさそうだな」
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/09/29(木) 23:37:55.85 ID:Fs558s+AO
死神「だって僕にはもう未来はないもの。将来のビジョンとか無いし」

男「未来がない?」

死神「死んでるもん、僕。肉体は土の下」

男「死んで、えっ? 本当に死神なのか?」

死神「酷いやこの人! ずっと僕が死神だとして話が進んでると思ってたのに!」

男「もしかしたらイタい厨二患者が話しかけて来てるのかもとか考えてた」

死神「さっきまでの会話は?」

男「半信半疑」

10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/09/29(木) 23:40:12.82 ID:Fs558s+AO
死神「しばらく人間信じられねぇ! この裏切り者!」

男「鎌振り回すな! あぶねーだろうが馬鹿!」

死神「パートナーがいれば! パートナーがいれば!」

男「誰だよそのパートナー! いいから落ち着けよ!」

死神「うん」

男「だからっていきなり落ち着くな!」

死神「人間って不思議で不条理」

男「その言葉そっくりそのまま返してやるよ!」
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/09/29(木) 23:43:53.88 ID:Fs558s+AO
死神「死神って信じられないならほら、手を握ってごらんよ」

男「ん。……あれ?」

死神「掴めないだろ?」

男「あ、ああ」

死神「ちなみに女の子のハートもキャッチできないんだ」

男「知るか」

死神「しようとしたことないから仕方ないよね」

男「なんなんだよお前もう」

死神「死神」

男「知ってるわ!」
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/09/29(木) 23:49:24.95 ID:Fs558s+AO
死神「まあ、ぶっちゃけ君が自分の余命聞いても驚かないの知ってた」

男「…なんでたよ」

死神「直感だよ。何年か続けていれば分かるようになるんだ」

男「へぇ」

死神「で、僕が君に余命を教えた理由。聞きたい?」

男「聞いてもらいたいんだよな?」

死神「そうだけど」

男「もうちょっと言い訳言うぐらいはしろよ…」
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/09/29(木) 23:53:38.19 ID:Fs558s+AO
死神「君、未練あるだろ」

男「のれん?」

死神「布じゃないよ未練だよ」

男「未練たって……俺そんなのないから」

死神「嘘つき。あるくせに」

男「っ」

死神「飛び出した家に住み続けているであろう両親」

死神「それから別れた彼女」

死神「それから、ああ、友達にも一目会いたいんじゃないか?」

男「―――」

死神「まだ未練がないと言い張るの?」
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/09/29(木) 23:57:46.27 ID:Fs558s+AO
男「うっせぇよ……!」

死神「……」

男「人の問題ごとに首突っ込んでほじくり返して、それの何が楽しいんだ!?」

死神「問題って、やっぱり気にしていたんじゃないか」

男「うるせぇっ! お前に何が分かる!」

死神「君の細かい事情なんか分からないよ」

男「じゃあなんでそんなこといいやがる!」

死神「未練を残して欲しくないから」
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/09/30(金) 00:02:28.93 ID:zKPz3a6AO
男「どうなるんだよ、未練残すと」

死神「大きな未練を抱えた魂は死神になる」

男「え?」

死神「僕も未練を残した」

死神「君には死神になって欲しくない」

死神「だから声をかけた」

死神「怒らせてごめんね。でも、こうでもしないと君は動かない」

死神「このままだと死んで後悔する」

男「後悔――」

死神「君の心の奥底ですっと引っかかっているんじゃないのかな?」
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/09/30(金) 00:05:21.08 ID:zKPz3a6AO
死神「今更何かポカしようが――あと三日だよ?」

男「そう、だな」

死神「やってみるだけやってみなよ。その為に僕は姿を現したんだ」

男「……」

死神「選べ。死神か、清算か」

男「………」
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/09/30(金) 00:08:30.63 ID:zKPz3a6AO
男「…会ってちょっとしかたってない奴にタメ語で話しかけて」

男「死神だなんだイタいこと言って」

男「わざと人を怒らせて命令して……」

男「誰がお前と同じ死神になるかよ!」

男「清算してやらぁ! 今すぐにだ!」

死神「…良かった。伝わってくれたんだね」

男「ああ」

死神「計画通り」

男「その黒い顔やめろ」
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/09/30(金) 00:11:47.38 ID:zKPz3a6AO
---

死神「で、どこに車で向かってるの?」

男「まず何ちゃっかり乗ってるんだよ」

死神「いいじゃん。それに車内なら僕と話しても漏れないから」

男「なんか不都合が?」

死神「霊感持たない人だと僕の姿見えないんだよ」

男「見えない?」

死神「声も聞こえない」

男「聞こえない?」

死神「だから、外から見ると独り言みたいだよ」

男「先に言えやぁああああ!!」

死神「安全運転!安全運転!」
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/09/30(金) 00:16:01.18 ID:zKPz3a6AO
男「『晩年あの人見えない何かと対話してたのよー』とか噂になるな!」

死神「人の噂も七十五日。気づいたら無くなってるよ」

男「俺余命三日! こっちが亡くなっとるがな!」

死神「ははは、君は楽しいね」

男「俺は楽しくない! 絶対噂たつ!」
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/09/30(金) 00:20:56.71 ID:zKPz3a6AO
死神「………」

男「…………」

死神「で、どこに向かっているの?(二回目)」

男「実家だ」

死神「ふぅん、まず実家からか」

男「一番厄介で――一番気になってるしな」

死神「ほほう。ショートケーキのいちごは最初に食べる派だね?」

男「頼むから真面目に聞いてくれよ」

死神「ごめん。ついテンションがあがったから」

男「テンション上がるのが…お前も……」
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/30(金) 08:54:21.01 ID:zKPz3a6AO
死神「遠いね。あと田んぼの風景が増えてきた」

男「片道二時間だからな。農家なんだよ俺んち」

死神「二時間か。時間配分とか考えているの?」

男「そうだな…。なあ、俺は何時に死ぬんだ?」

死神「えーと」

男「………」

死神「………」

男「……?」

死神「それは僕にも分からないかな!」

男「おい!」

死神「直に分かるよ」

男「まさかの丸投げしやがった」
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/30(金) 09:01:09.85 ID:zKPz3a6AO
死神「いつもパートナーが指令書預かってて…手元にないんだ」

男「そのパートナーさんのほうが良かったな、個人的に」

死神「無口無表情無愛想の無揃いですが」

男「やだなそれ」

死神「本当はパートナーも来るはずだったんだけどね…ちょっと用事入って」

男「用事? まさか、大きな事故が起こるから事前に集まってるとか」

死神「そんなことじゃないよ」

男「じゃあなんだよ」
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/30(金) 09:05:38.02 ID:zKPz3a6AO
死神「報告書書いてる」

男「報告書?」

死神「あの子、また物壊しちゃったから」

死神「あとは上司の雑用に駆り出されてるのかな?」

男「物壊すって…ドジっ子さんなのか?」

死神「無口無表情無愛想だよ? どんなギャップだよ」

男「ギャップありすぎるな」

死神「回収する時に邪魔が入ってね。払ってたら色々と鎌で切断してた」

男「怖ぇ!」
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/30(金) 09:08:07.85 ID:zKPz3a6AO
死神「不穏なんだ。最近ずっとさ」

男「大変なんだな」

死神「別に。人と話すのが疲れる」

男「俺もお前相手にすると疲れるよ」

死神「ありがとう」

男「褒めてないからな? どう考えても褒めてないぞ?」

死神「ブレがあるんだよ。生きてる人と僕らの認識に」

男「……」
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/30(金) 09:17:12.88 ID:zKPz3a6AO
死神「『どうして死にたくないんだろう』と思ってしまう」

男「死ぬのが嫌だからだろうが。それじゃ駄目なのか」

死神「分かってはいるけど理解ができない」

男「難儀だな」

死神「本当に。怒りを買われることもしばしば」

男「受け流しそうだけどな、お前の場合」

死神「………」

男「? どうした、怒ったか?」

死神「………正解っ! 一千万!」

男「みのさんかよ! まどろっこしいわ!」

死神「売られた喧嘩は転売する主義で」

男「転売するな」
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/30(金) 09:39:52.45 ID:zKPz3a6AO
死神「転売してそれを遠くから見るのが楽しい」

男「最低だな」

死神「まあ、売られた直後にパートナーが一蹴するからそんなことないけど」

男「パートナーさん強ぇー」

死神「強いよパートナーは」

男「…そうだ。お前、名前は?」

死神「名前?」

男「いつまでも『お前』じゃ嫌だろ」

死神「そうかな」

男「そうだよ。名乗りたくないならいいが」

死神「名乗る名乗らない以前に名前忘れちゃったから」

男「忘れた?」

死神「生前の記憶もね。好きなように呼んでいいよ」
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/30(金) 09:45:25.65 ID:zKPz3a6AO
男「好きなようにって…名前無くて支障はないのか?」

死神「ないかな。今のところは」

男「仮名とかはないのかよ」

死神「あー、短期間だけあるね。学校潜入した時に」

男「潜入って…まあ、そちらさんの事に首突っ込まないが」

死神「神無月。神無月大地」

男「神無月…死神だから神を入れたんだな」

死神「言われればそうだね。大地は適当だろうね」

男「神のいない月の大地って…」

死神「深い意味はないんじゃないかな。上司はそういい人だから」
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/30(金) 09:56:35.54 ID:zKPz3a6AO
男「じゃあ神無月な」

死神「カンちゃんって呼んでね!」

男「誰が呼ぶか! お断りだ!」

死神「じゃあ君はアイちゃんね!」

男「ヤッターマン出動よ! って言わせんなバーカ!」

死神「ノリいいね」

男「うるせーよ馬鹿」

死神「バカウケっておいしいのかな」

男「知らねえよ会話統一しろよ」

死神「それは無理なお願いだ」

男「ああああ殴りてええええ!!」

死神「安全運転!安全運転!」
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/30(金) 10:57:20.66 ID:zKPz3a6AO

死神「ここが君の家?」

男「違う。パーキングエリアだ」

死神「ぱーきんぐえりあ?」

男「…休憩所だよ。知らないのか?」

死神「あの地区から出るのは稀だし、車使わないからね」

男「じゃあ普段の移動手段はなんだよ」

死神「徒歩」

男「疲れるだろ…」

死神「疲れる肉体がないから問題ナッシング」

男「ああそうかい。ほら、出るなら出ろ」
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/30(金) 11:13:55.51 ID:zKPz3a6AO

男「トイレ行くから」

死神「ついていこうか?」

男「やめてくれ」

死神「遠慮せずに」

男「やめて」


幼女「ママー、なんかあの人誰かと話してるー」

ママ「しっ、見てはいけません」


男「………」

死神「おやおや」

男「泣きたい」

死神「泣いちゃえ泣いちゃえ」

男「他人事すぎるだろ!」
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/09/30(金) 11:22:16.61 ID:zKPz3a6AO

男「ふう」

死神「さっぱりしたみたいだね。今は賢者モード?」

男「んなわけないだろ」ペシ

死神「あいたっ」

男「…さわれた…だと?」

死神「君がトイレに行ってる間に上と連絡してね」

死神「一定期間、物体として存在できるようにして貰ったんだ」

男「…便利だな」

死神「上司はけっこう緩いんだ。勤務時間中に寝るし」

男「いくらなんでも緩すぎるだろ」

死神「他人に甘く自分に優しい人だから」

男「マジかよ」
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/30(金) 11:31:27.21 ID:zKPz3a6AO
男「中も寄ってくか」

死神「うわぁ、お店がたくさんだ」

男「こういうところは初めてか」

死神「うん」

男「実家にいくなら土産でも買ってこうか…何がいいと思う?」

死神「このジンギスカンキャラメルってやつ」

男「ご当地ものじゃねえし自爆臭がするから普通の饅頭でいいな」

死神「あう。しかし土産なんて、マメな人だね」

男「…最後だしな」

死神「最後でもさ。僕ならフラッと行くだけだと思う」

男「小学校の頃は思いやりのある子って評価されたことあんだよ」

死神「二十歳中ごろの大人が何を言ってるのやら」

男「うるさい」
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/09/30(金) 11:43:01.54 ID:zKPz3a6AO

死神「そして再び車内」

男「ほれ」

死神「パン?」

男「食えないならいいが、暇だろ」

死神「食べれるよ。ありがとう」

男「どうも」
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/09/30(金) 14:45:14.24 ID:zKPz3a6AO

男「………」

死神「………」

男「………」

死神「………」

男「……着いた」

死神「そう、行ってらっしゃい」

男「神無月は?」

死神「今は物体化から見えてしまうよ」

男「いいじゃねーか、別に」

死神「なんて説明する? 息子かい?」

男「さては人と話したくないだけだな」

死神「うん、その通り」
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/09/30(金) 14:48:43.17 ID:zKPz3a6AO


死神「真っ直ぐ家に行ったか…」


死神「ふぃー」


死神「ここまで会話するなんで久しぶりだよ」


死神「あの子は今頃何してんのかなぁ」


死神「上司の部屋を容赦なく片付けていたりして」


36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/30(金) 18:01:12.58 ID:zKPz3a6AO
――――

男「ただいま」

死神「ジャスト四時間。いいの?」

男「時間がないからな。――話すこともないし」

死神「家族なのに?」

男「家族だからだ」

死神「よく分からない」

男「分からなくていい」

死神「吹っ切れた感じがするね」

男「ついでに親父の血管も切れていたがな」

死神「ははは」

男「笑うな」

死神「あはははは! あははははははっ!! やっべ苦し!!」

男「大笑いするなよ!」
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/09/30(金) 19:12:16.93 ID:WxdKXWY3o
これをかいてたんすか先生
38 :何故バレた :2011/09/30(金) 20:29:52.18 ID:zKPz3a6AO
死神「次の予定は?」

男「帰って会社仲間と飲む」

死神「言われて気づいた。会社どうしたの?」

男「休みだよ。今さらの夏休み」

死神「季節的には秋休みだよね」

男「ただあれって夏休み短縮されるらしいぜ」

死神「知らなかった」

男「でも良かったよ休みで。大きなイベント事も終わった後だし」

死神「じゃなかったらこんなことできないもんね」

男「休みの初っぱなから死にます言われたときは一瞬どうしようかと思ったが」

死神「なんとも言えない」
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/09/30(金) 20:34:29.00 ID:zKPz3a6AO
男「先のばしにしていたからな、ずっと。いい機会だ」

死神「両親と何話したの?」

男「秘密だ」

死神「早く童貞卒業しなさいって?」

男「し、してるわ!! 何いってんだよお前!!」

死神「早く童t」

男「二度も言うなああああああ!!」

死神「安全運転!安全運転!」
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/09/30(金) 20:39:00.18 ID:zKPz3a6AO

死神「ふー…交通事故で死ぬつもりかい?」

男「誰のせいだ誰の」

死神「だいぶ両親怪しんだんじゃない?」

男「まだ続けるか……ああ。どうしたんだって」

死神「なんて言ったの?」

男「『今までの礼を言いに来たんだよ。ありがとうな』って」

死神「ぶっ」

男「何故笑う!」

死神「立派な死亡フラグじゃん、あ、やばい笑いが」

男「あながち嘘ではないけどな! 笑うほどじゃないだろ!」
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/09/30(金) 20:44:56.47 ID:zKPz3a6AO
死神「落ち着いた。四日後には虫の知らせだったとか言われてるよ」

男「ったく……神無月はどうなんだよ?」

死神「何が?」

男「両親と仲は良いのか……っと」

死神「……」

男「悪い、そんなつもりじゃなかった。生きて…ないんだな」

死神「気にしてないし、両親に殺された類いではないよ」

男「……そうか」

死神「そもそも覚えてなんか、いないから」
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/09/30(金) 21:56:05.38 ID:zKPz3a6AO
男「記憶は戻るのか?」

死神「死神をしていれば、いつかはね」

男「記憶が給料みたいなもんか」

死神「なら僕はすでに死神じゃないはずだよ」

男「……何年それやってんだ?」

死神「二十年ぐらい」

男「そんな長くか!?」

死神「記憶が戻らないんだもん。戻る早さはまちまちなんだよね」

死神「死神をしているのは生前を思い出すきっかけ作り、と考えてる」

男「大変だな、神無月も」

死神「生きている君らに比べればそうでもないさ」
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/09/30(金) 22:17:58.34 ID:zKPz3a6AO
男「達観してるな」

死神「肉体年齢も合わせると君よりは生きてるからね。や、死んでるか?」

男「どっちだっていい」

死神「そうだね。言葉遊びとか好きだけど苦手だ」

男「さ、帰って来たぞ」

死神「酒を飲むにはいい時間だ」

男「お前はまた車で待機か?」

死神「んーん。仕事があるから一旦君から離れる」

男「仕事って…他の用事もあるのになんで俺に引っ付いてたんだよ」

死神「今日は今からの一件だけだったから」

男「要するに暇だったんだな?」
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/09/30(金) 22:22:56.66 ID:zKPz3a6AO
死神「暇つぶしに死神候補を減らせるなら楽なもんだよ」

男「あ……」

死神「50パーは暇つぶしだったけど」

男「謝れ! 悪いこと言ったなぁと後悔しかけた俺に謝れ!」

死神「早とちりした君が悪いんじゃないか!」

男「逆ギレかよこの野郎!」

死神「早とちりと塵取りって似てるよね!」

男「あ、そうだな…って感心しかけたじゃねえか!」

死神「素直に感心しててよ!」

男「ああああ、話が進まねえなあオイ!」
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/30(金) 22:24:10.07 ID:zKPz3a6AO
2日以内に終わらねえ…
もうちっとだけ続くんじゃ
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/30(金) 22:34:59.11 ID:3VkYC1IAO
おつおつ
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/10/01(土) 07:43:29.70 ID:mdRxoJGAO
男「友人と会うべく俺は行くが」

死神「用事が終わったらまた会おうね」

男「マジで暇つぶしだな…集合場所とかは」

死神「僕のほうから君を見つけるよ」

男「一昔前の恋愛映画の宣伝みたいだな」

死神「死期が近い人を僕らは察知できるんだ」

男「ああそうかい」

死神「時間を大事にしなよ。じゃ」

男「……言われずともだ、バカ」
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/10/01(土) 08:24:42.26 ID:mdRxoJGAO
死神「こんばんは」



死神「僕? 僕は…直に分かるよ」



死神「へぇ、ぬいぐるみ貰ったんだ」



死神「可愛いね。一人が寂しくないように、か」


死神「えっ? 胸が痛んできた?」



死神「ナースコール押さなきゃ……いいの?」



死神「死んじゃうよ?」


死神「……そっか」



死神「一応、押すよ。間に合わなくてもさ」



死神「おやすみなさい、いい夢を」



死神「……僕は天使じゃないよ」

49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/10/01(土) 08:55:04.06 ID:mdRxoJGAO
男「よ、久しぶり」



男「ああ? 何か変? 気のせいだろ」



男「そんなことより飲もうぜ」



男「心配すんな、今日はおごりだ。俺の」



男「だからといってそれかよ! 遠慮ねえやつらだな!」



男「いいよもう、俺だって飲みまくるからな!」
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/10/01(土) 09:04:45.71 ID:mdRxoJGAO
男「あーあーこんなに酔っちまって……」



男「全く、お前らは……。これからが心配だよ…」



男「おう。また……飲みに、行こうな」



男「タクシー呼んだから乗れ」



男「ああ、奥さんによろしく」



男「……」

男「……」

死神「終わった?」

男「うわあ?!」

死神「壁をすり抜けたぐらいで大げさな」

男「そりゃ驚くわ! その、物体化はどうした!」

死神「解除したよ?」

男「はぁぁぁ…ついてこねえわ、やっぱ」
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/10/01(土) 09:50:00.26 ID:mdRxoJGAO
>>50訂正

×男「はあ…ついてこねえわ、やっぱ」

○男「はあ…ついてけねぇわ、やっぱ」
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/10/01(土) 14:19:15.88 ID:mdRxoJGAO
男「あとはもう、明日だな」

死神「夜中じゃ起きてる人いないもんね」

男「流石に明後日死ぬといえども他人の睡眠は妨害できないからな…」

死神「まあね」

男「それに非常識だ」

死神「非常識か」

男「死神には常識はないのか?」

死神「それなりにはあるよ?」

男「本当かよ」

死神「………多分?」
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/10/01(土) 17:02:28.21 ID:mdRxoJGAO
男「多分って。まあなんか神無月らしいがな」

死神「一日で僕が分かってたまるかい」

男「大雑把で無責任なのは分かったが」

死神「うぅ」

男「どーだ、ぐうの音もでないだろ」

死神「ぐう」

男「出たよ! ぐうの音出ちゃったよ!」

死神「ざまぁ」

男「てめぇ物体化しやがれ! 殴る!」
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/01(土) 22:25:29.20 ID:mdRxoJGAO
男「家についた」

死神「いたって普通のアパートだね」

男「一人暮らしの男にはいいぐらいだろう?」

死神「うん」

男「あー疲れた…寝る」

死神「おやすみ。僕も帰らなきゃ」

男「お前は寝ないのか?」

死神「僕らに睡眠はいらないよ」

男「辛くないか?」

死神「何が?」
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/01(土) 22:31:12.18 ID:mdRxoJGAO
男「寝なきゃ一昨日昨日今日明後日、ずっと続いたままじゃねえか」

死神「そうだね」

男「日の区切りができないじゃないだろ」

死神「そういわれればそうかもね。でも辛いとは思わないよ?」

男「…やっぱりお前のこと理解できなかったみたいだな」

死神「ほらみろ」

男「ドヤ顔するな」
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/01(土) 22:49:08.34 ID:mdRxoJGAO

―――

死神「やあ」

少女死神「……」

死神「報告書終わったの?」

少女死神「まだ」

死神「そうかい…壊しすぎたんだよ、君」

少女死神「やりすぎた」

死神「やりすぎたのレベルだろうか」

少女死神「言うことが」

死神「ん?」

少女死神「無理をしないこと」

死神「…注意というか気遣いなんて君らしくもない」

死神「あ、斬らないで下さい」
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/01(土) 22:53:04.76 ID:mdRxoJGAO
少女死神「……彼に」

死神「……」

少女死神「彼に感情移入のしすぎは良くない」

死神「うん、分かってる」

少女死神「それで壊れた死神を私は知っている」

死神「君は…僕を心配してくれているんだね」

少女死神「それが何か問題でも」

死神「…そこは恥ずかしがって赤面するとこじゃないかなぁ」

死神「あ、いえ、何もないです」

―――
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/02(日) 20:25:13.08 ID:vR+YNBPQo
支援
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/10/02(日) 23:53:22.20 ID:ORXdufvAO


男「!」

男「うわぁ…」

死神「おはよう。どうしたの?」

男「起床が朝の九時……」

死神「で?」

男「時間無駄に消費した……」

死神「仕方ないじゃないか。人間は八時間寝ないといけないんだろう?」

男「それは小学生の話だ」

死神「おや。そうだっけ」

男「………って、いたのかお前!」

死神「おそっ!」
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/10/03(月) 00:05:12.13 ID:v7ZXZ1eAO
男「あーちくしょう……」

死神「何まだゴロゴロしてんだい。やることあるんじゃないの?」

男「今してるんだよ」

死神「わけがわからないよ」

男「決心の時間が欲しいんだ」

死神「なんの決心?」

男「…元カノに会う決心だ」

死神「ふーん」

男「興味ぜんっぜんないなあ!」

死神「じゃあ興味持とうか? 根掘り葉掘り聞くよ?」

男「あ、やっぱ興味持たんでいい」
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/10/03(月) 00:41:21.19 ID:v7ZXZ1eAO
死神「でもさ、元カノ会ってくれんのかな?」

男「今からメールする」

死神「行動おっそ」

男「うっせ」
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/03(月) 07:14:26.88 ID:cLhBRXPvo
支援
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) :2011/10/03(月) 20:15:40.98 ID:hHI5ud5Oo
面白いぞ。もっと続けろください。
てゆーか、結構な長さあるじゃん
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/03(月) 22:50:10.63 ID:v7ZXZ1eAO
男「なんて送ろうか…」

死神「『会おうよチュッチュ!!』とかいいんじゃない?」

男「物体化しろ。ぶっ飛ばす」

死神「冗談だよ」

男「『半日俺にくれ』でいいか。そーしんっ」

死神「うわぁ」

男「…いいじゃねーかよ。たまにはカッコつけても」

死神「そうですね」

男「本心から思ってないな、絶対に」
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/03(月) 23:21:35.44 ID:v7ZXZ1eAO
死神「返ってくる確率は?」

男「50%」

死神「わぁーお。自信家だね」

男「そんなんじゃねえよ。相手が断れないタイプなんだ」

死神「万が一断る可能性もいれてそれな訳か」

男「ああ」

死神「元カノさんの特徴?を利用したわけか」

男「うっせっせ」
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/04(火) 00:03:16.87 ID:kmpVju7AO
男「あ」

死神「お」

男「……返ってきた」

死神「なんて?」

男「『いいよ』だと」

死神「良かったじゃんか。会いに行くんだろ?」

男「ああ、昼からだ。…いいか、神無月」

死神「ん?」

男「俺のすることには一切口出ししないでくれ」

死神「そもそも死者は生者に干渉はできないよ」

死神「君は君で好きなようにやればいい。僕は言われずとも口出ししない」

男「サンキュ。…これは俺の戦いだからな」

死神「厨二病?」

男「……自覚してるよくそっ!」
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/04(火) 00:10:57.34 ID:kmpVju7AO
死神「二十歳過ぎの厨二病って痛々しい通り越して悲しいよね?」

男「カッコつけただけじゃん! たまにはいいじゃん!」
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/04(火) 01:46:29.60 ID:kmpVju7AO
死神「そしてお昼、駅前にて待ち合わせ中!」

男「誰に向かって話しているんだ」

死神「ディスプレイの向こうだよ」

男「はぁ? ってか早く来ちまったな。あと三十分もある」

死神「いいんじゃない? 遅刻なんかしたら印象最悪だよ」

男「もう最悪だから今さら下がってもなんとも」

死神「どんな酷い別れかたしたんだよ、君」

男「自然消滅だよ」
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/04(火) 01:58:32.96 ID:kmpVju7AO
死神「自然消滅?」

男「ああ。お互いに忙しくなって、そのままさよならバイバイ」

死神「おれはーこいつとっ旅に出る!ピーカチュー!」

男「物体化しろ」

死神「いちいち申請するの面倒なんだけど」

男「はぁぁ……。ま、『さよなら』のメールで関係は切れたよ」

死神「まだ未練があるんだ。彼女に」

男「ある…んだろうな」
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 12:47:36.83 ID:abi4d1/AO
男「あるからこそ会いたいと思うのかもな…」

男「どんな事を言われるのか、分からないし」

男「言葉によっちゃ俺を傷つけるかもしれないって思うし」

男「だけど俺は彼女に会いたい」

男「はは…やっぱり会いたいんじゃねーか、俺」

死神「………」

男「……なんだよ」

死神「真面目すぎてなんとも言えなくなっちゃって…」

男「やめろその目! 恥ずかしくなってきたじゃねえか!」
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 12:52:06.84 ID:abi4d1/AO
男「あ」

死神「お?」

男「メールが来た」

死神「早いね。なんて?」

男「……『会おう』だってさ」

死神「良かったじゃん」

男「良かったんだろうか。改めて別れようとか言われそう」

死神「会いたくて会いたくて震えてたくせに今さら何言ってんだか」

男「震えたのはマナーモードの携帯だけだからな?」
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 12:56:33.84 ID:abi4d1/AO
死神「でさ、行くの?」

男「呼んだんだし当たり前だろ。逝く前に行かないと」

死神「ちょっ、いきなりのギャグは反則! お腹いてぇ!」

男「ウケたの!?」

死神「君、ギャグ全集とか出してみなよ!」

男「売る段階に既に俺死んでいるだろうか!笑いすぎだ!」
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/05(水) 13:50:26.92 ID:dw6ITfFDO
男の死因も気になるぜ・・・
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/10/05(水) 13:51:13.19 ID:abi4d1/AO
ちょっと待て。
>>71->>72は無しで
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 13:53:57.49 ID:abi4d1/AO
男「……ああそろそろ時間だな」

死神「遠くで見守ってるよ」

男「えー。そばにいてくれよ」

死神「このヘタレが。一対一で話し合いなさい」

男「おい誰がヘタレだ」

死神「あっ、ちょっと待って。誰かこっちに来たよ」

男「え? ああ本当だ。誰だ――、んなっ!?」

死神「?」
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 13:55:33.28 ID:abi4d1/AO
女「ごめんね、待った? 半年ぶり〜」

男「お、おう…久しぶりだな」

女「どっか座るとこないかな? 疲れちゃった」

男「そうだな…そこ入るか…」



死神「?」


77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 13:59:27.37 ID:abi4d1/AO
死神「そして二時間後」


女「じゃあね…、バイバイ」

男「ああ。さよなら、だな」

男「………」

死神「どうしたの?」

男「アイツ…体重が十五キロも増えたらしい」

死神「じゃあもっとスマートだったんだね? あの人」

男「そうだよ。デートがなくなってから週一でケーキバイキング行ってりゃあそうなるな…」

死神「うわぁ、すごくショック受けてる」

男「吹っ切れたよ、色んな意味で」

死神「お疲れさまです」
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 14:02:15.60 ID:abi4d1/AO
男「半年で人って変わるのな。ジャンボパフェ二個も食うとは思わんだ」

死神「半年前は?」

男「昼飯はソイジョイ一本で満腹」

死神「どっちも体に悪そうな気がする。劇的に変わったね」

男「匠もびっくりの劇的ビフォーアフターだよ」

死神「時間は人を変えるね」

男「綺麗に纏めやがったな」
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 14:07:02.08 ID:abi4d1/AO
死神「あとの予定は?」

男「まだ時間あるし…今からなら間に合うかな」

死神「何が?」

男「ずっと見たかったのがあるんだよ」

死神「それを見に行くんだ?」

男「そうだ。いつか見よういつか見ようって後回しにしてたから」

死神「どこ?」

男「後で。今俺すげー怪しまれてるから」
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 14:08:58.03 ID:abi4d1/AO
死神「遠くからひそひそ言われてるね。さすが人気者!」

男「誰のせいだ誰の!」

死神「僕だ!」

男「分かってるなら言うな! あといちいちツッコませんな!」

死神「ならツッコまなければいいじゃないか」

男「ツッコまずにはいられない性格なんだよ」
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 14:17:24.23 ID:abi4d1/AO
死神「それからしばらくして、車内」

男「誰に向かって言ってるんだか…」

死神「ところでどうも遠くに行くみたいだけど、高速道路使わないの?」

男「人生なんて焦るもんじゃないぜ」

死神「悟ったような口きいちゃって」

男「つく頃に夜になってた方が都合がいいんだよ」

死神「ふぅん?」
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 17:11:49.18 ID:abi4d1/AO
男「……」

死神「……」

男「お前の他にも死神はいるんだっけか」

死神「いるよ、たくさん」

男「友達とかはいないのか?」

死神「いないね。僕とパートナーに話しかける人さえあんまいないし」

男「どんだけだよ。何やったんだか」

死神「心当たりがありすぎてなんとも」

男「あるのかよ」
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 17:23:02.81 ID:abi4d1/AO
死神「一番の理由はパートナーといることかな」

男「そんなに変な奴なのか? たしかクールだとか」

死神「クールすぎて馴れ合わないから。それにドライ」

男「取っつきにくいんだな」

死神「そ。僕もなんか性格がアレらしいし」

男「あー、確かに神無月と付き合うとかなり疲れるな」

死神「おぅふ」
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 17:28:45.81 ID:abi4d1/AO
男「何処も人間関係は大変なんだな」

死神「大変じゃなかったらどんなにいいか」

男「感情がなくならないかぎり無理だな」

死神「だとしたら今よりずっとつまらない世界になるね」

男「あっちがたてばこっちがたたずか。うまくいかないもんだな」

死神「だからみんな理想郷を夢見るんじゃないか」

男「そうだな」

死神「びっくりするほどユートピア!」

男「…それ言いたかっただけだろ」
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 19:18:06.98 ID:abi4d1/AO
男「ついた」

死神「すっかり暗いね」

男「冬だからな。それに暗くなるの狙ってたわけだし。ほら降りろ」

死神「わぁ、大きな塔だ」

男「なんだ、知らないのか? 東京タワー」

死神「うん。すかいつりーは一時期有名になったから知ってるけども」

男「スカイツリーね。あっちのほうがここより高いし、新しいからな」

死神「ならなんでそっちいかないんだい?」

男「簡単だ。ここに来たかったからだよ」

死神「人間ってわけがわからないよ、本当に」
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 19:26:35.42 ID:abi4d1/AO
死神「暗いと東京タワーって光るんだね」

男「あれはただのライトアップだ」

死神「全く、みんな外来語が好きだな。日本の未来はどうなることやら、ぷんぷん」

男「清いほどに棒読みだな。それにぷんぷんって気持ち悪いからやめろ」

死神「ぷんすかぷんぷん!」

男「もういい、頭が痛くなってきた…。行くぞ」

死神「あれ? タワーの中入れるの?」

男「入れるよ」

死神「へぇ。世界を見る目って大事なんだね」

男「神無月が世間知らずなだけだ」
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 19:31:25.48 ID:abi4d1/AO
死神「で、エレベーターに乗るんだ」

男「……」

死神「お、エレベーター知ってるんだって顔したね? このぐらいなら知ってるさ」

男「……」

死神「こんな密室で喋るのは恥ずかしいんだね。あと気持ち悪そうな顔しないでよ」

死神「僕は今幽霊みたいなもんだから誰かの体にのめり込んでいるこの状態は仕方ないことなんだ」

男「……」

死神「基本的に僕はお喋りだよ? 口パクで何を…う、ざ、い? 酷いなぁ」
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 19:34:20.06 ID:abi4d1/AO
死神「あ、ついた。ここ展望台では一番高いところなんだ」

男「……」

死神「いやー、カップルいっぱいだね。うらやましい限りだ」

男「……はぁ。相手が無言なのに良く喋るな」

死神「パートナーで慣れたんだ」

男「パートナーさん無口なんだっけか…。かわいそうなやつ…」

死神「言わないでくれよ…」
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 19:45:54.01 ID:abi4d1/AO
死神「それで、何を見に来たの?」

男「夜景だよ」

死神「夜景? 町の明かりの事だよね」

男「一度ここで夜景を見たかったんだ。高いところからみる夜景は綺麗だからな」

死神「そうなんだ? ただ光ってるようにしか感じないけどなぁ」

男「美的感覚ねーなー」

死神「そいつぁすまねぇ」

男「ま、個人にもよるよな。こういうのは」
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 20:37:13.12 ID:abi4d1/AO
男「……」

死神「……」

男「……」

死神「……」

男「一時間もいたのか」

死神「そうみたいだね」

男「かなり怪しいやつだったろうな」

死神「帰って次の日にはさっぱり忘れられてるさ」

男「悲しいな。誰かに忘れられるのは」

死神「中には死ぬより忘れられることが怖いひとがいるぐらいだしね」

男「俺はどっちもどっちだな」
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 20:42:13.20 ID:abi4d1/AO
死神「歴史に残れるような人っていいよね」

男「それは思う。いつまでも生誕何年とか祝われてさ」

死神「作家に多いね」

男「俺は普通に暮らしてたからな。絶対そういうのはない」

死神「本人達だってそうして欲しかったとは限らないよ」

男「そうだけどな。…帰るか」

死神「もういいの?」

男「しっかり頭に焼き付けたから」
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 20:46:34.00 ID:abi4d1/AO
死神「地上から見る夜景と上から見る夜景は違うんだね」

男「そりゃあな」

死神「……」

男「……」

死神「……」

男「明日か」

死神「こわい?」

男「怖い。痛い死に方だったらやだ」

死神「みんな言うよ。早く死なせてくれって」

男「それで? 神無月はどうするんだ?」

死神「主にパートナーがするんだけどね。言われればすぐ楽にするよ」

男「優しいんだな」

死神「別にそんなんじゃない。言われたことをしただけ。僕もパートナーも」
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 20:56:35.30 ID:abi4d1/AO
男「でも言われなきゃ両親との関係はこじれたままだった」

男「友人に会えなかった。元カノに未練を残したままで終わっていた」

男「言っただろ? 薄々死ぬのは気がついていたんだ」

男「むしろありがたい」

死神「すっきりした顔して。こっちが嫉妬したくなるぐらいだ」

男「嫉妬すんのか」

死神「一応感情はあるからね」
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 21:03:40.11 ID:abi4d1/AO
男「疲れないか。目の前で人が死ぬのを見るのは」

死神「慣れた。死ぬ寸前に罵倒されるのも、慣れた」

男「そういうものなのか?」

死神「そういうものなんだ」

男「生きることを諦めてるな」

死神「死んでるし」

男「そうだったな」

死神「忘れっぽいなあもう、ははは」

男「やめろ、おでこにデコピンすんな」
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 21:06:03.85 ID:abi4d1/AO
男「やっと家だ…座り疲れた」

死神「最後ぐらいホテル泊まるかと思ったけど」

男「最後だからだよ」

死神「そういうもんか」

男「寝る。また明日な」

死神「おやすみ。また明日」
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 21:06:39.77 ID:abi4d1/AO
このまま最後まで行くけどいい?
夜中ぐらいになるかも
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/10/05(水) 21:14:19.30 ID:8jI6Gm0AO
構わん続けろ
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/10/05(水) 21:16:01.12 ID:pbagRfKB0
読んでるぞ!一気に行こうぜ!
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/10/05(水) 21:22:33.99 ID:WsOJqEjWo
構わんッッ!!
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 21:47:28.67 ID:abi4d1/AO
―――

死神「あれ」

少女死神「……」

死神「どうしたの? 僕と離れるのがそんなに嫌だった?」

少女死神「……」

死神「調子乗りましたすみません。だから鎌をしまいましょう」

少女死神「あなたが」

死神「僕が?」

少女死神「彼の死を回避させようとしてる気がして」

死神「……」

少女死神「私は止めない。だけど」

死神「……」

少女死神「私たち死神は、既に決められた死を変えられない」

少女死神「覚えている?」

死神「…あの女の子のことだよね」

少女死神「そう。なにも変えられず、そして新たな死神を生み出してしまった」
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 22:00:06.26 ID:abi4d1/AO
少女死神「今回あなたは、彼を死神にさせまいとした」

少女死神「恐らくは上手くいく。これは変えられた」

少女死神「だけども、今度は来るべき死をなんとかしようとしてる風に見える」

死神「……僕を買いかぶりすぎだよ、君は」

死神「変えられないと知ったばかりの事実に再チャレンジするほど僕は情熱がない」

少女死神「そう。でも一応言っておく」

少女死神「何をしてもいい。ただ覚悟だけは忘れないで」

死神「……」
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 22:02:58.69 ID:abi4d1/AO
死神「……最近の君はよく喋るね」

少女死神「そう」

死神「それだけ僕が好き…すみませんでした」

少女死神「……」

死神「君の言いたいことは分かった。覚悟は、しておくよ」

少女死神「じゃあ、私は戻る」

死神「まだ報告書?」

少女死神「上司がまたトラブルを」

死神「あの人は……」

―――
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 22:09:36.82 ID:abi4d1/AO
男「朝だ」

死神「おはよう」

男「お願いだから枕元に立つの止めてくんね?」

死神「こうすると目覚めがいいって聞いたんだ」

男「それどこ情報?」

死神「みのもんたって人がさっき言ってた」

男「みのさんはそんなこと言わない。あとリモコン触れたのか」

死神「意識すれば短時間は触れたりするよ」

男「初めて知った」

死神「初めて言った」
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 22:14:24.24 ID:abi4d1/AO
男「今日は…何すんかな」

死神「……」

男「ぼーっとしてよう」

死神「そうだね。きっと、何もしなければ何も起こらない」

男「? なんだよお前。俺に死んでほしくないのか」

死神「死んでほしいとは言った覚えないけど」

男「言葉の綾だ」

死神「そっか。…まだ死ぬような年齢じゃないのに、と思ってさ」

男「なんか若くして死んだ有名人のファンみたいなこと言うな」

死神「例えが細かすぎる」
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 22:18:46.14 ID:abi4d1/AO
男「お前が決めた死なら腹はたつが…神様とやらが決めたんなら仕方ないだろ」

死神「さりげなく酷いこと言わなかった?」

男「気のせいだろ」

死神「絶対気のせいじゃない…」

男「神無月は見たことあるのか? 神様とやらを」

死神「ううん、見たことない。多分僕の上司もないだろうし」

男「本当はいなかったりしてな」

死神「考えるのは自由だよ」
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 22:22:19.05 ID:abi4d1/AO
男「こんなにゆっくり過ごした数日は久々かもしれない」

死神「仕事大変なの?」

男「デスクワークだから肉体疲労はないけど、神経は使う」

死神「集中とかで?」

男「そう。目も疲れるし、給料なかったらやりたくない」

死神「そりゃやんないでしょ。給料のためにやってるんだし」

男「まあな。あー、でも仲間がいるし、会社自体に不満はないな」
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 22:27:16.04 ID:abi4d1/AO
死神「仲間は大切だよね」

男「神無月、お前が言うとかなり白々しいぞ」

死神「バレた?」

男「わざと白々しく言ってたのかこいつは」

死神「僕も生きてた頃は仲間いたのかなぁ」

男「そんな性格じゃなければいただろ」

死神「なんか酷い。この性格は死神になってから作り出したものだからね」

男「性格なんて作り出せんのかよ…至難のわざだろ」

死神「というか、記憶が白紙そのものだったから。一から作り直した感じ」
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 22:33:49.30 ID:abi4d1/AO
男「生前の記憶ないんだったけか」

死神「うん」

男「性格なんて周りの影響で養われるもんだろ。誰の影響だよ……」

死神「上司とパートナー」

男「マジで見てみたいな、その二人」

死神「『なんであんな二人の影響受けたんだよ…』って聞くよ」

男「間違えたんだな、影響受ける相手。そうとしか言えない」

109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 22:39:30.97 ID:abi4d1/AO
男「あ、そうだ。よいしょ」

死神「いきなり押し入れあけてどうしたの?」

男「アルバム探し」

死神「写真が収まってるの?」

男「そうだ。うわ、埃かぶってら」

死神「お? なんか君に似た男の子が写っている」

男「俺だ」

死神「君だったのか」

男「また騙されたな」

死神「暇をもて余した」

男「神々の遊び」

死神「……」

男「……」

死神「次行こう」

男「そうするか」
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 22:44:10.37 ID:abi4d1/AO
死神「家飛び出したくせになんでこんなもの持ってんの?」

男「適当にひっつかんだものがこれだった」

死神「適当すぎる」

男「当時の俺も同じこと感じた」

死神「幸せそうだね」

男「この頃はな。高校の頃の写真なんか反抗期こじらせてほとんどない」

死神「こじらせるとろくなもんにならないね」

男「厨二病しかり風邪しかりな」
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 22:48:46.01 ID:abi4d1/AO
男「アルバム見てたらかなり時間かかってた」

死神「アルバムって時間ドロボーなんだ」

男「昔の漫画もな。あとは何するべきか」

死神「テレビでも見ていればいいじゃん」

男「今の時間はドロドロしたドラマばっかだからやだ」

死神「じゃあ寝ろ」

男「寝れない」

死神「僕が子守唄歌ってあげるよ」

男「だか断る!」
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 22:54:24.55 ID:abi4d1/AO
死神「結局何してるの?」

男「部屋掃除」

死神「もう使えなくなるかもしれないのに?」

男「もう使えなくなるかもしれないからだ」

死神「本当に君らは何考えてるか分かんないよ」

男「ふとした拍子に分かるときがくるさ。よし、綺麗」

死神「綺麗になったね。小麦粉ばらまいていい?」

男「言いわけないだろ!」
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 22:59:44.91 ID:abi4d1/AO
キャアアアアア!!

男「!」

死神「なんだろ? 悲鳴?」

男「通り魔か? 不審者か?」

死神「窓から落ちないでよ?」

男「そんな間抜けなことはしないから安心しろ。――火事だ!」

死神「ちょ、出掛けるの?」

男「アパートの近くだし、怪我人がいないか気になるからな!」

死神「待って……行っちゃった」

死神「……くそっ、よりによって火だなんて」
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/05(水) 23:06:05.52 ID:RbR6FwMSO
これと本編はどういう風につながるんだ?
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 23:06:18.97 ID:abi4d1/AO
男「一軒家の一階が既に焼けてら…」

死神「……っ」

男「どうした、頭が痛いのか?」

死神「ううん、大丈夫。何でもない」

男「そうか? ……だれか消防車は呼んだだろうか」

死神「そうみたいだね。あと救急車も」

男「ならあとは邪魔にならないようにするか。……ん? あの人、なんか叫んで…」

母親「子供が! 子供がまだ中にいるんです!」

死神「!」

男「なっ!」

116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 23:10:49.99 ID:abi4d1/AO
男「どうやら子供は二階みたいだな。窓から手が覗いてる」

死神「まって、早まらないで。今から物体化する申請出すから」

男「いい、俺が行く。一酸化炭素中毒が心配だ」

死神「これで死ぬかもしれないのにか!?」

男「子供を見捨ててのうのうと見てろと!?」

死神「何故他人の命を優先するんだよ! 大切なのは自分の命だろう!」

男「助けられたはずの命を見捨てて生きるなら死んだ方がマシだ!」
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 23:12:22.18 ID:abi4d1/AO
死神「ちょっと待て! ……行っちゃった……」

死神「水ぐらい被ればいいのにっ…」

死神「だから人間って分からないんだよ……!」
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 23:16:35.67 ID:abi4d1/AO
男「ごほっ……あっちぃ」

男「体を濡らしてからくれば良かったな」

男「どこだ子供は……」

子供「あついよぉ……」

男「いた……よしよし、もう大丈夫だ。他には?」

子供「いない……」

男「じゃあ出よう。おいで、抱っこするから」

子供「うん……」

死神「そのまま後ろに避けろ!」

男「っ! ――燃えた木材が…」

死神「危ないなぁ、もう」

男「来たんじゃねーかよ…神無月」

死神「悪いね」
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 23:20:13.39 ID:abi4d1/AO
男「このまま帰ればミッションクリアだ」

死神「気を付けないと」

男「分かってる。しっかり掴まれよな」

子供「うん」

男「煙で前が見えねぇ…」

死神「左に大きく燃えたところがあるよ」

男「サンキュ」

死神「もう少しで出口だ」

男「そうみたいだな。…すごい臭いだ」

死神「――! 上から、木が降ってくる!」

男「ちくしょう、悪い許せ!」

子供「わっ!?」
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 23:24:17.14 ID:abi4d1/AO
死神「……」

男「……」

死神「……馬鹿だ」

男「知ってた」

死神「子供を突き飛ばすなんてしないで、自分ごと走り抜けば良かったのに」

男「煙吸って動けなくなってきてたし、とっさに突き飛ばしちまったんだよ」

男「それに、ここの倒れた家具にぶつかってただろうしな」

死神「結果的に君は落ちてきた天井の下敷きになったわけだけど」

男「そうだな」
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 23:29:23.62 ID:abi4d1/AO
死神「さっきから天井をどかそうとしたんだ」

男「そうみたいだな」

死神「でも掴めなかった」

男「そうみたいだな」

死神「他の…君に関係ないものは触れられるのに」

男「……」

死神「僕は、君の死を、回避できなかった」

男「俺は死ぬ運命なんだろうが。決まっていた物事がきっちり起こっただけだろ」

死神「そうだけども。ごめんね、無力で」
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 23:32:57.56 ID:abi4d1/AO
男「決まりの悪そうな顔すんなよ。似合わないぞ」

死神「酷い」

男「やりたいことやれたし、俺は満足だよ」

死神「そっか……。ねぇ、あのさ。僕、最近記憶が戻り始めててね」

男「そうなのか。で?」

死神「どうも火に巻かれて死んだっぽいんだ。お揃いだね」

男「そんなお揃いはやだな。ぐぁっ……!」

死神「足に火が…どうする? もう、」

男「もうちょっと、もうちょっと待ってくれ」
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 23:36:06.99 ID:abi4d1/AO
死神「……」

男「聞いてくれよ、最期の言葉」

死神「聞くよ」

男「死にたく、ない。生きたい」

死神「うん」

男「もっと、遠くまで、行きたかった」

死神「うん」

男「なんて、次から、次へ、言葉が出てくるがな…」

死神「……」

男「今からでも、もしかしたら、叶えられる願いがあるんだ」

死神「なに?」
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 23:36:45.86 ID:abi4d1/AO





男「笑顔になってくれないか、神無月」



125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 23:40:09.18 ID:abi4d1/AO
死神「悲しい顔してる?」

男「いや、むしろ、無表情、そのものだ」

死神「うわぁ……。自分の事ながらうわぁだよ」

男「なんか、笑ってる、顔、みたことなくて、な」

死神「大笑いした時あるじゃん」

男「あれは、なんつーか、乾いた笑いだよ……」

男「こう、人間らしい笑顔になれ」

死神「どうやって?」

男「よし、じゃあ、俺を真似しろ」
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 23:43:41.61 ID:abi4d1/AO
死神「……こう?」

男「もっとこうだ」

死神「ぐ……こうか」

男「まあ、及第点かな」

死神「難しいよ。笑顔」

男「自然に出せるようになれればいいな」

死神「頑張るよ」

男「……ぐあっ……。悪い、神無月。終わらせてくれないか」

死神「分かった」

男「……楽しかったな、この三日間」

死神「僕もだ」

男「マジかよ」

死神「マジだよ」

男「じゃあ締め括りに、笑ってくれないか。さっきみたく」

死神「ん」
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 23:51:51.89 ID:abi4d1/AO
男「綺麗な曲線描いてるよな、その鎌」

死神「そう? ありがとう」

男「おやすみ」

死神「おやすみ」
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/05(水) 23:58:04.90 ID:abi4d1/AO
死神「………」

死神「………」

死神「………」

少女死神「………」

死神「うわ!?」

少女死神「………」

死神「…いつからいたの?」

少女死神「今」

死神「ビビるなぁ…」

少女死神「いつまで、彼の肉体を見るつもり」

死神「なんとなくだよ」

少女死神「……」

死神「よし。魂を届けに行こうか」

少女死神「ええ」
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/06(木) 00:05:26.84 ID:ks8/04mAO


警察「二人の男性がいたと、救助された子供が言っているようで」

警察「しかし母親や他の野次馬が見たのは一人だけだといいます」

消防士「遺体は一体だけでしたよ。…誰なんでしょうね?」

警察「分からないです。他に、何か気になることはありますか?」

消防士「気になるのは…かろうじて残ってた顔が微かに笑顔を浮かべてたことですかね」

消防士「熱くて辛かったはずなのに、どうしてって――――」
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/10/06(木) 00:09:39.96 ID:ks8/04mAO
終わりです
即興なので分からないことや重複していたとかあったと思います
質問があればどうぞです
ありがとうございました

ちなみに「死神に鎮魂歌を」の番外みたいなものです
内容はクドいです
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/06(木) 00:16:35.99 ID:xkK9o4OL0
>>1乙!!

女の子萌えがほとんどなかったけどスンナリ読めた!良作!
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) :2011/10/06(木) 00:24:49.20 ID:rSlpGyOSo
乙です。
死神の方も読んでるよ!
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/06(木) 00:29:41.24 ID:UOnZ+AODO
乙!!
男が幸せそうで良かったよ
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/10/06(木) 17:11:08.17 ID:z8Tv6j2To
乙!!
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チリ) [sage]:2011/10/07(金) 02:15:33.92 ID:FKIHOtaKo
乙!どうりで何処かで見た気がすると思ったら
136 :えりんぎ [sage]:2011/10/07(金) 23:31:26.22 ID:qfHYqV/N0
乙。
死神のほうも読んでる、いつも楽しみにしてるよ!
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