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とある未来の通行止め その2 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :ブラジャーの人 [sage]:2011/10/02(日) 00:00:14.00 ID:NTBu0Hh40
まさかの2スレ目。
一方さんと打ち止めの未来設定。少女漫画みたいなものを(当初は)目指していたおっぱいスレ。

一方さんが、打ち止めのこと好きすぎて変態。
打ち止めがDカップを経て、ただいま絶賛Eカップ。彼女の辞書に反抗期は無い。

イチャイチャとほのぼのしかありません。
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VIPでTW ★5 @ 2024/03/29(金) 09:54:48.69 ID:aP+hFwQR0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1711673687/

小テスト @ 2024/03/28(木) 19:48:27.38 ID:ptMrOEVy0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/zikken/1711622906/

満身創痍 @ 2024/03/28(木) 18:15:37.00 ID:YDfjckg/o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1711617334/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part8 @ 2024/03/28(木) 10:54:28.17 ID:l/9ZW4Ws0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1711590867/

旅にでんちう @ 2024/03/27(水) 09:07:07.22 ID:y4bABGEzO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1711498027/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:18.81 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459578/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:02.91 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459562/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:25:33.60 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459533/

2 :ブラジャーの人 [sage]:2011/10/02(日) 00:05:19.03 ID:NTBu0Hh40
前スレをちまちま埋めつつ、2スレ目の更新もはじめます。よかったら前スレ埋めるの手伝ってほしいかも。そして私には前スレへのリンクを貼るという技(?)がない。誰か…

さてと、少ないけど投下します。


3 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/02(日) 00:12:37.06 ID:NTBu0Hh40
とある休日の、もうすぐ太陽も中天に差し掛かる頃、一方通行はやっと目を覚ました。随分寝過ごした、と思う。
何度か打ち止めが起こしに来たような気がするが、今日はなんだか眠気が勝ったらしい。
もぞもぞと起き上がって、部屋のあちこちに体をぶつけながらトイレ、洗面所へ行く。

(……、黄泉川も、いねェな…)

芳川はまた病院に泊まり込むと言っていたし、移動の途中で見た玄関に靴が無かったので、アンチスキルの仕事だろうか、黄泉川も出掛けているようだ。
キッチンから、何やら料理を作っている物音といい匂いがする。きっと打ち止めが、自分のために朝食兼昼食を用意してくれているのだろう。

(今日は打ち止めと家でゴロゴロするかァ…、あわよくば…)

いかがわしい思いで顔を洗い、まだ開きにくい目をこすって歯を磨いていると、背後に人の気配がする。
彼女が、やっと起きたね、という呆れ顔で自分を見ているのだろう。そう思って振り向いたのに。

「おっす。おはよう一方通行、ちょうどお前の家のちか」
「ぶはァっ」
「ぎゃぁぁぁぁ目がぁぁぁスースーするぅぅぅー!」
「どどどーしたのカミジョー!?」

そこにいたのは、彼の大切なアホ毛の小さい少女ではなく、自分と同じ背丈のツンツン頭だった。
予想外の人物に、つい口から吹き出してしまった歯磨き粉の泡が、上条当麻に直撃する。
一方通行は、包丁を持ったまま駆けつけてきた打ち止めと、目を押さえて床にうずくまる上条を、歯ブラシを咥えたまま交互に眺めた。
4 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/02(日) 00:16:19.87 ID:NTBu0Hh40
「はーい、コーヒーですよ。もう、これで目覚ましてね、ってミサカはミサカは寝ぼすけなあなたに愛情たっぷりを淹れてみたり」

キッチンのテーブルに座り、一方通行は熱いブラックコーヒーを啜る。これからパン等も食べさせてもらえるそうだ。
上条も彼の正面に腰を落ち着け、砂糖の入ったコーヒーをご相伴している。

「…何か用か?」
「だから丁度お前んちの前通ったから…、ひょっとして俺が送ったメール見てない?」
「見てねェ」

たしか携帯は昨夜から、ベッドサイドに置きっぱなしにしていたと思う。上条は合点がいったような顔で溜息をついた。

「だよなぁ。見てたらもうちょっと違う反応あるはずだもんな」
「なンだ、もったいぶりやがって。早く言え」

メールを送った上に、こうして家まで来るような大事なのか?一方通行が眉をしかめるが、上条の様子はそんな深刻ぶったものではない。

「打ち止めにも先に挨拶しとこうと思ってさー」
「ん?ミサカにも関係あるお話なの?」
「そうそう。むしろ一方通行より打ち止めだよ、よく考えれば」

朝(じゃないけど)から楽しい予定をぶち殺されて、ただでさえ不機嫌な一方通行は相手が上条とあってその態度に容赦がない。
とっとと話とやらを聞いて、家から追い出したかった。

「あと三秒以内に喋らねェと窓から投げる」
「俺打ち止めの中学に先生しに行くからよろしくな!」
「ぶっふゥっ」
「ぎゃぁぁぁぁ!目がぁぁぁぁぁぁ!!」

またも予想外のことに、今度はブラックコーヒーを上条に拭きかけてしまった。
5 :ブラジャーの人 [sage]:2011/10/02(日) 00:19:26.31 ID:NTBu0Hh40
はい、とりあえずここまで。
上条さんもどっかの大学で学生やってる。よく進学できたな…

また二日後か三日後か四日後に更新したいと思います。
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/02(日) 00:44:09.29 ID:NHbElF2DO
前スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1310655464/
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(石川県) [sagesaga]:2011/10/02(日) 00:57:42.56 ID:ysAsIxQL0
>>1乙、2スレ目も期待してる(乳的な意味で

登場人物紹介もどき

打ち止め:ミサカ達の上位固体にして今やJC、全国のロリコンが絶望した
春先には60のDだったのに、我らがセロリタンと結ばれケシカラン事して、
半年でEにまですくすく育ったのはウラヤマシス
最近では新宿の母よろしくマッサージにも目覚めた
それもこれも全ては一方通行への愛の為せる業

一方通行:学園都市第1位、ツンデレっぷりも第1位、tk最近じゃデレしかなくね?
上位固体のブラに欲情して襲った前科あり、気持ちは判るハァハァ
今は暗部も抜け、普通(?)の大学生に、でも金銭感覚は相変わらず0
ベクトル豊胸術の使い手としてお姉様に狙われている

番外個体:末っ子のくせに外見年齢がミサカ達より上のため、今じゃ我らがセロリタソと同じ大学に通っていやがるチクショウ
しかもカフェでバイトとかこっそりセロリタソ狙いなのがバレバレ
だが、嫌いじゃないぜ(ドヤァ
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/10/02(日) 03:12:34.58 ID:KzKy0I8AO
>>1
これからも楽しみにしてる!

>>7
>>1以外はこういうの作らない方がいいんじゃないか
ノリも気持ち悪い
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/02(日) 03:47:39.79 ID:/KF7PF5DO
>>1
続き楽しみにしてる

>>7
俺も>>1以外はそういうのやめた方がいいと思う
寒いぞ
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/10/02(日) 12:53:50.66 ID:WumyqH3AO
>>1乙、そして>>1

上条さん教育実習生なんて、中学生に上やん病患者大発生の予感だなあ爆発しろ

それにしても、一方通行さんの口から吹き出されたハミガキとコーヒーを顔面にくらうって、なんてご褒美?
「不幸だ」なんて言うならその役目は俺が代わってやろうペロペロ
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2011/10/02(日) 17:01:57.51 ID:ysKgPvWeo
固体→個体
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/02(日) 22:15:17.02 ID:y6hp2hov0
>>1
新スレでも多大な期待!
13 :VIPにかわりまして統括理事会がお送りします [sage]:2011/10/04(火) 13:20:15.71 ID:Wa4fqn7h0
とある魔術の禁書目録劇場版公開決定!!!!!
更に新約とある魔術の禁書目録3巻は12月10日に発売決定!!!
劇場版の詳細は10月11日発売の電撃文庫マガジンで!
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/10/04(火) 22:08:41.62 ID:uFlUm1CAO
>>13
嬉しいのは分かったからそろそろあちこちの禁書スレに同じこと書くのやめてくれないか
目障りだ
15 :ブラジャーの人 [sage]:2011/10/05(水) 03:28:38.13 ID:QBDpqJCD0
>>6 ありがとう!!

期待してくれた皆様、お待たせしました。

続き投下です。
16 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/05(水) 03:31:55.57 ID:QBDpqJCD0
「…先生ェだとォ?どォいうことだ」
「コーヒーって目に染みるんだな…」
「ごめんねカミジョウ…。あ、まだ髪にも付いてるよ、ってミサカはミサカは拭き拭きしてみる」
「五秒以内に喋らないとォ」
「教育実習だよ!二週間だけ打ち止めの学校に教育実習生として通うことになったんだ」

一方通行は新しく用意してもらったコーヒーに手を伸ばす。また吹き出さないように、上条の回答を聞くまで飲まずにいたのだ。

(そォいや、去年打ち止めがそンなこと言ってたなァ。今年は三下が実習生ってわけか)

「何でよりによって打ち止めの中学なンですかァー?」
「知らねぇよ。俺が決めたわけじゃないもん」
「わぁー、カミジョウがミサカの先生なの?学校でカミジョウに会うなんて不思議なカンジ」
「つーかオマエ教師になンのかよ」
「なんのために俺が教育学部に通ってると思ってたんだ」
「オマエの学部、今初めて知ったぜ」
「打ち止め、苦労してないか?悲しいことがあったらいつでも先生に相談しろよ?」

上条は、タオルをたたみながら一方通行の横に座った打ち止めにだけ喋りかけた。視界から白い人を意識的にカットする。
打ち止めは恋人が分かりやすく眉をしかめた気配を感じ、苦笑を浮かべてトントン、と彼の足を優しく叩いて宥める。

「苦労よりも嬉しいことの方が多いから平気だよ、ってミサカはミサカは幸せなことをアピールしてみる。ご心配には及びません」
「……そっか。はははは、御馳走さま」
「何がだよ…」
「ん?コーヒーが」
「……」
17 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/05(水) 03:34:00.54 ID:QBDpqJCD0
「打ち止め、今日から上条が教育実習生に来るんだってー?まさかアンタのクラスに来たりしてね?」

休み明けの朝食の時間に、黄泉川が牛乳を飲みながら打ち止めに話題を振る。
自分が教えた生徒が、教師(仮)になるなんて、と彼女も感慨深く思っているのだ。ちなみに芳川は先に出勤しているのでこの場にはいない。

「そうだよ!楽しみだよねー。帰ってきたらヨミカワ達とあなたにも報告するから楽しみにしててね、ってミサカはミサカはリポーター気分に浸ってみる」
「うん、よろしく頼むじゃん!」
「…心底興味ねェな」
「またまた、あなたってばツンツンしちゃって」

興味がないわけでは無かった。しかし、何か気に入らない一方通行である。なぜ上条当麻が、打ち止めの中学に?

(打ち止めに不幸体質がうつったらどォすンだよ)

心配なのだ、彼女のことが。そう思ってコーヒーを喉に流し込み、席を立った。

「先行くぞ」
「え?今日は二限目からでしょ?」
「……図書館で論文仕上げようと思ってな」
「じゃあミサカももう行く!ってミサカはミサカは…」
「片づけは私がやっとくから。二人とも気をつけて行ってくるじゃん」
「ありがとーヨミカワ!」

お互いの学校への分かれ道、打ち止めはいつもどおりに手を振って去って行く。
普段はそんなことしないのに、一方通行は見えなくなるまで彼女の後姿を見送った。
18 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/05(水) 03:38:02.58 ID:QBDpqJCD0
「では上条先生、自己紹介をお願いします」
「は、はい。えー上条当麻です。少しの間ですが……」

(まさか本当にミサカのクラスに来るなんて、ヨミカワおそるべし。えへへ、なんだかムズムズするなぁ。
カミジョウが教壇に立ってるよ!ぷぷぷ、ちょっと緊張してるよねアレ!)

上条はみごと打ち止めのクラスに教育実習生としてやってきた。
これから二週間何かと面白いことになりそうだと、打ち止めはニヤける顔を隠そうともせず、上条先生を見つめた。
そこで彼と目が合い、二人は周囲に分からない程度に笑ってしまった。


実習生はほとんどの授業を、見学とそのレポートに費やす。
機会は少ないが教鞭を取る際には、打ち止めが自分を心配そうに見ているのを感じ、上条は嬉しいような、情けないような不思議な気分になった。

(最初は心強い気がしてたけど、こりゃなんか失敗したら恥ずかしいよな…。一方通行と黄泉川先生に筒抜けだし)
(あ、カミジョウ、字が違うよ字が…、ってミサカはミサカは国語担当なのにそれはどうなの?とツッコんでみる)

「上条先生、字が違いまーす」
「あ!?あぁスマン、俺緊張してて…」

案の定、誰かが指摘する。教室にクスクスという笑い声が響き、なぜか打ち止めが恥ずかしくなってうつむいた。


「っだー…、つ、疲れた…」
「お疲れ様、カミジョウ。うちの学食はあの人も認めた味なのよ?ごはん食べて元気だしてね。午後はもう授業ないんでしょ?」
「おう、そこは気が楽だな…」

打ち止めと上条は、学食で向かい合って昼食を食べていた。
気安そうに話す二人の元に、打ち止めのクラスの女子が数人近寄ってくる。手には各々料理が乗ったトレイを持って、同席する気満々だ。

「お邪魔しまーす。ちょっとミサカ、あんた上条先生と知り合いだったの?」
「そうじゃなかったら抜け駆けかい?」
「あははは、ミサカとカミジョウ…先生は、実は昔からの知り合いなのだ、ってミサカはミサカはもったいぶることもなく暴露してみたり」
「そうなんだ。俺もラ、ミサカのクラス担当になって驚いてるとこだったんだよ」

打ち止めは、みんなの興味の対象、上条の正面の席を譲り、友人達と楽しい時間を過ごした。
19 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/05(水) 03:43:20.35 ID:QBDpqJCD0
『今、上条と友達とごはんです!今日はきつねうどんだよ。上条はカレーライス食べてまーす』

「……」

わざわざ友人に携帯を貸して写真も撮ったのだろう。画像付きでメールが来た。
それを図書館で見た一方通行は、大層大きな舌打ちをかまし、丁度後ろを通りかかった学生と二つも席を離して座っている学生をビクリとさせる。
今日、彼は講義にも出ず、ましてや昼食も取らず、こうして図書館に籠って論文にとりかかっている。
約束の期限にはまだ日にちがあるが、三本も重なっているため、別に今のうちに一本完成させておいてもいいだろう。

(結局三下は打ち止めのクラスかよ…、黄泉川の勘が当たったなァ…)

これまた必要以上に音を立てて携帯を閉じ、さらにゴン、と机に置いて、またパソコンのキーボードを叩く作業に戻った。
周囲の人間が距離を取るほど、昼食に誘いに来た野次馬達が声をかけるのを躊躇うほど、彼はイラついていた。


「ねぇ、ミサカちゃん、どうして今日、一方通行あんな怖いわけ?昼飯いいのかな…」
「…んー、なんとなく理由は分かるけど…。ま、あと一週間以上はあんなかも」
「えぇー、せっかくシャーペンと消しゴム、ラッピングしてきたのになぁ。仕方ねぇ。これミサカちゃんから渡しといて?」
「なんだか小学生の誕生日プレゼントみたいよねぇ…」
20 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/05(水) 03:46:06.59 ID:QBDpqJCD0
それから数日。毎日毎日、打ち止めは家で学校の様子を楽しそうに報告した。黄泉川も芳川も、笑顔で聞いている。
一方通行も楽しそうにしている少女を、わずかに目を細めて見ていた。
どうやら今の所、上条の不幸が彼女に災いをもたらすような事態は避けられているらしい。

「今日は階段から落ちそうな子をナイスキャッチしたんだって。おかげでカミジョウはお尻を打ったらしいけど」
「確か昨日は学食の中でこぼれそうな大鍋を支えたのよね?そしてヤケド…」
「んで、おとといは能力使ってケンカしてた男子生徒の仲裁だっけ?上条大活躍じゃん」
「そうそう。おかげで元気な男の子と一部の女子が、右手に挑戦状叩きつけてきたんだって。
カミジョウ大変そうだったよ、ってミサカはミサカは校内を走って逃げていた姿を思い出してみたり…」
「アイツはいまだにそンなことされてンのか…。五年前と同じだな。くだらねェ…」


こうして皆で、もしくは打ち止めと一緒にいる時はいいのだが、一人になるとどうにも心配というか、懸念というか、心が落ち着かない。
一方通行は自室で溜息をついた。
ここ数日、どうにも変だ…
21 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/05(水) 03:48:45.75 ID:QBDpqJCD0
「あーなーた。入るよー」
「…おォ」

打ち止めがドアをノックする。風呂上がりの彼女が、恒例のお部屋訪問に来たのだ。
こうしてキラキラする目で見つめられるだけで、落ち着かなかった心が静まる。
一方通行は少女の手を引き抱き寄せると、床に置いてあるクッションの上に雪崩れるように座りこんだ。
このクッションは青年の部屋でも床に座れるようにと、打ち止めが持ち込んだものだ。

(わわわ、今日はいきなり近いなぁ、ってミサカはミサカはどきどきしてみる)

「……」

(え?え?え?ちょっとちょっとあなたどこ)

「どこ触ってるのっ?」
「…胸」
「そうですね。でもそういう意味じゃないの。ダメ…」
「だめか」
「ヨミカワもヨシカワもいるじゃない。二人とも起きてたし…、ダメ、だったら」
「……厳しィな、オマエ」
「ミサカは誰よりもあなたに優しいはずだもん、ってミサカはミサカは打たれ弱いあなたをなでなでしてみる」

一方通行は打ち止めを抱きすくめていた腕をゆるめ、立ち上がってポルシェのキーを手に取った。
打ち止めはクッションを抱えそれを見上げていて、その表情は若干影がかかっている。

「走りに行くの?」
「あァ。悪い…、ちょっと頭冷やしがてらな。俺は明日三限からだし。…先に寝てろ」
「うん、おやすみ。あといってらっしゃい…」

これだけはしておかないと、と打ち止めは一方通行に駆け寄ってキスをした。

一人彼の部屋に残された少女は首をひねる。

(あの人、ちょっと変だったかな?……よし、明日は頑張ろう!ってミサカはミサカは大胆な決心をしてみる…っ)
22 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/05(水) 03:51:21.57 ID:QBDpqJCD0
次の日、打ち止めは放課後の教室で数人の女子に囲まれていた。
この教室は隣のクラスで、帰ろうと思ったら「ちょっといい?」と呼ばれて来たらこの状態である。
みんなが聞きたいことは一様に『上条先生との関係について』であった。

「上条先生と付き合ってないの?」
「昔からの知り合いなんでしょ?」
「名前を呼び捨てで呼ばれてたし、ミサカちゃんも上条って呼んでたよ…」
「あうあう、違うのー。ミサカには…っ。みんなも知ってるでしょー?授業参観に来てくれた人!あの白い髪の人がいるんだから。
カミジョウ、先生はその人と友達だからミサカとも仲いいだけ…」

(す、すごい…!わずか一週間でこのファンクラブの如き女子達の熱の入りよう…ってミサカはミサカはみんなの迫力に圧倒されてみたり…!)

いくら説明しても納得してくれない。今日は早く帰って一方通行にとっても優しくしなければいけないのに…
埒が明かないと思って、申し訳ないがこの事態を招いた張本人を生贄にすることにした。
高速で携帯を操作し、上条の番号を呼び出そうとしたら…

「あ、いたいたラストオ…、ミサカ、今度黄泉川先生に」
「あー!さすがカミジョー!先生!超絶タイミング!」

不幸体質健在である。生贄は自らやってきた。
打ち止めは「あとは直接聞いてね!」と言い残してダッシュでその場から逃走した。後から上条の悲鳴のようなものが聞こえたが無視。

(もうあの人帰ってきてるよね…っ。急がなきゃ…)

焦る心そのままに、打ち止めの足は速度を上げていった。
23 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/05(水) 03:53:04.21 ID:QBDpqJCD0
「た、ただいま…」

打ち止めは息を枯らして玄関からリビングに飛び込んだ。やはり一方通行は既に帰っていきていた。
ソファに寝転がっていたが、チラと目を開けてこっちを見たので起きている。打ち止めは鞄を床に置いて彼の足元辺りに腰を下ろした。

「はぁ…ふぅ。もっと早く帰ってこようと思ったんだけど」
「随分息上がってンなァ。何かあったか?」

こう訊いても、どうせ上条の話なのだろうが…、訊いてしまった。だって訊かなきゃおかしい流れだっただろう。

「大変だったんだよー?ミサカとカミジョウが付き合ってるんじゃないかって、みんなに疑われてね…」

そう言われて、一方通行の中で何かが吹っ切れた。というか、ブチきれた。

「うるせェ!ンな話は聞きたくねェンだよコッチはァ!」
「っきゃあ!」
24 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/05(水) 03:55:56.93 ID:QBDpqJCD0
飛び起きて打ち止めの両手を拘束し、怒りと、よく分からない感情が渦巻いて、衝動的に彼女を睨みつけてしまった。
誰もが震え上がるであろう赤い瞳に睨まれても、打ち止めはただ戸惑うだけである。

(…あ、やっちまった……)

彼女とは逆に、噴出した感情の勢いも激しければ、それが引いていくのも早かった一方通行の方が焦った。
打ち止めの茶色い目に見つめ返されて、何も言葉が出てこない。

(ど、どうしたのかな?ミサカ変なこと言った?急にこの人が怒って…ない?あれ?……)

握っていた彼女の腕を離し、青年は気まずそうに目をそらした。分かったのだ、ここ数日自分の心が落ち着かなかった理由が。
いや、本当は最初から分かっていたが、目をそらしていた。今みたいに。

(情けねェ…。くだらない心配しちまってよォ。……くだらなく、ねェ、か……)

妹達にとって、上条当麻は特別だ。一方通行の実験を止め、命を救われただけではない。
生きる意味を与え、それぞれの個性を見いだせと説いた彼女達の唯一無二の存在。
そして、打ち止めも妹達だ。

不安、不快、心配、そして怖れ…

自分がいない所で、打ち止めと上条が親しくすごし、仲を深めることが、一方通行は怖い。

子供っぽい、でも深刻な自分の心理を理解してうつむいていたいた青年の顔を、少女の温かく柔らかい手がすくいあげた。
ふたたび見た打ち止めの目は、泣きそうでいて、笑っているようにも感じられる。それがだんだん近づいてきて、右の頬に唇が押し付けられた。
その優しさに、自然と瞼が下りてくる。

何度も、何度も。左の頬にも。

25 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/05(水) 03:58:35.91 ID:QBDpqJCD0
「あなたがネガティブ思考だってことを忘れてた…。最近言ってなかったけど…、ミサカね、あなたのこと好きだよ」

「………」
(もっと…)

言葉の間にも、頬へ優しいキスは送られる。

「カミジョウにはこのミサカだって感謝してる。でも愛してるのはあなた。苦労も多いけど、あなたがいいの…」

(言ってくれ…)

「目あけて…?」
「………」

まだ頬は彼女に支えられたままだ。しばらくはそうしておいてほしい。

「あなたがいたから、ミサカ達は…、このミサカは生まれた」
「打ち止め…」
「でもね、最近は違うかもしれないと思ってる、ってミサカはミサカは新説を発表してみる」
「どンな?」

待っていた、唇へのキス。

「あなたはこのミサカ…私のために生まれてきたんじゃないの……?」

頭の芯が、ぼんやりする。胸が熱くなる、苦しくなる。手は震えていた。

「そう、かもな…」

一方通行の震える両手がゆっくり持ちあがるのを見て、打ち止めは彼の顔から手を離した。
お互いの背中に腕を回し、強く抱きしめ合う。


(優しく…できたかな…?ってミサカは、私は…)

26 :ブラジャーの人 [sage]:2011/10/05(水) 04:05:04.66 ID:QBDpqJCD0
一方通行の心配と、打ち止めの優しさの巻 完

聖母ぶりが表現できたら良かったのですが。
上条さんの活躍を期待した方々、すみません。やっぱ新スレ最初の話だし、通行止めでいきました。
いつか打ち止め、妹達も(全員じゃないだろうが)一人称が「私」になる日がくるんじゃないかな…?

アイデンティティーが無くなるようなさみしさがありますけどね…

27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/05(水) 04:20:05.88 ID:0KZSza7DO
>>1
一方通行がかわいいww
そして上条さんは相変わらずの一級フラグ建築士っぷりですな
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/05(水) 09:32:29.32 ID:qsuoM26go
>>1
通行止めはやはりいいものだ
どんな時も揺るがない絶対的な信頼で一方さんを包み込む
打ち止めさんマジ聖母
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/05(水) 09:45:07.22 ID:xhf/vkzeo
一方さんの傍に居るのがミサカだって証明のためにずっとミサカの気もする
乙 一方さん可愛いなー
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/10/05(水) 10:39:26.34 ID:Nx2L71kAO

素晴らしい話をありがとう
打ち止めまじ聖母だわ…
31 :ブラジャーの人 [sage]:2011/10/05(水) 15:49:37.27 ID:dznogMjN0
乙ありがとう。

前スレやっと埋まりましたね。1000が素晴らしいよww
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/05(水) 19:54:49.87 ID:b/TTYfW50

やっぱやきもちっていいな
あと前スレ>>1000に期待ww
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/10/05(水) 21:08:41.04 ID:o7MgIeMAO
前スレ>>1000なんてことをしてくれたwwwwww

黄泉川が結婚するとかないかしら
34 :ブラジャーの人 [sage]:2011/10/06(木) 21:16:15.55 ID:4K2r/cQ00
前スレよりしばしば議論を呼んだあの問題…

では投下します。

生まれてーはーじーめてー 愛さーれてー 私はーきーれーいにー なってーいく〜

35 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/06(木) 21:29:09.08 ID:4K2r/cQ00
「あなた…」
「ン……?」
「重いぃー…」
「ンー…悪ィ」

一方通行は腕に力を込めて打ち止めの上から身を起こした。まだ自分も彼女も、幾分息が荒い。最近部屋に取り付けたブラインドによって、
夕暮れ時だが室内はとても暗かった。おかげで恥ずかしさが軽減された打ち止めは、青年の視線を感じてもそれほど焦らない。

「あ」
「ふゥ…」

繋がっていた箇所を引き抜き、さっさと自分だけ後始末をする。打ち止めは毛布を探していたが、
実は情事の最中に床に蹴り落としてしまっていたので、裸を隠すものが何も見当たらない。
そうこうしている間に、一方通行だけが服を身に着けた。

「ずるい、あなただけ…ってミサカはミサカはこっちはまだこんな格好なのよ、と非難してみる」
「なにが。オマエも起きればいいだろォ?」

打ち止めは自分を抱きしめるように丸くなると、ジト目でベッドに座り直す恋人を見つめた。
部屋は暗い…が、完全な暗闇ではなく、目が慣れればある程度は視界が効く。
一方通行は丸くなった少女の体を、そのラインに沿って撫でた。

「ま、もうちょっとこのままでいてもいいと思うぜ…」
「うぅ…」

秋深まる季節だったが、いまだ体は熱く、彼の手も温かい。寒いことはなかったが、さすがに少し恥ずかしいと思う。
しかし、一方通行が本当に優しい表情で自分の体を撫でてくれる嬉しさが羞恥を凌駕したため、打ち止めは彼の言うとおりにすることにした。
方や一方通行は、その表情が思わせることとはだいぶ違うことを考えている。


(なンか…、最近打ち止めが……)

太った?

とは訊けない一方通行。以前より打ち止めの体が、柔らかく、丸みを帯びてきたような気がするのだ。

(あれほど足細くするとか言ってて、太るってこたァねェだろ。それに太ったっていうより…)

なんかイイ…と思う。
36 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/06(木) 21:33:43.57 ID:4K2r/cQ00
「打ち止め…」
「なぁに…?」
「痩せようなンて思うなよ」
「えっ?あの急にどうしたの?」

縮こまっていた少女の両腕を取って、シーツの上に縫いつけた。まじまじと見降ろす。やはり以前より、イイ。
打ち止めは服を着込んだ一方通行にそうされて、もじもじと体をよじらせたが、その動きは彼を更に感嘆させるだけだ。
そっと手を離すと、ありがたいことに打ち止めはそのままの態勢でいてくれた。
左手をベッドについて、右手で彼女の首、肩から胸、そして腹、足までをなぞる。
ゆったりと足を組み、揺れることのない青年の視線が穏やかだったので、打ち止めは大人しくしていた。

(触ってるだけで気持ちいいな…。馴染むっつーか…)

「変なの。今までこんな風に撫でてくれたことあったっけ?ってミサカはミサカはまるでペット扱いのようだとワンワン言ってみたり」
「褒めてンだよ。俺は…気に入ってる…。自分が硬ェせいか?」
「あら…、ミサカったらあなたを知らず知らずのうちにトリコにしてたのね?」
「……そォだな。だから、痩せる必要ねェよ…」
「素直〜…、ってミサカはミサカは普段と違うあなたにビックリしてみる」

一方通行は上半身を屈めて打ち止めの首筋に顔を寄せた。触れるだけのキスをして、肌から匂い立つかぐわしい香りを吸い込んだ。
この匂いも、以前と違う気がする…

(これも…、馴染むなァ…)
(なんだろう、今日のこの人は本当に素直でかわいい…)

打ち止めは青年の髪を梳かすようにして頭を撫でた。素直な彼など珍しい。
そこで、今なら訊けるかもしれないと思ったので、何気ない風を装って訊いてみた。

「ねぇあなた、教えてほしいことがあるの」
「……」

一方通行は喋らなかったが、胸元を軽く吸われ、さらさらと彼の前髪が肌をくすぐったのを返事と解し、打ち止めは本題を切りだした。

「ミサカはもちろんあなたが初めてだったけど、あなたはミサカが初めてだった?」

「…、……」

彼からの返事はない……
37 :ブラジャーの人 [sage]:2011/10/06(木) 21:38:34.29 ID:4K2r/cQ00
つづく。

すげぇ考えたよ。めっちゃ考えたよ。なぜこんなことを四六時中…畜生。

ちなみに>>34の歌は岩崎宏美さんです。
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/06(木) 23:53:32.39 ID:OQtsuNvB0


知りたくなかった
でも打ち止めがエロいから許す
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/07(金) 00:19:41.76 ID:GbFio0YDO


これは…聞きたいような聞きたくないような
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/07(金) 00:34:16.03 ID:AQ9Ym2jC0


既に名前の出てるキャラが相手だといやだな個人的には
近場で済ませてる感じがあるから
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/07(金) 00:59:54.07 ID:wiw/Dz8qo
別に男はどっちでもいいなあ
今打ち止めオンリーなら過去遊んでようと全く問題ない俺はちょっと異端のようだ

乙!
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/07(金) 03:17:20.88 ID:URCKo7bKo
男は自分が最初の男であれと思い
女は自分が最後の女であれと願う
と言うからな
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/07(金) 08:08:25.18 ID:ipYsM96DO
男は「自分は初めてです」
ってのは言葉で以外表せられないからな……
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/07(金) 13:42:32.17 ID:0wWaNcMDO
どっか風俗でテキトーに筆下ろし済みだと思ってたが
>>1の出した答えを楽しみにしてる

そして打ち止めエロい
これはたまらんな
これはたまらん
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/10/08(土) 13:00:50.97 ID:h5l1REFAO
あわきんや番外個体や妹達をセフレにするSSや漫画も読める俺に隙はなかった
打ち止めが成長するまでは、現実的にありえない話じゃないしな
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/08(土) 13:38:52.38 ID:2GIDfbnjo
本気だして考えてみたがあわきんとかその辺の人ならいいが妹達番外は微妙かもしれん
何だよ結局ミサコンかよwwって感じ
色んな意見があるもんだなあ
>>1の結論が気になる
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/10/08(土) 22:47:20.29 ID:QwUEIhup0
打ち止めと出会った後だったら、相手が誰でも少し嫌だな
まぁ、愛溢れる経験は打ち止めとが初めて、だったらいいけど
48 :ブラジャーの人 [sage]:2011/10/09(日) 00:52:17.92 ID:paCRolq30
なんか物議かもってる。
これはゲロ止め並みに投下をためらうレベルですね。

しますけどね。
49 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/09(日) 00:56:00.43 ID:paCRolq30
少女の胸元で息を飲む青年。
一方通行はゆっくりと顔を上げ、上体を起こして打ち止めを見降ろした。

(おぉ、こんなカオも珍しい、ってミサカはミサカはこの人の意外な一面を発見してみたり)

「急にどうしたは、こっちのセリフだな。そンなこと気になるのか?」
「うん、なる。教えて教えて!ってミサカはミサカは逃がさないぞ、とあなたを捕まえてみる!」
「ちょォ、オマエ…っ」

打ち止めは勢いよく腕を伸ばして一方通行の首に回し、自分の方へ引き倒した。
青年は誤って少女を押しつぶしてしまわないように気を配ってしまったので、体よくベッドへ転がされる。
打ち止めはさらに彼の胸の上にのしかかって、答えるまでは解放しない意思を伺わせた。

「じーっと見つめてプレッシャー…」
「言ってりゃ効果ねェよ…」
「ミサカだけバレバレで、あなたは内緒なのは不公平だと訴えてみる」
「男と女じゃ事情が違うンだ。あンまり公言するもンじゃねェ」

打ち止めの顔が、自分の胸の上で曇っていく。答えたくないということは、打ち止め以前に経験がある…と思わせてしまったのだろう。

「百面相だなまるで」
「………」
50 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/09(日) 01:00:48.35 ID:paCRolq30
お互いに、相手のことを大切に想い合っている。
誰にも渡したくない。愛して、愛されているのは自分だけ。
他の男についていくな。他のひとを見ないで。
でも、過去は取り返せない。

一方通行は打ち止めより肉体的に五年以上も年上だ。出会ってから本格的に男女の仲になるまでの五年間、それに出会う以前の
彼の異性関係を、打ち止めは知らない。彼は女性にうつつを抜かすような暇も性格も、
持ち合わせてなかったとは思う(自分は除く)のだが、やはり心配である。

(教えてくれないかな…。でもそれってつまり、先にした女のひとがいるってこと?)
(まさかこンなこと訊いてくるとはなァ)
(知ってもしょうがないのに、訊かずにいられなかった…。うーミサカかわいくないかも)
(仕方ねェか…。気になるモンだよな、やっぱりよォ…)

一方通行は両手の指先だけで打ち止めの背中をつつつ、とくすぐった。
少女がその刺激に目を丸くして、体を弓なりにしならせ戸惑っている隙に、さらりと告げる。

「わわわ、やめてもぉ」
「俺もオマエが初めてだった」
「…ぉ?」
「聞いてたか?」
「…うん」
「じゃもォいいよなァ?ほら、そろそろ服着ろ」

青年は体を起こそうとしたが、打ち止めはそれを良しとしない。立てられた膝に自分の足を絡めて動きを封じ、少し強引に彼の首、頭を抱えるように抱きついた。
一方通行には彼女の顔は見えなかったが、安堵の気配が伝わってくる。

「寒くねェの?」
「寒くない…。ぎゅってしてくれれば」
「……」

彼女のご要望に応え、一方通行はできるだけ多くの肌が触れ合うように努めた。
51 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/09(日) 01:02:11.15 ID:paCRolq30
ずいぶん前から気にかかっていたのだろうか。
その日は夕飯の時も、リビングでテレビを見ている時も、打ち止めは心晴れやかといった様子で絶えず笑顔だった。
芳川に「何かいいことがあったの?」と訊かれているほどである。よっぽど初めてどうしだったことを喜んでいるらしい。

(……、嬉しそうにしてるし、ああ言って良かったンだ…よな)

風呂につかりながら、一方通行は打ち止めの笑顔を思い浮かべる。正直、恥ずかしかった。

(どォして打ち止めはあンなに気持ちいいンだ…?)

肌を重ねるごとに、深く溺れていくような気がする。
打ち止めがあんなことを訊いてきたものだから、風呂を出てもそんなことばかり考えてしまう一方通行だった。
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/10/09(日) 01:04:44.95 ID:X4ffY2rSO
>>1
前スレリンク貼り方もまだ知らない段階かぁ
携帯だしね

ここブックマークしときな
http://s.s2ch.net/test/-41--.!FROM=&mail=&NG_NAME=&NG_MAIL=&NG_DATE=&NG_MESSAGE=&NG_BE=/ex14.vip2ch.com/news4ssnip/

俺使いやすい設定にした板URLだけど問題は無いはず
53 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/09(日) 01:08:10.04 ID:paCRolq30
(そォいや今日は打ち止めが部屋に来てねェな)

夕方に、散々ここでひっついていたことではない。打ち止めは大抵風呂の後に一方通行の部屋に来て就寝前のひと時を過ごす。
自分が入浴する前に彼女も風呂に入ったはずだが…

(まぁ、疲れて先に寝ちまったか…)

自分も疲れていることだし、ベッドに入って照明を消した。しかし、いざ目をつむると眠気が遠ざかってゆく。
根気強く毛布を被ってひたすらじっとしていたら、ドアの外に人の気配が感じられた。打ち止めだ。
彼女はノックもなしにそっとドアを開け、足音を忍ばせて入って来た。そして手がベッドに触れたところで、
一方通行は壁際に体を寄せて、打ち止めのためにスペースを空けてやる。

「やっぱり起きてた?」
「あァ?起きてて悪ィか」
「はい、入れて入れて。今夜は冷えますなぁ、ってミサカはミサカは毛布のおすそわけを期待してみたり」

今夜は枕を持参の打ち止め。彼の横に自分も頭を並べた。

「はぁ、ぬくぬく…」
「冷てェなァ。裸足で来るなよ」

一方通行は打ち止めに向き直って背中に腕を、冷えた足には自らの足を絡めて体温を分け与える。なんだかいつもと逆だ。
打ち止めも彼の背中に手を回し、ベッドの中でお互いに抱きあう。これで安らかに眠れるだろう…
54 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/09(日) 02:18:38.46 ID:paCRolq30
「っい!?」
「……」
「なンだよ!?」

背中を打ち止めにつねられた。しかも結構強く。
肉が無い一方通行の背中をつねるのは少々困難だが、成功した暁には大きなダメージが期待できる。

「なんでもない」
(なンでもないわけねェだろ…)
「…ん」

近付けていた顔を離し、彼女の真意を確かめようとしたのだが、打ち止めはおかまいなしで唇を突き出してキスを要求してきた。
一方通行は不満と困惑を抱えながらも、とりあえずキスをする。

「……ふ」
「ン……」
(おいおい、寝るンじゃねェのか)

濃厚な口づけは、中々終わらない。青年が肘をついて態勢を整えようとした時、不意に唇が離れていった。
打ち止めはもぞもぞと一方通行の胸に顔を埋め、寝る態度を表した。せっかく持ってきた枕は最早用無しらしい。

「おやすみ、あなた…」
「…おォ」

(……こりゃァ、…もしかしてバレてるのか?)
55 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/09(日) 02:21:24.02 ID:paCRolq30
あんなに真正面から、打ち止めに嘘をついたのは初めてだった。

大学に入って間もない頃だったと思う。一方通行はひょんなことから見知った同じ年頃の女性を抱いたことがある。
もう顔もあまり覚えていないが、たしか数回ほど会ったはずだ。なんとなく誘われたので、どんなものか興味もあったから試してみた。
打ち止めとのセックスが初めてではないことを彼女に告げれば、まず悲しませるか落ち込ませるかしただろう。

(打ち止めのためを思ってのことだったンだが…、バレてりゃ世話ねェな)

一方通行は打ち止めの頭を撫でた。香ってくる良い香り。触れ合った肌から伝わる柔らかさ。
比べるまでもなく、こんなに夢中にはならなかった。打ち止めが、打ち止めだから強く求めているのだと分かっている。

(だから、勘弁しろよ)

優しい恋人を腕の中に、青年は簡単に訪れた眠気に意識を手放した。

「……」
(ごめんね、あなた。ミサカはあなたの言ったこと、嘘かもしれないって疑ってるの。
でも本当なら嬉しいし、嘘でも、ついてくれたことが嬉しいからいいの……)

でも、もし嘘だったらやっぱり良い気はしないので、とりあえずつねっておくことにしたのであった。
56 :ブラジャーの人 [sage]:2011/10/09(日) 02:32:15.72 ID:paCRolq30
一方通行の嘘の巻 完

最近は脳内で一方さん、打ち止めと会話ができるようになりまして、聞き取りしたら上記のようなことでした。
お互い初めて派、経験済み派、真実は闇の中にとどめておいてほしい派… いろいろな方がいらっしゃるようでしたね。

結局「経験済み」でしたが、他の派閥の方々、ごめん。でもこうなってしまいましたよ、勝手に話が進んでいきまして。
ご容赦ください…

>>52 ありがとう。ブックマークのやり方勉強しとくね。
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/09(日) 04:45:15.73 ID:6tBGmmkDO
乙。
打ち止めが健気すぎて涙出るわ
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/09(日) 04:46:19.87 ID:6tBGmmkDO
乙。
打ち止めが健気すぎて涙出るわ
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/10/09(日) 09:28:48.12 ID:k0FkRcwAO
その「女性」が現れて修羅場になる展開wktk
男は一回だけのつもりでも女って忘れてないもんだよな
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/10/09(日) 09:33:45.74 ID:tnmFn/cJo
>>59
基本逆だと思うけどな
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/10/09(日) 18:24:21.48 ID:SphP09TAO
女は忘れる気になるとすぐ忘れる。忘れる気がないとずっと覚えてる

男は会わないとすぐ忘れる
62 :ブラジャーの人 [sage]:2011/10/09(日) 21:05:48.68 ID:is9ZTk+Q0
男女の仲について、いろんな格言(?)があるんだなぁ…

63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/09(日) 22:40:04.41 ID:7a8vRGqDO
>>1


>>62
男は名前をつけて保存
女は上書き保存

みたいな?
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/09(日) 23:12:48.62 ID:4LsWtNnn0


とりあえず大切なのは今だと思う
65 :ブラジャーの人 [sage]:2011/10/12(水) 18:34:35.40 ID:U9NO6jzB0
さて、またいつもの普通の通行止めです。

お忘れかもしれませんが、ここの黄泉川家には金魚がいます。しかし魚類は人間と絡みづらいのです。

では投下開始。
66 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/12(水) 18:37:52.69 ID:U9NO6jzB0
打ち止めはぶらさげたコンビニ袋を揺らし、我が家への道を歩いていた。一方通行におみやげのアイスも買ったので急いで帰らなければ。

(この寒いのになンでアイスなんだ、って文句を言いつつ食べてくれるあの人が簡単に予想できるなぁ)

近道に近所の公園を横切ろうとしたら、園内の植え込みからガサガサと音がする。
猫でもいるのだろうかと、なんの疑問も持たずそこを覗き込んだ。

(……わぁー、どーしよう。困ったことがあるとすぐにあの人に頼っちゃおうと思うなんて、ミサカ甘やかされてる証拠だよね。でも頼っちゃえ)



(遅ェな…。たかがコンビニに行くだけで)

リビングで体だけをくつろげていた一方通行は、帰りの遅い打ち止めに電話しようと携帯電話に手を伸ばした。
とたんに着信音が鳴り、それは案じていた少女からだったので、一気に安堵がこみ上げる。

「なンだ?」
『あなたー助けてー』
「はァ!?」
『怪我してるの』
「!?どォした、今どこにいる!?」
『あ、怪我してるのはミサカじゃないからね、ってミサカはミサカは電話の向こうで血圧上昇気味なあなたを落ち着けてみたり』
「……で、どこにいンだよ」
67 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/12(水) 18:39:29.74 ID:U9NO6jzB0
すぐ近くの公園にいるとのことで、一方通行は靴を履いてからベランダよりその方向へと飛び出した。
十数秒後には、眼下で手を振る打ち止めの姿が見え、隣に降り立つ。
打ち止めは「しぃー」と口に指を当ててから、植え込みの方を指し示した。
青年が一緒にそこへ近づくと、ガサゴソと何か動物が地面で動いているのが分かる。こちらが近づいたことに驚いて逃げようとしているのだろう。
打ち止めが一方通行の服の裾を引っ張り、二人してゆっくり、ゆっくり忍び寄った。


「ぐるっぽぅ」


「……鳩、だな」
「うん、鳩。ほら、血が出てるでしょ?ってミサカはミサカはこの子を助けてあげたいとあなたをウルウルおめめで見上げてみる」
「また面倒くせェことを…」
「だってぇ、この子真っ白だもん。あなたみたいだもん。見つけたからには放っておけないよ…」
「……はァ」

「ぐるぽー…」

68 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/12(水) 18:48:38.89 ID:U9NO6jzB0
「で、僕のとこに来たわけかい。でも一応僕は人間の医者なんだけどねぇ?」

公園で(能力を使って)鳩を捕獲した一方通行は、一度家に帰ってからいつもの病院にやってきた。
鳩をタオルに包み、ダンボール箱に押し込めて来たのだが、カエル顔の医者にそう言われてハタと気づく。

(そォいやそうだった。普通こういう時は動物病院だろォが。何やってんだ俺達は)
(怪我をしたらココ、という刷り込み意識が働いてしまった、ってミサカはミサカはうっかりさん)

「なんて顔してるんだい、二人とも。まぁっせっかく来たんだし、一応診せてごらん。頼ってくれて嬉しいよ」

(診るのかよ)
(結局診てくれるのね、鳩なのに)

動物の診察を人間用の病院内でするのはよろしくないので、中庭のベンチにて行うことにした。もともと人間には慣れている鳩は、
カエル顔の医者の手の中で大人しくしている。血が滲んでいる翼をかまっていた冥土帰しは、そっと鳩をダンボールの中に戻す。
診察が終わったと見て、打ち止めが心配そうに訊いた。

「先生どう?」
「うん、骨は折れてないよ。傷口を消毒して安静にしておけばそのうち飛べるようになるさ。野生動物だし」
「ではこちらに消毒薬を用意してありますので、あとはこの一九〇九〇号にお任せください、とミサカはナイスタイミングを自画自賛します」
「…後ろから気配を消して接近するのはやめろ」
「じゃ、僕はこれで失礼するよ。君達、この鳩を面倒みるならペットショップに寄って餌なんかを揃えてあげるんだね?」

いつの間にか傍にいた一九〇九〇号が、席を外した冥土帰しに代わって鳩の手当てをしようとする。
しかし、彼女が羽のあたりに触れたところで、ばたばたと箱の中で逃げるような素振りを見せる鳩。

69 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/12(水) 18:50:55.93 ID:U9NO6jzB0
「嫌がってるなァ」
「うぅ、やはり鳥類でもミサカ達が纏う微弱な電流を嫌って慣れてはくれないようです、とミサカは鳩なでなで出来るんじゃね?という期待が早くも崩れ去ったことに落胆します…」
「やっぱり…、あなたを呼んだミサカの判断は正しかった、ってミサカはミサカは一九〇九〇号と一緒にがっかりしてみる」
「仕方がありません。一方通行、これを」
一九〇九〇号が消毒薬とガーゼを摘まんだピンセットを一方通行に差し出した。オマエがやれ、という意味である。
彼は顔をしかめながらもそれを受け取った。打ち止めと一九〇九〇号が出来ないなら、自分がやるしかないだろう。

「そうです。まず血を拭いて…、それくらいでいいでしょう。あとはガーゼに消毒液を付けて…はい。
なかなか上手いじゃねーか、とミサカは上から目線で一方通行を称賛します」
「いちいち一言余計なやつだな」
「あとは安静にしてれば治るんだよね?ねぇあなた、この子のお世話してもいいでしょ…?」

打ち止めが一方通行の隣に座り、箱の中から彼の顔に視線を移す。
彼女にそんな表情をさせるつもりはない。一方通行とてこの白い鳩の面倒は、打ち止めが助けたい、と言った時から受け入れるしかないと思っていたからだ。

「ここまできてやらねェってわけないだろォ。…ペットショップ行くぞ」
「やったー!ってミサカはミサカは大喜びー!」
「あっぱれな心がけです。ミサカからはこの消毒液をタダで提供してやりましょう」
「どォも…」

「くるっぽー」

70 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/12(水) 18:53:52.26 ID:U9NO6jzB0
とりあえずここまで。

鳥類はスズメが一番好きなのですが、あいつらあんまり慣れないから。
人によっては「苦手」と言われる鳩ですけど、白いし、よろしくね。

71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/12(水) 23:51:10.11 ID:VOzQVhVP0

素晴らしなこの平和の象徴
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/13(木) 01:37:23.18 ID:tnkWz9FDO

鳩になんて名前つけるかが気になるところですな
73 :ブラジャーの人 [sage]:2011/10/14(金) 21:14:17.70 ID:sEDUugVR0
公園で豆を撒いたら、およそ二十羽ほどの鳩が体中にとまった思い出とともに執筆。

>>71 忘れていました。平和の象徴だということを。

>>72 …ごめん。

では投下します。
74 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/14(金) 21:47:13.66 ID:sEDUugVR0
鳩入りのダンボール箱を抱えた打ち止めと一方通行は、病院からペットショップへと向かう。金魚の水槽などはデパートで揃えたが、
さすがに野生の鳥のことは専門の店で任せた方がいいだろうと、ポルシェのナビで検索し一番近い所へと走らせた。
後席に置いた箱を、助手席に座る打ち止めがチラチラ伺って気にしている。

「そンな心配すンな。大人しくしてるみたいだぜ」

ルームミラーで箱を確認した一方通行が隣の少女を安心させようとしたが、おそらく無駄だろう。
動物好きの彼女は、これからしばらく鳩と過ごせるということで、心が浮き立っているのが丸分かりだ。

「うん…、でも暴れる元気もないのでは?とかえって不安になってみたり…」
「ンなわけねェだろ。アイツを捕まえるときにめちゃめちゃ走り回ってたじゃねェか」
「…そう、だよね……」

(やれやれ…)
75 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/14(金) 21:49:44.99 ID:sEDUugVR0
やってきたペットショップの店員に事情を話し、どのように世話をすればいいのか、餌はどれを買えばいいのか等を訊いた。
ダンボール越しならと打ち止めが箱を抱えているのだが、鳩は病院で一九〇九〇号に羽を触られた時のように嫌がる様子はなく、店内まで連れてきた。

「はぁ、鳩ですかぁ。特別気を付けるようなことはないっスねぇ」
「……、何かねェのか?食わせちゃいけないモンとか。飼う時のコツとか注意点とかよォ」
「いや、マジないっス。鳩なんでも食いますし。パンでも生米でも炊いたご飯でも…。
もちろん人間のお菓子なんかは、鳩に限らずアウトっスよ」
「あのあの、じゃあカゴに入れてテキトーにごはんをあげてればいいの?ってミサカはミサカは金魚ちゃん以上にアバウトな鳩の飼育方法に驚いてみる…」

せっかくやってきたペットショップの店員の説明は、とてもざっくばらんなものだった。打ち止めの言うとおり金魚の方が、手がかかりそうである。

「まぁ、お譲さんの見解でほぼOKっス。一応専用の餌があるんでそれをどうぞ。あとは籠を清潔にするとか、
数日に一回くらい水浴び…はダメかも。日光浴させるとか、フツーのことすりゃそのうち怪我も治りますよ」
「オゥ、気合いを入れていた分だけ脱力も激しいね、ってミサカはミサカは難しくなさそうなことにホっとしてみたり」
「あァ、楽な方が助かるけどな…」

76 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/14(金) 21:51:50.93 ID:sEDUugVR0
ケージや餌を買い、それらを台車に乗せて運んでもらった。
「おぉーポルシェすげーっスねー」と、凄いと思ってないように褒める店員に、打ち止めが箱のふたをそっと開けて鳩を見せる。

「店員さん、この子がオスかメスか分かる?」
「うーん、雌雄を見分けるのは難しいんスよねぇ。卵を産めばメスってのは確実なんスが」
「どっちでもいいじゃねェか別に」
「よくないよ、名前決めるのに大事じゃない」
「はぁなるほど。ちょっと箱ごと貸してもらっていいスか?他の店員にも見せてみます」

買った物を車に積んっでから、三人は店舗へ逆戻りした。そこで専門的な判別法でも行ってくれるのかと思ったら…

「はーい、この鳩が雄だと思うひとー…ん、二人」
「じゃ、雌だと思うひとー……お、店長も雌に一票っスかぁ?こりゃ店長加点で、四人だけど六人に換算してもいいくらいだなぁ」

(鳩の飼い方がアバウトなンじゃなくて、この店自体がアバウトなンじゃねェのか、もしかして)

「よっしゃ、まぁ雌ってことでひとつよろしくっス」
「わぁ、女の子かぁ。どんな名前にしようかな、ってミサカはミサカは悩んでみる」
77 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/14(金) 22:20:43.94 ID:sEDUugVR0
マンションに戻り、さっそくリビングにケージを設置する。夕暮れ時を過ぎ、珍しく芳川も早い帰宅をしたところであった。

「あぁ、これが保護した鳩ね。ふふ、真っ白じゃないの」
「一九〇九〇号から聞いてた?えへへ、白いから放っておけなくて、ってミサカはミサカはあの人を見つめてみたりー…」
「……さっさと手伝わねェか。餌食わすンだろ」
「はーい」


ひととおり準備が終わり、芳川が鳩を掴んでケージに入れる。相変わらず大人しい。
低い位置に取り付けた止まり木に、自ら足を乗せに行って首をすくめて丸くなった。

「まるで飼われていたかのように落ち着いているわね」
「おりこうさんだね、ってミサカはミサカはさっそくごはんをあげてみる。食べるかなぁ…」

ペットショップで買った餌を容器に入れて差し出すと、鳩はなんのためらいもなく食べ始めた。ガッツガツ食べ始めた。

「こりゃ心配いらねェな。あの店員やカエル医者の言うとおり、放っときゃ治るだろ」
「確かに、こんなに食欲あるなら大丈夫みたい。良かったね、ハト子」

「……」

「ハト子ォ?」
「あらあら、打ち止め、もう名前決めたのかしら」
「うん、どうも女の子みたいだからハト子」

一方通行は壁際の水槽を見た。水中では我が家のペット、三匹の金魚が気持ちよさそうに泳いでいる。
最近寒くなったので、ヒーターを稼働させたためか、三匹とも非常に快活だ。
そしてこの金魚たちにも、実は打ち止めがつけた名前があるのだ。
まず、『キンちゃん(コアカ)』そして『ギョっちゃん(コメット)』最後に『マルちゃん(流金)』である。

「オマエはほンっっとーに命名センスがねェ。驚くほどねェ」
「いいじゃない、分かりやすくて。鳩で雌ということが、すぐに想像できるわ」
「そうだよー、文句があるならあなたが名前つける?ってミサカはミサカは芳川の賛同を得て強気に出てみたり」
「……」

そう言われて、わざわざ鳩なんかの名前に頭を悩ます一方通行ではない。というか、生き物の名前を決めるなんて、彼はやったことがないのだ。
打ち止めのセンスが変ということは断言できるが、では自分なら…とはいかないのである。

「別に…なンでも構わねェよ」
「じゃ、やっぱりハト子だ。よろしくね、ハト子」

「くるっぽ」
78 :ブラジャーの人 [sage]:2011/10/14(金) 22:24:30.19 ID:sEDUugVR0
とりあえずここまで。
打ち止めとアニマルの組み合わせはとても絵になると思う。

動物飼いたい、恒温動物飼を。
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/14(金) 22:35:58.84 ID:ZrpuhOGM0

おいおい通行止めの子供の名前が心配になってきたぞ
一方さんも凄い廚二ネームを付けそうじゃないか
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/15(土) 00:37:28.00 ID:ZSnMkFJ/0

つまり、打ち止めのアニマルコスは素晴らしいということか
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/10/15(土) 02:48:35.22 ID:jzOGs2yAO
>>79
その二人というか
学園都市全体がネーミングセンスに問題有りだからな…
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/15(土) 07:21:13.53 ID:SH1cdAqwo
吹寄さんの悪口はやめるんだ

83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/15(土) 10:02:55.86 ID:nEb92CQ/o
>>79
息子は兎も角、娘が産まれたら百合子一択だろ
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/16(日) 15:34:56.38 ID:1rdzs4a0o
百合子ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/10/16(日) 23:56:17.39 ID:jJ61G1pAO
鳩(はぁと)ふる彼氏のノリだなwwwwww
86 :ブラジャーの人 [sage]:2011/10/19(水) 17:45:08.67 ID:rJH/tVS10
>>80 しかし、さすがに鳩コスは萌えないのでは。

>>83 >>84 やっぱり百合子は人気なんだなぁ。

>>85 うまい、そういう駄洒落は大好きです。

では、いつもより間が空きましたが続きを投下します。

87 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/19(水) 17:51:35.60 ID:rJH/tVS10
「いってきまーす。ハト子のお世話お願いね、ってミサカはミサカは主夫な旦那様に見送られるキャリアウーマンのような気分に浸ってみる。うふ」
「なにがキャリアウーマンだ。しっかり勉強してこい。中学生」
(まァ手は出してンだけどよ、中学生に)

保護者達が出勤し、打ち止めが学校へ行けば、この家は一方通行だけとなる。正確には保護中の鳩がいるのだが。あと金魚。
大学生という肩書を持つ彼が、一番時間の自由が効く。よって鳩の世話も彼にお鉢が回ってきた。打ち止めはハト子を可愛がっていたが、
体に纏う電磁波で嫌な思いをさせないように触れるのを自重しているので、怪我の消毒も主に一方通行がやっていた。

「おら、来い」

そう言ってケージの中に手を入れれば、自ら人差し指の上にとまりに来る。ソファの上にて消毒薬のビンを用意しても、鳩は一方通行の膝の上で大人しい。
これが終われば餌がもらえるとこの数日で学習したからだろう、と一方通行は思っているが、
彼以外の住人に言わせれば、ハト子は単に一方通行に懐いているそうだ。

「おし、…ほれ食え」
「くーっ」

この家に滞在する時間が長いのは、まず一方通行、ついで打ち止めだが、前述の理由で彼女は寂しいことにハト子にあまり触れられない。
長い時間を同じ室内で過ごし、餌をくれる一方通行に懐くのは必然であった。
ハト子の世話を終え、ソファに転がってテレビのニュース番組を見ている青年の腰の上には、鳩。
黄泉川家のリビングでは、見慣れた光景になりつつあった。


(十時過ぎたか…、そろそろ行きますかねェ)

二限目の講義に出席するため、一方通行はハト子をケージに戻す。

「ぽ」
「三時過ぎまでだ。その後また出してやる」

なんやかんやで鳥類に帰宅の予定時間を告げ、一方通行は大学へ向かった。同居人達(特に打ち止め)が可愛がっている鳩だ。それに自分に

(懐かれて…ンだよな?)

誰だって悪い気はしないだろう。
88 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/19(水) 17:56:55.30 ID:rJH/tVS10
「ただいまー!ハト子にごはん…っ」
「もォやった」

かわいいハト子に早く会いたくて急いで帰ったきたのに、既に先に帰宅していた一方通行によって餌もあげられてしまったらしい。打ち止めは口を尖らせた。

「えー、ミサカがあげたかったのにぃ。夜はミサカがごはん係だからね、ってミサカはミサカはあなたに先駆けて予約してみたり」
「そンなにやりたかったンかよ…」
「だって……」

テレビは音だけ聞いているのだろうか。打ち止めはソファに仰向けに寝る一方通行を見た。
規則正しく呼吸によって上下する彼の腹の上では、その動きに合わせてハト子も上下している。

「ハト子ってば、あなたにばかり懐いて…。ミサカ、ジェラシー感じちゃう」
「どっちに…」
「両ぉー方ぉー」

少女は青年の足にすがり付くように腰掛ける。そしてハト子の尾にそぅっと手を伸ばしてツンとつついた。

「く?」
「おォ?可愛さ余って憎さ百倍かァ?」
「違うよ、ただミサカだってハト子にちょっとでいいから触りたいの。羽キモチいいなぁ」

ハト子は打ち止めの方を振り向き、一方通行の腹の上を歩いて彼女へと近づいていく。
89 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/19(水) 18:01:22.46 ID:rJH/tVS10
「あら?あら?ってミサカはミサカはドキドキしてみる…」

傷ついた羽だが、少しは飛べる。ハト子は打ち止めの頭に飛び上がり、ぴょんぴょんとさらに背中へ。

「ふわぁぁぁ〜あなたあなたハト子がっ、ハト子がぁ…ミサカに…っ」
「落ち着け、興奮して放電するなよォ?じっとしてろ」
「うん、うん。でもどうして?ミサカの電気平気なのかな?」
「しばらく同じ部屋に居て、接近もしてたからな。まさか電磁波に慣れたのか?」
「あぁ、ハト子の重みが背中に。くすぐったいけどあったかいよぉ〜、ってミサカはミサカはハト子を乗せてるあなたの気持ちを実感してみたり」
「オマエの制服でクチバシ拭いてるぞ」
「それでもいぃー」
「くるくる」

そんなわけで、一方通行ほどではないが、ハト子は打ち止めにも慣れはじめた。打ち止めの喜びようたるや、今度は一方通行が嫉妬を感じてしまうほどである。
ハト子とあまり離れたくないということで、最近はろくにデートもしていない二人だった。


「やっぱりハト子はあなたの方に懐いてるのね、ってミサカはミサカは悔しがってみる」
「…なァ、明日あたり久しぶりに晩飯外で食って、ドライブ行かねェか?」
「んー、また今度にしようよ」
「……」
90 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/19(水) 18:04:15.19 ID:rJH/tVS10
打ち止めは今、一方通行の部屋にて彼についてきたハト子を追い、この鳥をニヤケ顔で観察中である。
おやつだと言い、食パンをちぎり少しずつ与えては、楽しい触れ合いに夢中だ。
やがてパンが尽きるとハト子は、クッションに座り雑誌を読む一方通行の右肩にとまり、白い髪をくちばしで啄ばみはじめる。

「むぅ、おやつが無くなった途端これなんだから、ってミサカはミサカは寂しいからあなたの反対側に失礼しまーす」
「右も左もくすぐってェなァ…」

鳩の傍に人差し指を近付ければ、こちらはお利口に飛び乗ってくれるのだが、反対側でじゃれついてくる少女はタチが悪い。

(鳩にやきもち焼くのか、俺に焼くのか、はっきりしろよ…)

鳩が自分にこうして懐けば「ずるい」と言われたり、まるで張り合うように、こうしてベタベタとひっついてくる。
二人きりで過ごしたいのでデートに誘うと「また今度」と断られるし。

(どォしろってンだ)

どうにも八方ふさがりであった。こうなると、ベクトル操作で羽の怪我をさっさと直して、空へ放してしまおうかとも思ったりする。
鳩に能力を使ったことなんてもちろん無いが、人間と同じ恒温動物だ、やって出来ないことはないだろう。

(でもなァ、コイツが泣くかもしンねェし)

怪我が治れば、別れもやってくる。それまではこの理不尽な状況にも我慢してやるべきか…
それに、打ち止めもそれを見越してこんな態度を取っているのかもしれない。

「んー、ちゅー。どぉ?ハト子とミサカのどっちがくすぐったい?」
「ばァーか。鳩はもう俺の足の上だぞ」
「あれいつの間に。まぁいっか、ってミサカはミサカはもう少しイタズラを続けてみたり」

(考えすぎかもなァ…)
91 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/19(水) 18:10:02.43 ID:rJH/tVS10
そんな日常を送ることさらに数日、ハト子は部屋の中を本棚からテレビの上、そこからソファへと飛べるまでになった。
黄泉川と芳川も、ハト子の回復ぶりを微笑んで見守っている。

「おぉ、ハト子もだいぶ飛べるようになったじゃん。一方通行と打ち止めが世話したおかげだね」
「世話っつっても、消毒と餌やりぐらいなンだがな」
「でも見てて立派だったわよ。しっかり愛情持ってめんどう見たから、こんなに懐かれているのでしょう?」
「……」
「あっははははは!ダメじゃんよぉ一方通行。そんなにこっち睨んでも頭にハト子乗せてちゃギャグにしかならないじゃん」
「ねー。白い髪に白いハト子だから同化して目がチカチカ、ってミサカはミサカは羨ましいからおやつでハト子をおびき寄せてみたり」
「ぽっぽ」

打ち止めがキッチンで、パンの切れ端を手に持ちハト子に見せびらかすと、黄泉川家のアイドルは一方通行の頭を蹴って、少女の前のテーブルに着地した。
首を振って「早くチョーダイ」とアピールしている。

「はい、あげる。うんうん、本当に飛べるようになったね、ハト子。……寂しいなぁ、これじゃもうすぐお外に放してあげないといけないね…」

切なげな打ち止めの声を聞き、リビングにいた三人は彼女へと視線を向ける。
一方通行を含め、黄泉川も芳川も、打ち止めが「離れたくない、このままハト子を飼いたい」と駄々をこねるのではないかと予想していたからだ。
しかし、この少女も考え方が大人に近づき、とっくに、…もしかしたら最初から別れを承知で鳩に接していたのかもしれない。
黄泉川が打ち止めの横に立ち、少女の肩を抱く。

「よしよし、良い子だね、打ち止めは…」
「……ん…」

一方通行は新聞へと目を戻したが、背後で黄泉川に慰められる打ち止めの様子は把握していた。

(やっぱ分かってたンだな……)

「打ち止めも、もう子供じゃないのね。ああして言葉に出して決心を固めているのかもしれないけれど」
「…あァ」

芳川もキッチンへと行くらしい。一方通行の横を通り過ぎる際に、こっそりこう告げてきた。

「君も、後で慰めてあげるのよ?」
「………」
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/19(水) 18:16:05.27 ID:O7Iiy2TDO
実際にはーとふる彼氏という鳩だらけのゲームがあってだな…
93 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/19(水) 18:21:03.05 ID:rJH/tVS10
芳川に言われたからこうしているわけじゃない。もとより一方通行は、打ち止めが悲しそうな顔をしていたら、自然と体が動いていただろう。

打ち止めは床に座り、ケージの中で首をすくめて眠る鳩をじっと見つめている。深夜のリビングはまだ明かりが点いているので、
遮光性の高い布でケージを覆っていたが、正面だけめくったところから、ずっと飽きもせずに。
そして一方通行も、ずっと打ち止めを後ろから抱きしめていた。どれくらいこうしているだろう。
リビングでこんなことをしていては、保護者達に目撃されて恥ずかしい思いをするかもしれないのに、
一方通行はそれを顧みず、時折少女の頭を撫でながら優しく包み込み続けた。

「かわいいねぇ、ってミサカはミサカはハト子のお休みポーズに釘付けになってみたり」
「最近はコイツ、カゴから出してる時はいつも動き回ってるからな」
「ふふふ、でもあなたの肩やお腹の上では大人しくしてるじゃない」
「カイロ代わりにはなった」
「もう、ハト子をホッカイロと一緒にしないで、ってミサカはミサカは寒くなってきたから気持ちは分かるけど怒ってみる」

「寒い」という言葉が出たからか、一方通行の腕に力が入る。二人の体がさらに密着した。

「オマエの方があったけェ」
「ミサカのこともカイロだと思ってる?」
「馬鹿言ってンな」
「……あなたとは、離れたくない」
「俺は鳩じゃねェよ」
「白いけどね」
「この減らず口が。よっぽど黙らせてもらいたいンだなァ?」
「そうかも」
94 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/19(水) 18:22:56.11 ID:rJH/tVS10
こんな風に言葉を交わし、近くでごそごそと動いていれば、照明の明るさも手伝って鳩が目を覚ますのも無理はない。
キスが終わった後でケージの中に視線を戻すと、ハト子が二人を見ていた。

「あ、ごめん、起こしちゃった」
「俺達も寝るか」

一方通行がケージの布を覆い直し、さらにリビングの照明を消す。立ち上がった打ち止めの腕を引き、当然のように自分の部屋へと連れて行った。
芳川に言われたからじゃない。今夜は彼女を慰めたいのだ。

ベッドの中でも、一方通行は打ち止めの背中や頭を撫でる。

「打ち止め……、俺は鳩じゃねェンだからな…」
「ありがとう、ってミサカはミサカはあなたの遠回しな言い方を理解して嬉しくなってみる…」

離れない。そばにいる。

言葉で想いを告げるのが不得意な青年の心は、打ち止めにしっかり届いていた。
95 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/19(水) 18:24:52.61 ID:rJH/tVS10
一週間後、すっかり傷が良くなった鳩を連れて、一方通行と打ち止めは近所の公園にやってきた。ハト子を見つけたここで、いよいよお別れの時が来たのである。

しんみりとした打ち止めと、さすがに寂しくない、とは言い切れない一方通行の二人は口数が少ない。
ところが、公園の入り口をくぐったとたん、そんな雰囲気は吹き飛んだ。

学校帰りなのだろう、ランドセルを背負った三人の小学生が園内を走り回っていた。それだけなら普通の光景だが、
少年たちは片手に小石を幾つか握り、それをひとつずつ狙い定めて投げては甲高い歓声を上げている。
狙っているのは、鳩だ。
群れて地面をついばんでいるものや、木の枝にとまっている鳩を追い回しては石を投げる。

「あ、あの子たち…っ」
「……っチ」

打ち止めが何か言う前に、隣の青年が飛び出した。電極のスイッチは能力使用モードになっている。

(あららら、あの人ってばやりすぎないかな!?ってミサカはミサカは心配してみる…けどハト子入りのダンボール持ってるから走れない…)
96 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/19(水) 18:29:04.14 ID:rJH/tVS10
「よし、全員であの辺一気に狙うぞ!」
「うん!」
「せぇーの…」

少年達が放った小石は、突然頭上から降りてきた青年の手のひと振りによって軌道を変え、地面にコンコンコンとぶつかり転がった。

「悪ガキどもがァ…!くっだらねェ遊びしやがって、痛い目みねェと分かンねェかこりゃァ、あァ!?」
「ひぃ!?」
「だ、誰!?」

目の前に現れた白い髪と赤い瞳の怖そうなオトナが、自分達のイタズラを怒っている。
言ってることもすっごく怖い。しかもなにか能力を使って投げた石を操作された。脅える少年達。

(あの人、悪い子にはちゃんと『悪ガキ』って言うのね。ミサカは長らくクソガキだったけど、そこは区別があるんだ)

とりあえず、子供達を吹っ飛ばすようなことは無さそうだと、打ち止めは静観してみることにした。

「に、逃げよう!」

少年達が打ち止めの前を横切り、公園の出口へと駆け出す。一方通行は傍にあったベンチを掴むとそれを放り投げ、
彼らの行く手に、がっしゃぁぁん、と落下させた。黒いランドセルが同時に動きを止め、握っていた石がポロポロと落ちて行く。
ほぼ間を空けず、再び恐ろしいヒトが上から舞い降りた。
一方通行は鋭い視線で少年達をその場に縫いつけ、地面を蹴る。
ベクトル操作された三つの小石が、一直線に彼らに飛んでいったが、全て肩にかかるランドセルのベルトにぶつかった。

「わぁ!」
「ひゃ!?」
「今日はソコに当てるだけで勘弁してやるが…、次やったら分かってンなァ?」

「!!っ…」

三人はガタガタ震えて、もう言葉も出ない。全員涙を浮かべていた。
さすがに気の毒に思った打ち止めが、一方通行と彼らの間に割って入る。

「お姉ちゃん達ね、ちょっと前にこの鳩を拾ったの。羽の怪我が治るまで世話したんだよ。もしかして君達が石をぶつけたのかな?」

恐ろしい男の人とは段違いに優しそうなお姉さんが、箱のふたを開けて子供たちに鳩を見せた。

「あ、この前の白いヤツだ…」
「うん…」
「やっぱり。このお兄ちゃん怖かったでしょ?鳩をいじめるなんてヒドイことすれば怒られて当然なんだから。鳩だって君達と同じように怖いんだからね!」
「…ご、ごめんなさい」
「ごめんなさい」
「もうしません…」
「よろしい。さぁ行った行った。もう帰っていいよ」

少年達は最後にぺこりと頭を下げて、反対側の出口へと駆けていった。当然、一方通行の横を通る勇気は無い。
97 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/19(水) 18:32:54.36 ID:rJH/tVS10
一方通行は、打ち止めが説教を代わってくれた辺りから、「やりすぎたか?」と気まずく思ってそっぽを向いていたが、子供達がいなくなるとベンチを戻して打ち止めに近づいた。

「ベンチ壊れてなかった?」
「背もたれの部分がちょっとだけだ」
「ちょっと…ね、ってミサカはミサカは子供に対してもアレはちょっと…と苦言を呈してみる」
「…ふン」
「ふふふ、でもハト子のことを思ってあんなに怒ってくれたんでしょ?あなたが子供にお説教なんて、ミサカ嬉しいかも」
「うるせェ。…ほら、とっととやるぞ」
「……うん」

打ち止めがダンボールを開ける。一方通行が中に手を入れれば、ハト子はいつもどおり指にとまった。

「ほらハト子、久しぶりのお外だよ。元気でね、ってミサカはミサカは定番のさよならを告げてみる」

それを合図に、一方通行が反動をつけるように腕を振った。
鳩は青年の動きにタイミングを合わせて羽ばたいた…のだが、二人の頭上でUターンして、一方通行の肩に戻ってきてしまった。

「ぐるっぽぅ」
「こら、こっちじゃねェだろ」
「ダメだよ、ハト子…」

一方通行は再度、もっと勢いをつけて鳩を放る。今度は大きく飛び、ハト子は十数メートル離れた木にとまり、
更に高い街灯の上へと移動した。まだ二人の方を見ているが、もう戻ってくる気配はない。

「大丈夫そォだな」
「うん」
「帰るか」
「うん」

打ち止めは、心配そうな表情の一方通行に笑顔を見せた。空になったダンボールを折りたたみ、彼の手を取って自分から歩き出す。

「ミサカも大丈夫だよ。寂しいけど結構平気なもんだね。ハト子が元気に飛んでればそれでいいや」
「…そうか」
「そうなの。でもしばらくはあなたに甘やかされて、寂しいのをまぎらわしてもらおうかな、ってミサカはミサカはさりげなく要求を伝えてみる」
「さりげなくねェよ。大体ドライブも食事も却下してきたのはオマエの方だろォが」
「……ひょっとして、あなたもヤキモチ?」
「……寒い。早く帰るぞ」


帰宅後、打ち止めに淹れてもらったホットコーヒーを飲み、一方通行はかたわらの彼女と一緒に羽が残るケージを眺めた。
片づけるのは、明日でいいだろう…
98 :ブラジャーの人 [sage]:2011/10/19(水) 18:41:24.36 ID:rJH/tVS10
通行止め、鳩を飼うの巻 完

鳩を可愛がる打ち止めと、じつはこっそり可愛がる一方さんの話。
そして鳥類にヤキモチ焼いたり焼かれたり。 …焼きトリ?

鳩の魅力にみんな気づけ!と思って書きましたが…
>>92 その必要はなかったんですね。すげぇなぁ。



 
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/10/19(水) 18:56:48.54 ID:stqHXX8AO
乙!
鳩も打ち止めも一方さんもかわいいな
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/19(水) 19:41:51.50 ID:dew5qEjRo
ハートフル彼氏な……鳩まみれっていうか……鳩をオトすゲーム……


鳩を頭にのせる一方さん想像して吹いた
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/10/19(水) 20:24:47.72 ID:laRQelmZo
乙!

佐天「"鳩をいじめると白鳩の化身にお仕置きされる"かぁ…新しい都市伝説のネタゲット!」
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/10/19(水) 20:49:12.91 ID:P4Yf+B9Xo
>>101

SSがかけそうだなwww
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/20(木) 00:23:52.61 ID:TnhjtBq90

もう黄泉川家は鳥食べらんないだろうな
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/20(木) 23:12:28.59 ID:zadLfPeOo
文鳥やインコを飼っているご家庭が鳥を食わないと思っているのか
105 :ブラジャーの人 [sage]:2011/10/21(金) 00:42:33.78 ID:girJ1dOJ0
>>99 そう言ってもらうと嬉しいです。かわいいを目指した話でもあったので。

>>100 それをやりたくて白鳩にしたし。

>>102 本当ですねww速効で子供達の間で噂になっただろうしなぁ。

>>103>>104の言うとおり、スーパーで売ってる鶏肉はおいしく食べるものだと思ってるよ、ってミサカはミサカは情報を訂正してみる。

では、たぶん明日か明後日に投下します。

106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(石川県) [sagesaga]:2011/10/21(金) 04:30:11.94 ID:08JgLi2H0
私は、鳩になりたい

あまあまだぜェコンチクショウ!w
107 :ブラジャーの人 [sage]:2011/10/21(金) 23:02:30.85 ID:+tboAuqC0
>>106 「貝」と「鳩」でえらい違いですww 今回は割とアレです。

ボインはなァ、お父ちゃンの物じゃねェ。

俺の物だ。

投下開始

108 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/21(金) 23:12:03.15 ID:+tboAuqC0
(まさか、三回もここに来るハメになるとはなァ…)

足取り軽やかな打ち止めの隣を、ノロノロと歩く一方通行。歩幅が違うので、こんな速度でも同じ歩みとなる。

「あなたってば、もう三度目だしいい加減慣れたら?ってミサカはミサカはお顔の暗いあなたを励ましてみる。がんばれー」
「コレに慣れたら男としてだめじゃねェかと思う」
「確かにあなたから進んで『行こう』と言われたら嫌かもしれないけど…。ほら、今日は平日だからあまり人もいないし」

一方通行と打ち止めは、『例の』下着専門店に来ている。華やかな売り場は、ただでさえ男性にとって居心地が悪いのに、
ここは初来店の折に、第三位の御坂美琴に鉢合わせてしまったという苦すぎる思い出の場所である。おまけにポルシェも壊された。

二度目の来店の時には、「どうしてもまた行きたい」とねだる打ち止めに根負けし、
万が一にも超電磁砲が来ていないかを調べさせた上、自分は店舗に併設されたカフェで待つことにした。しかし…

(ねぇ、奥の席の白い髪のお客さんて、前ウチで大騒ぎしてった人よね?)
(あぁ、あの胸がどうのでな…。第一位って噂だけどマジかな)
(うそぉ、まさか…)

「………」
(すっげェ覚えられてンじゃねェか…、クソ。超電磁砲の野郎ォ)

店員達のヒソヒソ話と視線がチクチクと突き刺さったため、三度目の今日は諦めて店内までついてきた。

「前回は外で待ってるあなたをあんまり待たせちゃいけないと思って、ゆっくり見られなかったの。
今日は初めて三階に行ってみるんだ、ってミサカはミサカはレッツゴー」
「ハイハイ、嬉しィー」

どうせまたデザインや色を審査させられるのだろう。一方通行のサングラスの色は、打ち止めによってまた薄くされていた。
109 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/21(金) 23:15:55.60 ID:+tboAuqC0
一階だけでも十分広いと思うのだが、この専門店はなんと三階建であった。カフェやエステが入っているにしても、本当に大きな店だ。
エレベーターで三階に降りたとたん、一、二階とは明らかに雰囲気が違うことに気づく。
他のフロアよりも照明が少しだけ暗く、通路から商品が見えくいようなディスプレイをされている。

「…おい、なンかこの辺の売り場、変じゃねェ?」
「うん、なんかヘン…だね」

とりあえず近くのテナントに入ってみると、そこには

「……あァ、オマエこォいうのが欲しかったのか」
「!!…ち、ちが、ちが!ミサっ」
「打ち止めさァん、エロいですねェ」
「ふぬぅぅぅぅ!!もぉ!知らなかっもん!あなたも分かってるクセにぃ!」

やけにケバケバしい色で、まるで下着としての機能を果たさないほど少ない布地面積。布ではなく、ほとんどがレースだけで構成されたもの。もはや紐。
打ち止めのような年頃の少女なら、目を白黒させてしまうようなセクシーランジェリーで溢れかえっているではないか。
そういう商品の店舗が集まった一角らしい。

「うわーうわー…、スゴイね。こんなゴテゴテしたのもある。上に服着たらもこもこで変になっちゃうじゃない」
「……たぶん上に何も着ない前提だからだと思うぞ」
「な、なるほど…、ってミサカはミサカはつい見入ってしまったけど、こんな恥ずかしいトコにいられないと我に返ってみるっ」
「まァな。まさかこのフロア全部がこうってワケじゃねェだろ。行くか」
110 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/21(金) 23:21:37.87 ID:+tboAuqC0
しかし、結構な売り場面積でこんな店ばかりであった。
通路を歩いていれば、嫌でもセクシーなブラジャーやショーツやガーターベルトやストッキングやコルセットやスリップが目に入る。

「えぇぇぇ何アレ。丸見えじゃない。ワイヤー入ってないじゃない。意味が分からない」
「だからそォいう用途なンだ。実用性は…、ソッチの意味で実用性があンだよ」
「ふーん…」
「なンだよ」
「やけにあなたが落ち着いてるなぁ〜って…」
「ここまで来ると逆に麻痺してくるモンだな。意識しねェようにはしてるが」
「そう…。あのー、実際どうかな?あなたはミサカにこういうの……着て欲しい?」
「はァ?」

打ち止めが足を止めた。あと十数メートル歩けば、この妖しいゾーンから抜けられるのに。
少女は隣の一方通行の顔を、こっそり下から覗き見るように伺っている。そんな仕草をしなくても、もとから頭一つ分近く背が低いのだが。

「……」
「えーと、ほら…コレなんてちゃんとカップがあるし、かわいいデザインだよね。スケスケじゃないし…」

返事をする前に、目を泳がせながら打ち止めは近くのマネキンを指さして喋り出した。
指の先には、確かに他に比べれば幾分、派手さ、いかがわしさは軽減されている下着がある。
それでもこの売り場の商品だ。打ち止めが普段身に着けているものとかなり趣きが違う。
111 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/21(金) 23:34:20.23 ID:+tboAuqC0
まずブラジャー。ベースの色はピンク。カップやストラップは黒のレースでフワフワと縁取りされ、
脇のあたりから長い白レースのリボンが垂れ下がっている。ホックは無いらしく、フロントで黒のリボンを結ぶらしい。
ショーツはお決まりのようにTバックだが、ピンクと黒のフリルが段になって際どいところまでを覆っている。
ガーターベルトもピンクで、太ももから足先までは白いレースのストッキング。

「Tバックだぞ」
「で、でも見えにくいし、フリフリだし」
「……欲しいのか?」
「……あなたが、いいと思うなら、着てみたいかも、ってミサカはミサカはあなたの意見を求めてみる」

しばし黙ってそれを観察する二人。

(たまには色っぽいコスプレで悩殺すると喜ぶってハマヅラが言ってたし…。
さすがにバーニーガールは勇気がないけど、下着なら、ってミサカはミサカは挑戦してみたり)
(いつもと違うことしてマンネリ化を防ぐのが大事だと、前に浜面も言ってたしなァ…)

よもやこの冒険の後押しをしてしまったなんて、当の浜面は知る由もないだろう。
そして一方通行と打ち止めも、お互いの決断に彼の意見が反映されていることは知らない。

「…いいぜ。着てみれば?」
「…!!そっ、そう!?じゃ、じゃあ、あ、隣に色違いの黒もあるね。どっちがいいかな!?」
「ピンクと、黒か」

となりのマネキンには、まるで色を反転させたようなデザインのセットが飾られていた。ストッキングは黒。一方通行は自らサングラスを外して二つを見比べた。
頭の中で想像する。それらを着た打ち止めを。

「ンー…やっぱピンク…、いや…」
「あの、両方買う?ってミサカはミサカは、まさかそこまで悩むとは思ってなかったと驚いてみる」
「…だな。両方買うか」

112 :ブラジャーの人 [sage]:2011/10/21(金) 23:39:33.99 ID:+tboAuqC0
とりあえずここまで

……自分が書いた一方さんに「爆発しろ」と思ったのは初めてだ。何やってんのコイツら。
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/10/22(土) 00:56:29.02 ID:8nLCa1WR0
一方さんもげ…なくていいややっぱ

いいぞもっとやれ
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/22(土) 01:03:36.26 ID:qkLAEU5SO
乙!
次は黒子と遭遇するかと思ったww
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/22(土) 05:55:30.72 ID:7xIo/T7DO
浜面ぐっじょぶ!

余談だが、郊外型ランジェリーショップの試着室っつーのは大抵カップル向け前提なんで男性も入れたりする
割と広めになっててカウチとかもあるわけで…
後は、判るな?


中々燃えたんだぜw
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/22(土) 10:11:52.17 ID:2ezRF8VDO
ピンクと黒か…どっちも捨てがたいよなわかるぞ一方さん
だが爆発しろ
滝壺と趣あるプレイしまくってる浜面も爆発しろ
お前らなんかそのまま永遠に幸せに暮らせばいい
117 :ブラジャーの人 [sage]:2011/10/24(月) 00:16:54.15 ID:yB/b7QE10
>>113 ご期待どおり、もっとやるよ。

>>114 違いましたの。出会ったのはスケベ下着でしたとさ。

>>115 男女で試着室に消えていくお客を見送る店員の心境とは如何に。燃え尽きてください。

>>116 書いてる人が選べなかったから両方買いました。

日付変わってしまいましたが、10月23日は祭りでしたね…。東京?外国だ。

では続き投下。


118 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/24(月) 00:21:34.36 ID:yB/b7QE10
買うと決めたのなら、いつまでも目撃される通路に突っ立っていられない。

「じゃァ、カード渡すから買ってこいよ」
「ミ、ミサカ一人で行くの?」
「え、俺も行かなきゃなンねェの?」
「だって恥ずかしいじゃない…、ってミサカはミサカはレジへの同行をお願いしてみる」
「俺と一緒の方が明らかに恥ずかしいだろ。コレ貸してやるから早く行ってこい」

一方通行はサングラスのレンズをさらに薄くして、打ち止めの耳に掛けた。カードも手に握らせ、彼女の背中を押す。
渋々と、恨めし気に青年を振り返りながら、打ち止めは店の中に入っていった。
ディスプレイ品なので、店員を伴ってここへ来るかもしれないと、一方通行は数メートル離れた物陰へと移動する。
待つこと数分、買い物を終えた打ち止めが出てきた。彼女は一方通行を見つけると、小走りで近寄る。胸にはぎゅっとショップ袋を抱きしめて。

「買ってきちゃった…」
「さて…これからどォすンだ?普通のも買っていくか?」
「ううん、今日はそんな気無くなっちゃったよ。…帰ろ?」
「…おォ」

まだこの店に来てそんなに時間は経っていないが、特に打ち止めは普段の買い物よりも疲労が激しい。二人はどこにも寄らず、駐車場へと引き返した。
車内で袋の中身を気にしながらも、一方通行の横では覗いたりすることを躊躇う打ちどめ。

「そういえば買ったはいいけど、どこに隠しておこう」
「オマエ、くれぐれも黄泉川とか番外個体にバレるなンてことはないよォにな」
「う〜ん…、ベッドの下?」
「絶っ対ェ見つかるぞ。まァ帰ってから考えりゃいい」

家族に隠さなければならない物など所有したことがない少女は、勢いで購入してしまった、このいかがわしいアイテムの隠し場所に苦心してしまう。

「広くもねェ部屋だが、意外に結構どうにかなるモンだ。そンなこと心配するな」
「うん、分かった、ってミサカはミサカはあなたを頼りにしてみたり」

(…これは、今度この人の部屋を家探ししてみるべきなのかな?ってミサカはミサカはこっそり企んでみる)
119 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/24(月) 00:25:46.45 ID:yB/b7QE10
平日の放課後に出掛けたので、マンションに帰ってくる頃はすでに夕暮れだった。保護者達の帰宅にはまだ時間があるが、なんとなく「今じゃない」と二人とも思っている。
太陽が出ていない時に、二人きりでゆっくり過ごせる時に着用するべきだと、一方通行も打ち止めも思っていた。言葉に出して確認を取りあったわけではないが、通じ合っていた。

さっそく打ち止めの部屋のどこに隠すかをカップル会議し、袋から取り出す時だけ、ランジェリーがちらと二人の目に触れる。

(一体いつ着けることになるのかな、ってミサカはミサカはドキドキしてみたり。明日?明後日?)
(……最初はピンクだな)

しかし、待ち望むチャンスはなかなか訪れなかった。めでたいことだが黄泉川のアンチスキルの仕事がなかったり、芳川の泊まり込みがなかったり。
「まだ着られないね」「そォだな」というような会話は、やはりないが、あの下着を買ってからもう一週間になる。

(そろそろ待ちくたびれてきた…。いくらミサカがショートケーキの苺は後で食べる派だとしても、待ちくたびれたよこれは)
(いっそホテルでやるかァ?)

と思っていた翌日、唐突に機会はやってきた。

「今日は警備員一斉見回りってのがあるじゃん。朝まで戻らないから戸締りしっかり頼むじゃんよ」
「新薬の実験に付き合ってくるから、病院に泊まってくるわね。もしかしたらもう一泊するかもしれないからよろしく」
「あァ」
「いってらっしゃいヨミカワ、ヨシカワ!お仕事がんばってね、ってミサカはミサカは元気にお見送り!」

いつもどおりに徹する二人。でも心の中ではお互い『今夜だな』と感じていた。
120 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/24(月) 00:29:24.02 ID:yB/b7QE10
その日の夕食の後、珍しく一方通行が先に風呂に入った。入浴後、リビングでテレビを見ていた打ち止めに声をかける。

「風呂あいたぞォ」
「はーい、入りまーす」

いそいそと立ち上がり、脱衣所へと向かう打ち止めの後ろ姿を見届けた
いつもならまだリビングでくつろいだりする時間だが、テレビも照明も消して、一方通行は早々に自室へと引っ込んだ。
部屋で待っていれば、きっと風呂上がりの打ち止めがあの下着を身に着けてやってくるハズだから。おそらく彼女もピンクを選ぶだろうと予想している。


(遅いだろうとは思ってたが、やっぱり遅ェ)

こんなにソワソワして彼女の来訪を待つのは、初めて抱いた時以来ではないか?
一方通行はベッドの上に大人しく寝転がって、ただひたすら待つ。さすがにもう脱衣所へ押し掛けたりはしない。

打ち止めが風呂へ向かってから五十分後、部屋のドアがノックされ、ゆっくり開けられる。

「お待たせしましたぁ〜、ってミサカはミサカは顔だけでこんにちはしてみたり」
「おっせェなァ。しかも何やってンだよ。早く入ってこい」
「だって電気ついてるから恥ずかしいんだもん」
「……オマエここまできてそンなこと言うのかよ。さすがに見るだろ今日は。見るためのモンだろォが」
「そうだけどぉ…。せめてちっちゃい電気にしてほしいな、ってミサカはミサカは可愛くお願いしてみる、ウルウル」

苦い顔で溜息をつき、一方通行は部屋の照明を消す。そして机のスタンドライトと、ベッドサイドの簡易照明だけ点けた。光の強さは最大に調節してある。これ以上は譲れない。

「おら、これでいいだろ。とっとと…」
「よし…お邪魔します…」

「………」
121 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/24(月) 00:31:51.72 ID:yB/b7QE10
ドスンとベッドへ座ると同時に、打ち止めがおずおずと部屋に入って来た。後ろ手にドアを閉めて、モジモジと照れくさそうにしている。
まるで、中学の制服をお披露目した時のようなシチュエーションだったが、あの時とは何もかもが違う。
まず、彼女が身に着けているのは『そういう用途』のために作られた、いやらしいフリフリの下着とガーターベルトとストッキング。
さらに、子供体型など今は遠い国のおとぎ話。豊かなEカップをピンクと黒のレースに包み、一方通行に「なンかイイ」と評された体を魅惑的に(そう見える)くねらせている。

「………」
「あのう感想はどうですか?つけ方分かんなかったし恥ずかしいし、大変な思いをしているミサカにお褒めの言葉とか」
「……ン」

青年はベッドに座ったまま、来い来い、と手招きする。打ち止めは素直に彼の前に立った。
両手が持ち上げられたのを見て、これから抱き寄せられるんだろうと、自らも態勢を整えようとする。
しかし、いつものように腰や背中に手は伸びてこず、なんと、黒とピンクのフリルの中に手を潜らせ、Tバックのため剥き出しになっていた打ち止めのお尻に指を食い込ませた。

「おわぁあぁいきなり!?」
122 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/24(月) 00:37:34.45 ID:yB/b7QE10
そのままお尻を引き寄せ、打ち止めの腹に口を当て、舐めた。舐めながら一方通行は、ストッキングや、ガーターに指を這わせ、撫で、慣れない感触を確かめる。

「これは、ん、かなり大好評の反応ですね、ってミサカはミサカは……っ」

今度はちゃんと腰を掴まれ、打ち止めはベッドへと倒された。はみ出していた少女の足もきちんとシーツの上に乗せてから、一方通行はその体に馬乗りになる。
充分に視界が効く中で、まずはじっくりと、…見る。

「どンなモンかと思ってたが、こりゃなかなか楽しィなオイ」
「あはは…あなた本当に楽しそう」

暑くて、一方通行は寝間着代わりのスウェットの上着を脱ぎ捨てた。彼女に覆いかぶさってキスをすると、胸を飾る黒いレースが肌をくすぐってくる。。
待ち望んだ夜。二人きりの夜。
打ち止めは激しいキスに応えながら腕を青年の背中に回し、今夜は特別だねという思いを込めて、ゆっくりと撫でさすった。

「あぁ…あなた、もうちょっと優しく触って…。生理が近いと胸が張って痛いの」
「ふゥン…、こンくらいか?」
「う、ん…」

ピンクの布の上から柔らかい胸を揉んだ。布越しでも、その頂きが硬くなっていることが分かる。すべすべした生地の上からでは摘まみにくいので、指と爪先で擦る。いつもと違う感触が、いつもと違うのだと二人に実感させる。

「どォだ、こういう触り方は…」
「……」
「おい」
「ふ、ん…ん」
「声我慢しなくていいじゃねェか、今日は…」

フロントのリボンを解いて直接触ってやろうとしたが、ふと手を止めて結び直す。打ち止めがコレを着るのを一週間も待ったのだ。脱がせるのはもったいないような気がする。
ワイヤーが入ってないので、カップの部分は簡単に変形した。中に手を突っ込んで、乳房を無理やりブラジャーのカップ上部からから剥き出しにする。変幻自在のようなEカップが、いびつに揺れた。

「脱がなくていいの?」
「脱がない方向でやる」
「えぇ、なんか、なんかすっごいエッチ。でもパンツは」
「こンなのほぼ履いてないも同ォ然だから、これも脱がずにやる」
「……あなたってば…あん」

特別な夜は、まだ長い。
123 :ブラジャーの人 [sage]:2011/10/24(月) 00:42:55.39 ID:yB/b7QE10
通行止め、セクシーランジェリーを買うの巻 完


作中では頑なに認めないけど、この一方さんてホントおっぱい星人ですね。
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/10/24(月) 00:47:10.41 ID:XTnMBzDAO
乙乙!
いやーこれはいいですな!
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2011/10/24(月) 00:51:23.27 ID:A1NYCto/o
乙乙乙
しかしなんという俺得SS

だがな、寸止めされたせいで俺の股間が収まらんじゃないか、どうしt(訳:いいぞもっとやrやってください
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/24(月) 07:43:17.02 ID:naB9L8CDO
まったく……
中学生相手に……

うr……けしからん!
いいぞもっとやれ!
127 :ブラジャーの人 [sage]:2011/10/24(月) 20:44:29.49 ID:0OowiX500
>>124 気に入ってもらえてなによりです。この二人はもうやりたい放題ですな…

>>125 実は…、気づいてる人は気づいてると思うけど、肝心なところの描写は初夜以外書いてないもんね。
だって私が恥ずかしいし、通行止めのプライバシーを考慮しないといけないし。
恥ずかしがるポイントがズレてるかしら?おっぱいはいいんだよ、おっぱいは。

>>126 早いとこ打ち止めを高校に進学させなきゃ…とは思っています。


ところで、今ネタの在庫不足が懸念されておりまして、脳内の在庫で対応している状況です。
生産体制が整い次第、順次投下します。

128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/10/25(火) 10:20:17.96 ID:rAlNDhuC0
いっそのこと、1回ぐらい青姦とかラブホとか行ってみたら?

案外楽しいし
129 :ブラジャーの人 [sage]:2011/10/25(火) 14:03:36.55 ID:WCERn37O0
>>128 結局ヤるだけじゃないですかww そして、この二人は既にラブホを結構利用してるんじゃないかと… 
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/25(火) 14:38:07.09 ID:EWOp9APUo
映画でも見に行って絹旗か黒夜あたりに遭遇するとか
五月計画繋がりで
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/10/25(火) 17:35:31.33 ID:Qeg5i5IL0
大人のおもちゃとか、ベクトゥルゥー操作とか
やってみたら?

てか、やってください
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/10/25(火) 20:18:04.05 ID:1axCNF5xo
>>130
映画 繋がり 知人遭遇
俺疲れてるのかな
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/25(火) 20:30:58.94 ID:EwfURI5ao
ヤってばっかってのもなんかなー
普通に他キャラとの絡みでもやってくれたら面白いと思うけど
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/25(火) 21:08:55.85 ID:qrj10PTv0
乙です

第三者目線の二人とかどうです?
賛否両論の激しいネタですが
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/10/25(火) 22:19:12.34 ID:rAlNDhuC0
>>129おお、まさかの作者さん返事アザーッス!!

だって、デンマとかコスプレ出てないから、行ってないかと。
136 :ブラジャーの人 [sage ]:2011/10/26(水) 12:24:56.37 ID:Q2ftT3SN0
>>130 >>132 ふむふむ。映画でアイテムたちや黒夜さんかぁ… とりあえず通行止めが見る映画に絹旗がいなさそうww 

>>131 「オトナのおもちゃなんてミサカにはまだ早いもん」……ベクトゥルーwwww イヤ・イヤ・ミサカ、ア 。なんちゃってよぉ(分かりにくいにもほどがあるネタ)
……LOVE・食らえよ(こりない)

>>133 通行止め&黄泉川家だけで、どこまで出来るか挑戦したい気もあるんですが、そうですねぇ…。ちょっと根性出して考えます。

>>134 え、第三者目線ネタって賛否があるんですか。そうなのかー。

>>135 ラブホ利用=オトナのオモチャじゃないんですよ?少女漫画を諦めたからといって、青年漫画を目指しているわけではない。
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/10/26(水) 18:40:18.82 ID:okisIy1AO
揺れおっぱい描写強化カモン
というわけで体育大会とかどうよ
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/26(水) 22:32:29.61 ID:MqmElTMg0
>>137
体育大会って禁書世界だと大覇星祭だっけか?
なかなかカオスな事態になりそうだwwww
139 :ブラジャーの人 [sage]:2011/10/26(水) 23:35:04.04 ID:8PdbJpUI0
>>137 >>138 作中、今12月やねん。大覇星祭とっくに終わっとるねん。やるにしても来年ですねん。
あと、揺れ乳は前スレの初期にやってるからなー。

というわけで、季節感溢れる話いきますよ。
140 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/26(水) 23:39:16.38 ID:8PdbJpUI0
「はい、そっち持って…。いい?よし、置いていいじゃん」
「ったく、足が悪い人間にこンな重労働させンなよ」
「文句言わないのよ、君が一番使っているのだから、準備くらいするべきでしょう?さぁ打ち止め、スイッチ入れてちょうだい」
「はーい、ってミサカはミサカはポチっとな!」

十二月に入り、季節は本格的に冬へと向かう。
よって、ここ黄泉川家でも恒例の炬燵がお目見えした。芳川が言うように、打ち止めがスイッチを入れたとたん、一方通行はさっさと布団をめくって潜り込んだ。

「ミサカもー」
「私も」
「私も入れてほしいじゃんよ。ちょっと足、一方通行、足邪魔」
「おい蹴るな。足が長いもンで、スイマセンねェ」

リビングの真ん中に置かれた炬燵。その四角いテーブルの一辺それぞれに四人は陣取った。

「あー…あったかいよー、ってミサカはミサカは数ヶ月ぶりに会うおこたにメロメロになってみる」
「さっそく今日は鍋にするじゃん。もちろん炬燵で。みんなも構わないよね?」
「賛成よ、愛穂。お味噌入れてほしいわ」
「ミサカも大賛成!もちろんあなたもお鍋でいいよね…アレ?」

さっきまで見えていた一方通行の姿がない。まさかと思って、彼の正面に座っていた打ち止めが背筋を伸ばして確認すると

「…すー…」

すでに一方通行は、自分の腕を枕にして眠っていた。四人も入っている炬燵で足を伸ばすのは困難なので、まるで猫のように体を丸く縮めている。

「早ッ!ってミサカはミサカはこの人の早寝スキルに驚愕してみたり!」
「この子、肉が無いせいか寒さに弱いのよね。炬燵を出せばこうなると思っていたわ」
「おこたを仕舞った時も怒って抗議してたもんね、ってミサカはミサカは春の乱を思い出してみる」
「かと言って夏の暑さにも弱いじゃん。まぁ数年前よりはマシになったかな?打ち止め、後でコイツ叩き起こして夕飯の買い物行って来て欲しいじゃんよ」
「はーい」
141 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/26(水) 23:42:39.67 ID:8PdbJpUI0
数時間後、夕暮れが迫る頃に一方通行は起こされた。
すでに炬燵に入っているのは彼だけで、いつの間にか自然と足を伸ばしていた。肩には冷えないようにと、打ち止めのストールが掛けられている。

「あーなーた。起きてー。ミサカと一緒にお買いもの行きましょー、ってミサカはミサカは…うふふ、まるで新婚さんみたい?お鍋食べたいでしょ?ほら早くぅ」
「…寒い」
「今行かないともっと寒くなるよ。それにごはんも遅くなっちゃうじゃない」
「…さっみィ…」
「もー…、しょうがないな。ヨミカワー、この人起きないからミサカが行ってくる。お金ちょうだ」
「なンだァ?鍋?肉入るンだろォな」
「あ、起きた」


部屋でコートを着込んで来た一方通行は、当然のようにポルシェのキーを手にしていた。

「あなた、スーパーだよ?すぐそこだよ?ポルシェちゃんでスーパー行くの?」
「寒いからな」
「それでよくロシアとか…」
「寒いのを防げるなら、出来ることはすべてやるぞ俺は」
142 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/26(水) 23:49:01.32 ID:8PdbJpUI0
一方通行が押すカートに、打ち止めが次々と食材を入れて行く。彼女のお気に入りのお菓子がドサクサにまぎれて放り込まれたが、一方通行はツッコまないでいてあげた。

あらかた食材がそろったが、野菜が並ぶ一角で、打ち止めがキョロキョロと何かを探している。

「何見てンだ?」
「あのね、…あったあった。はいコレも、ってミサカはミサカは問答無用でカゴに投入してみたり」

それは炬燵の友達、蜜柑であった。しかも十個入りの袋を、二つも。

「二つも買うのかよォ。どンだけ蜜柑好きなンだオマエは」
「ヨミカワ達も食べるでしょ?これでいいもん」
「俺はあンまり…」
「あはは、あなたは指が黄色に染まるもんねー。大丈夫だよ、ミサカがあなたの分も剥き剥きしてあげるからね!ってミサカはミサカは…今度はまるでお母さんみたい?」
「そりゃどォもォ」

やがて会計を済ませ、駐車場へ戻って来た二人。買い物袋を両手に持った打ち止めは、一方通行がポルシェの鍵を開けるなり、
我先にと荷物を積んだ。一方通行も左手の袋をトランクに載せる。

「ふぅ、重かったぁ」
「オマエが勝手に菓子やらジュースやら蜜柑やら買うからだ。やっぱり車出して良かっただろォが」
「あら、バレてたのね、ってミサカはミサカは笑ってごまかしてみたり、えへへへへへ。さて帰ろっか」

家に戻ったら、とっとと又炬燵に入ろうと、一方通行はスピードを上げた。
143 :ブラジャーの人 [sage]:2011/10/26(水) 23:55:25.83 ID:8PdbJpUI0
とりあえずここまで。

皆々様、参考になるアドバイスや欲望に忠実なご意見をありがとうございました。
まずは炬燵黄泉川家で再開します…というほど中断もしてない?もう分からない。
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/27(木) 00:31:28.86 ID:7zJSJCvE0

一方さん可愛い
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/27(木) 02:58:27.08 ID:NQB7+yP+0

一方さん素敵
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/27(木) 13:15:59.89 ID:QFWTEVtw0

一方さん格好いい
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/27(木) 15:21:26.09 ID:tJ1W0iK40

一方さん寒がり
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/27(木) 16:02:46.33 ID:kt5W6iLDO

一方さんがりがり
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/27(木) 19:49:17.80 ID:/3zMYUAKo
>>148
一方通行「……」カチッ
150 :ブラジャーの人 [sage]:2011/10/27(木) 21:43:19.75 ID:0uJmUzDB0
一方さん○○シリーズか。
作者からしたら、読者が最も可愛いぞww
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/27(木) 22:51:43.28 ID:G6BiVIIIO
おつ
二人とも可愛い
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/10/27(木) 23:04:14.22 ID:MusmL6oD0

こたつで熟睡する一方さんの寝顔マジ天使(^ω^)ペロペロ
寝ている一方さんの顔に落書きしたいけど化粧もしたい
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/28(金) 01:03:43.05 ID:ujLw2i1DO
>>1
みんな一方さんに夢中みたいなんで打ち止めは俺がもらっていきますねペロペロ
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(石川県) [sagesaga]:2011/10/28(金) 04:24:34.08 ID:mp5Fm4L40
炬燵に二人で一緒のところに入ってぬくぬくしてるとだな?
なんかこう……幸せな感じになるんだよな
んで、ちょーっとこう…悪戯とかしちゃうとだな?
…割とすっごい洪水とかになったりするんだよ
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2011/10/28(金) 09:57:37.11 ID:+p33vytn0
>>153
おいこんなところに肉塊置いたの誰だよ
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/28(金) 19:15:16.13 ID:D2U9PPU30
>>155

さっきアルビノでガリガリの男が
置いていったぞ
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/10/28(金) 22:31:32.89 ID:fXL+b7yfo
一方さん過保護
158 :ブラジャーの人 [sage]:2011/10/29(土) 00:45:21.39 ID:GATHmX7i0
>>152 「ファンデーションは使ってませン」

>>149………>>154もやっちゃって。いっちゃって。

>>157 そうww 打ち止めためなら、炬燵から出る一方さん。愉快なオブジェも作る一方さん。


では続きです。 

変態、それはー 君がー見た一位〜
159 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/29(土) 00:48:55.66 ID:GATHmX7i0
マンションに戻り、玄関を開けると、そこには見覚えのある靴が。

「あー、番外個体来てるのー?ってミサカはミサカは重い荷物に負けずに走ってみる!」
「こらオマエの袋に卵入ってンだから歩けェ」

人の気配がする台所では、黄泉川と番外個体が夕飯の準備を始めていた。待っていた食材の到着を歓迎する二人。

「おかえりじゃん。買いもらしはない?」
「よっ、最終信号。炬燵鍋に強制参加っつーから来たよ」
「ただいま。ちゃんと買えたよ!番外個体と一緒にお鍋なんだね、ってミサカはミサカは喜んでみたり」
「ちゃンとどころか、かなり余分なモンも買ったなァ」

そこへ一方通行も買い物袋を置きに、キッチンへやってきた。青年の言葉に、黄泉川が「んー?」と打ち止めを見る。

「あ、あなた…早々に告げ口なんてヒドイ。えへへ、おこたといったらミカンだよね?ってミサカはミサカはヨミカワにお供えしてみる」
「あ、ミサカ蜜柑好きだな。後でちょーだい」
「でしょでしょ?」

味方を得た打ち止めが波に乗ろうとたたみかける。さりげなく、お菓子とジュースが入った袋は背後に隠した。どうせすぐバレるだろうが。
なりゆきを最後まで確認せず、一方通行はさっさと炬燵へと向かう。目的の場所には芳川が先にいて、休日だがテーブルの上にパソコンを置き、何やら仕事中であった。

「おかえりなさい。寒い中御苦労さま」
「御苦労なのはソッチだろ。仕事のお持ち帰りたァ、そンなに忙しいのか?」
「まぁ、ひょっとして心配してくれているのかしら?」
「アホか」
「ふふふ、大丈夫よ、もう終わったわ。ここにはもうすぐ鍋が来るのだし」

芳川がパソコンをしまうと同時に、打ち止めが一方通行の隣に潜り込んで来た。
まだ炬燵は二面空いているが、今日の夕飯は五人なので、誰か二人は窮屈な思いをしなければならない。この少女は一方通行を巻き添えにして、進んで立候補するつもりらしい。

「せめェな…」
「あーあったかい。ミサカもお手伝いしようかと思ったけど、すぐ終わるからって追い払われちゃったの」
「鍋は凝ったモンじゃなければ用意が簡単だからな。……あの二人、まさか下ごしらえも炊飯器じゃねェだろううな…」
「とりあえず二台は動いてたよ、ってミサカはミサカはあなたに告げてみる」
160 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/29(土) 00:52:16.34 ID:GATHmX7i0
「お待たせー!熱いから気を付けるじゃん」
「ミサカの刻んだ肉と野菜と魚を心して…、おいそこ、当然のようにくっついてるんかい。最終信号を押しつけてからかってキレる第一位を堪能するミサカの計画が…!」
「…くだらねェ計画だが、崩れてくれて何よりだ」
「ほらほら、番外個体も座るじゃん」

熱々の湯気を生む鍋が、炬燵テーブルの真ん中に乗せられた。黄泉川が蓋を取り、温かく、美味しい夕飯が始まる。

「一方通行…、肉ばかりじゃなくて野菜も食べなさい」
「食ってるだろォが」
「野菜の割合が圧倒的に少ないじゃん」
「あなたは昔、ミサカに好き嫌いするなって言ってたじゃない」
「一方通行タンはお野菜キライでちゅ。…っぎゃぁーっはははははははは!ひぃーっひひひっ」

自分以外の四人から食事内容の注意をされてしまった一方通行は、歯を鳴らして不機嫌さを隠そうともしない。
打ち止めが、ひょいひょいと鍋から野菜を取って、青年の取り皿へと入れる。それに紛れて、ちょっと肉や魚もあげるのが、彼に甘い打ち止めらしい。

「はい、みんなあなたの健康を考えて言ってるのよ。もちろんミサカもね」
「約一名は明らかに違うがな…」

甲斐甲斐しい打ち止めと、それを大人しく享受する一方通行の様子を見て、番外個体はまた呼吸困難を起こしかけていた。
161 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/29(土) 00:54:00.74 ID:GATHmX7i0
シメの雑炊も終わり、空の鍋が乗る炬燵で一息つく五人。大いに食べたので、あたたかいここで、腹休めをしなければ動き難い。
炬燵の中ではどれが誰の足かも分からずぶつかりあっているが、今はどうでもいいことだった。

「あー…苦しい…。第一位に笑わせられるわ、雑炊の残り一杯までミサカに押し付けられるわ。もう、いろいろ破裂しそう」
「何言っているの。食べたい人がいるか聞いたら番外個体が名乗り出たのでしょう?」
「だって黄泉川が食べ物残すのはいけないって言ってたもん」
「あー、ウチの子全員良い子じゃん…」

相変わらず、打ち止めも番外個体もよく食べる。一方通行は隣の少女に視線を向けた。

「あなた、その目はまるで『姉妹そろって食い意地はってるな』って言ってるみたいなんだけど」
「…気のせいだ」
162 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/29(土) 00:55:57.81 ID:GATHmX7i0
「ミサカ、デザート作ってきたけどこりゃ今夜食べるのは無理だね。シュークリームが冷蔵庫に入ってるから明日食べなよ」
「あら?もしかしてあなた帰るのかしら?」
「えー、泊まっていかないの?明日大学休みじゃんよ?」

番外個体の口ぶりに、てっきり彼女は泊まっていくと思っていた黄泉川がテーブルに乗り出す。

「学校はないけど、朝イチからバイトなんだー。準備もあるしアパートからの方が近いから帰る。あ、でもお風呂は入ってく。最終信号、洗顔と化粧水とか貸してよね」
「ガッテンだ。ねぇ、朝はこの人に送ってもらえばいいじゃない。やっぱり泊まっていけば?ってミサカはミサカは妹を誘惑してみる」

番外個体と一方通行は、えー、という顔を同時に少女に向けた。

「全然誘惑になってないよ最終信号。ますます帰る気になった」
「俺明日は昼まで寝るからだめだ」
「あう…ミサカの作戦あっけなく失敗…ってミサカはミサカは誘惑スキルの低さを嘆いてみる」
163 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/29(土) 01:00:28.46 ID:GATHmX7i0
番外個体は、くれぐれもシュークリームを食べるように一方通行に念押ししてから、蜜柑をお土産にアパートへ戻った。
芳川は自室へ。黄泉川は風呂へ。リビングの炬燵には打ち止めと一方通行だけが入っている。今日、この青年は、可能な限りを炬燵で過ごしていた。

二人は対面で座り、悠々と足を伸ばしテレビを見ているが、一方通行はあまり集中していないようでボンヤリしていた。彼のそんな様子を見て、打ち止めがイタズラをしかける。

「…!!っゥわ!?」
「にゃははははっ、驚いたかね?ってミサカはミサカはしてやったり〜」

イタズラっ子は足を伸ばし、青年の足裏をくすぐった。すっかり脱力していた一方通行は声を出して驚いてしまう。これはかなり大成功だ。

「っこのクソガキィ…」
「うわっ?だって〜。ビクっ、だって〜」
「俺はなァ、やられたらやり返す主義なンだよ」

不敵な笑みを浮かべた青年は、左手で首のチョーカーに触れ、右手は炬燵の中に突っ込んだ。学習しない少女に、オシオキしてやるために。
打ち止めの細い足首を両方まとめて掴み、手前に引っ張る。その力に従い、打ち止めの体は絨毯の上に倒れて胸の下までが炬燵の中へ。

「きゃぁ、あははゴメン、ってミサカはミサカは…ありゃりゃ?ちょっと?おぉー!?」

打ち止めは、こうして引っ張られたら終わりだと思っていた。「こいつゥ」「うふふ」で済むと思っていた。
なのに、一方通行は足を離してくれるどころか、更に引いてくる。

「いやぁぁぁぁぁぁぁあなたどこまで…っ!やめ、やめやめてぇぇぇ」
「まだまだァー」

ズルズルと、ついに打ち止めは頭も見えなくなってしまった。反対に、すね辺りまでが一方通行の側に出てくる。
彼女は今日、レギンスを履いていたが、買い物から帰って炬燵に入ったら火照ってきたため、食事前に脱いでしまっていた。
絨毯に擦れて、打ち止めのスカートは容赦なく捲れあがり、生足が晒される。

「いやーっいやーっ」
「聞こえませェーン」
「絶対うそだぁぁぁ!ってミサカはミサカはおこたの中から抗議の雄叫びをあげてみるー!」
164 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/29(土) 01:03:41.66 ID:GATHmX7i0
膝、太ももが露わになり、完全にパンツ丸出し状態になってしまった。そしてそのパンツも、お尻と一緒に擦れて……食い込んでいる。

「ちょっと待って!今パンツが!」
「はい、いらっしゃァい」

いらっしゃい、と言うわりには、打ち止めの腹から上はまだ炬燵の中だ。このままでは熱いし危険だが、
一方通行は目ざとく早々に炬燵の電源を切っていて、能力を使って熱も火傷しない程度に下げていた。打ち止めは今、頭隠してパンツ丸見えである。
いっそ自分から彼の方に体を脱出させようと思ったが、そうすると益々食い込むというジレンマ。

「お、黒」
「えっちえっちえっちえっちいじわる!!」
「くくくくっ…」
「うひゃひゃはははセクハラー!」

右手は足首を掴んだまま、左手は打ち止めの足裏をくすぐる。明らかにやられたこと以上の仕返しだ。能力で押さえつけているので、打ち止めの足はビクともしない。
そしてとうとう、少女の全身が現われた。もし今日彼女がワンピースを着ていたなら、きっとブラジャーまで丸見えになっていただろうが、
幸いなことにスカートだったので、丸出しはヘソまでで回避された。

「うぁー…、電気の明かりがこんなに久しぶりに感じる…」

最後の方は諦めて万歳で引っ張りだされた打ち止め。大急ぎで起き上がり、まずお尻の食い込みを直していたら、一方通行が両手で頭を撫でてきた。

(おや?やりすぎって反省してる?)

「オマエ髪ぼっさぼさ。鳥の巣かよ」
「アナタのせいでしょーが!ミサカの髪はあなたみたいにフルフルすれば元どおりってワケにはいかないんだからね!」
「難儀な頭だなァ」
「これが普通なのぉぉぉ!ってミサカはミサカは女子代表で怒ってみたり!」

165 :ブラジャーの人 [saga]:2011/10/29(土) 01:06:41.31 ID:GATHmX7i0
一方通行は風呂の後も炬燵に入り浸っていた。まだ起きているのは彼と、彼につき合っている打ち止めだけだ。
もっとも、昼寝をして余裕のある一方通行と違い、そろそろ彼女にも睡魔が訪れる。

「眠いなら部屋行けよ…」
「まだへーき。あなたは寝ないの?」
「俺は本当に平ェ気なンでな」
「じゃあミサカもまだ起きてる」

夕食の時のように隣合っていたが、やがて打ち止めはコックリと船を漕ぎだし、一方通行の肩へとしな垂れかかってしまった。
これも、毎年恒例のことである。

「そらみろ。どこが平気なンだか…」
「んー…」

去年までは、こんな時には打ち止めの部屋のベッドに放りこんでやっていたが、今年からは違う。

一方通行は少女を抱きかかえ、自分の部屋へと直行。
まだ眠くはないのに、彼女に合わせてベッドの中、目を閉じた。
166 :ブラジャーの人 [sage]:2011/10/29(土) 01:11:46.79 ID:GATHmX7i0
黄泉川家の炬燵の巻 完

セクハラレータ(副題)

あの映画がテレビでやってたから見ました。爽子と風早くんに土下座。7月の私どうかしとったわ。 なぜ目指した…
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/29(土) 02:23:29.99 ID:3jh8ZhzDO
>>1
…うん、黒はいいよね
チョーカーのスイッチは入れてもアッチのスイッチは入らなかったセクハラレーター△
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/31(月) 23:10:31.63 ID:StvPXW8y0

黄泉川家に鍋が存在した事に驚いた
169 :ブラジャーの人 [sage ]:2011/11/01(火) 16:17:16.18 ID:ndBom0/20
>>167 次は入るよ、セクハラスイッチ。まぁ前スレの最初からわりとONだったかな。

>>168 さすがに鍋料理は鍋で食べるじゃん、たぶん。
デカイ蟹鍋だと炊飯器に入りづらいし。…もしかして特大炊飯器があるのか?

じゃあ夜更新しに来ます。

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170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(兵庫県) [sage]:2011/11/01(火) 20:53:53.93 ID:Yvu+E6fbo
「ご飯は鍋で炊くと美味しいじゃん」

「待てェ」

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171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/11/01(火) 21:11:26.04 ID:aU8mMLMD0
「鍋はご飯で炊くと美味しいじゃん」

「待てェ」

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172 :ブラジャーの人 [sage]:2011/11/01(火) 21:37:56.29 ID:Lmmvws4L0


揉んで揉んで揉んで揉んで揉んで揉んで揉んで揉んで揉んで
触って触って触って触〜るぅ〜ぅ〜う〜(リピート)




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173 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/01(火) 21:39:02.77 ID:Lmmvws4L0


今日は午前だけの授業だったので、打ち止めは昼過ぎにはマンションに帰って来ていた。せっかく炬燵を出したというのに、
ここ最近は冬らしい寒さも遠く、今も燦々と降る太陽に温められたリビングは、暖房などつけていないのにとても暖かい。

(んー、テレビつまんないな…。早くあの人帰って来ないかなー、ってミサカはミサカは退屈モード)

着替えてソファに寝転んでいたら、昨夜は夜更かししたせいもあるのか、ポカポカの陽気に誘われて打ち止めはゆっくりと眠りの世界へ…


そして三時過ぎ、大学から戻った一方通行は、だらしなくお昼寝する打ち止めを発見した。

(コイツ…、今はまだあったけェが、すぐに日が沈んで寒くなるンだぞ。風邪引くじゃねェか)

普段の自分の姿なのだが、この少女にはそれを許さない青年だった。さらに冬の間、彼のリビングでの定位置は炬燵でもあるし。


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174 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/01(火) 21:47:53.78 ID:Lmmvws4L0



打ち止めの意識は、大部分がまだ夢の中だったが、ほんの一部だけ覚醒していた。マンションの玄関が開き、いつものように遠慮のない足音で帰宅を告げる彼の気配がする。

(あ、あの人が帰ってきたみたい…、でも眠い…)

これも大きな音でリビングのドアが開けられたが、ソファで眠る少女を見たとたん、足音もドアを閉める音も静かになった。

(うふふ…優しいんだから)


一方通行は杖を置き、そっと打ち止め顔を覗き込む。どうやらぐっすり寝ているようだ。昨夜は遅くまで起きていたので仕方ないだろう。
これで今夜も、深夜まで眠れないとボヤくかもしれないが、明日は休みだし構わない。甘やかすことにした。

(しょォがねェな…)

一方通行は打ち止めを抱き上げ、彼女の部屋へと運ぶ。炬燵のせいで、彼女をこうして運ぶことが増えたが、もちろん苦になど思わない。
起きたら起きたで喜ばしいので大して気も使わず動いたが、それでも少女が目を覚ます様子はない。

(よっぽど眠かったンだな)
(あ、またミサカのベッドに宅配してくれるのね、ってミサカはミサカは眠り姫状態にうっとりしてみる…。ごめんねあなた、今日はなんだか眠く…て…)

打ち止めは相変わらず半分寝ているままだった。フワフワと心地いい感覚に、現実と夢の中を交互に行き交う。
やがてベッドに横たえられ、毛布が体に掛けられた。

(ったく、こンなカッコで…)

そこで、彼の手が止まった。暖かかったので、制服から着替えた彼女は簡素な室内着を着用していただけだった。
今みたいに脇腹をシーツにつけて横たわれば、豊かなEカップはワンピースの胸元に深い谷間を生み、それが見てとれる。

(あぁ、毛布が…。嫌だな、あなた、ミサカの傍にいてよ…)

自分をベッドに運び終えたら、一方通行は部屋から出て行ってしまうと思い、寝ているというのに理不尽なことを考える打ち止め。
しかし、毛布は腹の上あたりで留まってしまい、大好きな恋人が顔を近づけてくる。

(…もしかしてちゅー…、するのかな。えへへ…本当に眠り姫だ。アレ?白雪姫だっけ?)


むに


待っていた接触は、唇ではなく胸に与えられた。






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175 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/01(火) 21:51:51.18 ID:Lmmvws4L0



(ちょっと、あなた…そこは胸なんだけど)
(…やわらけェ)

一方通行は右手の人差し指で、布地からハミ出している部分をつついた。胸の中心へ、もっと柔らかい所へ向けて力を入れる。
つつく、という表現では足りないほどに、指が埋まっていく。

(えー…、てっきりキスだと思ってたのに)
(…………服邪魔だな…)

幸いなことに、今日のワンピースは前にボタンがついている。それを外せば、すぐにはだけさせることが出来そうだった。
ひとつ、ふたつと手をかけていき、ゆっくりと、わずかに打ち止めの体を仰向かせる。

(もう、調子に乗って…)
(コイツ寝てンのになァ…。寝込みはNGなンだけどなァ…。でもなンか、すげー面白ェ)

一方通行は近くのクッションを引き寄せて座った。寝込みのイタズラを気に入ってしまった彼は、腰を据えて取りかかるつもりだ。

(さすがにブラジャーは取れねェ。どうすっか…)
(起こされるでもなく、完全に脱がされるわけでもなく。あなた…)

こんなことをされていても、打ち止めはまだ半分寝ていた。
一方通行に触られることに慣れているとはいえ、焦ったり怒ったりしない最大の理由は、信頼があるからだった。


信用はしているか?と聞かれたら少し言葉につまるのは、彼には内緒である。





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176 :ブラジャーの人 [sage]:2011/11/01(火) 21:54:18.90 ID:Lmmvws4L0

とりあえずここまで。
おっぱいでしかネタが湧かなくなってきたどうしよう。

……どうしよう。



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177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/01(火) 22:33:48.59 ID:wcqmL2W60

それでいいとおもう

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178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(中部地方) [sage]:2011/11/02(水) 00:16:51.98 ID:hmL2Ja/2o


なにか問題でも?

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179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/02(水) 01:12:23.65 ID:sykqSIYn0
乙ぱい

テーマは最初からそれだったよ

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180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/02(水) 04:25:19.10 ID:hg/9bFMDO
乙ぱい

おっぱいの弾力をベクトル操作してェなァ
181 :ブラジャーの人 [sage]:2011/11/02(水) 15:56:47.68 ID:L1SVG+lh0
うむ…、そうか…

ははは、いっか。もうこれでいいなり。だってもう続き書けたし、筆の進み具合が何より正直だね。

182 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/02(水) 15:59:40.30 ID:L1SVG+lh0
一方通行は、眠る打ち止めのワンピースのボタンを四つ外し、胸元の布地を左右によけた。
現われたのは、黒い肌着で、『冬の寒さをこの薄さで防ぐ!アウターに響かない!』とCMされていたものだった。ちょっと捲れば、すぐに白いブラジャーが見える。

(この黒いのはよく伸びるから問題なさそうだが、ブラジャーは……)
(ミサカはこれからどうなっちゃうのでしょう)
(出来る…か?)
(うわ、入ってきた…)

黒い肌着は、強引に伸ばして胸の膨らみの下に引っかけ、一方通行はブラジャーの中にそっと右手を差し込む。五本の指と手の平に、スベスベとした乳房を押しつけるように。
彼は打ち止めが起きても構わないと思ってはいるが、禁止されている寝込みにケシカランことをする、というこのシチュエーションに興奮してしまっているので、
出来れば寝ていてほしいと、そっと、…優しく指を動かした。

(おかしィよな。もう何度も触ってンのに、どうしてだ?)
(あなた、ミサカ起きてるよ。別に遠慮しなくても、もう起きてるんだってば、ってミサカはミサカは心の中で呼びかけてみる)


悪くないな、と感じている二人。楽しいな、と喜んでいる二人。

可愛い恋人が寝ている隙に、いやらしいイタズラをする。
愛しい恋人が、寝た振りをする自分に欲情しているのか、こっそり体を触ってくる。
これは面白い。
183 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/02(水) 16:05:54.17 ID:L1SVG+lh0
むにむにと、柔らかさを堪能していた彼の手が、動き方を変えてきた。乳房の下を持ち上げるようにして、さらに左手はブラジャーのカップを少々強引にずらす。
先日のセクシーランジェリーの時に覚えた技(?)を、ワイヤーが入っている普通のブラジャーで、しかも寝ている今にやろうとしているのだ。
だって、揉んでいるうちに、どうしても見たくなってしまったのだからしょうがない。

(…出た)
(明るいのにぃ…)
(まだこの前のアトが少し残ってンだな。夏になったらバレ易いだろうから気を付けねェと)
(見てる、あの人がすっごく見てる…)
(せっかくだから、もう片方も)

一方通行はボタンをもうひとつ外し、細心の注意を払って打ち止めの体を更に仰向かせた。
完全に上を向くと乳房の膨らみが少なくなるので、斜めをキープするために自分が座っていたクッションを彼女の背中に宛がう。
丁度良い態勢を作り出し、シーツ側になっていた手つかずの乳房も、同じように剥き出しにさせた。ワイヤーとカップに押し上げられて、胸は触ってなくても変形している。

(……やべェ)

右手には左の膨らみを、左手には右の膨らみを。ぴったり添えて、そうっと揉む。
腰を浮かし床に膝をついて、ほぼ彼女の正面から覆いかぶさるように。

(あー…あったかいなぁ、ってミサカはミサカは、また、眠く…)

情事の時の性感を高めるような触り方ではないので、熱くなった一方通行の手に、ただ優しく胸を揉まれる打ち止めは、とても心地よい気分になってきた。

再び意識は深い場所へと潜り始める。

184 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/02(水) 16:07:38.92 ID:L1SVG+lh0
「俺って、本当にオマエの胸が好きなンだな。寝てるのにこンなことしてるなンてよ」
「えへへ、ミサカのお胸に夢中なあなたが可愛いな、ってミサカはミサカは小悪魔のほほ笑み」
「大体、俺がオマエとこういう関係になったきっかけってのが、急にオマエの胸が育ったからだったなァ」
「そういえばそうだったね。ミサカおっぱい大きくなって本当に良かった」
「あァ…。おい、もう少し強くしてもいいか?」
「いいよ。でもその前にちゅーしてほしいな、ってミサカはミサカはおねだりしてみたり」
「後で」
「イヤ、今してー」
「今はこっちに集中してェンだよ」
「キスぐらいすぐできるじゃない」
「後、後…。あー、イイなァ、柔らけェ…」
「うぅ、さっきから胸ばっかり…。ちゅーさえしてくれないの?」
「………」
「あなたって、もしかして、ミサカよりミサカのおっぱいの方が好きなの?」
「………」
「ミサカが、もしも…胸が小さいままだったら、あなたは…」
「………」
「ねぇ…」
「うるせェな、どォでもいいじゃねェか。今はこうしてEカップなンだしよォ」
185 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/02(水) 16:10:09.07 ID:L1SVG+lh0
「う、ふぇっ」
「!!」

急に打ち止めの体が震え、静かな部屋に彼女のすすり泣く声が響いた。ぎょっとした一方通行が打ち止めの顔を見ると、目に涙が滲んでいて、ゆっくり瞼が開かれる。

(え、なンでコイツ泣いてンだ!?俺のせいか!?寝てるのはやっぱだめだったか!?)
「ひっく、バカ…あなたのバカぁ…」

耐えきれなかった涙が一筋頬を滑り落ち、それで一方通行は固まってしまった。両手は打ち止めの胸を掴んだままで。

「あ、悪ィ、つい…」
(まずいまずいまずい、まさか泣くほどショックを与えるとは思ってなかったぜ…っ。うわすげェ罪悪感が今更…)


悲しい夢を見てしまった打ち止めは、切なくなった胸の苦しみと、自分の鳴き声で目を覚ました。その瞬間、焦る一方通行の顔が目の前にあり、すぐにあれが悪夢であったことを理解する。

「嫌な夢見ちゃった…」
「はァ?夢ェ?」
「夢の中でね、今みたいにあなたは寝てるミサカの胸を触ってるの」
「……へェ」
「ミサカがキスして、ってお願いしても無視なの。胸に夢中なの」
「なンだそりゃ」

潤んだ瞳のまま、打ち止めは悪夢の内容を打ち明けた。ちなみに、まだ焦る青年の手は、柔らかな場所に留まっている。

「夢の中のあなたは、ミサカよりミサカの胸が好きなんだって。ミサカの胸が大きくなってなってなかったら……うぇ」
「おいおい」
「ミサカと、ミサカのこと好きにならないって…」
(最悪じゃねェか、夢の俺…)

切なさがぶり返してきて、また泣きそうになる。
まさかそんな馬鹿馬鹿しい夢を見ていたとは、そして泣かれるとは思わなかった一方通行は、ようやく彼女の胸から右手を離し、頬の涙を拭ってやった。

「あのなァ、夢だろそれは?悪かった、俺がこンなことしてるせいだとは思うが…、夢だ、夢。忘れろ…」
「分かってるよ、夢だって…。寝ボケただけだから心配しないで、ってミサカはミサカはえっちなあなたを安心させてみる。あなた、いつまで触ってるつもり?」
「……」

一方通行は、ようやく左手も離した。

186 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/02(水) 16:13:00.27 ID:L1SVG+lh0

「オマエいつから起きてた?」

まだベッドに寝転がったままの打ち止め。ブラジャーの中に乳房を戻し、ストラップを整え、肌着とワンピースのボタンを元どおりに直しながら一方通行が訊く。

「最初からだよ。あなたがマンションに帰ってきたところから、ってミサカはミサカは衝撃の事実をお伝えしてみたり」
「根性悪過ぎだろ…」
「正確には、半分起きてて、半分寝てた」
「あァそォ…」

服を全て着せ、首の下まで毛布を掛けてやる。バツが悪いのはどう考えても一方通行の方だ。何となく床で正座してしまう。

「ベッドに運んでくれるのは嬉しかったんだけどね」
「……」
「あなたってば、ずぅーーっと胸ばっかりで」
「……すいませンでしたァ」
「別にイヤじゃないし、今更寝込みはNGなんてミサカも言わないよ?でも他にすることがあるでしょ?」

いつの間にか寝込みが解禁されていたとは。
一方通行自身が思うよりも、打ち止めは自分を受け入れてくれているらしい。罪悪感が通りすぎ、代わりに期待と欲望が湧きあがってくる。

「あァそうだったのか。悪い、じゃコッチも」

青年は毛布の中に手を入れて、少女の太ももをなぞり、足の付け根に指を忍ばせた。
ピタリと閉じていた足だったが、あまりに素早い指の動きでわずかに侵入を許してしまい、打ち止めは飛び起きて彼の手から逃げる。

「わ!?ちがうちがうよ!?そうじゃなくてキス!キスしてくれると思ってたの最初は!もうバカ!」
「でもオマエ濡れて」
「っきぃー!」

恥ずかしさと怒りで、打ち止めは衝動にまかせておもいっきり一方通行の頬をはたいた。
テレビドラマや映画でしか見たことなかったが、とっさの時には、本当にこうして手が動いてしまうのだと、身を持って実感したのである。
187 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/02(水) 16:27:37.55 ID:L1SVG+lh0

「ごめんね、まだ痛い?」
「大丈ォ夫…」

夕暮れが迫ってきて、リビングの気温も下がってきた。上着を羽織った打ち止めは、一方通行に膝枕をしてあげている。
下半身は炬燵に入ってぬくぬくしている青年だったが、その頬は真っ赤になって、氷水が入ったビニール袋で冷やされている。
保護者達が帰ってくる頃になっても腫れが引かなかったら、ベクトル操作で急速治療すればいい。それまでは優しい少女の膝に甘えさせてもらうことにした。

「見事にクリーンヒットしちゃったねぇ」
「あァ、早かった」
「手が勝手に動いちゃったの、ってミサカはミサカはおててに責任転嫁してみる」
「いや、別に怒ってねェよ。むしろ、オマエは怒ってねェのか?」

解禁されていたとはいえ、こっそりとイタズラしたことについては、やはりうしろめたい。

「寝てるミサカの服を脱がせて胸をモミモミしたこと?キスしないでもっとしようとしたこと?」
「……両方」
「…怒って、ないよ。ミサカもキモチよかったし」
「………」
「だからと言って、寝ている時はミサカの気分とかムードとか色々考慮しないとダメ!ってミサカはミサカはあなたが調子に乗らないように釘をさしてみる」
「ハイハイ」
188 :ブラジャーの人 [sage]:2011/11/02(水) 16:30:35.94 ID:L1SVG+lh0
イタズラする一方通行と、寝た振りする打ち止めの巻 完

今まで書いた話の中で、最もアホらしいな。
一方さんの変態がとどまることを知らない。
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/02(水) 23:35:58.79 ID:/C6yXMAe0

背徳感に揺れる一方通行
よく考えたら打ち止めは中学生
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/03(木) 02:13:58.27 ID:z2NIqNdDO
>>1
おっぱいは素晴らしい
通行止めはもっと素晴らしい
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関西地方) [sage]:2011/11/03(木) 10:21:26.26 ID:YzDk0PHL0
打ち止めのおっぱおばっか触ってたせいで打ち止めから反撃くらいそう
一方さんのちっぱい(^ω^)ペロペロ
192 :ブラジャーの人 [sage ]:2011/11/03(木) 14:06:31.26 ID:CBSw6BOK0
>>189 よく考えなくても中学生。この設定にしたことを後悔はしていない。と言い切る。

>>190 えぇ、どっちも素晴らしい至宝ですとも。でも普通の話も頑張って考える…

>>191 反撃って、平手打ちとかじゃない意味の反撃ですのん?ペロペロとか、酒でも飲まない限り無さそうな。
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/03(木) 14:11:56.11 ID:h4+frFwDo
男の乳など舐めてもな…
乙、打ち止めも一方さんもけしからん
194 :ブラジャーの人 [sage]:2011/11/05(土) 21:35:05.25 ID:GlU9ZadB0
>>193 女が男の乳を舐めるのってどうなのだろうか。個人的にはあまり盛り上がらない。

12月っていったらコレがあるやん!先祖代々、曹洞宗だからうっかりしてました。

では投下開始。
195 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/05(土) 21:39:42.44 ID:GlU9ZadB0

「どこもかしこも賑やかだねー、ってミサカはミサカは毎年のことながらウキウキしてみる」
「同じ音ばかり流れてて、耳がバカになったみてェだ」

一方通行と打ち止めは二人して街を歩いていた。近くのパーキングに車を停めて、軽く散歩がてらウィンドウショッピングを楽しむ。
クリスマスを間近に控え、世間はだんだんとお祭りムードを強めてきていた。十一月からケーキの予約が始まり、打ち止めは甘い匂いが香ってきそうなポスターをうっとりと眺めていたものだ。

「あ、これも美味しそう、ってミサカはミサカは足が止まっちゃう…」
「またか…、そンなに食いたきゃ買うか?」
「見るだけ。本番にはヨミカワと番外個体がもーっと美味しいの作ってくれるからいいの」
「炊飯器でなァ…」

クリスママス一色にディスプレイされた街の中で、二人は結局手近な甘味所に入りケーキを頬張った。もちろん一方通行はコーヒーだけである。

「一口いかが?ってミサカはミサカは一応あーんの誘惑をしてみる」
「結構ですゥ。そのフォークに刺さってるのが肉なら迷うとこだけどな」
「お肉をあーん、ってあんまりロマンチックじゃないね」

ケーキを片づけ、紅茶を啜る打ち止め。歩き疲れたので、二人はここで休憩することにした。ティーカップを傾けながら、何気なく打ち止めが話題を振った。

「クリスマスには、やっぱりアレだよ」
「どれだよ」
「プレゼント。サンタなミサカから何が欲しい?あまり高いのは無理だけど…」
「……」
196 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/05(土) 21:41:23.06 ID:GlU9ZadB0

そう言われても、一方通行はとっさに返事が返せない。そういえばクリスマスにはプレゼントを送り合う習慣が世間一般にあるのだった。ここ近年は、黄泉川家で典型的なクリスマスの御馳走と、炊飯器製のケーキを食べさせられて騒いでいただけだ。改まって「はいどうぞ」と何かを送ったりした覚えはない。

(去年まではどォしてたっけか)

打ち止めには、クリスマスが近づくと「クリスマスプレゼントにこれちょうだい!」とおねだりされていた気がするが…

「あなたはいつも『別にそンなもンいらねェよ』って断られてたけど、今年はさぁ…、ミサカにも何かさせて」

(おォそうだ、そうだった)

「つってもなァ…。これといって欲しいモンが思い浮かばねェ」
「な、何かあるでしょ?ほら考えてみて、思い出してみて?」

ここで、めンどくせェ、などど言えば、打ち止めを悲しませるということは、さすがに一方通行も分かっている。いわゆる恋人同士になってからの、初めてのクリスマスなのだから、周囲の恋人達がやっている行事を、自分達でもやってみたいのだ。恋人ぶりたいのだ。
197 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/05(土) 21:44:04.62 ID:GlU9ZadB0

「あ、車のスタッドレスは買わねェと、とは思ってる」
「ポルシェちゃんの?全然クリスマスっぽくないけど、それっていくらくらいするのかなぁ」
「浜面が六、七十万ありゃそれなりのホイールまで揃うって言ってたか、確か」
「高ぁ!」
「だろ?あとは……あー……えー…」
「ふー、あなたはお金持ちだから、欲しい物は大抵買えるもんね、ってミサカはミサカは意外にも困難な課題に項垂れてみたり」
「まァこの問題は置いといて、オマエは?なンか欲しいモンないのか?」
「え、ミサカ?」

一方通行はテーブル付近で揺らすコーヒーカップに視線を置いたまま、逆に訊く。コーヒーが冷めてしまうが、こうして気を紛らわせていないと恥ずかしい。
打ち止めがそういうつもりなら、そしてそれに付き合うならば、今年からはそれらしいものを、ちゃんと意識してプレゼントしなければならないだろう。

「えーと、えーと」
「なンだよ…早く言えよ。毎年なにかしらリクエストしてただろォが」
「そうなんだけど、いざあなたからそう言われるともう気持ちだけで、その、お腹…じゃなくて胸いっぱいっていうか」
「はァ?あるだろ?服とか、アクセサリーとか」
「それだといつもと一緒だし…」
「クリスマスって疲れるイベントなンだな」
「おかしいねぇ」

そんなわけで、お互い当日までに「とにかく何かを用意しよう。文句は言いっこ無し」という協定を結んで休憩は終了となった。
198 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/05(土) 21:48:09.55 ID:GlU9ZadB0

黄泉川も芳川も、十二月二十四日、二十五日は両日仕事があるらしい。これによって、今年は十二月二十二日に黄泉川家のクリスマスパーティーが開かれることとなった。初めてのことではないので、慣れたものだ。

「でも今年はその方がいいじゃん?」
「えーどうして?ってミサカはミサカは当然の疑問を抱いてみる」
「一方通行も打ち止めも番外個体も、イブやクリスマス当日は友達や彼氏彼女と遊びたい年頃じゃん。打ち止めも一方通行とクリスマスデートでもしてきたらいいじゃんよ」
「や、も、もーヨミカワ!冷やかさないでよ!ってミサカはミサカはまんざらでもないなと照れてみたり」

キッチンで台所仕事をする黄泉川のお手伝いをしていた打ち止めは、手が濡れていることも忘れて彼女の背中をバシバシと叩いた。鍛えられた体と頑丈な神経をした保護者はそんなこと気にもならないらしく、顔を赤らめる少女と一緒に笑っていた。
そんな二人の様子はリビングに居る芳川と一方通行にも丸分かりである。

「言われているわよ」
「……」
「予約したい場所があるなら、早めにしておくことをオススメするわ」
「…うるせェ……」

199 :ブラジャーの人 [sage]:2011/11/05(土) 21:52:43.24 ID:GlU9ZadB0
とりあえずここまでじゃん。

恋人は第一位 本当に第一位 つむじ風を背負って〜

200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/06(日) 00:15:14.01 ID:M+1Q3Lva0

そうか、昨日は11/5だったな
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(長野県) [sage]:2011/11/06(日) 23:00:22.00 ID:qawNN7Lb0
やっと追いついたおすすめの禁書スレで紹介されてから来たけど
本気で砂糖吐きそう(褒め言葉
これからも期待して待ってます。
久しぶりに毎日確認するスレが出来た。
202 :ブラジャーの人 [sage]:2011/11/08(火) 13:37:08.24 ID:2O4WqfUZ0
>>200 禁書とともに歩む日々、ですね。

>>201 褒め殺される。信じてもらえないかもしれないが、私はシャイだ。しかし素直に言おう。
ありがとう、すっっっごく嬉しいです!!と。
しかし、さすがにもう毎日は更新できないんですよW 今のペースは守っていきたいと思っています。

ではジングル話の続きをどうぞ。
203 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/08(火) 13:40:13.79 ID:2O4WqfUZ0
打ち止めは悩んでいた。一方通行にあげるクリスマスプレゼントのことで。一体何をあげれば喜んでもらえるだろうか…

(サングラスみたいに、あの人が気に入ってくれるもの。何か…)

部屋のベッドに寝転がり、打ち止めは考える。当日までまだ時間はあるが、もし用意に時間がかかるものなら、今から決めておかなければならない。

(いっそ気持ちが大事ってことで、肩たたき、いやマッサージ券?…それじゃまるで父の日でしょミサカ、ってミサカはミサカはセルフつっこみ)

一方通行のことを考えていると、知らず知らずのうちに時間が過ぎていく。楽しかったデートの思い出や、アレなことやコレなことまで、プレゼントとは関係ないことが甦ってくる。しかし、おかげであることを閃いた。

(あ、これいいかも…。ちょっと複雑だけど)



その頃、風呂の中では一方通行も悩んでいた。もちろん打ち止めにあげるクリスマスプレゼントのことで。いつもと違う物を用意したい、と思う。何をあげたってあの少女は喜んでくれるだろうが、結局力を入れてしまう自分を自覚する。

(俺も一丁前に浮かれてンのかねェ…?)

しかし、いくら考えても良いアイディアが出ない。仕方がないので、明日は午後からの講義をサボって色んな店を下見しに行くことにした。

(そォすりゃ何か目につくモンが見つかるだろ)


204 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/08(火) 13:44:17.67 ID:2O4WqfUZ0
次の休日、黄泉川家のリビングではツリーの飾り付けがされていた。街では十二月に入った直後から見かけたが、ここ黄泉川家では中旬から飾られる。

「だってその方が楽しみが凝縮されて、濃いクリスマスになるじゃん?」
「この行事に濃いとか薄いってあるのかしら…。打ち止め、そっち持って」
「はーい。もうサンタや鈴つけてもいい?ってミサカはミサカはウズウズしてみる」

女性陣は和気あいあいとツリーを賑やかにしていく。一方通行はというと、テレビを見るでもなく、新聞を広げるでもなく、彼女達の様子をソファに肘ついて眺めていた。
彼にはこの後、重要な仕事が用意されているのだ。毎年必ずやらされるので、今年も大人しく従う。

「よーし、出来た。あとは一方通行のでオシマイじゃん」
「はい、あなた」
「……ン」

立ち上がった一方通行は、打ち止めから手渡されたものをツリーのてっぺんに飾った。それはもちろん、金色の星である。

「これで一年ぶりにクリスマスツリーのお目見えね。買った時は打ち止めより大きかったのだけど、今はこのツリーがウチで一番小さいわ」
「そういえばいつの間にかミサカの方が背、高くなってたね?」

打ち止めは成長をアピールするように一方通行の横で背伸びした。まだまだ彼との身長差は大きく、もう少し伸びたいと考えている。

(俺も伸びたな。昔より星つけやすくなったもンなァ…)

日々の生活の中で、こうして金色に光るツリーの星を見るだけで、時の流れと体と心の成長を実感する。そんな普通を二人は手に入れた。
守りたい、絶対に手放さないと、お互いに誓っているかけがえのないものだ。
205 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/08(火) 13:46:04.92 ID:2O4WqfUZ0
一方通行が任されているクリスマスの仕事は、まだある。明確に言い渡されたわけではないが、そういう慣習になってしまっているので、パーティー当日の二十二日も自ら外に出掛けた。

(今年は車があるから楽だなァ…。もっと早く持っときゃよかったぜ)

それじゃあ体を鍛えられないよ、と、打ち止めに叱責される幻聴が聞こえたが、今は無視する。
彼の仕事とは、パーティー用の肉とシャンパン等の酒を買ってくることだった。これは一方通行一人でやらなければいけないらしく、粛々と任務を遂行する第一位。
自分も酒を呑むようになってからは、味の良い高級品を選ぶようになったので、保護者達は多大な期待を込めて帰りを待っているはずだ。

(今までは手抜きしてたのか、って突っかかってきやがって。本当に図々しいヤツらだ)

打ち止めにはジュースを買い、香ばしい焼いた肉の匂いがこもる車に乗り込んで家路につく。毎年のように、先に肉から購入してしまった。

(……買う順番間違えた)

初心者ドライバーには、よくあることである。
206 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/08(火) 13:50:28.00 ID:2O4WqfUZ0
マンションの駐車場に着くと同時に、打ち止めが駆け寄ってきた。一方通行の帰りを、まだかまだかと窓辺で待っていて、ポルシェのエンジン音が響くと玄関を出て迎えにきたのだ。

「おかえりなさーい。運ぶの手伝うよ、ってミサカはミサカはデキル子をアピールしてみたり!」
「おォ御苦労ォ」

と言っても、打ち止めには肉をあずけて、重い酒やジュースは自分が持った。


「おかえりなさい、御苦労さま。今年はどんなの買ってきてくれたのかしら?」

こんな時だけ、玄関まで芳川も迎えに来る。そんなんだから毎年買う酒の量が増え、しまいには打ち止めがマンション一階まで手伝いに来てくれるようになったのだ。

「ほらよ…」
「あら、今年も美味しそう。ありがとう、一方通行」

芳川はお目当ての品を受け取り、足取り軽くキッチンへ向かった。そこを覗き込むと、一方通行が出掛けていた間に来ていた番外個体と、黄泉川が料理の準備をしている。甘い匂いのする炊飯器の中では、きっとケーキのスポンジが焼かれているのだろう。

「あ、おかえりパシリの第一位。ミサカが好きなの買ってきてくれた?」
「知るかンなモン。文句言わずに飲ンで潰れてろ」
「どれどれ…?ちゃんとあるじゃん。良かったな番外個体」
「やたー。んもぅ、本当にツンデレなんだから。あなたのケーキは一番大きく切ってあげるよぉ〜」
「………」

一方通行はうんざりした顔で部屋に引っ込んだ。料理は黄泉川と番外個体が。会場(リビング)の準備は芳川と打ち止めが担当している。仕事が先に終わった一方通行は自室でパーティーの開始を待つことにした。
207 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/08(火) 13:53:42.53 ID:2O4WqfUZ0

半時間後、準備を終えた打ち止めも彼の部屋へやってきた。

「ミサカもここでゴロゴロするー、ってミサカはミサカは台所から追い出されたのであなたに不満を訴えてみたり」
「またか。まァいいンじゃねェの?オマエはあの変な料理を覚える必要ないからよ」
「ミサカが普通のに挑戦しようとするから追い出されるのかな、ひょっとして」
「だったら益々もォいい。アイツらに任せておけ」
「いぇーい。のんびりするがよい、の許可が出たー。堂々とゴロゴロしよ」

ベッドに寝転び雑誌を読む一方通行と、床のクッションの上で携帯をいじったり、同じく雑誌や持ち込んだ漫画を読んでいる打ち止め。

「ねぇねぇあなた、ってミサカはミサカは普通を装ってあなたに訊きたいことを尋ねてみる」
「あァ?ンだよ」
「……プレゼント。もう用意した?」
「……」
「……」

微妙な、だけどくすぐったい雰囲気が漂う。

「オマエ、今それ訊くか?あと二日だぞ?」
「え、ダメだったの?」

意外、という顔をされた。これではまるで一方通行の方が、初めて恋人と過ごすクリスマスを、打ち止めよりも楽しみにしているようではないか。

「…もう買ってある」
「おぉ…。なんか、なんかこう燃えるねクリスマス…っ。今すぐ欲しいのを我慢して、当日よ早く来い!ってミサカはミサカはこらえてみたり」

(コイツ、俺にムードを大切にしろって言うわりには…)

手にしていた雑誌は既に興味を失っていたが、視線はそこに置いたままで青年も訊く。

「オマエは?」
「うん?うふふふ、決まってるでしょ。ミサカも、もう用意してあるよ!」

そう教えられたら、自分も「今すぐよこせ、見せろ」と言いたくなってしまった。一方通行も、あと二日我慢しなければ。
208 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/08(火) 13:56:46.02 ID:2O4WqfUZ0

黄泉川の号令が聞こえたので、二人もリビングへと出向いた。部屋は暗くされ、キャンドルがオレンジ色に空間を染め上げている。定番の料理と、主役の生クリームたっぷりのケーキが炬燵の上に陣取っていた。

「和洋折衷だよなァ…」
「何言っているの。ツリーと炬燵に、その上にケーキ。これが日本のあるべきクリスマスよ」
「はいはい、早く入るじゃん!もう私お腹ペコペコなんだって!」

お決まりのように、一方通行と打ち止めは同じ場所に足を入れた。

「さて、みんな飲み物持った?それでは、カンパーイ!じゃん!」
「メリークリスマース!」

クリスマス。何を祝うのかは置いといて、飲んで食べて騒ぐのがこの家のクリスマス。
ぐい、と、それぞれグラスを傾けて、打ち止め以外の面々が「ぷはー」と息を吐く。
一方通行が金にモノ言わせて買ってきた酒は、とても旨かった。みんなの幸せそうな顔が、彼の毎年の『仕事』の原動力なのかもしれない。

「あぁ、至福ねぇ。打ち止め、番外個体、今年もアレをやってくれるかしら?」
「あーアレね。いいけど、第一位には不評だよね」

芳川のリクエストは一方通行にとって楽しいばかりのものではなく、嬉しそうに番外個体が笑う。打ち止めは伺うように隣の青年を見た。

「構うな。やってやれ、部屋が暗いうちにな」
「うん!」

打ち止めは彼から少し体を離し、番外個体と一緒に空中に手をかざした。二人はタイミングを合わせ、青い光を空中に閃かせる。ぱちぱち、ばちばちと音を鳴らして紫電が躍る、何とも美しい光景だった。

「おー、キレイキレイ!さすが姉妹じゃん。息ぴったり」
「毎年腕を上げているみたいね」

保護者達の賛辞を受けて、姉妹はさらに電気を操る。時折、番外個体がわざと一方通行の周辺にちょっかいをかけ、打ち止めに注意されていた。年々、自分の体にまとわりつく青い光が、その距離を縮めてきているような気がしないでもない一方通行。

「ひひ、睨むなよ親御さん。最終信号にかばってもらって嬉しいクセにぃ」
「この野郎ォ、反射して髪焦がしてやろうかァ?」
「もう、今日くらいは仲良くしなさいな。我が家は打ち止めが一番良い子ね」
「ミサカは悪い子でいいもーん」
209 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/08(火) 14:00:11.83 ID:2O4WqfUZ0

その後、部屋の照明もいつもどおりの明るさに戻り、本格的に腹を満たしにかかる五人。一方通行の目の前には、番外個体の宣言通り、一番大きく切り分けられた炊飯器製のケーキがある。打ち止めに手伝ってもらいながら、何とかノルマをこなす青年であった。

黄泉川と芳川は、料理よりも酒の方が多いかもしれない。番外個体も気に入りの酒と、高いシャンパンを飲んで顔が崩れてきていた。

「いいなー、ミサカだけお酒飲めないから、みんな美味しそうで楽しそうで羨ましい、ってミサカはミサカは例の事を忘れたわけじゃないけど羨望を抱いてみる」

打ち止めが、つまらなさそうに呟く。二人で初めてホテルに泊まった時に起こった事件を思い出すと、一方通行が飲んでもいい、と言うはずがない。
しかし、青年はしばし何事かを考えキッチンへと立ち、一、二分ほどしてコップに液体を一センチぐらい入れて戻って来た。

「なぁにそれ?」
「ウィスキー」
「?どうする気なの?ってミサカはミサカはドキドキしてみたり…」

一方通行は打ち止めが飲んでいた炭酸飲料にそれを注ぎ、ストローで軽くかき混ぜた。

「ほれ、こンくらいなら大丈夫だろ」
「わぁー、ありがとう!…おいしーっ」
210 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/08(火) 14:03:13.94 ID:2O4WqfUZ0

一番良い子なはずの打ち止めが不良の代表的行為をしているが、最早ベロベロになった保護者達は大して気にとめなかった。

「あー、悪いんだ。第一位がお姉ちゃんに酒飲ませてるぅ。酔わせてヤラシイことする気だ。きゃー!黄泉川!変態が出たよ!」
「あー?変態?そんなの一方通行に捻ってもらえばいいじゃん。私は今日休業」
「だから、この人が変態なんだって!」

一方通行の眉間に皺が寄る。そもそも打ち止めが酔うと、どちらかといえば彼の方が貞操の危機を迎える可能性が高い。

「うるせェこの馬鹿。おらァ、まだあるぜェ?遠慮せずに飲め」
「う!?んぐぐ…っ」

一方通行は自分のグラスを番外個体の口に無理やり押し付ける。当然抵抗して暴れる彼女によって、お高いシャンパンはこぼれていった。

「こら、もったいないわね。罰として片づけは君達二人でやりなさい」
「あァ?ふざけたこと言ってンじゃねェぞ芳川」
「ごほ!そうだよ。んなことより、この人ミサカも酔わせる気みたい。たっけてぇ〜襲われるぅぅぅ!」
「ぶーぶー、ってミサカはミサカは浮気者なあなたに非難を表明してみる!慰謝料請求!」
「ンな…っ」
「あっははははは!こりゃ一方通行逮捕じゃん!」

二十二日だが、日付など関係無い。いつもどおりのクリスマスの夜であった。
211 :ブラジャーの人 [sage]:2011/11/08(火) 14:06:25.26 ID:2O4WqfUZ0
とりあえずここまで。

おっぱいが出てこない話が書けると安心する。素晴らしいね、クリスマス。
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/08(火) 15:03:52.59 ID:C4ONDF+IO
一方さんがベツレヘムの星を飾る役なのか……
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/08(火) 19:46:06.13 ID:OVY0JGkDO
微笑ましいなぁ
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/08(火) 23:18:16.82 ID:T5ouBpY60


ほのぼの黄泉川家はいいね本当にいいね
原作一方さん思うとうるっとくる
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関西地方) [sage]:2011/11/08(火) 23:51:23.98 ID:EGxpAni50
おっぱいがでてこない話……だと……?
たとえおっぱいというワードがでてこなくてもそこにおっぱいは存在する(キリッ
心の目で感じることによっていつでも( ゚∀゚)o彡°おっぱい!おっぱい!

冗談はおいといてほのぼのはやっぱいいもの
二人のプレゼントが楽しみwwktk
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/09(水) 02:30:56.21 ID:RGz0yTpDO
さあ次はクリ○○スの話だな
正座して待ってるよ
217 :ブラジャーの人 [sage]:2011/11/09(水) 15:50:19.99 ID:A8ALwEKc0
>>212 星は男がつけるべきものらしいので。

>>213 良かった、そう言ってもらえて。変態から距離を取りたいのです。

>>214 せめてこのスレでは彼に「普通」を、「幸せ」を、「家族」を…。そう思って。

>>215 嘘だ。冗談に聞こえないww プレゼントは大したものじゃないけど、乞うご期待。

>>216 痺れてください。 
218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/11/09(水) 18:08:13.14 ID:FFf/vvwr0
ここの一方さんって歌うの?(俺の歌を聴けぇって感じじゃない奴)
219 :ブラジャーの人 [sage]:2011/11/09(水) 21:28:52.54 ID:A8ALwEKc0
>>218 とりあえず前スレで「愛が生まれた日」は、打ち止めに歌わされたよ。
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/11/09(水) 22:29:21.16 ID:FFf/vvwr0
>>219前スレから読んでたけど忘れてたわ。
221 :ブラジャーの人 [sage]:2011/11/10(木) 02:17:27.61 ID:fHmVVzKA0
>>220 一方通行「黒歴史だァ…、忘れてろ」

それでは続きを投下します。珍しい人たちも登場するよ!
222 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/10(木) 02:20:59.07 ID:fHmVVzKA0

さて、一方通行と打ち止めの待ち望んだイブがやってきた。一方通行の大学は既に冬休みに突入していたが、打ち止めは今日も学校に行っている。青年はたっぷりと昼まで惰眠を貪り、起きた後はリビングでのんびりしていた。しかし頭の中は、今日のことばかり。

(プレゼントなァ…)

実は、講義をサボって街に繰り出した日、早々に決めてしまっていたのだ。
場違いを覚悟で、彼女が好みそうな商品を揃える店を回って二軒目。新商品のポスターを見て、これがいいな、と即決した。だが、購入から日が経つにつれ、打ち止めが喜んでくれるだろうか、と不安が増してくる。

(……はァ、今更しょォがねェだろ。らしくねェ)

頭を振って迷いを払い、努めていつもどおりに過ごす。やがて午後になり打ち止めが帰ってきた。

「たっだいまー!」
「オカエリィ」
「あなた、今日だよ!ミサカ達の記念すべきクリスマスは!」
「いきなりすぎるだろ…」
「だって楽しみで楽しみで…。さーて、さっそく準備しようかな、ってミサカはミサカはあなたもお手伝いしてね、とお願いしてみる」
「ハイハイ」

どこか洒落た店でも予約して、二人で出掛けようかとも思ったのだが、結局自宅で慎ましく行うことにした。これ以上慣れないことはするものじゃない。
今日は打ち止めが(普通の)料理を作る。まだ修行中なので大したものは出来ないだろうが、入念にレシピを確認していたので、そこは期待しておこう。
223 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/10(木) 02:23:12.01 ID:fHmVVzKA0

「じゃ、いってくるからなァ」
「はーい、いってらしゃい。ケーキは小さいのにしてね?ってミサカはミサカは最近の高カロリー摂取を心配してみたり」
「ンー」

今日も一方通行は肉とシャンパン、それとケーキを買いに行く。今年二度目だろうがクリスマスとなれば、なんとなく同じことをしてしまうのだ。

(シャンパンは一本でいいよな)

先日のパーティーで買った酒は、すべて飲み尽くされた。余れば今日、自分が飲めばいいと思っていたが、それは甘かったようだ。

買い物の最中も、打ち止めに渡すプレゼントのことを考えてしまう。これほど誰かを真剣に思い、何かをあげるのは初めてのことだ。だから柄にもなく緊張しているらしい。

(あー、落ちつかねェ。だいたい何て言って渡すンだ?いつ渡すンだ?)

そこで、ふと頭の中である顔が思い浮かんだ。彼女にはアレをあげれば、いつも満面の笑顔と飾らない心からのお礼を言われた。予行演習、という訳ではないが、一足先にクリスマスプレゼントを渡して、本番のために心の準備でもしておこうか。

(今年から車があって楽だし)

だから、大したことじゃない。わざわざ出向くのは苦じゃないから。そう言い訳めいたことを呟いて、彼は急遽、買い物の量を増やした。
224 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/10(木) 02:27:58.36 ID:fHmVVzKA0

冬の夕暮れは早い。目的地に着く頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。その部屋を見上げると明かりが点いているので、留守ではないようだ。
路肩に車を停め、一方通行は慣れた様子で上条当麻の寮へと足を踏み入れる。
手には、大きな焼いた鳥肉と、特大のホールケーキを持って。

上条宅の玄関の前に立ち、呼び鈴を押す。「ピンポン」という音の「ピ」で、唐突にドアが開けられて、不覚にも一方通行は驚いてしまった。そして目の前に現れた人物を見て、益々驚いてしまった。

「はい。覚えのある気配だと思ったら、あなたは確か学園都市の第一位殿でしたね」
「あ、あァ」
「上条当麻、お友達がおみえですよ」

茫然と立ち尽くす一方通行には構わず、神裂火織(二十三歳)は部屋の中を振り向いて家主を呼んだ。「お友達」という言葉に、いつもなら反発を示す一方通行だったが、今は想定外の人物の登場と、彼女が着ている服に目を奪われて言葉がつげない。
神裂は、クリスマスにはよく見る、いわゆる「サンタコスチューム」を身に着けていた。それも露出度が大変高い物を。

「お、一方通行か?入ってこいよ」
「いらっしゃいなんだよ、あくせられーた!」

聞き慣れた声に導かれ、神裂の後について玄関をくぐる。そこにはいくつか靴が置いてあって、客人が一人ではないことを知ったが、長居はしないつもりなので、まぁいいだろう。


「……」
(コイツまで居るとは…)

しかし、部屋の奥側の炬燵に入っている男を見たとたん、つい顔をしかめてしまった。

「なんて面してるんだ?一方通行。俺が居てそんなに嬉しいのか」
「土御門…」
225 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/10(木) 02:31:56.55 ID:fHmVVzKA0

普段は上条とインデックスだけの二人住まいの部屋だが、今日はクリスマスイブだということで、親しい者が集まり、ここでもパーティーが行われているのだろう。ちょっと考えれば予想できそうなことだった。他にも、赤い髪のかなり背の高い、見覚えのある神父服の男がいた。確か「ステイル」と呼ばれている、上条たちの知り合いだ。

台所から濡れた手を拭きながら、上条が一方通行を出迎えた。

「どうしたんだよ、連絡も寄越さないで急に」
「…あー、…」

みんな、見ている。神裂も、ステイルも、目をキラキラさせて荷物に注目しているインデックスも。サングラス越しだが簡単に分かる、絶対ニヤけているであろう土御門も…
ここまで来て何も用が無い、などとウソはつけない。だってもう、美味しそうな匂いをシスターが嗅ぎつけているのだから。一方通行はぶっきらぼうに、持っていた袋を上条に突き付けた。

「え、な、何だ?」
「見て分からないのかい?彼はそれを受け取れと言っているんだよ。鈍いね」

戸惑う上条に、炬燵テーブルに肘をついたステイルが言う。口には火のついていない煙草が咥えられていた。

「分かってるよ。俺はどうして急に…えーと、これ肉?」
「あとケーキだ。シスターに食わせてやれ」
「……っ、やったぁー!ありがとー!あくせられーたー!」

期待どおり、インデックスが飛び上がって喜んでくれた。しかしここに見慣れない客人がいるとは思わなかった一方通行にとっては、いささか恥ずかしい。そして、見慣れすぎている土御門もいることで、更に強くそう感じられた。

「良かったですね、インデックス。御好意はありがたく頂戴して皆で食べましょう」
「うん、随分たくさんくれるんだね。彼女のことを良く分かっているじゃないか」

神裂が上条に代わって袋を受け取り、テーブルの上に中身を出していく。インデックスがそれと一方通行を交互に見つめ、手をわきわきと動かして、今にもつまみ食いしそうだ。ステイルはそんな少女を穏やかに眺めていた。
226 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/10(木) 02:34:22.46 ID:fHmVVzKA0

「ありがとな、一方通行。お前も一緒にやって…」
「いや、もォ帰る」
「な、なんで?だってコレ」
「本当に鈍いぜよ、カミやん。一方通行は打ち止めとクリスマスを過ごすに決まってるにゃー」

あえて見ないようにしていた土御門が、インデックスに先駆けて鳥モモ肉を掴んで齧りついた。一方通行は彼を睨みつけたが、土御門はどこ吹く風である。

「はしたないですよ土御門。インデックスも我慢しているというのに」
「硬いこと言わない、言わない。ねーちんだってもう飲んでるクセに」
「ぐ…、しかし飲まなければこのような格好できません」
「なぜ負けると分かっていてテレビゲームなんかしたんだい?神裂が勝てるわけないじゃないか。土御門はそれを分かっていて、その服を用意したんだろ」
「だってインデックスが私とやりたいと、あ、インデックスまで…」
「もう我慢できないんだよ!私も!」

一方通行が持って来たプレゼントによって、なし崩し的に上条宅のクリスマスパーティーは始まった。

「ははは…、今日はうち賑やかだろ」
「あァ、邪魔したな」
「そんなわけないだろ!ありがたいさ」
「あのサンタ女を見た時は、オマエがついに怪しい店にでも電話したのかと思ったぜ」
「ばっ、馬鹿言うなよ!あれは罰ゲームだって。インデックスと神裂の底辺の勝負、見物だったぞー」
「冗談だ」
227 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/10(木) 02:36:13.81 ID:fHmVVzKA0

一方通行は腰を落ち着けることもなく、これで帰ろうと背を向けた。あわてて上条が彼を追いかける。

「もう行くのか?お茶、あーっと、コーヒーぐらい飲んでいけよ」
「……打ち止めが待ってる」
「あ、そ、そうでした。ホント鈍い上条さんですみません…」

そこへ、インデックスも一方通行を見送りに玄関に駆けつけた。感心なことに、肉は置いてきたらしい。

「あくせられーた、もう帰っちゃうんだね」
「あァ、悪いな、こンなに大人数って知ってりゃ、もっと持ってきたンだが」
「ううん。すごく嬉しいクリスマスプレゼントだったよ。わざわざありがとう」
「ああ!?これクリスマスプレゼントだったのか!だからか!どうしよう俺、何もおかえしできるものが無い!」
「ばァーか。ンなモン期待してるわけねェだろ。じゃあな」

二人に別れを告げて、一方通行は歩き出す。まだ見送ってくれている上条と「良いクリスマスを!」と、大声で叫ぶインデックスに、自然と口角が上がった。

路肩に停めた車に戻り、上条の部屋を見上げれば、金髪の男がベランダからこちらを見下ろしていた。土御門は一方通行が顔を向けると同時に、ひょいと右手を掲げてヒラヒラと振る。

「ふン」

予定より帰りが遅くなってしまった。一方通行は急いでマンションに戻ろうと、いつもより強くアクセルを踏んだ。

228 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/10(木) 02:39:25.34 ID:fHmVVzKA0

「おかえりなさーい!遅かったね、心配したよ?」
「ちょっと寄り道しててな。オマエの方はどォだ、順調か?」

家に帰り玄関を開けると、キッチンから打ち止めが出迎えに来た。一応良い匂いが漂ってくるが、少女の料理の腕前はそれほど優秀じゃないので、心配して様子を訊いた。

「んふふ、練習の甲斐あって中々上手くいってるよ、ってミサカはミサカはあなたの期待を盛り上げてみたり!」
「ほォ、大口叩いて後で後悔しなけりゃいいが」
「むむ、絶対後で、おいしいって言わせてやるんだから」

打ち止めはエプロンをパタパタさせ、気合いと共にキッチンへ戻る。一方通行は彼女の後を追い、ケーキを冷蔵庫に、肉を皿に出した。

「こっちは食べる前に温めるか。でェ?俺は何を手伝わされるンですかねェ?」
「料理はミサカに任せて。あなたはお部屋の準備をお願い」
「…部屋の準備ってもなァ、特にすることねェンだけど」

今日は二人だけ…、二人きりのクリスマスなので、一方通行の部屋でやろう、ということになっていた。彼はテーブルを打ち止めの部屋から持ってくるだけでいいと思っていたのだが…

「えーとね、まずツリーを運んでね。あとキャンドルも用意して。そこのテーブルクロスも敷くこと、ってミサカはミサカはてきぱきと指示をとばしてみる」
「…了ォ解」

軽く掃除してから、言われたとおりに働けば、一方通行の部屋はかなり狭くなった。特にツリーが存在感を放っている。

(とりあえず出来たか。打ち止めの方も大丈夫そうだったな)

こっそり覗いたキッチンでは、一方通行の目から見ても、夕食は順調に完成に近づいているようだ。しばらく待っていると、打ち止めが青年を呼びに現れた。

「あなた、できたよー。運ぶのは一緒にやって」
「おォ」

二人して、おぼんに料理を乗せて部屋に持ち込む。シチュー、サラダをはじめとした簡単なものばかりだが、初めて一人だけで打ち止めが作った、本格的なディナーだ。一方通行は素直に褒めた。

「美味そうじゃねェの」
「えへへ、まだ食べてないでしょ」
229 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/10(木) 02:42:31.99 ID:fHmVVzKA0

テーブルの上に料理を並べ、キャンドルと、ベッドサイドの簡易照明だけの薄暗い中、二人はクッションに座り、グラスをチン、と鳴らした。打ち止めはジュースである。

「どう?」
「……だから美味いって」
「よしよし。はい、あーん」
「おい、それをかァ?」

打ち止めは手の平ほどもある鳥モモ肉を掴んで、一方通行の口元にずい、と差し出した。

「だって前に、肉ならやる、ってミサカはミサカはそう言ってたことをずっと覚えて狙っていたのと明かしてみる」
「あれは別に、外だったから…」
「ほらほら、あーん?」

溜息ついて、口を大きく開けてかぶりつく。そのまま食いちぎる力につられて、打ち止めの手が引っ張られた。

「わぉ、ゴーカイ」
「……ン」
「あ、ミサカにも?ありがと」

一方通行は肉を噛みながら、自分もオカエシに同じことをする。肉じゃなくて、フォークにケーキを乗せて。

キャンドルの明かりの中、リビングでもキッチンでもない、一方通行の部屋で食べる打ち止めの手料理。飾り付けられたツリーが二人を見守って、恋人同士の、初めてのクリスマスは楽しかった。これでいいのかは分からないが、楽しいと感じることが重要だと思う。
打ち止めの嬉しそうな笑顔が見られるなら、それは何でも成功なのだ。
シャンパンのせいか、一方通行は自分も笑っているような気がしたが、打ち止めしかいないので気にしない。
230 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/10(木) 02:45:50.91 ID:fHmVVzKA0

やがて料理もたいらげて、テーブルは壁際によけられた。キャンドルは二本目が半分まで燃えているが、二人はベッドにもたれたまま、ずっと他愛もない話を囁き合っている。

そうしてどれくらい時間が過ぎただろう。ふと見た時計が、午後十時に迫っていることに気づいて、一方通行は驚いた。打ち止めも青年の視線の先にある時計を見て「あ」と声をあげる。

「わぁ、もうこんな時間だね。…お風呂入らなきゃ」
「…そうだな。先に入れ」

立ちあがった打ち止めは、部屋の照明をつけて食器を片づけはじめる。なんだかとても惜しい気分で、一方通行もツリーをリビングに戻そうとした。

「あ、キャンドルは…まだ出しておいてね」
「…分かった」

まだもう少し、自分達のクリスマスは続くらしい。

(だよな、だってまだプレゼント渡してねェし)

打ち止めに続いて一方通行も風呂に入ったが、まだ保護者達は帰って来なかった。特に黄泉川は、こんな若者達が盛り上がる行事の日は、日をまたいで警備員の仕事に勤しむことが多いのだけど、芳川までとは。
今日、外に出掛けないことは、黄泉川にも芳川にも打ち止めが告げているはずだ。

(まさか気を使ってンじゃねェだろうな)

もしそうだとしたら、恥ずかしいやら、気まずいやら。そしてちょっと、ありがたい。

231 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/10(木) 02:49:54.70 ID:fHmVVzKA0

部屋に戻ると、まだ置いてあるテーブルの上のキャンドルと、簡易照明だけの薄暗い部屋に戻されていた。さっきまでの空間に、青年はほっと息をつく。

打ち止めはベッドの上に正座で待っていた。

「なにやってンだオマエ。足痺れねェか」
「もう待ちきれなくて」
「……」

一方通行もベッドに座る。わざと大仰に腰掛けたので、衝撃で打ち止めがスプリンングと一緒にゆらゆら揺れた。その拍子に、髪からの良い香りが青年の鼻をくすぐる。

「もう我慢できない。まだ二十五日じゃないけど、もういいよね!?」
「…いいと思うぞ」
「だよねっ。はいこれミサカからのプレゼントです!」

「………、どォも」

少女は背後から取り出した箱を、一方通行の目の前に差し出した。彼は一瞬手の動きを止めた後、軌道修正して両手でそれを受け取る。

「開けて開けて!ってミサカはミサカはあなたの反応を早く見たくて」
「落ち着け、今開ける」

黒いリボンを解いて蓋を開けると、中には革製のベルトが入っていた。手に取って、すぐに違和感に気づく。自分が持っているベルトより、だいぶ短い。

「それね、あなたのためにオーダーメイドで作ったベルトなの。あなたは悔しいことに……大変スタイルが良くていらっしゃるのでぇ、普通のじゃ長すぎるでしょ?」
「ふゥン…」

ためしに、軽く腰に巻いてみた。確かに丁度いい長さだと感心する。

「あなたが服着てるときに、明らかに長すぎだなぁ、ってミサカはミサカは羨ましく見ていたことを告白してみたり…」
「ンな辛そうな顔するなよ…、反応に困るだろォが」
「いかが?」
「………」
「わ、わわわ?」
232 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/10(木) 02:54:03.78 ID:fHmVVzKA0

一方通行はぐりぐりと打ち止めの頭を撫でた。そのままアホ毛の上に手を置き、よいしょ、と立ち上がって机に向かい、引き出しから小箱を取り出した。

(うぅ、髪がぐしゃぐしゃに…。でも気に入ってくれたみたいで良かった)

打ち止めが安堵のため息をつきながら髪を整えていると、再び一方通行がベッドに座り、今度は少女の前に可愛くラッピングされた箱が差し出された。それは片手に収まるほど小さなもので、打ち止めは満面の笑顔で受け取った。

「ありがとう、嬉しい!」
「まだ見てねェのに礼を言うか?」
「だって、このリボンとか、包装紙とか、あなたがこれを買っているシーンを想像するだけでミサカは大感動…」
「面白そうに笑ってンじゃねェか。いいから開けてみろ」
「…うんっ」

打ち止めは、もったいっぶって一度シーツに箱を置いてからピンクのリボンを解く。両手で蓋を外し、中に入っていたものは…

「口紅だ」
「口紅ですけどォ」

打ち止めはピンク色のスティックを持ち、まじまじと眺めた。嬉しそうな顔をしているが、未だ感想は無言である。いたたまれない一方通行は、訊かれてもいないのに説明を始めた。

「それ、最新技術を使った新作なンだと。塗ってもすげー落ちにくいらしい」
「へぇ…」
「カップやグラスにも付かないから、一度塗ればクレンジングするまでもつンだとさ」
「……」
「おい」
「あなた」
「おう」
「ありがとう…」

突然口紅から視線を戻され、その目があんまりまっすぐだったから、一方通行はついかしこまってしまった。打ち止めは口紅を握ったまま、固まる一方通行に抱きつく。
固まっていても、そうされれば青年の手は勝手に動いてくれた。
233 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/10(木) 03:00:29.53 ID:fHmVVzKA0

「あー、嬉しいなぁ。この嬉しさをどうやって伝えてくれようか」
「お気に召していただけたよォで…」
「うん、とっても。さっそく塗ってみてもいい?」

打ち止めが、鏡を求めて部屋から出て行こうとしたので、腕を掴んでとどめた。

「やり方があンだよ。塗ってやる」
「え」

青年は有無を言わさず、スティックをとりあげキャップを外し、ベッドサイドの照明を最大に調整して明かりを強くした。緊張した面持ちの少女の顎を掴み、ピンク色を唇に乗せていく。

「ちょっと口開けろ…」
「ん…」

打ち止めはきょろきょろと、天井や床に目を泳がせていた。彼の手が離れてほっとしたのも一瞬で、またすぐ同じように顎を持ち上げられ、唇を見つめられる。
不意な事に、うっかり一方通行の顔を見てしまった。頬が熱くなるのを感じる。

「で、塗った後に反対側のココで、こうやって上からなぞると、色が唇の上で固定される。…落としたい時はクレンジングしなくても、もう一度なぞると簡単に取れる…、…聞いてるかァ?」
「聞いてる聞いてる。すべて了解しました大丈夫です」

塗り終わった後、打ち止めは赤くなっているであろう頬を両手で揉んだ。

(どんな演出?効果てきめん!ってミサカはミサカは想像以上のロマンチッククリスマスに心の中でガッツポーズしてみたり)

「似合ってンじゃねェか」
「ふふふ。これであなたにちゅーし放題なんだね」
「…まァな」
「どれどれ…」

色づかせた唇が、一方通行の頬に近づいてくる。「本当だー」と、はしゃぐ打ち止めを抱き寄せて、一方通行はプレゼントの効力をさらに証明するために、自分の唇を用いてみせた。

234 :ブラジャーの人 [sage]:2011/11/10(木) 03:10:26.02 ID:fHmVVzKA0
黄泉川家と通行止めのクリスマスの巻 完

神裂火織(23歳)とステイル、土御門が登場してくれて、とても嬉しい。

それにしても、本当に馬鹿っぷるですね。
一方さん、プレゼントに口紅って、王道のど真ん中じゃないですか。常識から遠い世界にいたのに、流石です。
…ありきたりなプレゼントで申し訳ない。

打ち止め(巨大リボン装備)「ミサカがプレゼントだよ!」 これを想像しなかったわけないでしょ。でもできないでしょ。
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/10(木) 03:42:50.25 ID:/2+i7cMDO
>>1乙ぱい
あ、足が痺れたぜ…

下着の代わりにリボンを身に付けた打ち止めがいると聞いて
236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(徳島県) [sage]:2011/11/10(木) 08:08:38.70 ID:ZBEprefd0
ステイルさんは十九歳か・・・
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関西地方) [sage]:2011/11/10(木) 09:49:21.91 ID:5FarEsac0
>>234
なにを言っているんだ…?性夜はまだまだこれからだろうッッッッ
プレゼントが1つなんて誰が決めたんだ!
いいぜ……>>234が「ミサカがプレゼントだよ!」ができないって言うならまずはそのふざけた幻想ぶち[ピーーー]!

おっといけない、通行止めが甘すぎて思わずカッテニ手ガ動イテシマッタ
次は大晦日と元旦ですね(ぐふふ
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/11(金) 10:32:58.05 ID:QK6oD8cDO
性なる夜をすごした数日後に姫初めですねわかります。


お姉様は上条家にいなかったって事は電磁咆組でパーティーかな?
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/11/11(金) 15:44:42.62 ID:Ebs9l5Zu0
もしかして口紅が未元製だったりしてね(笑)
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/11/11(金) 15:45:14.79 ID:Ebs9l5Zu0
もしかして口紅が未元製だったりしてね(笑)
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/11/11(金) 15:45:45.65 ID:Ebs9l5Zu0
↑ごめん失敗した
242 :ブラジャーの人 [sage]:2011/11/11(金) 21:15:49.46 ID:29KVsYqN0
>>235 容易に想像できます、リボン打ち止め。

>>236 未来は益々、ステイルにとって肩身の狭い世の中であろうな…

>>237 正味なハナシ、黄泉川と芳川の帰宅を警戒して、性夜我慢したんじゃね?翌日頑張ったんじゃね?と思っています。

>>238 おそらくそうかと。  …大晦日と正月の前にはね、もうひとつ年末の大切な行事があるんだよ。

>>239 「ンな恐ろしいモン買わねェ」 



ごめんちょっとどうしても言いたいことがある。


『アクセラに乗ってアクセルを踏むアクセラレータ』


はいホントごめんなさいね、さっき前がアクセラだったから。
私の中のオッサンが暴れてどうしようもなかったの。しかもあと二夜は確実に更新ないの。オッサン暴走させてる場合じゃない…
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/13(日) 03:10:52.12 ID:j9T/QxUpo
おつおつ
なんかこのSS読んでると胸がきゅんきゅんしてくるよね
バカップルパートももちろんだけど、黄泉川家とか上条家とかもすごくキュンキュンポカポカするよね
こんな描写ができるなんて、さてはこの>>1リア充だな爆発しろ

それにしても、みこっちゃんは初春さんちで原稿仕上げのお手伝いか
胸が熱くなるな…胸は薄いけど
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/13(日) 05:31:59.37 ID:mlma3glAO
神裂かおり(25)とかになるとネタとしてもいじれなくなるよね

その時見た目は30後半位だろうし…
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]:2011/11/14(月) 02:41:18.03 ID:80mY0EDNo
えるしってるか
ふけがおはとしをとったらぎゃくにわかくみえるほうそく

ブライトさんを思い出せ。19歳→26歳→35歳で同じ顔
246 :ブラジャーの人 [sage]:2011/11/15(火) 01:20:01.26 ID:2iojqkFs0
>>243 リア充はこんなことやらないよ… 爆発なんて遠い国のおとぎ話だ。尻の爆弾も治ったしな。

>>244 >>245の言うとおり、老け顔はブライトさんの法則が高確率で適用されるのです。
高校生なのに二十代後半に見られる人は、二十代半ば〜後半で、やっと顔が年齢と一致する。

>>245 ……実体験?仲間?
 

ほんじゃ投下じゃ。
247 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/15(火) 01:26:14.30 ID:2iojqkFs0

クリスマスが過ぎれば、あっという間に正月である。僅か一週間ほどで、今年も終わってしまうのだ。

「一緒に初詣行こうね、ってミサカはミサカはおしとやかに着物であなたを悩殺してみせると意気込んでみたり」
「寒くなかったらな」
「寒くないわけないじゃない。だって冬だもん。ねー行こーよ行こーよ行こーよ」
「あーうるせェうるせェ、分かったから黙れ」
「やったー!ってミサカはミサカは行こうよコールがわずか三回で済んだことに、最近のあなたのデレっぷりが表れていると推察してみる」
「違ェ。学習したンだよ…」

いつものように、炬燵に入って年末のお昼を過ごしていた一方通行と打ち止め。
安心できる暖かい場所で、恋人とこうしていられる幸せを享受する。しかし、平和な空間に突如、鋭い刃が突き刺さった。

「はいはーい、そこの二人。イチャつくのはそこまでじゃん」
「ひゃぁぁぁ寒いぃー!」
「黄泉川ァ!急に窓開けンなァ!」

黄泉川はリビングのみならずキッチンも、それに打ち止めや一方通行の部屋の窓も開けに行っているようだ。
一気に風通しが良くなったリビングに、冬の冷たい空気が吹き荒れる。競歩のように勢いよく家中を一周して戻ってきた黄泉川は、きっぱりと宣言した。

「大掃除!するじゃん!」
248 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/15(火) 01:28:34.60 ID:2iojqkFs0

ほかほかして、ぬくぬくして、すっかり年末の仕事を忘れていた二人。炬燵にしがみつきながら一方通行は反抗する。打ち止めは素直に炬燵から出て来て、黄泉川からバケツと雑巾を受け取っているというのに。

「この家は充分キレイじゃねェか。毎年毎年馬鹿みてェに大掃除なンてやる必要ねェよ。どっかのジャージは整理整頓が趣味だしな」
「屁理屈いわない。私がそうやってるから、この大掃除も楽に終わるじゃんよ」
「頑張って早くやっちゃおうよ、ってミサカはミサカは炬燵ヤドカリなあなたを促してみる」
「さすがにベッドの下とか棚の裏は普段掃除できないしね。いつもみたいに一方通行には、そういうの持って運んでほしいじゃんよ。アンタは足が悪いんだから、もとからコキ使うつもりないじゃん」
「ほらほら、まだ暖かい昼間のうちにね?ってミサカはミサカはあなたを引っ張り出してみたりぃぃ〜」

服と絨毯の摩擦もあり、打ち止めの力では青年を動かせなかったが、緑ジャージの体育教師にとっては片手で済む作業だった。

「クソ、面倒臭ェ…」
「毎年結局やるんだから、これも学習するじゃん。それともやっぱり、お勉強は打ち止め関係しか出来ないのかなー?」
「やだぁ黄泉川もぉー!」
「面倒臭ェ上にウゼェ…」

最早このやり取りも、年末恒例行事のひとつのようだ。
249 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/15(火) 01:31:16.52 ID:2iojqkFs0

動きやすい服に着替え、大掃除が始まった。ちなみに芳川は今日も病院に出勤しているので、他三名で行う。

(冷てェ風に吹かれて掃除するくらいなら、仕事の方がイイかもなァ)

番外個体が一緒に住んでいた頃は彼女も頭数に入っていたが、今は人数が少ない分作業も増える。とは言っても、一方通行が主張したように、ここ黄泉川家は普段の掃除がゆき届いているので、大掛かりなことはしない。

「ベッドや本棚を丸ごと持ち上げるのを大掛かりと言わないのはウチくらいだよね、ってミサカはミサカは床をゴシゴシしながら呟いてみる」

一方通行の能力を使い、重くて大きな家具をどかし、その隙に黄泉川、打ち止めが掃除機や雑巾がけをこなしていく。一方通行は家具が壁に接着していた面を軽く拭き、キレイになった場所へそれを戻す。

「私達のチームワークも年々上がってるじゃん。この調子ならあと一時間くらいで出来るかも」
「ふー、これでリビングはピカピカだね。次は?台所?」

キッチンは特に掃除する場所が多い。食器棚を持ち上げる時は皿が割れないように、さすがに慎重になる。
あとテーブルと、電子レンジを乗せた棚と冷蔵庫と…

「ちょっとちょっと一方通行っ、そんなに一気に動かされても、私と打ち止めの手は合計四本しかないじゃんよ」
「あ?あァ、じゃあ俺は先に他の部屋行ってる」
「…ん、こっちも急いでやっとくから」
「わぁ、冷蔵庫の下埃だらけだね、ってミサカはミサカは掃除機を構えてみる!」
250 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/15(火) 01:37:00.71 ID:2iojqkFs0
たくさんの家具を一気にどかしたのは、実はわざとだ。キッチンに黄泉川と打ち止めを縛り付けておいて、青年は自室へと急ぐ。

(まァ、家具どかしたくらいじゃ見つかるモンじゃねェけどな。一応念を入れて移動させとくか…)

一般的に、家人(特に女性)には見つかりたくないものを、さらに奥深くにしまい込んだ。能力も駆使して封印した。

急いでベッドと棚をずらし、キッチンへ戻り何食わぬ顔で掃除に加わる。

「冷蔵庫はもォいいみたいだな。打ち止め、危ねェぞ。コード引っかける」
「おっとっと…」
「さーて次は…、一方通行、アンタの部屋じゃん?」
「……おォ」

一方通行は「他の部屋に行く」と言って席を外したのに、さすが保護者。何かを感づいている。
見つかってもいないし、見つかるはずもないのだが、一方通行は外側の窓拭きを言い渡されても無抵抗だった。
251 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/15(火) 01:43:31.43 ID:2iojqkFs0

寒風に晒されるのが辛いので「高い所はこの方が早ェンだよ」という言い訳で能力を使い、あっという間に窓はピカピカになった。それなのに、いかにも働きましたァという様子で、炬燵でグッタリしている一方通行。

「あなた、ちょっとコレ見て?」
「あァ?」
「着物。合わせてみたんだけど、ちょっと短すぎるかなぁ」
「…あー、初詣な。……それ、去年も着てただろ?」
「うん。でもこれ四年前に買ってもらったやつだし」

ピンクの花柄の着物を羽織った打ち止めが、一方通行の前でくるくると回って見せる。一年前は丁度良い裾の長さだったが、今は少し足りないように見えた。

(確かにこの一、二年でデカくなったからな、いろんなトコロが)

「明日、新しいの買いに行くか…?」
「…いいの?」
「転ンで汚すなよ」
「…ありがとう、ってミサカはミサカは今度は大人っぽい柄で攻めてみよう…。これで悩殺しやすくなったぞー」

(脱げばあっという間ですけどォ)

少女が重視しているらしいムードを読んで、口には出さなかった。
252 :ブラジャーの人 [sage]:2011/11/15(火) 01:48:32.15 ID:2iojqkFs0
とりあえずここまで。

一方さんもそういうモノ持ってんのかな。持つようになるのかな。

253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(石川県) [sage]:2011/11/15(火) 03:06:08.99 ID:sgxyRoQ+0
>>1

土御門から渡された堕天使エロメイドコス衣装とか上条さんからプレゼントされた巨乳大全とか、そんなのをもっていたりとか…
まさかジョークグッズとか持っていたりはしないだろうなぁ
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋) [sage]:2011/11/15(火) 19:24:57.37 ID:YgSBaFaIo
>>1

百合子変装セットを隠したんですねわかります。
255 :ブラジャーの人 [sage]:2011/11/15(火) 21:09:28.43 ID:ZTw4HbS00
>>253 「これで俺も明るい人気者だぜェ」「!!……あなた…!?」←打ち止めは見た

>>254 こっそり打ち止めのセーラーを着てみる一方さんを想像してしまいました。」「!!……あなた…!?」←打ち止めは見た


普通にエロ本、エロDVDじゃないの?もしくは暗部時代に使ってた銃とか。

では続きでありんす。


256 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/15(火) 21:16:55.42 ID:ZTw4HbS00

デパートの着物売り場に来た二人。学園都市では当然のことながら、和装があまり馴染みなくて店は閑散としていた。正月と成人の日を間近に控え、外の世界ではそれなりの賑わいを見せているのだろう。

(おかげでゆっくりと品定めできるけどなァ)

黄泉川も芳川も、正月は打ち止めに必ず着物を着せた。「カワイイ、カワイイ」とはしゃいで飾り付けて、もう何年目になるだろうか。初めて和風な少女を見た時には「馬子にも衣装だな」と一般的な感想を述べて三人の怒りを買ったものだ。

「あんまりお客さんいないね、ってミサカはミサカはこの値段なら当然かもと納得してみたり。着物ってこんなに高いの?」
「ピンキリだろォ?ほらコッチは安い」
「……他に比べたらね。これじゃあ普通の学生は買わないハズだよ。向こうのレンタルのお店は人が多かったもん」
「それに着る機会が少ないからな」
「…やっぱり今年は着物止めようか…?ってミサカはミサカは必要ない高額商品の購入を思い留まってみる」

必要無いといえば無いのだが、それでも一方通行は、正月には打ち止めに着物を着ていてほしいと思った。誰もが送る「日常」の風景に華やかな装いの少女を重ねて、今の自分達を彼女に実感させたい。それに

「黄泉川と芳川が承知するハズねェだろ…」

257 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/15(火) 21:24:53.68 ID:ZTw4HbS00

昨夜、新しい着物を買うと告げたら、一緒に行くと駄々をこねた黄泉川と、それを叱った芳川。

「私だって行きたいわよ。でもここは耐えるのよ愛穂。一方通行のセンスはアテにならないから、打ち止めがしっかりね」
「ちぇー、どーせお邪魔虫ですよ。やっぱり赤系の色がいいと思うじゃん。可愛いの、とにかく可愛いのね!一方通行はただの財布だと思って」
「やかましィし、なンて失礼なヤツらだ…」
「あはは…、ってミサカはミサカは苦笑い…」

保護者達は打ち止めの新たな装いを大層楽しみにしているのだ。これで「高いから買わなかった」となれば、落胆されるどころか(一方通行が)怒られる。それに、彼にとっては別に高い買い物ではない。

「どれでも構わねェからとっとと選べ」
「うん、ヨミカワとヨシカワ楽しみにしてくれてるもんね。小さくなっちゃったのは、二人と一緒に買いに行ったんだっけ。今回はあなたが隣に居てくれて…その、…」
「……なンだよ」
「幸せ…」
「…そォですか」

思い返せば、この一年は怒涛の一年だった。打ち止めとそういう関係になり、傍に居るだけではない、深い愛し合い方を知った。溺れるような快楽を知った。
同時に胸が苦しくなる切なさを味わった。それを乗り越える信頼も育てた。

くすぐったい空気を感じながら、二人は再びディスプレイされた商品たちに目を向けた。
258 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/15(火) 21:27:43.05 ID:ZTw4HbS00

中々決められないで店内をウロウロしていると、冷やかしではなさそうだと女声店員がそっと声をかけてきた。

「いらっしゃいませ。よろしければご案内しましょうか?」
「…そォだな。コイツのを新調したいンだが」

「新調」ということは、すでに今、一着以上は所有していることになる。いずれ着られなくなるサイズの和服を買うなんて、それなりに裕福な家庭なのだろうと店員は推察した。

「そうですか。もうお正月ですし、振袖でよろしいですよね?どのような柄がいいかお決まりですか?」
「……あの」

打ち止めが一方通行の傍から離れ、店員の耳元で囁く。

「大人っぽいのがいいんです」

何コソコソしてンだ、と不満そうな青年を横目に、恥ずかしそうにはにかむ少女は大変微笑ましかった。この娘のために良いのものを提供しよう、と決意する店員。

「大人っぽいのですか…」
(…この子には、華やかなピンクや赤の花柄が絶対に似合うと思うんだけど)

「でもピンクや赤が多くてミサカは…、うーん」
「そうですね。ここは学生さんの街ですし、どうしても…」

三人連れになった一行は、打ち止めが気に入る一着を求めて再びフロアを巡る。
黒や金、緑をベース色とした、落ち着いた柄のものもあったが、やはり打ち止めにはまだ早いデザインだと思われた。

「やっぱこォいうのがいいンじゃねェか?」
「あぁ、いいですねぇ。これはお客様によくお似合いになると思いますよ」
「うー、赤かぁ…」
259 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/15(火) 21:32:19.47 ID:ZTw4HbS00

一方通行が指さしたのは、濃い赤が裾に白へとグラデーションして、金、桃、紫の花柄が足元へ向かうほど、だんだんと花弁を大きく開いていくという、派手な模様の振袖だった。
打ち止めも、これは自分に似合う、と感じるのだが、欲しかったものとは方向性が違う。

「でも、こんな派手なの、ミサカがもっと大きくなったら着にくいよ?」
「大丈夫だ。オマエはこれ以上大きくならねェよ多分(身長は)」
「そうじゃなくって!年をとったらってこと!もう!」
「そン時ゃババ臭ェ茶色のヤツでも買ってやらァ」
「なんだとー!ってミサカはミサカは乙女に対して失礼なあなたに憤慨してみたり!」

微笑ましいケンカを始めた二人に店員が笑いながら口を挟む。

「大丈夫ですよ、振袖はもともと結婚前の若い女性が身に着けるものですから。結婚されたら、また違うのをお求めになられたほうがいいでしょう」

結婚。

「それに和服というのは、その家庭と共に受け継がれていく、という日本の美徳を備えた伝統の民族衣装なので、お子さんが生まれたら、その子に着せてさしあげれば良いかと」

お子さん。

まだまだ未来の、でも想像しなかったこともない単語。いきなり夢に見た光景を思い出させることを言われて、青年と少女は言い合いを止めた。

急に気まずい空気になってしまい、女性店員は(しまった、失言かな?)と焦ったが、振り向いて見た二人の様子に、安堵と、さらなる微笑みが自然とこぼれてしまう。

「……そういうことらしい。コレでいいだろ…」
「……うん、ってミサカはミサカは日本人として正しい知識を得られたと胸を張ってみる」

胸を張るどころか、打ち止めは顔を赤くして俯いている。一方通行もあさっての方に目を向けて、でも頬がわずかに染まっているのは、色白の肌では隠しきれない。

260 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/15(火) 21:34:52.77 ID:ZTw4HbS00

帯などの一揃えを包むと大荷物になるので、それは明日にでも自宅に送ってもらうことにした。
さぁこれで用事は済んだ。思いがけず顔を染めてしまう事態になった一方通行は、早くこの場を去りたかったが、例の店員が打ち止めを引きとめている。

「あの、お客様ちょっとだけお待ちください」
「?はい」

店員に何事かを言われ、打ち止めは青年にちょっと待っててとジェスチャーして、見えない奥のスペースに消えて行った。

(何やってンだ…?)

五分ほど経って、打ち止めは見送る店員にお辞儀をして一方通行のもとに戻って来た。

「お待たせしましたー」
「遅ェな、…それ、何だ?」

打ち止めはこの店のロゴが入った袋を持っていた。まるで、自分には秘密というような様子だったので気になる。店を出てデパート内の通路を歩きながら訊いた。

「…オマケで貰ったの」
「だから何を」
「和服用のブラジャー」
「………」
「着物って、胸が大きいとあんまり似合わないし着づらいんだって。だからそれ用のブラジャー」
「へェ…。そォいうのがあンのか」
「ミサカも初めて知った。というわけで着物を着たミサカはいつもより胸が小さいです。がっかりしないでね?」
「するかボケ」

261 :ブラジャーの人 [sage]:2011/11/15(火) 21:39:02.06 ID:ZTw4HbS00
とりあえずここまでどすえ。

打ち止めに比べて、一方さんの衣装のどうでもよさったらww
262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西・北陸) [sage]:2011/11/15(火) 22:47:49.85 ID:SV0qzVFAO
おつ!
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/16(水) 00:13:40.56 ID:QG6zN2w10

お代官様ごっこができるね
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) [sage]:2011/11/16(水) 00:41:11.82 ID:hLqbQSeRo
乙。 振り袖良いのぉ…

>>263
帯をぐるぐるしても着物はほどけない。 ソースは俺。
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/16(水) 01:13:45.88 ID:+uVcJA0U0


簡単には脱げないし、着付けが大変だから一人で着付けできないと初詣帰りにホテルとかで脱がせれないんだぜ。
けど、完全に脱がずにはだけた方がエロいんだぜ。
266 :ブラジャーの人 [sage]:2011/11/16(水) 22:15:19.97 ID:feD+uJmD0
>>263 >>265 お代官様ごっこも、半着衣和風プレイもやりませんよ。先に期待を裏切っておこう。

>>245のおかげで、いっこ替え歌考えた。


萌えあがーれ 萌えあがーれ 萌えあがーれ かんざきー 乳よー 弾めー


さて、明日か明後日には続きを投下したいな、と思っておりますので。
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/17(木) 17:22:01.55 ID:ZXDF7w8DO
>>1


>>266続き思いついちゃった


まだ、上条ーおーとすー 好意がー あるーならー
巨大な〜 胸を〜 使えー 使えー 使え〜

堕天使〜 メイドを〜 着るんだー かんざーきー
巨乳〜 けーんしー かんーざきー かんざき



正直すまんかった
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) [sage]:2011/11/17(木) 20:42:10.45 ID:n/mzVLWmo
普通に脳内再生できるところが怖い。 ねーちん素敵だと思うんだけどなぁ。 場の雰囲気を盛り上げるために飲みまくって直ぐ酔いが回っちゃうとか可愛いやん。
269 :ブラジャーの人 [sage]:2011/11/18(金) 00:30:20.03 ID:Tk27JJB+0
>>267 凄く嬉しいよ、ありがとう。このスレ立てて本当に良かった、と思ってしまう自分が悲しかった。

>>268 このアホらしい替え歌を、果たして何人が口ずさんだかと思うだけで笑えます。私だって神裂さん好きさ。巨乳だし素敵だよねー。

では続きを投下します。
270 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/18(金) 00:34:09.85 ID:Tk27JJB+0

十二月三十日の午後、暖かいコートを羽織り、マフラーを巻き、スカートから覗く足には黒いレギンスを履いた打ち止めは、玄関で一方通行に見送られていた。

「じゃあ行って来るけど…、あなた、飲み過ぎないでね?ってミサカはミサカは心配してみる」
「何度同じこと言ってンだ。大丈夫だから早く行け、遅れるぞ。あとな、オマエは酒なンて絶っ対飲むンじゃねェぞォ。もし飲むヤツがいたら焦がせ。俺が許可する」
「はーい、わかってますって」

打ち止めは手を振って出掛けて行った。今日、彼女は学校の友人達と遊ぶのだそうだ。中学生が忘年会もないだろうが、要は理由をつけて集まり、騒ぎたいのだろう。
そして、一方通行も集まる予定がある。こっちは正真正銘の忘年会だ。

(アイツらと会うってェのに、打ち止めがいないのも久しぶりだな…)

夕暮れになり、彼もコートを身に着けて家を出た。出がけに黄泉川から「飲み過ぎないように」と、まったく同じことを言われてしまい、頭を掻く。
駐車場が少ない店だし、家からわりと近い居酒屋なので歩いて行ったら自分が最後だった。

「あ、やっと来た!遅いんだよ、あくせられーた」
「こらインデックス、ちゃんと集合時間より前だろ。文句言っちゃいけません」
「さっきから腹減った腹減ったって訴えてんだよ、早く座れって。一刻も早く注文しようぜ」

既に他のメンバーは座敷席に座って待っていた。インデックス、上条当麻、浜面仕上が、順々に一方通行に声をかける。滝壺はおしぼりを弄って、何やら前衛的なオブジェを創作していたが、一方通行が正面に座ると中断して手を振った。彼も軽く手を挙げて応え、さっそく足を崩す。
271 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/18(金) 00:39:19.01 ID:Tk27JJB+0

「早ェなオマエら」
「当然!今日は美味しいものたくさん食べるんだから!」
「もう一回確認したいんだけど、みんな本当に割り勘でいいんでせうか!?後悔しない!?」
「くどいなー上条は。今日は忘年会だぜ?小さいこと言うなよ」
「インデックスが食べてるとこ好きだからいいよ。かみじょうも気にせず楽しくやろう?」
「あ、ありがとう…っ」
「大げさなヤツ…。早く注文するンだろ?ほらシスター、メニューだ」
「必要ないんだよ。さっき見て全部覚えたもん」
「……そォですか」
「後悔しない!?」

ふふん、と胸を張るインデックスと、必死の形相の上条。一方通行は差し出したメニュー表を改めて目の前に開き、ドリンクのページに目を通しながら答える。

「しねェ、しねェ。俺はまず…ビールでいいか。浜面、ボタン押せ」
「おうよ。上条この話はこれっきりな」
「あう、ありがとぉぉ…っ」
「はまづら、ボタン私が押したい」
「ん、ほいよ」

店員が来ると、インデックスが矢継ぎ早に食べ物ばかりを注文するので、とりあえず全員で押しとどめた。

「待て待て、まずは飲み物が揃うまではエンジン全開にするんじゃねぇ」
「そうだぞ。混んでるし、いきなりは店も困っちゃうから。な?」
「忘年会はまず乾杯しなくちゃ。インデックスはジュースだよね?」
「うぅ、ごめん…。じゃあ、じゃあ…りんごジュース!」
「っつーわけでェ、後でこのテーブルから大量に注文飛ぶからな」

一方通行の「宣戦布告」に、男性店員の顔が引き締まる。背後に遠く、カウンター向こうの大将らしきヒゲダルマと目配せを交わし、うん、と頷き合った。

272 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/18(金) 00:41:09.41 ID:Tk27JJB+0

男三人にはビール、インデックスにはジュース、滝壺はジュースのような甘い酒を頼み、浜面の声で乾杯となる。グラスが触れ合う音の後は、五人が喉を鳴らす音が…、いや、男三人だけは張り合うように飲み続けている。

「っはぁーっ!イッキしちまった…。空きっ腹だってぇのに」
「浜面、初っ端からとばすなぁ。もうおかわりかよ」
「なンで睨みあって飲まなきゃなンねェンだ?酒が不味くなるだろォが」
「いや、何でだろ?ついつい…」

頭をひねる上条の袖を、インデックスがくいくいと引っ張る。

「ねぇ、もういい?」
「…よし、いけインデックス!今日は無礼講らしいからな」
「わーい!」

ボタンを押すまでもなく、傍に控えていた店員に、次から次へと料理を頼む。生中も、三杯追加。
273 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/18(金) 00:44:51.10 ID:Tk27JJB+0

「枝豆…、たこわさ…、チャンジャ…。えい」

メニュー表を畳んだ滝壺が、注文用のボタンを押す。いやに細かい酒の肴ばかりを頼むつもりらしい。ピンク色のカクテルはまだ一杯目で、半分近く残っている。

「滝壺は大して飲ンでるわけじゃねェのに、やけに酒のツマミが好きだなァ」
「そうなんだよ。俺が頼んだの食ってたら気に入ったらしい」
「ビーフジャーキーも好きだよ。アクセラレータもお肉好きでしょ?」
「ジャーキーか…。俺は乾いてない普通の肉がいい」

串焼き(鳥モモ)に伸ばした手が、隣のインデックスの小さな手と皿の上で鉢合わせる。ラスト一本だったので、一方通行の方が引いた。

(お、やっぱインデックスに譲るんだ?最早習性か。条件反射か)

浜面が苦笑を浮かべて三杯目の生中を飲み干した。

「えへ、ありがとう、あくせられーた。美味しー」
「悪いなホント。あ、お兄さんこの串焼きもう一皿追加で。浜面は…また生?」
「おう」
「俺は熱燗。二合」

一方通行もジョッキを空にし、注文を控える店員の近くに返す。ビールは二杯で終わりにするらしい。

「熱燗て、おっさんかよ」
「あァ?日本人が日本酒飲ンで悪ィかよ」
「日本人に見えないあくせられーたが言っても説得力ないんだよ」
「…、いいだろォが、美味いンだから」
「俺もこれ飲んだら焼酎いこうかなー」
「とうま、飲み過ぎないでね?」
「インデックスは食べ過ぎないでね?」
274 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/18(金) 00:50:30.87 ID:Tk27JJB+0

宴は進み、笑い声と顔の緩み具合が大きくなってきた面々。特に酒を飲んでいる男三人が顕著である。浜面、上条はいつにも増して賑やかだったし、一方通行も珍しく饒舌だった。

「そういえば、ラストオーダーは学校の友達と忘年会なんでしょ?」

ようやく二杯目のカクテルに口をつけた滝壺が、普段は一方通行の隣にいる少女を思い、その空間を見つめる。

「あ?あァ。アイツも付き合いってのがあるンだろ、ガキはガキなりの」
「平気な顔しちゃってぇ。寂しいクセにぃ」
「ばーか浜面、また殴られるぞ?水鉄砲食らうぞ?つーか上条さんアレもう一回見たい」
「水が無ェよ。あー…、まァな。寂しいけどよォ」


「………」


「今、あくせられーたが素直になったんだよ、もぐ…」

それは唐突のことで、思わずインデックスでさえ、口の動きを止めてしまうほどだった。
そういえば、二本目のとっくりを傾ける色白の学園都市第一位の顔が、うっすらと、…赤い。
275 :ブラジャーの人 [sage]:2011/11/18(金) 00:54:23.51 ID:Tk27JJB+0
とりあえずここまで。

飲んでェ、飲まれてェ、飲まれてェ、飲んでェ

下戸だからこそ、いつも冷静な目で酔っ払い達を観察しています。
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) [sage]:2011/11/18(金) 01:01:01.36 ID:AkXiZl2Vo
呑んでばっかりだな乙。 呑むの、楽しいんだけどねぇ…醜態を晒さなければ。
277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/18(金) 01:48:16.17 ID:AR04olhDO
>>1乙ぱい
むしろ若い時には飲まれて失敗した方がいいぞ
気兼ねなく恥をかける間柄というのはそれだけ相手を信頼しているからこそなんだぜ
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/18(金) 04:14:07.42 ID:4CPMRpqAO
酒は吐いて強くなるんやを地でやってたら吐き癖がついちまったよ
一方さんも気をつけてな
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/18(金) 16:25:28.03 ID:CLcWIxu0o
やっぱりこいつらの絡みってなんか好きだなー
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(愛知県) [sage]:2011/11/18(金) 17:02:20.90 ID:T8NtOzF60
>>266-267
脳内再生できすぎて頭から離れない
どうしてくれるんだ
281 :ブラジャーの人 [sage]:2011/11/18(金) 20:31:33.37 ID:ePIOapGR0
>>280 それは君が乳タイプだからだよ。
282 :ブラジャーの人 [sage]:2011/11/21(月) 03:28:16.14 ID:0StF3leq0
おまたせしました。
投下、いっきまーす!
283 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/21(月) 03:31:24.79 ID:0StF3leq0

「いま、一方通行が『寂しい』って言った?上条聞こえた?」
「聞こえたけど…」
「アクセラレータの顔が赤い」
「もしかして…酔ってるのかも」

驚いた四人は第一位の顔をじっくり観察した。注目を浴びていることに気づいた一方通行は、怪訝な表情で見返す。

「?……ナニ見てンだよ?」
「あの、第一位さん酔ってる?」
「あァ?俺が簡単に酔うわけないだろ」

赤い瞳に睨まれて、浜面はのけぞって対面に座る上条に囁いた。

「酔ってないとのことです!」
「空耳だったのか?」

「アクセラレータ、ラストオーダーがいなくて寂しいんでしょ?」
「…あァ」
「そっかぁ、じゃあ今日はあんまり遅くまで忘年会につき合わせちゃ悪いね」
「…ンなことはねェが……、早く帰って会いたいことは会いたい。打ち止めは多分家に戻ってるハズだ」

女子二人は絡め手(というほどでもない)で一方通行の本音を聞き出した。「ほらね」という顔で上条と浜面を見た。

「酔ってないフリしてしっかり回っていたようです」
「何の前触れもなくな…」

一方通行が変な酔い方してる。なんか素直になってる。
284 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/21(月) 03:35:38.01 ID:0StF3leq0

浜面は滝壺に目で合図を送り、彼女は軽く頷くと反対側の一方通行の横に座った。
これで彼はインデックスとも隣合っていたので、両手に花状態である。滝壺はとっくりを手に取った。

「どうぞ」
「どォも」

ピンクのジャージちゃんが、白髪色白青年にお酌を始める。浜面は店員に熱燗を追加注文した。


「とうま、たきつぼは急にどうしたの?」
「一方通行をもっと酔わせて、楽しむつもりなんだろう。
止めた方がいいかな?と思う上条さんと、いいぞやれやれ、と、けしかける上条さんがせめぎ合ってるんだけど、どうしたらいい?」
「顔が笑ってるんだよ……」
「え?あはははは、正直だな俺」
「でも…私も素直なあくせられーたに興味あるなぁ…」

そんなわけで、インデックスと滝壺から代わる代わる酒を注がれる一方通行。ほんのり赤い顔以外はいつもどおりに見えるが、言ってることが驚愕である。


「打ち止めといつから付き合うことになったんだ?」
「春ぐらいから」
「きっかけってあんの?」
「打ち止めが告白されまくっててなァ、すっげェ焦った」
「他の男に盗られてたまるか!ってことか…」
「まァそういうことだな」


インデックスが、身を乗り出していた上条と浜面を手で制する。自分も質問してみたい。

「あくせられーたは、らすとおーだーのどこが一番好き?」
「どこが…?いや…、どこがって言っても…」
「選べない?」
「うン」

男二人は顔を伏せて震えていた。こっくりと幼い仕草で頷いた一方通行に、笑いが堪えきれない。
逆に女性陣たちは何か感銘を受けたらしく、白い頭を両サイドから撫でる。

「なンだ?オイやめろ…」

青年は顔をしかめて二本の腕を軽く払う。

「?こんなところは、まるで酔ってない時と同じような態度だなぁ」
「この野郎、俺の滝壺の手を拒否するとは、モノの価値が分からないヤツ」
285 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/21(月) 03:38:31.04 ID:0StF3leq0

その後も一方通行で楽しむ会は続けられた。上条が…

「あのー、いつも我々に美味しい差し入れをすみませんです助かります。何でそんなに良くしてくれるんでせうか」
「オマエらには借りがあるだろォが。あンなンで返せるとは思ってねェが、シスターは喜ンでるようだし、俺もコイツが食ってるとこは見てて良いと思ってる」
「一方通行…。ありがとう…」
「オマエが礼を言ってどォすンだ」

滝壺が…

「ラストオーダーはアクセラレータのこと、本当に、すごく好きなんだよ。悲しませちゃだめだからね」
「分かってる。俺だって打ち止めのことが好きだ」

「ごばはふっ」

浜面がビールを吹いた。


インデックスが…

「知らなかった。私が食べるのを、たきつぼみたいに気に入ってくれてたの…。あの、借りなんて思わなくていいんだよ?」
「俺が勝手に思ってることだ。迷惑ならやめるが…」
「ううん。やめないで」
「だよなァ」

浜面が…

「さっき『選べない』っつーことでしたが、改めて選択方式でお答え願いたいと思います!打ち止めの足、お尻、胸、どこが一番好きですか!」
「胸」
「ヘーイ!即答イェーイ!」

「一方通行…」
「あくせられーた…」
「はまづら…」
286 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/21(月) 03:42:23.71 ID:0StF3leq0

それから三十分も経っただろうか。素直な第一位を弄って、愉快な時間を過ごしていたが、突然彼の体がゆらりと傾いた。インデックスが慌てて支える。

「っ、ど、どうしたの?」
「ァ、なンか、眠ィ…」
「おいおい、大丈夫か?六合近く飲んだもんな。気持ち悪くないか?」
「いや、大丈夫だが、ね、むい…」

そのままインデックスの方へもたれ……と思われたが、一方通行は振り子のように体を揺らし、反対側にいた滝壺へと、ずるずるとしな垂れかかった。彼女は驚くこともなく、ゆっくりと白い頭を膝の上に導いてやる。

「あ、このやろ、人のカノジョに何してんだ」
「まぁまぁ落ち着けって。吐くとかじゃなくて良かったじゃねぇか」
「もしそこで吐いたら、さすがにタダじゃおかん」
「アクセラレータ、軽い…」

みんな滝壺の膝の上の、あどけない寝顔を覗いているが、インデックスだけは不満そうな表情で机を見ていた。

「なんであそこでフラ〜って反対に行っちゃうの?変でしょ、どう考えてもおかしいんだよ」

(おっぱいの引力に引かれたんだな)
(インデックス、実は自分でも分かってるんじゃないか?)
(アクセラレータが予想以上に……だった。良かったね、ラストオーダー)

一方通行が軽いとはいえ、いつまでも滝壺に膝枕をさせておくわけにはいかない。使っていない座布団を頭の下に敷き、さらに掛け布団として四枚ほど体の上に乗せた。
しばらく心地いい寝息を立てさせておいて、他の四人は、また酒と料理に舌鼓を打つ。たった今、珍しい一方通行を見られたこともあって話題は尽きなかった。

287 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/21(月) 03:45:55.92 ID:0StF3leq0

「ンン…」
「お、起きたか?どうだ、気持ち悪くない?」
「あー…、今何時だァ?」

上条は携帯で時刻を確認して驚いた。もう十時をとっくに過ぎている。楽しい時間はあっという間だ。

「うわ、いつの間に。もう十時過ぎだよ」
「…、十時か。俺はそろそろ…」
「あくせられーた、帰るの?」

上条とインデックスの後ろで、座布団をバサバサ落としながら一方通行が起き上がる。若干ふらつく足取りだったが、そばの壁にかけてあったコートを羽織る動作は素早い。

「あァ、金は払ってく。じゃあな」
「一人で帰れるのかよ。送って行った方が良くないか?」

上条が腰を浮かして引き止めようとして、一方通行は財布から紙幣を出しながらそれを断った。

「心配しすぎだろォが。どうってことねェよ、これぐらい」

(心配にもなるだろ普通)
(心配なんだよ。やっぱりとうまか、はまづらに送ってもらって、ってお願いしようかな…)
(今ならコイツに全額払わせることが出来るかも)
(アクセラレータは酔ってる自覚が全然ないんだね)

各人、思うことはあれ、さっさと歩いて店の出口に向かう青年を見送ることしかできなかった。
一方通行が寝ていた、わずか一時間足らずの間に、酔いが急激にさめたのかもしれない。

「大丈夫みたいだし、俺たちはもう少し飲んでいこうか?」
「そうだな」

その直後、レジの辺りから悲鳴が聞こえた。四人は一瞬だけ視線を交錯させると、男達は靴も履かずに飛び出した。
滝壺とインデックスもその後を追う。大体予想はついていたが…


「お客さん!ちょっと大丈夫ですか!?ちょっと!」
「あーあーやっぱり…。すみません、そいつ俺達のツレです」
「今急に倒れて…!」
「おい、一方通行…」

おたおたする女性店員を立たせ、浜面が仰向かせた一方通行の体を揺さぶる。規則正しい呼吸が聞こえた。

「…寝とる」
「色々と唐突だな今日は…」
288 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/21(月) 03:51:55.24 ID:0StF3leq0

またもいきなり睡眠してしまった青年を、浜面が背負った。これで忘年会はお開きになるだろうと、上条はまず自分と浜面の靴を取りに戻り、途中すれ違った女子に、簡単に事情を説明する。


「…本当だ。アクセラレータが寝てる」
「あははははは、おんぶされてるよ!」
「仕方ねえだろ。床に転がしとくわけにいかないし、店も迷惑だし」

床に倒れていたということで、女子達は一方通行の髪や服を軽くはたいたが、それにも構わず彼は寝ていた。


「さーて、この手のかかる第一位を、打ち止めのトコに送り届けて帰りますか」

浜面が、よいしょ、っと一方通行を背負い直した。手のかかる青年はかすかに呻き声を出したようだが、やはり起きる気配はない。

「浜面、コート着ないと寒いだろ。まず俺にパスして着ろよ。あとは交代しながらおんぶしてこうぜ」
「そうだな、じゃ…ほい、パス…」
「っとと…。寝てる男の受け渡しって結構難しいな」
「待って待って、私が腕持ち上げるから…」

インデックスの手助けを借りて、今度は上条の背中に落ち着いた第一位。浜面は滝壺からコートを受け取り、歩きながら身にまとった。

「今日は楽しかったね」
「なー。予定より早い解散になりそうだけど、中身は濃かった」
「うん。あくせられーたが素直に話してくれて、すごく嬉しかったんだよ」
「あぁ…、早く送ってやらねぇとな」

荷物を背負った上条が、その足を速めた。他の三人も歩調を合わせる。彼の帰る家まで、待つ人がいる場所まで…

289 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/21(月) 03:54:49.45 ID:0StF3leq0

滝壺からの着信に、きっとあの人のことで連絡があるのだろうと、打ち止めは急いで通話を始める。

「もしもし?」
『ラストオーダー?アクセラレータを持ってきたよ。もうすぐ着くから玄関開けてくれる?』
「…はい?」
『アクセラレータが酔って寝ちゃったから、はまづらとかみじょうが、交代でおんぶしてきたの』
「えぇー!?ってミサカはミサカはあれほど飲み過ぎないでと言ったのに!ご迷惑おかけしておりますぅぅぅ!!」

ドアを開けて通路を覗くと、浜面に背負われてぐったりした恋人の白い頭が見える。打ち止めは四人(と寝てる一人)に駆け寄った。

「ごめーん!ハマヅラ!カミジョー!みんな忘年会だったのに…。この人のせいで終わりになっちゃった?」
「気にすることないんだよ。あくせられーたのおかげで、すっごく楽しかった!」
「そーそー、このノロケ第一位め、打ち止めのことで頭がいっぱいってことがよく分かったぜ。愛されてんなぁ」
「え!?へぇ!?ノロケ!?この人が!?ってミサカはミサカは信じられない情報にあからさまに驚いてみるっ」

インデックスと浜面にはやし立てられ、打ち止めはこれだけ騒いでも目を覚まさない一方通行の顔を覗き込んだ。

「もう、あなた、ノロケるならミサカの前ですればいいのに…」

うらめしげに、でも少し嬉しそうに、打ち止めは青年の頬をつつく。上条は一人先行して、玄関のドアを支えた。

「とりあえず、コイツをベッドに寝かそうか。玄関に置いといても重くて運べないだろ?」
「うん。黄泉川はアンチスキルのお仕事で居ないし、そうしてもらえると助かるよ」
「ほいよ、ほんじゃ失礼しまーす」
290 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/21(月) 03:59:33.51 ID:0StF3leq0

騒がしい様子に、芳川が自室から顔を出した。

「こんばんは。ウチの問題児は一体どうしたのかしら?」
「あ、こんばんは芳川さん。一方通行が酔い潰れちゃって…」
「あらあら…ふふふ、この子がねぇ…?ごめんなさいね、重かったでしょう?」

芳川、打ち止めに導かれて、浜面と上条は一方通行の寝室に入った。滝壺とインデックスは邪魔にならないように、玄関で待機中である。
打ち止めが掛け布団をめくり、浜面が背中から一方通行を降ろす。体をぶつけないよう、上条がサポート。

「ありがとう、上条君、浜面君。疲れさせちゃったわね、お礼を言うわ」
「いや、こいつ軽いから、そんなに大変じゃないっすよ」
「じゃあ、もう遅いから俺達これで失礼します」

男二人は引き止める間もなく退室。それぞれの連れが待つ玄関へと向かった。

「あぁ、あのえっと、なんのお構いもできませんで、ってミサカはミサカはお決まりのセリフを…」

焦ってお見送りする打ち止め。四人はニヤリと笑って声をそろえた。

「いやぁ、これ以上二人のお邪魔はできないよ」
「馬に蹴られて死ぬっつーの」
「アクセラレータと仲良くね」
「早くそばに行って看ててあげて?お酒いっぱい飲んだから、具合が心配かも」

さすがに打ち止めの顔も赤くなった。

「っあ、あの人一体どんなこと言ったの!?」
「覚えてるようだったら、後で本人に訊いてみな。じゃあな」
「よいお年を〜」
「ばいばーい…ってミサカはミサカは不完全燃焼ながらも了解してみる」


手を振る打ち止めの背後では、芳川が可笑しそうに笑っていた。

「私は明日も病院に行かなくちゃならないから、もう寝るわ。打ち止めは起きてるなら、シスターさんの言うとおりにした方がいいかもしれないわね」
「うん、おやすみなさいヨシカワ」

291 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/21(月) 04:02:59.96 ID:0StF3leq0

一方通行を送り届け、そのマンションから去ろうとする上条達。その彼らの前方から、千鳥足の人物がやってくる。

「あれ?番外個体か?」
「んー?ヒーローさんじゃなーい。ミサカの実家になんか用ぉ?」

鞄とマフラーを振り回すようにして、番外個体が行く手に立つ。

「用は終わったよ。今、酔い潰れた一方通行を運んできたと」
「酔い潰れた!?第一位がぁ!?」
「わ、私達忘年会してたんだよ。それで、楽しくてついお酒飲ませすぎちゃって…」

急に大声出した番外個体に驚いて、インデックスが上条の背に隠れながら弁解する。お酌しまくって飲ませたことを、咎められているような気がしたのだ。

「あの白モヤシ、こっちの忘年会は断っておいて…。……でも、ひひひひ、酔い潰れてる、ねぇ…?」
「お、なんか悪いカオ。大概にしとけよ?」

言葉だけで、浜面も番外個体と同じような表情をしている。

「カワイイいたずらだよ。裸に剥いて、油性マジック(細)でリアルなスネ毛胸毛脇毛髭を描くだけだもん」
「最悪じゃねぇか。ぜひ写真撮って送ってくれ」
「こら、はまづら」

「こっちに参加してたら、絶対酔わなかったと思うんだ。ありゃりゃとぉー!じゃーねぇーん」

番外個体は、千鳥足をさらに激しくして実家に入って行った。


「……打ち止め、大変だな」

上条の言葉に、他の三人は大きく頷いた。

292 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/21(月) 04:05:55.75 ID:0StF3leq0

「ねぇあなた…?どんな忘年会だったの?ミサカのことなんて言ってくれたの?」

返事は無いのは分かっているが、打ち止めは声に出して呟いた。酔っ払いの世話には慣れているので、水やタオル、薬、洗面器を傍らに置き、一方通行の枕元に肘をつく。

(キレイな髪…)

うっとり眺めて、さらさらと指を潜らせる。

(ちゅーするぞー。起きろ眠り王子!ミサカを見ろー)

膝立ちとなって、彼の顔に覆いかぶさった。

「この痴女〜、夜這いとはイイ趣味しとんのぉ」
「うわぁぁぁぁ!?番外個体ぉぉぉ!?おかえり!」
「たらいらー。明日は大晦日だからー帰ってきたよー」

いざ、酒くさい唇にキスしようとした時、気配を殺した番外個体が背後から抱きついてきた。こっちもかなり、酒くさい。

「おうおう、第一位の寝込みを襲うなんざぁこりゃ大物じゃ。乳も大物に育つわけだぁ」
「お、お、襲ってなんかないよ!もー番外個体も酔ってるのね?ってミサカはミサカは離してほしくてもがいてみる」


その場で姉妹でじゃれあっていたら、二人とも予想していなかった場所からのアクションに、簡単に倒されてしまった。

「…うるせェ」
「やぁっん」
「うぎゅ」
293 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/21(月) 04:11:04.93 ID:0StF3leq0

ベッドから伸びた一方通行の手が、打ち止めの腰を抱え込んで引き寄せた。姉妹もろとも、青年のベッドへダイブ。

「あなた起きたの?具合どう?」
「あぁん、この人姉妹丼でもするつもり?」

「………」

「ちょっと?あなた?」
「最終信号ぁー、どうしよ、ここはゆりんゆりんな濡れ場で盛り上げてみる?ぎゃははは」
「えぇいこの愚妹静かにしてなさい!」
「お姉ちゃん怒っちゃいやー」

番外個体が、一方通行の腕に抱えられていた姉の体を自分の方へ奪おうとする。

「こらぁ!変なとこ触るなぁー、ってミサカはミサカは、…わ、あなたもぉ!?」

返事さえ無かった一方通行も、少女を奪われまいとさらに腕に力を込める。

「これなんかで見た!あいや先に手を離した方が真の母親!ってやつだ!」
「静かに、じっとしてねェか……」
「最終信号うるさい…」
「え、ここにきてまさかの共同戦線?ってミサカはミサカはがっちりホールドされて動けないから口で抗議をしてみたりぃ〜」
「しょォがねェな…」
「っ、あ」

億劫そうな様子で、一方通行は体を丸める。足の方には番外個体が圧し掛かっているので、ベッドは大きく軋んだ。
抗議する少女の口を自らの口で塞ぎ、大人しくなったのを確認してから離れる。

(きゃぁぁぁもぅ番外個体がいるのに…!?あれ?)

打ち止めは、自分の太ももを抱き枕にしている妹に視線を向けた。

(さっきまであんなに元気だったのに、これがお酒の力なのね、ってミサカはミサカはすやすやな番外個体に、毛布を…、かけてあげてみる…っ)

ぐちゃぐちゃになった毛布を自由の効かない手で、どうにか番外個体に掛ける。
一方通行は体の下から引き抜いた布団の中に自分と打ち止めを収め、これで終いだと言うように、大きく息を吐いた。その目は閉じられたままで、「寝る」という意思を強く表しているようだ。

(まぁいっか。おやすみなさい、あなた、番外個体…。来年もこんな風に、ミサカと仲良くしてね…)

一方通行のベッドが大き目だといっても、さすがに三人では狭かった。でも、全然嫌ではない。

294 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/21(月) 04:13:00.78 ID:0StF3leq0
とりあえずここまで。
やっと大晦日まで来たなぁ。
295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/21(月) 05:40:55.56 ID:gYEHRWHAO
素直一方いいネ!
296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/21(月) 11:03:18.49 ID:RaA+HoADO
>>1乙ぱい
女の子のおっぱいには不思議な引力があるよね

>絡め手
滝壺とインデックスが恋人つなぎをしてるのを想像してしまった…誰か描けよ下さいお願いします
297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) [sage]:2011/11/21(月) 15:49:41.35 ID:EkdvqdvBo
忘年会でのろけられても笑顔でいられるのは、恋人が居るやつだけさハハッ。
298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方) [sage]:2011/11/21(月) 22:03:06.58 ID:H69kLRjk0
打ち止め側の話も見てみたいデス
砂糖だばだば状態になるのは目に見えてるけどねww
299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(大阪府) [sage]:2011/11/22(火) 11:40:12.27 ID:AM/M0S+Y0
鳩は餌より水の方が大事だってばっちゃと両津が言ってたァ。

前スレから一気に読んだから蜜漬け状態だァ。
300 :ブラジャーの人 [sage]:2011/11/22(火) 21:53:39.35 ID:BkWwR9yV0
>>295 素直一方さんは、書いててすごく変な気分になりました…

>>296 万乳引力。質量が大きいものほど強い。

>>297 実際ノロケられても、「そうか」「よかったね」としか言えないねぇ。愚痴られえても「別れたら?」としか言えないねぇ。

>>298 学友と一緒にカラオケ行って、古い歌謡曲を歌って引かれてたんじゃないかな。

>>299 両さんも?それは信憑性高し。一気読みお疲れ様でした、本当にお疲れ様でした。大変だったでしょう?地の文しか書けなくてゴメンなんだよ。
301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/23(水) 01:02:40.38 ID:lQreBekDO
乳トンは偉大な発見をしたんだね
302 :ブラジャーの人 [sage]:2011/11/24(木) 23:31:17.70 ID:64VhFCT30
>>301 そうだね、これによって人類は多大な進歩を遂げたんだよww

さて、少々間が空きましたが、続きです。これを書いてるせいで、現実世界でも師走の気がして違和感がハンパない。
303 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/24(木) 23:36:36.80 ID:64VhFCT30

一方通行は目が覚めても、すぐに動くことができなかった。体がだるい。慣れてはいないが、何度か味わっている、『飲み過ぎの翌日』であった。

(頭痛ェ…、昨日は……クソ…、なンつー失態だ…)

一部はっきりしない記憶もあるが、大体は思い出せる。昨夜、酒の許容量を逸脱してしまった自分が、上条達の前で随分な醜態を晒してしまったことを…

(オマケになァンで打ち止めと一緒に寝てンだァ?俺もコイツも服着たままじゃねェか。あ、……俺が無理やり引っ張り込ンだンだっけか…)

体調の悪さに顔をしかめている自分とは違い、穏やかな打ち止めの表情を見るうちに、さらに昨夜の記憶を思い出した一方通行。それにつられて、かるく布団をめくって足元を見る。

(やっぱりかよ…。どォりで体が動かしにくいと思ったぜ)
304 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/24(木) 23:41:05.30 ID:64VhFCT30

一方通行のふくらはぎに頭を乗せた番外個体が、打ち止めの足を抱え込んで寝ている。最初は青年と打ち止めだけが被っていた布団だったが、いつの間にか番外個体も潜り込んでいたらしい。

(窒息しねェかコイツ)

急激な喉の渇きを覚えた青年は、ゆっくりゆっくりと足を引き抜いた。こてん、と番外個体の頭がシーツの上に落ちたが、目は覚まさなかったようだ。
足は抜けたが、さてこれからどうやって床まで行こうか。壁と打ち止めの間で思案する。
ただでさえ不自由な足と、今のようなフラつく体調では、気持ちよく眠る姉妹を踏みつけずに遂行できる気がしない。

(仕方ねェ。馬鹿馬鹿しいが…)

結局彼は首の電極のスイッチをONにして、音も衝撃もなく床に降り立った。部屋を出る前に、布団の中に全身を埋める番外個体のために軽く『穴』を作ってやる。こうして、わずかだが、掛け布団を歪めて空気の通る場所があれば、息苦しいことは無いだろう。

適当に着替えを持って、水を飲んだ後にシャワーを浴びる。熱い湯をかぶっている最中に電極のスイッチは戻した。体内に残るアルコールは大体処理できたが、まだ少しスッキリしない。

(だいぶ飲ンだからなァ…。番外個体も忘年会だったはずだ。…クク、起きたら頭ァ抱えて唸ってンじゃねェか?)

そして、打ち止めに呆れられながらも看病されるのだろう。その光景が思い浮かび、自然と口元がニヤける。

(…俺も、小言いわれるかもしれねェな)

その光景が思い浮かび、溜息が出た。
305 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/24(木) 23:43:36.49 ID:64VhFCT30

シャワーを終えて、また水を飲む。黄泉川はまだアンチスキルの仕事から戻っていなくて、芳川はすでに病院に出勤したようだ。

(年の暮れの暮れまで御苦労ォなこった)

自室を覗けば、まだ姉妹はぐっすり状態。誰がポケットから出してくれたのか(おそらく打ち止めだろう)携帯端末がベッドサイドのテーブルに置いてあり、メールの着信を知らせるランプが光っていた。

『おはよう。きっと君が一番早く起きると思うからメールしておきます。愛穂も私も昼過ぎには帰れます。夜はみんなでおそばを食べるので、どこにも出掛けちゃだめです。その後は打ち止めとデートでも初詣にでも、好きな所へ行きなさい』

芳川からのメールを読み終え、一方通行は舌打ちして頭を掻く。なんだかすごくおちょくられたような気分だった。
うるさくしたつもりはないが、打ち止めが目を覚ましたのか、もぞもぞと動き始めた。

「んー…?番外…個体…。やーん離してぇ…」
「もう蹴飛ばしてソイツも起こせ」
「あぅ、おはよう、あなた。…具合はどう?」
「…だいぶ良い」
306 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/24(木) 23:45:38.32 ID:64VhFCT30

打ち止めは先程の一方通行のように、番外個体を起こさぬよう、そっと足を動かして体をベッドから抜け出させた。適当に髪を手櫛で整え、青年の腰にすがりつく打ち止め。
まず怒られるのではないか?と心配していた一方通行には意外な行動だった。

「オイ」
「昨日はカミジョウ達とミサカの話、したんでしょ?……どんな風に?ってミサカはミサカはノロケたという噂の真相を確かめてみたり」
「………」

寂しい。
俺だって打ち止めの事が好きだ。
胸。

(言えるかァァァ!)

「ねぇねぇねぇ、ってミサカはミサカは焦るあなたの顔が全てを物語っているけど、具体的に知りたいと懇願してみる」

恥ずかしい醜態の詳細は、絶対に打ち止めには知られたくない。上条、浜面達にも情報を漏洩させないよう手を打たねば。そんなことを考えている一方通行の腰に纏わりつく打ち止めは、ますます彼の体をゆさぶって「ねぇ」を繰り返していた。

ゴン

一方通行のこめかみに、突然衝撃が走った。
がん、ごろごろと床を転がったのは、ベッドサイドに置いてあった、片手で掴める程度の時計である。それが投げつけられたのだ。

「このバカップルどもめ、朝っぱらから頭ガンガンのミサカの前でイチャついてんじゃねーよ。もっと痛くなるじゃない…」
307 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/24(木) 23:51:12.35 ID:64VhFCT30

番外個体が、布団から青ざめた顔と右腕だけを出して二人を睨んでいた。普段なら避けられる強襲に打たれたこめかみを摩り、一方通行は布団を、ばさぁっとはぎ取る。もう打ち止めの腕からは解放されて、話題の転換も図れそうだった。だからこの程度で勘弁してやるつもりだ。

「よォ酔っ払い、人に投げる前にブツを確認しなかったのか?もォ朝じゃねェ、起きろ」
「あー寒いよぉ、第一位がいじめる最終信号助けて頭も痛いよぅぅぅ〜」

番外個体は残されていた毛布を掴んで体にかけようとし、それさえも取り上げられるとシーツの上で丸くなった。

「大丈夫?薬いる?ってミサカはミサカは番外個体の具合を心配してみたり」

優しい姉は、一方通行から毛布を受け取って番外個体に被せてやる。ぐしゃぐしゃになった髪をよけて見た顔は、やはり青い。

「うん。持ってきて」
「もう、お酒飲み過ぎ!ってミサカはミサカは叱りつつも甲斐甲斐しくお世話してみる」

ぺち、と番外個体の額をはたいてから、打ち止めは薬と水を取りに部屋を出て行った。一方通行もドアを開けようとした時、イヤミの効いた声が後ろから追いかけてくる。

「大丈夫だよ、あなたは多分怒られない。ノロケてもらったのがよっぽど嬉しいみたいだからねぇ?ぎゃは!役得ってヤツかぁ?」

舌打ちして、一方通行はリビングに移動した。
308 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/24(木) 23:52:57.99 ID:64VhFCT30

番外個体の看病を済ませた打ち止めもシャワー浴び、スッキリした姿で彼の隣に座ったのはおよそ一時間後。ニコニコとして、番外個体が言ったように怒られることはなさそうだ。

「テレビはどこも年末特番だね、ってミサカはミサカはチャンネルを回しながら大晦日を実感してみる」
「リモコン弄ってりゃ面白ェ番組がやるワケじゃねェ。もうソレにしとけ」
「うん。…あなた、今年は色々とお世話になりました」
「…今年はまだあと半日ある」
「うふふ、あなたはミサカに半日後、なんて言ってくれるのかな?ってミサカはミサカは期待してみたり」
「期待ぐらいはさせておいてやるが……」

たくさんの人で賑わう街の様子を報道するニュース特番。それをただの音声以上に理解するつもりはない。こうして、打ち止めとソファにくつろげているだけでいい。

やがて帰ってきた黄泉川と芳川。まだフラつく足取りの番外個体。今年最後の一日が、暮れようとしていた。




309 :ブラジャーの人 [sage]:2011/11/24(木) 23:58:47.66 ID:64VhFCT30
とりあえずここまで。

終わらねぇー年末年始休暇のごとくだらだらと終わらねェー。

ふと思ったのですが、一方さんて、やけに入浴シーンが多いですね。うわ無駄。
310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]:2011/11/25(金) 00:37:06.84 ID:LfTpjIxGo
つまり、じきに風呂場で[らめぇぇっ!]が来るという天啓か!?
乙!
311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) [sage]:2011/11/25(金) 08:12:13.14 ID:0qOX/DD1o
ミサカ二人とベッドインとか…一方さんもげて若干苦しんだ後に爆発しろ。 んでそのあと今まで以上のサイズになって復活しやがれ(´・ω・)ペッ
312 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage]:2011/11/25(金) 16:46:21.38 ID:Q/YNFgCv0
一方さんの一方通行が復活とな
313 :ブラジャーの人 [sage]:2011/11/25(金) 20:32:34.55 ID:3YI1D2HD0
>>310 そうさなぁ…、またお風呂プレイもいいかも知れません。

>>311 どーゆーツンデレですか。苦しむの若干でいいんだ?そしてサイズUPしていいんだ?

>>312 能力じゃない一方通行ですけどね。打ち止めは喜ぶのだろうか…?なんか嫌だな。
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) [sage]:2011/11/25(金) 21:24:55.24 ID:0qOX/DD1o
>>313
一方さんにはちょっぴり苦しんでもらいたいけど、打ち止めは泣かせたくないというジレンマ… もう幸せになっちまえばええねん(´・ω・)カーッペッ
315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/25(金) 21:43:57.99 ID:UWfX6bfs0
一方通行なんか中学生腹まして社会的に死んじまえばいいんだ
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/27(日) 15:03:39.59 ID:MFxGsJjDO
>シャワー浴び、スッキリした姿
お風呂で一方さんを想って[田島「チ○コ破裂するっ!」]しちゃう打ち止めか…
317 :ブラジャーの人 [sage]:2011/11/28(月) 00:27:14.59 ID:XfWg2Shm0
>>314 まるでお義父さんみたいな…

>>315 さすがに中学生では…、ねぇ?

>>316 書きはしないが、非常にうひょーなネタですね!!妄想するとニヤけてまう。

では続きです。
318 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/28(月) 00:31:57.20 ID:XfWg2Shm0

今年最後の一日なのだが、一方通行は特に普段と変わりなく過ごしている。ソファに寝転がって、いつものように番外個体と打ち止めの対戦型ゲームを観戦していた。やはり打ち止めの方が勝率が悪い。

「最終信号もちょっとは成長したかなー?」
「…!っ、くっ。そう!?」
「胸の成長と比例してんね。もっと大きくなれば、ミサカに楽勝になるかもよ」
「そう!?じゃあ頑張るね!?」

(……必死だから何言われて、何言ってンのか分かってねェンだよな?)


いつもより、一方通行による打ち止め仇討ちの出番が遅い。とっぷり暗くなった頃、番外個体は仮眠から目覚めた黄泉川に、料理の手伝いを請われて戦線離脱した。
黄泉川家のおせちは、もちろんほぼ炊飯器製だ。年越し蕎麦も炊飯器を使って作られている。

番外個体がキッチンへ行くと、一方通行は炬燵に入った。入るなり、目の前にゲームのコントローラーが突き付けられる。

「面倒臭ェ、やらねェぞ」
「対戦モノじゃないよ?のんびりまったり、ミサカと遊びましょー、ってミサカはミサカはあなたをお誘いしてみる」
「のンびり、ねェ…?」
319 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/28(月) 00:36:46.19 ID:XfWg2Shm0

ゲームの中で、一方通行は牧場の主だった。打ち止めはその近くに住む獣医。
一方通行は、朝には牛の乳しぼり、昼は鶏、羊の世話。時々動物が病気になり、打ち止めが診療に来てくれる。仲良くなった二人は食事を共にしたり、休日にはデートをするようになった。

(『何を着て行きますか』だとォ?……ナニ着ても牛糞臭ェンじゃ様にならないだろ。アホか)
(セクシーワンピースぅぅぅ!ってミサカはミサカは高かった必殺のアイテムを使用してみたり!)

「なのにあなたは何でTシャツで来るの!?現実じゃ結構オシャレさんのクセに!あぁぁドクターミサカの高感度が下がっちゃうじゃない…」
「…それに比べて牧場主はなンか嬉しそうだな?」
「ドクターミサカのラブリー度にメロメロみたいね…」

珍妙なデートを重ねたり、二人で動物を看病したり、地上げ屋に脅される獣医を牧場主が助けていたりしたら…


「オイ、なンだこの選択肢は。どォいうことだ」

『結婚してください』
『一緒に暮らそう』
『愛してる』

「ぐふふふふふ、ついに、ついにドクターミサカがアクセラ牧場に嫁ぐ日が来たぁぁぁ!大丈夫よあなた、ミサカは動物大好きなの。あなたも大好きなの。立派なお嫁さんになるからね」
「お、一番下に『また明日』って選択肢が隠れてた」
「なぜ躊躇なくそれを選ぶかな!?ってミサカはミサカはつれないあなたに焦らされてみたりっ」

「君たち、楽しいかしら?そのゲーム」

いつの間にか、二人の背後でゲームの様子を見守っていた芳川が問う。

「なンだ、居たのか芳川」
「結構前から居たわよ。で?楽しい?」
「まァ退屈で眠くなることはないな」
「楽しいよー。芳川もやる?一緒に四人までプレイできるし」
「遠慮するわ。どうやってその牧場主と獣医に絡めというの。どんな職業になっても出来る気がしないわ。不可能よ」
「そこまで言うことかよ?」
「言い足りないくらいなのだけど」

芳川が呆れの境地を味わった時、夕飯を知らせる声が響いた。

「ごはんだよー!そこの獣医と牧場主もさっさと来るじゃんよー」
320 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/28(月) 00:41:26.20 ID:XfWg2Shm0

「わーい、おそば、おそば。年越し蕎麦〜」
「シスターの真似みたいなこと言ってンなよ」

黄泉川の号令で、今年最後の夕食、毎年恒例の年越し蕎麦を食べる。しかし、蕎麦だけではとうてい物足りない食べ盛りの若者達がいるので、肉やサラダなど、いつものメニューも並んでいた。

「あー、この後おせちも完成させないとな」
「おせちってさぁ、正月に台所を休むための料理なんでしょ?結局年末に二倍働かなきゃいけないんだね。日本の伝統厳し!」
「あら、番外個体も愛穂を手伝ってあげるのでしょう?」
「ミサカもお手伝いさせて?ってミサカはミサカはさすがに今回は追い出さないでほしいとお願いしてみる」

クリスマスはキッチンが狭いから、という理由で手伝いを許可されなかった打ち止め。一方通行の方針もあり、炊飯器料理は積極的に覚えるつもりが無いことが原因ではなかろうかと勘繰っているのだが、おせちくらいは関わりたい。

「そうだねぇ、おせちは下拵えもたくさんあるから、テーブルで出来ることは打ち止めにも頼もうかな。よろしくじゃん!」
「おまかせじゃん!ってミサカはミサカは参加できて嬉しいとはしゃいでみる」

そういうわけで、女性達はキッチンと、食卓でおせち作りを始めた。芳川でさえ、打ち止めの助手として働いている。ただ一人、手持無沙汰な一方通行は、珍しく一番最初に風呂に入った。

風呂から出ても、彼のやることと言えば、リビングの炬燵でテレビを見るか雑誌を読むかネットでも見るか、隣のキッチンの様子に耳をそば立てるか。もういっそ寝れば?と思うのだが、なにせ今日は大晦日。あと二、三時間で新年となる。
そういう行事は強制参加な黄泉川家なので、自室に引っ込むという発想は持てども、実行はし難い体となってしまっていた。
321 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/28(月) 00:47:35.64 ID:XfWg2Shm0

やがて十一時も迫って来た頃、おせちは何とか格好をつけられたらしい。

「ふふーん、なんか去年より立派じゃない?どぉ黄泉川これ」
「番外個体が腕を上げたからじゃん。それに打ち止めも手伝ってくれたしね」
「愛穂、私も手伝ったのだけど?」

四つの御重につまった、色鮮やかなおせち料理を満足そうに眺める女性達。こんなに綺麗な仕上がりだと、食べるのが惜しくなってしまう……のは保護者達だけらしい。
打ち止めと番外個体は、ちょっとつまみ食い、と手を伸ばす。

「こら!これは明日食べるじゃん。もう蓋するよ」

二人の手がはたかれ、小気味の良い『ぺち』『ぺち』という音が連続する。

「あーぁ、ってミサカはミサカは虚しく空を切る手を泳がせてみる」
「黄泉川のケチ。しょうがない、さっさとお風呂入って新年を待つか。最終信号、一緒に入る?もう遅いし」
「あ、もう十一時だっ。大変、お風呂の中で新年なんてイヤだよ。早く入ろう!」

おせちに蓋を被せる保護者を残し、打ち止めは部屋へ駆けて行った。番外個体も後を追うが、途中で日課のように、炬燵の一方通行をからかっていく。

「ぜんぜん声も姿も見えないから、もう寝たのかと思ってた。暇ならとっとと寝るか、手伝えばいいのに」
「…寝たら起こしに来るだろォが」
「ぶっはー!なに?輝かしい新年を迎える時には、絶対自分にお声がかかるだろうって?あひゃひゃははははは自信満々かよ!」
「起こされてンだよ、過去に実際に」

大笑いする番外個体と、不機嫌そうな一方通行。そのリビングにパジャマを持った打ち止めがやってきて、番外個体の腕を引っ張って風呂場へ連行し、さらに後から声が追いかけてくる。

「あなたー?まだ寝ちゃダメだからね!ミサカとハッピーニューイヤーだからねっ?」

(ほら見ろ…、だから眠れねェンだ)

脱衣所で番外個体がまた吹き出した声が聞こえる。おまけに、料理を終えて炬燵で休憩を取る正面の黄泉川と、右側の芳川も笑っていた。

322 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/28(月) 00:55:58.27 ID:XfWg2Shm0

「お風呂出たよーまだお正月じゃないでしょ!?ってミサカはミサカは確信を持ちつつも訊かずにはいられなかったり」

パジャマ姿の打ち止めと番外個体も、一方通行達と同じように炬燵に潜り込む。

「大丈夫よ。あと十分近くあるわ」
「だから言ったじゃん。髪乾かしてからでも大丈夫だってさ。これで最終信号が風邪引いたらミサカが怒られるかもしれないんだよ、まったく」

隣の一方通行の見咎めるような視線に気づき、打ち止めはまだ濡れた髪をあわてて髪止めで、ひとくくりに纏め上げた。

「こうしとけばあんまり冷たくないし、後でちゃんと乾かすから大丈夫だよ、ってミサカはミサカはあなたのお小言を事前に回避してみたり」
「……ったく」

それぞれが暖かい飲み物を手に、テレビ中継を見ながら年が明けるのを待つ。画面と背中合わせの位置にいる番外個体は、絨毯に肘をついていた。

「あと二分じゃん。今年も色々あったなぁー。うん、良い一年だった」
「それ毎年言っているわよ」
「と、ヨシカワがツッコむのも毎年恒例なのでした」

323 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/28(月) 01:02:33.06 ID:XfWg2Shm0

今年もあと一分を切り、テレビ中継でカウントダウンが始まった。五十秒…、四十秒…

(ン…?)
(えへへ…、ってミサカはミサカはぎゅう、ってしてみる)

炬燵布団の中で、打ち止めが一方通行の手を握る。みんなテレビを見ているし、炬燵に隠れてバレることはないだろう。一方通行がチラリと打ち止めを伺うと、彼女はにっこりと笑って目で応えた。

(コイツは昔っから恥ずかしげも無く…)

はじめは躊躇いがちに、そしてすぐ、一方通行も握り返す。

五、四、三、二、一.

強く強く、手を握り合ったまま、二人は新しい年を迎えた。

(今年も、ううん、来年も…)
(オマエと…)

「はい!明けましておめでとうじゃん」

黄泉川が画面に向けていた顔を戻して、新年のあいさつをし、炬燵の各辺から返事が。

「おめでとう」
「はいおめでとー」
「明けましておめでとうございまーす!ってミサカはミサカは元気な今年の第一声!」

次はあんた、きみでしょう?早く言えよ、あなたは?
女性達は青年を見た。四人の声なき声が、一方通行に降りかかる。

「…あァ」
「あぁ、って何。そんな明けましておめでとうがあるか。ま、勘弁してやるじゃんよ」
「とりあえず何か喋っただけでも進歩ね」

保護者達の寛大な評価に、一方通行の眉間に皺がよる。

「…もォ寝るぞ」
「明日はミサカと一緒に初詣行ってね?」
「ハイハイ」

実はまだ繋いでいた手を離して、一方通行は炬燵から出て部屋へ引っ込む。それを機に、他の面々もリビングから解散し始めた。
324 :ブラジャーの人 [saga]:2011/11/28(月) 01:07:50.98 ID:XfWg2Shm0

一方通行が部屋のベッドに入り照明を消そうとしたところ、申し訳程度のノック後、返事も待たずに打ち止めが入ってきた。

(番外個体と寝るンじゃねェのか?)

少女はベッドの側に立ち、ちょいちょい、と手で彼の顔を呼ぶ。青年は素直に従い、柔らかい唇にキスをした。

「おやすみのちゅーと、ミサカだけの明けましておめでとうだよ」
「ン」

打ち止めもベッドに座り、一方通行の肩に身をすり寄せた。

「去年は、…ありがとう、ってミサカはミサカは幸せをたくさんくれたあなたにお礼を言ってみる。今年もよろしくお願いします」
「…こちらこそ」

ちょっと驚いたように、打ち止めが青年の顔を見上げる。無表情なのは、照れるのを隠しているのだろうか。
もう一度キスをしてから、打ち止めは立ちあがりドアへ向かおうとした。しかし、一方通行に腕を掴まれたので足が止まる。

「番外個体が、ベッドが冷たいって文句言ってたから戻らなきゃ」
「………」
「明日はこっちで寝るからね?ってミサカはミサカはあなたの目力に負けそうになりながらも誘惑に抗ってみたり…」

少女の惜しそうな顔を見て、一方通行は手を離してやった。
明日が待ち遠しくなる日がくるなんて…。怖いとも思える幸福感を胸に、一方通行は眠りについた。
325 :ブラジャーの人 [sage]:2011/11/28(月) 01:12:29.43 ID:XfWg2Shm0
とりあえずここまで。

まだだ、まだ終わらんよ。
次こそお正月ですね。
一方さん、お年玉くれ!!6ケタでいいから!!


326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(愛知県) [sage]:2011/11/28(月) 01:24:05.26 ID:RuBkKLiw0

327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/28(月) 01:30:09.79 ID:PRvN4K0IO
6ケタてww多いわwww

乙乙!
やっと年越しか…なんとも濃い一年だったは
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) [sage]:2011/11/28(月) 02:05:45.67 ID:W5juB55Ao
乙でっす。

もう一年だなんて……嘘だと言ってくれよブラボー! こっちは受験生なんだよ! センター申し込み忘れたからヤヴァインダヨォオオオオオオオオオオオォオォォオオォオォオッォッォォォォオオォオ!!
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/28(月) 02:27:16.41 ID:6j/FrL4DO
>>1乙ぱい
やっぱり新年を迎えたら必要だよね




姫初め
330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage]:2011/11/28(月) 07:58:54.68 ID:oR1/9n800
一方さんならカードをそのままポンとあげそうだな…。
>>328
おつ。もう1年頑張れ by浪人した人
331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/28(月) 08:15:17.70 ID:2Fz/rV9IO
┌─────┐
│い ち お つ.│
└∩───∩┘
  ヽ(`・ω・´)ノ
>>328
おつ、もう1年頑張れ by俺も浪人した人
332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/28(月) 08:20:45.04 ID:/AFwaK9DO
>>1

>>328
あと13ヶ月もあるから頑張れ
333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/28(月) 08:21:38.41 ID:o/wIPixUo
>>1
通行止めが行事を楽しく過ごしているだけでほっこりしてくるな
寒がり番外さん可愛すぎワロタ

受験ならスレ見てないで勉強しろよと思うわけだが
334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage]:2011/11/28(月) 16:14:27.55 ID:HP8JJusFo
乙。いつも素晴らしい!
こたつの中でこっそり手つなぐとか……やばい

受験生だったこの時期は禁書にはまって原作を読破しようとしてたな
でも受かったから大丈夫だ!
335 :ブラジャーの人 [sage]:2011/11/28(月) 17:17:09.23 ID:CuJj0U6a0
>>326 >>332 あんがとう。いつも乙嬉しいよ。

>>327 7ケタもらえたら、もう仕事やめて一日中スレのネタ考えてたい。

>>328 今まで、如何にして勉強しなくて済むだろう…と考えて生きてきたわ。みんなのエールを励みに頑張るんじゃよ。

>>329 たぶん、保護者達が仕事に出かけるであろう1月3日か4日くらいに… 書かないからね?

>>330 カード貰えたら、純金とダイヤ買っておく。

>>331 そーゆーカワイイ「絵」?AAっていうやつか?どうやって作るの、みんな凄いな。 現役合格を応援してあげなさいなww

>>333 おっぱい以外は、何か行事にかこつけないとネタが湧かないんですよ。
番外ちゃんと打ち止めは、原作ではどうやって就寝してるのでしょうね?気になります…

>>334 受験や試験の前にハマる物があると辛いよねぇ。>>328 にとっては、奇しくもこのスレが該当するのか?そうだったらごめんww
336 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) [sage]:2011/11/28(月) 20:22:58.11 ID:DuTwZ+0Oo
328だよ、皆さん応援ありがとうなんだよ…
そうだよね、クリスマスに予定がないからって彼女持ちの親友の家に酒瓶三本持ち込んで全力で絡んで最後にはゲロ吐いてる場合じゃないよね…
俺、頑張るよ! クリスマスにはサンタコスでカップルに凸ってやるんだ!(イイ笑顔で)
337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/29(火) 02:05:15.44 ID:ERtq01PDO
>>336
おk
お前さんの為に俺がワンオフでサンタ衣装を作ってやろうじゃないか


当然ミニスカだがいいよな?
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/29(火) 14:45:04.65 ID:YOuP61bS0
>>1

     _     ._
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    L;;;;;;ヽ   L;;;;;ヽ  ""''""''""''""''"
      ̄ ̄    ̄ ̄
ゲコ太も受験生を応援してるよ。
339 :ブラジャーの人 [sage]:2011/12/01(木) 00:21:06.75 ID:JupGwmMf0
>>336 つまりやることは『サンタ狩り』だね?頑張って!

>>337 ミニスカもいいけど、サンタ狩りは昔から、もぐらの着ぐるみって決まっているのよ。

>>338 こわい。

では続きです。

340 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/01(木) 00:26:27.01 ID:JupGwmMf0

(ミサカを見て、この人なんて言うかなぁ、ってミサカはミサカは期待できないけど褒めてもらうためにユサユサ揺らして起こしてみる)

打ち止めは、そっと忍び込んだ一方通行の部屋、そのベッドに眠る青年を起こそうと肩に触れた。元旦の早朝、ひんやりとした空気の中で、彼女の頬は赤い。

「あなた、あなた、朝だよ〜」
「ンァ?……まだ眠ィ…」
「起きてー、ってミサカはミサカはほっぺをうりうりしてみたり」
「っ、やめろォ分かった起き、……」

観念して目を開けた一方通行は、いつもと違う打ち止めに、一瞬戸惑う。彼女は既に、二人で買いに行った赤い振袖を身に着けていた。髪も綺麗に纏められ、鮮やかな飾りで彩られている。目を瞬かせる彼の様子に、打ち止めは待ちきれなくて訊いた。

「このあいだ買ってもらった新しい着物だよ?ヨミカワもヨシカワも大絶賛だったけど、あなたはどう思う?」

上半身だけ起こした一方通行は時計を見る。彼にとっては、まだ就寝時間である七時前だった。

「もう着つけしたのかよ。早すぎだろ…」
「だって今日しか着られないんだもん。早起きして二人に着せてもらったんだー、ってミサカはミサカはそうじゃなくて!褒めてもらいたくて訊いてるのに」

お正月らしい装束の打ち止めは、一方通行の目から見ても、とても可愛らしく映っている。しかし素直に「可愛いぞ」などと言えるわけないので、

「まァ、中々…」
「なかなか?」

これ以上困らせないでほしい、と、一方通行は覗き込む打ち止めの頬に手を添えた。唇が触れる直前、ふと思い留まる。

「大丈夫だよ…、あなたからもらった口紅だから…」

せっかくの色が落ちる心配はない。遠慮なくキスした。
341 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/01(木) 00:30:53.29 ID:JupGwmMf0

打ち止めは眠そうな一方通行をリビングへ連れて行く。彼をソファに座らせ、続いて寝癖がついたままの番外個体も引っ張ってきた。

「ね、む…」
「ほら番外個体もここに座って、ってミサカはミサカは真ん中に陣取ってみたり」

打ち止めを間に挟み、三人は仲良くソファに並んだ。真ん中の子以外は、まだ覚醒しきっていない。

「お、揃った?御苦労さまじゃん、打ち止め。コイツらを起こすのは大変だったでしょ」
「さぁ君達、手を出しなさい」

見計らったように、黄泉川と芳川が三人の前に立った。番外個体よりは目が覚めている一方通行は、これからの流れを予想して、つい顔をしかめた。

「はーい、お年玉じゃん」
「大事に使うのよ?貯金してもいいし」
「わーいありがとうございます!ってミサカはミサカはお礼を言って受け取ってみる!」
「あーそういやいつも貰ってたっけ。さんきゅー」

黄泉川が女の子二人に、芳川が男の子に白い封筒を手渡す。一方通行のものには『お年玉』『一方通行君へ』と書かれていた。意外にも青年は無言で手に取る。

数年前、初めてお年玉というものを手渡された時、一方通行が「要らねェよ、そンなモン」と押し返そうとしたら、次のような事態になってしまったことがある。
342 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/01(木) 00:33:29.73 ID:JupGwmMf0

「オマエらから金を恵ンでもらう必要はねェ。どォしても出費したきゃ、そこのクソガキ達にやれ」

そう言って一方通行はリビングから出て行こうとした。

「待つじゃんよ」
「!?なっ」

黄泉川に腕と足を掴まれ、何がどうなったのか定かではないが三秒後には、彼は絨毯の上に組み伏せられていた。しっかりホールドされ、電極のスイッチに触れることも出来ない。

「子供は素直に受け取るものよ?番外個体と打ち止めを見習いなさい」

彼の前にしゃがんだ芳川が、『一方通行君へ』と書かれたお年玉袋を目の前に突き付ける。

「離せェクソ!」
「んー?私達からお年玉貰うならどいてやる」

まだ幼かった打ち止めは、その様子を楽しそうに見守っている。番外個体は大笑いで腹を抱えている。
十秒ほど待っても一方通行はジタバタと悪あがきしようとするので、仕方なく保護者二人は強硬手段に出た。

「おいィ!?どこ触ってンだこの年増どもォォォ!」
「暴れないでちょうだい。…、ほら、袋が曲がってしまったわ」

黄泉川と芳川は、一方通行の服の中、ズボンの中にお年玉をねじ込み始めた。

「大人しく…っ、するじゃん」
「やめっ…」
「うふふ、こんなことしてると、何だかアヤシイお店に遊びに来た有閑マダムのようね、ふふふふふ」
「こーら、桔梗、打ち止めも見てんだから教育上良くない発言は控えるじゃん」
「笑って言われても説得力ないわよ、愛穂」

「………」

一方通行は抵抗を止めた。
343 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/01(木) 00:37:58.85 ID:JupGwmMf0

そんなことがあってからは、一方通行は文句を言わずにお年玉を受け取るようになった。彼女達は彼に数百万の外車を買わせたりもするが、こんな場面ではこぞって保護者の役目を全力投球するのである。

「毎年仏頂面ね。でもちゃんと受け取るようにはなったから、よしとしましょう」
「ミサカは出来れば前みたいに、いかがわしいプレイ見たいから、この人には素直に受け取ってほしくないな」
「もしそんなことになったら、これからはミサカだって参加する!ってミサカはミサカはあなたの所有権を主張してみる!」

一方通行のチョップが打ち止めに、不機嫌を隠さない視線がその向こうの番外個体に向けられた。もっとも番外個体は全然こたえなかったし、打ち止めは髪をセットしていたので、彼のチョップは触れるか触れない程度のものだった。


番外個体は顔を洗うこともなく、二度寝するためにベッドへ向かった。一方通行も彼女に倣いたい気持ちだったが、振袖を振り振り振って楽しみを表す打ち止めを見てしまっては、出来ないことだった。

(寒いよな、まだ朝だしよォ)

急いで仕度をし、いつもより服を着こんで出掛ける準備をする。今日は徒歩で近くの神社まで初詣へ行くのだ。
科学の街だって神社はある。数は少ないし、普段は無人で、こうした参拝客が増える時だけ外から神職が派遣される社がほとんどであったが。

「もう行ける?ってミサカはミサカはうずうずして待ち切れなかったり」
「あァ」

二人は揃って玄関へ。丁度、廊下を通りかかった黄泉川が、

「打ち止め、せっかくの新品なんだから転ばないように気をつけるじゃんよ」
「それさっきヨシカワにも言われたよ。大丈夫だもん、ってミサカはミサカは耳にタコ」

マンション一階に着いて道路を歩きだした時、一方通行はニヤリと笑って少女に言った。

「転ぶなよ」
「…タコが増えた」
344 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/01(木) 00:42:11.49 ID:JupGwmMf0

「わぁ、さすがにお正月。もうたくさん人がいるね」
「和服も結構いるな」
「でもミサカが一番でしょ?ってミサカはミサカは一番のあなたにひっついてみたり」
「そォですねェ」

近所の神社に到着した二人は、既に列を成す参拝客の後ろに並んだ。周りでは屋台も出ているのか、醤油の焦げるいい匂いと、耳慣れないお囃子も聞こえる。

「着物は女の子ばっかりだね。男の人は少しだけ…。あなたが率先して着物男子を流行らせてみたら?」
「浴衣ぐらいならともかく、あんな動きにくそうなのはゴメンだな。杖が使い辛そォだ」
「番外個体も動きにくいって言って、着てくれないもんなぁ…」

(アイツが打ち止めみたいに着物を着てるところがまったく想像できねェ。同じ顔なのにできねェとは…)

そうして待つこと十分ほど。打ち止めと一方通行は賽銭箱と鈴の前に立った。二人は財布から小銭を出して投げ入れる。
足元のプレートに絵描かれた『参拝の仕方』を見ながら、打ち止めはガランガランと鈴を鳴らし、おじぎをし、手を合わせた。
お願い事をしつこく心の中で呟いてから隣を見ると、左手をポケットに突っ込んで自分を眺める一方通行と目が合った。

「ちょ、あなたお願い事は!?ってミサカはミサカはずっとこっちを見てただけ感を漂わせるあなたに何しに来たのとツッコんでみたり」
「こンなンに真剣なオマエが面白くてなァ…」
「…もー」
345 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/01(木) 00:44:32.09 ID:JupGwmMf0

後ろで順番待ちをする人に迷惑になるので、打ち止めは不満ながらも移動を始めた。人が少ない敷地の隅で、青年に頬を膨らませる少女。

「初詣に来てお願いしないなんて…。並んで、お金をまで入れた意味ってなんなの?」
「俺がそンなことする柄じゃねェのは分かってるだろ。大体、欲しいモノは自分で手に入れてきたしなァ」
「むー、欲があるのか無いのか…」
「せっかくの晴れ着なンだろ?ブスな顔ばっかしてンじゃねェよ。次は…おみくじだったか?」

打ち止めは慌てて両手で唇の端を持ち上げた。

「うふふ、ひょうでふね、ってミサカはミサカは惚れた弱みにつけこむあなたを睨んでやりたいけどできない、にっこり」

再び人混みに戻り、二人はおみくじを引いた。一方通行は以前も打ち止めや保護者達に初詣に連れて行かれ、おみくじを引いたことがある。しかし、毎度毎度、数日経てば何が書かれていたのか忘れてしまっていた。

「なにがでるかなー、なにがでるかなー」

お互い、白い紙をほどいていくと…

「大吉だー!ってミサカはミサカは勝利を約束されてガッツポーズを取ってみたり!あなたは?」

「凶」

「おぉぅ…」
346 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/01(木) 00:48:38.49 ID:JupGwmMf0

打ち止めは『凶』を引き当ててしまった青年をどうフォローするか慌てたが、一方通行本人は、なんとも思っていない。

「こンなのはただの験担ぎだ。良けりゃ信じればいい。悪けりゃ信じない。それぐらいに考えとけばいいンだよ」
「…あなたって実はポジティブなの…?」
「毎日毎日テレビの占いコーナーで一喜一憂してるオマエが変なンだ」
「だって気になる…。あ、見て、あなたのおみくじのココ…」

『恋愛運…好いた人、決まった人がいる場合はそのままにせよ』

「だってさ。凶という悪い結果だけど、ココだけは信じて欲しいなぁ、ってミサカはミサカはお願いしてみたり…。それに、これはミサカのお願い事そのものだよ」

自分をずっと好きでいてほしい、という少女の希望であった。
一方通行は紙を雑に折りたたみ、コートのポケットに仕舞う。残念そうな打ち止めを安心させるため、ここは流石に素直な態度を取った。

「そンなことは…、言われなくてもずっと前から分かってることだ」
「……、うん…。ミサカだって…」
「そうか。なら俺もオマエも、おみくじなンて必要なかったンじゃねェの」
「それはそれ、これはこれ。初詣には欠かせないの。大丈夫だよ、凶なあなただけど、隣には大吉のミサカがいるんだもん。御利益いっぱい!」

鼻で笑う青年と一緒に、神社を後にする打ち止め。しかし、途中で屋台の誘惑にまんまとハマり、おみやげを買ってしまったので手は繋げなかった。
347 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/01(木) 00:51:02.89 ID:JupGwmMf0

「だから家に帰ってから美味しく食べようと思ったのに…」
「打ち止めー、お餅は何個入れるじゃん?」
「うぅ、に、三個…、ってミサカはミサカはお雑煮大好きな自分を恨めしく思ったり…」

香ばしいイカ焼き、タコ焼きがあるのに。あと可愛らしい模様の、色とりどりの飴。

「打ち止め、あなたの身体データは順調に、正常の範囲内に伸びているのだけど、さすがに高カロリー食品の過剰摂取は…」
「ヨシカワ…、言わなくていいんだよ…」

項垂れながらも箸を握る手は力強く、打ち止めは一方通行が何と言おうとも、休み明けはダイエット週間にしようと決心した。

「あれ、あなたは食べないの?」
「ちょっと、後で」

一方通行はテーブルに手つかずの雑煮を残し、まずは自室へ向かう。おみくじというものは、境内の木に結ぶ風習があるらしいが、一方通行と打ち止めはそうせず持ち帰って来ていた。
青年はそのおみくじを折り直し、机の中の箱に丁重に収めたのである。

(打ち止めも俺と同じことしそうな気がすンなァ…)

コートを脱ぎ、一方通行も雑煮を食べるためにキッチンへ戻った。幸運の少女の隣へと。
348 :ブラジャーの人 [sage]:2011/12/01(木) 00:54:46.00 ID:JupGwmMf0
黄泉川家と通行止めの年末年始の巻 完

おかしいな、年始編の更新が一回で終わってしまったぞ。年末編のしつこさは何だったのか…

次回の更新は未定です。雑煮食べたい。
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/01(木) 01:13:17.71 ID:QJ9WmDrIO
乙乙!

こんな夜中にイカ焼きだのたこ焼きだの雑煮だの……ヨダレが出てくるじゃねーか!
350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) [sage]:2011/12/01(木) 01:15:43.68 ID:Y+ewN8680
>醤油の焦げるいい匂い
うおおおおおおおおおおおおおおおい
[ピーーー]気かあああああああああああああああ

乙 コンビニ行ってくる
351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]:2011/12/01(木) 01:21:30.63 ID:7FHhMZUQo
年始か……次は姫はj
352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) [sage]:2011/12/01(木) 01:46:45.79 ID:GgY7kKkqo
乙っす。 年始……センター…あばばー!
353 :ブラジャーの人 [sage]:2011/12/01(木) 12:28:47.48 ID:3UGRYWOS0
>>349 >>350 屋台では必ず食べるメニューだったのでつい…。そんなに食欲を刺激されたんですか。

>>351 みんなしつこい。分かった負けた。負けましたァ。熱意が伝わってきました。次の更新はそれやりますよ。

>>352 うんばば、もう気楽にいきなされ。
354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/02(金) 01:18:47.74 ID:rdQoHl4go
姫初めを訴えていたのは実は一人だったとかあったりしてな……

乙、振りそでの打ち止めとかあらゆる角度から激写したい
355 :ブラジャーの人 [sage]:2011/12/03(土) 02:02:04.51 ID:AFo9I8ju0
>>354 もしそうだとしても、もう書けちゃったから投下するしかありませんよね。やっぱ楽しかった…
まさか一晩で完成するとは、驚いたわ。

では、投下開始。
356 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/03(土) 02:06:26.36 ID:AFo9I8ju0

三ヶ日を待たずに、黄泉川はアンチスキルの仕事に出掛けた。翌日の一月三日には芳川も病院へ。一方通行、番外個体、打ち止めはおせちを消化しながら、新年を家の中でゴロゴロ、ダラダラと過ごしていた。

「あー、休んだ休んだ。ミサカは明日朝からバイトだから、夜にはアパートに戻るよ」
「了解。おせち持って行くかい?ってミサカはミサカはドラマで覚えた実家のお母さんの如きセリフで訊いてみる」
「いらなーい。もう食べ飽きたよ」
「だよねー。だから番外個体が持ってってくれたら嬉しかったんだけど」
「でも栗きんとんだけ持ってく!」
「全部はダメだよ!?」

タッパーに甘いおせち料理を詰める番外個体に纏わりつき、彼女を牽制する打ち止め。騒がしい姉妹の声を炬燵で聞きながら、一方通行はあることを期待していた。

(番外個体は今夜戻る。きっと明日も黄泉川と芳川は仕事のハズだ。……明日は、久しぶりに…)

年末に大掃除で働かされて以降、一方通行と打ち止めは男女の営みをしていない。正直、青年はかなり我慢していた。

357 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/03(土) 02:08:40.21 ID:AFo9I8ju0

保護者達と打ち止めに見送られ、番外個体が帰った後、一方通行は廊下で打ち止めとの就寝前のあいさつを終えた。今夜は一緒に寝ると手を出してしまいそうなので自重する。久しぶりの交合を保護者二人にバレないよう、気を使いながら出来る気がしがない。

「あなたからおやすみのちゅーはめずらしいね、ってミサカはミサカは廊下でするのも希少だとちょっと驚いてみる」
「そこまで珍しいことじゃねェだろ。俺はもォ寝るからな」
「うん、おやすみなさい、ってミサカはミサカはもう一回…」

(タチ悪ィ…)

耐えられそうにないので、廊下でさっさと済ましてしまおうとしているのに。一方通行、さらに忍耐の時である。
358 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/03(土) 02:11:58.23 ID:AFo9I8ju0

(うー?なに?電話…?)

翌日の朝、打ち止めは携帯端末の着信音で目が覚めた。黄泉川も芳川も、お正月休み中の子供たちを寝かせておいてくれるので、一方通行と共にお寝坊をしている少女。といっても彼とは違い、打ち止めは遅くとも九時には活動していた。
時計を見ると八時で、覚醒すると同時にネットワークから番外個体の応答を求める声が。携帯の着信も彼女からで、打ち止めは慌ててネットワークを介して妹に応える。

(はいはいはーい何かな?ってミサカはミサカは番外個体を落ち着かせながら訊いてみ)
(やべぇぇぇぇぇバイトちょー忙しいちょぉぉぉー手伝って最終信号!!)
(わぁ、……うわこんな朝からどういうこと!?まるで満員じゃない)
(近所のデパートが初売りセールやってるんだよ!みんなウチみたいなカフェや喫茶店で朝ご飯だから手伝ってよぉぉ!)
(わ、分かったすぐ行く!)

日本語が若干おかしい妹の焦りっぷりに、打ち止めはベッドから飛び起きて洗面所へと走った。
359 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/03(土) 02:15:40.02 ID:AFo9I8ju0

打ち止めが走り回る騒がしい音に、一方通行も目を覚ます。

(うるせェな…、あ)

今日は久しぶりに『楽しいこと』が出来る日だということを思い出し、青年は身を起こした。昼間だろうと構わない。こういう時のために部屋にブラインドを取り付けたのだから。

「あなたぁー!ミサカを送ってってぇー!」
「うォ、なンだ急に」

期待に胸膨らます一方通行の部屋に、ぜぇぜぇと胸を上下させる打ち止めが駆けこんできた。手には櫛と歯ブラシを握ったままだ。

「番外個体のカフェがデパートのセールのせいで忙しいの!お手伝いに行くからポルシェちゃんお願いします!ってミサカはミサカは返事も待たず着替えるために部屋へと…」

全てを言い終える前に少女は去った。呆然とする一方通行は、寝起きの回らない頭で、今聞かされた情報を整理する。

(打ち止めが番外個体の店に助っ人しに行く。そして俺は送って行く。だからヤれない)

「番外個体ォ…っ」

番外個体と、あの店が憎らしい。それにムカつく店員の男どもも憎らしい。きっと大忙しの中、慣れ慣れしく打ち止めに接するのだろう。自分がおあずけを食らっている最中に。


早く早く、と打ち止めに急かされ、一方通行は着の身着のままでタクシー役を務めた。

「おら、着いたぞ」
「ありがと!」

今もネットワークでは番外個体の悲鳴が打ち止めを呼んでいる。それでも少女は運転席に座る不機嫌な恋人に『いってきますのキス』を忘れなかった。それが一方通行にとっては嬉しくもあり、残酷でもあることを彼女は知る由も無い。

ふてくされた一方通行は、正月休みでガラガラの道路をポルシェですっ飛ばして、かなり遠回りしてからマンションに帰った。
360 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/03(土) 02:17:57.21 ID:AFo9I8ju0

「忙しい」と打ち止めから聞いていたので、もしかしたら夕方までバイトが終わらないのでは?と、諦める心の準備をしていた一方通行だったが、意外にも昼過ぎにお迎えの要請が来た。
これなら帰ってからできるだろうし、途中でホテルに寄るのもいいかもしれない。しっかりと避妊具を(複数)用意して、いそいそとカフェへ向かった。しかし…


(……こりゃ、無理か…?)

待ち合わせの場所で、打ち止めはぐったりと座り込んでいた。恋人が運転するポルシェのやかましいエンジン音が鳴り響いても、顔さえ上げられないようだ。車体が彼女の前で停車した時、ようやく立ち上がって助手席に乗り込む。

「ありがとう…。疲れたー。あなた、ミサカに労いのちゅうを…、癒しをプリーズ…」

少女は瞼を半分だけ開けて、彼の方へ顔を向けた。身を乗り出させるのも億劫らしい。
一方通行はわざわざシートベルトを外してご要望に応えた。

「えへ、ちょっと復活、ってミサカはミサカはあなた成分を補給して元気が出てきた…」

(俺はさらに弱ってきた…)
361 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/03(土) 02:25:37.53 ID:AFo9I8ju0

走り出した車内で、少女がぽつぽつと語り出す。

「まるで嵐のようでした…。めちゃくちゃ忙しかった…」
「そンなにヤバくて、先に帰って大丈夫なのか?」
「嵐はお昼までだったの。セールが目当てのお客さんは、さすがに晩御飯までは取らないから」
「まァそうだな」
「お正月で帰省してた学生さんたちが、だいたい四日から戻ってくるからセールは今日からが本番なんだってさ」

帰省という概念が無い一方通行と打ち止めだったが、納得できる理由だった。そこで心配になることがひとつ。

「まさかオマエ、明日も手伝うンじゃねェだろうなァ?」
「ううん、明日からは正規のバイトさんがたくさん出勤できるから大丈夫だよ」

とりあえずこれ以上の危機は回避されたらしい。しかし今現在でも一方通行の我慢が、かなりキていることに変わりはなく、今日も忍耐を強いられることになった第一位。

(あンなに疲れてる打ち止めに無理させンのはなァ…、畜生ォ)

打ち止めはリビングに入るなり、どさっとソファに倒れ込んだ。
コートを部屋に置き、遅れて来た一方通行が彼女の姿に目をみはる。

打ち止めの足が、太ももが、捲れあがったワンピースの裾から覗いている。バイトに行く前にはストッキングを履いていたような気がするが、きっと制服から着替える際に面倒臭くなって着けなかったのかもしれない。
だが、そんな推測はどうでもいい。重要なのはそれを見た一方通行の手が、勝手に動いてしまっていることだ。

ソファにうつ伏せで体を投げ出す打ち止めの、その足に触れる。

「ん…?」

すり、と足をこすり合わせる少女。しかし嫌がられたり、抵抗される様子はない。そのまま指を太ももと尻の方へと登らせていく。しっとりとした肌に、思わず喉が鳴った。

「うぅん、あなた…」
「………」
362 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/03(土) 02:28:05.99 ID:AFo9I8ju0

ついさっきまで「無理はさせられない」と殊勝な事を考えていたというのに、すでに青年は自分が止まれないことを自覚していた。欲情に飲まれてぼんやりする頭の隅で、よっぽど飢えていた己を分析する。

「っ、あんまりアトつけちゃダメ…」
「…ン」

床に膝をつき、太ももの一番柔らかい所に吸いついた。首を伸ばして、奥の足にも平等に唇と舌を這わせる。

「…あ、きもち…」
「もっとな」
「きゃ」

ワンピースの裾から手を突っ込み、強引に背中へと伸ばす。青いショーツが現れ、これも柔らかそうなお尻が見えた。しかし、まずはそこよりも柔らかいところを愛でてやろう。一方通行は服の中でブラジャーのホックを外し、左手で彼女に仰向けになるように促す。

「もう、待って、ってミサカはミサカはただ今反転、う」

彼女が完全に態勢を立て直さないうちに、一方通行の手は乳房を掴んだ。まだソファの背もたれに顔を向けたままの打ち止めの体が弓なりにしなった。背後から一方通行が上半身に覆いかぶさってきて、頬や首にキスされながら、胸をまさぐられる。
363 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/03(土) 02:33:08.26 ID:AFo9I8ju0

「あ、ん、待って」
「……ふー」
「ふふふ…」
「悪ィ」
「……いいよ、しばらくしてなかったもんね」

制止の呼び掛けには、耳に吹きかけた息で否と答えた。服の中で緩んだブラジャーの下に潜らせた手が、打ち止めの優しい言葉に後押しされて、動きを強く大胆にしていく。少女の衣服は既に胸より下を覆っていないが、熱くなった体は寒さを感じない。

「ミサカも久しぶりだから、ドキドキしちゃう」
「あァ」

早まる鼓動を確かめようと、一方通行が胸を押しつぶすように揉む。甘い吐息が漏れ始める頃を見計らって、指で先端を摘まんだ。
きゅ、きゅ、とリズムをつけて。
こねこね、こねて。
つんつん、とつついて。

びくびく震える打ち止めの体。一方通行は腰をくねらせる打ち止めの下半身にも左手を派遣する。ちなみに右手は胸担当である。
お尻からショーツの中に侵入し、割れ目の中をかき分けて行く。一瞬体を強張らせた打ち止めだったが、すぐに力を抜いて長い指を迎え入れた。

(いつもより濡れてンなァ…。コイツも多少は我慢してたのか?)
(あぁどうしよう、いつもより…、あ、あ、キモチいい)

打ち止めはショーツが汚れることを嫌うので、早めに脱がせる。下半身だけが裸という、二人にとっては珍しいシチュエーションとなった。
364 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/03(土) 02:38:31.47 ID:AFo9I8ju0

「オイ、こっち向けよ」
「ミサカがそうしようとしたら、待ちきれなくて狼さん暴走させたのはあなたでしょ?ってミサカはミサカは余裕の無いあなたの行動を指摘してみる」
「オマエは余裕あるみたいだなァ?」
「ないよぉ。だから久しぶりなんだってば」

一方通行だけが求めていたわけではない。打ち止めもまた、彼を求めていた。
気を良くした一方通行は打ち止めにキスをする。舌を差し入れて、卑猥な音を響かせた。

「…、はぁ…はぁ、優しく、してね?」
「こうか?」
「!!あー…あ」

求めてくれていたのは嬉しいのだが、自分と比べてどちらが飢えていたのかは明白である。そこは悔しい一方通行は下半身担当の左手を、奥へ、奥へと進ませた。

そう時をおかずに、「ベッド!」と訴える打ち止めを抱きあげ、一方通行は自室へ入っていった。万が一のことを考えて、床に落ちていた青いショーツは忘れずに回収。
だって、次はいつ部屋のドアが開けられるか分からなかったから。

365 :ブラジャーの人 [sage]:2011/12/03(土) 02:45:58.65 ID:AFo9I8ju0
一方通行と打ち止めの姫初めの巻 完

おっぱいは、やはりいいものだ。足もいい。
あー楽しかった、自分はやはり偽れないねぇ。
366 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/03(土) 03:13:13.21 ID:B8o/XtAio
乙っすー。 あぁ、一方さん達はこんなんなのに俺は男友達と同じ布団に寝ている… 誰か!誰か!この若人に癒しを! おっぱい!おっぱいを! ストレスではきそうなので、打ち止めのような可愛いこのおっぱいを! 年も近いよ!お得だよ! …色々入ってるから欲望丸出しだぜ…ハハッ。
367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/03(土) 04:10:21.06 ID:T1eEi+qIO
乙だぜ
こんな時間に更新とはな
姫初めってなんだろと思ってググったがそういうことか…DTにはつらい単語だ…

 ┌○┐
 │お|ハ,,ハ
 │断|゚ω゚ )  お断りします>>366
 │り _| //
 └○┘ (⌒)
    し⌒
368 :ブラジャーの人 [sage]:2011/12/05(月) 21:49:44.28 ID:OUo41nOC0
>>366 かわいそうに。しかし打ち止め級を所望とは贅沢ですね。

>>367 「こんな時間」て。日の出とともに投下したこともあるから平気!
辛いかもしれませんが、姫初め という表現は素敵だと思うでしょう?


えー、あと二夜か三夜は更新ないかと思うので、…どうすっか。
支部に落としたR18でも転載しますか?アカウント持ってないと閲覧できないし。
しかし立て続けにエロいじゃないの。
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(京都府) [sage]:2011/12/06(火) 00:42:35.67 ID:PWRBzTJyo
>>368
見たい。
修論で荒んだ心に清涼剤を下さいwwwwwwwwwwww
370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) [sage]:2011/12/06(火) 08:12:23.65 ID:wgxMy6pwo
>>368
はりー!はりー!はりー!

…………受験生なのに、救急車に乗ったバカなので、癒しがほしいのでござる…(´・ω・`)
371 :ブラジャーの人 [sage]:2011/12/06(火) 15:31:24.08 ID:Mf+JW+bo0
>>369 お勉強お疲れ様です。清涼剤になるのか分からんけど…

>>370 ナニがあったの。癒しになるのか分からんけど… 

お待たせしました、オマケ書いてたから。ではどうぞ。
372 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/06(火) 15:33:05.38 ID:Mf+JW+bo0

一方通行と打ち止めが体を重ねるようになってから、早数ヶ月。今では打ち止めから堪えきれない嬌声が自然と上がるようになった。我慢しようとしても出来ない、コントロール不可能な快感に味をしめた少女はそれを受け入れ、順調に適応していった。

今だって、一方通行の部屋のベッドで組み敷かれ、彼の動きに合わせて、あられもない姿と声で喘いでいる。

(あァ、やべェ…。打ち止め、打ち…止め…)
(ぁ、〜〜〜〜〜〜〜あー、あ、ぁ、な、た…っ)

夕暮れをブラインドでさらに暗く演出し、二人きりの甘い時間に酔いしれる。酒は飲めない打ち止めも、これには大いに酔う。

二人とも一糸纏わぬ姿で、ベッドの上で揺れた。一方通行が態勢を変え、より早く、強く繋がろうとする。その刺激に打ち止めが体をしならせて震えた。一瞬のことだが、背中が全てシーツから浮く。
少女の痴態を見降ろしていた一方通行の視界から、彼女の顔が消える。代わりに、上向いた顎と細い喉が現れ、そこから今日一番の、悲鳴にも似た歓喜の叫びが飛び出した。

(うォっ、オマエそりゃ反則だろおいィィィ!!)

青年が歯を噛みしめ、ギリ、と軋む。その隙間から漏れ出た声は、少女のもので掻き消された。目一杯に顔をしかめ、しばし不動を保ったかと思うと、力なく柔らかな胸の上に崩れ落ちていった。

うつ伏せでは間違いなく窒息する。汗ばむ乳房に右耳と頬を押しつけ、ドクドクと早鐘を打つ彼女の鼓動を感じる。

373 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/06(火) 15:34:47.75 ID:Mf+JW+bo0

(クソ、畜生ォまたかよ)

打ち止めの両手が一方通行の頭を掴み、わしわしと髪をかき混ぜた。それは抗議の意を込めて。
青年は文句も言わず、ゆるゆる伸ばした手で、打ち止めの腰から太ももを優しく撫でた。それは謝罪の意を込めて。

「ずーるーいー、ってミサカはミサカは『まだ』なのにぃ」
「……悪い」

ここ最近、一方通行の『負け』がこんでいる。アッチの学習能力が高かった少女は、回を重ねる毎に青年を縛り付けて虜にさせた。以前は、ほぼ必ず満足させてあげられたのに、今はこうして一方通行が先に限界を迎えることが増えてきている。

「ンな顔するなよ、ちょっと待ってろ…」
「んふふ、顔はご機嫌ナナメになってる?でも内心では結構嬉しいんだよ」
「なンで」
「あなたがミサカに夢中な証拠みたいだから」

(違う、オマエの具合が良くなってンだよアホ)

とは言えない。そしてある意味、合っているし。

一方通行は体を離し、勝者の笑みを浮かべる少女の体が冷えてしまわぬよう、二回戦に向けてウォーミングアップを開始した。

374 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/06(火) 15:35:50.18 ID:Mf+JW+bo0

「このままじゃだめだろ、どォ考えても」

湯船の中で一人呟く一方通行。打ち止めに引っかかれて薄皮向けた二の腕に、お湯が染みる。いいトコまでいったのだが、今日も黒星を記録してしまった。
もちろん自分以外の男を、打ち止めに経験させるなんてあり得ないが、耳年増な彼女のことだから、いつか『情けない』とか『ヘタクソ』とか『○○』という烙印を押されやしないかと不安になってくる。

由々しき事態である。

(いくら心配したって結果は変わらねェ。ぐだぐだ言ってねェで、明日からは練習だな…)

そう。人はいつも、努力と研鑽、工夫を重ねて、あらゆる困難を乗り越えてきたのだから。

375 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/06(火) 15:37:33.58 ID:Mf+JW+bo0

「っ、あなた、どうしたの…?」
「どォも、してねェよ…!」
「でもっ、なんかヘンだよ、って、ミサカはミサカ、あぁ」
「無駄口、叩いてないで、集中してろ…っ」
「だっていつもみたいに」

「………っ」
「〜〜〜!!」

(ミサカに夢中ってカンジじゃないもん…っ)


一方通行は誓いのとおり、翌日から練習を始めた。といっても、コレの練習は打ち止めと二人でないと出来ないので、機会があれば全力投球しないように注意して一生懸命に取り組むという、よく分からない心得で臨んだ。
心と体を全て欲に流されてしまわぬよう、どこか一部に冷静さを保ったままで行為に及ぶ。打ち止めの反応ひとつひとつを観察する。自分が簡単に達してしまわないように、快感を可能な限り制御する。

(…ここ、か?……ゆっくり?)
(変。変だけど、キモチいい…!)

打ち止めの乱れ髪がシーツに叩きつけられて音が鳴る。今だ、と狙い定めて、一方通行が勝負に出た。
果たしてその見極めは正しく、見事に完璧なまでの勝利を収めることに成功した。それ以降、一気に勝率を増やした青年は波に乗って乗って乗りまくる。それはもう、色々なことを試した。

376 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/06(火) 15:40:39.69 ID:Mf+JW+bo0

(練習開始からカウントして、負けたのはわずか二回か。やれば出来るじゃねェか)

このまま常勝不敗の男になりたいと、ベッドの中で口の端を持ち上げた。明日になれば打ち止めの月経も終わっているだろうから、また練習再開だ。

照明を消してからしばらく、ウトウトしかけたところで部屋のドアが開けられた。

(ン…?打ち止め?)

ノックも無しに、練習相手がベッドに近づいてくる。そして、まるで小さな子供のような仕草で、乱暴に服を脱ぎ捨てると布団の中に潜り込んできたではないか。

「おいおい」
「お邪魔します」

潜り込んできただけではない。一方通行のスウェットの上着の裾から手を忍ばせて、腹と腰を撫で回し、柔らかな胸を真上から押し付けてくる。
情熱的なお誘いだが、保護者がいる時はこの家でするのはあまり良くない。今夜は芳川は不在だが、黄泉川がいるはずだった。

「こら、黄泉か」
「さっき出掛けたよ、ってミサカはミサカは耳より情報をお伝えしてみる」
「……」
「電話があってね。せっかく晩酌しようとしてたのに、涙を飲んで我が家の警備員は使命を果たしに行きました」
「ふゥン」

だったら何も問題はない。練習大好きな青年は、態勢逆転を狙って体を起こそうとした。

「だーめ、ってミサカはミサカは先手必勝」

それを素早く察知した打ち止めに肩を押されて失敗に終わる。にじにじと、打ち止めのお尻が腹まで登ってきて、口を口で塞がれた。その時感じた微かな匂い…、これは…

「オマエもしかして酒飲ンだかァ?」
「グラスに注がれたものを瓶に戻すのはいけないかなーって」
「捨てろよ…」
「もったいないかなーって。ほんのちょっとだったし」

以前、図らずも飲酒してしまった打ち止めに、こんなふうにして押し倒されたことがある。その時ほどではないが、また青年は襲われてしまうらしかった。
377 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/06(火) 15:42:55.55 ID:Mf+JW+bo0

(別にいいけどよォ。吐きそうな様子もねェし)

しかしその予想は外れた。彼女の方から色々な仕草で促されて、すぐにいつもどおりのポジションに収まっていた。

(飲ンだ量が少ないからか?今日は俺が上でいいンだな?)

今は一回でも経験が欲しいので、心おきなく覆いかぶさる。そしていつものようにしていたら、突然打ち止めが手を突きあげてきて、中断を求められた。

「やー!もぉー!」
「あァ?なンだよ急に…」

一方通行の胸や顎を押しのけようと、下から張り手をかます打ち止め。仕方なく動きを止めて、少女の訴えに耳を傾ける。

「どうして?どうして最近のあなたはエッチする時に静かなの?」
「はァ?」
「前はミサカだけを見てて、なんていうか、うまく言えないけど、もっと…」
「……アー…」

一方通行は頭を掻いた。つまりこの少女は、我を忘れるように溺れる一方通行を感じていたいらしい。どこか冷静に、第三者の目線で愛の営みを観察するようなことは、彼女の精神面を充実させない要因となっていたのだ。

「でもオマエがなァ…」
「ミサカのせいだっていうの?」
「そうだ」
「ガーン、ってミサカはミサカはこれが倦怠期なのかと驚愕してみたり!」
「イけてなかっただろ?最近…」
「………」
「なンか言えよ…」

ベッドサイドのわずかな照明でも、打ち止めがポカンとして呆けている表情がよく分かる。

「そんなこと気にしてたの、ってミサカはミサカは予想外」
「普通気にするだろォが」
「気にしなくていいのに…」
「相容れないようだな」
「ですねぇ。しょうがないなぁ、ここはミサカが折れてあげる…」

打ち止めが、再び腕や足を絡めてきた。再開の合図に、できるだけご要望に応えられるよう努める。打ち止めのことだけに気を取られ、危うくまた負けそうになり慌てて押し返す。

「あ、りがとう、ミサカのこと、気にしてくれて…」
「一応、プライドってやつだ、男のな」
「これが幸せってやつかな、女の」
「もォ、黙ってろ…っ」
「それはできな、あぁ、ん、ん」
「そうやって鳴くのは、いいンだよ、馬鹿」


今夜の成績、(なんとか)一方通行の勝ち。
378 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/06(火) 15:45:10.38 ID:Mf+JW+bo0

心地よい疲れに身を浸しながら、一方通行と打ち止めは、遠ざかった眠気が訪れるまで、オレンジ色の微かな光の中で小さく囁き合っていた。

「知らなかったなぁ…、あなたがそんなこと思っていたなんて…」
「俺は全然気にしてなかったオマエに驚いてンだが」
「そりゃミサカだって……けど、あなたとああしていられるだけでいいの、ってミサカはミサカは正直に気持ちを伝えてみる」

一方通行がシーツに膝をつき、上から打ち止めを覗き込んだ。

「何?『ミサカだって…』?なンて言ったンだ?」
「え、そこに注目なの?」
「俺にとっては重要ォだ」
「いいから、スルーしてそこは、ってミサカはミサカはえっちなあなたから目を逸らしてみる」

彼とは逆の方へ顔を向けるも、顎を掴まれて強制的に目を合わせられる。ぎゅっと目をつむれば、わざとリップ音を立ててキスをされた。

ちゅ、と鳴っては「言えよ」
ちゅ、ちゅー、と吸っては「言うまで寝かさンぞコラ。遅刻してもいいのかァ?」

「う、うぅもう自分は明日遅いからって…」
「ほれ、言え」
「……ミサカだってイきたいけど」
「だろ?だったら協力しろ」
「どうやって、ってミサカはミサカは危険な臭いを感じ取って警戒してみたり」
「おいおい考える…」

(しかしなァ…、ヤればヤるほど良くなるンじゃ、俺が追いつかねェよ)

より一層の努力が求められる青年であった。
379 :ブラジャーの人 [sage]:2011/12/06(火) 15:54:41.80 ID:Mf+JW+bo0
あなたとミサカのラブゲームの巻 完

可愛いオマエの強がりを〜

一方さんが○○という話。
>>378がオマケ。本当に腹の立つ第一位だ…

明日更新できる、はず。
380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) [sage]:2011/12/06(火) 17:18:30.56 ID:wgxMy6pwo
……一方さんは能力使って自由自在とか思ってたけど、そんなこと無かったのね…紳士だわぁ。
381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/06(火) 21:47:24.85 ID:g33kqe7Y0


※打ち止めは中学生です
382 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/06(火) 23:23:02.46 ID:VW+NtHaDO
渋の方もお気に入り登録余裕でした
383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/06(火) 23:28:21.93 ID:w5S3tWgIO
乙レルス
>>381そうなんだよな…この打ち止めのエロさを見てると忘れそうになる
384 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/07(水) 07:15:58.31 ID:SGxLjanho
乙だぜ

若くて可愛くて一途でおっぱいで具合がいい彼女なんて
第一位マジうらやま
385 :ブラジャーの人 [sage]:2011/12/07(水) 19:27:36.17 ID:/CgsXlsW0
>>380 能力プレイはなぁ……、恥ずかしいやろ…。

>>381 もうすぐ高校生です。

>>382 ありがとう。あまり更新しないけど…

>>383 だからもうすぐ高校生。制服はブレザーにするんだー、ぐへへ。

>>384 むかつきますよね。

では今日の投下です。
386 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/07(水) 19:30:12.78 ID:/CgsXlsW0

「あ、今日は成人の日なんだ、ってミサカはミサカはテレビのニュースに注目してみる」

朝食を食べ終え、リビングで腹ごなししていた打ち止めがそう言った。炬燵の対面に座っている青年からの返事を期待して彼を見る。

「そォだな」
「去年はあなたが記念すべき一人前の成人として、堂々と式に出席したんだっけ」
「………」
「凛々しいスーツ姿で『行ってくるぜ打ち止め。帰ってきたらオマエだけのお祝いをくれよな』ってミサカに」
「どンな捏造記憶だコラ」

一方通行は成人式に出席しなかった。番外個体も。
あの第一位が現れたら会場が騒ぎになるかもしれないし、素直に面倒臭いと思ったからだ。黄泉川も芳川も、彼の歩んできた人生を鑑がみると、強引に連れて行くことはできなかったので断念したのだった。

『ミサカは培養器から出て五年だしね。成人式って言われてもピンとこないよ』

番外個体も冷めたもので、保護者二人と打ち止めは、せっかくのイベントなのに…、と残念がり、せめて三人でお祝いしてあげようと、レストランのディナーと腕時計をプレゼントしたのである。
一方通行がその腕時計をしているのはあまり見ないが、大学の入学式には着けていたし、机の中に大切に仕舞ってあるのをみんな知っている。
387 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/07(水) 19:32:55.44 ID:/CgsXlsW0

「ミサカは…、あと五年経ったら成人式出てもいいかな」

打ち止めがテーブルの上にあった蜜柑を手に取りながら、一方通行を伺うようにチラと視線を送る。どうしてそんな顔をするのかと、青年は一瞬いぶかしむが、すぐに思い至った。

「出席したきゃすればいいだろ。黄泉川と芳川も喜ぶンじゃねェか?」
「うん!…あの、あなたもお祝いしてくれる?ってミサカはミサカはそれが訊きたいことの本命だったり…」

蜜柑の皮が、ぺりぺりとゆっくり剥かれ始めた。

「……何して欲しいンだよ」

それはもちろん、肯定の意味である。蜜柑の皮を剥く早さが増す。

「おめでとうって言ってくれるだけでいいよ」

打ち止めは蜜柑を持って炬燵を出た。同時に一方通行が僅かに体を動かし、空いた場所に少女が身を滑り込ませる。丸のままの蜜柑を割り、ひとつ摘まんで隣の青年の口元に近付けた。

「はいあーん」
「………」

一方通行も朝食を食べたばかりで、全然腹は空いていないが、嬉しそうな打ち止めの顔を見ては断れない。まるで鳥の雛に餌でも食べさせているかのような「あーん」は、蜜柑が無くなるまで続く。打ち止めに握られたままなので、最後の方はだいぶ温まってしまっていた。

「早く、成人式出たいなぁ、ってミサカはミサカは五年という年月の長さに眩暈を覚えてみる」

ようやく蜜柑が片付いたと言わんばかりに、打ち止めが一方通行の腕にしがみつく。

一方通行と釣り合うように、背が高くなりたいと言う少女。
彼と同じ年頃の女性を警戒し、大人っぽい装いに努めたりもした。

(そンなことしなくても…)

いつも感じているのだが、それを止めさせるのもどうかと思って彼女のしたいようにさせてきた。それに一方通行自身も、実は嬉しかったので。

「五年なンてあっと言う間だろ」
「そう?」
「だってオマエが俺と会ってから五年じゃねェか」
「むむ、そう言われると短かったような、でも長かったような…」

首をひねる打ち止めの肩を抱き寄せて、一方通行はキスをした。打ち止めも素直に目を閉じ、体を預ける。

「…すっぱぁい……」
「オマエが蜜柑食わせるからだろォが。…打ち止め、別にな…えー…」
「??」
388 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/07(水) 19:34:38.91 ID:/CgsXlsW0

一方通行もテーブルの上で蜜柑を弄り始めた。別に食べたいわけじゃない。恥ずかしい(と彼が思う)セリフを絞り出すために、気を紛らわせているのだ。

「あンまり、焦らなくてもいいぞ」

結局こんなのしか出てこなかった。そのままのオマエでいいと、他の女に気が向くことなど無いと伝えたかったのだが…
しかし打ち止めには効果てきめんだったらしい。

「そっか。ふふ、それもミサカが剥いてあげる!」

鼻歌を口ずさむ打ち止めによって、青年の手から蜜柑が奪われる。もう一個食べるハメになってしまった。
半分ほどに減ったところで、もうその味に飽きてきてしまった一方通行。もぐもぐと口を動かしながら、手をクイクイとさせる。打ち止めは素直に蜜柑を渡した。

「ン」
「あーん」

今度は打ち止めの口に、ひとつずつ食べさせてやる。お互いに蜜柑味の口になれば、キスしても「すっぱい」と文句を言われることはないだろう。

389 :ブラジャーの人 [sage]:2011/12/07(水) 19:37:58.75 ID:/CgsXlsW0
成人の日の通行止めの巻 完

学園都市でも成人式はあるよねきっと。
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/08(木) 00:40:38.16 ID:WNV6Wh9uo
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/08(木) 01:39:04.97 ID:DHepc5cl0

蜜柑って食べ過ぎると手が黄色くなるよね
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/08(木) 04:20:11.58 ID:xpuuDAUDO
>>1乙ぱい
蜜柑をあーんもいいが、甘酸っぱい打ち止めに「あぁんっ!」と喘いでもらうのもまたよし
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) [sage]:2011/12/08(木) 04:22:11.58 ID:49AN5SL9o
二人は甘ーい俺酸っぱい…(´・ω・`) 乙でした。

394 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/08(木) 11:25:38.33 ID:Pa1JVdmIO
乙なのよな

打ち止めにあーんさせてもらうとか…ぐぎぎ 羨ましすぎるぞ第一位

食べ物系で口移しというのをいつかやってほしいな あれ?もうやったっけ?
395 :ブラジャーの人 [sage]:2011/12/08(木) 21:34:25.85 ID:bVGQXX740
>>391 打ち止め「だからいつもミサカが剥いてあげるんだよ、ってミサカはミサカは色白なあの人のへの甲斐甲斐しい恋人ぶりをアピールしてみる」

>>392 最近喘ぎすぎですって。打ち止めはまだ若いので、今は甘酸っぱくとも、これから熟した果実になるのだな…。それも美味かろう。

>>393 書いてる人も同じ気持ち。

>>394 口移しか…。ここでは書いてませんが、……やってるんじゃねぇの?日常茶飯事に。と思います。

次回の更新は12月10日以降かも。くそ、休めない。
396 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/08(木) 23:45:05.31 ID:vtII+9HT0
これ読んでるとき、ちょうどみかん食べてたんだ。
一人でだよ?たった一人で。
……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!
397 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 01:42:43.78 ID:AmQBt5560
昨日は月食で月が綺麗でしたね
一人で見ましたとも、ええ。
398 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 19:15:21.40 ID:HtfJodvfo
ハハッ俺は人と見たぜ! ……男友達とだけど。
399 :ブラジャーの人 [sage]:2011/12/11(日) 21:51:33.49 ID:Yp/zGqD90
>>396 泣いてはならぬ。一人で焼きスルメの人もいる…

>>397 こってり忘れてたわ。そういうコスモなイベントがあることを。

>>398 次は三年後でしたっけ?
もしも曇ってたら、一方さんは打ち止めのために夜空を晴らすだろうか。できそうだな、ベクトル操作。

さて、短いですが、

いつも、一人で、スケベ椅子。な私から通の行止めをどうぞ。
400 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/11(日) 21:54:29.48 ID:Yp/zGqD90

ある平日の夜のこと、

「あなた、ちょっといい?」
「あァ?」

炬燵でゴロゴロする一方通行の元に、数学の教科書とノートを持った打ち止めがやってきた。感心なことに部屋で勉強していたらしい。

「ここ、少し難しくて…」
「どれ…」

冬休みが明けて、受験を控える打ち止めは、にわかに勉強に力を入れ始めた。彼女が狙っている高校は、中学を決めた時と同じく『家から近い』を優先して選んだ所である。
幸いそれほど偏差値が高い高校ではない。ごく一般的な可も無く、不可も無く、という普通の共学高であった。
打ち止めの成績は優秀なので、何の心配もいらないのだが…

「…で、こォ。分かったか?」
「おぉなるほど。やっぱり早いやり方があったんだね、ってミサカはミサカは感心してみる。さっすがあなた」
「真面目ですねェ。別にオマエなら楽に受かるだろォ?」
「でも、みんなが受験勉強してると、なんかね…。ミサカもやらなきゃいけない気がしてくるの、ってミサカはミサカは不思議な気負いを感じてみたり」

夏…、いや、早ければ三年進級直後から、受験受験と勉強漬けのクラスメイトはいたが、お正月が明けたら、打ち止めも目を丸くするような受験モードの友達ばかりで、何か不安になったらしい。

「まァそれが普通なンだろォな」
「先生も、もっと上の高校を目指しなさい、って言ってたけど…。遠いし…」
「……うちにはうちの事情がある。気にするな」

そんな心配はもういらないと思うが、一方通行と打ち止めの壮絶な過去は、まだ遠い昔のことじゃない。出来るだけこの家から近い場所で生活をした方が良いだろうとの、保護者達を踏まえた相談の結果だった。

(大体、遠くの学校に行かせるなら、女子高じゃないと俺が納得しねェよ)
401 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/11(日) 22:01:30.70 ID:Yp/zGqD90

「勉強はいくらしても悪い事じゃないし、念には念を入れてということで。また教えてね?ってミサカはミサカは家庭教師なあなたに期待してみる」
「おやすい御用で……、ところで思ったンだが、ミサカネットワークで訊いた方が早いンじゃねェか?宿題をカンニングさせろってワケじゃねェから、今度はアイツらも協力するだろ」

教科書を畳んでいた手を止め、少女は青年の隣で足をくつろげる。ちょっと休憩でもするのだろうか。

「そうなんだけど…、みんな忙しそうだし」
「俺が暇みたいな言い方だな」
「だってあなたはまだ冬休みじゃない、ってミサカはミサカは炬燵の一部のように寝ていたあなたを思い出してみる」
「いいだろ、それが冬休みだ」
「それに、…ミサカからのお礼要らないの?ってミサカはミサカは下心を明かしてみる…」
「……要る」

打ち止めはキッチンへつながる扉を、一方通行は廊下へとつながる扉を、それぞれ注視する。黄泉川も芳川も部屋にいて、出てくる気配はなさそうだ。

「んー」
「……」

実は今日、打ち止めは家に帰ってから夕食の時以外はずっと勉強をしていたので、こうして触れあうのは(二人にとっては)久しぶりなのだ。
二人とも体をよじり、上半身だけ正面から向き合う。ちょっと長めのキスをした。

「……あ、まだ?」
「家庭教師代にしては足らねェな」
「高い…ぁ…」

まだまだ支払いを要求してくる一方通行の肩を掴み、かなり力を入れて引き剥がした。

「っぷは、もーダメ!ミサカは真面目に勉強するのです、ってミサカはミサカは厳しく告げてみる。明後日のお休みには、どこかおでかけしよう?それまではツケで」
「どこでツケなンて覚えてきた?優等生ェ。今どき無ェよ、そンなモン。利子がつくからな」
「いいけど別に、ってミサカはミサカはあなたに対してはお金持ちだからと余裕ぶってみたり」

(いきなりホテルに行ったらコイツ怒るか?)
(でも、いきなりホテルとか言い出したら支払い拒否だよ?)
402 :ブラジャーの人 [sage]:2011/12/11(日) 22:25:31.73 ID:Yp/zGqD90
とりあえずここまで。

通の行止めってなんじゃろね。「通行止めの通」か?
403 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 22:29:00.83 ID:HtfJodvfo
乙……俺も、今炬燵でねてるんだ…。 チラッ
404 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 22:45:55.08 ID:GWzotNEL0
おつーー
……はぁ
405 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 22:54:37.64 ID:kbkQLQHQ0

中学生が受験勉強するなんて迷信だよ
ウチの弟なんか一人でモンハンやってるよ、……一人で
406 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 22:58:08.55 ID:HLq5tCMDO
>>1乙ぱい
炬燵エッチの後は匂いを残さないようにな

>>403奇遇だな、俺も今炬燵で寝てるよ
407 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 23:31:02.41 ID:I/UP3oRIO
>>1乙ちゃん

>>403俺も………だよ///
408 :ブラジャーの人 [sage]:2011/12/13(火) 12:35:53.51 ID:ivx4kp1d0
>>403 >>406 いいなぁ、実は炬燵がない我が家です。

>>404 ため息吐かせてごめん。

>>405 ゲームか。ウチのPS3は、もう1年以上やってないな。つーか3のソフト一個も持ってなかったそういえば。

>>407 その乙、なんか私が おっちゃん みたいじゃないですか。

明日か、明後日更新するぞ(と自分に言い聞かせる)
409 :ブラジャーの人 [sage]:2011/12/15(木) 00:05:29.03 ID:oPkVYrpO0
さぁ、受験勉強の手を休めて、デートに出掛けた通行止めです。

では投下開始。
410 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/15(木) 00:09:30.48 ID:oPkVYrpO0

よく晴れた一月の空。降り注ぐ日に暖められた車内はとても快適だった。
今、一方通行と打ち止めは、特に目的地もなく休日の街中をドライブしている。そろそろお腹が空いてきたので、どこか目についた所で昼食を取ろうと、窓の外に目を向けていた。

「わぁ、なんてレトロなラーメン屋さん。まるで昔のドラマに出てくるやつみたいだよ、ってミサカはミサカはあなたに賛同を求めてみる」
「あ?……あァ、確かに」

丁度赤信号で停車中の時、ビルとビルの隙間に、埋もれるように建つ茶色い木造作りの店舗を指さす打ち止め。普通に走行していたら、おそらく気づかなかっただろう。扉の前には『営業中』の看板と、『ラーメン』と赤地に黒い文字で書かれた暖簾がかかっている。

「やってるみたいだな」
「…あー、いい匂いがするぅ、ってミサカはミサカは窓を開けた途端に襲いかかってくるスープの香りに空腹を刺激されてみたり」
「寒いから早く閉めろ。……あそこに駐車できそォだな」

今日の昼食はラーメンに決定。

411 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/15(木) 00:13:17.58 ID:oPkVYrpO0

「らっしゃーせー」

暖簾を手でよけながら、引き戸を開けて店に入る一方通行。ちなみに打ち止めは何もしなくてもアホ毛しか暖簾に触れられないので、背をかがめることもなくついてきた。

既に時刻は昼を過ぎているものの、休日のため席があるか心配していた青年だったが、狭い店内には片手で収まる人数しかいなかった。テーブル席に数人と、カウンター席に一人。

「あれ?」
「……げェ」

そのカウンターで、もくもくとラーメンを食べ続ける男。二人は彼を知っている。

「んぉ?おぉ!一方通行とアホ毛の末っ子じゃねえか!奇遇だな!」

口の中に麺やナルトを入れたまま、振り向きざま大声で喋りかけてきたのは、学園都市第七位の削板軍覇だった。
412 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/15(木) 00:15:13.02 ID:oPkVYrpO0

「お前達も昼飯か、ここ空いてるぞ」

箸を咥え、自分の横の席をバンバン叩く削板。そこじゃなくても、空いてる席は沢山あるのだが。

「末っ子じゃないって何度も言ってるのになぁ、ってミサカはミサカは言われるままに隣に失礼してみたり。あなたも早く」
「…チっ」

知り合いに「この席どうぞ」と言われれば、素直に座るのが当然だと思う打ち止めは、削板の隣に腰掛けようと…したところを一方通行に腕を掴まれてさらに隣の空席へ導かれた。

「あらら、ってミサカはミサカは…」
「食い過ぎだろ、ナンバーセブン…」
「あと三杯食う予定だ」

打ち止めと削板の間に座った一方通行は、改めて第七位の前に積み上げられた丼を眺めた。すでに四杯片づけているというのに、まだ食べるつもりである。

「へい塩一丁ぉお待ちー。次は坦々ね」

削板が手に持った丼のスープを飲み干した直後、新たなラーメンが追加された。どうやら最初にいくつもの種類のラーメンを注文しているらしい。若い男の店主は、一方通行と打ち止めに、軽く頭を下げて注文を訊く。

「らっしゃい、初めてのお客さんだね?何にする?削さんの友達ならサービスするよ」
「おう、偶然だがせっかく会った友人だ。良くしてやってくれ!」
「友人じゃねェ」
「ミサカは味噌ラーメンください!メンマトッピングで」
「そっちの白い兄さんは?」
「醤油…」
「この人にはチャーシューをトッピングしてあげて、ってミサカはミサカは以心伝心で注文してみたり」

一方通行の反論は全員にサラっと流され、勘違いを訂正する暇も無く、店主は調理に取りかかった。
413 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/15(木) 00:17:04.14 ID:oPkVYrpO0

「第一位達は今日どうしたんだ?」

削板が塩ラーメンに胡椒を振りながら二人を見る。口を開こうとしない一方通行に代わり、箸とコップを並べる打ち止めが答えた。

「ミサカ達は普通にデートの最中だよ」
「ほぅ、お前達付き合ってんのか」
「えへへー、仲良しカップルさんなのだ、ってミサカはミサカはソギイタにラブラブ具合をアピールしてみる」

一方通行は注がれた水を無言で飲んだ。

「そうか、幸せそうで何よりじゃねえか。いいことだ」
「うん!ソギイタは?彼女いないの?」
「っ!?お、俺か!?俺は…今は修行中だから」
「修行中だと彼女いちゃダメなの?ってミサカはミサカは疑問を口にしてみる」

一方通行は無言で足を組み替えた。

「……、ほら、カノジョ、なんてトレーニングに集中できなくて根性が出ないし」
「そんなことないと思うけどなー。大事な人がいれば、その人のために頑張ろうと思えるものだよ、ってミサカはミサカは精神論を述べてみる。これはコンジョーにも関わることだと思うの」
「こ、根性か…」
「へい、味噌と醤油お待ちー。トッピングはそれぞれオマケしといたよ」

一方通行は無言で箸を割った。

414 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/15(木) 00:20:13.41 ID:oPkVYrpO0

「おいしそー!ってミサカはミサカは元気よくいただきます!……ミサカは今受験勉強中なんだけどね」
「そういえば今は、受験生が最も根性入れてる時期だったな」
「んぐ、そう。ミサカは彼氏がいても勉強が出来ないことなんてないし、むしろ張り合いが出るぐらいだよ」
「張り合い?そンなモン出してたのかよオマエ」

久しぶりに喋った第一位。打ち止めが合格はほぼ確実な高校の受験に、それほど力を入れているのは何故なのだろうかと、少し不思議に思ったのだ。

「偏差値が特別高いワケでもねェ、能力開発もごく一般的な高校だろォ?オマエなら余裕で受かるって何度も…」
「そうだけど、せっかくあなたがミサカに勉強教えてくれてるんだから…。ミサカはトップで合格してみせる!ってミサカはミサカは宣言してみたりっ」
「トップ合格か。そりゃいい目標だ。末っ子も中々根性あるぞ」
「あは言っちゃった!もう後戻りできない!」

床に届かない足をぱたぱたさせて、打ち止めは両手で持ったコップの水を一気に飲み干した。一方通行は知らぬ間に掲げられていた打ち止めの目標を知り、箸の動きを止める。

「だって先生やってるヨミカワの家で暮らしてて、第一位のあなたが家庭教師なのよ?これで不甲斐ない成績じゃカッコ悪いもん」
「ンなこと気にする必要ねェよ。大体黄泉川は体育教師だろォが。世間体ってやつか?」
「それも無いわけじゃないけど、ただミサカが頑張りたいだけなの。あなたがいるから、ミサカから勝手にやる気が湧いてきてるだけなの、ってミサカはミサカはこれは一種の自然現象にも等しいと解説してみる」

やる気を再確認して、打ち止めは残りの味噌ラーメンに取りかかった。まずは腹ごしらえ。何事も体が資本である。一方通行も中断していた食事を再開させた。
415 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/15(木) 00:23:10.86 ID:oPkVYrpO0

「なるほど…、末っ子の言いたいことが分かったぜ。お前は一方通行のために勉強を頑張ってんだな、頑張れるんだな!」
「そう!そうだよソギイタ!ミサカが言わんとしていたことは正にそれ。だからソギイタも彼女できたらもっとトレーニングがはかどるよきっと」
「だからって、急に作れるもんじゃ…」

結局話は一回転して戻って来た。このテの話題になると、削板軍覇はいつもの勢いが失せてしまうらしく、店主が坦々麺を置いたのに、まだ手元の塩ラーメンが完食できていない。

「はい坦々麺お待ちー。削さんはねぇ、もっとその辺に力入れれば、すぐ彼女できると思うよ?ほら俺を助けてくれた時みたいにカッコ良くカワイコちゃんも救ってあげればさぁ」

慌てて塩ラーメンを掻き込む削板の前で、うんうんと腕を組む店主。ちゃっかり三人の話を聞いていて、ちゃっかり話題に混ざってきた。

「去年の夏だったかな、すぐ近くの会社で仕事してる常連さんからの頼みで、普段は断ってる出前を運んだ帰りのことだったよ…」
「なんだか急に回想シーンがやってきたよあなた」
「訊いてもねェのにな」
「夜の遅い時間だったからか、その会社を出た途端、俺は数人の男達に囲まれたんだ。もしかしたら、最初からつけられてたかもしれねぇ」

語り続ける店主に対して、当の削板は坦々麺を啜っている。顔はそんなことあったっけ?というような疑問符が張り付いていた。
416 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/15(木) 00:26:05.96 ID:oPkVYrpO0

「ベタベタな展開だよあなた」
「しかも長そォだな」
「配達ごくろうさん、その売り上げ寄越せや、っていうセリフを言い終わらないうちに、突進してきた削さんによって、そいつらは彼方に吹っ飛ばされて俺は一難を逃れたんだ」
「意外にもすぐ終わったよあなた」
「相変わらずワケの分からねェ野郎だ」
「いやぁ、ワケが分からなかったけど、とにかくあん時の削さんはカッコ良かったよ!俺が女なら惚れてもおかしくなかったね」

店主は空になっていた削板のコップに水を足して「ねぇ?」と彼に相槌を求めたが、やはり削板はますます疑問符を顔に浮かべるだけで、はて?と首をかしげた。

「えぇぇぇぇぇぇ、削さん覚えてないの!?それが縁で俺んちの店の常連になってくれたじゃん!?」
「なるほど、だから俺はこのラーメン屋に通うようになったのか」
「えぇぇぇぇ…、えぇー…削さぁん…、削さんらしくて何も言えねぇ」

店主はしばし肩を落として項垂れていたが、すぐに背筋を伸ばすとコンロの前で再び調理に戻った。ある程度、削板軍覇という人となりに触れて、理解があるのかもしれない。

417 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/15(木) 00:29:33.20 ID:oPkVYrpO0

「うーん、これはソギイタに彼女が出来る云々以前に、改善するべき問題があるのかも、ってミサカはミサカは悩んでみる」
「くだらねェことに頭ァ使う前に、オマエはオベンキョウに集中しろよ」
「おい一方通行、自分が幸せだからって、こっちをぞんざいにするのは良くないぞ」
「あァ?やっぱり一丁前にカノジョが欲しいのか?ナンバーセブンは」
「そう、いう意味じゃねぇ。ただ俺は彼女がいても根性が鈍るとは限らないという末っ子の意見を尊重してだな」

辛そうな赤色を口の周りにつけたまま、削板は弁解する。彼女が欲しくない、というわけではないらしく、急に現実味を帯びてきた『まだ見ぬ恋人がいる自分』を意識してしまう。

「なんにせよ、まず相手だよ。ソギイタは好きな人いないの?ってミサカはミサカはそれが基本だと原点に立ち返った質問をしてみる」
「……好き、な人……」

第七位は両手を膝の上に置いて、ウーンと唸って考えた。一方通行と打ち止めは、彼からどんな返答があるのかと見守る。果たして第七位の心に浮かんでくる異性とは?
418 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/15(木) 00:32:03.90 ID:oPkVYrpO0

「あ、麺がのびちまう」
「だめだコリャ、ってミサカはミサカはわざとらしく溜息をついてみたり」
「もうやめとけ」
「ううん、まだ桃色世界への可能性として、大きなポイントが残っている。ソギイタを好きな女の子がいるかもしれないってこと!」

打ち止めは既に食べ終わった一方通行の胸の前に身を乗り出す。青年は醤油味のスープが残った丼がひっくり返らぬよう、カウンターの上に片づけてやった。

「ねぇねぇ、さっきの話みたいに女の子を助けてあげたことはないの?それでお礼をさせてとか、連絡先を教えてとかさぁ。これ少女漫画でもお約束の恋のはじまりイベントだよ?」
「えー、どうだったかな?あったような…?んー?」

出前帰りのラーメン屋店主を助けた記憶を重要と思わない彼が、打ち止めの質問にきっぱりと答えられるだろうか。一方通行は打ち止めの頭を掴んでカウンターの正面に座り直させた。彼女の味噌ラーメンは、まだ少し残っている。

「早く食っちまえ。……大体な、…思うンだが、オマエが言ったようなトラブルは、どっかの三下が専任で請け負ってるンじゃねェの?」

この街で起こる、女性が巻き込まれるような事件や厄介事を全てあのツンツン頭の青年が解決しているなんて、そんな馬鹿なこと…と百パーセント笑い飛ばせない打ち止め。

「そ、そうかも…ってミサカはミサカはカミジョウの罪深さに今更ながら戦慄してみる。そのせいでソギイタみたいな健全な男子が彼女不足だなんて…」
「半分冗談だったンだが…」
「でもチャンスはきっとあるハズ!ってミサカはミサカは出会いを逃さないでね!とソギイタの正義感を信じて応援してみたり!」
「おうよ、応援ありがとうな!根性出てきたぜ!」

果たして彼に恋人ができる日が来るのだろうかと、一方通行は限りない困難に立ち向かおうとしている第七位を残して、打ち止めと共に店を出た。

419 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/15(木) 00:36:12.70 ID:oPkVYrpO0

少し離れた場所に停めたポルシェに戻るまで、打ち止めに左手を組まれて歩く青年。さっき、削板に恋人ができることを『困難』と評してしまったが、それは本来一方通行自身にこそ言えることだろう。

(俺は打ち止めと一緒にいられて…)

用意された絶望の中で、それに抗い自分を見つけてくれた少女。まさか、血にまみれる己に大切な女性ができるなどと、昔の自分が知ったら一体なんと言うだろう。

「ん?なぁにじっと見て、ってミサカはミサカはあなたのアツイ視線に気づいて見つめ返してみたり」

打ち止めが隣の青年を見上げる。前をしっかり確認できてない二人の歩みは、自然とゆっくりになった。

「いや…、俺は幸運だったな、と思ってよ」
「……大凶だったのに?ってミサカはミサカはあなたのおみくじについて記憶違いだったのかと初詣の思い出を蘇らせてみる」
「大凶じゃねェ、凶だ。悪くしてどォする」

一応睨んでやると、打ち止めはイタズラっ子のように笑った。ますます腕を絡めてもたれかかり、さすがに一方通行の体が傾いた。

「あなたが幸運なのは当たり前です。だってミサカがそばにいるんだもん」
「幸運って重ェな…」
「まぁ!失礼しちゃう!ってミサカはミサカは罰を与えるべくもーっとぶら下がってみたり!」
「あー幸せですゥー。だからヤメロって…」

美味しいラーメンで腹も心も一杯になった一方通行と打ち止め。
彼女の受験勉強の合間を縫ってのお出掛けであるため、受験終了までは、まだ心おきなくデートはし難いかもしれない。今日という機会を有効的に過ごすため、さてこれからどこへ行こうか…



420 :ブラジャーの人 [sage]:2011/12/15(木) 00:39:41.85 ID:oPkVYrpO0
とりあえずここまで。

勉強するにも息抜きが大切なのですよ、聞いたところによれば。
通行止めの場合、息抜きこそ真骨頂ですけどね。
421 :407 [sage]:2011/12/15(木) 00:44:11.33 ID:G7T4vCSIO
>>1

ハハッ、そうだよな!息抜きも必要だそうだよな!ハハハ!


ところで>>407の乙ちゃんは新約3巻のサローニャのつもりだったんだぜ……

422 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:45:37.13 ID:zxibzo540


>>421
その発想はなかった
423 :ブラジャーの人 [sage]:2011/12/15(木) 01:45:13.99 ID:oPkVYrpO0
>>421 分かってたさ、あのロシア娘のことだって。でも おっちゃん は回避したくて。
424 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 01:56:59.56 ID:Bj8hFunGo
お疲れちゃん、なら良かったんじゃないかね
おつ!
425 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 02:16:58.90 ID:JBzaBkbGo
乙!
受験とか人生の大事な節目に頑張る時
どうやってモチベーションを保つかは人それぞれだけど
打ち止めみたいに自分の周囲の人の存在を思うのはとても良い事だよね。
426 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 07:14:00.85 ID:MKpld8g2o
乙でした。

先生! 息抜きダカラーって遊んでばかりいたらこんな時期になってました……どうしたら…
俺、来年からめぞんで一刻な生活をするんダ…ハハハ…
427 :ブラジャーの人 [sage]:2011/12/16(金) 23:39:36.57 ID:4Y1KOSGg0
>>424 お疲れちゃん……可愛い。

>>425 世の中は、誰かのために頑張っている人のおかげで出来てるね。

>>426 もし管理人さんが木原クンみたいなんだったらどうするの。現役合格を目指しなされ。諦めたらそこで木原数多ですよ。


では、(きっと)明後日に…
428 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/18(日) 20:26:23.87 ID:psPpOsKIO
>>426
めぞんで一刻よりひなた荘がいいです
429 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/18(日) 23:07:37.23 ID:f7A7LFNIO
まだかなまだかな
430 :ブラジャーの人 [sage]:2011/12/18(日) 23:11:40.31 ID:yeJUHYer0
>>428 確かに女性比率は高いでしょうね。

ではデートの続きです。





431 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/18(日) 23:15:03.85 ID:yeJUHYer0

一方通行は知らなかった。打ち止めが受験勉強を頑張っているのが、自分(と黄泉川達)のためだったなんて。

『トップで合格してみせる!』『あは言っちゃった!もう後戻りできない!』

いつからそう考えていたのか。たった今、第七位のナンバーセブンとの会話の流れでサラっと宣言された。

(俺のために…ねェ)

だから、厳密には一方通行だけのためじゃないのだが…。
彼女を決意させた要因の多くは自分にある、とノロけられるぐらいには、一方通行も自惚れているのだ。


そう。今この第一位は、密かに喜んでいる。

(俺がいるからやる気が湧く、だとよ)

「あなた、何か良いことあった?笑ってない?ってミサカはミサカは横顔しか見えないけど、目を細めるあなたを笑顔と判断してみたり」
「ン?……何でもねェよ。それより、これからどこ行きてェンだ?」

ラーメン屋を後にし、二人はまたポルシェに乗って、あてのないドライブをしていた。

「えーと…どうしようね…」
「……、デパートにでも行くか?高校に入ったら要り用になるモンがあるンじゃないのか?」
「それはちょっとまだ気が早いよ、ってミサカはミサカはまだ合格さえしてないんだからと苦笑してみる」
「じゃァどこがいいンだよ」
「見たい映画も特にないし…、お外を散歩するのも寒いし…。むむむ、勉強のしすぎでデートのやり方を忘れてしまったかも」
432 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/18(日) 23:25:12.19 ID:yeJUHYer0

助手席の打ち止めが、腕を組んで考え込む。

「………」

一方通行には、実は行きたい場所があった。しかし、大手を振って「行こう」とは言い難い。なぜなら、彼が望む場所とは、ずばりホテルだから。

(コイツが受験勉強でイロイロ耐えてる時に、俺から誘うのは気が引ける…)

「どこがいいかなぁ、ってミサカはミサカは……」

早く早く。早く思いついてくれ。でないと、どうしようもない男が、恋人を幻滅させるようなこを口走ってしまいそうだ。

打ち止めは携帯端末のデータ等を見て、目的地を決める助けにならないかと、次々に目で画像などを追っていく。
二、三分後、。ぱ、ぱ、ぱ、と早送りしていた指が止まり、いくつか巻き戻る。

その画面に映っていたのは、秋に保護した白い鳩の写真であった。

「わぁ、懐かしい!あなた見て、ハト子だよ!ってミサカはミサカはあなたとのツーショットもあるのよとケータイを突き付けてみる!」
「危ねェよ、運転中ですゥ」
「えへ、そうでした。…あ、……鳩見たい」
「は?」
「鳩見たいよぅ、ってミサカはミサカは愛しさと切なさと懐かしさで胸がいっぱいだと告げてみる」

可愛がったハト子の写真を見て、急に強い欲求が起こったようだ。鳩ならそこら辺の公園にいるだろうが、なにせ一月の冷たい風に受験生を浸らせるのは良くないし、至近距離で見ることも難しいだろう。

(普段なら、却下したくなるようなリクエストだけどな)

今はもうどこでも構わない。ポルシェを路肩に停め、一方通行は自分の携帯端末で検索をかけ、ナビの地図でルートを確認した。

「どこに連れていってくれるの〜?」
「クソでっけェペットショップ」

そこに鳩がいるのか不明だが、とりあえず動物はたくさんいそうだった。
そのペットショップは期間限定で学園都市に出店していて、大型のドームを店として借り、様々な動物を取り扱っているらしい。一月いっぱいまでということで、今日その存在に気づけたのも何かの縁だ。

「素敵!!ってミサカはミサカはテンションが上がってきた!れっつごー!」
「へいへい。鳩がいなくても文句言うなよォ」
433 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/18(日) 23:30:34.92 ID:yeJUHYer0

休日ということもあって、駐車場には車がそれなりに停まっていた。車を所有していない学生が多いこの街では、駐車場が半分近く埋まっていれば御の字だろう。

スキップするような足取りで、アホ毛を揺らして打ち止めが先行する。その楽しそうな後ろ姿に、一方通行の邪念が少し晴れた。

(はしゃいでくれて何よりだ。…いい息抜きになれば、今日はそれで良しとすっかァ)


まず入口に入ってすぐのスペースは、二人に馴染みの深い鳥類のコーナーであった。

「わおぉぉスゴイ!この鳥さんおっきいねぇ!?クチバシもご立派!ミサカの手なら全部口に入れられちゃいそう」
「この小っせェインコなンて食われちまうンじゃねェの?一緒のカゴに入れてていいンかよ」
「どう見ても肉食じゃないよ、ってミサカはミサカは小さき者に優しいあなたを安心させてみる」

端から順に巡っていくと、打ち止めが求めた鳩がいた。白い個体はいなかったが、この大きさ、耳に残る鳴き声、特徴的な首の動き…

「あぁ…やっぱりカワイイ。ハト子のこと思い出しちゃうなぁ、ってミサカはミサカはセンチメンタル」
「乗せるとあったけェンだよなァ」
「一番先に出てくる思い出がそれ?ってミサカはミサカはでも仕方ないのかと思い直してみたり。ハト子はいつもあなたの上でリラックスしてたもんね」
「お、…鳩のレースがあるンだとよ」
「レース?どれどれ…」

鳩が入っているカゴに取り付けられていた説明書のプレートを読む二人。数百キロメートルもの距離を飛び、その早さを競う鳩のレースがあるのだそうな。

「うちで飼ってたヤツを見た限りでは、こンなことできる鳥だとはとても信じらンねェわ」
「いつものほほんとして、ゴハンチョーダイって顔してたし、あなたのお腹や頭でじっとしてたし、ってミサカはミサカはフォローできなかったり…」

「ぽっぽっぽっぽっ!」

俺たちは違う!という主張のように、鳩達が騒ぎはじめたので、名残惜しいが次のコーナーヘと行くことになった。
ここに訪れるきっかけは鳩のためだったのだが、この広い空間に、普段は生で見ることができない動物たちがいると思うと、時間はたっぷりあるとはいえ足が速まってしまうのだ。
434 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/18(日) 23:40:16.13 ID:yeJUHYer0

「にゃーん!猫だぁ!ってミサカはミサカはその愛らしさにメロメロになってみたりにゃーん」
「なンだコイツ。耳が無ェ」
「ぎゃぁあああああラブリー!お耳が丸くなってるっ。あ、見て、ミサカ達においでおいでしてるよ」
「引っ掻こォとしてるンじゃねェか?」

顔の高さに設置されている透明なプラスチックケースの向こうから、一匹の猫が二人の方へしきりに前足を繰り出してくる。
カリカリと爪がケースに当たり、これが肌に触れたらくすぐったいでは済まないな、という感想を持った冷静な第一位と、最早骨抜きの上位個体。

「ン?おい、あっちで猫さわれるらしいぞ」
「よし行こう」
「すげェ即答ォ…」


周りから仕切られた部屋の中で、自由に猫達と戯れることが出来るという。逃亡防止だろうか、二重になった扉を開け、人工芝が敷かれた二十畳ほどの小部屋の中へ入る。仕切りとなっている壁は一メートル間隔で透明になっており、放されている猫たちと、彼らと遊ぶ客の様子が通路から見える仕様になっていた。
淡い期待を抱き、おそるおそる足を踏み入れた打ち止めだったが…

「あーぁ、やっぱりダメか…、ってミサカはミサカは逃げて行くニャンニャン達にさみしく手を振ってみたり」
「ナンバーセブンじゃねェが、電磁波なンぞ気にしない根性のある猫が一匹ぐれェいてもいいのにな」

オモチャや、大きな木をかたどった遊具で遊んでいた猫に打ち止めが近づくと、猫たちはサっと飛びのいて彼女から離れてしまう。
溜息をついて一方通行の左手に縋る打ち止め。せめてこの安心できる場所で、可愛い姿を、許してくれる距離から眺めよう。さみしい笑顔を浮かべる少女の頭を、一方通行はわざわざ杖を収納して右手で撫でた。

「………」

ところで、もちろんこの部屋は一方通行と打ち止めの二人きりではない。今日は休日なのだから、他にもしっかり人がいる。さらに、透明な壁の部分からは通行人もこちらを見たりするわけで、

「…おい、もォ行こうぜ…」
「え?もう次?」
「図太い神経してンなオマエ。周りの視線が痛ェンだよ」
「あ、あらら…失礼しました、ってミサカはミサカは照れ笑いでごまかしてみる」
435 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/18(日) 23:46:25.02 ID:yeJUHYer0

次に二人が出会った動物は、

「全然動かねェ。生きてンのか?」
「ひゃーうひゃーぁぁぁ…、ぬるってしてるっ、ぬらってしてる…っ」

ここは爬虫類のコーナーである。じぃっとしてまったく動かない蛇を、鋭い眼差しで凝視する一方通行。この学園都市第一位のメンチ切りをかわすためには、爬虫類並みにならなければいけないのだろう。十秒ほどして、蛇はちょろりと舌を出して、にょろりと動き始めた。

「やっと動いた」
「……ふぅ…っふおぉ…」

一方通行の後ろから怖々と覗き込む打ち止め。嫌なら見なければいいのに。

「蛇も猫みたいにフワフワモコモコしてたらカワイイのかな?ってミサカはミサカは動物の可愛さの秘密は『毛』にあり!と予想してみる」
「それは最早爬虫類じゃねェよ」

他にも、イモリ、カエルなどの両生類も一緒のコーナーにいて、打ち止めはかろうじて小指の先ほどのミニカエルを直視できたのであった。
あと、客寄せだろうか、体長四メートルのニシキヘビが展示されており、ここまで大きいと感覚が麻痺するものなのか、打ち止めはポカンと口をあけて見つめていた。

「この写真の人、首に蛇巻いてるよ…」
「生写真じゃねェか。つーか、背景ここだよな?」

大きな展示用の檻の前で、体にニシキヘビを巻き付けてピースする人たちの写真が並んでいる。もしかして遊園地で、マスコットの着ぐるみと一緒に撮る記念写真と同じ趣旨なのだろうか。そう思った時、店員に連れられて、二人の高校生らしき男が近づいて来た。

「どちらの方から撮りますかー?」
「この馬鹿だけで。俺は見物です」
「四メートル!四メートル!フーゥ!」

あれよあれよと言う間に、店員はあっさり檻の鍵を開けて中に入り、蛇を掴んで出てくる。打ち止め達までの距離が、わずか数歩しかない所で、大きなニシキヘビが蠢いていた。

「……っっ!!あ、あなた…」
「落ち着けよ。大人しいモンだ」
「いつでも逃げられるように、ってミサカはミサカは腰を落として警戒のポーズをとってみる…」
「いや、これは俺を囮にして自分だけ助かるポーズだろ」

打ち止めはへっぴり腰で一方通行の上着を腰辺りで掴み、顔だけを背中から出している。はたから見るとすごく怪しい。
436 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/18(日) 23:54:16.47 ID:yeJUHYer0

「あふぅ、この重み、この冷たさ、そして体表の滑らかさ…。快感だぜぇぇぇ…っ」
「はーい、撮りますよ笑ってー。…はいスネーク」

(今、チーズのかわりにスネークって言ったよねあの店員さん、ってミサカはミサカはこの人に同意を求めたいけど声を出す余裕がなかったり)

恍惚とした表情の男子高校生からヘビを取り外した店員が、ふと一方通行達に目をとめる。

「お客さんも記念に一枚どうですかー?」

スーパーの試食のように、店員がにこやかに蛇ネックレスをオススメしてくる。鳥肌立てて首を振る打ち止めと、そんな彼女を見降ろして、何か言いたげな青年。

「?あの、その視線はナニ?ってミサカはミサカは…まさか」
「俺は別に蛇嫌いじゃねェし」
「!!?ふぁ!?」

どォせだから撮るか?という意味である。奇声を上げた打ち止めのアホ毛がささくれ立った。

「ダメ!イヤ!もしそんなことしたら、ミサカもうあなたと手繋がない!抱きつかない!ってミサカはミサカは断固拒否!阻止!禁止ぃぃぃぃ!!」
「分かった分かった…」

こういうやり取りは、店員からしたら珍しいものじゃないのだろう。ニシキヘビを檻に戻すと、笑顔のまま「ではごゆっくり」と言って立ち去る。打ち止めも一方通行の手を引いて、危険な場所から足早に移動した。

437 :ブラジャーの人 [sage]:2011/12/18(日) 23:58:53.75 ID:yeJUHYer0
とりあえずここまで。

蛇めっちゃ好っきゃねん。爬虫類最高。
蛇を巻きつける一方さんに、何の違和感も感じません。容易に想像できます。
しかし打ち止めには、やはり哺乳類かな…
438 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 00:50:34.57 ID:Qa6mKUAao
乙!

>「四メートル!四メートル!フーゥ!」

なにこいつ可愛いんだけど
439 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 00:52:43.19 ID:haTghw7DO
>>1乙ぱい
サボテンに話しかける打ち止めとか和むと思わないか?
440 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 01:53:05.33 ID:HQS2sj2IO
>>1
蛇にびびって涙目になる打ち止めとか可愛いと思わないか?
441 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 16:00:11.35 ID:RdkTErqso
乙でした。
男子高校生のキャラが濃いぜ。
442 :ブラジャーの人 [sage]:2011/12/20(火) 12:55:14.43 ID:+mPOZr9m0
>>438 >>441 この男子高校生は、作者の個人的な思い、主張を代弁させるために登場させました。蛇好きなら分かるでしょう?この気持ち。
……私が認識してるより、蛇愛好家って少ないの?10人に一人はいると思ってるが。

>>439 話しかけると成長が促進するみたいですね。激甘トークを聞かされたサボテンは、どんな花を咲かせるだろう。

>>440 うん、かわゆいね。へっぴり腰警戒ポーズも個人的に萌えるんだ。 私にとって、ここ最近の可愛いチャンピオンは>>429かな。
443 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/20(火) 15:27:59.84 ID:5GV13E0xo
>>442
亀は好きだけど蛇は…山登り中、山小屋を占拠されてた恐怖が忘れられないんだぜ。 とぐろ巻いてる蛇とかマジ怖え。

もうあと数日でクリスマスとか嘘や…
444 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/20(火) 16:13:19.08 ID:il3KoN7T0
蛇は普通だけどスネークはめっちゃ好きだぜ。

あと数日・・・忘れてたのに!忘れてたかったのに!
445 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/21(水) 13:32:14.90 ID:sNwJ4eGIO
クリスマス?何それ
美味しいの?それとも何かのキャラクター?

んなことより明後日だぞ明後日
日本国民なら天皇誕生日はもちろん祝うよな!(ゝω・)キャピ
446 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/21(水) 13:34:31.15 ID:GaSfhdKDO
クリスマスなんてなかったんや
447 :ブラジャーの人 [sage]:2011/12/21(水) 22:38:25.59 ID:i0CCvDlZ0
>>443 なにその偶然の出会い。うらやましい!うらやましい!!

>>444 クリスマスなぞ、ハっ(鼻で笑)二次だけで十分です。そんなことより、今はお正月に向かって日々を生きてます。

>>445 もちろんそのつもりですよ、曹洞宗だもん!神道も大好物。イエス様のことは十字教徒とリア充におまかせしますね。

>>446 無いと言う者には訪れない。それが聖夜。聖夜も今日みたいに普通に更新するつもりだよ!

アニマルにまみれる通行止めの続き投下。
448 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/21(水) 22:41:27.77 ID:i0CCvDlZ0

金魚、熱帯魚を見て回った後、二人は犬のコーナーへやってきた。さすがペットの一番人気。展示面積も最大のようで、客も今まで見た中で最も集中していた。

「や、やっとモコモコに戻ってこれた…、ってミサカはミサカは蛇のダメージを引きずってみたり」
「犬か。キャンキャンやかましィ…」
「わーい、しょっぱなからかわうぃーよ。豆芝だって」

さっそく透明なケージの壁に張り付く打ち止め。中の子犬の尻尾と同じように、アホ毛が揺れている。

「きゃんきゃんわんくーん」
「はぁぁぁぁぁ連れて帰りたいぃ…、ってミサカはミサカは…!!」

少女の顔はすっかりトロけていた。このような光景は、水族館の幼児に多く見受けられる。
打ち止めが歩くそばから幼児化するので、中々進めない。特にミニチュアダクスフントの前では三分以上留まったため、ついに一方通行が引き剥がす必要まであった。


屋根の無い柵だけの檻に入っている犬達もたくさんいた。犬種も値段もディスプレイが無く、不思議に思って通りすがりの店員に訊くと、この一角の犬達は飼い犬で、トリミングされた後、飼い主のお迎えを待っているということだった。言われてみれば、成犬ばかりである。

「みんな人懐っこいからね。撫でてあげれば喜ぶよ」
「え、さわってもいいの?ってミサカはミサカはよその家のワンちゃんをかまえることに驚いてみる」
「はい。飼い主さんにあらかじめ待ち合い場所の希望は訊いてありますんで。奥の立ち入り禁止の部屋で待ってるコもいますけど、ごく僅かです」
449 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/21(水) 22:44:17.03 ID:i0CCvDlZ0

打ち止めは恐る恐る、一匹のビーグル犬へと手を伸ばした。彼女の手が柵を越える前に、ビーグルは後ろ足で立ち上がって匂いを嗅いでくる。

「わぉ、積極的ね、ってミサカはミサカはたじろいでみたり」
「…逃げねェな」
「う、うん」
「我々のトリミング店は、このドームの近くで通常営業してまして。今だけここで出張店舗やってるんですよ。協賛企画ってやつです。常連の犬達だから、人見知りはしないと思いますけど」

打ち止めには、この犬が人に慣れていようが、いまいが、関係無い事情がある。
犬は一瞬だけぴくりと鼻先を震わせたが、フンフンと鳴らした後、頭を撫でさせてくれた。時々上を向いて打ち止めの手を確認するような仕草をするのは、やはり彼女が発する微弱な電磁波のせいだろうか。しかし、それでもさわらせてくれた。

「あったかい…かわいい…」

心底嬉しそうな打ち止めと、それを見守る一方通行。そばで説明をしてくれた店員が、二人を(決して否定的な意味では無い)困った顔で眺めていたが、やがて仕事を思い出して離れて行った。
450 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/21(水) 22:46:54.99 ID:i0CCvDlZ0

「なんか、小さなコは特に電磁波に敏感みたい、ってミサカはミサカはネットワークで報告するべく情報収集に努めてみたり」
「確かに。デカイ犬ほどフレンドリーな傾向にある。アイツら俺の方まで乗り出してくるからな」

先ほど、実際に身軽な犬が、身を離す一方通行を追って柵をピョンと飛び越えてしまった。慌てた二人だったが、犬は逃げるでもなく、ただ嬉しそうに一方通行の足元で彼の匂いを嗅ぐだけだった。柵は簡単に開いたので、「おいで」と呼べば、大人しく自ら中に戻って行く。

「すごい、自分で入っていったよ。お利口さん!」
「利口といえば、利口…かァ?」
「ばいばーい、ってミサカはミサカはフリフリ尻尾に手を振ってみる」
「お、犬でもあるだろォとは思ってたぜ。打ち止め、見ろよ」

猫にふれあいコーナーがあったように、犬でも同様の部屋が用意されていた。広さは二倍ほどあり、小型犬から、大型の成犬まで、様々な犬種が中を走りまわっている。
打ち止めは一方通行を置いて走っていってしまい、苦笑して彼女を追う青年。
451 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/21(水) 22:52:57.98 ID:i0CCvDlZ0

人工芝の上に新たな人間が足を踏み入れた直後から、小さいの大きいの中っくらいのがワラワラ近寄ってきた。目を輝かせる打ち止めと、対応に困っている一方通行。

中には、打ち止めの周りをぐるぐる回ってから離れていく犬もいたが、「でんじは?なにソレ」という態度の犬が何匹か残っている。

「あー!!この喜びどうやって言葉にすればいいの…!?後でたっぷりネットワークで自慢してやるもん!ってミサカはミサカはキミのお腹をうりうりしてあげる〜!」

やはり大きい犬種が懐いてくれる傾向が強いようだ。少女はお腹を見せてゴロンと転がるゴールデンレトリバーを、わしゃわしゃ撫でまくっている。
幸せそうな打ち止めに比べ、一方通行はというと…

(……くすぐってェ…。……ほれ、俺はオマエらにやれる愛想なンて無ェぞ。あっち行っとけ)

靴を脱いでいるので、踏まれる足や触れる鼻がくすぐったい。「撫でれ」というように、図々しく前足を膝にひっかけてくる怖いもの知らずを、シっシっ、と追い払おうとする一方通行。

(違う、じゃれてンじゃねェよ、この)

「?噛んでもいいの?遊んでくれるの?」と勘違いしたコーギーと紀州犬。犬だけど、笑っているような表情で、ぷらぷらする白い手に向かってジャンプジャーンプ。

(ったく馬鹿犬…っ、俺の手ェ噛もうってかァ?)

ぐるりと部屋を見回すと、犬用のオモチャが入った箱がすぐ背後にあり、一方通行は二匹の犬を引き連れて中を見に行く。適当に拾い上げた白いボールに、犬達の様子が一変した。

他に客もいるので、軽く転がすようにボールを放った。怖いもの知らずのコーギーと紀州犬は、争うように走りだす。

(やれやれ…)

床に置いてあった物や、若い女性客のお尻にぶつかって、ボールは不規則な軌跡を描いた。それを追って疾走する二匹に、周りから驚きの声が上がる。この広いとは言えない空間で犬にボールを放ればこうなると容易に想像できるので、みんな控えていたのだと、一方通行はやっと察したがすでに遅い。

(仕方ねェ、でもこれで落ち着けるだろ…)

そして、彼はこの後のお決まりの事態も、もちろん分かっていなかった。
452 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/21(水) 22:58:34.80 ID:i0CCvDlZ0

「オマエらなァ……」
「へっ」
「フンフン、へっ」

打ち止めの隣で、(子供用か?)小さい椅子に座って休憩に洒落込もうとしていた青年の足元に、さっき投げた白いボールがある。足の長さで勝ったのか、紀州犬が咥えて持って帰ってきたのだ。コーギーと共に、「もう一回!」と訴えているのは間違いない。

「あら?いつの間にかあなたもワンちゃんと遊んでたのね?ってミサカはミサカは珍しい光景に感動してみる」
「遊ンでねェよ…、困ってンだよ…」

紀州犬の尻尾に叩かれて、打ち止めがやっと恋人を振り返る。どう見ても、構ってあげて、さらに懐かれているようにしか思えない。
打ち止めが撫でていたゴールデンレトリバーが、背年が拾い上げたボールを見て起き上がる。青年はあわてて手を伸ばしてボールを箱に戻した。

「あーん、こっちのコまであなたに盗られちゃう、ってミサカはミサカは、まさかワンちゃんにまでモテモテのあなたに嫉妬を覚えてみたり」
「げ…、おい来るな」
「わふふん」

紀州犬よりもずっと大きなゴールデンは、もう持っていないのに、ボールを求めて一方通行の手に顔を近づける。逃げるように万歳しても追ってきて、届かない位置に手がいってしまうと、今度は一方通行の顔の匂いを嗅ぎ、べろっと舐めた。

「っ!?」

たまらず立って後ずさる青年。打ち止めは彼に代わってコーギーと紀州犬と遊んでいたが、決定的瞬間はばっちり目撃していた。遠慮もなにもない動物に、普段は周囲からとっつき難いと思われている一方通行が戸惑っている。その姿はとても面白く、愛おしいものだった。

「あなた、そんなに逃げなくても大丈夫だよ。こうやって撫でてあげれば喜ぶよ、ってミサカはミサカは目が点なあなたにアドバイスしてみる」
「………、はァ…」

そんなこと言われても…。
構ってもらえないことを察したのか、ゴールデンは舐めさせてくれる人間を求めて歩き出して行った。
453 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/21(水) 23:05:56.16 ID:i0CCvDlZ0

しばらくの間、一方通行は犬達と戯れる打ち止め見て過ごした。どの人も少女のように各々犬と触れ合って楽しんでいたが、何気なく見渡した室内に一人で、いや、一匹だけでウロウロする白い影を発見した。

(…確か…、シベリアンハスキー、だったか?)

わりと有名な犬種なので、一方通行も知っていた。そのハスキー犬は、人間に近づいては離れ、近寄っては逃げられ、を繰り返していた。

(なンで人に逃げられてンだ?)

ふと、ハスキーが一方通行の方に顔を向けた。

(……なるほど)

怖い。顔が。
細く釣り上がった目。つんと立った大きな耳。真っ白な体には、目の上と耳の端、背中の一部と尻尾だけ灰色の模様。狼を彷彿とさせるシルエットは可愛いとは言えず、ワイルドという表現がしっくりくる。先程、顔を舐められたゴールデンレトリバー並みに大きいのも要因か。今も子供たちと無邪気に遊んでいる愛嬌たっぷりのそのゴールデンとは、対照的な雰囲気だった。

ちょっと気になったので、十メートル以上も離れた所から、さらに観察を続けた。ハスキーが近づけば、子供はあからさまにビクついてしまい、大人は軽く撫でてやるだけで、彼(一方通行はなぜかオスだと思った)からすぐ視線を外してしまう。

トコトコと、ハスキーがこちらに歩いて来て距離が縮まり、さらに目が離せなくなった。

(おいおい…)

454 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/21(水) 23:10:00.71 ID:i0CCvDlZ0

「あのコ、あなたにソックリね、ってミサカはミサカはあなたの心の中を読んでみる」

いつの間にか打ち止めが隣に立って、同じハスキーを目で追っている。彼女が言葉を発するまで、隣にいることに気づかないほど、一方通行はあの犬に見入っていたらしい。
それほど、近づいてきたハスキー犬の目が赤いことに驚いてしまった。白い体といい、まるで一方通行と同じようなカラーリングではないか。

「あァ…」

おどけた風に両目を指さす打ち止めに、素直に相槌を打つ。

「おや、ミサカたちのこと見てるよ」

二人してその犬に視線を向けていたので、さすがにあちらも一方通行達に気づいたようだ。打ち止めは、まだじいっと犬を観察するだけの一方通行の様子を確認してから、床に膝をついて「おいでおいで」と招き寄せた。

「……わんっ」

ハスキーは二、三秒の後に、小走りで駆けてくる。まず両手を広げて迎えてくれた少女の胸に飛び込み、次いで隣の青年を見上げた。

「う〜ん、近くで見ると、ますますのソックリ具合ですなぁ、ってミサカはミサカはあなたの弟ですかとツッコんでみたり」
「アホ、似てンのは配色だけだろォが」
「わう」
「だよねぇ、似てるよねぇ?ってミサカはミサカは犬語を理解してみる」
「あう」
「ねー」
「言ってろ」
455 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/21(水) 23:11:59.59 ID:i0CCvDlZ0

だらんと垂れていた尻尾は、今は勢いよく左右に振られ風を感じるほどだった。行儀よくおすわりをしたハスキー犬は、優しい少女に頭や体を撫でられて、いたくご機嫌である。時々一方通行の顔を伺ってくるが、目を合わせるだけで、青年から手が伸びてくることはない。

「コイツは何で俺の方見てンだ?」
「あなたにもさわって欲しいからだと思う、ってミサカはミサカはそんな分かりきったこと訊くあなたに溜息ついてみたり」

言葉が分からない犬の気持ちなど、どうして分かりようがあろうか。責めるような表情の打ち止めに、一方通行はそう思いながらも反論できない。

「ほら…ふわふわでキモチいいから…」

精一杯冷たい口調でけしかけてみた打ち止めだったが、それでも一方通行が動こうとしないので、彼の手を握ってハスキーの頭へ導く。

「どう?」
「…毛」
「どういう感想ですかそれは、ってミサカはミサカはたった一文字で反応されるとは予想外だと呆れてみる…」
「あうぅ」

呆れたが、ハスキーはやっと構ってもらえて嬉しそうだし、打ち止めが青年の手を離しても撫で続けてあげているので、自然と笑みがこぼれる少女なのだった。
456 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/21(水) 23:19:14.63 ID:i0CCvDlZ0

小さな椅子に座る一方通行の膝の上に顎を置いて、気持ちよさそうに赤い目を細めるシベリアンハスキー。青年は頭だけでなく耳の裏や眉間も掻くように撫でてくれる。いちいち彼の手の方へ顔を押しつけて、危うく膝から顎を落としそうになっている。

(あーらら、すっかり仲良しさんになっちゃって…、ってミサカはミサカは羨む心を押しとどめてカメラマンに徹してみる)

携帯端末のカメラ、ムービーモードで記録。ミサカネットワークに記録。もちろん今この瞬間の光景も、心にしっかり焼きつける。


(足が痺れたな…)

一方通行が立ちあがると、ハスキーは至極残念そうに彼を見上げた。知り合って(?)半時間も経っていないのに、なぜか今は一方通行も犬の心が分かる。

(ンな顔するなって…)

なんとこの青年、犬の表情まで読めるようになってしまった。
すぐに床にあぐらをかいて、ぽんぽんと膝に呼ぶ。間髪いれず、ハスキーがまた顎を乗せに来た。犬は知る由もないが、本来はおいそれとお目にかかれない学園都市第一位の足を枕にするイヌ科イヌ目。リラックスしきってゴロリと転がれば、長い鼻が青年の腹にぶつかった。

(あー、ミサカだってあんなに甘えたことないんじゃない!?ってミサカはミサカは今度真似しようと目論んでみる)

仰向けになった顎の裏、腹もゴシゴシ、カリカリしてやると、つい後ろ脚が反応して動かしてしまうハスキー。自分でかゆい所を掻く時の状況を思い出しているのだろう。
空を切るだけのその足を見て、「くくっ」と一方通行の喉から笑いが漏れる。

「あうわう」
「がうー、ってミサカはミサカは流石にイチャつきすぎだと隠す気もない嫉妬の炎でメラメラ燃えてみる」
「………」

恋人の存在を忘れ、迂闊にも犬に夢中になってしまった。だって思いのほか可愛くて楽しかったもんだから。柄にもない姿を晒してしまった一方通行は、わざとらしく咳払いをして、ハスキーとは反対の膝に手をつく打ち止めの頭をぐりぐり撫でた。

「クン」
「いいのよ、ハスキーちゃん。ミサカは後でオトシマエつけてもらうから、ってミサカはミサカは君のポーズをキープさせてみたり」
457 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/21(水) 23:22:04.49 ID:i0CCvDlZ0

先程ボールをしまった箱の中には、まだ色々なオモチャが収まっていた。もうボールを投げるわけにはいかないので、三十センチほどの綱引き用の紐で戯れてみることにする。

「ふぐぬぬぬぬうぅ……スゴイ力だぁぁぁ、ってミサカはミサきゃん!あわ!ちょ、ブンブンしちゃあぁぁぁあ!うわっ」
「おい、パンツ丸見えェ」
「うぎゃ!」
「わんっ」

奮闘虚しく、引っ張りっこに負けてしまった打ち止め。尻もちをついた拍子に捲れあがったスカートを慌てて直す。頬を膨らませて一方通行を睨み、床に落ちた紐を彼にグイと差し出す。

「俺かよ…」
「だってミサカじゃ太刀打ちできないもん」
「わうわう!」

青年が紐を掲げた途端、ハスキーはガブっと噛みついていざ勝負。一方通行が平均より細いとはいえ、そこはさすがに成人男性。床に座っていることもあり、片手でハスキーと綱引きするのは容易いことだった。

「ハフ、ハフっ」
「おォ、本当にすげェ力だな…」
「ね?ミサカが負けちゃうのもしょうがないでしょ?ってミサカはミサカは自己弁護してみたり」
458 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/21(水) 23:26:22.51 ID:i0CCvDlZ0

こうしてシベリアンハスキーと遊んで過ごすこと、さらに一時間近く。二人と一匹を、小学生ぐらいの兄妹らしき子供達が見ていた。

「ん?どしたのそこのおチビちゃん達、ってミサカはミサカは殊更にお姉さんぶって話かけてみる」
「…かわいいねぇ」
「うん、かわいー。しろーい、おおきーい」
「あぅ?」

打ち止めに声をかけられて、遠巻きに見るだけだった子供が手を繋いだまま近づいてくる。一方通行はハスキーの顔を撫でていた手を止め、首根っこを掴むようにして、犬に二人の方を向かせた。

「……おら、新しい遊び相手だぞ」

小さな子供たちは、最初は怖々と、やがて笑顔で白い体を撫ではじめた。床に伏せたまま、ハスキーの尻尾は大きく左右に動く。ぱったん、ぱったんという音を聞いて、よっこらしょ、と立ち上がる一方通行。

「…そろそろ行くか」
「うん、…行こうか、ってミサカはミサカは後ろ髪引かれすぎだけど気丈に振舞ってみたり」

そっと離れたつももりだったが、部屋を出るところで後ろから既に耳慣れた足音が追いかけてくる。「えーー」という顔でハスキーが二人を見ていた。
軽く犬の頭に手を置いて、一方通行は先に通路に出る。振り返るとドアのガラス越しに、打ち止めが犬にぎゅっと抱きついていた。
このひと時で、すっかり情が湧いてしまっていた。

(そりゃ俺にも言えるか…)
459 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/21(水) 23:30:25.33 ID:i0CCvDlZ0

「あーぁ、かわいい分、別れる時のダメージが大きいね…」

打ち止めのしな垂れるアホ毛が痛々しい。
駐車場に戻ると、外は夕暮れになろうとしていた。一方通行はポルシェの前で、打ち止めの背中を励ますように叩く。

「このペットショップは一月いっぱい…、次の週末までだ」
「…だから?ってミサカはミサカは…」
「来週、もう一回来るかァ?」
「っ、うん!」


一気に上機嫌になった助手席の打ち止め。シートベルトを締めながら、青年も次の休日を密かに心待ちに思う。

「さて、そンじゃ帰るとしますかねェ」
「え?帰るの?家庭教師代のツケは払わなくていいの?」

「………」

そういえば、そんな話を一昨日したような。いや、でも、しかし…

「ヨミカワとヨシカワには、今日はあなたとデートで晩御飯も外で食べるって伝えてあるけど」
「………」

そういうことなら。

「二人ともチクショーって言って、今日はオトナのオンナ水入らずで、近くの和族で飲みまくるそうです、ってミサカはミサカは勝手に予定を組んでいたことを告げてみる。迷惑だった…?」

迷惑なんて、そんなこと思うわけないだろう。

「利子も返せよォ?」
「なんの、あなたこそさっきのオトシマエつけてよね」

ぶぉん、ぶぉん、とうるさいポルシェのエンジン音。マフラーから昇り立つ白い水蒸気が、犬が振っている尻尾に見えないこともない。

460 :ブラジャーの人 [sage]:2011/12/21(水) 23:36:47.17 ID:i0CCvDlZ0
受験勉強とその息抜きをする通行止めの巻 完

犬、大っっっ好きなんじゃぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!特に大きいのが、もふもふもふわふわふふもっふ。
経験上、あいつらなら打ち止めの電気など屁ぇとも思わないんじゃないかな?と思う。震度3でも寝続けるもの。野生など皆無だったもの。

ところで、どこが受験勉強なんでしょうね?いやいや、書いてないところでは励んでますから、きっと。
461 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/21(水) 23:44:25.98 ID:phggzGkS0
やだ・・・一方さんかわいい・・・
462 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/21(水) 23:47:38.59 ID:FCgHI8Kr0
思わず家の愛犬(故)のことを思い出してしまった……
わんこと戯れる一方さんに超癒されました!!
463 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 00:17:55.59 ID:BLbc2uRIO
おつ
なんかいろいろかわいすぎる
464 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 00:37:54.96 ID:80NhFULDO
>>1乙ぱい

主に打ち止めのぱんつがどんな可愛らしいものだったのかが気になった訳で
465 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 00:38:57.10 ID:daT9lS8IO


このスレでのように、いつか原作でも目を細めて笑う一方さんが見てみたいなあ
466 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 01:16:58.52 ID:XzH1S/0vo
おつ!犬と戯れる通行止め可愛過ぎワロタwwwwww
いいなあ和む。ふたりでまとめてもふもふすればいいと思うんだよ!
467 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 02:24:12.45 ID:GJItDq65o
乙!
このハスキーと一方通行がじゃれる姿を妄想して今夜は寝る。
幸せな夢が見れそうだwwwwwwww
ところで>>1は聖☆おにいさん読んでる?
468 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 04:01:22.38 ID:Ily7/L/Mo
確かにでかい方が可愛いよなぁ
ちっちゃい犬も可愛いんだけど、やっぱ飛び掛らん勢いでじゃれてくるデカ犬が可愛くて堪らん
469 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 06:55:33.16 ID:qrb0BypDO
乙ー
そのうち一方さんハスキー買って帰るんじゃないのwwww
470 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 08:27:56.01 ID:rFQOYPwr0
和族ってまさか現実世界で言う和try
471 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 13:28:31.50 ID:4bkkwgvWo
ちょっと我が家のビーグルと戯れて来る!

乙!
472 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 14:33:29.53 ID:NjaL8Wnbo
くそぅ犬いいなぁ…乙でござる。

もーうすーぐしけーんじゅけーんせーい…
473 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/22(木) 14:42:32.85 ID:b0TFRxud0
ハスキー・・・・。

ハス○ー原・・・いや、なんでもない。
474 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 16:32:20.82 ID:SXboVBDIO
>>473
他所のSSネタは自粛したほうがいい。気持ちは分かるけどな


カシャンカシャン
475 :ブラジャーの人 [sage]:2011/12/22(木) 22:09:33.98 ID:vSKh0qY20
>>461 >>463 >>466 自分で書いたものですが、本当にかわいいと思いますww 私も和み、癒されました。
しかし、>>462のように、愛犬(故)の思い出が蘇り悲しいやら楽しいやら… 何年たっても忘れられないねぇ。

>>464 打ち止めは最初からツケを支払うつもりだったので、そりゃ気合の一品で臨んだハズですよ。待ち遠しい春をイメージし、たんぽぽ色の生地に、新緑の緑レースがアクセント。とか。
それか黒、白のレース。←ブラが夏場にスケる可能性があるため、夏以外で積極的に身に着けるから。

>>465 ロシアで一回こっきりですものね。あとは「ギャハ」とか「ニタァ」ですし。

>>467 しまった。聖☆おにいさん好きすぎて、素で勘違いしてしまった。だって田舎だからWATAMIなんて見たことなくて、つい。

>>468 私も犬なら犬種問わず好きです。でも一緒に暮らしたいのは大型犬かな…。同じようなとらえ方で、『おっぱい』もなんでも好きだが、あえて選ぶなら巨乳なだけであり、けして『ちっぱい』を軽んじているわけではないんですよ?おっぱいに左右はあれど、上下はないのですから(と、尊敬する人が言ってた)

>>469 …………………

>>470 そのとおり。詳しくは>>467の漫画参照のこと宜しくお願いします。

>>471 ビーグルと一緒なんですねいいなぁ!!私にとってリア充とは、『平和に愛犬と暮らしている人』かもしれません。

>>472 受験生よ、このスレで嘆く先輩たちを反面教師として気張って下さい。

>>473 >>474 私は投下の中で、さりげなくオマージュとして表現すること数回。気づいてない人多数かも。
あとは上記のように、好きな漫画とかのネタが混ざってたり…
476 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/23(金) 05:42:37.73 ID:DM0x/OpDO
>>475
絵にしてくれる神を所望する!
477 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/24(土) 00:24:10.75 ID:VbJExg2IO
>>476
言い出しっぺの法則というものがあってだな……
478 :ブラジャーの人 [sage]:2011/12/26(月) 01:11:35.70 ID:Sd30CJSi0
聖夜の直後にこんなの投下。ここのクリスマスは先月初めに終了しておりますし。
479 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/26(月) 01:14:23.75 ID:Sd30CJSi0

二月に入り、ここ黄泉川家では番外個体も含めて夕食の後に節分の行事が行われた。今年の鬼は、ジャンケンで負けた黄泉川愛穂である。とは言っても、軽く豆をぶつけてはしゃぐだけなので、それほど苦になる役じゃない。
ちなみに五年前に初めて節分をやった時には、一方通行が鬼になってしまい、彼はたかが豆を数十個ぶつけられるのをしゃくに思って『反射』を使い、大いにひんしゅくを買った。

「さて、鬼は追い払ったし、みんなで豆を食べましょうか」

リビングの炬燵の上に皿を置き、そこから各自豆を数えていく。芳川が、やり易いように蜜柑が入っていた器にも豆を移し、子供達の方へ差し向けてやる。打ち止めと番外個体の手が豆を掴んだあと、億劫そうに一方通行も数えはじめた。

「年の数だけ食べると、その年は病気しないっていうじゃん。ちゃんと数えるように」
「そうよ、特に打ち止めは受験生なのだから、やれることは全てやっておきましょう」
「はーい、ってミサカはミサカは十五個ゲットだぜ」
「おい芳川、科学者がそンな迷信に振り回されていいのかァ?」

480 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/26(月) 01:18:35.47 ID:Sd30CJSi0

豪快に豆を口に放りこみ、さっさと二十一個食べ終えた青年が訊く。ひとつひとつ丁寧に口に豆を運んでいた芳川は、右手に座る打ち止めに微笑んだ。

「いいじゃない、打ち止めが勉強を頑張っている時くらい迷信に縋ったって。それに、こういう象徴的な行いをした…、という事実が、案外身体に良い影響を与えるものよ」

一方通行に次いで、豆を完食した番外個体が、避けられた蜜柑に手を伸ばす。皮をを剥きながら悪気も何もなく、思ったことを言った。

「つーか、ミサカ達って一応書類上の年齢と同じ数食べてるけどさ、出自が出自なだけに、いくつ食べるのが適当なのか判然としないんだよね。毎年感じてるけど」

打ち止めの口が動きを止める。芳川も一瞬戸惑ったような表情を浮かべた。

「それはそうだけど、私はやはり肉体の年齢で自己を定義していくのがいいと思うわ。心は体と密接な関係にあるのだし」
「まーどっちでもいーんだけどね。二十一個でも、五個でも。ミサカはミサカだもん」

打ち止めは手を開いて、残りの豆を見た。十五個取って、残りは六個。すでに九年分を消費してしまった。今更やっぱ五個だよね、と言われても修正が効かない。第一それはしたくない。

「気にすンな、早くそれも食っちまえ」

隣の青年が、少女の心を読んだように助け舟を出してくれた。

「ほーほー、打ち止めは十五歳。番外個体は二十一歳。ほれでいいじゃん。小難しいことは置いといて、むぐ、そうやって実感していけばいいじゃんよ」

行儀悪く豆を噛みながら、黄泉川も少女を後押しする。頷いた少女は、残りの豆を一気に口に入れて噛みしめた。今はもう中学三年生の十五歳として生きていくのだ。そう決めたのだ。

481 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/26(月) 01:20:33.30 ID:Sd30CJSi0

「この行事にあやかって、みんなが健康に過ごせるといいわね。特に打ち止めは、受験が終わるまではくれぐれも効いてくれることを祈るわ」
「自分でちゃんと体調管理するじゃん?一方通行と番外個体も気をつけて見ててあげるじゃんよ」
「ハイハイ分かってますよォ」
「ミサカが見なくても、他の妹達が勝手に色々やるし大丈夫だって」

打ち止めが志望校へのトップ合格を狙っていると知り、保護者達は俄然応援モードになっていた。その理由を訊いた一方通行も嬉しいと思ったが、それは黄泉川、芳川も同じだったらしい。一方通行が不在の時には、芳川も少女の勉強中に家庭教師を買って出ることがあるそうだ。もっとも、いざとなったらミサカネットワークで容易に調べられるので積極的ではない。

「なんだかみんなに心配されて感激ってミサカはミサカは気合いを注入してみたり」
「それはいいことだけど、無理にプレッシャーに感じることないじゃん?打ち止めが出来る範囲で頑張れるとこまででいいじゃんよ」
「うん。暖かい声援を受けて、ミサカは静かな闘志を燃やしてみる。めらめら」
482 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/26(月) 01:22:38.83 ID:Sd30CJSi0

深夜、リビングの炬燵でいつもどおりに問題集に向き合っていた打ち止めの元に、番外個体がやってきた。今夜は黄泉川家に泊まっていくとのことで、お肌のお手入れを終え、もう後は寝るだけという状態だ。荒れやすい指先にクリームを刷りこみながら、少女の横へと体を潜り込ませた。

「調子はどうよ、最終信号」
「ありがと、大丈夫だよ、ってミサカはミサカは番外個体の気遣いに笑顔というお礼で応えてみたり」
「別に、あんだけ期待されて実際に一位合格できなかったらカッコ悪すぎると思ってさ」
「やっぱりヨミカワもヨシカワも期待してるかなぁ…、ってミサカはミサカは宣言したことを少しだけ後悔してみる…」

一方通行に宣言した翌日、さっそく保護者達にも「頑張ってトップを取るね」と告げた。その場はただ「へぇ」で済ませられていたが、どうやらその後一方通行から何か聞いたらしく、色々と勉強の世話を焼かれるようになったのだ。

(きっとあの人が、ソギイタと話した時の事喋ったのね。ヨミカワ達、ミサカの考えてること喜んでくれてるんだな…)

(体育)教師の黄泉川、学園都市第一位である一方通行、そして芳川も一流の科学者である。そんな家族と同居していて、不甲斐ない成績は残せないという打ち止めのやる気に、少なからず感動を覚えた保護者達であった。

483 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/26(月) 01:26:13.60 ID:Sd30CJSi0

「今はナニやってんの?…国語か」
「漢字だよ。番外個体はこれ読める?」

問題集を覗き込む番外個体。打ち止めは妹の前に本をずらし、一か所をシャーペンで指し示した。

「…しののめ、はえ、こち…」
「おぉ、せいかーい」
「ナメんなよ、中学生」

しばしお勉強に付き合っていた番外個体だったが、不意に問題集を打ち止めの前に返して立ち上がった。わざとらしくあくびをひとつ。

「ふぁー…、ミサカは今日もバイトで疲れたから寝るよ。そろそろ部屋の暖房も充分効いた頃だろうし。最終信号が来るまでつけとくから消しといてね」
「分かった。ミサカはまだ社会科もやりたいから…。おやすみ、番外個体。付き合ってくれてありがとうね」
484 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/26(月) 01:28:30.00 ID:Sd30CJSi0

番外個体が退室して数分後、いつも最後に風呂に行く一方通行がリビングに入ってきた。

「やってるか?」
「やってるよ先生、ってミサカはミサカは真面目な子」

一方通行はタオルで髪をぬぐい、それを肩にかけて、さっきまで番外個体が座っていた少女の横に腰を落ち着けた。いつもの、夜のお勉強の時間である。
保護者達も部屋に戻り、二人きりのリビングでこうして過ごすのが、最近のお決まりだった。
別に付きっきりじゃなくても、打ち止めの自習に大きな支障は無いが、それでも一方通行は家庭教師を務めている。打ち止めも、彼が横にいるとペンが進むと言って大いに甘えていた。

「今ね、番外個体もミサカの勉強みてくれたんだよ」
「……ほォ」
「先生がたくさんいて、ミサカは幸せ者ですなー、ってミサカはミサカはより一層励んでみたり」
「………」

番外個体は、一方通行が風呂から上がる頃合いを見計らって席を外したのだろうか。邪推かもしれないし、本当に偶然かもしれない。

(ま、もォどっちでもいいか)

考えても詮無いことだ。思考を切り替え、一方通行は彼女の解く問題に集中しはじめた。
485 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/26(月) 01:31:02.73 ID:Sd30CJSi0

一時間後、きりのいい所まで進んだので休憩を取ることにした。二人でお茶を飲み、背伸びをする。一方通行はそのまま後ろに倒れ、絨毯に寝転がった。

「ミサカもゴロンと失礼しまーす」

青年の真似をして少女も体を横たえる。自分の頭の下に一方通行の腕が宛がわれるであろうことに、いささかも疑いを持たない。

「炬燵で寝ないように気を付けなきゃね、ってミサカはミサカは二人してヨミカワに怒られた数日前を思い出してみる」
「…あれは一時間だけ仮眠を取るつもりだったンだ。たまたまアイツが夜中にそれに遭遇しただけだ」
「とても言い訳くさい。…今日はこれぐらいで終わりにしておこうか?」
「そォだな…」

勉強が終わっても、一方通行が部屋へ戻る様子はない。打ち止めも。

少女はよいしょ、よいしょ、と体を動かし、青年の胸に顔を寄せた。反対側にあった腕に肩を抱かれて、自然と笑みが浮かんでしまう。こうして、何も言わずともお互いの心が分かる瞬間がたまらなく嬉しい。

「受験が終わったら、あなたにどんなお礼をすればいい?ってミサカはミサカはリクエストを募集してみる」
「礼が欲しくてやってるワケじゃねェよ」

囁くような会話。くぐもる声が体に響く。

「じゃあミサカが勝手にあなたに何かするね」
「好きにしろ…。くれぐれも怪我とかすンなよ」
「大丈夫です、ってミサカはミサカは一応言っておきます」
「一応かよォ…」

486 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/26(月) 01:33:11.30 ID:Sd30CJSi0

今夜は番外個体がいるので、打ち止めはきっと自室で寝るはずだ。だから、もう少し炬燵でくっついていたいと思う一方通行の目に、ある物が映る。夕食後に、黄泉川にぶつけた物の拾い残しであろう大豆だった。
それを見たら、豆の数に動揺していたような打ち止めの様子を思い出した。

「オマエ、そンなに年の差が気になるか?」
「……、うん」

かなり間を置いて、打ち止めが腕の中で頷く。

「焦らなくていいって言っただろォが…」
「…うん。でもミサカの心が自然と悩んじゃうの、ってミサカはミサカは乙女心に翻弄されていることを素直に明かしてみたり」
「………」
「あなたとこうしていられるようになった後も、時々なんだか焦っちゃって…。早くオトナになりたいよ。子供でいたくない…」

打ち止めが一方通行のために背伸びすることを嬉しいと思う青年だったが、そこには同時にもどかしさも僅かに混ざっている。どうして大丈夫だと完全に信じられないのだろうか。
それは一方通行が渡している証明や誓いが足りないからである。彼も薄々分かってはいた。

(もうちょっと、言わなきゃだめかァ…?)
487 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/26(月) 01:38:14.42 ID:Sd30CJSi0

青年は枕としていなかった腕で、少女の背中を撫でた。

「コドモねェ…。ふゥン…?」
「?あ、ちょっと…」

幾度か往復し、やがて上着の中、パジャマの中に手を滑り込ませる。滑らかな背中。中心の背骨を中指、薬指でなぞり、ブラジャーがされていなにことを確かめる。

「最近着けてねェのは何でだ?」
「…その方があなたが喜ぶかなと思って…ってミサカはミサカは寝苦しいという理由もあると付け足してみたり」
「…だから、子供は普通そンな事考えねェってンだよ」

風呂上がりにブラジャーを着けるのを止めたのが、一方通行のためだという。少々、いや、かなり気まずい。しかし「触りやすい」と、素直に肯定する自分がいることも確かである。
お言葉に甘えた青年は、背中にあった手を腹へと持っていく。

期待か躊躇いか、少女の体が弓なりに反れた。

(触りやすくなるだけなンだが)

人が歩く時のように、人差し指と中指を人間の足に見立てて登らせていく。

「……あ、あなた」
「なァ…、どォこが子供だよ」

脇腹を床につけて寝る打ち止めの胸は、右と左がすっかり寄せ合わされている。もはや谷間という表現では足りないほどに密着した肉と肉の間に指を埋めていった。胸板にチョップをするように手を当てたのに、小指、薬指、中指、人差し指が完全に閉じ込められてしまう。心地よい圧迫に、口の端が持ち上がる青年。

「つ、つまりミサカは既にあなたキラーな魅惑のレディーってことなの?ってミサカはミサカはあなたの言いたいことを代弁してみる」
「どォしてそう両極端な思考なンだよ。立派なオトナです、とは言えねェが、『コレ』で子供って無理があンぞ」

余っていた親指で、硬さを持ち始めていた頂きをくすぐってやる。

「や…、ぁ…はぁ」
「子供はそンな声で鳴きはしねェ。ったく嬉しそォな顔しやがって…」
「っ、いじわる〜、ってミサカはミサカは」
「こら声気をつけろ…。……俺はそォいうオマエがいい、って意味だ」
「あ、そ、うですか。ありがとう…ございます?」
「だから、いちいち落ち込ンだりするな…、打ち止め…」
「ん、…ん」

炬燵テーブルの上に置かれたままのお茶がすっかり冷えるまで、一方通行は得々と、キスと指で説いて聞かせるのだった。
如何に自分が、現状のままの少女に満足しているかを。

488 :ブラジャーの人 [sage]:2011/12/26(月) 01:42:16.06 ID:Sd30CJSi0
節分の日の通行止めの巻 完

もうすぐ春ですね。
あーもう、おっぱいの部分だけスラスラ書ける。自分の変態性を認識させられて、ガッカリしてしまう…
489 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 01:45:44.93 ID:I1Y3ooOIO
?「天国から乙なのよな」

ところで黄泉川と芳川の豆の数はやっぱ40個以jうわなにをするやめ
490 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 01:50:59.30 ID:3Byws6VEo
一方さんがおっぱい星人なおかげでしょっちゅう打ち止めのおっぱいを堪能できるので幸せです!
アザーッス!


……別に悔しくなんかないやい
491 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 02:31:51.12 ID:fOu3nQBHo
乙。
受験生のつもりだったが、いきていくためにソルジャーにならなきゃいけなくなっちまったぜガッディム!! 俺、打ち止めみたいなお嫁さんを貰えたらあともう少し生きていける気がするんだ…
492 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 02:32:30.71 ID:fOu3nQBHo
乙。
受験生のつもりだったが、いきていくためにソルジャーにならなきゃいけなくなっちまったぜガッディム!! 俺、打ち止めみたいなお嫁さんを貰えたらあともう少し生きていける気がするんだ…
493 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 16:24:07.37 ID:qxoJBaQIO
>>492
ようこそ、歓迎するぜ
494 :ブラジャーの人 [sage]:2011/12/27(火) 02:42:50.62 ID:X7yFh/RV0
>>489 やっぱ死んでしまったのですか… 
黄泉川先生と芳川さんて同じ年でしょ? で、原作ではまだ二十代じゃなかったっけ。五年後は女として一番油がのりきった美味しい頃なのでは。

>>490 おっぱいと打ち止めと通行止めが好きだから… どうしても一方さんがおっぱい星人になってしまうんですよね。悔しかったら泣いてもいいのよ?

>>491 >>493 「ガッディム!!」じゃないでしょ。「ようこそ」じゃないでしょ。ソルジャーは嫁の来手がない職業にもほどがあります。早く転職できますように。
 
よく考えたら、今年の更新はあと一回かも。まさか年をまたいで書き続けるハメになろうとはな…
495 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/27(火) 03:10:29.51 ID:ekcOE5NDO
>>1乙ぱい

年を跨いでハm…ぅゎなにをするーっ!
496 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/27(火) 16:48:09.69 ID:NhtzUbqIO
>>495
?「卑猥な表現は慎むように」
497 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/27(火) 17:32:35.82 ID:t5G5rwgK0
乙です

ところでパフパフってもうしてたっけ?
498 :ブラジャーの人 [sage]:2011/12/28(水) 03:03:14.34 ID:XT1TelJe0
>>497 パフパフか…。ここでは書いてませんが、……やってるんじゃねぇの?日常茶飯事に。と思います。
いや絶対やってるよねこのおっぱい星人なら。

では投下します。
499 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/28(水) 03:07:02.33 ID:XT1TelJe0

「受験票持ったか」
「持ったよー」
「筆記用具は?」
「えーと…あるよー」
「弁当はァ?空腹で午後か」
「あるある。ヨミカワが作ってくれたトンカツ弁当があるってば」
「……そォか…」
「あの、もう行っていいかな?ってミサカはミサカは終わらない忘れ物チェックに本番前だというのに疲労を感じてみたり」
「ン…、じゃ終わったら呼べ」

ここは打ち止めが受験をする高校の来客用駐車場。そこに止めたポルシェの中で、送って来た一方通行と、送られてきた打ち止めは話をしていた。あと一時間で入学試験が行われる。打ち止めの体が冷えないようにと、暖房を効かすためにエンジンを切らずに停車しているのでやかましい。後ろの壁に音が反響しているし。

「こんなに家から近いんだから大丈夫なんだけど……。分かった電話するね、ってミサカはミサカは応援してくれるあなたやヨミカワ達を励みに頑張ると誓ってみる」

うるさくてみんな見てるから早く行って、と急かされ、一方通行はマンションへ帰った。誰も居ない自宅に戻り、テレビをつけて……消す。缶コーヒーを冷蔵庫から取り出して、一口飲んだだけで置く。そういえばまだ暖房をつけていなかったので寒い。

(………落ち着かねェ)

おかしい。打ち止めの高校受験なんて、最初は全然気にしていなかったのに。いつの間にやら番外個体も含めて、がっちり応援モードになってしまった。昨日は珍しく、その番外個体からメールが来て「明日は試験会場まで送って行けよ親御さん。あゴメン彼氏さんかwww」と言われた。ムカついた一方通行だったが、もとより送迎はするつもりであった。

(あと少しで始まるな)

時計を確認してから、つけたばかりの暖房を消し、青年は自室へ。もう考えるのは疲れるから、寝る。

500 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/28(水) 03:12:02.83 ID:XT1TelJe0

(わーぉ、あの人との勉強ライフのおかげかな?ってミサカはミサカは走り出すペンの滑らかさに絶好調を実感してみたり)

冬休み明けからの勉強が成果を出しているのか、試験に臨む打ち止めは順調に問題を解いていった。周りではライバル達が、鉛筆を止めて熟考する気配がするのに、少女はスラスラと澱みなく回答を記入していく。

(これは…もしや、マジで主席合格四日前?)

残り時間があと三十分もあるのに、全て解いてしまった数学のテストを見つめる少女。いくら見直しても、間違えている箇所はなさそうだ。

(国語も社会も、一個か二個間違えてただけだもんね。あと二つ、お昼の後に頑張れば本当にミサカがトップ合格かも!)

一科目終わり休憩時間になる度、待ってましたと言わんばかりに、世界中から妹達の答え合わせが始まる。今のところ二科目で三か所の不正解があるだけだった。

(みんな、このテスト見てウズウズしてるのかなぁ。ミサカは完璧だぜ、と悦に入ってるけど、『上位個体そこぉぉぉぉ!間違えてるぅぅぅ』って悶えてたりして)

一方通行達と同じく打ち止めの高校受験を、心配し、応援する妹達に採点された二科目の結果は至極順調である。自分を奮い立たせるために掲げた『トップ合格』が、現実の物となってきて、そうとなれば落ち着いていた心が急にソワソワしてきてしまう。

(もし本当にトップだったらどうしよう、ってミサカはミサカは……今は試験に集中するべきだからと頭を振って思考を切り替えてみる)

チャイムが鳴り、解答用紙が集められる。早速ミサカネットワークに下位個体からのアクセスが集中し始めた。
501 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/28(水) 03:15:03.10 ID:XT1TelJe0

『お疲れ様です上位個体、とミサカ一〇〇三二号はもっともらしくねぎらいの言葉を述べてみます』
『今の数学のテストの答え合わせですが、とミサカ一二七八四号は』
『待って待って待って!ってミサカはミサカはストーップ!!制止を求めてみたり』
『何ですか?とミサカ一九七三六号は眠い目を擦りながら要求に応えます』
『あ、そっち今真夜中なんだね。わざわざ起きて見守らなくても大丈夫だよ?ってミサカはミサカは恐縮してみる』
『さっきから他のミサカたちもそう言っているのですが聞きゃしねぇので放っておいて下さい、とミサカ一〇〇三二号はそれよりも、上司が我々を止めた理由は何かと尋ねます』

三科目終わり、これから一時間のお昼休憩となる。周囲では、昼食を机に広げる者、教室から出て行く物、参考書やノートを開いて最後まで勉強に励む物など様々だ。
数人の生徒が、座ったまま何もしようとしない打ち止めを不思議そうに見ていたが、今はライバルに気を取られている場合じゃないので、すぐ視線を元に戻す。
502 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/28(水) 03:19:14.70 ID:XT1TelJe0

『ミサカの試験の結果なんだけど、もしかしたら本当に主席合格できそうじゃない?』
『そうですね、現にこの数学の』
『だぁぁぁぁ!!言わないで緊張する!ってミサカはミサカはプレッシャーを回避するために、みんなに家に帰るまで答え合わせを待ってほしいとお願いしてみる!』

ガバ、と頭を抱えて机を揺らす少女に注目が集まる。ナニあの子…と不審そうな表情の男子生徒が、その直後頬を染める。その数三人。

『なるほど。このヘタレが、とミサカ一六六六九号は度胸の無い上位個体を可愛く思いつつ、希望に添うつもりだとを報告します』
『でしたらいっそ、試験が終わるまでは感覚共有を切っておいては?ミサカ達も気になってしまうので、どうしても喋りたくなりますから、とミサカ一二七八四号は進言します』
『えー、でもー、終わったらすぐ結果知りたいもん。このまま感覚共有は続けて、みんなはミサカにだけ何も言わないでおいて?ってミサカはミサカは都合のいいお願いをしてみる』
『このワガママ上司め。ミサカ達にだけ我慢と忍耐を求めやがりましたよ、とミサカ一〇〇三二号は焦らしプレイなど、どこで覚えてきたと追及します』

試験の結果は、四日後に発表される。それまで待たなくても、こうして下位個体にチェックしておいてもらえば、今日の試験が終了次第、自分の点数が分かるので、ある程度見当がつく。

『そんなこと言わないで、ってミサカはミサカは人生の一大イベントだから多少の無理は聞いてもらえるであろうことを見越してみたり』

結局『しょーがねーなー、とミサカ○○号は…』と、妹の要望を承諾した数千人の姉達なのであった。

503 :ブラジャーの人 [sage]:2011/12/28(水) 03:24:06.64 ID:XT1TelJe0
とりあえずここまで。

さりげにミサカ妹初登場。MNY内だけど。
学習装置やMNYを悪用して入学試験を受けちゃダメですからね、『普通』に暮らす打ち止めは、普通に頑張って勉強したエライ子。

年内もう一回更新できるかもしれません。
504 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/28(水) 04:43:23.66 ID:0cQ5ox0IO
>>503
>『普通』に暮らす打ち止めは、普通に頑張って勉強したエライ子。

中学生でありながら、性的に頑張ったり開発されたりもしているエロイ子は普通と言って良いものか……乙
505 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/28(水) 05:47:27.70 ID:sESVkB9Oo
MNYだと・・・・・・
506 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/28(水) 06:05:06.26 ID:JcONjt+Fo
ミサカネット……ネット……?

おつ!
507 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/28(水) 06:15:16.57 ID:1B1cOFBIO


え?お前ら知らないの?
ミサカニューヨーク
自由のミサカとか居るんだぜ?
508 :ブラジャーの人 [sage]:2011/12/28(水) 08:53:23.98 ID:Uq3McH4v0
>>504 やべ反論できない。

>>505 眠くて。なんかおかしいと思ったのよ… 早く、優しさのグラサンを心にかけて。

>>507 イイヨ イイヨーアリガトー

あーこれを今年最後の更新にするのは切なすぎるので、やはりあと一回やりますよいお年を。
509 :ブラジャーの人 [sage]:2011/12/31(土) 15:04:45.87 ID:iouLPri10
>>507 よく考えたらミサカニューヨークなんて、超楽しそうですね。行きたい。住みたい。自由のミサカ、登りたい。

今年最後の更新の時間でございます。
510 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/31(土) 15:07:43.44 ID:iouLPri10

「おぉ…さすがヨミカワのトンカツ…。作ってから数時間が経っているというのにカリっとサクっとジューシー。学園都市の炊飯器の力も関係してるのかなぁ…」
「御坂、カツを見つめてうっとりとは余裕じゃのう。国、社、数、どうだった?」

打ち止めがやっと机に弁当を広げた頃、同じ中学に通うクラスメイトの女子が話かけに来た。彼女はもう昼食を終えて、打ち止めの様子はどうだろうと、他の教室から見に来たらしい。

「んむんう」
「食べてから返事しなよ。つーかまだ食べてなかったとは驚きだよ」
「……ミサカは絶好調だよ!このまま逃げ切って…ぐふふ、一位合格も夢じゃないかも、ってミサカはミサカは野望実現が近いことを明かしてみたり…」
「まじでー?急に勉強に力入れ出したと思ったら本当に…?まぁ、この偏差値の高校なら、御坂は元から余裕だしね」

打ち止めはパクパクと口を動かし、お弁当を消化していく。横で開けられた口に、なけなしの卵焼きを与え、容器を片づけた頃には、お昼休憩の残り時間はあと十分になっていた。

「ほら、もうすぐ次のテストが始まるよ」
「あ、やばい。戻るね、お互いがんばろーぜ」
「おうよ!ってミサカはミサカは気合いの返事で別れを告げてみる」

(あなた…、ミサカはやるよ。あなたに家庭教師をやってもらったんだもん、ってミサカはミサカは愛の力でこの試練を乗り越えると誓ってみる…!)
511 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/31(土) 15:10:17.33 ID:iouLPri10

昼食後の二科目も、自分ではバッチリ出来たと思う打ち止め。妹達は彼女の希望どおりに、家に帰るまで答え合わせを待ってくれている。今すぐ結果を知りたい気もするが、このまま試験会場に留まってしまうほどネットワークで盛り上がっても困るし、とにかく一番先に一方通行に知らせてあげられるよう、家に帰るまで我慢するのだ。

(さーて、あなたー終わったよー)

携帯端末で一方通行のお迎えを呼び出そうと電話を掛けたら、ワンコールで繋がって驚く。

「わぉ早い。あの、あなた試験終わったから」
『もォ駐車場にいる…』
「うそ!?あ本当だ!階下に見えるは我が家のポルシェちゃん!ってミサカはミサカはダッシュであなたの元に」
『馬鹿走ンじゃねェ』

教室の窓からは来客用の駐車場が見え、そこに恋人の愛車を発見した打ち止めは鞄を引っ掴み昇降口へと駆けだした。『急がなくていいから歩け!』「はーい」で通話を終わらせ、早歩きで外へ。

(ミサカのこと心配で、先にお迎えにきて待っててくれたんだなぁ、ってミサカはミサカはあの人の思いやりにジーンとしてみる)

「お待たせ。ありがとうあなた」
「別に。よく考えたら終了時間は分かってるからな」

「寝る」と決めて部屋に籠った一方通行だったが、どうにも打ち止めのことが気にかかって安眠できなかった。じっとしていられなくて、こうして先にお迎えに来てしまったのだ。
打ち止めがシートベルトを締めたのを確認し、一方通行はポルシェを発進させる。
512 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/31(土) 15:12:28.69 ID:iouLPri10

「……でェ?試験の出来はどォだったよ」
「えへへー、ってミサカはミサカはこの笑顔でよくできましたと語ってみたり」
「ほォ…、じゃあ自信はあるわけだ」
「うん、家に帰ったら下位個体が答え合わせをしてくれるの」

なるほど、ミサカネットワークか。と、一方通行が赤信号で停車中に納得していた時、ふと気配を感じ取ってルームミラーを確認した。そこに映っていたものは…

「はァ?番外個体ォ?」
「え?番外個体がどうかした?ってミサカはミサカはネットワークを繋いであの子を確認してみたり」
「なンかこっちに向かって爆走してるンだが。後ろ見てみな」
「え?」
「あ、もう横ォ」
「えぇぇぇ!?」
「最終信号ぁぁぁー!!」

自宅のマンションはすぐ近くなので、ポルシェのドアはロックしていなかった。助手席ドアがいきなり開けられ、目を爛々と輝かせた番外個体が体を屈めて車内に頭を突っ込んできたではないか。
明らかに興奮して様子のおかしい彼女が、打ち止めの頭を撫でまくる。

「すごいよえらいよ頑張ったねぇぇぇ!!もう絶対主席合格だよ!」
「ふぉぉおおぉぉ〜!?ちょっと落ち着いて番外個体ここは車道だよ!ってミサカはミサカは頭がガクガクあわわわわわ」

いつからポルシェを追い掛けていたのだろう。番外個体が、半ば混乱状態で浮かれている。
513 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/31(土) 15:18:36.54 ID:iouLPri10

『上位個体、番外個体が暴走していますが大丈夫ですか、とミサカ一三五七七号は…間に合いませんでしたね』
『あぅあぅこれは一体どういうことなの!?ってミサカはミサカはみんなに聞いてみるっ』
『試験終了まで命令どおり待機していた我々なのですが、上位個体の成績がすこぶる良かったものですから…』
『もうウチの上司がトップ合格確実じゃね?とネットワーク内で盛り上がりました、とミサカ一九七三六号は…もうだめだ、寝ます…おめでとうございま…』

打ち止めの試験結果を受けて、ちょっとしたお祭り状態になったミサカネットワーク。その感情の影響を受けた番外個体がこうして暴走してしまったのであった。

『今、一〇〇三二号と一九〇九〇号がそちらに向かっています。ご安心ください、とミサカ一三五七七号はすでに対応策を取っていたことを報告します』

そろそろ青信号に変わってしまう。ポルシェの後続車のドライバーが、何事かと窓から顔を出していて、このままでは危険だと、一方通行が電極のスイッチに手を伸ばそうとした時…

「この末っ子が、抜け駆けとはいい度胸じゃねーか、とミサカ一〇〇三二号は番外個体の右腕を拘束します」
「律儀に上司の命令に従って損しました、とミサカ一九〇九〇号は文句を言いながら左腕を拘束します」
「はぁーなぁーせぇ〜!もっと最終信号褒めるぅぅぅぅぅぅ〜!!撫でるぅぅぅぅぅ!!」

髪の毛ボサボサの打ち止めと、茫然とする一方通行を残し、妹達三人は、揉みくちゃになりながら歩道へ移動していった。

後続車のクラクションに我を取り戻した打ち止めは、あわててドアを閉める。一方通行は百メートルほど先の路肩に駐車し、打ち止めと共に車外に降りた。

「どォやら目標は達成できそうだな。番外個体の様子からすると」
「そうみたいだね、ってミサカはミサカはあの子もすごく応援してくれてたんだと喜びを実感してみたり」

一方通行と打ち止めが、路上でこんがらがって息を上げる一〇〇三二号、一九〇九〇号、番外個体の隣に辿り着いた時には、末っ子は少し落ち着きを取り戻しているようだった。
514 :ブラジャーの人 [saga]:2011/12/31(土) 15:21:19.27 ID:iouLPri10

「番外個体、もう大丈夫?ってミサカはミサカはお揃いのようにボンバーなヘアスタイルの番外個体を起き上がらせてみる」
「……うん」
「ふぅ、手こずらせやがって、とミサカ一〇〇三二号は汚れた服をはたきます」
「番外個体も砂だらけですよ。年頃の女性にあるまじき姿です。早く身なりを整えては?とたしなめつつ、ミサカ一九〇九〇号はお手伝いしましょう」
「……うん」

恥ずかしかったのか、疲れたのか、やはり一方通行に暴走されたシーンを目撃されたのが堪えたのか、番外個体は消沈した様子でノロノロと立ち上がった。

年齢や身長、あと胸のサイズに差異はあれど、大騒ぎしていた同じ顔の女性が四人も揃っているので、通行人がこちらを注視している。とにかく場所を変えようと、一方通行は周囲に手ごろな店舗か施設はないかと見回した。

「一方通行、あそこはどうですか?とミサカ一〇〇三二号は料理が特に美味しいと評判のカラオケボックスを指さして提案します」

青年の思考を読んだのか、一〇〇三二号が個室のある施設に向かおうとする。

「おい、別にカラオケじゃなくてもいいだろォが」
「ミサカはポテト盛り合わせとピザとタコ焼きを所望します。摂取したカロリーはその場で歌って消費すればよいのです。合理的な判断だぜ、とミサカ一九〇九〇号はたかる気満々で一方通行を振り返ります」
「聞けよオマエら」

番外個体を両脇から抱え、一〇〇三二号と一九〇九〇号はさっさと歩を進めていく。打ち止めは困った笑顔で青年を見上げ、「諦めようよ」とコートの裾を引っ張る。
一方通行は大きな溜息を吐いた。
515 :ブラジャーの人 [sage]:2011/12/31(土) 15:25:27.56 ID:iouLPri10
とりあえず今年はここまで。

また来年もよろしくお願いします。では今度こそ、

良いお年を。
516 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2011/12/31(土) 15:34:25.34 ID:1Cgf9JcM0
乙!!ワーストたんも可愛いなぁ……
来年も二人のイチャほの楽しみにしてます。
>>1も良いお年を。
517 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2011/12/31(土) 15:41:35.82 ID:Gmw17ZqEo
乙!素晴らしきおぱい成分をありがとう!来年も楽しみにしてます

そして
>「はぁーなぁーせぇ〜!もっと最終信号褒めるぅぅぅぅぅぅ〜!!撫でるぅぅぅぅぅ!!」
のワーストに萌えた
518 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2011/12/31(土) 21:34:17.70 ID:nH6BgH0IO
>>1乙!

拘束された状態でもがくワースト可愛いなw

良いお年を。
来年もよろしく!
519 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2012/01/01(日) 18:36:51.83 ID:4+4RC/2xo
乙。ワーストかわいいよワースト。
520 :ブラジャーの人 [sage]:2012/01/02(月) 02:59:26.19 ID:vsszXONb0
明けましておめでとうございます。
〈友人とシャアについて熱く語り合う〉というわけの分からない初夢でした。なぜ通行止めでなくシャア?それほど詳しくもないシャア?

それでは続きを投下します。
521 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/02(月) 03:05:03.87 ID:vsszXONb0

一〇〇三二号があっという間に受付を済ませ、一方通行と妹達四人はカラオケボックスの一室に腰を落ち着けた。受付の店員がそっくりな女性達に驚いていたが、彼女達にとっては慣れっこなのか、我関せず、な態度だったので、一方通行が「…姉妹だ」とボソリと呟いてフォローを入れておいた。

(さァて、ここで番外個体の回復を待って、さっさと帰りたいところだが…)

「はい、そうです二人前です、タコ焼きも。あと野菜スティックとポテチとメロンソーダと……、一方通行はコーヒーでいいですね。コーヒーを下さい」

内線電話で次々に食べ物を注文する一九〇九〇号。隅の椅子に座って項垂れる番外個体。そして…

「わーミサカそんなにパーフェクトだったの!?ってミサカはミサカはテストの点数を聞いて舞い上がってみたり!」
「はい。五教科で不正解の回答が四個。数学と理科は満点で、合計点は四百九十二点です。おそらく上位個体が主席合格と見て間違いないかと、とミサカ一〇〇三二号は試験結果を具体的に報告します」
「やっほぉぉぉー!あなたミサカ四百九十二点だったよー!ってミサカは」
「やかましい聞こえてるっつゥーの」

一〇〇三二号に自分の点数を教えてもらった打ち止めは、一方通行の横に勢いよく座る。靴を履いたまま正座し、無理やり青年の手を取って、一緒に「バンザーイバンザーイ」と喜んだ。
一方通行は三度目の万歳で右手を振り降ろし、少女の頭へチョップを食らわせる。

「はぅ!」
「オマエも興奮してどォする。見ろ、番外個体が震えてるじゃねェか。大概にしとけよ」
「あっ、いけない、いけない…」

打ち止め、今度は妹の横へ。慌ただしい限りである。

「ごめん番外個体、せっかく落ち着いてたとこだったのに、ってミサカはミサカはぜぇぜぇする番外個体を気遣ってみる」
「……だ、大丈夫。でも早くネットワーク静かにしてほしいぃぃぃ…」

こうして打ち止めが番外個体の肩をさすっている時に、丁度飲み物、料理が運ばれてきた。一九〇九〇号が入店前に食べたいと言っていた物より、明らかに多い。一方通行はコーヒーを手に取り、今日何度目かの溜息をついた。

(なンでか知らねェ俺が奢る流れだったよな。遠慮ってモンが無いのかねェ)
522 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/02(月) 03:11:56.86 ID:vsszXONb0

「はい、ウーロン茶でいいかな?飲む?ってミサカはミサカは番外個体に水分の接収を勧めてみる」
「うん、……ねぇ」
「なに?」
「よかったね、試験。宣言どおりじゃん。これで恥かかなくて済むよ」
「……えっへへー。ありがとー!番外個体も勉強みてくれたもんね」

番外個体は頭を振った後、適当に手櫛で髪を整える。そしてテーブルの向こうから自分達のやり取りを見守る一方通行と視線を合わせ、ニヤァ、と口元を歪ませた。彼女は小さな姉の両頬を軽く摘まんで引っ張る。

「やーんにゃににゃに?ってミハカはミハカは…」
「まったく、最終信号の家庭教師は第一位でしょぉー?ミサカはちょっとしか先生やってないし。ほらぁ早くあの人に『先生ぇ、ミサカの感謝のキモチ受け取ってぇん』って言ってきなよ。セーラー服上だけ着てスカーフゆるめて突撃しなよ」

番外個体が打ち止めのスカーフを抜き取り、ひらひらと一方通行に向けて見せびらかす。青年はすかさず野菜スティック(にんじん)を投げつけた。

「お、ビタミンとカロチンだアリガトウ。お姉ちゃんも食べる?」
「あーん」

にんじんを空中でキャッチした番外個体は、一本を仲良く打ち止めと半分こして食べる。やっと本調子に戻ってきたようだ。こうして番外個体にからかわれるのは毎度のことだが、それでも一方通行の眉間に皺がよらなくなる日は来そうにない。
そんな不機嫌顔の学園都市第一位に、一〇〇三二号が躊躇なく話しかける。

「いいのですか一方通行」
「あァ?何が」
「上位個体が通う高校はセーラー服ではありませんよ。ブレザーです、とミサカ一〇〇三二号は衝撃の事実をお伝えします」
「セーラー服好きという特殊嗜好を持つあなたにとって、これは上司への想いが薄れるきっかけになりはしませんか、とミサカ一九〇九〇号は心配します」

大人しく曲目を選んでいたはずの一九〇九〇号まで、大変失礼な認識でもって会話に割り込んできた。一方通行の眉間に、さらなる皺が刻まれる…

(おぉ、今ならあの人の眉間にこのポテチが挟めそうだな、ってミサカはミサカはコンソメ味を堪能しながら事態を静観してみたり)

523 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/02(月) 03:16:22.14 ID:vsszXONb0

「なにがどうして俺がそンなありもしない嗜好を持ってることになってンですかねェェェ!?」

大きくはないが、充分に恐ろしいと思わせる声を上げる一方通行を、番外個体が活き活きとした表情でさらに煽る。

「あっれー?違うの?第一位は最終信号の翻るセーラーと際どく捲れあがるスカートに欲情してんじゃないの?オトナとコドモの狭間で妖しくゆれるおっぱいを包むそのセーラー服に。ぎゃっははははははー!」
「オマエいい加減にしねェと尻を百回叩くぐらいじゃ済まねェぞ」
「あぁーん、ミサカの豊満ボディのドコをぺんぺんする気?おっぱい?やっぱりおっぱい?」
「そしてやはり巨乳好きという疑惑も本当だったのですね、とミサカ一〇〇三二号は一九〇九〇号と共に確信します」
「だから『も』ってなンだよ!さっきの特殊嗜好と併せてよォ!違うって言ってンだろォが」

ここまで静観していた打ち止めが、さすがに恋人が可哀そうになってきたので、上位個体らしく妹達をたしなめる。
まず、番外個体のおでこをちょっと強めに叩き、さっきから失礼極まりない姉二人には、ミサカネットワークを使って負荷をかけた。

「いったぁ〜」
「うぐぅ、とミサカ一〇〇三二号は頭を抱えます」
「ふぬぅ、とミサカ一九〇九〇号は全身を震わせてのけぞります」
「もー!みんなこの人をイジメすぎだよ!ってミサカはミサカはぷんすかしてみる」

名誉棄損も甚だしい妹達が打ち止めに叱られ、ようやく一息つけられるだろうかと、一方通行はこっそり少女に感謝した。一番年若い彼女に、しかも恋人に庇ってもらうなんて少々気まずいが、それは打ち止めの立場なら当然のことだと己に言い訳する。

「この人はそんなアブない人じゃありません!ミサカが何着てても大丈夫なの!」

よし、もっと怒ってやれ。言ってやれ。

「それに大きなお胸が好きなのはミサカ限定も同然なんだからね!ってミサカはミサカは情報の不正確さにもっとぷんすか!」

一方通行は電極のスイッチを切り替えた。

524 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/02(月) 03:19:39.40 ID:vsszXONb0

「さぁみなさん、ここはカラオケボックスという施設なのですから、それを正しく堪能しましょう、とミサカ一〇〇三二号はたんこぶをさすりながら提唱します」
「はーい!ミサカにデンモクぷりーず!ってミサカはミサカは一九〇九〇号にパスをお願いしてみる」
「ちょっと待って下さい。実はもう歌いたい曲が決まっていましたので…、とミサカ一九〇九〇号もたんこぶをさすりながら一番手を願い出てみます」
「あ、そうなの?じゃお先にどうぞ」
「番外個体も構いませんか?」

四人の妹達は、それぞれ一方通行にお仕置きされた。一〇〇三二号と一九〇九〇号はゲンコツを。打ち止めがやけに元気なのはデコピンで済まされたからである。

「ミサカが歌えるワケないじゃん。今はこの人にどつかれた頭から両手が離せないもん。なんでミサカだけ二発?」

番外個体だけはゲンコツをダブルで頂いた。最強の〈一方通行〉を発動させた青年は、わずか三秒で四人の女性へのお仕置きを完了。食べ物が乗ったテーブルに靴を履いて乗るのはどうかと思ったが、今回は教育的指導を優先させた。一瞬のことだし、皿やコップには少しも触れなかったので許容してもらいたいと思う。

「ほォ、まだ文句たれる元気があンのか」
「うわ、お姉ちゃん考え直した方がいいよイロイロと。この人そのうちDV(ドメスティックバイオレンス)彼氏になるかも?」

対面の一方通行に睨まれた番外個体は、彼には効果抜群な盾の後ろに身を隠す。打ち止めは苦笑して妹のたんこぶを撫でてあげた。

「あぃっ、もっと優しく…。マジ痛いんだってば」
「はいはい。番外個体はちょっとお口を閉じておいた方がいいかな。歌う時以外はね」

その後、少女はムスっとした一方通行の横に腰掛ける。

「あなた、ご機嫌直してね?」
「アイツらがこれ以上余計な事言わなきゃ大丈夫だろォよ」

笑顔の打ち止めが、一方通行の肩を宥めるようにポンポンと叩く。単純にもそれだけで表情が和らいでしまうのは、もうどうしようもない習性だった。
525 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/02(月) 03:23:42.55 ID:vsszXONb0

『上位個体、(たぶん)主席合格おめでとうございます、とミサカ一〇〇三二号は大音量で祝福します』
『これは全ミサカからのお祝いの気持ちを込めた歌です。こっち見やがれ、とミサカ一九〇九〇号は注目を呼びかけます』

うっかり二人の世界に入ってしまうところだった。マイクを通してスピーカーから流れる声に、一方通行と打ち止めは一段高くなっているステージに目を向ける。
一〇〇三二号と一九〇九〇号が並んで立っていた。二人で歌うらしい。

『なりゆきで訪れてしまったカラオケですが、せっかくなので、歌で上位個体を称えましょう、とミサカ一九〇九〇号はマイクを構えます』
『聞けば一方通行の指導あっての勝利だとか。ネットワークで我々を頼ることが少ないのは少々寂しいのですが、これも上司の成長の現れですね、とミサカ一〇〇三二号は納得します』

照れたように髪を掻きあげる打ち止めと、前振り長すぎだろ、いつ歌うンだ、と呆れていた一方通行だったが、急に自分の名が挙がったので内心どきりとする。

『そういうわけで一方通行、これはあなたにも聴いてもらいたいのです、とミサカ一〇〇三二号は訴えます。よろしいでしょうか』

(じーん…、ってミサカはミサカはみんなの心遣いに感動してみたり。しかもこの人にまで…)
(……、まァ、聴けっていうなら聴くがよ…。………クソ、柄じゃねェ)

二人の神妙な様子を受けて、いよいよ一〇〇三二号と一九〇九〇号のマイクを握る手に力がこもる。

『それでは…、おめでとうございます上位個体。ありがとうございます一方通行。祝福と感謝を込めて、ミサカ達の歌をお送りします、とミサカ一九〇九〇号は音楽を再生させますぽち』





526 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/02(月) 03:29:41.13 ID:vsszXONb0


『『セぇーえーラぁふーくっを!ぬーがーさーな・い・でっ』』


まだ痛むであろうたんこぶ二つを庇うこともせず、番外個体は椅子の上で転げまわって大笑いしていた。

『『今はダーメーよ 我慢なーさってぇぇー』』

(あ、あなた…)

今度こそ一方通行が大暴れしやしないかと、打ち止めはやっとの思いで首を動かし、青年の顔を覗き込んだ。
意外にも第一位は無表情で、少女と目が合うと僅かに肩をすくめるのみ。

(……もォいい…。俺は疲れた…)

静かに、静かに目を閉じる。

『『胸のリーボーン ほどかなーいーでねーー』』

打ち止めは優しく一方通行の手を握る。力なく握り返してくる恋人の大きな手。それが、痛々しかった…
527 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/02(月) 03:33:02.82 ID:vsszXONb0

哀れな青年は、今は自宅のリビングで全身をソファに投げ出していた。結局、とんでもないお祝いソングが終わった後、打ち止めに促されるようにして先に退散してきたのだ。
よって室料、飲食代は一銭も払わずに帰ってきたのだが、そんなこと非難されるいわれはさすがに無いだろう。

「あなた、コーヒー淹れたよ」
「おォ…」

打ち止めがテーブルに淹れたてを置いた。少女は絨毯の上に座り、仰向けに寝転がる一方通行の額から前髪をどかす。

「なンだ…」
「さっきデコピンされたから仕返しー…。ちゅ、ってミサカはミサカはあなたのおでこにカワイく攻撃してみたり」

額だけじゃなく、頬や鼻にも攻撃が降ってくる。心身(特に心)共にダメージを負った恋人を元気づけようとしているのだろう。思わず一方通行の喉から笑い声が漏れる。

「っくくく…」
「どうして笑うの?」
「俺も、オマエも単純だよなァ?」
「あ、ちょっと元気出た?ってミサカはミサカは成果ありだとはしゃいでみたり」

青年の指がクイクイと少女を呼ぶ。
打ち止めは彼の腹に腹を、胸に胸を乗せて上から圧し掛かる。もっと元気づけてあげようと、背中と首に回された腕に導かれるまま、幾度もキスで励ますのだった。

528 :ブラジャーの人 [sage]:2012/01/02(月) 03:41:03.45 ID:vsszXONb0
打ち止めの受験、本番の巻 完

妹達大暴れ。
昔の歌って本当にヤバイですよね、卑猥ですよね。
2スレ目立ててから、一方さんが一番可哀そうな話だったかも。

本年もこんなカンジで宜しくお願い致します。さっそくバレンタインすっ飛ばしたことに気づいた私ですけどね。
529 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2012/01/02(月) 03:51:21.13 ID:/ozmZNBpo

今年も宜しく!!
530 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2012/01/02(月) 13:15:08.01 ID:rLgBis9Ro

新年早々イチャイチャしやがって…いいぞもっとやれ
今年もよろしくおねがいします!おっぱい!おっぱい!
531 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2012/01/02(月) 15:23:26.03 ID:+x2I4erIO
乙!
今年もよろしくおっぱい!
532 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2012/01/02(月) 21:10:12.45 ID:/NH1BrZIO
>>528
この世には2月入試というものとあってだな…
533 :ブラジャーの人 [sage]:2012/01/03(火) 19:48:40.48 ID:7InfxQ/O0
乙ありがとうございます!
みなさんのご期待に添えるよう、ぐへ、頑張ります。

>>532 一応受験の日は二月末のつもりだったんだよ…
どーせ打ち止めのチョコを一方さんが我慢して食べてあげて、あまあまイチャイチャするだけさ。
ホワイトデーはやろうかな…
534 :ブラジャーの人 [sage]:2012/01/03(火) 21:02:39.96 ID:7InfxQ/O0
今回はいつもの黄泉川家で始まります。
どうぞー。
535 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/03(火) 21:08:21.62 ID:7InfxQ/O0

三月になって、日差しの色は暖かさを帯びてきたが、風はまだ冷たい。
昨日は打ち止めの入試の結果発表があった。ミサカネットワークのおかげで当日に得点が分かっていたため、おそらく主席合格であることは予想できたが、それでも緊張して四日間を過ごした。
結果は予想どおりのもので、今日黄泉川家ではいつもの五人でささやかながらも、お祝いパーティーが開かれている。炬燵の上に打ち止めの好物を並べ、各人酒やジュースが注がれたグラスを持った。

「それでは、我が家の打ち止めのトップ合格を祝して…カンパーイ!じゃん!よくやった!」
「わーい、ありがとうございます!これもみんなのご協力のおかげです、ってミサカはミサカは恐縮してみる。難関校じゃないけど…」
「打ち止めの努力があってこそよ。本人が頑張らなければ、他の子が取っていたでしょうね」
「素直にお祝いされなよ、最終信号。実際この二ヶ月は勉強三昧だったんでしょ?」

黄泉川と芳川、番外個体の賛辞を受けて、打ち止めはとても嬉しそうだ。自分の快挙を心から喜んでくれることに、主席合格を取ったこと以上の達成感を味わっている。

「そう言ってもらうと…、堂々と胸張っちゃおうかな。あとあと、やっぱりあなたが勉強教えてくれたおかげだから、今日はあなたにもカンパーイ!ってミサカはミサカは感謝の祝杯を掲げてみたり」

打ち止めは腕を伸ばして、一方通行のビールが入っているグラスに自分の物をチン、と当てた。その後はジュースを一気に飲み干す。

「ぷはー、勝利の味は格別ですなぁ!ってミサカはミサカはあなたに二杯目のお酌の準備をしてみる」
「早ェよ、まだ半分以上残ってるだろォが。そこのジョッキに注いでやれ」


一方通行が顎で黄泉川の方を示し、打ち止めはビール瓶を持ったまま炬燵から抜けて、対面に座る保護者の元へ。
536 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/03(火) 21:12:01.57 ID:7InfxQ/O0

「はい、ヨミカワ」
「お、気が効くじゃん。若いコにお酌してもらうとやっぱ違うねぇ」
「オジサン臭いわよ愛穂。打ち止めは今日の主役なのだから、王女様らしくしてていいのに」
「ううん、そもそもミサカがやる気になったのはみんながいたからだもん。だからミサカからもお礼させてほしいな」
「あー打ち止めイイコ!!ほんとイイコじゃんよぉ!!」
「あぅっ」

なみなみに注がれたビールを飲んでいた黄泉川が、ジョッキを握ったまま、がしっと打ち止めを抱きしめた。

「おやぁ、年の差百合プレイってかぁ?あなたどう?ムラっとくる?ひひひ」
「アホが」

ビールがこぼれて少女が濡れやしないかと危惧した一方通行だったが、ジョッキの中身はもうほとんど空で、安心と同時に大いに呆れる。

「ヨミカワ苦しいよ、あははは、もう酔ってるの?ってミサカはミサカはイヤじゃないけど、もぉ」
「酔ってない酔ってない。強いて言うなら打ち止めのせいじゃん。あんたがイイコだからじゃん」
「わーお。おっぱいに挟まってすっかり瓶が隠れてるね」
「………」

急なことで、打ち止めには瓶を手放す隙もなかったのだ。ジョッキと違って固定されているし、簡単に中身がこぼれないだろうと、一方通行は慌てはしなかった。

「羨ましい?」

番外個体が真面目な顔で一方通行に訊く。それが余計に神経に障るのだが。

「もォ一回言うぞ。…アホが」
537 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/03(火) 21:18:36.59 ID:7InfxQ/O0

「どう見ても酔っているわね。ちょっと、瓶は大丈夫なの?」

酔っ払いと少女の巨乳によってほとんど見えなくなってしまったビール瓶に、芳川が手を伸ばす。

「……抜けないわ…」

打ち止めは既に瓶から手を離して、頬をすりすりよせてくる黄泉川の背中をあやしている。胸の谷間と谷間にスッポリはまり込んだ瓶の底を掴んで抜き取ろうとした芳川だが、掴める面積は限られているし、摩擦が強いせいなのかビクともしない。

「一方通行、抜けないのだけど?」
「………」

「君がやりなさいよ」と芳川が一方通行に視線を向ける。彼は「なンで俺が」と睨み返す。

「だって危ないでしょう?まだ中身がたくさん入っているのよ?このまま愛穂が打ち止めを押し倒したらこぼれてしまうわ」
「えぇ、それはイヤだ、ってミサカはミサカはヨミカワ離してと訴えてみる!」
「やだあと三分〜」

不抜けた顔の黄泉川が、ますます打ち止めを抱きしめる腕に力を込める。それと共に、二人の体が傾いていった。

「…番外個体がやればいいだろォが」
「え?ミサカはビールでぬれぬれになった最終信号に襲いかかるあなたが見たいからやらないよ」
「あー、ビールまみれはイヤだよおまけに苦しいよあなたぁぁー!ってミサカはミサカは救助を要請してみたりぃぃぃ」

番外個体はアテにならないようだ。舌打ちした一方通行は、まずこれ以上二人が倒れないように打ち止めの背中を支え、まだ握られたままだった黄泉川のジョッキを奪う。それから、もう僅かしか見えなくなったビール瓶の底を五本の指で掴み……

「オイ、抜けねェぞこれ」
「ね?どういうわけか抜けないのよ」
538 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/03(火) 21:22:27.41 ID:7InfxQ/O0

黄泉川と打ち止めの腹にも挟まれて、力をかけ難いのは確かだ。しかしここまでとは思わなかった。一方通行は強引に指を食い込ませ、二人のお腹をかき分けていく。

「うひゃあくすぐったいよぉ」
「我慢しとけ…」
「あはははははははははははははははは」
「うるせェなこの酔っ払い!」

ぐ、っと掴んで、下に引っ張る。それでも瓶は抜けなかった。

「どォなってンだこりゃ」
「おそるべし巨乳の力だわ…」
「馬鹿言ってる場合かよ」
「でも現実に抜けないじゃないの」

芳川が青年の首のチョーカーを指さした。最終手段を使え、と言っているのだ。

「……まじで馬鹿馬鹿しィが、仕方ねェ…」
「ぶはっ、こんなんで第一位の能力使うわけぇ?」

それは一方通行こそが一番強く感じている疑問である。首の電極に触れて、ベクトル操作でもってビール瓶を抜く。続いて黄泉川と打ち止めを引き離そうとしたが、

「あ、大丈夫だよ。瓶が無くなって息が楽になったから、ってミサカはミサカはこのままヨミカワを甘やかそうとしてみる」
「ふふーん、ふふふーん」
「愛穂ったら……」

黄泉川はいたくご機嫌である。反対に一方通行は不機嫌になった。

「やめとけ、この具合じゃ三分経っても解放されねェぞ。オマエの背骨が折れる前に救出されてろ」

(ねぇ芳川、あれってヤキモチ?ミサカがああして最終信号と百合プレイしても同じかな)
(この二人が付き合うようになってから、特に顕著なのよね。時々胸やけするわ)
539 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/03(火) 21:27:56.50 ID:7InfxQ/O0

一方通行は黄泉川の両手をほどいて少女を脱出させた。残念そうな黄泉川だったが、さすがに能力を発動させた一方通行には抗えない。打ち止めは胸いっぱいに息を吸い、足りなかった酸素を取り込む。

「ふぅ、ヨミカワの愛がひしひしだったよ、ってミサカはミサカは深呼吸…」

それを見て青年は電極のスイッチを元に戻した…のが運の尽き

「あ、あなたまだ電極切らないほうがいいよ。なーんて、切ってから忠告しても遅いか。ぎゃは」
「はァ?……!?」
「スキンシップは家族の絆を高めるじゃん。それを邪魔した一方通行には、責任とってもらうじゃんよ!」

油断していた一方通行は、背後から飛びかかって来た黄泉川に両手ごと拘束された。押し倒されはしなかったが、容赦なく腕が胸と腹に食い込んで苦しい。

「っ〜、こンのクソババァ…!」
「あんたも家庭教師御苦労さまだったじゃん。黄泉川先生が褒めてやろう、ホレホレ」
「まぁ、たしかに愛穂にそうされるのは、普通の男子なら嬉しいものかしらね。一方通行、どう?」
「全然。…おい芳川、オマエ何する気だ」

冷静な芳川。棚からカメラを取り出したかとおもうと、シャッターを切り始めた。

「あ、記念撮影だね、ってミサカはミサカは一緒にフレームに収まってみる。いぇーい」
「ミサカもー。いぃぇえぇぇーい!!楽しー!!」
「…はい、打ち止め交代してちょうだい…。あ、待って全員で写りましょう」
「あのなァ…」
「わーっはははははははははあんたも笑うじゃんよ一方通行!写真は笑って撮るもんだ!」
「耳元でうるせェよ…いい加減離せ…」

芳川が炬燵テーブルの上にカメラを設置して、数秒後には全員そろって、ハイチーズ。
540 :ブラジャーの人 [sage]:2012/01/03(火) 21:31:09.73 ID:7InfxQ/O0
とりあえずここまで。

ビール瓶「俺…もう悔いはないよ。いつ割れてもいい…」
541 :以下、あけまして [sage]:2012/01/03(火) 21:38:22.91 ID:roI5ljn30
実は俺ビール瓶だったんだ
542 :以下、あけまして [sage]:2012/01/03(火) 23:42:03.72 ID:8Zo4g049o
今まで黙ってたけど実は俺もビール瓶だったんだ
543 :以下、あけまして [sage]:2012/01/03(火) 23:43:36.72 ID:Jsi/don30
乙!

奇遇だなお前ら、俺も実はビール瓶なんだよ
544 :以下、あけまして [sage]:2012/01/04(水) 00:09:13.03 ID:7pt4/j4So
みんなで12本で1ダースになろうぜ
545 :ブラジャーの人 [sage]:2012/01/04(水) 00:25:39.81 ID:+734HUlu0
>>544  >>540から数えてあと何本なのよww
今のところ5本集まってるのか?

打ち止め「わぁ、もし集まっても、そんなにたくさん挟むのは大変そうだ、ってミサカはミサカは弱音を吐いてみる」
一方通行「……」イラッ

挟んでもらう前に、割られる可能性大きい…
546 :以下、あけまして [sage]:2012/01/04(水) 02:32:34.51 ID:MIuNyCPd0
俺も!
俺もビール瓶なんだ!
そして出来れば番外個体の胸に(ry
547 :以下、あけまして [sage]:2012/01/04(水) 02:35:05.64 ID:wDD+cHgGo
乙。 実は俺もびー(ry

よゐこの皆! DTが年末だからってテンションあげてTENGAハードを買うと酷い目にあうぞ! 受験生との約束だ!
548 :以下、あけまして [sage]:2012/01/04(水) 08:16:23.85 ID:MDdH8zhDO
>>1乙ぱい
実は俺もビーr

ホワイトデーか…
一方さんのにまみれた打ち止めとか素晴らしいじゃないか
549 :以下、あけまして [sage]:2012/01/04(水) 10:48:01.43 ID:LZpiNaWOo
乙だったじゃん!


じゃあ、俺打ち止めのコップだったんだ
550 :以下、あけまして [sage]:2012/01/04(水) 11:58:25.55 ID:8LTfd70No
乙ぱい
そういえば俺も実はビール瓶だったわ

一方さんは日常茶飯事に挟んで擦ってもらってるんだから
ちょっとくらい良いじゃないですかーとか言ってみる
551 :ブラジャーの人 [sage]:2012/01/04(水) 13:52:34.60 ID:w3Ey7Jfj0

芳川「けっこう集まったわね、ビール瓶。このスレの読者にこんなに人外がいたなんて。付喪神?」
黄泉川「ボウリングできそうじゃん。まぁ瓶くらい挟んでもいいけど」

一方通行「……」イラッ

番外個体「ミサカをご指名とはイイ趣味だよね」
打ち止め「これって服脱ぐの?ってミサカはミサカは太すぎるから一人じゃ難しそうだと躊躇ってみたり」

一方通行「…」ぷちっ カチリ


>>541 >>542 >>543 >>544 シュパシュパシュパシュパ!!!!(ベクトリ手刃で連続ビン切り)

>>546 ッジャ!!(返す手をベクトル裏拳にして「カッ」と瓶の横腹を削ぎ落す)

>>547 >>548 パァン!パァン!(両手ベクトル握撃で破裂するかのような最期)

>>550 ミキャメキャギュゥゥゥゥゥゥウウ…(圧縮圧縮ビンを圧縮ゥゥゥゥゥゥ!)



>>549「ドキドキ」 

一方通行「コップか…」
打ち止め「こ、このコップはミサカのお気に入りで、できれば割らないでほしい…」

>>549 「ガクガクガクガク」ピシィッ←ヒビ

一方通行「浜面ンちの便所に一輪差しとして置いてくるか」
打ち止め「もっとイヤかも、ってミサカはミサカはコップの未来を嘆いてみる」


芳川「そして誰もいなくなった…、というわけね」
552 :ブラジャーの人 [sage]:2012/01/04(水) 13:58:42.61 ID:w3Ey7Jfj0
ベクト「リ」手刃ww (しかも正しくは刀だよ!ちね自分!刃牙ネタだからまちごうた)

こういうくだらないネタは楽しいなー。

さて、お正月進行だから早くも続きを投下します。
553 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/04(水) 14:06:38.37 ID:w3Ey7Jfj0

わずかな拘束時間だったが、すっかり体が凝り固まったような気がする一方通行。ぽきぽきと、肩や腕を回してほぐす。あとで打ち止めにマッサージをお願いしたい心境だ。

「さぁ、せっかくの料理が冷めてしまうわ。仕切り直して食べましょう」
「そーそー、私と番外個体が腕によりをかけて作ったんだから、残したらタダじゃおかないじゃん」
「オマエのせいだろ、この酔っ払いがァ…」

五人は改めて炬燵に浸かり、とりあえず腹を満たすことに意識を集中させる。食べ始めてみれば、それはとても美味しいので早々に料理は減っていった。

(炊飯器製だけどなァ…)
(むむむ…、やはりミサカの普通料理はまだまだなのね、ってミサカはミサカはさらなる修行の必要性を実感してみる)

554 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/04(水) 14:09:33.89 ID:w3Ey7Jfj0

「あーおいしかったぁ、ってミサカはミサカはお腹をぽんぽんしてみたり。あ、番外個体いいよ、今日はミサカがお片づけするよ」

空になった食器を持って、キッチンに運ぼうとした番外個体を打ち止めが制する。作らせておいて、片づけまで任せるのは申し訳ないと思ったのだ。

「だから主役でしょ最終信号は。ふんぞり返ってりゃいいのに」
「ならば女王様らしく命令しよう!ミサカにもお手伝いさせるのだ!ってミサカはミサカはもうお台所へダッシュしてみるっ」
「ちょっと皿持って走ると転ぶよ!」

姉妹で仲良く、言い合いっこしながらの洗い物が始まった。流れる水道の音や、食器が重なる音をBGMに、黄泉川、芳川は食後の一服、緑茶。一方通行は久しぶりの缶コーヒーである。

「打ち止め…あんなに立派になって…。もうどこに出しても恥ずかしくないじゃんよ…」
「出すところは決まっているのだけど。ねぇ?一方通行、うふふ、なんとか言いなさい」

これぐらいでは、もう一方通行の精神を揺さぶることはできない。相手が酔っ払いなら尚のこと。青年は落ちついた様子で缶に口をつけた。

(黄泉川だけじゃなく、芳川も少し酔ってンな)
555 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/04(水) 14:12:28.04 ID:w3Ey7Jfj0

「確かに打ち止めは良い子だわ。それに今回の受験のことといい…。愛穂、何かご褒美あげましょうか」
「ご褒美ねぇ…。うん、いいじゃん!卒業祝いと入学祝いもあるし」

あれでもない、これでもないと、保護者二人は何をあげるか相談しはじめた。
やがて、彼女達は黙って聞いていた一方通行にも意見を求めてくる。

「一方通行、黙ってないでお前も考えるじゃん。何がいいと思う?」
「特別なお祝いなのよ。ありきたりな物ではつまらないわ」
「……本人に希望を訊いてみた方がいいンじゃねェか」

頑張り屋さんで家族思いのあの少女に、こうしてご褒美をプレゼントするのはかまわないと思う。ただ、自分だけが彼女に贈るものではないので、一体何をあげるのが一般的なのか、一方通行はあまり見当がつかない。

「うーん、サプライズもいいのだけど、出来ればあの子が欲しがるものをあげたいことだし…」
「どうしよっかねー…」
「酒が入って、回りすぎてるオマエらの頭で考えるのは無理だろ。おら、もう戻ってきたから訊いちまえ」
「ナニナニ?ってミサカはミサカは深刻なお茶の間の雰囲気に事件を感じ取ってみたり」

556 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/04(水) 14:15:53.48 ID:w3Ey7Jfj0

打ち止めと番外個体がリビングに戻ってきてしまい、タイムアップだということで、黄泉川が単刀直入に切り出した。

「打ち止め、ご褒美あげるじゃん。何がいいじゃん?何が欲しいじゃん?」
「はい?ってミサカはミサカは急な問いかけに話が見えなくてあなたに解説を求めてみる」
「主席合格祝いと卒業祝いと入学祝いだとよ」
「すげぇ、トリプル祝いだよお姉ちゃん。どうせだからこの人が破産する勢いでワガママ言おうぜ」
「オマエは黙ってろ」

全員の視線が打ち止めに集まる。主役の王女様は、一体何をリクエストするのやら…

「い、いいよそんなの。今日だってミサカのお祝いしてもらってるし…」

こんな時は、本当に打ち止めの成長を感じてしまう。昔は随分無理を言って周囲を困らせたものだが。しかし、今は彼女に遠慮なく贅沢を言ってほしい。黄泉川も、芳川も、一方通行も。

「最終信号、だめだめ。見てみ、このお母さん達の表情」
「おぉぉぅ…、泣かないで今考えるから!ってミサカはミサカは心の欲しい物リストを大急ぎで検索してみるっ」

頬に両手を当て、打ち止めは考える。なんだっけ、なにが欲しかったんだっけ。服やアクセサリーは…、一方通行がよく買ってくれる。
新しい学校で必要なものは…、今度一方通行が買いに行こうと言ってくれている。それに生活必需品のような物は、保護者達が求める回答ではないだろう。
強いて言うなら、ウエストが細くならないかな…などと思う始末。

「何でもいいじゃん?」
「打ち止めが喜ぶものをあげたいのよ。悪いけど一生懸命思い出してちょうだい」
「う〜んう〜ん」

何でもいいのが一番困る。あと一方通行が甘やかしすぎるのも困る。打ち止めが悩み始めて三分が経過した。
557 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/04(水) 14:18:28.54 ID:w3Ey7Jfj0

「ご褒美もらえる主役がめっちゃ困ってんだけど」
「酔っ払ってっからなァ、アイツら」
「他人事みたいに言ってぇ、最終信号が悩んでるのは自分の責任でもあること、分かってんのかにゃーん?」

これは長くかかりそうだと、番外個体と一方通行は少女から視線を外した。ニヤニヤする番外個体に、一方通行が無意識に身構える。

「あなたがお姉ちゃんの欲しがるもの買ってあげちゃうからじゃん。モノでココロを引き止めてるみたいで、ミサカ正直情けないと思うナ」
「………」

そんなに何でもかんでも買ってやっているだろうか?一方通行は自らの行いを振り返る。

(……確かに、そう言えなくはないか…)

ずばりそう言える。誰の目から見ても。

「ンだよ、ひがンでンのかァ?オマエも欲しいものがあるなら、ついでだから言ってみろ。買ってやる」
「………やだ、第一位が気持ち悪い。鳥肌ゾワゾワ」

口と表情が一致していない番外個体。一方通行は鼻で笑ってやった。

「ま、気が向いたら俺にねだってみやがれ。破産するよォなものでなければ構わねェぞ」
「……ふん、破産ギリギリの買わせてやろ」
558 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/04(水) 14:24:22.83 ID:w3Ey7Jfj0

そろそろ打ち止めに妙案(というのも変だが)が浮かんだ頃か。少女は両手を頬から放して膝の上に置いた。上目づかいで、保護者と一方通行達を見る。

「お、決まったみたいじゃん」
「さぁ言ってみて。遠慮しないでね?」

黄泉川と芳川が急かす。打ち止めが心底言い辛そうに告げた〈欲しいもの〉とは、

「ミサカね、わんちゃん飼いたいの…、ってミサカはミサカは無理を承知で、それでも正直に言ってみる…」

「…………」
「…………」
「…、…」
「…犬かぁ。この前ペットショップが楽しかったって言ってたもんねー。そんなにゾッコンになっちゃったの?」

番外個体以外は、打ち止めの答に声を詰まらせてしまった。まさかの「犬欲しい」だとは思わなかった。

「うん、あ、でもいいの!マンションでは絶対無理って分かってるから。言ってみただけだから、ってミサカはミサカは茫然とするヨミカワ達に申し訳なく思ってみたり…」

今すぐ他の考えるから、と打ち止めは再度頭を抱え始めた。黄泉川と芳川は顔を見合わせる。「何でもいい」と言った手前、これは大層具合が悪い。打ち止めが散々悩んだ挙句、その脳裏に思い浮かんだものなのだから、よっぽどだろう。

「い、犬…。こりゃちょっと予想外だったじゃんよ…」
「金銭的にどうこう…ではないものね…」
「あーでも小型犬なら、なんとか許可下りんかな!?」
「いいの、いいの。ヨミカワ、ヨシカワごめんね?ちょっと待ってて…他の…んーと」

「打ち止め」

やけにはっきりとした一方通行の声が、その場を停止させた。彼は横に座る少女を眺めて、嘘は許さないという口調で問いただす。

「オマエ、あのハスキー犬がいいンだろ?」
「……うん…」
559 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/04(水) 14:28:08.86 ID:w3Ey7Jfj0

まだ一月の頃、一方通行と打ち止めは期間限定で学園都市に出店していたペットショップを訪れた。そこのふれ合いコーナーで、一頭のシベリアンハスキーと仲良くなり、次の週末にはその犬に会うためだけに、もう一度足を運んだほどである。一週間ぶりだというのに、ハスキーは二人を覚えていたのか、大喜びでじゃれついてきた。
最初に会った時と同じく、そのワイルドな見ためのせいで、寂しく隅で伏せていた姿を、一方通行もよく覚えている。
あの犬は今も、訪れる人間にビクビクされているのだろうか……

「ハスキーって…めちゃめちゃ大きいじゃん?」
「大型犬だなァ」
「打ち止めはもう、目星をつけた犬がいるのね?」
「ペットショップでな、どうも情が湧いちまったらしい。だがその店はもう学園都市から撤収してるし、そもそも値段がつけられてケージに入ってたワケじゃねェ」
「ふれあいコーナーの犬なんでしょ?第一位とも仲良くなった驚異のわんこ。あなたもメロメロ〜?」

保護者の質問に答えていた一方通行が、ちょっと驚いて番外個体を睨み、次いで打ち止めに咎める視線を突き刺した。「言ったのかオマエ…」と赤い目が物語る。

「え、あの、あのあの番外個体の言葉には誇張と脚色と確証の無い予想が多大に含まれておりましてミサカはただあなたもハスキーちゃんをナデナデして一緒に遊んだと告げただけでミ」
「分かったうるせェ黙れ」

マンションで大型犬。それだけで難問なのに、打ち止めが飼いたい犬はもう決まっていて、しかもペットとして正式に販売されているわけではないという。これはさすがに、諦めるしかないだろう。黄泉川と芳川は、打ち止めが「絶対無理」と言った訳を理解した。
となると、一体どんな犬だったのかが気にかかる。一方通行もメロメロとは、それはもう気にかかる。

「シベリアンハスキーね。どんな犬だったのかしら?」
「あのね、白いけど、眉毛と耳と尻尾は灰色なの」
「背中もな」
「そうそう!背中も!あとね、ぷぷぷ…おめめがね、ぷぷ、赤いの…っ、ってミサカはミサカは笑いがこらえきれない…」
「あーひゃっひゃっひゃっひゃっはっはははなにそれぇぇぇぇ!?この人のまんまかよ!」
「つーかまた白い時点でハト子と一緒じゃん。一方通行と打ち止めは白い生き物に惚れる習性でもあんの?」

こういう話になるのは覚悟の上であった。(一方通行以外には)和やかで楽しい団欒だ。しかし、彼はそれが目的で、わざわざ恥ずかしい思いをしたわけではない。
560 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/04(水) 14:31:07.64 ID:w3Ey7Jfj0

「やかましィ、聞け…。打ち止め、あの犬はなンとかして俺が引き取ってきてやる。だからオマエのご褒美はもうそれで決定だ」

打ち止めが口をあんぐり明けて、目もまん丸に見開いて一方通行を見る。それがだんだんと笑顔に変わっていき、

「ほ、ほんとに……!?でもあのコは売ってるコじゃないよ?ってミサカはミサカは当然の疑問を口にしてみる」
「売ってない、ってェのは、逆を言えば誰にも先に買われない、ってことだ。そこは交渉しだいで何とかしてみせるから安心しろ」
「待て待て待て待つじゃん一方通行っ、いくらお前でも、さすがにウチでは大型犬は…」
「許可が下りないと思うわ、残念だけど…」

そう、いくらあのハスキーを身請け出来たとしても、飼えなければ意味がない。保護者達がこう言うのは当たり前だ。一方通行は黄泉川と真正面から目を合わせ、いつになく真剣な表情で告げた。

561 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/04(水) 14:36:56.94 ID:w3Ey7Jfj0

「丁度いい機会だ。俺もこの家を出よォと思ってる。犬は俺のとこで飼えばいい」

「……」
「……」
「―――!!?」
「お、第一位もやっと独立かね。ミサカでよければ寂しい夜は一緒に寝てあげる。きゃぴっ」
「いらねェよ」

茶化す番外個体と、固まってしまった他の女性陣。特に、打ち止めは息もしていない。

「…え!?そんな、急すぎじゃん」
「…そう…、君はそう考えていたのね…」

寝耳に水である。今日は打ち止めの、高校入試主席合格のお祝いパーティーのはずだった。そして彼女にあげるご褒美を、みんなで相談していただけのはずだった。

「まァ…今まで世話になったな。前々から」
「やだー!やだやだ!!いやー!」

息をすることを思い出した打ち止めは、悲痛な叫び声を上げて一方通行の腕を掴む。彼がこの家を出て行ってしまうなんて…

「やめて!ミサカわんちゃん飼わなくていいよ、あなたと一緒の方がいい!ってミサカはミサカは断固反対してみる!」
「飼う飼わない関係なしに、以前から出て行こうとは考えてたン」
「いーやー!!」

もう聞く耳持たないという風で、打ち止めはコアラのように一方通行にしがみついた。ボディアタックを受けたも同然で、青年は押し倒されて頭を強打する。炬燵の中で足もぶつけた。

「いってェェェ!この馬鹿野郎ォが落ち着けェ!」
「イヤイヤイヤイヤ!ミサカもあなたについて行くもん!地獄の果てまで子泣きジジイしてやるもん離れないからね!ってミサカはミサカはここに宣言してみたり!」
「だから俺は最初っからそのつもりだボケェ!一緒に来い!」
「よっしゃぁぁぁぁぁあああ!ってミサカはミサカは……………え?…あれ?」
562 :ブラジャーの人 [sage]:2012/01/04(水) 14:44:38.29 ID:w3Ey7Jfj0
とりあえずここまで。

だから>>469にドキっとした作者。妖怪サトリか。

春は旅立ちの季節なの。二人を応援してね、ビール瓶のみんな。
563 :以下、あけまして [sage]:2012/01/04(水) 15:11:13.17 ID:v0++nWbAO
これは完結フラグ
564 :以下、あけまして [sage]:2012/01/04(水) 16:23:05.36 ID:Ye3V5VAn0
いや、まだ打ち止め高校編・大学編・社会人編・結婚編・夫婦編が残っている
565 :以下、あけまして [sage]:2012/01/04(水) 16:37:52.05 ID:MIuNyCPd0
その前に同棲フラグだっ!!
566 :以下、あけまして [sage]:2012/01/04(水) 19:04:51.60 ID:qO6po9LIO


おいおい………引越しちまったら親御さんの目が無いぶんあんっ///なことやこんっ///なこともし放題じゃねーか
さあ盛り上がってまいりました
567 :以下、あけまして [sage]:2012/01/05(木) 01:53:37.47 ID:h/DtVO+bo
乙。 僕はビール瓶じゃなくてTENGAだよプルプル。 
DTの諸君、ハードは辛いがソフトはいける。 いやほんとに。
568 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/05(木) 07:05:12.71 ID:rlh7p7JDO
>>469だけどまさか展開予想になるとは、なんかごめんね

同棲なんてまさにやりたい放題じゃないですか
569 :ブラジャーの人 [sage]:2012/01/05(木) 16:35:39.04 ID:wAm85jvi0
>>563 まだだよ。

>>564 そこまではやらないよ。

>>565 そうだよ。

>>566 おそらくやるんだよ。

>>567 プルプルじゃねーよww コンタクトみたいに種類があるのか…

>>568 あやまることなんてないんだよ。笑ったよ。

正月進行も終了してしまいましたガッカリ。明日投下できると思います。

570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/06(金) 06:20:11.23 ID:rHtiM+NDO
>>1乙ぱい
ハスキー犬がバター犬になったりとかなんとか
571 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/06(金) 12:48:48.38 ID:7kfAa4MQo
コップになって正解だった お気に入りと言ってもらえたし 打ち止めの熱いベーゼももらえたし
……もう……思い…遺す…事は…ない……パリン
572 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(徳島県) [sage]:2012/01/06(金) 14:17:59.39 ID:xnibcNXa0
しかも浜面家のトイレに飾ってもらえるんだからな
野郎の排便シーンを我慢できれば滝壺さんとフレメアの排便が見えr
割れてしまったか・・・
573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/06(金) 18:06:13.95 ID:Mw8AtH+eo
>>572
あ、スカトロには興味ないんで
574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(徳島県) [sage]:2012/01/06(金) 18:57:14.98 ID:xnibcNXa0
ごめん
徹夜明けで頭おかしくなってた
スレ汚しすまん
575 :ブラジャーの人 [sage]:2012/01/06(金) 22:46:55.57 ID:KUe+YMRm0
>>570 打ち止め「ばたー犬ってなぁに?ってミサカはミサカはあなたに質問してみる」

>>571 結局全員割れましたねww

>>574 汚れたなどと思わなかった私の立場は。


続きいきます。 同棲しましょ、そーしましょ。
576 :ブラジャーの人 [sage]:2012/01/06(金) 22:52:46.42 ID:KUe+YMRm0

打ち止めは、押し倒したままの一方通行の上で硬直している。

(今この人『一緒に来い』って言ったよね、ってミサカはミサカはリピート再生してみる。一緒に来い一緒に来い一緒に来一緒に来い一緒にこ)

「重てェどけ…」

青年は片手をついて体を起こす。自分にしがみついたままの少女のスカートが大変な有様になっていて、まずはそれを直してやった。

(ハイ白と黒の花柄ねェ。…コイツ、そンなに驚くことかよ…)


これは「家族」の大きな転換期だ。コアラな打ち止めがひっついたままだが、構わずに保護者達が一方通行に問いかける。

「つまり、君はこの家から出るけれど、打ち止めも一緒に連れて行く、ということなのね?」
「あァ」
「結婚はまだちょっと早いじゃん!?」
「気が早ェよ、誰がすると言った」
「ねぇ、最終信号大丈夫?」
「あ、あぁ、あわあわ…取り乱しちゃった、ってミサカはミサカは…落ち着きを取り戻したい……」

番外個体が打ち止めの肩を揺すり、少女はやっと一方通行から体を離して彼の隣に座り直した。
577 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/06(金) 22:55:22.89 ID:KUe+YMRm0

「うわーいつかこんな日が来るとは思ってたじゃん…。でも、せめて打ち止めが高校卒業するまではさぁ…」
「…あ、そうよ。打ち止めが寮住まいを免除されているのは、もちろん一方通行が顔を利かせているからだけど」
「そうそう、そうじゃん。教師で警備員な私の家にいるからじゃん。別に…絶対ってワケじゃないけどさ、ちょっと面倒が起こらないか?」

(そうっだった。ミサカはヨミカワ『先生』の家にいるから、他の子みたく寮に入らないでよかったんだっけ…)

一方通行と打ち止めの門出(?)を邪魔するつもりではないが、まだ高校生でもないうちから、ムードメーカーな少女まで家から居なくなってしまうのは寂しすぎる。
そんな心理からか、保護者達(特に黄泉川)は思いとどまるべき、というニュアンスを込めた意見を述べる。
また、打ち止めも一方通行について行くことは確定事項ではあるが、母のように接してきた黄泉川、芳川と別居するのは辛いと感じていた。
番外個体はすでに独立しているからなのか、他の面々に比べ、大して動揺していない。

「第一位はそこの問題についても考えがあるんじゃない?そーゆートコには抜け目ないもんね」
「アタリマエだろ。俺は結構ォ前から考えてたって、何度言わせンだ」
「ミサカは一回しか言わせてないし」

どんな方法か知らないが、一方通行が大丈夫と言うならそうなのだろう。物分かりの良い大人は、「ならしょうがない」と顔を見合わせた。

578 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/06(金) 22:58:23.24 ID:KUe+YMRm0

「ヨミカワ、ヨシカワごめん。ミサカはこの人と一緒に行くよ…。でも…お別れじゃないし……っ、ふぐっ、遊びにくるし…っ、ぅ、ミサカの部屋はそのままにぃぃぃ〜」
「分かってるじゃん。一方通行が嫌になったら、いつでも帰ってくるじゃん。だから、泣かなくて、いいじゃんよぉ〜えぇぇんききょぉ〜」
「よしよし、泣いているのは愛穂よ…。はぁ…寂しくなるわ…。打ち止め、しっかりね…」

そういう芳川の目も、ちょっと赤い。酒が入っているとはいえ、まさか芳川までこんなに悲しむとは思わなかった一方通行は焦った。

(なンだよこれは…。まるで俺が悪い人さらいみてェじゃねェか…)

大体、どこぞの馬の骨に『娘』を差し出す、みたいな言われようだが、そもそも一方通行こそが、この家の正真正銘の息子である。

579 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/06(金) 23:05:44.19 ID:KUe+YMRm0

数年前の、今日のように寒い日に、同じく炬燵を囲んでの会議があった。この時は打ち止めと番外個体が同じ面に足を入れていて、彼女達は一人反抗する一方通行を呆れ顔で見つめていたものだ。



「俺はこのままでいい。…クソガキどもを引き取ってやれよ」
「この二人は御坂さんの名前を貰うのよ。これは他の妹達の希望でもあるし、みさ、美琴さんのご両親も承知しているわ」
「もー、せっかくこんなに美人で若いお母さんができるんだから、もっと喜ぶべきじゃんよー。一方通行は一体なにが不満じゃん?」
「いろいろ不満だらけだクソっタレ。どォして俺が黄泉川の息子なンだよ」
「あら、君は私の子になりたかったの?」
「ブッ飛ばされてェのか芳川」

議題は、〈番外個体と打ち止めを御坂姓に、一方通行を黄泉川姓に迎え入れよう!〉である。
出席者五人のうち、一方通行だけが自らの処遇に異を唱えている。

「じゃあ、あなたもミサカ達と一緒に御坂の家の子になる?ってミサカはミサカは勧誘してみたり!お父様とお母様もいいって言うよきっと」
「なるか馬ァー鹿。つーかあの夫婦はどンだけ子沢山になる気だ」

御坂旅掛、美鈴夫妻は実娘のクローンである妹達を、希望があれば養子として引き取ることにした。もちろん戸籍、書類の上だけで、夫妻と妹達の日常生活に多大な変化をもたらすことはない。中には養子を辞退する個体もいるし、検討中という個体も。

芳川の勧めもあり、番外個体と打ち止めは御坂夫妻のお言葉に甘えることにしたのだ。
ちなみに名前は、そのまんま、

御坂 打ち止め(みさか らすとおーだー)
御坂 番外個体(みさか みさかわーすと)


「やめてよ最終信号。ミサカ第一位とキョーダイなんてやだ」
「俺だってお断りだァ安心しろ」
「番外個体、一方通行を挑発しないでちょうだい。それに打ち止め、いいの?」
「なにが?ってミサカはミサカは首をかしげてみたり」

芳川はもったいぶって間をあけてから、

「一方通行と兄妹になってしまったら、あなた、彼のお嫁さんになるのが難しくなるわよ」
「前言撤回今のナーシ!ってミサカはミサカは大きな過ちを犯すところだった…っ」
「よっしゃ決まり。やっぱり一方通行は黄泉川先生の子になるしかないじゃん」
「全然決まってねェだろォが……」

舌打ちとな溜息と悪態のオンパレードな少年。いくら反対しても、納得されない。
580 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/06(金) 23:10:13.51 ID:KUe+YMRm0

両手を腰に当て、得意げに胸を張る黄泉川。彼女は(ギリギリ)二十代でこんなに大きな息子を持つことに、まったく抵抗がないようだ。普通なら世間の好奇の目や、これからの人生…、具体的には結婚を考えると躊躇するべき大問題である。一方通行もそれを分かっているから、頑なに拒んでいた。

「アー、そのせめて、弟とかじゃだめなンかよ」
「お前、姉ちゃんが欲しいのか?」
「もォツッコむの疲れたから解答だけ早く言いやがれ」
「弟として養子縁組すると、私の実家の両親に事情を説明しないといけないじゃんよ。さすがにそれは回避したいから、あんたはこの私の息子になるしかない!分かった!?」

男らしく腹を括れとばかりに、黄泉川は一方通行へと体を乗り出して睨みつけた。打ち止めは無邪気に拍手。少年は何も答えず苦々しい表情だ。それを観察する番外個体は、

「あなたがマザコンになること、ミサカ心から願ってる」
「……面倒臭ェ」
「諦めたみたいね。手続きは愛穂と私でやっておくわ」



そんなわけで、半ば強引に一方通行にお母さんができたのだった。黄泉川がそれによってことさら母親ぶることはなかったし、一方通行も今までどおり接してきた。
この養子縁組について、一方通行には拒否する方法はいくらでもあった。しかし結局それを選択しなかったのは、彼本人の意思だ。
つまりは一方通行も、心のどこかで望んでいたことなのかもしれない。

一方通行は少なからず黄泉川に感謝をしたし、形だけでも〈母〉は〈母〉なのだ。
自分や打ち止め達を見守る芳川を含め、珍妙だし常識はずれだけど、自分達は家族、と思って過ごしてきた。その価値や尊さを実感しながら……
581 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/06(金) 23:18:08.23 ID:KUe+YMRm0

それなのに、この扱いの差は何だ。黄泉川も芳川も「打ち止め打ち止め」と、そればかり。一方通行だって五年間一緒に生活してきた家族の一員である。息子である。

(別に、不公平だとか言うつもりはねェが…)

自分に可愛げがないのは、百どころか千も万も承知しているけれども。
いつの間にか、今度は芳川にしがみついている打ち止めと、彼女の背中をさする黄泉川を見て、ほんのちょっとだけ不条理を感じてしまった。

「おいそこの泣き上戸ども。そうやってお涙頂戴してるとこ悪ィが、俺はこのマンションの一階に引っ越すだけだぞ」

まさか、そんな超至近距離へのお引っ越しだったとは……


「………」
「………」
「………」

「近くだろうとは予想してたけど、まさかそこまで近いなんてミサカもビックリ。つーかこの部屋からわずか数十メートルじゃねーか。ベランダで会話できるよアっホらし」

終始冷静だった番外個体は、もう話は片付いたとばかりに蜜柑の皮を剥きはじめた。テーブルの急須が空であることに気づき、キッチンにお茶を淹れに行きさえする。

「ぁい、い、一階?……ここの?」
「そォだよ、大げさすぎンだよ。確か、二部屋空きがあったはずだ。そこなら打ち止めは寮に入らなくても差し支えない。居住をこの部屋に登録しておけばいいンだからな」

一方通行はイライラした様子で、打ち止めに「戻ってこい」と手で合図した。

582 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/06(金) 23:21:46.55 ID:KUe+YMRm0

庭があるせいか、一階の家賃は高い。そのため部屋が埋まっていないことを、普段から自宅周辺の安全に気を配る一方通行は知っていた。
涙が引っ込んだ三人は、一階の部屋など見えもしないのに床に視線を向けた。

「な、なるほどじゃん。それなら確かに」
「ねぇ、一階はわんちゃんOKなの?ってミサカはミサカは飼っている人を見たことないから確認してみる」
「そういえば猫飼ってる部屋はあったと思うけど、犬は見たことないじゃん。あそこは庭もあるし、いいんかなー」
「大型犬でも大丈夫なのかしら。前例が無いのかもしれないわ。まずは管理人に問い合わせしなくては…」
「こういう時に第一位の肩書きを利用しないで、いつ使うンだ。許可させる以外ねェだろ」

(この家の住人には効果が無いが)背筋に冷や汗が伝うような一方通行の表情。彼が手荒な真似をしやしないか、それだけが心配だ。

「あなた頼もしい!でも管理人さんをイジメちゃだめだよ?ってミサカはミサカは注意してみたり」
「もちろン多少の凄みは効かせるつもりだが、具体的にはコッチの負担で納得させる。床も壁も改装するし、鳴声に難癖つけられるなら、犬専門の訓練校に通わせてもいい」

なんだかあっという間に話が進んでしまった。一方通行と打ち止めがこの家から出て行くことも、ハスキーを飼うことも、引っ越し先が同じマンションの一階であることも、全て決定済みであるかのような。
583 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/06(金) 23:25:07.25 ID:KUe+YMRm0

「んで?まとまったの?」

芳川と黄泉川の湯呑みに淹れてきた熱いお茶を注ぎ、番外個体は蜜柑の皮剥きを再開する。

「まとまった…のかしらね」
「まとまっちゃったじゃん…。番外個体も出て行って、今度は一方通行も打ち止めも出て行くことになったじゃんよ」
「そんなあからさまにガッカリしたら、この子達が安心できないでしょ?…愛穂も笑って送り出してあげなきゃ」
「遊びに来るよヨミカワ、ヨシカワ。寂しくなったらいつでもミサカを呼んでね?ってミサカはミサカはたった一分足らずで駆けつけることを約束してみる」
「しょーがないなー。ミサカも暇な時来てあげるからさ、元気出しなって」

子供達(女の子)が、芳川と黄泉川を励ましている。打ち止めが「あなたも!」と目で促してきた。さっきは(打ち止めのせいで)しっかりと伝えられなかったから、挨拶ぐらいはしておくべきかと、男の子も口を開く。

「出てくといってもこの距離だ。そンなに気落ちすンなよ」

そこまで気落ちしてくれることが、こんなにも心を揺さぶる。

「一方通行……、君も寂しくなったら帰ってくるのよ?」
「気が向いたらなァ。それと、明日にでも消えるみたいに言うなよ。まだ出てかねェよさすがに」
「それもそうじゃん。悪い悪い、ビールのせいで気が動転してたじゃんよ」
「そうね。準備にもかなり日にちがかかると思うわ」

やっと保護者達の表情が明るくなった。無意識にほっとした青年は、さらに挨拶を続けた。

「俺達がこの家を離れたら…」

今晩はやけに喋る一方通行に、保護者達の目はますます細くなる。あぁこれが家族なんだな。子供の成長と旅立ちなんだな。

「オマエらは、とにかく早く嫁の貰い手を探すンだぞ」

直後、青年に熱々のお茶がひっかけられた。

584 :ブラジャーの人 [sage]:2012/01/06(金) 23:30:27.22 ID:KUe+YMRm0
通行止めの旅立ちと、家族な黄泉川家の巻 完

黄泉川一方通行(よみかわ あくせられーた) やっと発表できたなこの設定。一方さんが黄泉川の息子…

なんとなくそんな気がするんだよ!!←そればっかでこのスレやってます
585 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/01/06(金) 23:33:19.81 ID:DbitlqsQ0
乙。
さらっと打ち止めのパンツ見といて無反応なあたりに二人の距離の近さを感じた
586 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/06(金) 23:50:17.09 ID:dsVFWKFIO

能力開放してない一方さんに熱々のお茶ってww大丈夫なんかいww
>>585
おれもそう思った
587 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/01/07(土) 00:11:40.41 ID:DCOI+jf7o
乙。
幸せ家族だなトン畜生っww若干不仲な家庭で育った俺としては羨ましいぜ…

あと、パンツ直すときの無反応ぶりがもう夫婦?みたいな。
588 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2012/01/07(土) 00:53:26.43 ID:Js7ByNaq0

てか番外個体の名前はそれでいいのかwwww
589 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/01/07(土) 17:35:27.09 ID:9qLvepUAO
乙!
各々名前それでいいんかいwwwwww

日本だと養子縁組は夫婦じゃないと出来ないけど、学園都市は別って感じ?
590 :ブラジャーの人 [sage]:2012/01/07(土) 22:23:31.29 ID:3JbmpIuq0
>>585 >>586 パンツで測る、通行止め愛。 正直そこに注目してくれて嬉しいな。まさにそういうつもりで書きました。

>>587 黄泉川家みたいな家族を作って見返してやるんだ!お嫁さん探し応援します。ただし乳で選んではいけません。

>>588 大丈夫。野比のび太と同じ法則。


>>589 あるぇ?養子縁組って、「養い親」と「養子」という「親子関係」しか結べないのでは?夫婦になるには「婚姻」しか方法がないのでは?
同性愛者の方が、よく養子縁組で世帯を共にする話を聞くが、あれもあくまで「親」(年上・攻)と、「子」(年下・受)だと思ってたよ。

それとも>>589の言わんとすることは「夫婦」である男女でなければ「養子」をとれない…ということかな?
私は配偶者がいなくても出来ると思ってた……

教えて本当に偉いヒト!もし間違ってたら脳内補完よろしくなんだよ!
 
591 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/01/07(土) 23:16:31.68 ID:Ay5pyRHt0
>「夫婦」である男女でなければ「養子」をとれない

まさにこれだよー。独身だと養子はとれない
まぁここは学園都市だし、別の法律があるってことで無問題!
592 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/01/08(日) 00:13:03.05 ID:D+LWlARRo
>>590
養子縁組の方は
黄泉川の養子になってる所に対しての指摘だと思うんだぜ!
黄泉川さんマジ独身
593 :ブラジャーの人 [sage]:2012/01/08(日) 00:56:50.96 ID:aSTFEijM0
ちょいとウィッキーさんで調べてみた。

未婚でも成年なら養子をとれるらしい。「養子」になる子が15歳以上なら、当事者どうしだけの合意で可能。(年齢や血縁の関係で、不可能なケースもある)

しかし、「夫婦」が養子をとる場合は、夫、妻、「両者」の意思が合致していなくてはいけない。
妻だけ、又は夫だけの独断で養子を迎えることはできない。後に縁組を解消される原因となる…とあった。

よし、たぶん大丈夫、たぶん。おそらく。


独身黄泉川先生、一方通行を息子にする。そういうことで、よろしく哀愁。
594 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/08(日) 03:00:58.49 ID:OAx9X/2DO
>>1乙ぱい

ビール瓶だった俺は生まれ変わって炬燵になったんだ
打ち止めの脚を(クンカクンカしつつ)暖めるだけの簡単なお仕事です
595 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/01/08(日) 14:40:46.85 ID:izFJwCEpo
幻視える…遊びにきた野郎共に、中で屁ぇこかれて悶絶する>>594の姿が…っ! 


幸せ家族を作るのなら、おっぱいよりも優しく明るい奥さんが欲しいなぁ。 
俺、魔法使いチケットまだ持ってるけどさ…

596 :ブラジャーの人 [sage]:2012/01/09(月) 21:20:55.32 ID:znD5G8j00
>>594 勝手に復活しよりましたね。おかげでこんなの考えた。 ↓小ネタ



ここはとある喫茶店

土御門「珍しいな、お前が俺を呼び出すなんて」
一方通行「……」シーン

土御門(暗いぜよ)

土御門「おい…、どうしたんだ。何か用があるんじゃないのか」
一方通行「なァ……」ジー

土御門(えぇぇぇ凄い熱い視線)

一方通行「オマエってオンミョージなンだろ?」ジー
土御門「は?あ、あぁまぁ…」
一方通行「あれだろ?昔映画にもなってたな。打ち止めとこの間見たンだが、日本のエクソシストみてェな」

土御門(激しく違うが否定しないでおこう)

土御門「そういう術や技もあるが…、俺はあまり」
一方通行「ウチがなンか変なンだよ…」ショボリン

一方通行「ウチの女どもがいる時だけなンだが、絶対おかしい。特に打ち止めの周囲でおかしい」
一方通行「家具とか食器から視線や気配がするようになった。勝手に物が落ちてくるしよォ」
一方通行「あとどォして俺が入るときだけ風呂の湯が水になってンだよ。まァ一瞬で沸かし直してンだが」イライラ

土御門(あの一方通行からまさかの話題)

一方通行「その、何だァ、怪奇現象ってェヤツか?」

土御門(もしかして怖がってる?)

一方通行「芳川はツクモガミとか言ってる」

土御門「ほぉ…、科学者が随分古めかしいモノ知ってるんだな」

一方通行「何だっていい……とにかく、お祓いってェのやってくれ」

土御門(テキトーにお札でも渡しておくかにゃー)



次回、ツッチーの黄泉川家大浄化作戦 

(つづかない)



明日の夜に本編を投下できたらいいなぁ、と思っています。
597 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/09(月) 22:12:13.05 ID:WfCr9jpoo
つづけろください

あ、明日の投下楽しみにしてます
598 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/09(月) 22:15:13.86 ID:GmzSWApNo
わっふるわっふる
599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/01/09(月) 22:45:44.18 ID:Zt/DtoNGo
まさか付喪神として出演できるとは…俺、幽波紋役としてでたいな…
600 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/10(火) 00:29:20.31 ID:5aM1ElIDO
乙です
小ネタを…小ネタの続きをぜひ…!
601 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/10(火) 04:31:03.26 ID:Vq2xbv0AO
じゃあ俺は箸だ!
602 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/10(火) 06:13:48.85 ID:m8VnYFzDO
>>1乙ぱい

まさか小ネタになるとは…
浄化される前に、せめて今一度打ち止めのスカートをペラリと捲り上げたか…っ…た…ガクリ
603 :ブラジャーの人 [sage]:2012/01/10(火) 21:17:19.47 ID:rx3h6EpP0
小ネタの続きは気が向いた時にでも… 向かなくても恨まないでください。

それでは本編いきます。
604 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/10(火) 21:19:31.97 ID:rx3h6EpP0

「パソコン見て何してるの?ってミサカはミサカ朝から真剣な顔のあなたに尋ねてみる。おはよーございまーすふぁー」
「例のペットショップ宛にメール送ってンだよ」
「わぁ、さっそくハスキーちゃんのために行動開始なんだね!」
「まァな」

一方通行は誰より早く起きて、新しい生活に向け、まずハスキー犬を所有する会社にパソコンのメール機能で接触を図っている。落ち着いて作業したかったので自室で作文していたが、こうして打ち止めも目を覚ましてやってきた。まぁ、あと少しで終わるので問題ない。
昨夜のパーティーの疲労が抜けない保護者二人と番外個体は、まだ寝ている。今日は全員休みなのだから、思う存分寝坊させておくつもりだった。

「…よし、こンなモンか」
「もう書けたの?ってミサカはミサカはやけに長そうな文面に見入ってみたり…」



(作者より 以下のメール内容は長い上に気色悪いので、読まなくても大丈夫です。)
605 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/10(火) 21:28:08.67 ID:rx3h6EpP0

 
とあるペットショップ経営者様、ならびに従業員の皆様

突然のメールにて失礼致します。私は学園都市に籍を置く、黄泉川一方通行と申す者です。

学園都市といえば、一月まで御社が特別に期間限定で出店していたこともあり、多くの方が記憶されていることでしょう。
私どもはその折にそちらに訪れ、普段は目にすることのない様々な動物と出会い、大変有意義なひと時を過ごさせて頂きました。
また、当家で飼育している金魚用に今までと違うポンプとフィルターを購入させて頂き、
以後、水槽内の環境が改善され、金魚は健やかに成長しております。その商品を紹介してくれたスタッフさんには大変感謝しております。

話が本題から逸れてしまいました。
実は今回メールをお送りした一番の理由というのは、そちらのふれあいコーナーにて飼育している、白いシベリアンハスキーについてなのです。
私どもは恥ずかしながら、今まで「犬」というものを近くでじっくり見る経験がありませんでした。
それも学園都市で生活している特殊性…と言い訳させてください。

なにげなく訪れたコーナーでしたが、そこで寂しそうにしている前述のハスキーに出会いました。
私の髪も白く、また同じように目も赤く、その偶然に驚いたものです。
連れと共にその犬と過ごすうちに、すっかり懐き、懐かれてしまいました。
特に、一緒に訪れた年若い女の連れはハスキーを恋しがり、次週の休日には、またその犬に会いに行ってしまうほどでした。

あれから一カ月少々の時が経ち、件の連れが言いました、あの子を飼いたいと。無理を承知でも、口に出してしまった願いでした。
しかし、無理かどうかは御社に尋ねてみなければ分からないことだと思い、こうしてお伺いを立てる次第であります。

どうか、あのハスキー犬を私たちに引き取らせて頂けませんでしょうか。

それによって起こる御社の損害は、もちろん補償させてもらいます。
さらに重ねていやらしいことを申し上げますが、幸いにも金銭的余裕に恵まれている身でありますので、
願いを聞き入れて頂いた暁には、ハスキーのために万全の準備を致します。
丁度住居を変えようとも思っておりましたので、気兼ねなく犬と暮らせる家を、すでに検討しているところです。

そちらからの返答もないうちにではありますが、はやる心故だと察してくだされば…と思います。
それでは、お忙しいこととは存じますが、どうかお返事をお願い致します。


黄泉川一方通行
            

 
606 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/10(火) 21:31:55.30 ID:rx3h6EpP0

長々と書かれていたが、要は「そっちで飼育しているハスキー犬を、どうしても飼いたいので引き取らせてくれ。出すモンは出すから」という内容だった。
打ち止めは、読み終えてもしばし言葉が出ない。

「……あなたのキャラがメールの文と違いすぎて、どう言ったらいいのか。これじゃどこの紳士かと思うよ、ってミサカはミサカは違和感たっぷり」
「うるせェ。向こうができるだけ好感持つようにしただけだ。結局は人間相手だかンな、心理戦だ、心理戦。ハイ送ォ信っと」

紳士なメールが送信され、打ち止めは仰々しく手を合わせてお祈りする。

「なにとぞ、なにとぞよろしくおねがいします…!お店の人が騙されてくれますように…!」
「失礼だなオマエ…」

その後、打ち止めに朝食を作ってもらい、二人で食べた。
いい匂いにつれられたのか、寝坊組が次々起きて来たため、少女は調理に追われてしまうが、
いずれこんな機会も減るか、無くなるかと思うと郷愁が湧くのであった。

607 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/10(火) 21:34:54.14 ID:rx3h6EpP0

時を同じくして、とあるペットショップでは……

「店長、どうしますかこのメール…。よみかわ…?(読み方わかんねぇ)さんていう人からの」
「あー…、どうしましょうねぇ。んー、正直イイ人なら問題ありません。でもやはり直接会ってお話したいですねぇ」

若い男の店員と、中年の小柄な女性の店長。二人は、届いて間もない一方通行からのメールが映し出されたパソコンのディスプレイを見ている。

「うちとしては、別にかまいませんよね。ワンワンスタッフとして、新しく一匹雇うことができるじゃないですか。ユキも黄泉川さんちで幸せに暮らせるなら…」

彼が言う「ワンワンスタッフ」とは、ふれあいコーナーにいる犬達のこと。
「ユキ」とは、例のシベリアンハスキーのことだ。白いからユキ(雪)という、安直なネーミングである。

「そうですけどねぇ、もし黄泉川さんがワルイ人だったらどうするの?メールは素敵でも、実際は…。言いたくないけど、科学の街で実験動物にでもされたりしたら私……」
「損失は補償って書いてありますが」
「……子供のハスキーが必要になって、金銭を出してもユキを手に入れようとしてたり」

実はあのハスキー犬、まだ生後七ヶ月の子供なのである。一方通行達は、大きさからして成犬と思っているが、
大きいのは体だけで、人間に換算すると、まだ十二〜十三歳といったところか。

「まったく、どんだけ疑い深いんですか」
「石橋は叩いて壊して新しく鉄橋を建設するくらいがいいのよ」

ふれあいコーナーの犬たちは、多くが保健所から引き取ってきたり、客に渡して間もなく『飼えなくなったからいらない』『オスじゃなくてメスにしたい』という身勝手な理由で返された動物である。それは猫でも同じだった。
いわゆる〈売り時〉の幼い頃を過ぎると、再度飼い手がつかず、ふれあいコーナーを設けてっそのような犬猫を飼育しているのだ。

営利企業である限り、ペットショップだからといって無尽蔵に犬を引き取り続けるわけにはいかない。
飼育するための人手も資金も、いつもギリギリだった。

「めでたくユキが貰われていけば、もう一匹飼う余裕ができますからね」
「まぁ、ねぇ…」

こちらの思惑は、まだ見せない。まずは黄泉川一方通行が、如何なる人物なのかを確かめよう。

とりあえず「黄泉川一方通行様と、一度直接会ってお話したいと思います。こまかいことは、そのときに…」と、当たり障りのない返信をしておいた。

608 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/10(火) 21:39:15.15 ID:rx3h6EpP0

「打ち止め、例の犬のトコから返信来たぞ」
「えぇ、もう!?早いね!?ってミサカはミサカはどんな回答だったのか恐る恐る訊いてみたり……」

一方通行がペットショップにメールを送った日の午後、ベランダで洗濯物を取り込んでいる打ち止めの元に青年がやってきて告げた。

「とりあえず一回会いたい、だとよ」

それを聞いて、打ち止めはほっとした。「できません、諦めてください」という結果も覚悟していたからだ。

「これからお互いに都合をつけて予定を組む。オマエも卒業式が終わったら暇だろ?そォしたら行ってみようぜ」
「うん!あぁ、早くもう一回会いたいなぁ…、ってミサカはミサカはあのコがミサカ達のコト覚えててくれたら嬉しいと期待してみる」
「どォだかな…」

洗濯物を全てカゴに収め、打ち止めはベランダの手摺に肘をついた。見降ろせば、これからの住まいである一階の部屋の庭がある。
枯れた雑草などで少々荒れている二つが、一方通行が言っていた空き部屋の場所なのだろう。
そこで、ハスキー犬と一方通行とで暮らす、新しい生活が待っている。

「真下だな。あそこにすっかァ……」

少女の横では、一方通行も同様の姿で下を向いている。同じマンションの棟でも、たった二十メートル以下しか離れていなくても、旅立ち、独立には違いない。
黄泉川と芳川が、こうして今の自分達みたいに、あの庭を見降ろすかと思うと少々切なくなる。

「…寒いし、もう部屋入ろう?ってミサカはミサカは暖房を恋しがってみたり」
「おォ」

それでも、二人は行くのだ。二人で行くのだ。


なんとなくだが、打ち止めの高校入学までには全てを完了しておきたくて、彼は精力的に行動を起こしている。

(明日は管理人に話をつけに行くか…)

609 :ブラジャーの人 [sage]:2012/01/10(火) 21:41:03.27 ID:rx3h6EpP0
とりあえずここまで。

一方さんのメール気持ち悪かったです。
アンタ誰よ状態。
610 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/01/10(火) 22:25:19.16 ID:CGw2E0m6o
乙!
一方通行さんも大人になったということで…
でも、あーでもないこーでもないと悩みながら書いてそうな光景がwwwwwwww
611 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/01/10(火) 23:39:40.73 ID:VlQKb+xHo
乙。 しっかりオトナな対応もできるようになってたんだな一方さん… 実際にあった時も、気持ちをしっかり伝えれば無事引き取れる予感がするぜ…
612 :ブラジャーの人 [sage]:2012/01/11(水) 23:16:30.72 ID:U0tBYuUy0
連日更新は久しぶりですね。

今日も通行止めは新しい生活のために頑張って(?)います。
613 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/11(水) 23:23:02.08 ID:U0tBYuUy0

打ち止めの卒業式は無事に終わった。一方通行が彼女の学校へ訪れるのは、春の授業参観以来だ。
『打ち止めと深い仲の男らしい』ということで、当時ほどではないが、やはり多大な注目を集めた。あの時は小気味良かった視線も、今となっては居心地悪い。

黄泉川、芳川も忙しい仕事の合間を縫って出席し、二人の見慣れないスーツ姿も、思えば三年前の入学式以来である。
驚くことに、番外個体までフォーマルでキメている。「どうしても来てほしい」と、打ち止めに頼まれたそうだ。

「今日はみんなお上品だね、ってミサカはミサカは記念写真を撮ろうと提案してみる。こんな機会は滅多にないよ」
「面倒臭ェな、さっさと帰ろうぜ…」
「写真くらい一分もかからないじゃん。照れずに付き合ってやるじゃんよ」
「照れてねェ」

芳川が、近くにいた父兄の男性に撮影を頼み、五人は体育館の壁の前に並ぶ。

「笑ったら?第一位。写真に写る時はしかめっ面っていう自分ルールでもあんの?」
「やかましィ地顔だほっとけ。オマエこそ慣れないカッコのせいで失敗顔すンなよ」

番外個体と一方通行が軽口を叩きはじめ、カメラを構えた男性が、いつシャッターを切ればいいのだろうかと佇む。

「すみません、もうこのままでいいので撮ってください」
「ミサカ達は笑顔笑顔〜」

呆れたような芳川の声に促され、撮影はすぐに終了。言い合いっこしていた二人の口が開いたままでしかめ面カメラ目線という、変な記念写真が撮れた。
614 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/11(水) 23:33:50.04 ID:U0tBYuUy0

「えへへ、これ新しい部屋に飾るんだ。合格祝いのときの写真も。あとでミサカにちょうだいね、ってミサカはミサカは写真立ても用意してある周到さを明かしてみたり」

「あぁ、愛穂がこの子を捕まえている時のね。あれも全員で撮ったものだったわ」

着々と、新しい生活に向けて準備をしている一方通行と打ち止め。マンションに向かって歩きながら、芳川が打ち止めの頭を撫でる。出て行くことになっても、いや、出て行くからこそ、こうして思い出を大切にしようとする少女がかわいい。

「最終信号達はこのあと横浜だっけ。忙しいよねまったく」
「私も桔梗も仕事じゃなかったら車出せたのに。日を改めてもいいじゃん?」
「乗換も少ないし、駅からはタクシーに乗るから構わねェよ。まァ実際に犬を連れて帰れるって時は頼むかもな」

そう、打ち止めの卒業式が終わったら、例のペットショップへ行こうという予定だった。早いうちに伺いたいという希望と、先方の都合を刷り合わせていたら、いっそ今日だ、ということのなったのである。

ペットショップがある横浜は大して遠くないし、駅から離れていないので公共交通機関で行くことにした。だって一方通行は学園都市内でしか車を運転できない。
もうマンションの管理人には犬を買う許可を(立場とコネを最大限に利かして)取っているので、あとはハスキーさえ引き取ることが出来れば、一方通行と打ち止めの新生活は完璧だった。

「中華街で遅めのランチを食べるんだ、ってミサカはミサカはグルメ小旅行も兼ねていることにワクワクしてみる」
「ただのデートかよ。黄泉川、芳川、お邪魔だからついてくるなってさ。ミサカ達のお土産は買ってきてよね」
615 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/11(水) 23:42:30.11 ID:U0tBYuUy0

そういうわけで、ここははるばる訪れた横浜中華街。一方通行と打ち止めは、そこの中華料理屋で遅めの昼食を取っていた。
青年はスーツを脱ぎジャケットを。ただネクタイは外さなかった。少女はセーラー服から、よそ行きの気合いの入ったワンピースを。
念入りに髪も巻いてセットし、麦野沈利直伝のメイクでおめかししている。

「シューマイジューシー!ってミサカはミサカはあなたにおすそわけしてみたり」
「どォも」
「代わりにその天津飯を一口寄越すのだ、ってミサカはミサカは交換条件を提示してみる」
「どォぞ。勝手に取って…と言う前に食ってンじゃねェよ」

学園都市とはまったく違う雰囲気の街並、見慣れない商品を扱うお店の数々、そして何より美味しいごはん。打ち止めのテンションはグングン上がっている。

食事の後はお土産屋さんを巡り、ペットショップへ赴く予定だ。打ち止めはさっそく手当たり次第に物色を始める。


「ぱんだーぱんだ〜。あ、この鏡もかわいい!」
「ほどほどにしておけよ。必要無い物まで買わないように」
「分かってるもん。みんなにあげる物だしちゃんと吟味してるから、ってミサカはミサカはしっかり者であることを主張してみる」
「……でェ、しっかり者の打ち止めさんは、まァーたそのトウガラシ買うンですかァ?」
「うん、買う」
「………はァ、行くとこ行くとこ同じモンばっか…。何個ありゃ気が済むンだ」

可愛らしい小物やお菓子の他に、打ち止めの持つカゴの中には〈トウガラシ〉が数個ある。本物の食用の唐辛子ではなく、それを模したガラス製の飾りだ。紐にトウガラシを鈴なりに結びつけ、揺らせばチャラチャラと音が出る。
一つの飾りにトウガラシが十数個から三十個ほどくっついていて、小さいものは一粒が一センチ、大きい物は三センチほどにもなる。比例して太く立派になるので、なかなかの見栄えだ。

打ち止めはこのトウガラシをやけに気に入り、いくつも買っていた。なにせ、どこの店にも必ず置いてある。

「これお守りなんだって。緑のもあったけど、ミサカはやっぱり赤いのがいいな」

一方通行にはどれも同じに見えるが、紐への括り付け方のバランスとか、色の鮮やかさが気になるらしく、打ち止めは真剣に見比べていた。

そしてついに……
616 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/11(水) 23:44:42.08 ID:U0tBYuUy0

「おぉ……あれ見てあなた…。すごい…」
「……まさかオマエ…」

そろそろペットショップへ行く約束の時間なので、次の店でお土産探しは最後にしようとしていた。
運がいいのか悪いのか、そこで打ち止めは素敵なトウガラシに出会ってしまう。

とにかく大きい。長さは打ち止めの身長並み。一粒…、もう粒という表現は正しくない。ひとつが十センチにもなる巨大トウガラシが、ワサワサ付いた巨大なオブジェ。

「あれも、新しいお家にぜひ……!ってミサカはミサカは布製なことが残念だけど絶対ゲットだぜ」
「やめろ」
「やだ買うもん。おこづかいで買うもん」
「買ってどォすンだよ。あんなワケの分からねェモン…」
「リビングに吊るそうよ」
「すげェ嫌なンだが」

と言いつつも、打ち止めの目の輝きを見れば、もう止められないことを悟った青年。どこかで宅配を頼もうと、早々に観念した。
617 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/11(水) 23:49:28.87 ID:U0tBYuUy0

「あ、あ、タクシーが来たぞ!きっとあれが黄泉川さんだ!」
「どいて私も見るっ」
「お、噂の紳士が来たかぁ…、どれどれ…」

一方通行と打ち止めは、タクシーでペットショップに到着した。彼らは知る由もないが、一体どんな紳士が来るのだろうと、店の従業員は興味深々だったのだ。
事務所二階の大きくはない窓に、数人が張り付く。そしてタクシーから降りた人物を見て、

「あれ、違うひとかな?えらい若そうな兄ちゃんだ」
「でも、でも髪が白いよ」
「若い…ですよね?杖ついてるけど」

上品な白髪のお爺さんが来ると思い込んでいたスタッフ達。(目が赤いのは先天的な症状か、何か理由でもあるんだろう、と考えていた)

「んー、見えた!目が赤い。あの兄ちゃんが黄泉川さん本人だな、確定」
「もう一人降りてきたわ。あれがメールに書いてあった女の子ね」
「ん?あれ?俺あの二人覚えてるよ。ニッシーと写真撮らないかオススメしたもん」

丁寧に作文したメールが仇となり、一方通行は大いに勘違いされていたのだった。

「あらあら、落ち着いてみんな。とにかく誰かお迎えにいって私の部屋に連れてきて」

店長の声に、最初にメールを読んだ若い男性店員が二人を出迎えに行く。

(驚きだなぁ、あんな若いあんちゃんだったとは…)


「いらっしゃいませ、黄泉川さんですよね」
「そうですこんにちは!今日はよろしくお願いします、ってミサカはミサカは第一印象を気にしたご挨拶をしてみる」
「本音がダダ漏れで印象良くねェよ。……さっそく店長に会いたいンですが」

そんなつもりではないのに、一方通行の鋭い視線を受けた店員はちょっとたじろいだ。

(ち、違う…!予想と全然違いすぎる…!女の子は良い意味で予想以上だけど)

618 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/11(水) 23:57:09.28 ID:U0tBYuUy0

通された部屋で、ソファに座りしばし待たされる一方通行と打ち止め。あまりに想定外な人物像に、従業員達が慌てたからだ。

「若い…。まだ子供だぜ」
「メール見て、てっきりナイスミドルが来るもんだとばっかり思ってたわ…」
「ガッカリすんなよオジン趣味が」
「逆に俺たちは連れの彼女が可愛くてウヒョーだよな」
「あぁ、巨乳だし」

こうして騒いでいても、彼らを待たせるだけである。店長は皆に静かに待つよう言いつけ、ふれあいコーナー責任者の女性と二人で対面に臨んだ。


「お待たせしましたー。初めまして黄泉川さん。店長の鈴木です」
お茶が乗る低いテーブルを挟み、四人はまず軽く挨拶。

「お忙しいところを失礼しました。こちらの勝手な申し出に付き合わせてしまって…」
「あぁ、いえいえ…。私達のことはお構いなく」

(あの人が丁寧な言葉使ってる…!ってミサカはミサカはくすぐったくて心中悶えてみたり)

「こっちはメールにも書きましたが、連れの御坂打ち止めです」
「こ、こんにちは、っ…ミ、御坂です」

珍妙な名前に面食らったが、学園都市では普通なのかもしれないと、そこには触れない店長。

(うん、思ったよりずっと若いけど、かわいいコ達ねぇ。男の子は顔が怖くても真面目そうだし)

「あの、それで本題なンですが」
「はいはい。シベリアンハスキーのことですね。わざわざ横浜までお越しになるなんて、そんなに好いて頂いたんですねぇ」
「はい…!すごくかわいかったからずっと忘れられなくて、ってミサカはミサカは…、」
「もう新居は決まりまして、…正直どォなンでしょうか。こういうことは…」

ちょっと気を抜けば、打ち止めはすぐに口癖が出てしまう。失敗、という風で口に手を当てて塞いだ。

微笑ましい様子に、店長達は思わずほころんだ。

「犬を引き取りたいということは別に構わないのですが、こちらとしてはやはり色々お訊きしたいこともありますので」
「えェ、もちろンそうでしょう」
619 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/12(木) 00:03:07.72 ID:yp3QW4f10

色々訊かれた。年齢も、新しい部屋の事も、どうしてその若さで豊富な資金があるのか、家族構成も。

一方通行はすべてに丁寧に答えた。

自分が二十一歳で、打ち止めは今日が中学の卒業式であること。
気合いを入れた少女が、もっと年上に見えたと店長達は驚き、それは打ち止めの機嫌を良くさせた。

新居はマンションだが庭つきの一階部屋で、管理人に了承を得ていること。

自分は学園都市の第一位という格付けを持っており、様々な利益を享受できること。さらに投資事業を行っていて、それが成功を収めていることも告げた。

「あなたそんなことしてたの!?ってミサカはミサカは知られざる副業に驚いてみたり」
「…他のヤツには黙ってろよ」


今まで保護者の元で世話になっていたが、独身でもある彼女達のために独立を急いだこと。
そして、これは流石に言いにくそうにしていたが、(打ち止めの希望もあるので、と前置きし)彼女と同棲すること。

「本当にヨミカワとヨシカワのこと心配でお家を出ることにしたのね。そして心配だから近くに住むんだ…」
「……オマエがホームシックになっても困るしな」

これには店長と隣のスタッフも苦笑。メールに騙されたのかとも思ったが、意外に……

(大丈夫そうかしらねぇ)

620 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/12(木) 00:11:52.50 ID:yp3QW4f10

「なるほど、たくさんお話して頂いてすみません。よく分かりました」

にっこり笑う店長に、てっきり願いが叶うのかと、打ち止めが身を乗り出す。

「正式なお返事は後日お知らせしますね」
「分かりました」

それはそうだろう。いきなり会って、ではどうぞ、などとはいくまい。一方通行は促されて席を立ち、気が急いてガッカリした少女の背中を押す。

「そうだ。せっかく来てくれたんですから、ユキに会っていきますよね?」
「ユキって?」
「あ、ごめんなさいねぇ。あなた達が御執心のハスキーのことですよ」
「あ、ぁ会う!会います!ってミサカはミサカは挙手してみる!」


外に設置されているというふれあいコーナーへと向かう道すがら、一方通行が質問する。

「まるでメスのよォな名前でしたが…オスですよね?」

店長ではなく、今まで主に話を聞いているだけだった女性店員が答えた。

「ふふ、えぇオスですよ。白いので単純にユキと名づけたんです。…あまり真剣に考えていては、どうしても犬達に思い入れしすぎてしまいますから…」

一方通行と打ち止めは教えられた。あの犬や猫達のこと、ふれあいコーナーの成り立ちを。まだあのハスキーが子供だということにも驚いた。

「稀にですが、黄泉川さんたちのように」
「さぁ着きましたよ。ほらあそこにいます」

女性スタッフの言葉を遮り、店長がある一角を指し示す。テニスコート二面程の土地が腰までの柵で仕切られていて、青空の下で十数頭の犬が走ったり、寝転がったり。隣接する奥の平屋の建物は、犬達の寝所だろうか。
お客らしい数人の人が居て、見覚えのあるコーギーと紀州犬などは人間と戯れていたが、やはりあのハスキーは一匹で過ごしている。
621 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/12(木) 00:22:16.35 ID:yp3QW4f10

打ち止めは出入り口を開け、足元にじゃれてくる他の犬に注意しながらハスキー犬の傍へと駆け寄る。一方通行も、店長達に軽く会釈して後に続いた。

「ハスキーちゃん!会いにきたよ!ってミサカはミサカは覚えてるかな?と不安ながらも声をかけてみるっ」

ハスキーは一瞬首をかしげていたが、すぐに打ち止めに突進した。ぶつかるように飛びついて、膝を折ってくれた少女に鼻を擦りつけては顔を舐める。

「…覚えてたンかねェ」
「はぅ、そう、うぷ、ハスキーちゃん落ち着いて…っ」
「立てホラ」

一方通行に腕を掴まれて、打ち止めは猛烈な歓迎のペロペロから脱した。

「わんっ」
「よォ、久しぶりだなァ…」

一方通行はぐりぐりとハスキー犬の頭を撫でる。椅子のある場所まで犬と打ち止めを連れて歩き、腰掛けたそばから、いつかのように彼の膝に顎を乗せるハスキー。

「このコ、あなたの膝がよっぽど気に入ってたのね」
「………」

一方通行は杖も外し、両手でハスキーをかまう。右手で頭を、左手で背中も。その姿は、まるで彼が一番犬に会いたかったかのように見えるではないか。

心待ちにした再開に、二人はしばし時を忘れて和んだ。


十分か、二十分か。ふと気づけば、柵の周りには案内してくれた店長達二人以外にも、数人のスタッフが集まってきていた。彼、彼女らは学園都市からやってきた一方通行と打ち止めを珍しそうに、そしてどこか楽しそうに眺めている。

またもうっかり夢中になってしまったことに気づいた一方通行。バツが悪そうに杖を取って、「えーもう行くの?」と不満を述べる打ち止めを引っ張ってそこを後にした。
ハスキーも恋しそうに二人を追う。後ろ脚で立ちあがり、柵から前脚と顔を覗かせた。

「…また、またね…、ってミサカはミサカは再開の約束でお別れしてみる」


622 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/12(木) 00:28:25.88 ID:yp3QW4f10

「もうよろしいのですか?」
「…えェ、お時間とらせて申し訳ない」

一方通行は笑顔の店長達と目が合わせられない。
少女の願いのために一肌脱いだ風を装っていた一方通行だったが、これでは自分も打ち止めと同じように望んでいることがバレバレだ。

「ありがとうございました。あの、…よろしくお願いします(ってミサカはミサカは最後のお願い…)」

代わりに打ち止めが挨拶をし、二人は待たせていたタクシーに戻る。ドアを閉めようとした時に、ずっと同席していた女性スタッフが「おみやげです」と、小さな手提げ袋を持って近寄って来た。

「さっきの話の続きですが、…たまに黄泉川さん達のように、うちの子を引き取ってくれる方がいるんです」
「え、じゃあミサカ達が初めてじゃないんだ」
「はい」

お二人のように若い人だけ、しかも学園都市からっていうのは初めてですけどね、と言う店員。

「もう店長の心は決まってると思いますよ。ユキには…、あの犬には黄泉川さんと御坂さんが新しい名前をつけてあげてください」
「何で?ユキっていう名前があるのに?ってミサカはミサカは、……え!?それより本当ですか!?」

店員はハスキーが二人の元に引き取られると断言した。一方通行も驚いて顔を向ける。

「本当ですよ、楽しみにしてて下さい!こういう時のために、私達はあまり動物達の名前を呼ばないようにしてるんです。だから…」

「はい、大切にします、って…約束します」
「どォも…」

623 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/12(木) 00:33:09.57 ID:yp3QW4f10

仕事はいいのか、とツッコミたくなるような人数に見送られ、車中から軽く会釈する一方通行と、窓を開けてブンブン手を振る打ち止め。

「さよーなら、ありがとうございました〜」

さよなら〜、ばいばーい、と気のいいスタッフ達。


その後タクシーの中、晴れやかな心で手渡された袋の中身を見た打ち止めは、

「ふぎゃあ!?」
「なンだよ!?」

会社のマスコットだろうか、かわいい犬の携帯用ストラップ、オリジナル卓上カレンダー、子猫がプリントされた絵葉書。それはいいのだが、

『前回は撮影されなかったので、せめてニッシーのブロマイドを記念にどうぞ!』

そうメッセージが書かれたメモが、巨大ニシキヘビの写真に貼り付けられていた。







「ハスキー犬は黄泉川様達に、ぜひお任せしたいと思います。あのコのことを、どうか大切に飼ってあげてください」


そう快諾の返事が電話で掛かってきたのは、翌日のことである。
624 :ブラジャーの人 [sage]:2012/01/12(木) 00:41:01.16 ID:yp3QW4f10
新生活に向かう通行止めとハスキーの巻 完

トウガラシについて  あれは本当に何なのでしょうか。中華街のどこに行ってもトウガラシトウガラシ。

ハスキーについて  名前は「ハス男」とかにはしないから安心してください。
一方さん以外に打ち止めをペロペロできる準レギュラーが登場しました。

625 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/12(木) 00:50:44.40 ID:hDUFVOuIO
乙!

ますます新生活が楽しみになってくるな!
626 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/12(木) 01:02:28.55 ID:pmzqxZvDO
>>1乙ぱい

ハスキー犬…なんて美味しいポジションだ、羨ましいぜコンチクショウ!
だが、可愛いのでしょうがないなw
627 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/12(木) 01:13:16.06 ID:P5BkwGaCo
                   ∧∧∩
                   ( ゚∀゚ )/
             ハ_ハ   ⊂   ノ    ハ_ハ
           ('(゚∀゚ ∩   (つ ノ   ∩ ゚∀゚)')
       ハ_ハ   ヽ  〈    (ノ    〉  /     ハ_ハ
     ('(゚∀゚∩   ヽヽ_)        (_ノ ノ    .∩ ゚∀゚)')
     O,_  〈                      〉  ,_O
       `ヽ_)                     (_/ ´
   ハ_ハ            キターーーーー          ハ_ハ
⊂(゚∀゚⊂⌒`⊃                       ⊂´⌒⊃゚∀゚)⊃

ユキさんについてるダニかなんかに転生してくるわ
628 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/01/12(木) 01:41:44.12 ID:uaf73J0Eo

一方さんのカタカナ口調に敬語って死ぬほどあわないんだなってよくわかった
絹旗が喋ったときから知ってたけどな…
629 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/01/12(木) 01:53:16.60 ID:jIXdGk5v0

サブどころかゲストキャラですらキャラが立ってるって>>1ほんとすごいと思うの
名前はユ○コ一択と思ったがオスなんだよな…

>>627
そして到着初日で一方通行に駆除されて天に召されるんですねわかります
630 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/01/12(木) 08:19:27.18 ID:J1PtHtkHo
乙。 ハスキーも加えてぺろぺろ生活か…胸が熱くなるな。

あと中華街のすぐ近くにすんでる地元民でも、由来は分からんゼヨ… 
631 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/12(木) 10:43:17.89 ID:tAXKywGSO


唐辛子のアレは魔除けの一種で、自分にふりかかる悪いことを一つ消すたび一つずつ折れてor割れていくと言われているお守りって聞いたことあるよー
一方さんなら1日で全部粉砕しそうだね!
632 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/12(木) 11:21:22.99 ID:6EeqfjbAO
ハスキー犬の名前って言ったらチョビ一択


だけど♂なんだよな
633 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/01/12(木) 23:05:19.03 ID:BeecNGt50
じゃあ、マイナーだけどシーザーは?
チョビと同じハスキー犬で、犬ぞりチームのメンバー。
口癖は「おれはやるぜ!」

おなじく動物のお医者さんの登場人物(犬)
634 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州・沖縄) [sage]:2012/01/13(金) 13:58:34.07 ID:rTMWZCHAO
強い子に育つようにヒヨちゃんと名付けるのはどうだろうか
635 :ブラジャーの人 [sage]:2012/01/13(金) 23:31:44.50 ID:brNUcIH+0
>>625 乞うご期待なんだよ。新生活編も、もうすぐ書けるかなー。

>>626 かわいいは正義ですから。

>>627 私も駆除されると思います、一瞬で。 みんな転生しすぎですよ。

>>628 ほんと書いてて辛かったですよ。別に一方語にしなくて、オール演技の標準語でもいいかと思いましたが、こっちにしました。

>>629 ニシキヘビ飼育員のことですかね。そんなに立ってましたか…

>>630 やはりお守りのようです。ニンニクみたいなものか。日本だと小豆とか?

>>631 上条さんの場合も…… 

>>632 やはりそう思いますか。おそらく「チョビ」はオス、メス兼用なんだろうけど。

>>633 色も似てますし?でも飼い主の顔を忘れるようなボンヤリ犬はちょっと。

>>634 そこまで最強にならなくてもいいです。
636 :ブラジャーの人 [sage]:2012/01/13(金) 23:35:56.19 ID:brNUcIH+0

スルーしたバレンタインの代わりに、ホワイトデーの話を。
637 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/13(金) 23:45:53.50 ID:brNUcIH+0

新しい部屋へ引っ越す準備は着々と進んでいる。
家具も既に購入済みで、貸しコンテナに預けてある。あとは床と壁の改装工事が終われば運び込めるだろう。

一方通行と打ち止めの部屋の物は、黄泉川家から持って行くことも考えたが、全て新調することにした。どうせ、ことあるごとに実家に泊まることになるのだろう、との考えから、そのまま残しておく。

「あなたの新しいベッド大きいね、ってミサカはミサカは早くこの上でジャンプしてみたいとウズウズしてみる」
「自分のベッドでやれ」

『一応』、それぞれの部屋にベッドを置く予定だ。一方通行はダブルベッドを購入した。あとはリビングのテーブルやソファ、棚など、家具一式勢ぞろいが、コンテナの中に収納されている。今日はついでなので、新居に持って行く衣料品や私物もここに預けておこうとやってきた。そうしておけば、引っ越し業者が家具と一緒に運んでくれる予定だ。

打ち止めが自分のシングルベッドに乗せた袋から、巨大なトウガラシが覗いている。それを見た一方通行はゲンナリした。

「…それ、マジでリビングに飾るのかよ」
「うー、あなたがどうしてもダメって言うならガマンする。自分の部屋に吊るす…」

どうしてもダメじゃないのでゲンナリするのだ。さらに、新居での打ち止めの居場所は、おそらく自室にほとんど無いだろうな、という認識。だからダブルベッドを買った第一位である。
あまり滞在しない部屋に置いても、彼女にとっては意味はないはずだ。

「あァもう好きにしろォ。でも端の方だぞ」
「やったぁ、ってミサカはミサカは上目使いの有効性を実感してみたり」
638 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/13(金) 23:58:37.39 ID:brNUcIH+0

マンションに戻り、二人はリビングの炬燵に足を入れた。今は春休みの最中なので、保護者達は仕事に出ている。
ひとまず足を温めてから、打ち止めは一方通行のコーヒーと自分のお茶を淹れにキッチンへ。
少女が立てる耳慣れた音を聞きながら、一方通行も炬燵を抜け出した。


「あれ?あなた?」

おぼんに飲み物を載せてリビングに戻ってきた打ち止めは、青年の姿が見えないことに気づく。テーブルにカップを置いていると、一方通行が戻ってきた。

「あ、いないからどこ行ったのかと思った」

青年は何も答えず炬燵に入る。打ち止めも隣に潜り込み、一緒に喉を潤した。

「……コレやる」

ひと息ついて、ほのぼのしていた打ち止めの目の前に置かれたものは、片手に収まるほどの透明なビニール袋だった。中にはクッキーが数枚入っている。

「………」

打ち止めは一瞬戸惑う。これは何だろう。確かに今日は三月十四日で、ホワイトデーだ。自分はバレンタインデーに一方通行にチョコレートをあげたので、こうしてお返しを貰ってもおかしくない。しかし、それは朝に貰ったはずだ。
黄泉川、芳川と一緒に、飴が入ったカワイイ箱を渡されている。「オマエから渡しとけ」と、番外個体の分も預かった。

「…、あ、これ、もしかして手作り?ってミサカはミサカは驚きの可能性に気づいてみたり…」

透明なビニール袋の中はクッキーだけで、防腐剤も、商品説明が書かれたカードも何もない。賞味期限も記載されていない。袋は折られた口をセロハンテープで貼り付けて封をされているだけ。

「不味くはないはずだ」
「でも、飴貰ったのに」
「オマエのチョコも手作りだろ、……まァ、差別化を図ってみた」

つまり、打ち止めだけ『特別』らしい。

「わぁ…ありがとう!あなたがクッキー作ってる姿なんて想像し難いけどだからこそ嬉しいよ!」
「俺も我ながらそォ思う」
「いつの間に作ったの?どこで作ったの?ウチじゃないよね?」
「昨日。三下の家で。しかもフライパンで焼いたという一品だ」
「フライパン!?」
「しょォがねェだろォ。アイツの家の電子レンジ、オーブン機能壊れてたンだから」
639 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/14(土) 00:07:11.84 ID:6F1tGWYT0

上条当麻から、「一緒にクッキー作ろうぜ」と電話で誘われたのは三日前だった。

「馬鹿かオマエは。…オマエは馬鹿か」
『二回も言うなよ、言い換えるなよ』
「……ホワイトデーか?」
『…うん。一人三枚だとしてもさ、一万枚以上用意しなきゃならないんだ…』
「一万枚のクッキーねェ…」

上条に好意を寄せる女性は、この世に一万人近く存在する。全員がバレンタインに彼にプレゼントをした訳ではないが、それでも半分近くの者から貰った。
保存の効くチョコレートはまだいいが、物品や、早く消費しないといけない食べ物には困った。仕方なくお裾わけしたり、実家に送ったりしたものだ。

『押入れにはまだ手付かずのチョコがわんさか詰まってんのにね。それのお返しをしないといけない上条さんなんですよ』
「インデックスはどォした。アイツがいてよく残ってンな」
『みんなが俺のために用意してくれたやつだし…。さすがに太るぞ、って脅してる』

ひとつひとつ封を開けて、必ず一口は食べると決心している上条。あとはインデックスに手伝ってもらって、チョコをジリジリと片付けているそうな。インデックスも自分宛ではないプレゼントを、全て横取りするのは失礼だとわきまえている。

『一方通行も黄泉川先生や打ち止めにお返しするだろ?ここはひとつ一緒にだな』
「もう飴買ってある」
『いいじゃないか助けてよ!もうラッピング用のリボンと袋買っただけで今月ジリ貧なんだよ!』
「オマエ俺にタカりたいだけだろ」
『そんなこと言わないでさ。喜ばれるぞ?手作り。心がこもってるもん。まぁ俺はひたすらに予算不足だからなんだけど』
「………」

喜んでもらえる。結局それが決め手となり、彼は上条を手伝うことにしたのだった。
640 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/14(土) 00:13:02.92 ID:6F1tGWYT0

そして翌日。上条の部屋はベッドもテレビも隅によけられ、ブルーシートが床一面に敷かれていた。友人知人から借りてきたという調理器具が、これまた借りて来たというテーブルに並べられている。まるで菓子作りの工場のようだ。

「ほォ、この粉を水と砂糖で混ぜて焼くだけ、ねェ。随分楽だな」
「あぁ、去年は大量に飴やマシュマロを買って、小分けにしてたんだけど、今年はこれでいく。安いから」

調理方法を確認しながら、手を洗う。手作りクッキーなんて、時間がかかり過ぎるだろうと思っていたが、なんともお手軽な。

「…どこかで調理室とか借りた方がいいンじゃねェか?」
「そんな施設のレンタル料ありません。……それに小萌先生に無理言って、高校の家庭科室使わせてもらったりしてるんだ既に……」
「それでも追い付かないわけか…。つーか去年まではどうしてたンだ?」
「今年が過去最高数を記録した上に、先月から出費が続いてて…」

「それにオーブン機能も酷使しすぎて壊れちゃったんだよ…。私があくせられーたに救援頼もうよって勧めたの」

隅でエプロン姿のインデックスも控えている。彼女もクッキー作りを手伝っているそうだ。
てっきりヤキモチを妬いて拗ねているかと思っていたが、毎年のことだし、自分も美味しい思いをしているので、粛々と助手をしている。
641 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/14(土) 00:19:54.85 ID:6F1tGWYT0

「フライパンやホットプレートでクッキーを焼くとはなァ…」

調理をしながら呟く一方通行。生地を筒状に整え、包丁で薄く切る。それをインデックスがホットプレートで焼いていく。頃合いを見払ってひっくり返し、冷ましてから袋に詰めてリボンを結ぶ。上条は台所でフライパンの前に立っていた。

黙々と作業を進める一方通行に、ふと素朴な疑問が…

「…そォいや、誰に送るのか分かってンのか?」
「大丈夫なんだよ、私が全部覚えてるから」
「でもよォ、世界各国だろ?もう発送しとかねェと」

台所のコンロを使っていた上条が居間に材料を取りに来て、その疑問に答える。

「妹達全員に直接送ってたら、送料で破産しちゃいますよ…。十四日に病院で代表者に授与式が開催されるんだ。後日順番に送られたり、妹達経由でそれぞれに届くよ」
「たかがホワイトデーに授与式…」

一体どんな式典なのだろう…。赤い絨毯でも敷かれるのか?

「あいつらなりの気遣いかなぁ。バレンタインも、同一所属機関数人の連名でチョコ一個っての多かったし」
「今作ってるクッキーもね、クールビューティーが預かって保管してくれてるの」
「あァ…、防腐剤も何も使ってねェしな。つーか最早ホワイトデーじゃないそれは」


その後、ただひたすらクッキー作りに精を出す。
手際が良い助っ人兼スポンサーが加わったことで、作業は効率的に進んだ。

「ありがとなー、おかげで何とか間に合いそうだよ。財政危機も乗り越えられそうだよ」
「うん、明日で目標の数が達成できそう。ありがとうなんだよ、あくせられーた」
「………」

今日以降製作分の材料費は、ほとんど一方通行が出した。目処がついたなら、これでオサラバしてもいいのだが、打ち止めのクッキーをまだ作っていないので、彼は明日もここへ足を運ぶ。

「インデックスにあげる分はさ、明日の夜一番最後に作るよ。その方が美味しいだろ?」
「えへへ…、うん!大きいのがいいなぁ」
「はいはい、チョコトッピングもつけてあげましょう!」
「やった!」
「オマエら、そォいうのは俺が帰ってからにしろ」

え?なんで?という反応に、一方通行は呆れてしまった。しかし、上条がインデックスを特別に想っていることは、チョコチップが付属することでも明らかだろう。インデックスも、その扱いを当然のものとして受け入れているようだし。

(それで明らかになるのもどうかと思うが…)
642 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/14(土) 00:24:55.60 ID:6F1tGWYT0

「だからあなた、この二日間はお出掛けしてたのね」
「まァな。これはその副産物だ」

実はこれこそが本命の用事である。バレてるだろうが、一応そう言っておく。

「ふむ、フライパン製クッキー…。さっそく食べてもいい?ってミサカはミサカはワクワクしてみる」

彼が横で頷き、打ち止めは、ぴりぴりとセロハンテープを剥がす。

「すごいね、一枚一枚味が違うんだ、ってミサカはミサカは感心してみる」

まず、チョコチップが入っているものから一口。

味見はしっかりしたが、反応が気になる一方通行。横目で、クッキーが少女の口の中に消えていくのを見守った。

「ふぉおおいひー!とてもフライパンクッキーとは思えないよ!ってミサカはミサカは続いて二枚目に突入してみる!」

「これも最高!」と、炬燵の中で足をバタつかせる打ち止め。コーヒーとお茶が入ったカップが揺れ、軽くチョップして止める。

「この緑色は……抹茶?」
「おォ」
「へぇ、珍しいね、ってミサカはミサカはもっと抹茶味たくさんあっても良かったのにとカロリーを気にしてみたり」
「抹茶味だからといって低カロリーとは限らねェぞ」

三枚目は刻んだナッツ。四枚目はレーズン。五枚目もチョコチップかと思いきや餡子。
ジャムが乗ったもの。ココアが混ざった茶色いもの。その他合わせてきっちり十枚。

いちいち「おいしー」と褒められて、一方通行はムズ痒くなった。
心配したのがアホらしくなるくらいに褒められた。口の端がつり上がるのを、歯を食いしばって耐えた。
643 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/14(土) 00:30:19.80 ID:6F1tGWYT0

「一方通行のやつ、結局卵もバターも買ってきて混ぜてたな」
「トッピングもすごくたくさん種類があったね」
「あそこまでして、俺の部屋でフライパンで焼く必要が果たしてあったの…」
「自分の家だとらすとおーだーにバレちゃうし…、とうまのこと手伝ってあげたかったんじゃない?」

お菓子工場のようだった上条当麻の部屋は、ホワイトデー当日の午後になってやっと片付いた。授与式も終わり、彼はインデックスとゆっくり過ごしている。

「えーと、俺のはチョコしか入ってないけど…」

上条が後ろ手に持っていた箱を、インデックスの前に差し出す。中には数十枚のクッキーがみっしり詰まっていた。

「……私はとうまから貰えるなら、そんなこと気にしないよ。ありがとう、とうま」
「え、え、え?」

インデックスの顔が、上条の目の前に近づいてくる。焦るも両手にクッキー入りの箱を持っているから止められない。


(でも俺、手ぶらでもこうしてたかもなぁ)
644 :ブラジャーの人 [sage]:2012/01/14(土) 00:35:09.62 ID:6F1tGWYT0
通行止めと上条家のホワイトデーの巻 完

神裂さんと五和には直接送ってある。海外組は日本式バレンタインに馴染みがないだろうな…、という予測。

え?浜面? 彼はいつもどおり爆発待ちです。

次回の更新は四日後の可能性高し。
645 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/14(土) 05:31:48.96 ID:pz9ByxTDO
>>1乙ぱい

上条さんに憐れみの涙が…

そして浜面爆発しろ
646 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/01/14(土) 11:12:27.53 ID:+P1FWMgLo
>>1乙。 そうか、爆発待ちか…爆発して並べて揃えて晒されちまえよ浜面…!

あ、上条さんはもう、不憫でならないからそれでいいっす。 はい。 


きょーうはせ−んたーすぃーけえんー
647 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/14(土) 17:06:31.74 ID:s3PJylwIO
乙乙

ニヤニヤを堪える一方さんにニヤニヤしちまったぜ
648 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(徳島県) [sage]:2012/01/14(土) 17:18:19.15 ID:2cEe1vjh0
美琴さんはちゃんとチョコを渡せたのだろうか・・・
649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/01/14(土) 21:45:07.52 ID:9HqjwmSw0
>>1

うーん、今更ながら5年後のインデックスをイメージできんwwww
650 :rindou [sage]:2012/01/15(日) 00:24:43.02 ID:ORboj/2g0
乙っす

上条さんはインデックスさんとくっついたんでせうか?

なんだか、胸の小さい美琴さんが不憫(’〜`)
651 :rindou [sage]:2012/01/15(日) 00:27:51.71 ID:ORboj/2g0
乙っす

上条さんはインデックスさんとくっっいたんでせうか?

なんだか、胸の小さい美琴さんが不憫(’〜`)
652 :ブラジャーの人 [sage]:2012/01/15(日) 12:18:00.14 ID:bqlozBMQ0
>>645 >>646 書いてないのに爆発希望される浜面の実力すごいなぁ。 そして、さすがに上条さんはかわいそうでしたね。
授与式は代表の10032号に渡され、その模様はネットワークで中継されます。

>>647 ニヤニヤの連鎖、いい連鎖。次もニヤニヤしてもらえるよう頑張ります。

>>648 きっと渡してないと思います。

>>649 未来のインデックスのイラストは、そういえば見た覚えがないかも… 今度探してみよう。禁書で美少女No1は、インデックスだと思ってます。

>>650 ここの上インは、明確な契約も交渉も意思の確認もしてないけど、上インです。
インデックスを上条さんのパートナーにするなら、美琴さんには申し訳ありませんが、彼女は泣くしかないでしょう。
誰かの恋が叶うときは、誰かが失恋するときです、仕方ありません。
自分の想いが届かないことを悟ったら、そっと身を引く… それが 純 愛 

恋に関しては、全員が幸せのはなれませんね。(あ、あと美琴さんの胸はもうすぐCカップです)


打ち止めは一方通行のものであり、一方通行は打ち止めのものである

滝壺は浜面のものである

上条さんはインデックスのものである

↑ これが私の3ヒーロー、3ヒロインのイメージです。







653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/01/16(月) 12:15:57.67 ID:bcGDARymo

未来のインデックスのイメージはローラの色違いイメージぐらいであまりないかも
2次ならいんでっくちゅ2の美琴妄想ぐらい?
654 :ブラジャーの人 [sage]:2012/01/17(火) 23:53:47.26 ID:FXcO3ReV0
寒いと、部屋から出たくない。車から降りたくない。布団から出たくない。そして風呂からも出たくない。

お待たせしました。
新生活スタートです。

655 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/17(火) 23:56:58.07 ID:FXcO3ReV0

真新しいソファに座り、二人きりで過ごす。一方通行と打ち止めが、新しい部屋に移った初日の夜のことだった。
室内の改装も終わり、家具も運び込んだ。ハスキーのために必要と思われるものも、ペットショップで購入した。

「トウガラシも吊るしたし、これで引っ越しは完了かな」
「まァ、細かい入用なモノがあったら、後でその都度揃えればいい」

多くを業者に任せたといっても、慣れない引っ越し作業は彼らを疲れさせた。各部屋の隅には、まだ手付かずのダンボールや荷物を詰めた紙袋が転がっているが、それはもう明日にしよう。

「あとはハスキーちゃんをお迎えに行ければ……」
「あァ…、それな、向こうが連れてきてくれるってよ」
「え?なんで?いいの?ってミサカはミサカは親切なお店の対応を不思議に思いつつありがたがってみたり」
「こっちにはデカい車も運転手もいるから出向くって言ったンだが…」

犬の搬送用車両があるので、それに乗せて来てくれるそうだ。自動車に乗り慣れていない犬と、これまた初めて犬を乗せて自動車を走らせる人間、というのは確かに心配だ。

656 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/18(水) 00:02:04.10 ID:+wSFMHg20

「そっか、そのほうがハスキーちゃんに負担が少ないかもね、ってミサカはミサカはお言葉に甘えるのが得策だと判断してみる」
「だな。店側の都合もあるから、日程が決まり次第連絡が入る。ただ三月中にはウチに来ると思う」

その日が待ち遠しい。打ち止めは一方通行の腕にぎゅっとしがみついて体をすり寄せ、待ちきれない心を表現した。

「こら痛ェ」
「う〜ふふふふふふ」

こうしてひっつき合っていても、

「やっぱり少し寒ィな…」
「んー、そう言われればそうかも?」

住んでる人数が少なければ、それだけ家電などからの熱の発生が少ないのは当然だ。黄泉川も芳川もいない生活がこれから始まる。寒さなんてもので、それを実感する。

「やっぱ炬燵買おうぜ。明日買いに行こうぜ」
「もうすぐ春なのに…。でもあなたがそう言うんじゃないかな、とは思ってたよ、ってミサカはミサカは想定内だけど呆れてみる」
「そォかい。恐れ入ったわ」

見透かされているのには、とうに慣れた。今は炬燵が無いので、隣の温かい少女を抱え込んで暖を取ろう。一方通行は腕の中に打ち止めを収める。

「ほぅ、ぬくぬく…」
「……おォ」
「今日はずっとこうしててね、ってミサカはミサカはリクエストしてみたり」
「ン」
「寝る時もだよ?」
「ハイハイ」
「お風呂もね?」
「分かった分か、……あァ?」


ドキドキ☆二人暮らし初日記念!ということで、一緒に入りたいそうだ。

(どンな記念だそりゃァ…)
657 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/18(水) 00:05:03.96 ID:+wSFMHg20

二人が恋人同士になってからも、一緒に風呂に入ることは珍しい。体を重ねるようになってからは稀にホテルの風呂も利用したが、必ず二人で入浴するわけではない。昨日まで住んでいた実家では、保護者がいることが多くて控えていたし。


「先に行ってて」と言われた一方通行が髪を洗い、シャワーで泡を流している時に、やっと打ち止めが浴室にやってきた。一体何をそんなに準備することがあるのか…

「あー、もう頭洗っちゃったの?ミサカがやってあげようと思ってたのに、ってミサカはミサカは残念がってみる」
「遅ェよ」
「じゃあせめて背中流してあげる!」

小さな薄いバスタオルを巻いた打ち止めは、スポンジにボディソープをつけ始めた。それを見た一方通行は、無言で彼女からスポンジを奪い取る。

「っ、なに?」
「……」

まだ冷える三月の夜、湯もかけずにこんな格好ではいさせられない。青年は少女の腕を掴んで、今まで自分が使っていた椅子に座らせる。そしてタオルを剥ぎ取って、天井付近にひっかけた。

「うわ、ちょ、お湯かけるならかけるって言って、ってミサカはミサカは説明の無いあなたを非難してみたり」
「黙ってねェと口に入るぞ」

シャワーノズルを伸ばし、打ち止めの後ろから湯をかける。初めはぬるく…、だんだん熱く。
一、二分でシャワーを止め、膝立ちのまま素早くシャンプーを手に取る。これ以上文句を言われる前に、彼女の頭を泡だらけにしてしまおう。
658 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/18(水) 00:08:00.07 ID:+wSFMHg20

「ふー…、キモチいぃ…。美容院でしてもらってるみたい…」
「よかったですねェ。ほら、また湯ゥかけるぞ」

リンスも終わり、今度こそ自分が一方通行の背中を流す番だと、打ち止めが立とうとするのを一方通行が制する。

「そのまま座ってろ」
「ぶー、さっきからミサカばっかりおもてなしされてるんだけど、ってミサカはミサカは不満を述べてみる」
「苦情は受け付けませン」

さっき打ち止めから奪ったスポンジで、彼女の背中を擦る。打ち止めは慌てて髪を纏め、手首にはめていた髪ゴムで縛り上げた。
隠れていたうなじが露わになり、そこにもスポンジが触れる。

「右ィ」
「はい」
「……次ィ、反対」
「ほい」

命令通り、素直に首を左右に傾ける打ち止め。首も丁寧に洗われる。一方通行の指が優しく耳の中に入ってきた時は、肩をすくめて反応してしまい、彼が後ろで表情を緩めた気配がした。

(背中だけじゃないの?ってミサカはミサカは恐縮してみたり)

「万歳しろ、万歳」
「な、何で?」
「いいからしろ。いつも無駄にやってるじゃねェか」

疑問に思いながらも、打ち止めは両手を上げる。目の前の鏡には自分の姿ばかりが映り、一方通行がどんな顔をしているのかも、ほとんど見えない。

「きゃあ!?前は別にいいよ!?ってミサカはミサカは赤ちゃんじゃないから自分で洗うと断ってみるっ」

「………」
(赤ン坊じゃねェから洗うンだよ阿呆)

「何で無言!?」
659 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/18(水) 00:12:24.34 ID:+wSFMHg20

一方通行が打ち止めの背後から伸ばした手が、腹の辺りを擦っていた。まさか体の前面までとは思っていなかった少女は、とっさに脇を締めたが無駄な抵抗だった。だって泡でヌルヌル滑る。

「おら、手ェどけろ」
「………うぅ」

観念して右手を弛めた。見計らっていたスポンジが右脇に宛がわれ、ラインに沿って胸の下へと。円を描くように膨らみの周囲を回り、一瞬手を離して「胸に触るぞ」という意思表示をする。


(……洗いにくい…)
(なんだか洗いにくそう、ってミサカはミサカは手間取っている様子のあなたを観察してみたり)

ぽよんぽよんしているので、泡だらけになったスポンジでは上手く擦れない。力を加えれば、「むにょ」「むにゅ」と逃げられてしまうのだ。痛がらせるといけないので、これ以上は強くしたくない。

(これでどォだ)

膝立ちになっていた体をにじり寄らせ、自分の胸と彼女の背中を密着させる。左手も前面に回し、乳房を滑らない程度に軽く固定してから、ようやく「洗えている」という実感が得られた。Eカップを下から支え、上部を洗う。上から押さえ、下部を洗う。

(丁寧だなぁ…。そこまでしなくても大丈夫なのに)

左胸も同じようにして、腕、腹、足ときた。左右から屈みこんで、足の裏までしっかりと。そして、

「!!そこはいいです!ってミ」
「おとなし、く、コラ、してろォっ」

スポンジを持った右手が、股間の前で構えている。左手は足を開かせようと左膝を掴んでいる。もっと直接的に、官能的に触れられたこともあるけど、それより恥ずかしい。洗われるということは……

暴れるうちに、打ち止めのお尻は椅子から落ちてしまい、もつれるように二人とも直接床に座り込んだ。一方通行を押しつぶさぬよう気をとられているうちに、恥ずかしいことは遂行されてしまった。

(くぅ、越えてはいけない一線を棒高跳びで飛び越えてしまった、ってミサカはミサカは羞恥に体を震わせてみる…!)

660 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/18(水) 00:17:42.81 ID:+wSFMHg20

がっくりしている少女に、またシャワーの湯がそそがれる。泡が全て流れると、一方通行によって抱きあげられた。

「?」
「よ、っと…」

湯船に入り、彼の膝の上に乗せられる。青年だけ、「やれやれ、一仕事終えた…」という風に息を吐き出す。

「……ミサカだけ色々されて、…茫然。あなたの背中流すの、楽しみにしてたのに…」
「もォ軽く洗ってあったからいいンだよ。…それよりしっかり浸かれ」

一方通行は打ち止めの肩を掴み、先程と同じように、自分の胸に彼女の背中を押しつける。

「はぁ〜良い湯だな〜、ってミサカはミサカはのびのびしてみる」
「髪ほどいていいか?」
「いいよー」

髪ゴムを外し、少女の手首に返す。自分が洗ったばかりの髪を手に取り、それを肩や鎖骨に流すと、お湯にひたって、ユラユラとたゆたう。色っぽいな、と思うが、口には出さない。

「!っ、あの、一応さわる前に一言下さい、ってミサカはミサカは苦言を呈してみる」
「………」

(また無言なのね…)
661 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/18(水) 00:22:33.01 ID:+wSFMHg20

お湯の中で軽くなった二人の体。打ち止めの胸も、ぷかぷか浮く。それを後ろから、すくうように握る。離す……寄せる…

湯の温度を熱めに設定したせいか、打ち止めの肌は既にほんのりと赤い。濡れた髪の匂いを吸い込み、息を吹きかける。

(あう、なんだかフワフワする…、ってミサカはミサカは実際にフワフワしてるんだったと現状を思い出してみる)
(……やっぱ楽しィわコレ)

甘い吐息が、打ち止めの口から漏れる。もぞもぞと体をよじらせる様子。ちょっとだけ先端の敏感なところを刺激すれば、震えた声が浴室に響いた。

これで反応するな、というのは無理な話だ。

一方通行は、自分の分身が臨戦態勢を整えようとしているのを自覚していた。それは(様々な意味で)上手い具合に、打ち止めの足の間で意見を主張していたので、態勢は変えないままだった。

(もう少し遊ンだら、このままベッドに行くかァ…)

そう計画を立てていたのだが、腕の中の少女が腰を浮かしてしまう。おあずけなのだろうか、と一瞬不安になる一方通行。

(オイオイ…ちょっと待てオイ)

打ち止めが一方通行の分身に手を添えて、自らの体内へ導こうとしている。

「…待てよ、ベッドで」
「いい。ココでいいから、ってミサカはミサカは今度こそミサカのお願いをきいてもらうつもりだったり…」
「ゴムつけてねェだろ」

「……つけないで、してみたい」


言葉に詰まった。一方通行もそうしたい、と思わなかったわけはない。しかし自分達の生活や周囲の人々のこと、自分の人生のこと、打ち止めの人生のこと、彼女の体のこと、過去のこと……
それらを思うと、今は避妊具無しでセックスは出来ないと考えていた。

「今だけ、じっとしてるだけでもいいから」
「打ち止め…」

じっとしている自信は無いが、少女の行動を容認した。
……絶対に耐えなければならない。

「ん…ん、う」

胸しか愛撫していなかったので、いまいち潤滑が足らないのか、あるいは湯の中だからか、ゆっくりゆっくり沈ませていく。

湯船の中で、打ち止めの背中が反れ、次いでぶるりと震えた。この態勢で、可能な限りの深さまで…

「はぁ…」
(あつい……)

「……ふ…ゥ」
(あつい…)
662 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/18(水) 00:25:07.20 ID:+wSFMHg20

彼との間に、何も無いまま繋がってみたかった。お互いの弱いところを、直接触れ合わせてみたかった。
いつか、そうしてもらえるだろう、と期待していた。

その機会が今でもいいじゃないか。そう思ったからお願いしてみた。

「えへへ…、なんだか嬉しい、ってミサカはミサカはもっと幸せを求めてちゅーを要求してみる」
「…ばァか」

また、背中と胸が密着する。お互いに腰をひねり、キスを交わした。否応なく結合部が摩擦される。

「………」
(耐えろ、俺…)

打ち止めがどんな想いでこの行動に出たのか、一方通行には分かる。自分よりも強く望んでいたのかもしれない。
少しでも長くこうしていてあげたい。

青年は目をつむり、少女の腹に優しく手を回す。集中しすぎてはいけない。でも、適度に集中を保たなくてはいけない。男の見せどころである。

663 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/18(水) 00:27:37.96 ID:+wSFMHg20

「あなたの方、向いてもいい?ってミサカはミサカは一言告げてから行動を始める見本を提示してみる」
「…あァ。このまま出来るか?」
「お風呂の中で浮けるし、平気」

打ち止めは浴槽のへりに手をつき、足を持ち上げる。一方通行も、もたれていた背中を離したり、さらに傾けたり。繋がった部分が外れてしまわぬよう、手助けしてやる。

「よい、しょ…。あは、あなたの顔を正面から見るのはどれくらいぶりだろう、ってミサカはミサカはキスしやすくなったから早速実行してみる」
「ンっ、……だいたい一時間ぶりくらいか」
「あなたが冷静で、ミサカはちょっと不満だな。」
「はァ…、冷静ェなわけねェだろォ…!?」

きつく抱きしめ、抱きしめられる。一方通行の腰を挟んだ腿に、自然と力が籠った。
頬を擦りつけ合い、時折口づけを交わす。

今、打ち止めと一方通行の間を遮るものは何もない。

664 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/18(水) 00:34:45.51 ID:+wSFMHg20

そうして、何分湯の中で過ごしていただろうか。

「打ち止め、もういいか?」
「ん?…うん。ありがとう」
「…よし」

一方通行は首の電極のスイッチを能力使用モードに切り替えた。しっかりと打ち止めを抱えたまま湯船から上がり、体に付いた水分を吹き飛ばす。

やはり、避妊具無しでは最後まで出来ない。

早く、一刻も早く自分の部屋へ。
浴室のドアさえ閉める余裕も残っていない青年は、走るような速さで、大きなベッドを置いた自室に飛び込んだ。そこのドアも開いたままだが、今日から打ち止めと二人だけなので気にしない。廊下から入ってくる明かりが、打ち止めの体に深い陰影を映した。


(お背中お流しします、は明日にしよう、ってミサカはミサカは目下の課題に取り組んでみたり)

665 :ブラジャーの人 [sage]:2012/01/18(水) 00:38:31.27 ID:+wSFMHg20
通行止めの同棲初日、一緒にお風呂の巻 完

はーぁビバノンノン

いきなり風呂で始まる新生活。…ごめんなさい。アハハン
666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/01/18(水) 00:40:48.42 ID:85YucjXPo
乙!
えらく積極的な打ち止めはともかく
その状況でギリギリを維持しつつける一方さん。
さすが第一位wwwwwwww
667 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/18(水) 00:48:52.95 ID:drU/lA+N0

第一位に「能力のエロ使い」タグをつけてやろう
668 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/18(水) 02:48:01.21 ID:JwLq3oFIO

おぉ…いきなり飛ばしていきますなww
669 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/01/18(水) 07:20:55.12 ID:/Wy9PY3Ao
生でヤっても出そうになったらベクトル操作で出ないようにすればいいじゃね
670 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/18(水) 08:16:44.19 ID:KawTLOISO
脳の電気信号をどうにかできる一方さんならオタマ共もなんとでもなるんじゃね
671 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/01/18(水) 09:00:50.88 ID:rrZp7k53o
乙。 ベクトル操作万能説か…  

ところで、そろそろ誰かがスポンジになるk
672 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/18(水) 12:24:35.45 ID:uzu81CeAO
スポンジは譲ろう
俺がなるのは…



お湯だ
673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/18(水) 12:45:23.83 ID:+wkEZbXGo
お湯は一方さんのブツにも触らなきゃいけないからあんまり羨ましくねぇな!
674 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/18(水) 14:23:21.26 ID:oiGdm05ho
>>673
はぁ?それ含めて至高じゃねーか!

と言うわけで僕はボディーソープになりますね^^
675 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/18(水) 16:07:09.33 ID:+Pqh2HKz0


俺は無難に掛布団にでもなっておく
676 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/01/18(水) 16:10:58.52 ID:tMG1xOUL0
俺は髪ゴムかな
677 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(徳島県) [sage]:2012/01/18(水) 17:32:45.66 ID:8sx0SXFB0
お前らそろそろ自重しないと土御門さんがお祓いに来るぞ


俺は番外個体さんの枕!!
678 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/18(水) 17:35:40.01 ID:dCcqYGmKo

一方さん○○なのに無茶しやがって…wドMだなww
能力で制御しないのはポリシー?
679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/19(木) 15:59:23.25 ID:4jRPSZdDO
なんという新性活!うらやまけしからん!

俺、リビングの唐辛子な
680 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/19(木) 16:33:42.75 ID:Us9PlcHIO
土御門「赤ノ式でマンションごと吹っ飛ばすか」
681 :ブラジャーの人 [sage]:2012/01/20(金) 02:20:41.10 ID:8kFrQiSe0
一方さんは頑張って日々練習を重ね、精進してますので…

なんかさ、能力を積極的に活用するのって、「純」じゃないじゃん。「漢」じゃないじゃん。ふたり一緒に「楽しく」ないじゃん。
本当に必要に迫られなければ、そういう用途で能力は使わない気がする…
打ち止めも「あなたがそう思うならそれでいいよ」かな。

だがそういうプレイを見たり読んだりするのは大好きなので、誰かもっと書いて描いて見せてほしいです。勝手ですみませんww


それより、あっという間に新居も付喪神だらけですね。>>679に至っては、魔よけのお守りに魔が憑く始末だよ。
だから小ネタ↓(>>596の続き)


一方通行「もォ耐えられン。新しい家に引っ越してますます変で耐えられねェ。さっさと何とかしろ」

土御門「だからこのお札を壁とかに貼ってだな」

一方通行「オマエ、それ本物は一枚だけで、あとはコンビニのコピー機で刷ったヤツだろ。真面目にやれ」

土御門「なぜバレたにゃー。いやでも効果あるぞ?」

打ち止め「ねぇねぇ、映画みたいにカッコいいのやって見せてほしいな、ってミサカはミサカはワクワクしてみる」

土御門「新居の床血だらけになるぜよ?」

一方通行「却下」

土御門「俺だってこんなことで血を吐くのは勘弁だな。札を貼った後は、お神酒を玄関に撒いておく。これで大体OKだ」

打ち止め「それで終わり?ってミサカはミサカはなんだか期待はずれ…」

一方通行「地味だな…」

土御門「いきなり拉致しておいて失礼すぎるぜよ」

打ち止め「だって…」
一方通行「なァ…」

土御門「もういいにゃー!だったら絶対間違いない最強浄化やってやるわい!」

一方通行「最初からそォしとけよ。でェ?どうやるンだ?」

土御門「まずは携帯を取り出します」

打ち止め「ふむふむ。現代機器を活用するのですな、ってミサカはミサカは柔軟なおんみょーどーの在り方に感心してみたり」

土御門「そしてとある番号に通話を試みます」

一方通行「………」

土御門「あ、カミやん?今すぐ一方通行の家に来てほしいんだけど」

打ち止め「………」

土御門「うんうん、え?大丈夫だにゃー。ただ右手で家中触ってくれるだけでいいから。バイト代は一方通行が出してくれるから」

一方通行・打ち止め(エェー…)



そげぶ乱舞の術


二日後に本編を更新できたらいいなぁ、と思ってます。では。


682 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/20(金) 02:31:57.16 ID:5I+MvBTIO
そげぶ乱舞わろたwww
683 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/01/20(金) 07:48:46.28 ID:DoPqO0Rjo
そげぶで除霊をするのなら、触れないところに憑けばいいじゃない。 
…まぁ、そろそろ自重する…のかな?
684 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/20(金) 07:49:05.23 ID:7H0HJ/NDO
>>1乙ぱい

炬燵だった俺も晴れて昇天出来たぜ…
今度生まれ変われるなら…洗濯機になるんだ…
685 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/21(土) 21:22:30.41 ID:NBn885A10

俺たちを倒しても第二、第三の俺たちがあらわれるがな
686 :ブラジャーの人 [sage]:2012/01/21(土) 22:13:38.78 ID:d5bIdmSb0
そげぶ追いつきませんねぇ。もういっそのこと守護妖精にでもなっちゃってください。

それでは投下します。

687 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/21(土) 22:21:42.03 ID:d5bIdmSb0

今日、例のシベリアンハスキーがやってくることになった。

なので、打ち止めはとてもソワソワしていた。その知らせを聞いた二日前から、地に足がつかない心地で過ごしている。あと一時間もしないうちに、搬送用車両がマンションに到着する予定だ。

「ちょっと落ち着けよ…」
「うん…」

打ち止めはそう言いつつも、窓から外を見るために、わざわざ炬燵(早々に買った)から抜け出す。もうこれで何度目だか。一方通行は苦笑した。

(だめだなコリャ…)

「あぁ!あなた来たんじゃない、あれ!ってミサカはミサカはお庭からダッシュでお迎えに出てみたり!」

庭を囲う壁には、すぐに敷地外へ抜けられる扉が付いている。打ち止めはサンダルをつっかけて、庭に飛び降りた。ちゃんと五段の階段があるが、ショートカット。まだ慣れない扉の解錠に戸惑いながら、扉も窓も開け放したまま走って行ってしまった。

「寒ィ…。……予定より早いな」

まだ冬の冷たさを残す風に晒され、一方通行も立ち上がる。確かに、大型車のエンジンがマンションの前で停止する音が聞こえた。
窓と庭の扉を閉め、彼も外へと向かう。

道路の路肩に停められた特殊車両。その横の歩道では、早速打ち止めがハスキーに抱きついていた。上着も忘れてサンダルで走り寄って来た少女に、ペットショップの店員が笑顔を浮かべる。

(あ、俺も忘れた)

続いて現れた青年も、同様に薄着であった。
688 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/21(土) 22:29:58.51 ID:d5bIdmSb0

「じゃあな。イイコにして、良くしてもらうんだぞ」

トラックを運転してきた店員は、一方通行と打ち止めにハスキー愛用のオモチャなどが入った箱を渡し、あっさりと引きあげて行った。それでも、別れ際には力強く犬の頭を撫でて…

ハスキーが走り去るトラックを追ったりしないか心配で、打ち止めはリードをぎゅっと握る。しかし彼は小さくなるトラックを見つめるだけで、少女の横で大人しくしている。

「寒いな。家に入ろォぜ」
「う、うん。はい、こっちだよ、ってミサカはミサカはハスキーちゃんの綱をクイクイしてみる…」
「わん」

犬、しかも大型犬を繋いだリードを引くなんて初めてのことだ。大いに緊張しながら、新居へのわずか百メートル足らずを進む。

「…そうそう…こっち」
「庭から上がるかァ。軽く足の裏拭いてやれ」

ハスキーは興味深々といった様子で、芝生や、植えたばかりの庭木の匂いを嗅いでいる。打ち止めは桶にぬるま湯を汲み、それに浸したタオルを持ってハスキーに近づいた。

「足拭きたいんだけど…、いいかな?ってミサカはミサカは前足から?後ろ足から?あれ?立ったまま…?」
「おすわり」

タオルを構えたまま戸惑う打ち止め。犬がそれに飛びついて引っ張り合いの遊びに発展しそうだったので、見かねて一方通行が横から命令を出す。
ハスキーはすぐにおすわりを実行した。

「伏せ」
「へっ」
「おぉっ、お利口!」
「これぐらいは躾けてあるって聞いてたからなァ」
689 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/21(土) 22:34:59.98 ID:d5bIdmSb0

芝生の上で<伏せ>をする犬の横にしゃがみ、一方通行は受け取ったタオルで前足から綺麗にしていく。

「大人しくしてンな…」
「嫌がらないねぇ…。こうされるのは初めてじゃないのかもね」

さて、いよいよ彼は新しい家の中に四本の足で踏み入った。まず嗅ぐ。何は無くとも嗅ぐ。フンフン嗅ぐ。

とりあえず自由に室内を歩かせてやろうと思っていたが、ハスキーは一方通行と打ち止めがいるリビングから出て行こうとしない。遠慮…、だろうか。

「あのね、ここはもう君のお家なんだよ。ミサカとこの人と君で暮らしていくの。よろしくね、ってミサカはミサカは……挨拶してみる…」

急に不安になってきた。打ち止めはただハスキーと暮らせる喜びに舞い上がっていたが、それは犬にとってはどうなのだろう。急に住み慣れた場所、優しい飼育員から引き離されて、たった三回しか会っていない犬のシロウトに飼われるなんて。

「お店に帰りたくなっちゃったらどうしよう!?ってミサカはミサカはもしかしてヒドイ仕打ちをしたのではとショックを受けてみたりっ」

一人暴走する少女に軽くチョップを与え、一方通行はキッチンへ。

「あなた?どうするの?」
「とりあえず、昼メシにしよォぜ」

「食って寝て住ンでりゃ、すぐにそこが家になる」という青年の主張のもと、軽い食事を用意した。犬は朝夕の一日二食だが、初日なので、特別豪勢なのを作ってやる。

乾燥ドッグフードに缶詰を乗せて、さらに茹でた牛肉と野菜をトッピング。ニボシもサービス。

「わふっ」
「おいし?ってミサカはミサカは訊くまでもない食べっぷりに感心してみる」
「オイオイ、作り甲斐ねェなァ、よく噛めよ…」

大喜びといった様子で、がっつくハスキー犬。一方通行と打ち止めは楽しそうにそれを眺めていた。人間用の昼食が、テーブルの上で冷めていくのもかまわずに。

690 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/21(土) 22:41:29.24 ID:d5bIdmSb0

腹が膨れて優しく撫でられて、暖かい部屋のなかでイイキモチになったのか、ハスキーはカーペットの上で丸くなって寝ていた。専用の寝床を用意していたが、わざわざ起こしてまで案内するほどでもないだろう。

不思議だ。部屋の中に大きな動物がいる。モコモコでフワフワで、すーすー寝息を立てている。一方通行と打ち止めは、それを見ながら炬燵に入っていた。二人会議の議題は…

「名前どうしよっかねー、ってミサカはミサカは長らく先延ばしにしていたこの問題の決着を求めてみる」
「…おォ」

実は、決まっていなかった。あれはどうだ、これはどうだ、と打ち止めが提案すれば、ことごとく一方通行が否と言う。

「もー、だいたいあなたがミサカにばかり考えさせてちっとも協力してくれないからでしょ」
「しかし犬の名前にネコは無いだろ」
「あれは一〇〇三二号のアイディアであってミサカの意見じゃないもん、ってミサカはミサカは『ネコ』さえ紹介しなければいけなかった苦労を察してほしかったり」
「………」

一応保護者達にも相談してみたら、黄泉川と芳川は、

「ポチ、コロ…が一般的なんじゃないかしら?」
「犬といったらハチじゃん。ハチ公じゃん」

という案をいただいた。たくさんの候補の中のひとつにしておく。

さて困ったなぁ、と二人は天(井)を仰いだ。このシベリアンハスキーは、ペットショップで「ユキ」という名前で認識されてはいたのだが…
店の職員から、「ぜひ黄泉川さんが考えた名前をつけてあげてほしい」「いつか来るかもしれないその日のために、呼びかけるのを控えていた」とまで言われたので、これは真剣に考えなければならないだろう。
691 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/21(土) 22:49:09.43 ID:d5bIdmSb0

「あなた、本当になんにも考えてなかったの…?」
「…ンー、…頭ァ悩ませてたワケじゃねェが…」

犬を飼うに当たり、一方通行は「一応はな」と、飼育に関する専門書や関連書籍を読んでいた。そういった情報を求めるうちに、飼育方法には関係ない分野にまで興味が広がってしまった。大学がまだ春休みで、時間だけは余っていたから。

そして昔『ロボ』と『ブランカ』という名前で呼ばれた狼がいたことを知る。

「ロボに、ブランカ…。なんだかおっしゃれーな名前だね」
「ロボは狼、ブランカは白って意味だ」
「狼の親戚ではあるけど犬だし、このコは白いしブランカでいいんじゃない?ってミサカはミサカは声に出してみたことでその響きの良さを確信してみる」
「だが、ブランカといえばメス、女性名なンだよなァ…」
「そんなの気にしないの。ブランカ…。ブランカかぁ」

打ち止めの噛みしめるかのような声を聞いていると、単純な事に一方通行も「まァいいか?」と思えてくる。

「今日からミサカとあなたとブランカの、二人と一匹暮らしだね、ってミサカはミサカは改めてよろしくとおじぎしてみたり」
「どォも。つーか決定なのかよ」
「うん決定」

打ち止めは炬燵の対面に座る一方通行の横に移動した。腕にすがりついて「いいでしょ?ね?」と言われれば、「いいけど別に」と了承するしかない。

「ブランカ…。ブラちゃんだね」
「……略すなよ」
「ミサカのブラちゃん」
「ヤメろ」

確信犯なのか、ケタケタ笑いだす少女と、彼女にチョップを与える青年。そんなに騒がしくしていれば、目を覚まして尻尾を振るハスキーが参戦するのも無理はない。
692 :ブラジャーの人 [sage]:2012/01/21(土) 22:57:17.97 ID:d5bIdmSb0
ハスキーがやってきたの巻 完

そこはかとなく中ニ臭く、また、おっぱいと白い毛に関連のある名前にしました。


一方通行「おォい、ブラどこいったァ?」

なんて言うようになったら笑える。

693 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/01/21(土) 23:00:10.61 ID:pb+T7e+AO
乙!
ここの読者なら「ブランカ」の時点で「ブラちゃん」は予想できるなww
ブラちゃんも加わってますます期待!
694 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/21(土) 23:17:32.97 ID:JaDiQg2DO
一方通行「おォィ、ブラの散歩の時間だぞ」
695 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/21(土) 23:21:06.35 ID:Yr0zMCSO0

今後のブラちゃんに期待
696 :rindou [sage]:2012/01/21(土) 23:43:23.54 ID:m2TYxcdi0


ブラに綱つけろよォ
697 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/01/21(土) 23:43:53.98 ID:nH+sbgSDo
乙だっぜ。  ぶらちゃんか…もう「俺、ブラになるんだ!」とか言えないな、皆…

あと何か>>1の動物描写はリアルでいいのぉ。 こう、その対象になってる動物への愛を感じる。 (通行止めたち含め)
698 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/21(土) 23:53:42.80 ID:yuUnjyNIO
乙なのよな

天井「なんか呼ばれた気がしたんだが?」
699 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/01/21(土) 23:55:34.87 ID:QDyC1qsDo
狼王大好きです乙!
700 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/01/22(日) 01:13:43.63 ID:F2vvL+970
乙!
一気に読み進めてきました
>>1の書く通行止めはすばらしい!!
701 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/22(日) 17:46:18.78 ID:SBjBdTa1o
ブラちゃんに「ヒゲ似合わない」って言われてヒゲ剃る一方通行
702 :ブラジャーの人 [sage]:2012/01/24(火) 01:45:25.84 ID:A4JCJ2AC0
ブランカ人気のようで嬉しいです。 >>697 そのとおり、何事も愛ですよ、愛。愛こそすべて。

>>698 呼んでません。木原クン、お迎えに来ておくれ。

>>699 うむ、そんな君にハイこれ! 白土三平 作『カムイ伝』
日本のシートン(と勝手に私が呼んでいる)巨匠の代表作。言わずと知れた忍者漫画だが、その作中で野生動物の描写にかなりのページを割いていることでも有名。
猿だけ、狼だけ、熊だけで百ページ連続も珍しくないよ。是非。

>>700 ありがとうございます。やる気源泉がこんこんと湧く…

>>701 一方さんの髪と眉、まつげ以外の体毛って、どうなってるんでしょうね。生えるの?白いの?限りなく薄いの?
「生えねェなァ…」と股間を見つめる一方さんww 小学生みてぇww


短いけど投下します。
 
703 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/24(火) 01:49:50.67 ID:A4JCJ2AC0

降りそそぐ日差しは暖かく、風は花の香りを含んでいる。四月になった。

「どーだブランカ!ミサカのニュー制服だよ、ってミサカはミサカはカワイく元気にポーズをキメてみたり」
「わん」
「そうだろ、そうだろ、似合うだろー?」

朝食の片付けがまだ済んでいないキッチンで、打ち止めはブランカの前で一人ファッションショーを開催していた。一方通行はテーブルに肘をつき、コーヒーを啜っている。

「…そろそろ行った方がいいンじゃねェか?初日から遅刻すンぞ」
「まだ大丈夫だよ。それに片付けが」
「俺がやっとくから、オマエはもォ行け」

しッしッ、とツレナイ素振りでいってらっしゃいをする青年の頬に、打ち止めは腰をかがめてキスをした。彼の機嫌が少々悪い理由は分かっている。

打ち止めの入学式の日に、炬燵を片付けるという約束をしていたからだ。夜はまだ寒いから炬燵が必要だ、と主張する一方通行と言い合いをした日、呆れと少しの怒りを表すために自室で就寝した。ちなみに、ブランカも引っ張りこんで閉じこもった。

その翌日、不服そうな青年から、「入学式まで」という期日を提示されていたのである。
704 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/24(火) 01:55:10.16 ID:A4JCJ2AC0

「おめでたい日なんだから、笑ってお見送りしてほしいな、ってミサカはミサカは拗ねてるあなたを宥めてみる」
「誰が拗ねてるってェ?」
「おぉコワ、はいはい行ってきまーす。ブラちゃんにも……、う〜ぎゅぅうふふ、いってきまふ」
「フンフン」

打ち止めは床に膝をついて、ハスキーの首に腕を回した。キスするように顔をすり付けると、ブランカの尻尾が激しく振られて椅子にぶつかった。
痛いだろそれ、と心配してしまうような音が鳴るので、一方通行は椅子をどかしながら立ち上がる。

「ったく、また毛ェ付けやがって。制服着てる時は気をつけるって言ってたのは、どこの打ち止めさンでしたかねェ」

玄関に置いてあるエチケットブラシを取りに行く青年。打ち止めは鞄を持って後に続いた。
新しい制服はグレーのブレザーで、幸いなことにブランカの白と灰の毛が付着してもあまり目立たない。しかし見苦しいことには変わりないので、こうして犬の毛対策グッズを揃えてある。

「えへ、申し訳ありません、ってミサカはミサカはお嬢様気分に浸ってみる」
「アホ。…後ろ向け」

あらかた毛を取り除いてやり、「いいぞ」と背中を叩いて合図する。打ち止めは手を振ってから出掛けて行った。
一方通行はやれやれ、と首を回し、さっさと朝食の後片付けを済ます。

「ブランカも来い」
「あう」

悲しいことに今日でお別れの炬燵を堪能しようと、一方通行は木漏れ日の中、腰まで潜り込んで二度寝の態勢に入った。優れた毛皮を持つハスキーには、もちろん炬燵など必要ないので、ブランカは主人の頭の先で床に伏せしてお付き合いする。
705 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/24(火) 01:59:09.12 ID:A4JCJ2AC0

「ミサカ、同じクラスだね!」
「うん、よろしく〜」

滞りなく式は終わり、打ち止めは教室でホームルームが始まるのを待っていた。一方通行はブランカと二人でどうしているかな、どうせ寝てるかな、と見当がついているが、メールを送ろうかと思っているところ、中学からの友人が話かけてきた。

「一組は私とミサカだけみたいよ」
「そっか。だいたい何人くらいがココに入って来てるのかな、ってミサカはミサカはそれ自体知らないことを思い出してみたり」
「えぇと…、私も正確には知らないけど、十人以上はいると思う」

全七クラスなので、十人ほどが入学しても、同じ組には一人か二人しか割り振られないはずだ。今までは仲良しの友人にたくさん囲まれていたが、周囲は知らない顔ばかり。

加えて、「三年生の上級生」だったのが、「一年生の後輩」となる。
成長著しい十代だ。式の合間にすれ違った三年生は、たった二つ年上なだけでも、かなり大人びて見えた。

(ミサカも卒業する時には…ぐふふふ。それに今だって、お化粧して頑張ればお姉さんに見られるもん)

二年、三年先の自分を夢想し(身長が伸びている予定)、ニヤける打ち止め。

(そういえば、あの人も背が伸びたな…。出会った時はもやしっ子だったけど、ってミサカはミサカは昔を懐かしんでみる)

既にホームルームが始まり、新しい担任が今後の心構え、明日からの予定を話しているが、打ち止めは上の空だった。

(ミサカも大きくなったのに、けっこうヒョイヒョイ抱っこされたり、アレとかコレされたりするし。あなたにも筋肉がついたのねぇ…)



その頃、愛しのあの人は…


(ァ…うゥ、く、苦しィ……)

「くぅーん…」

(息が……ァ)

「くぅぅぅーん…フンっ」

打ち止めの想像どおり、すっかり炬燵で寝入ってしまった一方通行と、目が覚めて退屈しているブランカ。彼は、起きてくれないご主人様の胸に顎を乗せて鳴いている。
苦しませるつもりはないのだろうが、一方通行の呼吸は、その表情が物語るように限界が近かった。
あと少しうなされたら、酸素を求めて飛び起き、喜んだブランカに顔を舐められるに違いない。
706 :ブラジャーの人 [sage]:2012/01/24(火) 02:04:59.96 ID:A4JCJ2AC0
とりあえずここまで。

打ち止めやっと女子高生になった… ブレザーひゃっほい。 
707 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/24(火) 07:08:49.66 ID:+zKc+Q410

能力使おうぜ
708 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/01/24(火) 08:55:17.91 ID:B1t+IPheo
乙。 ブランカって聞くとさ、どうしてもあの緑肉団子が出てくるんだぜ畜生…! 

愛かー愛かー…愛などいらぬっ! お師さーん! バレンタインが近いのに!はなす話題は進路の事ばかりっ! ネタに走れよ毒男ならっ!
709 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/01/24(火) 13:13:03.49 ID:u3X39oXY0
乙!!
今回もたのしませてもらいました
710 :ブラジャーの人 [sage]:2012/01/24(火) 21:46:43.00 ID:MsabWU/L0
>>707 打ち止めの能力でも、毛をどうにか出来るかな。一方さんは能力使わなくても全然平気な時には節約しそう。

>>708 どっちかっていうと、「BANANA FISH」のお師匠さん思い出してる私です。これも古いな。

>>709 今夜も楽しんでいってください。


続きです。
711 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/24(火) 21:49:37.80 ID:MsabWU/L0

打ち止めがボンヤリしてる間に、ホームルームは終わった。全然話を聞いていなかったが、とにかく明日も同じ時間に登校さえすれば問題ないと気楽に考えている。

「なんだっけ、明日は部活紹介があるんだっけ?ってミサカはミサカはさりげなく質問してみたり」
「しっかりせい。部活紹介と選択科目説明と進路相談だよ」

もう今日はこれで、新入生は帰宅してもよい。二年生、三年生も部活動に参加する者以外は解散となっている。ただ、一年生の多くは明日の部活紹介を待たずに、お目当ての部を見学しに行くらしい。

「私は絶対また吹奏楽部に入るわ。今から見に行く。ミサカは?やっぱり帰宅部?」
「うん。そうするつもり」

部活に入るとどうしても帰宅時間が遅くなってしまう。それに、激しい運動はあまりしないように、と芳川、一方通行に言われていたので、運動系は論外だった。
掃除も洗濯も料理も、更にまだまだ慣れていない犬の世話もある。それらを優先したいと思い、高校でも部活はやらないことにした。
友人に別れを告げ、打ち止めは家に帰る。

視界に入る、グレーのブレザーと新しい鞄と靴。一方通行と可愛いペットとの暮らしは、打ち止めの高校生活も始まり本格的なものになっていく。四年生になり講義の数がかなり減るとはいえ、一方通行も大学があるし、暮らしのリズムが整うまでは、部活なんて二の次三の次だった。

(帰ったらまず夕飯の献立決めて…。ブランカの散歩行って、その前に洗濯物たたんで…)

712 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/24(火) 21:52:59.35 ID:MsabWU/L0

「たっだいまー」

我が家の玄関を開けると、意外な事に部屋の中を風が吹き抜けている。庭に面しているベランダに、一方通行とブランカがいるのが見えた。床に寝転んでいたハスキーが、打ち止めの姿を見て飛びかかってくる。

「ただいまブランカ!あの人と何してたの?」
「毛ェ取ってた」
「あぁ、ブラシかけてあげてたのね」

ベランダに腰を下ろしたままの青年に近づくと、一方通行は犬用のブラシを振って見せた。そばに置かれたゴミ箱の中には、フワフワの冬毛が毛玉となっている。ブランカは再度、一方通行の前に寝転んだ。「はやくやって」という顔で青年を見上げる。

「左側もやりてェンだが、コイツさっきからこの恰好でしか寝ないンだよ…」

胸を圧迫されて起こされた一方通行は、こうしてブランカの相手をして過ごしていたというわけだ。打ち止めは笑ってしまった。
振り返れば、床に置かれた籠の中に洗濯物が綺麗に畳まれていて、やろうと思っていた家事がひとつ片付いていることに気づく。

「待ってて、ミサカすぐ着替えちゃうから。そしたらブラちゃんを反対側にしようね、ってミサカはミサカは大量の毛玉にやる気を刺激されてみたり」

713 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/24(火) 21:59:33.91 ID:MsabWU/L0

よく晴れた青空の下、二人でブランカの衣替えをする。彼の「きもちぃー!」という顔と、毛玉という確かな手ごたえが楽しくて、かなり時間をかけてしまった。

「こンなもンか。すげェ抜けたなァ…。生え過ぎだろオマエ」
「寒い地域のわんちゃんだもん。夏は体調管理気をつけてあげないとね、ってミサカはミサカは今から夏のブランカを心配してみる」


ハスキーを散歩に連れていこうと、打ち止めがリードの準備をする。リード=散歩と覚えているブランカが、目を輝かせて飛び起きた。

「コラ、オマエはさっき散歩行っただろォが」
「え?あなたが?転ばなかった?」

家の中はともかく、外では杖をつく一方通行では、大型犬を散歩させるのは難しいはずだ。膝など擦り剥いていないだろうかと、打ち止めは青年をまじまじと見降ろした。能力を使うにしたって、バッテリーの容量がある。

「俺じゃねェよ。オマエが帰ってくる少し前に一九〇九〇号が来て、散歩させてくれ、っつゥから」
「……あははは、そうだったの。良かったねぇブラちゃん。他のミサカ達とも仲好くしてね、ってミサカはミサカはアイドルな君を誇りに思ってみる」

「ミサカ達にも懐いてくれる動物あらわる」の報に、今ネットワーク内でも話題のブランカなのだった。これで犬を飼う妹達が増えるのでは、と一方通行と打ち止めは予想している。

「なンか、『楽しかったからまたやらせろ』って言ってたぞ。今度は他の妹達が来るンだとよ」
「そっか。でもちょっとだけミサカともお散歩行こうか?ってミサカはミサカは既に興奮しちゃってるブランカの期待に応えてみる」

すぐそこの公園を一周して戻り、ハスキーの足裏を一方通行に拭いてもらう。その間に冷蔵庫を開けて、忘れていた夕飯のメニューを決めようとしていたら、

「あァ、言い忘れてたが、晩飯は『上』で食うからな。オマエの入学式ってことで、黄泉川が張り切ってるらしい」
「………、なぁんだ」

またひとつ、家事が減った。
少女は、ぼすっとソファに体を投げ出した。

「なンだよ。呆けた顔しやがって」
「ふあー…、みんなも、あなたも助けてくれるなぁ、と思って」
「はァ?」
714 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/24(火) 22:05:58.52 ID:MsabWU/L0

今までは、あくまでお手伝いという範囲で家事をしてきた打ち止め。特に料理はまだ修行中の域を出ない。春休み中は時間がたっぷりあったので、時間をかけてなんとかこなしてきたが、これからは忙しい高校生活も始まる。

自分一人だけなら不調法も怠けるのも構わないが、一方通行と、なによりブランカがいる。

「これから大変だー頑張るぞー、ってミサカはミサカはモリモリの気合いが空回りしていることに脱力してみたり」

隣に腰掛けた一方通行が、打ち止めの頭を撫でる。

(妙にうわついてると思ってたが、そォいうことだったのか…)

「……あのなァ、まるで俺が何もしないぐうたらダメ男みてェじゃねェか。オマエの高校が始まって忙しくなることなンて、俺も黄泉川達も分かってる」
「………」
「学校がなかったから、ここに引っ越してからはオマエに世話やかせちまってたが…」
「………」
「頼れよ」

その後、一方通行は照れくさそうに足を組み直して目を逸らした。打ち止めに、ここまで戦力外だと思われていたことも不甲斐ない。


にじにじと、打ち止めが一方通行の体にすり寄って抱きつく。

「…うん、ありがと」
「オマエの成績が悪くなったら、アイツらに俺がどう言われるか分かるだろォ?」

「やっぱり同棲は禁止じゃん!」なんてことになったら困る。

「なるほど。それはミサカも困る、ってミサカはミサカは一緒にいたいと思ってくれるあなたにキュンキュンしてみたり」
「………」

舌打ちは肯定だろう。打ち止めは首を伸ばして、朝と同じように頬に口づけた。

主人達を見守っていたハスキーが、自分もソファの上に登り、青年に寄りかかって座る。

「へっ」
「オイ、またか」

すぐにズルズルと前足を滑らせて、顎は定位置(一方通行の膝の上)に収まった。
右に打ち止め、左にブランカ。

「動けねェ…」
「冬毛が脱げて、ちょっと軽くなったから平気だよねー?」
「ンなわけあるか」

毛が軽やかな指通りになった愛犬の体をさわりながら、打ち止めはもう一度首を伸ばす。やり易いようにと、一方通行が顔を傾けてくれた。

「うーん、頼りにしてるわ、あ・な・た。なんちゃってぇえへへへへへへへへうりうり」
「………」

これは『頼る』ではない。『甘える』だ。しかし、それも望むところなので黙って甘えさせておく。

715 :ブラジャーの人 [sage]:2012/01/24(火) 22:17:44.51 ID:MsabWU/L0
打ち止め高校生になるの巻 完 

こんなカンジで暮らしていく通行止めです。

一方さんが一人でブラの散歩に行き、不測の事態でバッテリー切れになったら

@ ブランカに置いていかれて放置→ 一匹で帰ってきたブラに打ち止めが驚いて事態を把握する
A 鼻クンクン、前足カリカリされて擦り傷多数
B 遠吠えで救助要請してくれる


どれにしても、最終的に打ち止めか妹達に回収されますね。
716 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/24(火) 22:25:22.08 ID:HYA+BDpX0

萌え死にそう、助けて
717 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/01/24(火) 22:33:46.53 ID:u3X39oXY0
乙!!
だれかブラックコーヒー持ってきて
甘すぎる
718 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/01/24(火) 22:47:19.59 ID:vMcemRLk0

結局「ブラちゃん」で決定かいっ
719 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/24(火) 23:28:32.20 ID:qDIeekiDO
MNWに
【放置セロリ】今日もアイドル犬ブランカが1匹で帰ってきた【回収せよ】

とかスレが立つわけだな
720 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/01/24(火) 23:39:08.51 ID:v+FT+n060
乙 

20000号がブラ男だのバター犬だの言い出して打ち止めにおしおきされるのは既定事項として、 
妹達は上条派と一方派みたいにブランカ派といぬ派に分裂するのかね?
721 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/01/25(水) 02:51:42.71 ID:sKkx+npYo
乙。 あぁ…幸せカップルさんめっ! ゲフゥ(砂糖を吐いて倒れる音)


俺はゆで卵をチョコでコーティングしたチョコエッグを友人に配るだけの作業に戻るぜ。
722 :ブラジャーの人 [sage]:2012/01/28(土) 21:47:04.38 ID:h4bZH4O80
>>718 ん? いけませんでした? ブラ「ちゃん」つけるだけマシと思って。

>>729 ミサカ○○号「またですか…、めんどくせぇですね」 「ジャンケンで決めましょう」 
「前回レスキューに向かったこのミサカは除外していただきたい」 20000号「ぬぁぁぁあああああぁぁあああ!!その権利をミサあばばば」

>>720 一瞬混乱した。ややこしい…


実は、ネタの考えすぎで……、知恵熱でしょうか。
しばし病欠します。
723 :ブラジャーの人 [sage]:2012/01/28(土) 22:07:31.38 ID:h4bZH4O80
ほら、熱のせいだ。

>>719 ミサカ○○号「またですか…、めんどくせぇですね」 「ジャンケンで決めましょう」 
「前回レスキューに向かったこのミサカは除外していただきたい」 20000号「ぬぁぁぁあああああぁぁあああ!!その権利をミサあばばば」

打ち止めに看病されたい…

724 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/01/29(日) 00:31:30.44 ID:pioFap/Bo
なんかインフル流行ってるみたいだし、ブラの人もお前らもお大事にな!
725 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/29(日) 12:55:17.38 ID:wOJWYtVbo
打ち止めー早く>>1の所へ行ってやってー!
ほっぺにちゅーとかしてやってー!

4日も音沙汰無しだったから珍しいと思って少し心配してたぜ
しっかり療養して下さい。お大事になー
726 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/30(月) 10:20:22.37 ID:IMAPfJ8DO
あれ?もしかしてこのブラちゃん
実は>>1なんじゃね?

ブラの人=ブラちゃん
727 :ブラジャーの人 [sage]:2012/01/30(月) 20:56:12.66 ID:lRW5hyey0
だいたい回復。

>>724 ありがとうございます。弱ってるときには心に沁みる。

>>725 そんなことになったら、一方さんに恨まれてしまうなぁ。

>>726 名前かぶってしまいましたね。分かってはいたけど…  犬になって通行止めと暮らす妄想楽しいです。


寒いけど、春真っ盛りな話いきます。
728 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/30(月) 21:00:29.89 ID:lRW5hyey0

日本で花といえば桜だ。もちろん学園都市にも桜はたくさんある。そして桜といえば、

「花見ねェ…」
「さーくーらー、さーくーらーららんらー」

とある休日の昼下がり、一方通行はソファに寝転がりながら、キッチンから聞こえる打ち止めの歌声に耳を傾けていた。ちなみに、歌っているのは打ち止めだけではない。

「らんらんらーん」
「ふんふんふーん」

インデックスと滝壺理后もいる。彼女達は完成したばかりのお花見弁当を、箱やバスケットに詰めていた。今この状況だけを見るなら、一方通行が亭主関白かまして女性陣を働かせているかのようだが、そうではない。
ついさっきまで三人の後ろに立って、料理教室の先生の如く振舞っていたのだ。そしてお約束のように、いつの間にか率先して包丁を握り、鍋、フライパンを前にしていた。


「わぅ」
「おォ、もォちょっと待ってろ…」

一方通行が寝るソファの下では、垂れ下がっている彼の腕に、伏せながらじゃれつくシベリアンハスキー。お客さんが来てワイワイしているのに、ご主人様達は料理に手いっぱいで、ほうったらかしにされていたので不満そうだ。
この後、一緒に出掛けることを分かっているのか不明だが、そう言って宥めておいた。

729 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/30(月) 21:05:36.59 ID:lRW5hyey0

「あーあ、せっかく成長した私の腕前を見せようとしたのに。結局あくせられーたに色々お世話やかれちゃったんだよ」
「大丈夫だよインデックス。キャンプの時よりずっと上手くなってた」

インデックスと滝壺は、お弁当をどっさり持って先を歩く。お花見弁当を作るに当たり、二人と一匹暮らしを始めた一方通行と打ち止め宅のキッチンが、広くて使いやすいということで調理場に選ばれた。あとお花見会場の公園にも近いし。

「サンドイッチはインデックスが一人で作ってたね」
「うん。…とうまの口に合うといいんだけど…」
「つまみ食いしたけど、すごく美味しかったから心配ないよ」
「あぁ、たきつぼいつの間に!私もしたけど!」


騒がしい二人に遅れること数歩。耳と尻尾ををピンピン立たせたハスキーのリードを持つ打ち止めと、その隣に水筒とブランカのごはん等を持たされた一方通行。
ブランカは昨夜から

『明日はみんなでお花見に行くんだぞー!ってミサカはミサカはブランカにもごちそうを作ってあげると約束してみたり』
『わんわん!』
『やかましィ。吠えさせるな』
『あうあう!』

そう言われていて、(実際には理解してないけど、何か楽しそうなことがあるんだなぁと)わくわくしていたのである。髭の一本一本にまで、やる気がみなぎっていた。

「こらァ、ブランカ待て」
「……っ!…はぅっ」
「そうそう。ミサカが転んじゃうからね。ゆっくり歩いてね、ってミサカはミサカはデキるブラちゃんに感心してみる」
730 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/30(月) 21:09:36.28 ID:lRW5hyey0

そうして、いつも散歩で行く所よりも、ちょっと遠い公園へやってきた。お花見シーズン中なので、普段は見掛けない屋台が軒を連ねている。

桃色の花弁が舞う公園の芝生の上では、レジャーシートを広げて飲み食いする花見客、頭上の花を見上げる通行人。写真を撮る者。沢山の人が行き来している。
飲酒が禁じられている未成年が多い学園都市なので、酔っ払いは少ないのか、度を越した馬鹿騒ぎは起こっていないようだった。それにまだ昼間でもあることだし。
一行は園内に足を踏み入れたが、目は自然と桜を追ってしまうので歩みは遅い。

「わぁ綺麗…。日本の桜は何度見てもすごいよ」
「だから大勢見に来るんだね。すぐ散っちゃうし…」
「ずっと咲いてたらありがたみが無い、ってミサカはミサカはこの人出も仕方ないことだと納得してみる」
「とりあえず三下どもと合流しよォぜ…。打ち止め、リードしっかり持ってろよ」

一方通行が一人で先を歩き始める。ハスキーも彼について行こうと、少女を引っ張った。

731 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/30(月) 21:11:50.77 ID:lRW5hyey0

「おーいインデックスー、こっちこっちー」

すぐに、上条当麻の呼び声が聞こえた。立って手を振る彼の足元では、浜面仕上もレジャーシートに座ってこちらを見ている。

「とうまーっ、美味しいの作ってきたよーっ」
「もう腹限界。早く食わしてくれー」

一方通行を追い越して、インデックスが上条達の方へ駆けて行く。大丈夫だ、彼女には走っても問題ない物しか持たせていない。
全員が落ち着けるよう、芝生に敷いたシートの上に持って来た物を並べ始める面々。一方通行は準備が終わるまでブランカのリードを持って待機。

「遅かったなぁ、俺我慢できなくて串カツ買っちゃった。あ、滝壺が作った料理は死んでも残さないかんね」
「うん、はまづらのお腹を応援している。すごくいっぱいあるけど?」
「いやいや、インデックスもいるし…、おー、コイツが噂の犬かぁ…」

このメンバーでは、浜面だけがブランカと初対面である。見慣れない動物に、興味深々といった様子だ。

「…うっはははははははははそっくりぃぃぃぃーいひっひっひっひあははぁー!いつから犬になったんだよぉ一方通行ぁ〜〜」

白と灰の毛。鋭く赤い目。飼い主を彷彿とさせる姿のブランカを見て、浜面は笑う。彼が転がるシートの上に並べた箸や皿が押しつぶされぬよう、上条がそれらをどかした。

(もー、学習しねぇなこいつは…)
732 :ブラジャーの人 [saga]:2012/01/30(月) 21:13:40.31 ID:lRW5hyey0

一方通行は手に提げていた鞄から、ブランカお気に入りのササミジャーキー数個を取り出した。目を輝かせたハスキーは、美味しいおやつを前に、肩を落としてスタンバイOK。
そして、首の電極のスイッチは入れられた。

「あははふぁうげふぉぅおおぅ!!?」

おやつは余すことなく、爆笑している男の口へと一直線に放りこまれた。突然のことに、目を白黒させてむせかえる浜面。

「よォし」
「わっふーっ」

ご主人様の合図に、無情にもハスキー犬はまっしぐら。リードも離されて、彼は本能のままに好物を貪り始める。

「ふやぁぁぁあああおぶあぶうべ助滝壺っ。たす、うばばばばあふ」

「あー、あなたってば、そのおやつは一日三個って決めたじゃない、ってミサカはミサカは与え過ぎを注意してみたり」
「今のは仕方ねェ」
「はまづらが浮気している…!?」

滝壺の持つお重の箱が、ミシリと軋む。「違う違う」と彼女を諭し、インデックスがお弁当を救出した。この中には空揚げが入っている。

「違、俺、滝壺だけおろろろっろうぅやめ…っ」
「わふわふわふべろべろ」
733 :ブラジャーの人 [sage]:2012/01/30(月) 21:19:38.07 ID:lRW5hyey0
とりあえずここまで。

またお待たせするかも…しれませんが、よろしくお願いします。
734 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/30(月) 23:19:19.32 ID:dZTleumy0

元気になったようで何より
735 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/30(月) 23:24:27.27 ID:3WKOFu3IO
おつおつ
無理しないでねー
736 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/01/31(火) 00:00:18.65 ID:psHjAQQ80

浜面かわれ
737 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/31(火) 01:35:52.52 ID:Gin8LtpFo
インさんが名前呼ぶ時って平仮名で下の名前じゃなかったっけ?
「りこう」とか
738 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/31(火) 01:56:12.92 ID:okpMkyI/o
>>737
そのはず。
ただ、意外と下の名前+平仮名を見かけないんだよな。
苗字+平仮名が結構多い希ガス
739 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/01/31(火) 02:08:21.14 ID:up/ogtRB0
滝壺さん犬に嫉妬はさすがに…
740 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/01(水) 11:10:57.54 ID:y5Rm62kBo
乙。

浜面「よごされちゃった…」とか一瞬思い浮かんだけど無いなコレは。 

もーうすーぐばーれんたいーん…(白目
741 :ブラジャーの人 [sage]:2012/02/01(水) 19:35:45.83 ID:PdZFV9zb0
>>734 >>735 あんごとー。体調管理気をつけます。

>>736 え。  勇者だな。

>>737 前スレから「たきつぼ」呼称にしちゃったから、こっちに統一してしまいました。浜面は「しあげ」と呼ばれる気がしない…

>>739 しかもオスだしね。

>>740 一個ぐらいもらえるさ。希望持って笑っているんだよ。笑う門にはチョコ来たる。


あんまりお待たせせずに投下できます。よかった。
742 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/01(水) 19:38:56.64 ID:PdZFV9zb0

女子がお弁当を作っている間、上条と浜面は場所取りをしていた。携帯用ゲーム機や、オセロ、将棋などのボードゲームを持ちこんで遊んでいたし、二人でくだらない話をして過ごしたので退屈ではなかった。

「しかしここまで腹が減るのは予想外でしたよ」

おしぼりで手を拭き、上条が並べられた御馳走を眺める。それぞれ座布団やクッションに座り、お花見弁当を囲んだ。ちなみにブランカは、すぐそばの電灯が設置された鉄柱に繋がれている。そうできるように、あらかじめこの場所を選んだ。

「まだ食べちゃだめなのか?」
「待って、もうすぐはまづらが…、あ、来た」

ハスキーの涎まみれになった顔を水場で洗ってきた浜面。前髪から雫を滴らせて小走りで戻ってくる。滝壺は、靴を脱いで隣に座る彼の顔や髪をおしぼりでぬぐってあげた。

「サンキュ。あー…ひでぇメに遭ったぜ。犬とディープキスとはな。ちょっと飼い主さん!」
「それでは全員揃ったので…、飲み物持った?…かんぱーい!さぁ食べるぞー」
「上条無視すんなぁぁぁ!でもいただきまーすっ」

男達は瓶ビールをそそいだグラスを。女子達はお茶とジュースを掲げて飲む。一番先に箸を伸ばしたのは、合流した時から空腹を訴えていた上条だった。

「とうま、このサンドイッチは私が作ったんだよ」
「お、上手に作れてるじゃねぇか。店で頼んだヤツみたいだぞ」
「でしょ?食べてみて!」

インデックスから手渡されたそれを、がぶりと噛む。三角にカットされたパンの半分近くが口の中に消えた。期待と不安の眼差しで、上条を見つめるインデックス。

「ふまい!…、うまいぞインデックス!」
「やった、よかった〜」

上条は未だ食事を始めていない彼女におにぎりを勧め、二人でもぐもぐ口を動かしながら微笑みあった。
743 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/01(水) 19:42:34.54 ID:PdZFV9zb0

「くーん」

優れた嗅覚に届く美味しい匂いと、楽しそうな人間達。人恋しいシベリアンハスキーから、切ない鳴き声が…

「あ、ブランカにもごはんあげなきゃ、ってミサカはミサカはうっかりさん。ごめんね〜、今あげるよー」
「ほれ」

一方通行が手提げ鞄の中からタッパーを取り出す。打ち止めはいつものステレンレス製のお皿にその中身を開け、さらに別のタッパーから出した物を上に乗せた。
自分のごはん皿を見て、ブランカが立ち上がる。お皿=餌、と、とっくの昔に学習済みだ。

「ど−だー、お花見ランチ・ブランカ専用バージョンだよ、ってミサカはミサカは言ってもないのにお手をしまくるブラちゃんに急かされてみたりハイどうぞっ」
「がつがつがつはふがつ」
「味わって食えよォ…、と言うだけ無駄か。毎度ながら」

この様子だと、食べ終わるのに五分もかからないだろう。一方通行と打ち止めは、みるみる減って行く餌と、それを美味しそうにがっつく愛犬を眺めた。

背を向ける二人に対して浜面は、

「なーんか、乳児とパパママみてぇ」
「大きな赤ちゃんだね。しかもあの食べっぷりはすごい」

滝壺は浜面の上着に付いてしまったブランカの足跡を指さした。口に突っ込まれたおやつを求めて襲われた時に踏まれたのだろう。
土の汚れなので、洗えば問題なく取れる。「あ、いつの間に」と、浜面がその箇所を摘まんで、おしぼりで擦った。

「仕方ないよ。あの犬まだ生後八…、九か月の子供なんだって」
「うっそあの大きさで!?」
「体はほとんど成長しきってるけど、子供は子供」
「ふーん、じゃ、大目に見てやらぁ。ありがたく思えよ、飼い主さんめ」

ずっと聞こえていたのか、一方通行が振り向いて浜面を睨んだ。ブランカの食事は、もうほとんど終わっている。

「あらやだ、聞こえてた?」
「今度はコレを突っ込ンでやろォかァ?」

ブランカお気に入りの綱引き紐を突き付ける一方通行。その紐の長さは三十センチ、太さは六センチ。両端は綱が解けて房になっている。

「突っ込むってドコによ?」
「………」
「黙らないで怖い」
「アクセラレータ、それはだめ」

恋人の危機を察知し、滝壺は浜面を庇うように、彼に抱きつく。
だらしなく鼻の下が伸びていく男。

「た、滝壺ぉ…おぉぅ」
「ふン」
744 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/01(水) 19:43:49.90 ID:PdZFV9zb0

「……」
「ん?どしたのインデックス」

滝壺達の様子を見ながら、順調にお弁当を食べ続けていたインデックスと上条。

「んしょ、んしょ…ふふ」
「ちょあの、インデックスさん?急にどうしたんでせうか?」

インデックスは座布団をずらし、彼の体に寄り添った。

「はい、私のサンドイッチ、もっと食べて」
「…おう、あはは…」
745 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/01(水) 19:47:56.11 ID:PdZFV9zb0

「あ、ちょうどいいところにブラちゃんの紐はっけーん、ってミサカはミサカはあなたからおもちゃを奪って君に与えてみたり」
「わふっ」
「でも引っ張りっこはまだ出来ないの。ミサカ達のごはんが終わるまで待っててね」

愛犬の世話がひと段落し、「さーて」と、打ち止めは改めてお弁当に向き合った。

「わぁ、結構減ってる。そうだスープもあるよ、ってミサカはミサカは水筒を開けてみたり。飲む人ー?」

ちょっと硬直している上条以外の四人が挙手。少女はプラスチック容器にスープをそそぎ、中心の組み立て式ミニテーブルに並べた。希望を訊いたクセに、結局六つ並べられている。

「スープっつぅか、これって」
「トン汁だよ、ってミサカはミサカはこれもスープの一種には違いないと胸を張ってみる」

浜面はとりあえず一口すする。

「うまい、味噌さいこー。滝壺、こんなうまい花見弁当作ってくれてありがとなー」
「そのトン汁はアクセラレータの言うとおりに作ったんだよ。今までで一番良く出来たと思う」
「………、あ、そぉ」
「この卵焼きは私が焼いたの」
「うん、中に入ってるの何だ?すっげぇうめぇ」
「エビのすり身とほうれんそう。味付けはアクセラレータがやってくれた」

なんだ、一方通行が手を加えていない料理はないのかよ、と浜面は思う。

「もうなんなの第一位!ことごとくなんなの!?」
「食ってるだけの分際でうるせェよ。何なンだオマエは」

浜面はただ、「俺のために…、嬉しいよ」「いいの。だってもうすぐはまづらのお嫁さんになるんだから当然」とか言い合ってイチャつきたかっただけなのに。上条とインデックスみたいに。
746 :ブラジャーの人 [sage]:2012/02/01(水) 19:52:38.32 ID:PdZFV9zb0
とりあえずここまで。

弁当美味しそうだなー。エビのすり身入り卵焼き、食べたいよ。
747 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/01(水) 20:31:28.09 ID:y5Rm62kBo
乙。 一方さん料理上手やね。 

あとバレンタインは貰えないから逆にばら撒けばいいんだと気づいたついさっき。 
「おらぁちょこれーとさまだ! ひろえひろえ! ふははははっwwwwww」 みたいなっ!?
748 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/02/01(水) 21:45:21.06 ID:Vd3zb/QAO
>>747

無理すんなよ、それじゃあ肝心のお前が救われねぇじゃねぇか!
749 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/02/01(水) 22:58:42.09 ID:Qxa1yYr20
>浜面はただ、「俺のために…、嬉しいよ」「いいの。だってもうすぐはまづらのお嫁さんになるんだから当然」とか言い合ってイチャつきたかっただけなのに。上条とインデックスみたいに。

おいてめぇら書かれてないとこで何やってたんだよ!!

750 :ブラジャーの人 [sage]:2012/02/03(金) 23:04:40.84 ID:nSpWiVLK0
>>747 >>748 確実に誰も救われませんよ。

>>749 上イン強化週間なんです。


ガソリンが目に入って痛いけど、頑張って更新する。……灯油と比べてどっちが痛いのかなぁ…
751 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/03(金) 23:09:16.48 ID:nSpWiVLK0

桜舞い散る中、一方通行は首の電極に手を伸ばした。能力を開放して何をするのかというと、

プシュッ

「悪ぃな、肝心の栓抜き忘れちゃって」
「別に…」

瓶ビールの栓を素手で外し、すぐにスイッチを元に戻した。瓶を受け取った浜面は、男衆のグラスに、トクトクついでいく。クーラーボックスに入れておいたので、よく冷えている。

「…っはぁ〜、花より酒だねぇ。もちろん桜も綺麗だけど、もっと綺麗な滝壺は今いないし。でへ」

上条が呆れたような顔を向けた。何も言わないけど、それは一方通行も同じである。
シベリアンハスキーを連れて、ちょっと公園内を散歩に行って来るね、と言い、打ち止め達は席を外していた。だから今ここには男しかいない。

「お前もう酔ってんの?」
「酔ってません。俺の心の声ですぅー」
「……へぇ」
「上条、自分だってあんだけイチャついておいて、その反応はないんじゃねーの?俺達は同じ穴のムジナなんだよ。ねっ?一方通行!」
「勝手に一緒のカテゴリーに入れンじゃねェ」

親指立てて片目を閉じる浜面に、そうされた本人がビール瓶の蓋を投げつけた。能力は使ってなかったが、浜面の額にジャストミート。

「お、おいおい誰がイチャついてるって?上条さんはそんな、」
「とーま、はいあーん(裏声)。ははは、ありがとうインデックスあーん。きゃっきゃうっふふーん」
「あーん、はやってないからね!?」
「やってたも同ォ然のように見えたが」
「えぇ!?っ、……、そうかなぁ…!?」

右に左に、せわしなく体を振って一人芝居をする浜面と、静かにグラスを傾ける一方通行。彼らの指摘に、上条の頬が赤くなる。

(焦ってる焦ってるぷー)
(自覚無ェのかよ)

752 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/03(金) 23:12:26.36 ID:nSpWiVLK0

「どうなのよ、インデックスちゃんと、なんかあったんだろ?なんかしたんだろ?」

まだ半分以上残っている上条のグラスに、浜面によってビールがそそがれる。条件反射か、瓶が突き出されたので、グラスを差し出してしまった。

「酔わせて喋らそうってか?あいにく浜面君が期待するようなことなんて、ありませんのことよ?」
「キスはしたンだよな」
「言うなよ一方通行ぁぁぁあああ!!」
「どうして一方通行だけ知ってんだよずーるーいー!!」

大声をあげる上条と浜面がビールを零す。一方通行、今度はおしぼりを二人に投げつけた。

「言うなよ…、個人情報大事にしてよ…」
「浜面も知ってると思ったンだが…。オマエ滝壺から聞いてねェのかよ」
「え?どゆこと?」

シートや服に付いたビールを拭く手を止めて、浜面が訊く。彼の恋人である滝壺も、上条とインデックスの進展を把握していたということなのか?
753 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/03(金) 23:17:05.81 ID:nSpWiVLK0

それはホワイトデーから数日後のことであった。


可愛らしい音楽が、打ち止めの携帯端末の音声着信を告げる。飼い始めたばかりのハスキー犬をソファの中心に、彼女は一方通行と春休みの午後をまどろんでいた。

「やっほーミサカだよー、ってミサカはミサカはたきつぼに挨拶してみたり」
『やっほーたきつぼだよー』
「別に真似しなくてもいいんだよ、ってミサカはミサカは何のご用か尋ねてみたり」
『今からラストオーダーの家に行ってもいい?』
「いいけど、…ミサカとあの人ちょっと前にお引っ越しして」
『大丈夫、すぐそばにいるの。一階の部屋でしょ?分かるから』
「あそっか。りょうかーい」

それで通話を終わらせ、滝壺の来訪を待った。彼女の〈能力追跡〉ならば、打ち止めがいる部屋が分かるはずだ。

「あなた、今からたきつぼが」
「全部聞こえてンだよ」

「らーすーとーおーぉーだぁー、あーけーてー」

「早ぁ!」

早い。それほど近くにいたのか。そしてまさかの庭から訪問だった。
打ち止めは窓を開け庭に降り、外へと続くドアを開けた。ドアの前には、たった今電話していた滝壺と、

「あれ?かみじょう?ってミサカはミサカは予想外なもう一人のご訪問に驚いてみたり。あなたー、かみじょうも来たよー」
「はァ?…なンで」

珍しい組み合わせだ。上条はぼんやりした様子で滝壺に続きベランダに上がってきた。「靴脱いで」と、打ち止めに注意されるほど、ぼんやりしていた。


「…犬だ……。噛まない?」

初めて見る人間に、ブランカがソファから降り、近寄って匂いを嗅ぐ。笑顔で頷く打ち止めに促され、滝壺はおそるおそるハスキーを撫でた。
上条はフラフラの足取りで一方通行の斜め前に座った。溜息をついてから、一方通行に軽く手を振るだけの挨拶をする。彼らしくない。

「オイ、コイツは一体どォしたンだ。なンで滝壺と一緒に来た?」

こんな上条を連れて来たクセに、ほったらかしでペットに夢中な滝壺に訊く。

「そこのベンチで会ったんだけど、様子が変だから連れてきたの」
「浜面も前、そう言ってシスター拾ってきたぞ。何なンだオマエらはァ」
「……うふ、…おそろい?」

「………」
754 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/03(金) 23:20:47.74 ID:nSpWiVLK0

全員がソファに腰を落ち着けた。ブランカは上条の匂いを確かめていたら、そのまま頭を掴むように撫でてくれたので、彼の前に座っている。

「インデックスとキスしちゃった…」

手をフワフワの毛にくぐらせ、上条が独白する。一方通行は、打ち止めが用意してくれたコーヒーを飲むのを中断して彼を見る。その目は「まだしてなかったのか」と物語っている。女性二人は「おぉ〜」と顔を見合わせた。

(イキイキしてンなァ、打ち止め達…)


ホワイトデーの日にキスして以来、時々ではあるが、インデックスのこと、これからの自分達の事を考えて、たそがれているそうだ。
今更だ、と一方通行を含む全員がツッコんだ。考えるまでもないだろう、と。

「んな、そん、そんなこと言われても、上条さんだって色々と苦悩することも…っ」

やがてツッコミは女子からの非難となり、追い詰められた上条は一方通行を引きずるように廊下へ連れ出した。「オトコだけで内緒話なんてー」と、打ち止めの文句がかすかに聞こえた。

「どォして風呂場なンだ?つーか勝手に拉致してンじゃねェ」
「なぁ…」
「…何だよ」

照明のついていない脱衣所で、男二人が立ち尽くす。早くリビングに戻りたい、コイツを追い出したい。一方通行は強く思った。

「一方通行は打ち止めとキスした後、どれくらい耐えた?それとも我慢する期間てあった?」

一方通行は足元の洗濯籠を、ぶつけるように上条の頭に被せて、彼を置き去りにした。

「ひどいっ。俺結構本気で訊いたのに!」
「尚悪いわァ!知ったことか、好きにヤれよボケ」
「上条さんは紳士なんです!しかも相手尼さんだぞ!?」
「じゃァ一生童ォ貞やってろ」

リビングに戻る一方通行と、彼を追いかける上条を、冷たい視線の滝壺と打ち止めが出迎えた。打ち止めの頬はちょっと赤くて、一方通行は気まずさの中に僅かな安堵を覚える。こんな話で頬を染めてくれる彼女が可愛いのだ。

聞かれていたことを悟った上条が、あわあわと狼狽し、家主は彼を蹴り出すようにベランダに押し出した。また庭からでいい、もう帰れと言い捨てて。
755 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/03(金) 23:26:41.41 ID:nSpWiVLK0

「なんだよー、滝壺から何も聞いてないよ俺」
「こういうことを、軽々しく喋らないのが滝壺さんの良いところですよ」
「だって俺とのアハンウフンは打ち止めにバラしちゃうのに?ねぇ一方通行もおかしいと思わんかい?」
「あはんうふんを!?」
「うるせェな、今はどォでもいいだろそンなこと」

ビールはすっかりぬるくなってしまった。三人はグイー、と飲み干してグラスを空にする。
〈一方通行〉で三本目を開けるのは確実そうだ。

「知らないうちに、上条達も進展してたかぁ…」
「………まぁ」
「チュウだけかね」
「……えーと、もう、少し…」

生温かい眼差しの浜面が、自分の鞄の奥を漁り、取りだしたモノを上条に手渡した。

「はい。きっとすぐ必要になるんじゃないかね」
「浜面君、これいつも持ち歩いてるんでせうか?」
「男のエチケットだもん。手持ちが二個しかなくて申し訳ないけどねッ」

使ったことは無いけれど、見たことはある普通の避妊具。万が一、人の目にふれたりしたら恥ずかしいので、上条はそれを握って隠した。
何か言ってやってよ!の意を込めて、彼は一方通行の方を見る。冷静で観察眼に優れ、このようなおふざけには厳しいこの人なら、浜面を叱りつけてくれるだろう。

「ン」
「はい?」

一方通行が右手を上条に向けている。まるで〈お手〉をさせているようで、愉快を通り越して怖い。

「俺は三個な」
「一方通行さぁぁぁああああん!!?」
「ほらぁ、やっぱり同じ穴のムジナじゃん」

上条は両手に避妊具を、合計五個も握るハメになった。

756 :ブラジャーの人 [sage]:2012/02/03(金) 23:31:19.51 ID:nSpWiVLK0
とりあえずここまで。

寒い、春恋しひ

757 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/04(土) 00:32:19.96 ID:oDeaFD3DO
>>1乙ぱい

浜面も一方さんももげろ
上条さんは俺達の最後の砦…の筈だよな?
758 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/02/04(土) 00:55:35.31 ID:Fxqp88pg0
>>757
残念だ…
最後の砦は今日崩されたようだ
759 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/04(土) 05:50:17.87 ID:+Bwj3nD40


>>757
ガールズサイドまで「もげろ」はとっとけ
760 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/04(土) 12:56:03.19 ID:2D1aE9x6o
乙…!  ふふふ、バレンタインに向けて毒男的心理装甲を着実に強化してる俺にはこの位のいちゃいちゃなど…何とも…ゲフゥ(砂糖を吐きつつ倒れ込む音)

……俺が!俺がチョコをばらまけばみんなしやわせになるんだ…そうさきっとそうさ。 
どうせまたぎりちょこしかもらえないんだ…
761 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/02/04(土) 19:31:45.86 ID:lcjEr+nPo
>>750
乙。お大事に
762 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/05(日) 05:52:29.86 ID:Y+rJuNeDO
取り敢えず浜面は八つ裂きにしても進行に問題は無いよな?な?
763 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/05(日) 07:41:53.13 ID:NEbdb+dSO
八つ裂き?甘いな塵のひとつものこさぬまま消滅させるべきだろ
764 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/02/05(日) 10:23:06.26 ID:l2bJ3ak0o

浜面がインデックス連れてきたのっていつ頃だっけか
765 :ブラジャーの人 [sage]:2012/02/05(日) 21:01:32.24 ID:k+FLO8Dp0
>>757 >>758 その砦、わりと難攻不落かも。

>>760 魏李でも貰えるならいいやん。それさえ無い男子もいるでしょうに…

>>761 シャンプーの十倍痛かったです。

>>762 >>763 月刊アイテム、三月号の特集『愛され浜面のモテカワ爆発回避術・〜許して麦のん、ラブビーム〜』 
という文句が自然にわいてきた。

>>764 上条さんが打ち止めの中学に教育実習に行った直後だよ。>>25直後の出来事、時期は11月。このスレには書いてなくてゴメン。
766 :ブラジャーの人 [sage]:2012/02/08(水) 01:13:35.06 ID:BsbXcKRt0
お待たせしました!

お花見最後の回です。 花より団子。団子より通行止め。
767 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/08(水) 01:16:24.13 ID:BsbXcKRt0

「ただいま〜、ってミサカはミサカはインデックス達がブランカのリードを持ってくれたから楽々だったり」

インデックスと滝壺は指定席とばかりに、上条、浜面の隣に座る。打ち止めはブランカの綱を結び直し、できるだけ自分達のそばに寄らせた。手を伸ばせば、簡単に届くくらいに。一方通行は早速帰って来た愛犬の頭を撫でる。

「早かったな」
「だってブラちゃんの足がこっちって言うんだもん」

ついさっきまで、女性厳禁な話題で騒いでいたため、男三人はどこかよそよそしい。大慌てでブツをポケットに押し込んだ上条は、特に顕著だった。

「お弁当だいぶなくなったね、ってミサカはミサカは作った甲斐を実感してみる」
「サンドイッチ、ほとんど上条が食っちまったよ」
「だってインデックスが食べろっていうもんで、つい」
「あはは…、みんなごめん。とうまも他に色々食べたかったよね」
「いいや、充分おいしい思いさせてもらいましたよ……ぁ、」

ニヤニヤしている浜面。膝に肘をつき、細めた横目でこっちを見ている一方通行。穏やかな笑顔の滝壺&打ち止め。そして大きな瞳に自分だけを映すインデックス。

上条はいたたまれない気持ちになった。しかしそれでも、嬉しそうなインデックスを見れば、自然と笑顔が浮かんでくるのだった。
768 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/08(水) 01:18:03.04 ID:BsbXcKRt0

「はいはいお腹いっぱい胸おっぱい。言えた義理じゃねぇけど、御馳走さまです」
「う、うるせぇ」
「………」

茶化す浜面に大した反論も出来ない上条と、頬を染めて俯くインデックス。打ち止めも滝壺も、この程度ならかわいいものだと、浜面を止めたりしなかった。インデックスも嫌がっているようには見えなかったので。

「もう付き合ってんだよね?」
「つ、……つき」
「あって…」
「だよね?あれ違うの?」

二人が口ごもる。打ち止めは一方通行に耳打ちした。

(初々しいねぇ、ってミサカはミサカは先輩風を吹かせてみる。ねぇあなた)
(止めなくて平気かよ。シスターの顔すげェぞ)
(そう思うならあなたが止めればいいじゃない)
(……、いや、俺がやらなくても、もうすぐ止まるみてェだ)

一方通行が顎で浜面の後ろの方を示す。とたんに、打ち止めはアホ毛と一緒に両手を振った。

ガシ、と浜面の頭をわし掴みにする手。何者かと見上げた彼は、

「うっげぇ」
「あんた達も花見じゃん?羽目をはずして大声で騒いだりしてないだろうね?」
「わーいヨミカワー!ってミサカはミサカは思いがけない出会いの喜びを抱きついて表現してみたりー!」
「おっとぉ、元気そうじゃん打ち止め」
「うん!元気元気!」

769 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/08(水) 01:20:41.56 ID:BsbXcKRt0

「きゃぁーどうしてここにアンタがいるんだよ心臓に悪いなチクショ〜…」
「こらこらなーんで逃げるじゃんよ浜面。後ろめたいことでもあるじゃん?」
「無ぇよ!強いて言えば俺のピュアハートを守るための回避行動だ」

いきなり現れた黄泉川愛穂。彼女の姿は警備員の出動時の物で、どうやら仕事中らしい。といっても、ごく軽装備であることから、見回り程度だと思われた。

「お久しぶりです、黄泉川先生。休みも仕事で大変ですね」
「ただの見回りじゃん。花見にかこつけて大騒ぎするヤツが出ないようにさ。上条達なら大丈夫だと思うけど、打ち止め達もいるし気をつけろよ?」
「おっしゃるとおり大丈夫です。僕達とっても平和。良い子。だからさっさと仕事に戻っても心配ないよ」

壁(上条)の背後から顔を覗かせて、浜面が黄泉川を追い払おうとする。もちろん彼はもう暗い仕事もしてないし、スキルアウトでもない。それでも未だに彼女が苦手で、好んで会うとか、喋ることは避けていた。幾度か訪れた黄泉川家も、実は家主の不在を毎回確かめていたのだ。さらに今の黄泉川の警備員姿が、彼のトラウマを刺激する。

「俺の背後が平和じゃない…」
「あっはっはっはっは、相変わらず面白いじゃん!一方通行にもあんたらみたいな友達が出来て、私としちゃ一安心。ウチの子と仲良くしてくれてありがとじゃんよー」

黄泉川は片手で打ち止めの頭を抱えたまま豪快に笑う。一方通行は「友達」に苦い表情だが、こうして休日につるんでいることは事実なので、黙っている。


「ヨミカワ、ちょっとぐらいミサカ達とお花見できない?」
「嬉しいお申し出じゃん…でもなー」

打ち止めが手を取ってぐいぐい引っ張る。かわいい娘(みたいなもの)からの、かわいいお誘いに黄泉川の頬が緩み、浜面の頬は引き攣った。

「だめだめ何言ってんのこの子!お仕事の邪魔しちゃ悪いでしょ!」
「俺の背後がうっとうしい…」
「はまづら、男らしくない。応援できない」
「うっ…」

滝壺の非難に、すごすごと元の位置に戻る青年。視界に黄泉川を収めないようにした。

「打ち止め、あンまり困らすな。黄泉川がビールを前にして飲まない保証は限りなく少ないンだからな」
「ふははは、ちぃとも言い返せないじゃんよ。それにまだ行かなきゃならない場所もあるし。打ち止め、また今度じゃん?」
「はーい、ってミサカはミサカは聞きわけよく了解してみる」

770 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/08(水) 01:24:20.33 ID:BsbXcKRt0

「あの、これ良かったらどうぞなんだよ。残り物みたいで申し訳ないけど…」

立ち去ろうとする黄泉川に、インデックスがタッパーを差し出す。中にはお弁当が詰められていた。

「ちょうど小腹が空いてきたとこだったからラッキー!助かるぅ〜」
「ミサカ達の手作りだよ!」

あのインデックスが食べ物を分け与えるとは。一方通行は思わず浜面と目を合わせてしまった。
そういえば、今日は上条に手作りサンドイッチを真っ先に勧めたり、お弁当が残っているのにブランカの散歩に出掛けたりと、どこか以前と様子が違う。
彼女の変化は急に起こったものではないかもしれないが、こと「食」についてのイメージが強かったため、ようやく気づいた。

「じゃあそろそろ行くじゃん。浜面、もうすぐ結婚だろ?昔みたいに馬鹿するなじゃんよー」
「わかっとるわい。そっちこそ勤務態度改めた方がいいぞマジで」

帰り際に一方通行の頭をぐりぐりしていく黄泉川。邪険に首を振って嫌がる素振りを見せるが、それだけではとても避けられるはずもない。

「ブランカもね」
「あう」
「一方通行とそっくりなのに、お前は素直でかわいいじゃん」

終いに犬も撫でて、やっと黄泉川愛穂は背中を見せた。行儀悪いことに、歩きながら早速おにぎりを齧っている。
771 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/08(水) 01:28:19.48 ID:BsbXcKRt0

「一方通行を子供扱いとは、黄泉川先生すげぇな…」
「いや実際子供なんだろ。恐ろしいわ、あんな母ちゃん」

赤い瞳に睨まれて、男達は話題を変える。

「それにしても、インデックスが弁当あげるなんて驚いたぜ。腹でも痛いの?」
「む、はまづらちょっと失礼かも。お仕事頑張ってるみたいだから、お裾分けしただけだもん。普通のことでしょ?」

(普通と言やァ普通だが、インデックスに関しちゃ異常と認識して間違いねェ)

「インデックスだって成長してるんだぞ?素直に褒めろよな」
「そうだそうだ、私だってもう大人なんだよ!」
「へぇオトナですかぁ」

彼女をフォローする上条と勢いづくインデックス。浜面の顔がまた歪む。今日何度目だろう…

「あのねお二人さん、オトナにはオトナの付き合い方ってものがあるんだよ」

しまった、墓穴を掘ったと、上条は後悔するがもう遅い。浜面は隣の滝壺の肩を抱いて自慢げに鼻を鳴らした。

「こうな?こういう風にな?オトナならすりすりせんと」
「は、はまづら、」

急なことで、流石の滝壺も戸惑っている。自分から抱きつくのと、こうして抱き寄せられ、周囲に見せびらかすようなことをされるのは違う。

「ほぉーら上条もやってごらん?楽しいよ?」
「馬鹿やろー出来るかそんなこと」
「え」

隣のインデックスから硬い声がして、見ると悲しそうに下がる眉と、潤む瞳。

「違いますよ、上条さんが言いたいのはね、公衆の面前で、はしたないことは控えるべきってことだかんね、ね、ね?」
「…うん」
「公衆がいなかったらすりすりする発言キましたー」
「お前今日ホントうっとおしい!!」

(あなた、そろそろ止めてほしいかも、ってミサカはミサカは)
(いや、また大丈夫だろ)


滝壺が右手で恋人の口を塞ぐ。そして左手で彼の耳をつねるように引っ張った。

「わたたたたふぁきつぼいたい!」
「いい加減にしないと、口きいてあげない」
「ごめんなさい」
「よろしい」

あっさりと反省した浜面。滝壺強し。

「なんでだろう。ちっともスッキリしない上条さんですが」
772 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/08(水) 01:31:58.58 ID:BsbXcKRt0

やはり「大人」になったといっても、インデックスはインデックスだった。お花見弁当は、米の一粒も残らず片付いた。

まだ夏に比べて日が短い春の空が、かすかに橙色を帯びてくる頃、六人は後片付けを済ませて家路につく。
しかし大量の荷物を徒歩で運びきるのは難しいので、とりあえず近くの一方通行宅に置くことになっていた。彼らの家が一階なことも楽であるし。

「俺だけ絶対荷物が多い…」

滝壺の「はい、はい、これも」と言われるままにしていたら、浜面は夜逃げする人のような出で立ちに。だが誰も助けてはくれなかった。自業自得である。
フラフラな足取りの彼を最後尾に、先頭切って歩くハスキーの計六人と一匹。ブランカの背にも、座布団が一枚括り付けられている。

邪魔にならないキッチンやリビングの隅、ベランダに荷物を置き、インデックス達が一方通行と打ち止めに別れを告げる。滝壺、インデックスがドアの外へ出て行ったのを見計らい、上条が一方通行と浜面を手招きして呼ぶ。薄暗い玄関に身を寄せ合う男達。ちなみに打ち止めはベランダで愛犬の足裏を綺麗にしている最中だ。

「ちょいちょい、君達こっち」
「んだよ、どんなアドバイスが欲しいんだ?初めは上手くいかなくて当然だから気取っちゃ」
「馬鹿は黙ってろォ」

上条はズボンのポケットから、受け取ってしまった避妊具を出す。左手の二つは浜面に。右手の三つは一方通行に。

「これ返す。せっかくだけど…」
「………」
「………」

返された避妊具は、元の持ち主の上着やズボンに仕舞われた。

「いいのかよ、インデックスのことは…」
「いいんだ、今は…」
「上条がそう言うなら、俺は何も口出ししねェよ」
「出来ちゃった婚でも、式には呼んでね」

苦笑した上条が、軽いストレートを浜面の胸にお見舞いする。

「ハハ、痛ぇよ」
「ははは」

ぽす、二発目。ぼす、三発目。どす、四発目。

(……あーァ、怒らせやがった)

「痛いっ、冗談だよ!止めろよ一方通行ぁっ」
「イヤだ」
「ははははは、俺に焼け死ねってか。丸焦げになれと?」
「何言ってんの上条、怖いぞ?」

やがて「とうまー?」と、ドアの外から大切な少女に呼ばれ、上条は帰って行った。続いて、胸をさする浜面も。
ようやく静かになり、一方通行はリビングのソファに落ち着いた。

773 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/08(水) 01:35:08.58 ID:BsbXcKRt0

「みんな帰った?ってミサカはミサカはお疲れ気味なあなたを気遣ってみたり」

足洗いセット(桶とタオル)を片づけた打ち止めが青年の横に座った。はしゃいでいたブランカは、絨毯の上で伏せて寝ている。こっちは本当に疲れているのだろう。

「いや…、疲れてるワケじゃねェよ」
「ふぅん、あれ…?ちょっと?」
「打ち止めァ…」
「あらあらら…」

一方通行の手が、打ち止めを捕えて引き寄せる。身動きできなくなる前に、聡い少女は両足をソファの上にあげて抱かれやすい態勢を整えた。

今日はやたらと、見せつけられた。浜面も上条も一方通行の前で、大いにノロけてくれた。恋人とそうやって過ごす幸せを、一方通行も味わってしまっている。だからといって、彼も同じことを他人の前でできるはずもなく、実は、悶々と、イライラしていたのだ。

その鬱憤を晴らすため…という程ではないが、早い話が「俺もやりたい」であった。
人の目が無くなった今、打ち止めに触れて、抱きしめたい。その願望は打ち止めにもあったのか、それともただ一方通行の心を知っていたからなのか、優しく抱き返してくれる少女。

「………」
「あなた…」

力を込めた腕を緩め、打ち止めの頬にキスをする。まだ唇にはしない。
ずるずる、すがりつくように、柔らかい胸元に額を押しつけた。良い香りで肺が満たされる。打ち止めは一方通行の白い髪と、丸くなった背中に手を滑らせた。

「………」

子供扱いされているようで癪だ。一方通行はそのまま打ち止めを押し倒す。

「う、重い…」
「ふン」
「苦しー、ってミサカはミサカは呼吸困難を訴えてみたり」

起き上がる、かと思ったら、今度は青年が下になって、相変わらず抱きしめられている。

(これは中々解放されないぞ、ってミサカはミサカは覚悟を決めてみる)

への字に曲がった彼の唇を目指し、打ち止めは首を伸ばした。彼を笑わせることは、彼女だけの得意技である。

774 :ブラジャーの人 [sage]:2012/02/08(水) 01:39:22.28 ID:BsbXcKRt0
みんなでお花見!の巻 完

桜全然見てないこの人たち。

775 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/02/08(水) 01:53:04.32 ID:4sO0ekOo0
>>1乙〜
今回も甘々で最高だったよ

だが男三人は今すぐ爆発しろ
776 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/08(水) 06:55:40.30 ID:7/kRTle80

花見なんて騒ぐ口実だよ
だから、警察が忙しい
777 :ブラジャーの人 [sage]:2012/02/08(水) 21:11:03.60 ID:A2HyVHPB0
>>775 もう「浜面爆発」という四文字熟語が、辞書に載っててもおかしくない気がしてきました。

>>776 いつもありがとう、おまわりさんに敬礼。 酔っ払いを職務に則ってさばくのは大変ですよな…


昨日も来たけど今日も来ました。 変な更新頻度で申し訳ない。
778 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/08(水) 21:14:14.01 ID:A2HyVHPB0

四月十五日、その日は打ち止めの誕生日(に設定した日)だった。
早く年を重ねたいと願った打ち止めが、就学した際にクラスでも誕生日を先に迎えたいと希望したので、四月生まれとした。
黄泉川家でいつもの五人で誕生日パーティーをしたあと、一方通行と打ち止めはどんちゃん騒ぎに疲れた体をベッドの上で休めている。

「泊まっていけ」と勧める黄泉川に「ブランカを一人にするのはかわいそう」と断って帰って来たのだ。

『一方通行、あんたがブランカ抱えてベランダまで跳んでくればいいじゃん?』
『アホか。怖がって暴れるだろォが』
『もー、今夜はミサカが付き合ってやっからワガママ言わないでよ。大人でしょー?』

番外個体がそう言って助け舟を出してくれて、二人は子供離れしきれない保護者に苦笑して別れを告げた。こちらからしょっちゅう訪問しているし、逆にこの一階の部屋にも、彼女達は押し掛けて来ているというのに…

「ふふふ、今日は楽しかったね、ってミサカはミサカはおもてなしにご満悦〜」
「ハイハイよかったですねェー」

今日も二人一緒に風呂に入った。ただ、酒を飲んだばかりの一方通行を心配して、打ち止めが無理やり引っ張りこんだだけである。
念願の〈お背中お流しします〉を実行できたものの、彼は酔っていたため期待していたような甘酸っぱい反応は得られなかった。

「今度はあなたがお酒を飲んでない時に、また洗ってあげるね、ってミサカはミサカは次なる約束を取り付けてみたり」
「気が向いたらなァ」

一方通行は仰向けのまま、左手を伸ばし打ち止めの背中を軽く叩く。だんだんと酔いが醒めてきて、洗われてしまったことの恥ずかしさが込み上げてきた。

「…なんかテキトーなお返事だよ」
「、ぐっ。…やめろ、まだ酒が残ってンだから」

ごろごろ転がって、打ち止めは一方通行の胸に圧し掛かった。本当に苦しそうな声だったので、素直にどく。

(大丈夫、今のは肺の上にピンポイントだったから。けしてミサカが重くなったワケじゃないよ、ってミサカはミサカは自己弁護)

779 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/08(水) 21:17:13.34 ID:A2HyVHPB0

彼の上から体を起こし、お詫びも込めて膝枕してあげる。今日は打ち止めの誕生日なのに、一方通行がいろいろされていた。

「……なァ」
「うん?」

薄暗い部屋の中、一方通行の眉間に皺が寄るのが見えた。

「おめでとう」
「わぁお、…ありがとー!ってミサカはミサカはそんな苦しそうな顔しなくてもいいのにと笑いをこらえてみる」
「うるせェ。慣れてねェンだよ。あとこの際だから訊く。欲しい物は何か言え」
「誕生日プレゼント?」
「おォ」

「うーん」と、一方通行の頭の上で組まれる打ち止めの腕。二分待ってみても、彼女からの返答がない。

「いつかの合格祝いみてェだな。思いつかねェのか」
「面目ない…。ミサカは恵まれすぎている…」

だから、誕生日に何を困らせてしまっているのだろう。
一方通行も一応は高級スイーツ店でケーキを用意したりしたが、特別な贈り物をしたくて訊いたことが仇となった。

「もォいい、謝るようなことじゃねェだろ」

悪いと思って、項垂れる少女の顔に手を伸ばした。頬をくすぐるようにしていたら、

「がぶ」
「おいナニやってンだ。ブランカかオマエ」
「ほう、ブリャちゃんのまねー」

最近の愛犬は、一方通行と打ち止めとの暮らしに慣れてきて、すっかり我が物顔である。本気じゃないが、飼い主に噛みついて、遠慮なくじゃれついてくれるようになった。まだ子供なので無理もないが、たまに痛い。
叱れば尻尾を丸めて反省するし、謝意を表すように手を舐めるのがとても可愛かった。今の打ち止めみたいに。

「噛んじゃってゴメンね、ついつい。いやぁブランカのこと叱れませんなぁ。これは噛みたくなっちゃいますなぁ」
「あっそォ」

ゴメンと言いつつ、まだ噛む。普段あまり噛ませてないので、その反動だろうか。まぁ指くらいなら構わない。むしろ、……イイ感じだ。

(って、これじゃだめだってンだろ)
780 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/08(水) 21:19:36.10 ID:A2HyVHPB0

もっと、という欲求を押さえて指を引っ込める。濡れた所を寝間着で拭い、柔らかい太ももから頭を起こした。
「あ、もう交代?」と、嬉しそうな少女が、ベッドを揺らしながら移動する。
あぐらをかいた一方通行の足に頭を乗せる時、髪を挟んでしまわないように、ちゃんと持ってくれている。いつもの流れだ。

「あなたが、ミサカとこうしてくれることが一番嬉しいよ、ってミサカはミサカは毎日が誕生日状態だとあなたを安心させてみる」
「………」
「そんなにミサカに何かをあげなきゃ、って使命感持たなくても平気だからね」
「そォかよ」

照れ隠しか、一方通行が打ち止めの髪を乱暴に乱して、見上げてくる瞳を遮った。
ぐしゃぐしゃなヘアスタイルなど気にもしていない少女は、唇を吊り上げて余裕の笑み。
一方通行は、結局自分で打ち止めの長い髪を整えて、顔を出させてやる。なんとも締まらないではないか。

「……?」

再び現れた打ち止めの目が、潤んできた。ベッドサイドの照明が揺れて映っている。
781 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/08(水) 21:22:27.56 ID:A2HyVHPB0

「でもさー、今年の誕生日は、…特別だよね、ってミサカはミサカはあなたに話題をふってみる」
「?…特別?」
「そう。ほら…、ミサカは今日から十六歳」
「あァ、それが?」

ぷくー、と膨れる打ち止めの頬。目まぐるしい変化に、毎度のことだが一方通行は感心してしまう。
少女は下半身に反動をつけて起き上がった。遠心力で振られた髪が、一方通行の顎を掠めていく。
打ち止めは、キっ、っと彼を睨み、シーツを蹴って跳びかかった。獲物を狙う猫のようだ。

「もぉー!十六歳といえば!分かるでしょぉー!」
「うォ!?」

大声と軋むベッドに、部屋の隅で丸くなっていたブランカが何事かと首をもたげる。しかし「なんだいつものことか」と鼻を鳴らし、すぐさまイビキをかきはじめた。

「十六歳!それは結婚できる年齢なのです!ってミサカはミサカは…あなたに告げてみたり…」
「………」

これは面食らった。倒れないよう、両手をついて体を支える一方通行の胸に顔を埋める少女は、最初の勢いを失って停止した。
勇気を出して言ってみた。「結婚」という言葉を自分から発するのが、これほど緊張するとは…

(うわぁ〜昔はもっと簡単に言えてた気がするんだけど、ってミサカはミサカは恥ずかし乙女―!)

涙まで滲んできた。だって一方通行ときたら、何も言ってくれないのだ。

(…どうしよう。いきなり結婚とかぶっちゃけて、まさか引かれた!?ってミサカはミサカはメンドクサイ女認定されてしまったり!?)
782 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/08(水) 21:24:46.45 ID:A2HyVHPB0

「オマエ…」
「あ…、あの」

ようやく、青年からアクションが返ってきた。縮こまっていた打ち止めの体を、ゆっくり抱きしめて、だんだんときつくしていく。

「俺と結婚したいのか」
「…昔もそう言ったハズだけど、ってミサカはミサカは覚えてないのかと憤慨してみる」
「今でも?」
「今の方が、何倍もしたくて困ってる」
「ンだよ…、欲しいモンあるじゃねェか…」

打ち止めが、鼻に起こる摩擦にも負けず顔を上に出す。青年の耳元で、いささか怒りを含ませた文句をたれた。

「ミサカだけしたくてもダメだよ。あなたが」
「分かってる」
「お情けで結婚とかされてもみじめ」
「分かってる」
「ちょっとさっきからミサカばっかり恥ずかしいこと言ってて不公平!」
「分かってる」
「あと一回でも『分かってる』って言ったらもう」
「結婚する。オマエと」
「うひゃぁぁぁぁぁぁぁ不意打ちぃぃぃぃ!ってミサカはミサカはしてやられたりぃぃぃ!!」
「今すぐじゃねェよ、落ち着け」
783 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/08(水) 21:26:11.97 ID:A2HyVHPB0

結婚の話をしているというのに、ムードなど遥か彼方でテンション上がりまくりな打ち止めの背を、優しく叩いて宥める。
ぽん、ぽん、と気の抜ける音が、打ち止めが幼かった頃を思い出させた。

「……っ」

昔はこうすれば笑っていたが、聞こえてきたのは幼さを感じさせない、切ない泣き声だった。

「泣くこたァねェだろ…」
「だって、だって…」


重すぎる罪を背負って、生きていく。許される時など永遠に来ないかもしれない。

(それでも俺はオマエといると、決めたンだ)
(嬉しい。ミサカと一緒って、決めてくれたあなたが…)


打ち止めの涙を吸い取り、しょっぱい口のままキスをする。
誕生日の夜は、温かく更けていった。


784 :ブラジャーの人 [sage]:2012/02/08(水) 21:30:55.47 ID:A2HyVHPB0
打ち止め、十六歳になるの巻 完

ミサカは まだ 十六だーからー (語呂悪…)

スルメしゃぶりながら糖度とのバランス取らないと、また体調崩しそう。
785 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/08(水) 21:45:40.91 ID:hpTN1HaIO
甘い…甘すぎるよたまらん乙
786 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/02/08(水) 22:43:13.34 ID:4sO0ekOo0
おつ
この甘さがここのいいところ
787 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/02/08(水) 22:59:22.88 ID:Tq4UI8cB0
乙乙
セロリめ…いい不意打ちかますじゃねえか
788 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/08(水) 23:21:21.81 ID:dvhbNxUK0

そこはかとないゴールの気配
二人に幸あれ
789 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/09(木) 00:02:28.21 ID:G1ScBALAO
畜生!末永く爆発しろ!
790 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/02/09(木) 02:06:16.75 ID:NXJg2ITGo
乙乙!
セロリさん爆発しろ!
791 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/09(木) 02:21:44.84 ID:qOIFMtkxo
乙! セロリさん素敵!イ一ヶメーン! 
お祝いに俺が対バレンタイン用として自作したチョコエッグ(ゆで卵をチョコでコーティングしたもの。 ぶつけられると超痛い。 硬いし、結構重いし)とチョコエッグ改(生卵をチョコでコーティングしたもの。 コレでキャッチボールすればアナタもアノ子もどっきどき)をくれてやろうっ! 
792 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/09(木) 02:53:26.89 ID:2+cAoUNDO
>>1乙ぱい
ウチのIMEさんには『浜面爆発』入ってるよ

…『一方さん爆発しろ』も登録しておくか…
793 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/02/09(木) 07:11:37.53 ID:qX91j/o/o
センチメンタルみーさーかー
794 :ブラジャーの人 [sage]:2012/02/09(木) 22:53:20.19 ID:l6iOWpm60
みなさん、乙や乙っぱいをありがとうございます。やる鬼がモリモリしてきます。

>>788 そう、気配だけ。もうちっとゴールは先なんです。

>>792 IMEってなんぞ、と思って調べてみる……、何コレ便利そう(馬鹿!)登録とかできんの?まじ便利そう(BAKA!)
そして実は以前より、前スレ、次スレへのリンクの貼り方を覚えな、と思っている私です(阿呆)たぶんこのスレで収まらない(AHO涙)もう昭和に帰りたい。

>>793 懐メロ、歌謡曲ネタに乗ってもらうと、とても嬉しい。


それでは本編更新は明後日に(できたらいいな)毎年二月、三月は修羅場ラ☆バンバで… 

795 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/10(金) 13:16:31.83 ID:SJdQJGnyo
おつ
結婚宣言に気を取られて指フェラやってんのスルーする所だった
ったく油断ならねぇこのバカップル
エロいぞいいぞもっとやれ
796 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/02/10(金) 22:29:18.61 ID:QhZpT04e0
FFF団の集会があると聞いて
797 :ブラジャーの人 [sage]:2012/02/12(日) 01:00:04.82 ID:h0lXQdzB0
>>795 実はやってました。 犬のマネですが(それがよけいにエロく感じられる人もいるかも)

>>796 なんだそれは、と思って調べてみる。……なるほど、稲中でいうところの「しねしね団」みたいなもんだね。


投下します。
798 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/12(日) 01:01:38.18 ID:h0lXQdzB0

打ち止めは困っていた。

「おおお、俺と付き合ってくさいください!ミサカさん!」
「…ごめんなさい。ミサカはもう付き合ってる人がいるので…」

「とりあえずお試しで!友達でもいいから!好きな物なんでも、行きたいところどこでも」
「…ごめんなさい。ミサカはもうラブラブに付き合ってる人がいるので…」

「断らない方が君の身のためだよ?」
「ごめんなさい。ミサカはもう付き合ってるレベル5の人がいるので…」

799 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/12(日) 01:04:11.51 ID:h0lXQdzB0

「ツ・キアッテルヒトガイ・ルノデー」
「なんの呪文かと思ったわよ」
「高校入ってからまたコレだよ、ってミサカはミサカは根本的解決方法を模索してみたり」
「贅沢者め…」

昼休みの教室、打ち止めは級友の女子とお喋りをしている。話題は<告白されすぎて困る>であった。

中学最後の一年は、一方通行が授業参観に来てくれたことで、打ち止めは既に売約済みと知れ渡って落ち着いたのだが…
他校は知らないが、打ち止めが通うこの高校は、授業参観は行われない。
そして、同じ中学からここへ進学した生徒は、わずか十数人。打ち止めには彼氏がいると、まだ知れ渡っていないのだ。

「あの白い人に、学校に来てもらえばいいんじゃない?」
「ヤキモチ焼きだから、出来れば避けたかった、ってミサカはミサカはフォローの大変さと天秤にかけてみる」
「愛されとんのぅ」
「でももう限界かも。適当に理由をつけて全校公開しようかな…」


そんなことを話していたら、おあつらえ向きに空に暗雲が立ち込めてきた。午後の授業が終わる直前には、案の定雨が。

「これはもう呼べ、呼ぶがいい、という天のご意思ね、ってミサカはミサカはあの人に電話をかけてみる。傘無いし」

800 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/12(日) 01:08:21.47 ID:h0lXQdzB0

あの人はあの人で、おそらく電話が来るのじゃないかと思って、家で待機していた。
大学も四年生になると、講義が少なくなって登校しない日ができる。そんな日は家事や雑事をこなし、愛犬とダラダラして過ごす。一方通行は雨音を訊きながら、自室の机に置いたパソコンに向かって、キーボードを叩いていた。
二人掛け用のソファの上では、ブランカが昼寝している。
そろそろだろうと、作業を中断して目を閉じる。ベッドに仰向けになり、携帯端末を握った。数分後、予想通り鳴りだす着信音。

「なンだ」

用は分かりきっているが、毎回そう言って通話を始める。

『雨が降ってきちゃった、ってミサカはミサカはあなたも当然把握している天気の話題で暗に要求をチラつかせてみたり』
「『暗』になってねェし、『チラ』どころでもねェな」
『だって傘持ってきてないもん。お迎え、来てくれるかなー!?』
「いつもン所でいいか」
『いいともー!…あ、待って。今日は正門、ううん昇降口まで来て欲しいな、ってミサカはミサカは注文を加えてみる』

打ち止めの通う高校は、二人が暮らすマンションから近い場所にある。こうして雨が降った時や、重い荷物がある時だけ、一方通行が送迎をしてくれていた。しかし普段彼が運転するポルシェは、目立つしうるさいので、裏門や道路の路肩で乗り降りしていた。

それが、今日は珍しく昇降口まで来てくれという。

「……、具合でも悪ィのか」

打ち止めの教室からだと、正門より裏門の方が歩く距離が長い。もしかして、それが辛いような悪い体調なのでは、と危惧する。少女は慌ててそれを否定した。

『あ、や、違う違う。今日は鞄重いし、えーともういいじゃないミサカは元気だよ!』
「……まァいいけどよ。じゃちょっと待ってろ」
『はぁーい、ありがとー』

通話の後、一方通行の声を聞いて目を覚ましたブランカに外出を告げ、上着を羽織る。一匹で家に残していても、「待っていれば戻ってくる」と信用してもらったので、もう玄関までついてくることはなくなった。
801 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/12(日) 01:11:03.46 ID:h0lXQdzB0

鼻歌まじりに、曇り気味な窓の外を見つめ続ける打ち止め。
放課後の教室は、雑談で駄弁る者、テストが近いため、真面目に教科書開いて友人に教えを請う者と請われる者など、ありふれた光景が広がっている。

(まだかな〜、ってミサカはミサカは耳を澄ましてポルシェちゃんの到着を待ってみたり)

エンジン音が聞こえてからこの二階の教室を出れば、丁度いいタイミングでポルシェに乗り込めると思う。
廊下からは、雨のため外で部活動を出来ない生徒が、屋内トレーニングをする物音や掛け声が届いてくる。教室の向かい側にある多目的スペースで、ダッシュや筋トレをしているのだ。
エンジン音を聞き逃さないように、打ち止めはさらに窓辺にすり寄り、じっと外を見降ろす。

(みんな、あの人見てどんな反応するかなぁ。去年はすごかったけど…)

自分にはこんなに仲の『いいヒト』がいるんだぞ!告白されても断っちゃうぞ!と知らしめるため、彼を目立つ場所に呼び出した。

(告白されて困ってるって言ったら、まーたあの人不機嫌になっちゃうもんね。騙してるワケじゃないけど、ってミサカはミサカは少しばかりの後ろめたさを感じてみる)

それにしても、一方通行の到着がいつもより遅い。打ち止めはついに窓を開け、身を乗り出した。聞き慣れたエンジン音もしない。

「こら、雨降ってンのに、なに窓開けてンだ」
802 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/12(日) 01:14:11.98 ID:h0lXQdzB0

形容し難い悲鳴で驚いてしまった。
背後から聞こえる一方通行の声に慌てて振り向くと、当然だがそこには彼が立っていた。右手に杖、そして左手には傘を持って。

「!?…な、なんで、あなたが」
「傘が無ェから迎えに来いって言ったのはオマエだろォが」
「でも、ミサカはポルシェちゃんで来るんだと思ってて、あれ?あなたポルシェちゃんは?ってミサカはミサカは自分の聴覚に不具合でもあるのかと」
「…今日は乗ってきてない」

ポルシェで来ると思い込んでいた打ち止めは、傘をさして徒歩で正門をくぐった恋人を見逃してしまったのだ。

いつの間にか、教室の中に残っている全員がこっちを見ている。それだけではない。ジャージを着た運動部の部員も、ドアや廊下に面している窓から顔を覗かせて興味深そうに覗き込んでいた。もちろん二年生、三年生の先輩もいる。

去年の春も、こうだった。一方通行が打ち止めの中学に授業参観した時と、よく似ている。

(しかし、心中はだいぶ変わっちまったなァ…)

恋というものを、芯まで理解できていなかったあの頃。
周囲からそそがれる視線の意味と、それを受けて心に湧きおこる高揚感の理由も分からなかった。
だが今は、

「車で来るよりも、オマエの魂胆に沿ってると思うがな」
「!……うわぁ恥ずかしい。ミサカの計画バレバレだったの?ってミサカはミサカは乙女心を『魂胆』呼ばわりされて機嫌を損ねてみたり」

大体、一方通行の機嫌を慮っての計画だったのに。どうやら打ち止めの状況と計画を把握した上で、こうして教室まで来てくれたのだと察する。
803 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/12(日) 01:17:48.20 ID:h0lXQdzB0

「あなた、怒ってない?ってミサカはミサカは恐る恐る訊いてみる」
「あァ?俺を怒らせるよォなことしたンか」
「へ?だから、ミサカがまたアレだからコレしてくれたんでしょ?」
「悪いが俺は精神系能力者じゃねェンだよ。普通に説明してくれませンかねェ」

昇降口に向かって歩くつかの間に、心配していたことを確認する打ち止め。一方通行の声音や表情は、いつもとなんら変わりないように思えるが…

「ヤキモチ焼いてもらえないと、それはそれでつまらなかったり…」
「……自分でも不思議なンだが…」
「?」
「だって大丈夫だろ?」
「………うん」


二人の心は、細かなひだの隙間までも、染み込み、混ざり合うように埋め合わさっている。
ともに暮らす何気ない日々の生活の中、折にふれてそれを実感していた。

薄い膜でも、積み重なれば厚みを増していく。二人は成長しているのだ。


「この後の予定を考えると、車の方が都合がよかったンだがな。まァ大した用事でもないから、一度帰ってから出掛けよォぜ」
「あ、忘れてた。服取りに行くの今日だっけ、ってミサカはミサカはデートを忘れていたことを申し訳なく思ってみたり…。晩御飯の献立まで考えちゃってたよ」
「それは明日にしとけ。ちなみに何食わしてくれる気だよ」
「レンコン入りハンバーグ〜」


一本の傘の下に、中睦まじく寄り添う一方通行と打ち止め。その姿はきっと、ポルシェで迎えに来てもらうよりも効果抜群であろう。

「ミサカが傘持つ、ってミサカはミサカは両手がふさがるあなたを気遣ってみたり」
「背が足りねェよ。俺が頭ぶつけるだろォが」
「ヒトが気にしていることをー!ってミサカはミサカはハイヒール履けば問題ないと見栄を張ってみる!」
「虚しい見栄を張り方だな」

804 :ブラジャーの人 [sage]:2012/02/12(日) 01:21:18.63 ID:h0lXQdzB0
雨の日のお迎えの巻 完

雨 雨 降れ 降れ もーっと降れー  ミサカのあの人連れて来いー

相合傘の通行止めでした。
805 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/12(日) 01:22:51.35 ID:4kNKSPWIO
乙ぱい

くそっくそっくそっ!!
足りん!壁が足りんぞぉ!!核シェルター持って来い核シェルター!!
806 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/02/12(日) 03:07:35.91 ID:nR926FxY0
807 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/12(日) 03:10:00.31 ID:ihzwQ93DO
>>1乙ぱい

雨だけに濡れ場ってね(

ところで、ミサワねーさんには番傘が似合うと思うんだがどうだろうか?
808 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/12(日) 06:15:49.67 ID:kj7pCxPto
乙乙。 壁を! 殴るよどんどんと! アウアウアァアァァァアアアア
809 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/12(日) 06:52:29.29 ID:IbSkxfHIO
>>807
お前天才だな
810 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/12(日) 08:33:15.06 ID:oBNDyVPs0

三人目の断り文句ワロタ
811 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/02/12(日) 12:46:16.32 ID:vpD9nJXO0


>「断らない方が君の身のためだよ?」
>「ごめんなさい。ミサカはもう付き合ってるレベル5の人がいるので…」

余計なことをすると学園都市第一位の他に第三位、レベル4が一人(番外個体)に9969人の妹達、
下手をしたら最強の無能力者と浜面滝壺繋がりでアイテムもセットでお届けされちゃいます
キャーナニコレコワイ
812 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/02/12(日) 22:45:47.92 ID:46h4FizP0
乙です

「ワタシのお姉さまになってください!」
は無しか
813 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/13(月) 01:27:58.80 ID:BF5Lat1IO
>>811
勝てる気がしないwww
814 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/13(月) 04:27:53.95 ID:2DdkyPqSO
>>811
第三位つながりで風紀委員も味方につける事出来るなww
815 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/13(月) 07:41:55.60 ID:tRPonoEAO
忘れられる黄泉川先生
816 :ブラジャーの人 [sage]:2012/02/15(水) 20:59:16.72 ID:hHAsBREZ0
みなさん、いつも乙や乙っぱいをありがとうございます。元鬼がわいてきます。

>>807 本当に天才。今のままのアオザイでもいいし、大正テイストな着物もいいな。

>>812 まだ一年生だし、「私、あなたのお姉さんになりたいの」はあるかもね。 打ち止め「間に合ってます」

>>815 芳川「私だってやる時はやるのよ」 ブランカ「わん!わん!わん!(噛む!噛む!噛んでやる!)」

では投下を開始します。
817 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/15(水) 21:02:04.96 ID:hHAsBREZ0

相合傘で帰って来た一方通行と打ち止め。ブランカの夕ご飯を用意した後、今度こそ青年の愛車で出掛けた。

「あなたと雨の中を歩くのは楽しかったけど、やっぱりドライブもいいね、ってミサカはミサカは流れゆく景色を眺めてみる。雨なのにゆっくり外が見られるのが車のいいところ」
「弱くなることを期待してたが、だめそォだな。…やっぱ飯は今度にしねェか。わざわざ一張羅を濡らすことはねェだろ」
「大丈夫だよ。空の下はほとんど歩かないでしょ?ミサカはもうワクワクしちゃってるんだから決行しまーす」
「忘れてやがったクセに何言ってンだか…」

今日、二人はイタリアの有名ブランドのオーダーメイドの服を受け取りに行く。浜面仕上と滝壺理后の結婚式用にあつらえたものだ。
授業参観やドレスコードのあるレストランに行くのとはワケが違う。初めて出席する本格的な冠婚葬祭である。今持っている服で行ってもおかしいことはないが、どうせだから気張ってみるか、ということになった。

なにせ、一方通行は細すぎるし、打ち止めは胸だけ大きいので、既製品は数が限られてしまう。無理して着られないことはないが、

「俺はウエストが歪ンじまうし…」
「ミサカは胸が張っちゃうんだよね、ってミサカはミサカはかさむ衣装代に申し訳なくなってみたり」
818 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/15(水) 21:03:39.96 ID:hHAsBREZ0

「いらっしゃいませ」
「完成したスーツとドレスを受け取りに来たンだが」
「お待ちしておりました。一方通行様はこちらへ」

「後でな」と目で合図して、一方通行は店員に連れられて奥へ姿を消してしまった。残された打ち止めは、とたんに不安な気持ちになる。
採寸のために訪れた時もそうだったが、フワフワの絨毯で敷き詰められた高級な造りの店内に一人にされるのは、なんだか緊張する。

「さぁ、御坂様はこちらへどうぞ」
「は、はい」

身を固くする打ち止めも店員に促され、青年とは別の個室へと案内された。

服を受け取るだけではなく、そのまま身に着けて帰りたいという希望を告げていたので、フィッティングル−ムで着替えることになっていたからだ。
819 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/15(水) 21:08:32.94 ID:hHAsBREZ0

「あのう、これどうやって留めるんですか?ってミサカはミサカは難解なボタンに悪戦苦闘してみたり…」
「まぁまぁ、お待ちください。引っ張るととれちゃいます」

若い女性店員三人にかしずかれるようにして、打ち止めは慣れないドレスに袖を通していた。

「よくお似合いですよ。でもせっかく着て頂いたのに、雨模様で残念ですね」
「空までお二人に嫉妬されたんですわ」
「本当に…。ほら、青にして良かったと思いますでしょう?御坂様はお若くて可愛いから、派手な色が映えますこと」
「あはは…」

採寸の時もこの三人に担当してもらった。そのためか、とても気安い。だがそれは自分に好感を抱いてくれていることが見てとれて、気分が良いものだった。

「さぁできました。鏡の前にどうぞ」

大きな全身鏡の前に移動し、見違えた姿を映す。

「わぁ……、ってミサカはミサカは言葉も出ない…。わぁ…」

青と紫を基調としたシルクのドレス。ところどころが白いレース生地でアクセントされている。裾は膝までで、歩くとスベスベの裏地が太ももを擦って気持ちいい。

「まぁまぁ本当に、本当に…っ」
「これで一方通行様もメロメロでございますね」
「………」
「あらかわいい、まぁかわいい。御坂様ったらお顔が赤いですよ。ドレスが青いのですぐわかりますよ」

はやし立てられて、さらに言葉が出ない打ち止め。今までの、どの自分よりもゴージャスで大人っぽく見える。この姿で、もうすぐ一方通行の前に立つのかと思うと、緩みかけていた緊張がぶり返してきた。

「でも、ちょっと楽しみかも。あの人とのデートが、いつもと違うものになりそうな予感」
「やっぱりこれからデートなんですね!?」
「素敵!」
「これはやるしかありませんわ」

「やる、って何を」と聞いても答えてもらえず、テンションの上がった店員は紅潮した顔で打ち止めを椅子へ座らせ、何やら慌ただしく動き出した。

820 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/15(水) 21:11:42.13 ID:hHAsBREZ0

「遅ェな…」
「えぇ…、ちょっと様子を見て参ります」

とっくにダークブラウンのスーツに着替えて、打ち止めを待つこと十分以上。一方通行はソファに座って一人ごちる。急かさせたつもりはなかったが、そばにいた女性店員が、打ち止めがいるであろう奥の部屋へと様子を見に行ってくれた。

一分後、急ぎ足で戻って来た店員は、

「一方通行様っ、もう少々お待ちくださいませっ。今良いところでございます」
「あァ?良いところって、オイ」

高級ブランド店で、この接客はどうなのだろうか。店員はろくに返事もせず背中を見せて離れてしまった。

「……申し訳ありません。また当店の従業員の悪いクセが出てしまったようでございます」
「悪いクセェ?」
「はぁ、若い女性がお客様の時には特に…」

いつの間にか横に立っていた店長。(イタリアのブランド店だが)英国紳士のイメージを絵に描いたような口髭を震わせて溜息をつく。

「私も幾度か注意したのですが、いやはや、情けないことにどうにも…。しかし、お連れ様の反応がすこぶる良いものですから、もう好きにさせることにしたのです」
「よく意味が分からねェンだが」
「先程の者が告げたとおりでございます。もうしばしお待ちを…」

うやうやしくおじぎをした店長も席をはずし、今度こそ一方通行は一人になった。テーブルの上で、冷めかけたコーヒーの湯気が揺れていた。

821 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/15(水) 21:15:06.75 ID:hHAsBREZ0

「はぅ、ちょっと待っていきなりそれは、ってミサカはミサカはご無体な〜」
「はいはい、口も目も閉じておいてくださらないと痛いですよ〜」

生クリームのようなものを顔に塗りたくられて、柔らかなタオルでゴシゴシ拭かれる。続いてお湯で、続いて…おそらく化粧水と乳液だろうか?あと良い香りの液体も二種類ほど。店員さんの指が、右から左から背後から、打ち止めの顔の上で踊っている。

やっと分かった。メイクされているのだ。

(この目の輝き…。まるでムギノのよう、ってミサカはミサカは爛々アイな店員さん達に師匠を思い出してみたり)

自分では使ったことも、所有したこともない道具でもって弄くり回されている。

「だめよ。アイシャドウはオレンジで若さを強調するのっ」
「分かってないわね。今日は雨で、もうすぐ夜なのよ。青でセクシーにキメるのっ」
「ライトブラウンで大人っぽさと、それに思い切れない少女のあどけなさを演出するのもありだと思うの」
「それよ!!」

口を挟む隙もない。それに口を開けようとすると、「動いちゃダメです」と注意されるのだ。


「御坂様、ご用意はいかがでございましょうか。一方通行様がお待ちで」

途中で、一方通行の独り言を聞いた店員がやってきた。中で繰り広げられている騒動に、「あぁ」と頷くと、自分も参加すべく用意に取りかかる。

「運が良うございます。あの者は当店で一番髪のセットが得意なんですのよ」
「きっと今に道具のひと揃いを持って、わたくしどもに加わりますわ」
「はぁ…、ってミサカはミサカはあの人が待ちぼうけしてるのではと心配してみる」
「あぁん、喋っちゃチークが…」

(どうすりゃええねん、ってミサカはミサカは心の中でツッコんでみる。ごめんねあなた)
822 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/15(水) 21:18:00.02 ID:hHAsBREZ0

やいのやいので、二十分後。

「ふぃー、…出来た。最高傑作でございます…」

ドライヤーを止めて、途中参加の店員が仰々しく額を拭った。

「あらぁ素敵だわ」
「まぁ…、近年稀にみる素晴らしい出来です」
「さぁ、最後の仕上げにルージュを…」

店員の一人が、ピンクの口紅に筆を滑らせるのを見て、半ば茫然としていた打ち止めが我を取り戻した。

「あ、待って待って。口紅はミサカが持ってるのを塗りたいの!ってミサカはミサカはポーチに手を伸ばしてみる」

この半刻足らずで、彼女達はすっかり仲良くなってしまったようだ。「シャネルですのに…」と残念がられたが、彼からクリスマスプレゼントにもらった特別製だと教えると、コロっと態度を改める。
むしろ、新技術の落ちない口紅について、どこのブランドか、価格はいくらかと、益々盛り上がりを見せた。

カツカツと、彼女達の履くヒールが、はしゃぐ足に合わせて床を鳴らした。ここは絨毯が敷かれていないので、よく響く。
自分も早く、こんな風に自由にハイヒールを履きこなしたいと思う打ち止めであった。

(ガールズトークに垣根は無いのね、ってミサカはミサカは友達増えたかな?と嬉しくなってみたり)
823 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/15(水) 21:20:02.93 ID:hHAsBREZ0

「あなた、お待たせ」
「……おォ、すっげェ待ったぞ。コーヒー二杯も飲ンじまったじゃねェか」
「えへへ、ごめんね。でもおかげでご飯に丁度いい時間になったよ、ってミサカはミサカは怒りを逸らしてみる」
「……えらいめかし込ンできたなァ。誰だオマエは」
「あなたのかわいいミサカだよー」

一瞬だが、一方通行が大きく目を剥いて肩を震わせたのはしっかり確認できた。待たせてしまった甲斐があったというものだ。

入店した時とはまったく違う、砕け過ぎた女性店員達の笑顔。それと、顔を寄せ合って囁き合う男性店員。うんうん、と髭を撫でて目配せを送ってくる店長。

そして大変身を遂げた打ち止め。ドレスは良く似合っている。
髪はフワフワくるくるにカールされ、いつもは控えめで実感できないが、本格的メイクがバラ色の頬を際立たせていた。

何もかもが、くすぐったい。一方通行はそっけない態度で「行くぞ」と一言。勝手に腕を絡めてくる少女に見せかけだけの舌打ちをして、店員に支えられたドアをくぐった。

雨は先程と変わらない強さを保っていた。駐車場には、ありがたいことに屋根がある。そして、これから向かうレストランも、もちろん駐車場には屋根がある。というか、地下だ。

「雨には濡れねェが、飯食う時に汚すかもなァ?」
「むむ、そうやってミサカにプレッシャーをかける気だな?ってミサカはミサカはその手にはのらないと粋がってみたり」
824 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/15(水) 21:24:58.27 ID:hHAsBREZ0
とりあえずここまで。

車はドイツ!スーツはイタリア!その名は… 学園都市第一位!!  ふんムカつく。だいたい彼女が打ち止めだし。

825 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/02/15(水) 21:31:22.19 ID:muUPsNrHo
>>1乙ぱい
店員さんおもろいなw

一方通行爆発しろ!!
826 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/15(水) 21:44:21.77 ID:gN/JMRrGo
乙。 ブラさんの書く店員’(と言うかモブ全般)がいちいち面白い良い人すぎて困る。 


バンバンバンバンバレンタインが終わったから当分イベントは無いぜ……ふぅ。
827 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(徳島県) [sage]:2012/02/15(水) 22:09:41.18 ID:Joe8QYLJ0
ホワイトデーがあるじゃん
828 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/15(水) 22:28:06.43 ID:ZmgRyKIAO
垣根「今誰か呼んだ?」
829 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/16(木) 22:22:51.62 ID:yVEqVMp30
>>826の”ブラさん”が犬のことかと一瞬勘違いしてしまった。
>>1が犬に自己投影しているのかと一瞬思ってしまった。
犬(>>1)視点でいちゃいちゃ光景を……なんでもないよ、黙る

乙です
830 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/17(金) 03:46:29.10 ID:Cw/36eODO
>>1乙ぱい
て、天才だなんて…別に嬉しくなんかないんだからねっ///

買ったばかりのドレスで食事…食べるのは料理だけじゃないんだろうなぁ…


やっぱ一方さん爆発しろ
831 :ブラジャーの人 [sage]:2012/02/17(金) 22:38:49.84 ID:NTl5oDlf0
>>825 >>826 ぶん殴りたくなるような外道も書ければ、もっと違う話もご覧頂けるのに…。 楽しんでもらえて嬉しいけどね! 

バンアレン帯ってなんだっけ。

>>827 そのうち、もらえなかった男子が勝手にお返しをする「ブルーデー」とかできるよ。

>>828 呼んでないよ。君の出番は当分… いや、永遠にないかも?

>>829 えぇ。偶然にもややこしくなってしまい、すみません。
垣根についても、「垣根」という言葉の使用を躊躇したいような思いはあります、垣根のせいで。

>>830 そのとおり。バレバレですよねww


続き投下します。
832 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2012/02/17(金) 22:42:53.93 ID:RlPIPI0Bo
お隣の国では14日は毎月なにかしら○○デーやってるらしいよ
833 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/17(金) 22:45:50.01 ID:NTl5oDlf0

このビルに来るのは何度目だろうか。顔なじみになったレストランの給仕に会釈し、いつもの席に腰を降ろす。
今日もコース料理なので、メニューを見る必要は無い。そして、一方通行があらかじめ「飲みものは水で」と指定していたので、本当に何も選ぶことはない。

「そんなに警戒しなくても、もう間違えてお酒なんて飲まないよ、ってミサカはミサカはジュース飲みたかったとブーたれてみる」
「甘ェジュースなンざ、料理に合わないだろォが」
「じゃあデザートと一緒ならいい?」
「好きにしろ」

料理を運んでくる者、皿を下げる者。通りすがりに、チラと二人を見る者。いつもより華やかで艶やかで、一味違った打ち止めに目を見張っているのだ。

一方通行は、それを誇らしいような、苦々しいような気持ちで堪えていた(大げさ)

「そんなにムスっとしなくても、ってミサカはミサカはあなたの眉間の皺を指摘してみる。あなたこそ、すれ違うレディー達の視線を集めてたこと、分かってるの?」
「………」
「ほらほら、今夜はビューティーなミサカと美味しいご飯だけ見て楽しもうよ、ってミサカはミサカは誘惑のウィンクばっちーん」
「アホか」


(夜景も綺麗なんですよー)

グラスに水を足しに来た給仕が、お店自慢の大きなガラス窓に視線を送った。

834 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/17(金) 22:50:45.26 ID:NTl5oDlf0

「ねぇねぇどうよ、ミサカのフォークとナイフ捌きは。もう服にこぼす心配なんて皆無だね!」
「まァまァだな」
「上から目線でカンジ悪ーい。でもあなたのお皿の方が食べた跡がキレイなのは事実なので、不満は言えないの」

「聞こえてンぞ」というツッコミを入れるのは、日に一回ぐらいにしてほしい。

浜面に「式には来てね。御祝儀もお願いね」と言われている。
披露宴をやるのか不明なのだが(不明なら聞けばいいのに)もしやるのなら、料理が振舞われるはずだ。

一方通行もだが、打ち止めはテーブルマナーというものをしっかり勉強したことがない。今日は文章や映像で見て覚えた内容を、もしもの時、実際に使えるか試しに来たのだ。

(ハマヅラの結婚式にかこつけて、ただオシャレなデートがしたいだけだったりして、ってミサカはミサカはタキツボに申し訳なくなってみたり)
(マナーは覚えといて損はないからな。いつ必要になるか分かンねェし)


「ねぇ、あなたのスーツ……」
「ン?」
「かっこいいよ、ってミサカはミサカは…、予想以上の大ホームランにクルクルヘアーを巻き巻きして照れ臭さをまぎらわしてみる」
「…フ、…食事の最中に、あンま髪弄ンなよ」

カールされた髪を、左手の人差し指に巻き付けていた打ち止めは、ぱ、っと手を離す。

「マナー違反なのは、このミサカを褒めないあなたの方だと思う、ってミサカはミサカは素直な感想を求めてみたり」

「………」

「求めてみたり」

「ストライクだな」
「よっしゃ」


この二人、たとえ披露宴があろうと無かろうと、大して関係ないのである。
835 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/17(金) 22:54:51.66 ID:NTl5oDlf0

幸せそうに、バニラアイスを頬張る打ち止め。
彼女がデザートを食べている間、一方通行はコーヒーを飲むことが多い。しかし、今日はこのビルに来る前に二杯も飲んだので止めておく。

手持無沙汰な様子の青年に、少女がスプーンを差し出した。西洋式テーブルマナーに限らず、「あーん」はお行儀が悪い。

「…ア、」
「ふふ」

でもいいじゃないか。この席は周りから見えにくいし、やっぱりこれはデートなのだから。マナーは二の次だ。


腹も膨れたし、会計も済んだ。さて帰ろうと、ビルの中の通路をエレベーターに向かって歩く。
駐車場は地下なので、下に降りるボタンを押さなければならないが、そのボタンの前で、一方通行の指が逡巡する。

「ぽちっとな、ってミサカはミサカは先手を打ってみる」
「…」

隣から伸びた打ち止めの手が、代わりに押してしまった。行き先は上だ。

このビルの最上階から下の三フロアは、ホテルになっている。二人が恋人同士になってから、なりゆきとはいえ初めて泊まったホテル。

色々と、思い出深いホテルだった……

836 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/17(金) 23:01:24.40 ID:NTl5oDlf0

今までに幾度か利用したが、スイートルームは初めてだった。今日は始まりから終わりまで、とっても豪華である。

「すごーい、広―い!ベッドも大きーい!ってミサカはミサカは大はしゃぎ!」

一方通行は上着を脱ぎ、備え付けのクローゼットに仕舞う。
大きな窓からは、美しい夜景が見えたが、さっさとブラインドを降ろしてしまった。今は夜景など、どうでもいい。

「お風呂もすごいよ!バタ足できそうだよ!」
「ハイハイ」
「さっそく入ろうかな。ね、背中外して?」

打ち止めは髪を持ち上げて、一方通行に背中を見せる。ファスナーはともかく、一番上のボタンは自分では外しにくいことは分かっている。
ボタンだけで良かったのだが、青年はファスナーまで降ろしてくれた。

「一人で脱げるもん、ってミサカはミサカは無駄と知りつつ一応抗議してみたり」
「…こっち向け」

袖も脱がされて、ドレスはすとん、と床に落ちた。下着とストッキングだけになった打ち止めに正面を向かせる。
風呂に入れば、きっと彼女は化粧を落としてくる。カールした髪もシャンプーしてしまうだろう。
自然なままの打ち止めもイイが、こうして(裸だけど)華麗に装った打ち止めを目に焼き付けておこう。先程少女自身がやっていたように、指に髪を絡ませながら…

(……ン…?)

ふと違和感を感じて、一歩下がって、よりじっくり観察する。

「なにか変?ってミサカはミサカは粗相があったのかと不安になってみる」
「静かに。…気をつけェ」
「ふぇ?あぁ、はいっ。……?」

恋人の真剣な視線を浴びながら、下着姿で直立不動になる打ち止め。一体これはなんのプレイだ、と訝しむ。

そのまま十秒以上が経過し、一方通行は元の位置に戻った。そしてまず、打ち止めの腰を両手で掴む。

「っ、うひ、ひひひ」
「変な声出すなよ…」
「だってくすぐったい」

次に、ブラジャーのアンダーに指を突っ込んでみる。少女は大人しくしていた。

「ンー…」

(何ですかコレは、ってミサカはミサカは喋っちゃいけない雰囲気に気押されてみたり)
(やっぱり、太った、っていうワケじゃねェな…)

肩のストラップを引っ張った後、青年はやっと両手で乳房に触れた。
837 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/17(金) 23:05:07.11 ID:NTl5oDlf0

「どういう作業なのでしょう、ってミサカはミサカはまるでお医者さんの診察のようなあなたの素振りに不審を感じてみたり」
「こら、じっとしてろって」

いつもの触り方じゃない。そっと下から支えるように、ブラジャーのカップを整えながら。

「オマエ、またデカくなったか?」
「…え、胸が!?」
「なンか、収まりきってねェっつーか…」
「えぇー?」

そう言われて、打ち止めは自分でブラジャーを整えた。
一方通行に背を向けて、「よいしょ、よいしょ」と。その後向き直って、ふんぞり返るように胸を張ると…

「あー、確かにちょっと溢れてるかも。というか、なぜあなたが先に気づくの」
「……何で気づかねェンだよ」

「気づかないよこんなのー。だって仮にF着けてもぶかぶかだよ、これぐらいじゃ」
「EとFの間か」

「いやいや、ほとんどEですって。メーカーによっては、ちゃんと収まるんじゃないかな」
「ふゥン…」

「靴でもあるでしょ、そーゆーこと、ってミサカはミサカはサイズというもののテキトーさを主張してみる」
「ま、どォでもいいわ」

(どうでもいいなら、ミサカより先に気づくことなんてあり得ないのでは?ってミサカはミサカはホックを外そうとするあなたを半目で眺めてみたり)

838 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/17(金) 23:07:38.01 ID:NTl5oDlf0

ブラジャーが緩んだままの打ち止めにキスしながら、ゆっくりベッドへと後退させる。

「ん、んーっ」

膝から上はベッドに押し倒されてしまった。焦った打ち止めは、彼の胸板を押し返す。だってまだシャワーを浴びていない。
口が離れ、見上げた恋人の目はすでに妖しく揺れていた。診察するうちに、一人で盛り上がってしまったらしい。

「シャ、ワ、ア!」
「後にしろよ」
「ダメ今日は絶対浴びるの!ってミサカはミサカは断固たる決意を表明してみる」
「後で一緒に入ってやっから」
「それ別にあなたにとって負担じゃないし、ミサカにとって超お得でもないからね!?」

それでも覆いかぶさってくる一方通行の顔に、ほとんど取れかけていたブラジャーで目隠しをして牽制する。花柄のピンクのレースが、一方通行にとても似合わない。

打ち止めは隙をついて腕の間から抜け出すと、バスルームに逃走した。背後のベッドからイライラした声が追いかけてくる。

「十分だぞォ!」
「無理、二十分ー!」

時計を確認し、一方通行は悪態つきながらブラジャーのストラップに指を通して回そうとした。

「……」

上手く回るはずもなく、愛車のキーリングでやり直した。これから二十分は、正直ツライ…

「あなたー」
「! …なンだ」

気でも変わってくれたのか?

「ドレス、ハンガーに掛けといてねー、ってミサカはミサカはおニューの心配をしてみるー」
「……分かったから早く入れよ」

839 :ブラジャーの人 [sage]:2012/02/17(金) 23:14:17.01 ID:NTl5oDlf0
豪華なデートをしようか、の巻


お医者さんごっこですか? (乳専門医)


作者が選ぶ「一方さん爆発しろ」ランキング

第5位 1スレ目、311からの 「黄泉川家の温泉旅行の巻き」

第4位 1スレ目、592からの「一方通行と打ち止めのはじめての巻き」

第3位 >>655からの 「通行止めの同棲初日、一緒にお風呂の巻き」

第2位 >>817(この話) 「豪華なデートをしようか、の巻き」

第1位 >>108からの「通行止め、セクシーランジェリーを買うの巻き」  


打ち止めにFフラグが立ちました。
840 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/17(金) 23:55:47.91 ID:Cw/36eODO
>>1乙ぱい

え、えふ…だと!?
えーえーえーびーしーでーいーえふじー

ベクトル式豊胸マッサージは偉大だなぁ
841 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/02/18(土) 00:00:01.24 ID:BQnwwwjqo
>>1乙ぱい

一方さん爆発しろ
842 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/18(土) 00:06:52.61 ID:vstfj5OAO
Fとか超電磁砲が聞いたら発狂するんじゃね?
843 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/02/18(土) 00:13:22.98 ID:7SwVJIL90
>>1乙ぱい

オリジナルがまだB(時間経ったからCかな?)だというのに、さらに差が付くのか
おねえたまカワイソスw
844 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/02/18(土) 01:20:12.62 ID:qz/GROTAO
今更だけどそんな巨乳な打ち止めが想像できない

ということで参考画像はよ
845 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/18(土) 02:19:31.20 ID:lxj9uJTOo
乙っしたー。 一方さんもげてはぜてくっつけ。 んで幸せになれ。


そろそろ本家御坂も本気出すべきだと思うんだ……(チラッ
846 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/02/18(土) 10:29:01.83 ID:zM4mHUf50
>>843
Bありゃ十分だよなww
847 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/18(土) 11:09:37.70 ID:Xl4Rz3gEo
漫画で出てきた打ち止め成長予想図はバインだったな

そのうち、お姉様も美鈴さんの巨乳遺伝子が本気出すんだよ
848 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/02/18(土) 23:47:04.59 ID:HYWpuiYT0
でもオリジナルさんは成長しない方がオイシイ気もするww
849 :ブラジャーの人 [sage]:2012/02/22(水) 00:56:15.48 ID:Ek3cHGzx0
乙、乙っぱいをありがとうございます。理想のおっぱいは人それぞれですよね。仮に打ち止めが巨乳にならなくても、
一方さんは爆発を望まれるようになるさ。 彼女のおっぱい=理想のおっぱい ですから。


おまたせしました。やはり忙しくて…
850 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/22(水) 00:59:06.44 ID:Ek3cHGzx0

高校に入学して、早二ヶ月。二人と一匹暮らしに慣れてくると、案外自分だけの時間が確保できるものだ。打ち止めは部活に入った。
それは、大学四年生になった一方通行の協力と、愛犬の世話を買って出てくれる妹達のおかげでもあった。
ただ、打ち止め自身としては、ブランカを世話してくれる下位個体が、

「やりたいからやるだけで、別に上位個体や、ましてや一方通行のためではありません。そんなことより、このオヤツをあげてもいいですか」

と言うように、

(ミサカだってあの人のお世話したいもん)

そこで、ゆる〜い雰囲気の文化部をチョイスした。それは手芸部。

『気が向いた時に顔を見せてくれればいいよ〜』とは、部長自らのお言葉である。

さっそく簡単な裁縫技術を教わり、打ち止めは枕カバーを拵えた。学園都市製の、高機能ミシンもあるが、あくまで手縫いにこだわった。だいたい、ミシンを使うような作品は、まだ作れない。

同じ部の先輩には、部屋のカーテン、座布団、服まで手作りする人もいる。見せてもらったが、気まぐれのように参加するだけの自分では、到底あのレベルに達するのは困難と思われた。

(ミサカはミサカのできることを、コツコツ楽しくやればいいや、ってミサカはミサカはハンカチに刺繍をしてみたり。うん、いいカンジ)

そこで、今凝っているのが刺繍である。難しい大きな模様は無理だが、ワンポイントや短い文字を入れてオンリーワンの手作り感を演出していた。
851 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/22(水) 01:01:31.02 ID:Ek3cHGzx0

ある日、一方通行が大学から帰って来た夕方のことだった。講義数が減った今では、打ち止めが彼の帰りを待つパターンは中々希少なのだ。

「あなたおかえりなさーい!ってミサカはミサカはお風呂か食事かミサカか王道の三択でお出迎えしてみたりー!」
「わんわん!」

走って玄関に突撃してきた打ち止めとブランカ。一方通行は愛犬を右手で撫でてやり、無邪気な笑顔の少女には、左手でチョップを食らわせてやった。
杖を壁に立てかけている間、打ち止めは「あれ?ブランカだけなの?」と不審の眼差しをハスキーに向けていたので、まったくの不意打ちとなった。

「あぅ! 急に何するの、ってミサカはミサカは不条理な暴力を非難してみる」
「やかましィ。こりゃ一体どォいうつもりだ」

そう言って青年がポケットから取り出した物は、そこから出てくるにはあまりに自然な、ごく普通のハンカチだった。
キョトンとする打ち止めに、ますます眉間の皺を深くし、一方通行は乱雑に手を振って布地を広げる。

「コレだよ! オマエがやったンだろォが」
「あー、コレね。今日気づいたの?ってミサカはミサカは二週間以上も前に縫った刺繍に憤慨しているあなたを不思議に思ってみる」
「二週間…!?」
「しかもそれと同じ文字を入れたハンカチは、全部で七枚もあるのだ! キミはすべて見つけられることができるかな!?」
「…このアホ」

『Last Order My Love』

ハンカチの隅には、黒い糸でそう小さく刺繍がされていた。
852 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/22(水) 01:03:17.83 ID:Ek3cHGzx0

「ほとんど毎日ラブハンカチを持ち歩いていながら気づかないなんて。あなたちゃんとトイレの後に手洗ってるの?」
「……オマエはどンな目で俺を見てるンだ。…どこにでも乾燥機があって、ハンカチなンざ滅多に使わねェンだよ」

それに刺繍された箇所が、折り方しだいで隠れてしまうので、今日の今日まで気づかなかったというわけだ。
洗濯物を取り込む時も、文字通り彼は取り込むだけで、綺麗に畳んでそれぞれの洋服箪笥やクローゼットの収めるのは打ち止めがやっていた。これも要因のひとつだろう。

「俺は知らずにこンなモンを毎日ポケットに入れてたのか…」
「失礼しちゃう。ミサカの愛を『こんなもん』だなんて、ってミサカはミサカはスーツやシャツにもしてやろうかと目論んでみる」
「もしやったらオマエただじゃ済まねェぞ分かってンのか」
「やーん、どんなコトされちゃうんだろう、ってミサカはミサカは期待と不安であなたの足をうりうりしてみたり!」
「ハァ……」
853 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/22(水) 01:05:11.53 ID:Ek3cHGzx0

呆れた表情で溜息をついたが、打ち止めは本当に楽しく部活動をやっているようで安心する。
一方通行は、打ち止めが「普通」の生活を充実して過ごしてくれることが、とても嬉しい。

(こンくらいどォってことねェ…か?)

しかし許容できるのはここまでだ。

「あのね、あのね、もちろんミサカもラブハンカチ持ってるんだよ。こっちは和風テイストに漢字なの」

打ち止めは二人で座るソファの横に置いてある鞄に手を伸ばし、自分のハンカチを広げて見せた。


『一方通行 命』


律儀な明朝体が、似合わないピンクの糸で刺繍されていた。

なぜか『Last Order My Love』よりも恥ずかしい気がする。

「さっきの王道の三択に、まだ答えてなかったよなァ?」
「ちょ、ちょ、それってもしかして照れ隠し?ってミサカはミサカは狼さんモードなあなたを警戒してみる」

854 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/22(水) 01:08:55.80 ID:Ek3cHGzx0

食事も風呂も済ませ、順番は違えど、三択はすべて終わらせた。寝間着に着がえ、あとは寝るだけだ。
打ち止めは就寝前のひと時を、ブランカと共に過ごしていた。というよりも、眠そうな犬を無理やりつき合わせていた。

「ほらもう一回立って。正確に測れないよ」
「くぅーん」

リビングの絨毯の上は、裁縫道具と布切れが散らかっている。実はソファには同じく寝間着の一方通行もいるが、彼はまるで蚊帳の外である。

「オイ、もう寝むそうだし、続きは明日にしてやれ」

けして、寂しいとか、悔しいからとかじゃない。本当にブランカが迷惑そうにしていたので。

「ぶー、早く作らないと、もうすぐ梅雨になっちゃうのに、ってミサカはミサカはブラちゃんのために頑張ってると言い訳してみる」

ここ最近、打ち止めが鋭意製作中なもの、それは愛犬の雨合羽である。
ペットショップや通販で買ったものは、サイズが合わなかったり、歩いているうちにずれてしまって、大して効果を発揮しなかった。
濡れて泥だらけになった犬を拭くのは大変だし、いちいち<一方通行>でキレイにするのもなぁ…、と思い、何着か買ったが、どれもイマイチだった。

雨でも散歩したがるブランカのため、こうなったら自分で最高の雨合羽を縫ってやろうとしている。特殊な耐水性の布を、試行錯誤してブランカ専用合羽に仕立て上げているのだ。
買ってしまった既製品は、糸を解いてお手本にされ、本懐を遂げた。

「いつ出来るンだよ、その調子じゃ」
「う…、それでも、一日でも早く完成すればブラちゃんが濡れる日が減るし」
「今年の梅雨は、平年より遅がけだそォだ。あンまり焦らなくても大丈夫かもな」

大嘘だ。梅雨の都合なんて本当は気にしてないので知らない。

「ほんと?良かったぁ。じゃあタキツボ達の結婚式も大丈夫かもね、ってミサカはミサカは晴れのジューンブライドを期待してみる」
「さァな…」

ぱぁっ、と輝く打ち止めの笑顔に、少しだけ良心が痛む。明日は梅雨の到来予想を調べてみようか。

今月、浜面と滝壺の結婚式がある。
855 :ブラジャーの人 [sage]:2012/02/22(水) 01:12:55.84 ID:Ek3cHGzx0
とりあえずここまで。

思い起こせば、浜面の結婚は1スレめ初期から囁かれていた都市伝説でしたが、どうも真実だったようです。


もう四月までは、更新はかなり不安定になるかもしれません。気長にお願いします。
856 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/02/22(水) 02:01:34.83 ID:b9wWYFNJo

浜面の結婚式か…

爆発しろ!!
857 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/22(水) 02:50:21.83 ID:tkcruHWVo
乙。 爆発はしなくていい、もげろ! もげてとれろ! んで最後にくっついてしあわせになれとんちくしょうっ!
858 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/23(木) 19:39:14.13 ID:ndIbTDmAO
本気出せば天候操作位なら余裕だよな一方通行
859 :ブラジャーの人 [sage]:2012/02/24(金) 23:03:00.07 ID:BkRFYL8S0
>>858 雨不足や日照不足も、これで解決だ!

気長な皆様、お待たせしました続きです。
860 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/24(金) 23:08:00.05 ID:BkRFYL8S0

晴天、とまではいかないが、雲の合間にはなんとか空が見える。
浜面仕上と滝壺理后の結婚式が取り行われる教会。そこに一方通行と打ち止めは来ていた。

一方通行はさして広くもない待ち合いの部屋の隅に座って、慣れない浮かれた空間をやり過ごしていた。打ち止めは「ちょっとタキツボの所に行って来る」と、席を外している。

だんだんと増えてくる招待客の中に知った顔を発見し、その中には、銃声や怒号とセットで記憶されているような者もいたので、あまり同じ部屋にいるのは気分がよろしくない。

なので一方通行も、今日の主役の控室に行くことにした。



「よぉ、来ないかと思ってたぜ」
「しつこく御祝儀の催促しやがったのは誰だよ。今から帰ってもいいンだぞコッチは」
「まぁまぁ、減らず口叩いてっけど大目にみてやれよ。緊張してて言動が怪しいんだ」

ものすごく珍しい恰好をした浜面と、上条当麻がテーブルに向かい合って座っていた。主役は不自然に体と表情を強張らせている。上条の言うとおり、さすがに緊張しているのだろう。
一方通行は上条の横に一席空けて座り、伏せられていたグラスに水差しを傾ける。

「………」
「何だよ、俺の顔に何かついてるか?見惚れてんのか?」

喉を湿らせながら、白いタキシードと整えられたヘアスタイルの浜面を眺める。浜面は一方通行の視線を、花が活けられた花瓶で遮った。

「オマエの正装が珍しすぎてなァ…。花を背負ってンのも違和感アリすぎだろ」
「十分くらいで慣れるぞ。スタイリストさんて偉大だよな」

上条のフォローは、全然フォローになっていない。だが、いつものやりとりが浜面の緊張を解したのか、やっと表情筋が動き始めた。

「やっかましいわ。普段を見慣れ過ぎてっからそう思うだけで、初対面のベイビー達が俺を見てみろ。絶対イイネつけてもらえる!花だって似合ってるハズ!」
「でも今日ここに来てるのは、普段のお前をよく知ってるヤツばっかりじゃないのか」
「…そういえばそうだった……」

861 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/24(金) 23:12:29.96 ID:BkRFYL8S0

「あー、また緊張してきたなぁ。もう早く終わんないかなぁ。でも始まるとなるとドキドキ☆すんなぁ」
「うるせェなァ…」

椅子から立って、そわそわと歩き出す浜面。結婚式に臨む男というのは、皆こんな風なのだろうか。彼以外に新郎に会ったことが無い一方通行には判断がつかない。
ただ、上条は「あ、久しぶりに浜面が動いてる」と言っていたので、精神面では、これでも落ち着きを取り戻しはじめたらしい。
さっきまでは、古いねじ巻き式の人形程度にしか動いてなかったのだそうだ。

「滝壺はどうしてるんだろ…」

浜面が窓の外を眺める。視線は建物の外壁をなぞり、滝壺理后の控室辺りを見ているのだろう。

「ン? オマエらまだ籍は入れてねェのか?」
「いや、今朝一番に婚姻届出して受理されたけど」
「じゃァもう『浜面理后だろ』
「あ、…いや分かってるけど、長年そう呼び続けてるもんでつい」

彼らはお互いのことを名字で呼び合っていたので、急に変えようと思っても、そう上手くはいかない。
特に、浜面が妻のことを「滝壺」と呼ぶのはおかしい。

「その点、一方通行も上条もいいよな。昔っから名前呼びだもんなー」

「………」
「………」

「二人とも静かになっちゃってどうした」

「いや…」
「別にィ…」

『そうだな、俺は結婚しても、コイツのように呼び方で頭を悩ます必要がなくてラッキーだぜ』

ごく普通にそう考えてしまい、その未来予想に気を取られてしまった一方通行と上条当麻なのであった。

862 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/24(金) 23:18:29.33 ID:BkRFYL8S0

「滝壺さん、考え直すなら今からでも超遅くありませんよ」
「大丈夫だよ絹旗。考えは去年から決まってたから」

「披露宴が無いなんて、浜面のやつ金もないくせに結婚急ぎ過ぎなんじゃねぇの、まったく」
「式の後は、レストランで披露宴の替わりにパーティーがあるよ。シーフードメインだから、麦野の好きな鮭もたくさんあるはず」
「でかしたわ」

「滝壺キレイ…にゃあ」
「本当にキレイだよ、ってミサカはミサカはウェディングドレス姿のタキツボにうっとりしてみる」
「ありがとう、フレメア、ラストオーダー。二人こそ今日は可愛いね」

ここは、新婦の控室。ウェディングドレスを纏った旧姓滝壺の周りには、いつものアイテムの面々に加え、打ち止めとフレメアが。
ちなみに、新婦のドレスは薄桃色である。

「みんな、大事なお知らせがある。私とはま、しあげは今朝、婚姻届を出したから、私はもう浜面理后」
「うぅ、超違和感です。滝壺さんのことを、これからなんて呼べばいいんでしょう」

絹旗最愛は大仰に腕を組んで首を傾げた。彼女も浜面と同様、旧姓滝壺の呼び方に苦悩する一人である。

「そっか。名字が変わったんだね、ってミサカはミサカは練習してみたり。リコウ、リコウ、リ・コ・ウ」
「理后、理后、理后…。浜面理后…」
「うんうん、その調子、ってミサカはミサカはフレメアと一緒に励んでみる」

「別に、私達アイテムで集まってるときは<滝壺>でいいんじゃない?結婚しても職場では旧姓を使用して、業務の円滑を優先することは珍しくない」

麦野沈利の提案に、絹旗が真っ先に乗る。よほど彼女を「浜面理后」と呼称するのに抵抗があるらしい。

「麦野の意見に超賛成です! 私達アイテムは永遠に不滅なんです!」
「なるほど、職場では旧姓…。キャリアウーマンみたいでかっこいい」
「お、これなら滝壺さんも超納得ですか? じゃあ超決定ですね」

新郎、浜面仕上が悩んでいる事案は、新婦の側では簡単に解決した。

(ミサカはアイテムじゃないから、一人で練習続けてみたり。リコウ、リコウ、リコウ…。ミサカはあの人と結婚しても、この問題が起きなくて楽だー)
863 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/24(金) 23:23:29.95 ID:BkRFYL8S0

「打ち止め、今日の化粧は自分でやったの?」
「うん、そうだよ。どうですか師匠」

打ち止めの化粧テクニックは、麦野沈利直伝である。弟子の成長をたしかめるように、麦野は打ち止めの姿をじっくり観察した。
時に、顎に手を掛けたり、髪をかきあげたり。

「ふーん。なかなか良くできてるじゃない。その髪も自分で巻いた?」
「ううん。残念ながらこれは美容院でやってもらった、ってミサカはミサカはまだ髪のセットまではマスターしてないと申告してみる」

「それでも立派。大体私なんて、いつも麦野にまかせっぱなし」
「フレメアは何もしなくてもいいんじゃないかな、ってミサカはミサカはすべすべお肌や天然フワフワヘアーのフレメアに嫉妬の眼差し」
「にゃあ! そのおっぱいにルックスのこと褒められても嬉しくない!」

「超うるさいです。何度目ですか、このやり取り」

微笑ましい(?)少女達のやりとりに、滝壺は頬をほころばせた。まるで、秋にキャンプした時のインデックスと打ち止めの口論をもう一度見ているようだ。
インデックスのことを思い出していた丁度その時、件のシスターがノックと共に控室のドアを開けた。

864 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/24(金) 23:26:03.97 ID:BkRFYL8S0

「もうそろそろ時間なんだよ。招待客のみなさんは先に教会に入って待っててほしいかも」
「あーあ、とうとうこの瞬間が超来てしまいました。では滝壺さん、私達は超先に行ってますね」

ぞろぞろと出ていく友人達を、ドアを支えて送り出すインデックス。打ち止めに「しっかりね」と言われ、手を振って応えた。
今日の式は、彼女が司祭役を務めるのだ。
女性が司祭、というのも変だが、彼女は浜面と滝壺のお願いを快く受け入れた。

「今日はよろしくね、インデックス」
「こちらこそ。りこうの結婚式のお手伝いができて光栄なんだよ」
「あ、インデックスは理后、って呼んでくれたね。みんな困ってたのに」
「さっき、はまづらの所にも行ってきたんだけど、あっちでその話してたから」
「なるほど。やっぱりはま、しあげも困ってた?」
「そうみたい。でも何故か、とうまとあくせられーたも様子が変だったんだよ」
「ふぅん?……二人とも結婚したくなったのかもよ?」

赤い顔で「まさか」と、冗談を笑い飛ばしたインデックスだったが、実は滝壺の予想は、あながち間違ったものではなかったり。
865 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/24(金) 23:28:25.91 ID:BkRFYL8S0

一方通行は、目立たない後ろの方に座りたかったのだが、打ち止めは強引に彼の手を引っ張って、かなり前列の特等席に腰を降ろす羽目になった。
さらに、隣にはノコノコとついてきた上条がいる。教会の椅子は一人ずつにスペースが区切られておらず、やけに隣が近く感じられた。

「オイ、どォしてオマエが横にいるンだよ」
「大役を果たすインデックスが心配で…。アイツ、上手くできるかなぁ」
「図々しく隣に座った意味を訊いてンだがな、俺は。それに完全記憶能力を持ったシスターの心配は必要ないンじゃねェのか」
「つまづいて転ばないか、手を滑らせて聖書を浜面の足に落としゃしないか…、そういう心配なのです」
「……」

確かに。一方通行を挟んで会話を聞いていた打ち止めも、インデックスには失礼だが、しきりに頷いていた。


ギィ、と背後の扉が開き、ざわついていた場内が静かになった。衣擦れの音とともに、修道服のシスターが中央の通路を進む。
上条は口を一文字に結び、「頑張れよ」と、目で語りかける。両の手を、胸の前で握りしめて。インデックスは呆れたように苦笑を返した。

(カミジョウ、まるで運動会のお父さんみたい、ってミサカはミサカは過保護だと判断してみたり)

祭壇に辿りつたインデックスが、堂々とした口調で告げる。

「これより、浜面仕上と滝壺理后の結婚式を取り行います。それでは、新郎、新婦の入場です。みなさまはお立ちになって、二人をお出迎えください」

パイプオルガンの音楽が鳴らされ、一同は立って後ろを向く。狭い場所で、足の悪い一方通行が苦労しやしないかと、打ち止めが手を差し伸べた。

「大丈ォ夫だ」
「いつでも肩貸すからね」

小声で会話を交わしていたが、打ち止めの注意はすぐに逸れた。浜面達が腕を組んでしずしずと入場してきたからだ。
866 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/24(金) 23:30:49.21 ID:BkRFYL8S0

(わぁ〜、タキツボやっぱり綺麗!ってミサカはミサカはさっきよりも輝いている、えっと、リコウに釘付けになってみる)

ベールの隙間から見える穏やかな表情の新婦に比べ、新郎はどこか落ち着かない雰囲気だった。まったく本意ではないが、一方通行の心も落ち着かない。

(やっぱ、結婚とか結婚式ってのはそォいうモンなのか。あの浜面がガチガチになってやがる)

男であるため、もちろん新郎の方に感情移入しやすいのは当然である。加えて、つい最近打ち止めと結婚の約束をしたことも、彼の心理に影響を与えていた。

(ハァ…、くだらねェ。打ち止めはまだ高一だぞ。ずっと先の事だろォがよ)

浜面達が祭壇の前に辿り着くと、今度は讃美歌が流れ始めた。
歌声も録音されているもので、打ち止めはバッグから取り出した紙を見ながら一緒に歌っていた。受付の時に、係の人間から手渡されていたものだ。一方通行は受け取らなかったが、冊子状のそれには、歌詞も書いてある。

『かわらぬ愛もて 導きたもう…』

大きな声で歌っているわけではないが、一方通行の耳には、打ち止めの声が心地よく染みる。
彼にしては珍しく、そして似合わないことに、讃美歌が終わってしまうのを惜しく思うほどだった。
867 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/24(金) 23:33:13.59 ID:BkRFYL8S0

あんなに背筋を伸ばした浜面を見るのは初めてだ。インデックスが捧げる祈りの間、身じろぎもせずに正面を向いていた。

「それでは、誓いの言葉を」

インデックスがそう告げて、浜面の肩が揺れる。夫婦になる二人は向かい合い、新郎が花嫁のベールをめくり上げた。

「汝ら、病めるときも健やかなるときも、富めるときも貧しきときも、この人を愛し、敬い、助け合い、なぐさめ合い、死がふたりを分かつまで、共に生きることを誓いますか」

「っ…、誓います」
「誓います」

姿勢もそうであるが、浜面の声も、まるで彼のものではないようだ。
良く言えば男らしい、悪く言えば、彼らしくない。

(うっわァ…、結婚式ってこンなこっ恥ずかしいのかよ。まるで見世物じゃねェか)

馴染めない、非常に心が落ち着かない。一方通行は眉をしかめる。
いつか、自分達もこんなことをしなければならないのだろうか…? 愕然とする一方通行。

(いや待て、別に式を上げなきゃ結婚できないワケじゃねェ。入籍だけして…)

青年は、こっそり隣の少女を盗み見た。

「ほぉ…ぅ、タキツボいいなぁ…」

(………)

868 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/24(金) 23:35:55.57 ID:BkRFYL8S0

「それでは、指輪の交換と、誓いのキスを」

もう腹が据わったのか、浜面の挙動に不自然なところはない。お互いの左手薬指に、金のリングが光る。
顔を上向けた花嫁に、喉を鳴らした花婿が口づけた。


「ここに、二人が夫婦になったことを宣言します」


(無理無理無理無理、絶っっ対ェ無理ィ。なンだこれ)

頭の中で、ぶんぶん首を振った一方通行。そのとき打ち止めは…

「はぁぁぁぁ〜、…しゅてき、ってミサカはミサカは…」

キラキラキラぱぁぁぁ、という、光と花の特殊効果まで見えるようだ。

(……こりゃ決定だな)

一方通行も覚悟を決めた。願わくば、この覚悟が変わらず持続しますように。



その後、参列者は教会の外で主役たちを待ち構える。これから花嫁から投げられるブーケを狙い、鼻息荒い女性達。打ち止めもその一人だったが、

「やめとけ。ここにいる女達はどいつもこいつも普通じゃねェ。巻き込まれたら事だぜ」
「うぅ、でもブーケ…」
「…オマエはブーケ無くても結婚は約束されてンだから、他に譲ってやれよ」

そう恋人に説得されて、ころりと態度を改めた。

果たして一方通行の推察は正しく、約三分間の攻防の末、哀れブーケは<原子崩し>の一撃を受けて、塵も残さず消え去った。

869 :ブラジャーの人 [sage]:2012/02/24(金) 23:40:30.04 ID:BkRFYL8S0
浜面と滝壺の結婚式の巻 完

女性が司祭って、聞いたことも見たこともない。たぶんダメだよね。まぁ気にしないでください。

今回の話を書いていて嬉しかったことは、ワードが「しずり」を「沈利」と一発変換してくれたことです。

870 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/02/24(金) 23:54:46.91 ID:0SO19Vido
乙!
浜面今回だけは祝福してやるよ
おめでとう

次は上条とインデックスが先かそれとも一方通行と打ち止めが先か
871 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/24(金) 23:56:59.32 ID:utXULYTDO
>>1乙ぱい
イイネ!!(ただし浜面は爆発しろ)

コラ麦のん、何やってんすかw婚期逃すぞ…ってもう逃してしまった後だったっけ^^;
872 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/25(土) 00:16:02.81 ID:Y/CPKy4IO


むぎのんw取れなきゃ意味ねーだろww
873 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/25(土) 00:53:22.81 ID:GpAJHDTAO
だれだよこんなおめでたい席に愉快なオブジェ並べたの

とりあえず今回爆発は可哀想だからどん作る機械でライスシャワー浜面に集中放火するわ
874 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/25(土) 01:53:55.04 ID:3LsphzKOo
乙。

もげなくていいから幸せに老後を過ごして奥さんもしこたま愛して愛する人々に囲まれて何の悔いもなく安らかに召されろ浜面。

あとむぎのんェ…消しさってどうすんすかwwwwww
875 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/25(土) 10:40:26.83 ID:MqMZsYLDO
しずりん……
876 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2012/02/26(日) 00:56:24.12 ID:Iw6HJR3oo
乙ぱい

>>871
志村ー、うしろー!うしろー!
877 :ブラジャーの人 [sage]:2012/02/27(月) 01:03:10.15 ID:I0XYtFGy0
>>870 さて、どっちでしょうね。 さてね…

>>871 そんなことない! まだまだ美味しいお年頃。

>>873 それ楽しそう。

>>874 そして生まれ変わって、もう一度… という『ぼくの地球を守って』状態に。

>>876 そうです。私がブラジャーの人です。 …古ぅ。


投下します。

878 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/27(月) 01:06:14.43 ID:I0XYtFGy0

よほど、浜面仕上と滝壺理后の結婚式に感化されたのだろう。打ち止めは式場で渡された小冊子や、いつの間にか持ち帰っていたパンフレットを頻繁に眺めていた。

無意識に讃美歌まで口ずさんだり、パソコン画面でウェディングドレスのデザインを検索したりもしていた。

自分との結婚を夢想して、楽しみに心躍らせているのかと思うと、一方通行は、

(あー…、なンなンですかこれはァ。……すっげェ、照れるンですけどォ)

打ち止めが望むことなら、何でもしてやりたい。しかし、彼女はまだ高校一年生だ。せめて卒業するまでは、我慢してもらわなければ。

彼女と結婚するための心の準備や覚悟が、一方通行に無いわけじゃない。
ここ日本という国において、学徒であるうちに嫁ぐということが、世間体や社会的評価に良くない影響を与えることは、お互い分かっていた。
それに、大学にだって行かせてやりたいと思っていた。好きなことを学ぶのもいい。
気の合う友人を増やしてもいい。学生ならではの日常を、笑って過ごしていてほしい。

(大体よォ、一緒に住ンで、寝て、抱いて、食べて。籍入れてねェけど事実婚だろ、俺とコイツは)

それでも、多くの愛し合う恋人達が経る道を、自分達も辿りたい。声高に宣言したい。生涯の伴侶を得た幸せを、世界に示したいのだろう。

(ま、浜面の結婚式の直後で舞い上がってンだよな。そのうち下火になる…)

879 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/27(月) 01:07:10.72 ID:I0XYtFGy0

一方通行が予想したように、打ち止めが『結婚』に関する情報に心を割く時間は、だんだん減っていった。
しかし、一度灯った炎が完全に消えることはなく、二人の未来を象る線は、より太く確かなものとなって互いを結ぶ。

見つめ合う目と目で、通じ合った。


ミサカはいつか、あなたと。


もうしばらく待ってろよな。そォしたらオマエと…

880 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/27(月) 01:09:21.68 ID:I0XYtFGy0

季節は巡る。

そんな気持ちで暮らすこと、さらに一年。


一方通行は大学卒業後、近所の小さなビルを買い、その一室に事務所を置いて仕事を始めた。
看板を揚げているわけじゃない。登記簿にも記載していない。まったくの個人で、彼がしている仕事とは…

ずばり金儲けである。

(一体何をしてるのか知らないけど、二人で過ごせる時間が無くなってしまう事態が避けられてミサカは満足、ってミサカはミサカは恵まれた身の上を誇ってみる)

ごくたまに、数日か一週間も家を空けることがあるが、そんな時は決まって下位個体や番外個体が家を訪ねてきたり、芳川桔梗や黄泉川愛穂が実家のような上階の部屋へ、「泊まりにいらっしゃい」と誘ってくれた。
もっとも、愛犬を一匹にさせるのが可哀そうなので、夕食や風呂の後は自宅へ戻ることがほとんどだ。
こっそりとブランカに非常階段を登らせて連れてしまったことも、数回あったが。

(内緒にしてたのに、なぜかあの人にはすぐバレた、ってミサカはミサカは監視カメラか監視ミサカでもいるのではと疑ってみたり)

大して怒られたりはしなかった。むしろ、自分が家を留守にすることを、「済まないことをした」と反省したらしく、
以降は頻繁に電話を鳴らして、連絡を寄越すようになった。海外に出向いている時は、時差に気を使ってまで…

(留守を守る奥さんと、出張中の旦那様みたいで楽しいけどね〜)
881 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/27(月) 01:11:31.34 ID:I0XYtFGy0

「でも、明後日からはミサカが出張で、あなたが主夫だよ、ってミサカはミサカは荷造りしながらあなたを心配してみたり。ブランカのお世話お願いね? 散歩は番外個体達に頼んでおいたから…」
「はいはい、ハイハイ、ハイ分かってンよォ。もォ八回も聞いたわ。子供か俺は」
「あと二回くらいは言いそう」
「そォかよ。三回言ったら怒るぞ。すげェことさせるからな」
「きゃあ、なんだろ。わざと三回以上言っちゃおうかな。だって五日もあなたと会えなくなっちゃうし…」
「……」

打ち止め、高校二年生の初夏。明後日から、待ちに待った修学旅行である。行き先は沖縄。

世界の光景など、それこそ地球の裏側まで、ミサカネットワークで見ることも感じることもできるが、
実際に、目で、皮膚で、耳で、打ち止めという個人が、己の五感で味わうのだ。知らぬうちに、遠い地へと想いはつのる。

中学の修学旅行(京都・奈良二泊三日)も楽しかったが、今回は四泊五日の長旅である。もっともっと楽しいに決まっている。

882 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/27(月) 01:15:28.85 ID:I0XYtFGy0

「おみやげ何がいいかな? ヨミカワ達には…、やっぱりお酒?」
「えらくはしゃいでンじゃねェか。浮かれ過ぎて怪我とかしてくンなよ」
「大丈夫だって。ミサカはもう十七歳のレディーなのよ、ってミサカはミサカはFカップを張ってオトナをアピール」
「デカけりゃ大人、という単純な思考のうちじゃ、まだ完璧じゃないと何度言わせる気だァ」

まだ未熟な彼女に忍び寄り、その腕を取って荷造りを中断させる。

「ちょっと、今いいところなのに」
「まだ詰め込むのかよ。何をそンなに用意することがある? つーか荷造りでいいところ、ってどォいう意味だ?」
「それはね、持っていった物が役に立った時のことを想像してニヤついたりとか…。あーぁ、もー…」

キャリーバックは、完全に打ち止めの背中になってしまった。だんだんと、一方通行の顔が近づいてくる。

「くだらねェこと考えてンだなァ…」
「ん、ぁ、…」
「五日分だぞ。前払い、前払い…」
「えー、まるでミサカがいつもあなたから『買ってる』みたいじゃない、ってミサカはミサカは立場は逆だと主張してみる」

「………」

「みんなでお風呂もあるんだから、キスマーク厳禁、ってミサカはミサカは無言で脱がそうとするあなたに注意を与えてみたり」

「………」
883 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/27(月) 01:17:56.90 ID:I0XYtFGy0

「青い海! それほど晴れてない空! 強すぎる風! めくれあがるスカート! 思ってた以上に甘いサトウキビ! もぐもぐ!」

「なんて男らしいのミサカ。サトウキビ丸かじりかよ」
「うふ。こんな姿をあの人には見せられないわ、ってミサカはミサカは彼氏のいない旅行でハジけてみたり」
「写真撮ってやれ、写真」
「やー!」

どうせ撮るなら可愛い姿を、ということで、伝統衣装を纏った自分を撮影してもらったり。
ジュースと間違えて、パイナップルの酒を飲みそうになって怒られたり。お土産を買い漁り過ぎて鞄が重くなったり。

打ち止めは大いに楽しむ。


二日目、三日目を滞在するホテルでは、夜中に屋上温水プールに忍び込んで、こっそり遊んでしまった。

「やば、やば。パンツが脱げそー! やっぱり水着じゃないと…」
「女子しかいないんだから気にすること無いわ。暗いし。さぁ、お尻出して泳いでごらん?」
「驚くほど落ち着かないね。私よりもミサカのブラ脱がすことに力入れてよ」
「ミサカはブラもパンツも、幸いピッチリ張り付いていて安心です、ってミサカはミサカは下着にはこだわり派で良かったと余裕ぶってみる」

仲良しの数人で、パンツとブラジャーだけになって、暗いプールを泳いだ。能力を使えば、屋上に登ることなど容易い。

一方通行の望みどおり、打ち止めは青春を謳歌していた。ただ、友達と共謀して、無断でホテルのプールに侵入するなど、彼の望みではない。しかも下着で泳ぎ回るとは…

彼が知ったら、間違いなくオシオキされるだろう。

884 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/27(月) 01:22:59.44 ID:I0XYtFGy0

(ワルイ子するのもスリルがあって面白いけど、もうあなたに会いたくてミサカうずうず…。早く帰りたいよー!)

存分に満喫した修学旅行だったが、五日も一方通行に会えない日が続くと寂しくなってくる。

帰りの飛行機、バスの中で、打ち止めは一人気を揉んでいた。ほとんどの生徒が、疲れで座席に体をうずめているのに、
彼女は窓から景色を眺めている。だんだんと近づいてくる我が家。そして恋しいひと。

電話だけでは足りない。早く顔を見たい。抱きつきたい。

その願いを叶えたあと、やっと打ち止めにも旅行疲れというものが訪れた。


「足がダルい…。棒になったみたい…。ダメよブラちゃん、ミサカは今クタクタだから〜」

さっさと楽な服に着替えて、リビングに寝転ぶ。ソファではなく、絨毯の上に大きなクッションを並べ、足をバタバタさせていた。
打ち止めの帰還に大喜びする愛犬を従え、上目づかいで、床から「マッサージしてほしいな」と訴える。

「帰ってきて、いきなりソレかよ…」

「おーねーがーいー。明日はミサカがやってあげるから、ってミサカはミサカは揉んでもらうまではこのまま動かないと決心してみたり」

885 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/27(月) 01:25:19.73 ID:I0XYtFGy0

打ち止めをマッサージしてやるのは、嫌じゃない。どちらかといえば楽しくてイイ(自分がされるのは、もっとイイ)

少女のむくんだ足を、やわやわとほぐし始めた。痛がらせぬよう、最初は優しく、やがて強く。

「ぬぁー〜、溜まった血液が全身を巡っているみたい…」
「いやァ? 全身を巡るってのは、…コレくらいだろォ」

今日は大サービスだ。ベクトル操作を駆使した特別バージョン。
チョーカーのスイッチを切り替え、打ち止めを回復させるべく、最強の超能力者が力を振るう。

「あぁぁぁぁー…、じわじゅわぁぁぁぁ。先生、肩もっ」
「誰が先生だ。オマエ明日、ちゃンとやれよ」

口は悪くとも、甘えて、甘えてさせてやる。
滅多に置いていかれることのない一方通行にとって、五日もお留守番をするのは、やはり異常なことだった。
だんだんとブランカに話しかける頻度が増えていく己を自覚し、「修学旅行さっさと終われ」と、子供っぽいことを考えたりもした。

緩みきった表情の打ち止めを見降ろし、不足していた精神の充実を図る。ところが、指圧を加えていた青年の手がぴたりと止まる。演算はそのままに。


(………なンだ、これ…)


疑問を唱えながらも、感知した瞬間から『答』は分かっていた。

自分のベクトル操作が、打ち止めに関して不明な結果を導き出すなんてありえない。


それでも。

(なンだよ、嘘だろ……)

同じことを繰り返してしまう。

886 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/27(月) 01:28:24.48 ID:I0XYtFGy0


トクトクトク、トクトクトク。 それは心臓の鼓動だ。とても小さく、早い鼓動だ。


打ち止めは半分夢心地な上、ベクトル操作は続けられていたので、青年の手が止まったのを不思議と感じず、うつ伏せのまま笑顔である。

(とりあえず、この恰好は良くない…、ンだよな? 知らねェけど)

「オイ、起きろ」
「んん? もう少し…。それに肩もまだやってもらってない、ってミサカはミサカは権利を」

「いいから。大事なことなンだ。…ラストオーダー、起きてくれ」

「??……」

真剣な声音に、思わず目を開いて脚の方の彼を見上げる。その表情が、ただごとではない、と告げていた。
力が入りきらない体を、のそのそ動かして尻を絨毯につける。向かい合ったが、しばし無言が続いた。

一方通行は、今一度確かめる。本当なのか、万が一にも間違いではないのか。慎重に、…確かめる。
十数秒の後、能力使用モードを終了した。

(………、意外なモンだな。いざそうなってみると、わりと冷静じゃねェか)

声も、普通の会話のように口から出てくれそうだ。

「あなたどうしたの? 言って…?」
「ン? あァ…。ネットワーク切ってるよな?」
「うん」
「何があっても、繋げるな。今から言うこと、落ち着いて聞け」
「はい、ってミサカはミサカは真剣に頷いてみる」
887 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/27(月) 01:29:20.40 ID:I0XYtFGy0
















「ラストオーダー…」



「……………」












「オマエ妊娠してる」









888 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/27(月) 01:30:13.29 ID:I0XYtFGy0
とりあえずここまで。



えらいこっちゃやで。
889 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/02/27(月) 01:32:34.18 ID:yFxTos1wo

なんてこった...
おめでとうでいいのか?
890 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/27(月) 01:53:04.98 ID:+GsHM/2DO
>>1乙ぱい

ΩΩΩ「「「な、なんだってー!!!」」」
891 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/02/27(月) 02:13:15.63 ID:Ppsif4nAO
一方さん……世間体とかいろいろ考えてたすぐそばからそれかいな…
892 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/02/27(月) 02:17:17.21 ID:J5CmsNPG0
乙っぱい
一方さんそんなことまでわかるのか…
893 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/27(月) 02:31:24.02 ID:RXi6QMIuo
乙っぱい。

孕ませだと……あかん、一方さん、それはさすがにアカンって……!
894 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/27(月) 08:15:13.63 ID:8gEf2Ro9o
妊娠ばっかに気をとられてるけど…

打ち止めいつの間にFになってんの?育ちすぎだろw
895 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/27(月) 08:25:44.29 ID:+jy1Mi5IO
ぱい乙
とうとうできちゃったのか…!
896 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/27(月) 13:53:26.18 ID:Ou3GECL0o
>>894
妊娠したなら更にデカくなるぞw

えらいこっちゃやのぉ、どーすんだろ
乙っぱい、乙っぱい
897 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/27(月) 16:09:12.33 ID:s22B9wwIO
えらこっちゃえらこっちゃ
898 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/27(月) 17:30:10.25 ID:rCxG+EHIO
ΩΩ Ω<な、なんだってー
899 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/27(月) 20:35:28.46 ID:lnP0p1dgo
アルェ?
避妊はしっかりしてたはずだよな?

もしやあの風呂の一件が原因なら、なんつー超低確立を当てたんや一方さんェ……
900 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/28(火) 01:55:30.19 ID:tZ+Z2ruIO
乙乙
やべぇ……驚きすぎて身体がくの字に折れ曲がって肺の中の空気を吐き出してノーバウンドで数十メートル以上吹き飛んじまったよ……
901 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(熊本県) [sage]:2012/02/28(火) 08:53:27.21 ID:Jw1ROWaT0

一方さん……。
打ち止め、おめでたー
902 :ブラジャーの人 [sage]:2012/02/28(火) 21:05:05.81 ID:xVSyY5SG0
またも一方株が下がり気味だ。

>>894 きっとイロイロあったんでしょうね。 愛とか欲が溜まってレベルUPしたんだろうなぁ。

>>899 お風呂の一件から一年以上が経っておりまして…  しかし、アレ系のプレイが一回こっきりという保証もない。

明日か、明後日くるよ。
903 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/29(水) 08:48:23.00 ID:0NFxUM5AO
やーい出来婚出来婚!JKと出来婚!

爆発
904 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/29(水) 12:56:13.13 ID:f7gaNycIo
>>902
あ、そんなに経過してたのかwww
一方さんからよか、打ち止めが誘ってそうな気はするが、油断してヤることヤってしまったか……
905 :ブラジャーの人 [sage]:2012/02/29(水) 13:00:01.78 ID:p4d+d1iL0
やぁ、久しぶりに真昼間の投下です。

いつ修羅場が来るか分からないから、書けるときに書いて、投下していかないとね。

906 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/29(水) 13:04:20.25 ID:p4d+d1iL0

妊娠。

そう言われて、打ち止めは無表情のまま、瞬きだけを繰り返した。だんだんと心臓の音が大きく聞こえてくる。

「う、…ウソ」
「こンなこと、嘘や冗談で言うわけねェだろ」
「………」
「お前の腹に、心臓の鼓動が感知できたから詳しく調べてみた。間違いない」

打ち止めは、絞り出すように息を吐く。生唾を飲み込んで、自分の腹を両手で押さえた。
いきなり「妊娠している」と教えられて、この少女はどう受け止めているのだろうか。それとも混乱で何も考えられないのだろうか。

「赤ちゃん……」

「……」

「……、本当に。あ、ぁ、あなたの子だよね?」

そんな反応があるか。一方通行はつい声を荒げてしまった。

「っ、…オっマエなァ! 俺以外に心当たりがあるのかよ!?」
「なななな、ないないない!ってミサカはミサカは慌てて釈明してみたり!」

かなりの怒声にビビった打ち止めが、絨毯の上を座ったまま後ずさる。
恋人の怒りが恐ろしく、テーブルに背中がぶつかりそうなことに、まったく気づいていない。

「! あぶ…っ」

潔白を表すために、一生懸命に振られている手を掴んで引き寄せる。そうしたら、今度は青年の方に体が傾いた。
「しまった、力を入れ過ぎた」と、できるだけ勢いを殺しながら胸の中に抱きとめる。

腹の中に胎児がいるのだ。転んだり、ぶつかったり、衝撃を与えるようなことは絶対厳禁のはずだ。

「はァ…、頼むぜ、もォ…」
「ごめん…」

そのまま、五分も…

打ち止めは一方通行に抱きしめられたままだった。一方通行に言わせると、彼女の全身から「ぎゅっとしてて」と訴えられているような気がしていたから。
907 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/29(水) 13:08:55.53 ID:p4d+d1iL0

「打ち止め」
「ん…?」
「悪ィが、足が痺れちまった」
「あわわわ、重ね重ね失礼しました、ってミサカはミサカはあなたのお膝から退去してみたり」

行儀作法の手習いのようだ。見咎めるような一方通行の視線を意識し、そうっと立ち上がる。
音も出さない忍び足でソファに近づき、着地点を振り向きながら腰を降ろした。

(これなら文句ないだろー、ってミサカはミサカは合格判定を求めてみたり)

いかがですか? と目で問いかけたら、二度、三度、首を縦に振ってもらえた。

すぐに青年も隣へやってきた。ついでに愛犬もやってきた。一方通行は手で「待て」を命令し、ブランカを床に待機させる。
今は、いや、今後しばらくは、打ち止めに激しくじゃれつくのを控えさせなければ。

「うーん、ミサカがママかぁー」

またもすぐに、少女は一方通行にもたれかかる。硬い腿を枕にして、お昼寝するようなポーズで目を閉じた。
青年は打ち止めの頬にかかる髪を避け、その横顔を見降ろす。
じわり、と少女の瞼の縁に涙が滲み、一方通行の体に緊張が走った。

怖いのか。
楽しい高校生活と、これからの青春を謳歌するどころではない事態に躊躇いを感じているのか。……焦る。

つぅ、と、涙が鼻梁をまたいで流れ落ちる前に、自然と動いた指が雫を拾う。もう片方の目からの涙は、きっと自分のズボンに染み込んだだろう。

「パパ」
「あァ?」
「ふふふふ、あなたがパパ」
「……」

ぽろぽろ、涙を流しながら、打ち止めの口の端がもち上がった。

「嬉しい、か?」
「分からない……。でも涙と笑いが込み上げてくるの、ってミサカはミサカは事実だけを申告してみる」
「そォか」

だったら、大丈夫だろう。心配が杞憂に終わって、青年の体から力が抜けていく。

「あなたは? ミサカが妊娠してどう思った? お腹にあなたの赤ちゃんがいるんだよ」

「俺は」

908 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/29(水) 13:10:20.37 ID:p4d+d1iL0


あぁ、この手に。この体の隅々にまで、どれほどの血と罪が染み込んでいるだろうか。万を超える命を摘んだ男が、同じ形の花に命を宿らせた。

共に生きると決めてはいたが、このロクデナシの子孫を繋いでいくつもりは……

それでも、打ち止めは温かい涙と、柔らかい頬笑みを浮かべてくれた。

屍の上に立って、守り続けてきた命。このまま、ずっと大切に、大切に愛しみたい。そして、ふれてもらいたい。
そうして手に入れたぬくもりの帳に、予期せぬ突然のできごとが降って来た。一方通行自身と、愛する打ち止めの、血を分けた子供。
無条件に守らなければならない。

(もう、行くしかねェンだよ)

「あなたも…笑ってるよ?ってミサカはミサカは泣きそうなあなたをヨシヨシしてみたり」
「へェ、俺が…?」

(だったら、本当に大丈夫だな)

909 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/29(水) 13:13:18.48 ID:p4d+d1iL0

自分のお腹の中に、一方通行との子供が宿っているという驚きの事実に、最初はさすがに思考停止した打ち止め。

体を重ねるようになってから二年近くになる。そういう行為をしているのだから、妊娠の可能性はゼロではなかった。それは理解していた。
しかし、一方通行は避妊具を必ず使用していたので、よっぽど起こり得ないことだと思っていた。
いつか結婚して、避妊具無しの性交をしてから、準備万端で彼の子を産むのだと思っていた。

(計画よりだいぶ早いし、ミサカはまだ高校生だけど)

自然と笑みが浮かんでくるということは、きっと自分は嬉しいのだ。もちろん戸惑いと心配もある。でも世の中の普通の新米お母さんは、全員そう感じるらしいので、心配したいだけ心配してしまおう。
しかし、クローン体であるこの身が、果たして無事に出産できるか分からない。打ち止めは『普通』の新米お母さんとは事情が違うのだ。

「ミサカ…、ちゃんと生んであげられるかなぁ……」
「…やるしかねェ。デキちまったからにはな」

一方通行が力強く打ち止めの手を握った。少女が驚くほど、青年の手は熱かった。

「オマエも疲れてるだろォし、病院に行くのは明日以降にするか。今日はゆっくり休め」
「そうだね、ってミサカはミサカは頼もしいあなたに安心を感じてみたり」
「ふン。明日からオマエの立ち居振る舞いは、全て俺の監視の元に置かれると思え。とにかく安静だ。走るな。転ぶな。冷やすな。食い物に気を使え」
「うわぁ…。前言撤回…。あ、ミサカ沖縄でプール入っちゃった、ってミサカはミサカは今までのヤンチャぶりを思い起こして青ざめてみる」
「はァ? プールゥ!? ……まァ、心臓動いてたし、大丈夫なンじゃねェの」
910 :ブラジャーの人 [saga]:2012/02/29(水) 13:19:09.95 ID:p4d+d1iL0

打ち止めは相変わらず一方通行の足に頭を乗せている。青年の反対側には、「よし」の許しを得て、ソファに登ってきたブランカも。
少女のお腹の中に赤子さえいなければ、まったくいつもの風景なのだが。

「あなたのベクトル操作って、妊娠判定まで出来るのね。生理が遅れてるのは知ってたけど、全然分からなかったよ〜」
「すると今は、…育ってても一ヶ月くらいかァ? こンなサイズだったし」

一方通行は、人差し指と親指でほんの数センチの隙間を作って打ち止めに見せた。

「もう男の子か女の子か分かる!?」
「アホ。まだ性別が決まってるわけねェだろォが」


明日から二人の生活は、ガラリとその形を変えるだろう。不安と希望が混ざった、怒涛の日々が始まる。
911 :ブラジャーの人 [sage]:2012/02/29(水) 13:24:35.13 ID:p4d+d1iL0
打ち止め、妊娠するの巻 完

1スレ目1000で、「次スレで打ち止めがおめでた」と言われていましたが、実はもっと前からその予定だったんだ。
まったく、サトリが多くてどっきりだぜ。
912 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/29(水) 14:21:31.45 ID:lwih/U4J0
娘さんと結婚を前提としたお付き合いをさせて下さい
913 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/29(水) 14:21:52.68 ID:Qh3StlOIO
やっぱり超低確率を当てたのか一方さんェ……
乙!
914 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/02/29(水) 14:26:04.19 ID:pJUphnw1o
避妊はしてたのか
それでも当たる一方さんwwwwww
915 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/29(水) 14:39:04.50 ID:gWATMUV0o
どんだけだよ一方さんwwwwww 乙っぱいwwwwwwww


……だけど、これ、保護者その他もろもろに殴り飛ばされるよね、一度は。 
916 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/29(水) 14:39:55.66 ID:1eTvK1ry0

世間の目が怖いな
917 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/29(水) 14:44:27.00 ID:lwih/U4J0
きっと雄本能がベクトル操作を呼び起こし幻想(避妊具)をぶち殺したんだ・・・
918 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/29(水) 15:39:31.11 ID:F+t1/65lo
ノーバウンドでぶっ飛ぶフラグが立ったな
919 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/01(木) 01:41:56.44 ID:BAKRqXqDO
>>1乙ぱい
サトリその1です

妹達が列を組んで出産祝を届ける光景が浮かんだ

ワーストたんは一方さんをいじり倒すんだろうなぁ
920 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/03/01(木) 11:37:06.66 ID:Vi+EfzcAO
皆に報告しても何だかんだで「あー…そろそろデキてもおかしくないと思ってたわ〜」とかで済まされそうな予感も
921 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/03/01(木) 21:09:08.30 ID:I+fuv6Qx0
乙です、そう言えば式はどうするのでしょう?個人的には、恥ずかしいけど挙げとくと良い派
922 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/02(金) 08:49:13.90 ID:2blfswFDO
〜●<コッカラサキハイッポウツイコウダゼェ

ベクトル精子か……
すごいな
923 :ブラジャーの人 [sage]:2012/03/02(金) 23:01:32.08 ID:JnPct9QC0
命中率には定評がある一方さんww

>>912 娘か、息子か。 どっちだろう…

>>915 うん!

>>921 ただし、一方さんは尋常の恥ずかしさでは済まない。

 
投下します。

924 :ブラジャーの人 [saga]:2012/03/02(金) 23:04:26.57 ID:JnPct9QC0

修学旅行の最終日に、打ち止めの妊娠が発覚した。
旅行中は歩きまわり、重い荷物を持ち、プールにさえ入ったということで、過ぎたこととはいえ、一方通行は胆を冷やした。

幸いなことに、翌日からは二連休だ。たとえ学校があっても、打ち止めは休まなければならなかっただろうが。
自由業のような身分の一方通行も、彼女と一緒にベッドの中でまどろんでいる。

しかし、一度意識が浮上してしまえば、いつものように二度寝してしまうことはできない。一方通行はそろそろと手を伸ばし、首のチョーカーの電極をONにした。

触れ合っていた打ち止めの体の中を、ベクトル操作で診察する。

さすがにたった半日では、何かが変わるはずもない。小さな鼓動は、同じように脈打っていた。
今はたった数センチ、数グラムのこの胎児が、あと(推定)九ヶ月すれば生まれてくるのだ。

打ち止めによると、妹達で妊娠した個体は、まだいないという。
結婚した者はいても、自分達の体を慮っているのか、妊娠経験者はゼロだ。
特殊な調整を必要とするクローン体なのに、健常者だって時に命の危機があるという妊娠、出産だから……

一方通行だって、そのように危惧していたから避妊していたのに。
もっと準備が整ってから、数年後くらいならば……、と思っていたのに。
できてしまったのだ。授かってしまったのだ。


トクトクトクトク、トクトク、トクトクトク……


生命だ。

打ち止めの腹の中で、自分達の子供が生まれている。今まさに、育っている。

(絶対ェ、無事に……)
925 :ブラジャーの人 [saga]:2012/03/02(金) 23:06:38.99 ID:JnPct9QC0

「おはよう、あなた、ってミサカはミサカは真剣な顔のあなたに朝の挨拶をしてみる。……赤ちゃん、元気?」

子供に意識を集中させていたので、打ち止めが声をかけられるまで、彼女の覚醒にまったく気づかなかった。一方通行は能力使用を中断する。

「俺ァ医者じゃねェからな……。だが、元気だとは思う」
「………うん」

打ち止めは下腹部をさすった。今は全然実感できないけど、やがてお腹が膨らんできて、赤ちゃんが動き出すという。
それはいつだろう。二ヶ月後? 三ヶ月後? 四ヶ月後?

「妊娠って、そのうちお腹が大きくなって、陣痛がきて、生まれる…、という大雑把なことしか知らないや」
「俺だって似たよォなモンだ」
「ネットワークじゃ、今は調べられないし。今日からさっそくお勉強しなきゃ、ってミサカはミサカはやる気満々だったり」

「………」

(お勉強、か)

926 :ブラジャーの人 [saga]:2012/03/02(金) 23:10:12.27 ID:JnPct9QC0

打ち止めは高校を中退することに決めた。一方通行は「休学する手もある」と言ってはみたが、それは聞き入れられないと予想はついていた。

頑張って主席合格を勝ち取って入学した。中間、期末テストでは、再度一方通行を家庭教師にして高順位を保った。
手芸部も楽しいと言っていた。いつか可愛いワンピースを作ると意気込んでいた。
友達も増えた、と……

子供を身籠ったことで、それらは打ち止めの手から零れ落ちることになったのではないか?
多くの若者が享受している人生の喜びを、途中で奪われることのなったのでは?

「またネガティブ思考に陥っているな?ってミサカはミサカは眉間の皺を伸ばしてみたり」
「…、ヤメロ」
「あははははは、変な顔―!」

バツの悪そうな舌うちが鳴る。少女は上半身を起こして、一方通行の首に腕を回した。彼は、打ち止めの体に僅かな負担もかけまいと、急いで肘をついて抱擁に応える。

「ミサカに赤ちゃんをありがとうね、ってミサカはミサカは気遣いも裏も無い、率直な気持ちを告げてみる」
「………」
「一晩経って、何と言いますかね、…幸せなの」
「………」
「これから大変だけど、負ける気全然しない。きっと大吉体質が二倍になってるんだよ」
「すげェ論理だなァ」
「なんでぇ? 納得できるじゃない。ミサカと赤ちゃんで二人分の幸運、ってミサカはミサカは今年は中吉のあなたを揺すってみたり」

大人しくしてろ、と、一方通行は打ち止めの頭を自分の肩に押し付けた。

927 :ブラジャーの人 [saga]:2012/03/02(金) 23:12:08.60 ID:JnPct9QC0

さて、起きて朝食を食べたはいいが、まず何をしようか。
なにはなくとも、まず<冥土帰し>の元へ行こうと思っていたが、そうすると、ほぼ確実に病院にいる一〇〇三二号達にバレる。
まぁ、いつかはバレる…じゃなくて、お知らせしなければならないのだが。

さらに、一方通行と打ち止めには、いの一番に報告するべき『親』がいる。

「やっぱり、黄泉川達には、先に言っとかなきゃなンねェよなァ」
「あと番外個体にもね」
「………」
「あとお父様と、お母様と」
「………」
「お姉様にも、ってミサカはミサカはだんだん俯いていくあなたを励ましてみる。大丈夫だよ、ミサカが守ってあげるからね」

そこまで男らしくないのもいけない。覚悟を決めて実家に出向いた。
先に電話して確認したら、タイミングがいいのか悪いのか、今日は黄泉川と芳川、二人とも在宅だそうだ。いつも忙しく働いたり、ボランティアしているくせに、今日に限って……
928 :ブラジャーの人 [saga]:2012/03/02(金) 23:14:35.42 ID:JnPct9QC0

「よっ、二人揃って朝のうちから帰ってくるのは珍しいじゃん」
「おかえりなさい。朝ご飯はもう食べたのかしら?」

いつ来ても、この二人は「おかえりなさい」と迎えてくれる。優しい保護者達に、妊娠のことを告げたらどんなことになるのだろうか。
お茶を淹れようとする黄泉川を制し、一方通行は保護者達をキッチンテーブルに誘った。

「なにか私達に話があるようね」
「改まってどうしたじゃん。打ち止めに赤ちゃんでもできた?」


いきなり出足を挫かれた。それとも、言い出しにくい話題の糸口を与えてくれた、と評価するべきか。


「………オイ」
「………わぉ、ってミサカはミサカはヨミカワは精神系能力者なのかと疑ってみる」


嘘から出た真に、向かいに座る保護者の顔色が変わる。

「ちょ、っと」
「まじか」

「昨日、分かった」
「ご報告に参りました、ってミサカはミサカ」


ぱぁん、と鮮烈な音が鳴り、打ち止めはセリフを最後まで喋ることができなかった。

929 :ブラジャーの人 [saga]:2012/03/02(金) 23:21:57.28 ID:JnPct9QC0

「…あれほど、避妊には気をつけなさいと、言ったじゃないの」

芳川が言い終わると同時に、勢いよく立ち上がったせいで傾いだ椅子が倒れる。まさか、一番初めに芳川に引っ叩かれるとは。
殴られるなら、黄泉川にだと思っていた一方通行は驚いた。

「妹達で妊娠した個体はいないわ。私からも、まだ妊娠しないように、と注意している。その理由は君もよく知っているわよね?」
「…あァ」

ぱぁん。

今度は反対側の頬を張られた。

「桔梗……」
「ヨシカワ、やめて……」

友人と打ち止めの言葉は届いても、彼女は一方通行を見据えたままだ。

「君の作った研究所でやっていることは、いつか全ての妹達が、人としての、女性としての幸せを選択できるようにするためよね?」
「………」

黄泉川と打ち止めは、目を合わせて驚き合った。『研究所!?知ってた?』 『ううん、今初めて聞いた』と、口をパクパクさせたり、首を振ったりして意思を疎通させる。

(ミサカ達のための研究所…。そんなのいつの間に…)

「避妊は、してたが………。こうなっちまったからには、……覚悟決めるしかねェだろ」
「この人ばかりを叱らないで。ミサカだって同罪だよ」

打ち止めは、立って一方通行に寄り添う。本当に守るかのように、半ば背中に彼を隠して。

「罪なことなんてないじゃんよ。誤解すんな。おめでたいことじゃんか」
「ヨミカワ……」
「そうよ。悲しい顔しないで」
「だって、ヨシカワがあんまり怖いから、ってミサカはミサカは迫力に圧倒されていたと白状してみる」

少しだけ、いつもの雰囲気が戻ってきた。一方通行はそこでようやく、痛む頬に手を宛がうことができた。
この痛みを、芳川桔梗の想いの深さだと感じて、

「打ち止めも子供も、必ず無事に産ませてみせる」
「あたりまえよ。明日から忙しくなるわ……」

やっと芳川に笑みが浮かび、知らず力の入った肩をほぐした一方通行と打ち止めであった。
930 :ブラジャーの人 [saga]:2012/03/02(金) 23:27:06.90 ID:JnPct9QC0

それから、打ち止めが高校をやめるつもりであること。
最強の超能力者<一方通行>と、第三位のクローン<打ち止め>に子供が出来たことによって、周囲に起こるかもしれない現象への対策などを話し合った。

「冥土帰しには、私から連絡を入れたわ。驚いていたわよ。喜んでもいたけれど」
「あの先生も一方通行達と付き合いは長いじゃん。感慨深いものがあるじゃんよ」

今日は彼の都合がつかないらしく、病院へは明日行くことにした。
『人体』については、ほぼ知り尽くしている一方通行の診察によれば、(妊婦や胎児のことは、その限りではないにせよ)「異常は感じられない」ということでもあるし。

なので、「これから御坂美琴へ挨拶に行こう」というのは、打ち止めの提案だった。

「お姉様とお話してから、お父様達に報告してもらうのがいいと思うんだよね」
「はぁ〜、美鈴さん達、あの若さで孫ができるじゃんか」
「何言っているのよ愛穂。それはあなたもでしょう? 打ち止めは黄泉川家に嫁ぐのよ?」

一方通行は黄泉川愛穂の養子である。彼に子供が出来るということは、彼女はおばあちゃんになってしまうのだ。この若さで。

「それはちょっと切ないけどそれよりも! うわ、うわーこれで打ち止めは名実ともに私の娘!……どうしよう滅茶苦茶嬉しいじゃん!」

黄泉川も勢いよく立ち上がったが、隣の芳川が椅子を支えてくれたので倒れない。

「お母さん、ってミサカはミサカはヨミカワに甘えた声で呼びかけてみる」
「でかした一方通行! 最高のお嫁さんゲットじゃんよぉ!」

いつもなら、頭を振って拒否の態度を表すのに、一方通行は頭を撫でられるがままだった。義母の力が強すぎてか、肩までがくがく揺れている。

(よ、嫁さン…)

「……一方通行、君って、まだ打ち止めにプロポーズしていないわね?」

しらー、っと冷たい視線が芳川から注がれる。黄泉川の手も離れていった。

931 :ブラジャーの人 [saga]:2012/03/02(金) 23:29:18.08 ID:JnPct9QC0

「男かそれでも。私はそんな子に育てた覚えはないじゃん」
「……うるせェよ。昨日から頭がいっぱいで、さすがにそこまで気を回せてねェだけだっつーの」
「よかったぁ。じゃあミサカと結婚はしてくれるんだね、ってミサカはミサカは実はいつプロポーズしてくれるのかと心待ちにしていたり」
「え、オマエ待ってたンかよ…」
「当然」

女性陣三人から、無言のプレッシャーが…
二人は攻めるような。一人は期待を込めるような。


「……っ! ク、今じゃなくたっていいだろォが」

「ちゃんと今日中に言うじゃん」
「わーい、楽しみだな!ってミサカはミサカは喜びを表してジャ」
「跳ぶなァ!」 「跳ねちゃダメよ!」 「打ち止め!」

「す、すいませんっ」
932 :ブラジャーの人 [saga]:2012/03/02(金) 23:32:38.03 ID:JnPct9QC0

打ち止めが御坂美琴の携帯端末に連絡を入れると、こちらは今から会えることになってしまった。
冥土帰しと同じく、「今日は無理なのよ」という返答を、こっそり期待していた一方通行は、こっそり舌打ちをした。

仕方がない。嫌な事はさっさと済ませてしまおう。
玄関に向かうため、一方通行が打ち止めを連れてリビングを通り抜けようとした時、

「あ、一方通行、ちょっと待つじゃんよ」
「あァ? ンだよ」
「打ち止めは最初からウチの家族みたいな、娘みたいなものだったとはいえ、御坂さんちのお譲さんであることに間違いないじゃん」
「………」

嫌な予感がする。

「それを、不詳の息子が妊娠させて、挙句に高校を中退させるとは……」
「危ないわ。打ち止め、こっちへ」

芳川が打ち止めの肩を掴んで後退させる。一方通行の頬が引き攣った。もう笑いさえ込み上げてくる。

「やっぱアンタにお説教の一つでもかますのが、親としての義務じゃんね?」

それは「説教」ではないだろ、という一方通行の反論は、握られた拳を見た瞬間引っ込んだ。口を開けていては、よけいに危ない。

見えないパンチは、青年の左頬にめり込む。

衝撃で床と壁に体を打ちつけて転がる青年に、新妻(予定)が駆け寄った。

「きゃぁぁああなたしっかりして!ってミサカはミサカは殴られすぎなあなたを心配してみたりっ」
「っ、この、…馬鹿、走ンじゃねェ…っ」

口の中が切れたのか、僅かに血を垂らしながらも、打ち止めと子供の心配をする一方通行の姿に、黄泉川と芳川は安堵と喜びを覚えるのだった。

933 :ブラジャーの人 [sage]:2012/03/02(金) 23:35:28.71 ID:JnPct9QC0
とりあえずここまで。

妊娠中は、まじで運が二倍になるのか、ギャンブル勝つらしいよ。

934 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/03/03(土) 00:03:37.10 ID:HPCbM5cBo

お姉様の反応が気になるな

ところで美琴は上条さんのことは諦めれたのかな?
935 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/03(土) 00:56:25.39 ID:mbOPGy0IO
乙乙!
黄泉川も芳川も、一方さんへの愛を感じるな
936 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/03(土) 02:16:25.37 ID:P9NwGnsHo
乙。 どちらも愛してるのならやっぱり、殴らにゃならんよね、これは。  
 めでたいことだけど、やっぱり中退させちゃうことになるし。 あぁ、男親はたいへんじゃのぅ……
937 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/03(土) 03:48:30.55 ID:MFlZvT9DO
>>1乙ぱい

>>924
>結婚した者はいても
…参ったなぁ、ウチの嫁には内緒にしておけって言っといたんだけどなぁ
938 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/03(土) 05:39:17.37 ID:Cel9tvIF0
おつおつ

胎児の状態的には7〜8週くらいだよね、と空気を読まないツッコミを入れてみる
939 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/03/03(土) 06:54:23.21 ID:Pf/R7MVAO
>>937はもうダメだ、精神操作系の能力に頭を完全にヤられている…
940 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/04(日) 01:13:20.74 ID:3t6AAruIO
おのれ第五位!
941 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2012/03/04(日) 01:16:10.25 ID:WTe0/AV+o
乙ぱい

美琴と会うという事は、胸囲の格差社会が繰り広げられるのか……胸が厚くなるな
美琴が打ち止めのおっぱいを揉んだりしそうな予k…おっと誰か来たようだ
942 :ブラジャーの人 [sage]:2012/03/04(日) 22:21:40.70 ID:n8mXO3js0
>>934 うぅむ、時々泣いたりしとるかもしれん…

>>938 私も妊娠したことないから調べてみたよ。なんとベビーは妊娠四週ぐらいでふるえるぞハートッッ!! すぎゃーね。

>>939 待って、>>937の奥方が20000号さんだったら面白いんじゃないか? 

明日更新、したい。
943 :ブラジャーの人 [sage]:2012/03/04(日) 22:36:36.73 ID:n8mXO3js0
ところでそろそろ次スレの季節。 練習に1スレ目を貼ってみよう。

http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1310/13106/1310655464.html

こうか。
944 :ブラジャーの人 [sage]:2012/03/04(日) 23:17:13.16 ID:n8mXO3js0
できた。

私にとって、ぱしょこたんとは……、例えるならば。 
その代表的な、様々な便利機能を、『庭付きプール付き車庫付き太陽光発電のオール電化一戸建』としよう。
私はそこに住みながら、

食事は全て外食、洗濯はコインランドリー、風呂は銭湯、トイレだけ使用し、夜は軒下に寝袋で寝ている……
このような状態だと、自分で分析している。押したことないキーが20個くらいあるからな。
そんな私が作ったよ、3スレ目。よろしく。

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1330869711/
945 :ブラジャーの人 [sage]:2012/03/06(火) 00:33:43.53 ID:5vzdayXZ0
このスレ最後の本編更新です。

946 :ブラジャーの人 [sage]:2012/03/06(火) 00:35:41.93 ID:5vzdayXZ0

御坂美琴は驚いていた。
打ち止めから、「久しぶりに会いたいし、お話したいこともあるの」と言われ、こうして外に出てきた。
待ち合わせのファミレスに向かう途中、場所を変えたいという追加連絡があり、そこが公園だったので、変だな、とは思っていた。

(なんで一方通行もいるわけ?)

梅雨を目前に控えた、少し曇った休日の午後。ベンチに見慣れたアホ毛の妹と、白い男が座っていた。

「あーお姉様、こっちだよー、ってミサカはミサカは手を振ってみるー」
「はいはい久しぶりー。打ち止め、私はアンタだけだと思ってたんだけど?」

一方通行は、ほんの数秒だけ御坂を見て、すぐに視線を外す。
見つめられても困るのだが、御坂は若干ムカつく。そっちには並木しかないだろうが。

947 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/06(火) 00:36:47.88 ID:6rM4MNjgo
よっしゃ! 今日受験だけど待機!
948 :ブラジャーの人 [saga]:2012/03/06(火) 00:41:28.50 ID:5vzdayXZ0

「んもぅ、そんな顔しないで。お姉様とこの人はこれから姉弟になるんだから、ってミサカはミサカは仲良くなることをオススメしてみたり」
「は? きょーだい?」

いきなりかよ。
そっぽを向いていた一方通行が、珍しく慌てた様子で打ち止めの口を塞いだ。御坂は何を言われたのか理解できなくて、ベンチの前に茫然と立ったままだ。

「オ、マエ、唐突にもほどがあるだろォ……!?」
「んぐ、ふぐぐ、もー。こういうことはさっさと言わないと、どんどん言い出せない空気になっちゃうんだよ」

「……え? え? 今日のお題?」

まだ立ちんぼうの御坂の手を取って、打ち止めは姉を隣に座らせた。一方通行は僅かに体をずらし、女性達から距離を置く。あぁ気まずい。

「お姉様、ミサカ妊娠したの。だからこの人と結婚するんだ」

「にん!?」

「赤ちゃんのために、できることは何でもやってあげたいし、やらなきゃいけない。残念だけど高校もやめて、ミサカはお母さんに専念することにしました」

「けっこん!?」

「妹達のみんなには、まだ言ってないよ。まずヨミカワ達と、お姉様だけ……」

「妊娠……!?」

御坂は、なんとか腰を曲げて前に屈んだ。打ち止めの向こう側に座る男に無言で問いかける。本当なの? と。

ずっと様子を伺っていたのか、一方通行は御坂にコクリと頷いた。無表情を装いきれていないのは明白だった。

「オマエの両親には、一応話を入れておいてくれ」
「おい……、ちょっと冗談じゃねぇわよ」
「おめでたいことに本当なんだよお姉様、ってミサカはミサカは『叔母さん』になるお姉様にお祝いを求めてみたり」
「間抜け面して思考停止してるとこ悪ィが、これは冗談じゃねェぞ」
「思考は正常よ、このケダモノ」
「………ふン」
「お姉様、ミサカは今とても幸せなの、ってミサカはミサカは険悪な雰囲気を緩和させるべく一人改善に努めてみる」
「打ち止め……、でも、心配よ……!」
949 :ブラジャーの人 [saga]:2012/03/06(火) 00:48:09.98 ID:5vzdayXZ0

御坂は打ち止めの両手を握って、その腹に視線を落とした。自分の甥か、姪になる子が息づいている場所を。
彼女にとって、凶悪で、絶望的で、恐怖と怒りと、敗北感で彩られた男との間に生まれた命。

いつかこんな日がくるかもしれないと、どこかで覚悟はしていたが早すぎる。
数年後なら妹達の体も今より更に安定していて、自分の心も、もっと許容範囲が広くなっているだろうか、と願っていた。
ゆっくり未来に近づいていってくれたら、と思っていた。

みんな、そんな理想の時間の流れ方を思い描いていたのだ。御坂も、黄泉川、芳川も。当事者の二人だって……

「大丈夫なの? 流産や早産。妊娠という現象に、そして出産に打ち止めの体は堪えられるの?」
「大丈夫。絶対ちゃんと産んでみせるよ。この人もいるし」

まさに危機感を抱いていたことを、ズバズバと言ってくれる。
幸せばかりじゃない。一方通行と打ち止めが、現実に乗り越えなければならない試練は、常人よりも酷だった。

「この際、アンタを責めるのは後回しにするわ。打ち止めと子供のことが、なにより先決ね」

御坂は打ち止めの肩越しに、憎々しい男を睨んだ。

「それは言われなくても分かってる。考え得る全ての策を行使するつもりだ」
「……私の能力は必ず役に立つわ。必要なら声をかけてちょうだい」
「おぉっ、この人とお姉様でベビー協定締結!?ってミサカはミサカは妊娠の副産物を喜んでみたり! やっぱり運がいいー」

末から二番目の可愛い妹を、アホ毛ごと撫でる御坂。まだまだ子供っぽいけど、これでも司令塔で上位個体。
会って過ごす時間の端々で、その感性や考え方にハッとさせられたことも多々ある。一方通行と御坂美琴が、こうして関係を築いていくことを喜ぶ打ち止めに、「お手上げ」の溜息が出る。

「言っとくけど、私と一方通行はぜぇぇぇぇぇえええんぜん仲良くないんだから」

それでも、憎まれ口をきいてやる。打ち止めの望み云々以前に、その権利が姉として許されるはずだ。

「ハっ、まさに利害関係が一致しただけの『協定』だなァ」
「はいはい、ミサカだっていきなり手を取り合ってルンルンして、なんて言わないもん。まずはここから……」

だって姉弟なんだから。

苦虫を噛み潰して、口の中でころがして、そして反芻するかのような表情を浮かべる夫(予定)と姉に挟まれ、打ち止めは一人ニコニコしていた。

950 :ブラジャーの人 [saga]:2012/03/06(火) 00:50:25.13 ID:5vzdayXZ0

安静必須な妊娠初期の妊婦さんを、いつまでも外にいさせられない。そもそも、まだ詳しい検査も受けていないし。
三人は簡単な相談を済ますと、それぞれの家に帰ることにした。

「あー、パパとママがなんて言うか……」
「後でどんな様子だったか教えてね、ってミサカはミサカは不安を感じてみたり」
「大丈夫よ、とにかく喜ぶのは目に見えてるから。でもあの年でお爺ちゃんとお婆ちゃんってのはショックかも。私も叔母さんだし……」

一方通行の頭を悩ませる案件は、まだまだ押し寄せてくる。
御坂夫妻には会ったことがあるが、その人格や人柄は好ましくも、彼にとってはくすぐったい部類の人種だ。

打ち止めや、大切な人々と共に生きていくかぎり、切っても切れない関係の枝葉を、樹木のように伸ばしていかざるをえない。
最近、やっとそれを理解した。

「きっと一方通行も冷やかされるわよ。イイ気味だわ」
「……」

今日はまだ半分しか過ぎていないが、一方通行は非常に疲れていた。
無意識に痛む頬を指でかまいながら、青年は御坂に背を向けて公園の駐車場へと向かう。少しの距離も、打ち止めに歩かせたくないので、ポルシェを出してきていた。

(ポルシェだと、乗降する時、体への負担が大きいか……?)

ポケットの中でキーを弄りながら、さっそく今後の生活の改善点に思い至っていたら、

951 :ブラジャーの人 [saga]:2012/03/06(火) 00:52:02.48 ID:5vzdayXZ0

「ちょろーっと待ちなさい。帰る前に、私にも一発殴られていきなさいよ」

御坂は軽く右手を振り上げ、ウィンクした。手が拳になっていなければ、セリフが物騒でなければ、とても可愛らしい仕草であった。

「……クソ、オマエもか」

一方通行は御坂にも殴られる覚悟があった。電撃を食らわされることも予想していた。だから、待ち合わせ場所を公園にしたのだ。

「その顔見れば分かるわよ。殴ってくれる人がたくさんいるってのは、それだけ打ち止めと結婚するアンタが恵まれてる証拠。ありがたく思えってーの」

(あなた、また殴られてくれるのね。ミサカのために……)

打ち止めが制止しても、一方通行はきっときかない。少女は一歩下がる。


不遜な態度で対面に立つ青年に対し、御坂はスキップするかのように駆けだした。

(え? スキップ?ってミサカはミサカは〜……、お姉様それはぁぁぁああ!?)
(オマエその年でそのパンツはどォなンだよ)

一方通行は、力を入れていた顎を緩めた。そこに、覚悟していた衝撃は来ないから。
952 :ブラジャーの人 [saga]:2012/03/06(火) 00:56:01.07 ID:5vzdayXZ0

途絶えた意識が、ゆるり、ゆるりと戻ってくる。
どうして自分は寝ていたのか定かではないが、右手を打ち止めに握られていることだけは分かっていた。頬も時々、指で撫でてくれた。

起きて、目を覚まして、と促されているようで、一方通行は瞼を開ける。
白い天井が見えた直後、ぴょこんと見慣れたアホ毛が視界をかすめた。そして、笑顔の打ち止めと目が合う。

「おはよう。まだ起きなくていいよ。痛いでしょう?」
「……病院か、ここ」

覚醒した直後、公園での御坂美琴とのやり取りが思いだされた。

「そう。お姉様ったら、よっぽどミサカのことが大事みたいで……。ついついあなたのみぞおちに足が吸い込まれちゃったんだって」
「いや、絶対狙ってただろアレ。この機会を最大限に活かしたンだろ」
「コメントは差し控えます、ってミサカはミサカは姉と旦那様の間で板挟みになってみる」

御坂の蹴りを食らった一方通行は意識を失い、いつもの病院に運ばれた。ちなみに、手配は蹴った人がした。そして彼女はもう帰った。

「あとが怖いからよろしくだって。ミサカがあなたのごきげんを取らなきゃいけないんだけど、何してほしいことある?」
「ばァーか。超電磁砲をどォこうしようなンて思ってねェよ。それより、ついでだからオマエの診察してもらえねェか聞いてみる」
「でも、カエル先生は今日忙しいんでしょ?」
「だったらオマエがこのベッドで一泊しろ。わざわざ家に戻ることはねェ」
953 :ブラジャーの人 [saga]:2012/03/06(火) 00:58:44.87 ID:5vzdayXZ0

一方通行は、自分がどれくらい寝ていたか知らないが、外はもう暮れ始めていることから、三〜四時間だと推察した。
きっと打ち止めは、その間ずっと座って付き添っていてくれたのだろう。今ベッドに寝るべきは、自分じゃなくて彼女である。
青年は体を起こし、ベッドから降りようとした。

「もう、無理しないで、ってミサカはミサカは痛みで思わず泣きそうなあなたを押しとどめてみたり」
「泣くか、アホ」

一方通行を寝かせようと、立ち上がった打ち止めに肩を押さえられる。そこで、ふと少女が座っていた椅子に視線が向いた。
いつものパイプ椅子じゃない。両側に肘掛けがついた、革張りの豪勢な回転椅子だった。
しかもクッションが敷き詰められ、大きな座面全体をすっぽり覆っている。

「あ、この椅子? 下位個体達が持ってきてくれたの。なんかエライ人の部屋から失敬してきたんだって」

「……………」

(そりゃ当ォ然バレるよな)

身重の打ち止めを気遣っての対応だろう。椅子を無くした誰かさんには申し訳ないが、一方通行にとってはありがたいことだった。

これで、妹達全員に知れることになったわけだ。意識を失わなくても、どうせ明日にはここに来て明かすつもりだったから、さしたる予定の変化はない。

954 :ブラジャーの人 [saga]:2012/03/06(火) 01:03:50.57 ID:5vzdayXZ0

「失礼します。一方通行の意識は回復しましたか」
「失礼、やっちまったダメ男は目を覚ましましたか」
「お姉様にノックアウトされちゃったモヤシは起きましたか」

ぞろぞろと、一三五七七号、一〇〇九〇号、一〇〇三二号が個室に入って来た。
さぁ、今度は何を言われるのか。はたまた殴られるのか、蹴られるのか。一方通行はもうやけくそだった。

「そんな、捕えられた野犬のように警戒心丸出しにしないで下さい、とミサカ一〇〇三二号は見たことないけど一方通行を野犬に例えます」
「大丈夫ですよ。あなたはすでに十分痛い目に遭っていますから、とミサカ一三五七七号はこれ以上の危害は一方通行には過酷すぎると同情を表します」

「安心してあなた、ってミサカはミサカは上位個体らしくミサカ達に言って聞かせてあるのだ、と鼻を高くしてみる」
「そォかよ」

今日はこれ以上、体にも心にも負担を掛けなくて済むらしい。さすがの一方通行も胸を撫で下ろした。しかしそんな心理を表には出さない。


「さて、それではお姉様言うところのケダモノが無事に起きましたが、せっかくなので天敵でも打っていきますか、とミサカ一三五七七号は鋭い針をチラつかせます。あ、点滴だっけ」

「ロクデナシ菌が口内の傷口から侵入しているかもしれません。血液検査をしましょう、とミサカ一九〇九〇号は採血用注射器の太い針をチラつかせます」

「一方通行が意識を失ってから三時間以上が経過しました。そろそろ必要かと思いまして、しびんです、とミサカ一〇〇三二号は特徴的な形状の容器を目の前に置いてみます」

「まさかこういう方面で攻撃を仕掛けてくるとは、ってミサカはミサカはあなたを守るために仁王立ちで立ちふさがってみたり!」

「…………」

打ち止めに譲ろうと思っていたベッドに再び潜り込み、一方通行は頭まで布団の中に隠れた。きゃんきゃんやかましい姉妹達に背を向けて。
955 :ブラジャーの人 [sage]:2012/03/06(火) 01:12:27.55 ID:5vzdayXZ0
おめでたの報告をする通行止めの巻 完

>>947 若者の未来を守るため、私は急いだ。 絶対合格してくださいよ。

過去最高に、一方さんが痛いことになったなぁ。


次回からは、3スレ目に投下します。ここは1スレ目のように、ボチボチ埋めていこうと思います。
早く埋めないと誤爆しそうだな…
956 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/03/06(火) 01:25:00.22 ID:oSzqzPDwo

一方さんかわいそうwwwwww

他のお友達に言ったときの反応が楽しみだ

957 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/06(火) 01:53:10.13 ID:T24ApXCDO
>>1乙ぱい女王

三下1号2号の反応が今から楽しみだなぁ

妹達怖すぎだろw
958 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/06(火) 02:10:51.20 ID:an4lxCjIO
乙乙!
鳩尾キックとかみこっちゃん鬼畜すぎるwww

というか>>1は妹達の口調がすごい「っぽい」な
……いや上手く言えないが
959 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/06(火) 02:38:06.64 ID:OSbCLMG4o
学園都市にいるのって19090号だよな?
960 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/03/06(火) 03:15:59.65 ID:0ebDdqyd0
>>1乙ぱい
妊娠ってことは、そのうち母乳が出るようになるのか…
ベクトル豊胸術使った巨乳なだけあって、おっぱいが張ったり出が悪かったりしそうだな。
一方さんならベクトル搾乳術で解決しそうだけども。

>>956
グループの面子が相手だと…

シスコン軍曹「こちら側の世界へようこそ。ところでもう性別は調べたのかにゃー?」
一方さん「いや、まd」
あわきん「赤目のアルビノショタに決まってるでしょう?」
ミサコン「いえいえ、きっと茶髪のアホ毛ロリですよ。それ以外は認めません」
あわきん「何よ、ショタの魅力が分からないの?」
ミサコン「貴方こそ何を言ってるんですか。小さい御坂さんの子ですよ?アホ毛ロリに決まってます」

シスコン軍曹「わかったわかった、じゃあ賭けでもしたらどうかにゃー?」
あわきん「賭け?」
シスコン軍曹「そうだにゃー。男なら結標が、女なら海原が生まれた子を貰い受けるってことで」
ミサコン「それは良いですね」
一方さん「」

シスコン軍曹「そういう訳で話は成立だにゃー」
あわコン「「息子(娘)さんを下さい(ハァハァ」」
一方さん(生まれてきたらコイツらには会わせないようにしよう)

こうなるんですね、わかります。
961 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/03/06(火) 03:26:27.18 ID:ME+GmH3AO
おそらく娘息子をくださいの話題になった時点で愉快なオブジェになってる
962 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/06(火) 07:39:58.46 ID:hFWABG7k0

浜面さんちはまだ、ご懐妊してないから面白い事になりそうだな
963 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/06(火) 07:59:36.51 ID:6rM4MNjgo
乙っしたー。 デキ婚だもの、こんくらいぶっ飛ばされても仕方ないよね。


ほぁー鬱やー…
964 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/03/06(火) 12:33:57.09 ID:aXWI/5Ko0

批判じゃなくてただ純粋に疑問なんだけどデキ婚てなんで男だけが責められるんだろうな
だって「避妊しなかった、してもできた」のは二人の問題だろう?なのになんでだろ
965 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/03/06(火) 18:52:53.92 ID:XoCYRsgZo
女だって責任あるし責められるけどあんまストレスかけても母子にさわりがある
二人の問題でも責任も負担も平等じゃないから

一方さんは特殊事情わかっててやらかしちまったからなあ
…ベクトル避妊とかやってる余裕なかったんだろうなやっぱ
966 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/06(火) 19:07:47.91 ID:6rM4MNjgo
まぁ、マジメな話をするなら双方に責任が……ってなるけど殴ったりってのはある種のけじめと言うか、愛情表現だからなぁ。

「一度でいい、奪っていく君を殴らせろ」的な物とかさ……
967 :ブラジャーの人 [sage]:2012/03/06(火) 22:05:49.95 ID:+lzUuu7v0
乙等、ありがとうございます。

>>958 妹達のセリフは、わりとスラスラ湧いてくる。 自分がMだからこそ、Sを求めているのだろうか。

>>959 あ、まちがえた。

ぞろぞろと、一三五七七号、一〇〇九〇号、一〇〇三二号が個室に入って来た。(誤り)
ぞろぞろと、一三五七七号、一九〇九〇号、一〇〇三二号が個室に入って来た。(正解)

>>960 これから大きな変化を迎える打ちぱいに対して、一方さんはどんな対応を取るのだろう…


>>964 >>965 >>966  男と女は平等ではない、ってことかなぁ。
それぞれの考察に概ね同意です。 男に厳しく、女に優しく。 子供を宿す、それだけで女性は大切だ。

女性と、あと、ちみっこには優しくしましょう。

968 :ブラジャーの人 [sage]:2012/03/06(火) 22:12:37.15 ID:+lzUuu7v0

裏小話

打ち止めは手芸部に入部して刺繍などをたしなんでいるが、実は「文芸部」という案もあった。
その場合、彼女は一方さんへの愛を綴ったポエムを披露し、彼を赤面させただろう。

………、打ち止めだったら、どんなポエムかと考えてみたが、1ミリも思い浮かばず、手芸部へと相成った。

969 :ブラジャーの人 [saga]:2012/03/08(木) 00:46:25.08 ID:36IvKIcU0

(ひっどーい。ミサカに内緒にしてたなんて、ってミサカはミサカは仲間はずれにされていたことを知って憤慨してみたり)
(別に隠していたわけではありません、とミサカ一〇〇三二号は弁解します)
(『病院の地下に研究所出来たのか』と訊かれなかったので言わなかっただけです、とミサカ一三五七七号は正当性を主張します)
(なんという屁理屈、ってミサカはミサカは呆れてみる)

自分の横で黙りこむ打ち止めに、おそらくネットワークで下位個体と会話しているのだろうと、一方通行は見当をつけていた。

この研究所を設立しようという計画は、彼が大学四年の前期あたりから立てていた。冥土帰しや芳川桔梗の研究や調整のおかげで、妹達の体は随分安定してきている。
その成果をもっと如実にさせるため、莫大な資金をかけてここを作ったのだ。
また、研究自体にも金はいくらあっても不足はない。というか金がなければ出来ないことの方が多い。

冥土帰しほどに至ってはその限りではないだろうが、それでもあるに越したことはない。下位個体本人達にも協力させ、芳川や一般人も関わるならば、なおさらだろう。数は力だ。人でも、金でも。

いくら一方通行でも、さすがに地下に最新設備を整えた研究所を建設するのは財布と相談が必要だった。
なので、彼は資金集めに集中しようと、コネと能力を活用して、日々お金儲けに精を出すことにしたのであった。
970 :ブラジャーの人 [sage]:2012/03/08(木) 00:51:23.11 ID:36IvKIcU0
自分のスレに誤爆て。危惧していたことだが。
971 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/08(木) 01:15:53.89 ID:l0NyXQzDO
自分のスレに誤爆しちゃう>>1かわいいよ
972 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/08(木) 07:46:01.57 ID:Sa0VACqIO
973 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/03/08(木) 17:35:29.57 ID:L+BXvpUco
974 :ブラジャーの人 [sage]:2012/03/08(木) 18:07:13.17 ID:j3onqwp00
975 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/08(木) 23:40:47.54 ID:cPNMKBJIO
976 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/03/09(金) 00:54:52.07 ID:IXrVrw4wo
977 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/03/09(金) 00:55:18.44 ID:IXrVrw4wo
978 :ブラジャーの人 [sage]:2012/03/09(金) 01:25:57.55 ID:QinHMsyE0
弥勒
979 :ブラジャーの人 [sage]:2012/03/09(金) 23:43:20.52 ID:zRqitSZA0
↑ 分かりにくいネタでした。
980 :ブラジャーの人 [sage]:2012/03/09(金) 23:47:52.12 ID:zRqitSZA0

とぉまぁー よい子だ ねんねしなぁ〜

右手も食費も かわりなくぅー
981 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/09(金) 23:59:54.83 ID:XYvyJG7IO
うめ

もう一二回くらい投下できたな
982 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2012/03/10(土) 17:14:20.14 ID:cmjoCDgro
ここまで追いつきましたよっと
これから3スレ目いってきます〜
983 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(徳島県) [sage]:2012/03/10(土) 23:26:20.61 ID:4n5fa6nZ0
文芸部て文字をみたらなぜか
打ち止めがでかい毛筆を持って何か書いてるところを想像した
984 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/03/11(日) 01:07:11.38 ID:rEbHuinSo
985 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/03/11(日) 02:38:50.53 ID:CdzcMYiQo
986 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/11(日) 02:54:34.02 ID:T7EwLz8IO
松竹梅
987 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/11(日) 09:49:09.17 ID:NlcVBweIO
988 :ブラジャーの人 [sage]:2012/03/11(日) 21:05:36.04 ID:zq/de5j90
裏小話

一方さんが車を買うにあたり、候補のひとつとして、フェアレディZ もいいな、と思っていた。

もちろん、「オマエは俺にとって、最高のレディだぜ」的な妄想が働いたからです。
989 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/03/11(日) 21:10:00.50 ID:bZrqtWV8o
湾岸深夜的カーチェイスか……
990 :ブラジャーの人 [sage]:2012/03/11(日) 22:42:00.25 ID:zq/de5j90
>>989 頭文字しか読んでない…… そして、38巻あたりで諦めた。
991 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2012/03/12(月) 10:50:22.49 ID:xbCU6msqo
ふと思ったが、"とある未来の通行止め"ってとあるを知らん人から見ればわけ分からんタイトルだよな
992 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/12(月) 12:07:11.42 ID:95oOD3hIO
??お、おう……
993 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/03/12(月) 14:08:38.71 ID:ZP2Y6vwgo
松竹梅
994 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/03/12(月) 16:01:05.45 ID:G4WnabVlo
うめめ
995 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/03/12(月) 16:01:52.71 ID:ZP2Y6vwgo
うめすっぱい
996 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/03/12(月) 22:18:13.47 ID:TdQgQ81f0
シスター・アンジェレネェ・・・
997 :ブラジャーの人 [sage]:2012/03/12(月) 22:34:34.89 ID:jd6ktLyk0
>>991「 禁書」を知らない人が、このスレのタイトルから想像するストーリー考えてみた。

最近はなんでも擬人化するから、交通標識たちが織りなす、ハートフルコメディなんてどうだろう。
頑なな「一方通行」 疑心暗鬼な「一旦停止」 博愛主義の「優先道路」 運が悪い「落石注意」 神出鬼没な「動物注意」 えーとまだないか。



あとは…

東西ドイツのベルリンの壁みたいに、政治的、または宇宙人進攻的な問題で隔絶された未来の世界。
ある日突然、引き裂かれた人々。この道の向こうには、愛しい人がいるのに、会いにいけない……
だって通行止めだもん。

世界は再び、ひとつになることができるのか!? 通行止め解除にむけて人生をかける男達、女達の戦い。

みたいな。

くだらないねぇ。
998 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/03/12(月) 23:21:21.39 ID:ZP2Y6vwgo
オリジナルで書いてみてよ
999 :ブラジャーの人 [sage]:2012/03/12(月) 23:46:06.04 ID:jd6ktLyk0
>>998 今はこれが、精一杯……

1000 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/03/13(火) 00:44:58.82 ID:djcHGNXRo
1000
1001 :1001 :Over 1000 Thread
 _,,..i'"':,  @    @   @
|\`、: i'、   @   @
.\\`_',..-i @   @ @
  .\|_,..-┘                    SS速報VIP(SS・ノベル・やる夫等々)
                          http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/

1002 :最近建ったスレッドのご案内★ :Powered By VIP Service
公家の首長国 @ 2012/03/12(月) 23:28:05.83 ID:DLQFjP2zo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1331562485/

恋人役をやった人を本当に好きになってしまった @ 2012/03/12(月) 22:11:24.16 ID:/dtH6/yDO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1331557884/

スーパー初心者大歓迎! @ 2012/03/12(月) 21:52:24.37 ID:+MzVkXzuo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1331556744/

結標「何でコイツと同じクラスなのよ!?」一方通行「それはコッチのセリフだ」 @ 2012/03/12(月) 21:25:51.54 ID:3EWpVR+Go
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1331555151/

ハワイアンな女の子が口開けて中指立ててるAAはやめろ @ 2012/03/12(月) 21:10:42.80
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4vip/1331554242/

ここだけ魔王の城 ただしコンマ00で魔王に膝蹴り @ 2012/03/12(月) 21:01:05.62 ID:sH7Q9g5Uo
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【ひんぬー】授業中にホモ小説読んで百合を目指す4【スパッツ】 @ 2012/03/12(月) 20:47:39.96 ID:25UgqdvAO
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【Fate】汝、自らを以って最強を証明せよ【コンマで聖杯戦争】 @ 2012/03/12(月) 20:44:03.67 ID:2DJPGdUc0
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