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浜面くんがSSを書くお話 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/07(金) 19:02:02.38 ID:i7QP7kDX0
アイテム和解後のパラレルワールド。
初心者向けSS講座的なスレです。
間違いや矛盾などあれば容赦なく指摘して頂けると幸いです。
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諸君、狂いたまえ。 @ 2024/04/26(金) 22:00:04.52 ID:pApquyFx0
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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714054765/

渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714052788/

二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714049241/

佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/07(金) 19:02:50.17 ID:i7QP7kDX0
「最近何かこそこそしてると思ったら、脚本を書いていたんですか」

と絹旗最愛は言った。

「絹旗か、おはようさん」

暦の上では十一月。秋の涼しさも過ぎ肌寒い季節のなか、浜面仕上はその大柄な体と茶色に染めた髪が何とも不釣合いなコタツに入りながら何かを書いている。

「おはようございます。浜面はゴリラみたいな体なのに超寒がりなんですね」

「確かに体は鍛えてるけどさ、運動選手と同じで体脂肪率低いんだよ」

なにかと『超』をつける独特の口癖を持つ彼女は、不思議そうな目をしながら尋ねた。浜面いわく運動選手のような体らしい。そう自負するだけの事はあり、彼の体は絞られた肉体であった。

「脚本なんか書いて映画でも作るんですか? 超浜面の作る映画だと超Z級になりますね!」

「ちげーよ! それと俺が書いてるのはSSって奴だ。ところで頼みがあるんだけどさ」

「何ですか? くだらない用事なら超窒素パンチですよ?」

そう言いながら彼女は小柄な体を精一杯伸ばし食器棚からコップを取り出し、牛乳を注いでいた。
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/07(金) 19:03:31.01 ID:i7QP7kDX0
「最近SS書いててなんかしっくりこなくてよ、なんかコツみたいなの分からないか?」

彼らは学園都市の暗部組織である『旧アイテム』構成員である。
過去に他の暗部組織である『スクール』の襲撃や麦野の暴走があり壊滅状態となり、学園都市とロシアでの戦争や他勢力らの暗躍によりアイテムを含む全暗部組織は実質的に壊滅した。
その後、ロシアに逃げていた浜面たちを追ってきた学園都市の刺客から、最高機密のデータチップを奪取しそれを材料に上層部と交渉。
その結果抗争に生き残った『新生アイテム』は以前のような裏の仕事が入ってくる事もなく、平和な日常を過ごしていた。
しかし全ての暗部が壊滅したとは言え『新入生』のように新勢力が現れるとも限らない。なので現在は麦野が個人名義で買い取った旧アジトで共同生活をしていた。
最近では裏の仕事のみならず最近では依頼自体がなく、各メンバーは個々で趣味に没頭したりと自由を満喫している。
今までコレと言った趣味の無い浜面はネットサーフィン中に偶然見つけたSS投稿サイトでSSに興味を持ち、自身のアクション映画のような体験を元にフィクションを交えてSSを書こうとしていた。

「何で私に聞くんですか?」

「いやほら、お前ってよく映画見てるじゃん? だから構成とかそう言うのに詳しいかな〜って思ったんだよ」

絹旗最愛は大の映画好きだ。休みの日は必ず映画館に足を運んでいると言ってもいいほど映画を見ている。ただし彼女が好むのは俗にB級と呼ばれている物で彼女以外の客はほとんどおらず、館内は同行した浜面と二人かせいぜい五人程度だ。
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/07(金) 19:04:07.79 ID:i7QP7kDX0
「私が好きな映画は超B級ですよ? 構成とか無茶苦茶ですし」

「何が駄目なのか分かるとその逆をすればいいんだろ?」

「反面教師って事ですか。まあB級以外を全く見ない訳でもないですし、これでも私は映画自体に造詣が深いと自負してます!」

「だろ? な、頼むから教えてくれよ」

「全く浜面は超浜面ですね。この超映画評論家の絹旗様に媚びへつらうなら教えてあげない事も無いですよ!」

「ははー。絹旗様哀れな私めにどうかご教授を」

浜面は土下座のようなポーズをとり絹旗に教えを仰いだ。

「仕方が無いですね。超馬並の知能しかない浜面のために教えて差し上げましょう! その前に今書いてる奴を見せてください。浜面がどんなレベルか分からないと説明のしようがありませんし」

「これなんだけど、なんかこうさ?」
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/07(金) 19:04:54.32 ID:i7QP7kDX0
――――――――――
「・・・・いてて」
俺の名前は浜面仕上。
色々あって学園都市と抗争する事になっちまた。
「死ねッ!!!!!!!!!浜面!」
「うお!!!??この野郎!!!!!!」
俺は素早い動作で拳銃を抜くと追っ手を撃退した。
「ちっ!負っ手がここまできたか」
数々の追っ手から逃げ切った俺は、敵の本部で親玉と退治した。
銃弾の飴が降り注ぐ!!
器用貧乏な俺は銃の扱いをそつなつこなすがその道のプロにはかなわねえ。
「さて・・・どおしたもんか」
どっかの警部もびっくりなハードな事件だぜ。
「・・・・あれは!!!!??」
何とボスの足元が崩れかけていた。
そこですかさず俺は手榴弾を投げ込んだ。
ズドーン
轟音が響いて親玉は落ちていった

終わり
――――――――――
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/07(金) 19:05:36.00 ID:i7QP7kDX0
「超窒素パーンチ!」

「ぐへッ!」

後頭部を殴られた衝撃で、浜面はコタツに顔面を打ち付けた。

「色々あってって何ですか!?」

「痛ッ……色々は色々だよ?」

「他にも『!?』をバカみたいに使って文章を誤魔化したり、誤字や誤用が多すぎです! 基礎の基礎どころか超日本語から教えてあげないといけないみたいですね」

「だって」

「黙りなさい馬面、少し待ってなさい馬鹿面、病院に行って脳を見てもらいなさい阿呆面」

「酷ッ!」

絹旗は有無を言わさず浜面を罵倒し物置部屋に向かって行った。
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/07(金) 19:06:12.20 ID:i7QP7kDX0
〜最愛ちゃんの映画構成講座〜

絹旗は物置部屋から少しほこりを被ったホワイトボードを取り出し、十五個の問題点を書き出した。

「口で言っても理解できないと思うのでここにいくつかの重要なポイントを書きます。何を書きたいのか知りませんけど、正義のヒーローが活躍するアクション映画を基準にして説明しますね」

「アクションは映画の王道だよな」

  /: : : : : /: : : : : : :./: : /: : : /:;イ: : : : : : : : : : : :.!  ■主人公は誰?
  |: : : : :/: : : : : : :./: /: : :_:彡 '"/: :/: : : : : : :.|: : : !  ■目的は何?
  |: : : : :| : : : : : :/,斗-‐ "\  /: :.! : : : : : : :|: : : |  ■事件がおきて主人公の人生はどう変化した?
  |: : l: : |: : : : : : /,,ィ==ミ、  \ i!:/:|: |: : |: :.| : |: : : !  ■主人公が最も幸福なのはいつ?
  |: : |i! :| : : : /:/.{ ハ;;;ヒ. ヾヽ  `|:|: |!: !: :.!: :i: :/ : : i   ■主人公にどんな能力を持たせるの?
  |: /.|!: | : : : :/ \;ソ 〃   |'|:.|.{: i :.i: :.!:/: : :j   ■主人公が自身の一つ変更が可能なら何?
  |/: :|!: |: :/:./             |:| ヽ乂: :.!': : : :/    ■主人公が自力で達成した最も凄い事って何?
 ,从/:i| :|: |:/           ,ィ;r‐ォ .〉:|: :|: : : /    ■主人公が最も大事にしている持ちものは?
ヽ .// |:/|: !:!          ,イツ,/ィ:乂从: :./       ■主人公最大の無駄は何?
::::.}  |' .|:.|:!            〉 ` /: : : : :/:./      ■何故簡単な手段を選ばずその選択をするの?
:::::|  / .|;|:| ヽ  r "~>     ∧: : : ://::/       ■主人公が最も後悔している事は?
:::::|   /ハi:::::|ヽ、__  _  イ: : : :/,/ "        ■主人公がする最初の大きな選択は何?
:::::|ヽ  -‐/::::::|  ヽ  |: /: : /: :./             ■主人公の大きな選択によって何が起きるの?
::l::|ミ、__ ,ノ:::::::/ |  ! |/: : /"´               ■他の登場人物はどんな影響を受けるの?
::l::ト  -‐!:::::/ /,  | | レ'                   ■浜面キモイです。
::l::|   i!:::/ 〃   |        r.、     /)
::l::|   /:://-   |         | .|     //./)
::l:i  /::::|!     ノ|         / '、,,_/.///
::li /:::::i |― ‐ ' ~ イ      /   !  `'_ィ'____
:::レ'::::::::::! ゝ―‐ ~  |      |    ハ.   ,.―― '゛
r‐'::::::::::i!  |     |     人  /  { _`ニニニァ
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8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/07(金) 19:06:59.67 ID:i7QP7kDX0
「先ほどの文と呼ぶのもおこがましい物は目的が完全に謎です。むしろ何を考えたらあんな文章が書けるんですか?」

「思ったことをそのまま書いたんだけど……てか一つおかしいよな? 十五個じゃなくて十四だよな?」

「窒素パンチをお見舞いされたいんですか?」

「はい、先生、問題ありません」

「よろしい。そして浜面が書いていたのは文章じゃなくて超ネタを並べただけです。まともな文章にするための説明を一から順にしますよ? 最初に主人公が誰なのかですが、基本的には一人ですが複数人いても構いません」

「はい、先生、主人公は大体一人です」

浜面は絹旗が物置部屋に行っている間に自室からノートを持ってきていた。粗暴で大雑把そうな見た目からは考え難いが、彼は意外と几帳面な性格をしている。根が素直で良い物を取り入れようとする姿勢は彼の美点であった。

「複数の主人公がいる作品はありますけど、逆に主人公がいないのはほとんどありませんね」

「あ〜確かに」

「別に人である必要はないですから厳密に言えば『主役』ですね」

小説においても主役が必須であり、話の展開と主役は絶対関係しなければいけない。主役がいなかったり、主役が話の展開と関係のない場合は『物語』であり小説とは区別されている。
映画においても主役は必要であり、主役とは生物以外にも深海の生物を主としたドキュメンタリー映画のような生と死などの『概念』が主役であったり、オーロラなどの『現象』が主役の作品もある。
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/07(金) 19:07:29.20 ID:i7QP7kDX0
「次に目的ですが、追加で『戦う理由』もありますね。大体の映画にバトルがあるので『生きる理由』、『救う理由』、『倒す理由』など目的と戦う理由が超密接に関係してます。戦いと言っても殴り合いや銃撃戦だけじゃなくレースバトルとかの『競う』性質や、『駆け引き』の恋愛もバトルと言えますね」

「明確な目的がなければ何をしたいのかわからねえしな」

「サスペンスとかみたいに序盤は目的を隠したりぼかして、主人公と共に話の全貌を解明していく作品もありますけど脚本家が目的を決めてないと話が何処に行くのか分かりません」

「アクション映画は最初から目的がはっきりしてるのが多いよな?」

「アクション映画はサスペンスなどと違って『爽快感』が求められるので、目的が余りに複雑だと爽快感が薄れるんですよ。だからと言って最初から何でもかんでも教えろって言うのは違いますけどね」

それはアクションシーン自体であったり一例であって、アクション映画でも後味の悪いバッドエンドも当然存在する。また、セオリーを全て無視したZ級映画も存在する。

「分かりやすさと言うのは三個目に主人公の人生はどう変化したかにも関係しています。目的が何にせよ事件が起きる訳ですから主人公の暮らしにも変化がでます。逆に一切の変化がなければ放置してればいいだけですし事件とは言えません」

「俺みたいに責任を取らされて暗部落ちの奴もいるしな」

「浜面の事は超どうでもいです」

浜面は過去に御坂美鈴の殺害を学園都市上層部より依頼され上条当麻によって阻止された。その責任を負わされ暗部に落ちたのである。
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/07(金) 19:08:37.69 ID:i7QP7kDX0
「四個目は主人公が最も幸福なのはいつかですね。不幸だけだと事件関係なしにただ不幸なだけですし落差がないと盛り上がりに欠けるんですよ。ゴムは引っ張って限界まで伸びた所を一気に開放するから威力が出るんです。大体はハッピーエンドの瞬間ですけど、最初が一番幸せでどんどん落ちていく種類もありますね」

ダウナー系の映画のうち初めから最後まで常に不幸で救いのない作品もなくはないですけど、今は覚えなくてもいいと絹旗は付け足した。

「けど伸ばし過ぎると伸びきってだらだらになるよな」

「それが中弛みですね。推理物とかならともかく、伏線を張りまくって引っ張りに引っ張るだけだと飽きますし、話に関係のないシーンはトイレタイムと言われることもあります」

しかし彼女なら例えトイレタイムと呼ばれるシーンでもしっかり見るのだろうな。と浜面は思ったが『超B級作品は最初から最後まで一秒たりとして無駄なシーンはないのです!』と言われるのが目に見えていたので口には出さなかった。

「ちょくちょく盛り上げる場面も欲しいよな」

「超アクション映画だとお客さんを飽きさせないために数十分ごとに盛り上げ所を作ってますね」

「盛り上がりと言うとド派手な爆発シーンとかカーチェイスとか派手なシーンって、最初と中盤か後半締める前だよな」

「大体は起承転結の承転の部分ですね。開始直後にドーンって爆発を起こして注目を引かすのもいいんですけど、最初から飛ばしすぎると中盤以降に飽きられる可能性が高いんですよ。感情は振れ幅によるので、開始直後は例え数十秒だけでも『日常』を表現してそこから『非日常』に持っていくのも手法の一つですね」

特に『予算』が限られる映画においては、最初から激しい状態が続くと、爆発しても『それが当然なんだ』と思われてしまい、後半の派手なシーンを取るのに多大なる予算と労力を使う事になる。
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/07(金) 19:09:09.08 ID:i7QP7kDX0
「難しいんだな」

「まだ半分も説明してませんよ? 五個目に主人公にどんな能力を持たせるのかです。これは能力者と言う意味じゃないですよ? 交渉術や格闘術、銃の扱いとかも込みですね。ただし超持たせ過ぎると主人公無双になるので注意が必要です」

「主人公が無能だと事件を解決できねーもんな。だからと主人公が武道の達人でひたすらに無双とかも見てて何て言うか……」

「駄目とは言いませんけどね。でも主人公が何でもかんでも解決しちゃうので超話が広がりませんし、それでも話を盛り上げようとしたら人質とか話の選択肢が限定されるんですよ」

「確かにアクション映画の主人公って行動力とか使命感とか『これだ!』って能力を持ってるけど、何か抜けてたりする方が魅力的だよな」

「浜面は超抜けっぱなしですけどね!」

人は完璧なものに畏怖や尊敬の意を示す事はあるが決して親近感は沸かない。真に人気があるのは崇拝すべきものではなく、何のへんてつもない少しドジな隣人である。
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/07(金) 19:09:39.35 ID:i7QP7kDX0
「六個目は主人公が一つ代えれる事が出来るなら何かです。さっきも言いましたけど、超万能だと話が広がりませんし欠点がないと面白くありません。その欠点を埋めるために脇役や小道具があると言っても過言ではありませんし、敵がそれを持ってる場合もありますね」

「俺の扱い酷! まあ抜けてるのは否定しないけどさ」

「浜面は所詮バカ面なんですよ。まあ浜面は無能力者ですが無能じゃないのは、オマケでギリギリ何とか仕方がなく認めてあげますよ」

「やっぱり俺の扱いってそんなんなのな」

「超浜面の癖に私に口答えするんですか? 指導してあげませんよ?」

「申し訳ありません絹旗様!」

浜面は音速の約二パーセントくらいの速度で土下座した。絹旗は彼のことをバカにするかのような態度を取ることもあるが本心では信頼しており、悪態をついたりするのは親しさ故のことである。
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/07(金) 19:10:11.05 ID:i7QP7kDX0
「仕方がないですね。七個目に主人公が自力で達成した最も凄い事です」

「主人公が何もしなかったり、他キャラだけが頑張って事件を解決ってのは主人公がいる必要がねえもんな」

「アクションだと大体は敵の親玉を倒す事ですね」

「でも脇役が親玉を倒す事もあるんじゃないのか?」

「その場合は超解釈次第ですけど、別に倒す自体が重要と言う訳でもないです。例を出すと主人公が命をかけて爆弾を止めてる間に脇役の活躍で事件が解決したりなどもありますし、その場合は主人公のお陰で敵を追い詰めるって感じですかね」

「倒すだけじゃないんだな」

更に言うと『凄い事』であって話と直接的な関係がなくてもいい。ただし余りに無価値なことや関連性がないものだと主人公である必要が薄れる。
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/07(金) 19:10:40.71 ID:i7QP7kDX0
「八個目主人公が最も大事な持ちものです。これは別に道具とかである必要はありません」

「ペットとかでもいいのか?」

「そうですね。他にも信条とか超プライドだったり恋人とかもありますよ」

浜面には身に覚えがあった。かつて愛する者を救うために超能力者を撃退した時。
彼は異能の力も特別な格闘技術も『持たぬ者』。対する麦野は単体で軍隊を相手に戦う事が出来る超能力者だ。
その超能力者にとって玩具に等しい拳銃しか彼に武器はなく、ただ愛する人のためだけに必死に策を練り、心の隙を利用し、地の利を知り撃退したのだ。一度ならず三度も迎撃したのは運以外に彼の恐ろしいまでの執念であった。

「二つ目の目的と関係しているものも多くて主人公の所持品が事件の発端になったり、主人公の彼女が実は○○でしたってこともありえますね」

「滝壺は何もないよな?」
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/07(金) 19:11:11.26 ID:i7QP7kDX0
「続いて九個目は主人公最大の無駄です。行動や物、人生など色々ありますが必要な所に必要な物を必要なだけ、だとさっきから言い続けているように話が広がりません」

「映画見てて『何でそれをしなかったんだ!』ってのも多いもんな」

「逆に『何でそこまでしたの?』と思う主人公もいますけどね」

「十個目も九個目に近いですね。何故最も容易な手段を選ばずその選択をするのかです」

「はい、話が広がらないからです先生」

「正解です。最初の登場シーンでいきなり主人公が超銃殺されたとか話が広がるとか以前の問題ですし、わざわざ敵に銃を突きつけながら話し込んで逆転されるのもお約束ですね」

「わざと過ぎて見てる方は『早く撃て!』ってもやもやするけどな」

「もやもやも超演出の一つですよ。ただし余りにもやもやさせ過ぎて、お客さんに不満を感じさせたら駄目ですけどね」

「イライラする映画は途中で帰りたくなるもんな」
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/07(金) 19:11:52.22 ID:i7QP7kDX0
「十一個目は主人公が最も後悔している事です。簡単に言うと影をつけることですね。今までの話でもそうですけど清廉潔白で万能で無駄の無い主人公は面白みがないです」

「欠点の一つか」

「聖人って機械的なんですよね、人間らしさが全くないですし」

「ロボット無双って奴か? まあ順風満帆な人生を歩んで万能な主人公だと単調だしな」

逆に事件前までは順風満帆な人生を歩んでた主人公が事件によって何かを失ったり後悔するのも映画の王道だ。
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/07(金) 19:12:38.59 ID:i7QP7kDX0
「続いて十二個目は主人公がする最初の大きな選択です。これによって超事件が引き起こったり、逆に事件が起きたからこそ、初めて非日常の世界で主人公が自発的に解決しようとする意志の表れとも言えますね」

「小説の話だっけ? 必然性とか」

「映画でもそうですね。選ぶ内容そのものは関係ありませんけど必然性のない物は脚本でなくネタの羅列です」

主人公が無意識無自覚で結果的に『選んでしまった』ものや何も選ばないのも『選ばない』と言う選択肢の一つであり、それによって話の方向性が決まったり伏線になる事もある。

「十二個目もですが最後の二つは密接に関係してるので、このまま一気に言いますね『主人公の大きな選択によって何が起きるのか』と『他の登場人物はどんな影響を受けるのか』です」

「そりゃ誰も何も影響を受けなければ大きな選択も事件もおきねーからな」

「その通りです。映画においては、ほのぼのだろうがアクションだろうが必ず一度落として持ち上げたり、その逆だったりします。そうでなくては写真や日記を見てるのと変わりません」
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/07(金) 19:13:22.23 ID:i7QP7kDX0
「つまり『明確な目的のために主人公を作って動かす』、『単調にならないために所々に盛り上げ場所を作る』、『話を広げるために問題を作る』、『そして解決させる』だな!」

「脚本のお約束と言ったら大体そんな感じですね。でもそれらは逆説的にも言えることです。『主人公を活躍させるために目的を作る』、『盛り上げるためにあえて単調なシーンを作って振れ幅を大きくする』、『問題があるから話が広がる』、『解決する目的を作る』」

「証明みたいな感じだよな」

「それは当然です。人為的に話を作って人を楽しませるには理由が必要ですし、その理由はほぼ全て『話を伝える』ようにするためです。でもこれは超映画の話なので小説はまた別かもしれませんよ?」
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/07(金) 19:13:53.13 ID:i7QP7kDX0
「お約束は分かったけど面白い話にするにはどうすればいいんだ?」

「脚本は面白さもそうですけど、どちらかと言うと筋が通っているかとか完成度を重視しますので、面白さは演出家の役目じゃないですかね? それに面白いつまらないは個人の感性によるものが大きいので一概には言えません。しかし一つの目安として映画で言うとアクションヒーローや恋愛ヒロインみたいに憧れの部分とかもあるんじゃないですか? 他にも共感や普段起きない事件がおきたり普段より大きなことがおきたり。結局はギャップとか感情の振れ幅だと思います」

「感性か、でも完成度も重要だよな」

「確かに完成度が高ければ納得度も高いですし品質はいいですけど、キャラを歩かせて話を広げる手法もありますし荒削りでも面白いと感じる人は多いですよ」

映画や小説においてキャラが勝手に動くことは多く『主人公を活躍させるために目的を作る』場合が顕著な例である。『そのキャラならこうするであろう、ああするであろう』が強く出る場合、キャラに歩かせることで魅力的な目的が出来ることがある。利点としてはキャラが独立しキャラそのものの魅力が増大するが欠点として作者が設定を忘れてしまう危険性ことがあり、目的や話その物に矛盾が生まれたりする場合もあるので注意が必要だ。
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/07(金) 19:14:58.37 ID:i7QP7kDX0
「けど、後半ふと路線を変えたくなる時とかはどうするんだ? ほのぼのからシリアスになったりダウナー系になったり」

「漫画じゃないんですから予定外の路線変更は基本的にありませんよ? 多少はありますし短いシーンや序盤ならいいですけど、映画と漫画とでは根本的に労力が違うんですよ。放映時間は大体三時間以内ですけど制作期間は一年以上かかることが多いですし、七、八割作ったところで意味もなく急に変更すると下手すると数億円規模の損害がでます」

人件費、破壊した大道具、これから必要な大道具など人も設備も余分に必要なので余程の理由がなければ大きな路線変更はしない。

「それとダウナー系と言っても種類がありますよ、現実の理不尽さを表現するとか」

「人の汚い部分を表現するとか?」

「『汚い』って何ですか? 宗教を例に出しますけど十字教の教えに七つの罪があります。『暴食』、『色欲』、『強欲』、『憤怒』、『怠惰』、『傲慢』、『嫉妬』これらは人の汚い部分と思いますか?」

時代により八罪とも言われたり内容も多少変動するが、現在では七つの罪とされている。

「宗教家がそう思うならそうなんじゃね?」

「私は違うと思います。確かに限度はありますけどこれらは人の本質じゃないですか?」

七つの大罪と名付けられているが本質は『お腹がすいた』、『子孫を多く残したい』、『沢山欲しい』、『腹が立った』、『面倒だから後回しにする』、『皆に凄いと思われたい』、『自分と違うものを見て悔しい』と言う元々人の持つ感情である。度が過ぎれば異常と判断されるが、人が元々持っているものを色濃くしたのを汚いと名付けるなら人は感情を消さなければならなくなり、それは人ではなく人形だ。
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/07(金) 19:15:51.01 ID:i7QP7kDX0
「人は汚いものですから『人の汚さを表現する』のではなく『人の本質の一部』を表現すると言った方が正しいんじゃないですかね? 結局のところ主観ですしそこまで深く考えなくてもいいですけど」

「宗教的な考えと言うか、哲学ちっくだな」

「哲学は宗教家のものだけとは限りませんよ? 考えや感情は大脳生理学や心理学と密接に関係してますし」

「考えが必要か」

「何を作るにも考えが必要です。自分が理解できないことや理解しようとしないことは書けませんし書いても陳腐になるだけです。汚さを書くにしも綺麗さを書くにも本質を理解しようとしなければ分かりませんので、主人公の本質は作者の自己であったり願望の投影が多いですね」

歴史上の小説を例にあげると新潮文庫だけで累計六百万部を突破した『人間失格』は、たった百五十ページのなかで狂気を濃密かつ残酷に表現された作品だ。しかし作者の太宰治は三十八歳で自殺しており、彼の人生そのものが狂気であったとも言える。映画監督や脚本家にも精神に異常をきたした人の作品は引き寄せられるような物が多く、もしかすると人は本質的に破壊や狂気を望み、それに魅了されるのかもしれない。人は理解を超えたものを見たとき恐怖や畏怖を感じる、ただし意味のない混沌である場合は人によっては、『無価値』と認識されることもある。
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/07(金) 19:16:22.62 ID:i7QP7kDX0
「ただしダウナー系でない作品に考えすぎや詰め込み過ぎるとくどくなるので箸休め代わりに小ネタとかもいれないと見るのがしんどいですよ」

「かなり参考になった! ありがとうな絹旗! でも俺が書いてるのは小説じゃなくSSな」

「私は余り本を読まないのでSSと小説の違いがわかりません」

「似たような物だしまあいいや。教えてくれたお礼に今度映画連れて行ってやるよ!」

「私はバカ面に連れて行って貰うんじゃなくて、私が超惨めなバカ面を連れて行ってあげるんです!」

「はいはい、その通りでございます絹旗様。ほれ飴やるよ」

「むきー!」

そう言うと絹旗は浜面に窒素パンチをお見舞いして『爆裂! 5時間連続ホラー映画祭り』を見に行った。しかし飴を頬張り歩く姿は何処か嬉しそうでもあった。
23 : ◆cmIC2ACkpo [saga]:2011/10/07(金) 19:17:33.58 ID:i7QP7kDX0
今日の投下はこれにて終了いたします。
明日もこのくらいの時間に投下予定です。
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/10/08(土) 00:27:38.52 ID:O5hO4MRAO
乙!
そんな1を応援してる
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/08(土) 18:56:20.87 ID:MoEXM0li0
投下開始します。
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/08(土) 18:56:55.61 ID:MoEXM0li0
「最近何かしてると思ったらはまづらは小説を書いてたんだね」

奥の部屋から絹旗と交代するかのように滝壺理后が出てきた。
浜面は暗部に落ちそれまで気心の知れた仲間達と離れ、人の命が飴玉よりも軽い世界にショックを受けていた中、無能力者の自分を守る為に超能力者であり、しかも学園都市序列第二位の垣根に立ち向かって行った彼女に心を打たれた。そして上条の言葉を思い出したことをきっかけに仄かな恋心にも似た物を胸に秘め学園都市に反撃の狼煙を上げることになる。
そして辛くも勝利をあげ思いが実り現在は滝壺と交際関係にあった。

「暇つぶしにな。それと俺が書いてるのは小説じゃなくてSS。滝壺はSSに興味あるのか?」

「はまづらの言うSSはちょっと分からないけど、小説は読む方だよ」

「構成はさっき絹旗に聞いたからある程度分かったけど、小説の方の決まりって言うかそう言うのを聞いてもいいか?」

「うん。わかったはまづら」

「おお! ありがてえ」

「はまづらが書いたSS見せて」

「おう! と言ってもさっき聞いてから手直ししてないから、今から短編を書くな!」

滝壺は少し微笑んだような表情でSSを書いている浜面の顔を見ている。口には出さないが読み物と言う共通の趣味を見つけて嬉しくてつい頬が緩むようだ。

「書き終ったらご飯にしようか」

「おう、滝壺の飯は美味いから楽しみだ!」
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/08(土) 18:57:33.27 ID:MoEXM0li0
昼食は握り飯と焼魚にキュウリの浅漬けが添えられていた。浜面は握り飯を口にすると滝壷に声をかけた。

「うむ。梅干が入っているのか。梅のほのかな酸味と海苔の食感が食欲を増大させておる」

「海苔は関西の味付け海苔を使用しております」

味付け海苔は醤油と砂糖、香辛料などで味付けがされた海苔だ。加熱乾燥されており、パリパリと海苔の食感を残しつつも、唾液によって調味料の味、香りが口のなかで広がる。
続いて浜面は漬物にも手をだしたのはキュウリの浅漬けであった。

「これもよき塩梅だ」

旬のキュウリは瑞々しく、酢の酸味とシャキシャキとした食感が心地よい。

「こちらもいかがですか? 七輪で焼いた秋刀魚でございます」

大根おろしが添えられており、ゆずの香りが……

「時代劇ごっこはもうやめて普通に食べようか」

「滝壺って案外ノリいいのな」

「秋刀魚は普通に焼いた奴だよ」

「油が乗ってて美味いな」

「もう十一月だしそろそろ旬も過ぎるね」

二人は時代劇ごっこが終わった後もなぜか淡々とした雰囲気で昼食を取り終えた。浜面は流しに食器をつけ滝壷にSSの評価を依頼した。
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/08(土) 18:58:11.36 ID:MoEXM0li0
「飯も食ったしさっそくだけど見てくれ!」


――――――――――

「どれがいい?」
俺は、ズラリと並ぶバッグを眺めて言った。
「・・・はまづらは、どれがいいと思う?」
と、滝壺は言った。
「どれも似たような物・・・・・じゃないのか?」
「・・・真面目に選んでよはまづら。」
俺は腕組をして返事をした。実際バッグの違いがいまいち分からない俺は、どう返事をしていいのかも分からないからだ。そもそも俺が滝壺の買い物に付き合っているのは、昨日ゴミと勘違いして滝壺のバッグを捨ててしまったからだ。
「だから・・・こうして弁償するために、HEAVEN MISTまで来たんだろ?」
ーーーHEAVEN MISTは女性向鞄量販店だ。人気ブランド物やセンスのいい格安ノーブランド物なども取り扱っているので女性に人気である。
「・・・・むぎの物凄い剣幕だったよね。」
「あいつ怒ると怖いからな・・てかバッグ駄目にしてごめんな。」
女性にとってバッグはとても重要な物らしいが俺にはいまいち分からなかった。
「ううん、久し振りはまづらと買い物にこれたしいいよ。それよりせっかくきたんだから楽しも?」
「俺は余り見るものないけどな。そうそう3万円以内で頼むな。」
「うん、あのバッグもそんなに高くない物だし、別にブランドに拘ってもないよ。」
一応アイテムの構成員として給料は貰ってるけど所詮は下っ端。三万円と言えば月給の0.9割ほどの額だ。だが愛しの滝壺の為なら3万円くらい嫌じゃないし、そもそも弁償だしな・・・。
「そのトートバッグはどうだ?」
「んー・・・・肩からかけれる方がいいな。」
「バッグなんて使えたら・・・・どれも似たような物じゃないのか?」
俺は世の男は女の買い物の長さにうんざりするもんだと身をもって感じた。
「・・・・たかがバッグと思ってるでしょ?はまづらのプレゼントだから長く大切に使いたいんだよ」
「そんなもんか?」
「そう言うもんだよ」
俺は「女の考える事はわからん」と言いたかった。けどそれを言ってしまうと何かとんでもないことが起こりそうだからやめておいた。
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/08(土) 18:59:06.93 ID:MoEXM0li0
何気なく陳列されたバッグを見たらこないだ雑誌で特集が組まれていたバッグを見つけた。
「・・これなんかどうだ?」
「あ・・・それいいかも」
俺が指をさしたのは、革のスリーウェイバッグだ。しかも学園都市との技術提携で妙に丈夫らしく最大で500sも入れれるらしい。
「でも・・・・・それってアスカロンのだよね? 値段は大丈夫なの?」
アスカロンと言えば、デザイナーのウイリーア=ムアックアーがイタリアの超高級ブランド『カミー=ノウーセキ』から独立した新生ブランドだった気がする。
一般人でも買える範囲らしいがそれでも俺の財布からすると手の届き難いブランド物だ。しかし値札には2万円と書いてあった。
「妙に安いくね!?これでいいじゃん!500キロも入るみたいだし」
「500kも私は持てないし、このサイズのバッグにははいらないよ。HEAVEN MISTはアスカロン直輸入だから結構安いのとそれに・・・・・ほら見て」
滝壺は当然0.5トンも持てるわけがなく、滝壺はバッグの横にある注意書きのプレートを指差した。そこには『ファスナーの一部が破損している訳あり商品』と書かれていた。
輸入物が高い理由は中間業者の手間賃が上乗せされてるからって聞いたことがあるし、直輸入で訳ありなら安いのも納得がいった。
「他の店だと5万円ちょっとはするもんね・・・・。お買い得だからこれにしようかな」
滝壺も気に入ったみたいだし予算にも合ったので俺はバッグを持って会計しに行った。
「彼女さんのためですか?」
「そうなんですよ〜昨日あの子のバッグを駄目にしちゃって・・弁償も兼ねて買い物に付き合ってるんすよ」
俺は照れながら会計を済ませ滝壺のもとに向かった。
「バッグを駄目にしてごめんな・・・・。これで許してくれるか?」
「うん。あのバッグはボロボロで近々買い換えるつもりだったし、久し振りにはまづらと出掛けられたのも楽しかったよ」
こうして俺と滝壺のお買い物デートは終わった。

終わり


主人公:浜面
185p、茶髪、ジャージにジーパン、17歳

ヒロイン:滝壺
165p、黒髪ショート、巨乳、上下ピンクジャージ、16歳
――――――――――
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/08(土) 18:59:50.56 ID:MoEXM0li0
「日常をSSにしたんだね」

「おう! こないだ滝壺と一緒に買い物に行った時のことを参考にな」

「はまづらが酔って帰ってきた日に、私のバッグを枕代わりにしてヨダレでベトベトにしたから買い換えたもんね」

「その件は真に申し訳ありませんでしたッ!」

浜面はまたしても音速の約二パーセントの速度で土下座した。彼は先日、元スキルアウト仲間の半蔵と町中でばったり出会い、そして勢いのままスキルアウト達のアジトに招待され酒をふるまわれ、ついつい飲みすぎたのである。

「別に気にしてないよ。それより最後のは何?」

「へ? ただの登場人物解説だけど?」

「作中で容姿を説明するのは普通だけど。最近の小説って、はまづらがやってるゲームみたいにステータスが出るの? あと、身長を少し盛ったね」

「普通はないのか? あと、ちょっとくらいいいじゃん」

「二巻目とか続き物だとプロローグの前に『これまでの登場人物のプロフィールと歩み』とかあるけど、短編とか序盤ででプロフィール説明は聞いたことがないかな。多分駄目って明確な決まりはないと思う。私の読んでる小説はこう言う手法自体がないから、よく分からないけど推奨はしないよ?」

容姿の説明などを本文以外で書いてはいけないと明確な決まりはないが、小説においては可能な限り『作中で説明』した方が良い。
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/08(土) 19:00:57.10 ID:MoEXM0li0
「あと、このホワイトボードに書いてるのは消してもいい?」

「ちゃんとノート取ったから大丈夫だぜ」

腕と連動し滝壺の豊満な胸が右に左に揺れる。普段からジャージ姿で分かり難いが彼女は胸が大きく、腕を動かすとかなり揺れていた。浜面の下半身に血が集まったが彼は駒場の顔を思い出し、必死で耐えていることに彼女は気付いていなかった。

「言いたいことは色々あるけど順を追って説明していくね」

そう言うと滝壺はホワイトボードに書いている文字を消し浜面の書いたSSの問題箇所を書いていく。

――――――――――

・どれも似たような物・・・・・

・ーーHEAVEN MISTは女性向鞄量販店だ。

・「妙に安いくね!?これでいいじゃん!」

・「真面目に選んでよはまづら。」

・「三万円と言えば〜為なら3万円くらい〜」

――――――――――

「これだと読み難くなっちゃうんだよはまづら」

「え? 何処が駄目なんだ?」

「小説って言うのはいくつか決まりことがあるんだけど、基本的には読む人が見やすくなくちゃいけないんだよ」
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/08(土) 19:01:36.17 ID:MoEXM0li0

             _ __
           ‐::"::::::.:::::::::::::::ヽ
      /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::ハ
.      /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ハ   ■沈黙などに使う点は『・・・』ではなく『…(三点リーダ)』
     /::::::::::::::、::ヽ:::、:::::ヽ:::::::::::::::ハ  ■回想や線引きに使う線は『ー』ではなく『―(ダッシュ)』
     |:::!:::l::::::|::!!:::|、::|从;;ハ;:::::::::::::ハ  ■そしてそれらを使う場合は二つで一つ『……』『――』
     |:::|:::|::!::|V.W '",- __ !:::!、::::::ハ   ■『!』や『?』は全角に統一して使った次は空白にする。
.      |::::ゞ" ̄ミ.    ヘ:メ゚} i:::|.!::::|::ハ     ・ただしカギ括弧の最後に付ける場合は空白は必要がない。
      i!::::ヽ;ィf;う,    ゙" .i:::|ハ:::|::|:ヽ, ■カギ括弧の最後に『。』はつけなくていい。
.      i!:::::::ヽ`"  l   ""i::|〃、::|::从 ■固有名詞以外でアラビア数字と漢数字を一緒に使わない。
       i!:i::::、ヽ.""        i::|"::| ::|::|:/ヽ■はまづら大好き。
       从:::::ヽへ、_  ゚  /V:川乂ヾ
         \ヽ|〈 ハ..l` ‐" ./ |ヽ、_
         レ'_ヽ. | 〉   / //、. \
         //ヽ.ゞ二/ /   \ \
        //  .〉ヘ / \   ./`,  i!
      |∧  /  V.   \ / .|   |
      |  !|/    __ __  , 、. V  |   |
      /  y    /ヽヽ.}弋彡 | / |   |
      /  |  /チニ~ヽ  ヽ.   |/  |   |
     /   | レ'"__ヽ   ト,   |  .|   |
    /  ヽ { .| '",,_.Y   /::::|ヽ、 |/ .|   |
    / -‐ヽ/:ゝ ゛|ゞ、-‐":::::/ 、 ヽ<j、  |
   / -‐/-|::::ヽ、| '"`ヽ::::/~  ヽ   ヽ i!
   ゝ-‐‐" ∧::::::/"   `ヽ、      i i!
   |       / -<  ヽ, "'-..,,_   /
   ヽ _,,..-''"´/" ~   \ \   ´""!
    // 〃/-‐ ‐-    、 ヽ 、\\

「俺も滝壺のことを愛してるぜ!」

「ありがとう、はまづら。じゃあ修正するね」

そう言うと先ほど書いたSSの一節の下に清書していった。
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/08(土) 19:02:15.10 ID:MoEXM0li0
――――――――――
・どれも似たような物・・・・・
→ どれも似たような物……

・ーーHEAVEN MISTは女性向鞄量販店だ。
→ ――HEAVEN MISTは女性向鞄量販店だ。

・「妙に安いくね!?これでいいじゃん!」
→ 「妙に安くね!? これでいいじゃん!」

・「真面目に選んでよはまづら。」
→ 「真面目に選んでよはまづら」

・「三万円と言えば〜為なら3万円くらい〜」
→ 「三万円と言えば〜為なら三万円くらい〜」

――――――――――

「点や線を記号で『……(三点リーダ)』にしたり『――(ダッシュ)』にするのは読みやすいからって理由なんだよ」

「『・・・』って読み難いか?」

「それ自体が読み難いんじゃなくて、『!』や『?』もだけど皆が別々のことをしたり統一しないとばらばらになるから決まりを作って統一しましょうってなったんだよ」

「漢数字とアラビア数字って奴を一緒にするなってのも見やすくするためか?」

「そうだね固有名詞は別だけど、アラビア数字と漢数字を一緒に使うとどれがどれだか分かり難いんだ。日本の小説だと普通は漢数字を使うね。あと単位は統一して見やすい方か分かりやすい方でね」
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/08(土) 19:02:47.77 ID:MoEXM0li0
「どうしてだ? 見やすい方がいいなら漢字じゃなく500キロとかでいいじゃん」

「漢数字を使う理由は『統一』や『一緒』で漢字を使うからで、単位の統一はキャラクターの台詞で変化するのは性格にもよるからいいけど、『トン』、『キログラム』、『グラム』とか不必要に種類があると混乱するし『5,000,000グラム』とか分かり難いでしょ? 単位で『割』とか使うなら『割』、『分』、『厘』に直そうね」

「ああ、そう言うことか」

「ちょっと特殊なのでカギ括弧の最後に『。』を付けなくていいって決まりだけど。これは現代小説の話で、それも絶対に付けちゃ駄目って訳じゃないよ。けどカギ括弧の文末に『。』をつけてたのは戦前の古いものと、小学校で教えるときくらいかな」

あと誤字に注意してねと滝壺は付け加えた。

「俺って今までずっと間違ってたんだな……」

「大丈夫だよ、はまづら。私はそんなはまづらを応援してる」
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/08(土) 19:03:13.43 ID:MoEXM0li0
「ありがとうな滝壺! 他に何か間違ってる箇所はあったか?」

「間違ってはないけど、おかしい部分はいくつかあるよ。例えば語尾がほとんど『〜た、〜だ』で単調になってる。ミステリーや推理小説みたいな読者に疑問を投げかけたり、伏線としてそこを強調したい時ならいいけどね。人の口調と違って作者が操作する文だから、地の文は単調にならない程度に変化を持たせた方がいいかな。それと口語以外の一文に何個も同じ助詞がつくと違和感があるね」

「何か淡々としてるって思ったのはそれが原因だったのかぁ」

「それもあるけど、「…」が余りに多くて凄い読み難かった。ほのぼのだから癖の強い表現は向いてないと思うよ? 他にも一人称視点ははまづらには難しいかな」

人称とは話においての『話し手』や『聞き手』である。
話し手という役割を『一人称:私』、聞き手と言う役割を『二人称:貴方』、それ以外を『三人称:その他』と呼び、神の視点や作者の視点も『三人称』と同じような扱いを受ける。
一人称の利点として作者が自分の世界観をそのままに表現できるので、書きたいものが書ける。主人公の心理描写がしやすく強調しやすい。
欠点としては、『作者が自分の世界にのめり込み過ぎる傾向にある』、『主人公の見聞きした物しか書けない』ので複雑な事件や人間関係、社会背景を表現しきるのが不可能で読者を置いていく事も少なくはない。
三人称は世界を広く見ることが可能であり、作者自身も広い視点で話を見れるので説明が容易である。
欠点としては一人称ほど深く心理描写をするのが不可能である。
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/08(土) 19:03:45.12 ID:MoEXM0li0
「自分の思ったことを書いてるし、一人称の何処がいけないんだ?」

「それはね向き不向きの問題なんだよ。ほのぼのとか軽い感じの作風で一人称だと気合が入りすぎてる感じがしてくどくなるのと、自分視点だからその人の気持ちや見たことしか分からないの。慣れてる人はいいんだけど、一人称視点って作者の修正も難しいから、慣れるまでは自由度の高い三人称視点の方がいいかな」

「客観的に説明しろってこと?」

「恋愛みたいな心理描写を細かくしたり、激しさを付ける時は一人称がいいんだけどね。ほのぼのは基本的に軽くて全体的にまったりした感じだから。それに自分視点だから自分が見てないのは説明できないし。この話だと私の気持ちとか私が見た物とか一切説明がないから店とか全体像がいまいち伝わらないの。読む人が最初から内容を理解している人ならいいんだけどね。それと途中一人称と三人称が混じってて違和感があったよ」

だからと言って頻繁な人称変更は、読者が『現在誰の目線で話が進んでいるのか』が分からず、迷子になってしまうのでしてはいけない。

「俺の目線でしか書けてなかったから店の様子とか分かり難いのか」

「これは短編だからマシだけど特に長編とかになると難しいね。ずっと主人公の目線でしか描写できないから必ず主人公が巻き込まれてなければいけないんだけど、それだと後半だれやすいんだ。短編ならいいんだけど続き物で十巻以上の作品とかだと『またか』って思われちゃうからね。けど主人公を二人にしてみるとか対策はとれるよ」

「主人公が増えれば一人称視点でも幅が持たせれるのか」
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/08(土) 19:04:12.72 ID:MoEXM0li0
「けど主人公が五人も六人もいたら読者が迷子になっちゃうから、多くても三人か四人くらいかな。もしそれ以上増えるなら外伝とかスピンオフにしたり○部とか○章とか時間軸や舞台をずらすのも手だね。章を変更する時なら主人公問題も未来のキャラに主人公を渡して前主人公は出ないとか、出てもゲスト程度の登場にするのもいいね」

「なるほど、そうすれば飽きられにくいし、バトル物とかだと主人公や世界観が違えばパワーバランスとかもなくなるからインフレも抑えれるのか」

「そうだね。特にバトル物だとどうしても過去以上の強敵を出さないといけないから、何処かで区切らないと宇宙規模の話になっちゃうこともあるね。それが味になって面白くなる物もあるけど、プロの作家でも中々難しいから素人が書く場合は特に注意が必要だと思うよ」

「二人称はどうなんだ?」

「二人称作品自体が少ないし表現も難しいからやめといたほうがいいよ」

二人称とは『貴方』の視点である。直接話しに関わっていなければ三人称と被り、近過ぎると一人称とほぼ同じになる。
表現や差別化が難しく、推測や突込みなどメタに近い要素もあり、苦労して差別化をしても読者に伝わり難いので二人称視点で書く人は少ない。

「どんな感じなんだ?」

「ちょっと軽く書いてみるから待ってね」
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/08(土) 19:04:50.59 ID:MoEXM0li0
――――――――――

きぬはたはいつも元気だね。
「超元気です!」
そんなに走るところんじゃうよ。
「超大丈夫です!」
あ、ころんだ。
「超痛いです……」
ご飯おいしいね。
「超美味しいです!」
そんなに頬張らなくても大丈夫だよ。

――――――――――

「ごめん、これ小説じゃなくてきぬはたの観察日記だった」

――――――――――

貴方は私の膝の上に頭を乗せて起きる様子もなく眠りについている。
安らかな寝息を立ててる貴方を眺めながら、私は軽く息をついた。
「今日も大変だったね、はまづら」
貴方が私のために学園都市に喧嘩を売って三ヶ月。ずっと学園都市の上層部に狙われてる。
暗部の仕事は大変だったけど、貴方にとってそれが日常だった。
けど今は違う。貴方はいつも学園都市の追っ手と戦う。
貴方が戦う理由は知ってるよ。それは私を守るため。
「俺は滝壺を守る」
あの日、貴方はそう宣言したね。
貴方は戦いに疲れて私の膝の上で眠ってる。
「いつになったら、あの頃に帰れるのかな」
貴方に聞こえないように呟く。
私が貴方に出来ることなんて何もないから、だから今だけは……。

おやすみ、はまづら。

――――――――――
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/08(土) 19:05:28.22 ID:MoEXM0li0
「私はこれが限界。むしろこれが二人称なのか自信ないよ」

「何て言うか自由度は一人称より少しあるけど三人称よりないし、三人称より主観的だけど一人称より客観的だし、中途半端に見えるな」

「上手な人が書けば問題ないけど、慣れない人だと私みたいにごちゃごちゃになると思う。あとはギャグとか突っ込みやメタやスラング的な物を使う作品だと二人称でもいいけど、そう考えても一人称でいいしあえて二人称でする必要もないかな」

「バカな友達に突込み的な?」

「うん。けどサジ加減が難しいジャンルだね」

「やり過ぎ注意ってか?」

「何でもかんでもメタ的な表現をすると、元ネタが分からない人は何を言ってるのかさっぱりわからないし。自虐ネタとかも度が過ぎると見苦しいね」

メタとはメタフィクションのことである。
メタ要素のある作品は高次元の存在である作者が登場したり、登場人物が『この話は作り物であり、自分も架空の人物である』と認識しての発言や行動を取ったりする。話が拡散する場合もあり、読者に『これは作り話である』と強く認識させるので感情移入を必要とするシーンやシリアスな作風などでは使われ難く、主にギャグ作品などで使われる。
スラングとは特定の集団でのみ使われる隠語や略語であり、AAなども含まれる。
ただしAAは見て理解できるのに対し『KY』などの知らない人にとっては暗号と同じであり意味が分からない場合もある。他にも侮辱用語として受け取られる場合もあるので使用には注意が必要である。
作風としてのスラングやメタなどを多用する作品が好まれる層は主に小中学生であり、それ以上の年齢層には受け入れられ難いので作風にあわせた用途が望ましい。
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/08(土) 19:05:57.10 ID:MoEXM0li0
「んじゃあギャグは二人称、通常は三人称、感情的なのは一人称ってのはどうだ?」

「主人公問題でも言ったけど章によって明確に区切られてたりするのは別として、こまめに人称変更すると読者が迷子になるから同じ章ではしない方がいいかな」

「注意書きいれたらいいんじゃねえの?」

「注意書きを入れても映像がないから難しいよ」

人称変更とは主人公視点で話が進んでいたと思ったらいつの間にか、友人視点で話が進んでいるなどである。漫画ではキャラクターからふきだしが付いているので、カギ括弧内の会話文が誰の台詞か分からないことは滅多にないが、小説では複数人で会話しているシーンは誰が話しているのか分からない場合があるのだ。地の文は状況説明のみならず視点の補助をする役目もある。

「じゃあ場面その物が変わる回想シーンとかは?」

「回想はそもそも小説向きの手法じゃないよ」

小説は漫画や映画などと違い映像がない。
映像を伴わない小説では読者のイメージによって世界が構築されている。読者のイメージに依存する小説において、回想を多用すると見た目でも非常に読み難く、映像がないので読者が今『過去、現在、未来』の何処にいるのか迷子になる可能性も高い。
よくある失敗例は事件が起こり、その後に事件への説明的な回想シーンを入れることなどである。読者は事件の結果を知っているのでスピード感がない、ハラハラもしない、そのシーンの時間軸が分からない、と欠点が多い。
どうしても使いたいのであれば読者がその作品の世界観や登場人物をきちんと理解した中盤以降にした方が望ましい。
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/08(土) 19:06:30.09 ID:MoEXM0li0
「そっか、それを踏まえて面白い話を書こうとしたら他はどんなことに注意をしたらいいんだ?」

「面白いとかは読者の感性次第だから一概には言えないね。バランスもそうだし、ジャンル次第じゃないかな? 後は伏線を張ったり派手な演出にしたりとかのそのジャンルらしさを強調すればいいんじゃないかな?」

「アクションだと派手に、推理だと伏線を多く張ったり小難しい文とかか?」

「小難しい文だけは別だね。学園都市で原稿用紙にペンを使って小説書いてる人はほとんどいないけどPCとか携帯電話を使う時は普通の人は知らない漢字を使ったりすることもあるけど、正直読めない」

ウェブ上では変換機能により容易に難解な漢字も使用できる。
・逞しい(たくましい) ・俯く(うつむく) ・如き(ごとき) ・捗る(はかどる) ・捻る(ねじる) ・拙い(まずい・つたない) ・稚拙(ちせつ) ・拗らせる(こじらせる)などが例だ。
常用外漢字などは特に伝わり難く小説向きではない。作風や読者の年齢層にもよるが、一般的な中高生が読み書き可能な漢字を目安にすると間違いはない。不必要に凝った文や漢字は作者の漢字力を示す物ではなく、表現力の低さを示す物であるので、どうしても使いたい場合はルビを振るのが望ましい。

「確かにいちいち辞書ひいて調べるのも面倒だよな。アクションや推理の方は?」

「アクションとか推理はその通りだね。特に推理やミステリー系は伏線を張ったり回収したりするのが他のジャンルより多いから練習になると思うよ。だからと言ってアクションとかにミステリーみたいな沢山の伏線を張ったら、がんじがらめになって爽快感が薄れるからジャンルに合わせた量がいいね」
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/08(土) 19:07:24.71 ID:MoEXM0li0
「じゃあ話の内容をしっかりさせようと思ったらどうしたらいいんだ?」

「最初に話と対人関係をはっきり考えたら矛盾は出難くなると思うよ。しっかり話しを作るってなると一番厳しいのは推理系だね」

「推理物が一番完成度が高いのか?」

「面白いかどうかは好みだけど完成度だけなら一番大変だね」

「推理小説のルールは十個とか多い人だと三十個とか言う人もいるけど十個の方を説明するね」

そう言うと滝壷は先ほど書いた修正文の横に、推理小説のルールで有名なノックスの十戒を書いた。
             _ __
           ‐::"::::::.:::::::::::::::ヽ
      /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::ハ         ノックスの十戒
.      /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ハ   ■犯人は物語の当初から登場させる
     /::::::::::::::、::ヽ:::、:::::ヽ:::::::::::::::ハ  ■探偵方法に超自然能力を用いない
     |:::!:::l::::::|::!!:::|、::|从;;ハ;:::::::::::::ハ  ■中国人を登場させてはならない
     |:::|:::|::!::|V.W '",- __ !:::!、::::::ハ     ・当時は超能力者と誤解されていた
.      |::::ゞ" ̄ミ.    ヘ:メ゚} i:::|.!::::|::ハ   ■犯行現場に秘密の抜け穴は一つまで
      i!::::ヽ;ィf;う,    ゙" .i:::|ハ:::|::|:ヽ  ■未発見の毒物、難解な機械を用いない
.      i!:::::::ヽ`"  l   ""i::|〃、::|::从 ■双子・一人二役は予め読者に知らせる
       i!:i::::、ヽ.""        i::|"::| ::|::|:/ヽ■登場人物を騙す場合を除き、探偵が犯人でない
       从:::::ヽへ、_  ゚  /V:川乂ヾ    ■探偵は読者の知らない手がかりで解決しない
         \ヽ|〈 ハ..l` ‐" ./ |ヽ、_      ■探偵は偶然や勘で事件を解決してはいけない
         レ'_ヽ. | 〉   / //、. \    ■ワトソン役は自分の判断を全て読者に知らせる
         //ヽ.ゞ二/ /   \ \
        //  .〉ヘ / \   ./`,  i!
      |∧  /  V.   \ / .|   |
      |  !|/    __ __  , 、. V  |   |
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/08(土) 19:08:25.02 ID:MoEXM0li0
「上から説明していくね。犯人は一番最初に登場する必要はないけど、出来るだけ最初の方から登場した方がいいね」

「話の後半ぱっと出てきた奴が犯人と言われてもよく分からないもんな」

「次に特殊な能力によって解決したり中国人を出さない。中国人を出してはいけないって言うのは、当時中国人は全員超能力者だと勘違いされてただけだから今は関係ないけどね」

「エセ能力者はともかく、読心能力者が探偵してりゃ十秒もかからないうちに解決しちまうもんな」

この例に当てはまらない物として『主人公が特殊能力者の探偵漫画』がある。しかしそれは『漫画』でありノックスの十戒はあくまで『推理小説』のルールだ。

「秘密の抜け穴は一つまで、未知の薬品や専門の知識が必要な機械を犯行に使わない、双子や一人二役は予め読者に知らせる。常識的な事だよね? 余りに選択肢が多すぎると誰でも犯人になり得るし、未知の毒物や科学的な説明が必要な道具も探偵が調べる事じゃないし、これは読者に対するペテンになるし何より読者に理解されないんだ。探偵が実は犯人でしたって言うのもそうだね」

ただし例外的に登場人物を騙すために探偵が変装をして犯人のフリをし、偽装の事件を起こして犯人を炙り出すためなら許される。
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/08(土) 19:09:04.99 ID:MoEXM0li0
「推理小説は作者の問題に対して読者が答えるものでもあるしな、誰でも犯行が可能だったり訳のわかんねーものを使われたら科学者じゃないしわかんねーよな」

「かなり特殊な作品もあるらしいけど私は知らない。次行くよ、探偵は読者の知らない手がかり、偶然や勘で事件を解決してはいけない。さっきはまづらが言ったみたいに推理小説は作者と読者の戦いでもあるから、隠し事とか偶然は駄目だよ」

「必然性って奴?」

「そうだね。『何故そう思ったのか』『何故それを発見できたのか』とか色々と理由がないと駄目だね。最後にワトソンは自分の判断を全て読者に知らせるだけど推理小説における助手って読者のメタ的な存在なんだよ。的外れな推理をしてるように見せかけて『読者が疑問に思う』ことを作者は推測して、ワトソン君に言わせたり補足説明的な役目としてるんだよ。探偵だけだと読者が疑問に思う所も気にせず解決しちゃったりするからね」

「ワトソンって足を引っ張ってるだけじゃなかったんだな」

他にも滝壺は伏線の張り方など細かく説明をした。必ず読者に犯人が分かるように伏線を張らないといけないことや、それが論理的でなければいけないこと、あからさま過ぎるのは面白みにかけること。伏線は必ず全て回収しなくてはいけないことなどだ。浜面はその全てをノートにとっていった。

「最後に犯行動機は出来るだけシンプルな方がいいね」

「復讐とかか?」

「そうだね。勧善懲悪なジャンルだから政治的や宗教的な理由だと善悪の定義が難いし、話が終わってすっきりしないといけないんだよ。けどこれは最低限のルールで三十個のルールを推奨する人もいるんだ」

「がんじがらめじゃねえかよそれ」
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/08(土) 19:09:57.34 ID:MoEXM0li0
「これだけルールが決まっているのに『現実的に可能なことを、論理的に、順序立てて、矛盾を生まずに、自然に解決』しなくちゃいけないんだ。だから他の話だと超能力とか『デウス・エクス・マキナ』で無理矢理解決させることもできるけど、推理小説はこれが使えないんだよ」

『デウス・エクス・マキナ』とは元は演劇用語で劇の内容が錯綜してもつれた糸のように解決困難な局面に陥った時、絶対的な力を持つ神が現れ、混乱した状況に解決を下して物語を収束させるという手法を指す。
一言で言えば絶対神(作者や監督)によるご都合主義だ。

「ご都合主義とかの逃げ道がない『作者の徹底的な構想』のみで作られる推理小説はある意味一番完成度が高いね」

「すいません、俺には難しすぎます……けど、そのデウスだっけかってマンネリのチート野郎じゃないのか?」

「そうとらえることも出来るけど、そもそもその手法が生まれた時代からご都合主義の批判はあったよ? けど、漫画の主人公とか『主人公がいれば絶対に大丈夫』って期待とか『主人公が到着』する安心感っていけないことかな? 同じ手法だからこそ腕が要求されるとも言えるしマンネリって別に悪いことじゃないよ」

「そう言われてみると、どれだけピンチになっても颯爽と現れるヒーローってマンネリだけどやっぱり格好いいよな」

『マンネリ』を罵倒用語として使うのは『マンネリ』にまで到達できない者の意見である。古いと言われている手法とはそれだけの歴史があり、批判されながらも消えていないのは完成度の高さの裏返しとも言える。
話の構成にしても、意表をつくのも確かにいい。しかしそれだけではマンネリになる前に消える。落語の内容は数十年、数百年、常に変わらず違いは間の取り方や多少の方言(イントネーション)程度である。

「でも、模写とマンネリは違うし、意味のないマンネリも別問題だからね」

「ヒーローが颯爽と現れて大団円とかはいいのか?」
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/08(土) 19:10:28.84 ID:MoEXM0li0
「締めの部分とかはベタなオチがいいね。ほのぼの系でも起承転結のうち『承転』部分に問題を持っていって、締めを大団円にするといいね。オチを難しくすると読者にうまく伝わらないこともあるから単純でベタな方がいいんだけど、小説で最初から最後までベタ過ぎると『似たような作品を見たからいいや』って思われたりするから注意が必要だよ。他にも全く事件がなくてほのぼのし過ぎたりすると最初から最後まで波がないから、落とし所がないし落としてもいまいち伝わらないよ」

「ああ、そう言えば絹旗に言われたな。ゴムは限界まで伸びた所を一気に開放するから威力が出るとか何とか」

「そうだね。何も問題がなかったら小説と言うより他人の日記じゃない?」

「そうとも取れるのか。推理とか俺には書けそうにないからどんなジャンルなら俺にも書けるんだろ」

「シリアスのバッドエンド物がいいかな」

「ええッ!」

浜面は思ってもいなかった滝壷の台詞に驚いた。
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/08(土) 19:11:28.49 ID:MoEXM0li0
「シリアスのバッドエンドはハッピーエンドより作るのが簡単だよ」

「けど作り込めば同じじゃないのか? ただ殺すだけとかじゃありきたり過ぎるし」

「シリアスのバッドエンドって推理小説とは違った狭さがあるんだけど、誰かを殺したり一生残る傷を作ったり、仲間同士が仲違いしたり、浮気や不倫をしたりすればいいから」

「それはハッピーでも同じじゃねえのか?」

「明確な違いは『救い』があるかどうかかな。死ぬにしても殺人鬼が死ぬのと、普通の人が理不尽に事件に巻き込まれたり殺されるのは別だよね?」

「そりゃ殺人鬼が死んでも同情はしないわな」

バッドエンドの定義の一つに理不尽さがある。自らの責任によって死んだり事件に巻き込まれるのは自業自得であり不幸ではない。

「バッドエンドは不幸ならいいんだけど、ハッピーエンドは必ず救われなくちゃいけないんだよ」

「救いって生き残ったり恋人と結ばれたらいいんじゃないのか?」

「ハッピーエンドは必ずしも生き残る必要はないよ。例え死んでも失恋しても、その人の心が救われたらハッピーエンドだし、バッドエンドは別に救う必要はないよ」

「けどバッドエンド物って気分が重くなりそうだな……」
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/08(土) 19:12:04.28 ID:MoEXM0li0
「それは個人の感性次第だね。最後に消す勇気が必要かな」

「勇気?」

「もし作品に矛盾を感じたりとか、いらないシーンとかは頑張って書いたとしても消す勇気が必要だよ。せっかく書いた文章を消したくない気持ちは分かるけど、そのシーンのせいで醒めたり、テンポが悪くなっちゃうと作品全体にも響くから」

「もしそれが四百字とかでもか?」

「うん。作品によっては消す勇気も必要だと思う」

四百字と言うと原稿用紙一枚分の量である。

「こええな……けど、小説のお約束も絹旗から聞いた脚本のお約束も構成部分ってやっぱり似てるな」

「小説は映画みたいに映像もないし音もないから文字で描写しないといけないけどね。けど本質は見てる人の感情を揺らすものだし平らな道だけだと飽きられやすいね」

「揺れ幅か。やっぱり映画みたいにドカーンって派手な表現を入れるといいのか?」

「そこまでしなくても日常でも普段見逃してるようなことを表現したり、見方をかえるだけでも世界は変わるよ」

「よし晩飯まで少し散歩してくる!」

「行ってらっしゃいはまづら。十九時までには帰ってきてね」

はまづらは返事をすると音速の約一パーセントの速度で町に出かけた。
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/08(土) 19:12:42.71 ID:MoEXM0li0
浜面は何かネタになるような物はないかと公園に来ていた。滝壺に『普段見慣れた町でも注意深く観察すると新しい発見がある』と言われたからだ。そこには白髪の少年と共に偽蟻の巣を作る茶髪の少女や、生肉を咀嚼する銀髪の少女がいる。少し経ったあと銀髪の少女は保護者と思われる少年に「そろそろオヤツの時間だぞ」と呼び出され、ホバリングしながら学生寮のある方向に行った。

「別に変わったことはないよなぁ」

公園で得た物と言えば出入り口付近に露出の多い美人がいて目の保養になった程度だった。
彼は公園に見切りをつけ繁華街の方に移動した。しかし繁華街で町を違った方面から観察してもいつもと同じ日常が転がっているだけだった。暗部も解体され、ロシアとの戦争以降は学園都市内部の警備も強化されたので昔ほどスキルアウトが暴れることが出来る場所もなく平和そのものである。

「やっぱり変わったことなんかねーよな」
50 : ◆cmIC2ACkpo [saga]:2011/10/08(土) 19:14:13.80 ID:MoEXM0li0
今日の投下はこれにて終了します。
次回は明日か明後日のこの時間帯の予定です。
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/08(土) 20:36:04.17 ID:HfFFz1cd0
乙!
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/10/08(土) 21:08:06.70 ID:DHIrVjmLo
生肉を咀嚼してホバリングする銀髪………恐えよwww
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/10/08(土) 21:28:33.66 ID:MoEXM0li0
感想など励みになります。

訂正箇所がいくつかあったので訂正します。
>>30
短編とか序盤でで→短編とか序盤での
>>37>>38
突込み→突っ込み

あと、いくつか漢字を開くのを忘れていましたのでモグモグされに行きます。
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/09(日) 18:58:56.68 ID:xxyUmQDC0
投下開始します。
本日は少な目
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/09(日) 19:00:02.39 ID:xxyUmQDC0
「丁度いいところに! おーい浜面ー!」

浜面は特に収穫もないと判断しアジトに帰ろうか迷っていたところ、元スキルアウト仲間の服部半蔵に呼び止められた。

「おう、半蔵。二週間ぶりくらいか?」

「お前今暇だよな? うん、そうだ暇だ。だから後は任せた!」

「へ?」

そう言って半蔵は、走り去っていった。

「君、ちょっといいかな?」

「俺?」

「そうそう、君だ。実は駐車場の場所を忘れてしまって困っているんだ。助けてくれないか?」

そうして浜面は木山春生と一緒に駐車場を探すこととなった。彼女が都市伝説の『脱ぎ女』であり夏場は熱いと言っては何処でだろうと脱ぐ彼女だが、流石にこの時期は寒いのか脱ぐこともなく無事に駐車場についたことを彼は知らない。
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/09(日) 19:00:57.74 ID:xxyUmQDC0
「何かお礼をしたいのだが欲しい物はあるかね?」

「別に礼が欲しくて手伝った訳じゃねえよ。てかずっと気になってたけど、アンタどっかで見たような気がするんだよな」

木山は過去に『幻想御手』を開発し、無能力者や低級能力者およそ一万人や多数の警備員を巻き込んだ事件を引き起こした。大事件を起こした犯人として顔や名前が上層部や暗部はもとより一部のスキルアウトにも知られていた。事件後服役していたが、ロシアとの戦争時に研究を手伝う代わりに刑期を短くする取引(いわゆる司法取引)をしており現在では出所している。

「私は君と初対面だが、誰かと勘違いしているんじゃないかね?」

「まあいいや、んじゃちょっとしたアンケートに答えてくれねえか?」

「いいだろう」

浜面は小説などの読み物で何が面白いかたずねてみた。

「面白いか、これでも私は研究者でね。特に脳の分野だから感情論は少し苦手だが、論理的な解説なら多少はできると思うよ」
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/09(日) 19:02:16.86 ID:xxyUmQDC0
〜木山せんせーの大脳生理学講座〜

「脳の科学的ななんちゃらとか、俺学校行ってないし馬鹿だから専門用語とかわかんねえしできるだけ簡単に説明してくれねえか?」

「わかった。大脳生理学で小説に使えそうな部分をできるだけくだいて解説してみよう」

「大脳なんとかって心理学みたいなもん?」

「厳密には違うが、まあ似たようなものだよ」

心理学とは人間の心の動きを明らかにするための学問である。しかし人間の心は学習や知覚、記憶もかなり大きな要素だ。
そして大脳生理学は学習、知覚、記憶を処理する大脳の働きを解明する学問である。
心理学によって構築された理論が大脳生理学により証明されたり、大脳生理学も知覚や記憶方面に発達しており現在では心理学と大脳生理学の明確な違いは余りない。
心理学は主に『仮説や概念を用いての理論構築』、大脳生理学は主に『実験情報による化学的な理論構築』である。
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/09(日) 19:03:34.74 ID:xxyUmQDC0
「そうだな、例えば人が一瞬で物を覚える時に、簡単な物を同時にいくつまで覚えられると思う?」

「んん、買い物を頼まれた時とか三つか四つくらいかな」

「ふむ、君は平均的な記憶力のようだね」

一瞬で記憶可能な数は人によるが、標準的な人間はおよそ五つ未満である。
記憶力に多少の自信があったり、何かしらの記憶術を用いている人であれば十二個未満。
一流の演奏家や記憶力にかなり自信のある人などは同時に二十個ほど覚える。
二つ未満の人は記憶障害の可能性がある。

「ギャグであったり何か知覚や、感情による物は処理するのに上限があるのだよ」

「ネタを詰め込み過ぎても理解できないってことか?」

「その通り。注意して見れば全部理解することも可能だろうが、ぱっと目に付くのは同時に五つくらいまでだろう」

「ネタ仕込む時は気をつけないとな……」

「そのネタを仕込む時も、余り濃い物を序盤で出さない方がいいね」

「飽きられるんだっけか?」

「その通り、ジャンクフードと同じで塩分になれると舌がマヒするのと同じさ。君は意外と利口だね」

「意外は余計だけどな」
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/09(日) 19:04:01.33 ID:xxyUmQDC0
「あとはそうだな……話を作る時とか必要だろうが、人間は遺伝子に組み込まれている情報以外だと『全く無関係な事』、『理由や興味のない事』を考えるのは無理だな」

「本当か? 学園都市の技術とか凄いじゃねえか」

「例えば歴史上最も凄い発明の一つに電話があるが、それは『遠くの人と会話できたらいいな』と考えたから出来た物だ。しかしそれは『人が声を出して会話する』と前提があるから思い浮かべるんだよ。飛行機だって鳥も雲も存在しない世界なら飛ぼうと思う理由がないから生まれなかっただろうね」

海も池も魚も見たことがない人は泳ごうとは考えない。教えられず見聞きもせずに空を飛ぼうと思うのは鳥などの本能に組み込まれたものだけだ。
人間が空を飛ぼうと思うのは理由がある。地上は山岳地帯や整備されていない道路では物を運ぶのが難しいが空なら通路の問題はない。
『必要性』それは興味であったり理由である。

「能力にしたってそうだ。能力者で特に多い発火能力はいい例だが炎を自由に使えたら便利だからね」

「じゃあ話を作るにはどうすりゃいいんだよ?」

「何でもいいからとにかくモノを見るべきだな。どんな細かい情報でも積み重なれば小説くらいにはなるだろう。例えばそこにある私の車を見て『レーサーがライバルと競ってチャンピオンになる小説』が生まれるかもしれんよ」
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/09(日) 19:04:53.04 ID:xxyUmQDC0
知識とは積み木のような物であり、全く新しい物を考えたと思っていても実際は既存の物の組み合わせや別ジャンルとの複合である。

「滝壺が言ってた注意深く見ろってそう言うことだったのか」

「そろそろいいかね?」

「ああ、ありがとな」

そう言って木山は何処かへと行ってしまった。

「腹減ったし何か買って食うか」
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/09(日) 19:06:03.14 ID:xxyUmQDC0
本日の投下はこれにて終了
次回も明日か明後日のこの時間帯予定です。
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/10(月) 19:06:42.08 ID:cmcpqSAE0
投下開始します。
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/10(月) 19:07:23.43 ID:cmcpqSAE0
浜面は小腹がすいたので近くのオープンカフェに向かった。
『当店ではドーナツの穴の部分は売りません』と謎のキャッチコピーだが、安くてボリュームのあるパンやケーキがあると評判の店だ。

「はーまづら。こんな所で何してるの?」

カウンターで何を頼むか考えていた浜面に、少し離れた所にあるテーブルから『アイテム』のリーダー麦野沈利が声をかけた。

「ん? 麦野か、散歩ついでに腹が減ってな」

「ふうん。浜面が散歩だなんて怪しいにゃーん。何か企んでるんじゃないの?」

「俺が散歩しちゃ駄目なのかよ!? ネタ探しだよ、SS書いてるから」

「あら? 浜面もSS見書きしてるの?」

「『も』って事は麦野もか?」

「話は後にして注文しちゃいなよ。店員が困ってるわよ」
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/10(月) 19:08:01.74 ID:cmcpqSAE0
「おっと、すいません。ベーグルのエビフィレ一つとトマト一つ飲み物はコーヒーのMを一つで」

注文が終わり、会計を済ませた浜面は麦野と同じテーブルについた。

「私がSS読んでるのは、任務で待機中とか時間あるじゃない? 本を持っていくと邪魔になるけど、携帯ならSSとか見れるし必須品だから邪魔にもならないしね」

読む専門だけどねと麦野はつけたした。

「待機中にそんな事するなよ……」

「それが原因で失敗した事なんてないし、別に任務遂行さえすればいいじゃない。それより書いてるなら見せなさいよ」

「おう! 朝から絹旗に脚本の作り方と滝壺に小説の書き方を学んだからかなり出来てる筈だぜ!」

麦野はまるで新しい玩具を見つけた子供のような笑みをしながら浜面に近付く。
しかし彼は朝昼と二人の教師に指導して貰いかなり自信がついていたので特に嫌がるそぶりも見せず、むしろ見てくれと言わんばかりの態度であった。

「どうすりゃ感想貰えたりまとめサイトに乗るかな?」

そう言って浜面は携帯電話に書き溜めたSSを麦野に見せた。
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/10(月) 19:08:29.41 ID:cmcpqSAE0
――――――――――


初SSなので温かい目で見てください。

キャラ崩壊します。

不定期です。

書き溜めはありますが少ないので書き溜めが尽きた後の更新は遅いです。

投下量少なめです。

誤字脱字は皆様の脳内補完でお願いします。

作者は文才がなく駄文です。

豆腐メンタルなので叩かないで下さい。

以上苦手な人はUターン推奨。

>>1は原作を読んでいませんので設定が原作と違ってもご了承ください。



――――――――――
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/10(月) 19:09:42.91 ID:cmcpqSAE0
「却下」

「おい! 見てもないのにどう言う事だよ!」

「注意書きの時点で読む気なくなったのよ」

「へ? 別に普通じゃないのかよ! ていねいな言葉使ってるし!」

「初SSとキャラ崩壊はまあいい、二次作品だと多かれ少なかれ原作と違う部分もあるしね。不定期更新も社会人や忙しい人なら仕方がないし、そう言う人だって書く権利は当然あるけどさ」

「じゃあ何が駄目なんだよ」

「更新が遅いって自覚してるなら書き溜めれてから投下すればいいし。投下量だって溜めればいいだけでしょ? 度合いにもよるけど、すぐ書き溜めが尽きて月一回更新とか一回の更新が一レスとかするくらいなら最初からまとめてから書きなさいよ。誤字脱字も見直せばいいし、もし間違えても投下後に気がついたら修正すればいいだけでしょ? それを読者に押し付けるのは作者の怠慢(たいまん)よ。謙遜(けんそん)してるつもりでしょうけど自分の作品を駄文と思うなら書くな! もし面白いと感じてくれた人がいたら『こんなクソSS読んで面白いと感じる貴方はセンス悪いですね』って言ってるのと同じよ?」

「んぐぐッ」

「叩くなだの苦手と思ったら帰れだのは『俺様の作品に文句を言うな! 嫌なら見るな!』って言ってるのと同じだし。そもそも注意書きは本当に重要なことを二つか三つ、複雑な話とかでも四つでいいんだよ!」

麦野はひたいに青筋を立てながら一気にまくし立てた。
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/10(月) 19:11:04.58 ID:cmcpqSAE0
「んなつもりはねーよ!」

「それは本人じゃないんだから分かる訳がないでしょ?」

「分かった……注意書き消す」

「それと気になったんだけど、原作を読んでいないって言うのは小説か何かが原作でアニメしか見てないとかその逆とか?」

「いや、SSで人気あるジャンルだったから感想貰えると思って」

「お仕置き確定ね」

麦野がその足元を強く踏みしめたかと思うと轟! と言う爆音とともに彼女が手に持っていた紅茶のカップが浜面の顔に突き刺さった。
彼が手に持っていたベーグルは吹き飛び、ノーバウンドで離れた席に座っていた少年のモース硬度七はありそうなツンツンした髪の毛に深く突き刺さる。周りでその様子を見ていた店員は悲鳴をあげる間もなくトレイに乗せてあるチョコドーナツを落とし、そのチョコドーナツを銀髪の少女が地面に落下する寸前で口にくわえた。
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/10(月) 19:12:15.90 ID:cmcpqSAE0
「書き直します……」

浜面は顔にかかった紅茶をふきながらそう言った。

「ふぅ……久し振りに怒鳴っちゃったじゃない」

「怒鳴っただけじゃねえし、紅茶もとんできたし」

「書き直すのはいいけど、ここじゃ寒いからいつものファミレスに行かない?」

「ベーグル食った後にファミレスって晩飯食えるのかよ?」

「いつもみたいにドリンクバーだけでいいでしょ」

そう言って彼らはファミリーレストランへと向かった。
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/10(月) 19:13:04.98 ID:cmcpqSAE0
ファミリーレストランに到着した彼らは、いつものように奥のテーブルに案内された。
店側も『いつも騒いで注文もろくにしないが恐ろしい客』として、他の客の迷惑にならないよういつからか隔離(かくり)スペースに案内するようマニュアルを作ったようだ。

「ドリンクバー二つで」

いつものようにドリンクバーのみを頼んだ。
店員も諦めており張り付いたような営業スマイルで対応した。
浜面は携帯電話とにらめっこ状態でSSを書いており、麦野はお気に入りのSSを静かに読んでいた。
数十分後、一段落ついたのか浜面は麦野にSSの評価を依頼した。





――――――――――
初SSなので温かい目で見てください。
オリジナルです。
――――――――――

「今回は普通の出だしね」
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/10(月) 19:14:07.32 ID:cmcpqSAE0
――――――――――

「何かおかしくねか?」
異変に気が付いたのは浜面であった。
それもそのはず、この辺り一帯は彼らの縄張りであり自分たちの庭のようなものだからだ。
「あの車、昨日はここになかったよな?」
「ああ、こんな場所に車をとめるバカはい」
浜面が言い終わる前に車内から金属バットや拳銃で武装した集団が出てきた。
「やべえ! こいつら『スティール・マグマス』だ!」





●  ●  ●  ●  ●





スティール・マグマスは浜面たちの組織と対立しているスキルアウト集団である。
しかも無能力者だけではなく噂では強能力者クラスまでいる強力な組織だ。彼らは髪の毛を赤色に染め、発火能力者や火炎ビンなど火による攻撃を好み、最近ではコンビニ放火強盗事件まで起こしている。

「やばい! 逃げろ半蔵ッ!」

能力者がいたのか火玉が打ち出された。






71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/10(月) 19:14:42.29 ID:cmcpqSAE0
間一髪寸前でかわした彼らは何とか逃げ出せた。
能力者が放った火玉が逆に目くらましになったようだ。


「何とか逃げ切れたな」
逃げ出した浜面は廃ビルの一室に逃げ込み対策を考える。
「まずは半蔵と合流するのが先か……あと、仲間にも知らせないと」
浜面は半蔵に電話をかけ合流場所を指定し、仲間にも襲撃されたことを知らせ、武器や人員を集めるよう指示をした。


●  ●  ●  ●  ●


「ここまで来れば大丈夫か」
安心した瞬間、背後に気配を感じた浜面は前転して攻撃をさける。


「チッ! 勘のいい奴め」
そこには金属バットを持った赤髪の男がいた。


「あっぶねーな!」
浜面は素早く護身用の拳銃を抜き、撃った。

銃弾は『キンッ』とかん高い音を立て金属バットに当たり、敵はバットを落とした。



72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/10(月) 19:15:20.68 ID:cmcpqSAE0






「うおおおッ!」






73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/10(月) 19:15:58.07 ID:cmcpqSAE0
自らをふるい立たせるおたけびをあげ、浜面は銃に驚きうろたえてい敵にタックルをかます。そしてそのまま馬乗りになり、殴りつけた。

「何とか一人は倒したか」








●  ●  ●  ●  ●









パンッパンッと乾いた音とともに銃声が聞こえる。

「」

敵は一人ではない。
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/10(月) 19:16:52.52 ID:cmcpqSAE0
騒ぎをかぎ付けた敵の仲間がこちらに向けて発砲してきたのだ。
浜面の持つ銃はあくまで護身用の単発銃。銃弾もほとんど持っておらず、ほぼ丸腰だ。

「逃げるしかねえよな!」


●  ●  ●  ●  ●

何とか逃げ出した浜面は半蔵との合流地点の近くまでやってこれた。






「お前の名は浜面で間違いないな?」





75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/10(月) 19:17:24.99 ID:cmcpqSAE0
今までとは明らかに違う雰囲気を持つ男が浜面の前に立つ。

「アンタがボスってところか」
「まあ、そんなところだ。質問に答えろ」
「ああ」

浜面は答えた。

「そうか……行くぞッ!」

彼は凄まじい勢いで浜面との距離を詰め殴りかかってきた。

「グッッ」

構えた状態から十分の一秒にも満たない速度で敵の拳は浜面の鼻先をとらえた。
時速三十五キロメートルの速度で敵の連打は続く。

●  ●  ●  ●  ●


続く

――――――――――
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/10(月) 19:18:16.85 ID:cmcpqSAE0
「はーまづらぁぁぁ!」

普通の男ならばそれだけで震え上がるような麦野の激が飛ぶ。

「空行が多くて見難い。あと、鼻糞つけんな」

「演出のつもりで改行したんだけど駄目なのか? あと、鼻糞じゃねーよ」

浜面が麦野に怒鳴られるのはいつものことなので特にひるむ様子もなかった。

「別に駄目って事はないけど。漫画とかと違ってSSって文字を見て貰うのが一番の目的だから、面白いつまらないの前に見やすくなくちゃいけないのよ」

「装飾は不要って事か」

「装飾が悪いとは言わないけどさ。やり過ぎると何を伝えたいのか分からなくならない? 漫画とかは『絵』と『文字』のバランスで出来てるけど、基本的に文字だけの小説やSSだと挿絵を超える装飾は見難いわよ?」

「ほどほどにって奴か」
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/10(月) 19:18:48.98 ID:cmcpqSAE0
「内容自体は荒削りな部分があるけど。アクション物の王道だし、もう少し頑張ればそれなりの出来になるわね」

主人公がある日いきなり事件に巻き込まれる王道の話であった。
敵も分かりやすく、スキルアウト同士の抗争と言う非常にシンプルな題材でもあり、仲間との分断や敵との戦闘や囲まれてピンチになるなど作者にとっても読者にとっても初心者向けの内容であった。

「これってノンフィクション?」

「スキルアウト時代の抗争をSSっぽくしてみたんだけど変だったか?」

「別に変じゃないけど表現不足なんじゃない? 表現が足りないから装飾してるように見えるわよ?」

「へ? ノンフィクション物って事実以外を書くいちゃ駄目じゃないのか?」

「嘘は駄目だけど、少し物足りない感じがするわね。あと不必要な説明を入れるとしらけるわよ? 例えば最後の『時速三十五キロメートルの速度で敵の連打は続く』とかは確かに普通の人間の速度じゃないわね、肉体強化能力者?」

「いや、発火能力者だった。『発条包帯(ハードテーピング)』で強化してたらしくて、逃げ回ってたら勝手に自滅したな」

発条包帯(ハードテーピング)とは軍用のテーピングだ。
身体の各所に張り運動能力を飛躍的に伸ばすが、肉体にかなりの負担をかけ長時間の使用は不可能である。


「あっそ。そんなバカはほっといて話を戻すけど、文字のインパクトは薄いわよ?」

そう言いながら麦野は携帯電話を返した。
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/10(月) 19:19:27.85 ID:cmcpqSAE0
「だって事実だろ? 肉体強化能力者並の速度だったのは事実だし」

「拳銃が時速千三百キロメートルくらいよ? スポーツ漫画とかならともかく、銃器の出るアクション系SSで言われてもピンと来ないわよ。だから知ってても表現しなかったり別の表現で誤魔化す方がいい時もあるし直前に『十分の一秒にも満たない速度で』ってちゃんと速さの表現できてるじゃない」

近距離でプロボクサーのジャブは構えてから顔に当たるまでおよそ百分の七秒であり、人の反射神経は十分の一秒前後である。

「言われてみればしょぼい気がしてきた……空手家とかボクサーとかのパンチも『クマのような重いパンチ』とか『蜂のように刺すパンチ』とか動物や昆虫とかに例えられてたしな。てか銃器に詳しいな」

「私は銃器を使わないけど、銃器で狙われることはあるから基本的な知識は持ってるわよ」

「ちなみにマシンガンってどのくらいの速度なんだ?」

「多分浜面の言うマシンガンと本来のマシンガンは違うと思うけど、重機関銃で時速三千八百キロメートルくらいかしら。確か『超電磁砲』と同程度よ」

「うげぇ俺そんな物と戦ってたのかよ……」
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/10(月) 19:20:06.15 ID:cmcpqSAE0
「突撃銃(アサルトライフル)か短機関銃(サブマシンガン・マシンピストル)と勘違いしてない? 突撃銃は時速三千二百メートル程度で簡単に言うとライフルに連射機能をつけただけ。短機関銃は拳銃用の弾丸を連射できる銃で当然速度は拳銃と同じ。本来マシンガンって言ったら人が携帯できる軽機関銃(ライトマシンガン)もあるけど、普通は三脚とかで支えたりヘリとか車に取り付けるみたいな奴よ?」

「ヘリの機関銃で撃たれた事あるんだよ」

学園都市との抗争時に浜面はHsAFH-11『通称:六枚羽』に襲われた経験がある。
絹旗の助けがあり難を逃れたが、六枚羽は恐ろしいまでの戦闘力と機動力であった。

「私の知らないところで変なのと戦ってたのね。そう言えばSS読んでて時々思うけど自動拳銃で全弾撃ち尽くして『カチッ弾切れか!』とかの台詞っておかしいわよね」

「俺もこっちで自動拳銃使ってそれに驚いたな。スライドオープン状態だっけ? スライドが引かれてる状態で固定されてるから、トリガー引けないんだよな。このネタ使うか」

「この話をSSにしても多分受けないわよ」

「へ、強力な所もアピールしちゃ駄目なのかよ!?」

「マニアック過ぎて読者がついてけないわよ? 皆が知ってる訳じゃないし、そもそも銃が主役だったり話の最重要品でもないでしょ」
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/10(月) 19:20:59.80 ID:cmcpqSAE0
「難しいな。じゃあ銃が主役とか、読者が最初から予備知識を持ってる二次作品でしちゃ駄目な事って何かあるか?」

「駄目な事はないんじゃない? 例えば銃が主役なら詳しく書いてもていねいに描写されてるって評価されるだろうし。二次作品だと注意しないといけないのは『キャラクターの根幹』、『キャラクターの性格』、『キャラクターの能力』、『キャラクターの知識』、『キャラクターの人間関係』、『作品の基本設定』、『舞台』とか重要な物のいくつか一致してればいいんじゃない?」

全て一致するとそれは二次創作ではなくただの模写であり、どれも一致していないのは名前を借りた別物である。

「いくつくらい原作と一致してればいいんだ?」

「それは個人次第よ。さっき言った六個だったら半分くらい同じならいいんじゃない? けど『能力』を変更すると別人になるかもね。特技とかは別だけど私の能力が『原子崩し』じゃなく『発火能力』だと私の名を語った別人でしょ? 能力が『キャラの根底』にも深く繋がってる場合は『能力』、『根底』、『設定』の三つを同時に代える訳だし『知識』も変わる可能性が高いわね。それと心理系能力者だとほぼ確実に『性格』も変わるわよ」

「特に『作品の設定』は変更すると、かなりかわるもんな」
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/10(月) 19:22:12.92 ID:cmcpqSAE0
「でもジャンル次第かな。例えば私の好きなSSの一つに、生物の生態をアニメのキャラに解説させる奴があるんだけど、『キャラクターの知識』、『キャラクターの性格』は原作とかなり違うわね」

「それって別物にならねーのか? あと六個じゃなくて七個だぞ」

「うるさい! ちょっと間違えただけよ! ……話を戻すわね。その作品は、意外と面倒見がいい『キャラクターの根幹』とか、各自の『人間関係』、『能力』、『舞台』は原作と同じだし『基本設定』はジャンルが違うから出す機会もないでしょうけど特別反してる訳でもないわね」

「けど生物の解説ってかなりマニアックじゃないか?」

「興味を持つ人と持たない人がいるのは当然ね。けどタイトル見ればすぐに分かるから、そう言うのが嫌いな人は見ないんじゃない? それにきちんと注意書きしてればいいだけだし」

いい意味でタイトルから内容が読めないのは評価される。
しかし、ただ人を寄せる為のタイトルで『タイトルと内容が一切関係ない』のは詐欺であり俗に『釣りスレ』とも呼ばれている。
専門的な内容や読む人を選ぶ内容、特に成人向けの性的描写が中心のスレッドや批判的な内容のスレッドは、必ずタイトルで内容が分かるように工夫や注意書きに明記したりする必要があり、そう言った作品でなくとも見る人を選ぶシーンなどでは事前に『○○の方はここから数レス飛ばして下さい』など注意が必要だ。
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/10(月) 19:23:27.28 ID:cmcpqSAE0
「そりゃそうだな。再構築物とかってどうなるんだ?」

「置き換えの場合や時間軸変更は結構いじってることになるわね。入れ替えるだけで簡単と思ってる人も少なくないらしいけど、再構成物は特に原作をきちんと把握してから組替えないとオリジナルになるわね。過去や未来設定とかも原作との矛盾が生まれたりキャラ崩壊があるのは当然だけど、その場合は『性格』や『根幹』をきちんと描写できてればいいんじゃない?」

「思ってたより難しいんだな。ほのぼの再構築とか実はかなりきついんじゃねえのか?」

「そうね。原作で敵同士だったのを仲良くしたり、逆に原作で仲間だったのを敵にしたり色々あるけど『原作で事件さえなければ仲良くなれたかも』って感じの表現があったり『実は面倒見がいい』的な人格のキャラがそう言う役になるのはいいんじゃない? 他にもギャグとかならある程度は許容されるわね」

「シュールとかカオスって奴か?」

「否定はしないし狙ってするなら別だけど、単にごっちゃごちゃしただけだとネタの羅列じゃない? 」

「キャラ崩壊させてシュールになるのとかはいいのか?」

「さっきから言ったけどやり過ぎると別物になるわよ。例えばそうね、フレメアの元保護者の駒場だっけ? その男をロリコンと言ったらどう思う?」

「いやいやいや、それはないって絶対にない。確かに駒場の兄貴はフレメアを可愛がってたし、俺も冗談でロリコンって言ったことあるけどそれは冗談だって!」
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/10(月) 19:24:27.56 ID:cmcpqSAE0
「でしょ? フレメアを見てればそんなことくらい分かるわよ。けど二次作品だと話を大きくしたり、捻じ曲げた解釈をしたり色々あるのよ。歴史上の人物でも勘違いされたまま常識になってる名言とかもあるわよ。マリーアントワネットとかね」

「お菓子がなければって人だっけ?」

「実際は浪費癖がある世間知らずなだけの貴族の娘よ。リンカーンの演説も熱弁したかのように言われてるけど、実際はいきなり言い出して言い終わったらとっとと帰ったから聞いていた人たちは何のことだか理解できてなかったわね」

「へぇ〜そうだったのか」

「アンタが駒場とか言う奴をロリコン呼ばわりしたのは、仲間に対して親しみを込めてでしょうけど、無関係な人にそれを言ったらただの暴言よ。特に二次作品は原作ありきで他人の褌を使わせて貰ってるんだから、極端なキャラ崩壊は注意書きとかが必要ね。でもキャラの根幹とかが余りに違いすぎる場合は『そのキャラでやる理由』をしっかり付ける事と、何の理由もなしに豹変すると二次で作らずにオリジナルですればいいだけだし」

「オリジナルかぁ」

「他にもどの読者層を狙うかにもよるわね。フレメアの見てるカナミンだっけ? あれの二次SSを作るとしたら普段からカナミンを見てる少女『を』狙うのかカナミンを知らない少女『も』狙うのか」
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/10(月) 19:25:01.02 ID:cmcpqSAE0
「どう違うんだよ」

「説明量が圧倒的に違うわよ。アニメも原作も完全に見た人を対象にするなら、基本的な説明は別にいらないし。逆に作品自体を知らない人にも楽しんでもらうとなるとかなりの説明が必要よ」

「説明多すぎだと見るのがきつくねえか?」

「多かれ少なかれSSは説明が必要だから仕方がないし、万人に等しくなんて不可能よ。説明で思い出したけど銃撃された時に『』って空白の台詞いれたでしょ?」

「駄目なのか?」

「絶句してるのは分かるんだけどト書きなら別としてこれ地の文ありの小説スタイルでしょ? だったら地の文で『〜は絶句した』とか『〜は言葉を失った』とか表現すればいいんじゃないかしら」

「ト書きって?」

「アンタSS書くほど読んでるのに知らないの? ト書きって言うのは元々映画とか劇の『脚本』の事ね。SS界だと少し意味合いが違うんだけど、元々脚本って文学的表現とか美しい文はいらないのよ。美しく見せたり表現するのは監督や演出家の役目だし」

「確かに脚本の『文章』を凝っても、俺達が見るのは演技や道具とかだもんな」
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/10(月) 19:25:47.32 ID:cmcpqSAE0
「そもそも見せる対象が観客じゃなく、演技者とか監督とかの製作者側だからね。表現して欲しいシーンを脚本家のイメージそのままに文字として書き写したような物よ」

映画などでは『編集者の修正はあっても基本的に個人で作る小説』と違い、脚本は最初から複数人で作られる事が多い。特に監督、プロデューサーや出資者や演技者などの打ち合わせによって作られたり変更される場合もあり変更の末に最初の構成とかけ離れた物が出来る事も少なくはない。

「何となく分かった。でも何でト書きって言うんだ?」

「名前の由来は歌舞伎の台本で『〜と立ち上がりながら』から来てるわね。演技者に動作の説明をしたりする物だから、これも本来観客が見る機会はないわね」

「それじゃあト書きは駄目なのか?」

「そもそもSSは小説じゃないし『サイドストーリー』、『ショートストーリー』、『ショートショート』とか色々と呼ばれてるわね。だからSSならト書きでもいいわよ」

「悪くないのは分かったけど、結局どっちがいいだろ」

「作風次第じゃない? ト書きは台詞メインで表現とかほとんどないし」

「けど地の文とかでがっつり描写してるSSもあるぜ?」

「それはト書きと言うより名前ついてるだけじゃない? さっきも言ったけど、ト書きは本来の意味だと客向けじゃないし」
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/10(月) 19:26:28.62 ID:cmcpqSAE0
「じゃあ何でト書き形式のSSが多いんだ?」

麦野は額に手を置き、少し考えながら自分が思った事を語った。

「分かりやすいからじゃないかしら? 活字に慣れてない人にとっては地の文が読みにくいと感じる人もいるみたいだし」

「地の文くらい俺でも読めるぜ?」

「それは暴論よ。小説じゃないんだから皆が活字慣れしているとは限らないし、それに地の文が多いと全体的に重苦しい雰囲気になる事もあるわよ?」

「そんなもんか?」

「それにいつでも何時間でも読める訳じゃないし、サラッと流し読みしたい人もいるでしょ? SSって堅苦しい物じゃなくて時間のない人や、まだ活字に慣れていない人にも読みやすいのがいい所じゃない?」

「言われてみたら地の文だらけだと少し読むのがしんどい気がしてきた」

「浜面がどの程度でしんどいと感じるかは知ったこっちゃないけどね。けどSS界って自由な所と思うにゃーん」

おちゃらけたような口ぶりであったが浜面は納得が行ったようだ。
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/10(月) 19:27:37.14 ID:cmcpqSAE0
「適材適所か、俺のSSだとどっちがいいかな?」

「ちゃんと描写したいなら小説形式じゃない? それとSSは小説と違って、会話行の次は読みやすくするために一行あけるのよ。書きたい物を書くのはいいけど読者に読んでもらうのが最優先だからね」

「読者様第一って奴か?」

「それはちょっと違うわ。基本的なルールは読者の為だけど、読者だけの為に書いてる訳じゃないし」

「嫌なら読むなって事か?」

「浜面それも違うわよ。例えばスプラッタ系が嫌いな人がグロ系SSを見て『残虐映写はやめろ!』って言うのは嫌なら読むなだけど、ちゃんと○○がおかしいとか矛盾点や展開の無理を指摘するのは意見ね。そう言う物まで嫌なら見るなって言っちゃうと何も成長しないわよ?」

「けど、どうせ書くなら認められたいのが人の性じゃねえ?」

「分からなくはないけどさ、日記帳に書いてる訳じゃないんだし変な事を書けば批判されるわよ。そもそもそれが嫌なら『批判されたくなければ書くな』じゃない? 名作と言われる物にも賞賛と批判があるんだし、割り切らないと何も作れないわよ」

「死ねとか消えろって言われても割り切るしかないのか……」
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/10(月) 19:28:12.24 ID:cmcpqSAE0
「それは無視しなさいよ。いくら批判されても仕方がないって言っても暴言まで気にしてたらきりがないわよ? それより話し込んでたらいい時間になったしそろそろ帰るわよ」

「もうこんな時間かよ! けど為になったぜ麦野ありがとな」

「はいはい。今日の晩御飯は当然鮭よね! 急いで帰るにゃーん」

当然のようにドリンクバー以外は注文をしないまま二人は会計を済ませ店を出た。
薄暗い夜道を二人は歩き出す。
しかし本日の晩御飯は、滝壺が病院内で知り合った少女に教えて貰い気に入った『アステカ料理』であることを本人以外、誰も知らなかった。
89 : ◆cmIC2ACkpo [saga]:2011/10/10(月) 19:29:39.72 ID:cmcpqSAE0
本日の投下はこれにて終了
次回も二日以内のこの時間帯に投下予定です。
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/10(月) 20:01:41.88 ID:cmcpqSAE0
またミスを発見

>>77
事実以外を書くいちゃ→事実以外を書いちゃ
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/10(月) 20:02:25.76 ID:95w6+XHSO
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/10/11(火) 06:37:17.03 ID:PCWbE2blo

生物の生態ってもしかしなくても
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/12(水) 19:08:36.16 ID:18+VBRdv0
投下開始します。
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/12(水) 19:10:37.06 ID:18+VBRdv0
浜面がファミレスでSS講座を受けている時間アジトでは滝壺が手を洗い、エプロンをつけ料理に取り掛っていた。
そして煮込む時間はかかるが、余り手のかからないスープに取り掛かった。
トウモロコシとインゲンマメや種を取り除いたカボチャをいれ、塩とトウガラシで味付けしそのまま煮込んだ。
次にトルティーヤと呼ばれるトウモロコシのパンを作った。
病院で出会った少女に教えて貰った通りに、トウモロコシを木灰の上澄み液で果皮を取り除き、柔らかくする。
これによってトウモロコシのたんぱく質が良質になり、粘り気のある食感と共に旨みを増す。その後、水分を切りすり鉢で粉になるまですり潰し、薄く延ばしたあとパン用に買った小型のオーブンにいれた。

「結構疲れるな」

予想以上に重労働だったが、皆に喜んで貰うため彼女は気合を入れて料理に取り掛かる。
先ほど作ったトウモロコシ粉の残りを練り、植物の葉で包み蒸すタマルと言う料理は日本でいうチマキのような物であった。トウモロコシのモチモチした食感と植物の葉から香る匂いが食欲をそそる。

最後に香辛料で味付けをした七面鳥を大型のオーブンにいれた。

アステカ料理はトウモロコシが非常に多く使われ、トウモロコシのみでは不足しがちなビタミンを鳥や豆類で補う栄養バランスの良い料理である。
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/12(水) 19:11:07.39 ID:18+VBRdv0
料理を終え、エプロンを脱いでいると『ガチャ』と音と共に、小さな女の子がやってきた。

「大体、遊びに来た。にゃあ」

彼女の名前はフレメア=セイヴェルン。元アイテム所属のフレンダ=セイヴェルンの実妹で普段はアイテムのメンバーと違い学校に通っており、小学校寮で暮らしている。本来は小学生などの低年齢層の外泊許可は中々下りないものだが、麦野が保護者代理として学校や寮に話をつけている。学校や寮も学園都市第四位の超能力者が直々に来たので断れず、特例として簡単な申請で宿泊許可が下りるのでフレメアは週末など時々泊まりにくるのだ。

「いらっしゃい、早かったねふれめあ。元気してた?」

「大体、元気。にゃあ」

「皆はまだ出かけてるから、ゲームでもしよっか」

そう言って、アイテムのメンバーが帰ってくるまで彼女らはゲームで遊んでいた。
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/12(水) 19:11:41.92 ID:18+VBRdv0
「ただいま帰りました」

「お帰りなさい。今日はきぬはたの好きなアステカ料理だよ」

「大体、おかえり。にゃあ」

「フレメアもきてたんですか。それと滝壺さん、私はアステカ料理がどんな物かすら知らないのですが」

「ヘルシーにトウモロコシを使ったパンと、トウモロコシを使ったおモチと、トウモロコシのスープだよ」

滝壺との会話が微妙にずれるのはいつもの事なので特に気にとめず、絹旗はそうですかと言って手を洗いに行った。

「ただいまー」

「おかえりはまづら。むぎのも一緒だったの?」

「散歩中にばったりあってさ、SSの書き方を教えて貰ったぜ」

「おかえり。にゃあ」

「フレメアもきてたのか、ただいま」

「ただいま、私がしっかり指導してあげたから人様に見せれる程度にはなったんじゃない?」
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/12(水) 19:12:17.07 ID:18+VBRdv0
「そっか、良かったねはまづら。それと前からはまづらが欲しがってたRPG買っておいたよ、7でいいんだよね?」

「それそれ7! あれ何処も品薄で手に入れるのきつかっただろ?」

「うん、人気商品みたいで中々見つからなかった。けど浜面がRPG使うなんて少し意外だね」

「そうか? たまにしてると思うけど」

「そうだっけ? けど取り扱いには注意してね」

「あの滝壺さん……何か話が食い違ってるようなのですけど、RPGって『ドラゴンファンタジー7』って言うタイトルのRPGゲームですよね?」

「ごめん、はまづら。携帯式対戦車擲弾発射器の方だと思ってた」

PRG-7とは旧ソ連の開発したグレネードランチャーである。製造費が安く、構造が単純で取り扱いも簡単、使い捨てを除けば対戦車兵器の中で比較的軽量なので、強力な武器なので世界中の紛争や武装組織に好まれる一品だ。
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/12(水) 19:13:02.21 ID:18+VBRdv0
「まあいいや……それより飯にしようぜ!」

「ふれめあ、お皿並べるの手伝ってね」

「大体、わかった。にゃあ」

皿を並び終えたあと、滝壺は少し待っててと言い台所に向かった。
ジュウジュウと小気味のいい音と共に、香ばしい匂いを引きつれ彼女はテキーラと小皿を持ってきた。

「テキーラか、度数強くなかったか?」

「食前酒だから薄めに割った奴だよ。おつまみは煎ったカボチャの種だよ」

食前酒なので小さなグラスに、三分の一ほどテキーラが入れられていた。

「ふれめあはこっちね」

フレメアは未成年、しかも小学生なのでオレンジジュースであった。
食卓には色とりどりのトウモロコシ、カボチャ、トウモロコシ、マメ、トウモロコシ、鳥、トウモロコシが並べられる。
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/12(水) 19:14:15.19 ID:18+VBRdv0
浜面は酒を飲み、カボチャの種を口に含んだ。
その瞬間、彼は全身を雷に打たれた錯覚を覚える。アルコールが全身を駆け巡り猛然と食欲が起こる。
次に七面鳥の大きなかたまりをナイフで切り取り、かぶりついた。
鳥の旨みと香料の辛さが口の中で溶け、絶妙に混ざり合い、飛び散る。
時々、パンで口の中の脂をぬぐい、野菜の旨みが凝縮されたスープで流し込む。
モチもほのかな甘味があり、包んである葉の香りも食欲を増幅させた。

「そんなにがっつかなくてもまだあるよ?」

「超美味しいです!」

「大体、美味しい。にゃあ」

「本当に美味しいわね」

皆が口々に美味いと言い、滝壺は大層満足した。
楽しい食事が終わり、滝壺は食器を洗っている。フレメアは『大体、宿題。にゃあ』と言って麦野に教えて貰いつつ、ダイニングで宿題をしていた。
そして浜面と絹旗はリビングでTVを見ていた。
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/12(水) 19:14:44.25 ID:18+VBRdv0
「この番組さ、前もやってなかったっけ?」

「確かにこの映像は前に超他の番組で放送してましたね」

『だだだだ、だ! だだだだー』
『だだーだだだ! だだだだ、だ』

画面には双子の赤ちゃんが向かい合い、『だだだ』と謎の掛け合いをしている。その下にはテロップで『僕のオヤツとったでしょー』、『とってないよー』と書かれていた。

「これってテロップ入れる意味あるのか?」

「さあ?」

彼らが見ているのは某動画サイトの動画を無断借用して、タレントたちが『ひな壇』と呼ばれる場所で映像を見たり、感想を言ったり、ボケたりする番組であった。
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/12(水) 19:15:25.76 ID:18+VBRdv0
「それと動物とか外人に日本語で吹き替えしたりしてるけど、面白いのかねぇ」

「昼前に超解説しましたけど分かりやすくしてるんじゃないですかね」

最近のTV番組はテロップ(字幕)や吹き替えを多用する。
それは視聴者に分かりやすくするためであるが『くどい』と感じ、好まない人も多い。
タレントに見せながら進行するのも、映像中にタレントなどの笑い声によって『ここが面白いんですよ、ここで笑うのが普通の感性です』と解説の一種である。

「絶対これ蛇足だよな」

「まあ、そうですね」

「TVでやったらいけないことってあるのか?」

「放送コードで禁止されていなければ明確に『してはいけない』と言うのはないですけど」

放送コードとはTVやラジオなどの放送局が放送基準、番組基準のことである。
電波法、放送法により決められており代表的なのが『嘘の報道をしない』、『公平』、『公安、善良な風俗を乱さない』などである。
国によってかなり違いがあり、同じ国でも時間帯によって放送可能な内容が変化する場合もあり『深夜に成人向けの番組』などが例だ。
他にも差別的用語の禁止など、様々な決まりがある。
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/12(水) 19:15:58.28 ID:18+VBRdv0
「映画みたいに『見せるもの』としてならいくつかありますけどね。バラエティーとかで芸人が妙に気取ったり、利口ぶるのが意外と多いんですけど駄目なんですよ」

「利口だったら駄目なのかよ?」

「利口じゃなければ面白いものは作れませんよ。教育番組で超浜面みたいなのが出てきて間違ったことを延々言い続けたら大問題です」

「相変わらず俺の扱い酷いのな」

「でもバラエティーとか人を笑わせるのが目的だと話は別です。芸人が利口ぶって作った難しいネタを面白いと感じますか?」

「余りに難しいと理解できないかも……」

「難しいものだと理解できませんし、超上から目線で『俺って面白いだろ、俺って賢いだろ』なんて言う芸人の何が面白いんですか? 分かる人は分かるんですから道化を演じてればいいんですよ」

人を笑わせるには相応の常識と感性、知識が必要である。
常識を知らなければ非常識なことは分からない。感性がなければ最適なタイミングで変化のさせようもなく、それらが絶妙に変化することで人は笑い楽しむことが出来る。常識を知ってこその変化であり、感性であるのでそれをバカにする者に常識を超える事は出来ない。
しかしそれらをせず気取ったり、自分を大きく見せようとすると必ず嘘が出る。そしてその嘘はすぐばれてしまい、観客に不快感を与えてしまう。道化を演じ、客をいい気分にして『笑って貰う』必要があるのに不快感を与えては意味がない。ただし『笑われる』のは芸人失格である。
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/12(水) 19:16:26.72 ID:18+VBRdv0
「俺は芸人のあり方じゃなくてTVの面白さを聞いてるんだけどさ?」

「超浜面は『笑われ芸人』にでもなればいいんですよ! と一割の冗談は置いておいて、面白い番組は色々ありますね。『笑い』、『感動』、『情報』、『納得』、『爽快感』とか、他にもあげるときりがないですけど。『興味』を引く内容なら視聴率が取れます」

「興味ねぇ」

「興味を引く内容にしても『天才型』と『秀才型』がありますね。一個の花丸か十個の丸か」

「確かに全体的に面白ければそのまま見続けるし、部分的でもすげえ面白ければつい見ちゃうよな」

「日本のTV番組は面白いシーン以外でチャンネルを変えられないように、中途半端にCMを入れて切りますけどね。ちなみに短気な国だと変なところでCMがはいると、どれだけ面白い番組でもチャンネルを変えたりTV局にクレームいれる人もいますが」

SSも同じで『面白い』シーンしか読まれない場合もある。しかし強烈な個性があり面白ければ視聴者は増え、適度に山を作れば飽きられにくい。そう言った意味で、細かい描写を省き重要な場面しか出さない『ト書き』は最も進化した手法であるのかもしれない。
ただし毎回中途半端なところで切ると、『来月一気に読もう』と思われたりして定期的に読まれない場合があり、その結果感想が極端に減るスレッドも珍しくはない。
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/12(水) 19:19:00.15 ID:18+VBRdv0
本日の投下はこれにて終了。
次回は三日以内のこの時間帯の予定です。

>>92
おそらく、それで合ってます。
105 : ◆cmIC2ACkpo [saga]:2011/10/13(木) 19:00:04.16 ID:VlymnfxG0
投下開始します。
本日は少な目。
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/13(木) 19:00:45.54 ID:VlymnfxG0
滝壺は小説を読んでいた。

「滝壺ってどんな小説読んでんの?」

「特にこれってジャンルはないかな。色々読むよ」

「そっか、話のネタってどう作りゃいいんかね」

「とにかく本を読むことだね。好き嫌いせずに色々な本を読めばそれだけ知識も増えるし、展開とか話の広げ方も分かると思うよ」

「他は何か方法ないか?」

「読むのと同じように書くのも大事だね。嫌いなジャンルとか、苦手なジャンルを書くと得意なジャンルを書くより成長できるって何かの小説に書いてた気がする」

「苦手なジャンルか。俺ってどんなジャンルが苦手なんだろ?」

「『5W1H』って言葉があるんだけどちょっと待ってね」

滝壺はそう言うと、部屋の端っこに置かれたホワイトボードを浜面の前に持ってき、ペンで書き始めた。
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/13(木) 19:01:15.02 ID:VlymnfxG0
             _ __
           ‐::"::::::.:::::::::::::::ヽ
      /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::ハ
.      /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ハ   ■1 When いつ
     /::::::::::::::、::ヽ:::、:::::ヽ:::::::::::::::ハ  ■2 Where どこで
     |:::!:::l::::::|::!!:::|、::|从;;ハ;:::::::::::::ハ  ■3 Who  だれが
     |:::|:::|::!::|V.W '",- __ !:::!、::::::ハ   ■4 Why  なぜ
.      |::::ゞ" ̄ミ.    ヘ:メ゚} i:::|.!::::|::ハ   ■5 What  何を
      i!::::ヽ;ィf;う,    ゙" .i:::|ハ:::|::|:ヽ  ■6 How  どうしたか。
.      i!:::::::ヽ`"  l   ""i::|〃、::|::从
       i!:i::::、ヽ.""        i::|"::| ::|::|:/ヽ
       从:::::ヽへ、_  ゚  /V:川乂ヾ
         \ヽ|〈 ハ..l` ‐" ./ |ヽ、_
         レ'_ヽ. | 〉   / //、. \
         //ヽ.ゞ二/ /   \ \
        //  .〉ヘ / \   ./`,  i!
      |∧  /  V.   \ / .|  |
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      /  y    /ヽヽ.}弋彡 | / |   |
      /  |  /チニ~ヽ  ヽ.   |/  |   |
     /   | レ'"__ヽ   ト,   |  .|   |
    /  ヽ { .| '",,_.Y   /::::|ヽ、 |/ .|   |
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   / -‐/-|::::ヽ、| '"`ヽ::::/~  ヽ   ヽ i!
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   ヽ _,,..-''"´/" ~   \ \   ´""!
    // 〃/-‐ ‐-    、 ヽ 、\\
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/13(木) 19:02:23.66 ID:VlymnfxG0
「『いつ』、『何処で』、『誰が』、『何を』、『何故』、『どうしたか』だね」

「どっかで聞いたことあるな」

「話の根幹だね。連想ゲームとかもそれに近いよ」

小学校などの国語の時間に習う人もいるが、滝壺は学校に行ったことがなく最近まで知らなかった。
滝壺は棚からハガキを取り出し裏に書いていた。

いつ:『昨日』『今日』『明日』
何処:『自宅』『病院』『学校』
誰が:『浜面』『絹旗』『麦野』
何を:『フォーク』『たぬき』『爆弾』
何故:『腹が立った』『友人のため』『お金のため』
どうした:『爆破』『戦う』『放火』

「メモ帳代わりにするには勿体無くないか?」

「大丈夫、これ郵便番号五桁の奴だから」

何故アジトに数年前のハガキがあるのかは謎である。
現在でも枠を付けたし七桁にすれば使えるが、滝壷はそれを知らないようであった。
そして葉書をシャッフルし並べていった。

「『明日』『自宅』で『麦野』が『たぬき』を『腹が立ったから』『放火』した」

「色々と酷いな」
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/13(木) 19:03:46.67 ID:VlymnfxG0
「これは例だから、もっと沢山の選択肢を作れば話の幅も広がると思うよ。他にも有名な『プロットカード』って言うカードを使った話の作り方があるけど」

先ほどのように彼女は二十四枚の葉書に書き込んでいった。

『意志』『清楚』『理性』『秩序』
『知恵』『誓約』『善良』『節度』
『至誠』『生命』『寛容』『解放』
『調和』『創造』『信頼』『公式』
『変化』『結合』『厳格』『勇気』
『幸運』『庇護』『治療』『慈愛』


「この二十四枚のカードを裏向きにしてシャッフルして並べるの」

そして並び終えたカードは『主人公の現在』、『主人公の近い未来』、『主人公の過去』、『主人公の援助者』、『主人公の敵対者』、『結末』を意味する。

「カードが逆位置なら意味も逆にして。例えば『幸運』なら『不幸』にしたり」

「ちょっと待って! 頭がこんがらがりそうだから一回やってみてくれ」

「うん、わかった。はまづら」

そう言って滝壷はカードをシャッフルしランダムに並べていった。
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/13(木) 19:04:32.05 ID:VlymnfxG0
主人公の過去『公式(逆)』
主人公の現在『創造』
主人公の未来『治療』
援助者『厳格』
敵対者『善良(逆)』
結末『幸運』

「これで話を作るね」

―――――
はまづらは昔スキルアウトで社会に背いてた。『公式(逆)』
最近はSSを書いてる。『創造(正)』
むぎのに厳しく指導される。『厳格(正)』
けど、変なことを書いてむぎのに殴られて入院。『治療(正)』
自分のSSが批判される。『善良(逆)』
それでも頑張って完結させたSSが評価される。『幸運(正)』
―――――

「多少はこじつけでもいいから、とにかくいくつも話を考えれば練習になるよ」

あくまで一番最初の構成なのでそこまで詳しく考える必要はなく話の大まかな道筋のみでよかった。
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/13(木) 19:05:13.36 ID:VlymnfxG0
本日の投下はこれにて終了。
次回は三日以内のこの時間帯の予定です。
112 : ◆cmIC2ACkpo [saga]:2011/10/16(日) 19:04:29.46 ID:og7wfuHu0
投下開始します。
異様に重いので途切れる可能性あり。
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/16(日) 19:05:23.84 ID:og7wfuHu0
浜面は滝壺に礼を言い、プロットカードでネタを考えていた。

「プロットカードか、アンタ小説家目指すつもりなの?」

「別に本気で目指してる訳じゃねえけど、やるなら頑張ってみようかなってさ。つかこれってそんな有名なのかよ」

浜面はプロットカードが読み専門の麦野すら知ってる事実に少し驚いたが、返事をしながらカードをシャッフルしていた。
彼は大雑把に見えて意外と凝り性である。
プロの作家を目指す訳ではないがやるからにはいい物を作りたいようだ。

「まあ、ネタだけじゃ駄目だけどね」

「面白けりゃいいんじゃねえの?」

「面白いのは大前提よ。その上で見られたり返事を貰うことも考えた方がいいわね」

そう言うと麦野はホワイトボードに書いていった。
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/16(日) 19:06:06.14 ID:og7wfuHu0
           /: : : : : : : : : : : : : : :..ヽ: : : : : : : : : :\    ■目を引くタイトル
          /: : : : : : : : : : : : : : : : : : :.l: : : : : : : : : : : :ヽ   ■人気作品の二次創作
       /: : /: ∧: : : : : : \: : : : : : |: : : : : : : : : :l: : : |   ■レスしやすい内容
        /: : /: / ヘ、: : : : : : :\: : : : |: : : : : : : : : :|: : : |   ■突っ込みやすい内容
.      }: : l: /_  \:.丶: : : : : ヽ: : |: : : : : : : : : :|: : : |   ■分かりやすい内容
        |: : :l:.l  \   \ \:.:.:.:.:.:.ヽ:|: : : : :l: : : |: l: : : :|  ■更新速度や量
        |: : :l:.| '^圷ミ     `>=::.十: : : :リ: : ::|/: : : 人  ■宣言
        }: : :l:.l 弋zリ    ´^「た卞 |: : : :./: : : |: : : /: : :\
       ?八ハ  ´     弋沙'´ |: : :./: : : : |:.:.: :}: : : l: :\
         /:.:l   〈           l: : /: : : : : |:.:.: :|: : : 八:..: :\
         }:圦            |: /: : : : : 八:.:. |: : /: : ヽ:..: ::ハ
         |: : :ヽ   _          |/: : : : : ∧:.:\l: /: : :..: :}: : ::|
         |: : :.:.:.\  `    .イ /: : : : : /: :.:\:.:.:.≧ト、: ノ: : : :|
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         〉:.:.:/       }:: }: : : : :./:./ /       V:.:.:.人
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.   /       /  ./  j        V:/       /         }  ノ
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/16(日) 19:06:54.57 ID:og7wfuHu0
「説明していくわよ」

「ちょっと待ってくれ、ノート持ってくる」

そう言って浜面は自室にノートを取りに行った。

「悪いな、解説頼む」

「タイトルは注意書きの一面も持ってるけど、看板の役割が大きいわね。変なタイトルだと見てくれる人自体が減るし、単純に見てすら貰えないものは評価のしようがないわね。そう言った意味で目を引くタイトルは有効よ」

「ふんふん。確か人寄せはいいけど詐欺は駄目だっけ」

「夕方の話を覚えてたのね」

「流石に数時間で忘れねーよ」

返事をしながら浜面はノートに書いていった。

「人気作品の二次創作もタイトルと似たようなものね。集客力自体はオリジナルより強いし」

「キャラ名『発言』。みたいなタイトルにすると二次創作だとすぐ分かるわね」

「けど、そうしない人も多いだろ?」

「それは好きにしなさいよ」

タイトルはそうしなければならない決まりなどなく、作者の自由である。
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/16(日) 19:07:49.60 ID:og7wfuHu0
「感想が欲しいなら今から言う内容が重要ね。タイトルや二次創作は見る人を増やすためだし」

「見る人がいないと感想はねえもんな」

「三つの内容があるけど『レスしやすい内容』は、安価やほのぼのとかは読者のレスするハードルが低いから返事が書きやすいわね。『突っ込みやすい内容』もハードルを下げるって意味では同じよ」

「『分かりやすい内容』ってのもか?」

「そうね、専門的な内容とか分かり難い内容だと読者がレスをためらったりするかもね」

「読者視点か」

「安価やほのぼのならハードルが低いし、笑えるギャグならそれに加えて突っ込みやすい、ドキドキさせる恋愛とかワクワクさせる冒険なら目的が分かりやすいし感動もさせやすいわね、こんな感じかしら? そこに共感性、興味や憧れとかがくっつくわね」

「憧れや興味は分かるけど、共感性?」

「例えば 『路地裏でからまれてる女の子を助けるために不良と喧嘩』するのと『魔王城で世界征服を企む魔王と戦う』だと、不良と喧嘩する方が簡単に想像できるでしょ? 想像できるほうが共感できるし、共感できれば興味もわくし、そうなりたいと憧れる人もいるわよ」

『ほのぼのさせる』、『笑わせる』、『ドキドキやワクワク』、『感動させる』これらは日常でもある。
日本人ならほぼ体験していることは簡単に想像でき、身近な人を守る行為は共感ができ、弱者のために立ち上がるのは非常に憧れられやすい。
人は何も分からないものに共感は出来ない、そして共感の出来ないものに興味を持つことは難しい、興味のないものになりたいとも思い難い。
逆に憧れたものには興味を持ち、興味を持ったものには共感しやすく、共感の出来るものは想像しやすい。
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/16(日) 19:08:47.60 ID:og7wfuHu0
「けど魔物とか魔王とか、共感しにくい魔王と勇者物とかも人気高いだろ?」

「共感と憧れは近いけど少し違って、共感は『自分もこう思う、自分もこうしたい』で憧れは必ずしも『自分ならこう思う、こうする』必要はないわね」

「つまり、どういうことだよ?」

「魔王勇者物がSSで人気があるのは確かだし憧れる要素もあるけど、本屋で『学園ラブコメ』と『勇者の冒険物』のどっちが多く置いてるかは少し考えれば分かるでしょ? 日本人は共感性の方が重要なのよ」

現代日本の価値観は漫画や小説に代表されるように、『身近な者を守るために戦う』や『自己を高めるために修行する』作品がとても多い。
アメリカなどと違い、使命感などで動く『博愛精神』は日本人に理解され難いからである。
なので憧れはするが、想像が出来なかったり自分でもそうするなどの共感を持ちにくい。

「それと魔物は動物、魔法は私らみたいな『能力』やこんなのが使えたらいいなって感じで、少ないけど想像も可能だし共感の部分もあるのよ? でも全体的に想像するのが難しいし憧れ方も自分がなりたいというより、遠くで見ていて凄いって思うのに近いわね」

想像、共感、憧れは密接に関係しているが同一ではなく、何かの要素が薄くても他の要素が大きければ人間は興味を持つ。

「ほら、確か有名な漫画で最終的に惑星すら一撃で破壊する奴あるでしょ。あれだって最初は宝物探しで世界を渡り歩いたり、主人公の闘争本能で戦ってるうちに結果的に世界を救うとかだったでしょ? 目的も戦う理由も単純で男の子ウケするし、強い人や冒険要素は憧れるし『強くなりたい』は共感性が高いわね」

「宝探しは男のロマンだよな」

「最初はとっつきやすい内容だったけど、雪だるま式にインフレが起こって凄まじい状態になってたけどね」
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/16(日) 19:11:17.84 ID:og7wfuHu0
「とっつきやすい始まりか」

「とっつきやすさは特に最初が重要ね。書き出しに多少盛り上げる部分を入れておかないと、オチまで読んで貰えない可能性があるから注意ね」

中にはつまらなく感じても最後まで読んでくれる読者はいる。しかし大多数はつまらないと判断するとそれ以上は読まない。作者が最後の最後まで温存し過ぎた結果、誰も見ていない状況になることも珍しくない。

「最初の方にポンってでかい爆弾落として、それで読者に興味を持たせるのもいいわね」

「絹旗の脚本指導の時も言われたな」

「けど、わざと共感性を外して言い回しや表現をひねる方法もあるけどね」

「ハードボイルド系とかか?」

「正解。浜面の癖にやるじゃん」

「ふふん! 三人も先生がいるしな!」

「調子に乗らないの」

調子に乗った浜面は頭をはたかれた。
しかし、調子にのってたしなめられるのはいつものことでもあった。

「ハードボイルドは共感要素が薄くて、憧れ要素がかなり大きいわね」

「ニヒルな主人公とか渋いし格好いいし、憧れるよな」

「ハードボイルドに限らず。方向性が違っても少年少女向けのコミックって何かしらの憧れがあるものじゃないかしら? 絹旗が読んでる魔法少女物のコミックとかも憧れだろうし」
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/16(日) 19:12:01.91 ID:og7wfuHu0
男女や時代によって好まれるジャンルは変わるが、主流となるのは主に『憧れ』がある。
昔ならば、『友情』、『努力』、『勝利』などの仲間と協力し、努力して勝利するのが人気であり憧れであった。
現在、人気の高いジャンルに学園ラブコメがある。これは『現在の憧れ』要素が高く、通常では考えられないような主人公のハーレム展開などがある。

男性に人気が高い学園物は『主人公はさえない』、『異能の力や強大な力を持ってる』、『もてる』が圧倒的に多い。
それらは読者が『一般人の主人公に共感できる部分』、『自分がこうなりたいと憧れる部分』が非常に強く、魔王勇者系とは違い舞台が現代日本、登場人物も主に日本人、感性も日本人的などであり非常に共感しやすい作りとなっている。
そして男性は数多くの女性から『自分が選ぶ』のに『憧れる』。
男の子では、ロボットやヒーロー物などの憧れる要素の強い物に興味を持つことが多い。
しかし男は何歳になっても子供っぽい部分があるので、五十代でロボットに憧れる人もいる。

女性に人気が高いのも学園系が多いが男性とは違い、複数人が主人公にアピールするのは同じであるが、主人公を巡っての戦いがあり、これらは『お姫様』要素である。
そして女性は数多くの女性から『自分が選ばれる』のに『憧れる』。
女の子では、自分の変身願望(憧れ)をかなえてくれる魔法少女物などに興味を持つことが多い。

男女共に言えることは、『自分が出来ないことや、体験できなかったことを登場人物に投影する』である。
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/16(日) 19:13:21.09 ID:og7wfuHu0
「ハードボイルドは特にだけど、格好つけるためにやたら名言を喋らせようとしたり、必要以上の表現はせずに。あっさりの方が記憶に残りやすいわね」

「そんなもんか?」

「じゃあ例を出すわよ」

――――――――――

『ノックをするべきだったかな』

『いいさ、オレと貴様の仲だ』

――――――――――

「仲がよさそうだな」

「漫画のワンシーンだけど、これ因縁の相手と戦闘前の会話よ」

「マジかよ! そう考えると意味合いが変わってくるな」

「日常でも普通に使える台詞を『そこで言う』からってのもあるわね。あっさりだからこそ冷静さが引き立つし、冷静なキャラが熱い部分を出すシーンとかは盛り上がるわよ」

「絹旗や滝壺にも溜めてからの放出は凄い的なことを言ってたな」

「人間はすぐ慣れちゃうからね」

「慣れが悪いとは言わないけどね」
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/16(日) 19:14:27.59 ID:og7wfuHu0
「そうなのか? 慣れたら物足りなくとか」

「確かにそう言った面もあるけど、駄目なことばかりでもないわよ? 毎週一定量の更新がある作品は定期的にみる癖がついたりとか。逆に更新速度が不定期や極端に遅かったり、投下量が極端に少ないと見限られるかもしれないし、『まとめに乗ったら見よう』とか『来月みよう』とかで見る機会が減る可能性と、面白いシーンがあってもそれが先月書かれた内容だとレスしにくいでしょ?」

「確かに感想ってリアルタイム的なものもあるよな」

「投下宣言があればいつ書かれるとか分かるし、終了宣言があれば感想を書くタイミングも分かりやすいわね」

「書きながら投下で感想が凄い量のところもあるぜ?」

「それは内容とかジャンルじゃない? 感想が書きやすい書きながら投下だと、アンタがさっき言ったみたいに『リアルタイム感』があるし『自分も参加してる』って感じがあるわよ」

「ん? なら書きながらの方がいいじゃねえのか」

「私の話をちゃんときいてる? ジャンルや内容次第って言ってたでしょ。シリアスとかは特にだけど、書きながら投下はいつレスしていいのか分からなかったり、遠慮しちゃうこともあるのよ」

「タイミング逃すと中々言いにくいよな。更新速度と似たようなもんか」

「前の話を持ち出して、空気を変えたくないこともあるしね」
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/16(日) 19:15:33.31 ID:og7wfuHu0
「てか、それ全部こなしたらいいのか?」

「それって、いくつあると思ってるのよ? 『二次創作』、『安価』、『学園』、『ほのぼの』、『ギャグ』、『恋愛』、『冒険』、『ハードボイルド』で想像できて、興味を持って、憧れるって無茶言うな!」

麦野は手に持っていたホワイトボード用のクリーナーを投げつけた。

「主人公が複数いて、二部構成以上なら出来なくはないけどさ。一人のキャラや舞台に詰め込みすぎると全部が中途半端になるわよ?」

「いッてえ……だって漫画キャラとかでいるじゃん」

「漫画と一緒にするな! そもそも安価の時点で話の方向性は読者に左右されるし。あれって実はかなり難しいのよ?」

「自分で考えなくていいから簡単じゃねえのかよ」

「自分で考えれないから難しいのよ」

安価スレッドは簡単に思われがちだが、かなり難易度が高い。
読者参加型なので読者が必須であり、進行速度が遅いと読者離れが起きるので投下速度も必要である。
無理難題を押し付けられても作者なりに解釈して書かないとならず、話の流れを作者が制御できなければ破綻してしまう。
特に二次創作は、ただでさえキャラ崩壊が酷くなるジャンルであり、オリジナル作品と違い誤魔化しが利き難く作者による制御や微調整が必要である。
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/16(日) 19:16:52.05 ID:og7wfuHu0
「安価は俺にできそうにねえな。他はどうだ?」


「安価スレはとてつもなく変なことをしない限り人が集まるけどね。他ってアンタただレス貰いたいだけのために書きたくない内容のSSを書いて楽しいの?」

「ぐっ……確かに自分の書きたい物を書きたいです」

「でしょ? 分かり難い部分をていねいに描写したりだとか、見やすい書き方にしたりとか、内容に関係ない部分で出来ることは改善すればいいわよ。けど書く内容そのものは自分の好きな物を書きなさいよ」

「滝壺が嫌いなジャンルや苦手なジャンルを書けって」

「それは練習だろがバカ面」

「痛ッ!」

「それに説明したのはあくまで主流の話よ? ホラーだってあるし、推理だってあるし全部説明していったらきりがないわよ」
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/16(日) 19:17:52.61 ID:og7wfuHu0
「色々聞けたし、いいSSが書けそうな気がしてきた」

「さっき書き忘れてたけど、まだあったわ」

「まだあるのかよ」

「キャラよ、キャラ。どんなに内容が面白くてもキャラが悪いと読んで貰えない可能性もあるからね」

「そりゃそうだな」

「さっきも言ったけど共感性ってのが重要だから、普通の作品だと主人公の個性は控えめにした方がいいわね」

「読者からすると個性が強すぎる主人公は感情移入しにくいってか」

「そうよ、勿論例外もあるけど基本的に主人公は『万人に好かれ、正義で強く実直』が王道だから結果的に味気ないキャラになるけどね」

「個性がないと物足りなくねえか?」

「その分ライバルやサポート役、敵に癖の強い設定や個性を詰め込むのよ。普通の作品で主人公を外道にしたりはできないし、結果的に主人公の自由度って低いから、そこも他キャラに任せるのがいいわね」

その結果それらのキャラが俗に言う『中二キャラ』になる事が多いが、味気のない主人公よりも強力な個性がある方が人気が出やすく人気投票でライバルやサポート役が一番人気になることも多い。
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/16(日) 19:19:01.78 ID:og7wfuHu0
「それと主人公は強くとは言ったけど強すぎると無双になるから注意が必要よ。爽快感重視ならいいけど、それにしても飽きられるのが早いから短編向きね」

「話が広がらねーもんな」

「ヒロインも重要ね。主人公と同じように強さの調整をしないといけないし、ヒロインが強すぎると主人公の存在意義が問われるわね」

「むぎのは強いからヒロごっ! があああああ!?」

いつも一言多い浜面は麦野の拳を真正面から食らった。

「まあ、ライバルとか敵のキャラを立たせ過ぎると主人公やヒロインが空気化するから、ある程度は癖と言うか個性も付けなさいよ?」

「はい、せんせい。わかりました」

「強い理由も必要ね、『何故強いのか?』とか」

敵が『宇宙人』や何か特別な種族であったり、過去に凄まじい修行をしていたなど人物背景があれば強くても納得が出来る。
前作の主人公を敵にしたりする手法もあり、その場合は前作で弱者から強者となった成長が描かれているので、異常に強くとも納得しやすく説明量を減らす利点もある。
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/16(日) 19:20:06.06 ID:og7wfuHu0
「他にも、仲間は当然として敵も大事にしないといけないわね。大事って言っても死なせないようにとかそう言った意味じゃなく、無意味な噛ませ犬にしないとか言う意味でよ? 特に二次創作系のオリジナルキャラ無双は嫌われやすいわ」

「好きな作品でいきなり謎のオリキャラがでてきて、好きなキャラに無双したりするのは気分いいもんじゃねえわな」

過去の敵を噛ませ犬にする場合は、かなり注意が必要である。
特にその敵が登場時に確固たる悪役を演じていた場合、その敵の人気が高い場合もある。主人公が過去の敵をあっさり倒すのは一度倒した相手であり、『主人公の成長』として比較的受け入れられるが、脇役や新キャラ、二次創作ではオリジナルキャラの無双は『何故強いのか?』が説明されない場合が多く、強さを見せるため既存のキャラが噛ませ犬になることも多いため読者の反感を買いやすい。

「それが受けることもあるけどね。でも普通は二次創作を見る人ってその元になった作品やキャラクターが好きで読んでる訳だし、それを誰かが考えたキャラにあっさり倒されるのは不満がでやすいわね。全部が全部とは言わないけど、噛ませ犬にするために変な補正がかかったり、そのキャラクターの個性をねじ曲げた解釈をして『別キャラ?』と思わせるほどキャラ崩壊させる場合もあるしね」

「夕方も言ってたしな」

「やり過ぎると二次創作じゃなくオリジナルになるしね」
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/16(日) 19:22:37.98 ID:og7wfuHu0
本日の投下はこれにて終了。
次回は五日以内のこの時間帯の予定です。
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/16(日) 20:36:14.95 ID:OgrViPu/0
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/10/16(日) 21:24:51.23 ID:cEoBy0pi0
おつ
130 : ◆cmIC2ACkpo [saga]:2011/10/19(水) 19:03:16.49 ID:lyzr8qYH0
投下開始します。
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/19(水) 19:03:47.98 ID:lyzr8qYH0
「最後に、どれだけキャラを作りこんでもそのキャラを演出したり表現する方法に問題があっちゃ意味無いわね」

「格好よくとか可愛くでいいんじゃねえのか?」

「そう言う意味じゃないわよ。例えば『上目遣い』とか『女の子特有の匂い』とかの演出って簡単で楽な表現だけど、ありがち過ぎるのよ」

「『前見たのと同じ話』に見えるって奴か」

「変な表現は駄目だけど、『その表現しかできない』と『その表現もできる』は別物だし、余りに使いすぎると『グシャ、バキ、ドーン』って表現とさほど変わらないわよ」

「そこまでかよ……」

「他にも、キャラと状況描写のバランスもあるわね」

「何それ?」

「例えば主人公が散歩をしてる時に、町の風景を描写すると、その間は主人公の動きがないでしょ? 主人公だけじゃなく状況を描写してる間は、全てのキャラが動けないし。余り状況を細かく描写しすぎるとキャラが動けなくなったり、話が進まないのよ」

どれだけ状況を説明し、どれだけキャラを動かすかの適切量は作風次第である。
コメディなどの軽い作風であればサクサク話を進めた方が読みやすく、シリアスなどの重い作風であれば描写をしっかりした方が雰囲気がでる。
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/19(水) 19:04:26.31 ID:lyzr8qYH0
「表現の違いを例にして出だしを作ると『辺りは一面の白い雪におおわれていた』は『日に照らされ白く輝く雪におおわれていた』にしたりとか『彼女は上目遣いをした』を『彼女は僕の顔を覗き込むように見てきた』にしたり、少し表現を変えたり付け加えるだけで結構印象が変わるわよ」

「そっか、なんにしてもまだ練習が必要だな」

「練習ねえ、本を読んだり漫画を見たり映画を見たり色々あるわね」

「気になってたことがあるんだけど、小説とかで影響を思いっきりうけちまったらパクリになるのか?」

「二次創作、パクリ、オマージュ、リスペクトとか色々あるけど全部別物よ?」

「どう違うんだ?」

「ホワイトボードのはもう全部書き写した?」

「ああ」

そう言って、麦野は先ほど書いた内容を消して新しく書いていった。
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/19(水) 19:04:50.86 ID:lyzr8qYH0

           /: : : : : : : : : : : : : : :..ヽ: : : : : : : : : :\    ■二次創作
          /: : : : : : : : : : : : : : : : : : :.l: : : : : : : : : : : :ヽ   ■カバー、リメイク
       /: : /: ∧: : : : : : \: : : : : : |: : : : : : : : : :l: : : |   ■リスペクト
        /: : /: / ヘ、: : : : : : :\: : : : |: : : : : : : : : :|: : : |   ■オマージュ
.      }: : l: /_  \:.丶: : : : : ヽ: : |: : : : : : : : : :|: : : |   ■パロディ
        |: : :l:.l  \   \ \:.:.:.:.:.:.ヽ:|: : : : :l: : : |: l: : : :|  ■モチーフ
        |: : :l:.| '^圷ミ     `>=::.十: : : :リ: : ::|/: : : 人
        }: : :l:.l 弋zリ    ´^「た卞 |: : : :./: : : |: : : /: : :\
       ?八ハ  ´     弋沙'´ |: : :./: : : : |:.:.: :}: : : l: :\
         /:.:l   〈           l: : /: : : : : |:.:.: :|: : : 八:..: :\
         }:圦            |: /: : : : : 八:.:. |: : /: : ヽ:..: ::ハ
         |: : :ヽ   _          |/: : : : : ∧:.:\l: /: : :..: :}: : ::|
         |: : :.:.:.\  `    .イ /: : : : : /: :.:\:.:.:.≧ト、: ノ: : : :|
         |: : :.:.:.:._:.>ー <_:.\_/: : : : : :/>―ァ`─<` V: : : :.|
         〉:.:.:/       }:: }: : : : :./:./ /       V:.:.:.人
         r‐〈   __   〉::::|: : : : //::::/    /   V:.:.:.:.:.\ _,-..、
       _/ヘ \_ノ〉:.:.r、j  /:::::::|: : : /:::::::::/   彡     }:.:.:.:.: ヽー‐'`):}
      / />- -´∧:.:.`ー' V::::::|: : :.{::::::::/            |:.:./:ハ:.|  彡'
      /       / |:.:.:.:}^} V:人: : :ヽ:/              V::/ }:|
.     /       /  .|:.:.://   .V:::\: :/       /__ <   V く:〈
    /       /  ノ//      V::::::/       /    `ー V  `)}
.   /       /  ./  j        V:/       /         }  ノ
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/19(水) 19:07:39.45 ID:lyzr8qYH0
「キャラ名や設定とか、似たタイトルにしたり複数の要素を取り入れている作品は二次創作、SSとか書き手も公表してるし説明するまでも無いわね」

「それはまあ、そうだな」

「カバーやリメイクは原作者が書き直したり、他人が原作者に許可を取ってコピーしたり、追加や削除したりしてるからこれも説明不要ね」

「だな」

二次創作やカバーなどは元になる作品を独自の解釈や、追加修正してるが『元作品』をいじった物として出している。

「リスペクトは二次創作やカバーとは違って元になる作品を『尊敬』の意味を込めて真似たり、似たような物を作ることだけどオリジナルよ」

「いいのか?」

「あとで説明するけど、そこに書いてあるのは全部問題ないことよ」

「そっか」

「オマージュもリスペクトに近いわね。ただリスペクトよりも、もっと直接的な引用や似せるわね。これも部分的だし尊敬の念を込めてるわね」

「そんなもんかね」

「そんなもんよ」
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/19(水) 19:09:30.17 ID:lyzr8qYH0
「パロディは有名な作品の一部を面白おかしく表現したり、演出したり社会風刺や皮肉の場合もあるわ。法律でもパロディは認められてるしね」

「自分の作品を別作品でパロってる作家もいるよな」

「そう言う人もいるわね。最後、モチーフは元となる人物や歴史や作品を見て、アイデアが思いつくとかね。直接的な引用とかはないし、時代劇とかほぼこれだけど誰も盗作とは言わないでしょ?」

「アイデアが二次創作って感じか」

「その認識でいいわ。今言ったのは盗作にはならないし、作者が自分で『○○の影響を受けています』とか公表してる場合とか、特別公表はしなくても誰が見てもすぐ分かるようにしてる場合が多いわね」

「王道とかはどうなんだ?」

「それは大元をさかのぼれば何か元ネタがあるんでしょうけど、皆が真似しすぎて当然になった物ね。王道と呼ばれるまで固まったネタは、もう引用とかじゃなくて『演出』って言うわよ」

「そこまで突っ込んだら、世の中の何割が盗作になるんだって話か」

主人公が最後の戦いで覚醒して敵を倒す、野球のサヨナラ満塁ホームランなどは常識と言われるほど多くの人が使う手法である。
それらを制限すると新しく創作することが非常に難しく、演出と同じ扱いである。

「ネタが被ったり二番煎じもまあ、ある程度は仕方が無いし許容範囲ね。ただし『世界観』、『キャラクター個性』、『話の進行』、『状況』、『台詞』とか夕方も言ったけど全部同じだと模写よ」

「難しいな」

「全部が全部とは言わないし偶然もありえるから、わざとじゃなければ多少被るのは仕方が無いわよ。それに商用じゃなければ二次創作とかも個人の自由だしね」
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/19(水) 19:11:04.64 ID:lyzr8qYH0
「けど二次創作の販売とかってなかったっけ?」

「厳密に言うと著作権違法になるけど、宣伝になると考えたり厳しく言って客離れされても困るのよ。だから余りに酷い場合を除いて訴えたり、口をはさんでくることは無いわね」

「どの程度していいんだ?」

「権利者次第……としか言えないわね。同人誌とかは原作あっての物だから、そのせいで原作の売上が落ちるのはかなり考え難いけど、ぬいぐるみとかボールペンとか権利者が販売してるのと同じ系統の二次創作物は、ほぼ確実に駄目ね」

「海賊版みたいなもんか?」

「そう思ってくれていいわ。SSはお金目的じゃないし、個人の自由として好きにすればいいけどさ」

「本やSSだけかぁ」

「権利者次第だから、どこからどこまでって言う線引きが凄く難しいのよ。さっきも言ったけど宣伝や客離れ問題もあるし、大企業は余程じゃなければ余り口を出さないし。ちなみに注意が必要な大手だと任天堂やカプコンね」

「厳しいのか?」

「任天堂は子供向けや家族向けとか、子供を大切にする企業なのよ」

「大人気だもんな」

「実際にあった事例で、任天堂は性的描写のある同人誌を訴えた事があるわね」

「マジかよ!? 同人誌すら駄目なのか」

「ちょっと違うわね。同人誌だからでも営利目的だからでもなく、性的な描写があったものを販売したからよ。任天堂はイメージを凄く大事にするから、そう言った問題はかなり厳しいわね。逆に性的な表現のない本やSSとかの二次創作で口出しした事例は、ほぼ無いと言ってもいいわ」

「任天堂って厳しいけど心が広いんだな」

「そりゃ元々、ヤクザ相手に花札とか売ってた企業だからふところは深いし、喧嘩を売らない限りは寛容(かんよう)よ」
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/19(水) 19:12:40.24 ID:lyzr8qYH0
「じゃあカプコンが厳しいのか?」

「カプコンほど二次創作に寛容な大手企業は珍しいわよ? 配布目的や営利目的でなく、キャラクターのイメージを損なうことをしない限りは基本的に自由だし、自作イラストとかSSとかの二次創作を公認してるわね。自社内でも『X』が波動拳や昇竜拳撃ったりパロディが多いのも特徴ね」

カプコンの二次創作に関しての公式見解では。
「著作権的には違法になる。しかし、そこまで規制するとファンの創作活動を制限してしまうので『精密な模写や公式画像を加工した物』、『イメージを損なう内容』、『営利目的』、『配布目的』以外なら許可する」
と最低限の権利以外でクレームを入れることは無い。
しかも学校などの教育機関であれば、画像や音楽の使用も販売以外なら許可すらいらない。

「じゃあ何が問題なんだ?」

「カプコンは色々なところと手を組んでゲームを作ることが多いのよ。『カプコン VS SNK』とか『マーブル VS カプコン』とか。それにゲームやCDとかから抽出したデータを使ったりは、二次創作じゃなくて盗作だから犯罪よ」

「結構コラボしてるよな」

「例えばマーブルキャラの権利者をカプコンと勘違いして、アメリカの権利者に賠償金請求されたりする可能性だってあるわよ? 全部の企業がカプコンほど二次創作に寛容な企業とは言えないし」

「こええな」

「さっきも言ったけどSSは営利目的じゃないから、そう言うことはないけどね」

「なんだっけ、一時期どっかの動画サイトで流行ったロックマンの替え歌かなんかの奴、あれはどうなんだ?」

「あれは、個人利用以外のイベントとか営利目的で許可はでてないわね。カプコン側が明確に認めないって言ってるし。替え歌とか個人で歌詞をつけるのは、法的には創作性が無いとされて二次創作と認め難いわね」
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/19(水) 19:13:33.21 ID:lyzr8qYH0
「そうなのかぁ。ってそういやどっかの芸人が替え歌CD出してなかったか?」

「あの芸人は元ネタ全部に許可取ってるわよ?」

「全部ってすげえな」

「他にもちょっと特殊だけど、偉人の名言とかの引用は問題ないわね。でも曲の歌詞を引用する場合はジャスラックに引っかからない程度にしなさいよ?」

「どの程度ならいいんだよ」

「王道でも言ったけど『会いたい、けど会えない』とか『二度と戻れない』とかその表現が常識レベルの物ならいいわよ。極端な物を作らない限りはどうしても被っちゃうんだし」

「極端な物か」

「練習代わりに王道や何かをモチーフにしたり、オマージュ的なSSをいくつか作ってみたら?」
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/19(水) 19:14:20.72 ID:lyzr8qYH0
「一回作ってみるか。けど何書こうかな」

「最初は失敗して当然だし。基本ルールだけ守って、はっちゃけちゃうのもいいかもね」

「勢いで書くってことか?」

「セオリーとかも無視しちゃうとか。一度荒削りなのをそのまま書いて、そこから伸ばしていくのもありよ」

「んじゃ、一回即席でオリジナル書こうかな。ネタはプロットカードで作るわ」

「即席ならト書きがいいかもね」

「分かりやすいし、考えやすいもんな」

「キャッチコピー的な物もあるといいわね」

「何で?」

「『乙』だけとかって中々言い難いじゃない? キャッチコピーみたいなのがあれば、読者もその言葉を使ったりとか作者と読者の一体感もでるわね」
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/19(水) 19:18:19.03 ID:lyzr8qYH0
「『1,2,3ダッー』みたいなもんか?」

「そうね。漢字五文字、ひらがな十文字以内がいいわね」

「大脳なんちゃら学の先生も言ってたな」

「あんた学者に知り合いいたの? まあいいわ、流行語とか呼ばれてる物も基本的に短いわね」

「そりゃあ、ジュゲムみたいな長い言葉だと覚えれねえよな」

簡単に覚えれる文字数は人種や言語にもよるがアメリカ人で七文字、日本人で十文字、中国の広東語を用いる人は十三文字となっている。
それ以上の長さのものは一瞬で覚えるのが難しく、覚えるのに時間がかかり定着し難い。

「確か『マジカルナンバー7±2』だったかな心理学では、人間が記憶したり認識するのは七つまでで例えば、意味の無い七桁の数字は覚えられるけど、それ以上は難しいわね」

「ん? 俺は普通五つまでって聞いたぞ?」

「それは多分、少し時間をおいても覚えていられる個数じゃない? 『トウモロコシ』とか『エンドウマメ』とか、数字とは文字数が違うでしょ。けど身近にあるものだしトウモロコシなんて聞いただけでイメージできるでしょ?」

「そこまで食う物じゃねえけど、イメージはすぐできるわな」

「知ってる物は度合いにもよるけど別物よ。私が言ってるのは、すぐ覚えられる言葉の個数よ」
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/19(水) 19:21:03.37 ID:lyzr8qYH0
「じゃあその『マジカル7』ってのは新語とか、新しいキャッチコピー的なのは七文字までがいいってことか?」

「その言葉はアメリカの心理学者が論文で発表したものだから、日本だと少し多くて十文字までよ」

『マジカルナンバー7』はジョージ・ミラーと言うアメリカの心理学者が『マジカルナンバー7+-2』という論文の中で
「一度聞いただけで直後に再生するような場合、日常的なことを対象にする限り記憶容量は個人差により五個から九個しか覚えられない」と言うことを発表した。

「七つってのは何か世界的な目安なのか知らないけど、日本語でも『八百屋』や『八百万』とか多いものを示す言葉は『八』が使われるわね。末広がりって言って漢字の八は上から広がるように下に書くでしょ?」

神話にも八はよく使われている。
スサノオが出雲でヤマタノオロチ(八岐大蛇、八俣遠呂智、八俣遠呂知)を討伐した話でも非常によく八が使われている
夫婦には『八人の娘』がいたが毎年、ヤマタノオロチいう『八つの頭』と『八本の尾』を持ち、『八つの谷』、『八つの峰』にまたがるほど巨大な怪物がやって来て娘を食べてしまった。
スサノオは七回絞った強い酒(八塩折之酒)を作り、垣を作って『八つの門』を作り、それぞれに酒桶を置くようにいった

「九尾の狐とかはどうなんだ?」

「九尾の狐は中国よ。五百年に一本ずつ増えて四千年で九本だったかしら」

「別物か」
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/19(水) 19:23:12.80 ID:lyzr8qYH0
「麦野ってキツネが好きなのか?」

「可愛いからいいじゃない!」

「別に駄目とは言ってねえよ!?」

「ったく。それと余りに短すぎると言葉の意味がなくなるから、最低三文字かしら。擬音とか二文字以下は伸ばしたり、連続して使うといいわね」

「『ぽーん』を『ぽぽぽぽーん』とか『プー』を『プープー』とかか?」

「そうね、『ぽぽぽぽーん』は凄まじかったわ。出来たら冷やかしに行ってあげるから教えなさい」

「おう!」
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/19(水) 19:29:53.68 ID:lyzr8qYH0
本日の投下はこれにて終了。
次回は五日以内のこの時間帯の予定です。

PS:最近この時間が異常に重いので時間帯変更しようか考え中
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/22(土) 19:03:00.52 ID:id0jcFTy0
投下開始します。
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/22(土) 19:03:36.02 ID:id0jcFTy0
「さて、今日はもう寝るか」

夜もふけ、浜面は自室に戻って行った。
ノートをテーブルの上に置いたまま……。

「あら? 浜面の奴ノート置きっぱなしじゃん」

「超何を書いたんでしょうね」

「私も気になる」

「ちょっと読んでみましょうか」
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/22(土) 19:04:25.27 ID:id0jcFTy0
シャワーを浴び終え、二人は同じベットに腰掛けている。
物理的な距離は、そのまま二人の心の距離を示していた。

「まだ緊張してるのか?」

普段の強気な言動や見た目に反し、初心な彼女は少し震えておりまるで子猫のようだ。

「う、うるさいわね、だってっ」

言葉が終わる前に浜面は距離を詰め、彼女を抱き締めた。
彼女からかすかにバラの香りがする。彼女の愛用する香水の香りだ。

「愛してるぞ」

そう言うと浜面は彼女の頬に手を当てゆっくりと近付いていった。
彼女はきつく瞳を閉じその瞬間を待つ。唇に当たる熱い感触、服を握る手に力が入る。浜面の熱い吐息が彼女の頬をくすぐった。

「んっ」

彼女は自身の体が熱くなるのを感じた。そして夢中になって舌を絡ませているうちに、ベットに押し倒されてしまった。

「行くぞ」

「あっ」

浜面は上着を脱ぎ肌を晒した。見せるだけの肉体ではなく、『実用性』を追い求め鍛えた機能美。
雄の匂いを感じ彼女は気持ちの昂ぶりを抑える事ができなかった。

「脱がすぞ」

「う、うん」

身につけているのはバスローブ一枚であり、その下は彼女を隠す物はない。

「だ、ダメ……」

彼女は浜面に抱き締められながら、その豊満な裸体をさらけ出した。
男とは違う丸み、触ると指を弾くような弾力がある。浜面は彼女の肩を抱いた。
シミ一つ無い透き通るような白い肌は、緊張のためか薄っすらと桃色に染まり、浜面の劣情を加速させる。
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/22(土) 19:04:54.23 ID:id0jcFTy0
「やっ……ん、んんっ」

「まだ肩しか触ってないぞ? そんなんで大丈夫か?」

「んっ……あっ……」

浜面は優しくキスをした。

「大丈夫か?」

「うん……少し落ち着いた」

彼女の顔は真っ赤に染まっており、目元に少し涙を浮かべている。

「続き、するぞ?」

「うん……きて」

薄っすらと彩られた肌。
二つの山の頂点は次第に硬く、尖り始め自己主張している。

「あっ、さわっちゃダメ……」

「やっぱ柔らかいな」

「んっあっ」

そして浜面の手は彼女の……
148 : ◆cmIC2ACkpo [saga]:2011/10/22(土) 19:05:27.03 ID:id0jcFTy0
「はまづらぁぁ! てめえエロシーン書きたいために利用しやがったな!」

「キモイです! 超キモイです浜面!」

「そんなはまづらは応援できない」



おわり
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/22(土) 19:06:32.81 ID:id0jcFTy0
エロって難しい。本編はこれにて終了します。
読んで頂き、ありがとうございました。

このSSに書いている事はあくまで一例であり、面白さを保障する物ではございません。
面白さとは時代や見る人の立場で変化し、全ての人に面白いと感じて貰うのは不可能です。
しかし努力次第で、大勢にではなくとも面白いと感じて貰うことは可能です。

次回投下は未定ですが、番外編を書いていこうかなと思っております。
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/27(木) 19:51:51.25 ID:Y+XI0bdLo
>>1
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/08(火) 02:06:59.08 ID:cG/UUBWQo
152 : ◆cmIC2ACkpo [saga]:2011/11/17(木) 22:04:33.35 ID:sFy044SM0
最後の投下いきます。
153 : ◆cmIC2ACkpo [saga]:2011/11/17(木) 22:05:11.85 ID:sFy044SM0
「さっきは大変な目にあっちまったぜ……」

アイテムの仲間に小説の書き方を聞いたその日に、そんな物を書く浜面の自業自得とも言えるが彼はいまいち理解していなかった。

「結局、浜面はバカって訳よ」

「んあ? なんだフレンダか、脅かすなよ」

「ところで何してんのよ浜面」

「SS書いてんだよって……え?」

「『え?』って何よ?」

「何でここにいるの? てかお前死んでるよね?」

そこにいたのは十月九日の対スクール戦で、保身のため自身の所属するアイテムの情報を売り麦野に粛清されたはずのフレンダであった。
154 : ◆cmIC2ACkpo [saga]:2011/11/17(木) 22:05:55.89 ID:sFy044SM0
「結局、幽霊って訳よ」

「ええ!?」

「浜面うるさい」

初めは言葉を発することすらできないほどにうろたえていた浜面であったが、冷静なフレンダを見てほんの少しだけ冷静になった。

「お前……。ああッ! 未練とか、あの、何言っていいのかわかんねえ!」

「相変わらずのバカ面ね、別に意味なんかないって訳よ。あれから少したったし、皆どうしてるかなって思っただけ」

「そ、そうか。いつまでこっちにいるんだ?」

科学の町で幽霊のような非科学的なものを信じる者は少ないが、浜面は過去に魔術などの能力とは別の法則による術や、天使などの人を超えた存在も見たことがあるのでフレンダ幽霊の存在を信用し、冷静さを取り戻した。

「結局、もう用事は済んだし。もうすぐ帰るって訳よ」

「あの世の『決まり』って奴か?」

「一日くらいならいてもいいらしいけど、もう皆の顔も見たし。けど、まさか浜面が『見える人』だってのは驚いた訳よ」

「未練はもうないってか? 見えるのはロシアとかで変な経験したからかなぁ……」

「粛清されたのも保身のために仲間を売った自分のせいだし。結局、暗部なんかにいたらいつ死んでもおかしくないって訳よ」
155 : ◆cmIC2ACkpo [saga]:2011/11/17(木) 22:06:29.92 ID:sFy044SM0
「まあ、な」

自身も暗部に所属する身であり、その気持ちは重々承知していた。
暗部では人の命を奪うこともある。その代わり、いつ誰に殺されれも文句の言えない場所でもある。

「私に何か用とか言いたいことはある?」

「いくつか聞きたかったことがあったけど、未練がねえなら特別言うことはねえよ」

それを聞くとフレンダは安心したような、寂しそうな顔をした。

「っと、くだらねえことを聞いてもいいか?」

「何を考えてるのよエロ面」

「ちげえよ! さっきも言ったけどSSって奴を書いててさ、何かアドバイス貰えたらなって思ったんだよ」

「SSって麦野が待機中に携帯で読んでたわね」

「携帯だけじゃなくPCでも見れるけどな。書き方とかネタの作り方は麦野たちに教えて貰ったんだけど、配置とかはどうなんだ? お前って格ゲーのコンボみたいにトラップしかけたり、ぬいぐるみとか作ってるじゃん」

フレンダが生前よく使っていた武器にぬいぐるみ爆弾がある。
トラップ作りが趣味なのかぬいぐるみ作りが趣味なのかは謎であったが、店に並んでいてもおかしくないほど精巧なぬいぐるみをいくつも作っていたり、言葉や視覚で相手の行動を制御する心理学などにも長けていた。

「レイアウトとかの配置系なら多少こだわりがあるって訳よ」

「おお! なら一回読んでみてくれ」

そう言って、浜面はノートに書いていたシリアス系のバトルシーンを見せた。
156 : ◆cmIC2ACkpo [saga !蒼_res]:2011/11/17(木) 22:07:25.54 ID:sFy044SM0
――――――――――
「電気技は俺には通じない……
貴様には何も残っていない……」

「残っているさ……熱い魂がな!」

黄色い悪魔は猛る。


   バチバチバチ


全身に光をまといながら
走る、駆る、疾る。


   バチバチバチ


友のために。
強大な電力は黄色い光ではなく
青き炎となり鋼の体に突き刺さる。

「電気は地面に逃げようとも、
炎までは耐えれなかったようだな」

――――――――――
157 : ◆cmIC2ACkpo [saga]:2011/11/17(木) 22:08:04.18 ID:sFy044SM0
「やっぱご都合主義過ぎたか? あと臭いし」

「それはフィクションだし別にいいけど、見た目がいまいちって訳よ」

「どう言うことだ?」

「基礎となる書き方だけど、日本の文学で『会話文の後の行頭は空白を入れる』字下げって言うんだけどさ。ウェブ上だと分かり難いから字下げをせずに、空行一つつけて字下げの代用にするのはまあ、いいけど」

「なら、何処が駄目なんだ?」

「会話文の途中で改行してたり、色を変えたり、文字をずらしたりって駄目ではないけど」

フレンダは少し複雑そうな顔をしていた。

「正直安っぽいって訳よ」

「え」

「確かに見やすいし文のリズムも取れるかもしれないけど、改行とか演出でリズムを作るのって文字で勝負してないし、文字以外での演出って極論を言っちゃうと『このCDを聞きながら見てください』とか『○×のイメージで』と同じよ? リズムとかイメージは形でじゃなく、文章で伝えないと文章が軽くなっちゃうって訳よ」

「グッ! 麦野にも似たようなことを言われたんだよな……」

「PCでも携帯でも見れるなら何文字まで表示できるか違うし、何処で区切られているのか分からないって訳よ。漫画みたいに吹き出しが付いてる訳でもないし、映画みたいにね」

「ぐぬぬ……」

「まあ、適材適所と言うか駄目って訳ではないんだけどね」

「ん、ならどう言う時になら使っていいんだ?」
158 : ◆cmIC2ACkpo [saga]:2011/11/17(木) 22:09:34.73 ID:sFy044SM0
「結局、B級とかって訳よ」

「ん? 安っぽくなるからB級になるんじゃないのか?」

「最初からB級と言うか、安っぽいチープな作風と受けを狙ったけど受けずにB級とはちょっと違うわよ?」

「絹旗が昔そんなこと言ってたっけか」

「『それを作る』のと、『それしか作れない』のは根本的に違うし。それと同じように『それができる人』と、『それしかできない』人も全然違うわね」

「その手法も取れる人は選択肢が多いけど、それしかできねーとそれだけだもんな」

「少ししか見てないから全体がどうなってるかは分からないけど、全体的なバランスも重要だし」

「そこは俺もまだ慣れてないから、今んところハリウッド映画を参考にしてる」

「ふうん、どんな感じ?」

「大体百二十ページで作ってて序破急のうち『序』三十ページ、『破』六十ページ、『急』三十ページで書いてる」

ハリウッド映画では一ページを一分として、百二十ページ前後の作品が多い。
およそ百二十分のうち多くは一部三十分、二部六十分、三部三十分である。
『序破急』と言う言葉は普通の人には馴染みがない単語だが、B級映画マニアの同僚に連れられレクチャーされ一般の人より詳しい二人であった。
159 : ◆cmIC2ACkpo [saga]:2011/11/17(木) 22:10:34.46 ID:sFy044SM0
一部は『序』であり、話の下準備をゆっくり進行し、視聴者を物語に導く。

「大体十五ページくらいを時代や舞台背景を描写したりストーリーを暗示させて作品のムードを作って、もう十五ページで事件のきっかけとか物語の分岐点を作ってる」

「いい感じね」

二部は『破』であり、話を加速させ視聴者を物語にひきつける。

「事件が起き、話の核心に迫ったりとか、『障害』、『選択』、『後悔』、『後戻り』、『転換』とかを組み込んでオチをぼかしたりしつつしてるぜ」

「ふうん」

「見え見えの展開だとつまらねえから『こんなことが可能なのか?』と思わせるくらい厳しくしてるな。けど、長かったりダラダラすると飽きられるから、ちゃんと箸休め代わりに多少のサブストーリー作って話が脱線しない程度にいれてるぜ」

三部は『急』であり、物語を締めくり視聴者に最も印象を残す。

「ここからが難しいんだよな。二部までと違って勢いだけじゃ書けないし、他の場所以上にじっくり練ってから作ってる」

「敵対組織のボスとの対峙や対決。敵の弱点を見つけたり、仲間のサポートなので逆転とか王道って訳よ」

「やっぱそう思うよな? んで締めの大団円だけど、あっさり終わらせた方が印象いいって聞いたからねちっこくならないように気をつけてる」
160 : ◆cmIC2ACkpo [saga]:2011/11/17(木) 22:12:05.10 ID:sFy044SM0
「なんだ、ちゃんと分かってるじゃない」

「よく分からねえからそうしてたけど、それでいいのか?」

「結局、上手な構成になってるって訳よ。他は飛ぶ鳥あとを汚さずと言うか捨て台詞を吐いたり、ちゃんとルールさえ守ってればいいんじゃない?」

「おお! サンキューなフレン…」

「はぁぁぁまぁぁぁづぅぅぅらぁぁぁ!」

浜面がフレンダに礼を言う寸前に赤い物体が凄まじい速度で飛来してきた。

「ギャァァ」

「その塩鮭腐ってんじゃねえか!」

「ええ! 俺のせいなの!?」

「てめえのせいだこのタコが!」

「フレンダ助けてくれよ!」

「あん? フレンダが何処にいるってんだよ」

「あれ? てかさっきの悲鳴ってまさか……」

振り返るとそこには誰もいない。フレンダは風になった。
浜面が無意識のうちにとっていたのは「敬礼」の姿であった。
それは自分以上に扱いの悪い、ある意味では自分以上の人々に愛されているいじられキャラのフレンダに向けて彼なりの最後の手向けであった。


161 : ◆cmIC2ACkpo [sage]:2011/11/17(木) 22:15:08.11 ID:sFy044SM0
以上を持ちまして、浜面君の冒険は終了いたします。
見てくれた全ての人に感謝のありがとう。
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/17(木) 22:48:56.80 ID:d8scZ6noo
>>1
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/17(木) 23:57:35.82 ID:l1McAqJoo
乙です。願わくばこれを読んだ人が一人でも書き手になりますように。
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