このスレッドはSS速報VIPの過去ログ倉庫に格納されています。もう書き込みできません。。
もし、このスレッドをネット上以外の媒体で転載や引用をされる場合は管理人までご一報ください。
またネット上での引用掲載、またはまとめサイトなどでの紹介をされる際はこのページへのリンクを必ず掲載してください。

バケモノガイスト〜いのじヴァンプ〜 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

1 : ◆QQMxiMkUf6 [sage]:2011/10/11(火) 12:52:11.31 ID:Z+bjIbml0

西尾維新先生の戯言シリーズと化物語のクロスっぽいもの。
ようはn番煎じ甚だしいね。

[注意]

いーちゃんが出てくる以上誰かが死んでも文句なし。

書きためなしで亀更新。
期間は自分が飽きるまで。
理想通り完結したらそれは一種の奇跡かと。

以上を踏まえてお送りいたします。
【 このスレッドはHTML化(過去ログ化)されています 】

ごめんなさい、このSS速報VIP板のスレッドは1000に到達したか、若しくは著しい過疎のため、お役を果たし過去ログ倉庫へご隠居されました。
このスレッドを閲覧することはできますが書き込むことはできませんです。
もし、探しているスレッドがパートスレッドの場合は次スレが建ってるかもしれないですよ。

渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714052788/

二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714049241/

佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/

トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713798788/

2 : ◆QQMxiMkUf6 [sage]:2011/10/11(火) 12:54:07.17 ID:Z+bjIbml0
 0


きみって化物みたいだよね


 1

「信じようが信じまいがそれはあなたの勝手です」

はたしてそうなのか。
ぼくの勝手なる主観でのみでそんなことを決めてもいいのだろうか。
そもそもぼくの意見は所詮60億分の1であり、それが肥大化することは無い。
あの赤色の様に至大なる存在でも無ければ、
あの青色の様に極大なる人間でも無い。
その中のぼくは見劣りどころか比較対象にすらならないだろう。

「あなたは良い人すぎる。もっと悪くなれよ。そうでないと生きづらいですよ」

軽く貶されてしまった。
しかし幸いなことにぼくが良い人かどうかはこの物語においてさほど関係が無い。
けれどもこれは考え方の違いだからぼくがどうこう言えた話ではそもそもないだろう。
いやもっと言うならこれは考え方というより生き方の違い。
このことを信じるか否か。
これだけで人生が大きく変わることは無いだろう。
しかしながらこれをどう選ぶかによって価値観なんて言うのは案外あっさり分かってしまう。
絶対的な絶対なる差。
絶大的な絶大なる差。
強大的な強大なる差
もしかしたらこの問い一つで未来なんて言うのは至極簡単に決められてしまうのかも知れない。
たとえば赤色の請負人。
たとえばぼくの裏表でもある殺人鬼。
たとえば奴隷を生きる美少女。
たとえば橙色の友達。
たとえばお友達の大泥棒。
たとえば武士の様な雰囲気の隣人。
たとえば狐面を被る最悪。
たとえば青色のサヴァン。
たとえば人間もどきの少年。
たとえば蟹に行き遭った少女。
たとえば蝸牛に迷った少女。
たとえば猿に願った少女。
たとえば蛇に巻かれた少女。
たとえば猫に魅せられた少女。
たとえば炎の姉妹と呼ばれる二人。
たとえば鬼もどきの少女。
彼らがどう答えるかはぼくには分からない。
もしかしたら言葉で言うまでも無いのかもしれない。
しかしそれを知ってしまうと人間は脆く崩れ落ちるであろう。

「この世には二つの生き方があるらしいです。
自分の価値の低さを認識しながら生きていくのか、
世界の価値の低さを認識しながらいきていくのか。この二つがあるらしいです。
自分の価値を世界に吸収されるか、世界の価値を殺ぎ落として自分のものへと変えるのか」

この言葉は聞いたことがある。
いつだったかいつごろだったか。どこだったのかどのへんだったのか。
生憎ながらそれは忘れてしまったが。
それでもおそらくこの台詞も誰からかに聞かれたことがある。

「―――で、あなたはどうなんですか?」

それは。

「あなたにはこの常軌を逸した世界、どう見えますか?」

あの時ぼくは答えず違うことを考え出した気がする。
答えなんか無いから。
―――。
全くもって戯言だった。
3 : ◆QQMxiMkUf6 [sage]:2011/10/11(火) 12:55:41.41 ID:Z+bjIbml0


 001


戯言遣い。
彼と僕の出会い話など需要があるか分からない物語を欲する層は僕の妹達の物語以上にこの世には無いだろう。
仮にそんな特殊過ぎる需要があったとしても、
僕はこの人との話について話す気はさらさら起きない。語ろうと何て間違っても思わない。
その理由としては誰もが納得してくれるだろうと僕は感じる。
しかし残念ながらこの人、戯言遣いの物語を語らずには僕の物語は進まない。
戯言遣い。
人類最弱。
欠陥製品。
いーたん。
様々な呼称がある中で僕がいーさんと呼ぶ彼。
その人が僕の人生の歯車を狂わせた。
―――いや、これではあまりに責任転嫁といえよう。
これは僕とその周りが勝手に狂っていっただけであり、彼が偶々その時やってきた。
そんな言い方もできるのかもしれない。
しかし。
「戯言だけどね」
と呟く彼の暗き、生気の感じない瞳が僕たちをどのように映したは生憎僕には分からない。
それでもこの物語において彼は無関係だというのはさすがに僕としても異論を訴えたいところだ。
傍観者のようで物語の渦中にいる。
傍観者のようで物語に関わってる。
傍観者のようで登場人物の一人。
傍観者のようで主要人物。
傍観者のようで主人公。
そんな彼を僕は見過ごさなかった。
いや見過ごせなかった。
どっちつかずの傍観者。
そんな彼の物語を語ろうと思う。
始めに言っておこう。
この物語は少なくてもハッピーエンドでは終わらない。
終わらない。終われない。
それどころか、まだ終わっていないかもしれないし、
始まってすらいないのかもしれない。
地獄の春休みの様に。
悪夢の黄金週間の如く。
この物語は最悪のまま、終わりを迎えるだろう。
それをどうとらえるかは個人に任せるし、僕の決める話ではないと思う。
だから僕はハッピーエンドで終わらないと言った。
そんな物語で良ければ僕は語る。
この改悪に改悪を重ねたような悪趣味な話を。
僕の人生においての、戯言遣いとの出会いの物語を。出遭い話を。
人外と、人害。
偽物同士の僕たちの出会いと別れの物語であったとしても。
4 : ◆QQMxiMkUf6 [sage]:2011/10/11(火) 12:57:51.49 ID:Z+bjIbml0
とりあえずプロローグまで。
言い忘れたけど、

戯言キャラは多分ネコソギラジカル後から
物語キャラは1stシーズン(偽物語)後から
5 : ◆QQMxiMkUf6 [sage]:2011/10/11(火) 14:19:40.56 ID:Z+bjIbml0
………というのを変更するんだぜ。
無計画っぷりがホント凄い
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/10/11(火) 14:27:33.47 ID:tKSi5e/AO
結局どういうSSなんだよ
7 : ◆QQMxiMkUf6 [sage]:2011/10/11(火) 16:46:15.66 ID:Z+bjIbml0
>>6
再構築物だと思って頂けたら。

こちらとしては楽しんで頂けるように書くつもりではありますが、
何しろこういったことは初めてに近いものなので正直どうなるか分かりませんが、
お付き合いいただけたらと思います
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/10/11(火) 21:18:50.64 ID:tKSi5e/AO
まあ、期待しといてやんよ
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/12(水) 22:40:18.07 ID:W2Hd+JTpo
伊織ちゃんは出ないんですか
10 : ◆QQMxiMkUf6 [sage]:2011/10/12(水) 23:48:24.81 ID:q1XJg2z70
>>9
場合によっては出る。

中途半端なところで止まるけど、
早々に更新ないのもあれなんで投下します
11 : ◆QQMxiMkUf6 [sage]:2011/10/12(水) 23:49:39.59 ID:q1XJg2z70


002


あまりに唐突かつ脈絡のない話で誠に申し訳ないのだが、僕は拉致監禁されたらしい。
いや、拉致監禁というにはあまりに自由すぎる光景が広がっているが。
今の状況は真っ赤な車(生憎車種までは分からないが)の助手席に座らされ、隣には真っ赤な人。
高速道路をホントに高速で走っており、オープンカーなので絶賛風になびかれ中である。
僕が覚えているのは、確か昨日普通に自分の家のベッドに潜り込んだまで。
ようは寝ているすきに誘拐されたのだろう。(一応親が警察で、妹たちは自称ながら正義の味方である阿良々木家でのことである)
時は21世紀。
こんな堂々とした誘拐があったものなのか。
少なくても僕は知らない。
知ってたまるか。
つーか何。この人。知らない顔だよ。
しかしながら僕はご存じかどうかは知らないが吸血鬼である。
最悪車から飛びおりれば何のこともなく逃げることができるだろう。
けれどもだ。それができない。
なんだかこの赤い人に睨まれているような気がしてたまらないから。
実際には前を向いて運転している。(とはいっても片手で髪をいじりながらという危なっかしい感じだが)
それでもだ、僕は動けない。拘束されているわけでもないのに。
蛇に睨まれた蛙さながらに。蛇に睨まれた吸血鬼少年 阿良々木暦……なんか色々交じっている気がする。
蛙になりすました少年 阿良々木暦…………ダサッ!
と。
ここで。
唐突に隣の赤い人が声をかけてきた。

「いやー。こよみんも大変だったな」

まぁいくらかツッコミどころのある台詞であったがまず声に出たのが。

「―――へっ?」

というあまりもあまりに情けないものになってしまった。
つーか何? 僕とこの人知り合い? てかここはどこだよ

「おいおい、知り合い? なんてつれねぇ事言うなよ。こよみん。あたしでも傷つくぞ」

心を読まれた。
……どうやって?
って、やっぱこの人と僕は知り合いのようだった。

「やっぱあれだったんだな。あんな大変なことがあったら記憶が曖昧になってもそりゃ仕方ねぇよなぁ!」
「――――な、何があったんですか!? ……えーと………?」
「あぁそこまで酷かったかぁ。悪い事しちまったなぁ!こよみん。あたしの名前は哀川潤だ。改めてよろしくな!」

と言ってシニカルに笑う。
おお、なんだか良い人そうだ。そんな事を思わせる笑顔でもあった。

「哀川さ「潤だ」…」

言葉を遮られ訂正を入れられてしまった。

「あたしの名前を名字で呼ぶのは敵だけだ」

なんて堂々といわれてしまうと羽川とのやりとりよろしくつい哀川さんと呼びたくなるがそれはやめておこう。
なにか命の危険が感じる。
12 : ◆QQMxiMkUf6 [sage]:2011/10/12(水) 23:50:44.89 ID:q1XJg2z70
生命活動に支障を及ぼす可能性がなぜか体中のサイレンから鳴り響いている。
だからやめておこう。

「それが賢明だ」
「心を読まないでください。潤さん」

恐ろしい人だった。
しかし僕の身にはどんなことがあったんだ?
謎が謎を呼ぶ。
だから聞いてみる。考えたところで仕方がない。

「それで、僕の身に何が起きたんですか?」
「あぁそれがよ聞いてくれよこよみん」

何故か「こよみん」というのが定着しているのはもう放っておいておこう。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「お前はあれほどの事件に巻き込まれたんだ。記憶をなくすのは無理ねぇわ」
「あれほどの事件ですか……」

何故だか記憶にないのだけど、僕と潤さんは何かしてきたようだった。
それも傍点部が付くまでの大層な出来事だったらしい。
何だろう?

「そうだ。とても一言では語りつくせない猛烈なる悲劇だった」

と潤さんは今までとは一変してまじめな顔で言う。
そして僕の顔を見てうんうんと頷いて。

「あたしが一歩遅れていたら、こよみんはきっと二〇〇〇〇回は死んでいたぜ」
「二〇〇〇〇回もですか!?そういえば全身何やら疼痛があるのですが…」
「それは敵の攻撃の後遺症だろう。いやただの敵ではない。《強敵》と表すのにふさわしい奴だったな。
 ………………だが安心しろ。お前をきぜ…じゃなくお前が気絶している間に全部片付けておいてやったから」

そしてそこから潤さんは記憶を失くした僕の為に逐一あますとこなく丁寧に、全てを教えてくれた。
それはただの異常でありながら、戦争と戦闘の物語であり、悲劇と奇劇の物語でもあり、流血と肉片の物語であり、そして何より愛と涙の物語であった。
そして僕はここで確信した。この人は良い人なんだな。と。
語り部たる僕の記憶消失のためにわざわざ用意してくれたかというような綺麗に物語をまとめてくれて、語る僕としても幾分楽できただろう。
しかしこの荒唐無稽な物語、潤さんでなかれば信じなかっただろう。
しかし僕は感動した。この人は素晴らしい人なんだと。

「この僕としたことが、そのような大事なことを忘れるなんて、改めてお礼を言わせてください」
「おいおい水クセぇこというなよ。こよみん。くすぐったいぜぇ」

と肩をすくめ。

「あたしとお前はそんな間柄じゃないだろう?」

とグッと親指を立て、素敵な笑顔ともにウインクをプレゼントされた。
あぁなんてカッコいいのだろう。滅茶苦茶格好良いじゃないか!
ただ車の運転にも注意して欲しい。

「この恩は絶対返しますよ。嫌と言われようが返します」
「おお! いやいやそんなつもりもなかったんだがなぁ。
いやはやしかしここでお前のその熱い思いを無碍に断るのは可哀相だなぁ」
「この阿良々木暦。あなたのために血肉惜しまず精一杯尽くしましょう」
「いやー。そこまで言われちゃあ、何か頼まれようなぁ。そうだ!今お前の様な奴が必要な仕事があったんだよなぁ。頼まれてくれるか?」
「はい。もちろんですとも。―――ちなみにこれはどこに向かっているのでしょう?」
「ん?ああ。いってなかったか。これはなぁ」

とここで一回間を溜め、シニカルな笑顔を浮かべながらこう言った。

「京都だよ」

結果として僕は潤さんに尽くすことになった。
それが何を意味を指すか知る由もなく。


 2


はたしてお化けなんて存在がこの世にいるのかと問われたら、ぼくはやはり首を傾げる他にないだろう。
そりゃそうだ。
ぼくのような一市民がお化けというものを理解したならば、夏に怪談噺を興じる人はおおよそ減るはずだ。
だって、理解をしたというのなら、ぼくはきっとそのお化けに対してなんら恐怖は抱かないはずだから。
13 : ◆QQMxiMkUf6 [sage]:2011/10/12(水) 23:51:34.11 ID:q1XJg2z70
勿論のこと例外だってあるだろう。しかしそれまでだ。

お化けというのは不明瞭だからこそ怪異として成り立ち、
明確な存在であれば、それは怪異ではないからだ。

都市伝説。
街談巷説。
道聴塗説。

様々な形でぼく達の周りでうろつき回る怪異だけれど、どれも『存在していない存在』であるとぼく達は無意識のうちに知っている。
けれど、
もしかしたら。
ひょっとして。
ありえなくない。
なんていう不安定な気持ちを効果的に擽ってくるもんだから怖いと感じてしまう。

よく聞く怪異というのは何故だか怖いものが大半を占めるとぼくは偏見にして寡聞ながらそう感じる。
例えば有名どころから引っ張って、吸血鬼なんて存在は割かし耳にする機会も多い部類だ。
吸血鬼。ヴァンパイア。文字通り、血を吸う鬼。
漫画か何かであれば主人公として登場するという展開もあり得るのだが、
実情は己の私欲の為に人の血を吸っているだけの存在というなんとも非道な話だよ。
それこそ鬼畜の名にふさわしい。
おおっと、あんまり悪いことを言うとこれからの『仕事』に影響するな。
戯言も程々にしておかないとね。

と、ぼくはここで一旦思考を切り替えることにした。
いい加減戯言を詠っている時間もなくなってきたから。

「………全く、面倒なことになったよなぁ」

そんなぼやきも直ぐに消え、ぼくはここに来るであろう待ち人をひたすらと待つ。
ここ、何て読むのか分からないけれど、「浪白公園」と書かれた良く分からない遊具の並ぶ公園に来るはずの人物を。
………戯言を言う暇こそないと言えど、その間やはりぼくも暇には変わりないので回想ごっこに講じたいと思う。


そう、あれは骨董アパートでの出来事だった。



 3



といったものの、そこからがいきなりおかしかった。
何せ。

「師匠〜。いつまで寝ているんですかー」

元気溌剌とした、懐かしき声がぼくの鼓膜を刺激してきやがったのだから。
成る程ね、これは夢なんだ。そう夢夢。ぼくは努々夢をみてました。
はい、戯言完成。
そしてぼくは夢オチだということを期待しつつ、布団に再度もぐった。
結果それは夢オチだったとさ、チャンチャン。

………というわけにもやはりいかず。

何やらズガズガという乱暴な擬音を放つ足音が段々こちらに近づいてきたかと思うと、
14 : ◆QQMxiMkUf6 [sage]:2011/10/12(水) 23:52:31.00 ID:q1XJg2z70
今度はブオォォォン、といった風を切る音がして、最後に掛け声がしたかと思うと……。

「ふらぁあっ」
「ぶっ!」

頭に誰かの勢いの良い強打が襲う。
するとなんということか、バチンッ、なんて尤もな効果音を出してぼくの意識を再びこちらに引き連れやがる。
……つーか鼻が痛い。

「いい加減起きてください、師匠。姫ちゃん学校の時間です」

そんな聞きたくても聞こえないはずの声をBGMとしながら、
うっすらと瞼を開くと、おぼろげに、見覚えのある輪郭が瞳に映った。
そうしている内に、全開に瞼を開くと、ぼくは絶句するほかなかったことに気付く。

「……………え?」
「いえ、師匠寝ぼけているんですか? だから姫ちゃんは捕習に行ってくるんです」
「……………あ、そう。行ってらっしゃい。あと馬鹿みたいな間違いはしない様に」
「………痒いとこついてこないでください! み、みてるがいいです! 学校から帰ってきたら日に物言わせてやるよーだ!
 ……………あと、師匠もそろそろ目を覚ました方がいいと思いますよ、じゃ、行ってきまーす」

と、変な小物臭とぼくの調子を窺う心配げな声と共にその子は元気一杯に走り去っていった。
………………。
バタン、と乱暴にドアを閉める音がぼくの鼓膜に届く。
そう、あの子がこの部屋を出ていった証拠だ。
………………。


………………え?


姫ちゃん、だったよな?
おいおいおい、ぼくは何時から他人の幻影を現世に呼びだすスタンド使いになったんだ?
そのスタンドも自由自在に動くというなんとも便利な機能を携える不思議なスタンドであったし。
――――さて、くだらない戯言もここまでだ。
誰だ? あの子供は。
何だ? これ現状は。
だって、姫ちゃんは、あの時に死んでいたじゃないか。
思いだしたくもない、あの時。
アルバイトに出かけた時、西東診療所で。

「戯言………どころじゃ、ないぞ」

呟き、一つ気付く。

「―――――補習?」

いやいや、それはないだろう。
何せ姫ちゃんが死んだあと、ぼくはどうしようもなかったので学校との関わりを断ったわけで。
姫ちゃんが行ったところで、不審者扱いされるだけじゃないか。
それに姫ちゃんは勉強が好きな訳でもない、好き好んでいく場所でもない。

「じゃあ、何だよ」

なんだ、この絶望感。
何が起こっている。
ぼくの周りで何が起こっている?

「分かるわけ、ねぇだろ……」

しかし、何もせずにはいられないだろう。
ぼくは枕元に置いてあるケータイを開く。
とりあえず、哀川さんに連絡を取ろうと思いのことだった。
あの人ならば何か知っているのかもしれない。
そんな淡い期待を胸に抱きつつケータイを取った訳だ。

ただ、現実はぼくをとことん虐め抜きたいらしい。


「……………は?」


呆然と、ケータイの画面を見つめる。
画面の一角、時刻を表すか所に大きな違和感があったから。
本来ならそこには正しい、ぼくの思っている通りの時刻が書いてあるはずだった。
けれどそれもまた、幻想らしい。

「七月……三十一日だって…」

昨日寝たのは、確か狐面の男との一件も片付いて、十二月に入ろうとしていたはずだろ?
それが……七月?
15 : ◆QQMxiMkUf6 [sage]:2011/10/12(水) 23:53:15.39 ID:q1XJg2z70
いや、まだ七月という事実だけならいい。
ただ、同じ年の七月という事実が矛盾していて堪らない。

「……………」

何だこれ?
何なんだこれ?
何がどうなっている。
ぼくの知らない間にぼくの身に何が起こった。

ぼくの中で、不安と防衛本能が共鳴を起こしている。
経験論からくる、この胸騒ぎ。―――――――まぁこの場合は誰でもそう思えるのか知れないけどね。

「………いや、まずは哀川さんだ」

そうだった。
その為にケータイを開いたんだった。
それすらも忘れるなんて、らしくないな。

心でそう思うと、不意に。
本当に不意に、ケータイが音を出し、震え出す。
どうやら、タイミング悪く電話が来たようだ。

「ん?」

いや、そうでもなかったようだ。
その電話は―――――――――我らがヒーロー、哀川潤からのものだった。




『よう、いーたん暇か』
「え? ていうか少し訊きたいことがあるんですが」
『つまりは暇ってことだな。今からいーたんのアパートに向かうからちっと待ってろ』
「へ? ちょっと哀川さん!?」
『じゃあねーん』

切れた。
…………ま、来るというのなら来るのだろう。
そう思いぼくは普段着に着替え、哀川さんを待つことにした。
その間にみいこさんや何やら早朝からご苦労なことで散歩に出かけていた春日井さんに、
さりげなく日付の違和感を申し出たのだけど、両者共々「病院行って来い」の一言で一蹴された。
全くもって冷たいね、皆。
でもそうこうしている間に三十分は過ぎたらしい。


豪快なエンジン音の元、真紅の車と共に、一人の女性が現れた。
つまるところ、哀川さん。
いつもの様な真っ赤なスーツにハイヒール。
ただ、顔はシニカルな笑みは浮かべておらず、シリアルバージョンだ。
珍しいことに。

「ん、いーたん。ご無沙汰してるかい」
「いえ、生憎ですが全然できてませんね」
「そっか、そっか。お前はやっぱあたし側か。少しは安心したぜ」

そう、頷きを入れるとぼくの部屋に無断に入る。
特別咎める気もないけど。

「さて、感動の再会のとこ悪いが、本題に入るぜ。いーたん」
「えぇ、ぼくの少しばかり雑談に興じている時間はなさそうですし」

さて、ぼく達にしてはえらく珍しいこのシリアスな空気が流れるってことは
それほどまでに重大にして害悪な事態が起こっているというのだろう。
………ま、目に見えてるんだけどね。

「さて、いーたんに一つ厄介事を頼まれてもらえねぇかなってさ」
「これはまた、哀川さんらしくないですね。ぼくに頼み事だなんて」
16 : ◆QQMxiMkUf6 [sage]:2011/10/12(水) 23:53:49.64 ID:q1XJg2z70
「潤な。――――って今回はそれどこじゃないかもしれないぜ。何せ、人外が相手なんだからよ」

人外ねぇ。
確かにこの時系列でいうのであれば、匂宮兄妹だって生きているけど。
けれど、そこまでの話か?

「いや、いーたんは勘違いしてるぜ」

おおっと、もはやぼくに言葉はいらないのではないか。
なんか突っ込むのもあほらしくなるな、ここまで来ると。

「そう思うならあたしの名前もいい加減一回で言えよ」

さて、本格的に言葉というものがいらなくなってきたところで、
ぼくの中で言語を発するという文化が廃れていかない内に喋るとしよう。

「で、勘違いって何です。出夢くんも十分人外じゃないですか」
「いやよー、今回で言うとこの人外は、そう言う意味じゃねーんだよ。
 っつーか何? いーたんはさり気に今回の事態に気付いている訳?」
「まぁ凡そは。―――――けど起こりゆる原因というものが全くもって分からないですが
 それで、いい加減もったいぶってないで言っていただけませんかね。ぼくは。ぼく達は今度は何を相手取らなければいけないんですか?」
「あぁ、別にもったいぶってたつもりもねーが、まぁいいや。じゃあ言うぞ」

そこで、一旦間を入れる。
やっぱもったいぶってたんじゃないのか?
と、戯言もここまでだ。
ぼくもそこまで空気の読めない奴じゃない。
しっかりと潤さんの話を聞くとしよう。
せめて何が飛び出してきても驚かないぐらいには。
そう。


「化物、よーするに怪異っつーわけだ」


そう。
驚かないぐらいには……。

「……………え?」

驚かないぐらいには、気張ったつもりなのだが。
言葉の端が漏れだしちまったじゃねーか。
だがまさか、潤さんの口から妖怪に準ずる言葉が出てくるなんて。
確かにジョジョとかは好きだけどさ。
………いや、妖怪ってのも今更か。
暴力の世界に出入りする様な潤さんにとっては。

「え。じゃねーよ。怪異だよ怪異。流石に分かるだろ?」
「まぁ、言葉の意味としては、ですが」
「そのまんまの意味で捕らえてもらっても構わねーぜ。ようは怪奇伝奇の権化の仕業だよ」

怪奇伝奇の権化。……ねぇ。
うーん。よく分からない。何だろうか、例えば轆轤首が現れるとかと同じと見ていいってことなのかな?
事態はそんな生易しいものではないのだけど。

「ま、その怪異が何の種類かと言われるとあたしも知らねーけどな」
「そうなんですか」

てっきり潤さんのことだから、解決編にこのまま移行するはずだったんだけど。
そこまで甘くはないってことか。

「とはいっても犯人に目星は付いているんだけど。その前に確認といこーや」
「はい、分かってますよ。そもそもぼくが言ってる大変と潤さんの言う大変が違うかもしれませんからね」
「よし、じゃあ言ってくれやいーたん。今あたしらの身には何が起こっているんだ?」

さて、纏めよう。
今日ぼくの身に起こったことを。

そして言おう。
恐らく正しく、同時に間違ってほしいと願うその現実を。


「今、ぼくはタイムスリップをしているようです」
「オーケー、あたしも同じだよ」
「もっと正確に言うなら、ぼくの記憶がこの世界に引っ張り出されたって感じですか。―――――こうしてギプスを付けている以上は」

そう、今ぼくはギプスを付けている。
ぼくにとってはさほど違和感がなかったので何とも言えなかったのだが、
この傷はどう考えても、斜道興壱郎研究所で負った傷で間違いがなかった。
当の本人が言うのだから多分あってるはず、そう信じたい。
17 : ◆QQMxiMkUf6 [sage]:2011/10/12(水) 23:54:16.46 ID:q1XJg2z70
偶には自分の記憶力に自信を持ちたいよね。

「そういうこった。あたし達はひぐらし宜しくタイムリープしてんだよ」

格別シリアスという訳でもなく、ただ喉が渇いたな―。みたいな調子でぼくに対し確認を取る。
―――へえ、潤さんも「ひぐらしのなく頃に」は見たことあるんだ。
確かにあれも一種の王道なのか? あれ単体が結構有名と思うし。
ちなみにあれはタイムリープと言っていいのかな? ………まぁいいか。

「……ただ、自分で言っておいてなんですがそんな現実味の帯びない結論でいいんですか? とてもぼくには……」
「いーたんも面白いことをいうなぁ。そんなの――――――――いまさら、だろ」

思わず「♪」が付きそうになるぐらいに弾んだ声で潤さんは返してくる。
何楽しんでんだ、このお方。

「まーまー、そんな毒づくなよいーたん」
「…………」

そろそろ違和感が無くなってきた。
ったく、京都府知事は何をやっているんだ。
ここにプライバシーというものが完膚なきまでに侵されている可哀相な大学生がいると言うのに。

「それはさておいてだ、いーたん。別にあたしは楽しんではいねーぜ。勘違いは良くねーよなー」
「………説得力に欠けますが、この際何でもいいですよ。―――――それで、目的が一致したということで、そろそろ発表してくださいよ」
「ん? おぉそうだな。今回の件は、ここで躓いてたんじゃあダメなんだよ」

おや、どういう意味だろうか。
ここで躓いてはいけない。
つまりは、まだこの先があるかのような、そんな口ぶりだ。
けれど、いくら怪奇伝奇―――怪異といえども潤さんに『不可能』ということはないはずだけれど。
例え一度失敗しても、二度目には成功するという究極ともいえる主人公体質を保持する潤さんにとって、
『程度』の話に意味はなさないというのに。

「おめーってさ。人のことを高く見過ぎだとか言うくせに、あたしに対する評価が異様にたけーよな」
「今更、何を言ってるんですか。人類最強さん」
「まーね。確かにそりゃいくら人類最強だもんな。変なこと聞いて悪かったなー、人類最弱くん」
「いえいえ、どういたしまして」

とても不毛なやりとりであった。
早くその元凶とやらを言ってもらいたいところだが。

「いーたんが変なことを思うからだろうが」
「思うぐらい良いじゃないですか。で、誰なんです。その元凶は」
「…………あれだよ」
「あれですか」
「おう、あれよ人類最悪」
「あいつですか」
「そのとーり」

さながら「最近調子はどうですか」と言われたとばかりに反応が出来ない。
強烈すぎる事実に反応が出来ないのではなく、予想できて身構えていたばかりに肩透かしを食らう結果になってしまった。
予定調和すぎる。
いくら王道が大好きな潤さんと言えどもこの人関連ならば遊んでいる暇もあまりないのも頷ける。
しかし、怪異か。
面倒な組み合わせもあったものだ。

「………それで、解決策は」
「うーんとね。ここからが最初に戻っていーたんに頼みごとがあるんだけどよ」

そいや、そんな事言っていたような……。
しかしどうせ拒否権もないだろうし。
早い内肯定でもしておくか。人に言われるより自分で立候補した方がまだ救えるはずだしね。

「分かりました、この欠陥製品、戯言遣い。人類最強哀川潤の為に骨身惜しまず奮闘することをここの誓って見せましょう」
「おお! 話も聞かず頷くなんてさすがだな戯言遣い。良い親友をもって心から嬉しいぜ!」

なんというオーバーなリアクション。
18 : ◆QQMxiMkUf6 [sage]:2011/10/12(水) 23:54:43.89 ID:q1XJg2z70
そんな風にされたら、自ら立候補したぼくが照れてしまうではないか。――――戯言だけどね。

「で、お前てさ、確か近い内に木賀峰の《死なない研究》ってのがあるだろ」
「…………そういや明日初の顔見せがあるみたいですね」

今日は七月三十一日。
明日、八月一日が、約束の日。
………あぶねえ、いくらあれだからって忘れるところだった。
どうせ木賀峰助教授も生きているんだろうしね。

「そう、その時にお前はバイトに参加すんな」
「何故ですか」

何故ですか、とは言ったもののさすがにもうあのバイトには
いくら金を積まれようが行きたくもないのだけれど。一応ね。

「いや、そこで一人の代理品を用意してんだよ」
「ふぅん。ちなみに誰ですか? それ」

ぼくの代理品。
一瞬零崎の事かと思い至ったが、その可能性は低いだろう。
今頃は潤さんから逃げ惑っている頃だと思うし。
さて、誰だ。
どんな人名が、ここに浮かび上がってくる?



「阿良々木暦。――――――――吸血鬼で、いーたんと同じ主人公だ」



………さすがにどう反応すればいいのか迷うところだった。



003



相も変わらず超スピードと言うのがふさわしい速度の快適なドライブをしている僕と潤さん。
忍は昼間の為かまだ起きてこない。………ま、潤さん自体に害はないんだけど。
どうにも事情がつかめない。
いや、つい先ほどまで、僕は潤さんにその旨を教えてもらったのだが、中々分からない。

ちなみに僕が今からする『奉仕活動』はこんな感じだった。
まず木賀峰さんと言う人の《研究》に付き添う。
そこには僕の付き添いっていうか僕が代理をやる以前の本来の人物の付き添いが二人いる。
そんな環境の中、僕は一週間ほど過ごせということだ。

ま、春休みとかの一件と比べたらそんな数値は全然屈するほどの日程ではないけど。
忍には悪いけれど、《あんな戦争》から僕を救ってくれた潤さんには恩返しもしなきゃいけない。
借りた物は返す。
当たり前の常識だ。
朝飯前の定石だ。

(おまえ様は馬鹿の極みをとことん走っておるのぉ)

何だか聞こえた気がするけど気のせいだろう。
何せ忍は今寝ている最中だしな。多分。―――多分ね!

「さて、もうすぐ京都に到着だぜ。こよみん」

お、案外京都と僕たちの町は離れていないのかな。
(寝ていたからかもしれないが)全然早く着いた。
確かにここから見渡せる程度でも僕たちの街とは雰囲気が大分違った。

「しっかしさぁ」

そんな光景に中途半端に見蕩れていたら、唐突に声を荒げ、潤さんが語りだす。
片手はハンドル。片手は握り拳。危ない限りだ。
19 : ◆QQMxiMkUf6 [sage]:2011/10/12(水) 23:55:20.55 ID:q1XJg2z70
目が血走ってますけど、口をえらく噛みしめてますけど、目に見えて不機嫌になったんだけど!?
まるで嵐の様な性格だ。
しかしこうして黙っている訳にもいかず、恐れ恐れ潤さんに話しかけてみる。

「………どうしたんですか。急に」
「いや、こよみんも大変な交友関係をもってるよなってさ。よくもまぁあんな奴と付き合えたもんだ」
「……話が見えませんが? ――――ってもしかして忍野にでもあったんですか?」

だとしたら、潤さんのこの態度も納得だ。
どう考えたってこの二人は馬が合わなそう。
見透かす人と。
見透かした様な奴。
まぁ、どっちもどっちだけど。
だけども、それはどうやら違ったようだ。
………さすがに、違うか。

「いや、誰だよそれ。ちげーちげー。そんな奴じゃねぇよ」
「…………ちなみに名前は何ですか?」

僕の知るところでこの人をそんな苛出せる人なんていたか?
………一人ぐらいしか思い浮かばないが。

「貝木泥舟っつったっけ。よくもまぁこよみんもあんな奴と親友やれたもんだ」

………その一人で正しかったようだ。
あの不吉ヤロー。

貝木泥舟。
ゴーストバスターという名で通り、簡単に言うと詐欺師だ。
その詐欺はかつて戦場ヶ原の家にも及び、家庭を崩壊させた。
自覚しての悪で、どうにも僕には対処の方法が思い浮かびづらい。
ようはやりづらい相手だった。
ちなみに先の忍野メメとは旧知の仲である。

……とまぁそんなことは振り返るまでもない。
そんな事実よりも、ただ一点の言葉に反射的に僕は問いかけた。

「……………親友?」

おいおいおい、僕は何時からあいつの親友になった。
むしろ敵と言っても差支えないだろ。
え?
え?
はい?

「ん、ちげぇの? いやよー。あいつがそう言うから読心術使うのも面倒だったからそのまま受け取ったぜ」
「待ってください。あいつと何時何処で何を何故話してたんですか!?」

いろんな意味で僕にとっては死活問題だ。
あんな奴の親友になったら、僕の人生お仕舞いだぞ。

「『何』が多いぜ。こよみん。けどいいさ。あたしとお前の仲だもんな。良いぜ話してやる」

いちいちこの人は格好良い。
くそっ、憧れちまうぜ。

「そうそう、それは約一か月前のことだった………」

そんな語り口調になって、その話は進んでいった。
20 : ◆QQMxiMkUf6 [sage]:2011/10/12(水) 23:58:01.45 ID:q1XJg2z70
ひとまず投下終了。
とんとん拍子で話が進んでいくのは仕様。
こんなところに時間をかけてられない。

次回あたりからは、
阿良々木くんはヒトクイに乱入予定。
戯言遣いの仕事はもう考えついている。
ってかこっちが本編なんだけどね
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/10/13(木) 01:18:10.37 ID:CGKAiZ9yo
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/13(木) 18:15:51.65 ID:zVNneFADo
伊織ちゃん出るんですかー
やったー!
23 : ◆QQMxiMkUf6 [sage]:2011/10/14(金) 23:42:39.29 ID:TNpvHj5J0
一応報告。
ちょっとリアルの方で、色々用事が出来たんで、しばらく投下できないかもです。
こんな作品でも楽しみにしていた方には申し訳ございません。
一週間ぐらいで帰ってくるかも。
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/10/15(土) 00:13:49.06 ID:FE5bMeMAO
は、早く… 間に合わなくなっても知らんぞ
25 : ◆QQMxiMkUf6 [sage]:2011/10/18(火) 19:57:24.41 ID:GxdnzWKy0
少量だけですが、投下します
26 : ◆QQMxiMkUf6 [sage]:2011/10/18(火) 19:59:00.38 ID:GxdnzWKy0


 004


「そう、それは七月の三十日だったと思うぜ」
「あいつは唐突にあたしの目の前に現れた」

『おい、人類最強』

「そんな風にな。ちなみに人類最強ってのはあたしのことだ」
「かっけーだろ」
「で、現れたかと思うと開口一番じゃねーが次に出てきた言葉はこれだ」

『お前にとって重要で重大な案件をもってきた。教えてやるから金を払え』

「溜息をつくってことはあれか? いっつもあんな感じなのか」
「何時まで経っても金金言いやがる」
「一に金、二に金。三四も含めて五まで金って感じ」
「いやはや困った奴もいたもんだよな」
「うちのいーたんとは似て非なる奴っつーのが印象に残るっつーなんともハタ迷惑な奴だったよ」
「いーたんってのもいつかまた話してやるけど」
「中々こいつも面白いんだぜ」
「今はまだ秘密だけどなー」
「ん?」
「あぁ次ね次」
「次つってもそこからあたしが割と本気で殴ってから、吐かせただけ」
「吐いたっつっても、金は巻き上げられたけど」
「ホントいい趣味してるよあのヤロー」
「そらまぁ情報は確かなものだったけどよ」
「しかし割高な買いもんもあったもんだ」
「値段は気かねーほうが良い。きっとこよみんはびっくり驚きそのままショック死さ」
「戯言っつらしーぜ。あんま気にすんな」
「それはともかくとして、ここで、飛び出してきたのがこよみんの名前っていうわけ」

『俺と阿良々木暦は親友だ。理由を言わずともあいつは俺を信頼してその案件も引き受けてくれるさ』

「とか言ってたぜ」
「おいおい、そんな憤慨するなよ。あたしはなーんも悪くない」
「別が嘘だろうがいいじゃねーか」
「それほどまでにあいつなりにお前のことは買ってるってことじゃねーかよ」
「詐欺師は人は愚か物も碌に買わねー人種だぜ、いいこった」
「そんときにお前のことについてもよーく聞かせてもらったぜ」
「あたしと縁が合うってのも大概だがとことん面白い人生してんな」
「ついでに今回の怪異についても十分に」
「《暴力の世界》でもなさそうだが、初めて聞くもんだから真偽はわかんねーけどよ」
「もしかしたら本当かもしれねぇし」
「しょっとしたら似非かもしれんし」
27 : ◆QQMxiMkUf6 [sage]:2011/10/18(火) 19:59:28.94 ID:GxdnzWKy0
「あたしにも分かんねーよ」
「そんなことはどうでもいい」
「それがあんときのあたしの心情ってのもあってな」

「んー、まぁこんな感じかな。って高速降りるぜ」
「もうすぐ着くと思うから、じっとしてな」
「……で、どこまで話してたっけ」
「あぁ、そうそう。その後あたしはこの日の為に計画を練ってだなそのまま今日という日に至ったんだよ」
「あの詐欺師はそれ以来会ってない」
「今頃はどっかでのらりくらり渡り歩いているんだろうよ」

「さて、詐欺師と出遭った経緯は以上だ」

「そこであたしは今回の依頼を請け負った」
「怪異撃退」
「いや、こよみんズ風に言うんだったら撤退してもらうとかそんな感じか?」
「まぁ、大方の目星は付いている」
「今回の怪異の特性に不気味なまでに似合いそうな輩はあたしの記憶に生憎あったし」
「この件だけは絶対あたしらが何とかしなきゃいけねえんだが」
「………しかしあたしも仕事はある」
「一回受けたたりー仕事なんだが外すわけも行かなくてよ」
「全くもって大人ッつーのはなんとも不便だよな」
「動きたいときに動けない」
「涼宮ハルヒの○○が全部今の私の気持ちには詰まってるぜ」
「憂鬱」
「溜息」
「退屈」
「消失」
「暴走」
「動揺」
「陰謀」
「憤慨」
「分裂」
「驚愕」
「いやー感性豊かってのも毒だねぇ」
「あ、ちなみによ。最も強い感性は憤慨でいいぜ」
「そう変な顔はするもんじゃねぇさ」
「整った顔が台無しだ」
「………はっ、照れてんじゃねーよ」
「おいおいいーたんならここを戯言で一蹴するツッコミしてるとこだぜ」
「あたしはあの詐欺師からこよみんのツッコミは上手いって聞いたんだけどなー」
「まぁいいよ」
「人と人を比べるなんてくだんねぇこと言わねえから」
「んで、話を戻すぞ」
「あたしには仕事がある」
「だが、詐欺師の言うようになるのであればあたしはこの仕事を請け負わざる負えない」
「あたしがそこまで言うほどの厄介なものらしいぜ」
「詐欺師が言うには、この怪異の名前は」

「つなぎ蜘蛛」

「ずばりそのまま蜘蛛の怪異だ」
「狐じゃねーのが若干気になるが、そんな都合よくいねぇんだろうよ」
「大体狐なんか怪異としては有り触れすぎてるっぽいしな」
「名前の由来は……何ってたかな」
「まぁ、大方」
「繋ぐ蜘蛛ってだけだと思うが」
「単純だ」
「ただ、単純だからこそ、怪奇は人から人に伝わりやすい」
「伝わりやすいから、怪異としてはランクが高い」
28 : ◆QQMxiMkUf6 [sage]:2011/10/18(火) 19:59:55.29 ID:GxdnzWKy0
「ようは強力って話」
「この怪異は、場面と場面と繋ぎ合せるらしいよ」
「軟い糸ながら様々なモノを巻き込みながら、餌も敵も時間も場所も絡ませて」
「絡ませて、止める」
「糸はどこまで伸びる、延びる」
「過去から未来へ、天国から地獄まで」
「紡いだ糸は、切れるまで残り」
「残った糸に蜘蛛は出歩きできて当たり前だ」
「だからこそ、タイムリープなんて洒落た真似なんて余裕だよ」
「何せ、延びた糸の範囲なら好きな時に戻せたり、あるいは早回しできるからな」
「あれとかもそうだろ?」
「芥川龍之介の小説『蜘蛛の糸』だってよ」
「運命を変えてるんだよ、お釈迦様は」
「嫌だねえ、釈迦のご都合で運命変えられるって」
「けど、それはひとまず置いとくぜ」
「それで、この怪異で一番厄介なのは、本人にこんな現象を起こしているという自覚ないんだよ」
「無自覚、無意識」
「無慈核、無為式」
「やってる本人は夢うつつ状態」
「はっ」
「ったく、どこの構ってちゃんだよ」
「あたしの知り合いってのもなんか腹立たしいな」
「しかし《縁》《縁》言っているあいつと思うならこの怪異ってのも中々頷けるぜ」
「蜘蛛の糸、赤い糸」
「糸にまつわる逸話や伝奇は《縁》が関わってるのもよくあることだし」

「聞いたら分かったと思うが、はっきりいって対処の方法があたしには思い浮かばん」
「そもそも怪異ってのもまだ知って一か月だ」
「よくわかんねぇよ」
「しっかりと目で見たわけじゃあるまいし」
「そこでこよみんの登場ってわけだ」
「ん?」
「あたしらしくない?」
「いうねぇ、こよみん」
「まだ知りあってそんな経ってな………いや、さすがは長い付き合いだけあるよなー!」
「うんうん、あたしもそれは思ってたんだけどよ」
「ただ、そうはいかねぇらしいんだわ」
「理由?」
「簡単だよ」


「この物語は既に数回も繰り返して、それもあたしらは全部失敗しているらしいからさ」


29 : ◆QQMxiMkUf6 [sage]:2011/10/18(火) 20:01:54.76 ID:GxdnzWKy0
ここまで。
3レスっておい。
しかも唐突にオリ設定入ったぞオイ。
……まぁ、こんな感じで進んでいきますがご容赦を。
これからもよろしくお願いします
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/18(火) 20:34:45.52 ID:Oo8yYhQVo
おつ
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/10/21(金) 19:11:32.81 ID:/iMlkfRAO
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2011/10/29(土) 12:04:17.73 ID:/V/jfxLi0
いいね
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/20(火) 18:19:43.13 ID:47QXm9VA0
俺得
34 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2012/01/01(日) 23:27:46.63 ID:Kn26+i/00
保守
35 : ◆xzYb/YHTdI [sage]:2012/01/20(金) 01:01:13.67 ID:lOJY1oZA0
大変お久しぶりです。こんな早々と頓挫しかけて申し訳なく思う、うん。
これまでは違う創作物にも手を出していたんですが、こちらも進めなければな、って感じで戻って参りました。

少なからず一月が終わるまでには3レス程度は投下したいなと思っております
需要なんか知ったこっちゃない。俺は俺の道を行くッ! ってな痛い感じな意気込みで頑張ります。

こんなgdgdな自分ですが感想とか貰うとむちゃくちゃやる気あがりますので、
暇ができたらどうかよろしくです。

では今回は以上です
36 : ◆QQMxiMkUf6 [sage]:2012/01/20(金) 01:05:27.37 ID:lOJY1oZA0
ギャアアアアアアアア!
酉が違う! 上の酉はなし。
裸エプロン先輩によってなかったことにされました、まる
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/20(金) 18:30:33.43 ID:Z5EHpPZb0
如何にもふいんきが西尾っぽくてとても良いと思いました(笑)
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/24(火) 14:00:39.19 ID:I0cHlUxU0
>>37
なんだお前のその感想貰うとやる気出るのかと思って適当に書きました感と(笑)は
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/01/24(火) 21:12:54.52 ID:Owwop7u30
>>35 見たことあるトリップだが同一人物か?
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2012/03/01(木) 18:29:38.50 ID:Z+xjaJuZo
そろそろ落ちそうだな
40.17 KB   
VIP Service SS速報VIP 専用ブラウザ 検索 Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)