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ヴァッシュ「学園都市に愛と平和(ラヴアンドピース)を!」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆DdirWW5ZSY [saga]:2011/10/17(月) 22:28:20.24 ID:4GCC8uAw0
    とある魔術の禁書目録  ×  TRIGUN MUXIMUM




「どうだ!!どうだヴァッシュ、」


「これが俺たちの持つ本来の力だ」

「そうだ…ジュライを消滅させたのもこの力さ」

「力を溜めろ!!くだらん感傷ごと人類を…」


    
     消しつくせ ヴァーッシュ!!!



ドドドドドドドド

キイィィィィィィィ



(……!?、なんだ…このゲートの大きさは…!力が…強すぎる!!!)

「くっ…アァアアアアアアア!!」






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諸君、狂いたまえ。 @ 2024/04/26(金) 22:00:04.52 ID:pApquyFx0
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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
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渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714052788/

二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
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全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

2 : ◆DdirWW5ZSY [saga]:2011/10/17(月) 22:29:12.32 ID:4GCC8uAw0

巨岩の頂上で対峙した二人の厄災、片方の男から顕現した異形の銃

その強大な力は地表ごと周りの全てを破壊するかのように見えた、

その刹那、異形の銃の主自身の手よって軌道はそらされた…


が、しかし、そこに溜められた余りにも膨大なエネルギーは

巨岩の頂上付近一帯をも巻き込んだ巨大な光と化した




あとに残された人々が見たのは不自然に穿たれた

六番目の月に空く、大穴であったという。
3 : ◆DdirWW5ZSY [saga]:2011/10/17(月) 22:32:28.40 ID:4GCC8uAw0







こと夏休みにおける男子高校生の朝は遅い、帰宅部ならばなおさらで、それは十
万人の学生に超能力開発というカリキュラムを課す科学の街、学園都市において
も変わらないもの…である筈なのだが、やんごとなき理由によってその日の上条
当麻の朝は早かった。

「ふぁ…はぁあ、くそ…眠ぃ、せっかくの夏休みなのに補習…とはな、不幸だ…
ふぁ」

不幸というよりは自己責任である筈なのだが、この少年には生まれ持っての謎の
不幸体質のせいで自らの境遇を「不幸」の一言で悲観的に片付ける悪癖があった


しかしそれもある種仕方のない話で、事実、不幸にも彼の家の冷蔵庫には消費期
限を気にするべきな焼きそばロールしか入っていない、
さらに不幸なことに、彼のベランダには大騒動の種が。



「…えー、と、なんだこれ、ていうかなんだこの状況…夢?」

結論から言うと本来布団などが掛かっているのが自然なスペースにとびきり不審
な人間が掛かっていた、しかも赤い服の青年と白い服の少女の二名が、ちょうど
掛け布団と敷布団を連想させる構図であったという。
4 : ◆DdirWW5ZSY [saga]:2011/10/17(月) 22:36:01.56 ID:4GCC8uAw0
「人間…だよな、誰だよ…っつーか何!?何のヒト!?二人とも!!コレ!?」





「私は…シスターさんなんだよ…」

「……じゃあコッチのお兄さんは何!?」

「そんなことより…お腹…空いた…がくっ」

少女は自らの口で擬音を発し力尽きた、青年はは未だ目覚めず。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



脳裏にはけして取り戻せない過去が残り続ける

………………レム…

そして、それを奪った男の姿も

…………!……



「…………ナイ…ブズ!!」」
「うわっ!」
「きゃっ」
5 : ◆DdirWW5ZSY [saga]:2011/10/17(月) 22:39:18.76 ID:4GCC8uAw0
「………こ、ここは…?」


「目、覚めましたか…?」

「君は……どちらさん?」

「いや、こっちが聞きたいから」

「お腹空いたー!!」

「お前はちょっと待て!」

「妹さん?」

「違う!どっちかって言うとアンタの側だろ!?」

「私はこんな人知らないんだよ!いいからさっさとご飯ちょーだい!」

「僕も…ちょっと…知らないな」

「じゃぁなんで二人仲良くうちのベランダに掛かってたんだよ!?」


とりあえず放っておく訳にもいかないので二人を布団の要領で取り込み、青年を
ベッドに寝かせた直後の光景である(白衣の少女は案の定目を覚ましていた)、 状
況が状況だけに二人が知り合いだと踏んでいたので、なおも彼は混乱することと
なったわけだが。

6 : ◆DdirWW5ZSY [saga]:2011/10/17(月) 22:43:45.39 ID:4GCC8uAw0

「とりあえず!!とりあえずだ! 我が家のベランダに引っ掛かってた以上、家主
に対する状況の説明を要求する!!」

「ベランダに…引っ掛かってただって!?」

「あ、あぁ、俺が朝起きたら二人仲良く、布団みたいにさ」

「(どういう事だ!?俺はあの時確かジェネオラロックでナイブズに…)」


ヴァッシュ自身はジェネオラロック付近で倒れていた所を誰かに拾われたのだろ
うと踏んでいたのだ、ロストジュライ以降、二度目の力の開放だったので前回の
ような記憶障害も起こらず、彼は事の顛末をボンヤリとだが、確かに憶えていた



「(そうだ、今度は確かに憶えている…!俺は自分の右手で…)」

「…あの〜」

「! あ、あぁ!何でもないよ! そ、それより君が家主なのかー!お若いのにご
立派だねぇ!うんうん!」

「いや、まぁ、学生寮なんですけどね」

「学生寮!ほぇ〜、それにしちゃ随分キレイだなぁ、金持ちなんだねぇ」

「いやいや、むしろ上条さんは万年ド金欠で…って!状況を!説明!!とりあえ
ず名前!!」

「ごめんごめん!ヴァッシュ、ヴァッシュ ザ スタンピードだ…うん」


一瞬、偽名を使うことを考えたが、すぐに自分の懸賞金は既に失効になっている
ことを思い出す、彼の脳裏ではあの保険屋の2人組の安否が気がかりとなっていた
7 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/17(月) 22:50:57.96 ID:4GCC8uAw0
「ヴァッシュさんか、で、なんでまたうちのベランダに?」

「それが…全く分からないんだ、…気がついたらこのベッドだった…悪いけど、
一つ聞かせてくれないかな」

「いや、それはいいけど、気づいたらベランダに居たって…」


ヴァッシュザスタンピードという名前を聞いても大きなリアクションが無かった
ことは幸いだった、先のカタストロフが自分の手によって引き起こされたと知れ
ばそうもいかないだろうが。

ともかく自分の置かれている状況を説明するためには、その結末を知る必要がある。


「ジェネオラロック…あそこで大規模な事件があった筈だろう?あそこは…今ど
うなっている…?」


自身の右腕に宿る強大な力、すんでのところで軌道を逸らしその銃で地上を薙ぎ
払うことは避けられたが、その反動は大きな被害をもたらした筈だった、しかし
少年から帰ってきた答えはヴァッシュにとって想定外のものだった。


「ジェネオラ…ロック?なんですかそれ?すいません俺、地理に詳しくなくて…



「(!?…どういうことだ…?)」


単純にこの少年が地理を知らないだけだったとしても、結果として五番目の月、
フィフスムーンに巨大なクレーターを穿つほどの衝撃である、衛星放送(サテライ
ト)のニュースに乗らない筈が無い、さらに不審な点が服装である。

あの時自分は確かにこの赤いコートを脱いでいた、ヴァッシュの記憶には確かに
それが残っていた、しかし、今の自分はコートにブーツ、ガンベルトから愛用の
銃に至るまでを完全に身につけていた。
8 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/17(月) 22:56:21.35 ID:4GCC8uAw0



「もう一つ、ここは……一体何処なんだ!?」






「ここは学園都市…だけど」



「……」

それは150年以上熱砂の惑星を歩き続けてきたヴァッシュにすら、一度も聞き覚えの無
い地名だった。








to be continued……
9 : ◆DdirWW5ZSY [saga]:2011/10/17(月) 23:03:03.87 ID:4GCC8uAw0
短いですが今回はここで、

SS書くの自体は二スレ目ですが、地の文の入ったシリアス話となると初めてと言ってしまって
いいんじゃないかな、もう。
だから文法とか、誤字とか、表現がわかりにくいとか、こうしたらいいのにとかあれば是非

しかし板そのもののサーバーがヤバイのか、投下時に重い重い、
時間かかりまくりなので、細かく区切って明日また投下します。

それでは完結させられるよう頑張りますので何卒ご声援のほどを。
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [saga]:2011/10/17(月) 23:06:29.76 ID:actt3p9Z0

トライガンもとあるも好きなので期待です。
11 :名無しNIPPER [sage]:2011/10/17(月) 23:09:40.41 ID:/jxa6TnDO
これは期待せざるを得ない
12 :名無しNIPPER [sage]:2011/10/17(月) 23:11:57.10 ID:/jxa6TnDO
これは期待せざるを得ない
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/10/17(月) 23:16:33.60 ID:/I+2gFtzo
これは期待やね。

……いかん、マキシマムの時系列が思い出せん。
フィフス・ムーン事件で転移でおk?
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/10/17(月) 23:23:14.84 ID:xooDa60AO
このパターンだとガンホーは来るのだろうか……?
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/10/18(火) 00:23:52.15 ID:cYrs8KtH0
期待! 間違ってウルフウッドも出てくれないかなぁ。
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/18(火) 10:50:52.01 ID:bEEnI7oIO
これは是非とも完走してもらいたい

それにしてもガンホーの存在如何で最悪学園都市が血に染まりそうで恐ろしいな
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/10/18(火) 11:07:28.43 ID:VigjATu+o
トライガンは好きな作品だし期待
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/10/18(火) 16:18:09.73 ID:ZJLspcRAO
>>16
エレンディラ・ザ・クリムゾンネイルとレガート・ブルーサマーズだけで十分地獄絵図やで

逆にザジとか同族を沢山連れてこないとキツいよな
19 :名無しNIPPER [sage]:2011/10/18(火) 16:28:24.93 ID:DPehUzADO
青夏さんはいかんて…
聖人クラスの筋力がないと抵抗もできないだろ
それでもヴァッシュみたく拮抗状態に持ち込むのが限界なんじゃ…
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2011/10/18(火) 16:41:49.98 ID:ckwaweZNo
なにこれ俺得
話的には無印終了した頃だよな、この段階でヴァッシュの髪に黒入ってたっけ?
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/18(火) 17:04:31.10 ID:TiOzd+rDO
>>20
無印終了後は後ろ髪だけ黒くなってる
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/18(火) 18:18:00.29 ID:7S2abE4IO
>>18
そいつらはアウト過ぎるがモネヴやパペットなんかも周囲に甚大な被害を出しまくってて油断できないよな
基本ガンホーは即効で倒せないと取り返しのつかない事態になる奴らばっかりだ
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/10/18(火) 18:55:56.95 ID:ZJLspcRAO
>>22
ミッドバレイも[ピーーー]ときは指向性解除しての広範囲殲滅だしな

サイクロプスとブレードくらいか、タイマン特化で破壊が少ないのは

上条だと対処不可能だけど一通ならとりあえず怪我しないな奴らが多いな
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2011/10/18(火) 19:11:15.18 ID:ckwaweZNo
基本セロリならどうにかなるけど上条さんならまず死ぬな、異能?なにそれ?な連中だし
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/10/18(火) 20:29:05.54 ID:OUGSKHfo0
>>1

トリガンとは懐かしい。
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/18(火) 20:43:22.00 ID:8DhARbfIO
>>24
セロリには基本物理攻撃は効かないだろうが初戦だけなら案外マスターCやエレンディラの人外の殺気叩きつけられて折れそうな気がする
27 : ◆DdirWW5ZSY [saga]:2011/10/18(火) 22:08:50.58 ID:Hq//dTkK0
投下するヨー いまから投下します宣言はさすがにあったほうがいいか
28 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/18(火) 22:10:39.53 ID:Hq//dTkK0
「すま…ない、まだ混乱してて、俺自身、状況が掴めないんだ……すまない」

「……だったら、お前は?流石にお前も記憶が無い、なんてことはないよな?」

少女に問いかける上条当麻、しかし少女は先程までとうってかわって、バツの悪
そうな顔を浮かべていた。


「…どうした?」



「……お腹…空いた……ごはん…」

「あ…」





冷蔵庫の中に唯一あった焼きそばパンを近づけると超速で捕食された(焼きそばパ
ンが)、なにやら酸っぱい香りを漂わせていたが…



「もぐもぐ……ごくん、私の名前はインデックス、見ての通りイギリス式十字正教のシスターなんだよ」

「見ての通りって、全然見えねぇよ!しかもなんだインデックスって!絶対偽名だろ!目次か!」


「むっ!そっちから言えって言ったのに理不尽かも」
29 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/18(火) 22:12:00.74 ID:Hq//dTkK0
「へぇ、シスターだったのか、実は知り合いにも牧師が居るんだ」

「牧師ってことはプロテスタントだから同じ宗派かもね」

「そこ!二人で盛り上がらないで!説明して!」


やはり二人は知り合いで、共謀して知らん振りをしているのではないか、と思う
上条当麻、 理由は二人が同様にかもし出すゆるゆるなオーラである。


「昨日の夜、となりのビルの屋上からこのビルの屋上に跳び移ろうとして、それでジャンプしたら落ちちゃって、そのまま気絶してたの」

「……それも嘘だろ」

「なっ…!さっきから説明しろ説明しろってうるさく言っておいてそれはおかしいんじゃないかな!?」

「当たり前の反応だっつぅの!落ちちゃった〜って、マリオか何かかお前は!」

「マリオさんっていう知り合いがいるのかな?」

「違ぇよ!」

先程まで彼の中では、こちらの少女の方が幾分かマトモに見えたので(見た目的に)
期待していたのだが、あまりにもあっさりとその期待は裏切られてしまった。 そ
もそも屋上から落ちて上条宅のベランダに直撃したと言うなら、こんな華奢な少
女の骨格が無事で済む訳が無い。
30 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/18(火) 22:13:54.12 ID:Hq//dTkK0
「しかも、なんでお前みたいな女の子が真夜中にビルの上を跳び渡るようなこと
があるんだよ、エクストリーム鬼ごっこか?」

「ある意味正解かも…追われてたから、私」

「!」
「!」

年端もいかない少女から語られた不自然な台詞に2人のお人好しは敏感に反応した

もしこの少女が本当に何かただならぬ事件に巻き込まれていたのなら、
流石に見過ごす訳にはいかない、お互いに知る由は無いが、2人にとってそれはも
はや理屈抜きの性分である。



「追われてたって…一体誰にだよ」




「……魔術結社なんだよ、どこの所属かまではわからないけど多分十字教の魔術って
ことはわかるんだよ」

「………」


「…追って来てるのが人達がどういう人達かは分かないけど…」



「多分……私の持ってる魔導書が目的だと思う」
31 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/18(火) 22:15:30.18 ID:Hq//dTkK0


「………」


…………


「魔術結社って何?」

「多分あの杖とか持って生贄の儀式でアブラカタブラーっていう」

「魔導書って…どう思いマス?」

「流石にそれは無いと思うナー、でも僕は個人の趣味とかは自由だとオモウヨー」

「うん、誰もが一度は通る道だよな」


「何かわいそうな子を見るような目を向けてるのかな!!」


ここに来て無駄な結託を見せる2人。


「第一魔導書なんて何処に持ってるんだ? 権利を持ってるとかか?」

「それは…違うけど」

「……」

「とにかく!魔術も魔導書も本当にあるの!!」

「はいはい、そういう設定なのな」

「きー!!第一おかしいんだよ!“超能力”は信じるくせに、魔術は信じないな
んて!」


「信じるも何も超能力はちゃんとした科学だからな」


「(超能力…?)」

超能力というモノ自体はヴァッシュも知っているが、まるで彼らはそれが当たり
前に存在しているかのような口ぶりをしている、さっきから抱いていた不信感は
膨らむばかり。
32 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/18(火) 22:16:31.62 ID:Hq//dTkK0

「超能力っていうと…あの、スプーン曲げたり、切れたヒトがくっついたりとか
の、あれ?」

「いや、なんていうか、学園都市の超能力はもうちょっとスゴい…というか、あ
と後の奴は超能力じゃなくてマジックだけど」



「(さっぱりわからないな…)」

おぼろげにジェネオラロックでドミニク ザ サイクロプスが見せた催眠術(ヒュプ
ノーシス)が思い出された、しかしあれは片目に着けられた装置の補助によって成
されたものだ。


「超能力と同じで、魔術は実際にあるもん!自分が知らないからって、それが無
いって決めつけるのは良く無いと思うんだよ!」

「だからって魔術は無いだろ、ねぇ?」



「……確かに、それはそうだね 知りもせずに決めつけるのは良く無いな」

「え!?」

実際のところヴァッシュも本当に魔法があるとは思っていなかったわけだが。
33 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/18(火) 22:18:19.90 ID:Hq//dTkK0
「…だったら、何か無いのか?魔法で炎をだすっ!とかさ」

「む…魔法じゃなくて魔術!あと…私自身は魔力がないから魔術が使えないんだ
よ」

「なんだそりゃ…」

「むむむ……そうだ! ……ふふーん、そんなに言うなら証明してあげる!さぁ!
私に包丁を刺してみるがいいんだよ!」

「なっ!?」

「なに言ってんだ!?お前!」

「大丈夫!私が今着てる服は歩く教会って言ってね、布の織り方から刺繍の柄に
至るまでの全てで“教会”を再現してて、法皇級の結界効果があるから包丁くら
いじゃ傷もつかないんだよ!」





上条当麻、ヴァッシュザスタンピードの両者は今、


すごいうさんくさいと思っていた。


「と言ってもお前、包丁って…」

勢いよくズブっと刺して、やっぱり思春期の少女特有の妄想でした〜、逮捕〜と
なっては冗談では済まない、いろんな意味で。

「んー…!そうだ、ふふふ、本当にそれが魔術でできてるってんなら打ち消せるんじゃねぇかな…」


「俺の幻想殺し(イマジンブレイカー)でな!!」



「……人のこと言えないんじゃないかな…」

「んなっ!」
34 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/18(火) 22:20:26.41 ID:Hq//dTkK0

どうやら、流石に幻想殺しとやらは一般的な単語では無いそうだ、それでなくと
ももはやこの時点でヴァッシュは状況を理解する事を軽く諦めていたわけだが。
考えても分かりそうに無いので現状はこの2人を観察することに徹することにして
いた。


「第一何?幻想殺しって」

「俺の右手だよ、俺の右手は超能力の異能の力を全て打ち消せるんだ、ちょっと
した上条さんの特技ってワケですよ、 で、この右手でその歩く教会とやらも無効
化出来るんじゃねぇかなーっと」

「ふーん、それ本当?ま、仮に超能力が消せたって歩く教会を消すなんて絶対無
理だと思うけど、それこそ聖ジョージのドラゴンの力でもなきゃ…」


「ほーう…じゃあ! やってやろうじゃねぇか」


少年が少女の真っ白な服に右手を伸ばす、ヴァッシュにとっては魔術も超能力も
、幻想殺しとやらも全てが未知の物だ、そのいずれかのほんの一片でも掴めれば
と固唾を飲み見守っていた、のだが。


パキィッ…



結果として少女の裸体が発生しただけだった。
35 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/18(火) 22:22:14.82 ID:Hq//dTkK0

「………」

「いつつ…いや、不可抗力でしょうが!!まさかあんなんなるなんて思ってなか
ったし!」

「なぜに…ボクまで…」

幻想殺しによって哀れにも引き裂かれた歩く教会と乙女の純情、その代償に容赦
無いバイティングを喰らった結果2人の全身は歯型まみれである。

「………」

毛布に包まりながら黙々と安全ピンで服を修繕する少女、無言なのが逆に怖い。


「いや悪かったって!しかもあれじゃん!これでめでたく魔術は実在するって証
明できたワケだしさ!」

「全然めでたくないんだよ!!」

「ごめんなざい!!」

再度噛み付かれた少年、さすがにもう少し言い方があるだろう。


しかし服に右手が触れた瞬間、引き裂かれる訳でなく、服がそれぞれのパーツ毎
にバラバラに別れていた、それはまるで服を縫っていた糸が全て消滅したかのように。

魔術、そして幻想殺し…以外と実在するのかもしれない、 そうヴァッシュは思い始めていた。
36 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/18(火) 22:24:57.71 ID:Hq//dTkK0


「服も直ったし…私はそろそろお邪魔するんだよ」

「! 大丈夫…なのか?確か追われてるんじゃないのかお前!」

「大丈夫、教会につけば保護してもらえるはずだから」

「そうなのか?……て、やっべ!!時間!」


「そう言えば学校なんだよね!早く行ったほうがいいよ!私ももう行くから」


とはいえ歩く教会の破壊を目の当たりにした以上、少女の話が完全に嘘だとはと
ても言えない状況である、そのまま行かせて良いものか、彼はさっきまで正直迷
惑だと思っていたが、そこは上条当麻の上条当麻たる所以のお人好し。

しかし、


「じゃあ、俺がついて行くよ」


もう一人もまた、極度のお人好しである。
37 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/18(火) 22:28:25.49 ID:Hq//dTkK0

「ダメッ…!だめだよ、巻き込んじゃう…」

「大丈夫だって、こう見えても腕には自信があるからね」

「でも…」


「うーん……じゃあこうしよう!俺も行く当てが無いから教会でお世話になることにする!!」

「……」


「案内してもらえるかな?」

「わかったんだよ……」

ヴァッシュの勢いに負けたのか、それとも彼の出す不思議な安心感がそうさせた
のか、少女は折れてヴァッシュの同行を認めたが、その強硬な態度はますます上
条当麻を不安にさせる。


「と、いう訳で安心して登校してくれたまえ!学生よ!」

「お、おぉ」



「……ありがとうな」

「元々こっちが迷惑かけてんだから、気にすんなよ」

「そうか、じゃあ、縁があったらまたな」

「うん、ご飯ありがとうなんだよ、あ!あと!」

「ん?」
38 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/18(火) 22:29:58.05 ID:Hq//dTkK0

「その右手の幻想殺しなんだけど、本当に全ての異能を打ち消してるんだったら
きっと」



「神様のご加護も打ち消しちゃってるんだと思うよ!」






「…………不幸だぁぁぁあああああ!!」



39 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/18(火) 22:34:51.38 ID:Hq//dTkK0
同日、早朝




「うっ……はぁ…ここは…?」





to be continuede…
40 : ◆DdirWW5ZSY [saga]:2011/10/18(火) 22:45:57.45 ID:Hq//dTkK0
今日はここまでなのですよー 

レスはモチベーションを生み出す最良の炸薬です、ありがとうございます
前回短くて御免なさいね、今回でチャプター1終了という名の書き溜めの枯渇です


ガンホー談義が盛り上がってますね、僕もガンホー大好きです、結局アイツらはザジとエレンデュラ
以外人間らしさみたいなのを捨て切れて無い感じが好き(ミカエルの眼は、まぁ…)

>>1の気力が続けばいつかは出るかもしれませんね、まぁ多くは語らず、

禁書に関しては一巻が手元に無いから展開とかうろ覚えです、あくまでSSだからね、
そこらへんはカンベンな、

それでは、頑張って書き溜めるぞ
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [saga]:2011/10/18(火) 23:28:24.66 ID:fPo8jXy60
乙、ニコ兄は出るの?
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/10/18(火) 23:34:53.83 ID:7BdwVMwa0
とりあえず相棒が出れば満足
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/10/19(水) 02:39:02.92 ID:80tQ7/PT0
うーん……漫画版読み直すべきか
アニメ版だけのうろ覚え知識じゃ置いていかれる系?
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/19(水) 03:53:08.42 ID:Mtisk8VRP
とりあえずヴァッシュがまともに戦えば18歳相手でもなんとかなるか
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/19(水) 04:50:06.18 ID:RPtXxVQso
ここでインデックスに同行するパターンってクロスでも再構成でも初めて見る気がする
これなら神裂さんに斬られないで済むかな
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/19(水) 08:32:56.32 ID:Y2lwW4XJo
>>45
むしろヴァッシュがきられる希ガス
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/19(水) 08:59:19.27 ID:5eyCKS5DO
ヴァッシュの左腕なら、加減された七閃なら防げると思う。
唯閃は無理だろうが。


あれ?仕込み義手って左腕だったよね?
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/19(水) 09:00:35.63 ID:AtT0Z3bIO
>>46
確かにヴァッシュさんなら確実に庇って斬られるな
しかも先生と再会する前のコートだから最悪大きなダメージ喰らいそう
49 :名無しNIPPER [sage]:2011/10/19(水) 10:10:10.56 ID:NniiV1nDO
>>47
左腕。
先生に会う前だから仕込み機関銃はないのか
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2011/10/19(水) 10:16:49.94 ID:jBv7tYdno
アニメならジュライ以前にすでに仕込んでた筈
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/19(水) 11:32:47.70 ID:3Sk3G3vIO
原作でも以前から銃を義手に仕込んでるのは変わらない
仕込んでたのが普通の銃がマシンガンかは不明だけどモネヴ戦で使用してる
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/10/19(水) 13:40:36.99 ID:DJ3+x9FAO
ただまぁ、ヴァッシュの拳銃は石だろうが金属だろうが一閃する融合体ナイブズの触手剣(ゲート開いてのミクロ刃は消してるから多分無理)は余裕で受け止めるし何とかなるだろ

本人は受け止めきれずに殴られてるけど
53 : ◆DdirWW5ZSY [saga]:2011/10/20(木) 23:05:15.86 ID:cW+Kbyhv0
Chapter2 前半  投下します
54 : ◆DdirWW5ZSY [saga]:2011/10/20(木) 23:06:36.78 ID:cW+Kbyhv0

「なんだ…ここは…!?」

ヴァッシュはただただ、圧倒されていた、その街並み、行き交う人々、そして夏
特有の“湿った”空気に。




あの熱砂の惑星において人が行き来する場所などほんの一握りだ、彼のホームと
もいえるシップの隠れ里のように人に知られていない街の一つなのだろう、 学
園都市とはそういった場所なのだろうと彼は思っていたのだが、


一歩、少女とともに部屋の外に踏み出した瞬間にヴァッシュにとって想像もした
ことのないような街が広がっていた。


「これが……学園都市なのか?…」


学園都市の市街で教会を探し練り歩く2人組、目立つ服装はかなり衆人の目を惹い
ていたが当の本人達は気づいていないようである。


「そうだよ?まぁ、私はあくまでも魔術側の人間だから、こんな科学の街のこと
は全然詳しくないんだけどね」
55 : ◆DdirWW5ZSY [saga]:2011/10/20(木) 23:09:16.13 ID:cW+Kbyhv0
科学の街、ヴァッシュにとっては今見ている光景のほうがよほど魔術のように感
じられる、しかし彼は今の光景を元の砂と太陽に囲まれた世界と対比して驚いて
いるだけではない、

街を走る自動車や電車、人の服装などにヴァッシュは覚えがあるのだ、

かつてSEEDSのシップの中でナイブズと共に学んだ地球の歴史、まさしくその映像
の中の世界が眼前に広がっていた。


「(一体ここはどこだ…何なんだ……?)」


少女の口ぶりから察するにここは科学の発展した都市なのだろう、しかし妙なの
はこれだけの巨大な都市にたった一基のプラントも見えないことだ、ヴァッシュ
は自分が長い明晰夢を見ているのではという疑問すら抱き始めていた。



「(……もしかしたらここは本当に……地球(ホーム)なのだろうか)」


学園都市には、あの惑星(ほし)の人々の営みに見える乾いた焦燥感が感じられない、

プラントという脆くデリケートな命綱の存在を常に感じるあの、酸素が減っていくかのような。
56 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/20(木) 23:10:41.95 ID:cW+Kbyhv0


もしここが本当に地球なら、このまま過去の全てを捨ててこの場所で平穏に朽ち
て行く、そう生きた方が良いのではないのか、ヴァッシュの耳にはナイブズの言
葉がこびり付いて離れなかった。



『お前さっき俺のこと厄災っていったよな…』

『まぁ人類から見ればそうなのかも知れない、だけどな…』

『それを言ったらお前も』


『同じなんだぜ…!!』




ヴァッシュの右手が変化し現れた異形の銃をナイブズはA・ARM(エンジェル・アー
ム)と呼んでいた、 その銃によって自分は周囲の全てをなぎ払い圧倒的な殺戮を
引き起こしていたかもしれないのだ。

さらにヴァッシュは絶望のさなかから急に拍子抜けするほどの平穏に投げ出され
たことで、この時もはや本人も気付かぬ内に彼の闘う意思は折れてしまっていた。
57 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/20(木) 23:11:53.61 ID:cW+Kbyhv0


「……大丈夫?」

「!… 大丈夫だよ、さぁ!その教会ってのは何処にあるんだ?」

「わかんない!」

「そうか!!……」



「探すしかないな……」



少なくとも今はこの少女を無事に送り届けることに集中しよう、そう思うことで
彼はその身を蝕む不安から逃れようとしていた。
58 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/20(木) 23:13:35.62 ID:cW+Kbyhv0


とはいえ学園都市は広い、ヴァッシュの知るどの都市よりも広い、
適当に歩き回っても到底教会など見つからないだろう、そこで2人が取ったのは、

大通りに出て通りがかりの人に尋ねてみよう!名付けて「迷える子羊を導きたま
え作戦」である、無論命名はインデックス。



が、現実はそう甘くはない、無駄に路地裏が多い学園都市で土地勘も都会慣れも
皆無な2人が何となくで辿り着いてしまった先は、


「あぁ!?んだてめぇぇらごらぁあ!!」

「なんだそのカッコはよぉお!!ケンカ売ってんのかぁ!!」

「お兄さん服装貧乏くせぇけど、流石に無一文ってこたぁねぇよなぁ」



スキルアウト、つまりはゴロツキの溜まり場となっていた袋小路だった、
結局何処にだってこういう輩は居るものだとヴァッシュは逆に安堵していたが。


「まぁまぁ…通りかかっただけじゃない、ね?、ここは一つ!穏便にいきましょ
?」

「へへへ、それはつまり穏便に財布をプレゼントして貰えるってことでいいのか
よ?」
59 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/20(木) 23:14:46.25 ID:cW+Kbyhv0


「悪いけど流石の無一文なんだよねぇ…僕、タダにならない…よねぇ…」

金が無いとわかるや否や、ゴロツキ達の空気が変わった、こういった連中の相手
に関してはもはやライフワークの一部になっているヴァッシュにはこの後の展開
が簡単に予想できてしまう。



「ちっ、くだらねぇ…俺たちの期待を裏切ってくれた罰だ、やっちまえ」

「や、やっぱりね…」



が、しかし、ひとつの誤算は

「おい!見ろよ!ガキもいるぜ!」

今、ヴァッシュは1人では無かったということだ。



「! 待ってくれ!殴るなら俺だけにしてくれないか!?」
60 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/20(木) 23:16:08.72 ID:cW+Kbyhv0


あくまで自分は彼女の護衛である、幸いにも相手は皆丸腰だ、この程度のことで
死ぬまでリンチされるということないだろう、争いを嫌うヴァッシュならではの
思考である。

「ヘェ〜かっこ付けやがって、恋人か何かかよぉ?」

「ロリコンじゃねぇか!ひゃはははは!!」

「ムカつくなぁ〜その態度、関係ねぇ、ガキからやれ!」

「!」

その瞬間、ヴァッシュの身体が動く、そしてスキルアウト達は咄嗟の出来事に我
が目を疑った。





「頼む……この通りだ」

ヴァッシュは地面に頭を擦り付け、土下座をしていたのだ、
万に一つでも彼女に危害が及ぶことがあってはいけない、さらに丸腰の相手を銃
で威嚇するのも彼の流儀ではない、 傷つく人数が最も少ない彼なりの方法が、これだった。

61 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/20(木) 23:16:56.06 ID:cW+Kbyhv0

「なんだ…?…コイツ」

「土下座…かよ」



「……ちっ、なんか冷めちまった、テメェ情けないにも程があんぞ、ガキの前で
土下座とはよ」

「ヒヒッマジだせぇ、写メっとこかな」

「……やめとけよ、行くぞ」




幸いにも荒事は避けられ、誰も傷つかずに終わった、だが…



「ははは!まぁー無事で良かったよ、怖いよねぇ、だけど結構話の分かる奴らで
良かった良かった」

「……」
62 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/20(木) 23:19:09.58 ID:cW+Kbyhv0

「がっかりさせちまったかなぁ、腕っぷしには自信があるとか言っちゃったけど
 荒事は怖くてさ…」

インデックスは真っ直ぐにヴァッシュを見つめていた。



「ううん、ヴァッシュはとっても優しいんだね」

「!」

今まで、暴力には暴力、それが常識の世界でヴァッシュの考えが誰かに理解され
る事はほとんど無かった、甘い、偽善者、腰抜け、そんな言葉ばかりを投げつけ
られる事にももう慣れていた、しかしこの少女は、


「さっきの人達を傷つけて私を守ってくれるより、ずぅぅぅっと、かっこよかっ
たんだよ!」


まるで聖女のような微笑みで彼を“かっこいい”と言う、
そのことが裏側で憔悴しきっていたヴァッシュの心に深く突き刺さった。


「そうかぁ……はは、何て言ったらいいのかな…」

「……もし、その銃を少しでも触ってたら、怒ってたよ」

「!……気づいてた?」

「うん、少し前から、でも」


「やっぱりヴァッシュは良い人だったから平気」


「……敵わないなぁ」
63 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/20(木) 23:21:11.73 ID:cW+Kbyhv0




「……ありがとう」

「こちらこそ、守ってくれてありがとうなんだよ!」



彼はこの世界の平穏とこの少女がもつ優しさをひどく愛おしく思った、

実のところ彼は、


自分という厄災が恐ろしいあまりに、銃を握れなかったというのに。
64 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/20(木) 23:21:50.88 ID:cW+Kbyhv0



「何者でしょうか?」

「さぁ、ただどう見ても学生には見えないね」

「もし魔術師だとしたら…」

「いや、大した脅威には成り得ないよ、見ただろう?今のを」

「えぇ、悪人では…ないようですね」



「(やれやれ、そういう意味じゃあないんだがな……)」


65 : ◆DdirWW5ZSY [saga]:2011/10/20(木) 23:32:17.41 ID:cW+Kbyhv0

ヴァッシュさんが大暴れするような話を期待していた方には拍子抜けな展開でしょうか…


あと本気出せばいくら素人が数揃えたって素手で倒せるくね?

とか言う疑問を抱いたやつ、それは…あれだよ、精神的に…弱ってたんだよ!バーカ!

このSSではみんな原作比の1.3倍くらい優しくなってんだよ!!


あと今は一つの章ごとに二分して投下してるけど、一気にやったほうがいいですかね
勿論すこしペースは下がるけど、さすがに一回の投下が11レスってのは少なすぎるきがするよ
66 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/20(木) 23:33:50.06 ID:cW+Kbyhv0
トゥビーコンティニューって書くの忘れてたよ!

バーカバーカ!
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/20(木) 23:35:14.56 ID:PJ2PMCqRo

大丈夫、ヴァッシュなら相手が弱くて楽勝でも自分が下手に出れば場を収められるなら土下座だってする
68 :名無しNIPPER [sage]:2011/10/20(木) 23:36:25.04 ID:5bdHKdDDO
乙!
マキシマムの最初の方でもだいぶ大人しくなってしいいんでないの
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/10/21(金) 01:39:06.87 ID:xm6COdsy0
争いを避けられるならなんでもするのがヴァッシュ
だからこその体中の傷跡だし
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/10/21(金) 11:57:46.16 ID:vVrvnnZAO
全裸で犬の真似をしても格好いいのがこの人間台風だ

そもそも本気を出したら、エレンディラ推して「自分以上」のレガードをも圧倒する男だし
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/10/21(金) 20:07:12.40 ID:MLlu9fv10
>>1

この場合、インデックスもバッシュもいつも腹ペコでは…
72 : ◆DdirWW5ZSY [saga]:2011/10/21(金) 22:43:09.72 ID:GJDXEOxA0
Chapter2 後半 投下するよ
73 : ◆DdirWW5ZSY [saga]:2011/10/21(金) 22:44:25.72 ID:GJDXEOxA0

「でも、気をつけた方がいいよ?そんな銃持ってることがばれたら、警察に捕ま
っちゃうんだよ」

「えぇ!?持ってるだけでデスカ!?」

「うん、だけど大丈夫だよ、みんな銃なんか持ってないんだから」

「……そうか、もともと居た所は治安がちょっと…いや、大分とアレだったから
ね……」

生身に武器をしこたまぶち込んだサイボーグとかが闊歩しているレベルである、
もはや治安が云々とかいう問題を通り越している気もするが。

と、そんなことを言っている間に、

「…お、かなり広い道に出たな」

「うわぁ…すごいんだよ…」

何時の間にか2人は片側四車線の道路を挟んだ巨大なビル街に出ていた、
今まで路地裏や小道を歩き回っていたために感じるギャップを差し引いても、
そのビル街の大きさはケタ外れだ、さらに、大きなギャップはスケールだけではない、
その場に満ちる休日特有の活気にも2人は圧倒された。
74 : ◆DdirWW5ZSY [saga]:2011/10/21(金) 22:45:57.06 ID:GJDXEOxA0

「ふわぁぁ、人がいっぱいなんだよ…」

「こ、こんなに人がいると、逆に誰に尋ねればいいのかわからないな……」



「スイマセーン!なんだよ!ちょっと教会が何処にあるか…あ、行っちゃった…
…」

「ちょっとお聞きしたいので…て!待っ!全力で逃げられた!?」



都会の世知辛さに打ちのめされる2人であった、
というかまず服装が怪しすぎて全力で避けられているのだ。

「うぅ…主よ、現代人の心は冷めきっています、なんだよ…」

「参ったな……ん?」



一瞬、 聞き覚えのある声が聞こえた、絶対に知り合いなど居るわけがないと無意
識の内に思っていたからこそ逆に、街の喧騒の中から聴こえるわずかな声が、
あの保険屋のコンビの一人“メリル・ストライフ”の声に聞こえたのだ。

「…あの人混みの中…か?」

「どうしたの?」

「いや、知り合いの声がした…気がしたんだ」

「え!?学園都市に知り合いが居るの?」

「いや、居るはずが無い…ないんだけど」

確かにあのアナウンサーのように良く通る声は、ジェネオラロックでナイブズと
対峙する直前に聞いたあの声だ、なぜかヴァッシュはそう確信していた。
75 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/21(金) 22:47:15.68 ID:GJDXEOxA0

「じゃあとりあえず探してみようよ!もし本当にその人だったら、教会の場所を
知ってるかも知れないんだよ!」

「あぁ、あの人混みの方から聞こえてきたんだ」

「すごい人混み…一体なんなのかな、バザーでもやってるのかも」



その人混みに近づくごとにメリルと思しき声は大きくなっていく、だが同時に人
の喧騒も近づき何を喋っているかまではわからない、


そしてついに2人は人混みの中心が見えそうな位置まで近づいた、ここまで近づけ
ば喋っている内容も聞こえそうだが、生憎少し前に声は途切れてしまった、しか
し当の本人はまだその中心にいるはずである、背の足りないであろうインデック
スを肩車し (最初は嫌がったが、好奇心に負けた) 人混みに近づいたヴァッシ
ュが見たのは、


「はーい、こちらは中継のメリル・ストライフですわ」

「カメラマンのミリィ・トンプソンです〜」

「こら!なんでカメラマンまで名乗る必要が有りますの? 」

「はい、では気を取り直して」

「学園都市ブロードバンド、GTBのお送りする学園都市ナーウですわー!」


メリル本人だった、しかも結局コンビ両方で居た、居たがしかし。

76 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/21(金) 22:48:43.18 ID:GJDXEOxA0

「保険屋さん!?」

「い、痛っ、髪が刺さるんだよ!」

「お、おーい!!メリル!ミリィ!」

ここで何をしているのかは分からないが、彼女達も学園都市に来ていたのだ、恐
らくこれで全ての謎が明らかになる、ヴァッシュはそう思い2人の名を呼んだが、
しかし結果としてその期待は裏切られることとなる。


「あらあら、どうやら私だけじゃなく専属カメラマンのミリィにも熱狂的なファ
ンがいるみたいですわね、ハーイ、これからも応援よろしくお願いしますわ」

「お願いしまーす!」


「……!?」

ヴァッシュにとって完全に予想外の反応だった、確かに今、彼女達はヴァッシュ
の言葉に反応したはずだ、しかし今の反応はまるで赤の他人に対するものではな
いか、
何かがおかしい、学園都市という場所は一体何なのか、棚に上げていた疑問が蒸
し返されてしまった。

「知り合いの人だったの?」

「いや……人違いだった…のかな」


自ら彼女らは名前を名乗っていたのだから、そんな筈は無かったのだが、インデ
ックスはあえて深くは追求しない。

と、その時、観衆の一人がヴァッシュに話し掛けてきた。

「羨ましいなぁ君、メリルさんに反応してもらえて」

「彼女を知ってるのか!?」

「いや、君も知ってるんじゃないのかよ、学園都市一の美人キャスターだぞ?」

「……どういうこと

ゴオオオオッ!!!



「!!」
77 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/21(金) 22:50:14.19 ID:GJDXEOxA0

突如何かが燃えるような轟音とサイレンが聞こえ、人々の目はそちらに流された、
音源は少し離れた銀行、 この男は何処まで行ってもトラブルを呼び込む性質(タチ)のようだ。


「ちっくしょお!!クソ警備員(アンチスキル)どもが!!なんでこんなに早く出
動してんだよ!?休日なのに暇なのかぁ!?」

「おらー!無駄な抵抗はやめるじゃん!!今投降すれば情状がつくじゃん!」


「じゃんじゃんうるッせぇんだよ!!今更投降したってもう俺の人生終わりだろ
うがぁ!!」


ヴァッシュはつい反射的に銀行の前まで走っていた、肩にはインデックスを乗せ
たまま。

「うぅ、揺られすぎて気持ち悪いんだよ…」



「それじゃあ逃げ切れるとでも思ってんのかー!それとじゃんじゃんうるさいと
は失礼じゃん!」



「あぁ…逃げ切れるさ……おらぁ!!この人質が目にはいらねぇかぁ!!」

「助けてー!!初春ー!!」

「佐天さーーん!!」

「人質とは……お前!そんなに失敗フラグ立てて怖くないのか!」

「うるせぇえええ!!」
78 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/21(金) 22:51:40.74 ID:GJDXEOxA0

ヴァッシュの地元 (の星) ではよく見る光景である、まぁ、あそこなら情状どこ
ろか即射殺だが、しかし彼にとって不思議なのが人質を取っている主犯格の男が
丸腰だという事だ、それでは人質どころか強盗として成立しないだろうとヴァッ
シュが思った直後、


「一歩でも近づいて見ろ、この女もお前らも丸焦げにしてやらぁあ!!」

ゴオォオオオ!!


「な、何だありゃ!?手から炎が!?」

威嚇するかのように自分と警備員の間に炎の壁を作った男、今まで成り行きで様
々な手合と戦ってきたヴァッシュだったが、流石に生身の手から炎を吹き出すな
どという手品師のような技は初めて見る。


「多分あれが超能力ってやつなんだよ!」

「あれが…」

あれが先ほど少年が言っていた超能力という事なのだろうか、確かに脱出やスプ
ーン曲げとはレベルが違うが、使用目的も大分と違うようだ。


「こ、ここで速報ですわ!中継クルーは何と!リアルタイムで銀行強盗の現場に
偶然にも遭遇してしまいましたー!すでに警備員による包囲は完成していますが
、犯人は恐らくレベル3相当の発火能力者(パイロキネシス)!一般学生を人質に膠
着状態に持ち込んでいます!!」


メリル達が事件に気づき中継を開始していた、これで彼らは学園都市全体にそ
の姿を晒したこととなり、このまま逃げおおせることはますます絶望的になった
と言える

それが良くなかった。
79 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/21(金) 22:53:20.54 ID:GJDXEOxA0

「おい!テレビだぞ!中継してやがる!!」

「しかもあのメリルさんだ!!チクショウ!!こんな状況じゃなきゃ!!」

「うるせぇぞ!!てめぇら!くそっ、舐めやがって!!!」


混乱した犯人一味が口々に騒ぎ出す、もはや内輪の中ですら混乱を制御しきれていない、
警備員の隊員とヴァッシュは経験則から一瞬で、この状況が非常に危険だと悟っ
た。


「危ないな…降りといてくれ」

「わ、わかったんだよ…」

肩からインデックスを降ろし自分の後ろに隠れさせる、警備員が人一人分ほどの
盾で包囲しているのでここまで炎がくることはないだろうが念のために、なぜなら。


「くそっ、くそくそくそぉお!!もう俺の人生も終わりだぁ!!最後にてめぇら
全員焼き殺してやらぁああ!!」

こういった風に自暴自棄を起こし凶行に走ることは明らかだったからだ。

「ヤバい!!全員伏せるじゃん!!!」

警備員は犯人の言う「てめぇら」に周りの野次馬達も含まれていると咄嗟に判断し、
“より多くの”一般人を守るため装備していた盾を構えた、

それと同時にヴァッシュは


人質の少女を含めた“全員”を守るため真っ直ぐと跳んだ。
80 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/21(金) 22:54:35.59 ID:GJDXEOxA0
「な!?」

「ヴァッシュ!!」

咄嗟の出来事に今にも辺りを包みこもうとしていた炎の勢いが一瞬止まる、
すかさずそこに懐の銃弾を手で投げこむヴァッシュ、

パァン!!

炎に包まれた銃弾は狙い通り男の足元で小さく破裂する、

その時、音と衝撃により男の集中の解けたことで分厚い炎の壁はほぼ霧散していた

「なぁっ!?」

「ふん!!」
ゴスッ!

ヴァッシュの渾身のラリアットが犯人の喉に突き刺さりそのままノックアウト、


人質の少女は無事だった。



「大きな炎を出す時、さっきより溜めの時間が長かったから集中が必要な技だと
踏んだんだけど、当たってたみたいだな」

「あ……確保ーーー!!!じゃん!!」

「ぐえぇ!ちょ、僕は関係ないって!」

主犯格の男が倒れたとほぼ同時に残った犯人に突撃する警備員達、少女は保護さ
れたようだが何故かヴァッシュも巻き込まれていた。
81 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/21(金) 22:55:42.06 ID:GJDXEOxA0


「ヴァッシュ……よかった」

インデックスは表面上では安堵していたが心の内では彼の無鉄砲な優しさ
に対する不安感がまだ渦巻いていた。

「(みんな助かったけど、下手したらヴァッシュが死んじゃうところだったんだよ
…)」





そしてその時、

「インデックス…」

今日外に出てから初めて、少女は1人きりになっていた。

「!」
82 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/21(金) 22:57:46.12 ID:GJDXEOxA0

「ふぅ、酷い目にあったよ、無事だったか?インデックス」





「……インデックス?」


to be continuede…
83 : ◆DdirWW5ZSY [saga]:2011/10/21(金) 23:01:55.66 ID:GJDXEOxA0
起承転結でいったらようやく承ですかね、

KJさんも後半で活躍するよ!多分な!

でもこのままじゃ絶対KJさんに懐かないよね、インさん
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/10/22(土) 01:21:19.99 ID:BRHk4+64o
期待してる。しっかり完走頼む。
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/22(土) 14:23:49.37 ID:DKevdT4SO
乙!
続きが楽しみなスレがまた一つ増えたよ
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/22(土) 14:24:57.61 ID:DKevdT4SO
乙!
続きが楽しみなスレがまた一つ増えたよ
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/10/22(土) 17:18:07.76 ID:1gqfuTzs0
>>1

メリル&ミリィ出てきましたね、

そして早速不幸になってるんだよ…
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/22(土) 20:51:45.54 ID:/SVIlyfIO
序盤としては裸でやけに細かい犬の真似をしたり銃床で頭殴られまくったりしないだけ幸運に思えるぜ
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/10/22(土) 21:29:38.57 ID:uQ9dU/Zk0
いや、きっと14歳さんの前でしてくれるさ
90 : ◆DdirWW5ZSY [saga]:2011/10/24(月) 21:32:50.02 ID:bKkSdJJC0
Chapter3 前半 投下します
91 : ◆DdirWW5ZSY [saga]:2011/10/24(月) 21:33:57.52 ID:bKkSdJJC0


「とんでもない結果となってしまいました!膠着状態が続いていた強盗事件! 突
如として犯人が自棄を起こし、発火能力で周りを焼き払おうとしたその瞬間!」

「先ほど私とカメラマンのミリィに熱い声援を送ってくれた、真っ赤なコートの
男性が犯人に飛びかかり!そのまま1人の重傷者も出さずに主犯格の男をねじ伏せ
てしまったのです!!」



「おや、ちょうどその男性が警備員の団子の中から出てきました!早速独占イン
タビューを敢行しようと思いますわ!」

「すいません!すごい活躍でしたけれど、今どういったお気持ちか聞かせていた
だいても?」

「はぁ…はぁ」

息を荒くしている、さっきまで警備員にもみくちゃにされていたのだから仕方の
ない話だが、出てきてからずっとキョロキョロと辺りを見回している。


「あの〜」

「すまない!!」

「ひゃ、ひゃい!なんでしょう!?」

「さっきまでここにいた白い服を着た銀髪の女の子を知らないか!?」

「え、えぇ!?」


「くそっ!!」

自分で彼女を守ると決めたはずが、ヴァッシュも流石にこの短時間の間にアプロ
ーチをかけてくるとは思っていなかった、 つまりは最初からずっと監視されて
いたということだ、彼は自分の腑抜け具合に苛立っていた。
92 : ◆DdirWW5ZSY [saga]:2011/10/24(月) 21:35:17.02 ID:bKkSdJJC0


「あの〜私見ましたよ、その子」

不意に口を開くカメラマン、ミリィ・トンプソン。

「本当か!?ミリィ!」

「はい!さっき髪の長い変な服のお姉さんを見た瞬間に走って行っちゃいました
けど」

「どっち行ったか分かるか!?」

「えぇっと、あっちです」

指差されたのは、大通りでなくまたもや人通りのないであろう路地裏だった、逃
げるなら人混みに紛れてしまえば良いものを、恐らく周囲の人間を巻き込ませな
いためのインデックスなりの考えだろう。

「ありがとう!恩にきるよ!」

「お手柄ですわね!ミリィ!」

「はい!」




「あ、インタビュー……」

ヴァッシュはすでに走り去っていた。

93 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/24(月) 21:36:47.28 ID:bKkSdJJC0

「はぁ…はぁ…っ」


インデックスは一心不乱に路地裏を走っていた、しかし追手は女性とは思えない
身体能力で歩きながら付かず離れずの距離をキープして追ってくる、
魔術的な追跡なら持ち前の知識によっていくらでもごまかしが効くのだが


「いいかげん捕まってはくれませんか、インデックス」

「はぁ、……」

相手の言葉に耳は貸さない、この女も魔術師だ、いくらでもインデックスの持つ
魔道書を悪用できる、

歩く教会を意識して相手は言葉による懐柔を図ってくるのだろう、これまでのよ
うに、耳に入る音を言葉として考えてはいけない。


「その気になれば無理矢理に捕まえることは容易です、しかし私達はあなたの意
思で私達の下へと下って欲しいのですよ?」

「……」

「魔導書を悪用するつもりもありません、聖人の名に誓って」

「……」


この女が聖人だということも知っている、世界中で二十人ほどしかおらず、その
戦力は核爆弾に匹敵するとまで言われている存在だ、確かに説得力の無い肩書き
ではない、

しかしいつの時代も正義や悪なんてものは流動的なものだ、目的の善悪に関わら
ずこんな強大で危険な力は使われるべきではないのだ。
94 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/24(月) 21:38:56.41 ID:bKkSdJJC0

「仕方ありませんね、こういった言い方はあまり気が進みませんが」

聖人の顔が一瞬歪む、溢れ出る何かを必死で押さえつけるような顔だ、
その顔は必死に走り続けるインデックスに見えることは決してなかったが。




「いいのですか?このままでは彼はあなたを追ってきますよ?」

「!」

それだけは許してはいけない、求めれば彼は恐らく地獄の底まで彼女を守ってく
れるはずだ、 たった半日足らずの関係だが分かる、それがヴァッシュザスタンピードとい
う男の生き方なのだ、

「(耳を貸しちゃいけない…!)」

ヴァッシュは争いが嫌いなんだろう、だけど目の前で誰かが傷つくことが我慢で
きなくて心を擦り切らせながら、今まで銃を握ってきたのだろう、

「(考えちゃ…)」


誰かが彼を助けなければいけないのに、自分なんかが彼から大切な平穏を奪い取
って良いわけがない、 そう考えた瞬間、インデックスの足は止まっていた。


「捕まって…くれるのですね」


「はぁっ…はぁ…」
95 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/24(月) 21:40:00.93 ID:bKkSdJJC0

足が動かない、自分が逃げ続けた距離と同じ長さだけ

あの優しい男を地獄に引きずりこむことになってしまう。

「さぁ…インデックス」

「あ…い…いや…」




「離れろ!!インデックス!!」

「!」


「時間切れ……ですね」

いけない、来てはいけないのに、

自分のせいだ、私が助けを求めたせいで
96 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/24(月) 21:40:40.10 ID:bKkSdJJC0

「……君が魔術師…?」

「えぇ…神裂火織と申します」

「魔術師なんて言うから杖を持ったじいさんだと思ってたよ…」


相手に話しかけて注意を引き、その間にジリジリとインデックスとの距離を詰め
る作戦だ ったのだが。

「そこ…気をつけた方がいいですよ」



「?…痛っ!!」

足に急激な鋭い痛みが走る、細いワイヤーだ、恐るべき鋭さで触れた脚の皮を切
り裂いていた。

「ヴァッシュ!!」

「大丈夫だ!軽い傷だから…!」

事実、神裂からの忠告のお陰で傷は浅く、薄皮を切った程度だった、

だが逆に忠告がなければ? 恐らくヴァッシュ本人も気づかぬ内に脚が切断されて
いただろう、その事実こそがインデックスに対する大きな攻撃になるのだ。

「でもっ…血が…あ…」

自責、後悔、それらは歩く教会では防げまい。
97 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/24(月) 21:41:29.72 ID:bKkSdJJC0

「インデックス…もう一度問います、あなたはまだ逃げますか?」

「インデックス!耳を貸すんじゃない!」


魔術師達に捕まるわけにはいかない、それは数多の魔導書を持つ魔導図書館とい
う存在としての責務だ、
ならばあの青年ににこれ以上血を流させるかのか?
神に仕える身として、そして1人の人間としてそんなことが選べるのか?

「っ……!!」


気付けばインデックスは走り出していた、それは自分を助けに来たヴァッシュの
もとへ駆け寄るためでなく、ましてや魔術師に投降するためでもない、
全ての選択肢を放棄するかのように逃げ出していた。

「!…インデックス!」

どちらが発した言葉だったのだろうか、


98 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/24(月) 21:43:22.46 ID:bKkSdJJC0

その刹那、神裂は少女を止めるべく懐の刀に手を伸ばした、
躊躇いの無い挙動だ、その胸中にあるものはうかがい知れないが恐らくは

この程度の攻撃で歩く教会は傷つかない、

そう思っているのだろう。


神裂の驚異的な踏み込みから放たれる抜刀術がインデックスに迫る、




「インデックスッ!!」



確かにその剣の速度は速い、だがヴァッシュの目にその始動は完全に見切られて
いた、
血反吐を吐くような鍛錬を積み、長年の実戦経験を持つ彼ならば容易に刀を撃ち
斬撃を反らせることができるだろう、

懐に手を伸ばし銃を握る、何千回、何万回と繰り返し身体で憶えた動作だ、間に
合う、まだ守りきれる距離だ、


「!!」

しかし彼の体は、


『くだらん感傷ごと人類を』

『消しつくせヴァッーーシュ!!』



最後に銃を握った瞬間の忌わしい記憶すら、克明に憶えていたのだった。

「っ!!」


ザンッ

99 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/24(月) 21:44:42.20 ID:bKkSdJJC0






「イン…デックス……?」


どちらが発した言葉だったのだろうか。



to be continuede…

100 : ◆DdirWW5ZSY [saga]:2011/10/24(月) 21:50:38.54 ID:bKkSdJJC0
原作では二年の平穏な生活の中で癒していった心の傷ですから
そう簡単に何とかならんでしょう、ってことで

101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/10/25(火) 00:11:45.09 ID:zoXvsDCX0

前々から思ってたんだが、
神裂さんは面倒臭がって斬らずに聖人の身体能力で追いつくべき
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/25(火) 01:37:53.97 ID:OtRd8QjCo
まぁ刀持ったキャラって少なからず「斬れば分かる」的な思考があるから
つーかそうしないと刀キャラが立たないって言うか
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/25(火) 04:58:22.43 ID:egKwDFdIO
微妙
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/25(火) 15:58:19.96 ID:MGTyEuoIO
ある意味で核かそれ以上に危険な連中とやりあってきたヴァッシュがこの世界でどう戦うのか期待
105 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/25(火) 22:44:01.80 ID:7f6BFA+j0
Chapter3 後半
106 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/25(火) 22:44:40.57 ID:7f6BFA+j0


意味がわからない、目の前の光景の意味が、

守ると誓ったのに、

なぜ少女は血塗れで倒れている?

なぜ


自分が振るった刃が血塗れなのか。


「……どうして…歩く…教会は…」


彼女の手には豆腐を裂くような感触が、べったりとこびりついていた。

「あ…あああああああああ」




「……っ! インデックス!」

彼女を切った張本人であるはずの魔術師がその場で某然とへたり込んでいる
どういう事情かはわからないが、今はそんなことを考えている暇はない。
107 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/25(火) 22:45:13.45 ID:7f6BFA+j0

「(出血が酷い…このままじゃ…)」

まず考えたのは病院だったが、そっrは必然的にヴァッシュの目の届かない所だ、
敵がこの女一人でない以上それは危険かもしれない、だがヴァッシュには応急処
置程度の知識しかない。

「知識…そうだ!おい! アンタ治療の仕方とか分かるか!?」

あろうことかインデックスを切った魔術師に助けを望む、がしかし魔術師からの
返事はない、腰が抜けたように座り込んでいる。

「くっ、仕方ない病院かっ…」


が、その時、少女が弱々しく口を開いた、何時の間にか意識を取り戻していたよ
うだ。

「ま…待って、ヴァッ…シュ…」

「インデックス!大丈夫か!」
108 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/25(火) 22:45:57.38 ID:7f6BFA+j0


「大丈…夫、傷を治す魔術が…あるから」

魔術、そうだ、事実インデックスを追う魔術結社が存在していた以上、それは魔
術そのものの存在も証明されたことになる、 しかし魔術というのはこれほどまで
の傷をも治すことができる代物なのだろうか。

「魔術…それ使えば助かるのか!?」

「まだ大丈夫…だと…思うけど、ここじゃダメ…なんだ…よ、どこか…部屋の中…」

「部屋…!?」

とはいえホテルも取っていない、周りはビル街の路地裏、とすれば手は一つ、





「悪いな学生さん、またお世話させてもらうよ…!」

インデックスを背負い走る、

目指すは上条当麻宅!

109 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/25(火) 22:47:07.21 ID:7f6BFA+j0

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「(せっかくの夏休みなのにもうこんな時間か…補習のせいけどさー 、自業自得
だけどさー)」

「(そういやどうしてっかな…あいつら)」

「ただいま〜っと」

がちゃ


「(ま、案外ひょっこり戻ってきたりしてな、リモコンリモコン〜)」

ピッ

『お次は、正午ごろ発生した銀行強盗事件についてです』

「(そんなんあったのか、下手に出歩いてたらまた巻き込まれてたかもな)」

『犯人は人質を取り短時間の警備員との膠着状態ののちパニックを起こし発火能
力で人質や周辺の野次馬を攻撃しようとしたところ、なんと突如として現れた素
手の一般男性により取り押さえられ、結果として死傷者ゼロ人で事件が解決され
た…ということなのですが』

「(すげぇな、幻想殺しならともかく…そういやこの右手のせいで…不幸だ…)」

『こちらが偶然居合わせた当局の中継スタッフが捉えた映像です』

「(顔面のモザイクはともかく…このコート、頭…これは……)」

ガチャッ!ドタドタドタ!!


「悪い!!とんでもなく急いでるんだ!部屋貸してくれ!!」


「ぶっ!! ヴァ、ヴァッシュさん!?」
110 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/25(火) 22:47:55.96 ID:7f6BFA+j0

突如としてテレビとリアルでダブル降臨したヴァッシュザスタンピード、だがそ
の尋常ならざる気配と背中の少女を見て、彼も自体の緊急性を理解する

「ってインデックス!!なんだその血!!」

「彼女を今から魔術で治す…部屋を貸してくれ」

「魔術…そうか! 部屋なら使ってくれ!」

「そうか!恩に切る!インデックス!その魔術はどうすればいい…インデックス
!?」

背中の少女は先ほどより弱々しくぐったりとしていた、それも当然だ、傷が大き
すぎる。

「くそっ!!頼む!目を開けてくれ!インデックス!!」

「……あ…」

「インデックス!?」

意識を取り戻したかのように見えたがしかし、その口から出てきたのは重態を感
じさせない機会的な口調だった。


「出血量が一定を超えました、このままでは五分以内に生命活動停止の危険性が
生じるため、ヨハネのペン、自動書記モードを起動します」

「イン…デックス…?」
111 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/25(火) 22:49:09.99 ID:7f6BFA+j0

本人の口からは確かに五分以内になんとかしなければ命が危険だということが語
られていたが、先ほどまでとうってかわった機械的な口調からはどうにもその危
機感を感じられない。

「これから禁書目録の生命力を回復させる術式を構成していただきます」

「あ、あぁ!ともかく頼む!!」

今はたとえどんな状況でもインデックスの命を最優先させなければ、
ヴァッシュは藁をも掴むつもりで変貌した少女に問い詰める、
自分があの時銃を撃ててさえいれば、仮定になどなんの意味も無いとわかっては
いるのだが、

ともかく絶対にこの少女を死なせはしない、

しかし、

その思いはまたしても最悪の形で裏切られるのだ。


「魔術使用に際しての適性を感知します……………これは…!」



人形のような少女の無表情が初めてほんの少しの驚愕を滲ませた。

「どうしたっ!適性って何なんだよ!?」

「……禁書目録の中に保存されている全ての魔術は…人間による人間のための術
式です」

「!!」
112 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/25(火) 22:50:07.42 ID:7f6BFA+j0

「感知の結果、貴方を人間では無い未知のカテゴリに属する生命体だと認識しま
した、あなたに禁書目録を治療する魔術を使用することはできません」

「……」


「……貴方は一体…何?」



そう、ヴァッシュザスタンピードは人類では無い、人間によって生み出されたほ
んの少しの紫外線と二酸化炭素からありとあらゆる物質を創り出す力を持つ、万
能の生体装置“プラント” ヴァッシュとその兄ナイブズは奇跡的な偶然により生
まれた自律行動をするプラントだ。


「……!じゃああいつなら!」

思考停止している暇は無い、ヴァッシュは部屋の外を指差して問う、部屋の外で
待つ上条当麻なら正真正銘人間だ、これならいけるはずだと考えたがしかし、事
実は時にどこまでも残虐だ。

「学園都市の学生は全員が“超能力開発”と称される脳内回路の改造が行われて
いる、と禁書目録の個人的記憶にはあります、脳の中に魔術と別の回路を持つ人
間もまた、魔術を使うことはできません」


八方塞がり、まるで船の上から絶望の海に投げ出され、上から頭を押さえつけら
れるかの様な。
113 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/25(火) 22:51:02.76 ID:7f6BFA+j0
「禁書目録の生命活動停止まであと三分、早急に治療術式を使うことができる人
物を用意してください」

刻一刻とタイムアップが近づいてくる、もはや今から学生以外の人間を外から連
れてくる時間は無い、それは実質的な“詰み”だった、それと同時にヴァッシュ
の中ではジェネオラロックを破壊した時と同じ絶望と無力感が膨れ上がっていく


「(俺がっ…あの時銃を抜いていさえいればっ…!)」

「インデックス…ッ!」





「……ここか」

114 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/25(火) 22:52:00.48 ID:7f6BFA+j0


がちゃ


「え!?誰ですかアンタ!?今ちょっと取り込んでて…って聞いてない!?」

タッタッタッ


ガチャッ



「久しぶりやな、人間台風(ヒューマノイドタイフーン)、苦虫噛み潰したような
顔しよってほんま」




「お前っ…!!」



「牧師のワイが言うんも何やけど」


「まだ葬式には早いで?トンガリ頭」


to be continuede…
115 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/25(火) 22:57:18.43 ID:7f6BFA+j0
ここまで、 とりあえず一番書きたかったシーンまで書けて良かった良かった

まぁいると思う見てくれる人に感謝感謝
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2011/10/25(火) 22:59:59.84 ID:mxMeKa2AO
面白い

いつも楽しみにしてます
117 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/25(火) 23:28:29.56 ID:7f6BFA+j0
普通にageるの忘れとったわ、 もうsage進行でもいいんだけどね、

見てくれる人は多分上がらなくても見てくれると信じて…
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/10/25(火) 23:50:00.17 ID:gEBVQvjR0
ウルフッドキター
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/10/26(水) 00:40:07.26 ID:/PTn9QzAO
ニコラスktkr
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/26(水) 01:14:55.54 ID:u3SojxS60
ニコ兄キタぁああああああああッ!?
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北陸地方) [sage]:2011/10/26(水) 12:10:21.40 ID:dAZ6lxpAO
ニコ兄いいいいいい!
122 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/29(土) 20:59:20.27 ID:e2fgqkvL0
Chapter4 前半投下します
123 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/29(土) 21:00:06.19 ID:e2fgqkvL0


「なんだったんだあの人…でかい十字架持ってたけど、まだ葬式には早ぇぞ…」

部屋の中から聞こえた断片的な会話からヴァッシュの知り合いだということは分
かったが、今日一日で上条当麻の平穏な生活は乱されっぱなしだ、その上彼本人
はじたいの全容を全く把握しきれていない。

「助かりゃいいんだけどな…」

自称イギリス式正教のシスター、インデックス、優しそうな雰囲気を纏うあどけ
ない少女が何故ああなって帰ってきたのかは窺い知れないが、恐らくは彼女の言
っていた追手による傷なのだろう。

ヴァッシュがついていながらこうなってしまったということは魔術結社とか言う
連中は想像以上に危険なようだ、外の様子を見てきた方がよいかもしれない、と
上条当麻は考えた、右手の影響を考え治療術式の部屋に入れなかったためせめて
何か少女の役に立てないかと思っていたからだが。

がちゃ



「魔術師…か」



「お呼びかな?」

「!」
124 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/29(土) 21:01:19.58 ID:e2fgqkvL0

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「で、その魔術とやらでこの嬢ちゃん治そう言うんか」

「あぁ、色々聞きたいことはあるが今はこっちを頼む、ウルフウッド」

「………たくっ…しゃあないのう」

「そうか!」

魔術、その胡散臭い響きに牧師ウルフウッドは盛大にツッコもうとしたがヴァッ
シュの真剣な表情に押し切られてしまった、確かに、そもそもこの男が人の生死
に関わる問題でふざけるわけがなかったのだ。

「で、ワイは何をやったらええんや?復活の呪文でも唱えるんか?」

「…感知の結果、正常な適性と判断しました、これから貴方には儀式場を構築し
ていだたきます」

「おぉ、まかしとき」
125 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/29(土) 21:03:41.07 ID:e2fgqkvL0

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


まるで彼が家から出てくるのを待ちかねていたかの様に1人の男がマンションの廊
下に立っていた、身長は高く赤髪で、大量の銀の指輪や髑髏のネックレス、果て
にはバーコードの刺青と一昔前のチーマーならともかく、お世辞にお世辞を重ね
ても魔術師には見えない。

「てめぇか…インデックスをあぁしたのは」

「違うよ、切ったのは同僚だ、で、僕はその尻拭いさ」

「殺せなかったから仕留めにきたってか」

その瞬間、男の顔が歪む、まるでこの世の最大限の侮辱を受けそれを飲み込むし
かないかの様だ、懐から煙草を取り出し火を付けた、学園都市では一般的に売っ
ていないので銘柄まではわからない。

「……」

ふぅ、と煙を吐き出し、男の顔は先程までの余裕を滲ませたものに戻る、ニコチ
ンに脳を支配されやがって、と上条当麻は冷静に考えていた。

「まさか、逆だよ、僕の仕事はあくまで、今度こそ彼女を無傷で連れ帰ることさ、そこでだ」


「……取引をしないか?」

「あぁ?」

「さっき言ったとおり、僕らは魔術師だ、治療魔術というものがあってね、ある
程度の傷なら治せる、いたいけな少女の命を守りたいと思うなら彼女を引き渡し
てくれないかな」

魔術師から出る予想外の言葉、確かにこのままみすみす帰ってくれるとまでは思
っていなかったが、それで、はいどうぞと差し出すわけにはいかない。
126 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/29(土) 21:04:36.69 ID:e2fgqkvL0

「それじゃ取引にならねぇじゃねぇか、確かにお前らの方が確実にインデックス
を治せるかもしれない、だけどそれでお前らにインデックスを渡したら本末転倒
だ」

「大丈夫だよ、君達、いや君にはもっとメリットのある話だから」

「俺…に?」

「なんと言っても、家が火事にならずに済む」

「!」

「塵は塵に、灰は灰に、“吸血鬼殺しの紅十字”!!」


突如として男の手から十字の炎が吐き出される、一瞬発火能力を思い出すが目の
前の男の言い分から察するにこれが魔術というものなのだろう。
突然のことに反応しきれずに十字の炎が上条家の家のドアに命中する、がその瞬
間炎は煙もなく消え去り、被害はドアに十字の焼け焦げを作るのみでとどまった


「あっぶね…!なにすんだてめぇ!!」

「今のは脅しだよ、本気でやれば今頃この建物ごと火の海だ、あの赤いコートの
男は彼女を連れて逃げれば問題無いだろうが、君にとっては死活問題じゃないの
かな?」

「……」


確かに日々極貧状態の上条当麻にとって家財道具一式や衣服、通帳まで燃えてし
まっては冗談ではすまない、しかもマンションには他にも多くの住人が住んでい
るのだ、非日常的状況の中で突然として日常的な危機を突きつけられたことで、
一瞬にして湧き上がった興奮が冷め、彼は再度冷静さを取り戻した。

「汚ねぇぞ…てめぇ…!」

「そりゃ結構、だが冷静に考えてみろ、君にとって彼女は今朝たまたま出会い、
すぐ別れた、それだけの関係だろう」

「!……」
127 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/29(土) 21:05:36.81 ID:e2fgqkvL0
「いや、それどころか迷惑だったんじゃないかな?今だって長期休暇のおりに突
然部屋を占領されて、挙句のはてに魔術師と素手で対峙する羽目に陥っている、
正直同情するよ、悪かったね」

確かに、彼にとってインデックスなど所詮たまたまベランダに引っかかっていた
だけの存在、彼女に同行し、さらに今も必死に命を救おうとしているあの男なら
ともかく、インデックス本人にとっても上条当麻は取るに足らない存在だろう。

「第一あの男、奴が魔導書を狙う魔術師じゃないと何故言い切れる?」

「……くっ」


待て、

それでもあの男は、必死になって少女を救おうとしていたじゃないか


「俺は……」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「こんなもんでええか、嬢ちゃん」

「はい、それでは今からこの儀式場に天使を降ろします…」

「天使…か」

128 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/29(土) 21:06:41.14 ID:e2fgqkvL0


「インデックスを渡すことはできない…」

「……」

上条当麻の出した結論はやはりそれだった、


魔術師の顔から滲む僅かな余裕が消え去る、だがそこには怒りも失望もなく、
ただ無機質な、蝿に殺虫剤をかけるような顔が残った。

「なら死になよ」

「Fortis931!…炎よ巨人に苦痛の贈り物を!」

魔術師が炎の剣を放つ、そこに込められた純粋な殺意は一介の高校生である上条
当麻を貫いた。

「うぁあああっ!!」

断末魔にも近い叫び、直撃ルート、あたりには焼死体の焦げた匂いが…無い、



「!?」

「あっぶねぇ…死ぬかと思った…」

逆だ、殺すつもりで放ち直撃した、なぜ死んでいない?
このなんの取り柄もなさそうな男が、一体何をしたというのか。

「何を…した!?」

「ちっ、やっぱりお前らにインデックスは渡せなねぇな」
129 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/29(土) 21:08:26.90 ID:e2fgqkvL0

とにかく距離を取らねば、目の前のこの一般的男子高校生が何らかの手札を隠し
持っていることは明らかだ。

それに対して自分の準備不足が嘆かれる、彼の本来得意とする魔術にはとある前
準備が必要になるのだが、なにしろインデックスを背負った赤いコートの男を追
いかけて今このマンションに到着した所だ。

「今のでわかったと思うけど、あれの回収を邪魔するって言うなら、殺すよ」

「それが本性ってか、なんなんだよ…!“あれ”だと!?インデックスは物じゃ
ねぇぞ!!」

「うるさいな、結局重要なのは中の魔導書だろう?」

「中の…?さっきから何なんだよ…!魔導書がどうとか!?」

「そうか、まぁ君はそこらへんは知らなくてもおかしくないか」

「……?」

確かに朝に一度インデックスは魔導書を持っていると言っていた、その時はまさ
か持ち歩いているとは思っていなかったが、中という言葉からある可能性を思い
つく。

「まさか…憶えてる……のか?」

「へぇ、思ったより賢いんだね、その通りだ、あれの脳の中には数多の魔導書が
焼き付けられているんだよ、完全記憶能力と言うらしいね」

完全記憶能力、見聞きした情報を完全に記憶でき、その上決して忘れることも無
いという上条のような落第生には喉から手が出る様な能力だが、そのせいで彼女
は血みどろの争いに巻き込まれているらしい。

「つまりあれが死ねば中の魔導書もぱーだ、勝手に死んでもらっては困るわけだ
よ」

なんだそれは、ふざけるな、それじゃまるで。
130 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/29(土) 21:11:36.13 ID:e2fgqkvL0
「あいつは道具だっていうのか!!!」



「……違うのかい?」


じゃあ……なんで、あの男は、あんな世界の終わりの様な顔で彼女を救おうとしてい
たと言うのだろうか。

「……!」


「今…決めたぜ、もしあいつがインデックスの魔導書を狙う魔術師だとしても……」

「お前らになんかよりずっと!アイツは人間としてインデックスのことを考えてる!」

「お前らに絶対インデックスはわたさねぇ!!俺とインデックスの関係なんて知
らねぇ!俺は!俺が正しいと思うことをするだけだ!!」


「……なら…死ねよ!!炎よ!!巨人に苦痛の贈り物を!!」

先程と同じ魔術、圧倒的な愚策と言える、さっきまでの冷静さを失ったのは何故なのか、誰にも窺い知ることはできないが。

「うおおおおっ!!」

パキィッ

乾いた破壊音とともに右手に触れた炎が跡形もなく消え去った。

「(右手…!なんだ!?それは!?)」

触れただけで魔術を消す、目の前で起こってしまったあり得ない事象が魔術師に
一瞬の隙を作り出した。

「喰らえっ!!」

バキィッッ!!

「がぁはっ!!」

渾身の右ストレートが魔術師の顔面に突き刺さる、小規模の魔術しか使っていな
かったために魔力の消耗が少なかったのが幸いし、彼はどうにか意識を保つこと
ができていた。
131 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/29(土) 21:13:04.64 ID:e2fgqkvL0
「くっ、さっきのもその…右手かっ!!」

「そうだ…魔術は俺に通じねぇぞ」

予想だにしない圧倒的危機に瀕し、齢14にして魔術の粋を極め新たなルーン文字
を発明するにまで至った天才魔術師の頭脳が走る。

右手だ、どうするか、全ての魔術を消す?本当にか?


待て、それならばまさか。



「歩く教会を消したのも…その右手ということか…!!」

「……そう、だな(…?)」

「なるほどね…点と線が繋がったって奴かな…」

「どういうことだ…?」

「さっきの閃きはどうした…?わからないのか?」



「確かにあれの背中の傷は僕の同僚が切ったものだ…だけどね、彼女は決して殺
すつもりで剣を振るったわけじゃない」

「足止めをするつもり…だったそうだ、そりゃそうだろう、まさか自分なんかの
技で」

「法皇級の結界効果を持つ歩く教会を貫通させられると思うわけがないからね」

「……!!!!」
132 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/29(土) 21:14:43.97 ID:e2fgqkvL0
全てが繋がった、つまり…結局インデックスが傷付いたのは。




「俺の…せい…?」


上条当麻の足元が揺らぐ、盤石だと思っていた地面が急にぬかるみに変わってし
まったようだ、一気に噴出した負の感情は少年の意識を一瞬そらせるにはあまりに強かった。


「(今だ、一瞬で近づいて右手を取る、そのまま至近距離で炎剣を御見舞してやる)」


魔術師が床を蹴り距離を詰めようとした絶体絶命のその刹那。






ドンっ

「じゃかあしいわ!!さっきから!!」
133 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/29(土) 21:16:37.42 ID:e2fgqkvL0

巨大な十字架担いだ男が家の中から現れた。

「なっ!?」

「表でドンパチやらかしおってからに、治療しとったこっちの身にも成れっちゅうんじゃ」

「治療って、あんたがかよ!?」

「そうやけど…あぁ、安心しぃや、今終わったとこや」

「そう…か…」


安堵する上条当麻、しかしその安堵にはもはや後ろめたい感情ばかりが満たされていた。



「……おんどれも…安心しとき、助かるらしいで、嬢ちゃん自身で言っとった」

「……!」


上条当麻にはウルフウッドのセリフの意味がいまいち理解できていなかったが、
とうの魔術師は自身の胸の内を覗かれた気分であった。



「……今一対二は少しキツいね、あれが助かったって言うなら、今は預けといてあげるよ」



「チッ、……行くなら早く消えろ…」
134 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/29(土) 21:19:27.76 ID:e2fgqkvL0


階段に足を運ぶ途中で魔術師の男がふと、口を開きウルフウッドに語りかける


「今は感謝しておくけど、君、あれを助けるためとはいえ土足で魔術に入り込ん
だのか?それとも、まさかお前らご自慢のおぞましい生体技術を使ったんじゃな
いだろうな」


「ミカエルの眼…汚れた暗殺者(コンタクトキラー)どもが」

「!……待てっ!今っ……くそっ」

魔術師は去り、少女は一命を取り留めた、当面の危機は全ていなし束の間の安息が訪れたはずが、



「(まさか…あるいうんか、此処にもあの地獄の釜の底の様な組織が…!!)」



空にはヴァッシュとウルフウッド、

そして上条当麻の今後の命運を暗示するかの様な曇り空が広がっていた。



to be continuede……
135 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/10/29(土) 21:24:26.91 ID:e2fgqkvL0
今回から全sage進行でまったり進みます、まぁ物語自体は佳境に入ったけどね

14歳は話術サイドっぽく、原作より人間っぽくなってます、
そしていまんとこKJさんェ…的状况、頑張れKJまじ頑張れ

このSSは大筋以外は出来る限り原作からそらせようとしてますので二人が絡むことで結構違う感じになっています、やっぱ上条さんの代わりとしてヴァッシュが出てるってだけのクロスではつまらんので。
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/10/29(土) 22:16:55.69 ID:Wubilr1bo
>>1
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/30(日) 13:31:07.67 ID:KfCfmdH40
>>52
ナイブズ・ヴァッシュの攻撃全てがプラントの力で作り出した次元系の力な。唯閃も余裕で防ぐ。
当然最後に出した手持ちのアレも。でそれを防ぐ銃身で防ぐヴァッシュ。まああの銃も色々とプラントの力のせいで変異してるんだがな。
上位ガンホー以上、プラント兄弟の面々はも音速の数百倍なんてレベルじゃない戦闘速度だったりして唯閃がまず当たらないけど
ヴァッシュのAA自体で惑星次元消滅とSFらしさが出てきてたからなぁ。
こっちの地球でAA砲が発動しない事を祈るよ
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/10/30(日) 13:39:18.32 ID:n4K880MZ0
「なんだったんだあの人…でかい十字架持ってたけど、まだ葬式には早ぇぞ…」

部屋の中から聞こえた断片的な会話からヴァッシュの知り合いだということは分
かったが、今日一日で上条当麻の平穏な生活は乱されっぱなしだ、その上彼本人
はじたいの全容を全く把握しきれていない。

「助かりゃいいんだけどな…」

自称イギリス式正教のシスター、インデックス、優しそうな雰囲気を纏うあどけ
ない少女が何故ああなって帰ってきたのかは窺い知れないが、恐らくは彼女の言
っていた追手による傷なのだろう。

ヴァッシュがついていながらこうなってしまったということは魔術結社とか言う
連中は想像以上に危険なようだ、外の様子を見てきた方がよいかもしれない、と
上条当麻は考えた、右手の影響を考え治療術式の部屋に入れなかったためせめて
何か少女の役に立てないかと思っていたからだが。

がちゃ



「魔術師…か」



「お呼びかな?」

「!」

139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/10/30(日) 13:39:57.95 ID:n4K880MZ0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「で、その魔術とやらでこの嬢ちゃん治そう言うんか」

「あぁ、色々聞きたいことはあるが今はこっちを頼む、ウルフウッド」

「………たくっ…しゃあないのう」

「そうか!」

魔術、その胡散臭い響きに牧師ウルフウッドは盛大にツッコもうとしたがヴァッ
シュの真剣な表情に押し切られてしまった、確かに、そもそもこの男が人の生死
に関わる問題でふざけるわけがなかったのだ。

「で、ワイは何をやったらええんや?復活の呪文でも唱えるんか?」

「…感知の結果、正常な適性と判断しました、これから貴方には儀式場を構築し
ていだたきます」

「おぉ、まかしとき」

140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/10/30(日) 13:44:57.43 ID:wWP5FQOq0
>>19
あれは筋力だけじゃなくプラント能力の発生する力場さえも制御させちゃってる。
でヴァッシュが惑星破壊級のエネルギーを秘めてるからまずこれ以上超えなきゃ抗うのは聖人じゃ残念ながら無理。
レガート自身も不殺とかないヴァッシュと同等の反応と身体能力持ちだから真っ向勝負も聖人は無理がありすぎるが・・
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/30(日) 13:45:56.00 ID:YRAVxE2Q0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


まるで彼が家から出てくるのを待ちかねていたかの様に1人の男がマンションの廊
下に立っていた、身長は高く赤髪で、大量の銀の指輪や髑髏のネックレス、果て
にはバーコードの刺青と一昔前のチーマーならともかく、お世辞にお世辞を重ね
ても魔術師には見えない。

「てめぇか…インデックスをあぁしたのは」

「違うよ、切ったのは同僚だ、で、僕はその尻拭いさ」

「殺せなかったから仕留めにきたってか」

その瞬間、男の顔が歪む、まるでこの世の最大限の侮辱を受けそれを飲み込むし
かないかの様だ、懐から煙草を取り出し火を付けた、学園都市では一般的に売っ
ていないので銘柄まではわからない。

「……」

ふぅ、と煙を吐き出し、男の顔は先程までの余裕を滲ませたものに戻る、ニコチ
ンに脳を支配されやがって、と上条当麻は冷静に考えていた。

「まさか、逆だよ、僕の仕事はあくまで、今度こそ彼女を無傷で連れ帰ることさ、そこでだ」


「……取引をしないか?」

「あぁ?」

「さっき言ったとおり、僕らは魔術師だ、治療魔術というものがあってね、ある
程度の傷なら治せる、いたいけな少女の命を守りたいと思うなら彼女を引き渡し
てくれないかな」

魔術師から出る予想外の言葉、確かにこのままみすみす帰ってくれるとまでは思
っていなかったが、それで、はいどうぞと差し出すわけにはいかない。

142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/30(日) 13:46:39.30 ID:YRAVxE2Q0
「それじゃ取引にならねぇじゃねぇか、確かにお前らの方が確実にインデックス
を治せるかもしれない、だけどそれでお前らにインデックスを渡したら本末転倒
だ」

「大丈夫だよ、君達、いや君にはもっとメリットのある話だから」

「俺…に?」

「なんと言っても、家が火事にならずに済む」

「!」

「塵は塵に、灰は灰に、“吸血鬼殺しの紅十字”!!」


突如として男の手から十字の炎が吐き出される、一瞬発火能力を思い出すが目の
前の男の言い分から察するにこれが魔術というものなのだろう。
突然のことに反応しきれずに十字の炎が上条家の家のドアに命中する、がその瞬
間炎は煙もなく消え去り、被害はドアに十字の焼け焦げを作るのみでとどまった


「あっぶね…!なにすんだてめぇ!!」

「今のは脅しだよ、本気でやれば今頃この建物ごと火の海だ、あの赤いコートの
男は彼女を連れて逃げれば問題無いだろうが、君にとっては死活問題じゃないの
かな?」

「……」


確かに日々極貧状態の上条当麻にとって家財道具一式や衣服、通帳まで燃えてし
まっては冗談ではすまない、しかもマンションには他にも多くの住人が住んでい
るのだ、非日常的状況の中で突然として日常的な危機を突きつけられたことで、
一瞬にして湧き上がった興奮が冷め、彼は再度冷静さを取り戻した。

「汚ねぇぞ…てめぇ…!」

「そりゃ結構、だが冷静に考えてみろ、君にとって彼女は今朝たまたま出会い、
すぐ別れた、それだけの関係だろう」

「!……」
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/30(日) 13:47:27.57 ID:YRAVxE2Q0
「いや、それどころか迷惑だったんじゃないかな?今だって長期休暇のおりに突
然部屋を占領されて、挙句のはてに魔術師と素手で対峙する羽目に陥っている、
正直同情するよ、悪かったね」

確かに、彼にとってインデックスなど所詮たまたまベランダに引っかかっていた
だけの存在、彼女に同行し、さらに今も必死に命を救おうとしているあの男なら
ともかく、インデックス本人にとっても上条当麻は取るに足らない存在だろう。

「第一あの男、奴が魔導書を狙う魔術師じゃないと何故言い切れる?」

「……くっ」


待て、

それでもあの男は、必死になって少女を救おうとしていたじゃないか


「俺は……」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「こんなもんでええか、嬢ちゃん」

「はい、それでは今からこの儀式場に天使を降ろします…」

「天使…か」
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/30(日) 13:48:02.89 ID:YRAVxE2Q0
「インデックスを渡すことはできない…」

「……」

上条当麻の出した結論はやはりそれだった、


魔術師の顔から滲む僅かな余裕が消え去る、だがそこには怒りも失望もなく、
ただ無機質な、蝿に殺虫剤をかけるような顔が残った。

「なら死になよ」

「Fortis931!…炎よ巨人に苦痛の贈り物を!」

魔術師が炎の剣を放つ、そこに込められた純粋な殺意は一介の高校生である上条
当麻を貫いた。

「うぁあああっ!!」

断末魔にも近い叫び、直撃ルート、あたりには焼死体の焦げた匂いが…無い、



「!?」

「あっぶねぇ…死ぬかと思った…」

逆だ、[ピーーー]つもりで放ち直撃した、なぜ死んでいない?
このなんの取り柄もなさそうな男が、一体何をしたというのか。

「何を…した!?」

「ちっ、やっぱりお前らにインデックスは渡せなねぇな」

145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/30(日) 13:49:31.38 ID:YRAVxE2Q0
とにかく距離を取らねば、目の前のこの一般的男子高校生が何らかの手札を隠し
持っていることは明らかだ。

それに対して自分の準備不足が嘆かれる、彼の本来得意とする魔術にはとある前
準備が必要になるのだが、なにしろインデックスを背負った赤いコートの男を追
いかけて今このマンションに到着した所だ。

「今のでわかったと思うけど、あれの回収を邪魔するって言うなら、[ピーーー]よ」

「それが本性ってか、なんなんだよ…!“あれ”だと!?インデックスは物じゃ
ねぇぞ!!」

「うるさいな、結局重要なのは中の魔導書だろう?」

「中の…?さっきから何なんだよ…!魔導書がどうとか!?」

「そうか、まぁ君はそこらへんは知らなくてもおかしくないか」

「……?」

確かに朝に一度インデックスは魔導書を持っていると言っていた、その時はまさ
か持ち歩いているとは思っていなかったが、中という言葉からある可能性を思い
つく。

「まさか…憶えてる……のか?」

「へぇ、思ったより賢いんだね、その通りだ、あれの脳の中には数多の魔導書が
焼き付けられているんだよ、完全記憶能力と言うらしいね」

完全記憶能力、見聞きした情報を完全に記憶でき、その上決して忘れることも無
いという上条のような落第生には喉から手が出る様な能力だが、そのせいで彼女
は血みどろの争いに巻き込まれているらしい。

「つまりあれが[ピーーー]ば中の魔導書もぱーだ、勝手に死んでもらっては困るわけだ
よ」

なんだそれは、ふざけるな、それじゃまるで。
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/30(日) 13:50:42.99 ID:YRAVxE2Q0
「あいつは道具だっていうのか!!!」



「……違うのかい?」


じゃあ……なんで、あの男は、あんな世界の終わりの様な顔で彼女を救おうとしてい
たと言うのだろうか。

「……!」


「今…決めたぜ、もしあいつがインデックスの魔導書を狙う魔術師だとしても……」

「お前らになんかよりずっと!アイツは人間としてインデックスのことを考えてる!」

「お前らに絶対インデックスはわたさねぇ!!俺とインデックスの関係なんて知
らねぇ!俺は!俺が正しいと思うことをするだけだ!!」


「……なら…[ピーーー]よ!!炎よ!!巨人に苦痛の贈り物を!!」

先程と同じ魔術、圧倒的な愚策と言える、さっきまでの冷静さを失ったのは何故なのか、誰にも窺い知ることはできないが。

「うおおおおっ!!」

パキィッ

乾いた破壊音とともに右手に触れた炎が跡形もなく消え去った。

「(右手…!なんだ!?それは!?)」

触れただけで魔術を消す、目の前で起こってしまったあり得ない事象が魔術師に
一瞬の隙を作り出した。

「喰らえっ!!」

バキィッッ!!

「がぁはっ!!」

渾身の右ストレートが魔術師の顔面に突き刺さる、小規模の魔術しか使っていな
かったために魔翌力の消耗が少なかったのが幸いし、彼はどうにか意識を保つこと
ができていた。
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/30(日) 13:51:30.31 ID:YRAVxE2Q0
「くっ、さっきのもその…右手かっ!!」

「そうだ…魔術は俺に通じねぇぞ」

予想だにしない圧倒的危機に瀕し、齢14にして魔術の粋を極め新たなルーン文字
を発明するにまで至った天才魔術師の頭脳が走る。

右手だ、どうするか、全ての魔術を消す?本当にか?


待て、それならばまさか。



「歩く教会を消したのも…その右手ということか…!!」

「……そう、だな(…?)」

「なるほどね…点と線が繋がったって奴かな…」

「どういうことだ…?」

「さっきの閃きはどうした…?わからないのか?」



「確かにあれの背中の傷は僕の同僚が切ったものだ…だけどね、彼女は決して殺
すつもりで剣を振るったわけじゃない」

「足止めをするつもり…だったそうだ、そりゃそうだろう、まさか自分なんかの
技で」

「法皇級の結界効果を持つ歩く教会を貫通させられると思うわけがないからね」

「……!!!!」
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/30(日) 13:52:12.19 ID:YRAVxE2Q0
全てが繋がった、つまり…結局インデックスが傷付いたのは。




「俺の…せい…?」


上条当麻の足元が揺らぐ、盤石だと思っていた地面が急にぬかるみに変わってし
まったようだ、一気に噴出した負の感情は少年の意識を一瞬そらせるにはあまりに強かった。


「(今だ、一瞬で近づいて右手を取る、そのまま至近距離で炎剣を御見舞してやる)」


魔術師が床を蹴り距離を詰めようとした絶体絶命のその刹那。






ドンっ

「じゃかあしいわ!!さっきから!!」
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/30(日) 13:52:42.95 ID:YRAVxE2Q0
巨大な十字架担いだ男が家の中から現れた。

「なっ!?」

「表でドンパチやらかしおってからに、治療しとったこっちの身にも成れっちゅうんじゃ」

「治療って、あんたがかよ!?」

「そうやけど…あぁ、安心しぃや、今終わったとこや」

「そう…か…」


安堵する上条当麻、しかしその安堵にはもはや後ろめたい感情ばかりが満たされていた。



「……おんどれも…安心しとき、助かるらしいで、嬢ちゃん自身で言っとった」

「……!」


上条当麻にはウルフウッドのセリフの意味がいまいち理解できていなかったが、
とうの魔術師は自身の胸の内を覗かれた気分であった。



「……今一対二は少しキツいね、あれが助かったって言うなら、今は預けといてあげるよ」



「チッ、……行くなら早く消えろ…」
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/30(日) 13:53:23.05 ID:YRAVxE2Q0
階段に足を運ぶ途中で魔術師の男がふと、口を開きウルフウッドに語りかける


「今は感謝しておくけど、君、あれを助けるためとはいえ土足で魔術に入り込ん
だのか?それとも、まさかお前らご自慢のおぞましい生体技術を使ったんじゃな
いだろうな」


「ミカエルの眼…汚れた暗殺者(コンタクトキラー)どもが」

「!……待てっ!今っ……くそっ」

魔術師は去り、少女は一命を取り留めた、当面の危機は全ていなし束の間の安息が訪れたはずが、



「(まさか…あるいうんか、此処にもあの地獄の釜の底の様な組織が…!!)」



空にはヴァッシュとウルフウッド、

そして上条当麻の今後の命運を暗示するかの様な曇り空が広がっていた。



to be continuede……
151 :名無しNIPPER [sage]:2011/10/30(日) 18:35:54.19 ID:wiN/FB/DO
なんか重複してねーか?
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sagasage]:2011/10/31(月) 19:01:31.53 ID:Z5wKYT7I0
なんでそんなことすんのかねー

153 : ◆DdirWW5ZSY [saga]:2011/11/06(日) 20:34:35.70 ID:Zbc9vo6+0
Chapter4 後半 諸般の事情からage進行でいくぞ
154 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/06(日) 20:35:35.23 ID:Zbc9vo6+0


「……ん…」

「インデックス…」

魔術によって傷が塞がると同時にインデックスは人形のような無表情のまま眠り
についていたが、今意識を取り戻した。
表情から察するに正常なインデックスに戻っているようだ。

「…ヴァッシュ……ごめん…」

「なに言ってんだ、助かってよかったって時に」

インデックスの表情はどこかおどおどと遠慮をしているようだった、

「でも…迷惑だったでしょ?…こんなことに巻き込まれちゃって」

「……なんでそう思うんだ?」

ウルフウッドが表の様子を見に出て行ってしまったので部屋にはヴァッシュとイ
ンデックスの二人きりだった。
表の騒ぎも治まり、部屋の空気は静かに淀んでいた。

「最初に会った時、言ったよね、私、シスターだって…」

「あぁ…」

「でもただのシスターじゃないんだよ、私が所属してるのは…必要悪の教会(ネセ
サリウス)って言ってね」

「必要悪…?」

「うん、教会の闇を一手に引き受ける魔術師達の組織なんだよ…教会に歯向かう
他の魔術師を、魔術を持って殲滅するのがその使命…」

「……」
155 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/06(日) 20:36:17.64 ID:Zbc9vo6+0

その組織が彼女の置かれた闇の原因の一つであることは明らかだろう。
つまりは今朝彼女自身でも言っていた魔導書、それが彼女をしばっているのか?

「魔導書…それも関係あるってことか?」

「うん…あの時は言ってなかったけど、私は常に数にして二万三千冊以上の魔導
書を持ち歩いてるの」



「…どういうことなんだ…?」

少女の持つ得体の知れない何か、その正体を不意に晒されてもヴァッシュにそれ
を理解仕切ることはできなかった、インデックスはそのことを省みようともせず
説明を続けている、まるで自分自身に言い聞かせるかのように。


「私は完全記憶能力の持ち主…だから、 頭の中に…刻みつけられてるんだよ」

「普通の人なら一目と見れないくらい危険な猛毒を持つ本、魔導書を…」


それが、それが彼女を闇に縛り付けるシステム危険すぎる魔導書の知識を一度人
間に転写することで安全に利用する、そして危険な原典は厳重に封印を施し第三
者に盗用される事を防ぐ、 それらのシステムの全容をインデックスはゆっくりと
ヴァッシュに説明した。



「なんで…そんな事に…なっちまってるんだよ……!」

このいたいけな少女がどのような過去を抱えて生きてきたのか、
そんな現実の残酷さを噛み締めるヴァッシュの口からは自然とそんな言葉が漏れ
出していた、しかし少女を包み込む地獄はそれだけでは飽き足らない。

「さぁ…ね、知らないんだ、実を言うとね、私も昔の記憶がないから」

「……」
156 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/06(日) 20:37:10.82 ID:Zbc9vo6+0

ヴァッシュは思い出す、朝に少女が上条当麻の問いかけに対して見せた表情を

『だったら、お前は?流石にお前も記憶が無い、なんてことはないよな?』

今にしてみればヴァッシュはインデックスのことを何も知らなかった、彼女が頑
なに自身の深みに彼を踏み込ませようとしなかったからだ。


「ちょうど一年くらい前から今の私の人生は始まったみたいなものなんだよ、そ
れでも何も覚えてない中で、魔導書、魔術、必要悪の教会、そういった記憶だけ
はあって」

「ただなんとなく…逃げなきゃって、今思ったら、自分が本当に必要なもの以外
何も持ってない、使われるだけの道具みたいに感じて…それが怖かったのかも」

「あの魔術師とその仲間はその時からずっと追いかけてきてる、今まではあの二
人が使う魔術を魔導書の知識を使って誤魔化したりして逃げてたんだよ、でも…」


一気に言葉を吐き出すインデックス、しかしその表情は逆に何かを必死に飲み込
むのに必死なように見えていた。
インデックスはまっすぐとヴァッシュの目を見据え口を開いた。


「わかるでしょ? まるで地獄…どうせいつかは捕まって道具として利用される
だけ、 だけど…!」

「だからこそ、ヴァッシュみたいに争いが嫌いな、本当に優しい人を巻き込みた
くないんだよ、 私はただの本棚、私なんかのためにヴァッシュが傷付いたら……
私も辛いから…」


自身で地獄と言い切るような状況においても、ヴァッシュのために、ヴァッシュ
を巻き込みたくないと言ってのける少女。
誰かのために自分の命を諦める、その姿はヴァッシュにいくつもの古い記憶を思
い出させる。
157 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/06(日) 20:37:58.04 ID:Zbc9vo6+0


理にはかなっているのかもしれない、だが、この男はそんな事を認められるほど
弱くも、強くも無い。

「……ハァ……あのっなっ!」

ぴしっ

「んっ!……?」


インデックスの額を中指で軽く弾くヴァッシュ、その表情はまるで全ての不安を
受け止めるかのような、いつもの柔らかい笑みだ。

「助けられたら、うだうだ考えずにまずはありがとうでいいんだよ」

「……」



「大丈夫だ、今度こそ俺が守るよ、誰がなんと言おうと勝手に守って見せる、も
う、あんな無力感はごめんだからさ」

「ヴァッシュ……」

「……昔、俺もそうやって守ってもらったんだ、大切な人に、だから俺も誰かを
救いたい、 今はもういないあの人のためにも」
158 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/06(日) 20:38:28.32 ID:Zbc9vo6+0




「だから……そんな簡単に手放さないでくれよ…俺が守るから」











「…………………んっ…」

声にならない声が頷く少女の口から発せられる、大粒の涙は“生まれて”初めて
与えられた明確な“居場所”への安堵からだろう。






159 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/06(日) 20:39:09.28 ID:Zbc9vo6+0

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「それでや、こっちはその嬢ちゃん助けたった、やからまずワイの質問に答えて
もらう」

「あぁ」

「あなたがヴァッシュのお友達の牧師様なのかな?」

「あぁ、ウルフウッドっていってな、いい奴だよ」

「答えろいうてるやろ!!」

ごすっ

ウルフウッドの拳骨が御見舞され、静まりかえっていた家の中にわずかな活気が
よみがえる。


「まず、魔術が云々とかは置いといたる、ワイが一番聞きたいのはな」

「此処が一体何処で、なんでワイとおんどれはあのジェネオラロックからこのお
とぎ話みたいな大都市に飛ばされたのかや、トンガリ」



「……そうか…はぁ…」
160 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/06(日) 20:39:41.34 ID:Zbc9vo6+0


もしかしたら彼自身がその問いの答えを知っているかもしれないという淡い期待
がまず打ち砕かれてしまった、無論ヴァッシュの持ちうる答えは一つ。

「悪いけどな…こっちもずっとそれが知りたかったところなんだ」

「づあああ、おんどれが原因ちゃうんかい!?」

「知らねーよ!!だって気づいたら俺アット学園都市だったもん!!て言うか何
!?そもそもお前は俺のこと知ってるわけ!?」

「知らんかったらわざわざニュースでおんどれ見つけて藁にもすがる思いで追い
かけて行くわけないやろうがっ!!」




「わー」
「ぎゃー」 ※省略されました




「はぁ…はぁ、一回整理しよう」

「賛成や…」

「喧嘩は何も生み出さないってことなんだよ」

盛り上がりすぎた。

161 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/06(日) 20:40:18.62 ID:Zbc9vo6+0


「そうだね…つまり俺は一回この街で君以外の知り合いを見てるんだ」

「それが、あの二人の姐ちゃんいうわけか」

「そう、もともとは保険屋さんだったはずの二人がカメラを持ってニュースを読
んでいた、さらに俺のことを一切憶えてないみたいだったよ」

「……憶えてる人間と、そうやない人間…」

「……?」

インデックスは二人の会話がほぼ理解できていないようだったが、ヴァッシュと
ウルフウッドが共通の状況に置かれていることは推し量れた。

自分の抱えていた闇と同じように彼もまた多くの秘密をまだ隠し持っている、今
はいいが、いずれは自分もヴァッシュの助けになれればとインデックスは考える。





「よしっ、わかった、考えてもなんもわからへんな、これ」

「そうだなっ!」

「っ!」ズルッ
162 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/06(日) 20:41:25.11 ID:Zbc9vo6+0


核心については何もつかめなかったとはいえ、この時点でウルフウッドは二つの
事実に辿り着いた、

まずはヴァッシュの右手に宿る常識では理解仕切れぬほどの力によって今の状況
があると言うのなら、元の世界に帰るための鍵もまたこの男の右腕にあるという
こと、

そして、

学園都市以前の最後の記憶、巨大な光に包まれたあの状況に置かれていたのは

けして自分だけではない、すなわち。



「…お前も分かってるはずやろ?トンガリ」

「何がだ?あと何だトンガリって」




「……ナイブズ」

「!……」


「あの時、遠巻きに眺めとったワイが此処におるっちゅうことは、あの男は確実
にこの世界の何処かにおるで」

「ウルフウッド……お前は一体…」



部屋の中が剣呑な空気に縛られる中、いつのまにか家主が自分の部屋に戻ってき
ていた。

「……」
163 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/06(日) 20:42:53.51 ID:Zbc9vo6+0


「お!やっと戻ってきたのか学生さん!君にもお礼を言わなきゃって思ってたんだ」


「……っ…」

「…?…どうした?」

うつむきがちに顔を下げる上条当麻、それはまるで少女を視界に入れることを無
意識に避ける様な仕草。


「…学生さんはやめてくんねーかな、ほら、この街は住人ほとんどが学生だから
さ」

「住人がみんな学生!?なんやそれ?若者ばっかりの街やと思っとったら」

「知らなかったのか? じゃあ、えー、たしか名前が…」

顔を上げ、精一杯に平常を装う表情をつくる、そう、この男にとっても自分は名
前も憶えていない程度の存在だ、

「上条、上条当麻…」

「カミジョー君か、助かったよ、“君が部屋を貸してくれたおかげで”インデッ
クスを助けられた」





「……いや、そんな」

実際にその程度の存在というだけあれれば、共に少女の手を握り、助けようと言
えたものを。



to be continuede……
164 : ◆DdirWW5ZSY [saga]:2011/11/06(日) 20:49:08.66 ID:Zbc9vo6+0
とりあえずsage進行だと、俺が書かなくなる危険性があるので
自分に対してのプレッシャーとしてageてみました、
あと>>138>>150は私ではないですよ、一応

次でようやくヴァッシュが銃を!? 乞うご期待。
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(埼玉県) [sage]:2011/11/06(日) 21:11:27.14 ID:LGlTCPzH0
おつであります
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/07(月) 01:40:54.99 ID:CSMgwi8D0

たまに、わざと2重投稿する荒しがいるんで、繰り返されるようなら対策考えた方がいいです。
ひどくなると投下中にまで割り込んで、2重投稿する奴もいるので。
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/11/07(月) 15:14:25.67 ID:eCkzL0Sc0

しかし鬼ィチャン登場フラグ…だと?
168 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/07(月) 23:39:06.73 ID:jIwSpck10
>>166

荒らしだったのか…正直読みにくくなったとかより、
あれ?レスがいっぱい…わーい
   ↓
なんじゃこら…

のガッカリ感のほうが>>1的にはクるものがあった
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/08(火) 10:22:53.63 ID:/Xc94VKIO
俺得スレ
楽しみに音楽聴きながら占拠された酒場の前で舞ってるぜ!
170 : ◆DdirWW5ZSY [saga]:2011/11/08(火) 22:24:35.83 ID:tLjeciaz0
Chapter5 前半  筆が進む進む
171 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/08(火) 22:25:57.32 ID:tLjeciaz0
「神裂、今戻った」

「…おかえりなさい、して、あの子は…?」

「無事だそうだ……君の方こそ、大丈夫なのか?」

「えぇ、もう時間もありません…足を止めている暇は…」

「そうだね…じゃあ、行こうか」

172 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/08(火) 22:26:42.41 ID:tLjeciaz0
「さて…」


「うん…」


「そうやなぁ…」



やることが無かった。

「まぁ、いずれ向こうの方から接触してくるはずなんだけど…」

インデックス以外のことについても問題は山積している、むしろまがいなりにも
一年間1人で逃げ延びてきたインデックスより、ヴァッシュとウルフウッドの方が
生活的な意味で危機に面している。

「ひとまず泊まる家がないとな、まぁ、この気候なら最悪野宿でもええんやけど
も…?」

チラッ

「そうだね、ほんっとうに最悪の時は野宿でもいいんだけど…か弱い女の子に一
泊の宿を提供してくれる…優しい学生さんはいないのかな〜」

チラッチラッ


「えぇ〜…」

露骨すぎるアイコンタクトであった、

「…いや、無理ならいいんだよ?本当に」



ゴスッ


「お!ん!ど!れは!何言ってけつかんねん!?本気で野宿するんかあぁ!?」

「いたいけな少女を本気で路上に寝かせる気なのかな!?」

「お前ら本当に聖職者か!?」

「もういいです…泊まっていってもらっても」

高度な心理戦の末に寝床を手に入れた三人。
173 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/08(火) 22:27:28.56 ID:tLjeciaz0


「とはいえずっと此処に泊めておくわけにはいかないんですけど」

「そりゃそうだ」

ともかく足元を固めることがヴァッシュ達にとって最初にすべきことだった、
魔術師と関係なく、生活できずに行き倒れなんてことになっては目も当てられな
い。

「とりあえず俺は学生だから、信用できる大人に相談してみたらいいんじゃねー
かな」

「例えば?」

「俺の担任の先生なら太鼓判押しとくぜ、あの人ならきっと力になってくれる」

上条当麻からの提案に顔を見合わせる三人、ヴァッシュとウルフウッドは状況が
状況だけに藁にもすがる思いだろうが予想通りインデックスは第三者を巻き込む
ことには否定的なようだった。

「大丈夫…なのかな…巻き込んじゃって」

「…借りられる手なら、借りよう、僕らはこの街について知らなさすぎる」

「そうやな、まずその先生にこの場所について細かく教えてもらうのが第一歩や
ろうな」

三人の指針はひとまずその上条当麻の担任とやらに協力を仰ぐことで一致した。


「それじゃ、善は急げだ今から訪ねてみっか」
174 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/08(火) 22:28:11.53 ID:tLjeciaz0

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



夏の長い日も傾き街は夕方になっていた、行き交う人の数も減り、昼間には目に
入らなかった学園都市のその巨大な姿が良く見えるようになっている。

「風車…でかいな」

「こうやって直接目の当たりにしてもとても信じられへん…魔術も、この街も」

「むー、魔術はあるもん!ウルフウッドも牧師様だから魔術が使えたんでしょ」

「シスターにも牧師にも見えないけどな」

会話しながら歩く三人、その少し前を行く上条当麻は少しの異変を感じていた。



「(妙に人が少ないな……まだそこまで遅い時間でもないのに)」


四人の間をやけに強いビル風が通り抜ける。


「……ウルフウッド」

「わかっとる」
175 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/08(火) 22:30:26.25 ID:tLjeciaz0

「…どうしたの?」

意味深なやり取りに不信感を抱くインデックスだったが普段通りの表情のヴァッ
シュに落ち着いた様子のウルフウッドを見て口をつぐむ、自分は少し心配しすぎ
なのだと自分に言い聞かせていた。


「……ちょっと用事思い出したわ、ワイはそれ済ましたらボウズの家に戻っとく、
やから先行っといてくれ」

「え…?」


突然明らかに怪しい理由を口にし、足を止めるウルフウッド、上条当麻とインデ
ックスは戸惑いを浮かべていたが、唯一ヴァッシュのみは全てを知っているかの
様に落ち着き払っている。



「…わかった……頼むぞ」

踵を返し、来た道を戻るウルフウッド、抱えた巨大な十字架を持つ手に少し力が
込められ、もう片方の手をすっと挙げる。


その瞬間、上条当麻の感じていたわずかな異変は、確信的な異常へと変わった。


「おかしいぞ……なんで、俺たち以外誰もいないんだ?」

「!!」
176 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/08(火) 22:31:34.74 ID:tLjeciaz0

いくら学園都市が学生の都市だとはいえ、これだけの規模の巨大なビル街に立っ
ているのがたった四人という絶対に自然には起こり得ない状況、その現状は一つ
の事実を明確に表している。

「これは…!人払いの術式なんだよ!近くに魔術師が来てる!」

インデックスは持ち前の知識で一瞬にして異常の原因を察知した
魔術師による襲撃、それはヴァッシュの考えるより遥かに早く起こってしまった。


「走れっ!その先生の家までインデックス連れて行くんだ!」

「……で、でも」

「そうだよヴァッシュ!相手が魔術師だったら私がいた方が力になれるから…」

「早くしろっ!」

インデックスと上条当麻、二人の目には種類の違う戸惑いが浮かんでいた。


「大丈夫、俺は死なない、相手も死なせない」

だが、そんな二人の言葉を断ち切るようにヴァッシュは懐から銃を抜く、
撃たずに済むなら、それに越したことはない、

だが世界はそこまで優しく作られてはいない。


「……わかった、いこ、とうま」

「お、おいっ…待てよ!」




「なに、無事に家に戻っとくさ」




「……」
177 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/08(火) 22:32:31.69 ID:tLjeciaz0

最終的に、巨大なビル街に立っているのがヴァッシュただ一人という異様な光景
となっていた、昼間までの府抜けた感覚ならばともかく今のヴァッシュには相手
の存在感が手に取る様にわかっている、あるいはわざと相手が自分にぶつけて来
ているからかも知れないが。



「周りの人に迷惑かけないようにっていうのなら感心するけど、どうせなら俺の
迷惑も考えて欲しいな、カンザキさん…だっけ」



ヴァッシュの背後数メートル先に一つの人影が現れた、
左右で丈の違うジーンズにシャツ、後ろで束ねた美しい長髪、そしてその全ての
ビジュアルにマッチしないひときわ目を引く長刀を腰に携えた魔術師。

「数時間ぶりですね、今代の禁書目録のパートナー」

「なんだそりゃ、俺はヴァッシュ、ヴァッシュ ザ スタンピードだ、以後よろしく」


魔術師は昼間みた時よりどことなくやつれた雰囲気のまま力なく口を開く、だが
その佇まいからは達人特有の確かな殺気が滲み出ている。
178 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/08(火) 22:33:14.05 ID:tLjeciaz0


「暴走(スタンピード)…ですか、まずあの子を救ってくれた事、礼を言いいます」

「……やっぱりあんたらもインデックスのことを…」



「それ以上は、言わないでください」

「なにを…!」

ジャッ!

という鈍い音と共にヴァッシュの足元のアスファルトが無残にも切り刻まれた、
都市のネオン光をわずかに反射することによってやっと極細のワイヤーが視認で
きる。




「私に……もう一つの名前を名乗らせないでいただきたい」
179 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/08(火) 22:34:50.11 ID:tLjeciaz0

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「数時間ぶりやな、魔術師(マジシャン)?」

「!…ずいぶん鼻の効くことだね、ミカエルの眼」

上条当麻のマンションの前、そこにはウルフウッドの読み通り先程の赤髪の魔術
師が待ち構えていた。


「……簡単なこっちゃ、おんどれはいっぺん 今二人の相手はキツい 言いおっ
た、つまりは準備さえあれば二人以上相手でも戦えるゆうことや、まぁ、どうせ
準備するなら目標が確実に帰ってくる場所に張るんが一番やからな」

「……流石は本職、といったところか」

全て正解だった、神裂が先に襲撃し、万が一取り逃したとしても自分がここで確
実にインデックスを捕らえる、付け焼刃とはいえ確実だと踏んでいた作戦は完全
に看破されている。

「だけど一つ想定外があるよ」

だが魔術師の顔にはいまだに絶対の余裕が宿っていた、何しろ相手は1人きり、魔
術を消す謎の学生も、赤いコートの男もいない。

「それは…僕の手際を侮ったことさ」

そう、全てのルーンカードは貼り終わり、詠唱も済んでいるのだ、

つまり、全ての準備はすでに整っている。


「魔女狩りの王(イノケンティウス)!!!」

180 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/08(火) 22:35:50.91 ID:tLjeciaz0

地面からドロドロに溶けた溶岩で出来たかの様な真紅の巨人が全身に炎を纏い現れた、

これが本気の、人を殺すための魔術。



「僕の名前を二つ教えといてやろう、ステイル=マグヌス、そして魔法名はFortis931だ」



バチッ

ウルフウッドが十字架を覆う布の留め具を外すと共に、その中身が露わになる、
中央に髑髏を模したエンブレム状の引き金をもつ十時型の巨大銃器、
それこそがウルフウッドの愛銃、最強の個人兵装“パニッシャー”

「ウルフウッドや…まぁ似たもの同士仲良うやろうや」





今夜、学園都市の二つの場所で魔術と銃弾が交差する。



to be continuede……
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(埼玉県) [sage]:2011/11/08(火) 22:37:18.55 ID:V6Xc034w0
いいねーいいねー盛り上がってきた!乙!
182 : ◆DdirWW5ZSY [saga]:2011/11/08(火) 22:41:32.45 ID:tLjeciaz0

はーい、戦闘自体は始まらないという、
ていうか自分的には筆が進んだつもりだが投下してみれば9レスしか無かった
ステイルの詠唱がめんどくさかったので既に唱え終わってることにした、なんてことはないよ

ていうか禁書とトライガン好きでSS速報に常駐してる奴何人居るんだろうね
個人的な興味だけど
183 :名無しNIPPER [sage]:2011/11/08(火) 22:43:37.67 ID:OuyWTFoDO
>>182
ここにいるぜ
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(埼玉県) [sage]:2011/11/08(火) 22:47:34.47 ID:V6Xc034w0
>>182
ここにもいるよ
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(愛知県) [sage]:2011/11/08(火) 22:58:11.40 ID:HDrdDwBBo
>>182
ノシ
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/08(火) 23:12:59.72 ID:6wf2FHaDO
>>182
ノシ

トライガンは読んだの大分前だけど今でも好きだ
187 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/08(火) 23:25:14.39 ID:tLjeciaz0
>>183 >>184 >>185 >>186

結果的にレス乞食みたいになってしまったが、

ありがとうございます

皆さんのおかげで最高の戦闘シーンが書けそうだ

188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/09(水) 01:47:33.68 ID:5/S2gOiDO

しかしトライガン世界の銃器、兵器はプラントの生成による超異常材質,装薬からなる
現実のモノと次元が違う初速(音速の数十倍以上)威力のモノだけど、こっちの世界じゃ補充できず持ってきた分しか無いからなぁ
節約しないとな
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/09(水) 01:48:01.63 ID:5/S2gOiDO

しかしトライガン世界の銃器、兵器はプラントの生成による超異常材質,装薬からなる
現実のモノと次元が違う初速(音速の数十倍以上)威力のモノだけど、こっちの世界じゃ補充できず持ってきた分しか無いからなぁ
節約しないとな
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/09(水) 01:48:37.36 ID:5/S2gOiDO

しかしトライガン世界の銃器、兵器はプラントの生成による超異常材質,装薬からなる
現実のモノと次元が違う初速(音速の数十倍以上)威力のモノだけど、こっちの世界じゃ補充できず持ってきた分しか無いからなぁ
節約しないとな
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/09(水) 02:02:35.00 ID:5/S2gOiDO
三重投稿サーセンorz
どうしてこうなった
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/09(水) 02:24:36.31 ID:YYxRaGRDO
ウルフウッドのロケランやクリムゾンネイルを見てると「弾切れ?なにそれ」って気分になる
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/09(水) 04:44:54.40 ID:aqF4qkDIO
乙なんだよ!
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/09(水) 06:56:42.49 ID:O1wBNCeU0
実は超SF設定なんて仕方ないなトライガン
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/09(水) 07:51:22.90 ID:Msl8dlFP0
乙ンダム
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/09(水) 10:37:33.11 ID:+3wRTGwAO
>>192
プラント技術で圧縮してるんだよ……多分
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/09(水) 20:34:38.79 ID:MchwxFow0
>>194
他にも設定であの星と回る5つの月は地球よりも遥かにデカいとされてるし
おまけに異常環境と高重力のせいで肉体能力がとんでもないのがモブキャラにすらいっぱいて
ニコラス含めたガンホー上位4人、青夏、プラント二人は>>137>>140の能力だし
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/09(水) 20:47:00.33 ID:zVV58/C90
>>192
ロケランもそうだけど、機関砲弾が秒間百発以上ぶっぱなしてるからな。外付け弾倉なしに
AA弾みたいの除いて無限リロード、コスモガンだし
んで>>190設定上な上に世界観最高レベルの個人兵器で機関砲弾一発一発がb単位の厚さのコンクリに人間大の風穴あけてロケランは数百m規模の爆発あげたりと馬鹿銃
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/09(水) 20:49:10.46 ID:sb+lbeQF0
オカマのネイルカノンなんてもう馬鹿銃の極み
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/09(水) 20:51:18.38 ID:YwXralKV0

ついにこの展開きたか。
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/09(水) 20:54:02.80 ID:ysqkHrOP0
詠唱はぶられたイノケンさん涙目
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/09(水) 20:57:21.87 ID:IAUaqDh/0
ポクムの自民十二号で一緒に天国まで飛んでこうピス。ゴウンゴウン
ボク様マダー
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/09(水) 21:11:41.72 ID:XqcMfvi00
もうボク様主役にしようぜ
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/09(水) 21:25:03.91 ID:+3wRTGwAO
>>199
プラント技術で最速の戦闘機をたたき落とすわ、秒間数十発余裕だわ、本人が場数慣れしてない天才キラーだわでヤバい
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/09(水) 21:38:39.65 ID:kpWJyCis0
こんな>>190弾速を眼前10cm以下から撃たれた後によける箱入りのレガが数m先から視認も出来ないもっとアホな弾速だからなぁネイルカノン
姉さんはそれを全方位から数十本撃っても発射音が一つしか聞こえない移動出来る速度とかな
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/09(水) 21:44:22.17 ID:A4mlgRrP0
しかもそれ拘束具未解除でww
チンカスくんはその未解除の姉さん並みの身体能力、戦闘力、ウルフウッドはリヴィオ並み、ラズロは本気姉さんに追従出来るほど
復活レガートはその本気姉さん以上、台風さんは不殺解くとレガートを一瞬でのす速度と身体能力。台風さんとほぼ同等のお兄チャン
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/09(水) 21:45:08.41 ID:A4mlgRrP0
ボク様とか偽ヴァッシュはこっち飛ばれてないの?
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/09(水) 21:47:28.89 ID:PUZqcMlJ0
久々にみたら内藤絵すげぇ、迫力パネェ、そして時々なにやってるわらかなくて
しばらく見てると分かる。
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/09(水) 21:49:12.35 ID:PUZqcMlJ0
>>204
でも全体からするとマトモな方の性格なんだぜ、あのオカ、お姉さん。
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/09(水) 21:54:36.41 ID:PN2OFKiF0
ジェネオラの時ならフンバリット人形も流れ着いてるな
あの謎の人形
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/09(水) 22:08:49.46 ID:nFywpQdp0
赤色はレアですよ!
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関西地方) [sage]:2011/11/09(水) 22:42:52.81 ID:jCphLkO6o
>>208
雷泥戦とか気に入ってたな

アニメは見なかった事にした
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/10(木) 09:35:22.67 ID:Zu63oSPl0
ウルフウッドが一緒にいるときの安心感がヤバい
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/10(木) 15:25:11.91 ID:prKuesRIO
武装云々よりもニコ兄の代謝促進剤こそ替えがきかなくて場合によっちゃヤバかも
仮に学園都市驚異の科学力だろうと即解析・生産は無理だろうし
少しはミカエル仕込みの全力出して殺りに行かないと一時的にでも戦線離脱しそう
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/10(木) 15:53:24.08 ID:fsEjvJWAO
>>214
ただあれは使えば使うほど寿命縮めるからなぁ、マトモに生きていたいなら五本ある内の四本しか使えない問題点もある
ある分使い切れないから問題ないだろう
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/10(木) 15:56:55.70 ID:dqjk+P/DO
>>198
重量は大の大人5,6人でようやく持て,重量は数百キロ。
ウルフウッドはそれをオカマと同等のラズロの反応超えて振り回せるから音速の数百倍。
まあラズロもこれ並だけど。
ホント肉体も武装も上位陣はチートすぎ
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/10(木) 15:58:57.60 ID:dqjk+P/DO
>>212
あの巨大雷泥はクソワラタwwww
ひどすぎるよあれ
218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/10(木) 16:10:00.22 ID:dqjk+P/DO
4巻のミッドバレイのウルトラショックの一枚絵もやばい
迫力かっこいい
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/10(木) 23:23:00.55 ID:TFvyKFEP0
>>216
ニコラスはヴァッシュ庇って>>190以上の弾速と20mm対物弾が涙目の貫通、破壊をする
二重牙の弾丸とそれ以上のマスターの銃の砲弾で全身を鉢の巣にされても、
数百mの爆発をするロケット×3の融合波の直撃受けても意識が残るありえなすぎるタフだからなぁ
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/10(木) 23:24:41.63 ID:TFvyKFEP0
序盤ガンホの雷泥すらそんなとんでも弾速の機関銃掃射を1m前後から全て叩き落す反応し、
パペットすら不意打ちで放たれた銃弾を人形で庇いつつ掴む。ニコ兄含めた上位の反応とか身体レベルがいろいろ狂ってるww
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/10(木) 23:26:24.21 ID:RnselWqZ0
>>214
あっちの世界のデフォでチート初速と威力の銃器兵器もそうだけど、プラントないと薬作れないのがねぇ
砂星じゃ生活レベルは低いけど戦闘兵器面は異常特化してたからな。雑魚ですら一個師団の火力のサイボーグとかいるし
ミカ眼はその中でも特に最悪のヤバさなんだし
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/10(木) 23:27:26.56 ID:TFvyKFEP0
アニメ雷泥の大失態

家よりデカイ
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/10(木) 23:31:15.61 ID:TFvyKFEP0
味方殺しの雷泥
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/10(木) 23:32:11.93 ID:Rhw9Hnrm0
銃使うの馬鹿にしてたぽいの、兵器隠し銃を使うアニメ雷泥
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/10(木) 23:35:00.23 ID:dqjk+P/DO
ビビッてバテレンの秘術とか言って背中見せて逃亡
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/10(木) 23:38:00.24 ID:QtLmyOti0
なんかアニメは作風もそうだけど、雷泥とかカッコわるい顔だった
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/10(木) 23:39:51.99 ID:Zwuy3YLZ0
CV.大塚明夫が止めだったなぁ雷泥。無駄遣い。
マイン様がベジータ様だったのは良かった。ピッタリだ
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/10(木) 23:41:04.17 ID:cGRCgIyb0
フィフスムーンの直後だからマイン様生きてるね。
こっちの世界での活躍を頼む
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/11(金) 00:47:15.26 ID:GytXnIfIO
作品が違うから安易に比べちゃ駄目なのは分かってるけどそれでもトライガン側の方が下手なレベル5よりもよっぽど有害に思えてきた(周囲への影響的に考えて)
実際ガンホーと本気でぶつかったらどれだけヴァッシュが努力しても辺り一面例え抜きで更地になりそうな気がする
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/11(金) 01:16:00.81 ID:mBEB/hjy0
>>228
どっちにしろ生きていたろマイン
アニメじゃ一瞬活躍しただけだけど
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/11(金) 01:21:44.42 ID:+xeLwy+T0
ほりかわりょうのヘタれ演技とマイン様のキャラがグッドすぎた。
死角がない(笑)
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/11(金) 01:47:27.27 ID:ohhhTwGg0
あの場にいた誰かが飛ばされたと想像して、それはマイン様と思いたい
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/11(金) 02:35:38.85 ID:+xeLwy+T0
>>212
いまだによく分からないあの雷泥絵とモネヴ戦のラストの絵が
234 : ◆DdirWW5ZSY [saga]:2011/11/11(金) 22:48:45.88 ID:/x5lanBt0
Chapter5 中盤 投下しまっす
235 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/11(金) 22:49:34.21 ID:/x5lanBt0

神裂火織は焦っていた、想定外の事態が現在進行形で起こっているからだ、

確かに相手は素性の知れない男だが自分は聖人、1人で核兵器にも相当するほどの戦力としてカウントされるある意味で人ならざる人間、

だが当たらない

そんな自分が放つ攻撃の全てが躱され、いなされ続けている、
致命傷は避けているとはいえ完全に当てるつもりでワイヤーを振るっている、一瞬何らかの魔術を使っている可能性も考えたがそういった様子もない。

そしてより一層不自然なのが相手が右手に持つ銃をまだ一発たりとも撃っていないことだった。

「右手のそれはお飾りかなにかですか?似合いませんよっ!」

ワイヤーを放つ、だが避けられる、何度繰り返しても不可解だ、変幻自在の鋼糸の動きはそれを振るう腕の形から読み取れるほど単純なものではない。

「自覚はしてるさっ!だけどそれはお互い様だ、可愛い女の子に刀は似合わない…っと!」

「くっ!」

調子を狂わされる、

「っ!!」

ワイヤーを放つ、やはり避けられる、だが聖人の目は的確に相手の挙動を観察していた、確かに相手は自分が攻撃を行ってから何かを見て避けている、
だがあり得ない、超高速で放たれる極細の鋼糸を肉眼で見切るなど。

「何度やっても無駄だよ」

「!?」
236 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/11(金) 22:51:13.28 ID:/x5lanBt0


「ここはずいぶん明るいからね、昼間なら危なかったけど…さっ!」

その瞬間、神裂は己の放ったワイヤーが人工的な都市の光を反射して輝く様を見る。

理解した、相手は鋼糸の光沢によるわずかな反射光を見て全ての攻撃を避けていたのだ、とっくに日は沈み、周りはビルやネオン看板の明かりで満たされている、数多の光源から注がれる光は夜闇の中でワイヤーを全方位から照らし出す。

「……!」

だが、常人の動体視力で可能な所業ではないことは明らかだ、事実、聖人の神裂火織でさえそんな事をしていたなどとは考えもしなかったのだから。

相手は一般人などではない、それどころか、存分に戦い慣れた手練れだ。


「……こんな戦い、無意味だって分かってるんじゃないのか?もうやめてくれ…」

「…っ」

そして同時に相手の思惑をも理解できた、要は配慮されていたのだ、

言葉によって説得するために相手は一発の銃弾も放たなかった。



だが、そんな提案に乗るわけにはいかない。


自分の行いを省みればこそ。
237 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/11(金) 22:51:58.98 ID:/x5lanBt0

「私は……貴方の実力を大幅に過小評価していたようですね、七天七刀を完全に見切るとは…何者なのですか?貴方は」

「俺は…ただのガンマンだよ」


「なるほど、それでは私も…ただの一人の聖人として貴方に戦いを挑むとしましょう」

手心はもう加えない、360度全方位から七本のワイヤーを迫らせる、
これこそが七閃、一瞬にして七度殺すという文字通り必殺の一撃。

放つっ!


「……っ!」




ッドンッ!!





その瞬間、ヴァッシュの銃が火を吹き、神裂火織の手から鋼糸の抵抗感が弱まる。


「(……!………そんな…まさかっ)」

全方位から迫る七閃を、避けられる訳がない攻撃を目の前の男は避けてのけた。
238 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/11(金) 22:53:13.90 ID:/x5lanBt0
「あっぶねぇっ!…装弾数たりねーよ」

やけに軽く、短くなった六本の鋼糸、まさか、


発砲音はただ一回、音が途切れる間もなく全弾を撃ち切り6本のワイヤーを撃ち切ったというのだろうか。



「あ…ありえないっ!!まさか…貴方も私と同じ…」
「いや、言ったはずだ」



「俺はただのガンマンだってな」

239 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/11(金) 22:54:02.96 ID:/x5lanBt0

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ウルフウッドは参っていた、もちろん相手の切り札だと思われる焔の巨人にだ。

「喰らいさらせっ!」

バババババッ

巨人にパニッシャーの強力無比な銃撃を撃ち込むが、一向にダメージのようなものを受けている様子はない、さらにその隙をつくように巨人の拳がウルフウッドに迫る、間一髪でそれを避けるが、近づくだけで思わず怖気づくほどの高温を感じる、一撃が致命傷になるだろう。

「余所見はいけないんじゃないか?」

「くっ!」

間一髪で炎剣を避ける

魔術師ステイル=マグヌスも巨人と同時にウルフウッドを攻めているのだ、
このままではいずれ焼死体になってしまう。

「それなら…っ!おんどれやっ!!」

パァンッ!

今度は懐のハンドガンでステイル本体を狙うウルフウッド、この手の手合は本体を潰してナンボである、だが相手も当然そこまで愚かではない。

ガァァアッ

「ふっ、無駄なことを」

巨人が即座に腕を伸ばし盾となり術者を守った、おそらく術者の身体を優先的に守ろうとするのだろう、そのうえ相変わらず巨人にダメージは全く無いようだ。
240 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/11(金) 22:55:11.79 ID:/x5lanBt0
「拍子抜けだな、最強の殺人集団と聞いていたが、この程度なのかい?」

「あんまり…その名前を出してくれるなっ!!」

地面を蹴り一気にステイルへ接近する、
それとほぼ同時に巨人が行くてを阻もうと腕を振るう、だが、

「遅いっ!」

俊敏なフットワークでその一撃を軽々避ける、一方の巨人は空振ったことでバランスを崩している、
ウルフウッドにとっては絶好のチャンスであり、ステイルには絶体絶命だ、

パァンッ!

再度ハンドガンが銃弾を放つ、一応殺さないように急所は避け肩口を狙っているが
この距離ならばたとえウルフウッド本人でも避けることはかなわないだろう。



ズッ



直撃、だが相手は


表情一つ変えてはない。



「吸血鬼殺しの…」
「!?」

「紅十字!!」
241 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/11(金) 22:56:08.38 ID:/x5lanBt0

何故か背後から十字炎が迫ってきている、避けきれない距離だ、咄嗟にウルフウッドはパニッシャーを振りどうにか炎を退ける。

「蜃気楼…っ 何でもありか!」

「熟練の魔術師ならばね、応用が効くものさ」

先程まで目にしていた位置にいたのはステイルの魔術によって投影された蜃気楼、
炎を操る魔術の応用型、ということなのだろう。



「まさか、もう万策尽きたか? 」

煙草をくわえ火をつける魔術師、流石に煙草の火はライターでつけるようだ。

完全勝利を過信している状態、
戦闘のプロであればあるいは今の状況の危険性を自覚できていたのかもしれないが。


「しゃあない……あんまり人の多い場所で派手やらかしとうなかったが」


魔術師に向けられるは、科学が作り出す絶大の火器(ほのお)。


「死ぬなよ?おんどれには聞かなあかんことが山とあるんやからな」


242 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/11(金) 22:57:21.50 ID:/x5lanBt0

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「ハァハァ…先生!小萌先生!俺です!上条です!!」

ドンドンッ!

夕飯時の木造二階建てアパートに乱暴なノック音がこだまする。
ヴァッシュが魔術師を引き受けている以上そこまで急ぐ必要は無いはずだが、
それ以前に一度目の当たりにした魔術師という人種の危険性から自然、心から余裕が失われる。

「はいはいっ!今出ますからそんなにドアを叩かないでくださーい!!」

部屋から目測では小学校四年生程度、赤いランドセルが似合いそうな女性が顔を出す。
月詠小萌という人物を知らない人間ならば確実にその教師の娘か何かだろう、と判断するだろうが
彼女はれっきとした成人女性で上条当麻の担任教師、月詠小萌本人だ。

「こんな時間にどうしたんですか?上条ちゃ…あれ?そっちの子は誰です?」

「いろいろあってコイツ追われてるんです!匿ってもらっていいですか!?いいですね!?」

「わ!わ!ちょっと待ってくだ…部屋が、片付けさせてくださーい!!」

インデックスを連れて強引に部屋に入り込む上条、
部屋の中は煙草の吸い殻とビールの空き缶でさながら人外魔境だが
今はそんなことを気にしている場合ではなかった。

「ちょっと!上条ちゃん!まずは一体何があったのかを…ていうかその子は誰なんですかー!?」

「えー…っと、こいつは…知り合いの妹的存在…というか、なんというか…」
243 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/11(金) 22:59:04.85 ID:/x5lanBt0


「……」

じっとりとした目で上条を睨みつける小萌、上条のクラスメイトの一人ならば何らかの性的興奮を
得たかもしれないがあいにく彼は性癖的にもノーマルな人間である。

「……先生にも…言えないことなんですね?」

「…すんません」

「ごめんなさいなんだよ…詳しい事は話せないけど相談に乗ってあげて欲しい人がいるの、
虫のいい話だってことは分かってるけど…」

うつむきながら話す少女、彼女の持つ独特の空気は人間の赤子のように
相手の警戒心をほどくものだった。



「……先生を頼ってきてくれた時点で、あなたももう先生の生徒さんなのですよ
、だから、話せるところまででいいですから教えてくれますか?」

「……うん、わかったんだよ………ありがとう」

「…俺からも、ありがとうございます」



上条当麻の見たて通り

月詠小萌もまた他者を救うために自らをかえりみずき行動する事のできる人物だった。

自分とは違う

全てを壊して、台無しにしてしまう事しか出来ない自分とは。



to be continuede……
244 : ◆DdirWW5ZSY [saga]:2011/11/11(金) 23:02:33.91 ID:/x5lanBt0
はい、五はまさかの三編構成 

T.Mの魔弾を聞きながらハイテンションで書き上げました

肘からミサイルは憧れるよね
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/12(土) 00:51:12.77 ID:vQiKOCNDO
おつです

ステイル「熱膨張って知ってるか?」
とか言わないよね?
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/13(日) 14:47:18.15 ID:s6yZAyrAO


ウルフさんパニッシャー持たない方が戦えそうだな
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(不明なsoftbank) [sage]:2011/11/13(日) 16:39:47.27 ID:BMnoBSYW0
まぁ街中であんなもんぶっ放せんわな
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(静岡県) [sage]:2011/11/13(日) 16:44:24.72 ID:CDkeTvI6o
乙!
デフォで聖人並みの身体能力だし体ひとつでなんとか・・・・
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/13(日) 17:44:27.86 ID:KhFvyFZ70
つうか昼間だろうが関係ないね
数キロ先のナイブズの糸より遥かに細い触手を視認し撃ち切ってるんだし
ナイブズは数千キロ上空に浮かぶ人口衛星視認してバラバラにしてるだからな
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/13(日) 17:50:08.18 ID:mIsdiviE0
まあトライガン勢の上位面子を原作基準まんまの戦闘速度や身体能力を再現したら>>205-206>>216で聖人も比較にならんもんで物語なりたたねぇし
クロスは得てしてそういうもの
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/13(日) 17:50:40.49 ID:CRYPcugZ0
撲殺牧師ウルフちゃん
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/13(日) 17:52:31.16 ID:arkBeGs30
で、ボク様とか登場マダー
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/13(日) 17:53:47.79 ID:hp/cWJ6t0
ウフフちゃんに見えた。ウフフウッド
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/13(日) 17:57:40.16 ID:9sP1vxMDO

肘からよりおっぱいミサイルがいい
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/13(日) 17:59:07.79 ID:xsxfO+fN0
>>253
眼科いってこいwwwwww
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/13(日) 18:02:09.63 ID:lT8r7uHe0
>>233
俺もわからん、キンッって効果音とか
モネヴの時になんか盾にしてていまいち何やってるか分かんない。
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/13(日) 18:04:08.79 ID:lT8r7uHe0
アワーズの誤記でウルフッドってのならあったのが覚えてる。
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/13(日) 18:13:20.13 ID:7XaYFH910
一瞬何が違うのか考え込んでしまった
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/13(日) 18:35:05.26 ID:2IGsy1k60
ウル足って・・・
260 : ◆DdirWW5ZSY :2011/11/13(日) 19:18:50.54 ID:seStlgdc0
Chapter5 後半 投下開始 ウル足大活躍
261 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/13(日) 19:20:18.84 ID:seStlgdc0

「なるほど…つまりは記憶喪失で何時の間にか学園都市にいた二人のお兄さんとその友達の人がこれからどうするべきかってことですか…」

「う、うん、そういうことかも」

ウルフウッドはともかくヴァッシュは都合上インデックスの兄だということにしておいた、
咄嗟に上条の口から出た嘘に起因するのだが。

「………」

「う、疑ってます?」

「いいえ…うーん、そういったことならやっぱり身元を調べてもらって生まれ故郷に帰るのが一番だと思うのですよー」

妥当な提案だがヴァッシュ達の故郷となるとおいそれと帰れる場所ではない、
インデックス達はその事情を知らないが帰るに帰れない事情があるのだろうということは何となく察していた。

「それでも帰れる見たてがつくまでは此処で生活せざるを得ない訳ですし…」

「そうですねぇ…IDも無い…となるとそもそもどうやって中に入ったのかも気にはなるんですけど」

「うっ」

確かにあの三人はIDを持たない、いわば不法侵入者だ。
外界より数十年分進んだ科学力を持ち、極めて排他的な特性を持つ学園都市は
IDを発行されなければ外部から内部へ入り込むことは通常不可能である。
実際に会って話をすれば彼らが悪人でないということはよくわかるが、
まっとうな手段を使って内部へ入り込んだとは到底思えなかった。
262 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/13(日) 19:21:02.51 ID:seStlgdc0
「……大丈夫ですよ、先生は自分の生徒のお兄さんを問答無用で警備員に突き出すほど薄情じゃありません」

「…っ ありがとうなんだよ!」

「だとすればあとは、あいつらが大丈夫かどうか…だよな」

「大丈夫」


彼が遭遇した赤髪の魔術師は邪魔者を殺すことになんの躊躇も無いようだった、
インデックスも魔術師の危険性は十分知っているはず、しかし、
それでも彼女ははっきりと言い切って見せた、ヴァッシュは無事に帰ってくると。


「私ね…とうまの家でヴァッシュの腕を触ったの」

「?」



「分厚いコートの上からでもわかったんだよ、とっても力強くて…それ以上に傷だらけだった」


少女の表情は安らかに悲しみをおびていた。
263 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/13(日) 19:22:43.99 ID:seStlgdc0

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「もう…やめろ、無駄なんだ!こんな戦いは」


ビル街に佇む二人、神裂はヴァッシュが見せた超人的速射に明らかに怯んでいる。


「黙りなさいっ…何を言っているのですか…? 私はあの子を回収するために来た魔術師ですよ!?」



ほんのさっきまでは考えもしなかった可能性、“相手が自分より強いかもしれない”
それは聖人である彼女にとって生まれてから両手の指で足りる程度の回数しか感じた
ことがない感情だった。

ヴァッシュはようやく攻撃をやめた神裂に語りかける、
人を撃つのは嫌だからというだけではなかった。

「あんたは…悪人じゃない」

「うるさい…」

「そうだろ!?最初に会った時も力尽くでやろうとすればもっと早く捕まえれたはずだ」

「黙れ…黙れっ…!」



「インデックスを…救いたいんじゃないのか!?」」


ヴァッシュは救いたかった、自分がその名を呼ぶ度に、相手が彼女のことを口に出す度に、
険しい顔つきのまま今にも泣きそうな目をしている眼前の一人の少女を。
264 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/13(日) 19:24:29.38 ID:seStlgdc0

「……っ…うる…っせぇんだよ!!!このド素人が!!貴方に何が解るっていうんですか!?救いたくても救えない…その気持ちが貴方にわかるとでも!?」

「わかるさ」

「…っ!」


「何の事情があるのかはわからないけど、本当は助けたくて、救いたくてしょうがないのに…自分を押し殺して…その相手にも憎まれて…」

「そんなの……悲しすぎるじゃないか…!」


「だから…教えてくれ!僕が知らないことを、彼女を狙う理由を!」






激昂していた聖人の顔から、す と表情が失せる。

そこにあるのは安心感からくる脱力、ではない。

むしろ、聖人の四肢には今までにない程の力が込められる。



「貴方の抜き打ちの速度、精密性、恐るべきものです……敬意を評して私も…最高のものをお見せします」

ゆっくりと。

「もう…終わりにしましょう」

刀に手がかけられる。


「唯閃」
265 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/13(日) 19:26:19.71 ID:seStlgdc0

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


圧倒的爆風、にも関わらず周囲の住人が一人も出てこないのは恐らくなんらかの魔術によるものだろう。

「……」

無言で懐の煙草に手を伸ばす、だがそれを咥える前に異常に気が付いた。


「……ドロドロの癖に…えらい丈夫やな」

赤く光っていたのは爆発の残り火ではない、魔女狩りの王は未だ無傷のまま主を守っていた。



「随分と無茶苦茶な銃だね、だが、そんな火器ではイノケンティウスは殺せない」

「……」

「流石に今のが最後か、命乞いをしても無駄だよ、どうせ君も…ろくな世の渡り方してないだろう?」


ウルフウッドは立ち尽くす、だが万策尽きたのではない。

ミカエルの眼は殺しのプロフェッショナルだ、彼らは相手の全ての動きを見切り即座に傾向と対策を見つけ出す。

その中にあって頭一つ抜きん出た闘争センスをもつ戦闘の申し子、それがウルフウッド。

彼は今まで見た全ての情報を使い、最適な解法を導き出していた。
266 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/13(日) 19:28:01.41 ID:seStlgdc0


「いーや、次で…最後や」

「まだ仕掛けがあるのか?随分と主を冒涜した十字架だ」


「それに関しては同感やが…ちっと違うな、えぇか?」

ぐ と力を込め標的を静かに見据える、ウルフウッドの目には勝利が見えていた。



「プロは一発芸には頼らへん」


−バシュッ!

その瞬間、十字架の上部にあたる箇所から再びロケット弾が打ち出される。

「(何を考えている?無駄だとわかっているだろうに)」

巨人は再びステイルを覆い隠すように爆風に備えている、だが。



「(狙いはおどれとちゃう…下や)」

やや下向きに発射された弾は舗装された地面に突き刺さった。
267 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/13(日) 19:29:08.15 ID:seStlgdc0
一度目の爆発の様子はウルフウッドの目に克明に残されていた、

確かに、改めて考えれば発射から爆発までのタイミングは異様なまでに“早かった”。

何のことはない、巨人の放つ超高熱に当てられ、
直撃する遥か以前に爆発してしまい衝撃が上手く伝わらなかったのだ。

そうなればいくら銃で撃とうともダメージが無いことも理解できる、
直弾と同時に弾頭が溶解してしまえば貫けるものも貫けまい。


ッドンッッ!!

「(ぐっ爆煙が…砂埃とっ目くらましか!!)」

噴煙に覆われ、空気の歪みを利用する蜃気楼も出すことが出来ない。

来るっ、わかっていようとも夜闇もあいまり周囲の見通しは絶望的だ、
真っ黒いスーツの牧師をこの中で即座に見つけられるほどの実戦経験はステイルには無かった。




「(くそっっ!!だが見通しの悪さは相手も)…」

「よう」

ガチャ

こめかみに殺意が突きつけられる。


「煙草は…勝ってから吸うべきやったな、ガキが」

268 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/13(日) 19:30:21.88 ID:seStlgdc0


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



絶対的な集中により聖人の周りの世界は止まって見えていた。


右腕に力を込め、弾丸を打ち込むかの様に鞘から刀身を開放する。



事実、神速を謳う唯閃の初速は弾丸を超えている、あとは逆に全身の力を抜き、流れに身を任せるのみ。



刹那は極限まで引き伸ばされ、哀れな相手の動きは。



動きは。


「(馬鹿な…!)」



動きは、速かった。
269 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/13(日) 19:31:30.35 ID:seStlgdc0



懐に手を伸ばし、グリップを握り、照準を合わせる。


もはや芸術の域といっても差し支えは無い完璧な抜き撃ちの挙動。



明らかな後出しにも関わらず、ヴァッシュの右腕はは唯閃の速度を……今、追い越し、



銃口が聖人の頭へと運ばれる。




「(…………死ぬ)」


走馬灯を見る余暇すら与えられそうにない一瞬の間に、彼女は己の死を知った。


いずれは訪れるその瞬間、覚悟はしている、つもりではあった、


だが。
270 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/13(日) 19:32:21.75 ID:seStlgdc0




「(………嗚々…インデックス)」





「(……無念です…)」



ズドン





こめかみに痛みをわずかに感じる。
271 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/13(日) 19:33:12.76 ID:seStlgdc0



集中は途切れ、元の時間感覚を取り戻しつつあるなかでは。


聖人は鞘から放たれた唯閃を軽く逸らすことが精一杯だった。


「……っ!!」







「……何故っ!!何故外したのです!!!」


瞬時に全身の魔力を抑え、軌道を反らしたとはいえ、
外し切れなかった唯閃はヴァッシュの腹則を切り裂きそこには血が滲んでいる

自分の頭を貫通するはずだった弾丸はこめかみを掠めたのみだった。
272 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/13(日) 19:34:04.30 ID:seStlgdc0

「いっつ…がっあっ!」

「っ!動かないでくださいっ、今傷を…」


「ほら…な?」

「何を…」


「やっぱり君は、良い人じゃないか…ぐっ!」


その時神裂は無意識のうちに目の前の男を救おうとしていたのだ。


傷の手当をしようとコートを脱がせ見えたその男の躯には
おびただしい数の古傷があった。


「……!!」
273 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/13(日) 19:35:10.24 ID:seStlgdc0

きっとこの男は今までもこうやって自分の命を軽々と扱って、
人を救おうとしてきたのだろう。

天賦の才能?超人的肉体? そんな程度のものであの神がかり的な早撃ちが完成する訳も無い。

ただ人を救うためだけに、 血みどろの研鑽を積んできた証なのだろう。

「貴方は……っ!」

たった数度の絶望で脚を止めて、聞こえの良い言い訳を並べて逃げて。

「……あ…ッ!」

何が“救われぬものに救いの手を”だ。



「ごめん……なざいっ…!私は……ただ…あの子を…あの子を……助けたかった…」


もしかしたら今度こそ、そんな馬鹿な事をつい考えさせられる何かを、

この男は持っていた。


「今からでも…遅くなんてない…!」

「……!」



「でも…無事に戻るって約束…破っちまったな…いってぇ…」

274 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/13(日) 19:36:15.23 ID:seStlgdc0


「大丈夫です…聖人の名にかけて……貴方を死なせはしません……!」

ぐ、とヴァッシュを掴み、そのまま自分の背に担ぎ上げる神裂。


「Salvere000」

開放された聖痕により爆発的身体能力を発揮し、聖人が弾丸のように走り出す

「ちょ…は、速…ぐええっ!!」


275 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/13(日) 19:38:07.03 ID:seStlgdc0



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「…教えてもらうで、あの嬢ちゃんのこと、そして、ミカエルの眼について知ってること全部や」

「素直に答えると思うのかい?」


巨人がゆっくりとその姿を消した、彼が自発的に術を解いた、ということは口とは裏腹に敗北は自覚している様だ。

「言っておくが、ワイも実際碌な世渡りしとらへん、口割らせる手段なんぞいくらでも知っとる」


「……馬鹿が、拷問、審問は“僕たち”の十八番だ、時間の無駄だ、殺せよ」

戦いの前に見せたのと同じ、余裕を滲ませた表情の裏にはたしかな絶望が感じられる。




「そか、その程度のもんか、おどれは」

「……何?」

「所詮おんどれが守りたいもんも、あっさり切り捨てれるわけか」

「黙れ…」



「ワイは死なへん、絶対に守らなアカんものがあるからや、死んだら蝿の一匹も守られへん」
276 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/13(日) 19:40:09.70 ID:seStlgdc0


「……」

目を閉じるステイル、抗っているのだろう、自分の本心に。

「……最後に聞くぞ、喋るか、死ぬか」


「……っ」


「嬢ちゃん助けたいんか!死にたいんか!」




「君達如きに…あれは救えない…」

「……ふっ、 わからんで?なにせこっちには規格外の鬼札(ジョーカー)が一枚…ないし」

「もう一枚あるからな」



「……!、あの右手…」


その時、そこに超高速の何かが飛来した。

ーザッ!





「ステイルッ!」

「…なにもんや!!」

「か、神裂!?」

「トンガリっ…おんどれはまた何をやっとんねん!!」

「ひっでぇ…な……怪我人だぞ…う…吐きそう…」
277 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/13(日) 19:41:48.17 ID:seStlgdc0

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「……」

インデックスが小萌と話している間、自分は外の空気を浴びていた。

自分は魔術でも、戦いでも、精神的にも彼女の助けにはなれないから。

「何で…俺がここに居るんだろうな…」

何も出来ないくせに。

す と自分の右手を見下げる、全てを壊すことしか出来ない役立たずの右手を。




その時。

「か、上条ちゃん!大変なのですよ!!上条ちゃん!!」

「せ、先生!?どうしたんですか!?」

「シスターちゃんが…シスターちゃんが…!!」



to be continuede…

278 : ◆DdirWW5ZSY [saga]:2011/11/13(日) 19:48:04.39 ID:seStlgdc0
自分なりに頑張って書いたけど、所詮俺の表現力じゃ全然伝わらんのだろうなぁ…
いっそ絵が描ければ漫画にしたいくらい

ていうか場面転換が多すぎて読みにくっ


まぁ愚痴はここまでで、

このSS自体は漫画版を主軸に置いていますので雷泥がおっきかったり
兄貴が普通に銃撃ってたり、むしろその銃自体が兄貴製だったり
ザジが一回殺されて普通に死んだり、ウルフウッドが改造人間じゃなかったりはしません
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(四国) [sage]:2011/11/13(日) 19:51:26.32 ID:sBAbLL0AO
面白い
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/13(日) 19:56:32.23 ID:P+c+0qWp0
>>245
問題ないww
ラズロがやった数百m×3の爆発と三千度どころじゃない炎を上げる焼夷能力のパニッシャーのロケット融合波を防いでも
パニッシャーなにも問題ないから膨張なんざしないwwというか溶けない
281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/13(日) 19:57:01.60 ID:4IZvXUjW0
はい乙。乙乙
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/13(日) 20:00:01.56 ID:/STiWT0x0
そこらのビルやら家やらが粉々なってるだろ。こんなパニッシャー撃ったら
283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/13(日) 20:02:16.27 ID:9sP1vxMDO
砂星製の弾丸なくなっちゃう。
プラントないから製造できないのに
284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/13(日) 20:03:00.93 ID:7XQ0OCeO0
ウフフ乙
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/13(日) 20:05:35.01 ID:qb4yp3CQ0
>兄貴が普通に銃撃ってたり
やめて!黒歴史やめて!!
286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/13(日) 20:09:16.78 ID:3r91iYvw0
あんまし家よりおおきな雷泥いじめんなし
287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/13(日) 20:20:45.97 ID:2IGsy1k60
ホッパードが快楽者だったりする曰くダメなアニメ版
288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(大阪府) [sage]:2011/11/13(日) 21:18:28.77 ID:seStlgdc0
アニメ開始した時はマキシマム始まったとこだったからなぁ
ホッパードなんか見た目一番ヤバそうだったからあぁなったんだろ

実際はガンホの中で一番いいやつだと思うけど(あくまでガンホの中で)

だからキャラ違いはいいとしても雷泥の作画は弁護しきれん…
彗星突ショボすぎww
289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/13(日) 21:20:54.22 ID:il/HI9eIO
A
乙!
楽しくよんでるぜえ
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/13(日) 21:40:13.57 ID:/vi4Txuz0
>>282
事後処理やべぇww
そこらの大型建築物の残骸だらけになってるな確実に
原作より遥かに劣るアニメ基準の映画のパニッシャーでも横に一回の掃射で銃弾がコンクリのでかい屋敷貫通して粉々に崩壊してるしなぁ
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/13(日) 21:41:27.42 ID:OeUwd2cB0
>>288
アニメのホッパード、ただのガイキチだしな
雷泥ショボいし顔とがってるし
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/13(日) 21:42:50.39 ID:dpQPyrWX0
なにがヒドいって背中を向けて必死に走って逃げる大塚雷泥
293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/13(日) 21:44:43.90 ID:9sP1vxMDO
信じられないけど向こうじゃ名作扱いなんだぜアニメ
294 :名無しNIPPER [sage]:2011/11/13(日) 21:51:10.95 ID:XXJtFjeDO
>>288
実際ヴァッシュが絡まなければ一番まともじゃね?
初登場時の憲兵隊にも逃げろって勧告してたし
295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/13(日) 22:20:42.59 ID:eJEKLXQIO
>>293
ホントなんでなんだろうな?
俺はワクワクしながらアニメ版見て悔し涙が出たのに…
296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/13(日) 23:41:37.50 ID:Op+o8zYn0
わざとかわさなかったか唯閃
本来のヴァッシュの反応と身体速度あったらあまりにも余裕だしなぁ
297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/13(日) 23:42:52.84 ID:rBxIciCu0
元よりあるとんでもない人外の肉体と150年の研鑽だもんなあ
いつだって臆病だけど
298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/13(日) 23:43:53.89 ID:QlRHbLyi0
>>288
なによりも銃つかっちゃう雷泥って
299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/13(日) 23:45:00.65 ID:FCHlJoME0
>>294
ガントレットはヴァッシュ絡まなければ唯一マトモなやつ
300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/13(日) 23:46:25.80 ID:FCHlJoME0
原作と比べちゃアレだが、まあアニメもあれでいい
色々と受け付けづらいとこがあるがww
301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/13(日) 23:48:10.01 ID:YVECLAIm0
>>295
アニメのキャラデザ自体から微妙に思ってしまう自分。
ナイブズへたれすぎて涙目だよ。なんだあれは
302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/13(日) 23:49:25.46 ID:M9ebtc4P0
ボロ泣きナイブズはもうねww
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/13(日) 23:52:22.01 ID:FCHlJoME0
撃たれた後の反応
原作「もっと、よく狙えよ。下手糞が(恐ろしく狂気的な笑みで」
アニメ「ぼ、ぼくを、、ぼくをうったのかぁ・・・・・(´;ω;`)」

ぼくってアンタ・・・
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/13(日) 23:54:10.08 ID:uQzzbSWG0
でもあのアニメのおかげで、深夜アニメが爆発的に増えた。
先駆けなんだよなぁ
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/15(火) 16:14:00.63 ID:0IiF9fJUo
面白い!!楽しみだ
306 : ◆DdirWW5ZSY :2011/11/15(火) 21:50:59.88 ID:c04+2yI+0
Chapter6 前半 ついにヤツが
307 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/15(火) 21:51:59.52 ID:c04+2yI+0
「ふーん、つまりは姐ちゃんらは」

「えぇ、私達の所属はあの子と同じ、必要悪の教会(ネセサリウス)…」

「仲間…だったのか…」

ヴァッシュ、ウルフウッド、ステイル、そして神裂の四人は上条当麻の家に上がり込み
ヴァッシュの手当をしたのち、インデックスの現状について話し合っていた。

「で、さっきそこの赤髪のが言っとった 救われへんいうのはなんや?」

「えぇ…それが最も重要なのです…私達が一年間素性を隠しながらあの子を捕まえようと
していた理由」

「……彼女は一年前以前の記憶が無い、これは知っているか?」

「あぁ…インデックス自身から聞いた…それと関係があるのか?」

ステイルはゆっくりとと口を開く、その顔には依然として諦めにも似た色が隠されて居た。


「彼女の記憶を消したのは……僕らだ」

「!」

「……ちっと…繋がってきたな」

冷静なステイルと対象的に神裂は不安を浮かべた表情をしている。

恐らく脳裏に過去幾度もの失敗がフラッシュバックしているのだろう。

「ご存知の通り、彼女の頭のなかには何万冊もの魔道書が保管されている、
その魔道書に加え元々の完全記憶能力によって…」

「一年に一度記憶を消さなければ…彼女の脳は記憶に押しつぶされて破壊される」


308 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/15(火) 21:53:14.85 ID:c04+2yI+0

「……」

「手段は違えど、目的はおんなじやったわけかい」

「でも…!」

「わかっています……根本的解決になど、なっていないということは」

神裂が重く閉ざしていた口を開いた。

「私達も…最初は彼女を本当の意味で救おうとしてきました、しかし、
いかなる手段を持ってしてもそれは叶わなかった…」

「それで…」

「それで…味方として失敗するんがもうしんどいから、敵の振りして取りあえず
生き延びさせとったちうわけか」

「えぇ…」


無味乾燥とした沈黙が部屋を包む、全員が考えていた。

本当に救えるのか?インデックスを?

ヴァッシュがおもむろにその沈黙を破る。

「一年に一度…じゃあ、まさかもうすぐ…!」



「えぇ…我々が揃って貴方達を襲撃したのも……タイムリミット迫っているからです」
309 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/15(火) 21:54:46.90 ID:c04+2yI+0


もはや時間の猶予すら残されてはいない、そんな事実によって
再び部屋が沈黙に満たされようとしたその時、一人の男がその部屋へと戻ってきた

ガチャ!

「おいっ!大変だインデックスが…な!?魔術師!?」

「インデックスが…どうした!?」

突如として現れた上条当麻に二人の魔術師は面食らっていたが、
彼にとっては魔術師の存在こそが想定の外だ、神裂が状況を説明しようと口を開く、が

「貴方はこの家の…大丈夫です、私達は…」

「えぇ、説明してる暇ぁあらへん!気にするな!!」

「えぇ!?」

「彼女が倒れでもしたのか?」

そう言ったのはステイルだった、その口ぶりはまるで、
そうなるであろうことをあらかじめ知っていたかのような。

「あ、あぁ!先生と話してる時に急に…高熱も出てる!」

「どういうことだ…?」

ヴァッシュの問いかけにゆっくりと答えるステイル、その目は暗に語りかける、


もう幾度目かの失敗か、と。

「時間切れ…もう彼女の脳は限界だ、今からまた…記憶を消さなければ彼女は死ぬ」

310 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/15(火) 21:56:25.96 ID:c04+2yI+0


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




一行はインデックスが臥せている木造アパートに到着していた。
ちなみにヴァッシュはもう自分で歩けると断わったが、無理やりに神裂に背負われ、
おんぶ体制のままでの移動となっていた。

「もうっ、もう下ろしてもらって結構!結構デス!!」

大の大人が女性に背負われて移動というのはある意味脇腹の傷より辛いものがあった。

「そうですか!?しかし万が一傷が開きでもしたら私は…」

「大丈夫だって!丈夫だけが取り柄ですから!」

「小萌先生!!連れてきました!」

ドアの前で叫ぶ上条当麻、冷静に考えれば近所迷惑だが、その場にはもはや冷静な人物が一人もいなかった。

「はい!! …あなたがシスターちゃんのお兄さんですか!?」

と、扉から出てきた少女的人物が言った。

「え…ま、まぁそんなモンですけど…そういう君は小萌先生の娘さんか何か…?」

と、答えるヴァッシュ、普段ならば説教一発ものの発言だったが。

「な!?私は正真正銘の成人女性で…」
「すいません!!急いでるから後でお願いします!!」

「そうですね…とにかく中へ!」

「いや」

「え?」

ウルフウッドが場を制止する。
311 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/15(火) 21:58:45.51 ID:c04+2yI+0



「大勢で入ってもなんや、……トンガリ、おんどれだけで会ったれ」




「…………あぁ」



提案の意味は一つ、


本当に間に合わなかった時のため。




ーガチャ



「インデックス…」


「ヴァッ…シュ……けが…してるよ…?」

312 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/15(火) 22:01:31.92 ID:c04+2yI+0





「本当に…間に合わへんのか…?」

「あぁ…今夜が山だろうね、記憶を消さなければの話だけれど」

「命は…助かる、か …ん、悪い、火ぃかしてくれ」

「あぁ」

二人分の紫煙が風に揺れる、魔術師達にとってはもう幾度と繰り返してきたこと、
一度開きかけた心を再び閉める、ただそれだけのことだ。

だが、

「なぁ…」

閉じられかけた心を再びこじ開けるように、声をあげる少年が一人。

「それで…本当に良いのかよ?」

「……あぁ?」
313 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/15(火) 22:04:10.39 ID:c04+2yI+0

「確かに俺はインデックスのために何もしてやれない…魔術を使って助けることも、
敵の振りをしてまで見守り続けることも、自分の命をかけてアイツを守るために駆けずり回ることも……何も出来なかった!!」

「……」

「でも!だからこそ思うんだよ!!まだ諦めるわけにはいかないって!!まだ!何か出来ることがあるんじゃ無いかって!!」

「……」

ひどい理屈だ、まるで、聞き分けのない子供と一緒だ。

「わかってる!!でも…でも!!

インデックスは…まだヴァッシュが助けてくれるって信じてる……

アイツだってまだインデックスを助けられるって信じてるはずなんだよ!!」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

『大丈夫だよ…ちょっと切っただけだ』

『ふふ…ぶじにもどる…って、やくそく…したのにね…」

『ごめんな…だけど』


『絶対に助けるって約束は…守るよ…守ってみせる』

『…う…ん…』
314 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/15(火) 22:06:28.50 ID:c04+2yI+0

ーすぅ

神父は深く煙草の煙を吸い込んだが、それと対象的に牧師は煙草を地面に捨て、
靴で残り火を踏み消した。


「……今から言うんは…しょーもない、何の根拠もないただの勘や…」

ウルフウッドがゆっくりと喋り出す、ほんの少し、ほんの少しだけ感じていた違和感だ。

ずっと最低最悪な人間の悪意に塗れて生きてきた彼だからこそ感じた違和感。



「嬢ちゃんの頭の話…おどれらは誰から聞いた…?」

「……上司…です、必要悪の…教会の…」


何が言いたいのかは、伝わってしまった。
だがそれは、今までの前提そのものを覆すような、今の状況や、彼の前置きがなければ
何を根拠に と一笑に付してしまうであろう発言。

だが、だからこそ彼は考えれずにはいられないのだ。


「おかしい…思わへんか? 曰く教会の全ての闇を引き受ける機関なんやろ…それが…」



「そこの頭がおどれらみたいなお人好しばっかりやと思うか…本当に…?」

315 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/15(火) 22:08:11.39 ID:c04+2yI+0

「……」

だが、あくまでも勘。

余りに何の根拠もない。


そんなものに縋れるほどの希望は
とうに擦り切らせてしまっていた。



「そんなことが…あるものか…彼女の脳は限界だ…」


「彼女の“完全記憶能力”は本物なんだぞ…」







「さっきから上条ちゃん達は……何を言っているんですか…?」



だが裏を返せば、

根拠さえあれば、彼女を救えるのだ。


to be continuede…
316 : ◆DdirWW5ZSY [saga]:2011/11/15(火) 22:15:34.43 ID:c04+2yI+0
ついに上条さんの見せ場ですねー、だがやはり描写力不足…

なぜなら漫画的にイメージした話をSSにしてるからです、
むろん支部とかでやる画力もやる気もねぇさ!

ていうか本当は>>1はSS書いてる場合じゃないんだけど
逆に? 逆境の中でこそ無関係なことが捗るみたいな?

それでは、あと二回の投下に御付き合いください。
317 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/15(火) 22:20:58.74 ID:c04+2yI+0
ていうか今気づいたんだけど

>>2  ☓六番目の月 
   
   ○五番目の月


えぇぇえええ、ありえねぇわーフィフスムーンつってんのに六番目てー
今日び小学生でも間違えねぇよー、しかも最終段階になってようやくきづいたよー

318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(埼玉県) [sage]:2011/11/15(火) 22:33:22.46 ID:9/bdx04r0
知識がある人がいるとすぐわかるなー乙
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/16(水) 00:59:11.22 ID:UBeSii7IO
乙!

あと二回・・・だと・・・
320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/16(水) 01:45:44.41 ID:XlLJPSWDO

佳境の佳境だな
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/16(水) 02:01:11.59 ID:XlLJPSWDO
>>296
ナイブズの秒速ウン万、ウン十万のAA次元刃の連撃を至近距離で回避、撃ち落としすると反応と身体速度だからなぁ。
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/16(水) 05:41:01.89 ID:Fg3L0Gfv0
GUNG-HOの上位の連中もその速度並で戦闘出切る能力だしね
ヴァッシュの抜撃ちも秒速何万kmの宇宙戦闘艦の主砲を
50mくらいから射たれた後に門で返す反応の鬼いちゃんが知覚すら出来ない程とかやべぇ
323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方) [sage]:2011/11/16(水) 05:43:34.72 ID:/NhRZYab0
乙、試験前に部屋のお掃除してしまうようなものだね
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/16(水) 05:43:50.71 ID:lWse041M0
>>317
いそがしいのに乙
てっきりホーム側の小さい月かと思ってたぜ
まあそれだとAA砲撃の範囲に月と地球完全に飲み込まれて消滅してるけどw
325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/16(水) 05:45:48.87 ID:Fg3L0Gfv0
俺もそう思ってた。
うまい伏線でも立てるのかと関心してたんだがなww
326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/16(水) 05:50:39.23 ID:21o7PSg20
黙ってればうまい事誤魔化せたかもしれんぞww
原作者の内藤もミスを逆手にとって生かしたキャラいたし
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/16(水) 08:38:28.67 ID:21o7PSg20
>>304
先駆けってエルフを狩るモノたちじゃないの
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/16(水) 18:59:43.30 ID:XlLJPSWDO
最後にボク様が登場する事を祈って
329 : ◆DdirWW5ZSY [saga]:2011/11/21(月) 19:54:24.87 ID:8W+E8zNQ0
chapter6 後半 
330 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/21(月) 19:56:09.07 ID:8W+E8zNQ0


「小萌…先生、これは…」

「言えない…とでも言うんですか?」

月詠小萌の口調は外見不相応かつ年齢相応な厳格なものだった。
上条当麻はそれ程長い付き合いではない、だが、彼女のこれ程までに怒気を孕んだ声を耳にしたのは初めてであり、
彼の感じた感情は紛れもなく、大人に叱られた子供、まさにそれが感じるものだった。

「私の家で、今シスターちゃんが苦しんでいて、しかもシスターちゃんの命が危ない?そんな状況で、それでも、私には言えない…そう、言うんですか?」

「……」

「すまないが…貴女のような人物を僕らの事情に巻き込むのは彼女自身も望むところじゃあない、耳を塞いでいてくれると、ありがたい」

そこに口を挟むのはステイル、彼はまだ14歳と、全員の中で一番の若年者だったが
魔術や裏の社会を経験していたことで老成した感性を持っており、本人もまたそれをある程度は自覚していた。

だが。

「僕らの事情?じゃあ私は無関係だっていうんですか?」

「それは…」

「関係無くなんてないです、シスターちゃんは、悩んで、苦しんでいる時に私を頼ってくれました、
先生を頼ってきてくれた子は、みんな先生の生徒さんなんです!!」

「シスターちゃん言ってました…ヴァッシュさん…お兄さんにこれ以上苦しまないで、出来る限り穏やかに生きてほしいって…」

「そんな、そんな優しい子だから…私を巻き込みたくないって考えるのは本当かもしれないです、
だけど私は先生なんです…お節介でも要らない世話でも…先生は生徒を助けるんです!」


「……」


331 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/21(月) 19:57:26.99 ID:8W+E8zNQ0




「負けやな…教えるわ、嬢ちゃんの、頭のこと」

「おいっ!」

「わかっとる…まかしとき」


ウルフウッドはインデックスの完全記憶能力、そしてその弊害により記憶のし過ぎで生命の危機を招いている、ということを極力魔術に絡めないように小萌に説明した。

その間、彼はお節介なまでに子供を想うその姿を自身の思い出の中の人物に重ね合わせていた。

まだ彼が闇の世界に足を取られる前の記憶、なにに替えても守ると決めたその場所を象徴するかのような女性を。

「……ちうことや、嬢ちゃんの頭に入ってる膨大な情報量のせいで記憶が圧迫されてる…らしいわ」

「……」

再び沈黙で場が満たされる、四人は先の自分達と同じように、彼女の現状に絶望を感じているのだと各々に考えていた、
だが、実際に月詠小萌の感じていた感情は絶望などではなく、とはいえ希望でもない。

言葉では言い表せない…怒りと呆れと安堵と喜びをぐちゃぐちゃに混ぜたかのような。


「あなた達四人とも……もし、先生のクラスの生徒さんだったら…」








「問答無用で一発大留年ですーーっ!!!」





「は?…」
332 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/21(月) 20:00:24.60 ID:8W+E8zNQ0
余りの緊張感の落差にその場にいた全員が言葉を失う。

「はぁ…完全記憶能力がどうこうって言ってたからまさかと思ったら…」

「ど、どういうことや!?」

「あのですねぇ…そもそも人間が記憶のし過ぎで死ぬだなんて、絶対にあり得ないんですよ?」

「なっ!?」

今度は小萌以外の全員に衝撃が走った、目の前の教師 (らしき存在) はあっさりと、それが当然だと言い放つ。
だが、当然ながら そうだったのか!と簡単に鵜呑みに出来るわけもない。

「彼女の頭の中に入っているのは普通の知識じゃあないんだ!もしその知識が酷く記憶を圧迫するようなものだったら!?」

そんなくだらない、都合の良い展開があるものか、そう言いたいかのように反論を繰り出すステイル、だが。


「問題なしですよ?人間の記憶というのは、知識とかを記録する意味記憶と思い出を蓄えておくエピソード記憶の二つに分かれてるんです」

「もし一方がいっぱいになってしまっても、そのせいで思い出を失くすなんてことはあり得ません!そもそも人間の脳は150年分の記憶を蓄えておけるんですから」

「……っ!」



それらが示すのはただ一つの事実。





「…騙されて…いた…か、あの女狐が…っ」


魔術師は二人とも辿り着いた事実に怒りを隠しきれず顔を歪ませている。

二人に嘘を教え、都合の良い手駒として操っていた“女狐”には勿論、それを看破出来なかった自分達により情けなさにも似た怒りを感じるのだ。
333 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/21(月) 20:01:46.77 ID:8W+E8zNQ0


その時、その事実を導き出した月詠小萌がぺたりと地面に膝をついた。

「ど、どないした!?腰でも抜けたんか?」

「ち、違うんです…安心したら、つ、つい…」

「……安心…した?」

神裂が小萌を見やる、確かにその表情は先程までと違い安堵に満たされているようだった。

「だって…さっきから皆さん…すごく沈んだ表情で…シスターちゃんの命が危ないって……
それを聞いた時すごく怖かったんです…あんな優しいシスターちゃんが…あのまま死んでしまうかもしれないって…」

「……」

「それで…我慢出来なくて……そんな時、上条ちゃんが…何かまだ出来るはずだって言ってくれたから……」



「そんな…俺は」

「上条ちゃんのお陰でもあるんですよ…シスターちゃんは…シスターちゃんは助かるんですよね?」

そうへたり込む彼女の姿は見た目通り、幼い少女を彷彿とさせる。



「あぁ…助ける、助けてみせるさ…今度こそね」

「…はいっ!」

力強く答えるステイルの表情は本人にとっても久方ぶりに年齢相応の希望に満ちた柔らかな笑みだった。

334 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/21(月) 20:03:02.43 ID:8W+E8zNQ0



そしてウルフウッドは向かう、無論、この知らせを最も必要とする男の元へ。


「トンガリ、朗報やぞ」


「…見つかったか?助けかた」


「当然」


スムーズなやり取りだった、まるで初めからこうなる事がわかっていたかのような。






「(ほんまに信じとったんかい……お気楽なんか…信用されとんのか…)」


335 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/21(月) 20:07:06.58 ID:8W+E8zNQ0


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「記憶の話が嘘で、それでもなおあの子が苦しんでいるということは…」

「そこに…仕掛けがあるいうことやな…とびきり悪どいやつがや」


全員がインデックスの元へ集まり話しあっていた、彼女の記憶の消去が必然ではないとわかったとはいえ、
それが具体的な解決方法にななるわけではない。

「嘘…か」

ヴァッシュも事情を聞き、具体的な策を考えていたがいかんせん人の悪意には鈍い男である。



「なぁ、センセ、悪いけど、なんか嬢ちゃんに飲ませるもんかなんか買ってきてくれへんか?
ワイらここら辺に詳しないからな」


「え?だったら俺でも…」
「おんどれはここにおれ」


上条はいまいち察し切れていなかったが、えもいえぬ空気を読み小萌はすっくと立ち上がった。

「…確かに…そうですね、それじゃ先生コンビニまで行ってきます……二十分くらい…かかると思います」


「……おおきにや…」

玄関を出るその表情は悲しげではあったが、
踏み込んではいけない一線を感じてはいるようだった。

「つまりは……魔術ってことかい?」

彼女を退室させたということは、そういう事だ。
無関係ではないとはいえ、それは科学と魔術(オカルト) の最後の境界であり
後戻り出来ない地点との死線(デッドライン) でもある。

「さぁな、ただ魔術(ソレ) で出来るようなモンなら、それが一番手っ取り早いいうこっちゃ」

「……私達の上司ならば…十分可能でしょう」

「なにがかけられてるか…わからないのか?」

空気が緊迫していく、とうのインデックスは先程からすーすーと眠っていた。
336 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/21(月) 20:08:01.01 ID:8W+E8zNQ0

「何がかけられているにしても…印があるはずだ…パッと見は見当たらないが…」

「印…ねぇ、身体にはそんなん無かったよなぁ?」

と、ヴァッシュに問い掛ける上条当麻、少しは状況といものが顧みれないものか。


「き、貴様らっ!!!あの子に一体何をしたっ!?まさか…食糧と引き換えに身体を…」

「なっ!?見損ないましたよ!!ヴァッシュ ザ スタンピード!!」

「違う!!断じてそんな事は無いから!!」

「そうだ!あれは事故みたいなモンで!むしろこっちが不幸っていうか!」

「なんだと!!消し炭になりたいか!?」

「トンガリ……流石にそれは庇いきられへんわ……」

「性犯罪者を見る目!?ていうかお前に庇われた記憶がないぞ!?」

わー
ぎゃー
ひょー

※以下略


「もういいです!!私がどこに印があるか調べます!!」

「とりあえず見えるとこから調べたらどうや……」

結局一から印を調べることに落ち着いた一同。
337 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/21(月) 20:08:37.90 ID:8W+E8zNQ0

「脳にかけられてんだろ?その魔術ってのは、だったら頭の近くにあるんじゃねぇの?」

「くっ、素人の学生のくせにあながち間違いでもないことを…」

インデックスの顔の周りから調べ始めた神裂、首周り、頭、と調べていくがそれらしいものは見つからない。

「皮膚の下とかやったらお手上げやな…これ」

「やっぱり…身体に」

「…それなら部屋から出て行ってもらいますよ…」

乾いた視線を男性陣に投げかける神裂。
そもそも神裂とステイルの二人は長らくインデックスを見守り続けてきたのだ、
表面的に見える部分にそんな異物があればとっくに気づいているはず。

「あ、あとはほら………!」


だが、まだ一箇所頭部付近に残された部位で滅多に見られることもなく
表面よりさらに中枢に近い場所が一つ。



「口…か!?」

ゆっくりとインデックスの小さな口を開かせるヴァッシュ
インデックスは大分と辛そうに汗を流している。

「あ……ん」

温かく湿った息が指先にかかる、少しの抵抗があったが少し力を込めて口を開かせる、

その奥には怪しく、紅く光る魔方陣が描かれていた。
338 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/21(月) 20:09:16.14 ID:8W+E8zNQ0

「あった!! ここだ!!」

「本当か!?………これはっ」

魔方陣を直接見てステイルはおののき、その声にはかなりの焦りが感じられた。

「これは一体何の魔術なんだ?」

「正直……詳しくは分からない…だが、恐ろしく堅固な守りがなされた術式だ…」

魔術に深く精通したステイルでさえ見たことのない魔方陣、
構造や発する魔力によって何かを封印するものだということは推測できた。

「でも、それを破れば何とかなるんだろ!?」

「それが問題なんだ!正攻法でこれを破ろうっていうなら一週間はかかる!もう時間は無いん…」

そこでステイルも気づくこととなった、
それが、それこそが最後まで残された鬼札(ジョーカー) を切るべきものではないかと。



「……一番ええとこ持っていきおって…待ちに待った出番やぞ、ヒーロー?」

339 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/21(月) 20:11:01.93 ID:8W+E8zNQ0

そう、どんな異能であろうと一撃で殺す、
全てをひっくり返す鬼札(ジョーカー) 、幻想殺し。

今ここにいる全員が彼女を助けるために不可欠な要素だったのだ。

「あぁ、今度こそ…この右手で救って見せる」



インデックスの口内の魔方陣に右手を伸ばす、
上条当麻の心は歓喜に打ち震えている。

壊すことしか出来ないこの右手で、一度は彼女を傷つける原因となった己の右手で、


彼女を救えるのだから。


「……っ!」


パキィ







『禁書目録の“首輪”の破壊を確認。』





to be continuede…
340 : ◆DdirWW5ZSY [saga]:2011/11/21(月) 20:15:32.96 ID:8W+E8zNQ0
こんちはこんちは こんち!ちんこ!破(わ)! >>1です


これが分からないジョー・ジャクソン達は書店行って血界戦線全巻買ってこいや!!


いやー、そろそろ血界四巻発売でテンションマキシマムなんですけど
SSのほうは軽く放置してしまってゴメンなさいね、用事は片付いたけど
自分へのご褒美(笑)で買ったダークソウルが面白すぎて俺の人間性がロスト気味だったので
341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/21(月) 22:12:17.67 ID:1cLSNORm0
竜王の殺息とヴァッシュが撃ち合って地球がヤバい
実際撃ち合ったらインデックスが塵も残らないけど
342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(埼玉県) [sage]:2011/11/21(月) 22:57:05.65 ID:L2FeBHzR0
おお、来てたか!乙
343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/22(火) 17:01:48.96 ID:7qUwtU1oo
ステイルさんはウルフウッドがミカエルの眼だって知ってる設定?
344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(茨城県) [sage]:2011/11/22(火) 19:33:33.89 ID:BBIfOtqco
話を見る限りは知っていたっぽいね
パニッシャーで分かったとか?
345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/22(火) 19:40:36.42 ID:zxE4Uk1oo
禁書世界にもミカエルの眼があるって事か
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/22(火) 21:41:50.41 ID:xXVFdCoDO
ミカエルの眼は宗教関係なのに科学サイドだからステイルさんに睨まれてるのかな?
347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/24(木) 15:06:08.97 ID:ftEL/nTKo
プラントが無い禁書世界には必然的にミカエルも無いと思うが…
348 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/26(土) 23:39:42.39 ID:EV9c2NGe0
ひとまず最終投下分書きあがりました 
349 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/26(土) 23:40:33.67 ID:EV9c2NGe0
投下は明日にします
350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(茨城県) [sage]:2011/11/27(日) 00:21:47.85 ID:X3l35Hxwo
楽しみにしています
351 : ◆DdirWW5ZSY [saga]:2011/11/27(日) 21:08:12.54 ID:Se+95jvi0
Last Chapter 投下します
352 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/27(日) 21:09:13.95 ID:Se+95jvi0

『全防御結界の破壊を確認。再構築を開始します。再構築…失敗。』



『書庫保護の優先順位に従い侵入者を殲滅します。』




乾いた破壊音とともに少女は何らかの巨大な力を開放し、上条当麻を吹き飛ばした。

その口から語られる事務的、いや機械的な言葉にヴァッシュとウルフウッドは聞き覚えがある。

「殲滅…か、とことんドグサレやな!おどれらの上司いうんは!!」

「これは…禁書目録の自動防衛システムと言ったところですか…!」

ゆらりと立ち上がった さっきまでインデックスだったモノの両の瞳に
喉の奥にあったものに似た紅い魔方陣が浮かび上がる、

まさしく侵入者を追い立てるかのように真っ赤に輝いている。

「関係ねぇ…“これ”を何とかすりゃ…インデックスを助けれるんだろ…っ!」

よろよろと立ち上がった上条当麻、
しかしその言葉とは裏腹に放たれる強力なプレッシャーによって圧倒されていた。


『空間内に有意思高エネルギー体を確認。高エネルギー体 ヴァッシュ ザ スタンピードを
現時点で最も危険な敵兵と認識。現時点で最も危険な敵兵ヴァッシュ ザ スタンピードを
最高効率で撃破するための術式を蔵書に基づき構成します。』


矢継ぎ早に紡がれた台詞が指し示す事実は、迎撃対象の確定、そしてその対象が何故か実際に首輪を破壊した上条当麻ではなく、負傷をし、まだなんとか歩ける程度のヴァッシュであるということだ。
353 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/27(日) 21:10:22.46 ID:Se+95jvi0
「まさか…あの子が魔術を!?」

「“それ”も嘘だったってことだろう!どうやら彼女の魔力の殆どはコレの発動に使われているらしいな!」

「トンガリィ!!来おるぞ!!」

怪我をおして立ち上がるヴァッシュ、だが一体何が来るのか、それが問題だ。
禁書目録の番人は突然に口を開き、機会的に言葉を報告する。

『エラー。対象に対する最適切な術式の構成に失敗しました。対象に対して適切な術式は…存在しません。』


「!?…エラー!?適切な術式が無い!?」

「ともかくチャンスや!あのラスボスもブチ消したれ!!ボウズ!」

突如として強烈な赤い光はその勢いを失い、同時にエラー宣言が発せられる。
ウルフウッドは瞬時に状況を認識し、唯一あの書庫の番を破壊出来るであろう
上条当麻に指示を出す。

だが。

『代替案を検索。単純な威力による破壊が有効と認識。』

『代替案 竜王の殺息(ドラゴンブレス) を書庫に基づき発動、敵兵ヴァッシュ ザ スタンピードを破壊します。』

ぽう

魔方陣がにわかに光る。


「いけませんっ!!彼を守ってくださいっ!!」
354 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/27(日) 21:13:24.34 ID:Se+95jvi0

その瞬間、巨大化し空中に展開された両目の魔方陣を中心に、
極大のレーザーのような攻撃が発せられる。
青白く輝く膨大なエネルギーの塊はウルフウッドにジェネオラロック、
学園都市に飛ばされる直前にヴァッシュが放った光の砲撃を思い出させる。


「う…おおおっ!!」

間一髪で幻想殺しが間に刺し入り、レーザーがヴァッシュに直撃することは無かった
だがその右手から発せられるのはいつもの明確な破壊音ではなく
油の切れた歯車のようにガリガリと何かが削れるような不快な音だ。


「(消し…きれてねぇのか…ぐぅっ!?)」

竜王の殺息はさながら鉄砲水のようにヴァッシュを狙い押し寄せる、
幻想殺しが触れている部分は一見相殺できているようだが他の魔術や超能力を消した時には
感じられなかった強い圧迫感が彼の右腕にかかっていた。

「!!」


その時、その場の全員に部屋を包むプレッシャーがずんと更に重くのしかかった。



ちりちりと、真っ赤に焼けた石が放つ熱気のような“力”がもう一つ。

竜王の息吹と拮抗する上条当麻の真後ろ、彼が今現在守ろうとしている
ヴァッシュ ザ スタンピード、その右手からだ。

「あ…があ…あああああっ」


「トンガリ…おんどれ…っ!!」
355 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/27(日) 21:15:33.00 ID:Se+95jvi0


ヴァッシュの右腕から天使の羽根のようなプラントとしての力の欠片が出現している。
それは間近に迫る強力なエネルギーに呼応するかのように胎動していた。

「これは…天使!?まさか…彼は一体…!?」

「(力に共鳴しおったんか!? なんにしても最悪の展開や…このままあの力が開放されれば、この街ごと吹き飛ぶ…!)」


インデックスの放つ魔術がどの程度の破壊力を持つかは窺い知れないが、
エンジェルアームの絶望的なまでの威力、その規模にウルフウッドは記憶を呼び覚ます。

ロストジュライ、一夜にして七大都市の一つジュライが瓦礫の山と化した、
ヴァッシュ ザ スタンピードがその名を、一つの災害として知らしめる契機となった事件


「ぐ…づあっ!」

一方で竜王の殺息を右手一本で防いでいた上条当麻だったが、
殺しきれない竜の力は確実に右手の皮膚を、指を、爪を容赦なく攻め立てていく。

「もう長くはもたんか!?」

「あの魔術は伝説の聖ジョージのドラゴンに匹敵する力を持つ…今持ちこたえているのが奇跡なんだ…っ」

だが内心ではステイルもまた、突如としてその異形の本性があらわとなったヴァッシュ方を恐れていた。
魔術の世界において強大にして絶対の力を持つ純粋なる力の結晶体“天使”
今のヴァッシュの姿はまさにそれだ。

空気を揺らし自身の圧倒的な力を主張するかの様に淡く光る羽根、もし彼が
本当に人の姿を持って現れた天使なのだとすれば、聖ジョージのドラゴンなど
比較にならない程の脅威であることは間違いない。

「ぐ…う…もう…持たない…ぞ…!」

その時、一人文字通り懸命に竜王の殺息を受け止め続けていた
上条当麻が絞り出すかのような声でそう言った。
幻想殺しとはいえそれが宿るのは普通の右手だ、ついに彼の右手は
強い圧力によって踏み潰されたかように皮膚を切り裂かれ血を吹き出した。

「……っ…ぐ…っ!!」

限界だ、全員がそう悟った、彼がほんのちょっとでも右手を逸らしてしまえば
竜王の殺息は紙を引き裂くように容易く彼自身の身体を貫通しヴァッシュを撃ち抜くだろう、
真に恐ろしいのはその先、巨大な二つの力同士がぶつかった時に一体何が起こってしまうのかだ。
356 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/27(日) 21:16:06.83 ID:Se+95jvi0

「僕らも……見せ場を作らないとね、彼女に申し訳が立たない」

「ステイル…?」

極限状態のなかステイルはそう言う、その瞳は今までとは違う決意を携えていた。
彼女の命だけでも、そんな考えではなく、
本当の意味でインデックスを救ったヒーローの一員となるため。

「魔女狩りの王(イノケンティウス)ッ!!」

瞬間、 上条当麻の前に赤く燃え盛る巨人がヴァッシュを守っていた彼を守るかのように顕現した。

「いまだ神裂っ!!」

「はいっ!!」

そして神裂の放つワイヤーがインデックスの足元の畳を引き剥がし体勢を崩す、
結果、竜王の殺息は大きく軌道を逸らしアパートの屋根を打ち砕いた。

「トンガリ…!」

ヴァッシュの力も幻想殺しによって消すことが出来るのかは謎だが、
今は暴発寸前のこの男の右腕を抑えることが最優先だった、のだが。

「ぐ…うう…ふううっ…がああああああっ!!!」

「トンガリ…おんどれ…!」

激痛の差中にあるかのように自身の右腕を抑え呻くヴァッシュ、
一瞬、ウルフウッドは抑えきれなくなったのかと考えたが、違う、
むしろ全くの逆だった。
右腕を包む白い羽根はサイズを縮め、光が確かに弱くなっている、
彼とっても最悪のトラウマであるはずの自身の右腕を強靭な精神力だけで押さえ込んでいる。

「俺は……いい……だ…から…っ…インデックスを…っ!!!」

己との死闘、その真っ只中で彼はあくまでもインデックスを助けてくれと言った。
彼もまた闘っていたのだった、1人の少女を救うために、そしてもう二度とあの災厄を引き起こさないために。
357 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/27(日) 21:17:01.55 ID:Se+95jvi0

上条当麻の脚は自然に駆け出していた、数畳にも満たない狭いアパートの中で
まるで短距離走選手かのように全力でだ。

血塗れの右手でも彼女に触れられればそれでいい、そう言わんばかりに不格好に
右腕を真っ直ぐに伸ばしたままで、穴の空いた天井から星空を仰ぐインデックスに向かって行く。


『……か…よ…なぜ…わ………か…は……ど…。』


書庫の番人が何か言っている、耳は轟音に麻痺し、極度の興奮状態にあった少年に周りの言葉が届くことは無かった。

30センチ、彼の頭上に淡い光が満たされる、が彼は気づかない。

20センチ、時間が圧縮されたかのように世界がスローになる。

10センチ、これで彼女は救われる、インデックスは、救われる。


少女に右手が触れる。




「避けろっ!!アホがっ!!!」


ひらり、と少年の頭上に天使の羽根が舞う、膨大なエネルギーを内包した羽根が、
竜王の殺息が屋根を破壊した時、その力の残滓が羽根となって現れていたのだ。

彼の右手はそれでなくとももう限界で、もはや降り注ぐ無数の羽根を全てかき消すことは出来ない。
全てがもう間に合わないことは目に見えていた。


だが、その時。





「ーーーー」





358 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/27(日) 21:19:08.07 ID:Se+95jvi0
その時、部屋に門(ゲート) が開いた、

プラントの力、何処から力を持って行き、持って来る、力の出入り口。

ジュライを滅ぼし、五番目の月に大穴を穿った、その力の原動力が開放される。




「消え……た…?」



力は上条当麻の頭上に放たれ、強大な力は彼の頭上に舞う羽根全てを飲み込んで渦を描きながら対消滅した。



「トンガリ…その力を…制御…したんか」

ウルフウッドは途絶え途絶えに話しかける、可能なのか、人間の精神力であの驚異的な力を制御するなど。

「いいや……必死だった、それだけだよ……」



指先程の大きさに変形したエンジェルアームは既に元の右手に姿を戻していた。

359 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/27(日) 21:19:46.92 ID:Se+95jvi0




〜翌日〜



360 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/27(日) 21:20:21.69 ID:Se+95jvi0


結果として誰1人死ぬことはなく二人の入院者が出たのみでこの騒動は幕をおろした。
入院したのはもちろん切り裂かれた横っ腹の傷が見事に開ききったヴァッシュ、
右手が見事にぐちゃぐちゃになった上条当麻の二名。
肝心のインデックスはむしろ前より食欲が旺盛になっている程だった。

「ねぇ…入院費ってどんくらい掛かるの?ここ…」

「……これくらいかな?」

「やっべぇなぁ…流石の無一文なんだよねぇ…僕」

「……どうするのかな?」

「もう動けるから退院させて貰おうかな…」

「だめだね?いくら常人離れした回復速度といっても完治するまでは僕の患者だ」

「せ、先生…とはいえ先だつものが……」

「大丈夫だよ?つけといてあげるから」

カエル顔の主治医となんとも情けない会話を繰り広げるヴァッシュを同室の上条は訝しげに眺めていた。
見た目は人間で中身はもっと人間らしい、だがあの時見せた姿はまさしく人外、
宗教を信じるタチではないがやはりあれは天使と言うのが相応しいものだろう。
361 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/27(日) 21:21:52.41 ID:Se+95jvi0

「おうトンガリ兄弟!元気でやっとるか?」

「誰がトンガリ兄弟だ、だれが」

「これ、あの赤髪神父からの手紙や、恨み辛みが書き連ねられとるらしいで?」

「なんだそりゃ?」


ウルフウッドからその内容に相応しくないように思えるほどきっちりとした便箋を受け取るヴァッシュ、

その中には急務が山積みであり急いでインデックスを連れて帰ることが出来ないので世話を任せたということ、

神裂が何故かヴァッシュの弟子に成ると馬鹿な事を言い出したのでこっちで説得しておいたということ、
最後に非常に遠回しな表現での感謝がその十倍ほどの恨み辛みを織り交ぜつつ綴られていた。

「あ、あと嬢ちゃんがえらい怒っとったぞ」


「エ?な、なにゆえに…?」

「おどれらが無茶しすぎやからーゆうて、歯ぁガチガチいわせとったから…喰われるな、あれは」



「………」



「逃げるか」

「あぁ…」

「逃げるんかい」
362 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/27(日) 21:23:19.36 ID:Se+95jvi0
怪我人とは思えない俊敏さでベッドを、病室を抜け出した二人をウルフウッドは呆れた様子で眺めていた。

思い出すのは、学園都市を発つ前のステイルと交わした会話。




『ミカエルの眼、だろう、といっても流石の僕でも詳しくは知らない』

『なんでその名前を知っとるか、それだけでもええ』

『?…君もその武器を見るに仲間じゃあないのか?…まぁいい、仕事柄裏の人間、特に十字教系
のヤツの情報はよく入ってくる、その中でも特にイかれた、十字を武器に科学の力に染まった
殺人集団、その名もミカエルの眼……その程度の事しか知らないよ』


『……そうか、だいたい変わらんな』

『……そんなに知りたいなら、この街の裏を探るのもいいかもしれないな、科学を扱うもの同士
繋がりがある、なんて与太話も聞いた事がある』

『……手紙、きっちり届けたるさかい安心し、まぁ、お互い達者でな』

『あぁ』




「見えて来おったな…この世界、この星のこと」

そう独り言ちて懐から神父に貰った煙草を出し口に咥える。

「病院は禁煙だよ?」

「ケチなこと言いなや」
363 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/27(日) 21:26:59.53 ID:Se+95jvi0


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そうして二人は無慈悲なる噛みつきの悪夢からの逃避の末、病院の屋上に辿り着いていた。
もう夕方だからか、屋上には誰もいなかった、強く吹き付ける暑い風はヴァッシュにたった
二日前まで自分がいた場所を遥か昔の思い出のように感じさせる。

「なぁ…その右腕…」

上条はその先を口に出しことが出来なかった、実質言いたいことは伝わってしまったのだが、
だからこそインデックスと彼自身をボロボロになりながら守りきった彼にそんな事を訊くと
言う事が酷く無粋な行いのような気がしたから。

「……詳しいことは…言っても信じないよ、ただ、俺の右腕は君の右手みたいに立派な力じゃあない、ただの…兵器だ」


人を傷つける悪だけを消し去り、大切なものは傷つけはしないような、そんな力ではない。
この右腕は違う、ほんの少しでも制御を誤っていたら全てをなぎ倒し消滅させていただろう、命も、人の営みをも。

「……」

その時、上条当麻は常にヴァッシュが浮かべている微笑みのその裏側の闇を垣間見た。
彼は例えそれが誰であっても人を救い続けるだろう、だが決して自分自身が助けられる事は無い
心の何処かで彼自身がそれを望んでいない。

だが、上条当麻にはそれが我慢出来ない。

「そんな事…ねぇよ!結果としてアイツと、俺を救った右腕だろ、たとえそれがどんな力を
持ってようとアンタは間違った使い方をしたりしない!だから、素直に誇ってくれよ、
 俺と、インデックスの分まで」



救って貰った分だけ救われて欲しい、それが今唯一彼にかけられる言葉だった。



「……ありがとな……」




364 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/27(日) 21:27:56.08 ID:Se+95jvi0

「な…なー、あ、…、っセイッ!!」

「空気に我慢できなくなってんじゃねーよ!!こっちも恥ずかしくなるでしょうが!!」

「うるせー!!カッコいいこと言いやがって!!若さか!?若さゆえにか!?」

「あんただって年寄りでもねーだろうが!」

「こう見えて結構年とってんだよ!」


「ぎゃー」
「いやーん」 ※ry


365 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/27(日) 21:29:14.91 ID:Se+95jvi0


どっち付かずの夕日は完全に沈みきり、美しい学園都市の夜景が現れ始める。
背の高いビル群は灯りに灯され、ヴァッシュにとって150年来見ることの無かった
上条当麻にとって見飽きた光景が広がる

「やっぱ高いと涼しいな、景色もいいし」

「はぁ、そういや…無茶苦茶な一日だったせいで、景色なんか見れてなかったけど……やっぱり綺麗なもんだね」

「そうか?そのせいで星なんかは見えないけどな、でもやっぱここはいい景色だな」


「街の中心まで見えるしな」

学園都市、数多くの摩天楼がそびえ立つ科学の都市、その中心には一つの建物が、学園都市の起こりとして存在している

「……!……あれ…は、あれが!?この街の…」






「あぁ、SEEDSビルだろ?百五十年前の移民船らしいけど、今じゃ街のエネルギー原だよ」


「…………ここは」
366 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/27(日) 21:31:14.94 ID:Se+95jvi0




都市の中心に佇むのはヴァッシュが百五十年来見ることの無かった完全な形を残したシップだった。



プラントが見当たらないのにも納得できる、本来あれは全てシップの中にあったものを採掘して利用していたものなのだから。
150年もそれに慣れていたから気づくことができなかった、地球(ホーム) には月も太陽もただ一つだということも。


ここは、



「レム……」

ヴァッシュの遠い思い出、脳裏に残り続ける彼女の願いが完全な形で成就された世界。

ヴァッシュの兄、ナイブズによって引き起こされた異星間移民船団の崩落、
ビッグ・フォールが起こらなかった、惑星ノーマンズランド。


「ヴァッシュー!!」





「……インデックス!」






      FIN
367 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/27(日) 21:32:43.87 ID:Se+95jvi0




都市の中心に佇むのはヴァッシュが百五十年来見ることの無かった完全な形を残したシップだった。



プラントが見当たらないのにも納得できる、本来あれは全てシップの中にあったものを採掘して利用していたものなのだから。
150年もそれに慣れていたから気づくことができなかった、地球(ホーム) には月も太陽もただ一つだということも。


ここは、



「レム……」

ヴァッシュの遠い思い出、脳裏に残り続ける彼女の願いが完全な形で成就された世界。

ヴァッシュの兄、ナイブズによって引き起こされた異星間移民船団の崩落、
ビッグ・フォールが起こらなかった、惑星ノーマンズランド。


「ヴァッシュー!!」





「……インデックス!」






      FIN
368 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/27(日) 21:36:40.37 ID:Se+95jvi0

やべっ 恥ずかしっ最後に二重投稿って!!!


お付き合いありがとうございました、
このSS読んでて感じたと思われる色々な違和感はこのオチにするためでした
実はヴァッシュが禁書世界に入ったわけではなくトライガン世界に学園都市が
建ったというお話、



最後にやらかしたのが恥ずかしすぎるので今からHTML化依頼してきます

369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/27(日) 21:39:04.47 ID:3V14JVXfo
そう来たか! と意表を突かれた所で乙!



二巻以降の執筆予定はあるかい?
370 : ◆DdirWW5ZSY [sagasage]:2011/11/27(日) 21:47:17.11 ID:Se+95jvi0

〜愛と恥辱の嘘予告〜




学園都市の設立の秘密、そして新たな大騒動に巻き込まれていく
ヴァッシュとウルフウッド、そして上条当麻。

SEEDSビルの中に佇む男…、兄、ナイブズの行方…、異世界の謎…、何故最後にやらかしたのかの謎…


そして現れる最凶最悪の男!!!


「おまえが…」

「お…おんどれが……っっ!」




















「憶えてるかい!? ボク様だよ」





俺は一体何を書いてるんだ。

371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(茨城県) [sage]:2011/11/27(日) 22:05:11.25 ID:X3l35Hxwo
乙!面白かった

ボク様って偽ヴァッシュと共に出ていたチビだっけ?
372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/27(日) 22:20:22.84 ID:eR99lyyo0

ぶっちゃけヴァッシュの力がフィフスムーンの時と同じくらい開放されてたら地球が完全に消滅してるんだけどな
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/27(日) 22:21:15.20 ID:iDp0Gjtz0
>>371
そう、あのボク様
374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/27(日) 22:28:05.07 ID:L6r6y91C0
ほほ。そういう展開か
まあ乙
375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/27(日) 22:54:06.16 ID:cuCEh8uDO
最後窓のないビルかと思ったら……
どんでん返し+読後感の良さで最高です
376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(中部地方) [sage]:2011/11/29(火) 17:43:54.73 ID:ftuvnO3Vo

まさかこんなどんでん返しが待ってるとは
同じ世界ということは実は学園都市の住民もトライガン世界みたいな超人になってるんだろうかww
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/29(火) 18:13:05.93 ID:o3Rw2mCko
仮にこの後原作通りに進んだとすると、チョーカー後の一方通行が歩けない所じゃ済まない気がするww
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