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京介「思えば遠くへ来たもんだ」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/10/24(月) 02:21:50.80 ID:ucx2SsZ8o

『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』のSSです。

未来設定、オリキャラ全開、NTR臭プンプンですので、性に合わない方はご遠慮ください。
総合スレだと何かと問題があるでしょうから、こちらで細々と書いていこうと思います。

京介が大学を卒業後、就職して半年経ったところから話は始まります。
カプは誰だよってことでしたら、いつものあいつだよってことで御了承ください。
更新については週一くらいの予定ですが、予定は未定ということで……。
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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714054765/

渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714052788/

二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714049241/

佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/10/24(月) 02:22:19.39 ID:ucx2SsZ8o

羽田を発って一時間半余り、新千歳空港までは飛行機だとあっという間だが、
俺が降り立ったときにはすでに穏やかな秋の気配に包まれていた。
日本列島は縦に長いんだと改めて実感させられる。
何はともあれ、今日からこの北の台地が俺の新たな生活の場となるんだ。

俺は大学を卒業すると、都内に本社を置く中堅の某メーカーへ就職した。
研修中はさまざまな部署へ回されたが、先ごろ営業部への配属が正式に決まった。
初任地となる札幌は、俺が学生の頃に訪れて以来の憧れの地だ。
営業所への初出勤を翌週に控えて、俺は期待と不安を胸に札幌営業所へと赴いた。

所長へ着任の挨拶も済ませ、いざ帰る段になってそのトラブルは起こった。
俺が社宅へ向かうつもりだと告げると、それまで机でパソコンを操作していた先輩の女性が
ふいに怪訝そうな面持ちで顔を上げた。
どことなく幼さの残る顔立ちで、どう見ても俺より年下であることは間違いなさそうだった。
妹の桐乃と同じくらいか、もし上だとしても一つかふたつくらいだろう。

「高坂さん、今これから社宅へ向かうとおっしゃいました?」

「ええ、この足で行こうかと思ってますけど……それが、何か?」

俺は会社の規定に従い、札幌勤務の間は単身者用の社宅から通うことになっていた。
社宅と言っても会社所有の建物ではなく、民間アパートを単身の社員用に借り上げたものだ。
アパートには違いないが、そこはそれ、生活に最低限必要な家財も予め揃っているし、
何より家賃が安いのが俺には魅力だった。

「本社の総務から、連絡が行かなかったのかしら……」

何のことかと訊けば、事情があって社宅への入居日が二日ずれて日曜日になったと言う。
彼女は申し訳なさそうに謝るが、そもそも彼女が悪いわけでもあるまいし、
俺も転勤の準備やら何やらでうっかりしていて確認しなかったのがいけなかった。
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/10/24(月) 02:22:57.32 ID:ucx2SsZ8o

「よろしければ、こちらでホテルを手配できますけど……」

「あっ、いや、それじゃあ申し訳ありませんし、駅まで行って適当に自分で探します」

「札幌駅の近くに、会社と提携しているホテルがあるんです。
 もちろん宿泊代は営業所で負担しますし、何も心配することはありません。
 ですから入居日まではそちらに宿泊してください。
 あっ、くれぐれも領収書だけは忘れないでくださいね」

ホテルへ飛び込みで入ったところで、必ずしも部屋が空いているとは限らない。
駅の旅行センターにでも頼めばいいんだが、宿泊代が営業所持ちと聞いちまった以上、
まだまだ薄給の新入社員の身では断る道理がない。
俺が返事に躊躇していると彼女もそこらあたりの事情を察してくれたようで、

「すぐに予約の電話を入れますから、お掛けになってお待ちください」

彼女は机の上の電話の受話器を取ると、慣れた手つきでホテルへと電話を入れた。
電話の応対といいホテルの手配といい、俺なんかとても敵いそうにもなかった。
一見すると今時のアイドルも顔負けの容貌だが、根は真面目でしっかり者なのかもしれない。

「高坂さん、ホテルの方は今日と明日の二泊分予約しておきました。
 あと、もしかしたら引越しの荷物も今日届くようにしてあるんじゃないんですか。
 それでしたら、わたしの方で連絡して営業所止めにしておきますけど」

宅配便で送った荷物は着替えや身の回り品だけだった。
しかし、俺は彼女に言われるまでそのことをまったくと言っていいほど失念していた。
彼女の機転のお蔭で、俺の荷物は宛先に該当なしという最悪の事態は逃れた。

「何から何までありがとうございます。
 来て早々ご迷惑ばかりお掛けして、本当に申し訳ありません」

「定時まではわたしも営業所にいますから、何か困ったことがあればお電話ください」

「いや、これ以上は営業所に迷惑を掛けるわけにも……」
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/10/24(月) 02:23:35.57 ID:ucx2SsZ8o

口ではそう言ったものの、都合よく札幌に親戚や知人がいるわけもなく、
ぶっちゃけ何か困ったことが起こったとしても、俺にはまったく頼る宛てがなかった。
念のため定時を過ぎても電話が繋がるようにと営業所の裏番を教えてもらい、
俺は自分の携帯にその番号を入力した。
そんな俺の不安を察したのか、彼女は神業のような速さで俺から携帯を奪い取ると、
自分も制服のポケットから携帯を取り出し電話番号とメアドを交換した。

「もし何かあれば、いつでもわたしに連絡していただいて構いませんから」

笑顔がとても印象的で、こんな所で事務をしているんじゃ勿体無いほどの美人だった。
桐乃やあやせも確かに美人だが、そんな二人を見慣れた俺でも一瞬言葉を失う。
それも、愛らしさと親しみ易さを併せ持った、誰からも好かれそうなタイプの女の子だ。
俺の好きな黒髪ロングではなく、肩までのセミロングなのがちょっと惜しいけどな。
まあ、今時こんな子に彼氏がいないわけもねえだろうけど。

「そう言っていただけると、本当に助かります。
 ……正式な出社は来週からなんで、今日のところはこの辺で失礼します」

何はともあれ、来週からの出社が今から待ち遠しいことに変わりはなかった。

途中、駅前のデパートで宿泊用の着替えだけを買い揃えてホテルへと向かった。
ホテルは雪まつりで有名な大通公園に面した最高のロケーション。
所詮はビジネスホテルだろうと高を括っていた俺の予想を見事なまでに翻し、
そこは東京の都心でも十分に通用する立派なシティホテルだった。

フロントで会社名と名前を告げ、チェックインを済ませてカードキーを受け取る。
床や壁は大理石らしく、吹き抜けには豪華なシャンデリアが煌々ときらめいていたが、
上階の宿泊客専用のフロアは一転して木の温もりのある落ち着いた雰囲気だった。

カードリーダーへカードキーをかざすと、小さな機械音を伴って電気錠が解錠された。
俺は部屋へ入るとサイドテーブルに荷物を置き、ベッドの上へ身体を投げ出した。

あいつ、今頃怒ってるかもな……・


(つづく)
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/10/24(月) 07:35:17.62 ID:jBIXTjBAO
相変わらず美人遭遇率の高い京介氏爆発しろ
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/24(月) 08:41:13.49 ID:uRMnHx/y0
なん、だと?
トリにつられて、ほいほいついてきたが...
期待していいかな?
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/10/24(月) 08:51:13.13 ID:u+ssyqwg0

期待してる
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/24(月) 10:13:33.63 ID:OWnW/LUDO
営業所のお姉さん…いったい誰なんだ…
9 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/10/24(月) 21:43:42.74 ID:ucx2SsZ8o
更新は週一くらいと申し上げましたが、いきなり嘘をつきます。

かなり大雑把ですが、一応はエンディングまで書き溜めてあります。
しかし、とても読んでいただけるような文章とはいえないので、
少しずつ手を加えながらのチマチマとした投下が続くかと思います。

いつも短編のSSしか書いていなかったせいなのか、
長めのSSとなると、何だか話が間延びして読んでても辛いかも……
10 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/10/24(月) 21:44:42.60 ID:ucx2SsZ8o

慣れない飛行機での移動と、営業所への着任の挨拶でかなり緊張したのかもな。
そのまま着替えもせず、ついウトウトと眠っちまったようだ。
ベッドに備え付けの時計を見ると、チェックインからすで二時間が経過していた。
中途半端な時間に昼飯を食ったせいか、今のところ腹もあまり減っていない。

テーブルに置かれたホテルの案内を見ると、最上階にはスカイラウンジがあるらしい。
そこは食事ができるレストランの他、洒落たカウンターバーが併設されていた。
札幌の夜景を見ながらカウンターバーで一杯、というのも洒落ている。

「ウイスキーをハイボールで……少し、薄めでお願いできますか」

無口で落ち着いた雰囲気のバーテンダー以外に客がいないのを確かめると、
俺はスーツの胸ポケットから一枚の写真を取り出した。
その写真を眺めていると、後ろめたい気持ちと寂しさが胸に込み上げてくる。

目の前にコースターが敷かれ、その上にハイボールのグラスが静かに置かれた。
カウンターの背後の棚に並べられた名前も知らない洋酒のボトル。
ハードボイルド? 石原裕次郎? 意味もなくそんな単語が俺の頭に浮かぶぜ。

「ブランデーにすりゃあ良かったかも……」

「あの……お隣りに…………座ってもよろしいですか?」

いきなり背後から声を掛けられ、俺は驚いて声のする方を振り向いた。
そこにはつばの広い帽子を深めに被り、大きくて濃いサングラスを掛けた女が立っていた。
髪はショートカットなのか、帽子の中にすっぽりと納まっている。
涼やかな声と清楚な服装からして、『夏休みは軽井沢の別荘で――』って感じだな。
本当のことを言えば一人で飲んでいたかったんだが、これも何かの縁かもしれん。

「えっ、ええ……どうぞ、空いてますから」

「ありがとうございます……」
11 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/10/24(月) 21:45:08.15 ID:ucx2SsZ8o

女がバーテンダーに注文を伝えている間、俺は横目でそれとなく観察した。
帽子とサングラスが邪魔だが、色白の頬と上品な口元が美人であることを窺わせる。
社宅への入居がずれたのも、今にして思えば偶然じゃないのかもしれん。

「失礼ですが、その写真の方……もしかしたら?」

「えっ、いやぁ、そんなんじゃないんですよ。……まぁ色々とありまして」

カウンターの上に写真を置いたままだったことをすっかり忘れていた。
神様が俺のことを哀れに思って、こんな粋な計らいをしてくれたのに無駄にはできん。
俺は気取られぬようさり気ない動作で写真をスーツの胸ポケットに収め、
これまたさり気ない動作でハイボールをひとくち口にした。

「……恋人なんでしょ?」

「恋人というか、一応付き合っていたというか……うーん、どうなんだろう」

「嫌いになって別れた、というわけではないのでしょ?」

初対面の男に随分と無遠慮なことを訊いてくる女もいるもんだ。
しかし、多少なりとも酒が入っているせいか、今夜の俺は少しだけ饒舌になっていた。
はっきりとした容姿は分からないけど、俺の大好きなタイプであることは間違いない。
俺の長年の経験と勘がそう告げていた。

「古い知り合いなんですが、付かず離れず……といった感じです。
 友だち以上、だけど恋人未満なんて言ったら、ちょっとキザに聞こえますか?」

女のタンブラーグラスには、オレンジ色の飲物がまだ半分ほど残っていた。
オレンジベースの何かのカクテルだろうか、俺がそう考えていると女も気付いたらしい。

「これはただのオレンジジュースなんです。……お酒は、まったくダメなものですから。
 わたしは、お酒よりも雰囲気に酔ってしまう性質なんです」

「そうだったんですか、俺も自慢できるほど強いわけじゃないけど……」
12 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/10/24(月) 21:45:42.23 ID:ucx2SsZ8o

何ともいい雰囲気じゃねぇか。
俺もアルコールは弱い方だし、女の方が強かったらどうしようかと思ってたんだ。
この雰囲気なら、事と次第によっては……

「訊いてもいいのかな、札幌へは旅行で来たんですか?」

「ええ、旅行といえば旅行なんですけど……他にも色々と用があって」

「羨ましいですね。俺なんか、札幌にある営業所へ配属になったもんで……
 実は、今日着いたばかりなんです」

酒の席で仕事の話をするのも無粋ってもんだし、俺は速攻で話題を切り替えた。

「趣味とか、訊いてもいいですか?」

「これといった趣味はないんですが……そうですね、占いなんかを少しだけ」

占いなら俺も多少は興味があるけど、星占いや血液型占いの話じゃ能がねえし、
かと言って四柱推命なんて持ち出したところで話が盛り上がりそうにない。
いつかテレビで見たことがある、神秘的でマニアックなタロットカードなんかどうだろう。
まあ、印象深い死神のカードが俺の頭に浮かんだからなんだけど。

「もしかしたら、タロットカードとかなさるんですか?」

「占いにお詳しいんですか? でも、タロット占いはあまり得意ではないんです。
 それよりも、一般的な手相占いの方が……」

「手相占いですか、俺も手相占いは以前から興味があるんですよ」

「もしよろしければ、見て差し上げますけど……」

俯いたまま恥ずかしげに左手を差し出すもんだから、俺もつられて右手を差し出した。
色白で細くしなやかな彼女の指先に、俺の眼はしばし釘付けになる。

がちゃっ。

「お久しぶりですね。……お兄さん」
13 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/10/24(月) 21:46:19.87 ID:ucx2SsZ8o

俺が驚いて椅子から転げ落ちそうになったところ、
女――いや、あやせに手錠を引っ張られ、俺は辛うじて落ちずに踏みとどまった。

「あ、あ、あ、あ、あやせっ!? ど、どうして俺がここにいるのが分かった?」

「初めは本社に電話したんですが、なかなか教えてもらえなくて苦労しました」

最近の会社は、簡単に社員の連絡先を部外者に教えたりはしない。
個人情報の漏洩が何かと問題になる昨今じゃ仕方のないことなんだが、
あやせは唇を尖らせ言外にその悔しさを滲ませた。

「何とか粘ったら、お兄さんが札幌へ赴任したと教えてもらえて、
 そのあと札幌営業所の方にお訊きしたら、今日はこちらに泊まっていると……」

サングラスを外し帽子を取ると、俺の見慣れた黒髪ロング――じゃなかった。
長い黒髪を無理やり帽子の中に押し込めていたせいか頭はボサボサで、
その上そこいらじゅうが跳ねまくっていた。
変装のためとはいえ、せっかくの綺麗な黒髪が台無しじゃねえか。

「営業所に何と言って訊き出したんだか、俺も怖いから訊かねえけど……
 てか、何でおまえがここにいるんだよ」

「そんなこと、お兄さんには関係ないじゃないですか。
 でも、お兄さんには明日になったら札幌の街を案内してもらいますから」

俺の質問には答えようともせず、一方的に要求を突きつけるあやせ。

「案内するったって、俺だって今日こっちへ着いたばかりじゃねぇか」

「学生のときに何度か来たことがありますよね。
 北海道のことなら俺に任せろって、以前わたしにそうおっしゃってました」
14 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/10/24(月) 21:46:53.26 ID:ucx2SsZ8o

このままじゃいつものあやせのペースに巻き込まれちまう。
何とかこの場は誤魔化して……

「なあ、いま気付いたんだけど、あやせはどっか予約でもしてあんのか?
 俺の部屋はシングルだし、おまえだって俺と一緒に寝るわけにはいかねぇだろ」

「ご心配いただかなくてもけっこうです。
 営業所でこちらにいるとお聞きした後、フロントで直接お願いしましたから」

「相変わらず手回しのいいこと……。
 俺、もう自分の部屋に戻りてぇんだけど、この手錠……外してくんねぇかなぁ」

意外にもあやせは素直に手錠を外してくれた。
あやせの分も含めて精算を頼み、伝票にルームナンバーを書き込みサインをすると、
俺はあやせを一人残して席を立った。

「じゃあな、あやせも早く自分の部屋へ戻って寝ろよ」

「ええ、言われなくてもこれから部屋へ戻ります。
 ……でも、お兄さんのことだから、すぐにわたしに会いたくなると思いますよ」

数分後、あやせの予言通りになった。

別に会いたくなったわけじゃない、会わなきゃいけないわけができたんだ。
俺が自分の部屋へ戻り、カードキーをドアの横のカードリーダーへ何度かざしても
電気錠が解錠されることはなかった。

不思議に思ってフロントで尋ねてみると、すでに俺の部屋はキャンセルされていた。
それだけでも驚きなのに、ちゃっかりと別の部屋に変更さているじゃねえか。
もう分かるだろ、あやせと同じ部屋だよ。
俺は半分涙目になりながら、フロントで聞いたルームナンバーの部屋へと向かった。
15 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/10/24(月) 21:47:21.85 ID:ucx2SsZ8o

「思ったよりも早かったですね。……わたしの言ったとおりになったでしょ」

「謀りやがったな――っていうか、何でこんなことができるんだよ。
 ホテルにしても客の了解無しに勝手に部屋を替えるなんて、できんのかよ?」

「わたしがお兄さんのフィアンセだって言ったら、快く替えてもらえましたけど」

よくもまぁヌケヌケと俺のフィアンセだなんておっしゃってくれちゃって。
俺は当分の間、このお気楽で気ままな独身生活を楽しむつもりでいるんだ。
それになぁ、俺が地元を離れてこんな遠隔地を赴任先に希望したのだって……。

「わたし、これからシャワーを浴びたいんですけど……
 もしも覗いたりしたら通報しますからねっ!」

「誰が覗くかよっ! とっととシャワーでも何でも浴びろっつーの。
 つーかあやせ、そう言いながら手錠を用意してるってのは一体どういう――」

がちゃっ。


(つづく)
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/10/24(月) 22:25:46.41 ID:e7vADknmo
これは予想外
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/24(月) 23:56:57.41 ID:knqXsk1AO
この二人まるで成長していない……
だがそれがいい。
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/10/25(火) 00:30:27.58 ID:vxjnMr5W0
この>>1のことだからあやせだと疑いませんでした

ありがとうございますッッッ
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/25(火) 09:23:45.16 ID:VrpfeJcN0
乙!

優しい嘘...ってあるんですね
wktkがとまらない
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/25(火) 13:02:19.99 ID:4wtSj8PDO
わけがわからないよ
なんで京介は愛しのあやせから逃げるハメに?ww
ヤンデレ化でもしたのか
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/25(火) 15:05:45.14 ID:3G4WqHzdo
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/25(火) 15:06:44.47 ID:3G4WqHzdo
ああすまん、SS速報だったか
応援してるよ
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/25(火) 16:27:43.59 ID:tO3iVTfy0
>>1あんたやっぱ最高だよ!
24 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/10/26(水) 21:11:26.64 ID:sFmcGxH8o

ベッドの脚に手錠で繋がれている右手を見て思わず苦笑した。
あやせのヤツ、空港の厳しい手荷物検査をどうやって通り抜けたんだか。
本人に訊くのが一番なんだろうが、それは怖い……。

俺は手持ち無沙汰でベッドに寄り掛かり天井を眺めていた。
かすかに聞こえるシャワーの水音が、バーでのあやせの言葉を思い起こさせた。

『初めは本社に電話したんですが、なかなか教えてもらえなくて苦労しました』

『何とか粘ったら、お兄さんが札幌へ赴任したと教えてもらえて……』

最初の赴任先が札幌と決まったとき、俺はあやせにだけは伏せておいた。
お袋は勿論のこと、桐乃からあやせに洩れることもないとの思いが俺にはあった。
あやせと仲の良い麻奈実にもよく言い含めて出てきた。
責められても当然なのに、俺を責めるような言葉をあやせは一言も口にしなかった。
この先、俺はどうすりゃいいんだ……。

シャワーの水音が一旦止まり、しばらくするとまた聞こえてきた。
あやせのヤツ、一体どこを洗ってんだか……。
この部屋はツインルームだから俺の居たシングルよりも広いのは当然なんだが、
調度品を見てもワンランク上の部屋であることは明らかだった。

ベッドに手錠で繋がれているのも忘れ、明日の予定を頭の中で整理する。
札幌市内を案内しろと言われても、今の時期に観るところなんて思い浮かばない。
さっぽろ雪まつりの時期なら、この場所はまさに打って付けなんだがなぁ。

ホテルの真っ白いバスローブを身に纏ったあやせが、シャワーを終えて出て来た。
まさに、地上に舞い降りた天使そのものだ。

「シャワー空きましたけど……って、何で正座なんかしてるんですか?」

「……取りあえず、手錠を外してくんねぇかな」
25 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/10/26(水) 21:11:59.22 ID:sFmcGxH8o

「絶対に何もしないと、約束していただけますか?」

「この体勢でどうやってシャワーを浴びろってんだよ。
 それとも何か、あやせがバケツにお湯でも汲んできてくれるってのか?」

あやせも自分の言っていることに無理があると気付いたらしい。
ブツブツと独り言を言いながらも素直に手錠を外してくれた。

「なぁあやせ、俺がおまえの許しもなく何かしたことがあったか?
 俺たちは付き合いも長いってのに、未だにチューしかさせてもらってねぇだろが」

「チューしかって、でも、それは……」

バスローブ姿のあやせからは、ボディソープ特有の甘くさわやかな香りが漂う。
唇を尖らせながら俺を睨むあやせ、そんなあやせが俺には可愛くて愛おしくて仕方がない。
あやせはバスルームから出て来たときよりも更に顔を紅潮させて……

「おっ、お兄さんは――」

あやせにとってみれば、初恋の相手は特別な存在なんだそうだ。
長い人生のうちで、初恋はたった一度きりなんだと真面目な顔でのたまう。
あったりめーじゃねぇか。

「お兄さんが考えているようなことは、も、もっとずっと先のことです」

「はいはい、さいですか。
 俺は前倒しだろうが早回しだろうが一向に構わないんすけどね」

あやせの瞳がわずかに潤んで見える。

「……わたし、お兄さんのことは信用しています」

あやせの呪文は、俺にとってメテオインパクト以上の効果があった。
26 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/10/26(水) 21:12:37.23 ID:sFmcGxH8o

「俺がシャワーを浴びてる間にちゃんと浴衣に着替えておけよ。
 いつまでもそんな格好してっと、いくら俺だって本当に襲っちまうかもしんねぇからな」

「お兄さんはそんなことをする人じゃないって知っていますから」

ふんっ、今日のところは石鹸の香りだけで我慢してやるさ。
まったく、気軽にセクハラできた昔が懐かしいぜ。
いつの間に俺の中で、あやせが占める割合が大きくなっちまったのがいけねぇな。

「お兄さん、いつまでわたしに見惚れているんですか?
 そんなふうに見られていたら、わたしが着替えられないじゃないですか」

「別に、そういうつもりで見てたわけじゃ……ま、いいさ」

「お兄さん、シャワーを浴びる前にも水分補給が大切なこと、知ってます?」

「いや、風呂上りに水を一杯ってのは聞いたことがあんけど……」

あやせがペットボトルを差し出した。

「ミネラルウォーター?」

シャワーを浴びる前にも水分補給が大切とか、どこでそんな知識を仕入れたんだか。
あやせから貰ったミネラルウォーターは少し苦味があって飲み辛かったけど、
俺はそんなあやせのやさしい心遣いがとても嬉しかった。

あやせが使った後のユニットバスは、ほのかな温かさと石鹸の甘い香りで満ちていた。
俺とあやせが同じホテルの同じ部屋に泊まり、まさか同じシャワーを使う羽目になるとは、
札幌に着いたときには考えもしなかったさ。

シャワーを浴びてバスローブ姿で部屋へ戻り、夜景でもと窓際に近づいたそのとき、
俺は急激な眠気に襲われてそのままベッドに倒れこんだ。

その日、俺の記憶はそこで途切れた。
27 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/10/26(水) 21:13:17.15 ID:sFmcGxH8o

翌朝、俺はあやせよりも先に目が覚めた。
あやせに強制的に眠らされたお蔭か、不思議な爽快感が俺の全身を覆っていた。
身体の上に布団が掛けられているってことは、あやせが掛けてくれたんだろう。
隣のベッドを見ると、あやせが安らかな顔ですやすやと眠っている。

本当に、俺のことを信用してんのかね……。
俺はいつの間にか、あやせと出会ったあの日から今日までのことを想い返していた。
懐かしさと、恥ずかしさと……痛みが入り交じった複雑な想い出だがな。

それでもチューまでさせてもらったんだから……あと、もう少しの辛抱だ。

俺があやせと一緒にいられるのも今日一日だけ。
明日は社宅へ行かなくちゃなんねえし、あやせに構ってやれる暇もないだろう。
今日くらいはあやせに付き合って、札幌の街をあちこち散策するのもいいかもな。

ベッド脇の時計を見ると、まだ五時前。
薄闇の中、あやせの寝顔を確認してからもう一眠り……。


再び目が覚めたときには、あやせがちょうど洗面所から出て来るところだった。
バスローブ姿もいいが、ホテルの浴衣を着たあやせにもつい見惚れちまう。

「目が覚めたんですか? 顔を洗ってくださいね、一緒に朝食に行きますから。
 それから……わたしが着替えている最中は見たらダメですよ」

おまえは鶴の恩返しの鶴かよ、俺は見ねえよっ。
恥ずかしそうに顔を赤らめて、『見たらダメですよ』なんて言われたら、
俺だって見たくても見るわけにはいかねえだろうが。

「あやせが心配しなくても、着替えが済むまでは俺もゆっくりと顔を洗ってるよ」
28 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/10/26(水) 21:14:03.46 ID:sFmcGxH8o

ベッドから起き上がると、あやせがふっと俺から眼を逸らした。

「……ん? どうした、俺の顔に何かついてんのか?」

俯いているあやせの前を通り抜け、洗面所の鏡の前に立って俺は気付いた。
昨夜はシャワーの後はバスローブのままだったはず……ホテルの浴衣なんか着て―― 
いや、深く考えたらいけない、深く考えたらいけねぇよな。
でもなあやせ、男のパンツにも前と後があることくらいは知ってんだろうが。

俺も顔を洗って着替えを済ませると、二人揃って昨夜と同じスカイラウンジへ向かった。
朝食はホテルによくあるバイキング形式だった。
俺が結構な種類の惣菜に満足しながら肉や揚げ物を中心に選んでいると、
あやせが横合いから俺の皿に野菜や煮物を載せ始めた。

「一度お皿に載せたものは、全部食べないといけないんですよ」

「……ったく、俺は草食動物かっつーの」

草食系動物の餌と化した皿をお盆に載せ、俺は窓際の空いた席に座った。
先に食っていると後が怖いので、あやせが来るのをじっと待つ。
窓から空を見上げれば、雲ひとつない澄み切った秋空が広がっていた。

俺が頬杖を突きながら外を眺めていると、ようやくあやせが席にやって来た。
あやせは何が可笑しいのか、いつにもまして可愛い笑顔だ。

「うふっ、先に食べていただいててもよかったんですよ」

「まぁいいってことよ。それより、あやせはどこか行きたい所なんてあんのか?」

「せっかく札幌まで来たんですから、時計台だけでも行ってみたいんです」
29 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/10/26(水) 21:14:58.23 ID:sFmcGxH8o

朝食を済ませた後、カードキーをフロントに預けて大通公園に沿って歩き始めた。
あやせが人目を気にしながらも、遠慮がちに俺の腕にそっと手を添えた。

「寒くねぇか?」

「ええ、大丈夫です」

初めて札幌時計台を見たときのあやせの顔が眼に浮かぶぜ。
昨夜もあやせに、時計台を見ずして札幌は語れねぇよなんて言ってあるしな。

「わたし、札幌時計台って写真でしか見たことがないんですが、
 小さな教会みたいな雰囲気がとても印象的で、一度は行って見たかったんです」

俺はあやせに変に期待を持たせちまったことを後悔し始めていた。
しかし、もう遅い。
大通公園をはずれてほんの少しだけ歩き、目の前の国道を横断する。

「お兄さん、ここから時計台まではけっこう遠いんですか?」

「いや、時計台ならあやせの目の前にあるじゃねぇか」

「えっ、どこですか?」

「だから、あやせの目の前だって」

あやせも初めのうちこそ唖然とした表情で時計台を眺めていた。
まぁしかし、札幌時計台を初めて見たやつなら当然のリアクションじゃねぇのかな。
賑やかな交差点の角に何気なく建っている札幌時計台。
立ち止まっているのは大抵観光客で、地元のやつは無視して平然と通り過ぎる……。

「う〜ん、もう少しのどかな所にあるのかと思っていたんですけど……
 でもでも、やっぱり来て見てよかったと思います」

通りすがりの人にデジカメを渡し、俺たちは二人仲良くフレームに収まった。
時計台を堪能した後は北大のクラーク像まで足を延ばしたり、ポプラ並木を散策したりと――
まあ、初めて札幌に来た観光客の定番コースってか。
30 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/10/26(水) 21:15:38.26 ID:sFmcGxH8o

ホテルは連泊で予約してあるからこのまま戻っても特に問題はなかった。
だけどあやせもいることだし、せっかくだから大通公園で時間を潰すことにしたんだ。
公園では大道芸を披露している人たちや、民族楽器を奏でるグループがいた。
あやせは興味津々で駆け寄り、そのひとつの観客の輪に加わった。

「そういや聞きそびれちまったんだけど、明日はどうするつもりだ?
 ホテルの予約は今日までだし、俺も明日は社宅へ行かなくちゃなんねえけど」

「明日はちょっと用事があるんです。
 ですから、わたしはわたしで別のホテルを予約しておきますから大丈夫です。
 月曜日に帰るかどうかは、その日になったら決めようと思っています」

あやせだってもう十九だし、俺が彼女の行動をとやかく言えるもんでもねえ。
それに、せめて今日明日くらいは我がままを聞いてやりたいしな。

民族楽器の奏でる音色に耳を澄ませ、珍しい楽器に瞳を輝かせるあやせ。
まあ、言ってみれば穢れを知らない幼い子供そのものだな。
その微笑ましい姿を見ていると、俺は可愛い娘を持った父親の気分だぜ。

「帰るとなったら、俺にも一応連絡してくれな。やっぱ、心配だしさ。
 ところでせっかく札幌まで来たんだし、あやせは何かやりたいことってねえのか?」

「そうですね。……じゃあお兄さん、札幌ラーメンをご馳走してください」

「ったく、相変わらず欲のねえヤツだな、おまえって」

そんなわけで近くのコンビニで観光ガイドを立ち読みし、歩いて行けそうな店を探した。
31 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/10/26(水) 21:16:34.18 ID:sFmcGxH8o

店は駅から少し離れたところにあったが、人気店らしく結構な客で込んでいた。
札幌にいる間は、休みのたびに一つひとつ食べ歩いてみるのもいい。
ガイドブックもいいけど、やっぱ自分の舌でお気に入りの店を見つけたいもんだ。
そうすりゃ今度あやせが遊びに来たとき……って、もう来ねぇかもしれんけど。

「やっぱ、札幌っつったら普通に味噌か?」

「う〜ん、そうですね。やっぱり、味噌ラーメンが一番好きですし」

「そっか、そういうことなら、俺も同じ味噌にすっかな」

「あっ、お兄さん……お兄さんはトッピングできるものは全部頼んでくださいね」

「全部……って、メニュー見んとけっこうあるし、そもそも何でそんなこと――」

あやせはふっと口元に笑みを浮かべ、俺を諭すように話し始めた。

「お兄さんが頼んだトッピングの中から、わたしが欲しい物だけをもらっていきます。
 だって、女の子がそんなにトッピングを頼んだら恥ずかしいじゃないですか」

注文してしばらく待っていると、あやせの頼んだ普通の味噌ラーメンと、
ありとあらゆるトッピングでてんこ盛りになった俺の味噌ラーメンが運ばれて来た。

「じゃあお兄さん、申し訳ありませんが、カニの足は当然もらっていきます。
 あっ、それからこれももらっていいですか?」

俺が唖然としている間に、あやせはチャーシューも味玉もコーンも……
海苔まで根こそぎ持っていっちまった。

「なぁあやせ、俺のラーメン……もやしとバターしか残ってねぇんだけどさぁ、
 チャーシューの一枚くらいは残してくれてもよかったんじゃねーの?」

「お兄さんのくせして、何をそんな女々しいことを言ってるんですか。
 もやしはこう見えても栄養があって、身体にいいこと知らないんですか?
 そんなこと言うと、もやしももらっていっちゃいますよ」
32 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/10/26(水) 21:17:32.30 ID:sFmcGxH8o

あやせとの攻防戦の結果、チャーシューを一枚だけ取り返すことに成功した。
こんなことなら、初めっからドンブリごと交換した方がマシだったじゃねぇか。
俺はチャーシューを麺の下に隠しながら何気にあやせに訊いた。

「そういや、明日は何か用事があるようなこと言ってたよなぁ」

「ええ、ちょっと人と会う約束があるんです」

あやせとは長い付き合いとはいえ、俺が何でも知っているわけじゃない。
札幌に知り合いがいても別におかしくもねえし、それに俺には関係のないことだ。
しかしまったく気にならないかといえば、気にはなる。

「お兄さん、わたしが誰と会うのか気になるんじゃないんですか?」

「べっ、別におまえが札幌で誰と会おうが、お、俺には関係ねーことだろうが」

「うふっ、無理していませんか? わたしのことが心配で仕方がないんですよね。
 わたしが会うのは女の人ですから、それならお兄さんも安心でしょ?」

ニヤニヤと笑いやがって、何でもお見通しってことかよ。
でも、あやせが男と会うつもりなんじゃねえかと勘繰ったって仕方がねえだろ。
誰がどう見たって、俺とあやせが吊り合っているとも思えねえしな。

ホテルへ戻る道すがら、あやせは時々立ち止まっては何かを探すように辺りを見回した。
大通公園の中にあるテレビ塔が目立つくらいで、他はどこにでもある都会の風景だ。

「どうしたあやせ。何か買いたい物でもあんのか?」

「いいえ、そうじゃなくて……明日からお兄さんはこの街で暮らすのかと思ったら、
 何となくこの街の風景を目に焼き付けておきたくなっただけです」

「……そっか」

ホテルへ戻っても寝るには早く、かといってあやせに手を出すわけにもいかんし、
寝るまでの時間は部屋のテレビで映画を見ながらやり過ごした。
途中、悪戯心でアダルトチャンネルに変えたら枕で思いっきり殴られた。
33 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/10/26(水) 21:18:55.54 ID:sFmcGxH8o

翌日、朝食を済ませると二人揃ってホテルをチェックアウトした。

「じゃあ俺は社宅へ行くけど、何かあったらすぐに連絡しろよ」

「分かってます。それでは、お兄さんもお気をつけて」

あやせを見送ってから、俺は営業所であらかじめ教えてもらった不動産屋へ向かった。
不動産屋で社宅の部屋の鍵を受け取るためだ。

社宅は会社から歩いて三十分ほどの所で、周りは閑静な住宅街だった。
スーパーやコンビニも近くにあるし、これなら急な買物でも便利だ。

社宅は築年数もまだ浅く、会社の資料で見たときの感じよりもずっと新しい。
部屋の中はリフォームしたばかりなのか、青畳のイ草の香りがして新鮮だった。
台所は小さなテーブルセットくらいは置けるスペースもあるし、
何よりも六畳の部屋が二つもあるんだから一人暮しの俺には申し分がない。

備え付けの家具は別にしても、家電製品はどれもこれも新品だった。
ここまで揃っていれば、新しく買うとしても食器とテーブルセットくらいかもな。
まあ、一人なんだし卓袱台でもいいんだけどさ。
部屋の隅には、宅配便の営業所で預かってもらっていた荷物がきれいに積まれていた。
不動産屋が気を利かせ、昨日のうちに運び込んでおいてくれたんだ。
俺はざっと部屋を掃除してから、それらの荷物を解き始めた。

その日の夜、俺は寝るまであやせからの連絡を待っていた。
しかし、無事を知らせるメールがあっただけで、あやせが電話を掛けてくることはなかった。
いっそのこと俺の方から掛けてみようかと一旦は携帯を手に取ったんだが、
考えあぐねた末に携帯を枕元に置き、部屋の明かりを消してそのまま床に就いた。


(つづく)
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/10/26(水) 21:21:44.37 ID:sFmcGxH8o
拙者、あやせたんペロペロではありますが、実は黒猫派でござる。
と言いながら、いつも黒猫が出てこない不思議。

札幌が舞台ですが、街の描写が不鮮明かつ適当なところはお赦しください。
次回からは、京介の会社とその周辺に舞台の中心が移ります。
オリキャラ全開になるので、性に合わない方は……
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) [sage]:2011/10/26(水) 22:41:58.49 ID:ob3Z64zvo

この微妙な距離感がなんとも言えないなー
ただNTRってのがあやせが寝取られるのか京介が寝取られるのか・・・
とにかく次も楽しみです
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/26(水) 23:42:12.28 ID:bhdctge70
乙でござる
貴殿の作品において黒猫氏なる方が登場する機会を待ちわびている次第でござる

...が、今作においては登場しなくとも不思議ではござらんですな
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/27(木) 00:34:34.97 ID:1pCYJ6PDO
まだ話が見えないな…
ワクワクするよ
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/10/27(木) 10:51:35.23 ID:jtI0qMY20
自分黒猫厨なんであやせがNTRれようが全然問題ないっす



そう思っていた時期が僕にもありました
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/27(木) 21:18:22.15 ID:ulWhN5b30
1完時黒猫>>桐乃
2漢以降あやせ>>>>>黒猫>>>その他
の俺にはここ最近の俺妹SSに対して死角はないな
40 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/10/27(木) 22:32:13.90 ID:jX4bSWxdo

送った荷物が元々少なかったこともあって、部屋は夜までには整理がついた。
引越しの挨拶回りもできれば昨日のうちに済ませておきたかったんだが、
日曜日だったせいか、何しろ不在の部屋が多くて思うようにはいかなかった。
俺の隣の部屋なんか表札もねぇし、一体どんな人が住んでるのかさえ分からねえ。

それはそれとして、ついに営業所へ出社する日がやって来た。
本社で研修を受けたとはいえ、これからが本番だと思うとやはり緊張するもんだ。
札幌営業所は、新人の俺を含めても総勢六名の小所帯。
そのうち一人は女性で、営業所の事務関係を一手に引き受けている。

そう聞くとベテランのおばちゃんみたいに聞こえるかもしれねえけど、
実は俺よりも三つ年下で、見た目は今どきのアイドルも顔負けの可愛い子だ。
顔が可愛いだけなら掃いて捨てるほどいるが、彼女の場合は……

「高坂さん、わたしの顔に何かついてますか?
 本社の研修で一通り教わったとは思いますが、今日は初日でもありますし、
 午前中はわたしの方から営業所のこととか説明させてもらいますね」

彼女は釧路の高校を卒業すると、現地採用で札幌営業所に昨年入社した。
というわけで俺より年下であっても、やはり先輩には違いない。
それは構わないんだが、桐乃やあやせと同い年っていうのが俺には……。

営業所への出社初日の今日、午前中は彼女からおもにレクチャーを受けて、
午後からは彼女を見習って得意先や取引先との電話応対。
他の先輩に同行しての得意先回りは取りあえず明日からということになった。
そんなわけで、今のところ営業所に残っているのはなんと俺と彼女の二人だけ。
そのうえ、机も隣同士……

「高坂さん、その前に、机に向かって電話を取ってる振りをしてください」

「……あの、一体それはどういう意味なんでしょうか?」

「どういう意味って、写真を撮るんですがそれが何か」

先輩は紺色の制服の上着のポケットから自分の携帯を取り出すと、
当然のように俺にレンズを向けた。
わけが分からん。
41 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/10/27(木) 22:32:43.50 ID:jX4bSWxdo

「あやせちゃんに頼まれたんです。
 高坂さんが営業所で仕事をしている姿を携帯で送って欲しいと」

先輩はさも当然のことのように言うが、何でこんなときに先輩の口からあやせの名前が?
俺は頭が混乱して、先輩が何を言ってるのかまったく理解できなかった。

「あ、ごめんなさい。……順番に説明しないとわかりませんよね。
 一昨日のことですけど、あやせちゃんが会いたいと言って連絡をくれたんです。
 それで昨日、駅前の喫茶店で初めて会ったんですけどね……」

俺は先輩の話を聞きながら、冷静にこの事態を分析した。
営業所にあやせが電話を掛けたとき、その電話を受けたのが他ならぬ先輩だったこと。
あやせは電話に出た相手が声色から若い女の子だとすぐにピンと来たらしく、
すかさず先輩の連絡先を訊き出したことなど……。

「あやせちゃんって、以前からティーン誌でモデルをやっていますよね。
 わたし、中学生のときからずっとあやせちゃんに憧れてたんですよ、あはは」

そう言いながら先輩は、俺の肩をバンバン叩いた。

「わたし夢でも見てるのかしらって思いました。
 だって、わたしの目の前に本物のあやせちゃんがいるんですよ。
 いきなり、『高坂の妻です』って自己紹介されたときはさすがに引きましたけど」

「面目ないです。……あいつ、頭が少しアレですから」

「そんなこと言ってもいいんですか? あやせちゃんに報告しちゃいますよ」

先輩の口から、『報告しちゃいますよ』なんて言葉を聞くとは思いもしなかった。
あやせの口癖である『通報しますよ』と一体どこが違うんだか。

「あっ、高坂さんに大切なことを言い忘れてました。
 わたし、あやせちゃん直々に高坂さんの監視役を拝命しました」

俺に向かって敬礼しないでください。
42 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/10/27(木) 22:33:18.30 ID:jX4bSWxdo

聞けば先輩の方から俺の監視役を買って出たそうだが、
俺が営業所で先輩に初めて会ったときの印象は、ここへきて脆くも崩れた。
いや、悪い意味じゃなくて、良い意味でってことだけど。

もしかしたら、顔に似合わず事務的な人かとも思ったんだ。
だってそうだろ、まだ入社二年目だっていうのに仕事は出来るし機転は利くし、
俺みたいなドン臭いヤツ、はなも引っ掛けないんじゃねぇか、なんてな。

先輩の場合、話してみるとそんな雰囲気は微塵も感じさせない。
とにかく明るい笑顔が印象的で、言ってみれば……あやせと同類かもな。

「高坂さんそういうわけでって、どういうわけかわかりませんけど……
 わたし、事務関係の教育係と監視役を兼ねてますのでよろしくお願いします」

訂正――あやせ以上に、性格はアレかもしれん。

その日は先輩の指示を仰ぎながら書類のコピーをしたり、
慣れない電話にビクつきながらも出たりで、あっという間に定時になった。
取りあえず初日は所長の計らいもあって定時退社が許された。

「高坂さん、もしよければ一緒に帰りませんか」

「一緒にって……先輩はどこに住んでるんですか?」

「あ、まだ言ってませんでしたっけ。――実は、高坂さんと同じ社宅なんです」

昼休みの他愛もない会話の中で、先輩の実家が釧路だとは聞いてた。
当然こっちではどこか借りて住んでるんだろうと気にも留めなかったんだが、
それがまさか、俺と同じ社宅だったとはな。
43 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/10/27(木) 22:34:01.19 ID:jX4bSWxdo

夕暮れのなか俺と先輩が社宅に着くと、左手に大きな紙袋の荷物を抱え、
右手に旅行鞄とコンビニの袋を提げた怪しげな人物が俺の部屋の前に佇んでいた。
不安そうな顔で俺と先輩が近づいて来るのをじっと待っている。

「おまえが抱えているそのでっかい紙袋は一体なんなんだ?
 それと、そのコンビニの袋も気になってしょうがねぇんだけどさぁ」

俺が訊くと、あやせは俯いて今にも消え入りそうなほど小さな声で答えた。

「この大きな荷物は、寝袋です。
 それから、こっちはマグカップと歯ブラシセット……」

脱力感が一気に俺を襲った。


(つづく)
44 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/10/27(木) 22:34:51.38 ID:jX4bSWxdo
週一の更新とか言いながら、チマチマ投下してすみません。
次回は少しまとめて日曜日にでも投下します。
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/27(木) 22:47:32.96 ID:ulWhN5b30

構わない
続けろ
続けてください!orz
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/28(金) 00:04:51.15 ID:CXK6pntDO
押しかけ妻いい…
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/10/28(金) 10:11:33.78 ID:xu/VWt68o
量が少なくてもちょくちょく更新してくれて嬉しいよ
この先に期待
48 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/10/31(月) 00:39:21.85 ID:o3htaoiVo

あやせは俯いたまま押し黙るし、俺も先輩の手前この場をどう取り繕えばいいのか。
そういや、ずっと以前にも今と似たような状況があったっけか。
桐乃のオタク趣味があやせにばれて、二人が仲違いしたあのときの状況にな。
別に俺とあやせがそうだってわけじゃねえけどさ、
あのとき、桐乃がテンパっちまった状況に今の俺が似てるってこと……。

先輩はこの状況をどう思っているのかと見れば、必死で笑いを堪えていやがる。
こうなったら仕方がない、あのときの俺の役回りを先輩に頼むしかねえ。
俺はあやせに気付かれぬように、先輩に目で合図を送った。

案の定先輩は、ここでわたしに振るんですかって顔で驚いていた。
勘弁してください。ここは先輩に頼るしか――

「高坂さんもあやせちゃんも、この場はそれくらいにして、ね……。
 せっかく遊びに来てくれたのに、高坂さんも意地悪なこと言わないでください。
 もしよければ、あやせちゃんはわたしの部屋に泊まってもらってもいいし」

先輩のとりなしは俺の期待どおりだった。
こういう言い方ならあやせも傷つかないし、俺のメンツもどうにか立つってもんだ。

「いや、先輩にそこまで迷惑を掛けるわけにはいかないですよ。
 それに、あやせのことは俺が責任を持たないといけないことですから」

「ねぇあやせちゃん、本当にわたしの部屋に泊まってもいいんだよ。
 だって高坂さんの部屋になんか泊まったら、あやせちゃんの貞操が……
 あっ、でも、あやせちゃんの許しがないと高坂さんは何にも出来ないんでしたっけ」

上手くとりなしてくれたのはありがたいんだけど、
このまま放って置くと今度は先輩が暴走するかもしれねえ。

「うふっ、これ以上言うと高坂さんに怒られそうですね。
 残念ですけど……今日のところは、わたしはおとなしく自分の部屋へ帰ります。
 あやせちゃんも遠慮なんかしないで、いつでも部屋に遊びに来てね」

再びケラケラと笑いながら先輩は自分の部屋へ入っていったんだが……
えっ!? 先輩の部屋って、俺の隣りだったのかよっ!
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/10/31(月) 00:39:58.85 ID:o3htaoiVo

あやせを部屋に招き入れてから、俺たちは二人だけのささやかな引越し祝いをした。
コンビニで買ったカップそばくらいしかなくてどうしようかと思ったところ、
タイミングよく先輩が乱入してきて料理を差し入れてくれた。

「高坂さん、それじゃあ現地妻のわたしは隣の部屋で控えていますね。
 あやせちゃんも身の危険を感じたら、壁をドンとやってすぐに大声で叫ぶんだよ」

「先輩、その現地妻って言い方は何とかならないんですか?」

あやせを見ると、俺と先輩の会話を楽しそうに笑顔で聞いている。
俺はてっきりあやせが不機嫌になるとばかり思っていたからかなり意外だった。
もしやこの二人、すでに密約でもあるんじゃねえかと勘繰ったくらいさ。

先輩に何度も礼を言ってから玄関まで見送り部屋へ戻ると……

「お兄さん、お隣りの先輩……とてもいい人でよかったですね。
 それに凄く可愛いし、渋谷とか原宿なんか歩いていたら絶対にスカウトされますよ」

「俺も初めて見たときから可愛い子だなって思ってたよ。
 あやせと同い年なんだよな、先輩って……性格はかなり違うみたいだけどさ」

「ふ〜ん、何だか興味があるみたいな言い方ですね。
 でも、あんなに可愛い人が、お兄さんを好きになるわけがないじゃないですか」

俺はなぁ、その台詞をそのまま――いや、十倍にしておまえに返してやりてえよ。
何でおまえみたいなヤツが、俺なんかを好きになったんだってな。

やがて後片付けも終わって俺は風呂を沸かし、あやせに先に入るように促した。

あやせが風呂に入っている間、手持ち無沙汰の俺は寝袋の包みを解いてみた。
たぶん駅前のデパートかなんかで買ったんだろう。
あいつがどこまで本気なのか俺には分からねえけど、今言えることは……
寝袋なんかであやせが寝られるわけがねぇだろってことさ。
50 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/10/31(月) 00:40:34.78 ID:o3htaoiVo

そう思っていると、風呂場からいつにもなく情けないあやせの声。

「……お兄さん。す、すみません……」

「どうした、何かあったのか」

「……パジャマがありません」

脱衣所のドアを細めに開け、今にも泣きそうな顔のあやせがそこにいた。
本日二度目の脱力感だ。
仕方なく、俺は自分のパジャマをあやせに貸してやった。

「少し大きいかもしれねぇけど、取りあえずこれで我慢してくれ。
 ……まさか、下着のまま寝るってわけにもいかねぇだろうしな」

「す、すみません。……お借りします」

普段はしっかりしているように見えても、どっか抜けたところがあるんだよな。
他人のためには脇目も振らず一生懸命になるのに……
まぁそんなヤツだからこそ、俺が惚れたのかもしれんけど。

「お兄さん、どうですか? 似合いますか?」

「やっぱ、少し大きかったようだけど、無いよりはマシだろ」

「ありがとうございます。本当に助かりました。
 下着のまま寝るしかないのかと諦めかけていましたから。
 でも、お兄さんには、そのほうが本当はよかったんじゃないんですか?」

「あやせ、もう一度風呂に入ってもいいんだぜ」
51 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/10/31(月) 00:41:13.81 ID:o3htaoiVo

あやせに軽く小突かれて、俺は着替えを持って風呂場へ行った。
俺一人なら風呂上りは素っ裸でもいいんだが、あやせがいたんじゃそうもいかん。
それにしても、あやせが入った湯船だと思うだけで妙な興奮を覚えちまう。
ホテルの風呂じゃその都度お湯を抜いちまうし、そうもいかない。

風呂から上がると、奥の部屋にはすでに俺の布団が敷かれていた。
布団の横にはきちんと寝袋が並べられている。
まったくあやせのヤツ、本気で寝袋で寝るつもりなのかよ。

あやせが俺のパソコンを勝手に起動して何かやっていた。
俺が風呂から上がっても、まったく気付きもしない。

「……あやせ、何やってんだ?」

「ああ、お兄さん、もうお風呂上がったんですか?
 お兄さんのパソコンにWebカメラを付けようと思って、今準備しているところです。
 そうすれば、わたしが家に帰ってもお兄さんを監視できますから」

「さいですか……」

こうまでアッケラカンと言われたんじゃ、俺だって怒るわけにもいかねえ。
まあ、これが隠しカメラだったらそうもいかねえけど、
初めからあることが分かってんだから、俺にも対処のしようがあるってもんさ。

あやせがカメラのセットアップを終えたのは、時計の針がてっぺんを指す頃だった。

「あやせ、寝袋は俺が使うから、おまえは俺の布団で寝てくれ」

「でも、それじゃあお兄さんに悪いじゃないですか。
 元はといえばお兄さんに連絡もせず、わたしが無理やり押し掛けたんですから」

「寝袋ってヤツは慣れてねぇとけっこう寝辛いもんなんだよ。
 俺はあやせにそんな思いをしてもらいたくねえし……いいから、貸してみな」
52 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/10/31(月) 00:42:05.57 ID:o3htaoiVo

寝袋の中で静かに瞼を閉じると、慌ただしかった今日一日が想い起こされる。
あやせと同い年で、底抜けに明るくて可愛い年下の先輩。
まさか、俺の部屋の隣りに住んでいたとは思いもしなかったけど。

「お兄さん……もう、寝てしまいましたか?」

薄闇の中、あやせが小さな声で囁いた。

「いいや、まだ寝てねえよ。……どうした、眠れねえのか?」

「わたし、お兄さんを好きになって……本当によかったです」

「……そっか……ありがとうな」


翌朝、俺は部屋の合鍵をあやせに預けてから家を出た。
新入社員のうちは誰よりも早く出社するもんだと分かってはいるんだが、
学生のあやせと一緒にいると、つい俺まで学生気分に戻っちまう。

営業所に到着すると、隣の先輩はすでに出社していて掃除を始めていた。
それほど壁が厚いわけでもないのに、いつ家を出たのかまったく分からなかった。
一声くらい掛けてくれてもいいのにな。

「おはようございます、先輩。昨日は、どうもご馳走さまでした」

先輩は俺の顔を見るなりニヤニヤする。

「どういたしまして。あやせちゃんは、今日帰っちゃうんですか?」

「どうですかね……。一応は合鍵を渡しておいたんですけど」

「ふ〜ん。なるほど、そういうわけですか。
 現地妻のわたしとしては、そのあたりがとても気になるところなんですけど」

朝っぱらから先輩のキツイ冗談に軽く付き合ったところで、
ちょうど営業所のドアが開いて他の先輩たちもどやどやと出社してきた。
俺は先輩との会話を惜しみつつ、お湯を沸かすために急いで給湯室へ向かった。
53 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/10/31(月) 00:42:53.08 ID:o3htaoiVo

今日はベテランの先輩に同行しての挨拶回りで一日が終わった。
名刺を渡しては簡単な自己紹介をして、後は何度も頭を下げることの繰返しさ。
いずれこの中の数社が俺の担当になるかと思えば手を抜くわけにもいかない。

事務所に戻って来たときにはとっぷりと陽も暮れちまって、
オフィスビルの窓には明かりが灯り、屋上のネオンも煌々と輝いていた。
事務をやっている先輩の机はきれいに片付けてあるし、たぶん定時で帰ったんだろう。
俺も日報を書き終えると、足早に会社を後にした。

「高坂さん、今お帰りですか?」

会社を出てしばらく歩くと、聞き覚えのある声に呼び止められた。
振り返ってよく見りゃ隣りの先輩だった。――会社でも社宅でも隣りなんだけど。
先輩は営業所の中ではいつも制服だし、私服姿をまだ見慣れていないせいもあって、
一瞬どこの美人に声を掛けられたのかと思っちまったよ。

「何だ先輩だったんすか。……まあ、日報を書くのに手間取っちまって。
 それより、先輩はとっくに定時で帰ったはずじゃないんですか?」

「まあ、いろいろとあるのよね。
 ……アパートに帰っても誰かが待っていてくれるわけでもなし、
 あんな素敵な恋人のいる高坂さんには、たぶん分からないでしょうけど」

彼女が一瞬だけ見せた寂しそうな表情を俺は見逃さなかった。
営業所の中ではいつも話題の中心にいるような先輩なのに、
皮肉とも取れない先輩の一言に、俺は先輩の別の顔を見たような気がした。

「高坂さん、わたし、ちょっとスーパーへ寄ってから帰りたいんですけど……
 もしよかったら付き合ってもらってもいいですか?」

「ええ、いいっすよ。俺も何か買ってから帰るつもりでしたから」

もしかしたら、あやせが何か作って待っているかもという淡い期待もあった。
あやせがいてくれたら、今日はあいつの手料理が食えるんじゃないか、なんてな。
俺は適当に棚を見て、カップラーメンと缶ビールだけをカゴに放り入れた。
54 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/10/31(月) 00:43:48.32 ID:o3htaoiVo

社宅へ向かう坂道を先輩と一緒に歩いていると、ふっと彼女が溜息を吐いた。
営業所の中では決して見せない憂いに満ちた表情に、俺はいささかの戸惑いを覚える。

「わたし、若い頃からモデルとかテレビに出ているような人たちって、
 普段わたしたちが見ている顔と本当の顔は違うんじゃないかと思っていたんです。
 あっ、もちろん見た目がっていうわけじゃなくて、性格がっていう意味ですけどね」

「先輩の言いたいことは俺もよく分かりますよ」

「でも、あやせちゃんはわたしが思っていたようなそんな人じゃなかった。
 見た目と同じで純粋で、わたしなんか足元にも及ばないくらい素敵な人でした」

あやせの純粋さは俺も認めるところだ。
いささかそれが暴走して、自己完結しちまうところが玉に瑕なんだがな。
何度あの性格に俺が振り回されたことか、今思い出してもよく耐えられたもんだ。

俺はあいつのそんな危うい性格が心配で仕方がなかった。
あいつの思い込みの強い生来の性格が、こんな形で現れるとは思いもしなかった。
どこかで区切りをつけないと、このままじゃあやせは……。

「あやせちゃんが、日曜日にわたしを訪ねて来たことは話しましたよね。
 ……うーん、高坂さんに話してもいいのかなぁ」

やがて先輩は、あやせと出会ったあの日の出来事をゆっくりと話し始めた。
初めのうちこそ互いに警戒していたそうだが、そこは同い年の二人だ。
すぐに意気投合して、その日はかなり遅くまでおしゃべりに花が咲いたそうだ。
あやせが俺に電話を掛けてこなかったのも納得がいく。

「あの日、別れ際にわたしに頭を下げてあやせちゃんが言ったんです……」

「あやせは先輩に何て言ったんですか?」

「……お兄さんをよろしくお願いします」
55 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/10/31(月) 00:44:44.86 ID:o3htaoiVo

このときになって、あやせが先輩に会いに行った本当のわけを知った。
俺は札幌に赴任することをあやせに黙っていたというのに……。
怒られてもなじられても当然なのに、それどころかあいつは頭まで下げて、
先輩に俺のことを頼んだんだ。

もう、限界かもしれなかった。

「何で高坂さんのことをそれほどまでに好きなんだろうって……
 あやせちゃんなら他にいくらでも素敵な彼氏が見つかるはずなのに、
 不思議に思ってわたしなりに考えたんです」

「何か……分かったんすか?」

先輩は俺の質問には答えず、俯きながらただ微笑むだけだった。

「人を好きになるって、もしかするとこういうことなんでしょうね……。
 ねぇ高坂さん、もしよろしければ今晩――」

先輩が言い掛けた言葉を急に止めた。
代わりに、営業所の中でいつも見せるような屈託のない笑顔で俺に言ったんだ。

「ほらっ、お兄さんも頑張らないと、ねっ」

気付けば俺たちはもう社宅のすぐ前まで来ていた。
部屋には灯りがともり、俺を待っていてくれる人がそこにいた。
56 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/10/31(月) 00:45:20.87 ID:o3htaoiVo

何だかんだと理由を付けて、あやせは俺の部屋に一週間も居座り続けた。
大学をずっと休むわけには行かないし、あやせも少し心配になってきたんだろう。
ようやく日曜日の午後になって、新千歳空港から羽田へ向かって飛び立った。

「また近いうちに札幌へ遊びに来ます。
 お兄さんに会いに来るわけじゃありませんから、勘違いしないでくださいね」

「じゃあ、何しに来るって言うんだよ」

「お兄さんの可愛い現地妻さんと、また会いましょうって約束したんです」

「いつの間に先輩と仲良くなってんだか……。
 とにかく気をつけて帰れよ。それから、家に着いたら必ず連絡してくれよな」

「わたしがいない間に先輩に手を出したら……わかっていますよね」

夕方になって社宅に戻ってみると、当然だが俺の部屋の電気は消えている。
もうここにはあやせはいないんだとあらためて実感した。
玄関のドアを開けるときに何気なくドアの横の表札に目を留めると――
俺の名前の横に、小さな文字であやせの名前が書いてあった。


(つづく)
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/31(月) 00:52:39.61 ID:zpKH5p8C0
乙乙です
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/10/31(月) 09:08:08.52 ID:C+ME3bec0
なんか盗聴器とか仕込まれてそうだな
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(福岡県) [sage]:2011/11/01(火) 10:47:52.26 ID:vLetRCqi0
あやせ可愛いな
しかし彼女の魅力はトラブルになったとき真価を発揮する

サーバを移転しました@荒巻 旧サーバ:http://vs302.vip2ch.com/
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/01(火) 12:45:09.17 ID:Ek2keFeDO
あやせ可愛すぎワロタ
てか一週間同棲しても何もなしとか京介の精神力は鋼鉄製かよww

サーバを移転しました@荒巻 旧サーバ:http://vs302.vip2ch.com/
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(東京都) [sage]:2011/11/04(金) 23:14:06.62 ID:Vgfub6si0
まだぁ
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/11/04(金) 23:40:31.63 ID:1V3VRP4Do
>>61
すいません。
総合スレ用にフェイトさんのSSを書いてました。
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/05(土) 00:39:29.37 ID:IlVvvuOX0
>>62存分に書きたまえ
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(東京都) [sage]:2011/11/05(土) 03:07:59.35 ID:FAzBfIU80
>>61
!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?
えっ?
期待していいの?
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(東京都) [sage]:2011/11/05(土) 03:13:11.99 ID:FAzBfIU80
すまん62だったo....rz
66 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/11/06(日) 22:03:12.41 ID:hxzUZCi2o

あやせが帰った翌日、仕事が終わって社宅へ帰る途中のことだった。
スーパーの前を通りかかると、ちょうど買物を終えて出てきた先輩と出くわした。
先輩とスーパーのレジ袋という取り合わせが如何にも不釣合いで可笑しい。

「また随分と買い込んだようですね。
 一人暮しなのに、そんなに買ったら余って困るんじゃないんですか?」

「今お帰りですか? お疲れ様です。
 わたしって食べるのも好きなんですが、料理を作っていると幸せな気持ちになるんです。
 ……で、気が付くといつもこうなっちゃうんですよね」

先輩は何ら悪びれる様子もなく、屈託のない笑顔でケラケラと笑った。
こうして会社帰りに先輩と並んで歩くのは何日ぶりだろうか。
あやせが俺の部屋に居た間、不思議と会社の帰り道で先輩と出くわすこともなかった。

「彼氏はいないんですか? 先輩みたく可愛かったら――」

「そんなことを訊く暇があるなら、荷物、持ってくれてもいいんじゃないんですか?
 ……でも、わたしのこと可愛いと言ってくれるなんて、ちょっと嬉しいです」

余計なことを言ったと慌てて口をつぐんだけど、別に怒ってはねえようだ。
俺が先輩からレジ袋を受け取ると、彼女は何だか嬉しそうな顔で俺の一歩前を歩く。
そして時々振り返っては、俺と離れ過ぎないようにと歩調を合わせた。

「ねぇ高坂さん、こうして歩いていると、何だか新婚さんみたいな気分になりませんか?
 旦那さんは少し地味で優しくて、いつも奥さんの尻に敷かれてるみたいな」

「地味っていうのは余計ですけど、先輩は恥ずかしくないんですか?
 その、なんつーか、俺みたいなのと一緒に歩いても……」

「うーん、正直なことを言わせてもらえれば少し恥ずかしいかな。
 わたしはまだ十九なのに、もうこの歳で結婚してるのかって思われてもね。
 これでお腹でも大きかったら、バッチリなんですけど」

このひとも日本語が通じねぇのかよっ。
なんで俺の周りの人間は、こうも日本語の通じねぇヤツばっかりなんだかなぁ。
札幌へ赴任してきてまだ間がないってのに、これじゃ先が思い遣られるぜ。
67 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/11/06(日) 22:03:46.31 ID:hxzUZCi2o

「そういや、あやせが先輩の部屋に泊り込んじまってすみませんでした。
 ずっと話し込んでたみたいですけど、迷惑だったんじゃ……」

「迷惑だなんてことは全然ありません。
 わたしって札幌に出てきてから、何だか会社と社宅を往復するだけの毎日だったんです。
 久しぶりに思いっきりおしゃべりができて楽しかったですよ」

先輩から迷惑じゃないと言ってもらえたのは有り難かった。
しかし、そのときの先輩の言葉に、俺が何か引っ掛かるものを感じたのも事実だった。
それが何を意味するのか、今の俺には思いもつかねえけど。

「高坂さん、あやせちゃんのお料理ってどんな感じなんですか?」

唐突に先輩から訊かれ、俺は何と答えればいいのかと戸惑った。

「あやせの料理は、よく言えば多国籍風というか……
 ぶっちゃけ、何がなんだか分からないものなんですけど、食えることは確かです」

「あはは、正直なんですね。……でも、高坂さんにとっては最高なんでしょ?」

「俺なんかのために、あいつが一生懸命に作ってくれるわけですからね」

「好きな人のためにお料理を作るのって、とっても楽しくて幸せなんですよね。
 ねぇ高坂さん、今日のお夕食はどうするつもりなんですか?」

「あっ、そういや、あやせはもう帰っちまったのか……」

ここ一週間ばかり、夕飯といえばずっとあやせが作ってくれていた。
先輩に訊かれてあやせの料理は多国籍風と言ったものの、決して不味いわけじゃない。
そもそも、あやせが作ってくれた料理に文句を付ける勇気なんて俺にはないし。

「もしよかったら、今日はわたしに作らせてもらえませんか?」

「そんなことをしてもらったら先輩に申し訳なくて……」
68 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/11/06(日) 22:04:22.28 ID:hxzUZCi2o

その部屋は、十九歳の女の子の部屋にしては余りにも素っ気なかった。
女の子らしいといえばドレッサーがあるくらいで、窓に掛かるカーテンも地味な色合いだし、
言っては悪いが俺の部屋と大して代わり映えもしない。
違うことといえば、読書好きなのか文庫本の詰まった木製の本棚があるくらいだ。

なりゆきで先輩の部屋にお邪魔したのはいいが、話の切っ掛けが見つからない。
俺には一応あやせという彼女モドキがいることは先輩も先刻承知のはずだ。
まさか、あやせに頼まれて俺を罠に嵌めようとしてるんじゃねえだろうな。

「どうかしたんですか? 何か緊張しているようにも見えますけど」

「い、いや、全然そんなことないっすよ。
 ……先輩の部屋にお邪魔するのって初めてじゃないっすか、だもんだから」

「遠慮なんかしないで楽にしてくださいね。すぐにお夕食の支度をしますから」

先輩は部屋着に着替えると、エプロンを身に着けて台所に立った。
部屋に一人残された俺は、台所で料理を作る先輩の後ろ姿を黙って眺めていた。
まあ、これはこれで中々いいかもしれん。

「高坂さん、もしよかったら、ビールでも飲みながら待ってますか?」

「あ、いや……あれ? 先輩ってビールとか飲むんですか?」

「高坂さんは、わたしがまだ未成年だということを忘れていませんか?
 でも、誰か来たときのために一応は買ってあるんです」

「そういうことだったんですか。……じゃあ遠慮なくもらってもいいですか?
 何だか俺、妙に喉が渇いちまって……すんませんけどお願いします」
69 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/11/06(日) 22:04:59.50 ID:hxzUZCi2o

先輩は缶ビールとグラスを部屋のガラステーブルの上に置くとすぐに台所へ戻った。
俺は自分が酒にそれほど強くないことを思い出したが、今更断るわけにもいかねえし……。
もしこれがあやせの仕掛けた罠だったら、喜んで掛かってやろうじゃねえか。

覚悟を決めてビールを飲みながら待っているうちに先輩からお声が掛かった。
俺がグラスを持って台所へ行くと、テーブルにはすでに二人分の食事が用意されていた。
あやせには申し訳ないんだが、久しぶりにまともな料理をこの目で見た気がする。

「やっぱ、先輩って料理が得意なんですね。何か申し訳ないって言うか……」

申し訳ないという気持ちは、この場合、先輩とあやせの両方に対してだがな。

「そう言っていただけると、わたしも作った甲斐があります。
 誰かのために料理を作るのなんて久しぶりなんですが、やっぱりいいものですね。
 気合が入るっていうか……作っていても何だか楽しいんですよね」

テーブルは白木の二人掛けの小さなもので、俺と先輩は向かい合わせに座った。
先輩が炊飯器の蓋を開けると白い湯気が立ちのぼり、旨そうな飯の香りが俺の胃を刺激する。
しかし、先輩は茶碗に飯をよそおうとして、ふとその手を止めた。

「……高坂さん、もう少し飲みませんか? わたしも少しだけ飲みたくなっちゃいました」

「いや、でも……そ、そうですね。先輩が飲むなら、俺ももう少しだけいただきます」

完全に断わるタイミングを逃しちまった。
ていうか、先輩が断わる隙を与えなかったと言うほうが正解かもしれん。
後で後悔しても知らんからな、俺。

「ねぇ高坂さん、今日は、わたしから先に注がせてください」

俺が先輩のグラスにビールを注ごうとすると、彼女は俺の手をそっと包み込み微笑んだ。
何やら俺を見つめる先輩の眼差しが妙に熱くて艶めかしい。
どうせまた俺をからかってるんだと分かっていても、この気持ちの高ぶりは抑えようがない。
70 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/11/06(日) 22:05:37.75 ID:hxzUZCi2o

「ねぇ、高坂さん……」

「はっ、はひっ。……な、何でしょう?」

「欲望に負けてわたしを襲ったりしたら、あやせちゃんに報告しますからね」

俺の引きつった笑いと、先輩の含み笑いとともに俺たち二人きりの夕食が始まった。
先輩はほんの少しのビールで頬を桜色に染め、それを見た俺は必死に料理を口に運んだ。
空きっ腹にビールは回りが速いことくらい俺だって知っている。
それにしても、先輩の料理はお世辞を抜きにして、見た目も味も本当に上出来だった。

「どうですか? 高坂さんのお口に合いますか?」

「口に合うもなにも、冗談抜きで本当に美味いっすよっ」

「じゃあわたし、いつでも高坂さんのお嫁さんにしてもらえますね」

先輩の冗談とも本気ともつかない台詞に、俺は咄嗟に返す言葉を失った。
料理が喉に詰まりそうになり、慌てて胸を叩くとようやく胃の中に落ちていった。

「あの、申し訳ないんですけど、あんまり俺のことをからかわないでください。
 先輩からそういう言われ方をすると……なんつーか……冗談で済まなくなりそうなんで」

「ごめんなさい。わたし、少し酔っちゃったみたい。……忘れてください」

「今日の先輩、いつもと違って少し変じゃないですか? 
 それほど酔っているふうにも見えないし、あやせが泊まったとき、あいつと何か……」

先輩は久しぶりに思う存分女同士でおしゃべりができたと喜んでくれたし、
一方のあやせも先輩と話ができて本当によかったと嬉しそうに俺に言っていた。
部屋で二人がどんな話をしようと、俺は女同士の話に首を突っ込むつもりは毛頭なかったし、
あやせとは帰ってからも何度か電話で話したけど、そのときの話が出ることもなかった。
71 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/11/06(日) 22:06:37.68 ID:hxzUZCi2o

先輩はテーブルに頬杖を突いて料理にも手をつけず黙り込んでしまった。
あやせが先輩の部屋に泊まったあの日、二人の間にどんな会話があったのか、
俺は黙って先輩の口が開くのを待つほかない。

「……あやせちゃんって、友だち、あんまり多くないんですか?」

「どういう意味ですか?」

先輩は小皿に載った料理を箸でつつきながら、言い出せなくて迷っているようだった。
あやせの交友関係を俺がすべて知っているわけでもねえが、
少なくともあいつに限っては友だちが少ないなんてことは考えられない。

「先輩も気付いたと思いますがあやせは思い込みが強くて、それに強引なところもあります。
 だけどあいつは見ての通り社交的だし、友だちが少ないとかそんなことは――」

「わたしの部屋にあやせちゃんが泊まったとき、少しだけ変だなって思ったんです」

「何を……変だと思ったんですか?」

「あやせちゃんって、高坂さんのこととなると夢中になって話してくれるんです。
 だけど、友だちのことやモデルの仕事のことを訊くと急に押し黙ってしまって……。
 おかしいとは思いませんか?」

先輩を見ていた俺の瞳と、俺を見つめる先輩の瞳がかち合った――

「……何か、思い当たることがあるんじゃないんですか?」

先輩が俺のグラスにビールを継ぎ足し、俺はそれを一思いに飲み干した。
俺はずっと胸につかえていた何かが、このとき一気に堰を切る感覚に襲われた。
ビールのせいで単に緊張の糸が緩んだというわけじゃない。
もしかしたら、俺の胸の内を誰かに――いや、先輩に聞いてもらいたかったのかもな。

「俺と付き合い始めてから、あやせは人が変わっちまったんですよ」


(つづく)
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(静岡県) [sage]:2011/11/06(日) 22:10:16.87 ID:ZPZAoSOq0
投下乙でした。
これまた続きが気になる所でお預けとは…
次回も楽しみにしてますね?
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/06(日) 23:59:50.22 ID:SG+zagNz0
先輩の容姿詳しくプリーズ
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/11/07(月) 01:26:15.55 ID:fI2uVJ4Bo
>>1としては、具体的なイメージはあるようでないようなものです。

SSの中で今までに明かになっているのは、
桐乃たちと同い年で髪は肩までのセミロングということだけです。

もし、綾波レイのように髪は青色で眼の虹彩は赤色じゃなきゃいやだとか、
灰原哀のように心は大人で身体は子供みたいな特殊な性癖がありましたら、
どうぞ適当に挙げておいてください。

SSの中に適当に織り交ぜながら描写させていただくかもしれません。
ちなみに、過度の巨乳だけは勘弁してください。
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/11/07(月) 01:34:43.57 ID:fI2uVJ4Bo
テスト
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/07(月) 05:12:06.17 ID:ig4skmMDO
続きが気になりすぎる
桐乃とかは出ないのかな
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(東京都) [sage]:2011/11/07(月) 12:17:54.49 ID:VE44+E9Y0


あやせは京介とつきあう以前から元々おかs
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/07(月) 14:39:49.72 ID:ATQd0/JIO
>>77
だがそこがいい
79 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/11/09(水) 01:31:02.02 ID:Kno1wkE2o

あやせの様子がどうも変だと思い始めたのは、なにも最近になってからの話じゃない。
始まりは俺がまだ大学四年だったときの桐乃の何気ない一言だった。

『なんだか、大学に入った途端にあやせって忙しくなったみたいでさぁ』

そのときは桐乃もそれほど深刻に気に留めている様子もなかったし、
俺に向かって言ったというよりも独り言に近かったから、俺も敢えて何も言わなかった。
だが俺は、いつしかあやせが桐乃と距離を置き始めていることに薄々気付いていた。

それでも高校を卒業する頃までは二人はよく一緒に買物に出掛けたり、
二人して俺をからかったりと仲良くやっていたからさほど深刻には考えていなかった。
親友とはいえ、俺だって学生のときに赤城と衝突することだってあったしな。

しかし俺が考えていたほど、事はそう単純でもなかった。
俺は就職先が決まってあやせと会う時間が増えた頃から、その思いは徐々に強くなった。
どういうことかといえば、あやせが桐乃の名を口にすることがなくなったことだ。

「高坂さん、ビール、少しぬるくなっちゃったから冷蔵庫から新しいの出しますね」

そのとき、俺はこの眼ではっきりと見たんだ。
冷蔵庫のドアポケットに缶ビールがぎっしりと並んでいる光景をな。
たしか先輩は、『誰か来たときのために一応は買ってあるんです』と言ってたはずだが、
これじゃ普段から飲んでますって言ってるようなもんじゃねぇか。

「先輩、俺はもしかして、見てはいけないもんを見てしまったんじゃ……」

「そう思うのなら見なかったことにしてください。
 もしもこの冷蔵庫の中の秘密を営業所の人に言い触らしたりしたら、
 わたしは高坂さんに襲われましたとか、あることないこと言っちゃいますから」

どちらがインパクトが強いかなんて考えてみてもしょうがない。
ヤってもないことをヤったと言われて俺は無実だと弁明しているうちに、
先輩のことだから示談が成立しましたなんて言って俺を一生奴隷にするかもしれん。
まあ、そうなったら諦めるしかねえけど。
80 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/11/09(水) 01:31:45.97 ID:Kno1wkE2o

冷蔵庫から出したばかりの冷えたビールを俺のグラスに注ぎ、
先輩は優しい眼差しで俺を見つめながらさり気なく言ってくれたんだ。

「もし、わたしなんかでよければ……話していただけませんか?」

話すとなれば桐乃のことはもちろん、かつて恋人だった黒猫のことも話すことになる。
知り合って間がなく、それも会社の同僚で先輩でもある彼女に話すようなことなんだろうか。
だけど俺はあやせが大好きだし、どんなことがあってもあいつを守ってやりたい。
もう、あのときと同じ轍は踏みたくはなかった。

先輩はくつろいだ様子で両手をテーブルの上で組み、すっかりと話を聞く体勢になった。
さて、どこから話し始めたもんかな。
俺は遠い日の記憶を手繰り寄せ、当時を懐かしむよう、ぽつりぽつりと先輩に話し始めた。

「俺が生まれたその日は雨が降ってたらしいんですが……」

「高坂さん、あやせちゃんはその時点でまだ生まれてないんじゃないんですか?」

「ですよね。……じゃあ、俺があやせと出会ったきっかけから話します」

先輩は時折頷いたり笑顔を見せたりしながら、俺の話を黙って聞いていた。
桐乃のオタク趣味については妹の名誉に関わることでもあるし、
そのあたりのことは女子中学生にしては変わった趣味だとか何とか言って誤魔化した。

当時から俺はあやせが好きだったけど、あの頃はまだ俺の一方的な片想いだと思ってたし、
あやせが俺のことをどう見てたかなんて知るわけもない。
いつもロクでもない相談事に振り回され、ロクでもない結果に肩を落としていた毎日さ。

「俺があるとき、あやせに結婚してくれって言ったことがあるんですが……
 速攻で防犯ブザーを鳴らされたこともありましたね」

「その頃から高坂さんって、あやせちゃんにセクハラしてたんですか」

まあ、今思えばそうなんだけどな。
81 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/11/09(水) 01:32:20.03 ID:Kno1wkE2o

高三になると桐乃がまだ留学中だったり黒猫が俺と同じ学校に入学してきたりで、
俺とあやせの接点というのは思ったほど多くはない。
環境の変化というか、俺の気持ちがあやせから黒猫に傾いていたことも原因かもしれん。
しかしそれも、夏休みの終わりと一緒に終わってしまった話なんだけど。

それまで俺の話を黙って聞いていた先輩の表情がにわかに険しくなったかと思うと、
グラスに残ったビールを一気に飲み干して吐き捨てるように言った。

「――馬鹿みたい」

「今、馬鹿みたいって……?」

「ええ、たしかに馬鹿みたいって言いましたけど。
 別に高坂さんに言ったわけじゃありません。……黒猫さんが馬鹿みたいって言ったんです」

別れてしまったとはいえ、かつての恋人を馬鹿呼ばわりされれば俺だってムッとする。
しかし、なぜか先輩の悔しそうな顔を見て、俺は喉元まで出掛かった言葉を飲み込んだ。

「ごめんなさい。高坂さんの彼女だったのに酷いことを言ってしまって」

「いえ、それはいいんですが……どういうことなのか教えてもらえませんか?」

先輩は小皿の料理を口に運ぶと、再び冷蔵庫から缶ビールを取り出した。
完全に居酒屋と化したこの台所は、俺から先輩に対する遠慮という概念を捨てさせた。
この人なら俺は何ら包み隠すことなく腹を割って話せるかもしれない。
そう思わせるだけの魅力がこの先輩にはあった。

「ねぇ先輩、黒猫が馬鹿っていうのはどういうことなのか教えてください」

「馬鹿を馬鹿って言って何が悪いんですか?
 別に、黒猫さんを馬鹿にして馬鹿って言ったわけじゃありませんよ」

「それじゃあ、黒猫は一体どういう意味の馬鹿なんですか?」
82 : ◆Neko./AmS6 [sage saga]:2011/11/09(水) 01:32:53.69 ID:Kno1wkE2o

「優しすぎるんです。……でもそれは勘違い、本当の優しさなんかじゃない。
 友だちのことを想ってそうしたことでも、一番傷つくのはその友だち自身なんです」

「……桐乃が一番傷ついたって先輩は言うんですか?」

「ええ、高坂さんの妹さんが一番傷ついたと思いますよ。
 だってそうじゃないですか、妹は兄のことが好きでも言い出せないんです。
 たとえ口に出せても、兄は妹の気持ちを受け止めてあげることしか出来ないんです。
 妹が兄のことをどんなに好きだといっても……無理なんですよ」

先輩は感情の昂りを抑えようともせず一気に言葉を吐き出したかと思うと、
おどけたような顔を俺に見せて淋しそうに笑った。

「ねぇ高坂さん、黒猫さんは今どうしてるんですか?
 今でもメールとかしたり、札幌へ来る前は時々どこかで会ったりしてたんですか?」

先輩に訊かれて、俺はゆっくりと首を横に振った。
黒猫は松戸の高校へ転校してからも桐乃や沙織との交流は続けていたが、
俺と顔を合わせることは意識的に避けていたのか、俺も自分から連絡するのはためらった。
桐乃からときおり黒猫の近況を聞くことはあっても、それで俺がどうするということもなかった。
いつしか俺の心の中からも、黒猫は出て行っちまったんだ。

「……妹から、黒猫は都内の美大に進学したってことは聞きました。
 その方面の才能は以前からあったみたいだし、あいつには合ってると思いますけど」

「何だか、あまり関心がなさそうですね。
 結局は高坂さんが振られたようなものだから、それも仕方がないのかな」

すっかりと冷静さを取り戻した先輩だった。
先輩が言うように、今はもう黒猫に対して俺の気持ちが薄れつつあるのは否定できない。
あのとき桐乃が自分の気持ちを押し殺してまで、俺を黒猫の元に戻そうとしてくれたのに。
それにしても、先輩はなぜ会ったこともない桐乃が一番傷ついたなんて言ったのか。
素直にその疑問をぶつけると、先輩は口元に笑みを浮かべて俺に言った。

「わたしも妹だから」


(つづく)
83 : ◆Neko./AmS6 [sage]:2011/11/09(水) 01:36:31.15 ID:Kno1wkE2o

シリアス展開で誤字脱字はほんと致命的でござる。
前回分の訂正です。

ビールは「注ぎ足す」もので、「継ぎ足す」もんじゃなかった。

ちなみに、『特にあやせを書きたかったわけじゃないんだ……』
という謎の言葉を残し、また次回までさようなら。
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/09(水) 07:16:53.57 ID:IB/CBf7W0
乙そして悦
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(東京都) [sage]:2011/11/09(水) 09:17:57.85 ID:HdDYPPzS0


そんな事書くとどこかおかしいあやせに消されるぞ
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/09(水) 14:46:34.32 ID:9H+c3/KDO
先が読めぬ……!
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/10(木) 12:08:41.87 ID:nYq3WlLIO
黒猫派を自称しながら一番魅力的なあやせを描くのが>>1ww
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/13(日) 20:04:59.21 ID:00tcyqsY0
総合スレに投下されたのも相変わらずあやせで安心した


89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/15(火) 03:00:19.06 ID:U6uftQESO
◆Neko.さんの投下が遅いと思ったら
本スレでブリジットちゃんとのお風呂の話を投下してた
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/21(月) 01:31:45.40 ID:IgBg3YYu0
総合の京介×桐乃良かった……


それでこっちはいつ書くんだいッッッ
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(埼玉県) [sage]:2011/11/21(月) 01:49:54.34 ID:haKj7DuCo
>>89
kwsk
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/21(月) 06:50:27.89 ID:d+TdoCCvo
>>90
あれ良かったねー。
黒猫派を自称してるのに桐乃派の俺が楽しめる桐乃SSを書くNekoさんパネェっすww
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]:2011/11/26(土) 21:25:48.16 ID:12KSP9Er0
あれ...まだ来ない?
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/27(日) 06:38:52.60 ID:iE182SMDO
他の書いてたし気長に待とう
95 : ◆Neko./AmS6 [sage]:2011/11/27(日) 19:15:59.36 ID:D0oVtXHmo
前略

このたび、諸般の事情により、誠に勝手ではございますが休止させて頂くこととなりました。
お付き合いくださった読者様にはご迷惑をお掛けすることとなり、大変申し訳ございません。
HTML化については先日依頼済みです。
またどこかのスレでお会いできれば幸いに存じます。

                                             敬具
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東) [sage]:2011/11/27(日) 19:34:37.62 ID:qaXbLXwAO
ど……どういうことだってばよ……?

先輩ちゃんとの今後は見られないのかー、残念。
おつかれさま
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/28(月) 00:20:04.72 ID:X5rCWQoDO
まじか…
残念だ
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]:2011/11/28(月) 23:29:33.85 ID:GcFzeF2m0
なん...だと?
まさかホントにお受験なのか?
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/29(火) 01:59:12.56 ID:ib3J7pzSO
く た ば れ
100 : ◆Neko./AmS6 [sage]:2011/11/29(火) 02:12:16.74 ID:rr4s8/d2o
まだスレが落ちていないようなので一言だけ。
多分、このトリップでは今後SSを書くこともないと思います。
総合の方で、過疎ると1レスだけ現れてたSSも今後はありません。
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/29(火) 04:02:59.57 ID:ekSDUuqDO
なん…だと…
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/29(火) 07:43:29.59 ID:sTTwqm8IO
>>100
今までお疲れさまでした。
俺妹関係のスレが殺伐としがちな中で、あなたの書くあやせSSに何度癒されたことか。
あやせだけでなく、どのキャラの話もそのキャラへの愛情も原作の読み込みも素晴らしかった。
いつの日か事情が変わってまた戻ってこられることを期待してます。


しかしあれだけ賑わってた俺妹SSスレも、今やどこも過疎。
良質な書き手さんがどんどんいなくなって寂しくなるなあ。
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/30(水) 12:41:58.76 ID:47/HYBZSO
まあ俺妹は完全なるオワコンだもんな仕方ないか
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