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転校生と遊戯王 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/06(日) 03:10:12.84 ID:NCPfTUCAO

「そうね、あんた。そこの青いスリーブのあんた。デュエルしましょ」

気がつけば白くて長い人差し指が僕の方を向いていた。
鼓動が高なる。
何でこんなことになっちゃったんだっけ…?
嬉しさと不安がない交ぜになった気持ちのまま、僕は現実から逃れるように昨日から今にいたるまでの出来事を思い返していた。
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旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
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木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1713351945/

いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713279251/

【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713277692/

こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713183168/

【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713091115/

アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
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エルヴィン「ボーナスを支給する!」 @ 2024/04/14(日) 11:41:07.59 ID:o/ZidldvO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713062467/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関西地方) [sage]:2011/11/06(日) 03:19:44.28 ID:aX1ccBUV0
き、期待なんてしてないんだからね///
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/06(日) 03:24:22.48 ID:NCPfTUCAO

「転校生?」

入学式が終わりざわつく教室の中で僕は聞き返した。

「ああ、外人らしいぜ。外人」

イヒヒ、とあまり品の良くない笑いを残してヒデオは続けた。

「金髪なんだと金髪。すげーよな」

ヒデオとは去年同じクラスになってからずっと親しくているが、どこからこういう情報を仕入れてくるのか僕は知らない。

「ふーん」

なるべく興味のないふりをしながら僕は新しい教科書に折り目などつけてはいたが、正直に言えば興味津々だった。
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/06(日) 03:40:04.21 ID:NCPfTUCAO
ヒデオに何か質問しようかとあれこれ悩んでいるうちに、チャイムの音が響いた。

「おっと、じゃまたあとでな」

言ってからヒデオは席に戻った。
ざわざわとまだ室内の喧騒は続いているが、さっきまでと比べると随分静かになったように感じる。
既に生徒達の興味は、級友との顔合わせからまだ見ぬ転校生へと移ったようだった。
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/06(日) 04:09:51.19 ID:NCPfTUCAO

……カツコツ

廊下から足音が響く。
ようやく担任が向かってくるようだ。
廊下を見てクラスメートの一部が何か騒いでいる。
「ガイジン、ガイジン」という声も飛び交いはじめた。
ちなみに僕はいかにも窓の外を見ているように見せかけて反射した教室内、黒板側の出入り口を凝視していた。
僕はこんな時でもクールなイメージを保つための努力は怠らないのだ。

…カツコツ

なんてやせ我慢をしているうちに、足音はかなり教室に近づいてきている。

カツコツ

徐々に高まっていく室内の熱気、それは扉の開く音と同時に最高潮に達した。

6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/06(日) 04:34:33.66 ID:NCPfTUCAO

わっ!!

と、何か爆発したんじゃないかと疑うくらいの喚声が起きた。
何事かと他のクラスの生徒が見にくるくらいだったから、相当の音量だったに違いない。
僕だって気を抜けば何か叫んでしまいそうだった。
心の準備をする時間をくれたヒデオには、いくら感謝してもしたりない。
ありがたや、ありがたやと脳内で二、三回ヒデオに向けた感謝の言葉をリピートさせる。


そう、そのくらい…


その子は可愛かった。


7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/06(日) 05:12:44.56 ID:NCPfTUCAO

(お、女の子かぁ…)

ヒデオの言った通り、転校生は外人で金髪だった。
どうやら緊張しているのか表情は硬いが、そんなことはまるで気にならない。
薄い眉、涼しげな目元、小さな口。
誰もが彼女の整った顔を食い入るように見つめては、時折思い出したように近くの友達とその驚きを共有していた。

「…というわけでこの子は今日から2-Aの生徒としてみんなと勉強することになった。
じゃあ、自己紹介してもらおうか」

その生徒達の様子に苦笑いしながら、担任は転校生にチョークを渡した。
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/06(日) 05:50:02.51 ID:NCPfTUCAO

伊都川 アリス

黒板に白い字が並ぶ。
綺麗な字だった。

「イトカワアリスです。両親の仕事の関係で、こちらの学校に転入することになりました。
よろしくお願いします」
よく通る声で転校生、伊都川アリスは自己紹介を終えた。
その淡白な内容と流暢な日本語に皆面食らった様子だったが、
「伊都川の席は…」
という担任の言葉で一斉に我に返ったようだった。
そして我に返ったのは僕も一緒で、チラリと自分の隣の席を確認してみる。
隣の席の生徒がもしも偶然休みなら、転校生の席は…。

「…?」

いた。
バッチリ出席していた。
そのうえ目があってしまった。

「…い、いやなんでもないです」

僕はクールに取り繕った。
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/06(日) 06:52:12.18 ID:NCPfTUCAO

結局伊都川さんは、他のラッキーな男子の隣に座ることになった。
少し残念だったが仕方ない。

そして、ホームルームが終わると彼女を待っていたのは質問の嵐だった。

「どこから来たの?」
「日本語うまいね」
「何人なの?」

不躾な質問の数々に彼女は渋々といった様子で、返答したりしなかったりした。
そんなことを休み時間を通して繰り返していき、様子を伺っていた僕が放課後までに理解したことは2つ。
彼女はアメリカ人と日本人のハーフである。
そして…愛想はあまりよくない。
皆初めは彼女が緊張してクラスに打ち解けられないのだと思っていたが、どうもそうではないことがそのうちに分かってきた。
いくつかのグループの昼食の誘いをきっぱり断り、学校を案内しようという女子達の提案も必要ないと一蹴。
話しかけても対応は渋々、これでは仲良くしようがない。
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/06(日) 07:32:40.69 ID:NCPfTUCAO
朝の喧騒はどこへやら、帰りのホームルームの時間には彼女に話しかけようとする生徒さえほとんどいなくなっていた。

唯一粘っているのは勧誘熱心な女バスの生徒達で、彼女の背の高さを必死に褒め称えている。
伊都川さんは無表情で、今にも帰ると言い出しそうな雰囲気だ。

「でもよう、正直がっかりだよな。アメリカ人てもっとこうフレンドリーだと思ってたのに」

おいよせ聞こえるだろ、と言いたくなるほど大きな声でヒデオが言った。
「せっかく可愛くてもさ、あんな態度じゃまともな友達だってできねえよな」

その言葉が聞こえたのか、伊都川さんを囲んでいた女バス連中がキッとこちらを睨む。
ヒデオも流石に失言に気づき、慌てて話題を変えた。

「…さ、さ、そろそろ帰ろうぜ!今週のゼアルはどんな超展開かなっ!と」
そう言ってヒデオが腰掛けていた僕の机を降りたのとほぼ同時に、伊都川さんの肩がピクリと動いたことに僕は気づいた。

11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/06(日) 07:51:16.35 ID:NCPfTUCAO

…もしかして今、ヒデオの言葉に彼女は反応したのだろうか。
もしそうだとしたら、どこに反応したんだろうか?
まさか、いやまさかな…
でも、試してみる価値はある。
僕は不自然にならない程度に大きな声で言った。

「お前中学生にもなってまだ遊戯王なんて見てんの?」

ピクっ!

あ、動いた。

「何言ってんだ、遊戯王はな!大人だってやってんだ!奥の深いゲームなんだよ、遊戯王は!!」

ピク、ピクっ!

やっぱり反応している。
しかも遊戯王という言葉に対して律儀に二回!

12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/06(日) 08:10:47.29 ID:NCPfTUCAO

これで伊都川さんが遊戯王に対して、何らかの関心を持っていることはほぼ確定した。
なんということだ、こんなかたちで予期せぬチャンスが僕に到来するとは!
しかし、どうする?話しかけるきっかけ程度にはなるかもしれないけど。
きっとその先が続かない、なぜなら…

「お前もデッキ組んでみろよ、そしたらデュエルの楽しさがわかるって」

ピク!

いちいち反応しちゃう伊都川さん可愛いなあ。
…じゃなくてそうだよ、そこだよヒデオ。
問題は僕に遊戯王の知識があんまりなくて、デッキも持ってないってことなんだよ。

13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/06(日) 08:34:54.45 ID:NCPfTUCAO

こんなことならやっておけばよかったな、遊戯王。
そしたら自然に伊都川さん遊戯王好きなの?とか聞きに行けただろうに。

「ねえ、伊都川さんって遊戯王好きなの?」

って先を越された!!
誰だ話しかけたの!!
あいつは確か、サッカー部の岩下!?
部活はどうした!部活は!も、もしかして…
僕は教室を見回し、やっと気づいた。
教室に残った生徒の数が明らかにいつもの放課後より多いことに。
話しかけさえしないものの、いやうかつに話しかけることができないものの、皆彼女とお近づきになるチャンスを狙っていたのだ。
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/06(日) 09:06:03.54 ID:NCPfTUCAO

気がつけば、やられたという顔をしているのは僕だけではなかった。
なんでかストレッチをしている陸上部の高野とか、さっきからずっとスクワットしてる柔道部の金田などあまりに不自然な居残りをしている連中が何人も目につく。
そしてその全員が僕と同じように、伊都川さんをチラチラと見ながらその会話に聞き耳を立てている。
それはなかなか異様な光景だった。

「な、なんで?」

サッカー部の岩下が話しかけてからたっぷり時間をおいて伊都川さんは聞き返した。
おそらくなんで私が遊戯王を好きだとわかったの?という質問だろう。
返事が遅かった為、岩下は無視されたのかと狼狽えていたのだが、その言葉で一気に元気を取り戻した。

「なんか遊戯王って言葉が気になるみたいだったからさ、もしかしたらって思って」

短くない沈黙、僕は固唾を呑んで二人を見守った。

「…こんなに早く、バレてしまうなんて」

伊都川さんは驚いたような顔をしたが、誰がみてもバレバレだったのは言うまでもない。
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/06(日) 09:45:37.93 ID:NCPfTUCAO
「俺も昔好きで集めてたよ。ブルーアイズとか持ってたし」

調子に乗って岩下が前にでる。

「へ〜、伊都川さんってそういう趣味があったんだ!意外だね」

が、伊都川さんを取り巻いていた女バス部員の一人が、岩下を押しのける。

「あと神のカード、とかも持ってたよ」

なおも屈せず前に出る岩下、流石サッカー部だけあってポジション取りが上手い。
ってそんなこと考えてる場合じゃない、このままではまんまとやつに伊都川さんを…
伊都川さん?
そういえばさっきからずっと押し黙っているが、どうしたことだろう。

「伊都川さん?」

岩下もそれに気づき顔色をうかがうが、なんと伊都川さんは…


「今日は帰ります、さようなら」


帰ってしまわれた。


16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/06(日) 10:31:28.96 ID:NCPfTUCAO

「ヒデオ…」

「断る」

僕はまだ何も言っていない。

「どうせデッキ貸せっていうんだろ?やなこった」

く、まさかヒデオに図星を疲れてぐうの音もでないとは…
伊都川さんがご帰宅あそばれてから数分。
もうすでに教室はもぬけの殻状態だった。
きっとどいつもこいつも明日までに、にわか遊戯王プレイヤーになる為に方々へ散ったに違いない。
…まあ、僕も似たようなものですがね。

「いつも女なんか興味ないって言ってたくせに、ちょっと可愛い子が転校してきたらこれだよ。
あ〜やだやだ、ケダモノケダモノ」

いくらなんでもそこまで言われる筋合いはないが、僕はぐっとこらえる。

「頼む!ヒデオ!一つでいい!俺に、お前のデッキを貸してくれ!」

渾身の目力をこめながら僕はヒデオににじり寄った。
全てはあの子の為に。

「ひっ!わかった、わかったからその顔で近寄ってくんな!」

殿!こやつめわかったと申しましたぞ!
うむ、でかした!
と僕は思った。

「じゃあ、デッキを貸してくれるんだな!?」

「………」

17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/07(月) 15:06:15.22 ID:IaNj5BWAO
「なあ、思ったんだが。お前俺より先に頼るべき相手がいるんじゃねーの?」

誰だろう、僕には皆目見当もつかない。

「とぼけんな、兄貴だよ!お前の兄貴!確か遊戯王やってただろ!」

言われてみればそんな気もしてきたが…

「やだよ兄ちゃんのおさがりなんて格好悪い」

こういう気持ちってなんなんだろう、とにかく嫌だ。

「贅沢言ってんじゃねー!!
いいか、俺だってデッキなんてそんなに何個も持ってるわけじゃないんだ!
出来れば人に貸すなんてことしたくないんだよ!」

…ここでヒデオをあまり怒らすのは得策じゃないな。

「わかったよ、デッキのことは兄ちゃんに頼んでみる」

僕はヒデオからデッキを借りるのを諦め今日はもう帰ることにした。

18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/07(月) 15:27:05.60 ID:IaNj5BWAO
兄は現在高校1年、弓道部に所属しているために帰りは帰宅部の僕より当然早い。
僕は家でただ待っているのも暇なので、学校帰りに近所のツタヤで遊戯王のアニメを借りた。

「ただいま〜」

「おう、おかえり」

「あれ、早いね」

鍵が空いてる時点で分かっていたが兄は既に帰宅していた。

「今日は練習なかったからな。ん、なんか借りてきたのか?」

「遊戯王のアニメ」

別に隠すことでもないので中身を出して見せる。

「へえお前がねぇ、どれどれ…」

遠慮なく物色する兄。

「GXか、なかなか良い趣味だな」

なぜか誉められた。
…それ以外のシリーズは借りられてたとは言いづらい。

19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/07(月) 15:58:33.36 ID:IaNj5BWAO
「さっそく見るか?」

わきわきを指を動かす兄。

「あ、その前にさ」

少し躊躇ったが決心して言う。

「兄ちゃん、遊戯王のデッキ貸してくれない?」
兄は怪訝な顔をする。

「なんだお前、いまさら遊戯王始めんの?」

「まあね。ダメ?」

「ダメってことはないが、なんで遊戯王なんだ?
カードゲームなら他にもあるぞ?」

僕がマイナーなモノを好むことを知っている兄は、よりニッチなカードゲームを紹介してくれる気なのだろう。
しかし、その気遣いは受け取れない。

「今、クラスで流行っててさ」

苦し紛れだったが嘘ではない。
きっと明日は男子のほとんどが自分のデッキを持ち寄るに違いないからだ。

「…なるほどな。まあ確かにカードは対戦相手がいてなんぼだからな」

僕らしくない言葉だったが、どうやら兄は納得してくれたようだ。

「ちょっと待ってろ」

そう言うと兄は、自分の部屋からちょうどテレビが入るくらいのダンボール箱を持ってきた。

20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/07(月) 16:33:38.75 ID:IaNj5BWAO
ダンボールの中身はカードの束のようだ。

「こんなに持ってたんだ」

まじまじと箱の中をのぞき込む。
カードは輪ゴムで十字に束ねられていて一つにつき百枚位はある。
全部でいったい何枚あるんだろう。

「何年かやってりゃ普通だよ。兄ちゃんの友達には部屋中カードだらけの奴だっているぞ?」

僕はそんな人間にはなるまいと思った。

「ほら」

兄は僕にカードの束を手渡す。

「どうせデッキだけ貸しても使い方がわからないだろうから実戦で教えてやるよ」

昔原作を読んだだけの僕にとってそれはありがたい提案だった。
それから兄は慣れた様子で携帯をいじり、僕に見せる。

「これがライフ。最初は互いに8000で、なくなったら負けだ。ってこれ位はしってるか」

見せられた携帯の画面には、電卓機能を使った状態で80008000と表示されていた。

21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/07(月) 17:55:49.96 ID:IaNj5BWAO
それから僕は兄から遊戯王についてのレクチャーを受けた。
内容は意外とスパルタで、僕は一度も勝たせてもらえなかった。

「このデッキが弱いんじゃないの?」

「エクストラデッキを使わないでもそこそこ戦えるようなデッキはそれしか持ってないんだよ」

「じゃあ、そのナントカっての使わせてよ」

「貴様が融合やらシンクロやらを使うなんて十年早いわ!」

まったく理不尽な兄だ。

「…いやでも、そうだな。これくらいなら入れててもいいか」

兄はそう言って僕に一枚のカードをくれる。

「これは?」

「お守りだと思って持っとけ。使い方はな…」

ーこうして遊戯王の基本的なルールと戦術を教わった僕は、明日はなんていって伊都川さんに話しかけようかな、などと考えながら眠りについた。

22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/08(火) 01:13:06.47 ID:yaO7zAdAO
その日僕はいつもより早く家をでた。
理由は、多分あの子に早く会いたかったからだろう。

「おっす、やけに早いじゃん」

ヒデオだ、通学路で会うのは珍しい。

「た、たまにはこんな日もあるさ」

「ふうん、まっいいけど。それより、デッキは借りられたのか?」

少し言いよどんだが、すぐに話題を変えてくれたので助かった。

「バッチリ、ルールも覚えた」

僕の言葉にヒデオはニヤリと笑う。

「“ルールを覚えた”だぁ?」

「なんだよ」

「これだから素人は…ひっひっひ。今日からじっくり教えてやるよ、いろいろとな」

ヒデオが何やら不穏な空気を漂わせているが、僕は気にしないことにする。
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/08(火) 03:01:18.83 ID:yaO7zAdAO
ヒデオと無駄話をしているうちに僕らは学校についていた。
昇降口を通り過ぎ、階段を上がる。
そして扉を開けると、普段なら清々しいはずの朝の教室は…
キナ臭い香りに満ちていた。
その発生源はおそらく、昨日の放課後残っていたであろう連中だった。

ちらちらと自分の懐を気にする者や、何かがびっしりと書き込まれたノートを読み込んでいる者。
中には堂々とカードをシャッフルしている奴までいる。
…見つかったら取り上げられるぞ。
しかし、肝心な伊都川さんの姿が見えない。
まあ今日は僕も少し早めにきたし、彼女も待っていればすぐ来るだろうと思っていたが。

「…遅いな」

「誰が?」

うおっ、しまった声にだしてた!

「せ、先生がさ。そろそろホームルーム始まる時間だろ」

あっそうと言うとそれ以上何も言わずヒデオは自分の席に戻った。

24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(京都府) [sage]:2011/11/08(火) 18:08:57.58 ID:wx03goMK0
投下分終わったら
今日はここまで、とか一言欲しいです


楽しみに待ってる
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/08(火) 19:01:59.59 ID:yaO7zAdAO
おお!!まさか読んでくれてる人がいるなんて!!

わかりました、投下終わる時はそう書きます!

26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/08(火) 19:17:08.08 ID:wKs9fhO+o

俺も見てるよー
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/09(水) 12:58:01.28 ID:ClXFIXaAO
ありがたやありがたや
今日の夜またつらつら書いてくので4649!
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/09(水) 19:43:42.12 ID:ClXFIXaAO
結局伊都川さんが教室に現れたのはチャイムが鳴る寸前。
しかもすぐにホームルームが始まってしまったため、誰も彼女に話しかけることはできなかった。
その後も彼女には話しかける隙がまるでなく、昨日と同様放課後になるまでまともに伊都川さんと会話できた者はいなかった。
僕はといえば一日中上の空で、伊都川さんの金色の後頭部をただ眺めていただけだった。
そして時間は運命の放課後。

「ちょっといいかな」

帰り支度を万全に済ませた伊都川さんに話しかけたのは、やっぱり昨日と同様に岩下だった。

29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/09(水) 20:14:53.70 ID:ClXFIXaAO
教室中の視線が岩下と伊都川さんに集まる。
やっぱり今日も人が多い。

「なんですか?」

伊都川さんは落ち着いた様子、というか無表情で振り向いた。

「昔使ってたデッキ持ってきたんだけどさ、その…」

岩下はしゃっしゃっ、とカードの束をシャッフルしながら言う。
どうやら少し照れているようだ、まあこの衆人環視の中では無理もない。

「カード」

「え?」

「スリーブに入れないと、傷がつきますよ」

伊都川さんはそれだけ言うと、自分とその一つ前の机を向かい合わせるように動かした。
その伊都川さんの意外な行動に岩下は言葉を失う。

「…どうしたんです、するんでしょう?デュエル」

岩下もまさかこんなにスムーズに話が進むと思ってはなかったのだろう。
予想外の展開に面食らってはいたがすぐに調子を取り戻す。

「あ、ああ!やろうやろう!」
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/09(水) 20:38:15.24 ID:ClXFIXaAO
伊都川さんの対面の席に腰掛けた岩下は執拗にデッキをシャッフルし続けている。
まだ緊張しているようだ。
それにしても伊都川さんはよくわからない人だ。
昼飯の誘いや校内の案内は断ったというのに、デュエルの申し出にはこんなにあっさりのってしまうなんて。

「なあ伊都川、ここで見てていいか?」

「どうぞ」

…姿が見えないと思ったらヒデオのやつちゃっかり観戦に最適な位置を陣取っている。

「おい、お前も来いよ!見てていいってさ!」

「お、おお」

こういう時はヒデオのアグレッシブさが羨ましい。
僕は感謝しつつヒデオの隣に並んだ。
今まで遠巻きに眺めていた連中も席についた二人を取り囲むように集まってくる。
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/09(水) 21:11:38.86 ID:ClXFIXaAO
クラスメート達の注目を一身に浴びながら、伊都川さんは鞄からタバコの箱ほどのケースを取り出す。
その中身は当然デッキだった。
取り出された白いカードの束は伊都川さんのイメージにピッタリで、僕はわけもなくドキドキしてしまう。
それから伊都川さんはデッキを所定の位置に置くと、また鞄から何かを取り出した。
それはぱっと見、厚みのある電卓のように見えた。

「デュエリストデバイスかよ。スリーブも二重だし、本物だなあいつ」

ボソボソとヒデオが何かつぶやいたが、僕にはほとんど意味がわからない。

「じゃ、始めましょうか」

そう言ってから伊都川さんは先ほど取り出した機械を何やら操作した。
するとメールの着信音のような音と共に二人のライフポイントとおぼしき数字が電卓(仮)の液晶画面に表示された。

32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/09(水) 21:43:33.38 ID:ClXFIXaAO
歓声が上がる。
ナンダアレ、スゲー、とまだ始まってもいないのにギャラリーはなんだか盛り上がっている。

「どうぞ、あなたからでいいですよ」

伊都川さんは岩下に先攻を譲り、デュエルが始まった。

「ああ、いいの?じゃ遠慮なく…ドロー」

カードを引いた岩下はしばらく手札を眺めてから《エルフの剣士》を召還した。

「「おー!!」」

ずいぶんと懐かしいカードの登場で、教室に「あーそんなのあったねー」という空気が流れる。

「んー、手札悪いな。ターンエンド」

言い訳してから岩下がターンを終える。
僕はなんだか気になって伊都川さんの方を見た。
するとお祭り騒ぎのような室内で一人、何故か彼女だけは険しい表情をしていた。

33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/09(水) 22:25:43.13 ID:ClXFIXaAO
結論から言うと、この勝負は伊都川さんの圧勝だった。
あっという間の出来事で僕には何が起こったのかよくわからない。

「つ、強いんだね!伊都川さん」

負けた岩下はへらへらと笑っている。

「もう一回やらない?」

伊都川さんの眉が僅かに動いた気がした。

「何度やっても同じです」

そうつれなく言うと伊都川さんはデッキを片付け始めてしまう。
ま、まずい!
ここで彼女が帰ってしまったら、もう今後仲良くなるきっかけなんてあるわけないに決まってる!
こ、こーなったら僕も男らしくっ…!


「待って!」

「まった!!」

「あのっ!」

「すいません!!」


え?

34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/09(水) 23:00:02.36 ID:ClXFIXaAO
さあ帰ろうと言わんばかりの伊都川さんを引き留める為に響く、いくつもの声!声!声!
そう、今の今までただのギャラリーに過ぎなかった男子生徒たちが、ここにきてその本性を表したのだ。

「「俺達と!!デュエルしてください!!」」

う、うわー!まじで男子生徒全員がデッキを持っているぅー!!
なんてさもしいヤツらなんだー!!

「ほら、お前もだろ。恥ずかしがってないで行けよ!」

ドン!とヒデオに背中を押される。
…はいそうです、僕もそのさもしい男子の一人でした。

「…で、誰からするんですか?」

伊都川さんが面倒くさそうな様子で僕らに訊ねる。
その視線は冷たく僕らを一瞥して…
な、なんだか悪くないぞ?
こ、これが被虐心と言うものか。
いやいや待て待て、僕はマゾじゃない、多分。

「ワシが相手じゃあ!!」

ってまた先を越された!
そしてこの無駄な男らしさは…柔道部の金田!

35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/09(水) 23:04:48.11 ID:ClXFIXaAO
じゃあ今日はここで終わります。
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/09(水) 23:48:53.65 ID:p8looO/Ho

遊戯王ssとかはたいていアニメの世界だからこういうのは新鮮でいいな
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/10(木) 16:34:00.85 ID:F76gF6uAO
ありがとうございやす
励みになりますです
今日も夜中につらつら書きますのでどうぞ宜しく
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/11(金) 00:29:48.55 ID:ingxwp2AO

「攻撃」

ピピピピブッ!

「参りました」

 ライフがなくなると同時に深々と頭を下げる金田の姿は無駄に男らしく、堂々としたその姿には貫禄すら感じさせる。
 これこそが敗者のあるべき姿だろうと僕は感心さえしていたが、伊都川さんの表情は相変わらず険しい。

「それ、あなたのデッキじゃないですよね?」

 伊都川さんの言葉に金田が顔を上げる。
気まずそうなその顔をみるとどうやら図星のようだ。

「扱いきれもしない他人のデッキで、よくあんな自信満々につっかかってこれましたね」

伊都川さんの辛辣な言葉に、金田の表情が歪む。

「あと最低限ルール位は覚えて下さい。
サイクロンで発動後の通常トラップは無効にできませんから」

僕は遊戯王と言えばみんなでわいわいやるものだと考えていて、今日のこともその延長のつもりでいた。
 だが伊都川さんの認識はどうも僕やクラスメートたちのそれとは違っていたのかもしれない。
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/11(金) 01:12:46.02 ID:ingxwp2AO

「次、やる人いないなら帰りますけど、私」

 伊都川さんは肩まで伸びた髪をかきわけながら言う。
 それはまるで人を小馬鹿にしているような仕草だった。

「えらそうに…」

 ぼそっと誰かが言った。

「さすがガイジン」

「たかがカードゲームだろ」

 そんな声も聞こえてくる。
  
バンッ!!

そしてそれらの言葉に応えるようなタイミングで、大きな音が響いた。

「たかが、カードゲーム、ですって…?」

それは、彼女が机を叩いた音だった。

40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/11(金) 01:30:12.43 ID:ingxwp2AO
「悪かったわね!子供騙しのカードゲームに毎月毎月小遣い全部つぎ込んで!!
何よ!!そっちがやろうって言ってきたんじゃない!!
私だって別にあんたたちみたいな素人とデュエルなんてやりたかなかったわよ!!
それをちょっと足りないとこ指摘したくらいでグチグチグチグチ!!
あー、もー!!新しい学校じゃ目立たないようにしようって頑張ってたのにぃ!!」

…伊都川さんのあまりの変貌に僕は驚きを隠せなかった。
彼女の言葉は早口で聞き取りづらいところもあったが、要するに猫をかぶっていたらしい。
ショックだ!僕の脳内にいた、おしとやかな伊都川さんが崩れ落ちていく。
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/11(金) 02:07:44.95 ID:ingxwp2AO
伊都川さんは荒くなった呼吸を整える為に軽く深呼吸をすると何故かこちらを向き、言った。

「そうね、あんた。そこの青いスリーブのあんた。デュエルしましょ」

気がつくと伊都川さんの白くて長い指が僕の方を向いている。
わからない、いくら考えても、どうしてこんなことになってしまったのか。

「あんたでしょ、昨日遊戯王がどうとか言ってたの」

「え、え?」

彼女と目が合う、灰色の瞳。吸い込まれるような感覚。

「わざと何度も言ってだでしょ!大きな声で」

好奇の目線が集まってくるのを感じる。
鼓動が高鳴り、頭に血が上るのを感じる。

「こうなったのも全部あんたのせいなんだから!
って黙ってないでなんとか言いなさいよ!」

「お、俺は…その…」

 言葉が出ない、舌が動かない、頭が回らない。 僕はどうしていつもこうなんだろう。
 大事な場面でテンパってしまう。
とにかく、何か、何か言わなきゃ、何か…!
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/11(金) 03:03:14.13 ID:ingxwp2AO

「そのへんにしとけよ」

 半ばパニック状態の僕を助けてくれたのは、ヒデオだった。

「なあ伊都川、いいじゃねーか遊戯王好きなのがバレたって。胸張って好きだって言えば何も問題ないだろうが」

ヒデオが落ち着いた様子で伊都川さんに近づいていくのを、僕はただ呆然と見ていた。

「よ、よくないわよ!!こんな子供みたいな趣味!!」

「前の学校でそうやってからかわれでもしたか?」

ヒデオの言葉に伊都川さんの顔が強張る。

「図星か…あのな、そんなバカ共はほっときゃいいんだよ。
人間自分の気持ちに正直に…」

「うるっさーーい!!何にも知らないくせに!!勝手なこと言わないでよ!!」

 バシバシと机を叩く伊都川さん。

「…駄目だコイツ、もう帰ろうぜ」

 諦めたようにヒデオは言った。

「ちょっと待ちなさい!!そいつは今からあたしと勝負するのよ!!
それで!私が勝ったら土下座させてから靴の裏ナメさせてやるんだから!!」

 このあまりにも過激な伊都川さんの台詞に、僕は逆に冷静さを取り戻す。

「いいよわかった、デュエルしよう」

「おい相手すんな、帰るぞ」

ヒデオが袖を引いたけど、僕は動かない。

「負けたらなんでも伊都川さんの言う通りにするよ、そのかわり…」

 
「俺が勝ったら、付き合って下さいっ!!!!」

前言撤回。
僕はまだ全然、冷静になんてなれてなかった。

43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/11(金) 03:04:10.67 ID:ingxwp2AO
えっと…終わります。
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(東海) [sage]:2011/11/11(金) 03:45:02.81 ID:gtmeYPzAO
追い付いた、文章丁寧でいいね!そしてこれからデュエルかwktk

とりあえず乙
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(東海) [sage]:2011/11/11(金) 03:55:57.14 ID:gtmeYPzAO
追い付いた、文章丁寧でいいね!そしてこれからデュエルかwktk

とりあえず乙
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/11(金) 17:32:08.58 ID:kD+RxPwOo

回想終了でこれからデュエルかな?wktk
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/11(金) 23:51:03.73 ID:ingxwp2AO
温かいレスありがとうございますです
続きは明日投下しようと思いますのでどうぞよろしくです
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/13(日) 00:42:02.61 ID:Njg2wx6AO
僕の突然の告白を聞いた伊都川さんは一瞬呆気にとられたような顔をした。
 しかしすぐその表情は不適な笑みに変わる。
 やはり彼女はこと遊戯王において相当の自信を持っているのだと僕は確信する。
 そう、彼女は自分が負けるなんてこれっぽっちも考えてないのだ。

「ふーん、あんた良い度胸してるわね」

含みを持たせた伊都川さんの声。
 その声音に背筋がぞくぞくと粟立つのを感じる。

「一発勝負で先攻は私、それでいいわね?」

 僕は頷き、席についた。
 こうなったらもう後には退けない。

「あーあ、けだものけだもの…」

ヒデオが何か言っていたが、僕は気にせずデッキを机においた。

「あ、そうそう。
後で揉めるのも嫌だから一応確認しておくけど。
私が負けたら私はあんたと付き合う。
あんたが負けたらあんたは私の奴隷になる。これでいいわね?」

あれ、そんな条件でしたっけ?

「いくわよ!私のターンドロー!」

 あ、ドローしちゃった。
…こうして、なんだか腑に落ちないところを残したまま僕と伊都川さんのデュエルは始まった。
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/13(日) 01:39:39.46 ID:Njg2wx6AO
えっと最初は五枚引いて…。
おお、結構いい感じ。
僕はまずまずの手札がきたことにほっと息を撫で下ろす。
さて、伊都川さんはどうくるかな?

「いくわよ、手札から《粋カエル》を捨てて《鬼ガエル》を守備表示で特殊召還。
召還時《鬼ガエル》の効果で、デッキから《黄泉ガエル》を墓地に送るわ」

なんだか可愛らしいモンスターがフィールドに守備表示で召還される。
守備力は…500か、あんまり強くないな。

「私はカードを一枚セットしてターンエンド」

 フィールドには伏せカードと低レベルモンスターが一体いるだけ。
それで終わりとは僕もなめられたものだ。
それとも所謂事故ってやつだろうか?
 気にしてもしかたないので僕はカードをドローする。

「俺のターンドロー」

 ええっとこのカードの効果なんだっけ…。

「ドローフェイズ、《鬼ガエル》をリリースして《水霊術ー「葵」》を発動。
手札を一枚墓地に送らせてもらうわよ」

え?

「何かある?なければ手札見せて」

よくわからないけどあのトラップの効果なのだろう。
 僕は言われるままに手札を見せる。

「地砕き、貪壷、幽閉、ミラフォ、ブレイカーにグリーンガジェットか。
エクストラが一枚ってことは除去ガジェかマシンガジェってとこかしら…
ま、とりあえずこれで」

 伊都川さんはぶつぶつ言いながら僕の手札を墓地に送った。
送られたのは《グリーンガジェット》。
これは、ちょっとまずいかもしれない。
僕は昨日の兄との会話を思い返す。
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/13(日) 02:26:21.32 ID:Njg2wx6AO

〜〜〜

「いいか弟よ、お前に渡したデッキは除去ガジェット。
略して“除去ガジェ”だ」

「コンセプトは“手札を減らさず除去して殴る”だ」

「単純だがそれ故に強く、初心者にも扱い易い」

「三色のガジェットには召還時にそれぞれ別の色のガジェットを手札に加える効果があり、それらは循環の関係にある」

「グリーンはレッドを、レッドはイエローを、イエローはグリーンを…という具合にな」

「つまりガジェットを召還するだけで、毎ターン相手より一枚多く手札を得ることができるというわけだ」

「ピンときてないようだな弟よ。
まあアドバンテージの概念はまだ実感しづらいだろうからあまり気にしないでいい」

「とにかくこのデッキで戦うときは、ガジェの効果が使えなくなる《スキルドレイン》や《ライオウ》。
それと《ダストシュート》などのハンデスにも注意だ」

「“除去ガジェ”ははガジェットの恩恵が得られなければいずれジリ貧になる。
手札のガジェットは切らさないようにするんだぞ」

〜〜〜

 
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/13(日) 02:57:36.31 ID:Njg2wx6AO
 …早速ガジェットなくなっちゃったよ兄ちゃん。
 でもあんなの防ぎようがなかったよ。

「ちょっと!ぼーっとしてないで、あんたのターンよ」

 おっと、そういえばそうだった。
 ん?ていうかよく見たら伊都川さんのフィールドがら空きじゃないか?
 これは…チャンスかも。

「俺は《魔導戦士ブレイカー》を召還 」

「えっと、“このカードが召還に成功した時このカードに魔翌力カウンターを1つ置く、最大1つまで。
このカードに乗っている…」

「ストップ!いちいち全部読み上げないで!時間かかってしょうがないでしょ」

「お、おう」

 自分の確認もかねて音読してたんだけど、止められてしまった。
 ええとつまりこのカードは、召還すると攻撃翌力がアップするカウンターを一個自分に乗せられて、それを消費することで魔法・罠カードを破壊できるって感じかな。
 まあ伊都川さんのフィールドには魔法も罠もないから今は関係ないけど。
 じゃあそろそろ攻撃するとしますか。

「《魔導戦士ブレイカー》でダイレクトアタック」

52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/13(日) 03:40:31.82 ID:Njg2wx6AO
「ダイレクトアタックされた時、バトルフェーダーを手札から特殊召還。バトルフェイズを終了するわ」

 な、なにそれ!?そんなカードあり!?

「ほら、まだあんたのターンよ!」

 う、ええとどうしよう、とりあえず罠を。

「か、カードを二枚伏せ…」

 いや、待てよ。伊都川さんは僕が《次元幽閉》と《ミラーフォース》を手札に持ってることをさっき見たはず、だったら…。
 僕は伏せようとしていたカードを直前で変える。

「…てターンエンド」

 少し間延びしたようになってしまったが、伊都川さんは特に怪しんではいないようだ

「私のターン、ドロー」

「《黄泉ガエル》を墓地から特殊召還」

 墓地から特殊召還?

「スタンバイフェイズ時に自分フィールド上に魔法・罠カードが無ければ《黄泉ガエル》は墓地から特殊召還できるんだ」
「へ〜」

 今のカードの効果について伊都川さんに聞こうか迷っていると、後ろからヒデオが教えてくれた。
 っていうかヒデオまだいたんだ。
 振り向くと心臓の辺りを叩いて見せてくる。
 解説は任せとけ、とでも言いたいらしい。

「バトルフェーダーをリリースして《虚無魔人》を召還」

 おお、上級モンスターだ。
 攻撃翌力は2400。

「《虚無魔人》がいる限りモンスターを特殊召還することはできないわ」

 僕のフィールドのモンスターは《魔導戦士ブレイカー》が一体で、その攻撃翌力は1900。
 攻撃翌力では完全にまけている。

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 それでも《虚無魔人》で攻撃してこなかったのはおそらく罠を警戒してのことだろう。

53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/13(日) 03:49:44.20 ID:Njg2wx6AO
中途半端ですみませんが
今日はここまでです
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西・北陸) [sage]:2011/11/14(月) 23:18:52.59 ID:ZKCH45WAO
女はガエル帝か?
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東海) [sage]:2011/11/30(水) 18:35:18.83 ID:zRFQxIkAO
>>あれれ〜?
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