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妹「ボクも連れて行って!」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :nyan [saga]:2011/11/06(日) 23:43:35.33 ID:j596Ywtl0
短編の小ネタです。
地の文中心ですが、すぐ終わりますので、
気が向けば読んでやってください。
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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
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全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
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笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(京都府) :2011/11/06(日) 23:43:48.00 ID:khzoj3ero
さむいはやく
3 :nyan [saga]:2011/11/06(日) 23:49:10.01 ID:j596Ywtl0
それは雪が降る日。
雪は降り積もり、世界は純白に変わる。
白い世界。
美しさに喜び、はしゃいだあの頃はどこにいったのだろう。
分からない。
何もかもが遠い記憶の果てで、思い出す事すら叶わない。

「あにぃ」

白い世界で、彼女は愛しい人の呼び名を呼んでみる。
優しく微笑む兄。
普段と変わらぬ優しい微笑。温かく自分を包む。
だけど、今日は……。


彼は兄で、彼女は妹だった。
幼い頃はよく共に遊んでいた。
毎日くたくたになるまで走り、泥だらけで帰宅した。
女の子らしくしなさい、と母に叱られるのが日課だった。
それでも、妹は兄といつまでも走っていたかった。それが願いだった。

ねえ、神様、ボクはどうして女の子に生まれたんだろう?

いつ頃からだったか、妹はそう思うようになっていた。
それは多分、自分が中性のような存在から、女の子に変わってしまったあの頃。
突然に襲った腹痛。
少しずつ変わっていく自らの身体。
生理。そして、性徴。
妹はそれを受け入れることが出来なかった。

どうして、いつまでも子供のままでいられないのだろう?
何故、このように悩むように生きなければならないのか。
自分でも分からない。
増して兄妹でさえなければ、別の形で兄と共に居られたかもしれないのだ。
それが妹の胸を痛める。

ねえ、神様は人間を真っ直ぐに創ったはずなのに、どうしてボク達は複雑に生きているんだろう?
迷い続けて、どうして生きていくんだろう?

自分は女として生きていくべきなのだろうか。
兄と共にあれないまま、ただの妹として。
それすらも分からない。
兄は自分の悩みをよく聞いてくれた。
太陽のような微笑で、彼さえいれば他に何もいらなかった、きっと。
辛くて泣き出してしまいそうな日には抱き締めて、慰めてくれた。
ずっと、このような日々が続いていくと信じたかった。

けれど、愛されたいと願ってしまったから。
いつまでも続く日々ではないことを、心の底で分かってしまっていたから。
だけど、それでも、今日は……。
4 :nyan [saga]:2011/11/06(日) 23:55:00.94 ID:j596Ywtl0



「―――」

ずっと黙っている妹を怪訝に思ったのか、兄が優しく妹の名を呼んだ。

「ううん、何でもない。大丈夫だよ、あにぃ」

言いながらも、本当は泣き出してしまいそうだった。
それでも。
そう言わなければ自分が自分でいられない気がして、
それがとても不安で、そう言わずにはいられなかった。

そうかい? と訊ねる言う兄の声も少し寂しげだ。
当たり前だ。
そう。今日は妹と兄との別れの日なのだから。
兄は今日を境に遠い何処かへ行ってしまう。
何て事はない。
ただ、兄が進学するため、遠い街に行ってしまうだけだ。
それでも、張り裂けそうなほどに、妹の胸は激しく痛んでいる。

雪が降っている。街に。
哀憐と言う名の雪が降り積もる。妹自身に。
これは何処にでもある別離。
分かっている、そんな事は。

そして、それだけで納得がいかない事も事実なのだ。きっと。
とても愛しくて、切なくて、妹は兄の胸で泣きたいのだ。本当は。
けれど、それは出来なくて、ただ自分は佇んでいるだけで、
気が付けば、
あっけないほどに、
別れまでの時間は、
終わりを告げていた。
哀しいまでに時間は残酷で、別れの儀式はあっという間に終わった。
自宅での両親と兄とのお別れ会が終了し、
妹一人だけが遠くに行くバスまで兄を見送りに着いていく。

バス停に着き、バスを待っている時間も、妹は何も言う事が出来なかった。
兄はその気持ちを察していてくれたのか、ただ、傍に居てくれた。

何か言わなきゃ。
あにぃが遠くに行っちゃうのに。
ボクの大好きなあにぃと逢えなくなっちゃうのに。
だから、何か言わなきゃ。

震える拳を握り締め、何かを言おうとした。
けれど、口を開けば嗚咽しか漏れず、
瞳を開けば涙が出てしまいそうで、何も出来ず、
ただ、妹は兄の隣で眼を瞑って震える事しか出来ない。

神様、あとほんの少しだけでいいから、時間を停めてください……。
5 :nyan [saga]:2011/11/07(月) 00:02:11.86 ID:WE841c1m0
願いが届いたのかどうか、バスは雪で十五分ほど遅れて到着した。
それでも、妹は何も出来なかった。
女なのか男なのか、それすら分からない自分が兄に何を伝えられるのだろう。

けれど。
兄がバスに乗り込もうとして、
「またね」と言ったとき、何かをしなければならないと感じた。
幼い頃、共に遊んでくれた兄。
足が速くて追いつけなかった兄。
でも、今度は追いつかなくてはならないのだ。
今日こそは。

いつも兄の事を考える度に、切なくて泣いていた。
家事が上手いわけでもなく、容姿に優れているわけでもない自分に泣いた。
もっと自分が出来る事を見つけたかった。
我侭を言うだけでない存在になりたかった。
されど、
そう出来ない自分に対して込み上げる涙に、妹の言葉は何度も押し殺されていたのだ。

だから、今日こそは、
何かをしなきゃいけない。

そうして、妹は、涙が流れるのも構わず、
眼を開いて、兄に飛び掛って、兄の肩を掴んで、
雪に降られても構わず、白い世界で二人きりでいるように。

兄の唇に、
ほんの少しだけ、
自らの唇を重ねた。

ほんの数瞬だけの、
恋人の時間。

この時間がずっと続いて欲しいと思った。これこそが永遠なのだと思いたかった。
それでも、兄は足が速いから。
追いつけなくて。
兄はまだ遠い存在で。
まだきっと憧れのようなものでしかないのだろう。
いつか追いつく事が出来るのだろうか。

唇は刹那のうちに離れ、兄の困ったような微笑を見て、妹は気付いた。

ねえ、神様は人間を真っ直ぐに創ったはずなのに、どうしてボク達は複雑に生きているんだろう?
迷い続けて、どうして生きていくんだろう?

分かった。迷い続けるのも、複雑に生きているのも、自分のせいだ。
兄はずっと何でも受け止めてきてくれてたのに、
自分一人で怖がって動けなくて、言葉に出せなくて、何も出来なくて、
そういう事だったのだと兄の微笑を見て分かった。
兄もきっと同じだったのだ。妹と同じ様に、多くの事に胸を痛めていたのだ。
だから、遠くへ行くのだろう。自分達の未来を考え続けるために。
6 :nyan [saga]:2011/11/07(月) 00:08:17.50 ID:WE841c1m0
ボク達は一人で怖がっているだけだったんだね、あにぃ……。

兄は頷いた。
頷いたような気がしただけだったかもしれないが、少なくとも妹はそう思った。
そして、バスは発車していく。兄を乗せて発車する。
妹は兄を引き止めるわけにはいかない。

それに……。
兄は足が速くて追いつけないから……、
それでも、追いつきたいから……、バスが発車して長い間、妹はバスを追いかけていた。
気が付けば、感情のままに駆けていた。

「ボ……、ボクも……、ボクも……!」

駆けながら叫んだ。
妹は兄の乗ったバスが見えなくなるまで走ったが、
追い付けず見失い、その後は雪の中に身体を投げた。
そして、雪の中に埋もれながら、妹は胸の痛みと懸命に戦った。

言えなかった。
「ボクも連れて行って!」と、どうしても妹は言う事が出来なかった。
それは言ってはならない。
言ってはならない事だからだ。
いつか、いつとは知れないけれど、いつか妹は自らの足で兄の傍に駆けねばならない。
その先にこそきっと、二人がいつも過ごしていた様な、そんな世界が広がっているはずだから。
恋人の時間が、その先にあるとは限らないけれど、妹はそこに至らねばならない。
足の速い兄に追いつける時、それこそが二人の始まりなのだと思うから。

妹は立ち上がって歩き出していく。
一歩一歩進むしかないのだと思う。
男とか女とか関係なく、自分が自分であるために。
妹ならば胸の痛みには、きっと堪える事が出来るだろう。
いつか痛みを乗り越え、兄と共に過ごす日々を手に入れる事が出来るはずだ。
彼女が彼女であり、その決意を忘れない限り。

けれど、その時までは紛れもなく痛みが存在する。
別離。愛惜。哀憐。
それらの思いが。
だから、兄の唇の感触がもう少し薄れるまで、妹にとって辛い時間は続くのだろう。

今だけ……、泣くのは今だけだから……。
だから、いいよね、あにぃ……。

そう思いながら大声で泣いたのは、それからずっと後、
何事も無かったかのように妹が自宅の布団の中に潜ってからの事だった。
7 :nyan [saga]:2011/11/07(月) 00:10:24.74 ID:WE841c1m0


超短編ですが終了です。
どうもありがとうございました。
見る人が見れば分かると思いますが、妹のキャラ設定はまんまシスプリの衛です。
すみません。昔、好きでして。
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(長屋) [sage]:2011/11/07(月) 00:12:53.59 ID:sjJzmuW4o

「ボク」、「妹」でまさかと思ったらそのまさかだったわ
懐かしいな…
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関西地方) [sage]:2011/11/07(月) 01:01:56.04 ID:azoJm5GA0
乙だが、こんくらい短いのなら小ネタスレとかの方が良かったかもしれない
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(東京都) [sage]:2011/11/07(月) 01:01:58.07 ID:z3fUWrFuo
乙〜確かに超短編だ

一応、念の為に置いときますね
■ HTML化依頼スレッド Part3
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11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/07(月) 04:25:37.04 ID:BbuhnXeDO

「あにぃ」が見えてから衛で再生してたがその通りだったかw
読んでるうちにじわじわと胸にくる感じでよかった
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