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上条「五和と入れ替わった」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(千葉県) :2011/11/07(月) 02:26:30.76 ID:/Ak3l0qto
上条「五和と入れ替わった」
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1320503698/
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旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
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木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1713351945/

いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
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【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713277692/

こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
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【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713091115/

アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
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エルヴィン「ボーナスを支給する!」 @ 2024/04/14(日) 11:41:07.59 ID:o/ZidldvO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713062467/

2 :>>440から [sage]:2011/11/07(月) 02:27:21.01 ID:/Ak3l0qto

上条「それでも手は繋がないといけないのでございましょうか……?」

五和「はい、もちろんですよ上条さん」

上条「なんかさ……五和、この二日位ですっげー性格変わってねーか?」

五和「そうですか? 私はそうは思いませんけど?」

上条「そりゃ自分の事は分かんねーよな。……ある意味、常に客観視してるようなもんだけど」

五和「そんな事より上条さん、今日は学校の後はどこへ行きましょうか?」

上条「んー……どこか、か。そういえばちゃんと案内もしてなかったしなー」

五和「そ、それって……デート、ですよね?」

上条「えっ? いや、ただ案内するだけだからデートとは違う気も……」

五和「そうなんですか……はぁ」

上条(……やっぱり、性格が変わって来てる気がする)
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(沖縄県) [sage]:2011/11/07(月) 02:30:50.02 ID:OSq3pQlIo
>>440まではどうやったらみれますか
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/07(月) 02:36:24.53 ID:/Ak3l0qto
とある高校

青ピ「おっ、カミやんに……なあっ!? 五和ちゃん……何でカミやんなんかと一緒に居るん?」

上条「いや、まだ道に不慣れなものですから、偶然お会いした上条さんに案内してもらったんです」

青ピ「……カミやん、それ以外の事はしてへんやろな?」

五和「し、してないぜ?」

青ピ「……ボクの目を見てみい、そして嘘偽りないですーって言い切れるん?」

五和「も、もちろんだぜ?」

青ピ「そうか……よーし、五和ちゃーん? ボクがカミやんの代わりに学校の案内を!」

上条「あっ、結構です。上条さんにお願いしようと思っていますので」

青ピ「……カミやん、これはどーいう事か説明してもらいたいんやけど?」

五和「そ、それは……」

上条「私が上条さんに頼みたいからこうしてるんですよ、ごめんなさい」

青ピ「うっ!? なんか、そのごめんなさいって言い方……ごっつう傷付くんやけど……」

上条「上条さん、行きましょうか?」

五和「あ、あぁ……そうしようぜ」

青ピ「相変わらずボクだけ負け組なんか……人生やめたろーかな……」

五和「(上条さん……良いんですか? 少しかわいそうな気も……)」ボソボソ

上条「(いつもの事だから気にすんな、アイツはアレが標準だから)」

五和「(そ、そうですか……)」
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/07(月) 02:37:55.54 ID:/Ak3l0qto
>>3
http://sstter.net/1320503698/1-1001/#10

SSったー!さんで見る事ができるみたいです
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/07(月) 02:48:50.85 ID:/Ak3l0qto
教室


上条(しかし、五和は上手くやってくれてるな……本当に一生そのままでも問題なかったりして)


吹寄「上条当麻……もう平気なのかしら?」

五和「だ、大丈夫だぜ? 問題ないぜ?」

姫神「本当に? そうやってまた。無理をしているかもしれない」

五和「本当に何でもないんだぜ? たまたま当たっただけでさ」


上条(……相変わらず話し方は少し変だけど。まぁ、贅沢言ってられねーか)

青ピ「なーなー五和ちゃん、やっぱりボクと  上条「結構です」

青ピ「……酷い、そないにあっさりバッサリと。でも、何やろう……ちょっとゾクゾクしてきたでー!」

上条(あー、なるほど。女視点だとこういう風に見えんだな……そりゃモテねーよな、コイツ)


小萌「静かにするですー、授業が始まるのですよー」

上条(……あれ? 土御門が居ねえ……)

小萌「むむむ、土御門ちゃんが居ないのですねー……誰か土御門ちゃんについて知ってる人は居るですー?」

青ピ「カミやん、隣なんやから何か知らんの?」

五和「えっ? えーっと……昨日は部屋に居たぜ?」

小萌「むー、土御門ちゃんも何気におサボりが多い気がするのですよー。上条ちゃんの方が上ですけど」

五和「す、すいません……」

小萌「か、上条ちゃんが素直に謝ってる? ちょっと違和感を感じるのですよー……」

上条(……そこまで生意気じゃねーと思うんだけどなー)
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/07(月) 03:09:35.09 ID:/Ak3l0qto
学園都市の一場面

「……良いんですか? きちんとした許可も得てる訳じゃないんでしょ?」

「そう言って何か起きた後では遅いのよ。誰かを失ってから後悔するなんて馬鹿げてるのよな」

「そりゃそうですけど……って、こっからどうやって入るつもりなんですか?」

「……何も考えなしでここまで来ると思ったか? 俺達にも協力者は居るのよ」

「協力者……? イギリス清教は動きづらいから、こうやって俺達がこっそり動いてるのに……協力者とは」

「ボランティアにしちゃあ、随分と重労働なのよ……好きでやってるから、問題は無いが」

「……しかし、本当なんですか? 五和が……」

「それが本当なら、また元に戻るだけよな。一人の仲間を見捨てて、のうのうと生きられる程鈍感じゃねえ」

「それはこっちも一緒です。さて……まだ何も起きてないと良いんですが」

「あぁ……再びここに来る事になるとは、思ってもいなかったのよ。――入るぞ」
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/07(月) 03:12:21.91 ID:0Xf1dT2AO
バイト行ってる間に落ちたと思ったら、こっちに移動してきたのか
期待
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/07(月) 03:23:57.54 ID:/Ak3l0qto
戻ってとある高校



上条(次の授業からの学園都市の開発やら何やらを見せる訳にはいかねーし、五和の体にそんな事をさせる訳にもいかない……か)

五和「(上条さん、上条さん)」ボソボソ

上条「(ん? どうした、五和?)」

五和「(そろそろ私は……抜け出した方が良いですかね?)」

上条「(あぁ、頼むよ。……俺も抜け出さないと駄目なんだけどな)」

五和「(えっ? どうしてですか?)」

上条「(そもそも、この体は五和の体なんだから余計にマズイって事。……んー、どうやって抜け出すかだけど)」


小萌『えー、生徒の呼出をするのですよー。上条ちゃん、上条ちゃん。それと五和ちゃんは至急職員室まで来てほしいのですー』


上条(……俺達を呼び出し? 何だろう……)

五和「(上条さん、とりあえず行く必要があるみたいですね)」

上条「(みたいだな、急いで職員室に向かうか)」


青ピ(カミやん……五和ちゃんと楽しそうに話しとるなー……でも、話しに入る隙もタイミングもさっぱりや)


姫神(転校生……しかも特別……。また個性を奪われた……? そして……敵?)

吹寄「険しい顔してどうしたの?」

姫神「少し。……いや。深刻な問題が起きたかもしれない」

吹寄「……?」
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/07(月) 03:40:49.03 ID:/Ak3l0qto
職員室


五和「お待たせしました、先生」

小萌「あー、待ってたのですよー。五和ちゃんも呼び出してしまってごめんなさいなのですー」

上条「いえ、大丈夫ですよ。先生、用って何ですか?」

小萌「えーとですねー、五和ちゃんはぶっちゃけると特別待遇って事で迎えていたのですが」

上条(そういえばそうだっけ……)

小萌「ここの高校だけではなく、別の高校も見た方が良いのでは、という話になったみたいなのですよー」

上条「つまり……他の高校に移動してほしい、って事ですか?」

小萌「ですですー。先生も、まだ知り合って全然時間が経っていないので悲しいのですが……」

上条「そ、そうですか……えっと、本当に短い間でしたけどお世話になりました」

小萌「うう……まだ何もお互いに深め合っていないのに……寂しいのですよー」

上条「いや、そんなまだ二日……一日も経ってないじゃないですか」

黄泉川「あー、ダメダメ。月詠センセはそういうのに弱いじゃんよー。だから、そうっとしておいてあげるのが一番じゃん」

小萌「べ、別に泣いてる訳では無いのですよ! でも、でも……」

黄泉川「こりゃ後少しで泣くなー。まっ、優しくしてあげて欲しいじゃんよ?」

上条「は、はぁ……」
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(長屋) [sage]:2011/11/07(月) 08:32:46.93 ID:XgKP0vqBo
VIPから
頑張れー、着地点見える?
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(北陸地方) :2011/11/07(月) 09:39:22.86 ID:38Am3J0AO
期待
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(新潟県) [sage]:2011/11/07(月) 11:56:11.65 ID:fEUUo6Iuo
こっちに来てたか
頑張れ〜
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/07(月) 13:52:59.94 ID:HPNywTgIO
ssったー>>429までしかない件について
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(滋賀県) [sage]:2011/11/07(月) 14:16:03.55 ID:06eWrnldo
http://logsoku.com/thread/hibari.2ch.net/news4vip/1320503698/
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(香川県) [sage]:2011/11/07(月) 15:24:10.33 ID:UD91WNxto
おいついたー
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/07(月) 18:00:35.95 ID:NRsBi2xbo
>>15
dクス
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/07(月) 18:57:58.46 ID:nOfGpRMIO
>>15
ありがd
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/07(月) 21:17:11.20 ID:thb0x7Sv0
さっそくこっちに来てたのか
ゆっくりでもいいから完走させてくれると嬉しい
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関西地方) [sage]:2011/11/07(月) 22:09:39.76 ID:RpjOJXUjo
期待
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(埼玉県) [sage saga]:2011/11/07(月) 22:34:02.98 ID:W2BBeRhZ0
  /: : : : : /: : : : : : :./: : /: : : /:;イ: : : : : : : : : : : :.!
  |: : : : :/: : : : : : :./: /: : :_:彡 '"/: :/: : : : : : :.|: : : !
  |: : : : :| : : : : : :/,斗-‐ "\  /: :.! : : : : : : :|: : : |
  |: : l: : |: : : : : : /,,ィ==ミ、  \ i!:/:|: |: : |: :.| : |: : : !
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  |: /.|!: | : : : :/ \;ソ 〃   |'|:.|.{: i :.i: :.!:/: : :j
  |/: :|!: |: :/:./             |:| ヽ乂: :.!': : : :/     
 ,从/:i| :|: |:/           ,ィ;r‐ォ .〉:|: :|: : : /
ヽ .// |:/|: !:!          ,イツ,/ィ:乂从: :./
::::.}  |' .|:.|:!            〉 ` /: : : : :/:./      超支援です
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22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(長屋) [sage]:2011/11/07(月) 23:47:29.14 ID:obkEv22To
>>21
誰だよこのきもいの
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(岩手県) [sage]:2011/11/08(火) 02:18:39.62 ID:Acv9QhEF0
>>22
屋上
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/08(火) 05:12:02.63 ID:/e28NgDRo
>>15 サンクス

流れとオチはVIPで一時間保守してもらった間に考えた、トンデモだけど
書き溜め無し、七時か八時まで出来たら良いな

>>22 超屋上
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/08(火) 05:24:28.25 ID:/e28NgDRo


上条「えーっと……小萌先生、上条さんも一緒に呼び出されたのはどうしてなんですか」

小萌「えぐっ……ひぐっ……えっ? 何ですか……? ひぐっ……」

上条(小萌先生……本当に泣き出しちまった)

五和「あの、小萌先生。俺も何か関係あるんですか?」

小萌「ぐすっ……えぐっ……」

五和「先生、おしぼりです。良かったらどうぞ」

小萌「上条ちゃん……ありがとうなのですよ……」ゴシゴシ

上条「落ち着きましたか?」

小萌「……はい、お見苦しい所を見せてしまって先生失格かもしれないのですよ」

五和「そんな事無いですよ……そこまで思ってくれるなんて嬉しいです」

小萌「? どうして上条ちゃんが嬉しい事になるのですかー?」

五和「あっ……何でもありません、気にしないで下さい」

小萌「そうですかー? えーっと、上条ちゃんを呼び出した理由でしたねー」

五和「はい、何かご用ですか?」

小萌「上条ちゃんに特別にお仕事ですー。五和ちゃんをとある場所まで連れて行ってほしいのですよー」

五和「俺がですか?」

上条(……雑用? でも、これなら抜け出せるかもしれねーな)
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/08(火) 05:50:19.71 ID:/e28NgDRo


五和「どうして俺が選ばれたんですか?」

小萌「それは先生にも分からないのですよー、先生も詳しくは……」

五和「そうですか……分かりました、五和さんを案内してくれば良いんですね?」

小萌「はい、よろしくお願いするのですよー」

上条「先生、私はどこに向かえば良いんですか?」

小萌「ちょーっと待ってくださいねー。えーっと……あれ? どこに行ったですかー?」ガサゴソ

上条(机の上はちゃんと整理しろっつーの……)

五和(見た目と違ってズボラ……? タバコの吸殻も凄い事になってる……)

小萌「あっ、あったのですよー。この紙に書いてある場所に向かってください」

上条「は、はい。ありがとうございます」

小萌「いえいえー。良かったらまた先生の所に来てほしいのですよー……ぐすっ……」

五和「先生……おしぼりです、どうぞ」

小萌「どうも……」ゴシゴシ

上条「では小萌先生、また会いましょうね。それでは」

五和「行ってきます(小萌先生……ありがとうございました)」

小萌「車には気を付けるのですよー! いってらっしゃーい」

27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/08(火) 06:09:21.88 ID:/e28NgDRo



上条「なんかよく分かんねーけど、抜け出せたのはラッキーだったな」

五和「本当ですね。でも、どうして急にそんな事になったんでしょうか?」

上条「んー……土御門がやってくれたのかも」

五和「なるほど、その可能性は高そうですね」

上条「まっ、何にせよ抜け出せた事に変わりは無いしな」

五和「ええ。えっと……この紙に書いてある場所にはどうやって行けば良いんですか?」

上条「どれどれ……第十学区か、学区は違うけど移動に何時間もかかるような場所じゃないな」

五和「すぐに向かうべきでしょうか……」

上条「もし土御門が手配してくれたとしたら、この書類自体意味のないモンかもしんねーぞ?」

五和「つまり、行く必要も無いって事ですか。もしそうなら、また昨日みたいに過ごす事になると」

上条「あぁ、二日連続サボりってのも良いのか悪いのか分かんねーけどな」

五和「私はサボっても問題ありませんけど……上条さんは授業に出なくても大丈夫なんですか?」

上条「学校公認なんだ、授業をサボっても大丈夫だって」

五和「そうではなくて……その、上条さんの学力と言いますか……」

上条「……耳が痛くなる話は今は無しでお願いします」

28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/08(火) 06:27:01.28 ID:/e28NgDRo


上条「……俺の学力はともかく、これからどうするよ?」

五和「一応、お弁当は今日も用意してありますよ」

上条「ちなみに弁当の中身は?」

五和「シュウマイと焼鮭、サラダにお漬物……他にも色々入ってます」

上条「……それ聞いたら急に腹減ってきた気がする。でも、まだ食うには早いよなー」

五和「そうですね……一旦、お家に戻りますか?」

上条「外を歩き回るのも怪しまれそうだしな……。弁当は外で食いたい気もするけど、仕方ないか」

五和「昨日は誰にも見つからなくてラッキーでしたね」

上条「御坂妹には見つかったけどな……ついでに白井も」

五和「そ、そういえばそうでしたね……では、やっぱりお家――っ、……上条さん」

上条「ん? どうし……なぁ、あの車」

五和「ええ……少しおかしいですね。不自然な場所に停まっています」

上条「もしかして……狙いは俺達?」

五和「それは分かりませんが……この時間は他の学生さんは居ないみたいですから」

上条「思い過ごしなら良いんだけどな……どうする?」

五和「……別の道を使いましょう、念のために」
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(千葉県) [saga]:2011/11/08(火) 06:46:01.23 ID:/e28NgDRo


上条「……嫌な予感ってのは当たるもんだよな」

五和「ええ……明らかにこちらを追っていますね」

上条「……土御門に連絡してみるか?」

五和「……それが良いかもしれません、あの車も土御門さんの手配したものかもしれませんからね」

上条「そうと決まれば……土御門、出ろよ」プルル

五和「……どうですか?」

上条「駄目だ、繋がんねー……走って振り切るか?」

五和「……今はまだ見通しの良い場所ですから、動きを見せる事は無いと思います」

上条「それならまだこっちも動かなくても良いって事か……本当に俺達狙いかもまだ分かってねーけど」

五和「そうですね……でも、この時間に、しかも私達と全く同じ道を利用しているというのも……」

上条「怪しいですよ、ってアピールしてるようなモンだよな……心当たりとかはあるか?」

五和「私は学園都市の人間ではありませんからね……狙われているとすれば、それは上条さんの方だと思います」

上条「やっぱそうなるよな……ったく、わざわざ入れ替わってる時に来んなっつーの」

五和「……むしろ、今が好機と見たのかもしれませんね」

上条「好機……?」
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/08(火) 07:13:08.52 ID:/e28NgDRo


五和「今まで上条さんは、ローマ正教の思惑を尽く阻止していますから、
    狙われても何の不思議もありません。実際、先日は上条さんだけを標的にしてきた程ですから」

上条「確かに……でも、魔術側の人間ならもっと強引に襲ってくる気もするな」

五和「『神の右席』でさえも結果的には三回も敗北しています、それならば慎重に動いていてもおかしくはありません」

上条「だとすると……入れ替わってる時を狙って来た可能性も十分に考えられるって事か」

五和「ええ……動きを見せない分、不気味ですね」

上条「……このまま何も起こらなければ最高なんだけどな」

五和「本当ですね……でも、……どうやらそうもいかないみたいですよ」

上条「あぁ……車が止まったか。あのワゴン車なら……六、七人は乗っててもおかしくないな」

五和「今の私達には戦闘を行えるだけの用意が出来ていません……もし、戦闘になった場合は」

上条「不利なんてもんじゃねーな……どうする?」

五和「……考えてる暇もなさそうですね、誰か降りてくるみたいです」
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/08(火) 07:29:15.85 ID:/e28NgDRo


上条「(……どうやら武装はしてねーみたいだな)」

五和「(ええ、でもまだ油断はできません……)」

男「失礼、上条当麻さん、でよろしいですか?」

上条「(……五和、対応できるか?)」

五和「(……大丈夫です、任せてください)」

五和「俺が上条当麻だが、何か用でも?」

男「はい、正確にはあなたの隣の方に用があるのですが……お隣にいらっしゃるのが五和さんで間違いありませんね?」

上条「ええ、そうですけど。まずはそちらが誰なのか知りたい所ですね」

男「あぁ、それは失礼いたしました……。私は研究所で能力開発の研究を行っている者です」

上条「……能力開発?」

男「既にご存知だと思ったのですが……何も聞いておりませんか?」

上条「もしかして……この書類の事ですか?」

男「ええ、その書類にある通り、私共は五和さんの能力開発を依頼されたのでこうして迎えに来たのです」

五和「(上条さん……本当なのでしょうか?)」

上条(間違いねえな、これは――――)
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/08(火) 07:39:54.95 ID:/e28NgDRo


五和「(……上条さん?)」

男「どうしました? 内緒話をされても困るのですが?」

五和「(上条さん、どうしたんですか?)」

上条「…………確認ですけど、私を対象とした能力開発なんですよね?」

男「ええ、それが何か?」

上条「五和……逃げるぞ!」ダッ

五和「か、上条さん!?」

上条「いいから早く! 今は何も考えずに走れ!」

五和「は、はい!」

男「なっ……待て! ……仕方ない、追え。殺さなければ何をしても良い」

五和「か、上条さん! 武装した集団がこちらを追ってきています!」

上条「クソッ……やっぱり中に物騒なヤツらが乗ってたんじゃねえかよ!」

五和「と、とりあえずあそこの路地裏に逃げましょう!」

上条「分かった! ……結局こうなっちまうのかよ!」
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/08(火) 08:01:41.89 ID:/e28NgDRo
路地裏

上条「はぁ……はぁ、撒いたか?」

五和「……足音はしませんね、あの集団は揃って重量のある武装をしていましたから……近づけば流石に物音が」

上条「だったら良いけど……学園都市製だとしたらそれは甘い考えかもな」

五和「どういう事ですか?」

上条「フランスでも見たろ? 見た感じはあそこまでじゃなさそうだったけど……」

五和「……そうでしたね。ここは学園都市、つまりは最新鋭の武装を相手にするも同じ」

上条「あぁ、油断してるとすぐに 「居たぞ! こっちだ!」

上条「――ってなるから気を付けような! 走れ!」ダッ

五和「は、はい!」

上条「あー! 魔術よりも科学の方が相手するのが難しいってのはどうなんだよ!?」

五和「ま、魔術は相手するのが楽みたいに聞こえるんですけど!?」

上条「今この時だけはそう思うんだよ! ともかく走れ!」

五和「は、はい!」
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/08(火) 08:25:53.74 ID:/e28NgDRo


上条「……はぁ……クソッ……まだ追って来てるか?」

五和「……分かりません、足音もしないのにさっきは近づかれてしまいましたから」

上条「……ったく、無駄に高性能なモン作りやがって」

五和「対抗できれば良かったんですけど……何もありませんし」

上条「相手がまだ四人位ってのが救いだな……大人数で道を封鎖されたら終わりだ」

五和「はい……それにしても、どうして敵だと分かったんですか? 敵、と言って良いかも分かりませんけど」

上条「五和の能力開発、なんて事をさせる訳が無い。それが理由の一つだ」

五和「昨日言っていた、能力開発を受けた者が魔術を使うと……という話ですか?」

上条「あぁ、いくら土御門でもそんな悪趣味な嘘はつかねーよ。……いや、土御門なら有り得るかも……?」

五和「ええっ!? ……どっちなんですか?」

上条「……まぁ、向こうはあんな物騒なのを用意してたんだし、やっぱり罠だろ」

五和「でも、良く考えてみれば……相手は銃を使用してきませんでしたよね?」

上条「そういえばそうだな……あれ? 敵じゃない……?」

五和「か、上条さん……」

35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/08(火) 18:16:11.99 ID:VuzA8Qpq0
今日はもうこないかな
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/08(火) 18:44:13.57 ID:dq4d8zYZo
おつおつ
いい感じですねー
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関西地方) [sage]:2011/11/08(火) 21:10:08.78 ID:bNJImBcuo
おつ
38 :九時までやりたい [saga sage]:2011/11/09(水) 02:47:18.18 ID:5TcqTAZ+o


五和「どちらにせよ……私達が何か事件に巻き込まれているというのは間違いなさそうですね」

上条「あぁ……魔術か科学のどちらかもはっきりとは分かってねーけどな」

五和「今までの事を考えれば、近代的な武装ならば科学側……と考えて良さそうですけど」

上条「学園都市が俺を……どうしてこんな事に」

五和「……何か心当たりは無いんですか?」

上条「心当たりって言われてもな……今更あの事を掘り返すとも思えねーし」

五和「あの事……何かあったんですか?」

上条(……一方通行を倒して『実験』を中止に追い込んだのは間違いない。
    後は……打ち止めを逃がすために戦った事……それ位しか思い当たるものが無いな)

五和「……上条さん?」

上条「あっ、悪い。……ともかく、今頼る事が出来るのは土御門しか居ない。何とかしてここから逃げて」

五和「土御門さんと合流する他は無い、と……こちらからは何も出来ず、ただ逃げると言うのも難しいですね」

上条「そうも言っていられないだろ。まずは、……っ!」

五和「見つかった……!? また足音が何も……」

「見つけたぞ! そのままだ、大人しくしていろ!」

五和「……こちらに銃を向けています、やはり」

上条「……結局はこうなっちまうのか、クソッ……!」

39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/09(水) 03:01:19.84 ID:5TcqTAZ+o


戦闘員A「手こずらせやがって……こちらの言う通りにしてもらうぞ」

上条「……嫌だっつったらどうするつもりなんだ?」

戦闘員A「目の前にあるものが何か分からない、とでも言いたいのか?」

五和「……私達は何も狙われるような事はしていません、狙いは何ですか?」

戦闘員A「依頼があったからこうしている、狙いも何もそちらの身柄を拘束すればそれで十分だ」

上条「(……五和、俺がアイツをどうにかするからお前はその間に逃げろ)」

五和「(そ、そんな事できません! 上条さんは何も戦う術を持っていないじゃないですか!?)」

上条「(大丈夫だ……アイツは身柄を拘束って言ったんだよ、それなら)」

五和「(命を取られるまではいかない……という事ですか。それでも、危険すぎます!)」

上条「(今はどちらでも良いから、土御門に接触する事を最優先にしなくちゃいけねえんだ……分かるだろ?)」

五和「(そ、それでも私は……)」

戦闘員A「悪いが無駄な時間を取るつもりは無い、そろそろ良いか?」

上条「……五和、頼むぞ!」ダッ

五和「だ、駄目です!」

戦闘員A「……無駄だと思うが」

上条「この野郎……ふざけんじゃ――ごはっ……!?」バタン

戦闘員B「大人しくしていれば良いと言ったはずだが、聞こえなかったようだな」

五和「上条さん! ……もう一人!? 身を隠していたなんて……」
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/09(水) 03:16:28.41 ID:5TcqTAZ+o


戦闘員A「おい、相手は女だぞ? そこまでやってもな……」

戦闘員B「仕方ないだろ、ともかくこっちの女を連れて行けば良いんだな?」

戦闘員A「あぁ、そうすれば俺達の仕事は終わりだが……」

五和「か、上条さん! しっかりしてください!」

上条「くっ……悪い、五和。失敗しちまったな……」

五和「そんな……良いんです、今は大人しく言う通りにするしかありません」

戦闘員A「そっちの男の言う事は正しいな、こちらも命を奪うつもりは無い」

上条「……分かった、テメェらについて行けば良いのか」

戦闘員B「ずいぶん口の悪い女だな……まぁいい、そういう事になるな」

戦闘員A「さて、そうと決まればさっさと……ん? 他の奴はどうした?」

戦闘員B「そういえば……まったく、どこを探しているつもりなんだろうな」

戦闘員A「まずはコイツらを連れて行くのが先だ、放っておけば良いだろう」

五和「上条さん……立てますか?」

上条「あぁ……大丈夫だ。ともかく今は……っ!」

戦闘員A「特に抵抗も無く楽に済んだな、さて――ぐうっ……!?」バタン

戦闘員B「……ん? お、おい! どうし――誰だ!?」

「おいおい、そのまま帰るなんてつまんねえ事言わないで欲しいのよな。少し、」

「遊んでくれても良いんじゃねえのか?」

41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/09(水) 03:33:28.43 ID:5TcqTAZ+o


上条「た、建宮!? それに……」

五和「牛深さんまで……どうしてここに」

建宮「久しぶり……って訳でもねえのよな。どうしてかって言われたら……」

戦闘員B「く、クソッ! お前たち全員……があっ!?」グラッ

牛深「大人しくしてくんねかえか? 、死なない程度ってのも難しくてな……ふんっ!」ブンッ

戦闘員B「う、ううっ……ふざけ……ん」

建宮「ふざけんな、ってのはこっちの台詞なのよ……ここで眠っていろ」ゴッ

戦闘員B「ぐうっ……っ……」バタン

牛深「……これで全員ですね。建宮さん、何とかなったってとこですか」

建宮「あぁ、しかし生かさず殺さずってのもなかなかどうして難しいものなのよ」

上条「建宮、どうしてお前がjここに居るのかは知らねえけど助かった。ありがとよ」

建宮「毎度毎度、お前さんと会う時は疲れる場面ばかりなのよ。どうにかなんねえのか?」

上条「俺もどうしかしてーけどさ……こればかりは」

五和「そんな事より上条さん! 怪我してるじゃないですか……すぐに手当てを……とりあえず、おしぼりで」

上条「あ、あぁ……ありがとう」ゴシゴシ

牛深「……話には聞いてましたけど」

建宮「……上条当麻が女らしい仕草ってのは、なかなかキツイもんがあるのよ」

42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/09(水) 04:13:06.51 ID:5TcqTAZ+o


建宮「とりあえず、この場から離れた方が良いのよ……新手が来たら厄介なのよな」

上条「そうだな……まずは俺の家に戻るか。……それにしても、コイツら死んでねえよな?」

建宮「心配しなくともいいのよ、殺す訳にはいかねえ事情がこっちにもあるのよな」

上条「それは良いんだけど……でも、その剣や斧で攻撃したら普通は」

建宮「だから面倒臭いのよ、殺めちまったらそこで終了……全てが終わりなのよな」

五和「建宮さん、それはどういう事ですか?」

建宮「話している時間も無いのよ、とりあえず生きてはいる。それで良いな?」

牛深「コイツらの装備、ちょっとやそっとのダメージじゃ倒れないらしくてな……学園都市ってのは怖いもんだ」

上条「……分かった、建宮の言う通りすぐにここから離れるのが良さそうだし……さっさと行くか」

五和「はい。……上条さん、本当に大丈夫ですか?」

上条「大丈夫だよ、そっちこそ何もされなかったか?」

五和「私は何もされていませんよ。……上条さんのおかげです」

上条「そっか、それなら良いんだ……行くぞ、五和」

五和「はい!」

建宮「……お前さん、どう思うのよ?」

牛深「……デキてますね、間違いない」

上条「おい、何ボーっとしてんだよ?」

建宮「何でも無いのよな」

43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/09(水) 07:37:57.92 ID:pG0xAUZXo
乙です
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/09(水) 10:12:42.16 ID:M2o9uM0ro
寝たのか?
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/09(水) 10:31:10.45 ID:39z5sHpAO
出先から、鯖不調なのか書き込み出来なくなったので寝ました。土日には終わるようにしたい
またあんな感じで出来れば良いんだけど。多分また夜に
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/09(水) 11:41:15.36 ID:M2o9uM0ro
自治スレで管理人が連投規制したって言ってたからそれかもね
待ってる
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(長屋) [sage]:2011/11/09(水) 12:53:35.99 ID:HdRxCaeEo
はいはーい、がんばれ
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/09(水) 23:53:43.12 ID:TlNkWJ240
マダー?
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/10(木) 05:00:57.27 ID:dHLvGdB0o
夜=この時間辺りだと思ってくれれば、昨日書き込めなかった分をまず
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/10(木) 05:03:30.48 ID:dHLvGdB0o


上条の部屋


上条「とりあえず俺の部屋に戻って来たけど……戻ったからって何が出来る訳でもねーんだよな」

五和「そうですね……でも、これを取りに戻れただけでも十分です」

上条「その槍は確か……」

五和「ええ、海軍用船上槍です。……前の戦いで大分傷付いてしまいましたけど」

建宮「あの聖人を撃退した槍だ、その辺の武装集団なんかに負けるようなもんではないのよ」

上条「それは頼もしいな。……俺には今出来る事はあまり無さそうだし、頼むぞ五和」

五和「もちろんです、上条さんのためなら何でもやってみせます!」

上条「お、おう……そこまでしなくても良いけどさ」

牛深「(……やっぱり、あの二人)」

建宮「(……間違いなくデキてるのよな、むしろ……もう)」

牛深「(なっ……いや、有り得る! この騒動がまさか良い方向に傾くとは……)」

建宮「(女教皇様には悪いが、仕方ないのよ。……俺達も応援した甲斐があったと言うものなのよな!)」

牛深「(まったくですね……その話を肴に焼酎でも飲むとしますか)」

五和「建宮さん、牛深さん、何を二人でこそこそ話しているんですか?」

建宮「何でも無いのよ…………ん?」

牛深「どうしました?」

建宮「いや……何でも無いのよ(何か引っかかる事がある気がするのよな……こう)」

51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/10(木) 05:05:51.58 ID:dHLvGdB0o


五和「……よし、これで私も戦う事が出来ます。術式は使用できないので本当にただの槍ですけど……」

上条「中身は五和だけど、パッと見て俺が槍を持ってるってのも変な気がするな……かと言って俺が使える訳でもないんだけど」

建宮(何か忘れているような気がするのよ……まぁ、思い出せないのだからきっとどうでも良い事なのよな)

牛深「しかし、本当に入れ替わってんのか……見た目は五和なのに、中身は全然違うとは」

上条「俺もそんなの有り得ねーって思いたいけど、実際こうなっちまってんだよな……」

建宮「その様子だと、お前さんもずいぶん苦労してるみたいよな」

上条「あぁ……でも、五和と入れ替わったのが不幸中の幸いだな」

牛深「幸い?」

上条「五和は色々気遣ってくれるし、俺の代わりになるよう精一杯やってくれてるんだ。本当に助かってんだよ」

五和「そ、そんな事ないです……何も出来てませんよ」

建宮「……なぁ、上条当麻。この狭い部屋にお前さんは住んでるのよな?」

上条「狭いってのは余計だぞ、それがどうかしたのか?」

建宮「つまり……ここで五和と二日間共同生活をしたって事に」

上条「ま、まぁそうなるけど……」

牛深「……見た所、ベッドは一つしか無いみたいだが……まさか」

五和「そ、それは……その……」

52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/10(木) 05:08:12.75 ID:dHLvGdB0o


建宮「上条当麻……正直に話して欲しいのよ」

上条「……何だよ」

建宮「…………もう、男女の関係に  上条「なってねえよ!」

建宮「いや、それは無理があるのよ。こんな狭い部屋に年頃の男女が一緒に居りゃあ、
    間違いが起きちまうのが普通ってものなのよな。むしろそれが正解ってものよ」

上条「だからねえって言ってんだろうが!? 五和も何とか言ってやってくれ!」

五和「そ、そうです! 建宮さん、変な事言わないでください!」

建宮「五和、正直に言っていいのよな? 上条当麻にはキチンと責任を――」

五和「人の話を聞いてください! まだしてませんってば!」

上条「ほら、五和もこう言って…………ん? ……まだ、ってどういう意味?」

五和「えっ……? え、ええと、それは……えっと……その」

牛深「建宮さん! ベッドの下にこんなモンが!」

建宮「……これは! こんどー 上条「おんどりゃああああ!!」ガバッ

建宮「あっ、おい何すんのよ! ……お前さん、それは」

上条「違う! 俺のじゃないからな!? 買ってねえし使ってもいねえからな!?」

牛深「建宮さん……ちらっと見た所開封済みで、六個入りのはずが五個しか入ってませんでした」

上条「だから違うって! これは土御門が! ……あれ、五和?」

五和「か、かかか上条さん!? そそそ、それは……」

建宮「ひゅーひゅー! 熱いのよなお二人さん!」

上条「…………アイツは殴る、必ずぶん殴ってやる!」

53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/10(木) 05:11:00.64 ID:dHLvGdB0o
上条「……で、これからの事を 建宮「五和、ちゃんと責任を取ってもらうのよ?」



五和「いえ、ですから……まだ私達は……」

牛深「でも、あの中身は確実に一つ減ってたぞ?」

上条「えーっと……今は大事な話をしようと 建宮「……って事は、他の誰かと」

五和「……!? そ、そんな……」

上条「……もしもーし? そろそ 牛深「英雄、色を好むってヤツか……モテるからって調子乗ってますね!」

建宮「俺達が大切に守ってきた五和を裏切るとは……鬼畜で外道の畜生なのよな!」

上条「テメェらいい加減にしろっつーの!! いつまでそんなくだんねえ話を――」

五和「上条さん! どういう事なんですか!? 本当に誰か別の方と……」

上条「はぁ!? んな訳ねえだろうが! 良いから今話すべき事を」

牛深「建宮さん! ベッドの近くに銀の長い髪の毛が!」

建宮「出たー! これはまさに浮気の証拠……見損なったのよな、上条当麻」

上条「だから違うっつってんだろうが! それはインデックスの……あれ? 五和さん……?」

五和「…………上条さんが、他の女の人と。誰……誰、絶対に……絶対に」ブツブツ

建宮「なっ……五和の症状が前より悪化しているのよー!?」

上条「……誰か助けて」

建宮「お前さんも大変なのよな」

上条「よし、まずはお前を殴るからそこに座れこのクワガタ野郎」

牛深「落ち着いて、落ち着いて」

54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/10(木) 05:32:50.82 ID:dHLvGdB0o


上条「……そろそろ真面目に話し合うぞ、良いな?」

五和「はい……ごめんなさい……」

上条「いや、五和が謝んなくても良いって。……悪いのはアイツらだから」

建宮「よし、現在の状況を確認するぞ。さっき襲撃してきたのは――」

上条「……急に真面目モードに戻りやがって」

建宮「ぐだぐだ言ってねえでお前さんも真面目に考えるのよ」

上条「はぁ……分かったよ。で、まず確認してーんだけど……何でお前達が学園都市に居るんだ?」

建宮「お前さんと五和が入れ替わったというのを聞いて、すぐに動くことにしたのよな」

牛深「つい先日、『後方のアックア』に襲撃されたばかりってのもありますからね」

五和「なるほど……お二人しか来る事は出来なかったんですか?」

建宮「学園都市に入るのにも一苦労なのよ。今回は協力者のおかげですんなり入れたが、
    入る事の出来る人数も限られちまったって訳なのよな」

上条「そっか、それでも二人も来てくれたら心強いな。……でも、協力者ってのは誰なんだ?」

建宮「あぁ、それなら――」

 「オレがその協力者ぜよ」

上条「……土御門?」

55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/10(木) 05:59:26.83 ID:dHLvGdB0o


土御門「カミやん、どうやら無事みたいだな。土御門さんも安心したぜい」

上条「土御門……お前が建宮達を学園都市に呼んだのか?」

土御門「あぁ、こっちも動かす事の出来る人間が居なくてな。その時に天草式が学園都市へ侵入するかもしれない、
      という情報を得てこうしてオレが手配したんだ。お互いの利害が一致、願ったり叶ったりって所だな」

上条「建宮達は俺と五和を助けに来てくれたんだよな?」

建宮「その通り、ローマ正教の襲撃を警戒しての事だったが……どうやら違ったみたいなのよ」

牛深「学園都市の者と交戦する事になるとは……やり難いったらないですね」

上条「何か問題でもあるのか?」

土御門「考えてもみろよ、今はイギリス清教と学園都市はなんとか関係を保っている。 だが、その両者の争いで死人でも出ようものなら……」

上条「関係が悪化しちまう……って事か」

建宮「それがさらに良くない方向へ向けば……待っているのは最悪の結末なのよな」

五和「……戦争、ですか」

土御門「ただでさえ、この学園都市は魔術側に何度も狙われているんだ。……しかも、それはローマ正教だけじゃなかった」

上条「シェリーの事だな……でも、アイツにだって事情が」

建宮「話がデカくなればなる程、個人の事情なんてのは何の意味もなくなっちまうのよ。
    イギリス清教が学園都市を襲撃した、その事実だけが状況を判断する材料となるのよな」

土御門「そして今回、イギリス清教の者が学園都市の人間を殺める様な事がもしあれば――」

上条「……学園都市とイギリス清教が対立する事になる」

56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/10(木) 06:26:32.94 ID:dHLvGdB0o


建宮「つまりは相手を殺さず、こっちは誰も死なせずっていう不利な条件で戦う必要があるのよな」

牛深「魔術側の人間相手だったらまだ良かったのに……こんな事になるとは」

上条「さっきのヤツらは間違いなく学園都市の人間だろうからな……」

建宮「愚痴を言っても仕方ないのよ。……まっ、優しいお前さんならどの道殺すなって言うだろうし、
    丁度良いと言えば丁度良いのかもしれないのよな」

五和「……私がもっとしっかりしていれば、本当に申し訳ありません」

建宮「気にする事でもないのよ、五和も上条当麻も生きていればそれで問題なし。
    最悪、俺達が死んでも末端組織の一員だ、まだギリギリ救いはあるのよ」

五和「そんな……それに、建宮さん達に何かあればきっと他のみんなが」

土御門「それも一つの問題なんだ、天草式の人間を死なせる訳にもいかない」

建宮「……どういう事なのよ?」

土御門「天草式の一員を失う事になれば、ある人物が間違いなく動く」

上条「それって……神裂の事か?」

土御門「あぁ、神裂火織だけは動かしてはいけない。桁違いの戦力である聖人が学園都市の人間を攻撃する、
     それは思った以上に危険であり、最悪の事態を避けられなくなる……ってな具合にいくつもの要因が存在する訳だな」

五和「……それでは、私達はどうすれば良いんですか? 今の話を聞く限りではどうする事も……」

上条「土御門、一つ大事な事に触れられてねえけど……理由でもあんのか?」

土御門「……何の事だ?」

上条「俺達を襲った集団、それを指揮してるヤツ……つまり、敵は誰なんだよ?」

57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/10(木) 06:50:50.71 ID:dHLvGdB0o
五和が男の生理現象に驚いてたのが懐かしい
難しい事考え過ぎた、寝ます。多分また夜に来ます
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(九州) [sage]:2011/11/10(木) 10:48:29.06 ID:n4cnrvxAO
おつ(^ω^)

頑張ってくれ
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/11(金) 14:38:23.17 ID:QWS/8OURo
まだー?
60 :いける所まで [saga sage]:2011/11/11(金) 21:02:53.14 ID:3DYpkalJo


建宮「確かにそれはこっちとしても知りたいところなのよ。敵の正体も分からずに戦うって事は避けたいのよな」

牛深「あんたはそれについて何か知ってるんだろ、だったら教えてくれねえか?」

土御門「…………」

上条「土御門、急に黙っちまってどうしたんだよ? まさか……分からねえとかいうつもりか?」

土御門「あぁ……悪いがそのまさかだ、オレもまだ敵の正体までは掴んでねえんだよ」

五和「そうですか……それだと、私達は誰かも分からない集団と戦う事に」

建宮「しかも殺さず殺させず、って条件付きなのよ。……勝利条件の無い戦いなんて馬鹿げてるのよな」

上条「何でも良いんだ……土御門、お前が知ってる事を教えてくれよ」

土御門「本当にすまない、でも今オレが言えるのはこれ位しか無いんだ……」

牛深「……仕方が無い、ともかく今はこの二人を守るしかないな」

土御門「情報は今も集めている、何か分かり次第必ず伝えるようにはする。だから今は」

上条「このまま何とかするしかねえって事か……」

建宮「……まぁ、今までも無茶な戦いは何度もあったのよ。それに比べればまだマシなのよな」

五和「安心してください、上条さん。あなたは私達が全力で守りますから!」

上条「あぁ……でも、俺には出来る事が無さそうだよな……なんか、情けない」

建宮「お前さんは十分すぎる程戦ってきた、だからそう気にする程でもねえのよな」

上条「そう言ってくれると少しは楽になるな……で、今は何をすべきなんだ?」

61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/11(金) 21:27:28.75 ID:3DYpkalJo


建宮「さっきの連中がまだ諦めたとも限らねえのよ、また襲撃して来たらその撃退って所か」

牛深「さっきみたいに少数だったらまだ良いんですけどね……」

五和「数で攻められたらこちらが圧倒的に不利ですから……何とか今の内に対策を」

上条「つっても他に味方が居る訳でもねーしな……いっその事、学園都市から抜け出すか?」

建宮「俺達二人を侵入させる事が出来たのなら、二人を出す事位は容易な気もするのよ」

土御門「……悪い、今の所はそれは出来ない」

上条「何か理由でもあんのか?」

土御門「こっちにも準備ってのがあるからな……今すぐって訳にもいかねえんだ」

建宮「……だとすると、本当に守るだけのジリ貧になりそうなのよな」

上条「いつもはあっさり抜け出せてんのにな……」

土御門(学園都市脱出を強行すれば、ヤツが何をしてくるかも想像できない……。
     まだ一部隊ならどうにかなるかもしれねえが、下手をしたら……無事では済まないか)

上条「土御門? おい、どうかしたか?」

土御門「ん、何でもねーぜよ。結局、今の所はあるモンで何とかするって感じですたい」

上条「そうだな……頼むぞ土御門、お前が居ないとこれからも何も出来ねえからさ」

土御門「あぁ、オレに出来る事はやるつもりだぜい。で、何か知りたい事は他にあるかにゃー?」

62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/11(金) 21:37:07.39 ID:3DYpkalJo


五和「土御門さん……一つ聞いても良いですか?」

土御門「おうよ、何だ?」

五和「これは……本当に土御門さんが置いていったものなんですか?」

土御門「へ? それは 上条「なあっ!? いつの間にそれを!?」

五和「土御門さん、正直に答えてください……これは本当に土御門さんが上条さんのベッドの下に置いたんですか?」

土御門(それは昨日オレがふざけてカミやんに渡そうとした……どっか行ったと思ったらカミやんの部屋に落としちまってたのか)

上条「なぁ、五和……今はそんな事やってる場合じゃないだろ? だから」

五和「上条さんは黙っててください! ……土御門さん、正直にお願いします」

土御門「えっ? それは……」

上条「イタズラだよな? 何かの間違いだよな? そう言ってくれよ土御門!」

土御門「えーっと」

牛深「浮気なのか……勘違いなのか」

建宮「……どっちなのよな?」

土御門「――――いやぁ、オレには何の事かさっぱりだぜい」

上条「な、なにいっ!?」

63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/11(金) 21:45:44.75 ID:3DYpkalJo


土御門「カミやーん……なかなか隅に置けませんにゃー? このこのー」

上条「つ、土御門! 本当の事を……ひ、ひいっ!?」

五和「上条さん……どういう事なんですか!? やっぱり他の女の人と……」

上条「だから違うって! 信じてくれよ!?」


建宮「お主も悪なのよなー」

土御門「そんな褒められても困りますにゃー」

牛深「そんな事やってる場合なんですかね……」


五和「上条さん……酷い、上条さんは浮気なんてする人じゃないって信じてたのに……」

上条「いやだからそんな事はしていなくてですね? つーか、浮気って何だよ!?」

五和「浮気は浮気です! それ以外に何があるんですか!?」

上条「そ、その……浮気ってのは既に恋人がいる者が別の異性と関係を持った事を意味する訳でして……」

五和「……何が言いたいんですか?」

上条「つまり……誰とも付き合ってない上条さんはそもそも浮気なんてしようが無いと思うのでございますが……」

五和「そ、それは……それでも浮気は浮気なんです!」

上条「だから浮気じゃないって! つーか、そもそもそういう行為をしてねえからな!?」


牛深「誰が止めるんですか?」

土御門「オレはパスさせてもらうぜよ」

建宮「同じく、遠慮させてもらうのよな」

64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/11(金) 21:57:21.52 ID:3DYpkalJo


建宮(さて、そろそろ止め……ん?)

土御門「……どうやら、来ちまったみたいだな」

牛深「まさか……さっきのヤツラが?」

建宮「牛深、窓の外を見てこい。……まぁ、見た所で結果は変わんねえのよ」

土御門(少数で来るか……いや、失敗を二度も繰り返すような事は無い。それなら――)

牛深「……建宮さん! 外に車が五、六台停まってます! おそらく……」

建宮「来やがったのよな……! おい、その辺にしとくのよ!」

五和「もう浮気はしないって誓いますか!?」

上条「誓うも何も無実だって!」

土御門「あー……カミやん、その辺にしとくぜよ」

上条「つ、土御門……助けてくれ……ってもともとはテメェのせいじゃねえか!」

建宮「遊んでる場合じゃないのよな、……敵さんのお出ましなのよ」

五和「敵……? という事は、さっきの……」

牛深「あぁ……さっきよりも数は多い……まともにやっても無駄だ」

上条「……こっちは五人、確かにその通りだな」

土御門「仕方ねえ……さっき狙われてたのは五和の姿をしたカミやんの方だったんだよな?」

上条「五和を連れて行こうとしてたからな……それがどうかしたのか?」

65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/12(土) 00:25:02.90 ID:tNiD2yY4o


土御門「それなら、今戦う事も出来ないカミやんを優先的に逃がすべきだ。五和の体なんだ、それを傷つけたくも無いだろ?」

建宮「確かに、それが今は一番なのよ。お前さんも逃げるだけなら出来るだろ?」

上条「それは出来るけどよ……良いのか? お前達に任せちまうだけなんて」

牛深「前もそうやって結局助けてもらっちまたんだ、今回位は単純に守られても誰も文句は言わないですって」

五和「牛深さんの言う通りですよ、今は私達に任せてください」

上条「分かった……でも、あんな大人数相手に出来んのか?」

土御門「さぁな、ただ……このままだと何もせず捕まっちまうだけだ」

上条「それはそうだけど……勝つ方法が無いんだろ?」

建宮「例えば他の誰かも居るようなところに出れば、向こうも思うようには出来ないはずなのよな」

牛深「人通りの多い所を目指して逃げろって事ですか……この辺はどうなんですか?」

上条「今の時間は学生は学校に居るから……そこまで期待できねえと思う」

土御門「第一、襲撃するくらいならその辺の準備も怠りなくやってるはずだ。おそらくこの辺も……」

五和「人に見られないように工作されている可能性が高い、という事ですね……」

上条「……いっその事、通報しちまうとか」

土御門「無駄だ、そんな事しても何の役にも立たねえよ」

上条「……ん? 土御門、どうしてそう言い切れるんだ?」

土御門「っ……まぁ、向こうも対策をとっているはずだからな。甘い考えはしない方が良いぞ」

上条「あ、あぁ……(……土御門のヤツ、なんか変だな)」

66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/12(土) 00:39:47.22 ID:tNiD2yY4o


土御門「さーて……そろそろ動くとしますか」

牛深「まだ向こうは動きを見せていません、……行くなら今ですね」

建宮「五和、お前さんも準備は良いのよな?」

五和「ええ……大丈夫です、いつでも行けます」

土御門「カミやん、分かってるだろうが今回は五和、つまりはお前の生存が最優先事情だ」

上条「あぁ、分かってるって。……行くか」

建宮「よし……行動開始なのよな」


―――――――――――

男子寮 廊下


上条「このまま普通に階段下りてたら見つかっちまうんじゃねえのか!?」

土御門「こっちだ、ここの手すりから飛んで抜け出すぞ」

上条「なっ!? ここは三階だけど流石にそんな事したら……」

建宮「外の通りからは見つからないし、……今はそれしか無さそうなのよ」

牛深「ええ、ぐずぐずしてたら見つかっちまう!」

五和「上条さん、急いでください!」

上条「……分かったよ! 駐輪場の屋根に向かって……ええい!」ドシン

67 :それなりに進んだので一旦上げ  [saga]:2011/11/12(土) 01:05:02.26 ID:tNiD2yY4o


とあるワゴン車の車内


戦闘員「動きがあったようです、こちらも行動を開始します」

  「そう、出来れば私の出番など無い方が良いのだけど」

戦闘員「もちろん、そうならないようにこちらも動くつもりです。ですが」

  「分かっているわ、二度も失敗をするなんて時間の無駄でしかないものね」

戦闘員「……良くお分かりの様で。では、よろしくお願いいたします」

  「ええ、せいぜい頑張ってもらえると助かるわ」

戦闘員「では、私は指示を出してきます。……こちらで待機していてください」


  (……私個人に依頼するなんて、何事かと思えば……こんな事をさせるとはね)

  (私の能力が必要なんて……そこまで苦労するような事でもないでしょうに)

  (さて、まずは見学。場合によっては……動くとしましょうか)

68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/12(土) 03:45:25.36 ID:LtxLHO/Qo




上条「つ、土御門ぉお!?」ダッダッ

土御門「何だ!? この状況でのんびり会話なんて出来ると思うなよ! いいから走れ!」ダッダッ

上条「分かってるっつーの! でも、これは……多すぎじゃねえか!?」

戦闘員C「居たぞ! 追え!」

五和「前より数が増えてるとはいえ……これは流石に……」

建宮「まぁ向こうも、死体を回収するのでは意味が無いみたいなのよ!」

牛深「それだけが救いですね、現に向こうは銃を―― 「撃てー!」

上条「なっ!? 撃ってきてんじゃねえか!」

土御門「どうやら本当に力づくでって感じになって来たみたいだな……」

五和「このままだと……全員捕まるか、倒れ伏す事になってしまいますね……」

建宮「仕方ねえ……さっきと同じ要領でやり過ごすしかねえのよな!」

牛深「また狭い通路で各個撃破、って事ですか!?」

土御門「それが良さそうだな……その策、乗った!」

上条「それなら……あそこの路地裏に逃げ込むぞ!」

五和「わ、分かりました!」

69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/12(土) 17:56:46.34 ID:pq9EnSj4o


路地裏

上条「さっきと同じように、こうやって逃げて来たけどよ……本当に何とかなんのか?」

建宮「数が少なけりゃどうとでもなるのよ、しかし……あれだけ居るとなると」

牛深「追って来てたのは二十人は居ましたかね……いや、もっと居るかもしれません」

五和「その内限界が来て、どうしようも無くなるのは間違いありませんね……」

土御門「固まって動くのは危険か……二手に分かれて逃げた方が良さそうだな」

建宮「だったら武器を持ってる俺達三人が時間を稼ぐのよ。その間に何とか逃げてもらうぞ」

上条「時間を稼ぐって……数が違いすぎるだろ!?」

建宮「勝つとは誰も言ってないのよ、あくまでも時間稼ぎなのよな」

牛深「ええ、だから心配しないで逃げてください」

土御門「カミやん、ここは任せといた方が良さそうだ。オレ達は逃げさせてもらうぞ」

上条「でも……逃げた所で味方が居る訳でもねえんだろ?」

土御門「いや、味方は居る。……困る位に強力な助っ人がな」

上条「魔術側のヤツらも関わってんだぞ? 学園都市の人間には――っ!?」


「こっちの方か……探せ!」


建宮「……時間も無さそうなのよ。今は逃げろ、上条当麻!」

土御門「行くぞカミやん! 何も考えず走れ!」

上条「分かったよ……今は頼んだぞ!」

70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/12(土) 18:13:35.10 ID:pq9EnSj4o


五和「……建宮さん、本当に味方なんて居るんでしょうか」

建宮「まっ、大体予想は付くのよ。この状況で、結局動かずにはいられなくなったって所なのよな」

牛深「建宮さん、それってまさか……」

建宮「さて、ここが踏ん張り所なのよ。用意は良いか?」

五和「大丈夫です……術式は使えませんが、戦う事は出来ます」

建宮「……姿が上条当麻ってだけに、何とかしてくれそうな気がするのよな」

牛深「悪い癖ですね、でも……俺も同じですよ」

建宮「ほら、敵さんが近づいてるのよな。……行くぞ!」


――――――――――――


上条「土御門、味方ってのは誰なんだよ!?」

土御門「黙って走れって言ってんだろうが。……まぁ、簡単に言えば本当は呼びたくなかったヤツってトコかにゃー」

上条「……魔術師、って事か?」

土御門「珍しく勘が良いじゃねえかカミやん、その通りぜよ」

上条「呼びたくなかった……魔術師」

土御門「ほらほら、まずは逃げるのが先決だぜい。……もうすぐ通りだ、急ぐぞ!」

71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/12(土) 18:32:55.34 ID:pq9EnSj4o


数分後


建宮「……はぁ、はぁ……数が多くてキリが無いのよな!」

牛深「銃ってのはやっぱり厄介ですね……ふんっ!」ブンッ

 「ぐうっ……いい加減に諦めろ!」

五和「そういう訳にもいきません……っ!」ドスッ

建宮「(……大分時間も稼いだのよ、そろそろ俺達も逃げるとするのよな)」

牛深「(分かりました……それにしても、相手はどうして銃を使ってこないんですかね……絶対に仕留められるはずなのに)」

建宮「(さっきは威嚇のためと考えると……どうしても生かして捕える必要があるって事か)」

牛深「(でも、目標の五和……つまり上条当麻はこっちに居ないのに)」

五和「二人とも、敵が近くに居るんですよ! ……っ!」ブンッ 「ぐおっ……」

建宮「(うわー……顔は上条当麻だけど、五和のオーラを感じるのよ)」

牛深「(敵が憐れになってきますね……あの男が絡むと別人になりますから)」

五和「建宮さん! ぼうっとしてないで戦ってください!」ゴスッ 「がはっ……」バタン

建宮(い、五和がヤバくなってきたのよ……ここはさっさと――っ!?)ヒュンッ

牛深「……っ!? た、建宮さんが消えた!? いったいどこに……!」

 「上よ、しっかり受け止めてあげて」

牛深「上……? なっ……!? 建宮さん!」ガシッ

建宮「ぐうっ……何がどうなってるのよ……!?」

72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/12(土) 19:00:35.51 ID:pq9EnSj4o


 「頑張っている所、悪いわね。でも、こっちもそこまで暇ではないのよ」

五和(サラシに……学生服? あの女が建宮さんを……)

建宮「気を付けろ! おそらく……あの女のせいで瞬時に移動させられたのよな」

牛深(『縮図巡礼』……いや、それよりも高度な……)

建宮「ここが引き際なのよ……逃げるぞ!」

五和「は、はい!」

 「あら、そんなに慌てなくても良いでしょうに。それに……」

五和「――っ!」シュンッ

建宮「い、五和!?」

 「この男さえ手に入れる事が出来れば、もう用は無い。お疲れ様、どうぞ好きに逃げてもらって構わないわ」

牛深「ま、待て! 五和をどうするつもりだ!?」

 「答える必要は無いでしょう? 私はそこまで暇じゃないの、はい」

建宮「またっ……!」シュンッ 牛深「クソッ……!」シュンッ

 「――これで良いのかしら? 後は任せるわね」

戦闘員「ええ、十分です。私達もこれで引き揚げます」

 「そう。車を都合してもらえる? 私も連れて行ってもらえると嬉しいのだけど」

戦闘員「……ご自分の能力で移動なされないのですか?」

 「……ええ、出来れば遠慮しておきたいわ。出来る事は出来るけど」

戦闘員「分かりました、車を出しますのでどうぞこちらに」

 (あの男は前に……どうして私にこんな事を頼んだのかしら。……それに、あそこに居たのは土御門……?)

 (まぁ、これ以上は関与する必要も無い。何が起きようと関係も無いわね)

73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/12(土) 19:10:00.92 ID:pq9EnSj4o


建宮「ぐっ……やられたみたいなのよな」

牛深「ええ、そうみたいですね……クソッ……!」

建宮「にしても、いきなり飛ばされて気が付いたら離れた場所なんて……訳が分からないのよ」

牛深「学園都市の能力者、ってヤツですか……あれで五和も……」

建宮「……ここで何を言っても仕方が無いのよ、まずはあっちに連絡を入れるしかないのよな」

牛深「そうですね……でも、敵の狙いは五和の姿をした上条当麻だったんじゃ?」

建宮「どうやら……本当の狙いは、あの男の身体だったみたいなのよ」

牛深「だとすると、五和が……」

建宮「あぁ、一刻を争う事態って事なのよ……」

74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方) [sage]:2011/11/12(土) 20:48:37.57 ID:Ni+DM6YTo
マダー?
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/12(土) 23:44:57.16 ID:RHGlrJVUo


上条「土御門、なんか変じゃねえか……?」

土御門「……あぁ、こっちに追手が来ている気配がねえな」

上条「アイツらがいくら戦いなれてるとは言っても……あんだけの数をいつまでも食い止められんのか?」

土御門「何かあったと考えて良さそうだな……連絡を――向こうから来たか」ピッ

建宮『こちらは建宮斎字、そっちは大丈夫なのよ?』

土御門「カミやんもオレも無事だ。……何かあったか?」

建宮『察しが良くて助かるのよ。……五和が攫われた』

土御門「何……? 五和が?」

上条「おい、土御門! 五和がどうしたんだ!?」

土御門「落ち着けカミやん、……お前達が居ても無駄だったのか?」

建宮『数で負けた訳じゃねえのよ、……学園都市の能力者ってヤツは厄介なのよな』

土御門「能力者……だからと言って三人が遅れをとるとは思えないが」

建宮『……人を瞬間移動させるような敵に勝つ方法なんて、流石に考えてなかったのよ』

土御門「瞬間移動……おい、どういう事だ!?」

建宮『ええい、とりあえずは合流してから話すのよな。それでも良いか?』

土御門「……分かった、一度カミやんの家に戻ろう」

建宮『了解なのよ』プツッ

上条「土御門……五和は」

土御門「オレにも分からねえ……とりあえず、一旦戻るぞ」

76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/13(日) 00:03:09.07 ID:tUfFxjwAo


とある男子寮 上条の部屋


上条「建宮、何があったんだ! 五和はどうなっちまったんだ!?」

建宮「大声出すもんじゃねえのよ、上条当麻。……お前さんの気持ちは分かるけど、一度落ち着くのよな」

土御門「詳しく聞かせてくれるか、瞬間移動……とはどういう事だ?」

牛深「俺達は途中まではなんとか持ちこたえてたんです。しかし……」

建宮「あの女一人にやられちまったのよ……」

上条「あの女……?」

牛深「上はサラシに学生服、変わった格好をしてる女でしたね……」

建宮「その女がやったのかどうかも分かんねえけど、俺をいきなり空中に移動させたり、
    遠くに飛ばしたり……その力で五和も攫われちまったって訳なのよ」

上条「サラシ……学生服、それって」

牛深「心当たりがあるんですか!?」

土御門「間違いねえな……『座標移動』か」

上条「土御門……お前も知ってんのか?」

土御門「あぁ、色々あってな。けど、そいつが出てきちまったのか……」

牛深「五和が何されるかも分かりません……」

上条「……今すぐ助けに行くしかねえだろ、何かされてからじゃ遅い」

建宮「けど、今のままじゃどうしようもねえのよ……何か打つ手はあるのか?」

土御門「……少し時間をくれ、情報を集めてくる」

上条「……土御門、お前に任せても良いのか?」

土御門「カミやん、オレだって嘘はつくし裏切る事だってある。
     ――けどな、こんな状況で黙った見過ごす程落ちぶれてねえんだよ」

上条「……んな事言われなくても分かってるっつーの、頼んだぞ」

土御門「おうよ、少し待っててくれ――」

77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/13(日) 00:23:07.18 ID:tUfFxjwAo


建宮「……少し、意外なのよな」

上条「意外って……何の事だよ」

建宮「お前さんの事だから、何も考えずすぐに五和を助けに行くぞ、とか言い出すのかと思ってたのよ」

上条「……かもな、でも今は敵も何も分かってねえんだ。だったら無駄な事は出来ない、
    今も五和がどうなってるかも知る事が出来ねえんだ……土御門に任せるしかねえだろ」

牛深「……間違いないですね、あれだけの敵を相手に何も考えず挑んだらそれこそ無駄死にです」

建宮「――けど、何かあった時はどうするのよ?」

上条「言わなくても分かってんだろ? お前達と一緒だ……」

牛深「……建宮さん、そんなの聞くだけ野暮ですよ」

建宮「確かに、悪い事をしたのよ。五和に何かあった時は……学園都市であろうと死ぬ気で立ち向かってやるのよ」

上条「……今は土御門に任せよう、俺達が動くのはそれからだ」

78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/13(日) 00:45:51.22 ID:tUfFxjwAo


土御門「……結標、お前もこれに関わってたとはな」

結標『あら、珍しく仕事以外の電話をしてきたと思ったらそういう事』

土御門「話を逸らそうとするな。……アイツに頼まれたのか」

結標『ええ、その通りよ。個人の仕事なんて何かと思ったら、あの男と関わる事になるとはね』

土御門「あの男、上条当麻をどこへやった?」

結標『それに私が答える訳にもいかないでしょう? 仕事の内容を話すなんて馬鹿な事をすると思っているの?』

土御門「あぁ、お前の言う通りだな。ただ、――オレがどういう人物か分かって言っているのか?」

結標『脅しているつもり? そんな言葉だけでどうにかなるとは思っていないわよね?』

土御門「オレも組織内で争いを起こしたくないんだ、協力してもらえると助かるんだがな」

結標『……嫌、と言ったら?』

土御門「それこそ答える必要も無いだろう?」

結標『それもそうね。……第十学区のある研究所』

土御門「……何? いきなり情報をよこすなんて何を考えているんだ?」

結標『私はもうこの件に関わる事は無いの、それに……隠さなくても良い、と言われたのよ』

土御門「隠さなくても良い、ときたか。ますます何を考えてるのか分からないな」

結標『それは直接言ったらどうかしら? それと……まだお互い傷を治してる状態なのだから、無理はしない方が良いと思うけど』

土御門「……まっ、オレの立場上それでも見過ごす訳にはいかなくてにゃー。切るぞ」

結標『お礼の一つ位言って欲しかったわね、無理しないように』プツッ

79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/13(日) 02:19:50.58 ID:VFV92mNro


建宮「しかし、学園都市の能力者ってのは恐ろしいのよ。詠唱も魔方陣も何もなくとも能力が使えちまうとはな」

上条「あれはあれで色々大変らしいぞ、……俺にはよく分かんねーけど」

建宮「分かんねえ? お前さんも能力者なのよな?」

上条「それはそうなんだけど……なんっつーか、能力は使えるけど違うと言うか……」

牛深「能力者ばかりの学園都市の中では、その右手も効果なしって所ですか」

上条「いや、一応今の所は能力者相手でも効果を発揮してくれてるぞ」

建宮「ん? ……おい、それだと何かおかしいのよな」

上条「おかしいって言われても……俺の右手はそういうモンなんだから仕方ねーだろ」

建宮「違うのよ、さっきあの女に五和は消された。お前さんの姿をしている五和がな」

牛深「それが何か……っ! 建宮さん、それって……」

上条「……幻想殺しが発動していない」

建宮「能力によって消せるもんとそうでないもんがあるのか?」

上条「例外を除けば、触れる事さえできれば何でも打ち消せる。……それに、転移系なら俺には効かないはずだ」

建宮「だとすると……今、上条当麻の右手は何の意味も無いただの右手。つまり――」

上条「幻想殺しが……消えた?」

80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/13(日) 02:30:11.46 ID:VFV92mNro


土御門「待たせたな、調べた所どうやら……ん? どうした、何かあったのか?」

上条「土御門……五和はあの女に能力で連れて行かれた、俺の姿をした五和が」

土御門「それがどうかしたのか? 『座標移動』ならそれ位…………おい、それはまさか」

建宮「あぁ、そのまさかなのよ」

土御門「幻想殺しが機能していない……ハッ、悪い冗談だろ?」

牛深「でも、確かに五和は能力とやらで連れ去られました……俺達の目の前で」

土御門「カミやん、五和の右手……つまりはお前の右手はどうなんだ?」

上条「それはまだ分かんねえけど……五和の右手が幻想殺しを使えるとは思えない」

建宮「……試しに簡単な治癒魔術を使ってやるのよ。右手を出すのよな」

上条「お、おう……こうか」

建宮「使うもんは……まぁ、適当で良いのよな。……これと、これで……よし、いくぞ」

土御門「これで打ち消しちまったらそれはそれで問題だな……」

建宮「……よっと、どうなのよ」

上条「おお……これが魔術ってヤツなのか。さっき擦りむいた所が治ってきてる」

牛深「魔術が普通に効いた、って事は……」

土御門「五和の手にも、カミやんの手にも無い。……幻想殺しが本当に消えちまった」

81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/13(日) 03:45:18.65 ID:VFV92mNro


建宮「入れ替わりが何か関係してるって事なのよ?」

土御門「カミやん、今まで幻想殺しが使えなくなったって事は無かったのか」

上条「……そんな事今までは無かったな、これが初めてだ」

土御門「……どうやら、ただ入れ替わっただけじゃなかったみたいだな。また厄介な事に……」

上条「土御門、確かに幻想殺しについても気になるけど、今は五和を助ける事が第一だろ」

土御門「あ、あぁ、その通りだな……五和の連れて行かれた場所だが、第十学区の研究所らしい」

上条「第十学区の研究所か……他の情報は?」

土御門「オレが調べた所、……この画面を見てくれ、ここの研究所に車が何台も一斉に出入りしたらしい」

建宮「なかなか便利そうな機械なのよな……いや、そんな事言ってる場合ではないのよ」

上条「……もしかして、この書類に書いてある場所と一緒か?」

土御門「見せてくれ……あぁ、この紙に書いてある場所と一緒だな。どこでこれを?」

上条「小萌先生に渡されたんだ、ここまで五和を連れて行くようにってさ」

建宮「連中は最初っからここに連れて行くつもりだったって事か……」

土御門「そうみたいだな……それなら一刻も早く……っ! ……着いちまったか」

 「――ええ、遅れて申し訳ありません。早速ですが、五和の居場所はそこで間違いないのですね?」

建宮「やっぱりそうだったのよな……味方ってのは」

上条「お、お前は――」

82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/13(日) 04:14:07.67 ID:VFV92mNro


第十学区のとある研究所


五和(うっ……こ、ここは……いったい。……口にも何か拘束、喋る事は出来ない。耳も……何も聞こえない)

 「目覚めたようだな、実験を開始するぞ」

 「まずは……低能力者の発火能力者からだ。呼べ」

――――――――――

 「え、ええと……何をすれば良いんですか?」

 「そこに向かって君の能力を使ってくれ、それだけで十分だ」

 「分かりました……えいっ!」ボオッ


五和(っ……!? 右手に何か……熱を……感じる?)


 「……何も無し、か。どうも、これで終わりだ」

 「は、はい……失礼します」

 「……さて、次は異能力者で試してみるか」


五和(……何が、私は今何をされて……)


 「何でも打ち消す、ねえ。今は何も反応が無いみたいだが……どうだ?」

 「能力を打ち消す様子は今の所見られません。……ただ、能力を測定する計器にも反応なしなのは不思議ですが」

 「仕方ない、空間移動系の大能力者の能力は効いたそうじゃないか。それだと、この実験は無駄かもしれないな」

 「一応、強能力者までは用意してある。地道に試していくしかないか」


五和(何も聞こえず、何をされているかも分からない……助けて、助けてください……上条さん)


83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/13(日) 04:17:23.18 ID:VFV92mNro
土日で終わる…のか?後三〇レス位で終わるはず
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋) [sage]:2011/11/13(日) 06:43:05.02 ID:9W77VN1Vo
おっつんこ
頑張って
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/15(火) 00:19:02.33 ID:6KoBeL+Do


 第十学区のとある研究所、そこでは秘密裏に実験が行われていた。
その実験の内容は、「幻想殺しの能力が発動されるかどうかを調べる」という単純なもの。
幻想殺しとはある少女の言を借りれば能力では無い、らしい。
しかし、上条当麻はその右手で実際に異能力を打消し、幻想殺しを発動させている。
この実験の答えはすでに出ている、幻想殺しは発動するというのがそれである。

では、この「発動されるか」という事を何故今になって検証する必要があるのか。
そもそも、上条当麻と五和が入れ替わった事が全ての始まりであった。
幻想殺しは上条当麻のみが使えるのか、それに類似する能力はあるのか、等々知られていない問題は数多くある。

では、精神が入れ替わった場合はどうなるのか。

もし、五和という少女が上条当麻の姿をしていた時に幻想殺しが変わりなく使う事が出来れば、ある一つの仮説が成り立つ。
幻想殺しは上条当麻の右手そのものである。つまりは精神や思考に関係なく、上条当麻の右手は常に幻想殺しを保持している事となる。

『御使堕し』の時にもし、上条当麻が他の誰かに入れ替わったとしたら、幻想殺しはどうなっていたのか。
それは知る事は出来ないが、先程述べた仮説が正しければその場合でも幻想殺しは発動する。

別の可能性を考える、つまりは幻想殺しは上条当麻の右手ではなく、彼の精神に依存するのでは、という仮説である。
この場合は上条当麻が現在、五和と入れ替わっているのであるから彼女の身体でも幻想殺しが使えるはずだ。

しかし、ここではその可能性や仮設を否定する。現在、幻想殺しは消滅した。これが一つの事実である。
その場合は幻想殺しは何をもって再び発動する事が出来るのか、何に依拠するものなのか。

幻想殺しとは、何か。

86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/15(火) 00:21:17.17 ID:6KoBeL+Do


 再び場を戻す。その研究所では『実験』が淡々と続けられていた。
研究者の指示により、集められた学生達は部屋に入り、能力を使うように言われる。
その能力を向けるのは、上条当麻の右手、つまりは五和の右手である。

 能力者達はただ能力を使うよう言われるだけであり、その先に人間の右手がある事を知らない。
自分だけの現実の構築、能力の使用の際はその対象の存在も重要であるが、
研究者達はその問題をクリアし、確実に対象の右手に効果を与えるようになっている。
能力者達は自分が何をしているのかも知らず、ただ能力を使えるだけだ。

 彼らには、一人の人間の叫び声は聞こえない。

 上条当麻の姿をした五和は、その苦痛に対し声を上げる事も出来ず、痛み訴える事も出来ない。
彼女の口や耳は封じられており、ただ黙して『実験』の被験者になるしかなかった。
集められた能力者は低能力者から異能力者、その中には発火能力、電撃使い、等々何人も集められていた。
その能力に共通する事項は、人間にダメージを与えられる能力という事である。

 そして彼らは五和の右手を傷つける。炎で、あるいは電撃で容赦なく彼女の右手と精神を痛め続ける。

(……熱い、今度は炎……っ! まだ……まだ終わらな……があっ!)

 その声はやはり誰にも届かず、生命に影響を及ぼさないギリギリのラインで『実験』は続けられた。
時間が過ぎ、何度も何度も右手を学生達の能力が襲う。火傷や傷が目立ち、見るも無残なものになってしまっている。

87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/15(火) 00:22:04.75 ID:6KoBeL+Do


「これで十三度、か。未だその『幻想殺し』とやらの効果は現れないな」

 「そうですね……やはり大能力者も集めるべきだったでしょうか?」

 「流石に大能力者まで出してしまうとな……しかし」

 「成果なし、というのもまた問題ですね。……呼び集めますか?」

 「……その必要もあるかもしれんな。被験者の状態は?」


五和(……ま、まだ……もう、痛みも何も感じない……上条さんの手が、……ごめんなさい上条さん……)


 「かなり衰弱していますね……危険な状態かもしれません、どうしますか?」

 「問題ないだろう、続けろ。まだ能力者は残っているのだろう?」

 「はい、まだ残っています。すぐに開始しますか?」

 「いや、少し時間を空けよう。データを確認した後再開する」

 「了解しました、直ちに計測結果を表示します」


五和(……誰か、誰か助けてください……)

88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/15(火) 00:22:46.07 ID:6KoBeL+Do


上条の部屋


上条「……場所だけ教えたら行っちまったけど、大丈夫なのか?」

建宮「俺達が行っても役に立たねえまでは言わねえが……少なくとも今はお一人でも十分過ぎるのよ」

牛深「……ええ、お任せするしか無いですね」

土御門「ったく……他のヤツを連れて来るならまだしも、結局アイツが来ちまうとはな」

上条「アイツが動くのが問題だって言ってたな……確かに頼りにはなるけど、良いのか?」

建宮「まっ、もともとあのお方が上条当麻と逸話に問題が起きていると知れば動かない訳がないのよな」

土御門「ステイルも役に立たねーな、止めてくれと言ったはずなんだが……仕方ねえか」

牛深「いや、あの雰囲気では誰も止める事なんて出来ないと思いますね……」

建宮「あぁ……本気だったのよ」

上条「助けが来たんだったら、ここで黙って待ってるなんてごめんだ。俺達も助けに行くぞ」

建宮「おうよ、お前さんも異存は無いだろう?」

土御門「むしろ、アイツが暴走する前に止めてくれ。……やり過ぎるのが一番怖いぜい」

上条「……ともかく、急ぐぞ。場所は第十学区だ」

土御門「悪いがオレは情報を集めてくる。一刻も元に戻れるようにしたいからな」

上条「分かった、そっちも頼んだぞ。……聖人の本気、か」

建宮「言うまでも無く、その戦力は桁外れ――着いた所で全て終わってそうな気がしないでもないのよな」

89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/15(火) 00:23:53.84 ID:6KoBeL+Do
第十学区 とある研究所 入口玄関


 武装した集団が研究所の前に数人並んでいた。その集団は先程上条達を襲撃し、五和を攫って行った者達である。

「……被験者を奪還される可能性があると言うが、本当なのか?」

「だからこうして俺達が警備に当たってるんだろ。まぁ、この研究所だけでも五十人が配備されているんだ」

「つまりはそれ相応の戦力を用意しないと何も出来ず撃退されるだけ、そんな状況で誰が来ると思う?」

「しかし、男三人、女一人と交戦したのだろう? その集団が来る可能性もある」

「だからと言って、あの戦力では何も出来ないだろう。それに、今度は威嚇ではなく沈黙させてしまえば良い」

「殺害の許可は出ていないはずだが……」

「状況次第では許されるさ。ともかく、敵は来ない。来ても何の問題も無い」

「その通りだな。ただ退屈な時間が……ん? 何者かがこの敷地内に侵入したようだな……」

「なんだ、結局やって来ちまったのか……それなら、迎えてやろうじゃないか」

「反応は……百メートル……っ!? ロストした!?」

「いや違う……早すぎて追えてないだけだ。対象は……この近くに居――ごがっ……!?」

「ど、どうした!? ……ひいっ!?」

 武装した集団が見たものは一人の女、その手には大きな日本刀が握られていた。

「ここに五和が……さて、すぐにでも救出してこの場を去りたい所ですが」

 女に対して、いくつもの銃口が向けられた。その中でも一人の男がその場にいる者達に指示を出す。

「……敵襲だ、全員に発砲を許可する。始末しろ」

 その言葉に対し、女はため息をつきながら一言。

「……どうやら、少々痛めつける必要があるようですね」

90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/15(火) 00:27:20.11 ID:6KoBeL+Do


研究所内の一室


(……あれから何もされていない。でも、何が起きているのかも分からないまま……。
 上条さん……ごめんなさい。あなたの身体をこうして守りきれなくて……また、傷付けてしまって)

 五和の置かれている状況は変わらず、視覚、聴覚を奪われ喋る事も動く事も出来ないままであった。
その五和の様子を眺めながら研究者達は何かを話し込んでいる。

「……外が騒がしいな。何かあったのか?」

「何でも、被験者を奪還する者がここにやってきたらしいですが……」

「報告では四人が抵抗していたそうだが、その四人か?」

「いえ、それが……侵入したのは一人のようです」

「一人……? ずいぶん無茶な事をするものだな。で、その侵入者とやらはどうした?」

「実は……外で警護している部隊から連絡が来ないのです?」

「……ったく、使えない連中だ。誰か外に――」

 一人の研究者がすべてを言い終える前に研究所内に警報が鳴り響いた。
それは施設に何かあった時だけに作動する物であり、それは即ち何か異常事態が発生した事を意味している。

「これは……何が起きているんだ!?」

「分かりません……すぐに確認し――だ、誰か居ます!」

「何…………っ!? お、女!?」

「失礼します、ここに居ると聞いたのですが……五和っ!?」

「ま、まさか……お前が侵入者か!? 誰か、誰でも良いからすぐにこの女を……ぐほあっ……」

 助けを要請した一人の研究者に向かって、女はその手に所持していた日本刀を振り回す。
刀は鞘に収まったままの状態であり、刀傷がつく訳では無かったがその女の化け物の様な力で研究者は壁まで弾き飛ばされた。

「助けを呼んでも無駄です。戦力と思われる部隊は全て機能していないでしょう」

「だ、誰だ!? 何故この研究所に……」

「答えるとするならば……その者を救出に来た、それだけです」

 その言葉の後、女はその場に居た者を全て沈黙させ、五和のもとへと向かった。


91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/15(火) 00:28:05.80 ID:6KoBeL+Do


五和(……誰かの気配? それに……これは敵ではないような……)

 「五和、五和! この腕は……っ! こんな事が……五和、大丈夫ですか!?」

五和(誰かが……近くに居る? これは……上条さん、いや……もしかして)

 「すぐに拘束を外します……これを、外せ、ば……五和!」

五和「その声は……女教皇様、ですか……?」

神裂「ええ、あなたを助けに来ました。……五和、この腕は」

五和「腕……? あぁ……こんな事になって、いたんで……すね」

神裂「酷い事を……安心してください、もう傷付けられる事はありません」

五和「そう、ですか……私、また……上条さんの身体を……」

神裂「五和!? しっかりしてください、五和!」

五和「ごめんな……さ、い……かみじょ、うさん……」バタッ

神裂(あなたはそこまで……。ともかく、すぐにでもこの場を離れなければ)

92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/15(火) 00:29:29.36 ID:6KoBeL+Do


同施設 入口前


上条「ここのはずだが、……っ!? 人が倒れてる……」

建宮「どうやらさっき俺達を襲ってきたヤツらの様なのよ。……流石、と言った所なのよな」

牛深「そのまま中まで攻め入ったんですかね……五和は大丈夫でしょうか」

建宮「まだ五和が攫われてから二時間弱だ、最悪の事態にはなっていないだろうが……」

上条「何かあったら遅いんだ……急ぐぞ!」

牛深「……待ってください、中から誰か出てきます」

建宮「あれは……女教皇様と五和なのよな」

神裂「…………」

上条「神裂! 五和は……五和は無事か!?」

神裂「……ええ、命に問題は無いでしょう。しかし……」

建宮「……! この右手は……どういう事なのよな!?」

牛深「火傷……場所によっては焦げた様な……それに斬られた様な無数の傷」

上条「……神裂! 何があった! 誰が五和にこんな事をしやがったんだ!?」

神裂「……実験室の様な部屋の中で、五和は拘束されていました。おそらく、そこで……」

上条「……クソッ!」ダッ

建宮「おい! どこに行くのよ上条当麻?」

上条「五和をそんな目に遭わせたヤツをぶっ飛ばすんだよ……こんな事されて何もしねえなんて無理だろうが!?」

神裂「待ちなさい、その必要はありません」

上条「……どういう意味だよ」

神裂「あなた達の怒りも分かりますが……代わりに私が潰しておきました」

建宮「潰す、と来たか。随分簡単に言ってのけるものよな」

神裂「……自制がきかなかったのか、少々やり過ぎてしまったかもしれませんね」

93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/15(火) 04:32:40.72 ID:6KoBeL+Do


その建物には窓が無かった。

学園都市の中に悠然とそびえたつその建物の一室に土御門元春は居た。
土御門の前には巨大なビーカーが存在しており、その中から手術衣の様な服を着た者が土御門に視線を向けていた。

「どうした、何の目的も無くここに来たという訳でも無いのだろう?」

「……幻想殺しをどうするつもりだ」

「君にしては珍しいな。あまり感情には流されない人間だと思っていたのだが」

「オレの話はどうでも良い、質問に答えろ。答える気が無いのなら……今すぐ入れ替わりを解除しろ」

 声こそ静かであるが、その鋭い眼光からは怒りの感情が窺える。
しかし、土御門の要求に対してもその者はただ平坦に答えを述べるだけだった。

「私が入れ替わりを起こした、と言った記憶は無いが。どうやら君は私が全ての発端だと思っているようだな」

「今更そんな事を聞きたくてここに来た訳じゃない。お前の狙いを理解しようとも思わない、ただ元に戻せと言っているだけだ」

「精神の入れ替わり、その様な特殊な状況を私が生み出せると本気で思っているのか?」

「あぁ、その通りだ。精神が入れ替わった状態で幻想殺しがどうなるか……それを調査するのが目的だろう」

「確かに、特定の状況下で幻想殺しがどの様な効果を見せるかは興味深いな。あくまでも興味でしかないが」

「……元に戻す気が無いのなら、せめてどうやったかだけでも言え。
 言わないのならイギリス清教に全てを任せて解除の方法を探す、分かったな」

 これ以上話しても無駄と判断し、土御門は部屋の出口へ向かって歩き出す。
しかし、背を向けた土御門に対しその者は一言こう述べた。

「――『御使堕し』。天使とやらが引き摺り下ろされた際に起きる副作用、だったか」

94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方) [sage]:2011/11/16(水) 20:17:05.81 ID:e9PJntrko
おつ
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/17(木) 00:45:07.63 ID:0hw86yUqo


上条の部屋


上条「五和……五和、目を覚ましてくれ!」

五和「……んん、ここは……?」

建宮「ここは上条当麻の部屋なのよ」

五和「そうですか……私、迷惑をかけてしまったみたいですね」

神裂「五和、あなたのせいでは決してありません。謝る必要は無いのですよ」

五和「ですが……私がもっとしっかりしていれば、捕まる事も無く……上条さんの右手をこんな事にしないで済んだと思うんです」

上条「……俺の右手なんかどうでも良い、五和が無事なら」

牛深「しかし、これは惨い……。建宮さん、準備は出来てます。すぐに治癒を」

建宮「分かっているのよ。五和、右手を出せ」

五和「ですが、上条さんの体には魔術は……」

上条「それが……どういう訳か、幻想殺しが消えちまったんだ」

神裂「幻想殺しが……消えた?」

上条「五和が攫われた時に学園都市の能力者が居たらしいんだが……そいつの能力が五和に効いちまったんだ」

神裂「あなたの右手は能力者、とやらにも効果を発揮するのですか?」

上条「あぁ、だから今五和の右手、つまり俺の右手には幻想殺しが無いって事になるな……」

神裂「それはあまり良い状況とは言えませんね……ローマ正教の者がそれを知れば、考えるまでも無いでしょうが」

上条「……最初はすぐ戻れると思ったが、まさかこんな事になるとはな」

96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/17(木) 00:59:54.40 ID:0hw86yUqo


上条「……右手の傷が治っていってる。これが治癒の魔術なのか?」

建宮「ああ、お前さんには効かねえと思っていたが……まさかこんな形で使う事になるとは思わなかったのよ」

牛深「……もう良いですかね。五和、どうだ?」

五和「は、はい……もう大丈夫です。ありがとうございます……」

上条「しかし、こんな紙切れとかペンで魔術が出来るとはな……」ヒョイッ

神裂「……なるほど、五和の体に幻想殺しが移ったという訳でも無さそうですね」

上条「……確かに、右手で触っても何の反応もねえな」

建宮「本当に消えちまったって訳か……どうなってんのか理解に苦しむのよな」

上条「それより……五和、本当に大丈夫か?」

五和「はい、もう心配していただかなくても大丈夫です。でも……どうして私を攫ったのでしょうか」

建宮「五和を攫ったって事は、つまりは上条当麻に用があったって事なのよ」

神裂「そして右手にだけ傷を負っていた。ここから考えられるのは……」

上条「俺の右手について何か知りたかった、そして調べる必要があった」

建宮「そう考えるのが自然なのよ。……お前さんの右手は確かに奇怪なもんだが、今になってそれを調べるとは」

牛深「入れ替わっちまった後ですから……それと何か関連が」

神裂「可能性は十分にあるでしょう。……そこから、元に戻す方法も見つかればよいのですが」

土御門「――五和は無事に奪還できたみたいだな」

上条「土御門? ……お前、どこに行ってたんだよ」

土御門「あぁ……ちょっとな。それより、その入れ替わりについて聞いて欲しい事がある」

神裂「土御門、何か分かったのですか?」

土御門「確証は無い、が……今は一番可能性として高い話をする」

97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/17(木) 01:18:25.48 ID:0hw86yUqo


建宮「可能性の高い話、と来たか。どの位信じられる話なのよ?」

土御門「正直に言えば、全く信じられなくても仕方の無いレベルの話だ。……だが、今は聞いて貰うしかないな」

上条「土御門、それでも良いから話してくれ。……五和をこんな目に遭わせたヤツが関係してるかもしれねえからな」

五和「上条さん……私は問題ありません。話してください。上条さんが元の体に戻る事が出来るのなら、私は何でもします」

土御門「……何でも、か。何か出来るのなら動いて貰いたいトコだが、それすらも出来ない状態でな」

神裂「もったいぶらずに話しなさい、土御門」

土御門「分かった。……入れ替わり、この単語だけで何か思いつく事はあるか?」

上条「……一番最初に考えたのは、『御使堕し』だったな。でも、あれは俺の右手で防ぐ事が出来たから違うだろ」

土御門「そうだ、カミやんの右手は『御使堕し』の影響を完璧に防いだ。それは間違いない」

神裂「では、『御使堕し』はまったく関係が無いという事で良いでしょうね」

土御門「いや、そうじゃねえんだ。完結に言うぞ『御使堕し』……今回もそれが原因だ」

上条「……土御門、いくら俺でもそれは違うって分かるぞ。俺にはアレは効果が無いんだからさ」

土御門「確かに、世界全体に影響を及ぼした『御使堕し』はカミやんには効かなかった。何故だか分かるか?」

五和「……上条さんの右手が防いだんじゃないんですか?」

土御門「その通りだ、カミやんは幻想殺しによって難を逃れている。そしてもう一つだけ例を挙げるぞ。『天罰術式』、この場合はどうだった?」

上条「同じ様に幻想殺しのおかげで影響が無かったな……それが何か関係あるのかよ?」

土御門「この二つに共通する事、それは……カミやんの身体全てに干渉しようとしたという事だ」

98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/17(木) 01:49:08.38 ID:0hw86yUqo


土御門「右手にも干渉しようとした結果、幻想殺しによって魔術が打ち消された。だからカミやんは影響を受けなかった」

神裂「それは分かりましたが、そうするとやはり『御使堕し』は関係無いという事になるのでは?」
                                   、、
土御門「そうだな、今回の『御使堕し』がカミやんの身体全てに干渉しようとしたならの話だが」

建宮「それはつまり……上条当麻の全身に干渉してはいない、と言いたいのか」

土御門「ああ、カミやんの全身に干渉した魔術は効果を発揮しない。それなら、カミやんの右手に干渉せずに魔術を使えば良いんだ」

五和「右手に干渉しない……それはつまり右手以外に干渉するという事ですか?」

土御門「正確に言えば、右手を除いた全身に干渉するという事だな」

上条「右手以外って……そんな事出来んのかよ?」

土御門「カミやんは右手以外の箇所に魔術が干渉してきた時、防ぐ事が出来なかったんだろ?」

上条「……アウレオルスにやられた時は、一時的に記憶を消されたな」

土御門「つまり、カミやんに魔術が絶対効かない、という訳では無いんだ。そして右手以外と、さらに五和を対象にする」

五和「私も対象に……確かに入れ替わったのは私ですから、その可能性もありますけど」

土御門「その二人を対象に、『御使堕し』は干渉を行った。いや、正確には『御使堕し』ではなくその『副作用』だな」

神裂「精神の入れ替わり……それが五和と上条当麻を襲った、そう言いたいのですね」

土御門「その結果、こうやって入れ替わりが起きちまった。頭をぶつけたなんてのはただの偶然、意図して起こされた入れ替わりって事だ」

上条「土御門、色々おかしい所があるだろ。俺の右手が入れ替わってすぐ触れたら効果は消えるんじゃねえのか?」

神裂「精神の入れ替わりを自覚している、というのも気になります。それに……そもそも天使が降りてきていないのですから『御使堕し』は起きないでしょう」

土御門「そうだな、天使が居ないと『副作用』自体起きねえよ。……ただ、天使に近い『何か』が存在したらどうなるか」

五和「……天使に近い、何か」

99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/17(木) 12:57:53.14 ID:V+lU0sqSo
おつわさん
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(埼玉県) [sage]:2011/11/20(日) 00:11:55.79 ID:qzfd+959o
100げっと
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方) [sage]:2011/11/20(日) 20:42:13.83 ID:FCQN1Pfgo
まだなのか
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/22(火) 05:38:34.35 ID:eIl0AXUOo


神裂「土御門、今は冗談を言っている時ではありません。あなたもそれは分かっているでしょう?」

土御門「ああ、分かってる。だからこそ今は持ちうる情報を全て出して話そうとしてるんだ」

建宮「……それは天使に近い何がある、と言っていると解釈して良いのよな」

土御門「その通りだ。九月三〇日、学園都市にあるモノが突如現れた」

上条「おい……それってまさか」

土御門「『ヒューズ・カザキリ』と言うらしいな。あの『前方のヴェント』を無力化する程の力を秘めた存在だ」

神裂「……それが天使に近いモノ、と言いたいのですか」

土御門「カミやんも間近で見ただろ? あの姿、そして学園都市に広がっていった光……天使に近い何かと呼んでも良いだろう」

上条「だからって、『御使堕し』とは状況が違いすぎるだろ……入れ替わりが起きるのは本物の天使が降りてきた時だけじゃねえのか?」

土御門「もちろん、本物の天使程の力は無いだろうな。……ただ、ここで重要なのはそこじゃねえ。天使に近いモノが存在する、それが鍵なんだ」

五和「それが存在すると、入れ替わりが起きるという事ですか?」

土御門「要は模倣だ。天使に近いモノが存在する時に『御使堕し』と同じような術式を組み、地脈の流れやその他の条件をクリアすれば」

神裂「『御使堕し』と同じ様な状況にする事が出来る、と言いたいのですか。……随分、無理のある考えですね」

土御門「無理があるのは十分承知だ。ただ、今回は天使を降ろす事が目的じゃねえ。あくまでもその『副作用』だ。
     現象よりもその副作用を起こすのが目的、ってのは良くあるコトだろ?」

建宮「だからと言って、魔術を発動させるのが簡単になった訳では無いのよ」

土御門「考えてもみろ、全世界に影響を及ぼした大規模魔術など必要ない。たった人間二人だけが影響を受ければいいんだ。
     右手に影響しないような繊細なモノだったとしても、六十億を相手にする訳じゃねえ。しかも場所は学園都市のある一室、両社に距離がある訳でも無い」

五和「そう聞くと困難では無いように感じますが……それでも」

上条「そんな事が出来るヤツが居るのか? それに、そいつの狙いは何なんだよ?」

土御門「それは……」

神裂「早く言いなさい、土御門。あなたはもう分かっているのでしょう?」

土御門「……悪い、そこまではオレにも分からねえんだ」

103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/22(火) 05:40:06.44 ID:eIl0AXUOo


上条「おい……そこまで言っといてそれは無いだろ? ……そこがはっきりしねえと何も出来ねえじゃねえか」

土御門「悪い、オレでも分からない事はあるんだ。……カミやんの右手に関する事ってのは間違いないだろうが」

神裂「土御門の考えでいくならば……右手について何かを知ろうとして魔術を発動させた、と考えるのが自然でしょうか」

建宮「右手を調べるため、と言い切れる理由でも?」

神裂「五和が攫われた研究所では、右手のみを対象に実験を行っていたと考えられます。実際傷付いていたのは右手だけでしたから」

五和「しかし、あの集団は学園都市側の組織という事ですから……魔術師と関係があるとは思えません」

建宮「……ローマ正教が学園都市の人間と協力するとは考えられないのよ、どこか他の魔術組織……そう考えるべきか」

上条「いや……風斬は魔術組織なんかに協力するようなヤツじゃない」

神裂「風斬? あなたは先ほど出てきた『ヒューズ・カザキリ』というモノについて何か知っているのですか?」

上条「風斬はモノじゃない、俺を助けてくれる仲間……そしてインデックスの友達だ。だからそんな事をするとは考えられねえよ」

五和「上条さんの言う通りだとすれば……学園都市の誰かが魔術を発動させたという事になりますが」

神裂「土御門、やはりあなたの考えでは納得がいかない箇所が多々あります。申し訳ありませんが……他の可能性を考えるのが妥当でしょう」

土御門「……そうだな、オレもそう思う。悪い、今まで言った事は忘れてくれ」

上条「それだと結局……何も分からずじまいって事か。何も出来ないのと一緒だな……」


土御門(……『御使堕し』、ヤツは確かにそう言った。これが天使に近い『何か』を利用したモノなのは間違いない。
      だとすれば、やはり『ヒューズ・カザキリ』を利用した……またはそれ以外の存在。ハッ、そんなものがある訳が無いか)

     (狙いの方は明らかに上条当麻の右手に関連した事だ、それは間違いない。しかし、何の得がある?
      そもそもアイツに魔術が使えるのか、人工のモノで模倣の役割を果たせるのか……実際、入れ替わっているという事実は考えている以上に深刻そうだな)

104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/22(火) 05:43:11.93 ID:eIl0AXUOo


「……こうして生きてる事すら利用されてる気がして腹立たしいわね」

『そう思うのは君の自由だ、好きにすれば良いだろう』

「ハッ、自由なんて言葉が出るとは驚いた。自分の思い通りに物事を運ぼうと馬鹿みたいに頑張ってるくせにね」

『なに、私がどうしようと君には影響は無い』

「本当にそうなら良いわね、お前が居る限りは無理だろうけど。で、何か用?
 私にはどうしてもやらなきゃいけない事があってお前と話す時間すら惜しいのよ」

『君に依頼する、この男に対して君の力を振るってもらいたい』

「なんだ、消して欲しい人間が居るって事? そんなの私に頼まなくても良いでしょうが」

『君に頼むと言った、それに変わりは無い』

「誰がそんな面倒な事をすると思ってんのかしら? 今はそんなどこのだれか分からないヤツより、
 どうしてもブチコロシたいヤツが居るの。……できるなら何度でも殺してやりたいヤツがなァ!!」

『その機会も与えよう。その前に体を動かす練習でもしてはどうだ』

「……この体とその機会、それが報酬って事か。言う通りにするのもムカつくけど、仕方ないから相手してあげる」

『ではすぐに動いてもらおうか――第四位、「原子崩し」』

105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/22(火) 05:43:44.24 ID:eIl0AXUOo


上条「何も分かんねーのに狙われてるってのもな……」

神裂「先程の集団位でしたら、いくらでも撃退する事は出来ますが」

上条「それは心強いけど……そいつらが来なくなるにはどうしたら良いかが知りたいんだよ」

建宮「現時点だと、学園都市の中に居ても危険ってのは間違いないのよ」

牛深「どうしたもんですかねえ……」

五和「大規模な戦闘になる事は避ける必要がありますから……もう学園都市から逃げ出すくらいしか」

上条「でも、そう簡単には出られないからな……土御門、こっそり抜け出すとかは無理なのか?」

土御門「あれだけの人数を動かしてるんだ、各方面への根回しは完璧ってトコだろうな」

上条「じゃあ許可も出ねえし、通報しても無駄って言いたいのかよ?」

土御門「やってみるか? それで解決するような問題だと思ってるなら考え直した方が良いぞ」

上条「そんな本気モードで言わなくても分かってるって……」

土御門(ヤツがそう簡単に逃げさせてくれる訳が無い、しかし学園都市に居てもその内限界が来る……)

106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/22(火) 05:46:04.85 ID:eIl0AXUOo


上条「結局……土御門、今はお前に頼るしかないんだよな」

土御門「どうした、急にそんな事を言い出して……」

上条「いや、こういう扱いが難しい問題とかってのはいつでも起きてたりするだろ?
    俺は学園都市の人間なのに魔術師と散々やりあってるけど、一歩間違えばどうしようも無い事になったりさ……」

建宮「……既にお前さんはどうしようもない所に居る気がしないでもないのよ」

上条「えっ? そうなのか……?」

神裂「呆れました……『前方のヴェント』は幻想殺しを狙ったと明言していたそうですし、『後方のアックア』に関しては言うまでもないでしょう」

牛深「二十億の信徒を抱えるローマ正教、その上に立つ『神の右席』がたった一人を狙ってるなんて……考えたくも無いですよ」

上条「そう聞くと大変な事に巻き込まれてるって感じがするな……」

土御門「今更すぎるぜよ……もうちょっと危機感持てって」

上条「それだといくつ体があっても足りないな……また入退院を繰り返す事になったりとか」

建宮「冗談で済む話でもねえのよ……五和もなんとか言って」

五和「――そんな事は絶対にさせません!」

上条「い、五和……?」

107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/22(火) 05:47:24.59 ID:eIl0AXUOo


五和「どんな敵が来ようとも、必ず私達があなたを護ります……たとえ、命に代えても」

建宮「あ、あの……五和ちゃーん?」

五和「もう二度とあなたに死ぬ様な思いはさせません。……だから心配しないでください」

上条「お、おう……ありがとうございます」


神裂「(建宮、五和の様子がおかしい気がするのですが……)」ボソボソ

建宮「(女教皇様……あれはもう取り返しがつかないのよ)」

土御門「(恋する乙女は聖人すら倒すからにゃー……恐ろしいもんぜよ)」

神裂「(なっ……! 恋する乙女とは皆ああいう目をするものなのですか……?)」

牛深「(なんというか……目に光彩が無い、とでも言えば良いんですかね)」

神裂「(五和……あなたはいつの間に。……ん? 待ちなさい、恋する……とはそもそもどういう事ですか?)」

土御門「(いや、恋とは何ぞやなんてそんな哲学的な事訊かれても)」

神裂「(そういう意味ではありません! まさか、上条当麻に対して五和が……?)」

建宮「(五和が居る限り女教皇様の出番は無いのよ……ですが、諦めないと言うのであればこちらも協力を!)」

神裂「(あ、諦めるとはどういう意味ですか!?)」

土御門「(ねーちん……堕天使エロメイド、使うか?)」

神裂「(必要ありません!)」


上条(アイツら楽しそうに何か話してやがる……俺も混ざりたい、そして五和の視線から逃れたい)

五和「上条さんの体には傷の一つもつかないよう、私が全力で……上条さん、聞いてますか?」

上条「は、はい! ちゃんと聞いてます!」

108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/22(火) 05:48:40.79 ID:eIl0AXUOo


上条「と、ともかく! 土御門、今はお前に頼るしかない……頼むぞ」

土御門「……んな事今になっても言わなくても良いぜよ。なんだかむず痒くて仕方ないにゃー」

神裂「しかし、現時点では防衛と警護しか出来ないというのに変わりはありませんね……」

上条「でも、俺達に出来る事も無いんだ……とりあえず五和が捕まるとか、最悪の事態だけは避けよう」

土御門(……お前に話す訳にはいかねえんだ、悪いなカミやん)

上条「……で、今は何をするべきなんだろうな」

建宮「情報収集、ってのも流石にここでは難しいもんがあるのよ。……飯でも食って英気を養うってのが一番かもしれねえのよな」

牛深「本当にそんな感じがしますね……どこかに身を隠すような場所でもあれば話は別ですけど」

神裂「下手に動くのも危険でしょう。それに向こうも相当の戦力が無いと戦えない、という事は分かっているはず」

土御門「ねーちんがボッコボコにしたから、しばらくは大人しくしてるだろうにゃー」

神裂「……間違っていませんが、もう少し言い方というものを」

上条「たしかに、神裂が居ればそこら辺のヤツには負けないか。やっぱり神裂はこういう時は頼りになるな……」

神裂「……それだと私がこの様な時にしか役に立たない、と言っているように聞こえますね」

上条「えっ? いや、別にそういうつもりじゃ……。神裂は他にも良い所があるけど、やっぱりその力は頼りになるって言いたいだけで……」

神裂「いえ、分かっています。私には戦う以外はありませんからその様に気を遣っていただかなくても大丈夫です」

上条「それ、絶対大丈夫じゃない言い方だろうが……」


五和(上条さんが頼りにしているのは……女教皇様や土御門さん。……私は、上条さんのために何か出来るのか)

109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/22(火) 05:49:49.75 ID:eIl0AXUOo


五和(戦いでは女教皇様の足元にも及ばない、学園都市の中では情報収集なんかも土御門さんに任せるしかない。
    建宮さんや牛深さんの方が私なんかよりもよっぽど役に立つだろうし……もしかして、私は)


上条「本当に飯食う位しか無いように思えてきたな……」

建宮「それ位出来る事がねえって事なのよ。せっかくだし、五和の手料理でも味わえば良いのよな」

上条「それだったらもう二日間、朝昼晩堪能させてもらってるけどな」

神裂「……それはまさか、五和はここで二日間を過ごしたという意味ですか?」

土御門「ねーちん、その通りぜよ。カミやんはこの狭い部屋の中で五和とあーんな事やこーんな事を」

上条「だから何度も言うけどしてねえっつーの!」

神裂「……しかし、五和と入れ替わっているのであれば、その……」

上条「な、なんだよ……」

神裂「その、つまり……お互いの裸身を見合うという事になるのでは……」

上条「それは…………不可抗力だ、だから仕方が無かったんだ!」

土御門「とか言ってー、少しはこう……揉んでみたりしたんだろ?」

上条「何故それを!? ……あっ」

建宮「お前さん……まぁ、仕方ないのよ」 牛深「男の性ですからね……」 土御門「カミやんのえっちー」

上条「テメェら好き放題言いやがって……!」

神裂「……上条当麻、一つ聞いてもよろしいでしょうか」

上条「か、神裂さん……? これはその、うっかりありもしない事をと言いますか……」

神裂「揉む、とは何を揉むのですか?」

建宮「女教皇様……わざとなのよな?」 土御門「ねーちん……相変わらずだにゃー」

神裂「な、なんですかその目は!? 何か私は変な事を言ったのですか?」

110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/23(水) 21:40:34.14 ID:sKsaANb6o
みてるよ
待ってるよ
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/26(土) 12:46:56.29 ID:g780uZ7Fo


建宮「ともかく、今は耐える事が肝心なのよ。上条当麻と五和を護る事さえ出来れば……五和?」

五和(私は結局、何も出来ずに足を引っ張ってしまっているでのは……上条さんの役にも立たず――)

神裂「五和? どうかしたのですか?」

五和「えっ? あ……女教皇様、申し訳ありません。少し考え事を……」

神裂「そうですか……先程の傷が影響しているのではと少し心配していたのですが」

五和「だ、大丈夫です。ほら、おかげ様でこんなに元気になりましたよ」

神裂「それならば良いのです。……話を戻しますが、やはりこのままでは」

土御門「ああ、こうなった以上は……イギリス清教に面倒を見てもらうしかねえか」

上条「面倒って、今もう既にイギリス清教が助けてくれてるんじゃねーのか? それなら別に抜け出しても……」

土御門「カミやんを保護させるなんて学園都市が許可を出さないだろうな、外に出す事はあっても能力者を魔術師のもとに置きたくはないだろう」

112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/26(土) 12:48:33.85 ID:g780uZ7Fo


上条「イギリスでも何でも良いから逃げてゆっくり元に戻す方法を探したいけどな……」

建宮「それは俺達も一緒なのよ……なんとかお前さんを外に連れ出したい所なのよな」

神裂「土御門、上条当麻を外に出す手段は無いのですか?」

土御門「そう言われてもな……(ヤツがそう簡単には許してくれない、とは言えないか……下手したら本気で潰しに来かねん)」

上条「本当にどうしたら良いか分かんねえってのがな……」

建宮「少し考える時間が欲しいのよ。抜け出すにしても、戦うにしてもまずは方針を決めておきたい」

上条「そうだな……とりあえず今分かってる事を整理して考えてみるか」

五和「……すいません、少し気分が悪いので外に出ても良いですか?」

牛深「まだ傷が痛むのか、五和?」

五和「いえ、そういう訳では無いんです。気分転換、というかそれ位のものなので……」

神裂「……しばらくは敵も来ないでしょうから、問題は無いと思います。ですが、くれぐれも注意してください」

五和「はい、ありがとうございます。……それでは少し失礼します」

土御門(……なんか様子が変だな)

113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/26(土) 12:49:52.50 ID:g780uZ7Fo




五和(はあ……敵に捕まってしまい女教皇様に助けてもらい、上条さんの身体を守る事も出来なかった。
    治癒魔術が効いたから良かったものの……また、私一人では護る事が――)

   (もっと、力があれば……もっと役に立つ事が出来たら……上条さんを私一人で助ける事が出来るのに)


 「あの……すいません」

五和「……えっ? わ、私ですか?」

 「はい、あなたに話しかけたつもりです。……迷惑でしたか?」

五和「いえ、そんな事は……あっ」

   (今は私は上条さんになっていて、この女の人はその私に話しかけたんだから……)

 「えっと……大丈夫ですか?」

五和「あ、ああ……大丈夫だぜ? 俺に何か用でも?」

 「あっ……大丈夫ですよ、無理してその人の真似をしなくても私は知っていますから」

五和「知っている……? ……それはいったいどういう意味ですか?」

 「あなたは……その体の本当の持ち主と精神が入れ替わっているんですよね? それを私は知っている、……という意味です」

五和「えっ!? ど、どうして知っているんですか!? あのお医者さんや土御門さんに聞いたんですか?」

 「それは……どう言えばいいか分からないんですけど、ともかく知っているんです」

五和(この女の人、いったい何者……?)

114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/26(土) 12:51:44.92 ID:g780uZ7Fo


五和「入れ替わった事を知っている、というのは分かりました。……それで、あなたは何か用があって私に話しかけたんですか?」

 「そ、そうなんですけど……そこまで大事な話では無くて。ただ、あなたに言いたい事があって」

五和「……言いたい事、ですか?」

 「はい……その、何と言えばいいか分からないんですけど。一言で言えば……あなたは何も気にしなくて良いんです」

五和「はあ……」

 「初対面の私にこんな事を言われても、その……不思議に思うかもしれませんけど……あなたじゃないと駄目なんです」

五和「私じゃないと駄目……?」

 「はい、入れ替わったのがあなただったから……きっと大丈夫です」

五和「……ごめんなさい、何が言いたいのか私には」

 「えっと、分かって頂かなくても良いんです……きっと後で分かります。それまではどうか……気を落とさずに」

五和(この人の目的や意図がさっぱり読めない……いったいこの人は、誰?)

 「あっ……そうですよね、いきなり現れても怪しいだけですよね……」

五和「いえ、そんな事は……一つだけ聞いて良いでしょうか?」

 「は、はい……どうぞ……」

五和「あなたは……いったい何者なんですか?」

 「私は……その身体の持ち主さんの、なんと言えばいいんでしょうか……一緒に住んでる、女の子の」

五和「……インデックスさん?」

 「はい、その子の……『ともだち』です」

115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/26(土) 12:53:18.43 ID:g780uZ7Fo


上条(五和のヤツ、なんか様子が変だったような……何だろう、少し気になる)

土御門「カミやん、さっきの五和なんだが」

上条「悪い、土御門。ちょっと五和の様子見て来るわ」ダッ

土御門「お、おお……。あのカミやんが……鈍感なカミやんが気付いた?」

建宮「どうやらこの数日間で機微な変化も見逃さないようになってきたようなのよ。驚きなのよな……」

土御門「ん、そっちもそう思うか。……これは、決まったかもしれないにゃー?」

神裂「決まった? いったい何が決まったのですか?」

土御門「残念だけど、ねーちんの堕天使エロメイドの出番はもう無いって事ぜよ」

神裂「なっ……!? 結構です! あんなものを着る機会など無くて構いません!」

土御門「そう言ってられるも今の内だぜい? さて、こっちは真面目な話をしねえとな」

牛深「やはり、イギリス清教に応援を頼みましょうか……」

建宮「それが最善策と思って良さそうなのよ。……まっ、それまで耐える必要があるのが厳しいのよな」

神裂「……学園都市内で撃退と逃亡を繰り返す必要がありそうですね。土御門、他に拠点となるような場所はありますか?」

土御門(撃退、あの武装集団を相手に戦い逃げ続ける……それならいっそ、一気に相手をしても変わんねえか)

神裂「土御門? どうかしたのですか?」

土御門「……いや、オレもようやく踏ん切りがついたトコだ。一番の方法を提案するぞ――」

116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/26(土) 12:54:27.31 ID:g780uZ7Fo


五和「インデックスさんの友人という事は、上条さんともお知り合いという事ですか?」

 「は、はい……以前助けてもらった事もありました」

五和「そ、そうですか……」

   (上条さん……私の知らない所でもやはり。それにこの人……女教皇様以上の)

 「えっと……そう見られると、少し……その……恥ずかしいです……」

五和「あっ……すいません。ええっと……もう一つ聞いても良いですか?」

 「こ、答えられる事なら……」

五和「あなたに聞いてもどうしようも無いかもしれませんが……上条さんと私は元に戻る事が出来るでしょうか」

 「元に戻る……ですか。そうですね……いつかは、きっと戻ると思います」

五和「……それは確証があって言っているんですか? それとも……気休めですか?」

 「確証はありません……ですが、気休めでもありません」

五和「……はあ」

 「あなたならきっと二人で乗り越えられる……そう思ったから、こうして声をかけたんです」

五和「乗り越えられる……? 近い内に何かある、という事でしょうか?」

 「それは私にははっきりとは言えません……でも、きっと大丈夫です。私は信じてます」

五和「そうですか……私には何が起きるか分かりませんけど、何とかなるんですよね?」

 「はい……だから落ち込まないでください。――あなたしかいないんです」

117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/26(土) 12:55:46.08 ID:g780uZ7Fo


五和「私しかいない……そっか。ありがとうございます、なんだか元気が出てきました」

 「そう言ってもらえると私も嬉しいです……あっ」


上条「五和ー! どこに居るんだー!?」


五和「上条さんの声……どうしたんだろう」

 「では、私は失礼します……あなたならきっと大丈夫」

五和「ま、待ってください! せめて、名前だけでも……」

 「気にしないでください。ほら……来ましたよ」スッ

五和「えっ……? 消えた……?」

上条「五和、こんな所に居たのか……ん? どうしたんだ?」

五和「上条さん……実は、今さっきまで女の人がここに居たんですけど……」

上条「女の人?」

五和「はい、ですが……話している途中で消えてしまって」

上条「消えた……ずいぶん不思議なヤツと話してたんだな」

五和「ええ……眼鏡をかけた髪の長い不思議な女の子でした。いったいあの子は誰だったんですかね……」

上条「眼鏡……髪の長い……消えた……もしかして、風斬かも」

五和「風斬さん、というお名前なんですか?」

上条「ああ、インデックスと俺の友達だから心配しなくても大丈夫だぞ。でも、どうして五和の前に現れたんだろう?」

五和(風斬さん……ありがとうございます)

118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/26(土) 20:36:13.63 ID:Jaag2Lr5o
おつ
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/28(月) 02:39:37.08 ID:igU/FLb1o


五和「そういえば私の事を探していたみたいですけど、私に何か用でも?」

上条「いや、用って程でもないんだ。その……少し気になったつーか」

五和「気になったって何がですか?」

上条「部屋を出て行く時、すこし様子がおかしかったからさ。表情が暗いと言うか、悩んでいるような……気のせいだったら良いんだけど」

五和「そうですか……すいません、心配させてしまって」

上条「良いって、何でも無ければそれで良いんだからさ」

五和「……正直に言うと、本当は少し落ち込んでいました」

上条「落ち込んでた……? 五和、よかったら話してくれないか? 俺に出来る事があれば言ってくれよ」

五和「……優しいんですね、上条さん」

上条「そ、そこまででも無いだろ。まだ話も聞いてないし、それを聞いた所で何も出来ないかもしんねーしさ」

五和「では、お話しします。その……私は上条さんのために何も出来ていないんだな、って思ってしまって」

上条「……五和?」

120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/28(月) 02:40:52.84 ID:igU/FLb1o


五和「魔術も使えず捕まってしまい、結局上条さんを護るどころか迷惑をかけてしまいました……」

上条「迷惑って……そんな事ねえよ、それに五和は戦ってたじゃないか。俺なんかよりもよっぽど立派だ」

五和「でも……もし入れ替わったのが私ではなく、例えば女教皇様だったとしたら……私よりも、きっと」

上条「五和……」

五和「私は上条さんみたいに一人で立ち向かう事も出来ませんし、女教皇様の様に多くの敵を一人で相手にする事も出来ません。
    結局一人では何もできない、そんな弱い人間なのかもしれない……そう思ってしまって」

上条「それで悩んでたのか?」

五和「……はい。すいません、ご心配おかけしました」

上条「あのさ……言っておきたい事があるんだけど、聞いてくれるか?」

五和「ええ……何ですか?」

上条「色々あって大変だけど、俺は……五和と入れ替わって良かったと思ってんだ」

五和「か、上条さん……? それはいったい……」

上条「いや、そんな大した理由じゃねえんだ。なんつーか……こんな状況でも楽しく過ごせたのは五和のおかげだと思ってる」

五和「楽しく……でも、入れ替わったまま元に戻れないかもしれないんですよ?」

上条「……それでも構わないって今は思ってるんだ。誰かに狙われたり、また巻き込まれたりして無事には生きられないかもしれない。
    そうなったとしても、五和と一緒なら……近くにお前が居てくれるなら乗り越えられると思う。……他のヤツにも迷惑かけちまうだろうけどな」

五和「私でも……何も出来ない私でも本当に良いんですか?」

上条「何言ってんだよ、お前みたいに何でも出来るヤツも居ないぞ? 五和は弱くなんかない、それは一緒に何度も戦ってきた俺が保証する」

五和「…………」

上条「……五和? どうし――なっ……!」

五和「……ありがとうございます、上条さん」
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/28(月) 02:42:53.15 ID:igU/FLb1o


上条「きゅ、急に抱き着いて来てどうしたんだよ……」

五和「……知りません、上条さんが悪いんです」

上条「俺が悪いって言われても……まあ、今更か」

五和「そうですよ……抱き合って寝るよりは恥ずかしくないと思います」

上条「確かに……そっちが嫌じゃなければ、このままでも」

五和「……私から抱き着いたのに、嫌って思う訳無いじゃないですか」

上条「そ、それもそうか……でも、やっぱり自分の体に戻った方が良いな」

五和「どうしてですか?」

上条「……自分の顔を見ると、少し萎える」

五和「ふふっ……確かに、それもそうですね」

上条「…………」

五和「……上条さん、もし……もしもの話ですよ」

上条「……ん?」

五和「今、お互い入れ替わっていなくてこういう状況になっていたら……どうしますか?」

上条「こういう状況って……」

五和「……抱き合って、相手の顔をじっと見つめるんです。そうしたら……」

上条「そ、それは……」

五和「……やっぱり、その……き、キ 「カミやーん! どこに行ったんだー?」

上条「……っ!? ……今のは、土御門の声か」

五和「そ、そうみたいですね……」

122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/28(月) 02:43:28.05 ID:igU/FLb1o


上条「……行くか、もしかしたら何か進展があったのかもな」

五和「そうですね……あの、最後に一つだけ聞いても良いですか?」

上条「ああ……何だ?」

五和「土御門さんが来なかったら……あのままだったとしたら……どうしますか?」

上条「……それを聞くか?」

五和「き、聞きます!」

上条「……元に戻ったら、その時にまた教えるよ。だから今は黙っとく」

五和「上条さん……その言葉、信じてますね」

上条「やっぱりさ、五和ってこの数日で性格変わってないか……?」

五和「それは……きっと上条さんのせいです」

上条「と、ともかく行こう! 土御門が待ってるだろうし!」

123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/28(月) 02:44:15.26 ID:igU/FLb1o


上条「土御門、何かあったのか?」

土御門「おっ、どこに行ったのかと心配してたぞ。とりあえず、一旦部屋に戻ってから話すつもりだ」

五和「あれから動きはありましたか?」

土御門「それも含めて話すから心配しなくても良いって。あっ、それと……」

上条「ん? 何だよ?」

土御門「お楽しみの所、邪魔してすいませんでしたにゃー」

五和「つ、土御門さん!?」

上条「て、テメェ! 覗いてやがったのか!?」

土御門「えー、別にオレは何も見てないぜい? ただ、二人が消えたからもしかしたら……」

上条「何もねえっつーの! なあ、五和?」

五和「そ、そうです! ……あと少しでしたけど」

土御門「おおっ!? あと少しってなになに? カミやん、ねえねえ?」

上条「黙ってろ! ……ほら、さっさと行くぞ!」

124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/28(月) 02:45:40.85 ID:igU/FLb1o


神裂「戻りましたか、土御門」

土御門「ああ、早速だが二人とも聞いてくれ。今からオレ達の動きを説明するぞ」

上条「分かった。逃げるのか? それとも戦うのか?」

土御門「その質問に答えるとするなら……両方だな」

五和「両方?」

土御門「簡単に言えば……学園都市から脱出する」

上条「脱出って……それは難しいからどうするか、って話じゃなかったのか?」

土御門「その通りだ。だが、これ以上この都市に居たところで状況は何も変わらねえ。
     イギリスから応援を呼ぶのも一苦労……それならいっその事、学園都市を相手取っちまおうって話だ」

建宮「前に天草式が学園都市に入った時とは訳が違うのよ。数が居なければそれ位しか方法はねえって事なのよな」

五和「でも……そんな簡単に逃げる事が出来るんですか?」

土御門「いーや、コレがなかなか面倒なんだ。きっと相手も動きを察知してすぐに戦力を用意してくるだろうな」

上条「だから戦う、逃げるの両方って事か……逃げる算段は付いてんのか?」

土御門「ここから『外』に一番近いのは第十学区、だがそこは相手側の研究所があった場所だ。流石に避けるべきだろうな」

上条「だったら、どこから逃げるんだよ?」

土御門「第二学区、そこにある廃工場を目指してもらう。そこには『外』に通じる道が隠されている」

五和「そこから逃げ出す、という訳ですね」

土御門「第二学区なら車である程度までは進めるだろう。……もちろん、敵さんは黙って見過ごす訳がねえだろうがな」

125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/28(月) 02:46:44.83 ID:igU/FLb1o


上条「でも、逃げ出した先に場所はあるのか? 安全な場所なんてそんな簡単には手に入らねえだろ」

土御門「『外』に出たらそのまま飛行機に乗ってイギリスに逃亡してもらう。二人仲良く揃って高飛びってところだな」

神裂「イギリス清教の者ならば事情を察して保護してくれるはずです。天草式の者も飛行場で待機させておきましょう」

建宮「脱出した後は何も心配しなくとも良いのよ。誰も死なせやしねえ、お前さんもそれが望みだろう?」

上条「……分かった、お前達には迷惑かけるけど……今は逃げる。だから、協力してくれ」

建宮「今更すぎるのよな、最初からそのつもりなのよ」

神裂「あなた達は必ず護ります、必ずです」

上条「土御門、お前は大丈夫なのか? ……今回の事で立場が悪くなったりとか」

土御門「オレの心配をしてる場合か? カミやん、今はオレよりも隣にいる者を大事にしろ。オレはオレで上手くやる」

上条「そうだな……五和」

五和「はい、分かっています……上条さんと一緒であればどこへでも逃げて見せます」

建宮「ずいぶん頼もしい事言ってくれるのよな。……さて、そろそろ牛深が戻って――と言ってたら来たのよ」

牛深「外に車が来たいみたです。キャンピングカー……で間違いありませんか?」

土御門「ああ、間違いないな。さて、持ってくモンを悩む時間も無い……行くぞ」

126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/11/28(月) 02:47:17.21 ID:igU/FLb1o


上条「こんな車よく用意出来たな……」

土御門「色々繋がりってモンがあるんだよ。ここまで運んできてもらったヤツには帰ってもらったから……運転は誰がするか」

五和「それなら、私が運転します。目的地までそのまま走ればいいんですよね?」

土御門「それは助かるぜい、じゃあよろしく頼むぞ」

上条「じゃあ早速……ん? どうしたんだよ、お前達。乗らねえのか?」

建宮「……いや、何でもないのよ。んじゃ、学園都市のドライブを堪能させてもらうのよな」

牛深(間違いなくこれは……)

神裂(……血の匂い。土御門……この都市であなたは……)

建宮(ここでも血生臭いやり合いは存在するって事か……まっ、それも当然って言えば当然なのよ)

土御門「さて……行くか。カミやん、二度と学園都市に戻れないなんて事は無いと思うが……もしかしたら」

上条「ああ、分かってる。……悪いな、土御門」

土御門「今更礼なんて言うなって。さあ、逃げ出すぞ……相手は学園都市だ、全員覚悟を決めろよ」

127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/28(月) 03:22:43.29 ID:g8QeAGc8o
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/12/03(土) 16:04:06.10 ID:74XlglxSo


車内

上条「第二学区か……何も妨害を受けずに行けたらこのまま走り続けてられれば良いんだけどな」

建宮「そんな簡単に脱け出させてくれるとは思えないのよ、何回かの交戦は覚悟するべきなのよな」

神裂「建宮の言う通りでしょう。しかし、絶望的な戦力差ではありません」

土御門「こっちには神裂火織って最高の戦力が味方してるんだ、逃げる位は簡単ってなもんだにゃー」

神裂「私だけではありません、建宮も牛深も五和も居ます。殺めずにこの場を凌ぎ切る事も出来るはずです」

上条「でも……こんな形で学園都市の外に行く事になるとは思わなかったな」

土御門「……ごめんなカミやん、オレがもっとしっかり的確に動いていれば」

上条「なんでお前が謝ってんだよ、誰のせいかも分かんねーけど……土御門には感謝する以外には無いだろ」

土御門「……そっか、そう言ってもらえるとこっちも気が楽ぜよ。少しの間だけイギリス旅行だ、楽しんで来い」

上条「そうやって考えていた方が良さそうだな……だったら旅行の出発の時位は優しく見送ってもらい」

五和「つ、土御門さん! 前方に武装した集団が!」

129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/12/03(土) 16:04:31.88 ID:74XlglxSo


土御門「来やがったか……数はどれ位か分かるか?」

五和「それが……道を埋め尽くすほど、その全員がこちらに銃を構えています」

牛深「連中、本気で妨害するつもりか……どうしますか?」

神裂「建宮、牛深、私達だけで全て引き受けましょう」

土御門「相手は任せた、オレ達は別の道から目的地を目指すぞ」

建宮「数が多いのは悩み所だが……まあ、あの時の上条当麻の状況よりはマシなのよな」

上条「あの時って……オルソラを助け出す時の事か?」

建宮「それだけじゃねえのよ、いつだってお前さんの敵は理不尽なヤツばかりだ。
   ……そう考えると、二回連続で助ける事が出来てラッキーとでも思っても良さそうなのよな」

神裂「では、行きましょうか。この車には誰一人として近づけさせません、安心して進んでください」

上条「神裂、何も出来なくて悪い……頼んだぞ」

神裂「何も心配する事などありません。五和、あなたも気を付けて」

五和「……はい、絶対に上条さんは護ってみせます」

神裂「頼もしい限りです。それでは、またイギリスで――」

130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/12/03(土) 16:04:59.64 ID:74XlglxSo


土御門「五和、ルートを変更したからナビに従って進んでくれ」

五和「分かりました。……女教皇様達は大丈夫でしょうか」

土御門「ねーちんの強さは天草式が一番分かっているはずだろ?」

五和「……そうですね、余計な心配でした」

土御門「でも、カミやんが『俺も一緒に戦う!』みたいな事を言いださねーとは少し意外だにゃー」

上条「俺達が逃げ出すために戦ってくれてるんだ。
   それなら俺のやるべき事は……情けないけど守られる事、それしか無いだろ?」

土御門「その通りだ、今はそれしか出来る事は無い。分かってんじゃねえか。
    ねーちんも天草式と共闘するのにもう抵抗は無さそうだし、それぞれ心境の変化ってモンでもあったか?」

上条「……そんなんじゃねーよ」

上条(……この身体は五和のでもある。だから、傷の一つも付ける訳にはいかねえんだ)

土御門「ん? 急に黙ってどうし――電話、か。……誰だ?」

131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/12/03(土) 16:05:26.79 ID:74XlglxSo


土御門「…………ああ、分かった」プツッ

上条「……土御門、何かあったのか?」

土御門「大した事じゃない、気にしなくても良い。……さて、土御門さんもそろそろ仕事に行ってくるぜい」

上条「仕事? ……何をする気だ?」

土御門「さっきから一台、こっちを追っている様だからな。ちょっと驚かしてくるだけだ」

上条「それは助かるけど、俺達だけで行っても大丈夫なのか?」

土御門「このカードキーを持って行け。そして工場に着いたら非常口を目指してくれ、それを差し込む場所があるはずだ」

上条「……分かった。土御門、無理すんなよ」

土御門「出来る限りはな、また会おうぜカミやん」

132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/12/03(土) 16:06:44.58 ID:74XlglxSo


上条「……結局、残ったのは俺達だけか」

五和「そうですね……皆さんのためにもこのまま無事に脱出しないと」

上条「五和、目的地まではあとどれ位か分かるか?」

五和「もう第二学区には入っていますから……十五分、といった所ですね」

上条「その間に邪魔が入らなければ良いんだけどな……」

五和「ええ……でも、少し気になりますね」

上条「気になる?」

五和「……はい、あれ程の戦力を展開できるのであれば部隊を分けて襲撃する事も出来たはずです」

上条「それが最初の一回だけで、後はほぼ素通し……確かに、やり方が下手過ぎるな」

五和「この先に新手が現れる可能性もあります……気は抜けません」

上条「ああ、俺達二人でどこまでやれるか……」

五和「……逃げ出せたとしても、上条さんは学園都市にいつ戻れるかも分からないんですね」

上条「そうだな……元に戻るか追われないって判断できるまで、しばらくはイギリスに……ん!?」

133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/12/03(土) 16:07:38.59 ID:74XlglxSo


五和「ど、どうしました!? 敵が現れましたか!?」

上条「いや……俺、このままだとやっぱり留年しちまうかもなーって不安になって?」

五和「上条さん……今だけは学校の事は忘れてください!」

上条「わ、分かってるって……でも、イギリスで何して過ごせばいいんだろうな」

五和「イギリスでは……私も居ますから、身の回りの事に関しましては心配しなくても大丈夫だと思います」

上条「そう言ってもらえると助かるな。それに……イギリスにはオルソラやアニェーゼ達も居るし世話になろうかな」

五和「そ、その必要はありません!」

上条「必要は無いって……どういう事だ?」

五和「その……上条さんのお世話は私がしたいんです……駄目ですか?」

上条「だ、駄目じゃないです……じゃあ、よろしく頼む」

五和「は、はい! ……って、こんな事をしてて良いんですかね」

上条「……他に出来る事も無いんだ、今だけは気楽に行こうぜ」

134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/12/03(土) 16:08:19.32 ID:74XlglxSo


第二学区 廃工場


五和「着きました、どうやらここが目的地みたいですね……」

上条「あれからも追手は無しか……こっちの動きが見透かされてんのかもしれないな」

五和「つまり……この工場の中に敵が潜んでいるかもしれないという事ですね」

上条「銃を撃たれちまうともうそこで勝ち目はなくなる……慎重に行かねえと」

五和「……行きましょう、時間もありません」

上条「ああ……何が待ってるかは分かんねえけど、行くしかないな」

135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/12/03(土) 16:08:47.44 ID:74XlglxSo


一方、神裂達は


神裂「数が多いですね……だとすると、五和達の方にもこれと同じくらいの敵が?」

建宮「……ともかく、今は目の前の敵を……ふんっ!」

神裂「ええ、少し離れていなさい……鋼糸の当たらない所まで」

牛深「わ、分かりました! 建宮さん!」

建宮「ああ、俺達は女教皇様の背中を守るのよ!」

神裂「殺めない程度には加減しますが……多少は痛むでしょう――七閃」

建宮「うわー……今ので何十人ぶっ飛んだのか。ご愁傷様なのよな」

牛深「少し、同情したくなりますね……」

神裂「建宮、戦闘中に話す余裕があるのならば戦いなさい」

建宮「(……敵にだけは回したくないのよ)」

牛深「(……同感です)」

136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/12/03(土) 16:09:16.98 ID:74XlglxSo


一方、土御門は


土御門「……手を出すな、とは何が言いたいのかさっぱり分からないな」

 『なに、元に戻るためにはそうするのが最良だと提案しているだけだ。それが納得いかないのなら私も考え直さねばならないな』

土御門「オレが邪魔をする、と言った時にお前は構わないと言ったはずだ」

 『その通りだ。だが、この問題も解決する。それならば無駄な事をしなくても良いだろう?』

土御門「第四位、だったか。お前は幻想殺しを死に追いやりたいのか?」

 『簡単な事だ、誰も死ぬ事は無い。魔術師も、学園都市の人間も』

土御門「……本気か? 何も得る物が無い、どう考えても無駄な戦いだ。何を考えている?」

 『試すだけだ。「それ」が本当に機能するのか、戦いを迎える事が出来るのか』

土御門「食えないヤツだ、万が一の事があった場合は……」

 『好きにすれば良い、気の済む様にすれば満足するだろう』

土御門「その言葉、覚えておくぞ」プツッ

土御門(……カミやん、死ぬなよ)

137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/12/03(土) 16:09:43.44 ID:74XlglxSo


廃工場内


上条「非常口か……五和、そっちはどうだ?」

五和「……見つかりませんね。そこまで広くは無さそうですから、その内見つかるはずだと思うんですけど……」

上条「さっさと見つけて脱出しねえと……ともかく探すしかないか」

五和「ええ……早くしないと追手が来てしまうかもしれませんからね」


「そんなに急がなくても良いじゃない。どうせ逃げるなんて無理なんだから」


上条「……っ! 誰だ!?」

138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/12/03(土) 16:10:35.97 ID:74XlglxSo


「誰って言われてもねえ。名前なんて知らなくても良いわよ、必要ないし」

五和「上条さん……どうやら敵の様ですね」

上条「クソッ……ここまで来て邪魔されんのかよ!」

「可哀想ね、逃げる事も出来ない。そしてこんな薄汚れた工場で殺されるなんてね」

五和「こ、殺す!? 私を連れて行くのが目的だったはずなのに……」

「それはどうか知らないけど、私はアンタを殺せと命令されたから来ただけ。だから――」

上条「……! 五和、伏せろ!」

五和「は、はい! ……っ!? 光線……?」

「チッ、避けられたか……ねえ、面倒だからそこに突っ立ったまんまでいてくれないかしら?
 殺す方も死ぬ方もそっちが楽でしょ。お互いのためにもそうするべきね」

上条「テメェ……ふざけた事言ってんじゃねえぞ!」

「怖い怖い、女のヒステリーは怖いって言うしね。……まあ、どの道死ぬ事になるんだからそれ位は許すか」

五和「……上条さん、私は戦います。このまま大人しく下がってくれるとは思えません」

「槍? またずいぶん悪趣味なモノ持ってきたわね、それでどうするのかしら?」

五和「……少し、痛い目に遭ってもらいます」

「いい度胸ね、でも……勝って無事に終わるなんて甘い事考えてんじゃねえぞ!」

五和「……っ、上条さん」

上条「んな事考えてねえよ……邪魔なヤツを黙らせねえと終わりそうもねえしな」

「ハッ、たった二人で何が出来るのか見せてみな。まあ……これで死んだら話にもならねえけどなぁ!」

上条「……来るぞ!」

139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [saga sage]:2011/12/03(土) 16:14:28.84 ID:74XlglxSo
ちょっとの間、脚本形式ではなく小説形式に変更
次回で長かった立て逃げNTR(乗っ取り)も終了
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/03(土) 21:21:47.81 ID:xh/O4s60o
おつー
次で最後か
最後まで楽しみにしてるわ
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/07(水) 23:34:39.92 ID:EXPngorvo
142 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga sage]:2011/12/10(土) 18:08:40.52 ID:rWBMrX3Fo


 第二学区の廃工場、そこで上条と五和は最大の危機を迎えていた。
その原因は二人の前に存在する一人の女、その女が狙うのは上条当麻の命である。
相手は光線を発射する事が出来るようであり、おそらく能力者であると上条は推測していた。
本来ならば右手を前に突き出し、その光線を打ち消して撃退しその危機を脱したい。

 しかし、幻想殺しは消滅してしまっているためその考えは消さなければならない。
さらに五和も魔術を使えないため戦う術は限られてしまっている。
現状では五和の持つ槍、そしてその廃工場に存在する物、それで戦うしか方法は無い。。
対して相手は無遠慮にその能力を振るうだけである。
実際、その生み出された光線で壁には穴が開いていた事から相当の破壊力を持っているのは間違いない。

「ほら、逃げるなら逃げてみな! なにか抵抗するならそれも良し。まっ、状況は変わらないだろうけどなァ!」

 そう言って女はまた右手を前に向け上条と五和に光線を撃ちだす。
五和の持つ武器ではその距離を埋める事は出来ず、現時点ではただ必死に避ける事しか二人には出来ない。

「クソッ……あんなの当たっちまったら一発で終わりだ! 絶対喰らう訳にはいかねえ……でも」

「こちらには対抗する手段が……っ! 右です!」

 瞬時に安全な場所を見つけ、なんとかその一撃を受ける事だけは無いように動いている。
もし避けなければ、それはほんの少し前に自分が居た場所を見れば分かる。
焼け焦げたような跡、穴の開いた壁、そこから想像できる未来は恐ろしい程単純なものである。

「チッ、まだ慣れてねえのか動きづらいな……オイ、面倒だからそろそろ死んでくれない?」

 その問いに答えなく、二人は息を殺し大きなコンテナの陰に隠れている。
避けるのに十分な距離、そして戦う術の確保、この二つが無ければ待っているのは絶望である。
この状況を変えるには逆襲の一手を打たなければならない。

143 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga sage]:2011/12/10(土) 18:10:37.00 ID:rWBMrX3Fo


女には右目が無く、そしてある一部分も存在していなかった。
その事に上条達はまた気付いていなかったが、逃げているだけの現状ではまだ知る事など出来ないだろう。

「隠れてるだけでどうにかなるとでも思ってんのか? さっさと出てきて死んでもらいたいんだけどなー」

 この問いにもやはり答えは返ってこない。今、自らの居場所を明かす事が死へと直結する、
それを二人は理解していた。だからこそ、何か手を打たなければならないと考えているのである。

「(……上条さん、相手の生み出す光線は当たってしまえばおそらく即死。ですが……)」

「(今、俺達が使えるのは五和の槍だけか……他に何か無いか?)」

「(すみません……魔術も使えず、今は槍も役に立ちそうも無いですね……)」

「(それで反撃してもあの光線で返り討ちになる……駄目だ、他の方法を考えねえと)」

「(でも、考えてる時間も――っ!?)」

 と五和が言いかけたところで近くにあった別のコンテナが一瞬で吹き飛んだ。
飛び散ってきた破片をかろうじて避けたが、それはこの場所も危険ではないという事を上条達が理解するには十分であった。

144 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga sage]:2011/12/10(土) 18:11:28.93 ID:rWBMrX3Fo


「結果的にその男を消せば良い訳だ、だったらこの工場がどうなろうと関係ない。つまりは……適当に攻撃してれば良いって事だなァ!」

 女はその言葉通りに無作為に物陰になりそうな物を片っ端から破壊し、その度に轟音と震動が廃工場内に響き渡る。
どうやら連続して能力を使用する事は出来ないのか、ある程度の間隔をあけてその攻撃は繰り返される。
しかし、それで逃げ切る事が出来ると言えばそんな事はない。要は少し猶予が出来ただけの事、現状は何も変わらない。

「(このままだと……何か、何かねえのか!?)」

「(……私が奇襲を仕掛けます。一撃で倒せば反撃も受けないでしょうから)」

「(待て! もし見つかったらどうする? 距離があったから避けられたのに、至近距離ならそれは不可能だぞ!?)」

「(ですが、このままでは二人とも……)」

 五和を一人で危険な目に遭わせないために上条は方法を考える。そして見つけたのが、

「(……分かった、五和にあの女を攻撃してもらう。ただし――)」

 工場内にある「それ」であった。上条は「それ」を用い相手に確実に攻撃出来るように五和に方法を伝える。

145 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga sage]:2011/12/10(土) 18:14:47.23 ID:rWBMrX3Fo


「ったく、さっさと殺して終わりにしたかったのに。そろそろ良いでしょう?
 今死ぬか後で死ぬかってそれ位の違いなんだから。ラクになるのは早い方がイイと思うけど?」

 口調とは裏腹に女は光線を生み出し続け、工場内のありとあらゆる物を破壊していく。
しかしそれでも上条達は姿を見せない。声を殺し、潜み、逆転の一手を打つ機会を窺っていた。

「チッ、面倒な仕事を任されたモンだ……何人か連れて来るべきだったか。身体に何も無ければ」

 そこまで言うと急に何かを思い出したかのように女の態度が変わった。下を向いて肩を少し揺らしている。
それは笑うのを我慢するように見えるが、この状況では不可解な行動であるのは間違いない。

(片手に片目……安い買い物とか笑わせてくれる。なあ、――)

 その様子を上条達はある場所から隠れて見ていた。
女の様子がおかしい事には気づいたが今はそれを気に掛ける余裕も無い。
上条達が居る場所、そこには大量のドラム缶が山積みされていた。

146 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga sage]:2011/12/10(土) 18:16:32.34 ID:rWBMrX3Fo


「(いいか……俺は囮になる、その間に近づいて)」

「(一撃を与える、……分かりました。でも、上条さんが危険な目に……)」

「(……それはお互い様だ。失敗したらともかく逃げろ、分かったな?)」

「(……はい。上条さん……死なないでくださいね、絶対に)」

「(当たり前だろ? この体を五和に返さねえといけないんだからさ。……頼むぞ)」

 そして上条は動く。その山が崩れるよう、積まれた下の方のドラム缶に衝撃を与える。
もはやこの工場は使われないと判断されたからなのか、その山は少しの衝撃で瓦解しそうなほど不安定であった。
しかし、それなりに衝撃を与えなければ崩れる事は無い。つまりは、相手に物音に気付かれ危険性が高まるという事でもある。

「なんだ、そんな所に隠れてたのか。さて……そろそろ穴だらけにしてやるから覚悟してもらおうかァ!」

 女はその山目がけて光線を撃ちだす。だが、それこそが上条の狙いであった。
その光線がとどめとなり、耳が居たくなるほどの轟音と共にドラム缶の山が崩れ始めた。

147 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga sage]:2011/12/10(土) 18:20:47.75 ID:rWBMrX3Fo


 上条の狙いは確かにドラム缶の山を崩す事であり、それに乗じて五和が襲撃するというものだった。
しかし、女とその山の距離は三十メートル程離れており、山が崩れようとも被害に遭う可能性は低い。
それどころか近くに居る上条の方が危険な程である。
さらに、女の居る場所は光線により物が吹き飛んだ後のため見晴らしが良い。
これでは奇襲どころか五和が無駄死にしてしまうだけ、現に女はその山が崩れるのを見ても何とも思わなかった。

「……っ、うるせえな……変な所に逃げやがって。オイ、もう良いだろ、男はどこに行った?
 まさか、女一人を残して逃亡したとか言うんじゃねえだろうな? ハッ、もしそうだとしたら情けなくて殺す気にもならねえけどな!」

 女は上条の方に近づく。入れ替わっているため女は男の方は隠れたと思い込んでいるが、それは間違いである。
それに気づく事はなく、光線をまた上条の方へと撃ち始める。
その途中ではドラム缶がいくつも転がって来ていたが、女を足止め出来る程度ではない。

「ほら、さっさと出て来いよ。じゃねえとこっちの女の方が使い物にならなくなるぞ? ああ、それがお望みなら任せてもらっても良いけど。
 どこにでも穴があったら便利かもね、好きな所で楽しめるから。……まあ、顔に穴開いた女が好きって悪趣味なヤツが居たらの話だけどなァ!」

 次第に詰まっていく上条と女の距離、避ける事が出来るギリギリまで上条は女をおびき寄せる。
両者の距離は残り十数メートル、これ以上はいくら何でも避けようがない。そして女は右手を前に出した。

148 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga sage]:2011/12/10(土) 18:21:19.01 ID:rWBMrX3Fo


「そっちの狙いは読めてるわよ。この隙に乗じて男の方が私を攻撃する、お前は囮って訳だ。でもそれは無駄な考え。
 最終的な目標はその男を消せば良い訳だし、出てきたらすぐに仕留めれば良いだけの話。残念ね、力の差ってのは簡単には覆らない」

「ああ、テメェの言う通りだ。今の俺達には戦う術がほとんど無い。……でも、それを生かせば良いだけの話だ」

「女のクセに口が悪いわね。まっ、私が言えた事じゃないか。……とりあえず、先に死んどけ」

 女の周りに光が集まり、そして光線が放たれようとしていた。しかし、その女の足元にまたドラム缶がいくつも転がってくる。

「こんなくだらない子供だましでどうにかしようって思ってた訳? せめてもう少し考えて戦った方が良かったわね」

「そうだな、子供だましだと思うよ。……なあ、五和」

「……何? まさか――っ!?」

 足元で止まっていた複数のドラム缶、その中から鋭利な刃先が姿を現した。
その正体は海軍用船上槍、天草式十字清教の一員、五和が操る得物である。

「……はあっ!」という声と共に刃が繰り出され女を襲う。

149 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga sage]:2011/12/10(土) 18:23:37.76 ID:rWBMrX3Fo


 単純な子供だましだった。
いくつもドラム缶を転がし、それで撃退するのであろう、と思わせる。
見晴らしが良い場所までおびき出せばまさか奇襲してくるだろうという考えも薄まる。
囮、視界の良さ、苦し紛れに見せかけた工作、その結果生み出されたのが一瞬の隙。

 この子供だましを利用して五和は槍を横薙ぎに払う。その狙いは女の胴体、躊躇いなど全く感じさせない一振り。
だが、女もこれに対して驚くほどの反応速度で回避しようとする。
実際、五和の狙いとは大きく異なり胴体を捉える事は出来なかった。
それでも至近距離からの一撃は完全に避ける事は不可能であり、五和は相手の左手に狙いを瞬時に変更した。

 そして五和の槍が女の左手に向かって振るわれた。予想した結果はおそらく左手に傷を負わせる、または斬りおとす。
その痛みから出来た隙を突けば相手を撃退する事はそう難しくは無い、と五和は思っていた。しかし、それは大きな間違いであった。

(手応えが……無い!?)

 刃が触れた物はただ一つ、女の衣服のみ。

150 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga sage]:2011/12/10(土) 18:26:41.58 ID:rWBMrX3Fo


「……あーあ、せっかく左手も隠せるような服を選んできたのになー。……テメェのせいで台無しだな、オイ」

 なぜ何も斬る事が出来なかったのか、その理由を上条と五和はすぐに理解した。

「……腕から先が」

「そう、色々あってムカつくヤツのために腕を失っちまったって訳だ。そしてこの目も。
 ……今思い出しても腹立たしい。それと、その次に殺したいヤツが今出来た。やってくれたじゃない、ねえ?」

 そう言うと女は憎しみの感情しか感じられない顔で五和に視線を向けた。

「もともと殺すつもりだったけど、予定変更。……気が済むまで殴ってからブチ殺す事にするか。まずはその変な武器……邪魔すんじゃねえ!」

 先程までの攻撃方法とは異なり、五和の身体に蹴りを入れる。その一撃で五和の身体を横に軽く吹き飛ばすほどであった。
避ける事は出来なかったが、五和はすぐに立ち上がり槍を構える。

 しかし、その槍を謎の光が弾き飛ばした。その光の正体は、女の左手の断面から飛び出している眩い閃光のアーム、
人間のそれとは全く異なる能力によって生み出された人を殺す腕だった。

151 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga sage]:2011/12/10(土) 18:30:47.35 ID:rWBMrX3Fo


「ハッ、そんな怯えた目で見られてもやる事には変わりはねえんだ! だったら少しは私を楽しませやがれ!」

 繰り出される蹴り、そしてその度に吹き飛ばされる五和。よろめいた所にまた女の一撃が繰り出される。

「ぐっ……! があっ……こ、こんなもので……」

「さっきみたいに私を殺そうとした目をしてみろよ! 情けねえぞ、×××が腐ってんじゃねえのか!?」

 その状況を傍観している事が出来る人物はこの場には居ない。女目掛けて上条は猛然と走り攻撃を仕掛けた。

「……テメェ、五和から離れやがれ!」

 上条はその場に落ちていた鉄パイプを拾い、渾身の力を込めてそれを女に振り下ろす。
しかし、それも五和の槍と同じ様に光るアームによって役に立たない物と化した。
女は右手で怯んだ上条を殴りつける、その衝撃で上条はよろめき、そこにまた蹴りが入る。

「がっ……クソッ……! おおおおおお!」

「そんな風に怖い顔してたら男が逃げてくな、それならいっその事誰にも見られない顔にしてやろうか!」

 猛る上条を蹴りで吹き飛ばし、そのまま再び五和の方に向かって攻撃を再開する。

「ごふっ……うっ……か、上条さん……」

 腹に、足にと身体の至る所に休みなくその攻撃は続き、ついに五和は地面に伏してしまった。その倒れた五和の頭部を女は容赦なく踏みつける。
一度ではなく執拗に何度も何度も、その度に五和は声にならない声をあげ、終いには空気を吐き出す事しか出来なくなっていた。

152 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga sage]:2011/12/10(土) 18:48:46.35 ID:rWBMrX3Fo


「なんだ、こんなモンでお終いなんて期待外れも良い所ね、簡単に死なないでもらいたいんだけど。
 感謝しなさい、誰かを痛めつけないと気が済まないの、だからすぐには殺さない」

 理不尽であってもそれを否定する事は誰にも出来ない。それでも上条は再び立ち上がり女に向かっていく。

「それ以上五和に触るんじゃねえ!」

「なに、私に命令してんのかしら? この状況で、何も出来ない女がそんな事許されるとでも思ってんのかなー」

 女は五和への暴行を中断し、上条へと対象を変更する。
上条は光線が撃ち出される前に相手の懐へと飛び込み、そこから活路を見出そうとした。
しかし、女は距離を詰められる前に上条の近くにあったコンテナを光線で吹き飛ばす。
その衝撃で上条はよろめき、逆に相手に距離を詰められてしまっていた。

「ったく、男以外は無視するように言われてるから女は見逃してやろうと思ってたのに。
 でも、自分から攻撃してきたって事は別に殺しても良いか。正当防衛ってヤツ? 何でも良いけど」

 そう言うと女は倒れた上条を五和にしたのと同じように頭部を踏みつけ、脇腹に蹴りを入れる。

「ぐっ……ごはっ……クソッ、こんな……」

 上条はなんとか立ち上がろうとするが、その顔面に女の重い蹴りが入る。
その勢いのまま後ろに倒れコンクリートの床に頭を打ち、上条は沈黙してしまった。

「あーあ、女だから顔を潰されたらもう誰も見てくれねえかもな。自業自得だ、諦めろ」

 女は再び五和に目を向け、自分の目的を果たすために最後の行動へと移ろうとしていた。

153 :終了は次回に変更 [saga sage]:2011/12/10(土) 18:54:49.51 ID:rWBMrX3Fo


「さて、そろそろ飽きてきたし……この辺で殺しておくか」

 あまりにも自分勝手な事を女は言うが、それを止められる者は今この場には居ない。
五和の体、つまり上条当麻の身体は傷だらけであり、夥しい程の血が流れ出している。

「じゃあね、楽しませてもらったから一発で消してアゲル。恨まな――ああ?」

「……やめ、ろ……五和から、離れ……」

 上条は五和を護るために残った力を振り絞り、女の足にしがみついた。
しかしその力はとても弱々しく、蹴りを再び入れられるとまた倒れてしまう程であった。
それでも上条は諦めない、再び女の足元にしがみつき行かせるものかと力を込める。

「……うざったいわね、男以外は殺す必要無いから見逃してあげようと思ってたって言ったじゃない。
 余計な事しちゃって、そこまで死にたいのかしら? それが望みなら容赦なく殺すけど」

 そう言いながら女は、足元にしがみついた上条を足の力だけでそのまま前方に飛ばす。
飛ばされた上条の倒れた場所は五和の近くであり、沈黙したままの彼女の顔を見る事が出来た。
その「自分」の顔は殴られ、踏みつけられ、出血も酷く見るのを躊躇う程の悲惨な状態であった。

「……い、五和……起きてくれ、頼む……死なないで、……くれ」

 上条は必死の思いで五和に声を掛けるがそれでも目を覚まさない。

「感謝しなさい、目の前で殺してあげるから。せめて最後を見届けてやりな。
 まあ、そんな近くに居たら巻き添えで一緒に死んじゃうかもね? それも良いかもしれない、むしろ最高か」

 女はそう言うと、傷だらけの二人を見下しながら笑い出した。
その表情は残忍であり、人間を殺すという事に何の迷いも無いのだろう。

 後は女はその能力を使い上条当麻を亡き者にするだけであった。
しかし、最後まで上条はそれを許さず抵抗を続ける。五和の上に覆いかぶさるようにし、無言で彼女を護り続ける。
力も無い、戦う術も無い。それでも、絶対に護りたいものがあった。

154 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/10(土) 21:31:36.98 ID:tOkb3ZFko
おつ
155 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/11(日) 05:53:43.15 ID:wTH8pZh8o
156 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2011/12/31(土) 17:40:41.69 ID:yrnre/FBo
ラストはいつだ
157 : ◆/4AHdsw06Y [saga]:2012/01/04(水) 01:57:56.96 ID:AiUnSeA3o
今からです。明けちまったよ…
ついでに依頼用の酉、ともかく完結するです
158 :以下、あけまして [saga sage]:2012/01/04(水) 02:00:02.17 ID:AiUnSeA3o

 そもそも五和はこんな所で血を流す必要は無かった。
狙われたのはあくまでも上条当麻であり、五和はただ巻き込まれただけである。
これも自らの不幸か、と思うと上条は己のその性質を改めて悔いた。
なぜ、何も関係ない者が死ななければならないのか、なぜこの時に狙われてしまったのか、
そもそもなぜ入れ替わってしまったのか、それすらも不幸なのか、しかしそれらに対して正解は出せない。

 だが、入れ替わったとしても何も変わらないモノはある。
五和を護るという事に変わりは無い。ならばやるべき事はただ一つ、考える必要も無い。
上条が取った行動、それは再び立ち上がるという単純なものだった。

「……頼む、五和だけは……五和だけは助けてやってくれ」

「そこの男を見逃せって言いたいのかしら? なら、それは無理な相談ってヤツね。
 私の目的はその男を消す事、悪いけど諦めてそこをどいてくれるかなー?」

「駄目だ……絶対に、俺のせいで死なせる訳にはいかねえんだ……だから、ここを動く訳には……」

 息も絶え絶えに上条は意思表示をした。その言葉を受けて女は笑みを浮かべてこう答える。

「はいはい、だったらその男は助けてあげる。ただし――その代わりにテメェが犠牲になれ」

159 :以下、あけまして [saga sage]:2012/01/04(水) 02:01:30.74 ID:AiUnSeA3o

 女の要求、それは五和の代わりに上条の命を差し出せというものだった。
つまりはどちらかの命は必ず奪われる、しかし二人とも死ぬ事は無い。

「さぁ、どうするのか見物ね。自分の命が結局は一番大切でしょう?」

 それに対して上条は、すぐさま迷いなくただ一言、

「……分かった、俺が代わりになる。だから……五和には手を出すな」

「ハッ、イイ女じゃない、男のためにそんなに簡単に命を捧げちまうなんてねぇ」

 そう言いながら女は右手を前に突き出し、上条に照準を合わせる。
もちろん、女が上条だけを殺して五和を見逃す訳が無い。
これはただの口約束であり、邪魔な女の方を始末したらすぐに男を消すつもりだった。
心の中では馬鹿な女だと罵りながら、安心しなさいと口では正反対の事を言う。

 女は今から五和の姿をした上条を消す、それはどうしようもない事実であった。
しかし、上条の後ろでは五和が意識を取り戻していた。そして五和は思案する、あの時を思い出しながら。
160 :以下、あけまして [saga sage]:2012/01/04(水) 02:03:47.28 ID:AiUnSeA3o

 この時点で考えると、五和は上条と共に戦った事が女性の中では最も多い。
四度、戦う姿を目は捉えた。三度、最初から上条と目的を同じくし戦地に赴いた。
二度、上条の側で戦った。そして一度、上条を護る事が出来なかった。

 その一度、「後方のアックア」という強大な敵を前にして何があったか。
上条を護るはずが、逆に護られてしまうという現実、何も出来なかった自分。
立ち向かおうとした心も、護りたい者の手によって折られてしまった。

 いや、それは言い訳だろう。結局の所、ただ上条という存在に甘えただけだ。
生命を重んじ、救いを求めてしまったからこそ戦う意思を簡単に挫かれたのだろう。
しかし、その最低の自分とはすでに決別したはずだ。槍を持ち、仲間と共に敵を排する事が出来たのだから。

 だが、それで全てを乗り越えたかというとそれもまた違う。
彼女はもう一つ、忘れてはいけない事実があるはずだ。それは、上条に護られてしまったという事。
目の前で圧倒的な力によって吹き飛ばされた上条の姿を、五和は二度と忘れないだろう。
しかもそれは自分のせいだ。自分が弱かったから、何も出来なかったから、心が折れてしまったから彼を傷つけてしまった。

 それに対して上条はどうだ。あの時、既にボロボロの身体で立ち上がり自らの身を差し出した。
それはとても勇気の要る事であると同時に、五和にとっては負けを意味する。
彼の右手は弱者強者を問わず何者であっても護る盾であり、たとえどんなに逆境に置かれても抗い続ける絶対の槍でもあった。

 では、あの時の甘えてしまった自分は何が出来たか。何も為せなかった、槍にも盾にもなる事は出来なかった。
そして今、あの時と似た状況が生み出されている。そこで五和は何を思ったか。
彼女は喜びを感じていた。何故か、それは上条当麻の身体を五和という人間が護っているように見えたからだ。
161 :以下、あけまして [saga sage]:2012/01/04(水) 02:05:18.46 ID:AiUnSeA3o

(あそこに立っているのは……私? そっか……私、やっと一人で上条さんを護る事が……)

 朦朧とした意識の中で、彼女は勘違いをしていた。
目の前に立つのは五和という人間、つまりは自分だ。倒れている上条を護り立ち向かっているのだ。
それは自分があの時出来なかった事、折れてしまった心、助けられなかった大切な人。
しかし、今は違う。自分は立ち向かった、弱い過去の自分では無い。やっと、やっと助ける事が出来た。

 だが、すぐに彼女は気付いた。
あれは自分では無い。自分の姿をしていても心は違う、精神は五和では無い。

 あれは、上条当麻だ。
強く、何者にも臆さない心を持った他人。自分が護りたかった存在、上条当麻だ。
今、倒れているのは誰だ。上条ではない、倒れたまま弱く情けない姿を晒しているのは誰か。

 それはあの時と変わりなく上条に護られていた者、五和だった。
その事実に気付いた時、五和は自らの無力さを感じた。結局は弱いままだったのか。
またこうやって護られてしまっている。そして相手は、また護ってくれている。

 中身が入れ替わった所で何も変わらなかった、情けないがそれが結果だ。
また自分の大切な者が傷付くのを見届けるだけ、ただそれだけの事。
あの時と同じように、自分は何もしないままで護られてしまえば良い。

 ――それだけは嫌だった、だから彼女は上条の手を引いた。

162 :以下、あけまして [saga sage]:2012/01/04(水) 02:06:51.03 ID:AiUnSeA3o

「……っ!? 五和!?」

 とてつもない力で手を引っ張られた上条は、そのまま後ろへと倒れていった。
その刹那、入れ替わるように立ち上がり、すれ違っていく自分の顔を上条は見た。
そして、声が聞こえた。それはとても弱々しかったが、優しく慈愛に満ち溢れたものだった。

「上条さん、ありがとうございます……今度は、私が――」

「お前、何を――」

 そう言い終わる前に上条は地面に倒れた。
目の前に広がる光景は、女に相対する自分、しかしその精神は自分のものでは無い。
すぐに上条は気付いた、五和は命を捧げようとしている。

「五和、やめろ! そんな事お前がしなくてもいいんだ!」

「ごめんなさい、上条さん。……でも、私はもう戻りたくないんです」

 それが彼女の最後の言葉だった。五和の覚悟を女は察し、そして手を前に突き出した。

「うん、やっぱり女を護るってのが男ってヤツよね。カッコいい最後だ、そのまま死んじまいな」

 女の周りが光り、その光は圧縮されていく。それは死の宣告であり、どうしようもない現実である。
163 :以下、あけまして [saga sage]:2012/01/04(水) 02:07:25.81 ID:AiUnSeA3o

「五和あああああ!!」

 上条はあらん限りの声で叫んだ。しかしもう間に合わない、このまま見届けるしかない。
五和は最後まで女から目を逸らさなかった。最後まで上条を護ろうと立ち続けた。

 もう、あの時の自分では無い。今、彼女は自らの命を顧みず立ち向かった。
その姿はまるで、上条当麻そのものだった。
誰かのために何者にも立ち向かう、それこそが上条当麻の精神。
今、五和という少女は上条当麻に最も近しい存在となった。

 その時、声が聞こえた。


(――を、――にだせ)


164 :以下、あけまして [saga sage]:2012/01/04(水) 02:08:40.14 ID:AiUnSeA3o

(……声? これは、この声は……)

 その声に五和は聴き覚えがあった。誰よりも近くで、そしていつまでも聞いていたい声。
だからこそ、疑いも無く五和はその声を受け入れた。ただ、少し違和感があった。
少し違う、それが何かとは言えないのだが確実に異なったものだとは断定できる。

(右手を、前に――)

 その声に五和は従い、右手を前に突き出した。
こんな事をしても何も変わらないだろう、自分は死ぬ事は間違いない。
だが後悔はしていない、自分は上条当麻の前に立つ事が出来た。
目の前には光、これは自分を殺すもの。ただそれを待つだけだった。

 しかし、奇跡が起きた。
いや、それは起こるべくして起きたのだから奇跡では無いだろう。
言い換えるとするならば、「蘇った」というのが適切である。
何が蘇ったのか、それは一つの事実だった。

 ――上条当麻の右手は、容赦なく異能の力を無効化させる。

165 :以下、あけまして [saga sage]:2012/01/04(水) 02:10:51.87 ID:AiUnSeA3o

「……消えた?」

 女は目の前で起きた事をただその一言でしか表現出来なかった。
自らの能力で生み出した光線が消えた、それは間違いない。
しかし、その方法が分からない、ただ男は右手を前に出しただけだ。
超能力者に対抗する術を相手は持ち合わせていた、今分かる事はそれだけ。

 そして五和は、そのまま後ろへと倒れて行った。

 相手の光線を消し去り、命の危機を脱したと思えば再び気絶してしまった。
意識を失う瞬間、五和は三つの人影を見た。
一人は上条当麻だ。しかし、何かがいつもの上条とは異なっていた。
二人目は一人で飛び出した時に出会ったメガネをかけた少女、名前は風斬だったか。
三人めは、いや、それを「人」と扱って良いのかは分からない。
それは遠くに存在しており、風斬の姿で隠れて見えなかったが存在していた事は確かだ。
五和はその三つの存在を見ると、そのまま深い意識の底へと沈んでいった。

 倒れる上条当麻の肉体、そして蘇る上条当麻の精神。
再び立ち上がったのは上条だ。その肉体は五和のものではない。
上条当麻の肉体に上条当麻の精神が戻ったのだ。

「ありがとな、五和」

 目を閉じたままの五和に一言つぶやいた後、上条は女の方を向いた。

「……五和をこれ以上傷つけさせねえ、絶対に」

 そして上条は、その戻ったばかりの右手を握りしめた。

166 :以下、あけまして [saga sage]:2012/01/04(水) 02:11:37.10 ID:AiUnSeA3o

 その光景を見ていた者が二人、土御門と神裂は廃工場の中に居た。
上条を後ろから引っ張り、そのまま立ち向かう五和の姿を二人は見ていた。
二人が建物の中で最初に見たのがその場面であり、間に入って助ける事は出来なかった。
結局、護りきる事は出来ず、目の前で大切な存在が消えるのかと一瞬絶望もした。

 だが、彼らははっきりと見た。五和が幻想殺しを発動させたのだ。
その結果、どうやら上条の精神はあるべき場所に戻ったらしい。
しかし、まだ全てが終わった訳では無い。依然として脅威は存在している。

 女が上条に向けて光線を撃ちだす。それを見た瞬間、土御門と神裂は動いた。
167 :以下、あけまして [saga sage]:2012/01/04(水) 02:13:21.12 ID:AiUnSeA3o

「チッ、何をしたかは分かんねえけど面倒な事になりそうだな……だったら」

 すべてを言い終える前に女は上条に向かって光線を撃ち出した。
しかし、それを上条は右手で受け止め、いとも容易く消し去ってしまう。
何が起きたのか分からない女に対して、上条は諦めろと言った。

「……無駄だ、もうテメェの能力は通用しねえよ。だから、今すぐ俺達の前から消えろ!」

 その言葉に女は苛立ちを隠せなかった。何も出来ないと思っていた相手の抵抗、
自分の存在に比べてるとはるかに劣る塵の様なもの、それに命令されたという事実が許せなかった。

「ハッ、笑わせんじゃねえよ! たった一、二回防いだだけで勝ったつもりか!?
 テメェが死ぬまで私はここに居る、だからゴミクズみてえにさっさと消えろっつうの!」

 そして女は再び上条を攻撃しようとした。しかし――女の身体に二つの金属が接した。

「……オイ、何のつもりだ?」

 一つは刀、触れれば何物でも斬れてしまいそうな鋭さを持っている。

「一歩でも動いた瞬間に、あなたの身体を斬りつけます。……その残った方の手も同じようになるでしょう」

 一つは拳銃、心臓の位置を的確に捉え、突きつけられている。

「そういう訳だ、もう諦めてもらえると助かるんだがな……さぁて、どうするか聞かせてもらおうか」
168 :以下、あけまして [saga sage]:2012/01/04(水) 02:19:06.93 ID:AiUnSeA3o

「土御門……それに、神裂か」

「よう、ずいぶんやられたみてえだなカミやん。後は黙って見てるだけで良いぜ」

 土御門の言葉を聞く限り、彼には何か考えがあるのだと上条は判断した。
五和も倒れたままで自分も既に満身創痍である。
それならば、と上条は土御門に事の成り行きを任せる事にした。

「一歩でも動いたら死ぬ、か。それはそっちも同じって事には気づいてんのかしら?」

「ええ、この距離ではお互いに無事では済まないでしょう。それでも私が取る行動は変わりませんが」

「ずいぶん頼もしい味方がいたもんだ、身の程知らずってのは減点だけど」

 銃と刀を突きつけられても女はその余裕を保ち続ける。
それは自分の能力に信頼を置いているから、そしてこんなヤツらには負けない、
と思っているからだろう。それだけの自信が女にはあった。
それを見透かした上で、土御門は女との交渉を始める。

「おいおい、オレ達をその辺の雑魚と一緒にするのは危険だぜい?
 こっちもそれなりに死線は越えて来てる、つまりはアンタと一緒って事だ」

「テメェらと私を一緒にするってのがそもそもの間違いって気付かねえのか、あぁ!?」

「落ち着いて考えてみろ、さっきそこに立ってる男は何をした?」

 上条は何をしたか、簡単に言えば女の攻撃を防いだ。
二度光線を打ち消した事は偶然でも無く、何らかの手段があってそれを成しえた。
その方法を女は知らない、現状は不確定な要素が多すぎる。

「どうやったかは分からないだろうがアレは事実だ。さて、話が出来る位には冷静さを取り戻したか?」

「……言うだけ言ってみろ、それ次第ではすぐに消してやるよ」
169 :以下、あけまして [saga sage]:2012/01/04(水) 02:21:23.09 ID:AiUnSeA3o

「一つ確認させてもらう。お前は誰かに依頼されてこんな事をしたんだろう?」

「ハッ、その口ぶりだとこっちの事情も知ってて聞いてるって所ね。だったら隠す必要も無いか。
 自分の意志でこんな汚ねえ所に来たんじゃない、その男を消せって頼まれただけ」

「もう一つ質問だ。その依頼の内容、本当に『消せ』と言われたか?」

「分かりきった事を聞いてどうすんの? その通り、確実に始末するのが今回の目的って訳だ」

 この状況であっても女の態度は変わらない。神裂は相手の体が動くたびに刀の角度を変えている。
その言葉を聞いて土御門はまた女に問いかけた。

「だったらもう一度その依頼の内容を考えてみろ。殺せと言われたのかどうかをな」

「だからそうだって言ってんだろうが! この男を――」

 そこで女は気が付いた。改めて依頼された時に言われた言葉を考えると、
「君に依頼する、この男に対して君の力を振るってもらいたい」、つまりは殺せとは言われていなかった。

「どうだ? 何かに気が付いたように見えるが」

「……へぇ、そういう事。あの野郎、くだんねえ事に付き合わせやがって……」

 上条と神裂は現状を理解できていなかった。ただ一つ分かるのは、流れが変わった。
先程までの命の奪い合いをするか否か、という状況とは離れている。

「さて、まだ続けるか? それとも」

「これ以上付き合ってらんないわ、後は適当に処理しといて」

 女の言葉を聞いて土御門はただ一言、「分かった」と答えた。
そのまま女はその場から去り、後に残されたのは四人と散々に荒らされた廃工場だけだった。
170 :以下、あけまして [saga sage]:2012/01/04(水) 02:22:32.94 ID:AiUnSeA3o

 土御門はこの場を収めたつもりだったが、まだ現状を把握できていない者が居る。
上条と神裂は何があったのか、何故女は去ったのか、これが決着なのかと頭の中が疑問だらけである。

「土御門、どうなってんだ……? 俺達は狙われてたんじゃないのか?」

「あぁ、それは間違いないな。でも安心しろ、もうこの事件は終わりだ。
 カミやんも五和も誰も死んでない、ハッピーエンドってヤツだぜい」

「納得がいきません、上条当麻と五和は実際に死ぬ直前まで追い詰められていました。
 それなのに黙って帰すなんて……あなたは何を考えているんですか!?」

「もう一度考えてみろよ、オレ達の目的は何だ? あの女を倒す事か?」

「それは……」

「カミやんと五和が生きている、そしてもう狙われる心配は無い。
 目標達成、勝利条件を満たしたんだ。これ以上何を望むっていうんだ?」

「しかし、狙われないと決まった訳では」

「それはオレが保証する。学園都市にも魔術組織にも通じてる土御門さんが言ってるんだぜい?」

「……土御門、信用して良いんだな?」

「おうよ、今回のは嘘じゃねえ。だから……もう倒れて良いんだ」

「そっか……ありがとな、後は……頼、ん……」

 言葉を最後まで言い切れないまま、上条はその場に倒れた。

「か、上条当麻!? 大丈夫ですか!?」

「無理もねえよ、ボロボロの身体で五和を護るために倒れないようにずっと気を張って立ってたんだ。
 それは五和も同じ、カミやんを護ろうと必死でな。……今だけは何も考えず寝させてやろうぜ」

上条の倒れた場所は五和の隣であった。そして二人は並んで、傷だらけのまま眠る事にした。
171 :以下、あけまして [saga sage]:2012/01/04(水) 02:23:42.33 ID:AiUnSeA3o


病院


上条「……んん? ここは……って、見慣れた天井。という事は……」

上条(……やっぱりいつもの病院かよ。はぁ、何度お世話になったら気が済むんだろうか……。
    自分で言うのも情けねーし、せめて心の中で思っておくだけに……ん?)

上条「……何だ? この微妙に膨らんだ布団は……まるで誰かが隣に居るかの――っ!?」


五和「……んんっ、かみじょうさーん……ふふふ」


上条(隣で寝ているのは……なんだ、五和だったのか。それなら別に何も……って!)

上条「元に戻ってるから女の子が隣で寝ているって事じゃねえか!? いったい何がどうなって……」

五和「……んー、上条さん?」

上条「い、五和!? なんでお前は俺のベッドの中で寝てんだよ!?」

五和「んー……えいっ」ギュッ

上条「って何故に抱き着くのでございますか!? アレだな! 寝ぼけてるだろお前!?」

五和「むふふー……捕まえましたよー……」

上条「離れてくれって! こんな所誰かに見つかったら 土御門「カミやーん! 目覚めたみたいで……」

土御門「あっ」

上条「……げえっ! 土御門!?」
172 :以下、あけまして [sage]:2012/01/04(水) 02:31:59.05 ID:xCcHd56AO
1乙…かな?
あけましておめでとうなんだよ
173 :以下、あけまして [saga sage]:2012/01/04(水) 02:33:51.19 ID:AiUnSeA3o

土御門「……いやー、流石はカミやん。死にそうになってもすぐに復活、
     そしてすぐに女の子を側に置いてイチャつきやがるなんてにゃー……」

上条「ご、誤解だ! 五和、お前も何か言ってやってくれ!」

五和「ええー……もう、上条さんったら……はい、ちゅうー」

上条「だああ! なんで顔を近づけて来るんだよ!? ともかく パシャ

上条「……つーちみかどくーん? 今、何をしたのかなー?」

土御門「写メ撮っただけだぜい? さーて、早速送信っと」

上条「なっ……!? テメェ、誰に送りやがった!?」

土御門「んー? お疲れのままイギリスに戻って行ったねーちんに」

上条「……おい、そんな事したら!」

土御門「おっ、メールだ。えーっと……」

『上条当麻、五和をよろしく頼むのよな』

土御門「との事」

上条「それ建宮だろ! アイツがこんな事知ったら……」

土御門「あっ、続きがあったにゃー」

『女教皇様がお前さんに会いたがってるのよな。首を洗って待っていなさい、との事なのよ』

上条「……土御門、今度殴るからな」

土御門「その時は全力で逃げさせてもらうぜよ」

174 :以下、あけまして [saga sage]:2012/01/04(水) 02:40:13.09 ID:AiUnSeA3o

上条「五和……起きろ。つーか起きてくれ!」

五和「……はっ! あ、あれ? 上条さん、ですか……?」

上条「……あぁ、正真正銘上条さんです。目は覚めたか?」

五和「か、上条さん……上条さぁぁん!」ギュッ

上条「って目覚めたのになんでやる事は変わんねえんだよ!」

土御門「シャッターチャンス!」パシャ

上条「だからテメェも撮ってんじゃねえよ!」

五和「私、上条さんが目を覚まさなくて……心配で心配で……」

上条「あー……うん、ありがとな。それと離れてくれると嬉しいんだ――」

五和「良かったぁ……私、上条さんがこのまま起きなかったらどうしようかって……」

上条「お、おう……もう起きたからとりあえず離れてくれたりすると」

土御門「えーっと、とりあえず青髪ピアスに送っとくかにゃー」

上条「そしてテメェはまた広めようとしてんじゃねえっつーの!」
175 :以下、あけまして [saga sage]:2012/01/04(水) 02:51:21.75 ID:AiUnSeA3o

上条「……五和、落ち着いたか?」

五和「は、はい……すいません、私ったら抱き着いてしまって……」

上条「いや、俺を心配してくれてたんだよな……こっちこそ、心配かけてゴメンな」

五和「上条さん……私は上条さんが無事ならそれで……」

土御門「はーいはい、ラブラブすんのは後回しにしてくれますかにゃー?」

五和「ラブラブ……そ、そんな事は……」

上条「とりあえず落ち着けって。……で、土御門。そろそろ話を始めるか」

土御門「そうだにゃー。……さて、何から話したら良いのか」

上条「じゃあ、最初は……神裂とあの二人はどうしたんだ? もう戻ったってさっき言ってたけど」
176 :以下、あけまして [saga sage]:2012/01/04(水) 02:53:52.88 ID:AiUnSeA3o

土御門「カミやん達を学園都市から脱出させるのに抜け道を使うって言っただろ?
     それを使ってねーちん達にはすぐに帰ってもらったんだ」

上条「そうなのか……。アイツらも疲れてるだろうし、そんなに急がなくても良かったんじゃねーの?」

土御門「いやいや、オレもそうしたかったんだけどな。魔術師が集団になって学園都市に居ちまうと問題になるんだ」

上条「あー……そういう事か」

五和「ましてや女教皇様の様な戦力が学園都市に居るなんて知れたら、深刻な問題になりかねませんからね……」

土御門「そーそー。という訳で、三人がイギリスに戻ったんですたい」

上条「そっか、お礼の一つでも言いたかったんだけどな……」

土御門「気にすんなって、どうせすぐに会えるんだから」

上条「すぐって言ってもそんな簡単には……いや、でも何かあったら会う事になりそうだな」

土御門「そういうコト。それに……いや、やめとくか」

上条「何だよ……気になるから言えって」

土御門「また後で言うって。気にしない気にしない」

上条(嫌な予感しかしねー……)


177 :以下、あけまして [saga sage]:2012/01/04(水) 03:08:30.26 ID:AiUnSeA3o

上条「じゃあ、次の質問。……あの女はいったい何だったんだ?」

土御門「……あの女に関しては悪いが調べてる最中だ。現時点では特に言う事が何も無いってのが正直な所だな」

上条「何も分からず仕舞いって事かよ……なんで俺達を狙ったんだか。
    それに、あの能力……一人でどんな物でも破壊しちまう様な威力、あんなのまるで」

土御門「超能力者、って言いたいのか?」

上条「……あぁ、もしそうだとしたら油断は出来ねえからな。また襲われる可能性が無い訳じゃない」

土御門「いや、それは心配しなくても良いぜよ」

上条「あの時もそう言ってたけど、どうしてそうやって言い切れるんだ?」

土御門「オレなりに考えてみたんだよ。どうしてあんなヤツまで用意する必要があったのかって」

五和「土御門さん……聞かせてもらえますか?」

土御門「確証がある訳じゃねえって事は理解しといてくれよ。何から話すか、まずは……五和が捕まった研究所を調べてみたんだ」

上条「……それが何か関係してんのか?」

土御門「あくまでも、オレの考えの中ではな」
178 :以下、あけまして [saga sage]:2012/01/04(水) 03:24:02.67 ID:AiUnSeA3o

土御門「その研究所ではカミやんの右手に対して、執拗に能力を用いて傷を負わせた。
     簡単に言えば人体実験だ、目的は幻想殺しに関する何かで間違いないだろう」

上条「……俺の右手を調べて何になるって言うんだよ」

土御門「そこまではオレにも分かんねえよ。話を戻すぞ。そこに集められた能力者は、
     低能力者から強能力者まで様々だった。ただ、強度は強能力者まで」

上条「こんなモンを調べるためにそんなに人を集めるなんてな……」

土御門「まったくだ。だが話は終わってねえ、五和を捕えるために出て来たヤツが居る」

五和「それって……あの急に体をどこかに飛ばす事が出来るっていう」

土御門「あぁ、『座標移動』っていう恐ろしい能力を持ったヤツだ。そいつは大能力者、そして」

上条「あの女が超能力者だと考えれば……無能力者以外のすべての強度の能力者が揃う」

土御門「それを眠っていたカミやんの右手に作用させるのが目的だった、ってのがオレの仮説だ」

五和「……そんな事をして、何になるっていうんですかね」

土御門「さぁな……それも含めて現在調査中、何か分かったらお知らせするって感じかにゃー」

上条「……ともかく、こんな事はもう勘弁してもらいたいけどな」

179 :以下、あけまして [saga sage]:2012/01/04(水) 03:33:59.87 ID:AiUnSeA3o

上条「で、これが一番気になってんだけど」

土御門「どうして元に戻ったのか、だろ?」

上条「あぁ……結局、誰が何のためにどうやったのかも分からないままだった」

五和「それでも私達はこうしてお互いの身体に戻る事が出来ました。……どうしてでしょうか」

土御門「そっちは簡単ぜよ。なぁ、カミやん?」

上条「へっ? いや、そんな風に言われても……」

土御門「おいおい、幻想殺しが蘇ったから入れ替わりを打ち消したって考えられないのかにゃー?」

上五「あっ」

上条「そっか……それだと元に戻ったのは納得いく。でも、それだと」

土御門「そうだな……五和の精神がカミやんの身体に存在したまま幻想殺しが発動した。つまり」

五和「私が……幻想殺しを?」

上条「って事になるよな……」

180 :以下、あけまして [saga sage]:2012/01/04(水) 03:47:37.17 ID:AiUnSeA3o
寒い、眠い。もう山場は終わった、二か月かかっちまった
最後のドタバタオチは明日、内容に関してはもう知らない

>>172
おめでとうございました
181 :以下、あけまして [sage]:2012/01/04(水) 20:55:08.33 ID:RxNGty+s0
乙!
182 :以下、あけまして [sage]:2012/01/04(水) 23:25:23.87 ID:kOOzs98To
おつ
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/01/07(土) 00:11:42.35 ID:GXtr/Dcfo

土御門「カミやんには心当たりは無いのか?」

上条「心当たりっつわれてもな……」

五和「えっと、私……あの時に声を聞いたんですけど」

土御門「声? いったい誰のだ?」

五和「それが、上条さんの声なんです」

上条「俺の声……? それは本当なのか?」

五和「……はい、間違いなくあなたの声でした。でも少し違うんです。上条さんなんですけど、
    上条さんでは無い……すいません、何言ってるか分からないですよね」

上条(俺だけど、俺じゃない……)

土御門「どうして少し違うと思ったんだ?」

五和「それもどうやって言えば良いのか……強いて言うなら、別の上条さんとしか」

上条(別の上条当麻、まさか――いや、そんな事がある訳)

土御門「カミやん? 何か思い当たる事でもあったのか?」

上条「えっ? ……悪い、さっぱり思いつかねーや」

土御門「……思わせぶりな態度取って何も無いとかやめて欲しいぜよ」

上条「そ、そういう言い方すんなっつーの!」

五和(上条さん、何か知っているみたいだけど……聞かない方が良いみたい)

184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/01/07(土) 00:25:58.88 ID:GXtr/Dcfo

土御門「で、その声はどうやって五和に幻想殺しを使わせたんだ?」

五和「えっと、『右手を、前に』と言われただけでした。その言葉に従ってみたら」

土御門「幻想殺しが発動、あの女の攻撃も防ぎ、入れ替わってたのも元に戻ったって事か」

五和「はい、その通りです。その後は気を失ってしまったので……」

土御門「そう考えると間一髪、本当にギリギリだったんだにゃー……」

上条「あぁ……もっと早く復活してくれても良いのにな」

土御門(……そのタイミングでしか復活しない何かがあった?
     そうだとすると、そのタイミングってのは……命の危機、防衛本能とも考えられるか)

五和「でも、本当に良かったです。もし、あの時幻想殺しが復活しなかったらきっと……」

上条「五和が死んじまってたかもしれねえのか……そう考えると怖くなるな」

五和「怖くなるな、じゃないですよ……上条さん、また私を護るために無茶して」

上条「し、仕方ねえだろ? あの時はそうするしか無かったんだよ」

五和「だ、駄目です! 上条さんは私が護ります、もうあんな事はしないで下さい!」

上条「いーや、俺が五和を護るんだ。だから何も心配するなっつーの!」

五和「だから違いますってば! だいたい上条さんは自分の命を――」


土御門(……目の前で痴話喧嘩されると、マジメに考えてんのが馬鹿らしくなってくるぜい)
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/01/07(土) 00:35:16.93 ID:GXtr/Dcfo

上条「五和の方こそ女の子なんだからもっと大切にされた方が良いだろうが!」

五和「何言ってるんですか! 上条さんは私にとって大切な人だから護られる立場にあるんですよ!」

上条「それを言うんだったらお前も俺にとっては大切だろうが!」

五和「ありがとうございます! でもこれだけは譲れません!」

土御門「……えーっと、お二人さん。夫婦喧嘩はその辺にしといた方が良いと思うぜよ」

上条「なっ……夫婦って何だよ!?」

五和「そ、そうですよ……それだとまるで私と上条さんが……その」

土御門「もう何でもいいですにゃー。もし敵が来たら二人でボッコボコにしとけって」

上条「あ、あぁ……あれ? 何の話だったっけ?」

土御門「いや、それももう良いぜよ。カミやんの少ない脳みそをこれ以上使わせるわけにもいかねーしな」

上条「少なくはねえよ! ……多分」

五和「だ、大丈夫ですよ! 上条さんは少し勉強が出来ないだけですから」

上条「……それ、フォローになってねえぞ」

186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/01/07(土) 00:45:56.57 ID:GXtr/Dcfo

土御門「……さて、俺はこの辺で帰らせてもらうぜい」

上条「土御門、……色々助かった、ありがとな」

土御門「礼を言われると気持ちが悪いにゃー……まっ、誰も死ななくて万々歳ってトコか」

五和「女教皇様や建宮さん達が居てくれなかったら……もっと悲惨な事になっていたかもしれません」

土御門「それと同時に、学園都市の組織と魔術師の戦闘になったのは頭痛のタネなんですけどにゃー……」

上条「……大丈夫なのか? お前が色々動いてるんだろうけど」

土御門「裏方の事は気にしなくても良いぜよ。今回のも地球を巻き込むようなモンじゃねえ。
     せいぜいピンポン玉位のちょっとした抗争だ、そこまで大事に発展しないから安心しろって」

上条「その小さな抗争で俺達は死にかけたんだけどな……」

土御門「今は生きてるんだ、それは贅沢ってモンだぜい? じゃあな、何かあったらまた言ってくれ」

上条「おう、そっちも気を付けてくれよ」

187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/01/07(土) 01:05:21.59 ID:GXtr/Dcfo

五和「……土御門さん、行っちゃいましたね」

上条「……アイツは俺に面倒事ばっか持ってくるけど、その分アイツも色々抱えてんだろうな」

五和「そうですね……私達も少しだけでも役に立てれば良いんですけど」

上条「アイツが頼ってきた時に応えてやれば良いさ。そういえば……五和はどうしてここに?」

五和「上条さんがなかなか目を覚まさなかったので……私、ずっと待ってたんです」

上条「そ、そっか……遅くなって悪かったな、もう大丈夫だ。五和の方こそ大丈夫なのか?」

五和「寝てる間に、建宮さん達が治癒魔術を施してくれていったみたいで……」

上条「アイツらには本当にお礼を言わないとな……俺の方も体に異常は無さそうだし」

五和「でも、ほとんど丸一日ずっと寝てたんですよ? 本当に心配したんですから……」

上条「ゴメンな……ん? 丸一日……?」

五和「はい、もう目を覚まさないかと……」

上条「……なぁ、五和。今日って休みか?」

五和「いえ、違いますよ。今日は平日ですね」

上条「……今、何時?」

五和「えーっと……二時半ですね。それがどうかしたんですか?」

上条「…………学校に行けなかった」

五和「あっ……」
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/01/07(土) 01:16:49.79 ID:GXtr/Dcfo

上条「……うわー、怖い。来年になったら土御門をさん付けで呼ぶ事になったりしねーよな……」

五和「さ、流石に考慮して頂いてると思いますけど……」

上条「だと良いんだけど……まぁ、今は五和と一緒に居られるんならそれでも良いか」

五和「……私も、嬉しいです。今日中には帰らないといけないので……」

上条「えっ? そうなの?」

五和「はい、元々お仕事でこっちに来ましたから……いつまでも帰らない訳には」

上条「そっか……帰っちまうのか」

五和「……残念、ですか?」

上条「だ、誰もそんな事は……」

五和「本当ですか? 私は……残念で仕方がありません」

上条「え……正直に言うよ、俺も残念だ。もう少し一緒に、って……言ってたら恥ずかしくなってきた」

五和「だ、大丈夫ですよ! その……入れ替わったり近くに居たせいかもしれませんが、
    上条さんの考えている事は……今だったらなんとなく分かります。……自信はありませんけど」

上条「そ、そうなのか……」
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/01/07(土) 01:26:03.96 ID:GXtr/Dcfo

上条「だったら、帰るまでの時間で何かするか? これでサヨナラってのも寂しいしな」

五和「は、はい! お願いします」

上条「でも、何かする事がある訳でもねーからな……そもそも、外に出て良いのかも怪しい」

五和「怪我が完治してるかどうかも分かりませんからね……」


冥土帰し「その心配は必要ないと思うけどね?」

上条「いつの間に……」

冥土帰し「今来たばかりだから、気にしなくても良いと思うよ?」

五和「な、何の事ですか?」

冥土帰し「お互い通じ合っているなんて、素敵な事だね?」

五和「えっ!? えっと、あの……その……聞いてたんですか?」

冥土帰し「少しだけだから問題は無いだろう?」

上条「よりにもよって一番恥ずかしい所をバッチリ聞いてんじゃねえか!」

冥土帰し「聞くつもりは無かったけど、聞こえてしまったんだから仕方が無いと思うよ?」

五和「……もう何でも良いです」

190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/01/07(土) 01:39:31.70 ID:GXtr/Dcfo

上条「……で、何しに来たんですか?」

冥土帰し「その言い方は失礼じゃないかな? 医者としてこの場に来たつもりなんだけどね?」

上条「ただの冷やかしにしか見えねーけどな」

冥土帰し「それは否定出来ないかもね? さて、僕も時間がある訳では無い。用件をさっさと済ませてしまうよ?」

五和「上条さん、ちゃんとお話は聞いた方が良いですよ」

上条「分かってるって。用件ってのは?」

冥土帰し「君はもう退院しても大丈夫だ、好きに動いてもらっても構わないからね?」

上条「本当ですか? それなら五和と出かけられる……良かった」
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/01/07(土) 01:41:48.42 ID:GXtr/Dcfo

五和「えっと……先生、お世話になりました。本当に感謝しています」

冥土帰し「いやいや、僕の方こそあまり役に立てなくて申し訳なかった。
      何かあったら、またいつでも来てもらってくれれば良いからね?」

五和「……はい、ありがとうございました」

上条「個人的にはこれ以上会いたくないんだけどな……」

冥土帰し「医者としては僕も同じ気持ちなんだけどね? 何度も入院する君に問題があると思うよ?」

上条「ええ、全くその通りでございます……はぁ」

冥土帰し「ほら、時間ももったいないだろう? すぐにでも出発した方が良いんじゃないかな?」

五和「そうですね……上条さん、行きましょうか」

上条「あぁ、今準備するからちょっと待っててくれ」
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/01/07(土) 01:53:46.50 ID:GXtr/Dcfo

上条「とりあえず外に出たは良いけど、何かしたい事とかあるか?」

五和「そうですね……とりあえず、空港に行くためのバイクを借りたいと思います」

上条「もう飛行機の手配は済んでるのか?」

五和「はい、土御門さんに手配して頂いたみたいで」

上条「それなら心配無さそうだな。じゃあ、俺は一回家に帰るから、
    バイクを借りたら俺の家に来てくれるか? 待ってる間に準備しとくよ」

五和「分かりました。では、また後で」

上条「おう、車には気を付けろよー」

五和「もう上条さんじゃありませんから大丈夫ですよー」

上条(……どういう意味だよ)
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/01/07(土) 02:04:44.39 ID:GXtr/Dcfo

上条の部屋

五和「上条さん、お待たせしました」

上条「おっ、意外と早かったな。五和の荷物もあるから忘れていくなよ?」

五和「……この部屋ともお別れか、ちょっと寂しいですね」

上条「またいつでも……って訳にもいかねーからな」

五和「そうですね……って、時間が無いんですから早く片付けないと」

上条「そういえば、何かしたい事とか思いついたか?」

五和「うーん、あまり時間がありませんから――あっ」

上条「ん? どうしたんだ?」

五和「上条さん、私……コレを着たいです」

上条「コレって……あぁ、それか。それを着てどうするんだよ?」

五和「もう一度だけ行ってみたいんです、自分の姿でこの服を着て」

上条「……分かった、じゃあ俺も着替えるとしますかね」

194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/01/07(土) 02:13:13.65 ID:GXtr/Dcfo

とある高校

五和「さぁ、着きましたよ」

上条「早い……バイク通学ってのも考えるべきか」

五和「多分ダメだと思いますけど……」

上条「しかし、五和とまた学校に来ることになるとはなぁ」

五和「こんなに可愛い制服ですから、自分で着ないともったいない気がして……」

上条「そっか、せっかくだし小萌先生に挨拶でもしてくか?」

五和「はい、良くして頂いたのでお礼を言ってから帰りたいですね」

上条「……小萌先生、また泣いたりしねーかな」

五和「さ、流石に二度目は無いと思いますよ……」

195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/01/07(土) 02:21:58.37 ID:GXtr/Dcfo

職員室

小萌「ううっ……ぐすっ……わざわざ挨拶に来てくれるだなんて、先生は……先生は……」

上条「(……また泣かれるとは思わなかったな)」

五和「(そ、そうですね……)」

小萌「い、五和ちゃん……学園都市から離れても、先生はいつまでも五和ちゃんの先生なのですよー……えぐっ」

五和「小萌先生……ありがとうございます」

上条(二日位しか会ってないはずなのに、これ程の大号泣とは……)

小萌「ひぐっ……こんな良い子なのですから、きっとどこに行っても大丈夫です! 自信を持つのですよー!」

五和「あ、あはは……期待に応えられるよう頑張ります」

小萌「それに比べて上条ちゃんと来たら……また学校をおサボりして」

上条(……何も言い返せないのが辛い)

小萌「土御門ちゃんも今日はおサボり……先生は頭が痛いのですよー……ぐすっ」

五和「え、えっと……先生、おしぼりです」

小萌「ぐすっ……どうも……」


上条(……土御門も学校には行ってなかったのか。じゃあ、病院に来る前はいったいどこに……)
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/01/07(土) 02:29:41.19 ID:GXtr/Dcfo

学園都市の一場面

「結局、お前の望み通りにはなったのか?」

「何の事を言っているか私には分からないが、好きに考えれば良いだろう」

「関与してない、なんて誰が信じるとでも思ってるんだ? ……まぁ、追及しても無駄か」

「どうやら、小規模な抗争が第二学区で起きていたようだが」

「あぁ、誰かが用意した大部隊のせいで危うく大騒ぎになるトコだったな」

「それに関しては何もする必要は無い。何も無かったのだからな」

「オレが揉み消す手間は省けたって事か、礼は言わないぞ」

「なに、もう一度言うが何も無かった。気にする事ではない」

「……で、お前は何が知りたかったんだ? 幻想殺しを危険に合わせてまで、得たかった事とは何だ?」

「私が知らない事を聞かれてもな」

「だったら何も言わなくて良い、オレが今から言うのは全て独り言だ。暇つぶしにでもしてくれ」
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/01/07(土) 02:46:20.10 ID:GXtr/Dcfo

「今回の事で分かったのは……幻想殺しは上条当麻の意識に関わらず、
その能力を発動する可能性があるかもしれない、という事だ。これはあくまでも可能性、
幻想殺しは何をもって発動するのか、何に依存しているのかは分からない」

「それを知って何になる?」

「そんな事、オレが知る訳無いだろうが。……もしかしたら、上条当麻の『中』には何かが存在しているかもしれない。
それが人か、意思か、あるいは神や天使、悪魔なんて事も考えられるか。いずれにせよ、何かが存在する可能性がある」

「ずいぶん、非科学的な事を言うものだな」

「お前には言われたくない。まぁ、幻想殺しが生命の危機に瀕した時に防衛本能で発動するのかもしれないが。
結局は何も分からなかった。しかし、上条当麻は死にかけたし、下手をすれば戦争の危機もあったのは事実だ。
先に言っておくぞ、これ以上あの男を不用意に戦いへと導くな。最小限に、そして絶対に命を失う事が無いようにしろ」

「私はそのつもりだが、どうやら世界はそう思っていないようだ」

「……それはオレから言っておく。アイツには悪いけどな」

「任せるとしよう。それと、あの少女には感謝すべきか」

「何?」

「誰でも良かったという訳では無い、最も合致する者が選ばれるのは当然だろう」

「……五和が、入れ替わるのに最も適した存在だったという事か」

「好きに考えれば良いだろう。それと、あまり深入りすべきでは無いとも言っておくか」

「こっちも好きにするつもりだ、邪魔はするなよ」

「それは動き次第だ、私にも考え位はあるのでな」
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/01/07(土) 03:03:45.44 ID:GXtr/Dcfo



上条「小萌先生、やっぱり泣いちまったな」

五和「良い先生ですね、上条さんもあんまり迷惑を掛けないようにしてくださいね?」

上条「……善処します。飛行機の時間まであとどれ位だ?」

五和「……あと、二時間位ですね」

上条「じゃあ、そろそろ飛行場に向かわないと駄目か……二十三学区だよな、確か」

五和「はい……だから、ここでお別れしないといけません」

上条「そっか……なんっつーか、色々あったけど無事に生きてて良かったな」

五和「そうですね……たまには何も無い時に上条さんとお会いしたいですけど、そういう訳にも……」

上条「……長い休みにでもなったら、イギリスに行ってみるのも良いかもな」

五和「えっ? ど、どうしたんですか急に?」

上条「いっつもイギリス清教にこき使われてるから、一回位文句言っても良いだろ? それに……」
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/01/07(土) 03:10:29.18 ID:GXtr/Dcfo

五和「それに……何ですか?」

上条「えっと、その……五和にも会えるだろ」

五和「は、はい! 私も、日本に戻る機会があったら……絶対に会いに行きます」

上条「……学園都市にに入るには、俺との関係者で、イベントがあるかそれなりの理由が無いと駄目だけどな」

五和「……そうですよね。上条さんの関係者、って事は」

上条「家族とかにならねーとな……そう考えると、難しいか」

五和「……上条さんと家族になればいいんですか?」

上条「あ、あぁ……でも、そんなの無理だろ? まさか、俺のウチの子になるとか?」

五和「ち、違いますよ……その、上条さんと……えっと、」

上条「俺と?」

五和「け……結婚したら、家族になりますよね」

上条「……っ!? い、五和……?」

五和「そ、その! もちろん冗談です! でも、冗談ではない方が嬉しいと言うか……だからつまり……」

上条「お、落ち着けって……いや、確かに家族にはなるけどさ……」
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/01/07(土) 03:25:00.60 ID:GXtr/Dcfo

上条「それだと、もう学園都市に入るとかそういう問題じゃなくて……。
    つーか、結婚する歳になったら学園都市には居ないかもしんねーし」

五和「あっ……そうですよね、それなら卒業後は天草式なんて事も!?」

上条「……あまりブラックな所では働きたくないかな」

五和「うぅ……それだと、私はいつ上条さんと会えば良いんですか!?」

上条「そんな事言われても……とりあえず、まだ俺達には……その、結婚とかは早いだろ」

五和「えっ……? 上条さん、今……『まだ』って言いました?」

上条「そ、そういう意味じゃねえって! それは拡大解釈ってヤツだろ!?」

五和「……そっか、そうですよね。上条さんは私となんて結婚したくないですよね」

上条「そんな風には誰も言ってねえんだけど……」

五和「良いんですよ……吹寄さんに姫神さん、ミサカさん……素敵な方ばかりですからね」

上条「どうしてそこでそいつらの名前が出るんだよ……だから、違うんだって!
    そういう意味じゃなくて……あー……ごめん! とりあえず謝っとく!」

五和「……ふふ、ごめんなさい。大丈夫ですよ、だから頭をあげてください」

上条「……本当に?」

五和「本当ですってば」
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/01/07(土) 03:32:34.56 ID:GXtr/Dcfo

五和「……上条さん、最後に一つお願いあるんですけど……良いですか?」

上条「お願い? まぁ、俺に出来る事なら……」

五和「上条さんにしか出来ませんよ。……良いんですね?」

上条「あ、あぁ……何をするんだ?」

五和「それでは……その、……失礼します!」

上条「なっ……まさか、お願いって……」

五和「は、はい……抱きしめてもらいたいなぁ……なんて。……駄目でしょうか?」

上条(……これが女の子の上目遣いか。やっと本物が見れた……)

五和「……上条さん? どうかしま――あっ……」

上条「えっと……こんな感じで良いのか?」

五和「……はい、しばらくこのままでいてください」
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/01/07(土) 03:41:39.38 ID:GXtr/Dcfo

五和(上条さんの体……暖かい、いつまでもこうしていられれば良いのに)

上条「……あのさ、俺の声を聞いたって言ったよな」

五和「えっ? は、はい……あの時、攻撃される前に確かに上条さんの声が聞こえました」

上条「それ、俺だけど俺じゃない……そう思ったんだよな?」

五和「ええ……私はそう感じました」

上条「多分、五和の言う通りだ。それと……その声に俺は心当たりがある」

五和「……本当ですか? それは、いったい」

上条「……悪い、これ以上は言えないんだ。でも、いつか必ず言う。だから、その時に」

五和「私は……いつまでも待ってます。上条さんのタイミングで、言ってくださいね」

上条「……ありがとな、五和」

五和「上条さん……」

上条(えっ? ここでこのタイミングで目を瞑るって……あの、もしかして……)

五和(わ、私ったら……流れで目を瞑っちゃったけど……どうしよう)
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/01/07(土) 03:49:08.25 ID:GXtr/Dcfo

上条(こ、こういう時は……やっぱり、するしかねえのか?)

五和(いくら上条さんが鈍感だからって……これは流石に気付いてるはず……)

上条(ど、どうする俺!?) 五和(ど、どうなるの私!?)

上条(……いくしか、ねえよな)

五和(……っ! 私の背中に回された上条さんの腕に……力が……もしかして)

上条「い、五和……」

五和「は、はい……」

上条(あと、五センチ……四、三)

五和(二、一……か、上条さん……!)

ピロリロ ピロリロ

上五「――っ!?」

204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/01/07(土) 03:55:19.52 ID:GXtr/Dcfo

上条「い、五和……その、携帯が」

五和「……みたいですね、はぁ。誰ですか……?」

建宮『よう、五和。今頃、上条当麻とイチャついてるだろうが、お前さんに話が』ピッ

上条「だ、誰だったんだ?」

五和「……間違い電話でした、気にしないでください」

上条「そ、そっか……それなら良いんだけど」

五和「……イギリスに戻ったら、まず最初にやる事が出来ました」

上条「へっ?」

五和「いえ、槍を研ごうと思いまして。……どんなものでも真っ二つに出来るように」

上条「ひ、ひいっ!?」

五和「上条さん……クワガタって、どうすれば真っ二つに出来ると思います?」

上条「し、知りません! 存じておりません!」

五和(……建宮さんの、バカぁ!!)

上条(助かった、のかな……? でも、もったいない気も……)
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/01/07(土) 04:03:50.08 ID:GXtr/Dcfo

五和「うぅ……もう行かないといけません、はぁ……」

上条「げ、元気出せって……」

五和「いえ、良いんですよ……どうせ、私なんて……」

上条「……五和、今度会う時は、その……携帯切っとけよ」

五和「そうですね…………えっ!? か、上条さん!? それ、どういう意味ですか!?」

上条「な、何でもねえよ! ほら、さっさと行けって!」

五和「ま、またそれについては聞かせてくださいね! 約束ですよ!」

上条「分かったって! 良いから出発しろよ!」

五和「もう……送って行かなくて大丈夫ですか?」

上条「あぁ、俺は大丈夫だから」

五和「分かりました。上条さん……最後に一つだけ」

上条「お、おう……」

五和「……私、あなたと会えて本当に幸せです」

上条「い、いきなり何を!?」

五和「そ、それではまた!」


上条「…………行っちまったか。ったく、最後まで恥ずかしい事言いやがって」

土御門「いや、カミやんも負けない位クサかったぜよ」

上条「あー……やっぱりお前もそう思う? ……って、土御門!?」
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga sage]:2012/01/07(土) 04:11:09.32 ID:GXtr/Dcfo

土御門「いやー、青春ですにゃー」

上条「……どこからだ?」

土御門「顔が近づいていったトコから」

上条「……今すぐ、見た事聞いた事を忘れるのは?」

土御門「無理だぜい」

上条「……今ならお前に勝てそうな気がする」

土御門「やめとけって。……しかし、本当に良い娘って感じじゃねえか」

上条「あぁ、本当にな。……アイツのおかげで今、俺は生きてるんだ。五和だけが頑張ってくれた訳じゃないけどさ」

土御門「『神の右席』の二人、そして今回。確かにそうかもな、五和のおかげで今のカミやんがある」

上条「……多分、五和とだから、今回も乗りきれたんじゃねーかなって思うんだよ」

土御門「こうやって元に戻れたのも、五和だったからって事か」

上条「いや、違うんだ。元に戻ったんじゃ無いんだ」

土御門「違う? どういう事だ?」
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/01/07(土) 04:27:29.08 ID:GXtr/Dcfo

上条「あの時、幻想殺しで相手の攻撃を無力化出来たのも、
    五和が俺の事を分かってくれたからなんじゃねえかな」

土御門「……そっか。まぁ、カミやんがそう思うんなら間違いねえな」

上条「五和はただ俺の真似事をしてた訳じゃない、俺以上に周りを思い、そして苦労してた」

土御門「なんだ、ちゃんと五和の事を分かってやろうとしてたんだな」

上条「そんなんじゃねえよ。……だからさ、さっきも言ったけど俺は元に戻ったんじゃない」

土御門「それなら、何だって言うんだ?」

上条「五和という女の子が上条当麻の身体を自分のものにしていた。それも無理やりじゃない。
    五和らしく、優しさとか誰かを助けたいって思いがあったからだ。だから俺はアイツに感謝とか、
    尊敬とかそんな意味を込めてこう思ってるんだ。元に戻ったんじゃない、俺は、上条当麻は――」

上条「五和と入れ替わった」

土御門「……あれは五和でもあり、上条当麻でもあったんだな」

上条「あぁ、だから入れ替わったって言った方が正しいんだ。……悪いか?」

土御門「オレが決める事じゃないからにゃー。二人で決めれば良いぜよ」

上条「……それもそうだな」
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/01/07(土) 04:34:06.72 ID:GXtr/Dcfo

上条「さて、俺達も帰るか……もう遅いしな」

土御門「おっと、カミやんには悪いがそうもいかねーんだぜい」

上条「……えっ?」

土御門「あれ? まだ何も聞いてないか、だから五和も行っちまったんだな。納得ですたい」

上条「土御門……すっげー嫌な予感がするんだけど」

土御門「おうよ! さて、何から説明すればいいんだか……」

上条「……もういいよ、どうせ不幸な目に遭うんだろうからさ。手短に言ってくれ……」

土御門「そうかー、じゃあ手短に言うぞ。今からイギリスに行ってこい」

上条「…………………………………………………………………」

土御門「カミやん? カミやーん? おーい、生きてるかー?」

209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/01/07(土) 04:39:39.94 ID:GXtr/Dcfo

上条「は、あの、ええと。何だって?」

土御門「いや、だから……おっ、来たみたいだぜい」

上条「えっ? 来たって誰が……ええっ!?」

五和「か、上条さーん! 大変です!」

上条「……何となく予想は出来るけど、どうしたんだ?」

五和「イギリスですよ、イギリス!」

上条「……ですよねー」

五和「さっきクワガ……建宮さんから連絡があったんですけど、それが」

土御門「カミやんをイギリスに連れて行け、だろ?」

五和「は、はい! という訳で、すぐに後ろに乗ってください!」

上条「……なぁ、本当に俺も行かないとダメ?」

土御門「ダメだぜい。ほら、さっさと行けって」

上条「……五和、行くぞ。もうこうなったらイギリスでもどこでも行ってやるっつーの!!」

土御門「いってらしゃーい。土産も忘れんなよー」
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/01/07(土) 04:48:07.81 ID:GXtr/Dcfo

五和「上条さん、しっかり捕まっててくださいね!」

上条「あぁ……つーか、あの後すぐに会うって……恥ずかしくないか?」

五和「そ、それはそうですけど……でも、この先上条さんとイギリスまで一緒で嬉しくて……」

上条「……そうだな、そうやってプラスに考えた方が良さそうだな」

五和「向こうに着いたら私がお世話します、安心してくださいね」

上条「……泊まるための金とかねーんだけど、大丈夫かな」

五和「そ、それなら……私が借りてるアパートに泊まりますか?」

上条「本当に!? それは助かる! ……って色々問題がある気がするぞ!?」

五和「だ、大丈夫です! 誰にも見つからないようにしますから!」

上条「それ、見つかったら問題があるって事だよな!?」

五和「し、知りません! あっ、第二十三学区に入りましたね……確か、ここからは」

上条「えっ? なに、何なの?」
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/01/07(土) 05:00:27.75 ID:GXtr/Dcfo

五和「百キロ出しても問題ないみたいですよ、しっかり掴まってくださいね!」

上条「ええっ!? これ以上しっかり掴まるのは無理だと思うので――ぬおおっ!?」ギュッ

五和「か、上条さん!? そ、そこは……その……掴まるなら別の場所にしてください!」

上条「無理! 今力抜いたら絶対落ちる! しかもすっげー柔らかくて離したくないんだけど!」

五和「だから、そこは……もう! 触るなら後で触らせてあげま……って違います!」

上条「あ、後でって何だよ!? つーか今掴まってんのはどこなんだ!?」

五和「わ、私のアパートでですよ! 掴まってるのは、その……言えません」

上条「と、ともかく減速! 安全運転プリーズ!」

五和「あっ、空港が見えてきました! もう少しですよ!」

上条「だからもっとゆっくり……ぬわー!」

五和「か、上条さん!?」


 その数時間後、五和がハイジャック犯をフルボッコにしたとかしなかったとか、
イギリスで上条がオリアナと一緒に居て五和がムスッとしたとかはまた別の話である。


上条「し、死ぬかと思った……冷や汗が止まんねー……」

五和「上条さん、すいません……はい、どうぞ。おしぼりです」

上条「サンキュー……イギリスでは、何も無ければ良いんだけどなぁ」

五和「そうですね……」

212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/01/07(土) 05:02:58.89 ID:GXtr/Dcfo
終わった…という訳で終わりです
ここまでどうもありがとうございました
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/07(土) 05:13:27.53 ID:CqsO9CYDO
乙!
後日談に期待
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/07(土) 12:02:33.46 ID:v1qomQKSO
終わり、だと……
その幻想をぶち転がす!
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/08(日) 00:58:51.59 ID:qfzCBcr7o
おつ
向こうからずっと、見てた
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