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【デュエル】ふと気付くとフルフェイスの甲冑騎士が目の前にいた件【ターミナル】 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2011/11/13(日) 00:09:33.07 ID:o6zVTpCH0
スレタイがわけわかんないことになってるけど遊戯王のSSです
注意点とかはたぶん特にないです たぶんですけど
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
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笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
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【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
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ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
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【安価】少女だらけのゾンビパニック @ 2024/04/20(土) 20:42:14.43 ID:wSnpVNpyo
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ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
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2 : ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2011/11/13(日) 00:10:09.63 ID:o6zVTpCH0
―― デパート 【Satisfaction】 ――

ふわ〜、と、テンプレートな欠伸を一つ。
眼を血走らせて両替機に向かう友人の姿を見て、僕はため息をついた。

「まだ終わんないの〜?」

「まだだ、ウルレアが来るまでは回す」

そう言って、両替機に500円玉をぶち込む友人。

両替機『やっ、ダメぇっ! そんなに強く入れたら……あぁんっ!』ジャララララ

……こんなどうでもいい妄想が展開されるくらい、僕は疲れている。早く家に帰って寝たい。
だけど、友人は巨大な箱の前から離れようとしない。ほんと、魔の貯金箱という言葉がふさわしいと思う。

「次こそはチェインを……あーくそ、またお前か!」

悪態をつきながら、出てきたカードを僕に投げる。
綺麗に回転しながら飛んできたそれを見事キャッチ。プリズム加工が美しい、青色のカードだ。
3 : ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2011/11/13(日) 00:10:43.22 ID:o6zVTpCH0

「カオスソルジャー、デイブレーカー、アマゾネスの鎖使い……。当たりなの、これ?」

手渡されたカードを1枚1枚眺めながら、聞いてみる。
友人は全力で首を振った。横に。

「全然だよ! 次こそは、次こそは来いエメラル! ドロー……はぁ!?」

100円玉を筐体に投げ入れると同時に、タッチパネルを連打する友人。
そして出てきたカードを、彼は何か恐ろしいものを見るような眼で見つめている。

「どーかしたの? そろそろ周りの人の目が痛いんだけど」

夕方のデパートのおもちゃ売り場は、結構な人数の小学生や、その母親が徘徊している。
そんな母親たちから向けられる『高校生にもなって……』という視線が、そろそろ耐え難いものになってきた。
僕はこいつに付き合わされているだけなのだが、そんな事情を彼女らは知らない。

「クリスタ…だと…? まさか、ということは……」

光の抜け落ちた眼で何事か呟きながら、友人は震える手で僕にカードを手渡す。
4 : ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2011/11/13(日) 00:11:17.35 ID:o6zVTpCH0

「ジェムナイト・クリスタ? かっこいいね、これ」

カードの効果や強さがいまいちよくわからない僕は、とりあえず素直な感想を述べてみる。
けど、友人の耳には入っていないみたいだった。

「クリスタが出てきた、ということは……」

崩れ落ちるように膝を折り、ぎこちない動作で腕を上げ、100円玉を投入する。
ロクに画面も見ずタッチパネルに触れ、カードが排出されるのを待つ。

<これが君のカードだ!

筐体から声が響いた。出てきたカードは……

「ラヴァル炎火山の侍女。メイドさんだね」

強いかどうかなんてわからないので、やっぱり素直な感想を述べる僕。
何気ない一言だったのだが、この一言で友人は壊れたようだった。
5 : ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2011/11/13(日) 00:11:48.71 ID:o6zVTpCH0

「……オメガの裁きじゃねえかよおおおおおおお!! どういうことだよ途中で内容変わるって!!」

叫ぶ友人。驚く店員。振り向くお母さん方。無関係な僕。視線が痛い。マジで無理。

「ちくしょー、店員に文句言ってやr」

「うんそうだねー大変だったねーうん今日はもう帰ろうねーああ店員さんなんでもないんですよすいませんねうちの子が迷惑かけたみたいでいえいえもう帰りますからありがとうございましたーまた今度来ますねーハハッ」

なにやらまずいことになりそうな気がしたので、友人の背中を押してその場を離脱(E:愛想笑いLv100)。
HANASE、HANASEと喚く友人を、半ば蹴り飛ばしながら進み、どうにかデパートから出た。


―― 帰り道 ――

一言文句を言ってやるといって聞かない友人を必死に宥め、どうにか僕は帰路に就いた。手には十数枚のカード。

「元気出しなよー、強そうなカードいっぱい出たじゃん」

と、なんとかしてフォローを入れようとしたら、

「それ全部くれてやるよ、いらねーから。あ、侍女だけは貰うけどな」

と、一蹴されたのが原因だ。
6 : ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2011/11/13(日) 00:12:22.60 ID:o6zVTpCH0

「まー、いらないならもらってやるけどね」

キラキラ輝くカードたちを眺めながら、僕は結構上機嫌だった。
カードはやっていないけど、綺麗なものを集めるのは好きだ。
美麗なイラストに、想像をかき立てる背景、そしてカード全体を彩るプリズム加工。うーむ美しい。

「これなんて、かっこいいのになー」

中でも一番気に入ったのは、『ジェムナイト・クリスタ』というカード。
このカードは他のカードと違って、なにやらキャラ設定のような文章がテキスト欄に書かれている。

「クリスタルパワーを最適化し、戦闘力に変えて戦うが、限界を感じることも多く、仲間との結束を大切にしている……」

設定を見るだけでわかる。甲冑の下の素顔はイケメンに違いないと。

「というか、間違いなくこいつは主人公だな」

前に友人が言っていたことを思い出す。
友人が学校帰りによく噛り付いているあの筐体、『デュエルターミナル』には、一本のストーリーが存在していて、
そこから出てくるカードは、そのストーリーに沿ってデザインされているそうだ。
7 : ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2011/11/13(日) 00:12:53.75 ID:o6zVTpCH0

「動いたら、もっとかっこいいんだろうなー」

目を閉じて、どこか遠くの世界に思いを馳せる。
爆発音と悲鳴の飛び交う戦場で、馬に乗って颯爽と現れる甲冑の騎士。
仲間との結束を力に変えて、侵略者たちに立ち向かう。かっこいい!
……なんて、思っていたら。

「うわっ!」
「むっ」

やたら硬い、何か……じゃないな。誰かにぶつかった。その場に尻餅をつく。
目を閉じて、しかも考え事をしながら歩いていたせいだろう。やっちまったな、僕。

「ご、ごめんなさい」

「いや、こちらの不注意だ。すまない」

「あ、どうも」

怖い人だったらどうしよう、と一瞬思ったが、なかなか紳士的な人だ。一安心。
差し出された手をとって、立ち上がる。すごく硬い手だ。
8 : ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2011/11/13(日) 00:13:34.99 ID:o6zVTpCH0

「ありがとうございまs……!?」

埃を払ってから、もう一度お礼をしようと、謎の紳士さんに向き直り、そして硬直した。

「む? どうかしたか?」

紳士さんが、怪訝そうな表情(たぶん)を浮かべて、尋ねる。
だが、僕は答えることができなかった。

なぜか、と言いますと。
その紳士が、肩から飛び出たクリスタルが印象的な、銀色の甲冑を身に着けていたから、
というか、もっとストレートに言うならば……

さっきまで眺めていた『ジェムナイト・クリスタ』と、まったく同じ格好をしていたから。

「え、あ、え、ちょ、ええええええええええ!?」

握られた手を振りほどいて、わけもわからず走り出した。
よく見れば、今僕がいる場所もおかしい。
さっきまで普通に街中を歩いていたはずなのに、今はどこか古風な、それでいてどことなく近未来な感じを漂わせる、石造りの町にいて……あるぇー!?
意味がわからない。わけがわからない。なにがなんだかわからない。何もわからない。
足がもつれる。転ぶ。痛い。
9 : ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2011/11/13(日) 00:14:06.82 ID:o6zVTpCH0

なんなの、ここ。
なんなんですか、これ。
心の底から突き上げる衝動に従って、僕は叫んだ。

「うわあああああああああああ!!」

「あんた何やってんの?」

「はっ!?」

聞きなれた声が耳に入って、ふと我に返る。
目の前にいたのは甲冑紳士などではなく、見慣れた僕の姉だった。

「家の前で絶叫って、あんたどうかしてるんじゃないの?
 あ、あたし今から友達の家行くから。今日は晩御飯いらないって言っといて」

姉はそう言い残して歩き去った。
しばらく状況が理解できず、キョロキョロとあたりを見回す僕。
コンクリートの道路、セメント造りの家、見慣れた我が家の玄関……

「……えぇー……?」

なにがなんだか、わからない。
とりあえず、その一言に尽きた。
10 : ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2011/11/13(日) 00:14:44.99 ID:o6zVTpCH0
――とりあえず一旦ここまで――
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/13(日) 00:33:40.29 ID:C9yo75JAO
…うむ。ほどほどに期待しよう
12 :名無しNIPPER [sage]:2011/11/13(日) 00:40:06.08 ID:IvJm2DdAO
クリスタさんに目を付けるとはなかなか最適化されている
刺激的なわた……ルマリンさんも出して欲しいな
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(石川県) [sage]:2011/11/13(日) 01:59:46.08 ID:hYLPgEfW0
>>12
同感だ
ジェムナイトのエクストラ、
同名2枚ずつで15枚超え厳しい
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/13(日) 07:48:48.85 ID:/fuMUtzIO
甲冑なのにヤリザ殿ではない……だと……
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) :2011/11/15(火) 18:54:00.33 ID:ZHsBykYr0
気に入った
融合素材になってあげよう
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(不明なsoftbank) [saga]:2011/11/15(火) 21:46:35.73 ID:GGnyy3iW0
ジェムナイト1のイケメンも支援するエメ
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/16(水) 12:01:15.37 ID:AAVPb4aSO
お願いですからガスタとして生き続けてください
18 : ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2011/11/17(木) 00:45:44.38 ID:Z8WBfIPG0

しばらく家の前でへたり込んでいた僕だったが、どうにか正気を取り戻し、考えた。
あの謎の甲冑騎士、いや、『ジェムナイト・クリスタ』は、幻覚や白昼夢だとは思えない質感を持っていた。
そして、あの時見た光景も、現実のものとして脳裏に焼きついている。

一体、なんだったのか。

そんなことを考えつつも、その日は普通に夕飯を食べて寝た。
僕は自分が思うよりも図太い人間だったらしい。

「あーあ、なんでリバースバスターはあんなことになっちまったんだ……」

で、一日経った今、僕がいる場所は学校である。学生だから当たり前。

「アニメと一緒じゃ、ちょっと強すぎるかなーとは思ったけどね。でも、あれはちょっとひどいなぁ」

「せめて攻撃力アップ効果は残してほしかったな。あれじゃ銀河眼出せねえよ」

今は昼休み。昼食を済ませた僕は、友人&宮本さんと、取り留めのない話をしていた。
とはいっても、話の内容の9割近くが、僕にはわけのわからないものなのだが。
19 : ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2011/11/17(木) 00:46:21.70 ID:Z8WBfIPG0

「そういえば、フォトンのサポートカードも結局来なかったね」

「そーなんだよなー、サブライレーションとハリケーンのどっちかは来ると思ったのに」

宮本さんというのは、クラスメイトの女子である。

「なんにせよ、フォトンはもうちょっと様子見だねー」

「超銀河眼次第だな。どうなることやら」

見た目は悪くない。いや、悪くないどころか、かなりの美人だ。
人当たりもよく、クラスでの人気は男女問わずなかなか高い。
それでいてなぜか友人のカードゲーム談義について来れるという、異色の美女である。

「まあ、その話は置いとくとして、だ。――デュエル、するか?」

「ふふっ。その勝負、受けて立つよー」

ちなみに友人もなかなかのイケメンである。クソッ。
20 : ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2011/11/17(木) 00:47:00.28 ID:Z8WBfIPG0

「「デュエル!!」」

友人や宮本さんが、こうしてカードゲームに興じていると、
周りの人間は『あの人、結構オタクだけど、イケメン(美人)だよね』という評価を下す。

「ウィンダの効果を発動するよ。デッキからガルドを特殊召喚ー」

「ふっ、そちらがリクルートでチマチマと場を繋いでいる隙に、俺は墓地を肥やさせてもらうぜ」

仮に僕が同じことをやったとしよう。
そうすると周りの人間は『あの人、顔はそんなに悪くないのに、オタクだよね』という評価を下す。

「いっくよー、ウィンダールで攻撃ぃー!」

「侍女で侍女を落とし、さらに侍女で侍女を落とし、またまた侍女で淑女を落とすぜ!」

まったくもって、世の中不公平である。
何が『天は人の上に人を作らず、人の下に人を作らず』だ。嘘つきは泥棒の始まりですよ、1万円札さん。
21 : ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2011/11/17(木) 00:47:26.63 ID:Z8WBfIPG0

「フハハハハ、これで終わりだ! 真炎の爆発を発動!」

「いやー! やめてよぉー!」

……なんてことを考えているうちに、2人の戦いは佳境に入っていたようだ。
友人がずらずらとモンスターを召喚し、宮本さんが悲鳴を上げる。

「バカな、全て防がれただと!?」

「危ないところだったよー。ほんと、ラヴァルとのデュエルは気が抜けないね」

僕は遊戯王というカードゲームをよく知らないから、確かなことは言えない。
けど、普段の態度を見ていたら、友人が結構なヘビープレイヤーであるということはわかる。

「くっ、だが俺の圧倒的有利に変わりはない! この状況をひっくり返せるもんならやってみろ!」

カードなんて触ったこともなさそうな美少女が、そんな友人を相手に、勝つことができるのか?
この2人のデュエルを見るたび、僕はいつもそう思う。
22 : ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2011/11/17(木) 00:47:53.03 ID:Z8WBfIPG0

「げ」

そして、次第に青ざめていく友人の顔を見て、考えを改めるのである。
人は見かけによらない、と。



「ちくしょー、なんで勝てないんだ……」

「むふふ、カードへの愛情が足りないんじゃないかな」

ぐったりと机に突っ伏す友人。まぶしい笑顔を振りまく宮本さん。
見慣れた光景ではあるのだが、どうにもすっきりしない。

「うーん、やっぱよくわかんないな。お前なんで負けたの?」

戦況だけを見ると、強そうなモンスターをたくさん従えている友人が、圧倒的有利に見える。
対する宮本さんの場には、美少女モンスターが1体と、変な鳥が1匹。緑のイラストが眼に優しい。
これでどうやって勝ちを収めたのか、僕にはまったく検討がつかない。
23 : ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2011/11/17(木) 00:48:23.65 ID:Z8WBfIPG0

「お前にも、わかるときが来るさ……デカけりゃいいってもんじゃないんだよ……」

「全然意味わかんないんだけど」

「まあ、堀越くんは遊戯王やってないもんね。わかんなくてもしょうがないよ」

そんなもんなのだろうか。あ、ちなみに堀越っていうのは僕の名前です、はい。
まあ、わからないことを無理に理解しようとする必要はない。
謎の敗因についてはとりあえず置いといて、気になったことを聞いてみる。

「2人が使ってるカードって、やっぱりあの……デュエルターミナル、だっけ? あれで買ったカードなの?」

友人が使っている『ラヴァル』にも、宮本さんが使っている『ガスタ』にも、綺麗なプリズム加工が施されている。
ちょうど、昨日友人に貰ったカード――『ジェムナイト・クリスタ』と、同じように。

「そうだよー」

「お、ようやくお前も遊戯王に興味を持ったか」

「いや、別にそういうわけじゃないんだけどね」

制服のポケットから、『ジェムナイト・クリスタ』のカードを取り出す。
やっぱり昨日のことが気になってしまって、学校まで持ってきたのだ。
24 : ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2011/11/17(木) 00:49:01.99 ID:Z8WBfIPG0

(けど、この2人に聞いたって……なぁ)

遊戯王に精通しているこの2人に聞けば、何かがわかるかもしれない。そう思ったのだが。
よくよく考えてみれば、

『気付いたらよくわからない場所にいて、そこでこのモンスターと出会ったんだけど、何か知らない?』

なんて言ったところで、まともな回答なんか望めるわけがない。
頭がおかしいやつだと思われるのがオチだろう。
うーん……。

「なんだ、ジェムナイトでも作るのか? 初心者が扱うには、ちょっと難しいデッキだと思うぞ」

どうしたものかと考え込んでいると、僕の手にある『ジェムナイト・クリスタ』のカードに目を留めた友人が、声をかけてきた。
このカードが気になるのは確かだが、別に遊戯王を始めようという気はない。カードゲームはお金がかかるからなー。

「いいじゃない、フィーリングって大事だよ? ジェムナイトなら確かパーツが余ってたと思うし、分けてあげようか?」

だが、そんなつもりはないと否定する前に、宮本さんに先手を打たれてしまった。
彼女の言葉の源にあるのは、とても純粋な善意である。
そこに美少女補正まで加わると、その言葉を否定するのはとても難しくなってしまう。
25 : ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2011/11/17(木) 00:49:52.37 ID:Z8WBfIPG0
「あーっと、実はそうなんだー。僕も軽く始めてみようかなーと思って」

仕方がないので、流される。
この場は適当に話を合わせて切り抜けよう。

「やっとお前もデュエリストデビューか! ジェムナイトなら俺も余ってるな。よし、分けてやろう」

切り抜けよう。

「うん、じゃあ今日の放課後、いつものカードショップに集合ってことで! いいかな、堀越くん」

切り抜けよう。

「え、でも僕カードショップとか行ったことないし、道とかわかんないし」

「俺が案内してやるから心配すんな。そうか、ついに堀越もデュエリストか……」

切り抜け……

「あ、もうすぐお昼休み終わっちゃうね」

「げっ、次数学じゃん! 俺課題まだやってねえ!」
26 : ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2011/11/17(木) 00:50:16.45 ID:Z8WBfIPG0

切り…抜け…

「私はちゃんとやってきたよー。見せてあげようか?」

「頼む! あ、じゃあ堀越、また放課後な!」

「また後でねー。むふふ、でもタダで見せるわけにはいかないなー」

「ぐっ、足元見やがって……ッ!」

……。
友人と宮本さんは、揃って自分の席へと戻っていった。
やっぱり、流されてるだけじゃダメだよね。
僕がそう気付くと同時に、昼休み終了のチャイムが鳴った。
27 : ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2011/11/17(木) 00:51:36.92 ID:Z8WBfIPG0
やっべ>>22が一行抜けた
――――
カードなんて触ったこともなさそうな美少女が、そんな友人を相手に、勝つことができるのか?
この2人のデュエルを見るたび、僕はいつもそう思う。

「ダイガスタ・スフィアードをシンクロ召喚!」

「げ」

そして、次第に青ざめていく友人の顔を見て、考えを改めるのである。
人は見かけによらない、と。
――――
28 : ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2011/11/17(木) 00:53:18.51 ID:Z8WBfIPG0
――今日ここまで――

ヤリザ殿にルマリンさんにエメメメさんとここは刺激的なインターネッツですね
まあなんとか頑張りますのでほどほどに読んでくださいな

リバースバスターどうしてああなった……
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]:2011/11/17(木) 01:20:51.24 ID:UWfO0c4Xo

ワームこそ至高
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/17(木) 05:06:45.57 ID:L6QyZ7YIO

こんなスレあったのか、面白い
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/20(日) 21:50:20.92 ID:XnoHQNc9o
おいおいおいおい
まさかジェムナイトが主題のSSだと?
ジェムナイト好きな俺得なSSじゃねえか
とくにクリスタさん好きだぜ!普通のジェムのほかにクリスタビート作るぐらいに!
クリスタさんを妄想するときは毎回プリズムも交えて妄想するわ
32 : ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2011/11/21(月) 00:11:32.47 ID:SEEu+x2t0

放課後、言われたとおりカードショップに赴いた僕は、たっぷり2時間の講義を受けることとなった。
そして今はその帰り道。新たなカードと知識を手に入れた僕は、講義の内容を思い返しながら歩いている。

「……それで、えーっと、『マディラ』の素材が炎族で、カテゴリ内だと『サニクス』と『ガネット』が該当。
 内『ガネット』は『ルビーズ』の素材にも指定されていて、それで……」

デュエル自体のルールは、実践の中で体に覚えてもらうとして。
せめてカード同士の繋がりくらいは把握しておこうと思ったのだが、覚えられる気がしない。

「しかしまあ、こんなに貰っちゃってよかったのかな」

『どうせ余ってたやつだし、別にいいぜ』

『うんうん。そのカードだって、堀越くんに使ってもらったほうが、幸せだろうしね』

言われるがままに受け取ってしまったけど、これは……なぁ。
ポケットから、2人に貰ったカードを取り出す。その数なんと30枚。
『余っていた』という2人の言葉に嘘はないだろう。けど、これだけの数となると、やっぱり気が引ける。
33 : ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2011/11/21(月) 00:12:19.40 ID:SEEu+x2t0

「まあ、貰っちゃったもんはしょうがないか」

とりあえずそういうことにして片付けておこう、うん。
そう心に決めて、貰ったカードたちに目を落とす。『ジェムナイト・サフィア』、『ジェムナイト・ルマリン』、etcetc。
どのカードも例外なくプリズム加工が施されている。やっぱり綺麗だ、この光り方は。

「その静かな守りは仲間から信頼されているらしい……らしいって何?」

そして、何より興味を惹きつけるのが、『クリスタ』にもあったキャラ設定。
この設定は全てのカードに存在するわけではなく、特殊な効果を持たないモンスターのみに記されているようだ。

「……彼の刺激的な生き方に共感するジェムは多い。1回会ってみたいなこの人」

もったいないなぁ、と思う。
特殊能力を持つモンスターは、テキスト欄を見ても能力の説明が書かれているだけで、そんな設定は載っていない。
だからといって、そのモンスターが何一つ設定のないつまらないモンスターなのかといえば、そんなことはないだろう。

「こいつとか、なんかありそうな気がするんだけどなー」

緑のボディが爽やかな『ジェムナイト・エメラル』のカードを手に取ってみる。
このモンスターには、傷付き倒れてしまった『ジェムナイト』を復活させる力があるのだ。
それはつまり、死人を蘇らせる力があるということで、きっと性格も……なんて、考えていたら。
34 : ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2011/11/21(月) 00:13:07.73 ID:SEEu+x2t0

「わかってる。けど、そんな簡単に見つかるものじゃないのよ……」

「うわっ!」

曲がり角で、誰かとぶつかった。その場に尻餅をつく。
考え事をしながら歩いていたせいだろう……って、前にもこんなことがあったような。

「あっと、ごめんなさい。立てる?」

「あ、はい。大丈夫です、ごめんなさ……」

差し出された手を握ろうとして、強烈なデジャブを感じた。
そうだ。昨日、『クリスタ』と遭遇したとき。あのときと、寸分違わず同じ状況――。

「……ほんとに大丈夫?」

「あ…っと。すいません」

顔を上げると、そこにはあの銀色騎士がいて、『また会ったな』なんて言葉をかけてくるのではないか。
そう思ったが、握った手はとても柔らかくて、何より鎧なんか着ていなかった。
35 : ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2011/11/21(月) 00:13:59.99 ID:SEEu+x2t0

「ちゃんと前見て歩きなさいよ、危ないじゃない」

「あ、はい。ごめんなさい」

長い黒髪が印象的な、キツそうな女の人。
僕が立ち上がるとすぐに立ち去ってしまったので、わかったのはそのくらいだった。
やっぱりよそ見しながら歩いてちゃいけないよねと、僕はカードをポケットにしまう。

「……ん?」

そして、ふと頭に浮かんだ疑問。
今の女の人は1人だった。連れの人なんていなかった。
けど、彼女は僕とぶつかる前、誰かと話をしていたような……?
あまり鮮明に思い出せるものではないが、独り言のような内容ではなかった気がする。

「うーん……まあ、何でもいっか」

まあ結局のところ、結論はこうなるんですけどね。


36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) :2011/11/21(月) 00:55:09.77 ID:ZhD/qUuro
ん?おわりか?
37 : ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2011/11/21(月) 01:48:32.65 ID:SEEu+x2t0

デパート『Satisfaction』の前まで来たところで、僕の足は止まった。

「そうだ、今日は母さん家にいないんだった」

『明日は遅くなる』と、夕食の場で母が予告していたことを思い出したからだ。
それはつまり、夕飯を作ってくれる人がいないということを意味する。
何か適当に、カップラーメンでも買って帰ろうかと、僕の足はデパートに向かう。

「いらっしゃいませー」

自動ドアが開くと同時に、店員さんの機械的な挨拶が響く。
どっかで見たような人だな、と思い、気付いた。ここ、おもちゃ売り場じゃん。

(うーん、やっぱまだ慣れないなぁ)

このデパートは最近できたばかりのものだ。利用回数は、たぶん片手で数えられる。
そのせいか、入り口を間違えてしまったようだ。
一旦外に出て別の入り口へ向かうべきか、それとも店内を通り抜けるべきか、考える。

(ん、あれって……)

外は寒いし、なるべくなら店内を通り抜けたいところだが、どう進めばいいのかわからない。
ルート探索にあたりを見回していると、ふと目に留まったものがあった。
38 : ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2011/11/21(月) 01:49:02.86 ID:SEEu+x2t0

(あれってたしか、デュエルターミナル……だったよな)

レジの向かい、ゲームソフトの棚を挟んで、設置されている大きな筐体。
無慈悲に100円玉を飲み込む、魔性の貯金箱、デュエルターミナル。
友人がプレイするのに付き合ったことは数回ある。だが、僕自身があれで遊んだことは1回もない。

(……1回くらいなら、いいかな?)

一応、僕も遊戯王を始めることになってしまったわけだし。もう他人事じゃあない。
周りに人はいない。豪胆な友人と違い、人目が気になる僕にとって、今は絶好のチャンスじゃないか?
まあ、物は試しですよね。僕はターミナルの前に陣取って、100円玉を投入した。

<遊びたいモードを選んでくれ!

小気味いい音と共に画面が切り替わり、モード選択に入る。
とりあえず、『アクションデュエル』を選んでみた。

<これが君のカードだ!

音声と共に、筐体の下部からカードが飛び出す。
出てきたのは、『輝石融合』という名のトラップカード。テキストを読む限り、どうも『ジェムナイト』に関連するカードらしい。
39 : ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2011/11/21(月) 01:49:32.32 ID:SEEu+x2t0

「っていうか、貰ったカードの中に、同じのがあったような……」

<1枚目のカードをスキャンしてくれ!

「おわっ」

確認のため、ポケットからカードの束を取り出したところで、画面が切り替わった。
『カードの裏表を間違えるな』『四隅を合わせてスキャンしろ』。友人は、こんなことやってなかったような……?
まあ、とにかく何かスキャンしないと始まらない。えーと、プリズム加工がしてあるカードなら、何でもいいんだよな。

「よーっし、ドローだ!」

カードの束から、適当に1枚を選んで引き抜く。
さて、引いたカードは、っと。

っ『ジェムナイト・クリスタ』

「……」

……別のカードにしようかな、と思った。
いやいや、何を気にしてるんだ僕は。こんなのただのカードじゃないか。別に気にすることなんてないだろう。
そうわかってはいるのだが、どうにも気が引けてしまう。やっぱり、やめておこうか。
40 : ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2011/11/21(月) 01:50:00.36 ID:SEEu+x2t0

(うーん。でも、こいつ強いしなぁ……)

だが、ここでスキャンしたモンスターは、後のゲームで使用することができるらしい。
ステータスを見るかぎり、『クリスタ』はなかなか強力なモンスターだ。スキャンしておけば、ゲームが楽になるかもしれない。
そして何より。静止画ではなく、かっこよく動き回る『クリスタ』の姿が見たいと、僕は思う。

……たかがカード1枚に、何をここまで思い悩む必要がある!

「ええい、ままよ!」

決意を固めた僕は、大きく腕を振りかぶり、スキャンゾーンに『クリスタ』のカードを叩き付けた。
ピッ、ピッ、ピッ……
電子音と共に、スキャンゾーンが黄色く点滅する。
41 : ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2011/11/21(月) 01:50:28.05 ID:SEEu+x2t0


そして、いきなり画面がブラックアウトした。

42 : ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2011/11/21(月) 01:50:56.83 ID:SEEu+x2t0

「あ、あれ!?」

まず頭に浮かんだのは、電源が落ちたという可能性。
しかし、スキャンゾーンは未だに点滅を繰り返している。

「こ、壊れた? ちょっ、勘弁してよそんなの」

ヤバそうな雰囲気を感じ取った僕は、この場を去ろうと決断した。
カードだけは回収しておこうと、スキャンゾーンの中心の『クリスタ』に手を伸ばす。


バチィッ!!

「い……っ!!」

カードに触れた指が痺れる。
必死で後ろへ飛び退き、そして気付いた。
43 : ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2011/11/21(月) 01:51:25.89 ID:SEEu+x2t0


筐体にセットされた『クリスタ』のカードから、イラストが消滅している。
正方形の枠の中に、銀色の騎士の姿はない。ただ黒い渦が描かれているだけだ。


「な、なんだよ、これ……」

スキャンゾーンの点滅が、どんどん早くなっていく。
黄色い光が、だんだん眩しくなっていく。目を開けていられない。

「……!?」

その光の中に、僕は信じられないものを見た。
『クリスタ』のカードに描かれていた黒い渦が、イラストの枠をはみ出して、広がり始めている。
いや、はみ出すどころの話じゃない。
黒い渦は、カードそのものを飲み込んだ。

立体として、この世界に現れた。
44 : ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2011/11/21(月) 01:51:59.74 ID:SEEu+x2t0

「うわああああああああああ!?」

光がさらに強くなると同時に、僕は平衡感覚を失った。
強い風の中にいるような感覚。轟音が耳をつんざく。
なんだろう、これ。
吸い込まれていくような、落ちていくような、よくわからない気持ち悪さ。

「ぐへぇっ!」

突如、全身に衝撃が走った。硬い地面にいきなり投げ出されたような、そんな衝撃だ。
目を開けてみると、実際に僕は地面に転がっていた。

……土の上に。

「え? あれ? え?」

僕は今デパートにいたはずだ。
それがなぜ、ビニールの床じゃなくて、土の上にいる?
気持ち悪さの抜けない頭で考えながら、立ち上がる。
45 : ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2011/11/21(月) 01:52:32.89 ID:SEEu+x2t0

「何をしているんだ! 伏せろ!」

「ぉわぁっ!」

立ち上がったところに、何か硬いものがぶつかってきた。
アメフト選手のタックルを食らったかのような衝撃だ。再び地面に転がる僕。

直後、すぐ近くで爆発音がした。

「うわ…っ!?」

凄まじい轟音に、一瞬僕の世界から音が消えた。
砂埃が舞い上がり、砂利が巻き上げられる。
それらは何か金属のようなものにぶつかって、キンキンと乾いた音を立てた。
46 : ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2011/11/21(月) 01:53:10.52 ID:SEEu+x2t0

「え、な……」

必死に身を起こすと、さっきまで僕がいたあたりの地面が、ごっそり抉り取られていた。
状況が飲み込めず、呆然としている僕の前に、見覚えのある手が差し出される。

「大丈夫か!? 君が何者かは知らないが、ここは戦場だ。我々が援護する、早くここから逃げろ!」

「……」

全身が銀色に覆われた、フルフェイスの甲冑騎士。
肩から飛び出たクリスタル、水晶をあしらった輝く腕輪。

「ええええええええええええええええええ!?」

差し伸べられた手は、紛れもなく、『ジェムナイト・クリスタ』その人の手だった。
47 : ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2011/11/21(月) 01:54:17.86 ID:SEEu+x2t0
――本日ここまで――

クリスタビートにはついプリズムを投入してしまう私です
かっこいいですよねプリズムオーラ
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(九州) [sage]:2011/11/21(月) 13:25:34.75 ID:YYwkC+yAO


クリスタ殿はかっこいいでござるな
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/21(月) 23:51:28.39 ID:pHfEzEgDO
ヤリザ殿も見習うべきでござるな
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) :2011/11/22(火) 07:36:25.44 ID:G3ht62Ex0
そういうニサシ殿も人のことはいえないでござる
51 : ◆yHQSlFpATmIe [sage]:2011/11/24(木) 00:25:00.20 ID:TlQFpclv0
リアルで光の護封剣中なのでちょっと間が空きますごめんなさい
後ヤリザもニサシもケンカすんなよウホ
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]:2011/11/27(日) 13:07:18.41 ID:IOzsSowu0
デパートの名前に満足した。
53 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/27(火) 20:50:17.43 ID:98WaLOf6o
光の護封剣にサイクロン!!
54 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/28(水) 22:38:34.69 ID:cdDAhCoSo
ジェムナイトマスター・ダイヤはジェムナイトの遺志を継ぐ!プリズムオーラの効果をコピー
手札のジェムナイトを捨て光の護封剣を破壊する!
55 : ◆yHQSlFpATmIe :2011/12/31(土) 03:20:15.95 ID:AnqlAiQt0

全くもって意味がわからないが、とりあえず差し出された手を取って、立ち上がる。いや、立ち上がろうとした。

「こっちだ、ついて――危ない!」

立ち上がろうとしたところで、思いっきり突き飛ばされた。わけもわからず地面を転がる。
無茶苦茶に揺れる視界の中に、後ろへ飛び退くクリスタの姿を捉えた。
次の瞬間、目の前が真っ白になる。

「〜〜〜〜〜!!」

地面を伝わりダイレクトに耳へ入る轟音、巻き上げられる土煙。
咳き込みながら起き上がるものの、視界は薄黄色の煙に覆われて、ほとんど何も見えない。

オーケーわかった。わけのわからないことだらけだが、とりあえず状況だけは把握した。
――ここは、戦場だ!
56 : ◆yHQSlFpATmIe :2011/12/31(土) 03:20:41.23 ID:AnqlAiQt0

「――! ――!」

何か、叫び声のようなものが聞こえた……気がした。どうも耳の調子がおかしい。
しかし、それが僕に対する警告だということは、すぐにわかった。それはなぜか?
答えは実に簡単だ。濃密な土煙の中に、赤く光る斧を見たから!

「ヤ、バ、ぃぃぃぃぃ!」

必死でその場を飛び退くと、ちょうど僕がいたところに斧が炸裂した。真っ赤な軌跡がとても美しい。

「チッ、避けやがったか」

だんだん調子の戻ってきた耳が、かすれた低い声を拾う。
短い言葉に込められた感情は、とても明確なものだった。そう、とても――
57 : ◆yHQSlFpATmIe :2011/12/31(土) 03:21:13.27 ID:AnqlAiQt0

「さっさと……死にやがれ!」

とても明確な、殺意!
立ち込める土煙のせいで、襲撃者の姿ははっきりとは見えない。
だが、煙の中でも目立つ光の軌跡が、襲撃者が斧を振り上げたことを教えてくれる。

「オラァっ!」

「おわぁっ!」

上段から打ち下ろされる斧。体を捻ってどうにかかわす。
今度の一撃は地面を抉ることなく、そのまま下段からの切り上げに繋がった。
その第二撃を決死のバックステップで回避し、勢いを利用して数歩後ずさる。

「少しはやるじゃねえか」

少しずつ薄まってきた土煙に、襲撃者の姿が浮かび上がる。
両手に握られた2本の斧が目を引くが、よく見るとなかなかゴツゴツした肉体をお持ちのようだ。
58 : ◆yHQSlFpATmIe :2011/12/31(土) 03:21:34.67 ID:AnqlAiQt0

「……」

現代社会に生きる僕にしてみれば、『クリスタ』の着ている鎧は、かなり見慣れないものだ。
けど、その鎧の内側には、赤い血の通う人間がいる。僕はそう思っていた。

煙が、晴れて行く。

だが、目の前のこいつは違う。
別に比喩でも何でもない、本当にゴツゴツした、文字通り岩のような肉体を持ち。
真っ赤な斧を握るその両腕までもが、オレンジ色に赤熱している。

こいつは、どう考えても、人間ではない。
『モンスター』という言葉がふさわしい、怪物だ。

59 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/31(土) 03:22:34.97 ID:ZWZv6ziV0
よっしゃリアルタイム遭遇ktkr
>>1お帰り!
60 : ◆yHQSlFpATmIe [sage]:2011/12/31(土) 03:24:43.13 ID:AnqlAiQt0
>>53>>54
光の語風剣が破壊されたことで罠カード連鎖旋風を発動! 俺の書き溜めを2枚破壊する!

リチュアがインヴェルズ復活とか考えてたネタを公式でやられた畜生とか、
マスターダイヤとかジェムナイト主人公すぎワロスとか、
ところで今ヴァイロンは何やってんのとかいろいろ言いたいことはあるんですがとりあえず、
間空きすぎましたごめんなさい
そして空いた割に投下これだけですごめんなさい
年内にもう1回来れたら来ます
61 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/31(土) 04:14:03.61 ID:K4HjbOwao

来てくれると信じていたぜ
62 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2011/12/31(土) 08:40:34.07 ID:wSnVZPlDO
乙!熱い物語になりそうな予感!

良いお年をっ!
63 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2012/01/01(日) 08:07:25.51 ID:P/ZZYaaDO
あけおめ〜。

ちょくちょく来てくださると嬉しいですね。
64 :1/5 ◆yHQSlFpATmIe [sage]:2012/01/03(火) 00:32:38.80 ID:7ghiPKS40

さて、煙も晴れてきたわけだが、この感情をどう説明したものだろう。
現実的な例えを持ち出すなら、『夜の山道でクマと出会った』というのが一番近いかな?
まあ、僕は夜の山道でクマと出会った経験なんてないんだけど。
というか、もっと言うならば――

「オラァ!」

「うわぅっ」

ゴツい斧を振り回すモンスターと対峙した経験もない! 現在進行形で経験積んでるところだよ!
ぶっとい腕から繰り出される斬撃は、恐ろしい音を立てて僕に迫り来る。
65 :2/5 ◆yHQSlFpATmIe [sage]:2012/01/03(火) 00:33:10.19 ID:7ghiPKS40

「さっ、」

右の打ち下ろし。横っ飛びで回避。

「さと、」

左から横薙ぎ。バックステップで回避。

「死に――」

右手袈裟切り。左へローリング。

「――やがれぇっ!」

両手の打ち下ろし。ローリングの勢いを残したまま、左へ転がって回避ぃっ!
斧が深々と地面に突き刺さる。僕は転がりながら立ち上がった。
66 :3/5 ◆yHQSlFpATmIe [sage]:2012/01/03(火) 00:33:39.34 ID:7ghiPKS40

「クソがっ、鬱陶しい野郎だぜ」

力任せに斧を引き抜き、悪態を吐くモンスター。いまいち表情が読めない奴だ。
額から吹き出る汗を拭って、僕は大きく息を吐く。
真っ赤な見た目から想像はできたことだが、あの斧はヤバい。すげーヤバい。なにがヤバいって?

「ラアアアアアアアア!」

「ぐ、うううっ!」

斧の一振り一振りに、恐ろしいほどの熱気がついて来ることだよ!
力任せな横薙ぎ自体は、横に飛べば回避できる。
だが、後に残るこの凄まじい熱! 

「ハァ、ハァ、ハァ……」

この熱は、確実に僕の体力を奪っている。
何度拭っても吹き出る汗で、前髪が額に張り付く。
67 :4/5 ◆yHQSlFpATmIe [sage]:2012/01/03(火) 00:34:07.95 ID:7ghiPKS40

「フン!」

当然ながら、この斧に一度でも当たれば、僕は死ぬ。

「ハッ!」

リアルに迫ってくる死の恐怖に、ヘソの下が嫌にざわつく。

「オラァッ!」

熱気から来る、生理現象としての汗。そして、恐怖から来る、冷や汗。
2種類の汗は、必要以上に、僕の体力を奪う。

「オオオオオオオオオオオオッ!!」

底冷えのする雄たけびを上げて、モンスターが斧を振り上げた。
かわさなくてはと思ったその時。
68 :5/5 ◆yHQSlFpATmIe [sage]:2012/01/03(火) 00:34:37.57 ID:7ghiPKS40

「――!」

額に溜まっていた汗が零れ落ち、そのまま右目に入った。とっさに目を瞑ってしまう。
踏み出した足が、一瞬止まる。

あ、ヤバい。

天高く振り上げた斧。それを振り下ろすのに、そんな大層な時間はいらない。
『一瞬』程度の時間があれば、余裕でお釣りが帰ってくる。

悲鳴を上げる暇すらない。
死の直前に思ったことは、『斧にぶった切られるのって、どんな感覚なんだろう』というものだった。
……あまりにも。あまりにも、寂しすぎる。
69 : ◆yHQSlFpATmIe [sage]:2012/01/03(火) 00:35:07.19 ID:7ghiPKS40
風呂入ったらもう1回来ます
70 :1/8 ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2012/01/03(火) 02:49:56.99 ID:7ghiPKS40

けど、僕がその感覚を知ることはなかった。

「……!?」

突然、足元の地面が盛り上がった。
謎の出来事に驚く暇もなく――

「ゲハァッ!」

直後に地中から飛び出してきた何かが、猛スピードでモンスターに突っ込んでいった。
たっぷりスピードの乗ったタックルを受けて、うめき声を上げて後ろにぶっ飛ぶモンスター。

「……えっ? いや、あのー……えっ?」

とりあえず助かったらしいが、なにがなにやら全くわからない。呆然と立ち尽くすしかない僕。
そんな僕の足元が、いきなり盛り上がった。

「おぅわっ!?」

いきなりの不意打ちに、僕は必死でその場を飛び退く。
しかし焦りすぎて足がもつれたのか、着地に失敗し、その場で盛大にすっ転んだ。

「ぐ、いってー……」
71 :2/8 ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2012/01/03(火) 02:50:56.34 ID:7ghiPKS40

地面に打ち付けた尻をさすりながら、体を起こす。
そこで、地面からぴょこんと顔を出している、オレンジ色の生き物と目が合った。

「……」

「……」

「……」

しばらくの間、無言の睨み合いが続いた。
とりあえず、まず思ったこと。

「……もぐら?」

長く鋭い爪に、細長い鼻。
加えて、上半身だけを地中から出しているそのポーズは、どこかモグラを髣髴とさせる。

「えーと、君が助けてくれたのかな」

「……」

こくり、と頷く謎のモグラ。割とかわいい。
どうやら、さっき飛び出してきたのも、このモグラで合っているようだ。
つまり、このモグラは僕の命の恩人に当たるわけか。いや、恩獣と言うべきか?
72 :3/8 ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2012/01/03(火) 02:51:27.27 ID:7ghiPKS40

「えーっと、とりあえず……ありがとう」

軽く頭を下げると、モグラはキュイキュイ鳴きながら首を横に振った。
こちらの言葉は理解しているようだが、言語を発することはできないようだ。
とりあえず、今のリアクションは『いいってことよ』というような意味として受け取っておく。

「う、ぐ……くそ、やってくれるじゃねえか」

低いかすれた声を聞いて、僕は現状を再認識する。そうだ、動物とふれあってる場合じゃない。
斧モンスターは既に立ち上がっていた。どうやらモグラの一撃は大したダメージにはなっていないらしい。

「いい加減、頭に来たぜぇ?」

再び斧を振り上げるモンスター。
しかし、さっきモグラが奴をぶっ飛ばしてくれたおかげで、今僕と奴の間にはいくらか距離が開いている。
ここは斧の射程外、恐れることは――
73 :4/8 ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2012/01/03(火) 02:51:58.84 ID:7ghiPKS40

「頭に来たからよぉー……死んじまいな!」

振り上げた斧を、モンスターはそのままぶん投げてきた。
……投げたァ!? ちょっと待て、そんなの想定してないぞ! 
斧の射程外とは言ったがそれはあくまで振り回しても届かないってだけの話であって投げられたら回避するのは厳しいっていうかもう無理――

――飛んできた斧にぶった切られるのって、どんな感覚なんだろう?
僕は再び死を覚悟した。


……けど、今回も、僕がその感覚を知ることはなかった。

「なっ……はぁ!?」

目の前の地面から突如巨大な壁が現れ、飛んできた斧を弾き飛ばしたからだ。
向こうが見えるほど透き通った、巨大な水晶のような壁。

「大丈夫か!?」

謎の超常現象を目の前にして呆然としている僕。
そんな僕に手を差し伸べるのは、やっぱり――
74 :5/8 ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2012/01/03(火) 02:52:34.41 ID:7ghiPKS40

「助けが遅れてすまない、敵に囲まれてしまってな……」

――『ジェムナイト・クリスタ』、その人だ。
つい数分前に会ったばかりのはずなのだが、あまりにも密度の濃い数分間だったせいか、すごく久しぶりに会ったような気がする。

「水晶……へっ、『クリスタ』か。まさか、いきなり上級戦士様と出会えるとはなぁ」

壁の向こうから、モンスターの声が聞こえてくる。
どこか悦びを含んだその声に、クリスタが答える。

「私を知っているか。いかにも、我が名はクリスタ。貴様の名は?」
     ウォリアー
「ただの『戦士』だよ。名乗るほどの名前なんざ、持ち合わせちゃいねえ」

「そうか」

淡々としたやり取り。

「ラヴァルの『戦士』よ。我々ジェムナイトは争いを好まない。何度もそう言ったはずだ」

「ああそうだな、何回も聞いたさ」

水晶の壁を挟んで交わされる、2人の会話。
とても淡々としたものなのに、そこには確かな緊張感が漂っている。
75 :6/8 ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2012/01/03(火) 02:53:05.51 ID:7ghiPKS40

「わかっているのなら、なぜこのような真似をする?」

「気に食わねえ奴をぶっ潰すのに、いちいち相手の機嫌を伺う必要があるのかい?」

クリスタの問いに、『戦士』は悪びれもせず答えた。

「……そうか。わかった」

そう呟くと、クリスタはちらりと僕のほうを見た。

(下がっていてくれ)

小声だったが、確かな迫力を感じる一言だった。
とりあえず、言われた通りに数歩下がる。

「ラヴァルの『戦士』よ。我々は今まで、何度不当な侵略を受けようと、専守防衛の姿勢を貫いてきた」

「腑抜けの腰抜けを貫いてきた、って言ったほうがいいと思うぜ」

「しかし、だ」

『戦士』の軽口を一蹴し、クリスタは話を続ける。
76 :7/8 ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2012/01/03(火) 02:53:37.43 ID:7ghiPKS40

「もし、貴様らラヴァルの者たちが」

クリスタの右手が、水晶の壁に触れた。

「力を持たぬ者までも、未来を担う子供までも、その手に掛けようと言うのなら!」

その瞬間、巨大な壁はバラバラに砕け散った。
舞い散る水晶の破片の中で、クリスタと『戦士』が対峙する。

「その時は――」

クリスタが宙に手をかざすと、その手に吸い寄せられるかのように、砕けた破片が集まっていく。
そして。
鎧の胸部に嵌め込まれた、丸いクリスタルが光ると同時に。
集まった破片は、水晶の剣を形作った。

「――我々は、躊躇うことなく剣を取ろう」

透き通る剣の切っ先を、『戦士』に突きつけ、そう宣言した。
77 :8/8 ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2012/01/03(火) 02:54:11.94 ID:7ghiPKS40

「へっ。そう来なくっちゃあ困るぜ」

『戦士』は微笑と共に膝を折り、さっき投げた斧を拾い上げた。
2本の斧を交差させ、クリスタに向ける。

「さて、と。じゃあ、せいぜい派手に行こうぜ、上級戦士さんよぉ?」

――全面戦争の始まりだ。

そう呟いて、『戦士』は前に出た。
78 : ◆yHQSlFpATmIe [saga]:2012/01/03(火) 02:56:11.79 ID:7ghiPKS40
――今日ここまで――

どうでもいいんですが、ジェムナイトの水族3人ってあれ男なんでしょうか女なんでしょうか。
アイオーラとアメジスはなんというかスカートっぽいの履いてますし
サフィアもなんか体つきとかが女性っぽいような……
と、キャラ付けにいろいろ悩んでいるのですがどうなんでしょう
79 :以下、あけまして [sage]:2012/01/03(火) 03:25:18.60 ID:K7TOLs1Vo
アクアマリナ「」
80 :以下、あけまして [sage]:2012/01/03(火) 03:55:27.44 ID:90rybmpho

その辺は自由に決めていいんでない?
女っぽいと思ったならそれでいいし

俺には全員男にしか見えなかったけど…
81 :以下、あけまして [sage]:2012/01/03(火) 08:37:36.61 ID:ke0Om4gDO
女性も居ないと寂しいよね?
82 :以下、あけまして [sage]:2012/01/04(水) 00:40:58.64 ID:sAPZKx7Eo
サフィアは女の様な気もするけど融合体がガチムチすぎて…
他の2体は男だと思う 西洋の昔の鎧だとスカート普通にあるから
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/06(金) 20:38:00.86 ID:+d0d5wBdo
ラズリー以外は男にしか
84 : ◆yHQSlFpATmIe [sage]:2012/02/06(月) 23:01:55.25 ID:is2J0AXL0
まずい、サボり癖がついてしまっている……
そのうち投下はします、絶対します
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/12(日) 20:17:57.82 ID:0huuHeBxo
>>1を対象にデモンズチェーン発動!!
サボり癖を無効化する!!!
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