紅莉栖「岡部、IS学園に転入して」　Ⅲ

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紅莉栖「岡部、IS学園に転入して」　Ⅲ - SS速報VIP 過去ログ倉庫

1 ： ◆H7NlgNe7hg ：2011/11/15(火) 17:19:01.75 ID:gOZJgFGao

Steins;GateとIS〈インフィニット・ストラトス〉のクロスオーバーなＳＳです。

Steins;GateよりもIS成分の方が強いと思います。

時間軸はシュタゲ→アニメ終了後。 IS→原作７巻まで。

自身、どちらも原作アニメゲーム視聴読了プレイ済みです。

３スレ目になります。

↓前々スレ↓
紅莉栖「岡部、IS学園に転入して」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1316162389/

↓前スレ↓
紅莉栖「岡部、IS学園に転入して」　Ⅱ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1319196690/

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　“だいじ”

　世界線、時間軸等難しい作品ですので、矛盾等あるかと思いますがお手柔らかにお願いします。
　特に“IS”はアニメと原作を読んだだけでは未だに解明されていない機体の謎や、細かく描写されていないシステム等があります。
　ので、独自解釈が入ります。

　一部、グロテスクな表現。キャラクター死亡等の表現が含まれる可能性があります。
　許容出来ない方は、残念ですが別の世界線でお会いしたいと思います。

　　　　　　　　　　　　　　 ,,　,,
　　　　　　　　　　　　ヽ(*ﾟдﾟ)ノ　ｶｲﾊﾞｰ!

1.5 ：荒巻＠管理人★(お知らせ) [Twitter]： ID:???

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捨て猫＠ 2025/04/09(水) 18:03:41.50 ID:qlT5qs1WO
　　http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1744189421/

【シャニマス】ベジータ「ア、アルストロメリアだと………！」【ドラゴンボール】＠ 2025/04/08(火) 21:21:00.94 ID:ch+GxRTZo
　　http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1744114860/

どけ、馬鹿ども＠ 2025/04/08(火) 17:50:19.05 ID:ZpOcDfR4O
　　http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1744102218/

=＾・ω・＾= ぬこ神社 Part127《ぬこみくじ・猫育成ゲーム》＠ 2025/04/08(火) 15:05:35.64 ID:ORnLfiWxO
　　http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1744092335/

”巨大”とは感動である＠ 2025/04/08(火) 01:19:24.07 ID:lXIr96Fs0
　　http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1744042763/

イキスギ龍戦隊　トコロテンリュウチャーン＠ 2025/04/07(月) 23:14:15.12 ID:Wirs8NLuo
　　http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1744035254/

ブラックホールを利用したスイングバイですか＠ 2025/04/07(月) 22:24:09.84 ID:cNeF3kS2o
　　http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1744032249/

>>2->>1000←こいつらバカ＠ 2025/04/07(月) 17:56:14.63 ID:EPGMr7I0O
　　http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1744016174/

2 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/15(火) 17:23:28.45 ID:gOZJgFGao

>>1です。

今スレもどうぞよろしくお願いします。
３スレ突入とか未知の領域ですが、完走目指して書き進めます。

3 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/15(火) 17:44:46.85 ID:gOZJgFGao

主役：岡部倫太郎

http://kie.nu/.1SN
http://kie.nu/.1SO
http://kie.nu/.1SP

搭乗IS：石鍵（いしかぎ）イメージ

http://kie.nu/.1SQ
http://kie.nu/.1SR

助手：牧瀬紅莉栖

http://kie.nu/.1SS

頂き物の絵です。
イメージしやすいかと思います。

4 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/15(火) 17:45:36.19 ID:gOZJgFGao

おわーり。

投稿出来るようでしたら、また今夜来ます。
ありがとうございました。

5 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/15(火) 18:21:38.14 ID:NxrQVWqdo

乙
舞ってる

6 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/15(火) 18:42:21.82 ID:oak/rC2DO

スレ立て乙しぃ。
リボルテックヤマグチのジェフティ眺めながら待ってる。

7 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]：2011/11/15(火) 19:20:24.39 ID:cHBQETgbo

スレタテ乙

8 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) [sage]：2011/11/15(火) 20:27:24.12 ID:V3kZeYilo

乙乙。
２スレ目からスレを見失ってて、ようやく発見したと思ったらもう三スレ目だしｗｗ
一気読みしたけど面白い！今後はリアタイで見ようっと。

9 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/15(火) 21:20:02.19 ID:gOZJgFGao

>>１です。

新スレ１発目を投稿したいと思います。

10 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/15(火) 21:20:33.04 ID:gOZJgFGao

往きます。

11 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/15(火) 21:21:50.43 ID:gOZJgFGao

前スレ　>>920　　続き。

─────────────────────

　──牧瀬紅莉栖さんに行って貰いましょう。

─────────────────────
　

12 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/15(火) 21:22:17.03 ID:gOZJgFGao

　──コンコン。

　ノック音の後、すかさず扉が開く。
　化粧ボックスを持った牧瀬紅莉栖が男子更衣室にずかずかと入り込んできた。

岡部「助手……ノックをしたのなら普通は返事を待つかワンテンポ待つか位するだろう」

紅莉栖「もう着替えは殆ど終わってるって、虚さんに聞いたから入ってきたのよ」

一夏「えーっと、化粧をしなきゃいけないんだよな？」

紅莉栖「そ。さすがに自分じゃ出来ないでしょ？」

一夏「あぁ。頼むよ」

岡部「ほーーぅ。助手ぅ、貴様が化粧の心得を持っているとは初耳だぞ」

紅莉栖「女子なら誰でも出来るっつーの。ほら、座りなさいよ。まずはアンタからね」

13 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/15(火) 21:22:43.90 ID:gOZJgFGao

　そう言って、椅子を引き寄せる紅莉栖。
　岡部を対面に座らせ、岡部の顔を屈み見る。

紅莉栖「……」

岡部「なんだ、どうした」

紅莉栖「なっ、なんでもない！　カツラ、取ってよ……」

岡部「む、そうか。邪魔になるな」

紅莉栖「（何時もの岡部に戻った……）」

　岡部の格好はスーツのようなものだった。
　そのせいか、普段よりもしっかりとした雰囲気が流れている。

　それもこれも、衣装の出来が良すぎる事に起因していた。

14 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/15(火) 21:23:18.45 ID:gOZJgFGao

紅莉栖「（くそっ、岡部程度に……）」

岡部「俺はどうしたら良いんだ？」

紅莉栖「へぁ！？　えーっと……まず、アイラインを引くから──」

　あたふたと、化粧ボックスからペンシルタイプのアイライナーを取り出す。
　キュッキュと、数ミリだけ芯を出し岡部の顔に視線を戻した。

紅莉栖「髭……ちゃんと剃ってるのね」

岡部「あぁ……Ms.シャーロックが煩くてな……毎度会うたびに髭は不潔だから剃っておけと騒ぐのだ」

紅莉栖「へー」

　ペンシルを握る指に、何故か力がこもった。

15 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/15(火) 21:23:45.97 ID:gOZJgFGao

紅莉栖「（それにしても……）」

　今の紅莉栖にとって、岡部の顔をここまで至近距離で見たのは初めての経験だった。
　別世界戦の記憶が一瞬だけ、リフレインする。

紅莉栖「（えっ、ちょっ……うそっ、えっ！？）」

岡部「？」

　紅莉栖の動揺に顔をしかめる岡部。
　端から見ると、紅莉栖の表情はあからさまにおかしかった。

岡部「どうか──したのか？」

紅莉栖「いいいいい、いや何でも無いわよ！　まず、ラインを引くから……えーっとこの場合……目は開いたままね」

岡部「解った」

16 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/15(火) 21:24:13.74 ID:gOZJgFGao

　インライン。まつげの生え際に、ラインを乗せていく。
　その手は少しだけ震えていた。

岡部「おおお、おい……助手、手が震えてないか」

紅莉栖「うっさい、黙れ。眼球に突き刺さるわよ……」

一夏「……」

　やり取りを見て戦慄する一夏。
　次は自分がアレをやられるのかと、身震いが起きる。

紅莉栖「（うー……なに恥しがってんだろ、私。落ち着け、落ち着け……）」

　一切の煩悩を振り払い、今はメイクに集中する。
　でなければ岡部の視力はアイライナーによって奪われることになるだろう。

17 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/15(火) 21:24:41.77 ID:gOZJgFGao

岡部「（むう……）」

　眼前に迫る紅莉栖の顔。
　至近距離で行われるそれは、岡部にとっても修行であった。

　微かに香る、紅莉栖の匂いが岡部の鼻腔をくすぐる。
　決して香水では出せない、石鹸と女子の匂いであった。

紅莉栖「（よし、集中集中……）」

　岡部のまぶたを上に引き上げ、ギリギリのラインに墨を引く。
　力加減はなるべく弱く。

　だがしっかりと、色を乗せる。
　舞台にあがる場合は濃いめのメイクでなければ、顔の印象が薄くなってしまう。

18 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/15(火) 21:25:12.59 ID:gOZJgFGao

岡部「目が乾くな、コレは……」

紅莉栖「我慢なさい……」

　しっかりと、両目にラインを入れた後はファンデーション。
　ボックスから下地クリームを手に取り、岡部の顔に点々と付けそれを引き伸ばす。

岡部「うわっぷ！　おい、もっと優しく出来ないのか」

紅莉栖「はいはい、もう時間無いんだから。あっ、一夏はそこにある化粧水を顔に付けて、肌を慣らして置いてね」

一夏「おう、解った」

岡部「化粧水……？　おい、俺はそんなの付けてないぞ」

紅莉栖｢そうね、忘れちゃった」

岡部「……」

紅莉栖「アンタも一夏も眉毛しっかりしてるから、書く必要無いし……目のクマも無いからコンシーラーも必要無いわね」

19 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/15(火) 21:25:48.36 ID:gOZJgFGao

　ぶつぶつと手順を呟く紅莉栖。
　自身が岡部の顔を作っている間に、一夏へと指示を続ける。

紅莉栖「化粧水が終わったら、この下地クリームを顔に塗っておいてね。薄く引き延ばす感じで」

一夏「了解」

紅莉栖「岡部はあと、ファンデーションだけだから」

岡部「なるべく早く頼む」

紅莉栖「すぐ終わるわよ。衣装に付くとまずいから、タオルを首から下に巻くわよっと」

　ぐぃっと、岡部の首にタオルを巻きつける。
　控えめな胸が岡部の頬に当った。

20 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/15(火) 21:26:12.43 ID:gOZJgFGao

岡部「ぐっ……！」

紅莉栖「ん？　どした？」

岡部「なっ、なんでもない！　早くしてくれ」

紅莉栖「？」

　自分がした行為に気付かなかった紅莉栖は首を傾げた。

紅莉栖「まぁ良いわ。塗るわよ」

　スポンジにファンデーションを染み込ませ、馴染ませる。
　それを少しずつ岡部の顔へと塗布する。

　３分としない内に、岡部の素肌は色白く変質していった。

21 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/15(火) 21:26:43.76 ID:gOZJgFGao

岡部「なんだか顔がむずむずするんだが……」

紅莉栖「そんなものよ。良かったわね、女子の気持ちが体験出来て」

岡部「ぐぬぬ……」

紅莉栖「で、カツラがあるのか。どれ、それもセットしましょうか」

　岡部が外したカツラを手に取る紅莉栖。
　中部分から持ち上げ、手櫛で軽く髪を整える。

紅莉栖「岡部は短髪だから、このまま被っても問題無いかな……はい、被せるわよー」

岡部「うむ……」

紅莉栖「ピンで留めて……よしおｋ。スプレーで形整えて……よっし、こっち向い──」

22 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/15(火) 21:27:11.13 ID:gOZJgFGao

岡部「む？」

紅莉栖「……」

　固まる紅莉栖。
　不意打ちだった。

　自らの手で作り出した、その男の顔に見とれてしまった。

岡部「助手？　クリスティーーーッナ？　おい、セレセブ。どうしたのだ」

紅莉栖「あっ……いっ、いや。何でもないわよ」

　自分の動揺を自覚し、咄嗟に背を向ける。
　高鳴る心臓の音に驚いた。

23 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/15(火) 21:27:39.05 ID:gOZJgFGao

紅莉栖「（変身ってレベルじゃねーぞ！　あぁでも岡部って、元々顔立ちは良い方だからメイクしたらそうなるのも無理ないっていうか……）」

　どぎまぎと頭の中で言い訳を繰り広げる。
　見とれてしまった自分が悔しかった。

一夏「おーい、紅莉栖。下地？　ってやつまでは出来たんだけど」

紅莉栖「おっ、OK.　すぐに一夏に取り掛かるわね。ほら、岡部そこどいて。一夏が座るから」

岡部「ワンサマー、目には気をつけろよ……」

一夏「お、おう。あっ、付け歯はそこにあるからな。簡易接着剤で付けるんだと」

岡部「了解した」

　交代で席に座る一夏。
　先ほどの光景をみて、緊張していた。

24 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/15(火) 21:28:11.77 ID:gOZJgFGao

紅莉栖「まずは、ファンデーションから塗るからね」

一夏「あれ？　最初は目じゃないのか？」

紅莉栖「あぁ、岡部のは気にしないで。順番滅茶苦茶だったから」

岡部「……」

紅莉栖「はい、目を瞑ってね」

一夏「ん」

　丁寧に一夏の顔をファンデーションで覆っていく。
　岡部の使用した色より、濃いめのソレだった。

紅莉栖「次は、アイメイク。ライン入れるから目を開けてね」

一夏「お、おう」

25 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/15(火) 21:28:37.17 ID:gOZJgFGao

　緊張が増す。
　ついに訪れた、この瞬間。

　しかし、意外にも紅莉栖の手は滑らかに一夏の目を強調していった。

一夏「（あれ……？）」

紅莉栖「（うーん、一夏は可愛い顔してるわよね。まだ高校１年生だからかしら）」

　岡部の時とは異なり、あっと言う間に処置が完遂する。

26 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/15(火) 21:29:05.32 ID:gOZJgFGao

一夏「おー……肌の色と、目の感じが違うだけで結構変わるんだなぁ」

紅莉栖「そうね。一夏も女子の化粧術には気をつけないよ、本当に変身するんだから」

一夏「千冬姉は滅多にしないから、化粧って言う文化を良く知らないんだよなぁ」

紅莉栖「化粧無しであの美貌か……」

一夏「でも、紅莉栖だってあんまりしてるようには見えないけどな」

紅莉栖「私？　は、研究で忙しいからほとんどノーメイク……って言わせんな！」

一夏「はははっ、充分可愛いって」

27 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/15(火) 21:29:34.19 ID:gOZJgFGao

　軽口を叩き合う２人に対して、岡部は等身大の鏡の前でなにやら台詞を吐きポーズを取っていた。
　とても、痛々しい。

岡部「これが──“仮装”……プァァフェクト（完全）だ、じょしゅぅう！！」

　想像していたよりも、遥かに出来の良いコスプレに仕上がり完全に舞い上がっていた岡部。
　鏡から振り返り痛々しい台詞を吐き出す。

紅莉栖「（くそっ、罵倒する台詞が思いつかないとは……）」

一夏「おおお……かっこ良いな、それ！」

岡部「フゥウハハハハハ！！　実に良い、最高にハイと言うやつだな、んん？　どうした助手よ」

紅莉栖「そのハイテンションは気持ち悪いから止めておきなさい。後で写真に残ることを考えて生きるべきよ」

岡部「ぬ……」

28 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/15(火) 21:30:07.49 ID:gOZJgFGao

　写真。
　この一言で我に帰る岡部。

一夏「いや、でもすげぇ似合ってるよ凶真は」

岡部「そ……そうか、ワンサマーも良いと思うぞ。ワイルドで」

一夏「素肌部分が多くて、ちょっと恥しいんだけどな……」

　──コンコン。

　微妙になった空気の中で、ノックの音が響いた。
　ワンテンポ取ってから扉が開く。

29 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/15(火) 21:31:05.90 ID:gOZJgFGao

虚「準──備……」

　飛び込んでくる光景。
　先ほどよりも、いっそう外見に磨きがかかった男子２人が飛び込んでくる。

虚「んんっ、失礼しました。準備は整いましたか？」

紅莉栖「えぇ。たった今終わったところよ」

虚「了解しました。それではただ今より開催されるので、名前が呼ばれたらステージ上へ出てきて下さい。
　　演出は全て、此方でしてありますので」

　用件だけ済ませると、虚は直ぐに扉を閉め実況席に居る薫子の元へと足を運んだ。
　先ほどの情景が脳裏にこびり付き、胸が高鳴る。

30 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/15(火) 21:31:44.30 ID:gOZJgFGao

虚「（お嬢様……あの２人に勝つのは少々難問かと思います……）」

　楯無の仮装。
　そしてそれに伴なう演出を理解した上で、１位を確信していた虚だったがそうはいかなくなった。

　岡部倫太郎の出来が異常である。
　それもそのはずで、岡部の着ている衣装は演劇部の既存の物やリメイクした物ではない。

　椎名まゆりが以前から岡部に着せようと作っていた、フルカスタム衣装。
　この数日間、学校で自室でIS学園で手心を加えたそれは完全にプロの仕事であり、そのクオリティは＠ちゃんねらーも素直に認めるような出来栄えである。

　まゆりは確信していた。

まゆり「絶対に、オカリンが１位になるのです！」

　──IS学園　はろ☆いん　仮装大会　開催──
　
　

31 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/15(火) 21:32:39.96 ID:gOZJgFGao

おわーり。

前スレアンケ共々ありがとうございました。
３スレ目になり、マンネリ化等あるかもしれませんが完結目指して書き続けていきます。

32 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) ：2011/11/15(火) 21:35:13.34 ID:XVPGWTya0

お疲れ様！！
次回も期待して、拝んでる

33 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/15(火) 21:40:02.88 ID:+3V3FVQSO

乙。
早く…早く続きをくれ…。

34 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/15(火) 21:44:46.05 ID:Ff8CC0XT0

おつです
>>3で晒されている石鍵が割と恥ずかしいので前スレが埋まる前に投下するつもりでしたが間に合いませんでした。

http://wktk.vip2ch.com/dl.php?f=vipper25878.jpg

35 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [sage]：2011/11/15(火) 21:52:23.47 ID:WiQ81Pbao

なんかジョジョ立ちっぽいぜ

36 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(高知県) ：2011/11/15(火) 21:54:49.31 ID:ugm5IfSeo

乙！
やはり、オカリンのだけは衣装が別格だったかｗｗｗｗ
まゆしぃ☆さすがだなｗｗｗｗ

37 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(高知県) [sage]：2011/11/15(火) 21:56:02.08 ID:ugm5IfSeo

下げ忘れた。すまん
>>34も乙なのだぜ

38 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/15(火) 21:56:39.70 ID:NKcNFeFI0

乙！
流石まゆりだな！いい仕事してくれるぜ！
さぁて、どうなるのか楽しみに続き待ってる。

39 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東海・関東) [sage]：2011/11/15(火) 22:04:07.55 ID:q+2YXR/AO

>>1乙！

>>34、スレ埋めゴメン！

40 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/15(火) 22:45:06.79 ID:zxRWbrUSO

なんという生殺し！
続きが気になるぅぅぅぅ

乙！

41 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/15(火) 22:56:07.90 ID:5h3hJYgko

この日だけで、いったいどれだけの女が、オカリン派になるのだろうか

オカリンの衣装は吸血鬼か？

42 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/15(火) 23:01:53.25 ID:QjGqP0vIO

前スレから追ってやっと追いついた。
石鍵がぞんがいかっこよすぎて欲しくなった。

43 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/15(火) 23:07:50.65 ID:8jVx60ZQo

乙

44 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]：2011/11/15(火) 23:13:01.85 ID:15SuMMOz0

>>1、>>34共に乙！

たしかにJOJOだがそれと同時に、”私のおいなりさん”を食べさせる漫画も思い出してしまった。なんか押し付けるように見えて･･････。
すまない、気分を害しただろ？お詫びといってはなんだが、IBN5100をプレゼントするよ。なにちょっくら1975年にタイムトラベルするだけさ。

45 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/15(火) 23:21:25.34 ID:9zbcL1kc0

乙

46 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/16(水) 00:17:01.51 ID:cIgGs12oo

>>34
前のもかっこ良かったがこれはヤバい
二人とも乙

47 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage]：2011/11/16(水) 00:26:11.10 ID:vYIYqYnW0

３スレ目乙
このSS最高やー

48 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/16(水) 10:33:16.82 ID:65D/bY3IO

しまった、前スレの最後が見れないorz

49 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/16(水) 14:19:05.25 ID:ppO1qDTIO

>>34
これ、中身オカリンって知らなかったら対戦相手女の子泣くんじゃないか？

50 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(大阪府) [sage]：2011/11/16(水) 18:07:46.77 ID:1WXOMYhh0

is学園は軍人養成学校なのに
これぐらいで泣き出したりしないだろう

51 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) ：2011/11/16(水) 18:45:23.96 ID:nXCPSGXIO

日常パートも面白いのー！
次も期待！！

52 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/16(水) 19:09:13.24 ID:cIgGs12oo

そもそも専用機は所持者が限られるし、顔が見えないのはオカリンだけな訳で
とりあえず何が言いたいかって言うとageんな

53 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/16(水) 19:48:04.00 ID:JkBeHI+DO

岡部はまゆりの『特別』なだけに衣装も『特別』なんだな
これは2828するなぁ

54 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(宮崎県) [sage]：2011/11/16(水) 19:49:34.02 ID:RQWdxhZKo

女子高生に追いかけられる岡部を見てやきもきする助手か
悪くない

55 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(栃木県) [sage]：2011/11/16(水) 21:30:07.57 ID:PfRLchZfo

まゆりってメイクとかしなさそう
マユ毛的に考えて

56 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/16(水) 22:19:28.02 ID:ZoFofjSDO

>>55
逆に考えるんだ。
｢メイクする必要がないほど、顔立ちが整っている｣と。

57 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage]：2011/11/17(木) 00:13:37.94 ID:bNktrd730

ギアスのゼロの衣装をベースに吸血鬼チックに改造したのかな？

58 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/17(木) 00:30:17.01 ID:pT9E0yjSO

今日はこないのかな？
随分と焦らしてくれる

59 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/17(木) 00:43:43.02 ID:Wh/CDp6fP

セリフ的にアーカードかと思ったｗｗ
今日も楽しみに待機

60 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage]：2011/11/17(木) 00:55:39.43 ID:bNktrd730

なるほどｗｗｗｗ吸血鬼ったらアーカードか
それはあるな

61 ： ◆H7NlgNe7hg [sage]：2011/11/17(木) 18:15:09.84 ID:Lw7llQPEo

>>1です。

家空ける用事だとか病院だとかで、PCの前に居れる時間が少なく更新出来ませんでした。
今夜は出来るように頑張りますですはい。

62 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(愛知県) [sage]：2011/11/17(木) 18:41:55.04 ID:Hta9C4Cqo

乙。
調子悪い時はお休みしてもいいんだぜ
無理しなさんな～

63 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/17(木) 22:34:17.67 ID:Lw7llQPEo

往きます。

64 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/17(木) 22:34:55.05 ID:Lw7llQPEo

>>30　　続き。

　─女性控え室─

千冬「カラーコンタクト……？」

楯無「よいしょっと……あっ、歩きにくい……」

シャル「何か僕だけ普通過ぎて逆に恥しいかも……」

ラウラ「和服と言うのは良いものだな。尻尾が邪魔だが」

セシリア「なぜ、わたくし達だけ……」

鈴音「……お国の色が出てるのよ」

箒「ほう、杖を持つのか」

簪「まっ、前が……見え、ない……」

65 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/17(木) 22:35:21.60 ID:Lw7llQPEo

　最後の追い込み。
　各自メイクを終了し、小道具を装備する。

　衣装はまゆり等が用意したが、小道具類は全て演劇部が用意した。
　演劇部には特殊メイクに特化した者や、衣装道具に青春の全てをつぎ込もうとしている変わり者が居る。

　IS学園の生徒として、それはどうかと首を傾げたくはなるがそのお陰で随分と本格的な仮装を用意することが出来た。

虚「準備は整ってますね？　演出はすべてこちらで行います。
　　皆さんは思い思いに……立っているだけでも結構ですし、アクション等を行っても構いません。本日はISの起動も許可されております」

　既に会場の明かりは落され、暗転している。
　黛薫子が自慢のトークで会場を沸かせていた。

66 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/17(木) 22:35:55.04 ID:Lw7llQPEo

薫子「はーいはいはい！　やって来ましたハロウィン！　仮装イベントの時間です！！」

本音「ぐぅ」

薫子「もう……起きないんだから……実況は私、新聞部副部長の“黛薫子”がお届けします！」

　わーわー、と黄色い声援が上がる。
　千冬や一夏。楯無の名前が大声で叫ばれる。

　やはり生徒達のメインはこの３人に絞られるようだった。

67 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/17(木) 22:36:27.67 ID:Lw7llQPEo

薫子「それではルールをご説明いたします！」

　舞台の後ろには超大型の空中投影ディスプレイを設置。

　仮装者の姿を大画面に映しだす。

　そして生徒個人のデバイスからも、仮装者の顔が見れるように映像をリンク。

　大画面で見るのも、自分のデバイスから間近に見るのもご自由。

　最大１０ポイントの点数を毎回審査。

　結果は最後に上位３名のみ発表。

68 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/17(木) 22:37:03.64 ID:Lw7llQPEo

　投票ランキング上位５名が超大型投影ディスプレイに映し出される。

　１位　織斑千冬

　２位　織斑一夏

　３位　更織楯無

　４位　凰鈴音

　５位　セシリア・オルコット

69 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/17(木) 22:38:03.95 ID:Lw7llQPEo

>>67-68

の間に

薫子「さぁ、良いですね？　良いですね？　まずは、投票ランキングを見てみたいと思います！」

が入る予定でした。
飛ばして、コピペしていましました。

70 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/17(木) 22:38:45.70 ID:Lw7llQPEo

薫子「おおう、皆さん本気で予測してますね！？　そう言う私も千冬先生に清き１票を投じた身でありますが」

　他薦投票１位に輝いた千冬が、本投票も１位を取った。
　女子達の思惑はこうである。

女生徒「本当は一夏君に入れたかったんだけどー、デザート欲しいしー、他薦１位の織斑先生でしょー」
女生徒「だよねぇ……っつーか、皆そうしてるんじゃない？」
女生徒「普通に考えても千冬様一択だけどねっ！！」

女生徒「私は織斑一夏君！！！」
女生徒「私も私も！」
女性徒「はぁ、デートしたかったなぁ……」

71 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/17(木) 22:39:12.24 ID:Lw7llQPEo

女生徒「後はまぁ、生徒会長だよね。純粋に人気あるし」
女生徒「負ける姿が想像付かないよね」
女生徒「楯無生徒会長が負けるはずないよ！」

女生徒「鳳さんは雑誌で凄く可愛かったもんねー」
女生徒「セシリアさんも！　代表候補ってもうアイドルだもんね」
女生徒「同じ歳とは思えないわー」
女生徒「くっそ、くっそ！」

女生徒「岡部君はちょっとオッサン臭いって言うか……」
女生徒「うん、顔は整ってる気がするけど髭とか髪型とかね……」
女生徒「清潔感がちょっと足りない気がするよね」
女生徒「でもでも、仮装は見たいから他薦表は入れたけどね！」

72 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/17(木) 22:39:48.00 ID:Lw7llQPEo

　デザートを勝ち取る為に集中した千冬票。
　そして純粋な人気から集まった一夏票。

　現職生徒会長としての票収集力を見せた楯無。
　代表候補生として、雑誌に多数出演していた鈴音とセシリアが首位を獲得した。

　皆、岡部の事を気にはしていたが織斑姉弟の牙城を崩せるとは思えず投票を控えた結果だった。

薫子「さぁ、皆様。待ち焦がれたショウタイムのお時間がやってまいりました」

本音「ぐう」

薫子「ご静粛に──」

73 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/17(木) 22:40:18.25 ID:Lw7llQPEo

　薫子の台詞と共に、会場の明かりと言う明かりが全て消える。
　ッパ。と明かりが付いた時、ソレが壇上に佇んでいた。

　静まり返る館内。
　全ての人間が言葉を失った。

簪「……もご」

　──包帯を全身に巻いた……女？

　会場内に居る誰しもが思った台詞である。
　大型の投影ビジョンは、何時の間にかピラミッドを映し出していた。

　気分はエジプトである。

74 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/17(木) 22:40:50.85 ID:Lw7llQPEo

楯無「……あちゃぁ」

　控え室からモニターを見て、楯無が頭を抱える。
　どこから、誰が見ても失敗だった。
　

薫子「えーっと、これは……ミイラおと、女。マミーですね。はい……」

　ご丁寧に、幾重にも包帯を全身くまなく巻きつけてある。
　全ての包帯は保健室の使用済みを頂いているこだわりもあった。

　新品の包帯や、洗濯してある包帯では“それっぽさ”が醸し出せない。
　以下は衣装担当の演劇部員のコメントである。

75 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/17(木) 22:41:18.43 ID:Lw7llQPEo

劇部員「はい。苦労したのは包帯の入手ですね。新品じゃっぽくないっしょ、ってことで。
劇部員「包帯チックなお手ごろなコスプレシャツや、ズボンもあったんですけど、そこはこだわりました」

劇部員「ちょっと臭かったけどね（笑）」
劇部員「簪さんにはちょっと可哀想ですけど……顔を露出しない以上、こだわりって必要だったと思うんです」
劇部員「あっ、でもちゃんと除菌だけはしてるから大丈夫ですよ！」

　以上。
　担当演劇部員コメント。

簪「……ふが」

　包帯で霞む視界の中、うろうろと壇上を歩き回る。
　簪の出来る、唯一のパフォーマンス行為だった。

76 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/17(木) 22:41:50.25 ID:Lw7llQPEo

薫子「えーーーっと、はい。更織簪さんで、マミーでした！」

　ぱらぱらと、申し訳程度に流れる拍手。
　会場も、それを見守る控え室の空気も重かった。

　顔の見れない仮装だったが、評価出来る点もあった。
　包帯を体にピッチリ巻くことにより、ボディーラインがくっきりと見えることだ。

　簪の胸はお世辞にも大きいとは言えないが、その控えめな膨らみが薄い布一枚を隔てて強調されている。
　──が、惜しくらむはこの学校の９９％以上が女性であり、審査員である客席の女性率が１００％だったこと。

　そう言った、フェティシズムを含んだ効果は一切得られない。
　こうして仮装大会一発目。

　更織簪の仮装は終了した。

77 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/17(木) 22:42:36.66 ID:Lw7llQPEo

簪「（うぅー……恥し、かった……）」

　当人は会場をおかしくした空気よりも人前に出た恥が勝っていたため、その事実に幸いにも気付けずにいた。
　ざわざわと、どよめく会場。

　──えっ、こんな感じなの？

　と言う、不安に満ちた感情が館内に立ち込める。
　そんな空気を察知しつつも、薫子は視界を続けた。

薫子「えーでは次の仮装に移りたいと思います」

本音「ぐう……」

78 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/17(木) 22:43:04.42 ID:Lw7llQPEo

　再び落される、全ての明かり。
　しばらくして、超大型の投影ディスプレイが映像を映し出す。

　赤い満月だった。

　満月の手前にぽつんと浮かぶ、人型の影。
　徐々に、館内の明かりが灯り始め顔を照らし出す。

　黒衣のマントを羽織り、黒のトンガリ帽を被ったソレはどこからどう見ても魔女の様子を呈している。　

箒「……」

　箒の顔は緊張のため、強張っていた。
　演劇部員の台詞を思い出す。

79 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/17(木) 22:43:31.10 ID:Lw7llQPEo

劇部員「この杖。ちょっとしたトリックスティックでね、思い切り振ると“ホウキ”に変身するから是非そのギミックを使ってね」

箒「（この杖を……振る！）」

　ぴょむん！

　へんてこな音が鳴り、少量の煙が発生する。
　杖が竹箒へと変身した。

箒「（おお……）」

　──おお。

　観客席からも声が漏れる。
　気分は軽くマジックショーだった。

80 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/17(木) 22:44:03.99 ID:Lw7llQPEo

薫子「二番手は魔女に扮した、篠ノ之箒さんです。何時もは束ねている黒髪が解かれ妖艶な空気を作っていますね」

　杖から変身した竹箒に跨る箒。
　ISのPICのみを起動させる。

箒「（……むっ！）」

　重力から逆らい、浮かび上がる体。
　箒はそのまま竹箒に跨り飛翔を始めた。

　ぼっと湧き上がる館内。
　先ほどとは変わり、楽しそうな声が聞こえ始める。

81 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/17(木) 22:44:31.69 ID:Lw7llQPEo

女生徒「えっ、ちょっ！　あれ何！？」
女生徒「ワイヤーアクション？」

女生徒「ばっか、ISの機能でしょ？　PIC起動させてるんだよきっと。専用機持ってるから出来るんでしょ」
女生徒「あぁそっかー。でも、PICだけ起動させるのって“凄く難しい”んじゃないの？」
女生徒「部分展開よりも高度だよ！　凄い凄い！」

薫子「これは、高度なPICのみを起動させる方法を使った演出ですね！　いやぁ凝ってる」

　会場が箒の技術に息を呑む中、異変が起きた。

箒「（むっ！　むっ！？）」

　突然、竹箒がふわふわとぶれ始めたのだ。
　急上昇、急降下を繰り返し館内を猛スピードで駆け始める。

82 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/17(木) 22:44:57.51 ID:Lw7llQPEo

薫子「……えっ」

　実況者であることも忘れ、素の声をあげる薫子。
　箒は速度を上げ続けやがて──。

　──ガシャアアアンッ！！

箒「うわあああああぁぁぁぁああぁぁぁああぁぁぁあ！！」

　体育館の窓をぶち破り学外へと躍り出て行った。
　ぱらぱらと落ちるガラスの破片だけが、音を出している。

　静まり返る会場内。
　なんの演出も無く終わった仮装の次は、仮装者が退場してしまった。

83 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/17(木) 22:46:46.67 ID:Lw7llQPEo

　箒自身、初めて使ったPICのみを起動させる術は大変高度で御し得るものではなかった。
　それこそ、代表生並の技術が必要になる。

　そんな大それた芸当を身に着けていない箒が行えば、暴走するのも止む無い話。
　竹箒は学園から飛び出て、彼方の方向へとすっ飛んでいく。

　箒に跨ったまま吹っ飛ぶ箒。
　IS学園関係者からすれば洒落では済まない。

　直ぐ様、何人かの教師が箒を追い学園から出て行く。
　ドタバタと教師が慌しくする中、薫子は努めて冷静に自分の職務をまっとうする。

薫子「……篠ノ之箒さんでした。生徒の皆さんは各自、評価の方をお願いします」

　静まり返る館内の中で、薫子の呼びかけだけがハッキリと生徒全員の耳に届く。
　
　更織簪。篠ノ之箒。
　両名の行った仮装はこれまでのところ、お世辞にも成功したとは言えない出来になっていた。

84 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/17(木) 22:47:16.02 ID:Lw7llQPEo

おわーり。

ありがとうございました。
２人しか進まなかった……。

85 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(広島県) [sage]：2011/11/17(木) 22:48:38.76 ID:8jA/nIFvo

乙です
オカリン吸血鬼が楽しみすぐる

86 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/17(木) 22:49:39.93 ID:Lw7llQPEo

>>34
（　　ﾛ）　　゜゜

（　　ﾛ）　　。。

ああああありがとうございます！！
反応遅れて申し訳ありません。
カッコイイれふ……。

>>3の石鍵もカッコ良いのですが、次スレがもし立つ場合載せないほうが良いでしょうか？
今回頂いた物は勿論載せたいとは思うのですが。

>>62
調子が悪くて病院行ってる訳ではないので、大丈夫でせう。
ただちょっとニートの癖に慌しかったりするのです。
ありがとうございます。

87 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(不明なsoftbank) [sage]：2011/11/17(木) 22:58:20.51 ID:x3a8lLnc0

>女生徒「岡部君はちょっとオッサン臭いって言うか……」
>女生徒「うん、顔は整ってる気がするけど髭とか髪型とかね……」
>女生徒「清潔感がちょっと足りない気がするよね」

もうこのセリフがフラグにしか見えないｗｗｗｗｗｗ

88 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/17(木) 23:12:35.67 ID:hNSQFXPDO

乙
身嗜みを整えた岡部を見た生徒って極一部だったからな
反響が楽しみすぎる

89 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/17(木) 23:14:35.83 ID:bC3F0A3SO

頼む…頼む早くオカリンのコスプレを見せてくれ…。

90 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方) [sage]：2011/11/17(木) 23:21:07.89 ID:JKgnhLm1o

これって参考画像あるのかな？(ﾁﾗｯﾁﾗｯ

91 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]：2011/11/17(木) 23:26:17.45 ID:c/h2bS6io

乙

92 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(不明なsoftbank) [sage]：2011/11/18(金) 00:17:22.26 ID:M/G5RfXn0

シノノノさんはどうしていつもこんな扱いなのか…………

93 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋) ：2011/11/18(金) 00:41:08.14 ID:S26D66q6o

おかりんを見せたあとの反応が気になりすぎて死にそう

94 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/18(金) 01:07:36.24 ID:6ps7NFRKo

真の主役は遅れてやって来るものだからキョーマさんは最後でしょ

95 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方) [sage]：2011/11/18(金) 01:07:50.12 ID:g20/yh9/o

>>92
ええやろ！原作の扱いええんやから！

96 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/18(金) 01:17:54.89 ID:SNKFdkR8o

この後こいつらは、オカリンにメロメロか

97 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/18(金) 01:36:09.03 ID:uPESILPIO

>>96
見下ろしすぎて見上げているポーズのオカリンを想像してしまったじゃないか

98 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/18(金) 02:36:23.10 ID:6mXy3lyIO

あああああオカリンたのしみすぐる

99 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/18(金) 04:18:10.09 ID:tg66RWfIO

オカリン！オカリン！オカリン！オカリンんんんうううわぁああああああああああああああああああああああん！！！
あぁああああ…ああ…あっあっー！あぁああああああ！！！オカリンオカリンオカリンんんんんぁわぁああああ！！！
あぁクンカクンカ！クンカクンカ！スーハースーハー！スーハースーハー！いい匂いだなぁ…くんくん
んはぁっ！岡部倫太郎もとい鳳凰院凶真たんの少しこけたの白衣をクンカクンカしたいお！クンカクンカ！あぁあ！！
間違えた！モフモフしたいお！モフモフ！モフモフ！白衣モフモフ！カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい！！
セシリア戦のオカリンたんかわいかったよぅ！！あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ！！ふぁぁあああんんっ！！

これが限界だった。

100 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/18(金) 06:02:23.61 ID:143lkNbY0

こちらへ投下したイラストについては、アップした時点でこのSSへ捧げたようなものなので、以降のイラストの使用に関して何も言うことははございません。

>>34
改めて読み返すとなんだか突っけんどんな態度のレスに見てとれそうですね。決してそんな事は無いです。ごめんなさいです。むしろ自由に使っていただいた方が嬉しいです。なのでもうちょっと頑張ってみました。

http://wktk.vip2ch.com/dl.php?f=vipper26103.jpg

石鍵をデザインする際の参考資料にキラークイーンも含まれていたので、GIOGIO立ちの指南は割と間違ってないかもです。

おまけ：ネイキッド石鍵
http://wktk.vip2ch.com/dl.php?f=vipper26104.jpg

ハロウィン楽しみです。誰がどんな衣装なのか早く見てみたいですね(ﾁﾗｯﾁﾗｯ

101 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(不明なsoftbank) [sage]：2011/11/18(金) 07:32:12.67 ID:M/G5RfXn0

>>100
ちょｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ変態仮面ｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ
朝から笑かすなｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ

102 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/18(金) 09:14:03.01 ID:rg3+jV3IO

ここに貼られた画像全部エラーで見れない…

103 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/18(金) 09:20:14.58 ID:R208/B7Ko

プラウザで開け

104 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]：2011/11/18(金) 09:20:39.25 ID:BNWBYC1T0

>>100
おまｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗたしかにそっちにも似てるとは言ったがｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ
なんつうか、ありがとうございます！ありがとうございます！

105 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/18(金) 09:55:07.76 ID:s+4hHQXIO

俺の股間がトランザム!!

106 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage　saga]：2011/11/18(金) 16:56:17.32 ID:ic934Gk+0

>>100
鈴は何て言ってるんだ？
「近付くな！変態！」みたいなかんじ？

107 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]：2011/11/18(金) 17:46:13.28 ID:xPtFoUmJo

ああ追いついてしまった・・・続きが気になってやばい。

108 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/18(金) 21:18:15.88 ID:L+7zIaFao

>>1です。

>>100
（；´゜益゜）あぶぶぶぶぶぶｂ
ありがとうございますうううううう！！
どれもこれも、素晴らしい出来なので是非とも新スレに以降する際には飾らせて頂きたいと思います……。
本当にありがたいです。書いててよかったSS。

画像が見れないというのは、どうしてでしょう。
携帯からだからってことなのでしょうか？
イメピタなら見れるのかな？　という事でちょっとやってみました。
見えたら反応欲しいです。

知らないうちに、イメピタがサービス終了していたので似たようなもので。
http://imefix.info/20111118/201269/
http://imefix.info/20111118/201270/
http://imefix.info/20111118/201271/
http://imefix.info/20111118/201272/

見れるかなぁ。

109 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/18(金) 21:18:53.38 ID:L+7zIaFao

それでもって、投下します。
往きます。

110 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/18(金) 21:19:26.20 ID:L+7zIaFao

>>83　　続き。

　箒の退場により、ざわざわと賑やかになる会場。
　教師達が慌ててガラスの欠片を片付け、１０分程して行事が進行された。

薫子「えー、アクシデントが御座いましたがもう大丈夫なようです」

　薫子のアナウンスが入る。
　体育館内の生徒達はダレ気味であった。

薫子「では気を取り直して……」

本音「ぐう……」

　照明が落される。
　おどろおどろしい音楽が流れ始め、スモークが炊かれ始めた。

111 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/18(金) 21:19:52.62 ID:L+7zIaFao

女生徒「なんか、寒くない……？」
女生徒「空調の設定間違えてるんじゃないの？」

　何人かの女生徒が、会場の温度が下がっていると声を上げ始める。
　そんな女生徒達を無視するように、ゆっくりと照明が光量を上げていった。

女生徒「……ひっ」

　悲鳴が上がる。
　巨大ディスプレイには、人の顔が映っていた。

　デバイスからも覗く人の顔。
　顔色は悪く、恨めしそうな表情を作るその人物は“凰鈴音”だった。

　額の中央部にはお札のような物が貼られている。

112 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/18(金) 21:20:19.57 ID:L+7zIaFao

薫子「おっ、驚きました……これは、キョンシーですね？」

　両腕を前に突き出し、前を見つめる鈴音。
　ドーランを塗りたくられ、死体のような質感を演出された顔は恐ろしく気味の悪い出来に仕上がっている。

薫子「おおお……ファンシー路線ではなくリアル路線で来ましたね！」

　鈴音は一言も発しない。
　ぴょんぴょん、と跳ねる回るばかりだった。

女生徒「あ……ちょっと可愛いかも」
女生徒「ね、動きが可愛い」

女性徒「でも、顔やばいよ……」
女生徒「怖すぎる……」

113 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/18(金) 21:21:05.67 ID:L+7zIaFao

　服装も、誰もが想像に容易い清朝期の服装をしていた。
　誰がどう見ても、立派なキョンシーに化けている。

鈴音「（我慢……我慢……１位を取らなきゃいけないんだから……！）」

　内に秘める闘志を隠し、表情と感情を殺して壇上をうろうろと跳ね回る。

薫子「それにしても、不気味ですね……！」

　巨大投影ディスプレイは相変わらず、鈴音の顔色悪い表情を映し出している。

鈴音「（これは仮装大会なんだから、箒みたいにアクションは要らないのよ）」

114 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/18(金) 21:21:33.44 ID:L+7zIaFao

　その場でピョンピョンと跳ね回り、仮装を披露する鈴音。
　まさしく趣旨通りの模範的な行動だった。

薫子「いや、素晴らしい。凰鈴音さんで──」

　バツン！！

　薫子がその場を締め様とした矢先、ディスプレイを含む全ての照明が落された。
　またトラブルか？　と会場が沸きかけたその時、ディスプレイが映像を映し出す。

女生徒「…………ひぁっ！」

115 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/18(金) 21:21:59.56 ID:L+7zIaFao

　映し出されたのはまた、顔だった。
　血色の無い、醜い顔。

　しかし、ソレは凰鈴音の顔では無い。
　その顔の正体は──。

　──“セシリア・オルコット”だった。

薫子「これ──は……セシリア・オルコット！　セシリア・オルコットさんです！」

セシリア「……」

116 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/18(金) 21:22:52.30 ID:L+7zIaFao

　ボロボロに着崩れた衣服。
　ツギハギだらけの服は、常の彼女を思えば絶対にチョイスされないような類のものである。

　顔面はドーランにより、蒼白色になっている。
　さらにはまるで縫われていたように、顔中抜糸跡だらけだった。

　頭部を貫通するように、突き出ている巨大なボルト──ネジが一掃気味悪さを演出している。

薫子「ふ、フランケンシュタインですね！　英国が生み出したとされる怪物、フランケンシュタインです！」

　発祥が中国であるキョンシーと、フランケンシュタインが同時に壇上へ。
　必然にらみ合う鈴音とセシリア。

117 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/18(金) 21:23:18.99 ID:L+7zIaFao

鈴音「（ちょっと！　どう言うつもりよ、乱入してくるだなんて！）」

セシリア「（演出ですわ、え・ん・しゅ・つ）」

　セシリアの言う演出は成功したようで、客席からは調子の良い声が幾つか上がった。

女生徒「うわー、セシリアまじ気合入ってるね」
女生徒「凄い凄い！　鈴音さんより顔ヤバイよ！」

女性徒「顔アップにすると、どんだけ作りこんでるか解るね」
女生徒「気持ち悪い！」

　耳に入る客席の反応で、ぴくぴくとセシリアの頬が突っ張る。
　しかし、今日は仮装大会。

　見目麗しさを競うのではないと、自分に言い聞かせる。

118 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/18(金) 21:23:45.86 ID:L+7zIaFao

セシリア「（我慢……が・ま・んですわ……）」

鈴音「（くっ、もしかして私ってセシリアに完全に食われた！？）」

　途中乱入してきたセシリアのインパクトは大きかった。
　巨大ディスプレイもセシリアの顔ばかりが映されている。

セシリア「（頂きましてよ……あとは──フランケンの持ち味を生かしてフィニッシュですわね）」

　──キュィィィン。

　ISを局部的に展開する。
　最小限の展開で、パワーアシストのみを起動した。

　傍目から見てもISを展開しているとは思えない。

119 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/18(金) 21:24:13.83 ID:L+7zIaFao

セシリア「さ、鈴さん。退場いたしましょう」

鈴音「──なっ！」

薫子「おおっと！　フランケンシュタインが自慢の怪力でもって──」

　鈴音を持ち上げた。
　まるでベンチプレスを持ち上げるかのような扱いで、ヒョイと小柄な鈴音を頭上に押し上げる。

鈴音「なっ、何すんのよ！！」

　今まではマイクで拾われないような小声を出していた鈴音だったが、これは堪らず声を荒立てる。
　ジタバタと手足を振り回し、逃れようとするが相手はパワーアシストを受けている身。

　抵抗は虚しく、から回った。

120 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/18(金) 21:24:39.70 ID:L+7zIaFao

女生徒「あー、やっぱりキョンシーよりフランケンのが強いんだ？」
女生徒「まぁイメージもそんな感じだよねー」

　この台詞がいけなかった。
　最前列、仮装者である鈴音達の耳に入る距離での囁き。

　女生徒達に悪気は無い。
　目の前でフランケンシュタインに担ぎ上げられるキョンシーの構図を見て、そのままの感想を述べただけなのだから。

セシリア「それでは、鈴さん？　控え室の方に参りま────」

　──シュゥゥゥゥン！

　ずしん。
　まるで重力が増したかのように、パワーアシストに掛かる負荷があがった。

121 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/18(金) 21:25:07.34 ID:L+7zIaFao

セシリア「──なっ！」

鈴音「……」

　その光景を見て頭を抱える教師達。
　薫子も実況を忘れていた。

　みしみしと、軋む壇上。
　鈴音はIS“甲龍”を完全展開していた。

セシリア「な、何をしているんですの！？　しかもPICを作動させていないだなんて……おっ、重い……」

鈴音「あーら、フランケンシュタインさんは力持ちなんでしょ？　ほらほら、さっさと運んでみなさいよ」

セシリア「上等……ですわ！！」

122 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/18(金) 21:25:34.01 ID:L+7zIaFao

　──シュゥゥゥン！！

　負けじとセシリアもIS“ブルー・ティアーズ”を完全展開させる。
　そのまま“甲龍”を投げ飛ばすが、鈴音も咄嗟にPICを作動させ空中で足を止めた。

薫子「あのー……」

女生徒「……」
女生徒「……」

　会場は完全に置いてけぼり状態になった。
　いがみ合うセシリアと鈴音。

123 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/18(金) 21:26:01.53 ID:L+7zIaFao

鈴音「良い機会だわ。キョンシーとフランケンシュタイン、どっちが強いか決めようじゃない」

セシリア「あーら、そんな事を言って良いんですの？　たかだかゾンビ風情がそんなお口を叩いても」

鈴音「あんただってゾンビじゃない！」

セシリア「人造人間ですわ！！」

　──ガシッ。

　両者手を合わせ、取っ組み合う。
　ギシギシと音を鳴らしながら、異様な空気を発散していた。

124 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/18(金) 21:26:39.59 ID:L+7zIaFao

女生徒「え、なに？」
女生徒「何で２人とも完全展開してるの？」

薫子「えっ、えーっと……」

　本気で力比べを始めている、セシリアと鈴音。
　薫子はとっさに教師達が待機する方へと視線を流す。

　幾人かの教師達が、頭上で両腕をクロスさせペケの字をジェスチャーしていた。

薫子「はいストーーーーップ！！！　凰鈴音、セシリア・オルコット。両者失格！！」

　薫子の声が響く。
　ピタリ、とISを纏う少女２人の力が抜けた。

125 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/18(金) 21:27:05.48 ID:L+7zIaFao

鈴音「えっ」

セシリア「えっ」

薫子「えー、ISを完全展開したこと。それはつまり、仮装を脱ぎ捨てたと判断いたしました」

　──ざわ。
　ざわ──。

女生徒「えっ、失格？」
女性徒「嘘……私、セシリアに賭けてたんだけど」

女性徒「私だって、凰さんに入れてたんだけど……」
女生徒「マジで？　どうなるの？」

126 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/18(金) 21:27:33.80 ID:L+7zIaFao

　声を大きく上げたのは失格になった２人では無く、その２人に賭けた女生徒達であった。
　共に４位５位と上位に座った身である。

　少なくない票数が彼女達い集まっていた。

薫子「ご静粛に。ご静粛に。両者は失格となりましたので、このお２人を予測した皆様方は残念ですが今後は純粋に仮装を楽しみ、評価のみご参加下さい」

　無残につも告げられる、無効票の宣告。
　かなりの人数がこの時点で肩を落す事になった。

鈴音「嘘……」

セシリア「はぁ……」

127 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/18(金) 21:28:19.26 ID:L+7zIaFao

　落胆し、その場で尻餅を付く２人。
　ドーランにより死に顔を作っているため、より一層落ち込んでいるように伺えた。

　更織簪。
　篠ノ之箒。
　凰鈴音。
　セシリア・オルコット。

　４名の仮装が終り、投票率は接戦を極めている。
　それと言うのも、鈴音とセシリアが失格となったためだ。

　このままでは仮装大会が失敗に終わる。
　黛薫子の表情が曇ったまま、５番目の仮装者である“シャルロット・デュノア”の順番が回ってきた。

128 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/18(金) 21:28:50.96 ID:L+7zIaFao

おわーり。

今日もありがとうございました。

129 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(広島県) [sage]：2011/11/18(金) 21:29:33.93 ID:iXxH8fZ1o

乙です
次はシャルしぃか

130 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) [sage]：2011/11/18(金) 21:37:47.78 ID:8hYfwHxAO

乙です。
見事に四人前座とかしててるな

131 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/18(金) 21:45:28.36 ID:/PwSkcGSO

乙。明日受験だから受験前に見れて良かった。
もう少し読みたいな～。

132 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(愛知県) [sage]：2011/11/18(金) 21:47:00.31 ID:swUXF/Hho

乙です
シャル楽しみだ

>>131
受験、うまくいくといいな！

133 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/18(金) 21:59:55.49 ID:AfUDBXnjo

>>132
１スレ目から読み返すなよ
絶　対　に　読　み　返　す　な　よ　！　絶　対　だ　ぞ　！

というフリはともかく>>1乙！
次回も楽しみっす

134 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/18(金) 22:02:05.26 ID:AfUDBXnjo

失礼、上の>>132は>>131でしたごめん

前半連中は壮大な前フリなようですね、後半組に大期待です！
はやくオカリンが見たい！

135 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方) [sage]：2011/11/18(金) 22:09:51.69 ID:6R8aMiFDo

乙

このスレの更新確認が日課になってる

136 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 00:06:09.73 ID:q2oGiT3Eo

花の金曜日だのでもう1回更新させていただきますです。

137 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 00:06:47.80 ID:q2oGiT3Eo

往きます。

138 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 00:07:19.83 ID:q2oGiT3Eo

>>127　　続き。

　五番手。
　“シャルロット・デュノア”の仮装発表は実に模範的であった。

薫子「シャルロットさんは、猫娘の仮装ですね。実に可愛らしいです」

　ネコ耳に、ネコの尻尾。
　そしてカラーコンタクトでオッドアイを演出している。

　ニコニコと愛想の良いシャルロットは、声援に答えて手を振ったりお辞儀をしたりと様になっていた。

シャルロット「（うーん、こんなんので良いのかなぁ……）」

139 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 00:07:57.10 ID:q2oGiT3Eo

　壇上ではアレしてこーしてと、リクエストされるポーズを取ったりと中々の忙しさで今までのソレとは毛色が違っていた。
　一時男装していたこともあり一部では、その類の方々に人気が出ているシャルロット。

　絶大なとは言いがたいが、ココへ来て初めてまともな票数。
　評価を得た仮装となった。

　六番手に壇上へ躍り出たのは、ドイツの冷氷“ラウラ・ボーデヴィッヒ”

ラウラ「……」

　ずりずりと、巫女袴を引きずりながら壇上中央へと陣取る。
　大きな狐色の尻尾と九本の毛艶が良い太い尻尾が印象だ。

140 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 00:08:24.44 ID:q2oGiT3Eo

薫子「“ラウラ・ボーデヴィッヒ”さん。九尾の狐ですね！！　いやぁ、それにしても可愛らしい！！」

ラウラ「かっ、かわっ……！！」

女生徒「あーん！！　可愛いー！！」
女生徒「尻尾！　尻尾もふもふしたいよう！」

　“可愛い”と言う声援や感想を耳にして、見る見る顔が茹でタコのように赤らむラウラ。
　クラリッサに言われた台詞が脳内で再生される。

　──織斑一夏の視線も隊長に釘付けです。

ラウラ「……」

141 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 00:08:55.78 ID:q2oGiT3Eo

　思い出したらもうだめだった。
　ぷるぷると体は小刻みに震え、けれどこの場所から逃げ出すわけにも行かない。

　ラウラは固まった。

薫子「──え？　えーっと、ラウラさん？　もしもーし？」

ラウラ「……」

　目をギュッと瞑り、口もへの字に結んでいる。
　両腕は袴の裾を強く握り締めていた。

薫子「えーっと、あらぁ？」

ラウラ「かっ、可愛いと言われると、私は……私は……」

142 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 00:09:39.30 ID:q2oGiT3Eo

　ぽつぽつと聞こえそうで聞こえない声。
　マイクですら拾えない小声でラウラは主張する。

　そんな羞恥を曝け出すラウラに、会場の小さいものが好きな女子達が可愛いを連呼する。
　あうぅ、と呻きながら段々と小さくうずくまるラウラ。

　終いには両手で顔を隠してしまった。

薫子「えーっと、ラウラ・ボーデヴィッヒさんでした！」

　薫子が区切って、終了させる。
　控え室からシャルロットが飛び出し、ラウラを回収。

　６番手までをこなし、ようやくまともな仮装お披露目となり薫子は1人安堵の溜息を漏らしていた。

143 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 00:10:23.14 ID:q2oGiT3Eo

薫子「（何とか形になってきたわね……次は……アイツか、期待してるわよ～～！）」

　ラウラが回収され、生徒達の投票が始まる。
　シャルロット、ラウラと続いて成績を伸ばすがやはり決め手にかけるのか頭一つ抜け出るようなことは無かった。

　仮装者が女子で、採点する側も女子であれば“可愛さ”を主張しても驚くようなアドバンテージは産まれない。
　その点、鈴音とセシリアは良い点を付いていたが失格となってしまった為お話にならなかった。

　次第に明かりが落ちていく体育館。
　次の仮装者が出場する前触れであることを、生徒達は皆もう理解していた。

144 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 00:10:59.52 ID:q2oGiT3Eo

　──ザーン。ザザーン。

　波の音がどこからともなく、BGMとして流れてくる。
　モニターには大海原の景色が映し出されていた。

　スポットライトで照らされた壇上には１人の女性。
　“更織楯無”がその場に腰を下ろしている。

薫粉「IS学園生徒会長！　更織楯無とはこの人！　仮装は────」

　どこからどう見ても、人魚であった。
　豊満な胸を貝で隠し、くびれたウエストから下に視線を落すと魚のソレになっていて足は見当たらない。

　鱗がライトを反射して、キラキラと美しく光を乱反射させている。
　俯けていた顔を挙げ、客席にニコリと笑いウィンクを投げた。

145 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 00:11:48.83 ID:q2oGiT3Eo

女生徒「キャーーーー！！！」
女生徒「かいちょおおおお！！」

　沸き起こる黄色い声援。
　今日一番の反応だった。

楯無「しー……」

　湧き上がる歓声を、指一本口の前に置き静まらせた楯無。
　まるで指揮者のタクトのように、そのジェスチャーに合わせ声を落す生徒達。

　静まり返った館内。
　楯無は、両手を広げた。

　何時の間にか展開されていた一対の“アクア・クリスタル”がキラリと光る。
　あれよあれよと、ナノマシンで構成された水が楯無の前に道を作ってゆく。

146 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 00:12:33.25 ID:q2oGiT3Eo

楯無「あはっ♪」

　足の無い足で機用に立ち上がり、水の上へと飛び乗る。
　おおーと、会場では声があがった。

　“アクア・クリスタル”はそのまま、会場の上へと水の道を作っていく。
　楯無はISのパーツである“アクア・クリスタル”とPICのみを起動させ、水の道を空中で泳いだ。

　箒が失敗した、生身でのPIC操作。
　これこそ国家を代表する人間だからこそ出来る、精密なIS操縦の一種であった。

女性徒「すっご……」
女生徒「かいちょぉ……」

147 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 00:13:12.19 ID:q2oGiT3Eo

　息を呑む観客席。
　空中を泳ぐ姿は、とても神秘的で美しかった。

　もはや仮装の領域を逸脱している。
　時折り跳ねる水しぶきも、ライトを乱反射させ演出を盛り上げていた。

薫子「これは驚きです、パッと見演出も素晴らしいですが真に凄まじいのはISの精密部分展開や操縦術でしょう！」

　５分程の空中遊泳を堪能した後、壇上へと水のアーチを作りそこへ見事に着地する。

148 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/19(土) 00:13:33.07 ID:RucfDO+SO

乙。受験当日に初リアルタイムとは…。受かる気がしてきた!!
まさかホントにもう一度更新してくれるとは…。
>>1様の優しさに惚れそうです。

149 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 00:13:41.52 ID:q2oGiT3Eo

　
楯無「ぺこり」

　そう口にした瞬間。

　──パシャリ。

　楯無を形作っていた物は、水しぶきを上げ形をなくした。
　壇上の床に残った水だけが、今までソコに居た何かの証明として残っている。

薫子「──こっ、これは！！」

女生徒「えっ！？」
女生徒「何々！？　どういう事！？」

薫子「おっ、驚きです……何時の間にか生徒会長は、自分と水で作った分身とで入れ替わっていた模様です！」

150 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 00:14:08.77 ID:q2oGiT3Eo

　再び湧き上がる会場。
　場は完全に楯無に支配された後だった。

薫子「私達は何時から、アレが会長だと錯覚していたのでしょうか……？」

　正解は誰にも解らない。
　女生徒達はあれやこれやと、推測していたが全てはずれて居た。

　楯無は最初から壇上へ足を踏み入れていない。
　舞台袖から、水で作った自身を操作していた。

151 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 00:14:36.31 ID:q2oGiT3Eo

楯無「ぷぅ……さすがにしんどかったー。だけどコレで……私の勝ちね♪」

　広げた扇子には-常勝不敗-の文字が自信満々に書き殴られていた。

　７番手、更織楯無。
　圧倒的な得票率でトップへと、文字そのままに躍り出る。

　残り３人。
　ドラマは最終局面を迎えようとしていた。

　誰しもが思う。
　楯無の演出、仮装を凌駕することは出来ないであろうと。

　投票が終り、再び闇を落される体育館内。
　ディスプレイが映像を映し出すのにそう時間はかからなかった。

　黄色く輝く満月がディスプレイ上に昇る。
　カーン、カーンと鐘の音が会場へと鳴り響いた。

152 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 00:15:02.79 ID:q2oGiT3Eo

　そんな舞台裏では演劇部がもの凄い勢いで働いていた。
　部長である女子が声を張り上げる。

劇部部長「急いで！　時間が無い！！　あーもうっ、こんなことならもっと色々と用意しとくんだった！！」

　直前まで見ること叶わなかった仮装者の姿お披露目。
　部長は１番手である、簪の発表が行われる直前に“ソレ”を目にして雷のようなインスピレーションを受けたと言う。

劇部部長「ハリーハリーハリーハリ！　急いで！　準備よ！　この演出に全てを賭ける勢いで！！」

劇部員「はいっ！　部長！！」

劇部員「頑張ります！！　その絵が私達も見たいです！！」

153 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 00:15:33.50 ID:q2oGiT3Eo

　部長の提案した演出。
　それを間に合わせる為に、馬車馬の如く働く部員達。

　その成果が生きてか、小道具や演出はぎりぎりで間に合う事になった。

劇部部長「よし、間に合ったね……あとはこの台本を。この演出通りにすればきっと素敵な舞台になるから！」

　はい、と手渡す台本。
　受け取る人物。

　もう間もなく。
　出演の時間が迫ってきていた。

154 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 00:16:33.28 ID:q2oGiT3Eo

おわーり。

>>148
受験生がこんな板に居たら、将来>>1みたいに無職になっちゃうぞ！
って注意しようと思いましたが花金なので更新してみました。

ありがとうございましたー。

155 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長崎県) [sage]：2011/11/19(土) 00:18:07.72 ID:h/Z+No6Do

乙！
流石は会長だ…

156 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(広島県) [sage]：2011/11/19(土) 00:27:11.55 ID:tO/CW1QPo

おーもっかい来るとは思わなかった
乙！！
そして話が進んだｗｗ次回も楽しみに待ってます

157 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/19(土) 00:31:20.84 ID:NLuXRzuvP

乙！

うあああ！なんという生殺しっ
続きが気になりすぎて禿げそうだ！

158 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(愛知県) [sage]：2011/11/19(土) 00:40:10.74 ID:O0gcKoE40

乙！
続きも楽しみに待ってる

159 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage]：2011/11/19(土) 00:57:58.72 ID:PTpzVQsK0

いよいよか
　　　　　　　ヽ|/
　　　　／￣￣￣｀ヽ、
　　　 /　　　　　　　　ヽ
　　　/　＼,, ,,／　　　|
　　　|　（●）（●）|||　 |
　　　| 　/￣⌒￣ヽ　U.| 　　・・・・・･･･ｺﾞｸﾘ。
　　　|　 | .ｌ~￣~ヽ |　　 |
　　　|U ヽ￣~￣ﾉ　　 |
　　　|　　￣￣￣　　　 |

160 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/19(土) 00:59:50.67 ID:7rIoQ33DO

乙
もうすぐステージで邪気眼が爆発すると聞いて

161 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋) [sage]：2011/11/19(土) 01:03:25.30 ID:fW6gdSvA0

小出しを選択しなければ、今頃終わってそうなものなのにここはマゾの多いインターネットだよね

162 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]：2011/11/19(土) 01:32:20.46 ID:5nKAwa8t0

乙です。

にしてもなんというところで区切ってくれるのだこの>>1はっ･･･!!

163 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/19(土) 01:41:29.47 ID:Ih0PwFSIO

きたか…！！

　　( ﾟдﾟ )　ｶﾞﾀｯ
　　.r　　ヾ
＿_|_|　/￣￣￣/＿
　　＼/　　　　/

164 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/19(土) 01:44:32.67 ID:jfLKUwmIO

もうすぐだ…
もうすぐオカリンが来る…！

165 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/19(土) 02:54:50.41 ID:NKIgrb5IO

寝るに寝れないどうしてくれる

オカリーン！

166 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(愛知県) [sage]：2011/11/19(土) 03:35:36.39 ID:RO9x6lceo

続きが気になって眠れない
くそう>>1め・・・これが孔明の罠か！

167 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/19(土) 05:38:40.03 ID:Kzij1aoDO

乙！
続きが気になるぜ！早くオカリンが見たいがオカリンはトリであってほしい。

168 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/19(土) 08:27:50.69 ID:JeTY+N/SO

おま・・・ふっざけんな！
一昨日からどんだけ期待させんだよ！！
ここまできたらＩＳ学園全員の並の反応じゃすまされねーぞ!!!!
そして助手のツンデレ具合も並じゃすまされねーぞwwwww

169 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(不明なsoftbank) [sage]：2011/11/19(土) 10:31:26.14 ID:eyyZTK5R0

ちょｗｗｗｗｗｗ
シャルとラウラ流されすぎｗｗｗｗｗｗｗｗ

170 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 16:54:20.28 ID:q2oGiT3Eo

>>１です。

何かもの凄くプレッシャーを感じますががっが。
添削が終わったら投下しにきまう。

171 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(不明なsoftbank) [sage]：2011/11/19(土) 16:54:50.92 ID:ylTY2i47o

>>170
めっちゃ待ってる！

172 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(鹿児島県) [sage]：2011/11/19(土) 16:57:48.28 ID:wkOmGyAwo

wktk

173 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage.saga]：2011/11/19(土) 16:59:32.57 ID:yCF7tu1b0

ｺﾞｸﾘ……！

174 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/19(土) 17:00:59.83 ID:JeTY+N/SO

>>170
待ってる（*´∀｀）

175 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋) [sage]：2011/11/19(土) 17:17:47.13 ID:Zb4Ny6bzo

（0゜・∀・）ﾜｸﾜｸﾃｶﾃｶ

176 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]：2011/11/19(土) 17:25:32.23 ID:thtRz8jto

　　　　　　　　　　　　　　　+　　　+　+　　　　　+　　　+
　　　　　　　　　　　　　　　　∧＿∧　 ∧＿∧　∧＿∧ 　+
　　　　　　　　　　　　　　(0ﾟ･∀･)　(0ﾟ･∀･) (0ﾟ･∀･)　ﾜｸﾜｸﾃｶﾃｶ　　+
　　　　　　　　　　　　　　 oノ∧つ⊂) ∧つ⊂) ∧つ⊂)　　　　+　　　　　　　　　　　　+
.　　　　　　　∧＿∧　　　(　(0ﾟ･∀･) (0ﾟ･∀･) (0ﾟ･∀･)　　　　　　　+　　　　+
　　　　　　　（　；´Д｀）　oノ∧つ⊂)∧つ⊂)　∧つ⊂) 　+　　　　　　　　　　　 ∧＿∧　　　　　+
　　-=≡ 　/　　　ヽ　　 (　(0ﾟ･∀･)（0ﾟ・∀・）（0ﾟ・∀・）　　　ﾜｸﾜｸﾃｶﾃｶ　　　　(0ﾟ･∀･)　ﾜｸﾜｸ
.　　　　　 /|　|　　 |. |　　oノ∧つ⊂) ∧つ⊂) ∧つ⊂)　　　　　　　　　　　　 oノ∧つ⊂)
　-=≡　/.　＼ヽ／＼＼_(　(0ﾟ･∀･) (0ﾟ･∀･) (0ﾟ･∀･)　　　+　　　　　　　　　(　(0ﾟ･∀･)　ﾃｶﾃｶ
　　　　/　　　ヽ⌒)==ヽ_）=∧つ⊂) ∧つ⊂) ∧つ⊂)　　　　　　　∧＿∧ oノ∧つ⊂) 　+
-= 　 /　/⌒＼.＼　||　　||（0ﾟ・∀・）（0ﾟ・∀・）（0ﾟ・∀・）ﾜｸﾜｸﾃｶﾃｶ( ´･ω･)　（0ﾟ・∀・）　ﾜｸﾜｸﾃｶﾃｶ
　　／／　　　 >　）|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|　　　　　/ヽ○==○ （0ﾟ∪ ∪ 　　　+
　/　/ 　　　　/ ／ .|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿| -=≡　/　　||＿　||_ と＿_）__）
　し'　　　　　（＿つ￣(_））￣ (.)）￣￣￣￣ (_））￣(.)）￣　　　　し'￣(_)）￣￣￣￣(_)）￣(_)）

177 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(広島県) [sage]：2011/11/19(土) 17:29:24.39 ID:tO/CW1QPo

この感じ…神！

178 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 17:31:39.56 ID:q2oGiT3Eo

画像探すのに手間取ってしまった。
往きます。

179 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 17:32:20.75 ID:q2oGiT3Eo

>>153　　続き。

　ディスプレイ上に満月が昇る。
　
　カーン、カーン。

　鐘の音が体育館内に反響し、音が跳ね返る。

　カーン、カーン。
　カーン、カーン。

　息を飲む客席。
　視線は壇上に釘付けだった。

　しかし、仮装者は一向に現れない。

　カーン！　カーン！
　鐘の音が強く鳴る。

180 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 17:32:47.29 ID:q2oGiT3Eo

　────ワオォォォォン！！

　犬の遠吠えのようなものが、鐘の音に紛れて耳に入る。
　キョロキョロと辺りを見回すが、やはり人影は現れない。

　──ズダンッ！！

　突如、壇上の上から黒い塊のような物が大きな音を立てて降って来た。
　静まり返る場内。

　降りて来た塊はゆっくりと立ち上がり、その尊顔を曝け出す。

　織斑一夏だった。

181 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 17:33:15.39 ID:q2oGiT3Eo

薫子「お、お、“織斑一夏”登場です！！　派手なパフォーマンスで登場したのは狼男の仮装をした織斑一夏君です！！」

女生徒「キィィィィィヤァァァァアア！！！」
女生徒「一夏くううううううん！！！」

女生徒「きゃわっきゃわっ！！」
女生徒「可愛いすぎるうううう！！！」

　一夏の仮装は狼男。
　人狼であった。

　大きめの耳に、太い尻尾を携えている。
　上半身は腕以外を露出し、下半身は毛で覆われているような作りだった。

　*参考画像　http://kie.nu/.1Zz

182 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 17:33:44.60 ID:q2oGiT3Eo

　ディスプレイにアップで映し出される顔。
　付け歯である、鋭い犬歯が目立つ。

　化粧の効果は高かったらしく、大きめだった目はさらに目立ち女性のような雰囲気すら漂わせている。
　先ほどまで楯無の演出に酔いしれていた女子は、すでにそのことを忘れている。

薫子「素晴らしい仮装……いや変身です！　ちょーっと肌の露出が多い所も憎いサービスですね！！」

女生徒「なにあれ可愛い……」
女生徒「ヤバイ、ヤバイ！！」

183 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 17:34:10.55 ID:q2oGiT3Eo

女生徒「ちょっと薫子は実況してないで写真撮りなさいよ写真！！　写真部でしょ！！」
女生徒「誰か！　誰か超望遠レンズ付きのカメラは無いの！？」

一夏「（ちょっと、恥しいけど……良い感じだよな）」

　殆どの女子が巨大ディスプレイではなく、自分の端末から一夏を見ていた。
　えへえへと笑う者、にたにたと頬を吊り上げる者と思い思いに一夏を楽しんでいる。

　控え室に居る女子もまた、同じだった。
　控え室モニターに映る一夏の仮装姿。

184 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 17:34:37.02 ID:q2oGiT3Eo

箒「……」

セシリア「……」

鈴音「……」

シャル「……」

ラウラ「……」

　５人娘の目が点になり、口がぽかーんと開く。
　初めて見る一夏の仮装は余りにも素敵に見えた。

　特に、はだけている胸元に視線が行く。
　大胆にも露出された胸板は厚く、女子達の胸を締め付けるだけの何かを秘めている。

185 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 17:35:06.73 ID:q2oGiT3Eo

まゆり「うんうん。一夏くんのコスもバッチリなのです」

　自分の手掛けた作品に満足するまゆり。
　一方で、紅莉素は１人そわそわと苛立たしげにモニターを見つめていた。

紅莉栖「（あーもう、ヤバイんじゃないの？　皆どんな反応するんだろう……）」

　モニターを見つめてはいるが、視線は一夏をまるで捉えていない。
　まるでこの先出てくる“何か”を見据えているようだった。

　壇上では、きゃいきゃいと客席からリクエストされるポーズに励む一夏の姿がある。
　羞恥心はあったが、壇上で注文を断ると言うのは空気がさせてくれない。

　止むを得ず、シャルロットと同様にせがまれたポーズを取りファンサービスをこなしていく。

186 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 17:35:33.25 ID:q2oGiT3Eo

薫子「いやー、良いですね。良い。お客さんの反応が違います。これぞ織斑一夏！」

　実況をしつつ、進行表に目を落す薫子。
　先ほど更新された項目を見ると、ここから先は全て“なりゆき”と書かれている。

　つまり、台本があって台本が無い。
　演劇で言うところのエチュードを決行しようと言うのだ。

薫子「（一体何をしたいのかしらね……一夏君の演出でも充分盛り上がってるけど）」

　会場は未だ覚めやらぬといった感じで、盛り上がり続けている。
　その熱は冷えることなく、控え室に居るガールズ達まで客席へ行くなどと言い出す始末だった。

187 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 17:36:23.00 ID:q2oGiT3Eo

　終始和やかに一夏の出演時間が終わろうとした時、物語が動いた。

　──バツン。

　今日、幾度目かの消灯が起きる。
　何も見えない闇の中、ガサガサと壇上から音が聞こえ洩れてくる。

劇部員「（急いで！　セットしたら直ぐにはけるよ！）」
劇部員「（おっけー！　撤収！！）」

　３分と立たずに、音は消えた。
　ディスプレイに明かりが灯り、まんまるいお月様だけが輝いている。

188 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 17:37:06.85 ID:q2oGiT3Eo

　──ジ・ジジジ。

　映像にノイズが走る。
　徐々に、満月に亀裂が生まれていく。

　それはまるで眼球だった。

女生徒「──ひっ」

　あまりの不気味さに女生徒が声を漏らす。
　横にひび割れた隙間から、真っ赤に染まった目がギョロリと会場を舐め回す。

一夏「な──んだ？」

189 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 17:37:28.27 ID:q2oGiT3Eo

　何時の間にか壇上に現れた舞台セット。
　“丘”のような物がソコにはあった。

　燃えるような赤い瞳をした、月の輝く丘。
　会場全ての人間がその目に視線を奪われた。

　────現在、君達が人間であることを感謝せよ。

　低く、通った声が会場に響く。
　IS学園に男子生徒は２人しか在籍が無い。

190 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 17:37:58.95 ID:q2oGiT3Eo

　１人は織斑一夏であり、一夏の声はこのような質のものではない。
　とすれば、答えは１つ。

　声の主は“岡部倫太郎”であった。

　──ズガンッッッ！！！

　轟音を立てて、天井から何かがセットの丘へと突き刺さった。
　ソレは人の形をしていない。

　月明かりに照らされたそれを、全ての女生徒が目を凝らして見つめる。

　それは、十字架だった。

191 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 17:38:26.75 ID:q2oGiT3Eo

　突如、丘に突き刺さった十字架。
　鉄で出来ているのか、漂う無機質さが会場の温度を低くする。

薫子「──ぁっ、あれ……は」

　完全に度肝を抜かれ、声を失っていた薫子が必死に声を振り絞る。
　薫子だけではない。

　会場に居る全ての人間が、発声することを忘れている。

　ふわふわと、天井から人影が降りて来た。
　その人影はゆっくりと、まるで重力の枷が無いかのように十字架へと降り立つ。

192 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 17:38:53.03 ID:q2oGiT3Eo

楯無「（生身でのPIC操作……しかも、完璧に出来ているなんて……）」

　舞台袖で見学していた楯無が、演出ではなくそのISの精密操作に感嘆する。
　国家代表クラスで無ければ難しいとされる作業を、難なくこなしているのだから当然だった。

　真紅の外套を肩に羽織って居るそれは間違いなく、岡部倫太郎である。
　しかし、面影が一切感じられない。

　色白い肌。
　血のような瞳の色。
　長く伸びた艶ある髪に、遠目からでも確認出来る程の牙を携えている。

　外套の下は白のシャツと、赤いネクタイ。
　黒いズボンと黒い靴。

　紳士のような怪物。
　誰もがイメージする“ドラキュラ”が十字架の上に降臨した。

　*参考画像
　http://kie.nu/.1ZA
　http://kie.nu/.1ZB

193 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 17:39:32.05 ID:q2oGiT3Eo

岡部「……」

　次第に照明が光を強め、客席からも全貌が解るようになる。
　巨大投影ディスプレイは何時の間にか、岡部の顔をアップで映し出していた。

　岡部が時折りみせる、嫌味ったらしい作り笑顔が今はなんともマッチしている。
　化粧により整えられた顔から覗くの笑みは妖艶であり、人を惹き付ける──まさに吸血鬼の微笑であった。

薫子「……」

女生徒「……」
女生徒「……」

194 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 17:40:11.23 ID:q2oGiT3Eo

　今までの仮装とは誰しもが違う反応を見せる。
　声を上げれない。

　目は見開き、口も呆然と開けているが声を上げる事が出来なかった。
　そう言った行為が許される空間では最早無くなっている。

まゆり「やったー！　やっぱり似合ってる、まゆしぃの思った通りなのです！
　　　　オカリンは絶対に、あのコスが似合うと思ってたんだー」

　控え室で１人はしゃぐまゆり。
　自らが思い描いたとおりの吸血鬼を見て、心底満足していた。

　それとは打って変わり、一夏の時と同様に目を丸くするガールズ達。

195 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 17:41:08.51 ID:q2oGiT3Eo

箒「あ、れが……」

セシリア「倫太郎さん……」

鈴音「だっての……？」

シャル「ふぁ……」

ラウラ「むぅ、変わるものだな……」

　そして溜息を付く、牧瀬紅莉栖。
　その視線はメインモニターに映った岡部ではなく、サブモニターに映っている客席の方を追っていた。

紅莉栖「（ダメだ、コレはダメだ。絶対に岡部の評価が変わる……）」

196 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 17:41:49.39 ID:q2oGiT3Eo

薫子「……」

　実況を忘れて、岡部に魅入られる薫子。
　彼女もまた高校２年生の女子である。

　目の前に現れた、この世ざる雰囲気を纏う男を前にして言葉を失っていた。

岡部「良い月だな──人狼よ」

一夏「っ！」

　岡部の口が開く。
　人狼と言うのは、一夏を指しているようだった。

　“即興劇”-エチュード-の始まりである。

197 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 17:42:16.28 ID:q2oGiT3Eo

岡部「“不死者”-ノスフェラトゥ-である、吸血鬼と人狼。さて、どちらが種族として上かな？」

一夏「さぁね、興味無いな」

　──ここか。

　ここから即興劇をやれって言うのかよ。
　台本って言ったって台詞なんて無かったし、キャラクターの説明？

　そんだけ見てもなぁ……なぁ、凶真。
　何でお前はそんなにスラスラと台詞が浮かんで来るんだ？

　心の内で、一夏が岡部に語りかける。
　演劇などやったこともない一夏にとって、羞恥心を完全に拭えないままのエチュードはかなりの無茶振りと言えた。

198 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 17:43:00.92 ID:q2oGiT3Eo

岡部「牙を出せ！　爪を立てろ！　吼えろ人狼！　貴様にはソレしか能が無いだろう──」

　──シュゥン！！

　右手から“サイリウム・セーバー”のみを部分展開する。
　赤く発光した剣は今でこそ、その神秘性が生きたと言える。

一夏「（なるほど！）あぁ、良いぜ……見せてやるよ、俺の爪を！！」

　──シュゥン！！

　負けじと一夏も左手を部分展開。
　“雪羅”をクローモードにし、狼の爪に見立てる。

199 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 17:43:27.35 ID:q2oGiT3Eo

岡部「良いぞ、人狼。解ってるじゃないか。そう──我々は爪と牙と刃で物を語れば良いのだ」

　──ふわり。

　またもや重力を忘れたかのような動きで十字架から飛び立つ岡部。
　ばさばさと外套が揺れる。
　その一挙手一投足が会場に居る全員の心を魅了していた。
　
　まゆりの作った仮装──コスプレの完成度。
　メイクにより、らしさを演出した顔立ち。

　髭なども一切無く、一部の女子が口にしていた不清潔さなど何処にも無い。
　漂うのは高潔なる雰囲気のみだった。

200 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 17:43:59.48 ID:q2oGiT3Eo

岡部「……」

一夏「……」

　相対する２体の怪物。
　丘の上から見下ろす形で吸血鬼が人狼を見つめていた。

　──ガギィィン！！

　先に動いたのは吸血鬼だった。
　丘を駆け下り、一閃。その刃を人狼へと振り下ろす。

　その刃をクローで受け止める人狼。
　そのままギリギリと鍔迫り合いのような形にもつれ込む。

201 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 17:44:28.06 ID:q2oGiT3Eo

岡部「フゥハハハ！！」

一夏「ぐぅぅっ……！」

　──キンッ！！

　力で吸血鬼の刀剣を振り払う。
　バランスを崩したところへ、クローによる薙ぎ払いを吸血鬼へとお見舞いする。

岡部「くくくっ！」

　──ふわり。

　またもやPICにより、空間をつくり攻撃を避ける岡部。
　完全にPIC操作を会得している。

　その精密度は国家を代表する楯無と同等と言えるレベルであった。

202 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 17:44:55.27 ID:q2oGiT3Eo

一夏「うおぉぉぉぉ！！」

岡部「ふぅーははは！！」

　──キンキンッ！　ガギッ。

　剣と爪が弾き合う。
　勿論、お互い体に刃を当てるつもりはない。

　お互いが攻撃を狙う箇所は事前に決められており、攻撃を狙う箇所も刃を刃に当てられるよう武器が主だったターゲットであった。

岡部「どうしたどうした人狼！　ヴァラヴォルフ！　ライカンスロープ！　不死者よその程度か！」

一夏「くぅ……！！」

203 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 17:45:38.50 ID:q2oGiT3Eo

　台詞に詰まる一夏。
　まるで、返す言葉が出てこない。

　それに引き換え岡部は完全にエンジンがかかっていた。
　鳳凰院凶真をも越えるようなテンションである。

　仮装──コスプレには不思議な力がある。
　自分ではない自分。

　そう言ったものを曝け出す不思議な力。
　今、岡部にはそう言った不思議な作用が良い悪いは別として作用していた。

204 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 17:46:11.95 ID:q2oGiT3Eo

一夏「くそっ……！」

　劇である以上、台詞が出てこなければ迂闊に攻め入る事が出来ない。
　エチュードでは発言出来ない者、行動を起こせない者は弱者であり脇役に成り下がる。

　そしてこの舞台の主役は完全に岡部であった。

　ヒュ────ッッッッパ！！

一夏「！！！」

　台詞に詰まった一夏の隙を逃すことなく、捉えた岡部。
　右腕の“サイリウム・セーバー”を解除し、懐へと飛び込んだ。

　驚き飛びのこうとした一夏であったが、手遅れと言わんばかりに岡部の両腕が一夏の両手首を掴んでいる。

205 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 17:46:43.27 ID:q2oGiT3Eo

一夏「なっ──」

岡部「捕まえた──」

一夏「なっ、ぐっ！」

　一夏も“雪羅”の展開を解き掴まれた手首を開放しようともがく。
　けれど岡部はそれを許さなかった。

岡部「私はお前を──捕まえた」

206 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 17:47:10.98 ID:q2oGiT3Eo

　開かれる犬歯だらけの口腔。
　ギザギザに尖った、その牙を一夏の首元に突き立てる。

　──ザンッッ！！

　もう間もなく、もう間もなく牙が首筋に触れようかという時。
　ディスプレイに映し出されていた満月が引き裂かれた。

　映像演出であることは間違いない。
　間違いないが、引き裂かれた満月の向こうから歩いてくる人物を伺うと、ソレが出来てしまうだろうと会場に居る全員がそう思った。

207 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 17:47:36.52 ID:q2oGiT3Eo

　カツカツと、音を鳴らし丘の上へと歩みを進める。
　突き刺さった鉄製の十字架を難なく持ち上げ肩に担ぐ。

　────やれやれ、出来の悪い弟を劇の中でも助けなきゃならんとはな。

　“織斑千冬”
　狼女──満を持しての登場だった。

　*参考画像
　http://kie.nu/.1ZC
　http://kie.nu/.1ZD

208 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 17:48:07.31 ID:q2oGiT3Eo

　会場は岡部の登場からこっち、沈黙を守り未だ声を上げる者は居ない。
　数十分前までのアクシデントあり、和みあり、美麗さありのハロゥイン仮装大会とは全く別種の催し物へと変化していた。

劇部部長「最高、最高に面白い……あぁもう！　IS使った劇したいなぁもう！　なんで私は専用機もって無いのよ！！」

劇部員「部長。織斑先生は生身ですよ」

劇部部長「１００キロ近い鉄の十字架を片手で持ち上げる人間は、生身とは言えないでしょ」

劇部員「です……ね。はぁ、先生カッコイイなぁ」

劇部員「って言うかさ、本当にあれ……岡部──さん？」

劇部員「カッコ良過ぎてやばいんだけど……なに、俳優さん？」

劇部部長「エチュードであの台詞回し出来るってどこかで、舞台経験積んだりしてたのかしら……」

209 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 17:48:28.61 ID:q2oGiT3Eo

　舞台裏では、演劇部部長と部員達がヒソヒソ声で自分達の演出した劇を悦に浸りながら観戦している。
　彼女等にも結末は解らない。

　何故ならコレは即興劇。
　エチュードであるのだから。

紅莉栖「うーうー……」

　岡部の登場から、一向に落ち着きを取り戻せないで居る紅莉栖。
　不思議に思ったのか、首を傾げながらまゆりが声をかけた。

210 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 17:48:56.52 ID:q2oGiT3Eo

まゆり「紅莉栖ちゃんどうしたの？　オカリンすっごくカッコイイよ？　見ないの？」　

紅莉栖「えっ、あっ、うん……そうね、何時ものアイツとはちょっと違うわね……」

まゆり「ちょっとどころじゃないよー！　凄くカッコ良い、イケメンさんになっちゃったのです。
　　　　　これも紅莉栖ちゃんのメイクのお陰だね」

紅莉栖「まゆりの衣装のお陰よ……」

まゆり「えへへ」

　一向に晴れない、紅莉栖の胸の内にあるもやもや。
　今回、この劇により岡部の人気はうなぎ登りに跳ね上がるだろう。

　暴騰すると言って良い。
　そうすればうら若き女子高生達が、岡部の元へとわらわら集まってくる。

211 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 17:49:47.97 ID:q2oGiT3Eo

紅莉栖「（ぐぬぬぬ……！！）」

　言い知れぬ不安が込みあがり、画面を見る余裕など今の紅莉栖には無かった。
　
　まゆりは自分の作った作品を岡部が着ている。
　そしてそれが、大変似合っていることに感激して目を輝かせていた。

紅莉栖「（良いのまゆり！？　岡部、人気出ちゃうのよ……？）」

　何時もならドン引き必須の中二病邪気眼まで、スパイスとなり岡部を引き立てている。
　何もかもが、岡部の味方へと変貌していくハロウィン。

　誰も彼もが劇を楽しんでいる最中、牧瀬紅莉栖だけがその後の心配を大きく膨らませていた。

212 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 17:50:37.12 ID:q2oGiT3Eo

おわーり！

ちょっと長かった。
今日もありがとうございました。

213 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋) [sage]：2011/11/19(土) 17:51:42.18 ID:Zb4Ny6bzo

うおおおおおおおおおお！
めちゃくちゃよかったぜ！！
おかりんかっこよすぎだし千冬さんやばすぎるううううううううう！！！！！！！

214 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(不明なsoftbank) [sage]：2011/11/19(土) 17:52:22.17 ID:xZiGX+yvo

乙乙！

215 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) [sage]：2011/11/19(土) 17:52:51.37 ID:T0sTF+g20

乙でした。
ＳＳでドキドキしたのは初めてだ！

216 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(鹿児島県) [sage]：2011/11/19(土) 17:52:58.22 ID:wkOmGyAwo

流石オカリン！
俺たちにできないことを平然とやってのける！！
そこに痺れる憧れるぅ！

217 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(広島県) [sage]：2011/11/19(土) 17:53:35.68 ID:tO/CW1QPo

おつんつん
アーカードか！
続きが気になるのう

218 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/19(土) 17:59:18.15 ID:NLuXRzuvP

乙！！
オカリンの声で難なく再生できたｗｗｗｗｗｗ
しかし千冬姉が狼女ってことは、ボコられそうな悪寒ｗｗｗｗｗｗ
続きたのしみすぐる！

219 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/19(土) 18:47:54.85 ID:xq0Ozxi0o

アーカードの旦那コスとか絶対似合うだろ…

220 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/19(土) 19:19:59.15 ID:JeTY+N/SO

乙
　　　_, ,_
　（; ´Д｀）ﾖｯｼｬｰ!
　/ヽ_ｧ/ヽ_ｧ
　）　　）

非常によかった。もう一度読んでくる！助手がヤキモキしてるのがたまらん

221 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/19(土) 19:50:47.62 ID:YW6ZgAxO0

ｷﾀ━━━━(ﾟ∀ﾟ)━━━━!!!!
オカリンまじかっけぇよオカリン！
モヤモヤ紅莉栖可愛いよ紅莉栖。
ってか一夏ワイルドハーフかよｗｗ

222 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]：2011/11/19(土) 19:51:34.99 ID:qTgfikSp0

乙　
オカリンこういうの得意そうだよね

223 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋) [sage]：2011/11/19(土) 20:03:32.08 ID:x0GmY+uQo

オカリンは十年近くまゆりのために中二を演じてたから即興劇は得意だろうｗｗｗｗｗｗ
ただし後から後から設定が追加されると苦手だけどｗｗｗｗｗｗ
乙

224 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(鹿児島県) [sage]：2011/11/19(土) 20:19:53.59 ID:xgdrfA9Ho

オカリンマジかっけーっす

225 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/19(土) 20:33:32.79 ID:rXTqWtzIO

オカリンさんマジオカリンさんだ！

226 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 20:36:02.71 ID:q2oGiT3Eo

日曜日なのでもう1回更新にきまう。

今、全てを合わせると約２６万字を突破しようとしています。
ライトノベルに換算すると種類にもよりますが２冊分程度でしょうか。
２冊にまとまらないって、どんだけ膨らませてるんだって突っ込みを自分に入れたくなりました……。

227 ： ◆H7NlgNe7hg [sage]：2011/11/19(土) 20:40:38.80 ID:q2oGiT3Eo

土曜日だった……。

228 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(鹿児島県) [sage]：2011/11/19(土) 20:44:17.41 ID:wkOmGyAwo

わーい

229 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/19(土) 20:45:01.52 ID:sbF8tLRIO

>>226
毎日が日よ…ごめん何でもない。
すげー楽しみにしてる。このまま一年くらい続いてても全く問題ない。

230 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/19(土) 20:56:32.43 ID:9Eb0+lESO

>>227

土曜日にもう一度、日曜にも投下すれば嘘にはならない(ﾁﾗｯﾁﾗｯ

231 ： ◆H7NlgNe7hg [sage]：2011/11/19(土) 20:56:51.32 ID:q2oGiT3Eo

往きます。

232 ： ◆H7NlgNe7hg [sage]：2011/11/19(土) 20:57:45.00 ID:q2oGiT3Eo

>>211　　続き。

　会場中が息を呑んだ。
　実況である黛薫子も、暫く声を発せ無いでいる。

　紫色に光る鋭い眼光。
　白銀の長髪に、赤い体毛のような衣装。

　尻尾や耳を付けてはいるが、ソレは狼など生易しいモノでは無い。
　もっと恐ろしい、十字架を背負った悪魔だった。

233 ： ◆H7NlgNe7hg [sage]：2011/11/19(土) 20:58:13.42 ID:q2oGiT3Eo

一夏「ち、千冬姉……」

千冬「おう」

　──ブン！！

　十字架を振り回し、先端を岡部に向ける。
　元々手に納まるサイズではない十字架。

　千冬はそれを握力で持ってしてひしゃげ、そのまま握っていた。

千冬「吸血鬼……だったか？　弟を返して貰うぞ」

岡部「何処までも野蛮な種族だ」

234 ： ◆H7NlgNe7hg [sage]：2011/11/19(土) 20:58:41.32 ID:q2oGiT3Eo

　拘束していた一夏を解き放ち、千冬に向き直る岡部。
　既に一夏は眼中に無かった。

　勝敗は既に決してある。
　一夏は役者として岡部に負けたのだ。

　いまさら、千冬と岡部の間に割って入ろうとするほど空気の読めない男ではない。
　いそいそと千冬の後ろへと逃げていく。

一夏「悪い、千冬姉。勝てなかった……」

235 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 20:59:14.11 ID:q2oGiT3Eo

　目を伏せて、視線を合わせずにいる。
　そんな弟を見て、姉は溜息を1つ吐き。

　──ゴンッ。

一夏「あだっ」

千冬「後は任せろ」

　優しく、励ましの拳骨をくれてやり天敵である吸血鬼の元へと歩み寄って行った。
　不器用な、姉なりの精一杯の励ましであることを一夏は理解している。

236 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 20:59:37.26 ID:q2oGiT3Eo

千冬「待たせたな」

岡部「ククク、ネコじゃらしが必要か？」

　──ブォン！

　鼻先数寸を十字架が掠める。

千冬「武器を出したほうが身のためだぞ？」

岡部「（……こ、この女……いま本気で振らなかったか？）」

　芝居により、過剰に分泌されたアドレナリンのお陰で役になりきっている岡部でさえ、今の一振りは素に引き戻すに充分な威力が見込めた。
　咄嗟に“サイリウム・セーバー”を再展開する。

237 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 21:00:04.93 ID:q2oGiT3Eo

千冬「課外授業だ。どうせだから見極めてやろう」

岡部「戯言を……」

　──ブォン！！

　幾ら鋼鉄で出来ている十字架とは言え、武器ではない。
　エネルギー供給がされていない、ノーマル状態の“サイリウム・セーバー”でも切り裂く事は可能である。

　岡部は武器破壊を狙い、早々に決着を付けるつもりでいた。

238 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 21:00:45.78 ID:q2oGiT3Eo

　──チュィン！

岡部「……っ！？」

　──チュィンッ！

　何度剣を振ろうが、その刃が十字架を切り裂く事は無かった。
　“サイリウム・セーバー”の軌道に合わせて、十字架を乱暴に殴り放つ。

　完全に千冬が後出しジャンケンの格好になっているにも関わらず、剣速は同等。
　もしくは千冬が若干勝っているほどだった。

239 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 21:01:13.26 ID:q2oGiT3Eo

千冬「どうした、吸血鬼。表情が優れないぞ」

岡部「──っ」

　生身であるはずの千冬が、パワーアシストも何も無い状態で力・速度で岡部に勝っている。
　考えられないレベルの出来事だが、これこそが世界最強に君臨した覇者。

　織斑千冬であった。

岡部「ッチ」

　舌打ちをして、後方へと仰け反る岡部。
　その際もPICを使用し、まるで本当の吸血鬼のような身軽さで距離を取った。

240 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 21:01:40.50 ID:q2oGiT3Eo

千冬「（やはり──コイツ、ISの精密操作が極端に上手い……）」

　直接、剣を交えて理解出来る岡部の操縦術。
　部分展開は勿論、機能のみを効率よく使用している。

　熟練のIS操縦者が激しい訓練の後、至る境地へと僅か１ヶ月で到達している。
　これも“篠ノ之束”が用意した最新のISだからこなせる技なのかと。

　そうでなければ説明が付かなかった。

241 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 21:02:12.98 ID:q2oGiT3Eo

千冬「（まぁ良い）」

岡部「（化物女め……どうする。どう切り抜ける……）」

千冬「良し。茶番は終りにするぞ。岡部──絶対防御は生きているな？」

岡部「ぬ？」

　──ブォン！

　めきめきと、千冬の腕に力が入るのが見て取れる。
　十字架……鉄塊を担ぎ直し思い切り振りかぶる。

242 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 21:03:00.21 ID:q2oGiT3Eo

千冬「終りだ──」

　豪ッッ！！！！

　健脚を爆発させた千冬は、一瞬にして距離を０にし岡部に接近する。
　岡部はその千冬の行動に反応出来て居ない。

岡部「──しまっ」

　──キーンコーンカーンコーン。

　鉄塊が振り下ろされそうになった、刹那。
　この場に似つかわしくない間抜けなチャイムがIS学園中に駆け巡る。

243 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 21:03:32.06 ID:q2oGiT3Eo

　ピタリ、と岡部の眼前で止まる鉄塊。
　あわや直撃と言ったところだった。

岡部「なっ……」

千冬「む。もう時間だな。実況、仕事をしろ」

　どんと、十字架を逆十字に壇上へ突き刺し薫子に指示を送る。
　今鳴ったチャイム音は終りの時間を合図していた。

薫子「えっ──あっ、はい！　もうこんな時間！？」

244 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 21:04:42.35 ID:q2oGiT3Eo

　戦闘エチュードに見とれていた実況が、我に返る。
　タイムスケジュールを見ると、本来ならとっくに集計が終り１位を発表、解散している時間になっていた。

千冬「想定していたよりも、時間がかかったようだな。私も些か遊びが過ぎたようだ。黛、取りあえず場を締めろ」

薫子「──はっ、はい！　えーっと、これにより仮装披露の全工程が終了しました────」

　言葉が詰まる薫子。
　この後に集計して、順位を発表するような時間を取って良いのかを独断では決められなかった。

　ふぅ、と溜息を吐き千冬がマイクを取り上げる。

245 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 21:05:11.82 ID:q2oGiT3Eo

千冬「今言った通りだ。時間が予定よりも押してしまった。体育館が使えるのは後３０分も無い。
　　　　その後は部活動で使うからな、生徒は自分が座っていた椅子を仕舞い解散。投票はデバイスから行え、準備の発表は──おい、生徒会長」

楯無「はいはーい」

　舞台袖で楯無が観戦していたのを知っていた千冬は、マイクを楯無に放る。　　
　後は生徒会長の仕事だと言わんばかりに、自らは黙って壇上を降り控え室へと向かって行った。

楯無「はーい、皆さんお疲れ様でした。最後は凄かったねー、ちょっと吃驚しちゃった。
　　　　投票・発表・表彰、と全部やりたかったけれど時間も無いみたいだからその機会はまた今度に」

246 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 21:05:38.81 ID:q2oGiT3Eo

　１位から３位の発表は後ほど、クラスの掲示板と各自のデバイスに送信します。

　それだけ言うと楯無も、解散！　と大きく言い放ち全てを終わらせた。
　ぞろぞろと自分の椅子を片付けて、自室へと帰っていく女子達。

　その中には、まるで放心したような状態の女子も少なくない。
　良質な映画を一本見終わった後のような感覚に浸る者も居た。

　岡部や一夏、仮装出演者達はと言うと──。

岡部「……」

一夏「……」

　疲れと緊張の糸が切れたせいか、その場にへたって座り込んでいる。

247 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 21:06:05.27 ID:q2oGiT3Eo

岡部「……疲れた、な」

一夏「あぁ……」

　疲れた。
　この一言が今回の仮装大会の全てを物語っていた。

　全ての後片付けを生徒会役員及び、仮装参加者及び、劇団員。
　総勢３０名程の人員で一気に片付ける。

　こうして、岡部倫太郎と牧瀬紅莉栖がIS学園に転入し始めて参加したイベント。
　“はろ☆いん　仮装大会”は幕を閉じた。

248 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 21:06:32.66 ID:q2oGiT3Eo

　集計の結果１位を飾ったのは岡部倫太郎となった。
　その得点は圧倒的で、２位である織斑千冬を２倍近く引き離しての大勝利である。

　IS学園に転入してから初めての勝利が“仮装”であったことを知るのは打ち上げの後。
　翌日の事であった。

　明日は日曜日。
　一夏の家へ集まり、打ち上げをしようと提案したのは更織楯無であった。
　
　

249 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/19(土) 21:08:06.07 ID:q2oGiT3Eo

おわーりおわーり。

やっとハロウィンが終わった……。
一体何日前にハロウィンがあったんだかと。

これで多分、全体の6/10位は消化出来たかと思います。
ちょっとずつゴールが見えてきました。

本日もありがとうございました。
外は雨だからSSでも読んでまったり土曜日を過ごすと良いと思うんだ。

250 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/19(土) 21:09:47.96 ID:KFm6+yCp0

乙！
こんなにもワクワクしながら読んだのは久しぶりですな！
原作ェ

251 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/19(土) 21:18:51.41 ID:0UtU2MpIO

乙！
オカリン一位とかマジぱねぇっす

252 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]：2011/11/19(土) 21:20:35.03 ID:K2Cx7/eWo

これで6/10か。どう終わるのか楽しみだ。乙！

253 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) [sage]：2011/11/19(土) 21:23:01.36 ID:zzsEuO8po

オカリンはやっぱり厨二が映えるな、もはや厨二を通り越してカッコイイ…となるレベル。
VPの大魔法とか暗記していたと見たｗｗ

254 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/19(土) 21:31:59.85 ID:Zw7erwgto

2が落ちてたー
みてくるー
一乙

255 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/19(土) 21:32:47.26 ID:QI9wjIhIO

乙乙

まとめて冬コミで売ってれたら余裕で買いに行くレベルだよ…

256 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]：2011/11/19(土) 21:34:37.34 ID:thtRz8jto

乙
６／１００でもいいんだぜ？

257 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/19(土) 21:54:02.87 ID:Zw7erwgto

あれ、まだhtmlしてないのかな……

258 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/19(土) 21:54:49.02 ID:/BIycl4DO

いい、ハロウィンだった

259 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/19(土) 22:04:09.33 ID:28IG64SS0

乙
いやいや6／1000でもいいんだぜ？

260 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/19(土) 22:24:41.71 ID:Wtx9/Aiuo

女子高生に言い寄られてる岡部を見て顔真っ赤な助手を早く

261 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) ：2011/11/19(土) 23:20:48.15 ID:CHq+PsIv0

6/10でこれか
ぱねぇな

なんかこれ、マンガ家や動画化していいレベルじゃん

262 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/20(日) 00:02:32.79 ID:Le+wDBpIO

オカリンまじかっけぇ…

263 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東海) [sage]：2011/11/20(日) 02:53:10.04 ID:P0ocLYxAO

…あれ、簪の反応がなかったような…

264 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/20(日) 03:30:18.09 ID:aUjMU6sIO

オカリン△
そこにシビれる憧れるぅ！

265 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]：2011/11/20(日) 03:37:30.39 ID:QmZ2BPHw0

これは金払っても良いレベルだわ
にしても千冬相変わらず姉化け物過ぎるｗｗ

266 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/20(日) 05:12:20.48 ID:qcC70VfFo

オカリン×一夏だな

267 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/20(日) 07:26:59.31 ID:KIkKuD3Ao

>>1です。
おはようございます。
大したお話でもないし、さくりと投下してしまいます。

>>263
簪……ごめんねごめんね。

268 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/20(日) 07:27:40.60 ID:KIkKuD3Ao

往きます。

269 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/20(日) 07:28:15.63 ID:KIkKuD3Ao

>>248　　続き。

　─織斑家─

一夏「────で、楯無さん。何で俺の家になったんですか？」

楯無「え？　だって、打ち上げしたいじゃない？」

　何当然の事を言っているの？　と首を傾げながら一夏の作った料理を頬張る楯無。
　パーティー料理用にと作っているメインの１つ、油淋鶏である。

　甘酸っぱい味付けが食欲をそそる一品だった。

270 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/20(日) 07:28:53.02 ID:KIkKuD3Ao

鈴音「何よ、一夏。中華なんて作っちゃって。ん、美味しい」

　横から鈴音が飛び出し、油淋鶏を口の中に放り込む。
　お墨付きが出た。

　織斑家には現在、かなりの人間が集合していた。
　状況を整理してみる。

　何時もの面々……一夏、箒、セシリア、鈴音、シャル、ラウラ。
　岡部に紅莉栖。

　楯無、簪、まゆりの計１１人。

271 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/20(日) 07:29:24.28 ID:KIkKuD3Ao

　虚や本音は生徒会の仕事をこなしたいという事で欠席になっている。
　本音は本番中眠りこけて居たため、罰として虚に事務仕事を強制させられていた。

　実況を担当した薫子は、隠し撮りしていた写真の現像等で大忙しらしい。

楯無「つまり、仮装をした人間だけの打ち上げってことね♪　んー美味し。一夏くん料理上手ねぇ」

　次に箸をつけたのは肉じゃがだった。
　圧力鍋で調理したので、味が良く染み込み口の中でジャガイモがほろほろと溶けていく。

272 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/20(日) 07:29:51.92 ID:KIkKuD3Ao

一夏「つまみ食いばかりしてないで手伝って下さいよ、箸並べたり」　　
　
　キッチンには一夏と、シャルロットの２人が居た。
　家主である一夏が皆を接待するのは当然として、シャルロットは料理部として手伝うことになっていた。

　箒やセシリア、鈴音とラウラも手伝うと聞かなかったがソコは狭いキッチンである。
　なんとか一夏が場を治め今に至っていた。

　特に──。

紅莉栖「私も手伝おうか？」

セシリア「わたくしもお手伝いいたしますわ！」

まゆり「まゆしぃも手伝うよー！」

273 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/20(日) 07:30:14.37 ID:KIkKuD3Ao

　この３人が口を開けたときの一夏の必死さと来たら、相当なものであった。
　岡部はその台詞を聞いた途端、家から逃げ出そうとした始末である。

　特に、まゆりの料理の腕など一夏が知る由も無いはずだが、それは岡部の表情が全てを物語っていた。
　
一夏「はいはい。楯無さんもあっちでゲームしてて下さいよ」

楯無「ぶー、つまんなーい」

シャル「一夏、クロケットが揚がったよ」

一夏「おー、美味そうだな！　フランスのコロッケだよな？」

シャル「うん。小さい頃よくママと作ったなぁ」

274 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/20(日) 07:30:50.05 ID:KIkKuD3Ao

　仲良く料理を作る２人。
　その２人にじっとりとした視線が絡みつく。

箒「ぬう……」

セシリア「わたくしだって……」

鈴音「楽しそうね……」

ラウラ「シャルロットめ、やるな……」

簪「……良い、なぁ」　

まゆり「次は箒ちゃん達の番だよー」

　ガールズ達の視線がキッチンへ集中する中、まゆりの声が箒を振り向かせる。

275 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/20(日) 07:31:25.45 ID:KIkKuD3Ao

箒「あっ、はい」

　プレイしているゲームは“桃太郎電鉄”だった。
　埃を被っていたスーパーファミコンを引っ張り出し、時間潰しのために遊んでいる。

　その為チーム別けも大雑把で適当に楽しんでいた。

箒「えぇっと、５……おっおいラウラ！　どこに進めば良い！」

ラウラ「矢印の出ている方向へ進めば良いのではないか？」

箒「うっ、うむ……む？　目的地？　に到着したぞ」

276 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/20(日) 07:31:56.74 ID:KIkKuD3Ao

　何だかんだとゲームで楽しんでいるうちに、日が暮れてきた。
　夕食の準備は着実に進み、良い香りが立ち込めてくる。

紅莉栖「だっかっら！　なんでそんな無駄な物件買うのよアンタは！　プロ野球チームって馬鹿なの？　アホなの？」

岡部「えぇい！　これは後々必ず役に立つ物件なのだ！」

紅莉栖「２０年しか時間が無いのになんでそんなもん買うのよ！　こつこつ貯めていたのにっ」

岡部「桃鉄で現金を貯める意味など無いだろうがっっ！」

　しばしば言い合いも見られたが、極一部の人間でありそれも決まった２人だったので周囲も気に留めなかった。
　楽しい時間が過ぎる。

277 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/20(日) 07:32:29.10 ID:KIkKuD3Ao

一夏「おーい、飯出来たぞ」

シャル「ご飯にしようよー」

　調理者である一夏とシャルロットが声をかける。
　総勢１１名の食卓。

　リビングにあるテーブルでは足りないので、折りたたみ式の机を出して料理を並べていく。
　グラスにジュースや烏龍茶を注ぎ、全員が着席したのを見計らい楯無が口を開けた。

278 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/20(日) 07:33:01.35 ID:KIkKuD3Ao

楯無「えー、皆さん。お疲れ様でした」

　──お疲れ様でした。

楯無「無事、生徒会主催のイベントを終わらせることが出来ました。コレも一重に皆が協力してくれたお陰ね」

　楯無にしては珍しく、しんみりとした口調で続ける。
　皆も黙って耳を傾けた。

楯無「今年もあと２ヵ月で終わるけれど、精一杯楽しみましょう。お疲れ様、乾杯」

　──乾杯！

　掲げられた１１のグラスが、チンと音を立ててぶつかった。

279 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/20(日) 07:33:36.14 ID:KIkKuD3Ao

岡部「むう……美味いな、ワンサマー」

まゆり「美味しー！」

紅莉栖「これは……負けたわね」

一夏「そうか？　なら良かった」

　一夏の作った料理は概ね好評だった。
　IS学園に入学してからは料理をする機会など無かったが、腕は訛っていない。

280 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/20(日) 07:34:28.96 ID:KIkKuD3Ao

ラウラ「このクロケットも美味いな。ジャガイモの味が良い」

シャル「えへへ、ありがとラウラ」

　シャルロットが作った料理も大変出来が良かった。
　元々料理が好きだった手前、料理部に入部してから更に腕があがっている。

鈴音「（うー、悔しいけどシャルロットの料理って美味しいのよね……）」

箒「（シャルロットめ、また１つ腕を上げたようだ……美味い）」

簪「（料理、出来たほうが……良い、よね……うぅ）」

281 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/20(日) 07:35:14.40 ID:KIkKuD3Ao

　やはり女子である。
　同性のシャルロットが料理の腕を上げていることに危機感を覚えた。

　そして何よりも、自分達より一夏の料理……家事全般のスキルが上である事実に少なからずショックを受ける。
　解っていた事とは言え、やはり女子として悔しいものだった。

　──ピピピピッ。

　突然携帯の受信音が鳴り響く。
　持ち主は楯無だった。

　全員の視線が楯無に集まる。

282 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/20(日) 07:35:43.48 ID:KIkKuD3Ao

楯無「後で虚ちゃんからメールが来るから。仮装の順位が解ったら教えてくれるって♪」

　先ほど楯無が言っていた台詞が瞬時に脳裏をよぎった。
　今の受信音は間違いなく、その結果報告のメールだろうと息を呑む。

楯無「ふむふむ……」

　思わせぶりに頷く楯無。
　乗り出すように、結果を聞こうとするガールズ達。

　一夏と岡部は苦笑いしていた。

283 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/20(日) 07:36:11.22 ID:KIkKuD3Ao

楯無「……あはっ」

　ほんの一瞬、楯無の視線が岡部へと向いた。
　その視線移動に気付いた者は居ない。

楯無「──発表します。第１位は……」

　──ごくり。

　息を呑む音が聞こえそうな程の緊張が走る。
　主に一夏とのデートがかかった箒、セシリア、鈴音、シャルロット、ラウラ、簪から。

284 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/20(日) 07:36:37.64 ID:KIkKuD3Ao

　楯無の口が開く。

　──１位：岡部倫太郎。

　一斉に振り返り、岡部に視線が集まった。
　当人は目を丸くして、口に含んでいたドクトルペッパーをごくんと飲み込んだ。

　笑顔を綻ばせるまゆり。
　頭をかかえる紅莉栖。

　うなだれる６人の女子達。
　岡部の肩を叩き祝福する一夏。

　岡部自身はどう言う態度を取って良いのか計りかねて居るらしく、呆然としていた。

285 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/20(日) 07:37:18.65 ID:KIkKuD3Ao

楯無「２位は千冬センセ。３位は一夏くんだって。それ以降は秘密。あーあ、おねーさんも見事に負けちゃったわね」

箒「か、会長……」

　すごすごと挙手をしたのは箒だった。
　誰もが思っていた疑問を口開く。

箒「この場合、１位の景品はどうなるのですか……？」

　うんうん、と頷く女子一同。
　この景品の為にあのような仮装をしたのだから、当然の疑問だった。

286 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/20(日) 07:38:03.38 ID:KIkKuD3Ao

楯無「うーん、倫ちゃんと一夏くんがデート……？」

岡部「……」

一夏「はは……」

　結局優勝者に商品は無かった。
　変わりに、優勝者特権とし部活への貸し出しを年内パス出来ると言う権利が発行されることになる。

　爆発的に岡部人気が高まる中、生徒会役員なら部活へ貸し出しをしろ！
　と生徒からの要望が激増した。

　織斑一夏が各部活動へ仮出向しているのだから、当然のように岡部倫太郎にもその災厄を降りかかる。
　それを免除出来る名目が出来たのは幸いだった。

287 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/20(日) 07:39:00.08 ID:KIkKuD3Ao

岡部「まぁ良い。これで明日からはまた日常に戻るわけだな」

楯無「あら、そんなこと無いわよ？」

　キョトンとした顔で楯無が即答した。
　やっとテストが終わり、開放された気分の学生に釘を打つかのような物言いで言葉を続ける。

楯無「全学年個人別トーナメント。倫ちゃんも専用機持ちだからしっかりエントリーされてるし、専用機持ちでの技術向上合宿なんてのもあるわ」

岡部「……」

288 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/20(日) 07:39:28.02 ID:KIkKuD3Ao

　やっとイベントを１つ消化出来たと思ったらまだ先があるらしい。
　この学園は、休む事を知らないのか次から次へとイベントを持ってくる。

　日曜日が終われば月曜日。
　こうして岡部倫太郎を取り巻く日常は明日、明後日と続いていく。　　

　この先待ち受ける運命のことなど、誰一人として予感せず楽しい一時を皆で過ごして行った。
　
　
　

289 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/20(日) 07:40:03.82 ID:KIkKuD3Ao

おわーり。

良い日曜日を。

290 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/20(日) 07:41:15.98 ID:ZH9W6nFYo

>>289
乙
オカリンかっこかわいいよオカリン

291 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/20(日) 08:06:21.72 ID:DAVB/6zd0

なんか始まる前にパラダイムシフト置いときますね。
アップローダーは、とりあえずはいつものを使います。

http://wktk.vip2ch.com/dl.php?f=vipper26418.jpg

おまけ：ハロウィンダイジェスト
http://wktk.vip2ch.com/dl.php?f=vipper26419.jpg

おまけのおまけ
http://wktk.vip2ch.com/dl.php?f=vipper26420.jpg

http://wktk.vip2ch.com/dl.php?f=vipper26421.jpg

292 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) [sage]：2011/11/20(日) 08:13:41.74 ID:iNIpBqMAO

いちおつ

牧瀬紅莉栖はメシマズかわいい

293 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋) [sage]：2011/11/20(日) 08:31:27.73 ID:XGn9aq3x0

絵が可愛すぎてヤバイ

294 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]：2011/11/20(日) 08:41:34.40 ID:bL0SM2tKo

>>291
素晴らしいな

295 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/20(日) 08:48:08.36 ID:X+kv5wKIO

>>291
だが待ってほしい。会長の世界線だけが少し違うような気がする。

296 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]：2011/11/20(日) 09:50:16.22 ID:FuZzymTBo

乙

297 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/20(日) 10:49:57.25 ID:nn2cKVNIO

会長は魚になったのだよ

298 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋) [sage]：2011/11/20(日) 11:01:21.92 ID:SZ6eZzWxo

>>291
素晴らしいな
会長に突っ込みたい気もするが

299 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]：2011/11/20(日) 12:59:28.04 ID:liuJW7fI0

>>298
貴様！突っ込みたいのか！？

300 ： ◆H7NlgNe7hg [sage]：2011/11/20(日) 13:36:45.80 ID:KIkKuD3Ao

>>291
ほぁっほぁっ！
ありがとうございますうう！

シャルロットの中の人つながりのオッドアイネタを拾われるとは思いませんでした。
嬉しいでございます。
モッピーも可愛いなぁ……。

301 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(愛知県) [sage]：2011/11/20(日) 14:57:01.37 ID:lDVX5x7Eo

吸血鬼オカリンのバトルシーンは
頭の中でBGMにtechnovisionがかかってたｗｗ

日常でもてもてオカリンにやきもきする助手が早くみたいよ

302 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/20(日) 16:44:17.64 ID:RDu1okfAO

乙！

303 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(不明なsoftbank) [sage]：2011/11/20(日) 22:16:13.39 ID:AlTUh6eqo

今回の『はろ☆いん」偏で何故か思ったんだけど
ルカ子が学園に入学できたなら
一夏やオカリンを抜いて
ぶちっちぎりの一番人気になりそうだなーと思いました

304 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長野県) [sage]：2011/11/20(日) 22:20:52.91 ID:ik/Puq0xo

だが男だ

305 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/20(日) 22:24:50.52 ID:Y9h56MxkP

ルカ子は可愛い男の娘で注目は集めるかもだけど
同性っぽい扱いで盛り上がるだけで
異性としてのルックスを保ってる二人の方が圧倒的に人気高いとおもｗｗ

306 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/20(日) 22:26:56.39 ID:5FGB6HUG0

>>291
ちくしょうちっちゃくて見えねー(;_;)

乙

307 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]：2011/11/20(日) 22:27:47.53 ID:NLO57poW0

乙おーーつ！

>>291のおまけはアレだな。どこからともなく某CIAエィジェントゥ！がシスターの格好して絡んできそうだな。もしくは、おまけらしくチアコス。

308 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/20(日) 23:00:14.90 ID:X+kv5wKIO

>>306
飛び先のダウンロードの横にある「vipper～jpg［新］」ってリンクは押したか？
お前が見ているのはきっとただのサムネイルだ。

そして九尾コスのラウラの嫁は俺な

309 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) ：2011/11/21(月) 00:04:27.85 ID:srS/m7Gq0

ラウラかわいすぎる

>>306
だが俺の嫁でもある

310 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/21(月) 01:32:51.35 ID:XULFLsdIO

ラウラとシャルがかわいすぎワロタ

オカリンマジイケメン

311 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]：2011/11/21(月) 03:42:52.68 ID:1B4fUn+Ho

>>291
千冬さんならロアナプラでも普通にやっていける気がするなぁ

312 ： ◆H7NlgNe7hg [sage]：2011/11/21(月) 05:35:51.07 ID:77Ma8bm7o

よいしょっと。

最近、更新する時間が不定期すぎるなぁと思う>>1です。
添削が終わったら投下しにきます。

313 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [sage]：2011/11/21(月) 05:40:18.33 ID:z9ZHWrdE0

>>1キター！

舞ってるぜ

314 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/21(月) 05:46:35.47 ID:77Ma8bm7o

>>313
な　ぜ　起　き　て　い　る　！

往きます。

315 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/21(月) 05:47:06.30 ID:77Ma8bm7o

>>288　　続き。

　ハロウィン仮装大会の翌々日。
　つまり１１月２日、月曜日。

　何時ものように、何時もの面子で食事をしていると異変が起きた。

女生徒「あっ、あの──これ読んで下さいっっ！」

　そう言って、可愛い便箋を岡部に手渡す少女。
　顔は羞恥の為か真っ赤に染まっていた。

316 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/21(月) 05:47:30.27 ID:77Ma8bm7o

岡部「……」

　何が何だか解らないと言った表情でソレを受け取る岡部。
　女生徒は便箋を渡すと、脱兎の如く駆け出して行った。

岡部「これは……」

　マジマジと便箋を見つめる岡部。
　明かりに透かして中身を見ようとする仕草を見せる。

一夏「手紙か何かじゃないのか？」

　隣に座っていた一夏が答える。
　しかし、岡部は首を傾げながら答えた。

317 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/21(月) 05:47:57.39 ID:77Ma8bm7o

岡部「いや、あのような知り合いは俺に居ない……とすると……」

　──パキッ。

　対面で牛丼を食べていた紅莉栖の割り箸が割れる。
　顔は俯いていた。

岡部「──まっ、まさか……」

　ハッとし声を上げる。
　紅莉栖の方面からギリッと言う音が響いた。

318 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/21(月) 05:48:37.48 ID:77Ma8bm7o

岡部「解ったぞ……」

紅莉栖「（ぐぐぐ……）」

一夏「？」

箒「ただの手紙だろう？」

セシリア「一体どうしたんですの？」

鈴音「中身見れば直ぐに解るじゃない」

シャル「あ……あはは」

ラウラ「？？？」

319 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/21(月) 05:48:59.83 ID:77Ma8bm7o

　一同が岡部の言動を見守る。
　ちなみに、簪も折角だから朝食をと誘ったが元々が照れ屋な性格からか食堂へ来る事は無かった。

　やっぱり購買パンの方が好きなのかなぁ。と一夏は右斜め上の思考をしている。

岡部「恐らく──仮装大会で俺が優勝したことによる──」

紅莉栖「……」

岡部「妬みに違いない」

紅莉栖「──は？」

岡部「仮に、サウザンスノウ派とでも言っておこう──が、１位を取った俺に腹を立てた。
　　　　そして俺にこの……くわぃみそり入りの手紙を……」

320 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/21(月) 05:49:32.05 ID:77Ma8bm7o

一夏「なっ、まさか！」

箒「剃刀がその中に入っていると言うのか？」

岡部「うむ……勘だが恐らくな。でなければ俺が手紙を貰うような理由は無い」

セシリア「確かに。手紙を渡して来た方の様子は尋常じゃなかったですし……」

鈴音「そわそわしてるって言うか、顔も真っ赤だったわよね」

シャル「いやぁ、それって……」

ラウラ「破壊工作員としては三流もいいところだな。顔に出すぎている」

321 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/21(月) 05:49:59.16 ID:77Ma8bm7o

　壮大に勘違いする面々。
　唐変木である一夏は元より。

　岡部もこのような事態を経験したことは無い。
　自分に真っ直ぐ好意を送る行為。

　仮に真正面から告白を受けたところで、今の岡部は罰ゲームか何かだと解釈するだろう。

岡部「もしくは……俺に怪我をして欲しいどこぞの国のエィジェンツ……と言ったところか」

紅莉栖「（何なのこの馬鹿は……）」

シャル「（うーん、教えてあげた方が良いのかなぁ。でも紅莉栖の表情が芳しくないよね……）」

322 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/21(月) 05:50:26.13 ID:77Ma8bm7o

　渡された便箋。
　それがラブレターである事を認識していたのは、紅莉栖とシャルロットだけであった。

　岡部の勘違いに宛てられて、他の女子面子もそのラブレターが良くない物と思い始めている。

ラウラ「倫太郎。爆発物である可能性は無いのか？」

一夏「ばくっ！？」

岡部「この薄さだ。その可能性は低いだろう」

鈴音「ちょっとちょっと、物騒な話ししないでよ」

セシリア「いえ──まんざら在り得ない話しではありませんわ」

ラウラ「あぁ。我々は常に行動を共にしている。それはつまり、各国の代表候補生がひとかたまりに居るという事だ」

323 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/21(月) 05:50:52.27 ID:77Ma8bm7o

箒「……専用機持ちを一撃の下、屠ることが出来ると？」

ラウラ「各国諜報機関や、企業などがそのような強硬手段を取るとは考えにくい……が、可能性としては在りうる」

セシリア「万が一。と言う言葉がございますし」

　──ごくり。

　岡部の手元に視線が集まる。
　紅莉栖はどうしたものかと表情を作り、シャルロットは乾いた笑みをこぼしていた。

324 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/21(月) 05:51:18.81 ID:77Ma8bm7o

岡部「ふむ……どうしたものか」

　岡部の顔は真剣そのものであった。
　ふざけている様子は微塵も感じられない。

　本当に、ラブレターであるとは思っておらず何かしらの嫌がらせかそれに準じた物だと考えている。

紅莉栖「……私が処理しておいてあげるから貸しなさい」

シャル「（えっ！　良いの？　紅莉栖……）」

325 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/21(月) 05:51:46.00 ID:77Ma8bm7o

　その言葉に一番驚いたのはシャルロットだった。
　紅莉栖はその手紙が何なのかを理解している。

　それを処分するという事は、他人の思いを踏み躙ると言う行為に当てはまる。
　シャルロットは紅莉栖がそのような事をする人間とは思えなかったので、驚いた表情を作った。

岡部「む──そうか、爆発の恐れは無いが手を切る心配がある。気をつけてな」

紅莉栖「了解。教室に行く前に処分するから先に行くわね──あっ、シャルロット。もし良かったら付いて来てくれない？」

シャル「えっ、僕？」

紅莉栖「えぇ。良かったらだけど」

326 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/21(月) 05:52:13.10 ID:77Ma8bm7o

シャル「……うっ、うん！　じゃぁ紅莉栖に付いていくからお先にね」

ラウラ「シャルロット。私も付いて行こう」

　立ち上がるシャルロットに続こうとラウラも席を立とうとする。
　危険が及ぶ可能性を考えて付いて行こうとするラウラの気持ちは嬉しかったが、素直に受け入れる訳には行かない。

シャル「ありがとラウラ。でも大丈夫、すぐ済ませてくるから。ね？」

ラウラ「そうか、解った」

　素直に聞き入れ、椅子に着席しなおす。
　ラウラにはこう言った素直さがあった。

327 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/21(月) 05:52:39.55 ID:77Ma8bm7o

シャル「お待たせ。じゃぁ行こっか」

　食堂を出て行く２人。
　向かう先は紅莉栖の自室だった。

一夏「それにしても、怖いな。剃刀入りの手紙か」

箒「手先でも切り裂ければ良い、と考えてのことだろうか」

岡部「１位を取った事により、少なからず名前が出てしまったからな……厄介なことだ」

鈴音「アンタは男子ってだけで相当知名度はあったけどね」

セシリア「御自分では理解していらっしゃらないようですけれど」

ラウラ「今回の件で、一夏同様に倫太郎もより一層自分の身を守る術を身に付けねばな」

328 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/21(月) 05:53:12.18 ID:77Ma8bm7o

　見当違いの話しで盛り上がる一同。
　食後のブラックコーヒーを啜りながら、岡部の脳裏に疑問が過ぎった。

岡部「（はて──助手は何故、雑務など自分から引き受けたのだ？）」

　この疑問が解決する事は無い。
　岡部には到底理解出来ない、乙女心だった。

329 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/21(月) 05:53:41.09 ID:77Ma8bm7o

　─セシリア・紅莉栖部屋─

　部屋は相変わらず、セシリアの豪華なベッドや調度品で溢れていた。
　紅莉栖の荷物は少量の着替えと、書籍類だけとIS学園に来てからも娯楽品などは増えていない。

紅莉栖「ふぅ……あっ、適当に腰かけてね」

シャル「うん。ありがと」

　紅莉栖は自分のベッドに腰をかけ、シャルロットは椅子に腰を下ろした。
　暫くの沈黙が続く。

330 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/21(月) 05:54:21.54 ID:77Ma8bm7o

シャル「あの────」

　沈黙に耐えかねたシャルロットの口が開く。
　と、同時にアクションを起こしたのは紅莉栖だった。

紅莉栖「～～～～っっ！！」

　いきなりベッドに顔を押し付け、ジタバタともがき始める。
　足をバタつかせ、声にならない叫び声を発していた。

　終いには枕を被り、ぐりぐりと頭を動かしている。
　長く綺麗な髪が次第にぼさぼさと乱れていく。

331 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/21(月) 05:55:10.72 ID:77Ma8bm7o

シャル「……」

　目を細め、その状況を見守るシャルロット。
　自分でも良く脳内で行われる行動。それを目の当たりにした観想は──。

シャル「（端から見るとこんな感じなんだね）」

　だった。

紅莉栖「……」

　数十秒経ってから気が済んだのか、むくりと起き上がる。
　顔色は優れているとは言えなかった。

332 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/21(月) 05:55:31.64 ID:77Ma8bm7o

紅莉栖「どう思う？」

シャル「えっ？」

紅莉栖「これ……」

　差し出す便箋。
　もちろん、先ほど岡部が受け取ったラブレターと思しき物である。

シャル「ラブレター……だよね、きっと」

紅莉栖「うん」

333 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/21(月) 05:56:06.53 ID:77Ma8bm7o

　流れる沈黙。
　口を開いたのはやはりシャルロットだった。

シャル「それ、どうするの？」

紅莉栖「困った事に、回答が導き出せないのよ」

シャル「気持ちは解るけど……」

紅莉栖「恐らく……いえ、十中八九。これがラブレターだと岡部が認識しても色好い返事はしないと思うの」

シャル「それは──うん。僕もそう思う」

紅莉栖「けれど、だからと言って第三者がこの手紙を破棄する権限なんて持ち合わせているはずが無い」

シャル「うん」

334 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/21(月) 05:57:37.72 ID:77Ma8bm7o

　そこまで言ってまたうな垂れる紅莉栖。
　紅莉栖にしては珍しく、情緒不安定な姿を他人に見せている。

紅莉栖「どうすれば……」

シャル「えーっと……多分、この間の仮装大会でオカリンの人気が凄く上がったんだと思う。
　　　　──その、凄くカッコ良かったし」

紅莉栖「岡部のくせに……」

シャル「だから、コレからもそう言った事……ラブレター貰ったりすることが多くなるんじゃないかなぁって」

紅莉栖「……」

335 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/21(月) 05:58:24.28 ID:77Ma8bm7o

シャル「数を貰えばオカリンだって、自分の人気に気付く……あぁでもでも一夏の例もあるし」

紅莉栖「岡部もまぁ……鈍感と言うか、自分の評価を認識できていない類の人間だから」

シャル「一夏もだよ、全然気付かないんだ……」

　重なる溜息。
　シャルロットもシャルロットで苦労していた。

紅莉栖「この手紙。やっぱり岡部に渡したほうが良いのかしら」

シャル「うん……やっぱり、叶わないとしても想いは知って欲しいと思うよ。女の子なら」

紅莉栖「そうよね……」

336 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/21(月) 05:58:46.02 ID:77Ma8bm7o

　きゅっ、と手紙に力が入る。
　紅莉栖と岡部の曖昧な距離感。

　自分が岡部に抱く気持ち。
　それが完璧に、完全に整理出来ていないまま、なぁなぁと一緒に歩いている自分に苛立ちが積もる。

紅莉栖「ちゃんと、渡す」

シャル「それが良いよ」

紅莉栖「うー……これからも、こんな事が多くなるのかしら」

シャル「あはは……お互い気苦労が絶えそうにも無いね」

337 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/21(月) 05:59:12.61 ID:77Ma8bm7o

　椅子から立ち上がり、ぽんぽんと紅莉栖の背中を優しく撫でる。
　年上でしっかりしていると思っていた女性が、恋愛面では同じ少女であることを再確認してシャルロットは親近感を覚えていた。

シャル「さ、行こうか」

紅莉栖「うん……」

シャル「その前に髪をとかさないとね。髪がぼさぼさだ」

紅莉栖「あっ……」

　にっこりと笑顔を見せて、櫛を取り出すシャルロット。
　布団に上がり紅莉栖の後ろに座り込んだ。

338 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/21(月) 05:59:50.19 ID:77Ma8bm7o

シャル「はい。じっとしててね」

紅莉栖「あ、ありがと……」

　何故か頬を染める紅莉栖。
　友達自体が少なかったこともあり、同年代である友人に髪をといで貰うことなど初体験だった。

シャル「ラウラもだけど、紅莉栖の髪の毛もサラサラだね」

紅莉栖「そ、そう？（あっ……気持ち良いかも）」

シャル「うんうん♪」

339 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/21(月) 06:00:32.52 ID:77Ma8bm7o

　丁寧に髪を整えていくシャルロット。
　ほぼ毎日ラウラにしているだけあって、手馴れたものだった。

　すいすいと綺麗になっていく紅莉栖の長髪。
　５分もすれば元通りになっていた。

シャル「でーきたっ」

紅莉栖「ありがとね、こんな事までさせちゃって」

シャル「良いの良いの、僕こういうの好きだから」

340 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/21(月) 06:00:58.59 ID:77Ma8bm7o

　そう言って、ベッドから飛び降りるシャルロット。
　手を出して紅莉栖の手を取る。

紅莉栖「……ありがとう」

　一瞬躊躇ってから、その手を握る。
　紅莉栖はなんだか可笑しくて、顔がにやけてしまった。

　友達なんて１人も居なかったのに、岡部と出会ってからこうも簡単に友達が出来てしまう。
　あいつには友達を引き寄せる力でもあるのかと勘繰ってしまう。

341 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/21(月) 06:01:24.94 ID:77Ma8bm7o

紅莉栖「（でも……だとすると、友達少ないわよねアイツ）」

　良質な人間だけを引き寄せるとでも言うのか。
　しかし、それならば納得がいく。

　ラボのメンバーにしても良い人ばかりだ。
　知り合えて、友達になれて良かったと素直に思える。

　IS学園に来てからも同じだった。
　紅莉栖が持っていなかった物を、簡単に岡部が持って来てくれる。

342 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/21(月) 06:01:52.21 ID:77Ma8bm7o

紅莉栖「（悔しいけど……）」

　──やっぱり、私は岡部が────なのかな。

紅莉栖「（絶対に言ってやら無いけどな！）」

　頬がほんのりと紅潮し、顔がニヤける。
　自分でも驚くほど晴やかな気持ちになることが出来た。

343 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/21(月) 06:02:18.77 ID:77Ma8bm7o

シャル「じゃぁ、行こうか」

紅莉栖「えぇ」

　２人揃って部屋を出る。
　向かう先は１年１組。

　紅莉栖の手にはしっかりと、岡部宛の手紙が持たれていた。

344 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/21(月) 06:03:33.54 ID:77Ma8bm7o

おわーり。

最近は、素敵な絵を沢山貰ってるのでモチベーションも上々でございますえへへ。

ところで、更新時間はやはりゴールデンタイム。
人が沢山居るであろう18時～23時位が良いのでしょうかね。

投稿する時間を何時も迷ってしまいます。
こんな時間に投稿しておきながら、アレなんですがが。

本日もありがとうございました。

345 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage]：2011/11/21(月) 06:05:26.90 ID:+ftWghkLo

乙～

346 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/21(月) 06:10:25.53 ID:0WRvhFxKo

ふむ乙！
助手めんこい

347 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(静岡県) [sage]：2011/11/21(月) 06:12:29.85 ID:j9PKLDqs0

乙でした
投稿時刻はいつでも良いと思いますよ？
リアルタイムな反応を楽しみたいなら
やはりゴールデンタイム推奨ですが、
今の時刻のように出勤前に読めるのは嬉しかったりします
むしろ毎日ちゃんと投下してくれて感謝感謝
続きも楽しみにしてます

348 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(高知県) [sage]：2011/11/21(月) 06:23:42.84 ID:PdUJg6RAo

乙！
投稿時間はいつでも構わないかな。
起きてＰＣつけた時に更新があると激しくテンションあがるし

349 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/21(月) 06:31:12.03 ID:77Ma8bm7o

ご意見ありがとうございます。
これからも、投稿できる状態になったら投稿する。
をやっていきたいと思うます。

350 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/21(月) 07:40:03.23 ID:URIeu8ZSo

乙

351 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/21(月) 08:17:27.86 ID:5vn+P6JSO

乙。
皆アホ過ぎワロタｗｗｗｗｗｗ

352 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/21(月) 08:50:30.26 ID:ZgcYEs0xo

乙
お前らどこの軍曹殿だよｗｗ

353 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/21(月) 08:54:16.06 ID:hh7gqLJDO

朝から乙です。
とりあえずシャル以外の面々は、ワンサマーのことを｢鈍感｣とか言っちゃダメだな。
原作でもこんなんなの？

354 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/21(月) 08:59:14.29 ID:5jQoq106o

おつー

355 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福岡県) ：2011/11/21(月) 10:48:36.28 ID:VQoIR5C/0

乙。
フルメタを思い出したww

356 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage.saga]：2011/11/21(月) 11:49:42.57 ID:9lqGUv9q0

ＫＩ☆ＴＥ☆ＴＡ☆
乙！確かに宗介っぽさがあったなｗｗｗ
嫉妬する紅莉栖可愛いよ紅莉栖

357 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/21(月) 11:49:54.90 ID:2We4aI9DO

乙
助手が嫌な奴に成らなくて良かった

358 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(島根県) [sage]：2011/11/21(月) 20:10:46.25 ID:/m7Vpdnro

乙

359 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) [sage]：2011/11/21(月) 21:45:02.49 ID:mwD7lmrlo

乙でした。

オカリンといいワンサマーといい、こいつらなら開けられた形跡のある下駄箱爆破くらい素でやりそうで怖いｗｗ

360 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(埼玉県) [sage]：2011/11/21(月) 22:20:12.58 ID:RAPpJdEKo

乙
いや、本当に売り物レベルの読み物をしている。
早く全部読みたいという気持ちとずっと続け！という気持ちが合わさって頭がおかしくなるｗｗ

361 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]：2011/11/21(月) 22:23:34.15 ID:hRcCzLDp0

>>1乙～

お前らそんなにオカリンにアンブッシュ耐久させたいのかよｗｗｗｗｗｗ

362 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/21(月) 22:44:23.93 ID:IV19YQ620

紅莉栖はどこでラブレター返すんだ？やっぱ教室？
だとするとクラスの誰かに見られて……

363 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) ：2011/11/21(月) 23:14:27.23 ID:jJ9LHHFx0

返し方が気になりますな・・・

364 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/21(月) 23:24:08.05 ID:tvmK4lHY0

乙～

365 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage]：2011/11/21(月) 23:45:08.93 ID:EIrv3iEi0

でも大半はオカリンと助手が恋人関係だと思ってるんだよな？
その誤解（？）を上手く利用すれば今後オカリンに寄ってくるであろう数多の女の子たちを抑えることも可能だぞ助手よ

366 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/22(火) 11:39:36.86 ID:j2YtO+Bho

>>365
助手がそういう手段をとるなら、そもそも手紙を返したりはしないだろ

367 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(不明なsoftbank) [sage]：2011/11/22(火) 18:38:26.72 ID:hepnYOk/o

そういえばオカリンのコスプレ写真は
ラボメンのもとに渡ったのだろうか？
IS学園では生徒の間で出回ってそうだけど
むしろ動画とかで

368 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(山口県) [sage]：2011/11/22(火) 21:29:25.27 ID:zMx6Jh0Vo

>>359
それなんてダル?

369 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/22(火) 22:56:34.05 ID:ulN97U4yo

>>1です。
今日は遅めになりましたが、日付跨ぐ前に投稿出来そうです。
ちょっと短めではありますがが。

370 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/22(火) 23:07:23.95 ID:ulN97U4yo

往きます。

371 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/22(火) 23:08:02.60 ID:ulN97U4yo

>>343　　続き。

　─教室─

岡部「なぁ、ワンサマーよ」

一夏「ん？」

　HR前の教室。
　何時も通り、生徒達はこの貴重な合間時間を思い思いに過ごしていた。

　そんな中で岡部は何時もと違った違和感を覚えている。

372 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/22(火) 23:08:30.70 ID:ulN97U4yo

岡部「何か……こう、視線のような物を感じるのだが」

　キョロキョロと辺りを見回しても普段と変わらない教室。
　けれど、今日は何故か纏わり付くような視線を感じていた。

　それも１つや２つでなく、結構な数の視線を感じる。

一夏「んー？　どうだろうな……何時も通りな気がするけど」

岡部「むう……」

373 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/22(火) 23:09:25.08 ID:ulN97U4yo

　視線の正体はクラスの女子達だった。
　一夏にしてみればIS学園に入学した当初からひたすら見られ続けて居るわけで、この類の視線は日常茶飯事である。

　別段気にするほどの、気に入るレベルの物ではなかった。

岡部「いやしかし、何故だ。チラチラと此方を伺われているような気がしてならんのだが……」

一夏「まぁ俺達はこの学園からしたら、パンダみたいなものだからさ」

　今もまだ珍しがられてるんだよ、とそう付け加えた。
　事実、一夏は自身が男性として魅力的な視線で見られているとは露ほど思っていない。

　そしてその視線の半分近くが、先日の仮装で岡部に移動していたことも知らなかった。

374 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/22(火) 23:10:11.17 ID:ulN97U4yo

岡部「そうか……」

　腑に落ちない岡部であったが、気に病んでも仕方が無い。
　ISを動かせる男性は世界に２人しか居ないのだから、注目を浴びるのもまぁ納得出来ると岡部もその結論に行き着く。

　そもそもが、岡部にも一夏にも自分が不特定多数の女性に好意を向けられている。
　このような答えを出す思考が無いのだから、正当など導き出せるはずも無い。

　首を傾げ、なんだろうなぁと思う他無いのだ。

　しばらくボーっと過ごしていると、机に近づいてきた者がいた。
　牧瀬紅莉栖だ。

375 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/22(火) 23:11:03.44 ID:ulN97U4yo

岡部「助手か」

　紅莉栖は岡部の机に食堂で女子生徒から手渡された便箋置いた。
　封は切られておらず、そのままの状態である。

岡部「処分したのでは無かったのか？」

紅莉栖「一応、スキャンをかけてみたの。したら危険物の反応は一切無かった──つまりコレは純粋にアンタに向けられて書かれた手紙よ」

シャル「うん。危険は無いから大丈夫だよ」

　紅莉栖の後ろからシャルロットが顔を出す。
　そう言えば、何故か紅莉栖がシャルロットを連れ出して行ったな。と岡部は思い出した。

376 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/22(火) 23:11:26.78 ID:ulN97U4yo

岡部「いやしかし、あの女生徒の顔は知らないし貰う謂れが──」

紅莉栖「だーかーら、開けて読めば全部解るでしょうが」

シャル「だね。読めば解るよ。僕達が目を通すのも悪いし席にもど──」

　──ペリリ。

　シャルロットが気を利かせて席を離れようとする暇も与えず、岡部は封を破った。
　そしてそのまま、無神経にも全文を音読し始める。

岡部「──えー、何々……岡部倫太郎さまへ」

377 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/22(火) 23:11:53.35 ID:ulN97U4yo

　──いきなり、このようなお手紙を出してしまって申し訳ありません。
　
　さぞ、驚いたことでしょう。

　しかしながら、私の胸に宿ったこの想いを貴方様に告げずにはいられませんでした。

　このような軽率な行動を取った事を御許し下さい。
　
　
　

378 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/22(火) 23:12:19.94 ID:ulN97U4yo

紅莉栖「っちょ！　何いきなり読み始めてんのよ！！」

シャル「わっわっ！」

　慌てる紅莉栖。
　顔を赤くするシャルロット。

　２人には読まずとも、この手紙の内容は想像がついている。
　それを知らないとは言え、岡部が音読を始めてしまった。

　考えてもいなかった自体に、混乱する２人。
　２人がわちゃわちゃと悶えている中で、騒ぎを聞きつけたのか何時もの面々──。

　一夏、箒、セシリア、ラウラが岡部の机付近に集まってきていた。
　偶然にも岡部を囲むような形になったので、そのお陰か他の生徒に聞かれるような心配は無くなっていた。

岡部「えぇい、今読み上げるから助手もヂュノアも少し静かにしていろ」

379 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/22(火) 23:12:52.99 ID:ulN97U4yo

　──あの日。

　仮装大会の日。

　貴方様の仮装姿を見たとき、私の胸には雷が突き刺さりました。

　夢にまで見た“アーカード”を目の当たりにした私の気持ちがお解かりいただけるでしょうか？

　ちなみにですが、ご存知でしょうか？
　
　“Alucard”とは“Dracula”の逆綴りなのですよ。
　
　

380 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/22(火) 23:13:22.01 ID:ulN97U4yo

岡部「……む？」

紅莉栖「へ？」

シャル「え？」

箒「？」

セシリア「？」

ラウラ「？」

　一様に首を傾げる一同。
　その中でも紅莉栖とシャルロットの傾げ具合は図抜けていた。

381 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/22(火) 23:13:51.45 ID:ulN97U4yo

　──あぁ、なんて素晴らしい衣装！

　なんて素晴らしい仮装！

　なんて素晴らしい台詞の数々！

　徹頭徹尾、貴方様は“アーカード”でした！

　あの時、あの場所で完全に完璧に貴方様は“アーカード”でした！

　完全です。完全に、です。
　
　
　

382 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/22(火) 23:14:33.07 ID:ulN97U4yo

岡部「……」

　ひくひくと、頬の皮が引きつり始める岡部。
　残りの顔ぶれも手紙の内容が理解出来ないでいる。

　岡部は口を閉ざし、音読を止めた。
　ぱらぱらと残りのページに目を移すと同じようなことがつらつらと書き綴られている。

　端から端までビッシリと書かれた、キャラクターに対する愛。
　紅莉栖やシャルロットが想定していた文とは、完全に方向が違っていた。

　ラブレターではない。

383 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/22(火) 23:15:04.54 ID:ulN97U4yo

　コレは──。

紅莉栖「──ファンレター？」

岡部「……」

　岡部は眉をひそめた。
　他の連中は、アーカードとは何だ？　と口々に会話している。

　手にしていた手紙を机上に置き、携帯を取り出した岡部はすぐさまコールボタンを押した。
　発信先は“椎名まゆり”である。

　短めの発信の後、聞きなれた声が岡部の鼓膜を振るわせた。

384 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/22(火) 23:15:36.75 ID:ulN97U4yo

まゆり『トゥットゥルー♪　オカリン？　どうしたのー？』

岡部『あぁ、俺だ。今は大丈夫か？』

　なぜ、いきなり電話をかけたのか理解出来ない一同はさらに首を傾げる。
　理解不能であった。

まゆり『うん、大丈夫。まだHR前の自由時間だよ』

岡部『そうか。１つ聞きたい事があるのだが……』

まゆり『んー？　なぁに？』

385 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/22(火) 23:16:03.00 ID:ulN97U4yo

岡部『あの、３１日の仮装な。アレには何か元ネタがあるのか？』

まゆり『あるよー！』

　その言葉を聴いて、天井を仰ぎ見る岡部。
　ふきだしを付けるのなら、やはりか。が妥当である。

岡部『そうか……』

まゆり『あれ？　オカリン知らなかったの？』

岡部『あぁ。まゆりのオリジナルだと思い込んでいた』

386 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/22(火) 23:16:33.77 ID:ulN97U4yo

まゆり『えーっ！？　すっごくそれっぽい台詞を言ってたから、オカリンも知ってるんだと思ってたのです』

岡部『……』

　岡部は今の今まで、自分が袖を通したそれが既存のキャラクターの衣装。
　つまり、キャラクターコスプレであることを知らなかった。

　また、自身が付けた設定が知らず知らずそのキャラの真芯を捕らえていたことにも。

387 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/22(火) 23:17:00.49 ID:ulN97U4yo

まゆり『いやぁ、良い完成度だったねー。オカリンかっこ良かったなー』

岡部『……今日な、ファンレターを貰った。衣装が凄いと絶賛されているぞ』

まゆり『ファンレター！　ほんと？　凄いね、オカリン！』

岡部『いや、凄いのはお前だ。まゆり』

まゆり『へ？』

岡部『まぁ良い。このファンレターはお前の家に郵送しておく。全文は読んでいないが、ひたすらキャラクターの事が書かれているに違いない』

まゆり『そうなの？』

388 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/22(火) 23:17:27.55 ID:ulN97U4yo

　電話口で首を傾げるまゆり。
　コスプレイヤーに送られる賛辞とは、ソフトに向かって送信されるのが殆どである。

　ハード。衣装とソレを作った製作者に拍手を送る者は同業か“通”な人間だろう。

岡部『そうだ』

　しかし岡部はそうと断定している。　
　ならば、まゆりはそうなのだと思う娘だった。

389 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/22(火) 23:18:11.53 ID:ulN97U4yo

まゆり『わかったー。えへへ、嬉しいなぁ』

岡部『今日中に出しておく。じゃぁな』

　用件を済まし、電話を切る岡部。
　文中に出てきた謎の単語はキャラクターの名前で、仮装の元ネタだと周りに説明する。

一夏「へぇ、じゃぁ椎名さんの作った衣装に惚れ込んでこの手紙を？」

岡部「だろうな」

390 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/22(火) 23:18:47.33 ID:ulN97U4yo

セシリア「そう言えば、演劇部の方が椎名さんの腕前に舌を巻いてましたわね」

箒「あぁ。縫い方を控え室で教えて貰っていたりもしたな」

ラウラ「私の着ていた衣装も手作りだと聞いた。職人芸と言うやつだな」

　話しの角度が変わり、まゆりの技巧について話し始める。
　そんな中で、紅莉栖とシャルロットだけが小声でひそひそと意見しあっていた。

391 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/22(火) 23:19:21.97 ID:ulN97U4yo

紅莉栖「（どう思う？）」

シャル「（うーん、全部読んでないから一概には言えないけど）」

紅莉栖「（──よね。かと言って全部読ませてとも言えないし）」

シャル「（でもまぁ、僕達が思っていた内容じゃなくてホッとしたような……）」

紅莉栖「（そう……よね。うん、まぁ良い……か）」

392 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/22(火) 23:19:53.82 ID:ulN97U4yo

　実際、最後まで文を読み進めても岡部に対する恋心を綴ったものは無かった。
　あるのは原作の話しと、衣装のクオリティについて。

　岡部のレイヤーとしての、土台の良さ。
　顔立ちや、身長。
　更には声質の良さから声優になってはと話が飛び火している始末だった。

　ここで産まれる疑問。
　これ程までに、岡部の演じたキャラクターに陶酔した彼女が本当に恋心を抱いていないのか。

393 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/22(火) 23:20:20.51 ID:ulN97U4yo

　答えはNOである。
　彼女だけではない。

　あの日、岡部に見とれた女子の中で瞬時に恋に落ちた者も少なくなかった。
　それだけの魅力があの日の岡部はあった。

　しかし、誰も行動に移すことは無い。

　

394 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/22(火) 23:20:54.79 ID:ulN97U4yo

　
　なぜなら“岡部倫太郎と牧瀬紅莉栖は付き合っている”と言う根強い噂。
　それを裏付けるかのように、仲の良い２人の姿を何人もの生徒が目撃している。

　そして高校１～３年生の女子が、岡部を諦める程の容姿と才覚を牧瀬紅莉栖は持ち合わせていた。
　以上の点により、岡部が女生徒から手紙を貰うことはこれ以降ありはしなかった。

　最初で最後のラブレター騒動。
　その全ての真実を知るものは、誰１人として存在しなかった。

395 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/22(火) 23:22:00.26 ID:ulN97U4yo

おわーり。

本日もありがとやんした。

最近、地の文章が多くなりすぎて反省しております……。
読みにくければ気軽に言ってください。
改善出来るようなところがあれば、改善していくので。

396 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) ：2011/11/22(火) 23:23:43.74 ID:i0oH32SSO

乙

397 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/22(火) 23:25:32.57 ID:i5ZHeHADO

おつぱい！

398 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(太平洋) ：2011/11/22(火) 23:28:15.40 ID:o/HQ6zUN0

乙カレー
>>1よ、訂正する所なんかないぞい
次回も期待してやんす

399 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) [sage]：2011/11/22(火) 23:29:06.71 ID:1KmlBOjqo

乙、やったねクリスティーナ！ライバルが増えないよ！
でも一人くらいガチで勝負挑んでくる娘がいてもいいとおもうな。
ISガールズはワンサマーの方ばかり向いてるから、バランス的にｗｗ

400 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]：2011/11/22(火) 23:29:40.38 ID:lXy65NuKo

乙

401 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方) [sage]：2011/11/22(火) 23:53:17.55 ID:bIMmYjJmo

乙

402 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]：2011/11/22(火) 23:54:21.90 ID:Ssd1FZ9Lo

乙　相変わらず読みやすくて好みだよ
ただ不満を上げるとしたら更新そくｄおっと闇よりの使者がきたようだ

403 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) [sage]：2011/11/22(火) 23:58:52.79 ID:Hs4T4xjAO

面白いです
展開的にIS勢からはオカリンに惚れそうなのは出ないのかな？

何はともあれ乙です

404 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/23(水) 00:32:55.82 ID:PTG1Z2RIO

セシリーの心の殻を破る様なイベントがあればオカリン側に…反応も満更でもないし…

405 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]：2011/11/23(水) 01:43:05.87 ID:3LplRQ6ho

ここまでの分(前スレのも含めて)テキストファイルでうｐしてくれると嬉しいかも(ﾁﾗｯﾁﾗｯ

406 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/23(水) 01:54:09.51 ID:ouBowdd3o

その程度の編集自分でやれと

407 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/23(水) 02:14:05.40 ID:MdqqoVKIO

まゆしぃマジ天使

さて、ダルに出番はあるのだろうか？

408 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/23(水) 02:59:44.92 ID:Gn34pC/co

>>1です。

>>405
需要があるとは驚きですが、折角ですのでアップロードしました。
頂いた絵も全て入っております。

http://www1.axfc.net/uploader/Sc/so/294650

ちゅうい。
誤字などを含め、ここに投下されたものが正しいものです。
投下中に表現を変えたり、削ったりとしていますので若干違うニュアンスだったりすることが多いと思います。

ということです。
ありがとうございました。

409 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/23(水) 05:20:27.91 ID:LNU6xmqIO

>>408
もう！この人ったらまた甘やかして！
ありがとうございます
ありがとうございます

なんやかんやでこのスレも400超えたか。
後日談で100スレ使うとして、本編完結まであと2スレくらいか？

410 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) [sage]：2011/11/23(水) 07:25:48.21 ID:PA6L2E+co

>>409
100スレ…だと…？
このペースでスレ消化するなら三年はかかるぞｗｗ

411 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東・甲信越) ：2011/11/23(水) 07:30:01.51 ID:R72bSpZAO

パーフェクトだ>>1

412 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/23(水) 10:28:06.92 ID:XoW4mN1T0

>>1
今回も面白かったぜ

そういやあと1月でクリスマスだな
クリスマスイベントも読みたいぜ
俺は去年一緒にシュタゲアニメを楽しみにしてた彼女が今年はいないから…

413 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋) [sage]：2011/11/23(水) 10:45:14.54 ID:2NUqm+NSo

>>408
うわああ！
>>1優しすぎるだろ完璧です！！

毎度毎度おつかれです

414 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/23(水) 11:49:15.53 ID:qqJS0kkAO

投下乙です

>>412
クリスマスはポケ戦でも見ようぜ…

415 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長野県) [sage]：2011/11/23(水) 12:30:41.95 ID:/Y3vfmXZo

じゃあ俺はエンドレスワルツを・・・・・

416 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/23(水) 14:17:17.59 ID:LsKn6ztX0

ポケ戦もエンドレスワルツも見たからダイハードかホームアローン見るわ

417 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/23(水) 15:54:17.91 ID:L0tRiJ6no

乙乙です
やっとこさIS7巻を読んだから簪がわかるようになったぜ！ｗｗｗｗ

418 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(不明なsoftbank) ：2011/11/23(水) 20:26:10.30 ID:g/K57k7Fo

乙！
わたしはおまえをつかまえた、とかのアーカード台詞が全部即興とかマジオカリンやばい
だが、告白を断りに行くオカリンも見たかったぜ！

419 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(不明なsoftbank) [sage]：2011/11/23(水) 20:27:00.76 ID:g/K57k7Fo

すまない
ageてしまった、ごめん

420 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/23(水) 20:54:33.76 ID:EYhnrP6AO

ほとばしる乙！

421 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/23(水) 21:20:30.63 ID:Z5aD95vS0

かけぬける乙！

422 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 01:23:01.55 ID:LqdW5ycAo

>>1です。
今日は、短めのを何回か投下出来たらなと思っています。

423 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 01:23:28.56 ID:LqdW5ycAo

往きます。

424 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 01:23:56.37 ID:LqdW5ycAo

>>394　　続き。

　
……。
…………。
………………。

岡部『……』

　視界は最悪だった。
　剣山のように尖った岩肌、ハイパーセンサーを極端に鈍らせる濃霧。

　外部からのサポートも受けれない、完全単独戦。
　日本海、海上に設置された特別IS戦闘演習場に岡部ら専用機持ち、ならびに成績優秀者が集っていた。

425 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 01:24:22.84 ID:LqdW5ycAo

岡部『“パラダイム・シフト”索敵開始……』

　濃霧の向こうへと、ビットを飛ばす。
　ビットから送られてくる１２の映像を、小窓のモニターで確認する。

　この濃霧の中では、大変役立つガジェットであり岡部も場面場面に使い方を変える術を身に着けていた。

岡部『対象発見』

426 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 01:24:49.99 ID:LqdW5ycAo

　“甲龍”の後姿が１つの小窓から映し出された。
　勘付かれぬように、距離を固定する操作をビットに送る。

　専用機“甲龍”の操縦者である“凰鈴音”はじっと動かず集中していた。
　“濃霧戦”に切り替わり、３日が経過している。

　この極端に視界の悪い中では、闇雲に動き回ることが失策であると午前中に痛いほど理解していた。

427 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 01:25:16.80 ID:LqdW5ycAo

鈴音『倫太郎のヤツ……今度こそは吠え面かかせてやるんだから……っ！』

　目をギラギラと血走らせ、八重歯を尖らせている。
　午前中に岡部と当り、呆気なく撃破された思い出が脳裏を横切る。

　ギリギリと歯を鳴らしながらも、集中は切らさない。

鈴音『見てなさいよー……』

岡部『……』

428 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 01:25:43.61 ID:LqdW5ycAo

　センサーに掛からないギリギリの距離まで間合いを詰める岡部。
　鈴音は未だ、敵影に気付いては居なかった。

　“パラダイム・シフト”に指示を送る。
　指示を受け取った１２のビットは、静かに“甲龍”を取り囲む形を作った。

鈴音『……っ！　────居る』

　岡部は音も気配も出しては居ない。
　しかし、鈴音は持ち前の勘でもってハイパーセンサーにも引っかからない何かを感知した。

429 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 01:26:09.91 ID:LqdW5ycAo

岡部『囲まれていることに気が着いた……か。しかし、関係無い』

鈴音『……』

　──ゴクッ。

　鈴音の喉が鳴る。
　暑くも無いのに、額から汗が吹き出ていた。

鈴音『来るわね……』

岡部『……』

430 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 01:26:35.94 ID:LqdW5ycAo

　岡部の位置は、甲龍からおよそ１０ｍ離れた地点である。
　射撃を行えば充分なダメージを与えることは出来るだろうが、致命傷は与えられない。

　鈴音も優秀なIS操縦者である。
　一撃でも被弾すれば、的を散らされ追撃は許されない。

　岡部が此処へ来て学んだこと。
　それは１度目のチャンスで仕留めなければ、到底勝ち得ないと言うことだった。

431 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 01:27:07.33 ID:LqdW5ycAo

　回りの人間は皆、岡部よりもISに携わっていた時間が長い人間達である。
　その中でも専用機持ち、並びに成績優秀者と渡り合う為には一度訪れたチャンスを逃すわけにはいかない。

　チャンスを伺い、チャンスを作り、チャンスを生かす。
　当たり前のことを必死に遂行していた。

岡部『──行け』　

　１２のビットに指示を送る。
　指示を受けたビットは、順次目標へと向かって飛んでいく。

432 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 01:27:34.17 ID:LqdW5ycAo

　──ヒュンヒュンッ！！

鈴音『来たっ！！　こ──っれは！？』

　風を切って、放たれてきたソレはビット兵器その物だった。
　連結された“双天牙月”で切り落とす。

鈴音『っく！　何で、こんな物！！』

　“双天牙月”を振り回し６対目のビットを破壊した時、背中に悪寒が走った。
　振り向くことは出来ない。

433 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 01:28:00.28 ID:LqdW5ycAo

鈴音『──────っ！！』

岡部『チェックだな、大陸娘』

　チャネルを通さなくても聞こえる距離から、岡部の肉声が聞き取れた。
　“サイリウム・セーバー”が背中をなぞるように行き来している。

鈴音『……１年１組、凰鈴音。負けました』

　ビーーーーーーーーーーーーーーーーー。

　と長めのブザーが鳴り響き、濃霧が次第に晴れていく。
　鈴音の顔はやはり芳しくなかった。

434 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 01:28:39.41 ID:LqdW5ycAo

千冬『ご苦労。直ぐにリンクから出ろ、次が待っている』

　オープンチャネルから千冬の指示が入る。
　この施設では各個人、午前に１戦。午後に１戦と日に２回の戦闘訓練が強いられている。

　かなりの過密スケジュールで行われる合宿は、臨海学校で行われたソレとは全く毛色の違う本格的な物だった。
　戦闘訓練に反省会。基礎体力が落ちないようにトレーニングも義務付けられている。

　自由時間は遊ぶことなどせず、皆泥のように眠っていた。
　中にはラウラや楯無などの例外もあり体力の問題も無い者も居たが、大半の生徒は毎日をそう過ごしていた。

435 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 01:29:06.34 ID:LqdW5ycAo

鈴音「あーもうっ、午前と午後で２連敗とかありえないっ！」

　更衣室でイライラを飛ばしているのは、２連敗を喫した凰鈴音だった。
　ロッカーを強く蹴飛ばす。

セシリア「そう苛々しないで下さいな。負けているのは、鈴さんだけでは無いのですから」

箒「全くだ」

　そう口を添えるセシリアと箒。
　セシリアはまだ一度も岡部と戦っては居ないが、その戦績だけは知っていた。

　フィールド状況が晴天から濃霧へ切り替わった途端に、岡部は連勝している。

436 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 01:29:33.46 ID:LqdW5ycAo

　箒に２勝。一夏に２勝。そして鈴音に２勝している。
　晴天での通常戦闘ではラウラに２敗、シャルロットに２敗していた。
　
　これまでの岡部の戦績は６勝４負。
　この施設に来てから実に１０戦も戦っていた。

セシリア「明日は恐らく、わたくしと倫太郎さんです。気を引き締めないと……」

箒「簪と当る可能性もあるが……気を引き締めることだ」

437 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 01:30:07.02 ID:LqdW5ycAo

　悔しげな箒の表情。
　自分より、操縦期間の短い岡部に負けたことが悔しかった。

鈴音「はぁ……反省会行って来る。次は、負けない」

　ぽつりとそう呟き、更衣室を後にする鈴音。
　切り替えの早さも代表候補生には必要なスキルだった。

438 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 01:30:33.50 ID:LqdW5ycAo

セシリア「今は、一夏さんと簪さんが戦っていますわね」

箒「あぁ。次はセシリアとシャルロットだったな」

セシリア「えぇ……箒さんはラウラさんとですね？」

箒「……」

　２人とも午前の部では負けを味わっている。
　午後の部では負けたくないと言う気持ちがとても強かった。

　鈴音のことなど言えやしない。
　箒もセシリアも、負けた自分に苛々している。

439 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 01:30:59.46 ID:LqdW5ycAo

　この気持ちを引きずってしまえば午後も勝てるはずが無い。
　そう解ってはいても心はささくれる。

　深い深呼吸をしてから、２人は表情を作りなおした。

セシリア「負けませんわよ」

箒「無論だ」

　表情を作る。
　２人は気持ちを無理矢理にでも切り替えた。

440 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 01:31:26.73 ID:LqdW5ycAo

……。
…………。
………………。

真耶「ちょっと、過密スケジュール過ぎますよね……生徒達に疲れが見えてます」

千冬「だが政府からのお達しだ。全国で放映されることになるから、無様な戦闘は見せられない……」

真耶「操縦者の実力底上げを徹底的に……ですね」

　場所は作戦司令室。
　この人工的に作られた島は、有事の際にも機能するよう作られている。

　２人の教師はこの司令室から、全てのリンクをモニターしていた。

441 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 01:31:53.94 ID:LqdW5ycAo

真耶「それにしても、岡部君の戦績上昇が著しいですね」

千冬「視界の悪さに他の者が慣れていないだけかと思ったが……ヤツの索敵技術が全てを上回っている」

真耶「“石鍵”……束博士が手掛けた最新モデル……一体どんな性能が……」

千冬「……」

　押し黙る２人。
　篠ノ之束の思惑は、親友である千冬にも掴めない。

　一体何を考えているのか。
　何を企んでいるのか──。

442 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 01:32:20.96 ID:LqdW5ycAo

束「企むなんて酷いなー、私は常に思考し考えているだけだと言うのに！　ぷんぷんだよ、まったく！」

真耶「～～～～～！？」

千冬「……」

　千冬の眉間に一瞬、しわが寄った。
　完全に予期せぬ来訪者の登場に、真耶の表情は凍りつく。

束「ちーちゃああん！　来たよ－おいっすー！」

443 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 01:32:48.45 ID:LqdW5ycAo

　抱きつこうとする束を、アイアンクローでもって迎撃する。
　ばたばたと両手をクロールさせる束だったが、空をかくばかりだった。

千冬「なんの用だ、束。どこから入った、どうやって来た、何故急に来た」

束「わははー！　質問攻めだねちーちゃん。良いよ良いよーもっと質問してくれてOKだよー」

　にへらにへらと笑顔を浮かべる束。
　そんな束とは対照的に、溜息を付く千冬。

千冬「────岡部か」

束「うん」

　さらりと。
　束は自分の目的を肯定した。

444 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 01:34:43.43 ID:LqdW5ycAo

おわーり。
ありがとうございました。
ご飯食べて、お風呂入って、投下出来るようになったらまた来ます。

昨日アップした、ファイル。
DL数が100超えてるんですが、どういうことなの……そんなに人居るのってまたビビってます。
初期は試行錯誤していた段階なので、表現の仕方が今と違って読み返すと恥しい。
自分で読み返せない、そんな感じでした。

何時も何時もありがとうございます。

445 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 01:37:06.85 ID:LqdW5ycAo

日程めも。
これが間違っていたら目も当てられない。

日　1日目→ラボ

月　2日目→学園自己紹介等　紅莉栖制服制作

火　3日目→制服完成　コア到着

水　4日目→石鍵登場　初戦闘敗北　石鍵考察パッチ作る

木　5日目→箒トレーニング

金　6日目→機体制御　鈴トレーニング

土　7日目→　岡部紅莉栖別行動　紅莉栖ラボ　楯無・シャル特訓　プロテインジュース

日　8日目→　ラウラ　トレーニング・午後からセシリアおされコーディネート　簪登場

月　9日目→　簪ストーキング

火　10日目→対抗戦当日　石鍵vs黒い雨

水　11日目→2日目　石鍵vs蒼い雫　対抗戦終了

-三週間位経過-

月　実質32日目→全校集会　ハロウィンイベント告知

火　33日目→投票　１日目　まゆり合流

水　34日目→投票　２日目　

木　35日目→投票　最終日　集計中

金　36日目→前日　楯無vs一夏・岡部

土　37日目→当日　ハロウィン　１０月３１日

日　38日目→打ち上げ　１１月１日

月　39日目→ラブレター騒動　１１月２日

　一ヶ月経過
　　
？　１２月１日→日本海海上にある、特別リンクへ合宿　この日は説明を受けただけ
？　１２月２日→通常戦闘訓練　２戦
？　１２月３日→通常戦闘訓練　２戦

？　１２月４日→濃霧戦　２戦
？　１２月５日→濃霧戦　２戦
？　１２月６日→本編再開-濃霧戦　２戦

　計１０戦

岡部戦績　６勝４負

生徒名簿
１年
　　織斑一夏
　　岡部倫太郎

　　篠ノ之箒
　　セシリア・オルコット
　　凰鈴音
　　シャルロット・デュノア
　　ラウラ・ボーデヴィッヒ
　　更織簪

２年
　　更識楯無
　　フォルテ・サファイア
　　サラ・ウェルキン

３年
　　ダリル・ケイシー

446 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/24(木) 01:38:41.86 ID:Q4x2CauIO

>>444
おつ
オカリン、強くなってきたな～

オカリンの厨二病のかっこよさは異常

447 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/24(木) 01:39:17.71 ID:FXHsR2ISO

乙。
鈴ちゃんついに1組になれたんだね…。

448 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(静岡県) [sage]：2011/11/24(木) 01:40:27.57 ID:74WzldFf0

乙でした
また良い所で終わってる…
オカリンが自分なりの戦い方を身に付けつつあって
格好良いったら
続きも楽しみにしてますね
あとテキストファイルも頂きました
ROMってるだけの読者、結構多いと思いますよ？

449 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/24(木) 01:40:28.05 ID:ZsauuviIO

前スレでも言われてたけど、ガチで隠密戦のエキスパートじゃないか石鍵。

支援絵のDL数が毎回三桁超えてたから100人以上は余裕でいるんじゃなイカ？

450 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/24(木) 01:42:50.38 ID:fsIMRgiwo

いちおつ！
ROMだけの人もいっぱいいるみたいだね
素晴らしいSSだからそのぐらいの人気あって当然だと思うよ

451 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/24(木) 03:02:08.44 ID:LvOziY6yo

>>1乙。こりゃ束さんがどう説明するか気になるねぇ。
面白いです、楽しみ。

408のＤＬが何故かＺｉｐじゃなかったけど、同じような人いるのかな

452 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/24(木) 03:26:03.68 ID:WSoC1MiDO

乙です

自分で書いた作品って見直すの恥ずかしいよね

453 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 04:08:35.68 ID:LqdW5ycAo

>>1です、続きを投下します。

454 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 04:09:18.81 ID:LqdW5ycAo

>>443　　続き。

-作戦司令室-

真耶「あの……どうぞ、お茶です」

束「おー、センキュ──」

千冬「いらん。水でも飲ませておけ」

束「あう、ちーちゃんは相変わらずイケズだなぁ」

455 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 04:09:57.63 ID:LqdW5ycAo

　押し切るような形で、司令室の椅子に腰をかけた束。
　会話はしているが視線の先は、モニターだった。

　モニターの中では“紅椿”と“シュヴァルツェア・レーゲン”が濃霧の中、戦っていた。

千冬「……」

　ぐい、と束の頭を掴み捻った。
　コキッ。小気味良い音が響く。

456 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 04:10:44.20 ID:LqdW5ycAo

束「わだだっ」

千冬「この部屋は関係者以外立ち入り禁止だし、生徒の戦いを部外者に見せることはできん」

束「だーかーらー、IS関係で言ったらそらもう私はちょー関係者な訳だし、その理屈で言ったら私が部外者になることなんて──」

　──メキメキメキッ。

　捕まえていた束の頭蓋が軋む。
　千冬の握力は、握力計を軽く振り切ることで有名だった。

457 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 04:11:15.59 ID:LqdW5ycAo

束「わーかったわーかったよう！　痛い痛いってば！」

千冬「ふん。山田先生、私にはコーヒーを」

真耶「あっ、はい。少々お待ち下さいっ」

　これは、席を外して欲しいと言う合図だった。
　真耶もそれを理解して席を外す。

458 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 04:11:59.03 ID:LqdW5ycAo

　──キィ。

　椅子が鳴る。
　束と対面の席に腰を下ろした。

　この親友同士が椅子を並べて座るのなど、何年も無かったことである。

束「っふっふっふ、なんか久しぶりだね。こうやってお話するのは」

千冬「お前が姿をくらますからだ、馬鹿」

　ふん、と鼻を鳴らしそっぽを向く。
　こうして視線を合わせずに会話をするのも、昔から変わらなかった。

459 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 04:13:47.62 ID:LqdW5ycAo

千冬「──で、あの“石鍵”はなんだ」

束「なんだとはなんだ」

千冬「……」

束「うぅ、解ったよう。そう睨まないでよちーちゃん」

　こうして一々釘を刺さねば、束はとことん話しを逸らしていく癖が昔からあった。
　
束「“石鍵”かー、あれねー、あれはねー……」

460 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 04:14:15.28 ID:LqdW5ycAo

　──失敗作なんだよねぇ。

千冬「失敗作……？」

束「うん。厳密に言うと確実に失敗作になる機体、かなぁ」

千冬「続けろ」

束「アレはね、ソノ機能全てをコアに任せてあるんだ」

461 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 04:14:41.65 ID:LqdW5ycAo

　──“ファースト・フォーマット”“ファースト・シフト”でまず操縦者の脳と同期する。

　そして操縦者の特性と言うか、まぁ人格だよね。

　そう言ったところから機体を生成していくんだ。

　これは凄い技術だよ？　何しろ最初から操縦者と完全リンクする訳だからね、いきなり手足のように操縦出来るはず。

　もう革新だね。革命だね。束さん天才だよね？

千冬「ヤツの操縦技術の正体はソレか……で、何故それが失敗作になるんだ」

462 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 04:15:08.28 ID:LqdW5ycAo

　──んもう。

　コアが同期する個体……つまり、その人物によって大きく能力が変わるんだよ。当たり前だけれどね。

　それこそ、第１世代に劣るスペックも在り得るし箒ちゃんの駆る“紅椿”より高スペックになる可能性もあるんだ。

千冬「妹を溺愛するお前が、なぜソレをあいつに渡さなかったんだ」

463 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 04:15:52.42 ID:LqdW5ycAo

　──はははっ、痛いところを突くねちーちゃん。

　だから。それが失敗作である由縁なのだよ。

　その操縦者の人格。つまり経験や思想、考え方を基盤にして全てが生成されるのさ。

　考えてもごらんよ、２０年も生きてない子らがこのシステムを使ってISを生成したところで５０歩１００歩の機体しか産まれないよ。

　そんな大それた人生を歩んでる子なんて滅多なことじゃ居ないからね。

　まぁ、そんな訳でそれっきりあのタイプは着手していないんだ。

　完全に失敗作だね。

千冬「……」

464 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 04:16:18.89 ID:LqdW5ycAo

　──あれはね、元々はちーちゃんにでも渡そうかと思っていたんだよ。

　ちーちゃんクラスの人間が“ファースト・フォーマット”を行えば、それはそれはもの凄い機体が産まれたんじゃないかなぁ。

千冬「断るがな」

　──だしょー？

　だから、あの子にあげちった。

　世界で２人目のIS操縦出来る男子だからね、データも取れるしまぁ良いっかーって。

465 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 04:16:56.30 ID:LqdW5ycAo

千冬「で、どうなんだ実際。お前の目から見て“石鍵”は」

　──うん、異常。

　何を思ってあの形になったんだろうね？

　普通の人間なら、まずISの形をイメージする際にあんなフォルムは考えないよね。

　絶対防御があるんだから、肌を一切露出しないとか意味が解らないし。なに、照れ屋なの？

　それに男の子だったら、もっと攻撃的な装備を思い付いても良いもんだと思うけどなーんかパッとしないよね。

466 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 04:17:24.97 ID:LqdW5ycAo

千冬「──ほう、まるで全てを見ていたような口ぶりだな？」

　──すぴーすぴー。

千冬「はぐらかすな。……まぁ良い、その件は今回不問にしておいてやる」

　──さすが、ちーちゃん。話が解るね、大好きだよ結婚しよう。

千冬「断る。それで、どうしてまた今回は出てきたんだ」

467 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 04:18:02.37 ID:LqdW5ycAo

　──いやぁ、画面越しに見ていても煮え切らないから直接中身を見に来ようかなってね。

　束さんにそこまで興味を持たすなんて、中々凄いことだよ、これは。

　一体彼はどんな人生を歩んできたんだろうね？

　履歴を調べた限りじゃ完全に普通の子で、一切興味を惹かれない凡百な人間なんだけど。

　そこんとこどうなの、ちーちゃん？　

千冬「画面越しに……か。変わったヤツではあるが、普通……だな」

468 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 04:18:33.79 ID:LqdW5ycAo

　──おかしいよねぇ。

　そんな普通の子が、普通じゃないISを作り出すなんて。

　これはもう、脳をナノ単位まで調べても罰は当らないよね。

　科学の発展、ISの発展の為にーって。

　いっくんは切り刻みたくないから出来なかったけど、彼なら別にどうなっても良いから刻み放題でしょ？

千冬「刻むな。アイツも私の生徒だ、危害を加えるなら許すわけにはいかん」

469 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 04:19:00.37 ID:LqdW5ycAo

　──むう、妬けるなー嫉妬しちゃうなー。

　でもまぁ、刻まないでも調べられるから良いよ。

　ちーちゃんに免じて、機体を調べるだけにするよ。

千冬「生れるはずが無い、異常な機体か」

束「いっくん同様、なんでISが動かせるかさっぱりだしねー、不思議不思議」

　目を細めながらお茶を飲む束。
　飲み干した湯飲みをタンと机に置いた。

470 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 04:19:26.82 ID:LqdW5ycAo

束「ぷはー、ご馳走様。それじゃ私は行くよん」

千冬「施設内を自由に闊歩されても困るんだがな……」

束「気にしない気にしないっ。じゃねっ！」

　快活に答えると、束は司令室からトタトタと元気よく飛び出して行ってしまった。
　千冬はそれを止めようとはしない。

　止めても無駄であることは、親友である彼女が一番理解していた。

471 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 04:20:05.77 ID:LqdW5ycAo

千冬「岡部……か、お前は一体どんな世界を見てきたと言うんだ」

　“石鍵”のデータベースに目を落す。
　牧瀬紅莉栖が隠蔽していたデータが、そこには表示されていた。

　提出されたスペックとはことなる数値。
　開放されていない、莫大なエネルギー量。

　呆れるほど頑丈な装甲。

千冬「牧瀬がこれを隠す意味は解る。隠されているエネルギーを推定で計算しても異常な数値だ……」

472 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 04:20:34.31 ID:LqdW5ycAo

　操縦者：岡部倫太郎　IS:石鍵

　謎に満ちた凡百の生徒。
　千冬はそっと、その画面を閉じた。

　誰に語るまでもなく、呟く。　

千冬「私がこれ以上、詮索しても仕方が無い。後は束に好きなようやらせるさ」

　──もちろん、教師として口は出すがな。

　最後にそう付け加えて。

473 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 04:23:10.98 ID:LqdW5ycAo

おわぁり。

>>447
鈴ちゃん１組になった訳じゃないよ！　よく見て、１年生枠だよぉ！

支援絵のDL数！
不覚。見たことありませんでした、いや恐ろしい数です。
NIPじゃシュタゲもISも書いてる人が少ないので、需要少ない零細と思い細々と書いてたので口が塞がりません。

今日もありがとうございました。
完結目指して頑張ります。

474 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/24(木) 04:23:21.30 ID:LvOziY6yo

いくつかの世界線を越えた人間だ、そりゃ束さんも分からないもんだｗｗ
リアルタイムで見れたーお疲れ様です。

475 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]：2011/11/24(木) 04:24:03.85 ID:WjmZ0gRco

乙　惹き込まれるわ
続きが気になって世界がやばい

476 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/24(木) 04:25:24.07 ID:LqdW5ycAo

>>451
ええと、自分ではDLしていないので解らないのですがZIPじゃない……？
と言う事は中身が見れない、読めないと言う事でしょうか。

あれえ・・・

477 ： ◆H7NlgNe7hg [sage]：2011/11/24(木) 04:30:30.44 ID:LqdW5ycAo

申し訳ありません。

>>408
を落すと自身も不明なファイルになっています。
フォルダーをアップするなんて初めてなもので、これは一体どういうことでしょう。
DL出来た方々は中身を見ることが出来たんでしょうか……。

478 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/24(木) 04:31:52.11 ID:LvOziY6yo

>>476
ＤＬしようとすると、何故かzipファイルではなく「不明なファイルの種類」と出てくる。
多分何らかのエラーなんだと思う。ファイルサイズは変わってないけど、ファイル名が途切れてるし

もしかしたら、「Steins;Stratos.zip」の ; が影響するのかもねー。
憶測なので何ともいえないけど

479 ： ◆H7NlgNe7hg [sage]：2011/11/24(木) 04:33:42.58 ID:LqdW5ycAo

>>478
不手際申し訳ありませんでした。
一応、無理矢理？　中身開けば見れたんですが、見難いですね……。

以後気をつけます。

480 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋) [sage]：2011/11/24(木) 07:48:28.32 ID:Uv+75wBwo

拡張子つけたら解凍できたよー

481 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/24(木) 08:38:17.81 ID:c2BPYriIO

ＩＳ勢に過去改変の事を感づかれた時が怖いな
オカリンのライフが0ってレベルじゃねぇ…

ハラハラしながら楽しませてもらってます、>>1乙！

482 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/24(木) 10:05:56.03 ID:+iRX+U4IO

そりゃ、あんな事やこんな事に遭遇、経験したオカリンだからなぁ

483 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/24(木) 10:18:34.97 ID:+iRX+U4IO

そして、今更ながらなぜ石鍵があんなスペックなのか分かった気がする

『硬い』か…なるほど

484 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage.saga]：2011/11/24(木) 10:27:40.69 ID:/TUn32uC0

乙！続き待ってるぜ！
>>447が言ってるのは>>433にて

鈴音『……１年１組、凰鈴音。負けました』

のことでは？

485 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(静岡県) [sage]：2011/11/24(木) 11:12:09.48 ID:PID5gTjno

最近のSSで一番面白いからなぁ
ROM専も大量に居るだろうね

486 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(高知県) [sage]：2011/11/24(木) 17:31:51.77 ID:v2EPk5Avo

乙！
そりゃまぁ、オカリンは学生の中じゃ間違いなく、誰よりも長い時間を経験したわけだしな
下手すりゃ千冬さんより長いんじゃないか

487 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/24(木) 18:30:11.22 ID:zIKa7n5SO

実際の経験時間は描写されてるより遥かに長い設定だからな
どれくらいのもんなんだろ

488 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(山口県) [sage]：2011/11/24(木) 18:52:33.72 ID:gFpMlFyPo

束さんから溢れ出るラスボスオーラで世界がヤバイ

ノーマルオカリンであの性能だからβ版オカリンの場合だったらマジキチなモンが生まれるな、いやむしろ自力で造りそうだ

489 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/24(木) 19:19:30.82 ID:WyNx7mFSO

次は束vsオカリンか、胸が熱くなるなｗｗｗｗｗｗ
戦うわけじゃないけど

束ならオカリンの秘密に感づいてしまいそうだから怖い

490 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(愛知県) [sage]：2011/11/24(木) 19:41:36.50 ID:AaujVi1no

オカリンの秘密を興味本位で覗いてしまって戦慄しそうだよな
というか、世界線漂流の記憶を他人が見たら、正直気が狂うレベルだと思う

491 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]：2011/11/24(木) 19:44:40.58 ID:Qm0ly9v90

まあ岡部が歩んだ人生は異常なものだよなぁ

492 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(中部地方) [sage]：2011/11/24(木) 19:53:22.79 ID:tgxo1g3no

正直言うと千冬姉だけ岡部の過去は知ってほしい
そして千冬姉の反応が見たい

493 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋) [sage]：2011/11/24(木) 20:12:54.72 ID:y15TvIAMo

γ世界戦のオカリンだと世界がヤバイ

494 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/24(木) 20:37:56.41 ID:RXVAA1jCo

でもなるほど、すげー面白くなってきたな... 石鍵を使いこなせるはずじゃなかったのに... 岡部、想定外の男だな！

495 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(滋賀県) [sage]：2011/11/24(木) 20:38:31.62 ID:Ex+48b7V0

γオカリンは300人委員会のトップとして世界を支配していたからな

496 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]：2011/11/24(木) 21:01:39.99 ID:Qm0ly9v90

>>495
ラウンダーの長で300人委員会にも入ってる、じゃないっけ。
俺の記憶違いか・・・？

497 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/24(木) 21:03:32.93 ID:sW9NcT9To

オカリンのポテンシャルどんだけだよｗｗｗｗｗｗ

498 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/24(木) 21:03:48.15 ID:BauyOQ8v0

このオカリンの設定はγを通っているのかな？

499 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方) [sage]：2011/11/24(木) 21:11:25.02 ID:sVVsuF2Bo

あの糞固い装甲はまゆ氏の事があったからかねぇ？

500 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(不明なsoftbank) [sage]：2011/11/24(木) 21:15:15.38 ID:6XkgtgAro

>>498
αとβだけ言っていた気がする

501 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/24(木) 21:21:58.93 ID:oZzJ/3oIO

>>498
1スレ目で>>1が「γは経験無しで」とか言ってた気がする…
オカリンのISは粒子化しそうだから恐い

502 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/24(木) 21:29:15.00 ID:03WDjdxYo

>>501
俺はメタル化しそうで怖い・・・
てかもうＩＳ自体が金属かｗｗｗｗ

503 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/24(木) 21:33:57.80 ID:WyNx7mFSO

>>492
それはちょっと気になる
興奮してしまうわ

504 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/24(木) 21:37:26.17 ID:dJE06ghDO

千冬姉バージョンの石鍵も見てみたいな

505 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/24(木) 21:38:40.55 ID:RO6LkQrIO

千冬姉バージン……だと？

506 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/24(木) 21:47:18.16 ID:cYdZhTzh0

おまいらおちけつｗｗ
俺のように精神を統一し、深呼吸してネクタイ一つでPCの前に正座して静かに待とうぜ。

507 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/24(木) 22:37:21.99 ID:sW9NcT9To

冷え症なので靴下の着用を認めていただきたいのですが…

508 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(愛知県) [sage]：2011/11/24(木) 22:39:59.42 ID:AaujVi1no

俺は腹巻きを許可してもらいたい
お腹弱いんだ

509 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(徳島県) [sage]：2011/11/24(木) 22:40:38.27 ID:k41mo2Nx0

今夜は寒いから
靴下も履いてろよ

510 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岩手県) [sage]：2011/11/24(木) 22:44:51.52 ID:zFex8w18o

スレ伸びてたから更新来たかと思ったら・・・

511 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]：2011/11/24(木) 22:52:01.25 ID:k4Fve/yDo

わくわくするのは分かるが雑談で埋めないようにな～

512 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/24(木) 23:59:05.04 ID:iilQHsRFo

毎日の楽しみ

513 ： ◆H7NlgNe7hg [sage]：2011/11/25(金) 01:22:52.79 ID:GqzxbLrTo

>>1です。

>>484
申し訳無い……また誤字ですね。
本当に多い。
今日の分を落としにきました。　短いのですが。

514 ： ◆H7NlgNe7hg [sage]：2011/11/25(金) 01:23:14.13 ID:GqzxbLrTo

往きます。

515 ： ◆H7NlgNe7hg ：2011/11/25(金) 01:23:46.83 ID:GqzxbLrTo

>>472　　続き。

　─談話室─

　特別IS戦闘演習場には様々な施設がある。
　それは有事の際に、軍人……この場合IS操縦者が状況に合った行動が取れるようにと設計されているからだ。

　“岡部倫太郎”と“凰鈴音”は、数ある部屋の中の一室。
　談話室で反省会を行っていた。

　試合後は反省会を行う。
　これは千冬が決めたルールであった。

516 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/25(金) 01:24:17.20 ID:GqzxbLrTo

鈴音「ってか、アンタ何で濃霧になった途端に張り切っちゃってるのよ」

岡部「実力だ」

鈴音「平地戦じゃズタボロだったじゃない」

岡部「ぐぬぬ……」

フォルテ「あー、面倒だからさっさと反省会終わらせちゃっても良いっスかね」

517 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/25(金) 01:24:44.82 ID:GqzxbLrTo

　会話に割って入ったのは２年生の“フォルテ・サファイア”だった。
　反省会には、その試合を観戦していた第三者が客観的な意見を述べる。

　これも千冬が決めたルールである。
　実戦は勿論、見ることによって学ぶことも大いに大事だと。

鈴音「あっ、はい」

フォルテ「あーっと……鈴音っちはあれっスね。短気すぎるっス。もうちくっと冷静に対処した方が良いっスよ。
　　　　　　岡部っちが行った攻撃、っちゅーか牽制っすかね？　あれは」

518 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/25(金) 01:25:21.63 ID:GqzxbLrTo

岡部「あぁ。あのビット自体に攻撃力は皆無だ」

フォルテ「つまり、思いっきり目を惹き付けるための攻撃な訳っスよ。打ち落とす必要すら無いっス」

鈴音「うぅ……」

　フォルテにしてはまともな意見のオンパレードだった。
　普段、一切やる気を見せないこの生徒が何故このように振舞うかと言うと──。

519 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/25(金) 01:26:00.05 ID:GqzxbLrTo

　
……。
…………。
………………。

フォルテ「どうでも良いっスよー」

　午前の部。
　岡部vs鈴音　を真面目に観戦していなかったフォルテの第一声はソレだった。

　椅子に横たわり、欠伸をかいている。

520 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/25(金) 01:26:18.59 ID:GqzxbLrTo

フォルテ「自分、今日は午前午後と観戦役と反省会のご意見人なんで適当にやっちゃって下さいっス」

鈴音「はぁ」

岡部「むう」

千冬「それは、真面目に試合を見ていないし、反省会に参加する気も無いと言うことか？」

フォルテ「有体に言えばそうっスねー、ふぁぁ……ん？」

521 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage]：2011/11/25(金) 01:26:25.14 ID:uvfRJtkp0

完結したら誰か漫画化してくれ
むしろ今のうちに描き溜めておいて完結後うｐしてくれ

522 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/25(金) 01:26:58.62 ID:GqzxbLrTo

　空いた口が塞がらなくなるフォルテ。
　今、自分は誰に何を答えたのか。

　目の前に居るのは、後輩２人。
　談話室には自分を含め、３人しか居ないはず。

　なのに、何故か後方から問いかけが投げられ後方へと回答をした。
　ギ・ギ・ギと首が後ろに回る。

千冬「おう」

フォルテ「あ……」

523 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/25(金) 01:27:31.29 ID:GqzxbLrTo

……。
…………。
………………。

フォルテ「視界の悪い中で、前方から飛び道具か何かの攻撃が来たら先ず後ろを警戒するべきっス。
　　　　　この時、一番良いのがホバリングで左右へ移動。単機で戦っているのなら友軍機に気を使う必要が無いのでマシンガン何か撃ちつつ旋回するのもありっスね」

鈴音「……はい」

岡部「だが、大陸娘にマシンガンの装備など無いはずだ。そう言った場合はどうする」

フォルテ「無けりゃ、無いで良いんスよ。あればあったで使えば良いんス」

524 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/25(金) 01:28:11.19 ID:GqzxbLrTo

　気だるそうな声でフォルテが答える。
　何だかんだと、この娘は優秀な操縦者であった。

　的確にポイントを絞り、反省会を進めていく。
　１分１秒でも早く終わらせたいと言う念が、それを後押ししていた。

フォルテ「──と、言う訳で。鈴音っちは今後もっと落ち着いて戦況を見ると良いと思うっス。
　　　　　　勝った岡部っチには特に言う事無しっすね。操縦が上手いっス」

鈴音「ぐぬぬ……ありがとうございました」

フォルテ「いえいえー、それじゃぁ自分はコレにて失敬するっス！」

525 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/25(金) 01:28:37.87 ID:GqzxbLrTo

　片手を挙げ、挨拶を済ませ旋風のように談話室を出て行くフォルテ。
　自由時間の限られたこの島では、１分１秒でも時間が惜しかった。

　廊下をすいすいと歩いていく。
　すると、すれ違う人影。

フォルテ「ん？」

526 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/25(金) 01:29:21.44 ID:GqzxbLrTo

　うさ耳のカチューシャ。
　まるで、お伽の国から飛びしてきたような格好の女性。

フォルテ「どっかで見たような……まぁ良いっス。さくっと部屋帰って寝るっスよ」

　ISの開発者であり、第一人者である“篠ノ之束”の顔をみてコレであった。

527 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/25(金) 01:29:48.53 ID:GqzxbLrTo

　

鈴音「はぁ……見てなさいよ、次こそは決着を付けてやるんだからね！」

岡部「決着なら既に付いてるではないか……」

鈴音「そう言う意味じゃなくって──」

　──バーン！！

　勢いよく開く扉。
　鈴音が岡部に向かって開いていた口は、違う意味でまた開く事になる。

528 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/25(金) 01:30:18.13 ID:GqzxbLrTo

束「じゃーんっ！！！」

鈴音「あ、あ……」

束「やぁやぁ来たよー！！」

岡部「……？」

　突然の闖入者に、目を丸くし空いた口が塞がらない鈴音。
　そんな鈴音に対して、岡部は対極的に眉をひそめ首を傾げていた。

529 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/25(金) 01:30:49.33 ID:GqzxbLrTo

束「おやおやおや？　私が誰だか解らない？　おかしいね？　おかしいよねー？」

岡部「むう……？」

束「世界中でちょー有名人しちゃってる束さんを知らない人なんて、今現在この星には産まれたての赤子位なもんだと思うけど」

岡部「……」

鈴音「ちょっ、ちょっと！」

　本気で解らないと言う顔を作る岡部。
　そんな岡部に肘撃ちをして、教えようとする鈴音。

530 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/25(金) 01:31:45.22 ID:GqzxbLrTo

束「何故だろうねーどうしてだろうねー？」

岡部「……あぁ、ホログラフの」

　思い出す。
　“石鍵”を始めて手に入れた時に流れたホログラフ映像。

　マシンガンのように喋りまくる女。
　岡部は“萌郁とは対照的だな”と言う感想を抱いていた。

531 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/25(金) 01:32:19.50 ID:GqzxbLrTo

束「あれあれあれ～？　その程度の認識ってちょっと君の常識を疑っちゃうね」

岡部「む……」

　言い返せないで居る岡部。
　色々思い当たる節がある。

　出来たと言って良い。

　しかし“それは絶対に”人へは言えない。
　言わないと決めていた。

532 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/25(金) 01:32:46.01 ID:GqzxbLrTo

束「ふふふーん？　まぁ良いや、その話しには触れないであげよう。“今は”ね」

岡部「……」

鈴音「？」

束「さてさて、さっそくだけど。君のIS──見せてね」

　ニッコリと笑顔を作る束。
　中身の無い、表面だけの笑顔。

　岡部の目にはそれがとても不気味な物に映った。

533 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/25(金) 01:35:38.41 ID:GqzxbLrTo

おわーり。
短くて申し訳無いです。

お知らせ。
明日、と言うか今日からちくっと忙しくなってしまって……。
2.3日更新出来ないかもです、と言うお知らせです。

お知らせ序に、もう1つ。
物語を終わらせる為にひた走ってますが、エンディングを2つ用意していまうです。
トゥルーとバッドです。
トリガー形式で、またアンケートを取らせて貰うかとは思いますがその際はご協力いただければ幸いです。

今回もありがとうございました。

534 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) ：2011/11/25(金) 01:37:11.53 ID:nuEagv34o

面白いな、完結までがんばってくれ

535 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(大阪府) [sage]：2011/11/25(金) 01:41:41.03 ID:OKO4Fc3N0

あー、最高っにおもしろい?
乙です。

ゆっくりでもいいから
続けてほしいな

536 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/25(金) 01:45:08.62 ID:CWK4lcaco

二つのエンディングとは粋ですな、面白い。
お疲れ様です。

537 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方) [sage]：2011/11/25(金) 01:47:12.88 ID:ysKtVsc0o

バッドを見せてからトゥルーにリセットとかあるかなないかな？

538 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]：2011/11/25(金) 01:47:39.18 ID:HF434797o

EDが2つか・・・こってるな
勿論両方やってくれるんだよな

539 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方) [sage]：2011/11/25(金) 01:47:40.49 ID:ysKtVsc0o

あ、わすれてたっ！
┌─────┐
│いちおつ.│
└∩───∩┘
　ヽ(`･ω･´)ﾉ

540 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/25(金) 01:53:54.83 ID:GqzxbLrTo

>>537-538
勿論です、どちらも書きます。
どちらから見たいかだけ、お尋ねする形になると思います。
その際、最終章だけタイトルがありますのでそれで選択して貰う形になるかと。

541 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/25(金) 02:28:44.22 ID:aF2pgXNIO

SGじゃなくてIS世界線だったのか…

542 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/25(金) 02:43:08.43 ID:DtHKFmKgo

バッドエンドを見たてらスタッフロールが巻き戻されて新たなストーリーが始まるのであろう？

543 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/25(金) 02:49:29.69 ID:AN7pR1SIO

1乙！

バッド回避するのにタイムリープしたりするんだろうか・・・

544 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]：2011/11/25(金) 04:33:00.98 ID:+8uFHRTCo

乙

545 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/25(金) 04:33:04.33 ID:9fpkurWx0

SG世界線じゃないって、つまりどう言うこと？

546 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/25(金) 08:52:52.58 ID:38CY9FHIO

>>543
IS勢を救う為に再び執念オカリンか…考えただけでチキン肌

547 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) [sage]：2011/11/25(金) 09:12:34.42 ID:C3lYzyKAO

バード肌

548 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/25(金) 11:23:04.76 ID:skRTA2QI0

　　　　　　　　　 /::::::::::::::::::|:::::::::::::::::..ヽ::::::::::::..＼
　　　　　　　 /::::::::::: |::::::|＞､|:::::::::::::::. :::::::::::::::::.
　　　　　　　　 :::::::::::::::::l::::/＞彳|:::::::::::::::|ﾊ:::::::::::::::i
　　　　　　|::::|::::::.V／ｵｯﾉ　 |:::::::::::::::|ｿ|::::::::::::::|
　　　　　　|:::::＼::::.＼　　　　|:::::::::::::::|ｲ:::::::::::::::|
　　　　　　　 |:::::::::《ｯ)j￣　　　|:::::::::::::::| |::::::::::::: |　私よ、今日も岡部の活躍を余すところなく
　　　　　　　　 |:::::: ∧　`　　　　 |::::::::::::: |｜::::::::::: |　　確認したわ。
　　　　　　　　 |__r-ﾊﾍ　　っ　　|::::::::::::::|　|:::::::::::: |　　ええ、これからも監ｓ……チェックを続けるわ。
　　　　　　　 ,.ﾍ､〉ﾊﾉ　＼　　　ｲ|i::::::::::|___|::::::::::::ﾊ　　その為にもとりあえず>>1乙しておくわね。
　　　　　　|Tﾉ'／＼ _／＞＜ |:ﾄ|:::::::,'￣|:::::::::::::∧
　　　　　　　／／　　（ {:::::::::::::::::|:|:::::::/　　|:::::::::::::ﾄ:::.＼
　　　　　＼＼／／ /:::::::::::::::::|:|::::/||　　i::::::::::::::|￣￣
　　　　　　 :| ヽ／／:::::::::::::::::ノ|:::/　ヾ　 !::::::::::::ﾉ
　　　　　　／|　　　/:::::::::＞／　j/／／V/::::::::::::/
　　　　 :||　|　　　ﾚ〉:::/∠_ 　ｲ|/／　 /:::::::::::::/
　　　　　 |＼| 　　/ |::/ |￣　/ 「 7　　:l:::::::::::: /　Y
　　　　 }　ヽ_／ﾉ|:|　| 　 /　|_/　　 /!:::::::::::/　　|ヽ

549 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/25(金) 15:16:20.17 ID:mSFbRvOIO

やっぱりバッドが先じゃないと後味わるいような希ガス

550 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/25(金) 22:55:09.99 ID:CWK4lcaco

トゥルー前にいくつかエンディング迎えるのはＳＧの法則だよな

551 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]：2011/11/26(土) 01:02:59.57 ID:KFyP1yPj0

なんてこった･･････SG世界戦に到達できたと思ったらIS世界戦に迷い込んでたでござるの巻

552 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/26(土) 02:26:46.01 ID:n4jLRMYIO

バッドからのトゥルーでお願い

553 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/26(土) 03:12:15.61 ID:otgnjHRQ0

バッドからのトゥットゥルー！が理想

554 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/26(土) 17:08:41.58 ID:OHW9lDCAo

つ「涼宮ハルヒの分裂」

555 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/27(日) 00:25:11.39 ID:EEp0eK3E0

ここでハルヒの名前が出る理由がさっぱりな俺に説明

556 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [sage]：2011/11/27(日) 00:35:18.99 ID:9yuwKNJTo

世界が分岐して最終的に統合される展開があるから

557 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋) [sage ]：2011/11/27(日) 01:01:13.05 ID:/doCLuKOo

意味わからんから氏ねや

558 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/27(日) 01:05:08.39 ID:EEp0eK3E0

スレが荒れる原因になるから、そういう言葉止めようぜ…
意味は良く分からんけどさ

559 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/27(日) 09:50:10.57 ID:n5gPacrDO

もしかして、流れに便乗しつつ皆と違う言い回しがしたかったとかそういうアレか

560 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]：2011/11/27(日) 10:30:06.12 ID:LtKBU8f30

>>559
成程、オカリンと同じ病を患ったのか

561 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(山口県) [sage]：2011/11/27(日) 12:38:36.05 ID:+6oTqLDCo

以下雑談自重

562 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/27(日) 15:03:47.09 ID:cxTdIrNL0

どのスレにも一人は居るけど、作者が雑談認めてるのに止めるやつはなんだろうな？
全く関係無い話題ならともかくーと言ってなかったっけ？

563 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長野県) [sage]：2011/11/27(日) 16:30:56.63 ID:KwjPwkcwo

まああんまり雑談で埋めると更新されたのかと勘違いする

564 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長野県) [sage]：2011/11/27(日) 17:35:21.73 ID:WyascXiPo

時々ageるのも混ざってるしな　　　後は時々いる展開予想系とかが嫌いとかなんじゃないか？

565 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/27(日) 21:29:15.58 ID:BWK/b0fzo

雑談もあってのニッパーだと思う。
レスかぶりとかもな

566 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/27(日) 21:53:01.12 ID:7CkKSXlDO

>>565
ニッパーってwwwwwwww
ガンプラでも作んのかよwwwwwwwwwwwww

567 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(山口県) [sage]：2011/11/27(日) 22:30:37.26 ID:+6oTqLDCo

>>566
こいつはくせぇーーッ

568 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長野県) [sage]：2011/11/27(日) 23:13:53.18 ID:WyascXiPo

そんなことより世界と踊ろうぜ！

569 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/27(日) 23:23:39.17 ID:bAkiM9kJ0

最近マジでこのSSは原作（IS）をあらゆることで越えたと思うわ
地の文章、筆の速さ、展開の意外性の点で特に
はっきり言って原作がある分を差し引いても、そこらで量産されてるラノベより面白いよ
完走まで>>1には頑張って欲しいな

570 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/27(日) 23:31:41.15 ID:9s+JqjOpo

そういう物言いは荒れる元にもなるから控えた方がいいと思うぜ
このＳＳが最高に面白いという点に関しては同感だけどね！

571 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/27(日) 23:58:29.68 ID:2jjAO395o

毎日書く>>1が書き込まず他の奴らがわいわい騒いでるとなんかわくわくしてくる

572 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方) [sage]：2011/11/28(月) 00:17:41.21 ID:DGkiTvx8o

きたか…！！

　　( ﾟдﾟ )　ｶﾞﾀｯ
　　.r　　ヾ
＿_|_|　/￣￣￣/＿
　　＼/　　　　/

と思ったらこのザマだよ

おちつけ

573 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋) [sage ]：2011/11/28(月) 00:30:48.94 ID:cZQHrxYLo

>>569
わかるわ
ISの数段上を行ってるよな
主これからも頑張ってくれよ～！

574 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(不明なsoftbank) [sage]：2011/11/28(月) 00:32:03.82 ID:jPkSVg4Qo

他を貶めることで持ち上げるなよ

575 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長野県) [sage]：2011/11/28(月) 00:39:45.93 ID:xGTxlpWyo

原作と～とか言ってるのは釣りだろ

576 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]：2011/11/28(月) 01:09:39.26 ID:IMzCgzoR0

>>569
物凄く気持ち悪いです。

577 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(静岡県) [sage]：2011/11/28(月) 01:59:18.41 ID:NW36T9XEo

そんなことより続きが気になるんだお

578 ： ◆H7NlgNe7hg [sage]：2011/11/28(月) 02:01:06.62 ID:p7oVTZaJo

>>1です。

やっと家に帰ってこれたので、明日明後日には平常運転に戻れるかと思います。

沢山のレスありがとうございます。
更新したら、レスが沢山付いてて驚きと嬉しさでいっぱいです。
励みになりますです、多謝！

あと、DL数が200いきそうです（（；゜Д゜））
VIPと比べたら過疎気味だよなぁとか思ってたので、大変失礼してました。

と言うお知らせでした。

579 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(広島県) [sage]：2011/11/28(月) 02:02:28.78 ID:ShxIzJKPo

乙です楽しみに待ってます

580 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/28(月) 02:12:09.44 ID:z1SqgT+d0

>>578
レスしないだけで結構いるよ、ソースは俺

581 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/28(月) 04:41:16.26 ID:5PP6RLrA0

おかえりなさい
なんだかもうクライマックスって雰囲気ですね。非常に楽しみです。
鈴と助手とラウラで貧乳ズなんて描いてる場合じゃないですね。下の二つは違いますが。

http://wktk.vip2ch.com/dl.php?f=vipper27099.jpg

http://wktk.vip2ch.com/dl.php?f=vipper27100.jpg

DL数は、リピーターや巡回BOTのクリックも集計しているので正確な数は把握できないのですが、それでも凄い人数ですよね。

>>106
すみません。思い切り見過ごしてました。
はい。適当に単語を並べているだけですが、だいたいそんなかんじです。

582 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/28(月) 07:48:26.53 ID:2Fz/rV9IO

>>581
すげえええええ
リモコンわろたｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ

583 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) [sage]：2011/11/28(月) 10:17:56.96 ID:W/IJn46o0

>>581
オカリンがVANQUISHのサムっぽいｗｗｗｗｗｗ
あと、クリスさん足ｗｗ

584 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/28(月) 12:37:41.53 ID:5XJxUT21o

>>581

　　(　＾)　　地面か、、、
　（　）￣
(　　| |　　)

　　＿(＾o＾)　　フンッ！
　　　　（　）|
　　(　　| |　　)

　　　　　　　( ＾o)　うわっ！
　　　　　￣（　）
　　　(　　　//　　)
　　　　　　　　　　　　 (o＾ )　なんだこれ！熱っ！
　　　　　　　　　　　　（　）ヽ
　　　　　　　　　　　　 | |　

..三　　＼　＼　　V　　／　 (o＾ )　三　マグマだー♪
　三　　＼　＼　　V　　／　（　）ヽ　三
三　　　＼　＼　　|　　／　　/ /　　　三

三　 ( ＾o)　＼　　V　／／　/ /　　三　マグマだー♪
　三／（　）　＼　 V　／ (o＾／　　　三
三　　　ヽヽ　＼　|　　／（　／　　三

..三／（　）　＼　 V　　／　　 (o＾ )　三　
　三　ヽヽ＾o) ＼ V 　　／　　（　）ヽ　三
三　　　＼　　)＼ |　(o＾／　 / /　　　三

585 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/28(月) 17:56:36.24 ID:osye6OK2o

更新来たかと思ったらなんだ雑談か... 良いスレだな
しかし絵のレベルもすげええええ
>>1も明日からかな？がんばってくだしあ＞＜

586 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/28(月) 23:14:17.03 ID:p7oVTZaJo

>>1です。

添削が終わったら投下しに来ます。
日付変更前にはこれるかと思います。

587 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/28(月) 23:31:30.24 ID:IhbPqaHDo

まってた

588 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/28(月) 23:32:01.51 ID:p7oVTZaJo

往きます。

589 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/28(月) 23:32:42.82 ID:p7oVTZaJo

>>532　　続き。

　
……。
…………。
………………。

エム「……」

スコール「良い？　場所は日本海──」

エム「解っている」

　仄暗いIS格納庫。
　そこには３つの人影があった。

590 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/28(月) 23:33:00.69 ID:p7oVTZaJo

オータム「スコール！　何で俺にも行かせてくれないんだ！！」

スコール「“アラクネ”はまだ動かせる状態じゃないわ。オータム、それは貴女にも解っているでしょう？」

オータム「だけど……っ！」

スコール「そうだ、オータム。後でお風呂に入りましょう、髪を洗ってあげるわ」

オータム「あっ、あぁ……」

　エムはそんな２人を冷やかな目線で見つめていた。
　煩わしい女に、馬鹿な女でお似合いだとも思っていた。

591 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/28(月) 23:33:34.42 ID:p7oVTZaJo

スコール「エム。命令されたこと以外はしてはだめよ」

エム「解っている……だが、ISに搭乗さえしていれば殺してしまっても構わないのだろう」

スコール「えぇ。だけど、貴女の標的である“織斑千冬”は現段階でISの保有は確認されていないわ」

エム「……」

　エム──“織斑まどか”の標的であり目標は“織斑千冬”である。
　それ以外の者など何の興味も無い。

　“織斑一夏”とて例外では無い。
　幾度か接触して確認した。

592 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/28(月) 23:34:02.77 ID:p7oVTZaJo

　やはり、彼女にとって“織斑一夏”など何者でもないのだ。

　ただ、利用価値は大いに認められた。
　“織斑一夏”を殺害すれば“織斑千冬”はどんな表情を作るのだろうか。

　それを思うと、エムの口角は歪に変形していく。

スコール「貴女も大概ね」

エム「……」

　見透かされたように呟くスコール。
　内心を覗かれたようで、気持ちの良いものではなかった。

593 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/28(月) 23:34:29.22 ID:p7oVTZaJo

スコール「任務の再確認」

エム「主に視察……現在、日本海海上に設置されてある特別IS戦闘演習場にはIS学園の専用機が全て集結している。
　　　　コレを襲撃。データを収集」

スコール「宜しい。そこにはロシア代表である“更織楯無”も居るから注意してね」

エム「…………」

　IS戦において、無類の力を発揮するエムにとって代表操縦者と言えどたかが知れていた。
　アメリカ代表操縦者である“イーリス・コーリング”と一戦交えた時ですら、余裕を感じられた程である。

594 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/28(月) 23:34:57.67 ID:p7oVTZaJo

エム「……一度でいいから、ぞっとしたいものだ」

　そう小さくこぼし“サイレント・ゼフィルス”は大きく飛翔した。
　目的地。

　──特別IS戦闘演習場へと進路を向けて。

　
……。
…………。
………………。

595 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/28(月) 23:35:43.06 ID:p7oVTZaJo

束「ぱらりろぱらりらぺろ～♪」

岡部「（ゴッドファーザー……？）」

　お気に入りの音楽を口ずさみながら、大量の空中投影キーボードを高速で叩く束。
　場所は変わらず談話室。

　彼女が居れば、そこがラボでありラボになる。
　束のペースでIS“石鍵”を展開させられた岡部は、そのまま済し崩し的に協力する形となった。

　鈴音はと言うと、束は眼中に無いのか完全に見えていないような素振りをしている。
　チャームポイントである八重歯を、ぽかーんと開けた口から覗かせていた。

596 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/28(月) 23:36:20.95 ID:p7oVTZaJo

束「へいへいへ～い、全部曝け出しちまいな～」

　口はふざけていてもそこは超、が付く天才である。
　空中に呼び出された６枚のディスプレイと、６枚のキーボードを完全に使いこなしている。

束「ふんふん。思った通り複雑怪奇なフラグメントマップだね。いっくんのソレとも大分違うね」

　──フラグメントマップ。

　各ISがパーソナライズによって独自に発展されしていくその道筋のことである。
　人間で言う遺伝子的なもの。

597 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/28(月) 23:37:11.22 ID:p7oVTZaJo

岡部「どうして男である俺がISを動かせるのか、解ったのか？」

束「ん～？　さてねー、何でだろうねー、いっくんにも言ったけどさっぱりぱりだよ。
　　ナノ単位まで分解してみても良い？　いっくんにはお断りされちゃってさ」

岡部「断る」

　分解。
　それは言葉のニュアンスで“IS”ではなく、本体である“人間”を指していることは容易に想像が付いた。

598 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/28(月) 23:37:55.58 ID:p7oVTZaJo

束「それにしてもこの子は引き篭もり気味だね、全然答えてくれないよ。君がこの子の父親であるのならば、束さんは母親に当ると言うのに全く失礼な！」

　岡部に話しかけているのか、居ないのか。
　束の発する言葉はその全てが自己で完結していた。

　鈴音など未だに部屋の片隅で呆然としている。
　以前、束に話しかけて無残にも蹴散らされたセシリアが脳裏を過ぎり迂闊に動けないでいた。

束「ふむふむ……おっ、何か面白いパッチが２つほど当てられているね」

岡部「……」

599 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/28(月) 23:38:32.01 ID:p7oVTZaJo

　そのパッチと言うのは勿論“牧瀬紅莉栖”が自作し当てたものである。

　１つはエネルギー供給を自動でカットする、機能をカットするパッチ。
　もう１つは、パラダイム・シフトの出力をカットするパッチ。

　考えてみれば、２つともが元々あった能力を制限するパッチであった。

束「なるへそぺるせぽね……中々良いエンジニアが居るようだね、ほー……しかしまぁ良く解らない仕様だねこの子は」

600 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/28(月) 23:39:18.15 ID:p7oVTZaJo

　束にして良く解らない仕様と言いせしめる。
　コアは頑なにその全貌を見せようとはしなかった。

束「干渉を拒否ってるねこりゃ。全部自分でやりたがってるや」

　なおも高速でキーボードを叩く手を止めない束。
　６枚のディスプレイは次々にデータを表示していく。

岡部「で、結局何か解ったのか？」

束「んー？　まぁ、ちょこっとだけどね……それにしても此処へ来て随分と実戦を組めているじゃないか、あとちょっとだね」

岡部「？」

601 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/28(月) 23:39:59.75 ID:p7oVTZaJo

　束は、こっちの話しだよと付け加えた。　
　そしてまたブツブツと独り言のように語り始める。

束「制限？　リミッターか、があと……枚、コレは外部からじゃ無理だなぁ……意味解らん。ワンオフもまだ……、セカンドシフトも……」

　高速で端から端まで動く眼球。
　一字も漏らさず、膨大なデータを目で見て読み取っている。

　通常のエンジニアでは見れない情報。
　コアのブラックボックスに当る、深層部のデータを読み取っていた。

　ソレでも全てを掴むことが出来ない。
　束に掴めないのなら、この世界でそれを知ることが出来る人間など居ないことになる。

602 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/28(月) 23:41:00.06 ID:p7oVTZaJo

岡部「……」

　岡部はただただジッと、稀代の天才が満足するまで付き合うしかなかった。
　それから数分後。

　耳を劈く様なアラートが施設一杯に鳴り響いた。

　──ジリリリリリリリリリ！！！

　“RED ALERT”
　緊急事態を告げる警告音。

603 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/28(月) 23:41:47.52 ID:p7oVTZaJo

岡部「！？」

鈴音「！？」

束「ほよ？」

　しばらくして、教員である“山田真耶”のアナウンスが入った。

真耶「緊急事態です！　対象“UNKNOWN”は施設の迎撃システムを全て破壊し施設内に侵入しました！！」

604 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/28(月) 23:42:14.37 ID:p7oVTZaJo

岡部「なっ……」

鈴音「何よ、また！？　ここでも！？」

束「ほー……」

真耶「各人、教員や施設職員の指示に従って避難して下さい！」

千冬「聞こえたな、相手は市街戦想定リンクで暴れまわっている。恐らく──“亡国企業”だろう。専用機持ちは作戦室に集合、こちらで指示を出す」

605 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/28(月) 23:42:52.65 ID:p7oVTZaJo

　“亡国企業”-ファントム・タスク-
　幾度だが、岡部も耳にしてある単語だった。

　一夏や、楯無に気をつけろと言われている相手。
　危険な相手だと。

鈴音「ちょっと！　何ぼさっとしてんのよ、行くわよ！」

606 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/28(月) 23:43:29.43 ID:p7oVTZaJo

　呆然としている岡部に声をかける鈴音。
　岡部が呆然とするのも当然であった。

　ついこの間まで一般人であった岡部である。
　このような緊急事態に、とっさに指示通り動く事など簡単に出来るはずが無かった。

束「はいストーップ！！　大陸の子はちょっと、黙っててね」

607 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/28(月) 23:43:59.19 ID:p7oVTZaJo

　岡部を連れて行こうとする鈴音に待ったをかける束。
　有無を言わせない何かがあった。

束「君君ぃ、チャーンスだよコレは」

岡部「なにを言っているんだ……」

　“ALERT”が鳴り響く中、束は笑顔を作っていた。
　明らかに異常である。

　そんな笑顔を見て、岡部は束に恐怖すら感じた。

608 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/28(月) 23:44:26.18 ID:p7oVTZaJo

束「丁度ISを展開しているしさ、これはもうヤッちゃうべきだよね、そうするべきだよね」

鈴音「──なっ」

　束が何を言おうとしているか、鈴音は即座に理解した。
　この女は──この科学者はデータを取るために目の前の人間を戦場へ送り出そうとしている。

　戦力も何も解らない状況で、単機出撃すればどうなるかなど想像に容易い。
　それでも稀代の天才は笑顔を浮かべて、ソレを促していた。

609 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/28(月) 23:44:53.01 ID:p7oVTZaJo

束「さっ、イってみよーかー！！」

　市街アリーナの方向に人差し指を向けて、くるくると円を描く束。
　──キンッ！　と甲高い音が鳴ったと思うと、楕円形の穴が綺麗に空いていた。

　まるでアイスディッシャーでくり貫いたかのように、壁が消失している。

束「そこの廊下を出て、突き当たりの扉を開けばソコははい楽園！」

岡部「なっ……」

鈴音「……」

610 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/28(月) 23:45:20.39 ID:p7oVTZaJo

　ギリリッ、と鈴音の八重歯が鳴る。
　逆らえない。“篠ノ之束”には逆らえない何かがあった。

鈴音「……あの」

　意を決して口を開く。
　コレ以外に、最善の手は思い浮かばなかった。

鈴音「中国代表候補生の“凰鈴音”です。サポートを願い出ます……」

束「ん？　勝手にすれば？」

鈴音「はい……ほら、行くわよ……」

611 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/28(月) 23:45:47.90 ID:p7oVTZaJo

　即座にIS“甲龍”を展開した鈴音は岡部を廊下へと誘った。
　市街エリアに向かう途中、プライベートチャネルで岡部へと話しかける。

岡部『おい』

鈴音『言いたいことは解る。けど、あの人に逆らっても碌なことになりはしない』

　すぐにオープンチャネルを使い、司令室に居る千冬にコンタクトを試みたが“何故か繋がらない”状況になっていた。
　つまり、そう言うことなのだろう。

612 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/28(月) 23:46:14.76 ID:p7oVTZaJo

鈴音『良い？　先ず、敵の戦力を探るわよ。そしてなるべく戦闘は避ける、戦闘になった場合も時間を稼ぐ』

岡部『……』

　鈴音の頭は自身も驚くほど冷やかだった。
　全身がピリピリと緊張で痛む。

　岡部は何が起こったのか、理解が追いついていなかった。

613 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/28(月) 23:46:41.77 ID:p7oVTZaJo

鈴音『IS学園には度々こう言った襲撃があんのよ』

岡部『話しには聞いた事があるが……』

鈴音『集中しなさいよね。でないと……怪我じゃすまないわよ』

岡部『……』

　何時になく本気な声色の同学生。
　否応無く、これが現実であることを岡部の脳は理解していく。

　──襲撃。

　岡部にとって最も嫌いな言葉の１つ。

614 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/28(月) 23:47:07.63 ID:p7oVTZaJo

岡部『俺は素人だ……お前の指示に従おう』

鈴音『何よ、素直じゃない……』

　呆気に取られたような顔を作る鈴音。
　岡部は鈴音に２戦２勝している、結果だけを見るのならばこの場合、作戦を考えるのは岡部になる。

　しかし、岡部はあっさりとその権利を鈴音に譲渡した。

615 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/28(月) 23:47:33.83 ID:p7oVTZaJo

岡部『これは遊びじゃない。お前の方が、こう言った状況への対応などに慣れているだろう』

鈴音『まっ、まぁね……』

　代表候補生としての、有事の訓練。
　そして度重なるIS学園での襲撃を経験している鈴音。

　短い思考の中で、鈴音に指揮を任せるのが最善だと岡部は答えを弾き出した。

616 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/28(月) 23:48:00.06 ID:p7oVTZaJo

鈴音『そんじゃま、行くわよ……』

岡部『あぁ……』

　市街エリアに続く扉へ辿り着く。
　鈴音の頭ではいち早く援軍……一夏の登場を願っていた。

617 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/28(月) 23:48:27.25 ID:p7oVTZaJo

用語説明。
wikiからペタリしているので、原作読んでいる方はスルーOKな内容です。

“亡国企業”-ファントム・タスク-

裏の世界で暗躍する秘密結社。
第二次世界大戦中に生まれ、50年以上前から活動している。
組織は、運営方針を決める幹部会と実働部隊の2つに分けられる。
ただし、組織の目的や存在理由、規模などの詳細が一切不明の謎が多い組織。

スコール・ミューゼル
　亡国機業の女性幹部。長身で豊かな金髪を持ち、抜群の美貌を誇る。
　エムやオータムにIS強奪を指示し、事ある毎にIS学園へ潜入や襲撃をさせている。
　彼女自身もIS操縦者であり、部分展開の状態で楯無の追撃を振り切ったり、エムよりも速く動いて彼女を制裁しようとするなどの底知れない実力を持つ。

エム
　亡国機業の実働部隊に所属。
　一夏より年下と思われる外見ながら、複数の専用機持ちを相手取りながら互角以上に立ち回るなどIS操縦において高い実力を持つ。
　平然と他人を殺害しようとする冷酷な性格で、自身の能力の高さゆえに他人を常に見下している。
　自身は「織斑マドカ」を名乗り、千冬と瓜二つの顔をし、千冬のことを「ねえさん」と彼女は呼んでいる。
　使用ISは「サイレント・ゼフィルス」

オータム
　亡国機業の実働部隊に所属。
　スコールの恋人。髪はロングヘアー、口が悪く、短気。
　使用ISは「アラクネ」

618 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/28(月) 23:50:14.49 ID:p7oVTZaJo

おわーり。
お久しぶりな更新でした。
本日もご静読、ありがとうございました。

>>581
毎度毎回、ほんっっっっっとうにありがとうございます……。
感謝の語録が足りなくて参るくらい嬉しいございます！
ありがとうございますありがとうございます！

619 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/28(月) 23:51:01.62 ID:YRvErF6Jo

乙！！

これからも期待してるぜ！！

620 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/28(月) 23:51:37.51 ID:p7oVTZaJo

間違えて、書き込み押してしまった。
>>581
タイバニよろしく、フルフェイスメットが　カシュッ　と開く妄想をしていたのでピッタリです。
デフォルメキャラが相変わらず可愛すぎて頭がおかしくなりそうです。

ふう。

621 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋) [sage]：2011/11/29(火) 00:01:35.98 ID:N/DwWUTyo

面白かったぜ！！
続きが気になるぅー

622 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長野県) [sage]：2011/11/29(火) 00:02:59.44 ID:ZMF+fIjwo

乙　　久方ぶりだけど、今週からまた楽しみ

623 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage　saga]：2011/11/29(火) 00:03:56.54 ID:rkVcYuBZ0

おつつん

そういえば原作が打ち切りだって聞いたんだが

624 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(山口県) [sage]：2011/11/29(火) 00:06:29.06 ID:gIUrNEeho

>>623
ツイッターをちらと見る限りでは「一応」書いてるらしい
作者の性格さえどうにかなればなぁ……

625 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東・甲信越) [sage]：2011/11/29(火) 00:09:18.86 ID:vOKp3PkAO

絵師さんもSSを書いているのなら、是非読んでみたいんだが……
叶わぬ夢だろうか、レベルたっけぇよ！
他のスレでも描いてるのなら教えて欲しいレベルです

626 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/29(火) 00:44:24.68 ID:qKP1UmVI0

乙！！続きが気になって仕方ないお

627 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/29(火) 02:52:57.66 ID:wFA/4c0IO

初実戦のパートナーは鈴音か。
SGの序盤で率先して協力してくれたのが鈴羽だったから感慨深いな。

そして『企業』と『機業』、どっち？

628 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/29(火) 07:51:23.88 ID:NAF1kObSO

くそっ！設定上しょうがないかもしれんがクリスより束のほうが上というのが気にいらない
いつか束を出し抜いてけれｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ

629 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(滋賀県) [sage]：2011/11/29(火) 09:42:14.47 ID:6HdfyQ220

助手も簡単にタイムリープマシンを作るあたり、結構チートだけどな

630 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/29(火) 11:59:02.14 ID:rW/Pa8Sd0

乙！
オカリンガンバレ！

631 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(不明なsoftbank) [sage]：2011/11/29(火) 15:55:43.21 ID:tYwjkBEf0

>>628作るものの方向性が違うだけで別のものならクリスのが上の分野だってあるんじゃね？

632 ： ◆H7NlgNe7hg [sage]：2011/11/29(火) 16:42:54.44 ID:RyOcQ/wjo

　　　　/＼＿＿_／ヽ　　ヽ
　　／　　　　::::::::::::::::＼　つ
　 . | 　,,-‐‐　　‐‐-､ .:::|　わ
　　|　､_(o)_,:　 _(o)_,　:::|ぁぁ
. 　 |　　　　::<　　　　 .::|あぁ
　　＼　 /( [三] )ヽ ::／ああ
　　　／｀ー‐--‐‐―´＼ぁあ

＜ピコーン

～～～～.txtの内容は変更されています。
変更を保存しますか？

　はい（Y)　いいえ（N)　キャンセル

　　　ニア　いいえ（N)　　ｶﾁｯ

うわああああああああああ

633 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(鹿児島県) [sage]：2011/11/29(火) 17:02:05.52 ID:1bSRJTA1o

　　　　/＼＿＿_／ヽ　　ヽ
　　／　　　　::::::::::::::::＼　つ
　 . | 　,,-‐‐　　‐‐-､ .:::|　わ
　　|　､_(o)_,:　 _(o)_,　:::|ぁぁ
. 　 |　　　　::<　　　　 .::|あぁ
　　＼　 /( [三] )ヽ ::／ああ
　　　／｀ー‐--‐‐―´＼ぁあ

634 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(山口県) [sage]：2011/11/29(火) 17:48:31.00 ID:gIUrNEeho

>>1頑張れ超頑張れ

635 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/29(火) 18:25:33.96 ID:rW/Pa8Sd0

な、なんだってー！？
これも機関の陰謀だというのかチクショウ！
負けずに頑張れ！
今度は消えない世界線に行くんだ！

跳べよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ！！！

636 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/29(火) 18:48:04.17 ID:bb4EHM4IO

書き溜め…

637 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/29(火) 19:06:05.24 ID:1Smd4UMC0

次回もｗｗｋｔｋだぜ！！

638 ： ◆H7NlgNe7hg [sage]：2011/11/29(火) 19:18:10.45 ID:RyOcQ/wjo

ちょっと正気を失いかけて、VIPのニートスレに在中したりネットサーフィンとかしてしまいましたが大丈夫です。
今日中にきっと更新します。
サーフィンしてたら、比翼恋理のだーりんがPSP移植の記事を見たのでやる気がみなぎりました。

639 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/29(火) 19:30:57.92 ID:gph25Amm0

>>638
マジか！俺もやっと比翼恋理できる
更新待ってるぜ！

640 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/29(火) 20:29:53.14 ID:qm9wxmKC0

>>638
本当に！？やっときたか！！

641 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岩手県) [sage]：2011/11/29(火) 20:38:46.72 ID:7W52qtBGo

なんでPSPなん・・・
どーせ抜かれるのがオチだろ

642 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/29(火) 20:51:21.64 ID:DC8W1h1Mo

vitaだったら本体買わんといかんかったからｐｓｐで出てくれてうれしい限りだ

>>1よ、めげずに頑張ってくれ
まってるぜ！！

643 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/29(火) 21:00:46.67 ID:RyOcQ/wjo

往きます。

644 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/29(火) 21:01:53.43 ID:RyOcQ/wjo

>>616　　続き。

　─市街戦アリーナ─

　日本海に浮かぶ特別IS戦闘演習場。
　その広大な敷地面積の殆どが、実戦を想定したアリーナで出来ていた。

　平地戦、市街戦、海上戦、山岳戦。
　そして、濃霧や雷雨など様々なシチュエーションを作り出せる全天候型のアリーナ。

　５つのアリーナからなる演習場は、全長３０キロにも及ぶ超巨大施設である。
　各国が資金を提供しているだけあって、その施設の充実振りも確かだった。

645 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/29(火) 21:02:08.07 ID:RyOcQ/wjo

　それだけの施設である。
　防衛システムもかなりの物を用意してあった。

　領空海内付近に近づけば直ちに警告。
　警告を無視した場合は、迎撃。

　今回の襲撃者はその防衛システムを全て破壊し、侵入してきた。
　それだけで、かなりの手錬だと伺える。

　襲撃者が最初に侵入したエリアは、市街戦を想定したビル郡立ち並ぶコンクリートジャングル。
　バイザータイプのハイパーセンサーで周囲を感知するが、人っ子一人居ない完全の無人街だった。

646 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/29(火) 21:03:13.05 ID:RyOcQ/wjo

エム『……くだらん』

　──キュンッ！！

エム『……』

　背後から放たれるBTエネルギー。
　エムはそれをほんの少し、体をそらすだけで難なく交わした。

647 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/29(火) 21:03:40.21 ID:RyOcQ/wjo

職員『侵入者ですね？　貴女は幾つもの法を破っています』

職員２『抵抗は無駄です。直ちにISを解除し──』

エム『……』

　警告をし、投降を促す職員に対しエムは無言で“スターブレイカー”。
　星を砕く者の名を持つ長大なライフルの銃口を向けた。

職員『やる気まんまん……』

職員２『って訳ね……』

648 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/29(火) 21:04:15.62 ID:RyOcQ/wjo

　
……。
…………。
………………。

-作戦司令室-

千冬「遅い！　岡部と凰はどうした」

　作戦司令室。
　そこには、IS学園の専用機持ち……岡部と鈴音以外が集っていた。

649 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/29(火) 21:04:42.22 ID:RyOcQ/wjo

一夏「連絡が付きません。プライベートチャネルも一切繋がらない……」

楯無「……」

千冬「確か最後に一緒に居たのは……サファイアだったな」

フォルテ「えっ？　あっ、自分っスか？」

千冬「反省会はどうした」

フォルテ「やだなぁ、ちゃんとやったっスよ。終わった後、自分は談話室から出てきちゃったんでその後は知らないっス」

千冬「サファイア。誰か不信な……いや、見知らぬ人間を見なかったか？」

650 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/29(火) 21:05:13.73 ID:RyOcQ/wjo

フォルテ｢……？　あっ、そう言えばウサギの耳みたいのつけた人とすれ違ったような……」

箒「……っっ！」

一夏「！！」

　ウサギの耳。
　彼女、“篠ノ之束”を表すのにこれ以上の特徴は必要が無かった。

　反応する一夏と箒。
　２人の視線は、自然に千冬へと集中した。

651 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/29(火) 21:05:40.74 ID:RyOcQ/wjo

千冬「そうか……」

箒「あっ、姉が……来ているんですか？」

千冬「あぁ」

　千冬は簡潔に答える。
　しかし、それ以上口を開こうとはしなかった。

楯無「（篠ノ之博士が来ているこの状況で襲撃……ちょっと、タイミングが良すぎるわね）」

652 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/29(火) 21:06:07.37 ID:RyOcQ/wjo

　勘繰る楯無。
　それもその筈で、IS学園を襲撃する無人IS。

　証拠こそ一切出ないものの、犯人の姿は浮かんでいた。

真耶「市街アリーナで職員が襲撃者と戦闘中！　モニター出ます！！」

　真耶の声と共に映し出されるモニター画面。
　そこには“サイレント・ゼフィルス”に無残にも、嬲られている２機のISの姿があった。

653 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/29(火) 21:06:39.48 ID:RyOcQ/wjo

セシリア「“サイレント・ゼフィルス”……っ！！」

　声をあげたのはセシリアだった。
　“サイレント・ゼフィルス”は英国で開発されていた第３世代機であり、“ブルー・ティアーズ”の姉妹機にあたる存在だった。

ラウラ「と言う事は……やつか」

一夏「……」

　一夏の表情が一段と引き締まる。
　自分の命を狙ってきた、実の姉の顔を持つ“織斑まどか”と名乗る存在。

　拳を握る力が徐々に強まっていく。

654 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/29(火) 21:07:06.11 ID:RyOcQ/wjo

一夏「ちふ……織斑先生……どうするんですか？」

千冬「相手の目的が不透明すぎる。迂闊に手出しは出来ん」

一夏「でもっ！　このままじゃ、職員の人達が──」

千冬「お前が行って、救えるのか？」

一夏「……」

　有無を言わさぬ千冬の言葉。
　一夏は歯を食いしばり、俯くことしか出来なかった。

655 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/29(火) 21:07:34.82 ID:RyOcQ/wjo

……。
…………。
………………。

鈴音『ここらがギリギリね……これ以上進むと相手のセンサーに引っかかる可能性があるわ』

岡部『……』

　スラスターは吹かさず、PICのみの静穏駆動でビルの隙間に機体を隠す２人。
　数キロ先では既に戦闘音が聞こえてきていた。

656 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/29(火) 21:08:03.11 ID:RyOcQ/wjo

鈴音『誰か戦ってる……一夏、達な訳無いわよね……職員の人間かしら』

岡部『俺が探ろう』

　──カシュッ。

　両肩部のハッチが開き、ビットを射出する。
　１２のビットが散開し市街へと静かに飛び立って行った。

657 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/29(火) 21:08:45.53 ID:RyOcQ/wjo

岡部『……展開。索敵開始』

鈴音『便利よね、それ』

　そんな岡部を見て、口を尖らせる。
　鈴音は素直に、そのガジェットの有用性を認めていた。

658 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/29(火) 21:09:12.46 ID:RyOcQ/wjo

岡部『……見つけた。職員らしきIS２機と交戦中だ』

鈴音『私達の見知った顔じゃないってことね？』

岡部『の、ようだな……しかしどう見ても劣勢だ』

鈴音『はぁ……』

　大きく溜息を吐く。
　その色はどう見ても憂鬱なものだった。

659 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/29(火) 21:09:43.75 ID:RyOcQ/wjo

岡部『どうした？』

鈴音『運が悪いわね、アンタもアタシも』

岡部『？』

鈴音『劣勢なんでしょ？　助けない訳にはいかないじゃない……』

岡部『……』

　岡部の沈黙は、納得を意味していた。
　先ほどの鈴音の台詞を思い出す。

660 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/29(火) 21:10:42.44 ID:RyOcQ/wjo

　プライベートチャネルが何故か繋がらない今、早急な支援増援は望めない。
　戦闘を避ける。戦闘になっても逃げる。

　自分達が今出来る最善は、敵戦力を把握し戦いを避けることであると鈴音は答えを出していた。
　しかし、襲撃者と戦っている者が居る。

　劣勢であり見逃す訳にもいかない。
　結局のところ、火鉢に手を突っ込むしか道が無いのだ。

661 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/29(火) 21:11:19.76 ID:RyOcQ/wjo

鈴音『──で、今どんな感じ？』

岡部『“嬲っている”と言う表現が適切だな。止めを刺さず、遊んでいるように見える』

鈴音『ったく、何が目的なのよ毎回毎回っ！』

岡部『……どう叩く？』

鈴音『倫太郎は常に私へ状況を教えて。アンタの方が視野が圧倒的に広いしね』

岡部『解った』

662 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/29(火) 21:12:04.05 ID:RyOcQ/wjo

　キョロキョロと市街地を舐めまわすように視線を配る。
　鈴音は冷静に、冷やかに現状を理解しようと努めていた。

　──鈴音っちはあれっスね。短気すぎるっス。もうちくっと冷静に対処した方が良いっスよ。

　先輩に釘を差された。
　自身でも気付いている欠点。

663 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/29(火) 21:12:26.52 ID:RyOcQ/wjo

　代表候補生としてのプライド。
　中国はその人口の数から、代表候補生に選ばれるだけでも他国に比べて難関であった。

　数々のライバルを打ち破り、やっと専用機を手に入れた。
　それが鈴音からすれば、ぽっと出の岡部に負けたことが悔しくて仕方が無かった。

　頭に上った血は冷め遣らず、午後の戦闘にも響きあえなく連敗。
　そんな自分に指揮を任せると言ってきた岡部の言葉が、鈴音はたまらなく嬉しく感じた。

664 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/29(火) 21:13:04.92 ID:RyOcQ/wjo

鈴音『（アタシがしっかりしなきゃ……）』

　市街戦アリーナの作りを頭に叩き込む。
　頼りの綱は、岡部の策敵能力。

　これをフルに活用し、相手にダメージを与えヒット＆アウェーを繰り返す。
　単純なようだが、コレが一番安全かつ効果が認められる。

665 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/29(火) 21:13:33.53 ID:RyOcQ/wjo

鈴音『相手の装備は解る？』

岡部『長大なライフル……銃口の先に剣も見える。銃剣のようだ』

鈴音『ライフルか……』

岡部『ビット兵器のような物も見えるが、稼動はしていないようだ』

鈴音『オッケー。解ったわ。良い、作戦は簡単よ──』　

666 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/29(火) 21:14:02.19 ID:RyOcQ/wjo

……。
…………。
………………。

職員『つっ、強い……』

職員２『自力が……違いすぎる……』

エム『……』

667 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/29(火) 21:14:29.34 ID:RyOcQ/wjo

　２人の職員はエムに良いようにあしらわれていた。
　剣で挑めば、銃剣で捌かれ空いた手で殴られる。

　狙撃をしようにも、回避され返す刀で四肢を狙い打たれる。
　そうして徐々に徐々に、破壊されていった。

職員『目的は何……』

エム『雑魚に用は無い』

職員２『専用機……か』

668 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/29(火) 21:14:57.57 ID:RyOcQ/wjo

　自分達は襲撃者の目的である専用機を引き出す餌だと言うことを、彼女らは理解した。
　そして、相手を倒す事は愚か引くことすら出来ないことも。

　彼女達はこの施設の職員であり、管理者でもある。
　軍事施設に近いこの施設に、単機での襲撃など想定されていない。

　いわんや、あったとしても迎撃システムでそれを拒む事が出来る。
　その為、施設内の防人は彼女等しか居ない。

669 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/29(火) 21:15:33.59 ID:RyOcQ/wjo

　数の少なさに不安を覚えるが、ISのコアは量産機を含め４６７。
　その内の２つを割いているのだから、実際はかなりの防御力を誇っていると言って良い。

　そしてその２つを任されている彼女等の実力も、折り紙つきである。
　そんな２人だったが──。

職員『参ったわね……』

エム『そろそろ片方には死んでもらう。餌は２ついらない』

670 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/29(火) 21:16:00.69 ID:RyOcQ/wjo

　──ジャキッ。

　眼前に迫る“スターブレイカー”。
　職員の乗る“打鉄”にはもう殆どエネルギーは残されていない。

　至近距離で星砕きを放たれれば命は無い。

エム『……』

職員２『あ、あ……』

671 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/29(火) 21:16:27.65 ID:RyOcQ/wjo

　コンマの世界だった。
　数コンマ、その表示がエムのバイザーに表示されなければ職員の頭部はこの世から消え失せていただろう。

　《-警告-ロックオンされました》

　振り返るがもう遅い。

　IS“甲龍”に装備された機能増幅パッケージ。
　“崩山”により大幅に火力を増大された拡散衝撃砲が、無防備状態の“サイレント・ゼフィルス”に襲い掛かった。

672 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/29(火) 21:19:35.34 ID:RyOcQ/wjo

おわーり。
アクシデントがありましたが、無事投下できて良かったです。
本日もありがとうございました。

>>627
“機業”のようです。
ブレがあって申し訳ありません。
正しくは　亡国機業　ですね、企業ではありませんでした。

そろそろ、ＩＳの原作を読んでいないとサッパリな展開になってきたかと思います。
誰これキャラが多々出てくると思いますがよろしくお願いします……。

673 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) [sage]：2011/11/29(火) 21:25:02.66 ID:TQh9UVAq0

初手乙貰った！

674 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(山口県) [sage]：2011/11/29(火) 21:29:56.95 ID:gIUrNEeho

おつ

675 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(埼玉県) [sage]：2011/11/29(火) 21:43:02.92 ID:aNq44aybo

乙

うむぅ、アニメを少し見たから大体は解るものの最近はまずいな・・・
しかし周りが酷いと言っている原作をわざわざ読むのもなぁ

676 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) [sage]：2011/11/29(火) 23:06:55.17 ID:2dVb8JoAO

乙です。
訓練じゃなく初めての実戦かー

乗り越えたらパートナーの鈴音とは戦友ぽっい感じになるのかな？期待

677 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage　saga]：2011/11/29(火) 23:34:18.04 ID:rkVcYuBZ0

乙
ＴＵＴＡＹＡにＤＶＤあったから借りて来ようかな

678 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/30(水) 00:07:01.22 ID:1mfZ+WeO0

>>672
わからなくても俺は面白いぞ

679 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]：2011/11/30(水) 00:15:24.44 ID:DQkLXfGjo

乙

680 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/30(水) 01:13:47.78 ID:By9M1g5So

>>1です。
短いのですが、キリが良いので投下してしまおうかと思います。

681 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/30(水) 01:14:33.41 ID:By9M1g5So

往きます。

682 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/30(水) 01:15:01.10 ID:By9M1g5So

>>671　　続き。

鈴音『──貰ったっ！！』

　照準は完全に敵ISを捉えている。
　岡部の索的のお陰で、移動から照準、射撃まで殆ど時間を割かずに行うことが出来た。

　赤い炎を纏った弾丸が“サイレント・ゼフィルス”に向かって高速で射出される。
　避け様が無い、完璧なタイミングだった。

683 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/30(水) 01:15:27.83 ID:By9M1g5So

鈴音『当るッ！！』

岡部『退けぇッッッ！！』

　鼓膜が破れるかのような大声で、岡部の声が割ってはいる。
　ヒット＆アウェーを行うと言ったのは自分であったはずなのに、直撃を過信し行動がワンテンポ遅れた。

　エムが唇を吊り上げる。

　──ジ・ジ・ジ。

　職員との戦闘では終ぞ展開されることが無かったシールド・ビット。
　“エネルギー・アンブレラ ”が作動していた。

684 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/30(水) 01:15:54.68 ID:By9M1g5So

鈴音『なっ……』

　“サイレント・ゼフィルス”の横っ面に直撃するはずだった炎弾は、傘状のシールドによって防がれてしまった。
　即座に応射される、小型のレーザーガトリング。

　威力は低いが“甲龍”を足止めするには充分な威力。
　シールド・ビットもレーザーガトリングも職員との戦闘では使われなかった兵器で、予期せぬ行動に鈴音は足元を掬われる形になった。

エム『まずは、一匹……』

鈴音『う……そ……』

685 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/30(水) 01:16:21.73 ID:By9M1g5So

　スラスターを吹かし、エムは一気に間合いを詰めた。
　銃剣の切っ先が“甲龍”に向けられている。

　──ボシュウゥゥゥゥゥゥ！！！！

エム『……ッッ』

　あと数メートルで標的に届くかと言う距離で、何かが弾けた。
　その何かは視界を埋め尽くすほどの水蒸気を発し、センサーを鈍らせる。

686 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/30(水) 01:16:49.01 ID:By9M1g5So

エム『逃したか……』

　振り返ると、職員２人の姿もソコには無かった。
　鈴音が当初検案した作戦がドンピシャで成功する。

　鈴音が攻撃を仕掛け、岡部が職員を救出する。
　“モアッド・スネーク”を使い敵を攪乱。その隙に鈴音もエスケープすると言う単純な救出作戦だった。

エム『視界不良……センサーも鈍っている、この霧はセンサージャマーか……』

　キョロキョロと辺りを見回すが、既に気配すら消えていた。

687 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/30(水) 01:17:28.02 ID:By9M1g5So

鈴音『はぁ、はぁ……』

　心臓は爆発しそうなほど、早鐘を打ち鳴らしている。
　一歩間違えれば死んでいた。

　鈴音の瞳からは涙がぽろぽろと溢れ出ている。
　悔しいからではなく、人間の生存を喜ぶ生理現象のようなものだった。

688 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/30(水) 01:17:55.05 ID:By9M1g5So

岡部『無事かっ！？　おいっ、返事をしろ！　鳳っ！！』

　プライベート・チャネルから岡部のがなり声が聞こえてくる。
　答えねば、自分が無事であることを教えねばと思っても口が上手く動かない。

鈴音『あっ、あ……』

　バイザー越しにだが確かに伝わってきた、確かな殺意。
　足も肩も震えが止まらなかった。

　目前に迫っていた銃剣の切っ先は、自身の頭部を狙って突き進んできた。

689 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/30(水) 01:18:22.92 ID:By9M1g5So

岡部『っちぃ！』

鈴音『うっ……くぅっ……』

　再び流れ始める涙。
　それはもう、止める事が出来なかった。

　先ほど流れた涙とは質が違う。
　冷静になれと、客観視しろと直前にあれだけ言い聞かしたにも関わらずまたやってしまった。

690 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/30(水) 01:18:49.95 ID:By9M1g5So

　“崩山”の直撃を確信し、勝利を見てしまった。
　４門からなる、強化衝撃砲が直撃すれば間違いなく終わっていた。

　～たら。～れば。
　後悔ばかりが、後から後から胸の内を渦巻いてこびり付く。

　調子に乗っていたと、自覚する。

　──ポン。

鈴音『っひ……』

691 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/30(水) 01:19:16.35 ID:By9M1g5So

　背後から肩を叩かれた。
　動けない。

　まるでボルトで固定されたかのように、首が回らなかった。

岡部『応答をしろ、心配をさせるな』

　声の主は、バイザーの死神ではなく岡部倫太郎だった。

692 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/30(水) 01:19:44.45 ID:By9M1g5So

鈴音『……』

　じわり。
　また滲む、涙。

　安堵と、緊張の解れから流れ出る涙を止める事は出来ない。
　そしてソレをクラスメイトである岡部に見られたくない気持ちで一杯になり、目をぎゅっと瞑る。

693 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/30(水) 01:20:16.09 ID:By9M1g5So

岡部『……』

　岡部はただ黙って、鈴音の頭の上に手の平を乗せた。
　機械越しに優しく鈴音の頭部を撫でる。

鈴音『……』

岡部『安心しろ。職員２人はISを解除させ、比較的安全そうなビルの一角に隠れてもらった』

694 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/30(水) 01:20:51.03 ID:By9M1g5So

　岡部の視線は明後日の方向を向いている。
　鈴音の泣き顔を見ないようにとの気配りだろうが、実に不自然だった。

岡部『──後は、任せろ』

鈴音『なっ、何を任せるのよ……』

　鈴音の語尾は小さく、けれどちゃんと言葉になっていた。
　相変わらず涙はこぼれ出ているが、きちんと会話を出来る程度には心が回復していた。

695 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/30(水) 01:21:19.03 ID:By9M1g5So

岡部『この霧が解らないか？』

鈴音『……』

　辺りを見回すと、周囲１メートル先も見えない濃霧に包まれている。
　明らかに異常な視界だった。

岡部『モアッド・スネークを大量に設置し起動させた』

　──ココはすでに、俺の庭だ。

岡部『任せろ』

696 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/30(水) 01:22:02.07 ID:By9M1g5So

　そう言い放ち、掌をどけ背を向ける岡部。
　その後姿や言い回しに鈴音は、どことなく一夏と同じようなものを感じた。

岡部『では、行って来る』

鈴音『あっ……』

　二の句を告げず、飛び出す岡部。
　鈴音はそれを止める事が出来なかった。

697 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/30(水) 01:22:29.01 ID:By9M1g5So

鈴音『うぅ～……』

　何時の間にか赤面していた両頬。
　知ってか知らずか、その両頬を思い切り叩いて鈴音は顔を引き締めた。

鈴音『落ち着いた……くそぅ、見てなさいよ……』

　そこには先ほどまで、泣き顔を晒していた鈴音の表情は無い。
　中国代表候補生の“凰鈴音”がソコには居た。

鈴音『行くわよ、鈴音』

　──そう自分に言い聞かせて。

698 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/30(水) 01:24:29.07 ID:By9M1g5So

おわーり。

>>677
すみません。
アニメを見ても、出てこないキャラクターです……＜亡国機業ず

>>678
だと良いのですが、これから先もこう言ったＩＳアニメを見ていても知らないキャラや設定が出てきます。
シュタインズゲートのみを知っている方達からすればさらに意味不明にににに

ここから先は読者離れも増えて行きそうではありますが、頑張ります。
ありがとうございました。

699 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(中部地方) [sage]：2011/11/30(水) 01:25:23.28 ID:8kKrv7h/o

おつかれさまです！

700 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/30(水) 01:25:29.38 ID:F8nM7Q11o

乙
オカリンかっけーっすｗｗｗｗｗｗ
ISはアニメしか観てないけど知らない部分は脳内補完してるよ

701 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]：2011/11/30(水) 01:26:43.95 ID:+xWRJBXzo

ISはアニメのみのSG勢だけど面白いから安心汁
またの更新が楽しみだ　乙！

702 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/30(水) 01:29:54.35 ID:Lyfqadqr0

乙

703 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/30(水) 02:00:39.47 ID:2OObbYUUo

ISの設定知らんけど読んでるよ
なあに、かえって楽しめる

704 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/30(水) 02:11:12.10 ID:1mfZ+WeO0

>>698
自分の思考の縛りがないから俺もかえって楽しめてるよ、おつつつつ

705 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/30(水) 02:25:13.44 ID:yohmF/GJo

お疲れ様です。面白い、オカリン頑張れ！
そしてＩＳ読んでる身としちゃ、鈴音の奮戦にも期待……！

706 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/30(水) 02:47:54.66 ID:25OkDH2So

乙。しかしこの展開、普通ならフラグが立つレベルだが、立たないんだろうな・・・恐るべし。

707 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/30(水) 02:51:45.98 ID:LX4eRvwIO

オカリン△

708 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長野県) [sage]：2011/11/30(水) 02:59:59.20 ID:PRQoXPkRo

>>706　既に立ってるからな、別の人間に

709 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/30(水) 03:15:23.64 ID:A0yEUUXKo

ほんとに面白い。展開が読めないし、キャラの動きとかがすげーいい！がんばれー！最後まで読むよー！

710 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/30(水) 06:36:02.47 ID:88CWshZ+0

いろいろとおつかれさまです。
亡国の人たちのイメージは、キーワードを基に脳内で補完しているので全く問題ないです。
http://wktk.vip2ch.com/dl.php?f=vipper27227.jpg

こちらへアップした絵をPIXIVへ少しずつ投稿しはじめました。追加修正したり画像サイズが大きかったりとあざとい完全版商法です。
「SS速報」かもしくはこちらのスレタイでタグ検索すれば見つかると思います。

PIXIVに投稿したイラストも、今まで同様切ったり貼ったりご自由に使っていただいて構いません。投稿先のURLを直リンとかは流石にアレかもしれませんが。

>>625
餅屋は餅屋ですゆえ

711 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage]：2011/11/30(水) 07:46:31.99 ID:dIw+6x+B0

いち乙
餅屋乙

712 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/30(水) 08:13:16.82 ID:4ObyduQgo

>>710
そのまんまスコールじゃねぇか！

713 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/30(水) 09:15:26.00 ID:9CXaCfMf0

１乙！
続きが気になって仕事が手に着かないぜ！

>>710
スコールﾜﾛﾀｗｗｗｗ

714 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/30(水) 09:18:57.37 ID:dcMJCPspo

これ酢豚惚れるだろｗｗｗｗｗｗｗｗ

715 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) [sage]：2011/11/30(水) 09:30:18.45 ID:MjRyYrbAO

酢豚さん原作だと人気ないと思ったけど、そんなことないのね可愛いね

乙です

716 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/30(水) 13:20:43.19 ID:PY2vKFlSO

乙ッ
落ち込む元気娘とか分かってらっしゃる

>>710
スコールさん、嫁のリノアが時間圧縮しながら探してましたよ

717 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(宮城県) [sage]：2011/11/30(水) 13:29:32.67 ID:g9UASG6h0

>>710 アラクネに声出して笑ったｗｗｗｗｗｗｗｗ

718 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage　saga]：2011/11/30(水) 14:53:48.19 ID:81c7+U3d0

>>710
確かにスコールとまどかだけどｗｗｗ

719 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/30(水) 17:33:47.47 ID:vHGurGsDO

くねくね荒ぶってるから、アラクネ？

720 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/30(水) 17:43:38.06 ID:Rqaxfhsg0

アニメ化まだぁー？？

721 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/30(水) 19:28:37.00 ID:By9M1g5So

>>1です。
今日は、２回に別けて投下できたらなと思っています。
短いのと短いのみたいな。

>>710
魔砲少女まどか☆まぎか！
ぴくしぶ拝見しました、完全版商法最高ですね、コメントに笑わせて頂きました。
ぶっくまーく！

みなさん、レスありがとうございます。
かなりの方が、やはりと言うかＳＧ勢なんですよね。
理解しやすいよう努めますので、最後までよろしくお願いします。

722 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/30(水) 19:34:27.25 ID:By9M1g5So

往きます。

723 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/30(水) 19:34:58.60 ID:By9M1g5So

>>697　　続き。

　市街戦を想定された町は、今や濃霧に包まれていた。
　ハイパーセンサーを鈍らせる効果を持つその霧のお陰で、ISを纏っていても目下１メートル先も見えないほどである。

　そんな状況下で、作戦司令室から覗くカメラが全容を捉える事など出来様はずも無かった。

真耶「ダメです……突然発生した濃霧の影響でモニターが映りません｣

千冬「っち……」

724 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/30(水) 19:35:34.47 ID:By9M1g5So

　ただ、ひたすらに白む世界を映すディスプレイに千冬が舌打ちをした。
　襲撃者の侵入から数十分立った今、一向に現状が把握出来ていない。

　それと言うのも“何故か”各機械が動作せず、動こうにも動けないでいたからだ。

　濃霧を映し出すモニターを見て、生徒が呟いた。
　織斑一夏だ。

725 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/30(水) 19:35:57.28 ID:By9M1g5So

一夏「なぁ、この霧……って……」

ラウラ「あぁ。見覚えがある」

セシリア「倫太郎さんの装備に、このような霧を発生させるものがありましたわね……」

千冬「……」

　その台詞を聞き、千冬の眉間に皺が寄る。
　つまり、現場には岡部が居ると言うことだ。

　そして岡部が直前に束と接触していたのは、最早確定的である。
　幾つかの辻褄が合い、ギリッと歯を軋ませた。

726 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/30(水) 19:36:31.78 ID:By9M1g5So

真耶「各部ロックが掛かっています……この部屋にも外部から強烈な妨害が入り、出ることが出来なくなっています……どうして」

　何時の間にか閉じ込められた。
　現在、この島に居る専用機持ちは殆どがこの部屋に集っている。

　この司令室は核シェルターにもなっているので、完全にシャットアウトされた場合はISを持ってしても壁を破壊することは出来ないだろう。

千冬「完全に閉じ込められたか……」

　ぽつりと呟いた千冬の言葉を、全員が耳にした。

727 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/30(水) 19:37:06.60 ID:By9M1g5So

　
……。
…………。
………………。

　濃霧の中を、音を殺し駆ける機体がいた。
　PICを使い地面スレスレをホバリングの要領で駆け抜けていく。

岡部『(この霧が晴れるまでおよそ２０分。“モアッド・スネーク”の再装填に３０分……）』

728 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/30(水) 19:37:57.45 ID:By9M1g5So

　有利に働く時間は最大で２０分だった。
　霧は次第に晴れていき、再び蔓延させるには３０分以上が必要である。

　四方、５キロメートルで作られたビル郡。
　視界さえ良好であれば、ISの機動力を持てば容易く居場所が割れてしまうだろう。

　そして相手は恐らくプロ。
　まともに遣り合って勝てるとは、微塵も思って居なかった。

729 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/30(水) 19:38:24.85 ID:By9M1g5So

岡部『（どうする、どうする……）』

　あとワンテンポ遅れていたら“凰鈴音”は死んでいた。
　それだけは、それだけは回避せねばならないと何度も何度も反芻する。

　全身から汗が吹き出て、息が荒くなる。

730 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/30(水) 19:38:51.45 ID:By9M1g5So

岡部『（はぁはぁ……見つ、けた………）』

　ビットが敵ISを発見する。
　巨大ビルに挟まれた６車線道路の中心部に陣取っていた。

　“エネルギー・アンブレラ”が既に展開され、何時でも迎撃が出来るような体制を取っている。

731 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/30(水) 19:39:19.41 ID:By9M1g5So

岡部『（こちらには気付いていないな……）』

　ごくり。唾を飲む音が自身に響く。

　岡部の視界は良好だった。
　“モアッド・スネーク”により発生した、霧は“石鍵”に作用しない。

　加えてパラダイム・シフトにより増幅されたセンサー。
　これにより、岡部にとっては通常の視界と変わらずこの濃霧の中を動き回る事が出来た。

732 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/30(水) 19:39:52.83 ID:By9M1g5So

岡部『（……）』

　条件は整っている。
　これ以上の地理的優位は見込めようが無い。

　それどころか、時間が経つにつれその優位性さえも薄れていってしまう。
　どうしたら良いか。

　そんな考えで頭が一杯の時、ふと紅莉栖の顔が脳裏を過ぎった。
　直前に“篠ノ之束”が言い放った言葉も同時にリフレインする。

733 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/30(水) 19:40:28.30 ID:By9M1g5So

　──中々良いエンジニアが居るようだね。

岡部『（ん……？）』

　何かが引っかかる。
　奥歯になにかが挟まったような違和感。

岡部『……っ！』

　一瞬、驚いたような表情を作り、そして小さく笑う。

岡部『（紅莉栖、やはりお前は天才だよ……）』

734 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/30(水) 19:40:57.00 ID:By9M1g5So

　思い出す紅莉栖の説明。

　──万が一、エネルギーカットが必要な場面が来る可能性を考えて簡単にオン・オフが出来るよう…………。

　これは、ダメージ判定がある訓練やトーナメントでは無い。
　実戦である。

　エネルギーの表示を気にする必要が無いのだから、わざわざエネルギーを消費し防御に回す必要など無いのだ。
　“石鍵”の装甲なら、ほとんどの攻撃を防げるだろうと紅莉栖に太鼓判を押されている。

735 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/30(水) 19:41:27.03 ID:By9M1g5So

岡部『（かと言って、本当にノーガードでプロに挑むと言うのも恐ろしいがな……）』

　クックッと喉元で自嘲気味な笑いをこぼす。
　岡部の手は震えていた。

　一瞬だけ、目を閉じて。
　“石鍵”に指令を送る。

岡部『プログラム解除』

736 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/30(水) 19:41:54.07 ID:By9M1g5So

　《エネルギー供給カットプログラムを解除しました》

　表示される文字列。
　これで、恐らくは被弾した際にエネルギーが割かれることが無くなった。

岡部『（全てのエネルギーを攻撃に回せるな……）』

　ぐっぐっ、と両手を握り緊張を解す。
　両手にガジェット、“サイリウム・セーバー”と“ビット粒子砲”を展開した。

737 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/30(水) 19:42:32.19 ID:By9M1g5So

岡部『（霧が晴れるまで、およそ１８分……行くとするか）』

　見据える先は“サイレント・ゼフィルス”。
　岡部は意を決して、訓練ではない本当の戦闘へと身を乗り出した。
　
　岡部倫太郎。
　決死の１８分間が火蓋を切った。

738 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/11/30(水) 19:43:22.37 ID:By9M1g5So

おわーり。

ありやとやんした。
投降出来るようでしたら、もう一度来ます。
最近生産力が低下してるです……。

739 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(不明なsoftbank) [sage]：2011/11/30(水) 19:46:37.51 ID:lcUPCNyLo

乙乙

740 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]：2011/11/30(水) 19:52:50.68 ID:+xWRJBXzo

毎度のことながらイイとこで終わっちゃうんだよな
続きが気になってどうにかなる　乙！

741 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/30(水) 19:59:28.94 ID:+XG14aTNo

ぐぬぬ…続きが気になるぜ。乙

742 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) [sage]：2011/11/30(水) 20:26:26.25 ID:Z2I+jnDNo

乙。
オカリン…死ぬなよ…

743 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) ：2011/11/30(水) 20:26:41.21 ID:3q8MDf+30

続きが気になる

だがそれがいい

744 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(高知県) [sage]：2011/11/30(水) 21:17:25.40 ID:dd6ccQfBo

>>1乙！
いろんな設定がここにきて生きてる感じ
続きが気になるな。

>>710
毎度乙！
絵柄が似てるなぁとは思ったけど、きぬはた荘も、加えてお話屋さンもあなただったのかｗｗｗｗｗｗ

745 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/30(水) 21:29:13.16 ID:g4sOHS9io

乙

746 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/30(水) 21:38:08.91 ID:yb11wV+IO

最高や！
俺は両方読んで見てやった人だけどものすごい面白い！
┌─────┐
│いちおつ.│
└∩───∩┘
　ヽ(`･ω･´)ﾉ

747 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/11/30(水) 21:56:09.65 ID:0+PoU9IGo

乙

748 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(不明なsoftbank) [sage]：2011/11/30(水) 22:39:20.35 ID:YS7aJ8aRo

関係ないかもだけど今HDにたまったシュタインズゲートを見ている
最初はアレだけど回が進むにつれ面白くなるねコレ

749 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長野県) [sage]：2011/11/30(水) 22:50:51.44 ID:PRQoXPkRo

酷いのは漫画版だそうだ

750 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 01:26:25.79 ID:IL5CBkZEo

>>1です。

ちょっと中途半端に切るのもなぁってところなので、この場面が終わるところまで書き上げてしまいます。
ので、投下はちょっとお待ちくださひ。
朝方かな……昼か夕方か、夜になるか、ひいいい。

751 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]：2011/12/01(木) 01:30:21.32 ID:4BjsMsWSo

全裸待機

752 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/01(木) 01:56:41.06 ID:zlcuUvPPo

無理せずゆっくり書いてよ

753 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(中部地方) [sage]：2011/12/01(木) 02:00:16.38 ID:qeoIiRC2o

>>1のペースでいいんで頑張ってください

754 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 05:48:35.75 ID:IL5CBkZEo

1時間ばかり落ちてたようで、投稿出来ず右往左往してました。
無事復活したようなので落します。

久々にちょっと長いです。

755 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 05:49:18.95 ID:IL5CBkZEo

往きます。

756 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(静岡県) [sage]：2011/12/01(木) 05:49:31.38 ID:xxOXm3ZZ0

リアルタイム更新ｋｔｋｒ！

757 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 05:49:50.97 ID:IL5CBkZEo

>>737　　続き。

　-17:58:28-

　ビットに指示を送る。
　鈴音に対しても行った作戦で、注意を前方に逸らす為ビット自体を明後日の方向から突撃させた。

　──ヒュンヒュンッ！！

　風を切り裂きながら、目標へと突き進む２体のビット。

758 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 05:50:21.71 ID:IL5CBkZEo

エム『来たか……』

　エムはその襲来を音で感知した。
　目は濃霧で潰されている。

　聴覚感知を最大にし、風を切る音でビットの位置を計算。
　それを排除した。

　──ドン、ドン！

　“スターブレイカー”から放たれる２発の実弾。
　霧に隠れるビットを正確に射撃した。

759 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 05:50:48.57 ID:IL5CBkZEo

岡部『（この状況で精密射撃だと──だがっ！！）』

　背後からスラスターを全開にした岡部が斬りかかる。
　叫び吼えたいのを我慢し、無言での突撃。

　少しでも、相手に気取られる事なく攻撃を仕掛けたかった。
　が、エムはそれに気付いている。

　ビットを撃墜した流れで、背後からの強襲者へと銃剣の切っ先を振り回した。

760 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 05:51:27.93 ID:IL5CBkZEo

岡部『（気付かれてっ──ッッ！！）』

　“スターブレイカー”と“サイリウム・セーバー”のリーチは“スターブレイカー”に軍配が上がっている。
　剣先はまるで見えているかのように“石鍵”の頭部へと照準を合わせていた。

岡部『ぬううぅぅぅぅ！！』

　咄嗟に海老反り、ギリギリのところでそれを交わす岡部。
　PICを上手く使いリンボーダンスでもするかのように、そのカウンター攻撃を回避した。

761 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 05:51:54.88 ID:IL5CBkZEo

　交差する２体のIS。
　岡部はその体勢のまま、スラスターの推進力でもって前進し旋回。

　“サイレント・ゼフィルス”と対峙する形になった。

岡部『……』

エム『お前が例の男か……』

岡部『貴様は何者だ』

エム『……』

762 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 05:52:21.56 ID:IL5CBkZEo

　エムは答えない。
　ただ“スターブレイカー”の銃口を岡部に向けることで答えとした。

　バカッと中央から割れたライフルが最大出力で岡部を狙い撃つ。
　バチバチと放電状のエネルギーを溢れさせるそれが“石鍵”に向かって放たれた。

　──バシュゥゥウウ！！

　轟音と共に放たれるBT射撃。
　岡部はその攻撃が“偏光射撃”-フレキシブル-だと言うことを知らない。

　愚直にもその射撃を避けた後、突進しようとした。

763 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 05:52:47.98 ID:IL5CBkZEo

岡部『むっ！？』

　その時“石鍵”がエネルギー供給を一瞬解除する。
　と、同時に背後から強烈なエネルギーの塊が“石鍵”を吹っ飛ばした。

岡部『がぁっ……！！』

764 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 05:53:21.14 ID:IL5CBkZEo

　痛みは無い。
　“スターブレイカー”-星を砕く者-の直撃を持ってすら、“石鍵”の装甲を破る事は出来なかった。

　しかし、衝撃を殺す事は出来ない。
　背後からの攻撃により、機体はエムの──“サイレント・ゼフィルス”の目の前へと炙り出される。

岡部『しまっ──』

　──ガンッ！

　サッカーボールでも蹴るかのように、思い切り蹴り上げられた。
　エムはパワーアシストで増幅された暴力をなんの躊躇いもなしに、撒き散らす。

765 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 05:53:53.44 ID:IL5CBkZEo

岡部『くっ……！！』

　蹴り上げられたことで、体勢を崩された。
　持ち直す前にエムの攻撃が続け様に行われる。

エム『……』

　蹴り上げる直前に、出力を最大にしてあった“スターブレイカー”を“石鍵”の頭部へと接着させる。
　バチバチと鳴る放電音が、岡部の耳へと直接響く。

766 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 05:54:28.05 ID:IL5CBkZEo

岡部『────ッ』

エム『死ね……』

　────ズガン！！

　頭部に走る最大級の衝撃。
　“石鍵”の本体は、頭部に引っ張られるように遥か後方へと吹き飛んでいく。

　零距離での最大攻撃。
　その衝撃は計り知れず、数十メートル先にあるビルへと“石鍵”はめり込んでいた。

767 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 05:54:56.26 ID:IL5CBkZEo

　──が、尚も“石鍵”の装甲は健在で、搭乗している岡部の肉体には傷一つ付いていない。

岡部『はぁはぁ……』

　ぺちぺちと、首筋を叩く。
　頭部が消え失せたかと錯覚した。

岡部『機体に助けられたな……』

768 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 05:55:22.86 ID:IL5CBkZEo

　２分にも満たない攻防。
　その一瞬で自力の違いをまざまざと見せ付けられてしまった。

　ガラガラと、瓦礫が機体へと降り注ぐ。
　通常であれば勝負は決している。

　しかし、今の攻防ですら“石鍵”全くと言って良い程エネルギーを消費していない。
　あれだけの攻撃に関わらず全てを、その装甲の防御力のみで耐えた結果だった。

769 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 05:55:53.99 ID:IL5CBkZEo

岡部『まだだ……まだ、終わらせなどしない』

　岡部は再び、霧へと溶けていく。

エム『……』

770 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 05:56:21.86 ID:IL5CBkZEo

　練達の狙撃者であれば、銃から放たれた弾丸がタバコを打ち抜いた感触すら感じ取る事が出来ると言う。
　エムも言わずと知れずその境地に立っている者である。

　対象を捉え、撃ち抜けば感触で相手の息を止めたかが掴める。
　先ほどの攻撃は完璧に対象の頭部を捉え、消滅させるに相応しい攻撃力をもった射撃だった。

　しかし、手に残る感覚。
　それは相手を殺したとは思えなかった。

771 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 05:56:49.03 ID:IL5CBkZEo

エム『気配が生きている……』

　ぐっ、と“スターブレイカー”を握る手に力が入った。
　相手が生きているのであれば、逃走……或いは再度攻撃を仕掛けてくるだろう。

　そして先ほどの相手であれば、後者を選ぶ類の人間であることは一度まみえれば察しが付く。
　エムは再び警戒を強めた。　

772 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 05:57:17.29 ID:IL5CBkZEo

　-14:32:98-

773 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 05:57:49.46 ID:IL5CBkZEo

　──ピビポボポボポボポボポボポボポ！！

エム『……』

　濃霧の向こうから襲い掛かる弾丸の雨。
　速射性高く、威力も充分に見込めるソレを完全に回避することは難しい。

　一瞬の判断でエムは“エネルギー・アンブレラ”をもってして、その攻撃を防御した。
　全ての弾丸はその傘状の防御網を突破することは出来ず、全てが弾かれる。

774 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 05:58:13.21 ID:IL5CBkZEo

　弾着を確認し、即座に射撃位置を見出し霧の向こうへとレーザーガトリングを放つ。
　しかし、攻撃が当った感触は無くまた霧の作る静寂だけが町を覆った。

エム『……』

岡部『厄介なのはあのシールドビットだな……』

　ビルの影に隠れ、パラダイム・シフトで様子を伺う。
　敵の装備は大方把握出来た。

775 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 05:58:44.71 ID:IL5CBkZEo

　大型の銃剣ライフル。
　小型のレーザーガトリング。
　そしてシールドも兼ねた６機のビット。

岡部『オルコットも行っていた“偏光射撃”-フレキシブル-……あれが厄介だな』

　勝算は見出せない。
　相手の戦闘力は、どうみても自身より上であることは先ほどの攻防で痛いほど理解していた。

776 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 05:59:12.70 ID:IL5CBkZEo

　──が、諦める訳にはいかない。
　このエリアには未だに２人の職員と“凰鈴音”が居る。

　最悪でも救助、救援が来るまでは１人であの死神と対峙しなければいけなかった。

岡部『……根競べだな。ヤツとてISだ、エネルギーは無限ではあるまい』

　唯一見出した活路。
　姑息とも思える、相手のエネルギー枯渇を期待しての攻撃。

777 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 05:59:39.78 ID:IL5CBkZEo

　だが、今の岡部にはそれ位しか策が見出せない。
　であるならば、その作戦に全力をつぎ込むしか無い。

　この男はソレしか出来ないのだ。

岡部『行くか……』

　呼吸を整え、再び死神の懐へと足を向ける。
　覚悟はとうの昔に決まっていた。

778 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:00:06.54 ID:IL5CBkZEo

　“ビット粒子砲”を構え“サイリウム・セーバー”は出力を抑えた状態で突撃する。
　お世辞にも高出力とは言えないスラスターを吹かし、標的の懐へと邁進した。

エム『……』

　スラスター音で敵が突進してくることが解った。
　エムの腕ならば、射撃を行い撃墜することは可能であっただろう。

　が、エムはそれをしなかった。
　頭部を直撃し、破壊したはずのISが再び攻撃を仕掛けてくるのだ。

779 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:00:33.61 ID:IL5CBkZEo

　見極める必要があった。
　銃剣を構え、相手を迎え撃つ。

　──ピビポボポボ！！

　襲い来る弾丸は“シールド・ビット”で防ぎ、視線は弾丸が襲ってきた土台である機体その物に向ける。
　発射角度から計算して、敵は姿勢を極端に低くしていると予測出来た。

　事実、岡部は射撃での応射にそなえ、姿勢を低くしての突進を行っている。

780 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:01:09.06 ID:IL5CBkZEo

　──ヒュッ───ボッ！！

　濃霧から抜ける。
　霧を振り払い“サイレント・ゼフィルス”の眼前へと躍り出る。

岡部『……っ！！』

　目に力を入れ、一瞬たりとも情報を見逃さない。
　“サイレント・ゼフィルス”は銃剣を構えている、先ほどの攻防で“サイリウム・セーバー”よりもあちらの方がリーチが長いことは解っていた。

781 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:01:37.81 ID:IL5CBkZEo

　お互いに攻撃をし合えば、確実に銃剣の切っ先が先に“石鍵”へと到達する。
　──が、襲撃者は知らない。

　ガジェット“サイリウム・セーバー”がエネルギーを刃とし、出力……刀身の長さすらも調節出来ることを。

　──ブォォォン！！

　独特の音を響かせ、赤い刀身が伸びる。
　銃剣が“石鍵”に到達する前に“サイリウム・セーバー”は“サイレント・ゼフィルス”を横薙ぎにした。

岡部『うぉぉおおお！！』

782 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:02:00.15 ID:IL5CBkZEo

エム『……』

　バイザー越しに伺い知れるエムの表情。
　そこには驚嘆も、焦りの色も一切が見えなかった。

　即座にして反応する体。
　迫り来る刃を、ゆっくりと飛来してきた紙飛行機でも避けるかの動作でひらりとかわす。

783 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:02:27.58 ID:IL5CBkZEo

岡部『──まだだっ！！』

　本来であれば、攻撃が避けられることなど考えられないようなタイミングであった。
　しかし、それを難無く避けるエム。

　そして避けられることを、想定したいたかのように岡部も動き続ける。
　相手の力量は解っていた。

　IS学園に転入してから、岡部にとって攻撃が避けられるなど日常茶飯事になっている。
　自然と追撃、連撃が常となり単発の攻撃をすること自体が少なくなっていた。

784 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:02:55.63 ID:IL5CBkZEo

岡部『ワン・トゥー……』

　──ブォン！　ブォンッ！！

岡部『スリー・フォー！！』

　体に叩き込まれた剣での連撃。
　出し惜しむこと無く、今自分に出来る全てのテクニックを駆使した。

785 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:03:29.39 ID:IL5CBkZEo

エム『……』

岡部『ファイブ・シックス！！』

　その連撃を舞う様に避けるエム。
　自力の違いか、一切攻撃がヒットしない。

岡部『──セブンッ！！』

　──チッ！

エム『……ッ』

786 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:03:57.02 ID:IL5CBkZEo

岡部『──エイトッッ！！』

　──ッヂ！

エム『……』

　避けたはずである。
　無駄な動きはせず、刀身の長さ、スイングスピードを見極め最小の動きで全ての攻撃をかわしていた。

　しかし、掠るように攻撃が当り始める。

787 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:04:23.63 ID:IL5CBkZEo

岡部『──ナインッッッ！！』

　────ヂヂッ！！

エム『ッチ』

　不快に感じる被弾音。
　舌打ちを鳴らし、エムは珍しく距離を取ろうとした。

788 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:04:53.13 ID:IL5CBkZEo

岡部『まだだ！　────ラストォォ！！！』

　──ギャィィイイン！！

　胸部を狙った最後の一撃。
　咄嗟に躍り出た“シールド・ビッド”かその攻撃を防ぎ、撃墜される。

岡部『──はぁっ、はぁっ』

　息も絶え絶えになる岡部。
　しかし、一矢与えることが出来た。

789 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:05:20.23 ID:IL5CBkZEo

エム『……』

　エムの目線は“サイリウム・セーバー”に向けられている。

エム『そう言う、ことか……』

　岡部は攻撃する際、一振り一振りで供給するエネルギーの量を変化させていた。
　相手に気取られることの無いよう、１センチ、また１センチと刃を振るごとに刀身を長くする。

　目測を誤ったエムは次第に避けきれず、最終的には満願成就し一撃をお見舞いすることに成功した。

790 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:05:47.48 ID:IL5CBkZEo

岡部『（しかし、これでやっとビットが１機か……）』

エム『……』

　またも、対峙する形になる２機のIS。
　エムの表情は“シールド・アンブレラ”を１機破壊されたと言うのに冷やかなものだった。

　動けぬ岡部、動かぬエム。
　岡部に至っては、今持ち得る全てのコマを出し尽くしてしまった。

791 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:06:39.27 ID:IL5CBkZEo

エム『……』

　エムは口を結び、開こうとはしない。
　岡部の出方を伺っている。

岡部『（時間はまだある……再度、出直し奇襲を──）』

　“ピット粒子砲”を構え、撃ち放ちまた霧に紛れようと左腕を上げた刹那、エムが口を開いた。

792 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:07:11.54 ID:IL5CBkZEo

エム『小細工は終りか』

岡部『……ッ！』

　“瞬時加速”-イグニッション・ブースト-。
　一瞬にして詰められる間合い。

エム『茶番は終りだな』

793 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:07:33.70 ID:IL5CBkZEo

　──ガンッ！！

　思い切り殴りつけられる。
　よろけた体勢から、腹部を思い切り蹴り上げられ宙を舞う“石鍵”

岡部『ぐっ……』

　──バチバチ。

エム『……』

794 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:08:01.19 ID:IL5CBkZEo

　再びライフルから篭れ出る、嫌な放電音が耳につく。
　──が、今回はその音源が１つではない。

　１機撃墜されはしたが“サイレント・ゼフィルス”には残り５機ものビット兵器が未だ宙を浮いている。
　その５門の砲口が全て、岡部へと向けられていた。

795 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:08:37.50 ID:IL5CBkZEo

　
　-8:56:03-
　
　

796 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:09:12.46 ID:IL5CBkZEo

　白む視界。
　眩い閃光を放ち、全身に突き刺さるＢＴ射撃。

　“石鍵”の機体は光弾の嵐を一身に浴び、アリーナの空を模した天井へとめり込んでいた。

岡部『ぐ……』

　──キゥン！　ドドドッド！！！

　尚も続く射撃。

797 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:09:34.02 ID:IL5CBkZEo

　“スターブレイカー”に加えビット射撃、レーザーガトリングと集中放射。
　今やアリーナ上空は地獄の釜淵であった。

　──ドンドンドン！

岡部『ぐっ……ぬぅ、このままでは“石鍵”と言えど……』

　エネルギーカットの機能は健在だった。
　殺意の暴風とも呼べる弾幕に対し、絶対防御は一切作動していない。

798 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:10:02.13 ID:IL5CBkZEo

　ギシギシと機体の軋む音が、岡部の耳に入る。

　──数十秒、数分。

　無限に感じられた砲撃が、止み“石鍵”はゆっくりと天井から剥がれ落ち地上へと落下していく。

　地上から聞こえるスラスター音。
　死神が止めを刺しに、上空へと飛来する音であった。

799 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:10:36.47 ID:IL5CBkZEo

岡部『ここ、までか……』

　装備が足りない。
　自力が足りない。
　時間が足りない。
　策が足りない。

　足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない。
　足りない足りない。足りない足りない。

　必要だ。
　ヤツと戦うにはまだ必要だ。

　装備が、武器が、時間が、力が必要だ。

800 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:10:59.33 ID:IL5CBkZEo

岡部『……』

　──キィィィイイ！！

　迫り来る死神。
　この音は到来を合図する、死のカウントダウン。

801 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:11:27.26 ID:IL5CBkZEo

岡部『まだ、だ……まだ、諦める訳には……』

　エリアには職員が。
　“仲間”である“凰鈴音”が居る。

　自分が、ここで果てる訳にはいかない。
　死んでやる訳にはいかない。

802 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:11:57.17 ID:IL5CBkZEo

　──ギリッ！

　奥歯を噛み締める。
　血管は今にも千切れそうなほど、浮き上がっていた。

　────バクンッ！！！

　聞きなれない音が、背部から聞こえた。

803 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:12:27.64 ID:IL5CBkZEo

岡部『……？』

　世界がゆっくりと感じる。
　今にも死神は自身の首を掻き切りに来ていると言うのに、悠長にも眼前に表れたデータを目で追っていた。

　《戦闘経験値が一定量に達しました。新ガジェットを構築完了しました。伴い、第２ゲートを開錠します》

　新たなるガジェットの発露。
　第２ゲートの開放。

　その文面が表す意味を、岡部は既に知っていた。
　ゲートの開錠と共に膨れ上がる総エネルギー量。

　天井からの自由落下の中で、そのガジェットは芽を出した。

804 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:13:06.52 ID:IL5CBkZEo

───────────────────────

　　　　　　　《蝶翼-ノスタルジアドライブ-》

───────────────────────
　
　
　
　

805 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:13:35.63 ID:IL5CBkZEo

《蝶翼-ノスタルジアドライブ-を構築しました。スラスターを開放します》

　背部に装備された２機のスラスター。
　背後から鳴った音は硬く閉ざされたそれが開口された音だった。

806 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:14:02.69 ID:IL5CBkZEo

-5:02:57-
　
　

807 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:14:29.66 ID:IL5CBkZEo

エム『……』

　上空へと飛翔する“サイレント・ゼフィルス”
　濃霧の中をただただ目標へ向けて。

　視界は相変わらず悪かったが、さほど問題も無かった。
　霧が蔓延しているのは地上であって、上空へ出れば霧が晴れていることは当初から把握している。

　敵ISが霧の中に居ると踏んだから、自らを餌に濃霧へと滞在していただけであって標的が空へ居るのであれば留まる理由も無かった。

808 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:14:56.54 ID:IL5CBkZEo

エム『……ッチ』

　飛翔する中で、何かとすれ違う。
　“石鍵”だった。

　自由落下を続けている“石鍵”に対し、スラスターを吹かせていた“サイレント・ゼフィルス”はすれ違うように行き違ってしまった。
　体勢を変え標的に進路を変えようとした時、違和感に気付く。

809 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:15:23.43 ID:IL5CBkZEo

エム『……』

　背部のスラスター形状が変化している。
　スラスターからはエネルギー状の羽……蝶の羽のようなものが生えていた。

　鱗粉のような煌きが、辺りを覆っている。
　蝶の羽から篭れ出るエネルギーの粒だった。

810 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:16:03.09 ID:IL5CBkZEo

エム『ふん』

　今更スラスターが変化したからと言って、戦局が変わるはずも無い。
　鼻を鳴らし、死神は銃剣の切っ先を“石鍵”に突き立てる為、スラスターを再度点火させた。

　
……。
…………。
………………。
　
　

811 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:16:25.21 ID:IL5CBkZEo

鈴音『これは……』

　濃霧の中、音を頼りに気配を殺し近づいていた鈴音の元に１機のビットが近づいてきた。
　パラダイム・シフトの１つである。

ビット『……』

　ヒョロヒョロと鈴音の周りと飛び回り、どこかへ誘おうとするビット。
　方角は空を目指していた。
　
　
……。
…………。
………………。

812 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:16:58.46 ID:IL5CBkZEo

岡部『……ノスタルジアドライブ』

　聞き覚えのある単語。
　それもそのはず。

　その単語の意味を誰よりも理解しているのは、他ならぬ岡部倫太郎だった。

813 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:17:30.07 ID:IL5CBkZEo

《刻司ル十二ノ盟約-パラダイム・シフト-に同期します》

　淡々と進められる、セットアップ。
　説明も他所に、岡部は理解していた。

　蝶翼の意味を。

岡部『……』

814 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:17:52.58 ID:IL5CBkZEo

　
-4:31:27-
　
　

815 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:18:19.73 ID:IL5CBkZEo

エム『──死ね』

　銃剣を抱くように固定し、落下スピードを強めるエム。
　“瞬時加速”-イグニッション・ブースト-を併発し、その威力は考えただけで恐ろしいものになっていた。

《──同期終了。跳べます》

　岡部の心は不思議と落ち着いていた。
　死が迫り来ていると言うのに、穏やかなものすら感じる。

　信じられる“仲間”が居る。
　後は任せるだけだった。

岡部『跳べ』

816 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:19:02.14 ID:IL5CBkZEo

-4:36:07-
　
　

817 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:19:28.58 ID:IL5CBkZEo

エム『──ッッ！！！』

　眼前に捉えていたはずの標的が消えた。
　そして突如表れる“甲龍”の姿。

　“崩山”の火口は既に全てが“サイレント・ゼフィルス”に向けられていた。

鈴音『──えっ！！』

岡部『ふあぁぁぁぁあん！！！　撃てえええええええェェェェエッッッッ！！！』

818 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:19:55.79 ID:IL5CBkZEo

　戸惑いを隠せない鈴音の声。
　それを掻き消すような岡部の咆哮。

　鈴音はトリガーを引き放った。

エム『──────ッ』

819 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:20:24.81 ID:IL5CBkZEo

　“石鍵”に向けて突撃しようと推進力を地上へと向けていたエム。
　突如表れた“甲龍”の砲撃に対し“スターブレイカー”とビットを盾にする機転は見事としか言いようが無かった。

　エムは“スターブレイカー”と５機のビットを代償に“崩山”の直撃を免れる事に成功する。
　咄嗟の事により“エネルギー・アンブレラ”での防御ではなく、そのビット自体を盾にしたことにより、殆どの兵装を失ってしまった。

820 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:20:52.19 ID:IL5CBkZEo

エム『ッチィィィ！』

岡部『ぬぁぁぁああ！！！』

　振り返ればソコには岡部が“サイリウム・セーバー”を振りかぶり突進して来ている。
　訳が解らなかった。

821 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:21:19.45 ID:IL5CBkZEo

　眼前に居た“石鍵”が消え、突如姿を現した“甲龍”。
　そして、いきなり背後から襲い掛かる“石鍵”。

　────ガギィィィン！！

　左腕を突き出し、防御に回す。
　ギリギリと赤い刀身が、エネルギーシールドを削っていく。

822 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:21:46.63 ID:IL5CBkZEo

スコール『エム、エム？　聞こえる？　機体の損傷が著しいようね……直ぐに帰還なさい』

　プライベート・チャネルで言い渡さされる撤退の命令。
　“サイレント・ゼフィルス”の機体損傷率は６０％を超えていた。

エム『……ッチ！』

　──ガキッ！！

岡部『ぐっ！』

823 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:22:14.50 ID:IL5CBkZEo

　左腕で刀身を受けたまま、右腕で“石鍵”を殴りつける。
　“石鍵”が体勢を崩したと同時に“瞬時加速”-イグニッション・ブースト-を発動させた。

　自身が侵入した経路を辿り、そのまま日本海へとエスケープする。
　“サイレント・ゼフィルス”の任務は終了した。

エム『……』

　ギリッ。
　エムの表情は珍しく、憤怒の色に染まっていた。

824 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:22:41.48 ID:IL5CBkZEo

岡部『ぐぬぅ……最後まで殴りつけてくるとは』

鈴音『嘘……勝ったの？』

岡部『撃退した──が正しいだろうな』

　地上を見下ろすと“モアッド・スネーク”の煙は既に晴れていた。
　市街戦アリーナは“サイレント・ゼフィルス”との激闘で、瓦礫の町と化している。

825 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:23:13.19 ID:IL5CBkZEo

　しかし、被害を考えるなら最小と評価しても過言では無かった。
　奇跡的に死傷者は零である。

岡部『何にせよ、これで一仕事済んだと言う訳だな……』

鈴音『そうね……って！　説明しなさいよ！　何よあれ、どう言うことよ！　さっぱり意味が解らないんだけど！？』

岡部『ぐぬっ！』

826 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:23:37.02 ID:IL5CBkZEo

　胸倉を掴むように、詰め寄る鈴音。
　急に目前へと表れた“サイレント・ゼフィルス”に対しての問いかけだった。

　直前まで、鈴音の目前には“石鍵”の姿があった。
　“石鍵”が落下してきたと思ったら突然姿が消え、変わりに“サイレント・ゼフィルス”が表れた。

　“最大火力を放てる用意をしておけ”とだけ、言われた鈴音は何が起きたのか理解出来ずそれの答えを求めていたのだった。

827 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:24:04.60 ID:IL5CBkZEo

岡部『ぐぬぬ……』

　しかし、岡部は口を閉ざす。
　上手く伝える言葉が見当たらなかった。

鈴音『ったく、何よ。自分で全部やっちゃってさぁ……』

828 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:24:46.34 ID:IL5CBkZEo

　怒っていたと思ったら、力を緩め何やらしおらしさを見せる鈴音。
　何と無しに顔は紅潮していた。

鈴音『っま、良いわ。今回は何とか切り抜けられたしね……ありがと』

　ぽつりと、聞き取れない程の音量で礼を呟き、明後日の方向を向きながら拳を突き出す。
　岡部は苦笑を浮かべ、その拳に拳をコツン、と合わせた。　

829 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 06:25:56.90 ID:IL5CBkZEo

おわーーーーり。

２～３日に別けて投下しようと思った分を一気に投下しました。
ちかれた。

スペース入れ忘れて、空白が変な感じになったところがありますが、スルーしてやってください。

長くなって読みにくいとは思いますがが。
ありがとうございました。

830 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/01(木) 06:29:05.99 ID:06H5/boIO

超かっこよかったっす、オカリン
乙！
鈴もしかしたら惚れたかもなｗｗｗｗｗｗ

831 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/01(木) 06:29:27.63 ID:3O7hlY2SO

乙！
リアルタイム遭遇は初めてだった。
最高におもしろいぜ！

832 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(宮城県) [sage saga]：2011/12/01(木) 06:31:22.94 ID:oAKMW8PO0

乙ッ！乙乙乙ッッ！！
蝶翼カッコ良すぎ濡れた

833 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [sage]：2011/12/01(木) 06:48:08.18 ID:+H9OMzZZo

乙！
オカリンかっこよすぎるぜ！

834 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(山口県) [sage]：2011/12/01(木) 07:08:18.90 ID:iwGh5vBTo

鈴ちゃん惚れるんじゃね？
蝶翼カッコよすぎる!!
ゴレイヌさんみたいな事も可能なのか…

835 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/01(木) 07:15:23.00 ID:2LyqR+HDO

空間移動じゃなく、時間移動か

836 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/01(木) 07:26:36.57 ID:7stLCdYio

対象と位置を入れ替えるような能力なのか？
乙！

837 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(山口県) [sage]：2011/12/01(木) 07:34:04.63 ID:iwGh5vBTo

しかし、ノスタルジアドライブはDメールの別名で時間移動だが残された蝶翼は…？
月光蝶使えたらさらにチート味が増すな…

838 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/01(木) 08:00:43.16 ID:9f7v5+uNo

同期してみみたいだし
パラダイムシフトで観測した事象(位置情報)を別世界線のそれと変更かな？
ゼロシフトより便利だな

839 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/01(木) 08:35:19.22 ID:/d4hzEq50

乙乙！！
ノスタルジアドライブｗｗｗｗ
チート過ぎるがそれがイイ！
マジオカリン△
助手の持ち歌にSG最高の技術。もはや■は無いｗｗｗｗ
続き楽しみにしています！

840 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋) [sage]：2011/12/01(木) 08:44:37.75 ID:hYJsqw1i0

岡部の月光蝶とか脳内再生余裕すぎるwwwwwwww

841 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/01(木) 08:48:53.58 ID:BpU6prsIO

しかし、一歩間違えたら八月の悪夢が再来するだろうからあんま使いたくないだろうなオカリン

842 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/01(木) 09:06:27.28 ID:XG92RA1vo

ゴレイヌみたいなもんだよね？
>>1おつおつ

843 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(鹿児島県) [sage]：2011/12/01(木) 09:14:03.28 ID:JSpCGwNgo

ん？ビットの位置を自分や鈴と瞬時に入れ替えられる能力？

844 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/01(木) 09:41:21.31 ID:kCy76EoM0

NDって未来の動画送ってきた奴だから、時間軸のずれた映像を見せる（幻を見せる）的な
能力かと思ったわけだが、ゴやっぱり、レイヌみたいなもんなんかな？

845 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/01(木) 10:06:12.32 ID:p30ytSfDO

鈴ちゃんガンタンクかわいい

846 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) [sage]：2011/12/01(木) 11:36:17.03 ID:GWwU8zxAO

乙です
オカリンかっこいい

鈴音可愛いい

戦闘回面白かったです

847 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(茨城県) [sage]：2011/12/01(木) 13:06:03.04 ID:0/6Qxej60

乙
背中から溢れ出る光の粒か
ＧＮドライブで量子化したのかと思った

848 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(中部地方) [sage]：2011/12/01(木) 13:35:49.34 ID:qeoIiRC2o

とっても面白かった>>1おつかれ
おかりんかっこよすぎる

849 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/01(木) 14:02:09.10 ID:SsL/jPfAo

ホワイトまっちょしぃとブラックまっちょしぃか・・・

850 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) ：2011/12/01(木) 16:23:09.66 ID:epFVYVD+0

岡部は月光蝶じゃなくてトランザムバーストだな

851 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/01(木) 18:56:34.21 ID:NE4x/0ASO

こんだけチートなオカリンでも千冬には勝てないんだろうな…

なんだかんだで最強はマッチョし…ん？誰かきたようだ

852 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/01(木) 20:44:09.42 ID:BpU6prsIO

あ、ひょっとして前スレで「回避」を選んでたら翼が先に解除されてたのか。
というわけでトゥルーおわった後の二週目に期待。

853 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]：2011/12/01(木) 21:01:58.40 ID:RyF7r/kCo

強くてニューゲーム！！

854 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(不明なsoftbank) [sage]：2011/12/01(木) 21:28:04.69 ID:M/Y+CmLvo

>>851
盾無会長相手なら10回に1回くらいなら
引き分けにもっていけそう

855 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage]：2011/12/01(木) 21:29:16.38 ID:wnLVfjB20

おかりんカッケー

856 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 21:52:23.78 ID:IL5CBkZEo

>>１　です。　今朝方投稿したので、箸休めを投稿して今日は終りに致します。

857 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 21:52:50.20 ID:IL5CBkZEo

往きます。

858 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 21:53:30.62 ID:IL5CBkZEo

Steins;Stratos番外編

～頑張れ！　クリスティーナ！～

　─朝・食堂─

紅莉栖「……」

　もぐもぐ。

紅莉栖「ごちそうさま」

859 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 21:53:57.58 ID:IL5CBkZEo

　─教室─

紅莉栖「……」

　　──わいわい、がやがや。

紅莉栖「（お昼は何食べようかしら……）」

860 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 21:54:24.60 ID:IL5CBkZEo

　─昼・食堂─

紅莉栖「牛丼、卵味噌汁セットで」

おばちゃん「あなた何時もソレねぇ、それじゃぁ体に良くないよ！　はい、きんぴらごぼう。おまけね」

紅莉栖「ど、どうも……」

　もぐもぐ。

紅莉栖「ふう……番茶も美味しいわね」

861 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 21:54:52.16 ID:IL5CBkZEo

　─放課後・自室─

紅莉栖「夜はカップラーメンで良いわよね、食堂面倒だし」

　──３分。

　ずるずる。

紅莉栖「……」

　ずるずる。

紅莉栖「ごちそうさまでした」

862 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 21:55:19.35 ID:IL5CBkZEo

　─食後─

　ぺら、ぺら。

紅莉栖「あっ、この本はもう読んだ事あったわね」

　PM19:30

紅莉栖「お風呂行こうかな」

863 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 21:55:46.09 ID:IL5CBkZEo

　─浴場─

　カポーン。

紅莉栖「……ふぅ」

　ゴシゴシ。

紅莉栖「……」

　──ちょっと、胸大きくなぁい？

　──そんな事ないよーもうっ。

紅莉栖「出よ」

864 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 21:56:21.81 ID:IL5CBkZEo

　─自室─

　シャコシャコ。

紅莉栖「（歯を磨いたら後は寝るだけね）」

　シャコシャコ。

紅莉栖「（朝ごはんは何を食べようかしら……）」

865 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 21:56:47.96 ID:IL5CBkZEo

　─朝・食堂─

紅莉栖「モーニング牛丼セット」

おばちゃん「はいよー」

　もぐもぐ。

紅莉栖「……」

　もぐもぐ。

紅莉栖「焙じ茶も良いな……」

866 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 21:57:14.68 ID:IL5CBkZEo

　─授業─

教師「えー、それでは２人組みを作って下さい」

紅莉栖「……」

教師「えーっと？」

紅莉栖「……？」

教師「牧瀬さん？」

紅莉栖「はい？」

教師「２人組みをね？」

紅莉栖「あっ、はい。すみません、ぼーっとしてて……えーっと」

867 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 21:57:41.60 ID:IL5CBkZEo

　キョロキョロ。

紅莉栖「……あ」

　キョロキョロ。

紅莉栖「えっ……」

　紅莉栖、ここで気付く。
　ここ２，３日感じていた違和感。

　────私、ぼっちじゃね？
　
　
　

868 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 21:58:08.87 ID:IL5CBkZEo

教師「えーっと、牧瀬さん？」

紅莉栖「えええっと、ええとお……」

　現状を理解し、慌てふためく紅莉栖。
　周囲はもはや２人組みを形成しており、入り込む余地など無かった。

紅莉栖「ぬおお……わっ、私がぼっちだと……？」

　強化合宿に参加出来るのは、代表候補生と専用機持ちである。
　そして紅莉栖はそのどちらにも該当せず、お留守番と相成った。

869 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 21:58:39.69 ID:IL5CBkZEo

紅莉栖「だっ、誰か……誰か」

　オロオロと周りを見渡す。
　すでに、殆どの女子は仲良しグループから２人組みを決めていた。

本音「くりすてぃ～なぁ～」

紅莉栖「っ！？」

870 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 21:59:16.01 ID:IL5CBkZEo

　不本意なアダ名を呼ばれ振り向く。
　この際、不本意だろうが何だろうが名前を呼んでくれる人物なら誰でも良かった。

本音「１人ぃ？　あぶれちゃってさぁー」

紅莉栖「うっ、うん！」

本音「良かったら一緒にやらない～？」

紅莉栖「おっ、おｋ！　大丈夫よ！」

本音「わーい」

871 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 21:59:53.77 ID:IL5CBkZEo

　布仏本音。
　クラスメイトである本音は、何時も仲良し３人組の女子が居る。

　今回は２人組みを作らなければいけないため、１人だけあぶれてしまった。
　それが幸いして、なんとか紅莉栖も２人組みを作る事ができた。

紅莉栖「（まさか、私がぼっちだったとは……気付かなかった……）」

　岡部ら専用機持ちが合宿へと旅立って数日。
　常に何時もの面子と行動を共にしていた紅莉栖は、必然１人で行動するようになっていた。

872 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 22:00:20.48 ID:IL5CBkZEo

　─放課後・自室─

紅莉栖「……」

　ぼけー。

紅莉栖「……」

　ベッドに横たわり、天井を見つめる。

紅莉栖「いち、にぃ……あっ、人の顔っぽい」

　何も考えられず、無意味に天井のシミの数など数えていた。

873 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 22:00:47.46 ID:IL5CBkZEo

紅莉栖「──って、何やってんのよっ」

　上体を起こし、ベッド上に胡坐をかく紅莉栖。
　体を左右に揺らしながら、落ち着かないようだった。

紅莉栖「私をぼっちにさせるなんて……ったく、早く帰って来なさいよね……」

　この時、岡部は激闘の１８分間を繰り広げていた。

874 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/01(木) 22:01:34.63 ID:IL5CBkZEo

おわーり。

３スレ目ももう直ぐ終りますね……。
１１月中に完結する予定だったのに……。

本日もありがとうございました。

875 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(広島県) [sage]：2011/12/01(木) 22:03:43.10 ID:uDIzkhO1o

お疲れ様です
10スレくらい続けてくれても良いんですよ

876 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/01(木) 22:06:29.15 ID:kCy76EoM0

>>1乙！

それはそうと…、クリスぇ………

877 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/01(木) 22:06:44.81 ID:vUOZIcqmo

お疲れ様です。危機とは露知らず、紅莉栖が余りにもぼっちすぎるｗｗ

878 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(大阪府) [sage]：2011/12/01(木) 22:10:10.88 ID:PFquNJot0

乙です

……クリス(´･_･`)

879 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) ：2011/12/01(木) 22:10:43.18 ID:GIXifsNmo

乙！

これ見てる限りアメリカでもぼっちだったんだろうな・・・

880 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/01(木) 22:15:37.09 ID:PO2Vq5dR0

乙！

紅莉栖カワイソス(｡´Д⊂) ｳﾜｧｧｧﾝ!!
実際にありそうだから恐い。
紅莉栖には岡部がいれば良いと思ってたが岡部がいないときは辛いな……。

881 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]：2011/12/01(木) 22:35:25.33 ID:RyF7r/kCo

本来こういうキャラだもんなぁ…泣ける

乙
次も楽しみだ

882 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/01(木) 22:47:51.71 ID:NE4x/0ASO

今シュタゲのアニメ見返してるが…なんか所々でこのＳＳを思い出していろいろ考えてしまう。楽しいwwwww
え？ＩＳのアニメ？知らね、あれは一回見れば充分wwwwww

883 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(山口県) [sage]：2011/12/01(木) 22:49:12.34 ID:iwGh5vBTo

>>882
くさい

紅莉栖ェ……

884 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) [sage]：2011/12/01(木) 23:04:45.27 ID:gQ8h5/dTo

乙。

クリスティーナ…そうだよなあ…
全俺が泣いた。

885 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/01(木) 23:21:52.86 ID:3l7aP6/DO

あれ？
助手って、頭と顔と性別以外俺とそっくりじゃね？

886 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/01(木) 23:31:56.37 ID:3nO/bSTUo

>>885
クリスティーナ友達はいるじゃん

887 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/01(木) 23:32:00.53 ID:LzmAq2Xs0

鈴かわいいな、そしてノスタルジアドライブきたぁぁぁぁああと心の中で叫んでしまった
共闘面白かったです、またお願いします

888 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/01(木) 23:39:59.94 ID:2LyqR+HDO

・飛び級の為、同学年がいない。
・研究所は研究仲間であって友達と呼べる程でもない。むしろ妬(ry
・まゆりが初の友達の可能性大

889 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/02(金) 00:15:22.85 ID:D4mZ0avmo

ノスタルジアドラｧｧｧｲブ！！！！！

あと>>837のせいで銀河南無さんの「月光蝶である！」のフレーズが延々リピートされてるわけだがとりあえず乙！

890 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]：2011/12/02(金) 00:40:05.36 ID:aC3Npf+Oo

乙

クリス…

891 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方) [sage]：2011/12/02(金) 01:52:51.93 ID:o9r2tjgOo

クリス…………(´；ω；｀)ﾌﾞﾜｯ

892 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/02(金) 02:22:05.61 ID:Dag9X8bIO

ノスタルジアドライブきた！
オカリンかっけー！

893 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]：2011/12/02(金) 02:33:07.26 ID:5Xmsc++a0

今さっき、まゆりルートをクリアして。
「紅莉栖、お前･･････ッ」とウルウルしつつふと、更新きてるかと思って見てみればこの仕打である。

くそおおおぉぉぉ！>>1乙！
いいインターバルになったぜサンクス！あとはプロローグからトゥルーまで駆け抜けるずえぇ。

894 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/02(金) 02:44:11.18 ID:LPpP87w1o

ここの>>1は盛り上げ方がマジ上手い
今回でオカリン＆石鍵の新ガジェット解禁だろうなっていうのはまあ、物語の定石として明らかだったけど
それでもなお「うおおおおお！」となるというか、むしろ定石を最大限に活かしているというか、定石かくあるべしというか
とにかくすげぇ
同じくＳＳ書いてる身としては嫉妬を覚えるレベル
今後とも頑張って、とにかく完結をさせて欲しいと切に願っております

すげーおもしれーよマジでチクショォー！

895 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/02(金) 08:38:49.70 ID:0+XArQfAO

こういう場所でうざい自分語りをしてる時点でダメだろ

>>1乙！
次スレも楽しみです！

896 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋) [sage ]：2011/12/02(金) 08:55:40.54 ID:1vMDZm2co

>>894
うわぁ…
臭すぎだろ

897 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 08:59:51.31 ID:U0T2Gmtso

>>1です。

沢山の賛辞ありがとうございます。
励みになります。

ところでちょっとお聞きしたいのですがが。

次スレからスレタイを変更しても宜しいでしょうか。
このＳＳの正式名称は、　Steins;Stratos　と言う厨２くっさいものなのです。

当初、この名前でスレを立てようと思ったのですがそのスレタイでは一体何のスレか解らないんじゃないか。
人を呼べないのではないか……と思いあぐねた挙句、紅莉栖に台詞を喋ってもらうスレタイになった訳です。

物語も終盤に差し掛かり、読み手の方の人数も固定されたかなぁと思うので今こそ、スレタイを変えても大丈夫な時期では？
と個人的に思って居たりします。

えー、今の紅莉栖に台詞言わしてるやつのが良いよー。
と言う意見があれば、そのまま突き進むのですがどうでしょうか。

変更する場合は

Steins;Stratos　Ⅳ　　から始まりますです。

898 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]：2011/12/02(金) 09:04:02.86 ID:Dl0USn0oo

厨二臭くていいんじゃね

899 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(鹿児島県) [sage]：2011/12/02(金) 09:09:25.98 ID:7NaU5Uc0o

俺は分かるからそれでも構わん

900 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長野県) [sage]：2011/12/02(金) 09:46:16.02 ID:Sr6EXMrio

俺は>>1の意見を尊重する

901 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) ：2011/12/02(金) 10:06:15.47 ID:vJisjTbZo

他人がとやかく言えることじゃないから>>1の好きなようにどうぞ

902 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 10:08:21.11 ID:U0T2Gmtso

なんて事を聞きつつ、投下作業に入ろうかと思います。
いやぁ、読み手さんがスレを見つけられない場合は本末転倒かなぁと>>1は思ったりしてみたり。

903 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 10:08:54.60 ID:U0T2Gmtso

往きます。

904 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 10:09:24.94 ID:U0T2Gmtso

>>828　　続き。

　─病室─

岡部「……」

　襲撃者撃退後、岡部は昏倒した。
　その後、直ぐに施設内の病室に担ぎ込まれ今に至る。

千冬「……」

　ベッドの横に備え付けてある小さな椅子。
　そこに腰を落していたのは織斑千冬であった。

905 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 10:09:52.56 ID:U0T2Gmtso

　
……。
…………。
………………。

千冬「束、何処へ行くつもりだ？」

束「やぁやぁ、ちーちゃん」

　病室から続く渡り廊下。
　一方は病室から、出入り口へと。

　もう片一方は出入り口から病室へと足を向けていた。

906 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 10:10:23.58 ID:U0T2Gmtso

束「用事は済んだからね、そろそろ帰るよ」

千冬「何か、言うことは無いか？」

束「はてはてー、なんのことだろー？」

千冬「今回の襲撃。お前が関与していると言うのなら、私も動かない訳にはいかない」

907 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 10:11:26.08 ID:U0T2Gmtso

　──パキッ。

　千冬の指がなる。
　その、たおやかな指に力が入った。

束「嫌だなァちーちゃん。この束さんがあーんな“ド三流”と関わってる訳無いじゃないか」

千冬「……」

　束は笑顔を崩さない。
　心のソコからどうでも良いといった言い様である。

908 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 10:11:47.47 ID:U0T2Gmtso

束「あんなのは、どこぞの警察か何かが相手してれば良いのさ。関わるだけ時間が勿体無いよ、それこそプラモデルでも作っていた方が有意義だね」

千冬「……」

　握り締めていた拳を緩める。

　束は相変わらずの笑顔で、てくてくと千冬の元へと歩を進めて行った。

909 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 10:12:14.67 ID:U0T2Gmtso

束「まぁー、ちろーっとデータが欲しかったから皆には手を出さないで貰ったけどねー。結果オーライ！　ぶいぶいっ」

千冬「我々を閉じ込めたのはやはりお前か」

束「うん。あの子のISが成長段階へ入ってたからね、邪魔しないで欲しかったんだ」

　千冬と束の影が重なる。
　双方とも、目線は前だけを向いていた。

910 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 10:12:41.27 ID:U0T2Gmtso

束「お陰で面白いデータが取れたよ」

千冬「ほう、是非とも教えて貰いたいものだな」

束「４．８秒」

千冬「……？」

束「ISの起動時間に誤差があるんだよね、事前のデータチェックではそんなこと無かったのに不思議だよね」

千冬「……」

束「と言うか、ISの起動時間に誤差が出るなんてありえないはずなんだけどねー」

911 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 10:13:08.11 ID:U0T2Gmtso

　ISのパーソナルデータ。
　それには起動時間から、戦闘時間まで事細かく記されている。

　そしてその数字に誤差。
　間違いが生じることは決して無い。

　在り得ない。

912 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 10:13:56.63 ID:U0T2Gmtso

束「はい、ちーちゃん。これ」

千冬「……」

　手渡される動画カード。
　束は千冬の手を取り、そのカードを握り締めさせた。

束「束さん特性の映像処理で濃霧の中もすっきりバッチリ全部捉えた映像だよん、見たければ見てね」

千冬「あぁ」

913 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 10:14:33.78 ID:U0T2Gmtso

　ぶっきらぼうに応答する。
　束は最後にニッと笑い、出口へと歩いて行った。

束「ちーちゃん、またねー、ばいばーい！　箒ちゃんにシクヨロでぃーす！」

　どこで覚えたのか、流行の芸人言葉を口にして立ち去る束。
　千冬が振り向くとソコに人影はもう無かった。

914 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 10:15:42.15 ID:U0T2Gmtso

……。
…………。
………………。

　──ジ・ジジ。

千冬「……」

　手渡された動画カードを、デバイスに差込み病室でソレを再生した。
　横のベッドでは岡部が寝息を立てている。

915 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 10:16:34.23 ID:U0T2Gmtso

千冬「……」

　──ピッ。

　ある一部分で動画を停止した。
　“サイレント・ゼフィルス”が“石鍵”に向かって直下降の“瞬時加速”を仕掛けている場面であった。

千冬「……」

　──ピッ。

916 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 10:17:53.08 ID:U0T2Gmtso

　何度も何度もそのシーンを見返す。
　コンマ単位でのスロー再生。

　コマ送りにしての場面再生。
　どの様に再生しても結果は同じだった。

千冬「どう言うことだ……」

917 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 10:18:20.01 ID:U0T2Gmtso

　その瞬間になると“石鍵”は存在を消失させていた。
　どんなに細かくそのシーンを刻んでも、その瞬間だけ“石鍵”は画面から消失している。

　次のコマへ送ると“石鍵”の位置は“既に通過してあった”空間へと移動している。

千冬「４．８秒……」

　束の吐いた台詞を思い出す。
　消失した時点から逆算した地点。

　４．８秒前に通過した空域に“石鍵”は姿を現している。

918 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 10:19:08.53 ID:U0T2Gmtso

千冬「……」

　──ピッ。

　──ピッ。

　何度も見返すが、結果は変わらない。
　“石鍵”は一瞬だけこの世から消え、４．８秒前の座標へと移動している。

919 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 10:19:35.46 ID:U0T2Gmtso

千冬「瞬間移動……だとすると、起動時間の誤差が説明つかん。認識をズラした……映像まで騙す精度だと言うのか」

　ふぅ、と溜息を吐く。
　解らないことだらけであった。

　束の突然の来訪。
　“亡国機業”-ファントムタスク-の襲撃。

　機器類の不具合（これは束が仕掛けたもの）
　岡部の昏倒。

920 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 10:20:02.66 ID:U0T2Gmtso

千冬「時間がいくらあっても足りん……」

　ちらりと岡部に視線を落す。
　脳波等に異常は見られない、医師は疲れから来たものだろうと診断している。

千冬「岡部。お前の目が覚め次第、合宿を終了し学園へ帰る。さっさと起きろよ」

　眠っている岡部にそう言い放ち、千冬は病室を後にした。

921 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 10:20:42.85 ID:U0T2Gmtso

……。
…………。
………………。

　──グラリ。

　視界が霞む。
　頭に強烈な痛みが走った。

922 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 10:21:15.76 ID:U0T2Gmtso

岡部「ぬっ……」

鈴音「えっ、ちょっとどうしたのよ！？」

　ISが自動解除され、瓦礫の上へと倒れる岡部。
　全身から汗が吹き出ていた。

岡部「（ダメだ……意識が……）」

鈴音「──ちょっと！　ねぇ！」

923 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 10:21:44.15 ID:U0T2Gmtso

……。
…………。
………………。

　──目を覚ますと、そこは病室だった。
　見知らぬ天井。

　微かに痛む頭痛が、現実へと意識を引き戻す。

924 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 10:22:26.11 ID:U0T2Gmtso

岡部「そうか……あのまま」

　“蝶翼”-ノスタルジアドライブ-。
　その発露から発動までを思い出す。

岡部「あの感覚は……紛れも無い……」

　──“運命探知の魔眼”-リーディング・シュタイナー-。
　
　

925 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 10:23:05.41 ID:U0T2Gmtso

　蝶翼を発動させた時、猛烈な眩暈と頭痛が岡部を襲った。
　あの時は事態が事態である。

　痛みやその他の感覚は全て置き去りに、がむしゃらに行動をした。
　が、その反動で今この様に横たわることになっている。

岡部「久々に味わったが、間違いない。あの感覚はリーディング・シュタイナーだ……」

926 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 10:23:37.88 ID:U0T2Gmtso

　ツギハギだらけの思考回路。
　幾つもの可能性が浮かんでは消える。

岡部「……」

　最も限りなく正解に近い回答を、岡部は既に導き出していた。
　けれど、それは言葉に出来ない。

　したくは無かった。

927 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 10:24:12.09 ID:U0T2Gmtso

岡部「……」

　病室で１人放つ沈黙が、空気を重くする。
　答えなど出ても、どうにも出来なかった。

　──カサリ。

　ベッドから何か、紙のような物が落ちた。
　拾い上げ、文字を読み取る。

928 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 10:24:39.66 ID:U0T2Gmtso

　それは千冬の置手紙であった。
　ぶっきらぼうな文字で、起きたら連絡しろ。合宿を切り上げ学園へ帰る。

　とだけ書かれていた。

岡部「……帰るか────紅莉栖にも、しばらく会って無かったな」

929 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 10:25:10.65 ID:U0T2Gmtso

　こうして、日本海に浮かぶ特別IS戦闘演習場での合宿は終りとなる。
　IS戦闘での初勝利、そしてその喜びを塗りつぶすかのような初の実戦。

　再び発動した“運命探知の魔眼”-リーディング・シュタイナー-。
　苦い思い出だけをこの島に残して、舞台は再びIS学園へと移って行く。

930 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 10:26:47.42 ID:U0T2Gmtso

おわーり。

御静読あーざーまーす！
スレタイですが、厨２のシュタストラスにしようかと思います。略すとSS！
今日中に立てて、このスレにリンク貼って誘導すれば大丈夫かなぁと。

931 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/02(金) 10:33:40.44 ID:6w1zy63IO

おつ！移動しちゃったのか…

932 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/02(金) 10:46:48.63 ID:U/hnW3LBo

乙です
次スレも楽しみにしてます

933 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/02(金) 10:49:31.72 ID:2x35eSkDO

乙～。
マジでＤメールみたいに過去に跳んだんか…？石鍵さんパネェ。
石鍵さん必死で束に情報渡すまいと頑張ってたんだな

934 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 11:05:30.52 ID:U0T2Gmtso

↓次スレ誘導↓

Steins;Stratos　Ⅳ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1322791121/

このスレが埋まり次第、上記のスレッドでまた投稿させて頂きます。
よろしくお願いします。

935 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]：2011/12/02(金) 11:11:10.05 ID:672Q20s80

乙です。

936 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長野県) [sage]：2011/12/02(金) 11:12:45.29 ID:Sr6EXMrio

乙　それにしても、教師として生徒を危険に合わした研究者を修正しないって・・・・こんなにも俺と先生で意識の差があるとは思わなかった……！

937 ： ◆H7NlgNe7hg [sage]：2011/12/02(金) 11:18:06.69 ID:U0T2Gmtso

と、言うことでした。
何度してもスレ立ては緊張して疲れる……。

全て書き終えて、投稿し終わったら設定だとかプロットだとかも落します。
総スルーしてる質問やら、これどうなってんだよ意味解んねェよごるァ！
なんでココはこうこうこうじャねェの？

等々の質問にお答えしますです……。
本日もありがとうございました。

938 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長野県) [sage]：2011/12/02(金) 11:58:14.89 ID:Sr6EXMrio

>>1が読んでる漫画とバイブルを教えて

939 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/02(金) 12:48:38.78 ID:rkEnxRQDO

>>1乙

リーディング・シュタイナーが発動したなら世界線も変動したのか？
只のタイムスリップした副作用であって欲しいところ。

940 ： ◆H7NlgNe7hg [sage]：2011/12/02(金) 13:11:20.06 ID:U0T2Gmtso

すみません。
答えるのは、完結したら～と言う意味でした。
ＳＳ書いてるくせに、日本語が不自由で申し訳……。

>>938
このスレに関係していると言うか関わってそうな作品だと。

皇国の守護者（原作含む）
レッドアイズ
ヨルムンガンド
ヘルシング
FRONT MISSION DOG LIFE&DOG STYLE

まだまだありますが、こんな感じでしょうか。
漫画読みなので、挙げるとキリがなくなってしまいますね。

941 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋) [sage]：2011/12/02(金) 13:38:37.34 ID:Ns6ixuAMo

特定の人間だけを世界線変動させる能力かな？
どんな効果にしても凄い能力だな～

蝶翼はデスティニーみたいなんだろうか

942 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/02(金) 13:42:07.23 ID:VZ7ByyrDO

リーディングシュタイナーって世界線移動しても記憶を持ち続けるオカリンの能力名だよね
ノスタルジアドライブが発動したおかけでオカリンと二組は撃退に成功
それによって今の世界線で一部改変が起こって世界線移動→リーディングシュタイナー発動ってことだろ

943 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/02(金) 15:37:01.13 ID:CT65LsqDO

フロントミッションD&D良いよね

ゼニスのデザインだけは納得できないが

944 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/02(金) 16:33:25.41 ID:rkEnxRQDO

>>940
>>1とは良い酒が飲めそうだ。
とりあえず、佐藤大輔は皇国の守護者の続編を書くべき。

>>941
結果が変わる＝世界線の変動じゃなかったっけ？
まゆしぃが毎度えらい目に遭うのはタイムリープだけ
だと世界線が変動しないからだったはずだし。

945 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/02(金) 16:42:10.84 ID:rkEnxRQDO

↑安価ミス…orz

>>941じゃなくて>>942だった。

946 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]：2011/12/02(金) 16:54:36.68 ID:pSsckVpF0

原作キャラだから仕方ないけど束ってどうしようもなく腹立つキャラだな・・・
何でおとがめなしなのかさっぱりわからん。

947 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/02(金) 18:02:42.68 ID:jsi6V5s90

乙！

世界線変動率は結果が変わることによっても僅かに動くからなあ。
オカリン頑張れ。

948 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/02(金) 18:03:28.02 ID:Ub2WLvOSO

いや、ここSG世界線でしょ
なら未来は未確定の世界線だからリーディングシュタイナーは発動しないはずだよ
改変も何もない世界線だから
だからこのリーディングシュタイナーが発動した時の感覚は蝶翼のリスクなんじゃないかな

949 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/02(金) 18:21:02.67 ID:VZ7ByyrDO

>>944
いや結果は変わらないだろアトラクタフィールドの収束があるんだから
変わるは結果にいきつくまでの過程
つかこのSSが始まった時点ですでにIS世界線にいるんだろ。ISが存在してんだし今回はあくまでIS内での変動だろ
結果が変わるような大規模な世界線変動じゃないだろメタ的にいって

950 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/02(金) 18:22:42.27 ID:6WMyrwbIO

>>948
パラダイムシフトなんて観測装置が登場したせいで未確定な未来じゃなくなったのかもしれないし、今回のジャンプでSG世界線から遠退いちゃったのかもしれない。

まー考察は楽しいけど、これ以上口を挟むのは野暮なんでこの辺にしとく。

951 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(不明なsoftbank) [sage]：2011/12/02(金) 18:24:07.86 ID:dGJCmToAo

なるほと
あくまでも“似てる”だけという事か

作品内で
最も限りなく近い正解をって言ってるしな

952 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/02(金) 18:32:51.46 ID:VZ7ByyrDO

シュタゲ本編のSG世界線だって別に何も起こらない平和な世界線ってわけでもないしな
シュタゲはあくまで秋葉原が舞台のオカリン中心の話だし実はSG世界線にはISが存在してましたってなってもおかしくない
束さんとオカリンの会話もなんか意味ありげだし。

953 ： ◆H7NlgNe7hg [sage]：2011/12/02(金) 18:34:39.31 ID:U0T2Gmtso

>>1です。

スレも残り僅かとなったので、おまけを投下したいと思うます。

954 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 18:36:14.34 ID:U0T2Gmtso

往きます。

955 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 18:36:51.64 ID:U0T2Gmtso

>>　　続き────ではない。

　
……。
…………。
………………。

一夏「～～♪」

　一夏はその日、一日の疲れを湯船に浸かり癒していた。
　ここは大浴場。

　普段、男子に開放されることは無いが週に何日か。
　または月に何度か男子である一夏や岡部にも、解放されることになっている。

956 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 18:37:31.37 ID:U0T2Gmtso

一夏「いやぁ、やっぱ風呂は良いよなぁ。なぁ凶真？」

岡部「あぁ、そうだな」

　岡部にしても、久々の湯船とあり堪能していた。
　シャワーのみの生活はラボと同様で、こちらでもなんの問題も無かったがやはり湯船は気持ちが良かった。

一夏「両手両足伸ばせるでかい風呂ってのが良いんだよなー」

岡部「しかも今日は柚子湯か……」

一夏「体の芯まで温まるよなぁ」

957 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 18:37:58.24 ID:U0T2Gmtso

　はぁ、と思わず出る溜息。
　一夏は表情まで蕩けて湯船を楽しんでいる。

岡部「（ここだ。ここで聞かねば……）」

　心底、久方ぶりの湯浴みを楽しんでいる一夏とは裏腹に岡部は緊張していた。
　ドクンドクンと心臓が早鐘を打っている。

　その理由とは、セシリアやラウラに軽々しく口約束してしまった内容に起因していた。
　ハロウィンが終わって早１週間。

958 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/02(金) 18:38:01.29 ID:D4mZ0avmo

リアルタイム久々～♪

959 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 18:38:25.29 ID:U0T2Gmtso

　これだけの時間をかけていながら、未だにミッションはクリアされていなかった。

　──織斑一夏に好意を寄せる女性は居るのか。

　簡単なようで難しい。
　一介の男子中高生であれば、日常的に繰り広げられる話題だがこの２人に至っては全く持って使用されない話題。

　お互いの恋愛に関する話題など一度たりともしたことがなかった。
　そして岡部倫太郎の今までを見通しても、そのような甘酸っぱい話しを同性としたことも皆無である。

960 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 18:38:55.16 ID:U0T2Gmtso

岡部「（どのように話題を持ちかければ良いのか……）」

一夏「ん？　凶真どうかしたのか？　変な顔してるぜ」

岡部「あぁ、いや。何でもないんだ……」

一夏「？」

　安請け合いをしてしまった。
　岡部は心の中で苦虫をすり潰したような感覚に襲われる。

961 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 18:39:27.51 ID:U0T2Gmtso

　セシリアはちょくちょく肘で腹を突付いて来るし、ラウラは鋭い眼光で睨みを利かせてくる。
　早急に自体を解決せねばならなかった。

岡部「な……なぁ、ワンサマーよ」

一夏「うん？」

　一夏は肩まで湯につかり、相変わらず幸せそうな顔をしていた。
　頭頂部に畳んだ手ぬぐいまで乗せている。

962 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 18:39:56.21 ID:U0T2Gmtso

岡部「あー、特に意味は無いのだ、が……アレだ。話題の一環としてだな……」

一夏「どうしたんだ？」

　岡部の歯切れの悪さに眉をしかめる。
　今まで感じたことが無いような間を見せる岡部に対して、ほんの少しだけ嫌な予感がよぎった。

岡部「あー……軽い気持ちで聞いてくれ。前述の通り、話題の一環としてだな」

一夏「あぁ……」

　──ごくり。

　一夏の喉が大きな音を立てた。

963 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 18:40:23.46 ID:U0T2Gmtso

岡部「その、だな……ワンサマーに今、そのあれだ……好いてる異性など居るか？」

一夏「────え？」

　ザ・ワールド。
　世界が止まった。

　静止する世界。
　まるで、この風呂場一角だけ時が凍りついたように２人の男子は動きを止めた。

964 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 18:40:58.14 ID:U0T2Gmtso

岡部「……」

一夏「……」

　数十秒の時を経て、再び動き出す世界。
　口を開いたのは織斑一夏であった。

965 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 18:41:32.45 ID:U0T2Gmtso

一夏「……どっ、どうしたんだよ急に」

岡部「いっ、いやなに、前述してあるだろう。話しの一環としてだな……」

一夏「吃驚した、何事かと思ったぜ……そんな話題かよ」

岡部「で、どうなのだ……？」

一夏「ん？　ハハッ、居ない居ない。ってかそれどころじゃないだろ？」

岡部「……と言うと？」

一夏「言うと？　って。ISの勉強にISの訓練。生徒会の雑用に部活動の貸し借り……そんなの考える暇はねーって」

966 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 18:42:00.86 ID:U0T2Gmtso

　流石の唐変木・オブ・唐変木ズである。
　通常であれば、恋愛フラグのオンパレードであるそれを“多忙”の一言でバキバキとへし折ってきた。

　フラグをフラグとすら気付かず、片っ端からへし折っていくのである。
　恋愛に興味のある人間であればそのような自体に陥るはずもない。

　織斑一夏は根っからの恋愛不向き体質であった。

岡部「（哀れな……ワンサマーに好意を向けてもコレでは……）」

一夏「凶真だってそうだろ？」

岡部「……む？」

967 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 18:42:34.95 ID:U0T2Gmtso

　急に話しを振られ、首を傾げる。
　何に対して“そう”なのかを瞬時に理解できなかった。

一夏「いや、いきなりこんな学校へ叩き込まれて勉強だー訓練だーだぜ？　そんなのに構ってられないだろ？」

岡部「む……あぁ、いや、まぁ……そう──だな」

　一瞬、脳裏を過ぎった紅莉栖は無視して相槌を打つ。

　ここで１つ疑問が浮かぶ。
　一夏を取り巻くガールズ達の好意について、この男はどう解釈しているのだろうかと。

968 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 18:42:58.22 ID:U0T2Gmtso

　余計な詮索ではあるのだが、一度頭に浮かんだ疑問をそのままにするのも気分が良くない。
　岡部は意を決して口を開いた。

岡部「……あー、ワンサマーよ。アレだ、あの……周囲の女子達についてはどう思っている？」

一夏「周囲って？」

　コレである。
　この男は、自分を取り巻く“ハーレム”の存在を認知できていない。

969 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 18:43:27.72 ID:U0T2Gmtso

岡部「……そうだな、では……しののののに付いてはどう思っている？」

一夏「箒か？　幼馴染だよ、一番最初の」

岡部「……」

一夏「そう言えば、俺がプレゼントしたリボンを大事に使ってくれてるなぁ……物持ちの良いヤツなんだ」

岡部「そ、そうか……」

　見えているようで見えていない。
　人と同じ鳥を見て、違う泣き声を聞いているような男だった。

970 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 18:43:55.12 ID:U0T2Gmtso

岡部「ではMs.シャーロックはどうだ？」

一夏「セシリア？　礼儀正しいヤツだよなぁ、何時まで経っても敬語が抜けてないみたいだし」

岡部「……」

一夏「そう言えば、最近良くマッサージを頼まれるな。テニス部ってそんなに疲れるのかな？」

　スキンシップに多少の照れはあるものの、この程度の感覚である。
　健気にアタックを続けるセシリアに岡部は物悲しさを感じていた。

971 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 18:44:33.69 ID:U0T2Gmtso

岡部「……大陸娘はどうなんだ？　２組だから、あまり関係無いかもしれないが」

一夏「鈴か、アイツも幼馴染だよ。ファースト幼馴染が箒で、鈴がセカンド」

　人をファーストだとか、セカンドだとか言う括りをするのはどうかと思う岡部であったが、
　自身も人のことを言えた義理では無いのを思い出し、ギリギリのところで踏みとどまる。

一夏「昔っから、アイツはぺたぺたぺたぺたくっ付いて来るんだ。全く、何時まで経っても子供だよなぁ」

　ここまで来たら、最後まで。
　岡部は次の名前を提示した。

972 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 18:45:00.29 ID:U0T2Gmtso

岡部「ヂュノアはどうなんだ？　かなり親しいようだが……」

一夏「シャルか？　良いヤツだよなー、誰にでも親切だし」

岡部「……」

一夏「最近は料理部で作ったって言って、飯も食わせてくれるしな」

　１人だけ特別な愛称で呼んでいるのだから、多少なりとも違った感情を抱いているかも。
　そう思ったが、何のことは無い。

　一夏は誰に対しても平等な男であった。

973 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 18:45:30.52 ID:U0T2Gmtso

岡部「眼帯。眼帯娘はどうなんだ？　時たま布団に潜り込んでいるようだが」

一夏「ラウラには参ったよ。昔なんて服を着ないで潜り込んで来たんだぜ？　軍隊に居たからかもしれないけど、常識って大事だよな」

岡部「……」

　どの口が常識を口にするのか。
　自分が何を言っているのか、この男は理解しているのかと突っ込みたい衝動を我慢する。

974 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 18:46:01.24 ID:U0T2Gmtso

岡部「……あー、ノーガード。アレはどうなんだ、一応な……」

　正直、半ばどうでも良いが楯無も端から見ればハーレムの一員である。
　気持ちとしてはもう疲れたので聞きたくも無かったが、質問を続けた。

一夏「会長？　会長もなー、凶真が同室になってからはかなり落ち着いたけど……ちょっと前までは一緒にシャワーを浴びたりと大変だったな」

岡部「……」

　この学園は一体どうなっている。
　世の男性、得にダルなどがこの話しを聞いたら発狂するのではないか。

　そんな事を思いながらも、岡部は質問を続ける。

975 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 18:46:28.29 ID:U0T2Gmtso

岡部「あー、ノーガードな。アレには妹が居ただろう、たしかー……」

一夏「簪か？」

岡部「そう、その娘だ」

一夏「簪はアニメが大好きなんだ。俺に良く貸してくれたりするよ、この間も廊下でアニメが大好きって大声で言ってたなぁ」

岡部「……」

　それは違うんじゃないか？
　その一言が搾り出せない岡部。

　段々と意識が朦朧としてくる。

976 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 18:46:56.37 ID:U0T2Gmtso

岡部「あー……姉はどうだ、サウザン……ウィンターは……」

一夏「千冬姉？　千冬姉がどうかしたのか？」

岡部「……」

一夏「千冬姉も良い年齢だし、そろそろ彼氏の一人でも作ってくれたらなあって思うよ……って、凶真！？」

岡部「……ぶくぶく」

　何時の間にか湯船に頭頂部まで浸かる岡部。
　完全にのぼせていた。

977 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 18:47:23.35 ID:U0T2Gmtso

一夏「やばい、おい！　凶真っ！」

　湯に使った岡部を一気に引き上げる一夏。
　そのまま引きずり、脱衣所まで連れて行く。

岡部「あぶぶぶ……」

　体は真っ赤に火照り、湯気が立ち上っている。

一夏「ったく、ココまでのぼせるヤツなんて初めて見たよ」

978 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 18:47:55.71 ID:U0T2Gmtso

　ハハッ、と笑いながら学友を見下ろす。
　その顔は楽しそうでもあった。

　高校に入り、男１人で過ごしてきた。
　周りの全てが女子の生活。　

　そんな中、現れた同性の学友。
　岡部が転入してから、一夏は毎日が楽しくて仕方が無かった。

一夏「ポカリでも……あっ、ドクペの方が嬉しいのか？」

　同室の友の為、ドリンクを買いに走る一夏。
　その顔はやはり笑顔であった。

979 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 18:50:37.68 ID:U0T2Gmtso

おわーーーり。
これにて、このスレでの投下は終了いたしますです。

>>937
で言ってるんですが、完結後うんたんの説明はしないかもしれません。
冷静に考えたら２次作品の　ぼくがかんがえたせってい　を隅々まで披露するのは痛いことに気付きました。
文章でなんとなーく、解るよう努めますのでどうかご理解下さい。

おそらく、次スレ……奇跡が起きて次々スレで完結するかと思います。
本当にありがとうございました。

980 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(中部地方) [sage]：2011/12/02(金) 18:52:53.52 ID:QZmZM9cdo

乙です次スレでも待ってます

981 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(京都府) [sage]：2011/12/02(金) 18:54:52.96 ID:gQcQjdVqo

乙

982 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/02(金) 19:03:26.26 ID:ZhDwT6vKo

お疲れ様です。朴念仁、ここに極まれりというか……

983 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福井県) [sage]：2011/12/02(金) 19:03:47.70 ID:n1OZV/n3o

乙

984 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(北海道) [sage]：2011/12/02(金) 19:10:31.15 ID:CdI1+9X90

乙乙
ワンサマーのこれはもはや病気

985 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長野県) [sage]：2011/12/02(金) 19:13:35.13 ID:Sr6EXMrio

乙ー

ワンサマー爆発しろ

986 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) [sage]：2011/12/02(金) 19:43:00.72 ID:HTfXfmG6o

新スレ＆埋めネタ乙です。

ワンサマーとオカリンいいな、ナイスコンビｗｗ
だがオカリン、ラボメン抱えてるお前が言うなだぞｗｗ

987 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]：2011/12/02(金) 19:44:36.50 ID:aC3Npf+Oo

乙

988 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県) [sage]：2011/12/02(金) 20:00:37.40 ID:vtkv6PKd0

乙。
オカリンはクリス、フェイリス、ルカ子の好意には気づいてなかったか？

989 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(山口県) [sage]：2011/12/02(金) 20:04:05.16 ID:r6KFyg+co

オカリンちょっと鏡見てこようぜ
ワンサマーェ……

990 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/02(金) 20:04:58.16 ID:nb9vTQpSO

>>986
オカリンの場合全員の気持ちを知った上で助手に告ってる(オカリンの記憶では)からちょっと違うような。
一夏の場合は全く気付いてないし。

991 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/02(金) 20:07:30.58 ID:nb9vTQpSO

言い忘れてた。

>>1乙！

992 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/02(金) 20:14:21.64 ID:X6UY7rDBo

乙
次スレも次々スレも楽しみにしてる

993 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋) [sage]：2011/12/02(金) 20:43:33.63 ID:bM0GkLaOo

>>1乙
てかあと7レス出し埋めるか？

994 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(山口県) [sage]：2011/12/02(金) 20:44:01.47 ID:r6KFyg+co

梅酒

995 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/02(金) 20:48:38.18 ID:iCS9d5vDO

>>1乙
次のスレも楽しみにしてる

996 ： ◆H7NlgNe7hg [saga]：2011/12/02(金) 21:01:32.42 ID:U0T2Gmtso

埋めます。

997 ： ◆H7NlgNe7hg [sage]：2011/12/02(金) 21:02:13.34 ID:U0T2Gmtso

埋め誘導。

↓次スレ誘導↓

Steins;Stratos　Ⅳ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1322791121/

このスレが埋まり次第、上記のスレッドでまた投稿させて頂きます。
よろしくお願いします。

998 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(山口県) [sage]：2011/12/02(金) 21:05:19.39 ID:r6KFyg+co

うめうめ

999 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(西日本) [sage]：2011/12/02(金) 21:05:47.78 ID:R9P4b8tmo

うめ

1000 ：VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]：2011/12/02(金) 21:07:02.81 ID:uQwx89bh0

うめ

1001 ：1001 ：Over 1000 Thread

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿, - ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /＿＿＿＿＿）
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　|_|　　┃　┃　 || 　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　（/　　 ⊂⊃　　ヽ)　　　　　　　／￣￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　!　　＼＿／　　!　　　　　　（（（ヽ　　　　ヽ
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　　　ゝ／￣￣￣＼　　　　　／.　＼／￣＼／　 .＼　　　　　|　・ |─ |__　　　/
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　　　|　|　/　 ─ ､－､!　　　 |　 |　 /　∋ |＿＿|　　|　 |　　　　ヽ　／　　ヽ＜
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　　　（　　　` ─　o－i　　　ヽ　／　　　　　　　　＼ .ﾉ＿　　　　　　.j￣￣ |
　　　　ヽ､　　┬─┬ﾉ　/￣　./　　　　　　　　　　　ヽ-　､＼　　　 /　￣　ヽ＼
　／／ /ヽ─| | ♯|　 /　　　i　　　　　　　　　　　　　 | ..)　）＼　 i　　./　　 |＼＼
　 | |　 /　　｀i'lノ）)┘/　, ─│　　　　　　　　　　　　　!-l⊂⊃l┐__ヽ__/＼ / | 　 | |
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1002 ：最近建ったスレッドのご案内★ ：Powered By VIP Service

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眼鏡うｐ　スレ的には眼鏡フェチで＠ 2011/12/02(金) 17:03:16.49 ID:1xxsOU3DO
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