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QB「禍福は糾える縄の如し」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [saga]:2011/11/21(月) 18:53:03.55 ID:36tkAMAy0
まどかSSです

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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714054765/

渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714052788/

二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714049241/

佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 18:54:01.02 ID:36tkAMAy0
「ねぇ、本当にこんなところに魔女がいるの?」

「んー、どうかな。いるような、いないような」

「今夜見たい番組あったんだけど」

「ごめんね。やっぱりいないみたい」

「はぁ……そりゃそうでしょうよ。ソウルジェムに何の反応もないし」

「ふん? なのに付いて来たんだ?」

「それはほら、万が一ってこともあるし。私が見落としたせいで誰かが襲われたりしたら嫌だから」
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 18:54:31.62 ID:36tkAMAy0
「なるほど、君は本当に優しい子だよ。おまけに優秀だ。たった一人で十二体もの魔女を撃破した手並み、称賛に値する」

「何よ? いきなりどうしたの?」

「君と契約して早三ヶ月。思えばいろいろなことがあった。お菓子作りの実験台にされたのも今ではいい思い出さ」

「あはは……でもうまくなったでしょ?」

「おかげで君と僕との間には堅い信頼関係ができた。こんな人気のない場所にノコノコやって来てくれるくらいに」

「え?」

「プレゼントだよ。受け取って」

僕は上蓋のないドラム缶を眼下の少女めがけて突き落とした。
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 18:55:09.60 ID:36tkAMAy0
「いぎゃあああァァァ!! 熱いぃッ! 焼けるぅぅっっ!!」

「クスッ、可哀想に。そんなに苦しいかい?」

頭から硫酸を被り、身悶える女の醜態を眺めながら暗い愉悦に浸る。

ああ、なんということだろう。

若く瑞々しい肌は焼け爛れ、美しい髪がズルリと抜け落ちていく。

眼球は光を失い、顔面の至る所から筋やら骨やらが露出を始める。

「不用意なやつだよ、君は。僕みたいな得体の知れない生き物を信用しちゃダメだろ」
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 18:55:35.26 ID:36tkAMAy0
何が悪かったというわけでもない。

僕は生まれながらにこうだった。

生物がもがき苦しむさまが好きで好きでたまらないのだ。

本来であれば即廃棄処分されるはずの感情持ちの不良個体。

しかし僕はこの残忍な性格を買われ生かされた。

そういえば自己紹介がまだだったね。

僕はインキュベーター。

この国では同胞たちに倣いキュゥべえと名乗っている。
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 18:56:10.46 ID:36tkAMAy0
「じゃ、僕はもう行くね。携帯ここに置いとくから救急車でも呼びなよ」

「キュゥべえぇぇ! どこにいるぅッ! 殺してやるぅぅうう!」

「よくないなぁ。女の子がそんな汚い言葉遣いするなんて」

自身に投げかけられる憎悪。

実に心地よい。

「くそがぁっっ! うぅぅぅ見えないぃぃぃぃ! 熱いよぉぉぉぉ!」

「うん? もしかして両眼とも潰れちゃった?」

それはうまくない。

せっかくの楽しみが半減してしまう。
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 18:56:50.29 ID:36tkAMAy0
「仕方ないなぁ。今の君の状況、僕が教えてあげる」

赤黒く剥けた少女の額に自分のおでこを押し当て、脳内に直接イメージ映像を送ってやる。

ぐちゅっとぬめった触感が気持ちいい。

「どう? 分かる? 理科室の人体模型みたいだろ? これが今の君の姿だよ」

「ぁ……うぁぁ……嘘よ、そんなの……」

「触ってごらん、自分の顔を。指先に、手の平に、全神経を集中させて確かめてごらん」

「見たくない……知りたくない……こんなの……助けて……お父さん……お母さん……」
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 18:57:23.98 ID:36tkAMAy0
「無理無理。こんなに醜くなった君をいったい誰が愛してくれるというんだ? 誰もが君を指してこう言うだろう、化け物と」

「いやぁ……」

「手術なんかしたところで無駄さ。元の顔になど戻りはしない。君は生涯醜いままだ」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

ソウルジェムが砕け散り、どす黒い感情の奔流が巻き起こる。

貴重な魔女の誕生シーンだ。

「顔は女の命。まさにその通りだったね」

正義の味方を気取る魔法少女が、人を喰らう醜悪な魔女へと変貌していく。

僕はこの瞬間が大好きだ。

胸の中が温かいもので満たされていくのが分かる。

これが幸せというやつなのだろう。
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 18:58:10.39 ID:36tkAMAy0
「よいしょ、よいしょっと。ふぅー」

抜け殻となった少女の躯を結界の外へ引き摺り出しておく。

ただの行方不明で終わらせるなんて勿体なさすぎる。

ここまでグロテスクに爛れてくれたんだ。

もっと多くの人達に見てもらわないと。

ああ、変わり果てた娘の姿を見て、彼女の両親はどんな反応を示してくれるのだろうか。

今から楽しみでならない。
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 18:58:54.54 ID:36tkAMAy0
さーて、此処らの素質持ちはみんな狩り尽くしちゃったし、これからどうしようかな。

僕は気侭なフリーランス。

結果さえ出せば、同胞たちも文句は言ってこない。

どこで何をしようが勝手というわけだ。

そういや、見滝原ってとこに何か凄い子がいるんだっけ。

次はそこへ行ってみよう。

新天地でも素敵な出会いがありますように。
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 18:59:35.45 ID:36tkAMAy0


第一話「お菓子の国で捕まえて」

12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:00:05.12 ID:36tkAMAy0
「へぇー、転校生にそんなこと言われたんだ。変なのー」

「うん、わけ分かんないよね。でも、ちょっと気になることがあるんだ」

「ん? なになに?」

「実はね、あの子とは夢の中で会ったような気がするの」

「……ぷっ、くくっ……夢、夢って……くふふっ……!」

「もう! 笑わないでよ!」

「ごめんごめん。いやー、まどかさんには敵いませんなー」ケラケラ
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:00:53.64 ID:36tkAMAy0
「あなた達、随分楽しそうにお喋りしてるわね?」ドドド…

「うっ、この声は……」ビクッ

「さ、早乙女先生……」ビクゥッ

「児童は寄り道せずに真っ直ぐ帰ること。全校集会で校長先生がおっしゃってたでしょう?」

「あははは……」

「ご、ごめんなさい……」

「分かったのなら、さっさと食べて帰りなさい! 日が落ちるのなんてすぐなんですからね!」

「ふぁい! ひほひへはべまふ!」

「もごもご! はよふはら!」

「はい、さようなら。気をつけて帰るんですよ」



14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:01:27.85 ID:36tkAMAy0
「参ったねぇ。あのファーストフード店まで見回りの範囲に入るなんて」

「そうだねぇ。この分だと他の先生たちも巡回してるのかな?」

「そうなんじゃない? ほんと大袈裟だよね。どうせ悪戯に決まってるのに。仁美なんか車で送り迎えされちゃってるしさ」

「早く騒ぎが収まるといいのに。せっかく早く帰れるのに一緒に遊べないんじゃ損だよ」

「うんうん……あれ? 収まったら収まったで授業時間元に戻るんじゃない?」

「あっ、それもそうだね」
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:02:01.17 ID:36tkAMAy0
「今日はCD漁るのやめた方がいいかな。さすがに二回目は親に連絡行くだろうし」

「うーん、その方がいいと思う。うちのママ、先生の友達だからこういう話すぐ伝わっちゃうし」

「あー……そういやそうだっけ。そんじゃ、今日はこれでお開きということで。ばいばい、まどか」ノシ

「うん、ばいばい、さやかちゃん。また明日」ノシ
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:02:36.28 ID:36tkAMAy0
「あーあ、こんなことなら先にCD買いに行けばよかった。恭介がっかりするだろうなぁ……」

どうも、こんにちは。

私は美樹さやか。

どこにでもいる普通の中学二年生です。

最近の悩みは健康診断書を盗み見されて、身長体重がクラスのみんなにバレてしまったことかな。

それはさておき、私の通う見滝原中学校は現在平時より早く生徒を家に帰すよう努めている。

何でも、13人もの犠牲者を出した女子児童連続殺害事件の実行犯らしき人物が、次はこの県を狙うと犯行声明出したとかで警戒してるみたい。

おかげで先生方の監視を掻い潜ってCDを調達し、幼馴染の待つ病院まで足を運ぶのが日課となってしまったわけだ。

今日は手ぶらで行くことになっちゃったけど。
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:03:18.45 ID:36tkAMAy0
「ごめんね、お小遣い日前なんだ……違うな。実は財布落としちゃって……これはダメかも。今日は耳を休めて、私と一緒に、一緒に……えへへ」ニヤニヤ

「よーし、設置完了。これでリアルサイレントヒルごっこができるぞ」

「うぇ!? だ、誰かいるの!」

病院の正面玄関で一人シミュレーションをしていると、突然足下の辺りから声が聞こえた。

驚いて下を向くと、白っぽい小動物がもぞもぞしている。

「な、何だ、猫か…………あれ、猫じゃない。なにこれ?」

とにかくなんかすごい変な生き物。

全身を覆う真っ白な体毛に、ガラス玉のような紅い瞳、耳から生えた手羽先のような何か、ふぐりを思わせる小さな口。

こんな動物、今まで見たことない。

「やばっ、もしかして新種? よし、写メ撮って恭介に自慢しよ。逃げるなよ〜」
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:03:57.21 ID:36tkAMAy0
「……」タタッ

「あっ、こら!」

逃げられた、しかも院内に。

「中はまずいって。おーい、戻ってこーい」

私も慌てて小動物の後を追う。

野生動物は細菌と寄生虫の塊。

早く捕まえてあげないと。

「ったくもう……ん?」キラッ

視界の端で何かが黒く光ったような気がした。
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:04:26.86 ID:36tkAMAy0
「おーい、チビ助やーい。おっかしいなぁ、どこ行っちゃたんだろ」

とりあえず一階フロアを探してみたけれど、影すら見つけられなかった。

診察室とかには入れないし……上かな。

でも、あの短い足で階段の上り下りができるのだろうか。

「あれ? やあ、さやかじゃないか。来てたんだね」

「!」ピクッ

恭介だ、恭介の声、どうして一階にいるんだろ、言い訳まだ考えてない、ああそんなことより挨拶しないと。
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:04:56.92 ID:36tkAMAy0
「おっす、今日も来てやったぞ。恭介こそ、こんなところで何してるのさ?」

「何ってリハビリに決まってるだろ。足腰鍛えておかないと歩けなくなるからね」

「ふーん、一人で?」

「そうだけど?」

「看護師さんに付き添ってもらわなかったの? 一人で歩き回ったら危ないでしょ」

「これくらい平気だって」

「だーめ。ほら、肩貸すから」

「いや、いいって」

「なんだよー、逃げんなよー」

「ああ、もう。分かったよ」
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:05:38.10 ID:36tkAMAy0
「重くないかい?」

「全然。むしろ前より軽くなった。ちゃんとご飯食べてる?」

ぴったりと触れた肩先から微かな温もりが伝わってくる。

体が熱い。

このまま時間が止まればいいのに。

「……」チラッチラッ

歩を進めるたびに入院着の隙間から鎖骨が顔を覗かせる。

「……」スンスン

そしてほんのり香る汗の匂い。

「さやか?」

雨の日も風の日も雪の日も毎日欠かさず通ってきたんだもの。

これくらいの役得はあって然るべきだと思う。
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:06:20.60 ID:36tkAMAy0
「それでね、早乙女先生ったらまた破局したんだって」

「またか。もうお見合いでもしたらいいんじゃないかな」

「えー、お見合いとか絶対うまくいかないよ。私は恋愛婚がいいなぁ」

「いつから君の話になったんだ。あまり夢を見過ぎてもいいことないと思うけど……ッ!」グラッ

「わっ、っとと! どうしたの、恭介? 気分悪いの?」

「大丈夫、ただの立ち眩み……うっ……!」ガクッ

「恭介! 待ってて! すぐに誰か呼んで来るから!」

「何だろう……すごく、眠いんだ……」

「すみません! 誰か手を……え?」
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:06:59.22 ID:36tkAMAy0
助けを求めようと周囲を見回し愕然とする。

お医者さんも看護師さんも外来の患者さん達も、皆床に倒れ伏し、呻き声を上げている。

「何なの……何が起きてるの……?」

「死んじゃうよ。みんな死んじゃう」

「え……?」

「僕はここだよ。下を見て」

言われた通りに視線を下に落とす。

「あ、あんたが、喋ってるの?」

玄関口で見失った白い獣がそこにいた。
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:07:44.65 ID:36tkAMAy0
「今ならまだ間に合う。それを捨てて敷地外まで逃げるんだ」

「それって……そんな言い方しないで」

既に意識を失った恭介の体を抱きしめる。

獣の目がスッと細くなった。

「君のよろしくない頭でも現状の異常さは理解できるはずだ。時間がない。早く逃げろ」

「だから何が起きてるのよ! そもそも、あんたは何なの!」

「僕かい? 僕のことはキュゥべえとでも呼んでくれ。それと、残念ながら時間切れだ」

次の瞬間、世界が一変した。
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:08:27.28 ID:36tkAMAy0
甘ったるい匂いがする。

見渡す限りお菓子の山だ。

足場が覚束ない。

リノリウムの床がぶよぶよの何かに変わってた。

「白昼夢ってやつなのかな……」

夢であってほしいと願いながら頬を抓る。

「……痛い」

無情にも確かな痛みが返ってきた。

「忠告はしたよ」

「……っ! これって、あんたの仕業なの?」

「さてね。そんなことより見てごらん。使い魔たちがお菓子作りを始めたよ」
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:08:58.44 ID:36tkAMAy0
キュゥべえと名乗る小動物に促されるまま前方に視線を向ける。

「やだ……何あれ……」

数十センチほどの謎の生物が群れをなし、うぞうぞと蠢いている。

斑点模様の胴体に、青いぐるぐる模様の、顔?

田んぼの鳥よけ風船のような無機質な顔だ。

手足は針金のように細く、頭にちょこんとナースキャップを被っている。

そして恐ろしいことに、奴らは自身の体よりもはるかに大きな人間の体をせっせと運んでいた。

「あっ! あの人……!」

恭介の担当医さんが運ばれてる。

あの人だけじゃない。

あれは受付の人、あっちは恭介の隣の部屋のお爺さん、こっちは「なにボーっとしてるんだ。すぐそこまで来てるよ」
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:09:25.98 ID:36tkAMAy0
「ひ……! ダメ! 来ないで!」

こっちに気づいた化け物たちが次々群がってくる。

「この! あっち行け!」

蹴り飛ばしたり、踏みつけたりして応戦してみるけれど、どいつもこいつも信じられないくらい力が強い。

外見はぬいぐるみそのものなのに獰猛すぎる。
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:10:06.00 ID:36tkAMAy0
「こいつら……いぎっ!?」

必死に戦っていると、いきなり体のバランスが崩れた。

痛い。

左足が猛烈に痛い。

ドン、ドン

「痛ぅ……くぁ……!」

ドン、ドン、ドン、ドン

目がチカチカする。

足元がぐらつく。

ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン

「あぎッ!」

後ろだ。

後ろから何かを叩きつけられてる。
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:10:44.98 ID:36tkAMAy0
「うっ……ぐぅ……こっの……」

どうにかして反撃しようと右足を軸に後ろ蹴りを放つ。

ブシュッ

「あぇ……?」ゴシャ

倒れた。

誰が?

私が。

痛い。

鼻打った。

立てない。

どうして?
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:11:38.75 ID:36tkAMAy0
「ぅぁ? ぁ…あぁ……! あ゛あ゛あ゛あ゛!! 痛い痛い痛い痛い痛いぃぃぃぃ!!」

左足が短くなってる!

膝から下がなくなってる!

ギコ、ギコ

「あがッ……!」

ギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコ

「きひぃっ!?」

右足も?

右足もなくなっちゃうの?

「やめて! もうやめてぇ! 痛いのぉ! 助けて! 助けてよぉ! 何でもするからぁ!」

ブシュッ



31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:12:12.36 ID:36tkAMAy0
あれから何回も刻まれた。

鉈で、鋸で、包丁で、何度も何度も刻まれた。

痛くて、熱くて、血がいっぱい流れて、生きてるのが不思議なくらい。

いっそ狂って死ねたら楽だったのに。
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:12:56.94 ID:36tkAMAy0
恭介も死んじゃった。

私の目の前で殺された。

肉を潰され、骨を砕かれ、頭をお団子みたいにこねられて、今はお皿の上。

やめてって叫んだら、喉を思い切り殴られて声が出せなくなった。
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:13:29.67 ID:36tkAMAy0
その後、両手両足を切断されて達磨みたいになった私は、まだ人の形を保ってる他の皆と一緒に奥の部屋まで運び込まれた。

恭介は別の部屋。

寂しい。
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:14:01.08 ID:36tkAMAy0
バキッ、ゴリッ、グッチャ、グッチャ

咀嚼音が聞こえる。

蛇みたいなお化けが人を食べてるんだ。

ああいうの踊り食いって言うんだっけ。

もうすぐ私の番。

恐い。
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:14:32.66 ID:36tkAMAy0
「んー、いまいち。意識を奪ったままじゃ断末魔が聞こえないだろ。センスないなぁ」

「あ゛……ギュゥ゛べえ゛……?」

「うわっ、ひどい声。ヒキガエルの方がまだマシだよ」

「だず、げで」

「おいおい、僕に何を期待してるんだ」

「じに゛だぐな゛い゛、ごわ゛い゛」

「クスクス、いいよ、今の君すごくいい。涙と涎と鼻汁で汚れきったその醜い面。写メ撮っちゃお」パシャッ

「ぎょう゛ずげ、あ゛い゛だい゛」

「ん? 彼はもう死んだだろ」

「ぎょう゛ずげ……」

「うーん、どうしよっかなー」
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:15:13.45 ID:36tkAMAy0
さて、困った。

彼女をこのまま死なせるべきか、それとも生かすべきか。

正直、現在のシチュエーションにはいまひとつ興奮できない。

途中までは文句のつけようのない出来だったのに。

可愛らしい少女が無様に泣き喚き、虫けらのように四肢をもがれていくさまは最高の見世物だった。

特に素晴らしかったのは、両腕を奪われるまで決して離そうとしなかった少年が肉塊に変えられた時の絶望の表情だ!

あれには危うく絶頂しかけた。

思えば、あそこがピークだったのだろう。

少年を失い、彼女の反応は目に見えて悪くなってしまった。

このまま魔女に喰わせたところで大したリアクションは期待できそうにない。

ならば。
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:15:50.51 ID:36tkAMAy0
「君、どうしても助かりたい?」

「ぁ……あ゛あ゛……」

「君一人だけなら何とかなるかもしれない。助けてあげようか?」

「ぎょう゛、ゲホッ! ずげ……」

「うん? 僕は一人と言ったんだ」

「わ゛だじば、い゛い゛がら゛」

「はぁー……つまんないんだよ、そういうの。反吐が出る」
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:16:24.34 ID:36tkAMAy0
「僕は大いに気分を害しました。何か面白いことしてください」

「ぅ……ぁぁぁ……」

「そういえばお腹とか空いてませんか、空いてますよね、空いてますか、そうですか。どうぞお食べください」ポイッ⌒●

「……?」

「使い魔さんが丹精込めて作り上げた人肉団子だ。食べなよ」

「い゛……や゛……」

「食べてくれたら――――上条恭介を生き返らせてあげる」
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:16:55.26 ID:36tkAMAy0
「ん゛っ、ぐっ……! あ゛むっ……!」グチャグチャ

「おやおや、まさか本当に食べるとは」

犬のように地を這い、必死の形相で同胞の肉を貪る女の狂態を眺めて溜飲を下げる。

「どんな味がする? 三日前に産まれたばかりの赤子は」

「ん゛!? ごぶッ、う゛げぇ゛!」ビチャビチャ

「あらら」
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:17:37.70 ID:36tkAMAy0
さて、カニバリズムもたっぷり堪能したことだし、契約の儀に移るとしよう。

「聞くまでもないことだが改めて確認させてもらうよ。君の願いは何だい? 解釈の余地が生じないよう正確に言ってね」

「ぎょう゛ずげ! あ゛わ゛ぜで!」

「うん、話はちゃんと聞こうね。死体とご対面させちゃうよ?」

「ぎょう゛ずげを゛い゛ぎがえ゛ら゛ぜでぐだざい゛」

「うんうん、よくできました。それでは前を失礼。ちょっとチクッとしますよー」

散々痛めつけられ、ただの布切れと化した制服を剥ぎ取り、直接胸部に触れる。

「……ッ……!」

「はい、おしまい。これが君の魂、ソウルジェムだ。なくすなよ」

蒼く輝く宝玉は、清水のごとく過剰なまでに澄んでいた。
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:18:13.02 ID:36tkAMAy0
「う、腕がある……足も……! あ、あー、あーあー、ごほん。嘘みたい……治っちゃうなんて……」

「ようござんしたね」

「あれ? でも恭介は? 恭介はどうしたの!」

「安心しなよ。魂は回収しておいた。君は肉体を復元するだけでいい。彼の場所は分かる?」

「え、えっと……確か、向こうの部屋に運ばれたはず……」

「なら急ごう。魔女のところに運ばれたら面倒だ」
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:19:34.96 ID:36tkAMAy0
ギーコ、ギーコ、ドン、ドン、ザクッ、ザクッ、ゴシャッ

「おーおー、やってる、やってる」

「あいつら……! 人を何だと思ってるのよ!」

「そりゃ餌でしょ。もっとも、今度は奴らが狩られる番だけどね」

「え?」

「ソウルジェムに手を当ててごらん。感じるだろう? 圧倒的な力の鼓動を」

「う、うん。よく分からないけど、なんかすごい……」

「理解する必要なんてない。感覚が掴めればそれでよし。さあ、魂を奮わせろ。あらゆる理不尽を消し飛ばす力を求めよ」

パァ――――――――

「これって……剣? それにこの格好……」クルッ、クルッ

「変身完了、上出来だ。征け、魔法少女よ。人に仇なす使い魔どもに正義の鉄槌を下せ」
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:20:16.39 ID:36tkAMAy0
「怖く、ない? 勝てると思ってる?」

完治したはずの四肢が疼く。

私の体をめちゃくちゃにしたあいつらを殺せと。

「――ッ」

興奮に震える手で細身の長剣を握りしめる。

初めて触れるはずのそれは気持ち悪いほどによく馴染んだ。

「何も考えるな。魂の赴くまま感性に身を委ねろ」

「ん、わかった」

敵影は1、2、3……もういいや、数なんて関係ない。

何匹いようが斬って斬って斬りまくるだけ。

「ハァッ!」

剣を構え、敵陣に突貫する。

気合の叫びが自然と漏れた。
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:20:46.92 ID:36tkAMAy0
「!」

「!!」

化け物たちが私の存在を感知する。

でも、もう遅い。

「フッ――」

顔面に刃を立て、斬る瞬間手前に引く。

「……!」ズルッ

ほーら真っ二つ。

「よし、次!」
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:21:21.25 ID:36tkAMAy0
なんだろ。

周りの動きがやたらと遅い。

はっきり言って止まって見える。

「次!」

そもそも剣の扱いなんて私知らない。

体が、脳が、勝手に反応する。

「……次」

「恐れることはない。それは紛れもなく君の力さ」
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:21:54.81 ID:36tkAMAy0
「これでラスト!」トスッ

最後の一匹を刺突で仕留め、一息つく。

これでこの部屋の怪物は全滅。

「はぁ……」

「素晴らしい初陣だった。ああ、そうそう。君が戦ってる間にいくらか集めておいたよ」ドサッ

私が休憩してると、キュゥべえが奥から大量の肉塊を運んできた。

「これって、まさか」

「上条恭介の肉片。パーツから察するに腕かな? 指とかあるし」

「恭介、こんなグチャグチャに……」

「大丈夫。君の魔法なら彼を元に戻せるはず。さあ、やってごらん」
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:22:26.85 ID:36tkAMAy0
「恭介……待っててね」

邪魔な手袋を外す。

恭介のお肉だもん、素手でも平気。

「あ……ああ!」グチュ、グチュグチュ

恭介の親指、恭介の人差し指、恭介の中指、恭介の薬指、恭介の小指、恭介の皮膚、恭介の爪、恭介の骨、恭介の血、恭介の膿、恭介、恭介、恭介、恭介、恭介がいっぱい。

「おっ、いいじゃん。挽き肉こねるの得意だったりする?」

恭介が私の爪の中に入ってくる。

私の爪が恭介に犯されてる!

「ある程度形になってきたら魔法を使うんだ。手抜きしろとは言わないけど、あまり神経質になる必要はないよ」

「んっ……ふぅっ……!」ビクンビクン

「おーい、聞いてる?」
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:22:55.97 ID:36tkAMAy0
しばらくこねていると腕が形を成してきた。

「どう?」

「ん、そのくらいでいいだろう。今度は魔力を込めて練り上げるんだ」

「こんな感じ?」コネコネ

「いいぞ、その調子。肉に生気が宿り始めた」

剥き出しの肉が肌色の皮膚に覆われていく。

細くて綺麗で繊細な恭介の腕が蘇っていく。

「よし、そこで一旦やめ。次の部位に移ろう」
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:23:34.41 ID:36tkAMAy0
それから私たちは恭介を構成する部分部分を順々に一つ一つ修復していった。

「きょ、恭介の顔、顔が! こ、こんなに近くに!」

「落ち着きなよ。まだ骨に肉付けしてる段階じゃないか」

道のりは決して平坦ではなかった。

「恭介のおち、おちん、うぅ……///」

「ふーん、皮被ってるんだ。しかもちっちゃい。幻滅した?」

「するわけないでしょ……。それに小さい方がエ、エッチするとき痛くないって雑誌に載ってたし……」

「いや駄目だね。小さいと子宮まで届かないだろ。この男の性器は欠陥品だ。ポンコツペニスだ」

「……別に小さくたっていいでしょ」

「いやはや、こんなサイズじゃバイブでも使った方がマシってもんさ」

「いいの! 私が腰を落とすから!」

「ワーオ」

でも私は頑張った。

全ては恭介のために。

そして。
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:24:10.34 ID:36tkAMAy0
「心の準備はオーケー?」

「オーケー」

「よろしい。ドッキング開始だ」

関節、筋肉、神経を慎重に繋ぎ合わせる。

「……っ」プルプル

「深呼吸だ。リラックスして」

「すぅー……はぁー……」

緊張を抑え込み、作業を再開。

「……うん、良い感じだ。このペースでミスなくいこう」

「ええ……」

バラバラの肢体が人の形を取り戻していく。

もうすぐ、もうすぐ恭介が私の元に帰ってくる。
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:24:39.73 ID:36tkAMAy0
「……ぷはーっ! はぁー、緊張したぁ……」

「お疲れ様。肉体の再生はこれ以上ないくらい上手くいったよ」

「そう……」

修復を終えた恭介の裸体を眺める。

クラスの男子と比べると、だいぶ線の細い華奢な骨格。

本人は気にしてるみたいだったけど、私の目には何よりも美しく映って見える。
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:25:07.97 ID:36tkAMAy0
「それじゃ、最後の仕上げといこうか」コトッ

キュゥべえが指輪を取り出す。

台座には黒と白のマーブル模様の宝石が収められている。

「とんだクズ石だ。君の頼みがなければ即砕いてたよ。これだから男は駄目なんだ」

「それは?」

「彼の魂を結晶化したものさ。劣化版ソウルジェムとでも言うべきか。これを付けてやれば彼は息を吹き返す……たぶん」

「貸して! 私が付ける!」

「はいはい、どうぞ」
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:25:41.52 ID:36tkAMAy0
リングを恭介の左手薬指に急いで嵌めこみ、すぐさま胸に耳を当てる。

「…………………………………………」ピトッ

温もりの感じられない冷え切った体。

心音はまだ聞こえなドクン

「!」

動いた!

脈がある!

息もある!

「生きてる! 恭介が! 恭介が生き返った!」

「あれま、成功しちゃったよ。やってみるもんだね」
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:26:17.38 ID:36tkAMAy0
恭介の頼りない胸板が上下に揺れる。

徐々に血が通い始め、土気色の肌が健康的な色を帯びていく。

「よかった……! ほんとうに……よかったよぉ……!」

「それで? これからどうする?」

「ん、とりあえず恭介を安全な場所に連れてってあげないと……」

「そうかい。なら脱出するとしよう。付いてきて」

意識の戻らない恭介を背負い、キュゥべえの後に続く。

道中、目についた怪物たち(使い魔というらしい)を斬り捨てながら、お菓子でできた足場を進んでいくと巨大な蛇の胴体がすぐ目の前を横切った。

心臓止まるかと思った。
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:26:46.50 ID:36tkAMAy0
「ふん、もう嗅ぎつけたか。豚め」

「びっくりしたぁ……あんなに大きかったんだ」

「悠長に構えてる場合か。どこかの馬鹿があれにちょっかい出したせいで出口を塞がれてしまった。もはや戦うしか助かる術はない」

「誰かって、私の他にも生き残りがいるの?」

「いたんじゃない?」
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:27:22.85 ID:36tkAMAy0
菓子箱の影から身を乗り出し、蛇の様子を窺う。

蛇は黄色い何かを口に含み、口内でモゴモゴと反芻している。

「おっ、あそこ見てみなよ」

「なに? 何かあるの?」

キュゥべえの指し示す方向を見ると、琥珀色に輝く宝石が無造作に転がっていた。

「あれって、もしかして私や恭介と同じ?」

「たぶんね。悪運の強いことだ」

そう言うと、キュゥべえは小走りに駆けていき、宝石を回収するやいなやピューッと戻ってきた。

さすが小動物、身のこなしが軽い。
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:27:52.26 ID:36tkAMAy0
「間違いない。ソウルジェムだ。この子、現在進行形で食べられてるよ」

「なっ……早く助けないと! キュゥべえ、恭介のことお願い!」ダッ

前方の視界を埋め尽くす黒々とした蛇の皮。

胴を斬りつけても意味がない、頭の方へ回り込まなきゃ。

大丈夫、まだ間に合う。

肉片さえ残っていれば助けられる。
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:28:26.13 ID:36tkAMAy0
レロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロ

蛇は大口を開け、汚らしく唾液を垂れ流しながら何かを舐め回していた。

「うっ……」

頭だ。

女の人の頭が飴玉みたいに舌の上で転がされている。

レロレロ…ガリッ

舐めるのに飽きたのか、蛇が頭頂部に牙を突き立てる。

ビシャッ

「……ッ!」ピチャ

生温かいピンクのしぶきが飛んできた。
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:29:14.45 ID:36tkAMAy0
やっぱり恐い。

あいつの食糧にされたみんなの最期が頭の中に浮かんでくる。

嫌だ、食べられたくない。

喉の奥がすっぱい、吐き気がする。

さっきから手汗が止まらない。

脂が、恭介の脂が流れちゃう。

そうだ、恭介。

せめて恭介だけでも生かして帰さないと。

恭介……私に力を。

「ぁ……ハァァァッ!」

恐怖を呑み込み、合わない歯の根を噛みしめて、私は蛇の首筋に刃を刺し込んだ。
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:29:52.42 ID:36tkAMAy0
「このっ、き、斬れない!」

堅い、いや、厚い。

刃が全然通らない。

蛇は依然として私の方を見向きもせず口を動かしている。

「舐めるな!」

悔しい。

悔しいけど今の私には有効打がない。

「くっ」

刃が抜けない。

仕方なく剣を手放し、距離をとる。

ダメだ、こんな鈍らじゃ傷一つ付けられない。

「もっと、もっと強い剣が欲しい……!」
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:30:26.12 ID:36tkAMAy0
「ならば望め。ソウルジェムに最強の武器を求めるんだ」

「……来て」

キュゥべえの助言に従い、下腹部に据えられた宝石に軽く触れる。

「んっ」

やがて、私の望みに応えるかのようにソウルジェムが光を放ち、銀色に輝く刀身をズルリと吐き出した。

「や、やった……!」

大きい。

刃だけで三メートル近くはありそう。

そんな規格外の大太刀を両手で構える。

このずっしりとした重量感――――いける。
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:31:01.27 ID:36tkAMAy0
「覚悟しなさい……」

軟らかな足場を斬り払い、更地にする。

堅くなった足元をしっかりと踏みしめ、足腰のバネを利用し、蛇の頭上まで一気に跳躍。

狙うは、この期に及んで食事をやめないド腐れ蛇の首級一つ。

お前に食べられて亡くなったみんなの恨みを思い知れ。

「死ねぇ!」

一片の躊躇もなく、蛇の頸部に大太刀を振り下ろす。

ありったけの呪詛を込めたその刃は、皮を破り、肉を断ち、暴虐を恣にした悪魔の首を刎ね飛ばした。
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:31:38.43 ID:36tkAMAy0
「ごめんなさい。私がもう少し早く来ていれば……」

蛇の口からこぼれ落ちた女性の頭を拾い上げる。

噛み砕かれたのは後頭部と下顎部分。

顔の損傷は比較的少ない。

年は私と同じか少し上。

よほど怖い思いをしたのだろう、表情筋が引き攣っている。
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:32:30.93 ID:36tkAMAy0
「キュゥべえ、この人の体探すの手伝って」

「おいおい、僕を魔女に食べさせるつもりかい?」

「は? いや、あんたは周りを探して。あれの腹は私が捌くから…………あれ?」

おかしい。

蛇の胴体が見当たらない。

確かさっきまでそこに「……」ニタリ

「え……」

道化師面の蛇が嗤っている。

私のすぐ横で。

「ッ!」ヒュッ「……!」ガパッ

私が逃れるよりも早く、蛇の口は開かれた。
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:33:11.51 ID:36tkAMAy0
「君はベテランなんだろ? それがこうも簡単にやられるなんて、情けないと思わないのかい?」

「あ……いや、死ぬのは、いや……」

「死なないさ。このソウルジェムがある限り。例え、首だけになろうとも、脳漿が漏れようともね」

「こわい……キュゥべえ、たすけて……」

「だからさぁ、君たちは僕に何を期待してるのさ」

「おともだち、でしょう……?」

「人間の友達をつくることをお勧めします」

「こわいの、さむいの、ひとりは……いや……」

「ふん、弱い人間は嫌いだよ。虐め甲斐がなさ過ぎる」

「たす、け……」

「さやか、もちろん君は楽しませてくれるんだよね?」
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:33:41.10 ID:36tkAMAy0
「はっ、はっ、はっ、はっ……!」

呼吸が荒い。

犬みたいだ。

「ぐぅっ!」ズキッ

後ろに跳んだときに右足をもっていかれた。

転倒せずに踏ん張れたのは不幸中の幸いだったけど、状況はかなり悪い。

蛇はこれ見よがしに足をしゃぶりながら、付かず離れず私の周りを飛び回っている。

手負いの獣は遠からず自滅する。

それを理解しているからか、自分から仕掛けようとはしてこない。
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:34:13.75 ID:36tkAMAy0
斬り落としたあいつの頭は今もそこに転がっている。

新しく生えてきたのだろうか。

それとも蛇らしく脱皮したとか。

いずれにせよ、ただ斬るだけでは倒せそうにない。

ひょっとして詰んだ?

死ぬときはせめて恭介の腕の中で……そうだ、恭介、恭介を守らないと。

まだ諦めちゃダメだ。
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:34:46.69 ID:36tkAMAy0
「はぁぁぁ……よし」

剣を複数取り出し、マントの切れ端で一纏めにする。

足一本分の太さになるまで束ねた長剣を右足の切断面に突き刺す。

「んぅ……! ぐぅ、んぅぅぅ……!」

舌を噛まないようマントを口に咥え、痛みに耐える。

恭介のためにも、この程度でくじけるわけにはいかない。

刃の埋もれた右足を限界まで振り上げ、地を踏み砕く勢いで振り下ろす。

「んっ! ぎっ! んぁぁぁ!」ダン、ダン

右足を何度も地面に叩きつけ、剣先を体内に固定する。

これを繰り返すこと十数回。

剣による即席の義足が完成した。
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:35:20.38 ID:36tkAMAy0
「いいじゃないか! やはり魔法少女たる者、体を張らないと!」

「……」

「寝るな」ゲシ

「いたっ、いたい……けらないで……」

「次うとうとしたら君をボールにサッカーするからな」

「うぅ……」

「生まれたてほやほやの新人さんが頑張ってるんだ。先輩から何か言うことはないの?」

「……つかいま、たおさないと」

「ほう、無駄にキャリアだけ積み重ねてきたわけでもないのか。でも気付くのが遅かったね」

「つたえ、ないと」

「よし、行ってこい。さやか、パス!」ドカッ
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:36:00.56 ID:36tkAMAy0
「へ? う、うわぁ!」パシッ

義足の調子を確かめていると、急に生首が飛んできた。

びっくりして危うく斬り捨てるところだった。

「ひどい……しんじてたのに……」

生首がしゃべった。

いや、よく見ると琥珀色の宝石が髪に絡まってる。

こんな状態でも一応生き返ることはできるんだ。
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:36:37.61 ID:36tkAMAy0
「だ、大丈夫ですか?」

「つかいま、さいせい、になう、う、うぅ……」

「すぐにやっつけますからね。安心してください」

「つかいま、たおして……」

「任せてください。蛇ごとぶった斬ってやりますよ」

歩行に問題はない、と思う。

走るのは無理、できて一回。

つまりチャンスは一度きり。

弱点、何か弱点はないの?
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:37:17.60 ID:36tkAMAy0
「つかいま、を、たおして……」

「はいはい、分かってますよ」

「だめなの、たおさないと……」

首のお姉さんが使い魔を倒せとしつこく呟く。

「キュゥべえ、この人も預かって……キュゥべえ? どこに行ったの?」

キュゥべえが見当たらない。

隠れ場所を変えたのだろうか。

恭介のこと頼んだのに……あれ?

「あの、お姉さん。キュゥべえがどこに行ったか知りませんか? それと、一緒にいた男の子も」

「しらない、みてない……」
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:37:50.59 ID:36tkAMAy0
まさか。

まさかまさかまさかまさか。

「はッ!」ブオンッ

視界を遮る邪魔な菓子箱を切り崩す。

いない。

「目障りなのよ!」ブンッ、ブンッ

いない、いない、いない、いない。

恭介がいない。
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:38:50.56 ID:36tkAMAy0
「つかい、ま?」

「……ッ!」

薄汚い使い魔風情が!

私から恭介を奪うな!

「どけぇぇぇぇ!」

「!」ズリュッ

ぷかぷかふわふわ鬱陶しい糞蛇を分割し、元来た道を駆け戻る。

「くるしい、かみ、つかまないで……」

「どこ! 恭介はどこにいるの!」

「つかいま、あのへや……」

「恭介……!」

ギィィ…
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:39:25.59 ID:36tkAMAy0
巨大なデコレーションケーキの足場。

蝋燭に見立てた椅子とテーブルの一群。

この場所はよく知っている。

いつ食べられるかも分からない恐怖に脅えながら、悠久とも思える時間を過ごした場所だ。

「あそこ……」

「あそこって、ああ、あれね」

鉄塔のごとく聳え立つ丸椅子の頂上。

そこに安置するかのように据え置かれた一匹の使い魔。

特に生かしておく理由もない。

長剣を投擲し、風穴を開けてやった。
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:39:56.07 ID:36tkAMAy0
ズル、ズル…

「きをつけて、きてるわ……」

地を這うような音と共に蛇が姿を現す。

まだ恭介を見つけてないのに。

走ったせいで義足も半壊しちゃったし、それもこれも全部キュゥべえのせいだ。

役立たず。
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:40:39.41 ID:36tkAMAy0
「来なさいよ。私はもう逃げない」

というか動けない。

こうなったら居合の要領でカウンターを叩きこむしかない。

どういうわけか向こうもやる気みたいだし、あとはタイミングさえ合えば「!」グアッ

「見切っ……!?」ガクッ

真正面から突っ込んでくる蛇に横薙ぎを放つ寸前、義足が逝った。

体勢は大崩れ。

今から身を躱すことは不可能。

この片膝をついた状態で迎え撃つしかない。

「死んで……たまるかぁぁぁぁ!!」

あいつを殺せるのなら腕が千切れてしまっても構わない。

渾身の力で振り上げた刃は蛇の顔面を確かに捉えた。
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:41:14.27 ID:36tkAMAy0
「……ごぼッ」ビシャッ

口から血が出た。

蛇の全体重をかけた突進を正面から受け止めたせいで私の肋骨はボロボロだ。

でも。

「ふ、ふふふっ……勝ったぁ……」ペタン

私は生き残った。

蛇は顔面から胴に至るまでザックリ斬り裂かれ、あっけなく死んだ。

なーんだ、再生できるのは一回だけか。

恐がって損した。
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:41:52.32 ID:36tkAMAy0
蛇が死んだからだろうか。

甘くイカれた空間は朝霧のように立ち消え、病院はいつもの静寂な時間を取り戻した。

「たすかった、のね」

「ええ……」

それにしても暗い。

外はもう夜みたいだ。

非常口の誘導灯を頼りに這うようにして進む。

恭介はどこだろう。
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:42:46.18 ID:36tkAMAy0
ところどころ肢体の欠損した人達があちこちに転がっている。

よかった。

私達の他にも生き残りがいたんだ。

「よっ、お疲れ」ヒョコッ

「キュゥべえ……」

「芋虫と団子でダンゴ虫ってか」

「今までどこに行ってたのよ! 恭介は!?」

「やれやれ。せっかく機転を利かせて勝たせてやったというのにこの仕打ちか。彼ならそこで寝ているよ」

「……」スースー

「恭介! 無事だったのね!」
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:43:24.09 ID:36tkAMAy0
待合いソファに横たわる恭介の元へ急いで這い寄る。

……微かな寝息が聞こえる。

この野郎、人の苦労も知らないで。

腹いせに頬をツンツンしてやると赤ちゃんみたいにムニャムニャ言い出した。

かわいい。

そんな幸せそうな寝顔を見ていると、私も眠たくなってくる。

「あ……」パァ…

緊張の糸が切れたからだろうか。

コスプレじみた派手な衣装はひとりでに霧散し、大太刀と長剣も消滅した。

「どうして、はだかなの……?」

「……いろいろあったんです」
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:44:16.41 ID:36tkAMAy0
「しかし困った。肝心のサイレントヒルごっこがまだできていない」

「は?」

「君、三角頭役を務めてくれないか? ゲストもちょうど到着したことだしさ」

バンッ

ザワザワ、ガヤガヤ、ヒャッハー

「やべーよ! 本当に死体だらけじゃねーか!」

「馬鹿、よく見ろ! こいつら生きてるぜ!」

「QB神ってマジで実在したんだな! ただのグロ画像マニアじゃなかったんだ!」

「キチってるよな、ほんと。こないだロリ13人ぶっ殺したばっかなのによ」

突然、正面入り口の引き戸が乱暴に開かれ、フルフェイスヘルメットの集団が院内へなだれ込んできた。

「な、何なの、この人たち……」

「インターネット、それは人類の生み出した叡智の結晶。よく利用させてもらっているよ」
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:44:57.98 ID:36tkAMAy0
「こいつ腸はみ出てんじゃん。きめぇ」

「QB様、どこにおられるのですか? サインください。そして握手を!」

「俺、人殺してみたかったんだ。こんだけいればバレないよな」

「この切断面! 最高だ! ヌこう」

「根性無しめ。俺は直接挿れてやる」

おかしい。

まだ悪い夢を見ているのだろうか。

違う。

右足から幻肢痛がする。

痛い。

「いつの時代、どこの国にも救いようのない人間は存在するものだ。だが誰も彼らを責めることはできない。これは性だ。真に責められるべきは彼らを作り出した神だ」
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:45:54.26 ID:36tkAMAy0
「あん? おい、こっち来てみろよ。起きてるやつがいるぞ」

「んー? お嬢ちゃん、どうしたのかなー? そんなカッコで寒くないのかい?」

「あ……やだ、見ないで……」

「かわいいねー。うちの娘と同じくらいかなー? でもお胸の方は全然違うなー」ムニュ

「ひ……!」

触られた触られた触られた触られた触られた触られた触られた触られた!

「やだやだ。あんたみたいなペドな父親を持った娘さんは不幸だなっと」クチュ

「いやぁ!」

やめて!

そんなところに指を入れないで!
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:46:47.11 ID:36tkAMAy0
「なんだ、もう濡れてんじゃん。淫乱なんだね」

「ち、違っ!」

「むほっ、最近の学生さんはけしからんなー。このおっぱいは彼氏くんに育ててもらったのかなー?」

「やだぁ! もう触らないでぇ!」

なんで!?

どうして好きでもない男にベタベタ触られないといけないの!?

「ん? この傷口、猛獣に齧られたような痕……素晴らしい! 一枚撮らせてくれ!」パシャッ

「あ、あぁぁ……」

うそ……。

私の裸、撮られちゃった。
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:47:41.78 ID:36tkAMAy0
「やっぱり若い子はいいよー。うちの上さんは態度と横幅ばっかりデカくてねー」

「おい、そこでシコシコやってるやつ! こっちで出せよ。リアクションあった方がおもしれーだろ」

「どれどれ?」ボロン

「ひぁ……!」

大きい、怖い、汚い!

「しまって! そんなの見せないで!」

「ふむ、なかなかいい切断面だ。よろしい、スパートだ!」シュッシュッシュッシュッ

「な、なにしてるの! 私の前でおちんちんいじらないで!」

「うっ! でる!」ドロッ

「きゃぁっ!」

あ、足に、変なのかけられた!

白くて、粘っこくて、臭くて!

「も、もう我慢できん! 直接傷口に挿入させてくれ!」

「あ、あぁ、ああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」



87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [sage saga]:2011/11/21(月) 19:48:59.36 ID:36tkAMAy0
黒き想いに囚われて、この地を訪ねし悪鬼ども。

条理という名の殻を脱ぎ、我欲を満たしにやって来た。

されど一人の修羅があり、悪鬼を斬らんと剣を取る。

そして始まる斬り切り舞い、首腕胴脚宙を舞う。

白き大地は紅を帯び、修羅の視界も朱に染まる。

やがて悪鬼は死に絶えて、修羅は女子に身を落とす。

赤が嫌だと泣き叫び、男の名前を繰り返す。

ならば捨て去れ、人の皮。

頭と獣を従えて、冥府魔道をいざ征かん。

後に残るは死屍累々、兵どもが夢の跡。


第一話 了
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福島県) [saga]:2011/11/21(月) 19:51:08.74 ID:36tkAMAy0
一旦終わり

続きはまたいつか
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方) [sage]:2011/11/21(月) 22:39:48.84 ID:4vBzcX5xo
これQBでやる意味あんの?とか
おまえこれただ甚振りたいだけじゃねーの?とか

いろいろ思ったけどそれなりに良い描写が続いたので乙
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [sage]:2011/11/22(火) 10:06:56.06 ID:umdedci9o
なにやら凄いことになってるね、一応続きを待つ
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/30(水) 03:02:06.86 ID:TT5yqgowo
こりゃ久々に当たり引いたかも知れん
最初に死んだ娘がマミさんだと思ってたからびっくらこいた
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