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勇者「終わったか……」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆2oAC0/KsUw :2011/11/21(月) 22:52:27.30 ID:eA9nlIoIO
勇者は無能であった
皆から勇者であるが故に期待され、重荷を背負わされた
なんと不幸であろうか

しかし、そんな重荷もスグになくなる

なんせ自分の目の前にいるのは桁外れに強い魔王なのだ

敵うはずがない
敵うはずがない

頭ではわかっているのに、体はそれでも立ち向かおうとする

なぜだろう?
敵うはずがないのに

勇者は思った
今、魔王を倒せば皆が喜ぶ。倒せなければ皆が悲しむ。
勇者は人が悲しんでいるのを見るのは嫌いだ
だから倒そうとする

いつぞやの母の言葉が脳裏に浮かんだ
「勇者は偉くないし、強くない。賢くもなければ、性格もよくない。ただ、人の為に勇気を出して戦う者……それが勇者なんだよ」

今の自分は勇者なのだろうか?
もし勇者でなければこの場から立ち去れる
あぁ、私は勇者なのだ。だから立ち向かわなければいけないのだ

「どうした?降参か?」

魔王の野太い声が部屋中に響き渡る

あの時、世界の半分を貰っていたら
そんな考えが頭を過ぎった

「……」

勇者はなにも言えなかった
降参は出来ないけど、敵うはずもない

勇者に選択肢などなかった。道路のコンクリートのように敷かれた道を進むだけ

今は道など見えやしない
この合間まで言われるがままにすればよかったのに
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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
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渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714052788/

二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
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全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/21(月) 22:55:58.64 ID:IV19YQ620
面白そうなスレハケーン!!
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(宮城県) [sage]:2011/11/21(月) 23:13:44.65 ID:bt4y7a7o0
>>2ハリケーンに見えた期待
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) [sage]:2011/11/22(火) 15:21:14.77 ID:m0Mbo4KAO
終わったか……
5 : ◆TO1jMGJ4SY [sage saga]:2011/11/22(火) 17:26:35.44 ID:HL9oGisl0
右手に持つ剣を握りなおし、対峙する者の目へ瞳を向ける

睨みつける事などしない、いや出来やしない
相手を見るだけで背筋は凍り、腕から力が抜け、足は震えそうになる

さしずめ、目の前にいるのは『魔王』なんてものじゃなく
『絶望』を形にした、そのものなんだろうと思えてくる

「……ふっ……ふふっ……」

なんだ、まだ俺も馬鹿な事を考える余裕があるじゃないか
そう気付くと、こんな時にもかかわらず、つい笑い声が抑えられなかった

「……余裕そうだな 我を前に醜く笑うか」

余裕だと? そんなものがあるわけない
醜いか? 悪いな、元からこんな顔なんだよ

「………」

あぁ、言ってやりたい
お前なんてすぐに倒してやる、と
俺が、平和な世界を取り戻す、と

でも声はまるで、何かに奪われたかのように音をたててくれない


ただ

それでも

この勇気だけは奪わせない、奪わせてたまるか

「……惜しいな、誠に世界を半分。 分けてやっても…… な…」

目の前の『恐怖』は甘い言葉を発し続けている

「……五月蝿ぇ」

その言葉を、振り切るように声を吐き出し、剣を振り上げた
6 : ◆TO1jMGJ4SY [sage saga]:2011/11/22(火) 17:45:57.30 ID:HL9oGisl0
ガキイイィィィィンッ!!!

そう、金属音を響かせた剣は腕に大きな反動を伝えてきた
自慢の一つであった「力」だが、奴には何の効果もないようだ

「……っ! はあああぁぁ!!!」

即座に剣を引き、すぐさま次の一撃をぶち込む

頭、腕、足、胴体、首、肩、目、指
なんだっていい、どこかに傷を付けたい
俺の一撃は、無駄じゃないという、証が欲しい

「うわあああぁぁぁぁっ!!!!」

ブオォンッ と、剣が空を裂きながら
致命傷を与えるべく、敵の身体へ向かってゆく


だが

剣戟は、まるでくる事が解っていたかのように
まるで、そこにある事が当然であるかのように


すべて、魔王の持つ武器へと吸い込まれてゆく

頭を狙った一撃は
     全て行き先を地べたへ変えられ

胴を狙った一撃は
     何もない空へ誘導され

首を狙った一撃は
     ただ、魔王の持つ塊とぶつかり、俺の腕を痺れさせるだけ

「っっっぐ、まだだあああぁぁあっ!!!」

それでも、俺は剣を振り続けた
7 : ◆TO1jMGJ4SY [sage saga]:2011/11/22(火) 18:07:16.99 ID:HL9oGisl0
今まで、何十もの魔物を割った一撃
何百もの魔物を切り裂いた 斬撃

自身に才能のない事はわかっていた

だが、それでも…… その上で…
文字通り血反吐を吐き、崩れた身体でもなお剣を握り
自身に習得させた斬撃たち

どんな生物、いや神だろうが、悪魔だろうが通用すると信じて振り続けてきた、いや

・・・・
今までは、信じていた

「……ふむ…」

自身の腕は悲鳴をあげ
        剣は不快な高音を奏で

  足は地面を踏み散らし


勇者は、自身の最強……  いや、人類最強の斬撃を繰り広げていた

8 : ◆TO1jMGJ4SY [sage saga]:2011/11/22(火) 18:20:45.79 ID:HL9oGisl0

「……そう、か… なるほどな…」

だが、それすら魔王に傷一つ付けられない
それどころか、汗一つかかせることも、息一つきらせることも出来ない


「うおおおぉぉぉ!!!」


だが、その程度で諦めてたまるか

この一撃は俺の、辛いなんて想い程度で止めるわけにはいかない


この一撃には

魔物に親を殺されたと泣く、子供達の『想い』
    笑って過ごしていた友を、肉塊へと変えられたと目を腫らした者達の『想い』

恋人が、目の前で喰われるのを見たと、血を流していた者達の『想い』
     皆が、笑っていられる世界が来たら…… と、願いを続ける者達の『想い』


……多くの、『想い』が詰められていた


「喰らええぇぇぇぇ! 魔王ぉぉぉぉ!!!」

その時

ヒュンッと、風を切る音すら聞かせない、最高の一撃を繰り出し

肉を裂く音が、耳を支配した
9 : ◆TO1jMGJ4SY [sage saga]:2011/11/22(火) 18:27:03.90 ID:HL9oGisl0

「はぁっ! はぁっ! はぁっ! はぁっ!!」


俺は、足りない空気を飲み込むかのように体内へ送り


「……勇、者…」


魔王は、まるで信じられない、と言った形相でこちらを見ている


しばらく、刻が止まったかのように世界は歩みをやめ


ボトッ、と


俺の左腕が、地面に落ちていった
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(中部地方) [sage]:2011/11/22(火) 18:59:12.73 ID:Pqx4xuVSo
ほう、珍しい形式のSSだな
面白い
11 : ◆TO1jMGJ4SY [sage saga]:2011/11/22(火) 19:24:36.94 ID:HL9oGisl0

「う、うわああぁぁぁ!!?!?」

熱い、痛い、熱い、痛い、アツイ、イタイ アツイイタイアツイイタイアツイ!!


「まさか、我が傷を負う、か……」


その言葉で、戦いの途中だと冷静を戻し
グッと相手を睨みつける


「ぐっ〜〜〜!!! ま、魔ぉ…ぅ…っ!!」


彼の顔には、濃い緑の液体が線を作って流れていた

俺の渾身の一撃は、ただ魔王の額から血を流させる事しか出来なかったようだ


「……まだ、その目を我に向けるのか… 出来損ないの勇者よ…」


奴は、そう呟き、顔を破顔させ、


「……ク ……クククッ! クハハハハハ !!!!」


城に響き渡るほど、声を出して笑っていた
12 : ◆TO1jMGJ4SY [sage saga]:2011/11/22(火) 19:39:22.22 ID:HL9oGisl0

「…………っ!?」

ワケが解らない
なぜ笑う? 俺と言うゴミを踏みつける事への快感か

いや、違う……
なぜか解らないが、違う気がする


「ククククッ…… ククッ… 決めた、決めたぞ……」


ゾクッ!!!

なんだコレは


恐怖を感じた? 殺気を当てられた?

違う、そんな言葉では表せない


先ほどまで唸り散らされていた痛みは 、 何も感じなくなり

危険を捕らえ、敵を追い続けていた俺の瞳は、 ただ震えるだけ

恐怖を振り払うため、動いていた腕と足は 、 固まったように動かない 


「……勇者、世界の半分を得る『権利』のみを、やろう」


俺は、ただ魔王の声を聞くことしか出来なかった
13 : ◆TO1jMGJ4SY [sage saga]:2011/11/22(火) 19:52:59.84 ID:HL9oGisl0

コツッ コツッ コツッ……

「勇者、我は貴様を…… 物と変わらぬと、思っていた」


足音が響き、魔王が徐々に、俺の瞳に大きく写ってゆく
それが解るのに、身体が動かない


「許せ、我の落ち度だ。 貴様は間違いなく 『人間』 だ」


今まで、勇気を示し続けていた身体が……っ!
想いを体現してきた俺が、動かない……っ!


「貴様は、『出来損ないの勇者』だが…… 『勇者』という物ではない…」


ほんの少し、右手が動けば……
笑ってくれる人が、涙を流さずに居る人が……っ!!


「我は、それが堪らなく、愉しい……」


その言葉の後、俺の瞳は、
  魔王の手のひらで埋め尽くされた
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(不明なsoftbank) [sage]:2011/11/22(火) 20:09:27.00 ID:hepnYOk/o
今の所そこそこ面白い
15 : ◆TO1jMGJ4SY [sage saga]:2011/11/22(火) 21:23:02.27 ID:HL9oGisl0

メキッ メキ メキ メキ メキッ!

「がっ…! がああぁぁぁあぁあぁっぁああ!!!?」


頭が割れるっ! 骨がっ! 目がっ! 壊れ…っ!?


「勇者よ…… 貴様に時間と、力をやろう…」


まるで燃えるように熱いッ! 目から液体が流れてく!!


「貴様がどの様な選択をしようと、我は許そう……」


さっきまで見えていた光がっ!! 魔王の命がっ!!


「我を楽しませよ…… 次に目覚めた時、貴様は…」


バチュッ

そう、音が聞こえた気がして

俺の意識は途絶えた
16 : ◆TO1jMGJ4SY [sage saga]:2011/11/22(火) 21:30:07.01 ID:HL9oGisl0
[薄暗い、場所]



………

………………

………………………ん


………ここは、どこだ?


「俺は…… 何をして……?」


………あ

そうだ、俺は魔王と戦って……


そして…… 腕を落とされて……


……魔王に、頭を掴まれて…


「……負けた…のか…?」


記憶はないが、おそらくそうなのだろう……

だが……


「なんで、俺は生きているんだ……?」
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/22(火) 21:36:39.33 ID:QNN2Y4eIO
ほう、面白い
18 : ◆TO1jMGJ4SY [sage saga]:2011/11/22(火) 21:41:11.44 ID:HL9oGisl0

頭が痛い、目眩がする……
死んでいない事は幸運だろうが、気分は最悪だ


「クソッ…… まぁいい、まずはこの頭痛をどうにかしなきゃ…」

にぶく痛みが続く頭を左手でおさえ、立ち上がろうと右手を地面に付ける
体中の至る所から、ギチギチと音が出てきそうだ


……左手?


「落とされた左手が…… 付いている…?」


どういうことだ?
ここは治療室でも、教会でもないのに腕が付いている?

いや、それどころか……


「……痛みが、ない?」
19 : ◆TO1jMGJ4SY [sage saga]:2011/11/22(火) 21:47:27.31 ID:HL9oGisl0

いや、痛みは完全にないということではない

だが切り傷など、外的要因からくる痛みがない……


「なんだよ…… 傷はないの…… か…… ぁ…?」


身体を触れ、また、目で見て傷がないか確認をした

……ただ、それだけだったはず


「……嘘…だろ…?」





俺の腕は、小麦色の毛が隙間なく生えていた
20 : ◆TO1jMGJ4SY [sage saga]:2011/11/22(火) 21:54:20.25 ID:HL9oGisl0

「なんだよこれ…! お、俺の、身体は……!?」


何処を触っても、肌の感覚がない

代わりに返ってくるのは毛の感覚
それも、毛髪のようなものではく、もっと軽い


「そんなっ……! これじゃ… まるで……っ!?」


……魔物


「嘘だっ! 嘘だあぁぁぁ!!」


地を手で殴り、足で蹴り、身体を飛び上がらせて

わずかに見える光へと飛び出した
21 : ◆TO1jMGJ4SY [sage saga]:2011/11/22(火) 22:05:15.23 ID:HL9oGisl0
[地上、何処かの草原]


地面を蹴り跳ね
       腕を振り回し
             息を切らせる


苦し…… くない…

疲れがこない

身体に、重みを感じない

何処までも走っていけそうな気すらする


「ハァッ ハァッ ふざけるな…… ふざけるなっ……!!」


どれも、感じた事のないモノ

少なくとも、魔王と戦う前はこんな事などなかった


「違うっ…! 違うっ!!」


・ ・ ・ ・ ・
水のにおい に気付いて、俺はそっちに足を向けた
22 : ◆TO1jMGJ4SY [sage saga]:2011/11/22(火) 22:12:19.19 ID:HL9oGisl0
[どこかの、泉のほとり]


「ハァッ ハァッ ハァッ……」


あまり切れていない息を整え
水のにおいを頼りに着いた泉へと、足を進める


「フゥー…… フゥー……」


目の前の水に乾ききった身体が騒ぎ出す
喉が騒ぎ出し、水を飲めと騒ぎ立てる


だが、今の俺はそれを無視して
唯一つ、自分の姿を確認することだけしか、頭になかった


「……フッ ……フッ ……ッ!」


どれだけ走っても、大して変わらなかった呼吸が荒くなる

そして、それは泉に近づくたびに、荒くなっていた
23 : ◆TO1jMGJ4SY [sage saga]:2011/11/22(火) 22:17:15.57 ID:HL9oGisl0

一歩、踏みしめる

水面が揺れているのが、よく解る


一歩、踏みしめる

魚が泳いでいるのが見えた


一歩、踏みしめる

水の底で、草のような物が水に合わせて揺れている



そして



……一歩踏みしめ、水面へと、顔を近づけた
24 : ◆TO1jMGJ4SY [sage saga]:2011/11/22(火) 22:25:00.11 ID:HL9oGisl0

「……は…はは…」


水にうつった顔は、髪があり、眉があり

目があり、耳があり、鼻があり、口があった


「はははっ…… ははははっ…!」


俺の顔は間違いなく、人の形をしていた



「ハハハハッ! ハハハハハハッ!!」


目の前の水は、歪んだ笑みを浮かべた
                    人型の魔物が写っていた


「なんだよコレッ! 俺はっ! 俺はっ!!」

俺は人の、人類の希望、勇者だった


でも、今水に映っているのは魔物……

人でないものが、人の希望になる事など出来るわけがない

つまり…… 俺は、勇者でなくなった


………


元勇者「終わったか……」


第0章 終わり
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/22(火) 22:36:38.05 ID:f660dqNgo
面白い
26 : ◆TO1jMGJ4SY [saga]:2011/11/22(火) 22:48:30.12 ID:HL9oGisl0


ポカポカ天気が田畑と、家と、みんなを照らす

少女「こんな日が、ずっと続くといいなぁ」

………




---------------------------------------------------------------------


『崩れる世界』

「魔物がっ! 魔物が攻めてきたぞー!!」


---------------------------------------------------------------------

        『失う者物』

子供「お、おねいちゃ…… 助け……」


---------------------------------------------------------------------

                『定まる覚悟』

少女「勇者がいないんだったら…… わ、私がっ! 勇者になるっ!!」


---------------------------------------------------------------------

                          『出会う「勇者」』


元勇者「……俺は、只の偽善者だ。 それ以上の存在じゃない」


---------------------------------------------------------------------


                    第一章

                 『勇者 と 希望』


次回も、厨二病全開! スレ主来たら即終了!! 投下予定日は後日通知!!!
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/22(火) 23:12:42.63 ID:2Kz0uFm3o
とりあえず半年ROMるとこから始めよう
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋) [sage]:2011/11/23(水) 00:00:49.48 ID:U08tANLv0
プロローグだから判断できないが、まだ続けてほしいと思う。
だから期待するよ!続きを
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/24(木) 15:08:07.21 ID:a/PdrX6Lo
>>1は1レスだけで消えたしもういいよ
>>5に期待
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(中部地方) [sage]:2011/11/24(木) 22:09:38.91 ID:E+FneNDno
っていうかむしろ>>1は来るな
31 : ◆TO1jMGJ4SY [sage]:2011/11/26(土) 01:54:10.84 ID:xc1wqWIM0
見てくれてありがとー
それと、とりあえず報告

『勇者 と 希望』 前編 12/4 投下予定
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/26(土) 03:24:44.26 ID:otgnjHRQ0
>12/4 投下予定 
なん…だと?せめて週に一回くらいのペースでできないか?
無理ならとやかく言わないが
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/26(土) 09:52:18.55 ID:U9gXnYEVo
せめてってお前なんなんだよ
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/26(土) 17:10:12.74 ID:Jaag2Lr5o
好きなペースで書いてな
でもエタるのダメ絶対
35 : ◆TO1jMGJ4SY [sage]:2011/12/04(日) 22:24:54.49 ID:bnExP2CR0
先に言おう、殆ど書き溜められてないと!!

まったりと失礼します
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/04(日) 22:51:03.29 ID:2cvikHmNo
報告してくれるだけでもおk
37 : ◆TO1jMGJ4SY [sage]:2011/12/04(日) 23:15:18.88 ID:bnExP2CR0


********************************************



目の前の景色は、紅に染まっていた


料理の為にしか使ったことのない 紅い炎は、今や家々を蹂躙し

村の人達で作ってきた農作業の道具は、ただただ黒い煙を撒き散らしてる


時折、家だった物が崩れると、ナニカ嫌な声が耳を叩いている気がするけど、間違いだと思いたい


ついさっきまで、夕食の香りに包まれていた村だった

でも今は肉の焼ける臭いと、焦げ臭さしかわからない


「ッッオエッ! ウッ…… ゲホッ! ゴホッ!」


胃液が喉の奥を叩いて、外へと飛び出て行く

それに合わせて、剣を構えた少女の口から

ビチャッ

と水が、音をたてて落ちていき、汚溜まりになってゆく
38 : ◆TO1jMGJ4SY [sage]:2011/12/04(日) 23:24:34.38 ID:bnExP2CR0



………

………………


「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ ……ッ…」


喉のドアがやっと閉まった

いったい、どれくらいの時間こうしていたんだろう


「ハァッ、ハァッ、だ、誰か、居ないの……」


周りを見まわしてみるけど

あるのは炎と、炭と、紅い痕


「だれか…… 誰か…っ!」


剣を杖代わりに付き、震える脚を引きずりながら精一杯の声を出す


一歩踏むたびに、鎧が ガチャンッ と音を鳴らし

首から垂れてる飾り物が、たまに チカッ と辺りの光を反射する

この村で、警備兵のシンボルマークとなってる兜は、何処かにいってしまった
39 : ◆TO1jMGJ4SY [saga]:2011/12/04(日) 23:33:10.00 ID:bnExP2CR0

「や、やだ…… 誰か、返事してよぉ…」


死にたくない、焼けて死にたくない、押しつぶされて死にたくない

でも、それ以上に、死んで欲しくない


そう呻くように「誰か」と呟いて、人を求めてまわりをみる


でも、近くに残っているのは黒焦げ人形と、真っ紅に輝く家ばかり

こんなの嘘だ、間違ってる


『何が』嘘なのか、『何が』間違ってるのかわからない

でも、とにかくそう思う これは嘘で、間違ってると……


「…た…す……て………ちゃ…」


ふと、耳に届いた声の方へ驚き、ゆっくり振り向くと


「……た…す……け…て……姉…ちゃ……」


近くの小屋の中に、血塗れの男の子がいた
40 : ◆TO1jMGJ4SY [sage saga]:2011/12/04(日) 23:40:16.34 ID:bnExP2CR0

「たす…… けて……」

いつも私を困らす悪戯っ子は、弱弱しく言葉を発していた

身体の半分は瓦礫に埋もれて、見える部分は至る所に傷を負っている

その子の元へ、足を無理矢理引きずってゆく


「……だい、じょうぶ… もう安心して、いいからね…」


精一杯の虚勢と笑顔を作ったつもり、でも掠れた声と疲労は隠せなかったみたいで

自分でも、驚くくらい変な声をしていた


「……姉…ちゃ…」


そういう悪戯っ子は、自分のしたことを後悔してるみたいな顔をしていた
41 : ◆TO1jMGJ4SY [sage saga]:2011/12/04(日) 23:48:34.91 ID:bnExP2CR0

「だいじょうぶっ…… 私は、すっごく強いんだから…」


そう言い、汚れた足で精一杯地面を突き、剣を捨てた片手を振って進んでいく

さっきの闘いで骨が折れたのか、わき腹が痛い

ミシミシ と音がするのは、私の体なのか、何処かの家なのかはわからない


「よいしょ…… と… だいじょ、ぶ?」


ポスッ と横に座り込み、彼の顔を覗き込む


「ね、ねいちゃ…ん……」


その時、 バキッ と音が聞こえた気がして上を向くと

天井と、屋根が降ってきているみたいで


私は 終わったなぁ とか思っていた


……そういえば、なんでこんなことになってるんだっけ

そう思い、目を閉じて、今までの事を思い出していた


………………………

………………

………
.
42 : ◆TO1jMGJ4SY [sage saga]:2011/12/04(日) 23:55:38.59 ID:bnExP2CR0


━━━━━━━━━━───────────━━━━━━━━━━

                    第一章


                       勇者
                       と
                        希望


━━━━━━━━━━───────────━━━━━━━━━━

.
43 : ◆TO1jMGJ4SY [sage saga]:2011/12/05(月) 00:00:29.84 ID:dMKi1xV50

[前日 朝]


強い日差しが目をつつく

まぶしさで少しだけ目を閉じるけど、自然と微笑んでた


「うーんっ! 今日も、とってもいい天気♪」


フッ と吹く風が顔を撫でていく

遠くの森にある木々は揺れ、そのたびにキラキラと輝いている


今日も晴天、雲ひとつなし

遠くで農作業をしている、村の皆がよく見える


「平和だなぁ〜♪」


グッと伸びをすると、背中や肩から心地良い反応がかえってくる

大きく、まだ少し冷たい空気を一杯に吸い込んで、吐くと

体の中にある悪いモノが外に出て行くように感じられた


「さて、村の警備役として、ちゃんと見回りをしてこなきゃ」


視線を遠くから戻し、村の方へと身体ごと振り返る

今はもう、飾りみたいになっている腰の剣が揺れ

チンッと一度、音を立てた
44 : ◆TO1jMGJ4SY [sage saga]:2011/12/05(月) 00:06:29.94 ID:dMKi1xV50

足を前に出す度に、鎧が ガチャンッ ガチャンッ と鳴り響く

あまり重たいものではないのだけど、整備不良のせいで

大きな音が出てしまうようだ


「う〜ん、やっぱりちゃんと整備しなきゃいけないよねー…… でも…」


そう呟く少女は、少し前の事を思い出す


流石に、十四歳にもなった自分なら

一人で鎧の整備くらい出来るだろうと意気込んでみた事

手を出すと完全に分解してしまい、鍛冶屋の人に直してもらった事、


そして、二度とこのような事をしないでくれと、泣いて頼まれた事


「……はぁ〜… でも今、鍛冶屋さんも忙しいみたいだしなぁ」


頭の中にある、思い出の世界から戻ってきて言う


その事件以後、そういった整備はすべて鍛冶屋のおじに頼むようになっていた

しかし、そのおじはついさっき見たとき、いろんな家の包丁が使えなくなったと愚痴て

一心不乱にトンカチを振っていた
45 : ◆TO1jMGJ4SY [sage saga]:2011/12/05(月) 00:11:52.41 ID:dMKi1xV50

すぐにでも整備をしてもらいたいところだけど


「……まぁ、後でもいっかな〜♪」


そんな時に一日以上、時間を取る作業を持っていくなんて

人でなしなマネはしたくない


何より、こんな平和なのだ

武器の整備なんてものより、みんなの晩御飯の方がよっぽど大事だろう


「ふ〜む、もし魔物があらわれたら、いっそのこと”正拳突き”でもやってみようかな〜」


自身の、出来やしない特技を夢想してみる

あらわれるモンスターたちを、ちぎっては投げ、ちぎっては投げ

バッタバッタとやっつける女の子


……どうやっても、可愛い女の子の姿が想像できない


「う〜ん、やっぱり武器があった方がいいなぁ……」


口に出してみて、変な事を言っているなぁと改めて気付く

そんな考えすべてを放り投げる様に頭を振り

馬鹿な妄想は終わりにして、また歩みを始めた
46 : ◆TO1jMGJ4SY [sage saga]:2011/12/05(月) 00:37:51.17 ID:dMKi1xV50

今日もいつも通り、平和な日々みたいだ


「おはようございまーす!」

「おはよう、警備さん。 今日も朝の見回りご苦労さん」


畑へと向かう、牛を連れた老父から挨拶され



「おっはよー!」

「よぉ! 餞別だ! 持ってきな!!」


この村に居付いてる商人から薬草を貰い



「おはようございます、神父さん!」

「お早う御座います。 良い天気ですね」


教会前で掃除をしている神父さんに挨拶をし……


「おっは…」

ぺろんっ


「……へ?」



「うわー…、やっぱ鎧の下にすっげぇ厚着してるよ…… めくり甲斐のね」 ゴスンッ!!


道端で、悪ガキにゲンコツを叩きこんだ
47 : ◆TO1jMGJ4SY [sage saga]:2011/12/05(月) 01:12:07.98 ID:dMKi1xV50

「痛っってぇぇぇぇ……っ!!」

よほど痛かったのか、その子はその場で頭を押さえ しゃがみ込んでいた

ちょっと本気で殴ってしまったので、少し心配ではあるが……


「痛い、じゃないでしょ…… その前に言う事があるんじゃないの…?」


でも、こっちはうら若くか弱い女の子なんだ

多少は多めに見ればいい、と自分を納得させて プンスカ怒る


「う、うるせぇよババア! フーンだっ!!」


そう言って、素早い動作で ふっと向こうの方へと走って行った

……ちょっと泣いてたみたいだけど、そんなに痛かったのだろうか


「はっはっはっ、あの子もこれでちっとはこりるじゃろうなぁ」


今までの一連を見てたらしいお婆ちゃんは、そう言って笑っていた


まぁ、自業自得ではあるのだろうけど……

うん、明日また会った時にでも謝っておこう
48 : ◆TO1jMGJ4SY [sage saga]:2011/12/05(月) 01:15:58.47 ID:dMKi1xV50

………

「よーし、何はともあれ朝の見回り終了っと♪」


軽く一伸びして、背中をコキコキッと鳴らす

まだ日は昇りきってないが、それでもポカポカと暖かい

昼寝が出来るのなら、絶好の日だろう


「ふむ…… 昨日は獲物も取れたんだし、今日はお昼寝してようかなぁ」


普段は隠れているサボり癖が少し頭を出してくる

実際、昨日は沢山の動物を獲る事が出来た


家の倉庫には収まらず、他の住民にお裾分けをしても

肉が有り余ってしまい、どうすれば食べきれるのだろうかと頭を悩ませているところだ


「う〜ん…… やっぱり、見回りってことにして向こうの丘に…」


「お、警備ちゃん! 長老が呼んでいたよ!!」


「う〜ん、長老さんのトコか…… あそこはお茶が…… 長老さん?」


遠くの方に住んでいる村人さんの一言で、私の午後は何をするかが決まってしまった
49 : ◆TO1jMGJ4SY [sage saga]:2011/12/05(月) 01:16:39.98 ID:dMKi1xV50

「うぅ〜…… なにかやっちゃったかなぁ…… はぁ…」


息を吐いても、重い気分は何処にも出て行かなくて

それが足にも伝わっているのか、一歩一歩が重かった


「この前、山の木を切り倒しちゃったのがバレちゃったのかなぁ…… それとも…」


村長さんは小言が多くて、どんなに気を付けてても怒られる

……うん、私が悪いわけじゃない。 ……たぶん


まぁ、それでも理不尽な理由でよく怒られている


「……でも逃げる訳にもいかないし、美味しいお茶が飲めるから、我慢 我慢……」


そう呟いていたら、もう村長さんの家に着いてしまった


「……逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ、我慢、我慢……」


そう言葉を繰り返して自分の心を強く持たせる

これからせまり来る試練に耐えられるように!


「……何を言っとるんじゃよ」


……相手は試練でもなければ障害でもなく、普通の人で


気付いたら後ろに居た村長さんが、凄い残念な顔をしていた
50 : ◆TO1jMGJ4SY [sage saga]:2011/12/05(月) 01:17:31.89 ID:dMKi1xV50

[村長家内]

コトッ とコップから音がたち

私の目の前から草原で横になってる時にする香りがする


「まぁ、これを飲んで聞いとくれ」


その言葉に甘えて、さっそく手を付けてみる

清々しい香りがフッとして、甘味だけを残して消えてゆく


「ふぅ、で、お話はなんなんですか?」


お茶の味を楽しみながら、意を決して聞いてみる


「あぁ…… 少しばかり悪い噂を聞いてのぉ」


悪い噂と聞いて、即座に自分の勤務態度の話かもと考える


いや、それとも狩り用の落とし穴に人がはまっちゃった事がばれたのか?
いやいや、もしかして昨日のお肉のお裾わけが村長さんの分だけちょっと少なかった事?
いやいやいや、それとも……


「……少し、見回る範囲を広げて欲しい」


「……へ? それだけですか?」


気を張っていたが、それが解いていく

少なくとも、怒られるって話ではなさそうだ
51 : ◆TO1jMGJ4SY [sage saga]:2011/12/05(月) 01:18:11.30 ID:dMKi1xV50

「それだけじゃと…… まぁいい…」

わざとらしく、盛大に溜息をついてくれる

今の対応のどこが悪かったのか、私には解らないけど


「は、はぁ…… で、少し見ている範囲をおっきくすればいいんですか?」

一応、確かめる為に聞きなおしてみる


「そうじゃよ、何か異常があったら即に引き返せ。 それだけじゃよ」

本当にそれだけみたいだ

何か変な話でも聞いたのだろうか……


「はい、わかりました」

別に少し面倒になるだけだし、問題はないので了承の返事を返す


「あぁ、頼んだぞ」


少しおかしいと思ったけど、気にせずに

それだけ話をして、お茶を飲み終わってから家を出ていった
52 : ◆TO1jMGJ4SY [sage saga]:2011/12/05(月) 01:19:46.30 ID:dMKi1xV50
前編1 終了! 前編2に続きます

読みにくいなんて声は聞こえない、俺は聞こえないぞっ!!
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東海・関東) [sage]:2011/12/05(月) 01:21:59.51 ID:LsRds3WAO


面白いし期待期待
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [sage]:2011/12/05(月) 17:13:21.91 ID:il6T8XHXo
とり検索してみろ
55 : ◆TO1jMGJ4SY [sage]:2011/12/06(火) 08:04:17.96 ID:b2jlNpLJ0
酉検索してみた
絶叫が聞こえた人は近くに俺がいるかもしれなあばばば
56 : ◆jjxXtPnCy. [sage]:2011/12/06(火) 08:17:29.36 ID:b2jlNpLJ0
とにかく変更してみる
黙々と続けるので、ふと見てくれればいいなぁ...
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]:2011/12/06(火) 17:01:25.20 ID:Zr/eXWWao
期待
トリップワロタ
58 : ◆jjxXtPnCy. [sage saga]:2011/12/27(火) 23:23:44.55 ID:p1PkoPqN0
スマヌ…… スマヌ……
とにかく生存報告で、来月中に投下を予定してます

詳しく決まったらまた報告します
59 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/27(火) 23:41:42.50 ID:Pj9GiyPho
待ってる
60 : ◆jjxXtPnCy. [saga]:2012/01/03(火) 23:25:23.62 ID:YaToY8Mu0
突然で申し訳ないが、少し失礼させてもらいますよ!
61 : ◆jjxXtPnCy. [sage saga]:2012/01/03(火) 23:26:54.76 ID:YaToY8Mu0

[前日 夜]


目の前で、パチパチッと音が鳴っている

辺りをほんのりと照らすたき火は、先ほどさばいた魔物の肉を焼いて

一緒に良い匂いも撒き散らしていた


「ぁぁ〜っ、疲れた〜」


伸びをしながら、バタッと後ろに倒れ込む

朝方とは違う 澄んだ草々の香りが頭に直接語ってくるようだ


今日は家には帰らず、少し村の外れで晩食の準備をしていた


「いやー、今日も一日頑張ったー」


今日も今日とて、お肉が取れた

昨日も沢山のお肉が取れたが、今日も負けず劣らずだ


「ふーむ、こんなに取れたらお店が開けちゃうかなー♪」


それなら、誰かと結婚して、その人と一緒に幸せな……


「……やめよう、虚しくなるだけだ…」
62 : ◆jjxXtPnCy. [sage saga]:2012/01/03(火) 23:28:37.77 ID:YaToY8Mu0

一つ息を吐いて、腰の剣を抜いてみる

目の前にかざしてみれば、月の光が反射していた


「……私も、普通に産まれてたら、かなぁ」


普通とは対称的なソレを手に持って、呟く

親に決められた人と結婚して、その人と過ごして、好きになって


そんな事を考えていると、目の前の 親の形見でもある剣は、少し寂しそうに輝いた

よく見れば刃こぼれの跡もあるし、何度も直した後もある

この剣には、家族の何もかもが詰まっているようにも思える


「父さんと、母さんかぁ……」


でも、私自身が両親の事を知らない

物心がついた時には、私は形見の剣を抱えていたこと

そしてこの村の皆と一緒に暮らしていた事しか憶えていない


「……まぁ、いっか。 何を言っても変わらないし」


そう言って、剣をしまう

なんで自分だけ違うのか、なんて疑問はずっと昔に終わった話だった
63 : ◆jjxXtPnCy. [sage saga]:2012/01/03(火) 23:29:36.59 ID:YaToY8Mu0

剣をしまった後に目へと写った夜空は綺麗で、一瞬心を奪われる

こういう景色を見る事が出来るのも、警備役の役得かもしれない


「……まぁ、名前だけの警備役だけどね」


両親もおらず、土地も持たず…… でも剣の才能だけはあったみたいで

私を不憫に思った村長さんが、私を警備兵という形で雇ってくれた

そのおかげで、私みたいなのも村人として生きていけている


「ほんと…… 感謝、しなきゃ……」


それでも、寂しいと思うのは、悪い事なのだろうか


パチンッ! と音が鳴り響き、我に返ると

たき火の火が勢いよく燃え上っていて、お肉が食べごろになっていた


「……よし、悩むの終わり。 いただきまーす」


今は頭の中を空っぽにして、食事に夢中になっていた
64 : ◆jjxXtPnCy. [sage saga]:2012/01/03(火) 23:30:27.52 ID:YaToY8Mu0

[ 当日 朝 ]



「……ん、んん〜〜っ!」


目に刺さるような光を感じて、意識が覚めてゆく

日差しが当たっていたようで、少し顔が熱い気がする


「……おはよ〜」


誰かへと向けた訳でもない言葉は、ただ空気に溶けて行くばかりで

まるで今の私の頭みたいにはっきりとしない


「いやぁ、やっぱり屋根のあるところで寝ると違うなぁ」


結局先日は、周辺を確認して家に帰って休むことにした

この辺りを見たところで異常らしい異常は無かったし

何も問題はないだろうという事で帰ってくる事にした


「ん〜…… でも、今日も範囲を広げて調べなきゃなー」


それでも、村長さんの言うことだし

何か変な感じもしたしと思って

もう少し積極的に調べてみようと決心を強めてみた
65 : ◆jjxXtPnCy. [sage saga]:2012/01/03(火) 23:31:06.10 ID:YaToY8Mu0

朝食を素早く取って、脱ぎ捨ててあった服と鎧を付け始める

少し胸がきつくなったかなぁ、なんてセリフを言ってみたいけど

今は成長停滞期らしく、一昨年から変わる兆しがない…… うん、これは一時的に止まってるだけ…


「よいしょっ、とぉー!」


鎧の具合を確かめるため、軽く飛び跳ねてみると

ガシャンッ、と大きな音が鳴る

そう言えば整備に出していなかったっけ


「……まぁ後で後で。 それより見回りっと」


誰も居ないのに、変な言い訳をして歩きだす

踏み出した時に、腰の剣からカツンッと寂しい音が鳴った
66 : ◆jjxXtPnCy. [sage saga]:2012/01/03(火) 23:31:38.38 ID:YaToY8Mu0

ガシャンッ、ガシャンと音を鳴らして道を歩く

やっぱり目立ってしまうようで、少し困る

整備に出してしまえばよかったとちょっと後悔してしまう


「……って、鍛冶屋さん忙しいんだったっけ」


昨日、なんで整備に出さなかったのかを思い出して

さっきまでの自分にツッコむ


「そう言えば、昨日かぁー」


そこで、イタズラ小僧を殴った事を思い出してしまう


「……うん、お仕事の方が大事だしね」


謝ろうと思っていたけど、ちょっと忙しくなりそうだし

後でキチンと謝ろうと決めて、外へと向かって行った
67 : ◆jjxXtPnCy. [sage saga]:2012/01/03(火) 23:32:16.31 ID:YaToY8Mu0

[ 草原 ]


一歩踏み込むと適度な反発が足に帰ってくる

でも今はその感触を楽しむ余裕もなく、走りまわっている

出来る限り五感を使って、何か変な事がないかを確認し続ける


「……ここも大丈夫そう。 次は…」


辺りの様子を見て、次の地点に行く

いつもの見回りと比べるとずっと真面目に、広い範囲を調べる

今のところは変なとこはないみたいだ


「……ハァ、ハァ…ッ……」


息が苦しい、今度から走り込みでもはじめて鍛えようかなぁ……


「……っはぁ! あー、もう疲れたー……」


脚が止まる、頭がふら付く、目の前がチカチカする

普段はどちらかと言えば息を潜めて狩りをしているので

こういった、常時動くようなこと得意じゃないのに
68 : ◆jjxXtPnCy. [sage saga]:2012/01/03(火) 23:32:57.07 ID:YaToY8Mu0

「ええと、村を中心にほとんどの場所を見回ったから……」


そう、まずは平地を中心に確認したがどこも異常らしいものは見当たらなかった

一応両目ともバッチリ遠くまで見えるから、何かあったら見逃してる事はないし

こうなると、何かありそうなのは向こうの森とか、かな?


「……ちょっと遠いんだけど、仕方ないなぁ」


少し溜息が出て来るが、無理矢理抑え込む

ちょっとサボりたいけど、流石に二日目でそれは駄目だろうし

村長さんの深刻な顔も気になるし、頑張ってみよう


「ふぅ、それじゃ行こうかな」


一息入れて、足を持ち上げると ガチャンッ と音が空に溶けていった
69 : ◆jjxXtPnCy. [sage saga]:2012/01/03(火) 23:37:09.40 ID:YaToY8Mu0

[ 当日 夜 ]


「はあぁぁ…… 今日も疲れたぁー……」


身体を引きずるように動かして家に向かう

整備不足の鎧の音も、剣の音も鈍い音になっている気がする


「まったく、張り切りすぎちゃったかなぁ」


そう言いつつ、変な満足感を得ていた

とにかく広い範囲を見てきたので、明日 明後日は

見てこなくても大丈夫だろうと思う


「それにしても、変な依頼だったなー」


ただ見回る範囲を広げて欲しい、とだけだったし

何か事件でもあったのかな、と思う


「まぁいっか。 とりあえず明日にでも村長さんから話を聞かせてもらって……」


その時、何かが チカッ と光った気がして……

町が燃え始めた


前編 終わり
70 : ◆jjxXtPnCy. [sage saga]:2012/01/03(火) 23:39:23.82 ID:YaToY8Mu0
失礼しました、更新は今月中を予定しており
この後は 中、後編と分ける予定です
それでは、今更ですが、新年明けましておめでとう御座います
71 :以下、あけまして [sage]:2012/01/04(水) 21:07:28.58 ID:kOOzs98To
おつー
待ってるよ
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