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【ほむら】「あれから10年か…」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) :2011/11/27(日) 22:50:57.77 ID:Wa/5bzz40
はじめまして、このような大型掲示板に投稿するのは初めてな者です。

最初に簡単な概要を

・魔法少女まどか・マギカSS
・原作最終話から10年後の話(if)
・タツほむ(冒頭or一部はほむらメイン。後はタツヤメインです)
・オリキャラ要素あり

以上です。

何分不慣れなもので、色々と不備があると思いますが、
その都度指摘していただけると有難いです。

では宜しくお願いします。
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ごめんなさい、このSS速報VIP板のスレッドは1000に到達したか、若しくは著しい過疎のため、お役を果たし過去ログ倉庫へご隠居されました。
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もし、探しているスレッドがパートスレッドの場合は次スレが建ってるかもしれないですよ。

旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713353246/

木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1713351945/

いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713279251/

【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713277692/

こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713183168/

【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713091115/

アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713089503/

エルヴィン「ボーナスを支給する!」 @ 2024/04/14(日) 11:41:07.59 ID:o/ZidldvO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713062467/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) :2011/11/27(日) 22:52:21.53 ID:Wa/5bzz40
―――夜も更け、誰も居なくなったビルの屋上で、私はあの日の事を思い出していた
ワルプルギスの夜を倒し、「あの子」がこの世界を作り変えたあの日を・・・

【ほむら】
「随分、長い間戦ってきたのね…」

【QB】
「そうかな?僕にはそれほど長く感じないんだけど?」

【ほむら】
「貴方達のような珍獣と私達人間じゃ、時間の感じ方が違うのよ」

【QB】
「相変わらず酷い言われようだね…。でも確かに、ほむらは魔法少女としては息が長い方だと思うよ」

【ほむら】
「10年経っても魔法『少女』なのよね…私」

―――おもえば・・・あの子の為に魔法少女になって・・・同じ時間を何回もやり直して・・・今はあの子が作り変えたこの世界で魔法少女として戦っている

【QB】
「そりゃそうさ。それにこの10年間、君の容姿は変わっていないし、身体能力だって衰えていない。何年経っても君は少女のままだよ」

【ほむら】
「…私も、もう人間じゃ無いわね」

―――そして、私の『時間』は・・・あの日から止まったまま・・・
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) :2011/11/27(日) 22:53:37.54 ID:Wa/5bzz40
【QB】
「生身の人間より今の方が絶対便利だと思うんだけどな〜」

【ほむら】
「貴方も相変わらずよね」

【QB】
「まぁね」キュップイ

【ほむら】
「…そろそろ行きましょう」スウ

―――呪いを生む前に消える宿命の『魔法少女』 

【QB】
「うん、今日も魔獣達があちこちから沸き出て来ているよ」トテトテ

【ほむら】
「ええ、そうみたいね」

―――私が何時消えてしまうのか分らないけれど

【ほむら】
「早く終わらせましょう」

【QB】
「頼りにしてるよ。『ベテラン』魔法少女・暁美ほむら」ペシペシ

【ほむら】
「・・・そうね、まずは貴方から葬ろうかしら?」チャキ

【QB】
「・・・それは止めてもらえると嬉しいかな」シュン

―――私がこの世界に存在するうちは、戦い続ける


それが、あの子との『約束』だから―――
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) :2011/11/27(日) 22:54:36.74 ID:Wa/5bzz40
―翌朝―



――・・・て――

【???】
「ん・・・うぅ・・・」

――・・・ぇ、起きて――

【???】
「ふぇ・・・?」

――朝だよ・・・起きて・・・――

【???】
「んにゅ・・・あと5分・・・」

――・・・駄目だよ、今日入学式でしょ・・・――

【???】
「まぁだ・・・大丈夫・・・ンニャンニャ」

――・・・起きなさい!!!――

【???】
「はぁう!!は・・・はい!!!



あ・・・あれ?」

(夢・・・?)

【???】
「・・・確かに誰かに呼ばれたような?」

(んー・・・誰も居ないよな?)

【???】
「・・・起きるか」モソモソ
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) :2011/11/27(日) 22:55:50.54 ID:Wa/5bzz40
――――――――――――


【知久】
「やあ、起きたかい?タツヤ」

【タツヤ】
「ん、おはよう父さん・・・。

ねえ父さん、俺を起こしに部屋に来たりした?」

【知久】
「・・・? いや、パパはタツヤの部屋には行ってないよ?」

【タツヤ】
「そう・・・」

(じゃあ、あの声は一体・・・?)

【タツヤ】
「・・・まどか?」
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) :2011/11/27(日) 22:58:36.57 ID:Wa/5bzz40
とりあえず今回はここまでです。

短くて申し訳ありません・・・

ペースはかなりゆっくりになると思いますが、ひっそりとコツコツ
頑張っていこうと思っています。では
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(静岡県) :2011/11/27(日) 23:03:47.25 ID:xNmiexnB0

タツほむか。期待大。
次回も期待してる
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/27(日) 23:21:04.62 ID:Knu9sLISO
おつおつ
続きが楽しみだ
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/28(月) 01:57:08.23 ID:LYh4+zvIO

期待
10 :1です :2011/11/29(火) 19:07:31.46 ID:XYRZUvjZ0
こんばんわです。コメント有り難う御座います。
期待に応えられるかどうか分りませんが何とか頑張っていきたいと
思います。

では続きを投稿します
11 :1です :2011/11/29(火) 19:09:39.55 ID:XYRZUvjZ0
まどか・・・

子供の頃から頭から離れない名前。
そんな名前の人、知らない筈なのに
どこか懐かしい響きがする。

父さんや母さんに聞いても「そんな名前の人は知らない」と言うばかり。
きっと『まどか』という人は俺が幼い頃に遊んだ子供
あるいは人形の名前とかだろう、と言うけれど

俺はそうは思えなかった。何故かは分らないけど・・・
いつも傍にいたような・・・そんな感じがする

それに、過去に一度だけ『まどか』の事を知っているような人に会ったこと
がある。

その頃の記憶が曖昧で、もう顔も思い出せないけど
その人の髪に結ばれた赤いリボンと、自分が書いた『まどか』を見せて

「そうだね、そっくりだよ」

と言われたことだけは何故か鮮明に覚えてる・・・。


【知久】
「あー、タツヤ。起きて早々悪いんだけど、ママを起こして来てくれるかな?」

【タツヤ】
「・・・母さん、まだ寝てんの?」

【知久】
「はは、そう言わずに頼むよ」

【タツヤ】
「いつもの事とは言え、しょうがないなぁ・・・」

(・・・まぁ何時までも夢のことを考えてたってしょうがないか)

とりあえず朝のことや『まどか』のことを考えるのはここまでにしとこう。
今は母さんを起こしに行かないと・・・
そうして、俺は母さんの寝室に向かった。
12 :1です :2011/11/29(火) 19:11:41.88 ID:XYRZUvjZ0
――――詢子の部屋――――

【タツヤ】
「おーい、起きろー。母さーん」

【詢子】
「んにゅ〜まららいじょおぶだお〜」

相変わらず朝弱いよなぁ・・・この人
あれ?でも俺も朝同じこと言ったような・・・ま、いっか

【タツヤ】
「大丈夫じゃないから起こしに来てるんだぞー」

時計を見たらもう7時過ぎだ。いい加減起きないとマズイ
とりあえずカーテンを開け、朝日を浴びせてみる

【詢子】
「んや〜まらねむぅい〜」

これでも起きないのか。前まではこれで起きてたんだけどなぁ
・・・・・・しかたない



【タツヤ】
「・・・起ぉぉぉきろぉぉぉぉ!!!クソババァァァァァァ!!!」バッ

【詢子】
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」ゴロゴロ ドスン!!

俺はシーツを引っ張り出し、母さんをベットから転げ落とした

【タツヤ】
「・・・おはよう」

ひっくり返った母さんにとりあえず朝の挨拶をする

【詢子】
「・・・タツヤ、あんた最近あたしの起こし方乱暴じゃない?」

【タツヤ】
「起きない母さんが悪い」

毎朝起こしに来るこっちの身にもなってくれ・・・

13 :1です :2011/11/29(火) 19:13:27.69 ID:XYRZUvjZ0
――――洗面所――――

【詢子】
「いやータツヤも今日から中学生かぁ」

起きた母さんは歯磨きを終え、洗面台の鏡で化粧をしている

【タツヤ】
「いいのかよ。息子の入学式なんかの為に会社休んだりして」

【詢子】
「何言ってんの!愛しい息子の晴れ舞台よ、会社なんかに行ってられ
るかってんだ!!!」

【タツヤ】
「おい社長!!!」

うちの母さんはこう見えて大手企業の敏腕女社長をやってる。
もともとキャリアウーマンだったらしいのだが「自分が社長になった
ほうが楽」という理由で会社を乗っ取ってしまったらしい・・・(一部
の人からは反対されたらしいが、毟ったらしい・・・なんだそれ)
そのおかげでうちは結構裕福なんだけど

【詢子】
「大丈夫よ。仕事は部下に頼んであるし、今月はそれほど
忙しい月じゃないわ」

【タツヤ】
「いいのかよ、それで・・・」

まぁでも母さんが社長になってから、会社が良くなった
らしいし・・・そこらへんは本当に『びんわん』なんだろうな
14 :1です :2011/11/29(火) 19:14:37.78 ID:XYRZUvjZ0
【タツヤ】
「っていうか、化粧濃くない?」

【詢子】
「これくらい普通よ」

いやいや、洗面台に何種類化粧品置いてんだよ

【タツヤ】
「そんな見栄張らなくても・・・」

【詢子】
「馬鹿ね、女は外見で舐められたら終わりなのよ」

【タツヤ】
「自分の年齢考えろよババa


【詢子】
「あ゛あ゛ぁ゛ん?」


イヤイヤ トテモ オキレイデスネ オカアサマ・・・」

鬼だ、今鬼を見た・・・

【詢子】
「ん、宜しい♪」

【タツヤ】
「・・・」ティヒヒ…

【知久】
「二人とも、そろそろご飯食べないと時間危ないよ〜」
15 :1です :2011/11/29(火) 19:17:33.39 ID:XYRZUvjZ0
―――リビング―――

【タツヤ】
「制服、少し大きくないか?」

俺が今着ているのは今日から通う見滝原中学の制服だ
一般的な学ランとは少し違ってボタンではなくチャック式
色も薄い黄色になってる(黄ばんでるとかいうな)
なかなか洒落た制服だと思うのだが・・・サイズが・・・

【詢子】
「男の子はすぐ大きくなるからそれ位で良いのよ」

【タツヤ】
「そうかもしれないけどさ・・・」

袖をふた折りしないと手が出てこないのはどうかと思う

【知久】
「はは、でも似合ってるよタツヤ

さ、朝食にしよう」

【タツヤ】
「うん、いただきまs

って多っ!!父さん、朝からこんなに沢山食べれないよ!!」

テーブルに並んだ料理の数は高級レストランのフルコース並みだった
とてもじゃないが3人で食べられる量じゃない

【知久】
「いやぁタツヤの中学入学祝いだと思って
パパはりきり過ぎちゃった」ニッコリ

【タツヤ】
「お祝いは夜で良いじゃんか!!!」

【知久】
「ごめんごめん。我慢できなくてつい」

そう言って父さんは何故か満面の笑みを浮かべた

【タツヤ】
「・・・」ウェヒヒ・・・

うちの父さんは所謂専業主夫って奴だ。
母さんが働いてる間、家で掃除、炊事、洗濯をこなしている
偶に近所のおばさん達から「草食系」だの「女々しい」だの「働けよニ○ト」
だの噂されてるけど、俺は家事が得意で優しい父さんが好きだ。母さんもそう
なんだと思う(噂してたおばさん達が、次の日ガタガタ震えながら俺達のこと
見てたし・・・何したんだよ母さん・・・)
16 :1です :2011/11/29(火) 19:20:19.03 ID:XYRZUvjZ0
【詢子】
「それよりタツヤ、あんた時間いいわけ?」

【タツヤ】
「ふぇ?だってまだ時間・・・」

リビングの時計を見たら、まだ7時ちょうどだし余裕だろ



・・・は?7時ちょうど?

【知久】
「あ、ごめんタツヤ。リビングの時計止まってるんだったよ」

【タツヤ】
「」

改めて自分の携帯で時刻を確認してみる
・・・・・・8時を過ぎていた

【タツヤ】
「ちぃぃぃぃぃこくだぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!」

【知久】
「いやーそういえば電池を入れ替えるの忘れてたよ」テヘッ

【タツヤ】
「でへっ、じゃないよ!?こんな料理作ってる暇あったら
 電池換えててよ!!!」

入学早々遅刻って洒落にならないぞ!!

【タツヤ】
「と・・・とにかく俺もう行かなきゃ!!」

【知久】
「えー料理食べていかないの?」

【タツヤ】
「いかないよ!!!」

何を言ってるんだこの人は

【詢子】
「ほら、行くなら早くいきな。間に合わないよ。
あたし達は後で行くから」

そう言って鞄を渡してくる母さん。
いや誰のせいだよ

【タツヤ】
「じゃあ行ってきます」

【詢子】
「和子に会ったら宜しく言っといて〜」

【タツヤ】
「ん、分かった」

【知久】
「タツヤ〜せめて一口だけでも・・・」

【タツヤ】
「いらん!!!!」

俺は父さんの訴えに振り向かずに答え、パンを一枚くわえて家を出た
走っていけばまだ間に合うだろう・・・・・・


【知久】
「うぅ、最近のタツヤは冷たいなぁ・・・」

【詢子】
「反抗期かしらね〜」
17 :1です :2011/11/29(火) 19:23:44.51 ID:XYRZUvjZ0
今回はここまでです。

家出るまで長かったかな・・・
ほむほむとタツヤが会うのはまだまだ先になりそう・・・
それまでお付き合いいただけると幸いです

ではノシ
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/29(火) 21:33:41.56 ID:8bXAT8Kio
タツほむとか需要ない...
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(静岡県) :2011/11/29(火) 21:35:08.06 ID:DHb5qoTR0
だが俺得
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(大阪府) [sage]:2011/11/29(火) 22:38:36.74 ID:RpVQP/U8o
乙 俺得
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]:2011/11/30(水) 00:27:16.62 ID:gcHXnUgZo

応援してるよー
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(大阪府) [sage]:2011/11/30(水) 16:37:25.55 ID:+LKzoUuoo

俺得だから続けろ下さい
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(空) [sage]:2011/11/30(水) 23:53:24.98 ID:FeB8l/Oho

期待
24 :1です :2011/12/01(木) 21:23:57.73 ID:JGFNO7Rf0
こんばんわです。コメント有難う御座います。

あんまり執筆作業がはかどらないので、画像を載せる練習がてら
このスレのイメージ画的なものを描いてみたので投稿しときます。
イメージ画といってもチラシの裏使って描いた落書きです(笑)

これからものんびり更新していきますので宜しくお願いします。
ではノシ

落書き→ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org2331180.jpg
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]:2011/12/02(金) 01:57:43.04 ID:htrl2H4Wo
その絵は黒歴史になるからやめたほうがいいぞww
26 :1です [saga sage]:2011/12/06(火) 18:06:43.04 ID:o87/a+2N0
こんばんわです。

>>25ご指摘ありがとうございますw
やっぱり下手糞な絵を晒すものではありませんねww
今後は自重します。

それでは続きを投稿します。
27 :1です [saga]:2011/12/06(火) 18:09:52.12 ID:o87/a+2N0
見滝原町―――

元々何の特徴も無い所だったのだが、俺が物心つく前に近代化が図られたらしく、

今ではすっかり都市と言われても遜色ない位の立派な町となっていた

町の電力はもっぱら風力発電や水力発電で賄っているし、

公園や歩道なども綺麗に整備されている

早朝はその美しい景観を求めてジョギングをする人やペットの散歩に来る人も多い


【タツヤ】
「ング、ゼェ・・・ゼェ・・・」


しかし、俺はそんな景色になんて目もくれずにひたすら走っていた

パンを咥えながら走るのは、我ながらベタだなぁと思う


【タツヤ】
「す・・・少し休憩するか・・・」


大体10分くらい走り、学校の近くにある公園まで辿り着くと公園のベンチで少し休むことにした

全力で走ってきたので正直もう息が続かない


【タツヤ】
「でも、なんとか遅れは取り戻せたかな・・・」


学校に近くという事もあり、公園の前を通る見滝原の生徒を何人か確認することが出来た

どうやら入学日に遅刻というのは避けることができそうだ
28 :1です [saga]:2011/12/06(火) 18:12:31.56 ID:o87/a+2N0
「あら、タツヤ君?」


ベンチに座ってぐったりしてると、後ろから声が聞こえた

俺はベンチに寄り掛かり、ひっくり返るようにして後ろを確認する


【タツヤ】
「・・・仁美さん?」

【仁美】
「クスッ ごきげんよう、タツヤ君」


志筑仁美さん 24歳 

近所に住んでいる年上のお姉さん

何かと俺の面倒を見てくれていて、子供の頃はよく遊んでもらったもんだ


【タツヤ】
「・・・おはようございまーす

仁美さんこんな所で何してるんですか?」

【仁美】
「早朝のお散歩ですわ」

【タツヤ】
「あー散歩ですか・・・」


仁美さんの言葉に俺が頭だけひっくり返ったまま答えていると


29 :1です [saga]:2011/12/06(火) 18:14:18.72 ID:o87/a+2N0

【仁美】
「あらあら、どうしたのタツヤ君?随分疲れてますわね」


そう言って、仁美さんは柔らかい笑顔で俺の顔を覗き込んできた

俺は思わず顔を背けるように前に向き直ってしまった

端正な顔立ちにすらりとした長い手足、ウェーブのかかった薄い緑色の髪の毛

・・・正直、仁美さんはかなりの美人だと思う


【タツヤ】
「あ、あはは。ちょっと色々ありまして・・・」

【仁美】
「こんな所でパンなんか持って・・・

ま、まさか!!『パンを咥えながら走っていたら曲がり角で女の子とぶつかって、

そこから二人の甘酸っぱい恋物語が始まる』なんていう事を期待して実践してみたら失敗したので落ち込んでいるという事ですの!?

いけませんわタツヤ君!!その話は都市伝説ですのよ!?」

【タツヤ】
「違いますよ!!!」


・・・変なところもあるけど

俺はとりあえず今にいたる経緯を仁美さんに話した
30 :1です [saga]:2011/12/06(火) 18:16:24.90 ID:o87/a+2N0






【仁美】
「あら、そうでしたの・・・私ったらてっきり・・・」

【タツヤ】
「いや、別にいいんですけどね・・・」


さっきより疲れたような気もするけど・・・


【仁美】
「ふふ、それにしてもタツヤ君ももう中学生なんですね。月日が経つのは早いですわ」


仁美さんは俺の制服姿を見ながら感慨深そうに話す


【タツヤ】
「はは、まだあんまりしっくりこないんですけど」

【仁美】
「そんなことありませんわ。とても似合ってますよ」

【タツヤ】
「あ、ありがとうございます・・・」

【仁美】
「そうですわ!今度うちでタツヤ君の中学校入学のお祝いパーティーをしましょう。

恭介さんももう直ぐ帰ってくることですし」

【タツヤ】
「恭介さん日本に帰ってくるんですか?」


恭介さんとは上条恭介さんのことで、仁美さんの・・・その、フィアンセってやつだ


31 :1です [saga]:2011/12/06(火) 18:19:30.38 ID:o87/a+2N0
【仁美】
「ええ、先日連絡がありましたの。スケジュールに空きができたから一旦日本に帰ってくるそうですわ」


恭介さんは音楽家の中では天才ヴァイオリニストといわれているらしく、

音楽関連の大学を卒業した後、世界のあちこちを飛び回っている

仁美さんとは学生時代から付き合っているらしい

大学生時代に婚約するって話になった時は、仁美さんのご両親にだいぶ反対されたらしいけど

(仁美さんは本物のお嬢様だったらしい)、恭介さんが世界で活躍し始めてからは、

掌を返したかのように婚約を後押しするようになった

・・・・大人って勝手だな


【タツヤ】
「いや、でも久しぶりに二人っきりになれるのんだし・・・俺が邪魔しちゃ悪いですよ。

お祝いパーティーならうちでもやりますし」


恭介さんと仁美さんは今一緒に住んでいて、仁美さんは自分の貯金を使って今は花屋をしている

その他にもお茶や造花の教室も開いてるらしい(仁美さん曰く、両親には頼りたくないそうだ)


【仁美】
「遠慮することはありませんわ。恭介さんもきっと喜ぶと思いますし」

【タツヤ】
「いやでも、仁美さんはいいんですか?恭介さんとイチャつきたいでしょ」

【仁美】
「えぇ!?そ、そそそそんなことは・・・!!!」


図星か


【仁美】
「・・・あぁ、確かに久々だし・・・手を繋いだり、肩を寄せて・・・キャッ、だ、駄目です恭介さん、

そんな事まだ私達には早いですわ・・・」

【タツヤ】
「おーい、帰ってこーい」


真っ赤になった顔を両手で押さえながら、体をクネクネさせる仁美さん

う〜ん、可愛いんだけど・・・どこか残念だ
32 :1です [saga]:2011/12/06(火) 18:21:33.98 ID:o87/a+2N0
【タツヤ】
「そ、そういえば仁美さん達も見滝原の卒業生なんですよね。

やっぱりその頃から付き合ってたりしてたんですか?」


【仁美】
「・・・!!!」


話を逸らそうと仁美さん達の中学時代のことを話題に出してみる

でも仁美さんはその話を出した瞬間―――――表情を強張らせたような気がした


33 :1です [saga]:2011/12/06(火) 18:23:20.25 ID:o87/a+2N0
【仁美】
「そ、そうですね・・・その頃から、ですわ。付き合い始めたのも・・・」

【タツヤ】
「・・・ひょっとして何かマズい事聞いちゃいました?」

【仁美】
「い、いえ、そんな事は・・・」


そう言って後ろを向く仁美さん、まるで俺に顔を見られたくないように

その時一瞬だけ見えた仁美さんの表情は


【仁美】
「ただ・・・その頃は、色々ありましたから・・・」


・・・どこか寂しそうな表情をしていた気がする


【タツヤ】
「仁美さん大丈夫ですk」


俺は仁美さんに声を掛けようとした

しかし




34 :1です [saga]:2011/12/06(火) 18:25:31.60 ID:o87/a+2N0
―――キーンコーンカーンコーン



【タツヤ】
「・・・・・・あ」


見滝原中学で始業のチャイムが鳴った

・・・そういえば学校に行く途中だったんだ


【仁美】
「ま、まぁ大変!!タツヤ君、チャイムが鳴ってますよ!!急がないと遅刻ですわ!!」

【タツヤ】
「え、で、でも・・・」

【仁美】
「でも、じゃありませんわ!!さぁ早く行きなさい」


そう言って俺の背中を押してくる仁美さん


【タツヤ】
「は、はい、分りました。それじゃ、行ってきます」

【仁美】
「はい、いってらっしゃい」ニコッ


いつの間にか仁美さんの表情はいつもの柔らかい笑顔に戻っていた

さっきの表情は・・・俺の思い過ごしだったのだろうか?

・・・とにかくこれ以上詮索しない方が良さそうだ



それよりもせっかく間に合ったと思ったのに・・・完全に遅刻だな・・・ハァ

俺は少し憂鬱になりながら、再び学校に向かって走り出すのであった




35 :1です [saga]:2011/12/06(火) 18:26:49.61 ID:o87/a+2N0

――――――――――――――――

【仁美】
「・・・行きましたか」


仁美はタツヤが走り去った後もその場に立ち尽くしていた


【仁美】
「・・・本当に月日が経つのは早いですわね」


そして、その場で空を見上げる


【仁美】
「もうあれから10年も経つんですね・・・」


先ほどタツヤに一瞬だけ見せた寂しそうな表情で


【仁美】
「私は・・・幸せになって良いんでしょうか・・・」


そのままの状態で、誰にも聞こえないような小さい声で呟く


【仁美】
「・・・・かさん・・・」


36 :1です [saga]:2011/12/06(火) 18:29:36.30 ID:o87/a+2N0
今回はここまでです。お疲れ様でした。

相変わらずほむほむが出てこない・・・


それではまたノシ
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(静岡県) :2011/12/06(火) 18:37:26.06 ID:AF+who260

ほむほむはもう少し先になりそうだね。
次回も楽しみにしてる!
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/12/06(火) 18:38:58.40 ID:2YRJTh4yo
乙彼様です!
やっぱ引きずるよね……
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/12/06(火) 20:03:08.11 ID:F/FBMrdwo
乙乙
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]:2011/12/07(水) 00:41:57.29 ID:kqKSOqijo
おっつー
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/07(水) 22:26:56.63 ID:ch6K52xSO
乙。続き期待してます。
42 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga]:2011/12/13(火) 17:35:01.24 ID:A1CVSX7J0
こんばんわです。いつもコメント有難う御座います。

まとめwikiを覗いてみたら自分のが載ってて少し感動してしまいましたw

それでは続き投稿します。
43 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/13(火) 17:36:50.39 ID:A1CVSX7J0
――――――――――――――


【タツヤ】
「(ま、間に合った・・・)」

あれから全力で走った俺は何とか見滝原中学に到着し、クラス分けを確認して教室に向かう途中で、

体育館に向かうクラスメイト達と合流した(担任の先生であろう人にはやんわりと怒られた)

その後、入学式も無事に始まり、今校長先生のありがたい(眠い)お話も終わったところだ


「それでは、続きまして1年生の学年主任である早乙女先生のご挨拶です」



【早乙女】
「え・・・皆さん、本日は我が見滝原中学に入学おめでとうございます」

【タツヤ】
「(あ、早乙女さん1年の学年主任だったのか・・・)」


早乙女和子さん 年齢非公開(と言ったところで母さんと同じなんだけど・・・)

昔からの母さんの友人で、この見滝原中学で教師をやっている
44 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/13(火) 17:38:47.87 ID:A1CVSX7J0








【早乙女】
「コホン ・・・学園生活を送るにあたって皆さんに伝えておかなければならないことがあります








45 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/13(火) 17:41:14.71 ID:A1CVSX7J0

                       目
                       玉
                       焼
                       き
                       に
                       付
                       け
                       る
                       調
                       味
                       料
                       な
                       ん
                       て
                       醤
                       油
                       で
                       も
                       ソ
                       |
                       ス
                       で
                       も
                       ど
                       っ
                       ち
                       で
                       も
                       い
                       い
                       ん
                       で
                       す
                       !!
                       !!                    」

46 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/13(火) 17:42:49.18 ID:A1CVSX7J0

ざわ・・・ざわざわ・・・ざわざわ・・・


<アノセンセイナニイッテンノ・・・ 

               エ?メダマヤキ?>
<ワケワカンネ・・・
             マヨネーズイッタクダロ>


【タツヤ】
「(あー・・・また駄目だったんだ・・・)」


早乙女和子さん ・・・・・・・・・・・・・・・・・・独身

只今彼氏募集中・・・・になったみたいです、はい・・・

でも、もう流石に婚期が・・・いや、これ以上はやめておこう
47 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/13(火) 17:44:08.73 ID:A1CVSX7J0

【早乙女】
「大体、目玉焼きなんかでギァーギャー喚くような男なんて駄目なんです!!

女子生徒の皆さんはそんな男とはお付き合いしないように!!男子生徒h」

【校長】
「・・・ゴホン、えー早乙女先生」

【早乙女】
「・・・はっ!! い、いやとにかくですね!!1年生の皆さんには規則正しい学園生活を送っt」


校長の咳払いでようやく早乙女さんの暴走は止まった

・・・というより醤油とソース両方置いとけば解決なんじゃ・・・まあ、いいか

その後は特に問題もなく、入学式は無事に終了した
48 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/13(火) 17:47:38.14 ID:A1CVSX7J0
――――――――――――――――――


【タツヤ】
「今日は色々と疲れたよ・・・」


入学式終了後、クラスで今後の事について簡単な説明を受け、新入生は下校となった


【タツヤ】
「何だかんだで、もう夕方になっちゃったな」


学校自体はお昼過ぎに終わったのだが、その後クラスが一緒になった友達と駄弁ったり

遊んだりしていたせいか、すっかり夕方になっていた

おまけに友達の買い物に付き合っていたため、いつもの帰り道とは全く違う道に来てしまっていた
49 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/13(火) 17:49:37.82 ID:A1CVSX7J0

【タツヤ】
「あ、此処って・・・・」


とりあえず家に向かって歩いていると、河川敷に作られた散歩道に辿り着いた

そういえば昔はよく此処に遊びに来たな


【タツヤ】
「懐かしいな・・・

よく此処で『まどか』の絵描いてたっけ・・・」


子供の頃は父さんと母さんに連れられて来る度に、此処の道端に『まどか』の落書きを描いていた


【タツヤ】
「え・・・と、そうそう、ちょうどこんな木の枝を使って・・・」


地面に目をやると、手頃な木の枝が転がっていた

その枝を眺めながら、子供の頃の事と同時に今朝の夢の事も思い出す

誰かに呼ばれたような夢――――結局誰だったのかはわからずじまいだけど

いつも傍で聞いていたような・・・・そんな懐かしい声―――――
50 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/13(火) 17:52:21.16 ID:A1CVSX7J0

【タツヤ】
「『まどか』・・・か・・・。久々に描いてみるか」


懐かしさに感化されたのか、あるいは今朝の夢のことがあったからなのか

俺はその木の枝を拾い、子供の頃のように『まどか』を描いてみることにした


【タツヤ】
「ん・・・と、確かこうやって・・・此処がこうなってて・・・」


小さい子供のようにしゃがみ込み、地面に落書きをする


【タツヤ】
「おー案外覚えてるもんだな」


だいぶ昔のことだから、ちゃんと描けるかどうかちょっと心配だったが

まるで昨日まで『まどか』に会っていたかのように、姿かたちを鮮明に覚えていた


【タツヤ】
「会ったことなんて・・・ない筈なんだけどな・・・」


なのに・・・この懐かしさはなんなんだろう―――

51 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/13(火) 17:54:26.55 ID:A1CVSX7J0











【タツヤ】
「よーし出来たー!!まどかだー!!」


俺は最後に落書きの隣に「まどか」と名前を書き込み、周りを気にすることなく声を上げた

髪の毛を二つのリボンで縛り、ドレスのような服を着ている俺の中の『まどか』

はは、改めてみると・・・こんなヒラヒラした服着た人なんて居ないよなぁ

でも―――――――やっぱりただの妄想だとは思えないんだよな


【タツヤ】
「・・・そっくり・・・ねぇ」


落書きを描き終えると、また少しだけ昔のことを思い出す

女の人にそっくりだと言われたあの日を・・・その人は、赤いリボンを付けてて・・・

そうだ、確か―――




52 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/13(火) 17:55:30.32 ID:A1CVSX7J0




【タツヤ】
「長くて・・・綺麗な黒髪――――」



53 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/13(火) 17:56:16.38 ID:A1CVSX7J0









――――ドサッ


54 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/13(火) 17:57:52.85 ID:A1CVSX7J0

自分が描いた『まどか』眺めながら、物思いに耽っていた時、後ろの方で物を落とす音が聞こえた


【タツヤ】
「え?」


俺は音に気付き、立ち上がって後ろを振り返る―――――




―――――――すると丘の上に一人の女の人が立っていた
55 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/13(火) 17:58:42.08 ID:A1CVSX7J0





「・・・・・・嘘・・・」






56 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/13(火) 17:59:19.49 ID:A1CVSX7J0


その人は――――長い黒髪が綺麗な・・・赤いリボンをした人だった

57 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/13(火) 18:02:08.73 ID:A1CVSX7J0
今回はここまでです。お疲れ様でした。

少し刻みすぎてしまった・・・

後、早乙女先生・・・ずれてます・・・

すいません


それではまたノシ
58 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/13(火) 19:10:15.68 ID:l3NudqbL0

ついにたっくんはほむらと再会したか。
次も期待してる。
59 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 21:57:05.91 ID:7QEsuwGAO
お疲れ様
60 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 22:10:44.29 ID:Rmbk6YXKo

続きが気になるな
61 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 21:18:18.74 ID:FPP+R+7so
おつおつ
62 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 23:27:09.19 ID:2mmm4tBSO
乙です。
63 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/26(月) 22:26:25.82 ID:upiDRO5AO
続きが気になるな
楽しみにしてます
64 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 22:28:01.70 ID:upiDRO5AO
ごめんなさい
sage忘れてました
65 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga ]:2011/12/27(火) 00:42:43.01 ID:Ih/o0Dgb0
夜遅くにこんばんわです。コメント有難うございます。

遅くなってしまいましたが、続きを投稿させていただきます。
66 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/27(火) 00:44:15.15 ID:Ih/o0Dgb0


その人は俺の顔と地面の絵を交互に見つめ、驚いたような表情をしていた

・・・やばい、怪しい人だと思われたのだろうか・・・

よく考えれば中学生が地面に落書きしてるなんてちょっと危ないからな・・・・


【タツヤ】
「あ、あははは・・・あの、こ、こんにちは〜」


気まずくなった俺は、そう言って描いた絵を自分の体で隠す

顔が引きつっている事に気付いてはいたが、今はとにかくどうにかしてこの場をやり過ごしたかった




「・・・・・・・」





俺の言葉に応えることなく、ただジッと此方を見つめくる

まるで自分の中を見透かされているようで、思わず視線を逸らしてしまった

うう・・・なんか気まずい上に緊張までしてきた・・・

67 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/27(火) 00:45:41.00 ID:Ih/o0Dgb0


「・・・・・だ、・・・・えて・・・・」


その人が何か呟いたような気がしたが、声が小さいせいで上手く聞き取れなかった


【タツヤ】
「あ、あの〜何か・・・?」


「・・・いえ、何でもないわ。ごめんなさい、困らせたみたいね」

【タツヤ】
「い、いや、そんな事は・・・」


俺が再度話しかけると、その人はようやく反応してくれた

さっきとは違って、表情は少し穏やかになった気がする

その表情はどこか神秘的な感じがして―――――思わず見とれてしまう程綺麗だった

容姿から見て俺より少し年上くらいだろうけど、どこか大人びた印象を受ける

仁美さんも美人だと思うけど、この人は・・・また違うタイプの美人というかなんというか

・・・・って、何をまじまじと人の事を見てるんだ俺は!?


68 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/27(火) 00:47:39.28 ID:Ih/o0Dgb0

「あなた、それ見滝原の制服よね。1年生?」

【タツヤ】
「は、はい・・・今日入学しました」


俺が軽く動揺していると、今度はその人のほうから声を掛けてきた


「そう・・・」

【タツヤ】
「あの、お姉さんも見滝原の?」


「・・・ええ、卒業生よ」

【タツヤ】
「あ、卒業生だったんですか。てっきり先輩なのかと・・・」


「・・・そう見える?」

【タツヤ】
「え?ま、まぁ・・・そう、ですね」


「・・・・・・」



俺の反応を見て、その人は少し顔を曇らせた

どうしたんだろう・・・若く見られたのが嫌だったんだろうか

69 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/27(火) 00:49:40.41 ID:Ih/o0Dgb0


「絵、上手いのね」

【タツヤ】
「うっ」


そう考えてると、その人は地面の落書きにふれてきた

俺は再び気まずくなってしまい、顔を赤くして変な声を出してしまった

しかも、その人は更に―――



「・・・ねえ、もう少しよく見せてもらえない?」

【タツヤ】
「ふぇ!?」




―――こんなお願いをしてきたのだ
70 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/27(火) 00:51:48.37 ID:Ih/o0Dgb0


【タツヤ】
「で、でも・・・」


「お願い」

【タツヤ】
「は、はぁ・・・別に、いいですよ」


俺は隠していた体をどけ、地面に描いた『まどか』を見せた

恥ずかしかったけど・・・どうしてか、そうしなきゃいけない気がしたんだ



「・・・」



俺が体をどけると、その人は丘から下り俺の隣まで来て絵を見始めた

うぅ、なんか傍にこんな美人な人がいると思うと・・・


【タツヤ】
「は、はは、何か恥ずかしいですね。中学生なのに地面に落書きなんて」


俺は恥ずかしさを隠そうと、愛想笑いをしながら呟く
71 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/27(火) 00:53:11.37 ID:Ih/o0Dgb0


「そんなことないわ」


しかし、その人は淡々とした口調でそう呟いた




「まどか・・・」




そして、地面に書いた文字を読み上げる



何故かは分らないけど――――何処か懐かしそうに、そして寂しそうに・・・


72 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/27(火) 00:55:06.33 ID:Ih/o0Dgb0

【タツヤ】
「この人、誰かは分らないんです」



【タツヤ】
「でも、小さい頃から知っていて、何故か凄く懐かしい気がして・・・」



【タツヤ】
「ずっと傍にいてくれていたような・・・そんな気がするんです」





気付けば俺はその人に『まどか』について話していた

いつもは他の人にその話をするなんて滅多に無い筈なのに

何故かその人には話してもいいかと思ったのだ




「そう・・・」




俺の話をその人はただ黙って聞いていてくれた

人によっては危ない発言に見えるような妄想に近い話を、一言一言しっかり聞き取れるように

俺の話に耳を傾けてくれていた


73 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/27(火) 00:56:28.10 ID:Ih/o0Dgb0








「きっといるわ」











74 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/27(火) 00:57:23.52 ID:Ih/o0Dgb0











【タツヤ】
「・・・え?」


75 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/27(火) 00:58:31.29 ID:Ih/o0Dgb0




「あなたがそう思うなら」





「思い続けてくれているのなら」







「・・・この子はきっと何処かにいると思うわ」


76 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/27(火) 01:00:06.11 ID:Ih/o0Dgb0


―――え、ちょ・・・この人・・・俺の、話を・・・信じて・・・



その人は俺に優しく微笑みかけてくる




凄く暖かくて、懐かしい笑みを―――――え・・・




この感覚・・・・覚えがある・・・・



そうだ、『まどか』について話したことといい、さっきからこの人には妙な親近感を感じていたんだ




―――――赤いリボンに、綺麗な黒髪




―――――赤い・・・・綺麗な・・・・・





―――――え、ま・・・まさか・・・

77 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/27(火) 01:01:40.03 ID:Ih/o0Dgb0


【タツヤ】
「そ、それってどう言う・・・」


「・・・・!!」


俺が詰め寄ろうとした時、その人は一瞬険しい表情をして誰もいない方向に振り向いた

どうしたのかと、俺もその方向に眼を向ける

しかし、その方向にはやはり誰も居なかった


【タツヤ】
「(あれ・・・?)」


俺たちの視線の先に人はいない――――

78 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/27(火) 01:02:48.21 ID:Ih/o0Dgb0








――――ただ、一匹の白い生き物がこちらを見つめているだけだった






79 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/27(火) 01:04:35.68 ID:Ih/o0Dgb0


【タツヤ】
「白い・・・・・猫?」


なんだ・・・あの猫みたいな生き物・・・あんなの見たことないぞ

外国の動物かなんかだろうか・・・?



「え・・・!?」


俺がその生き物に気が付くと、その人は驚いたようにこちらに向き直った


「あなた・・・・あれが見えるの・・・・?」

【タツヤ】
「へ・・・」


あれって、あの生き物のことだろうか?

見えるのって・・・・どういうことだ

80 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/27(火) 01:06:07.19 ID:Ih/o0Dgb0



「・・・ごめんなさい。私、もう行かなきゃいけないの」

【タツヤ】
「え!?ま、待って下さい!!あなたに聞きたいことが・・・!!」



俺が言い終わる前に、その人は傍から離れていってしまった

いつも間に移動したのか、その人は再び丘の上に立ってこちらに視線を向けていた





「ごめんなさい。でも―――」

81 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/27(火) 01:07:40.50 ID:Ih/o0Dgb0



「――――やっぱり、そっくりよ。その絵、『まどか』にね」ファサァ・・


【タツヤ】
「!? ま、まって・・・!!」ダッ


呼び止めよう丘の上に駆け上る――――――



だが、気付けばその人は居なくなっていた


辺りを見回しても既に人の気配はなく完全に見失ってしまった

あんな一瞬の内にどうやって―――


【タツヤ】
「いや、それよりも・・・」


あの人・・・・やっぱりあの時の―――――

82 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/27(火) 01:08:33.93 ID:Ih/o0Dgb0





『そうだね、そっくりだよ』



子供の頃・・・一度だけ会った・・・






83 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/27(火) 01:09:32.03 ID:Ih/o0Dgb0









――――ズキッ


84 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/27(火) 01:11:54.06 ID:Ih/o0Dgb0




【タツヤ】
「痛っ・・・!!」


なんだ、急に・・・頭が・・・、風邪でも引いたか・・・


【タツヤ】
「・・・ぅ。そういえば、名前・・・聞いてなかったな」


頭痛は直ぐに治まり、俺は再びあの人のことを思い出す

名前すらきけなかった・・・、また、会えるだろうか


【タツヤ】
「・・・帰るか」


色々考えることもあったが、日が暮れてきたこともあり

俺は帰路に着いた

85 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga ]:2011/12/27(火) 01:16:13.90 ID:Ih/o0Dgb0
今回はここまでです。お疲れ様でした。

只でさえスローペースなのに、今回は更に遅くなってしまい申し訳ありませんでした。

一応次回でプロローグ部分は終了になる予定です。

なんとか・・・年内には・・・!!

それではノシ
86 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/27(火) 01:29:13.03 ID:CCazku9no

ほむらの数年後とか胸熱

って胸は薄いままか
87 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/27(火) 03:55:22.00 ID:4APqoF8AO
>>86に手榴弾が投げ込まれる音)
88 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/27(火) 06:41:52.15 ID:v/+s89x90
マミさんや杏子はまだ存在しているのか?
89 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/27(火) 07:21:53.34 ID:IMpA9vWDO
存在してろ
いや存在させてあげてください
90 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sagesaga]:2011/12/27(火) 11:26:42.40 ID:K+3gk4oA0

まどマギの未来系は期待せざるを得ない
91 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/27(火) 12:22:47.43 ID:tyc6/DdH0
読むたびにタツヤの姿のイメージが士郎に似る。
「正義の味方」の所を引いた士郎みたいな感じ
92 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/27(火) 13:15:09.07 ID:SSwd9nrv0
見た目は中学生中身は24歳......なるほど...!!
93 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/27(火) 13:20:57.25 ID:wSAuLYBIO
さらにワルプルギスマラソンでループした回数を上乗せすれば……おや、向こうからタンクローリーがどんどんこっちへ近づい
94 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga ]:2011/12/31(土) 01:08:40.75 ID:erDHPG4C0
夜遅くにこんばんわです。いつもコメント有難うございます。

なんとか年内にプロローグ部分を書き終えることができました。

長くなったので2回に分けて投稿します。
95 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 01:11:25.55 ID:erDHPG4C0

―――――――――――――――――


【知久】
「それじゃあ、タツヤの中学入学を祝って、カンパーイ!!」

【絢子】
「カンパーイ!!!!!うおっしゃー!!!!今日は飲むぞー!!!」

【タツヤ】
「・・・・・・・」

【知久】
「どうしんだい、タツヤ。あんまり嬉しそうじゃないね?」

【タツヤ】
「・・・あ、いや。そんなことないよ父さん」

【知久】
「そう。学校から帰ってきてからずっと難しい顔をしているよ。

 ひょっとして学校で何かあったかい?」

【タツヤ】
「そんな事ないって。あ、ああ腹減ったー!!いただきまーす」


96 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 01:12:40.42 ID:erDHPG4C0

あの後家に帰ってきてからも、俺の頭の中は夕方の河川敷での出来事で一杯になっていた

あの人が――――子供の頃に出会った、あの人なんじゃないかって




『やっぱり、そっくりよ』





・・・うん、あの言葉から考えてほぼ間違いないだろう

間違いない筈なんだけど・・・・


97 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 01:15:26.07 ID:erDHPG4C0

【タツヤ】
「・・・いくらなんでも若過ぎないか?」


そう、あの人が昔会った人だと断定しきれてない理由は・・・あの容姿だ

その人と会ったのはもう10年くらい前の話なのだ

俺も今年で13歳になる。必然的にその人もそれ相応の年のとり方をする筈だ

しかし、あの人の外見はどう見たって俺より一つか二つしか違わない

世の中には年をとっても外見が変わらない人がいるって聞くけど・・・

あれはいくらなんでも・・・・



・・・隣に居たと思ったら、気付かない内にいなくなってるし

まさか、幽霊だったりして・・・

98 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 01:17:37.30 ID:erDHPG4C0

【タツヤ】
「はは、んな馬鹿な」


とにかく、また今度あの河川敷に行ってみよう

グダグダ考えてるより、もう一度あの人に会って直接聞いたほうが早い



【タツヤ】
「『まどか』のことも聞いてみないとな・・・」



そうだ、あの人は『まどか』について絶対何か知ってる

長年俺の中で存在し続けてきた『まどか』、その正体が分るかもしれないんだ


【タツヤ】
「さて、考えててもなんだし、そろそろ料理をいただくとしますか」イタダキマス


【絢子】
「なぁに、ひどりでぶづぶづ言っでんのよぉ〜」ガバッ

【タツヤ】
「うおわ!?」
99 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 01:19:48.44 ID:erDHPG4C0

料理に手を付けようとした瞬間、後ろから“ビール瓶を持った”母さんが覆い被さってきた


【絢子】
「きょおぉはあんらのためのぱ〜りぃなのよ〜

 もっろたのしみならいよぉ〜」ウェヒヒヒ

【タツヤ】
「うわっ酒くせっ!!飲み過ぎだろ!!」



母さんは酒癖が悪く、酔っ払うと直ぐ近くの人に絡んでくる

会社の飲み会で大暴れしたって話を聞いたのも一回や二回じゃない



【絢子】
「こんらのまらまら序の口よぉ〜、ほら〜あんらものみなさい〜」グイッ


そう言って、持ってるビール(瓶丸ごと)を差し出してくる母さん


100 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 01:21:49.08 ID:erDHPG4C0

【タツヤ】
「飲むか!!俺はまだ未成年だ!!」

【絢子】
「らいじょうぶらいじょうぶ〜ばれなきゃいいのよぉ〜」ギャハハ

【タツヤ】
「何言ってんだあんた!?」


自分の息子に法を犯せと言うのか!?


【絢子】
「あによ〜あらしの酒がのめないっていうのかバカヤロー」

【タツヤ】
「うぅ・・・と、父さーん」

【知久】
「あ、あはは・・・頑張れ〜タツヤ」


そう言って俺の救援要請をやんわりと断る父さん

助けるどころか、巻き添えを食らわないようにと俺達から離れていく始末だ

101 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 01:23:45.29 ID:erDHPG4C0

【絢子】
「ング・・・ぷはっ、たくよ〜どいつもこいつも〜
 
 もっとテキパキじごとしろっつんだよ〜」ヒック


絡んできたと思ったら、今度は持っていたビール(瓶丸ごと)を自分で飲み干し

俺とは全く関係ない会社での愚痴を言い始めた

はぁ・・・こうなると長いんだよな〜


【絢子】
「うおい、なかざわ〜。でめ〜いつまでおなぢちゅういされればぎがすむんだおら〜

 いづまでもじんじんじゃねぇんだぞ〜」グイグイ

【タツヤ】
「ええい、離せババア!! そして俺はなかざわじゃねぇ!!」


はぁ、駄目だこりゃ・・・まともに食事すらできやしない・・・


【タツヤ】
「(ていうか、確か俺の入学祝いだよな・・・)」

【絢子】
「おおう、なかざわ〜はやくつぎのさけもってこい〜」

【タツヤ】
「もう、なんでもいいや・・・」


その後も俺の中学校入学祝いのパーティーの時間は

酔っ払いの介護に費やされるのであった

102 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 01:26:13.21 ID:erDHPG4C0

――――――――――――――――――

【絢子】
「飲みすぎた・・・」オェ

【タツヤ】
「自業自得だ」



あの後、母さんはハシャぎまくった挙句にソファで居眠りをしてしまった

パーティーがひと段落ついた頃に起きたのだが

酔いが覚めたらしく、テンションが駄々下がりして顔を真っ青にしていた

完全に二日酔いだ・・・まだ日付変わってないけど


103 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 01:27:46.34 ID:erDHPG4C0

【絢子】
「み、水・・・・」

【タツヤ】
「・・・たく、ほら」


俺はコップに水道水を注ぎ、母さんに渡す


【絢子】
「悪いね・・・」ング

【タツヤ】
「・・・なんかすげー疲れた」ハァ

【知久】
「はは、お疲れ様タツヤ」


残飯の後始末をしていた父さんが声を掛けてくる


【タツヤ】
「全くだ。誰かさんが俺に全部押し付けたが為にこんなことに」

【知久】
「は、はは・・・まぁそう言わないでよ

 ママもきっとタツヤとお話したかったんだろうし」


そう言って苦笑いを浮かべる父さん

いや、前半はともかく後半は完全になかざわさんと勘違いされてたから

104 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 01:29:30.84 ID:erDHPG4C0

【絢子】
「うぅ、駄目だ・・・気持ち悪い・・・」


水を飲み終わった後もソファーでぐったりしている母さん

おいおい、大丈夫か・・・


【知久】
「大丈夫、ママ?二日酔いの薬飲んでおく?」

【絢子】
「おぇ・・・うん、その方がいいかも・・・」ウップ


流石にやばいと感じたのか、滅多なことでは薬に頼らない母さんが薬を求めた

確かに明日は平日だし、会社に行かなきゃいけないだろうからな・・・

105 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 01:33:46.75 ID:erDHPG4C0

【知久】
「あれ?まいったな・・・薬切らしちゃってるよ・・・

 タツヤ、悪いんだけどちょっと買ってきてくれないかな?」

【タツヤ】
「えぇ〜」


想定外の仕事を頼まれ、面倒くさそうな声をだしてしまう俺

まだ仕事あるのかよ・・・もう完全に俺の入学祝いになってないじゃん・・・

もう、しょうがないな・・・


【タツヤ】
「わかったよ。じゃあちょっと近くのドラッグストアまで行ってくる」

【絢子】
「何だか悪いね・・・タツヤ」

【タツヤ】
「いいから、母さんは俺が戻ってくるまで大人しく寝てなさい」

【絢子】
「おぅ・・・了解・・・」オエ


余程体調が悪いのか、返事をしてソファーに寝そべる母さん

俺は父さんからお金を受け取り、上着を羽織って出かける準備を整える


【タツヤ】
「じゃあ、行ってくるから。母さんを見ててよ」

【知久】
「分かった。タツヤも気をつけるんだよ」

【タツヤ】
「はぁ〜い」


そして、俺は玄関を開けて外に出た

106 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 01:35:33.88 ID:erDHPG4C0

―――――――――――――――


「ありがとうございましたー」

【タツヤ】
「全く、世話の掛かる・・・」




15分程歩いた先にあるドラッグストアで薬を購入し、お店から出る

107 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 01:36:48.89 ID:erDHPG4C0

【タツヤ】
「ふぅ〜、4月になったとはいえ、まだまだ寒いな・・・」


再び外に出ると、冷たい風が顔に当たる

入学シーズンのこの季節も、夜の気温は上着を着ていてもまだ肌寒く感じるレベルだ

本格的に暖かくなるのはもう少し先になるだろう


【タツヤ】
「早く帰ろ」


今日は本当に色々なことがあったから、正直もう眠い

帰ったらあったかい風呂で体を温めて、さっさと寝てしまおう

俺はそう思って、白い息を吐きながら足早に帰り道を戻っていた



【タツヤ】
「って、あれ?」

108 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 01:38:19.47 ID:erDHPG4C0

しかし店から出て10分程歩くと、目の前の住宅街で奇妙な現象が起きていた



【タツヤ】
「・・・霧?」


そう、帰り道の先に妙な霧が発生していたのだ

濃い霧なのか目を細めてみても、中の様子を確認することができない

周りを確認してみると、霧は周辺の住宅街を全て覆いつくしているようであった


【タツヤ】
「来るときはこんな霧出てなかったぞ・・・?」



寒いせいだろうか・・・でも、霧が発生するくらい気温が低いとも思えないし・・・

109 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 01:39:09.53 ID:erDHPG4C0










――――――――――ズキッ











110 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 01:40:31.33 ID:erDHPG4C0

【タツヤ】
「痛っ!!」


霧の前で立ち止まっていると、夕方感じたような頭痛が再び俺を襲った

やばい、こりゃ本格的に風邪かも・・・とにかく早く帰ろう


【タツヤ】
「まぁ、家までは一本道だしこの中を突っ切れば大丈夫だろ」




そうして、俺は家に帰るために霧の中に入ろうとした
111 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 01:41:35.08 ID:erDHPG4C0








――・・・め――






112 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 01:42:28.20 ID:erDHPG4C0








【タツヤ】
「ふぇ?」









113 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 01:43:17.36 ID:erDHPG4C0








――それに近づいちゃダメ!!!!!――








114 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 01:47:15.31 ID:erDHPG4C0


【タツヤ】
「え、今声が聞」



ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオohohohohohohohohohhohohohohohoho!!!!!!!!!


【タツヤ】
「え!?うわあ!?」


声が聞こえたように感じた瞬間――――――――霧の中から突風が吹き荒れた


俺は訳もわからず、ただただ両腕で顔面を抑えるので精一杯だった―――


115 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga]:2011/12/31(土) 01:51:26.99 ID:erDHPG4C0

とりあえず前半はここまでです。お疲れ様でした。

急ピッチで書き上げたので、表現など所々可笑しいかもしれませんが
、どうかご了承下さい。

後半は明日(今日)の夕方頃投稿します。後、後半は少しグロテスクな描写になるかもしれません。

それではノシ
116 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/31(土) 02:03:41.62 ID:wULg2Ey/o
117 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2011/12/31(土) 05:28:32.24 ID:I3RpKXT3o
おつおつ
118 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/31(土) 06:54:47.34 ID:NsKOK7Gh0
あいかわらず、士郎声で再生される
119 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2011/12/31(土) 07:54:53.88 ID:wSnVZPlDO
ぱ〜りぃ〜☆

中沢君は恵まれないなぁーww

おつ乙!
120 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga]:2011/12/31(土) 16:24:38.32 ID:erDHPG4C0
大晦日にどうもです。

では後半を投稿します。
121 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 16:26:32.40 ID:erDHPG4C0
――――――――――――――


【タツヤ】
「・・・ん、んぅう・・・な、なんだったんだあれ・・・?」


突然吹かれた突風によって、俺は尻餅をついていた


【タツヤ】
「あれ?此処は・・・」


とりあえず立ち上がり、周りの状況を確認してみる


【タツヤ】
「霧が・・・」


辺りを見回してみると周辺はさっきの霧に覆われていた

変だな・・・まだ霧の中には入っていなかった筈なのに

それにさっきの突風、まるで――――――俺自身が霧に呑み込まれたみたいだ
122 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 16:27:36.16 ID:erDHPG4C0

【タツヤ】
「・・・・にしても何だ、この霧・・・・う、気持ち悪い・・・」


なんなんだこの霧の中・・・・周りは全く見えないし、なんか・・・瘴気というかなんていうか

とにかく不気味な雰囲気を醸し出していた





そう言えば・・・・さっきの声



【タツヤ】
「この霧に近づくなって――――」


123 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 16:29:06.50 ID:erDHPG4C0










ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛










124 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 16:31:16.30 ID:erDHPG4C0

【タツヤ】
「・・・!?な、なんだ!?」


い、今の不気味な呻き声みたいなものは・・・!?

やっぱり、この霧なんかおかしいぞ!?





「ウ゛ウ゛ウ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァァァァァァァァァァ!!!!!」





【タツヤ】
「なっ・・・・・!!!」


俺は声を失った




目の前に――――――――この世のものとは思えない化け物が現れたことによって





【タツヤ】
「う・・・嘘・・・だろ・・・なんだよ・・・こいつ・・・」


ひ、人の形をした・・・でかい・・・ば、化け物・・・・


125 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 16:36:19.04 ID:erDHPG4C0



工工工エエエエエエェェェェェェェェェェェェエエエエエエ工工工、工工工エエエエエエェェェェェェェェェェェェエエエエエエ工工工・・・・

(イツカキミガ、ヒトミニトモス。アイノヒカリガ―トキヲコエテ・・・)


「ア゛ー・・・ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!」


グオォン!!  ドゴッ!!!!


【タツヤ】
「いっ!?う、うわあ!?」ザー・・・ドサッ!!


次の瞬間、化け物の中から触手みたいなものが飛び出し、襲い掛かってきた

とっさの判断で横に跳んだ俺は辛うじて避けることができたが

衝撃で吹き飛ばされてしまった

126 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 16:39:13.86 ID:erDHPG4C0


【タツヤ】
「いたた・・・、どうなってんだよ・・・」


触手は地面に突き刺さり、道路のコンクリートを粉々に砕いていた

あんなのをまともに喰らっていたらと思うと・・・


【タツヤ】
「・・・・って今、明らかに俺を狙って――――」




「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!」


ビュン!!!


【タツヤ】
「わぁっ!!」ザッ!!




再び触手が襲い掛かってくる

間違いない・・・こいつ、俺を狙ってやがる



【タツヤ】
「は、はは・・・冗談きついぜ・・・」




悪い夢でも見てるんじゃ・・・
127 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 16:40:18.42 ID:erDHPG4C0










――――――――――ズキッ!!










128 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 16:41:08.05 ID:erDHPG4C0



しかし、まるで夢ではないと宣告するように

俺の頭を再び頭痛が襲った
129 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 16:44:15.42 ID:erDHPG4C0


【タツヤ】
「っ痛・・・!!な・・・また・・・!!こんな時に・・・クソッ」




――――――――ズキッ――――――ズキッ―――――ズキッ




なんだ・・・頭痛が・・・・どんどん酷く・・・なって




【タツヤ】
「が・・・あ・・・!!!あ、頭が・・・割れそうだ・・・!!」




くそっ・・・なんなんだよ本当に・・・!!

まるで、この化け物に反応してるみたいじ―――――――

130 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 16:45:47.20 ID:erDHPG4C0


「ウ゛ッァァァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!」




ビュウゥゥウン!!!





【タツヤ】
「・・・!!し、しまっ」




ドゴッ!!!!ガン!!!




【タツヤ】
「が・・・・・は・・・・・っ」ゴファッ!!!





べチャ・・・


131 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 16:47:17.06 ID:erDHPG4C0





頭痛に気を取られていた俺は、化け物の攻撃をまともに受けてしまった

そのまま壁に叩き付けられ―――――――そして、俺は大量の血を吐いた




132 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 16:49:21.93 ID:erDHPG4C0


【タツヤ】
「あ・・・・が・・・・ぁ・・・」


気の遠くなるような痛みが全身を襲う――――――体の中の骨という骨全てが砕かれたような感覚がした


【タツヤ】
「ごふっごふっ!!!・・・・はぁ・・・・はぁ・・・」ベチャ


そして、再び吐血する


本当に骨が折れているらしく、俺は指一本すら動かせずにいた



「ア゛ア゛ア゛・・・・ア゛ア゛・・・・」


化け物が俺に近づいてくる――――――どうやらとどめを刺すつもりらしい

くそ・・・体が動かない・・・・意識も・・・・遠のいて
133 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 16:50:40.61 ID:erDHPG4C0





・・・・俺・・・・死ぬのかな・・・・・

こんな訳分んない化け物に・・・・・殺されるのか・・・・・





134 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 16:52:14.31 ID:erDHPG4C0










――――ピシ・・・――――










135 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 16:53:54.01 ID:erDHPG4C0



【タツヤ】
「――――嫌だ・・・・・」






―――――ピシ・・・ピシ、ピシ――――






まだ、死にたくない――――――



136 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 16:55:11.10 ID:erDHPG4C0











―――――ビキッ!!!――――










137 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 16:56:28.53 ID:erDHPG4C0




【タツヤ】
「いやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!!!!!!!!!!!」






バァァァァバアアアアアアアアアアアアアアバァァァァアアアアアアアアアアア





「ア゛・・・?ア゛ア゛、ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!」





バシュゥゥゥゥゥゥン・・・・


138 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 17:01:53.71 ID:erDHPG4C0

―――――――――――――――――




【タツヤ】
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・あ・・・・れ・・・?」




化け物が・・・・消えた・・・?




必死の思いで顔を上にあげてみると―――化け物が消えていた




【タツヤ】
「ハァ・・・ハァ・・・助かっ――――」


139 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 17:03:43.07 ID:erDHPG4C0


「ア゛ア゛・・・ア゛ア゛ア゛・・・」

「ア゛ア゛「ア゛ア゛・・・ア゛ア゛ア゛・・・」・・・ア゛ア゛ア゛・・・」「ア゛「ア゛ア゛・・・ア゛ア゛ア゛・・・」ア゛」




しかし、目の前の化け物が消えたと思ったら―――――後方から同じ化け物が何体も出現した




【タツヤ】
「ハァ・・・ま、まじかよ・・・・」


さっきのと同じ化け物が・・・・こんなに沢山・・・・


は、ははは・・・もう、駄目だ―――――


頼む・・・・いるなら・・・助けてくれ・・・・


【タツヤ】
「・・・・・神、様」ボソ

140 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 17:05:02.11 ID:erDHPG4C0










――――――――――――――――ビュン、グサ









141 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 17:06:16.82 ID:erDHPG4C0



「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァァァァァ!!!!!!」バシュゥゥン・・・・


【タツヤ】
「・・・え?」


こ、今度はなんだ・・・


化け物の中の一匹が・・・消えていく・・・?
142 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 17:07:32.60 ID:erDHPG4C0










「消えなさい」









143 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 17:09:18.43 ID:erDHPG4C0

ビュン、ビュン、ビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュン



「ア゛ア゛ァァァァァ!!!!!!」「ア゛ア゛゛ア゛ァ!!!!!!」「ア゛ア゛ア゛ア゛ァァァァァ!!!!!!」




化け物達が次々と消えていく――――――

そして、俺の方に人らしきものが近づいてきた・・・・




【タツヤ】
「・・ハァ・・ハァ・・・だ、誰・・・・?」




意識が薄れていくなか、その存在を確かめる―――――




「・・・・・・」





【タツヤ】
「・・・え、あな、た・・・・夕・・・方・・・・の・・・」


俺の前に現れたのは――――――――夕方会ったあの女の人だった
144 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 17:10:52.90 ID:erDHPG4C0




夕方会った時とは違う服装で――――――






―――――――背中に黒い羽を生やして






その人は俺の目の前に立っていた――――――







―――――そして俺の意識は、そこで堕ちた――――――
145 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 17:13:57.06 ID:erDHPG4C0

―――――――――――――――――




「大丈夫」





「あなたは、私が守る」





「絶対、守るから」





「今度こそ・・・・必ず・・・・」








―――――――――――――――――

146 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2011/12/31(土) 17:23:09.45 ID:erDHPG4C0


‐‐‐‐‐‐交わした約束忘れないよ‐‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐‐目を閉じ確かめる‐‐‐‐‐‐

‐‐‐‐押し寄せた闇 振り払って進むよ‐‐‐‐


‐‐‐‐‐‐振り返れば仲間がいて‐‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐気がつけば優しく包まれてた‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐‐何もかもが歪んだ世界で‐‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐唯一信じれるここが救いだった‐‐‐‐‐



‐‐‐‐‐喜びも悲しみもわけあえば強まる想い‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐‐‐この声が届くのなら‐‐‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐きっと奇跡はおこせるだろう‐‐‐‐‐



‐‐‐‐‐交わした約束忘れないよ‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐‐目を閉じ確かめる‐‐‐‐‐‐

‐‐‐‐押し寄せた闇 振り払って進むよ‐‐‐‐

‐‐‐‐‐どんなに大きな壁があっても‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐‐越えてみせるからきっと‐‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐‐‐明日信じて祈って‐‐‐‐‐‐‐



‐‐‐‐‐‐‐ずっと明日待って‐‐‐‐‐‐‐





魔法少女まどか☆マギカ〜After Story〜 第0話「あれから10年...」  fin
147 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga]:2011/12/31(土) 17:30:19.00 ID:erDHPG4C0
ここまでです。お疲れ様でした。

最後のはその場のノリでやりました(笑)スイマセン


結果『全身骨折+出血多量』を果たして守ったといえるのk


最後は駆け足になってしまいましたが、プロローグは此処で終了です。

もうちっとだけ続くのじゃよ(ドヤァ)


って長く書きすぎましたね。それではよい御年を〜ノシ
148 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2011/12/31(土) 19:01:39.76 ID:ItV9OtlX0

二番……だと……
149 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) :2011/12/31(土) 22:13:00.26 ID:eJ10x9j+0

良いお年をー
150 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2011/12/31(土) 23:40:01.95 ID:WUgYQLQeo


良いお年を
151 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2012/01/01(日) 07:40:34.11 ID:P/ZZYaaDO
明けましておめでとうございます!

戦闘後、必死に治癒魔法を使うほむほむの姿が…。
152 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2012/01/01(日) 10:18:16.65 ID:wjvlBsnYo
あけほむ
ことまど
153 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2012/01/02(月) 15:48:11.64 ID:MsooUNoW0
そういや改変後のQBって魔法少女は長持ちするように使うだろうし、平均寿命って伸びてそうだよね
表向きの職業の斡旋とか、新米教育担当とか送ったり、魔法少女保護組合的なもの作ってそう
154 :以下、あけまして、おめでとうございます [sage]:2012/01/02(月) 23:27:10.82 ID:+6IbI+HOo
面白いな
続き期待
155 : ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/01/09(月) 01:26:58.53 ID:3eUY91AI0
正月は終わりましたが、あけましておめでとうございます。

そして、コメント有難うございました。

それでは続きを投稿します。
156 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/09(月) 01:29:29.89 ID:3eUY91AI0


――――――――――――――

誰かは言った。希望と絶望は相反するようで、似通っているものだと

希望を求めるだけ、絶望は生まれる。どちらかが勝るという事は決してない

希望と絶望が螺旋状になって続く世界に、苦しむ少女達がかつては存在した

しかし、一人の少女がそれを打ち消した。自らの希望の力を使うことで―――

その力によって生まれた、自らの絶望をも少女は打ち消した

そして、少女は自ら神となり、世界を再編した

少女達が希望から絶望に堕ちていかないように、世界を作り変えた

この世界では、少女達は希望から絶望の中へと飲み込まれることはない



それでも、世界には絶望が生まれ続ける

誰かが希望を抱く分だけ、同じくらい絶望が生まれる

光を照らせば、影が生まれるように――――――






『希望』と『絶望』、どちらかが勝ることなどない

どちらかが消えることも決してない

――――――――――――――


157 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/09(月) 01:31:07.40 ID:3eUY91AI0

――――――――――――――



――ん・・・んぅ・・・あれ・・・此処は・・・

――俺、何してたんだっけ・・・

――ああ、そうか。確か変な化物に襲われて・・・


体が宙に浮いているかのように軽い

目を開けてみても、見慣れない景色がぼんやりと映るだけだった


――俺・・・・死んだのか・・・・


三途の川、なんてものが本当にあるとは思っていなかったが

あんな化物に襲われた後だと、何があっても不思議じゃないなと思えてくる
158 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/09(月) 01:34:07.51 ID:3eUY91AI0


―――大丈夫、生きてるよ―――

――え?


そんな風に考えていると、目の前に光が差し込んできた

その光の中から人が現れ、俺に話しかけてくる

霧に掛かってるかのように何もかもがぼやけて見えるため、それが誰なのかは全く分からない


――あなたは・・・


誰?と言おうとした瞬間、その人は目の前からいなくなり、後ろへと回り込んできた

そして


―――・・・まだ、寝てなきゃ駄目だよ?―――

――あ・・・・

―――うぇひひ、もう少し横になっててね?―――


その人は、俺に膝枕をしてきた


――(なんだろう・・・凄く落ち着く・・・そして、暖かい・・・)


そう感じながら、姿を確認しようと目を凝らして見てみるが、顔が近いにも関わらずぼんやりとしか映らない

白いドレスのようなものを着ていることくらいしか確認できなかった

159 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/09(月) 01:35:44.54 ID:3eUY91AI0


―――・・・ごめんね、あなたを巻き込んじゃって―――

――え、巻き込んだって・・・?


一体どういうことだろう・・・?

理解し難いことが立て続けに起こり、俺の頭の中は疑問で一杯になる

しかし、考えようにも周りの影響なのか、頭の中が寝起きの時のようにぼーっとしていて、上手く思考が回らなかった


―――私のせいだから・・・―――

―――私が・・・もっと・・・ていればこんなことには・・・―――

―――あなたを・・・巻き込むつもりは無かったのに・・・―――


俺に向けて謝罪の言葉を述べた後も、自分を責めるかのような呟きを続けてくる


160 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/09(月) 01:39:09.55 ID:3eUY91AI0


――よく分らないけど、あなたのせいじゃないと思いますよ?


今言ったとおり、状況はよく分らない

それでも、声を掛けずにはいられなかった、慰めの言葉を掛けずにはいられなかった

ぼんやりとしか見えないが、その人が悲しそうな顔をしているのが、何となく分ったから

この人に悲しんでほしくない、不思議とそう思えたから


―――・・・良い子に育ったんだね―――

――え?

―――うぇひひ、なんでもないよ―――


最初の言葉は良く聞き取れなかったが、どうやら笑ってくれたようだ

その笑顔を見ていると、なんだか一緒に居る俺自身も心が一層暖かくなってくる。そして、何処か懐かしい気持ちになる


(・・・・・って、あれ?この感覚って・・・確か・・・)


俺の頭の中が徐々に覚醒し、今の状況を把握し始める

161 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/09(月) 01:40:41.43 ID:3eUY91AI0



―――・・・ごめんね、本当はもう少しこうしていてあげたいんだけど―――

―――もう時間が無いみたい・・・―――


――え・・・


次の瞬間、ぼんやりとしていた背景が徐々に明るくなっていく

すると、その人は俺から離れていった


162 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/09(月) 01:42:35.80 ID:3eUY91AI0


―――ねぇ、あなたに一つお願いがあるんだ―――


――え・・・ちょ、ちょっと・・・


その人の声がどんどん遠くなり、姿も離れていってしまうような気がした


―――・・・ちゃんの事を支えてあげてね・・・―――

―――私じゃ出来ないから―――

―――導いてあげることが今の私にはできないから・・・―――

―――体の時間が止まっちゃってる・・・・・・ちゃんを―――



――え・・・誰を?時間って・・・どういうこと、訳わかんないよ・・・


そう言って、俺はその人に向けて命一杯手を伸ばす。しかし、全く届かない

その間も、その人はどんどん離れていってしまう


―――だから、お願い―――

―――たった一人で戦い続けようとしている―――

―――・・・・・・ちゃんを、救ってあげて―――

―――大丈夫・・・あなたなら、きっと・・・―――

―――だって、あなたは私の・・・・・・・・なんだから・・・―――



――ま、待ってくれ・・・


距離が離れすぎたのか、最後の言葉は上手く聞き取れなかった

その人の姿はどんどん見えなくなっていく。もう少しで完全に見えなくなってしまうだろう

だからなのか、俺は思わず叫んでしまった



あの名前を――――――――――――
163 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/09(月) 01:44:05.95 ID:3eUY91AI0



【タツヤ】
「まどか!!!!」


そして、気付けば俺は空を掴むように手を上に伸ばしていた

見慣れた天井に向けて


【タツヤ】
「あ、あれ・・・」


不思議に思い、辺りを見回してみる

自分の部屋の光景がそこにはあった。俺は自分のベットで横になっていたのだ

カーテンの隙間から光が差し込んでいる。どうやら今は朝らしい・・・


【タツヤ】
「また・・・夢・・・だったのか・・・」


【タツヤ】
「え・・・でも、俺、確か買い物の帰りに・・・」


俺は化物に襲われて、やられる寸前にあの黒髪の人に助けられて・・・

164 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/09(月) 01:45:48.02 ID:3eUY91AI0


【タツヤ】
「って。あれ?」サワサワ・・・



そうして、気付く――――化物によってボロボロにされた筈の自分の体が



【タツヤ】
「・・どこもなんとも無い」



―――傷一つ付いていなかったことに


俺は不思議に思い、あちこちを触ってみたり動かしてみたりしてみる

しかし、痛みを感じるどころかいつもよりむしろ調子が良いように思えた

一体どういう事だろう・・・?さっきの事といい化物のことといい・・・


【タツヤ】
「まさか、ひょっとして・・・・」



数秒考えた末、俺は一つの結論を出す

165 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/09(月) 01:47:11.98 ID:3eUY91AI0








【タツヤ】
「・・・・全部、夢オチ?」


















・・・・・ひどく間抜けな自分の声が、部屋に響いた気がした



166 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/09(月) 01:48:45.61 ID:3eUY91AI0


‐‐‐‐‐‐交わした約束忘れないよ‐‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐‐目を閉じ確かめる‐‐‐‐‐‐

‐‐‐‐押し寄せた闇 振り払って進むよ‐‐‐‐


‐‐‐‐‐‐振り返れば仲間がいて‐‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐気がつけば優しく包まれてた‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐‐何もかもが歪んだ世界で‐‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐唯一信じれるここが救いだった‐‐‐‐‐



‐‐‐‐‐喜びも悲しみもわけあえば強まる想い‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐‐‐この声が届くのなら‐‐‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐きっと奇跡はおこせるだろう‐‐‐‐‐



‐‐‐‐‐交わした約束忘れないよ‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐‐目を閉じ確かめる‐‐‐‐‐‐

‐‐‐‐押し寄せた闇 振り払って進むよ‐‐‐‐

‐‐‐‐‐どんなに大きな壁があっても‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐‐越えてみせるからきっと‐‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐‐‐明日信じて祈って‐‐‐‐‐‐‐


‐‐‐‐‐‐‐ずっと明日待って‐‐‐‐‐‐‐


魔法少女まどか☆マギカ〜After Story〜 第1話「わたしの、最高の友達」
167 : ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/01/09(月) 01:57:24.64 ID:3eUY91AI0
以上です。お疲れ様でした。

少し短いですが・・・

とりあえず今回から第1話開始です。


今年の目標は・・・・もっと地の文とかの言い回しを上手く書けるようになりたいです
見返す度に自分の表現力の無さに絶望しそうになるので・・・

それでは今年も宜しくお願いしますノシ
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県) [sage]:2012/01/09(月) 09:55:04.98 ID:dW89axt/o


今年もよろしく
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/09(月) 13:45:48.01 ID:AKhDLuyj0

ところでみんなはこのタツヤの声誰で再生されてる?俺は士郎と同じ声で再生される。
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/09(月) 15:44:17.56 ID:1Wwvhkli0
なぜか肉村
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/09(月) 20:48:17.44 ID:TH6p7odEo
何故か中沢
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/09(月) 21:31:45.18 ID:Vghma9Pw0
>>169
同じく
某スレの影響か、fateの士郎から厨二成分抜いて人間味を足した感じで固定されてる
173 : ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/01/16(月) 02:01:25.75 ID:YF58KWJJ0
夜遅くにこんばんわです。いつもコメント有難うございます。

自分はfateを見たことないのでよくわからなかったのですが、ググって調べてみたら確かにタツヤのイメージに合うかもしれないですね。

それでは続きを投下します。
174 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/16(月) 02:03:33.38 ID:YF58KWJJ0
――――――――――――――――――――


よく考えれば分かることだと思った

世の中にあんなホラー映画に出てきそうな化物が、実際にいるわけが無い

つまり、全部自分の妄想が作り出した産物に過ぎなかったわけだ


【タツヤ】
「一体どうしたってんだ・・・俺・・・」


俺が嘆息を付きながら天を仰いでいると、少し慌てた様な足音で誰かが部屋に近づいてきた



ガチャ


【知久】
「タツヤ、目が覚めたかい?」

【タツヤ】
「あ、父さん。おはよう」


入ってきたのは父さんだった。何故か顔には安堵の表情を浮かべている



ドタドタドタ!! ガチャ!!!



【絢子】
「タツヤ!!」


次にかなり慌てた様子で、母さんが俺の部屋に入ってきた


175 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/16(月) 02:06:18.91 ID:YF58KWJJ0


【絢子】
「あんた、どこもなんともないわよね!?」グイグイ

【タツヤ】
「うわわわわ、何だよいきなり!!どうしたってんだ!?」ユサユサ


母さんは部屋に入ってくるなり、俺の肩を掴んで揺すってきた

顔はかなり強張っている。二人とも何で朝からこんなに慌てているんだ?


【タツヤ】
「どうしたんだよ・・・二人ともそんなに慌てて・・・」


とりあえず母さんの拘束を解き、俺は二人に慌てている理由を聞いた


【絢子】
「あんた、覚えてないの・・・?」

【タツヤ】
「? 何が?」

【絢子】
「あんた、昨日玄関で倒れてたのよ?」





【タツヤ】
「・・・・・は?」
176 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/16(月) 02:07:56.58 ID:YF58KWJJ0

予想していなかったことを言われ、俺は再び間抜けな声を出す

え?倒れてたって・・・・


【知久】
「昨日、タツヤが薬を買いに行ったきり中々帰ってこないと心配していたんだ。そしたらドアのチャイムが鳴って、開けてみたらタツヤがそこに倒れていたんだよ」


続けて父さんがその時の状況を説明してくれた


【知久】
「起こそうにも、全く起きなくてね。とりあえず着替えだけさせてベットで寝かしたんだよ」

【タツヤ】
「・・・嘘・・・・」

【絢子】
「本当よ、嘘なんかつく筈無いだろ。あたしもビックリして、二日酔いなんかどっかにいっちゃったわよ」

177 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/16(月) 02:09:48.61 ID:YF58KWJJ0

二人が嘘を付いていないことくらい、態度を見れば分かる

しかし、信じることができなかった

俺が薬を買いに外に出たことは、父さんが言うのだから本当だろう

じゃあ、やっぱりあの化物に襲われたのも…


【タツヤ】
「夢じゃ…ない…?」


いや、そうだとしたら身体のことの説明が付かない

あの時、確かに俺は身動きが取れないくらいボロボロにされた。その時のダメージが一晩で癒えるわけがない

あの場面だけが夢だったのだろうか…?でも、それだとあの霧に飲み込まれた時からが夢?いや、もっと前から気を失ってたとか・・・・

178 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/16(月) 02:10:38.77 ID:YF58KWJJ0













――――――――――――――ズキッ











179 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/16(月) 02:13:07.37 ID:YF58KWJJ0


【タツヤ】
「あがっ!!」

【絢子】
「タ、タツヤ!?」


俺が混乱していると、鈍器で殴られたような痛みが頭を襲った

その痛みは、昨日の夕方、そしてあの化物と遭遇する前後に感じた痛みとおなじものであった



【タツヤ】
「・・・くそっ、なんなんだよ・・・・」


昨日から不可解なことが起こりすぎていて、正直訳が分からない

俺の周りで一体何が起きてるんだってんだよ・・・・


【絢子】
「あ、あんた本当に大丈夫なのか?」


俺がそうやって嘆息しながら呟いていると、母さんが顔色を伺うように覗き込んできた

急に声をあげたせいもあってか、どうやら本格的に心配されているらしい・・・

これ以上母さん達を心配させるわけにはいかない、よな・・・・

180 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/16(月) 02:15:44.76 ID:YF58KWJJ0

【タツヤ】
「だ、大丈夫、大丈夫!!いやー今思い出したよ。実は俺鍵忘れちゃっててさー。チャイム鳴らして開けてもらおうと思ったんだけど、そしたら足が滑って頭をぶつけちゃったんだよね〜。多分その時、気絶しちゃったんだな、きっと。あはは〜ドジだね〜俺も」


俺は早口で咄嗟に思いついた言い訳を述べる

内容は正直どうかと思ったけど、他に上手い言い訳なんか思いつかなかったのでしょうがない


【知久】
「鍵・・・・・掛けてあったかな・・・?」


父さんが不思議がっているので、俺は慌てて弁明する


【タツヤ】
「か、掛けてあったよ!!いやだなー父さん。だ、大体掛けてなかったら不用心じゃないか!!」

【知久】
「・・・うん、確かにそうかもしれないね。とりあえずタツヤが無事でよかったよ」

【タツヤ】
「う、うん」


俺の言葉に、父さんはあっさりと引き下がった

父さんには悪いけど、父さんが物事を突き詰めて考えるようなタイプじゃなくて良かったよ・・・


【知久】
「でも本当に大丈夫かい?もしも体調が悪いんだったら、学校を休んでも良いんだよ?」

【タツヤ】
「大丈夫だよ。そんなヤワじゃないって」

【知久】
「そう・・・だったら、まずはシャワーを浴びて来ると良いよ。昨日はお風呂に入ってないんだし」

【タツヤ】
「そ、そうだね。そうするよ」


俺はそう言うと、ベットから出てそのまま浴室に向かう

どうにかこうにか、誤魔化すことができたようで、俺も安心していた





【絢子】
「・・・・・・・・・・」

181 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/16(月) 02:17:45.40 ID:YF58KWJJ0
――――――――――――――――――――


浴室でシャワーを浴びた俺は、朝食などを足早に済ませ、学校に行く準備をしていた


【タツヤ】
「それじゃあ、行ってきます」

【知久】
「タツヤ、本当に大丈夫かい?」

【タツヤ】
「大丈夫だって、心配し過ぎだよ」


玄関で再び声を掛けてきた父さんに、俺は振り向かずにそう答えた

実際、体に殆ど異常は無いので、言っていることに間違いはない

そうして、俺は玄関を出た



182 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/16(月) 02:18:47.21 ID:YF58KWJJ0










【絢子】
「タツヤ」











183 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/16(月) 02:19:54.42 ID:YF58KWJJ0


しかし、門を出たところで母さんに呼び止められる

振り向いてみると、スーツ姿の母さんがいた。腕を組み険しい表情をしていたので、少し迫力を感じる


【タツヤ】
「な、何?」


母さんの出す雰囲気のせいか、俺は少し口籠もってしまった

・・・まさか、さっきのことで何か感付かれたのだろうか・・・父さんと違って母さんは鋭いからな・・・



184 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/16(月) 02:21:20.43 ID:YF58KWJJ0


【絢子】
「・・・・・・・」





だが、母さんは俺の顔を見て押し黙っているだけだった



【絢子】
「・・・いや、なんでもない。・・・なんつーかさ、あんま親に心配掛けるんじゃないよ?」

【タツヤ】
「あ・・・うん、ごめん」


母さんの言葉に、バレてなかったことについて安堵しつつも、心配を掛けてしまったことに対して自責の念を感じてしまう


【絢子】
「分かりゃあいいさ。ほら、さっさと行ってきな」


そう言って背中を叩いて送り出してくる母さん。きっと俺の表情を見て、気持ちを察したのだろう

こういう所を見ると、本当にこの人は鋭いなと思う


【タツヤ】
「・・・行ってきます!!」


母さんに応えるように、俺は力強くそう言ってから学校に向かった


185 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/16(月) 02:24:11.52 ID:YF58KWJJ0

――――――――――――――――――――



自分の息子が嘘を付いていることくらい絢子には分かっていた

そして、何かを隠していることも

それを問いただそうと呼び止めたのだが


【絢子】
「言いたくないことを無理矢理聞きだすってのもな・・・」


自分の息子だっていつまでも子供じゃないのだ、と思い、直前になって言葉を飲み込んだのだ

しかし、それでも不安は残る


【絢子】
「なんか嫌な予感がするんだよな・・・・」


自分の息子が、とんでもないことに巻き込まれていくんじゃないか――――そんな言いようの無い不安が絢子を襲う

だが、不安を感じる理由はそれだけでは無かった




【絢子】
「なんか・・・ずっと前にも、似たようなことがあったような気が・・・・」


186 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/16(月) 02:26:40.18 ID:YF58KWJJ0

それが何時のことだったかは思い出せない――――



ただその時、何か大切なものを失ってしまったような気がすると、絢子は感じていた






【絢子】
「お前は・・・いなくならないよな・・・」








気付けばそんなことを呟く。何故そんな言葉が自分の口から出てきたのか、絢子には分からなかった




――――――――――――――――――――
187 : ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/01/16(月) 02:31:59.25 ID:YF58KWJJ0
今回はここまでです。お疲れ様でした。

毎回短くて申し訳ないです。。。


一応自分の中でのタツヤの設定としては、身長が160代中盤あたりってことくらいです。

あとは皆さんのイメージにお任せします。

それでは、この辺でノシ
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/16(月) 18:07:28.43 ID:KK+/ieIDO
そりゃあねぇ、産みの親で…しかも立派な人ですもの。
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/17(火) 07:07:01.23 ID:vVShuQ9IO
最初はちゃんと詢子だったのにぃ
190 :1です [sage]:2012/01/17(火) 08:00:27.30 ID:Js67iliDO
携帯から失礼します。>>1です

>>189さん

ご指摘ありがとうこざいます。


気付かぬうちに「詢子」が「絢子」になってましたね・・・・

申し訳ありません。以後気をつけます。
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/01/21(土) 02:56:02.89 ID:SY4IXGWBo
中一(入学直後)で160cmって、長身だな。
オレなんて中三まで150cmだったぞ。いまは172cmだが。
(成長期が中三〜高一ごろだった)

中三ぐらいになれば170cmぐらいのヤツもクラスに何人かいたけど、
中一で160だと、クラス内でトップ級(トップグループ)の長身のような気がする。

声変わりも、普通は中学に入ってから進行すると思うけど、
身長がすでに160にまで伸びてるなら声変わりは終わってるかもな。
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/22(日) 04:07:22.09 ID:fED8QF2V0
自分を基準にするなよ…
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/01/22(日) 23:27:05.13 ID:enjn5XvAO
まーたしかに入学時160は大きいほうだな
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/01/23(月) 18:40:53.59 ID:gHUM46Xto
>>192
スマン。
単に自分の身長を言うだけだと、クラス内で低い方だったり高い方だったり、
どの位置か不明で、数字に意味がなかったな。

中一頃にはクラス内で真ん中(やや後ろ)ぐらいの身長。
中三でも真ん中辺の身長だった。という情報がついてないと意味がなかった。
(中一の時は150より低かったが、それでも真ん中付近だったはず?)
195 : ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/01/26(木) 01:45:53.44 ID:dsy+p0mV0
夜遅くにこんばんわです。

身長のことで騒がせてしまってすみません・・・

160台にしたのは単純にほむらより高く―と思ったからです。

とりあえず、このSSでは

ほむら→156cm

タツヤ→163cm

ということにしておきます。違和感があるかもしれませんが・・・宜しくお願いします。

それでは続きを投稿します。
196 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/26(木) 01:48:09.98 ID:dsy+p0mV0
――――――――――――――――――――


新入生は4月の下旬までは、一部を除いて本格的に授業は無い

大抵は校内でのオリエンテーションやら、今後の授業方針の説明やらで一日が終わる

だからというわけでもないが、学校にいる間も俺の頭の中は、昨日の夜から朝にかけての出来事で一杯だった


【タツヤ】
「(と、言っても・・・考えてみてもさっぱり分からん・・・)」


結局あれが夢だったのか夢じゃなかったのか

夢じゃなかったとしたら怪我はどうしたのか

というか夢だったら痛みとか感じないよな〜とか

考えれば考えるほど、まるで迷路に迷い込むかのように出口が見つからなくなってくる

でも、俺の中で一つだけハッキリしていることがある


197 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/26(木) 01:49:09.58 ID:dsy+p0mV0



【タツヤ】
「(あの人にもう一度会えれば・・・何か分かるかもしれない)」


そう、昨日の夕方、そして夜に俺を助けてくれた(?) あの黒髪の人

あの人にもう一度会えれば、疑問が解けるかもしれない


【タツヤ】
「(今日またあの河川敷に行ってみるか・・・・)」


俺はあの人に会うために放課後、再び昨日の河川敷に脚を運ぶことにした


198 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/26(木) 01:50:36.60 ID:dsy+p0mV0


【担任】
「・・・・い、おい、鹿目!!聞いてるのか!!」


と、そこまで考えて、担任に呼ばれていることに気が付く

因みに、今は教室でホームルーム中だった


【タツヤ】
「・・・ふぇ?」

【担当】
「お前、私の話を聞いていなかっただろう・・・?」

【タツヤ】
「あ・・・」


どうやら何か重大な話をしていたらしい・・・正直まったく耳に入っていなかった


【担任】
「全く・・・入学式には遅刻してくるし、あまり先生達に目を付けられんようにな」

【タツヤ】
「す、すいません・・・」

【担任】
「・・・まあいい。そして、鹿目」

【タツヤ】
「はい」




【担任】
「お前保健係な」

【タツヤ】
「え」

【担任】
「クラスの係を決めていたのに、お前だけ参加していなかったからな。残り物に振り分けといたぞ」

【タツヤ】
「oh…」


こうして俺は、クラスの保健係になった

うん、これからは例えホームルームだったとしても、授業にはちゃんと参加しよう・・・・

199 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/26(木) 01:52:31.49 ID:dsy+p0mV0


――――――――――――――――――――


放課後、俺は足早に学校を後にし、昨日の河川敷に向かった

そこまで急ぐ必要もなかったのだが

少しでも早くあの人に会いたいという気持ちが自分の中にあったようだ



い・・・いや、あくまでも聞きたい事があるから会いたいだけであって・・・

決して、やましい気持ちなんて・・・・これっぽっちもないんだが・・・

ま・・・まあ、確かに綺麗だなぁとは思ったけど・・・




・・・・俺は誰に言い訳しているんだ・・・・

そうこうしている内に、俺は昨日の河川敷に到着した

まだ日が高かったので、周りには散歩している人や遊んでいる子供も多い

とりあえず近くのベンチに腰掛け、あの人が此処を通るのを待つことにした

200 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/26(木) 01:54:05.35 ID:dsy+p0mV0



しかし・・・




【タツヤ】
「(来ない・・・)」


一応、日が暮れるまで河川敷で待っていたが、結局あの人は来なかった

うーん・・・昨日来たからといって、今日も此処を通るとは限らないのだろうか


【タツヤ】
「・・・今日はもう帰るか」


俺はベンチから立ち上がり、今日のところは家に帰ることにした

また明日も此処であの人を待とう、と考えながら――――――――

201 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/26(木) 01:56:12.56 ID:dsy+p0mV0


――――――――――――――――――――

あの日から毎日のように、放課後はあの河川敷に向かいあの人を待ち続けた

だが、あの人が河川敷に姿を見せることは一度も無かった

最初のうちはベンチに座ってあの人を待つだけだった俺も、河川敷の周りをうろついてみたりしてみたが

それでも有力な情報を得ることはできなかった

そして何の収穫も得られないまま日付は進み、あの夜の出来事から一週間が経とうとしていた――――――――


【タツヤ】
「あ〜、何で来ないんだよ〜」


俺は昼休み、学校の屋上にある広場でうな垂れるように寝転がっていた


【タツヤ】
「(もう来ないのかな・・・)」


昼食用のパンをかじりながら、そんな事を考える

八方塞な状況の中、どうしてもマイナスな考えが頭をよぎってしまう

202 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/26(木) 01:57:28.85 ID:dsy+p0mV0


【タツヤ】
「でもまあ・・・どっちみち他に手がかりなんて無いしなあ」


あの人が誰なのか、何処に住んでいるのかが分からない以上、手がかりはあの河川敷しかない

子供の頃と一週間前の2回会った、あの河川敷しか・・・


【タツヤ】
「たかだか一週間空回っただけだ。もうちょっとだけ頑張ってみるか」


後ろ向きになりかけた心を奮い立たせるため、空に向かってそんな宣言をする俺


【タツヤ】
「さて、そろそろ教室に戻るかな・・・」ヨッコイショ


203 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/26(木) 01:59:00.55 ID:dsy+p0mV0












――――ジ・・・













204 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/26(木) 01:59:57.77 ID:dsy+p0mV0


【タツヤ】
「・・・・ん?」


体を起こして、立ち上がったところで俺は妙な視線を感じた


【タツヤ】
「誰か、居るのか・・・?」


他に誰かいるのかと、辺りを見回してみる


【タツヤ】
「―――って、あれ?」


そこで俺は視線の正体を見つけた

しかし、それは人じゃなかった


205 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/26(木) 02:01:16.39 ID:dsy+p0mV0













「・・・・・・」キュイ












206 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/26(木) 02:02:56.11 ID:dsy+p0mV0


変な白い生き物がフェンスの上に登り、俺を見ていたのだ


【タツヤ】
「なんだ、視線の正体はお前か。此処屋上だぞ、どこから入ってきたんだ?」


俺は人じゃなかったことに若干安堵しつつ、その生き物に近づいた

見たところ猫っぽい生き物だが・・・

その生き物は全体的に白く、背中には赤い模様がある

後は耳が妙に長いのが特徴的だった

普通の野良猫とはちょっと違うような・・・

でも、首輪が付いていないから誰かのペットってわけでも無さそうだ


【タツヤ】
「(・・・あれ?)」


と、そこまで考えて俺は、頭の中にある引っかかりを感じた


207 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/26(木) 02:04:46.73 ID:dsy+p0mV0


【タツヤ】
「お前、どっかで見たことある―――」


【タツヤ】
「―――ってそうだ、あのとき確かあの河川敷で・・・」


俺はその生き物が、あの時あの人と話していた際に、こっちをずっと見ていたあの生き物だと気が付いた

あの時は日が暮れ掛けていてよく見えていなかったから、この生き物があの時と同じ奴だと直ぐには分からなかったのだ


【タツヤ】
「なんで、こんなところに・・・」


俺はその生き物の目の前まで来ると、おもむろに手を伸ばした

その時だった






『君は』


【タツヤ】
「ん?」


208 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/26(木) 02:05:43.34 ID:dsy+p0mV0


『やっぱり僕のことが見えるんだね』





【タツヤ】
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?」


突如、脳に直接語りかけてくるような声が聞こえた


【タツヤ】
「え・・・」


だが、辺りを見回してみても人はいない

屋上にいるのは俺と――――――――――ここにいる白い生き物だけだった




・・・・・え・・・・ひょっとして、今こいつ喋った・・・?


209 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/26(木) 02:07:14.14 ID:dsy+p0mV0


―――キーンコーンカーンコーン



俺が軽く混乱していると、昼休み終了のチャイムが鳴る


【タツヤ】
「うわっ!!ご、午後の授業が始まる!! と、とにかく、今は教室に戻らないと・・・!!」



『・・・・』



【タツヤ】
「(今のは・・・・・・気のせい、だよな・・・?)」


白い生き物は相変わらずこっちをただジッと見ている

そのことが気になりつつも、授業に遅れまいとして俺は足早に屋上を後にした

210 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/26(木) 02:08:16.91 ID:dsy+p0mV0
――――――――――――――――――――


因みに午後の授業はホームルームで、具体的には体育館で部活動勧誘会が行われた

体育会系の部活から、文科系の部活まで色々な部活が新入生にアピールを行う場である

実際の練習風景を動画で公開したり、その場で実技をやってみせるなど

それぞれの部活が部員をゲットするために、趣向を凝らしたアピールを行う

実技はそれぞれ部内の精鋭達が行ったため、なかなか華やかであり、俺達新入生の反応も上々であった

そして、部活動勧誘会が大反響の中終了すると、クラスでは何処の部活に入るかと言った会話が飛び交っていた


「タツヤー、部活どこにするー」

【タツヤ】
「んー、そうだな・・・・」


俺の周りも例外ではなく、下駄箱で帰りの支度をしながらクラスの友人と部活動について駄弁っていた

皆の話を聞くと、体育会系なら野球部やサッカー部が、文科系なら軽音部辺りの有名どころがやっぱり人気みたいだ

そんな中で、俺が一番興味を持った部活はというと――――

211 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/26(木) 02:09:35.79 ID:dsy+p0mV0


【タツヤ】
「弓道部・・・・かな・・・」


「えー、なんでまたそんな地味なとこなんだよー」

【タツヤ】
「いや・・・なんとなく?」


どうして?と聞かれたら、そう言うしかない。本当に、ただなんとなく・・・なのだ

別に野球やサッカーが嫌いなわけじゃない

それでも俺の中で一番印象が強かったのが弓道部だった

・・・別に弓道に興味があったわけじゃ無かったんだけど・・・・何故だろうか?



「まあ、いいや。それでタツヤ、俺達これからゲーセン行くけどお前どーする?」

【タツヤ】
「あー・・・」


今日もまたあの河川敷に行こうと思っていたのだが・・・・

誘われたときくらい付き合うかなと、少し迷ってしまう

まあ、偶には――――――――
212 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/26(木) 02:10:33.87 ID:dsy+p0mV0







『こっち』







【タツヤ】
「―――ッ!?」


213 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/26(木) 02:11:25.01 ID:dsy+p0mV0


と、そこでまた昼休みの時と同じように声が聞こえた


【タツヤ】
「だ、誰だ」




『こっちだよ』




【タツヤ】
「あっ――」


声の出所を探し、校門に視線を送る

すると、そこには―――――――――――昼休みの時の白い生き物がいた

214 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/26(木) 02:12:31.54 ID:dsy+p0mV0


【タツヤ】
「(やっぱり、あいつなのか・・・)」


あの生き物が・・・・俺に語りかけてきているのか・・・?


「タ、タツヤ?」

【タツヤ】
「ふぇ・・・!?」


俺の挙動不審な行動を見て不思議に思ったのか、友人が怪訝とした顔で俺を呼んだ


「どうしたんだよ?急に辺りをキョロキョロしたりして」


【タツヤ】
「い、いや、ほら校門の方に変な生き物が・・・」


俺はそう言って校門の方角を指差す

だが―――

215 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/26(木) 02:13:52.47 ID:dsy+p0mV0


「はあー?何言ってんだ、お前。何もいねえーじゃんか」

【タツヤ】
「―――え?」


友人は「そこには何もいない」と言ったのだ

そんなわけない、今でも確かにあの生き物が校門の前にいるのだから

俺は再び校門の前を指差して友人に言った


【タツヤ】
「い、いや居るだろ!?あそこに白い生き物が!!」

「・・・・お前、頭大丈夫か?熱でもあるんじゃねーのか」


それでも、友人は何も居ないと言い張る


【タツヤ】
「(なんで・・・一体どういうことだよ・・・)」


216 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/26(木) 02:14:55.23 ID:dsy+p0mV0


『僕の姿は、君にしか見えないよ』




【タツヤ】
「(え・・・)」


俺が混乱している中、再び頭の中に声が聞こえる


【タツヤ】
「(お前か、俺の頭の中に話しかけてくるのは・・・?)」




『うん、そうだよ』




俺が同じように頭の中でその生き物に話しかけると、その生き物は返事をした

やはり、俺の頭の中に話しかけてきたのはあの生き物だったらしい

もう何がなんだか分からなくなってきたぞ・・・・・

217 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/26(木) 02:16:39.88 ID:dsy+p0mV0


【タツヤ】
「(な、なんなんだ・・・お前・・・)」




『説明してあげてもいいけど・・・此処じゃちょっと、ね』




そう言って、その生き物は校門の方を向いて立ち上がり、顔だけこちらに向けて言った




『僕についてきてよ』




【タツヤ】
「(は?)」




『君は、「ほむら」に会いたいんだろ?』




【タツヤ】
「(ほむら・・・?)」




『あぁ、そうか。君は名前を知らないんだね。あの時、君を助けた女の子のことだよ』


218 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/26(木) 02:19:20.03 ID:dsy+p0mV0


【タツヤ】
「(あ・・・あの人のことか!?)」


あの人の名前・・・ほむらっていうのか・・・




『うん、そう。だから、ほむらに会いたいなら僕について来てよ』トテトテ・・・




そうしてその生き物は、校門の先に歩き出した


【タツヤ】
「(あ、おい待てよ!!)」ダッ!!


「おい、タツヤ!?」

【タツヤ】
「わ、悪い!!急用思い出したから俺帰るわ!!」


俺は呼び止める友人に適当に理由をつけて別れ、急いであの生き物を追うのだった

219 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/26(木) 02:20:41.11 ID:dsy+p0mV0

――――――――――――――――――――


白い生き物は俺を誘導するように、近すぎず遠すぎずの距離を保ち、前を先行する

俺は普段通らないような道に若干戸惑いつつも、何とかあの生き物についていく

移動しながらも、俺は混乱している頭で必死に考えていた



あの生き物はいったい何者なのか

なんで人の言葉を話せるのか

なんで俺にしか見えないのか

・・・なんであの人のことを知っているのか―――――



頭の中には「なんで?」という疑問が次々と浮かんでくる

正直、もう常識で考えられるような状況ではないような気さえしてくる


【タツヤ】
「(とにかく今はあの生き物について行くしかないか・・・)」


怪しい人間(人間じゃないけど)に付いていっては駄目だよ、という父さんの声が聞こえてきそうだが・・・

それでも、ここまで来たら後には退けないと腹をくくり、俺はあの生き物についていく


220 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/26(木) 02:21:48.47 ID:dsy+p0mV0


そうして十数分くらい歩くと、白い生き物はアパートらしき建物の前で止まった




『ここだよ』




俺が建物の前まで辿り着くと、再び頭の中に声が聞こえる




『それじゃあ、僕はここで』キュップイ




【タツヤ】
「(あ、おい!!)」


そして、それと同時にその生き物はどこかに行ってしまった

221 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/26(木) 02:22:38.24 ID:dsy+p0mV0




【タツヤ】
「・・・ここが」


白い生き物が何処にいったのか気になりつつも、目の前の建物に目を向けた

見たところ、そこはいたって普通のアパートであった

俺はアパートの敷地内に入り、周りをうろついてみる



そして、俺は一つの表札を見つけ、その場に立ち止まった

その表札にはこう書かれていた――――――

222 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/26(木) 02:24:07.97 ID:dsy+p0mV0










―――――――――【暁美ほむら】、と


223 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/26(木) 02:24:54.29 ID:dsy+p0mV0



あの生き物が言っていた「ほむら」という名前

その名前が表札には刻まれていたのだ

あの生き物が言っていたことが本当なら、ここがあの人の・・・・


【タツヤ】
「え・・・・と、あ・・・あかつ・・・いや、違うか。あ・・・あけ・・・」



224 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/26(木) 02:25:30.61 ID:dsy+p0mV0








「“あけみ”よ」








225 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/26(木) 02:26:27.93 ID:dsy+p0mV0


【タツヤ】
「―――えっ」


表札の前で一人ブツブツと呟いていると、横から声が聞こえた

俺は声が聞こえた方角に振り向く―――――――すると、そこには






「”あけみ ほむら”って読むのよ」






あの時と同じように、長い黒髪を赤いリボンで装飾した、あの人が立っていた




【ほむら】
「どうして・・・・ここが・・・」


226 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/01/26(木) 02:30:00.64 ID:dsy+p0mV0


――――――――――――――――――――



「う〜ん・・・」


タツヤがほむらの自宅に訪れ、ほむらと再会した頃

それを近くの家の屋根の上で見ていた少女がいた


「ほむらお姉ちゃんに用があってきたんだけど・・・」

「何か取り込み中みたいだね〜」


少女は片手に望遠鏡を持ち、タツヤ達のことを観察していた

もう片方の手には何故か食べ物が握られている


「というか、あの男の子・・・あの時の・・・?」


「キュウべぇのこと見えてるみたいだし・・・・」


「どういうこと?」


そう言って、首をかしげる少女は

幼く、弱々しかったかつての面影はなく――――特徴的な緑色の髪の毛をポニーテールにまとめていた

227 : ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/01/26(木) 02:32:21.46 ID:dsy+p0mV0
今回は以上です。お疲れ様でした。

そういえば、マミタツの薄い本ではタツヤが高校で弓道部の主将やってたな〜、と


それではまたノシ
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/01/26(木) 04:06:21.77 ID:yR84GoAAO
乙です
杏子やマミさんがどうなったのか気になるなぁ
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/26(木) 12:37:12.72 ID:fSCh1tsQo
乙です



女の「子」……だと……?
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/01/27(金) 02:47:47.03 ID:dwZTxaHs0
マミ「今日も紅茶が美味しいわ」668からの分岐改変が起きない平行世界
もし改変が起きない平行世界のマミがシャルロッテに死ななかったら OR マミ死亡後にまどかがマミ、QBの蘇生願いを願ったら
魔法少女全員生存ワルプルギス撃破
誰か書いてくれたらそれはとってもうれしいなって
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/01/27(金) 16:27:23.61 ID:XwfBpHsg0
ゆまちゃん来た!
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/04(土) 21:22:33.64 ID:yZgMXvaCo
遅い
はよ
233 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/06(月) 20:59:47.22 ID:1206Z3/c0
こんばんわ>>1です。いつもコメント有り難うございます。

>>232さん
お待たせしてしまって申し訳ありません。

今週中には何とか投稿できそうなので、その時はまた宜しくお願いします。

現状報告だけですが、今日はこの辺でノシ
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/07(火) 01:15:57.68 ID:RM9y3WfQo
まだそんなに経ってないじゃん
1ヶ月とか経ったらさすがにだけど、これぐらいで遅い遅い言ってたら他のスレどんだけ遅いんだよって話
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/02/07(火) 01:41:04.35 ID:+ZRnOQ0AO
週一で更新してた人が何も言わず急に2、3ヶ月いなくなるとかよくあることだからな
236 : ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/02/07(火) 21:36:23.60 ID:o/eYJLLp0
こんばんわ>>1です。
思ったより早く出来上がったので、投稿しに来ました。

>>234さん
>>235さん
お心遣い感謝します。
私生活の都合で、中々作業時間が取れないのですが、何とか最低でも2週間に一回は更新したいと思っています。
どうか宜しくお願いします。

それでは続きを

237 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/07(火) 21:38:16.02 ID:o/eYJLLp0
――――――――――――――――――――

長くて綺麗な黒髪を赤いリボンで装飾し、紫と黒を基調としたワンピース姿でその人は俺の前に現れた

手にはビニール袋が握られている。きっと買い物か何かの帰りなのだろう


【ほむら】
「・・・・・・」


そして、その人は俺のことをジッと見つめてくる

その表情は、何故俺が此処にいるのかが分からない、そんな表情だった

当人である俺はというと、その人の事を見ながらただただ口をパクパクと動かすだけの状態になっていた

会いたいと思ってはいたが、いざ目の前に来られると、何を話していいのか分からないでいたのだ
238 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/07(火) 21:39:35.87 ID:o/eYJLLp0


【ほむら】
「・・・なんであなたが此処にいるの」

【タツヤ】
「ふぇ!?えぇぇ・・・・と・・・・そ、それは・・・・あ、あのですね・・・」


俺は何と説明すればいいのか分からず、冷や汗をかきながら目線をキョロキョロさせる



『僕が連れてきてあげたんだよ』




【ほむら】
「!?」

【タツヤ】
「あっ!!」


と、そこでさっきの白い生き物が再び俺の目の前に現れた

【ほむら】
「・・・・どういうつもりよ」


『どういうつもりと言われても・・・』


その人は、その生き物に視線を向ける

その視線は、まるで汚い物を見るように冷たい物だった


239 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/07(火) 21:41:41.76 ID:o/eYJLLp0

【タツヤ】
「あ、あの〜・・・」

【ほむら】
「・・・何」

【タツヤ】
「こいつ、腹話術とかじゃ・・・ないですよね?」


そして、俺は未だにこの喋る白い生き物の存在が信じられず、そんなことを聞く


【ほむら】
「・・・そう見える?」

【タツヤ】
「・・・・見えないです」


じゃあ一体こいつはなんなんだ・・・


『残念だけど僕はそんなんじゃないよ』

【タツヤ】
「お前一体何者なんだよ!?」


俺はとうとう我慢できなくなり、校門でしたものと同じ質問をその生き物にぶつける


240 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/07(火) 21:43:06.13 ID:o/eYJLLp0


『一体何者なのか・・・か』


『その質問はむしろ僕の方からしたいくらいだよ』



【タツヤ】
「・・・は?」


『君は一体何者なんだい?何で僕のことが見えているんだい?』

【タツヤ】
「・・・はい?」


その生き物は俺の方を向いて、本当に不思議だというような口調で言ってきた

質問を質問で返され、混乱している俺の頭はますます混乱する

何で見えるのかって・・・こっちが聞きたいわ・・・

241 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/07(火) 21:44:23.55 ID:o/eYJLLp0




『僕の姿は才能のある女の子にしか見せていないんだ』




『見たところ才能の欠片も感じない』




『ましてや男の子である君が』




『見せようとしていない僕の姿を、どうして見ることができるんだい?』



242 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/07(火) 21:45:41.65 ID:o/eYJLLp0


【タツヤ】
「・・・何を言っているのかさっぱり分からないんだが・・・」


そいつが一方的に俺に向かって話してくる。しかし、その言葉の一つ一つが全く理解できない

才能?姿を見せていない?何の話だ・・・

頼むから中学一年生にも分かるように説明してくれ・・・



『その様子だと君自身にも分からないみたいだね』



俺の様子を見て、少し呆れたような口調で話すその生き物

訳が分からないのはこっちなのに、こんな扱いをされると少し泣きたくなってくる・・・

243 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/07(火) 21:47:06.07 ID:o/eYJLLp0


【ほむら】
「あまりその子に関わらないで」


と、そこで今まで黙っていたその人が口を開いた

その人は相変わらず、冷たい視線をその生き物に浴びせていた



『君は、やっぱり何か知っているんだね、ほむら』



【ほむら】
「あなたに話すようなことじゃないわ」ファサァ


そう言って、その人は自分の長い黒髪を片手で掻き揚げる

その仕草がどこか大人っぽい印象を与え――――――なんだか、凄く綺麗だと思った


『やれやれ・・・相変わらずだね、君も』


その生き物は嘆息をつくような素振りを見せると、再びこちらに向き直る


『それじゃあ、とりあえず自己紹介しておこうか』


【タツヤ】
「お、おう・・・」

244 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/07(火) 21:48:32.35 ID:o/eYJLLp0


『僕の名前はキュウ

【ほむら】
「インキュベーターよ」』


【タツヤ】
「え?」


そいつが自分の名前を言おうとした瞬間、暁美さんが口を挟んできた

そのせいか、只でさえよく分からない名前だったのを、俺は上手く聞き取ることが出来なかった


【タツヤ】
「インベーダー?」

【ほむら】
「インキュベーターよ・・・」

【タツヤ】
「(間違えたらしい・・・)」

【QB】
「・・・まあ、僕のことはQB(キュウべえ)って呼んでよ」

【タツヤ】
「キュウべえ・・・ねえ・・・」


変な名前だな、と俺は思った

だが、こんな変な生き物が喋っている事自体が、既に常識では考えられない状況だったのであまり驚かなかった

245 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/07(火) 21:50:24.40 ID:o/eYJLLp0


【タツヤ】
「・・・で、結局お前は一体何者なんだ?」

【QB】
「それは」

【ほむら】
「只の珍獣よ」


【タツヤ】    【QB】
「え?」    「えっ!?」



そいつ、キュウべえが自分のことを話そうとすると、再び暁美さんが口を挟む

確かにパッと見たら只の珍獣だよな・・・本人が一番驚いている気もするが


【QB】
『ちょ、ちょっとそれはいくらなんでも・・・』

【ほむら】
『この子に説明することなんてないでしょ』

【QB】
『まあ・・・そうなんだけど・・・』



【タツヤ】
「  ???  」


何か二人(一人と一匹?)で話している気がするが、俺には把握出来なかった
246 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/07(火) 21:51:20.01 ID:o/eYJLLp0


【ほむら】
「とりあえず、こいつは只の変わり者よ。気にしなくていいわ」

【タツヤ】
「はあ・・・・そう、ですか・・・」




【タツヤ】
「(それでいいんだろうか・・・)」

【QB】
「(納得いかない・・・)」



こいつの事はいまいち理解できなかったが、これ以上詮索する必要もないと俺は判断し

キュウべえ=只の珍獣

という方程式が俺の中で確立した

247 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/07(火) 21:54:53.96 ID:o/eYJLLp0


【タツヤ】
「あ、俺の名前は鹿目タツヤっていいます」


そして、俺はそこで初めてその人に向かって、自分の名前を名乗った

というか、俺は今まで自分の名前を名乗らずに話していたのか・・・

そう考えると、少し失礼だったかなと思えてくる


【ほむら】
「そう・・・」

【タツヤ】
「あの・・・あなたは『暁美ほむら』さんで良いんですよね・・・?」

【ほむら】
「・・・ええ、そうよ」


その人は肯定して小さく頷く

その表情からは、ついさっきの冷たいものは感じなかった


【タツヤ】
「なんか・・・カッコいい名前ですね」

【ほむら】
「・・・え?」



248 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/07(火) 21:56:27.92 ID:o/eYJLLp0


だからだろうか

さっきまでの緊張が幾分か取れた俺は、自分が感じたことをそのまま言葉にしていた


【タツヤ】
「なんだろう・・・そう、なんか「燃え上がれ!!」みたいな感じがして凄くいい名前だと思います」

【ほむら】
「そ、そう・・・ありがとう・・・」

【ほむら】
「・・・」

【タツヤ】
「・・・・?」


すると、暁美さんは一瞬驚いたような表情を見せると、その表情が少し曇ってしまったように見えた

ひょっとして、名前のこと気にしていたのかなと、俺も不安に思ってしまう


【ほむら】
「・・・ごめんなさい。あまり名前を褒められたことが無くて・・・」

【タツヤ】
「え?そ、そうなんですか」

【ほむら】
「・・・・名前負けしてるもの」

【タツヤ】
「そ、そんな事無いですよ。暁美さんは・・・!!」


とっさに、凄くかっこ良くて綺麗です!!・・・とまで言おうとして、俺は口を押さえた

いきなり良く知らない餓鬼にそんなこと言われたら迷惑だろう、と思ったのだ

・・・後は、少し恥ずかしかったからだ

249 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/07(火) 21:57:40.70 ID:o/eYJLLp0


【ほむら】
「・・・・って、似るものなのね」

【タツヤ】
「ふえ?」

【ほむら】
「いいえ、なんでもないわ」


暁美さんが下を向いて何かを呟いたようだったが、上手く聞き取れなかった


【ほむら】
「それで、あなたは何をしに来たの?」

【タツヤ】
「あ・・・」


暁美さんの言葉に、俺は此処に来た本来の目的を思い出す

そうだ、俺がこの珍獣についていってまでこの人に会いたかった理由は―――

250 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/07(火) 21:58:50.86 ID:o/eYJLLp0


【タツヤ】
「俺、暁美さんに聞きたいことがあるんです」


【タツヤ】
「だから、この間の河川敷でずっと暁美さんを待っていたんですけど」


【タツヤ】
「暁美さん、来なかったから・・・」


【QB】
「だから、僕がつれてきてあげたんだよ」ヒョコ


いつの間にか俺の肩に乗っていたキュウべえが、そう口を挟んできた

こいつ知っていたのか、と俺は少し気恥ずかしくなってしまう

というか勝手に人の肩に乗るな、珍獣
251 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/07(火) 22:01:12.84 ID:o/eYJLLp0


【ほむら】
「そう・・・・」


暁美さんは俺の話を聞き終えると、何処か遠くを見つめているように空を見上げた

それは、まるで何かを思い出しているかのように――――


【ほむら】
「・・・いつまでも外で話すのも、ね・・・」


【ほむら】
「とりあえず、あがって」


【タツヤ】
「え、いいんですか・・・?」

【ほむら】
「ええ、構わないわ」ガチャ・・・

【タツヤ】
「そ、それじゃあ・・・」



暁美さんは俺を招くようにドアを開ける

俺は暁美さんの後を追うようにして、部屋の中に入った―――――


252 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/07(火) 22:02:19.87 ID:o/eYJLLp0


【ほむら】
「あ、そうそう」

【タツヤ】
「?」

【ほむら】
「あなたは駄目よ」ヒョイ、ポイッ

【QB】
「ちょ」ヒューン

ドン!!(←走行中の車にぶつかる音)

【QB】
「」グテ・・




【タツヤ】
「・・・・・・」

【タツヤ】
「・・・・・暁美さん」

【ほむら】
「何?」

【タツヤ】
「・・・あいつ、車に轢かれましたが・・・」

【ほむら】
「あの生物(なまもの)はあの程度じゃ死なないから大丈夫よ」

【タツヤ】
「・・・」

253 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/07(火) 22:03:40.49 ID:o/eYJLLp0

――――――――――――――――――――


【ほむら】
「今、御茶を淹れるから。その辺に腰掛けて待っていてくれる」

【タツヤ】
「あ、すいません・・・」


暁美さんが台所で作業をしている間、俺は目線をキョロキョロと動かし、部屋を見回す

あまり人の部屋をジロジロと見回すのは良くないことだと、頭では理解しつつも・・・どうしても好奇心がその上をいってしまうのだった


【タツヤ】
「(此処で一人暮らししているのか・・・)」


暁美さんの部屋は、凄くさっぱりとした印象だった

女性が住んでいる部屋としては、あまりに物が少ないように思えたのだ(まあ、女の人の部屋なんてまともに入ったことないけど・・・)

何というか、生活するうえで必要最低限の物しか置いていない

そんな感じであった

254 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/07(火) 22:04:55.02 ID:o/eYJLLp0


【タツヤ】
「(あれ、これって・・・)」


そうして部屋を見回していると、俺は角にある机の上に何か置いてあるのを見つけた―――


【タツヤ】
「(写真・・・?)」


それは一枚の写真だった

花瓶などの装飾物は殆ど置いていない暁美さんの部屋であったが

何故かこの写真だけは綺麗な写真立てで飾られていた


【タツヤ】
「(あ、これって暁美さんかな・・・)」


その写真に写っていたのは、見滝原中学の制服を着た暁美ほむらさんだった


【タツヤ】
「(卒業生だって前に言っていたけど、本当だったんだ・・・)」


255 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/07(火) 22:06:28.05 ID:o/eYJLLp0



それは友達との写真なのか、暁美さんの他にも女の人が2人写っていた―――――





一人は赤い長い髪を頭上で纏めた女の人で、少し無愛想な表情で写真に写っていた





もう一人は優しそうな笑みを浮かべている、金髪を縦ロールにした女の人だった





その2人に囲まれて写っている暁美さんは無表情だけど――――それでもどこか嬉しそうな顔をしているように俺は思えた―――――


256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/07(火) 22:07:34.24 ID:Me2LjPvf0
どう考えてもその写真に違和感がある間があるんだろうな・・・・・
まどかがいたはずのところが・・・・
257 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/07(火) 22:07:47.51 ID:o/eYJLLp0


【タツヤ】
「(・・・あれ?)」


そうして写真を眺めていると、俺はある部分が気になった

それは、写真の片隅に載っている数字だ


【タツヤ】
「(日付が・・・えっ!?10年前!?)」


そう、その写真は今から10年前に撮られていたものだったのだ

つまり、暁美さんは見滝原に在学していたのは今から10年前のことで・・・

年齢は俺より最低でも10コ上だということだ


【タツヤ】
「(嘘だろ・・・)」


俺は信じられなかった

大人びているなと思ってはいたが、かなり若い風貌をしているので、全然そんな風には見えない

世の中、いくら年をとっても容姿が変わらない人がいるとは聞いたことあるけど・・・

正直、本当にいるとは思わなかった――――――

258 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/07(火) 22:09:45.32 ID:o/eYJLLp0


【ほむら】
「あまり人の部屋を物色するものじゃないわよ」

【タツヤ】
「うおわわっ!!」


写真に気を取られていると、いつの間にか後ろにお茶の準備をした暁美さんが立っていた

俺は大慌てで後ろを振り返り、部屋の真ん中にあるローテーブルの前に座り込んだ(正座で)

そして、あたふたと弁論(言い訳)を始める


【タツヤ】
「すすす、すいません!!!つい出来心で・・・!!」

【ほむら】
「・・・はあ、しょうがないわね」


別にかまわないけど、と暁美さんは嘆息をつきながら、俺の前にティーカップを置いてくれた

中には綺麗な色をした紅茶が淹れられていた


【ほむら】
「遠慮しないでどうぞ」

【タツヤ】
「あ、す、すいません。いただきます・・・」


俺は若干緊張しながら、とりあえず落ち着こうとティーカップに口を付ける

259 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/07(火) 22:11:14.26 ID:o/eYJLLp0


【タツヤ】
「・・・美味しい・・・」


暁美さんの入れた紅茶は、一口飲んだだけで思わずそう呟いてしまうほど美味しかった

香りとか舌触りとか・・・・味覚が疎い俺には良く分からないけど

とにかく美味しかったのだ


【タツヤ】
「この紅茶美味しいですね」

【ほむら】
「そう、ありがとう」


父さんや仁美さんが淹れる紅茶も美味しいけど、暁美さんが淹れた紅茶もそれらと何ら変わらないものであった

見たところ普通のハーブティーなのに・・・

やっぱり淹れる人によって、味って変わるものだな〜と、俺はしみじみ思うのだった


【タツヤ】
「暁美さん、紅茶淹れるの上手なんですね」


【ほむら】
「そうね・・・」


俺は思わず考えていること口から出してしまった

すると暁美さんは、ふうと息を吐きながら―――――

260 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/07(火) 22:12:50.99 ID:o/eYJLLp0


【ほむら】
「昔、学校の先輩に教えてもらったことがあるのよ・・・」


そんな言葉を口にする

何処か寂しそうな表情を浮かべ―――――机の上の“あの写真”に目を向けながら


【タツヤ】
「あ、暁美さん・・・?」

【ほむら】
「・・・ごめんなさい」


【ほむら】
「少し・・・昔のことを思い出していたの・・・」


俺が声を掛けると、暁美さんは此方を向いて応えた

顔に、ムリヤリ笑顔を作って――――

それでも、俺の頭の中はあの写真を見る暁美さんの顔で一杯になっていた

261 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/07(火) 22:13:59.41 ID:o/eYJLLp0


【タツヤ】
「その人は・・・」

【ほむら】
「え・・・?」

【タツヤ】
「その人は、きっと素敵な人なんでしょうね」


俺は少し悩んだ末、そんな言葉で暁美さんに返した

“その先輩って机の上の写真の人ですか”とか“その人は今何をしているんですか”とか

聞きたいことは沢山あったけど・・・

でも、俺は口から出ようとしたそれらの言葉を全て飲み込んだ

それは、なんだか聞いてはいけないような気がしたから・・・


そして、俺の言葉に少し驚いたような表情をしていた暁美さんは


262 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/07(火) 22:15:38.57 ID:o/eYJLLp0



【ほむら】
「・・・ええ」



やがて、そう言って小さく頷き




【ほむら】
「気が弱いくせに、変に強がるところがあって」



【ほむら】
「凄く、寂しがり屋な人だったけど」



【ほむら】
「それでも・・・あの人は立派な先輩だったわ」




言葉を一つ一つ紡ぐように、どこか懐かしげに、その人の事を話した

先輩に対しての建前とか、そんなものじゃなくて

心の底から、そう思っている―――――そんな重みのある言葉だと、俺は感じた

263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/07(火) 22:15:56.60 ID:Me2LjPvf0
なんかこのほむらがQBを険悪しているのに違和感ある。
あの最終回の場面じゃ仕事上のパートーナーぐらいの仲ぽかったけど・・・・・
264 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/07(火) 22:16:51.05 ID:o/eYJLLp0


【ほむら】
「・・・それで?」

【タツヤ】
「はい?」

【ほむら】
「あなた、私に聞きたいことがあるんじゃないの?」

【タツヤ】
「あ・・・、はい・・・そう、ですね」


部屋に入ったことから生まれた妙な緊張感から、徐々に開放されつつあった俺は

暁美さんのその一言をきっかけにして、本題に移ることにした


【タツヤ】
「・・・・」


俺は一呼吸置くために、紅茶を飲む

色々聞きたいことがあったので、どれから聞こうか迷った


【タツヤ】
「あの・・・」


それでも、俺は自分の中で一番引っかかっていることをまず第一に聞くことにした―――――


265 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/07(火) 22:18:26.25 ID:o/eYJLLp0








【タツヤ】
「あなたは、『まどか』のことを知っているんですか?」








266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/07(火) 22:21:33.93 ID:m5/zWNvAO
「だった」か…。過去形って事は
やっぱり、マミさんと杏子は…
267 :このSSにまどマギアフターとか略称を付けてみたり・・・ ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/02/07(火) 22:24:22.35 ID:o/eYJLLp0
今回は以上です。お疲れ様でした。

一応ほむほむの服装は漫画版のやつです。

そして、次回で1話が終わる予定になってます。

それでは今日はこの辺でノシ
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/07(火) 22:36:24.73 ID:jp9ETzTi0
乙乙!!
269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/08(水) 00:02:53.23 ID:vYywGArDO
良いとこで切りやがったな〜。乙乙
270 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/15(水) 21:01:44.82 ID:YRBtXNOd0
こんばんわです。いつも閲覧有難うございます。

今週末には続きを投稿できると思います。

つきましては、今更な感じですけど、今後についての注意書きです。

・キャラ崩壊(お前誰だ)
・独自解釈

以上になります。

それではまたノシ
271 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/02/20(月) 01:35:21.62 ID:epVdRYLw0
夜遅くにこんばんわです。

それでは続きを投稿します。
272 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/20(月) 01:39:17.84 ID:epVdRYLw0


あの写真の日付を見た時は、年齢と容姿のギャップに驚いた

だが、それと同時に俺の中の疑念が確信に変わった

この人は―――――子供の頃、河川敷で出会ったあの人なんだと

だったら、この人は『まどか』のことを知っている筈

ずっと昔から、俺の中で存在し続けている『まどか』

その『まどか』がいったい何者なのか、俺はどうしてもそれが知りたかった


【ほむら】
「・・・・」


俺が『まどか』のことを聞こうとすると、暁美さんは表情を引き締め、何か考え込むようにそのまま黙ってしまった

暁美さんに驚いたような様子はない

まるで、聞かれることが分かっているかのようだった


【ほむら】
「知ってるか、と聞かれれば・・・」


暁美さんは自分の紅茶に口を付け、一呼吸入れる

そして―――――


【ほむら】
「・・・・知ってるわ」

273 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/20(月) 01:40:33.61 ID:epVdRYLw0


【タツヤ】
「ほ、本当ですか!?」


やはり、この人は『まどか』のことを知っていた

俺の中での想像に過ぎなかった『まどか』は、やっぱり実際に居るんだ



【タツヤ】
「お、教えてください!!『まどか』って一体何者なんですか!?」


俺は、『まどか』が実際に存在したことに対しての興奮を抑えられなかった

そんな状態で、俺は暁美さんに詰め寄るようにして、再び『まどか』について聞き出そうとする


【ほむら】
「まどかは・・・」


そんな俺の様子に、暁美さん動じることはなく――――

274 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/20(月) 01:41:23.60 ID:epVdRYLw0


【ほむら】
「まどかは・・・・私の友達よ」



至って淡々とした口調で――――そう答えた



【タツヤ】
「へ・・・?友達・・・?」



【ほむら】
「ええ・・・」



暁美さんは両手を胸に当て、言葉を心の底から搾り出すようにして続ける


275 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/20(月) 01:42:19.42 ID:epVdRYLw0














【ほむら】
「私の、最高の友達」













276 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/20(月) 01:43:40.88 ID:epVdRYLw0

最高の友達―――――

そう言葉にした暁美さんの目は、嘆きや悲しみ、そんな感情に満ちているような気がした

【タツヤ】
「最・・・高、の・・・・?」


そして俺は、暁美さんの言葉の意味が良く分からず、首をかしげる

最高の友達・・・・・・・つまり、親友ってこと・・・?


【タツヤ】
「あの・・・それ、で・・・?」

【ほむら】
「・・・・・」


俺は若干ためらいながらも、暁美さんに他に何かあるかと聞く

しかし、暁美さんは再び黙り込んでしまった


【ほむら】
「・・・ごめんなさい。それ以上のことは言えないわ」

【タツヤ】
「え!?」


そして、少しの沈黙の後―――――

暁美さんの口から発せられた言葉は、このような表現を使うのは失礼ではあるが

結果的に言えば、俺の期待を裏切るようなものであった

277 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/20(月) 01:44:47.86 ID:epVdRYLw0


【タツヤ】
「な、何か他に知っていることって無いんですか!?」

【ほむら】
「・・・・ごめんなさい」

【タツヤ】
「そ、そんな・・・・」


暁美さんは「もう自分に話せることはない」と言うかのように

俺の言葉に対して、ただ「ごめんなさい」と繰り返すだけになってしまった


【タツヤ】
「そう、ですか・・・」


俺は暁美さんの言葉に落胆してしまう

ようやく見つけたと思った『まどか』の手がかりだったのだが

詳しいことを聞き出すことは出来なかった

278 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/20(月) 01:46:08.36 ID:epVdRYLw0


【タツヤ】
「・・・・」



【タツヤ】
「・・・・分かりました」


仕方なく、俺は引き下がることにした

もしかしたら、何か言いたくない訳があるのかもしれない

だったら、無理して聞き出すなんてことはしたくない

そう思ったから

とにかく、『まどか』という存在が、俺の妄想ではなかったと分かっただけでも、今回は良しとしようと

俺は自分に言い聞かせるのだった


【ほむら】
「質問は終わり?だったら・・・」

【タツヤ】
「あ!!
 ま、待ってください!!」


暁美さんが話を切り上げ、立ち上がろうとするのを俺は慌てて呼び止めた

まだ、暁美さんに聞きたいことがあったから

279 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/20(月) 01:47:50.94 ID:epVdRYLw0


【タツヤ】
「あ、あの、俺一週間前に変な化物に襲われて」

【タツヤ】
「殺されそうになったんですけど」


【タツヤ】
「そ、その時、誰かが助けてくれて・・・」

【タツヤ】
「そ、それって、あの・・・」


一週間前、俺は夜に外出した時、妙な霧に囲まれ、この世のものとは思えないような化物に襲われた

そして、俺は殺される寸前、誰かに助けられた

意識が朦朧とする中、俺の瞳に映ったのは・・・・不思議な服を来て、黒い翼を生やした暁美ほむらさんだったのだ


【ほむら】
「・・・・・・」


暁美さんは俺の言葉を聞きおわると、再び黙り込んでしまった

顔を隠すように後ろを向いてしまい、表情は分からない

しかし、やがて何かを決意したかのように――――

280 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/20(月) 01:49:09.42 ID:epVdRYLw0


【ほむら】
「・・・・忘れなさい」

【タツヤ】
「え?」

【ほむら】
「その日あったことは・・・・全部忘れなさい」


暁美さんは俺の方に振り返り、真剣な表情をしてそう言った

未だにあの日の出来事は、夢だったんじゃないかという思いも若干あったが

暁美さんのこの反応を見る限り、夢ではなかったんだと思った

でも、忘れろって・・・・・どういう・・・・


【ほむら】
「悪い夢を見ていたと思って・・・お願い」

【タツヤ】
「え?え?な、何でですか?大体あの化物なんなんですか!?それに・・・」




【ほむら】
「お願いだから・・・・!!」



【タツヤ】
「――――っ!!」

281 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/20(月) 01:50:22.15 ID:epVdRYLw0


俺は暁美さんにどういうことかと聞きだそうとする

しかし、暁美さんはそんな俺の問いを強い口調で制した

どこかクールな印象だった先程までとは違い、暁美さんは感情をむき出しにして俺に訴えかけてきた

その表情から、どこか鬼気迫るものを感じる


【ほむら】
「あなたを・・・・巻き込みたくないのよ・・・」

【ほむら】
「だから・・・」

【タツヤ】
「あ、暁美さん・・・?」


言い終わると、暁美さんは脱力して座り込んでしまった

そのせいか、言葉の最後のほうは上手く聞き取れなかった

俺はそんな暁美さんをみて、まるで自分が危ない橋の上を歩いているかのような感覚に陥っていた

282 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/20(月) 01:51:40.26 ID:epVdRYLw0


【ほむら】
「・・・・・」

【タツヤ】
「え・・・・と・・・・」


暁美さんはそのまま下を向いて黙ってしまう

俺もどう声を掛けて良いのか分からず、アタフタと周りを見回すだけになっていた


【ほむら】
「・・・ごめんなさい。取り乱してしまったわ・・・」

【タツヤ】
「あ、いえ・・・」


暫く沈黙が続いていたが、やがて暁美さんは小さく深呼吸をして、その場に座り直した

落ち着きを取り戻したのか、暁美さんの表情は先程までのものに戻っていた


【ほむら】
「・・・鹿目タツヤ」

【タツヤ】
「ふぇ!?は、はい!!」


すると突然、暁美さんにフルネームで名前を呼ばれた

俺は驚きのあまり、座っているにも関わらず、背筋を伸ばし、気をつけの姿勢をとる

挙句には素っ頓狂な声を挙げてしまった
283 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/20(月) 01:52:38.38 ID:epVdRYLw0





【ほむら】
「あなたは――――」







【ほむら】
「あなたは、自分の人生が尊いものだと思う?」







【ほむら】
「家族や友達を大切にしてる?」



284 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/20(月) 01:53:40.15 ID:epVdRYLw0


【タツヤ】
「え・・・・」




暁美さんの突然の質問に、俺は言葉を失ってしまった

いきなりどうしたんだろう?とか、なんでそんな事を聞いてくるのか?とか・・・

そんな想いが、頭の中をグルグルと駆け巡っていく

それでも、今日一番の真剣な表情で俺に問い質してくる暁美さんを見ると

自分の意見をちゃんと言わなければと、自分の中の、その問いに対する答えを探す

そして、俺は暁美さんの問いに応える―――――
285 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/20(月) 01:55:00.28 ID:epVdRYLw0



【タツヤ】
「大切・・・・ですよ」





【タツヤ】
「父さんも、母さんも、友達も・・・」





【タツヤ】
「誰一人として、居なくなって欲しくない、失いたくない」






【タツヤ】
「だって・・・その人達がいるから、今の自分があるんだって思うから」



286 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/20(月) 01:56:23.78 ID:epVdRYLw0


俺は言葉を言い終えると、ふぅと小さく呼吸をした


【タツヤ】
「・・・てぃひひ、なんか恥ずかしいですね」


本人達の前では決して口に出さないようなことを話し、気恥ずかしくなった俺は

顔を掻きながら暁美さんから目を逸らしてしまった


【ほむら】
「・・・・」


暁美さんはというと、一瞬驚いたような表情をしたが

直ぐに何かを考え込むようにして俯いてしまった

そして、ふっと息を吐き再び俺に視線を向けると


【ほむら】
「やっぱり、そっくりね・・・」

【タツヤ】
「ふぇ?」

【ほむら】
「・・・なんでもないわ」


暁美さんはよく分からないことを呟き、俺は思わず視線を元に戻す

そっくりって・・・・誰に・・・?

287 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/20(月) 01:57:43.36 ID:epVdRYLw0


【ほむら】
「もし―――」



【ほむら】
「もし、その言葉が本当だとしたら」



【ほむら】
「もう、私には関わらないほうが良いわ」


【タツヤ】
「え・・・?」

突然、暁美さんは俺に向かってそんなことを言い始めた


【ほむら】
「これ以上私に関われば・・・」



【ほむら】
「あなたの人生を、壊してしまうから・・・」


【タツヤ】
「あ・・・あの、言ってることがよく―――」


分からない、と言おうとした瞬間
288 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/20(月) 01:59:02.73 ID:epVdRYLw0


【タツヤ】
「いっ!?」


【ほむら】
「・・・・あなたと私では、住む世界が違うのよ」


暁美さんは、自分の手を俺の顔に向けて伸ばしてきた

その細くて長い指で、俺の頬を触れてくる

俺は、暁美さんのその行動に驚き、体を強張らせた

心臓はドキドキと煩く高鳴り、顔が熱くなってくるのが分かる


【ほむら】
「あなたは・・・」



【ほむら】
「あなたの世界を生きて」



【ほむら】
「お願い・・・・」


289 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/20(月) 02:00:39.36 ID:epVdRYLw0


暁美さんは先程の表情と違い、物腰柔らかそうな表情を浮かべ

まるで子供をあやすかのように、優しい口調で俺に語りかけてくる

だが、俺はその表情の中に、何か負の感情が混じっているように感じた


【タツヤ】
「は・・・はあ」


暁美さんのその表情に見とれてしまったからか

暁美さんの言っていることの意味がいまいち分かっていないにも関わらず

俺は反論することなく、腑抜けた返事を返すだけとなってしまった


【ほむら】
「・・・そろそろ日が暮れるわ」



【ほむら】
「もう、家に帰りなさい」


暁美さんが窓の外を見ながら、俺にそう言った


290 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/20(月) 02:01:36.96 ID:epVdRYLw0


【タツヤ】
「・・・・」



俺は少し考えた末



【タツヤ】
「・・・・・分かりました」



俺は暁美さんの言う事を素直に聞くことにした

まだ聞きたいことが沢山あったけど

これ以上、暁美さんの下に居てはいけないような気がしたから

それは、危ないとかそんな事じゃなくて

これ以上俺がここに居たら――――――――暁美さんが傷付くんじゃないかと

何故か、その時は思ったんだ―――――


291 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/20(月) 02:04:27.52 ID:epVdRYLw0


――――――――――――――――――――


【タツヤ】
「うわ、もう日が落ちる寸前だな・・・」


あの後、帰る準備を早々に済ませ、暁美さんの家を出た

暁美さんは玄関先まで俺を送り、「気をつけて帰るのよ」と声を掛けてくれた

いつの間にか時間は過ぎ、暁美さんの家を出る時には、もう夕方になっていた



【タツヤ】
「結局、これといった収穫は無かった気がする・・・」



俺は今日暁美さんから聞いたことを、頭の中で整理してみる

しかし、収穫あったとすれば、『まどか』が本当に存在していたことが分かったくらいだ

それが分かっただけでも十分なのだが、俺は何となく腑に落ちなかった

一週間前に俺に襲いかかってきたあの化物のことが、殆ど分からなかったからだ

でも、何となくではあるが、暁美さんが「自分に関わるな」といった理由は

あの化物にあるのではないかと俺は感じていた

292 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/20(月) 02:06:34.29 ID:epVdRYLw0


【タツヤ】
「最高の友達・・・・か」



ふと、そこで暁美さんの言葉を思い出す

『まどか』は自分の友達だ、という暁美さんの言葉を

最高の友達―――――その言葉の意味を、俺は良く分からない

でも、今改めて考えてみると

その言葉には、仲間とか親友とか、そんな言葉では比喩できないほど

何かとてつもなく重厚な想いが隠されているんじゃないか

そう思えてくる

293 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/20(月) 02:07:50.66 ID:epVdRYLw0


【タツヤ】
「俺にいるのかな・・・・『最高の友達』だって言える人が・・・」



我ながら友人は多いほうだと思う、親友と言える友達だって居ると俺は思っている

でも・・・そう例えば、その人の為に命を賭けられるかと聞かれれば・・・・

俺は、その問いに応えることは出来ないと思う

いつか俺にも・・・出来るのかな、自分の命すら差し出せると思えるような

『最高の友達』って奴が・・・・



【タツヤ】
「・・・そろそろ暗くなってきたな、早く帰ろ」



そんな事を考えている内に、夕陽は沈み空は闇に包まれ夜に変わっていく

俺は歩くスピードを上げ、さっきキュウべえに案内された道を戻る

そして、学校まで戻ると、俺はいつもの帰り道を歩き始めた


294 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/20(月) 02:08:40.88 ID:epVdRYLw0















『そっちに行ったら、また魔獣達に襲われちゃうよ?』















295 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/20(月) 02:10:42.63 ID:epVdRYLw0


【タツヤ】
「―――っ!?」


そこで突然、俺は自分に語り掛けてくるような声を聞く

その声は、昼休みと放課後の2回、キュウべえに話し掛けられた時と同じように

脳に直接伝わるものだった



【タツヤ】
「だ、誰だ!!」



俺はその声に驚きつつも、誰か居るのかと辺りを見回す





『上だよ、上』




【タツヤ】
「上?」


俺は脳に伝わる声を頼りに上を見上げ、再びキョロキョロと視線を動かした



【タツヤ】
「あ・・・」



そして俺の目は、道沿いに建っている住宅の屋根の上で止まる――――――

296 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/20(月) 02:12:00.26 ID:epVdRYLw0







「へぇ・・・やっぱり君、テレパシー通じるんだね」











そこには、足を空中に投げ出すようにして屋根の上に座り、俺を見下ろしている人がいたのだ

その人は、緑色の長い髪の毛を頭上で結った、見知らぬ女の人であった――――――


297 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/20(月) 02:13:20.25 ID:epVdRYLw0
――――――――――――――――――――


『あなたは――――』



『あなたは、自分の人生が尊いものだと思う?』



『家族や友達を大切にしてる?』




何故・・・あの時、私はあんな質問をあの子にしてしまったのだろう・・・

何を期待していたのだろう・・・

あの娘と・・・同じ答えを期待してしまったのだろうか


298 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/20(月) 02:15:03.82 ID:epVdRYLw0

【ほむら】
「だって・・・そっくりなのよ・・・・彼が、あまりにも・・・・」



慌ててソワソワする姿が、照れ隠しに笑う姿が




真剣な表情で私を見てくるその姿が



私は、どうしてもあの子の姿に、あの娘を重ねてしまう




あの子は・・・あの娘じゃないのに・・・・

299 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/20(月) 02:17:01.96 ID:epVdRYLw0


【ほむら】
「・・・どこまで罪を重ねれば気が済むのかしらね、私は」


ふと私は、机に飾ってあるあの子が見ていた写真に視線を向ける

『思い出作りだ』と言って撮った、あの写真を――――


【ほむら】
「私に彼女達と思い出を作る権利なんて、無いのにね・・・」



私は、彼女達に酷い仕打ちをし続けてきたのだから・・・



【ほむら】
「どうして・・・」



【ほむら】
「どうして私が、私だけが生き残ってるの・・・」



そう呟く自分の頬に、何かが流れるのを感じる

しかし、それが何なのか、今の私には分からない

だって、私は既に人ではないのだから・・・・
300 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/20(月) 02:18:47.48 ID:epVdRYLw0
















『最期くらい、ちゃんと先輩でいさせて、ね?』
















301 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/20(月) 02:19:25.25 ID:epVdRYLw0

















私は――――――思い出していた
















302 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/20(月) 02:20:36.98 ID:epVdRYLw0


















『お前と過ごした時間、悪くなかったぜ』

















303 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/20(月) 02:21:37.92 ID:epVdRYLw0



















あの子と話している内に、脳裏に呼び戻された、昔のことを――――


















304 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/20(月) 02:22:39.20 ID:epVdRYLw0




















『頑張って』



















305 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/20(月) 02:24:19.26 ID:epVdRYLw0


吹っ切れた筈だったのに・・・・割り切っていた筈だったのに



気付けば私は、その場に崩れ落ちていた


【ほむら】
「私は・・・私は・・・っ!!」


そして、自分の頬を流れる水に構うことなく、空を見上げて――――


【ほむら】
「いつになったら・・・・あなたの下に行けるの・・・?」




【ほむら】
「・・・まどかぁ」




私は叫ぶ

私以外、誰も居なくなった部屋の中で


306 :第1話「わたしの、最高の友達」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/20(月) 02:27:56.18 ID:epVdRYLw0


―――――でも、心の底では分かっているのだ


これは罰なのだ、と



私一人が生き残っているのも

私の身体の時間が、止まってしまっているのも



全てが私に科せられた、決して消えることの無い罰


仲間を見殺しにし続け、最愛の友人を守ることすらできなかった

私への――――
 



ttp://www.youtube.com/watch?v=fZneQCCnESU





魔法少女まどか☆マギカ〜After Story〜 第1話「わたしの、最高の友達」  fin
307 :次回予告みたいなもの ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/20(月) 02:30:05.79 ID:epVdRYLw0


「あなたを襲ったあの化物はね、『魔獣』っていうんだよ

 
 人間の恨みや妬み、そんな人の世の呪いから生まれた存在


 それで、私がその魔獣を退治して、この世界で暮らしている人達を守っている


 『魔法少女』なんだ」




第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」

308 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/02/20(月) 02:33:23.56 ID:epVdRYLw0
以上になります。お疲れ様でした。

後半グダグダですね・・・申し訳ない。

今回で1話は終了になります。

それでは第2話でお会いましょう。ではノシ
309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/20(月) 06:49:50.04 ID:GFLjJhcg0
投下乙です。
いつも楽しみにしてます、頑張ってください!
310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/21(火) 01:42:27.38 ID:p/6+OCnd0
乙。
おもしろいんだけど、空白多すぎて読みにくい
311 :>>1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/02/21(火) 21:22:09.31 ID:bNVIxx6a0
こんばんわです。コメント有り難うございます。

>>310さん
ご指摘ありがとうございます。確かに空白が多すぎましたね・・・。
次回からは気をつけます。

ではノシ
312 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/22(水) 03:12:29.99 ID:mFcZIqgbo
313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/28(火) 04:10:44.17 ID:XgItSxLWo
期待
314 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/03/03(土) 00:25:10.51 ID:gdyo5F0+0
こんばんわ>>1です。いつもコメ&閲覧有難うございます。

では、第2話を投稿させていただきます。
315 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/03(土) 00:27:18.33 ID:gdyo5F0+0
(前回のあらすじ)
謎の化物による襲撃で、瀕死状態になったタツヤは夢の中で再び『まどか』らしき人物に会う。

そして、朝起きればその時受けた筈の傷が全て消えていた。

タツヤはそのことを不思議に思いつつも、自分を襲ってきた化物のこと、また『まどか』のことを知るべく、河川敷で出会った女性を探すため、再びその場所に足を運んだ。

だが、女性を見つけることはできず、タツヤは途方にくれる。

しかしそこで、タツヤは謎の喋る白い生き物と出会い、その女性がいるというアパートまで案内される。

そこでその女性と再会し、彼女が「暁美ほむら」という名前であり、その白い生き物は「インキュベーター(キュウべえ)」と呼ばれている事を知る。

案内されたタツヤは、暁美ほむらに『まどか』について聞くも、彼女は「彼女は私の最高の友達」と答えるだけであった。

そして、帰りの道でタツヤは緑色の髪を頭上で結んだ少女に出会う――――

316 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/03(土) 00:29:02.44 ID:gdyo5F0+0

――――――――――――――――――――


【タツヤ】
「あんた・・・・誰だ?」


俺は屋根の上に女性が座っているという非常識な状況に内心は戸惑っていた

それでも、最近の非常識だらけの日常のせいで耐性が付いてきたのか、そんな内心を顔に出すことなく、俺はその人に対していた


「う〜ん、人に名前を聞くときは、自分が先に名乗るものだよ?」


俺の言葉に対して、その人は足をパタパタさせながら応える。


【タツヤ】
「う・・・」


その度にスカートがひらひらと舞い上がる。

そのせいで、その人のちょうど真下に位置する俺には、どうしてもスカートの中身がチラチラと見え隠れしてしまう。

317 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/03(土) 00:30:24.57 ID:gdyo5F0+0

「よいしょっと」

【タツヤ】
「いっ!?」


次の瞬間、その人は屋根の上から飛び降りてきた。

そのせいでスカートが完全にひっくり返り、只でさえ見えそうだったスカートの中身が丸見えになる。

俺はそれに気付き、慌てて目を逸らした。

・・・女の人のスカートの中身を、堂々と見ようとするほど俺には度胸は無いのだ。


「よっと・・・。ん?どうしたの?」

【タツヤ】
「ふえ!?」


心の中で誰かに言い訳をしていると、目の前に着地したその人がきょとんとした表情でこちらを見ていた。

俺はそれに気付き、身体をビクッとさせ、更には変な声まで出る。

というか、屋根の上から飛び降りて平気なのか・・・この人。
318 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/03(土) 00:31:58.63 ID:gdyo5F0+0

「あ、分かった。さては、スカートの中身が気になったんでしょ?」

【タツヤ】
「うぇ!?いいいいいいや、け、決してそんなことはっ」


その人に図星を付かれ、更に困惑した俺は完全にキョドりながら応える。


「でも大丈夫。スパッツ履いてるから見えても平気なんだよ、ほら」ピラッ

【タツヤ】
「うわああ!!!」


そう言って、その人は自分のスカートを持ち上げて見せてきた。

確かに・・・スパッツを履いているみたいではあった・・・。

だが、中学生男子にはそれでも直視するのが難しいくらいの光景であったことは、言うまでもない。


【タツヤ】
「分かった!!分かったから!!早くスカートを元に戻せ!!」


俺は片方の手で目を隠しながら、もう片方の手でスカートの端を摘んでいるその人の手を指差す。
319 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/03(土) 00:33:31.37 ID:gdyo5F0+0

「え、何で?」

【タツヤ】
「何でって、恥ずかしくないのかっアンタ!?」


「だってこれ下着じゃないから平気だよ?」ヒラヒラ


俺の訴えがよく分からないという顔をしながら、その人はスカートをパタパタさせながら首を傾げる。

うん、確かにスパッツは下着ではない。

下着では無い、けれども・・・俺には刺激が強すぎる。


【タツヤ】
「いいからスカートを元に戻してください!!お願いします!!!」


俺はヤケクソ気味になって、その人に向かって叫んだ。


「んー、まあいいけど」


そして、ようやくその人はスカートから手を離す。

それでも声を聞く限り、まだ納得していないようではあった。

天然なのか、ワザとなのか、俺にはその人の行動がよく分からない。

なんにしても、何だかよく分からない人に絡まれてしまったと俺は心の中で溜息を付いてしまうのだった。
320 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/03(土) 00:34:58.96 ID:gdyo5F0+0

【タツヤ】
「で、俺に何か用か?」


ようやくその人のことを直視できるようになった俺は、いきなり現れたその人に改めて不信感を募らせる。

俺はその人のことを警戒するように、身を強張らせ強めの口調で問いかけた。


「むう、命の恩人に向かってそんな言い方無いんじゃないのかなぁ」


俺の言葉使いが気に入らなかったのか、その人は不満そうな顔をしながらそう呟く。


【タツヤ】
「・・・は?」


しかし、俺にはその人の言っていることがイマイチ理解できなかった。

命の恩人って何だ?この人とは初対面の筈だけど・・・
321 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/03(土) 00:35:59.37 ID:gdyo5F0+0

「あ、でも気を失ってたから分からないか・・・」


その人は一人で納得するように、何かブツブツと呟いている。

言っていることの意味が分からず、俺は脳内で頭を抱えていた。

・・・とりあえず、あんまり関わらない方が良さそうだ。


【タツヤ】
「用が無いなら、俺はこの辺で・・・」


嫌な予感がした俺は、その人の横を通り抜けて家に帰ろうとした。
322 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/03(土) 00:37:24.32 ID:gdyo5F0+0

「はい、ストップ」グイ

【タツヤ】
「ぐぇ!!」バタン


しかし、俺はその人に後ろから制服の襟を捕まれ止められた。

襟だけを掴まれたせいで首が絞まり、俺は呻き声をあげながらその場に倒れる。


「さっきの話聞いてなかった?そっちは危ないって言ってるの」

【タツヤ】
「げほっげほっ・・・」


その人は、そんな俺を見下ろしながら呟く。

俺はというと、その場で咳き込み、その場に座り込んでしまっていた。


【タツヤ】
「さっきから何なんだよ・・・大体アンタ何者なんだ」


俺はそのままの状態で、その人を見上げながら問いかける。
323 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/03(土) 00:39:51.62 ID:gdyo5F0+0

「ゆま」

【タツヤ】
「は?」

「「アンタ」じゃなくて、私にはちゃんと「千歳ゆま」って名前があるの」

【ゆま】
「それから、あなた中学生でしょ?ゆまは高校生、17歳、あなたより年上なんだよ」

【タツヤ】
「はあ・・・」


千歳ゆま、その人は自分の事をそう名乗った。というか年上だったのか・・・。

見たところ身長は俺と同じか、少し高いくらいかではあった。

しかし、話し方が少し子供っぽかったので、自分より年齢が上だとは分からなかった。
324 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/03(土) 00:40:55.28 ID:gdyo5F0+0

【ゆま】
「分かった?『鹿目タツヤ』君?」

【タツヤ】
「っ!?何で俺の名前知ってるんだ!?」


その人が俺の名前を知っていたことに、俺は思わず驚きの声を挙げた。

名乗った覚えは無いのだが・・・一体どういうことなのだろうか。


【ゆま】
「この子に聞いたの」

【タツヤ】
「この子?」


その人はそう言って、後ろに視線を向ける。

するとそこには――――
325 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/03(土) 00:42:13.01 ID:gdyo5F0+0

【QB】
「やあ、また会ったね」ピョコ

【タツヤ】
「うあわ!!生きてた!!!」

【QB】
「勝手に殺さないでおくれよ・・・・」


――――あの白い生き物がその人の後ろから出てきたのだった。

耳からもう一つ耳が生えていて、金色のイヤリングをしている。

背中には赤い不思議な模様があって、小さな赤い目をしている白い生き物。

そう、名前は・・・確か・・・・。


【タツヤ】
「Q&Aだっけ?」

【QB】
「その発想はおかしいよ」


そいつは表情を一切変えずに、俺にそう切り返してきた。

てか、本当に生きていたんだな。確かに車に轢かれた筈なのに・・・。
326 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/03(土) 00:44:10.68 ID:gdyo5F0+0

【QB】
「僕の名前はキュウべえだよ」

【タツヤ】
「え、インキュベーターじゃないのか?」

【QB】
「覚えてるじゃないか」

【タツヤ】
「すまん。今思い出した」

【QB】
「訳が分からないよ・・・」


項垂れるようにしてそう呟くキュウべえ。

いや、訳が分からないのはお前の存在そのものだよ。


【ゆま】
「ははは・・・本当に見えるんだねぇ」


俺とキュウべえのやりとりを見ながら、その人は呟く。

何故か苦笑いを浮かべながら。
327 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/03(土) 00:45:46.86 ID:gdyo5F0+0

【タツヤ】
「アンt・・・千歳さんは、こいつと知り合いなんですか?」

【ゆま】
「まあ、そんなところかな。因みに、ほむらお姉ちゃんとも知り合いだよ」

【タツヤ】
「え、暁美さんとも・・・?」


その人、千歳さんの口から、暁美さんの名前が出てきた。

俺が先程まで一緒にいた『まどか』のことを知る、唯一の存在である暁美ほむらさん。

この人は暁美さんと知り合いなのだろうか。

この変な生き物(キュウべえ)とも知り合いみたいだし、本当にこの人は何者なのだろうか?
328 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/03(土) 00:46:46.39 ID:gdyo5F0+0

【ゆま】
「本当はほむらお姉ちゃんに用があってきたんだけど・・・」

【ゆま】
「家に行ったら、ほむらお姉ちゃんと君が玄関先に話してるところだったんだよねぇ」

【タツヤ】
「は、はあ・・・」


玄関先で話している時って、結構前の方から見られていたんだな。

というか、何処で見ていたんだろうか・・・。


【タツヤ】
「で、その千歳さんとインキュベーターが俺に何の用なんですか?」


暁美さんに用があるんだったら、俺が帰った後に会いに行けばいい筈だ。

それが、なんでわざわざこっちに来て俺に声を掛けてきたのだろうか?
329 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/03(土) 00:47:46.85 ID:gdyo5F0+0

【QB】
「君はさっきの話を聞いてなかったのかい?」

【QB】
「君の帰り道が危ないからって言ってるじゃないか」


俺の質問に対して、千歳さんの代わりにキュウべえが皮肉たっぷりな口調で応えた。

そこで、俺は千歳さんが冒頭で言っていたことを思い出す。

確かこの先が危険だとか、魔獣がどうとか・・・。

魔獣って・・・・何だろう?

色々疑問に思うことが出てきて、俺は軽く混乱していた。


・・・・・でもまあ、とりあえず
330 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/03(土) 00:50:56.94 ID:gdyo5F0+0

【タツヤ】
「フンッ!!」グリッ

【QB】
「ぎゅぶいっ!!」


この珍獣にイラッとしたので、俺はそいつを思いっきり踏みつけてやった。


【QB】
「な、何をするんだい!!僕は君にこんな事される覚えは無いよ!!」ジタバタ

【タツヤ】
「・・・・」グリグリ

【QB】
「離しておくれよ!!君がどうしてこんな事をするのか理解に苦しむよ!!」ジタバタ
331 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/03(土) 00:52:04.10 ID:gdyo5F0+0

【タツヤ】
「あえて言うなら、お前なんかウザイ」グリグリ

【QB】
「そんな理由でかい!?言っとくけど女の子はこんな事絶対にしないよ!!一部は除くけど!!」ジタバタジタバタ

【タツヤ】
「そうか、残念だったな。俺は男だ」グリリッ!!

【QB】
「ギュブりゃ!!!」


【QB】
「」チーン←大の字(うつ伏せ)


俺はその珍獣を思いっきり踏み付け、止めを刺す。

・・・動物愛護かなんかに睨まれないだろうか。

まあ・・・大丈夫だろ。こいつ変な生き物だし。
332 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/03(土) 00:53:17.73 ID:gdyo5F0+0

そのまま足でキュウべえを押さえつけながら、俺は改めて千歳さんに問う。


【タツヤ】
「あの、俺いまいち状況が掴めないんですけど・・・」

【ゆま】
「ほむらお姉ちゃんから何か聞いてないの?」

【タツヤ】
「へ?・・・・いや、特には」


暁美さんからは今の状況に関することを、俺は何も聞いていないと応えた。


【タツヤ】
「・・・・あ」

しかし、考えてみると、思い当たる節が一つだけあることに気付いた。

それは、あの化物のことである。

あの化物が一体何者なのか、暁美さんに聞いたものの何も応えてくれなかった。

ひょっとしたら、あれが千歳さんの言う『魔獣』なのであろうか・・・?
333 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/03(土) 00:54:30.12 ID:gdyo5F0+0

【タツヤ】
「いや、でも詳しいことは何も・・・」

【ゆま】
「はぁ、相変わらずだなぁあの人も・・・」


俺が自身無さ気にそう呟くと、千歳さんはどこか呆れ顔になりつつ溜息を付いた。

その後、何か考え込むように押し黙ってしまった。


【ゆま】
「(まだ魔獣は出て来てないみたいだし・・・)」

【ゆま】
「(少し説明してあげたほうが良いよね・・・)」

【ゆま】
「(私もこの子に聞きたいことあるし・・・)」


そして、考えが纏ったのか、千歳さんは再びこちらを振り返える。

その拍子に、ポニーテールにした緑色の髪の毛がゆらゆらと揺れた。
334 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/03(土) 00:55:50.58 ID:gdyo5F0+0

【ゆま】
「OKー。詳しいこと教えてあげるよ」

【ゆま】
「でも、ここじゃちょっとアレだから、場所変えよっか」

【ゆま】
「顔、貸してくれる?」


そう言って千歳さんは、俺に自分の後についてくるようにとジェスチャーする。

正直、俺はこの人の事をまだ信用した訳ではない。

それなのにホイホイとついて行って大丈夫かと、少し警戒する。

でも、この人が暁美さんと知り合いだという事実が、俺をどこか安心させていた。


【タツヤ】
「はあ、わかっ、りました・・・」


だから俺はそう応えて、千歳さんの後をついていくことにしたのだった。
335 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/03(土) 00:56:29.12 ID:gdyo5F0+0

【QB】
「・・・ゆま、僕を無視しないでおくれよ」ムク・・

【ゆま】
「キュウべえー、ついてこないと置いてくよー」

【QB】
「・・・・」トテトテ
336 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/03(土) 00:58:42.82 ID:gdyo5F0+0

‐‐‐‐‐‐交わした約束忘れないよ‐‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐‐目を閉じ確かめる‐‐‐‐‐‐

‐‐‐‐押し寄せた闇 振り払って進むよ‐‐‐‐


‐‐‐‐‐‐振り返れば仲間がいて‐‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐気がつけば優しく包まれてた‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐‐何もかもが歪んだ世界で‐‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐唯一信じれるここが救いだった‐‐‐‐‐



‐‐‐‐‐喜びも悲しみもわけあえば強まる想い‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐‐‐この声が届くのなら‐‐‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐きっと奇跡はおこせるだろう‐‐‐‐‐



‐‐‐‐‐交わした約束忘れないよ‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐‐目を閉じ確かめる‐‐‐‐‐‐

‐‐‐‐押し寄せた闇 振り払って進むよ‐‐‐‐

‐‐‐‐‐どんなに大きな壁があっても‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐‐越えてみせるからきっと‐‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐‐‐明日信じて祈って‐‐‐‐‐‐‐


‐‐‐‐‐‐‐ずっと明日待って‐‐‐‐‐‐‐


魔法少女まどか☆マギカ〜After Story〜 第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」
337 :1です ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/03/03(土) 01:04:35.66 ID:gdyo5F0+0
以上になります。お疲れ様でした。

千歳ゆま、17歳。身長は164センチくらい。

「ゆまちゃんは幼女だから良いんだろ!!馬鹿め!!」って人はごめんなさい。。。

大人版ゆまを描こうと頑張ったけど、上手く描けなかったのは秘密(笑)

ではまた次回ノシ
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/03/03(土) 03:53:34.12 ID:IHtBnvKxo
乙です
339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/03(土) 18:37:41.39 ID:Yn60l5+To
340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/03(土) 23:45:45.70 ID:Plinb4JXo

さーてどれだけ引っかき回してくれるのか
341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/04(日) 22:59:29.88 ID:2lTSkuZlo
なんだかタツヤが人の話をろくに聞かない嫌な奴に見えるんだが
342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/03/08(木) 01:56:01.44 ID:8DQPqgMAO
まあまどマギの中学生の大体は人の話ちゃんと聞いてないけどな
343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/03/11(日) 09:44:02.11 ID:j1Z4Hqmqo
中学生自体が話聞かない生物ですし
344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) :2012/03/13(火) 20:55:25.93 ID:udDf8uZ20
ゆまは生きてるのか
345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/13(火) 23:31:14.87 ID:o+tb/PO50
更新してるって信じてたの!信じてたのに裏切られたの↑
346 :1です ◆7F2DwKbdfg [sage]:2012/03/15(木) 03:01:58.10 ID:KcO3zGKDO
夜遅くにこんばんは。
最近、花粉症が酷くなってきた>>1です。

携帯から失礼します。

いつも閲覧&コメントありがとうございます。


お待たせしております。
次回の投稿は、今週末から来週頭辺りには出来ると思います(曖昧)。




余談ですが今日はまどマギPの発売日ですね、私は通常版を買う予定です。

このSSはゲームの影響を殆ど受けないと思うので、安心してプレイ出来ます(笑)


長くなってすいませんでした。それでは次回の投稿でノシ
347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/03/20(火) 16:29:35.19 ID:fwUDGomNo
まだかのう
明日でもう折り返しだよ?
348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/03/21(水) 18:06:02.90 ID:mQ+Ntpveo
行ってしまったわ・・・円Pの理に・・・
349 : ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/03/22(木) 02:00:28.70 ID:6Mp+6Q8j0
夜遅くにこんばんわ>>1です。いつも閲覧&コメありがとうございます。

予定よりも遅れてしまって申し訳ありませんでした。
350 :ミスったずぇ… ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/03/22(木) 02:03:43.26 ID:6Mp+6Q8j0
↑すみません(汗)

べ、別にゲームしてて遅れたわけじゃ(ry

それでは続きを投稿します。
351 :ミスったずぇ… ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 02:06:10.72 ID:6Mp+6Q8j0
――――――――――――――――――――

あの後、俺は場所を変えると言われ、見知らぬ道を歩いていた。

そして、途中でコンビニを見つけた千歳さんは、

「何か食べ物買ってくるねっ」

と言って、1人で中に入っていってしまった。

なので今は、いつの間にか復帰していたキュウべえと共に、千歳さんの帰りを待っている。


【タツヤ】
「はあ・・・」


俺は何でこんなことになったのか、と溜息を付く。

外で千歳さんの帰りを待っている内に、あの人に色々振り回されたせいで混乱していた頭が、徐々に落ち着きを取り戻す。

今考えてみると、最初に声を掛けてきた時、千歳さんは俺に「また襲われる」と言っていたような気がする。


352 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 02:08:07.48 ID:6Mp+6Q8j0


【タツヤ】
「(やっぱあの時のことかな・・・)」


また・・・と言われて俺が思い出すことは、やはり・・・


「ありがとうございましたー」

【ゆま】
「お待たせー」トットット・・


と、そこまで考えていると、千歳さんがレジ袋を持って戻ってきた。


【ゆま】
「はい、君の分」

【タツヤ】
「あ、ありがとうございます・・・」


千歳さんは、レジ袋の中から温かい肉まんを取り出すと、そのまま俺に差し出してきた。

俺は、若干戸惑いながらもそれを受け取る。

353 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 02:10:06.48 ID:6Mp+6Q8j0

【タツヤ】
「あ、今お金を・・・」ゴソゴソ

【ゆま】
「あはは、いいのいいの。お姉さんの奢りだよ」

【タツヤ】
「へ、いや・・でも・・」

【ゆま】
「いいってば。もう、年上の好意には素直に甘えとくもんだぞ」アーン、パク

【タツヤ】
「は、はあ・・・」ハム・・


自分の分の肉まんを頬張りながら、俺からお金を貰うことを拒む千歳さん。


【ゆま】
「とりあえずさ、身体はもう平気?」

【タツヤ】
「へ?身体・・・?」


そして、歩きながら何故か俺の身体の事について聞いてくる。


【ゆま】
「結構危なかったんだよー。君、もう少しで死ぬところだったんだから」


千歳さんの言葉に、何を言っているのだこの人は、と一瞬思った。

しかし、その後直ぐに一週間前の出来事が俺の頭をよぎる。

それは、あの化物にボロボロにされた筈の身体が、翌日には傷一つ付いていない状態にまで回復していた時の事だ。

354 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 02:11:57.43 ID:6Mp+6Q8j0

【ゆま】
「ま、その様子だと大丈夫みたいだね〜」


そう言って、千歳さんは前に向き直り、再び自分の肉まんを口にやる。

確かに、今俺の身体に異常な箇所はどこにもない、健康そのものだ。

しかし、そう考えると、あの日のことは本当に何だったのかと俺は頭を悩ませる。


【ゆま】
「君ってさー。ほむらお姉ちゃんとどういう関係なの?」

【タツヤ】
「ふぇ?」


千歳さんは再び此方に振り返り、そんな事を聞いてきた。

どういう関係と聞かれても・・・正直解答に困る。

昔会ったことがある・・・・昔馴染みとか?いや、違うな・・・。


【ゆま】
「いや、ほむらお姉ちゃんが自分の家に人をあげるなんて珍しいからさ」

【ゆま】
「基本的にあの人、他人と関わろうとしないし」

【QB】
「うん、皆無だよ」


他人と関わらない、か・・・。

確かに、ぱっと見たら、美人だけど、どこか冷たいような印象だったからな・・・。

他人を寄せ付けないような、そんなイメージだった。

355 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 02:13:40.74 ID:6Mp+6Q8j0

【ゆま】
「ひょっとしてカレシとか?」

【タツヤ】
「ぶー!!!!!」


そこで、千歳さんが突拍子もないことを言い出したもんだから、俺は肉まんを盛大に噴出してしまった。


【タツヤ】
「ち、違いますよ!!!」


俺は大慌てで否定する。

暁美さんとはついこの前話し始めたばっかりなのだ。

断じてそんな関係ではない。

・・・そう断言できるのが、どこか虚しい気がするのは・・・きっと気のせいだろう。


【ゆま】
「あ、そう?まあ、そうだよね。ほむらお姉ちゃんに限ってそれは無いよね」

【QB】
「100%ありえないだろうね」


・・・この人達は暁美さんにどんなイメージを持っているんだろう。

確かに、外見上はそんなイメージを感じもしなくはない。

でも、何となくだけど―――それが本当の暁美さんではないような気がする。

家で話した時の暁美さんは、どこか・・・寂しがっているような印象を受けたから――――――

356 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 02:15:49.22 ID:6Mp+6Q8j0

【タツヤ】
「・・・・・・」

【ゆま】
「も〜そんなに警戒しなくても大丈夫だよ」


千歳さんは俺の態度を見て、不満そうな口調で訴えてくる。

未だにこの人のペースについて行けてない俺は、無意識に千歳さんとは少し距離を取って歩いていたのだ。


【ゆま】
「別にとって食うわけがないんだから」

【タツヤ】
「あ、いや・・・」


確かに、今のところ俺に危害を加えるような素振りはない。

でも、素性のしれない人ということで、俺はどうしても警戒してしまうのだった。

暁美さんの時は平気だったのに・・・まあ、あの人は昔に一度会っているからな・・・


【QB】
「付いて来てる時点で、警戒するだけ無駄だと思うけどね」キュップイ

【QB】
「とりあえず、君に危害を加えるつもりはないから安心してよ」


そして、千歳さんの隣を歩いているこの珍獣にまでこんなことを言われる。

・・・それにしても、コイツの言葉にいちいちイラッとくるのは何故だろうか。

357 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 02:17:38.54 ID:6Mp+6Q8j0

【QB】
「(でも、ゆま。僕としては彼を巻き込むのは賛成しかねるよ)」

【ゆま】
「(へ?なんで?)」

【QB】
「(だって何のメリットも無いじゃないか、彼は僕と契約出来ないんだよ?)」

【ゆま】
「(相変わらず契約の事しか頭に無いんだね〜)」

【QB】
「(いや、それが僕の役割だからね・・・・。それに・・・)」

【ゆま】
「(それに?)」

【QB】
「(・・・いや、何でもないよ)」


358 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 02:18:29.97 ID:6Mp+6Q8j0







【QB】
「(それに・・・多分、ほむらが怒るよね・・・)」

359 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 02:20:23.97 ID:6Mp+6Q8j0

――――――――――――――――――――


【ゆま】
「ま、悪いようにはしないって」

【タツヤ】
「へ?」


暫く沈黙が続いていると思っていたら、千歳さんが急に言葉を発したので、俺も反応する。


【ゆま】
「あ、ううん。こっちの話」


俺の声に気付いた千歳さんは、振り返りながらそう呟く。

よく分からないけど・・・あの珍獣と何か話していたようだ。

昼から薄々気付いていたが、どうやらあの珍獣を経由することで、心の中で会話が出来るらしい。

・・・・そう考えると・・・なんかもう、ファンタジーだな・・・

俺は今更になって、この非常識な状況を改めて再確認するのだった。

360 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 02:21:04.49 ID:6Mp+6Q8j0

【QB】
「ところでゆま、僕には何か食べ物ないのかい?」

【ゆま】
「え?無いよ?」

【QB】
「え」

【ゆま】
「いつも餌あげてるでしょ?」

【QB】
「いや、アレは餌じゃなくて・・・」

【ゆま】
「贅沢言わないの」

【QB】
「・・・・」

361 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 02:24:28.14 ID:6Mp+6Q8j0

――――――――――――――――――――


【ゆま】
「うん、この辺で良いかな」


あれから暫く歩いた俺たちは、町外れの工場跡地に辿り着いた。

周辺には暗くなったせいか人は見当たらない。

確かに此処なら話を誰かに聞かれることはないだろう。


【タツヤ】
「あの〜・・・」

【ゆま】
「ん?何?」


その場所に到着すると同時に、俺は千歳さんに話しかける。

自分の中にある疑問について、ひとつ聞いておきたかったから。


【タツヤ】
「さっきから千歳さんの言ってる『魔獣』って、人型の化物の事ですか?」


そう、千歳さんの口から随所に出てくる『魔獣』という言葉。

それが一体なんなのかを確認したかったのだ。

362 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 02:25:57.44 ID:6Mp+6Q8j0

【ゆま】
「ああ、やっぱりそこから説明しないと駄目か〜」

【ゆま】
「本当にほむらお姉ちゃん何も言ってないんだなあ・・・」ハア


そう言った千歳さんは、大きく溜息を付く。


【ゆま】
「・・・コホン。うん、そう。君が襲われた奴のこと」


そして、咳払いをすると、千歳さんは俺の質問に答えてくれた。

やはり、『魔獣』という言葉はあの化物のことを指していたようだ。


【タツヤ】
「それで、なんで俺が襲われたってこと知ってるんですか?」


あの時、あそこには俺以外人はいなかったように思えたのだが・・・


【ゆま】
「ああ、それはね」

【ゆま】
「その日、ほむらお姉ちゃんが私の所に来たの」

【ゆま】
「瀕死状態の君を抱きかかえてね」

363 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 02:28:01.86 ID:6Mp+6Q8j0

【タツヤ】
「え・・・」


俺は千歳さんの言葉に声を失う。

暁美さんが・・・俺を千歳さんの所に、運んだ・・・・?

え・・・でも、なんで・・・?


【ゆま】
「さっき言ったでしょ?危なかったって」

【タツヤ】
「いや、でも・・・次の日には身体は元通りに治ってて・・・」


そうだ、この人は今、俺が瀕死状態だったと言った。

そして、ついさっきは死にかけていたとも言っていた・・・。

だったら、先程も思ったことだが――――――

364 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 02:28:43.06 ID:6Mp+6Q8j0





【ゆま】
「うん、私が治してあげたの」

365 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 02:29:53.44 ID:6Mp+6Q8j0



その時受けた傷は一体どうしたという・・・・・・・・・の・・・・・・








・・・・・・・え?


366 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 02:32:16.46 ID:6Mp+6Q8j0

【タツヤ】
「・・・・・は?」

【ゆま】
「だから、私が治してあげたの」

【ゆま】
「君が魔獣から受けた傷を全部」

【ゆま】
「結構大変だったんだから」


・・・・え?何?それってどういう・・・・

多分、骨とか色々な部分が破壊されていて、ボロボロになっていた俺の身体を・・・?

一晩で・・・治した・・・だと?

俺は訳が分からず、脳内がまるで迷路に迷い込んでしまったかのような感覚に陥っていた。


【タツヤ】
「・・・・アンタ何者だ?」


そんな混乱している中でも、俺はなんとか言葉を搾り出す。


367 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 02:34:06.87 ID:6Mp+6Q8j0


【ゆま】
「あ、まだ言ってなかったね」




しかし、千歳さんの口から出てきた答えは――――――





【ゆま】
「私、『魔法少女』なの」




そんな俺の思考回路を停止させるには十分すぎるくらい…とんでもないものだった。



368 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 02:35:59.44 ID:6Mp+6Q8j0

【タツヤ】
「・・・・・・・・・HAI?」


沈黙・・・・・・・・・。

…エ?コノヒトハナニヲイッテイルノダ・・・・?


【タツヤ】
「・・・・すいません。もう一度お願いします」

【ゆま】
「私ね『魔法少女』なんだ」

【タツヤ】
「」


・・・・。


ぎゅー。


【QB】
「…どうして僕の両耳を引っ張るんだい?」

【タツヤ】
「…夢でも見てるのかと思って」

【QB】
「それを調べたいなら、その行動は自分自身にとるべきじゃないかな…」

【タツヤ】
「…言われてみれば、確かにそうだな…」


俺はそう言って、キュウべえの耳を離す。

そんな当たり前のことすら考えられないくらい、俺の思考回路はオーバーフローしていたのだった。

369 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 02:39:51.33 ID:6Mp+6Q8j0

【QB】
「それに、これは夢ではないし、彼女が言ってることも真実だよ」


キュウべえは俺から離れると、千歳さんに近づき肩に飛び乗る。

そして、話を続けた。


【QB】
「彼女は僕と契約した『魔法少女』、君を襲った『魔獣』を狩る者さ」

【タツヤ】
「契…約…?」


思考回路を修復しつつ、俺はキュウべえの話に耳を傾ける。


【QB】
「うん、僕はね君達の願いを何でも一つ叶えてあげられるんだ」

【QB】
「でも、その引き換えとして女の子達に『魔法少女』になってもらってるんだよ」

【QB】
「『魔獣』と戦ってもらう為にね」


いまいち現実性に欠ける話をされ、俺は酷く困惑する。


【タツヤ】
「願いを叶える?」

【QB】
「そうだよ、何だって構わない。どんな奇跡だって起こしてあげられるよ」


何でも……願いを……叶える…?

370 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 02:41:49.81 ID:6Mp+6Q8j0

【タツヤ】
「お前が…か?うさんくせぇ…」

【QB】
「いや、本当だよ」


キュウべえはそう言うけど、俺にはとてもじゃないけど信じられなかった。

こんな訳が分からない珍獣に、そんな力があるとは到底思えなかったからだ。


【QB】
「まあ、君は無理だけどね」

【タツヤ】
「あ゛?」

【QB】
「だって君には才能が無いからね」

【QB】
「大体男の子だろ?君は」


確かに男は魔法少女になれないな。

男だったら魔法少年ってところだろうか。

…いや、なりたくないけど。

371 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 02:43:26.97 ID:6Mp+6Q8j0

【タツヤ】
「お前どっかいってろ」ヒョイ、ポイ

【QB】
「ちょ」キュップイー


なんだか面倒くさくなった俺は、キュウべえの耳を掴んで放り投げる。

…うん、あんな珍獣がそんな能力持っているわけが無い。


【タツヤ】
「…しかし、本当にファンタジーだな…」

【ゆま】
「ははは、まあ普通はそう思うよね」


俺が思わずそう呟くと、千歳さんは苦笑いを浮かべる。

…うん、まるでゲームやアニメの世界に入っているような気分だ。


【タツヤ】
「え、じ…じゃあ、ひょっとして暁美さんも…?」


ふと、そこで暁美さんのことが俺の頭をよぎった。

あの人が助けてくれたってことは…あの人も…やっぱり…。

372 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 02:45:06.10 ID:6Mp+6Q8j0

【ゆま】
「うん、あの人も魔法少女だよ」


そうか、やっぱりあの人も…。

あの時の暁美さんのあの姿は、魔法少女としての姿だったという訳か。

そう考えると、なんとなく納得がいく。

…いや、それにしても…。


【タツヤ】
「魔法『少女』…」

【ゆま】
「こらそこ、『少女』を強調しないの」

【タツヤ】
「…すいません」


触れてはいけない所だとわかりつつも、どうしても気になってしまう…。

でも、だとすると暁美さんは―――――どれくらいの間、あの化物と戦ってきたというのだろう…。

きっと、長い間『魔法少女』として戦ってきたんだろうな…。

373 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 02:45:57.81 ID:6Mp+6Q8j0

【ゆま】
「…まあ、あの人の場合、身体は中学生のままなんだけどね」ボソ・・

【タツヤ】
「へ?」

【ゆま】
「うううん、こっちの話」


千歳さんが最後に小さな声で何か言ったような気がしたけど…俺は上手く聞き取ることが出来なかった。

374 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 02:47:45.23 ID:6Mp+6Q8j0

【タツヤ】
「それで、結局『魔獣』って奴は一体なんなんですか?」


俺は、今の状況をなんとか受け入れようと努力しつつ、話を続ける。

突拍子もない話だけど…実際に俺はその『魔獣』に襲われた訳だし…。

これまでのことも、全部辻褄が合ってしまうのだ。


【ゆま】
「『魔獣』っていうのはね」

【ゆま】
「人間の恨みや妬み」

【ゆま】
「そんな人の世の「呪い」から生まれた存在なの」

【タツヤ】
「呪い…?」


テレビなんかでよくやっている、人形に釘を打ち付けて呪いをかけてやるって奴だな。

あの人が嫌いだとか…憎いだとか…そういう感情のことか。


【ゆま】
「それで、私がその魔獣を退治して、この世界で暮らしている人達を守っている」

【ゆま】
「『魔法少女』なんだ」

375 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 02:48:53.78 ID:6Mp+6Q8j0

千歳さんは胸を張って、どこか誇らしげに宣言する。

人間を守る…か。

本当に…なんとも現実味のない話だな。

…でも、威張って言えることなのだろうか、17歳で魔法少女って…。

でも、暁美さんのこともあるし、そこはあまり突っ込んで考えないほうが良さそうだ…。


【タツヤ】
「つまり、人のマイナスな感情があの化物を生み出していると…」

【ゆま】
「そう、そんな感じ。うん、中々物分りが良くてよろしい♪」

【タツヤ】
「ははは…」


千歳さんの軽い口調に、俺は苦笑いを浮かべる。

楽観的というか…なんというか…。


この人を見ていると、こっちの調子が狂ってしまいそうだった。

376 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 02:50:15.25 ID:6Mp+6Q8j0

【タツヤ】
「う〜ん…」

【ゆま】
「何?まだ信じられない?」

【タツヤ】
「いや…そういう訳じゃないんですけど…」


千歳さんが嘘を言っているようには見えないし、俺も最近のことを考えれば納得がいく。

しかし、そう言うものの、やはり現実味が感じられないというのも事実だった。

『魔獣』に『魔法少女』か…。

377 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 02:51:23.55 ID:6Mp+6Q8j0

【QB】
「やっぱり、男の子はその手の話をあまり信じないんだね」

【QB】
「女の子なら今の時点で目を輝かせているところだよ」


そこで、いつの間にか居たQBが話に介入してきた。


【タツヤ】
「どっかいけと言った筈だが」

【QB】
「そんなこと僕が聞く義理は無いよ」


もう少し遠くに投げてやれば良かった…。


【QB】
「それよりもゆま、そろそろ…」

【ゆま】
「うん、そうだね」


キュウべえの言葉で何かに気付いたのか、千歳さんは視線を俺とは違う方角に向ける。

あの方角は…見滝原中学の方角、つまり俺達が歩いてきた方角だ。

378 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 02:53:15.58 ID:6Mp+6Q8j0

【QB】
「瘴気があの辺を覆い始めた、魔獣が現れるよ」

【タツヤ】
「瘴気…って、え?まじか?」


あの化物が…また現れるのか…。

流石にこの時間、学校に人は残ってないだろうけど…。


【ゆま】
「そうだ、信じられないならさ」

【ゆま】
「直接自分の目で確かめればいいんじゃない?」

【ゆま】
「どうせ、君を家まで送り届けなきゃいけないんだし」


まるで名案を思いついたかのように、手をポンッと叩きながら千歳さんは俺に提案してくる。


【タツヤ】
「……え?」


一瞬何を言っているのか分からなかった俺は、そんな間抜けな声を出す。

379 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 02:54:45.98 ID:6Mp+6Q8j0

【タツヤ】
「え?え?ち、ちょっと…」

【ゆま】
「よっと」


俺がしどろもどろになっているのを気にすることなく、千歳さんは何故か左手にしてある指輪を外した。


【ゆま】
「いい?よく見といてよ」





――パアァァア――





【タツヤ】
「――――えっ!?」


突如、指輪が光り始める。

そして―――――その指輪は緑色に光り輝く宝石に変わった。


【タツヤ】
「なんだ…これ…」


俺はその光り輝く宝石を見ながら、思わずそう呟いた。

380 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 02:55:52.55 ID:6Mp+6Q8j0

【タツヤ】
「なんだ…これ…」


俺はその光り輝く宝石を見ながら、思わずそう呟いた。


【ゆま】
「これはね『ソウルジェム』っていうの」

【タツヤ】
「『ソウルジェム』…?」

【ゆま】
「そ、魔法少女の力の源」


千歳さんは自分の手の平にその宝石を乗せ、俺に見せてくる。

まるで何かの卵みたいだ。

ふーん…これが魔法少女の…

と、その時だった――――

381 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 02:57:18.01 ID:6Mp+6Q8j0





――――――――ズキッ






382 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 02:58:38.18 ID:6Mp+6Q8j0

【タツヤ】
「痛っ!!」

【ゆま】
「え?」


『ソウルジェム』とやらを見ていると、突如鈍器で殴られたかのような痛みが頭を襲う。

それは、一週間前に感じた頭痛の時と同じものだった。


【タツヤ】
「なんだ…また…」ズキズキ


最近は頭痛なんて起きていなかったのに…。

まるで―――――この宝石に反応したみたいだ。


【ゆま】
「だ、大丈夫?」


俺の突然の変化に慌てたのか、千歳さんが声を掛けてくる。


【タツヤ】
「あ…すいません。もう、大丈夫です」

【ゆま】
「ほ、ほんと…?」


幸いその頭痛は長く続くことなく、俺は千歳さんの言葉にそう応えた。

本当に何なんだよ…この頭痛…。

383 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 03:00:51.10 ID:6Mp+6Q8j0

【QB】
「ゆま、少し急いだほうが良い。魔獣達が現れ始めた」


そうしていると、何かを感じ取ったのかキュウべえが俺達の間に入り込み、千歳さんに話しかける。


【ゆま】
「あ、うん。そうだね」


千歳さんも何かに気付いたのか、キュウべえにそう頷いた


【ゆま】
「じゃ、気を取り直して」

【ゆま】
「私が『魔法少女』だって証拠見せてあげるよ」

【タツヤ】
「ふえ?証拠?」


そういって千歳さんは集中するように、目を瞑る。

え?証拠って、何だy
384 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 03:01:55.64 ID:6Mp+6Q8j0

【ゆま】
「えい!!」


――パアァァアアアアア――


【タツヤ】
「うわっ!?」


次の瞬間、千歳さんの掛け声に反応したのか、ソウルジェムが光を発する。

俺はあまりの眩しさに、一瞬眼を閉じて怯んでしまった。

そして、何事かと思い、恐る恐る瞼を開いてみる。

すると…そこには―――――

385 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 03:02:45.00 ID:6Mp+6Q8j0









【ゆま】
「♪」ニャンッ





―――――猫耳をつけた千歳さんが立っていたのだった。


386 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 03:04:45.34 ID:6Mp+6Q8j0

【タツヤ】
「(゚д゚)…」


俺は千歳さんの姿に言葉を失った。

多分、「開いた口が塞がらない」とはこのことを言うのだろう。

そして、この時の俺は、本当に間抜けな顔をしていたと後で思うのだった。


【ゆま】
「…い、お〜い、大丈夫〜」ブンブン

【タツヤ】
「…はっ!!」


千歳さんが顔の目の前で手を振って、俺はようやく意識を取り戻した。

目の前にいる千歳さんに目を向けると…やっぱり猫耳だった。

正式には、猫耳のような白い帽子であるが…。

そして、全体的に髪の毛の色と同じ緑を基調とした衣装。

上は、肩を出したノースリーブタイプの服装で、下は履いているスパッツが少し見えるくらいの短めのスカート。

胸の部分を少し大きめのリボンで装飾し、首から十字架のようなアクセサリーを掛けている。

その他にも手袋や靴など、どこかメルヘンチックな格好になっていたのだった。

387 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 03:06:13.15 ID:6Mp+6Q8j0

【タツヤ】
「…コスプレに早着替え?」

【ゆま】
「違うよっ」


いや、勿論そんなことは分かっている。

しかし、俺の心は現状を受け入れることを拒否していた。


【タツヤ】
「なんだ…これ…」


本当になんだこれ…。

何、この状況…正直もうお腹一杯だよ…。


【ゆま】
「よーし、じゃあ魔獣をやっつけに行こっか!!」


脳内が収拾付かない状況になっている俺を気にすることなく、千歳さんはそう高らかに宣言する。

388 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 03:07:50.39 ID:6Mp+6Q8j0

【ゆま】
「じゃあ、ちょっとジッとしててね」

【タツヤ】
「え?」


千歳さんはそう言って、何故か俺の後ろに回りこむ。

そしてあろうことか――――



むぎゅ




【タツヤ】
「 ! ! ! 」


俺を後ろから抱きかかえてきたのだ。


【タツヤ】
「な…ななななな何してんだアンタ!!」

【ゆま】
「え?いや、普通に歩いて行くのだと遅いから一気に移動しちゃおうかなって」

【ゆま】
「だから、少しの間だけ動かないでね」

【タツヤ】
「ええ!?」

389 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 03:09:22.08 ID:6Mp+6Q8j0

俺の腹回りに手を伸ばし、がっちりホールドした状態で千歳さんは言う。

う、動くなって言われたって…。


むぎゅむぎゅ


せ…背中に…な、何か柔らかい感触ががががっががggg


【ゆま】
「それじゃ、いくよ」ピョン

【タツヤ】
「うわわっ!!」


千歳さんは俺を抱きかかえたまま、空高くジャンプした。

そして、住宅地の屋根を飛び移りながら移動し始める。

とんでもない身体能力だ。

これが、魔法少女の力という奴なのだろうか…。

390 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 03:11:25.82 ID:6Mp+6Q8j0

【タツヤ】
「ち、ちとせしゃん!?お、俺自分の足で行きますからっ!!」


俺は、呂律の回ってない状態で千歳さんに訴える。

今の俺に背中にある感触を感じるほどの余裕は無かった。

千歳さんに抱きかかえられた状態の俺にとって、この移動は遊園地の絶叫系アトラクションとは比べ物にならないほどのスリルだったのだ。

それに一般男子が、あまり体格の変わらない女の子に後ろから抱きかかえられているという状況は、少し恥ずかしかった。


【ゆま】
「う〜ん」


俺の訴えに反応したのか、千歳さんが何か考え出した。

いや、考える前に一回止まって拘束を解いてくれ…。


【ゆま】
「その「千歳さん」って呼ばれ方、なんか違和感あるんだよね」

【ゆま】
「ゆまで良いよ」

【タツヤ】
「えっ!?い、いや、そうじゃなくて…!!」

391 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 03:13:15.03 ID:6Mp+6Q8j0

千歳さんの見当違いな発言に、俺は再び声を荒げる。

この人は俺の話を全く聞いていなかったようだ…。


【ゆま】
「じゃあ、私は君のことを「たっくん」って呼ぶね」

【タツヤ】
「た…!!」


たっくんって…確かにガキの頃はそう呼ばれていた気がするけど…。

でも中学生になってその呼ばれ方は…少し、恥ずかしい…。

って!!そうじゃなくて!!!

392 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 03:14:07.13 ID:6Mp+6Q8j0

【タツヤ】
「人の話を聞けぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!!!!」

【ゆま】
「あぁ、駄目だよたっくん。動いたら危ないよっ」

【タツヤ】
「たっくんって言うなぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!!」


結局、そんな感じのやりとりを続けながら、俺は千歳さんに運ばれ続けるのだった――――

本当にこの人のペースにはついていけない…。


393 :以下オマケみたいなもの… ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/22(木) 03:22:16.69 ID:6Mp+6Q8j0
(BATTLE!)
千歳ゆま(後期) 

Lv.45 因果値:170

HP:550/550 (C)
MP:670/670 (S)
STR(物攻):135 (S)
CON(射攻):118 (A)
VIT(防御):56 (E)
DEX(命中):103 (B)
AGI(回避):42 (E)

(SUB)
鹿目タツヤ(青年期)

因果値:???

394 :gdgdやないか… ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/03/22(木) 03:25:37.27 ID:6Mp+6Q8j0
以上になります。お疲れ様でした。

>>380はミスです。すいません。。。


次回はゆま戦闘パートになります。

それではまたノシ
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/03/22(木) 11:57:29.65 ID:aKQoazaAO


因みにほむたつは確定なのかね?
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/03/22(木) 11:58:21.32 ID:aKQoazaAO
別に変わったっていいのよ?(チラッ
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/03/22(木) 19:05:57.64 ID:T8KoBtkj0
乙!続きが楽しみだ。
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/03/22(木) 19:39:56.09 ID:AHpzSEGzo
乙 ゆまちゃんprpr
399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2012/03/23(金) 17:45:24.05 ID:8Zt4EnDI0
今日くるかな?(ワクワク
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/03/23(金) 17:47:11.34 ID:8Zt4EnDI0
ageてしまった・・・スミマセン
401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/03/24(土) 02:48:37.36 ID:7kVufGqro
今更見つけた
ほむたつ俺得
期待
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/03/26(月) 03:15:43.47 ID:i+iSDK/AO
正確にはタツほむやで
男女の順だし。
403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/26(月) 16:26:58.22 ID:fsUxcYgVo
>>402
受け攻めの概念は性別を凌駕するものだ。
ほむタツでなんの問題もない
404 :近況報告みたいなもの ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/03/29(木) 01:27:46.77 ID:ZvN/vaNs0
夜遅くにこんばんわ>>1です。いつも閲覧&コメ有難うございます。

一応このSSのメインはタツほむです、一応(意味深)

最近、リアが忙しくなりがちであまり筆が進みません。

なので、気晴らしにこのSSのwiki弄ったり、落書き描いたりしてます。←この流れおかしいよ

来週の土日位には何とか投稿したい・・・

とりあえず、ゆま(魔法少女)の絵晒しときます。
ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org2805174.jpg.html

では来週会えたら会いましょうノシ

405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/29(木) 10:25:14.37 ID:H7iT1oPIO
パンツ被ってるように見えた私は既に汚れきっているのね
406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/31(土) 17:35:40.36 ID:FPxBZfmHo
上で士朗のイメージって言われてるけど、個人的には夢喰いメリーの夢路が近い気がする
士朗ほど重いもの背負ってないし、大事なことを忘れてて思い出しそうになると体の一部が痛むって共通点があるし

ともあれ、ほむほむが幸せになってくれるといいなぁ
407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/04/02(月) 12:41:16.09 ID:qn+nXR/ho
見ようと思ったらもう消されてたorz
408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/04/06(金) 11:01:52.31 ID:VtK6P2OAO
再うp希望

ってかお願いします
409 :期限過ぎましたぞ、ご自重を!! ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/09(月) 03:21:40.53 ID:4YD6iMl+0
夜遅くにこんばんわ>>1です。いつもコメ&閲覧ありがとうございます。

申し訳ございません。土日には投稿するといっておきながら間に合いませんでした。。。

思ってたよりも文が長くなってしまっているのと、リアが忙しいのとで(就職目指してうんたらかんたら)←言い訳

今週中には何とか投稿したいと思っていますので何卒宜しくお願いします。

>>408さん

一応再貼りしておきますね。駄絵ですが(汗)

ttp://hp41.0zero.jp/data/800/tiger2/pri/21.JPG

今度のは自分専用のアプロダ使ってるので勝手に消えない・・・筈。

それではまたノシ
410 :画像表示されてないかも・・・ ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/09(月) 03:34:08.71 ID:4YD6iMl+0
度々すいません。。。

もう一回貼り
ttp://hp41.0zero.jp/data/800/tiger2/pub/1.JPG

411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/04/09(月) 05:08:46.17 ID:3LqaQtLYo
>>409
あざーっす!!!
上のでも見れましたよ!
412 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/09(月) 23:43:01.43 ID:rNHCu6Ueo
やっぱりパンツじゃねえか!
413 :パンツといえばまどパンだよねっ ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/04/12(木) 02:15:25.38 ID:UQyZec2X0
夜遅くにこんばんわ>>1です。いつもコメ&閲覧有難うございます。

パンツに見えるのは仕様だっ!!←嘘付け

それでは続きを投稿します。
414 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 02:18:33.02 ID:UQyZec2X0
――――――――――――――――――――

【タツヤ】
「酔った・・・」

あれから結局、俺は千歳さんに抱きかかえられたまま移動する羽目となり、現在に至る。

高いわ上下に激しく揺れるわで、目的地に到着した頃にはこんな状態になっていた。


【ゆま】
「ほらほら、どうしたの。だらしが無いぞ〜」


能天気な口調で、俺にそう言ってくる千歳さん。

いや、誰のせいだと・・・・。


【ゆま】
「元気だしていこうよ、たっくん」

【タツヤ】
「たっくんって言うな・・・」

【ゆま】
「え〜なんで〜」

【タツヤ】
「なんでって・・・そりゃ・・・」


なんかこう・・・背中が痒くなるというか・・・こっ恥ずかしいというか、とにかく何か嫌なのだ。

415 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 02:20:15.31 ID:UQyZec2X0


【ゆま】
「じゃあ何て呼べばいいの?」

【タツヤ】
「えっ!?え〜と・・・」


突然そう言われても・・・どう答えたらいいのか分からない。

普段は普通に「鹿目」とか「タツヤ」とか言われているから・・・。


【ゆま】
「特に案が無いなら『たっくん』で良いよね」

【タツヤ】
「えっ」

【ゆま】
「はい決定」

【タツヤ】
「」


・・・無茶苦茶だよ・・・。

俺はいつまでこの人に振り回され続けるのだろうか・・・。


416 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 02:23:37.15 ID:UQyZec2X0


【ゆま】
「じゃ、そろそろ行こっか」


俺の苦悩も知らずに、千歳さんは前に進み始めた。

仕方なく、俺も後に付いていく。


【タツヤ】
「あ・・・」


すると、見覚えのある光景が俺の目の前にはあった。


【タツヤ】
「霧が・・・」


そう、一週間前俺の目の前に出現したあの霧が、道路全体に広がっていたのだ。

その道路は俺が普段から使っている通学路であり、俺が先程進もうとしていたのもこの道路だった。


417 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 02:30:29.24 ID:UQyZec2X0


【QB】
「やっぱり、君は『瘴気』も見えるんだね」

【タツヤ】
「へ?」

すると、横に居たこの珍獣がそんな事を言い始める。

俺は何の事か分からず首を傾げた。


【ゆま】
「たっくんがあのまま先に進んでいたら、今頃コレの奥底に迷い込んでるところだっんだ
よ」

【タツヤ】
「この霧・・・一体何なんですか?」


俺は目の前に広がる薄気味悪い霧に警戒する。


【QB】
「これが『瘴気』だよ」


すると、千歳さんの代わりに、この珍獣が答えた。

418 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 02:31:37.03 ID:UQyZec2X0


【タツヤ】
「『瘴気』・・・」

【QB】
「簡単に言うと、魔獣が出すオーラみたいなものさ」

【QB】
「魔獣はああやって自分から『負』のオーラを出して纏っているんだよ」

【QB】
「あの中は異空間になってて、魔獣の住処になってるのさ」


キュウべえは淡々とした口調で話を続ける。

あの霧の中って、そんな風になっていたのか。

確かに以前アレに取り込まれた時は、何というか不気味な雰囲気を醸し出していた気はするけど・・・。

419 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 02:33:25.50 ID:UQyZec2X0


【QB】
「本来なら、普通の人は外から瘴気を直視することが出来ない筈なんだけど・・・」

【QB】
「本当、君は何なんだろうね」


いや、だからお前が何なんだよ・・・。


【QB】
「まあ、今はそんなこと考えてる場合じゃないね」

【QB】
「見たところ、此処の魔獣はそれほど強大じゃないみたいだよ」


キュウべえはそう言って千歳さんの肩に乗る。


【ゆま】
「まあ、こっちとしてはありがたいよ」

【ゆま】
「一般人もいるしね」


・・・やっぱり、俺も行くことになっているんだな。

正直、あんな事があったからイマイチ乗り気になれないんだけど・・・。

420 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 02:34:50.43 ID:UQyZec2X0


【ゆま】
「たっくん?」

【タツヤ】
「うわっ!!」


気持ちが顔に出ていたのか、千歳さんが俺の顔を覗き込んでくる。

俺は驚いて、慌てて顔を逸した。


【ゆま】
「大丈夫だよ」

【ゆま】
「ちゃんと家まで送り届けてあげるから」

【ゆま】
「信じて、ね?」


千歳さんは俺を安心させるように、微笑んでくる。


【タツヤ】
「う・・・」


俺はそんな千歳さんの表情を見て、一瞬たじろいでしまった。

さっきまで別の事が気になっていて気付かなかったけど、千歳さんって結構美人なんだよな・・・。

それに、さっき背中で感じていたけど、胸も結構・・・。

421 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 02:37:46.93 ID:UQyZec2X0


【タツヤ】
「(・・・って何を考えてるんだ俺は!!)」ブンブン


俺は自分の如何わしい感情を振り払うように、頭の上で両手を振り回す。


【ゆま】
「どうしたの?」

【タツヤ】
「え!?いやっ!?ナンデモナイデスヨ!!」ハハハ


そんな俺の行動を見て、首を傾げる千歳さんに、慌てて弁明する。

焦りなのか、後ろめたさなのか、後半は完全に声が裏返っていた。


【ゆま】
「ふ〜ん」

【ゆま】
「ま、いいや」

【ゆま】
「それじゃ、そろそろ行こっか」


千歳さんは少し考えるような素振りを見せたが、直ぐに俺の方に向き直る。

そして、話すと同時に、霧の中へと歩みを進め始めた。

422 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 02:38:54.23 ID:UQyZec2X0


【タツヤ】
「あ、ち・・・ちょっとっ!!」


俺も千歳さんの後を付いていくように、歩き始める。

なんだかんだあったが、多分この人は信用できるだろう。

そう頭の中で思ったことが、俺にこの行動を取らせたのだろう、と思う。


【タツヤ】
「(どっちみちこのままじゃ家に帰れない訳だし・・・な)」


そうして俺は、千歳さんとキュウべえと一緒に、再び霧の中に入っていくのだった―――――――――

423 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 02:40:11.92 ID:UQyZec2X0


――――――――――――――――――――


【タツヤ】
「うわ・・・何だ、此処・・・」


霧の中は、奇妙な雰囲気を醸し出していた。

その中には家や道があり、建物等の位置だけは俺の知っている通学路と殆ど同じだ。

ただ、その全てが異質だった。

家は、人が住めそうに無い歪曲した造物に、道路沿いに植えられている木は、まるでアマゾンにでも植えられていそうな不気味な植物に、それぞれ変形していた。

その他にも、その場所にあった物全てが異様な形に変形しており、おぞましい印象を与えている。

俺達が暮らしている世界とは、似ているようで全く似ていない世界、そんな感じだった。

さっきキュウべえが言っていた通り、まさに『異空間』となっていた。


【タツヤ】
「何か・・・俺が前に入った時と随分違うな」


俺が以前迷い込んだ時は、こんな雰囲気ではなかった。

というより、あの時は周りが霧に覆われていて、こんな風景一切見えなかったのだ。

424 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 02:41:17.76 ID:UQyZec2X0


【QB】
「魔獣によって形成される瘴気は違うからね」


俺が辺りを見回していると、後ろからキュウべえが付いてくる。


【タツヤ】
「魔獣ってみんな同じじゃないのか?」

【QB】
「勿論だよ」

【QB】
「それぞれの魔獣を形成している呪いのタイプが違うからね」

【QB】
「全ての魔獣が似ているようで、全くの別物なんだと考えた方が良い」


相変わらずキュウべえは、表情を全く変えることなく淡々と解説する。

それに若干のフラストレーションを感じつつも、俺は黙って話を聞いていた。

別物・・・か、依然俺が襲われた魔獣とは全く別のタイプだという事か。

425 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 02:42:43.96 ID:UQyZec2X0


【ゆま】
「此処の魔獣、多分芸術家さんかなんかが作り出した奴だね」

【ゆま】
「自分の作品を誰かに盗作されたとか、そんなところでしょ」


先に霧の中に入り、前を進んでいた千歳さんがこちらに戻ってくる。


【タツヤ】
「千歳さん、分かるんですか?」

【ゆま】
「まあ、長年魔獣狩っていると、大体ね」

【ゆま】
「てかコラ、私のことは下の名前で良いって言ったでしょ」


千歳さんは俺に指をさしながら、魔獣の事とは全く違うことに突っ込んでくる。

ああ、確かそんなこと言われていたような・・・。


426 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 02:44:17.23 ID:UQyZec2X0


【タツヤ】
「ええ〜」

【ゆま】
「なんでそんなに嫌そうなの!?」


【タツヤ】
「だって・・・」


なんか気恥ずかしいし・・・。


【ゆま】
「なんだったら『ゆまちゃん』でも良i

【タツヤ】
「それは全力で遠慮する」


ぶー・・・」


俺の言葉に対して、千歳さんは顔を膨らませて不満そうな表情を浮かべる。

というかこんなことしている場合じゃないんじゃ・・・。



そう、俺が思ったその時だった―――――――


427 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 02:45:04.26 ID:UQyZec2X0




「きゃああぁぁあああぁあアアアアアアァアアアア゛ア゛゛ア゛ア゛!!!!!!」





女性の断末魔のような叫びが辺り一面に木霊した。


428 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 02:46:38.28 ID:UQyZec2X0


【タツヤ】
「・・・!!??な・・・何だ!?」


俺は叫び声に反応して、声が聞こえた方向に振り向く。

その叫び声はどうやら霧の奥の方から聞こえてくるようだった。


【ゆま】
「ひょっとして、もう既に人が取り込まれて襲われてるんじゃ・・・」

【タツヤ】
「ええっ!!??」


襲われている。

その言葉を聞いた時、あの時の出来事が脳裏を過る。

あの時、俺はギリギリのところで暁美さんに助けてもらったけど、そうじゃなければ千歳さんの言うとおり殺されていただろう。


429 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 02:48:23.01 ID:UQyZec2X0


【タツヤ】
「た、大変だ。早く助けないと!!」ダッ


もし、俺の時と同じように誰かが襲われているのなら、一刻も早く助けに行かないと手遅れになるかもしれない。

そう感じた俺は、声の聞こえた方角に走り出す。

自分に何が出来るのかとか、そんな事を分からない。

とにかく何とかしないと、という気持ちが俺の身体を勝手に動かした。


【ゆま】
「あっ、ちょっと待ちなさい!!」


そんな千歳さんの制止も耳に入ることなく、俺は霧の奥へと駆けていった。

430 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 02:49:19.11 ID:UQyZec2X0

――――――――――――――――――――


【タツヤ】
「確か・・・この辺の筈だけど・・・」ゼェ・・ゼェ・・


俺は耳に残る叫び声を頼りに、その声が聞こえた方角をひたすら進んでいく。

声の大きさから言って、それほど遠くでは無いと思ったのだが・・・。


【タツヤ】
「おーい、誰かいるかー!!」


俺がそう声を挙げるも、返事は返ってこない。


【タツヤ】
「・・・っ!!」


そのことが、俺に何か嫌な予感を感じさせ、移動するスピードを速めさせる。

そして俺が再び走り始めようとした時――。


431 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 02:49:56.28 ID:UQyZec2X0




――――――ドサ




432 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 02:51:30.75 ID:UQyZec2X0


【タツヤ】
「ん?」


何かが倒れるような音が聞こえたのだ。

俺は辺りを見回し、音の正体を確かめる。


【タツヤ】
「あっ!!」


すると、恐らくは元の世界で公園だったのだろう広場に、女性が倒れているのを見つけた。

俺はそれを見つけると、急いでその女性に駆け寄る。


【タツヤ】
「おい、大丈夫か!?」


横を向いて項垂れるように倒れているその女性に、俺は声を掛ける。

しかし、返事が無い。

俺はその人に更に近づき、抱き起こそうとした。


433 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 02:52:10.29 ID:UQyZec2X0




ビチャ・・・




434 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 02:53:58.79 ID:UQyZec2X0


【タツヤ】
「・・・ん?」


そこで、その女性に触れた左手に違和感を感じる。

それは、何か生暖かい物に触れたような感触―――。

俺は先程感じた嫌な予感を再び感じ、恐る恐る自分の左手を確認する。


【タツヤ】
「・・・・・な」


俺は自分の左手を見て、声を失った。



その手には――――――赤い液体がべっとりと付いていたのだ。



それは紛れも無く、その女性の血液だった―――――。


435 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 02:55:26.26 ID:UQyZec2X0


【タツヤ】
「ひっ・・・!!」


俺は慌ててその女性から離れようとした。

しかし、俺が触れた影響なのか、横向きだったその女性の身体がゴロンと仰向けになる。




そこで――――俺は気付いた。



その女性の身体に更に《違和感》があることに―――――――。

436 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 02:56:23.78 ID:UQyZec2X0


横向きに寝ていたから、よく分からなかった。






人間の身体にある筈の一部が――――――その女性には無かった事に。





その女性の、片側の腕と脚が・・・・欠けていた事に。

437 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 02:57:20.46 ID:UQyZec2X0


【タツヤ】
「う・・・うわぁぁああ!!!!」



俺は叫び声をあげ、その場に座り込む。

腰が抜けてしまったのか、そのまま自分を引きずるようにして後ろに下がる。


【タツヤ】
「うぷっ」


そして、目の前の無残な光景を見た俺は、思わず吐き気を催す。

慌てて手を口に当て、俺は吐きそうになるのを抑えた。


【ゆま】
「たっくん!!」


そこで、俺の後を追ってきた千歳さんがこちらに駆けつけてきた。

438 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 02:58:17.29 ID:UQyZec2X0


【ゆま】
「たっくん、大丈夫!?」

【タツヤ】
「ち・・・千歳、さん・・・」


千歳さんは尻餅を付いている俺に駆け寄り、声を掛けてくる。

しかし、俺は上手く声が出せなかった。


【QB】
「ゆま、人が・・・」

【ゆま】
「・・・」


続けてキュウべえも到着する。

そして、千歳さんも目の前に倒れている女性に気付いた。


【タツヤ】
「あの・・・俺・・・その・・・」


千歳さんに何とか状況を説明しようとするが、やはり声が上手く出せない。

未だに身体は固まっているし、腰も抜けたままだ。

自分が傷を負った時よりも、他人の無残な姿を見てしまった時の方が、精神的なダメージが大きかったようだ。


439 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 03:02:20.54 ID:UQyZec2X0

【ゆま】
「キュウべえ、たっくんの事見ててね」

【QB】
「分かった」ピョン


千歳さんはそう言うと、その女性に近づいていく。


【QB】
「大丈夫かい?」

【タツヤ】
「あ・・・あぁ」


幾分か落ち着いてきた俺は、傍に居るキュウべえの呼びかけに応える。

キュウべえは目の前の無残な光景にも顔色一つ変えず、涼しい顔をしていた。

こいつは、この状況に対して何も感じていないのか・・・?


【ゆま】
「・・・」


千歳さんの方を見てみると、その女性のことをなにやら調べている様子だった。

無残な光景にも関わらず、目を逸らすことなく千歳さんはその女性の身体に触れる。

先程までの能天気な表情と違い、顔を引き締め真剣な表情をしていた。


440 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 03:03:31.04 ID:UQyZec2X0

【QB】
「その人どうだい、ゆま」

【ゆま】
「うん、まだかろうじて生きてるみたい」

【ゆま】
「これなら助けられるよ」


【タツヤ】
「・・・え?」


千歳さんの言葉に、俺は一瞬耳を疑った。

しかし、千歳さんは今はっきりと「助けられる」と言ったのだ。

こんな状態の人を・・・一体どうやって。


【QB】
「よく見ておくといいよ」

【QB】
「これが彼女の力だ」

【タツヤ】
「ふぇ?」


キュウべえの言葉に、思わず間抜けな声が漏れる。


441 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 03:04:55.18 ID:UQyZec2X0


【ゆま】
「――再生の活力――」


―パァァアアア・・・


その女性に掌を向け、何やら呟いたと思った次の瞬間、その女性が光り輝き始めた。

俺は突然の光に驚き、一瞬目を背けてしまう。

そして、一体何が起きているのかと再び千歳さんに目を向けた。




【タツヤ】
「・・・え?」



442 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 03:05:29.42 ID:UQyZec2X0



俺は目の前に広がる光景に目を疑う。

目を擦り再度確認したが、やはりその光景は変わらなかった。

その光景とは、無残な状態になっていた女の人の傷が―――――――


【女性】
「・・・」


――――――――全て治っているというものだった。


443 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 03:06:47.39 ID:UQyZec2X0

【タツヤ】
「え?え?どうして?なんで?」


俺は目の前の光景が信じられず、混乱する。

傷が治っているのは勿論、欠けていた腕や脚まで元通りになっていたのだ。

普通だったら絶対にありえない事だった。


【QB】
「彼女の得意技は治癒魔法さ」

【QB】
「あれくらい造作も無いよ」

【タツヤ】
「治癒・・・魔法・・・?」


魔法・・・キュウべえの口から出てきたその言葉に、俺の身体は再び硬直する。

魔法少女の力・・・・。

あんな状態の人を、一瞬で・・・。


【タツヤ】
「この人、本当に大丈夫なんすか?」


俺はそう言いながら、倒れている女性に近付く。

・・・うん、本当に傷一つ無い。

さっきまでの姿が嘘のようだ。


444 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 03:07:49.47 ID:UQyZec2X0

【ゆま】
「うん、今は気絶してるけど多分大丈夫だよ」


確かに息もしているみたいだし、大丈夫みたいだ。


【QB】
「その人は、瘴気に取り込まれてしまったんだろうね」

【タツヤ】
「取り込まれた・・・?」


キュウべえの言葉に、俺は自分の時のことを思い浮かべる。


【QB】
「魔獣は人の負の感情に狙いをつけて襲ってくるんだ」

【QB】
「人間のその感情に付け込んで、瘴気の中に取り込んでね」


キュウべえの話を、俺は黙って聞き続ける。

感情に付け込んで・・・か。

俺があの時瘴気に取り込まれた時とは少し違うな・・・。

物理的に取り込まれたからな・・・・俺の場合。


445 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 03:09:00.46 ID:UQyZec2X0

【ゆま】
「なにはともあれ、間に合って良かったよ」


千歳さんは、心底ホッとしたようにそう呟く。

さっきの真剣な表情、そして今の安堵の表情。

それらを見ると、やっぱりこの人は悪い人ではないんだと―――改めて思った。



それにしても・・・魔法、か。


【タツヤ】
「本当にあるんだな・・・」


俺はその人と千歳さんに視線を交互に移しながら、徐に呟く。


【ゆま】
「どう、少しは信じてくれた?」


すると、千歳さんが俺に近付き、笑顔で顔を覗き込んでくる。


【タツヤ】
「え!?え、え〜と・・・は、はい・・・」コク


俺はしどろもどろになりながら首を縦に振る。

こんなものを目の前で見せられたら、この人が本当に特別な力を持つ『魔法少女』なんだと信じざるをえなかった。


446 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 03:10:01.86 ID:UQyZec2X0

【ゆま】
「っていうか、駄目だよ。勝手にどっか行ったら」

【ゆま】
「魔獣に襲われたらどうするの?」


千歳さんが顔をズイッっと近付け、俺に注意する。


【タツヤ】
「す、すいません・・・」


俺は目と鼻の先にある千歳さんの顔に、内心ドキドキしながら応える。

確かに、よく考えれば無謀な行動だったと思う。

それでもあの時は、身体が勝手に動いてしまったのだ。


【QB】
「君は考えるより先に身体が動くタイプなんだね」

【タツヤ】
「人の心を読むなよ・・・」

【QB】
「おや図星かい。これはあくまで僕の予想でしかなかったんだけど」

【タツヤ】
「この野郎・・・」

俺はこの珍獣の憎まれ口調に対する怒りを、何処にぶつけようかと両手をワナワナさせる。

・・・・後でコイツを殴ろう、うん。

俺はこの珍獣への報復を心に誓う。


447 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 03:10:40.02 ID:UQyZec2X0


そんな時だった―――――。






―ウ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛




【タツヤ】
「(ビクッ!!)」



俺は聞き覚えのある呻き声を聞いた―――――――。


448 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 03:11:48.64 ID:UQyZec2X0

【タツヤ】
「え!?い、今のって・・・」


俺は身体を強張らせ辺りを見回す。


【QB】
「ゆま」

【ゆま】
「うん、近いね」


キュウべえと千歳さんも声に気付いたのか、その場で立ち上がり周りを確認する。


ドーン・・・ドーン・・・ドーン・・・


【タツヤ】
「うわっ」


次の瞬間、地面が小刻みに揺れ、俺は倒れないように脚に力をいれた。

瘴気が濃くなったのか、辺りに嫌な空気が広がり、気分が悪くなってくる。

449 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 03:12:56.48 ID:UQyZec2X0



ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛




次第に不気味な呻き声がこちらに近付いてくる。



そして、しばらくの後して俺達の目の前には――――――




【魔獣】
「ウ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア!!!!!!」



あの時出会った――――――――あの化物が現れたのだった。


450 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 03:13:52.91 ID:UQyZec2X0

【タツヤ】
「で・・・でた・・・」


俺に襲い掛かってきた巨大な人間型の化物。

その化物は、あの時のヤツとは少しだけ形が違うように見える。

しかし、それでもその化物から感じる嫌な感じは、あの時感じたものと全く同じものだった。


【QB】
「ゆま、任せたよ」


魔獣が現れると、キュウべえは俺の肩に乗り、千歳さんに声を掛ける。

振りほどこうかと考えたが、今の俺にそんな余裕は無かった。

その魔獣と対峙することで、走馬灯のようにあの時の記憶が蘇ってくる。

正直、立っているのがやっとで、今にも崩れ落ちてしまいそうな状態だった。


451 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 03:14:32.06 ID:UQyZec2X0

【ゆま】
「怖い?」

【タツヤ】
「ふぇ!?」

【ゆま】
「足、震えてるよ?」


千歳さんにそう指摘されるほど、今の俺は怯えきっていた。

手も、足も、自分では制御できない程に震えていたのだ。


【タツヤ】
「だ、だだだだだだ大丈夫、こ・・・これは武者震だっ」


俺は千歳さんに何とか強がってみせる。

しかし、自分でも分かるくらい、声が震えていた。


452 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 03:15:17.34 ID:UQyZec2X0

【ゆま】
「大丈夫だよ」


でも、そんな中で千歳さんは俺に近付き、そして―――――


【ゆま】
「言ったでしょ、ちゃんと送り届けるって」


―――優しく包み込むように、俺の震える手をそっと握り締める。

子供をあやすような柔らかい口調で、俺に語りかけながら―――。


【タツヤ】
「なっ」


俺は千歳さんの行動に一瞬身体を強張らせた。

しかし、同時にその暖かい手の温もりを感じ、俺の緊張が次第に解けていくのを感じる。

徐々に身体の震えも治まってく気がした。


453 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 03:16:49.90 ID:UQyZec2X0

【タツヤ】
「ち・・・」

【タツヤ】
「・・・ゆま、さん」

【ゆま】
「あは、やっと名前で呼んでくれたね」


特に意識したわけじゃない。

でも、俺は無意識のうちに千歳さんの事を名前で呼んでいた。

何故だろうか、さっきまであの魔獣に怯えていた筈だったのに、今は何故か心が安心感で満たされている。

この人が俺にそう感じさせている、という事なのか、俺にはよく分からなかった―――。


【ゆま】
「じゃあ、その人のこと見ててね」


俺にそれだけ言い残すと、そこから離れる。


【ゆま】
「ふっ!!」シュン


そして、手を合わせて力を込めるしぐさをすると、俺達と千歳さん――もといゆまさんとの間に何か境界ができたような気がした。

それが気になった俺は、その場から恐る恐る手を伸ばしてみる。


454 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 03:18:36.85 ID:UQyZec2X0

コンコン


【タツヤ】
「うわっ、なんだこれ」


俺とゆまさんとの間は、透明な壁で仕切られていた。

辺りを見回すと、その壁は俺達を囲うように形成されていたのだ。


【ゆま】
「その中にいれば安全だからね」

ブオンッ!!


俺にそう言い残すと、ゆまさんは招き猫のような形をしたハンマーを出現させる。


【ゆま】
「それじゃあ、サクッと終わらせちゃうから!!」


ゆまさんは、その重そうなハンマーを片手だけでヒョイと持ち上げ、魔獣に立ち向かっていく。

俺はその光景を、ただただ後ろから見守ることしか出来なかった――――――。


ttp://hp41.0zero.jp/data/800/tiger2/pri/22.JPG


455 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 03:20:14.39 ID:UQyZec2X0

――――――――――――――――――――


・・・・・。


【ほむら】
「・・・・・」


あれから私は、何をする気にもなれず、ただボーっと椅子に腰掛けていた。

気付けば日は落ち、空は暗くなっている。

どれくらいの時間そうしていたのか、自分でも分からない。


【ほむら】
「(とりあえず、夕食にしようかしら・・・)」


このままではいけないと思い、私は腰を上げる。

そして、先程行ってきたコンビニで調達した食料に手を伸ばす。

コンビニのビニール袋の中には、菓子パンや長持ちしそうな冷凍食品が数量入っている。

買ってきてから長時間放置していたせいか、冷凍食品の氷が溶け、なんだか水っぽくなっていた。

ひとまず冷凍食品を冷凍庫に保存する。

456 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 03:21:55.46 ID:UQyZec2X0

【ほむら】
「・・・これだけでいいわね」


そして、私はビニール袋から菓子パンを一つだけ取り出して封を開ける。

今日の夕食はこの菓子パン一個だけだ。

自炊なんて無意味なことはしないし、そのことを別に気にもしていない。

栄養管理とか、そんなものは魔法少女には関係ない。

究極的な話、食事を取らなくてもソウルジェムさえ無事なら身体は動くのだから。


【ほむら】
「(・・・あら?)」

【ほむら】
「(ソウルジェムが・・・)」


再び椅子に腰掛けると、テーブルに置いてあった私のソウルジェムが反応していた。

どうやら近くに魔獣が現れたらしい。

そうと分かれば、早急に退治しに行かなければならないだろう。

それにしても、今日は珍しくキュウべえが居ないのね・・・。


457 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 03:23:03.89 ID:UQyZec2X0


\ソノヒトコトデネェ・・/ \ソノフタコトメデェ・・/


【ほむら】
「あ、携帯が・・・」


外に出るためソウルジェムを指輪に変えていると、椅子に放置してあった私の携帯が音を発する。


【ほむら】
「(メールね・・・)」


こんな時に誰かしら・・・。

といっても、私のアドレスを知っている人なんて限られているんだけど・・・


【ほむら】
「(ゆまからだわ)」


メールを送ってきた相手はゆまだった。

千歳ゆま、今では私が知っている唯一の魔法少女。

そう言ってしまっても、過言では無い。

458 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 03:24:33.81 ID:UQyZec2X0

『ほむらお姉ちゃんへ。
 お姉ちゃんのお家に行こうとしたら、近くに魔獣の反応があったから
 退治しとくね☆』


【ほむら】
「(あなたの担当は風見野市でしょう・・・)」


どうやら、既にゆまが退治に向かってしまったらしい。

それなら私が行くまでもない・・・か・・・?


『あ、それとね。今「鹿目タツヤ」君と一緒にいるんだけど』


【ほむら】
「・・・え?」


『魔獣倒すついでにその子も家に送り届けとくから、じゃーねぇノシ』


【ほむら】
「――――っ!!」


嘘、どうしてあの子と!?

いや、今はそんなことどうでもいい。

一緒って・・・まさか、あの子を巻き込んだんじゃ・・・。

459 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/12(木) 03:25:42.46 ID:UQyZec2X0


【ほむら】
「・・・馬鹿っ!!!」ダッ!!



私は鍵を掛ける時間すら惜しみ、玄関から外に出る。




そして、大急ぎでソウルジェムが反応する場所へと向かうのだった―――――。

460 :戦闘までいってねーじゃねーか!! ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/04/12(木) 03:28:56.42 ID:UQyZec2X0
今回は以上です。お疲れ様でした。

途中、挿絵っぽく絵をぶち込んでみた。・・・もう少し上手く描けるよう練習しないと・・・。

次回こそ、ゆまっちの戦闘パートです。

それではまたノシ
461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/12(木) 07:13:19.37 ID:Lq1UcOblP

投下スピードはともかくストーリーが全然進まンなwwwwww
462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/04/12(木) 07:50:05.81 ID:3ZCaCDvy0
http://www.oklos-che.com/2012/04/blog-post_08.html?spref=tw
463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/04/12(木) 08:16:16.42 ID:rhXxDdTAO

何やらゆまちゃんにマミさんルートの気配が……

しかししっかり胸を チェックとはたっくんやるなww
464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/04/12(木) 18:59:15.14 ID:LiwljGIoo
おつー
最初に比べると絵がうまくなった気がする!
465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/13(金) 01:07:18.71 ID:qzXi3nsIO
どういう事だよ!!
今回はパンツに見えないじゃないか・・・
466 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/04/14(土) 11:33:11.82 ID:SxfoKiFw0
なんか見ようとしたら、サイトから拒否されるんだが…
なぜだ?
467 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/04/14(土) 19:41:56.38 ID:0S0BGx4Wo
乙乙!
468 :(」・ω・)」ゆー!(/・ω・)/まー!Let& ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/16(月) 03:18:22.66 ID:2VRH7a420
夜遅くにこんばんわ>>1です。いつも閲覧&コメ有難うございます。

>>466さん
URLをコピーして直接入力すれば・・・と思ったんですが・・・softbank?
すいませんです。。。


次の投稿ですが、何とか来週中くらいにはできそうです。それでは、お休みなさいノシ
469 :携帯から… ◆7F2DwKbdfg [sage]:2012/04/16(月) 03:24:47.62 ID:poLpTm7DO
>>468

来週×
今週○


駄目だこりゃ/(^p^)\
470 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/04/16(月) 03:26:27.23 ID:NgBeLtDQo
お疲れ様ですww
471 :川´_ゝ`){期限をマモレナカッタ ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/04/22(日) 02:01:10.58 ID:bEHUFl7Y0
夜遅くにこんばんわ>>1です。いつも閲覧&コメ有難うございます。


それでは続きを投稿します。
472 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 02:04:12.76 ID:bEHUFl7Y0
――――――――――――――――――――

ttp://www.youtube.com/watch?v=q-OSr08Q3fI


[芸術の魔獣 呪いの性質は『美欲』]


【魔獣】
「ウア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」


自分の方に向かってくると認識したのか、魔獣はゆまさんに標準を定め、襲い掛かってきた。


ブンッ!!


白装束のマントの下から、巨大な手を出現させ、振り降ろしてくる。


【ゆま】
「よっと」ヒョイッ


しかし、ゆまさんは紙一重で、それをジャンプしてかわした。


【ゆま】
「遅いよ」ダッ


そして、魔獣が振り下ろした手の上に着地し、そのまま腕をつたって魔獣との距離を一気に縮める。

473 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 02:06:07.57 ID:bEHUFl7Y0


【ゆま】
「じゃあ・・・」

【ゆま】
「お返し!!!」ブンッ!!


ドギャッ!!


魔獣の顔面まで近付くと、首から上をかち上げるようにアッパースイングをする


【魔獣】
「ア゛ァア゛ァ・・・」ズザァァァアア、ドンッ


攻撃をまともに受けた魔獣は、顔が跳ね上がり斜め後ろへと豪快に吹き飛ぶ。

そのまま後ろの造物に激突して、その拍子に破壊された造物の瓦礫によって埋もれた。

474 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 02:07:09.09 ID:bEHUFl7Y0

【タツヤ】
「すげぇ・・・」


その一部始終を見ていた俺は、思わず感嘆の言葉を挙げた。

あんな化物相手に臆することなく立ち向かうゆまさんを、純粋に凄いと思ったのだ。


【QB】
「ゆまはベテランだからね」

【QB】
「あれくらいは当然だよ」


俺の言葉に反応するように、肩に乗っているキュゥべえが言葉を発する。

お前はいつまで俺の肩に乗っている気なんだよ・・・。

475 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 02:08:53.12 ID:bEHUFl7Y0

【魔獣】
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」

ガッシャァァァァアアン!!!!


と、そこで瓦礫の山に埋もれていた魔獣が、それを思いっきり吹き飛ばしてきた。

そして、此方を真っ直ぐ睨みながら再び立ち上がる。


【タツヤ】
「うげっ倒したんじゃ・・・?」

【魔獣】
「ア゛ア゛ア!!!」ブンブン


瓦礫から出てきた魔獣は、見たところ大したダメージを受けていなかった。

むしろ、先程よりも動きが活発になっているように見える。


【ゆま】
「まぁ、アレで倒せたら苦労しないんだけどねぇ」


ゆまさんは魔獣に再び対峙し、臨戦態勢をとる。

このような状況でも、油断している様子はなく――――張り詰めた空気が此方にも伝わってくるようだった。

476 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 02:10:19.84 ID:bEHUFl7Y0

【魔獣】
「ウウウア゛ア゛ア゛・・・」


魔獣は此方に襲いかかってくることはなく、その場で巨大な手を2本出現させた。

その両手を地面に下ろし四足歩行の状態になる。


【魔獣】
「ウ゛ウ゛ウ゛・・・」


魔獣はその場で不気味なうめき声を上げ続ける。

それはまるで、何か力を溜めているようだった。


【魔獣】
「ア゛ァア゛ァア゛ァア゛ァァァァァ!!!!」


バァァァァァアアアアア!!!!!!!


そして、次の瞬間―――――魔獣は此方へ向けて、ビームのようなものを撃ってきた。


【タツヤ】
「いっ!?」


そのビーム砲は真っ直ぐ此方へと向かってくる。

俺は咄嗟に両手で身体を守るような体制をとった。

477 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 02:12:59.68 ID:bEHUFl7Y0

【ゆま】
「はあっ!!」ブン!!

ギュイン、ドーン・・・


しかし、ゆまさんはその攻撃に瞬時に反応し、ハンマーを振り下ろす。

ハンマーはレーザーに直撃し、そのままソレの軌道をズラすことに成功した。


【タツヤ】
「うわ・・・」


軌道がズれたレーザーが直撃した家の造物を見て、俺は絶句する。

それは、直撃した部分からマグマのようにドロドロに溶けており、原型を留めていなかったのだ。

あんな物をまともに受けていたらと思うと、ゾッとする・・・。


【QB】
「アレくらいの攻撃なら、ゆまの作った結界の中にいる僕達は平気だよ」

【タツヤ】
「うぇ、本当かよ」

【QB】
「本当さ、ゆまもそう言っていただろう?」


確かに、ゆまさんもそう言っていたけど・・・。

やっぱり反射的に身を守ろうとしてしまう。



それにしても、俺を襲ってきた魔獣とは攻撃の仕方がずいぶん違うなと思った。

あの時は、あんな巨大な手は出さなかったし、あんなレーザーを撃ってくることも無かった。

やはりキュゥべえの言っていたとおり、姿形は似ていても、魔獣によって色々違うんだな・・・。

478 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 02:15:18.79 ID:bEHUFl7Y0

【魔獣】
「ア゛ァア゛ァア゛ァア゛ア゛ァア゛ァア゛ァア゛ア゛ァア゛ァア゛ァア゛」


バンッ!!バンッ!!ババンッ!!!


俺が思考を巡らせていると、魔獣が再び攻撃を仕掛けてくる。

今度はレーザー一発だけではなく、ソレを何発、何十発と連射してきた。


【ゆま】
「えいっ!!」ブンブン!!


ゆまさんはその全てを打ち返そうとはせず、自分に当たりそうな砲撃のみを標的にする。


ドン!!ドン!!ドドン!!


【タツヤ】
「おわっ!!!」


当然のように、ゆまさんが打ち返さなかった流れ弾が此方にも飛んでくる。

結界とやらのおかげで、直接当たることは無かったが、何とも心臓に悪い光景だった。


【QB】
「ゆま、あいての魔獣は遠距離攻撃を主体としてるみたいだ」

【QB】
「物理攻撃じゃ不利だよ」


キュゥべえはようやく俺の肩から降り、ゆまさんに声を掛ける。

確かにあんなに弾幕が凄かったら、迂闊には近付けない。

ゆまさんが持っているようなハンマーでは相性が悪いかも。

479 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 02:18:16.73 ID:bEHUFl7Y0

【ゆま】
「じゃあ、こっちも・・・!!」


しかし、ゆまさんはそんな事を言われても、焦るような素振りを見せない。

そして、その場で身体を捻るように動かし、ハンマーを構える。


【ゆま】
「いけぇ!!」

【ゆま】
「―――波動撃!!―――」


ブオォォォン!!!

そのまま、ハンマーを思いっきりフルスイングする。

すると、スイングしたその先から津波のように地面を這って進んでいく巨大な衝撃波が出現した。


ズザァァァァァアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!


その衝撃波は前へ進むにつれて徐々にスピードと大きさを増し、魔獣に迫っていく。

それを見た魔獣はその衝撃波を打ち消そうと砲撃を続けるが、その全てをその衝撃波はかき消していった。


ドォォォォォォォオオオオオオン


【魔獣】
「ウ゛ア゛ァア゛ァア゛ァ・・・」


衝撃波が魔獣に命中して、ダメージを与える。

魔獣の身体を支えていた巨大な手の片方が消し飛んでいた。

バランスを保てなくなった魔獣は、その場に崩れ落ちる。

480 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 02:19:12.66 ID:bEHUFl7Y0

【タツヤ】
「おぉ、化物が崩れ落ちたぞ!!」


俺は興奮しながら、声を荒げる。

ゆまさんと魔獣が戦っている光景は、そこらのアクション映画なんかよりもずっと迫力があった。


【QB】
「ゆまの衝撃波攻撃は協力だからね」

【QB】
「まあ、あれくらい当然だよ」


俺とは対照的に、隣にいる珍獣は冷めたような態度をとる。

481 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 02:20:12.19 ID:bEHUFl7Y0

【タツヤ】
「よっと」ヒョイ

【QB】
「え」


俺はそんなキュゥべえの両耳を掴み、そのまま持ち上げる。


【QB】
「な、何をするんだい?」


【タツヤ】
「済ましてねーでお前も戦ってこいっ!!!」ガッ!!ブンッ!!

【QB】
「ちょ」キュプーイ、ゴン!!

【QB】
「」チーン


そして、思いっきり魔獣の方向へ投げつける。

しかし、当然のごとく(?)結界にぶつかり、そのままズルズルと下に堕ちていった。

・・・うん、少しは気が晴れたかな。

482 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 02:22:41.35 ID:bEHUFl7Y0

【ゆま】
「たぁ!!」ブン!!

【魔獣】
「ア゛・・・・ア゛ァア゛ァ・・・」


俺が珍獣に制裁をくわえている間も、ゆまさんと魔獣の戦いは続いていた。

いつの間にか魔獣は身体のあちこちが欠け、今にも倒れそうになっている。


【タツヤ】
「おい、お前のせいで良い所を見逃したじゃねーか」

【QB】
「それは・・・僕のせいなのかい・・・?」ムク・・


お前以外に誰がいる。

・・・と、今はこの珍獣の相手をしている場合じゃないか。


483 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 02:23:33.94 ID:bEHUFl7Y0

【ゆま】
「これで」

【ゆま】
「おしまい!!」

ドゴン!!!

【魔獣】
「ア゛ア゛ア゛ア゛ァァァ!!!!」


ゆまさんはトドメをさすため、魔獣の目の前でハンマーを振り下ろす。

ボロボロになった魔獣にそれを防ぐ術はなく、そのまま地面にめり込むように崩れ落ちていった。


サァァァアアア・・・


【タツヤ】
「や、やった・・・」


魔獣はそのまま動かなくなり、次第に砂のような物へと変わり消えていく。


すげ・・・本当に倒しちゃったよ・・・。

でも、ようやく・・・これで――――――。

484 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 02:24:38.44 ID:bEHUFl7Y0

【タツヤ】
「終わっt」

【ゆま】
「まだだよ」

【タツヤ】
「・・・・えっ?」





【魔獣】
「ウ゛ア゛ア゛・・・ア゛ァア゛・・・」

「ウ゛ア゛ア゛「ア゛アァ・・・ア゛アァア゛・・・」・・・ウ゛ア゛ア゛アァ・・・」「ア゛「ア゛ア゛・・・ア゛ア゛ァア゛・・・」ア゛ァ「ア゛アァ・・・ア゛アァア゛・・・」・・・ウ゛ア゛ア゛アァ・・・」「ア゛「ア゛ア゛・・・ア゛ア゛ァア゛・・・」ア゛ァ」


【タツヤ】
「うげっ!?」


俺が終わったのかと少しだけ安心した、その時――――

その魔獣の後ろから―――――同じような姿をした魔獣が、何体も現れたのだ。

――――あの時と同じように・・・。

485 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 02:26:33.93 ID:bEHUFl7Y0

【タツヤ】
「・・・また、増えやがった・・・」


現れた魔獣の群れは、ざっと見ただけでも10は超えているようだった。

自分が戦っているわけじゃないが、あれ全部倒さなきゃいけないのかと思うと・・・正直嫌になる。


【ゆま】
「一体じゃないとは思っていたけど・・・」

【ゆま】
「ちょっと多いなぁ」ハァ・・


この数は予想外だったのだろうか、ゆまさんも思わず溜息をつく。


【QB】
「おかしいな・・・この瘴気の規模で、これだけの魔獣がいる筈ないんだけど・・・」


珍しくキュゥべえも首を傾げるようにして呟く。

そう言えば、確か此処に入る前に「大したことない」みたいなこと言っていたよな・・・。

・・・・全然大したことなくないじゃねーか、おい。


「ウ゛ア゛ア゛「ア゛アァ・ァア゛・・・」・・・ウ゛ア゛ア゛アァ・・・」・・・ア゛ア゛ァア゛・・・」ア゛ァ「ア゛ァア゛・・・」・・・ウ゛゛アァ・・・」「ア゛「ア゛ア゛・・ァア゛・・・」ア゛ァ」


そして、魔獣の群れはどんどん俺達の方へと迫ってくる。

その光景を見る限り、魔獣達は完全に俺達をターゲットとして定めているようだった。

486 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 02:27:52.94 ID:bEHUFl7Y0

【タツヤ】
「ゆ、ゆまさん」

【ゆま】
「大丈夫だって」


俺の言葉に対して、ゆまさんは余裕の表情を崩さない。

だからといって、瞳に油断の色も見せてはいなかった。

それだけ、自分に自信があるということなのだろう・・・。

とにかくそのことが、また俺を少しだけ安心させるのだった。


【ゆま】
「ちょっと魔力使うけど・・・」

【ゆま】
「纏めて倒しちゃうから!!」ブンッ


ゆまさんはそう力強く宣言すると、ハンマーを思いっきり振り上げる。

そして、そのまま静止すると、ハンマーにエネルギーのようなものが溜まっていくのを俺は感じた。

487 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 02:28:57.26 ID:bEHUFl7Y0

【ゆま】
「せーのっ」

【ゆま】
「それっ!!」

ドゴォォォォン!!!!


ゆまさんは、そのままハンマーを力いっぱい振り下ろす。

そして、魔獣ではなく、真下の地面をハンマーで思いっきり叩きつけた。


ガ・・・ガガガ・・・


【タツヤ】
「おわっ!!??」


突然地面が揺れ始め、俺は体制を崩す。

俺が倒れまいと脚で踏ん張っていると―――――ゆまさんがハンマーを叩きつけた場所から、魔獣の群れに向かって地面にヒビが入り始めたのだ。


488 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 02:30:09.48 ID:bEHUFl7Y0

【魔獣】
「ウ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!!!!」

「ア゛ァア゛ァア゛ァア゛ァア゛ァ!!!!!」

「ウ゛ァァァアアア゛ァア゛ァア゛ァア゛ァア゛ァァァァアアア!!!!!!!!!」


地面の揺れは激しさを増し、ヒビ割れの規模はどんどん大きくなっていく。

そのヒビ割れは、やがて巨大な地割れとなって魔獣達を襲う。

前方にいた魔獣の群れは――――――その地割れによって、次々と飲み込まれていくのだった。


【タツヤ】
「今度こそ・・・やったか?」

【ゆま】
「たぶん、ね」


魔獣の群れは、地割れによって出来た巨大な穴に、一体残らず飲み込まれていく。

ゆまさんは、ふぅと息を吐き額の汗を拭った。

あれだけの数を相手に怯むことなく、それどころか、あっという間に倒してしまうゆまさんを見て、俺はただただ感心するばかりだった。

489 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 02:31:58.79 ID:bEHUFl7Y0

【QB】
「ゆま、あれじゃあグリーフシードを回収出来ないよ」

【ゆま】
「しょうがないよ、場合が場合だし」

【QB】
「はあ、やれやれ・・・」


ゆまさんとキュゥべえは俺の方を見ながら、なにか話している。

キュゥべえにいたっては、俺を見て溜息を付いているように見えた。


【タツヤ】
「(何なんだよ一体・・・。)」

【タツヤ】
「(てか、ぐりーふしーどってなんだ?)」

490 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 02:32:45.98 ID:bEHUFl7Y0






「ガ・・・」





【タツヤ】
「・・・え?」


なんだ・・・今、何か聞こえたような・・・。


491 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 02:34:21.66 ID:bEHUFl7Y0

【魔獣】
「ガァァァァァァァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!!」


ドゴォォォォン!!!!


【タツヤ】
「いっ!!??」


俺が何かうめき声のようなものを聞いたと感じた、その時――――。

地割れによって生まれた裂け目から――――巨大な化物が現れた。


【タツヤ】
「なんだよ・・・あれ・・・魔獣、か・・・?」

そいつは群れが飲み込まれた裂け目から身体を半分だけ出し、両手でその身体を支えている。

その化物はさっきの魔獣とほぼ同じ姿をしていたのだが、大きさが桁違いだった。

とにかくデカいというか、恐らくさっきの奴の数倍はあるんじゃないだろうか・・・。

492 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 02:35:53.83 ID:bEHUFl7Y0

【ゆま】
「うわ・・・嘘、でしょ」


流石のゆまさんも、かなり驚いている様子だった。

只でさえ、俺達とはかなり体格差があったのに、あんなのどうやって倒せって言うんだよ・・・。


【QB】
「まさか・・・こんな瘴気の中にこんな魔獣が存在するわけないよっ」


俺の隣に居たキュゥべえも、似たような反応をする。


【タツヤ】
「おい珍獣!!全然大したことなくねぇじゃねーか!!」

【QB】
「僕だって分からないよ。こんな魔獣、滅多に現れないんだからっ」


俺は両耳を掴んで持ち上げ、この珍獣に抗議する。

キュゥべえも、声が上ずっているようだった。

・・・全く、アテにならない珍獣だな。

493 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 02:38:18.11 ID:bEHUFl7Y0

【魔獣】
「ガァァアア!!」ブン!!


その巨大な魔獣は片方の腕を振り上げ、ゆまさんに向けて振り下ろしてくる。


カギンッ!!

グググ・・・・バァン!!

【ゆま】
「きゃあっ!!」ドゴン!!


ゆまさんはハンマーで何とか防御したが、反動で後ろの造物まで吹き飛んでしまった。


【タツヤ】
「ゆまさん!!」

【ゆま】
「いたた・・・参ったね、こりゃ」


造物にめり込んだように見えたが、幸いゆまさん無事のようだった。

しかし、よく見てみると身体のあちこちに傷が付いている。

多分、さっきまでの戦いで少なからずダメージを受けていたのだろう。


【タツヤ】
「ゆ、ゆまさん大丈夫ですか?」

【ゆま】
「へへ・・・、コレくらい余裕だって」


俺が心配して声を掛けるも、ゆまさんは笑顔でそう返す。

そして服に付着した土埃をパンパンと手で叩き、足下のハンマーを拾い上げた。

494 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 02:40:04.38 ID:bEHUFl7Y0

【ゆま】
「―――継続活性―――」


突如、ゆまさんの身体が光り輝いた。

そして、それと同時に―――ゆまさんの身体の傷も消えていく。

それは女性の身体を治した時と異なり、時間を掛けて、少しずつ傷を癒しているように見えた。

これも、多分治癒魔法って奴なのだろう。



【ゆま】
「(う〜ん、でもどうしよっかな・・・)」

【ゆま】
「(アレ倒すには、生半可な攻撃魔法じゃ駄目だろうし・・・)」

【ゆま】
「(強力な奴、使いたいけど・・・)」

【ゆま】
「(そのためには魔力をャージしなきゃいけないし・・・)」




【魔獣】
「ガアア!!!!」ブンッ!!

【ゆま】
「うわっと」ヒョイ


立ち止まっている間も、魔獣は続けて攻撃を仕掛けてくる。

ゆまさんはそれを紙一重で交わし、距離を取った。

495 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 02:42:24.90 ID:bEHUFl7Y0

【ゆま】
「(・・・・)」

【ゆま】
「・・・・うん、よし」


そして、自分に気合いをいれるように頷き、ふぅと息を吐く。


【ゆま】
「・・・・頼むよ」スッ


ゆまさんは、首から胸元にぶら下げていた十字架のようなアクセサリーを額に当てる。

その行動がどういう意味を示しているのか、俺には理解できなかった。

けど、それは自分自身に、何か御まじないを掛けているかのように見えるのだった。


【ゆま】
「はぁぁああ!!!」

【ゆま】
「―――砂塵撃!!―――」


ドゴォォォオオン!!


ゆまさんは再びハンマーを地面に振り下ろした。

すると、今度は彼女を中心にして、砂埃が豪快に舞い上がる。

496 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 02:44:10.79 ID:bEHUFl7Y0

【タツヤ】
「ごほっごほっ・・・ゆ、ゆまさん・・・?」


俺は舞い上がった砂埃のせいで、思わず咳き込んでしまう。

その砂埃は、前が全く見えなくなるくらい、辺り一面を覆っていた。

そのせいで魔獣どころか、ゆまさんの姿すら見失ってしまう。


【魔獣】
「ガァァッァアアアアア!!!!!」

ブン!!ブン!!


砂埃のせいで視界不良の中、魔獣はその巨大な手を振り回し、それをかき消していく。

さっきの攻撃は、この魔獣にはあまり効いていないようだった。


【タツヤ】
「ゆまさんっ!!」


舞い上がった砂埃は徐々に規模を収縮し、俺はその中に人の姿らしきシルエットを見つける。


【ゆま】
「・・・」


しかし、戦いに集中しているのか、俺の言葉に対して返事は無かった。

497 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 02:45:26.66 ID:bEHUFl7Y0

【ゆま】
「・・・・」ヒュンッ


【魔獣】
「ガアア!!!」

ブン!!ゴンッ!!


ゆまさんは再び魔獣に立ち向かうため、真正面から近付いていく。

しかし、馬鹿正直に前へ突っ込んでいったせいか、魔獣に叩き落とされてしまった。


【タツヤ】
「ゆ、ゆまさん、大丈夫ですか!!」

【ゆま】
「・・・・」


俺の声が届いていないのか、ゆまさんはただ黙って起き上がる。

そして、再び真っ直ぐ魔獣に向かって突っ込んでいった。


【魔獣】
「ウガァァアアアアアアア!!!!」


ブブン!!ドゴッ!!ガンッ!!


当然のごとく、魔獣は再び叩き落とそうとする。

ゆまさんも何とか受け止めようとするが、体格差が違いすぎるため、打ち負けてしまう。

その後も、手で叩かれようが、叩き落とされようが、ただただ真正面から突っ込んでいくばかりとなっていた。

498 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 02:48:04.86 ID:bEHUFl7Y0

【タツヤ】
「ち、ちょっとゆまさん!!それじゃあ身体が持ちませんよっ!?」


今の状況は『猪突猛進』といえば聞こえは良い。

しかし、あれでは魔獣を倒す前に、ゆまさんが倒されてしまう。


【タツヤ】
「・・・っ。おいキュゥべえ!!ゆまさんにテレパシーで何か言ってやれよ!!」


煮え切らなくなった俺は、隣にいるキュゥべえに声を掛けた。


【QB】
「ゆま、君はもしかして・・・」

【タツヤ】
「おい!!人の話を聞けよ珍獣!!!」


しかし、この珍獣は俺の言葉に耳を貸さず、ただただ戦況を見つめるばかりだった。

全くどこまでも役に立たない奴だな・・・コイツ。

と、今はそんな事よりゆまさんの方が心配d



【魔獣】
「ガアアアアアア!!!!」

ガシッ


【タツヤ】
「あっ!!!」


魔獣は何度も自分に向かって来ることに嫌気がさしたのか、とうとう両手を使ってゆまさんを捕まえてしまった。

そして、魔獣はそのままゆまさんを持ち上げ、自分の顔付近まで近づける。

499 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 02:49:05.63 ID:bEHUFl7Y0

【タツヤ】
「だ、駄目だ!!ゆまさん、早く逃げ・・・」


【魔獣】
「ガア!!!!!」


バアアアアアアアアア!!!!!


【タツヤ】
「っ!!??」


俺がゆまさんに逃げろと言おうとした時――――――魔獣は口のような部分から巨大なレーザーを出す。

それは、さっきまでの魔獣が撃ってきた物とは比べ物にならないほど、とてつもなく大きなものだった。




そして、魔獣の両手によってガッチリ拘束されていたゆまさんは――――――その攻撃をまともに受けてしまう。

500 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 02:50:27.78 ID:bEHUFl7Y0

【タツヤ】
「あ・・・・あ…」


俺は、その光景に言葉を失う。



魔獣の手の中にいた筈の、ゆまさんが――――――――跡形も無く消し飛んでしまっていたのだ。



【タツヤ】
「そんな・・・ゆ・・・ま・・・さんが・・・」




魔獣によって――――――――――殺されてしまった。





死んでしまった・・・・。

501 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 02:51:54.61 ID:bEHUFl7Y0


【タツヤ】
「ゆまさぁぁぁぁぁぁああああああん!!!!!」





俺はその場に崩れ落ち、あの人の名前を叫ぶ。





しかし―――――そんなことをしても、ゆまさんの返事が返ってくることはない。





返ってくるはずは・・・・ないのだ。


502 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 02:52:39.89 ID:bEHUFl7Y0





【ゆま】
「呼んだー?」


だって、ゆまさんはもう・・・







・・・・・・・・・え?

503 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 02:53:50.16 ID:bEHUFl7Y0

【タツヤ】
「・・・はい?」


もう聞こえる筈のない声が、俺の脳内に響く。

・・・はは、もう幻聴が聞こえ始めたのか。




・・・いや、そんな事あるわけない。

この声は、そんな不確かなものではない―――――――――。



【ゆま】
「あーあ、やられちゃった」



【ゆま】
「でも、残念」



【ゆま】
「『はずれ』だよ」


504 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 02:55:00.60 ID:bEHUFl7Y0



ゆまさんの声が、辺り一面に響く。




俺はその声の出所を探し出すべく、キョロキョロと視線を動かした。




そして、近くの高台のような造物に目を向けると・・・。

505 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 02:55:33.06 ID:bEHUFl7Y0





【ゆま】
「『本物』はこっちだよ」





506 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 02:56:31.72 ID:bEHUFl7Y0

ttp://www.youtube.com/watch?v=lfI_5lr193s



その造物のてっぺんにいる、ゆまさんを見つけた――――――――。


【タツヤ】
「ゆ、ゆまさん・・・」


本当に・・・・生きて・・・、え・・・でも、なんで・・・?

俺は確かに、あの魔獣に捕まって攻撃をまともに受けたゆまさんを目撃していたのだ。

逃げられる時間なんて、無かった筈なのだ。

507 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 02:57:44.76 ID:bEHUFl7Y0

【QB】
「幻覚魔法、か・・・」

【タツヤ】
「ふぇ?」


それまで黙って見ているだけだったキュゥべえが、ポツリとそう呟く。

げん・・・かく、まほ・・・う、・・・・幻?

そう言えば、ゆまさんは「はずれ」だとか「本物」だとか言っていたような・・・?

俺は、目の前で一体何が起きたのか、全く分からなかった――――。



【魔獣】
「ガァァァァァァアアアアアアアア!!!!!!!!」


俺と同様に、声が聞こえてから辺りを見回ていた魔獣は、やがてゆまさんを見つける。

すると、裂け目から半分だけ出していただけだった自らの身体を、一気に外へと押し出す。

そして、腕と脚による四足歩行でゆまさんに近付いていった。

508 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 02:59:06.06 ID:bEHUFl7Y0

【ゆま】
「あ、やっと気付いた?」


【ゆま】
「でも、もう遅いよ♪」



魔獣が近付いてくるのを、ゆまさんは余裕の笑顔で迎える。

それはまるで、自分の勝利を確信しているかのような微笑みだった。


【ゆま】
「―――1、2、3―――」

【ゆま】
「―――チャージ完了―――」


次の瞬間、ゆまさんが持っているハンマーが変化し始める。

それは、あの魔獣すら覆い隠してしまうくらい、とてつもなく巨大なハンマーへと変わる。

そして、あの細い腕の何処にそんな力があるのか、ゆまさんはそのハンマーを頭上に振り上げ、魔獣に向かっていった。

509 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/22(日) 03:01:11.86 ID:bEHUFl7Y0

【ゆま】
「いけぇぇぇぇぇえええ!!!」



【ゆま】
「メテオインパクトォォォォォォオオオ!!!!」




ドッゴォォォォォオオオオオオオオオオオオン




【魔獣】
「ギガァァァァァァァァアアアアアアアアアア!!!!!!!」



バシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥウウウウウウン



ゆまさんが振り下ろした巨大なハンマーは、魔獣の脳天に命中しそのまま地面へと叩き付ける。

そして―――――魔獣は地面にめり込むようにして、崩れ落ちていくのだった。


510 :川´_ゝ`)っ旦{技名って…素敵やん ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/04/22(日) 03:06:18.09 ID:bEHUFl7Y0
今回は以上です。お疲れ様でした。

今更『キュゥべえ』が『キュウべえ』になってた事に気付いたずぇ・・・。

まあ、いいか。

それでは、お休みなさいノシ
511 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/22(日) 05:06:32.32 ID:M+7iP2c5o
ほむほむ来るのおせぇww
512 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/04/22(日) 09:55:34.15 ID:a8enPrAu0
乙です。
巻き込んだことにほむらがどう反応するか…
513 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/22(日) 12:09:09.45 ID:q3BtF/Fio
514 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/04/24(火) 05:56:16.27 ID:38K9RHivo
乙乙!
515 :川´_ゝ`){当てにならない近況報告 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/04/30(月) 01:20:23.34 ID:sXcNJlw+0
夜遅くにこんばんわ>>1です。いつも閲覧&コメ有難うございます。

次回ですが、近日中に投稿したいと思います。

とりあえず昆布茶と濡れ煎餅置いときますんで気長に御待ち下さい。

っ旦旦旦 

紅茶とケーキなんて洒落た物は持ち合わせておらぬ故な・・・。
川´_ゝ`)

では、また次回にノシ
516 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/30(月) 01:28:56.67 ID:G0EUwV3IO
濡れ煎餅美味しいよね
高いけど。
こんぶ茶なら100均でもかえる
517 :川´_ゝ`){勝てねーなー阪神 ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/05/02(水) 01:24:43.58 ID:4a+oG3PX0
夜遅くにこんばんわ>>1です。いつも閲覧&コメ有難うございます。

それでは続きを投稿します。

今回は少し短いかもしれません。
518 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/02(水) 01:27:16.31 ID:4a+oG3PX0

カラン、コロン・・・


その巨大な化物はさっきの魔獣と同様、砂になるようにして消えていく。

そして、その化物は小さくて黒いキューブのような物体に変化したのだった。


【ゆま】
「お、流石デカかっただけあってグリーフシードも大量♪大量♪」


ゆまさんはそれを拾い上げ、満足そうな表情を浮かべながら服の中に仕舞い込む。


【タツヤ】
「・・・・うへぇ」ヘナヘナ


一方、一部始終を見ていた俺は、しゃがみ込むようにしてその場に崩れ落ちる。

腰が抜けたのか、あるいは緊張の糸が切れたのか、どちらにせよ足腰が立たなくなったのは確かだった。

無理も無いだろう。

化物にやられたと思っていたゆまさんが、突然現れてそのまま化物を倒してしまったのだから。

未だに今何が起こったのか、俺には全く分からなかった。

519 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/02(水) 01:28:45.97 ID:4a+oG3PX0

【ゆま】
「はぁぁぁぁぁー」

【ゆま】
「つっかれたぁー」バタン


ゆまさんはそう言って背伸びをした後、その場に腰を下ろす。

そして、そのまま大の字になるようにして寝転んだ。


【タツヤ】
「ゆま、さん・・・?」

【ゆま】
「(大丈夫だよー)」

【タツヤ】
「(!?)」


俺が声を掛けようとすると、脳に直接ゆまさんの声が響く。

恐らくキュゥべえのテレパシーを使っているのだろう。


【タツヤ】
「(あ、あの・・・)」


俺もゆまさんに合わせて、テレパシーを使ってそれに応える。

しかし、その後何と声を掛けていいのか分からず、しどろもどろになる。

お疲れ様でした、とでも言えば良いのだろうか・・・?

520 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/02(水) 01:30:25.43 ID:4a+oG3PX0

【ゆま】
「(ごめんねー、心配掛けちゃって)」

【タツヤ】
「(あ、いや・・・)」


心配を掛けた。

それは、恐らくあの巨大な化物、もとい魔獣とのことを言っているのだろう。

あの時は、倒されてしまったと勘違いして、思わずゆまさんの名前を大声で叫んでしまった。

それを思い出すと・・・・今更だが、かなり恥ずかしい気がしてきた・・・。


【タツヤ】
「(あ、あの・・・)」

【ゆま】
「(ん?)」

【タツヤ】
「(・・・お疲れ様です)」


結局、俺は一番妥当だと思う言葉を選ぶ。

少し気恥ずかしかったが・・・感謝や労いの気持ちはキチンと言葉にして相手に伝えなければならない。

・・・・って、父さんがいつも言っていたから。

あ、でも言葉には出してないか。

521 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/02(水) 01:32:11.71 ID:4a+oG3PX0

【ゆま】
「(・・・うん、ありがと)」


ゆまさんは満面の笑みで、俺に言葉を返す。

そのことで、ますます気恥ずかしくなった俺は、思わず顔を背けてしまうのだった。


【ゆま】
「(流石に魔力使いすぎちゃった)」

【ゆま】
「(ちょっと休ませてねー)」


ゆまさんは寝転がりながら、テレパシーで続ける。


【ゆま】
「(・・・)」


余程疲れたのか、そのままテレパシーを通じても喋らなくなってしまった。


パリィィン


【タツヤ】
「(あ・・・結界が・・・・)」


それと同時に、今まで俺達を囲っていた結界も解除される。

これを維持するのにも、多分魔力を消費していたのだろう。

522 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/02(水) 01:33:48.57 ID:4a+oG3PX0

【タツヤ】
「今度こそ・・・終わったんだよな・・・?」

【QB】
「恐らくね」

【QB】
「でも、まだ瘴気が消滅しきってないから、油断しない方が良い」


俺の言葉に、隣に居たキュゥべえが応える。


【タツヤ】
「瘴気が消滅したらどうなるんだよ?」

【QB】
「結論から言えば、元の空間に戻るね」


確かに、魔獣を倒した後も俺達が居る場所に変化は無かった。

キュゥべえの言うように、まだこの場所に瘴気とやらが充満しているって事だろう。

ということは、まだ魔獣がいるかも知れないって事か。

正直もう勘弁して欲しいのだが・・・。

523 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/02(水) 01:38:07.03 ID:4a+oG3PX0

【女性】
「う・・・・うん・・・・」

【タツヤ】
「あ・・・」


地面に寝かせておいたあの女性に視線を落としてみると、その女性は今にも意識を取り戻しそうだった。

その女性は魔法で傷を治した後、ゆまさんが魔獣と戦っている間も、眠るように気を失ったままとなっていたのだ。


【タツヤ】
「だ、大丈夫ですか・・・?」

【女性】
「ん・・・あ、あれ・・・?私・・・」


その人は、徐に起き上がり辺りを見回す。

まだ脳が覚醒していないのか、自分が置かれている状況に気付いていないようだ。


【女性】
「・・・!!そ、そうだわ!!私・・・確か・・・」


しかし、少しずつ自分に起きたことを思い出したのか、震えたような声を出し始める。

仕方ないのかもしれない。

突然訳のわからない化物に襲われ、危うく殺されそうになったのだ。

悪い夢を見ていた・・・なんて言葉では済まされないくらい、恐ろしい体験だったに違いない。

震えが止まらなくなるのも、分かる気がする。

524 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/02(水) 01:39:42.79 ID:4a+oG3PX0

【タツヤ】
「だ、大丈夫ですよ。もう安全ですから・・・」

【女性】
「い・・・嫌、嫌っ!!」


何とか宥めようとするのだが、その人は頭を抱えるようにして塞ぎ込んでしまう。

どうやら魔獣に襲われたことが、一種のトラウマになってしまっているらしい。


【女性】
「い、嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!」ダダダッ

【タツヤ】
「あっ!?ちょ、ちょっと!!!」


突如、その人は叫び声を挙げる

そして、一刻も早くこの場から離れたかったのだろうか。

俺の静止にも耳を貸さず、広場の出口に向けて走り出してしまった。


【タツヤ】
「(まだ、瘴気も消えてないのに・・・・大丈夫かな・・・・?)」

【タツヤ】
「(何か嫌な予感が・・・・・)」


何となく不安を覚えた俺は、そのままその女性の事を目で追っていく。

525 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/02(水) 01:40:27.22 ID:4a+oG3PX0




「ウ゛ア゛・・・・」




526 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/02(水) 01:42:01.39 ID:4a+oG3PX0

【魔獣】
「ウ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」

【女性】
「きゃぁぁぁぁぁああああ!!!!!」

【タツヤ】
「いっ!?」


な・・・!? 出口の方にまだ魔獣がっ!!

くそっ嫌な予感が的中しやがった・・・・!!


【魔獣】
「ア゛・・・・ア゛ア゛・・・!!!」

【女性】
「い・・・嫌・・・・助けて・・・・」


目の前に魔獣が現れると、その人はその場に固まって動かなくなってしまう。

一方、魔獣はその女性を標的に定め、力を溜め始める。

恐らくあのレーザーみたいなやつを撃つ気なのだろう――――――。

527 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/02(水) 01:43:55.42 ID:4a+oG3PX0

【タツヤ】
「くそっ!!!!」ダッ

【QB】
「あ!!ま、待つんだ!!!」


俺はキュゥべえが言うよりも早く、女性が居る場所へ走り出す。


【タツヤ】
「避けろって!!!」バッ

【女性】
「きゃ!?」

【魔獣】
「ア゛ア゛!!!!!!」

バァァァァアアアアアアア!!!!!


俺は間一髪でその人を押し倒す

そして、魔獣が撃ったレーザーをなんとか避けることができた。

528 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/02(水) 01:45:29.95 ID:4a+oG3PX0

【QB】
「ゆま、起きるんだ!!」

【ゆま】
「えっ!?な、何!?」

【ゆま】
「あ!!!!」



【タツヤ】
「・・・っ。いてて・・・・」


その人に覆い被さった状態になった俺は、その身を何とかして起こす。

身体が少し痛い・・・・どこか擦り剥いたかも・・・。


【ゆま】
「駄目っ!!」

【ゆま】
「タっくん逃げて!!!!」

【タツヤ】
「? へ―――――」


529 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/02(水) 01:46:47.18 ID:4a+oG3PX0

【魔獣】
「ウ゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!!!!」


バァァアアアアアアアア!!!!!!


【タツヤ】
「――っ!!」


俺が起き上がった、その時―――――魔獣は再び、レーザーを撃ってきた。




今度は、俺を狙って―――

530 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/02(水) 01:48:30.48 ID:4a+oG3PX0

【タツヤ】
「(やばっ身体が動かない・・・!!!)」


一瞬の出来事に反応出来なかったのか、俺の身体はまるで金縛りにあったかのようにピクリとも動かなかった。



徐々に魔獣が撃ったレーザーが、俺に近付いてくる。



それは数秒にも満たない時間の筈なのに、何故かとてもゆっくりに見える。



【タツヤ】
「(や、殺られる・・・!!)」



そして、レーザーが俺の目の前まで近付いた時――――――――



【タツヤ】
「(うわっ――――――)」




――――――――――俺の目の前は、真っ暗になった。

531 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/02(水) 01:50:16.33 ID:4a+oG3PX0


――漆黒の暗闇の中、一つの場面が浮かび上がる――


――嵐のように吹き荒ぶ強風、崩れ落ちた建物、破壊された道路――


――映し出されたのは、全てが崩壊した町の姿――


――まるで世界の終焉を意味しているのかとさえ感じられる、『絶望』の縮図――



「アーヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!!!!」



――そして、その光景をあざ笑うかのように、狂気染みた笑い声を挙げる化物――




――そして・・・・――



――その化物を真っ直ぐに見つめ、立ち向かおうとするのは・・・・一人の・・・・・――


532 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/02(水) 01:51:20.45 ID:4a+oG3PX0





――――――ビキッ




533 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/02(水) 01:53:02.47 ID:4a+oG3PX0


【タツヤ】
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!!!!」


ttp://hp41.0zero.jp/data/800/tiger2/pri/23.JPG


ブオン、ドゴォォォォォオオオン・・・・



【ゆま】
「・・・・・え?」

【QB】
「な・・・・」


534 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/02(水) 01:55:18.47 ID:4a+oG3PX0


【ゆま】
「い、今のって・・・・」

【ゆま】
「防御・・・・結界・・・・?」

【QB】
「まさか・・・ありえない・・・・」

【QB】
「そんな筈・・・ないじゃないか・・・」

【QB】
「どうして彼が・・・」

【QB】
「どうして僕と契約していない彼が・・・」

【QB】
「どうして・・・・『魔法』を使えるんだい・・・!?」


535 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/02(水) 01:56:08.64 ID:4a+oG3PX0


【タツヤ】
「・・・・・・」



【タツヤ】
「・・・・・魔法、少女」




【タツヤ】
「・・・・ソウル、ジェム」



【タツヤ】
「・・・・グリーフシード」




【タツヤ】
「・・・・・・・・・」


536 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/02(水) 01:57:45.38 ID:4a+oG3PX0











【タツヤ】
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・魔女」
537 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/02(水) 01:58:47.04 ID:4a+oG3PX0


【ゆま】
「タ・・・・タっくん・・・・?」


・・・・・・ん?


【タツヤ】
「・・・・あれ?」

【タツヤ】
「俺・・・・今、何を・・・?」


確か・・・・魔獣の攻撃が目の前に迫ってきて・・・。

そしたら、突然目の前が真っ暗になって・・・それで・・・えーと・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・その先が、思い出せない・・・。

一体、何が起きたというんだ・・・?

538 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/02(水) 01:59:49.38 ID:4a+oG3PX0


【魔獣】
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!!!」

【タツヤ】
「・・・って!!今はそんなこと考えてる場合じゃなかった!!」

【ゆま】
「・・・・あ!!タ、タっくんっ!!」ダダッ


魔獣は再び力を溜め始め、砲撃を行おうとしている。

あの女性は・・・・・また気絶してしまったらしい。

抱きかかえて逃げる・・・・ような時間は無さそうだ。


【タツヤ】
「くそっ!!どうする!?」


万事休す、か・・・


539 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/02(水) 02:00:32.81 ID:4a+oG3PX0




「(下がってなさい)」




540 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/02(水) 02:02:42.82 ID:4a+oG3PX0

【タツヤ】
「え?」



「――降り注げ、天上の矢――」


ピュン、ピュン、ピュピュン


グサグサグサッ!!


【魔獣】
「ア゛ア゛ア゛ァァァァァァァァア!!!!!!!!」

【タツヤ】
「うわっ」


バシュゥゥゥゥゥゥウン・・・・・、カラン・・コロン


テレパシーで何か聞こえたと思った瞬間、何処からともなく現れた無数の矢が魔獣を襲った。

魔獣は一瞬で消滅し、またあの黒いキューブのような物に変化する。

541 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/02(水) 02:04:10.48 ID:4a+oG3PX0

【タツヤ】
「い、今・・・何処から・・・」キョロキョロ


さっきの矢が何処から降ってきたのかと、辺りを見回す。


【タツヤ】
「・・・・あ」


そして、魔獣を矢で射抜いた張本人は、少し離れた場所に立っていた。



その人は、グレーを基調とした衣装に身を包み――

長くて綺麗な髪の毛と――

それを装飾した赤いリボンが特徴的な――


【ほむら】
「・・・ふぅ」ファサァ・・・


――暁美ほむらさんだった。


542 :以下、オマケ ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/02(水) 02:07:03.87 ID:4a+oG3PX0

暁美ほむら(リボン)
Lv.60 因果値:500

HP:780/780 (B)
MP:750/750 (B)
STR(物攻):105 (C)
CON(遠攻):128 (B)
VIT(防御):120 (B)
DEX(命中):135 (A)
AGI(回避):133 (A)

技)マジカルアロー、マジカルスコール、侵食する黒き翼(究)

543 :川´_ゝ`){熱いぜ、キヨシ!! ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/05/02(水) 02:11:14.07 ID:4a+oG3PX0
今回は此処までです。お疲れ様でした。

描く度に絵のクオリティーが上が・・・・・・・・・・・らなかった!!!!!!!!!!

では、お休みなさいノシ
544 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/05/02(水) 02:21:58.60 ID:75bvXxpro

たっくん、まどかの色々を受け継いでるのか?
545 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/05/02(水) 21:38:57.49 ID:nbfwv20AO


ゆまちゃん死ななくて良かった……
これはたっくん変身フラグか?
546 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/03(木) 10:29:19.48 ID:d7o2v8XG0

あと超亀だけど>>406
喋り方が士郎ぽい所もあるし、髪型的に成長したタッくんのイメージ。
それにCV:岡本信彦よりCV:杉山紀彰が合う。これは個人的なイメージだけど・・・・・
547 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/05/19(土) 09:28:48.35 ID:AHhrBhEO0
保守
ほむらはこの環境にどう反応するのか
548 :川´_ゝ`){待たせたな!! ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/05/20(日) 01:33:49.81 ID:xnvIzXwi0
夜遅くにこんばんわ>>1です。いつも閲覧&コメ有難う御座います。

事前報告が無く、遅くなって申し訳ありませんでした(汗)

今の時期、リアルの方でちょっと頑張らなきゃいけないことがありまして・・・すいませんです。

言い訳はこの辺にして、今回は今日と明日の二回に分けて投稿したいと思います。

それでは、投稿します。
549 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/20(日) 01:35:38.06 ID:xnvIzXwi0

――――――――――――――――――――

暁美さんは造物の上をつたって此方に近付いてくる。

そして、俺の目の前で飛び降りると、背中から黒い翼のようなものを出し、ゆっくりと着地した。


【タツヤ】
「あ・・・暁美、さん」


力が抜け、その場に座り込んでいた俺は、暁美さんを見上げて呟く。


【ほむら】
「・・・大丈夫?」

【タツヤ】
「あ、はい・・・」

【ほむら】
「怪我は無い?」

【タツヤ】
「だ、大丈夫です」


暁美さんに対して、少し戸惑いながら答える。

多少の外傷は負ったが、それほど気にすることでもなかった。


550 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/20(日) 01:36:54.85 ID:xnvIzXwi0

【ほむら】
「そう」クルッ


それだけ言い残すと、暁美さんはくるりと背中を向ける。

そして、そのままゆまさんの方へと歩き始めた。


【ゆま】
「ほむら、お姉ちゃん・・・」


暁美さんはゆまさんの目の前まで来ると、立ち止まり視線をゆまさんへと向ける。

身長はゆまさんの方が高いのに、なんとなく暁美さんがゆまさんを威圧しているように見えた。


【ほむら】
「・・・・」


暁美さんは何も言わず、片手を振り上げる。

そして――――。



バチン!!!


551 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/20(日) 01:39:53.23 ID:xnvIzXwi0

【ゆま】
「痛っ!!」



【タツヤ】
「いっ!?」


目の前で起きたことに、俺は思わず声を挙げた。

暁美さんが、ゆまさんの頬をおもいっきり叩いたのだ。



【ほむら】
「・・・あなた、自分が何したのか分かってるの?」

【ほむら】
「一般人を巻き込んだのよ」


黙っていた暁美さんが静かに口を開く。

その口調は落ち着いているようにも見えるが、声色からして明らかに怒っている様子だった。

552 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/20(日) 01:41:03.76 ID:xnvIzXwi0

【ゆま】
「・・・ごめんなさい」


暁美さんの雰囲気に圧倒されたのか、ゆまさんは弱弱しくそう答える。


【ほむら】
「私が間に合わなかったら、彼は死んでいたかもしれないのよ」

【ほむら】
「・・・・・本当に分かってるの?」


徐々に語尾を強くしていき、暁美さんはゆまさんに詰め寄る。

なんでかは分からないが、どうやら相当怒っているみたいだった。

553 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/20(日) 01:42:26.60 ID:xnvIzXwi0

【タツヤ】
「あ、あのー・・・」

【ほむら】
「・・・何?」

【タツヤ】
「も・・・もう、その辺にしておいた方が・・・」

【タツヤ】
「俺も無事だった訳ですし・・・」


何となくゆまさんが不埒に思えた俺は、暁美さんとゆまさんの間に割って入り、暁美さんを宥めようとする。

うん・・・ゆまさんが俺を助けてくれたことは事実な訳だし・・・。


【ほむら】
「・・・・一般人を瘴気の中に入れるなんて」

【ほむら】
「常人のすることじゃないわ・・・」


俺の顔を見ると、暁美さんは少しだけ落ち着きを取り戻す。

しかし、それでも怒りが収まっていないようだった。

どうしたらよいものか、俺は思考を巡らせその場の打開策を考える。

そして、少し考えた末・・・。

554 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/20(日) 01:44:04.86 ID:xnvIzXwi0

【タツヤ】
「いや、実はですね」

【タツヤ】
「俺が勝手にこの中に入ったんですよ」

【ほむら】
「え?」

【ゆま】
「ちょ、ちょっと!?」


全部自分が悪いということにして、この場を収めようとした。

後ろにいるゆまさんが驚きの声を挙げるが、俺は尚も続ける。


【タツヤ】
「いやーゆまさんには止められたんですけど」

【タツヤ】
「どーしても魔獣って奴をこの目で見てみたくなりまして」

【タツヤ】
「てぃひひひ」


暁美さんに向けて、能天気に笑ってみせる。

・・・まあ、突っ込んでいったのは本当なんだし、あながち間違いではない。

555 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/20(日) 01:46:04.88 ID:xnvIzXwi0

【ゆま】
「たっくん・・・」


【ほむら】
「・・・・」


暁美さんは俺とゆまさんを交互に見比べながら、表情を少し歪める。


【ほむら】
「・・・はあ」

【ほむら】
「・・・関わっちゃ駄目、って言ったわよね?」

【タツヤ】
「・・・ごめんなさい」


やがて、暁美さんは溜息を付き、視線を俺に向けた。

厳しい事を言われ、俺は思わず身体を縮こまるようにして謝ってしまう。

556 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/20(日) 01:47:11.08 ID:xnvIzXwi0

【ほむら】
「・・・もういいわ」

【ほむら】
「でも、魔獣に関わるのはこれで最後にしなさい」

【ほむら】
「でないと・・・あなた、いつか本当に死ぬわよ」

【タツヤ】
「・・・・はい」


暁美さんに説教され、俺は軽く凹む。

それでも、先程までの怒りは収まったのか、口調は少しだけ穏やかなものに戻っていた。


【ゆま】
「・・・ありがと」ボソ・・

【タツヤ】
「へ?」

【ゆま】
「なんでもない」


後ろでゆまさんが小さな声で何か言ったような気がしたが、俺には上手く聞き取れなかった。

557 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/20(日) 01:48:44.79 ID:xnvIzXwi0

【タツヤ】
「いやーそれにしても」

【タツヤ】
「魔法少女って凄いんですね」

【タツヤ】
「何か『正義の味方』って感じ」


俺は自分が感じた事を率直に言葉にする。

何故そんなことをしたかと言えば、この場に流れる何となく重苦しい空気を変えたかったからなのかもしれない。


【ほむら】
「そんな大それたものじゃないわ」

【ほむら】
「戦わなきゃいけないから戦ってるだけよ」


俺の言葉に対して、淡々とした口調で返してくる暁美さん。


【ゆま】
「ははは、まあ・・・ねえ」


そして、それを見たゆまさんは苦笑いを浮かべる。

558 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/20(日) 01:51:44.09 ID:xnvIzXwi0

【ゆま】
「さっき魔獣倒したとき箱みたいな物落ちたでしょ?」

【タツヤ】
「え?あ、そういえば・・・」


確かに黒いキューブみたいなもの落ちてたな。


【ゆま】
「あれは『グリーフシード』って言って」

【ゆま】
「私達魔法少女の魔力の源なの」

【タツヤ】
「源・・・?」


そういえば、さっきもそのグリーフシードがどうだとか言ってたな・・・。

何だろう・・・、ゲームでいう回復薬みたいな物なのだろうか・・・?


【ゆま】
「うん、よっと」

――パアァァア


ゆまさんは掛け声と共に、猫耳の魔法少女姿から元の姿に戻る。

そして、さっき胸元に仕舞ったあの黒いキューブを取り出す。

559 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/20(日) 01:53:05.25 ID:xnvIzXwi0

【ゆま】
「私のソウルジェム、少し濁ってるでしょ?」

【タツヤ】
「ふぇ?そ、そういえば・・・」


ゆまさんの緑色のソウルジェムは変身する前に見たときよりも、少し黒ずんでいる様に見えた。

綺麗に光り輝いていたのに、その輝きも薄れているように感じた。


【ゆま】
「これをこうして・・・」


そして、ゆまさんはソウルジェムの周りに幾つかその黒いキューブを置く。


――パァァァァアアアア


【タツヤ】
「おっ」


すると、そのグリーフシードという黒いキューブは、ソウルジェムの黒ずんだ部分を吸い出し始めた。

しばらくすると、ゆまさんのソウルジェムは先程のような輝きを取り戻す。

逆に、黒ずんだ部分を吸い出したグリーフシードは元々黒かった部分が余計にどす黒くなった気がする。

560 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/20(日) 01:54:46.27 ID:xnvIzXwi0

【ゆま】
「はい、これで良し」

【ゆま】
「これで魔力も元通りってわけ」

【タツヤ】
「へー・・・」


なんだか・・・・思ったより面倒くさいんだな・・・。

もっとこうバアって回復できないのかな、バアアって。




――ググググ・・・・・


【ゆま】
「おっ」

【ゆま】
「瘴気が晴れてきたね」


ゆまさんが言うように、しばらくすると俺達が居た場所が本来あるべき姿に戻っていく。

造物は普通の建物に、不気味な植物は木に戻り、空を覆っていた霧は徐々に晴れていった。

561 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/20(日) 01:56:02.52 ID:xnvIzXwi0

【タツヤ】
「この人、どうしよう・・・」


元の世界に戻れたところで、俺は再度気絶してしまったあの女性に目を向ける。

未だ目を覚まさないので、地面に寝かせてあるけど・・・。


【ゆま】
「そのままそっとしておいたら?」

【ゆま】
「もう魔獣もいないし、起きたら自分で帰れるでしょ」

【タツヤ】
「それも、そうか」

【タツヤ】
「ま、それでも一応・・・」ンショ


俺はその女性を抱きかかえ、近くのベンチに腰掛けさせる。

地面に寝かせておくより、こっちの方が良いだろう。

後は自然と目を覚ました時、悪い夢でも見ていたんだと思ってくれれば良いのだが・・・。

562 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/20(日) 01:57:21.15 ID:xnvIzXwi0

【タツヤ】
「ふぅ〜」

【タツヤ】
「やっと終わった〜」


俺は、その場に大の字になって寝転がる。

元通りとなった空を見上げると、暗闇を照らすように星が綺麗に輝いていた。


【タツヤ】
「しっかし・・・」

【タツヤ】
「あんな化物といつも戦ってるんですか?」


俺は寝転がったまま、ゆまさん達に聞く。


【ゆま】
「まあね」

【ゆま】
「ほぼ毎日夜は外に出て、魔獣退治かな」


毎日か・・・それは大変そうだな・・・。

563 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/20(日) 01:58:42.78 ID:xnvIzXwi0

【タツヤ】
「二人で・・・ですか?」

【ゆま】
「うううん」

【ゆま】
「私は普段は風見野の方を回ってるから」

【ゆま】
「見滝原は基本的にほむらお姉ちゃん一人かな」

【タツヤ】
「へー、一人で・・・」


ゆまさんのいう風見野ってのは、見滝原市の隣にある風見野市のことだ。

見滝原ほどではないが、あそこも近代化が進んでいて結構大きめの都市になっている。

そんな両方の都市を一人ずつでなんて・・・。

564 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/20(日) 01:59:17.84 ID:xnvIzXwi0




【タツヤ】
「他に仲間って居ないんですか?」






565 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/20(日) 02:00:38.06 ID:xnvIzXwi0

【ゆま】
「え?」



【タツヤ】
「え?いやほら、二人だけじゃ大変そうだし」

【タツヤ】
「他に魔法少女っていないのかなーって・・・・」


居るんだったら、協力し合った方が魔獣退治も楽なんだろうなぁ〜と思ったんだけど・・・。


【ゆま】
「・・・・」

【ほむら】
「・・・・」


・・・なんだろう。二人の雰囲気が突然変わって・・・。

何となく、空気が重いような・・・。

ひょっとして、まずいこと聞いちゃった・・・のかな?

566 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/20(日) 02:02:42.71 ID:xnvIzXwi0

【QB】
「魔法少女ならもう一人居るよ」

【タツヤ】
「おわっ!?」


目の前に突然この白い生き物が現れたので、俺は驚いて後ずさりする。

ああ・・・そういえばこの珍獣いたんだっけ、すっかり忘れてた。

いや、そんな事はともかくとして・・・。


【タツヤ】
「魔法少女って、もう一人いるのか?」

【QB】
「そうだよ」


【ゆま】
「まあ・・・・」

【ゆま】
「いるには・・・いるんだけど・・・」


【タツヤ】
「へ?」


キュゥべえの言葉に、歯切れの悪い言葉を重ねるゆまさん。

そのもう一人の魔法少女って人に何か問題でもあるんだろうか・・・・?

567 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/20(日) 02:04:15.71 ID:xnvIzXwi0

【ほむら】
「アレはもう魔法少女なんかじゃないわ」

【ほむら】
「使命から逃げ出した」

【ほむら】
「ただの役立たずよ」


そこで、今まであまり口を開かなかった暁美さんが言葉を発する。

しかし、その言葉は、負の感情を感じさせるものだった


【QB】
「君は相変わらず彼女のことが嫌いなんだね」



【ほむら】
「ええ、嫌いよ」

【ほむら】
「顔も見たくないわ」



【ゆま】
「はは・・・」


キュゥべえの問いかけに、暁美さんは憎たらしそうな表情を浮かべて答える。

それを見て、ゆまさんは何故か呆れたように苦笑いを浮かべた。

568 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/20(日) 02:05:18.39 ID:xnvIzXwi0

【QB】
「まあ、そんな事は今はどうでも良いんだ」

【QB】
「それよりも、僕は君に聞きたいことがあるんだよ鹿目タツヤ」

【タツヤ】
「あ?」


そう言ってキュゥべえは俺の目の前に移動してくる。

なんだよ、突然。


【QB】
「君h」

【ほむら】
「あなたはもう帰りなさい」ズイッ

【タツヤ】
「うわっ!?」


キュゥべえが何か言い掛けようとした瞬間、目の前に暁美さんが現れる。

それは、まるでキュゥべえの言葉を遮りたかったかのように。

569 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/20(日) 02:07:20.62 ID:xnvIzXwi0

【QB】
「ちょ・・・ほむらっ」

【タツヤ】
「え?え・・・え、あの」

【ほむら】
「今日はもう遅いわ」

【ほむら】
「家に帰りなさい」

【タツヤ】
「いや、でも、今そいつが話があるって・・・・」


俺は暁美さんの後ろで戸惑っているキュゥべえを指差しながら応える。


【ほむら】
「ソイツの話は聞かなくて良いわ」

【ほむら】
「聞くだけ無駄よ」


暁美さんはキュゥべえの方を振り向くことなく言い捨てた。


【タツヤ】
「あ、いや。でも・・・・」


やっぱり聞くだけ聞いといた方が良いんじゃ・・・。

570 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/20(日) 02:08:31.40 ID:xnvIzXwi0

【ほむら】
「いいから、今日は帰って」

【ほむら】
「親が心配するわよ」

【タツヤ】
「は、はあ・・・・」


うーん、そう言われると・・・・確かに、父さんが夕飯作って待っているかもしれないな・・・。

母さんは、多分まだ仕事だろう。


【タツヤ】
「・・・分かりました」

【QB】
「・・・・・」


結局、根負けした俺は暁美さんの言うとおり、家に帰ることにした。

キュゥべえが、まだ何か言いたそうだけど・・・一体何を聞こうとしてたんだろう?

そのことが少し気になりつつも、俺は乱れた服装や荷物を整えて帰る支度をする。

571 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/20(日) 02:09:42.49 ID:xnvIzXwi0

【ゆま】
「ごめんね、色々迷惑掛けちゃったみたいで」

【タツヤ】
「あ、いやぁこっちこそ・・・」


ゆまさんにはなんだかんだで助けてもらってばっかだったし・・・。

お世話になりっぱなしだった気がする。


【タツヤ】
「それじゃあ、俺はこの辺で」

【ゆま】
「またね、たっくん」


帰る支度を整えた俺は、二人に挨拶をすませ、そのまま帰ろうとした。


572 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/20(日) 02:11:21.63 ID:xnvIzXwi0

【ほむら】
「鹿目タツヤ」

【タツヤ】
「え、あ、はい」

【ほむら】
「・・・・・」


しかしそこで、暁美さんに呼び止められる。

俺が振り返ると、暁美さんは何だか険しい表情を浮かべていた。

暁美さんは、何かを言いたそうだったが、俺の顔を見るなり黙り込んでしまう。


【ほむら】
「・・・・いえ」

【ほむら】
「真っ直ぐ家に帰るのよ」フッ・・


そう言った暁美さんは、先程の表情とは違った柔らかい笑みを浮かべいて―――――


【タツヤ】
「うっ」

【タツヤ】
「は・・・はあ」


その微笑みに、俺の心臓の動きは・・・少しだけ速くなるのだった――――。


573 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/20(日) 02:12:50.34 ID:xnvIzXwi0

【タツヤ】
「(あー、大分夜遅くなったな・・・・)」

【タツヤ】
「(父さん達に怒られなきゃ良いけど・・・)」

【タツヤ】
「(ああ見えて、父さんも怒ると怖いからなぁ・・・・)」


そして、俺はこの後のことを考え、少し憂鬱になりながら帰路に着くのだった。

574 :川´_ゝ`){続く、そーい ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/05/20(日) 02:17:42.88 ID:xnvIzXwi0
以上になります。お疲れ様でした。

タツヤの呼ばれ方が「たっくん」と「タっくん」でバラバラになってたので、
「たっくん」に固定。

それでは、また明日の同じ時間くらいに来ます。ノシ
575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/20(日) 08:34:52.22 ID:pQ9qWBm20


裏切り者はたぶんマミさんあたりかな・・・・・。俺の杏子がこんなことするはずがない!
スーツ姿で背が伸びて、リボンを外してロングヘアーの大人杏子をイメージした。
576 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/20(日) 08:39:36.57 ID:l4Sj4DwVo
おつおつ!
続きがきになるぜぇ
このほむほむマジクールビューティー

他の大人Ver.な面々も気になるな
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/20(日) 10:43:30.07 ID:ARa7tw+Qo
ゆまの反応見てると、杏子の線も捨てがたいな……
どちらにしろ、乙
次回にも期待
578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/05/20(日) 14:31:33.05 ID:gMeZQ44po
マミさんはアイドル業が忙しい&流石に少女って名乗るの恥ずかしいで
一線から引いてしまったんだよきっと
ファンの魔法少女がGS貢いでくれるから自分で狩らなくても良いんだよきっと
579 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/20(日) 17:29:46.87 ID:pQ9qWBm20
>>>578
現実逃避過ぎるwwwwwwwwwwwwww
タツヤが写真を見ているから、もしマミさんがアイドルだったら(あれ?この黄色い縦ロールの人みたいことがあるような・・・)とかあるだろwwwwwwwwwwww
580 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/05/20(日) 18:42:52.79 ID:1GI5emWpo
>>579
ということは、マミったのか。
581 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2012/05/20(日) 22:00:18.65 ID:TNH+sjxAO
本編メンバーが使命から逃げ出すってのが考えられんからもしかしたらオリキャラかもね
それにほむほむも写真大事にしてるみたいだしね

まあ10年もたってるからわからんが
582 :川´_ゝ`){キタエr(ryキタデ ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/05/21(月) 00:22:22.82 ID:Pa3DyyRs0
夜遅くにこんばんわです。コメ&閲覧有難う御座います。

それでは続きを投稿します。
583 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/21(月) 00:25:18.32 ID:Pa3DyyRs0

――――――――――――――――――――


【ほむら】
「・・・ふぅ」


私は姿が見えなくなるまであの子を見送り、そのまま深く息を吐いた。

何はともあれ、あの子を無事に家に帰すことが出来たようだ。


【ゆま】
「ほむらお姉ちゃん、随分たっくんに優しいんだねー」


後ろに居たゆまが、そんな口を叩く。


【ほむら】
「別にそんなんじゃないわよ」ファサァ

【ゆま】
「そうかな〜」


ゆまは納得がいかない、というような表情を浮かべる。

・・・そんなに普段と違うかしら?

584 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/21(月) 00:26:33.43 ID:Pa3DyyRs0

【ほむら】
「あの子に感謝しなさい」

【ほむら】
「本当ならもっと怒ってたところよ」

【ゆま】
「う・・・や、やっぱり・・・?」


あの子があの時、嘘を付いていたことなんて分かっていた。

それでも、懸命にゆまを守ろうとしていたあの子を見ていたら、怒る気も失せてしまったのだ。



・・・本当、優しいのね・・・。

・・・まどかとそっくり・・・。



【ほむら】
「とにかく、一般人を瘴気の中に入れるなんて絶対駄目よ」

【ゆま】
「・・・・は〜い」ショボン


私は再度、ゆまに忠告する。

・・・あの子は私達に関わるべきじゃない。

この世界のことを・・・・知るべきじゃないのよ。

585 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/21(月) 00:28:58.02 ID:Pa3DyyRs0

【QB】
「彼は“一般人”じゃないよ」

【ほむら】
「!?」


そこで、これまで黙って私達の話を聞いていたこの珍獣が口を開いた。


【ゆま】
「キュ、キュゥべえ・・・」

【QB】
「そうだ、彼は普通じゃない」

【QB】
「ゆまだってみただろう?」

【QB】
「彼が魔法で結界を張ったところを」

【QB】
「あんなの、イレギュラーとかそういう言葉で済まされるものじゃないよ」

【ほむら】
「・・・・・」


私も、その瞬間を遠くから見ていた。

あの時、私があの場所に到着すると、あの子が今にも魔獣に攻撃されそうになっていた。

私はそれを見て、慌てて弓に魔力を溜め魔獣を撃退しようとしていたのだ。

でも・・・

586 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/21(月) 00:30:19.31 ID:Pa3DyyRs0

【タツヤ】
『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!!!!』


あの子は自分の目の前に結界を展開させ、魔獣の攻撃を受け止めたのだ。

魔獣の攻撃はあの結界に触れた瞬間、跡形も無く打ち消されてしまった。


【QB】
「ほむら、いい加減教えてくれないかな?」

【QB】
「君は、彼が何者なのか知っているんだろう?」

【ほむら】
「・・・あなたに教えることなんか無いわ」


・・・正直、私にもどうしてあの子が魔法を使えるのか分からない。

それでも、ただ一つ分かっていることがある。

あの結界の、あの魔法陣・・・。

あれは・・・・。


587 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/21(月) 00:31:45.60 ID:Pa3DyyRs0

【ほむら】
「(あれは・・・まどかの・・・)」


まどか・・・、あなたなの・・・?

あの子に力を与えているのは・・・・。

一体、何のために・・・・。


【QB】
「ほむら、いくらなんでもそれは・・・」

【ゆま】
「駄目だよ、キュゥべえ」

【ゆま】
「ほむらお姉ちゃん、こうなったら梃子でも動かないもん」


キュゥべえが尚も食い下がろうとしたところを、ゆまが首根っこを掴んで止めた。

そのままきゅぅべえを持ち上げ、胸元に抱き寄せる。


【ほむら】
「私、そう言われるほど頑固じゃないわ」

【ゆま】
「うわー、自分で気付いてないって所がタチ悪いよね」

【ほむら】
「風穴開けるわよ」

【ゆま】
「ごめんなさい」


全く、この子は・・・・。

588 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/21(月) 00:32:52.03 ID:Pa3DyyRs0

【ゆま】
「まあ、冗談はさておき・・・」

【ゆま】
「確かに私もたっくんが魔法を使ったことは気になるけどさ」

【ゆま】
「知ったところで、どうこうなるわけでもないよね」


じゃあ知らなくても問題ないよね、そうゆまは言う。

この状況でその言葉は、正直・・・有難かった。


【QB】
「ゆっゆま、でも・・・」

【ゆま】
「しつこい男は嫌われるぞー」

【ゆま】
「なーんてね」アハハ


それに・・・・・例え本当の事を話したとしても、誰が信じるだろうか。

彼が・・・まどかの弟だなんて・・・。

『まどか』という存在が認識されない、この世界で・・・。


589 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/21(月) 00:34:16.30 ID:Pa3DyyRs0

【QB】
「はあー分かったよ」キュップイ


キュゥべえはようやく諦めたのか、ゆまの拘束から脱出し、地面に降りる。

そうだ、あの子にどんな力があろうと関係ない。

私は、絶対にあの子を私達の事に巻き込んだりしない。

今度こそ・・・・必ず・・・。


【ゆま】
「そう言えば、ほむらお姉ちゃんグリーフシードは?」

【ほむら】
「え?ああ、私はいいわよ。あまり魔力使ってないし」

【ゆま】
「そっか。じゃあ残りは私がお持ち帰りするね」


そう言うゆまの手には、まだ未使用のグリーフシードが数個握られている。


590 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/21(月) 00:35:30.07 ID:Pa3DyyRs0

【ほむら】
「今日の魔獣は強かったみたいね」


今日、瘴気の中で感じた魔獣の力は相当の物だった。

私が到着した時にはその力は消えていたから、ゆまが一人で倒してしまったのだろう。


【ゆま】
「そーなんだよ、今日は中々だったんだよ」

【ゆま】
「最初は大したことなかったのに〜」


確かに、ここ最近の魔獣は強くなっている気がする。

それだけ、呪いの力が強くなってきているということなのだろうか。


【ほむら】
「一人でよく倒したものだわ」

【ゆま】
「へへ・・・」


ゆまは私の言葉を受けて、気恥ずかしそうに顔を掻きながら笑みを浮かべる。


591 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/21(月) 00:36:38.74 ID:Pa3DyyRs0

【QB】
「そうだね」

【QB】
「まさかゆまが幻覚魔法を使えただなんて」

【QB】
「正直驚いたよ」


そして、話に割り込むように、キュゥべえが私達の間に入り込んできた。


【ゆま】
「まー、ね」


幻覚魔法、それはこの子が一番懐いていた・・・・佐倉杏子の得意としていた魔法。

自分の分身を出現させ、相手を翻弄する。

そういえば、名前が付いていたわね・・・・確か―――――。


【ほむら】
「ロッソ・ファタズマ」

【ゆま】
「・・・・・・」


592 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/21(月) 00:38:35.04 ID:Pa3DyyRs0

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「その魔法、ゆまも使えるようになりたいっ」

「ああ?この魔法は流石にお前じゃ無理じゃねーか?」

「えー!!ヤダヤダヤダ!!!!ゆまも使いたいっ!!」ジタバタジタバタ

「だぁー、わかったわかった!!いつか教えてやるよ」

「本当っ!?」

「ああ」



「お前がもう少し大人になって」

「強くなったらな」



「わーい!!約束だよ!!」

「キョーコ!!」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


593 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/21(月) 00:40:05.12 ID:Pa3DyyRs0

【ゆま】
「・・・違う」

【ほむら】
「え?」

【ゆま】
「私のは・・・ロッソ・ファタズマじゃないよ」


ゆまは、どこか遠くを見つめるように顔を上げ、ポツリと呟く。

その姿は、いつも元気の良いゆまとは・・・少し違うように見えた。


【ほむら】
「ゆま・・・」

【ゆま】
「分身は一体しか出せないし、動きを上手く制御できないし、魔力消費激しいし・・・」


本物とは程遠いよ、とゆまは言う。

元々ゆまの得意としている系統の魔法ではないのだから、当然なのかもしれないけど。

それでも・・・。

594 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/21(月) 00:47:39.55 ID:Pa3DyyRs0

【ゆま】
「それに、さ」

【ゆま】
「やっぱりあれは・・・“杏子”だけの技だから・・・」

【ゆま】
「簡単には名乗れないよ」


彼女にとって佐倉杏子という存在は、果てしなく大きいものなのだろう。

魔法少女として、立派に独り立ちした今でも――――――。





―――杏子のいなくなった、今でも・・・・・。



ゆまが形見である彼女の髪飾りを、毎日肌身離さず持ち歩いている事からも、そのことは窺える気がした。

595 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/21(月) 00:49:03.96 ID:Pa3DyyRs0

【ほむら】
「あなたも、成長したのね」

【ゆま】
「そーだよ。胸もおっきくなったんだよ」Dカップ、タユンタユン

【ほむら】
「黙りなさい」

【ゆま】
「」


・・・・それでも、頭の中はもう少し成長してほしいわ・・・。

身体ばっかり大きくなって・・・・。

・・・・つい最近まで私と同じくらいだったのに・・・・。


596 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/21(月) 00:49:53.63 ID:Pa3DyyRs0

【ゆま】
「あ、そうだ」

【ゆま】
「魔獣のことがあったから、すっかり忘れてたよ」ゴソゴソ

【ゆま】
「はい、これ」スッ


突然、ゆまが風呂敷みたいな物を取り出す。

どうでもいいけど、どこから出したのかしら・・・。


【ほむら】
「・・・・何これ?」

【ゆま】
「家のおかずの残り」

【ゆま】
「これ渡そうと思って、今日来たの」


風呂敷の中には、プラスチックのタッパが幾つか積んである。

そしてその中には、手作りのお惣菜が色々詰められていた。


597 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/21(月) 00:51:33.34 ID:Pa3DyyRs0

【ほむら】
「それ、あなたの『保護者』が作ったの?」

【ゆま】
「そだよ」

【ゆま】
「作りすぎたからほむらお姉ちゃんの所に持って行きなさいって言われたんだよ〜」


あの女が、私に・・・・?

全く、余計なお世話だわ・・・・。


【ほむら】
「・・・さっき言ったでしょ」

【ほむら】
「私、彼女嫌いなのよ」

【ゆま】
「まあまあ、そう言わずに」

【ゆま】
「どうせろくなもの食べてないんでしょ?」


・・・・確かにそのとおりではあるけど。

しかし、本当に余計なお世話だと思った。

なんで私が、あの女の情けを受けなきゃならないのよ・・・・。

598 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/21(月) 00:52:51.04 ID:Pa3DyyRs0

【ゆま】
「と に か く」

【ゆま】
「食べ物粗末にしちゃ駄目だからね?」


ゆまは私の顔の近くまで接近し、ジト目で私を見つめてきた。

食べ物のことになると、ゆまは突如として厳しくなる。

全く、誰に似たのかしらね・・・・。


【ほむら】
「はあ・・・」

【ほむら】
「分かったわよ、有難く受け取っとくわ」


仕方なく、私はその風呂敷を受け取る。

私が素直に受け取っておかないと、この場は収まりそうになかった。


599 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/21(月) 00:54:19.70 ID:Pa3DyyRs0

【ゆま】
「えへへ、うん、それでよろしい」グッ

【ほむら】
「あなたね・・・」


私はゆまの態度に呆れ、ため息を付く。

本当、これだけ見ていると・・・無邪気というか天真爛漫というか・・・。

普通の女の子よね。


【ゆま】
「それじゃ、私もそろそろ家に帰るね」

【ほむら】
「そう、あの女は家に居るの?」

【ゆま】
「んー、まだ仕事してるんじゃないかな?」

【ほむら】
「そう」


仕事・・・か。

魔獣退治もしないで、いい気なものね・・・・。


600 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/21(月) 00:56:12.38 ID:Pa3DyyRs0

【QB】
「ゆま、帰る前に使用済みのグリーフシード回収させてよ」

【ゆま】
「あ、はいはーい」ヒョイッ

【QB】
「」パクッ

【ゆま】
「それじゃあね、ほむらお姉ちゃん」

【ほむら】
「夜道には気をつけるのよ」

【ゆま】
「もー、もう子供じゃないよー」

【ほむら】
「ふ、それもそうね」

【ゆま】
「じゃ、またねっ」


ゆまはそういって、建物の屋根に飛び乗る。

そして、屋根を飛び移るようにして、ネオンが綺麗に光る見滝原の町へと消えていった。



もう少し人目を気にして帰りなさいよ・・・。


601 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/21(月) 00:57:19.86 ID:Pa3DyyRs0

【ほむら】
「さて」

【ほむら】
「私も帰ろうかしら」


私はゆまに渡された風呂敷を片手に取り、帰る支度をする。


【ほむら】
「というかこの量、とてもじゃないけど私一人じゃ食べきれないわよ・・・」


風呂敷の中のタッパには、色取り取りの惣菜が敷き詰められている。

野菜のものもあれば、肉や魚で作られたおかずさえある。

どんだけ作ったの、あの女は・・・。


602 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/21(月) 00:58:33.29 ID:Pa3DyyRs0

【ほむら】
「・・・」

【ほむら】
「・・・」ヒョイ、パクッ


私は、風呂敷内のタッパを一つ取り出し、中身を一口分だけ口に運ぶ。


【ほむら】
「」ホムホム・・ゴクン

【ほむら】
「・・・・甘いわ」


そのおかずは砂糖を入れすぎているのか何なのか・・・。

とにかく、甘さを強調した味付けになっていて・・・。

もの凄く、甘かった。


603 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/21(月) 01:01:17.57 ID:Pa3DyyRs0

――――――――――――――――――――

時間は、タツヤ達がそれぞれ帰路に着いた時から少し遡る。

見滝原の都市部にある、とあるビルの中―――。

その部屋は、中央に接待用の高そうな椅子やテーブルが設置され、巨大な薄型テレビも配置されている。

普通の会社員では滅多に入れないであろう特別な場所。


【詢子】
「ううー・・・・」カタカタ・・・


そこで鹿目詢子は一人、目の前のパソコンと格闘していた。

目の前に浮かび上がる画面に睨みを利かせ、デスクに映し出されるキーボードを叩く。

その立派な部屋には似つかわしくない、平社員かのような世間一般的なスーツ姿で。

しかし、それでも彼女はこの会社のれっきとした『社長』なのである。


【詢子】
「いよっしゃー!!!」バンッ

【詢子】
「終わったー!!!!」


パソコンとの数時間に及ぶ格闘の末、本日分の仕事を終わらせた詢子はその場で立ち上がり雄叫びを挙げる。

しかし、疲労の為か直ぐに崩れ落ち、椅子の背もたれに背中を預けた。


604 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/21(月) 01:02:49.26 ID:Pa3DyyRs0

ガチャ


「失礼します」

「お疲れ様です、社長」


詢子が仕事を終わらせる時間を見計らってか、一人の若い女性が部屋に入ってくる。

女性は労いの言葉を掛け、お盆を持って詢子に近付いて来た。


【詢子】
「ああ、ようやく溜まってた仕事を片付けたよ」

【詢子】
「全く、社長になってもやる事あんま変わんねーな」


背もたれに背中を預けながら、背伸びをして答える詢子。

その女性に見せる詢子の仕草は、もう何年も連れ添っている同僚に見せるような、リラックスしたものだった。


「そうですね」クスッ


それは彼女のほうも同様なのか、立場上は『社長』と『秘書』という関係ではあるが、下手に緊張することもなく詢子に接してくる。


605 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/21(月) 01:04:20.26 ID:Pa3DyyRs0

「飲み物、どうぞ」


そんな彼女は詢子に向けて柔らかい笑みを浮かべ、お盆からティーカップを差し出す。


中には綺麗な色をした紅茶・・・・ではなく、働いている人なら誰もが一度はお世話になるだろう、ブラックコーヒーが淹れられていた


【詢子】
「お、サンキュー」


606 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/21(月) 01:07:54.46 ID:Pa3DyyRs0


詢子の隣に立つその姿―――


すらりと高い身長に、女性らしく凹凸の均衡がとれたスタイル。


肩まで伸ばした薄い銀色の綺麗な髪の毛を、キャリアウーマンらしくヘアゴムで縛り、


若々しいスーツに身を包み、胸元を装飾したリボン風のアクセサリーが魅力的なその女性は――

607 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/21(月) 01:09:54.54 ID:Pa3DyyRs0



【詢子】
「織莉子」



――――美国、織莉子といった。



ttp://hp41.0zero.jp/data/800/tiger2/pri/24.JPG


608 :以下、プロフ的なおまけ ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/05/21(月) 01:17:47.23 ID:Pa3DyyRs0

美国織莉子 25歳 身長167cm。

詢子の秘書を務める。あと巨乳(←ここテストに出ます)
609 :川´_ゝ`){PC重ぇ… ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/05/21(月) 01:25:32.81 ID:Pa3DyyRs0
今回は以上になります。お疲れ様でした。

(>>575>>581、やべぇ・・・もう一人の魔法少女、杏子でもマミさんでもないよ・・・。どうするべ・・・)

と、思ってしまうのでした←おい


このSS始めて早数ヶ月・・・ようやくメインどころの魔法少女3人を登場させることが出来ました。

これいつ終わるんだろ・・・。


それでは、また次回に。ノシ
610 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/05/21(月) 01:53:02.77 ID:CMgNeDXk0
乙です
10年で3人だけか…
10年後で3人だけでも生き残ってられる事自体が珍しい事なんだろうけど…
それでも…早すぎるだろ…
改変後世界でも魔法少女の死傷率はそこまで変わらないんですか?まど神様
611 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2012/05/21(月) 02:10:25.55 ID:si6KqZ3AO
甘さ強調してるってもうキリカ確定じゃね?
612 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/05/21(月) 02:13:16.84 ID:/yeMaXnro
>>610
元の世界ではたいてい一年以内、
2〜3年もすれば大多数が終了だったことを思えば、
かなり生存率が上がってるよね。これでも。

比率としては、だいたいこんなもんじゃないの?
613 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/05/21(月) 08:24:35.85 ID:VdZo/0sYo
さやかが元の世界では3日位で魔女化したことを思えば驚異的に寿命は延びてるな
あれはあれで記録物の早さかもしれんけど・・・ww
614 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/21(月) 08:35:44.70 ID:YJc96VwO0
オリっちはヘアゴムで髪を縛るよりただのロングヘアーがいいと思うのはおれだけ?
シブで見たら俺好みだった・・・・・
615 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/05/21(月) 12:53:11.75 ID:on5PkXJAO
意外!それはオリキャラ新人!!
616 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/22(火) 07:42:20.96 ID:6QtIXpRE0
ゆま、Dカップのタユンタユンか…
617 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/05/27(日) 14:25:14.06 ID:TLdOngHQo
おりキリだとあと二人になっちゃう…
でもあと一人で、おりこは居て…

おい

おい
618 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/05/30(水) 06:49:16.85 ID:jD0IeLjAO
まさかの藍花にゃんか
619 :川´_ゝ`){辛いです… ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/06/03(日) 01:56:14.83 ID:qGnVXCMh0
夜遅くにこんばんわ>>1です。沢山のコメ有難う御座います。

今週の土日までには投稿したかったんですが・・・遅筆で申し訳ありません。

早くて明日(今日)、遅くても水曜日までには投稿したいと思います。


それと今後についてですが、シナリオ内にちょいちょいまどポの内容を入れていく予定です。
まどポ未プレイの人は申し訳ありませんが、何卒ご了承下さい。

それではノシ
620 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/06/03(日) 10:02:56.16 ID:Tq73sx4P0
生存報告乙
待っとるぜー
621 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/04(月) 07:55:16.17 ID:VLAY13uno
wktk
622 :川´_ゝ`){ウエハースうめぇ ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/06/05(火) 02:01:23.72 ID:R0E3nX8O0
夜遅くにこんばんわ>>1です。いつも閲覧&コメ有難う御座います。

それでは続きを投稿します。
623 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/06/05(火) 02:08:51.26 ID:R0E3nX8O0


――――――――――――――――――――

【詢子】
「いやー仕事終わりの一杯は格別だなっ」


詢子は手渡されたコーヒーをスポーツドリンクのように一気に飲み干し、その表情に生気を取り戻していく。


【織莉子】
「おじさんみたいですよ?」

【詢子】
「うるせぇ」


そして、そんな彼女を見た織莉子の言葉に、詢子は苦笑いで返した。


【織莉子】
「仕事の進行具合はどうですか?」

【詢子】
「まあ、ぼちぼちだな」

【詢子】
「今進めてるプロジェクトも、大筋合意まで持ってけてるしね」

【詢子】
「ま、そのおかげでこちとら毎日残業三昧さ」


詢子はやれやれと言いたそうに、両手を上げる。


【織莉子】
「わざわざ社長が動かなくても・・・」

【織莉子】
「部下に任せておけば良いのではないですか?」


詢子の様子を見て、怪訝とした表情で呟く織莉子。
実際の所、詢子の会社は別に少人数というわけではない。
むしろ、社員は普通の会社に比べれば多いほうだろう。
織莉子の言うとおり、社長自らがわざわざ仕事をする必要はないのである。
しかし、詢子は――


【詢子】
「まあ、確かにそうなんだけど」

【詢子】
「ただ、あたしは何もしないで態度だけデカイ上司ってのが一番嫌いなんだ」

【詢子】
「そんな奴等と同じ真似はしたくないんだよ」


そう織莉子に返す。
自らが率先してペースメーカーを務めることで、後続を走る部下達を引っ張っていく。
それが自分のスタイルなのだと。


【織莉子】
「そう、ですね」


彼女の言葉から少し間をおき、織莉子は静かに頷く。
詢子の性格を知らないわけではない。
しかしそれでも、織莉子は彼女の凄さを感じずにはいられなかった。

624 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/06/05(火) 02:11:14.09 ID:R0E3nX8O0


【詢子】
「ま、うちには優秀な秘書がいるからな」ゴソゴソ

【詢子】
「多少のムリは利くってもんさ」ピッ


『つづいてのニュースは・・・』


【詢子】
「あ、見たかった番組もう終っちゃったか〜」チェッ


詢子は中央にある大画面テレビに電源を入れながら、織莉子の方を振り向き呟く。
テレビでは、主に今日起きたニュースについて取り上げられていた


【織莉子】
「いえ、私なんてそんな・・・」


織莉子は視線を詢子から逸らし、俯きながら応える。
照れているのか、表情は緩み顔が少し紅くなっている。


『続いてのニュースです』

『本日夕方頃、資金不正の疑惑で裁判中の民衆党・小川代表がマスコミに囲まれる中、再度自らの無罪を主張しました』


【詢子】
「うわっ、このおっさんまだ自分の罪認めてねーのかよ。見苦しいにも程があるぞ」


テレビから流れるニュースの映像を見ながら、詢子は溜息を付く。


『だからね、あれは身内が勝手にやった事なの。私は知りません。』

『全くこっちも困るんだよ。君達のようなハイエナのような連中にあること無い事書かれるとね』

『プライバシー権って言葉知ってる、君達?』


テレビにはふてぶてしい態度を取る年配の男性が映っている。
その男性は、自らを囲む報道陣達を睨み付け毒を吐くように罵倒を続けていた。


【詢子】
「相変わらず無茶苦茶言ってるな、このおっさん」


その姿を見て、なんでこんな奴が議員なんだ、と詢子は呆れ返っていた。

625 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/06/05(火) 02:13:26.96 ID:R0E3nX8O0


【織莉子】
「・・・・」


そんな中、織莉子は詢子の言葉に反応することも無く、ただ押し黙ってテレビを見つめていた。
その表情には先程までとは違い、どこか暗いものを感じさせる。



『まあ、戦えと言われれば、私は最後まで戦いますよ』

『私はあの“美国久臣”のような臆病者ではありませんからね』

『逃げるように自殺なんて、馬鹿な真似はしませんよ』



【織莉子】
「――っ」


そして、その議員がある名前を口にした瞬間、織莉子の身体が固まる。
それは―――――――自分の父の名前だった。


『大体自分に何かやましい事がないかぎりあんな真似は・・・』


ピッ


尚も議員が続けようとするが、その声は途中で途切れてしまう。


【詢子】
「・・・何年前の話引き合いにだしてんだよ」


表情に憤怒の色を浮かべる詢子によって、テレビが消されたからだ。


【織莉子】
「・・・・」

【詢子】
「織莉子・・・・」


詢子が心配そうに声を掛けるも、織莉子は俯いたまま何も喋らなかった。
その態度は落ち込んでいるようにも見えるが、同時に悔しさを滲ませているようにも見える。


626 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/06/05(火) 02:15:30.25 ID:R0E3nX8O0

【織莉子】
「・・・・いいんです」

【織莉子】
「もう、慣れましたから」


織莉子は弱々しい笑みを見せ、詢子にそう応える。


【織莉子】
「それに」

【織莉子】
「社内でも、よく言われてますし・・・」


そう言う織莉子は、ある日のことを思い出していた。
それは、自分が秘書の仕事をしている最中、給湯室から聞こえてきた女性社員達の会話―――――


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


『うちの社長ってさー、なんであんな若い人を自分の専属秘書にしてるわけー?』

『あんた知らないの?彼女、あの美国久臣の一人娘なんだってさー』

『まぢ?あの不正追求されて自殺したっていう?』

『そうそう、だからさー彼女も社長とか取り巻きになんか媚びでも売ってんじゃないのー?』

『えー、なんか卑怯くさーい』

『ま、所詮は蛙の子は蛙ってことよねー』

『それもそっかー』

『『あははははははははは』』


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




627 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/06/05(火) 02:17:47.11 ID:R0E3nX8O0

聞こえてくるのは、心無い噂話。
しかし、それでも織莉子を傷付けるには十分過ぎる内容だった。
自分はそんなことしていない、とその人達に叫びたかった。

媚なんて売っていない。資格もちゃんと取っている。
面接だって、同期社員達と同じように受けてきた。
結果的には詢子の推薦で、彼女の専属秘書を務めることになったけど、それでも自分は卑怯なことなんてしていない。
そう――心の底から叫びたかった。

しかし、出来なかった。
例え、そう叫んだとしても―――誰が自分の事を信じてくれようか。
そう思うと、どうしても声が出なかった。

自分はどうしようもない臆病者だなと、織莉子はつくづく思うのだった―――


【詢子】
「他人の言うことは気にすんな」

【織莉子】
「え?」


そんな風に織莉子が自暴自棄になっていると、それまで黙っていた詢子が口を開く。


【詢子】
「本人のいない所で、そんな事言う奴らなんざろくなもんじゃねぇからな」


仕事の時と同じように、その表情は真剣味を帯びていた。
そのせいか、織莉子自身も妙な緊張感を感じ身体を強張らせる。


【詢子】
「他人の言葉なんて関係ない」


【詢子】
「大事なのは、お前自身がどう思ってるかだ」


【織莉子】
「・・・・え?」


詢子の言葉に、固まっていた織莉子の口から疑問の声が挙げる。
それを見た詢子は一つ息を吐き、尚も続けた。

628 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/06/05(火) 02:19:42.36 ID:R0E3nX8O0


【詢子】
「なあ、織莉子」

【詢子】
「お前の目には、親父さんはどう映ってたんだ?」

【詢子】
「世間で言われてるような、不正を働いて逃げるような卑怯者に見えてたのか?」


一言一言―――ずっしりと重みのある言葉を、織莉子に問い掛ける様に口に出す。


【織莉子】
「そ、そんな事ありません!!」


父に対する詢子の言動に対して、思わず織莉子は声を荒げた。


【織莉子】
「お父さ・・・、父はそんなことする人ではありませんっ」

【織莉子】
「父は、いつも優しくて・・・」

【織莉子】
「この国が幸せになるようにって、いつも考えていて・・・・」


幼い時に母を亡くした織莉子にとって、父親は大切な唯一の“家族”であった。

自分が寂しがらないようにと、いつも傍にいてくれた父。
仕事と家庭を上手く両立して、自分に精一杯の愛情を注いでくれた父。

織莉子はそんな父を尊敬していたし、大好きであった。


【織莉子】
「だから・・・だから・・・っ!!」


だからこそ、父がそんな事に手を染めているなどと――――織莉子は信じたくなかった。

認めたくなかったのだ。

父が、自分のことを“裏切った”ということを―――――。

629 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/06/05(火) 02:20:32.25 ID:R0E3nX8O0






ポン

630 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/06/05(火) 02:22:28.25 ID:R0E3nX8O0


【織莉子】
「んっ」


織莉子が涙目になりながら声を荒げていると、それを宥めるかのように頭の上に何かが乗る。


【織莉子】
「しゃ、社長・・・?」


それは―――――詢子の手の平であった。


【詢子】
「お前がそう思ってるなら」

【詢子】
「それで良いじゃんか」


詢子は織莉子の綺麗な髪の毛を、優しく撫でながら続ける。


【織莉子】
「で、でも・・・・」

【詢子】
「信じてやりなよ、親父さんのこと」

【詢子】
「家族、なんだろ?」


織莉子の気持ちを落ち着かせるように、ゆっくりと言葉を紡いでいく詢子。


【詢子】
「あたしは信じるよ」

【詢子】
「あんたのことも、親父さんのことも」


それは、上司が部下に伝えるような言葉では無く――――

――――母が娘に囁きかけるような言葉であった。

631 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/06/05(火) 02:26:27.03 ID:R0E3nX8O0


【織莉子】
「社長・・・」

【詢子】
「ほら、シャキっとしな」

【詢子】
「綺麗な顔が台無しだぞ?」


そう言って、詢子はハンカチでそっと織莉子の涙を拭う。


【織莉子】
「・・・ありがとうございます」


落ち着きを取り戻した織莉子は、詢子の優しさに感謝するようにそっと呟く。


【詢子】
「ま、そんな自分を悲観すんなって」

【詢子】
「あんたは『頭脳明晰、容姿端麗、スタイル抜群の美しすぎる秘書』って」


【詢子】
「中沢が言ってたぞ」


織莉子の肩をポンと叩き、高評価の言葉を並べ励まそうとする。


【織莉子】
「ふふ、他人の言うことは気にしちゃ駄目なんじゃなかったんですか?」


そのおかげなのか、織莉子の表情も緩み始める。


【詢子】
「なぁに、自分にとってプラスの評価ん時は別さ」

【詢子】
「それを糧に、自分に自信を持つんだ」

【詢子】
「それが、美人のひ け つ♪」


そう自信満々に言ってのける詢子。それにつられ、織莉子の表情も徐々に柔らかいものへと戻っていった。

632 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/06/05(火) 02:28:27.02 ID:R0E3nX8O0

【詢子】
「ま、親父さんの名前は今後もお前に付いて回るだろうけど」


そして、織莉子の様子を見計らい詢子は再び彼女の父のことを口にする。
世間に知られている存在だからこそ、その重みは織莉子に圧し掛かるのだ、と。


【織莉子】
「・・・はい」


そして、その事は織莉子にとって、一番の悩みの種でもあった。



美国議員の娘
 

美国さん



そう言われ続けて今まで生きてきた。
父の名前を経由せずに自分のことを見てくれる人なんて、詢子を含めても今まで僅かしかいない。
そのことは、詢子もよく知っている。


【詢子】
「それでも、『美国織莉子』はお前一人しかいないんだ」

【詢子】
「だったら、越えるしかねぇな」

【詢子】
「自分の名前で親父さんの名前を塗り替えられるように」


それでも詢子は、その現状に負けてはならないと言う。
父の名を背負った上で、強く生きていかなければならないのだと。
そして、父を超えなければならないのだと―――

633 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/06/05(火) 02:30:52.62 ID:R0E3nX8O0

【織莉子】
「私が・・・父を・・・」

【織莉子】
「できます、でしょうか・・・」


詢子の言葉に、織莉子は若干の迷いを見せる。死して尚、父親は自分にとって偉大な存在。
それを、自分なんかが超えることができるのか、と。


【詢子】
「大丈夫だって」

【詢子】
「なんたって、あたしが付いてるんだからな」


しかし詢子は織莉子に向けて、自分に任せろ、と胸を張る。


【織莉子】
「・・・・ふふ、そうですね」


それは織莉子にとって、どんな言葉よりも励みになるものだった。
それだけ彼女は、詢子を尊敬しているのだ。

父と、同じくらいに。

634 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/06/05(火) 02:34:39.62 ID:R0E3nX8O0

【詢子】
「アンタがいずれこの国を背負うようなビックな人間になったら、あたしはこう言うんだ」

【詢子】
「美国織莉子はあたしが育てた(キリッ、ってな」ウェヒヒ

【織莉子】
「ふふふ、頼りにしてますね」



二人の間に――――――――穏やかな空気が流れる。

それは―――まるで本物の母と娘の間で流れるような、心地の良いものであった。



【詢子】
「うおしっ、じゃあ今日はもう帰るか!!」

【詢子】
「車出せぇい、織莉子」


織莉子は思う。多分、この人には一生敵わないのだろうと。


【織莉子】
「・・・はいっ」


そして、そのような人物に出会えた事を――――深く神に感謝するのだった。
635 :川´_ゝ`){量産型中沢 ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/06/05(火) 02:40:34.09 ID:R0E3nX8O0
今回は以上です。お疲れ様でした。

織莉子たん回でした。もうちょっとだけ続きます。

一回の投稿分の文章を長くしてみたら、いつもの半分くらいで終わったw

読み難かったら、ご指摘お願いします。

それではお休みなさいノシ
636 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/05(火) 05:01:47.17 ID:h5rHwfpXo
637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/06/05(火) 12:17:17.18 ID:tw2waJNAO

>>634のせいで脳内映像が本宮絵になった……どうしてくれる
638 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/05(火) 14:33:36.59 ID:vZSXzBG1o


なんだろう、中沢をしばきたくなってきた
639 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/05(火) 17:52:30.66 ID:Lvcj9Fjso
部下を信頼してマネージメントに徹することのできないワンマン経営は全時代の遺物だよ……
640 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/05(火) 18:31:07.51 ID:0aCP+OxB0

詢子さんはどっかの仕事のときはいい上司なのに家に帰ったらダメ親父の人より何万倍いいな。
しかもその人、生活費を出すぐらいしか役立っていないような・・・・・
641 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/06/06(水) 01:02:37.53 ID:3iG+wFDso
>>639
調子がいいときには効率的だけど、いちど躓き出すと歯止めが効かなくなって倒産まで邁進しちゃう例が多かったもんな。

早期に有能な後継者を育て上げて権限を譲っていかないと、あっという間に会社がレッドゾーンに入っちゃう。
642 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/07(木) 18:17:17.22 ID:eIrvij8xo
>>641
育てる以前の問題として、言われたことをやるだけの無能社員しかいなくなるよ。
部下にとって必要なのは何でもかんでも自分でやってしまう上司じゃなくて、
部下の仕事に全面的に責任を取ってくれる上司。
643 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東日本) [sage]:2012/06/08(金) 00:16:45.05 ID:UaxrVJHOo
正直そういうのどーでもいーですしおすし
644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/06/11(月) 22:51:47.32 ID:Kbzmr0QB0
今北

しかし、気になる画像がことごとく既にリンク切れ…orz
見れないのは自分だけ?
645 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/16(土) 12:47:27.21 ID:kVC3/CUHo
マダー
646 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/19(火) 23:53:47.22 ID:ObF3ATWno
マダカァー
647 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/20(水) 00:09:04.76 ID:OmzSf+0oo

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648 :川´_ゝ`){絶賛停電中☆なので携帯で ◆7F2DwKbdfg [sage]:2012/06/20(水) 01:41:00.36 ID:ALuadBuDO
台風真っ只中こんばんは>>1です。沢山のコメ有難う御座います。


今回は近況方向です。
遅れてしまってすいません。


私用で言いにくいのですが、今週末大事な試験が控えておりまして…

次回の投稿はその試験以降になると思います。


申し訳ありませんが今暫くお待ち下さい。

宜しくお願いしますm(_ _)m
649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/06/20(水) 01:57:01.85 ID:55hhrDimo

リアル大事に
650 :川´_ゝ`){マドカァー!! ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/06/26(火) 01:59:38.57 ID:fAZ3AiuH0
夜遅くにこんばんわ>>1です。いつも閲覧ありがとう御座います。

お待たせしました。私用が一段落したので投稿します。
651 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/06/26(火) 02:02:42.60 ID:fAZ3AiuH0

――――――――――――――――――――

社長の専属秘書として、織莉子には詢子を車で家まで送り届けるという仕事がある。
その後、そのまま自分の家まで車を使って帰ることが彼女の日課となっていた。
織莉子が運転席に乗り、詢子が助手席に乗り込む。


『その後、小川代表は記者たちを振りきり・・・・』

【詢子】
「うわ・・・ラジオでもこの話題かよ」


助手席に座った詢子が気晴らしにとカーラジオを付けると、流れてきたのは先程テレビで映っていたニュースと同じ内容のものだった。
詢子はまたやってしまったと思い、チラッと織莉子に視線を移す。


【織莉子】
「大丈夫ですよ」

【織莉子】
「明日にはその人、雲隠れしますから」

【織莉子】
「病院に検査入院するとかで」


しかし詢子の心配を余所に、織莉子は比較的平気な様子だった。
それどころか、まるでその議員のその後を予知したかのような言葉を述べる。


【詢子】
「なんだ、また占いかなんかか?」

【詢子】
「お前の占いは当たるからな〜」


それを聞いた詢子は、織莉子に特に異変がないことを安堵しつつも、彼女の言葉に耳を傾けた。
織莉子のこのような発言は、今に始まったことではない。時々こう言った予言のような発言をすることがある。
詢子はそれを織莉子が占いかなにかによって、言っているのだと思っていた。


【織莉子】
「ええ」



【織莉子】
「私、未来が見えますから」


しかし、実際はそうではない。
彼女も、かつては魔法少女として活動していた。そして、彼女の固有魔法は・・・『未来予知』。
未来に起きる出来事を知ることができる。

652 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/06/26(火) 02:05:21.31 ID:fAZ3AiuH0

【詢子】
「ははは、お前にしちゃ面白い冗談だ」


織莉子の事情を知らない詢子が、そんな非科学的な力を信じるはずもなく、彼女の言葉を笑い飛ばしてしまう。
もちろん織莉子にとっても、そのように言われることは想定内であった。


【詢子】
「だが・・・ま、実際のところそんな力使えるんだったら」

【詢子】
「色々楽なんだろうな〜」


詢子はそんな言葉を口にする。
事前に未来が見えれば、仕事・プライベートに関わらず便利なんだろう、と。




それは――――何の力も持っていない人が思い浮かべる、未知への理想。
そう・・・あくまでも、理想でしかない。


【織莉子】
「・・・そうでもありませんよ」

【織莉子】
「見たくない未来も、見えてしまいますから」


織莉子は、詢子の方を振り向くことなく呟く。
前を向き、車を運転する彼女の表情からは・・・どこか暗いものを感じさせる。


彼女は知っているのだ。未来を見ることによって―――――。


【織莉子】
「その道を歩んだ先にある」

【織莉子】
「抗うことのできない、非情な運命も・・・・」


自分の力では、決して変えることの出来ない

“運命”

が見えてしまうという事を――――――。
653 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/06/26(火) 02:06:57.99 ID:fAZ3AiuH0

【詢子】
「織莉子・・・?」

【織莉子】
「す、すいません」

【織莉子】
「少し、昔を思い出してました」


彼女は――――――戦うことを辞めた。

未来を見ることを拒絶するように、力を使うことを止めてしまった。
完全に止めたわけじゃない。ただそれでも、普通の生活に影響が出ない程度に使用範囲を限定してしまっていた


【織莉子】
「そういえば社長」

【織莉子】
「先日お話した件なんですが・・・」


身近な人の最期を見たくないから。
親しくなった人の最期を、もう見たくないから。
魔獣との戦いの中で、 “魔法少女の運命”をもう見たくないから。


【詢子】
「ん?ああ、有給欲しいって話か」



【詢子】
「確か、友達の命日なんだよな」





戦いの中で、大切な友人の最期が見えてしまったから――――。




変えたいと願った。変えたいと死力を尽くした。
でも、変えられなかった。だから―――彼女は諦めてしまった。

運命は、変えられないのだと。


そして、もう戦い(あの)中には戻りたくない、と。

654 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/06/26(火) 02:08:52.34 ID:fAZ3AiuH0


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


『私は呉キリカって言うんだ、宜しく織莉子』



『このコーヒーは私には苦すぎるよ、織莉子』



『私と織莉子が組めば、どんな魔獣が相手でも負けはないね!!』




『織莉子を悪くいう奴は、私が許さないっ』




『織莉子は弱くない』

『本当に弱いのは、私のほうだ・・・』




『織莉子・・・』

『生き・・・』


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
655 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/06/26(火) 02:10:51.97 ID:fAZ3AiuH0


【織莉子】
「・・・っ!!」



織莉子は自分の中で浮かんでは消える――かつての友の表情を振り払うように、運転に集中する。
ハンドルを握り締めすぎたのか、手には少し汗を掻いていた。


【詢子】
「いいよ、いいよ。その日はゆっくり過ごすといいさ」


詢子はそんな織莉子の気持ちを察したのか、余計な詮索はせず彼女の頼みを快く承諾してくれる。


【詢子】
「つーか一日と言わず一週間くらい休んだらどうだ?」


冗談交じりに詢子は言う。
これもまた、彼女なりの気遣いなのだろう。


【織莉子】
「い、いえ・・・そんなに休むわけには」

【織莉子】
「仕事がありますし・・・」

【詢子】
「それくらい大丈夫さ、仕事の大半は部下に任せてあるんだし」

【詢子】
「あたしの仕事は中沢をパシr(ry 同行させっから」

【織莉子】
「は・・・はあ・・・」


織莉子はそれでいいのか、と首を傾げる。
それでも、詢子が自分のことを考えてくれているのだ、ということを肌で感じることができる。
織莉子はそんな詢子の優しさに、今はただただ感謝するばかりであった。


後、中沢君はまた泣かされるんだろうな、と少し罪悪感も感じるのだった。

656 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/06/26(火) 02:12:55.30 ID:fAZ3AiuH0

――――――――――――――――――――


【詢子】
「よーし、我が家にとうちゃーく」


会社を出て数十分、車は鹿目家の自宅前に到着した。詢子は車から出て、背伸びをする。
自宅のリビングには明かりが付いていた。恐らく、知久が夕飯を作って待ってくれているのだろう。


【詢子】
「ん?」


しかし、詢子はリビングに人影が一つしかないことに気付く。
そこで、ふと周りを確認してみると、何やら人影のようなものが此方に近付いてくる。
それは、この時間本来ならリビングの人影の一人にいるであろう―――


【タツヤ】
「げっ」

【詢子】
「ああ゛っ!?」


―――――自分の息子であった。


【詢子】
「おい、タツヤ。お前まさか、今帰りか?」

【タツヤ】
「えっいや・・・てぃひひひひひ」

【詢子】
「笑って誤魔化すな」


母の問いに冷や汗を掻きながら応えるタツヤ。
普通のお店ならもう閉店しているような時間帯だ。確かに中学生が帰る時間としては少し遅すぎる。
もっともタツヤとしては、ゆま達の魔獣退治に付き合っていたなどとは、流石に言えないのだが・・・。


【織莉子】
「社長、この子は・・・?」


そこで車を一時停止させ、自分も車から出てきた織莉子がタツヤに視線を向ける。
彼女にとってタツヤは、自分より少し低い身長で、見慣れた見滝原の制服。目付きやその他諸々・・・どことなく詢子に似ている少年というイメージだった。

657 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/06/26(火) 02:15:06.89 ID:fAZ3AiuH0

【詢子】
「ん?ああ、あたしの息子だ」

【詢子】
「そういや、会うの初めてだっけか?」

【織莉子】
「はい」

【タツヤ】
「・・・?誰?」


タツヤは織莉子を見て首を傾けながら呟く。
普段タツヤがこんな時間に外にいることは無いので、織莉子と顔を合わせることは今まで無かった。


【詢子】
「誰?じゃねえだろ、あたしの秘書だよ」

【タツヤ】
「秘書?この人が?」

【織莉子】
「社長の秘書の美国織莉子です」

【タツヤ】
「あ、ども」ペコッ


タツヤは、この人がか〜と言いながらチラッと見ると、織莉子はタツヤに丁寧に頭を下げる。
それにつられてタツヤは慌てて頭を下げた。


【詢子】
「ほら、ちゃんと挨拶しな」ドンッ

【タツヤ】
「ふぇ!?えっえ・・・と、鹿目タツヤです」

【タツヤ】
「母が、いつも・・・お世話になって、ます」


母に思いっきり背中を叩かれ、タツヤは思わず前に出てしまう。
そして、織莉子の目の前に立つと顔を赤くし、口籠りながら挨拶した。
658 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/06/26(火) 02:17:59.70 ID:fAZ3AiuH0


【詢子】
「ぎこちねーな、おい」

【タツヤ】
「・・・うるへー」


タツヤは少し恥かしそうに顔を背けながら、ぶっきら棒に呟く。
傍から見れば、織莉子はかなりの美人だ。
普段から仁美を見慣れ、最近ではゆまやほむらと顔を合わせているタツヤでも、思わず顔を赤くしてしまうのだった。


【織莉子】
「こちらこそお世話になっています」

【織莉子】
「社長に似て、しっかりしたお子さんですね」


そんなタツヤのことが可愛く思えたのか、織莉子は優しく微笑みながら挨拶を返す。


【詢子】
「そうか〜?世話の掛かる馬鹿息子だぞ」

【タツヤ】
「なぁっ!?」

【織莉子】
「ふふ・・・」


タツヤが詢子に何か訴えているのを、織莉子は笑顔のまま眺める。
母との思い出が少ない織莉子にとって、鹿目親子のやり取りは微笑ましくもあり、少しだけ羨ましくもあった。




そんな風に詢子やタツヤを眺めている時―――――――。



ザーーーーーーー



【織莉子】
「・・・え?」


突然、織莉子の脳内に――――見知らぬ映像が流れ込んできた。
それは壊れたビデオテープをみているようで、何が映っているのかよく分からなかったが、普通の人からは感じないような違和感を持たせるものだった。

659 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/06/26(火) 02:21:14.58 ID:fAZ3AiuH0


【タツヤ】
「ふぇ?」

【タツヤ】
「あ、あの・・・何か?」

【織莉子】
「あっ」

【織莉子】
「い、いえ・・・」


その映像のせいで、タツヤに近付いていた織莉子は慌てて離れる。
その様子を見て、タツヤはキョトンとした表情を見せた。


【織莉子】
「(今の・・・何・・・)」

【織莉子】
「(この子の・・・・未来?)」


タツヤに対して、未来予知の能力が反応したのか、勝手に反応しないように抑えつけてある筈なのだが・・・と頭を悩ませる織莉子。
しかしそれでも、肝心の映像の内容が分からない以上、彼女が分かる事は一つも無かった・・・・。


【詢子】
「よーし、じゃあ織莉子。あたし達はそろそろ家の中に入るわ」

【織莉子】
「あ、はい。では私もこれで失礼します」

【詢子】
「おう、お疲れさん」


詢子は織莉子に背を向けながら手を振った。そして、自宅の方へと足を進めていく。


【詢子】
「ほら、タツヤ。家の中に入るぞ」

【タツヤ】
「・・・は〜い」


【タツヤ】
「失礼します」ペコ

【織莉子】
「え・・・ええ」


タツヤは再び織莉子に頭を下げ、詢子の後を追うように自宅へと足を向けた。
織莉子はタツヤのことが気がかりになりつつも、これ以上気にしていても恐らく意味が無いだろうと判断し、詢子達をそのまま見送るのだった。

660 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/06/26(火) 02:22:35.93 ID:fAZ3AiuH0

【詢子】
「ところでタツヤ、お前ちゃんと家に遅くなるって連絡入れたんだろーな?」

【タツヤ】
「」

【詢子】
「・・・入れてないんだな」



ガチャ



【知久】
「遅 か っ た ね タ ツ ヤ」ニコリ



【タツヤ】
「( ゚д゚)…」

【詢子】
「あぁ〜あ・・・」

661 :川´_ゝ`){全部中沢が悪いんや!! ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/06/26(火) 02:27:04.89 ID:fAZ3AiuH0
今回は以上になります。お疲れ様でした。

織莉子メイン回は次回まで続きます、そして、次回で長かった2話が終了する予定です。

それでは、次回はもう少し早く来れるようにします。お休みなさいノシ
662 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage ]:2012/06/26(火) 02:32:17.66 ID:JGz3Bq2X0
663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/26(火) 20:12:28.87 ID:9W6nHbSpo
知久さんがこんなに怖いSSは初めてだ((( ;゚Д゚)))
664 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/06/27(水) 02:05:15.17 ID:XDVcKeO4o
665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/06/27(水) 03:22:16.59 ID:EEgiD9Amo

やっぱりキリカは導かれてておりこがトラウマっちゃってたか
666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/06/28(木) 08:24:28.85 ID:KhYnGgI10

タツヤの未来はどうなるのやら…
667 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/07/05(木) 00:48:42.27 ID:IkypWqAHo

タツヤが「てぃひひひひひ」って……
668 :川´_ゝ`){近況報告だぞ ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/07/11(水) 00:34:47.66 ID:yKTyI2P70
夜遅くにこんばんわ>>1です。閲覧&コメ有難う御座います。

お待たせしております。
次回は明日か明後日辺り、投稿したいと考えております。
相変わらずの隔週更新で申し訳ありませんが、宜しくお願いします。

それでは、お休みなさいノシ
669 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/11(水) 07:49:35.71 ID:xWGTD7ICo
乙 まぅてる
670 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/11(水) 10:55:43.57 ID:HyegmwRao
おお!待っとるぞ!
671 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/11(水) 16:38:20.06 ID:kUWCBbY8o
キマシタワー
672 :川´_ゝ`){部屋にエアコンが来たぞー!! ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/07/12(木) 00:21:25.72 ID:aN2X/tS40
夜遅くにこんばんわ>>1です。いつも閲覧有難う御座います。

それでは続きを。

若干長いので2日間に分けて投稿します。
673 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/07/12(木) 00:25:10.22 ID:aN2X/tS40

――――――――――――――――――――


【織莉子】
「そろそろ私も・・・」


詢子達を見送った後、織莉子は自身も自宅に帰るため車に乗り込もうとする。

しかし、車内に入ろうとドアに手を掛けようとした時。


「おーい!!」

【織莉子】
「え?」


どこからか、聞き慣れた声が聞こえることに気付く。

辺りを見回してみると、家の屋根を蔦って誰かが此方に近付いてくるのが見えた。


【ゆま】
「織莉子―!!」

【織莉子】
「ゆ、ゆま・・・?」


その声は、今は同居人でもある千歳ゆまによるものだった。

ゆまはジャンプしてあっという間に距離を縮め、織莉子の目の前で着地する。


【ゆま】
「やっぱり織莉子だ、こんな所で何してんの?」

【織莉子】
「仕事の帰りよ。あなたこそ、いままで何してたのよ」

【ゆま】
「私は魔獣退治の帰りだよー」


織莉子が不思議そうな表情で聞くと、ゆまは疲れたーとでも言いたそうに身体を伸ばしながら応える。


【織莉子】
「ここ見滝原よ?」


風見野はどうしたのよ、と織莉子は思う。
見滝原が現在暁美ほむらの担当地域だということは彼女も知っている。風見野を担当しているゆまが本来此処にいる筈がない、と。
674 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/07/12(木) 00:28:01.73 ID:aN2X/tS40


【ゆま】
「織莉子に頼まれた荷物をほむらお姉ちゃんに渡すついでだよ」

【織莉子】
「ああ、そういえばそうだったわね」


そこで自分がゆまにお使いを頼んだことを織莉子は思い出す。
夕食の分量を間違え、作りすぎてしまったのでほむらにお裾分けしようと考え、ゆまにお願いした。
彼女は油断すると直ぐに魔法少女としての肉体を盾にして食事をとらなくなるので、調度良いと思ったのだ。


【織莉子】
「それで、ちゃんと渡してくれた?」

【ゆま】
「うん、渡したよ」

【ゆま】
「嫌々だったけどねー」


まいったね、と両手を挙げるジェスチャーをとりながら、溜息交じりに応える。


【織莉子】
「相変わらず嫌われてるわねぇ」


とは言うが、彼女が素直に受け取らないのは想定内だった。
だが、暁美ほむらという人間は押せば断れきれない性格だということも彼女はよく知っていた。
だから、ゆまが無理矢理渡せばどうにかなるだろうと考えていた。


【ゆま】
「何であんなに嫌ってるんだろうねー」


暁美ほむらは、かつて魔法少女としての“価値観の違い”により対立した相手。
織莉子が一線から退いた今でも、ほむらは織莉子のことを嫌っていた。


【織莉子】
「まあ・・・」

【織莉子】
「彼女にも色々あるのよ」


ほむらからして見れば、たった一人友人を失っただけで戦えなくなってしまった自分のことを、不甲斐無いとも感じているのだろう。
逃げた、と言われても仕方ないと思う。
彼女だって、今まで何人も友人と言える人物を失っている筈なのだから――――。




それに――――――恐らく彼女が自分を嫌っている理由は、それだけじゃないのだろうと、彼女はうすうす感付いていた。
自分は自分の知らないところで、彼女の“何か”を奪ってしまったのだろう、と―――――


675 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/07/12(木) 00:30:23.08 ID:aN2X/tS40

【ゆま】
「ふ〜ん」

【ゆま】
「ま、いいや」


あまり興味が無さそうな素振りで、ゆまはそっぽを向く。


【ゆま】
「ん?あれって・・・」

【ゆま】
「たっくんだ、お家此処にあったんだー」


ゆまが目の前にある鹿目家のリビングに視線を向ける。
すると、そこには今日魔獣退治に同行させた鹿目タツヤが見え隠れしていた。


【織莉子】
「何?あなた社長の息子さんと知り合いだったの?」

【ゆま】
「社長・・・?それは分からないけど、たっくんの事は知ってるよ」

【ゆま】
「といっても、今日会ったばかりなんだけどねー」


織莉子の言葉に応えながら、ゆまは鹿目家の様子を伺う。
家族の帰りを満面の笑みで迎える父、それに応える母、そして何故か母の後ろに隠れ震えている息子。
そんな光景が、ゆまの目に映った。


【ゆま】
「家族・・・仲良さそう・・・」


ポツリ、誰にも聞こえないような小さな声でゆまが呟く。

外から眺めていても分かる、家族の仲睦まじさ。

確かな家族の絆が、そこにはあった。

そして、それは―――――彼女の家庭には、到底ありえなかったもの。
676 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/07/12(木) 00:32:47.09 ID:aN2X/tS40


【織莉子】
「・・・羨ましい?」


織莉子が、心配そうな面持ちで声を掛ける。
近くにいた彼女には、ゆまの呟きが聞こえてしまっていた。


【ゆま】
「ちょっとだけ、ね」


ゆまは一瞬寂しそうな笑みを浮かべる。
彼女が鹿目家を見て何を感じたのか、その表情だけではよく分からない。


【ゆま】
「でも、もう大丈夫」


それでも、直ぐにゆまはその表情を引き締める。
その瞳からは、どこか力強さみたいなものを感じた。


【ゆま】
「約束したもん」

【ゆま】
「強くなるって」


空を見つめ、一言一言自分に言い聞かせるように呟く。
そこには既に―――かつての幼くて弱々しかった彼女はいない。


【ゆま】
「それに、私は一人じゃないし」

【織莉子】
「ゆま・・・」


織莉子に視線を向けて、そう宣言する。


【ゆま】
「あ、そーだ」

【ゆま】
「はい、これ」

突如、ゆまが何か思いついたかのように手を叩く。
そして、服のポケットに手を突っ込むと何かを取り出し、織莉子に手渡した。

677 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/07/12(木) 00:34:54.65 ID:aN2X/tS40


【織莉子】
「え?あ・・・・」

【ゆま】
「織莉子の分のグリーフシード」

【ゆま】
「そろそろ浄化しないとマズイでしょ?」


ゆまが手渡したのは、今日魔獣を狩った時に手に入れたグリーフシードだった。
魔法少女のソウルジェムは、魔法を使おうが使わまいが、少しずつ穢れていく。
勿論、織莉子のソウルジェムも例外では無い。
戦うことを止め、自力でグリーフシードを回収できなくなった織莉子は、ゆまが回収したグリーフシードによって自身のソウルジェムを浄化していた。


【織莉子】
「そう、よね・・・」


グリーフシードを見つめ、小さく呟く。
彼女からこれを貰う度に、織莉子は複雑な心境になる。
ありがとう、という感謝の念は勿論ある。しかしそれと同時に、申し訳ないという気持ちも湧いてくるのだ。
社会人として働き、自立したように見えても、結局自分は誰かに迷惑を掛けながら生きているのだと思い知らされる瞬間でもあった。


【ゆま】
「あ・・・」

【織莉子】
「え?きゃ!?」


そうな織莉子を見ていると、ゆまは突然自分の視線が歪むのを感じる。
足元が覚束無くなり、そしてそのまま織莉子の方へと倒れこんだ。


【ゆま】
「(なんだろ・・魔力は回復したのに・・・)」

【ゆま】
「(疲れが残ってたのかな・・・?)」


ゆまが自分の身体の異変に困惑しつつ、織莉子に身体を預ける。


【織莉子】
「大丈夫?」

【ゆま】
「えへへ・・・ちょっと疲れちゃった・・・」

【織莉子】
「本当?」

【ゆま】
「だいじょーぶ、だいじょうーぶ」


その気になれば自分の足で立てるのだが、スーツ越しでも感じることができる織莉子の温もりが気持ち良かったので、ゆまはそのまま彼女に身体を預けていた。

678 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/07/12(木) 00:37:31.45 ID:aN2X/tS40


【織莉子】
「・・・車、乗っていきなさい」

【織莉子】
「家に帰りましょう」

【ゆま】
「うん・・・」


ゆまはそのままの状態で、目を瞑りながら頷く。


【ゆま】
「えへへ、織莉子のおっぱい枕フカフカー」


ゆまが織莉子の胸元に顔を埋め、大きく息を吸い込み、もぞもぞと顔を動かす。


【織莉子】
「止めなさい」ペシッ


そんなゆまを織莉子は幼子を叱るように、平手で頭を叩く。


【ゆま】
「いてっ」

【織莉子】
「全くもう・・・」


【ゆま】
「じゃっ帰ろ、織莉子」


織莉子から離れたゆまが、車の助手席側のドアに近付き、早く開けろと催促する。
それを見て、織莉子はやれやれと溜息交じりに息を吐き、鍵を開ける。
そして、二人で車に乗り込み鹿目家を後にした。


気付けば――――彼女の中で渦巻いていた葛藤は、ゆまの笑顔によってかき消されていた。


【織莉子】
「(・・・・ありがとう)」


面と向かって言うのは恥ずかしかった織莉子は、心の中でゆまに感謝するのだった。

679 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/07/12(木) 00:39:47.49 ID:aN2X/tS40


【織莉子】
「ところでゆま」

【織莉子】
「あなた、学校の成績相当悪いそうね」

【ゆま】
「えっ」

【織莉子】
「このままじゃ卒業どころか、3年生にすらなれないかもって担任から電話が来たわ」

【織莉子】
「まだ4月なのに・・・」

【ゆま】
「あのインテリ眼鏡〜」グヌヌ・・

【織莉子】
「まあ・・・良い成績取れとは言わないけど・・・」

【織莉子】
「卒業だけはちゃんとしてね?」


【ゆま】
「うー」


【ゆま】
「(よーし、こうなったら魔法で・・・)」

680 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/07/12(木) 00:41:32.20 ID:aN2X/tS40


【織莉子】
「ゆま」



【ゆま】
「え?」



【織莉子】
「魔法使っちゃ駄目よ?」



【ゆま】
「(゜゜)」





【織莉子】
「駄目よ?」ニコッ





【ゆま】
「Σ(゜д゜)」





【織莉子】
「だ め よ?」

【織莉子】
「」ニッコリ





【ゆま】
「は、はい・・((((゜д゜;))))」

681 :川´_ゝ`){PCの調子悪い ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/07/12(木) 00:48:15.01 ID:aN2X/tS40
短いですがきりが良いので今回はここまでです、お疲れ様でした。

今回は織莉ゆま回でした。
突然キーボード叩く指の動きがスローになって、後ろから殺気を感じたりしますが多分気のせいですね。

それでは、また明日同じくらいの時間に来ます。お休みなさいノシ
682 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage ]:2012/07/12(木) 00:49:38.30 ID:AZ/8YhSD0
乙ー
683 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/07/12(木) 11:51:36.01 ID:z5PaLMgAO

あまり顔文字は……使うとしてもメールの中身位にしてほしいなぁ
684 :川´_ゝ`){犬日々´見てた ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/07/13(金) 00:40:23.40 ID:RUfp4etL0
夜遅くにこんばんわ>>1です。いつも閲覧有難う御座います。

>>683さん
ご指摘有難う御座います。以後気をつけますね。

それでは、続きを投稿します。
685 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/07/13(金) 00:50:51.06 ID:RUfp4etL0

――――――――――――――――――――


【ゆま】
「ZZZ…」

【織莉子】
「寝ちゃった・・・」

【織莉子】
「よっぽど疲れたのね」


車で自宅へ向かうこと数分、隣に座ったゆまは静かに寝息を立てていた。
道路を走る車の数も少なく、聞こえる音は自分が車を運転する音とゆまの寝息だけとなっていた。
その静けさが、織莉子には少し寂しく感じる。


「そうだね」

【織莉子】
「きゃっ!?」


その雰囲気の中織莉子が運転していると、視界の端から白い生き物が現れる。
驚きのあまりハンドル操作を誤ってしまい、車体が少し揺れた。


【QB】
「やあ、暫くだね織莉子」

【織莉子】
「キュゥベえ・・・」


その白い生き物は、彼女達にとっては切っても切れない関係にある存在。


【QB】
「そんなに驚かなくてもいいじゃないか」

【織莉子】
「・・・運転中よ、急に話しかけないで」


その存在を確かめると、織莉子はこれまで見せたことがないような険しい顔付きになる。
その鋭い視線は、はっきりとその白い生き物を捕らえていた。

686 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/07/13(金) 01:08:48.98 ID:RUfp4etL0

【QB】
「それはすまなかったね」

【織莉子】
「それで、何か用?」

【QB】
「用なんて特に無いさ」

【QB】
「ちょっと世間話でもしようかと思っただけだよ」


その白い生き物は、織莉子の視線を気にすることなく淡々と話し始める。


【織莉子】
「あなたとする世間の話なんて、私は持ち合わせていないわ」


織莉子は視線を再び前に移し、冷たくあしらうように言い捨てる。
そのまま、その生き物の存在を自分の頭の中から消すかのように、黙って車の運転を続けた。


【QB】
「やれやれ・・・君もほむら同様、僕に冷たいね」

【織莉子】
「自覚してるのにわざわざ会いに来るなんて、悪趣味ね」


織莉子にとって、この生き物との思い出に良いものはない。
むしろ、この生き物を見ていると当時の苦い記憶が蘇ってくる。
正直、もうこの生き物には会いたくはなかった。


【QB】
「まあ、そう言わないでよ」

【QB】
「僕はまだ、君の復帰を諦めたわけじゃないんだ」


そんな織莉子の気持ちをあざ笑うのかのように、キュゥべえは続ける。
織莉子の気持ちを知っているのか、知らないのか―――
もっとも、例え知っていたとしても、この白い生き物がそんなことを考慮する筈もないのだが。

687 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/07/13(金) 01:10:19.89 ID:RUfp4etL0

【織莉子】
「・・・・・」

【QB】
「当然だろ?君は僕と契約した魔法少女なんだ」

【QB】
「僕からしても契約した以上、ちゃんと働いてもらわないと割に合わない」

【QB】
「ま、君は既に“少女”って言える年齢じゃないけどね」

【織莉子】
「あなたは私を貶しに来たのかしら?」

【QB】
「そんなつもりはないんだけどね」


キュゥべえとしては、ただ淡々と自分の主張を続けているだけ
しかし、その一言一言が織莉子の癇に障る。


【QB】
「最近は特に魔獣が強くなってきててね」

【QB】
「それぞれの個性が、より強くなってきてるんだ」


今日ゆまが戦った魔獣から見ても分かるように、最近の魔獣達は力を付けてきている。
たった数年でここまで急激に力が強くなったというのは、今まで前例が無い。
そういう点から見ても、今の状況はあまり良いという風には言えなかった。


【織莉子】
「そう・・・」

【QB】
「おまけに見滝原や風見野は、今魔法少女が不足している現状でもある」

【QB】
「君の力を借りたい気にもなる僕の気持ちが、分かってもらえるかい?」


今の段階で、見滝原周辺には魔法少女は織莉子含め3人しかいない。そして戦っているのはほむらとゆまの2人だけだ。
キュゥべえとしても、少しでも戦力を増やしたいと考えていた。


【織莉子】
「・・・魔法少女が不足してるなら」

【織莉子】
「新しい子と契約しにいきなさい」

【織莉子】
「それがあなたの仕事でしょ?」


織莉子は不機嫌な面持ちでキュゥべえに言い捨てる。
魔獣が強くなる一方で、見滝原ではゆまが契約して以来、新しい魔法少女が生まれていない。
戦力が足りなくなるのは、ある意味当然の結果であった。

688 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/07/13(金) 01:12:25.55 ID:RUfp4etL0

【QB】
「う〜ん・・・・」

【QB】
「そうしたいのは山々なんだけどね」

【織莉子】
「何よ・・・」


織莉子のもっともな指摘に対して、キュゥべえは珍しく言葉を濁す。


【QB】
「此処数年、見掛けないんだよ」

【QB】
「契約に値する素質を持った人間を、さ」


キュゥべえの口から出た言葉は、未来予知ができる織莉子でも予想できないような内容だった。
契約できる人間がいない、これはインキュベーターがこの地球という星に来て以来、起きたことがない未曾有の出来事である。


【織莉子】
「どういうこと、それ・・・」

【QB】
「僕にも分からないよ」

【QB】
「とにかく見滝原と風見野は今、ほむらとゆましか戦える魔法少女がいないんだ」


魔法少女の絶対数を増やすことが出来ない今、残っている魔法少女を頼るしかない。
そういった理由で、今回織莉子に白羽の矢が立ったという訳だ。


【織莉子】
「・・・あすなろ市は?」


キュゥべえの話を話半分で聞いていた織莉子は、徐にある町の名前を挙げる。
その町は見滝原、風見野の近くに存在しており見滝原同様、町の規模が大きく設備が整えられた近未来都市であり―――


【QB】
「あそこは僕の管轄じゃないから分からないよ」

【QB】
「まあ、ジュゥべえからそういった報告受けてないし、大丈夫なんじゃないかな?」


そして、今でも魔法少女達の活動が活発的に行われている場所でもあった。

689 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/07/13(金) 01:14:03.69 ID:RUfp4etL0

【織莉子】
「だったら、そこから応援呼べばいいじゃない」

【織莉子】
「あそこは確か魔法少女の組織があった筈よ」

【QB】
「『プレイアデス聖団』かぁ・・・」


あすなろ市は他の町とは違い、魔法少女達が集団で行動している。
それぞれが魔法少女として、それぞれの使命を背負い、そして同じ目標を持って活動する集団。
それが、プレイアデス聖団である。

聖団というだけあって、あの町は魔法少女の絶対数も他と比べて圧倒的に多い。
あそこなら、一人か二人くらいなら此方に回してもらえるのではないか、と織莉子は考えていた。


【QB】
「彼女達、扱いずらいから苦手なんだよねぇ」

【織莉子】
「・・・は?」


しかし、肝心のキュゥべえはというと、イマイチ乗り気になれないようでいた。
できればその手段だけは使いたくない、キュゥべえはそう言っているように見える。


【QB】
「君達人間だって、危ない宗教とやらには手を出したくないんだろ?」

【QB】
「それと同じさ」

【織莉子】
「何言ってるのよ、あなた・・・」


訳分からないわ、と言いたそうに織莉子は溜息を付く。


【QB】
「とにかく、あの集団とはあまり関わりたくないんだよ」

【織莉子】
「ああ、そう・・・」


イマイチ納得ができない織莉子だったが、キュゥべえはこれ以上詳しいことを話そうとはしなかった。

690 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/07/13(金) 01:14:59.32 ID:RUfp4etL0

【ゆま】
「・・・うにゅ?」

【ゆま】
「どったの〜・・・」


織莉子とキュゥべえが話していると、今まで眠りについていたゆまが、声を出しながら身体を回転させ、織莉子の方に顔を向ける。
まだ半分は寝ているらしく、目は開いてはいなかった。


【織莉子】
「どうもしてないわ」

【織莉子】
「まだ家に着かないから、眠ってて?」

【ゆま】
「ふぁ〜い・・・・」

【ゆま】
「ZZZZZ・・・」


織莉子はゆまに向かって、母が赤子をあやすように優しく呟く。
ゆまはそれを素直に聞き入れ、再び静かに寝息を立て始める。
年相応の寝顔を浮かべるゆまの顔を横目で見た織莉子は、キュゥべえのせいで引きつっていた表情を和らげた。


【QB】
「ゆまと上手くやってるみたいだね」

【織莉子】
「ええ、まあね」

【織莉子】
「色々・・・あったもの」

【織莉子】
「本当に、色々・・・」


キュゥべえを見て呼び起こされる、織莉子の記憶。
それは、ゆまを自分が引き取ることになった数年前の出来事。

691 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/07/13(金) 01:16:55.47 ID:RUfp4etL0

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「前に言ったよな?」


「オトシマエは必ず付けさせるって」


「・・・・こいつの世話は、任せたぞ」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

692 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/07/13(金) 01:18:29.02 ID:RUfp4etL0

【織莉子】
「私は、この子を一人前に育てる義務があるのよ」

【織莉子】
「魔法少女としてじゃない」

【織莉子】
「一人の、人間(ひと)として・・・」

【織莉子】
「それが、私なりのケジメの付け方よ」


ゆまに魔法少女としての運命を背負わせたのは、自分。

だからこそ――――自分は責任を取らなければいけない。

彼女を独りにしないように、自分が背負ったものに彼女自身が押し潰されないように―――

あの人がゆまにそうしたように――――親友が自分にそうしてくれたように

いなくなったあの人の分まで、自分がゆまを見守っていこう、と。

織莉子は自分の中で、固く誓っていた。


【QB】
「へぇ、そうかい」

【QB】
「で、結局復帰は考えてくれないのかい?」


キュゥべえは織莉子の言葉に、特に興味を持つことなく、いつも通り淡々と自分の目的だけを遂行しようとする。


【織莉子】
「・・・・・お断りするわ」


そして織莉子は、キュゥべえに拒絶の意思を伝える。
この白い生き物に対して、いらぬ宣言をしてしまったと彼女は少し後悔していた。


【QB】
「やれやれ、どうやら今日はここまでのようだね」

【QB】
「しかたない、僕はもう行くよ」

【織莉子】
「ええ、そうして頂戴」


ようやく折れたキュゥべえは、尻尾を振りながら背中を向ける。
それを確認することなく、織莉子はただ前を見つめながら冷たく言い捨てた。


【QB】
「じゃあまた会いに来るよ、織莉子」


顔だけを織莉子に向けて言い放ったキュゥべえだったが、織莉子はそれを無視して運転を続ける。
それを確認したキュゥべえは静かに首を横に振り、閉まった窓を通り抜け、夜の暗い町並へと姿を消していった。

693 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/07/13(金) 01:27:41.94 ID:RUfp4etL0


【織莉子】
「(私は、この道を選んでしまった)」

【織莉子】
「(だから、もう引き返さない)」


キュゥべえがいなくなり、再び静けさを取り戻した車の中で、織莉子は思う。


【織莉子】
「(ゆまや暁美さんとは少し違う道だけど・・・)」

【織莉子】
「(それでも私は・・・、前に進まなくちゃいけない)」


振り返ってはいけない、立ち止まってはいけない。
そんなことをしたら――――自分は自身を保てなくなる。


そして、やがては他の人同様―――――――――導かれてしまうだろう。


この世界を見守る―――――――女神によって。


【織莉子】
「(それに、それはきっとゆまや暁美さんも同じだから)」

【織莉子】
「(だからこそ私達は、歩き続けなくちゃいけない・・・)」

【織莉子】
「(それぞれが歩んだ、それぞれの道を)」


―――歩みを止めてはいけない―――


織莉子は自分に再度そう言い聞かせる
そして、自宅へ向けて先が見えない真っ暗な道路を、ただひたすらに進み続けるのだった。

694 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/07/13(金) 01:30:25.41 ID:RUfp4etL0

――――――――――――――――――――

【タツヤ】
「エエエェェェェェェエエエ・・・」

【知久】
「変な声上げてないで手を動かそうか、タツヤ」ニコニコ

【タツヤ】
「」ガチャガチャ

【詢子】
「これでもかってくらい、食器を洗わされている息子の姿がそこにはあった」

【タツヤ】
「社長、少し黙ってください」


【知久】
「タ ツ ヤ」


【タツヤ】
「(ビクッ)」

【知久】
「このお皿、まだ汚れが残ってるよ。洗い直そうか」ニコニコ


【タツヤ】
「(お、終わらん・・・・)」


【詢子】
「(こりゃ相当怒ってるな)」

695 :第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/07/13(金) 01:32:20.21 ID:RUfp4etL0

【知久】
「それが終わったら、次はお風呂を掃除してもらおうかな」

【タツヤ&詢子】
「「え?」」

【知久】
「勿論、ちゃんと出来なかったらやり直しだから」


【詢子】
「ま、まてまてっ!!あたし、そろそろ風呂に入りたいんだけど・・・」



【知久】
「何 か 言 っ た か い ?」ニッコリ



【詢子】
「タツヤ頑張れ!!死ぬ気で頑張れ!!」

【タツヤ】
「oh..」


【知久】
「ほら、また手が止まってるよ」



【タツヤ】
「こんなのって無いよ!!!絶対おかしいよ!!!!!」



ttp://www.youtube.com/watch?v=fZneQCCnESU



魔法少女まどか☆マギカ〜After Story〜 第2話「それぞれが歩んだ、それぞれの道」  fin

696 :次回予告 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/07/13(金) 01:36:42.94 ID:RUfp4etL0

ttp://www.youtube.com/watch?v=uUjX0qfYYdk&feature=plcp


「あなたはこの世界に不思議な力があることを知っていますか
 
 なんでも1つだけ願いを叶えてくれるなら、どんなことをお願いしますか
 
 あなたはどんな『奇跡』を起こしますか」


第3話「奇跡と魔法と、その代償」
697 :川´_ゝ`){PCェ・・・ ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/07/13(金) 01:41:30.52 ID:RUfp4etL0
今回はここまでです。お疲れ様でした。

途中PCが3回程イカれた・・・どういうことだおい。

次回から3話になります。2話よりは短くなるとは思います。

それではノシ
698 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/13(金) 07:17:29.69 ID:s2lA9VcLo
乙乙
699 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/13(金) 10:28:43.66 ID:k/SDpqqDO
ずらい × づらい ○

つらいに濁点が付くから
誤変換はしょうがないと思うが、誤字は減らした方がいい
700 :川´_ゝ`){oh.. ◆7F2DwKbdfg [sage]:2012/07/13(金) 12:36:01.85 ID:/SoOWdADO
>>699さん
ご指摘有難うございます。気付きませんでした(汗)

以後、気を付けますm(_ _)m
701 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/07/13(金) 13:41:09.31 ID:UZj+T13AO
702 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/13(金) 15:58:37.13 ID:QwJFzflWo

知久さん怖すぎワロタ
703 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/13(金) 22:54:04.46 ID:MAZuOKeLo
704 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/16(月) 01:45:01.11 ID:a9jjuSvM0


場面場面でBGM?が張られるのが熱いねえ
705 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/07/19(木) 13:19:02.25 ID:gzj7w+d+o
乙乙!
706 :川´_ゝ`){携帯から近況報告 ◆7F2DwKbdfg [sage]:2012/07/20(金) 02:07:15.88 ID:x4Xs9LwDO
夜遅くにこんばんは>>1です。いつも閲覧&コメ有難うございます。


次回ですが、今週の土日どちらかには投稿したいと考えているので、宜しくお願いしますm(_ _)m


では、お休みなさいノシ
707 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/20(金) 12:57:41.22 ID:hkRmg2E8o
期待
708 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/20(金) 16:34:03.13 ID:bU47i4m8o
生存報告乙
709 :川´_ゝ`){27hは見てません ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/07/22(日) 00:40:52.19 ID:p8+1cl4N0
夜遅くにこんばんわ>>1です。コメント有難う御座います。

それでは続きを投稿します。
710 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/07/22(日) 00:44:15.50 ID:p8+1cl4N0
(前回のあらすじ)
タツヤは『魔法少女』である千歳ゆまによって、魔法少女のことやソウルジェムのことを聞かされ魔獣退治に付き合わされる事に。ゆまと魔獣との戦いの際、襲われそうになったタツヤは、自分でも気付かないうちに不思議な力を発動させる。途中から合流した暁美ほむらは、それがかつての『まどか』の魔法であったことに困惑するも、キュゥべえによる追求からタツヤを逃がすため、彼を無理矢理家に帰らせるのだった。
 一方、かつて魔法少女だった美国織莉子も自分の上司である鹿目詢子の息子・タツヤと接触し、妙な違和感を覚える。そんな中、織莉子はキュゥべえによって今見滝原周辺で起きている奇妙な現象について知らされるのであった。
711 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/07/22(日) 00:46:49.85 ID:p8+1cl4N0

――――――――――――――――――――

ザァァァァァァァアアアア・・・・
ガン、ガン、ガン・・・・

―――――・・・ん?・・・此処は・・・・何処だ・・・・
―――――見滝原の、体育館・・・?なんでこんな所に・・・
―――――それに俺・・・なんで制服着てるんだろう・・・?


――う・・・・うぇぇえ・・・・――

――うわぁぁぁぁぁぁあん!!!!――


―――――なんだ・・・・五月蝿いな・・・


――うぇっ、うぇえ、ひっく・・・――


―――――誰かが・・・泣いてる・・・?子供の・・・・泣き声・・・?


【タツヤ】
『びぇぇぇえええええええんっ!!!』


―――――なっ!?あ、あれってまさか・・・
―――――・・・・・俺、か?


【知久】
『ほうら、タツヤ。怖くない、怖くないよ・・・』

【タツヤ】
『う・・・うぅ、こあ゛ぐ・・・ない』グスッ


若い父さんが子供の俺を慰めてる。俺は父さんに抱きかかえられ、徐々に泣き止んでいく。
ああ・・・そういえばこの頃は何かと直ぐに泣き出してたっけ・・・。


【タツヤ)】
『きょおーは・・・・んぷ・・・の?』

【知久】
『そう・・よ。今日・・・・だ』


泣き止んだ俺と父さんが何か話してる。
でも、何故か音がどんどん遠くなっていくような気がして・・・何を言っているのかよく分からない・・・・。

そして、なんでこんな光景を俺自身が見ているのかも―――全く分からなかった。



パァァァァア・・・・

712 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/07/22(日) 00:48:29.09 ID:p8+1cl4N0

――――――――――――――――――――


ゴロゴロゴロ・・・・・
ザァァアアアア・・・・・


父さん達を見ていた筈なのに、いつの間にか目の前が体育館の窓越しから見る外の景色に変わっていた。
外を見ると、台風が直撃したかのような大荒れの天気だった。風は今にも窓を割ってしまいそうなくらい強く、雷か何かが落ちるような音も聞こえてくる。

正直、・・・・今の状況に俺は頭が回らず、混乱していた。


ガシッ!!


すると突然、誰かに腕を掴まれる感覚にとらわれる。


【詢子】
『どこ・・・・・ってんだ』


腕を掴んでいたのは・・・・母さんだった。
母さんは何故か深刻そうな面持ちでこちらを見つめてくる。
声は相変わらず・・・俺の耳には届かない。

なんで、そんな表情をしているんだろう・・・・俺・・・何か悪いことしたかな・・・。



713 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/07/22(日) 00:49:47.56 ID:p8+1cl4N0

――――――――――――――――――――


ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・
ザァァァァァァアアアア・・・・


場面が再び切り替わり、今度いる場所は体育館の外だった。
空は厚い雲に覆われ、その雲からは大粒の雨が次々と降ってくる。
俺は傘も差さず、ただ立ち尽くすようにして目の前の光景に視線を向けていた。


―――――なんだ・・・・これ・・・



俺の目の前に広がる光景は―――――――見滝原の光景ではあったが、俺の知っている見滝原の光景ではなかった。

建物は崩壊し・・・・道路は陥没している。
ビルが立ち並んでいた筈の見滝原の中央区は、文字通り廃墟の町と化していた。


『アーヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!!!!』



―――――!!??




突然、不気味な声が辺り一面に木霊する。
それは、この見滝原の光景をあざ笑うかのように、狂喜に満ちたような笑い声だった。
俺は声が聞こえた方向に視線を移す――――気付けば、俺は崩れかけたビルの上に立っていた。


―――――なっ・・・!!




声の正体を自分の目で確かめ、俺は絶句した。
なぜなら、そこには―――――――



『アーヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!!!!』



この世のものとは思えない――――宙に浮いたデカイ化物がいたから・・・・。


714 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/07/22(日) 00:52:16.41 ID:p8+1cl4N0


―――――なんだ・・・・アレ・・・。魔獣・・・か、いや、それとは規模が違いすぎるというか・・・・。
―――――女性のような形をしてるけど・・・・逆さまになって浮いてるし・・・・。


ドォォォォォォォン!!!!ガガガガガガ!!!!!ブゥゥゥゥン・・・


―――――っ!?こ、こんどはなんだ・・・・何か、爆音みたいな音が・・・?
―――――それになんだか・・・一瞬、人が吹っ飛んだように見えたけど・・・・


俺は崩壊したビルから辺りを見回す。すると、奥の方で瓦礫を背にして、座り込んでいる人を見つけた。


【ほむら】
「・・・・っ」ハァハァ・・


―――――えっ!?あれって、暁美さん・・・?ちょ、ちょっと雰囲気が違うけど・・・・あれは間違いなく暁美ほむらさんだ・・・。
―――――なんであんな所に!?それに・・・あんなボロボロで・・・!?

―――――と、とにかくっ!!動けないみたいだし・・・・助けないとっ



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



―――――て、あれ?



俺は、急いで暁美さんの傍に駆け寄ろうとした。
でも――――――俺の身体は何故か全く動こうとしなかった。
まるで、自分の身体じゃないかのように・・・・・。


スゥ・・・・


―――――え?



そして、俺が動けない代わりに――――――俺の中から、一人の少女が姿を現し、暁美さんに近づいていく・・・。
後姿しか見ることは出来ないけれど、その人は俺と同じ見滝原の制服を着ていて、俺よりも身長がだいぶ低く、ピンク色の髪の毛を真っ赤なリボンで二つに結っている―――

その後姿は初めて見る筈なのにどこか懐かしい気がして、体が動かない俺は、ただボーっとその人の後姿を眺めることしか出来なかった―――――――

ttp://hp41.0zero.jp/data/800/tiger2/pri/25.jpg

715 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/07/22(日) 00:54:09.19 ID:p8+1cl4N0

――――――――――――――――――――


ジリリリリリリリリリリリリリリ!!!!!!!!!


【タツヤ】
「んあっ!?」


・・・・・あれ?


【タツヤ】
「・・・・・・また、夢か」


自分の目に映る光景は、いつも通りの部屋の天井。いつも通りの自分の部屋。
そして、いつも通り寝巻きを着てベットに横になっていた自分。普段と、何も変わらない。
その事実が、今まで見てきた光景が「夢の中の出来事」であったのだということを物語る。
意識が徐々に覚醒し、その事を自覚し始める。

それにしても、あの夢は何だったのだろうか?見滝原市のあんな光景、俺は見たことが無い。
それに、あのとてつもなくデカイ化物に、ボロボロになった暁美さん・・・・。
そして、最後に現れた、あの・・・・。


―――――ズキッ


【タツヤ】
「痛っ!!」


突如、俺は例の頭痛に襲われる。
頭を内側から鈍器で殴られるような鈍い痛みが、俺の頭を襲った。


【タツヤ】
「くそ、またかよ・・・・。一体何がどうなって・・・・」


最近俺をちょくちょく困らせている、この頭痛。
理由はよく分からないけど、現実、夢問わず自分の周りで奇妙な出来事が起きる時に、この頭痛は起きているようだった。
奇妙・・・・それは、昨日の夕方に起きた一連の出来事。

人々のマイナスな感情から生まれ、人々を襲うという『魔獣』
そして、その魔獣を狩り、人々を守っているという『魔法少女』
まるでアニメでも見ているんじゃないかと思うくらい、常識を逸した二つの存在。

しかし、それが現実なのだということは、昨日実際に一部始終を見ていた自分が一番よく分かっている。

千歳ゆまさん、そして暁美ほむらさん、2人の魔法少女と出会い、その戦いを目撃していた自分が、一番・・・・。

ああ、そういえば・・・なんかもう1匹変な生き物がいたっけ?
あれだ、あれ・・・ご当地ゆるキャラランキングで初登場時はTOP100くらいには入るんだけど次回のランキングでは1300位くらいに落ちてそうな生き物だ。


716 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/07/22(日) 00:56:50.49 ID:p8+1cl4N0

「おはよう」

「タツヤ」


そうそう・・・ちょうどこんな感じで、身体が白くて耳から耳が生えてるような・・・胡散臭い表情の生き物だったな。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?


【QB】
「どうしたんだい?朝から酷く間抜けな顔をしているよ」

【タツヤ】
「」


【タツヤ】
「・・・・・・・・・・は?」


俺は状況が飲み込めず、その場で固まる。

俺が子供の頃に作った工作物などが飾っている棚の上に、そいつは居た。
当たり前のように、至極当然のように、澄ました表情で、そいつは居たんだ。


【タツヤ】
「」テクテクテク・・

【タツヤ】
「」ガシッ!!

【QB】
「きゅいっ!?」


俺はそいつの傍まで歩み寄り、その珍獣の両耳を鷲掴みにする。
珍獣は、何をするんだと言うばかりにジタバタしているが、俺はそれに構う事なく、徐に自分の部屋の窓を開けた。


【タツヤ】
「何勝手に人の部屋に入ってんだ珍獣ーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!」ブゥゥゥゥン

【QB】
「きゅっっっっっぷいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」ヒューン、キラーン


そいつを窓から放り投げた後、俺は無駄に息切れしてしまった。
なんでアイツ俺の部屋に居るんだ・・・・ああもう、朝から何が何だか・・・・
気付いた頃には頭痛は治まっていたが、俺は違う意味で頭が痛くなっていくのだった。


717 : ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/07/22(日) 00:58:24.90 ID:p8+1cl4N0


‐‐‐‐‐交わした約束忘れないよ‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐‐目を閉じ確かめる‐‐‐‐‐‐

‐‐‐‐押し寄せた闇 振り払って進むよ‐‐‐‐


‐‐‐‐‐‐振り返れば仲間がいて‐‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐気がつけば優しく包まれてた‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐‐何もかもが歪んだ世界で‐‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐唯一信じれるここが救いだった‐‐‐‐‐



‐‐‐‐‐喜びも悲しみもわけあえば強まる想い‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐‐‐この声が届くのなら‐‐‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐きっと奇跡はおこせるだろう‐‐‐‐‐



‐‐‐‐‐交わした約束忘れないよ‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐‐目を閉じ確かめる‐‐‐‐‐‐

‐‐‐‐押し寄せた闇 振り払って進むよ‐‐‐‐

‐‐‐‐‐どんなに大きな壁があっても‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐‐越えてみせるからきっと‐‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐‐未来(あした)信じて祈って‐‐‐‐‐‐‐


‐‐‐‐‐‐ずっと未来(あした)待って‐‐‐‐‐‐‐


ttp://www.youtube.com/watch?v=9lR-HUYwSAU&feature=related


魔法少女まどか☆マギカ〜After Story〜 第3話「奇跡と魔法と、その代償」


718 :川´_ゝ`){そうだ、寝よう ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/07/22(日) 01:06:30.58 ID:p8+1cl4N0
今回は以上になります。お疲れ様でした。

今後について一つお聞きしたいことがあります。
タツヤの友人達を名前有りにしようか「友人A君」みたいなモブ扱いにしようか迷ってます。

どっちにしてもストーリー上そこまで影響はないのですが・・・・。
参考にしたいので、こっちが良いみたいな意見があったらお願いします。

それでは、お休みなさいノシ
719 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/22(日) 01:08:45.66 ID:HYDaH8aho
たかがモブでも名前があると一気に胡散臭くなるので「男A」とかそんな感じで
720 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/22(日) 01:35:46.18 ID:Wmdwlh1eo

おやすみ
721 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2012/07/22(日) 09:06:51.35 ID:TskAFOia0

名前はない方がいいかな
722 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/22(日) 22:23:23.33 ID:uVb0orRC0


個人的には名前ありのが物語の世界に没頭できる感じだけど…
どうなんだろ
723 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/22(日) 22:29:28.62 ID:w/Wyi6I+o
自分も名前有りに一票
ギャグや台詞羅列だけで続くSSなら別にいいんだけど、これに関しては名前有りの方がいいと思う
724 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/07/23(月) 00:08:28.74 ID:C9fnOAhFo
ぶっちゃけオリキャラノーサンキュー
725 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/07/23(月) 09:12:50.40 ID:AVcTGSido
オリキャラは痛い
726 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 11:22:48.86 ID:B0PeyhUgo
綺麗に意見が別れてるなww
727 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/07/23(月) 18:33:35.57 ID:pbLFTSJAO
ぶっちゃけ10年後なんていうイフストーリーなんだからオリキャラ上等だと思うが。
名前ありで良いんじゃないか?
728 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/07/26(木) 07:33:04.46 ID:gizz9OIR0
別に本編に深く関わらないモブには名前はいらない
(モブなはずなのに中沢くんに名前があるのは不明。まどポでは「男子生徒」と表記されていたけど・・・・)
729 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/26(木) 12:13:14.39 ID:06BDtiBlo
>>728
和子センセが名前呼ぶシーンあるから、便宜的にでも名前が必要だったんだろ。
730 :川´_ゝ`){正直すまなかった... ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/07/27(金) 01:31:25.31 ID:cO9owD580
夜遅くにこんばんわ>>1です。沢山のコメ有難う御座います。

色々な意見有難う御座いました。参考にさせていただいております。

結論としては、やはり下手にオリキャラを出してしまうと自己投影などでまどマギの世界を壊しかねないので、
友人は「友人君」扱いにしようと思います。

まあ、既に世界は壊れてしまってるかもしれませんが...タツヤとゆまなんて正直誰おま状態ですし(失笑)

名前有りが良いと言ってくれた皆さん、申し訳ありませんでした。


その代わりと言っては何ですが、今後の展開としてほむらの両親を名前有りで出そうかなと考えております。
そういうのが苦手な方には申し訳ありませんが、生暖かい目で見てやってください。


次回の投稿予定日はまだ未定ですが、また何かありましたら宜しくお願いします。

長文すいませんでした。ではお休みなさいノシ


731 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/07/27(金) 07:32:12.68 ID:grknXgNHo
えっ
ほむらの両親って名前公式で無かったよな?
名前有り無しは統一しろよ
732 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/27(金) 17:17:29.69 ID:H3P4lc/xo
一部名前有りにするんなら、全部やろうよ
733 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/27(金) 17:21:27.94 ID:03I3uI6lo
こんな話だし、俺は>>1がそう決めたならそれでいいと思うよー
734 :川´_ゝ`){生存報告 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/08/04(土) 00:27:57.65 ID:GKGIivvK0
夜遅くにこんばんわ>>1です。いつも閲覧有難う御座います。

>>730の発言は少し軽率だったかも知れません。すいませんでした。
自分の発言に責任を持てないのもどうかと思うのですが、オリキャラの件はもう少し考えたいと思います。
お騒がせして申し訳ありませんでした。

そして次回の投稿ですが、今度の日曜日辺りを予定しています。
また予定日が前後するかも知れませんが、何卒宜しくお願いします。

では、お休みなさいノシ
735 :川´_ゝ`){熱いね ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/08/06(月) 00:17:29.38 ID:AmqdXDyO0
夜遅くにこんばんわ>>1です。

それでは続きを投稿します。
736 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/08/06(月) 00:20:58.72 ID:AmqdXDyO0

――――――――――――――――――――


【詢子】
「ふぁ〜あ・・・・」


あの後、いつも通り母さんを起こし、そのまま洗面台で顔を洗っていた。
普段よりも寝起きが悪かった母さんは、歯磨きをしている最中も眠そうな顔をして欠伸をしている。


【タツヤ】
「眠そうだな」

【詢子】
「おお、どっかの誰かさんのせいでな」

【タツヤ】
「・・・・ごめんなさい」


昨日は結局、怒った父さんの命令で風呂場を隅々まで掃除することになった。その後、お風呂に入った母さんが寝床に着いた時には、日付が変わっていたのだ。
睡眠時間が削られる結果になった母さんがこんな状態になるのは、ある意味当然でだった。
・・・・流石に罪悪感を感じる。


【詢子】
「・・・ま、連絡くらいちゃんとしろよな」

【タツヤ】
「・・・・努力します」


何のために携帯を持たせていると思っているんだ、と溜息を付かれる。
うん、確かにそうだ、否定はしないし・・・できもしない。なんだけど・・・・昨日はなぁ・・・・。


【QB】
『まあ、昨日はそんな暇無かったからね』

【タツヤ】
「ぶぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!」


突如、脳に直接響くようにアイツの声が聞こてくる。
ちょうどうがいをしていた俺は、洗面台にある鏡に向かって盛大に水を吹き出してしまった。

737 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/08/06(月) 00:23:22.98 ID:AmqdXDyO0


【タツヤ】
「げほっげほっ・・・・」

【詢子】
「おい汚ねーな、どうした」

【タツヤ】
「いや・・・・・別に、何でも・・・」


隣で母さんが怪訝そう表情で見つめてくる。
そりゃそうだ。はたから見れば何の前振りもなく水を吹き出したようなものだ。驚かないわけがない。


【QB】
『大丈夫かい?』


いつの間にか俺の横にいたコイツが再びテレパシーを送ってくる。
言葉だけ聞けば心配しているようなイメージであるが、コイツの表情からそのような感情は一切感じられない。
つか、さっき外に追い出したのにまた入ってきやがったのか、お前は。


【タツヤ】
『どこから沸いた』

【QB】
『僕を虫みたいに言わないで欲しいな』


うるせー、ミニトマトを目にした雪だるまみたいな顔しやがって。


【詢子】
「お前、本当に大丈夫か。最近変だぞ?」

【タツヤ】
「え?あ・・・ああ、大丈夫、大丈夫!!」


母さんが本格的に心配し始めたので、慌ててその場をやり過ごそうとする。
こういう時の母さんは本当に勘が鋭い。ちょっとした行動の変化でも直ぐに感付いてくる。
母さんにはコイツが見えないだろうし、ここは構うべきじゃないな・・・。


【タツヤ】
「そ、それよりも早く済ませちゃわないと・・・!!」

【詢子】
「お、おお・・・」

【QB】
『・・・・』


俺は横のコイツに対して無視を決め込み、母さんと一緒に顔を洗う作業に没頭する。
コイツはその後は特にテレパシーを送ることもせず、ただ此方を見つめてくるだけだった。
一体なにが目的だったんだ、コイツ・・・。

738 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/08/06(月) 00:27:13.58 ID:AmqdXDyO0

――――――――――――――――――――


【タツヤ】
「じゃ、行ってきます」

【詢子】
「きーつけてなー」


朝食を取った後、いつも通り制服に着替え、玄関で靴に履き替える。
そのまま玄関のドアに手を掛け、外に出ようとした。


【知久】
「待って、タツヤ」

【タツヤ】
「えっ!?な、何?」


しかし、その途中で突然父さんに呼び止められる。
俺は昨日のこともあってか、若干腰が引けた状態で父さんの方へと振り向いた。
いや、昨日の父さんは本当に怖かったんだ・・・・本当に・・・・。
顔は今みたいに笑っていた。でも、その表情からはいつもの優しい印象を一切感じることができなかったんだ。
口は笑っていても目が笑ってないってこういう事を言うんだ、と肌で感じた。


【知久】
「何怯えてるんだい・・・」

【知久】
「大丈夫、もう怒ってないよ」


俺が怯えているのが分かったのか、父さんは笑みを浮かべ話し掛けてくる。
朝食の時から、もう怒ってないのだと分かってはいたものの、やっぱり昨日の今日だと反射的に身体が萎縮してしまう。
普段どおり接せと言われても、それは少し無理な話だった。


【知久】
「ほら、お弁当」

【タツヤ】
「え?」


そんな俺に向かって、父さんは手に持っていた手提げバックを渡す。
中を確認してみると、そこには大きめのハンカチで綺麗に包まれた弁当箱が入っていた。

739 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/08/06(月) 00:29:47.12 ID:AmqdXDyO0

【知久】
「学校のパンだけじゃ飽きるだろう?」

【知久】
「タツヤの好きなもの入れといたから」


弁当箱越しに良い匂いが伝わってくる。確かに俺の好きなものの匂いだ。
恐らく朝早く起きて作ってくれたんだろう。
小学生の時は給食だったから、弁当なんて遠足以来だ。


【タツヤ】
「父さん・・・」

【知久】
「次からはちゃんと連絡するんだよ」

【知久】
「心配するからね」


微笑みながら、父さんは言う。しかし、その言葉からはどこか力強さを感じる。
多分、昨日は本気で心配していたのだろう。だからこそ、あそこまで怒ったんだと思う。
そういうことを意識させられると、やっぱり申し訳なく思ってしまう。


【タツヤ】
「・・・うん、分かった」

【タツヤ】
「ありがとう」


だから、ちゃんとお礼は言わなくちゃいけないと思った。その言葉に昨日の件の謝罪も含めて。


【知久】
「はい、いってらっしゃい」


そう言って、父さんは背中を押してくる。
俺の言いたいことなんか、何でもお見通しだというような表情を浮かべて―――。


【知久】
「ママも急がないと、織莉子ちゃんが迎えにくるよ」

【詢子】
「おお、それもそうだな」


母さんに隠れてあまり目立たないけど、やっぱり父さんも凄い人なのだと、改めて尊敬する。

いつか俺も大人になったら―――二人みたいな人間になれるのだろうか・・・。

そんなことを考えながら、俺は家を出た。

740 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/08/06(月) 00:33:17.55 ID:AmqdXDyO0

――――――――――――――――――――


【タツヤ】
「・・・・・で」ピタ

【QB】
「・・・」トテトテ、キュップイ

【タツヤ】
「・・・なんでお前は付いて来るんだ」


家を出たはいいものの、何故かこの白い珍獣が俺の後ろに付いてくる。
特に絡んで来るということはないのだが、コイツのせいで後ろに変な違和感を感じる。
・・・正直、鬱陶しい。


【QB】
「別にいいじゃないか、何か問題あるかい?」


外に出てから初めて口を開いたこの珍獣だが、相変わらずこんな感じの態度だった。
いや、相変わらずといってもコイツと会ったのは昨日が初めてなんだけど・・・。
それだけ昨日の出来事が濃かったという事だろう。


【タツヤ】
「問題はない」

【タツヤ】
「ただ、凄く!!とっても!!かなり!!だいぶ!!」

【タツヤ】
「目障りだっ!!」


俺は鬱憤を全部吐き出すように言い捨てる。朝からコイツに振り回されてウンザリしていた。
憎まれ口の一つでも言ってやりたかったのだ。


【QB】
「その物言いは酷く理不尽だ」

【QB】
「人権侵害、という奴だね」

【タツヤ】
「(お前どう考えても人じゃねーだろ・・・)」

741 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/08/06(月) 00:35:54.25 ID:AmqdXDyO0

【タツヤ】
「で、結局何の用なんだよ・・・・」


だんだんコイツと話すのが嫌になってきたので、半ば投げやりに言う。
何か用事があるんだったらとっとと済まして、早く学校に行きたかった。
俺はその場で立ち止まり、この珍獣の言葉を待つ。


【QB】
「そうだね、強いて言うのであれば・・・」



しかし次の瞬間、コイツの口から出てきた言葉は――――



【QB】
「タツヤ、君に興味が湧いた」

【QB】
「これから暫くの間、君を観察させてもらうよ」



――――俺の予想の斜め先を行くものだった。



【タツヤ】
「・・・・は?」


思わず一言、声を漏らす。
言っていることの意味が、何一つ理解できなかった。

興味?観察?そういったワードが頭の中で浮かんでは消え、俺の脳内を軽くショートさせる。
そして言った本人はというと、やっぱり顔色一つ変えず、済ました表情をしていた。


【QB】
「ま、そういうことだから」

【タツヤ】
「ま、まてまて!!」

【タツヤ】
「なんだそれ、聞いてねーぞ!!」


コイツが話を終わらせようとするが、当然納得できるはずもなく、俺は慌てて噛み付く。


【QB】
「当たり前じゃないか、今言ったんだからね」

【タツヤ】
「そういう事を言ってるんじゃない!!」


じゃあ何なんだい?とコイツは俺を見上げる。
必要最低限の説明はした、とでも言いたそうな表情をしている。最初から最後まで詳しく説明する気なんて、コイツには端っからないらしい。

742 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/08/06(月) 00:37:29.70 ID:AmqdXDyO0

【QB】
「まあ、いいじゃないか。それに、別に君の許可を取る必要なんてないだろ?」

【タツヤ】
「(こ、この珍獣めぇぇ)」


・・・口を開けばこんな感じのコイツと話していると、怒りのあまりプルプルと身体を震わせ、思わず拳を握ってしまう。
それでも俺は短腹を起こしてはいけないと、その感情を必死に抑え静めようとしていた。

そんなことをしていると、本当に頭が痛くなるような感覚に捉われ、なんだかもうどうでもいいや、という感情が湧いてきてしまう・・・。


【タツヤ】
「ああもう、分かったよ!!好きにしろ!!」

【QB】
「うん、そうさせてもらうよ」


俺が思わずそう叫ぶのを、コイツは声色や態度を一切変えることなく受け流す。
それにしても、これからこんな奴と四六時中行動を共にしなきゃいけないのか。大丈夫かな、俺。

勢い任せに言ってしまった自分の言葉を、俺は少し後悔した。



【QB】
「・・・・」

743 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/08/06(月) 00:40:19.29 ID:AmqdXDyO0


【QB】
『(そうだ、僕は今まで数多くの人間と契約してきたけど)』



【QB】
『(君みたいに何の因果も持たずに、それも契約なしで魔法を使える人間を、僕は見たことがない)』



【QB】
『(鹿目タツヤ、君は未曾有の存在だ)』



【QB】
『(素質を持った人間がこの見滝原で現れない中、君というイレギュラーが出てきた)』



【QB】
『(君は、この現状を変える大きな切り札になるかもしれない)』



【QB】
『(そのためにも君の傍で、君という人間をじっくり調べさせてもらうよ)』



【QB】
『(ほむらには悪いけどね)』


744 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/08/06(月) 00:43:05.02 ID:AmqdXDyO0

【タツヤ】
「おい」

【QB】
「え?」


後ろに居たコイツが急に黙り込み、妙な違和感を覚えた俺は改めて視線を移す。
どうやら何か考え事をしているようだった。

それを見て、何か妙な寒気を感じる。なんだろう、良く分からないけど・・・なんか嫌な予感がする・・・。


【タツヤ】
「お前、何か変なこと考えてるだろ」

【QB】
「そ、そんなことはないさ」

【タツヤ】
「胡散臭ぇ・・・」


俺が指摘すると、コイツは明らかに先程とは違う動揺した素振りを見せる。
まるで何かを隠しているような・・・そんな印象を受ける。
・・・本当にコイツと一緒に居ていいんだろうか。俺は少し不安になった。


【QB】
「(やれやれ、意外と勘の良い子だね・・・)」

【QB】
「ほら、学校に行くんだろ?遅れるよ」

【タツヤ】
「お前に言われなくても分かってるわ!!!」


振り向き様にコイツに向かってそう叫ぶ。
そうだ、いつまでもコイツに構っているわけにも行かない。そう思った俺は、学校に向けて歩を進めようとした。

745 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/08/06(月) 00:46:48.76 ID:AmqdXDyO0

「タツヤ・・・・君?」

【タツヤ】
「え?」


と、そこで聞き覚えのある声が自分の名前を呼んでいることに気付く。俺はその人の姿を確認するため、声の聞こえた方向に視線を向けた。
すると、声の主は通学路の近くにいる公園から、驚いたような表情で此方を見つめていた。


【仁美】
「何・・・・してますの?」


その人はウェーブの掛かった緑色の綺麗な髪を背中まで伸ばし、髪の毛の先を大きめのリボンで結っている。
女性の平均身長よりも少し背が高く、手足がスラッと長くて、膝下まである春物のロングスカートが良く似合った、志筑仁美さんであった。


【タツヤ】
「あ、仁美さん・・・」



【仁美】
「誰も居ないのに、まるで誰かを怒鳴り付けるようなことを・・・」

【タツヤ】
「げっ!!!い、いや・・・そのっ」


まずい、どうやらコイツとのやり取りの一部始終を見られたらしい・・・。外に出てから特に人とは出会わなかったので、この珍獣が普通の人には見えないんだということを意識していなかった。
俺は何とか上手い言い訳を言おうとするが、焦っているせいか言葉が上手く出てこない。
そうしている内に、仁美さん表情が見る見るうちに焦りの色へと変化していく。


【仁美】
「まさか・・・まさかっ」


そして、何か思い至ったような素振りをみせると、俺に向かって声を上げた。


【仁美】
「学校に馴染めず友達が出来ないから情緒不安定になって挙句の果てに自分の中にエア友達のようなものを作ってそれに話しかけることで気を紛らわしてる、ということですの!?

いけませんわ、タツヤ君!!入学早々自分の殻に閉じこもっては!!タツヤ君ならきっと素敵なお友達が出来ますわ!!!」

【タツヤ】
「違いますよ!!!!」


仁美さんは何だかもの凄い早口で、盛大な勘違い発言をしてきた。あまりに見当違いな発言だったので、思わず大声でツっ込んでしまう。
・・・この人、たまにぶっ飛んだ発想をするところがあるからなぁ・・・。普段は見るからにお嬢様って感じで、見滝原で五本の指に入るような美人なのに・・・。

746 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/08/06(月) 00:50:33.24 ID:AmqdXDyO0

【仁美】
「え?で・・・でも、今・・・?」

【タツヤ】
「え、えーと・・・」


とりあえず落ち着いたらしい仁美さんが、改めて表情に疑問の色を浮かべる。
俺はどうにかこの場をやり過ごそうと、必死に思考を巡らす。
誰も居ないのに一人で怒鳴ったりしているような人間だとは、ちょっと思われたくなかった。


「仁美、そのくらいにしてあげなよ」


「タツヤ君が困ってるじゃないか」


【タツヤ】
「ふぇ?」


俺が必死に言い訳を考えていると、仁美さんの後ろからこれまた聞き覚えのある声が聞こえてくる。こっちは男性の声だった。
声の行方を追って、仁美さんの後ろに視線を移すと、俺が良く知る人物がそこには立っていた。



背が高く、少し細身の体系。そして、銀色の髪の毛を風に靡かせているその人は
今や世界を代表するヴァイオリニストであり、仁美さんの婚約者でもある――――――。



【恭介】
「やあ、暫くだねタツヤ君」

【タツヤ】
「きょ、恭介さんっ!?」




―――――――上条恭介さんだった。


747 :川´_ゝ`){頑張れ、日本 ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/08/06(月) 00:55:40.43 ID:AmqdXDyO0
今回は以上になります。お疲れ様でした。

ようやく主要人物をほぼ全員登場させたって感じです。(ほぼかよ)

それでは、また次回。ノシ
748 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/06(月) 03:03:10.44 ID:CP8fck0No
恭介から謎のイケメン臭が
749 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/06(月) 12:06:13.03 ID:LzeoxnKAo
>>748
そもそもイケメンですし
750 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/09(木) 08:38:23.90 ID:dzjeMg8DO
>>1

モブの名前うんぬんあったけど
持部(もぶ)さんでいいんじゃね?
751 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/13(月) 12:49:10.42 ID:yZwcFkOCo
持部三…
752 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/16(木) 15:52:08.94 ID:XNwTbz9ko
まだかね…
753 :川´_ゝ`){熱湯甲子園 あ、間違えた ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/08/17(金) 00:13:08.54 ID:QxzP3quw0
夜遅くにこんばんわ>>1です。いつも閲覧&コメ有難う御座います。

お待たせしてしまって申し訳ありません。
春頃から受けている某試験の最終が無事に終了すれば、今までよりは速いペースで投稿できると思います。
私用で申し訳ないのですが、何卒ご了承ください。

次回の投稿ですが、早くて次の土日、遅くても水曜日くらいには投稿したいと考えています。
また詳しいことが決まったら報告しにきますので、宜しくお願いします。

それではお休みなさいノシ
754 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/17(金) 00:44:27.06 ID:lnGCIV2Do
乙ー
リアルを大切にしろよ
755 :川´_ゝ`){遅れて申し訳ない ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/08/22(水) 02:14:34.54 ID:S+Xv2UIx0
夜遅くにこんばんわ>>1です。

いつもありがとうございます。しかし、実はまだ予定してるところまで書けていません(汗)
とりあえず今出来ている部分までを明日の深夜頃、投稿したいと思います。
相変わらずの遅筆で申し訳ありません。

それと、報告が遅れてしまったのですが、明日の投稿からオリキャラが登場します。
色々検討した結果、名前有りで登場させることにしました。
オリキャラが苦手な方、また意見を下さった方には度々申し訳ないのですが、何卒宜しくお願いします。

投稿でもないのに長文すいませんでした。ではお休みなさいノシ
756 :川´_ゝ`){大阪桐蔭つえぇ ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/08/23(木) 00:08:13.45 ID:DxWMJJ/S0
夜遅くにこんばんわ>>1です。

それでは続きを投稿します。
757 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/08/23(木) 00:11:53.07 ID:DxWMJJ/S0

【タツヤ】
「恭介さん、日本に帰って来てたんですね」


上条恭介さんは仁美さんと同じく、俺が子供の時から世話になっている人だ。
仁美さんとは婚約関係にあり、現在同棲中だったりする。因みに二人共見滝原中学の卒業生で、同級生だったらしい。


【恭介】
「うん、といっても帰ってきたのは昨日なんだけどね」

【恭介】
「まだ時差ボケが酷いよ」


恭介さんは日本の音楽家としてヴァイオリン片手に世界中を駆け巡っている。
詳しいことはよく分からないけど、世界中にいる演奏家達と一緒にコンサートを開いているらしい。世界では日本の天才ヴァイオリニストとして結構有名なんだそうだ。
そして、時々こうして休養のため日本に帰ってくるという生活を続けている。


【恭介】
「少し遅れちゃったけど、中学校入学おめでとうタツヤ君」

【恭介】
「制服、良く似合ってるよ」

【タツヤ】
「はは・・・、ありがとうございます」


恭介さんが俺の制服姿をまじまじと見てくるので、少し照れ笑いをしながら応えた。
最後に恭介さんと会ったのは、まだ小学生の頃だったから制服姿を見せるのはこれが初めてだ。


【タツヤ】
「恭介さんは何時まで日本にいるんすか?」


世界中でコンサートを開いているためか、恭介さんが日本にいる期間は案外短かい。
帰ってきたと思ったら、すぐ次の日には別の国に飛んでいるってこともザラだ。
だから、仁美さんは勿論そうなのだが、俺としてもこうして恭介さんと過ごす時間は貴重だったりする。


【恭介】
「しばらくは居るつもりだよ、此処最近ずっと世界中を飛び回っていたからね」

【恭介】
「それに、夏には日本でコンサートを開く予定なんだ」

【恭介】
「だから、それまでは日本にいると思うよ」


話によると日本でコンサートを開くにあたって、色々準備することがあるそうだ。
そういった事を恭介さんは少し嬉しそうにしながら話す。今回は長期間日本にいられることに安堵しているようだった。
世界中を渡り歩くというのはやりがいがある分、それだけ大変だということだろう。

758 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/08/23(木) 00:15:16.21 ID:DxWMJJ/S0

【恭介】
「だから、今度のコンサートは是非タツヤ君にも来てほしいな」

【タツヤ】
「え!?い、いや・・・俺は・・・その〜」


予想外のお誘いに俺は動揺する。目線を恭介さんから逸らし、口籠ってしまう。
別に嫌だというわけではない。こうして本人から直々に誘ってくれているのだ、嬉しくないわけがない。
ただ、一つだけ問題が・・・。


【仁美】
「タツヤ君は恭介さんのヴァイオリンを聞くと直ぐに眠っちゃいますからね〜」

【タツヤ】
「う・・・」


そう、俺は恭介さんの弾くヴァイオリンの音色を聞くと、途端に眠りに落ちてしまうのだ。
何故かは分からないが、恭介さんがヴァイオリンを弾き始めると、もの凄い勢いで睡魔に襲われてしまう。
なので、俺が恭介さんのヴァイオリンを最後まで聞き通せたことは今の一度もなかった。

一回、隣にいた仁美さんに思いっきり腹を殴られて起きたことはあるが、その時は音色をまともに聞けるような状態ではなかった。
・・・あの時の仁美さん、怖かったなぁ


【恭介】
「ハハ、それだけ気持ちの良い演奏だったってことかな?」

【タツヤ】
「すいません・・・」


いや、俺だって聞けるなら最後まで聞きたい。
でも、毎回毎回・・・我慢はするのだが結局、睡魔には勝てずにいる。
うーん、なんとかならないものか・・・。


【仁美】
「そうそう、恭介さんも日本に帰ってきたことだし」

【仁美】
「今度、前に言ってたタツヤ君の中学校入学お祝いパーティをしませんか?」

【タツヤ】
「え!?」


そんなことを考えていると、仁美さんは以前提案していたお祝いパーティーの話を持ちかけてくる。
恭介さんのコンサートのことばかり考えていた俺は、思わず声を挙げてしまった。
そういえば、前にそんなことを言っていたっけ?ここ最近、色々なことが在りすぎていて、すっかり頭の中から飛んでしまっていた。


【恭介】
「それはいいね。やろうよ」

【タツヤ】
「い・・・いや、いいですよ。前にも言ったけど家でやりましたから」


別にお祝いされるのが嫌なわけではない。むしろ、そう言ってもらえて嬉しい。
しかし、せっかくの二人で過ごせる貴重な時間を、俺なんかのために割いては欲しくなかった。

759 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/08/23(木) 00:17:51.22 ID:DxWMJJ/S0

【恭介】
「いいじゃないか、遠慮はいらないよ?」


しかし、恭介さんが仁美さんに便乗してくる。
どうやら乗り気になってしまったらしい。恭介さんも、日本にいる時くらいゆっくりしたい筈なのに・・・。


【タツヤ】
「でも・・・」

【恭介】
「僕がタツヤ君をお祝いしたいんだ、それでも駄目かい?」


俺が尚も断ろうとすると、恭介さんの方からやらせて欲しいと言われてしまった。
本来ならこちらがお願いするようなことなのだが・・・。
流石にそこまで言われてしまうと、無下に断るわけにはいかない。


【タツヤ】
「は、はあ・・・、恭介さんがそう言うなら」

【タツヤ】
「お言葉に甘えて・・・」

【恭介】
「じゃあ、決まりだね」


結局、俺は仁美さん達の提案を受け入れることにした。
本当に良いのかな・・・。


【仁美】
「そういえば、タツヤ君。そろそろ学校に行かないと」

【タツヤ】
「あ、やべっ!!」


仁美さんにそう言われて、慌てて時計を確認してみる。
遅刻とまではいかないが、気付かぬ間に結構時間が経ってしまっていた。


【恭介】
「ごめん。足止めしてしまったね」

【タツヤ】
「いや、大丈夫ですよ」

【タツヤ】
「走れば全然間に合いますから」


実際、ちょっと急げば充分に間に合う時間だったので、それほど問題はなかった。
それでも、油断していると直ぐに時間が過ぎてしまうので走って学校に行くことにした。

760 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/08/23(木) 00:20:06.31 ID:DxWMJJ/S0

【仁美】
「パーティの詳しい日付とかは後で連絡しますわ」

【タツヤ】
「はーい」

【タツヤ】
「じゃ、俺はこの辺で」


仁美さん達に別れを告げ、俺は学校に向かって駆けていく。
それにしても、お祝いパーティーかぁ・・・。なんだかんだ言って、何をするのか楽しみだったりする。

それにしても、あの二人とは子供の時からの付き合いだけど、いつもお世話になりっぱなしだ。俺や父さん母さんと特に縁があるわけじゃないのに・・・・。

そういえば、どうやって知り合ったんだっけ?
俺が本当に小さかった頃の話だから、記憶がイマイチ曖昧で上手く思い出せない・・・。


【QB】
「今のは上条恭介と志筑仁美だね?」


俺が学校まで走っていると、後ろから付いてきたこの珍獣に話しかけられる。
そういえばコイツいたんだっけ・・・すっかり忘れていた。
よく今まで大人しくしていたな・・・いや、というかそれよりも・・・・


【タツヤ】
「お前なんで恭介さん達の事知ってるんだよ?」


確か、さっき仁美さんにはコイツのことが見えてなかったよな・・・。
なのに、なんでコイツはあの人達の名前を知っているんだ?


【QB】
「まあ、以前色々あってね」

【タツヤ】
「???」


恭介さん達がいた方角を向きながらコイツが応える。何かって・・・やっぱり魔法少女関連のことか?
でも、コイツが見えないんだから・・・直接関係があるとは思えないんだけど・・・。


【QB】
「まあ、君には関係ないことだよ」


そうやって色々考えていると、この珍獣が拍子抜けするような事を言ってくる。

せっかく人が真面目に考えていたのに・・・・。

いちいち癇に障るようなことを言ってくるコイツに嫌気がさす。


そうしている内にも時間は刻々と過ぎていることに気付く。これ以上、コイツに構っていたら本当に遅刻してしまうかもしれない。
そう思った俺は、コイツを放置して学校に向かって駆けていくのだった。

761 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/08/23(木) 00:24:05.59 ID:DxWMJJ/S0

――――――――――――――――――――


【タツヤ】
「なんか朝から疲れたな・・・」


結局、学校まで全力疾走することになってしまった俺は、机に突っ伏していた。
色々寄り道をしていたので、学校に着いたのは朝のホームルームが始まる少し前であった。
なんか俺、いつも遅刻ギリギリだな・・・。


「よーう、タツヤ!!」


俺が机でグッタリしていると、やかましい声が目の前で響く。
ああ・・・この声は・・・。姿が見えなくても、声だけで誰か分かる。


【タツヤ】
「大輔か・・・」


突っ伏したまま、そいつの名前を口にする。

コイツの名前は板垣大輔、小学校の時からの俺の友人だ。リーゼントヘアーをこよなく愛する漢の中の漢(自称)
物心ついた時から野球をやっていて、身長は俺よりもだいぶ上、尚且つ運動神経が良い。まさに、全身が筋肉で出来ているような奴だ。
勿論脳みそも筋肉で出来ている。つまり馬k・・・いや、止めておこう。

因みにリトルリーグ時代は周りのみんな坊主頭なのに、一人だけこの髪型を貫いたらしい。
この頭は漢の勲章なんだーだとか・・・。

こうして見ると、一見不良っぽい印象が強いが、決してそうではない。
毎朝俺よりも早く登校してきたり、校則を守る(髪型以外)ところなど、根は結構真面目な人間である。

まあ、要するに馬鹿なのだ。あ、馬鹿って言っちゃった。


【大輔】
「ハハハ、相変わらずギリギリの登校だな―!!」


ガハハ、と豪快に笑い飛ばされる。相変わらず朝から元気な奴だな、と俺は軽く溜息を付いた。
全力で走ってゼェゼェと肩で息をしているような状態の俺にとって、コイツの今のテンションはちょっとキツかったりする。


【タツヤ】
「ああ、朝から恭介さん達と会ったりしたからな・・・」

【大輔】
「なにぃ!?恭介師匠帰ってきてたのかっ!!貴様、何故俺に一言連絡しない!!」


恭介さんの名前が出た途端、大輔は俺の机を両手で叩き大声を挙げる。
顔をズイッと近づけ、リーゼントの先が俺のデコに当たる。
相変わらずコイツの髪の毛邪魔だな・・・。

762 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/08/23(木) 00:28:13.46 ID:DxWMJJ/S0

【タツヤ】
「俺だって今日知ったんだよ。つか、師匠ってなんだよ・・・」


大輔と恭介さんは直接面識があるわけではない。
ただ、俺経由でコイツが色々と恭介さんのことを聞いてくるので、教えてあげたりはしている。


【大輔】
「ああ!?俺が恭介師匠をりすぺくとしてることは知ってるだろうがっ!!」

【タツヤ】
「いや初耳だよ」


リスペクトって確か尊敬しているって意味だよな?
大輔が・・・恭介さんを?

見た感じ、

大輔→脳筋タイプ 恭介さん→秀才タイプ

なのに?

人としての土台からして違うだろ。


【大輔】
「あの人はう゛ぁいおりん一本で天下布武を成し遂げた漢だぞ!!日本男児として尊敬するわけにはいかねぇだろ!!」

【タツヤ】
「天下布武って、お前な・・・」


何処の時代の人間だお前は・・・。
確かに恭介さんは世界を代表する演奏家だけれども、世界を統一したりはしてないぞ。


【大輔】
「この漢・板垣!!
恭介師匠のように世界を蹂躙してやるぜ!!!このぎたー一本でな!!」


そう言って大輔は後ろから一本のギターを取り出す。
単細胞なコイツのことだから、大方、恭介さんがヴァイオリンなら俺はギターで〜みたいな感じなんだろうけど。

因みに、大輔の家は親父さんがラーメン家を営んでいるので、多分コイツは将来店を継ぐことになる。
ギターでどうのこうのってのは最初から無理な話だ。大輔の親父さんかなり怖いからな・・・。
おまけにプロレスラーみたいな体系してるし。


【タツヤ】
「お前、ギターなんて弾けたっけ?」

【大輔】
「まっっっったくっ弾けん!!!」

【タツヤ】
「駄目じゃねーか」


お前って、ほんと馬鹿だな・・・。
そのお気楽な思考を見ていると、溜息が漏れる・・・。

763 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/08/23(木) 00:34:14.59 ID:DxWMJJ/S0

【大輔】
「なに、いずれ弾けるようになるさ。部活は軽音楽部に入ったからな」

【タツヤ】
「へー」


軽音部ねぇ〜、体育会系の大輔にしては予想外のチョイスだ。
でも部活の人達はこんなの受け入れて大丈夫なのだろうか?多分だいぶ苦労することになるぞ?


【タツヤ】
「つか、野球部には入らないのか?」

【大輔】
「あんな部にもう用はない!!このイカした髪型を受け入れてくれなかったんだからな!!」

【タツヤ】
「いや当たり前だろ」


何処にリーゼント頭の球児がいるんだよ。
昔から野球一筋でやってきたくせに、そんな理由で辞めちゃっていいのかな・・・。
まあ大輔クラスの運動神経なら、ちょっとブランク空いても直ぐ取り返せそうだけど。


【大輔】
「行くぜ、ろっくんろーる!!」ジャーン


ほんとに大丈夫かな・・・コイツ。

―――キーンコーンカーンコーン


ガラッ


【担任】
「おーい、板垣。廊下まで響いてるから自重しろー」


ホームルームの合図であるチャイムと同時に、先生が教室に入ってくる。
廊下まで響いていたのか、大輔の声は大きいからな。
というか、先生もまだ4月なのに、騒いでる奴=大輔って判断してるよね絶対・・・。

764 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/08/23(木) 00:35:53.35 ID:DxWMJJ/S0

【大輔】
「邪魔しないでくれ、まいてぃーちゃー。俺のはーとは今びーとを刻んでるんだ!!」

【タツヤ】
「何人だよ、お前」


意味分かって言っているのだろうか、コイツは・・・。
因みに俺はよく分からない。・・・英語苦手なんだよ。だって日本人だもん。


【担任】
「馬鹿言ってないで席に着け。後、学校の楽器を勝手に持ち出すんじゃない」

【タツヤ】
「それ自分のじゃなかったのかよ!!」


ホームルームが始まる時間だというのに、思わず大声でツッコミをいれてしまう。
あたかも自分の所有物のように扱っていたから、てっきり自分の物なんだと思っていた。
学校の物だったのか・・・つか、どうやって持ってきたんだ?



【大輔】
「当たり前だ。こう見えてぎたーは高いんだぞ」

【タツヤ】
「あ、頭痛くなってきた・・・」


部活の人達は本当にコイツなんか受け入れて大丈夫なのだろうか。
今からでも考え直したほうが・・・。

その後、何故か俺も一緒に先生に軽く怒られてからホームルームが始まった。
いや確かに大輔と話していたのは俺だし、ちょっと大声を挙げてしまったけども・・・。

酷いとばっちりだと、俺は思った。

765 :以下、おまけ ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/08/23(木) 00:42:16.14 ID:DxWMJJ/S0

上条恭介 24歳 身長176cm

志筑仁美 24歳 身長165cm

板垣大輔 13歳 身長170cm
766 :川´_ゝ`){短くてごめんね ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/08/23(木) 00:46:44.84 ID:DxWMJJ/S0
今回は以上になります。お疲れ様でした。

身長とかは>>1の独断と偏見で決めています。深い意味は無いのであしからず。

次回は恐らく1週間以内には投稿できると思います←縛り

それでは、お休みなさいノシ
767 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/23(木) 07:01:44.62 ID:F1Xt/vE8o
仁美でけえ
中学さやかよりは高いな
768 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/23(木) 10:29:06.99 ID:nT9jsWZro

大輔君ワロタ
そして仁美ちゃん怖いわww
769 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/23(木) 12:14:58.55 ID:cHRBm35Bo

この世界でもハラパンは健在なのかww
770 :川´_ゝ`){なんだかんだで24TV見た ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/08/27(月) 01:21:57.47 ID:91bl6cm10
夜遅くにこんばんわ>>1です。いつも閲覧&コメ有難う御座います。

ようやく前回投稿予定だった分を全て書き終えました。
明日(28日)の0時くらいに投稿しに来ます。

因みに3話はほむらの出番があんまりないです。あれ、タツほむ要素何処いっt(ry

では、また明日。お休みなさいノシ
771 :川´_ゝ`){シャイニールミナス ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/08/28(火) 00:09:43.99 ID:+7CwZWPa0
夜遅くにこんばんわ>>1です。

それでは続きを投稿します。
772 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/08/28(火) 00:14:20.42 ID:+7CwZWPa0

――――――――――――――――――――


ホームルームが終わり、そのまま午前の授業を受け、今はお昼休みの時間だ。
俺は父さんから受け取ったお弁当を食べるため、屋上に足を運んでいた。
因みに大輔は勝手に持っていったギターを返しに行き、今頃は顧問の先生に怒られている頃だろう。


【QB】
「・・・」ジー


この珍獣は相変わらず俺の傍にいる。教室でも後ろからずっと俺のことを見てくるし、移動する時は後ろからトコトコと付いてくる。
昼食で屋上まで来てみても、付いてきては俺のことをジッと観察してくるのだ。
他の連中はこの珍獣が見えないから良いけど、見える尚且つコイツに見られている俺はたまったもんじゃない。


【QB】
「・・・」ジー

【タツヤ】
「なんだよ、弁当はやらねーぞ」

【QB】
「いや、いらないよ」


だったら、頼むからそうやって隣にびったり張り付かないでくれないかな。
せっかくの父さん特製弁当が不味くなっちまうだろ。

はあ、せめて早く大輔来ないかな・・・。


【QB】
「・・・やっぱり君はどうみても普通の人間だね」


そんなことを考えていると、ポツリと一言コイツが呟く。
表情は相変わらず変わらないが、その目はどこまでも不思議そうにして、俺を捉えていた。


【タツヤ】
「当たり前だろ、他に何があるってんだ」

【QB】
「前にも言ったかもしれないけど、僕は普通の人間には見えないんだよ」


それは分かっている。そのせいでこっちは色々と苦労しているんだから。
コイツに対しての言葉がついうっかり声に出てしまうと、クラスのみんなや先生を誤魔化すのが大変だ。


【QB】
「見せてない、と言った方が正しいんだけどね」

【タツヤ】
「はあ?どういうことだよ」

【QB】
「僕は僕と契約するに値する人間にしか姿を見せないようにしてるのさ」

【QB】
「その方が効率的だからね」


なんだ。特別な人がこの珍獣の姿を見ることができるんじゃなくて、コイツが姿を見せる相手を厳選していたって事か?
その契約ってやつをするために。

773 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/08/28(火) 00:16:57.96 ID:+7CwZWPa0

【タツヤ】
「つまり、魔法少女になれる女の子にだけ姿を見せてるってわけか」


ん?でもちょっと待て。
だったら何で俺はコイツの姿が見えているんだ?俺、男だし・・・。
コイツ、昨日男とは契約出来ないって・・・。


【QB】
「まあ本当は、女の子じゃなくてもいいんだけどね」

【タツヤ】
「は?」


俺は珍獣から返ってきた言葉に驚き、声を漏らす。
魔法少女は女の子じゃなくてもいい・・・?え? どういうことだ。


【QB】
「僕と契約するに値する資質、いわば強い因果を持っていれば本当は誰でも良いんだよ」

【タツヤ】
「なんだよそれ?」


因果。あまり聞きなれない言葉だ。
当然、それがどういうものなのか、俺には分からない。


【QB】
「この世界への、その人の影響力とでも言えばいいのかな」

【QB】
「その人の存在が、この世界にどれくらい影響を与えるのか」

【QB】
「そういった力を現しているものだと考えてくれれば良いよ」

【タツヤ】
「は、はあ・・・」


影響力ねぇ・・・分かったような、分からないような・・・。
特別な力なのかどうかも、正直分からない。
とにかく、それが魔法少女になるには必要なんだってことくらいは何となく分かった。


【QB】
「そういった力はこの世界に生まれてきた以上、普通の人でも少なからず持ち合わせている物なんだけど」

【QB】
「契約に値する人というのは、そういった力を強く持っている人のことなんだ」

【QB】
「例えば、歴史を変えるような出来事を起こした人間とか、その国を治めた王様とか」

【QB】
「そういった人達さ」


つまり、今までの歴史の中で有名だった人も魔法少女だった可能性があるわけか・・・。
なんか、イマイチ想像出来ない・・・。

774 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/08/28(火) 00:19:29.48 ID:+7CwZWPa0

【QB】
「勿論、普通の人間の中にも強い影響力、つまり強い因果を持つ人はいる」

【QB】
「ゆまやほむらのようにね」

【QB】
「だから、そういった因果を強く持っていれば、例え男の子だとしても契約はできるのさ」


暁美さんやゆまさんも強い因果を持っている、か。そりゃそうか、あの二人魔法少女なんだし。
でも、そんなに特別な人達には見えないけどな・・・。
二人とも普通に見れば他の人と何も代わらない只の女性に見えるけど。


【タツヤ】
「じゃあ、実際お前は男とも契約してるのか?」

【QB】
「いや、してないね」

【タツヤ】
「あ?」


え、してないの?
さんざん男でも〜って言っておいて・・・、今までの話なんだったんだよ。

真面目に話を聞いているのが馬鹿馬鹿しくなってきた・・・。


【QB】
「魔法少女の力の源である魔法を使う為には、その人の感情エネルギーが必要なんだ」

【タツヤ】
「感情・・・エネルギー?」

【QB】
「そう、その人の喜怒哀楽の感情変化によって生み出されるエネルギーのことさ」

【QB】
「そういったエネルギーを多く持つのが、第二次成長期の女の子達でね」

【QB】
「だから、必然的に女の子の方が契約する数が増えてしまうのさ」

【タツヤ】
「ふ〜ん・・・」


感情エネルギー・・・・ようはマジックポイントみたいなものか。
コイツが言うには感情の変化が激しいほど、そのエネルギーは増大し易いらしい。
感情の浮き沈みが激しく、色んな想いを抱え込んでいる第二次成長期・・・まあ要するに思春期の女の子達が多く持つものなんだそうだ。
775 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/08/28(火) 00:21:33.07 ID:+7CwZWPa0

【タツヤ】
「で、結局のところ俺にはその因果かなんかがまるでないと・・・そう言いたいわけだ」

【QB】
「そうなんだよ、実際僕は君に姿を見せようとはしていない」

【QB】
「なのに、君は僕のことが見えている」

【QB】
「不思議だ、こんなの初めてだよ」

【QB】
「君は何者なんだろうね」

【タツヤ】
「いや、知るかよ・・・」


ただ・・・気になっていることはある。今朝も見た奇妙な夢のことだ。
崩壊した見滝原・・・見覚えの無い光景の筈なのに、何故か頭に引っかかる。

それだけではない、あの巨大な化物・・・。夢なのに、妙に頭に残っている。
あれは・・・一体なんだったんだろう・・・?


それに、奇妙な夢はそれだけではない。それは、一連の出来事が起きる前からよく見ている夢。
誰かに話しかけられているような夢・・・その人は、顔も声も姿も知らない筈なのに、凄く懐かしい気がする・・・。


【タツヤ】
「・・・」


【タツヤ】
「・・・まどか」ボソ


無意識に、その名前が口から出る。誰かは知らない、でも口に出す度に懐かしい気分になる名前。

『まどかは、私の最高の友達』

昨日、暁美さんが言っていた言葉。その意味は、やっぱり今でも分からない。
ただ、魔法少女と――――まどか、この二つの言葉に何となく繋がりがあって、ここ最近の出来事に関係しているのかもしれない、と俺は感じた。


【QB】
「どうかしたかい?」


そこでキュゥべえの声が、俺を現実の世界へと呼び戻す。
気付けば、コイツが俺の顔を覗き込んでいる。俺の呟きはどうやらコイツには聞こえていなかったようだ。
776 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/08/28(火) 00:23:38.91 ID:+7CwZWPa0

【タツヤ】
「・・・いや」

【タツヤ】
「あの人達はあんな化物と毎日のように戦っているのか、てな」


俺は何となく今考えていたことを勘繰られたくなかったので、別の話題を振る。

自分達の知らないところで、あんな化物と毎日戦っているのかと思うと、正直頭が下がる。
怖くないのかとか、私生活に支障はないのかとか、色んな思いが頭の中を駆け巡った。


【QB】
「それが使命だからね」


それでも、コイツは魔法少女が魔獣と戦っていることが至極当然のように言う。
戦うことが当たり前、そこに疑問を抱くのは可笑しい、そんなニュアンスも含めて―――。


【タツヤ】
「使命・・」

【QB】
「そうさ、彼女達の願いを叶える代わりに、課せられた使命さ」

【QB】
「この宇宙の寿命を延ばすためのね」

【タツヤ】
「は?宇宙?寿命?」


宇宙の・・・寿命を、延ばす?
また、コイツからよく分からない言葉が出てきた。
魔法少女が魔獣と戦うことがどうして、そんな宇宙がどうのという話になるんだ・・・。


【QB】
「君はエントロピーという言葉を・・・」

【QB】
「いや、君は多分知らないよね」

【タツヤ】
「・・・」


今、すっごく馬鹿にされたような気がする・・・・。
えんとろぴー・・・・・だって?舐めるなよ、えんとろぴーの一つや二つ・・・・・・・・・・・・何だそれ、分からん。


【QB】
「簡単に言うと、この宇宙では生まれるエネルギーよりも減ってしまうエネルギーの方が多いということだよ」

【QB】
「じゃあ、このまま放っておくとどうなるか分かるかい?」


突然、俺に向けてそんな問いかけをしてくる珍獣。
なんでお前にそんな事聞かれなきゃいけないんだと思ったが、これ以上馬鹿にされるのもそれはそれで癪だった。
仕方なく、答を出そうと思考を巡らす。

増えるよりも減るほうが多いってことは、どんどん減っていくってことだ。
つまり・・・。
777 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/08/28(火) 00:26:05.50 ID:+7CwZWPa0

【タツヤ】
「宇宙のエネルギーってのが・・・無くなる?」

【QB】
「正解だ。そうなってしまったら宇宙は消滅して、
君達人間どころか僕達インキュベーターまで滅んでしまう」


コイツは宇宙が消滅すれば、全ての生物が死滅するだろう、と続ける。その事を聞かされて、少し戸惑う。

そもそも、宇宙のエネルギー・・・そんなものがあるなんて想像もしたことなかった。
いや、もし仮にあるんだと思っていたとしても、宇宙なんだからそれはきっと無限にあるんだ、と思っていたに違いない。


【QB】
「だから、僕達は宇宙の寿命を延ばしているのさ」

【QB】
「グリーフシードを集めて、そのエネルギーを使ってね」

【タツヤ】
「グリーフシードって、あのキューブの・・・?」


グリーフシードとは、昨日魔獣を倒した時に出てきた黒いキューブのことだ。
ゆまさんが自分の魔力を回復するためにグリーフシードを使っていたことを思い出す。
あんな小さな物が、宇宙のために何の役に立つというのだろうか。


【QB】
「そうだよ、アレには魔獣達や魔法少女達の負の感情エネルギーを溜めることが出来るんだ」

【タツヤ】
「負・・・マイナス?」


負の感情・・・。確か、昨日も似たようなことを聞いた気がする。
魔獣達は人から呪いや妬みといった「呪い」の感情から生まれるという。
その感情を、グリーフシードに溜める・・・?


【QB】
「負の感情エネルギーは魔獣の源であるのは勿論、魔法少女の中にも存在するエネルギーでね」

【QB】
「ゆまのソウルジェムが黒く濁っているのを昨日見ただろう?」

【タツヤ】
「あ・・・あぁ・・・」

【QB】
「あれは魔法を使った分、魔法少女に溜まってしまった負の感情エネルギーを現しているんだ」

【QB】
「そのエネルギーをグリーフシードで吸収して、それを僕が預るというわけさ」


あのキューブって、そんなシステムになっていたのか・・・。ただの魔力回復アイテムだと思ってた・・・。

778 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/08/28(火) 00:28:08.55 ID:+7CwZWPa0

【QB】
「負の感情エネルギーは他のものとは違って、突発的に現れては急速に膨れ上がっていくエネルギーでね」

【QB】
「その分だけ膨大なエネルギーを生み出してくれるんだ」

【QB】
「宇宙の寿命を延ばすには打ってつけのエネルギーという訳だよ」

【タツヤ】
「なんか・・・随分壮大な話だな、おい」


魔法少女の因果、感情エネルギー、宇宙の寿命、そしてえんとろぴー・・・。
色々といっぺんに説明されたせいか、どれから整理すればいいのか、正直分からない。

中学生の頭脳レベルでは、コイツの説明を一から十まで理解するのは難しかったようだ。
とりあえず、魔法少女が魔獣と戦うことで世界が色々と救われている、それくらいの解釈が精一杯であった。


【QB】
「そうかもね」

【QB】
「まぁ要するに僕達は魔法少女達を使って、宇宙の寿命を延ばすエネルギーを回収してるってわけだよ」

【タツヤ】
「使ってって・・・お前、まるで魔法少女を道具みたいに」

【QB】
「まあそうだね」

【タツヤ】
「なっ!!」


絶句。
コイツは平然とした面持ちで、魔法少女を物として扱っていることを肯定してきたのだ。

表情を一切変えず、淡々とした口調で、特に悪びれる様子もなく。
それが、まるで万人共通の認識であるかのように――――――――――。


【QB】
「これでも僕達は君達人間に大分譲歩しているつもりだよ?」

【QB】
「君達が家畜を扱っているように、君達を使ってもいいのにさ」

【タツヤ】
「・・・っ!!おいこらお前っ!!!」


人を何だと思っているんだ、コイツは。
自分達にとっての都合の良い道具としか認識していないというのか?
何様のつもりだ、珍獣のくせに。

779 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/08/28(火) 00:30:20.40 ID:+7CwZWPa0

【タツヤ】
「この珍獣がっ・・・!!!」


【大輔】
「待たせたな!!!!」バーン


【タツヤ】
「!!??」ビクッ

【大輔】
「いやーあの先生、説教が長いったらねーわ」


頭に血が上ってきた俺が思わずキュゥべえに掴みかかろうとした瞬間、屋上の扉が勢い良く開いた。
そして、そこから大量のパンを抱えた大輔が能天気な笑みを浮かべながら現れる。
それを見た俺は、キュゥべえを掴もうとした手を慌てて引っ込めた。


【大輔】
「ん?どうしたタツヤ、怖い顔してるぞ」

【タツヤ】
「いや、なんでもない・・・」


大輔に何か感付かれないように表情を緩めてみるが、それでも俺の表情は険しかったようだ。
それを見た大輔は、不思議そうな表情で俺の顔を覗き込む。
そんなに怖い顔していたのだろうか・・・俺。


【大輔】
「・・・???まあいーや、それより飯にしようぜ、飯!!
俺腹減っちまったよ」

【タツヤ】
「・・・うん、そうだな」


疑問の念よりも空腹感の方が上回ったらしい大輔は、そう言って俺から離れた。
そのまま屋上の手ごろな場所まで移動すると、両手で抱えるように持っていた大量のパンを地面に置く。

いつも思うけど・・・どんだけ食べるんだコイツは。パンが山みたいになってるぞ・・・。
食費どうしてるんだろう・・・。


【QB】
『やれやれ・・・ちょっと話し過ぎちゃったかな』

【タツヤ】
『!?』


俺が大輔に気を取られていると、キュゥべえがテレパシーを送ってくる。
それが聞こえた途端、俺の表情は再び険しくなる。
見てみれば、アイツは気付かぬ内に相当遠くへと移動して俺を見下ろしていた。

780 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/08/28(火) 00:32:51.10 ID:+7CwZWPa0

【QB】
『まあ、僕達は別に君達と敵対したいわけじゃない』

【QB】
『そのことは分かってよ』


流石に悪かったと感じたのか、それともただ礼儀的なのか、そんな言い訳染みた言葉を述べるキュゥべえ。
いま一つ腑に落ちなかったが、恐らく俺がどうのこうの言おうがコイツは何も感じないだろう。
一連のやり取りでそのことだけは、嫌というほど分かった。


【タツヤ】
『今の話・・・』

【QB】
『ん?』

【タツヤ】
『今の話、暁美さんやゆまさんは知ってるのか・・・?』


コイツに怒りをぶつけることよりも、気になることがあった。
それは、あの二人のことだった。暁美さんやゆまさん・・・魔法少女達のことである。
あの人達は知っているのだろうか・・・自分達がどんな事をしているのか、どのように
扱われているのか、そして・・・どのように思われているのか・・・。



【QB】
『うん、勿論だよ』

【タツヤ】
『っ!!』


ということは魔法少女達は、コイツの考えを知っった上で、あんな化物と戦っていることになる。
そのことが、俺にはどうしても納得出来なかった。


【タツヤ】
『なんで・・・そんな事になってまで・・・あの人達は・・・』

【QB】
『彼女達には、そうまでして叶えたい願いがあったってことだろうね』

【タツヤ】
『叶えたい・・・願い・・・』


そういえば、昨日コイツが言っていた。


――魔法少女になる代わりに、一つだけなんでも願いを叶えられる――


――どんな“奇跡”だって起こしてあげられる――


その奇跡ってやつのために、あの人達は戦いの世界に身を置いたということか・・・。
781 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/08/28(火) 00:35:40.46 ID:+7CwZWPa0

【QB】
『まあ、それがどんな願いだったかは僕の口からは言えないけどね』

【タツヤ】
『・・・・』


どんな、願いだったんだろう・・・。

あの人達が、あんな何時死ぬか分からないようなリスクを背負ってまで・・・叶えたかった願いって・・・。

起こしたかった奇跡って・・・何なんだろう・・・。

俺の頭では、到底想像することが出来なかった―――――。


【大輔】
「おーい、タツヤー」ブンブン


【タツヤ】
「っ!? 
 あ、ああ!!悪い悪い!!!」

【大輔】
「どうした?お前ちょっと変だぞ?」

【タツヤ】
「だ、大丈夫だって!!」


大輔に目の前で手を振られ、俺はようやく我に帰った。
度々難しい表情になり考え事をしている俺を見て、大輔は再度不思議そうにする。

何とか適当な言い訳をして誤魔化すことは出来たが、朝から似たような状況が続いているのでどうにかしたいものだ。

・・・そうは考えているものの、あの珍獣や魔法少女のことが頭から離れなかった。



【タツヤ】
「大輔」

【大輔】
「ん?何だ?」



【タツヤ】
「お前、何でも一つ願いが叶うとしたら・・・何を願う?」

【大輔】
「横浜優勝」

【タツヤ】
「」



【タツヤ】
「・・・・お前に聞いた俺が馬鹿だったよ」

【大輔】
「なにおー!!!」


俺は魔法少女の事が気がかりになりつつも、大輔と馬鹿話をしながら昼休みを過ごした。

782 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/08/28(火) 00:38:04.27 ID:+7CwZWPa0

――――――――――――――――――――

【タツヤ】
「はあ〜、色々準備しなきゃいけないんだな〜」


放課後、俺は弓道部に見学しに行った。
そのまま入部届けも提出しようと考えていたのだが、道具を色々と購入しなければいけないらしい。
弓自体は学校で貸してくれるらしいが、袴や矢、弦などは自分で買わなきゃいけないとか。
全部揃えるとなると結構なお金が掛かるみたいだ。


【タツヤ】
「やれやれ、父さんに頼んでみるしかないよな〜」


我が家では、母さんが働き父さんが主夫という形を取っているが、お金を管理しているのは父さんの方だ。
母さんは父さんからお小遣いをもらって生活している。母さんは金遣いが荒いらしい・・・。
まあ確かにお酒に全部注ぎ込んじゃいそうだからな。


【大輔】
「タツヤ〜」


そんなことを下駄箱で靴を履きながら考えていると、後ろから大輔の声が聞こえる。
どうやら、アイツも部活帰りのようだった。


【タツヤ】
「お前、ちゃんと先輩とかにも謝ったんだろうな」

【大輔】
「大丈夫だ、部室入った瞬間スライディング土下座を決めてやった」キリッ

【タツヤ】
「やることがイチイチ極端なんだよお前は!!」


大輔は楽器を持ち出しただけに留まらず、その後も色々とやらかしたらしい。それらを見た時の先輩達の表情が目に浮かぶ。
でも今帰りということは、とりあえずはコイツを部員として受け入れたということだろう。
・・・・・本当にいいのか?


【大輔】
「まあまあ、いいじゃんか。
それよりまだ日も高いし、今から楽器屋行こうぜ」


そう言って大輔は俺よりも先に靴に履き替え、腕を引っ張ってくる。なんでも自分に相応しいギターを探しに行くんだとか。
・・・一体何を基準に相応しいか相応しくないのか判断しているのかイマイチ分からない。それに、朝高くて買えないと言っていただろ・・・。


【タツヤ】
「え〜」

【大輔】
「なんだよ、偶には付き合えよー。最近お前直ぐ帰っちゃうじゃんか」


確かに、最近は学校が終わっては暁美さん探しに河川敷に行っていたからな。
783 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/08/28(火) 00:41:20.81 ID:+7CwZWPa0

【タツヤ】
「分かった分かった。付き合うよ」


正直疲れたからもう帰りたかったが、帰って何かするわけでもないし・・・。
久しぶりに付き合ってやるかと俺はコイツに付いていくことにした。
それに、コイツ一人で楽器店なんかに行かせたら何するか分からないしな・・・。ちゃんと見張っとかないと。

下駄箱で靴に履き替え、先に靴を履いた大輔の後を追って外に出る。


【男子生徒】
「おいアレって白女の生徒じゃね?」

【男子生徒】
「え!?白女ってあのお嬢様学校だろ?うちなんかに何の用だよ?」


【女子生徒】
「うわっ凄い美人・・・私達より年上っぽいし高等部の人かな?」

【女子生徒】
「誰か探してるみたいだね、うちに彼氏がいるのかも」

【男子生徒】
「マジかよ、リア充爆発しろ」

【女子生徒】
「まあまあ――――――」


すると、他の生徒が何やら騒がしくしているのが聞こえてきた。
生徒達の視線は校門前に集中している。どうやら誰か来ているようだ。


【大輔】
「なんか盛り上がってるな」

【タツヤ】
「ん?ああ」

【大輔】
「今の人達、白女がどうとかって言ってたぜ」

【タツヤ】
「白女ねぇ〜」


白女といったらここら辺で随一のお嬢様学校だ。幼稚園から大学まである有名私立校である。
お嬢様学校と言われるだけあって一般人ではなく、それこそ仁美さんみたいな良家のお嬢様達が通っている学校だ。


因みに白女というのは略称で正式名は・・・・なんだったっけ、忘れた。
まあ俺には到底縁の無い学校だから別に良いけど。


【タツヤ】
「どれどれ・・・」


そんなお嬢様がうちの学校に何の用があるのかと、見滝原中学の生徒達がざわついている。
俺自身も興味本位で校門前に視線を移した。

784 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/08/28(火) 00:44:07.34 ID:+7CwZWPa0

【タツヤ】
「・・・・・・え?」


しかし、視線の先を確認した次の瞬間、俺は硬直した。
なぜなら、その先に映っていたのは――――――





「あーーーー!!!!」




【ゆま】
「やっと見つけたー!!!」


ttp://hp41.0zero.jp/data/800/tiger2/pri/27.jpg





白女の制服を着た、俺の知っている―――――というより、昨日色々とお騒がせした人の姿だったから。

785 :川´_ゝ`){前売り券売ってねえ・・・ ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/08/28(火) 00:56:42.50 ID:+7CwZWPa0
今回は以上になります。お疲れ様でした。

魔法少女システム原作と内容違って矛盾があるかもしれませんが・・・大目に見てやってください(逃げ腰)

白女って正式名とか公式アナウンス無いですよね・・・?


因みにイラストはPCの場合、そのままジャンプしても見れないと思うので、興味があるって人はURLコピーしてURL入力するところに直接貼り付けてみて下さい。

それでは、また次回にノシ
786 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/28(火) 01:14:01.08 ID:1JQJ4mH9o
利用可能なエネルギーが減るのであって、エネルギーそのものは無くなりも減りもしないよ。
タツヤが無知なのは仕方がないがQBが馬鹿なのは勘弁してくれ。
787 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/28(火) 04:49:07.18 ID:Yo/nhMvFo


大輔「横浜を日本一にして欲しい!」
QB「残念だが僕の力ではできないよ」
788 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/28(火) 09:16:11.10 ID:I3qxoUNso
横浜優勝……そりゃ奇跡だわ
789 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/08/28(火) 10:10:14.56 ID:VD0k9OyAO
>>788
「奇跡も魔法もあるんだよ!」

「アタシってばほんとバカ……」
790 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/28(火) 10:18:52.11 ID:ZdxTTUQIO
横浜優勝とかまどかレベルの因果無いと無理だろ……
791 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/28(火) 15:21:53.08 ID:1Kk6qiiJo

とりあえずタツヤ爆発しろ
792 :川´_ゝ`){まどオンやってた ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/10(月) 02:25:56.14 ID:Qwu56coq0
夜遅くにこんばんわ>>1です。いつも閲覧&コメ有難う御座います。

>>786さん
ご指摘有難う御座います。
一応色々調べながら書いてはいるんですが…無知で申し訳ないです(汗)
参考にさせていただきます。


次回の投稿は5日の0時頃を予定しております。

相変わらずの隔週更新ですが、何卒宜しくお願いします。

それでは、お休みなさいノシ
793 :マチガエタ ◆7F2DwKbdfg [sage]:2012/09/10(月) 03:07:45.30 ID:P4CHbZ/DO
>>792

5日ちゃう12日や


度々申し訳ありませんm(_ _)m
794 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/10(月) 08:30:41.97 ID:PaHXjnqTo
報告乙
待ってるよー
795 :川´_ゝ`){18分遅刻 ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/09/12(水) 00:19:46.74 ID:K0hk8Q550
夜遅くにこんばんわ>>1です。


それでは続きを投稿します。
796 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/12(水) 00:23:18.53 ID:K0hk8Q550


緑色の髪の毛をポニーテールに頭上で纏め、白女の制服である紺色のセーラー服に身を包んだその人は、校門の前でキョロキョロと辺りを見回していた。

千歳ゆま、昨日帰り道で現れ、自分は魔法少女だと名乗った人。
そして、魔獣という現実世界ではありえないような化物と俺の目の前で戦い、倒してしまった人だ。
なんであの人此処にいるんだ・・・、というか白女の制服って・・・。


【タツヤ】
「ゆ・・・ゆまs」

【ゆま】
「たーーーーーーくぅぅぅん」ダキッ

【タツヤ】
「うあぁぁぁぁぁぁぁー!!??」



【大輔】
「」



こっちの姿を確認したらしいゆまさんは、もの凄いスピードで此方に近付いてくる。
俺の目の前まで近付いてくると、思いっきり抱きついてきた。

・・・冷静になろうと現状を説明してはいるが、正直頭はパニックになって何がなんだか分からない…。
大輔なんか口開けたまま固まってるし・・・。


【ゆま】
「もう、全然見つからないんだもん!!」

【ゆま】
「ずっと探してたのに!!」


そんな事を言いながら、俺を抱きしめ続けるこの人。


【タツヤ】
「はぁ!?な・・・なんで俺を探して・・・というか抱きつくなぁぁあ!!!!」


なんとか引き剥がそうともがいてみるが、両手でがっちりホールドされているため、ビクともしない。
むしろ、抱きしめる力がどんどん強くなっている気さえする。

なんか柔らかいものが当たっている気もするが…きっと気のせいだろ、うん・・・。

797 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/12(水) 00:25:02.25 ID:K0hk8Q550

【ゆま】
「えー!!せっかくの感動の再会なのにー」

【タツヤ】
「感動の再会は分かったから!!もう何か色々見られてるから!!!すっごい見られてるから!!!!」

【タツヤ】
「だから離れろぉぉぉぉぉお!!!!!」


ゆまさんの事を注目していた校内の視線が、一気にこっちに集中してくるのが分かる。
正直・・・生徒達の視線が痛い。それにもかかわらず、更に抱きしめる力を強めるゆまさん。
力が強すぎて身体が痛くなってきた・・・。


【ゆま】
「ぶー、しょうがないなー」

【タツヤ】
「ゼェ・・・ゼェ・・・」


耐えられなくなった俺は、なりふり構わず大声で叫ぶ。それを聞いて、ようやくゆまさんは俺から離れた。
いや、なんでそんなに不服そうなんだ・・・。


【大輔】
「」

【大輔】
「・・・・」

【大輔】
「・・・・はっ!!」


それまで固まった状態だった大輔が正気を取り戻す。
そうとう衝撃的な光景だったんだな・・・・。何か悪いことをした気分だ。


【大輔】
「おいタツヤ!!」

【タツヤ】
「っ!?お、おう」

【大輔】
「誰だこの人!!」


大輔はそう言って俺にズイッと身体を寄せる。
誰だと言われても・・・・何というか、どう答えたら良いのか分からない。
俺もこの人の事まだよく知らないし・・・。てかまたコイツの髪が俺のデコに・・・。


【タツヤ】
「え・・・え〜と・・・」

【ゆま】
「君、たっくんのお友達?」


俺が回答に困り、しどろもどろになっていると、ゆまさんが間に割って入ってきた。

798 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/12(水) 00:26:54.31 ID:K0hk8Q550

【大輔】
「は、はっ!!自分、板垣大輔と申します!!タツヤのダチやってます!!」


ゆまさんに対して大輔は顔を真っ赤にしながら早口で答える。口調からも分かるとおり、相当緊張しているようだった。

大輔は今までスポーツ一筋だったせいか、自分の母親以外の女性に免疫がない。
(俺は仁美さんがいたからある程度慣れているけど・・・)


【ゆま】
「へー大輔君かあ」

【ゆま】
「私、千歳ゆま。宜しくね」

【大輔】
「お、おお・・・」

【タツヤ】
「おーい」


大輔に向かって笑顔を見せるゆまさん。それを見たコイツはまるで珍しいものでも見ているかのような声を挙げる。
いやしかし、ゆまさんは誰に対してもこんな感じで接するんだな。
まぁ、こういうのって性格だよね、きっと。


【大輔】
「ち、千歳さんはっ、タ・・・タツヤと、ど、どういうご関係なので、しょう、か!!!」

【タツヤ】
「(動揺しすぎだろ・・・)」


背筋をピンっと伸ばし、噛み噛みで話す大輔。

どういう関係って・・・・昨日会ったばかりだしな・・・。


【ゆま】
「う〜ん、どういう関係って言われても・・・」


流石のゆまさんも返事に困っているようだ。
だがしかし、そう考えていたのも束の間―――


【ゆま】
「・・・・人には言えない関係?(魔法少女的な意味で)」

【大輔】
「(ピシッ)」



ゆまさんが悩んだ末、出した答えに大輔は再び固まる。


いや、大輔だけではない。俺自身もそれを聞いた途端、背筋が凍るような感覚に囚われた。


コノヒトハナニヲイッテイルンダ・・・

799 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/12(水) 00:27:41.92 ID:K0hk8Q550

【タツヤ】
「紛らわしい言い方をするなー!!!!!!」

【ゆま】
「えー、でも間違ってないでしょ?」


確かに魔法少女がどうとかなんて人には簡単には言えないよ!!
でもそういう言い方したら、何か色々違う意味で捉えられるだろうがぁぁぁああ!!??
ワザとかっ!?それとも天然なのかぁぁああ!!??


【大輔】
「ひ・・・・ひ・・・・ひ・・・」




【大輔】
「人には言えない関係ぇぇぇぇぇえ!!!????」

800 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/12(水) 00:29:26.39 ID:K0hk8Q550

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

―川○島―

【ゆま】
『ふん、貴様とこの場で対峙するのも。これで5度目か』

【タツヤ】
『そうだな。いい加減、決着をつけたいものだ』

【ゆま】
『では、今回で決着を付けようではないか』

【タツヤ】
『ふん、そうだな』

【タツヤ&ゆま】
『『では行くぞ!!宿敵!!!』』

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
     O ホワン
    0 ホワン
   。 ホワン
【大輔】
「な、なんと・・・・・」

【タツヤ】
「いや、多分・・・色々間違ってるぞお前」


ゆまさんのせいで大輔が妄想の中にトリップしてしまった。
コイツの思考回路から考えて、多分意味の分からないことを想像しているんだろうけど・・・・。
長い付き合いのせいか、大輔が何を考えているのかは大体分かったりする。


【ゆま】
「?」


そしてそこの人ー、惚けた顔しないで下さいねー。原因はあなたですよー。


【大輔】
「タツヤ!!!!」

【タツヤ】
「うおっ!?」


少しの間、自分の妄想の中に入り込んでいた大輔だったが、突然正気に戻りそのまま俺に詰め寄ってきた。

いや、だからお前に近付かれると髪の毛が・・・。


【大輔】
「俺は知らなかったぞ!!こんな人と、お前がそんな関係だったなんて!!!」

【タツヤ】
「い、いやいや、だから・・・」


俺が距離を取ろうと後ろに下がるも、コイツは更に詰め寄ってくる。
多分コイツが想像している関係ではないと思うのだが・・・・いや、言葉通りの関係でもない・・・よな?

なんだか俺自身も混乱してきたぞ・・・。

801 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/12(水) 00:31:29.17 ID:K0hk8Q550

【大輔】
「貴様ぁぁぁあああ!!!シラを切るつもりかぁぁぁあああ!!!!」

【タツヤ】
「だから違うって・・・」

【大輔】
「うわぁぁあ!!!神様ぁぁぁああ、この者を惨滅する許可を私にぃぃぃぃい!!!!!」

【タツヤ】
「違・・・・って何言ってんだお前!!??」


突然キレたかと思えば、意味不明な言葉を口走る大輔。だ、大丈夫かコイツ…。

大輔がこんなに取り乱すことは滅多に無い。
でも、どう説明したらコイツを納得させられるのか・・・俺には分からなかった。


【大輔】
「畜生ぉぉぉお!!!!お前なんてもう知るか馬鹿野郎ぉぉぉぉぉぉおおおおお!!!!」ダダダダダダッ

【タツヤ】
「あ!!おい大輔!!??」


とうとう大輔はそんな捨て台詞を残して、校門へ向けて駆けていってしまった。

俺が静止しようとした頃には既に大輔の姿は無く、あいつが走った時に出た砂埃だけが残っていた…。

相変わらず、凄い脚力してるな・・・。てか楽器店行くんじゃ・・・。


【ゆま】
「愉快な友達だね〜」

【タツヤ】
「・・・・」ジトー


走り去っていく大輔を見ながら、ゆまさんが能天気に呟く。
そんなゆまさんを、俺は呆れ顔になりながら見つめていた。


【ゆま】
「ん?何?」

【タツヤ】
「いや、別に・・・」


アイツをあんな風にした元凶だというのに・・・この人はまったく気付いていない。
アンタ大物だよ…ゆまさん。


まあ・・・でも、俺も悪い・・・・のか?自分が100%悪くないとは言い切れないしな・・・。

・・・後で、大輔には謝っておくか。


【タツヤ】
「てか、それ白女の制服ですよね?」

【ゆま】
「そうだけど?」


大輔のことは一先ず置いておくとして、俺はゆまさんが着ている制服について指摘する。
ゆまさんが着ているのは・・・間違いなく白女の制服だった。
良家出の人だけが入れる、凡人には到底縁のない・・・・あの白女の。

802 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/12(水) 00:33:12.11 ID:K0hk8Q550

【タツヤ】
「何で着てるんすか?」

【ゆま】
「何でって、私が白女の生徒だからだよ?」

【タツヤ】
「えっ!?」


思いっきり大きい声が出てしまった・・・。
いや、制服着ているんだからその学校の生徒だってのは当たり前なんだけどさ・・・。
なんだろう、にわかには信じられん・・・。


【ゆま】
「そ、そこまで驚かなくてもいいでしょ!!」

【タツヤ】
「いや・・・だって、あそこはお嬢様学校だって」


お嬢様って


【仁美】
『うふふ、ですわー』←優雅に紅茶を飲む志筑仁美の図


こういう人をいうんじゃ・・・・。ゆまさんにそんなイメージは・・・・・・ごめんなさい、無いです。


【ゆま】
「今、サラッと酷いこと考えたよね?」

【タツヤ】
「すみません・・・」


確かに失礼極まりないとは思った。まあ、お嬢様っていっても色々あるよね・・・うん。
それに、似合っているか似合ってないかと言われれば・・・・似合ってるし。
ゆまさんスタイル良いからな・・・。身長がそこそこあって、出るところは出てるし。


・・・・・・はっ、何考えてるんだ俺はっ!!!
803 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/12(水) 00:33:43.24 ID:K0hk8Q550




【ゆま】
「(ま、実際見えないところで色々手回ししたんだけどね)」


【ゆま】
「(主に織莉子が)」





804 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/12(水) 00:37:25.20 ID:K0hk8Q550

【タツヤ】
「え〜と・・・ところで何か用ですか?」


自分の中の雑念を振り切り、本題に移る。
ゆまさんがわざわざ見滝原中学まで来たということは、何か用があるということだろう。
ひょっとして、魔法少女のことで何かあるのだろうか・・・?


【ゆま】
「ん〜・・・とね」

【ゆま】
「特別、用があるってわけじゃないんだけど」

【タツヤ】
「」


な い の か よ。


じゃあ、何しに来たんですか・・・あんだけ見滝原の生徒騒がしといて・・・。
傍から見ればただの迷惑な人だぞ・・・・。


【ゆま】
「此処で立ち話もアレだし、場所変えよっか?」

【ゆま】
「なんか、すっごい見られてるし」ハハハ

【タツヤ】
「・・・」


ゆまさんの言う通り、学内にいる見滝原の生徒達の殆どが此方に注目している。
何かこっちを見ながらヒソヒソ話していて・・・正直居心地が悪い。
というより、見られてるの自覚していたんだな・・・この人。


【ゆま】
「よし!!そうと決まれば、早く行こっ」

【タツヤ】
「あ、ちょっ!!引っ張んないで下さいっ!!」


ゆまさんは俺の腕を掴み、そのままズルズルと引っ張っていく。
その光景によって、ますます生徒達の注目を集めることになってしまった。

自覚しているなら、もう少し人目を気にしてください…。


【ゆま】
「まあまあ、恥ずかしがらずに」

【タツヤ】
「いや、それもあるけどっ」

【タツヤ】
「痛い!!痛いって!!!」ビキビキ


腕を変な方向から引っ張られているせいか、結構痛い。

生徒達の視線が痛い、腕も痛い、なんか悲惨だな、俺・・・。

こんだけ注目されたら、他の生徒が俺の顔とか覚えちゃったんじゃないだろうか・・・?
噂とかにならなきゃいいけど・・・。

そんな事を考えると、少し憂鬱になる。
結局、その後もゆまさんに腕に引っ張られ、そのまま学校を後にすることになった。

805 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/12(水) 00:41:04.75 ID:K0hk8Q550

――――――――――――――――――――

【ゆま】
「到着〜」


ゆまさんに腕を引っ張られながら歩くこと数分、俺達はある場所に辿り着いていた。


【タツヤ】
「ここって・・・」

【ゆま】
「そ、昨日の公園」

【ゆま】
「もう此処には魔獣の気配はないみたいだね」


そこは、昨日魔獣と戦った場所である公園であった。
中に入ると、特に人がいるわけでもなく、閑散としている。

昨日あれだけ激しい戦闘だったにも関わらず、公園内にそんな痕跡は見当たらない。
異世界がどうとか言っていたから、実際に此処で戦ったわけじゃないんだろうけど・・・。
あんなドンチャン騒ぎがあったら、流石に近隣の人が気付くしな。


【ゆま】
「お、昨日は暗くてよく分からなかったけど」

【ゆま】
「ここからでもよく見えるね〜スカイタワー」

【タツヤ】
「は、はあ・・・・」


ゆまさんが見上る先には、巨大な塔のような建物が建っている。

見滝原スカイタワー。近日中にオープンする予定の見滝原の新しい施設だ。

元々見滝原にあった電波塔と展望台を取り壊し、その二つの役割を重ね合わせた建物である。

見滝原市の中央に位置し、観光名所としてとにかく高さを売りにしているらしい。
最上階まで登れば見滝原市だけでなく、風見野市やあすなろ市も一望できるそうだ。

完成は・・・確か1ヶ月後だったけ?

806 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/12(水) 00:42:28.29 ID:K0hk8Q550

【ゆま】
「どうしたの?何か疲れてるけど?」

【タツヤ】
「・・・・」


ゆまさんが顔を覗き込むのを、俺は無言で睨む。

いや、あんたがひたすら俺の腕を引っ張ったからだよ・・・。
・・・まだ腕の関節辺りが痛い・・・。


【ゆま】
「疲れた時は糖分採ったほうが良いよ」

【ゆま】
「ということで、はい飴あげる」


そう言ってゆまさんは、棒に刺さった飴を二つ取り出す(何処から出したんだ・・・)。
一つは自分の口に運び、もう一つを俺に差し出してきた。


【タツヤ】
「あ、ありがとうございます・・・」


若干迷いながらも、ゆまさんから飴を受け取る。
飴の出所を心配したが、本人が食べているから大丈夫だろう。


・・・そういえば、子供の頃もこんな風に公園で飴を貰ったことがあったな。
え〜と…そうそう確か、あの時は父さんと母さんと公園に散歩に来ていて、俺が途中で迷子になって――――。

807 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/12(水) 00:45:14.26 ID:K0hk8Q550

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


【タツヤ(幼少期)】
『ふぇぇえ・・・パァパァー、マアマアー!!!!』

【タツヤ(幼少期)】
『うわぁぁぁぁぁぁぁぁああああん』



『だぁああ!!!うっせーな!!!』


『昼寝の邪魔すんじゃねーよ!!』



【タツヤ(幼少期)】
『あぅ・・・』ビクッ


『なんだ、お前。迷子か?』

【タツヤ(幼少期)】
『う・・・うぅ・・・』


『親と逸れたくらいでピーピー泣いてんじゃねぇよ』


『男だろ、お前』


【タツヤ(幼少期)】
『うぅ・・・泣か、ないっ』グスッ


『へっ、なんだ。お前、なかなか根性あるじゃん』


『飴、食うかい?』ス・・

【タツヤ(幼少期)】
『あめ・・・たべう』パクッ


『・・・たくっ・・・しょーがねーな』


『お前の親、あたしも一緒に探してやるよ』


【タツヤ(幼少期)】
『あう?いっしょ?』


『ああ、一緒だ』


【タツヤ(幼少期)】
『うわぁ、おねえたん。あいがとっ』




『・・・ちぇ、せっかくゆまがマミんとこ行ってるから、久々に一人を満喫しようと思ったのによ』

『また子守りか』ヘッ


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

808 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/12(水) 00:47:35.52 ID:K0hk8Q550

【ゆま】
「どしたの?」

【タツヤ】
「い、いや・・・少し昔のことを・・・」


ちょっとだけ昔のことを思い出してしまった。
飴をくれた女の人の事は、もう顔すら思い出せないけど・・・その時話したことや、一緒に父さん達を探してくれたことだけはしっかり覚えてる。

そういや、その女の人とゆまさん、何となく雰囲気が似ているような・・・・いや、気のせいか。
まあ、ちょっとした思い出に浸るのはここまでにしておこう。


【タツヤ】
「で、結局何しに来たんすか?」


特に用が無いと言っときながらこんな所までつれてきて・・・この人はどういうつもりなんだろうか・・・。
まさか、本当に何も用事はないのだろうか・・・?いや、まさか・・・な。


【ゆま】
「ただ、たっくんに会いたくなって・・・」

【タツヤ】
「は?」


突然、そんなことを言い出すゆまさん。少し顔を赤らめ、頬に手を当てながら上目遣いをする。

・・・・何言っているんだろ、この人。
ゆまさんの言っている意味が分からず、心の中で取り乱す俺。
いや、落ち着け・・・。特に深い意図は無い・・・・はず。


【ゆま】
「というのは冗談で」

【タツヤ】
「(ガクッ)」


・・・冗談かよ。
無駄に焦って馬鹿みたいじゃないか・・・。やっぱり、この人のことはよく分からない。
もう帰っていいかな・・・俺。


【ゆま】
「昨日のお礼を言いにきたんだよ」

【タツヤ】
「お礼・・・?」


ようやくまともな事を言い始めたゆまさんに対して、気の抜けた返事で返す。
お礼って・・・・何のことだ?昨日のことなら、むしろ俺の方がお礼を言わなければいけないんじゃ・・・?

809 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/12(水) 00:49:30.73 ID:K0hk8Q550

【ゆま】
「昨日、私がほむらお姉ちゃんに詰め寄られてた時、助けてくれたでしょ?」

【ゆま】
「そのお礼」

【タツヤ】
「ああ、あの時の・・・」


ゆまさんが言っているのは、昨日暁美さんと合流した後のことだろう。
暁美さんがゆまさんに、なんで俺を瘴気の中に入れたんだと問い詰めていた時、咄嗟に自分が勝手に入ったんだと言ったんだっけ。


【ゆま】
「じゃ、改めまして」

【ゆま】
「昨日はありがとね、たっくん」ニコッ


そう言って満面の笑みを向けてくるゆまさん。
その表情を見て、思わずドキッっとしてしまった・・・。


【タツヤ】
「えっ!?い、いいいや・・・ど、どういたしまして」

【ゆま】
「あはっ、照れてるたっくんかーわいいっ」

【タツヤ】
「ううぅ・・・」


くそ、何か不覚を取ったみたいで悔しい・・・。
だって、しょうがないじゃないか・・・・ゆまさん美人なんだから・・・。
そんな人が笑顔を向けてきたら誰だって・・・ねぇ?


【タツヤ】
「で・・・でも、そんなことの為にわざわざ?」

【ゆま】
「うん、そうだよ」

【ゆま】
「うちには礼儀とかにすっごい五月蝿い人がいるからねー」

810 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/12(水) 00:51:17.97 ID:K0hk8Q550

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

【織莉子】
『・・・・一般人を魔獣退治に巻き込むのは、流石にどうかと思うわ』

【ゆま】
『うっ・・・やっぱり?』


【織莉子】
『それにあなた、暁美さんに怒られた時、その子に助けてもらったんでしょ?』

【ゆま】
『はい・・・そうです』

【織莉子】
『・・・・はあ、全く・・・』


【織莉子】
『・・・明日その子にちゃんとお礼を言うのよ』

【ゆま】
『え!?』



【織莉子】
『言 う の よ ?』ニコッ



【ゆま】
『は、はい・・・』ビクビク


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

811 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/12(水) 00:54:54.69 ID:K0hk8Q550

何か思い出したのか、突然顔を青くし身体を震わせ始めるゆまさん。
昨日、怖い思いでもしたのだろうか・・・?

でも本当にそれだけの為に、わざわざ会いに来たのか。
別にお礼を言われるようなことをしたつもりはないんだけど・・・。



【QB】
『彼女達には、そうまでして叶えたい願いがあったってことだろうね』



【タツヤ】
「・・・・」


【タツヤ】
「あ、あのっ」

【ゆま】
「ん?」


俺は昼の出来事を思い出し、ブランコに腰掛けるゆまさんに話しかける。
ゆまさん達にまた会えたら――――――聞いてみたいことがあったんだ。


【タツヤ】
「キュゥべえから聞きました」

【タツヤ】
「・・・・魔法少女のこと」


キュゥべえの言っていた、魔法少女の使命。
この人達は、魔法少女のことをどう思っているんだろう。
魔法少女になった自分達のことを、どう思っているんだろう。


何を願って―――――――魔法少女になったんだろう。



【ゆま】
「・・・・そっか」

【タツヤ】
「ゆまさんは・・・知ってるんですよね?」

【タツヤ】
「あいつの目的とか」


正直、色々と分からないことも多い。
でも、アイツが魔法少女達を自分の都合の良い駒としか考えていないことは分かった。
そんな扱われ方をしてまで、どうしてこの人達は・・・。

812 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/12(水) 00:57:56.29 ID:K0hk8Q550

【ゆま】
「・・・うん、まあね」

【タツヤ】
「何とも思わないんですか?」

【タツヤ】
「あんな奴に良い様に使われて・・・」


自分がその立場だったらと思うと、とてもじゃないが我慢できない。
怒ったりとか、理不尽だとか思わないのだろうか。


【ゆま】
「う〜ん、何とも思わないって言ったら嘘になるけど・・・」

【ゆま】
「それでも、自分で願って魔法少女になったからね」


だが俺の考えとは裏腹に、特に悩む様子もなく平然と答えるゆまさん。


【タツヤ】
「で、でもっ!!」

【タツヤ】
「あんな危険な目にあってまで・・・!!」

【ゆま】
「お?何、ひょっとして心配してくれてる?」

【タツヤ】
「えっ!?そ、そりゃ・・・」


【タツヤ】
「だって・・・」


ゆまさんの指摘に対して、俺は上手く言葉を出せなかった。
…そりゃゆまさんは昨日会ったばっかりだけど…でも、心配くらいする。

昨日、実際に魔獣と対峙した時に感じた、あの恐怖感―――。
目の前で起きた、激しい戦闘―――。

それだけで分かる。これはゲームなんかじゃない、生きるか死ぬかの戦いなんだって…。

なのに、どうしてそんなに平気でいられるのか。
あの珍獣のわけの分からない目的の為に、どうしてこんな死と隣り合わせのようなことをしなくちゃならないのか。
それが――――――俺にはどうしても理解できなかった。


【ゆま】
「ま、確かに普通の日常に憧れたりはするけどね」


座っているブランコを漕ぎ、空を見上げながら呟くゆまさん。
この人だって普段は白女に通う普通の学生なんだ。他の人と何一つ変わらない、普通の女の子。
他の人より、少しだけ役割が増えただけの普通の…。

そんな人が憧れる、普通の生活って何なんだろう…?

813 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/12(水) 00:59:43.47 ID:K0hk8Q550

【タツヤ】
「友達と、遊んだりとか・・・・?」

【ゆま】
「うん」

【タツヤ】
「買い物とか行ったりとか…」

【ゆま】
「そうだね〜」


自分が普段やっているようなことを何となく挙げてみる。
こういう何気ない生活が、この人達にとっては大事になっていたりするのだろう。

まあ大輔と一緒にいると、普通じゃない出来事も沢山あるんだけど…。
それはそれで楽しいから良いんだけどね、飽きないし。


【タツヤ】
「後、え〜と…」

【タツヤ】
「そうだ、両親と」

【ゆま】
「え?」

【タツヤ】
「親と食事しに出かけたりとか…」


親と一緒に過ごす日々ってのも、結構大事だと思う。
自分のことを一番分かってくれて、肩に力をいれる必要のない相手。

そういう人達と過ごす時間は――――――俺にとっては大切にしたい時間だった。





そう―――――――――『俺』にとっては

814 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/12(水) 01:01:04.24 ID:K0hk8Q550


【ゆま】
「……」


その時、俺は全く気付いていなかった。
自分が…親のことを口にした瞬間―――――


【タツヤ】
「ゆまさんってご両親は…」

【ゆま】
「居ないよ」

【タツヤ】
「一緒n・・…


……………え?」





――――――――――――ゆまさんの顔から、





【ゆま】
「私の両親は」



【ゆま】
「魔獣に殺されたの」





――――――――――――笑顔が消えていたことに。


815 :川´_ゝ`){みかしーオワタ ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/09/12(水) 01:12:17.31 ID:K0hk8Q550
今回は以上になります。お疲れ様でした。

一つお伺いしたいのですが、正直この文章って読みづらいですか?
某所でそんな意見をチラ見したもので^^;

もし、こうした方が読み易いよ〜みたいな意見があったらお願いします。参考にするので。

後私事なのですが、以前から受けていた試験が終了して
無事某所から内定を頂けたので、今後はもう少し早いペースで投稿できると思います。

それでは、今日はこの辺で。お休みなさいノシ

あ、まどオンのAP処理しないと
816 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/12(水) 06:21:23.75 ID:5qTnrNku0
読みやすいと思ってたのは俺だけだったのか
817 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/09/12(水) 07:25:51.81 ID:L32cJEMAO
文章については別に問題ないと思うが

しかし腕を引かれたなら腕に胸が当たるはずなのに気が付かないとは…タッくんそれじゃあラノベ主人公には成れんぞ!
818 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/13(木) 21:08:26.71 ID:+trkZ2/ro
やめてください!当ててもまったくない人だっ(ry
819 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/13(木) 21:50:38.70 ID:xBWk+kNRo
ラノベ主人公になんてなれなくたって良いさ
エロゲ主人公になってフルコンプ狙えば良いんだよ
820 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/18(火) 20:15:52.55 ID:X+OSoRfDO
たっくんと聞くと不愛想で猫舌なあの人を思い出す
821 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/18(火) 20:17:27.32 ID:iN7PEW+po
全部たっくんって奴のせいなんだ……
822 :川´_ゝ`){風邪気味やったで ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/21(金) 01:50:59.43 ID:0/8qAZ0x0
夜遅くにこんばんわ>>1です。いつも閲覧&コメ有難う御座います。

>>816さん
>>817さん
そう言ってもらえると有難いです。また何かありましたらお願いします。


次回の投稿ですが、今度の土日を予定しております。
早くて23日0時、遅くても24日0時頃には投稿するつもりです。宜しくお願いします。

それでは、お休みなさいノシ
823 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/21(金) 20:52:21.14 ID:vVTAKb4co
待っとるぜ
824 :川´_ゝ`){TGS2012行ってきた ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/09/23(日) 00:26:24.53 ID:xbVl+Fhi0
夜遅くにこんばんわ>>1です。約30分遅刻しました、TGS行ってたもので(終わったの17時)

それでは投稿します。
825 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/23(日) 00:28:44.67 ID:xbVl+Fhi0

【タツヤ】
「嘘・・・・」


俺は、言葉を失う。

親が・・・魔獣に・・・・殺され・・・・た・・・・?

ゆまさんの口から出てきた言葉を、信じることが出来なかった。


【ゆま】
「嘘じゃないよ」

【ゆま】
「今はとある人に引き取ってもらって一緒に暮らしてるの」

【ゆま】
「だから、その人が親代わりってところかな」


今までと殆ど変わらない口調で話すゆまさん。
それでも、さっきまでの明るさは陰を潜めているような気がする。
自分の弱い所を見せたくない、そんな風に振舞っているように見えた。


【タツヤ】
「あ、あの・・・」

【ゆま】
「ん?」

【タツヤ】
「・・・・ご、ごめんなさい」


頭を下げずにはいられなかった。
ゆまさんの心の傷を抉ってしまったように思えたから。
自分さえ余計なことを言わなければ、両親のことを口にする必要はなかったのにと罪悪感を覚えた。


【ゆま】
「はは、別にいーよ」

【ゆま】
「今の暮らしには満足してるしね」


それでも、ゆまさんは再び笑みを浮かべ明るく振舞う。
余計な心配を掛けまいとしているその姿を見て、俺は申し訳なく思った。

826 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/23(日) 00:31:47.20 ID:xbVl+Fhi0

【タツヤ】
「じゃ・・・じゃあ、ゆまさんは魔獣に親を殺されたから魔法少女に?」


気まずい雰囲気の中で、つい気になっていた事を口にしてしまう。

ゆまさんの魔法少女になった理由―――――――。

この場でそのようなことを聞いて良いものかと思った。
しかし、だからといってゆまさんに対して、気の利いた言葉が言えるかと聞かれたら・・・恐らく無理だ。
思ったことを口に出すことしか、今の自分にはできなかった。


【ゆま】
「んー・・・」


俺に対して、少し気まずそうな表情を浮かべるゆまさん。
やっぱり、今聞いちゃまずかっただろうか・・・?




【ゆま】
「ちょっと違うんだよねー・・・」




しかし、彼女の結論を聞いて、俺は自分の耳を疑うことになる――――。


【タツヤ】
「え?」


―――――ゆまさんの口から出てきた言葉は、俺の考えを肯定するものではなかったから。


【ゆま】
「親が殺されたからっていう理由で魔法少女になろうとは思わなかったよ」

【タツヤ】
「え?な、なんで・・・」


俺自身、きっと親のために魔法少女になったのだろうと決め付けている部分があった。

だから、その考えを否定され戸惑いを隠せずにいたのだ。


【ゆま】
「・・・」


それに――――――それだけではない。
827 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/23(日) 00:32:58.83 ID:xbVl+Fhi0

【タツヤ】
「だ、だって親が殺されたりしたら誰だって・・・!!」

【ゆま】
「・・・・誰だって?」


なんというか・・・ゆまさんの雰囲気がさっきまでとは違い、それに違和感を覚える。

ゆまさんと自分との間に、何かズレが生じてきているような・・・・そんな気がした。


【タツヤ】
「・・・か、悲しくなったり・・・するじゃないですか・・・」

【タツヤ】
「それで・・・仇を討とうとか・・・」


家族を殺されれば、誰でも悲しくなるだろう。
そして、仇を取れるのであれば、取ろうと思うに違いない。

最低限、俺はそう考えるだろうと思っていた。勿論、実行するかどうかは別の話だが・・・。


自分にとって、家族とは――――――それ程大切な存在だったのだ。


【ゆま】
「・・・・・」


なんだろう・・・やっぱりさっきからゆまさんが何か変だ・・・。
・・・・空気が、重い。


【ゆま】
「・・・って言ったら」

【タツヤ】
「?」


すると、少しの間黙っていたゆまさんが、ゆっくりと口を開く。
俺はゆまさんから発せられる妙な威圧感に気圧され、息を呑んだ。

そして、次の瞬間―――――
828 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/23(日) 00:33:38.52 ID:xbVl+Fhi0


【ゆま】
「何とも思わなかったって言ったら」




【ゆま】
「どうする?」


829 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/23(日) 00:36:25.17 ID:xbVl+Fhi0






空気が――――――――――止まった気がした。




830 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/23(日) 00:38:26.70 ID:xbVl+Fhi0

【タツヤ】
「・・・・・は?」


ゆまさんの口から出た言葉を聞いて、俺は固まってしまう。

何とも思わなかった、確かにゆまさんはそう言った。


 何が・・・?    
       どうして・・・・?     
               ど うなって・・・・?


        何とも思わなかったって・・・・?


           ・・・・、家族が・・・・・殺されて・・・・も・・・・・・?


【タツヤ】
「そ、それって・・・どういう・・・」


彼女の言っている意味が、俺にはよく分からない。


【ゆま】
「・・・・」シュルシュル

【タツヤ】
「ふぇ!?い、いきなり何を・・・っ!!」


突然、ゆまさんが自分の制服のリボンを解き始めた。
リボンを取り払うと自分の首元を見せるように、片手で制服を引っ張る。

俺はゆまさんの突然の行動に驚き、思わず顔を逸らしてしまう。
それでも、やっぱり姿が気になってしまい、薄っすら目を開けそのまま視線をゆまさんの方へと向けた。


【タツヤ】
「・・・・え?」


しかし、ゆまさんの姿を確認して、俺は目を見開き前を向く。
なぜなら、制服の中から現れていたのは―――――ゆまさんの白い肌と、


【タツヤ】
「そ・・・それって・・・」

【ゆま】
「これがその理由」


その肌を汚すように付けられた――――――痛々しい火傷の痕だった。


一目見れば、分かる。
無数にあるそれは、普段の生活の中で起きる事故で付けられたようなものではなく、


人工的に付けられたものであるということが。

831 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/23(日) 00:40:14.91 ID:xbVl+Fhi0

【タツヤ】
「・・・・・」

【ゆま】
「私ね、小さい頃親に虐待されてたの」

【タツヤ】
「虐・・・・待・・・・」


ゆまさんの告白に、俺は再び言葉を失った。

虐待、親が・・・・子供に暴力を振るうこと・・・。


【ゆま】
「私のお母さんは何かとお父さんと喧嘩しててさ」

【ゆま】
「次第にお父さんは家に帰ってこなくなった」

【ゆま】
「それで、お母さんはそれを私のせいだって言って、暴力を振るうようになったの」



【ゆま】
「毎日





 毎日





 毎日・・・」



淡々とした口調で、自分の過去を打ち明かしていく。人には知られたくないはずの・・・暗い過去を。

表情も・・・さっきとはくらべものにならないくらい暗い。
先程までの人と本当に同一人物なのかと、一瞬疑ってしまう程だった。


【ゆま】
「だから」

【ゆま】
「自分の目の前でその人達が殺されるのを見てもさ」

【ゆま】
「何の感情も湧かなかった」


そんなゆまさんにどう声を掛けて良いのか分からず、ただ黙って話を聞いていることしかできなかった。
832 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/23(日) 00:44:23.85 ID:xbVl+Fhi0

ttp://www.youtube.com/watch?v=yKBFtAJaTQ0&feature=plcp


【タツヤ】
「ゆ、ゆまさん・・・」

【ゆま】
「・・・と、ごめんごめん。ちょっと嫌な思いさせちゃったかな」

【タツヤ】
「い、いや・・・」


俺が思わず声を挙げたのを聞いて、慌てて取り繕おうとするゆまさん。
表情だけは笑顔に戻ったものの、それが本当の笑顔じゃないことは、痛いほど伝わってきた。


【ゆま】
「昨日たまたま帰る途中にたっくんとご両親を見つけてさ」

【タツヤ】
「え?」


昨日って・・・家の玄関で母さんと会ったときのことかな・・・?


【ゆま】
「ちょっと羨ましく思っちゃった」

【ゆま】
「私の家族の間に、あんな幸せそうな空間なんて・・・無かったから」


少し俯きながらそう呟く。
髪の毛に隠れて、ゆまさんがどんな表情をしているのかは、分からなかった。



【タツヤ】
「・・・・」


そこで、さっき感じた違和感・・・・俺とゆまさんの間に生じたズレがなんだったのかが、何となく分かった。

親に愛された記憶が無いから――――――親を大切にするという気持ちが、この人には無いんだ。

いや、無いというより・・・分からないって言った方がいいのかな・・・?


だから、家族のために何かやろうという考えにはならなかったんだ。


そう考えると―――――――何故か無性に悲しくなる。


親に大事にされなかった子供の気持ちが、俺には分からなかったから。


親に大事にされて生きてきた・・・・俺には・・・。

833 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/23(日) 00:46:14.21 ID:xbVl+Fhi0

【タツヤ】
「あ、あの・・・」

【ゆま】
「何?」

【タツヤ】
「その・・・今の家庭では・・・えっと・・・」


恐る恐るゆまさんに尋ねる。
もし、今の家族からも暴力を振るわれていたらどうしよう、と・・・。



でも、そんなことを聞いたところで、俺に何かできるかと聞かれたら・・・それは・・・。


【ゆま】
「ああ・・・大丈夫、さっきも言ったでしょ?今の生活には満足してるって」

【ゆま】
「ちゃんと上手くやってるよ」

【ゆま】
「こうして学校にも通わせてもらえてるしね」


制服を整えながら、笑顔で応えるゆまさん。スカートの端を摘み上げ、少しおどけてみせる。
今度の笑顔は、さっきのような無理矢理作ったものではなく、自然と出た笑顔のようだった。


【タツヤ】
「そ、そうですか・・・」

【タツヤ】
「(・・・良かった)」


ゆまさんの言葉を聞いて、俺は心の中で安堵する。その事実が、何故かまるで自分のことのように嬉しかった。

今は何もなくて良かった―――心の底からそう思えた。


【ゆま】
「ふふ、優しいね。たっくんは」

【タツヤ】
「えっ!?いいいいや、決してそんな事はぁっ!!!」


ゆまさんがそう言って、笑顔のまま近付いてくる。俺は自分でも分かるくらい顔を真っ赤にして抵抗した。

そりゃ確かに、心配だったけど・・・。


【ゆま】
「照れるな照れるな」ウリウリー


【タツヤ】
「ええい、おちょくるなー!!」

【ゆま】
「ははは」


それに多分、俺は肯定されることが怖かったんだと思う。もし、今でも家族と上手くいってないなんて言われたら。

きっと、何も言えなくなってしまうから・・・。

だから、何もなくて良かったって・・・思ったんだ。

834 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/23(日) 00:48:27.76 ID:xbVl+Fhi0

【タツヤ】
「・・・」

【タツヤ】
「でも・・・家族のためじゃないなら」


【タツヤ】
「一体何のために、ゆまさんは魔法少女になたんですか?」


そこで再度、ゆまさんに魔法少女になった理由を尋ねてみる。

止めておけばいいのにと少し後悔したが、ここまできたら聞いちゃ不味いということもないだろうと、腹を括っていたのかもしれない。

それに、やっぱり知りたかったんだと思う。

戦うことを受け入れてまで、叶えたかった願いを―――――――。


【ゆま】
「・・・・」


【ゆま】
「大切な人を、守りたかったから・・・かな・・・」


ゆまさんは少しだけ考えるような素振りを見せると、空を見上げながら呟くように言った。

どこか・・・寂しそうな表情を浮かべながら―――。


【タツヤ】
「大切な・・・人・・・?」

【ゆま】
「うん」

【ゆま】
「その人のために」

【ゆま】
「私は魔法少女になったの」


一言一言を心の底から搾り出すように話すゆまさん。
その姿が、彼女の口から発せられる言葉一つ一つが嘘偽りの無い本心であるということを物語っている。


【タツヤ】
「危険を承知の上で・・・」

【ゆま】
「まあ、その時は必死だったから」

【ゆま】
「考えてる余裕なんて、無かったんだけどね」


必死だった・・・か。よほど大切な人だったんだろうな・・・。

家族との間で良い思い出がないというこの人に、それだけ思われている人って・・・どんな人なんだろう。
そして、その人はゆまさんにとってどんな存在だったんだろう。

835 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/23(日) 00:50:09.53 ID:xbVl+Fhi0

【タツヤ】
「それで、その人は今どうしてるんですか?」

【ゆま】
「・・・」

【タツヤ】
「ゆまさん?」


そんな事を考えながら何気なく呟くと、ゆまさんが急に黙ってしまった。
突然どうしたんだろうと、声を掛けてみる。しかし、ゆまさんは暗くなってきた空を見上げたまま、その場で立ち尽くしていた。


【ゆま】
「・・・どうだろうね」

【タツヤ】
「・・・・え?」


暫くの沈黙の後、ゆまさんが口を開く。気のせいか、声のトーンがさっきより低い気がする。
さっきの雰囲気とは・・・・また違うような気がする。


【ゆま】
「守れる力を持っていたとしても・・・」

【ゆま】
「必ず守れるとは・・・・限らないんだよ」


そう言って、ゆまさんは俺に対して背を向ける。

まるで、自分の顔を俺から隠すように・・・。


【タツヤ】
「ゆま、さん・・・?」

【ゆま】
「はは、ちょっと難しかったかな?」


ゆまさんはそう言って、再び顔を此方に向けてくる。

守れる力があっても・・・? え、どういうことだ?

彼女の言っていることが、俺にはイマイチ理解できなかった。

836 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/23(日) 00:52:06.35 ID:xbVl+Fhi0

【タツヤ】
「・・・それって、どういう」

【ゆま】
「こーら、ここから先はプライベートの領域だぞ」

【ゆま】
「これ以上追求したら、めっ!!だよ」


俺の顔の前で、人差し指を立て笑顔でそう言うゆまさん。
今言ったことの真意を聞こうとしたのだが、途中で止められてしまった。

なんだろう・・・その人について、何か話したくないことでもあるのだろうか・・・?


【タツヤ】
「え?で、でもっ」


それでも俺は、尚も食い下がろうとする。
直ぐそこで「はい、そうですか」と納得できるほど、俺も大人では無い。


【ゆま】
「ほら、もうすぐ暗くなってきちゃうからっ」

【ゆま】
「今日はもう家に帰りなさいっ」

【タツヤ】
「うぇ!?ちょっ、待っ!!」


すると、ゆまさんは俺の身体を公園の出口に向けさせ、そのまま背中をグイグイと押してくる。
突然帰れと言われ、俺もどうすれば良いのか分からず、ただ転ばないように気を付けるだけで精一杯になっていた。


【ゆま】
「ほらほら、流石に二日連続で夜遅くに帰るわけにいかないでしょ!!」

【タツヤ】
「いや、だからって・・・」

【ゆま】
「いいから行くの!!」


言っていることはもっともなのだが、何故そんなに急かされているのかが分からない。
大体此処まで連れてきたのあなたでしょう・・・。

それとも、やっぱり何か聞かれたらまずいことでもあるのだろうか。


【タツヤ】
「うわぁ、うわわ、分かった!!分かりましたから、押さないでください!!」


色々腑に落ちない部分もあったが、このままでは埒が明かないので素直にゆまさんの言う事を聞くことにした。

多分、これ以上は言いたくないこともあるのだろう。深く詮索してはいけないのかもしれない。
俺は自分にそう言い聞かせて、無理矢理納得するのだった。

837 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/23(日) 00:54:47.89 ID:xbVl+Fhi0

【ゆま】
「うん、分かれば良し」

【タツヤ】
「全く・・・・」ハァ


ようやく背中を押されることから開放され、溜息交じりに息を吐く。
でもまあ、ゆまさんにはこうやって自由奔放に振舞ってもらった方が良いのかもしれないな…。


さっきのゆまさんは・・・・ちょっと、怖かったし。
い、いやいや、別にビビったわけじゃないぞっ!!本当だぞ!!!


【ゆま】
「はは、今日は付き合ってくれてありがと」

【ゆま】
「またね、たっくん」

【タツヤ】
「え?は、はい・・・また・・・」


自分の中で意味も無く言い訳をしている内に、公園の出口に辿り着く。
そこで、ゆまさんに別れの挨拶をすませ、俺は公園を後にした。

838 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/23(日) 01:01:03.41 ID:xbVl+Fhi0

――――――――――――――――――――


【タツヤ】
「・・・・」

【タツヤ】
「(明るくて自由な人なんだと思ってたけど・・・)」

【タツヤ】
「(色々と訳ありなんだな・・・)」


今日はあの人の違う一面を見た気がする。
普段見せることのない、光に隠れた・・・暗い影の部分を。

そういった感情から生まれる色々な想いを胸に抱いて、あの人は・・・戦うことを選んだのだろうか。

奇跡と―――――そこから生まれる魔法の力を信じて。

単純に憧れとかそういった感情で魔法少女になったわけではないという事が、痛いほど伝わってきた。


【タツヤ】
「親から、暴力・・・・か・・・」


正直虐待なんて、自分にとってテレビのニュースの話題でしかなかった。
子供にとって親は大事な存在だし、親にとってもそうなのだと信じていたんだ。

でも・・・それは自分が親から大切にされていたから、そう思うことができたのかもしれない。


【タツヤ】
「(普通の生活ができるだけでも・・・幸せなのかな)」



それはきっと、当たり前のことを――――――――当たり前だと思える幸福。



【タツヤ】
「(きっと・・・・俺は恵まれてる方なんだろうな・・・)」


俺が親の話をし始めた時――――――――――昨日、両親との様子を見た時


あの人はどんな事を思ったのだろう―――――何を感じていたのだろう




その答えが、今の俺には見つけることができなかった。

839 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/23(日) 01:04:05.71 ID:xbVl+Fhi0

――――――――――――――――――――


【ゆま】
「・・・・」


タツヤが帰宅した後も、ゆまはそのまま公園にいた。何をするわけでもない、ただボーっと空を見上げている。
空は徐々に夕陽が沈み、星が光り始めてきている。


【QB】
「珍しいじゃないか」

【QB】
「君が人に進んで自分の過去を打ち明けるなんて」


すると、どこからともなく聞き慣れた声が聞こえてくる。
声の主であるインキュベーターは公園の隅にある木の陰から姿を現し、後ろからゆまに近付いてきた。


【ゆま】
「・・・いつから見てたの」

【QB】
「最初からだよ」


ゆまは振り向くことなく、その声に応える。言葉に若干の嫌悪感を含めて。
タツヤを影から観察していたインキュベーターは、彼女とタツヤの会話を一通り聞いていた。
それでも、この生き物は悪びれる様子もなく、ゆまの足元まで近付く。


【ゆま】
「悪趣味だね」

【QB】
「その言い方は酷いな。これでも気を使ったつもりだよ?」

【ゆま】
「気を使ってくれるほど、あなたって感情持ってないでしょ」

【QB】
「それもそうだね」キュップイ


皮肉を込めてゆまが言う。それでもインキュベーターは態度を改めず、冗談交じりに彼女の言葉を受け流す。

ゆまと長い付き合いになるこの生き物にとって、彼女の過去の話など今更聞きたい話題でもない。
いや、そもそもこの生き物から言わせてみれば、魔法少女の過去なんて過ぎ去った一連の出来事でしかなかった。

インキュベーターにとって見れば、興味の無い話題をたまたま聞いたに過ぎず、誤るようなことではなかった。

840 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/23(日) 01:07:17.83 ID:xbVl+Fhi0

【QB】
「それにしても、僕には分からない」


しかし、普段彼女達の過去に滅多に干渉しないインキュベーターが、珍しく不思議そうに首を傾げる。


【QB】
「君が、どうしていつまでも身体の古傷を消さずにいるのかがね」

【ゆま】
「・・・・」


それは、幼い頃に彼女が受けた身体の傷についてであった。


【QB】
「君の治癒魔法を使えば、そんな傷なんて綺麗さっぱり消せる筈だよ」

【QB】
「現に君は変身する時、人に見せるのが嫌だと言って身体の傷を魔法で隠しているじゃないか」

【QB】
「いっそのこと消してしまえいいのにと僕はいつも思うよ」


救いの願いで魔法少女になったため、ゆまの治癒系の魔法はトップクラスの性能を誇る。
例え、どんなに致命的なダメージを身体が受けようとも、即死でなければ治すことが可能だ。
インキュベーターの言うとおり、身体に残った古傷を消すことくらい、造作もないことである。


【ゆま】
「・・・キュゥべえには、分からないよ」


インキュベーターの言葉を、ただ黙って聞いていたゆまだったが、徐に口を開く。
その視線はインキュベーターではなく、ただただ遠くを見つめていた―――――。



『お前のせいだ!!』


『お前が可愛くないから、あの人は家に帰ってこないんだっ!!!!』



脳裏に浮かぶは、かつての記憶。自分の事を否定し、拒絶した母の言葉。
決して良い思い出ではない。今思い出しても、古傷が疼いてしまうくらいだ。


【ゆま】
「あんなのでも、やっぱり私の親だから」


それでも、彼女にとっては思い出すことのできる数少ない家族の記憶。

841 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/23(日) 01:10:31.51 ID:xbVl+Fhi0

【ゆま】
「この傷はさ、唯一の証なんだよ」

【ゆま】
「私にも、ちゃんと血の繋がった家族がいたんだっていう、ね」


面倒を見てくれている織莉子や、自分を救ってくれた杏子には感謝している。
彼女達も、ゆまにとって家族同然の存在だ。

しかし、それでも彼女達はゆまの「本当の家族」ではない。

傷を消してしまえば、血の繋がった家族の記憶を失ってしまうかもしれない。
そうなれば、自分は本当の意味で孤独になってしまう。

彼女は、そうなることが怖かったのだ。


【QB】
「絆、という奴かい?」

【ゆま】
「どうだろう・・・」

【ゆま】
「『絆』って言うより『鎖』って言った方が正しいかもね」


絆なんて綺麗なものではない。

それは、自分があの家族から逃げないように繋がれた―――――鉄の鎖。
自分が、あの家族の子供であるという証拠。

例えそんな物でも、彼女は失いたくはなかった――――。


【QB】
「ふ〜ん、やっぱり僕には分からないよ」


素っ気無くインキュベーターが言う。
この生き物にとって、魔法少女達の複雑な心境など、知ったところで何の価値もない。
魔獣を倒して、グリーフシードを集めてくれさえすれば良いのだから。


【ゆま】
「いいんじゃない。わからなくても、あなたには特に影響ないでしょ?」

【QB】
「そうだね」

【ゆま】
「そう即答されると、それはそれで複雑なんだけど・・・」

【QB】
「じゃあ、どう反応すればいいんだい?」

【ゆま】
「知らないよ」

【QB】
「それはちょっと困るよ・・・」


それでも、魔法少女と良好な関係を築こうと彼らなりに努めている点を見れば、「以前の世界」の彼らよりはマシなのかもしれない。



以前の世界を知っている人物なんて・・・この場には居ないのだが。

842 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/09/23(日) 01:13:01.52 ID:xbVl+Fhi0

――――――――――――――――――――

同時刻、あすなろ市――――。


【女子高生B】
「ねえねえ、マジでアレ頼むのー?」

【女子高生A】
「今更何言ってんのよ。大丈夫だってみんなでいけば食べきれるよ!!」

【女子高生C】
「ぶっちゃけ私ダイエット中なんですけど・・・・」


「いっらしゃいませ、ご注文はお決まりでしょうか?」


【女子高生A】
「ごちゃごちゃ言ってないで頼むよ、ほら!!」






【女子高生A】
「バケツパフェ1つ下さーい」


「バケツパフェ1つ、ですね」


「かしこまりました」







【ほむら】
「立花さん、バケツパフェ1つ」


【立花】
「ああ、了解」

843 :川´_ゝ`){明日もTGS行く ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/09/23(日) 01:17:39.99 ID:xbVl+Fhi0
今回は以上になります。お疲れ様でした。

変なタイミングでBGM入れてしまってすいません。すっかり忘れてました・・・。

次回からほむほむパートです。タツヤとは多分絡みません。(あれタツほm(ryウェヒー)

それでは、また次回。お休みなさいノシ
844 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/23(日) 01:35:35.42 ID:mPbeZfVA0
乙乙!
845 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/23(日) 01:43:22.83 ID:jYKZCENAo
立花さん…だと…
846 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/09/23(日) 05:58:04.96 ID:i1EHZdGVo

息をするように地雷を踏みに行くタツヤェ…
847 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/09/23(日) 09:13:35.81 ID:wNodQhA9o
乙乙!
848 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/24(月) 20:47:13.69 ID:mWjP+DtDO
ちなみにゆまって誰?本編にいなかったと思うけど
849 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/09/24(月) 20:47:27.64 ID:SMmfXStQo
おりマギの幼女
850 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2012/09/25(火) 02:08:43.43 ID:VSo/vve/o
喫茶店のマスターで立花さんって……、おやっさn(ry
851 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/25(火) 07:38:28.45 ID:jO6aFUtp0
>>848
画像は「魔法少女おりこ☆マギカ」の画像。この話の十年前と考えていい
ttp://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/skipturnreset/20110613/20110613174354.jpg
852 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/25(火) 16:16:35.09 ID:imepvZsDO
橘さんだと!?
>>849>>851
スピンオフなんてあったのかよ
とりあえず画像でメンタルがタフな幼女だというのは理解した
853 :川´_ゝ`){10月になっちゃったよ ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/03(水) 01:56:41.78 ID:H2tYz6pw0
夜遅くにこんばんわ>>1です。いつもコメ有難う御座います。

お待たせしております。次回の投稿は明日10月4日0時頃を予定しています。

報告&投稿が遅くなって申し訳ありません。宜しくお願いします。

後、【立花】の表記なんですが、今後は【宗一郎】に変更します。
因みに立花宗一郎は「魔法少女かずみ☆マギカ」の登場人物です。
スライス秋山に次ぐイケメンです。→ttp://hp41.0zero.jp/data/800/tiger2/pri/28.jpg

ではお休みなさい。ノシ
854 :川´_ゝ`){雨降ってる ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/10/04(木) 00:13:52.54 ID:ssakbukd0
夜遅くにこんばんわ>>1です。

それでは続きを投稿します。
855 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/04(木) 00:18:39.50 ID:ssakbukd0

レパ マチュカ。
あすなろ市にある喫茶店。そして、此処は―――――、


【宗一郎】
「ほむら、バケツパフェ持っていってくれ」

【ほむら】
「あ、はい」


―――――――私の仕事場でもある。


今話している立花宗一郎さんに雇われ、私はウェイトレスとして働いている。

立花さんはこのお店の店長兼シェフであり、私やゆまの知り合いでもある。
初めて出会ったのは私がまだ学生だった頃だ。
マミさんがあすなろ市にデザートの美味しいお店があると言って、此処を訪れたのがきっかけ。
その頃から、色々あって立花さんとは親しくさせてもらっている。

正直、接客なんて私には向いていないと思ったのだが、立花さんの好意ということもあり無下にもできず、こうしてどうにかこうにか仕事をこなしている。


【ほむら】
「お待たせしました、バケツパフェになります」


【女子高校生´S】
「「「おー!!!」」」


【女子高生A】
「噂には聞いていたが・・・まさかこれほどとは・・・」

【女子高生B】
「てか、これ本当に食べきれるわけ!?」

【女子高生】
「ダイエットェ…」


女子高生達が注文したのはこのお店で一番人気のバケツパフェ。
バケツみたいな巨大な入れ物にデザートのパフェがぎっちり入っている。
マミさんが言っていたのもこのバケツパフェのことだ。
とてもじゃないが一人で食べられる量ではなく、複数人でようやく一つを完食できるレベル。

でも昔、杏子とゆまとマミさんの4人でこれを注文した時、杏子が一人で食べきったのよね。
ゆまが自分も食べたかったって泣いて、結局2つ注文する羽目になったのだけれど・・・。


【ほむら】
「相変わらず凄い人気ですね、バケツパフェ」

【宗一郎】
「ああ、採算取れないのが痛いがな」


苦笑いを浮かべながら立花さんが応える。
実際、あのバケツパフェは人気メニューではあるが、あまり利益にはならないらしい。

確かに、あの量で値段もそこそこだから無理もない。

856 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/04(木) 00:22:43.97 ID:ssakbukd0

【ほむら】
「でも、あれ考えたの立花さんですよね?」

【宗一郎】
「んー、まあ、そう言われれば・・・そうなんだが・・・」


立花さんはいつもコストのことで頭を抱えている。
そんなに悩むなら、メニューから外せば良いと思うけど・・・。

でも、元々あのバケツパフェをメニューに入れたのは、ある人に懇願されたかららしい。
そういう経緯があるから、あのバケツパフェをメニューから外せないのかもしれない。

まあ単純に、人気メニューを外しづらいというのもあるだろうけど。


【ほむら】
「それにしても、あんなメニューよく思いつきましたね」

【宗一郎】
「褒められてるのか、貶されてるのか分からん台詞だ」

【ほむら】
「褒めてます、一応」

【宗一郎】
「一応なんだな・・・」


顔を引き攣らせながら応える立花さん。
実際、あんな物作れるのは恐らくこの人だけだろう。私では無理だと思う。


「あんまり苛めちゃ駄目よー、ほむらちゃん」


「その人意外と繊細なんだから」


立花さんとカウンター越しで談笑していると、キッチンの奥のほうから声が聞こえる。
キッチンを覗くと、料理を作っている時の良い匂いがする。


【宗一郎】
「おい」

【ほむら】
「すいません、美佐子さん」


声の主の名前は立花美佐子―――――――立花さんの奥さんだ。


【美佐子】
「はい、ビーフストロガノフできたわよ」

【美佐子】
「お客さんのところ持っていってあげて」

【ほむら】
「はい」


美佐子さんは料理をお皿に盛り、キッチンの奥のほうから出てきた。
私はその料理を受け取り、さっきの女子高生とは別のお客さんのところへ持っていく。
料理からは食欲をそそる美味しそうな匂いがしていて、普段食事を適当に済ませている私も思わず唾を飲み込んだ。
857 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/04(木) 00:25:14.69 ID:ssakbukd0

【宗一郎】
「前言撤回を要求する」ズイッ

【美佐子】
「あら、本当のことじゃない」

【宗一郎】
「人を草食動物みたいに言うな」

【美佐子】
「え、違うの?」キョトン

【宗一郎】
「頼むから勘弁してくれ・・・」ハァ


美佐子さんに詰め寄った立花さんだったが、結局うな垂れて帰ってくる。

美佐子さんは、元々警察官だったらしい。結婚を機に退職し、今はキッチンで立花さんの手伝いをしている。

そんな元々の仕事に美佐子さんの方が年上なこともあってか、口喧嘩で立花さんが勝ったところを、私は見たことがなかった。


【美佐子】
「大丈夫よ、あなたは一流だわ」

【美佐子】
「シェフとしては」キッパリ

【宗一郎】
「おい、一言多いぞ」


【ほむら】
「(相変わらず仲が良いわね、あの二人)」


・・・・何だかんだでこの二人は仲が良い。それが、少しだけ羨ましくなる。
結婚なんて、私には多分縁のないことだろうから。


【女子高生B】
「そうそう、コレ見てよ!!」

【女子高生C】
「おっ、御崎海香の最新刊じゃん」

【女子高生A】
「もう出てたんだねー」


ふと視線をお客さんの方へ移してみると、女子高生達の話が聞こえてくる。

御崎海香―――――――直接面識はないが、話は聞いたことがある。

一言で言えば・・・・彼女は、魔法少女だ。
あすなろ市の魔法少女集団・プレイアデス聖団の中心人物だと聞いている。
現在本人は現役を退き、聖団全体の指揮と後輩達の育成に尽力しているらしい。

858 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/04(木) 00:28:11.72 ID:ssakbukd0

【女子高生B】
「御崎海香の小説って面白いよねー。流石10代の時からベストセラー出してないわ」


学生の頃から小説家として活躍し、私も幾つか彼女の小説を読んだことがある。
彼女達が持っているのは「speranza prezzo(スペレッツァ プレッゾ)‐奇跡の代償‐」。
御崎海香が現在刊行している本だ。

そして、その内容は―――――、


【女子高生A】
「でもさー、流石に魔法少女物なんてメルヘン過ぎっしょ」


私達、魔法少女を題材にした物語。


【女子高生B】
「でもさ、これに出てくる魔法少女って妙にリアルじゃない?」


普通の生活への憧れと魔法少女としての使命。その二つの間を揺れ動く魔法少女達の葛藤。
そして、次々と失われていく仲間達。絶望と希望が交互に渦巻く世界で、魔法少女「かずみ」が何を思い、何を残していくのかが描いている。

彼女が何故このような内容の小説を書こうと思ったのか、私には分からない。
それでも、彼女が何かを伝えようとしていることだけは、何となく理解できた。


【女子高生B】
「案外本当にいたりしてねー」

【女子高生A】
「あはは、ないない」

【女子高生A】
「奇跡と魔法なんておとぎ話でしかないっしょ?」


まあ、この娘達の反応が世間一般の反応なのだろう・・・。
魔法少女なんて、普通の人からしてみれば空想上の存在でしかない。
本当に魔法少女のことを信じている人なんて・・・・ごく僅かしかいないだろう。


そう―――――ごく僅かしか・・・。


【ほむら】
「ありがとうございました」


【女子高生C】
「食べ過ぎた・・・」

【女子高生A】
「ご馳走様でしたー」

【女子高生B】
「美味しかったです、また来ますね」

【宗一郎】
「ああ、いつでもどうぞ」

バタン


結局、あの女子高生達は色々と文句を言いながらも、長い時間を掛けてパフェを食べきった。
他のお客さん達は既におらず、彼女達が帰った後のお店には私達だけしかいない。

859 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/04(木) 00:30:32.98 ID:ssakbukd0

【ほむら】
「・・・」

【宗一郎】
「どうした、ほむら?」

【ほむら】
「いえ・・・」


私は彼女達が言ってことが気になっていた。

奇跡と魔法なんておとぎ話でしかない―――――

分かっていたことではあったが、いざはっきり言われると中々堪える。

それと同時に、ちょっと言われた位でくよくよ悩んでいる自分に嫌気が差す。
・・・普段は強がっているくせに、中身はいつまで経っても弱いままなのだと感じずにはいられなかった。

しかし、そう自暴自棄になっている時だった


【美佐子】
「奇跡と魔法ならあるわよ」

【ほむら】
「っ!?」

【美佐子】
「ね、ほむらちゃん」


キッチンから再び現れた美佐子さんがそんな事を言い出したのは。

私は、美佐子さん達のことで・・・まだ話していないことがある。





この人達は、知っているのだ。

私のことを――――――――そして、魔法少女のことを―――――





と言っても、この人達が素質を持っているわけではない。勿論アレ(インキュベーター)が見えるわけでもない。
なんでも美佐子さんは警察官だった頃、“ある事件”について調べていた時、魔法少女の存在を知ったという。
立花さんは美佐子さんから聞いたんだとか。

最初は美佐子さんも信じていなかったらしいが、その事件を調べていくうちに現在の科学では説明出来ないような物が発見され、魔法少女の存在を信じるようになっていったという。

それでも、本当にいるという核心までには至らなかったそうだが、今ではこうして私を魔法少女として認識している。
なんでも、信じる最大のきっかけになったというのが、実際に魔法少女に助けられたことらしい。
因みに、私ではない。恐らくあすなろ市の魔法少女の内の誰かなのだろう。

860 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/04(木) 00:33:49.96 ID:ssakbukd0

【宗一郎】
「スペレッツァ プレッゾね・・・」


そこで思い出したように、立花さんが呟く。
立花さんも仕事をしながら彼女達の話を聞いていたようだった。


【美佐子】
「あなたも読んでみる?」

【宗一郎】
「持ってるのか?」

【美佐子】
「ええ、お店に置こうかなって思って」

【宗一郎】
「どれどれ・・・」


そう言って、美佐子さんは自分の鞄から本を取り出し、立花さんに渡した。
彼が手渡されたのは小説の第1巻。立花さんは適当な椅子に腰掛け、パラパラとページをめくる。



【宗一郎】
「『あなたはこの世界に不思議な力があることを知っていますか』」


【宗一郎】
「『なんでも1つだけ願いを叶えてくれるなら、どんなことをお願いしますか』」


【宗一郎】
「『あなたはどんな『奇跡』を起こしますか』」



立花さんが声を出して読み上げたのは、物語の冒頭部分。
たった一つの願い。

その為だけに、魔法少女達は戦うことを選んだ。そこから生まれる、たった一つの奇跡を信じて。
でも――――――――私の願いは、叶わなかった。


『彼女に守られる私じゃなくて、彼女を守る私になりたい』


私の、最初の願い。

でも結局、今でも守られているのは・・・私の方であって、彼女を守ることはできなかった。


【宗一郎】
「魔法少女」

【宗一郎】
「夢と希望を叶える存在、か」


再び、立花さんが小説の一部分を読み上げた。そしてそのフレーズに、私は聞き覚えがある。
あの子が私に残した、最後の言葉の中の一つ。

861 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/04(木) 00:38:37.98 ID:ssakbukd0

【宗一郎】
「まあ、普通は信じないよな」


小説を閉じ、立花さんが呟く。
立花さんの言うとおり、よほどイレギュラーな体験をしない限り、魔法少女の存在を信じろというのは無理な話だろう。


【美佐子】
「ええ、でも・・・」

【美佐子】
「少しずつでも、魔法のことを・・・魔法少女のことを受け入れてくれる人が増えてくれれば・・・」

【美佐子】
「救われる魔法少女だって、きっといると思うの」


まるで、何かに訴えかけるように力強く話す美佐子さん。
受け入れてくれる・・・人、か。本当にそんな人がいてくれれば、確かに救われるのでしょうね。

でも、私は知っているんです・・・美佐子さん。何回も、同じ時間を繰り返してきた中で・・・。
自分の正体を最愛の人に受け入れてもらえず、絶望の淵に叩き落された魔法少女を・・・。


『あたしこの子とチーム組むの反対だわ』


『ていうーか、魔法少女じゃなかったら誰がこんなやつと一緒にいるかってーの』


『どうしてかなぁ・・・、ただ何となく分かっちゃうんだよね』


『あんたが嘘つきだってこと』


彼女とは・・・最後まで仲良くなることはできなかった。今では、少し後悔している。


【美佐子】
「そう思わない?ほむらちゃん」


【ほむら】
「私は・・・」

【ほむら】
「その必要は・・・・・ありません」


ごめんなさい、美佐子さん。
私は・・・あなたの言葉を素直に受け止めることができません。
もしも、自分にとって大事な人に自分を受け入れて貰えなかったら・・・きっと悲しいから。

そして、その悲しみは・・・きっとあの子でも癒せないと思うから・・・。


【ほむら】
「私は、誰にも受け入れてもらえなくてもいいです」

【ほむら】
「私は一人で戦えます」


そうだ、私は・・・迷ってはいられない。例え、一生孤独になろうとも―――私は戦い続ける。

だって・・・この世界は、あの子が守ろうとした世界だから。

862 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/04(木) 00:41:02.48 ID:ssakbukd0

だから、私はこの世界を守る、今度こそ・・・守ってみせる。


【美佐子】
「ほむらちゃん・・・」

【美佐子】
「それって、寂しくない?」


私の顔を心配そうに見つめながら美佐子さんが言う。きっと本気で心配してくれているのだろう。
確かに・・・人は、一人では生きてはいけない。分かってる、分かってるけど・・・でも・・・。


【ほむら】
「・・・」

【ほむら】
「もう、慣れました」



私は、もう人間じゃないから・・・。



【美佐子】
「そう・・・」

【ほむら】
「・・・今日は、もう上がらせてもらいます」

【ほむら】
「お疲れ様でした」


私は、美佐子さんに今の表情を見せないように振り返らず言った。

これで良い・・・これで良いんだ。この人達を、私の戦いに巻き込みたくない。
もう、周りの人が居なくなるのは・・・・嫌・・・。


だって…もう時間は巻き戻せないから。
いなくなったら・・・それで、終わりだから。



【ほむら】
「じゃあ、私はこの辺で・・・」

【宗一郎】
「ああ待て、ほむら」


更衣室で私服に着替え、お店のドアを開けて帰ろうとした時、立花さんに呼び止められる。
ドアを閉めて振り返ってみると、立花さんはキッチンの棚から封筒を取り出し、私に近付いてきた。

863 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/04(木) 00:46:26.34 ID:ssakbukd0

【宗一郎】
「これ、今月分の給料だ。持っていけ」

【ほむら】
「・・・ありがとうございます」


立花さんから封筒を受け取り、軽く会釈する。封筒の中には、そこそこのお金が入っていた。
私は自分の口座を持っていないので、給料は直接受け取るようにしている。

・・・自分では殆ど使っていないけど。


【宗一郎】
「それとな、ほむら」

【ほむら】
「・・・はい?」


私が、受け取った封筒を自分の鞄に入れていると、立花さんが何かを言いたそうにして私を見ていた。
そして、少しの間黙っていると、立花さんはゆっくりと口を開く。


【宗一郎】
「お前は、1人じゃないと思うぞ」

【ほむら】
「・・・」


あまり感情を表にださない立花さんが、心配そうな表情を浮かべながら言う。
それは、今私が考えていることが分かっているかのような台詞だった。

そして、その言葉は・・・きっと立花さんが本当に思っていることなのだろう。
この人もこの人なりに心配してくれているんだと思うと―――――――少しだけ、胸が苦しくなった。


【美佐子】
「ほむらちゃん」


私が無言でいると、再び―――美佐子さんに呼び掛けられる。


【ほむら】
「・・・はい」

【美佐子】
「これだけは言わせて」


【美佐子】
「幸せになることを・・・諦めちゃ駄目よ」

【ほむら】
「・・・っ」


美佐子さんの言葉が、私に深く突き刺さる。思わず、私は顔を歪めた。
まるで・・・あの子に言われているような気がして・・・。

864 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/04(木) 00:48:29.82 ID:ssakbukd0

【ほむら】
「・・・失礼します」


私は、どう言葉を返したらいいのか分からず、挨拶だけ済ませて、そのままお店を出る。

今の私の姿を見たら・・・あの子は、怒るだろうか?
いや、多分違うだろう。きっと・・・今にも泣きそうな顔で、私を心配するに違いない。
あの子は・・・そういう子だから。誰よりも私に優しくしてくれる・・・あの子だから。


【ほむら】
「ごめんなさい・・・」

【ほむら】
「ごめんなさい・・・まどか」


心から搾り出すように、私はそう呟く。
でも、返事を返してくれる人は――――――いない。

そして、あの子が居ない寂しさを・・・紛らわしてくれる仲間も――――もう、いない。


【ほむら】
「・・・寒い」


何故だろう・・・、
今日は気温が高めのはずなのに・・・・家に帰る間、ずっと肌寒かった。

865 :以下、オマケ ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/04(木) 01:01:37.51 ID:ssakbukd0

立花宗一郎 37歳 身長178cm 登場作品『魔法少女かずみ☆マギカ』

立花美佐子(旧姓石島) 39歳 身長160cm 登場作品『魔法少女かずみ☆マギカ』
参考→ttp://hp41.0zero.jp/data/800/tiger2/pri/30.jpg

※身長や年齢設定は>>1の独断と偏見が絡んでいます。予めご了承ください。


866 :川´_ゝ`){もう直ぐ映画公開 ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/10/04(木) 01:09:12.32 ID:ssakbukd0
今回は以上になります。お疲れ様でした。

>>848さんのような例があるので、今後は外伝キャラにはオマケで登場作品と参考画像載せようかなって思ってます。
>>849さんと>>851さんは説明有難う御座いました。

ついでにほむらの仕事服姿載せときますね→ttp://hp41.0zero.jp/data/800/tiger2/pri/29.jpg

それでは、また次回。お休みなさい ノシ
867 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/04(木) 01:55:52.11 ID:Wdr7hb7mo
BBA!俺だ!結婚してくれ!
868 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/04(木) 13:17:19.73 ID:wk6Lx9xI0

まどマギはフルネームがある男はモテる法則でもあるのか・・・・?
だからまどマギには男が少ないのか?
869 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/04(木) 13:43:41.17 ID:2kXSwekH0
男なんていないよ
870 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/04(木) 13:58:48.19 ID:8jPFJ88IO
ショウさんと中沢がモテないって言いたいのか
871 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/04(木) 15:55:43.88 ID:wk6Lx9xI0
ごめん。モテるっていうのは的確じゃなかった。
つ【勝ち組】


872 :川´_ゝ`){前編見てきた ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/12(金) 02:12:56.84 ID:kxXB9Ld20
夜遅くにこんばんわ>>1です。いつも閲覧&コメ有難う御座います。

次回の投稿ですが、次の土日のどちらかを予定しています。時刻はいつも通り0時〜0時30分の間くらいで。
ひょっとしたら予定が延びてしまうかもしれませんが、宜しくお願いします。

では、お休みなさい。ノシ
873 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/13(土) 13:04:34.79 ID:sSHzJFQvo
おk
874 :川´_ゝ`){後編も見てきた ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/10/15(月) 00:20:20.54 ID:F/0LNMXa0
夜遅くにこんばんわ>>1です。

投稿の前にお詫びを一つ。
今回更新する予定だった部分なんですが、最後まで書き切ることができませんでした。
なので、キリの良い所まで投稿したいと思います。

ちょっと短くなってしまいますが…ご了承ください。

それでは、続きを。
875 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/15(月) 00:27:36.73 ID:F/0LNMXa0

――――――――――――――――――――

翌日、宗一郎と美佐子は、店内で開店の準備をしていた。
美佐子は店内の掃除とレジの準備、宗一郎はキッチンで料理の下拵えをしている。
これら一連の流れは、彼等の毎日の日課になっていた。


【美佐子】
「今日、ほむらちゃんは?」

【宗一郎】
「ああ、今日は休みだ」


今日、ほむらは店に来ていない。
元々、レパ マチュカには店員はほむらしかいないので、彼女が休みの時は立花夫婦の二人で切り盛りしている。
といっても、そこまで忙しいお店でもないので、ほむらがいなくても特に問題はない。


【美佐子】
「そう・・・」

【美佐子】
「ねえ・・・」

【宗一郎】
「ん?」


店内の掃除にひと段落を付けると、美佐子はカウンターの椅子に腰掛ける。
一つ溜息を吐き、顔には複雑な表情を浮かべ、宗一郎を見た。


【美佐子】
「昨日、私・・・少しほむらちゃんに構い過ぎたかしら?」

【宗一郎】
「・・・さてな」


美佐子が気にしていたのは、昨日のほむらとの会話。魔法少女としての彼女に口を出してしまったこと。
今思えば、軽率な発言であったと美佐子は反省していた。ほむらは魔法少女としての自分について話すのはあまり好きではない。
そのことは、美佐子も理解している。ほむらのあの反応は、容易に想像できることだった。


【美佐子】
「駄目ね・・・私」

【美佐子】
「どうしても、ほむらちゃんとレミを重ねちゃって・・・」


レミ・・・、それは美佐子の中学時代の友人である椎名レミのこと。

ほむらとレミの共通点――――――それは彼女達が魔法少女であったという事だ。
いや、レミに関して言えば、魔法少女だった“らしい”と言うべきか。

876 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/15(月) 00:31:24.93 ID:F/0LNMXa0

彼女は美佐子が中学校の3年に上がる頃、行方不明になり姿を消してしまっていた。
当時は、その事件が評判となり、家出や誘拐、拉致などといった様々な憶測が飛んでいた。
勿論、美佐子自身も心配していたのだが、そんな時レミの妹がこんな事を言っていたのだ。

『おねーちゃんわねー、まほーしょーじょになったんだよ』

正直、当時の美佐子はその言葉を信じていなかった。
恐らく、姉が居なくなった寂しさから来る妄想のようなものなのだろうと思っていた。
しかし、時代が進み美佐子が警察官になった頃、彼女は魔法少女の存在を知る。
そして・・・その時初めて、美佐子はレミが魔法少女だったのだと知ることになる。

それと同時に――――――彼女がもうこの世界にはいないという事も・・・彼女は理解してしまった。
魔法少女の『運命』を知ってしまったから―――――


【宗一郎】
「・・・そうか」


レミのことを美佐子から聞いていた宗一郎は、スープを掻き混ぜながら彼女の言葉に耳を傾ける。


【美佐子】
「ほむらちゃん・・・寂しさに慣れたって言ってた」

【美佐子】
「それって・・・」

【美佐子】
「ずっと一人ぼっちで戦ってきたってことよね・・・」

【宗一郎】
「・・・」

【美佐子】
「そんなの、寂しすぎるわ・・・」


美佐子は後悔していた。レミの事を気付いてあげられなかったことを。

彼女はきっと、一人っきりで化物と戦い続けてきたのだろう。そして、誰にも気付かれずに、この世界から居なくなってしまった・・・。
自分がレミの妹の言葉を信じていれば、自分が親友として…彼女の傍にいてあげられたら。
彼女の『運命』は・・・変わっていたのかもしれない。そう、美佐子は思っていた。

だからこそ、ほむらには同じようになって欲しくなかった。
多くの仲間を失い、一人ぼっちになってしまった彼女に・・・彼女のことを受け入れ、支えてくれる存在を作って欲しかったのだ。


【宗一郎】
「大丈夫さ」

【美佐子】
「え?」


そこで、そこまで黙って聞いていた宗一郎が、静かに口を開く。


【宗一郎】
「いつか、必ず」

【宗一郎】
「あいつの苦しみを理解して、支えてくれる人がきっと現れる」


スープを掻き混ぜていた手を止め、そのまま火を止める。
宗一郎の言葉は、まるでそうなることを確信しているかのように、力強かった。

877 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/15(月) 00:34:39.65 ID:F/0LNMXa0

【美佐子】
「そう、かしら・・・」


彼に対して戸惑いを隠せず、不安そうな声を挙げる。
そんな事はない、と昨日は大口を叩いていたが、現実は昨日の女子高生のように、魔法少女のことを信じている人など殆どいない。
ほむら同様、美佐子自身もその事を気にしていた。


【宗一郎】
「俺とあなたが出会ったこと」

【宗一郎】
「そして、俺達とほむらが出会ったこと」

【宗一郎】
「そうした出会いは、偶然なのかもしれない」

【宗一郎】
「でもそういう偶然も、きっと1つの奇跡なんだと今は思う」


それでも、宗一郎は淡々と続ける。
何億人も居る人類の中から特定の人物が出会える確立、それは限りなく低い数値だ。
でも、人の出会いというものは数字で測れるものではない。

それは、偶然という名の――――――1つの奇跡。
そしてその偶然が、1つの出会いをもたらす。


【美佐子】
「・・・奇跡」

【宗一郎】
「ああ、誰にも分からないような・・・小さな奇跡」


それは、魔法少女が願うようなものとは比べ物にならない、誰もがそれが奇跡なんだと認識できないくらい小さいもの。
そういった小さな奇跡が、日常で起こる偶然として世の中に存在する。

そして、その偶然が・・・また新たな奇跡を生み出す。そして、その奇跡もまた1つの偶然となって・・・。
この世界は、そうやって成り立っているのだと彼は考えていた。


【宗一郎】
「あいつだって、奇跡を信じて魔法少女になったんだろ?」

【宗一郎】
「今まで長い間戦ってきたんだ」

【宗一郎】
「そろそろ小さな奇跡の一つや二つ、起きたって良いんじゃないか?」


美佐子を励ますように肩にポンと手を乗せる。柔らかい笑顔と落ち着いた口調が、彼女を安心させた。
普段は彼女の方が立場的には強いのだが、こういう時にいつも励ましてくれるのは宗一郎の方だった。

878 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/15(月) 00:38:35.30 ID:F/0LNMXa0

【美佐子】
「・・・・」

【宗一郎】
「信じよう、本当の奇跡って奴を」

【美佐子】
「・・・そう、ね」

【美佐子】
「ほむらちゃんを救ってくれる人が現れてくれるといいわね」

【宗一郎】
「ああ」


キュゥべえに願うことで得られる奇跡ではなく、真に信じるものだけに起きる「本当の奇跡」。
それが、ほむらに起きるかどうか、確証はない。それでも、信じなければ起きるものも起きない。
今はただ、彼女の幸せを願うことが最善なのだと、二人は結論付けるのだった。


【美佐子】
「はあ、何か疲れたわ」グテー

【宗一郎】
「おい、まだ開店前だぞ」

【美佐子】
「アラフォーのオバサさんは体力無いのよ」

【宗一郎】
「自分で言うか」


肩の力が抜けたのか、カウンターに突っ伏してしまう美佐子。それを見てこれから開店だと言うのに・・・と、宗一郎は溜息を付いた。
しかし、この雰囲気こそがこの夫婦の日常でもある。ようやく普段の調子に戻ってきたというところか。


【美佐子】
「開店前にバターコーヒー淹れてくれる?」

【宗一郎】
「フゥ・・・・分かった」


コーヒーにひと欠片のバターを落とすことで出来るバターコーヒー。これを飲むと力が出るという話だ・・・といっても漫画の中での話だが。
でも、二人ともその効果を信じており、疲れた時によく飲んでいる。

お店のメニューにはないが、美佐子と初めて会った時に宗一郎が出したもので、思い出の飲み物でもあった。

879 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/15(月) 00:47:22.57 ID:F/0LNMXa0

ガチャ


宗一郎がコーヒーを淹れていると、まだ準備中の看板を掛けているドアが開いた。



「立花さーん、おっはよーございまーす」


「・・・おはようございます」


ドアを開け入ってきたのは二人の女性。
一人は少女のように明るい笑顔で活発そうな印象を持ち、
もう一人はどこか物静かで人見知りをしそうな印象を持つ女性だった。

二人とも髪の毛は綺麗な金髪であり、一人は右側に髪の毛を纏めたサイドテール、もう一人は左側に纏めたサイドテールにしている。
それは、二人合わさると綺麗なツインテールになるように見えた。


【美佐子】
「あら、二人ともいらっしゃい」

【宗一郎】
「お前ら、まだ開店前だぞ・・・」


「えーいいじゃないですかー、減るもんじゃないし」


「・・・・ごめんなさい」

【宗一郎】
「全く・・・しょうがないな・・・」


この二人は立花夫婦の知り合いである。


そして今後、暁美ほむら―――――そして、鹿目タツヤと関わっていくことになるのだが、それはもう少し先の話である。

880 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/15(月) 00:51:28.79 ID:F/0LNMXa0

――――――――――――――――――――

見滝原商店街――

【ほむら】
「これで今月分は・・・よし」


今、私は見滝原にある商店街に来ている。今日は仕事が休みだったので、家で掃除をした後、町に出てきていた。
色々と時間が掛かってしまい、用事を済ませた頃には空が茜色に染まり夕方になってしまっていた。


【ほむら】
「・・・コンビ二にでも寄りましょう」


近くにコンビニを見つけ、何となく足を向けてみる。
食料は先日補充したばかりだけど、昨日お店の料理を見て、いつもより美味しい物を食べたいと思ったのかもしれない。

・・・美味しい物とか言ってレストランとかじゃなく、コンビニで済まそうとするのってどうなんだろう。
自炊も苦手だし、まるで男性の一人暮らしみたい・・・。


ウィィィン、ヴァミヴァミヴァミーマヴァミヴァミマ


【ほむら】
「ん?」


コンビニの自動ドアが開き、聞き慣れた音楽が店内に流れる。
そこで前を見てみると、レジに並んでいる人達の中に知っている顔を見つけた。


【タツヤ】
「お願いしま〜す」ドサッ

【ほむら】
「あの子・・・」


なんであの子が・・・、って見滝原に住んでいるんだから商店街でたまたま会っても不思議じゃない・・・か。


【ほむら】
「(何にしても、気付かれない内に出たほうが良いわね・・・)」


あの子と顔を合わせるのは、あまり気が進まない。

嫌いだとか苦手だとか・・・そういうことではなく、あの子と話すとどうしてもあの娘のことが頭を過ってしまうからだ。
・・・あの子と関わっちゃ駄目って思ってるのもあるけどね。


・・・仕方が無い、今日はこのまま帰りましょう。

881 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/15(月) 00:55:51.70 ID:F/0LNMXa0

【コンビ二店員】
「651円になりま〜す」

【タツヤ】
「なん・・・・だと・・・」


【ほむら】
「(・・・え?)」


私がUターンして外に出ようとした時、あの子とコンビニ店員の会話が聞こえてきた。
気になって振り返って再度視線を向けると、あの子が驚いたような表情を浮かべている。
買い物カゴの中には、飲み物だけが数本入っているだけだった。

何・・・どうかしたの・・・?


【タツヤ】
「・・・」ガサゴソガサゴソ


【タツヤ】
「・・・・・」


【タツヤ】
「・・・・・・・・・・1円足りない」


【ほむら】
「」ガクッ


【ほむら】
「(何してるのよ・・・あの子)」


顔を青くしている様子を見て、思わず肩に掛けていた鞄の紐がズレ落ちてしまった。
1円って・・・ちゃんと財布の中身確認してからレジに行きなさいよ・・・。

・・・まだ中学生になったばかりみたいだし、無理もないのだろうけど。
それにしても、あんなに2ℓのペットボトル買って・・・どうするつもりなの・・・?


【タツヤ】
「い・・・1円まけてくれないですかね?」

【コンビニ店員】
「いや、普通に無理っすね〜」

【タツヤ】
「ぐぬぬ・・・・」

【コンビニ店員】
「早くして下さいね〜。後ろつっかえてるんで〜」


まあ、普通に考えればコンビニでまけてもらえる訳ないわね。
でもあの店員・・・ちょっと態度悪いわよ、ちゃんと指導受けてるの・・・?


・・・って、何呑気に観察してるのよ、私。
早く店を出ないと、あの子と顔を合わせちゃうじゃない。

早く・・・・出ないと・・・。


【ほむら】
「(・・・・)」

882 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/15(月) 00:58:25.63 ID:F/0LNMXa0

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

【ほむら】
『あ・・・』


『どうしたの? ほむらちゃん』

【ほむら】
『お金が・・・・足りません』


『え!?い、いくら足りないの!?』

【ほむら】
『・・・・1円です』


『ええー・・・』

【ほむら】
『ご、ごめんなさいっ!!足りない分棚に戻してきますっ』


『ああ、待って待って』


『私が出してあげるよ!!』

【ほむら】
『えぇ!? そ、そんなの悪いですよぉ・・・』


『良いって良いって、はい1円』スッ

【ほむら】
『で・・・でも・・・』

【コンビニ店員】
『早くしてくんないすか〜?』


『あ、はいは〜い。お願いしま〜す』

【ほむら】
『あ・・・あのっ!!』

【ほむら】
『か、必ず返しますから!!』


『え〜別に良いよ〜』


『だって私達友達でしょ?』ティヒヒ

【ほむら】
『・・・で、でもっやっぱり返しますっ!!』


『てぃひひ、じゃあ待ってるね』




『ほむらちゃん』

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

883 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/15(月) 01:03:38.63 ID:F/0LNMXa0

・・・何、昔のこと思い出してるのよ。今のあの子とは何の関係もないじゃない・・・。

でも・・・・うぅ・・・。


【ほむら】
「(・・・ああ、もうっ)」


気付けば、私は悪態を付きながらあの子に近寄っていた。

自分の鞄から財布を取り出して・・・。


【タツヤ】
「し、仕方ない。足りない分は棚に戻すか・・・」

コトッ

【タツヤ】
「ふぇ?」

【ほむら】
「・・・これで足りるでしょ」

【タツヤ】
「あ、暁美・・・さん?」


そのままこの子に近付くと、私は財布から小銭を出しその場に置いた。
884 :以下、オマケ ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/15(月) 01:17:13.34 ID:F/0LNMXa0

かずマギ原作、バターコーヒーのシーン※ネタバレ注意
ttp://hp41.0zero.jp/data/800/tiger2/pri/32.jpg

かずマギ原作、レミ+α※ネタバレ注意
ttp://hp41.0zero.jp/data/800/tiger2/pri/31.JPG
885 :川´_ゝ`){ナイトメアってなんやねん ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/10/15(月) 01:21:24.09 ID:F/0LNMXa0
今回は以上になります。お疲れ様でした。

短くなってしまい、申し訳ありませんでした。
その代わりと言ってはなんですが、今週中には続きを投稿したいと考えています。

それでは、また次回。お休みなさいノシ
886 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/10/15(月) 01:23:27.17 ID:GRWEdi4ho
金髪…誰だ?
あいりは元は銀髪だし、ニコとカンナってのも髪型的に……

887 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/10/15(月) 01:53:04.62 ID:NUXHq9hpo
888 :川´_ゝ`){訂正だお ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/15(月) 01:59:45.75 ID:F/0LNMXa0
読み返してみたら>>879の一部が文章抜けてた...

訂正↓

×
二人とも髪の毛は綺麗な金髪であり、一人は右側に髪の毛を纏めたサイドテール、もう一人は左側に纏めたサイドテールにしている。
それは、二人合わさると綺麗なツインテールになるように見えた。


二人とも髪の毛は綺麗な金髪であり(片方はかつて銀髪だったが、今は染めている)、一人は右側に髪の毛を纏めたサイドテール、もう一人は左側に纏めたサイドテールにしている。
それは、二人合わさると綺麗なツインテールになるように見えた。


どうやら訂正前の文章で投稿してしまったようです。すいませんでした。


889 :川´_ゝ`){すまぬ ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/15(月) 02:03:23.64 ID:F/0LNMXa0
>>886さん
ごめんなさい。>>888の通りです。
軽いネタバレになっちゃいましたね^^;
すいませんでした。
890 :川´_ゝ`){突撃訪問 ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/10/19(金) 00:50:15.61 ID:yP/hW21B0
夜遅くにこんばんわ>>1です。いつも閲覧有難う御座います。

続きが出来たので投稿します。
891 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/19(金) 00:53:17.91 ID:yP/hW21B0

【タツヤ】
「えっあの・・・」


この子は、突然現れた私を驚いたような表情で見つめている。
まあ・・・それが普通の反応よね。


【ほむら】
「そこのマナーの悪い店員」

【コンビニ店員】
「あ゛?」

【ほむら】
「さっさと会計しなさい」


後ろのお客さんに迷惑になると思い、店員に会計を急かす。
少し皮肉を込めた言い方をしたせいか、店員は私を思いっきり睨んできた。

悪いけど全然怖くない、いいから早く会計しなさい。


【コンビニ店員】
「(ちっ、なんだこの鉄板女、うぜぇ) お預かりしま〜す」


店員は舌打ちをしながらレジを打ち始める。

よくこんな態度で面接とか受かったわね・・・この店員。此処の店長の顔が見てみたいわ。


【タツヤ】
「あ、あの・・・暁美さん?」


この子は未だに状況を飲み込めていないようで、その場で固まったままとなっていた。
突然現れて、勝手に話を進められたら・・・そうなるでしょうね。

・・・私自身、顔を合わせるつもりは無かったのに。


【ほむら】
「・・・じゃあ、私はこれで」

【タツヤ】
「って、ええ!?ちょ、ちょっと待ってください!!」


店員が会計を済ませている間に、足早にコンビニを後にする。
後ろからはあの子の慌てた声が聞こえてくるが、私は構わず出口へと足を進めた。


【ほむら】
「(何してるのかしら・・・私)」


突然出てきて・・・お金だけ置いて帰ろうとするなんて、普通じゃないわよね。
どしちゃったんだろう・・・普段はこんなこと絶対しないのに。

・・・罪滅ぼしのつもりでいるの・・・か、な。

892 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/19(金) 00:54:56.34 ID:yP/hW21B0

【タツヤ】
「暁美さん!!」ダッダッダッ


そんなことを考えていると・・・あの子が走って私を追いかけてきた。


【タツヤ】
「た、助かりました。ありがとうございますっ!!」


そう言って頭を勢いよく下げる。
結局、顔を合わせることになってしまった・・・。あんなことすればこうなることは当然か・・・。

本当に・・・何しているんだろ、私。


【ほむら】
「・・・」

【タツヤ】
「あ、あの」

【タツヤ】
「お金は、必ず返しますから!!」


以前、私があの娘に言ったような台詞をこの子が言う。

それを聞いて、一瞬昔に戻ったかのような錯覚に陥る。・・・今度は立場が逆だけどね。

1円くらい気にしなくても良いのに・・・。
でも・・・あの時のあの娘も、こんな気持ちだったのだろうか?


【ほむら】
「・・・いらないわ」

【ほむら】
「・・・私はただ借りてたものを返しただけだもの」ボソッ

【タツヤ】
「え?今なんて?」

【ほむら】
「・・・なんでもないわよ」


この子が聞き取れないような小さい声で呟く。

結局、あの後・・・あの娘にお金を返すことは出来なかった。
だからと言って、この子にこんなことをしても・・・何の意味も無い。

そう…分かっていた筈なのに、何故か気付いたらあんな行動をとってしまっていた。

893 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/19(金) 00:57:11.59 ID:yP/hW21B0

【ほむら】
「とにかく、お礼だったら何もいらないから」

【タツヤ】
「いや、そういうわけには・・・」ウーン

【タツヤ】
「あ、そうだ!!」


突然、この子が何かを思いついたような声を挙げると、自分の鞄をゴソゴソと漁り始めた。
チラッと見えた鞄の中身は、男の子らしく財布などが整理されずにゴチャゴチャになって入っている。
そして、少しすると鞄の中から袋包みになった物を取り出した。


【タツヤ】
「これ、良かったらどうぞ」スッ

【ほむら】
「・・・何、これ」

【タツヤ】
「クッキーです」

【タツヤ】
「・・・一応、手作りの」


そう言って、この子は小包を手渡してきた。中身を確認してみると、お菓子のクッキーが数枚入っている。


【ほむら】
「手作りって・・・あなたの?」

【タツヤ】
「てぃひひ・・・ええ、まあ・・・」


照れ笑いを浮かべながら、この子が応える。確かに、市販の物ではないのは一目見れば明らかだ。

それでも・・・まさか、この子の手作りだなんて・・・。


【タツヤ】
「うちの父親、主夫やってるんですけど」

【タツヤ】
「こういうの作るの得意で、母親が仕事で家に居ない時よく作ってくれてたんです」

【タツヤ】
「俺も小さい頃から、父親の周りをうろちょろしてたから・・・いつの間にか作り方覚えちゃって」

【ほむら】
「そう・・・」


そういえばこの子と・・・あの娘の家って、そういう家庭だったわね。
忘れていたわ・・・あの頃から、もう随分と時間が経ってしまっていたから。

894 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/19(金) 01:00:24.14 ID:yP/hW21B0

【タツヤ】
「か、形はアレですけど、味は保障しますよ!!」


確かに、中のクッキーはところどころ欠けていたり、形がいびつになったりしている。
でも、気になるところはそれだけで特に変な匂いがしてたり、焦げたりなどはしていない。
むしろ、それがいかにも手作りっぽくて、一生懸命作ったんだというのが伝わってくる。

そう言えば、あの娘は確か料理は駄目だったわね。
・・・よく似ている姉弟だと思っていたけど、こういうところは微妙に違うのね。


【ほむら】
「でも、本当に良いの?」

【タツヤ】
「あ、はい。元々作りすぎた奴ですし・・・」

【タツヤ】
「・・・って、あ」ヤベ


この子はつい口を滑らせた、とでも言いたいかのように舌を出す。
作りすぎたものを渡す=余りもので済ませた、とでも思ったのだろうか・・・わざわざそんな事、気にしなくてもいいと思うけど・・・。

本当に、優しいのね・・・この部分だけは、ほんとあの娘にそっくり・・・。


【ほむら】
「・・・ふ。じゃあ、有難く受け取っておくわね」

【タツヤ】
「あ、は・・・はい」


この子はホッとしたような表情を浮かべる。

何故だろう、この子と話していると・・・最近ずっとやさぐれていた自分が穏やかになっていくのを感じる。・・・顔を合わしたら不味いと思っていたのに。


でも・・・それと同時に昔を思い出してしまい、寂しいという気持ちが一層強まっていくのも感じる。


やっぱり私は、この子をあの娘を・・・。


【ほむら】
「・・・」ジー


気付けば、私はこの子が持っているレジ袋に視線を移していた。袋の中には、先程買ったペットボトルの飲み物が入っている。

さっきも思ったけど・・・こんなに買ってどうするつもりなの?まさか自分で飲むため・・・なわけないわね。
というより、これ炭酸入っているけど・・・さっき、あんなに激しく走って・・・大丈夫なの?


【タツヤ】
「ん?ああ、これですか。いやー、実は・・・」


私の視線に気付くと、買い物の理由を話し始めた。
しかし―――

895 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/19(金) 01:02:32.42 ID:yP/hW21B0

【QB】
「上条恭介と志筑仁美が開くパーティーの買出しさ」ヒョコ

【ほむら】
「!!??」


この子が話し始める前に・・・どこから現れたのか、場違いな白い生き物が現れた。
なんでコイツ、こんな所に居るの・・・。後、なんで理由知っているのよ。


【タツヤ】
「うわっ、また出た」

【QB】
「やあ、ほむら」ピョン

【ほむら】
「・・・何をしているの」

【QB】
「特に何もしてないよ?」

【タツヤ】
「嘘付け!!しつこく人を付け回してるくせに!!」

【ほむら】
「え?」


付け回っている・・・?コイツが・・・この子を・・・?
え・・・まさか・・・。


【タツヤ】
「いや・・・コイツ、何か知らないけど俺の後を付け回してくるんですよ」

【ほむら】
「・・・そう」ギロ

【QB】
「・・・」プイッ


キュゥべえはいつも通り涼しい表情をしている。自分は何もしていないと言い張るかのように。
しかし、私が睨みつけると、コイツは顔を逸らした。
・・・一応、マズいとは思っているみたいね、感情無いくせに。


【ほむら】
「(何考えてるのよ)」

【QB】
「(何がだい?)」

【ほむら】
「(惚けないで、何を企んでるのって聞いてるの)」

【QB】
「(さあ、僕には何がなんだか)」

896 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/19(金) 01:05:24.42 ID:yP/hW21B0

【ほむら】
「(・・・・この子を巻き込まないで)」

【QB】
「(ほむらは何か勘違いしてるんじゃないのかい?僕は何も知らないな〜)」

【ほむら】
「(・・・・)」


・・・少し、油断していたのかもしれない。
まさか、コイツがこんなに早くこの子に目を付けるなんて・・・。
この子は契約の対象外だから、直ぐには接近して来ないだろうと予想していたのに。

やっぱり、先日のゆまが起こした魔獣騒動の時の――――この子の能力。
アレが、コイツがこの子に興味を持つ原因になってしまったのだろう。

コイツがこの子に変なことを吹き込まないように、何か手を打たないといけない。
でも、既に近付いているのなら、もう手遅れかも・・・。


この子だけは・・・巻き込みたくないのに。


とりあえず、今は考え込んでいても仕方ない・・・か。あまり事を大きくすると、かえってこの子に迷惑を掛けてしまうかもしれない。
今コイツの事に触れるのは、あまり得策ではない気がする。


【ほむら】
「・・・あなた、志筑仁美と上条恭介と知り合いだったのね」


それにしても、この子とあの二人が知り合いだったことには少し意外だった。
あの娘がいれば、さやかとの繋がりで知り合ったって考えられるけど・・・。
あの娘がいないこの世界では、あの二人とこの子の繋がりなんて皆無に等しい。人の出会いって、分からないものね。


【タツヤ】
「え?暁美さん、仁美さんと恭介さんのこと知ってるんですか?」

【ほむら】
「ええ、一応・・・ね」

【タツヤ】
「へぇ、友達だったんですか?」

【ほむら】
「ただ学生時代クラスが一緒だっただけよ」


実際、あの二人と私はあまり関係が無い。志筑さんとは中学の頃、何度かお昼を一緒に食べたことはあるけど。

後は、風の噂であの二人が同棲を始めたと聞いていただけ。
上条君は世界中で演奏しているって聞いたけど、今の話の内容からすると帰ってきてるのね。

897 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/19(金) 01:07:54.03 ID:yP/hW21B0

【タツヤ】
「そうですか・・・」

【タツヤ】
「・・・・」

【ほむら】
「じゃあ、私はそろそろ行くわね」


私はそう言って、この子に背を向ける。これ以上、話すこともないでしょう。


【タツヤ】
「あ・・・あのっ!!」

【ほむら】
「・・・え?」

【タツヤ】
「ちょっと、話聞いてもらってもいいですか?」


そう思っていたのだが、私が歩き始めたと同時に呼び止められた
何事かと思い、私は再度この子の方へと視線を向ける。
すると、この子は先程とは違い、何か思い悩んでいるような表情をしていた。


【ほむら】
「・・・・・何?」

【タツヤ】
「昨日、学校の帰りにゆまさんに会ったんです」

【ほむら】
「・・・ゆまに?」


ゆま、また見滝原に来てこの子に会ったのね・・・。
あまりこの子に構って欲しくはないのだけれど・・・でも、私生活にまで口は挟めないし・・・仕方ない、か。
それでも、魔法少女のことはあまり話さないようにって、今度ちゃんと言わなきゃ駄目ね。


【タツヤ】
「それで・・・なんというか、話の流れの中であの人の過去の事聞いちゃって・・・」

【ほむら】
「ゆまの・・・過去を、ね」


ゆまの過去、それは・・・両親に虐待されていたということと、その両親が魔獣に殺されたこと。

あの子が他人に自分の過去の事を打ち明けるなんて・・・珍しいわね。
私も彼女の過去の話は彼女から直接ではなく、杏子から聞いている。

・・・以前会った時間軸では、そんなこと聞いてすらいなかったしね。

898 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/19(金) 01:10:52.83 ID:yP/hW21B0

【タツヤ】
「その話聞く前に俺、結構無神経なこと言っちゃって・・・」

【タツヤ】
「悪気は・・・無かったんですけど・・・」


思いつめたような表情でこの子が話す。
この子は・・・私達の世界を知らないから、1つのことでこんなに深刻に考えることができるのだろう。
・・・私達は彼女の過去の話を聞いた時は、こんなに深く考えることはなかった。
もう何回も・・・こういう話は聞いてきたから、あぁこの子も・・・と思うに過ぎなかった。

それを考えると、私達は・・・感覚がズレてしまっているのかもしれない。
人が死ぬことに、慣れてしまっているから。


【ほむら】
「知らなかったんだもの、無理はないわ」

【タツヤ】
「で・・・でも、その後一人で色々考えたんですけど」

【タツヤ】
「今度、ゆまさんに会ったら・・・なんて声を掛けたらいいのかって、分からなくなっちゃって」


知らなかったで、済まさない辺りがこの子の優しさなのだろう。
相手のことを、まるで自分のことのように考え、悲しみ、悩むことができる。多分、中々できることじゃない。
でも・・・そういうこの子の姿を見ていると、やっぱり脳裏にあの娘のことがちらついてしまう。


【ほむら】
「・・・大丈夫よ」

【ほむら】
「あの子はあなたが思っているより、ずっと強い子だから」

【ほむら】
「そんなに考え込まなくても、普通に接してあげれば良いのよ」


私はこの子の不安を少しでも取り除けるように、ゆっくりと落ち着いた口調で話すように努める。
言っていることは勿論嘘じゃない。ゆまは本当に強い子だ。
それこそ、精神面では魔法少女の中では一番強いんじゃないだろうか。



私とは違って、大切な人との別れをちゃんと乗り越えているものね。


【タツヤ】
「そう、ですかね・・・」

【ほむら】
「鹿目タツヤ」

【タツヤ】
「えっあ、はい」

【ほむら】
「あなたは、優しすぎる」


いつぞや、あの娘に言った台詞をこの子に言ってしまう。
特に意識していたわけではないのだけど・・・この子の思い悩む姿を見ていたら、何故か言わずにはいられなかった。

899 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/19(金) 01:14:13.70 ID:yP/hW21B0

【タツヤ】
「ええっ、いやいやいや!!全然そんなことないですって!!」

【ほむら】
「でも、だからこそ一つ忠告しておくわ」

【ほむら】
「その優しさが、時に誰かを傷つけることもあるのよ」

【タツヤ】
「え・・・?」


この子は両手を振って否定していたが、私の言葉を聞いてその場で固まってしまう。
何を言っているのか分からない、そんな表情をしていた。

それはそうだろう・・・、人に優しくすることが誰かを傷つけるなんて、きっと考えたこともないだろうから。

優しいことは罪ではない。でも、優しすぎることは罪になりうる。
この子は良心で行った事だとしても、時にはその良心が棘となり、相手に容赦なく突き刺さる場合もある。
そういう事態になることだけは・・・なるべく避けて欲しい。

だってその時、きっと傷つくのは他ならぬこの子自身の筈だから・・・


【ほむら】
「今は意味が分からなくても良い。でも、そのことを胸に留めておいて」

【タツヤ】
「え・・・と、その・・・はい」


この子は未だによく理解できていないようで、曖昧な返事を返している。
難しいことだからしょうがないだろう。今はとりあえず、私の言ったことだけ覚えていてくれたら・・・それでいい。

それにしても、私はどうして・・・こうもあの娘に言った事を、この子にも繰り返してしまうのだろうか。
やっぱり、私は・・・未だにあの娘との別れを受け入れられていないのかもしれない。

あの娘は・・・いつでも傍にいると言ってくれたけど・・・でも、やっぱり・・・。


【ほむら】
「じゃあ、今度こそ私は行くわね」

【タツヤ】
「あ、はい。あの、話聞いてくれてありがとうございました」

【ほむら】
「・・・えぇ」


これ以上、この子と共に此処にいたら・・・また色々と思い出してしまうかもしれない。

本能でそう判断した私は今度こそこの子と別れ、帰ろうとした。

900 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/19(金) 01:16:49.62 ID:yP/hW21B0

【ほむら】
「あぁ、それと」


ただそこで、一つ言っておかねばならないことを思い出したので、私は足を止める。
背中を向けたままの姿勢で、顔だけこの子の方へと向け言葉を続けた。


【ほむら】
「その珍獣には、気をつけなさい」

【タツヤ】
「え?」

【QB】
「やあ」


・・・私達の話には一切入り込んで来なかったが、コイツはずっと傍に居た。
多分コイツには興味の無い話だっただろうから、会話に参加しなかったのだろう。

世界が変わって、コイツもだいぶ魔法少女や人間達に良心的になったけど、まだまだ油断はできない。

コイツの目的自体は、結局のところ変わっていないのだから。


【タツヤ】
「お前まだ居たのか!!」

【QB】
「そりゃ居るよ」

【タツヤ】
「いい加減どっか行け!!じゃないとマヨネーズかけて食うぞ!!」

【QB】
「僕を食べたら、僕みたいな耳が生えるよ」フリフリ

【タツヤ】
「ええぇ!?」

【QB】
「冗談に決まってるじゃないか」キュップイ

【タツヤ】
「こ の や ろ 〜」



【ほむら】
「(キュゥべえに遊ばれてるわ・・・大丈夫かしら、この子)」


気のせいか、キュゥべえも楽しそうね・・・。
今まで、この珍獣にこんな態度で接する人間いなかったから、コイツも新鮮なのかもね。
それとも、感情でも芽生え始めたのかしら・・・そんなわけないか。


<オマエナンカコウシテヤル!!コウシテヤル!!
              ビヨーン グリグリ グニャグニャ
                             ギリュッブイー!!!>


・・・とにかくこの子自身も、コイツのことあまり良く思っていないみたいだし・・・今のところは大丈夫みたいね。

901 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/19(金) 01:19:34.75 ID:yP/hW21B0

【ほむら】
「あなたももう行ったら?志筑さん達が待ってるんでしょ?」

【タツヤ】
「あ!!やべっ!!!」

【タツヤ】
「じ、じゃあ暁美さん!!またっ!!!」ダッダッダッ

【ほむら】
「・・・ええ」


そのまま私に背を向け、勢いよく走り出す。あっという間にその後姿が小さくなっていった。
いや、だから飲み物・・・炭酸が・・・・まあ、いいか。

まさか、キャップ開けた瞬間噴出して顔が炭酸まみれになる、なんてベタなことにはならないでしょう。

・・・・ならないわよね?



【ほむら】
「(・・・・)」

【ほむら】
「(・・・また、か)」


また・・・会う機会は、あるのだろうか。いや、機会があったとしても・・・私はあの子に会うべきなのだろうか。

このまま離れていった方が、あの子のためなんじゃ・・・。

でも、それは多分・・・言い訳なのだと思う。
あの子に会うと・・・あの娘・・・まどかのことが頭から離れなくなるから。
正直、私はあの子に会うたびに・・・話すたびに・・・あの子にどう接して良いのかが分からなくなっている。

だから、結局私は自分を守るためにあの子を避けているに過ぎないのだ。巻き込みたくないとか・・・そんな理由を付けて。

そう考えると、自分の事が酷く醜く見えて仕方が無かった。

902 :川´_ゝ`){とうとう900かぁ ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/10/19(金) 01:22:42.37 ID:yP/hW21B0
今回は以上になります。お疲れ様でした。

何だか色々gdgdになってしまってすいませんでした。今後は気を付けたいと思います。

それでは、また次回。お休みなさい ノシ
903 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/10/19(金) 01:23:12.28 ID:5TGky6Rlo
904 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/10/19(金) 02:15:59.80 ID:V8Aoqh1do
乙〜

そろそろ次スレの必要性を頭に入れておく時期ですね
905 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/23(火) 18:05:24.96 ID:wdj5Q0YDO
やっと完結した方のスピンオフ読んだが色々突っ込み所が多いが特に
・各主要キャラの多彩な顔芸
・電波系魔法少女とサイコ魔法少女のクレイジーな思考
・骨
・ゆまちゃんまじ天使
のせいで本編より衝撃的だったわ

906 :川´_ゝ`){藤浪と北條とか胸アツだな ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/28(日) 01:55:50.70 ID:00CD0AnG0
夜遅くにこんばんわ>>1です。いつも閲覧&コメ有難う御座います。

>>904さん
そうですね。一応3話がこのスレ内で終わる予定なので、4話から次スレに行こうかなって考えてます。

>>905さん
きらマギに載ってる番外編は、作画が変わり過ぎてて違う意味で衝撃受けます。

次回の投稿は明日29日0時以降を予定しいます。
お待たせしておりますが、宜しくお願いします。

それでは今日はこの辺で。お休みなさい ノシ
907 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(香川県) [sage]:2012/10/28(日) 11:47:10.28 ID:7sVYCjhu0
乙 投下時期を言ってくれるのは本当にありがたい
908 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/28(日) 13:16:02.46 ID:5cKtkhpDO
???「織莉子とキリカ。見滝原中学校にとって非常に迷惑な存在だったのだ」
この二人を見てたら小説版女神転生の中島と弓子思い出した
散々やらかした挙げ句、本人達は満足してる所とか
さすがに傍迷惑っぷりならこの中島と弓子には負けるがな。あっちは世界滅亡だし
909 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/28(日) 16:07:44.03 ID:iT/vgeXe0
プレイアデスはどうなっているんだろう?
カンナあたりは出そうだけど・・・・
910 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(香川県) [sage]:2012/10/28(日) 23:13:03.16 ID:7sVYCjhu0
カンナ妹ズが出てくる可能性が微レ存…?
911 :川´_ゝ`){めっさ遅刻しとるやん ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/10/29(月) 00:50:31.91 ID:TY6KliiF0
夜遅くにこんばんわ>>1です。いつも閲覧有難う御座います。

お待たせしました。それでは続きを投稿します。
912 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/10/29(月) 00:54:30.72 ID:qHHF9rWio
コノシュンカンヲマッテタンダー!
913 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/29(月) 00:55:33.08 ID:TY6KliiF0

【ほむら】
「キュゥべえ」

【QB】
「何だい?」

【ほむら】
「あの子に変なこと吹き込んでないでしょうね?」


あの子が帰った後、私に付いてきたコイツを問い詰める。
魔法少女のことを知れば、あの子はきっと色々と考え込んでしまうだろうから。
ゆまのこともそうだったが、余計な心配を掛けたくはなかった。


【QB】
「変なことってなんだい、例えばほむらの胸は巷で噂の72より・・・」


【ほむら】
「・・・」(※黒翼が漏れ出している)


・・・・。


【QB】
「・・・冗談だ。そんなに怒らないでおくれよ」

【ほむら】
「真面目に答えなさい」


今度ふざけた発言をしたら・・・容赦はしない。


【QB】
「・・・まあ、ある程度はね」

【ほむら】
「あなたっ」


予想はしていたけど、やっぱりコイツ・・・。ある程度って・・・どの程度まで話したのよ。

あの子は・・・コイツの話を聞いて、どう思ったのだろう。
さっきはそういう素振りを見せなかったが、私達のことについて深く考えていなければいいのだけど。

だってそれは、あの子の身を危険に晒すことに繋がってしまうから。


【QB】
「別に君達に迷惑が掛かるようなことは言っていないよ」

【ほむら】
「そういうことを言っているんじゃないわよ」

【QB】
「じゃあ、なんなんだい?」

【ほむら】
「さっきも言ったでしょ?あの子を巻き込みたくないのよ」

【QB】
「君がどうしてそこまで彼のことを気にするのかが分からないよ」

【ほむら】
「・・・」

914 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/29(月) 00:59:00.77 ID:TY6KliiF0

コイツに痛いところを突かれ、思わず黙ってしまう。

私が・・・どうしてあの子のことをそこまで気にしてしまうのか・・・か。

それは勿論、あの子がまどかの弟だから。
そして、あの子がまどかと重なるから・・・だから、あの子を巻き込まないようにすることに、此処まで執着してしまうのだろう。

かつて、私が彼女を救うために時間を何度も巻き戻したように。

それ以外の理由なんて、多分存在しない。


【QB】
「彼と行動を共にしてみたけど、他と大して変わらない普通の人間だったんだ」


当たり前だ。コイツがあの子の私生活を観察したところで、満足のいく結果が得られるわけがない。
あの子は何処にでもいる普通の男の子なのだから。

そう、他の子と何も変わらない・・・普通の・・・。


【QB】
「今ではあの時の魔法はマグレだったんじゃないかってくらいにね」

【QB】
「そんなわけはないんだけどね〜」


なのに、あの子は・・・魔法を使った。まどかの魔法を・・・。どうしてかは・・・私には分からない。
あの子が微かにまどかのことを覚えていることと、何か関係があるのだろうか。

何にしても、このまま放置しておくわけにはいかないだろう。
やっぱり―――――また、あの子とは会うことになるかもしれない。


【ほむら】
「・・・」

【QB】
「相変わらず君は彼の事になるとだんまりだし」

【QB】
「もう何がなんだか・・・」


珍しくキュゥべえが弱音を吐く。流石のコイツでも、あの子のことを図りかねているということだろう。

事情をある程度把握している私でも、あの子の力のことは理解出来ていないのだから当然よね。
まぁ理解できたとしても、コイツに言うつもりは無いけどね。


【ほむら】
「・・・」

【ほむら】
「・・・まどか」ボソ

【QB】
「ん?何か言ったかい?」

【ほむら】
「いいえ、別に」


まどか・・・、あなたの弟がどうして魔法を使えるのか・・・私には分からないけど・・・。
それでもどうか、あの子の身に不幸が起きないように・・・ちゃんと見守ってあげてね。

915 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/29(月) 01:02:47.93 ID:TY6KliiF0

――――――――――――――――――――

【タツヤ】
「戻りましたー」ガチャ


俺は今、恭介さん達の自宅にお邪魔している。昨日言っていた中学入学パーティーの為だ。
もう少し日にちが空くかと思っていたが、思い立ったが吉日というのかなんなのか、昨日のうちに電話が掛かってきて今日行う事になった。

なので、学校が終わった後、家で私服に着替え、恭介さん達の家を訪れた。
そこで食べ物はあるが、飲み物を切らしてしまっているということだったので、俺が買出しに行って来たのだ。

近くのコンビニで飲み物を買おうとしたのだが、お金が足りないという大惨事を起こし、途方にくれていたところを暁美さんに助けてもらった。

暁美さんはいらないって言っていたけど、お金・・・ちゃんと返さないとな・・・。

その後も暁美さんと話していてせいか、時間が掛かってしまったけど・・・どうやら間に合ったようだ。


「ミー」


玄関で靴を脱いでいると、後ろから猫の鳴き声が聞こえてきた。
振り返ると、リビングの方から1匹の黒猫が此方に近付いてくる。


【タツヤ】
「おーエイミー。出迎えご苦労さん」


その黒猫の名前はエイミーといい、恭介さん達が飼っている真っ黒な身体が特徴の雑種の猫である。


【エイミー】
「ミー」ゴロン


俺の近くまで近付いてくると、エイミーは眠たそうな顔をして廊下に敷いている玄関マットに寝転がり背中をマットに擦り付ける。
多分、寝起きで背中が痒かったのだろう。


【タツヤ】
「はは、相変わらずおばさんくさいなー」

【エイミー】
「ミ〜・・・」

【タツヤ】
「悪かったって、そんな怒るなよ」


エイミーが不機嫌そうな泣き声を出す。どうやら気に障ったらしい。

コイツはもう10年くらい生きている結構な老猫で、人間の年齢で言えば多分俺よりずっと年上だと思う。というより、この家の中で一番の年長者なのではないだろうか。
元々は仁美さんが学生の頃からひっそりと飼っていた猫なんだとか。

因みに余所者の俺に懐いているのは、多分俺を自分の子供か孫のように思っているからだろうと仁美さんが言っていた。

916 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/29(月) 01:07:04.25 ID:TY6KliiF0

【恭介】
「やあ、ご苦労様」


エイミーとじゃれ合っていると、リビングから今度は恭介さんが出迎えに来てくれた。
俺は自分の靴を来客者用の下駄箱に入れ、エイミーと一緒にリビングへと向かう。

リビングに入ると、出掛けている内に恭介さん達が準備したのか、テーブルに簡単な装飾が施されていた。
そこはまるで、何処かの洒落たレストランのようだった。


【恭介】
「わざわざ悪かったね、タツヤ君の為のパーティーだったのに」

【タツヤ】
「いや、別にいいですよ。気にしないで下さい」

【仁美】
「あらタツヤ君、おつかれ様。お料理ももうすぐ出来るところですわ」

【タツヤ】
「本当だ、良い匂いがしてますね」


テーブルに荷物を置いていると、キッチンからエプロン姿の仁美さんが顔を出す。元々綺麗な人なので、エプロン姿も中々様になっていた。
キッチンには仁美さんが作った料理のいくつかが既に並べられており、後はスープが出来上がるのを待つだけとなっていた。


【恭介】
「それにしても、少し時間が掛かったみたいだね」


【タツヤ】
「ああ、えーと・・・そうですね」


キッチンの前で、仁美さんの料理を観察していると、ソファに座っていた恭介さんにそんなことを言われた。
俺はその一言で、この人達に聞いておきたいことがあったのを思い出す。


【タツヤ】
「あの、恭介さん達って暁美ほむらさんって知ってます?」


それは、暁美さんのことだ。あの珍獣が今日のことを話した時、あの人は恭介さん達とのことを知っているようだった。
暁美さんは、ただのクラスメイトだと言っていたけど・・・実際のところはどうだったのだろう、と疑問に思っていたのだ。

それに、クラスメイトだった恭介さん達なら、暁美さんのことを少しは知っているかもしれないとも思った。


【恭介】
「暁美・・・さん?」

【仁美】
「え、暁美さん!?彼女が、どうかしましたの?」


暁美さんの名前を出すと、恭介さん達が驚いたような表情を浮かべる。
仁美さんに至っては、料理中にも関わらずキッチンから飛び出してきてしまった。

な、何なんだ・・・二人のこの反応?やっぱり、ただのクラスメイトじゃないのかな・・・。

917 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/29(月) 01:09:30.48 ID:TY6KliiF0

【タツヤ】
「いや、実は・・・」


俺は今日コンビニで暁美さんにお世話になったことを二人に話し始める。
それと、俺がなんで暁美さんのことを知っているのかも簡単に説明した。

でも、流石に魔法少女関係のことは言っていない。そんなことしたら、あの人達の迷惑になるかもしれないし、それに・・・多分信じないだろうし。


【恭介】
「へぇ〜暁美さんが・・・」

【仁美】
「・・・・」

【タツヤ】
「はい」


暁美さんのことを話すと、二人は次第に口数が少なくなっていき、黙り込んでしまった。
先程までとは違い、リビングには重苦しい空気が流れ、エイミーだけがのんきにソファでゴロゴロと寝転がっている。


【タツヤ】
「あの・・・暁美さんとは、どういう・・・?」

【恭介】
「いや、あまり接点はないんだけど・・・」

【恭介】
「ちょっと、昔に色々と・・・ね」

【タツヤ】
「はあ・・・?」


昔・・・か。そういえば、あの珍獣もこの二人のことを知っているようだったな・・・。
今と似たようなことも言っていたし。

アイツが関わっているとすれば・・・多分、魔法少女のことだよな?
でも、恭介さん達は魔法少女のことを知らないみたいだし・・・。

この二人と暁美さんとキュゥべえ、この3人と1匹の間に・・・何かあったということだろうか?

う〜ん、でも何だろう。この二人の反応見てると・・・この人達が直接結びついているとは思えないんだよなぁ。
この人達を結び付けるには―――――――まだ何か欠けているものがあるような・・・そんな気がする。まあ、これは勘なんだけど。


【仁美】
「タツヤ君」

【タツヤ】
「? はい?」


それまで黙って俺の話を聞いていた仁美さんに突然名前を呼ばれた。
仁美さんは目線をキョロキョロと泳がせ、落ち着かないような素振りを見せる。
そして、意を決したように俺に向けて言葉を続けた。

918 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/29(月) 01:12:46.94 ID:TY6KliiF0

【仁美】
「暁美さんは・・・元気にしていましたか?」


どこか暗い表情を浮かべて、仁美さんはそう言った。
やっぱり…知り合いだったのかな?でも、なんでこんなに表情が暗いんだろう。
それに、なんだか・・・少し寂しそうだ。


【タツヤ】
「ええと、そう・・ですね。元気・・・だったと思いますよ?」


仁美さんに自分の率直な感想を述べる。
暁美さんは不思議な雰囲気を醸し出して物静かな人だけど、元気か元気じゃないかと聞かれたら・・・恐らく前者だろう。
ああいう人だから、パっと見では判断できないんだけど・・・多分、ね。


【仁美】
「そう・・・、だったら・・・良かったですわ」

【タツヤ】
「は、はあ・・・?」


返答を聞いて、心なしかホッとしたような表情に変わる仁美さん。
その表情の変化の意味は分からないけど・・・他人を寄せ付けないようなイメージを持つ暁美さんのことを心配してくれる人がいて、俺は何処か安心していた。


【恭介】
「・・・」

【仁美】
「お料理、運んできますね」

【タツヤ】
「あ、俺も手伝いますよ」

【仁美】
「ふふ、ありがとう」


再び仁美さんは笑顔に戻り、キッチンに戻る。
火を付けっぱなしだったスープが沸騰していたので、慌てて火を消した。
そして、キッチンに並んであった料理をテーブルに運ぶため準備する。


・・・恭介さんがまだ黙ったままだったが、その時はあまり気にならなかった。


【エイミー】
「ミー」トコトコ

【タツヤ】
「いや、お前は食べれないだろ」ガシ


俺達が準備をしていると、後ろからエイミーがトボトボとキッチンに入ってきた。
多分、料理のいい匂いに釣られてやって来たのだろう。さっきまで寝てたくせに・・・。

919 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/29(月) 01:14:58.87 ID:TY6KliiF0

【エイミー】
「ミー・・・」ションボリ

【タツヤ】
「後でキャットフードやるから」


エイミーの首を掴み、ソファに戻す。
ただでさえ高齢なのに、人間の食べ物なんか与えたらコイツの身体に毒だろう。
凄く残念がっている気がするが・・・まあ、餌とミルクやるからそれで我慢してくれ。



そんなこんなで、数分後。


【恭介】
「準備はこれくらいで良いかな?」

【仁美】
「では、始めましょうか」

【タツヤ】
「はーい」


準備を終え、テーブルに料理を並べる。恭介さんも手伝ってくれたおかげで、スムーズに進めることが出来た。
エイミーには前述通りキャットフードとミルクを与え、今はテーブルの下にいる。


【恭介】
「じゃあ乾杯しようか」


恭介さんはそう言って、今度はテーブルにグラスを並べ始める。


【タツヤ】
「あっそうだ、飲み物開けないと」


それを見て、買ってきた飲み物をまだ開けていないことに気付き、急いでコンビニの袋からペットボトルを取り出す。
とりあえず1本だけ取り出し、残りはビニール袋ごと床に置いた。


【タツヤ】
「よーし」


【恭介】
「!? ちょ、ちょっと待つんだタツヤ君!!」


【タツヤ】
「へ?」キュッ


勢い任せにペットボトルを開けようとすると、何かに気付いたかのように恭介さんが慌てて止めに入る。
しかし、勢いを付けすぎたせいか、恭介さんが制止したにも関わらず、返事と同時にペットボトルのキャップを外してしまった。

920 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/29(月) 01:16:46.09 ID:TY6KliiF0



シュバァァァァァァァァアアアア!!!!





そして・・・次の瞬間、中身の炭酸水が噴水のように勢いよく噴出してきた。



【タツヤ】
「」ビッチャビッチャ・・・



突然のことで避けることが出来ず・・・・俺は盛大に噴出した炭酸水の餌食になる。

どういうことだおい・・・なんでこんなに豪快に噴出すんだよ、漫画じゃあるまいし。
色んなところがビチャビチャになったじゃねーか。


【恭介】
「タツヤ君・・・炭酸のペットボトルは運ぶとき気をつけないと・・・」

【タツヤ】
「ふぁい・・・」

【仁美】
「(ベタですわ・・・)」

【エイミー】
「ミー」コレハヒドイ


恭介さん達が苦笑いを浮かべながら此方を見つめている。
・・・あー、そういえば暁美さんを追いかける時とこっちに戻る時に思いっきり走ったからなぁ。
でも、こんなに露骨に噴出すものなのか・・・。何故かエイミーにも呆れられた声出されるし。

はあ、のっけからとんだびっくりパーティーになっちゃったな。せっかく俺の為に開いてくれたのに・・・。
でもまあ・・・俺らしいって言えば、俺らしいか。


因みにその後は大した問題も起きず、俺は濡れた服に構うことなく仁美さんの料理を堪能した。

結局、暁美さんのことは話題に上がらなかったが、まあ他人の人間関係にあまり口は挟めないし・・・しょうがないか。

921 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/29(月) 01:20:58.19 ID:TY6KliiF0

――――――――――――――――――――


【タツヤ】
「ふー良い風呂だった〜」


パーティーも無事に終わり、俺は一足先にお風呂をいただいた。
今日は恭介さん達の家にお泊りすることになっている、父さん達も了承済みだ。
本当はそこまで迷惑掛けたくないと断ったのだが、二人が是非ということだったので好意に甘えさせてもらったのだ。


【タツヤ】
「え〜と、客間は何処だっけかな〜と・・・」


俺の寝る布団は2階の客間に敷いてあると仁美さんに言われたので、今は2階に来ている。
二人の家にお邪魔するなんて久しぶりだったから、イマイチ部屋の位置が分からずに、そこら辺をうろうろと歩き回っていた。


【タツヤ】
「ここか!!」ガチャ

【タツヤ】
「あ、違った」


【タツヤ】
「此処は・・・恭介さんの部屋か?」


とりあえず適当に扉を開けてみる。
しかし、そこで行き着いたのは客間ではなく―――――恭介さんの部屋だった。


【タツヤ】
「相変わらず凄い部屋だな」


恭介さんの部屋は、これでもか!!ってくらい音楽関係に溢れていた。
演奏で使う何種類ものヴァイオリンに沢山の楽譜、それに加えてあの人が貰ったであろう表彰状やトロフィーなどが綺麗に飾ってある。
この部屋を見ると、改めて恭介さんは凄い人なんだな〜としみじみ思う。仁美さんもさぞ鼻が高いだろう。


【エイミー】
「ミー」

【タツヤ】
「ん?なんだ、エイミーも入ってきちゃったのか」


扉を開けっ放しにしていたせいか、エイミーが恭介さんの部屋に入ってきてしまった。
エイミーは俺の方へとのんびりトボトボと近付いてくる。


【エイミー】
「ミー」ピョン

【タツヤ】
「おーい、あんまり動き回るなよー」


エイミーは俺に近付くやいなや、ピョンと棚に飛び乗りその後もあちこち動き回る。
飾っている物を倒すんじゃないかと内心ヒヤヒヤしたが、エイミーも長年この家にいて分かっているのか、そういった記念品などには手を出さないように配慮しているみたいだった。

922 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/29(月) 01:24:48.64 ID:TY6KliiF0

【エイミー】
「ミー」トントン

【タツヤ】
「なんだ、どうかしたのか。おっこれは・・・」


と、そこでエイミーがある場所で立ち止まり、俺を呼ぶような仕草を取る。そこは、恭介さんが使っている机だった。
その机には音楽の専門誌の他に、語学の参考書などが並んでいる。きっと海外に行くための勉強をしているのだろう。
また、机上には何も書かれていない楽譜とペンが置いてあり、端には恭介さんが書き込んだであろう楽譜が積んであった。


【タツヤ】
「恭介さんって作曲もやってるんだな〜」

【タツヤ】
「う〜ん、俺には読み取れん・・・」


音楽の成績が良いとも悪いとも言えない自分が見ても、全く理解出来ない。
せいぜい音譜が沢山並んでるな〜と思うくらいが精一杯だった。

・・・こうやって、語学の勉強に加え作詞もやっている恭介さんには本当に頭が下がる。
両方とも凡人の俺じゃまず無理だ。


そんな風に俺が思っている時だった。


【エイミー】
「ミー」ピョン

パサァッ


エイミーが突然ジャンプして床に飛び降りる。
そしてその拍子に足が楽譜に引っかかり、積んであったものがパラパラと飛び散ってしまった。


【タツヤ】
「うわっ!!お前なにやってんだ!!」

【タツヤ】
「は、早く拾わないと・・・」


それを見て、大慌てで飛び散った楽譜を拾い集める。こんなところ恭介さんに見られたら、流石に怒られてしまう。
とりあえず順番とかは気にせず、ひたすら落ちた楽譜を拾い集め元の場所に戻していった。

これで大丈夫かな・・・、と言っても元の順番とか分かんないし・・・。


【エイミー】
「ミー」ピョンピョン

【タツヤ】
「だー!!お前はじっとしてろ!!」

【エイミー】
「ミー」モグリコム

【タツヤ】
「そんなとこ入ってないで出て来い!!」


何故か俺の邪魔をするかのように、周りを飛び回るエイミー。
暫くして、エイミーは机の下にある隙間に潜り込んでしまった。俺はエイミーを捕まえようと机の下を覗き込む。

幾らなんでも、これ以上何かされたら対処しきれない・・・早く捕まえて追い出さないと。

923 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/29(月) 01:26:42.65 ID:TY6KliiF0

【エイミー】
「ミー」カリカリ

【タツヤ】
「って、ん?」


しかし、俺がエイミーが入り込んだ隙間を覗き込むと、コイツは奥で足を止めていた。
そして、前足で何か箱みたいな物を引っかいている。まるで、俺にその箱を見せたがっているかのようだった。


【タツヤ】
「なんだ・・・それ?」

【エイミー】
「ミー」


隠すように置いてあるその箱を、手を伸ばして取り出してみる。それと一緒に、エイミーも自分で隙間から出てきた。
取り出した箱は至って普通の箱で、蓋が付いているだけで特に鍵などが付いているわけでもない。

・・・・きっと中身はプライベートな物が入っているのだろう、隠しているくらいだし。



・・・・・・・・・・・・・・・・・。



開けてはいけない・・・開けてはいけないのだが・・・。






好奇心には勝てませんでした。


【タツヤ】
「え〜と・・・」

【タツヤ】
「・・・CD?」


蓋を開けてみると―――――――――中には音楽CDが沢山入っていた。


【タツヤ】
「また随分と古いやつばっかだな・・・」


中身のCDを幾つか見てみたが、どれもこれも年季が入っていてケースにも傷が付いている。
多分、昔に買ったCDなんだろうけど・・・でもCDなら普通に棚に置いてあるのに、なんでこれらだけ別にしてあるんだ?

924 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/10/29(月) 01:29:03.93 ID:TY6KliiF0

【タツヤ】
「あれ、他にもまだ何か入ってる・・・」ガサゴソ



【タツヤ】
「お、楽譜だ」


CDを漁っ・・・・もとい調べていると、箱の底から一枚の楽譜を見つけた。
綺麗に折りたたんではいるが、やっぱりこれも相当年季が入っていて、所々擦り切れている。
書き込まれている音符も読み取れない部分があって、多分・・・楽譜としては使い物にならないだろう。


【タツヤ】
「この一番上の文字ってタイトルか何かかな?」


楽譜の一番上に英語で書かれている文字は、まだかろうじて読める。
多分、恭介さんがつけたんだろうけど・・・。


【タツヤ】
「え〜と・・・・


・・・S・・・A・・・Y・・・A・・・・」


書かれている英語を何となく読み上げてみる。
楽譜には、こう書かれていた―――――――――



Dear to SAYAKA。



―――――と。



【タツヤ】
「・・・・さやか?」





・・・・・・誰?

925 :川´_ゝ`){誤字あったらごめんね ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/10/29(月) 01:33:25.61 ID:TY6KliiF0
今回は以上になります。お疲れ様でした。

まどオンでプラチナBOXのSS武器確立が2倍だと言ったな、あれは嘘だ。

多分後2〜3回の更新で3話が終わると思います。このスレで終われればベストですね。

それでは、また次回。お休みなさい ノシ
926 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/29(月) 02:04:14.02 ID:EufBCuvBo
乙です。

ゼロの2倍はゼロ、というほどじゃないけど、1%が2%になったところで当たらない確率はあんまり下がらないしねえ。
927 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/10/29(月) 02:56:05.56 ID:Eo7S3kkAo
928 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/10/29(月) 19:48:53.09 ID:CR/CDRV60
乙乙
929 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/30(火) 19:01:35.45 ID:Fv3rX6dF0
さやかちゃんのエピソードきたか…。
乙!
930 :川´_ゝ`){寒くなってきたね ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/08(木) 00:52:27.26 ID:Pq2ghWnn0
夜遅くにこんばんわ>>1です。いつも閲覧&コメ有難う御座います。

次回の投稿ですが、11月9日0時以降を予定しております。
お待たせしておりますが、宜しくお願いします。

では、今日はこの辺で。お休みなさいノシ
931 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/08(木) 01:37:54.94 ID:pNxbLLAa0
おつ!楽しみにしてます!!
932 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(香川県) [sage]:2012/11/08(木) 22:31:39.81 ID:HrSiHnLo0
うれしいこと言ってくれるじゃないの
933 :川´_ゝ`){ミューコミにキタエリ出てる ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/11/09(金) 00:08:37.57 ID:Xj2zG4h70
夜遅くにこんばんわ>>1です。

今日は遅刻しなかったぞ!!7分なんて許容範i(ryアカルイミライヲー

それでは続きを投稿します。
934 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/09(金) 00:11:45.63 ID:Xj2zG4h70

さやかっていう名前、聞いたことないけど・・・。恭介さんの知り合いかな?

だとしても、どうしてこんなわざわざ隠してあったのだろう。
それに、こんな古い楽譜とかCDも・・・大切に保管してるみたいだし・・・一体どうして。


【タツヤ】
「…はっ!!」

【タツヤ】
「まさか・・・・浮気相手っ!?」

【タツヤ】
「い・・・いやいや、恭介さんに限ってそんな・・・」


散々考えた末、一つの不安が頭を過る。

誰にも見られたくないように隠してあった箱。その中に入っていたCDと一枚の楽譜。
そして、その楽譜に英語で書かれた「さやか」という文字。

考えたくはなかったが、俺の浅い思考回路では、そういう結論にしか結びつかなかった。

・・・何か、見てはいけないものを見てしまった気がするぞ。
ここは恭介さんにバレないうちに片付けて、無かったことに・・・・。


【恭介】
「僕がどうかした?」

【タツヤ】
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!」


CDや楽譜を箱の中に戻そうとしていると、後ろから恭介さんの声が聞こえてきた。
俺は突然のことで驚き、思わず大声を挙げてしまう。
振り返ると、ラフな格好をした恭介さんがドアの前に立っていた。どうやら風呂上りのようだ・・・。


【タツヤ】
「きょ、恭介さん!?ど・・・どどどどうしてっ!?」

【恭介】
「いや、此処僕の部屋なんだけど・・・タツヤ君こそどうして?」

【タツヤ】
「い・・・いやあ、ちょっと部屋がどこにあるのか分からなくて・・・あ、あははは」


後ろ手で必死に物を隠しながら、恭介さんに歯切れ悪く応える。
言っていることはあながち間違いではないのだが、気が動転しているせいか苦し紛れに吐いた言い訳のようになってしまった。


【恭介】
「・・・何か隠してる?」

【タツヤ】
「うぇ!!??いいいいや、決してそんなことはぁ!!」


恭介さんは俺の後ろを気にしながら、怪訝そうにして此方を見てくる。
・・・流石に、後ろで怪しい動きをしながらここまで挙動不審になっていれば疑われる・・・か。

と・・・とにかく、此処はなんとか誤魔化さないと・・・。

935 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/09(金) 00:13:23.52 ID:Xj2zG4h70



【エイミー】
「ミー」ズルズル



しかし、俺がこの場を切り抜ける方法を必死に考えていたのにも関わらず・・・


【タツヤ】
「」


【恭介】
「あ・・・・」


後ろにいたこの馬鹿猫が、例の楽譜を口に咥えて恭介さんの前に現れてしまった。

それを見て、俺と恭介さんは一瞬言葉を失った。



【タツヤ】
「何してんだお前ぇぇぇぇぇぇええええええ!!!!」



お前ぇ!!人が一生懸命打開策を考えていたのにぃ!!!台無しじゃねぇぇかぁぁぁあああ!!!!!


【恭介】
「タ・・・タツヤ君・・・それ・・・」


恭介さんは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして、エイミーと俺を交互に見てくる。
口をパクパクさせていて、かなり焦っているようだった。

やっぱり、人には見せたくないものだったらしい・・・。


【タツヤ】
「ご、ごめんなさい!!」

【タツヤ】
「これ・・・恭介さんの机で見つけて・・・」

【タツヤ】
「中身が気になって・・・・つい」


仕方なくこれまでの経緯を全て白状した。ここまできたら、言い訳のしようがない・・・。


・・・やっぱり、怒られるだろうか。

936 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/09(金) 00:16:15.76 ID:Xj2zG4h70

【恭介】
「そう・・・か・・・」

【タツヤ】
「・・・すいません」

【恭介】
「ハハハ、なんか恥かしいな」


苦笑いを浮かべ、気まずそうに顔を掻く恭介さん。とりあえずは怒ってはいないようだった・・・。
でも、この反応・・・何か秘密がバレてしまったというような・・・そんな反応だ。
やっぱり・・・恭介さん・・・。


【タツヤ】
「あ、あのっ!!」

【恭介】
「? 何?」

【タツヤ】
「う・・・浮気はいけないことだとおもいますっ!!」


俺は、思いきって恭介さんに自分の考えを主張する。

だって、やっぱり・・・そういうのは駄目だと思うし・・・仁美さんが知ったら悲しむだろうし・・・。
これ以上、道を踏み外したら駄目だよ恭介さん。


【恭介】
「・・・・え?」


恭介さんは、何を言われているのか分からない、そんな顔をしている。
気まずそうな表情から一転して、キョトンとした顔になっていた。

惚けようとしているのか・・・でも、そう簡単には・・・。


【恭介】
「いや…何のこと・・・かな?」



・・・アレ?
ナニカ、オカシイゾ?



【タツヤ】
「・・・・・え?」

【タツヤ】
「だ・・・だって此処に「さやか」って・・・」

【恭介】
「・・・・あ、ああそういうことか」


恭介さんの反応がいまいちだったので、俺はエイミーが咥えた楽譜を指差す。
すると、恭介さんは少し考え込むと、何かを理解したかのように頷いた。

937 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/09(金) 00:18:30.79 ID:Xj2zG4h70


【恭介】
「・・・・」

【恭介】
「さやかと僕はそんな関係じゃないよ」

【タツヤ】
「え!?」


恭介さんの言葉を聞いて、思わず声を上げてしまった。


・・・え、違うの?
じ・・・じゃあ、このさやかって人は本当に・・・誰?


【恭介】
「僕とさやかは・・・ただの幼馴染、さ」

【タツヤ】
「・・・・マジっすか?」

【恭介】
「うん」

【タツヤ】
「oh…」


幼馴染・・・だと・・・?
ということは、さっきのは俺が勝手に勘違いして、訳の分からない発言をしただけ・・・?
改めて恭介さんを見てみると・・・うん、嘘をついているようには見えないな。


やばい、顔が熱くなってきた・・・恥かしい・・・。

938 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/09(金) 00:20:56.38 ID:Xj2zG4h70

――――――――――――――――――――


【タツヤ】
「すいませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」ドゲザァ

【エイミー】
「ミー」オナジクー


【恭介】
「い、いや、別に気にしてないよ」エイミーマデ・・


恭介さんの前で、自分の頭を地面に擦り付けるように土下座する。
真似をしているのか、エイミーも俺の隣で頭を下げるようにうつ伏せになっていた。

恭介さんが困惑しているけど、こうでもしなきゃ俺の気が治まらない。


【恭介】
「とりあえず頭を上げてよ」

【タツヤ】
「いや、しかし・・・」


恭介さんはそう言ってくれるが、中々頭を上げる気になれない。
申し訳ないという気持ちも勿論あるが、自分の勘違いが恥かしくて恭介さんをまともに直視できない、という理由もあった。


【恭介】
「怒ってないから」

【タツヤ】
「は、はあ・・・」

【恭介】
「でも、人の物を漁るのはあまり褒められたものじゃないよ」

【タツヤ】
「うぅ・・・」


恭介さんは笑顔でそう嗜められる。今になって好奇心に負けた自分が恨めしく思った。

それに、よく考えれば・・・あの楽譜は相当年季が入っているものだし、だいぶ昔のものだというのは一目瞭然だ。
そのさやかって人が現在進行形のそんな相手じゃないって事くらい、ちょっと考えれば分かることだったかもしれない。
そう考えると、ますます自分の軽率な行動が恥かしくなってくる。

・・・穴を掘って埋まりたい気分って多分こういうのを言うんだろうな。


【恭介】
「それにしても・・・懐かしいな・・・」

【タツヤ】
「あの、これって・・・?」

【恭介】
「それは僕が病院に入院していた時に、さやかが買ってきてくれた物なんだ」


入院・・・そう言えば仁美さんがいつか話してくれた事があったな。

恭介さんは昔、事故にあって長い間入院していたことがあるらしい。詳しいことは知らないが、怪我したのは確か・・・足だったかな?

仁美さんはその時、何回かお見舞いに行ったって聞いていたけど・・・そのさやかって人もお見舞いに来ていたのか。

939 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/09(金) 00:23:17.86 ID:Xj2zG4h70

【タツヤ】
「じゃあ、この楽譜は・・・」

【恭介】
「・・・それはね。その時、僕がさやかへのお礼にと作った曲なんだよ」


ああ・・・だから、上の方にさやかって書いてあったのか。
でも、恭介さんがその人のためにわざわざ曲を作るなんて・・・幼馴染って言っていたけど、仲良かったみたいだな。

・・・仁美さんにはそういうお礼しなかったのかな?


【恭介】
「・・・結局、渡せなかったんだけどね」

【タツヤ】
「え?な、なんで・・・」

【恭介】
「・・・・彼女が、遠くに行ってしまったから、かな」


恭介さんは窓越しの空を見つめながら、何処か寂しげに呟く。

遠くに・・・か。何処かに引っ越しちゃったのかな?俺、会ったことないし。
でも、それなら・・・頻繁じゃなくても、会うことくらいは出来るんじゃ・・・。
恭介さんも今更で恥かしいって事なのかな?


【タツヤ】
「そ、そうですか・・・」

【恭介】
「うん、だからタツヤ君が考えているような関係じゃないから安心していいよ」

【タツヤ】
「はう・・・」


恭介さんに意地悪くそう言われ、再びへこんでしまう。
もうこれ以上言わないでください・・・というのは流石に虫がよすぎる、か。

でも、正直言うと・・・恭介さんの話を聞いて、少し安心したというのも事実だった。
もしも本当に浮気とかだったらが・・・仁美さんが可哀想だったから。


【恭介】
「はは、それに・・・さやかと僕なんかじゃ釣り合わないしね」

【タツヤ】
「へ、そんな・・・」


自嘲気味に笑いながら言う恭介さんを見て、思わず声を漏らした。
恭介さんは自分で自分のことを凄いと言う人ではないが、お世辞でこんな事を言う人でもない。
今の言葉は、間違いなく恭介さんの本心だろう。

恭介さんにこんな風に言われるって・・・そのさやかって人、どういう人なんだろう?

940 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/09(金) 00:26:13.19 ID:Xj2zG4h70

【恭介】
「さやかはさ・・・」

【恭介】
「真っ直ぐで友達想いで・・・」

【恭介】
「正義感の強い、素敵な女の子だったんだ」


恭介さんは自分の部屋の手頃な椅子に腰掛け、話を始めた。
その人のことを話している恭介さんは、思い出を懐かしむような優しい表情をしている。

でも、それと同時にどことなく寂しそうな表情も浮かべていて・・・今の恭介さんはその二つの表情が入り混っているように俺は感じた。


【恭介】
「僕も、彼女にはいつも助けられてばかりだった・・・」


恭介さんがいつも助けられていたなんて・・・ちょっと想像できない。
世界を舞台に活躍している恭介さんばかり見ていたから、この人が学生の頃をよく知らないというのもある。

でも、それでもあの恭介さんにここまで言わせるなんて、さやかって人は天女か何かなのか・・・?
そんな馬鹿げた事を考えてしまうくらい、恭介さんがその人のことを信頼しているように見えた。


【恭介】
「・・・ハハ、まあ昔の話だよ」


恭介さんはそう言って、照れ笑いを浮かべる。
そして、そんなこの人の姿を見ていると・・・なんとなくだけど、理解できてしまう。
その人との思い出が――――恭介さんの中では、かけがえのない宝物になっているのだと。


【タツヤ】
「あの・・・」

【恭介】
「ん?何?」


だからこそ、頭の中で一つの疑問が生まれる。

その疑問を・・・言葉として声に出していいのかと一瞬迷ったが、俺は静かに言葉を続けた。


【タツヤ】
「恭介さんは・・・ひょっとして」


【タツヤ】
「その人のこと・・・好きだったんですか?」


恭介さんの一連の言動を聞いて、疑問に思ったこと。それは、恭介さんとその人との関係についてだった。
恭介さんは幼馴染だと言っていたけど・・・実際はどうだったのだろう?

ひょっとしたら恭介さんは、そのさやかって人に恋愛感情を抱いていたのかもしれない――――俺は、そう考えていた。

941 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/09(金) 00:28:24.53 ID:Xj2zG4h70

【恭介】
「え・・・・」

【タツヤ】
「えっあ、いや、すいません!!変なこと聞いちゃって・・・」


普通だったら、昔の恋愛話で済んでいただろう。

でも、今の恭介さんには仁美さんという婚約者がいる。

だから・・・今の一言は、下手をすると二人の仲を否定することになるかもしれない。
そんな危うさを持つ諸刃の剣のような言葉だったので、俺は言うのを躊躇っていた。


【恭介】
「・・・どう、だろうね」


俺の疑問に対して、恭介さんは暫く無言のままだったが、少しするとポツリとそう呟いた。


【恭介】
「正直なところ・・・よく分からないんだ」


そして、恭介さんの口から発せられた答えは―――――明確な回答とは言えない、曖昧なものであった。
しかし、今の恭介さんを見ていると…その言葉は、心の底から搾り出した本当の気持ちであると、なんとなく理解できる。

恐らく、自分にとってそのさやかという人がどんな存在だったのかを必死に考えた末に出したのが、この答えだったのだろう。


【タツヤ】
「恭介、さん・・・」

【恭介】
「はは、それに今僕には仁美がいるからね」

【恭介】
「下手な事言ったら、それこそ浮気になっちゃうよ」


笑いながらそう応える恭介さん。

・・・そういえば以前公園で仁美さんと話した時、2人の中学生時代の事を聞いた事があったな。

その時の仁美さん・・・何か様子が可笑しかったけど、ひょっとして仁美さん・・・この事を知っていたのかな・・・?


【恭介】
「・・・まあ、それでも」

【恭介】
「さやかが僕の恩人であることに代わりはないんだけどね・・・」


恭介さんは背もたれに寄り掛かり、上を見上げながらそう呟いた。

恩人ってどんな意味だろう・・・。精神的な意味で、ということだろうか?

942 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/09(金) 00:31:24.67 ID:Xj2zG4h70

【恭介】
「・・・タツヤ君はさ『奇跡と魔法』ってあると思うかい?」

【タツヤ】
「えっ」


突然、そんな事を言い出す恭介さん。それを聞いて、俺は思わず声を漏らした。

だって、俺の中で『奇跡と魔法』って言われて一番最初に出てくるものといったら――――――――


【恭介】
「メルヘンな話だと笑われるかもしれないけど、僕はあるって思ってるんだ」

【タツヤ】
「う・・・嘘・・・」



―――――――それは、魔法少女のことだったから。



【恭介】
「ハハ、意外だった?」

【タツヤ】
「い・・・いや、そんなことは」


どうして・・・恭介さんがそんなことを言い始めたんだろう。ただの偶然なのだろうか・・・。
それとも・・・・やっぱり恭介さんは、魔法少女と何か繋がりが・・・?
そもそも、それと今までの話に何の関係があるというのだろうか。

そんな風に俺が思考を巡らせていると、恭介さんは椅子から立ち上がり、部屋にあるベランダの近くまで歩を進めた。


【恭介】
「でも、僕は思うんだ」


ベランダの近くで立ち止まり、窓越しに外を見つめながら恭介さんは呟く。


【恭介】
「その『奇跡と魔法』を手に入れるためには・・・」

【恭介】
「それ相応の『代償』を支払わなければいけないってね・・・」


恭介さんは、何故か自分の左手に視線を落とし指を動かしながら言った。

代償・・・?なんのことだろう・・・?
もし、魔法少女のことを指しているのだとしたら、願いを叶えて貰う代わりに魔獣と戦わなければいけない事とかだろうか。

でも、それって代償ってのとは少し違うような・・・。

943 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/09(金) 00:34:01.09 ID:Xj2zG4h70

【タツヤ】
「代償・・・」

【恭介】
「うん、自分にとってかけがえのないものを支払わなくちゃいけないと思うんだ」


視線を再び外に移し、恭介さんは話を続ける。

奇跡を望む代償として、自分にとって大切なものを失う。

それが魔法少女に関係する話なのか、俺には分からない。
ひょっとしたら、全然関係ない話で俺が勘違いしているだけかもしれない・・・その時は、そう思った。


【恭介】
「でも、人間って失わないと気付かないんだよね」

【恭介】
「それが・・・自分にとってどれだけ大切なものだったかなんて、さ・・・」


まるで・・・自分に言い聞かせているようにして、恭介さんが呟く。
何かを思い出すかのように、夜空を見上げながら。

こっちから表情は分からないけど・・・今の恭介さんの後姿は、とても寂しそうだった。


【タツヤ】
「恭介、さん・・・?」

【恭介】
「ごめんごめん、ちょっと可笑しな話をしちゃったね」

【タツヤ】
「い、いえ、そんなことは・・・」


恭介さんは此方に振り返り、再び笑顔を作る。結局、恭介さんの言葉の真意を・・・俺は理解することが出来なかった。

でも…さっきも思った事だが、今の話って・・・そのさやかって人の事と何か関係があるのかな。

まさか、そのさやかという人も暁美さんやゆまさんと同じ・・・?


【恭介】
「タツヤ君」

【タツヤ】
「あ、はい」


色々と考えていると、急に恭介さんに名前を呼ばれた。
何かと思い、視線を向けると恭介さんも此方に向き直り、ゆっくりと近付いてくる。

944 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/09(金) 00:36:31.84 ID:Xj2zG4h70

【恭介】
「その楽譜・・・貸してくれるかい」

【タツヤ】
「へ?は・・・はい」


俺は言われたとおり、エイミーが咥えていた楽譜を渡す。

すると、恭介さんは棚を開け何やら準備を始めた。


【恭介】
「よいしょっと・・・」

【タツヤ】
「あの・・・何を・・・?」

【恭介】
「いや、せっかくだからタツヤ君にこの曲を聴いてもらおうと思ってね」


恭介さんはそう笑顔で応え、椅子などを端に寄せスペースを作り始める。
そして、部屋に置いてあったヴァイオリンに手を伸ばした。


この曲って・・・さやかって人のために書いたと言っていた、その曲を・・・か?


【タツヤ】
「え!?いや、そんな大切な曲を・・・悪いですよ!!」


恭介さんにとって思い出の曲であろうその曲を俺なんかのために弾くなんて、いくらなんでも・・・。
それに、前にも言ったが俺は恭介さんの弾くヴァイオリンの音色を聞くと、いつも眠ってしまうのだ。

そんな自分にそんな大事な曲を聞く権利なんてないと、俺は恭介さんに訴え掛ける。


【恭介】
「いいんだ。中学入学記念ってことで」

【恭介】
「それに、なんだか久しぶりにこの曲を弾きたくなってね」


それでも、恭介さんはお祝いに弾かせてくれと言って俺の話を聞いてくれない。

勿論、そう言って貰えて嬉しくないわけがない。世界が注目している天才・上条恭介の曲をたった1人で聞けるのだ。こんな美味しい話はないだろう。

でも、なんというかサービス良すぎですよ・・・恭介さん。

945 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/09(金) 00:38:04.43 ID:Xj2zG4h70

【タツヤ】
「そう、ですか。じゃあ・・・お願いします」


これ以上拒む理由もないと思った俺は、恭介さんの提案を受け入れることにした。

むむ・・・こうなったら、何がなんでも途中で寝るわけにはいかないぞ。
手に針を刺してでも眠気を飛ばさないと・・・。


【タツヤ】
「って・・・その楽譜、読めるんですか?」

【恭介】
「大丈夫。自分で書いた曲は大体頭に入ってるから」

【恭介】
「ちょっとでも楽譜を確認出来れば弾けるよ」

【タツヤ】
「(す、すげー・・・)」


やっぱり・・・この人天才だ。


【恭介】
「では、たった一人のお客様であり」

【恭介】
「僕の大切な友人であるタツヤ君のために」


恭介さんの部屋の中央に出来たスペースで、恭介さんが一礼する。
俺はたった一つ用意された簡易観客席で、緊張しながら演奏が始まるのを待つ。

ヴァイオリンを持った恭介さんは、目の色を変え・・・集中している。その様子が此方にも伝わってくるくらいだ。
表情はいつもの優しいものとは全く異なり、堂々としていて・・・凛々しくもあった。

946 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/09(金) 00:38:54.76 ID:Xj2zG4h70



【恭介】
「曲名―――――」








【恭介】
「『Oktavia』」

947 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/09(金) 00:41:20.53 ID:Xj2zG4h70

ttp://www.youtube.com/watch?v=PVQRlsv7pY0&feature=related


恭介さんがヴァイオリンを構える。
顎当てに自分の顎を乗せて固定し、右手に持った弓を使ってヴァイオリンを弾き始めた。

右手の弓と左手の指を細かく動かし、ヴァイオリンから綺麗な音色が奏でられていく。


【タツヤ】
「(すげぇ・・・)」


今まで恭介さんの演奏を聞いたことは何回かあったが、ここまで近くで聞いたことはない。
だからなのか、最初のうちはどちらかというと曲よりも演奏している恭介さんに注目してしまっていた。

目の前でヴァイオリンを弾いている恭介さんがすごく印象的だったのだ。

どうやって音を出しているのかは全く分からないが、両手を小刻みに動かし一心不乱に演奏している姿を見て、とにかく凄いなと思った。


【タツヤ】
「(それにしても・・・)」

【タツヤ】
「(なんだか…悲壮感が漂う曲だな・・・)」


曲に耳を傾けると、何だか不思議な感覚に囚われていく。
演奏にも迫力がありメロディーも綺麗で良い曲だと思うのだが・・・なんとなく、もの悲しい印象を受ける。
例えるなら・・・・そうだな・・・。



悲しみに耐えて頑張ってきたけど、徐々にその悲しみに押し潰されていって・・・それでも、必死にその感情と戦い続けて・・・。


―――――でも、結局その感情に押し潰されて・・・。











―――――それを、見ていることしか出来なかった――――――



948 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/09(金) 00:44:55.60 ID:Xj2zG4h70


【タツヤ】
「(・・・あれ?)」

【タツヤ】
「(俺・・・・この曲、知って・・・・る・・・・?)」


なんだ・・・今の感覚・・・?俺は・・・昔、この曲を―――――――――聞いたことが、ある・・・?


そんな馬鹿な・・・、だって恭介さんはこの曲を俺に始めて・・・・。




――――――――ズキッ



【タツヤ】
「がっ!!」


恭介さんの弾く曲に違和感を覚えた時だった―――――――


―――――――俺が、『例の頭痛』に襲われたのは。


【タツヤ】
「が、はっ!!あっ!!」


痛っ・・・!!また・・・、この頭痛・・・!!くそ・・・一体なんだってんだよ・・・!!


ズキッズキッズキッズキッズキッズキッズキッズキッズキッ


うっ・・・、なんだか・・・前より痛みが増しているような・・・。
視界が・・・霞む・・・・。く・・・そ・・・。




『・・・・やめて!!』



くっ・・・・なんだ。



『お願い・・・・て!!!』



・・・脳内に、見たこともない映像が・・・流れ込んでくる・・・。

不気味な・・・風景に・・・なんだ・・・アレ・・・人、魚・・・?

それに・・・



『さやかちゃんだって、こんなの嫌だった筈だよ!!!!』



・・・この前・・・夢で見た・・・・・。


949 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/09(金) 00:47:00.02 ID:Xj2zG4h70

【タツヤ】
「はっ・・・・あっ・・・!!」

【恭介】
「・・・!!タ・・・タツヤ君!?」


俺の異変に気付き、恭介さんが演奏を中断する。そして、慌てて俺の傍まで駆け寄ってきた。


【恭介】
「だ、大丈夫かい!?」

【タツヤ】
「はあ・・・はあ・・・だ、大丈夫です・・・」

【タツヤ】
「少し、頭痛が・・・」


不思議なことに恭介さんが演奏を中止すると、あれだけ酷かった頭痛があっという間に納まっていく。

どういうことだ・・・?まるであの曲に反応したみたいじゃないか・・・。
それに・・・なんだったんだ、あの映像。あの空間って・・・魔獣の瘴気の中みたいだった・・・。

それにあの女の子・・・あれって・・・。


ズキッ

【タツヤ】
「ぐっ!!」

【恭介】
「ほ・・・本当に大丈夫?」

【タツヤ】
「は・・・はい」


くそ、さっきのやつを思い出そうとすると・・・また頭痛が・・・訳わかんねぇ。

950 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/09(金) 00:49:26.93 ID:Xj2zG4h70

【恭介】
「お風呂上りで体が冷えたのかな・・・?」

【恭介】
「ごめんよ。なんだか無理させていたみたいだね」

【タツヤ】
「い・・・いや・・・そんなことは・・・」


この頭痛は恭介さんのせいじゃないのに、いらぬ心配を掛けてしまった。
まあ、目の前で頭を抱えられ苦痛に歪む顔を見せられたら、誰でもそう考えちゃう・・・か。

せっかく俺のために演奏してくれたのに、悪いことをしてしまった・・・。


【恭介】
「とりあえず、今日はもう寝たほうが良いよ」

【タツヤ】
「あ・・・・はい・・・すみません」


結局、恭介さんは俺の身体を心配して、ヴァイオリンを弾くのを止めてしまった。
そのまま、俺を客間まで案内してくれて、わざわざ布団まで敷いてくれた。
本当に今日は恭介さんには迷惑ばかり掛けてしまっているな・・・。

そんな罪悪感を覚えながらも、布団に入ると演奏中には感じなかった睡魔がやって来る。

あんなことになるくらいなら・・・むしろ、睡魔に襲われたほうがマシだった・・・な・・・。

本当に・・・この頭痛・・・って、なん・・・なん、だよ・・・・。


まだ寝るにはだいぶ早い時間だったが、俺は理不尽な頭痛に悩まされながら・・・徐々に眠りに落ちていった。

951 :川´_ゝ`){流石キタエリ、ブレないな ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/11/09(金) 00:57:42.02 ID:Xj2zG4h70
今回は以上です。お疲れ様でした。

まどオンの某便利ツールが不正扱いされたそうで。
運営、他にやること沢山あるやr(ry

そんなどうでもいい話はさておき、後1回+αくらいの更新で3話終了です。
ギリこのスレで終わると思います。

では、また次回。お休みなさい ノシ
952 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/11/09(金) 01:58:32.87 ID:YK8lyabko

次回も期待してます
953 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/09(金) 16:37:46.88 ID:2USqjC3Uo
ゆまはよ
954 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/11/09(金) 17:33:34.94 ID:EsEQEUR70
乙乙!
955 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(香川県) [sage]:2012/11/09(金) 18:30:30.40 ID:0qB+lha+0

まどかさん弟を苦しめてまで演奏中断させるってよっぽど腹に据えかねたのか
956 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/11(日) 01:34:16.70 ID:MXBzPyau0
乙!これは話が一気に進む予感…
楽しみにしてます!
957 :川´_ゝ`){動物の森 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/15(木) 01:45:50.16 ID:rISlsts30
夜遅くにこんばんわ>>1です。いつも閲覧&コメ有難う御座います。

次回の投稿ですが11月16日0時以降を予定しております。
ちょっとリアがごたごたしてるので、ひょっとしたら17日になるかもしれません。
宜しくお願いします。

それでは、また。ノシ
958 :川´_ゝ`){TDS下巻読んだ ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/11/16(金) 00:06:02.02 ID:GKd/flaB0
夜遅くにこんばんわ>>1です。

それでは続きを投稿します。
959 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/16(金) 00:08:44.57 ID:GKd/flaB0

――――――――――――――――――――

【恭介】
「ふぅ・・・」


タツヤを寝かした後、恭介は自分の部屋で椅子に座り背もたれに寄りかかっている。
先程の出来事の後、タツヤに特に異常はないということだったので、少し安心していた。

時計を見ると、恭介が就寝するにはまだまだ早い時間帯である。


【恭介】
「・・・・」


ふと、恭介はタツヤが取り出した箱に視線を移す。
そこには、沢山のCDと一緒に・・・沢山の思い出が詰まっていた。

いなくなってしまった幼馴染との楽しかった日々の記憶と――――――

―――――忘れようとしても・・・忘れられない、消えることのない悲しみと一緒に。


彼女との思い出でいつも蘇るのは、あの時の病院での記憶。
自分が絶望に淵に沈んでいた時に、光を差し込んでくれた言葉。

『奇跡も魔法もあるんだよ』

その後の日々は、恭介にとってまさに奇跡といっていい・・・まさに天国のようなものだった。
治らない筈だった左腕が、突然完治したのだ。

またヴァイオリンが弾ける――――――その紛れもない事実が恭介を高ぶらせた。

それだけじゃない、クラスのアイドル的存在だった志筑仁美が自分に告白してくれたのだ。
嬉しくない筈が無い。夢見心地で浮かれていた恭介はその場で即仁美と付き合うことに決めた。



そう・・・有頂天だった


調子にのっていた・・・それこそ世界が薔薇色に見えるくらいに・・・。



だから、気付かなかったのだ。
自分が一番辛い時に支えてくれた、一番大切な人の存在が・・いつの間にか、消えてしまっていたことに。

そして、自分の中に眠っていた・・・・本当の気持ちに・・・。


【恭介】
「・・・・・僕は、まだ・・・」


そんな彼女に対しての負い目や罪の意識が、今でも恭介の心を縛り続けていた。




\ピリリリ・・・/

960 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/16(金) 00:11:15.42 ID:GKd/flaB0

【恭介】
「あ・・・」

【恭介】
「電話が・・・」


恭介がボーッと空を見上げていると、近くに置いていた携帯が鳴り出す。


【恭介】
「え〜と・・・」


電話に出ようと、椅子から立ち上がり携帯に手を伸ばす。
誰からの電話かとディスプレイを見てみると、そこには恭介もよく知っている人物の名前が表示されていた。


ピッ

【恭介】
「中島か?」

【中沢】
『誰が中島だ、俺は中沢だ』


電話の相手は、学生の頃からの友人からだった。
友人の中でも、恭介が心を許せる数少ない人物の1人で、昔から色々と相談に乗ってくれている。


【恭介】
「ごめんごめん。しばらくだね」

【中沢】
『ったく、帰ってきてるなら連絡くらいよこせよな』

【恭介】
「ははは・・・」


電話越しで文句を言われ、苦笑する恭介。
彼自身日本に帰ってきたのはつい最近のことで、またタツヤの事もあったためそこまで頭が回らなかった。

そのうち連絡しようと思っていたみたいだが、先を越される形になってしまった。


【中沢】
『どうだよ、調子は?』

【恭介】
「まあ、ぼちぼちだね」

【中沢】
『日本の天才と呼ばれるのがボチボチねぇ〜』

【恭介】
「茶化さないでよ」


彼もまた恭介の友人であると同時に、恭介を応援している人間の1人である。
恭介の世界での活躍は、逐一彼の耳に入っていた。
本人相手にそんな冗談交じりの皮肉を言うのも、ある意味彼の楽しみの1つであった。


【中沢】
『まあ、なんだ。元気そうで良かったよ』

【恭介】
「うん」


恭介も彼と話すことで、改めて日本に帰ってきたのだと認識することができた。

961 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/16(金) 00:13:13.54 ID:GKd/flaB0



【中沢】
『・・・で、いい加減決心はついたのか?』


しかし・・・そうしみじみ思っているのも束の間、彼が恭介に話を切り出す。
先程とは一転して声のトーンを落とし、電話越しでも彼が真剣な顔付きになっているのが伝わってきた。


【恭介】
「・・・・何が?」


そんな雰囲気に対して、恭介は彼の言っていることが理解できないかのように振舞う。

・・・自分の動揺を悟られまいと、必死に平静を装いながら。


【中沢】
『惚けるな』


しかし、彼にはそんな恭介の考えなどお見通しだった。


【中沢】
『志筑さんのことだよ』

【中沢】
『いい加減、籍入れる気になったか?』

【恭介】
「・・・・」


彼が恭介に対して、こんなトーンで話すことなんて―――――1つしかない。

――――――――志筑仁美との関係についてだ。

そして、その話題が恭介にとってふれて欲しくないものであるということも、彼は把握している。
案の上、彼が仁美の名前を出すと、恭介は思い悩むようにして黙り込んでしまった。


【中沢】
『はあ、その様子じゃ・・・まだみたいだな』

【恭介】
「・・・ごめん」


彼が懸念していたこと・・・いつまでも二人が中途半端な婚約関係でいること。

恭介と仁美の関係は他人から見れば完全に夫婦そのものなのだが、肝心の結婚を二人はまだしていない。
仁美の苗字が未だに『志筑』のままであることが、その事実を物語っている。

学生時代から、何かと二人の関係をサポートしてきた中沢にとって、その問題はもはや他人事ではなかった。
だから、こうして度々恭介や仁美に結婚の話を持ちかけたりなどと奮闘している。

962 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/16(金) 00:16:02.18 ID:GKd/flaB0

【中沢】
『・・・まだ、美樹のこと引きずってんのか?』

【恭介】
「・・・」


二人が結婚に踏み切れない理由、それは中沢自身も理解していた。

それは、恭介の幼馴染――――――――美樹さやかの存在。

彼女は中学の頃に突如として行方不明になっていた。
そして、それは当時入院していた恭介が退院してから・・・わずか数日後の出来事だったのである。

恭介も・・・仁美も、さやかが居なくなったのは自分のせいではないかと考えていた。

仁美は、自分がさやかから幼馴染の恭介を取ってしまったからだと・・・。

そして、恭介の場合は――――――――。


【中沢】
『気持ちはわかるけどさ、お前の責任じゃないだろ?』


彼から見れば、恭介が何故そこまで美樹さやかに遠慮しているのか、いまいち理解できなかった。

幼馴染だからといってそこまで自分を責めることはないと、彼は恭介を励まし続けている。


【恭介】
「でも、僕は・・・」


しかし、そんな彼に感謝しつつも・・・恭介は、後一歩を踏みきれずにいた。

そしてそれは・・・・仁美も同じであった。


【中沢】
『今のお前を美樹に見られたら・・・怒鳴られるぞ』

【恭介】
「・・・はは、かもね」


彼は特にさやかと親しかったわけではないが、性格はなんとなく分かる。
だからこそ、恭介に訴え続けていた。

今の恭介達を見て――――――――――美樹さやかが喜ぶはずがない。

と言っても、結局は恭介を励ますために自分の憶測を言っているに過ぎないのだが・・・。


【中沢】
『まあ、俺が口を挟めることじゃないんだろうけどよ』

【中沢】
『志筑さんのことも・・・ちゃんと考えてやれよ』

963 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/16(金) 00:19:25.07 ID:GKd/flaB0

仁美のことを考えろ・・・それは彼なりの恭介へのメッセージ。

前を見ろ――――――

    ――――――過去に縛られるな――――――

                  ――――――現実を受け入れろ

――――――厳しいかもしれないが、それでもお前は前に進まなければいけない。


そう、彼は暗に示していた。


【中沢】
『じゃないと・・・きっと、美樹も悲しむぞ』

【恭介】
「そう、だね。ありがとう」


そのことは、勿論恭介にも伝わっている。恭介自身も頭では分かっているのだ。
いつかは・・・・答えを出さなければいけないということを・・・。

だがしかし―――――――その答えを出すにはもう少し時間が掛かりそうだった。


【中沢】
『へっどうだ、俺も大人になっただろ?』

【恭介】
「そうかな〜?」

【中沢】
『おい』


口ではそう言うが・・・確かに彼は大人になった。恭介もそう感じている。
彼が居なければ・・・恐らく仁美とも今の関係を続けていられなかっただろう。


もっとも、美樹さやかの件でギクシャクしていた二人の関係を修復する最大のきっかけになったのは、既に客間で眠りについている少年なのだが・・・それはまた別の話である。


【恭介】
「ははは、それで、そっちの方はどうなんだい?」

【恭介】
「仕事は順調?」


ようやくいつもの雰囲気が戻ってきたところで、今度は恭介が彼に仕事のことを聞き始める。


【中沢】
『いやいや、お前と違って俺は普通のサラリーマンだからな』

【中沢】
『毎日、おっかな〜い女社長に怒鳴られてばっかりだよ』


中沢は普通の大学を卒業した後、某企業で事務として働いている。一般として、男性は営業職の方が多いのだが、営業は彼の性には合わなかったらしい。

おかげで、中沢は就職活動にだいぶ苦労したそうだ。

964 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/16(金) 00:22:57.72 ID:GKd/flaB0

【恭介】
「社長と直接話せるなんて、凄いじゃないか」

【恭介】
「確か、早乙女先生の親友なんだろ?」

【恭介】
「(それに、確か・・・タツヤ君のお母さんだったね)」


そんな彼が今の職に付くことができたのは、中学時代の恩師である早乙女和子のおかげである。
彼女が自身の友人であり、タツヤの母である鹿目詢子に彼を紹介してくれたからだった。


そのことを確認する度に、恭介を思う。
自分のことより彼本人のことをもっと気にするべきなんじゃ・・・と。


【中沢】
『お前な、人事だと思って・・・本当に怖いんだからな?』

【中沢】
『まあ、でも・・・良い事もあるけど』ニヤ


そこまで言うと、中沢は何かを思い出すようにしてニヤニヤし始めた。
それが、電話相手の恭介にも何となく伝わってくる。

今の状態は、人に見せられるような顔じゃないんだろうな、とその時の恭介は思った。


【恭介】
「へ・・・へえ、一体どんな?」


あまり聞きたくはなかったが、一応確認しておこうと恭介は続ける。


【中沢】
『いや〜、社長の秘書さんがマジ女神(ry』




『中沢ぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああ!!!!!!!!!!』ドコイキヤガッタアノガキャァァァァアアアア!!!!



しかし、彼が気持ち悪い笑みを浮かべながら理由を話し始めた瞬間―――――後の方で物凄い怒号が聞こえる。


そしてその怒号は・・・中沢に対するものだった。


【中沢】
『』ビクッ

【恭介】
「い・・・今、凄い声が電話越しに・・・」


当の本人はというと、その声を聞いた途端に顔を青ざめさせ、ガタガタと身体を震わせる。

声は電話越しでも響いており、恭介もその声を聞いた瞬間思わず身体をビクつかせた。
何事かと思い、恭介は恐る恐る中沢に状況を尋ねる。

965 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/16(金) 00:26:11.52 ID:GKd/flaB0

【中沢】
『・・・悪い、実はまだ仕事中でな』


暫く固まっていた中沢だが、ようやく口を開く。
どうやら彼は仕事先から恭介に電話を掛けていたようだった。


【恭介】
「それは流石にマズイよ、中村」

【中沢】
『俺は中沢だ・・・はあ、悪い・・・切るわ』

【恭介】
「う・・・うん、頑張って・・・」


一気にテンションが下がる彼の声を聞いて、コイツも色々苦労しているんだな、と思う恭介だった。


【中沢】
「ああ・・・今度暇な時にでも飲みに行こうぜ」

【恭介】
「僕、お酒はちょっと・・・」

【中沢】
『何女々しいこと言ってんだよ』

【恭介】
「まあ、おいおい・・・ね」

【中沢】
『約束したぞ、じゃあな』プッ


一方的に約束を取り付けられ、電話を切られる。
恭介は強引に誘ってきた彼に対して、一つ溜息を付いた。

それでも偶に帰ってきた時くらい、親友の愚痴に付き合うのも悪くない・・・と恭介は笑みを浮かべるのだった

966 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/16(金) 00:29:22.63 ID:GKd/flaB0

【恭介】
「・・・」

【恭介】
「・・・さやか」


電話を置き再び静かになった自分の部屋で、恭介は幼馴染の名前を呟いた。

彼女が行方不明になって、もう随分と年月が経つ。
警察どころか・・・彼女の両親でさえ、彼女の捜索を諦めてしまったくらいに――――。


でも、どんなに月日が経とうとも、恭介の心にぽっかり開いてしまった穴が埋まることは無かった。


【恭介】
「・・・今でも少し思うんだ」


【恭介】
「僕の腕が治らなければ・・・君はいなくならなかったんじゃないかって・・・」


自分の左手を見つめながらそう呟く恭介。
非現実的だと相手にされないかもしれない・・・しかし、恭介は本気で思っていた。

自分の左腕と引き換えに、彼女はいなくなってしまったのではないかと――――。

『奇跡と魔法』を手に入れる為の『代償』―――――それが・・・彼女だったのではないかと。


【恭介】
「こんな僕をみたら・・・君は、やっぱり怒るかな」

【恭介】
「・・・駄目だよね、仁美もいるのに」


中沢の言う通り、仁美と今の関係を続けるのは良い事では無い。
そんなことは恭介だって分かっている。

最初は仁美の片思いによる告白で始まった関係だったが、今では恭介自身も仁美のことをちゃんと愛している。
そして、彼女を幸せにしたいという気持ちも勿論あった。

だが・・・それでも、美樹さやかのことを考えると・・・どうしても一歩が踏み出せない。

恭介は、怯えているのだ
自分が結婚して幸せになれば・・・自分はさやかのことを忘れてしまうのではないかと。

そして―――――――――自分だけが、幸せになっていいのか・・・と。


【恭介】
「・・・本当に、僕は最低な人間だ」


さやかに恩返しをすることができない。かといって、仁美を幸せにすることもできない。
そんな中途半端な自分に恭介は嫌気が指す。

何が天才だ、と・・・・恭介は小さく呟く。

そして、今日は眠れそうにないな・・・・と心の中で思うのだった


967 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/16(金) 00:33:19.16 ID:GKd/flaB0

――――――――――――――――――――

とある会社内にて――


【詢子】
「中沢ぁぁぁぁぁあああ!!!!」

【中沢】
「はいぃぃいい!!!」

【詢子】
「てめぇ!!この書類ミスだらけじゃねぇか!!何やってんだ!!!」

【中沢】
「す、すいません!!」


怒り狂った詢子に書類を投げつけられる中沢。
社長室にいるにも関わらず、詢子の声は社内全てに響き渡っている。
しかし、社内にはまだ仕事で残っている社員が結構いるのに、その怒号を聞いて慌てる人はいなかった。


【詢子】
「何回同じ間違いすりゃ気がすむんだ!!今すぐやり直せ!!」

【中沢】
「は、はい!!!」


全員考えることは一緒だったのだ・・・・また中沢か、と。


【中沢】
「うぅ、くそ〜」カタカタ


「コーヒーどうぞ」

【中沢】
「あ、どうも」


自分のデスクに戻り、PCと睨めっこをしている中沢に1人の女性が近付く。
女性は彼のデスクまで近付くと、淹れたてのコーヒーを置いてくれた。


【中沢】
「って、うぇっ先輩!?」

【織莉子】
「ふふ、大変そうね」

【中沢】
「は、はいぃ」


コーヒーを持ってきてくれたのは詢子の秘書を務める美国織莉子だった。
織莉子は年齢でも入社した年でも中沢の1年先輩に当たる。

968 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/16(金) 00:35:50.41 ID:GKd/flaB0

やたらと詢子に絡まれ・・・もとい怒られる中沢に何かと世話を焼いてくれていた。
中沢自身も、そんな彼女に信頼を寄せており、ちょっとした好意も持っていた。


オイ、ミクニサントナカザワガハナシテルゾ

ナカザワノクセニナマイキダ

キョウモウツクシイゼミクニサン

オレニモコーヒークレーミクニサン

マタオトコドモガハナノシタノバシテル

ソンナニムネノオオキイコガイイノカコノヤロー

クッ


織莉子がオフィスルームに来たことで、社内に残っている社員の視線が一斉に集まる。
社内No.1の美貌とスタイルを持つと言われている織莉子は、男性社員達の中ではアイドル的存在だった。
逆に、そのせいで女性社員の評判はあまり芳しくなく、中には陰口を言っている女性社員も少なくない。
以前、織莉子が給湯室で聞いた話がまさにそれだ。


【詢子】
「お前ら仕事しろー!!!!!!」カッ!!

【一同】
「「「げえぇ、社長ー!!!」」」


社員達が仕事そっちのけで織莉子達を見ながら談笑していると、いつの間にかオフィスルームに来ていた詢子に怒鳴られる。
社員達はそれを聞いて、大慌てで自分の持ち場に戻っていった。

詢子はそんな社員達をチェックしながら織莉子達に近付いていく。


【詢子】
「織莉子、こんなところにいたのか」

【織莉子】
「何かご用ですか?」

【詢子】
「ああ、〜の資料もうできてるか?」

【織莉子】
「ああ、それでしたら既に纏めてありますから、後でお持ちしますね」


中沢の席の近くで、織莉子は詢子に仕事の現状などを説明する。

秘書である織莉子の仕事は、主に詢子のサポートだ。
仕事に使う資料の作成は勿論、スケジュールの管理や詢子や取引相手の送迎など彼女の仕事は様々である。
その全てを、織莉子は1人でそつなくこなしていた。


【詢子】
「さっすがー、できる秘書がいて助かるよ」

【織莉子】
「ふふ、いえいえ」ニコ

【詢子】
「中沢に爪の垢でも煎じて飲ましてやりてーよ」チラッ

【中沢】
「すいません・・・」


仕事のできる織莉子と仕事のできない中沢を交互に見つめ、詢子は溜息をつく。
織莉子ほどまではいかなくても、せめて普通の仕事くらいミスなくこなして欲しいと彼女は頭を痛めていた。

969 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/16(金) 00:39:11.58 ID:GKd/flaB0

【詢子】
「はあー・・・早く片付けちまえよ、終わったら飲み行くからな」

【中沢】
「えっまたっすか!?」


詢子に飲みに誘われて、思わず悲鳴を上げる中沢。
誘うと言っても、平社員の中沢にとってそれはほぼ強制であり、拒否権なんかない。
最近では結構な頻度で飲みに連れてかれており、その度に詢子の愚痴や説教を聞く羽目になっていた。


【織莉子】
「今日は早く帰らなくていいのですか?」

【詢子】
「ああ、うちの息子も今日は知り合いのところに泊まりだしな」


タツヤは恭介宅に泊まり、家には知久が居たが、「楽しんでおいで」というメールを貰っていた。
なので、今日は特に時間を気にせず飲みにいけるというわけだ。


【詢子】
「つーわけで悪いが車頼むわ」

【織莉子】
「分かりました」


詢子が飲みに行くときは、ほぼ毎回のように織莉子が同伴している。
車の運転や、詢子が泥酔した時の介抱などをするためだ。勿論、お酒は飲まない。
織莉子自身、そこまでお酒が飲めるというわけでもないので、むしろ都合だった。

時たま酔っ払った詢子が織莉子にお酒を飲まそうとするのだが、その度にやんわりと拒否している。


【中沢】
「・・・」

【詢子】
「お前、今露骨に嫌な顔しただろ?」

【中沢】
「えっいや、そんなことは・・・」


中沢は二人のやり取りを眺めながら苦笑いを浮かべている。
これからのことを考えて憂鬱になっているのが顔に出てしまっていたようだった。

・・・中沢が恭介を飲みに誘ったのも、偶にはゆっくりと気ままにお酒を飲みたいと思ったからなのかもしれない。


【詢子】
「はぁー・・・さっさと終わらせろよ」

【詢子】
「間違ったところ直すだけなんだから、1時間以内な」

【中沢】
「は、はい」


そう言い残して、詢子は社長室に戻っていく。

970 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/16(金) 00:42:03.95 ID:GKd/flaB0

マタナカザワガギセイニ・・

ガンバレナカザワ

デモミクニサンモイッショナンダロウラヤマー

ヤメトケシャチョウトイッショジャソレドコロジャナイゾ

アノフカフカナムネデカイホウサレタイ

クッ

【詢子】
「仕事しろって言ってんだろ!!!!」

【一同】
「「「はいぃぃぃぃ!!!!!!!」」」


手を止めている社員達に一喝していきながら。


【中沢】
「うぅ、何でいつも俺ばっかり・・・」

【織莉子】
「さあ、どうしてかしらねぇ」


中沢が泣き言を言いながら、再び自分のPCと睨めっこを始める。
そんな彼を見て惚けたことを言う織莉子だが、本当は何となく分かっていた。

恐らく、詢子は少しでも早く、中沢に一人前になって欲しいのだ。
親友の早乙女和子を通じて雇い入れたのだから、尚更その気持ちが強いに違いない。

そう織莉子は考えていた。


【中沢】
「先輩〜」

【織莉子】
「あらあら・・・」


後は・・・彼のこういうところが、詢子がイジり倒したくなる原因なのだろうな・・・とも思った。
多分、本人は気付いていないのだろうが。


【中沢】
「(だが先輩も一緒・・・これはこれで役得だな」

【織莉子】
「何が役得なの?」

【中沢】
「んあ!!??いいいや何でもないっす!!」


心の声をその場にいた織莉子に聞かれてしまい、中沢はひどく慌てていた。

後半の部分がしっかりと声に出てしまっている辺り、中沢らしいといえば中沢らしい。
幸い織莉子に聞こえたのは最後のほうだけだったので、何とか言い逃れすることが出来たようだ。

971 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/16(金) 00:45:03.15 ID:GKd/flaB0

【織莉子】
「?そう、じゃあ私は仕事に戻るから」

【中沢】
「え・・・あ、はい」


織莉子が先程詢子に頼まれた仕事を片付けるため、自分のデスクに戻ろうと中沢に背を向ける。



ポトッ

【中沢】
「ん?」


しかし、その拍子に織莉子のスーツのポケットから何かが地面に落ちる。
中沢がその音に気付き、視線を床に移すと小さな物が転がっていた。
織莉子の物かと思い・・・彼女に視線を向けるが、彼女はそれに気付かず、そのまま歩いていってしまう。


【中沢】
「先輩、何か落としましたよ?」

【織莉子】
「え?」

【中沢】
「(なんだこれ、キーホルダー?)」


中沢が織莉子を呼び止めながら、床に落ちている物を拾う。

確認してみると、それは―――――――可愛らしいぬいぐるみのキーホルダーだった。


【織莉子】
「中沢君、それ・・・!!」

【中沢】
「え?」


中沢の声に反応して振り返った織莉子は、中沢が持っているキーホルダーを見た瞬間、目を見開く。
その後、自分のスーツのあちこちを手で確認し、それが無いことに気付いた。
すると・・・彼女はサーと音が出るかのように顔を青ざめさせていった。


【織莉子】
「か、返して!!」

【中沢】
「いや、先輩?」

【織莉子】
「早くっ!!!!」

【中沢】
「いっ!?は、はい!!!」


ツカツカと一気に距離を詰め、見たこともないような形相で中沢に詰め寄る。
普段の温厚で落ち着いた雰囲気の彼女とは全く別人ではないかと思ってしまうくらい、今の彼女には鬼気迫るものがあった。

そんな彼女の雰囲気に気圧され、中沢は何がなんだか分からないまま、そのキーホルダーを織莉子に渡した。

972 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/16(金) 00:47:33.53 ID:GKd/flaB0

【織莉子】
「ハア・・・ハア・・・」

【織莉子】
「・・・ごめんなさい、中沢君」


キーホルダーが手元に戻ると、織莉子は我に返るように落ち着きを取り戻していく。
そして、傍で驚いている中沢に頭を下げた。


【中沢】
「いや、別にいいんすけど・・・」

【中沢】
「なんなんすか、それ?」


見たところそれほど高価な物ではなく、どこにでもありそうな市販のキーホルダーである。

中沢はどうしてそんな物のために、彼女があそこまで取り乱したのかが分からなかった。
そして・・・そのキーホルダーが、彼女にとってどれだけ重要なものなのかも―――――。


【織莉子】
「・・・」

【織莉子】
「私の大切な物よ」

【織莉子】
「命よりも、大切な・・・」

ttp://hp41.0zero.jp/data/800/tiger2/pri/33.JPG


そう、そのキーホルダーは―――――――



『織莉子』


『このキーホルダーは私の宝物にするよ!!』




―――――――以前、彼女が最愛の友人にプレゼントした物。



そして・・・今は―――――――――――その友人の形見にあたる物になっていた。


ゆまが杏子の髪飾りを肌身離さず持ち歩いているように、織莉子もそのキーホルダーを持ち歩いていた。
彼女がいない寂しさを紛らわせるために・・・そして、彼女との楽しかった日々を忘れないために―――――。

973 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/16(金) 00:49:41.11 ID:GKd/flaB0

【中沢】
「へ、へぇ・・・」

【織莉子】
「ありがとう、拾ってくれて」ニコ


そんな事など知る由もない中沢に、今の彼女の言葉を理解することは出来なかった。
一方の織莉子は、そのキーホルダーを握り締め、満面の笑みをうかべていた。


【中沢】
「(さながら天使のようやで・・・)

 いや、別に感謝される程じゃっ」


その笑顔を見れただけで、キーホルダーのことなどどうでもよくなってしまう中沢だった。


【織莉子】
「ふふ、何かお礼しなきゃね」

【中沢】
「じゃあ仕事を」

【織莉子】
「手伝わないわよ?」

【中沢】
「」


もっとも、こんな性格だからいつまで経っても仕事を覚えないのだが・・・。


【織莉子】
「それとこれとは話が別よ」

【中沢】
「そんな〜」

【織莉子】
「ふふふ・・・」


結局、中沢が書類を無事に提出したのは、それから2時間後のことで・・・再び詢子の雷が落ちたのは言うまでもない。
・・・中沢が詢子の説教うんぬんから開放されるには、もう少し時間が掛りそうだ。

因みに中沢が詢子にボロボロにされるのを、織莉子は満面の笑みで眺めているだけだった。
974 :川´_ゝ`){かずマギももう終わるな ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/11/16(金) 00:55:44.16 ID:GKd/flaB0
今回は以上になります。お疲れ様でした。

次回で3話終了になります。後はエピローグだけなので次回は短めになると思います。
何とかこのスレで終わるかな・・・?もし万が一の場合があったら、また連絡します。

それでは、また次回。お休みなさい ノシ
975 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/16(金) 01:20:12.32 ID:pFks8w9DO
個人的にこの会社の構成がどうなってんのか気になるな
早乙女先生の縁があったとはいえ、平社員が社長に直接指導されたり、社長がオフィスに顔出したり、業務フローが平社員→社長みたいだから然程、規模は大きくないと思うが
というか中沢が役得すぎて裏山しい
976 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/11/16(金) 01:20:35.42 ID:/SYoobdzo

なんか某72の人がいるな

スーツの胸元がぱっつんぱっつんでとってもウェヒヒヒですねおりこさん
977 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/11/19(月) 01:23:42.38 ID:tv7f1NO/o
978 :川´_ゝ`){炬燵で寝たら風邪引くよ ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/19(月) 02:01:05.89 ID:2sGWBO1/0
夜遅くにこんばんわ>>1です。いつもコメ有難う御座います。

>>975さん、
すいません。正直会社の構成とかはあまり深く考えてなかったです^^;
なので、現実とは矛盾してる点が多々あると思いますが・・・ご了承下さい。

それで、次回の更新ですが11月21日0時以降を予定しております。
短いので多分このスレで終わると思います。

それでは、今日はこの辺で。お休みなさい ノシ
979 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/11/21(水) 00:52:56.29 ID:oZquWL+D0

――――――――――――――――――――

翌日、見滝原中学―――


【タツヤ】
「英語なんて言語が無くなってくれたら」

【タツヤ】
「それはとっても嬉しいなって」

【タツヤ】
「思ってしまうのでした」

【和子】
「物騒なこと言うんじゃありません」


放課後、殆どの学生が帰宅するか部活動に参加している中、俺は何故か教室にいた。
自分の机に座り、英語の教科書と電子辞書を広げている。
そして電子ボードの前には、母さんの親友であり英語の先生である早乙女和子(独身)さんが立っていた。


【タツヤ】
「勘弁してよ〜和子さ〜ん」

【和子】
「学校では先生と呼びなさい。あなたが英語の小テストで赤点取るからいけないんです」


小テストか、そう言えばそんな物があったな。鞄の中にグチャグチャになって入ってるけど。


【タツヤ】
「29点じゃないか〜1点くらいまけてくれても〜」

【和子】
「駄目です」

【タツヤ】
「ケチ〜」


うちの学校はテストで30点未満を取ると赤点扱いで、ペナルティーとして放課後の補習を受けなければいけなくなる。
このルールは中間や期末だけじゃなく、授業中に行う小テストとかでも適用されるらしい。

案外学業面厳しいな、うちの学校。
因みに、うちのクラスで補習を受けなければいけなくなったのは・・・俺と―――


【大輔】
「ふっ、たかだか小テストでこの程度とは・・・まだまだお前も甘いな、タツヤ」


―――この馬鹿である。


980 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/21(水) 00:55:07.53 ID:oZquWL+D0

【タツヤ】
「・・・0点のお前に言われたくない」

【大輔】
「馬鹿野郎!!中途半端な点数取るくらいなら正々堂々諦めた方が男らしいだろ!!」

【タツヤ】
「諦めた時点で男らしいも糞もねぇよ!!」


この馬鹿は、小テストを白紙で出したらしい・・・。授業中にその事で問い詰められると、こいつは

自分、日本人ですから

と、はっきり言い切りやがったのだ。自分のやったことが、あたかも当然であるかのように・・・。
本当にコイツ馬鹿だな〜ある意味尊敬するわ。


【和子】
「はいはい、喧嘩しないで二人とも」

【和子】
「じゃ、補習始めますよ」

【大輔】
「先生!!俺は将来ぽすてぃんぐでも海外えふえーでもめじゃーに行くつもりは無いので英語は必要ありません!!」ショウガイベイスターズデガンバリマス

【和子】
「ごめんなさい。先生、あなたが何を言ってるのか全く分からないわ・・・」


和子さんがコイツの訳の分からない宣言を聞いて、頭を抱えている。
というかコイツ、ついこの間ギターで天下取るって言ってなかったか・・・?
・・・気にしたら負けだな、うん。



因みにその後の和子さんの補習は、主に大輔向けの内容で進んだ。大輔の英語力があまりに酷かったからだそうだ。

一方の俺は、和子さんからプリントを渡され、自分で辞書を引きながら解くことになった。
どうしても分からない部分のみ、和子さんに質問するという形で補習は進んでいく。

・・・大輔のせいで和子さんが四苦八苦していたために、あまり質問出来なかったのは内緒だ。


981 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/21(水) 00:57:53.75 ID:oZquWL+D0


【和子】
「はい、今日はここまで」


夕方になり部活動を終えた生徒達が下校し始めた頃、ようやく俺達の補習は終了した。


【大輔】
「燃え尽きたぜ・・・真っ白によ・・・」


そして、大輔は何故か前身真っ白になりボロボロになっていた。自慢のリーゼントですら崩れて前に垂れ下がっている。
一体何と戦っていたんだろ・・・コイツ。


【和子】
「板垣君、お願いだからアルファベットくらい順番通り覚えてね・・・」ハァ

【大輔】
「先生は俺に日本男児を辞めろと?」

【和子】
「そんな事言ってません」


これだけ長い時間掛けたというのに、結局コイツはアルファベットすらまともに覚えることが出来なかった。
和子さんが何回も教えたというのに、一度もAからZまで言い切ることが出来なかったのだ。
それくらい、俺でも言えるというのに・・・。和子さんもコイツのせいで相当お疲れのようだった。

・・・うーん、この補習・・・意味あったのかな?


【タツヤ】
「さてと、1日ぶりに家に帰るか」


朝は恭介さんの家から直接来たので、家に帰るのは昨日ぶりになる。
父さんから来たメールによると、昨日は母さんがかなり泥酔して帰ってきたそうだ。
家に着いてからも部下に対しての愚痴を言いまくっていたらしい。
何してんだあの人・・・。


【和子】
「そう言えばタツヤ君、昨日は上条君の家に泊まったんですって?」

【タツヤ】
「それ、母さんから聞いたんすか?」


俺が帰り支度をしていると、電子ボードの片づけをしていた和子さんが声を掛けてくる。
和子さんと母さんは今でも親交が深く、よく二人で飲みに行くらしい。
母さんが言うには、和子さんは父さん以外で弱音や悩みを打ち明けることができる唯一の人物だそうだ。
あの強気な母さんが弱音なんか吐くのかな・・・、ちょっと想像できん。

982 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/21(水) 00:59:43.57 ID:oZquWL+D0

【和子】
「そうよ〜、上条君元気してた?」

【タツヤ】
「はい、元気そうでしたよ」


和子さんは恭介さんや仁美さんが生徒だった時から、この見滝原中学で教師をしている。
二人の担任も務めていたことがあるらしい。
今でも、二人とは頻繁に連絡を取ったりしているそうだ。


【タツヤ】
「昨日は色々お世話になりましたし」

【大輔】
「何ぃ!?貴様!!何故俺を誘わない!!!」

【タツヤ】
「無茶言うな!!!」


お前あの二人と面識ないだろうが・・・。

それはいいとして、昨日は本当にお世話になった。
お祝いしてくれたり泊めてもらった事は勿論、何より恭介さんにはいらぬ心配をかけてしまった。

でも、正直なところ・・・昨日の夜のこと、よく覚えてないんだよな・・・。
恭介さんが俺のためにヴァイオリンを引いてくれたところまでは覚えているんだけど、後のことはさっぱり・・・。
また例の頭痛が起こったみたいだけど・・・う〜ん。


【和子】
「とりあえず、上条君に私も応援してるって伝えといて」

【タツヤ】
「あ、うん・・・じゃなくて、分かりました」


和子さんも、恭介さんの活躍には注目しているらしい。元担任だという事もあって、きっと思い入れも強いのだろう。

・・・ん?元担任ということは、ひょっとして・・・。


【タツヤ】
「和子さん」

【和子】
「先生、でしょ」

【タツヤ】
「・・・先生って、恭介さんの担任だったんですよね?」

【和子】
「ええ、そうよ?」

【タツヤ】
「じゃあ、暁美ほむらさんって知ってます?」


俺は、試しに和子さんに暁美さんの事を聞いてみる。
昨日、暁美さんも恭介さん達もお互いの事をクラスメイトだったと言っていたからだ。
ひょっとしたら二人の担任だった和子さんも暁美さんの事を知っているかもしれない。

983 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/21(水) 01:01:55.71 ID:oZquWL+D0

【和子】
「え・・・」


そう、軽い気持ちで聞いたのだが・・・・。


【和子】
「ど、どうしてあなたが暁美さんのことを・・・」


和子さんは暁美さんの名前を聞いた瞬間、驚いたような表情を浮かべた。

そしてそれは・・・昨日の恭介さん達と同じ反応だった。


【タツヤ】
「え、いや・・・ちょいと色々ありまして・・・」


どうして、暁美さんの名前を出すとみんな同じ反応するんだろう・・・?
まるで、俺が暁美さんの事を知っていることが意外そうな顔だ。
まあ、実際そうなんだろうけど・・・何の接点もないし。


【和子】
「そう・・・」

【和子】
「暁美さん、元気そうだった?」

【タツヤ】
「え?え・・・えぇ、まあ」

【和子】
「なら、良かったわ・・」


俺が答えると、和子さんは胸を撫で下ろすように安堵の表情を浮かべる。
なんか、昨日も同じこと聞かれた気がする・・・。なんで、みんなそんなに暁美さんのことを・・・。



【タツヤ】
「あの・・・暁美さんって学生時代に何かあったんですか?」

【和子】
「え!?ど、どうして?」

【タツヤ】
「いや、昨日も恭介さん達に似たような反応されて・・・」


恭介さんといい仁美さんといい、そして和子さんといい・・・昔から暁美さんを知っている人は、みんな同じ反応をしている。
暁美さんは今はどうしているのか・・・とか、彼女は元気にしているか・・・とか。
そんな風に聞かれたら、どうしても・・・あの人の過去に何かあったのかと考えてしまう。

あの人が他の人とは違うのは俺も知ってる。きっと色々あったのだろうと思うけど・・・。


【和子】
「・・・・」

【タツヤ】
「和子さん?」


俺が暁美さんの事を尋ねると、和子さんは黙ってしまった。顔を覗いてみると、凄く暗い表情をしている。

・・・やっぱり、何かあったのかな?

984 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/21(水) 01:04:57.46 ID:oZquWL+D0

【和子】
「・・・あれから、もうどのくらい経ったのかしらね・・・」

【タツヤ】
「え?」


暫く黙ったままだった和子さんが、まるで何かを思い出すかのようにして静かに口を開く。
そんな和子さんの表情は・・・凄く悲しそうで、視線は何処か遠くを見つめていた。

この表情・・・確か、恭介さんや仁美さん・・・それに、ゆまさんもしていたような気がする。


そんな違和感を覚えながら・・・俺は和子さんの言葉を待った。


【和子】
「タツヤ君はまだ幼かったから知らないだろうけど」

【和子】
「昔ね、この見滝原で・・・」

【和子】
「女の子達が次々と行方不明になったことがあったの」

【タツヤ】
「・・・・・え?」


しかし、その言葉に・・・俺は思わず声を漏らした。
・・・今、和子さんは何て言った?  女の子達が・・・・・・・・・・え?



『その『奇跡と魔法』を手に入れるためには・・・』



【和子】
「私のクラスの生徒も含まれてたから、よく覚えてるわ」

【和子】
「その子達は・・・結局見つかからなくてね」

【和子】
「警察も、捜査を打ち切っちゃったんだけど・・・」



『それ相応の『代償』を支払わなければいけないってね・・・』



それって・・・・まさか、そんな・・・・。

985 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/21(水) 01:06:25.64 ID:oZquWL+D0

【和子】
「その子達が行方不明になった事件全てに関わっていたのが・・・」


【和子】
「暁美さん、なのよ」



【タツヤ】
「・・・・」




【タツヤ】
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」




この時の俺は―――――――まだ知らなかったのだ―――



魔法少女達の抗うことのできない運命も――――――暁美さん達の悲しみも―――――



――――たった一つの奇跡の対価として支払われる―――――――大きすぎる代償も・・・。


986 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/21(水) 01:07:34.44 ID:oZquWL+D0

――――――――――――――――――――

\♪〜/ \♪〜/



ピッ

【ほむら】
「・・・・・」


【ほむら】
「もしもし」


『・・・・』


【ほむら】
「・・・うん」


『・・・・』



【ほむら】
「大丈夫、心配しないで」

987 :第3話「奇跡と魔法と、その代償」 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/21(水) 01:09:28.24 ID:oZquWL+D0



【ほむら】
「・・・・ごめんね」





【ほむら】
「お母さん」


ttp://www.youtube.com/watch?feature=endscreen&v=cH6NB2F-Jcw&NR=1


第3話「奇跡と魔法と、その代償」  fin


988 :次回予告 ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/21(水) 01:14:19.06 ID:oZquWL+D0


「私は、あなたが思っているほど優しくもないし、強くもない

 あなたを助けたのも、その場の成り行きよ

 私はいつでも自分だけの為に戦ってる。他の事なんてどうでもいいわ
 
 だから、これ以上私に関わらないで

 

 私の瞳に・・・『あなた』は映っていないのだから」


第4話「犯した罪 課せられた罰」
989 :BGM貼り忘れた ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/21(水) 01:15:58.83 ID:oZquWL+D0
>>988

ttp://www.youtube.com/watch?v=uUjX0qfYYdk&feature=plcp

990 :川´_ゝ`){最後までgdgdですまんね ◆7F2DwKbdfg [saga]:2012/11/21(水) 01:30:31.50 ID:oZquWL+D0
今回は残りレス数のあって、冒頭の挨拶は省略しましたすいません。
3話終了になります。お疲れ様でした。

なんとかこのスレ内で終わらせることが出来ました。有難う御座います。
そして、4話以降は2スレ目に続きます。

初めて立てたこのスレを無事に終わらせることが出来たのも、読んでくれる皆さんのおかげです。
まだ話自体は終わってませんが、改めて御礼を言わせて下さい。有難う御座いました。

さて、次スレですがスレ名を変えようと思っています。一応次のスレ名は

魔法少女まどか☆マギカ〜After Ten Years of History〜

を予定しております。
改変後+長編+オリキャラ無双と、人を選ぶ作品ではありますが、
これからものんびり更新していくので、時間潰し程度の軽いノリで読んで戴けると幸いです。


長々と失礼致しました。それでは次スレで。
お休みなさい ノシ
991 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/21(水) 07:54:12.97 ID:DbnSPDmEo
乙カレー
このスレはもう埋めるのかな
992 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/21(水) 08:01:07.40 ID:XkCNsL8Lo
おつおつ

>>991
次スレ誘導待ちに 999 くらいで維持しとけばいいんじゃね?
993 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/11/21(水) 17:13:07.65 ID:JLN4ija10
乙乙ー
いつも楽しく読んでるよ、次スレも頑張ってくださいな
994 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/21(水) 17:15:55.04 ID:sX/V9zrIO
先に立てたら?
一レス分のあらすじだけ書いて

感想書こうにも埋まっちまう
995 :川´_ゝ`){寒い ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/23(金) 01:38:48.07 ID:dp81wpXM0
夜遅くにこんばんわ>>1です。
いつも閲覧&コメ、そして応援有難う御座います。

とりあえず新スレ立ててきました。

魔法少女まどか☆マギカ〜After Ten Years of History〜【あれから10年】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1353601211/l50

4話冒頭投稿日はまだ未定ですが、また宜しくお願いします。
新スレ立てたので、此方はもう埋めて構いません。ご協力お願いします。

それでは、また新スレで。お休みなさい ノシ
996 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/11/25(日) 19:57:04.19 ID:INoRg4Vno
乙乙!
997 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2012/11/26(月) 22:06:57.32 ID:sQ2Tt+nAO
998 :川´_ゝ`){そろそろ埋めよう ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/27(火) 01:25:58.89 ID:Q2R/80SJ0
埋め
999 :川´_ゝ`){そろそろ埋めよう ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/27(火) 01:26:39.60 ID:Q2R/80SJ0
>>999
1000 :川´_ゝ`){そろそろ埋めよう ◆7F2DwKbdfg [saga sage]:2012/11/27(火) 01:28:03.99 ID:Q2R/80SJ0
>>1000
閲覧有難う御座いました。>>995の次スレでも宜しくお願いします。
1001 :1001 :Over 1000 Thread
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      ,ノ      ヽ =@           _,イ:
    '.o  r┐   *   ヽ、 ヽ、_     ,..-=ニ_
    =@   ノ       ノヽ、,  !..□ /     ヽ
     ヽ        .ィ'.  ,!    ハ/    、   `!、    七夕に…
      `ー-、_    く´ =@    /     ヽ  
         ,!     `!  l              ヽ、__ノ    このスレッドは1000を超えました。もう書き込みできません。
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A雑民の奴らを2、3人、血祭りにあげて引き摺り下ろして細切れにしてやる! @ 2012/11/27(火) 01:12:27.21 ID:oUbUhttpo
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【Fate】やる夫で聖杯戦争 @ 2012/11/27(火) 01:01:27.94 ID:ESzL85tdo
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ニート岡部「うはwwww」カタカタ まゆり「」 @ 2012/11/27(火) 00:57:00.77 ID:maiCgtyi0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1353945420/

健夜「年下の男の子を落とす100の方法 アラ卒寿」 @ 2012/11/27(火) 00:29:10.34 ID:bMxa8b+do
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1353943750/

【年末だ!】ここだけきのこたけのこ大戦 会議場★78【リア充撲滅だ!】 @ 2012/11/27(火) 00:20:38.77 ID:Wag2ZYm8o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1353943238/

男「もし俺が女だったとしたらどうする?」幼馴染「」ガタッ @ 2012/11/27(火) 00:10:59.81 ID:Cnrg2Qfp0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1353942659/

キリト「マドカ☆マギカ★オンライン……?」vol.5 @ 2012/11/27(火) 00:03:34.03 ID:8G4BintU0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1353942213/

【咲】京太郎「ネット麻雀で強くなる」淡「その3だよー!」【安価】 @ 2012/11/27(火) 00:00:56.84 ID:OgfqRY9fo
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