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一方通行「半額弁当だァ?」 -
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1 :
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(三重県)
[sage saga]:2011/12/04(日) 02:26:50.61 ID:AzEYozbn0
一方通行(アクセラレーター)
学園都市が誇る、最強の能力者。学園都市で7人居るレベル5の頂点に君臨する化物である。
彼の持つ反射の壁を越えた者は、片手で数えるほどしか居ない。
唯一人の少女を救う為、最強の化物の前に丸腰で立ち塞がった“幻想殺し”の少年。
反射の壁を破る為、異色の理論と自らの拳を用いて一方通行をギリギリまで追い詰めた“研究者”木原数多。
いまや考える冷蔵庫となった“未元物質”を生成する垣根帝督。
木原数多の“引き突き”を不完全ながら再現する事に成功した“忍”――杉谷。
黒翼を用いても、触れる事すら許されなかった別次元の“化物”エイワス。
本来、こちら側に舞い降りるはずの無かった天使“神の力”ガブリエル。
以上、計6――訂正しよう。未だ一方通行の反射の壁を越えることが出来たのは、例外か人外か変人くらいである。
だが、その一般人に対しては最強である筈の第一位が、スーパーの弁当売り場で買い物籠を頭を突っ込み、うつ伏せの状態で倒れている。
戦場に立ち、狂気の笑みを浮かべる彼のことを知る者がもし、この光景を見れば絶句し、自らの目を疑うだろう。
だがコレは現実である。彼は弁当の争奪戦に挑み、そして散った。
“オルトロス”と呼ばれた双子の少女とピアス男によって、彼の反射の壁は突き破られ、スーパーの床に打ち伏せられたのだ。
そればかりか、豚呼ばわりされながら蹴り飛ばされ、海岸に打ち上げられた魚の如く無残な姿のまま放置されている。
全盛期の彼ならば、スーパーごと吹き飛ばし、町ごと消し去っていた事だろう。
冷酷非情の第一位も随分と丸くなったものである。
「ねぇ。学園都市第一位なのに、フルボッコされた上に豚呼ばわりされるのってどんな感じ?
ねぇねぇどんな感じ? ミサカ的にはもっと屈辱的に罵られてるとこが見たいんだけど」
「……うっせェ」
「なんならコレを期にブタセラレーターって改名するのもいいんじゃね? 運気上がるかもよ。ギャハ☆」
科学と半額弁当が交差する時、売り場はカオスに包まれる。
1.5 :
荒巻@管理人★
(お知らせ)
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旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
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木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
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いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
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【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
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こんな恋愛がしたい 安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
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【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
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アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
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エルヴィン「ボーナスを支給する!」 @ 2024/04/14(日) 11:41:07.59 ID:o/ZidldvO
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713062467/
2 :
前書きと注意書き
[sage saga]:2011/12/04(日) 02:29:22.29 ID:AzEYozbn0
<前書き>
とある魔術の禁書目録とベン・トー(原作)のクロスオーバーです。
禁書からは一方通行と番外個体のペアが出張、ベン・トー側は新巻までのキャラが登場しますのでアニメ組は要注意。
佐藤と著莪は原作通り平常運行。
ギリードゥーは俺の嫁。
台本形式と地の文入りは半々で、食事と戦闘風景と著莪は地の文主体。
正直、クオリティーに関しては目を瞑っていただけるとありがたい。
仕事の合間を縫って、SS書いてるので不定期更新ですが、週に一回は更新していきたいと思います。
3 :
狼の掟
[sage saga]:2011/12/04(日) 02:31:58.65 ID:AzEYozbn0
需要と供給。その間で発生する微かなズレ。
そのズレの合間で生きる者たちが居る。
身銭、自らの生活、そして己の誇りを懸けて混沌が渦巻く狩場を駆けるものたち。
人は彼らを“狼”と呼んだ。
<狼の掟>
・店員が売り場から消える前に駆けるなかれ
・その夜に自分が食す以上に狩るなかれ
・狩猟者でないものを攻撃するなかれ
・獲物を捕ったものを襲うなかれ
・店に迷惑をかけるなかれ
『礼儀を持ちて誇りを懸けよ』
4 :
第一話 『新鮮緑豆もやし200g 前編』
[sage saga]:2011/12/04(日) 02:36:08.74 ID:AzEYozbn0
〜時は遡り半日前〜
黄泉川「旅行?」
番外個体「そ。バイクの免許取れたから、試運転がてらね」
一方通行「」ゴロン
黄泉川「ちゃんと計画は立ててるじゃん?」
番外個体「とりあえず、持ち金無くなったら帰ってくる感じでー」
打ち止め「ミサカもミサカも行ってみたーい!」
番外個体「残念ー。このバイクは二人乗りだから、上位個体は乗せてやんねー」
打ち止め「ずるいずるいー! ってミサカはミサカは、足をバタバタさせて不満を露にしてみたり」
芳川「それはいいけど、一方通行は外出できるかしら? 腐ってもレベル5の第一位なんだから、そう簡単に外出できないんじゃない?」
番外個体「そこらへんは大丈夫。ミサカが先週、紙書いて出したら受理されたよん。学園都市も脇が甘いねー。ケケケ」
一方通行「」
黄泉川「ま。いい社会勉強にもなるじゃん。くれぐれも現地の人に迷惑かけないようにするじゃん?」
番外個体「あいさー。じゃ、この白髪借りてくね」
一方通行「」ズルズル
5 :
第一話 『新鮮緑豆もやし200g 前編』
[sage saga]:2011/12/04(日) 02:40:08.73 ID:AzEYozbn0
一方通行「っ――! 白昼堂々拉致とは、いい度胸だなァオイ。つーかさっさとロープを解け。クソッタレが!」
番外個体「保護者の許可取ったんだし、拉致じゃないよん」シュル
一方通行「チッ……学園都市第一位の私事外出が、そう易々と通る訳ねェだろうが」
番外個体「私事でのお願いならね。上層直々の“命令”だったらどうかにゃーん?」
一方通行「あァ?」
番外個体「ミサカが作られた目的を忘れたわけじゃないよね? 自爆装置は消えても、上層部とのラインは切れなかったって事」
一方通行「……行き先は?」
番外個体「指示された場所に行って、そこからは代理人が教えてくれるってさ」
一方通行「さっさと行くぞ。そいつの面ぶん殴る」
番外個体「ちゃんとカルシウム取ってるー? 沸点低いよ。あ、そうそう。先に聞いておきたいんだけどさぁ」
一方通行「あァ?」
番外個体「“狼”――って知ってる?」ニチャァ
6 :
第一話 『新鮮緑豆もやし200g 前編』
[sage saga]:2011/12/04(日) 02:51:06.77 ID:AzEYozbn0
師走である。師走と言えば、坊主も裸で仏事に走り回ると言う――。
……何か違う気がするが、そのくらい忙しい時期であり、風邪をひきやすい時期でもある。
僕の通う烏田高校も例に漏れず、ウイルスが蔓延していた……ただし、流行っているのは風邪ウイルスなどという雑魚キャラではなく、
インフルエンザウイルスというラスボスレベルのウイルスだで、
しかもあろう事か、新型である。
更に運良く……いや、運悪く先生達の間でも流行っているらしく、あの万年健康体と思われたダンドーさえも病床に伏しているらしい。
その為、今日は昼から臨時休校となった。だが、おそらく明日からは学校閉鎖となる事は間違いないだろう。
つまり、今日から何日間は超大型連休となる(予定)筈である。きっと、おそらくは。
ただ、男子寮はインフルエンザウイルスの社交場となっている事だろう。
ちなみに内本くんからは一緒にインフルプレイを楽しまないか等という謎の勧誘を受けたのである。
しかし、熱に魘され……いや、喘ぐ内本君を隣で見る趣味は無い為、丁重にお断りした。
流石に、ウイルス溢れる寮に戻るような自殺行為だけは避けたいところだ。
7 :
第一話 『新鮮緑豆もやし200g 前編』
[sage saga]:2011/12/04(日) 02:55:59.69 ID:AzEYozbn0
インフルエンザと言えば小学校のクラスメートの石岡君の話を――と、言いたいところなのだが。
実のところ、石岡君のインフルエンザに関する面白い話と言えば、インフルエンザに罹り医者から自宅で安静するように。
と診断を受けながらも、給食の時間にランドセルを背負って登校してきた時の事くらいである。
しかも運の悪い事に、その日の午後は体育でなんと長距離走だった。
それでも、「広部さんの為に走りきる」と言い切った石岡君の目は決意で溢れていた。
当然、走るどころか立つのもやっとな病人に、長距離走など不可能に近い。
トラックの3分の1あたりで、完全に足は止まって呼吸もまともに出来ていない状態となってしまった。
だが、それでも石岡君は止まらなかった。発熱による汗なのか運動による汗なのか……。
とにかく滝のような汗を滴らせ、涙を滲ませながら、再び走り始めたのである。
その姿に、僕らクラスメートだけでなく体育教師の胸を打たれた。
同情の声は歓声に変わり、煽っていた友達たちも皆、石岡君を勇気付ける為に拍手をし始める。
石岡君の不屈の意思が、ただの体育の授業を彼の一人舞台と変えたのである。
しかし、それは同時に後戻りが出来ない地獄のロードの始まりだった。
もうゴールしたクラスメート達はトラックの内側で「諦めるな!」「ゴールを目指せ!」と暖かい声援が送られ、
体育教師に至っては、完全に趣旨を忘れてしまっているのか、途中で膝を付き倒れそうになった石岡君に対して
「まだだ! まだ立てる! カウントは終わっていないぞ!」等と死人寸前な石岡君に鞭を打っている始末である。
更に、運動場の脇を通る道路ではどこで聞きつけたのか暇を持て余した老人たちが集い、まるで競馬でも見ているかのような熱狂的な応援を石岡君に浴びせていたらしい。
8 :
第一話 『新鮮緑豆もやし200g 前編』
[sage saga]:2011/12/04(日) 03:00:51.17 ID:AzEYozbn0
そんな四面楚歌な状況にも拘らず、石岡君は走り続けた。大好きな広部さんの目にその雄姿を焼き付けたかったのだろう……。
――実のところ、広部さんはインフルエンザで欠席していたのだが、その事を彼に伝えたクラスメートは一人も居なかった。
“ここで事実を言えば、きっと石岡君は二度と立ち直れなくなってしまう”
と、僕たち全員が同じように感じていたに違いない。そう、このとき僕らは確かに心と心で繋がりあえたのだ。
さて、その死に物狂いで頑張った石岡君の結末なのだが。
本来ならばクラスメートの拍手と声援を浴びながらゴールテープを切り、感動のフィナーレという、
NHKで二時間半のドキュメンタリー番組を作ってもらえそうな、最高のゴールが演出される予定だった。
しかし結局、石岡君は半分ほど走って倒れてしまうと言う、なんとも良くありがちなオチになってしまったのでその辺りは割愛しよう。
結局、何が言いたいのかと言えば、人間何事も諦めてはいけないが、引き際も肝心と言う事だ。
そして、今日から無期限の連休が始まると言う事は――。
そう。今の宿無しの状況を使って、先輩の部屋に泊めてもらうのもアリなんじゃないだろうか!
9 :
第一話 『新鮮緑豆もやし200g 前編』
[sage saga]:2011/12/04(日) 03:08:38.17 ID:AzEYozbn0
以前もお見舞いという形で部屋に入った事はあったが、今回はプライベートでいける。
白粉という名のクリーチャーは行く前に沈めてしまおう。それなら大丈夫だ何も問題ない。
将棋、囲碁、チェス、ポーカー、ブラックジャック、神経衰弱。
すべて苦手だし、どうせ全敗だろう。だがそれがいい。僕は先輩が微笑む顔が見れればそれで構わない。
あの笑みを見るだけで、清々しい気持ちになれるのだから。
夕飯はサバの味噌煮を買って二人で交換し合って食べるのもいいかもしれない。
そして夜中……先輩はベッドの上で僕の肩にもたれ掛かり、甘い吐息交じりに僕の耳元で愛の言葉を囁き。
愛し合う二人はベッドの上で永遠の愛を誓い、心身ともに一つに――!
「って予定だったのに、なぜ僕は著莪の部屋のベッドに居るんだろうな」
「おーい、佐藤。愚痴愚痴言ってないで。弁当食べてゲームしよう」
そう言って、癖のある長い金髪を揺らしながら、著莪はスーパーの袋から弁当を取り出し電子レンジに入れた。
まあ、そんな甘い幻想をぶち殺すが如く、白梅梅による女性陣のみのお泊り会が開かれ、案の定僕は蚊帳の外である。
今頃、白梅は先輩や白粉と色々楽しんでいる頃だろう。ああ、もし幽体離脱が出来れば先輩の様子を見に行けるというのに!
尚、著莪は白梅から逃げるために、僕と一緒に里帰りするという、苦しい言い訳でお泊り会を回避したらしい。
言い訳をするなとは言わないが、なぜ僕を道連れにしたのか。
まあ、寮に居場所が無い僕にとってはある意味、渡りに船だったのだけど。
10 :
第一話 『新鮮緑豆もやし200g 前編』
[sage saga]:2011/12/04(日) 03:13:17.70 ID:AzEYozbn0
壁を見ても先輩の制服は掛かっていない。その代わりに赤と黒の二つのスカジャンが並んでハンガーに掛けられている。
何時間待てども、風呂場からバスローブ姿の先輩が現れる事はないだろう。
現実に帰れば淡い幻想など、いとも容易く打ち砕かれてしまうものだ。
そう、妄想の中ではサバの味噌煮弁当だった夕食も今は――。
「弁当? 著莪、お前にはこのスティックパンが弁当に見えるのか?」
普段なら、どん兵衛を買って腹を満たしているが、車が“不慮の事故”で壊れてしまった親父からの仕送りが激減してしまった。
その為、いまや安くなったスティックパンを齧りながら飢えを凌ぐのがやっとだ。
腹の虫は準備運動バッチリ! でも金が無いので半額弁当を手に入れることは不可能。
どんな苦行だよ。と、ため息を漏らしながら、黙々と齧りつく。ちなみに、この食習慣は一昨日から続いている。
9本あったパンも今では残り2本となって非常に危うい状況である。
しかも、パンを買った時点で残金が既に100円を切ったのだ。果たしてこの無期限連休を生き残れるのか……。
ああ――考えただけでも憂鬱になる。
そんな僕をよそに、著莪は仕事を終えた電子レンジから弁当を取り出し、蓋を開けた。
『から揚げニンニクスタミナ弁当』なんとも食欲をそそるネーミングだが、今置かれている状況では拷問にしかならない。
11 :
第一話 『新鮮緑豆もやし200g 前編』
[sage saga]:2011/12/04(日) 03:17:27.93 ID:AzEYozbn0
衣揚げされた熱々ジューシィーな鶏のから揚げと、その上に散らされたガーリックチップ。ふんわりと炊き上げられた白米。
その脇には煮詰められ、更に赤みが増した甘い香りを漂わせるニンジンときつね色になるまで炒められたタマネギ。
そして、それらの下には炒められたもやしが敷き詰められている。
メインのから揚げから漂う香ばしいニンニクの香りと、衣から染み出る肉汁の匂いに釣られ、つい涎が出てしまう。
それに気付いたのか、著莪はにやりと笑みを浮かべ、小振りのから揚げを割り箸でつまみ、僕の目の前へと持ってきた。
食欲をそそる香りがより一層強くなり、空腹感が極限を超えそうになる。
「なにー? 佐藤も食べたいの?」
「――食いたい」
「んー仕方ないなぁ。じゃあ、貸し一つな」
そう言うと、著莪は少し小振りのから揚げを箸でつまみ上げ――
自分の口へと運んだ。
「おい」
12 :
第一話 『新鮮緑豆もやし200g 前編』
[sage saga]:2011/12/04(日) 03:30:49.65 ID:AzEYozbn0
お前、一番やっちゃいけねー事をしたなぁぁぁぁ!!!! と、怒りをぶつけようとした瞬間、著莪の顔がずいっとこちらに寄ってきた。
悪戯っぽい笑みでから揚げを咥えながら、猫のように四つん這いの状態で右手を差し出してくる。
ああ、なんて既視感……。
「……食えと?」
なんとこれを食えと申すか。
「はっはほふへっへ」
「もう何言ってんのかわかんねーよ」
お前は僕をどうしたいんだよ。
以前はビーフジャーキー。今日はから揚げ、若干ランクアップしているように見えるが、結局お手とおかわりさせてる時点で扱いが一緒だ。
だが、コレを食べなければこの空腹感を鎮める事はできないだろう。
屈辱と空腹――天秤に掛けるまでもない。僕は迷わず空腹を満たす方を選んだ。
お約束どおり、著莪が差し出している右手にタッチをし、戦利品を受け取った……口で。
カリッという衣がはじける音共に、ジワリと肉汁が染み出る――これは、衣の外にガーリックチップが振ってあるだけじゃない。
肉の方にもニンニクの味がしっかりと染み込んでいる。
もちろん、ニンニクだけではなく、旨みの凝縮された鶏肉も肉厚でサクサク、あれだけ肉汁が出ていたと言うのに、
噛めばまた中から肉汁が染み出てくる……その肉汁ですら鶏とニンニクの旨みを同時に閉じ込められていて、最高にうまい。
たった一つのから揚げだというのに、空腹感は満たされ……そしてまた渇いた。
くそっ。ご飯も食べたくなってしまったぞ。ニンニクの食欲促進効果が半端無いじゃないか!
そんな葛藤を遮る様に、唇にぺろり。と生温かい感触が……どうやら、口の周りについていた衣を著莪が舐め取ったらしい。
本人は満足そうに笑みを浮かべながら、まだ容器に残っているから揚げを口に運んでいる。
行動に移す前に口で言え口で。お前は口より先に舌が出るタイプか。というか、そんなにから揚げが惜しかったのだろうか……。
13 :
第一話 『新鮮緑豆もやし200g 前編』
[sage saga]:2011/12/04(日) 03:38:10.10 ID:AzEYozbn0
「な? うまいだろ?」
「ん、うまい。むちゃくちゃうまい」
「だろー? じゃ、あたしも貰うね」
きらり、と著莪の眼が光り僕が大事に抱えていた袋に入っていた最後のスティックパンをひょい、と奪い取った。
「あ、おい!? それ最後の一本なんだぞ」
「カロリー的に見ればから揚げの方が高いんだし、公平公平」
「いや違うだろ! 全然、公平じゃないぞ」
カロリーの問題じゃない。僕にとってはそのスティックパン一つでこれからの生活が決まるってのに!
だが、そんな必死な抵抗もむなしく、僕の最後の希望が著莪の口の中へと吸い込まれていった。
先輩。僕はもう駄目かもしれません。呟きながら、僕はベッドの上で俯く。
「仕方ないなー。ほら、ご飯もあげるから。コレで文句なし! ほい、あーん」
そう言って、著莪は僕の口元にご飯が盛られた箸を近づける。
というか、さっきもコレで良かっただろうに。
と、愚痴を零しそうになるが、 コイツの気分が変わってしまうと本気でお預けになりそうなので、お言葉に甘える事にした。
14 :
第一話 『新鮮緑豆もやし200g 前編』
[sage saga]:2011/12/04(日) 03:52:12.09 ID:AzEYozbn0
どうやら、白米の方にもガーリックの味を染み込ませているようである。
それとは別に、から揚げの衣から出たニンニクが絡んだ肉汁も染み込み、
噛むほどに、ニンニクと鶏の――さっきとはまた違ったマイルドな旨みが口いっぱいに広がった。
おそらく、脇に盛り付けられた野菜は口直しのために、少し甘めの味付けになっているのだろう。
ニンニク弁当という名に相応しい、まさに徹底されたニンニク攻勢。
文句があるとすれば、これをお腹一杯食べれないという事くらいだろうか。
仕送りが入ったら、この弁当を真っ先に取ってお腹一杯食べよう。そう腹の虫に誓った。
「よしっ。お腹一杯になったし、佐藤! 先にシャワー浴びてこいよ!」
「いや逆だろ普通」
そもそも、僕はいまだに空腹だ。腹の虫がニンニクのおかげで更に活性化して、胃の奥で大合唱しているというに。
「何なら一緒に入る?」
「……――いや。先に入る」
決して、僕は悩んでいたわけじゃない。予期せぬ言葉に頭が付いていかなくなって、フリーズしていただけだ。
断じて悩んでいたわけではない。ほんの少しだけ、久しぶりに一緒に入ってもいいかな等と思っていたわけでもない。
目の前に居る女の子に――たとえ幼馴染であろうが、従姉妹であろうが「一緒にお風呂入ろっ」等と言われて、迷わない男なんて居ない。
僕はむしろ煩悩に打ち勝ったのだから誇ってもいいレベルじゃないだろうか。
そうだ。僕は、変態ではなく紳士であり先輩一筋なのだ。こんな誘惑に負けるわけにはいかない。
そこまで考えて、ふと重大な事実に気付いてしまった。
15 :
第一話 『新鮮緑豆もやし200g 前編』
[sage saga]:2011/12/04(日) 04:02:00.17 ID:AzEYozbn0
「げ。そういや、着替え持ってきてなかった」
「あたしの貸そうか? 大きめのジャージあるから」
「おっ。サンキュー」
軽く返事をして、箪笥から黒い大きめのジャージを取り出した……が、よく見ると中学の時の僕のジャージだった。
どこ探しても見当たらないと思ったら、お前が持ってたのか著莪。
よくある探しているうちは見つからないが、どうでも良くなった時に見つかるあの現象。
まあ、色々言いたい事もあるが、今日は久しぶりに徹夜でSEGAに入り浸るとしよう。
脱衣場で服を脱ぎ、棚からタオルを取り出して浴室に入り、シャンプーで髪を洗う。
僕がいつも使っているような、リンスinシャンプー等ではなく、香りつきの高そうなやつである。
なんだか、格差を見せ付けられた気がして悔しいので、少し多めに使ってやるか。
そんな貧乏臭い贅沢をしたあと、僕は風呂に入って湯船に15分ほど浸かった――。
そして……シャワーを浴びてしばらくして、明日からの飯がなくなったことを思い出し、泣いた。
16 :
◆lHikOiUyw1Hq
[saga]:2011/12/04(日) 04:16:23.32 ID:AzEYozbn0
はい。前編終了ー。
まだクロスしてないけど、後半はしっかりクロスするので安心して欲しい。
あと、ベン・トー側だけ描写が濃いのは完全に作者の都合です。申し訳ない
正直、黒子の半額弁当の人の二番煎じみたいな感じですが、開き直って独自路線で突き進みます。
ちょっと無茶な導入部だった気がしないでもないけれど、このまま推し進めます。
今月10日には禁書新刊が。そして24日にはベン・トーの新刊が発売になるわけです。
目指せラノベ売り上げワンツーフィニッシュ。頑張ればきっと何とか……なりませんかね?
さて、ちょっと謝りたい事があるんだ。
俺、SEGAじゃなくてソニー信者なんだ。だから、SEGAネタは控えめに行く
本当にすまない
17 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(長屋)
[sage]:2011/12/04(日) 04:33:05.10 ID:OBlL3VhSo
ダメだ。こんなクソスレなんて見ては。
まるで3年前の石岡くんを見ているようだ。
僕がまだ中学二年の時著莪とデスクリムゾン二人プレイタイムアタックに挑んでいた時に空気の読めない石岡くんが僕の家に遊びに来た時の事を思い出す。
著莪が右上に標準がずれたガンコンを使用し標準がズレてるとは思えない命中率で雑魚チラシを行い僕がコントローラーを使用しxボタンとyボタンを交互にピアノ打ちを行い火力を担当するという
見る人がみれば神に挑む二人の勇者が刹那の戦いを行っているように見える戦いを繰り広げている横で石岡くんは暇そうに2ちゃんねるを見ていた。
著莪と僕は人の家で2ちゃんねるかと少しムカっとしていたが邪魔されないならまあいいかと思って放置していたのが悲劇の始まりだった。
僕と著莪の圧倒的チームプレイによりラストステージに行った瞬間、石岡くんが『うわぁ!?』と言う間抜けな声と共に倒れこんだ。
そのような声に集中力が切れる僕と著莪では無いが倒れこんだ先がパワーメモリーを刺しているSSだったのがまずかった。
僕と著莪は真っ青になりながら窓から石岡くんを投げ捨て、パワーメモリーの様子をみる。
知ってる人は知ってると思うがSSのパワーメモリーは接触が緩いとすぐにデーターが飛ぶ。悲劇は…起きていた。
力無くうなだれる僕、そして静かに涙する著莪。今までの僕らデーターに対し、静かに黙祷を行ったのを今でも思い出せる。
えっと、なんの話をしていたんだっけ?そうそう、クソスレの話だったよね。その時石岡くんがやってたのがVIPでこんな感じのクソスレを立てて、その時にビックリ系のブラクラを踏んだんだ。だから僕は
>>1
に警告したい。クソスレなんて建てても悲劇しか起こらないと…
18 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(長野県)
[sage]:2011/12/04(日) 05:47:03.33 ID:uP/mWtv3o
おつ期待
こんな時間に読むんじゃなかったな腹へった
19 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(関西・北陸)
[sage]:2011/12/04(日) 14:57:33.43 ID:D6mNwErAO
一方さん能力使っちまえよ
20 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
[sage]:2011/12/05(月) 19:14:54.77 ID:6isd9PcWo
>>1
乙
ベントー原作の雰囲気を表現出来てていいな
それと同時にアサウラの弁当描写の凄さを改めて実感させられるわ
21 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
:2011/12/10(土) 09:17:57.53 ID:3sdXfq3DO
土御門「期待するにゃー!しかし、黒子のは強敵だぜぃ。
上やん×黒子の王道ですたい」
22 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/10(土) 13:27:32.62 ID:ZS/hB+Kxo
一行目からなのですっごい気になってしまった
読みはアクセラレーターではなくて、アクセラレータだ
23 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
:2011/12/11(日) 03:15:48.63 ID:uAOhFXCM0
アニメしか見てないけど原作のベントーで女相手にガチで顔面殴る男っている?
上条さんならしそうな気がするんだよな。そして、二つ名は鬼畜の女殺しとか呼ばれたり
24 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/11(日) 04:02:21.60 ID:dACajhe2o
どっかで見たことある文だけど気のせいだな!うん!
とりあえず乙
25 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/11(日) 04:08:39.94 ID:oWxTvCYWo
>>23
女に膝蹴りするレベル
文と弁当の描写が原作に似かよってて結構読みやすい
車の事故ってのはドラマCDのアレか。ついでに訂正しとくとベン・トー!新刊発売は22日だ。24日はSD&GO!2号の発売日だな
26 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/11(日) 09:22:22.99 ID:X6wZSVXT0
期待して開いたが黒子と上条とあわきん出ないんかよ
27 :
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)
[sage]:2011/12/11(日) 18:08:50.28 ID:gZJUICJDO
>>23
むしろ腹パン連打からのフィニッシュ決めそうな勢い
狼なら木原神拳つかえそう
乙
28 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長野県)
[sage]:2012/01/08(日) 23:48:17.50 ID:6J5kuFheo
まだかよ
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